バカとテストと神様 (SSSS)
しおりを挟む

プロローグ

僕は車に轢かれてしまった。

原因は車に轢かれそうになっていた少女を助けた為だ。

でも、後悔はしてない。

僕は死んでしまったけどその少女は救えたのだから。

 

『本当に?』

 

声が聞こえた。

僕はその声を探そうと周りを見渡したけど声の主は見つからなかった。

 

『あ~ごめんごめん、今姿を見せてあげるよ』

 

そんな声が聞こえた瞬間、僕の目の前に少女が現れた。

少女の見た目を一言で説明すれば美人だ。

少女の髪は綺麗な金色でその金色の髪の毛は肩まで伸びていた。

目の色は髪と同じく金色で透き通る様な瞳だ。

 

「どうかしたの?」

 

目の前の少女がそう言って不思議そうな顔をして僕を見ている。

どうやら少女に見惚れていたらしい。

僕は『大丈夫だよ』と言いながら周りを見渡す。

そう言えばここはどこだろう?

そんなことを考えていると

 

「ここは死んだ人間が天国に行くか地獄に行くかを審査する場所だよ」

 

目の前の少女がそう言って来た。

ってあれ?今、心読んだ?

 

「そりゃ読めるよ~私、神様だもん」

 

「へぇ~神様なんだ~」

 

って、神様?神様ってあの天国からずっと人間を見守ってるって言う神様?

 

「そうだよ~♪」

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

 

僕が驚愕の表情を浮かべていると神様(自称)は爆笑しながら『その反応が見たかったんだよ~』とか言っていた。神様って意地悪な人が多いのかな?

 

「失礼だな~私はそんな意地悪じゃないよ~」

 

「充分意地悪だと思うよ。と言うか心を読まないでよ」

 

「あはは~ごめんごめん。それよりさ~」

 

神様はそこ一旦切って僕の方に近付いてくる。

そこで僕は何故だか嫌な予感がした。

 

「さっき質問に答えてくれない?本当に後悔してない?」

 

何故嫌な予感がしたのか理由が分かった。

僕の心の中が見透かされそうだったからだ。

 

「僕は後悔なんて『嘘だね』う、嘘じゃない!」

 

「私は神様だよ?嘘なんてすぐに分かるよ。

それに後悔するのは悪いことじゃないよ」

 

確かに僕は後悔してる。

だって……僕はもう大好きな仲間達と会えないのだから。

 

僕の悪友の雄二。

 

とても優しい姫路さん。

 

偶に女の子らしい仕種を見せる島田さん。

 

誰かの写真を取ろうと常に狙うムッツリーニ。

 

女だと言われて必死に否定する秀吉。

 

皆の顔を思い出して涙を流してしまう。

もう一度……もう一度雄二達に会いたい。

会って色々話してバカ騒ぎをしたい。

僕は……僕は……

 

「生きたい……!」

 

でも、僕は死んでしまった。

だから、雄二達にはもう会えない。

そんなことを考えていると暖かい感触が僕を包み込んだ。

神様が僕を抱きしめてくれたんだ。

 

「君のその思いは当然の物だよ。君はまだ若いんだから」

 

僕の心が安らいでいく。

神様の温かい感触が僕の心を癒してくれる。

少しそうしていると神様が

 

「君はもう一度生きることが出来る」

 

そう言って来た。

 

「本当!?本当に僕はもう一度生きることが出来るの!?」

 

神様はその問いに静かに頷いて答えた。

それを見て僕の心から悲しみと言う感情が消えて喜びと言う感情が生まれた。

また皆と会える。その喜びが僕の心を高ぶらせた。

 

「個人的なお願いをしても良いかな?」

 

神様がそう尋ねて来たから僕は心を落ち着けて頷く。

神様は『ありがと』と返事をして少し深呼吸をした後こう言って来た。

 

 

 

「私の恋人になって!」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

一話 試練

ここは天国の宮殿。

え?何でそんな所に居るかって?

それじゃあ、何でここに居るのか順を追って説明しようか。

 

 

時は少し戻り

 

 

「えっと……何て言ったの?」

 

多分聞き間違いだろう。そう思って聞き直す。

だって神様が恋人になってなんて言う訳……

 

「私の恋人になって欲しいの」

 

言ってたぁぁぁぁぁぁぁぁっ!

何で!?何で僕なんかとなの!?

 

「ずっと天国から吉井君のこと見てて吉井君のこと好きになっちゃったの」

 

勝手に心を読まないでとかプライバシー侵害だよとかそう言うツッコミは全て置いておこう。

 

「本当に僕なんかで良いの?」

 

僕は学園で観察処分者に認定される程の問題児だ。

そんな僕が神様に釣り合う訳がない。

でも、神様は

 

「吉井君が良いの。だから、お願いします」

 

そう言ってくれた。

だからか分からないけど……僕は頷いて

 

「こちらこそお願いします」

 

そう答えた。

神様は涙を流しながら

 

「ありがとう、吉井君!」

 

そう言って僕に抱きついて来た。

それを見て僕は幸せ者だと思った。

だって、僕なんかと付き合えるってだけで目の前の神様は涙を流して喜んでくれたんだから。

少し経って神様は顔を紅くしながら

 

「ごめんね、ちょっと取り乱しちゃって」

 

そう言いながら僕から離れた。

あ、可愛い……

って

 

「もしかして読めた?」

 

「うん、ばっちりと♪」

 

うわぁぁぁぁぁっ!やっちゃったぁぁぁぁぁっ!

良し、無心になるんだ!そうすれば心を読まれない!

 

「ふふっ、本当に吉井……明久君って可愛いね」

 

無心……無心……

 

「そう言えば明久君に私の名前って名乗って無かったよね?」

 

むs……そう言えばそうだった。

折角彼女になるんだから名前を知っておかないとおかしい。

 

「私の名前は『ブラフマー』宇宙の創造を担当する神で渾名はイタリア語で創造を意味する『クレアツィオーネ』とかそれを縮めた『クレア』だよ。明久君は私の彼氏になるんだから『クレア』って読んで欲しいな」

 

「分かったよ。よろしくね、クレア(ニコ)」

 

「う、うん///」

 

?何で顔を紅くしたんだろう?

 

「うん、分かってたよ。明久君がそう言う反応をとるくらいね……」

 

今度は遠い目?何でだろう?

 

「はぁ……」

 

今度はため息か。一体何なんだろう?

って、無心にならないと……

そんなことを考えて心を無にしようとしていると

 

「そんなに心を読まれるのが嫌なら読まれないようになる?」

 

クレアがそう言って来た。

 

「出来るの?」

 

出来るならすぐになりたい。

そして僕のプライバシーを守りたい。

 

「うん、出来るよ」

 

「ならなりたい」

 

「ふふっ、分かったそれじゃ、行こうか」

 

そう言って僕の手を握って来るクレア。

うぁ……女子に手を握られたのって久しぶりだよ……

はっ!しまった!

 

「ふふっ」

 

うわぁ……完全に読まれた……早く心が読まれないようになりたい……

そんなことを考えていると目の前に相当大きな門が見えてきた。

大きさは大体僕が住んでるマンション位の大きさかな?

と言うかこの門開くのかな?

 

「開くよ。門は開く為にあるんだから」

 

そう言いながらクレアは門の前に出る。

だから、心を読まないでよ。

そんなことを考えていると

 

「アテン~!遊びに来たよ~!開けて~!」

 

そう叫んだ。

まさか、そんなんで開く訳……

 

『分かりました~!待っててください!』

 

そんな少女の声が聞こえて門が開いた。

え、そんなんで開くの?

 

「ね?開くって言ったでしょ?」

 

そう言いながらクレアは門の中に入って行った。

ここでは常識が通じないと思っておこう……

そう思いながら門の中に入る。

すると

 

「「嘘!?」」

 

そんな驚愕の声が聞こえた。

何事かと見ると中にはクレアと紫色の髪をした大人しそうな子が驚愕の表情で僕を見ていた。

あれ?ボク何かした?

 

「えっと……その門から内に入れる人は指で数えられる程も居ないんです」

 

「????」

 

意味があまり分からない。

 

「あのね、その門はある特殊な術がしてあって神様もしくは神様の素質がある人じゃないと入れないの。

神様の素質がある人でも入るには頭痛程度の抵抗があるんだけど……何の抵抗もなかったよね?」

 

「うん」

 

特に頭痛とか苦痛があったとかそう言うのは無かった。

 

「それってつまりね?相当上級の神様になるってことなの」

 

「上級ってどれ位?」

 

「独断で死んだ人を一万人は生き返らせられる位は」

 

人を蘇らせられるのがどれ位すごいのか良く分からないけど二人の表情から余程凄いことだって言うのが分かった。

 

「これなら吉井君は相当上級の神様になれますね」

 

大人しそうな少女……確かアテンだったかな?がそんなことを言った。

僕は神様になろうと思ってる訳じゃないんだけどな……

すると僕の心を読んだクレアがこんなことを言った。

 

「明久君、神に心を読まれないようにするには神になるしかないの」

 

「へぇ~そうなんだ。って僕も神様になれるの?」

 

「なれますよ。そもそも人は死んだ瞬間にもう神としての末席に座っているんです」

 

「大抵の人間は気付かない内に転生しちゃうんだけどね」

 

つまり、今の僕も神様の末席に座ってるってことか。

末席って確か最下位の座席って意味だったよね?

……二人共、そんな目で僕を見ないで……

 

「と、とにかく、吉井君には立派な神になってもらう為に試練を受けてもらいます」

 

「試練って?何をするの?」

 

僕がそう尋ねるとクレアが俯いた。

?どうしたんだろう?

 

「吉井さん、あなたには地獄に行って貰います」

 

「え!?」

 

地獄!?地獄ってあの悪いことをした人が行くって言うあの地獄!?

 

「そうです。その地獄に行ってあなたには試練を受けてもらいます」

 

「……試練ってどんな?」

 

「七千度の熱湯に肩まで浸かって一年間幽閉させてもらいます。

その間人間界では時間は十分程度しか進みません」

 

クレアの肩が震えたのが見えた。

多分試練を受けたか見たんだろう。

つまり試練は相当辛いと言うことだ。

……やってやる。

 

「「え?」」

 

二人は僕の心を読んだのだろう。

信じられないといった表情で僕を見ている。

 

「心を読めなかった?僕はその試練を受けるよ」

 

「あ、明久君、本気!?あの試練は見ているだけでも十分拷問だよ!?

それを受けるだなんて『良いんだよ』え?」

 

「心を読まれたくないからとかそう言う理由だけじゃない。

僕はクレアと同じ場所に居たいんだよ。

男の勝手なプライドかもしれない。

それでも君と同じ場所に居たい。

だから僕は試練を受ける」

 

僕がそう言うとその場に沈黙が流れる。

少ししてその沈黙を破ったのは……

 

「分かったよ、明久君。私はもう何も言わない」

 

クレアだった。

クレアは僕が試練を受けることを認めてくれた。

僕は心の中で感謝の言葉を告げながらアテンに近づく。

 

「そう言う訳だよ。僕は試練を受ける」

 

僕がそう言うとアテンは少し思案顔になってから一枚書類を取り出してそこに判子らしき物を押す。

するとアテンはそれを僕に渡して

 

「あなたが無事試練を乗り越えることを祈っています」

 

そう言ってくれた。

僕は『ありがとう』と返事をしてその書類を受け取る。

そして僕達はそこから出た。

 

 

地獄

 

 

地獄に着いた僕達は試練を受ける場所を見下ろしていた。

その光景はその名の通り地獄絵図。

地獄の裁きを受けている罪人達が叫び声をあげて助けを求めている。

 

「明久君……これを首にかけて」

 

そう言ってクレアが僕に渡したのは十字架の首飾り。

 

「お守りにして」

 

「ありがとう、クレア」

 

僕はそう言って首飾りを首にかけた。

 

「それでは吉井明久さん、こちらへお願いします」

 

そう言ったのは案内人。

罪人にちゃんとした裁きを与える為に居るらしい。

 

「分かりました」

 

僕はそう返事をして案内人について行く。

すると服の袖が引っ張られる感触がした。

振り向いてみると涙目のクレアがそこに居た。

僕は心を読むことは出来ない。

でも、この時は何が言いたいのか分かった。

 

『行かないで』

 

そう言いたかったんだろう。

僕はクレアの耳に口元を近づけこう言った。

 

『必ず帰るから』

 

そう言って僕は案内の後を追った。

そして少し歩いていると少し熱くなってきた。

目の前に先程罪人達が入っていた沼があった。

 

「さて、入るとするかな」

 

そう言いながら少し体を動かす。

体を動かしたのは準備運動がしたかった訳じゃない。

震えている体を誤魔化す為だ。

 

「お洋服をお預かりします」

 

案内人のその言葉で覚悟を決める。

僕はクレアに言ったんだ。

必ず帰ると……

そう言ったんだ。

 

「それじゃ、行くか」

 

僕は服を脱いでゆっくりと地獄の沼に入る。

 

「っ!」

 

少し体が触れただけでものすごい苦痛が身体中に走る。

一瞬だけやめてしまおうかと言う考えが体の中を走るが僕はその考えを振り払って一気に沼の中に入る。

 

「くぅっ!」

 

さっきとは比べ物にならないほどの苦痛が身体中に走る。

それでも僕はクレアとの約束を守る為にここで諦める訳にはいかない!

 

「絶対この試練を乗り越えてやる!!!」

 

そんな僕の声が響き渡った。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二話 修行開始

「吉井明久さん、試練が終わりました」

 

そう言ってきたのは僕をここに案内した案内人。

案内人は僕を引き上げて服を差し出した。

僕は差し出された服を受け取ってその服を着る。

その最中案内人が

 

「ハッキリ言って驚きました」

 

そう言ってきた。

僕は服を着ながら尋ねる。

 

「何がですか?」

 

「人間であるあなたがこの試練を乗り越えたことです」

 

案内人がそう言った時僕が服を着終えた為案内人は『ついて来てください』と言ってゆっくりと歩き出した。

そして先程の言葉をこう続けた。

 

「私が知る限り人間がこの試練を乗り越えたことはありません。

それなのに人間であるあなたは乗り越えた。

あなたには神の素質があります」

 

「そう言ってくれると嬉しいです」

 

そんなやり取りをしていると前方にある影が見えた。

肩まで伸びている黄色の綺麗な髪。

それだけでその影が誰のものか分かった。

クレアだ。

それが分かった瞬間思わず僕の表情は緩んだ。

それを見てか案内人がこんなことを言ってきた。

 

「それでは、私はこれにて失礼します。

ナニをしても構いませんよ?」

 

「え、ちょ!」

 

僕の制止の声も聞かず案内人は何処かへ消えて行った。

あの管理人め……!

いつかしばいてやる……!

そう思いながらゆっくりとクレアが居る方へと歩き出す。

するとクレアが僕に気付いたのか僕の方に走って来た。

 

「明久君!」

 

名前を呼ばれて僕は腕を広げる。

クレアも腕を広げながら駆け寄って来た。

そして――――

 

「「明久君/クレア!」」

 

僕達は抱き合った。

 

 

アテンの部屋

 

 

「「//////」」

 

再会した後僕達はアテンの部屋に来ていた。

僕の試練合格の打ち上げをするそうだ。

え?何で僕達は顔を赤らめてるのかって?

えっと……その……あの後若さが暴走して色々とやってしまったんだよ///

結局案内人が言ったナニもやっちゃったし……

あ~!思い出しただけでも顔から火が出そうだ!

 

「ふふっ、クレアも無事に思い人と結ばれたみたいですね」

 

後ろからそんな声が聞こえて後ろを見るとそこには黒い髪をポニーテールにした綺麗な少女が居た。

 

「「閻魔(さん)!」」

 

え、閻魔!?閻魔ってあの地獄の罪人を裁くって言うあの!?

 

「初めまして、吉井明久君。

私は冥界の総司の閻魔です。

ある人からあなたが試練を乗り越えたら盃を交す様にと言われていたので参上した次第です」

 

「ある人って誰ですか?」

 

「私達の友……いえ、兄弟と言っても良いかもしれませんね」

 

「へぇ~って、僕未成年だからお酒はちょっと……」

 

未成年で酒を飲むのは禁止されてるからね。

美人のお誘いでも断らないと。

でも、閻魔は

 

「神なんだから別に平気ですよ」

 

と言って譲らない。

こう言う人って絶対に譲らないからな……

しょうがない……誘いに乗るか。

 

「分かりました、飲みます」

 

過去に戻れるなら僕はどんな手を使ってでもこの誘いを断るだろう。

 

 

 

「あきひしゃくぅ~ん、もっとのもうよぉ~」

 

「あきひしゃしゃ~ん」

 

「うふふっ……」

 

何でこうなったんだろう?

皆、ただ楽しくお酒を飲んでいただけなのに……

いつの間にか飲み比べになってて……

僕が一番になってて……

皆酒癖が悪くて酔いつぶれちゃって……

もう誰も神様の威厳なんて全くないよ……

 

「………」

 

クレアが僕の顔をじっと見ていた。

 

「クレア、どうかしたの?」

 

「……明久君って髪の毛を黒く染めたらもっとかっこよくなるんじゃない?」

 

「へ?」

 

クレアの言っていることがいきなりすぎて意味が分からなかった。

すると

 

「じゃじゃ~ん!毛染め剤~!」

 

ドラ〇もんみたいなノリでクレアがどこからか出したのは髪染め剤(黒色)

あれ、何か僕拘束されてる?

 

「あきひしゃしゃ~ん、ごめんなさい~」

 

「私も見たいんですよ~」

 

二人共凄く良い笑顔だね~

でも……

 

「離して~!文月学園では髪を染めるのは禁止されてるんだから!」

 

鉄人の鉄拳が来る!

皆にからかわれる!

 

「大丈夫♪神の力で記憶操るから♪」

 

うわぁ~神様の力便利だね~♪

 

「ふふっ、覚悟してね~♪」

 

「い、いやぁぁぁぁぁっ!」

 

 

少しして

 

 

「こ、ここまでかっこよくなるなんて////」

 

「す、少し予想外でした////」

 

「い、イケメンですね////」

 

皆が顔を赤らめて僕を見ている。

かっこいいって言ってくれるのは嬉しいんだけどね……

何だか前の僕がかっこ良くなかったみたいで複雑だ……

 

「そ、そう言えば明久。ちょっと修行しない?」

 

「修行?どうして?」

 

「えっと……神にはそれに相応しい力が必要なんだよ」

 

クレアはそう言うとアテンと閻魔の方を向いて内緒話を始めた。

 

「(クレア、あなた何を考えているのですか?)」

 

「(二人共、明久が鍛練をしているところを想像してみなよ)」

 

「「(か、かっこいい!)」」

 

「(でしょ?それに明久が一生懸命頑張ってるところもかっこいいと思わない?)」

 

「「(思う!)」」

 

「(それに……私達神には敵も居るしね……私達がいくら強かろうとも明久を守りながらは戦えないよ)」

 

「(敵のことを明久君に説明しないんですか?)」

 

「(明久君にはまだ早いよ)」

 

ある程度話し終わったのかクレア達は僕の方を向いた。

 

「それじゃあ、明久君。ついてきて♪」

 

そう言ってクレアは僕の手を握って歩き出した。

 

 

宮殿

 

 

少し歩いて宮殿らしき所に着いた。

 

「明久君、ここが訓練場だよ」

 

そう言ってクレアが宮殿の扉を開ける。

そして、中に入るとそこは相当広い道場みたいな場所だった。

 

「明久君、ここで明久君を鍛えるの。

色々辛いことになるだろうけど良いかな?」

 

「良いよ、神様として相応しい強さになる為ならね」

 

それに……クレア達が隠していることを打ち明けられる位は強くなりたい。

そして、三人の役に立てるようになりたい。

その為ならどんなに辛くても、人が変わっても良いさ。

 

「それじゃ、始めようか」

 

こうして僕達の修行が始まった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

三話 ライバル

ガキンッ!ガンッ!ガンッ!カキンッ!

 

宮殿の道場から剣戟が聞こえてくる。

宮殿でクレアと閻魔が明久と戦っているからだ。

明久は右手に刀を持っている。

その武器は模造刀で殺傷能力はない。

 

「「はぁっ!」」

 

クレアと閻魔は同時に明久に襲いかかる。

まず明久は上段から切り下そうとしている閻魔の偃月刀を弾き体の防御を無くす。

閻魔ほどの実力者なら一瞬で体勢を立て直せるが明久には一瞬あれば十分だった。

明久は閻魔が体勢を立て直す寸前にがら空きのボディに左手で一撃を入れる。

 

「くっ……」

 

閻魔は気絶し倒れた。

明久はすぐにクレアの方に振り向き刀を振るう。

 

「っ!」

 

クレアはその斬撃を鎌で防ぐ。

その瞬間明久はクレアの鎌を掴んでクレアの鎌を動かなくする。

そして明久は刀をクレアの首筋に当て……

 

「俺の勝ちだ。クレア」

 

そう言って微笑んだ。

 

 

明久side

 

 

俺が修業を始めてから百年が経った。

百年という月日は長いもので俺を強くしてくれた。

クレア達が勉強を見てくれたから頭も良くなった。

まぁ、百年という月日は強さや頭の良さだけじゃなく俺の性格や口調も変えたけどな。

『それでも明久君のこと大好きだよ!』と言ってくれるクレアは俺にとって本当に大切な存在だ。

 

「明久君、本当に強くなったよねぇ~」

 

「全くです。いつの間にか明久君に追い越されてしまいましたよ」

 

「師匠がよかったからな」

 

とは言ってもそれが本当の理由じゃない。

一番の理由は修行を始める前から全然変わってない。

三人の役に立ちたいから。

三人が隠していることを打ち明けられるほどは強くなりたい。

だけど、三人はまだ俺に秘密を打ち明けてくれていない。

まぁ、それでも良い。

皆が打ち明けてくれるまで気長に待つさ。

そんなことを思っていると三人(クレア・アテン・閻魔)が秘密話を始めた。

 

「(明久君、強くなったからもう敵のことを話してもいいんじゃないですか?)」

 

「(そうですよ、クレアさん)」

 

「(……二人の言うとおりだね。明久君は私達以上になったからもう話さないと駄目だね……)」

 

内緒話が終わったのか三人が俺の方に振り向いてきた。

その顔は真剣な表情で俺も思わず身構えてしまった。

 

「明久君に話すことがあるの」

 

「何だ?」

 

とにかく落ち着け。

クレア達が隠していることを打ち明けてくれるのが俺の本望だったはずだ。

今更どんなことを言われようと取り乱すな。

 

「私達神には敵が居るの」

 

「敵?一体どんな?」

 

「それを説明するにはパラレルワールドについて説明しなくちゃいけないの」

 

『パラレルワールドって何だかわかる?』と聞いてきたので頷く。

パラレルワールドとは、簡単に言えば可能性の世界。

例えば今、俺は車に轢かれてここに居るが車に轢かれていなかったらどうなったか。

この時点でもう一つの世界が発生する。

このもう一つの世界がパラレルワールド。

選択されなかった選択はパラレルワールドの自分が選択し行動するらしい。

もっと簡単に言えば俺がAのゲームに成功したことにしよう。

するとAのゲームに失敗するとどうなるか。

この可能性が生まれた時点でパラレルワールドが生まれAのゲームに失敗する俺が生まれる。

これがパラレルワールドの概念だ。

 

「それでね、明久君達の世界もパラレルワールドだって言うのは分かるよね?」

 

「ああ、それで?」

 

「パラレルワールドは細かいところは同じだけど大筋は違うの。

でも、大筋が変わることは絶対にない。元は同じだから」

 

「変わったらどうなるんだ?」

 

「世界は滅びる」

 

クレアは感情の籠っていない表情でそう言った。

『何でそんな簡単に言えるんだ』そう言いそうになったところで彼女の目を見てやめた。

確かに感情は籠っていなかったけど……俺には悲しそうな顔に見えたから。

 

「それで?世界が滅びるのと敵の件は一体どんな関係があるんだ?」

 

「世界の大筋を変えようとする者達が居るの。

それが私達の敵」

 

『どうしてそんなことをするのか分からないんですけどね』と閻魔がクレアのセリフに付け足した。

つまり、世界を滅ぼそうとする奴が敵ってことか。

そんなことを思っているとクレアが人差し指を立てて

 

「ところが!そういう訳じゃないんだな~」

 

そう言ってきた。

何で心が読めたんだ!?

俺は神になったはずじゃ……

 

「あ、びっくりしてるね~安心して。

今のは私が何となく明久君が『世界を滅ぼそうとする奴が敵ってわけか』なんてことを思ってるんじゃないかな~って思って言ったセリフだから」

 

「そ、そうだったのか。

で、そういうわけじゃないって言うのはどういう意味だ?」

 

「ほら、二次創作とかでよくあるじゃん?転生ってさ。

あれで偶々大筋を離れちゃうことがあるんだよ」

 

「そういう時はどうするんだ?」

 

「頼むんだよ。これ以上原作から離れた行動をするなって」

 

「それで聞かなかったら?」

 

「脅はk……ごほんっ!もっと深く話すんだよ」

 

「待て、今脅迫って言いかけなかったか?」

 

神様が脅迫って良いのかよ……

 

「良いんだよ、世界の為だもん」

 

「犯罪だからな。それと心を読むんじゃねえ」

 

地獄の試練を乗り越えた意味がなくなるじゃないか。

 

「それでさ~神からチートな能力を受け継いだ人とか小説とかであるじゃん?

ああ言う人が偶に居るんだよ。だから、私達が武力で叩きのめs……ごほんっ!お願いするんだよ」

 

……何でクレアは神になれたんだろうな……

 

「とりあえず明久君の武器をどうにかしないとね。

閻魔~地獄から何か持ってきてよ~」

 

地獄からかよ……

そこは天界で用意させろよ……

 

「良いですよ」

 

しかも良いのかよ……

そうだ、ここは常識が通用しないのを忘れてた……

 

「ある人と武器を用意するので数日待っていてください」

 

「ある人って誰だ?天目一箇神か?」

 

「いいえ、ほら、あなたが試練を乗り越えたら盃を交すようにと言った人です。

あ、そうだ。この武器の練習をしておいてください」

 

そう言って閻魔はどこからか紙を出すと何かを書いて俺に紙を渡してきた。

その紙にはこう書いてあった。

 

『剣・刀・刺突剣(レイピア)・曲刀(ショーテル)・楯(シールド)・籠手(ガントレット)・薙刀・戦斧(ハルバード)・大鎌(サイズ)・槍(ランス)・大鎚(ハンマー)・弓矢・拳銃・狙撃銃(ライフル)・大砲(キャノン)・杖(ワンド)・魔導書』

 

「……多くね?」

 

「明久君ならば大丈夫ですよ。では」

 

閻魔はそう言って道場から出て行ってしまった。

……俺にあと何年修行しろと言うんだ……

 

「明久君、がんばろ?」

 

まぁ、クレアが居るんだったら良いけどな。

 

「ふふっ、お二人とも仲が良いですね」

 

「「アテン!」」

 

「ふふっ」

 

アテンも意地悪だな……

そんなことを思っていると道場が開く音がした。

 

「………」

 

そこには二つの触覚みたいな髪がある特徴的な紅い髪に刺青とちょっと露出度が高い服を着た少女が立っていた。

 

「あれ?ヒルデ、どうかしたの?」

 

「……おなか減った」

 

「そう、アテン、ヒルデに何か作ってあげて」

 

「あ、はい」

 

アテンはそう返事をすると宮殿の台所に入っていった。

それを見届けているとクレアにヒルデと呼ばれていた少女が俺のことを見ていたのに気付いた。

 

「クレア、この子は?」

 

「この子は『ブリュンヒルデ』

今の明久君なら名前を聞いただけで分かるんじゃないかな?」

 

「ああ、分かる」

 

ワルキューレの一人。

人間界の物語では彼女は物語によって違う人格として描かれているがここ天界では最強の武を持っているという噂が流れている。

 

「……クレア、この子は?」

 

「吉井明久君。地獄の試練を乗り越えた子だよ。私の恋人」

 

「そういうことは紹介しなくていいんだよ」

 

「……仲が良い」

 

「そうでしょう」

 

嬉しそうにそう言うクレア。

あ、ちょっと可愛い……

 

「ヒルデさ~ん、ご飯持ってきましたよ~」

 

「……(ピクン!)」

 

うおっ!?触覚が動いた!?

俺が驚いていると

 

「ヒルデはご飯が目の前にあると髪が動くんだよ」

 

クレアがそうフォローしてくれた。

 

「な、なるほど……」

 

食べ物が好きな女の子なんだな。

そんなことを思っていると

 

「……明久強い。ヒルデと戦う」

 

ヒルデがそう言ってきた。

 

「え?はい?」

 

俺が困惑している間にもヒルデはどこからか自分の武器を出して準備をし始めた。

 

「明久君、とりあえずヒルデと戦ってみなよ。

何か得られる物があるかもしれないよ」

 

「そうだな」

 

俺はそう返事をして先程まで使っていた模造刀を持って構える。

 

「とりあえず、一撃で終わらせよう。良いな?」

 

「……(コクン)」

 

俺は頷いたのを見て居合の構えを取る。

 

「クレア、頼んだ」

 

「は~い」

 

そう言ってクレアとアテンは立ち上がり俺達から離れる。

どんな被害になるか分からないからその行動は正解だろう。

俺はその行動を見届けて集中を始める。

そして、少しして……

 

「始め!」

 

クレアの声が響き渡り俺達は一気にお互いに駆け寄る。

そして、お互いが武器を振るうと……

 

バキンッ!

 

そんな音がして……

 

 

 

 

俺の模造刀が粉々になった。

 

「あ~負けた~」

 

そう言いながら粉々になった模造刀を適当に捨てる。

するとヒルデが頭を横に振りながら

 

「……ヒルデが負けた」

 

そう言ってきた。

 

「はぁ?俺の武器が壊れたんだぞ?お前の勝ちだろ?」

 

俺がそう言うとヒルデは自分の武器を俺に渡してある一か所を指して

 

「……ヒビが入った」

 

そう言った。

 

「え、ヒルデの神器にヒビ!?」

 

そう言いながらクレアが近づいてくる。

それに倣いアテンも近づいてきた。

 

「……これが神器だったら明久の勝ち」

 

確かに模造刀と神器じゃ強度に天と地ほどの差があるからな。

因みに神器って言うのは神の武器のことだ。

 

「……また、戦う」

 

ヒルデはそう言って宮殿の道場から出て行った。

 

「明久、すごい人をライバルにしちゃったね」

 

「頑張ってくださいね」

 

「他人事かよ!」

 

まぁ、俺もライバルができるのは悪い気分じゃねえしな。

そんなことを思いながら俺は鍛錬を再開したのだった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

天界新聞

更新遅くなってすいませんでした。


今回我ら天界新聞は人間でありながらも地獄の試練を乗り越えた吉井明久氏に取材を申し込んだ。

 

明久(以降 明)「俺の日常?」

 

記者(以降 記)「はい、地獄の試練を乗り越えた明久さんの日常を読者に紹介したいのです」

 

記者がそう言うと考え込む吉井明久氏。

やはり、自分のプライベートを見せるのは嫌のようだ。

それに記者が居ると交際中のブラフマー氏と愛を語り合えないのも理由の内だろう。

 

明「……クレア……ブラフマーと相談しても?」

 

記「構いません」

 

記者がそう言うと吉井明久氏は奥にある扉を開いて中に入っていった。

もう既に同棲しているという噂は流れていたが事実のようだ。

そんなことを思っていると部屋の中から声が聞こえてきた。

 

クレア(以降 クレ)「えぇ~それだとさぁ~私達イチャイチャできないじゃ~ん」

 

明「そうだけどあの新聞には俺達も世話になってるんだから協力しようぜ。

あと服着直せよ」

 

クレ「襲っても良いよぉ~♪それと、取材の協力しても良いよぉ~♪」

 

明「………そんな恰好で出るなよ。あと、頬に付いてるぞ」

 

私は何も聞いてない。聞いてないんだ……!

そんなことを思いながら頭を抱えているとガチャッと言う音を立てて扉が開いた。

私は慌てて顔を元の位置に戻した。

 

明「協力しても良いそうです」

 

記「そ、そうですか。それは良かったです」

 

ここから吉井明久氏の日常を記す。

 

 

10:00

 

吉井明久氏仕事を始める。

途中吉井明久氏が『こんなの神の仕事じゃねえ!』と言って脱走。

ブラフマー氏と閻魔氏が追跡。

吉井明久氏の机の上にあった書類は以下の通り。

 

『猫が買いたいけどマンションだから買えません。マンションの規則を変えてください』

 

『アテン様可愛いよ……ハァハァ……』

 

『明久様結婚してください』

 

『パチンコ店を作ってください』

 

記者は吉井明久氏に同情した。

 

10:30

 

脱走した吉井明久氏をブラフマー氏と閻魔氏が捕獲。

帰ってきた時吉井明久氏は気絶していた。

 

11:00

 

気絶していた吉井明久氏が起きた。

吉井明久氏はアテン氏、ブラフマー氏、閻魔氏に謝罪をし仕事を再開した。

 

11:30

 

仕事が終わり昼食の時間。

吉井明久氏が料理を作った。

記者も少し吉井明久氏の料理を分けてもらったが相当おいしかった。

 

12:00

 

鍛錬を開始。

途中来たブリュンヒルデと吉井明久氏が対戦を開始。

今回はブリュンヒルデ氏が勝利したが前回は吉井明久氏が勝利したためおあいことのこと。

 

12:30

 

吉井明久氏が昼寝を開始。

 

16:00

 

吉井明久氏が起床。

これからブラフマー氏とデートらしい。

ついて行ってもいいのかと尋ねると

 

『別に良いですよ』

 

と了承してくれた。

 

16:30

 

映画館に入った。

見た映画は人気のラブストーリー映画。

記者と吉井明久氏達は離れて座っていたがイチャイチャしているのが丸見えだった。

 

19:00

 

映画が終わった。

吉井明久氏の頬にキスマークがあったが無視した。

 

19:30

 

夕食。

今回も吉井明久氏が作った。

相当美味しかった。

何故、こんなに美味しいものが作れるのか疑問に思った。

 

20:00

 

吉井明久氏が適当にテレビを見始める。

すると、吉井明久氏がいつも見ているアニメの一時間スペシャル版が放送されていた。

 

21:00

 

吉井明久氏が風呂に入った。

なんとブラフマー氏も一緒だ。

尋ねてみるといつも一緒に入っているらしい。

風呂場から色っぽい声が聞こえた気がするが気のせいだろう。

 

21:30

 

取材終了。

取材して分かったことがある。

 

二人は相当仲が良い。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

四話 天空神との出会い

ここは天界の街。

ゲームセンターや大きいスーパーとか色々ある。

カップルや友達で歩いている人達を見ると俺が昔人間だった頃を思い出す。

 

「懐かしいな……」

 

もう、地上に行ってもあいつ等は死んでいるだろう。

もしかしたらここでばったりあいつ等と会ったりするかもしれない。

まぁ、そんなことはねえだろうけどな。

死んでここに来ている人達は確認ができているだけで七千兆人以上に上る。

ここに来ずに転生する人はそれ以上。

その中からたった五人と偶然出会う確率なんて相当低い。

 

「しっかし……いつになったらあの頃に行くんだ?」

 

最近忘れがちだが俺が転生の輪に入らなかったのはあいつ等とまたバカなことをやる為。

閻魔が俺の神器を取ってくるまではあの頃に行けない。

 

「そろそろあいつ等の面影が朧気になってきてんだよなぁ……」

 

早く行かないとあいつらの顔を完全に忘れちまう。

 

「はぁ……」

 

ため息をつくなんて俺らしくねえなぁ……

ったく、どっかで適当に何か食うか。

そう思って辺りを見渡した瞬間――――――

 

「焦っているね」

 

周りの光景が変わり周りに居た人達が消えて目の前に四十前半の男が居た。

周りの光景を変え周りに居た人を消すだなんてこれはまさか……!

 

「天界で固有結界を発動した……!?」

 

間違いない。

これは固有結界だ。

神が発動する固有結界は簡単に言えば幻のような物だ。

ただ、固有結界は精神を殺すような物ではなく肉体を殺す。

術者の力にもよるが神すらも殺すことが出来る。

ただし、天界ではいかなる者であろうとも固有結界を発動させることは出来ないような結界が作られている。その結界があるにも関わらずこの目の前の男は固有結界を発動させた。

それは―――――この目の前の男が最高神並みの力を持っていることを指す!

 

「……っ!」

 

クレア達は俺が相当な上級神並の力を持っていると言っていたがこの男はそれ以上だ。

そんな相手に神器無しで戦うだなんて無理な話だ。

くそ……どうすれば良い……どうすれば……!

 

「ふふっ、私の狙いは君と戦うことではないよ。吉井明久君」

 

「!?」

 

まさか、心を読まれた!?

確か、以前にクレアが言っていたはずだ。

神になっても天空神ゼウスには心は読まれると……

まさか!

 

「君の思っている通り、私は天空神ゼウスだ」

 

「っ!失礼いたしました!まさか、我らが王とは知らず……!」

 

「良いよ、私としては君が自然体でいてくれると助かる」

 

俺が思っていたよりも我らが王ゼウスは気さくな人らしい。

 

「威厳を持ってくれと周りからよく言われるよ」

 

「地の文まで読まないでください……」

 

地の文まで読むだなんて流石天空神ゼウスと言うべきか……

 

「ふふっ、そうだろう?」

 

「自分で言わないでください……

それよりどうして態々固有結界を発動させて私と二人きりになったんですか?」

 

「ん~、君が焦っていたからかな」

 

「………」

 

「早く仲間の所に行きたいんだろう?」

 

「……はい」

 

本音を言えば神器がなかろうと今すぐにあの頃に行って皆とバカ騒ぎをしたい。

でも、俺達には敵が居る。その敵と戦う為に、その敵から仲間を守るために俺は力を付けなくちゃいけない。

 

「焦ってはいけないよ」

 

「……分かってます」

 

「分かってないよ。君は本当に焦っている。

早く仲間の元に行きたいとね」

 

ゼウスの言う通り俺は焦っている。

早く修行を終わらせてあいつ等の所に一刻も早く行きたい。

でも……

 

「焦っているとその分テクニックが身に付くのが遅くなるよ」

 

ゼウスの声は本当の父親のように優しい声だったが俺は少しキレてしまった。

 

「そんなこと俺だって分かってますよ!

でも、日に日にあいつらの面影が朧気になってきて怖いんです!

あなたに分かりますか!?日に日に親友の面影が朧気になっていく恐怖が!」

 

この時の俺はまるで反抗期の子供の様に怒鳴り散らした。

ゼウスに怒鳴り散らしたところでどうしようもないと言うのに。

俺の理不尽な行動にゼウスは怒るだろうか?幻滅されてもしかたない。

それなのに、それなのにゼウスは……

 

 

優しく微笑んでいた。

 

「怖いのは分かるよ。それでも君は焦っちゃいけない。

ゆっくりと、それでも確実に進んで行くんだ。

君が焦っていると君の大切な人が心配するからね」

 

ゼウスがそう言った瞬間に俺の頭の中に雄二達の顔が浮かび上がってくる。

今度は朧気ではなくハッキリと。

 

「さて、話が出来て良かったよ。

それじゃね、吉井明久君」

 

「ありがとうございました、ゼウス様」

 

「うん、バイバイ」

 

ゼウスがそう言った瞬間景色がさっきの街の物に戻り街を歩いていた人達が戻ってきた。

正確には俺が戻ってきたと言うべきかもしれないがそんなことはどうでも良い。

 

「……雄二……姫路……島田……ムッツリーニ……秀吉……必ずまた会えるからな」

 

俺はそう呟き宮殿の道場へと歩き出した。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

五話 サボりからの新しい出会い

俺は今ゼウス様と以前に会った街に居た。

と言っても今回は悩んでいてリラックスしに来た訳じゃない。

今回は仕事をサボりに来たんだ。

 

「ったく……何であんな書類を神が始末しなきゃいけないんだよ……」

 

『パチンコをするための金がないから貸してください』だとか『好きな人にはどうやって告白すれば良いですか』だとか『甲子園に行きたいよ……』だとか自分で解決しろって言いたくなるような書類ばっかりだ。

どいつもこいつも神を何だと思ってるんだか……

俺達は便利屋じゃねえっつーの。

 

「ふぅ……紅茶が旨いなぁ……」

 

今頃クレア達は俺を探してるんだろうか?

もし、帰ったらどうなるんだろう?

まぁ、三人のことだしそんな大したことには……

 

『クレア、居ましたか?』

 

『ううん、こっちには居ない。アテンの方は?』

 

『こっちにも居ません……』

 

『もう、明久君どこに行ったんだろう?』

 

『見つけたら絶対に許しません!』

 

怒らせちまったか。

後が怖いからそろそろ帰るかな。

そう思いながら立ち上がった瞬間

 

『見つけたらSMプ〇イでお仕置きなくちゃいけませんね……じゅる』

 

『そうだね……じゅる』

 

『そうですね……じゅる』

 

よし、逃げよう。地獄の果てまで。

 

「おばちゃん、金はここに置いておくからな」

 

「ああ、またおいで」

 

金を置いて立ち上がり猛ダッシュ。

見つかっても良い。捕まらなければ良いんだ。

 

「あー!明久君!」

 

「「何ですって!?」」

 

早速発見されたがそれでもなお走る。

捕まらないように。

捕まれば一生癒えることはない傷を負うことになるから。

 

「あ~!デメテルちゃん!アテナちゃん!その男の人捕まえて!」

 

クレアがそう言うと前に居た二人の少女が反応した。

一人は天然そうな表情に桃色の髪、それにかなりでかいむn……ごほん!

で、もう一人の方は褐色の肌にそれなりにでかいむn……ごほん!

二人は俺を見るや否や神器を出現させ構えた。

二人とも剣。それに対する俺は素手……

結構きついな……

それでも、やるしかない!

 

「おらぁぁぁぁぁっ!」

 

更に速度を上げて二人に突っ込む。

振り向いて奇襲すると言う選択肢もあっただろうが三人はすぐに体勢を整え奇襲に備える筈。

ならば、数が少ない方に突っ込んだ方が幾分かはマシだ。

 

「はぁっ!」

 

まず最初に桃色の少女が切り掛かってくる。

俺は右に跳んでそれをかわすが……褐色の肌の少女はそれを読んでいたのか桃色の髪の少女の右斜め後ろで待ち構えていた。

 

「これで……終わりだ!」

 

捕まえてと言うクレアの言葉を覚えていたのか柄で俺の鳩尾を狙ってくる少女。

桃色の少女ももう体勢を立て直して俺が避けた時の為に備えている。

俺は柄を右手で受けて即座に離して右へ走る。

これで逃げ切れる筈だ!

そう思った瞬間

 

「はぁっ!」

 

「んなっ!?ぐはぁっ!」

 

閻魔の偃月刀が飛んできて俺の後頭部に当たった。

流石に当たったのは柄の方だったが俺を気絶させるには充分だった。

 

 

宮殿

 

 

「いってぇ……まさか偃月刀を投げてくるとは……」

 

意識を取りした俺はクレアから治療を受けていた。

そんなに大した傷では無かったが念の為だそうだ。

 

「油断してましたね。そうでなければ絶対に避けられたでしょう」

 

「そうかもなぁ……で、そっちの二人は誰なんだ?」

 

先程の二人の少女を見ながら尋ねる。

クレアが親しそうに二人の名前を呼んでいたことからお互いに面識があるのは分かったがそれ以外のことは分からない。

 

「こっちの桃色の髪で胸が大きい子はアテナちゃん、こっちの褐色の肌の子はデメテルちゃんだよ」

 

「へぇ~って、まさかあのオリュンポス十二神の二人か!?」

 

「うん、そうだよ~」

 

「マジかよ……」

 

何でそんな上の方の神とクレア達は知り合いなんだよ……

 

「あれ?そう言えば閻魔、俺の神器はどうしたんだ?

取りに行ったんじゃないのか?」

 

「配達してくれるらしいので任せました」

 

「ああ、なるほど」

 

「それより明久君!仕事サボるなんて何事!?」

 

「う……悪い……」

 

クレアっていつもは軽い感じがするけど仕事のこととなると結構うるさいんだよなぁ……

 

「今度サボったら本気で怒るからね!」

 

「わ、分かった。絶対もうサボらない」

 

多分だけど。

 

「それより何でオリュンポス十二神の二人が天界に?

オリュンポス山に住んでるんだろ?」

 

「私はクレアの恋人がどんな人かなって思って父上に許可をもらって」

 

「私はアテナの監視だ」

 

アテナってクレアと同類なんだな……

 

「明久君、今何か失礼なこと考えなかった?」

 

「考えてないって」

 

本当に鋭い奴だ。

 

「折角来てもらったんだ。何かおもてなしをしよう。

アテン、一緒に何か作ってくれるか?」

 

「あ、はい」

 

「私も手伝うよ」

 

「ああ、頼む」

 

「それでは、私も……」

 

「閻魔は休んでろ!」

 

この前閻魔の料理を食ってみたんだがあれは……地獄の試練より辛かった……

一週間何を食べても味を感じなかったしな……

そんな料理を客人に食わせる訳にはいかない。

 

「(明久君、ありがとう!)」

 

「(明久さん、ありがとうございます!)」

 

二人も同感らしい。

二人だけでなく閻魔が手伝うと言った瞬間冷や汗を浮かべたデメテルとアテナも俺に感謝しているらしかった。

 

 

「あ~美味しかった~」

 

「三人とも、今日はありがとう」

 

俺達が作った物を食べて二人は満足げな表情をして俺達に感謝を述べた。

適当に作った物だったけど満足してくれたか。

作った奴としては本当に嬉しい。

 

「満足してくれたようで嬉しいよ(ニコ)」

 

「そ、そうか///」

 

「こ、こっちも楽しかったからおあいこだよ///」

 

?何で二人は顔を真っ赤にしてるんだ?

 

「そ、それじゃあまたね!///」

 

「ま、また会おう!///」

 

二人は顔を真っ赤にして帰って行った。

クレア達は俺の後ろで『何で分からないのかなぁ』と呟きながら呆れていた。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

キャラ紹介

吉井明久(117)

 

性別 男

 

見た目 原作の髪の色を黒くした感じ。

    相当なイケメンで天界では告白が絶えない。

 

 

性格 原作よりも強引。

   だが、優しさは変わらない。

 

 

教科点数 全て教師ですら届かない点数を取る。

 

 

召喚獣の装備 原作と同じ

 

 

召喚獣の腕輪 ???

 

 

 

 

 

クレア (????)

 

 

性別 女

 

 

見た目 金髪碧眼の美少女

    『真・恋姫†〇双』の『〇琳』をストレートにした感じ。

    胸は『〇琳』とは違ってCカップ位。

 

性格 とても明るく明久至上主義者。

  

 

教科点数 明久並

 

 

備考 明久至上主義者で明久の彼女。

   明久がバカにされるのは我慢できない。

 

 

召喚獣の装備 『真・恋姫†〇双』の『華〇』

 

 

召喚獣の腕輪 ???

 

 

 

 

閻魔(????)

 

 

性別 女

 

 

性格 かなり真面目だがそれは仕事だけの話。

   仕事以外では未成年にも酒を勧める。

 

 

見た目 『真・恋〇†無双』の『愛〇』

 

 

備考 明久に惚れている。

   ちょっとだけS。

 

 

召喚獣の装備 『真・恋姫†無〇』の『愛〇』

 

 

召喚獣の腕輪 ???

 

 

 

 

アテン(???)

 

 

性別 女

 

 

性格 『真・〇姫†無双』の『月』

 

 

見た目 『真・〇姫†無双』の『月』

 

 

教科点数 明久並

 

 

備考 明久に惚れている。

 

 

召喚獣の装備(まだ思い浮かびません……)

 

 

召喚獣の腕輪 ???

 

 

 

アテナ(????)

 

 

性別 女

 

見た目 『真・〇姫†無双』の『桃〇』

 

 

性格 『真・〇姫†無双』の『桃〇』

 

 

教科点数 明久並

 

 

備考 明久に惚れている。

 

 

召喚獣の装備 『真・〇姫†無双』の『桃〇』

 

 

召喚獣の腕輪 ???

 

 

 

 

デメテル (???)

 

性別 女

 

見た目 『真・〇姫†無双』の『蓮〇』

 

 

性格 『真・〇姫†無双』の『蓮〇』

 

 

教科点数 明久並

 

 

備考 明久に惚れている。

 

 

召喚獣の装備 『真・〇姫†無双』の『蓮〇』

 

 

召喚獣の腕輪 ???

 

 

 

 

ブリュンヒルデ(???)

 

 

性別 女

 

 

性格 『真・〇姫†無双』の『恋』

 

 

見た目 『真・〇姫†無双』の『恋』

 

 

教科点数 明久並

 

 

備考 明久のライバル

 

 

召喚獣の装備 『真・〇姫†無双』の『恋』

 

 

召喚獣の腕輪 ???

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

六話 女子会

ここは天界のどこかの部屋。

ここにはクレア、アテン、閻魔、デメテル、アテナの五名が居る。

クレアを前に四名があることを頼みこんでいた。

 

「クレア!お願いだ!」

 

「クレア!お願い!」

 

「クレアさん!お願いします!」

 

「クレア!」

 

クレアは腕を組みどう対応をするかを考えている。

一体、アテン達が何を頼み込んでいるか。

それは四人の共通点を思い出せば分かるだろう。

四人とも神だという点ではない。

今回重要な共通点それは……

 

「分かったよ。四人共明久に告白していいよ」

 

四人共明久のことが好きだということだ。

 

「「「「やったーーーっ!」」」」

 

四人は立ち上がり喜びを露わにする。

この四人は明久のことが好きだが明久にはクレアと言う恋人が居る。

そこでクレアに玉砕覚悟で明久に告白することの許可を貰おうとしていたのだ。

結果は先程の通り四人にとって最高の結果だった。

 

「でもさ」

 

「「「「ん?」」」」

 

「四人ともどうやって告白するの?」

 

「「「「……え?」」」」

 

「え?じゃないよ!まさかどうやって告白するか考えてなかったの!?」

 

「「「「うっ……」」」」

 

「はぁ……全く、四人とも駄目だねえ……

告白って言うのは雰囲気が大切なんだよ?」

 

正直クレアも雰囲気も何もなく告白したようなものである。(一話参照)

 

「今何か聞こえたような気がするけどとにかく考えよう」

 

「一応聞くのですがクレアはどのような状況で告白した方がいいと思うのですか?」

 

閻魔の言葉にクレアは少し考え

 

「分からない」

 

そう答えた。

 

「「「「えぇーーーーっ!?」」」」

 

「だって私雰囲気とか考えずに告白したんだもん!」

 

「さっきまで雰囲気が大切だと言っていたのは誰だ!」

 

「デメテルさんの言う通りですよ!」

 

「しょうがないじゃん!ずっと会いたかった人に会えて緊張してたんだから!」

 

 

十分後

 

 

「とにかく、どうやって告白するかは各自で決めて」

 

「「「………はぁ」」」

 

四人は呆れた顔をして部屋を出て行ったのであった。

 

 

その頃明久は

 

 

 

「五人共どこ行ったんだよぉ……仕事手伝ってくれよぉ……」

 

大量の仕事に追い詰められていた。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

七話 告白

窓から数えきれない星と月の光が差し込むある一室のベッドの上に二人の男女が居る。

今は情事の後でお互い軽い口づけをしたり頭を撫でたりと慈し合う時間。

 

「にゃぁ~」

 

そんな猫の様な声を出したのは女の方。

男に撫でられる度に本物の猫の様に目を細めて猫の様な鳴き声を出す。

一応明記しておくがこれは男の趣味ではなく女の方が勝手にしていることだ。

 

「ふっ、やれやれ……甘えん坊な猫だな」

 

「にゃぁ~」

 

女は良く鍛えられた男の胸板に顔を埋め、幸せな顔をしている。

男にとってもそれが苦痛だという訳ではない。

むしろ、幸せだと言えるだろう。

 

「あのね、明久君」

 

女……クレアが男の名を呼ぶ。

明久は『猫口調やめたんだな』とクレアをからかおうとしたがクレアの顔が真剣なものだったからやめた。

 

「どうした、クレア」

 

「多分、明日から閻魔達が告白してくると思うの」

 

「はぁ?」

 

「その告白を受けてあげて?」

 

明久は『こいつは何を言ってるんだ?』と言う顔をしている。

それもそうだろう。明久にはクレアと言う恋人が居る。

その恋人が他人の告白を受けてあげてと言っているのだ。

 

「あのね、閻魔達も私と同じなの」

 

「俺の生き方を見てたってとこか?」

 

「うん。それで明久君に惚れてるの。

私は明久君に一番早く会って告白して成功した。

運が良かったんだよ。だから、お願い」

 

明久はクレアにそう言われてクレアの頭を撫でながら考え始める。

少しそうしているとクレアの頭から手を離して

 

「これから二人っきりになる時間は減るかもしれないから覚悟しとけよ」

 

そう言った。

クレアは笑顔で明久に感謝した。

 

 

俺は今閻魔達に呼び出され天界のある山に立っている木の下に居た。

何でもこの木は天界の絶好の告白スポットらしい。

 

「やっぱり告白されるのかねえ……」

 

俺は昨夜クレアに言われたことを思い出しながら木を見上げる。

この木は百億年という長い時間天界を見下ろしてきたそうだ。

その威厳は百億年と言う長い時間に恥じない物だった。

 

「……やっぱり百億年って言う長い時間を過ごせばこれくらいの威厳ができるのかねえ……」

 

そう言って百億年後の自分を想像してみる。

百億年後……多分俺はクレア達と一緒に笑い合ったり怒り合ったり時には泣き合ったり……

色々なことをして幸せに暮らしているんだろうな……

 

「って、あんまり今と変わってねえし……」

 

まぁ、実際何年経っても変わってないんだろうな……

俺達にとってそう言う光景が一番の幸せだろうから……

 

「あら?明久君、早いですね」

 

閻魔の声が聞こえて声のした方を向くとそこには俺を呼び出した閻魔達が居た。

 

「ちょっと早く起きてな。お前等こそ約束の時間よりも三十分は早いじゃないか」

 

「私達も明久さんと同じです」

 

「お前等も言えないじゃないか」

 

アテンの言葉に苦笑して答える。

なるほど……アテン達も緊張して早く起きたのか。

よく見ると四人共そわそわしてるしな。

 

「それで用って何だ?」

 

何の用事かは知っているけど知らないふりをする。

告白かどうかは最後まで分からないからな。

 

「えっと……その……」

 

用事を尋ねると四人が顔を赤くした。

やっぱり告白なのか?

そんなことを思いながら四人を観察していると閻魔が覚悟を決めた表情をして一歩前に出た。

 

「明久君、好きです!私と付き合ってください!」

 

それを見て三人も便乗する。

 

「私も明久さんのこと好きなんです!付き合ってください!」

 

「私も明久君のことが好きなの!だから付き合って!」

 

「私も明久のことが好きだ!付き合ってくれ!」

 

「「「「お願いします!」」」」

 

「………」

 

分かってたことだけど実際告白されてみると反応ができなくなるな……

そりゃ、美女四人に告白されて冷静を保てる奴なんてこの世に居ないだろ。

 

「えっと……明久さん、クレアさんから付き合う許可はもらったから大丈夫です。

だから、私達と……」

 

「ああ、悪い。つい呆然となっちまった。

そんなことより本当に俺で良いのか?」

 

「「「「はい/うん!」」」」

 

即答か……

こんな美女達に好かれて俺は幸せ者だな……

 

「良いぜ、全員幸せにしてやるさ!」

 

「「「「明久君/明久さん/明久!」」」」

 

全員が綺麗な涙で顔を濡らし一斉に俺に抱き着いてくる。

俺は両腕を広げて全員を受け入れる準備をする……って

 

「おい!流石に四人同時は無理だ!待て!」

 

「「「「もう待てない!」」」」

 

「ちょ、うわぁぁぁぁぁっ!」

 

その後俺は受け身を取れず地面に頭をぶつけてしまい三時間後に目が覚めた。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

八話 明久の武器

閻魔達に告白されて数日。

閻魔達と一緒に仕事をしたり、デートをしたり、その……アレをしたり……

そんな幸せな生活を過ごしていたある日、俺達は閻魔に呼び出され宮殿の道場に集まっていた。

 

「それで?閻魔、用って何だ?」

 

「よくぞ聞いてくれました!ようやく明久さんの武器が届いたんです!」

 

興奮した表情をしながら親指を立ててそう言う閻魔。

そうか、ようやく届いたのか。

 

「皆さん?ここは『おぉ……!』と言いながら拍手をするところですよ?」

 

「そう言うの期待してたのか?」

 

「別にしてませんけど……」

 

そう言ってからそっぽを向いてぶつぶつ呟き始める閻魔。

やっぱり期待してたんじゃないか。

 

「そ、それより!明久さんの武器はどんな物になったんですか?」

 

きりがないと思ったのかアテンがそう尋ねた。

 

「よくぞ聞いてくれました!これです!」

 

閻魔がそう言って出したのはアクセサリーの他にも電子カードのような物や指輪など兎に角色々な物だった。

というか……

 

「これで戦えってか?」

 

電子カードや指輪は俺が知る限り戦闘で使える物ではない。

閻魔は俺に負けろと言っているんだろうか?

 

「ち、違います!実際に試してみましょう。

えっと……それじゃ、これを右腕の人差し指に付けて手を伸ばして人の名前を呼ぶように『桜華(オウカ)』と言ってください」

 

「?分かった」

 

一応何が出るのか分からないので立ち上がり五人から離れる。

そして、閻魔の言うとおり右腕の人差し指に指輪を付けて腕を伸ばす。

そして

 

「桜華!」

 

人の名前を呼ぶようにその名前を呼んだ。

すると指輪が輝き始めた。

 

「な、何だこれ!?」

 

俺は少し狼狽するが閻魔はニコニコと笑っている。

なるほど、安全だから安心しろってか。

そんなことを思っていると光が俺の手の平に集まり始め刀のような形になって徐々に重みが生まれてくる。

重みが一定になった瞬間その光が霧散し本物の刀が生まれた。

 

「刀……だよな?」

 

そう呟いた瞬間

 

『明久君、初めまして』

 

そんな声が聞こえた。

声のした方を向くとそこには茶髪のポニーテールの少女が居た。

そして、一番の特徴は……

 

「随分小さなぁ……」

 

そう、その小ささだ。

目測だけど5cm位しかない。

俺がその少女を見ていると閻魔が説明を始めた。

 

「明久君、彼女達は精霊と言う種族で、その腕輪は『精霊機』と言います。精霊石にされている精霊(本体)は拘束術式を13個の重ね掛けで、出てこれる精霊は分身でサイズは5~15cm前後と制限を掛けてあるんです。因みに精霊を見ることが出来るのは、神や魔族、それと魔縁(妖怪)に一様、子共や動物だけです」

 

「なるほど、カンペを見ているのは無視するとして説明ありがとな。

それより、精霊機毎に精霊が居るのか?

この電子カードみたいな物にも」

 

「ええ、居ますよ。

それより、一応素振りしてみたらどうですか?」

 

「ああ、そうだな。桜華、良いか?」

 

『良いわよ。どんな風に私を使うのか見させてね』

 

「ご期待に添えるように頑張るよ」

 

俺はそう返事をして素振りを始める。

まずは準備運動として縦に、その次に目を瞑ってイメージトレーニングをして仮想の敵と戦う。

仮想の敵を倒したら目を開ける。

 

「どうだった?」

 

『え、あ、えっと……かっこよかったわよ///』

 

「ご期待に添えた訳だ。良かった(ニコ)」

 

「////」

 

ん?顔を赤くしてどうしたんだ?

 

『はぁ……鈍感ね……』

 

「???」

 

『兎に角これからよろしくね、明久』

 

「ああ、よろしく(ニコ)」

 

『っ!///そ、それじゃあ、私は寝るわ!』

 

オウカがそう言うと俺の手の平にあった刀が消えた。

顔を赤くしてたけどどうしたんだ?

 

「「「「「はぁ……」」」」」

 

何で皆呆れた表情をするんだ?

良く分からねえ。

 

「そんなことより、いつ人間界に行くんだ?」

 

もう武器も調達できたしそろそろ行っても良い筈だ。

 

「精霊機の武器を全て一度使ってからですね」

 

「了解。なら、早速終わらせるか」

 

俺は近くにあった指輪を手に取る。

さて、あいつ等に会うために頑張るか!

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

九話 人間界へ

閻魔に精霊機を渡されてから数日後。

俺達はあの頃の人間界に通じるゲートへと来ていた。

 

「さて、これから二年間は天界とお別れだ。思い残すことはあるか?」

 

後ろに居る六人(ヒルデも居る為)の方に振り向きながらそう尋ねる。

六人は持てるだけの荷物を持っていてまるで修学旅行みたいだ。

引率の先生は居ないけどな。

 

「ないない。二年って短いからすぐに帰れるよ」

 

そう言ったのは俺の手に抱き着いているアテナ。

反対側の手にはクレアが抱き着いていて三人(閻魔、デメテル、アテン)は嫉妬の表情で二人を見つめている。

何でも出かける前に俺の手に抱き着く権利をじゃんけんで賭けたらしい。

勿論、俺は公認していない。

 

「そう言えば、これだけの大人数、どうやって一緒に暮らすんだ?前までのマンションだとこの人数は入らねえだろ?」

 

ヒルデとはそういう関係ではないとはいえ一人だけ仲間外れって言うのは出来ない。

だから、七人暮らしと言うことになるんだが……

あのマンションは四人暮らしが限界だろう。

 

「そこら辺は大丈夫!お父様が人間達の記憶を色々と操ってくれたから!」

 

「「あの人は……」」

 

顔に手を当てながら呆れる俺とデメテル。

人間達の記憶を勝手に操るのは神の法則で禁止されている。

人間の記憶を操るにはオリュンポス十二神の過半数以上の同意が必要だがゼウス様は独断で操ることができるそうだ。

 

「あと、私達のこととかも明久君のお姉さんも私達との関係を認めてるんだよ!」

 

「普通なら絶対にありねえな」

 

苦笑しながらそう言う。

うちの姉貴は不純異性交遊を全面的に禁止している。

普通ならどんなに頼み込んでも許可してくれないだろう。

 

「あと、明久君の髪のこととか口調のこととかこの天界に居る間に変わったことは以前からのことだって記憶を操ったんだよ。転生者以外ね」

 

「ああ、なるほど。それで髪とか口調とかそう言うのに狼狽えた奴等は転生者だから対処しろってことか。

それなら転生者のリストを渡してくれればいいのに」

 

「無くしちゃったんだって」

 

「「はぁ……」」

 

あの人は……前まで尊敬していた俺がバカみたいだ……

 

「そう言えば俺あの世界の本来の道筋知らねえんだけど。

その辺りどうするんだ?」

 

転生者が世界の道筋を変えようとしたところで俺は本来の道筋を知らないから本来の道筋とどう違うのか分からない。そこらへんのことはどうするんだろうか?

 

「大丈夫!このゲートを潜れば行先の道筋が分かるから」

 

「へえ~、便利なもんだな」

 

「そう言ってくれると祖父も喜ぶでしょう。

このゲートは私の祖父がゼウス様と協力して造った物ですから」

 

「へえ~、閻魔のお祖父様が……すごい人なんだな」

 

「ええ、尊敬しています」

 

昔を懐かしむ様な表情をする閻魔。

今度会ったら挨拶しよう。

 

『お孫さんをもらいます』と。

 

そんなことを考えていると

 

「……明久、人間界でも鍛錬する」

 

ヒルデがそう言ってきた。

 

「は?いや、あのさ……、もし、俺とお前が戦ったら人間界がそれこそ何も残らない荒地になっちまうんだけど……」

 

「……………(ウルウル)」

 

「固有結界を張れば多分大丈夫だな!ヒルデ!絶対に負けないからな!」

 

「うん」

 

やっぱり俺は女の涙に弱い……

 

「明久、自己嫌悪に陥ってないで仕切ってくれ」

 

「ああ、悪い。さて、皆。行くぞ!」

 

「「「「「「うん!/……うん」」」」」」

 

俺達はゲートを潜った。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十話 振り分け試験

天界から人間界に来た翌日。

俺達は振り分け試験を受けていた。

この世界の本来の道筋から抜けないように俺はFクラスにならないといけないんだけどな。

でも、どうやってFクラスになるか……

名前を無記名で出すか?

それならどんなに問題を解こうともFクラスだ。

でも、自分からFクラスに行かないといけないだなんてなぁ……はぁ……憂鬱だ……

そんなことを思っていると

 

ガタッ……

 

何かが倒れた音がした。

音のした方を向くとそこには床に倒れこんだ少女が居た。

 

「姫路!大丈夫か!?」

 

近づいて確認してみると熱があるようだった。

そうだ……この世界の本来の道筋では姫路が高熱で強制的にFクラスになるんだった!

 

「姫路、試験途中の退席は無得点扱いになるが問題ないかね?」

 

こいつ……教師だったら心配位しろよ!

 

「退席……します……」

 

「分かった。では、姫路、お前は無得点だ」

 

そう言ってその教師は教卓に戻ろうとする。

まさか……自分で保健室に行けってか!?

 

「姫路、ちょっとすまん」

 

「え……?」

 

姫路に軽く謝り姫路を抱える。

 

「吉井!席に戻りなさい!」

 

扉まで歩いたところで先生にそう言われた。

俺はゆっくりと先生の方を向き

 

「黙れ下種が……」

 

そう言って教室から出た。

 

 

校門

 

 

 

「ふぅ……」

 

試験を途中退席した後俺は校門でクレア達を待っていた。

一人で帰ったりすると絶対怒るんだもんなぁ、クレア達って……

お、来た来た……

 

「おい~お前等~こっちだ~」

 

そう言いながら手を振って六人に自分の位置を知らせる。

すると、六人は早歩きで俺に近づいてきた。

 

「……明久、途中退席した?」

 

ある程度近づいてくるとヒルデがそう尋ねてきた。

そう言えばヒルデはあの会場で見てなかったから別の会場で受けてたのか。

 

「ああ、知り合いが高熱で倒れちまったからな。

それに俺は世界の道筋を守るために強制的にFクラスに入らなくちゃいけなかったからな。別に良いさ」

 

「……ヒルデ、きちんと試験受けちゃった」

 

ヒルデはそう言うと俯いてしまった。

そう言えばヒルデって結構頭良かったんだよな……

そうなるとAクラスは確実か。

気にしてるのかな?

 

「別に良いって。それに、俺達はAクラスと戦うことになる。

その時に戦うのは召喚獣だけど戦おうぜ、ヒルデ」

 

「……うん」

 

ヒルデは悲しそうな顔から一変し笑顔になった。

やっぱり、ヒルデは笑顔が一番似合うな。

 

「そう言えばクレア達もAクラスか?」

 

俺がそう尋ねるとクレア達はビクッ!と体を震わせる。

おい、まさか……

 

「「「「「名前を無記名で出しました……」」」」」

 

「はぁ……」

 

そう言って顔に手を当てて呆れる俺。

ったく、こいつ等の頭なら絶対にAクラスどころか学年主席も夢じゃねえっていうのに……はぁ……

まぁ、多分俺と居たいからっていう理由だろうからそこまで深くは責めないけどよ……

 

「もう終わっちまったもんは仕方ない。さっさと帰るぞ」

 

「「「「「「はい/……うん/うん」」」」」」

 

俺達はその後他愛のないことを話しながら家に帰った。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十一話 世界の始まり

遅くなってすいませんでした。


校舎へと続く坂道の両脇には新入生を迎える為の桜が咲き誇っている。

別に花を愛でる程雅な人間では無いけれど、その眺めには一瞬目を奪われる。

その美しい桜が咲くこの坂道を俺達は……

 

「急げぇぇぇぇぇぇぇっ!」

 

「分かってるよ!」

 

全力疾走していた。

遅刻の原因はと言うと……

 

「明久君の所為だからね!あんなに私を……私を……きゃーーっ!」

 

「そんなことを大声で言うな!それと閻魔達も思い出してんじゃねえよ!」

 

このやり取りから分かる通り昨夜のアレだ。

いや、俺は悪くないんだよ!

読者の皆も想像してみろ!

好きな奴が涙目で『もうやめて』とか『もう許して』とか言ってくるんだぜ?

もう、興奮するしかないよな!

 

「……?」

 

因みに純粋なヒルデは首を傾げている。

やっぱり純粋だなぁ……

と、そんなことを思っていると

 

「おはよう、吉井達と篠井。全員遅刻だぞ」

 

クレア達は家同士で決めたフィアンセということになっている。

ヒルデは俺の従妹という設定だ。

因みにこの先生は西村先生。

渾名は『鉄人』

その渾名の由来は趣味のトライアスロンから来ている、

真冬でも半袖でいるあたりも由来の一つかもしれないけどな。

 

「「「「「「おはようございます、西村先生。遅刻してすいません」」」」」」

 

「……おはようございます。遅刻してごめんなさい」

 

「うむ、次から気を付けろよ。ほら、お前達の封筒だ」

 

先生はそう言って箱から封筒を差し出してくる。

俺の宛名の欄には『吉井明久』と大きく書いてあった。

 

「吉井、残念だったな……ちゃんと試験を受けていれば……」

 

ああ、そうか。

ゼウス様が記憶を操って俺は元々頭が良いって言う風になってるんだっけか。

 

「別に良いですよ。過ぎたことです。ただ、姫路にもう一度チャンスをあげてほしいって言うのはありますけど……無理でしょうね」

 

「ああ、学園長が規則だと言って首を縦に振らなかった……」

 

やっぱりか……

 

「それより吉井(妻達)!何故テストを無記名で出すとはどういうことだ!」

 

「「「「「あれ?そうだったんですか?」」」」」

 

うわ……見え見えの演技だ……

ここまで演技だと分かる演技は滅多に見れないぞ。

 

「はぁ……もう良い……」

 

先生も突っ込む気を無くしたみたいだ。

滅茶苦茶同情してあげたい……

 

「もう、教室に行け……ただでさえ遅刻しているんだ。

これ以上遅れるな」

 

「「「「「は~い」」」」」

 

「……はい」

 

「先生、本当にすいません……」

 

俺はそう言って封筒とその中身を鞄にしまい教室に向かう。

しまった封筒の中身には

 

『吉井明久 Fクラス』

 

と書いてあった。

 

 

――――さぁ、物語を始めよう。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十二話 Fクラスの転生者

「……これは教室か?」

 

二年生の頃はほとんど足を踏み入れなかった三階に足を踏み入れると通常の教室の五倍の広さはあろうかという教室が俺達のことを出迎えた。この世界の本来の世界の道筋の知識によればこれがAクラスの教室らしいが……

 

「豪華過ぎますよね……」

 

アテンの言うとおり豪華過ぎる。

ぱっと見ノートパソコンや個人エアコン、冷蔵庫まである。

更に見渡してみると壁には格調高い絵画や観葉植物、地面には高級そうな真っ赤な絨毯等があり高級ホテルのロビーのようだ。

 

「ここでヒルデちゃんとは一回お別れだね」

 

「……ん」

 

少し残念そうな顔をしてヒルデはAクラスの教室へと入った。

それを見届け俺達はFクラスへと向かう。

その途中

 

『ああ、篠井さん、おはようございます。

クラス代表として挨拶をお願いします』

 

そんな声が聞こえた。

ヒルデがAクラスの代表か……

大変そうだ……

 

 

Fクラス教室前

 

 

「……ここは本当に教室か?」

 

「まるで山小屋の様ですね……」

 

Fクラスの教室の前まで来たが……Fクラスの教室は閻魔の言うとおりまるで山小屋の様。

この世界の本来の道筋の知識で知っていたとはいえこれは酷い……

 

「と、とりあえず入るぞ」

 

と言って思い出す。

確かこの世界の本来の道筋ならばここで俺はクラス代表の雄二に罵倒される。

罵倒されると恐らくクレア達は黙っていないだろう。

雄二はクレア達の逆鱗に触れて……

 

「まぁ、その時は何とかするか」

 

自惚れる気はないが今の俺は全力の五人と戦っても余裕で勝てる位の実力をつけている。

もしもの時は固有結界を張って五人を止めれば良い。

そんなことを思いながらゆっくりと扉を開く。

 

「遅刻してすいませんでした」

 

そう言って固有結界を張る準備をする。

すると

 

「いえ、別に大丈夫ですよ」

 

そんな少女の声が聞こえた。

俺はその声の主を見る。

その少女は美しい紅い髪のストレートにでかいm……げふん!

とにかくスタイル抜群で美しかった。

 

「自己紹介が遅れましたね。私は坂本美子。このクラスに居る坂本雄二の妹でこのクラス代表です」

 

学園生活三日目。

俺達はいきなり転生者を発見した。

 

 

 

坂本美子―――神無月中学校。この世界の本来の道筋に出てくる人物『坂本雄二』の妹。

成績は坂本雄二とほとんど同じで今回はたまたま坂本美子の方が坂本雄二よりも点数が高かった。

俺の頭の中にそんなデータが流れてくる。

そう言えば誰かが言っていた。

神はその者が転生者であるということを認識すると頭の中に転生者のデータが流れてくると。

 

「坂本美子……だったな。俺は吉井明久だ。

席は決まっているのか?」

 

「え……あ、適当だそうです」

 

「は?どこまで適当なんだよ……」

 

そう言いながら俺は呆れた演技をする。

先程の反応から見てこいつは間違いなく転生者だろう。

それ以外にもこのクラスには二人程居るか……

その内邪な心を持っているのは……一人か。

俺はそんなことを考えながら空いていた席に座る。

すると、クレア達全員が俺の近くに固まった。

図に表すとこんな感じだ。

 

|  アテン アテナ デメテル

|   

窓  閻魔 明久 クレア

|  転生者 モブ モブ

 ―――――――――壁――――――   

 

一応言っておくが席の数は横が5、縦が10だ。

と、先生が入ってきたから説明は終了だ。

 

「え~、皆さん、おはようございます、二年Fクラスの担任の福原慎です」

 

先生は俺達を見渡しながらそう言ってから黒板に名前を書こうとして……やめた。

うわっ、チョークすら完備されてないのかよ……

 

「皆さん全員に卓袱台と座布団は支給されてますか?不備があれば申し出てください」

 

いや、不備だけだと思うんだが……

 

「せんせー、俺の座布団に綿が入ってません」

 

「我慢してください」

 

「せんせー、俺の卓袱台の脚が折れてます」

 

「木工用ボンドが支給されてますので直してください」

 

「せんせー、窓が割れてて寒いです」

 

「分かりました。ビニール袋とセロハンテープの支給を要請しておきます。

必要な物があれば極力自分で調達してください」

 

流石Fクラス……

 

「では、自己紹介をしてもらいましょうか。

廊下側の人からよろしくお願いします」

 

福原先生の指名を受けて廊下側の生徒の一人が立ち上がり自己紹介を始める。

 

「木下秀吉じゃ。演劇部に所属しておる」

 

おお、秀吉か懐かしいな……

相変わらず女と間違われそうな顔だ。

 

「……土屋康太」

 

っと、こっちも懐かしい奴だ。

相変わらず無口だな。

 

「―――――です、海外育ちで日本語は会話はできるけど読み書きが苦手です。趣味は――――」

 

お、この声は……

 

「吉井明久を殴ることです♪」

 

やっぱり、島田か。

相変わらずピンポイントかつバイオレンスな趣味だな。

はいはい、クレア達、島田を睨むな。

島田が震えてるだろうが。

 

「こほん、吉井デメテルだ。

明久の婚約者だ」

 

『『『吉井を殺『うるせえんだよ、このバカ共が!』がはぁっ!』』』

 

今起こったことを簡単に説明しよう。

 

1.デメテルが自己紹介した瞬間にFFF団が俺に襲いかかろうとする。

 

2.転生者(1)がFFF団を殴り飛ばした。

 

それだけだ。

 

「ふぅ……原崎哲也だ。

特技は喧嘩とゲーム。よろしく」

 

こいつ転生者か。

さて、データは……来た来た。

 

原崎哲也―――神無月中学校出身。よく坂本雄二とつるんでいる、不良。

『死神』と呼ばれ闇社会では恐れられている。

成績はBクラス代表並だが試験当日に不良達に絡まれ試験を受けられなかった。

口は悪いが好青年。

 

なるほど、敵対することはなさそうだな。

問題はもう一人の転生者か。

そんなことを思っている間にもクレア、アテナの自己紹介が終わり俺に順番が回ってきた。

俺はゆっくりと立ち上がり自己紹介を始める。

 

「吉井明久だ。クレア、閻魔、アテン、アテナ、デメテル、今挙げた五人は俺の女だから手を出しやがったら……コロシテヤルカラナ?」

 

『『『い、イエッサー!』』』

 

俺の言葉に原崎ともう一人の転生者を含める男子全員が敬礼して答える。

クレア達、そんな目で見ないでくれよ……怖いから……

俺はそんなことを思いながらゆっくりと座る。

さて、残るはまだ来ていない姫路ともう一人の転生者のみか……

そんなことを思っているともう一人の転生者が立ち上がり自己紹介を始めた。

 

「中岡信也です。よろしく」

 

『『『美形は帰れ!』』』

 

うおっ!?FFF団が復活した!?

まぁ、こいつらの生命力はゴ〇〇リ以上だからしょうがないか。

さて、データは……よし、来た。

 

中岡信也―――今に至るまで様々な女子を強姦し籠絡させてきた男。

 

簡単なデータだが……クズだな。

クレア達も俺と同じことを思っているのか顔を顰めている。

特に中岡の前に居る閻魔は辛そうだ。

今日帰ったらたっぷりと慰めてやろう。

そうだ、こいつには監視術をかけておくか。

あ?監視術って何だってか?

監視術って言うのは名前の通り監視する術だ。

術にかかった相手を好きな時に監視することができる。

同時に監視できる人数は力の強さで決まり、今の俺は同時に十五人ほど監視することが出来る。

ゼウス様は二十人位だそうだ。

と、そんなことを説明していると教室の扉が開き、一人の女子生徒が入ってきた。

 

「あの、遅れて、すいま、せん……」

 

『えっ?』

 

その女子生徒とは姫路瑞希のことだった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十三話 試召戦争の引金

「丁度良かったです。今自己紹介の最中なので姫路さんお願いします」

 

「は、はい!あの、姫路瑞希と言います。よろしくお願いします」

 

小柄な体を更に縮こめるようにして声を上げる姫路。

 

「はいっ!質問です!」

 

既に自己紹介を終えた男子生徒の一人が手を挙げる。

 

「あ、はい、何ですか?」

 

教室に入るなり自分に質問が自分に向けられることを想定していなかった為に驚く姫路。

その仕草は小動物のようで保護欲をかきたてる。

勿論俺はクレア達以外の女に興味はないけどね。

 

「どうしてここに居るんですか?」

 

聞きようによっては失礼な質問だがその疑問は当然。

だが、姫路はAクラスに余裕で入れる程の学力を持っている。

そんな彼女がこんな学力最低クラスに居る訳ない。

 

「そ、その……振り分け試験の途中に高熱で倒れてしまって……」

 

その言葉を聴き、全員が納得した表情になった。

試験途中での退席は無得点扱いになる。

彼女は最後まで振り分け試験を受けられずFクラスになったという訳だ。

そんな姫路さんの言い訳を聞いてFクラスで言い訳が始まった。

 

『そう言えば、俺も熱(の問題)が出たせいでFクラスに』

 

『ああ。化学だろ? アレは難しかったな』

 

『俺は弟が事故に遭ったと聞いて実力を出し切れなくて』

 

『黙れ一人っ子』

 

『前の晩、彼女が寝かせてくれなくて』

 

『今年一番の大嘘をありがとう』

 

流石Fクラス、バカばっかりだ。

 

「はいはい。そこの人たち、静かにしてくださいね」

 

そう言って先生が教卓を叩くと……

 

バキィッ! バラバラバラ……

 

突如、先生の教卓がゴミ屑と化した。

あの教卓本当に壊れるんだな……

 

「代えを用意してきます。少し待っててください」

 

先生はそう言って教室の外に出た。

さっきまで興味はなかったけどこの設備は本当に酷過ぎる。

俺達神は体調を崩さないけどこんな設備にクレア達を居させたくない。

そう思った時だった

 

「吉井君、少し良いですか?」

 

坂本美子が俺に話しかけてきた。

 

「ん?どうかしたの?」

 

「ちょっとお話が……」

 

転生者の接触か……

俺はクレア達を見る。

クレア達は頷いた。

 

「分かった。廊下に出よう」

 

俺はそう言って立ち上がり廊下へと歩いた。

 

 

廊下

 

「あの……大変聞きにくいんですけどあn『ちょっと待って』え?」

 

何か話そうとしている坂本美子を止める。

彼女が深刻そうな話をしようとしていると分かったからだ。

 

パチン

 

指を鳴らす。

これは俺が固有結界を発動する時の呪文の様なものだ。

と、俺が指を鳴らした瞬間周りの光景が変わっていく。

 

 

「これは……」

 

完全に光景が変わると辺りに神殿らしき建物が現れた。

所々に洪水で壊れたような神殿もある。

 

「アトランティス……大陸と呼べるほどの大きさを持った島と、そこに繁栄した王国のことだ。

大きな軍事力を持っていて世界の覇権を握ろうとしたけどゼウス様に海中に沈められた。

ただし、俺のイメージの中でのアトランティスだけどね。

ああ、時間とかは気にしなくていいよ。

ここと本当の世界の時間軸は狂っているからね

こちらの方が千倍程早く時間が過ぎている」

 

そう言いながらゆっくりとアトランティスを歩く。

そして、少し歩いて俺は坂本美子の方を向く。

 

「それで?話って何かな?転生者さん」

 

「え……」

 

坂本美子は何を言われているのか分からないのか呆然としている。

まぁ、当然の反応かな?

俺はそう思って苦笑してこう言った。

 

「俺は吉井明久。神だ」

 

「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

 

坂本美子の叫び声がアトランティスに木霊した。

 

 

「落ち着いたか?」

 

神の力で作ったソファーに座りながら尋ねる俺。

さっきまで狼狽えていた坂本美子(以降坂本妹)は何とか落ち着いた様子だ。

 

「は、はい……でも、驚きました。

まさか、吉井君が神になっていたなんて……」

 

「俺も最初神に会った時は驚いたもんだよ」

 

まぁ、世界の本来の道筋の主人公が神になっていたら驚くのは当然の反応だよな。

俺は苦笑しながらも本題に入ることにした。

 

「それで、坂本妹、お前はこの世界で何を望んでいるんだ?」

 

俺は若干殺気を放ちながらそう尋ねる。

こいつの心の中に邪悪なものは感じない。

だが、もしもの時がある。

もしもの時は……俺の独断で粛清する。

俺がそう思った時坂本妹は言った。

 

「私、あなたに会いたかったんです……」

 

「俺に?」

 

「ええ、私、前世では守ってくれる人が居なかったんですよ……」

 

そう言って彼女は前世での人生を語り始めた。

彼女は前世では真面目な優等生で彼女を良く思わない生徒も多かったらしい。

そんな時、一人の男子生徒が転校してきた。

彼女はその男子生徒に一目惚れして告白したが結果は駄目だったそうだ。

 

『真面目すぎる優等生と付き合いたくない』

 

それが断られた理由だそうだ。

それから彼女は告白したことをクラスメイトからからかわれることになった。

更に彼女に対して好意を持っていた男子生徒に彼女は無理矢理犯されたそうだ。

写真も撮られ『これをばら撒かれたくなかったら俺と付き合え』と脅迫されたらしい。

だが、その男子生徒がある日間違えて学校にその写真を持ってきたことで彼女が犯されたことが学校中に知れ渡ることになった。そのことで更に彼女はからかわれたり犯されたりしたらしい。

 

「そんな時です。私は車に轢かれました。

その時思いました。『明久君なら私を守ってくれたのかな?』って。

そんな思いを汲み取ってくれたからでしょうか、神様が私をこの世界に転生させてあげるって言ったんです。

本当に嬉しかった……明久君なら私の心の傷を癒してくれるとも思っていましたから。

実際転生して正解でした。あなたは私を癒してくれましたから……」

 

彼女はそう言って微笑んだ。

 

「俺と会いたかったか……俺はいつの間にかお前のスターになってた訳か」

 

「はい、私にとっては大スターです」

 

そんなに褒められると何と言うかな……

まぁ、こういう奴にそう言うことを言うと『事実です』とか言うんだろうな……

 

「あぁ、そうだ。あの中岡信也って男には気を付けろよ。

あいつは相当クズだ」

 

「哲也君は『分かってる。あいつはクズじゃないんだろう?』はい、良い人です」

 

「目を見れば分かる。さて、そろそろ結界から出ようか。

結界から出た後はFクラスの連中を焚き付けるんだろう?」

 

「はい、一回やってみたかったんです。そう言うの」

 

俺は彼女の返事を聞いて指を鳴らし固有結界を解いて教室に入った。

 

 

Fクラス教室

 

 

生徒の自己紹介が終わり坂本妹の演説が始まっていた。

最初はこのクラスの設備とAクラスの設備を比較してクラスの連中の士気を高めていた。

そして、演説の最終局面

 

「皆さんもこの教室に不安はあるでしょう!こんな酷い教室は他の学校にありません!

そこで私から提案です!私達FクラスはAクラスに試験召喚戦争を仕掛けようと思います!」

 

Fクラス代表坂本美子は戦争の引き金を引いた。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十四話 宣戦布告と生贄(中岡)!

龍夜様からサブタイトルのアイディアをいただいたので使わせてもらいます。

1/12


Aクラスへの宣戦布告。

それはこのクラスにとっては現実味の乏しい提案にしか思えなかった。

 

『勝てるわけがない』

 

『これ以上設備が落とされるなんて嫌だ』

 

『姫路さんがいたら何もいらない』

 

否定的な声が教室のいたるところから上がる。

確かに誰が見てもAクラスとFクラスの戦力差は明らかだ。

文月学園に点数の上限が無いテストが採用されてから今年で四年。

この学園のテストは一時間と無制限の問題数が用意されており能力次第でどこまでも成績を伸ばすことが出来る。

また、科学とオカルトと偶然により完成された『試験召喚システム』はテストの点数に応じた強さを持つ『召喚獣』を換び出して戦うことのできるシステムで、教師の立会いの下で行使が可能となる。

その中心にあるのが、召喚獣を用いたクラス単位の戦争――――試験召喚戦争と呼ばれる戦いだ。

その戦いで重要になってくるのがテストの点数なんだけどFクラスとAクラスの点数は本当に桁が違う。

正面からやりあうとしたら一人に対して五、六人、相手次第では十人も用意しなければならない。

 

「そんなことはありません。私が必ず勝たせてみせます」

 

そんな圧倒的な差があるにも関わらず坂本美子はそう宣言した。

 

『何を馬鹿なことを』

 

『出来る訳が無いだろう』

 

『何の根拠があってそんなことを』

 

否定的な意見が教室中に響き渡る。

 

「根拠ならあります。このクラスには試験召喚戦争で勝つことの出来る要素が揃っています。それを今から証明します」

 

そう言いながら壇上から皆を見下ろす坂本美子。

そして、ある一点を見てその目線は一気に冷たくなった。

俺もその方を見る。

あ~……なるほど……女子なら冷たい視線を浴びせるよな~……

 

「土屋君、姫路さんのスカートを覗いてないで前に来てください」

 

「………!!(ブンブン)」

 

必死に手を振って否定のポーズを取る康太と呼ばれた男子生徒。

隠せる訳ないのにあいつもバカだな……

 

「土屋康太。この人があの有名な、寡黙なる性識者(ムッツリーニ)です」

 

「……………!!(ブンブン)」

 

土屋康太という名前はそこまで有名じゃないがムッツリーニと言う名前は別だ。

その名は男子には畏怖と畏敬、女子には軽蔑を以って挙げられる。

 

『ムッツリーニだと……?』

『馬鹿な、ヤツがそうだというのか……?』

『だが見ろ。あそこまで明らかな覗きの証拠を未だに隠そうとしているぞ……』

『ああ。ムッツリの名に恥じない姿だ……』

 

例えどんな状況であっても自分の下心を隠し続ける。

やっぱり異名は伊達じゃない。

 

「???」

 

姫路は頭の上に多数の疑問符を浮かべていた。

多分渾名の由来が分からないんだろう。

 

「姫路さんのことは説明しなくても分かるでしょう。皆だってその実力は分かっているはずです」

 

「えっ? あ、私ですかっ?」

 

「ええ。ウチの主戦力です。期待しています」

 

もし、試験召喚戦争に至るとしたら彼女程頼りになる戦力は居ないだろう。

 

『そうだ。俺たちには姫路さんがいるんだった』

『彼女ならAクラスにも引けをとらない』

『ああ。彼女さえいれば何もいらないな』

 

誰だ、さっきから姫路にラブコールを送ってるヤツは。

 

「木下秀吉君だって居ます」

 

秀吉はあまり学力では名前を聞かないけど他のことでは有名だ。

演劇部のホープだとか、双子の姉貴、つまり木下優子のことだとかな。

 

『おお……!』

『ああ。アイツ確か、木下優子の……』

 

「それに原崎哲也君はBクラス並みの点数を持っています」

 

「おいおい、美子。そんな持ち上げるなよ」

 

若干照れた様子でそう言う原崎。

普通の不良ならめんどくさがるところなのにやっぱり普通の不良じゃないってか。

 

『原崎ってすごい奴なんだな』

『Bクラスレベルとかすげえな!』

 

教室中の雰囲気が良くなってきた。

皆の中の炎が一気に燃え上がって来た。

 

「それに吉井明久君も居ます」

 

『そう言えば吉井明久って去年の学年主席じゃなかったか!?』

 

その言葉に転生者達が驚いた表情をした。

それもそうか。転生者にとって俺の認識は『ただのバカな観察処分者』ってところだろうからな。

 

『俺、そう言えば吉井が振り分け試験中に倒れた姫路さんを保健室に運ぶ為に途中退席したのを見たぞ!』

『そうか!だから吉井はFクラスなのか!』

『確かにこれだけの戦力が居ればAクラスともやりあえるかもしれないな!』

『勝てるぞ!俺達は勝てる!』

 

「そうです!私達は絶対に勝てます!まずは私達の力を証明する為にDクラスを征服しようと思います。

中岡君、Dクラスに宣戦布告してきてください」

 

「へ?俺?」

 

中岡は自分に振られると思わなかったのか間抜けな声を出した中岡。

なるほど……坂本美子は世界の本来の道筋で俺に降りかかる予定の不幸を全部中岡に押し付ける気か。

それならちょっと手伝ってやるかな。

そう思った俺はゆっくりと立ち上がり中岡の前にゆっくりと歩く。

そして

 

「行け」

 

そう言った。

その瞬間中岡は震えだし扉を開けて廊下を疾駆していった。

そんなに殺気込めた気はないんだけどな……

 

「それでは、原崎君、吉井君の婚約者さん達、吉井君、兄さん、土屋君、姫路さん、木下君はついてきてください。

屋上でミーティングをしますので」

 

坂本美子がそう言って廊下に出たのを見て俺達はそれに続いた。

 

 

 

 

屋上に向かう途中中岡の叫び声が聞こえたような気がしたが……

気のせいだな。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十五話 Dクラスの転生者

坂本美子(16)

性別 女


見た目 雄二の妹とは思えないほどの清楚。
    髪はストレートの赤色。


性格 真面目だが少し抜けているところがある。


教科点数 雄二とほぼ同じ


召喚獣の装備 文月学園の制服に日本刀


備考 十三話の転生者のデータを参照


腕輪 ???




原崎哲也(16)


性別 男


見た目 髪型は『家庭教〇ヒットマン リ〇ーン』の『獄〇』で右頬に傷がある。


性格 見た目とは違い優しい。


教科点数 Bクラス代表並


召喚獣の装備 文月学園の制服にサバイバルナイフとファイティングナイフを二つずつ持っている。


召喚獣の腕輪 ???


備考 十三話の転生者のデータを参照



中岡信也(16)


性別 男


性格 クズ以外の言葉で表せない。


教科点数 Aクラスの上位レベル並


見た目 黒髪のイケメン。


召喚獣の装備 文月学園の制服に姫路並の大剣。


召喚獣の腕輪 ???


備考 十三話の転生者のデータを参照



龍夜様からサブタイトルのアイディアをいただいたので使わせてもらいます。

1/12


ミーティングが終わった後、俺はDクラスの教室へと向かっていた。

ミーティングが終わって教室に戻っても中岡が帰ってなかったからだ。

別に心配はしてないんだけど、もしDクラスに転生者とか居たらどんな奴か知りたいからな。

 

「失礼しま~す」

 

そう言ってDクラスの扉を開く。

中にはDクラスの生徒達とボロボロになった中岡が居た。

まぁ、中岡は死んでねえだろう。

若干動いてるし。

 

「お前、誰だ?」

 

一人の少年がそう言って近づいてきた。

こいつ……結構やるな……

 

「俺はFクラスのもんだ。ここに宣戦布告をしてきた奴が居るだろ?

生きてたら渡してくれねえか?」

 

「ああ、あいつか。ちょっと待ってな」

 

少年はそう言って中岡に近づき襟首を持って……

 

「ほら、受け取れ」

 

中岡を俺に向かって投げた。

避けようと思ったがそうすると中岡が上手く着地するような気がしたため俺は足を上げて……

 

「くらいな!」

 

「ふぎゃっ!」

 

中岡の頭にかかと落としをした。

え?加減?そりゃしたよ。死なれちゃ困るからな。

 

「あんた……本当にこいつのクラスメイトか?」

 

「ああ、本当だぜ?それじゃ、俺はこいつを連れて帰るからな。

お互い良い戦争しようぜ?じゃぁな~」

 

俺はそう言って中岡を引き摺ってDクラスの教室から出た。

Fクラスの教室へ向かう途中中岡に聞こえないように俺は一言

 

「この世界での試召戦争は思いっきり荒れるな……」

 

そう呟いた。

 

 

第三者視点

 

 

Dクラス教室

 

 

明久達が教室から出た後明久に近寄った少年は思案顔になっていた。

 

「(あのバカを投げた時にあいつが放ったかかと落とし……全く見えなかった……一体何者だ?)」

 

そんなことを考えていると一人の少女が彼に近づいた。

 

「ねえねえ、代表?もしよかったら私が彼のこと調べてあげようか?」

 

「良いのか?三留」

 

「うん、良いよ。私もあの人には興味があるから♪

それに……」

 

「ん?」

 

「宏君の為だから///」

 

「そうか……ありがとうな……」

 

三留の頭を撫でながらそう言う宏と呼ばれた少年。

その光景を見て周りのDクラスの生徒達はこう思ったと言う……

 

 

(((他所でやれよ……)))

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十六話 Dクラス戦、精霊機の力の片鱗

龍夜様からサブタイトルのアイディアをいただいたので使わせてもらいます。

1/12


「次お願いします!」

 

「「「私も/俺も/僕も!」」」

 

Fクラスのメンバーが試召戦争で頑張っている中俺達と転生者達(坂本美子以外)は回復試験を受けていた。

高橋先生は俺達が問題を解いている間に採点を行っているが……相当採点が早い。

俺達が次の問題を解いている間にはもう既に暇を持て余している。

あの人の手はどうなっているんだろう……?

少し気になる……っと、そんなことを考えている暇は無かったな。

問題をさっさと解いて前線の援護をしにいかないと……

 

「よし、これくらいで良いだろ」

 

「明久さん、もう行くんですか?」

 

「ああ、前線が心配だし、嫌な予感もするしな」

 

アテンの問いにそう返事をして回復試験の教室の扉を開いて戦場へ向かった。

 

 

前線

 

 

「来ないで!ウチは普通に男が好きなの!」

 

戦場に着いた瞬間そんな声が聞こえた。

声が聞こえた方を向くと島田の召喚獣がDクラスの生徒に襲われている光景が見えた。

襲っているのは確か……清水だったか……

仕方ない助けてやろう。

 

「試獣召喚(サモン)」

 

俺の喚声に応じて召喚獣が現れる。

俺の召喚獣は改造学ランを身にまとっていて身長は大体80cm位。

そして、手には木刀を持っていた。

って、ちょっと待て!

 

「何で木刀なんだよ!」

 

俺、去年の学年主席なんだよな!?

確か前に(十四話)そんなこと誰か言ってたよな!?

なのになんで木刀!?

せめて金属製の武器を装備させろよ!

本来の世界の道筋と同じ装備なんて嫌だぞ!

折角大嫌いな勉強を頑張ったのに!

心の中でそんな叫び声をあげていると

 

『ねえ、アキちゃん?』

 

『ねえ、明久』

 

俺の精霊機に入っている精霊であるフラウとブリギットが話しかけてきた。

 

『何だ?二人とも』

 

アキちゃんとは呼ばれたくないがフラウは何度言っても直してくれないからもう諦めた。

 

『私達、この召喚獣だっけ?に干渉できるかも』

 

『マジか?』

 

『うん、フラウの言うことは間違ってないよ。

召喚獣はオカルトと科学と偶然でできてるんでしょ?

それなら私達が干渉出来ておかしくないよ』

 

なるほど……確かに言われてみればそんなことが出来るかもしれない。

 

『良し、分かった、やってみてくれ』

 

『了解♪』

『了解』

 

二人はそう返事をすると俺の召喚獣に入って行った。

あ、マジで干渉できるんだ。

そんなことを思っていると俺の召喚獣の手が光に包まれる。

その光は徐々に形を変えていき最終的には銃になった。

 

「おぉぉ~……すげぇ~……って感心してる場合じゃないか」

 

本来の目的を思い出して島田の方を見る。

島田は相当追いつめられていて絶対絶命だった。

 

「ちょっと、どんなもんか試してみるか」

 

俺は銃を清水に向けて引き金を引いた。

銃弾は真直ぐに清水の召喚獣の頭にとんでいきそれを破裂させた。

 

「……え?」

 

清水はいきなりのことに呆然としている。

そりゃ、いきなり自分の召喚獣の頭が破裂したら驚くよな。

 

「戦死者は補習ーーーっ!」

 

鉄人がどこからか現れて清水を攫っていった。

うわっ、速いな~

 

「い、今の吉井が助けてくれたの?」

 

「まぁな。それより島田。お前は補充試験受けろよ。

ここは俺が何とかするからさ」

 

「う、うん、頼んだわ」

 

島田は俺の言葉にそう返事をして補充試験の教室に向かう。

俺はそれを見届けて軽く指を鳴らす。

そして少し息を吸ってDクラスの前線部隊全員に聞こえるように

 

「Fクラス吉井明久!Dクラス前線部隊全員に化学勝負を申し込む!」

 

そう言った。

 

『『『はぁぁぁぁぁ!?』』』

 

「に、認証します!」

 

先生の言葉と共に化学のフィールドが展開されお互いの点数が表示された。

 

『Dクラス前線部隊 VS Fクラス 吉井明久

 化学 平均100点 VS     453点』

 

「あ~やっぱり途中で切り上げて来たから点数低いか……」

 

『何ですって!?途中で切り上げてきてその点数!?』

 

『だ、大丈夫だ!全員でかかれば!』

 

「ふっ……だったら全員でかかってきな。それで勝てると思ってるんだろ?

教えてやるよ。数なんて大した力にならないってことをな」

 

俺はそう言って召喚獣に拳銃を構えさせた。

 

「さぁ、始めよう。一方的な殺戮って奴をな」

 

後で聞いた話だがその時の俺はまるで悪魔のような笑みを浮かべていたそうだ。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十七話 明久の片鱗、Dクラスの被害状況!

龍夜様からサブタイトルのアイディアをいただいたので使わせてもらいます。

1/17


さて、明久が廊下で悪魔のような笑みを浮かべた時から時は少し進みDクラス教室。

 

「……何だ……これは……」

 

そう呟いたのはDクラス代表である『矢崎宏』

彼の手の中には一枚のプリント。

そのプリントはDクラスの被害状況が書かれているプリントだ。

そのプリントにはこう書かれていた。

 

総員 50名

 

戦死 28名

 

補充試験中 5名

 

つまり、六割以上が現在戦闘不能となっている。

更に、驚くべきことはその被害をたった一人の少年が齎したことだ。

 

――――吉井明久

 

Dクラスにこれだけの被害を齎した少年。

生き残った生徒に話を聞くと圧倒的な召喚獣の操作技術で一撃も入れることができなかったとのこと。

更に、途中で振り分け試験を切り上げたのにも関わらず400点を超えているらしい。

 

「本当に吉井明久なのか……?」

 

自分達が知っている吉井明久は学園一のバカだったはず。

なのに、いつの間にかその少年は去年の学年主席となっていた。

 

―――分からない。

 

いつの間に何が起こった?

何故、吉井明久が去年の学年主席になっている?

何故、何故、何故……

 

「代表!」

 

勢いよく開け放たれる教室の扉の音に思考が遮られる。

それと同時に一人の男子生徒が入ってきた。

 

「どうした?」

 

一旦考えることをやめて勢いよく扉を開けた少年へそう尋ねる。

 

「ダメです!もう吉井を抑えきれません!」

 

その報告を聞いて宏は天井を仰いだ。

 

―――もう、駄目か……

 

30名以上もの大勢を無傷で圧倒した相手に勝てると思うほど宏は自信家ではない。

 

―――降伏するか。

 

そんな考えが頭に浮かぶ。

もうこれ以上犠牲を増やす訳にはいかない。

そんなことを考え、諦めかけたその時だ。

 

「宏君……」

 

三留に声をかけられた。

三留の方を向くと彼女は泣きそうな顔をしていた。

 

「……すまん、俺はまた逃げようとしていた……」

 

もう逃げないと決めたのに。

どんなことがあっても逃げないと決めたのにまた逃げようとしてしまった。

 

「前線部隊の連中を全員下げろ。俺と三留が出て何とかする」

 

「分かりました!」

 

宏の言葉にそう答えて報告をしに来た男子生徒は廊下へ出て行った。

それを見送って宏は立ち上がり三留の方をもう一度向く。

 

「行くぞ、三留」

 

「うん」

 

そうして二人は教室から出る。

今度こそ強大な力に立ち向かう為に。

 




ハイスクールD×Dの新作を書いていたら遅くなりました。

申し訳ありません。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十八話 神と強靭な意志を持つもの

新校舎Bクラス教室前。

そこでは明久が圧倒的力を以てDクラスの生徒を薙ぎ払っていた。

 

「一撃も喰らってないでここまで来ると何だか弱いものイジメをしてるみたいだな……」

 

明久の言う通り明久は未だに一撃も喰らっていない。

明久の操作がすごいのも理由の一つであろうが理由は他にもある。

その内の一つがDクラスの生徒が明久の迫力に圧されたということだろう。

先程からDクラスの生徒は明久が一歩進むごとに一歩後退している。

それでも明久に挑むのは最低クラスに負けて設備を下げられたくないと言う意地。

だが、明久はそんな意地さえも薙ぎ払う。

己の愛する者の為に悪魔にすらなる。

それが、明久が百年間修行してきた中で得た答えだから。

とは言うものの……

 

「やっぱり弱いものイジメみたいで嫌だなぁ……何だか萎えるぜ……」

 

ため息を一つ吐きながら目の前に居るDクラスの生徒達を見る。

そこに居る生徒達は皆怯えた表情を見せている。

それを見てまた明久は一つため息を吐いた。

 

「お前等、撤退してくれねぇかな?これ以上弱い者イジメしたくねぇんだよ」

 

正直かなりそう言いたい。

撤退してくれる訳がないとは分かっていたがこれ以上弱いものイジメをしたくなかった。

あり得ないとは分かっているが撤退してくれないだろうか。

そんなことを考えた時だった。

 

「前線部隊撤退しろ!代表からの命令だ!撤退しろ!」

 

「……は?」

 

Dクラスの前線部隊隊長である平塚がいきなり通常ではありえないような命令を下した。

その命令に従いDクラスの生徒達が撤退していく。

 

―――まさか、降伏する気か?

 

もうDクラスに勝ち目はない。

だから、降伏するのではないかと思ったのだがその考えはすぐに消えた。

それは一組の男女を見たから。

ただの男女ではない。

その二人は撤退するDクラスの生徒の流れに逆らいながらゆっくりと明久の方へと歩いてくる。女子生徒の方に見覚えはないが男子生徒の方に見覚えがあった。

先程中岡を拾いに行った時に中岡を投げた生徒だ。

明久は何となくその男子生徒の正体を掴んでいた。

確信なんてものは無い。

だが、間違いはないだろう。

 

―――転生者

 

その思考を肯定するかのように男のデータが頭の中に浮かんでくる。

 

矢崎宏―――睦月中学校出身。冷静沈着で滅多に感情を表すことがない。

Dクラス代表。

 

「また会ったな」

 

「ああ、あの時、初めて会った時俺はこういう絵が描かれるんじゃないかってずっと思ってたよ」

 

そう、明久はずっと思っていた。

 

―――例え、この男がDクラス代表でなくとも戦うことになるだろう。

 

そう思うと血が滾って仕方なかった。

『強者は強者と会うと血が滾る。その滾りは戦うことが無い限り止むことは無い』

かつて天界に居た頃に明久の同僚が言っていた言葉は真実だったらしい。

今すぐ戦いたい、この滾りを満たしたい。

だが、礼を失する訳にもいかないだろう。

滾る血を一生懸命理性で抑えこみながら明久は自己紹介を始めた。

 

「一応自己紹介をしておくぜ。俺は吉井明久だ。あんた等の名前をお聞かせ願いたい」

 

「……矢崎宏だ」

 

「鈴浦三留です」

 

「さて、自己紹介も終わったしさっさと始めようぜ?」

 

獰猛な笑みを浮かべながらそう言う明久。

……正直、こんな笑みを浮かべている明久が自分のことを神だと言っても誰も信じないだろう。……同じ神でさえも。

 

「その前に変な事を聞いていいか?」

 

「何だ?」

 

早くしろと言う顔をする明久。

そんな彼の顔はすぐに固まることになる。

 

「お前は何者だ?」

 

「………」

 

宏の質問を聞いて明久の表情が獰猛な笑みのまま固まった。

だが、明久はすぐに表情を真顔に戻し、それから数秒後また獰猛な笑みを浮かべた。

 

「この勝負が終わったら教えてやるよ」

 

「なら、勝って聞くことにする。俺は今度こそ三留の前で強大な力に抗って打ち勝たなければいけないんだ。行くぞ、吉井明久!試獣召喚《サモン》!」

 

「あぁ、来いよ。俺も負ける訳にはいかねぇからな。本気で行くぜ!」

 

こうして神と強靭な意志を持った二人の戦いが始まった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十九話 矢崎宏の前世

俺――「矢崎宏」はどこにでも居るような平凡な男だった。

ケンカはそれなりに強かったがそれ以外は何も持っていなかった。

そんな俺に惚れたのが「鈴浦三留」だ。

告白された時は我が耳を疑った。

何せ彼女はクラスのいや、学園のアイドルだったから。

成績優秀、スポーツ万能、おまけに鈴浦財閥のご令嬢。

誰がどう見ても高嶺の花だった。

だけど、彼女は俺に告白した。

何度もドッキリ疑惑を疑った。

でも、付き合っている内にその疑惑は消えて行った。

彼女は何度も俺への好意を示してくれた。

そして、最初彼女の好意に懐疑的だった俺も彼女に惹かれていった。

それからというもの、本当に幸せだった。

色々な場所へデートに行った。

生々しい話にはなるが肉体関係も持った。

本当に幸せだった。

 

 

だけど、そんな幸せは長く続かなかった。

 

 

――鈴浦財閥が倒産寸前まで追い込まれたのだ。

 

 

原因は鈴浦財閥の会長である鈴浦剛三氏の急病だった。

氏が倒れたことにより会社は氏の息子であり三留の兄である鈴浦恭三が会社を一時的に会社を継いだ……が、それが俺たちの幸せの終わりだった。

 

恭三は三留を会社の復興の為の道具として利用したのだ。

三留は海外の富豪の元へ嫁ぐことになった。

勿論、俺達はできる限りのことをした。

だが、それでも結婚は止められなかった。

そのことに自棄になった三留と俺は心中した。

そして、俺達は死んだ。

そんな俺達の前に神が現れ、驚愕の真実を暴露した。

鈴浦剛三氏の急病と三留の海外の富豪との縁談はある悪神によって仕組まれたものだというのだ。もちろん、俺達は激怒した。

神は俺達の怒りを受け止め、こう言った。

 

『あなた達にはやり直す権利がある』

 

詳しい話はこうだ。

悪神といえど神は神。

神の行いで不幸になった者は神によってもう一度新たな人生を送ることができる。

そして、俺達はもう一度やり直すことを選んだ。

今度こそ、幸せを掴み取るために――

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

「………」

 

『Dクラス 矢崎宏 VS Fクラス 吉井明久

 化学   23点 VS      421点』

 

吉井はあまりにも圧倒的だった。

やり直す際に様々な特典を神から貰い受けた俺でも一撃しか入れられなかった。

原作を読んでいた俺だが吉井はこんなに強かったのだろうか?

それ以前に400点を超える点数などどうやって取った?

本当にこいつは『吉井明久』なのか?

 

「矢崎宏……お前に敬意を表する。お前は圧倒的な戦力差においても諦めず俺と戦った。

人間(・・)の中でも最高級の精神力だ」

 

そう言う吉井の姿は神々しい雰囲気を宿していた。

 

「はっ……ははっ……そういうことか……」

 

何故吉井がそうなるに至ったかなどは分からない。

だが、分かったことが一つだけあった。

 

「お前がここまで圧倒的だった理由がようやく分かった」

 

相手は神だった。

勝てる訳がなかったんだ。

 

「神よ……俺達の児戯に付き合ってもらったこと感謝する……」

 

そう、目の前の男にとって俺達との戦いは児戯に等しかっただろう。

それでも最後まで付き合ってくれた。

何と寛容だろうか。

こんな男に負けるのであれば悪くは無い。

 

「さぁ、神よ。この児戯を終わらせてくれ」

 

そう言って俺は召喚獣に装備を捨てさせる。

この男を相手にして素手では勝てない。

つまり、俺はもう勝術を失ったという訳だ。

 

「そうか……なら、もう終わりだ」

 

吉井の召喚獣が銃を構える。

銃口の向いている先は勿論俺の召喚獣。

この距離で外すことは無いだろう。

ゆっくりと吉井の召喚獣が銃の引き金を引く。

そして――

 

 

 

 

タァァァァァンッ!

 

一発の銃声が鳴り響いた。・

 




長いこと更新を止めていたこの作品『バカとテストと神様』

もう需要がないだろうから更新しなくても良いなかなぁ?と思っていたんですがとあるお方のメッセージによりまだ投稿を続けることとなりました。

これからもよろしくお願いしたします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二十話 明久VS三留

色々な事情があったとはいえ投稿がここまで遅くなった挙句この駄文……

皆様には本当に釈明ができません……

何だかスランプっぽいです……

どうすればいいんだろうか……


「さぁ、神よ。この児戯を終わらせてくれ」

 

そのセリフと共に召喚獣に矢崎宏は召喚獣に装備を捨てさせた。

その行動に明久はほんの少し失望する。

強大な力を前にしても臆することなく向かってきた人間。

 

 

――嬉しかった。

 

 

だが、相手が抗うことをやめてその喜びは潰えた。

出来れば最後まで抗って欲しかった。

 

――抗っただけマシと考えるべきなのかねぇ……

 

人間達にとって自分は畏怖される存在。

最初は知らなかったとはいえその自分に抗った。

そのことだけは称賛に値する。

 

「そうか……なら」

 

―――その勇気を湛えて

 

「終わりだ」

 

―――終わりにしよう。

 

そして、放たれた一発の弾丸。

宏の召喚獣はただその場に佇むだけ。

 

―――やっぱり避けないか……

 

一瞬だけ……一瞬だけ、明久は悲しみの表情を浮かべたがそれに気付いた者は居なかっただろう。それは一秒にも満たない本当に短い時間だったから。

それは明久が意図して消した訳ではない。

明久の表情が逆のものに変わったからだった。

 

―――悲しみから喜びへ。

 

明久にとって自分の感情をそう変える出来事が起こったのだ。

 

 

時間は弾丸が放たれた瞬間にまで遡る。

秒速200メートルの弾丸は真直ぐ宏への召喚獣へと向かっていた。

それを遮るものは無い。

宏の召喚獣の胸を貫き戦死させる

 

 

 

―――筈だった。

 

少なくともその場に居た者は皆そう思っていた筈だ。

その瞬間までは。

 

ガキンッ!

 

鳴り響く金属音。

恐らく何が起こったのかを瞬時に理解したのはその場では明久と宏のみだっただろう。

 

「へぇ……中々やるじゃないか」

 

―――その称賛に

 

「神様に褒めて頂き光栄だよ。でも」

 

―――矢崎宏を守った女は

 

「宏を傷付ける人は」

 

―――鈴浦三留は

 

「神様でも許さない!」

 

明久を睨むことで返答とした。

 

 

「三留、やめろ。相手は神だぞ。俺達人間の手には負えない」

 

宏の言葉に宏に従順の筈の三留は首を振った。

 

「ごめん、宏君。今回だけは宏君の言うことは聞けないよ」

 

宏がやられそうになっているのを黙って見ているなんてできないから。

そして何より――――

 

「私の大好きな宏君を傷付けたから」

 

だから―――

 

「絶対に許さない!」

 

「ふっ……OK、来いよ。途中で絶対に諦めるなよ?」

 

「諦めないよ。というかさ―――」

 

三留はそこで言葉を止めた。

瞬間三留の召喚獣の姿が消えた(・・・)

 

「!?」

 

一瞬の悪寒。

その後明久は召喚獣を一歩下がらせた。

その瞬間、一筋の銀が明久の召喚獣の頭があった場所を通る。

それと同時に三留の召喚獣が明久の召喚獣の前に姿を現した。

 

「―――人間、舐めないでよね」

 

『Fクラス 吉井明久 VS Dクラス 鈴浦三留

化学    421点 VS      459点』

 

明久の頬を一筋の汗が伝った。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二十一話 VS三留 終 そして……

ガキンッ!ガッ!ガキンッ!

 

廊下に鳴り響く金属音。

明久と三留の戦いは拮抗していた。

三留の召喚獣は瞬間移動を繰り返し偶に現れたかと思えば、明久の召喚に斬りかかってくる。無論、明久も受け止めて反撃しているがいかんせん三留の召喚獣が速すぎて捉えられない。しかも、明久には二つ疑問に思うことがあった。

 

(これは一体何なんだ……!?)

 

三留の召喚獣の高速移動のタネだ。

最初はムッツリーニの腕輪以上の速さで高速移動をしているものだと思っていた。

だが……

 

(もし、そうなら何で相手の点数が減らねぇ!?)

 

そう、それが二つ目の疑問。

相手の点数は459点のまま。

腕輪の能力ならば点数は確実に減る筈。

だと、言うのに相手の点数が一点も減っていない。

これは一体何だというのだろうか。

 

(いや、落ち着け。考えても分からねぇものはわからねぇ)

 

どうにか思考を落ち着かせる。

まず分かっていることは二つだ。

一つ目は相手の能力が点数を消費しないと言うこと。

これはそれほど重要ではない。

 

(重要なのは二つ目だ)

 

この能力は―――

 

(ムッツリーニの腕輪の能力より速い……!)

 

ムッツリーニの腕輪の能力は高速移動。

そして、こちらは瞬間移動に近い。

 

(しかも、点数が減らないから無制限に使える分こっちはかなり厄介だ)

 

相手の点数の方が高い為、何か攻略法を見つけなければ負けるのはこちらだ。

 

(でも、正直見つけられる自信がねぇ……)

 

腕輪を使ってもいいが正直それだけは避けたい。

 

(俺でも軽く引いたしな……)

 

この世界にやって来た初日にゼウスから教えられた明久の召喚獣の腕輪の能力。

あの能力はかなり強すぎる。できればヒルデと戦う時まで使わないでおきたい。

 

「隙あり!」

 

「―――っ!」

 

姿を消して、明久の召喚獣の前に姿を現す三留の召喚獣。

勿論、明久もそのままやられるほど弱くは無い。

三留の斬撃を拳銃で受けとめる。

点数的には三留の方が高いが差は僅か40点程。

それならば受け止める程度問題ない。

勿論、鍔迫り合いをすれば明久の召喚獣が負けるが鍔迫り合いが行われることは無い。

 

「貰った!」

 

受け止めていた拳銃とは反対の拳銃を三留の召喚獣に向けて発砲する。

その瞬間に三留の召喚獣は明久の前方から消えて三留の前に姿を現す。

これが先程から繰り返されている光景だった。

 

(……試してみるか?)

 

危険な賭けだったから正直この手だけは取りたくなかったが仕方ない。

 

(失敗すれば一発死亡。免れても点数はかなり削られる……要するに一発勝負だ)

 

そう考えた瞬間だった。

三留の召喚獣が姿を消す。

刹那、三留の召喚獣が明久の召喚獣の前に姿を現した。

 

タァァァンッ!

 

同時に一発の銃声が鳴り響く。

 

「――――え?」

 

銃声の発生源は勿論明久の召喚獣の拳銃。

そして、その拳銃の先は三留の召喚獣の心臓。

 

「ふぅ……」

 

明久がした賭けとは簡単なこと。

三留の召喚獣が現れたと同時に三留の召喚獣の心臓を撃ちぬくというもの。

言うのは容易いがするのはかなり難しい。

少しでも早ければ当たらなかっただろうし、遅ければ切られていた。

 

「これで後は……っ!」

 

飛んでくる鋼。

それを躱し、明久は県が飛んできた方向を見る。

それと同時に明久は目を見開いた。

 

 

 

―――そこにあったのは宏の召喚獣の近く地面に突き刺さっている剣。

 

しかもそれは一振りだけではない。

何本も突き刺さっていた。

しかもそれだけではない。

明久が最も驚いたのは宏の召喚獣の頭上に表示されていた点数と科目。

 

『Dクラス 矢崎宏

 数学  671点』

 

点数はまだ納得ができる。

だが、科目が自分の居る召喚フィールドの科目と宏の居る召喚フィールドの科目が違うと言うのにあちら側の攻撃が届いたと言うのは納得できない。

 

「神よ、どうやら俺はまだ諦める訳にはいかないようだ―――」

 

その言葉と同時に数学の召喚フィールドが拡大し、

 

 

―――化学の召喚フィールドを飲み込んだ。

 

「!?」

 

明久の顔に浮かぶ驚愕の表情。

それと同時に宏の召喚獣は剣を構える。

 

「行くぞ!」

 

まだDクラス戦は終わらない。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。