美遊兄Grand Order (START )
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1
聖杯の願いによって美遊は別の世界に転送される。美遊の温かな幸せの掴める世界。その世界に自分はいないが、美遊が幸せに暮らせるならそれで良い。
その間、士郎は美遊を守るだけ。
士郎は美遊が転送されるまで戦った。
だが、転送されると同時に士郎と美遊の中の何かが切れる音がした。
そして、なす統べなく吹っ飛ばされる。
でも、士郎は後悔しなかった。唯一あるとすれば、
美遊を、海に連れていってあげられなかったこと。
このまま自分は拘束される。
そう考えた瞬間、
士郎は黒い何かに吸い込まれた。
暖かい。それが最初の感想。その後に来た感情は唖然。
黒い何かに吸い込まれた後にこんな場所に来た。
地面には自分の血で汚れてしまっているが、魔方陣のようなものがある。
「なんだここ?」
拘束されていないし、見張りもいない。どう見ても牢獄ではない。
士郎は立とうとしたが、身体中についている傷が疼く。
「ん?」
視線を地面に向けると、三枚のカードが落ちていた。
その三枚ともクラスカードだった。
一枚目はアーチャー、英霊エミヤ。
次に、
「なんだこれ?」
後の二枚もクラスカードだ。だが、そこには
こんなクラス聞いたことない。
その前に、
「逃げないとな·····」
こんな知らない場所でじっとしているのは落ち着かない。
士郎は痛みに必死に堪え、ドアから出た。やはり見張りはいなかった。
士郎は自分の来た道をもう一度見る。自分の血で道が血塗れになっていた。
自分の傷を見る。そこから血が滴り落ちていた。血を見て、自分の状態がひどいことを認識した。
頭がボーとする。鏡を見るまでもなく自分の顔色はひどいだろう。
頭がボーとしたまま、廊下を歩く。すると、扉が見える。
だが、今の士郎はその扉を認識出来なかった。
壁に寄りかかりながら歩いていた士郎は自動ドアに気がつかずに開いたドアに対応できず室内に思いっきり転んだ。
ボーとした頭が少しマシになってきた。
そこは食堂だったらしい。席にはいろんな格好をした人がいた。
いろんな格好だ。中には鎧を纏った人もいる。
士郎はその人ならざるものを見て確信する。
「えい·····れい」
その言葉にほとんどがこちらを向く。
「大丈夫です·····て、村正のお爺ちゃん!」
一人の女の子が士郎の元へと駆けつけた。
「村·····正?」
その時、
「シロウ·····何故?」
声のした方を見る。そこには金髪の少女がいた。その声は悲しそうだった。
「だれ·······だ」
そう言って士郎は気絶した。
衛宮士郎 設定
人間。サーヴァントに近いがサーヴァントではない英霊の紛い物。ゆえに契約はできない。
一応ステータスは書いておきます。
属性 混沌 悪
167cm 57kg
反英雄。受け継いだ正義を自分で捨て、たった一つの為に世界を敵に回した最低の悪。カルデアでは二人目のマスターとして戦うが、妹に何かあったら人を殺し、世界を敵に回すことも厭わない。
ステータス
筋力 D 耐久力 D 敏捷 D 魔力 B+(雪下の誓いがない場合) 幸運 E- 宝具 ?
保有スキル
心眼(真)B 魔術 C+ 投影魔術 A 千里眼 C- 雪下の誓い EX
雪下の誓い
衛宮士郎と朔月美遊との絆の証。世界は違えど、絆は消えず、衛宮士郎は朔月美遊から無尽蔵の魔力を得る。
宝具
『無限の剣製』
神装兵器投影可能にするかも。するとしたら代償も大きくします。
ヒロイン未定
SN組はUBWルートです。
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2
夢を見た。それは、美遊の夢。
夢の中で美遊は笑っている。それはもう楽しそうに。
そして側には美遊と同じくらいの少女。平行世界の衛宮士郎。
その夢を見て安心した。
そんな日常を過ごしていたら·······俺の願いは半分叶えられたよ。
「う······ん」
士郎は微睡みの中、何とか意識を保たせて、起き上がった。
「ここは?」
「目覚めたかい」
声がした方を向く。声の主、黒髪の若いモナリザに似た女性だった。
「あ、あぁ」
「私の名はレオナルド·ダ·ヴィンチ。カルデアの技術部のトップさ。気軽にダ·ヴィンチちゃんと呼んでくれ」
「わかった。ダ·ヴィンチちゃん。ん?レオナルド·ダ·ヴィンチ?」
「そう。私こそが天才、レオナルド·ダ·ヴィンチなのだ」
自分で天才と言っているあたり、天才とバカは紙一重というのは本当のことなんだろう。
「君の名前は?」
突然ダ·ヴィンチちゃんは名前を尋ねてきた。そういえば名乗ってなかったな。
「俺は、衛宮士郎。よろしく」
「よろしく。そういえば客人がいるよ」
「客人?」
「入ってきたまえ」
そういうと一人の女性が入ってきた。赤い髪でサイドテールの少女だ。
「目覚めたんだ。村ま·····士郎君」
「あぁ、君は?」
「私は藤丸立花。カルデアのマスターだよ。君のことはアルトリアから聞いたよ」
「マスター·······」
「そういえば説明がまだだったね」
そう言ってダ·ヴィンチちゃんは現状の説明をしてくれた。
この世界の聖杯戦争はこっちとは違い、サーヴァントに戦わせるようだった。
「士郎君。お願いがある。君はカルデアの第二のマスターとして特異点に行ってくれないか?」
いきなりのことで少し戸惑った。だが、返事はもう決まっていた。
「わかった。俺で良ければ」
身寄りのない士郎はこの選択しか残されていなかった。
「それは良かった。じゃあ立花君。案内してくれないか?」
「任せてよ、ダ·ヴィンチちゃん。行こう」
士郎は手を引っ張られ医務室から出た。
ダ·ヴィンチは考えていた。突然現れた衛宮士郎という存在を。
マスター候補生の中にはそんな人間はいなかった。
彼の履歴もまったくなかった。突然現れたのだ。そして彼の属性。混沌 悪。現代人でこの属性を持っている人間はいないだろう。あの少年と話したが、悪の要素は感じられなかった。
「これは様子見かなぁ」
天才は静かにそう呟いた。
士郎は立花にカルデアを案内された。だが、立花に用事ができ、去っていった。
「藤丸立花······か」
藤丸立花。一般人ながら人理修復を成し遂げた、ある意味、正義の味方だ。
彼女を見ていると切嗣のことを思い出す。切嗣から受け継いだ正義を捨てた自分を思い出す。人類の為に振るわれるべき力をたった一人の為に使った最低の悪を。
後悔はしていない。後悔するわけがない。妹を守れた。それだけで満足だ。
すると、後ろから殺気を感じた。
士郎は後ろから来る何かを掴む。それは矢。
こう来るだろうと士郎は考えていた。突然現れた自分を歓迎しないやつも出てくるだろう。
士郎は矢を地面に置き、そのまま立花に教えてもらった部屋に向かった。
自室に入る前に何人かのサーヴァントとすれ違ったがその全員が士郎を不審な目で見ていた。
士郎は椅子に座り、ボーとする。すると、
「士郎君。いるー?」
外から立花の声が聞こえる。士郎はドアを開けた。
「皆に自己紹介するから」
そう言って立花と一緒に食堂に向かうことになった。
「········」
「ん?」
立花は士郎の目を見つめる。
「なんか士郎君って暗いよね」
「そうか?暗い感じはないけど」
「ふーん」
立花はそう言って再び歩き出す。
「そういえばアルトリアが士郎君のこと心配してたよ」
「ん?アルトリア?誰だ?」
「え?覚えてないの?」
「覚えてないというか会ったことないぞそんなやつ」
「聞いてた話と違うなー。君、彼女のマスターだったんだろ」
「というか、彼女の言っている、衛宮士郎と俺は········ん?」
よく見ると違う道に小さい金髪の少女をナンパしている黒ひげの生えた男がいた。
「
士郎は投影魔術で野球ボールくらいの鉄球を投影する。
あんなに小さい少女をナンパしているのは出来れば見たくない。サーヴァントだから大丈夫だろう。
士郎は目一杯の力で鉄球を黒ひげの男に投げた。しかし、
「はうっ!」
「あっ」
運の悪いことに鉄球は男の股間にあたり。男は白目を向いて気絶した。
「あのっ、ありがとうございました!」
少女はそう言って食堂のほうへ向かっていった。
「大丈夫かな?」
立花はそういいながらも黒ひげを無視して食堂に向かう。意外とドライだな。
「みんなー、来たよー」
立花は食堂に入るなりそう言った。
士郎は食堂に入った。
全員の視線は士郎に向けられる。
「衛宮士郎です。よろしく」
士郎は前に出て挨拶をする。
「·······」
サーヴァントの反応はあまりいいものではなかった。
「マスター、何故いきなりマスターを追加したのですか?」
そう質問したのはショートカットの髪も肌も雪のように白い女性だった。
「ダ·ヴィンチちゃんが私だけだと大変だからだって」
「でもコイツ使い物になるの?」
その言葉にサーヴァントたちが頷く。
「ちょっとジャンヌ、そんなこと言っちゃダメだよ」
「事実です。使えないマスターに従いたくありません」
「士郎君はどんな魔術使えるの?」
「あぁ、強化魔術と投影魔術だ」
「ふん、強化と投影なんて初歩中の初歩、それだけの魔術でサーヴァントたちが従うと思いますか?」
この反応は予想していた。強化はとにかく、投影なんて一般的には使い物にもならないからだ。立花はジャンヌという少女を注意している。
「ん?」
周りを見渡すと意外な視線に気がついた。
一人はジャンヌという少女を睨んでいる。
もう一人は士郎を信じられないというような表情でこちらを見ている。
まぁ今はどうでもいい。
「まぁこんな俺だけどよろしく頼む」
「ふーん」
すると、後ろから声がした。白い服を着て白髪の杖を持った男だった。
「君はそちらの選択をしたんだね」
その言葉に士郎は固まった。つまりヤツは士郎のやったことを知っている。
「お前·······なにを····」
「一ついい忘れてた」
「彼女はあの世界で友人ができたよ」
その言葉に再度固まる。この男は胡散臭いが嘘を言っているとは思えなかった。
「そう········か、良かった。だったら俺の願いは半分叶えられたよ」
士郎の言葉に金髪の少女は目を見開く。
「シロウ····貴方は――――――――」
「君の知っている衛宮士郎と俺はまったく違うぞ」
「え?」
「そういうことか」
褐色の男は納得したように言葉を発した。このサーヴァントを自分は知っている。
「英霊······エミヤ」
そう。自分が至ったかも知れない、切嗣の目指した正義の理想。
「ヤツはエミヤシロウであってエミヤシロウではない。よく見ろ。ヤツはあのときとまったく成長してない」
「え?」
確かに、よく見ると身長もあのときと変わっていない
「貴様は平行世界のエミヤシロウだな」
「··········あぁ、そうだ」
その言葉にこの場にいるほとんどがざわつく。
「なぁ、この世界の衛宮士郎はどんなやつだ?」
突然の質問で戸惑っていたが、すぐに気を取り戻した。
「そうですね。彼は正義の味方を目指していました」
「正義の味方·······正義···か」
そう呟いた士郎の表情は寂しく、悲しそうだった。
「引き継いだ誇りは······自分で捨てたよ」
「え?」
小さくて聞こえなかったが。多分独り言だろう。
「ん?そういえば······もうこんな時間か」
そう。案内される前にダ·ヴィンチちゃんにこの時間に医務室に来るように言われていた。
「すまん。もう行くよ」
そう言って士郎は食堂から出ていった。その時の少女の表情は暗かった。
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3
衛宮士郎の朝は早い。他の職員よりも。こんな時間に起きる英霊はただ一人。
カルデアのオカン。エミヤである。
「毎朝毎朝何故ここにいる」
「仕方ないだろ。頼まれたんだから」
士郎がカルデアにきて一週間経った。つい数日前に小腹の空いた立花に料理を作ってやったら大変気に入ったらしく、エミヤと一緒に料理当番を任された。
立花曰く、懐かしの味、らしい。
エミヤとはなぜか馬が合わなく、仲は良くない。
朝7時。職員もサーヴァントも起床する時間。
各々が自由な席に座る。
士郎は注文のきた席に行って品を配る。因みに、士郎の私服は和服である。
「すみません。ありがとうございます。シ········シロウ」
そう声をかけたのはアルトリアだ。まだ士郎とはギクシャクしている。
すると、後ろから手が伸びてきて、士郎は引っ張られる。
「おい、ハンバーガー10ダース追加だ。早くしろ」
そう言ってきたのはセイバーオルタだ。何故かセイバーオルタは物凄く大胆でよく体を寄せて肌をくっつけてくる。
「やめなさい、セイバーオルタ!シロウもデレデレし過ぎです!」
アルトリアは少しでも士郎が他の女にデレデレしていると顔を赤くして注意してくる。
改めて周りを見ると、アルトリア顔は大量にいる。誰だか見分けがつかない。
中には士郎とアルトリアの様子を嫉妬して睨んでいるのもいる。
ちなみに、まだ士郎を不審に思っていたり、信用していないサーヴァントも、大勢いる。
「さて」
士郎はエプロンをたたみ、定食をお盆へのせて、空いている席を探す。。
「隣いいか?」
「えぇ、どうぞ」
そう答えたのはジャンヌ·ダルクだ。
白い方は反転したジャンヌらしい。
「あの····」
「ん?」
「あの子がほんとに失礼なことを······」
あの子、とはジャンヌ·オルタのことだろう。
「それなら大丈夫だ。こっちが未熟なせいでもあるから」
「むぅ、そんな言い方はしないでください·········」
ジャンヌは不機嫌そうにそう言う。
ここのところ、食事はジャンヌと一緒に食べている。
ジャンヌは突然現れた士郎に親しく話してくれた。
ジャンヌと何気ない話をしてなから食事を食べ、ジャンヌがいなくなったあと、士郎は机に乗った食器を片付け、自室に戻るために食堂を出た。
(またか···········)
視線を感じる。カルデアに来てからよく視線を感じる。
多分、士郎をよく思っていないサーヴァントが士郎に嫌がらせをして追い出すために観察しているのだろう。
士郎はその視線を無視し、自室に戻る。
「ふぅ、今日か········」
そう、今日の昼間、初めてのレイシフトだ。
士郎はレイシフトに備えて、準備を進めた。
セイバーオルタは美遊兄を大変気に入っております。(気になってもいる)
反対にジャンヌ·オルタはまだ美遊兄のことを認めておりません。(他の英霊も同様)
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4
士郎は動きやすい服に着替えて、中央管制室に集まっていた。
今日レイシフトするのは微小特異点らしい。
ダ·ヴィンチちゃんから説明を受け、レイシフトするが、
「なんでさ」
今日一緒にレイシフトするはずのサーヴァントがいなかった。
『大変です!サーヴァントがレイシフト出来ない事態になりました!しかもコフィンの異常で、直るまで戻れません!士郎先輩、コフィンが直るまでそこでじっとしててください!』
マシュが焦った声でそう言う。つまり、士郎はコフィンが直るまでサーヴァントがいない状況でじっとしてないといけないらしい。
「ふぅ」
士郎は落ち着こうと息を吐き、その場に腰を下ろした。
別にサーヴァントがいなくても士郎は敵を倒せるが、サーヴァントと同等の力を持つ人間等、戻ったら絶対疑われる。出来れば使いたくはない。
すると、反対の道から足音がした。
その道を見ると、そこにはゾンビや骸骨兵が大量にいた。
すると、骸骨兵は矢を撃ち、ゾンビは剣を持ち、士郎に斬りかかってきた。
士郎は反対に逃げ、敵が士郎のことを見えなくなるまで、逃げた。
士郎は岩の影に隠れ、息を殺した。
『大丈夫ですか?士郎先輩?』
その声はマシュの声だった。
「マシュ」
『はい』
「出来れば、先輩って言わないでほしいな」
そう。マシュに先輩と呼ばれると、どうしても桜のことを思い浮かべてしまう。
『わ、わかりました』
マシュは疑問に思いながらもそう答えた。
「ふぅ、さて、」
士郎は敵がいないか確認し、いないと判断し、この場所を少し探索しようと立つ。
そして色々な部屋に行き、なにかないか探すが、特にめぼしいものはない。
そして最後の部屋に入ると、
ガシャン、
「え?」
部屋に入るなり、突如部屋の扉が閉まってしまった。
『大変です!扉を開けるには────────』
「あぁ、あいつを倒さなければいけないんだろ?」
士郎は部屋の中央を見る。そこには、黒い鎧と禍々しいオーラを纏った、サーヴァントがいる。一騎だけのようだが、その手に握られているのは······
聖剣、
アーサー王の持つ、絶対の剣。
『士郎さん、逃げてください‼』
「出られないから逃げられないんだよな······」
士郎は閉ざされた扉を見る。固く閉ざされている。
「やるしかないな····」
「人間風情が·····」
士郎は再び前を見る。セイバーオルタはすでに構えている。
「
士郎は干将·莫耶を投影する。
『それは·······』
マシュは驚いたようにそう言う。
これは英霊エミヤのもの。士郎がそれを持っているのに驚きを隠せないようだ。
セイバーオルタはこちらに攻撃を仕掛ける。
士郎は防ぐが、二撃、三撃と防いでいるうちに、不利になっていった。
「
「
すると、士郎の後ろに大量の剣が出現し、セイバーオルタに向けて放つ。
セイバーオルタは剣を撃ち落とす。
士郎は撃ち落としたすぐあとに、セイバーオルタに斬りかかる。
セイバーオルタはすぐに姿勢を立て直し、受け流す。
士郎はさっきの剣撃を越える速さを越える速さで剣を繰り出していた。
セイバーオルタの剣撃も速くなる。
士郎は体を右に体を傾ける。すると、正面から二本の剣が飛んでくる。
セイバーオルタはその剣を撃ち落とす。だが、
士郎はいつの間にか後ろにいた。
セイバーは避けるが、干将·莫耶はセイバーオルタの顔に掠り傷をつけた。
「貴様何者だ?その能力、最早人間ではないな」
「··········別に、ただの英雄くずれさ·········」
その戦いをジャンヌとアルトリアは映像で見ていたが、その時の彼の表情は悲しそうな表情だった。
士郎は後退し、二つの剣を投影しようとする。
「あ、あ、あ、あ、あ、!!」
士郎は一つの剣を投影し、セイバーオルタに投げつける。
──────
そのハリボテ。それをセイバーオルタにぶつける。
そしてもう一本の剣を投影する。
──────
それをセイバーオルタにぶつけ、板挟み状態にする。
士郎はセイバーオルタの上に飛ぶ。
「バカが、次で終わらせる」
「─────卑王鉄槌。極光は反転する」
セイバーオルタの周りに魔力が集まる。だが、その時、士郎は呟く。
「
「光を呑め!
その光は周りを巻き込み、士郎を飲み込む。周りに砂埃が舞い、映像も見えなくなる。
砂埃が晴れたときに見えたのは、胸を貫かれたセイバーオルタの姿だった。
後ろには旗でセイバーオルタを貫いた士郎がいた。
その旗をマシュは知っている。
──────
士郎はエクスカリバーをそれで防ぎ、セイバーオルタを貫いた。
セイバーオルタは消えていき、やがては完全に消滅した。
「はぁ、はぁ····」
強かった。これが本物の英霊の力。比べ物にならなかった。
士郎はそう考えていると、やがては目的を思い出した。
士郎は部屋の奥にある聖遺物を手にいれる。
すると、体が粒子になっていく。はぁ疲れたな。
すると、視界はコフィンを映していたが、視界は疲労により、意識を手放した。
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5
「またここか」
士郎は周りを見る。士郎は医務室のベッドに寝かされていた。
士郎は立ち上がろうとするが、
「ッ·······!?」
体のあちこちが痛んだ。久々に戦ったんだ。それに今回は本物の英霊。体にガタが出るのは当然だろう。士郎は暫く寝ることにした。
動けるようになり、家事や炊事をできるくらいには回復した。
だが、さっきの戦いでサーヴァントの士郎への不信感は募るばかりだった。
さっきの戦いでの士郎のことを聞こうとダ·ヴィンチちゃんが来たが、あまり言いたくないので黙秘権を行使した。
次の日、体は完全回復した。
「動けるようになって何よりです」
最初に声をかけてきたのはジャンヌだった。
「あぁ、なんとかな」
「··············その、あの······」
ジャンヌは士郎のことを聞こうか迷っていた。だが、戦っているときの士郎のあの表情を思い出すと、気が引けた。
士郎は感じ取ったのか、口を開く。
「出来れば言いたくはないんだ」
「ッ·········!わかりました······」
ジャンヌはそう言って士郎から離れる。
「士郎くん大丈夫?」
そう言ってきたのは立花だった。
「あぁ、もう大丈夫だ」
「そっか。もう無茶しないでね」
そう言って士郎から離れる。多分ジャンヌとの会話を聞いていたのだろう。
立花は士郎のことを聞いては来なかった。立花なりの気配りだろう。
何故か気まずくなり、士郎は自室に戻っていった。
立花のダ·ヴィンチちゃんに呼ばれ、研究ラボに来ていた。
「どうしたのダ·ヴィンチちゃん?」
「士郎君のことでね。君には伝えないといけないと思ったんだ」
「·············」
「単刀直入に言わせてもらうと、彼は聖杯と繋がっている可能性がある」
「···············え?」
立花はその言葉に立花は驚く。
「彼を調べたんだ。彼の中にはなにかのパスが繋がっていた」
「それが、聖杯とのパス···········」
「そう、正直言うと、彼は謎なんだ。あの力、あの能力。それ以前に彼は突然現れた」
「············」
立花は答えられなかった。確かに、実際彼は謎なのだ。
「そこでだ。立花君に頼みたいことがあるんだ」
「ん?」
「彼の監視を頼みたいんだ」
「え?」
「ずっと見ててくれってわけじゃないんだ。観察してくれってことだ」
「観察···············」
監視、と聞いて少し強張ったが、観察、と聞いて少し落ち着いた。
「じゃあ、頼むよ」
そう言って解散となった。
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6
士郎は自室に戻り、椅子に座った。そして、ポケットに入っているクラスカードを確認する。
「ん?」
すると、三枚のはずなのに、もう一枚入っていた。
士郎はその一枚を取り出す。
それは、セイバーのカード。
しかも、このカードは、英霊の力など何にもない、いわば屑カードだ。
コンコン、
すると、ドアを叩く音がする。ドアを開けると、そこには、セイバーオルタがいた。セイバーオルタは一言、
「お腹が空いた。ハンバーガーを十ダース寄越せ」
つまりセイバーオルタは今すぐハンバーガーを作れってことだ。
「ハイハイ········」
そう言って士郎はセイバーオルタと一緒に食堂に向かった。
セイバーオルタは十ダースと言っておきながら、五十ダースを平然と食べ、満足しながら帰っていったとき、
「シロウ、いますか?」
アルトリアの声がした。
「どうしたんだ?」
「あ、えっと、その·······私にもなにか作ってくれませんか?」
「あぁ、それぐらいだったら」
そう言って士郎は厨房で料理を作る。
「あの」
「ん?」
「その肌はどうしたんですか?」
その肌、とは顔の褐色になった部位だろう。
「んー、代償、かな?」
「代償?」
「まぁ、力を使いすぎた、てところかな?」
「·······そうですか」
アルトリアは俯く。表情は少し暗い。
「········よし、完成だ」
その間に士郎は料理を完成させていた。
「ッ··········⁉」
あの暗い表情はどこにいったのか、アルトリアは料理を見て目を輝かせていた。
「では、いただきます」
アルトリアは手を合わせてそう言った。アルトリアは美味しそうに料理を食べている。自分の料理をこんなに美味しそうに目の前で食べているのを見ると、照れくさくなる。
「シロウ、夜遅くすみませんでした」
食べ終わったアルトリアはそう言う。
「気にするな。さっきまでオルタに作ってたからな」
「はい、わかりました。では」
そう言ってアルトリアは踵を返し、部屋に戻っていく。
さて、戻るか。
そう思った矢先にこちらに向かう足音がする。
そして、食堂に来た客人は珍しい客人だった。
「··········」
ジャンヌ·ダルク·オルタ。士郎に不満がある英霊だ。
だがジャンヌ·オルタは少し顔を赤らめていた。そして、一言、
「りょ、料理作って·······」
最後のほうは蚊の鳴くような声だった。
士郎は意外だと思って目を見開く。
ジャンヌ·オルタはジャンヌやサンタ·リリィに士郎の料理のことを聞いて食べたくなったらしい。
「······了解」
士郎は苦笑しながらそう言った。
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7
士郎は厨房で料理を作っている。食堂の席にはジャンヌ·オルタが静かに座っている。心なしか、ジャンヌ·オルタの顔が赤い。
士郎はジャンヌ·オルタを見ると、
「なによ·······」
ジャンヌ·オルタは顔を赤らめながらもこちらを睨んでくる。ジャンヌ·オルタはずっと恥ずかしさに堪えていた。初対面であんなことを言って、それからずっと蔑んでいた相手にこんなことを頼むとは思わなかった。
それもこれもあの二人のせいだ。あの二人が士郎の料理はものすごくうまいと食堂でその料理が机にある状態で言ってきたからジャンヌ·オルタも食べたくなってしまった。士郎の料理は香りからしてものすごく美味しそうだったので、ジャンヌ·オルタは折れた。
「ほら、完成だ」
士郎は完成した料理をジャンヌ·オルタの前に置いた。
「ッ·······!!」
ジャンヌ·オルタはその料理に息を飲む。改めてみると、見ているだけで美味しそうだということがわかる。
加えて香りも合わさり、ジャンヌ·オルタの空腹間は増すばかりだった。
パク
ジャンヌ·オルタは一口食べた。すると、ジャンヌ·オルタは、無言で次々と口に運ぶ。
(·········悔しいけど美味しい)
美味しいのだ。その味はなんでか優しい味だった。ジャンヌ·オルタは完食し、無言で士郎にお皿を差し出す。
「·········」
「?」
ジャンヌ·オルタは無言を貫いているが、顔が赤い。そして一言、
「お、おかわり··········」
ジャンヌ·オルタは恥ずかしそうにそう言った。士郎はジャンヌ·オルタの意外な一面に驚いた。
「は、早くしなさいよ········」
「·······ハイハイ」
士郎は笑いながら皿を取って料理を作り出した。
結局ジャンヌ·オルタは5回もおかわりをした。ジャンヌ·オルタは終始顔を赤くさせていた。
「味はどうだった?」
士郎はジャンヌ·オルタにそう問いかける。
「·················」
ジャンヌ·オルタは黙りこむ。そして一言、
「そ、その、美味しかったわよ‼」
ジャンヌ·オルタは恥ずかしさのあまり半場ヤケクソになってそう言った。そして一言、
「ま、また作って」
ジャンヌ·オルタは小声でそう呟いた。
士郎はその声を聞き取った。
「あぁ·········また作るよ」
士郎は笑みを浮かべながらそう言った。その言葉がとどめになった。
「~~~~~~ッ!?」
ジャンヌ·オルタは顔から蒸気が出そうになるほど顔を赤くして走り去っていった。
士郎は満足感を感じながら後片付けをした。
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