ダンガンロンパアンサンブル ~希望の転校生と絶望の学院~ (粒餡)
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プロローグ「ようこそ絶望学院へ」
プロローグ「ようこそ絶望学院へ」 1


水城 あらと(みずしろ あらと)
ページ1
身長:172cm
体重:61.7kg
誕生日:2月5日
特記:超高校級の相談窓口

至って普通の高校生だが、聞き上手で小学生の頃から相談によく乗り解決していた、それは教員にまで相談されるレベルになり、そして、中学生の頃親戚の潰れそうになっている会社の社長の相談を受け、答え、結果その親戚の会社は急成長を遂げ、世界有数の企業にまで上り詰めた。このことから希望ヶ峰学園に招待された。


 通学路にある桜の匂いを嗅ぎながら、俺は、この学院の前に立っている、なんでも、あの通学路にある桜が高校の名前の由来らしい。

「・・・君咲学院、か」

 そんな俺が入っていいものかという雰囲気を醸し出すこの高校は何を隠そう――

「・・・なんでオレ、女子高の前にたってるんだろ・・・」

 そう、この高校はよりにもよって女子高、つまりは女子しか通えない・・・そのはず、だったのだが、来年に共学化を目指しているが、お嬢様高校なためいきなり共学化をするのも不安だから、試験的に生徒の兄弟から来年高校受験をするものを一人入れようという頭おかしいんじゃねえのと思うことをしでかしたのだ、ギャルゲーでやれギャルゲーで。

 まあ、とにかくそういう理由で俺は姉ちゃんである雷あんずに半ば無理やり入学させられ、しかも運の悪い事に俺以外の生徒は受験してないということで俺は普通に合格になってしまったのだ・・・まあ、学費免除は普通に嬉しいけどさ。

「まあ、こんなところでいつまで立っててもしょうがねえか」

 そう一言呟いて、俺は君咲学院へと歩き出す、これから三年間、どんな生活が待ち受けているのか分からないが、まあ楽しもう・・・そう思い、一歩、また一歩と学院の敷地内に近づき、そして、踏み入れた――瞬間、俺は痛みを覚え、頭を押さえた。

「っ・・・?」

 緊張のせいかとも思ったが、その痛みは徐々に増して行き、ついには立っていることさえできなくなった。

「が、ああああ!?」

 そして、俺はその場で倒れ・・・視界は、真っ暗になった。

 

プロローグ ようこそ絶望学院

 

「・・・ん、あ?」

 ・・・寝てた、のか?何故か突っ伏してた机から目線を上げ、周りを見渡す、そこは、教室・・・らしきものだった。

「・・・なんだここ」

 何故かついてる監視カメラ、まあこれは分かる、不審者が来て万が一生徒に傷でもついたら責任問題ってレベルじゃねえからな・・・そして、常在戦場と書かれた掛け軸、まあこれも別にいい、そして・・・

「なんで窓が塞がれてるんだ?」

 俺は立ち上がり、窓を塞いでる鉄板を触ってみる。

「・・・ふぎぎぎぎ!」

 剥がそうとしてみたが、やはり見た目通り普通の鉄板だ。

「・・・どういうことだ?なんで窓が塞がれてるんだよ、くそ、とりあえず一度玄関ホールに・・・ん?」

 教室を出ようとした瞬間、先程まで寝ていた机の上にメモが置いてあることに気づいた。

「なんだこれ・・・っと」

 それを拾い、読んでみると

『入学案内

新しい学期が始まりました、この学園がオマエラの新しい世界となります。

尚、入学式八時から体育館で始まるので遅れないでね!』

「きったねえ字だな・・・って、あれ・・・八時・・・って、今何時だ?」

 恐る恐る教室に取り付けられている時計を見る、そこには・・・

「八時ちょうどだー・・・じゃねえ!やべえ!入学早々遅刻とか洒落になんねえよ!」

 俺は入学案内と書かれた紙を放り投げ、教室から出ていく

 

「うっわ・・・何この趣味の悪い廊下・・・紫色とか、ってんなこときにしてる場合じゃないんだってば!」

 廊下を全速力で走っていく、何でこんな時間まで気絶してんだよ俺は、こんなにメンタル低かったっけ!?

 そして、体育館がどこにあるのかも分からずとりあえず廊下を進んでると、開いてる扉が目に入る。

「ここが体育館か!?」

遅れた言い訳を考えながら、俺は扉の中に飛び込む、そこには――

「あ、また人が来ましたね!」

「でも今度は男の人だよ?」

彼女たちの姿があった、どうやらここは玄関ホールだったらしい、何故かすごい大袈裟な入口だけど・・・そして、何故か女子の姿しかない。

「え、えーと・・・他の男子はまだ来てないのか?」

「あんた今年の入学者の人数も知らないの?」

「えっと・・・何人でしたっけ」

「・・・」

「あ、あははは」

目の前のメガネかけた人に睨まれてしまった。しょうがねえじゃん! 入学者の人数とか一々覚えてねえよ!

「十六人だよ」

「あ、ありがとうございます・・・って、あれ、十六人?」

俺はその指摘を受け、今この場にいる人数を数えてみる、すると・・・

「・・・あれ、十六人・・・いる?」

「そういうこと、つまり、今年の入学者で男子はあんただけ、ってことね」

「え、えええええ!?」

「まあそんなことは置いといて! やっと十六人揃ったことですし、体育館とやらを探しに行きやしょう! 勿論あっしが一番最初に見つけますがね!」

そういって赤い髪をした女の子が玄関ホールから飛び出していこうとしたが・・・

「ちょ、ちょっとまって!」

「っ、なんですかもう! みんな揃ったんですから」

「え、えっとさ、もう一回自己紹介したほういいんじゃないかなー・・・って、ほら、彼来たばっかりで私たちのことよく知らないしさ、こんな変な状況で素性もわからない人と一緒に行動するのは嫌でしょ?」

「え、いやまあ確かに名前ぐらいは教えて欲しいなあとは思いますけど・・・」

「私も賛成です、こんな典型的なクローズサークル物みたいな状況の中、男性が一人いるというのは不安ですから」

「なるほど! そういうことなら私も賛成であります! いざという時に弱点を知っておいて戦闘の時に優位にたつ、戦法の基本でありますな!」

「いや、別にそういうわけじゃなかったんだけどな・・・」

「むぅ・・・まあ、そういうことなら」

・・・とりあえず何か自己紹介する流れ、になったな。はぁ・・・めんどくさいことになってきたなあ



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プロローグ「ようこそ絶望学院へ」 2

こっから三話ぐらい自己紹介に費やします。



「さて、と・・・とりあえず、あそこにいる五人から話かけてみようかな」

そこに壁際に集まっている人たちは、先ほどメガネの人、長い、綺麗な銀色の髪をした人、金髪の長い髪の子、茶色の長い髪をした子・・・この子はどこか、テレビとかじゃないところで見かけたことがあるような・・・まあいいか、そして、ピンク色の長い髪の人だった・・・

「・・・なんというか、カラフルだな・・・」

「だよねー! みんな綺麗な子ばっかりで、お姉さん緊張しちゃうよ!」

「おうわ!?」

「あ、ごめんね、急に話しかけちゃって」

「あ、いえ、大丈夫ですよ、えっと、あなたは・・・」

「あ、私は八雲ちづる、『超高校級の演劇部』って呼ばれてるんだ!」

『超高校級の演劇部』

ヤクモ チヅル

「八雲・・・ちづる・・・まさか、あの?」

「あのって、どのかな? 女優の八雲ちづるのことなら私のことだよ! 知ってるかなあ?」

「いやいや! 知ってるもなにも超がつくレベルの有名人じゃないですか!」

八雲ちづる、数年前に突如として現れ、瞬く間に人気女優にまで上り詰めた人だ。恋愛ドラマによく出演し、その内容に合わせた演技の一つ一つに惹かれるという人は大勢いる。

「あはは、ありがと、だけどここにいる人たちはみんな超がつくレベルの有名人だと思うよ?」

「まあ、確かにそうですね・・・」

「だからさ、そんな緊張しないで、気軽に声をかけてね☆」

本人はこう言ってくれるけど、ぶっちゃけきついよなあ・・・

 

「さて、と次は・・・あの人かな、あのー」

「・・・」

聞こえなかったのかな?

「あのー!・・・あのー!!」

「・・・うるさい、あんまり大きい声、出さないで」

「あ、すみません」

「・・・何のよう?」

「あ、えっと、名前とか色々聞きに来たんですけど」

「・・・時国そら、『超高校級の天文学部』」

『超高校級の天文学部』

トキクニ ソラ

「超高校級の・・・天文学部?」

「そう、と言っても、新しい惑星を見つけただけだけど」

「新しい惑星を!?」

「・・・うるさい」

「あ、すみません、でもすごいですね、新しい惑星を見つけるなんて」

「別に・・・私はただ、宇宙人を見つけたかっただけ」

「宇宙人を・・・?」

「宇宙人は今まで見つかってない、あなたは何でだと思う?」

「えっと・・・存在してないか――」

「・・・」

話にならない的な目で見られてる・・・!

「ら、なわけなくて!」

「うるさい」

「あ、すみません、まだ、そこまで技術が発達してないから、とかですかね? 宇宙人といっても大きさは様々だと思いますし」

「・・・まあ、ギリギリかな」

「ええ・・・」

「私はそうは思わなかった、私は、まだ見つかってない惑星に宇宙人がいると考えたの」

「・・・もしかして、そのために?」

「うん」

「何でそこまで宇宙人に固執するんですか?」

「・・・私には、宇宙人の声が聞こえるの」

「・・・は?」

「どこかで、一人ぼっちの宇宙人が救いを求めてるの・・・! 待っててねまだ見ぬ宇宙人! きっと私が見つけてあげるからね! ゆんゆん」

俺は自分の世界に入ってしまった時国さんから離れた、やばい人だ、この人

 

「次は・・・あの人かな、すみません」

「ん、ああ、私の番?」

「はい、あなたは・・・」

「私は湖南やこ、『超高校級の映画監督』とかいう名前で呼ばれてるわ」

『超高校級の映画監督』

コナン ヤコ

「映画監督・・・ですか」

「ぱっとこない、っていう顔してるわね」

「あ、いやそんなわけじゃ!」

「ま、そうよね、特にあんたは今年の入学者の人数すら覚えてないぐらい些細なことは記憶しないタイプのようだし、映画監督の名前なんて気にしないに決まってるわよね」

「あはは・・・すみません」

「これでも『追われる者』で有名になったつもりなんだけどね」

「え、あの映画湖南さんが作ったんですか!?」

「まあね」

『追われる者』、主人公はある日、何者かに追われてるという感覚にとらわれ、その感覚から逃げるためにあちこちに逃げるが、その感覚はどこまでもついてくる。最終的に自殺するが、最後の場面で、主人公が自分の住んでいたアパートを見ている、というところで終わる映画だ。これだけ聞いたら面白さはよくわからないと思うが、実際に見てみると脚本、音響、俳優の演技から何から何までが素晴らしく、全国で上映決定がされたほどの名作だ。

「あれ、わたし的には最低の駄作なんだけど、あんなんで全国で上映決定されるなんて、本当にちょろいわね」

「あれで駄作なんだ・・・」

「当たり前でしょ、あんなありふれた作品、私じゃなくても誰でも作れるわ。まあ、最初は名を売るために試しに脚本とか音響とか全部自分でやってみたんだけど、案外なんとかなるものよ?」

「脚本とか音響もやってるんですか・・・」

「本当は他人に任せたかったんだけど、技能が低い奴らばっかで、結局私がやることになっただけよ。俳優とかも本当はもっとちゃんとしたやつ用意したかったんだけど、結局まともだったのはちづるだけね」

・・・あの俳優さんたち、全員すごい演技だったけど、この人の理想はどんだけ高いんだ・・・

「あ、ちづるさんとは知り合いなんですね」

「まあ、仕事柄よく会うわね、うざいけど、あれは間違いなく天才よ、うざいけど」

「あはは・・・」

 

「さて次は・・・あの子かな、ちょっといいかな?」

「あ、私の番ですか?」

「うん」

「私は小鳩あずさです! 『超高校級のテニス選手』として、キラキラ笑顔で頑張ってます!」

『超高校級のテニス選手』

コバト アズサ

「超高校級のテニス選手・・・あーっと、確か、『テニス場の天使』だっけ?」

「あ、あはは・・・確かにそう呼ばれてますけど、その名前は恥ずかしいのであんまり呼ばないでくれるとありがたいです!」

『テニス場の天使』――小鳩あずさは、自身のとてつもなく軽い体重を活かし、風に乗りとんでもない角度から打ってきて、その様から『テニス場の天使』・・・って呼ばれるようになったんだっけかな。

「わたし、テニスは実は中学校になってから初めてやったんですよ」

「え、それで大会とかでいつも優勝してんの!?」

「えへへ、そうなんですよ、と言っても、努力してないわけじゃないですよ? あずさは力がないし、体重もあんまりないので、強いのが来ると吹っ飛ばされちゃうこともあるんです! だからそのための練習とかもしっかりしてるんですよ!」

「へー、えらいな」

「ありがとうございます! これから三年間、よろしくお願いしますね! あずさのキラキラ笑顔でよければいつでも貸すので!」

笑顔を貸すってなんだろう・・・だけど、今の笑顔を見る限り、多分ここらへんも『テニス場の天使』って呼ばれる所以なんだろうな

 

「さて、最後はあの子か」

「あ、やっと私の番? もう遅いよ!」

「え、あ、ご、ごめん?」

何かこの子八雲さんとは別のベクトルで馴れ馴れしいんだけど・・・

「・・・もしかしてその顔、私が誰か忘れちゃったの?」

「・・・ごめん、なさい、全く思い出せないです」

「まあ・・・そうだよね、ごめんね、やっぱりちっちゃい頃の友達のことなんて覚えてないよね・・・」

やばい、落ち込ませてしまった・・・だけど、ちっちゃい頃の友達・・・? そんな時に、超高校級になれるレベルの子のことなんて忘れるわけないと思うんだけど・・・ん?

「・・・もしかして、なつみちゃん?」

「!、思い出してくれたんだね! 新人くん!」

「あはは、ごめん、あの頃から随分とその・・・大きくなってて気付けなかった」

「お、大きくないもん!」

三波なつみ、おれが小学生の高学年ぐらいになるまで仲が良かった女の子だ。残念ながらとちゅうで転校してしまったけど、まさかこんなところで会えるなんて・・・

「えっと、それでなつみちゃん・・・三波は、どんな才能なの?」

「なつみちゃんでもいいのに・・・」

「この歳になって名前でちゃん付けはちょっときつい・・・」

「・・・まあいっか、思い出してくれただけでも嬉しいからね、じゃあ、改めて、私は三波なつみ、才能は、『超高校級のファッションデザイナー』だよ」

『超高校級のファッションデザイナー』

ミナミ ナツミ

「ファッションデザイナー・・・そういえば、子どもの頃そういう職業につきたいとか言ってたね」

「うん! 転校した後も、自分で服をデザインしてみたり、作ってみたりしてたらいつの間にかこんなところまで来ちゃったよ」

「そうなのか・・・でも、すごいね、自分の好きなことでそのまま認められるなんて」

「そんなことないよ、君だって、ちゃんとこうしてここにいるじゃない」

「でも、俺は成り行きでここに来たようなもんだし」

「私も同じようなものだよ、要は気の持ちようだって!」

「あはは、そうかな・・・そう言われてたら、なんだかそんな気がしてきたよ」

「そうそう、何事もポジティブに行かなきゃね!」

三波は子どもの頃と変わらず相変わらず元気だな・・・俺も見習いたいぐらいだ、まじで



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プロローグ「ようこそ絶望学院へ」 3

さてと、次は・・・あの玄関ホールの入口?に集まってる人たちに声かけるか・・・ちょうど五人集まってるし。となると、最初は・・・あそこの人でいいかな、しかしここの人たち本当にカラフルな髪色してるな・・・照明のせいかもしれないけど、あの人の髪は若干紫色に見える。

 

「えっと、すみませ――」

「むっ!」

「うおわ!?」

俺が声をかけた瞬間、俺はなぜか浮かんでいた。それが俺が話しかけた人に投げ飛ばされたと気づいたときには、もう地面に叩きつけられたあとだった。

「い、いてえ・・・何するんだよいきなり!」

「・・・ああ、すみません、急に後ろにたたれたものでつい・・・」

「つい!?」

「いえ、普通後ろに人が立ってたら投げ飛ばすでしょう?」

「いや投げ飛ばさないけど!?」

何かこの人すごい何言ってんだこいつみたいな目で見てくる!

「・・・どうやら、あなたと私ではすこし価値観が違うようですね」

「俺が異常みたいな言い方すんなよ!」

「そういえば、何の用ですか?」

「いや、名前とか聞きに来たんだけど・・・」

「ああ、これは失礼、私は悠木ともこ、『超高校級の剣道部』としてこの学校に来ました、以後お見知りおきを」

『超高校級の剣道部』

ユウキ トモコ

「剣道部・・・いや、だけどあの投げ方見るにむしろ柔道部員とかそこらへんの方が近い気がするんだけど・・・」

「何言ってるんですか、剣士として剣は勿論、投擲、槍など、様々な武術を会得するのは当然のことですよ?」

「それ試合とかじゃ使えないよね!?」

「そうなんですよ、全く」

「全くって・・・」

「まあ、切られなかっただけマシだと思って下されば・・・」

「え? うわ!?」

この人よく見たら腰に鞘つけてる!?

「さて、もういいですか? 私はこれからぴょんぴょん丸の手入れをしなければいけないので」

「・・・ぴょんぴょん丸って、もしかしなくてもその剣ですよね」

「それ以外に何があるのですか、あと剣ではなく日本刀です」

「は、はあ・・・」

時国さんもやばかったけど、この人は別のベクトルでやべー人だな・・・

 

「はぁ・・・」

「いやー、さっきはすごかったですね! 私あんな風に人が飛ぶの初めて見た!」

「俺もあんなふうに飛ばされるのは初めてだよ・・・」

「あはは、やっぱそうです? それにしても、あの人怖いですよねー・・・何か、私の本能的な部分があの人にだけは近づくなって警告してるんですよ」

「そうなんだ・・・って、え?」

「へ?」

「い、いつの間にそこに?・・・」

「ああ、すみません、何か投げ飛ばされてた面白い人がいたのでつい話しかけちゃいました!」

「面白い人て・・・えっと、君は?」

「あ、まだ言ってませんでしたっけ? 男の人に自分のこととか色々喋るのはちょっと抵抗あるけど・・・まあいっか! お姉ちゃんも自己紹介は大事って言ってたしね!」

「私は神樹いちか、『超高校級の霊媒師』なんだ! よろしく!」

『超高校級の霊媒師』

コダマ イチカ

「よろしく、霊媒師って、言ったら、何かこう、よくテレビで見る霊を見る人?」

「あー、違うんだな、これは、やっぱり素人はそういう意味の方で受け取っちゃうかー」

「すまん、あんまりそういうのには詳しくなくて・・・」

「まあ、しょうがないですよ! 私もお姉ちゃんに詳しく説明されるまで全然分かりませんでしたから!」

「あはは・・・」

「霊媒師っていうのは、まあ簡単に言っちゃえば自分の体を幽霊に貸せる人、ってことです」

「・・・」

・・・まさかこの子もやばい人だったりしないよな

「あ、今『こいつもやばい奴か』とか思ったでしょ」

「す、すまん」

「全く、あの剣士だかなんだかよくわかんない人や、偽物と一緒にしないでくださいよ、私は、本当に霊媒体質なんですよ、というかそうじゃなきゃこうしてスカウトされてないでしょ」

「あー・・・それもそうだな」

「ま、とはいえ私もそんなに自分の才能がすごいとは思ってないんだけどね、だってそうでしょ? 私はただ体を貸してるだけなんだから、むしろ私の体に入ってまでしゃべりたがる幽霊の方が私はすごいと思うんだよね、まあそれよりもすごいのがお姉ちゃんなんだけどね!」

「お姉さんが大好きなんだな」

「もう大好きってもんじゃないよ! 愛してるといってもいいね! だから本当はここに来たくなかったんだよねー、ほら、ここって学園にずっといなきゃダメじゃん? お姉ちゃんに会いに行けるのも休みの日ぐらい、こんなんじゃお姉ちゃん分が足りなくて私死んじゃうよ・・・」

「あ、あはは・・・まあ、頑張れよ、俺にも何かできそうなことがあったら手伝うからさ」

「そうですか・・・まあ、頼りにしてないけど、いざとなったらお願いします」

「正直だなお前・・・」

「それが私の取り柄なんで!」

ちょっとシスコンこじらせすぎてるけど、今まで話してきた子の中だとダントツで喋りやすいな、小鳩も、三波もそこまで話辛いってわけなんじゃないんだけど、やっぱりなあ・・・八雲さんは・・・まあ、うん

 

「さてと、次は・・・」

「ちょっと待ちなさい?」

「はい?」

俺が呼ばれたんで、そちらの方に振り返ると、そこには金髪の人がいた・・・この人、中々のサイズをお持ちで

「えっと、何か御用ですか?」

「ええ、あなた、水城新人で間違いないかしら?」

「そうですけど・・・えっと、何かあなたに相談されたことってありましたっけ・・・」

「私はないわ、だけどお兄様たちがあるわね」

「お兄様・・・?」

「ああ、失礼、名乗ってなかったわね、私は円城寺れいか、『超高校級のお嬢様』よ」

『超高校級のお嬢様』

エンジョウジ レイカ

「円城寺・・・ああ、あの人か」

そういえばちょっと前にそんな苗字の人から相談を頼まれたな、あの人異様に妹の写真見せてきたからよく覚えてる・・・そういえば、この人、あの写真に写ってた人だな

「・・・ていうか、超高校級のお嬢様ってことはもしかして・・・あの人たち、円城寺家の人たちなの・・・?」

「あら、ご存知じゃなかったのかしら? てっきり私は知ってるものだと」

「いやー・・・だって、あの人たち相談してきた内容が今度の妹への誕生日プレゼントをどうしようか、だったんで・・・」

「お兄様ったら・・・」

「まあ、とりあえず妹さん・・・円城寺さんの好みとか聞いて、ブローチがいいんじゃないかと提案しました」

「ああ、あれあなたが選んでくれたの? 中々のものだったわ、ありがとう」

「いえ、と言っても本当に僕はブローチがいいんじゃないかって言っただけなんで・・・」

「それでも、選んでくれたことには変わり無いでしょう? ・・・で、あなたに相談があるんだけど」

「はあ、何ですか」

まさか円城寺家の人から二回も相談を頼まれるとは・・・俺の才能も中々捨てたものじゃないな

「あなた、お兄様の写真持ってたりしないかしら?」

「・・・は?」

「私、いつもお兄様の写真持ち歩いてるんだけど、何故か今持ってなくて・・・」

「えーと・・・確か、持ってたはずですけど、あれいつものカバンに入れてたもんで・・・つまり、今は僕も持ってません、すみませんお役に立てなくて・・・」

「・・・そう、いえ、いいのよ、だけどどうしようかしら・・・ただでさえお兄さまたちに会えないだけでも辛いというのに、写真もなくしてしまうだなんて・・・」

「お兄さんがお好きなんですね」

「当然よ! お兄さまたちはいつもれいかを大事にしてくれるもの! 笑顔が可愛かったから別荘を買ってくれるほど愛されてるのよ?」

「そんだけで別荘を!?」

「ええ」

円城寺財閥・・・規格外の金持ちだとは聞いていたが、まさかそこまでとは・・・

「・・・まあ、それはさておき、今の私は円城寺家の円城寺れいかではなく、ただのクラスメイトの円城寺れいかよ、だから、緊張せず仲良くしてくれたら幸いだわ」

「あ、あはは・・・あんまり期待には答えられないかもしれないですけど、頑張ります」

「よろしくてよ、これから三年間、一緒に頑張りましょうね」

お金持ちだからちょっと会話がぎくしゃくしちゃったけど、案外話しやすい人だったな・・・だけど、この人はブラコンか・・・家族が好きすぎる人多すぎない?

 

「やっぱり才能がある人って若干壊れてるところがあるものなのかなあ・・・」

「遅い! 遅すぎますぜ! ジョンくん!」

「うわ!?」

いきなり目の前に女の子が!?

「え、いや何が遅いの? ていうかジョンくんて誰・・・?」

「あんたの名前がわからないので、とりあえずジョンくん呼びすることにしたんですよ!」

「えぇ・・・俺の名前は、水城新人って言うんだけど」

「そうなんですか、まあ、何かジョンくんの方がしっくりくるんで、これからあんたの名前はジョンくんだ!」

「嫌だけど!?」

やばい、今まででトップクラスで喋りづらい人だ・・・まだ時国さんは話が通じたけど、この人はダメだ・・・

「え、えっと、君の名前はなんていうのかな? ほら、今は自己紹介する時間だし?」

「ああ、そういえばそうでしたね、では、ごほん」

「そこ行くジョンくんに、ついでに周りのお嬢さん方! お控えなすって! あっしは『超高校級の陸上部』、榊むつみですぜ! 榊むつみ! 榊むつみとはあっしのことですぜ!」

『超高校級の陸上部』

サカキ ムツミ

「あ、あはは・・・げ、元気だね」

「当たり前ですぜ! あっしの家の家訓は、一に元気! 二に努力! 三四がなくて、五に元気ですから!」

元気二回言ってるし・・・

「ま、とりあえずこれからよろしくお願いしますぜ! ジョンくん! あっしは声がでかくて、ちょーっとばかしめんどくさいとは思いますが、付き合いが長ければ長いほど魅力がわかるスルメなんてよく褒められますから!」

「それ褒められてんの・・・?」

「まあ、うるさいのもめんどくさいのも事実なんで! だが、そんな逆境にも負けず、あっしは一番を目指すんですぜ! 一位の栄光にどうか、榊むつみ、榊むつみをよろしくおねがいしまーす!」

騒がしい人だけど、だけど、自分の欠点をちゃんと理解して頑張ってるし、割といい人、なのかな・・・三年間、頑張って付き合ってればいいところの一つは見つけれる・・・かな?

 

「さてと、最後は・・・あの子か、ちょっといいかな?」

「・・・なんでしょうか」

「いや、名前を聞きにね?」

ここにいる人たち、今がちゃんと自己紹介の時間だって理解してる人何人いるんだろう・・・

「ああ、そうでしたね、私は藍乃あいか、『超高校級の探偵』です」

『超高校級の探偵』

アイノ アイカ

「探偵!? すごいな、探偵ってあれだろ? やっぱり事件とかたくさん解決してるんだろ?」

「探偵という職業に夢を見過ぎです、死神じゃあるまいし、そんな毎回毎回殺人事件に関与なんかしませんよ、大体、警察も無能ってわけじゃあるまいし、普段は浮気調査とか、そんな感じの依頼だけですよ、探偵は」

「そ、そうなんだ・・・でも、じゃあ何で君は超高校級の探偵なんて呼ばれてるんだ?」

「・・・私がその、死神だからですよ」

「へ?」

「・・・冗談です、間に受けないでください」

「あ、ごめん」

この子もこの子で中々に扱いづらいな・・・

「まあ、似たようなものかもしれませんがね、私は主に、警察でも解決できないような難事件を解決するのが仕事なんですよ」

「・・・いやめちゃくちゃすげえじゃん!?」

「そんな褒められたことじゃないですけどね、要は私は誰かが死ななければ生活費すら手に入らないんですから、今は高校生でまだ両親からお小遣いなどをもらえますが、大人になったらそうとも言ってられませんし、独立もしなければいけません」

「今は独立してないのか?」

「はい、今は私の師匠の探偵事務所で厄介になっています」

「超高校級の探偵の師匠か・・・何か凄そうだな」

「実際、私なんかよりも全然すごい探偵ですよ、うざいですけど」

「そ、そうなんだ・・・」

「・・・それより、聞きたいことがあるのですが」

「ん、何だ?」

「・・・あなたは、今の状況をどう思っていますか?」

「どうって・・・いきなり聞かれてもな」

「では、質問を変えましょう、あなたも校門に入ったら頭痛がして、気絶したらここにいた口ですか?」

「あなたも・・・ってことは、君もか?」

「はい、というか、ここにいる皆さんそうですよ」

「それは・・・」

偶然・・・そんな一言で片付けていいことなのか・・・?

「はっきり言って、今の状況は異常です、何かとんでもないことに巻き込まれている・・・そんな予感がするんです」

「・・・探偵の勘、ってやつ?」

「・・・そう、かもしれませんね、私は勘はあまり信じていないのですが、あなたも気お付けてくださいね・・・これは、私の勘ですが」

彼女はそういい、一息溜めたあと

「・・・誰か、死ぬかもしれません」

「・・・え?」

「勘、ですけどね」

「そ、そうだよな、うん、勘、だよな」

・・・誰か死ぬかも知れない、そんな彼女の言葉が、忘れようとしても、簡単には忘れられなかった。




ちなみに、それぞれの衣装は何かそれっぽいもの着てると思ってください、あいかちゃんの場合では、探偵の時の衣装だったりします。
後、自分の活動報告の方で『ダンガンロンパアンサンブル ~希望の転校生と絶望の学院~ 『自由行動』』
というものを作りましたので、よかったらどうぞ、いつでも投票をお待ちしてます。


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プロローグ「ようこそ絶望学院へ」 4

さて、と、後は適当に散らばってる人たちに声をかければ終わりかな

 

「まずは、っと」

「おー、何だ何だ、誰をナンパするかとか品定めでもしてるのかー?」

「し、してませんよ!」

「いやいや、否定しても、やっぱりお前も男だし、私みたいなパーフェクトボディを持つ女性に見とれてもしょうがないからなあ」

話しかけるというか、いちゃもんをつけてくる彼女、だけど・・・

「・・・子ども体型じゃん」

「お前今なんつった!?」

「いいえ、なんにも?」

「子ども体型じゃねえし! これから成長するんだよ!」

「はいはい、そうですねー」

「何だその舐めきった態度はー!」

「いや、最初の会話があんなだったら誰でもこういうふうになりますって、それで、あなたは?」

「ぐぬぬ・・・ふん・・・私は双葉みづき、『超高校級の幸運』だ」

『超高校級の幸運』

フタバ ミヅキ

「幸運・・・」

「そう、私は一般的な高校生の中から抽選でただ一人選ばれた存在! つまりここの奴らより私の方がすごいんだよ!」

「まあ、確かにある意味すごいかもしれませんけど・・・威張るほどでは」

「な、わ、私は中学校の時ではみなちゃんと一緒に『幸運の双子』って言われてテレビにも出たことがあるぐらいすごかったんだぞ!」

「幸運の、双子、ああそういえば聞いたことがあります、その双子に会えたら幸運が訪れるとか、だけどちょっと出ただけですぐにいなくなっちゃいましたよね」

「ぐ、だ、だけど未だに私たちのところに来る人たちは多いんだぞ!」

「・・・だけど、それだとむしろ当選するの周りの人の方なんじゃ・・・」

「う、うるさいうるさいうるさい! いちゃもんばっかつけて何だよ!」

「あはは、すみません、まあさっきのお返しと思ってくれれば・・・だけど、幸運ってすごいと思いますよ、俺なんて『超高校級の相談窓口』だなんて微妙な才能ですもん」

「相談窓口? 変な才能だなー、お前、下手すると私より微妙なんじゃないか?」

一応微妙な才能だとは自覚しているのか・・・

「まあ、そうですね、幸運より下かもしれませんね」

「そうだろそうだろ? わかってるじゃないかお前!」

「ありがとうございます」

この人もめんどくさい人だけど、比較的扱いやすい人ではあるな、うん

 

「次はー・・・」

「あいやー!」

「うわっ!?」

な、なんだ!?

「あ、ごめんごめん、周りを見てなかったアル、怪我はないアルか?」

「な、ないけど・・・」

「・・・? 本当に大丈夫アルか? 痛いとこあったら言うアルよ?」

大丈夫、大丈夫だけど・・・なんでこの人取ってつけたようにアルとか言ってんの・・・?

「・・・あ、もしかして私の口調が気になってるアルか?」

「あ、う、うん」

「あはは、一応、普通に喋れはするんだよ? だけど、私の叔父さんが『お前は中々学校でも馴染めない子だから、いっそのことアルとか語尾につけたらどうだ、きっと馴染めるぞー、がはは!』って、言ってくれたの、だから私はこうしてアルを語尾につけるアルよ! 恥ずかしいのなら言わなきゃいいのに顔を赤くしながら言ってくれたから、つけなきゃ叔父さんに申し訳ないアル!」

・・・それ、ただ酔ってただけなんじゃ・・・

「えっと、それで何やってたんですか?」

「ああ、ずっと動かないでいるのも性に合わないから、ちょっと体を動かしてたアルよ」

「そうなんですか・・・」

「だけど、やっぱり狭い場所だとダメアルね、むつみちゃんじゃないけど早く体育館を探したいアルよ」

「そうなのか・・・そういえば、君の名前は何ていうの?」

「あ、まだ言ってなかったアルね、私の名前は龍泉寺レンレン、『超高校級の拳法家』アル」

『超高校級の拳法家』

リュウセンジ レンレン

「拳法家?」

「そうアル、私は叔父さんから教えてもらった、『ドラゴン拳法』の使い手アルよ!」

「ド、ドラゴン拳法・・・?」

なんかすごくB級映画で出てきそうな名前だな・・・

「そう、残念ながら私の叔父さんは身につけることが出来なかったけど、私は叔父さんとの修行の末、ついに『ドラゴン拳法』を身に付けることができることができたアル!」

「そう・・・」

「だけど、私はもっと高みを目指すアル、目指すは、全国で『ドラゴン拳法』会得者を増やすことアル!」

「お、おう・・・ちなみに、何て叔父さんに教えてもらってたんだ?」

「うさぎ飛びで神社の階段を登ったり、タイヤをつけて庭を百周したり?」

「・・・」

「とにかく、叔父さんがいなければ私はここにいないアル、叔父さんには感謝してもしきれないくらいアルよ!」

・・・それは、ただ単に龍泉寺さんに才能があっただけなのでは・・・いや、龍泉寺さんの才能を開花させたという意味ではある意味叔父さんすごいのかもしれないけど。

 

「次は・・・」

「止まれ!」

「え?」

「両手を上げて、頭の後ろに組め!」

「え? え?」

「ハリィ!」

「は、はい!?」

背中に何か突きつけられてるという異常の状況の中、言われるがままに頭の後ろで手を組む、ていうかまじで何この状況・・・

「名前と才能、所属を言え」

「え、えっと、水城新人、才能は『超高校級の相談窓口』で・・・所属って何?」

「ふむ・・・嘘は言ってないな?」

「言ってないって・・・」

「・・・よろしい、じゃあ、普通の状態にしていいですよ」

「は、はあ・・・」

俺は両腕を下ろし、後ろから聞こえる声の持ち主の方に振り返る。そこには、ピンク色の髪をした女の子がいた。

「えっと・・・何のよう?」

「いやね? 事務所から見知らぬ場所で見知らぬ男性と出会った場合はこうしろと訓練されてたから、つい、意外と手で銃の形作って背中に当ててもわからないもんでしょ?」

「ま、まあ確かにわからなかったけど・・・」

「ごめんごめん、あ、ちなみに私は羽森つばさっていうんだ、一応『超高校級のアイドル』ってことになってるよ」

『超高校級のアイドル』

ハモリ ツバサ

「羽森つばさって・・・『merry-melody』の?」

「はい! ご存知のようで何よりであります!」

「いやいや、むしろしらない人の方が珍しいレベルの日本一のアイドルじゃないか・・・」

『merry-melody』、二人組のアイドルで、当初はただのご当地アイドルだったが、相方の子のカンペ芸、そして、羽森さんのツッコミというバラエティ番組による人気だけでなく、歌とダンスも完璧で、瞬く間に日本一のアイドルになった子だ。

「だけど・・・何かテレビで見るのと印象が違うな」

「あはは、当たり前じゃん、今はマスコミとかいないから言っちゃうけどさ、やっぱりメイクとか、編集とかの影響は強いからね」

「そうなのか・・・でも、それ抜きにしてもやっぱりかわいいし、やっぱり『超高校級のアイドル』なんだな、って実感できるよ」

「あはは、ありがと、そう言ってもらえるとわざわざこうして『超高校級のアイドル』としてこの学校に来た甲斐もあるってもんだよ」

「それにしても、やっぱりすごいなあ・・・俺でも知ってるような有名人がいっぱいいて、俺は相談窓口なんてわけわからない才能だから何か肩身が狭いよ・・・それにしても、わざわざって何か、来たくなかったような言い方だね」

「・・・」

俺がそう言うと、羽森さんは何か微妙な顔をしてしまった。

「あ、ごめん、もしかして聞かれたくなかったようなことだった?」

「・・・いや、そういうんじゃなくてさ、やっぱり、超高校級と呼ばれることはあるなーって思っただけだよ、すごいね、そんな何気ない会話から悩みのタネを見つけ出すなんてさ」

「え、えっと・・・」

「・・・なーんてね」

「え?」

「あはは、冗談だよ、冗談、半分ぐらいはね?」

「は、半分か・・・」

「まあ、女の子は秘密がちょっとあったほうが魅力的だからね、ま、というわけでばいばい」

そう言って、羽森さんは去っていった。

「・・・聞かれたくないことだったのかなあ」

 

「さて、と」

「あ、どうもー」

「え? あ、こんにちは」

俺が次は誰に話しかけようか考えていると、何かすっげえ奇抜な格好した子が話しかけてきた。

「えっと・・・?」

「んー・・・? あ、もしかして私の服が気になるんですかぁ?」

「いやね、流石に気になるといいますか・・・」

「ふふふ、この衣装はですね、私の才能とふかーいふかーい関わりを持っているのですよぉ?」

「へー、どんな才能なの?」

「えへへー、じゃあ、おほん」

「天よ! 地よ! 水よ! この世の全ての生き物よ! 私は七夕セブン! 弱きを守り、強きを挫く、我が名は熊沢ひめの! 今日も天の川に変わって盗んじゃうよ☆」

「・・・」

「あ、ちなみに才能は『超高校級の怪盗』です」

『超高校級の怪盗』

クマサワ ヒメノ

「へ、へえ・・・って、え? 怪盗? 怪盗って、あのルパンとかの?」

「そうだよー」

すげえな、まさか犯罪者までスカウトしてるとは思わなかった・・・、それにしても、『七夕セブン』か、聞き覚えはあるな、確か全国で盗みを働いている怪盗だったか。だけど標的はいつもなんからの悪事を働いている大富豪ばかりで、盗んだものも元々の持ち主がいるなら持ち主に、いないのならば警察に大富豪の悪事の証拠と一緒にいつの間にか届けているという、義賊、だったっけ。

「あはは、もしかして私が怪盗だからってあなたのものを何か奪うかも、って心配してるんですかぁ?」

「い、いやそんなことはないぜ?」

「大丈夫ですよー、私、悪人以外からは何も盗みませんからー、だけど、もしあなたが何らかの犯罪を起こしたときは・・・覚悟してくださいねー?」

「ひゃ、ひゃい!」

間延びした喋り方で、いまいちスゴさがよくわからなかったが、最後の言葉をしゃべる時に開けた目は、本気だった・・・悪いことだけはしないでおこう、いやしないけどもね?

 

「さて、最後はあの人か・・・」

「あ、こんにちは! 私の番ですか?」

「おう、こんにちは、一応、君が最後だよ」

「おお! なら最後のトリとして立派な自己紹介をしなければいけませんね!」

「私の名前は氷野くるみです! 『超高校級の薬剤師』としてこの学校に来たんですYO☆」

『超高校級の薬剤師』

ヒノ クルミ

「へー、薬剤師ってことは、薬を作ったりしてるのか?」

「YES! と、言っても私は薬を作ってるわけではないんですけどね!」

「え?」

「なんでか知らないんですけど、私が『料理』して出来たモノが何故か料理として扱われてるんですよ! 不思議じゃないですか? やっぱあれですかね、良薬口にあべし! ってやつなんですかね?」

「色々間違ってるけど・・・料理って、何入れたりしてるんだ?」

「そうですねー、最近だと、新鮮な野菜はそのまま食べても美味しいからって採れたてのじゃがいもをそのまま煮て作ったカレーなどを作りましたね!」

「へー、美味そうだな」

「ですよね! 私の先輩もあまりの美味しさに泡を吹いて気絶しちゃったんですYO! やっぱり土をつけたままのが効いたんですかね?」

「つ、土をつけたまま!?」

「YES! ついでに土には栄養がたっぷり含まれていると聞いたので土を鍋の半分くらい!」

「鍋の半分!?」

それもうただの泥じゃねえかな!?

「え、えっと、超高校級の薬剤師、なんだよね?」

「そうですよ? 先輩が風邪をひいてしまった時に、料理を作ってあげたんですけど、間違ってじゃがいもにかけちゃったら、何故かじゃがいもがたくさんできて校庭に埋まるほどになったんですYO!」

「へ、へー・・・そうなんだ」

これはあれかな、無自覚の天才、って奴なのかな・・・

 

「さて、自己紹介はこんなもんかな・・・」

「ちょっと待ちなさいよ、まだあんたの名前とか私聞いてないんだけど」

「あれ・・・そうでしたっけ?」

「新人くん・・・一応君の自己紹介の場でもあったんだよ?」

「あ、あはは・・・すまんすまん、じゃあ、もう知ってる人もいるけど改めて、俺は水城新人、『超高校級の相談窓口』だ、よろしくな」

『超高校級の相談窓口』

ミズシロ アラト

「相談窓口?」

「まあ、相談窓口と言っても、何でも屋みたいなもんだけどな、色々な相談を受けて大体のことはできるようになったし、まあ器用貧乏とも言えるけど」

「おお! そうなんですか! じゃあ水城さん! 今度私の料理食べてくれませんか?」

「え゛」

「何故だか私の料理食べるとみんな気絶しちゃうんですYO! だけど、『超高校級の相談窓口』なら何か凄そうですし多分食べれますよね?」

「え、いや、え」

「・・・水城、どんまい」

「誰か・・・医者を呼んでくれ・・・」

「薬剤師ならそこにいますが」

「そういえばカレーにはチョコをいれたら美味しいと聞きましたね・・・じゃあチョコは勿論、カカオ豆とか、後は何か色合いが似てますし土入れましょう土、栄養たっぷりですね!」

「oh・・・」

「ど、どんまい新人くん・・・」

そんな、平穏な日常とは言えないが、それでもまだ平和なこの時間。しかし、それを壊すものが唐突に現れる。

『ピーンポーンパーンポーン』

「え、何?」

『えー、今日は入学式当日なんですけど・・・集合場所の体育館に誰も集まってません・・・オマエラ! 遅いよ! 遅すぎるよ! ナマケモノものかよ! いやもうちょっとナマケモノでもマシな速度で動くよ! とにかく、自己紹介なんていいからさっさと体育館に集まんないと、お尻ペンペンの刑に処すからね! 全くもう』

「・・・今の、何?」

「・・・」

その声が玄関ホールに響いた瞬間、先ほどまでの和やかな雰囲気はどこにもなく、異様な空気がこの場に流れていた。

「・・・とりあえず、体育館に行くしかなさそうですね」

「で、でも場所はまだわかんないし・・・」

「大丈夫です、ここを調べた時にこの場所の地図を見つけましたので」

「それ先に言ってよ!?」

「すみません、言おうと思ったら水城さんが入ってきたもので、言うタイミングを失って・・・」

「す、すまん」

「いえ、大丈夫です。とにかく急ぎましょう、流石に本当にお尻ペンペンなんてやるとは思いませんが、万が一ということもありますし」

「そ、そうだなー、流石にこの歳になってお尻ペンペンとか嫌すぎるし」

「では、皆さん、こっちです」

玄関ホールから出て行く藍乃さんを追いかけて、俺たちは体育館に向かう。そこに、とてつもない絶望が待っているとも知らずに・・・。



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プロローグ「ようこそ絶望学院へ」 5

「・・・ここが体育館、でいいんだよな?」

「多分そうだと思うけど・・・」

「ていうか、すっごい近かったな、ほぼ一本道じゃん」

「まあ元々十六人目、待ってただけだしね、どこぞの遅れた十六人目のせいでだいぶ来るのが遅れちゃったけど」

「あ、あはは」

「とりあえず、さっさと体育館の中に入りましょう! あっしいちばーん!」

「あ、ずるいです! じゃあ私は二番です!」

「じゃああずさは三番!」

「ちょ、そんな走ったら怪我するアルよ!」

「あははー、みんな元気だねぇ」

「全く・・・ま、いいわ。こんなところで油売ってる暇あったらさっさと中に入りましょ」

「そうですね」

そう言って全員が体育館と書かれたプレートがある扉を開けて中に入っていく、俺も最後らへんで入ろうとしたが・・・

「・・・あれ、神樹、入らないのか?」

「・・・」

「神樹ー?」

「え、あ、はい?」

「いや、はいじゃなくて、みんな入っちゃってるぞ」

「あ、あれ・・・? ああ! 本当だ!」

「たく、何ぼーっとしてんだよ」

「ぼ、ぼーっとしてたわけじゃないもん! ただ・・・」

「ただ?」

「・・・ただ、入りたくなかっただけ」

「はぁ?」

「何となく、嫌な予感がするんだよ・・・この体育館の中から・・・」

・・・探偵の勘の次は霊媒師の勘、か。

「・・・そんなんただの気のせいだって、ほら、置いてくぞ」

「・・・そう、だよね。うん、そうだよね! じゃあ、中に早く入ろ! みんなまってるから!」

「お前に言われたくねえよ・・・」

明らかに無理してる感が見え見えだったが、まあ落ち込まれてるよりはだいぶましだ。中に入ると、そこにはトロフィーや、よくわからない金ピカの刀などあり、その奥にも扉があり、そこが開けっ放しになってることからその先が体育館だということが分かる。それにしてもトロフィーの量結構あるな・・・だけど、これもほんの一部なんだろうな。

「と、こんなことに気をかけてる暇はなかったな、俺も早く体育館に入ろう」

そう、独り言を呟き、俺は体育館の方へ足を進める・・・中に入ると、そこには至って普通な体育館だった。ただ、中央には椅子が並べられていて、数えてみるとそれはちょうど十六個ある。

「・・・これは」

「・・・入学式?」

「うわ!?」

「あ、いたんですね時国さん」

「・・・」

「き、気付かなかったのは謝るんでその目やめてください・・・」

「あんたら何してんのよ・・・だけど、確かに簡素ではあるけど、確かに入学式っぽいわね、ということはここで行う、ということで合ってるようね」

「だけど、肝心のあっしらを呼び出した張本人がいないですぜ?」

「私たちを呼んで、当の本人が遅れるというのは感心しませんわね」

そう、各々が愚痴を言っていると、突然”それ”は現れた。

『オマエラー! やっと集まったのか!』

「・・・え?」

「声は聞こますが、声の持ち主はどこにいるのでありますか・・・?」

「・・・あっち」

そういい、時国さんがゆっくりとステージの方を指差す、俺たちは全員時国さんが見ている方向を見る、すると。

『ここだよここ! 全くもう、君たちが遅いから先生は待ち続けて』

そう言って、”それ”は俺たちの目の前に姿を現す、”それ”の姿は・・・

「こーんな姿になっちゃったよ!」

――変なぬいぐるみだった。色は右半分は黒、左半分は白というモノクロカラーで、何となくクマっぽい形をしていたが、白い方の表情は黒い丸の目に、口も至って普通のマスコットポイとも言えなくはなかったが、黒い方の表情は目はギザギザの赤い目に加え口を釣り上げギザギザの歯を見せつけている・・・やはり変なぬいぐるみだった。

「・・・へ?」

「パ、パンダが喋ってるー!?」

「んー、パンダかどうかは微妙なところだけど、多分あの変なぬいぐるみの中からスピーカーか何かで喋ってるんじゃないかなぁ、私もたまに盗む時に使ったことあるし」

「こらー! 僕をそんなちゃちなおもちゃと一緒にするんじゃないよ! 後僕はパンダじゃなくてクマだよクマ!」

「しかも動いてますー!?」

「ていうか、普通その色合いじゃわかんないだろ・・・」

「突っ込むところはそこなんですか・・・? まあ、動いてるのも恐らくラジコンかなにかなんでしょう」

「全く・・・オマエラは夢がないなあ・・・もうちょっとメルヘンチックに考えなよ! 普通にクマさんが喋ってるって認めなよそんな無粋な推測ばっかりしないでさー! はあやだやだ、もうちょっとボクみたいにメルヘンチックな想像をしたりしなよ、自分たちが作ったロボットに世界をぶっ壊される想像とかさ・・・」

「それのどこにメルヘン要素があるのかな!?」

「ちづる、ちょっと黙ってなさい、話が進まないわ、声を聞く限り、こいつが私たちを呼び出した張本人らしいし、さっさと話させて状況を確認するのが先決よ」

「でもこんなクマにまともな話ができるのでありますか?」

「オマエラさあ、ボクのことをさっきからこいつとかクマとかパンダとか超プリティマスコットとか言うなよ!」

「いや、別に最後のは言ってないし・・・」

「ボクにはちゃんとモノクマっていう名前があるんだよ! そして、この『希望ヶ峰学園』の学園長なのだー!」

希望ヶ峰学園長

モノクマ

「・・・は? こんなクマが、学園長?」

「そうなのです!」

「まあ、希望ヶ峰学園というのは才能がある者が入る場所、そういう所の学園長ならまあぬいぐるみの姿で出てきても別に不思議ではないのでは? 才能がある人というのは少しばかり普通ではないところがありますから」

「あなたがそれを言うの・・・?」

「はいはい、とりあえず時間が押してるから入学式を始めるよー、ほらほら、席についてー」

モノクマがそう言うと、みんなは渋々それぞれ自由に席についていく。

「みんな座ったねー? それじゃあ、起立! 礼! おはようございます!」

「・・・」

「全く、協調性がない奴らだなあ・・・はいはい、それじゃあこの学園長である僕がこの学園の説明をしていくよー」

「えー、君たちはそれぞれこの世界の希望とも言える才能を持つ、超すごい高校生の集まりなのです、だけどさあ、そんな希望の象徴とも言える君たちが外に出て事故にあったり、君たちの才能に嫉妬した人たちに殺されたりするかもとボクは不安なのです・・・どのくらいなのかというと、昼も寝れない生活が続くのです、こんなんじゃあおちおち冬眠もできないよ! ということなので! 君たち、超高校級の希望とも言える君たちには!」

「この学園内だけで生活してもらうことにしたのです! いやー、ボクって生徒想いのいい先生だなあ」

「はあああああああ!?」

「そんな、困りますわ。せめて一週間に一度、いえ二度は家に帰ってオニイサマニウムを吸収しませんと私やっていけませんわ」

「私もオネエチャンニウムを一週間に三度は吸わないと死んじゃうよ!」

ふたりの叫びはともかくとして、周りもそれはちょっとという雰囲気が漂っている。

「え、えええ!? 二人共そんなに重大なものを吸わないとやっていけないの!? た、大変だよやこちゃん! 学園長さんに抗議しなくちゃ!」

「あいつらのデタラメを間に受けてるんじゃねえわよ全く・・・まあ、別にいいでしょ、むしろあいつらにはイイ薬なんじゃないの? 確かに私たちの才能に嫉妬して犯行に及んだ、というのもありえなくはない話だし、三年間ぐらいならいいでしょ」

「え、誰が三年間なんて言ったの?」

「はぁ? まさか大学までずっとこいつらと一緒なんて言わないわよね」

「いんや? ていうか、そこの二人が変なところで変な叫びをあげるからこうして僕の話が遮られてるんでしょ! 先生の話はちゃんと聞きなさい!」

「ええ、それで、この学園生活の期限を発表しまーす! オマエラは高校の三年間の過程を終えても、大学生になろうが、大人になってしわくちゃになってミイラになったとしても、ずーーーっとこの学園にい続けてもらいます! もちろん、外に出ちゃいけないよ? オマエラが危険な目にあっちゃったらボクはやっていけないよ、おろろ・・・」

「はあ? あんたふざけたことぬかしてんじゃねえわよ! つまり一生こんなところで過ごせって言うの!? そんなのごめんよ!」

「そ、そうですよ! いくら冗談でもひどすぎます!」

「冗談なんかじゃないよ」

「っ・・・!?」

 

「ボクは冗談なんかいうやつが大っ嫌いなんだよ! どのくらい嫌いかというと冗談を言ったやつを上段投げするくらいには嫌いなんだよ!」

一瞬、一瞬だが、モノクマの雰囲気が変わった、今までのふざけた雰囲気ではなく、殺意とも、敵意とも言えないようなごちゃまぜの感情をぶつけられた。そして、そんなものをぶつけられた俺たちは、この学園生活が一生続くということが真実であると嫌でも分からされた。

「そ、そんな・・・」

「あ、でも安心してね? オマエラのための資金は潤沢だからさ! 食料とかの補給は勿論色々な娯楽設備を配置していってあげるつもりだからね!」

「そ、そんなのいらないからさ、私たちを外に出せよ!」

「そ、そうです! 私まだ部長に教えてもらいたいことがいっぱいあるんです!」

「私だって、まだまだいっぱい作りたい服とかあるのに・・・!」

「全くもう、オマエラはわがままだなあ・・・自分の意志でこの学園に来たっていうのに、入学式早々出せなんて言うなんてさ・・・だけど、まあぶっちゃけないわけじゃないよ、この学園から出る方法」

「な、何だ・・・あるならあるって早く言ってよ・・・」

「君たちみたいなわがままな子達のために、ボクは特別ルールとして『卒業』というルールを作ってあげたんだよね」

「『卒業』・・・?」

「そう、オマエラにはさ、やっぱり学生だから秩序というものを守らなくてはなりません、だけど、万が一その秩序を破った人が出た場合は、その破った人だけが学園を出ていかなければいけません」

「・・・その秩序、とは?」

「うぷぷ、それはねえ・・・」

モノクマが、その条件を言う・・・俺たちはきっと、普通の学校に行って、普通の学園生活をして、普通な卒業を迎えるはずだったのだろう、だが・・・

「人が人を殺すことだよ・・・」

この場では、そんな普通などは望むのは無駄だと、ようやく全員が、理解したんだ。



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プロローグ「ようこそ絶望学院へ」 6

「ころ・・・す?」

誰かが、モノクマの事を言ったことを繰り返す。それでやっと理解あのクマが何を言ったのかを理解できた。

「そう! 殴殺刺殺撲殺斬殺焼殺圧殺絞殺惨殺呪殺、殺し方は問いません! 殺したもん勝ちですの早い者勝ちだよ!」

「殺すなんて、ふ、ふざけんじゃねえ! そんなことするわけねえだろ!」

「み、水城の言うとおりだよ! そ、そんなひ、人を殺すなんて、そんなこと出来るわけないじゃん!」

「あれ? もしかして君ベジタリアンの人なのかな? 君たちが食べてる肉だって動物さんたちの命を奪ってるんだから、そういう意味では君たちは十分な殺人鬼、おっと間違えた、殺動物鬼なんだよ?」

「ひ、人と動物を一緒にしないでよ!」

「えー!? 君は動物じゃないのかい!? 霊長目ヒト科じゃないのかい!? こいつは驚いたぜ・・・まさかボクの生徒の中に動物じゃない子がいるなんて・・・だけどボクは差別なんてしないよ! ボクは生徒想いのいい先生だからね! とりあえず動物じゃない生徒なんてさすがのボクでも初めてだし専用の隔離室でも作ろうか?」

「・・・もう、いい」

「え?」

「もういいって言ってる! あんたのふざけた言い分はもう聞き飽きた! これ以上そんなふざけた事言うようならあんたを、壊す」

「そうだねぇ、もしかするとこれも入学式の催し物って可能性も低いけどあるかもしれないけど、流石にこれはやりすぎだよぉ?」

俺たちがモノクマの言葉にひるんでいると、龍泉寺さんと熊沢さんが前に出る。それぞれ臨戦態勢に入っていて、今すぐにでもモノクマを壊しそうな雰囲気を放っている。

「で、でもモノクマを破壊したところで、まだ予備とかいるんじゃ・・・?」

「・・・その可能性は、低いと思うわよ。あんな高性能なラジコン、そう簡単に作れるもんでもないし、仮にあったとしても二、三個ぐらいよ・・・希望ヶ峰学園がこの件に関わってない、というのが大前提だけどね」

「それでも、こんな奴に従うぐらいだったらその可能性にかけるほうがいい!」

「何でオマエラは早速学園長のボクに暴力を行おうとしてるんだよ! いくら超高校級の子達だからって流石にこれはやりすぎたぞー! い、言っておくけどボクには高性能爆弾が積んであるんだからね! べ、別に攻撃されてもオマエラが死ぬだけなんだからね!」

「じゃあ、こうするだけだよぉ?」

そう言うと、熊沢さんはこっちに戻ってきて、パイプ椅子を持ち上げたと思うかと、ものすごい勢いでモノクマの方にそれを投げ飛ばした。当然、そんなものを避けきれるはずもなくパイプ椅子はモノクマに命中し、モノクマは爆発してしまった。

「な、何だあのスピード・・・」

「・・・七夕セブンはかなりの力の持ち主だとは聞いてましたが、まさかあれほどとは・・・」

「藍乃殿は警察の捜査を手伝ってるのに七夕セブンには関わらなかったでありますか?」

「私殺人事件専門だから・・・」

「だ、だけどさ・・・これでモノクマはいなくなって、平和に・・・」

「そんなわけないじゃん!」

「うわぁ!?」

神樹の奴がものすごいフラグ臭のする発言をしたというか、している途中にモノクマは最初と同じように台の後ろから現れる。

「全く! 学園長を踏んだりばらしたりしたことを生徒はいてもパイプ椅子を投げる生徒はお前が初めてだよ! だけどこんなことして許されるとでも思って――」

「えい☆」

モノクマが喋り終わる前に、また熊沢さんがパイプ椅子を投げ飛ばす。

「お前いい加減に――」

「そりゃあ☆」

「ひでぶっ!?」

その後、パイプ椅子計十六個使い切るまでこのやり取りは続けられた。

「ぜぇ・・・ぜぇ・・・」

「むぅ、結構数あるねぇ、十六匹も壊したのに、まだいなくならないなんて・・・驚いちゃったよ」

「むしろ私はパイプ椅子を投げ続けたあんたの筋力の方が驚きなんだけど・・・まあいいわ、とりあえずこれでほぼ希望ヶ峰学園、もしくはそれに同等するレベルの組織が関わってることは確定したわね、まあ超高校級の生徒を全員誘拐するなんてしてる時点でほぼほぼ確定みたいなもんだったけど。まあいいわ、とりあえずこの学園を探索しましょ」

「こらー! 勝手に話を進めるんじゃないよ! オマエラ自由すぎんだろ! ていうかオマエ! 学園長への暴力行為は校則違反だよ! オシオキすんぞ!」

「あら、あまりに壊されすぎたから後出しで仕返し? 中々いい根性してんじゃない」

「ぐぬぬぬぬ・・・ああ分かったよ! そんな事言うオマエラにはこれをプレゼントするよ!」

そう言ってモノクマは俺たちに向かって何かを投げ飛ばしてくる、それを何とかキャッチする。

「これは・・・?」

「電子生徒手帳だよ、それぞれオマエラの名前、希望ヶ峰学園のマップ、他の生徒の通信簿、そして! 一番重要な校則! オマエラ絶対これ読んどけよ! 今度校則違反したら問答無用でオシオキだからね! じゃあボクはお家に帰るとするよ、はぁ、全くこんな問題児クラスを受け持つことになったボクはなんて不幸なんだ・・・くまったくまった」

モノクマはそう言うと台の後ろに行き、そのまま出てこない、どうやら本当に帰ったようだ、まあ監視カメラで監視されてるからあまり変わらない気がしないでもないが。そして、しばらくその場には沈黙が訪れるが、それを壊す人物がいた。

「・・・ひめのちゃん、ありがとうアル」

「え?」

「私、立ち向かった割には何もできないで・・・」

「そ、そんなことないですよ! 私なんて今日の夕ごはんどうしようなんて考えてましたから一緒です!」

「いやそれは一緒にするのはちょっと龍泉寺に失礼ってもんですぜ・・・?」

「私も、龍泉寺さんが立ち向かってくれたからああやって立ち向かうことができたんだよぉ? だから、龍泉寺さんもちゃんと頑張ってたんだよ?」

「そうね、私たちなんて動きすらしませんでしたもの。その上人を殺せだなんて強要されてる中最初に動いたあなたは立派よ?」

「えへへ・・・なんだかそんなに褒められると照れるアル・・・」

「まあ、この中で唯一の男子なのに動かなかった人もいることですし、その人と比べれば立派です」

「悠木さんは相談窓口の俺に何を期待してるの・・・?」

「実は凄腕の剣の使い手だったりしません?」

「例えそうだったとしてもあんたの前では絶対言わねえ・・・」

「そうですか・・・残念です」

「まあ、彼にはみなの相談役として頑張ってもらいましょう、何せ希望ヶ峰学園と円城寺財閥お墨付きの『相談窓口』ですからね」

「あはは・・・まあ、期待に答えられるように頑張ります」

「とりあえず、これからのことを話し合うためにもまずはこの電子生徒手帳とやらを確認しましょ」

「そうだね、校則を見てなかったからオシオキされましたーとか冗談にもならないからね・・・」

それぞれの顔に明るさが戻りつつある、空元気のとこももちろんあるかもしれない。だけどこの場では暗いことを考えるよりは空元気でもポジティブに考えることが重要だしな・・・これから、どうなるかは分からない、だけど、できればこの全員で、誰ひとり欠けること脱出したいな・・・

 

「さて、じゃあ電子生徒手帳を確認しますか、とりあえずは・・・そうだな、円城寺さんから期待されてることだし、通信簿から見ることにしますか」

俺が電子生徒手帳を起動させ、通信簿をみようとすると。

「だ、だめー!」

「へ?」

三波が突然俺に静止の声をかける。

「どうしたんだよ、三波」

「まさか唯一の男子だから警戒して情報を渡さないようにしようとか考えてるの? だとしたらそれは愚策よ、今は一人でも人手が欲しいんだから、男手なら尚更よ」

「ち、違うの! この生徒手帳てっきりみんなのプロフィールが書いてあるのかと思ったら、た、体重とか胸囲も書いてあるの!」

『え』

俺以外の何人かの声がハモる、そして女子たちは一斉に通信簿を見始める。

「え? だからどうしたんだ? むしろ、こんな状況だからこそ見るべきだろ? 体重なんて特にリアルタイムで更新されるなら健康チェックのためにも確認をすべきだ、長期戦になる可能性もあるし――」

「ストップ、いい? 絶対通信簿を開くな、少なくとも私のだけは絶対に見るな!」

「え、羽森さん何言って」

「わ、私のも見ちゃダメー!」

「八雲さんまで!?」

「・・・確かに最近は中々不健康な生活を送ってたけど、こ、これは何かの間違いです! 再測量を要求します!」

「・・・私は別にどうでもいいんだけど」

「ダメだよそらちゃん! そらちゃんも女の子なんだから!」

「むぅ・・・」

「ていうかあずさちゃんこの体重の軽さ何!?」

「いやー・・・何故かあずさ、全然体重増えなくて・・・あまり増えるのもあれなんですけど、もうちょっと増えて欲しいなーって・・・」

「なにその贅沢な悩み!?」

「わ、私はこんなにちっちゃくないぞ! おいモノクマ出てこい!」

「えー・・・別にどうでもいいんじゃ」

『よくない!』

「えー・・・」

「私も別に気にはしないんだけど・・・まあ、あんたたちがそんなに気になるなら、水城は通信簿は見ない、ってことでいいんじゃない?」

「そうしよう! いや、そうすべき!」

こうして俺は通信簿を見ることが禁止された、なにこの理不尽。

 

プロローグ

ようこそ絶望学院へ

END

生き残りメンバー

竜泉寺レンレン 藍乃あいか 円城寺れいか 三波なつみ

時国そら 八雲ちづる 神樹いちか 熊沢ひめの

羽森つばさ 双葉みづき 氷野くるみ 湖南やこ

小鳩あずさ 悠木ともこ 水城あらと 榊むつみ

のこり

『16名』



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一章「ムーン・オブ・ザ・ラビット」
一章「ムーン・オブ・ザ・ラビット (非)日常編」 1


とりあえず、通信簿騒動からすこし経った後、俺は仕方がないのでマップを確認することにした。

希望ヶ峰学園

 

【挿絵表示】

 

寄宿舎

 

【挿絵表示】

 

才能研究室

 

【挿絵表示】

 

「・・・才能研究室?」

まあここを希望ヶ峰学園だと書いたり、寄宿舎までは分かるが、才能研究室という単語だけはピンと来なかった。

「あらと君、何か気になることでもあったの?」

「ああ、この才能研究室、ていうのが気になってな・・・マップを見る限り俺らの才能に関わってる何か、ということはわかるんだが・・・」

「ううん・・・まあ、こればかりは流石に実際に行ってみないと分かんないかな・・・」

「だよなあ・・・とりあえず校則も確認しておくか」

「ていうかまだ見てなかったんだね・・・」

「通信簿見てから見ようと思ってたんだよ」

「・・・絶対に見ちゃダメだからね?」

「分かったって、そんな怖い顔すんなよ」

「怖い顔なんてしてない!」

「はいはい・・・」

そんな会話をしながら俺は校則の項目を開く。

校則

1.生徒達はこの学園内だけで共同生活を行いましょう。共同生活の期限はありません。

2.夜10時から朝7時までを『夜時間』とします。夜時間は立ち入り禁止区域があるので注意しましょう。

3.就寝は寄宿舎に設けられた個室でのみ可能です。他の部屋での故意の就寝は居眠りとみなし罰します。

4.希望ヶ峰学園について調べるのは自由です。特に行動に制限は課せられません。

5.学園長ことモノクマへの暴力は禁じます。禁じます! 監視カメラの破壊を禁じます。

6.仲間の誰かを殺したクロは『卒業』となりますが、自分がクロだと他の生徒に知られてはいけません。

7.コロシアイ学園生活で同一のクロが殺せるのは、2人までとします。

8.なお、校則は順次増えていく場合があります

 

「・・・改めて、俺たちは異常な状況に巻き込まれてるんだなって実感できるな、これを見ると」

「そうだね・・・」

「だが、校則を見てまた気になることが一つ増えたな・・・」

「え、なに?」

「この六番目の校則、卒業云々の場所は説明されたが、他の生徒に知られてはいけません、ってどういうことなんだ・・・?」

「ううん・・・まあ、やっぱりころ・・・殺人なんてバレていいことでもないからじゃない?」

「あのクマがそんなことに気を遣うとはとても思えねえけどな」

「それはそうだけど・・・じゃあ、新人君はなんでだと思うの?」

「・・・人を殺すだけじゃまだ足りない、とかか?」

「た、足りないって・・・?」

「分かんねえけど、わざわざ知られてはいけませんなんて書いてあるんだ、何らかの意味があるとは思ったほうがいい」

「・・・そう、だね。うん、分かった、私も何か考えておくよ」

「あんまりこれについて考えすぎて誰かを・・・みたいのはやめてくれよ?」

「そんなことしないよ!」

「知ってる、お人好しのお前に誰かを殺すことはもちろん、傷つけることですらできなさそうだからな」

「それはあらと君もでしょ?」

「・・・さあ、もしかすると案外俺が一番目の卒業生になるかもしれないぜ?」

「それはないよ、だってあらと君は優しいもん。むしろ人を助ける側でしょ?」

「・・・ああそうかい」

「あれ、どうしたのあらと君、急に顔隠して・・・もしかして、照れてるの?」

「照れてなんかねえよ!」

「はいはい」

「このやろう・・・」

後で絶対に仕返ししてやる・・・!

「あんたら、いちゃいちゃするのも結構だけど、もうそろそろこの学園の探索と行くわよ。マップには希望ヶ峰学園って書いてあったけどまだそうと決まったわけじゃないからね」

「い、いちゃいちゃなんてしてません!」

「あーはいはい、分かったわよ」

「絶対わかってない!」

「三波さんをからかうのはそこまでにしなさい? まあ、仲がいいのは大変結構なことだけどね」

「別に仲なんて良くねえわよ。とりあえず探索はツーマンセルで、八人ずつ希望ヶ峰学園、寄宿舎を調べることにしましょ」

「えー、別にみんな自由でよくない?」

「あら、別にあんたが死にたいっていうなら勝手にしていいわよ?」

「へ?」

「今誰があのクマの言うことを間に受けて殺人計画を立ててるか分かったもんじゃないのよ? 今はなんやかんやみんな落ち着いてるけど探索してる途中に不安になってきて最悪の状況を想像して思わず・・・! なんてのもありえるんだから」

「そんなこと・・・!」

「あら、言い切れるの? 今この場の全員が誰かを殺そうって思ってるって」

「そ、それは・・・」

「はいはいそこまでよ、神樹さん、あなたの言うことも分かるわ。いくらさっき会った仲だからといっても一応はクラスメイト、そんな人たちの誰かが誰かを殺そうと考えてるなんて思いたくないって、私も思いたくないわ、だけど、信じるために疑うのもまた大切なことなのよ? あの人は絶対にこんなことはしない、だから大丈夫だ、そう信じきって行動してたらきっといつか後悔するわ」

「・・・分かり、ました。すみません、何か余計なこと言っちゃって」

「いいのよ別に、まあ私も言いすぎたわ流石にこんな状況ですぐに緻密で巧妙な殺人計画を建てる奴がいるとか私だって思いたくないもの、そんなサイコパス相手したくないわ」

「あー・・・それで思ったんですけど、ちょっとよろしいですか?」

「何よ羽森、もうそろそろ行動を開始したいんだけど」

「いや、大したことじゃ・・・いややっぱり大したことでありますね。悠木さんのその腰につけた日本刀をなんとかしたほうがいいんじゃないかなー・・・って」

そう羽森さんが言うと、みんなの視線が自然と悠木さんの腰に集まる。

「・・・なんですか、私のぴょんぴょん丸に何かご不満が?」

「何で日本刀にそんなやたら可愛いな名前付けてるんでありますかこの人・・・いや、やっぱりこの状況で一人凶器を持ち歩いているのは流石にどうかなーと思った次第でありまして」

「・・・あなたは確か軍人系アイドルということで売ってるんでしたっけ?」

「いや別に軍人要素はそんな全面に押し出しているというわけでもないですけど・・・」

「軍人系アイドルなら拳銃ぐらい持ってるでしょう?」

「悠木さんはアイドルをなんだと思ってるの・・・?」

「まあ今は持ってないですけど普段は常備してますね」

「持ってるんだ!?」

三波のツッコミに合わせて周りの何人かが驚く何でそんなもん常備してるんだよ・・・

「だったら分かるはずです、今、拳銃がなくて落ち着かないでしょう?」

「まあ・・・」

「つまりそういうことです」

「・・・なるほど! これは失礼いたしました! そういうことなら持ってても不思議ではありませんね!」

「いやあんたらの中だけで完結しないで欲しいんだけど・・・」

「ううん、でも、二人組の相方の方に渡すぐらいなら別に渡してもいいんじゃねえか?」

「私ぴょんぴょん丸を取られたほうが暴走しますよ、まあ女子に危害を加えるわけにもいかないので被害は全て水城さんの方にいきますが」

「ぴょんぴょん丸と悠木さんを引き離すだって!? 何でそんな残酷なことができるんだ! そんなことは絶対にさせてはならんぞ!」

「あんたね・・・仕方ないわね、まあいいわ、とりあえずはい、二人組組んでー」

「何か全国の一部の人が悲しみに包まれそうな単語ですね」

「まあこの場にいるのは偶数だし別に余ることはねえだろ」

「あらとくーん、一緒に探索行く?」

「ん、分かった。一緒に行くか」

俺の才能を活かすためにもまだあまり知らない人に関わりに行くのもアリかなとは思ったが、まあそれはあとで暇を見つけたやればいいか。

「それじゃ、とりあえず一通り探索し終わったら寄宿舎の食堂に集合しなさい」

「分かった、それじゃあ行くか、三波」

「うん」



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一章「ムーン・オブ・ザ・ラビット (非)日常編」 2

「じゃあ、水城君、どこ行く?」

「うーん・・・まあ、やっぱり気になるし、才能研究室に行こうぜ。才能研究室自体には脱出の手がかりはなさそうだけど、二階にはあるかもしれないしな」

「分かったよ、じゃあ行こっか」

「おう」

そういうわけで、俺たちは才能研究室に向かうことにした。

「・・・」

「・・・」

が、くそ・・・! 何か気まずい、最後に会ったのも小学生の頃だしなあ・・・いくら仲が良かったとはいえ、やっぱりしゃべることなんてそんなに。

「そういえばさ水城君」

「ん、何だ?」

この雰囲気を和らげるためかは分からんが、三波が俺に喋りかけてきた。

「子どもの頃・・・小学生だった頃の記憶って、どこまで覚えてる?」

「あー・・・それはお前との思い出をどこまで覚えているか、ってことか?」

「うん」

「うーん・・・あ」

「何か思い出した?」

「お前が飛行機は空から糸で吊るしてるんだって小学四年生まで勘違いしてた、っていうのを思い出したよ」

「もう! そういう変な思い出は思い出さなくていいの! ていうかあれ水城君がそう私に教えたんじゃん!」

「あれ、そうだっけ?」

「そういんじゃなくてさあ・・・ほら、もっと何かあるでしょ?」

「何か、って言われても・・・」

そう言われて俺はまた思い出そうとするが、特になんも思い浮かんでこなかった。

「・・・すまん、お前が期待するような答えは全然思いつかない」

「・・・そうだよね、水城君って昔からそういう人だったよね」

「ごめんって」

「あはは、冗談だよ、じゃあ、この話はまた今度、ってことで。ほら、もうそろそろ着くよ?」

「え? あ、本当だ」

目の前には、白と黒のどこかモノクマを連想させるような色合いをした扉に、『才能研究室』というプレートが付けられている。

「・・・悪趣味だな」

「まあ、あんまり入りたくない場所ではあるね・・・」

「仕方ないから入るしかないんだけどな・・・」

そう言って俺はドアノブを回す、何かしらあるといけないから勢いよく扉を押してみるが、特に何も起こらなかった。

「それじゃあ、入るぞ」

「う、うん・・・えっと、一応何があるかわかんないから、慎重に、ね?」

「おう」

俺たちはそのまま室内に入り、進んでいく。しばらく、というには言いすぎかもしれないが、割と長い廊下を歩いていくと曲がり角に遭遇し曲がると、恐らくそこが才能研究室だろうと分かる扉が何枚かあるが、一番目を引いたのは。

「・・・なんだ、あれ」

「・・・鉄格子?」

廊下の一番奥には、マップのとおりに階段があった、が。そこにいくための道には鉄格子が備え付けてあり、通れないようになっていた。

「・・・とりあえず、あそこは無視しよう、今はこの部屋の探索が先だ」

「う、うん」

通れない道のことを考えてもしょうがないし、俺は試しにと『超高校級の剣道部』つまり悠木ともこさんの才能研究室を開けようとするが。

「・・・あれ?」

「どうしたの?」

「鍵がかかってるっぽい・・・? クソ、どっかに鍵があんのか?」

「ううん・・・あ、もしかして、その研究室の持ち主しか開けられないとか?」

「あー・・・その可能性もあるな。じゃあ、俺の研究室は・・・こっちか」

三波の指摘のとおり、俺は自分の才能研究室を開けようとするが。

「やっぱり開かないな・・・」

「そっか・・・」

「一応三波の研究室も開けてみてくれないか?」

「分かったよ・・・ダメだった・・・」

「そっか・・・じゃあ、とりあえずあっちの鉄格子調べようぜ」

「そうだね・・・もしかしたらどっかに開けるためのスイッチがあるかも!」

俺たちは階段にいくための道を塞いでいる鉄格子を調べるが、特に成果は出なかった。

「ダメだったね・・・」

「ま、しょうがない、別の所探しに行こうぜ」

「うん」

そう言って俺たちが来た道を戻ろうとすると。

「ん、お前たちこんなとこにいたのかー?」

「・・・」

「あ、双葉さんに時国さん」

「どうしたどうしたこんなところで二人きりで、もしかして逢引でもしてたのかー?」

「そ、そんなことしてないよ!」

「・・・はあ」

「何だよ時国そのため息!」

「・・・何でもない、で、あなたたち・・・水城は何をしていたの?」

「なんで今私ちらっと見られただけで無視されたの・・・?」

「あー、ここ調べてたんだが、才能研究室って鍵かかってるみたいでダメなんだわ」

「・・・あっちは?」

「あっちは見ての通り鉄格子でこれ以上進めないから他の所に行こうって話をしてたんだ、時国さんたちは?」

「それならちょうどいい」

「は?」

「・・・?」

いや、そんな何がわかんないんだろう的な目でこっちを見ないでくれ・・・。

「私たちはなー、さっきまで個室調べてたんだよ」

「個室か・・・何かあったのか?」

「まあ、ベッドとか、机とか、シャワールームとかもあったなー」

「そこだけ聞くと何か普通の寮とかみたいですね・・・」

「本当にな、んで、後はそこって完全防音らしいんだ。扉閉めただけで外の音が全然聞こえなくなるんだよなーあそこ」

「・・・あそこなら、例え悲鳴をあげても気づかれないね」

「そういうこと言うなよお前は・・・そして! 私たちはこんなものを見つけたからここに来たんだ」

「・・・鍵?」

双葉さんが誇らしく見せるのは、何かの鍵だった。

「・・・もしかして、ここの鍵か?」

「そのとおり!」

「と言っても私が見つけたんだけどね・・・なんで机のうえに置いてあったのに気づかないんだろうこのアホ・・・」

「アホっていうな! 水城からも何か言ってやれよ!」

「ノーコメントで・・・で、鍵を見つけてここに来た、ってことは才能研究室の探索に来たんだろ? じゃあ俺たちもその探索に参加させてくれないか?」

「別にいいけどノーコメントってお前・・・」

「あー、ごめんごめん、双葉さんは別にアホではないと思うよ」

「だろ!?」

「・・・こんなうるさい奴の相手してる私の身にもなって欲しい」

「私そんなうるさくないだろ?」

「いやごめんそれは流石に庇いきれない」

「お前なー!」

「あはは、とりあえず、ほら入りましょう?」

「ぐぬぬ・・・まあ、そうだな」

三波に諭され、双葉さんは『超高校級の幸運』の才能研究室の扉についている鍵穴に持っていた鍵を差し、捻る、するとカチッ、という音がする。

「おー開いた開いた、んじゃ入るぞー」

中に入り、最初に目に入ってきたのは、『超高校級の幸運』とはかけ離れたものだった。

「・・・なんだこの部屋」

「こ、個性的な部屋ですね・・・」

「・・・幸運っていうより、オカ研って方が似合いそう」

「何だよその反応かっこいいじゃんこの部屋!」

まず最初に目に入ったのが部屋の真ん中に堂々と置かれている、おとぎ話に出てくる魔女がよく何か得体の知れないものをかき混ぜている鍋、そしてその周りには何やら魔法陣的なものが書かれていて、壁際には本棚も置いてあった。

「ていうかこの部屋何か薄暗くねえか? 電気つけようぜ」

「この雰囲気がいいんじゃん、分かってないなあ・・・」

「いやそんなやれやれみたいな雰囲気出されても・・・」

「しっかし、誘拐犯とは言え中々いい趣味してんじゃん、この部屋、私は気に入ったぞ?」

「・・・なるほど、確かに興味深くはある」

「だろ!? いやー、時国は分かってるなあ水城と違って!」

「・・・ここの棚、毒薬とか置いてあるし、コロシアイに利用されそう」

「そっちの興味かよ!? ていうか私たちはコロシアイ何かしないっつうの! 時国もそうだろ?」

「・・・・・・そうだね」

「なんだ今の間は!?」

「何でもない、ていうかさっきからうるさい・・・もうちょっと静かに喋って」

「お前本当に自由なやつだな・・・」

「あはは、時国さんと双葉さんは仲良くなってるんですね」

「仲良くない」

「即答すんなよ・・・まあ、やっぱりこんな状況に巻き込まれたらいくら私でも心細いしなー、みなちゃんもいないし。まあだからみなちゃんの代わりとは言わないけど、やっぱり信頼できるやつを一人でも作っておきたいじゃん?」

「・・・別に私はあなたのことを信頼してるわけではないんだけど」

「まあまあ、それは後々って感じで!」

そう言って双葉さんは本当に楽しそうに笑う。時国さんも顔をしかめていはいるが、多少は楽しそうにしている(様に見えなくもない)・・・コロシアイ、か。

「・・・うん、そうだよな。俺も三波がいたから良かったけど三波だけに頼ってるわけにもいかないしな」

「だろー? いやー、私いいこと言ったなー」

「はいはい、んじゃ。とりあえずもうちょっとこの部屋探索してから食堂に向かおうぜ」

「ま、それもそうだな」

そして俺たちはこの部屋を探索する。

「ううん、結局見つかったのはこれだけかあ」

「堂々とテーブルの上に置かれてたけどね」

部屋を隅から隅まで探したが、発見したものは封筒を一枚、そして壁に張ってあった注意書きだけだった。注意書きには。

『この才能研究室は双葉みづき様が死んだ場合鍵が自動的に解除されます』

「・・・嫌な文章だなー」

「まあ、でも実際誰かが殺されて死体をここに放置されたらかなり面倒」

「だからお前は何でそういう解釈しかできないんだよ・・・」

「とりあえず、次はこっちの封筒見てみない?」

「そうだなー、しかし、この封筒どっかで見たことあるような・・・」

双葉さんが封を開け、中の紙を出す、そこには。

『双葉 みづき 様

今回、我が校では平均的な学生の中から、抽選によって一名抽出いたしました。その結果当選したあなたを

『超高校級の幸運』

として、我が校に招き入れることになりました。つきましては、入学するにあたり希望ヶ峰学園の入学案内パンフレットを同封致します。』

「ぎゃー!!」

「うるさい」

「こ、これ私の招待状じゃん! 何でこんなところに!」

「・・・平均的な高校生」

「う、うるさいやい! 幸運だって希望ヶ峰学園が認めてるんだから立派な才能だろ!?」

「そ、そうだよ水城君」

「・・・だけどその結果こんなところに閉じ込められてコロシアイを強要されるんだから、幸運とは言い難いけどね」

「ぐぬぬ・・・」

「えっと・・・」

結局、数分間ぐらいでなだめ終わって、これ以上探すものもないので俺たちは才能研究室をあとにし食堂に向かった。



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