TS賢者ハルの異世界放浪紀《改訂版》 (AJITAMA5)
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剣と魔法の世界ファウリア
第一話


どうも、万守誠也(あらがみ せいや)です。

初めましての方は初めまして。旧版を読んでくださった方々はお久しぶりです。

改訂版一話目と言うことで急ピッチで仕上げました。
出来るだけ週一投稿目指して頑張りたいと思います。

注意

前作との違いは以下の通りです。

イージーモードからハードモードに。
シリアスが若干増えます。
淫夢語録は汚いものは一切使いません。



 ───拝啓。親愛なるお父さん、お母さんへ。

 

 

 僕、神代(かみしろ)晴輝(はるき)は修学旅行の帰り、不幸にも飛行機事故に遭い死んでしまいました。

 

 親不孝者の息子でごめんなさい。育てて貰った恩も返さず死んでしまいました。

 

 二人や、仲の良い友人達は悲しんでくれているのでしょうか?

 

 僕がいなくなって不安にはなっていないでしょうか?

 

 後輩の女の子は―――後追いなどと考えて自殺していませんか?

 

 突然消えてしまった僕たちの身を案じてくれているのですか?

 

 案じてくれているのならば、その心配は及びません。僕は元気です。

 

 突然異世界と言う未知の環境に女の子になって放り出されたけれど、僕は何とかやっています。

 

 出会いにも、仲間にも恵まれて、賑やかに暮らしています。

 

 冒険で日々のお金を稼いでその日暮らしの危ない生活だけれど、目的のためなら苦にはなりませんでした。

 

 だから―――

 

 

 ―――………絶対に生きて帰るよ。お父さん。お母さん。

 

 

   ◇

 

 

 事の発端は20XX年の9月の中頃、日本ではまだ残暑に悩まされている頃、シンガポール修学旅行4日目の帰りの飛行機の中で起こった。

 

「いやぁ、楽しかった。な、ハル」と、僕に声を掛ける奴が居た。

 

 こいつの名前は村上(むらかみ)一樹(かずき)。僕の幼馴染みであり、腐れ縁の男。小さい頃に一樹から女の子みたいだと言われ、喧嘩して以来の親友だ。見た感じはかなり筋骨隆々(ゴリラ)の日本男児という感じ。

 

 ―――女の子みたいだという言葉で察した人もいたかと思うが、僕の見た目は世間一般の男性と比べると圧倒的に線が細く、身長も小さく、体重も軽く、肌は白磁のようにキメ細やかで真っ白で髪の毛は長く(切ろうとしたらお母さんから怒られそれっきり切っていない)枝毛は全くと言って良いほど無い。

 

 …ああ、なんか、自分で言っててすごく悲しくなってきた。って誰だ今美女と野獣コンビとか言った奴、怒らないから出てこい(激怒)

 

 話は戻るが「ハル」というのはカズ…一樹が勝手に僕に付けた渾名(あだな)だ。カズ曰く、僕には可愛い渾名の方が似合うらしい。まあ言った本人は後でシメたが。見た目少女にシメられるゴリラ…。

 

「ハルって言うな、カスキ。まあ楽しかったけどさ」

 

 僕はカズを睨み付けながらそう言う。効き目無いだろうけど。女の子にこれをやると絶対に「かわいい!」とかいって撫でてくるし。あ、撫でるのはドンとこいだよ?

 

「人のことを親の仇みたいに睨みながらカスって言うなよ、男の娘。結局楽しかったんじゃねえか」

 

 やはりカズはその睨みを飄々とした態度でかわす。もうちょっとデリカシーって物を覚えられないのかね。この男は(←とか言ってる自分も男)

 

「男の娘って言うなぁ…、これでも鍛えてるんだよぉ…」

 

 五年続けてもぷにぷにだけどさぁ…

 同じサッカー部の筈なのになぁ…

 

「心中お察しするよ。…それよりさ、昨日の事…ありがとな」

 

 いつも通りの会話をしていると、カズが話を変えてきた。

 

 …昨日の事、ああ、あれか。

 

「ああ、あれね。見てたよ、『ずっと俺の側に居てくれ!』…だっけ?」

 

「うぐっ…見てたのかよ趣味悪いな。…まあそうだ。おまえが居なかったら今頃俺はヘタレのままだったろうな」

 

「言えてるね。…それより、告白成功おめでとう。ミナをよろしく頼むよ。」

 

「ああ、頼まれた。絶対に幸せにする」

 

「それは結婚したときに言ってあげなよ。…まあどうせカズの事だからプロポーズまで僕を付き合わせるんだろうけど」

 

「い、いやぁ…それはない…と、思います」

 

「あはは、何だよその自信なさげな物言いは。もっと自信を持っていこうよ」

 

「き…気を付ける…出来るだけ」

 

「頑張ってね、村上一樹(ヘタレ野郎)くん」

 

「なんか今ルビ振りおかしくなかった!?」

 

 …ここまでの会話を聞いて察しのいい人なら気づいていると思う。

 

 ───こいつ、リア充です。

 

 ちなみに「ミナ」というのは黒沢(くろさわ)美奈(みな)という僕たちのもう一人の幼馴染みである。小さい頃はとても勝気な女の子でカズとは馬が会わなかったのか、いつも喧嘩をしていた。中学生ともなると落ち着いてきたのか暴力による喧嘩から口喧嘩に変わった。もちろん口喧嘩では女の子であるミナの方が圧倒していた。しかし内容が内容。殆ど痴話喧嘩のようなものでいつもクラス中から「夫婦」と囃し立てられていた。結果として、カズは否定するがまんざらでもなさそうに、ミナは顔を真っ赤に染め涙眼になっていた。

 

 ゴリラと喧嘩するってことはそのミナはアマゾネスなのかって?

 

 無い無い、ミナはかわいい女の子だよ。流れるような黒髪に整った顔立ち、身長は低め。胸はそこそこで括れはあるし腰も細い。つまりスレンダーな美人。

 

 ───しかしここまで行っていてそんな二人は、高校のほぼ中間地点の修学旅行になるまで付き合っていなかったのである。

 

 大体の原因がこのヘタレの糞チキン(村上一樹)にあるのは勘のいい人なら想像つくと思う。

 

 修学旅行前にこいつに頼られたとき、こいつはやれ突然の呼び出しに不快に思わないだろうかとか、やれ断られたらどうしようだとか、…まあ簡単に言えば、告白できない意気地無しのテンプレみたいになっていた。ヘタレなゴリr…あ、もういい?………はい。

 

 このままではミナの方が可哀想なので一発ぶん殴って協力した。

 

 結果は大成功で、見事二人は昨日ようやく付き合うことになった。

 

「全く…、僕が居なかったらどうなっていたことか」と言い窓から空を見る。

 

 空は綺麗な紫色に染まっている。標高が高いと空が紫色になるって本当だったのかと感心していると、一筋の黒煙が見えた。気になってその方を見ると、

 

 ───飛行機の右翼のエンジンから黒煙があがっていた。

 

「…カズ、あれはもしかして───」

 

 ヤバイんじゃないか。そう言おうとしたとき、

 

 ───エンジンがボウッと幻聴が聞こえそうな程綺麗に炎上した。

 

 そしてそれに呼応するように飛行機が右側に傾きだす。

 

「うわああああああっ!!」

 

「いやああああああっ!!」

 

 急な出来事に騒ぐ生徒達。隣では「ミナ…こんなはずじゃ…」とうわ言のように呟き顔を真っ青にしたカズがいる。

 

 そんな悲愴に暮れたカズの横顔を見て哀れに思っていると、飛行機の傾きは45度を越し、もう墜落してもおかしくはない状況だった。

 

「誰かああああああっ!!」

 

「皆落ち着いてえぇっ!!」

 

 ───これはもう見ていられない。…そう思った僕はみんなより一足先に眼を閉じ、意識を手放したのであった。

 

 

   ◇

 

 

 真っ暗な空間、その中にひとつ煌めくディスプレイがあった。

 

 突然ピコンという音がたち、画面には『転生適合者を発見しました』の文字が浮かんだ。

 

「………来た」

 

 突然、どこからともなく人が現れた。シェルエットからして13~14才の少女だろう。

 

 その女性がディスプレイに触れることに呼応し、ディスプレイの文字は切り替わっていく。

 

『›転生システム、オールグリーン』

 

『›転生先:ファウリアに決定』

 

『›転生被験者:ハルキ·カミシロ、カズキ·ムラカミ、ミナ·クロサワ』

 

(ここまでは順調か………いや、待て)

 

 少女は突然手の動きを止めた。

 

(このハルキ・カミシロの文字…若干だがノイズがかかっている)

 

 少女はディスプレイから手を放し、そのすぐ下に淡く光るキーボードらしきものを呼び出した。

 

(システムログイン…enter)

 

『›管理者の干渉を確認しました』

 

(これは少々こちらから弄るしかない………)

 

『›ネーム変更:ハル·カミシロ、ヴィルヘルム·アインス、イルミナ·ノワール』

 

(うむ………?)

 

 少女は何かおかしいことに気が付いた。今まで男性名だったものが明らかに女性名に変わっていたからだ。ノイズも心なしか大きくなっている。

 

『›Warning:ハル·カミシロに重大なバグが発生。』

 

(……やはりバグか………)

 

 取り合えず、と少女はその転生適合者の情報を覗き見た。

 

(ふむ、これは………女性は必須条件か、戻そうにも反応すらしない。転生年齢まで8才と固定されている。それに初期ステータスが異様に高い………何なのだろうか、全てがバグだったらまず適合者にはなれない筈だし………ここはある程度優遇するべきか………)

 

『›データ修復開始………完了』

 

(加護は他の二人より強めにかけた………これなら簡単には死なないだろう)

 

『›これより転生者三名の転生を行います』

 

「それでは…貴殿方の健闘を祈る」

 

 

 物語はここから始まった。

 

 

   ◇

 

 

 

 暫くして手放し、冥界へ向かった筈の意識が肉体に舞い戻ってきた。

 

 ───死んでいない?あんなことが起こったのに?

 

 そう思って、まだ光に慣れない重い(まぶた)をうっすらと開け、自らの五体を確認する。

 

 右腕、左腕と順番に力を込める。…しっかりとした感触がある。どうやら身体は無事なようだ。うっすらと開けていた眼も段々と光に慣れてきたのでしっかりと開け、起き上がってみる。

 

 まず一番最初に目に入ったのは、ふっくらとした太ももだった。脛毛は元々ないからいつも通りだが、心なしか少し白くなった気がする。

 

 その次に目に入ったのは、何故か履いているスカート。…事故が起こったのに寝ている間になんて悪戯(いたずら)をしてくれたんだ、あいつらは。

 

 さらに次は小さいながらも柔らかそうな…、

 

「…って、あれ!?」

 

 何で僕に胸が?と言おうとしたところに、更に違和感を感じた。

 

 ───元々男としては高かった声が今は不自然なほどに声が高い。というよりアニメ声。

 

「まさかっ…!」

 

 と言い、僕はたまたまポケットに入れていた折り畳み式の手鏡を開け、自らの姿を確認する。…そこ、女子力高いとか言うな。

 

「─────っ」

 

 そこに写っていたのは、

 

 神秘的に青く輝く長い髪、

 

 美人というよりも可愛いといった整った顔立ち、

 

 吸い込まれるような淡青の眼、

 

 そんな見た目をした()()だった。

 

───体感的に言って7~8歳ってところかな?

 

「ってそうじゃなくて!!」

 

 今は周りの状況確認だ。…そう言おうとしたが、

 

 ───辺りは鬱蒼とした森の中だった。飛行機が落ちているような痕跡は無い。

 

「もしかして………これって異世界に来ちゃった感じ?」

 

 元々の僕は身体はあまり強くなく、外に出るよりも家の中でラノベを読むことの方が多かったので意外とすんなりこんな発想ができてしまった。

 

 あ、部活には出てたよ?………ほとんどマネージャー扱いだったけど。

 

「…ここが異世界だって言うならこんなことは出来る筈だよね」

 

 そう言って興味半分に右手を前に伸ばし、テンプレな魔法(アレ)を唱える。

 

「《ステータス》!」

 

 と唱えると、目の前に青色のウインドウ(テンプレ中のテンプレ)が現れた。

 

 

─────────────────────────────────────────

 

 

名称:ハル·カミシロ

年齢:8歳

基礎Lv.:Lv.1

職業Lv.:賢者Lv.1

基礎ステータス

 HP 50/50

 MP 1000/1000

 STR 12

 INT 200

 VIT 8

 WIS 150

 DEX 10

 MIN 100

 AGI 7

 LUC 13

スキル

 火魔法Lv.1 水魔法Lv.1 風魔法Lv.1 土魔法Lv.1 雷魔法Lv.1 氷魔法Lv.1 龍魔法Lv.1

 木魔法Lv.1 幻魔法Lv.1 光魔法Lv.1 闇魔法Lv.1 無魔法Lv.1 空間魔法Lv.1

 スペルブレイク

 無詠唱

パッシブスキル

 絶対神の加護Ⅹ…基礎ステータス上昇率、取得経験値量が120%増加

 魔法使いの秘術Ⅹ…基礎MP、INT、WIS、MINを10倍加

 異世界言語翻訳

所持金:0ファルス

説明

 前世で事故に遭い異世界に転生した神城晴輝。しかし何らかのエラーによって異世界転生時に性別や年齢が変化してしまった。

 

 

─────────────────────────────────────────

 

 

「リアルすぎる夢…、なのかな?」

 明らかにおかしい。こんな天文学的数字でお察しな確率の異世界転生が自分に起きるなんてあってたまったものじゃない。

 そう呟いた瞬間「ピコン」という音と共に、ステータス上部にレターマークのアイコンが出てきた。

 僕はそれを恐る恐るタッチしてみる。…すると軽快な音が鳴り、ウインドウの画面が切り替わった。

『メッセージボックス』と上部に書いてあるウインドウで、一番上に一つだけメッセージがあったのを発見した。

 僕はそれを、今度は思いきって開けることにした。

 

 

─────────────────────────────────────────

 

 

 どうもー☆この世界の管理者でーっす!いやぁ、なんか分かんないけど異世界転生させたら謎のバグが起きて君をょぅι¨ょにしちゃったみたいだわー。めーんご☆(爆)…いやほんとに修正しようとしたんだけどね?よく分かんないけどプログラムには弾かれるしね? どうやって修正すりゃ良いんじゃこんちくしょうと徹夜でプログラム修正してるよー☆つまりここまで深夜テンションだよん。うー☆

 

 …とふざけるのはここまでにしておいて、

 

 本当にごめんなさい。

 

 君の事、助けられなくて。

 

 本当は赤ちゃんからやり直すのに8才で固定されちゃったし。

 

 力が及ばず女の子になるのを止められなくって。

 

 だから、せめてもの罪滅ぼしに最高位の加護を付けた。

 

 ある程度の情報の開示も約束しよう。

 

 今の君ならば、これが良いか。

 

 

 村上一樹君と黒沢美奈さんはこの世界に転生した。

 

 君の転生する8年ほど前にずらして。

 

 君と出会うときは、きっと同い年が良いだろうから。

 

 

 …さて、今のうちにこのウインドウで出来ることとこれからのしなければならないことを説明しておくよ。

 

 まずウインドウで出来ること、これは箇条書きで書いておくよ。

 

·ステータス…文字通りステータスの確認が出来る。

 

·ディクショナリィ…一度見て《鑑定》したアイテムやモンスターの情報を見ることが出来る。

 

·アイテム…Lv.1空間魔法《アイテムボックス》で収納したアイテムを確認できる。

 

·スキル…アクティブスキルの確認、パッシブスキルの確認とONとOFFの切り替えが出来る。

 

·メッセージボックス…自分に届いたメッセージを確認することが出来る。自分でメッセージを打つことも可能。

 

·フレンド…この世界にで出会った転生者とフレンド登録が出来る。これをしたものは、メッセージを送る対象に出来る。

 

 …といったところかな?多分これで全部のはず。

 

 …次にしなければならないことは、…あ、箇条書きで書けるか。

 

·森を南下して抜ける。

 

·そこから南にある街に行く。

 

·冒険者ギルドに行って、登録を完了させる。

 

 …まあこっちもこんなものか。…ああ、冒険者登録用のお金は振り込んでおいたよ。色はつけておいたから大事に使ってね?ちなみにコンパスもあるよ。

 

 じゃあ他の人にも説明しなきゃいけないから、もうこれでこの文章は終わりだよ。

 

 まったねー☆

 

 あ、ついでにこの世界について書かれた《ワールドディクショナリィ》も貼付しとくよー☆

 

 

─────────────────────────────────────────

 

 

「………なぁにこれぇ」

 

 思わず言ってしまった。…うん、最初のこのテンション、ね?こんな感じで来るとさ、一瞬『ああ、駄目神だ』って思うじゃん?だけど最後はしっかり仕事してんじゃん?謝罪も、してくれたじゃん…?嬉しいこともッ、教えて、くれた、っく………

 

「うわぁあああああっ!!!」

 

 よかった…っ。二人とも、生き返れたんだ…っ!

 

 こりゃ、涙は止まらないよ…。

 

 

 三十分後………

 

「…ひっく…まあ多少はまともな神様で良かったよ。《アイテム》《コンパス》《リリース》!」

 

 そう唱えると、アイテムウインドウにあるコンパスの文字にカーソルが行き、軽快な音が鳴って、掌の上にコンパスが現れた。

 

「行くしかないかぁ………泣いて喉乾いたし」

 

 諦め半分にそう言いつつも僕は南を目指して歩きだすのだった。

 

 

 ―――二人とも、絶対に見つけるよ。

 

 

 

 

 




コーナー《ワールドディクショナリィ》
ここでは世界の設定をネタバレにならない範囲で語らさせていただきます。

今回ハルが降り立ったのはファウリアという世界。
人間族、亜人族、魔族の三種族が存在している世界です。
その中ハルが降り立ったのは人間族の国、イルレインです。
イルレインは数千年前から続く王国で、
特産品は金鉱石等の希少金属類、ダイヤモンド等の宝石類です。
国土は全世界二大陸の内の一つの大陸の4分の1を占めています。
隣の帝国からよく喧嘩を売られています。


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第二話

後半が追加ストーリーです。
前半は少し変わった程度なので飛ばしたい人はどうぞ。

今回は若干ステータスが多いですがご容赦ください(ストーリー的な問題で)

ついでにここから週一投稿です(多分)


 

 森を南下しはじめてから15分程経って…

 

「喉が…乾いた」

 

 僕は項垂れつつも歩みを進めていた。…それよりチート付与されててもやっぱりそこら辺は人間のまんまなんだな…。身体は幼女だから距離は歩けないし体力は直ぐに切れる。

 

 15分歩き続けるだけなのに休憩を挟んでしまうほどだ。

 

「そろそろ森を抜けてもおかしくはないと思うんだけど…」

 

 先ほどから木々の間に隙間が出来はじめ、風が吹き込むようになってきている。

 

「そろそろ抜けられそうだし…走る?」

 

 そう自分に言い聞かせる。…よし、走ろう。と心に決め、コンパスで南を確認し僕は走り出した。

 

 

   ◇

 

 

 ………五分ほど走って森を抜けた。

 

「のどいらい」

 

 走ったせいで喉は痛みを覚え、呂律が怪しくなっている。…そりゃそうだよ僕、走ったんだもん。

 

「みずがのみらい」

 

 森の中には湖などの水源は見当たらなかった。どうやって生きてるんだろうこの森。…まあ今はとりあえず水探ししよう。ちょうどここは他よりも土地が高い位置にあるからすぐに見つかってくれるでしょ。

 

 …まあ案の定すぐに見つかった。さらに200m程まっすぐ行くと橋があるようで、その下はきれいな清流が見える。ついでに更に先には街壁らしき物もある。

 

「よし、あそこにむかおう」

 

 しゃべる度に喉が痛む。すぐに向かおうと思った時、

 

『ガサッ』

 

 …近くの茂みから音がした。まあ大体予想できていたから驚かない。そして僕は声をあげる。

 

「そこのモンスター………きすぁま(貴様)………みているら?」

 僕が○IO様の台詞を放つ(放ててない、恥ずい)と、そこにいたモンスターはそれを挑発と受け取り、

「ブヒャアッ!」

 と飛びかかってきた。僕はとりあえずその攻撃をいなしてスキル《鑑定》を発動する。

 

─────────────────────────────────────────

 

名称:オーク

種族:オーク

基礎Lv.:Lv.2

基礎ステータス

 HP 150/150

 MP 0/0

 STR 30

 INT 2

 VIT 24

 WIS 6

 DEX 12

 MIN 4

 AGI 16

 LUC 20

スキル

 痛打Lv.1

パッシブスキル

 なし

所持金:0ファルス

説明

 どこにでもいるただのオーク。特に火の魔法に弱い。

 

─────────────────────────────────────────

 

 あれ…強くね?初めて出会うモンスターは基本ドラ○エ的にスライムかと思ったけどオークだしSTR?筋力かな?の値が僕の倍以上だし、VIT?多分体力?は三倍だし。

 

 ちなみに僕のステータスはこうだ。

 

─────────────────────────────────────────

 

名称:ハル·カミシロ

基礎Lv.:Lv.1

基礎ステータス

 HP 50/50

 MP 1000/1000

 STR 12

 INT 200

 VIT 8

 WIS 150

 DEX 10

 MIN 100

 AGI 7

 LUC 13

所持金:10000ファルス

 

─────────────────────────────────────────

 

 …とこんな感じになっている。一見すると他が上回っているように見えるがかなり危ない。

 

 特にAGI(俊敏値)、相手がこれを上回っていると普通の魔法使いでは魔法の詠唱がうまくいかず、すぐに追い詰められてしまう。

 

 …そう、()()()()()使()()()()

 

 オークは僕のことを確実に()()()()()目で僕を見ている。…気持ち悪い。

 

 スキルは先ほど何が使えるか確認済みだ。ならばどうするか、それはもう決まっていた。

 

「ブヒャッ!」

 

 ただ、行動する前にオークが動き出した。こうやって飛びかかって近接戦闘に持ち込むあたり、僕が魔法職というのを本能で理解しているのかもしれない。しかし、

 

「おそい!《ファイアボール》!」

 

 僕はそのまま組敷かれはしなかった。何故なら僕は普通の魔法使いではなかったからだ。

 

   《無詠唱》

 

 このスキルは言葉の通り一定以内の詠唱をすっ飛ばして魔法を打つことが出来るスキルらしい。ちなみに一定以上でもある程度の省略は出来る。ついでにこのスキルを習得するには2、30年かかるらしい。

 

 僕はそれを持っていたおかげで絶対に当たる位置までおびき寄せて魔法を放つことが出来た。

 

「ブヒイィィ………」

 

 オークがほぼ零距離で放たれた火球によって吹き飛ばされ、燃え尽きる………と思ったら空中で弾け飛び、特徴的なオークの鼻と、よく分からない球体(恐らく魔石かなにかだろう)と、刃こぼれしたナイフをドロップした。

 

「このしぇかい(世界)でははぎとりのがいねんはないんら…。やさしいしぇかい(世界)だな」

 

 僕はオークの鼻はアイテムボックスにしまい、ナイフはそのまま装備して川へと向かった。

 

 

   ◇

 

 

 あれから四十年!…じゃなくて30分後のこと。

 

「ぷはっ………、ふう、漸く落ち着いた」

 

 ようやっとの思いで川岸についていた。…川の水って大丈夫なのかな?そう思って鑑定してみたが、

 

 

 

─────────────────────────────────────────

 

 

 

名称:淡水

 

状態:綺麗

 

摂取効果

 

 なし

 

説明

 

 ただの水。飲料用に料理用、果ては調合用と使用の幅は広い。

 

汚染度:0% …身体に悪影響なし

 

 

 

─────────────────────────────────────────

 

 

 

 なんて便利なんだろう、鑑定って。名前や説明だけじゃなくって状態、さらに汚染度まで出てきちゃったよ。

 

 …結果として水は飲むことが出来た。

 

 これでしばらくは大丈夫だろうから、また南に進み街門を目指すことにする。

 

 

   ◇

 

 

 あれから更に一時間程経って…

 

「ブヒイィィ…」

 

「この辺りの魔物はこれで全部かな?」

 

 僕はオークなら問題なく狩れる程にレベルアップしていた。

 

 途中オーク以外のモンスターも出てきたが問題は無かった。

 

 出てきたモンスターは以下の通りだ。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

名称:フィールドウルフ

種族:ウルフ

基礎Lv.:Lv.3

基礎ステータス

 HP 165/165

 MP 0/0

 STR 40

 INT 5

 VIT 28

 WIS 5

 DEX 14

 MIN 8

 AGI 36

 LUC 18

スキル

 爪術Lv.1

パッシブスキル

 なし

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

名称:フィールドスライム

種族:スライム

基礎Lv.:Lv.3

基礎ステータス

 HP 130/130

 MP 15/15

 STR 24

 INT 20

 VIT 40

 WIS 13

 DEX 10

 MIN 56

 AGI 3

 LUC 16

スキル

 擬態Lv.1

パッシブスキル

 物理半減Lv.1

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

名称:クレイゴーレム

種族:ゴーレム

基礎Lv.:Lv.5

基礎ステータス

 HP 320/320

 MP 30/30

 STR 56

 INT 32

 VIT 68

 WIS 10

 DEX 5

 MIN 30

 AGI 5

 LUC 12

スキル

 土魔法Lv.1

パッシブスキル

 物理半減Lv.1

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 ついでに僕のステータスもあげておこう。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

名称:ハル·カミシロ

基礎Lv.:Lv.12

職業Lv.:賢者Lv.12

基礎ステータス

 HP 230/230

 MP 2840/2840

 STR 56

 INT 890

 VIT 43

 WIS 450

 DEX 60

 MIN 320

 AGI 57

 LUC 44

スキル

 火魔法Lv.3 水魔法Lv.2 風魔法Lv.3 土魔法Lv.2 雷魔法Lv.1 氷魔法Lv.1 龍魔法Lv.1

 木魔法Lv.1 幻魔法Lv.1 光魔法Lv.1 闇魔法Lv.1 無魔法Lv.1 空間魔法Lv.3

 スペルブレイク

 無詠唱

 気配察知

パッシブスキル

 絶対神の加護Ⅹ…基礎ステータス上昇率、取得経験値量が150%増加

 魔法使いの秘術Ⅹ…基礎MP、INT、WIS、MINを10倍加

所持金:10000ファルス

説明

 モンスターとの戦闘を終え、強化されたハル。その強さは前とは比べ物にならない。

 起こってしまったエラーは現在進行形で管理者が修正中だ。

 

 

─────────────────────────────────────────

 

 

 このようにモンスターを倒すだけで強くなれるのは非常に嬉しい。レベルを上げるのが楽しくて気が付くと本来の目的を忘れてモンスターを狩っていたほどだ。

 

 そのせいか、モンスターを探している間に《気配察知》なる物まで覚えていた。

 

 《気配察知》のお蔭でモンスターが狩れるわ狩れるわ。素材も沢山手に入ったのでお金も手に入るだろう。

 

「さて、そろそろ街へ向かうか」

 

 そう言って再び街壁の方を向いたその時、

 

「っ………誰だッ!」

 

 右の方から殺気が飛んできた。気配察知のお蔭でここまで感知できるようになったのは嬉しいことか。

 

「BOOOOOOOO………」

 

 しばらくして右側から現れたのはオークだった。

 

 しかし普通のオークではない。

 

 その体躯は平均1.7mから大きく外れた4.0mの巨躯、

 

 その腕は丸太のように太く、手には僕の身長ほどの棍棒、

 

 何よりも特徴的なのはオークなのに(たてがみ)があると言うことだ。

 

「BOAHHHHHHHHHHH!!!!!!!!」

 

 一瞬、ほんの一瞬だが僕はそれを見て恐怖し、呆けてしまった。

 

 今の間にこの化け物は一体何回僕を殺せていたのだろうか。そう考えただけで寒気がする。その隙をこいつは()()()()()()()()だけで過ごした。その気になれば何時でも僕を殺せるのに。

 

(嘗められてる…?)

 

 僕が真っ先に思ったことはそれだ。

 

 こいつには強者としての傲慢、矜持、余裕と言うものがある。

 

 今の僕に勝てる相手ではない。しかし、逃げられそうにもない。

 

「っ………《鑑定》!」

 

 せめて撃退だけでも。僕はそう考え《鑑定》を使用した。

 

 オークは相変わらずこちらが動くのを待っているかように動かない。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

名称:剛撃のブルフロア

種族:オーク(古代種)

基礎Lv.:Lv.75

基礎ステータス

 HP 12830/12830

 MP 124/124

 STR 580

 INT 323

 VIT 534

 WIS 130

 DEX 250

 MIN 315

 AGI 420

 LUC 666

スキル

 痛打Lv.32

 強烈ブローLv.13

 薙ぎ払いLv.6

パッシブスキル

 剛撃X…物理属性の攻撃威力が100%上昇する。

所持金:0ファルス

説明

 かつてこの世界に魔神王が存在していた頃から生息する魔物。

 その名は魔神王より拝命されたと言われている。

 二つ名、ユニークモンスター等の異名を持つ。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「なっ………なっ………なっ………」

 

 なんだこれ、とは言えなかった。威圧感で息をすることさえ苦になるほどだ。

 

 この戦闘からは絶対に逃げられないだろう。圧倒的不利な大差の中、この化け物と対峙しなければいけないのだ。

 

 勝てるのか?否、勝てる見込みなど一筋もない。

 

 ならば足掻いて、()()()()

 

 僕はそう心に決め、一歩を踏み出した。

 

 

 

 

 

 




え?街の近くでなんでLv.75が出るのかですって?それは

 縄 張 り ハ イ レ ッ デ ィ ン 

この一言で伝わる人は伝わります。
分からない人は縄張りハイレッディンでググってみてください。

フェイクボディで何回ocg切れてボッコボコにされたことか(憎悪)


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第三話

少々遅れましたあああ(焼きスライディング土下座)

理由としては前回が本来は日曜日に投稿するものだったんです。
そこをミスって土曜日になってしまったんです。
お騒がせして申し訳ありません。

と言うわけで今回からは当初の予定通り日曜日投稿とさせていただきます。

それでは、本編をどうぞ。


 

 

 一歩踏み出した。しかしブルフロアから反応は返ってこない。

 

 もう一歩踏み出してみた。耳がピクッと動いた。

 

 ならば先制攻撃だ、と僕は現在撃てる最強の魔法を放つ。

 

「《フレイムアロー》!」

 

 フレイムアロー。三本の炎で出来た矢を対象に放つスキルだ。

 

 詠唱せずに放たれたそれはブルフロアの鼻面に命中し、煙を上げた。

 

「BUOOOHHH……?」

 

 ブルフロアは不思議そうにこちらを見ている。

 

 まるで、これごときが切り札なのか?と、言いたげな様子。痛くも痒くもなさそうだ。

 

 実際、ブルフロアのHPは100も削れていない。………鼬の最後っ屁にすらなりやしなかったか。

 

「ッ!《フレイムアロー》!《フレイムアロー》!《フレイムアロー》!」

 

 同じ魔法を何度も撃ったが、全てブルフロアの体毛を焦がす程度にしかダメージは入らない。

 

 そして突然視界が切り替わった。…恐らくあの棍棒で殴られたのだろう。

 

 すさまじい速度で景色が切り替わり、固いものに後頭部と背中をぶつけて、漸く止まった。

 

 次の瞬間には僕の頭からは熱く紅い液体が止めどなく溢れ出す。

 

 ………走馬灯だろうか、思考はとても落ち着いている。恐怖も感じていないのか、失禁は起こしていない。

 

 このあと僕はどうなるんだろう、オークの餌?奴隷?………いや慰み者だろうな。

 

 あーあ、せっかく二人を見つけるって決意したのにな。また死んじゃうのかあ。

 

 生きてまた笑いあいたかったな。語り合いたかったな。

 

 生きて………、生きて………ッ!

 

「生きなきゃ…ダメだ、………生きなきゃダメなんだ」

 

 生きろ!()()こんなとこで死んではいけないんだ!

 

 だから、立ち上がれよ!私、神代晴輝ッ!立ち上がれよッ!!

 

「うう………ああああああああああッ―――!」

 

 私が叫び声を上げた瞬間、私は光に包まれた。

 

「BUOOOHHH!?」

 

 ブルフロアは驚愕で動けないようだ。

 

 瞬間、誰かの声が聴こえた。

 

『一時的憑依です、すみませんがこの身体、借りさせて貰います』

 

(……何…これ………?)

 

 次の瞬間、僕の意識は暗転した。

 

 

   ◇

 

 

 憑依に成功してすぐ、私は私自身に鑑定をかけた。

 

『肉体損傷レベルC、精神損傷レベルB、適合率5%ですか…』

 

 《僕》は随分やられてしまったようですね。安定さえしていれば適合率10%は妥当なのですが…。

 

「BO…BO…!?」

 

 おや、貴方は気付いているのですか。それはそうですね。なんせ今の私は、

 

 全ての光を反射せんと煌めく純白の髪、

 

 見るもの全てを吸い込まんと揺らめく紅の瞳、

 

 そのような姿となっていればそれは嫌でも気付くでしょうね。

 

 今の状態ならば効くでしょうと、私はブルフロアに《覇気》を浴びせます。

 

 するとどうでしょう、ブルフロアはガチガチに硬直してしまいました。

 

 これなら、と私は赤色の三重の魔方陣を展開し魔法を詠唱します。

 

『汝熱く燃ゆる人、その猛り狂う熱を、我が杖に捧げ』

 

 私が放つのは炎の最高位魔法、その中でも速射型の、詠唱の少ないものです。それでもまあまあな威力はあるのですが、やはり他の者には見劣りますね。

 

『その熱き魂を、現世(うつしよ)に顕現させよ!』

 

 まあそれでもこれ位の者なら消し炭に出来るのですけれどね。

 

『《フェニックスフレイムアロー!》』

 

「BOOOHHH!?」

 

 不死鳥の鏃がブルフロアの腕を穿ちました。何とか我にかえって防御したようです。そしてこちらを向き鼻で笑いました。……ちょっとムカつきます。これは教えてあげるべきですね。

 

『腕…燃えてますよ?』

 

「BO?」

 

 そう、燃えているのです。実はこの魔法ほとんど攻撃用ではなく、状態異常用なのです。

 

 ―――状態異常《エターナルバーン》

 

 この状態異常は自然治癒することはなく、徐々に火達磨にされてしまうという恐ろしい状態異常です。水で消すこともできず、治癒する方法は最高位状態回復魔法《エクスキュア》のみです。

 

 詰まり、このモンスターは既に詰んでいるのです。

 

「BO……BOAAAHHH!?」

 

 おや、腕が炎上していることに気がついたようですね。まあ気がついた所で死ぬのには代わりありませんが。

 

「BOOOHHH!BOOOHHH!」

 

 流石はオーク、いくら強くなったところで燃えるものは燃えますね。

 

「BOOOHHH………」

 

   パアアァァン!

 

 あら、もう駄目ですか。弾けてしまいましたね。

 

『さて、オークは丁度良い狼煙代わりになってくれましたし、素材回収したら…眠って……誰かが回収するのを待ちましょうか………』

 

 少々無理をし過ぎたのでしょうか、私の意識は素材を回収した後、すぐに暗転しました。

 

 

   ◇

 

 

 突然、大きな火柱が上がった。その火柱は(あか)く、天すら焦がさんと立ち上っていた。

 

 僕はそれを見た瞬間、何故かそこへ行きたくなった。何とか仕事の休憩時間を変わってもらい、鎧を脱ぐ。

 

 脱いだ鎧は今は片付けない。何故か、急がなければ間に合わない気がしたからだ。

 

 兎に角急いで仕事場である城門を抜けて、平原へと駆ける。

 

 火柱が上がっていたところにたどり着くと、そこには青髪淡青目のなんとも可憐な少女が横たわっていた。

 

「君っ…大丈夫じゃ…ないか」

 

 少女は後頭部から出血をしていた。抱き起こした右手に血がベットリと付いた。打撲もあるようで、このままだと少女は死んでしまうかも知れない。それを悟った僕はすぐに少女を背負い、街門へと走り出す。

 

 街門を抜けるときに、誘拐じゃないかと同僚に囃し立てられたが構わず門を抜けて僕の掛かり付けの医者へと連れていった。

 

「ふむ、よくぞ連れてきてくれましたね。あの傷は本当に危なかった…あと一時間もすればこの子は亡くなっていたかもしれません」

 

 医者のその台詞にホッとした。助けられたんだ、そう思うと達成感が湧いた。取り合えず代金を、と医者に掛け合ったが、

 

「いえ、要りませんよ。人を助けただけの貴方に代金を求めるのは性分じゃないのでね。それにこれからも贔屓にして頂ければ」

 

 と一蹴されてしまった。相変わらずいい人だ、これからもここは贔屓にさせてもらおう。

 

 それから家に帰った。ベッドは一つしかなかったので少女を寝かせた。家に丁度貰った蜂蜜酒があったので、湯煎で温めてから少女に少し飲ませてやった。その後、僕は椅子で眠りに就いた。明日は少女が目覚めている様に祈りながら………。

 

 

 

 

 




ハルの体を乗っ取ったのは一体誰なのだろうか。
ブルフロアは一体何に気がついたのだろうか。
チート持ち主人公をワンパンでダウンさせるモンスターを作り上げた魔神王とは一体何者だったのか。


…また謎が増えた…。

これらの伏線回収はかなり後(おそらくは五十話よりも後)になると思います。
頭の片隅にでも置いて読んでいただければ、と思います。
プロットはそこまで出来ているのであとはエタらなければ…
え、文字数が少ないって?
ステータスが一度も出てないからね。仕方ないね。





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第四話

お久しぶりです

風邪からの復帰、テスト、キャラの構想が決まらない等の理由で遅れました(焼き土下座)

また、体育祭が控えてるので次も遅れる可能性があります。


それでは本編をご覧ください。


 何処までも続く真っ白な空間の中で、僕は膝を抱え(うずくま)っていた。

 

『―――。』

 

 何処からか突然、声が聞こえた。

 

『―――?』

 

 僕を、呼んでいる?

 

 誰だろう、そう思って顔を上げると、

 

 そこには、黒い影のような、(もや)のような、

 

 人を(かたど)ったモノが居た。

 

『―――、―――。』

 

 影は何か喋って、僕に向かって、手を差し出した。

 

「手を取れ」…そう言われている気がした。

 

 僕が戸惑っていると、影は勝手に僕の手を取り、引っ張って立ち上げた。

 

 突然の事だったので、僕はつんのめって、影の胸元に倒れ込んでしまった。

 

 すると影は、ケラケラと笑うように肩を震わせ、僕の頭を撫で始めた。

 

 嫌な気分では無かった。…寧ろ、安心した。

 

 ―――ふと、思った。

 

 僕はこの撫で方を知っている気がする。一体誰の物だろうか、と。

 

 しかし、その疑問に答えられる者など、この場に居る筈もなく、僕は微睡み、眠りに就いた。

 

 

  ◇

 

 

 刹那、瞼に光を感じ、僕は目を開けた。

 

 まず目に映ったのはふかふかとした羽毛布団と少しシミの付いた天井だった。

 

「知らない天井だ…」

 

 どうやら僕は誰かに助けられたらしい。

 

 体は大丈夫なのか、そう思って体を起こす。

 

「っ───!」

 

 次の瞬間には腹部に激痛が走り、僕は顔をしかめた。

 

「あはは…、随分手酷くやられたみたいだね…」

 

 そう言って、全身の傷を確認する。

 

 見たところ骨折とかは無い様だった。

 

 コンコン、と部屋のドアがノックされた。

 

 僕は「どうぞ」と声をかけた。ドアがガチャリと音をたてて開いた。

 

「おはよう、起きたみたいだね」

 

 出てきたのは灰色の髪と目をした青年だった。

 

「あ、はい」

 

 青年はこちらに微笑みかけながら、お粥の乗ったお盆を近くにあった机の上に乗せた。

 

「怪我の具合はどうだい?」

 

 そう言われて僕ははっとした。そして、もう一度自分の体を確認する。

 至るところ火傷が拡がっていた。特に頭、背中、腹部は怪我の具合は悪い。あの化け物と対峙していた時には分からなかったが、腹を殴られて吹き飛ばされたらしい。

 

 だが、それにしても不思議だ。あれだけの威力の一撃、正直言って内臓が破裂しても可笑しくはなかった。

 ただ運が良かっただけなのか、それとも手加減されていたのか。はたまた僕の体が特殊なのか。

 

 まず僕はどうやってあの場から生還したのか。

 あの青年が化け物を倒した?…いや、《気配感知》からしてそのような力があるようには思えない。

 僕が気絶している間に居なくなった?…逃がすメリットは無いし、それなら連れ去るか殺すかするだろう。

 

 そうならば『あの空白の時間に何者かが化け物を討伐した』と考えるのが筋だろう。

 

 まあ今はそんなことを考えていても仕方がないので、目の前の青年に応答する事にしよう。

 

「大丈夫、と言うには程遠いです。立ち上がれる気がしません」

 

「そうなんだ…、じゃあまずは、取り合えず何かお腹に入れないとね。お粥を作ってきたから、食べてさっさと元気になろう」

 

 そう言って青年は微笑みガッツポーズをする。…なんと言うか、力が抜けた。

 

「クスッ…ありがとうございます。頂きます」

 

「うん、お代わりならすぐに出来るしどんどん食べてね。今回のは自信作なんだ」

 

 そう言いながら青年は立ち上がり、それじゃあまたね。と言って部屋から去っていった。

 僕はそれを尻目に見ながらお粥を口に運んだ。

 

「………美味しい」

 

 お粥のスッキリとした塩味が舌から脳に伝わる。噛み砕くことでお米の甘味が染み出てくる。

 それはとても単純で、当たり前の事だけど。それが、今の僕には何よりも生きていることを実感させてくれた。

 

 

  ◇

 

 

 約30分後

 

「ふぅ……やっと、眠ったみたいだね」

 

 僕、──岸田拓也──こと、アル・コーストは転生者だ。

 しかしそれだけでは語弊がある。正確に言うならば、

 僕、──岸田拓也──こと、アル・コーストは時空と調和の女神、『コスモス』様によって拝命された転生者であり、転生者殺し(プレイヤーキラー)だ。

 転生者殺し(プレイヤーキラー)とは、転生者を殺す者。しかし、転生者だから殺すわけではない。

 転生者は普通の人間とは違い、ステータスを理解するだけでなく、元々のスキル習得速度が非常に速くなっている。その力を利用して、不正や悪事を働く転生者、もといプレイヤーを抹殺するために、転生者殺し(プレイヤーキラー)は存在しているのだ。

 

「それにしても彼女…やはり転生者なんだろうか」

 

 あの謎の火柱。普通の人間が出して良い火力では無かった。魔物の仕業という線もあるが、生憎この街の周囲にあれだけの炎を扱う魔物は居ない。

 そうなるとある程度普通よりも技能(スキル)の習得の速い転生者の可能性は大きいと言える。

 試しに《鑑定》を使用したが中身は隠蔽されていて知れたことなどほぼ零に等しかった。

 

「やはり、女神様に聞くしか無さそうだね」

 

 僕はメッセージボックスを開き、女神様に連絡をとる事にした。

 

 

──────────────────────────────────────────────────────────

 

 

             group.コスモス、アル・コースト

 

               聖龍暦5000年11の月24日

 

                        『突然ですが、今少し良いですか?』

 

『構わないよ』

 

『急にどうしたんだい?』

 

                              『先日の事なんですが』

 

                              『女の子を拾いました』

 

『本当に突然だね…』

 

                   『鑑定してみたら殆ど隠蔽されていて見れず…』

 

                   『分かったのはその女の子の名前はハル・カミシ

                    ロというだけでした』

 

『それは本当かい?』

 

『それならその子は転生者だね』

 

                                     『なら』

 

『殺しちゃ駄目だよ』

 

                                『ですが危険です』

 

                   『遠くだったので見ては居ませんが先日とてつも

                    なく大きな火柱が立ちました』

 

                          『その中心に彼女は居たのです』

 

『だからと言って彼女がこの世界の住人に危害

 を加えると断定することは出来ない』

 

『今は少し我慢してくれないかな』

 

                                『…畏まりました』

 

『あ、そうそう』

 

『彼女の記憶、最奥まで覗いてみたんだけど』

 

『記憶の終着点に小さな歪みがあった』

 

                                 『本当ですか?』

 

『本当だよ。』

 

                      『生の記憶は授肉した瞬間から生まれる』

 

                    『貴女様はその生の記憶を最奥まで覗くことが

                     出来る』

 

『そうだね。そして最奥まで覗いたらそこに歪

 みを見つけた』

 

『まるでそこから先があるかのように』

 

                   『つまり彼女は貴女様の知り得ぬ《多重転生

                    者》である可能性が高いと』

 

『そうだね』

 

『だからこそ今は殺しちゃ駄目だよ』

 

『彼女は何かを持っている』

 

『そんな気がするんだ』

 

                                 『分かりました』

 

                      『何か分かり次第、連絡させて頂きます』

 

『此方でも調べておくよ』

 

                            『それでは、失礼しました』

 

『その前に一つ』

 

『彼女は元男のts転生者だよ』

 

                                     『えっ』

 

『じゃあね』

 

 

──────────────────────────────────────────────────────────

 

 

「ふぅ………」

 

 青く薄い硝子のようなウインドウを閉じ、一息吐く。

 ………やはり彼女は、いや彼は転生者だった様だ。それも厄介な事に多重の可能性が高いと来た。

 多重転生者と言うのは二重、三重と記憶を保有して転生した者のこと。それも肉体まで生前のスペックを維持している者もいるという。

 

 正直言って彼がそうならば絶対に敵に回したくはない。僕ですら勝てるかどうか怪しいし、何よりも強力な転生者同士の争いは周囲を焦土と化す程だ。

 だが逆に味方につければ最高だ。そしてそのまま転生者殺しになってくれれば大抵のプレイヤーは屠れるだろう。

 

「………よし」

 

 兎に角今は何をすべきか、方針は決まった。

 

 女神様に恩を返すためにも精進せねば。

 

 

 




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