TRPGによくある導入からの人理修復 (ヨーグルト=ソース)
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親の顔より見た導入

TRPGで戦犯になったから罰ゲームで書いた続きはたぶん書く。


 親の顔より見た導入

 

 

 

 

 

 いつも通り、スマホをチラチラと確認しながら通勤の道のりを進んでいく。

 ながらスマホは確かに良くないのだろうが、今日の案件について連絡が来ないかが気になってしまい、やはりスマホを確認してしまう。

 

 そして駅のホームについた時、違和感に気が付いた。

 

 あれほど騒がしく、通勤時間ということで自分と同じように会社へ向かうために電車に乗る人達で溢れているはずのホームに誰もいないのだ。

 

 線路を挟んで向かい側の5番ホームにはやはり人はたくさんいるが、誰一人としてこちらに違和感を持っている者はいないようだ。

 

「ああ、またか」

 

 今までにも何度かこのような不可思議な現象に巻き込まれてきたからこそ分かる。ここでこのホームからすぐ出ようとすれば碌でもないことになるのだろう。だからこそ

 

「来たか……」

 

 今来たこの無人電車に乗るべきなのだろう。

 

 探索は始まったばかりだ。

 

 

 

 

 ────────────

 

 

 

 電車に揺られ、30分ほど。

 

 その間、1度も止まることはなく、また、途中からはあるはずのないトンネルに差し掛かったため、外の景色を見ることは叶わなかった。

 

『次は、終点、冬木です。』

 

 唐突に響く女性のような、男性のような、老人のようでもある、そんな深く聞くと自分の心が削られていきそうな不可思議な声によると、この電車が向かっているのは冬木とかいう街らしい。

 聞いたことある様な無いような。

 

 プシュー、と気の抜けた音とともに電車の扉が開く。

 

 チラリと後方車両を横目に見れば黒いナニカがゆったりと迫ってきているのが見て取れる。

 

「ここに留まるのは悪手かな……軽くでいいか」

 

 ざっと車内を見渡すと座席の上に、一つだけカバンが置かれているのが見て取れた。

 そのカバンだけ持ち、扉から電車の外に出る。

 

 すると、黒いナニカが自分を追って、隣の車両から出てこようとしたところで、ガシャン!と勢いよく電車の扉が閉じ、またどこかへと走り出した。

 

「ここは……地下の駅か、周りには特に何もなさそうだな」

 

 ぐるりと見回すと、特にこれと言って気になるものは見つからない。外に出て現状を確認しようと、改札にSuicaを軽く叩きつけ、駅から出る。

 

 ────────────

 

 

 轟々と燃える街、崩れ落ちた建物群、地獄のような光景が、駅の外には広がっていた。

 後ろを振り向けば、登ってきたはずの階段は元からそこには何も無かったかのように忽然と姿を消している。

 

 そんな不可思議な出来事に、やはりため息しか出てこない。

 

「1人だけなのは初めてだな、これはキツそうだ」

 

 1つつぶやき、周囲の探索を始める。

 周囲にある探索できそうな無事な建物はガソリンスタンド、コンビニ、花屋がある。

 

 ガソリンスタンドは引火したら危険だ、コンビニでまずは色々と揃えようか……。

 

 コンビニ内にはほとんど汚れが見当たらず、食品類は無事なことが見て取れた。

 

「そういえば、このカバンの中身見てなかったな」

 

 先程電車の中で見つけたカバンをカウンターに載せ、中身を見てみると、メモ帳、刃渡りが包丁よりも少し長いくらいの両刃の剣、虹色に輝く何かの石、鎖や鍵などで厳重に封をされた木箱、そして赤いタトゥーシールだ。

 

 そして、取り出してみて気がついたが、このカバンは外見と内容量が一致しておらず、まだまだ入りそうだ。

 

 メモ帳を確認しながら長持ちするものを優先して食料、水を入れていく、同時にライターともったいないが酒瓶、紙などを使って火炎瓶も作っておく。

 

 一息ついたところでメモ帳の内容を軽く整理してみる。

 

 ~〜~〜~〜~〜~

 

 ・召喚の魔術

 ー召喚には魔力が必要、これは普通の人間では魔力が足りないが、聖晶石で代用可能。

 

 ータトゥーシールはこの召喚を行う上で契約の証としてどこかに貼る、手の甲が1番扱いやすい。これは使い魔に対する絶対命令権であり、24時間にひとつ回復する、ストックは3。

 

 ー召喚に必要な詠唱。

 

 ーメモ帳最後のページにある魔方陣を描き、祭壇に遺物を置き、詠唱を行うことで召喚は可能。

 

 

 ・サーヴァント

 ー召喚術、またはそれに類するもので呼び出された使い魔。

 

 ー多くは人類史にその名を残した英雄、英傑や、偉人が呼び出されるが、希に例外もある。

 

 

 

 

 

 ・ldx(npi@@_smxt5…5〆

 ー生き残りたければ己、またそれに類するものを救え。

 

 〜~〜~〜~〜~

 

 以上だ。

 

「1番重要な生き残る条件が解り辛い……要は自分の身は自分で守れ?まあ、今は情報が足りないか……」

 

 召喚の魔術に必要な魔法陣は半分ほど破れていて使えそうにない。

 

 そして遺物、これは多分厳重に保管されているこの木箱の中身だろう。今までに見てきた魔導書なんかと似た気配を感じる。

 

「それで、この剣は確か……アゾット剣……?だっけか」

 

 前に変な部屋に攫われた時に似たような剣を見たことがあるが、きちんとした扱い方などは知らないため、ただの剣としてしか使えないだろう。

 

 その時ふと、外から聞き覚えのある、しかし絶対に普段では聞くことは無い、とても聞きたくない音が響いてくる。

 

 

 カラカラ……カラコロ……

 

 

 硬質な何かがぶつかるようなそんな音が複数近づいてくる。

 

「はぁ……やっぱり、いつものか」

 

 いつも持ち歩いている通勤カバンはいつの間にか手元からなくなっていたため、常に携帯していたタクティカルバトンも無いので、仕方なくこのアゾット剣を使うしかなさそうだ。幸い、長さはあまり変わらないのと、相手が自分の予想通りなら、刃の部分を当てなくても良いだろう。

 

 カバンを適当な紐で背中に括り付けて密着させ、スーツの脇の下と脹ら脛から踵にかけてアゾット剣で裂け目を入れて動きやすくするとコンビニから出る。

 

 そこに居たのは、小学校の理科室にある骨の模型とは違い、ひとりでにカラカラと動き続け、手に錆びて折れた剣を持っている化け物……スケルトンがいた。

 

「たしか、前に戦った時は足の関節を優先して砕いたらなんとか逃げきれたはず」

 

 あまり嬉しくないが、過去に巻き込まれた経験が役に立ちそうだと、少し汗を流しながらもアゾット剣を握り直す。

 

 

 ────────────

 

 

「はぁ……はぁぁぁ……疲れた……」

 

 あの後、狙い通りスケルトン達の膝を優先して狙ったことで、なんとか足を破壊し、逃げ切ることが出来た。

 

 戦っている最中、アゾット剣の柄が緩くなって刃が取れた時はどうなるかと思ったがなんとかはめ直し、戦えた。

 

 しかし、柄の中になにかあったな……

 

「これは……錠剤?」

 

 何やら赤い錠剤のようなものが入っていたが、これについては残念ながら喉元まで出てきていたがおもいだせなかった。

 

「後回し、か」

 

 ザッ

 

 またも、唐突に足音が聞こえてきた、しかし今回は、スケルトンから逃げきれたことから気が緩んでいたのか、接近に気がつけなかったようで、すぐ後ろから音が聞こえてきた。

 

 なんとか体が反射的に動いてくれたため、アゾット剣をそちらに向け、目をうっすらと瞑り、そのシルエットを確認する。

 

 今までには見るだけでも発狂しそうなおぞましいものも存在していたので、このうっすらとシルエットで確認するというのが癖になってしまったが、今はいい。

 

 どうやら相手は人型のようだ、手にはなにか大きな……十字架……?こいつらは狂信者かなにかか……?

 

 見ても大丈夫だと判断した自分は相手をしっかりと確認する、そこに立っていたのは何かをかばうように巨大な……盾?を構え、こちらを見ている少女と、盾の向こうからこちらを窺う少年少女だった。

 

 互いの間に奇妙な沈黙が続く。

 

 

 

 攻撃してこないってことは……同じように巻き込まれた感じか?でも、あのヘンテコな格好……いや、向こうも困惑してるぞ?

 

 若しかしたら前みたいに別の時代の人間かもしれないな。

 

 剣を下げようとしたところで、白髪の少女がこちらに高圧的な態度で質問をしてきた。

 

「貴方!その剣を下ろして所属と名前を名乗りなさい!」

 

 と、まずは自己紹介で警戒を解くか。

 

「失礼しました、○○株式会社、○○店の店長、内荒 藤太(ないあら とうた)です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「はい?」」」




今までやってきたセッションで1番カオスだったのは全員がセイバーを探索者にした時(作者の探索者はヒロインX)

今回のダイス箇所
駅のホーム
電車内
地下鉄駅のホーム
探索箇所決定
コンビニ聞き耳や逃げたあとの聞き耳etc.....


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蜂蜜酒のような

途中ファンブルとクリティカルのせいでかなり無理のある展開に思えそう(小並感)

文字数もっと多い方が良いですかね


 

 

 

 

 

「失礼しました、○○株式会社、○○店の店長、内荒 藤太(ないあら とうた)です」

 

 

 

 

「「「はい?」」」

 

 こちらの自己紹介に対し、相手方の反応はあっけに取られたような顔をした。

 

 もしやうちの店の常連様か……?いや、常連と言えるお客様の顔はある程度覚えているから違うか。

 

 ここはひとつ、素直に聞くのがベストだな。

 

「どうかなさいましたか……?」

 

 そう質問すると向こうは何やら微妙な顔をしたかと思うと、盾の向こうで顔を合わせているのか、顔を隠しながらコソコソと話を始めた。

 

 何を話しているのか気になって聞き耳を立ててみれば、やはり私の自己紹介に対してどこか不可思議な部分があったらしく、小さな議論を交わしていた。

 

『所長、なんか一般人みたいですけど!?』

 

『○○株式会社と言えばお菓子の会社でしたか?ドクターが良くそこの和菓子がとても美味しいと評していました』

 

『うん、あそこの和菓子はお手頃な価格でとっても……って違う違う!!なんでそんな人がこんなところにいるのかがまず疑問なんだけど!?』

 

『私だって知りたいわよ!それに彼の持ってるあの剣!アゾット剣でしょ?完全にこっち側の人間でしょぅ!?』

 

『アゾット剣……ってなんですか?』

 

『素人は黙っていなさい!』

 

『所長!ひとまず詳しい経緯を聞くしかないんじゃないですか?向こうも今は敵意は無さそうですし』

 

『はぁ…………それしかないわね……あぁ、レフ、本当にどこに行ったの……?』

 

 うむ、3人のはずが4人目の声が聞こえてきたことは今は置いておいて、アゾット剣について何か知っているということはこういった事に巻き込まれた経験があるということで良さそうだ。

 

 経緯……ふむ、経験者ならば同じようにここに来たといえばいいだろうか?

 

「お待たせしました、詳しいお話をお聞かせ頂けますか?」

 

「はい、ではここでの経緯を軽く説明しますね」

 

 

 

 1 駅のホームで人がいなくなった

 

 2 その後来た電車に乗ったらいつの間にか冬木

 

 3 スケルトンの足を壊して無力化しながら逃げてきた

 

 4 逃げ切ったところであなた達に出会った。

 

 

 

「とまあ、こんな感じです」

 

「訳が分からないわよ!!!!!!」

 

 

 なんと。

 

 

 ────────────

 

 

『ドクター、どう思いますか?』

 

『うーん、本人の様子を見るに嘘は吐いていなさそうなんだけど……信じられないような話なのは確かだ』

 

 目の前にいる彼、内荒さんは極めて自然体で、安心できるような笑みを浮かべてこちらを向いている。

 

 それは現状と比べると酷く浮いており、逆に作り物のようにも感じてしまう。この状況をまるで当たり前のありふれたものと思って居そうな、そんな笑顔だ。

 

 彼は一体……本当に自分たちと同じ存在なのか?それとももっと別の……『所長!近くに魔力反応!!これは……サーヴァントです!即刻その場から離れてください!!!』

 

「なんですって!?」

 

 っ!今私は何を考えていたのでしょうか?彼の様子にどこか違和感を覚えて……?いや、そんなことよりもサーヴァントです!私もまだデミサーヴァントとしての力をうまく扱えずにいる状況、あまり長居しては所長や先輩、内荒さんが危ないです!

 

「先輩!とりあえずここから離れましょう!!」

 

「わかった、所長、内荒さん、マシュ!急ごう!」

 

「は、はい!」

 

 

 ────────────

 

 

 先程の4人目の声の正体は何やら近未来的な立体映像から流れていたようだ。

 彼らはそれぞれ薄紫の髪の子がマシュちゃん、白髪の子がオルガマリーちゃん、黒髪の子が立香くんと言うらしい、立香くんはフルネームが藤丸立香らしく、同じ日本人として少し親近感がある。呼びやすいし藤丸くんでいいか。そして立体映像の彼はロマンと呼ばれており、彼らのオペレーターのような役割を臨時で行っているそうだ、そしてそのロマンさんがどうやら、先程のメモ帳にあった『サーヴァント』とやらの反応を検知したらしく、皆ここから離れることとなった。

 

 彼らは何やら上等な霊地?を目指していたらしく、その道中で私を見つけたため、こちらに来ていたようだ。

 

 なので、今はその霊地に向かっているところだ。

 

「藤丸くん、そういえば聞いていなかったけど君たちはどうやってこんなところに?」

 

「え?ああ、実はレイシフト……うーん、なんて説明すればいいんだろう?」

 

「貴方みたいな素人に説明できるようなものじゃないわよ、そもそも私n『所長たち!今まで沈黙していたサーヴァントの反応が急激に…………に向かって……ま……!ザッ』ロマニ!?……サーヴァントの反応が何とかって……」

 

 藤丸くんに質問すると彼はうまく説明でいなかったのか、所長……オルガマリーちゃんの方を困ったように向き、彼女がそれに辛辣な言葉をかけようとしたその時、ロマンさんから急に通信が入ったかと思うと、すぐに途切れてしまった。

 

 だが、あの焦った声にはとても嫌な予感がする。

 

「藤丸くん、すぐここから」

 

 

 

 

 ズッ___ガアアアアアアン!

 

 

 

 

 

 

 離れよう。

 

 

 

 その言葉が出る前に、とてつもない破壊音と共に黒い影が頭上から目の前に降ってきた。

 

「先輩!!!」

 

「■■■■■■■ーーー!!」

 

 大きく上がった土煙の向こうから浅黒い色の巨体が迫って来た瞬間、マシュちゃんが両手に持った盾を間一髪の所で正面に構える。

 

 

 ────

 

 一瞬音が消えたかと思う程の空気の圧を感じると同時に、鼓膜を破壊されるのではと言うほどの大きさの硬質なものが擦れ合う音が耳を侵す。

 

「うぅ……ああああああああアアアア!!!!」

 

 マシュちゃんのその雄叫びで一瞬固まっていた体が動き出す。

 

 しかしアレにどう立ち向かえばいいのか?手元にはアゾット剣とよく分からない石などが入ったカバンしかない。

 

 アゾット剣で刺す?石を投げつける?

 

 ダメだ、絶対に効かないし、当たらない。

 

 だがどうする?

 

 そう考えに考え、答えを導き出そうとしていた時その光景が目に入った。

 

 

 マシュちゃんの盾が大きく逸らされたのだ、今この状況では、圧倒的にどうしようもない隙。

 

 

 

 

「マシュさん!!!!」

 

 

 

 いつの間にかマシュちゃんは目の前からいなくなっていた……いや、自分が前に出たのだ、彼女を後に引き倒し、その反動で前に。

 

 巨大な影が自分の体に向けて迫る。

 

 渾身の一撃だったのだろう、せめてもの足掻きと、前に掲げたカバンはなすすべもなく私の腹部に叩きつけられ、胃の中身から肺の中身、いや、内蔵まるごと体外に排出されそうな程の衝撃は、私の体をピンポン玉のように軽々と吹き飛ばした。

 

 周りの景色が一瞬で前方に消えていく。

 

 

 

 そして───

 

 

 

 

 ────────────

 

 

 息苦しい、まるで水の中をで息をした時のように胸の奥まで水が入り込んだような痛さとともに苦しさもこみ上げてくる。

 

 

 

 苦しい?

 

 

 

「っ!?!?っっっけほぉっ……ごぇ……」

 

 苦しさからえづき、喉奥からこみ上げてくる熱いものを吐き出す。

 

 一瞬のパニックのあと、全身に感じる冷たさに現実へと、精神を叩きつけられる。

 

「はぁ……はぁ……っおぇ……」

 

 ひどい息切れと、腹部に感じるヒリヒリとした感覚、どうやら生きていたようだ。

 

 ダンプカーが全速力でぶつかってきたような衝撃を受けたにも関わらず、腹部の腫れと意識を飛ばすだけで済んだようだ。

 

 周りを見てみればどこか武家屋敷のような建物の庭にある、池に落ちたらしい。

 

 この身がそこそこ軽かったのか、すくい上げる形だったのが良かったのか、また、着地地点が水のおかげだったからか……とにかくいくつもの幸運が重なった結果なのだろう。

 

「手の冷え具合からして、意識が飛んだのはほんの一瞬か?」

 

 ならばまだ彼らはあのバケモノと戦っているのか……逃げきれたかも……いや、あれだけのパワーとスピードを持った相手だ、生きていたとしても防戦一方だろう。

 

「サーヴァント……か……」

 

 あの通信の声の相手が言っていたサーヴァントとやらがアレなのなら、対抗できるのは同じサーヴァントのみだろう、マシュちゃんはサーヴァントとは少し違うと言っていたのと、あの実力差だ、多分倒せないのだろう。

 

 

 あのメモ帳……

 

 

 召喚の方法は描かれていた、魔力とやらも多分あの石が代用物なのだろう。

 

 そして魔法陣、これは綺麗に半分が破れてなくなっていたが……もう半分は気にせず左右対称で描いて代用してみよう。若しかしたら可能かもしれない。それに、今はそれしか手が無い。

 

 そう思い、カバンを探すと、カバンに入っていたあの石が土蔵の方に続いていくつも落ちており、その先にはカバンが落ちていた。

 

「良かった、途中でなくなっていたりしなくて済んだか……」

 

 急ぎ、石を拾い集め、カバンからメモ帳を出す。

 

「指……は、流石に大変だ、なにか棒があれば……」

 

 魔法陣を正確に早めに書くために棒状のものを探す、が周りには見当たらない……土蔵ならばと扉を開けて中を確認すれば様々な工具などが散らばっているのが見て取れたためすぐさま近寄って長めのモノを探す。

 

 少し奥に竹箒を見つけたのでそれを出すために引っ張って見るが、なかなか抜けない。全力で引っ張ってみれば、箒の持ち手部分のみがすっぽりと抜け、その拍子に尻餅をついてしまう。

 

 だが、丁度よく持ち手部分の棒のみになったので改めて魔法陣を書こうと、手をついた時その手に違和感を感じた。

 

「これは……」

 

 手元を見るとなにか彫られたような溝があり、土埃を軽く退かすと、そこにはメモ帳と似た魔法陣が掘られていた……いや、似たというよりも多分同じものだろう、全体があるということはこれが正解か?

 

「とりあえず、やるか」

 

 魔法陣の手前に石をすべて放る、数は100以上はありそうだ。

 

 手の甲にタトゥーシール……令呪だったか?を貼り、そして魔法陣の向こう側に工具箱を置き、上にハンカチを敷いて簡易的な祭壇にすると、その上に木箱をそっと載せる。

 

「これであとは詠唱か……」

 

 

 

 

 

閉じよ(満たせ) 閉じよ(満たせ) 閉じよ(満たせ) 閉じよ(満たせ) 閉じよ(満たせ)

 繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」

 

 

 魔法陣に光が灯る

 

 

 「――――告げる。

  汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

  聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

 

 光の強まりとともに、足元の石が順に砕け散ってゆく。

 

 

 「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。

 汝三大の言霊を纏う七天、混沌の門より来たれ、無垢なる守り手よ―――!」

 

 

 最後のひとつが弾け、魔法陣が限界まで輝くと、光と同時に自分以外の周りのものが吹き飛ばされる。

 

 煙がゆっくりと晴れていく。そこに立っていたのは。

 

 

 

 

 

 

 

「こんにちは。サーヴァントフォーリナー、アビゲイル・ウィリアムズ、貴方の呼び声に答えて参上したわ!私のことは、アビーって呼んでくださいな」

 

 

 

 

 

 どこか、蜂蜜酒のような綺麗な色をした髪に、青い瞳をした女の子だった。




バケモノさん(ヘラクレス)に殴られるシーン
成功→普通に逃げてなんやかんや土蔵に
失敗→逃げるが、余波で気絶
のはずがファンブルだったので喰らって貰ったけど流石に幸運くらい降らないとなと思ったらクリティカル出たので軽傷です。

信用や説得もどこかで振ってます。


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人懐っこい良い子

とりあえず続き置いときますね。
今回もまたダイスは何回か振っています。


「こんにちは。サーヴァントフォーリナー、アビゲイル・ウィリアムズ、貴方の呼び声に答えて参上したわ!私のことは、アビーって呼んでくださいな」

 

「あ、ああ、こんにちは、アビー。ボク……私は内荒 藤太です」

 

 もしこの場にほかに人がいたならば、なんとか普通の反応を返すことが出来た私のことをどうか褒めて欲しい。

 

 あのバケモノを見たあとだからこそ、サーヴァントとは英雄、英傑と呼ばれるような筋骨隆々な者か、あの化け物のように凶悪なものが出てくると想像していたのだが、結果はこれだ。

 

 あの混沌のような作り物めいたありえざる美貌などではないが、とても愛らしい容姿をした少女が出てきたのだ。

 

 それこそ、馬鹿な!と叫びたい気持ちも分かるだろうか?……それにしても、こちらを見て少しだけ驚いたのは何故だろうか……?

 

 まあ、いまはとにかく藤丸くん、達を助けに行かねばいけない。

 

「アビー、キミに早速頼みたいことがあるんだ、だが、これはかなり危険で野蛮なことだ、断りたかったら断ってくれ」

 

 そう前置きをしてから軽く今の状況を話す。

 現状彼女が最後の頼みと言っても過言ではない……が、それはそれだ、彼女がもしも嫌がるのならば、1人で助けに行くつもりだ。

 

 そしてその質問に彼女は笑顔でこう答えてくれた。

 

「確かに戦いはあまり好きではないけれどマスターの最初の頼み事だもの、頑張るわ!」

 

 彼女はそう答えるとどこからか大きな鍵を顕現させる、すると彼女の服装が露出の多いものとなり、魔女のような大きな帽子が頭の上にふわりと乗っかる。そして額に鍵穴のようなものが現れ軽く微笑んだ顔でこちらを見る。

 

「それに、マスターは私のこのチカラを使っても平気そうだから、全力で戦えるわ」

 

 その鍵を空間そのものに突き刺すようにして捻ると、鍵穴のような形の穴が生まれ

 

「さあ、行きましょう?マスター」

 

 その中に私は引き込まれていった。

 

 突然の事に目を見開く。

 見上げてみれば空は真っ白で、何かがあるようには思えない、それとも見えないだけでナニカは存在しているのだろうか?逆に足元を見てみればそこは宇宙のようだ、様々な星々の輝きが見て取れる。

 

 ならばここはなんなのか?足元には宇宙、しかし自分のたっている場所を境に綺麗に途切れている。

 まるで宇宙の端に立っているような……宇宙の外側?

 

 

 外なる神を認識してしまった時のような…………

 

 

 おぉ、いあ……いあ……

 

 

「マスター!」

 

「っ!」

 

 危ない、頭がどうにかなる所だった。

 危険だがもう一度よく周りを見てみてもやはり奇妙な感覚に囚われるが、先程よりはずっとマシだ。

 

「すまないアビー、もう大丈夫だ」

 

「良かった……」

 

 彼女は心底安心したような表情をし、今度は弾けんばかりの笑顔を向けてくる。

 その様子にどうしたのかと聞けば。

 

「この場所は普通の人じゃ耐えられないみたいなのだけれど、マスターが平気だったから嬉しいの……この場所で、独りぼっちはもう嫌なの……」

 

 そうか………………はて?その言い方だと私は実はかなり危ない橋を渡ったのではないか……?

 

 そんな私の気持ちを読み取ったのか、アビーは慌てながらも説明をしてくる。

 

「じ、実は召喚の時にマスターに耐性があるっていうのはこの繋がりからなんとなく、感覚でわかってはいたの……だからとっても嬉しくて、この景色を一緒に見ることが出来る人がいた事が。

 ……ごめんなさい、私悪い子ね……この感覚が間違っていたらマスターは大変なことになっていたかもしれないもの」

 

「いや、そういうことならいいんだ。それよりも今は、藤丸くん達を助けに行こう!」

 

「えぇ!分かったわ!」

 

 アビーがそう答えると同時に私たちはひとつの鍵穴に吸い込まれる。

 

 

 ────────────

 

 

 もう一度鍵穴をくぐり抜けると、そこはあの時吹き飛ばされた場所のようだ、周りには瓦礫が散乱している。

 

「藤丸くん達は……」

 

「マスター!あれ!」

 

 アビーが指を指した方向を見ると、轟音とともに巨大な土埃が舞った。

 

 彼らはまだ無事のようだ、この距離ならば先程の鍵穴を使わずともすぐに着くだろう。

 

 戦闘の現場に着くと、そこではマシュちゃんと青いフードをかぶり、杖を持った男性があのバケモノと戦っていた。

 マシュちゃんと男性が連携をとって戦っているのを見るに、彼は味方ということで良いのだろう。

 

 その事をアビーに伝え、牽制攻撃を打った後、こちらに来たタイミングで、あのデカブツのみを先程の鍵穴のようなものを使ってどこか遠くへと飛ばすように指示する。

 

「今だ、アビー!」

 

「えい!」

 

 マシュちゃんと男性のふたりが離れた瞬間、掛け声とともに空中に現れた触手から放たれたレーザーがデカブツの体にいくつかの穴を開ける。

 

「■■■■■■■ーーー!!」

 

 不意打ちを食らって怒り狂ったのか、やつは一直線にコチラへと向かってくる。まだだ、やつの反応速度は尋常ではなかった。ギリギリまでひきつけ、ひきつけ……

 

 

 そして

 

「開け、門よ」

 

 目の前に現れた巨大な鍵穴へとその身が入った瞬間、鍵穴と共にその巨体は一瞬にして消えた。

 

「はぁぁぁぁぁぁあ……何とかなった……」

 

 気が抜けたのだろうか、体が少し重く感じるのと同時に崩れ落ちてしまった。

 短時間でよくもこんなに密度の濃い時間を過ごせたな……視界の端で時計を見てみれば、この冬木に来てからまだ2時間も経っていない。

 

 アビーにお礼を言ってから惚けている藤丸くんやマシュちゃん達の元へと向かう。

 

「無事でよかったよ、藤丸くん、マシュちゃん、所長さんも」

 

 こちらの声でどこかへとやっていた意識が覚醒したのか、慌てつつも大丈夫だったか、怪我はしていないか、無事でよかったと、矢継ぎ早に話しかけてくる。

 

 すると後ろから先程のフードの男性が話しかけてくる。

 

「よォ兄ちゃん、さっきは助かったぜ。正直、そこの嬢ちゃんと俺だけじゃ奴さんの相手はキツかったからな」

 

「いや、こっちこそ藤丸くん達に協力してくださって感謝の念しかありません……」

 

「ははは!そりゃあこっちにも都合があっての事だから気にすんな!」

 

 そんなふうに彼、クー・フーリンさんと自己紹介も済ませ、アビーを紹介することに。

 

「内荒さん、そちらのシルクハットをかぶった女の子は……?」

 

 シルクハット……?どう見ても魔女帽子だと思うが、まあ、今は紹介が先か。

 

「紹介がまだでしたね、この子はアビゲイル、さっきの化け物を遠くに転移させてくれたのは彼女だ」

 

「はじめまして!どうかアビーって呼んでくださいな」

 

「はい、はじめまして」

 

「はじめまして、宜しくねアビー」

 

「って貴方!どうやってサーヴァントなんて召喚出来たのよ!?」

 

「それは『所長!無事ですか!?知らぬ間にすぐ近くにサーヴァント反応がふたつ増えているんですけど!?』ぁー」

 

 どうやら通信が直ったようで、ロマンさんが大慌てで通信を飛ばしてきた。

 

「ええ無事よ、さっきまで死にそうな思いをしていたけどもね!……それと、このサーヴァント達は協力者のクー・フーリンと彼が召喚したアビゲイル・ウィリアムズよ」

 

『よ、良かった……って、クー・フーリン!?ケルトの大英雄じゃないか!なんたってそんな大物が?あとは……アビゲイル・ウィリアムズ?そんなはず、彼女が英霊……?それに召喚を?』

 

「ロマンさん、ひとまずクー・フーリンさんに詳しい話を聞きませんか?」

 

『おっと、そうだったね……見たところ霊地の近くまで来ているようだから道中に詳しい話を聞こう』

 

「なんで貴方が仕切っているのよ!!!!」

 

 前途多難そうだ……

 

 

 ────────────

 

 

 所変わって武家屋敷。

 

 

 アビーは先程までとは違い、また最初に出会った時と同じ格好に戻っていた。先程藤丸くんが見えていたのはこの格好のアビーだったのだろうか?

 

 あのあと、クー・フーリンさんやマシュちゃんなどにも、アビーが手をかざしたあとに光ったかと思うと化け物、シャドウサーヴァントがいなくなったことに驚いたと言っていた。

 

 私には鍵穴が見えていたし、特に眩しかった記憶もない、もしや見えているものが少し違うのか?

 

 まあ、そのことは置いておこう。

 

 道中にこの場所、特異点に関する話や今回の異変、人理焼却についての話を聞いた。

 どうやら今、何者かの手によって人類存亡の危機に陥っているらしい。

 

 そして、彼らはこの事態を解決するための組織、人理継続保証機関フィニス・カルデアという国連の組織の者達であるらしい。

 秘匿されてきたが、世界には魔術と呼ばれる学問があるそうで、今回の事件もその魔術によるもののようだ。

 

 そして、人理焼却の原因の一つである、特異点、その一つであるここでは、聖杯戦争と呼ばれる、魔術師同士の争いがあったようでその聖杯が特異点発生の原因になっているため、聖杯を回収するというのが今回の目的のようだ。

 

 ふむ……つまりメモ帳にあった己に類するものというのは人類のことか?

 と、いうことは彼らに協力するのが1番か。

 

「それで、貴方はどうやって召喚を行ったのかしら?」

 

 おっと、そうだった、少しぼーっとしてしまって説明しようと思っていたのを忘れていたな。

 

「実はここに来る直前にこのようなメモを手に入れたんですが、魔法陣の部分だけ破れていて、使えなかったのです。が、吹き飛ばされてからそこの蔵の中に同じ魔方陣を見つけたので、召喚を行いました」

 

「はぁ?このメモ……何この詠唱、ところどころ違うじゃない」

 

「はぁ、そうなんですか……」

 

「まあまあ細けぇこたぁ気にすんなよ嬢ちゃん、それより今は聖杯を手に入れなくちゃあ始まらねえぜ?」

 

「うぐっ、それもそうね……で?聖杯の場所とかは知っているのかしら?」

 

 彼女はクー・フーリンさんにそう質問するが、ここで私は異変に気付く、周りのものがぼやけて見え、体に力がうまく入らなくなってきた。

 

「おう、そりゃあ……って……にきまっ……」

 

「…………?…………ターだ……?」

 

「っ!だい……」

 

 この感覚は覚えがある、どんなものだったか……過去の呪文を使ったあとの症状に似ている。

 つまり精神力やらを1度に多く消費してしまったのだろうか…………?

 

 昔一緒に探索をした仲間の中で似たような症状になった者もいたな。彼は確か……回復するまで気を失って……。

 

「すみま、せん……暫く、起きれない、かと……」

 

 最後になんとか言い残し私の意識は暗闇に呑まれて行った。

 




この後マシュや藤丸くんなどの視点を書こうか迷っています、ほとんど内荒の視点でほんの少しだけほかのキャラ視点という形にするか、内荒視点&他キャラ視点にしようか……。



アビーのボイスで「この境界からの眺めを〜〜」みたいな感じのセリフあった気がしたのでそれっぽい描写入れています。

宝具の時のあの白い空間、あれは宇宙の外側なのかなと私は思っているのですがどうなのでしょうね?この二次創作では門を使った転移はあの空間を経由して行っているという設定です。

宇宙の外側、そんなところに立っているという不可思議な状況や、そこから感じさせる上位者や外なるモノ、SANチェックが起こりますね。

アビーの見え方の違いですが、あれです。Bloodborneでは啓蒙が無いと人形ちゃんは動いて見えませんよね?つまりはそういう感じです。

主人公が最後のところで気を失ったのは魔力使いすぎです。
今はまだカルデアからの補助を受けていないですからね、サーヴァントのスキルやら能力やらを扱うにはなかなかきついところがあると思うので。


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真っ白な部屋に

なんとか一晩でリリィ集め終わった……
そしてその後に執筆したから眠気で誤字も多そう。

誤字といえば、誤字報告がいくつか来てましたね、誠に感謝です。

あと、お気に入り増えてて嬉しいです……いつの間にか300こえてる……それと感想してくださっている方ありがとうございます。

追記03/29 08:28
早速の誤字報告で申し訳なさアップ

追記なう03/29 22:09
クロスオーバーのタグがないことについて怒られて少しだけ非公開になってしまいました、誠に申し訳ありません。
他に必要そうなタグがございましたらお教えいただけると嬉しいです。

そして出るわ出るわ誤字報告。感謝の念にあふれております。


 

 

 目を覚まし、周りを見渡せばそこは真っ白な部屋だった。

 

 部屋には扉と大きな窓があり、自分が寝ていた寝台の他には、部屋の隅にある机ぐらいだ。

 そして、机の上には1枚の手記が置いてあるのが寝台の上からでも見える。

 

「いつぞやの毒のスープを思い出すな……」

 

 多少のデジャヴを感じ、また、突然知らない部屋に居た事実に軽く頭を抱えつつも今1番の手がかりであろう手紙の置いてある台へと向かう。

 服装は記憶の中で最後に着ていた各所を割いたスーツではなく、病院服のような姿だ。

 

「持ち物無し……しかも格好まであの時と似ているとは、なんとも嫌な感じだなぁ」

 

 そうぼやきつつも、机の上のメモに目を通す。

 

 〜〜〜手記の内容〜〜〜

 

 これを読んでいるということは、君は目を覚ましたということだね。

 ここは我々の拠点の患者の寝室の一つだ。本来なら近くに医師やらが居るべきだろうが、今はその余裕もないため、定期的に様子を見に来ているが、このメモを読んでいるということは周辺には誰もいなかったのだろう。

 

 この部屋の扉から出て通路を右に進み続ければ少し大きめの扉、管制室があるので、もし歩く余裕があるのならばそこまで来てもらえれば人がいるはずだ。

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「藤丸くん達が言っていた、例のカルデアという組織かな?」

 

 ひとまず安心だ、ということで他には何かないものかと周りを一通り見渡してみたが、何もなさそうなため、手記の通り管制室とやらに向かうことにしよう。

 

 

 ────────────

 

 

 手記の通り、右に進み続けてみれば、通路と同じような近未来的な外観をした、大きめの自動扉が姿を現した。

 

 扉の横には『管制室』とご丁寧に札がかかっており、ここがそうなのだと分かる。

 

「しかし、この規模の施設にしては人と全くすれ違わなかったな……」

 

 そう、違和感を感じつつ、管制室の扉に近付く。

 

 が、その瞬間気がついてしまう、この扉の横には、カードをかざすような機械が存在しており、その下には番号を入力するためのキーパッドも存在している。

 

「これは……電子ロックか、私は電気修理などの技術は持ち合わせていないのだが……」

 

 試しにその機械を見てみれば、液晶部分のサイズと、数字入力時の表示のされ方から、8ケタのパスワードのようだ……失敗、やはりあてずっぽうな数字では開かないか。

 

 他に人を探すしかないようだ、引き返そう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ」

 

「どうしたんだい?ダ・ヴィンチちゃん」

 

「いやあ、医務室で寝ている彼居るだろう?置いておいたメモにここのパスワード書いておくのを忘れていたよ」

 

「えぇ……?じゃあ次様子を見に行く時にボクが書いておくよ」

 

「そうしてもらえるかな?」

 

 

 ────────────

 

 

 さて、困った管制室の他にどこか人のいる部屋はないか……。

 

 そう考えているとふいに自分が今お腹を空かせていることに気が付く。

 どれだけ気絶していたのだろうか、かなりの空腹だ。

 

「ふむ、どこか食べ物を食べられる場所に行けば人が居そうだな」

 

 どこか案内板のようなものはないかと周囲を見渡すが残念ながら見当たらない。

 仕方がなくまた彷徨い歩いているとどこからかいい匂いがしてきた、どうやらこの先にこの匂いの原因があるようだ。

 

 少し先には『食堂』とまたもご丁寧にカードがかけられた扉がある、ここはロックはかかっておらず、そのまま入れるようだ。

 そのまま中に入って見ればチラホラと職員らしき人達が食事をとっていた。

 

 彼らはこちらに気が付くと、その疲れた表情を、しかし明るくして話しかけてきた。

 

「ん?あぁ、目が覚めたのか!」

 

「いやぁ、本当によかった……」

 

 どうやら自分が気絶してここに運ばれてきたということは彼らには知れ渡っていたようで、皆からそれぞれ似たような反応を得られる。

 そんな中、職員の1人が質問をしてきた。

 

「それで、昼食を取りに来たのかい?」

 

「あぁーなんと言えばいいのか、元々は先ほど目が覚めて、メモに管制室に来てくれと書いてあったのですが、肝心の管制室に入るための鍵やロックの番号を持ち合わせていなくて……それからお腹がすいたので、せっかくだからと食堂に」

 

 そう説明すると皆は軽く笑いながら「ダ・ヴィンチ女史も抜けている部分があるんだな」「ロマンじゃないか?」などなど話し始める。

 

 ふむ?ダ・ヴィンチというとあのダ・ヴィンチか?まあ、後で会うのだから今はいいか……それよりもこの腹の虫を慰めてやらねば。

 

 そう思っていると、腹からとても大きな音が鳴ってしまう。

 

「おっと、お腹がすいているんでしたね、それなら話は食事をしながらにしましょうか」

 

「ははは……お食事はどこで受け取れますか?」

 

「ん、それならそこのカウンターから頼めばすぐ貰えるさ、まあ、あまり豪勢な食事という訳では無いがね」

 

 それだけ聞き、カウンターへと向かうと、今回の定食の種類が書かれていた。が、特に嫌いなものもこれといってないため、来てからのお楽しみにしようと適当に決めたものを注文すると、ほとんど待たずに受け取れた。

 

 見たところ焼き鮭に味噌汁、野菜の盛り合わせ、白米に、おひたしと海苔というバリバリの和食セットのようで、普通に美味しそうだ。

 

 料理を載せたプレートを手に持って戻ろうとすると、何やら藤丸くんとマシュちゃんが慌てながら職員たちと話している。

 

「どうしたんですか?藤丸くんマシュちゃん」

 

「じ、実はもう1人のマスターさんが行方不明?で」

 

 こちらが質問するとかなり慌てているのか、こちらには向かずにそう答え、先程まで質問をしていた職員に何か知らないかと急かしている。

 思ったよりも大事のようだ、詳しく聞いてよう。

 

「それは大変だな……その人の特徴は?」

 

「そうですね、内荒藤太という方なのですが、身長はそこそこ高めでお年は多分20代半ばかと」

 

 ん?

 

「なあ藤丸くんマシュちゃん」

 

「「何でしょう?」」

 

 そう言ってこちらを振り向いた彼らは一瞬ポカンとした表情で止まったかと思うと。

 

「「居たあぁあああああああぁああああああ!!!」」

 

 とかなり大きめの声で叫んだ。

 

「と、とりあえずダ・ヴィンチちゃんに連絡を……」

 

「先輩、只今連絡は行いました!」

 

「さすがマシュ!」

 

「ありがとうございます!」

 

 と、一連のやりとりを終えると落ち着いたのか、こちらに向き直り、質問をしてくる。どうやらあのメモに書かれていた管制室に来なかった理由が少し気になったようだ。

 

「ああ、その事なんだけども」

 

 と、職員の人達にしたのと同じ説明をすると「ダ・ヴィンチちゃんが原因か……」「とても焦りました……」と、呆れた顔で言っていた。

 

 さて、また出てきたダ・ヴィンチ女史についても気になるが、今はあのあとどうなったのかだ。

 

「それで、あのあと結局どうなったのかな、藤丸くん」

 

「あぁ、そうですねそr「それについては私がお教えしよう!!」ダ・ヴィンチちゃん……」

 

 ……何が起きたんだ?

 藤丸くんが応えようとした瞬間、横からモナ・リザが割り込んできた……?彼女がダ・ヴィンチ?ちゃんやら女史と呼ばれていたのに疑問はあったけども、まさかモナ・リザと全く同じような容姿をしているとはさすがに予想外だぞ。

 

「さてさて、久しぶりに、という程でもないけどお決まりの反応ありがとう。

 私はダ・ヴィンチ、気軽にダ・ヴィンチちゃん、と呼んでくれたまえ」

 

「あー、内荒藤太ですよろしくお願いします」

 

 困惑しつつもそう言うと、彼女も「よろしく」とニッコリ笑って返してくる。

 

「それじゃあ改めて、あの後どうなったのか、アビーのことも教えてくれませんか?」

 

「了解だよ、それじゃあ……」

 

 と言って彼女は出口の方へとチョイチョイと手招きをした。

 

 疑問に思いながら出入口に目を向けると、シルクハットをかぶったリボンまみれの女の子……アビーがドアの横から顔を出し、軽く眉を落としながらこちらを覗いていた。

 

 どうやら入ってこようか迷っていたようだ。

 

 とりあえず自分も「アビー、おいで」と言うと、少し躊躇してから、こちらへと歩み寄ってくる。

 

「さて、言いたいことがあるのだろう?彼も目を覚ましたし言っておいたらどうだい?」

 

 はて、アビーが言いたいこと……?何だろうか。

 

「その、マスターごめんなさい!」

 

「………………?」

 

「か、考え無しにあんなにも魔力を使ってしまって、マスターにご迷惑をかけて……私、悪い子ね、またご迷惑をかけてしまったわ」

 

 待て、まったく状況が分からないぞ?魔力?何のことだ……。

 

「その、状況が読めないのですが……」

 

 と、ダ・ヴィンチ女史に助けを求めるとどうやら、今回自分が気絶した理由が、アビーが使った宝具やスキルで私の魔力を使いすぎたためらしい。

 さらに、その後に特異点が崩壊する際、無理してカルデアへと門を繋げた事で命の危機に陥っていたそうだ。

 

「なるほど……アビー、別に気にしていないからそこまで謝らなくてもいいさ、それに助けてくれと頼んだのは、ボク……私だ、気にしないでいいよ」

 

「で、でもその、命の危険があったのよ?」

 

「それに関してもだよ、特異点の崩壊に巻き込まれればどっちにしろ死んでいたかもしれないんだ、それこそ怒るのは筋違いだよ」

 

 そう言って彼女の頭を撫でてあげると、彼女は、少し恥ずかしげにはにかんだ。

 

「さて、それじゃあ改めて説明に入らせて貰おうかな?あ、食べながらで構わないからみんな一旦座ろうか」

 

 そうだった、すっかり忘れていたが今は食事を取ろうとしていたのだ。

 幸い、料理はまだ冷めていない。ありがたく頂こう。

 

 

 ────────────

 

 

「そうか……所長さんが……」

 

 あのあと、食事をしながらも、あの場所でのあらましについて教えて貰った。

 

 どうやら私が気絶した後で、敵サーヴァントとの戦闘や、マシュちゃんの宝具の解放、また、特異点の原因排除などを行ったらしい。

 そして、聖杯を所持していたサーヴァントを撃破したが、元カルデアの職員であった、レフ・ライノールが敵として現れ、特異点、人理焼却、所長さんが既に死んでいるなど、様々なことを話した後に、所長さんの残っていた魂を殺したらしい。

 

 胸糞悪い話だ。

 

 皆が暗い顔をしていると、ダ・ヴィンチ女史が元気を出させるような明るい声で声を上げる。

 

「さて!みんな悲しむのはもう終わりだ!これから私たちには人理を復元するという大きな使命が残されている……それでも、元々人類最後のマスターである立香くんの他に、もう1人のマスターが我々カルデアのメンバーとして加わったんだ!つまりは戦力2倍、特異点の難易度も2分の1さ!!」

 

 暗い顔をしていた職員や藤丸くん達も、彼女のその声で顔に輝きを取り戻す。

 

 いつの間にかカルデアのメンバーに……いや、そのつもりではあったけどさ。

 

「確かに、記録に残ったとしても誰の記憶にも残らない。だけど、救世主となれるチャンスだぞ?さあ皆、人理修復頑張ろう!!」

 

 まあ、何にしても。

 

「「「「はい!!!」」」」

 

 今回の探索は長くなりそうだ。




アビーが召喚された時に驚いた表情をしていたことや、好感度高めとか、主人公があの境界に入っても平気なことを知っていたこと等、実はきちんと理由があります。

そしてセイレムのプロットがなかなか固まらぬえ……(読解力が低すぎてよくわからない部分も多くて何回もセイレム見直してる←)

魔力云々はカルデアに来たのでもう大丈夫やね

今回使った技能は目星、幸運、機械修理、ナビゲート、聞き耳、アイデアです。なお初期値もあったため失敗も多かったよう。


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芸術(料理)99+10(姪補正)

日常パート的な。

1話だけ投稿してあるBloodborneとFGOのクロスオーバーの話とか幼女戦記の二次創作も考えてると時間が足りぬえ。

そして誤字報告やらお気に入りやらありがとうございます…


 

 

 

 

 

 

あのあと、マイルームへの案内や、私や藤丸くん、マシュちゃん等のメディカルチェック、また私の令呪のデータ採取などをしたあと、ブリーフィングルームへと集合していた。

 

「さて、君達に集まって貰ったのは他でもない、第1特異点へのレイシフトの準備がもう直整うから事前にブリーフィングを行うためだ」

 

ドクターロマンが放った一言で、直前までの緩めの雰囲気は霧散し、皆が真剣な面持ちで、彼のことを見る。

 

「さて、まずは……そうだね、君たちのミッションについて改めて説明しよう。」

 

液晶パネルを操作し、私たちの前に立ててみせると、指をひとつ立てる。

 

「まず1つ目。特異点の調査及び修復。その時代における人類の決定的なターニングポイントで、それがなければ我々はここまで至れなかった……人類史における決定的な"事変"のことだね」

 

「君たちには、その時代に実際に飛んでもらい、その事変を改定しうる要因を調査、発見し、これを取り除かなくてはいけないんだ。さもなければ、我々人類は2016年を持って滅びてしまうことになる……これが、1つ目のミッションの概要だ」

 

そして2つ目の指を立てる。

 

「第2に、聖杯の調査。

推測の域をまだ出ていないが、特異点発生には聖杯が絡んでいると考えている。

この聖杯というのは願いを叶える願望器であり、莫大な魔力を有している……んだけど、レフはその聖杯をどうにか手に入れて悪用しているのだろう。聖杯でもなければ時間渡航や歴史の改変なんて無理だから、ホントに……」

 

「まあ、そんなわけで、特異点の調査をすれば否が応でも聖杯も関わってくるだろう。

そして、その聖杯が残っている限り、またいつ異変が起こるかわかったもんじゃない。だからこそ、聖杯の回収、または破壊が君たちの2つ目の目的だ」

 

そこまで説明すると、彼は「今の説明で大丈夫かな……?」と、頭をかきながら曖昧に笑いつつ、そう聞いてくる。

 

そんな彼の様子に、硬かったメンバー達の様子もいい感じに和らいだようだ。

ドクターに大丈夫だと伝えれば、良かったと言い、胸をなでおろした。

 

「それから、特異点についたらまずは霊地の確保を優先してくれるかな?こちらからのバックアップなんかがしやすくなるから、特異点の調査の安全性が多少は上がるはずだ」

 

「はい、必要なのは安心できる場所、屋根のある建物、帰るべきホーム……ですよね、先輩」

 

「うん、マシュはいいことを言うね」

 

「昔はあんなに無口で正直何を考えているか分からなかったマシュに、こんなにも仲のいい人ができて嬉しいよ……さて、それじゃあ時間も限られているから早速レイシフトの準備を……と、言いたいところだけど──」

 

ドクターはそこまで言うとダ・ヴィンチ女史の方を向く。それに対して彼女はこちらを向き、令呪のある手を指して、説明を引き継いだ。

 

「内荒くんの令呪に関してなんだが、カルデアからの魔力供給の事もあるからね、軽く調整しなくちゃいけないんだ。代わりにと言ってはなんだけど、特異点Fも体験したばかりだからね、その調整と同時に少しだけ休みを入れるとしよう……約24時間、まあ大体1日だね、しっかりと英気を養ってくれたまえ」

 

「「「了解です」」」

 

 

────────────

 

 

さて、24時間か、寝たり部屋でゆっくりするにはまだ早いな、何かないか……

 

 

……

 

 

ダメだ思い浮かばない、ここは藤丸くん達にここのことを聞きに行こう、新人とはいえ、ある程度はここのことも知っているだろう。

それに、これから一緒に特異点の探索をする仲間だからこそ、コミュニケーションは大切だ。

 

 

……

 

 

ダメだ見当たらない……本格的にすることがないぞ……?

 

そうだ、アビーとここの探検をしてみようか!彼女は今はマイルームだったな。

 

 

 

 

 

 

 

「アビー」

 

「あ、マスター、どうかなさったの?」

 

「ああ、実は今から休むのは少し早い気がしてね、だからテキトーにカルデアを見て回ろうと思ったんだけど、一緒に見て回らないかな?」

 

そう聞くと、目を輝かせて「是非!ご一緒するわ!」と食いついてきた。やはり暇をしていたのだろう。

 

 

────────────

 

アビーを連れてカルデアを見て回ってみたが「すごい」の一言だ。

 

シミュレーションルームでは、様々な環境を再現できるようで、森やビーチ等を再現して軽く見て回ったり、それを応用して、現代の街並みを再現し、アビーに解説したりもした。

 

そして次にレクリエーションルームだ、ここにはボードゲームやビリヤード、はたまた、カジノにあるような大人の賭け事で行うようなゲームすら置かれており、是非とも今度職員の誰かと使ってみたくなったな。

 

とまあ、その他は資料室や大浴場等も見て周った。そして、食堂の前についた時点でふと疑問に思ったことがあり、アビーに質問をしてみる。

 

「アビー、サーヴァントは食事なんかはどうするんだ?」

 

そう、ここに来てから彼女が食事をしている所は見ていないのだ。

 

「私たちサーヴァントは食事や睡眠は必要なくて、魔力さえあれば寝たり食べたりが要らないの」

 

と、凄いでしょと言わんばかりのドヤ顔を見せるアビー。その可愛らしい様子に少しほっこりしてしまう。

……せっかく付き合ってもらったし、ここは彼女になにかご馳走するとしよう。幸い、料理の腕には覚えがある。

 

「食べること自体はできるのかな?」

 

「ええ、味を楽しんだりはできるわ、それに、本っ当に少しだけなら魔力の足しになるの」

 

「よし、それならせっかくだし何か食べようか……なにか好きなものとかはあるかな?」

 

「好きなもの?実は私、パンケーキがとっても大好きなの!ふわっふわのパンケーキにトロットロのバター、カリッカリに焼いたベーコンと一緒に食べるとたまらないわ……ただ、カルデアの食堂で出しているのかしら?」

 

「ああいや、そこは私が作るから安心してくれ、探索に付き合ってもらったお礼にね」

 

「まあ!マスターが作って下さるの?」

 

パンケーキを作ってあげるというと、彼女は眩しい笑顔をこちらに向けてくる。

相当嬉しいようだ。

 

「それはそうと、付け合せにマッシュポテトとかはいるかい?」

 

「っ!マスターったら心でも読めるの?私、熱々のグレイビーソースのかかったマッシュポテトもとっても大好きなの」

 

「そうか、それじゃあ一緒に作ってあげよう」

 

「ありがとう、マスター!」

 

この笑顔だけで荒んだ心が癒されるようだ。具体的には1d10くらい。

スキップでもしだしそうなほど機嫌よく、ニコニコと笑みを浮かべているアビーだったが、ふと、何かを思いついたようにこちらを振り向く。

 

「ねえマスター、私も一緒にお料理してもいいかしら?」

 

「お礼に作るつもりだったんだが、まあ別にいいけど……どうしたんだい?」

 

「その、私、お料理をちゃんとしたことがなかったし、誰かと一緒にお料理するなんてとっても楽しそうだと思ったから……」

 

ん……?まあいいか、それにあまり料理したことがないならパンケーキやマッシュポテトは簡単だからちょうど良さそうだ。

 

「分かった、色々と教えてあげるから、頑張ろう」

 

「ええ!ありがとうマスター!」

 

 

 

─────尊い──────

 

 

 

「と、これで混ぜ終わればあとは焼くだけだ」

 

「混ぜるのは任せて!これでもサーヴァントだもの、力仕事は得意よ!」

 

「それじゃあ任せようかな、こっちはソースの準備をしておくよ」

 

あの後、厨房にてスタッフの方に許可をとって料理を開始した。

まあ、パンケーキに関しては基本混ぜるだけで、最後は一緒に焼けばいいので苦労するようなこともなく、無事にできそうだ。

 

ベーコンを焼いたり、ソースの材料を揃えながら、横目でアビーの様子を見れば「んっしょんっしょ」と、なれない様子ながらもさすがサーヴァントというか、かなりの速さで混ぜている。

 

あ、顔に飛んだ。…………甘くて美味しい?それは良かった……。

 

そんな微笑ましい様子を見ながらも、準備をすべて終えたため、パンケーキを焼き始める。

 

1度見本を見せ、彼女にも同じようにやらせると、なかなか上手にひっくり返すところまで出来ている。

 

たまたま食堂に来ていたスタッフにもお裾分けするためにかなり多めに生地を用意しておいたので、残りをアビーに任せ、茹でておいたジャガイモはポテトマッシャーで潰した後、クリームなどを入れ、軽く混ぜておく。

 

そして、グレイビーソースを作る傍ら、こちらもパンケーキを焼く作業を続けた。

 

 

 

 

 

 

「さて、こんなものかな?」

 

「マスター、こっちも全部焼けたわ」

 

「よし、それじゃあ持っていこうか」

 

どうやら丁度よい時間だったようだ。

かなり大きめのプレートにパンケーキを載せ、ほかのプレートや深い皿に付け合せなども載せ食堂に来ると、何人かのスタッフと、藤丸くんがおしゃべりをしていた、丁度いいタイミングだったな、彼にも食べてもらおう。

 

「やあ」

 

「あ、内荒さん」

 

「休んでなくてよかったのかい?」

 

「いやぁ、今から休んでもなって思って時間を持て余してたので……内荒さんは?」

 

「はは、まあ私も同じような理由でアビーとカルデアを見て回っていたんですよ、で、色々あってパンケーキを焼くことになったから、一緒に食べないかい?」

 

そう聞くと彼は嬉しそうな顔をしながら「是非!」と。

どうやら甘いものがかなり好きなようだ。

 

「ほかの方もどうぞ」

 

そう言って机の上に大皿と数枚の皿を適当に重ねておいておく。

 

「それじゃあ食べようか」

 

「ええ」

 

席につき、いただきますをしてから、パンケーキにバターを乗せる。熱で溶けて表面を垂れていくバターの上からハチミツを少し多めにかけ、端の辺りを切り取り、口に運ぶ。

 

ふわふわの口当たりに優しい甘さとバターの丁度いい塩気……うん、美味い。

 

「美味しいね、マスター」

 

「ああ、うまく作れたね」

 

どうやらアビーの口にもあったようだ、口いっぱいに頬張って、とても美味しそうに食べている。

 

なんというか、とても幸せそうだ……。

 

 

 

 

このあと、マッシュポテトなどもふるまい、アビーとメチャクチャおしゃべりした。

 

 

 




今回はあんまりダイス振らなかった……


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何度も出てくるけど恥ずかしくないもん

Prototypeコラボはよ。


お久しぶりです。読者さん方は元気にしていましたか?私は元気です。
就職も決まり、続きを書きたくなったためまた書き始めました。待ってくれていた方がいらっしゃいましたら、待たせてしまって申し訳ありません。


今回の話はそこそこ急展開な感じかもしれませんが、私が今回出てくる彼女が好きなのでこんな感じになりました……ちょっと最初の予定とは違いますけど、後書きにてその予定外について書きます(ダイスのせい)

あと、あくまでメインはアビーですので、そこについてはご安心ください。


 

 アビー達とパンケーキを食べた後、丁度いい時間だったので、マイルームにて睡眠を取り、今はブリーフィングルームに居る。

 

 この場には藤丸君、ダ・ヴィンチ女史、ドクター、そしてカルデアスタッフが数名揃っており、次の特異点に関する報告と、いくつかの作戦に関する話をするそうだ。

 

 そして、全員揃ったところでドクターが口を開く。

 

「おはよう、立香くんや内荒さんはちゃんと寝れたかい?」

 

「はい、なんか変な夢を見るくらいには」

 

「お……私も普通に寝られましたよ」

 

「ははは、それなら良かった。こんな状況下だからね、気が休められないんじゃないかと心配してたんだ。さて、それじゃあブリーフィングを始めようか」

 

 ドクターのそんな軽い声にブリーフィングということで少しだけピリッとしていた空気は、いつの間にか和やかなものとなっている。これは……たぶん狙ってやったんだろうか?

 

「まずは今回レイシフトしてもらう時代についてだ」

 

「今回レイシフトしてもらう特異点は7つ発見されたゆらぎの中でも一番揺らぎの小さいもの……言い方はあれだけど、難易度が一番低いと予想される所に行ってもらう。」

 

 そう言うと表情を引き締め直し「改めて健闘を祈っているよ」と、付け足してから、休憩前に行なったブリーフィング内容の確認をし、藤丸君、マシュちゃんと共にそれぞれ割り当てられたコフィンに入る。

 

 冷たい感触を感じながら目をつぶり、その時を待つ。

 

 

 アンサモンプログラム スタート。

 

 

 霊子変換を開始します。

 

 

 レイシフト開始まであと、3…2…1………

 

 

 全行程 完了。

 

 

 グランドオーダー、実証を開始します。

 

 

 

 ......................................................

 

 

 

 一瞬の浮遊感の後に感じたのは、冬木で味わったもの程ではないが、炎の熱さだった。

 

 急ぎ周辺の確認をすればそこは、瓦礫や黒く焦げたナニカ……。

 いや、目をそらすのはやめよう、黒焦げたそれは辛うじて人の形をしていることから元人間だということがみてとれる。

 

 辺りにはタンパク質の焼けた匂いや、崩れた石材の粉っぽさで思わず口元を覆って顔を顰めてしまうほどの惨状であった。

 

「これは……」

 

 しばし黙祷を捧げ、気を取り直し現状の確認をする。

 

 見たところ藤丸くん達の姿が見えないことから、レイシフトとやらの不具合なのか、誤差なのか、離れた場所に出てしまったのだろう。

 

 レイシフト後、すぐ連絡すると言っていたドクターからの連絡も来ないということは、はぐれたのは私たちの方だろう。

 

 藤丸くんはこういったことに慣れていなさそうだから、僕側にアクシデントが起きたのは不幸中の幸いと言うやつなのだろうか。

 

 しかし炎……火……それらに関することと言えば火の精等しか思い当たる節が無い。しかし、この破壊の跡からするともっと大規模な、ナニカの群れがここを襲撃したように見える。

 

 試しに近くにある遺体を調べてみる。

 

 遺体の表面はそれこそ炭のように焦げているが、少し押してみるとそれは表面だけのようで、周りの様子からも、火事などで長時間体を焼かれたのではなくとてつもない温度の炎で一瞬にして焼かれてしまったのだろう。

 

 生々しい死体の様相から、ある程度耐性があるとはいえあまり長く見ているのは精神衛生上宜しくなさそうだ。

 

「さてどうするか……」

 

 アビーに来てもらうにはマシュちゃんのシールドが必要なはずだが、離れ離れとなってしまった今一人で身を守らなくてはいけない筈だ。

 

 そこまで考えて、いざ探索を開始しようと足を一歩踏み出そうとした時、ふと、先の方から何かが近づいてくる気配を感じた______おどろおどろしい気配。

 

 明らかにこの現状味方になり得る確率は0に近いだろう。

 

 すぐさま大きめの瓦礫の中に身を潜め、空いた隙間から様子を窺う。

 

「ふんっ、美しい娘が全くいないじゃない」

 

「そういった人間は既にこの街からは逃げているのであろうな。まあ、ここを出ることが出来たとして、あの麗しの狩人から逃げられるとも思えぬがな」

 

 そんな会話が窺った先から聞こえてくる。

 

 先には目が落ちくぼみ、顔色が青白い、ボロボロの黒コートの男性と、仮面をつけた白髪の女性が見える。

 

 そんな彼らからは狂人特有の独特な雰囲気が伝わってくる。

 

 そして『麗しの狩人』や『美しい娘に執着する』など、いくつかの情報も手に入った。

 

 あとは彼らがここからいなくなるのを待つだけだと言うタイミングで、頭上から小さな石が転がり落ちるのが見えた。

 

「誰だ!!」

 

 

 

 不味い

 

 

 そう思った時には、こちらに女の方が光弾のようなものを飛ばしてきた。

 一発目は正確な場所がバレていなかったため何とか避けることが出来たが、二発目が先程とは比べ物にならないほどの精度で飛んでくる。

 

「おぉっ!?」

 

 あと数瞬、直撃をくらいそうになったその時、目の前を桃色のナニカが掠めたかとおもうと光弾が弾け飛んだ。

 

「エリちゃんフェスティバルINフランスだなんて素敵!!……って思っていたのに、どうして貴女なんかが居るのかしら!?」

 

 衝撃で舞った土煙が晴れると、そこには派手なピンクや紫に見える髪に、左右一対の大きな角を持ったフリフリな女の子の姿が。

 

 初めて会うはずなのに初めてに感じない……例えるならば何度も出てきて居るようなそんな……そう、例えるなら異変に巻き込まれた際、黒幕が無貌のアイツだった時のような。

 

「…………それはこちらのセリフよ、アイツは私に殺らせなさい、バーサーカー」

「仕方がない、まぁ、良いだろう」

 

 仮面の女性も何やら因縁があるようだ。

 

「さて、それでは私はそこの男を殺すとしよう」

 

 黒衣の男……バーサーカーはそう言うとこちらに向けて槍を飛ばして攻撃をしてくる。

 

「あっぶっなっ」

「ちょっとアンタ!何ぼさっとしてるの!?そんなんでアタシのプロデューサーが務まると思っているのかしら?」

 

 飛んできた槍は、ピンク髪の少女の手によって弾かれる。

 

 しかし、プロデューサー?……何だか彼女に向かってこちらの魔力が流れていくのが感じる。

 いつの間にか契約をしていたのだろうか?

 

「よく分からないけど、分かりました、よろしくお願いします」

「それじゃあマスター、一発目ドドーンとキメちゃうから、魔力よろしくね?」

 

 そう言うと、彼女がマイクスタンドのような槍を地面に突き刺した。

 

「最初はやっぱり盛り上がる曲からね!!!」

 

 そんな掛け声とともに、地面の下から巨大な城、いや、城の形をしたスピーカーがせり上がってくる。

 

「っ!なんてこと!」

「あれはなんだ!?」

「バーサーカー!アレはある意味不味いわ!」

 

 

 

 そしてーーー

 

 

 

『ボェェェェェェェェェエエエエ!!!!!』

 

 

 

 音響兵器が放たれた。

 

 

 

 

「「「!?!?!?」」」

 

 轟音が辺りを揺らし、名状し難い音によって脳を揺らされる。

 スピーカーの後ろ側ですらこれほどなのに、正面の敵側がどれほどの被害なのかは見当もつかない。

 

 しかし、轟音が鳴り響き始めてから10秒、20秒……どれほど聴き続けたのかはわからないが、聴いているうちに分かってくることもあった。

 

 これは歌なのだ、下手で、聞くに耐えない旋律……旋律というのも烏滸がましいほどだが、それでも情熱を感じることが出来る。

 

 昔異変に巻き込まれた際に一緒になった歌に全てをかけている男や、アイドル、彼ら彼女らの歌に通づる何かを感じることが出来たのだ。

 

 そして。

 

『―――!!!……これでフィニッシュよ!!』

 

 彼女のライブが終わりを告げた。

 

 

 

 パチ……パチパチパチパチ

 

 

 

 気がつけば拍手をしていた、彼女の歌とは言えない拙いソレに、しかし感じ入るものはあった。

 

「良いライブだったよ」

 

 驚いた表情でこちらを見ていた彼女にそう一言告げる。

 

「え……?」

「正直に言うと、アレは歌とは言えないような酷いものだった……」

「っ!」

 

 その一言に、緩んでいた顔が引き攣るのが見えるが、そのまま続ける。

 

「しかし、しかしだ、キミの目指しているモノにいちばん大切な物はしっかりと込められている。これからもっと練習をすれば、君は素晴らしいアイドルになれると思いますよ」

 

 言いたいことを言い切ると、彼女の肩が震えているのが見える。

 

 さ、さすがに直球で言い過ぎたか?

 

「すみまs「ふ、ふぅん?アナタ見る目あるじゃない!!」ん?」

 

 謝ろうとすると、彼女はそう口にした。

 

「アタシ、アイドルを目指しているけど、褒められたことなんて一度もなかったわ……でも、アンタはきちんと褒めてダメなところを指摘してくれた……」

 

「やっぱりあたしの目に狂いはなかったわ!マスター……いえ、プロデューサー!」

 

 

 

 

 

 

 

「一緒にアイドル道を進みましょう!!!」

「はい」

 

 まっすぐとこちらを見つめるその瞳にそう答えるのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれ?そういえば名前すら聞いていなかったよな?

 

 

 

 敵はいつの間にか居なくなっていた。

 

 

 ────────────

 

 

 結局、周辺を探してみても敵は見つからなかったため、改めて少女と自己紹介をし合っていた。

 

「さてと、自己紹介がまだだったわね?プロデューサー、私はエリザベート・バートリー。よろしくね?」

「私は内荒 藤太です、よろしくお願いします」

 

 そう言って名刺を一枚差し出すと、彼女……エリザベートは上機嫌に名刺を受け取る。

 

「名刺!今のすっごくプロデューサーっぽかったわ!」

「ははっ、喜んでもらえて何よりです」

 

 どうやらお気に召したようだ。

 

「それでプロデューサー?」

「何かな?」

「なんでプロデューサーはこんな所にいたのかしら?」

 

 あ。

 

「いや、仲間とはぐれてしまって……探していたところなんですよ」

「ふーん?それじゃあそのプロデューサーの仲間を私のファンにする為にも探さないといけないわね!!」

「そうだね……私は戦えないので戦闘になったら頼むことになりますが、よろしくお願いします」

「ええ、任せなさい!!!」

 

 

 そう答えると、エリザベートは腰と胸に手を当て、自信満々に宣言する。

 

 

 

 

 

「エリちゃんのライブツアーinフランス、開幕ね!!!!!」

 

 

 

 

 

 さて、合流までの予定とこの子のレッスン内容を考えなくては。

 

 




前書きにて書いていた予定外は、アレです、レイシフトの幸運で失敗してぐだ男たちから離れてしまったことについてです。
本当はぐだ男たちとレイシフトし、アビーをマシュの盾を通して呼んで探索開始のはずだったんですが、バッドラックでファンブルっちまったんや……。

ファンブルでファブニールとかワイバーンの群れの真ん中に出そうかとも思いましたが、さすがに100ファンではなかったのでシャドウサーヴァント達の近くにしました。

そして次にエリちゃんについて。
エリちゃん可愛いよ、何度でも出てきて欲しいと思うくらいには好きです。ハロウィンからリストラされても話の中に出ては来るあたり流石エリちゃんですよね。
凄くどうでもいい話ですが作者の好きなFateキャラのベスト3は

1位沙条愛歌
2位メルトリリス
3位エリザベート
という具合なので、エリちゃんはそこそこ贔屓してます、はい。

そんなエリちゃんですが、こう、契約してはいますが結局のところこれは現地サーヴァントとの仮契約みたいな形ですので、あくまでメインはアビーです(鋼の意思)
ほかの特異点で現地サーヴァントとしてこれからも何度も出てきていただきますが。

でもメインはアビーだから安心してね……。

じゃないとメルトリリスとか出したくなっちゃうから……ヤンデレお姉ちゃんも出したくなっちゃうから……収集つかなくなりゅぅ。



エリちゃんが好きな同士が居たらコメントお願いします(露骨なry


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