バンドリ 〜THE amazing〜 (JOKER1011)
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1話

「いや〜アメイジング5の皆さん本当にありがとうございました。」

 

「いえいえ、お役に立てて良かったです。それでは失礼しますね。」

 

「ふ〜疲れた。」

 

私の名前は永田美波。この世界ではウェイブと名乗っている。美波の波という部分から決めた。今思えば安直な名前だなって思う。ジョブはダークナイトで、このアメイジング5のリーダーをしている。

リーダーに選ばれた経緯は…忘れちゃったな。

 

「ウェイブお疲れ。」と忍者が話しかけてくる。

この子はリサ。ジョブは見ての通り忍者で、かなりしっかりしている。本当に何故私がリーダーに選ばれたんだろうってくらいしっかりしている。

 

「今日も簡単だったね。依頼。」

この子はレリー。ガンナーで皆のムードメーカー。いきなり突拍子も無いことを言ったかと思えば、核心を突いた発言だったり誰も思いつかない打開策を提案してくる。でもそのお陰で何回か窮地を脱している。

 

「今日はもう終わりですか?」

今話しかけてきたのはロト。ウィザードで依頼の窓口をしてくれている。最近は落ち着いたが興奮すると戦闘狂になる癖がありウィザードなのに前衛に出てきてモンスターを杖でボコボコにし出す事が多々あった。

 

「もう、皆学校はどうするの〜」

この子はフィル。サマナーでいつもボーっとしているようにみえるが感情が表に出にくいタイプで実はちゃんと考えてる。そしてやる時はやる。

 

「じゃあ、今日はもうお開きで。」と私が発言すると皆が肯定の意味である手のマークを送ってくる。

 

「それじゃ!」

 

「あっ!待って!」とロトが言うがもう遅く私とロト以外、ログアウトしてしまった。

 

「むー」

 

「どうした?ロト?なんか話すことがあるの?急を要するなら今からメール送って呼ぶけど。」

 

「えっ、いや明日でいいよー」とロトはログアウトした。

 

ロト何話そうとしたんだろう?明日になったら分かるか。

そう考え私もログアウトした。

 

ジリリリリリ!

 

目覚まし時計が鳴り寝ながら止め、時間を確認する。

 

「7時20分か。起きないと。」

私は起き上がり洗面所で顔を洗い朝食を食べる。

 

「おはよう、美波」と母が洗濯物を畳みながら挨拶してきた。

 

「おはよう」

私は幼い頃に父を亡くし母、私、弟の三人で暮らしてきた。

 

母は女手一つで私達を育て私達をここまで大きくしてくれた。

 

そのせいか未だに私に反抗期というものが訪れない。

 

「お母さん、翔太は?」

 

「朝練行ったわよ。部活が忙しいんだって。」

 

「ふーん。」

朝食を食べ終え学校へ行った。



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2話

「おはよう、美波。」

 

「おはよう。美咲。」

 

私の友達の美咲が話しかけてきた。美咲は入学してからの友達で最近バンドに入ったらしい。クマとして。

 

「じーーー」

 

「な、何?」と驚いた顔でこちらを見る。

 

「え?うん。大変そうだな、クマ生活w」

 

「生活って言わないで。大変なんだからね。特に三馬鹿が。」

 

「はっはっはっは!も楽しそうじゃん。この前live見に行ったけど。」

 

「まあね。」

 

「美波は楽しいの?ゲーム。」

 

「うん。美咲みたいに私も笑顔にしてるよ。」

因みに私がアメイジング5なのを美咲は知っている。

「あっ!そろそろホームルームだから、座らないとね。」

 

 

「はい!座れ!」と先生が教室に入ってくる。

 

「出席とるぞー、安藤、石田、岡田」

 

「はい。」

 

次々と読み上げられ

「日比y…」

 

「はい!」と返事と共に生徒が一人入ってくる。

 

「お前は、またか。俺だから良いけど他の先生だったら怒られてるぞ。」

 

「でへへ!」

 

それから午前中はいつも通り過ごし昼休みは美咲と、あと今日は同じバンドの花音さんと三人で弁当を食べ午後からもいつも通りの授業で居眠りし隣の席の美咲に起こされた。

 

「ああ、毎日毎日一緒だな。なんかないかな〜」

 

「それでね!有咲がね!」

 

「香澄ちゃん!前!前!」

 

ドン

 

「ぐえっ」

 

何かが後ろからぶつかってきた。

 

後ろを振り向くと猫耳?みたいな髪型の子と大人しそうな子がいた。

 

「すみません!」と大人しそうな方に謝られた。

 

「いや、いいんだ。それより君怪我は?」

 

「ないです。すいませんでした。」

 

「大丈夫大丈夫。」

 

「君達…それ何背負ってんの?」学校のリュック以外に、もう一つデカイ荷物を背負っている事にさっきから気になっていたのだ。

 

「ああ、これ?ギターだよ!」

 

「私のはベースです。」

 

「ギターとベースか。バンド?」

 

「そうだよ!私達の他にあとメンバーが三人いるんだよ。」

 

「なるほど。じゃあ引き止めて悪いね。頑張ってね。」

 

「はーい!」と走って行った。

 

バンドか。面白そうだな。

 

その夜

 

NFO内

 

「今日は何にもなくて平和だったねー」とフィルが言う

 

「じゃあ、お疲r…」

 

「待って!」

 

「一体どうしたの?ロト。」

 

「あの…会いませんか?」

 

「会う?何と?」とレリーが聞く。

 

「私達リアルで会いませんか?」

 

「リアルですか?またどうして?」

 

「えっと…その…」

あっ、これは助け舟出さないと。

 

「私も前々から思ってたんだ。私達はお互いを知っていたとしても、それはあくまでもゲームの中の世界のこと。だからもっとお互いを知るために顔を合わせる必要があると思うの。そうすれば、もっと私達は一つになれる。そうでしょ?ロト。」

 

「ありがとう。全部言ってくれた。」



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3話

さて今私は一人でカフェにいる。今着いた所だ。

待ち合わせ場所の名は(羽沢珈琲店)だ。場所はフィルが決めた。どうやら近所らしい。

 

因みに待ち合わせの時間は12時だ。今日は土曜日だからかな。意外と人が居なくて静かだな。

 

「ちょっと聞いてよ、つぐ〜」

 

前言撤回だ。うるせえ。私はチラッと声のした方を見る。ピンクっぽい髪でガーリーな服に身を包んだ女の子が店員さんに愚痴を聞いてもらっている。

 

仲が良いな。と思いながら先に出された水を飲みながら見ていると視界の隅に注文を取りに来た女の子か。見えた。そちらを向こうとした瞬間「へいラッシェーイ!!なに握りやしょーか!」という恐らくこれまでもこれからも確実にカフェで聞くことはないだろうという言葉に飲んでいた水を吹いてしまった。

 

「だ、大丈夫ですか!お客様!」と先程まで友達に絡まれていた店員さんが走り寄って来た。

 

「ゲホッゲホッ!はい、なんとか。」

 

「大変申し訳ありません!すぐに代わりのお冷をお持ちいたします。」と厨房へ引っ込んでいった。

 

「あの…」と先程場違いなセリフで私を笑わせた店員さんが話しかけてきた。

 

「はい?」

 

「今の水の吹き方、かっこよかったです!どうやってやるんですか?」

 

あれは私がプ女子で、あるヒールの選手がやってたパフォーマンスを練習してたから咄嗟に出ただけなんだが…

この子…外国人か?ふふっ、からかってやるか。

 

「教えられません。私忍者だから。」

まあ、今時こんな嘘に引っかかるわけ…

 

「凄いです!!忍者さんなんですね!!」

信じちゃったよ。純粋過ぎんだろ。

 

「いや…今のは…」

 

「すいません、仮の世を忍んでる最中に」

もう、良いや。

 

その時キョロキョロと挙動不審な客が入ってきた。

 

誰だ?挙動不審な割には目深に被っている帽子が派手すぎるだろ。魔法使いみたいな形の白い帽子に色とりどりの星が付いてて、帽子の上の方の尖っている部分にも星が付いている奇妙な帽子だ。

一体どこで売ってるんだ?

 

かくいう私もプロレスラーのオメガ選手のTシャツだけど。

 

私がこの服を着ているのはちゃんと意味がある。

実は集合する際に目印として各々好きなものを身につけてくるようにと決まったのだ。言ってしまえばオタクなのだ。

 

確か…私がプ女子で、あとは(ゲーム)、(ミリタリー)、(特撮)、(コスプレ)が来るらしいが。

 

目の前の子が該当するとしたらゲームかコスプレだよね?

 

でもあの子が?

 

まあ、声掛けてみるか

 

「すいません」

 

「ひゃい!」

 

「あの〜」

 

「まさかとは思いますが…フィル?」

 

「えっ、何で知ってるんですか?」



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4話

「やっぱりね。その帽子で分かったよ。」

まだ目をパチクリとさせたフィルがこちらを不思議そうに見ている。どうした?ああ!そうか!

 

「ああ!ごめんごめん、私がウェイブなんだよ。」

 

「そうなんですね。一方的に名前知られてたから怖かったです。」

 

「いやーごめんごめん。」

 

「じゃあ自己紹介は皆が来てからね。」

 

「やっほー!待たせたな!つぐ!」

するとさきほどの店員さんが裏から戻って来た。

 

「あ!映見ちゃん!いらっしゃい。あれ?あおちゃんもいらっしゃい。」

 

するとニコニコした感じで私の前まで来て「それってNJプロレスのTシャツとマジカル☆レイナの帽子だよね?と、いうことはあなたがウェイブで、あおちゃんがフィルだったんだね。」

 

何故私達がわかったんだと聞こうとしたが納得した。腰にマスクドライダーのベルトを巻いていた。たまに弟が見てるから私もわかる。確実にこの子がロトだ。

 

「いや〜ありがとうね。私の言葉を代弁してくれて。」

 

「まあ、メンバーが困ってるのを助けるのもリーダーの役目だからね。」

 

「じゃあ、このまま待ってよ。」とストンと私の向かいの席に座った。

 

そこから少しおしゃべりをしているとガチャっと店の扉が開き日比谷と綺麗な女の人が入ってきた。

 

思わず見とれてしまうような肩甲骨まで伸ばした黒髪、そして整った顔。上着として着ているジャケットが奇抜だった。色んなゲームのエンブレムがジャケット中に貼られた奇抜な服だ。

 

そして日比谷はイメージ通りスポーティな服だった。しかし意外なのは日傘を差していたことだ。そして傘を閉じると柄の部分が銃になっていた。

 

恐らくこの二人がリサとレリーだな。

 

すると二人は私たちのテーブルまで来て「栄光は!」とリサが言う。

 

私たちは条件反射で「我らにあり!」と返す。これはリサが提案した気合いを入れる円陣みたいなようなものだ。

 

改めて思うが、どうやら間違いなくこの五人がアメイジング5で間違いないようだ。

 

「さて…集まったところで…」と言うと皆がこちらを見る。

 

「注文取る?」と言うと四人はコントの如く転けた。

 

「もうリーダー。」とリサが口を尖らせて言う。

 

「ごめんごめん。さっきからさ、皆待ってて水5杯しか飲んでないからさ。」

 

「じゃあ、私も!すいません!」とレリーが手をあげる。

 

すると先程から私を忍者と勘違いしたままの店員さんが来たため注文を言う。

 

しかし店員さんはまた去り際に「またお願いしますね、忍者さん」と私にウィンクして去っていった。

 

そのことについてリサに聞かれたが適当に言っておいた。

 

 



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5話

皆の注文した飲み物が届いた所でようやく自己紹介へと移る。

 

「じゃあ、ここはリーダーである私から始めるね。私はウェイブこと永田美波。花女の一年で今は帰宅部やってるんだけど中学までは総合格闘技やってたの。多分今でも普通の男子相手だったら3人までなら素手で倒せるかな。」

 

「総合格闘技ですか。あのufcの…」とリサが聞いてくる。

 

「うん、そうだよ。それにしてもよく知ってるね。」

 

「まあ、父がよく見てましたので。」

 

「次は私ですね。私はリサこと平河響。花女一年でパソコン部です。私がよく着ているこのジャケットはある意味私のユニフォームとかいうか勝負服ですね。」

 

「へ〜リサって本名じゃないんだ!」とレリーが言う。

 

「ええ、響きは英語でリサウンドって言うからリサよ。」

 

「あとこの写真って響?」とロトがスマホをテーブルの真ん中に置いた。

 

そこには今響が着ているジャケットを着て顔に白色のベネチアンマスクを付けた女性が映っていた。

 

私でも知ってる。これはプロゲーマーLisaだ。14歳の頃にデビューして数々の賞を取ってきたため神童とかホープとか言われてる女性だ。まさかこれが響なのか?

 

「ええ、私よ。」あ、隠さないんだ。

 

「私は別に隠してないし、聞かれたら答えるわ。私が話してもいいと思った人ならね。」

 

「じゃあ次は私ね。私はレリーこと日比谷爽。花女。帰宅部よ。よくmutubeでエアガン紹介とFPSやTPSのシューティングゲームの実況もしてるよ!」

 

「いわゆるmutuberってやつですか?」とフィルが聞く。

 

「うん。まぁ、まだ登録者数とかは始めたばかりで全然いないけどね。」

 

「いつも何のゲームやってるんですか?」と響が聞く。

 

「C○Dや○FとかPU○Gかな。」

 

 

「いいセンスですね。」と笑い合う。

 

「じゃあ、次は私だね。私はロトこと岩本映見。羽女一年で写真部に入ってるよ!趣味は写真を撮る事かな?後は私の家はでてすぐの岩本写真館だよーよろしく!」

 

「写真…ああ、だからあんなに私の写りが良かったのですね。」と響が聞く

 

「うん、私たまにコミケのカメコとかやってるからね。そこで横のフィルちゃんとあったんだよねー ね?フィルちゃん?」

 

「うん、あの時はびっくりしたよ…目線お願いしますって言われて見たら映見ちゃんだったんだもん。」

 

「じゃあ、最後だね。私はフィルこと神田碧。羽女一年で演劇部の裏方で衣装作ってます。趣味はコスプレ…かな。私の家はここを出てすぐの神田呉服店です。」

 

「コスプレ?で、その…マジカル☆レイナが好きなの?」

 

「すっごいんだよ!あおちゃんは!ほら!これとか!」とスマホを見せてくる。

 

「え、これが…碧…」

私、響、爽は驚く。そりゃそうだ。画面の中の女の子はピンクと白の服を着て可愛いポーズを決めた女の子が映っていたからだ。

 

「もう〜恥ずかしいからやめて…」と碧が顔を赤くして俯く。

 

「あら?これ…2017年のピコピコ超会議よね?いたの?」と響が聞く。

 

「はい、いました。」

 

「やっぱり…それにこれ新作ゲームに出てくるナビキャラのミレイ・ユニオンよね?確か私そのゲームのイベントに出てたから…ステージで話したよね?」

 

碧はコクリと頷く。

 

「やっぱりね、あまりにも可愛いし完成度が高かったからイベント写真以外に撮ってもらおうとしたら、いなくなってたからさ。」

 

「だって…恥ずかしかったから…」

 

「ねえ、ところでどうする?こっから。面白い事したいな〜」と爽が言う。

 

「でも私達がする事と言ったら…」と碧が言う。

 

「ゲームよね。それで次のイベントなんだけどねー」と話をしていると女子が二人入ってきた。



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6話

「それでね、りんりん!今回のイベントなんだけどね!」

 

「そうだね。今回魔竜バルボロス討伐の他にキラポン大量発生だもんね。」

 

うん?NFOの話か。私は声の方を見る。一人はゴスロリというか…何だろ?分かんない服装の元気な女の子とおとなし目の…どっかのお嬢様みたいな静かな女の子の一見不釣り合いなコンビか。

 

「まあ、それでね、バルボロスをどう叩くかなんだけどね」と爽が言う。

 

「まあ、イベント自体はまだ始まってないから分からないけど、いつもどおりのフォーメーションでいいんじゃない?」と響が提案する。

 

「2–1–2だよね。うん!分かった!」と話していると

 

「あの〜すいません。」と話しかけられる。やばっ!騒ぎすぎたか?

 

「皆さんもNFOやってるんですか?」とさっきの元気な方に声をかけられる。

 

「ええ、やってますが。失礼ですがあなたは?」と響が聞く。

 

「ふっふっふっ、よくぞ聞いてくれた!私は深淵の魔界より出でし魔界の使者、あこ!」とポーズを決めながら自己紹介をした。

 

私たちはあっけに取られるが「で?お名前は?」と何事もなかったかのように響が聞き返す。

 

「そうか。我が名が聞き取れなかったか。私は深淵の魔界より出でし魔界の使者!あこ!」

 

「ふ〜ん、で?お名前は?苗字込みで。」とまた響が聞く。

 

「だから私は…深淵のm…」

 

3分後

 

「宇田川あこです。」

あ〜あ、大人げねぇwあれからあこちゃんが厨二病真っ盛りな自己紹介をするたびに何度も名前を聞き返すという流れが続き、最終的にあこちゃんが折れた。心が。

 

あれからあこちゃんは30回も同じセリフをくりかえしたのだ。これは後で聞いたのだが初対面でこっちが全く名前が分からないのにちゃんと名前を言わないやつは腹たつらしい。

 

因みにサイン書く時の宛名やイベントで共演する同業者が使うニックネームは構わないらしい。

 

「あの…えっと…白金燐子です。」とオドオドしながらもう一人の子が挨拶する。ありゃあ、これ絶対響のせいだ。

 

「それでどうしたの?」と碧が聞く。

 

「実は…」どうやらバルボロスに挑みたいが前情報が正しければレベルが足りない。だから協力を申し込みたいらしいのだ。

 

「ねえねえ、それっていr…ムグッ!」と依頼と言いそうになった爽を私が急いで止めた。

 

「なんで邪魔すんの〜」

 

「私達は正体を隠して活動してんのよ?今ここで依頼の話なんかしたらバレちゃうじゃない。」

 

「あっ!そっか!」

 

「本当にこの子は…」

 

「ところで響さんは妹さんはいらっしゃるんですか?」と燐子が聞く。

 

「いないわ。それがどうしたの?」

 

「いえ…雰囲気が私が入ってるバンドのメンバーに似てて…」

 

「私に?ふ〜ん。」

 

「じゃあ明日は休みだから…明日の10時にゲーム内に集まりましょうか。」

 

「それではよろしくお願いします。」とあこちゃんと燐子さんは帰って行った。

 

「あの〜」と碧がおずおずと手をあげる。

 

「どうしたの?あおちゃん。」と映見が聞く。

 

「私達ってバレないようにするのならジョブは何にしたらいいですか?」

 

「あっ…」見事に全員がハモった。

 

そうじゃん!そのままで行ったらバレるじゃん!何で気がつかなかったんだ!

 

「じゃあ私はナイトで行くよ。」

 

「じゃあ私はアサシン!」

 

「じゃあ私はイェーガーで行くよ。」

 

「じゃあ私は灰魔導師!」

 

「じゃあ…ビーストテイマー!」

 

「各自明日までに操作に慣れておくように!解散!」と私の号令で急いで帰り各自いつもとは使い勝手が違うジョブに苦労した。



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7話

そして次の日

 

「いや〜お待たせ!」と私がログインすると私が一番最後だった。

 

「あ!ウェイブさんおはようございます。」と聖堕天使あこ姫ことあこちゃんが

 

「おはようございます☀️ウェイブさん(・ω・)ノ」とRinRinこと燐子さんが挨拶をしてきた。

 

なるほどな。あこちゃんがネクロマンサー、燐子さんがウィザードか。

 

昨日私達は各自と言ったけどやっぱり緊急招集が響からかかり集まった。

 

さて今回は私がナイト、響がアサシン、爽がイェーガー、映見が灰魔導師、碧がビーストテイマーという布陣だ。

 

フォーメーションは結局2-3となった。私と響が前衛、爽、映見、碧が後衛だ。

 

「さて…訓練ですが…何するんです?」と響があこちゃんと燐子さんに聞く。

 

「えっと〜今日は〜」

 

「まず各自のレベル上げと武器の見定め、あとはあと練習として龍の谷へ行きましょう。あそこならピンからキリまで龍がいますし、今回のイベの場所です。地形を把握しつつレベルを上げることができる!それ以外ないでしょう!」と燐子さんが答えた。

 

なんだ今のマシンガントークは。本当に燐子さんか?

 

「なんだ〜ちゃんと喋れるんじゃないですか〜」と爽が笑う。

 

「はい、ゲーム内では相手の顔を見ずに喋ることが出来るからですよ?(・ω・)ノ」

 

「なるほど。確かにそういう方はたくさんいますね。私も色々なゲームのオフ会に行ったことがありますが、意外といるものですよ。」と響が答える。

 

「じゃあそろそろ行く?」と私が言うと皆賛成したため龍の谷へ向かった。

 

「ここですね。」

 

「早速入りましょう!」

 

そして歩きながらまた話をする。

「うちはネット弁慶と逆ネット弁慶がいるんだよね。」と笑いながら映美と碧に指を指す。

 

「えへへ」

 

「えっ…」

 

「ほらね?」

 

「ところで皆さんっていつもこのパーティで戦ってるんですか?」

 

「ええ、そうですよ。」

 

「と、しゃべっている間にエネミーです!」と響がナイフを二つ構える。

 

皆武器を構える。

 

私は片手剣、響は双剣、爽は弓、映美は杖、碧も杖を構える。

 

あこちゃんの方を見るとあこちゃんは素手で、燐子さんは杖を構えている。

 

「一撃で決めちゃいます!ギガンティック・メテオ!」シーン

 

「えっと…それはウィザードの魔法ですから(^^;;」と燐子さんに苦笑いされる。

 

いつもの癖が…出たか…

 

やばいな…気をつけないとね。

 

「じゃあ私が!」と燐子さんがギガンティック・メテオを唱えドラゴンを倒した。

 

その後は、どんどん二人の圧倒的な火力そ私達のスペックは下がったが歴戦の戦士を彷彿とさせるチームワークを前に敵はバッタバッタと倒れていき、気づけばログインしてから二時間経っていた。



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8話

「今日は楽しかったです!またお願いします!」と興奮気味にあこちゃんはログアウトしていった。

 

「あれ?燐子さんは帰らないんですか?」

 

「私はまだ…それに確かめたい事があります。」

 

「皆さんは…アメイジング5ですか?」

 

え…バレた…

 

「何を言っているかさっぱりなのですが。」と響が言う。

 

「いや、私の推理が外れてなければ合ってます。まずロトさん。」

 

「私?」

 

「先ほどのドラゴンにギガンティック・メテオを撃とうとしましたが、あれはウィザードにしか使えない呪文です。それを使おうとしたと言うことはいつもはウィザードを使ってるはずです。」

 

「次にレリーさんは弓を使っていましたが、ボウガンでもないのに前衛、中衛、後衛の全てに対応していました。まずそんな自殺行為をする方は聞いたことありません。」

 

そこから次々と奇妙な点を指摘していき、何も言い返せなくなった。この子…詳しすぎる。やりこんでるだと…

 

「以上の点から私はあなた達がアメイジング5だと推測しました。」

 

「仕方ないわね。そうよ。私たちがアメイジング5よ。」

 

「やっぱり!ファンなんです!」と燐子さんは答えた。

 

「はい、いつか私もアメイジング5のメンバーになりたい!と思って頑張ってたんです!」

 

「まあ、メンバー入りは無理ですね。」と響がバッサリと斬り捨てる。

 

「で、ですよね…」

 

「しかし…サポートメンバーならいいですよ。」

 

「やった!」

 

「でもいいんですか?私たちたまにネット番組に出演してますよ?」

 

「はい!声加工してもらえるなら…」

 

「まあ、そのくらいなら。」

 

「これは、あくまでも口止めですから。」

 

………

 

「それじゃ今日はおつかれ!」と皆ログアウトしていった。

 

「バンドか。」私は一人呟く。

 

やってみたいな〜

 

あこちゃんと燐子さんは同じRoseliaに所属していると聞いた。

 

Roselia。私も名前だけなら聞いたことがある。5人組のガールズバンドだ。

 

一度美咲を見るためにCircleに足を運んだ事がある。その時に美咲がいるハロハピの後に演奏していたが、本当に現役女子高生が演奏してるのかってくらい上手かった。

 

楽器なんか学校の授業でやった鍵盤ハーモニカとリコーダーとアコギくらいしかやったことはない。

 

だが、そんな私でも分かる。彼女達は凄まじく上手い。

 

今度一応だけどみんなに話してみるか。

 

 

次の日

 

私はお昼にお弁当を食べながら美咲に話しかけていた。

 

「ねえ、美咲。」

 

「どうしたの?美波。」

 

「バンドってどうやってやるの?」



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9話

「え?」

美咲の箸が止まり、こちらを見る。

 

「美波、バンド組むの?」

 

「いや、この前Roseliaの二人と遊んだんだけどバンドの話聞いてたらすっごく楽しそうでね?」

 

「美咲のところはどうやったの?」

 

「私は…こころに誘われて…かな?」

 

「弦巻さんね。あの子ならやりかねないや。」

 

「とりあえず誘ってみるよ。」

 

「目星はついてるの?」

 

「うん。4人ほど。」

 

「じゃあ、大丈夫じゃない?」

 

 

 

NFO内チャット

 

ウェイブ(美波)「皆に聞きたいことがあるんだけど。」

 

リサ(響)「みんな隣にいるんだから画面を通さなくても良いのでは?」

 

ウェイブ「そりゃそうなんだけどね。」

 

ロト(映美)「えっと…どうしたんですか?」

 

レリー(爽)「私も聞きたい!」

 

フィル(碧)「私も気になる。」

 

ウェイブ「みんなさ、ガールズバンドって知ってる?」

 

レリー「ガールズバンド?」

 

ウェイブ「うん、最近私も知ったんだけど、花女や羽女の高校生がよく組んでるって。」

 

レリー「ああ!こころんや日菜さんがやってるやつか!」

 

フィル「確かに私も蘭ちゃんや薫さんや麻弥さんとかがやってるのを聞いた事ある。」

 

ロト「確かに私も聞いたことある!」

 

リサ「私も聞いたことあるわ。」

 

ウェイブ「あれ?知らなかったの私だけ?まあ!いいや!」

 

ウェイブ「単刀直入に言うね。」

 

ウェイブ「私この5人でバンド組みたい!」

 

レリー(爽)「いいよー」

 

ウェイブ(美波)「え!いいの!」

 

リサ(響)「私もやってみたいです。」

 

ロト(映美)「うん!面白そう!」

 

フィル(碧)「私もやりたい!」

 

ウェイブ(美波)「みんな、ありがとう!早速なんだけど楽器何したい?」

 

リサ(響)「私ギターがいいです。」

 

レリー(爽)「じゃあベース!」

 

ロト(映美)「昔からピアノしてたからキーボード!」

 

フィル(碧)「じゃあドラムやろうかな。麻弥さんに教えてもらおっと!」

 

ウェイブ(美波)「あれ?みんなボーカルいいの?じゃあ私がやろっと。」

 

ウェイブ(美波)「じゃあ諸々はまた今度ってことで…じゃあ解散。」

 

お腹すいたな。パンでも買って帰ろうかなーと思ってると微かに女性の声がした。

 

ふと不思議に思い、声のした方を見ると路地裏だった。不審に思い中に入っていくと女性3人がニヤニヤ笑った男二人に言い寄られていた。

 

とっさに隠れてスマホを取り出す。警察に電話しようとすると聞いたことのある声がした。

 

花音「や、やめてください!」

 

え!?花音さん!?

 

花音さんの他にピンク色の髪のどっかで見たことある人とピンクの薄い版?みたいな子か。

 

ひまり「だーかーらー、今からバイトがあるんです!」

 

男1「いいじゃんかよ。バイトなんてフケて俺たちと遊ぼうぜ〜」

 

男2「いいとこ連れてってやるぜ?」

 

彩「お願いですから、もう諦めてください。」



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10話

男1「うるせえ!」と掴まれた腕を振りほどこうと振った手が女性がかけていたサングラスにぶつかり、サングラスが吹き飛ばされた。

 

彩「きゃあ!」と衝撃でその場に尻餅をつく。

 

男2「おい!相手は女だぞ。大丈夫か?ってお前パスパレの丸山彩じゃねえか!?」

 

男2「ヘッヘッヘ!アイドルと遊べるとなりゃ、ますますお前らを帰せなくなったぜ。」

 

へー、あの子アイドルなんだ。アイドルでもバイトってするんだな。

 

男1「おらっ!いいから来い!」と彩と呼ばれた女の子が無理やり腕を掴まれ連れて行かれそうになったところでようやく私は行動を起こした。

 

美波「はあああああぁ!!」と言いながら走る。

 

ようやくこちらに走ってきてる女に気づき、構えるが、そんなもんは関係ない!

 

私は跳び、近くの男の側頭部に回し蹴りを叩き込む。

 

男は衝撃で頭からゴミ置場に突っ込んだ。

 

花音「え!?美波ちゃん?」

 

美波「どうも、花音さん!」

 

男2「貴様!!女だからって容赦しねえぞ!」と右ストレートが飛んでくる。この軌道は顔か。遅い!このくらい止められるが、相手は男だ。腕が痺れる可能性もある。

 

だから私は落ちていた鉄パイプを足で蹴り上げ、手に持ち男の拳を防いだ。

 

男2「痛ってえ!!」と拳を抑えてうずくまったところに眉間に裏拳を入れ沈めた。

 

美波「今のうちです!」と3人を連れて大通りに出た。

 

路地裏の方を見ると男たちは追ってきていなかった。

 

彩&ひまり「あの、ありがとうございました!」とペコッと頭を下げてきた。

 

花音「ありがとうね。美波ちゃん。」

 

ひまり「あれ?花音さん知り合いなんですか?」

 

花音「うん、花女の一年の永田美波ちゃんだよ。」

 

美波「先程花音さんから紹介がありました。永田美波です。よろしくお願いします。」

 

彩「年下だったんだ‥私は花女二年の丸山彩って言うんだ。ええと…パスパレって知ってる?」

 

美波「まんまるお山に彩りを。ふわふわピンク担当で合ってますか?」

 

彩「え?知ってるの?私の事。」

 

美波「ええ、弟がパスパレのファンですので。あ!差し支えなければサイン頂けませんか?」

 

彩「うん!いいよ!」

 

美波「ありがとうございます。弟が喜びます。」

 

ひまり「私は羽女一年の上原ひまり!それにしてもかっこよかったよ!格闘技習ってるの?」

 

美波「いえ、昔総合格闘技習ってたんで。」

 

花音「もう着いたよ。」と言ったので見るとハンバーガー屋だった。

 

ああ!ここか!

 

ひまり「今日はありがとうね!そうだ!はいこれ。」

 

ひまり「クーポン券あげる。ちょっと貰いすぎちゃったんだよね。」

 

美波「ありがとうございます。」

 

ひまり「もう!同い年なんだから敬語やめてよー」

 

美波「わかった。ありがとう。」

 

 



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11話

美波「私バンド組みたい!」

 

美波母「絶対ダメよ。」

 

私は家に帰り、ママにそう伝えた。しかしママから返ってきた答えは反対だった。

 

美波「どうして?」

 

美波母「ダメな物はダメよ!」

 

美波「なんでよ!なんでやっちゃいけないのよ!」

 

美波母「いうことを聞きなさい!」

 

美波「ママなんか知らない!」と私は自分の部屋に走り、ベッドに突っ伏した。

 

そして泣いた。

 

なんでよ…なんで…いつもなら応援してくれるのに…

 

その日私はそのまま眠ってしまった。

 

次の日

 

学校が休みだった為、私が起きたのは10時だった。

 

私は頭を掻きながらリビングに降りると、誰もいなかった。

 

とりあえず水を飲み、ソファーに座って考える。

 

どうしてママは反対したんだろうか。

 

成績?いやいや自分は真ん中の方だ。

 

素行?うーん、それも多分違うな。

 

なんでだろう。

 

そ考えているとスマホが鳴ったため、出る。

 

響「今日遊ぼうよ。」

 

響だった。

 

いいよと返事を打ち、外に出た。

 

美波「おまたせ。」

 

響「いや?私も今来たところ。」

 

簡単な会話をし、二人で歩く。

 

響「ねえ。」

 

美波「何?」

 

響「なんかあったの?」

 

美波「うん、実はね?」

 

 

響「そっか。お母さんが反対をねー」

 

美波「うん。今までよっぽどの事がない限り、私のやる事に反対しなかったのに。」

 

響「まあ、そればっかりは介入できないや。ごめんね。」

 

美波「え?いやいや、話聞いてくれただけでも助かったよ。」

 

響「そうだ!演奏するとしたらやりたい曲があるんだ!この2曲なんだけどね?」

 

一つは海外のロックミュージシャンの曲だ。どうやら右利きのギターを左で持ってる姿がかっこよく見えたらしい。

 

響「これは本命だよ。」

 

そう言われ、イヤホンを耳に入れ、聴いてみた。

 

なんだろう、言葉にはできないけど、カッコいい。

 

美波「私この人の演奏聴きたい!」

 

響「その人ね?15年前に死んじゃったんだよね。交通事故で。」

 

美波「そう、残念。なんてバンドのなんて名前の人?」

 

響「サンダーボルツのケントって人だよ。」

 

と、言いながら写真を見せてきた。

 

あれ?この人‥見たことある‥どこでだろう?

 

響「はい、もしもし。お父さん?どうしたの?え?うん、わかった。」

 

響「ごめんね。お父さんに呼ばれちゃった。じゃあね。」と帰っていった。

 

だから私は自分の中の記憶にいるこの男が何者なのかを確かめるべく急いで家に帰った。

 

家に着き、パソコンを立ち上げる。

 

検索は勿論、サンダーボルツのケントだ。

 

調べた結果、分かった事を整理すると、

 

グループのギターボーカルで、作詞担当。

 

事故にあった当時、彼には妊娠した妻と1歳になる娘がいた。ということだ。

 

更にないかと調べると妻の写真は出てこなかったが、娘の写真は出てきた。

 

私だった。



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12話

サンダーボルツのケントが私のお父さん‥なんで‥

 

私は‥お父さんの顔を知らない‥

 

そう思った瞬間、忘れていたのかどうかも分からない記憶が流れてきた。

 

「ほら〜美波〜パパだぞ〜」

 

「美波は将来立派な子に育つさ!なんたって俺とお前の子だからな!」

 

「お!美波!パパのギターが好きか!そうかそうか。」

 

「また上司に怒られちまったよ‥お!美波!俺を慰めてくれるのか?」

 

 

 

「お父さん‥」

 

その夜、晩御飯が終わって私はお母さんに大事な話があると行って椅子に座ってもらった。

 

「どうしたの?美波?あ!もしかしてバンドの話?悪いけどお母さんはバンド活動なんか認めないよ。バンドなんて大嫌いさ。」

 

そう言ったお母さんの前にコピーした紙を見せた。

 

「これは‥美波、これどうしたの?」

 

「今日偶然友達からこのバンドの話を聞いて調べた。お母さん!これどういうこと?」

 

「知ってしまったのね。そうよ、このケントは永田健人。あなたのお父さんよ。」

 

「教えるわ。全て。翔太も呼んでらっしゃい。」

 

私は翔太を呼びに行き、翔太を私の隣に座らせた。

 

「元々私はサンダーボルツのファンで売れない頃から応援し続けてたの。夢に向かって頑張る彼をすぐ近くで応援したくて結婚したわ。

彼は私と子供達の為に働きながら夢を追い続けた。でもね?彼はある日、バンドを捨てて私達の為に頑張る。そう言ったの。」

 

「私は嬉しかった。でもそれと同時にもう彼の演奏は聞けないんだって‥そう思ったの。」

 

「そして解散を告げる為にいつものライブハウスに行ったの。その帰りだったわ。彼は車に轢かれたの、飛び出した子供を助けようとして。毎日泣いたわ。毎日毎日。彼に会いたくて死のうとも考えた。でも死ねなかった。美波とお腹の中にいた翔太の事を考えたら、死ねなかった。

だって私しかいないんだもの。」

 

「あなたにバンドをして欲しくなかったのはね?バンドをしてまた私の目の前から大切な人がいなくなるのが怖いからなのよ。」と言い泣き出した。

 

そうだったのか。だからお母さんは‥

 

「私は‥私は!絶対にいなくならない!お母さんの前からも翔太の前からも絶対にいなくならない!」

 

「だから‥だから‥」と私も泣いた。

 

「俺もだ。俺だって母さんと姉ちゃんの前からいなくならねえ!約束するよ!」

 

「二人共ありがとうね。最後にもう一度聞くわ。あなたはバンドをやる。その決心は固いのね?」

 

「うん!やる!」

 

「分かったわ。少し待ってなさい。」と席を立ち、二階に上がっていった。

 

そして手にギターケースを持って降りてきた。

 

「開けてみなさい。」

 

そう促され、開けると中には埃を被ってはいるが、波のような模様が入った真っ赤なギターが入っていた。

 

「これって‥」

 

「ええ、健人さんからのプレゼントよ。将来自分みたいに美波がギター始めたら渡すつもりだったのよ。」

 

 



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13話

そして次の日、私は1人喫茶店に向かっていた。

 

ある人達と待ち合わせをしているからだ。

 

店に入ると、もう2人座っていた。

 

美波「すいません、遅れました。」

 

梶田「いや、そんなに待ってないよ。それより俺たちの事覚えてる?」

 

美波「‥すいません。」

 

梶田「まあ、そりゃそうだよね。俺たちが最後に会ったの君が1歳の時だもんな。」と眼鏡をかけた男性が笑う。

 

男達の面子は向かいの男が眼鏡をかけていて、その男の隣がキャップを被っている。

 

周りから見たら異様な光景だろう。

 

男2人が座る席に女子高校生が1人。

 

誰だって異様に思う。私だってそう思う。

 

梶田「じゃあ、自己紹介しておくね。僕がサンダーボルツのギターの梶田誠。隣がベースの宍戸悠人。」

 

梶田「君のお母さんから聞いたよ。バンドやるんだって?しかもボーカル&リードギター。健人を思い出すよ。」

 

宍戸「おい、今日はそんな話しにきたんじゃないだろ?」

 

梶田さんが宍戸さんに肘で突かれる。

 

梶田「ああ、そうだったな。これを見てくれるかい?」

 

そう言ってカバンからクリアファイルを出した。

 

サンダーボルツと大きく文字とロゴが描かれたクリアファイルだ。

 

梶田「中身は曲の楽譜だ。未発表のね。」

 

宍戸「サンダーボルツはあの日に解散した。しかし10年後にまた一日だけでも復活しようって話になってたんだ。」

 

梶田「その時にやろうと思って君のお父さんと僕が作った曲だ。もうそれは実現しないけどね。」

 

梶田「頼みがある。この曲をもらってくれないか。」

 

美波「え?」

 

いきなりの話に美波は戸惑う。

 

いきなりサンダーボルツのメンバーに呼び出されたと思えば、パパと梶田さんが作った曲を使ってくれと言われた。

 

美波「でも‥私‥」

 

梶田「たしかに君はギターを弾くことができないだろう。だけどそれなら僕が教える。だからお願いだ!」と頭を下げられる。

 

隣の宍戸さんにもだ。

 

美波「‥分かりました。」

 

そして店を出て二人と別れる。

 

どうしよっかな〜

 

せっかくだからギターのピックとか見にいこうかな。

 

そして江戸川楽器店に入り、ピックを見る。

 

ふむ。さっぱり分からない。

 

全部だいたい形一緒だしな〜

 

やっぱ、これかな!赤いし。

 

そしてレジに行こうとすると曲がり角から出てきた人にぶつかった。

 

私は大丈夫だったが、向こうは転んでしまった。

 

麻弥「イタタ‥」

 

美波「大丈夫ですか?」

 

私は、目の前の自分にぶつかって転んでしまった人に手を差し出す。

 

麻弥「いや〜すいません。自分が余所見して歩いてて。」

 

その人は手を掴み立ち上がりながら言う。

 

美波「いえ、私もすいません。」

 

美波「それでは。」

 

あの人、バチもってたな。バンドやってる方なのかな。

 

会計して店の外に出ると、電話がかかってきた。

 

 



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14話

響から指定された場所へ行くとそこはライブハウスだった。

 

響「おーい!こっちこっち!」

 

響が手を振る。

 

私はそちらに歩いて行ってライブハウス前にあるカフェの椅子に座る。

 

美波「どうしたの?いきなり呼び出して。」

 

映美「それは私が説明するね?私たちバンド組むって言ったじゃん?だから本物を見よう!って感じかな。」

 

美波「だから全員いるのね。うん!私も見たいと思ってた。」

 

美波「チケット買って来なきゃ。」

 

碧「私がもう買ってるよ。」

 

はい!と私に手渡してくる。

 

爽「今日出るのはPoppin'PartyとRoseliaだね。あ!そろそろ行かなきゃ!」

 

と、五人で入って行った。

 

中はまあよく見るライブハウスって感じ。名前は【CiRCLE】。あとすごくざわざわしてる。

 

あ!始まるみたい!

 

最初はPoppin'Party‥略してポピパからだった。ボーカルの元気な声から始まり、全体的に明るめな曲だった。

 

続いてRoselia。彼女達の演奏ははっきり言って言葉にするのは難しかった。クールなボーカルの静かな中にも見える熱意が見える演奏だった。

 

す、すごい‥

 

終演後

 

爽「すごかった!!ポピパヤバイ!」

 

碧「うん!すごかった!」

 

響「市ヶ谷さん‥イメージ変わったな!可愛かった!」

 

映美「Roselia‥覚えとかなきゃ!」

 

私達は最初に集合したカフェで語り合った。

 

やらなきゃ!やってやる!

 

それから私達は猛練習した。まずは元サンダーボルツの人達に来てもらい練習した。

 

響はジミヘンスタイルってやつを練習してて苦労してた。

 

そっからはCiRCLEで練習した。

 

そして2ヶ月後、、、

 

 

美波「今日まで私達は頑張ってきたわ。」

 

響「ええ!バシッと決めてやりましょう!」

 

爽「楽しもう!」

 

映美「私達なら‥いける!」

 

碧「よし!やってやる!」

 

私達はCiRCLEのドアを開ける。

 

そこで、まりなさんが迎えてくれた。

 

まりな「来たわね。さてみんな!今日がデビューだけど、どう?調子は?」

 

5人「大丈夫です!」

 

まりな「それを聞けて安心したわ。じゃあ控え室まで案内するわ。」

 

今日のタイムスケジュールは確認している。

 

aftergrowさんの後で、Pastel Palettesさんの前。私達新入りが1番目じゃないのが不思議だけど。

 

どうやら控え室はみんな一緒らしい。

 

と、いうことは‥今日はRoseliaさんとPoppin'Partyさんがいないのか。

 

ガチャ!

 

美波「えーと!今日デビューするXです!ええと‥お分かりかと思いますが、バンド名はステージで明かそうと思うので今はXと名乗ってます。よろしくお願いします。」

そう言い、全員で頭を下げる。

 

?「え‥碧‥?」

 

よく知ってる声がして碧が頭をあげる。

 

碧「蘭ちゃん!?」

 

蘭ちゃん?ええと‥あの人は‥ああ!aftergrowの美竹蘭さんか。

 

美波「あれ?知り合いなの?」

 

碧「うん。うちのお店のお得意様。」

 

ひまり「あ!あの時のヒーローさん!」

 

あ!あの時の絡まれてた人!

 

そこから続々とメンバーの知り合いが現れて会話をする。

 

私はミッシェル(美咲)と花音さんとひまりさんと。

 

響は青葉さんと。

 

爽は弦巻さんと。

 

映美は羽沢さんと。

 

碧は美竹さんと瀬田さんと宇田川さんと北沢さんと話している。

 

そして私達はステージ袖で出番を待つ。

 

袖でaftergrowさんの演奏を聞くが、やっぱり年季の違いを思い知らされる。

 

そしてaftergrowさんの演奏が終わり、まりなさんが袖から出てくる。

 

まりな「はい!なんと今日デビューする5人組がいます!皆さんたのしんでください!」

 

と、言ってハケると同時にステージ上が暗くなる。

 

そして爽が一人出る。

 

人影が見え、スポットライトがつく。

 

そこに爽が一人立つ。

 

腰のホルスターからモデルガンのSAAを二丁抜く。

 

それをガンプレイでクルクルと回す。

 

観客からは歓声が上がり、拍手が起きる。

 

そしてライトが消え、その隙に私達はステージに立つ。それと同時にパンッ!パンッ!と発砲した。

 

そして演奏を始めた。

 

私が作詞、響が作曲した私達のデビュー曲。【Masquerade】

 

そしてそれに合わせて碧と映美が作った衣装、曲名に合わせて全員ベネチアンマスクをつけ、私は赤、響は黄緑、爽は黄、映美は水、碧はピンクのゴシック調のドレスだ。ドレスといっても丈は膝上だが。

 

ただ全員自分の個性は入っている。私は右が赤、左が青のマスクとブーツがレガースブーツで、響はLisaの時のジャケットの配色、爽は目の開いているところの形が銃弾で色は迷彩で腰に先ほどのホルスターがついている、映美はマスクドライダーのベルト風の形で、配色も一緒、碧は黒の背景に星を散りばめたデザインだ。

 

そして一曲目が終わり、自己紹介をする。

 

美波「皆さん!はじめまして!The amazingです!略すとアメジです!よろしくお願いします!」

 

 



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15話

私たちが演奏を終えて袖へ戻るとスタッフさん達が異様に慌ただしかった。

 

美波「どうしたんですか?」

 

美波の声にポニーテールの新人スタッフが足を止めて説明する。

 

どうやら次の出番のパステルパレットが仕事の関係でまだ到着していないということだった。

 

そこでさっき出てもらったアフターグロウにもう一度歌ってもらうか、その次のハロー!ハッピーワールドに歌ってもらうか決めている最中なのだという。

 

するとその新人スタッフに対して映美が提案をする。

 

映美「私達が歌いましょうか。」

 

新人スタッフ「え!本当ですか!とりあえず確認取って来ます!」と走っていった。

 

美波「ちょっと!映美!何勝手なことを‥」

 

映美「あるじゃん。もう一曲。」

 

美波「え!?それって‥!!!」

 

響「ええ、あれよ。」

 

碧「確か‥美波ちゃんのパパのだよね?」

 

爽「だよねー!すっごくカッコいいやつ!」

 

美波「うん。でも、まだ歌うべきじゃ‥」と私は顔を伏せる。

 

響「歌うべきだよ。」

 

その言葉に私は顔を上げる。

 

爽と映美と碧もうなづく。

 

美波「分かった。やろう!」

 

新人スタッフさんが、まりなさんを連れて帰ってきた。

 

まりな「本当にいいの?」

 

美波「はい!大丈夫です。とっておきのがあります。」

 

まりな「3分後にお願いね!」と新人スタッフさんを連れて走っていった。

 

響「あ!衣装どうしよう!」

 

そうなのだ。Masqueradeのベネチアンマスクとドレス姿なのだ。

 

この曲には合ってない。

 

碧「ふっふっふ!こういう時の為に持って来てるよ!今すぐ楽屋戻ろう!」

 

楽屋に戻るとスーツケースを開けて衣装を配り出した。

 

碧「とりあえず着て!」

 

急かされるままに着用する。

 

碧「ど、どう?」

 

美波「カッコいい!すごいよ!碧!」

 

碧「へ?」

 

響「すっごくカッコいい!」

 

爽「決まってるよ!普段着にしたいくらい!」

 

映美「さっすが碧!」

 

そうなのだ。碧が用意していた衣装は膝下の長さの黒いトレンチコートに黒いハット。黒い編み上げブーツ。しかもそのハットには私は赤、響は黄緑、爽は黄色、映美は水、碧はピンクの羽根が刺さってる。

ブーツには同色の紐になっていた。

 

碧「あとのアクセントは自分でなんとかして!あ!でもリメイク以外でね。」

 

そういうと爽はガンベルトを巻きだした。

 

するとコンコンとドアが叩かれ、まりなさんが顔を出す。

 

まりな「ジアメのみんな!そろそろ!」

 

5人「はい!」

 

舞台袖に着くと客席はザワザワしている。

 

よし!行こう!

 

もう一度爽にモデルガンを撃ってもらいステージに立つ。

 

美波「ええと‥皆さん!もうお気づきかと思いますが、パスパレさんは前の仕事の関係で遅れてます。なので急遽私達が一曲歌わせて頂ける事になりました。」

 

美波「今から歌う曲は私の大切な人達が残してくれた一曲でカバーさせていただきました。」

 

美波「聞いてください。リバイバル ライトニング」

 

響のギターと映美のキーボードから曲が始まり徐々に音を合流させていく。

 

その頃、楽屋では‥

 

ひまり「すごいね!ジアメさん!デビューにしては上出来だよ!」

 

つぐみ「そうだね。蘭ちゃんはどう?」

 

蘭「まあ、いいんじゃない?でも何かに似てる‥」

 

巴「そりゃカバー曲なんだから似るのも普通だろ?」

 

モカ「いやいや、ともちん〜?このリバイバル ライトニングなんだけど、検索に出てこないよ〜?」

 

蘭「‥まさか!」とカバンから雑誌を取り出しペラペラとめくり出した。

 

蘭「やっぱり!ほら!」

 

そう言い雑誌を机に広げてみんなに見せる。

 

そこに書かれていた記事の内容はこうだ。

 

【サンダーボルツ!新メンバーを入れて今年復活か!?】

 

モカ「なにこれ?」

 

ひまり「サンダーボルツ?を知らないんだけど‥」

 

そのモカとひまりの言葉に蘭が驚いたような顔をした。

 

蘭「嘘でしょ!?サンダーボルツはね?インディーズバンドでSPACEでずっと活動してたんだけど、14年前に活動休止したの。でも復活はもう無いって言われてるの。」

 

巴「どうしてだ?」

 

蘭「活動休止を発表した帰りにボーカルが交通事故で亡くなったの。」

 

つぐみ「え‥うそ‥」

 

蘭「本当。それからも頑なにメンバーを入れずにいたの。」

 

ひまり「それで復活ってどういう事なの?」

 

蘭「活動休止前に発表したファイナル ライトニングの歌詞に(14年後に轟く)ってあるの。だからあれから14年後の今年に復活するんじゃって噂が流れてるの。」

 

巴「そういう事か。そのアンサーソングがジアメのリバイバル ライトニングってことか。」

 

蘭「だと思う。曲調が似てるのよ。まるで同じ人が書いたみたい。」



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16話

その後、演奏が終わった頃にようやくパスパレさん達は到着し、無事場つなぎに成功した。

 

私達は袖に引っ込み、楽屋へ戻る。

 

そこには美竹さんと‥羽沢さんが立っていた。

 

蘭「ちょっと聞きたいんだけど?」

 

美波「はい、なんでしょう?」

 

あらら、相変わらず鋭い目をしてるな。でもね?私はそんな目なんか昔から見てたから怖くないよ?

 

美竹さんはそのまま言葉を発さないため、私と無言の睨み合いになる。

 

見てられなかったのか、羽沢さんが代わりに喋る。

 

つぐみ「ごめんね?いきなり。あのね?さっき演奏聴いてたんですけど、皆さんの曲のリバイバル ライトニングが蘭ちゃんが、ええと‥サンダーボルツさんのファイナル ライトニングに似てるって言ってて‥」

 

ああ、そのことか。

 

美波「ええ、アンサーソングですよ。父が生前復活する為に遺した曲です。」

 

蘭「え!?父‥!?」

 

美波「ええ、私の名は永田美波。サンダーボルツ、ギターボーカルのケントこと‥永田健人の娘よ。」

 

つぐみ「やっぱり蘭ちゃんの言った通りだ‥」

 

蘭(湊さんと同じ‥湊さんのお父さんが残したLouderみたい‥)

 

蘭「聞きたいことはそれだけ。それじゃ。」

 

それだけ言うと聞きたいことが無くなったのか踵を返して歩いて行った。

 

つぐみ「あ!ちょっとまって!蘭ちゃん!えっと‥蘭ちゃんあんなだけど本当はいい子っていうか‥えへへ、また会いましょうね?」

 

そう言い、走って行った。

 

美波「ふふっ!」

 

私は思わず笑ってしまう。だってお父さんのバンドを知ってる人がいたからだ。

 

 

次の日

 

?「ねえ、あなたが‥永田さん?」

 

声をかけられた。ポピパの‥ああ、花園って人か。

 

美波「うん、そうだけど。」

 

たえ「サンダーボルツの?」

 

美波「ああ、それお父さんだね。」

 

たえ「‥‥‥」

 

美波「‥‥‥」

 

いや、喋れよ!何この沈黙!?

 

爽に助けを求めようと見るが、爽は爽で弦巻さんに捕まっていた。

 

こころ「ねえっ!昨日のあのクルクル〜からのバァンってやったの、とってもかっこよかったわ!」

 

爽「え!そう?えへへへへ。」

 

あららら‥ありゃ無理だわ。

 

しかし、天は私に味方してくれるようだ。

 

チャイムが鳴り、花園さんは帰って行った。

 

そして放課後になり、B組の響を迎えに行き、CIRCLEへ向かう。

 

まりな「あ!美波ちゃん、響ちゃん、爽ちゃん!映美ちゃんと碧ちゃんならもうスタジオ入ってるよ!」

 

美波「ありがとうございます。」

 

言われたスタジオに入ると、映美と碧は機材のセッティングをしているところだった。



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17話

響「楽しかったね。初ライブ。」

 

響がこちらに目を向けずに携帯ゲーム機を操作しながら言う。

 

美波「え!?どうしたの、これ!?」

 

よく見ると響のギターにはアレンジが加えられていた。

 

ギターのヘッドがPS4のコントローラーの形になっていてネックには、そこから伸びたコードが描かれていたからだ。

 

爽「そんなに驚く事?」

 

そう言いながら出したベースはアレンジどころかベースの形をしておらず、ベースの長いネックを使ってスナイパーライフルの形をしていた。

 

美波「楽器に二人の趣味が‥ガチだ。」

 

まさかと思いバッと後ろを見る。

 

映美「♩〜」

 

碧「‥‥」

 

よかった、普通の楽器だ。

 

まあ、この二つはスタジオのレンタル品だから改造は不可能だよね。

 

自分もギターのチューニングなど諸々の準備を終え、練習を開始する。

 

もちろん私達が披露した3曲の【Masquerade】とカバー曲の【Get over】と父の曲【リバイバル ライトニング】だ。

 

練習の合間に次に私達はどんな曲をやりたいかを話し合う。

 

結果、カバー曲をやってみたいということで、後日やってみたい曲を各自3曲ずつ持ち寄る事にし、今日の練習はお開きとなった。

 

ライブハウスを出て、カフェでアイスティーを注文し、空いてる席に座る。

 

やってみたい曲を探し、めぼしいものをリストアップし、アイスティーを飲み干したところでカップをさげ、ある場所に向かう。

 

そこは墓地だ。

 

美波は歩き、永田家の墓の前に着く。

 

美波「お父さん、私バンド始めたよ。信頼できる仲間にも出会った。あとね!お父さんが遺してくれた曲も披露したんだよ。本当に‥ありがとう。」

 

もちろん返事が返ってくることはないが、ひとしきり言いたい事を伝え、墓地を後にした。

 

美波「ただいま。」

 

美波母「おかえり、美波。」

 

美波「今日お父さんのお墓に行ってきたよ。」

 

美波母「ちゃんと伝えられたのね?よかったわ。」

 

 

美波「お母さん。」

 

急に真面目なトーンで母の名を呼ぶ美波。

 

その変わりように母は動きを止め、美波を見た。

 

美波「私‥絶対お母さんの前からいなくならない!」

 

美波母「ふふ、そうね。でもお嫁にはちゃんと行くのよ?」

 

美波「もー!分かってるよ!」

 

二人で笑いあい、美波は二階の自分の部屋に上がっていった。

 

部屋に入り、背負っていたギターケースからギターを出し、立てかける。

 

そのまま、仰向けにベットへ寝転ぶ。

 

思えば、慌ただしく色んな出来事が過ぎていったなぁと考える。

 

アメイジング5のメンバーとの初のオフ会、私からみんなをバンドに誘った事、母に反対されたけど結果許してもらった事、父の死の真相を知った事、初ライブを成功させたこと。

 

色々あったな、ふふっ

 

美波「さて!いっちょ頑張りますか!」

 

 

The amazing バンドストーリー第1章 完

 



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