FGO脳ザビ子が行く、リトライ不能Fate/EXTRA紀行 (藻介)
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開幕

一方が進まないと全然別の妄想がはかどる。

初めましての方は初めまして。エクシエともうします。お楽しみいただければ幸いです。
また、よろしければ、拙作『ぐだ×ぐだOrder ~ようするにぐだ子がぐだ男を呼ぶ話』も読んでいただけたらとおもいます。

初めましてでない方は恥めまして(否誤変換)。今後も一層精進していくつもりなので、こちらの方も楽しんでいただければ幸いです。

前口上が長くなりました、新作の方、どうぞよろしくお願いします。



chapter1:戦闘システム

 

「戦闘はこのように、Attack、Break、Guardからなる、三つのコマンドの三すくみで行ってもらう」

 

 どこにつながっているとも知れぬ空間。その中を一つの声が響いている。

 

 とても天の声、などとは呼べないその声が、私に問うてきた。

 

「さて、理解したかね」

 

 私は、ひと呼吸おいて答える。

 

「大丈夫」

 

 そして、同時に思った。

 

(ようはあれか、ムシ〇ングか。時代を感じるなあ)

 

 天の声。ゲーセン好きだったんだろうか。

 

 私はそれを口に出すことはしなかった。

 

 

chapter2:負けイベント

 

 すっかり灰色に染まってしまった死体の山。

 

 その中に倒れていたドールの一つが、一人でに立ち上がり、襲ってくる。

 

 こちらも、かたわらのドールで対抗。

 

(六手すべてが判らない……、ここはGuardで耐えて様子を見るしか)

 

 結果、二勝三敗一引き分け。

 

(み、見えねー! どんなんだったけ? いや、というか、やっと与えられたダメージが1って何!)

 

 気づいてしまった。これは、勝てない。

 

(では、ここで私は死んでしまうというのか)

 

 すこしAttackを増やしてみる。一勝四敗一引き分け。逆に受けるダメージが増えてしまった。耐えきれず、こちらのドールが倒れる。

 

(あきらめるしか、ないというのか)

 

 敵のドールが標的をこちらに変えた。一歩一歩、威圧するようにゆっくりと迫ってくる。逆に滑稽に見えた。だが、滑稽は滑稽なりの恐ろしさがある。

 

(それは、認められない)

 

 ここは逃げよう。一歩でも、一メートルでも、アレから遠くへ。

 

(私はまだ、自分がだれかすらも分かっていない)

 

 だが、私が苦渋を飲む思いで離した距離など、一息ですむとでもいうように、ドールの気配はほんのわずかな間に迫ってくる。

 

(まだ、何もなせていない)

 

 背中に一筋の感触が走った。斬られた。そう気づくのに、どれほどの時間を使ってしまっただろう。

 

 いや、そもそも。傷なんてどうでもいいことだ。それにはすぐ気づけた。

 

(そして、何よりも)

 

 あきらめない。

 

(私は、まだ)

 

 あきらめない。なぜなら、私はまだ――

 

(チュートリアルガチャすら引いていないんだから!!)

 

 瓦礫が崩れる音が、私の意識を叩き起こした。

 

 その中から、何か、人型の赤いものが降ってくる。

 

 それは、あれほど苦戦したドールの攻撃をたやすくかわし、その上で、まるで枝でも折るように、一刀に伏した。

 

 そして、赤い騎士は言う。

 

「さて、一応聞いておくが、私のマスターは君かね?」

 

 赤い外套が印象に残る青年だった。

 

 私は答える。

 

「はあ、恒常星四か……」

 

「いっぺん死んでみるか」

 

「いえいえ、すみません。私があなたのマスターです」

 

 ――――フラグ回避成功。

 




一方そのころ一周目ザビ子さん

「そうしゃー、夜ご飯の時間だ。何をたべる? 外食か? 配達を頼むか? それとも、余の手作りがいいか?」

「いや、いつもお世話になってるし、今日は私がつくろうかな」

「そうしゃの、手作り、だと……!?」

「うん。なにがいい? セイバー」

「何でもよいぞ。というか、そうしゃの作るものなら余は何でもよい!」

「もう、セイバーったら」

~~~~

「マスター、紅茶の砂糖はいくついるかね」

「いや。いらない。お腹いっぱい」


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一回戦

エクシエです。
前回間違えたのは、別の投稿サイトのアカウント名でした。すぐ直します。

ではどうぞお楽しみください。


chapter3 二周目

 

「甘い!」

 

 アーチャーがエネミーに両手の中華刀を振り下ろす。ダメージ数値は、手元の端末によると『14』とのことらしい。

 

 強いのか弱いのか分かりにくい。

 

 いや、たぶん強いんだろう。だってあんなにすごい筋肉しているのだし。

 

「気を抜くな、マスター!」

 

 フラグだった。エネミーはまだ倒れてはいない。何とかしのぐ。

 

 さて、次はと。1、3、4、6手目が分かっていて、それ以外が分からない。体力的にも短期で済ませたいところだが、ここは。

 

「せい!」Attack 13ダメージ

 

「打ち破る!」Break 15ダメージ

 

「しまっ」

 

 Attackの体勢に入っていたアーチャー。しかし、エネミーの行動はGuard。もう、アーチャーは体制を変えられない。

 

 別にそのまま殴ってしまっても構わんのよ。アーチャー。

 

「ソイヤッ!」shock(64) 50ダメージ。

 

 エネミーはアーチャーが殴る間もなく、ノイズになって消えた。

 

 完全に空ぶったアーチャーは、とんでもなく微妙な顔でこっちを見てくる。

 

「ごめん。譲渡資金(引継ぎ)があること言うのすっかり忘れてた」

 

 そのあと、魂の改ざんというのをするまで、私がコードキャストを使うたびにアーチャーは、悔しさを交えた微妙な表情でこっちを見てきた。

 

 ごめんて。ほんとごめんて。

 

 

chapter4 周回

 

「しかし。君は本当に精がでるな」

 

「やだ、アーチャー。セクハラ?」

 

「ちがう」

 

 どうだか。

 

 マイルーム。一回戦の対戦相手は予選で親友(というロール)だったシンジだ。

 

 今日のアリーナ探索も終わり、今は休憩を兼ねて、作戦会議をしている所。

 

 あらかた今後の方針を互いに話し合ったところで、アーチャーが言った。

 

「アリーナ探索に余念がないな。と言ったんだ。君、妨害が無ければ、いつまでもレベリングしているだろう」

 

「いつまでもはしないよ」

 

 ちゃんと目標を決めてやっているだけだ。

 

 デフォルトで最弱とのことらしいので、他の二倍はがんばらねば、とうてい生き残れるとは思えない。

 

「めざせ、レベル上限値(レベル99)!」

 

「目標が高いのは悪いことではないさ」

 

「めざせ、脱筋力D!」

 

「私の設定上の筋力はCだ」

 

 設定上では意味がないだろうに。こういうのは、実現してこそ意味があるのだ。

 

「とりあえず、目標一日4レべで行こう」

 

「まあ、いいがな。あまり根をつめてもいかんぞ」

 

 おや、心配してくれているのだろうか。この一見皮肉屋に見えるサーヴァントにしては珍しい。今夜は何かいいモノでも降ってくるのだろうか。

 

「大丈夫。もう一周アリーナを回るごとに、リンゴをかじることにならないだけ百倍マシ」

 

「何をわけの分からないことを言っている、マスター。はあ……、ひとまず、これでも受け取って休みたまえ」

 

 プレゼントが降ってきた。

 

 なにこれ。濃縮エーテルと、礼装? 譲渡資金の中に同じものはない。『赤の紋章』か。

 

「アイテムは運営(ムーンセル)からだ。君の通算移動歩数が一定数に達したことの記念らしい」

 

 ムーンセルは、万歩計だった! 

 

 いや、未来予想どころか未来選択すら可能(だとレオに聞いた)なムーンセルのことだ。こんなの、作業中の暇つぶしに消しカスをこねているようなもの、もしかしたら、それ以下かもしれない。

 

「そして、礼装は私からだ」

 

 アーチャーから?

 

「エネミー討伐数が300に到達した祝いと、君の日々の努力への、せめてものねぎらいを兼ねてな」

 

 アーチャーも、万歩計だった! いや、討伐数だから万歩計とは違うのか。

 

「ていうか、数えてたんだ。豆だね、アーチャーも」

 

「まったくだ。覚えておくだけで一苦労だったぞ。本来それは、三回戦、はやくとも二回戦で渡すつもりだったものだ」

 

「そっか。ありがとう、アーチャー」

 

「うむ。さて、今日は休むといい」

 

「いやいや、せっかくアーチャーがくれたものだし、さっそくつけてみるよ」

 

「む、……、そうか」

 

 おや? おやおやおや? 今デレたか? 今デレたかこの赤いの? そうかそうか、そんなにうれしかったか―。愛いやつめ。おっと、先輩の奥さんの口癖がうつってしまった。

 

 そうと決まればいち早く装備しよう。えーと、端末のEquipのところから操作して、……アレ?

 

「ねえ。アーチャー」

 

「む、なんだ。マスター」

 

「コレ、むっちゃ弱いんだけど」

 

 つけるとしたら、MPが増えるかわりにshock(64)かheal(16)のどちらか、外さなくちゃいけなくなる。それは、正直いって、探索上かなりきついです。

 

「マスター」

 

「なに? アーチャー」

 

「地獄に落ちてみる気はないか?」

 

 ごめんて。ほんとごめんて。

 

 とりあえず、部屋に飾ってみた。タイガー鉢植えに隠れた。

 

 

chapter5 真名

 

 時はすこしさかのぼって、対戦相手発表直後。シンジと改めて顔を合わせた後のことだ。

 

 それまで姿を消していた(霊体化というらしい)アーチャーの一言である。

 

「まったく、これもまた、運命というやつか」

 

 そして、そこからすこし、時間を今に近づけて。

 

 レオのサーヴァント、セイバー。真名は自分から明かしていたところによると、かの名高い円卓の騎士、その中でも日が出ている時には主君のアーサー王さえ上回るといわれた、ガウェイン卿だった。

 

 そんな彼を目にして一言。

 

「まさか、彼女の関係者もこの聖杯戦争にかかわっているとは。いや、当然といえば当然か」

 

 その後も、アーチャーの身の上つぶやきはたびたび出てきた。

 

 そのたびに、私は思ったのだ。

 

(このサーヴァント、真名隠す気あるんだろうか)

 

 真名を隠すことの重要さは、聖杯戦争に参加するマスターならば常識であるらしい。実際、上のような発言をしていたアーチャーも、人前にはあまり出ようとしないし、あまつさえ、マスターである私にすら隠す始末だ。

 

 つまり、真名とは、知っているだけで、そのまま勝利に直結し。また、知られるだけで、敗北、つまり、確証はまだないが、そのまま死へとつながりかねない、強力な情報(マトリクス)なのだ。

 

 その断片を、アーチャーは要所要所で漏らしている。

 

 実は、私も心当たりがないわけではない。

 

 覚えていることの中に、なぜかあったとあるゲームの記憶。その中に、アーチャーと瓜二つの人が出ていたような気がするのだ。

 

(まあ、さほどあてにはならないだろうけど)

 

 たとえどれだけ似ていようと、ゲームはゲーム、現実は現実だ。一緒にするべきではない。

 

 それにあれだ。アーチャーがネームレス・レッドとか名乗って変なマスクかぶるわけがない。

 

 サンタムとか名乗って、変なマスクをかぶって子供たちの前に立ちはだかるわけがない。

 

 真田エミ村とか名乗って、六文銭が描かれた変なマスクかぶってお城を魔改造するわけがない。

 

(うん。やっぱりあのエミヤとかいう変な人と、私のアーチャーは別人だ!)

 

 とは思いつつも、私もやってみたいことはあるのだ。

 

 そして、今。苦労の末、シンジのライダーをあとすこしというところまで追いつめた。

 

 その時に、アーチャーは抜かしたのである。

 

「やはり、名前というのはこうも人を縛るものなのだな」

 

 決心がついた。

 

「アーチャー、あれやって! あいあむざぼーんおぶまいそーどってやつ!」

 

 アーチャーがこけた。その上をライダーのカルバリン砲の弾が通り過ぎていく。幸運上げておいてよかった。

 

 その後、どうにか勝ちをもぎ取れた。

 

 シンジがガチで死んだ。めっちゃ泣いた。放っておけというアーチャーをgain-str(16)で殴った。

 

 大丈夫だ、シンジ。君のことは何があっても忘れない。

 

 本当だよ。嘘なんかじゃないから! 絶対!

 




一方そのころ一周目ザビ子さん

「あれ、おかしいな」

「どうしたのだ。そうしゃよ」

「いや、大したことじゃないんだけどね。やってたゲームのデータがどっかいっちゃって」

「む。もしやそれは、余が3人くらいでてくるというアレのことか?」

「そう、それ。いろいろがんばってセイバー全種宝具5、スキルマ、100レべまで育てたんだけど」

「ぜんぜん大したことでなくないではないか!」

「うーん。どうしよ」

「む、そうしゃ、確かそのゲームは引継ぎ設定、というのができたのではなかったか?」

「あ、そういえば。よかった。ナンバーもパスワードもひかえてある」

「よかったな。そうしゃよ」

「うん。ありがとう。ネロ」

(それにしても、消えたデータどこに行ったのだろう)

~~~~

「はっくしょい!」

「色気のないくしゃみだな、マスター。やはり根性ではだめか、帰ったら、何か暖かいモノでも作ろう」

「ありがとう、アーチャー」


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三回戦

二回戦が飛んでますが、ちゃんと前回の続きです。
ぶっちゃけた話、緑茶陣営が尊すぎて突っ込みどころが無かったというのが本音です。

……だというのにこの低クオリティ(当社比)。楽しんでもらえるかとても疑問ですが、せめて何かの暇つぶしに読んでもらえれば、嬉しいです。



ステータス(三回戦終了時点)

 

 

・岸波白野 

 ・マスターレベル 32/99

 ・MP 321

 ・装備 麒麟のマント(boost-mp(45).heal(64))

      (マスターMP45上昇。MP50消費でサーヴァントHP大回復)

     破邪刀(boost-mp(60).shock(64))

      (マスターMP60上昇。MP30消費で敵にダメージ&スタン)

 

・アーチャー

 ・HP 1958

 ・MP 312

 ・筋力C(66) ・耐久C(76) ・敏捷D(47)

 ・魔力E(16) ・幸運D(32)

 ・スキル解放 7/8

  ・鶴翼三連 消費MP50

    (敵に投影レベル依存ダメージ)

  ・赤原猟犬・耐久低下 消費MP30

    (敵に投影レベル依存ダメージ&敵の防御力ダウン。投影レベル1以上で使用可能)

  ・赤原猟犬・腕力低下 消費MP30

    (敵に投影レベル依存ダメージ&敵の攻撃力ダウン。投影レベル2以上で使用可能)

  ・投影準備 消費MP10

    (自身の投影レベルを1上昇)

  ・熾天覆う七つの円環 消費MP60

    (使用時に受けた攻撃を無効化。投影レベル5(Max)で使用可能)

  ・構造強化 消費MP20

    (自身のGuardに投影レベル1上昇を付与)

  ・構造把握 自動発動

    (投影レベル1で戦闘開始(※習得前は0から開始))

 ・宝具解放 0/1

  ・―――――

    (―――――)

 

 

殺したくなかったし死んでほしくもなかった

 

 

「さて、マスター。大変心苦しい状況ではあるが、何か言っておきたいことはあるかね?」

 

「………………それ、本当に聞きたい?」

 

「…………いや、やはり言わずともいい」

 

「そっか。ありがとう」

 

 アーチャーの気づかいがこれ以上ないくらいに身に染みる。

 

 いたたまれない気持ちでいっぱいで、もう一言もしゃべらずにこの場から立ち去ろうと思っていた。それでも、どうしようもなく言わずにはいられない一言がのどの奥からこぼれ落ちてしまった。

 

「本当。どうしてこうなった」

 

 ここでの時間と現実での時間にどれほどの差があるのかは分からないが、体感にして、二週間ほど遡る。

 

 まだ一回戦も終わっていなくて、これが本当の戦争だなんて多くの人たちが信じきれていなかった頃。私は確かに言っていた。

 

『とりあえず、目標一日4レべで行こう』

 

 さすがに目標設定が高すぎたのか、一回戦中はどうにかなっていたそれも、二回戦後半からは3レべ、そして三回戦後半の現在で2レべと、なし崩し的に引き下がっている。それでも制限時間ギリギリで、朝帰りの日もあった。

 

 今にして思えば、これがことの始まりだったのかもしれない。

 

 日に日にデフレしていく経験値。増える周回回数。1Waveキルはいつの間にか当たり前になり。決戦を二日後に迎えた五日目の時点で、ダンジョンエネミーの行動パターンはすでにコンプリート。脳死マラソンが幕を開ける。

 

 そうして、走り切った先にようやく見えた三回戦終了後の景色は――やり切れなさ極振りの地獄だった。

 

 具体的には、敵コードキャストでのダメージを除いて、ノーダメージで3Wave決着。

 

 こんなのってないよ。あんまりだよ。

 

『ねえ、どうして? どうしてそんな当たり前のことも許されないの?』

 

 ありす(マスター)無きアリス(サーヴァント)の叫びが脳に焼き付いて離れない。

 

 そんな地獄を生み出してしまったのが自分だという事実を受け止めきれない。

 

 下へ下へと流れていく景色を背に、ひどい顔をした自分がエレベーターの窓に映っていた。きっと背後に立つアーチャーにも見られてしまっているはずだ。

 

 いやだなあ。

 

 そんな気持ちを押さえつけようとして、渾身のジョークを一つ。

 

「ねえ、アーチャー」

 

「なんだ」

 

「『上げすぎたレベルでモンスターを蹂躙していると、なんだか大切なものを見失った気がしますね』って、こういう時のことを言うのかな?」

 

「……マスター。私が言うのも難だが、さすがに不謹慎ではないかね」

 

「そうだね」

 

「…………」

 

「………………」

 

「……それで?」

 

 少しの沈黙があった。それで会話は終わりだと思っていたのに、アーチャーは先を追及してきた。思わず、「え」とこぼしてしまった。

 

「それでって。これ以上何も言うことはないけれど」

 

「ちがう。そうではない」

 

「じゃあ何」

 

「それで、辛いから、ここで止めてしまうかね?」

 

 ――――ああ、そういうこと。その答えならば決まってる。

 

「いや、止めない」

 

 私はまだ、私が戦う理由を知らない。目的もなければ、聖杯に叶えてもらう願いもない。

 

 だから、見つけなくてはいけない。

 

 シンジ、ダン卿、ありす。彼らを殺した責任を取らなくてはならない。これから殺す誰かの分まで生きなくてはいけない。

 

 だから、まだだ。まだ、止まるわけにはいかない。

 

「そうか。ならば結構だ」

 

 がこんと派手な音を立てて、エレベーターが止まった。

 

 聖杯戦争は、いまだ半分も終わっていない。

 




~一方そのころ一周目ザビ子さん~

ネロ「そうしゃ! もうすぐ余の出る新しいげーむが出るらしいぞ!」
ザビ「そっか。もう出るんだ、アレ」
ネロ「早速予約するのだ」
ザビ「いや、無理だって。お金ないし」
ネロ「なん…………だとっ。一体何に使ったというのだそうしゃ」
ザビ「えっと、ちょっと困ってる人にあげちゃって」
ネロ「む。それは、うむ。仕方ないな」
ザビ「ごめん。今度からはちゃんとネロに相談してから使うようにするよ」
ネロ「うむ! そうするがいい! なんたって、余と奏者の共用財産なのだからな」
ザビ(共用ってところ気に入ってるのかな? ネロはやっぱりかわいいなあ)

~~~~~

紅茶「マスター。そんなに金銭を積んで何を買うつもりだ」
ザビ「え。麻婆豆腐だけど」
紅茶「は?」



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四回戦

エクシエです。
今回からリンルートに入ります。分岐シーンを省略したのであらかじめご了承ください。

それでも良ければ、お楽しみください。




ステータス(四回戦終了時)

 

 

・岸波白野 

 ・マスターレベル 44/99

 ・MP 388

 ・装備 開運の鍵(boost-mp(40),gain-lck(32))

      (マスターMP40上昇、サーヴァントの幸運(クリティカル発生率&弱体耐性)強化)

     破邪刀(boost-mp(60),shock(64))

      

・アーチャー

 ・HP 2649

 ・MP 398

 ・筋力B(86) ・耐久B(100) ・敏捷C(59)

 ・魔力E(16) ・幸運D(41)

 ・スキル 8/8

  ・鶴翼三連 消費MP50

  ・赤原猟犬・耐久低下 消費MP30

  ・赤原猟犬・腕力低下 消費MP30

  ・偽・螺旋剣 消費MP70

   (敵に投影レベル依存の貫通ダメージ。投影レベル3以上で使用可能)

  ・投影準備 消費MP10

  ・熾天覆う七つの円環 消費MP60

  ・構造強化 消費MP20

  ・構造把握 自動発動

 ・宝具 0/1

  ・―――――

   (―――――)

 

 

chapter5 理想の大きさ

 

「おめでとう、マスター。アリーナのアイテム、その半数である50個を回収し終えた。これに懲りず、精進したまえ」

 

 言峰のちょっとした趣向——おかげで一度対戦相手に出くわし死にかけたが——を何とか終え、日課のレベル上げをしてから、何とか帰還した5日目の終わり。また一つ、アーチャーの総合的万歩計疑惑が深まった。

 

 でもまあ、この赤いのの真面目っぷりも今更ではあるし、むしろ頼もしいと思えるようになってきたのも事実。

 そんなわけで、私はというと、アーチャーの人となりよりもアイテムの方。半数を集めきった。そのことにちょっとした達成感と、安堵を覚えていた。

 

 つまり、油断していたのだ。だからこれは、その油断から出たものであって、別に日頃もやもやしていたとか、そういうものでは断じてない。その辺り、勘違いをしてほしくはない。

 

「ところでアーチャー、リンとはどういう関係なの?」

 

 がっちゃん、どっちゃん。

 

 私がいい終わるか否か、何かが激しく崩れる音がした。アーチャーだった。アーチャーが、椅子代わりに積み上げた机を豪快に崩して、頭と足の位置を入れ替えている。

 突然の相棒のあり得ない体勢に驚きつつ、頭では、ああこいつやっぱりと思う自分がいた。

 

「……マスター。近くで電波異常が発生したらしい。私はよそ見をしていて対処できなかったが、君の方は無事か?」

 

 居住まいを整えつつ、赤いのはそう平気な顔をしてうそぶく。どうやら、聞いていなかったふりを貫くつもりらしい。

 

 だが、相手が悪い。このあきらめの悪さに定評のある私、岸波白野に持久戦を持ちかけるなんて、愚の骨頂というやつである。

 すかさず追撃をしかけた。

 

「アーチャー、リンとはどういう関係なの?」

「…………」

「アーチャー、リンとはどういう関係なの?」

「…………」

「ねえ、アーチャー」

「…………」

「リンとはどういう関係なの?」

「……………………はあ、そんなに知りたいかね」

 

 試行回数3回とか、こいつ、チョロい!

 

 とかなんとかいったら間違いなくげんこつとだんまりのコンボが来るので、のどの奥で押しとどめて。

 

「うん。知りたい」

 

 素直な気持ちを吐き出してみることにした。

 

「アーチャー。リンのことを話に出すとき、いつも遠い目をしてたから」

 

 まるで、過去の一点を見つめているような瞳だった。アーチャーの灰色の瞳。そこには、もう戻れない、アーチャーにとっての幸せな過去がある気がした。それは、私にはないものだ。だから、その一つであるかもしれないリンとの関係について、アーチャーにどうしても聞いてみたかった。

 

 そこまで思考が巡ってきて、ようやく分かった。私は嫉妬していたのだ。私には無い過去を持つ、リンに、アーチャーに、その暖かな記憶に。

 

 やっと、心のもやもやが晴れた気がする。やはり悩みは人に聞いてもらうのが一番らしい。

 

 いつの間にか俯いていた顔には、いつの間にか温かい涙が張っていて、それを気づかれないように拭ってから、答えを聞こうとアーチャーに向き直る。

 

 さて、当の本人の第一声は。

 

 

「フッ」

 

 

 なんとも微妙な表情でした。明後日の方向への嘲笑すらかましている。

 

 おい、ここまでのシリアスを返せよ。

 

 危うく装備ストレージからお仕置き用のgain-strength(16)を取り出しかけたが、その嘲笑が別に、私へ向けられたものではないことに気づき、すんでのところで引っ込めた。この鋼の自制心には自分でも花丸をあげたい。

 一方アーチャーは、同じ表情のまま、まるで思い出したくない記憶の蓋が開いてしまったように——たぶん、事実そうなのだろう——言葉を吐き出す。

 

「君はどうやら勘違いをしている」

「そうなの?」

「ああ、私とあのあかいあくまに何か因縁があるのかだと? そんなもの、犬にでも食わせてしまえたらどんなに良かったか」

 

 つまり、当たりだったのか。じゃあ勘違いってなんだよ。

 

「辺り一面に宝石をばらまいて教室数部屋を破壊、さらにガンドの連発でついで数棟も破壊。血潮は金で心は脳筋。抱えた借金は数知れず。肩代わりにオレのバイト代からいくら引かれたか額を計算しただけで胃がよじれる。しまいにテムズ川になんかよくわからん理由で投げ飛ばされた日には死を覚悟した。それほどに、トオサカリンとは淑やかさからかけ離れた存在なんだ」

「へ、へえ」

 

 ぶっちゃけ、よく分からない単語ばかりで理解が追い付かなかったが、とりあえずムーンセルが緊急で支給してきたこのテロップを出しておこうと思う。

 

 ※当サーヴァントの言動には、日々の疲れ、その他精神的ストレスからくる妄言が多分に含まれており、実際に起こったこととは異なる場合があります。もし、読者の皆様が勘違いをなさっても、著者は一切責任はもちません。あらかじめご了承の上、ご自身で調べてみることをおすすめします。

 

 うん。テロップの内容もさっぱりだ。

 

「つまりだ。私がトオサカリンに対して何か特別な感情を抱いているといったことは断じてない」

「な、なるほどー」

「それにだな、もっとこう、ふくよかなくらいが女性は」

 

 …………ん? あれ、今なんといったこの赤いの。

 

「えーと、アーチャー? もっと、何だって?」

 

 聞いていなかったのか、と、数分前の自分を棚に上げてアーチャーは、ご丁寧にもその無骨な手で(何のとはいわないが)ラインを描き始め、そこでようやっと我に返ったのか空中にあった手を膝の上へと戻した。

 

「……いや、これ以上はお互いのためにもやめておこう」

「そうだね」

 

 とはいいつつも、gain-strength(32)で目の前の赤だるまは制裁。

 光ってうなる二本指がクリーンヒットし目をラ〇ュタごっこをするアーチャーの横で、私はひそかにバストアップを決意したのだった。

 

 

 いや、それにしてもあのライン。サクラレベルとか、無理ゲーの香りしかしないが。

 

 

chapter6 怪物

 

 四回戦の対戦相手はこれまで以上に異質な相手だった。何せ相手マスターのランルーくんに、

 

「オイシソウ」

 

 と、初対面でいわれたのだから、ユリウスの殺気とは別ベクトルで危険を感じた。

 

 とりあえずその日の夜からは多少無理をしてでもアーチャーに起きてもらっていた。

 

 アーチャーもこれには賛成してくれていて、私同様に、警戒を強めていたように思える。

 たぶん、二日目、アリーナで会った時のランサーの「どっちでもいける」発言が原因だろう。それをアーチャーにいったら、脳天チョップを食らってしまったが。わりと私としてはマジだったんだが。

 

 じゅるり。

 

 また、情報が集まりにくかったのもある。

 

 スキル「信仰の加護」の存在まではすぐに分かった。けれど、そこから先が長かったのだ。

 

 信仰の加護は、一つの宗教の英雄的存在に与えられるスキルだ。つまりそれに当てはまる人物がランサーの真名である可能性が高い。

 

 けれど、宗教も星の数ほどある。今地上にどれだけ残っているかは分からないが、英霊の座に時間の観念はない。過去、なんなら、未来の宗教でもありうるわけだ。これ以上、特定のしようがない。

 

 そんな中で迎えた四日目、言峰の課したコンペティションは、リスクこそあれ、私たちには必要なものだった。

 

 アリーナ第二層に出現するワニ型エネミー、MAN EATERの討伐数を競うそれ。賞品は敵サーヴァントの情報。思い返せば、一回戦終盤、シンジとの貨幣集め競争の発展形ともいえる。

 

 その流れで、マップ内に宝箱とエネミーの出現位置を表示する礼装「遠見の水晶玉」、移動速度上昇を付与できる「強化スパイク」を装備。対象エネミーをマップに登録していざ開始。

 

 と、意気揚々と狩りを始めたまではよかったのだが、いきなりランサーたちに遭遇、する前に何とか、アーチャーがどこからともなく取り出した透明マントみたいな布で隠れることができた。

 隙間からのぞき、串刺しにされたエネミーの内側からさらに、別の杭が飛び出してきたのを見た時は、思わず悲鳴を上げそうになって、アーチャーの手で口をふさがれたのを憶えている。

 

 結局、できる限り会わないよう、ランサーの位置もマップでチェックしながら、できるだけ多く狩った結果。8対4で勝利。

 

 アリーナで一度やり合った時に得た情報と合わせて、これでどうにか敵ランサーの真名がルーマニアの串刺し公ヴラド三世だと分かった。

 

 そして迎えた決戦当日。

 

「アーチャー!」

 

「了解した。トレース、オフ。赤原を行け、緋の猟犬!」

 

 マトリクスをうまく使い、戦況としてはなんとか、こちらが優勢に立ち回れている。

 

 ランルーくんが使うコードキャストのデバフ、特に、seal-break(Break封印)をそのつど所持限界まで貯めた治療薬(ドロップ品)ではがし、スキルで威力の上昇しているGuardを多用するランサーに、容赦なくBreakを叩きこむ。

 

 継戦能力の高いランサーの動きも、目に見えて鈍くなってきている。決着は近いはずだ。

 

「……っ! マスター!」

 

 そう思ったのもつかの間、膨大な魔力が、ランサーから放たれた。宝具を使う気だ。

 

 まずいかもしれない。

 言峰から受け取った情報では、ランサーの宝具「串刺城塞(カズィクル・ベイ)」はGuardを貫通してくるとのことだった。熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)で防げるかどうかは分からないが、もし防げなければ、一気に形勢逆転されてしまう。

 

(アーチャー! shock(64)で一瞬だけ動きを止める! その間に仕留めて!)

 

(了解だ。一気に行くぞ、マスター!)

 

 念話を切って、目の前に集中。

 

 相手の魔力がたまり切るまでの時間を計算。カウント、5、4、3、2、1、今!

 

「いっっけーーーーーーーーー!」

 

「地獄のぐげ———っぬう!」

 

 苦痛に顔をゆがめたランサーの手から槍が滑り落ちた。

 

「やって! アーチャー!」

 

 渾身の魔力を右手にため、高く飛び上がるアーチャー。その右手には刀身がドリルのように尖ったいびつな剣が握られている。

 

「——我が骨子は捻じれ狂う(I am the bone of my sword)

 

 それをもう片方に持っていた黒弓につがえ、限界まで引き絞り、発射。

 

偽・螺旋剣(カラド・ボルグⅡ)!」

 

 剣、いや矢はまっすぐにランサーの心臓へと迫る。瞬間勝利を確信したが、すぐにそれが甘かったと思い知らされた。

 

 ランサーがその両腕で挟み込むように受け止めていた。先端が数センチ刺さっているが、どう見ても致命傷ではない。

 

「うそ…………!」

 

 ランサーの自慢げな笑い顔がこちらを向いた。胸に矢を刺さったままにしながら、落とした槍を拾いこちらへと突貫してくる。

 

「よけて! アーチャー!」

 

 アーチャーはまだ着地できていない。このままでは、おそらくよけるどころではないはずだ。それに気づけなかったことが悔やまれる。

 

 思わず目を背けそうになった、その時だった。

 

「……壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)

 

 アーチャーの小さなつぶやきが聞こえた。と同時に、ランサーを中心に爆発が起きた。

 

 あれは、刺さったままになっていた矢が爆発したのか?

 

 舞い上がった砂埃が晴れるのを待つ。やっと中が確認できるようになった時、そこにはランサーの胸に中華刀を刺しているアーチャーの姿があった。

 無感動にいつもの表情を崩さないアーチャーに対して、満足げに口から血を流すランサー。

 

 胸にちくりと、槍で刺されているわけでもないのに、私はこの時小さな違和感を覚えた。

 

 アーチャーが剣を抜き、距離をとる。それと同時にむこうとこちらの間に壁が出現した。

 

 その奥で徐々に消えていくランルーくんとランサー。その姿が突然、見えなくなる。

 

 あまりにも早すぎる。そう思えば、アーチャーが私の顔を手で覆っていただけだった。

 

「アーチャー」

 

「どうした。マスター」

 

「手、どけてくれない?」

 

「……了解した」

 

 再び、視界が戻ってくる。ランサーはすでにいない。何とか最後の言葉を聞くことはできたが、その瞬間を見れなかった。

 

 やがて、ランサーの血の上で子供が駄々をこねるように、寄り縋っていたランルーくんも、がちゃりと、古いおもちゃが壊れるような音を立てていなくなった。

 

 やはり、何度やっても慣れそうにない。

 

「行くぞ、マスター」

 

「うん」

 

 振り返り、帰りのエレベーターへと乗り込むアーチャー。その背中に思わず、寄り掛かる。

 

「ねえ、アーチャー。どうしてあの時、私の顔を覆ったりしたの?」

 

「…………怪物は、怪物のままにしておいた方が、気が楽だろうと思っただけだ」

 

 それって、どういうことなの。

 そう聞く前に、アーチャーは霊体化していた。たぶん、今は問い詰めても答えてくれないだろう。

 

 心のもやもやが晴れないまま、エレベーターは校舎へと到着した。

 




特に関係もないけど一方そのころぐだ男くん

 ぐだ「ここは、誰かの夢、いやこの感じ、ジャンヌかな?」

 メッフィー「ご名答でございますマスター!」

 メッフィー(敵)「さあさあ、お早く!」

 ぐだ「これはひどい」

~次の夜~

 ぐだ「アビー! どこだー! アビー!」

 メッフィー「よびました?」

 ぐだ「ま た お ま え か」


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