Fate/Cross Order 人理修復異界課 (九咲)
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プロローグ・転生

ここの小説読んでいたら自分も書いてみたくなったので物書きのいろはもあまり分からない拙いものですがお願いします


死は突然やってくるものである

 

ままならないものではあるが死んでしまったらしい

 

突然の衝撃、浮遊感

 

痛みは……なかった

 

他人事のようにその様を眺めていた気がする

 

 

ああ、死ぬんだなと感じるだけであった

 

 

地面にぶつかった時と同時に大嫌いだった世界からシャットダウンされた

 

 

無になるならそれでも私はかまわなかった

 

大嫌いだった世界から逃げられるならそれは絶好の機会と思うから

 

 

 

 

 

私の話を少ししたいかなと思う

 

大丈夫、長くはならないよ、そんなに内容があるような人生じゃなかったから

 

 

私はただつまらない人間なのだ

 

 

そう私、藤川五火は一般人だ

 

ただ、生まれ育ち学校を卒業し就職し職場と家を往復するだけのつまらない人間だ

 

思い出になるようなイベントもなければ劇的でもなかった

 

挫折もなければ達成もなく

 

無難にこなすだけの人生

 

 

だからかな非現実には憧れる  

 

 

 

胸が躍る冒険譚、胸がときめくラブストーリー、

 

 

空想が大好きだった

 

ああ、だからかな

 

 

私はその選択に躊躇いはなかったのは

 

 

「キミは唯一の異界人理修復に適応したマスターだ、君にはこのカルデア人理修復異界課に「藤丸立香」として転生して貰い異界の人理修復…クロスオーダーに挑んで貰う」

 

 

クロスオーダー……グランドオーダーではないんですか

 

現れた声の主に対してそれを問う

 

 

その声は青年だと思う

 

 

「グランドオーダーはすでに男性の「藤丸立香」が挑んでいる、キミは女性の「藤丸立香」をロールしクロスオーダーに挑んで貰う……キミの五火からとって「藤丸立火」と名乗ろうか」

 

これは

 

 

転生者として転生者を殺す物語だ

 

 

1、「覚醒×邂逅×運命」

 

 

夢を見た、夢を見た、夢を見た、

 

 

夢だったのだろうか

 

 

分からない

 

 

けど私は私じゃなくて別の存在になっていた

 

 

夢は現実感を伴い襲い掛かる

 

 

私だった存在は死に、私の意識は別の存在をロールし存在していた

 

視界の高さから違ったというクリアだった

眼鏡をせずにこのクリアさ、前世では眼鏡をかけてからねあと無駄に背はあったから立ち上がったときは視界の高さに違和感があった

 

確定したのは鏡を見たときだ

 

「なに、この美少女」

 

藤丸立香(女)その人がいた

鏡を映った少女は間違いなく美少女にカテゴライズしているだろうよ、うん

 

「ぱねーよ、やべーよ、がち転生っすか」

混乱している自分は混乱していた

 

地の文がおかしいくらいには混乱していたワロス

 

 

「目が覚めたかい、立火ちゃん」

部屋に入ってきたのは優男を体現した青年だった

 

「え、えっと…」

 

「どうかしたかい、そろそろ召喚する時間だよ?グランドオーダーは始まっているんだからクロスオーダーも始めるよ……どうかした?知識は与えたはずだけど」

 

青年は困った風に言う

 

 

この感じ…私の転生を知っている

 

見た目はこのカルデアにおける医療部トップ、ドクターロマニその人なのに

 

「君の転生を知っているさ、君を転生させた僕だからね」

意味深に笑う超常のそれ

 

神と言えば簡単、森羅万象の意志

人類史を存続させるだけにそれはある

 

「まぁサポートはする、だがこの先はキミの力を必要だ人類最後のマスターの反転存在」

 

知識としてあたえられたドクターロマニとは違い薄く笑う

 

「ようこそ反転の世界のカルデアへ、君を歓迎する……世界に害する転生者を殺すために」

 

中身のない私が空想しているほど甘くはない転生だったのかもしれなかった

 

 

それでももはやもうおりることは、出来ない

 

 

なんの覚悟もこの時はなかった

 

 

 

 

 

 



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プロローグ2・召喚

「さて、これからはドクターロマニとしてロールしキミのサポートをする、完全にドクターロマニとなるから無駄な質問はなしだよ立火ちゃん」

知識は与えたはずだよと念を押す森羅万象の代行者

 

分かってる…混乱はしているけど疑問は頭の中の与えられた知識が答えてくれていた

 

ここはカルデアであってカルデアではない

 

グランドオーダーの任を負った藤丸立香くんやマシュ・キリエライトはいない

 

鏡の中のように反転した異界のカルデアなのだ

 

カルデアの職員はロールしているNPCみたいなもの

 

異界課は私とドクターロマニ彼だけだ

 

黒幕であるレフや所長であるオルガマリーはグランドオーダーの本筋であるからクロスオーダーには不要のキャラクターであるらしい

 

 

クロスオーダー

 

転生者による異界…平行世界の人理に重大な損害が与えられる

いわゆる人類悪として認定する転生者を打倒してその特異点を修復する

 

これが私のすべきこと

 

 

…スケールでかくない?でかいよね?でかかったわぁ…イカンイカン藤丸立香になりきらなきゃ

 

 

藤丸立香?…コミュ力お化けだよね?喪女の私にはきついってアハハー

 

なりきるのはやめた

 

 

「大丈夫かい?」

ドクターロマニは苦笑して聞いてくる

森羅万象の代行者は消えロールしているNPCドクターロマニのようだ

 

「だ、大丈夫大丈夫…」

 

「ならいいけど……早速だけど1つ目の特異点を補足したから解析しレイシフトできるようにしとくから君はサーヴァントを召喚してくれるかな?召喚の手筈は整ってるからキミの令呪とともに契約してきて」

ドクターロマニは慌ただしく準備を始める

 

「時間がないから1回限りの召喚だ、外れを引かずにたのむよ」

 

リアル幸運E-の私に無茶を仰る

 

私は部屋を出て与えられた知識と共にカルデアの召喚の間へ向かう 

 

 

2、「召喚×邂逅×運命」

 

 

迷うことなく召喚の間についた

そこには一人の女性はいた

そういえばレオナルドダヴィンチちゃんもいない

ようだ

 

「藤丸さんですね、召喚の手筈はすんでいるのですぐ始めて下さい」

 

「あ、はいえーと」

サーヴァント召喚の口上を思い出す

ステイナイト式だけどいいよね

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)。繰り返す都度に五度。ただ満たされる時に破却する」

与えられた知識からアップロードして言葉に乗せる

目をつぶり息を整える

カルデアがバックアップ体制を整ってるから呪文唱えるだけ

 

「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。祖には我が大師シュバインオーグ。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

「告げる」

 

「告げる。汝の身は我が下に我が命運は汝の剣に。聖杯のよるべに従い、この意、この理に従うなら応えよ」

 

「誓いは此処に。我は常世総ての善と成るもの、我は常世総ての悪を敷くもの」

 

「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ天秤の守り手よ!」

 

体から魔力は放流と化し駆け抜ける

召喚の座からは逆巻く風と稲光。私は目を開けるものの反射的に半眼になってしまう

座には召喚の文様が輝きを放つ

 

召喚…誰を召喚するのだろう私は……この転生を共に歩んでくれる理解しあえるサーヴァントならいいな

 

藤丸君達のように

 

理解者が少なかった前世ではダメだったけれど……今度こそ私は……

 

その思考が途切れ召喚は終わる

 

光が収まった座には一人の黒い外套を纏った少年……いや青年がいた

 

赫月(かくづき)のセイバー召喚に応じ参上した、君が俺のマスターか?」

 

それが彼との出会いだった



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プロローグ3・レイシフト

召喚そして契約を交わす

 

「藤丸立火、此処に契約は結ばれた。このクロスオーダー共に果たそう……己には己の果たすべきことはある」

 

「果たすべきこと……?」

 

「いや忘れてくれ、私情だ」頭をふり忘れてくれと手をあげる

 

「あ、ぅん…」

コミュ障すぎんだろー私

 

黒い外套のサーヴァントをまじまじ見つめる

 

背は前世の私よりも高くわりかしがっちりしている

白髪で前髪が一部オレンジ色

黒い外套……外套といいながらローブって感じではないよねうーん

赫月といいながら赤くはないよね

赫って赤々しく燃えるように輝く……だっけ

 

与えられた知識の中から該当するであろう英霊はいない

 

「どうしたマスター、黙り込んで」

眉をひそめるセイバーくん

 

「あ、いやなんでもない………えっと真名は……?」

だからコミュ障すぎんだろ!

 

「……大したものじゃないさ」

 

「あ、えと……い、言いにくいなら…………」

マスターとして知っておくべきだろと思いながら

 

「藤丸さん、ドクターロマニから至急来てくれとのことです」

その場にいた女性は内線をとりドクターロマニからの伝言をつたえてきた

 

特異点を補足したからすぐにレイシフトしてくれと

 

 

3、「転移×全滅×悪意」

 

 

「やぁ、呼び出して悪いね、立火ちゃん……召喚はどう?……セイバークラスか上々じゃないかな?」

ドクターロマニはうんうん言いながら頷く

 

 

私は赫月のセイバーをつれレイシフト装置のある部屋に来ていた

レイシフトルーム、表側の装置と何ら変わらない見た目はしているがあらゆる平行世界の特異点の座標を補足できる

この平行指定(クロスオーダー)にはなくてはならないものだろう

 

「さて、立火ちゃん落ち着いている暇はないよ……最初の特異点は火急の事態なんだ補足が遅すぎたのかもしれない」

ドクターは眉をひそめ言ってくる

え、最初の特異点からそんなこと言わないで

セイバーにもあったばかりだから慣らしとかは

 

「ないよ」

え、表情にでてましたかそうですか

 

「……第一の特異点は日本の空座町だ」

 

 

 

 

「…………BLEACH?」

 

「そうだよ、BLEACHの世界に転生をした転生者が悪意を持ち本来の物語をねじ曲げている」

 

転生と言う言葉に違和感なく言うNPCのドクターロマニ

NPCだからかその言葉に違和感がないだろうか

 

それはそうだろう

ここは転生者を殺す機関なのだから

 

ここで漫画のタイトルが出てきたことに面を食らってしまったがそうだよね

 

転生をするなら漫画やアニメなどの創作物だ

 

 

転生する人間全員が善人であるかと聞かれたらハイとは言えないのかもしれなかった

 

だからの人理修復異界課なのだ

 

 

「さぁ、準備をしてくれ立火ちゃん……軽く解析しただけだから詳しくは分からない……かなり厳しい状況かも知れないから」

 

プレッシャーかけないでよ、ドクター

 

転生したばかりでわけの分からない知識を詰め込まれて

何も覚悟もできる時間もなくレイシフトって……自分の藤丸立火の力量もわからないまま大丈夫だろうか

 

「不安そうな顔をしているなマスター、初めてあった奴に言われてもあれだが……己がついている」

このサーヴァントからは不器用ながら気遣いを感じた

彼は善人なのかもしれない

 

 

いつまでもくよくよしていないで覚悟を決めなきゃもう藤川五火じゃなく藤丸立火なのだ

 

藤丸立香本来の君には及ばないのかも知れない

 

 

五火はいつかやるって揶揄されないように

 

もう立火なんだから

 

「よしいこうセイバーくん」

前を向いて

 

私は、行こう

 

 

光に転換しレイシフトする

 

 

行き先は

第一空想特異点「幻浸虚構重霊地(げんしんきょこうじゅうれいち)・空座」

 

レイシフトしたその先は崩壊した街並みにそびえ立つビルより大きい怪物にそれを中心に蠢く無数の怪物に汚染された光景だった

 

私の最初の一歩は隠し切れてない汚染された悪意が出迎えてくれた

 

 

 

 

 



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第一空想特異点「幻浸虚構重霊地・空座」
第一節「Death&strawberry①」


(ホロウ)

 

BLEACHにおける悪霊の総称。落ちた人間の魂

 

人間の魂を主食とし襲いかかる怪物

 

一節によれば失った中身を埋めるために襲いかかるという

 

白い骸骨をかぶり胸の部分には穴がある怪物だ

様々な個体が存在はしているが

 

あくまで悪霊……霊体であるはずだ

 

藤川五火時代には霊感が無かったよ……うん

 

「……霊体だよねあれ」

セイバーくんに同意を求める

視界に映るそびえ立つ巨大な虚と無数の虚

「いやあれは……あれらは実体を持っている」

セイバーくんは警戒している

「マスター早く離脱すべきだ、さすがにあの数は無理だ」

ですよねー…あれは巣だ……あの数はやばいって

 

 

周囲1㎞ほどのクレーターの中心にいる巨大な虚……見た目は大虚(メノスグランデ)とは違う

 

BLEACHは読んだことあるからある程度知識はあった

 

BLEACHはこれら悪霊・虚を主人公の死神になった少年が退治する話から始まる

 

まぁそれはいい…その巨大な虚を守るように浮いている無数の虚の数十体が此方を見てい……る?

 

「気付かれた!?」

 

「我らサーヴァントの極上の魔力に惹かれたか……!」

マスター失礼する!とセイバーくんは私を抱える

 

「……わ!?」

ひ、姫様抱っこぉおお!?

セイバーくんがそのクレーターを見渡せる瓦礫の上から離脱しようとすると同時にこちらに気づいた虚はこちらを狙いを定め動き始める

 

そもそもなんで、こんなところにレイシフトするのぉ!?!?

 

いきなりの怒濤の展開にレイシフトするときの覚悟なんかめっきり砕けて涙目だよ

 

転生特典くれよ!?俺ツエーしてやるからよー!?

 

現実は無情である

 

セイバーくんは私を抱えながら瓦礫と瓦礫に跳躍、跳躍、跳躍

 

初めてのお姫様抱っこにドキドキなんてする暇も無くその場を離脱しようと試みるのに精一杯

 

彼ひとりならば戦闘しながら離脱は可能なのかもしれない

 

マスター特権からの彼のステータスはセイバークラスの水準に十二分達している

 

私を抱えながら守りながらの離脱は厳しい

 

背後からの殺意に緊張が高まる

 

虚共の霊圧が収束し帯電する

 

「あれって……」

 

虚閃(セロ)ぉおぉ!?あれって大虚以上の虚が使うんじゃなかったっけ!?

 

「ちっ!……マスター目をつぶってろ!」

あ、え……はい!っと言われた通りにしますからなんとかして!

 

放たれた閃光、霊圧の濁流が襲いかかる

下級の虚だろうと私には充分な殺傷力だ

 

 

「……模倣展開・剣」

彼がそう、つぶやくと殺意の濁流は消える

 

消えたのではない目を開けると彼は剣を握っていた何の装飾もされていない無骨な西洋剣

 

虚閃を斬ったのだ

 

 

「すごい…」

 

「惚けるなマスター!…離脱するぞ!」

 

「あ、うん……!」

 

剣を握るためか抱き寄せるように抱えられてるのは気にしない気にしない……!

 

追ってくる虚の数が増えて来ているような気がする

 

追いつかれたら彼はともかく私は一巻の終わりだ

いや私が死んだら彼も終わりだ

 

 

「早々に……とにかく離脱して情報を集めたい……な!」

追いつかれ背後からの襲いかかる猛禽類とゴリラをあわせたような虚を斬りすてる

霊圧の残滓となり霧散する

確か虚は仮面、頭部が弱点……的確に斬っていた

セイバーくん、虚を知っている……?

 

「……ち、追いつかれたか」

十数体の虚に囲まれる

 

「かっかっか、うまそうな魂をしている」

 

「貴様を食えば我らも仮面を破れるかのぅ」  

 

サーヴァントは英霊、魂の格は人間のそれとは比べ物にならないため虚からしたら極上の物に見えているのかも知れない

 

「ぜ、絶対絶命……?」

涙目になってるよぅ、わたしぃ……

 

「仕方ない………トレ」

 

 

 

「氷地を奔れ『白蛇前(しらへびのまえ)』」

 

セイバーくんを襲おうとした虚が凍る

 

「へぇ、生き残りがいたのか、助太刀するよ」

 

赤い髪の黒い装束を着た少女が宙に浮いていた




Fateもすき、BLEACHも好き


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第二節「Death&strawberry②」

死神

 

別名、調整者

あの世と現世の魂魄の量を均等にするバランサー

 

悪霊である虚、なりかけの半虚(デミホロウ)、そして(プラス)という善良な魂魄を魂葬し尸魂界(ソウルソサエティ)や地獄へ送ることでバランスを保つ

そういった現世の過剰分の魂を正しく導く存在

 

それが彼女ら死神

 

「あたしが見えてるな、まあ今の空座町じゃ当然だけどな」

彼女は白い刀を構える。彼女が振るたびに霜が舞う

 

「さぁさぁレギオンどもあたしが相手だよ!この護廷十三隊六番隊副隊長、阿散井苺花がね!」   

 

「『氷天戦花の舞葬』ぉ!」 

氷の蛇が複数現れ周りの虚を凍らせていく

 

白い刀。彼女の『斬魄刀』

死神の力の象徴の一つ

 

 

対虚のスペシャリスト

 

「とりあえずあたしに任せて逃げな、そこのお兄さんもそこのおねーさんがいちゃ闘いにくいだろ」

にいっと笑いながら構える阿散井苺花

 

『君臨者よ、血肉に仮面、万象羽ばたき人の名を冠する者よ・真理と節制・罪知らぬ夢の壁に僅かに爪を立てよ!』

 

『破道の三十三!蒼火墜!』

 

蒼い炎を複数の虚に叩きつける

 

「あ、ありがと……」

 

離脱するぞマスター!

とセイバーくんに抱えられながら複数の虚を次々に撃墜していく赤い髪の死神を背に離脱する

 

 

阿散井苺花

彼女がいるということは…………ここはBLEACH原作終了後の世界のようだ

 

 

疾走、疾走、疾走、疾走、疾走

 

 

阿散井苺花の助太刀により虚の集団から逃げおおせる事が出来た

 

 

「撒くことができたようだなマスター」

ある程度形を残している建物の一室、そこに私達は腰を落ち着けることにした

 

「ようやく落ち着けるよぉ……ごめんねセイバーくん足手纏いで……」 

怒濤の展開に腰を抜かしたのかへたれこむ

藤丸立香ならばうまく立ち回れたのだろうか…?いや比べてもしかたないや……

 

「何、仕方ないさ…そしてマスターを守るのも我らサーヴァントの役割だむしろ己自身の不甲斐なさにな」

苦笑しながら一応周りを警戒しているセイバーくん

 

………ようやく落ち着けたからかこの特異点の状況を確認しようとゆっくり立ち上がる

窓から外を見る

わりかし高い建物だからかあたり一面を一望することが出来た

 

瓦礫、瓦礫、瓦礫、瓦礫、

 

瓦礫の山…まるで災害に被災したかのような有様であった

 

「酷い……有様だね」

月並みの言葉しか出てこずなんて口数が、少なくなってしまう

 

「とりあえずマスター…情報収集しなければならない…我々がレイシフトしてきた以上異常の原因となる奴がいるはずだ」

 

「そだね、……とりあえず何か知ってる人……さっきの人……阿散井苺花って言う人にもう一回会えればいいんだけど…さっきお礼も言いたいし」

 

阿散井苺花

BLEACHの登場人物の朽木ルキアと阿散井恋次の娘

 

BLEACHの最終回に主人公の息子と苺花が出会って終わった  

 

だからこの特異点はBLEACHの原作後の時間軸のはず  ある程度成長してたし、まぁ死神の成長速度は明言されてないからなんとも言えないけど

 

現状それ位しか、わかってないなぁ

 

 

「その話、詳しく説明してあげましょうか」

背後からの声が掛かる

 

二人してばっと振り返る

セイバーくんは剣を構える

 

「怪しいものじゃないっスよ、剣を下げてください……貴方がたもこの状況をどうにかしたい人達のようだ」

 

あ、えと……この人は……!?

 

ゲタ帽子の胡散臭い風体の人はこの世界でもふたりとしていないよね

 

「浦原喜助といいますっす、以後お見知りおきをお嬢さん」

BLEACHにおける重要人物、浦原喜助その人だった

 

 

 

 

 interlude

 

とある一室

「失礼します、侵入者2名は阿散井苺花の介入により離脱した模様です」

金髪の少女が畏まった様子で入ってくる

 

悪霊群(レギオン)級の虚は数十体ロストし、阿散井苺花も離脱したようです、追いますか」

 

「構わないよ、阿散井苺花はまたいずれ仕掛けてくるさ」

椅子に座っている青年はさも損失すらも気にしてない様子で言ってくる

 

「……それよりさっきのふたり、一人は僕と似たような感じがする……転生者かな?」

 

 

青年は面倒くさいなぁっとやれやれと頭を振る

 

「あいつにカルデアには気をつけろって言われたしそれかなぁ……好き勝手やってんだから邪魔しないで欲しいよねぇ?」

 

入口付近に控える金髪の少女に同意を求める

 

「……消しますか?」

 

表情を変えずに聞いてくる

 

「真面目だなぁ、……まぁ僕狙いなら来るでしょうその時は頼むよ」

 

 

「……随意に」

 

 

 interludeout

 

 



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第三節「Death&strawberry③」

浦原喜助

 

元護廷十三隊十二番隊隊長にと初代技術開発局局長

 

BLEACH初期から登場する登場人物だが…

 

「私達が怪しくないんですか……?」

 

ズバッと聞いてみた方が早いよね……浦原喜助に限って善意だけで私達に近付くなんてあり得ないからね

 

事実、セイバーくんは警戒を解いてはいないみたいだから

 

「あら手厳しいッスね、……まぁ正直怪しい怪しくないなら怪しいッスけど」

扇子を取り出しばっと広げる

 

「状況が、状況っすからね。貴方がたがレギオンに襲われてたのは阿散井サンからは聞いてますから」

 

「……レギオン?」

聞き慣れない単語だ、BLEACHにそんな用語はなかったはず

 

悪霊群(レギオン)級虚ッス……お嬢サンがたを襲った虚の総称です……中央にいた強大な虚がいたでしょう?あれが生み出すんっす」

 

「虚を……生み出す?虚は長い時間かけて穴が広がった魂魄がなるものじゃ……?」

 

 

「基本はそうっすね、あれ強大な虚は要塞(フォートレス)級虚……改造された大虚(メノスグランデ)、あの虚が周囲の魂魄を吸収し虚へ変換しているようなんす」

 

悪霊群に、要塞……?原作後の時間軸とは言えねじ曲がれ過ぎじゃなかろうか……?

 

「浦原さん、ここにいたんだ探した」

窓から入ってくる……先程の死神、阿散井苺花がよっとと降りてくる

 

「阿散井サン、無事でしたか」

 

「よゆー、よゆーいちかちゃんにかかればレギオンクラスなんて……あれの真髄は数だからなぁ……うざいうざい」

「ん……?さっきのふたりか、無事でよかったわ生き残りなんて久しぶりに見たから」

 

「あ、さっきはありがとうございます……」

軽く会釈する

ノリがリア充に近いから若干苦手だ

 

「かたいかたい、敬語なんていいよ、年も近そうだし」

なぁ浦原さんと同意を求める苺花

 

警戒は……しなくていいか

 

「あ、あの藤丸立火ですよろしくお願いします」

 

「赫月のセイバーだ」

 

「阿散井苺花…よろしくな、って……赫月のセイバーって……」

へ、変だよね……称号にクラス名だし……聖杯戦争やサーヴァントを知らなきゃ不信に思うかな……失言だったかな

 

「ふむ、彼に似ていますね」

浦原さんも彼女と同様思うところがあるのかそんなことを言ってくる

 

「彼って……?」

 

 

虚影(きょえい)のアサシン、そう名乗ってましたねこの状況を招いた彼が」

 

サーヴァント!?……サーヴァントがいるの?

 

「……藤丸サン、心当たりがありそうっすね」

私の反応を逃さずいってくる浦原さん

 

顔に出やすいみたい私…ああ、馬鹿か君はみたいな顔をしないでよセイバーくん…泣きたい

 

「藤丸サン、共同戦線を張りませんか?現状、敵同士ではなく目的も一致していると思うんす」

真剣な表情をして提案してくる

 

「あたし達は戦力が足りていない、貴方がたは情報が足りていない」

悪くはないと思うんですがどうですか? 

 

選択し決断する、ただそれだけのはずだ

 

最初の分岐路

 

藤川五火の悪い癖、あらゆる選択、決断は流れ周りの意見に流されていた

マジョリティーこそ問題無い。

大多数意見は波風立たないからなるべく周りの意見に合わせていた前世

 

決断するという気持ちが欠如していのかもしれない

 

「マスター、悪い話ではないと思う我々には情報が明らかに足りていない…君がどう決断してもサポートをする」

 

あはは、やっぱりセイバーくん君は善人だよ

うまくやって行けそうな気がするよ

 

 

「浦原さん、わかりました共同戦線を組みましょう…」

弱々しいながらも決断する

 

「わかりました、阿散井サンもかまわないっすね?」

浦原さんは頷きながら彼女に聞く

 

「構わないよ-、戦力がある分には問題ないしね……ソウルソサエティからの援軍も望めないのもあるからね、まぁあたしだけでもぶっ潰してやるつもりだったけど」

異論はない様子で彼女は頷き返してくれる

不敵な笑みを浮かべながら言ってくる 

 

「……援軍望めないんですか?」

援軍、護廷十三隊が来るならばそもそも正体不明の私達と手を組むなんて言わないだろう

 

「………そうッスね、…そもそもこの状況が不安定で歪なんす」

「そこの彼はともかく、藤丸サンに霊力は無いようですね……それなのに霊体である虚達を知覚出来るのは変に思ったッスね?」

 

「あ、はい…」

 

「……まぁそれは仕方ないっす、現状この空座町はあやふやな状況なんです」

 

「霊子が実体化しているんだよ、だから虚も私達死神も生きてる人間に知覚出来てる」

 

え? 

 

「……そして、虚も生きてる人間ごと捕食し魂魄を食らうまぁ元々霊力の高い人間を食らうってことはあるけどな」

と苺花はつまらそうに吐き捨てる

「あのレギオンは雑食なんす、魂魄の味や霊力の高さなんか関係なく捕食する」

人間側も知覚できるからさぁ大変、それがレギオンを刺激し阿鼻叫喚の地獄絵図を再現されるのは容易に想像出来た

 

ある日、突然現れた化け物達

平穏に過ごしてきた人達からすれば突然過ぎる災害だった

必死に抵抗はしただろう、自衛隊とかも出てきたのかもしれない

 

だがその結果がこの瓦礫の山……だよね

 

 

「虚影のアサシン……そう名乗る男が現れてそうなりました」

…………サーヴァント……!

 

 

「3体の要塞級と無数のレギオン……そして3体の破面(アランカル)を引き連れて現れてたんす」

 



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第四節「thelostbrave①」

忘れもしないあの日

 

あたし、阿散井苺花が副隊長に就任したあの日だ

 

自分でも浮き足たっていたのはわかっていたと思う

 

気性が荒いおやじと見た目気品があるくせにわりかし感情がそのまま出る母上に似たのか感情をごまかすのは苦手だった

 

若輩ながらも副隊長に就任した

あたしの努力が認められたのだ

 

斬拳走鬼バランスよく才能があり霊術院からもよく目立っていたとは思う

 

阿散井夫妻の娘、そして朽木白哉叔父上の姪として恥ずかしくないよう研鑽を重ねてきたつもりだった

 

それが形となり認められ副隊長に就任

それをあいつに自慢してやるつもりで私は現世へ向かっていた

席官になれば駐在任務も減る、副隊長ならなおさらだ  

そもそも空座町担当業務だって母上が少し気を利かせてた

……なんでニヤニヤしてたのだろうあの母上 

 

まぁいい、あの死神代行の馬鹿に自慢してやる

 

ニコニコして「おめでとう」

 

としか言わないだろうがあいつへの見栄もあるんだ

「へへーん、見ろよこの限定刻印。副隊長以上が現世に余計な影響うけないよう限定されるんだぜ、限定!この苺花ちゃんは限定されるような実力の持ち主ってわけ!」

 

なんだこのテンション恥ずかしくなる

 

 

まぁこの現世にきたのは、別に理由はある

 

あいつの死神代行業務がないのだ、大体が一応の担当死神がいたのだがそいつと滅却師石田の嬢ちゃんが対応していた

 

死神代行のあいつに何があったのか確認してきてくれと言うのが今回のあたしの任務……まぁ母上からの頼みであったけどな  

 

サボる…なんてあいつの性格上無いはず

 

石田の奴から何もない……あの女とは馬があわないからなぁ

滅却師、石田雨竜の娘

 

石田竜鳴(いしだりゅうな)……堅物であるそいつとは死神代行であるあいつと死神のあたしによく突っかかってはきていた

 

あいつがなんかあったからあたしに連絡してくれる奴でも友達でもねぇからな

……まぁ見かけたら聞きはするが

 

……まぁ親父さんとかに聞く方が早いかな

 

そう考えながら地獄蝶をつれ断界を抜け現世への扉を抜ける  

 

現世への扉をあけ現世へ転移する

 

微かにあった不安と違和感を気持ちが昂ぶっていたあたしは気づいていなかった

 

 

現世・空座町中

 

石田竜鳴は苛立っていた  

 

弱冠中学生にして滅却師

既に並の虚ならば問題なく滅却できる

父、石田雨竜が同世代だった時とは超えていると本人からの言質は取れている

父の性格上リップサービスなどおだてるようなことが言えないのは竜鳴自身知っている

 

とりわけ動血装(ブルートアルテリエ)の才能があったようで攻撃力には自信があった

 

さらに聖文字(シュリット)の真似事まで最近しようと試していたのだが

 

「最近、あの人がいないからお鉢がこっちまできてくるし」担当死神も頼りにならないしとぶつぶつ呟いている

 

 

最近の空座は担当死神、死神代行…私、石田竜鳴で虚退治をしていた

別に共闘しているわけではない

 

かつての戦いの名残、父の話では空座町はかなり濃厚な重霊地らしく以前にくらべ虚が集まりやすくなっているらしい

 

まぁ以前の担当死神のあの女がいなくなっただけでましだけど……今のは平死神で頼りにならないし

まぁあてにしてないけど睡眠不足になるわ

 

苛立ちながらまた

 

「また虚…最近多くない……!?」

 

しかも近い……!?

 

振り返るとそこに長い紫の髪の毛をした眼帯の女が立っていた

 

「……割れた……仮面……?」

 

知識として知っている

 

虚にも種類がある

 

虚、巨大虚(ヒュージホロウ)、そして大虚(メノスグランデ)

 

そしてその上位種で仮面を剥いだ虚達

 

見たことはなかったし、もし遭遇したら逃げなさいと父からは言われてはいた

 

 

「……優しく殺してあげます」

ねっとりした、蛇のような殺意が私の体を纏わり付いてきた

 

すぐに身体が、反応し後退し武装する

いつもの相棒のような弓が……それでも心許ない

 

いつまでも鳴り響く警告の本能が静血装(ブルートヴェーネ)を全開にさせる

 

こいつ……破面!

 

「いい反応ですね……ふふ」蛇のような女が薄く笑う

 

寒気がする、蛇に睨まれたカエルのような心地

 

「……」弓を構え狙いを定める

仮面を剥ごうが頭部は急所たりえるはずだ

 

血装を静から動へ変換

 

素早く射撃、射撃、射撃、射撃、射撃、

 

無数の神聖滅矢(ハイリッヒブファイル)は着弾、炸裂

 

私の霊力を帯びたそれらはそれなりの攻撃力のはずだ

 

「……ふふ、まだ成長過程の青い果実……」

 

破面の鋼皮(イエロ)には貫通せず傷つけるには至らなかった

 

「くそ……!」 

渾身の一撃も、届かず

 

「さぁ、我がマスターの、糧になりましょう」

 

意識は沈む




苺花の性格設定は私のイメージです



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第五節「the lost brave②」

「……最近見ない?」

 

あたしは知り合いを見つけたので声をかけていた

くるくるとした髪の女児

 

茶度音虎(さどねこ)、先代死神代行の仲間茶度泰虎の娘

先の千年血戦後、ボクサー?で大成したらしい筋肉の塊のような男の娘

 

…なに、この天使

 

その茶度とも何度かあったことはあったがその遺伝子は髪の毛の、くるくるにしか遺伝してなかった

 

まぁくるくるの遺伝は強いからな

かの糖分侍もよく言ってた

 

その不釣り合いの愛くるしい猫のような風貌の女児

 

それが茶度音虎だった

 

まぁ筋肉ゴリラの相手がさぞ天使だったんだろう

 

「苺花ちゃん?」

 

その音虎は可愛らしく首をかしげる

 

「あ、いやなんでもねー、……であいつはいないのか」

 

「うん、お兄ちゃんさいきんあそんでくれないし……なんかへんだった」

 

子供は敏感だ、特に懐いている相手の変化は

 

「……変ねぇ」

首をかしげる、善人の塊であるようなあいつが不審な行動をとるとは思えない

 

親父さんとお袋さんを足して二乗したような奴だ

 

「まぁた変なことに首を突っ込んだか?」

 

不審な行動は取らないだろうが余計な行動は取るし巻き込まれる

 

トラブル招来体質は補正の附属品だ

 

たまにtoloveるときもある、なんかイラッとしてきた

 

「よし、音虎苺花ちゃんが探してきてくるわ、用もあるし」

にかっと笑いかける

「ほんと?」

 

「ほんとほんと、あたしが約束破ったことあるかー?」

 

「……結構あるかも」

 

あ、さいですか

 

 

さぁて、どこにいったか……霊絡でも辿れば早そうなもんだが

斬拳走鬼バランスはよいが霊的知覚、探知はどうも苦手だ

本業の隠密機動にはもちろん敵わないし……

 

一瞬、微かなノミのような小さな殺意がちくりとこめかみにささる

 

 

……!

 

反射的に抜刀、こめかみへの一瞬の線を弾く

 

金属音、それは地面に刺さり霊子へ霧散する

 

……短剣、短刀の類

 

「……素晴らしい、私の気配遮断を察知しますか」

男の声

 

「誰だ、てめぇ…!」

 

「あなた方の天敵ですな、死神」

無機質な敵意が襲いかかるがあまりにもそれは平坦だった 

 

これから起こることは全て作業にしかならないと

 

 

暗殺者すなわち隠密機動の同類

 

だが、隠密機動のそれとは質が違う

 

霊圧、霊力、気配のどれもが感じられない

 

開かれた市街地にもかかわらず苺花にはどこにいるか知覚出来なかった

 

「ちぃ……暗殺者ぁ……出て来いよ…」

 

「暗殺者が標的の前に姿を現すなんて愚策も愚策、常識だ」

カッカッカと笑う男の声

 

 

暗殺者相手には派手に大技を出して周囲の環境を崩すのも一つの賭けだが……音虎がいる

 

暗殺者相手に護衛しながらは悪手だ

 

 

複数のちくりとするノミのような小さな殺意がまたあたしを狙う

 

右目、脇腹、左脚……

 

この微かの小さな殺意が頼りだ

 

 

3つの線に対し、反応し一閃!

二つの短剣を弾くが右目を狙ったものが逃し頬を削る

 

「野郎……!」

 

「い、苺花ちゃん……血!」

音虎はあたし死神を知覚出来るほどの霊力の持ち主だ

 

だがこの暗殺者は知覚出来ていないだろう

 

あたしの、突然負傷などに困惑している

 

「てめぇ…わざと……巻き込んだな…!」

 

「……貴様は大分前から捕捉していた、だが確実に葬る為にベストなタイミングを狙うのは当然」

 

あたしを……音虎という人質か

 

「…………轟天に吼えろ!!『猿魔雷公(えんまらいこう)』ぉおお!!!!!」

 

斬魄刀の名前を呼び始解する

 

斬魄刀、第一段階目の解放

 

斬魄刀と対話、同調し斬魄刀本来の姿、力を解放する

 

あたしの斬魄刀は特別だがなぁ…!

 

 

「……『始解』か、やはり浅薄……気の短い標的はやりやすい」

落胆もなくただ平坦に侮蔑する声

 

「浅薄かは食らってから決めな!!」音虎も守っててめぇも倒すと虚空を睨みつける

 



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第六節「the lost brave③」

オリジナル斬魄刀です




斬魄刀第一段階の解放

 

その斬魄刀の『解号』を叫び、力を解放し姿を変える

 

それが『始解』

 

あたしの斬魄刀『猿魔雷公』は雷撃系の斬魄刀

…まぁこれだけではないけど

 

『猿魔雷公』は雷を纏う斬魄刀だ

 

解放と同時に刀身は雷となり四肢に紫電の霊子が帯電する

 

この、解放状態になると身体能力は上昇する

 

バチバチと視覚化された体に纏う霊圧が紫電する

 

 

「さぁ……来やがれ……!」

 

 

「笑止……!」

 

 

右方左方からの殺意があたし達を囲む、無数の短剣が投擲される

 

音虎を巻き込んだのはあたしだ

 

必ず『護る』!!

 

電光石火!!紫電を纏う霊圧は腕の形となり短剣を全て摑み取り握り潰す

 

さらなる追撃、短剣短剣短剣短剣

投擲、投擲、、投擲、投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲投擲

 

その全ての短剣は人質である音虎を狙い始める

 

「野郎、恥も外聞もねぇのか」

 

「ある、狙った標的を逃すことである」 

相変わらず平坦な声、徹底した効率主義

当然今のあたしの急所である『音虎』を狙う

 

あたしの形となった紫電の両腕、そして霊圧の『尾』が短剣をはじき続ける

 

雷の狒々となるあたしは神経を研ぎ澄ませる

 

こいつは多分『虚』、短剣もこの数は霊圧から生成しているだろう

 

しかしそれでもあたしの『猿魔雷公』よりは燃費は良いだろう

 

何分保つか、燃費が悪い『雷電狒々』状態では

ジリ貧だ

 

それまでに居場所を突き止める…!

 

 

この連続投擲にも間がある

 

 

一回の生成するにも『限度』はある

 

 

「いいか、苺花いかなる攻撃にも『回数限界』がある

俺の蛇尾丸にもな……それを見極めるのも重要だ」

 

親父のえっらそうな言葉にも叔父上も頷いていた

 

 

次の間が勝負、一瞬攻撃が止む

 

奴の、一回の投擲数はおおよそ『200』

 

もしかしたら『猿魔雷公』の蓄電量が切れるのが先かもしれないし音虎へのリスクが高まる

 

短剣の雨をしのぎながらその機会を待つ

 

 

音虎は不安そうに怯えている

あたしにつかまりフルフル震えている

 

 

「さぁ、終わりだ」

 

 

攻撃が止む

 

 

いまだ!!跳躍する、

 

 

「そこだ!!!!」

 

 

雷瞬の壱

 

 

「『鳴咬(なりかみ)!!』」

 

虚空を斬り捨てる

鮮血がまう

 

姿を現す黒い男

紫電の居合いが暗殺者の胸を斬り捨てる

 

 

「ギャフ…!?な、なぜ…!」

と地面に叩きつける

 

「無様だなぁ暗殺者……仮面に黒い身体に……仮面が割れてる……『破面』かてめぇ」

暗殺者の風体の破面の首に刀を突き付ける 

 

 

「小娘風情にぃ…!」

 

「ようやく、感情を崩したなぁ?そっちの方が人生楽しめるぜ………どうしてあたしを狙った?『破面』は最近見ないらしいが」

 

「……」沈黙

敗者は死のみ。口を閉ざす

 

「無様だな、『百貌』……いや、『百貌』でも最弱の貴様には充分すぎる成果か」

 

背後から声

 

いつの間に?

 

なんであたしの腹から剣が生えてんの?

 

「い、い、苺花ちゃん!!?」

あ、音虎泣くなよ……誰だ……泣かした奴は……

 

 

「時間稼ぎに大儀だった…他の『百貌』が受け継ぐ。メドゥーサが石田竜鳴を確保した」

 

振り向く先にいたのは金髪の黒い騎士

割れた竜骨…………『破面』

そいつの黒く禍々しい剣があたしを貫いていた

 

「沈め、死神……先に地獄に行くが良い。時期に全て追わせてやる」

剣が抜かれる、それと同時に血が噴く

 

「いやぁぁぁぁぁ!?!?!?」

音虎の悲鳴が嫌に耳に……『護る』っていったはず……なのに…

 

「相変わらず泣き虫だなぁ音虎」

 

声、懐かしい声だ

 

野郎…来るのが遅いんだよ……

 

 

「お兄ちゃん……!苺花ちゃんが!!苺花ちゃんが!!」

泣き叫ぶ音虎、その声の主に縋りつく

 

あたしも、眼が霞んできた……失血しているからよ

 

 

「うん、知ってるよ……僕がそうするように頼んだんだ、ねぇアルトリア」

 

「ああ、マスター」

 

なに言ってんだ……てめぇ……?

 

「ごめんね、音虎助けられないや」

いつもの、声で……音虎を泣かすな

 

「一勇ィィイィィイ!!!!!!」

 

「ほら、苺花元気じゃないか」

 

黒崎一勇は、邪悪に笑う



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第七節「the lost brave④」

黒崎一勇

 

先代死神代行黒崎一護と井上織姫の息子

 

幼い年から死神化を既にしていた所謂天才児

 

死神、滅却師、虚、完現者様々な血統をもつ中々のハイブリッドなやつだった

 

先述した、通り

 

黒崎一護の『正義感』や井上織姫の『のんびり』している所を足して二乗したような奴で

 

「霊だって困ってたら助けるのは当然だよ、目の前で見える範囲は助けなきゃ…父さんだってそのための力でそのための『一つの勇気』だってかずいって付けてくれたんだ」

 

そんなことを平気で言うような奴が

 

あたしの、知っている『黒崎一勇』の筈だ

 

 

「そんな、いらつくような笑みを浮かべてんじゃねぇぇ!!!一勇!!!!」

 

「あ、ごめんごめん苺花……あまりにも血塗れが滑稽で……ねぇアルトリア?」

 

「……」

 

「無愛想だなぁそっちのアルトリアは……さて苺花、僕は忙しくなりそうなんだ」

 

だから、何だよ。音虎を泣かしたことに対して納得出来る用事なんだろなぁ!?

 

「……早めに死んでよね?うん楽に殺してあげるよ」

だからその、薄っぺらい笑みをやめやがれ!!

 

あたしは失血し続ける身体を無理に動かす

 

雷を纏い操り人形のように動かす

 

滅却師の『乱装天傀』と同じ要領で動かす

厳密には違うだろうが動けるならなんでもいい

 

「わ-、無理するんだねぇ苺花……いつまで意識は持つかな……アルトリア手を出さないでね……なぁによしみさ」

僕自らとどめを刺してこう

 

2対の斬魄刀を取りだす

 

あいつの、斬魄刀……厄介だな

 

「解放?……しないよ今の君に要る?死にかけの君にさ」

侮蔑するように、笑いかける

 

今のあいつの笑みには癪が触る、元々あいつにへらへらされるのは嫌いだった

今のあいつの、笑みはおぞましい何かを含んでいる

 

傀電乱纏(かいでんらんてん)』雷の霊子を纏い人体を誤認させ無理に動かす

 

あたしの『怒り』が原動力となる

 

 

一撃で決める!!

 

『雷瞬の弐』

 

 

「『雷閃切』……か……!?」

 

 

『月牙天衝』 

放たれた斬撃が斜めにあたしを斬り捨てる 

 

野郎…初動が見えなかった…いつ構えた、いつ刃先を向けた、いつ振り払った……? 

 

「………………行こう、アルトリア始めよう『幻浸』を」

 

 

あいつは、此方をみず歩き始める

あたしのことなんか気にとめず

音虎を無視し歩き始める

 

音虎は茫然自失だ、恐らくショック過ぎて気絶したのだろう

 

……全てが遅く見える

 

望めばあいつに届きそうで

 

それでもあいつの、背は遠い

 

 

なにがあいつを変えたのかあたしには、わからない

 

死んでしまうあたしにはあいつを止める資格なんてないのかもしれない

 

 

雨が降り始めた

 

 

あたしの、身体に打ちつける

 

 

最後に見たのは……誰かだった

 

 

 

 

 

 

場は戻って現在

「それからあたしが浦原さんに助けられて目を覚ましたらこの、現状だった」

陰鬱そうに、苺花ちゃんが言う

 

私、立火は言葉を、失っていた

 

「元々一勇サンはその時点で黒崎サンらを無力化しソウルソサエティからの援軍が来ないようあらゆる門を封印していたみたいっす……一勇サン自身もそうですが彼に控えている『破面』も厄介でした」

特に黒い騎士

 

聞いた感じだと、アルトリアペンドラゴン

かの『騎士王』……なぜサーヴァントが破面に?

 

「そして、彼は黒崎一勇ではなく『虚影のアサシン』と名乗っています」

 

かつての主人公の、息子

 

この特異点の転生者

 

 

藤丸立火の初めての敵だった

 

 

 



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第八節「the blood①」

摩耗した夢を見る

 

走り続け、走り続け走り続け、走り続け

 

置き去りにした顔は削れ思い出せなく

 

 

走り続けて走り続けた先には屍しかなく救った筈のものも屍になって

救われなかったものも屍だった

 

摩耗したそれは正しかった、後悔はしていないと自分に言い聞かせて

 

 

「……」

 

かつての自分さえも置き去りにした  

 

その、走り続けた先に天秤の亡い、世界を信じて

 

 

擦り切れ擦り切れ擦り切れ……こんな筈ではなかったと嘆かず

 

…………それでもそれは×××で出来ていた

 

 

 

 

 

 

 

 

「セイバーくん?」

 

 

「…なんだマスター?」

寝ていたのか?いや……立火は困った風に笑っていた  

彼女は人の顔を伺う癖がある

自己主張の少ない彼女の悪癖だと己は思うが

 

 

「……すまない、少しぼーとしていた」

軽く謝罪をするとそっかと、彼女は前を向く

 

 

目の前にはあの巨大な虚が視界に入った

もちろん距離はかなりあるから巨大さは軽減されるがこの距離でこれはやはりデカい

 

 

要塞級大虚(フォートレスメノス)

暫定的な呼称ではあるが大虚の下級個体『ギリアン』が何体か折り重なり改造された虚であるらしい

 

それが空座の重要な位置に3体

 

それが今の現状、霊子・器子の境界を曖昧にさせ霊的存在を実体化された空間を作り出しているらしい

 

 

浦原曰く

 

「このままこの現状が続くと尸魂界と現世のバランスは崩壊し空座町という楔は尸魂界ごと霊的存在が世界に流れ込む可能性があります」

 

全ての境界はなくなり全てはアヤフヤになる

 

虚という怪物は世界を喰らい続ける可能性はある

 

 

「そうならないためには…あの虚を倒すのが一番だよね」

 

「あぁ……そして……あの3体は『破面』が一体一体守っている」

 

現状わかっている『破面』は『騎士王』と『暗殺者』

 

それを撃破した上でさらに、無数のレギオンを生み出すあれを破壊もしくは無力化しなければならない

 

 

「藤丸サンと赫月さんには空座町の北東部にある要塞級を様子見し可能であれば…お願いします」

「あたし達も他の場所を偵察……一人、滅却師が捕まっているみたいだから救出もしなきゃならない」

 

石田竜鳴か

 

こうして役割分担をし空座町北東部に向かってきていた

 

立火は怯えながらあたりをキョロキョロしている

 

市街地を離れ自然が増えてきているが瓦礫になっている

 

 

『暗殺者』がいるならば常は警戒しなければならない

マスターをやられればサーヴァントの己は存在出来なくなる

 

 

進む、まだ要塞級を護る悪霊群級の生息範囲内に入ってはいないが『破面』の霊圧補足範囲に入るかもしれない

 

警戒しながら己は武器を即座に出せるように

常に魔力の引き金を引けるようにしている

 

マスターのすきだらけの隙もつかれないよう細心を払う

 

「……ねえ、セイバーくん」

立火は口を開く

 

「……なんだ?」

 

「……セイバーくんの話、聞きたいな」

 

「?」

 

「あ、いや……セイバーくんのこと何も知らないなぁ……って、これから一緒に頑張っていくなら」

 

なんて……と、声が小さくゴニョゴニョ俯く立火 

 

「確かに……召喚されてすぐにレイシフトして逃げてと忙しかったな……どう戦うかマスター的にも不安だろう」

真名は……本当たいしたものじゃないのだがな

 

 

 

「そこの、赫月様も転生者ですよ藤丸殿」

突然の声

 

「!?」 

振り向けばそこには赤い着物の女がいた

 

「おひさしゅうございますわ、赫月様愛おしくて愛おしくてこの『血怪(けっかい)のバーサーカー』、愛に来ちゃいました……ンフフフフ……」

ニタニタとおぞましく笑う頭のてっぺんから足の先まで赤い赤い赤い血のような片角を生やした女が立っていた

 

「…………貴様、いたのか」

 

「……この特異点にいらっしゃるとあの方にききましていても立ってもいられなくて、我慢、我慢したのですよ?……ンフフフフ…赫月様の、いけず……あああたまりませんわぁ……ようやくようやく貴方様にぃ……!」 

 

恍惚の表情、一人構わず盛り上がっている

 

悪寒、鳥肌が止まらない……おぞましさといきなりの遭遇に



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第九節「the blood②」

血怪のバーサーカーと名乗るそれは恍惚の表情を崩さず笑っていた  

 

『狂兵』のクラスのサーヴァント、理性を放棄し強化するクラス

 

だがこのバーサーカーは話しているし理知的ではある

 

「…思考、嗜好、倫理観その他が狂っているからのバーサーカーだよ、マスター」

セイバーくんは吐き捨てる

 

「あら、お褒めに預かり光栄ですわ。…ンフフフフ」

ニタニタと笑う赤い着物の女

 

「褒めてない」

 

褒めてないよねー

 

「この特異点の転生者、貴様らの差し金か」

セイバーくんの言葉には嫌悪感と殺意が乗せられている

 

「そうでもありますし、そうでもありませんわ……赫月様」

 

「煙に巻きやがって『血怪の』、貴様の飼い主のやりそうなことだよ」忌々しく吐き捨てる

セイバーくんはイライラしている?

 

「奴は今どこにいる?」

 

奴?誰だろう

 

「あなたに愛に来たと言いましたでしょう、我が主の事なんかどうでもいいでしょう、わたくしのことだけみてくださいいまいましい、あの気持ち悪い我が主などどうでもいいでしょう?」

 

ニタニタ笑いながら早口で言ってくるバーサーカー

 

「巫山戯るなよ、『血怪の』」

バーサーカーの首に剣を、突き付ける  

 

「ンフフフフ…やっぱり貴方様は良いですわ、けどいまの貴方様は我が主どころかわたくしのことすら倒せませんわよ」剣に触れると血となり溶けてしまう ドロリと霧散する

 

「今回は愛に来ただけですわ、…貴方様を召喚した女を見に来たついでですわ」

 

ひい!?このヤンデレチックな女に殺意を向けられたんだけど!?

 

「取るに足りませんわ、ンフフフフ…いずれ貴方様を……………………ああ、我が主からついでの伝言がありましたの」

主ぃぃ…ついでなんだ……

 

 

「そのまま伝えますわ」

 

『やぁ、少年息災でなによりだ。召喚されてようやくお前も参戦できることだろう』

 

参戦……?クロスオーダーのこと…?

 

 

『お前が、最後のサーヴァント。マスターともどもお前の参戦を監督役として認めよう』

 

 

『これで、セイバー・アーチャー・ランサー・ライダー・アサシン・キャスター……そしてバーサーカーの転生召喚が確認された』

 

 

(まが)ツ聖杯を巡る『次元聖杯戦争』の開始を宣言しよう』

 

 

『だがお前の参戦は我々『禍神転生者(かしんてんせいしゃ)』と彼女を殺して止めること』

 

 

『さぁ、全力でくるがいい、最初の『禍神転生者』を倒せねば始まるまい』

 

 

「以上が伝言ですわ、また愛ましょう赫月様。わたくしも特異点でお待ちしておりますわ…けれど早くしないと手遅れですわよ?」

血怪のバーサーカーは『狂化』していながらも優雅に一礼しながら血となり霧散し消える

 

 

「……次元聖杯戦争?」

 

「……巻き込んですまないマスター、しかしこのクロスオーダーに関わる以上この次元聖杯戦争は避けては通れないことだ」

 

 

「……セイバーくんも転生者だったんだね、わたしと一緒だね」

弱々しくにへらと笑う

なんか少しうれしくなった気がする

 

「……私達は一蓮托生、なんだから」

 

「済まない、マスターよろしく頼む」

 

私達は再び握手交わす



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第十節「the blade①」

転生者の、サーヴァント  

 

そもそも過去、未来の英霊をクラスという枠組みに召喚する

 

というのがサーヴァントの召喚システムだ

 

通常の聖杯戦争なら聖杯の力を借り受け行う

 

このクロスオーダーはカルデアというそのものが代行……しているはず……だよね

 

 

過去の英霊に転生するというのは土台無理な話だろう

 

アカシックレコードそのものに抵触しそうで禁忌になりそうな気がする

 

「特例で可能かもしれないが…あまりにも歴史改変に関わる場合…………だろう」

転生し直しか最悪、そのまま涅槃行き

 

 

そもそも、転生とは何だろう

 

輪廻転生とは、違うのか

 

予定外の死、手違いからの転生はよくある

 

わたしはクロスオーダーのマスター適正による転生

 

 

 

「…そもそも、転生ってルールに反してない?」

予定通りだったとしても無念の死ってあるんだと思う

 

不公平…だとは思う

 

「…確かにな、だがこのクロスオーダーにおいては問題なのは『禍神転生』だ」

 

禍神…いわゆる邪神という類の神々

 

奴らの企みや意思によりより劣悪な魂を転生させその世界の崩壊や混乱を招く

 

その平行世界の人類史の存続の危機に瀕することは想像に固くない

 

「それを止める為のクロスオーダーだ、転生者には転生者」

所謂、守護者では別世界の危機に召喚することは出来ない

 

「だからの己だ」 

 

禍神転生者に対抗するための転生者

 

「…己には英霊たり得る肉体と英霊の力を借りている、もちろんよくある転生特典と呼ばれる『ギフトスキル』もな」

 

マシュ・キリエライトちゃんのようなデミサーヴァントみたいなものだろうか

 

 

「ちなみに借り受けている英霊の力って?」

 

 

「…英霊エミヤ、……エミヤシロウが走り続けたその先正義の味方さ」

 

 

エミヤ?……エミヤ!?

 

 

 

英霊エミヤ

 

錬鉄の英霊、投影魔術を得意とし主にアーチャークラスに召喚されるサーヴァント

 

その正体は衛宮士郎が全てを救いたいと走りに走り続け死後もそうありたいと世界と契約し守護者になった男

 

 

「…エミヤか…」

 

作品としては知っていた、そもそも転生したわたしにとって漫画やゲームの世界

 

好きなキャラクターの一人だったりはする

 

 

 

「とりあえず、話はこれくらいにしとこうマスター…奴ら、此方に気付いたようだ」

話しながら進みいつの間にかレギオンのいる区間にはいっていたらしい

 

「レイシフト直後は無様をさらしたがね、…汚名はことごとく返上しとこう」

 

 

凍結解除(フリーズアウト)と呟く

 

赤い外套の男の力を借り受ける彼の力

 

 

「剣環展開」

 

此方を捕捉する空にいるレギオンの大群

 

逆にそれに狙いを定めるようにあらゆる聖剣、魔剣を宙に浮かせる

 

それら全てが投影魔術により、生成された贋作

 

 

「さてレギオン共、…お前らを一掃するため準備をしてきたぞ」

さらに増える剣環、一刀一殺すべき狙いを定める

 

セイバーくんの殺意に レギオン達が反応する

 

全投影連続層射(ソードバレルフルオープン)!」

 

エミヤシロウの同じ口上をし一斉掃射される

 

怒涛の剣群、視界に映る全てのレギオンを撃ち抜く

 

「アーチャークラスの真似事だが、様になっているようだ」

セイバークラスに召喚されたのだからアーチャークラス程射撃のクラス補正は受けない

 

だが十二分にすぎる戦果

 

 

それでも次々現れるレギオン共、

 

 

「さて、レギオン共を一掃して『破面』を引きずり出そうかマスター」

ニヤリと笑う

 

「……偵察じゃなかったっけ?今回」

セイバーくんのやる気満々が若干恐いです

 

 

「偵察するのは構わないが……別に倒してしまっても構わないだろう?」

 

 

………絶対知ってるでしょ、セイバーくん



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第十一節「the blade②」

「藤丸サン達は戦闘に入ったようですね」

 

「そうだな、…偵察と言っときながら戦闘は避けられなさそうだしな……浦原さんもそう思ってたんだろ」

 

「そうッスね……もし要塞級を落としてくれればこの現状が良くなるかもしれないッス」

 

別動隊として動いてたふたり、阿散井苺花と浦原喜助は別の要塞級を狙うため隠密行動をしていた

 

彼らの目的は拉致られた石田竜鳴の居場所の特定

 

そもそも、石田竜鳴が何故拉致られたのかわからない

 

滅却師である以上滅却師であることが理由なのだろうか

 

判断材料が、少ない今はこの理由は捨てた方が無難だろう

 

奴らの理になることは確実なのだから救い出すのは当然の、帰結

 

霊圧を消す外套に鬼道を混ぜ視覚的にも消えている

 

暗殺者顔負けに隠密行動をしていた

 

既に藤丸立火達とは別の要塞級の近くまでは来ていた

 

 

空座一高跡地、かつての黒崎一護たちが通って黒崎一勇も通っていた高校

 

その跡地に廃校になった空座一高に要塞級大虚は鎮座していた

 

 

やはり巨大、縦長に阿修羅像のように三つの仮面

 

周囲の魂魄を捕食し悪霊群を生成する要塞

 

「そして…空座町全体の霊子実体化の結界の核も成していると思われます」

 

「破壊するにはデカすぎるし……浦原さんの卍解で何とかなるか?」

 

「無理でしょう、『破面』の邪魔が必ず入ります」

 

 

『破面』を撃破、これは前提条件にすぎるのだ

 

 

「必ず倒す、……そのために卍解を習得したし九十番台の鬼道だって」

 

「そうッスね、いまの阿散井サンなら隊長にだって引けをとらない筈っす……まぁ卍解は取得したばかりのが懸念ですね」

 

「……あとあいつだって卍解はあるのもな、見たことないけど」

 

死神代行時代にあいつは卍解を使っていない

 

『始解』はしていた、……あいつの斬魄刀は2対の斬魄刀

 

花天狂骨、双魚理そして真の斬月に続く2対一刀の斬魄刀

 

「……負けるわけには行かねぇ……止めて吐かせてやる……」

 

「廃校の、中に霊圧を感じます……破面と」

 

 

「石田か」

あたしの、言葉に浦原さんはうなずく

 

空座一高……かつてのあいつの学び場に侵入した

 

 

 

 

 

 

 

セイバーくんとレギオン共の戦闘は苛烈にすぎた

 

無双に次ぐ無双

 

剣群の数は500に達していた、一刀一殺は確実にこなしていたから倒したレギオンも500を超える

 

 

「……そろそろ、来るだろう」

 

その、言葉と同時に現れる

 

一回り大きいレギオンが現れる

 

 

中級大虚アジューカスのレギオン

 

通常のレギオン体には、比べ物にならない霊圧を身に纏うそれはレギオンの大群を引き連れているそれだろう

 

「貴様か、侵入者は……」

殺意と共に霊圧で負荷をかけてくる

 

「…投影、開始(トレースオン)

 

セイバーくんの、両手には英霊エミヤを象徴する夫婦剣

 

干将莫耶が握られている、黒と白の双剣

 

 

「そのような、小さき刃でどうにかできるものか!」

鬼のようなアジューカスが殴りかかる

 

 

「っ!!」

攻撃をミリ単位で交わし十字に首下に斬りつける

 

「がっ!!?」

容赦なく首を切断して霊子となり霧散する

 

「……過信と慢心だな虚、それらは足下を掬うぞ」

 

先に行こうマスターとセイバーくんは言ってきた

 

「う、うん行こう」

 

……私いる?これ

 



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第十二節「the blade③」

これで、よいのだろうか

 

知識として与えられたマスターとサーヴァント像に現状かけ離れている

 

……転生してまで守られている。良くは……ないよねぇ

 

焦燥がまとわりつく。知識として与えられたものの中に『私のクロスオーダーのマスター適正』の詳細が欠落している

 

自分の手の甲の紋様を見つめる

 

『令呪』…サーヴァントへの三度の絶対命令権

通常の聖杯戦争とは、違い一晩たてば全画全て回復する

 

これがマスターの、証

 

これをうまく使えば……良いのかな

 

 

 

「………ギフトスキルかぁ……私である必要性ってなんだろ?」

わざわざ藤丸立香の座を奪ってまでの理由は、わからない

「教えてくれれば良いのに、……」

ぼそっと愚痴をつく

 

 

 

 

セイバーくんの進撃ここにて止まる、開かれた広場、視界には要塞級がみえる

 

 

「…………ずいぶん暴れたのですね、……あなたがたが侵入者にて阿散井苺花らの助っ人ですか」

 

幽鬼のように、ゆらりと立つ長身の紫髪の眼帯の女

 

 

『破面』

 

仮面を破りし虚、虚の死神化

 

先程の虚とは、くらべものにならない霊圧を身に纏っていた

 

ぞくり、と寒気がするような霊圧

清廉な混じりっけ無しの殺意に身を固くする

 

「…………破面にサーヴァントの魂を定着させたのか」

 

 

「さて、どうでしょう。詳しいことは私は知りませんし、興味も、ありません……『(エスパーダ)』として与えられた役割をこなすだけです」

 

セイバーくんは私の前に立つ

 

 

「……あなたがたの目的はあれ、でしょう」

要塞級に差しながらゆらりと構える

 

「……マスターからあれの守護を任せられてます、通すわけにはいきませんね」

 

殺意が増幅する、極寒の霊圧

 

「えらくしゃべるじゃないか、破面……」

 

「呑み込んであげます、名も知らぬ敵」

 

魔力と霊圧がぶつかる、破面は鎖の先に杭がついた、武器を取り出す

 

「……投影、開始」

 

隕鉄の鞴、原初の火。赤い剣

皇帝ネロの愛剣を投影する

 

使い手の感情に呼応し火力を上昇させる

 

彼の感情の炎が刀身に纏う、

 

 

「………第二刃(セグンダエスパーダ)、メドゥーサ……優しくは殺してはあげません」

 

「赫月のセイバー、推して参る!!」

 

メドゥーサは跳躍

初速の、速度は既にセイバーくんの速度を超えている

 

スピードを、武器にする

 

 

木をけり反動にさらに跳躍、跳躍、跳躍それを繰り返し加速する

 

セイバーくんを中心に周囲の木などを利用し囲こまれる

 

加速、加速、加速

 

 

「…」

殺意!

 

衝撃……!!セイバーくんの腕から鮮血が飛び散る

 

「ちぃ……」

 

メドゥーサは獲物を狙うように跳躍と加速を繰り返す

 

「確かに早いな……、だがな」

 

業っ…!と赤い鞴は炎を纏う、さらに火力を上昇させる

 

「…!」

回転させ思いっきり振りかぶる!!

 

炎を纏い、突進しようとしてくるメドゥーサを迎え撃つ

 

 

衝突、鞴と鎖が拮抗するがすぐにメドゥーサは離脱、距離を取る

 

力では、かなわないと分かっているのだろうか

 

「……やはりセイバークラス、正面戦闘は不利ですね」

 

クラスを、知っているやはりサーヴァント、英霊が混ざっているよね

 

「…戦い方を変えましょうか」

眼帯を外す

 

 

反英霊メドゥーサ、本当に彼女と混ざっている『破面』なら…『魔眼』……

 

「気を付けて!!セイバーくん!!」

 

セイバークラスの対魔力で打ち消せるかもしれないけど…言いようのない焦燥が襲いかかる



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第十三節「the monster①」

『魔眼』

 

いわゆる中二病的なあれと言えばわかりやすいと思う

 

それでも立派な魔術行使だ

 

視覚情報の受容体である眼球から外側に働き掛ける一工程の魔術行使

 

一般的な魔術師では魅力や暗示が限度

 

 

しかし中は未来視や過去視、そして死を線としてみる直死というものもある

 

その中でも一際有名なのは

 

石化の魔眼(キュベレイ)』だ

 

対象を見ただけで石化させる、この文面を見るだけでやばいにつきる(語彙力不足)

 

 

メドゥーサならば…石化させる目を持つ蛇女として有名なのだから

 

魔力抵抗値として対魔力という物がありその干渉を和らげる事が出来る

対魔力Aなら打ち消し対魔力Bなら判定により石化され対魔力C以下なら抵抗できず受けてしまう

 

セイバーくんの対魔力B-、英霊エミヤはDだが借り受けるのは器ではなく力だから関係はない

 

石化しないが………体に負荷をがかかりステータスのワンランクダウンは余儀なくされる

 

「……さすがはセイバークラス、対魔力はそれなりのようです……アルトリアレベルだと問答無用で打ち消されますが……王道とは憎たらしいですね」

 

宝石のような目、『石化の魔眼』はセイバーくん対象に射貫き負荷をかけ続けてくる

 

「ち………メドゥーサと聞いて警戒はしていたが」

 

「警戒はしてはいましたか、隙をつけば石化できたものの」

 

「はっ、残念だったな…これぐらいの負荷、なんてことのない」

 

剣群を展開、それはつまり白兵戦は不利になったというセイバーくんの強がりか 

 

「アーチャークラスの真似事、……ふふふ、」

薄く笑うメドゥーサ、眼帯を外した彼女は絶世の美女だった

 

美の女神エウリュアレとステンノの末妹メドゥーサ

 

その魂を定着?させた破面なのかどうかはわからないがその力はメドゥーサそのもの

 

与えられた脳内Wikipediaにある『メドゥーサ』の項目と目の前のそれは合致していた

 

「じわじわ殺してあげます」

鎖が舞う、跳躍、初速からトップスピードまですぐに達する。

 

剣群を展開するが彼女のスピードに反応できない

 

セイバーくん自身の反射速度が多少落ちているせいか

 

その、多少は命取りになるのが戦闘 

 

 

多角化に攻撃を繰り返すメドゥーサ

じわじわ削りセイバーくんにダメージを与える

 

「…くっ」剣群をセイバーくんのまわりに展開し盾のようにする

 

 

「…………防戦一方ですね」

もちろん攻めの一手に加速し攻撃を緩めないメドゥーサ

 

響く金属音、繰り返される攻撃に剣群はひびが入ってくる

 

「…セイバーくん!!!!」

 

 

 

己の番

 

 

己は思考していた、体にかかる負荷は対魔力で半分は遮断していたが戦闘には支障は多少となりともあった 

 

その多少は対スピードにはかなりの弊害になった

 

さすがの石化の魔眼、恐ろしいものだ

 

…だが奴が破面で英霊である以上必ず『あれ』があるだろう

 

負けてやるつもりはないしこれ程度と思われるのも甚だ不愉快だ

 

『俺』はあいつを救わなければならない

 

摩耗した夢の中であいつの削れた顔を思い出す

 

 

 

 

 

機をねらう

 

 

 

「……投影、装填(トリガーオフ)

ガチャンと脳内にある魔力の撃鉄にいれる

 



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第十四節「the monster②」

猛攻につぐ猛攻  

 

メドゥーサの跳躍、反動を利用した全方位の多角的の攻撃を休める手はない

 

全て剣群の盾により防ぐが壊れ始め、セイバーくん自身を傷つけ始める

 

一撃死の攻撃力はないのか致命傷には至らないが

 

破面は破面

 

スピードによる霊圧高度も高くなり油断は出来ない

 

 

セイバーくんは用意してある剣群をさらに出すが石化の魔眼の負荷が思った通りに行かない

 

………やばい、わたしに出来る事は無いだろうか?

 

 

本来なら魔術、スキル、コードキャストなどでサーヴァントをサポートする

 

なに?脳内Wikipedia(私命名)で頭でっかちになっているが混乱して判断出来ない

 

圧倒的経験値不足……

 

あの石化の魔眼をディスペルするなんて到底無理だし…やっぱり令呪でセイバーくんを強化するしか……

 

「ふ、藤丸立火の名において命じる……」

 

 

「マスター!!」

それを遮るセイバーくんの念話

 

「まだ……使うな」

 

「え、でも……セイバーくん……」

 

 

「任せろ」

短く言い切る

彼の目はまだしんでなく、私は…………彼を信じてみようと思う

 

 

 

再び己の番

 

 

「…………そろそろその目障りな剣も品切れでしょう?終わりにしてあげます」

 

「はっ、てめぇをまだ解放すらさせてねぇ」

 

「出来ればあれは使いたくありませんね」

 

 

「意地でも使わせてやる、『怪物』」

 

その言葉にぴくりと反応するメドゥーサ

極寒の霊圧もさらに深く鋭くなり濃さも増す

 

「…殺します」

 

 

「……上等!!!!!」血は沸騰する、鼓動は脈動する

 

魂は赫杓と燃え上がる

 

「てめぇの負荷にも慣れてきた頃だ」

ニヤリと笑う

 

「あり得ません、石化の魔眼は呪いと同じ……あなたの対魔力では慣れるなど……」 

 

 

「タイラントって知ってるか?」

 

 

「?」

突然の問いに眉をひそめるメドゥーサ

 

 

「とある、世界の危険種と呼ばれる古代の怪物でな。……あらゆる環境に適応する特性があってな」

 

凍土にも砂漠にも

 

「止まった時間にも適応するらしい」

 

「何が言いたいのです……?」

 

 

「わかるだろ、その特性をな……転生する際英霊の肉体に付与して貰ったんだ」

 

己のステータス表をマスターは見る

 

 

寄贈特性・竜の因子A

 

あらゆる環境・干渉に、適応する

 

 

「………てめぇの負荷に、適応した」

ニヤリと笑う

 

 

 

「……!!……いいでしょう、だがあなたは既にボロボロ鎮めてあげます!!」

 

再び猛攻を、仕掛けるメドゥーサ

 

 

負荷にも慣れた、お前のスピードにも慣れた

 

己の中の竜の因子が、暴れまわる

 

片眼が十字に輝く

 

 

見える、見える

 

右、左、上下と動き回るのスピードを視認出来ていた

 

 

「…投影、装填」

 

隕鉄の鞴を、構える

是、花散る天幕(ロサイクヌゥスブレイドワークス)

 

 

メドゥーサを捉え切り捨てる

皇帝ネロの剣技ごと投影し模倣する憑依経験は完了する

 

「ぐっ…………」

鮮血を垂らしながら立ち上がる

 

「……仕方ありませんね……」

 

自嘲的に笑う

 

「……」

来るだろう、分かっているむしろ本番はこれからだ

 

鞴を握る力がつよくなる

 

 

「マスター……さらに距離を取れ戦闘範囲は広くなるから気をつけろ」

 

メドゥーサの不安感を持つ霊圧の高まりに弛緩させているマスターに、声をかける

 

 

「だ、め……体動かない……」

 

 

「……わかったその場を動くなよ……マスター」

 

 

「呑み込みなさい、『怪物神殿(ゴルゴーン)』!!」

 

 

「きたか…」

 

斬魄刀の解放

 

奴のの霊圧が爆ぜた、姿を変える

 

いや、本来の『怪物』へと変異する 

 

 

黄金の翼を持つ、蛇髪の女

ところどころには虚の特徴も残している

 

先程とは、くらべものにならない程の霊圧が場を支配していた

 

「醜いでしょう?…ふふふけどこれであなたはお仕舞いです」

傷は解放により塞がっていた



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第十五節「the monster③」

帰刃(レスレクシオン)

 

破面の斬魄刀解放。死神のそれとは違い本来の姿を刀の形に封じ込めた物。

 

死神のそれは刀の変化だが帰刃は破面の姿形が大きく変化し本来の姿へと戻る

 

 

怪物神殿(ゴルゴーン)

 

『恐ろしいもの』と呼ばれるそれは畏怖の対象の最悪の彼女の姿

 

メドゥーサがいきつく成れの果ての寸前、それが彼女の解放

 

「脳内Wikipediaが更新された…?」

 

 

「……脳内Wiki……なんだって?」

 

「あ、いやなんでもない………」

 

 

「……この醜い姿を晒したのです、生きては返しません、マスター共々死ぬが良い!!」

 

霊圧の高まりを感じる

 

 

王虚の閃光(グランレイセロ)!!』

極大の虚閃が放たれる、並大抵の威力ではないそれは私達ごと、呑み込もうとする

 

「……マスター!!ぐっ……」

思いもしない負荷がかかり私を突き飛ばしたセイバーくんはその極大の虚閃に飲み込まれ吹き飛ばされる

 

「セイバーくん!!?」反射的にかけようとするが力入らず転んでしまう

 

なに、体に力が、入らない………なんで……?

 

「『他者封印・鮮血神殿(ブラッドフォートアンドロメダ)』、結界内を私の眼球内に置き換え溶解させ生命力を奪う『形のない島』……私の解放と共にそれは発動されます、抵抗力すらありませんか人間」

私を踏みつける

 

「マスターを、殺せばサーヴァントは消える。彼はセイバークラス単独行動スキルは無いでしょう……これで」

 

「……マスターから離れろ」

 

「随分早いですね……いや丈夫ですね、鮮血神殿内ももう適応ですか」

 

「お前の魔力で形成されたものだからな、とりあえず除け」

 

どんっと大きな衝撃がメドゥーサを襲い軽く吹き飛ばす

 

「…私を吹き飛ばしますか……」

 

 

「軽いぜ、お嬢さん?」皮肉る

 

えと、半怪物化してるからそれなりの筈ですが……女性の、体重の話は厳禁?サーセン

 

 

ボロボロの、セイバーくん

先程の虚閃のダメージはデカい……はずだ

 

 

「……セイバーくん……」

 

「しばしの辛抱だ……」

折れた隕鉄の鞴を捨て地面に跳ねた同時に霧散する

 

 

「投影、開始」

 

干将莫耶を構える

 

それからは私を守るようにメドゥーサの攻撃を凌ぐ

 

鉤爪、蛇髪の触手、魔力光の投射による苛烈な攻撃を凌ぐ

 

鮮血神殿下の私の意識は朦朧となり始めた

 

 

彼の背中しか見えない

 

 

 

 

己の(ターン)

 

メドゥーサの攻撃は最も使い慣れた干将莫耶により受け流し、なんとか凌いでいた

 

『怪物神殿』による半魔獣化の解放は解放前の非力さなく怪力を有していた

 

スピードは無くなっていたがそれでも緩慢ではなく鮮血神殿下におくことで十二分に大抵の相手は潰せるだろう

 

 

「………しつこいですね」

 

「蛇のお前には言われたくはないがね」

 

 

使うか、このままではジリ貧だ……彼女が持たない

 

 

マスターをちらりと見る

顔色が悪く肩で呼吸している

 

 

力を貸してくれ、エミヤ……!

 

 

『身体は剣で出来ている…!』

干将莫耶を捨て右腕を突き出す

 

エミヤシロウの、口上のが好きだからそちらで行く…!

 

『血潮は鉄で、心は硝子』

 

何かを察したメドゥーサは攻撃を仕掛けてくる

 

己は『識天覆う七つの円環(ローアイアス)』を3回分展開する

多重の覆われた花弁の盾が己の前方に展開された

 

『幾度の戦場を越えて不敗、ただ一度の敗走もなくただ一度の勝利もない』

 

「小癪な……!!」

メドゥーサはローアイアスを打ち破ってくる

 

『担い手は一人、剣の丘で鉄をうつ』

 

目の前にメドゥーサ

『ならば、その生涯は意味はなく』

 

『借り物の、身体はそれでも剣で出来ていた!!』

 

 

世界は塗り替えられた




やりたかったシーン①


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第十六節「the monster④」

世界は塗り替えられた

 

心象世界を現実へ侵食させる禁呪『固有結界』

 

 

世界の侵食は既に張っていた結界ごと呑み込んだ

 

夥しい数の剣の丘、天空を覆う歯車はガチャリと動いていく

 

英霊エミヤの心象世界、剣の荒野

 

 

無限の剣製(アンリミテッドブレイドワークス)

 

 

彼の、ノーヴルファンタズムに該当する成れの果て

 

 

丘の上に立つ、赫月のセイバー

 

「ようこそ、『彼』の世界へメドゥーサ。歓迎しよう……なに、この映る全ては偽物だ」

 

 

「だがな、偽物が本物に勝てない道理はない」

 

「これ全ては君を葬る為に用意した、味わうが良い『恐ろしいもの』よ」

 

 

「…君を討伐する」

 

剣が二つが彼方より飛来する

 

クラレントとバルムンク

 

叛逆の騎士と龍殺しの剣を取り出す

 

 

 

「……舐めるなぁ!『鮮血虚閃(ブラッドフォート・セロ)』」

極大の真っ赤な虚閃が放たれる

 

その閃光はその二振りから放たれた極光に霧散される

 

 

怒涛の剣雨がメドゥーサに降り注ぐ

 

断罪かのように、怪物は打ち伏せられる

 

 

「一方的な蹂躙は好きじゃ無いがね……手を緩めればこちらがやられる」

 

 

クラレントを構える

 

偽・叛逆の剣(クラレント)!!」

赤雷の斬檄を放つ

 

「がっ!」

無数の剣で針鼠のようになったメドゥーサが吹き飛ばされる

 

「……はぁ……はぁ……呑み込まれなさい、『魔獣神殿(ゴルゴーン)』!!」

 

満身創痍のメドゥーサは咆哮する

 

メギャァァァァァァァァァアメギャァァァ!!

 

彼女の、身体は肥大化する

癌細胞のように増殖し肥大化する

 

「ただでは、死んであげません……食い殺してあげます……マスターのためにぃぃ!!」

怨嗟のように呪いのように叫ぶ

 

「……なぜ、そこまでする?」

 

「……私も転生者なんですよ、ただ死に行く私を転生し力を与えてくれた!!!英霊の力を模倣し破面として転生させてくれた!!…ただ、ちっぽけないじめられっ子に過ぎない私に、復讐の機会をくれた!!!!」

 

 

「……チビブスの私の気持ちなんか貴方になんか分かりゃぁしない!!マスターは分かってくれた!!この長身美人のメドゥーサの外見をくれた!!本当は嫌だけどマスターのためなら化け物だってなれる!!」

 

メドゥーサだったものの咆哮は続く

 

 

「いじめをする奴らは最初に殺した!!ざまぁみろひゃははははははっ!!!!!!!!!」

メドゥーサの仮面は剥がれ転生者元の少女の本心が漏れ出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

摩耗した夢を見た

 

 

『……なんでいじめるんだろうね、お兄ちゃん…………』

 

摩耗した夢を見た。少女は、泣いていた

 

 

 

 

 

 

 

「……ばっかじゃない、……」

ふらふらと立火は立っていた、既に満身創痍

 

「マスター……無茶は…結界は破壊したが生命力は戻っていない……」

 

「馬鹿でしょ、貴方……」

きっと立火は怪物を、にらむ

 

「ナニ……?」

怪物になりかけてるそれは立火を、睨む

 

 

「確かに虐めをしている奴は悪いし、何があっても因果応報知ったこっちゃない……平気で弱いものを虐めをする感性は反吐が出る、私も虐められてたから……わかる

 

息を切らして肩で呼吸しながら続ける

 

 

「鏡見てみたら?……笑い方あいつらと一緒だよ、化け物の風貌抜きに……醜いよ」

 

 

「………!?アタシハアイツラトイッショジャナイ!!アタシハトウゼンノケンリヲコウシシタダケ!!ゴルゴーンアイツラヲツブセ!!」

 

完全にゴルゴーンの魔獣となり自意識は憎悪と化し潰れる

 

言葉にならない咆哮する

 

 

「……セイバーくん、あの子止めて……きっと利用されただけの転生者だから」

 

「分かった」

頷くと同時に立火は倒れ気絶する

 

 

 

目の前にいるのはゴルゴーンの魔獣

 

無数の大蛇の、集合体その中心には強大な赤い眼

 

まさに『怪物』そのものだった

 

『彼』の世界を石化して侵食させようとする

 

 

「…マスターにも頼まれた、容赦はしない」

 

この固有結界全ての剣群を総動員する

 

「……行け」

 

怒涛の剣の嵐は吹き荒れる、魔獣を飲み込み降り注ぐ

 

嵐はすでに、濁流へ

 

 

「……!…!!」

魔獣は濁流を受け衝撃を喰らい吹き飛ばされる

 

「…要塞級もこの世界に招待しといた、一緒になるが良い」

 

魔獣は要塞級に、打ち付けられ剣で縫いつけられる

 

「…ぁ…!ぁ!」

 

 

 

「……これで、終わりにしよう……投影・過動(トレースオーバードライヴ)

 

 

投影し作るのは彼女の剣

 

 

 

 

 

 

「『遙かに永久の黄金の剣(エクスカリバーイマージュ)』」

鋒から放たれる光の濁流は要塞級ごと怪物を、呑み込んだ

 

「…………次の輪廻に渡れることを期待したいな」

 

彼の、世界は霧散した



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第十七節「the monster⑤」

前世の名前は嫌いだからすぐに捨てた

 

つまらない人生につまらない他人

 

苦痛な人生に苦痛の自分

 

劣等感の塊でちびで不細工

 

自分の外見と鬱屈した自分が嫌いだった

 

世界の全ては不公平で成り立っていた

 

思春期の半数以上はランク付けしていなきゃ済まない生き物だ

 

集団になればそれが顕著に出ると思う

 

強者と弱者、搾取する側と搾取される側、虐めっこと虐められっこ

 

学校というものはある意味世界の縮図だろう

 

 

ああ…私は虐められていた

 

…………反吐が出る

 

悪口、陰口、事実無根の告げ口

 

殴る蹴る、リンチの正当化

 

 

ああ、なんでいじめはまかり通るんだろう

未成年?守られている?法律?

てめぇらのしていること全ては犯罪だろうがぁぁ!!

 

見た目、性格全てが気にくわない私はクラス学年全てに目の敵にされていた

 

縋るような友達もなく

 

頼れる教師もいなく

 

親は私に無関心だった

妹は可愛がられていた……ねぇお父さん、よその種からできたって気付こうよ、可愛いじゃん、妹

 

妹からは汚物を見るような目で見られ

 

「あんた、良く生きてるねアタシ無理」

 

なら、××のうか?

 

 

周りの人が全て敵、…ねぇ誰か私を愛してよ

 

 

 

とあるとき私に優しくしてくれる人が一人いた

 

もちろん、私は警戒した

でもそれ一ヶ月続くもんだから警戒が緩くなってしまったからヒョイヒョイと心を開いてしまった

 

当然、周りの人が全て敵だった私はがっついてしまった

 

その人に依存してしまった

 

依存しきった時にネタばらし、当然良くある罰ゲームからのからかい

虐めっこからの囲まれて嘲笑、罵倒

 

「××のがっつき方、キモっ……必死過ぎて笑える」

「あんたなんかに友達できるかよ!!」

「この期間中まじ辛かったわ……罰ゲームにしてはおもすぎね?」

 

 

……なんでこんな仕打ち受けなければならないの?私はあんたらになんかしたか?

 

なら………××んでやるよ

ふらふらと、立ち上がり教室から投身自殺

 

 

……ぁぁ……それでも飛び降りてもあいつらは笑っていた

 

 

 

それが私××××の人生だった

 

 

「悔しくはないのかい?」

頭に浮かぶ優しい声

 

「悔しいでしょう?なんでキミが死んであいつらは笑っていたんだい?なにもわるくないんでしょう?」

 

悪いとすれば私の外見が悪いから、

 

「悪いのかい、愛嬌はあると思うけど」

 

みんなちびで不細工と馬鹿にする

 

「……キミには復讐の機会をあげよう、僕の転生に付き合ってくれるんだったらキミが望む外見にしようじゃないか」

 

メドゥーサさん、みたいな長身美人になりたい

 

「ちょうどいい、メドゥーサという力も貰おうよ、付き合ってくれるかい」

優しくイケメンみたいな声に付き合ってくれるかいと言われ舞い上がる

 

はい…

 

「じゃぁ決まりだ……次目覚めてからキミはメデューサだ、……そのまま僕についてくる前に望みを叶えなよ

望み……?

 

「×んだよ、君を馬鹿にしてきた様な奴らをさぁ……うんうん僕についてくるんだから罪なんか問われないし罪悪感を感じる必要も無いさ」

 

そう、だよね

 

「そうそう、因果応報天罰覿面…思い知らせなきゃキミの怒りを」

 

こうして私はメドゥーサに転生した

 

其れから克明に覚えている

世界の全ては私の敵、私の小さい世界にいた敵は全て処分した

どいつもこいつも泣き叫び媚びを売ってきた

 

ああ、なんて醜いんだ

 

…最後に妹お前を処分した

 

………………だれか私を愛してよ

 

 

それからはマスターについてきた、この外見をくれたあの人が好き、仕返しの機会をくれたあの人が好き

 

あの人がいてくれるだけで私の穴は塞がるのだから

 

あの人のためならば何でも出来る

 

 

 

鏡を見るそこには………私を嘲笑していた同じ嘲笑があった

 

「ァァァァァァア!!!!!!!!」

 

 

あの侵入者の言葉で、気付いてしまった

 

あぁ、私はあの虐めっこと同じになってしまった

 

あの人のためにと何人殺しただろう

 

弱者から、抜けるためには強者にならなきゃいけない

果たして……そうなのだろうか答えは分からない

 

弱肉強食は世の常だけれど……私はあいつらと同じになってしまったことに気付いてしまったことに酷く怯えていた、嫌悪していた

 

「……ここで離脱か、ご苦労様メドゥーサ……いや××、使い捨てにしては、つかえたよ」

 

やめて、捨てないで、私頑張るからねぇ捨てないで

 

「……じゃぁね」

 

ァァァァァァア!!!

 

…………あの子なら友達になってくれたかなぁ…………

 

侵入者のオレンジ髪の子を思い出す

 

あの子の眼は……優しそうだったなぁ

 

 

裁きのような極光は私を呑み込んだ

 

 

………こんな私は……多分愛されない……

 

 



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第十八節「the assassin①」

金髪の黒騎士

アルトリア・ペンドラゴンは憤慨していた

 

要塞級大虚の、一体が落ちた

 

メドゥーサの落ち度だ、元々使い捨ての転生者の破面だったからさほどこいつのことはよかった

 

「なぜ、マスターは侵入者に追撃させない……」

 

 

まぁいい、もう一体の空座一高廃校の要塞級のところに侵入者が来ている

『百貌』が、対応しているが奴らでは心許ない

 

石田竜鳴もそこに監禁している

 

奪い返されたらそれこそ計画に支障が出る

 

「私も出よう」

 

其れで終わりだ

 

 

 

 

空座一高廃校

そこは百貌と呼ばれる暗殺者の『破面』の巣窟だった

 

 

「ちぃ、…石田にどんな価値があるんだってんだ……」

 

「分からないッスね……起きろ、『紅姫』」

 

「……氷地に奔れ『白蛇前』」

 

あたしと浦原さんは互いに始解する、無数の暗殺者・レギオンに囲まれていた

 

「…………侵入者は排除する」

 

暗殺者共は構える、短剣、短刀

 

 

学校の廊下での戦闘はあまりにも狭い

 

2対多の戦闘

 

けど……負けてやる気はねぇ

 

「『天相従臨・極小』」

周囲がペキペキと凍結していく

氷結系最強の氷輪丸や雷撃系の厳霊丸の天候をも支配する能力

 

それまでにはいかねぇが周囲を支配する!!

 

凍結させ、動きにくくなるだろう

 

「阿散井サン、アタシもいること忘れないでくださいよ」

 

「……そんな影響ないでしょ、貴方には」

 

「まぁそっすけど」

 

 

「……前とは別の斬魄刀を使うのね」

女性型の暗殺者がそんな事を聞いてくる

 

「あ?……あたしが前に戦った奴じゃねーだろ……隠れて見てやがったのか」

 

「私たちは『百貌』と呼ばれる群体の英霊をコピーさせた破面よ、情報は共有されてるわ…まぁ前回の戦いは参考にできないようだけど」

 

「やけにお喋りな暗殺者だな……いいぜ、教えてやるよあたしの斬魄刀は二重人格でね表裏一体の、斬魄刀なんだよ」

 

「阿散井サン…」

じぃっとこちらを見る浦原さん、なんだよ手の内晒すなって?

 

 

「これくらいじゃ晒したことにならないし、……こいつら殺し尽くせばいいだけだ」

 

無数の殺意に囲まれる

 

「あーあ、阿散井サン、下手な挑発やめてくださいよ?」

 

「挑発乗った時点で暗殺者失格でしょ、…一応聞くけど石田そこにいるよなぁ?」

 

無言、沈黙

 

「沈黙は、肯定って……なぁ!!」

氷の蛇が周囲に広がっていく

 

 

「……チームワークって物は少しは考えてほしいモノっす」

 

 

「浦原さんは要塞級の時が、本番さぁ!!」

 

百貌たちは短刀を投擲したり襲いかかってくる

 

白い刀を持ち、白い蛇達を操るあたしは切り捨てていくが百貌たちの攻撃は、緩まない

 

 

「『散在する獣の骨、尖塔・紅晶・鋼鉄の車輪、動けば風止まれば空、槍打つ音色が虚城に満ちる!!』」

 

 

「破道の六十三……『雷吼炮』!!」

 

放たれる鬼道の咆吼の衝撃が暗殺者共は吹き飛ばす

 

「ちまちま攻撃……してんじゃねぇよ」

 

眉間を狙って投擲されたであろう短剣を白蛇が巻きつき凍らせ砕く

 

「なるほど……あの時とは違うようだ」

 

一人の暗殺者が出てくる

 

異様に包帯を巻かれた歪な腕

 

 

「『呪腕』のハサン・サッバーハがお相手つかまつろう、阿散井苺花殿」

 

「暗殺者風情が名乗り出るったぁ……どういう風の吹き回しだ?」

 

「前回、姿を現すは愚策ともうした百貌がいたな。何、未熟者の戯言、どういう状況でも暗殺をこなすのが一流ではないか…いくら場の構築しようともうまくいかないのは世の常……いやはやあれも百貌の端くれだったんだがな」

 

こいつ……他とは違う

 

あたしは白蛇前を構える

 

「………マスターのため、お前達を排除しよう」

 

 

 

 

 

 



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第十九節「the assassin②」

数ヶ月前の空座一高廃校の一室

 

石田竜鳴は拘束されていた

 

物理的にも霊的にも拘束されていた

 

いくら、優秀な滅却師とはいえか弱い少女、そして幾重に重ねられた縛道

 

無理矢理でも剥がそうものなら霊力の発生の『魄睡』、霊力のブースターである『鎖結』を潰されてしまう

 

そうしたら滅却師としては終わるし、逃げる手段も無くなるから意味も無い

 

 

「…………くっ」

この状況になってからしばらく立つ

……父が探しに来ると思うが……

 

「…………元気ですねぇ…」

 

「…………貴方達の目的はなんなの……」

 

傍に座っている見張り役の女に聞く

 

確か……静謐のアサシンとかか名乗っていた『破面』の一人だ

 

「さー、見張り役言われてるだけですしねぇ……まぁ知ってて漏らすわけないですよ」

膝を抱えながら髪の毛を弄っている

 

「下っ端か……」

 

「む、口悪いですね…私は貴方の、見張りを一人で任せられるぐらいにはそれなりですよー」

ぷんすかですじゃねぇーよ

 

「そだ、ひとついいこと教えてあげます」

 

「なによ」

 

「あなたの父親、殺しましたよ」

 

「……は?……お父さんが貴方達如きやられるわけ無いじゃない」

はは、何言ってるんだこいつは

 

「これ、なーんだ」

ひとつの血にまみれたモノを取り出す

 

 

「…………滅却十字(クインシークロス)?」

それは……お父さんの

 

「いやーさすが千年血戦を生き抜いた猛者ですねー、私達ハサンではきつかったですよー、アルトリア様がずばーっと半分にして、ですね」

 

言うな

 

「先代たちは軒並みマスターが殺しましたよー、いやはや容赦ないですよね、私達ハサンもドン引き」

やけにチャラいなこいつ

 

「…………マスターって誰よ……」

やけに喉が渇く、嫌な予感がする

 

 

「僕だよ、石田さん」

 

 

「…………………黒崎……さん……?」

 

え?いつもぼんやり気味のあの人がなんでこんなところに

 

「やぁ、久しぶりだね……」

 

 

「……なんで?……何でって……そりゃ……ねぇ」

なんでこんなにおぞましい別の何かにかんじるの

 

「キミの中のユーハバッハの因子が必要だからだよ」

 

ユーハバッハ……?

 

「?優秀なキミにしては、勉強不足だね、……いや石田雨竜がわざと教えなかったか」

 

「ユーハバッハは滅却師の始祖にて先の千年血戦の元凶さ……父さん達が倒した滅却師、持っていた力は全知全能……その力が必要なのさ」

 

そんな力なんて……

 

「全ての滅却師はユーハバッハの血が流れている、キミも僕にもさ……僕の目的に必要だ」

ニヤリと笑う、そんな笑いは見たことない

邪悪な笑みだった

 

 

「禍ツ聖杯への贄にキミは選ばれた」

 

 

 

 

そして現在

 

 

「……はっ、その程度か死神」

 

「うるせぇ!!」

空中戦になるも思った以上にやつの攻撃を凌ぐのが精一杯だった

 

「……はぁ……くっ……」

他の暗殺者共と違って気配の消し方、投擲のタイミングが絶妙に過ぎる

対応しようにもすぐにパターンが変わる

 

「こんなとこで苦戦している場合じゃないんだよ!!」

 

あたしはあいつを止めなければならないんだ!!

 

 

 

「まさか、使う気ですか阿散井サン!?」

 

 

「今使わずいつ使うんだよ!!」

 

斬魄刀・白蛇前を下段に構える

 

「卍・解!!」

 

霊力が膨張し、拡散する

 

周りが凍結し、熱を奪っていく

 

拡散していた、霊圧は刀に収束していく

 

上昇した霊圧は周りを威圧する

 

 

「…裏界白蛇姫ノ恋情(りかいしらへびひめのれんじょう)!!」

白い着物を纏った姿に変異する



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第二十節「the assassin③」

「卍解……『裏界白蛇姫ノ恋情(りかいしらへびひめのれんじょう)』」

 

白い着物を纏ったあたしが降り立つ

周りを凍結させ、芯まで凍えさせるあたし阿散井苺花の白蛇前の卍解

 

「これが……『卍解』…………素晴らしい霊圧だ、おぉ寒い」

 

 

『卍解』…斬魄刀戦術最終奥義

歴代隊長は習得し歴史に名を残すことなる

唯一卍解なしに隊長になった更木剣八も最終的には習得していた

 

斬魄刀の2段階目の解放

斬魄刀の『具象化』と『屈伏』が必要

本来なら10年以上の鍛錬を要する

 

 

「……貰うぜ、お前の腕と足『白蛇姫ノ嫉妬』」

 

視認した『呪腕』の歪な腕と軸足となる脚を『凍結』させる

 

「ぐぬ……!?」

 

「白蛇前は嫉妬深い女でな、……所有欲求も凄まじいんだ……それらはあいつのもんになる」

 

「あからさま、その腕切り札そうだもんな『呪腕』さんよ」

 

「おのれ!!」

気配遮断し、一度距離を置こうとする

 

「無駄だよ、『白蛇姫ノ狂愛』……こいつは蛇だからねっちこいぜ……逃がさない」

氷の大蛇が追尾し巻き付く

対象の霊圧を覚えマーキングし追尾する

 

「『白蛇姫ノ心中』」

バリィン!!と全身を凍結させ砕く

 

「ぎゃび!!」

 

床に叩きつけられるハサン

 

 

『……好みじゃないんですけど、イケメンと戦わせなさいよイケメンとー……つまんなーい』

 

「……棒読み怖ぇよ、せめて感情乗せろ感情」

 

『苺花に……そこらへん期待しても……無駄』

 

「あ?」

 

『女子力?…………ぷ』

 

……こいつ嫌い

 

 

「解放するぞお前達!!」

 

霊圧の上昇……くるのか

 

「首を差し出せ……!!」

 

 

 

 

「………………何をしているお前達……」

その場を支配する禍禍しい程の重い霊圧

 

「小娘相手に揃いも揃って情けない、……転生しても所詮死刑囚の愚図共か」

嘆息

 

「…………アルトリア殿……」

 

 

第1刃(プリメーラエスパーダ)『騎士王』アルトリア・ペンドラゴン

 

黒の騎士

 

 

「……第3刃(トレスエスパーダ)としての矜持もなかったな、山の翁殿もさぞ残念がるな…………下がれ、私が引き継ごう、斬り捨てて其れで終わりだ」

 

 

「………お言葉だがアルトリア殿、解放さえすれば卍解していようが……」

 

「……わからぬか、このような稚拙な未完成な卍解、解放を必要とした時点でナンセンスだハサン・サッバーハ」

 

「……あ?」

 

稚拙な未完成な卍解…だと……?

 

「試してみるか!!あの時とは違うんだよ!!騎士ィィイ!!」

 

飛び掛かる

 

「…………ちぃ」

 

「『白蛇姫ノ情念』!!!」

凍結の衝撃波を放つ

 

「…………どけ」腕で振り払う、衝撃波は霧散する

 

「この程度だな、…『鉄槌虚閃(ストライクセロ)』!!」

禍禍しい烈風の虚閃が叩きつけられる

 

 

「がっ!!」

壁に叩きつけられる

 

『苺花!!?』

 

 

「所詮はこの程度………ん、侵入者はふたりの筈だが……ゲタ帽子の男はどうした?………石田竜鳴を探しに行ったのか、ハサンつくづく無能だな」

 

はぁっとつまなそうに吐き捨てる

 

 

「……馬鹿にしやがって、てめぇだってたまたま強い英霊を宛がわれただけの転生者だろうが…!」

呪腕のハサンに転生した男は激昂する

 

「……愚図が、………もう使い物にならんなマスターに進言しよう次の転生者を用意するようにな」

 

 

 

「仲間割れしましたね………阿散井サン、すぐに戻りますよ」

霊圧を隠す外套を着なおし姿を消し石田竜鳴の霊圧のある先を目指す

 

「ここか、石田サン!助けに…………これは……!!?」

 

とある一室に達しドアを開ける……



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第二十一節「the unknown①」

それは膿んでいた

 

それは狂っていた

 

憎悪を喰らい絶望を孕んで怨念を生み続ける

 

人の形をした憎悪で、絶望で、怨念だった

 

この部屋にあるのは……この世全ての悪習を詰め込まれていた

 

怨嗟を、呪いを、詛いを呪詛にして謳う

 

 

霊圧と呼んでいいかわからないそれは核となる人型から吐き出されていた

 

 

部屋の中心に拘束されていた人型は少女のようだった

 

人型をしているだけでそれは黒く膿んでいた

 

 

「……何ですかこれは……」

浦原喜助は戦慄していた、……あまりも狂っていた

 

 

「……殺して……殺して……」

拘束された少女の傍らに拘束されたそれはげっそりしていながら瀕死の状態のそれ

 

……かつては静謐のアサシンと呼ばれた女性型ハサン

 

生かさず殺さずにこれの餌にされている

 

 

怨嗟の人型は全身漆黒で頭部に複数の眼球が蠢いている

 

(……見覚えが、………アタシにはある……?)

 

おぞましいそれに微かな既視感を浦原喜助は覚えていた

 

 

ギョロリと複数の眼球は浦原喜助を捉えていた

 

ニタリと…………笑った気がした

 

極上の餌が来た……と言わんばかりに

 

 

(もしや……これは…ひどく飢餓状態じゃないっすかね……?)

 

よくわからないそれは拘束されており足元のそれのみで供給していた

 

怨嗟を吐き続けるそれは霊力はそれなりに使うのかもしれない

 

そこに現れた隊長格の霊圧を持つ浦原喜助

 

怨嗟の人型からすれば迷い込んだ餌に過ぎない

 

 

「そもそもアタシは外套をきたままッス、どういう霊圧知覚してるんすか!!」

 

浦原喜助は紅姫を構える

 

「先手必勝ッス!!火遊び紅姫数珠つなぎ!!」

 

それのまわりに数珠つなぎの其れを囲い起爆する

 

 

その瞬間漆黒の口が獣のようになり爆発ごと喰らう

 

ゴクリとその霊圧を飲み干す

 

 

『アァァァァァアァァァァァアァァァァァ!!』

歓喜の咆吼を上げる

 

「…攻撃の霊圧ごと食ったんですか……これ……」

 

死神でも虚でも滅却師でもないそれは咆吼を上げる

 

滅却師……?またも既視感

 

「そもそもこの部屋からは石田サンの霊圧を感じていた筈…………まさか……」

 

 

ダァン!!

 

浦原喜助の霊圧を喰らった怨嗟の人型は拘束を破る

恐らく幾重に重ねられた縛道を破る

 

その縛道さえも喰らい霊力へ変換しているようだった

 

アァァァァァアァァァァァアァァァァァ

咆吼は周囲を軋ませる

 

「くっ……アタシの霊圧を喰らったせいで覚醒してしまったらしいっすね……」

 

 

アァァァァァアァァァァァアァァァァァ

と咆吼は続く

 

人型の頭上に光の輪が現れる

 

廻りの壁を無理矢理霊子に変換し喰らっていく

 

器子と霊子の境界があやふやになっている現状お構いなしに霊子に変換している

 

(……これは……滅却師の霊子の絶対隷属!!?)

 

浦原喜助は断空を展開する

霊子である其れは喰われるが今は無機物の霊子を喰らうのを優先しているらしい

 

空座一高廃校はこの封印されていた一室を中心に食われて崩れていく

 

 

先ほど戦っていた、破面と苺花を目視出来た

 

 

「阿散井サン……!!」

瞬歩で彼女を担いで離脱する

 

 

「……浦原さん……?」

意識失っていたようだ

 

「いいから離脱するっすよ!!」

 

「石田…は?」

 

「それどころじゃないっす……むしろ……とにかく話は後っす!」

瞬歩で離脱する

 

 

 

 

 

「……やはりハサン如きこの程度か」

アルトリアの周りに斬り伏せられた百貌達

 

「ぐっ………首を差し出せ『山の翁』!!」

ハサン達が解放しようとした、瞬間廃校は瓦解した

 

その、中心にいる醜悪な人型

 

「……なんだ……?」

 

ハサン達が見上げた瞬間ハサン達崩れていく

 

「ギャァア!!?」

吸われている!!?周りのハサン達悲鳴を上げる瓦解し崩れていく

その霊子の、くずがあの人型に収束していく

 

アルトリアは、後退

霊子の崩壊の干渉はある程度対魔力で相殺出来た模様 

 

「なんだ…あれは……?石田竜鳴の霊圧が混じっている………?」

異様な其れを見上げるアルトリア

 

 

「………『境界を喰らうモノ(ボーダーイーター)』さ」

黒崎一勇……虚影のアサシンが隣にストンと現れる  

 

「マスター……」

 

見上げる彼の横顔は邪悪に三日月に口角をあげ笑う  

ハサン達を、食い終わったその人型は要塞級大虚をも食べ始める

 

その異様な光景をただただ笑って見ていた



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第二十二節「end&strawberry①」

懐かしい夢を見た、何もない私ではあるけどそれなりに何かはさすがにある

 

藤川五火には兄がいた

 

五つ程離れた兄がいた

 

私と違ってなんでもできて優秀な兄だった

 

五火はいつかやると揶揄される私とは違い即断実行を体現したような人だった

 

転生する直前はあの人も、結婚して家庭を持ち忙しくしているあの人とは疎遠になっていた

 

ただひとりで仕事をこなす私を気にかけてはくれていたのだろうか今になってはわからない

 

そんなあの人との思い出は、ある

 

 

中学校の時私は、虐められていた

 

今となっては……まぁ多感な思春期なときに陰キャよりな私は標的になるのはまぁまぁしかたないなとは思う

 

当時の私は荒れていた、全て周りが敵だの思っていた

 

それでもあの人は私を諭したりと味方になってくれていた

 

「いいか、五火同じ事はやるなよ……それは虐めてくる奴らと一緒だし自分を陥れる事になるし悪循環だからな」

 

その言葉は、妙に納得したし相手もスルーした私の反応がつまらないからか私へのいじめは沈静化した 

 

そんな些細な事ではあるがにそれなりに兄には感謝はした 

 

…………ダメ人間になるのは避けられなかったのは兄も苦笑はしていたけど

 

あのメドゥーサに転生した彼女のそばにいたら何か出来ただろうか……わからない

 

…………私は……このクロスオーダー、……彼女の、ような転生者を…救いたいのかもしれない

 

 

…………私の、小さな理由

 

 

 

覚醒

 

「…………知らない天井だ…」

 

1度は言ってみたい台詞を呟きながら私は覚醒した 

まぁ知らない天井だった

 

どこだ…ここ…?

 

小さな家のようだが……誰もいない

 

「………どうしたんだっけ?」

 

メドゥーサとの、戦闘後私は『他者封印・鮮血神殿』の影響で気を失って居たんだ

 

……まだ……だるい

覚醒直後もあるんだけど……行動には支障は無さそうだ

 

ん……?

机にある写真に目が行く

 

 

とある集合写真と家族写真のようだ

 

オレンジの髪の男の人と栗色の髪の女性

 

既視感を覚えていた、幸せそうな写真だ

 

 

「頭がまた回らないや……」

周りをキョロキョロする

あれ、いないやセイバーくん……

 

 

「キミの連れなら少し出掛けて居るぞ…目が覚めたかよかった」

 

「あ……」

 

振り返るとオレンジの髪の三十代位の男性がいた

 

 

写真より、年を取っているが……本人だ

 

……この人見たことあるような……

 

「……あ、助けて貰ったみたいで…?ありがとうございます」

状況はわからないけれど……助けてくれたのだろう

 

「いや、構わないさ……むしろお前達に感謝しなきゃいけないのはこちらだ」

頭をかきながら言ってくる

 

「…?」

首を傾げる

 

「……『破面』を一体倒してくれたのはお前達だろう?……本来なら俺達がなんとかしなきゃならないはずだがな」

 

「あいつの暴走もな」

苦渋の表情を見せる

 

「…………名前を伺っても…?」

 

 

「あぁすまん……しがない町医者だけどな」

 

「……黒崎一護だ」

 

髪の色・オレンジ

瞳の色・ブラウン

 

医者兼先代死神代行

 

 

原作主人公との、邂逅だった

 



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第二十三節「end&strawberry②」

黒崎一護

 

この特異点、BLEACHの世界の主人公の位置にあたる人物

 

その、壮年の男性は先代死神代行

 

死神と滅却師の両親を持ち虚の力を有する

完現者(フルブリンガー)…は、よくわからないけど

 

…ここは黒崎診療所……みたいだね

 

 

「まぁ……起きたばかりだから混乱はしているだろうけどなとりあえずお前達が敵じゃ無い事と共同戦線を張った事は浦原さんからは聞いている」

 

黒崎一護さんは、お茶を渡してくれた

 

「あ、ありがとうございます」

受け取る

 

「………黒崎さんは今一人ですか?…」

 

「浦原さんと苺花は裏で休んでいるぜ?」

 

「……そうじゃなくて家族の方とかは……」

 

 

「………」

 

「あ、…すいません……えっと」

やっぱりこの、反応はやっぱり……

 

 

「………いや、いい……この空座町の現状は知っているな?虚の実体化……事実は現世と霊子の境界の曖昧になっていると浦原さんからは聞いている」

黒崎さんは腰をかけ、話し始める

 

虚の実体化、これだけならまぁ……混乱はあるだろうが対応は出来る

 

 

 

 

「…………あいつが変わってしまった」

 

「最初は単なる反抗期かとは思った、のほほんとした奴だからあいつでもなるんだと織姫は話してたな…」

 

少し懐かしむかのように、はなす黒崎さん

 

「けどそれは違った……人が変わったように周りとの接触を避け始めた」

 

「家を空ける事が多くなった、まぁ俺自身あいつの時分の時はよくあったけどな……まじめなあいつの行動としては違和感はあったな……」

 

頭をかきながら言う

 

「初対面のお前にする話でもないが…少し昔話しようか、まぁおっさんの世間話に付き合ってくれ」

とぽつぽつと話し始める

 

黒崎一勇は………人一倍正義感は強い少年だった

 

死神の子供だった一勇は生まれながら高い霊力を持っていた

 

当然『見える人』だった

 

それは親である黒崎一護と同じような生まれだった

 

しかし一勇は幼い時代に既に『死神』として力を発現していた

 

死神の子供は死神

 

所謂『真血』に当たるだろうが黒崎一護が死神として覚醒したに比べればあまりにも早すぎた

 

 

死神として覚醒したならば当然『虚』も見えた筈だ

 

黒崎一護は朽木ルキアと出会うまで虚を視認出来ていなかった事を考えてみれば虚をも見えていたのは……あまりも、父とは違う事なのかもしれない

 

 

日常的に整の霊が虚に襲われているのを見ていたのかもしれない

 

 

だから

「お父さん、目に見える範囲の霊を助けたいと思うのは間違いじゃないよね」

 

当然間違いないのは確実だった、

 

ただ一つのものを護れるようにとつけられた親はただ一つの勇気を持ってるようにと付けた子に

 

間違いないじゃないと教えた

 

 

………成長した子は死神代行業を引き継いで彼の見える範囲の霊を助けたいと虚退治をしていた

 

 

 

「優しい奴だった、俺や織姫からしたら自慢の息子だった…………筈だった」

 

 

「ある日を境に……さっき言った通りに違和感を覚えた、……あいつが……よくわからなくなった」

 

 

「……虚が実体化したあの日だ、あいつが変わってしまったと確信した日だった」

 

 

……あの日、3日ほど居なくなって帰ってきた日だった

 

「酷く心配した織姫があいつを抱き締めた……」

 

 

黒崎一護は顔を顰める

 

 

「あいつは………母親を手にかけてしまった……」

 

 

息子らしからぬ邪悪な笑みだった

 



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第二十四節「end&strawberry③」

困惑、絶望、憤怒様々な激情が黒崎一護に襲いかかる

 

何故、何故、何故、何故と繰り返す

 

親子は『母親』を失う

 

息子はその手ずから母親を失おうとした

 

その理解出来ない禁忌を最愛の息子が犯す

 

……母親を亡くしている黒崎一護からしては到底理解出来なかった

 

息子が理解出来ない何かに変異する

 

それは喪失だった

 

 

「一勇……!!何をしているのか分かっているのか…!?」

咆哮に近い激情だった、否定させて欲しかった

 

「……父さん、あなた達はどう足搔いても障害になる、母さんの六花もね。仕方なく……仕方なくだよ」

 

そんな黒崎一護の激情とは真逆に一勇の感情のない損得勘定のリスクマネジメントを軸に話す

 

冷たい、あまりにも母親に手をかけた後悔がどう足搔いても見えなかった

 

お前は…誰だと呟く

 

「やだなぁ父さん…………黒崎一勇あなたの息子さ」

三日月様に裂けた笑みを浮かべる

あまりにもおぞましい

 

血を流す織姫の体を支えながら絶望した

 

こいつは…………誰なんだ……誰なんだよ!!

 

 

激情に任せ死神化……ああ遊子も夏梨も来てなくてよかった……

 

 

「かぁずぅい!!!!!」

咆哮と共に斬月を構える

死神化しなくなって久しい、全盛期に比べれば落ちたものも激情に駆られた霊力は迸る

 

「…………断ち纏え『双月』」

一勇が構えるのは黒い2対の斬魄刀、解放し迎え撃つ

 

 

結果としては惨敗だった

卍解までしたうえで始解の一勇に打ち負けた  

 

 

そこからは……ご覧の通りだ

 

 

 

「あいつは『虚影のアサシン』と名乗り、破面を引き連れ虚の実体化しレギオン共を軍勢とし空座町を滅ぼした……そこからも地獄絵図さ、自衛隊も派遣される事態にもなったが……現代兵器も通用するわけはなく全て無駄に終わった」

 

「現状空座町は不可侵の結界が張られて尸魂界も手を出せない状況になった…」

 

話し終え……息をつく黒崎さん

 

 

場の空気は重い、……私は彼の息子の豹変の理由を知っている

 

……けど到底信用はできないだろう

 

でも…息子は……別に『黒崎一勇』が悪性になったわけではないと……伝えたい

 

 

「……お前達が何者かは知らない、……敵ではない筈だ……お前達もこの事態を止めたいのだろう?」

 

「……はい、私と彼は……この事態を収集するために来たとある機関の人間です」

 

「とある機関…ね、不可侵の結界が張られて……どうきたかはわからないけれどさ………息子を頼む」

 

頭を下げる一護

 

「得体の知れない何かになっても……息子は息子なんだ………きっと逆で織姫もそう言うはずだ」

 

「あ、はい……なら一緒に……」

 

 

 

そこに黒崎一護の姿はなく、一つの機械が置いてあった

 

 

私は理解した、彼は既に……

 

 

「マスター……目を覚ましたかよかった」

ちょうどセイバーくんが帰ってきた

 

「セイバーくん……誰かに助けられた?」

 

「いや………浦原達と合流してここに案内されたんだが」

不思議そうに首を傾げるセイバーくん

 

 

一つのカードを拾い上げる

 

クラスカード『セイバー・黒崎一護』

 

 

「一緒に……止めましょう」

 

願いを託され決意する

 

私は………『禍神転生者』を許さない

 

 

 

 



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第二十五節「the knight①」

事態は火急である

 

私が眠っている間に事態は刻々と変わっていった

 

「…………黒い人型の化け物?」

 

「ええ………石田サンを助けに行った際それと遭遇しました」

浦原さんは頷く

 

「それは暗殺者の破面達を捕食しその場にいた要塞級をも食い荒らしました」

 

要塞級大虚を食べたぁ!?

 

「……えぇ……で、藤丸サン達が一体倒してくれたので残る一体…空座町中心の重霊地の中心にあたる部分に

鎮座している要塞級大虚も捕食しました」

 

「要塞級がこの実体化の核なんですよね……なら」

 

浦原さんは、首を振る

 

「…変わらないッスね、この黒い人型が代わりを務めるようです……むしろ悪化しただけです」

 

「………あの化け物、……石田なのか?」

イスに腰をかける苺花ちゃんが声をあげる

 

「……おそらく……あの化け物は滅却師の霊子の絶対隷属を使用して捕食しています……残る滅却師は彼女だけですし………霊圧の根っこは彼女のものでした」

 

「一勇のやつ、石田に何しやがったんだ」

 

滅却師……石田竜鳴が、化け物に変異し捕食している

 

…………霊子体に変わりつつある空座町には滅却師の絶対隷属を振り回されたら崩壊するのでは?

 

「……そっすね、そこが一番の懸念ですが……セイバーサンに見てきて貰いましたが現在あれは休眠状態に入ったようです」

 

……休眠状態?

 

「原因はどうであれ……休眠状態ならば動くなら今でしょう……」

 

「ですよね……」

 

動くならば、……今最大の敵は

 

「……最後の破面……第一刃のアルトリア・ペンドラゴンを藤丸サン達に倒してもらいたいです最悪無力化が望ましいですが」

 

アルトリア・ペンドラゴン

 

星の聖剣も神造兵葬…それを操る文句なし比類なき力を持つサーヴァントだ

 

味方ならばやらかしが多い彼女だが敵になれば…まるで暴風の如き強さだ

 

しかも黒い騎士ならば『オルタナティブ』

 

黒い暴君のアルトリアオルタ

 

容赦ないだろう

 

「問題無い……行こう、マスター」

 

「あたしも行くぜ!!この前の借りを返してやらなきゃ」

 

「阿散井サンには別の仕事がありますっす……アタシに付いてきて貰いますよ」

 

「……く、なんでだよ」

がくっとなる苺花ちゃん

 

「……この不可侵の結界をなんとかしますっす、そうすれば尸魂界からの援軍も要請できます…今までは試みようとすると破面の誰かに妨害されてました」

 

「今なら……」

 

 

「そう今なら……破面は残り一体、化け物は休眠状態……アルトリア・ペンドラゴンは藤丸サン達に抑えて貰います」

でも…彼が来るのでは

 

「だから阿散井サンには、時間稼ぎをして貰います」

 

「あたし?」

 

「…頼りにしてますっすよ」

 

「ああ!!」 

 

 

私達はアルトリア・ペンドラゴンの撃破

 

勝てるだろうか…

 

 

 

 

アルトリア・ペンドラゴンは困惑していた

 

休眠状態のそれを見守る  

 

黒い人型は全ての虚を食い尽くした

 

手駒は居なくなった…けどこれだけで全軍以上の戦力を有しているのはよくわかる 

 

 

ボーダーイーターとマスターは言った 

おぞましい、単純におぞましい

けど

 

「…………待っていてくれ、すぐ終わる……真衣……」

アルトリア・ペンドラゴンは呟く



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第二十六節「the knight②」

アルトリア・ペンドラゴンは誰も信用していなかった

 

彼女も、もちろん転生者だ

 

アルトリアも、メドゥーサも、ハサンも、

 

黒崎一勇が用意した擬似英霊だ

 

破面に転生した彼女らに植え付けた

 

『禍神転生者』による『隷属転生』と呼ばれるものだ

 

弱みを握り屈服させ死に至らせ転生させる

 

メドゥーサの彼女にはいじめからの人生からの離脱を

 

ハサンの彼らは全ては死刑囚で次の来世を

 

アルトリアの彼女には…………『人質』を

 

 

全て『禍神転生者』の都合の良いようにと出来ている

 

 

それでもアルトリア・ペンドラゴンはこなさなければならない

隷属転生してしまったら抗うすべはない

 

自身の与えられた役割をこなさなければならない

 

…誰も信用は出来ない、奴らが約束を守るとは限らない

 

それでも…………

 

 

座して待つ、……………『敵』を

彼女にとっては、救済はない

 

「頼むよ、アルトリア………僕に歯向かう敵は全てきみの剣の錆にしてくれ」

マスターはそういう

 

「…ああ、マスター……全ての敵は粉砕してくれる」

 

静かに待つ

 

 

 

 

 

空座町中心部

そこはクレーターと化していた

以前は要塞級大虚が鎮座していた

それは既になく、殺風景だった

 

「…………本当に居なくなっている」

 

最初にレイシフトした場所である

 

最初に要塞級大虚の威容をみた場所でもある

 

「マスター…既に休眠状態の人型は別の場所に運ばれたらしい…だがアレの呪詛みたいな霊圧はダダ漏れのようだ」

 

「…私も……よくわからないけど鳥肌がひどいよ」

ね?と言いながら見せるが苦笑された

 

 

「浦原さん達は不可侵の結界をどうにかするのは私達が戦闘に入ってからだよね」

 

「そうだな、……だが不可侵の結界が破壊できたとしてもすぐに援軍がくるとは限らない」

 

「……アルトリア・ペンドラゴンは私達でなんとかしなきゃならない」

 

「……ああ」

 

「…………セイバーくん、勝算は?」

 

「五分だな。本来のアルトリア・ペンドラゴンと仮定するならば……だが」

破面という転生者である不確定要素がわからない…よね

 

『帰刃』もおそらくあの剣に準ずるモノであるだろう

 

 

「……やるしか無いさ、任せろマスター」

 

「……うん、頼りにしてる」

 

残る……という選択肢を提案した、どう足搔いても足手まといだ

 

守りがなく……彼一人が現状私のサーヴァント

 

なぜかドクターロマニからの連絡はない

 

先ほど連絡を試みたが……つながらなかった

追加の召喚も望めない……おそらく不可侵の結界がこちらにも作用しているのだろう

レイシフト出来たのも…奇跡かな

 

「ならすぐに対処できるように一緒に居た方がいい、令呪も何かあった時たのむぞ…マスター」

ぽんと頭を軽く叩かれる

 

「マスター…って呼び方…なんかやだ」

むすっとする

 

 

「ならリツカ、これでいいだろう」

苦笑されたが応じてくれた

 

うん、…まだ呼び慣れない名前だけどその方が慣れてくるよね

 

 

そんな中私達は進む

クレーターの中心部分から地下に進めるようだ

 

地下に空洞……?

 

 

この先に……あの禍禍しい霊圧があるようだ……ならおそらく休眠状態のあれを守るべくアルトリア・ペンドラゴンも居るはずだ

 

禍禍しい、呪詛のような霊圧…探知能力のない私でも…ピリピリとくる

 

呪詛のような霊圧の中、地下へ降りていく

 

自然に出来た様なモノではない……?

 

 

進めば進むほど霊圧の濃度は濃くなる

 

「…………大丈夫かリツカ?」

 

「……大丈夫」

顔をまだまだしかめる程度さなんとかなるなる

 

空元気……ですよね

 

 

開けた場所に出た

 

東京ドームくらいの広さはある

空座町の地下にこんなところが……?

 

 

…………………

呪詛のような霊圧とは別の霊圧があった

 

清廉な霊圧ではあったが暴風の如き強さを有していた

 

「やはり来たか…死神達じゃないか……貴様ら……カルデアの人間か?」

広場の中心に立ち塞がる黒い騎士がいた

 

「……まぁ、どうだっていいだろう。私は敵を粉砕するただそれだけだ…」

黒い剣を構える、既に彼女は戦闘態勢にはいっていた

 

「………投影、開始(トレースオン)

 

 

対『騎士王』の火蓋は切って落とされた

 



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第二十七節「the knight③」

騎士王の力は超級と呼ばれセイバークラスに枠するならばあまりにも格上だった

 

踏み込みは苛烈、打ち込みは激烈

 

打ち合えば投影物は刃こぼれは逃れられない

 

 

剣士としては圧倒的格上だったのだ

 

 

エミヤは本来はアーチャー、セイバークラスの適応はあるもののセイバークラスの上位に位置するアルトリアとの差は否めない

 

 

セイバーくんはそれでも…追いすがる

 

 

壊れた幻想(ブロークンファンタズム)

本来は投影物を弓にて射出し起爆させる

 

いわゆるミサイルみたいなものだが

 

「『壊幻剣環・連続爆撃(エクスプロード・ソードヴァレット)』」剣環として展開

 

打ちつける爆撃する

 

長距離の狙撃は難しいが剣環として展開は可能

 

打ちつける・爆発

打ちつける・爆発

打ちつける・爆発

 

剣士としてかなわないなら戦い方は別にある

 

 

「……煩わしい!!」

 

神秘故の対魔力を有しても物理的爆撃は功を成している

 

「『鉄槌虚閃』」

ストライク・セロ……烈風の虚閃が放たれ全て吹き飛ばされる

 

力押しのゴリ押しに過ぎる!

 

 

 

距離を取る

 

「…煩わしい戦い方をする」

 

「騎士道か、反転しててもあるらしい……そんなモノ俺にも彼にもない」

 

「……拘って守れなかったら意味が無いだろう!!」

 

我が骨子は捩れ狂う

 

「『偽・螺旋剣(ガラドボルグ)』!!」

 

螺旋剣でアルトリアを穿つ

 

 

が弾かれた!?

 

「……なら、貴様がどのような策を講じようとも全て無駄にしてやる」

 

故の暴君は威風堂々と

 

「ねじ伏せてやる!」

 

セイバーくんの顔を掴み地面へ叩きつける

 

「ああ、いくらでも策を用意しろセイバー……全て無駄だと思い知らせてやろう」

 

アルトリアは表情を変えず踏みつける

 

「セイバーくん!!」

 

私は……何もできないの…?

 

 

「ああ、セイバーのマスター……私は貴様には手をださん……弱者は震えて見ているがいい」

私の方をみずに言ってくる

 

「…………投影、開始」

 

……叛逆の剣よ!!

 

赤雷は降り注ぐ

 

「………それは」

アルトリアは後退

 

「……お前相手に相応しいだろ?」

 

「はっ!…………私に勝てなかった騎士の剣を取りだすとはな」

 

アーサー・ペンドラゴンの嫡子……叛逆の騎士モードレッドの剣・クラレント

 

「…………行くぞ!」

宙に剣環をさらに展開、セイバーくんは駆ける

 

 

 

 

場所は変わって

 

浦原喜助達は藤丸立火達が戦闘に入ったのを確認し行動を、開始した

 

 

不可侵の結界の破壊もしくは無効化

 

外套を再びかぶり不可侵の結界の、核があるであろう場所を目指す

 

 

まさか……ここか

 

電波塔群

 

現状、電線は瓦礫となり意味を成さないが霊力の電線が空座町一体を包む

 

その結界……なぜか知っているような気がした浦原喜助

 

「……で、どうするんだ?浦原さん」

苺花は浦原喜助に聞く

 

 

「…アタシの卍解で改造します、解析している時間もないでしょう……不可侵から別の能力の結界に改造しますッス」

 

「………………なるほど、その間作業中守ればいいんだな」

ぐっと、拳を握る

 

「そうです、お願いしますよ」

 

核の中枢に近付くようにめざす

 

……私は、拒絶する……

 

がっと進もうとすると弾かれる

 

「……!?……これは織姫サンの力!?」

 

 

「え、織姫さん!?」

苺花は驚愕する

 

 

「そうさ、これは母さんの六花の力を基に作った結界……『全絶結界』……外的交渉を全て拒絶する」

 

「……一勇!!」

 

「やぁ、苺花に浦原さん来ると思ったよ……あれも休眠状態だから僕自らきたよ」

 

「……虚影のアサシンって呼んでよ苺花、名乗りがいがないね」

 

「……畜生、バレバレか」

 

虚影のアサシンが降り立つ

 

 



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第二十八節「the knight④」

浦原と苺花は虚影のアサシンと対峙する

 

電波塔跡地に入り核を見つけ出さなければならない

 

来るとはわかってはいたが早過ぎた

 

「…まぁ、当然読まれてるでしょうね」

 

「……『全絶結界』は自信はあるけどあなたの卍解は厄介だ……万が一があるからこうして僕が来たんですよ」

ニコリと笑う

 

「まさか、買い被りですよ………………ね」

 

 

 

「………一勇、てめぇを今倒せば関係ねぇよ全部」

苺花は構える、斬魄刀を抜く

 

 

「……へぇ、僕に勝てる気でいるんだ。アルトリアすら相手にならない君が……?」

目を細める

 

 

「てめぇを止めなきゃ!!一護さん達に合わせる顔が無いだろうが」

刀を地面に突き刺す

 

「卍・解!!!!」

 

霊圧は加速し上昇し拡散する

 

稲光を斬魄刀が、放つ

 

「へぇ…………」

 

大きな稲妻が斬魄刀に落ちる

 

 

「……『表界轟雷帝猿魔ノ憤怒』(ひょうかいごうらいていえんまのふんど)!!」

 

後ろに稲妻の強大な狒々が現れる

 

『猿魔雷公』の卍解状態、2段階目の変容

 

「あたしの怒りを思い知れ!!!」

 

「キミの怒りなんか興味はないけど……よしみだ付き合ってあげよう」

斬魄刀も抜かず対峙する

 

「斬魄刀も抜かないで舐めてるのかてめえ!!」

 

 

「…………………キミ相手に斬魄刀すらいるかい?」

侮蔑の笑いを浮かべる

 

「………………『雷帝猿魔ノ号砲』」

紫電した、球体を帯電させる

 

 

「これでも喰らいやがれ!!」

稲妻の球体を放つ

 

「へぇ、喰らったらどうかなるのかな?」

 

手刀で真っ二つにする、きれいに切れてしまった

 

 

「………喰らったら……ねぇ?」

 

化け物かよ……と呟く

もともと一勇には死神として天賦の才はあったがこれは異様だ

 

「いい物を見せてあげる……」

 

顔に手をかざす

まるで何かを被るような所作をする

 

一勇の、顔に仮面

 

 

虚の、仮面

 

「…『虚化』……!?」

 

「ピンポーン、…………これが本物の遠距離攻撃だよ苺花」

 

放たれた虚閃は今までの虚とは、比べ物にならない

 

「ぐぅ……!」

なんとかかわすも背後にすぐ虚化した一勇が現れて地面に叩きつけられる

 

「ぐぁ…!?」

 

 

「始解すらしていない僕にどう勝とうと言うんだい、苺花……教えてくれないかな……?」

 

「ぐ……『雷帝猿魔』!!」

雷の巨狒々が一勇を掴む

 

『憤怒の雷』!!

雷の霊圧が紫電し攻撃する

 

「……『虚月天墜(きょげつてんつい)』!!」

一勇は手刀から黒い斬撃を放つ、巨狒々は真っ二つになり霧散する

 

 

「……これを使わせるなんて、ほめてあげるよ……虚月天墜は僕なりに強化した月牙天衝さ」

 

 

巨狒々が破壊されたことにより苺花の卍解は解除される

 

「どうだい、自身の無力さをのろうがいいさ」

手刀を掲げる

 

「………ざまぁみろ……あたしの役割はここまでだ……」

 

浦原喜助が……いない!?

 

「元から別行動さ……ただの身代わり人形みたいなもんさ」

さっきまでいた浦原喜助は、ただの人形

 

電波塔跡地の裏口…ここから反対側に……巨大な女性型の観音がみえる

 

「……観音開紅姫改メ…!?…図ったな…浦原さん……キミは単なる囮か」

はじめて、一勇の表情が、ゆがむ

 

瞬歩で、その場所へ向かう

 

「…頼むぜ……浦原さん…………」

 

 

 

 

赫月のセイバー対アルトリア・ペンドラゴン

 

地下の大空洞の戦いは熾烈を極めていた

 

剣環につぐ剣環

 

クラレントの赤雷の剣劇を軸に全方位の剣環がアルトリアを襲うが直感スキルよる超反応で、全てに対応している

 

既に剣環は、300に達していた

 

今、最後の剣環が叩き落とされる

 

………凍結待機している剣はまだあるが……通用するのかこれは

 

「煩わしい…………こうなれば……もう解放して力の差を分からしてやるしかないな?」

 

全身から烈風の霊圧が迸る

 

「……斬魄刀解放……来るか……」

身構えるセイバー

 

 

「…………光を呑め、『卑王(ヴォーティガン)』!!」

 

禍禍しい黒い烈風の霊圧が溢れだしアルトリアを包みこんだ

 

まるで巨大な何かが現れるようなモノを感じてしまう

 

 

何かが咆哮したように感じる

 

黒い霊圧が晴れるとそこには黒い鎧を纏うアルトリアの姿がある

 

アルトリア・オルタの一段階目のような姿でさらに影を纏う

それは竜の翼と尻尾を形成される

 

彼女の中の竜の因子によりそれは再現される

 

魔竜ヴォーティガン

 

「貴様らはこれからは一匹の竜と戦うと同義だ……さぁ竜殺しにくるがいい」

 

 



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第二十九節「the knight⑤」

帰刃『卑王(ヴォーティガン)

 

アルトリア・ペンドラゴンという擬似英霊の中の竜の因子を破面の力に混ぜ込み『帰刃』の力として再現した

 

転生者……という歪な存在が力と力を掛け合わせる要因となる

 

本来のアルトリア・ペンドラゴンとは違う力の顕現

 

故に……在らざる力として、ここに立ちはだかる

 

「さぁくるがいい…………『竜息虚閃(ドラグブレスセロ)』」

超高熱の熱線のような虚閃が放たれる

 

 

「……ぐ…!!」

直撃を避けるも、余波の熱はダメージを与えてくる

 

セイバーくんは顔を顰める

 

やばいんではないだろうか

 

 

「……セイバーくん……」 

 

 

「かわすじゃないか、セイバー…面白い!!」

咆哮のような、霊圧

 

 

存在自体が嵐のようなモノ、迸る霊圧はセイバーくんを陥れていく

 

霊圧は暴風のように、苛烈で沼のように重かった

 

「………あの剣ならば……」

 

ふらふら立ち上がるセイバーくん、体は傷付き動きは緩慢になりつつある  

 

だが眼は死んでいなかった

 

「…………セイバーくん………」

 

「は、眼は死んでいないようだな……つくづく惜しい……」

影の竜の尾で叩きつける

 

 

「がっ!!」

 

「…自身の無力さを思い知らせてやる、何も救えんとな!!」

 

「『竜星群』」

 

無数の虚弾(バラ)を宙より打ち出す

虚弾は虚閃より威力はないが速度は虚閃の十倍

 

解放状態のアルトリアが放つそれは十分威力を有していた

 

「ロー……アイアス……」

 

セイバーくんを護る花弁の七重の盾は穴だらけになっていた

 

 

「しぶといな…………卑王鉄槌。極光は反転する、光を飲め!!」

 

彼女は剣を抜く、刀身は禍々しい黒い光へ変わる

 

 

「……宝具!?」

破面化している擬似英霊でも宝具は使えるの!?

 

あれを食らってはだめ……!

 

間違いなく……終わる…!?

 

どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、、どうしよう…!?

 

焦燥、絶望感……どうしよう…

 

私は頭を抱える……何で私は……何も出来ないの…!?

 

転生した意味は…!?

 

「…………下がってろリツカ」

 

立ち上がるセイバーくん

 

投影、重装装填(トリガーオーバードライブ)

 

手を前に翳す

 

是、人理の礎(カルデアスシールドワークス)!!」

 

マシュ・キリエライトの盾を複製し投影する

 

剣以外の投影は魔力を倍以上必要とするがなりふり構ってはいられない

 

「盾か…防ぎきってみるがいい……『約束された勝利の剣(エクスカリバーモルガン)』!!」

 

アルトリアは剣を振りかぶり反転極光の濁流は放たれる

 

『約束された勝利の剣』

 

アルトリア・ペンドラゴンの所有するエクスカリバーから放たれる対城宝具

 

人々の、願いを星が変換した神造兵葬にして『最強の幻想』

 

所有者の魔力を加速し収束させ光に変換し放たれる神霊レベルの魔力行使

 

自身の魔力…このアルトリア・ペンドラゴンの場合霊圧を変換しているため黒い禍々しい極光へ変換される

 

エクスカリバーモルガン

 

黒い極光の斬撃

 

 

直撃を受けたら…死は逃れられない

 

「リツカ!!己の後ろにいろ!擬似展開・人理の礎(ロード・カルデアス)!!」

盾に魔力を通しカルデアスを擬似展開させる

 

あくまで投影品、ランクは落ちるが……

 

「防ぎきってやる…!」

 

黒い極光は暴れる濁流となり襲いかかる

 

 

「ぐっ……!」 

ロード・カルデアス……擬似展開・人理の礎はデミ・サーヴァント……グランドオーダーに参加しているカルデアの局員マシュ・キリエライトの盾

 

……表の記録では、彼女はこのエクスカリバーモルガンを防いでいる

 

防げないのであれば…彼の投影の精度が十分じゃないか……そもそも残存魔力が足りないせいか

 

 

あの解放状態によるエクスカリバーモルガンが同一のモノでは無く上回っいた場合もありえる

 

 

反転極光の威力・勢いが衰える事無く偽・人理の盾を襲いかかる

 

濁流を抑える堤防のように耐えるが如何せん威力がつよい

 

盾に展開する結界にヒビが入る

ぴきっと蜘蛛の巣状に広がる

 

バリィン……!

結界は崩壊、結界は霧散する

 

 

 

やばい…!?

 

「そのまま耐えててください」

後ろから声

 

走り抜ける人影

 

 

「……『風王鉄槌』!!」

走り抜けた人影はアルトリアに見たことある攻撃を打ちつける

 

風の、衝撃破

 

「ぐっ…貴様………」

 

エクスカリバーモルガンは止まり霧散する

 

「………同じ顔に攻撃するとはやっぱり慣れませんね」

 

 

清廉なる王者の風格

 

 

「アルトリア・ペンドラゴン!!?」

青王!!?

 

オルタナティブではなく、本来の彼女の姿がある

 

 

「……その子が寄り道したいっていうからきたけど……ありゃ同業者さんかなぁ……」

 

さらに足音

 

茶髪の、ウェーブロングのカルデアの制服を着た少女

 

 

「まぁ私もその後ろのそれに用できたし混ぜて貰うよ、藤丸立香さん」

 

…私の見間違いじゃなければ……岸波白野その人だった



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第三十節「the another①」

岸波白野

 

Fate/extraシリーズの主人公の女の子

 

ウェーブロングの茶髪の少女、クラスにいる三番目くらいの美少女…らしいが十二分美少女だと思う

 

その人がカルデアの制服を身に纏い空座中心の地下大空洞に現れる

 

 

「何、ぼーとしてるの?戦闘中だよ藤丸立香さん…詳しいことは後……まぁうちのセイバーが黒いアルトリアを抑えてるからいいけど」

 

青いアルトリアと黒いアルトリアは打ち合う

剣劇は響く

 

 

「…あなたは……誰?」

 

「岸波白野。……あなたの与えられた知識の中でそれは出てくるでしょ?それはわかってるでしょう……まぁあなたと同じ転生者よ」

 

転生者…?

 

「……『禍神』でも、『隷属』でもないわ……むしろそれを倒す鏡のカルデアのマスターの一人よ、あなた一人じゃないわよクロスオーダー適正マスターは」

 

そう考えるならばそうだよね……並行世界・平行世界は幾重にも枝分かれしたもしもの世界

 

異世界も転生者が干渉したら枝分かれする

 

その悪干渉し枝分かれした特異点を潰す

 

これが私達の役目…他のマスターもいるはず

 

「マスター同士、かちあうなんて珍しいけどね……新人マスターを心配でもする筈無いしねぇ森羅万象の意思は」

岸波白野さんは笑う

若干無表情だが……可愛い

 

 

「……次元聖杯戦争、それに参加するあなた達をサポートしろ。それが森羅万象の意思だよ藤丸さん」

 

次元聖杯戦争も、知ってるんだ

 

 

「私は……その後ろの『禍ツ聖杯』の欠片に用がある、奴らより先に回収もしくは破壊も任務の一つだよ」

 

休眠している漆黒の人型を見る

 

 

……繭!!?

漆黒の人型は巨大な繭となっていた

 

「…………セイバー!!宝具展開!!」

 

「……黒いアルトリアを止めたいのでしょうセイバー!まずは無力化、……『禍ツ聖杯』の孵化を許したらこの特異点は食い潰されるわよ」

 

「はい、ハクノ……いきます……亞衣……あなたを止めます」

ぼそっと呟く

黒いアルトリアに対して敵意はない

 

「…させるか!!転生者ども!!あれを破壊されたら…あの子は……あの子が殺されてしまう……!」

 

……殺されてしまう?……

 

 

「私は……!…!…………朽ちろ!!『影円卓・卑王竜!(シャドーオブラウンド・ヴォーティガン)』」

 

霊圧肥大化する

影という属性を持った霊圧が増大拡散肥大…そして収束する

 

 

「……く、まじか……」

フラフラとセイバーくんが立ち上がる

 

「もう……アルトリアではないね、あの隷属転生者改造されてるね」

白野さんは毒づく

 

 

収束、収束、収束、収束、

影はまとわりつく

 

そこは一匹の魔竜がいた

 

「……『帰刃・刀剣解放第二階層(レスレクシオン・ゼクンダエターパ)』………2回目の解放だ……潰してやる転生者共!!」

咆哮、収束収束収束収束収束収束収束収束収束収束収束収束収束収束収束収束収束収束収束

 

虚閃が放たれる

 

 

「…く、……」

青いセイバーがなんとか弾くが重い

 

 

「………なんで、あんなに必死なんだろう……」

ぼそっと呟く

 

「……『隷属転生者』…あれはそれよ、『禍神転生者』に弱味を握られている肉体的にも魂的にもね………」

 

「そんな……」

 

「私は彼女をとめます」

騎士王はゆっくり体勢を直す

 

「……元々、用があったのは君だからねセイバー……いいよ」

白野さんは溜息をつく

「全力をサポートしよう……藤丸さん先輩の戦いを見せてあげよう」

 

と言いながら前へ出る

 

「なら己も…」

セイバーくんも行こうとするが

 

「……キミは回復に努めなさい、いざ藤丸さんを護るのはキミだ」



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第三十一節「the another②」

影円卓・卑王竜

 

破面のアルトリアの『帰刃』の解放の2階層目

 

BLEACHでは第4十刃のウルキオラ・シファーのみが至った境地

 

自身を竜に変換させ周囲の霊圧領域は影に落とす

 

円卓を思わせるそれは『影円卓』と名付けた

 

この『影円卓』内は彼女の領域内と化している

 

その範囲はこの地下大空洞全域

 

「ガァァァァァァ!!!!!!」

咆哮する

 

 

「……自我を失っているね、あの解放状態『狂化』が付与されるらしい」

 

「……あなたはそこまで……」

 

 

「……セイバー、知り合いなら止めなきゃならないよ」

 

太股につけているカードホルダーよりカードを一枚白野さんは取り出す

 

あれは……クラスカード……?

 

 

「『夢幻召喚』……ランサー!!」

 

白野さんは光を放ち……換装する 

英霊を纏う

アイドルみたいな服に黒い角に尻尾……吸血鬼を思わせる風貌に紅い槍

 

「セイバー!いくよ!」

 

「はい、ハクノ!……恩に切ります!」

 

ふたりは跳躍……!!

 

「……てぃ!!」

 

白野さんは槍を構える

 

 

「ガァァァァァァ!!………ジャマヲスルナ……!!」

 

影を操作し自身を覆うようにし展開し槍を弾く

 

「……ちぃ……影が邪魔……だねぇ……セイバー!……影を出させるから隙を見て切り込んで!!」 

白野さんは再度跳躍する

 

「ハクノ…了解しました」

騎士王は剣を構え、間合いを図り隙を伺う

 

「ガァァァァァァ!」影は流動的に魔竜の周りを動き始める

 

「……あれが攻防一体の盾になっているのかな……面倒くさい……」

白野さんは槍を回転させ再度構える

 

「コードキャスト……腕力、脚力、宝具威力強化」

自身にコードキャストにて強化、セイバーにも強化をかける

 

「さて、……いくよ!」一気に間合いを詰め空間を足場にして背後に回る白野さん

 

縮地と呼ばれる歩法に似ていた

 

「……たぁ!!」

連続的に槍で攻撃する

 

 

「ちぃ…影を抜けても硬い鎧みたいな皮膚……この世界じゃ……『鋼皮』だっけ?……堅いなぁ……」

弾かれた槍撃を見て毒づく、竜の鎧のような皮膚は軽く削られただけだった

 

 

「エリザベートの攻撃力じゃあれかぁ…仮にも同じ竜種でしょうが」

 

決定的な隙を作れなく青いセイバーも上手く攻めきれない

 

影円卓と、呼ばれる流動的な影の盾に竜の皮膚の鎧

 

セイバーに、アイコンタクト……彼女は頷く

「…擬似展開・鮮血魔嬢」

 

宝具の擬似展開……バートリー・エルジェーベト

 

白野さんの背後に城がそびえ立つ

 

鮮血を帯びたおどろおどろしい城が展開される

 

黒い翼を展開、槍を地面へ突きつける

 

白野さんは大きく息を吸う

 

 

「ばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

魔力を帯びた声帯砲を放つ

エリザベートの場合、殺人的な歌唱力にて殺傷力を帯びていたが白野さんは声帯砲を放つ

 

防ごうと展開した影ごと吹き飛ばす

 

「!!?」

 

それと同時にセイバーは跳躍…!

 

所謂竜の逆鱗と呼ばれる箇所を斬り付ける

 

 

「ガァァァァァァ!」

鮮血が舞う、鋼皮を破り切り捨てる

 

 

「……キサマラ…!…ジャマヲスルナ…ワタシハマイヲスクワナケレバナラナイ…!」

竜は咆哮する

 

「……………真衣は私なのです、亞衣」

セイバーは悲しそうに微笑む

 

「……もう、それすらわからないんですね……救わなければならないと思って……でも真衣って誰か覚えていますか?」

 

竜の動きは止まる

 

「彼女も……転生者…?」

私はつぶやく

 

「…そうだよ、元々私は単騎のマスター、プリズマイリヤの夢幻召喚システムを真似したギフトスキルでクロスオーダーに参加しているからね」

白野さんは降り立つ

 

「…彼女ある特異点にいた迷い子の転生者、今の姿もセイバーのクラスカードで擬似サーヴァントにしているだけ……契約して連れてきただけなんだよ」

 

「感謝します白野さん……この子を会いたかったですから」

 

真衣と呼ばれた少女は薄く笑う

 

「……私はこの子の人質でした、どこかにわからない所に放流された私を救うために……隷属転生したのです」

 

止まっている竜に触れる

 

影円卓もエラーしたかのように止まる

 

 

「……私は救われてるよ、亞衣」

微笑みかける

アルトリアの夢幻召喚がとけ……あどけない少女となる

 

「……真衣……?……生きてたの?……よかった……」

張り詰めていたアルトリアオルタ、の仮面は取れ竜のまま泣く

 

「…………はい、亞衣久しぶりだね」満面の笑みで笑う

竜の、鼻先に抱きつく

 

「……ふぅ、……とりあえず戦闘は終了……かな」

白野さんは軽く微笑む

 

「白野さん、隷属転生者を解放するって出来るんですか」

 

「リツカ、それは……」

セイバーくんは何かを言い掛ける

 

「…………『禍神転生者』を倒せば呪縛を解ける」

 

よかっ…

 

「けど、元々の世界に……転生し直す事は出来ない」

 

「なんで……」

 

 

 

 

「あーあ、アルトリア負けてるの?2階層目使って?……まぁ『境界を喰らうモノ(ボーダーイーター)』を僕がくるまで守ったのは褒めてあげよう」

 

突然の声

 

「黒崎…一勇……?」

 

「初めまして、カルデアのマスターさん……僕が『虚影のアサシン』さ。次元聖杯戦争の第1幕始めようか……」

返り血に染まっている黒崎一勇の姿がある

 

「……なんだ……浦原さん達はどうした!!?」

 

「…?あー……『全絶結界』壊されちゃってさ……尸魂界の増援来てねぇ……いやぁさすが護廷十三隊だねぇ…………完全虚化しなきゃきつかったねぇ」

 

「……ぇ……ぁ……」

混乱……つまり……全滅?

 

「……まぁいいや、喰え『境界を喰らうモノ』よ、そこの死にかけの魔竜をさ……食い尽くせ」

 

繭の中から大量の触手が現れ亞衣と呼ばれた魔竜を掴み取る

 

「亞衣!!?…きゃぁぁあ!!?」

 

繭が大きな口を開ける

 

亞衣と真衣……二人を捕食する

 

バリバリッ……ムシャグシャ

 

目を覆いたくなる惨状、血液もなくただ捕食される

 

「ぇ………」

 

「……」

白野さんは血管が浮き出るように……憤怒している

 

セイバーくんも同様

ふたりは飛び掛かるが黒崎一勇に一瞬でたたき付けられる

 

「なに、怒ってる?僕にとっては使い捨ての駒……いい時間稼ぎだったようんうん」

 

「……あなたはなにも感じないの?人を何だと思ってんだ!?」

私は激情のまま吠える、

 

メドゥーサの名も知らない少女も、さっきの彼女達も……生きてたんだよ!?

 

 

「…………『禍神転生』なんて最高のゲームさ、僕の意思のままに出来る最高じゃないかなぁカルデアのマスター?」

ヘラヘラ笑う

 

「腐ってる……」

 

「腐ってるのは世界さ、……下らない問答はいらないよ……さぁ『禍ツ聖杯』の生誕を祝おう」

 

 

笑う、邪悪は笑う

 

『人類悪』と呼ぶべき邪悪はそこにある

 

「……藤丸さん、そいつらに理由はない邪悪は邪悪」

 

 

「そうだな、………ただ倒さなきゃ救われない世界が在る」

 

「先ほどのような亞衣と真衣のように輪廻転生の因果が外れてしまう魂が出る」

 

 

「……本来死ぬべきじゃない魂が隷属される」

 

白野さんとセイバーくんが立ち上がる

 

 

「……見過ごせる?藤丸さん」

 

見過ごせる訳がない

 

「……見過ごせる訳がない!!」

 

真っ直ぐと敵を見る、黒崎一勇の殻を被った邪悪がそこにいる

 

「…さぁ君達もあれの餌になるがいい」

 



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閑話「比翼の少女達」

亞衣と真衣は双子の少女

 

亞衣は気が強く責任が強い真衣は気は弱くも優しかった

 

彼女達はいつも一緒にいた

 

どこに行くのもなにをするのも一緒

 

お互いに何かあれば駆けつける

 

性格の上その役割は亞衣がなることが多かったが不満などなかった

 

彼女達は……いわゆるネグレクトされていた

 

父親は無関心、母親は淫売……よそに男を作っていた

 

彼女達にとってお互いしかいなく依存していた

 

 

彼女達の小さい世界はそれだけが全てだった

 

 

 

「……亞衣~?」

 

「なによ、真衣……?」

 

「えへー、何でもなぁい……」

 

 

ネグレクトされていても虐待はなかった、父親は最低限の養育は果たしていた

 

淫売の母親は彼女達が10歳の時に蒸発していた

 

……薄々とわかっていた

 

お父さんじゃない男の人といなくなったのだと

 

 

父親は機械のように働く……お父さんは傷付いていたのだろうか

 

姉妹に興味のない父親への接し方などわからなくて溝は深まる

 

 

 

事件は姉妹が13歳になった時だった

 

真衣が帰ってこない、部活も入っていないし委員会もある日では無い

 

ネグレクトされていた姉妹には門限などなかったが遊び歩く趣味や友達などいなかったふたりは夕飯時には必ず二人一緒が当たり前

 

時刻は9時を回っている、携帯電話は持っていないけど家電にくらい連絡いれるはず律儀な真衣だから

 

亞衣は不安で潰れそうだった

 

 

父親が帰ってきた

 

訴えた、真衣が帰ってこないの!!

 

父親は一言

 

 

「そうか、…………まぁ夜遊びしたい年頃だろ、あいつの子だ」

ボソボソと言う、覇気の無い言葉

 

……それは姉妹をあまりにも理解していない言葉だった

 

 

反射的に家を出る

真衣を探す、探す、探す、探す、探す、探す、探す、探す、

 

明け方まで探した、見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない

 

発狂しそうだった

 

返してよ、真衣を返してよ

 

 

雨が降り始めていた、喪失感を亞衣に押しつけるような雨だった

 

 

 

真衣がいなくなってから1週間

 

毎日探しているが見つからない

 

 

父親へ訴えた

 

「……真衣?誰だ」

 

はぁ!?……なかったことにしたいのか!?と亞衣は激昂したが父親は首を傾げるばかりだ

 

 

だが、……真衣がいた痕跡はなくなる

 

真衣の机がない、真衣のロッカーがない

 

真衣の名前がクラス名簿にない

 

あまりにも薄情だと亞衣は吼えたが……家からも真衣の痕跡は消える

 

 

「私は一人っ子だっけ……」

 

元々荷物は少なかったけど…………真衣の荷物丸々なくなっていた

 

無気力の父親がそこまでやる気力ないはず

 

 

まるで……世界から忘れられていくような感じがする

 

「……私は…………忘れるものか……!」

 

 

真衣を必ず探し出す

 

 

毎日それから探す、行為をすることで忘れないようにするために

 

 

「…………」

 

 

ふらふらする、生きる理由が見付からない

 

 

体力がなくなるまで探す毎日に疲弊しきっていた

 

ふらふらする

 

身体を引きずりながら探す

 

 

「………真衣…って…誰だっけ……?」

 

 

注意散漫だった彼女に鉄の塊が命を奪う

 

 

…………彼女の末路

 

 

 

白い空間

優しい声がした、初めての××以外の優しい声

 

「……可哀想な子だ、僕が一緒に探してあげよう」

 

「だから……僕のことも手伝ってね」

 

それは悪魔との契約だったのかもしれない

 

 

 

 

とある特異点

 

「……………君誰?」

岸波白野は困惑していた

 

「……真衣って言います、ここどこですか?亞衣が待ってるから帰らなきゃ……」

 

 

彼女達は比翼の鳥

 

再会は果たされるのだろうか

 

 



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第三十二節「Brave&strawberry①」

空座中心部、地下大空洞

 

境界を喰らうモノ(ボーダーイーター)』と呼ばれるそれは亞衣と真衣を喰らい巨大な繭の中で脈動していた

 

『禍ツ聖杯』と呼ばれるものは何かは分からない

 

けどそれを孵化させるのはまずいのは分かる

 

本能が警鐘をならし続ける

 

 

「……行ける?…セイバーくん……」

 

「行くしかないだろリツカ……投影、開始」

 

干将莫耶を投影する

 

 

……対敵するのはこの特異点の『禍神転生者』

 

黒崎一勇の殻を被った…次元聖杯戦争のアサシンクラスの参加者

 

「……次元聖杯戦争、止めに入ってるセイバークラスって君?…赫月のセイバーって」

 

「あ?」

 

「いやぁ、確認だよ。……キミ以外全員が『禍神転生者』………あのクソ神父も趣味が悪いな」

くつくつと笑うアサシン

 

「……そいつはどこにいる?」

 

「さぁ?接触はいつもあっちから…………会いたきゃまずは『血怪』にあうんだね……」

 

 

 

「今、死ぬキミには関係ない話さ……」

黒い霊圧を纏う

 

「ねぇ!!『月牙天衝』!!」

 

一瞬で間合いを詰められ手刀から月牙を放つ

 

反射的に干将莫耶で受け止めるが双剣は粉砕

 

「やるね…まずは僕に斬魄刀を抜かせてみな赫月のセイバーくん」

黒い霊圧をゆらりと纏っているアサシン

 

 

「…アサシンクラスめ……」

 

 

「僕がなぜセイバークラスじゃなくてアサシンクラスなのかはじきに分かるさ……キミが生きてればね」

 

 

 

「………そっちには行かせないよ岸波白野。」

 

繭に迫っていた白野さんを月牙が阻む

 

「ちぃ…………あいつを無力化、もしくは弱らすのが先かな……『夢幻召喚(インクルード)』!!アーチャー!!」

 

黄金の鎧を纏う

 

英雄王ギルガメッシュ

 

「……ゲートオブバビロン!!」

 

「全投影連続層射!!」

 

剣群と剣群がクロスして襲いかかる

 

 

「……はは!!……月牙天衝!!」

両腕の月牙を放ち弾いていく

 

 

剣群を、全て叩き落とす

 

「……………ちぃ……化け物め」

 

「大丈夫かい?他の『禍神転生者』に勝てるのかいそれで!!?」

笑いを堪えるように挑発してくる

 

「……『天の鎖』よ!!」

空間から鎖を取り出しアサシンを捕縛する白野さん

 

 

「お?」

 

 

「やって!!赫月の!」白野さんは叫ぶ

 

 

「投影装填……是、射殺す百頭(ナインナイブズブレイドワークス)!!」

 

無銘の斧をヘラクレスの怪力ごと投影

 

大英雄ヘラクレスの絶技を模倣する

 

九度、同時に斬りつける

 

暴風と呼べる斬撃がアサシンに襲いかかる

 

 

「……!!」

 

 

衝撃、衝動、噴煙

 

歴然たる殺意をぶつけた

 

噴煙が晴れるとアサシンを護る円状のドーム

 

バリィン!!と蜘蛛の巣状に破砕する

 

「『静血装・外殻展開』+纏う月牙『月牙纏装』を壊すなんて怖い攻撃力だ」

 

 

「滅却師の力も使えるのか…」

 

 

「『ギフトスキル』って便利だよねチートしてる気分さ……!」

頭から血が少し流れるアサシン

 

 

「へぇ……僕の防御を超えたか……」

流れてきた血をペロリと舐める

 

「…………こっちの攻撃が通るか」

セイバーくんは折れた斧剣を捨てる

 

「……いや、ヘラクレスの攻撃をあそこまで相殺するなんて大概だけどね……むしろこのレベルの攻撃を出し続けなきゃならない」

 

「……『ギフトスキル』か」

 

 

「……おそらく、転生先の能力を限界値までブーストしていると思うわ、まぁ転生の基本だけど…別にギフトスキルも在るって踏んだ方が良さそう」

白野さんは淡々と言う

 

 

「…ギフトスキル…………」

私のギフトスキルって………………「検閲」されているようで脳内Wikipediaには靄が掛かっている

 

なんで……?

 

 

「………傷つけられたしなぁ……ご褒美あげよう……斬魄刀を抜いてあげる」

 

いつの間にか抜いているふた振りの斬魄刀を構えるアサシン

 

「断ち纏え……『双月』!!」

 

斬魄刀を解放、『始解』する

 

 

ふた振りの刀は黒い斬魄刀に変異する、それぞれ『天鎖斬月』に酷似していた

刀身は天鎖斬月より短め、殺意を濃縮したような漆黒

 

「あれで…『始解』か」

 

纏う霊圧は先程より重く濃かった

 

 

「紹介しよう、彼女達は『断月』と『纏月』…ふたりで『双月』さ」

 

「『重ね月牙(かさねげつが)』」

右手に持つ『断月』から幾重に重ねられた月牙が放たれてる

 

……いつの間にか間合いを詰められた白野さんが吹き飛ばされる

 

「きゃ!!」

黄金の鎧を粉砕、夢幻召喚は解ける

 

「気を緩めないでよ、…すぐ終わっては面白いないからね……あれが生誕するまでの暇つぶしだから」

 

 

「舐めるんじゃないね……」

鮮血が流れる白野さん

 

「白野さん……!」

 

「……目を背けるな、前を見なさい藤丸さん……いつまでもひよっこじゃ駄目よ……糧にしなさい」

ふふっと笑う白野さん

 

「……次が在るつもりかな?キミ達はこの特異点で死ぬ……あぁクソ神父に言っとくよ……キミが用意した次元聖杯戦争の、敵はつまらないふたりだったってね」

 

 

「投影、開始」

 

 

「『夢幻召喚』……狂化するからよろしく……バーサーカー!!」

 

漆黒の鎧を纏っていく

 

バーサーカー……泉の騎士サー・ランスロット卿

 

「-------------------っ!!!!」バーサーカー特有の咆哮

 

 

「…剣群展開、全投影待機」

 

さらにセイバーくんは200に迫る剣群を展開

 

 

「……どうするか楽しみだねぇ」

だらりとふた振りの双月を構えるアサシン

 

 



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第三十三節「Brave&strawberry②」

前衛にバーサーカーへ夢幻召喚した白野さん、後衛に剣群展開しているセイバーくん

 

猛攻を仕掛ける白野さんにそれに追撃するように剣群を射出する

 

白野さんには当たらないよう配慮はされているが十二分な剣雨

 

 

それでも猛攻をいなしているアサシン

 

ふた振りの斬魄刀…右の『断月』は攻撃力特化しているようだ

 

左の『纏月』はさっきいった『月牙纏装』はこっちの技らしく左腕が常に月牙が纏っていた

 

そのふた振りを使用し、白野さんとセイバーくんの攻撃を同時にいなしていた

 

狂化している白野さんは猛攻を続ける

 

「------------っ!!!」

 

地面に突き刺さっている射出された後の剣を掴む

 

バーサーカー・ランスロットの力……掴んだモノを自身の宝具へ変換させる

 

騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)』を使用しさらに猛攻を加えていく

 

 

セイバーくんが放った当たらなかった投影物を掴み、宝具化・攻撃を繰り返し猛攻を続ける

 

 

「…は!!いつまで続くかな!!?」

 

いなしにいなし続けるアサシン

 

「……けどいい加減目障りだね……『纏い月牙』」

纏月を離し白野さんの首を左腕で掴み断続的に月牙を喰らわせる

 

「ぐっ……!!?」

 

「……岸波白野。次元聖杯戦争の参加者でない君は目障りだね…!野良の雑魚禍神転生者を相手にしてるといい」

 

「アサシン!!!」

 

干将莫耶を投影し間合いを詰めるセイバーくん

 

力の限り打ちつける剣戟をアサシンは断月で受け後ろへ吹き飛ばされ後退する

 

「……へぇ……さっきの馬鹿力を憑依させたままって器用だね……痺れるよ」腕をぷらぷらさせている

纏月を手元に引き寄せる

「……悪いね、赫月の」

白野さんは立ち上がる

バーサーカーの夢幻召喚は解けていた

 

 

「あーぁ……いろいろ面倒くさいねぇ…………」

 

溜息交じりに面倒くさいと呟く

 

 

「………………よし、殺そう。」

ふた振りの斬魄刀を重ねるように構える

 

「……『卍解』!!?まずい……!」

 

 

「かぁぁぁぁずぅぅういぃい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

突然の大声、大空洞内に木霊する

 

 

「驚いた、………………良く来たね」

 

「…………苺花ちゃん」

 

 

 

全員が振り向くと大空洞の入り口に阿散井苺花が立っていた

 

「………浦原さん達をやったのか」

 

「やったよ、当たり前だよ」

 

「罪悪感はねぇのか……!」

 

激昂、憤怒の表情を続ける

 

 

「やれやれ、……いい加減可哀想になってきたよ阿散井苺花……元の黒崎一勇に執着し過ぎじゃないかな……まぁ恋心かな、意外に乙女だね」

ニヤニヤクスクス笑うアサシン

 

「な……!!?」

 

「でも……残念、元の黒崎一勇はどこにもいない……もともとの魂ごと喰らって無理矢理転生したからね」

 

「転生…?」

 

「まぁ、信じられないだろうけどね…黒崎一勇に成り代わった赤の他人さ僕は……どうだ?黒崎一勇は悪くないよかったねけどね…他の人はどうだろう?」

邪悪な笑いは続く

 

「……そんな話……信じられるか……」

 

「信じようが信じまいがきみの自由、黒崎一勇の殻を被った誰ともしない誰かに恋心を抱くのは気持ち悪いと思うけどね…?まさか僕ごと黒崎一勇を愛してくれてるのかい?」

 

「……なわけねぇだろうが!!」憤怒とともに卍解

 

表界轟雷帝猿魔ノ憤怒……雷の卍解

 

「……まぁ、黒崎一勇に転生している以上黒崎一勇の所業は所業、貶めているには変わりないけどね」

 

「このまま恨みを抱かせて殺すかそれとも『隷属転生』してあげるか…面白いとおもわないかい?藤丸立火、赫月のセイバー?」

 

苺花の雷の狒々の拳を受け止めながら笑う

 

「…アサシン!!てめぇは!!!!!!」

 

「……『禍神転生者』はやはり腐っているね…とめるよ」

 

 

「何で……何でそんなことができるのよ!!?」

私は吠えた

 

 

「……弱肉強食は常だろ、強者になったんだ力を振るわなくてどうする?……転生して、好き勝手チートして力を振るえる!!最高じゃないか…よくあるだろ…転生して俺ツェーしたいやつも……それと同じだろう!!?」

欲望にまみれた邪悪な笑みを浮かべる

 

「…………わかったよてめぇは一勇じゃねぇ………」

 

 

「……ようやくわかったかよ、小娘……もうロールプレイもし無くて良いなぁ!!?」

一勇の振りすらやめアサシンは吠える

 

 

「……一勇……今、助けるよ……そんな奴……に乗っ取られて嫌だろ…………『破道の九十・黒棺』」

 

「詠唱破棄だと!!?」

 

「既に唱えといた…『詠唱待機』だ……喰らえ」

 

「巻き添え食らうんだぞ!!?」

 

 

「…………上等」

黒い棺の重力結界が展開する、苺花は自身ごと巻き込むように九十番台の破道を発動する

 

 

次第にふたりを包み込み見えなくなる

 

「苺花ちゃん!!?」

 

 



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第三十四節「Brave&strawberry③」

空間が黒で塗り潰される

 

破道の九十・黒棺

 

九十番台の破道は原作から強力なモノが多い

作中に登場した数は多くないが

 

原作のボス、愛染惣右介が得意とした黒い棺型に展開する強力なイメージを持つ重力結界

 

それを自身ごと巻き込んで発動しているなんてあまりにも無謀だよ……!

 

 

黒い棺の結界が割れる、払うように粉砕された

ガラスのようにバラバラと落ちていく

 

「……自爆特攻……悪くないんじゃないか?阿散井苺花、少し痛かったぜ完全詠唱の黒棺はなぁ」

 

無傷ではないが黒棺は喰らった割には軽傷過ぎるアサシンと傷だらけの苺花ちゃんが立っていた

 

「……畜生……黒棺喰らってそれだけかよ……あたしの最大威力の鬼道だぞ……」

肩で息をしている苺花ちゃんは力無くアサシンを睨みつける

 

術者は受けた側に比べたらあまりにも傷だらけだった

巻き込んで発動したのに割に合わない

 

「力量の差だよ、単純にな……『転生者』は『転生者』でしか倒せないはそういうところだな……まぁたまに原作からチート染みたやつがいるけどな」

ヘラヘラ笑いながら苺花の首根っこを掴む

 

「離せ……!!」

 

「……相当、無理して発動してるんだな……卍解解けてるぜ?本人の意思に反する卍解がとけるのは持ち主の死期が近いんじゃないか?」

 

アサシンは月牙を纏う

 

 

「やめろ…!」セイバーくんが跳躍、止めに入るが

 

「目障りだ……『境界を喰らうモノ』……餌だ」

脈動する繭は肥大化を続けていた

先程までの倍の大きさ

 

「自身の孵化に大量の魔力を消費するみたいだ……周りのモノ食い始める段階に入るぞ」ニヤニヤ笑いながらアサシンは言い放つ

 

繭が放つ魔力波をセイバーくんにぶつける

 

「…セイバーくん!」

 

 

 

「……『令呪を持って我が肉体に命じる』……!」

 

令呪を起動させる白野さん、令呪は拡大し白野さんの魔力回路を魔力と共に走り抜ける

 

 

「『転生夢幻召喚(リバースインストール)』!!!クラスカード・セイバー!!」

 

 

内蔵英霊ネロ・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクスを自身に転生召喚する

 

今までの夢幻召喚は英霊を纏い一部力を発現するが基本ステータスは白野さんに依存する……らしい

 

転生夢幻召喚は一時的に英霊へと変換する

 

 

 

「私は単騎のマスター…埋め込んである二枚のカード、彼女達は別だよ……ネロ、お願い」

 

 

『うむ、承った最愛の我が奏者よ!!』

 

 

赤いセイバーに肉体と魂を変換させる

 

対峙するのは繭

 

「赫月の!!そちらは貴殿に任せたからの!!」

 

 

ネロに変換した白野さんは、跳躍

 

「相手してあげなよ、『境界を喰らうモノ』……カルデアのマスターしかも英霊へと変換したとなれば極上の魔力だ!!……なぁ苺花!!?」

 

「気安く……呼ぶな……破道の一、『衝』」

アサシンの腕に鬼道を放ち反射的にアサシンが離す隙に懐に蹴りを入れる苺花ちゃん

 

「ぐっ……小娘…死にかけの分際で……」

 

「窮鼠猫を噛むってな………はぁ……はぁ…」

ふらふらとしながらも、後退

アサシンから距離を取る

 

「アサシン!」

 

 

「しつこいね、赫月の!!」

セイバーくんは跳躍、干将莫耶を打ち込む

アサシンも干将莫耶を右の『断月』で受け止める

 

 

「…なぁ?赫月の?貴様がよく分からん……なぜ次元聖杯戦争をとめたがる?」

 

「貴様らゲスを止めるのに理由なんかねぇだろうが!!」

体重を乗せさらに力を込める

地面はヒビがはいりアサシンごとへこむ

 

「ぁあ……『常世総て(とこよすべて)のセイヴァー』を探してるんだってなぁ?……災害染みた救済者に因縁でも在るのか?クソ神父もそんなこと言ってたわ」

 

「………知ってるのか貴様」

 

 

「さぁ、どうだろうな……『崩界のアヴェンジャー』『常世総てのセイヴァー』は貴様にとってキーマンだろうよ……まぁ俺には関係ねぇな!!転生して好き勝手チートして禍ツ聖杯を手に入れて俺だけの世界を作ってやる!!」

 

「……そんな……我欲だけみたいに……」

 

 

「……カルデアのマスター、俺達は徹頭徹尾邪悪なのさ、我欲にまみれ正道を外れた願いを持ち異常な嗜好を持って行動している。そういう風に選定されたのだよ、改心とか期待するなよ」

 

 

「……『禍神転生者』はそういうものだリツカ」

 

アサシンから距離を取り私の前に立ってくれるセイバーくん

「分かってるよ……別にそうは思ってない……こんなモノに彼女達は利用されたと思うと馬鹿らしい」

 

 

「は、言ってくれる……弱者は常に利用される大なり小なりそうだろ…………強者とは常に利用する側だ!!」

 

「……英雄にとはいわない…けど私は……私達はお前達から彼女達みたいな人を守りたい……!」

 

 

「当然だ!!リツカ!!」

 

 

俺を使え…!

 

クラスカードが光る

 

「これは……黒崎さんの、クラスカード……?」

 

 

「叫べ!!リツカ!!」

 

 

ギフトスキル……?

 

 

寄贈知識群更新・検閲解除

 

第一寄贈特性解放

 

『さぁ、叫びなさい藤丸立火』

 

頭に響く声…森羅万象の意思……?

 

私の令呪が起動し光を放っていた

 

「ちぃ……!なにをするつもりだカルデアのマスター!?」

 

 

重装夢幻召喚(インストール・アームド)!!」

 

英霊に英雄を纏わせる、あぁこの特異点の英雄の力を憑依させる

 

これが私の、ギフトスキル…!

 

「頼むよ、セイバーくん!!『クラス・セイバー』!!」

 

黒崎一護の力を与える!!

 

 

セイバーくんを光が包み込む

光が衣服を形成していく

 

 

黒い死神の服……『死覇装』を纏うセイバーくん

 

そして身の丈程の大刀……『斬月』を構える

 

 

「…………いくぞ!!『虚影のアサシン』!!」

 

 



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第三十五節「Brave&strawberry④」

黒崎一護・全盛期の力を引き出す

 

けどそれは千年血戦編の双剣の『斬月』ではない。さらに死神代行消失編で、霊力を取り戻した時のオシャレな感じのではなく『空座決戦編』くらいの黒崎さんの力だと思う

引き出せてそれだ…黒崎さんの力を限界値まではまだ厳しいようだ

 

英霊エミヤの力に主人公の力を重ねる

 

単純な足し算だ、あのアサシンとの力量の差を埋めるんだ!

 

いけ!セイバーくん!!

 

 

「……だ!」

 

「……ちぃ」

 

打ち合う、打ち合う、打ち合う、

 

 

瞬歩をお互い使用し、速度の世界へ消え打ち合う

大刀の『斬月』と双剣の『双月』の打ち合う金属音を置き去りにする

 

「は……!俺に殺された黒崎一護の力を借りるとはなぁ…!」

 

「……黒崎一勇の体を返して貰うぞアサシン!」

 

 

『始解』同士の戦闘

エミヤの技術に黒崎一護の膂力を足す

英霊の体に死神の魂を重ねる

 

不和無く重ねる…『重装夢幻召喚』の恩恵もある

 

本来反発し合うだろう要素を総て零にする

……十分チートスキルだろう

 

黒崎さんの願いもある、彼が力を貸してくれるという意思もそういった作用があるのかもしれない

 

 

ありがとう、ございます黒崎さん

 

 

「「……『月牙天衝』!!」」

 

 

お互いに月牙を放つセイバーくんとアサシン

 

衝撃は外に余波として飛び相殺

 

 

お互いに後退し距離を取る

 

 

「…く、面倒臭ぇ……英霊の力に死神の力……『虚化』!!」

仮面を取りだす、黒い霊圧に変容

鬼のような虚の仮面、黒崎一護のそれに酷似している

 

「……『虚月天墜』!!」

上段の構えから放たれる月牙天衝に似た斬撃

 

 

「ぐっ……!!」

躱せない速度で放たれた斬撃を斬月で受け止める

 

だがあり得ない角度から月牙をくらう

 

 

「がっ……!!」

吹き飛ばされる

 

壁にぶつかる

 

「……なんだ……」すぐに体勢を立て直すセイバーくん

 

 

「……『虚月天墜』、俺がアレンジした2連の月牙だ……2連目、感知できなかったろう?」

仮面をつけたアサシンは嘲るように説明する

 

 

「……厄介だな…………仕方ない、出し惜しみもなし……時間も余力もねぇ……行くぞ」

 

斬月を前に突き出すように構える

 

霊圧の高まりを感じる

 

「………『卍・解』!!!」

使い方も分かる……黒崎一護が力を貸してくれる

 

なら迷いもなく実行する

 

 

「………………『天鎖斬月』」

 

黒い死覇装も形を変え、斬月も黒い刀と変容する

 

霊圧値も著しく上昇、霊圧硬度も同様

 

 

「…と『虚化』」

セイバーくんも仮面を取り出し虚化する

 

『天鎖斬月』が可能とする超速戦闘

卍解状態は本来、巨大な力を秘めるモノが多い中『天鎖斬月』は通常の斬魄刀サイズ

 

最速の、斬魄刀の部類には入るだろう

 

 

それと自身の霊圧を虚側へと境界を越える『虚化』

 

戦闘力は増大する

 

「……『月牙天衝』!!」

くろい月牙を一瞬で間合いを詰めアサシンの背後を取り放つ

 

「ぐっ……………『卍解』に『虚化』かぁ……英霊の力を使い黒崎一護より一時的に強くなってるなぁ……おもしれぇ……」

吹き飛ばされるもすぐに踏みとどまるアサシン

 

 

「…………『卍・解』!!」

 

アサシンも卍解する

霊圧値の増大、禍禍しさを備えた霊圧が噴出する

 

 

黒い霊圧は影となり噴出、アサシンの体に纏わり付いていく

 

「…『双月童子・纏御前』」

 

重苦しい霊圧が場を支配する

 

 

鬼のような虚の仮面にふた振りの刀は消え体全体に月牙を纏っている

髪の毛は伸びている……そして……胸の孔

 

 

「……卍解かそれは……」

 

 

「………俺の卍解は…『完全虚化』と融合した卍解だ……………自我は残るがなぁ……!!『虚月天墜』!!」

無数の月牙が収束し振り落とされる

 

卍解状態での『虚月天墜』だろうか……?

 

 

「虚ろな月が天を墜とす、我ながら良い名前だろう!!?」

 

「ちぃ…!『月牙天衝』!!」

 

振り落とされる『虚月天墜』は、巨大な円状の霊圧の塊となり墜ちてくる

 

月牙を放つが飲まれるだけ

 

「……リツカ……!」

この範囲私も巻き込まれる…?

 

 

 

 

ネロ対『境界を喰らうモノ』

 

ネロとなった白野は駆ける、駆ける、駆ける

 

極上の英霊の魔力に惹かれ繭からは影の触手がネロを狙う

 

切り捨て、駆ける

切り捨て、駆ける

切り捨て、駆ける

 

を何回繰り返したかは分からない

 

 

「なんとも、煩わしい触手よな…!皇帝権限『瞬歩』!!」

 

皇帝権限……一時的にスキルを自身に与える

彼女の我が儘を体現したようなスキルだった

 

加速する、赫月のセイバーが使用していた歩法を用いる

 

「はぁ!!」

隕鉄の鞴は、火力を上げる

瞬歩で繭の上へ行く

 

それでも触手は反応しネロを狙う

 

火炎の斬撃は触手を切り捨てる

 

 

「ちぃ…!」また離脱、後退を繰り返す

触手は枝葉を別れるように展開し、獲物であるネロを執拗に狙う

 

「煩わしいにも、ほどがあろう!!」

自身を回転させ前方後方より飛来する触手をさらに切り捨てる

 

「卑猥なる触手めが!今は余が借り受けている最愛の奏者の肢体を触れさせてなるものか!…」

激昂により隕鉄の鞴の火力はさらに上がる

 

鞴を、構える

 

わらわらと触手の大群が束になり、ネロに襲いかかる

 

思いっきり鞴を振りかぶる

 

感情の炎は束になっている触手を焼き捨てる

 

「…余の怒りを思い知るがいい!!」

 

『あ、いや…ネロ怒るポイントちがくない?』

 

「最優先は奏者だからな!!是非もないよね!!」

 

『どこぞの魔王の真似はいいから……!?来るよネロ!』

 

触手ではなく人型を形成していく繭

 

繭に繋がれた人型は十体

 

 

「捕食方法は変えてきたみたいだのぅ…」

 

鞴を下段に構える、瞬歩で間合いを詰める

 

 

「がぁぁぁあ」唸り声を上げながら人型は襲いかかる

 

切り捨て、切り捨て、切り捨て

 

それでも人型は再生し沸いてくる

 

「煩わしいのはかわらんのぅ……!」

 

舌打ちをしネロは大きく後退し距離を取る

 

 

「奏者、宝具展開するぞ」

 

 

『うん』

 

 

「我が才を見よ!

万雷の喝采を聞け!

インペリウムの誉れをここに!

咲き誇る花のごとく…… 開け! 黄金の劇場よ!!」

 

 

薔薇が舞う黄金劇場が展開する

 

 

「『招き蕩う黄金劇場(アエストゥス・ドムス・アウレア )』よ!!」

 

皇帝ネロの絶対皇帝圏……かつて彼女が有した黄金劇場

 

固有結界にて非なるモノ、彼女のあらゆる願望を叶える空間

 

 

「招くは貴様ら『境界を喰らうモノ』よ、赫月のらには手を出させぬよ」

ネロは笑う

 

「我が黄金劇場にて果てるがいい!」



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第三十六節「blade&strawberry①」

『虚月天墜』と奴が呼んでいたそれ

 

巨大な霊力の塊、月牙の集合体

 

……『始解』状態のそれは月牙天衝のあと知覚し難い2撃目を付随させていた

 

 

これは……連続的に月牙を、放ち付随し続けたものか

 

 

「……セイバーくん!」

 

「……気絶した阿散井苺花と離れてろ!!リツカ!」

 

背後にいる彼女にそう声をかける

 

「…………投影、開始」

 

虚化した死神の状態でそう呟く

 

 

頭上には『虚月天墜』まるで隕石の如く降り注ぐ為に滞空している、恐ろしい程の威容を放つ

 

 

籠められた殺意の濃度に怖気が走る

 

 

逃がす気は無いとそう言いたいのか、奴の執念を感じる

 

 

ああ、己もお前を逃がす気はねぇ

 

洗いざらい話して貰う、禍ツ聖杯も奴のことも……あいつの行き先も

 

 

だから……ここで死ぬわけにも行かない

 

……リツカも死なせるわけにはいかない

 

 

最初は弱々しいマスターだと思った

 

人見知りするただの少女に見えた

 

実際そうなのだろう

 

けど彼女には怒りがあった、悲しみがあった

 

邪悪を憎むそれがあったのだ

 

 

だから彼女の剣として応えなければならないだろう

 

 

 

「………投影、付与(トレースエンチャント)

自分の魔力回路全てを起動させる

 

 

『天鎖斬月』に魔力を通す、強化の要領で投影を付加させる

 

『天鎖斬月』と自身の魔力回路が繋がる

 

 

 

『常にイメージするのは最強の自分だ』

 

 

反芻する彼の言葉、己に力を貸してくれている彼の意思が思い浮かぶ

 

 

『だがな、私の戦い方を模倣すべきではない。きみは私ではないし私もきみではない』

 

 

わかっている、だから今までもアレンジはしてきた

 

 

『常識に囚われるな赫月、君には君の力もある……ならば君を阻むものなどなにもないだろう』

彼の言葉は力強く

 

『君を助ける力もあるだろう』

 

 

 

『明確な邪悪はそこにいる、我らは君の正義の為に尽力しよう』

 

 

『限界はそこではないのだからな』

 

赤い外套の男は皮肉っぽく笑った気がした

 

 

ああ、……行ってやる

限界を越えてやる

 

 

 

 

 

「何をやっても無駄だ!!死ね!」

鬼のような虚の仮面を付けたアサシンは笑う

嘲るように斬撃の塊である『虚月天墜』を振り下ろす

 

まるで強大な流星のように己達を潰そうと降り注ぐ

 

「セイバーくん!?」

苺花を抱え距離を取ろうとしているリツカ

 

 

「………任せておけ、リツカ己のうしろ一切の魔力もとおさねぇ」

安心させるため僅かに笑う

 

「…………うん、一蓮托生だからねセイバーくん」

 

ああ、そうだな

リツカはリツカなりに覚悟を決めたようだ

阿散井苺花も死神、戦士の覚悟もあるだろう

 

 

 

「は、余裕綽々ってかぁ!!?赫月のセイバー!!」

奴は吠える

 

「さてな、……素を出すと小物くさいな虚影のアサシン」

 

投影を完全に行う、天鎖斬月は装飾された投影物を纏い強化される

 

 

 

「『叛逆ノ天鎖斬月』」

 

を織り交ぜ投影を付加した天鎖斬月を構える

 

 

「!!?」

 

 

「行くぞ、……『赤雷ノ月牙天衝』!!」

 

『叛逆ノ天鎖斬月』の鋒から赤き雷の斬撃を放つ

 

 

「宝具と月牙天衝を混ぜたの!!??」

リツカは驚愕の声を上げる

 

 

放たれた赤雷の斬撃は濁流となり『虚月天墜』へぶつかる

 

「この程度!!……ちぃ!!」

 

「……でぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

赤雷は力を増す、勢いを得たそれは『虚月天墜』を真っ二つにする

 

 

「ぐぁぁ!?」

 

『虚月天墜』は霧散する、『赤雷ノ月牙天衝』に押し負ける

 

 

 

 

 

「てめぇ…………かくづきぃ……!!」

赤雷の斬撃を喰らいダメージを負うアサシン、仮面が割れている

 

宙に浮く奴は激昂している、傷を与えることが出来た。奴も無敵ではない

 

 

『天鎖斬月』に纏っている装飾、魔力が霧散する

さすがに一発が限度か

 

奴は割れた仮面を修復する

 

 

「……『双月童子・断御前』!!!!」

 

纏っていた月牙を右手に収束し巨大な刀になる

 

 

「…変形するのか、………投影、開始」

再び投影しようと魔力回路を起動

 

「させるかよ!!!調子づくんじゃねぇぞ!?ああ!?……!!てめぇはあれが生誕するまでの暇つぶしだろうが!!」

 

奴は己の首をつかみ壁に叩きつける

 

 

「ぐっ…!!」

 

 

「『虚月天墜』!!」

 

そのまま虚月天墜を放ち壁ごと吹き飛ばす

 

己の体は壁の中に埋め込まれてしまう

 

「セイバーくん!?」

 

 

「……そろそろ『境界を喰らうモノ』は孵化する、そこで指をくわえて見ているがいい!!」

 

「雷鳴の馬車 糸車の間隙 光もて此を六に別つ」

 

「縛道の六十一、『六杖光牢』!」

 

六つの杖状の縛道で縛り上げられる

 

「く……!」

 

「『境界を喰らうモノ』が孵化すれば!!この世界の境界はあやふやになりさらに他の特異点をも喰らい始める!!……そうすれば他の『禍神転生者』を蹴落として俺が勝者だ!!」

 

高笑いするアサシン

 

 

 

私の番

 

 

 

あまりにも醜悪すぎる、反吐が出そうだった

あの、邪悪がまかり通るのか

 

 

「醜い、……醜すぎる……」

私はわなわな震えながらアサシンを睨み付ける

 

「あ?何も出来ない弱小マスターが何をほざく?…貴様を護るサーヴァントはあの様…吠えるだけは吠えれるのか」 

 

アサシンは私のほうへ歩き、髪を掴む

 

「きゃ…!」

 

「……『禍神転生者』は醜いかよ、カルデアのくずマスター?…だが……常に俺達が強者だ!!貴様らは常に喰われる側の弱者だ!!……あぁ貴様を殺せば忌々しい赫月のセイバーも顕界出来ず消え去るか」

 

私の腹部を掴み虚閃を放とうとする

 

 

「…お前なんか……セイバー君が倒して……くれる、……助けて!!セイバーくん!!」

 

「は、……縛道で身動きできないやつがどう貴様を助ける……って」

 

バゴォ!!

と思いっきり吹き飛ばされるアサシン

 

 

短い付き合いだけど……助けてくれる……え……?

 

 

「……リツカに手を出すなよ……アサシン」

 

無理やり縛道を破り血だらけになっているセイバーくん

虚の仮面は剥がれ素顔が再び見える……傷だらけ

 

「あぁ……リツカ、必ず『護る』」

ぽんと頭をなでてくる

 

「セイバーくん……」

 

 

「エミヤ、黒崎一護……限界はここじゃない………限界はここで越える力を貸してくれ」

 

 

 

『身体は剣で出来ている』詠唱を始める

 

「かくづきぃ…!!……いい加減ウゼぇ!!…ぶち殺してやる…!」

 

アサシンは再び立ち上がる

 

 

「…………時間稼ぎくらいしてやる」

ふらふら苺花が覚醒して立ち上がる

 

「……苺花ちゃん、無理したら……」

 

「いや、いい…ここで何もしなかったら後悔する、一護さんにも母上にも顔向け出来ねぇ…やらせてくれ立火」

 

「…死なないで」

 

「は、死にはしないぜ……無敵の苺花ちゃんだ……!」

 

卍解『裏界白蛇姫ノ恋情』

 

白い氷の卍解を纏う、白い死魄装に代わる

 

 

「偽者野郎!!一勇を返して貰うぜ!!」

 

苺花ちゃんは傷だらけの身体でアサシンへ向かっていく

 

「まだ救える気でいるのか!!阿散井苺花!!」

 

 

『血潮は鉄で、心は硝子』

 

 

苺花ちゃんは追いすがる、力の差は歴然だった

 

それでも、追いすがる

 

一勇を救うためと……意地を見せている

 

「『破道の七十三、双連蒼火墜』!!」

 

 

 

『幾度の戦場を越えて不敗ただ一度の敗走もなくただ一度の勝利もない』

 

 

青い炎の鬼道は弾かれる

 

「まだ救える眼でいやがる!どいつもこいつも!てめぇら弱者如き俺の邪魔をするんじゃねぇ!!」

 

「……その弱者如きに、足元掬われるんだよ!偽者野郎!『白蛇姫ノ情念』!!」

凍結させる斬撃を放つ

 

『担い手はここに一人、剣の丘で鐵を打つ』

 

 

「……『月牙天衝』!!」

 

「苺花ちゃん!!!?」

 

苺花ちゃんは走る走る走る走る走る走る

 

アサシンへ向かって突進する

ぎりぎりで月牙をかわす

 

「あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぉ!!」

苺花ちゃんは咆哮、叫びながら白い刀を振り上げる

 

『ならばその生涯には意味は無く』

 

 

「くそ………!」

 

白い刀は、折れていた

 

「残念だったなぁ……」

 

二の太刀にて苺花ちゃんは切り捨てられる

勢いよく吹き出す鮮血

 

「苺花ちゃん!!」

 

「……後は頼んだぜ…英雄さんよ…」

 

 

 

『借り物の身体はそれでも、剣で出来ていた…!』

 

 

世界を塗り替える

 

 

固有結界の展開、心象風景は大空洞を浸食していく

 

 

剣の墓の荒野に

 

「ち、固有結界……心象風景の具現化か……!!?」

アサシンは辺りを見渡す

 

 

頭上に浮かぶ逆さまの摩天楼  

 

 

二人の『心象風景』……エミヤシロウの心象風景に黒崎一護の力が混ざっていた

 

「『超越の剣製(リミットオーバーブレイドワークス)』」

 

「混ざったから何だ!!」

 

アサシンは突進、セイバーくんへ向かっていく

 

荒野の山、頭上の摩天楼に刺さっている無数の『天鎖斬月』を全てを引き抜くセイバーくん

 

 

「『天嵐ノ月牙天衝』」

 

迎撃すべくアサシンに嵐のように降り注ぐ

 

「がぁぁ!」

 

 

「ぐ、……『虚月』……!」

反撃しようと手を振り上げるが剣が、振り注ぎ打ち抜く

 

 

「………断罪の時間だ、アサシン」

 

ハリネズミのように剣山になっているアサシンの首に剣を突きつける

 

 

「……終わるかよ!!!……あれが孵化すれば!禍ツ聖杯の欠片が完成すれば俺はユーハバッハの因子で奴の『聖文字』全知全能を手に入れれば敵は居なくなる!!てめぇも『崩界のアヴェンジャー』も『血怪のバーサーカー』も敵じゃねぇ!他の『禍神転生者』も出し抜けるんだよ!」

 

べきべきと刺さっている剣が、抜けていく

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

虚化を暴走させている、霊圧値が異常値を叩き出す

虚の穴が広がる

 

鬼のような『完全虚化』となる

 

「ガァァァァァァォ!!!!」

 

咆哮、ビリビリと霊圧を放っている

 

 

「……投影、付与」

 

天鎖斬月本体がセイバーくんの前に飛来する

 

掴み魔力回路を天鎖斬月に接続

 

魔力を通して再び付与投影を行う

 

『超越の剣製』により全ての工程、省略

 

憑依経験は、既に実行済み

 

 

その、幻想は……実を結び形をなす

 

 

「…………『約定ノ天鎖斬月』」

 

星の聖剣を天鎖斬月に纏わせる

 

 

「さぁ、虚影のアサシン……彼女たちの怒りを喰らうがいい」

 

『約定ノ天鎖斬月』を上段に構える

 

 

荒野の中央、光は収束する

 

 

「因果は応報する、禍神に与する邪悪……森羅万象に代わり……罰を下そう」

 

 

「ワラワセルナァォァァァ!!!!」

 

汚濁に似た霊圧を撒き散らしながら鬼のようななったアサシンはセイバーくんに突進していく

 

 

「……『極光ノ月牙天衝』」

 

光は収束を繰り返し刀身に光を纏わせる

セイバーくんは、思いっきり振り下ろす

鋒から放たれた光の濁流はアサシンを呑み込んだ



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第三十七節『blade&strawberry②』第一空想特異点・了

「…!!!!?」

 

『約定ノ天鎖斬月』による『極光ノ月牙天衝』の光の濁流がアサシンを呑み込んだ

 

壁にぶつかり、それでも勢いは止まらず壁を削る

 

 

止まり、アサシンは壁に埋め込まれる形になる

 

 

「原型をとどめてやがるのは流石だなアサシン」

 

『超越の剣製』は消える

 

 

「………………ぐは…!」

 

鮮血を吐き出すアサシン、既に死に体

 

 

元の地下大空洞へ場所はもどる、固有結界は消えた

 

 

「…………ぐ…………まだだ……まだ……『境界を喰らうモノ』…!俺を喰らえ!!全てを壊しちまえ!!」

 

奴がそう叫ぶも無反応

 

そういえばあの禍々しさを感じる霊圧は消失していた

 

……私もアサシンとの戦いに見入っていて失念していた

 

 

「何故!!反応がねぇ!!」

 

 

「それは余が勝ったからである、孵化する前でよかった……流石に、手こずったわ」

 

裸の石田竜鳴を抱えながら傷だらけのネロが立っていた

 

『……ネロ、お疲れさま休んで』

 

「うむ、此度の戦いも我等の相性が良いことが証明されたのぅ……またあの駄狐ではなくこの強くて可愛い余を呼ぶが良い奏者」

 

夢幻召喚は解け、白野さんに戻る

 

「…………全くあの子は…………で、どうする?アサシン、君は既に死に体、禍ツ聖杯の孵化には失敗……次の特異点にでも行かれたら困るし逃がさないけどね……ね?藤丸さん、赫月のセイバー?」

薄く笑う白野さん

 

「当然逃がさない、因果応報……罰を受けてもらう!!」

私は叫んだ、あの子達の為にも

 

 

「当然だ、……その首ははねる……その前に聞きたい!!」

 

剣弾を投影し射出、アサシンを地面に縫いつける

 

 

「……貴様ら如きに……『境界を喰らうモノ』を……巫山戯るんじゃねぇ……俺は……俺は…弱者で終わるわけには……!!」

 

 

「答えろ!!アサシン!!奴は『崩界のアヴェンジャー』は、どこに居る!!?それに……あいつ、『常世総てのセイヴァー』はどこに!!?」

 

 

 

「………………が!!?」

突然アサシンは苦しみ始めもがく

 

「……て、てめぇ…!用無しになったらこれか…!?」

 

一瞬にして融解し血となりドロリと血溜めとなる

 

「げ、げっがい……ぎざまぁ…!」

 

 

「ンフフフ……お疲れさまでございます、虚影の…いや虚栄とでも、申しますか……クラス適正すら無くよう頑張ってくださりましたねぇ……ンフフフ…『禍ツ聖杯』の欠片の成長を感謝致します」

ニヤニヤクスクスと笑いながら血溜めが赤い着物姿の女へ姿を変え現れる

 

 

「『血怪のバーサーカー』…!?」

 

「第1特異点クリアおめでとうございます赫月様……といってもあれはコンプレックスの塊である底辺労働者を転生させて焚き付けただけのモノでして……まぁ禍ツ聖杯の欠片を成長させてくれたのは予想外でしたが」

 

血怪のバーサーカーの手には、禍々しさを内包した聖杯の欠片

 

「な、いつの間に…回収したはず…」

 

白野さんがにらみつける

 

「……ンフフフ…、ごめんあそばせ岸波様」

ニヤニヤクスクスと嘲笑う

 

「……『血怪のバーサーカー』いや禍神名『血怪姫』……こいつに喰われた特異点は数知れず……特級の封印指定の『禍神転生者』…此奴が次元聖杯戦争に参加しているなんて厄介だね」

 

「……」

ニタァァァァと嗤う着物姿の赤い女

 

 

「何のマネだ、血怪の!」セイバーくんは吠える

 

「……戦いに来たわけではありませんの、これの回収と挨拶だけですわ……今の貴方ではわたくしを満足させられませんし…ああ、我が主にも会わせられませんわ」

 

申し訳ありませんがと付け足す

 

「ですが、『常世総てのセイヴァー』については教えて差し上げましょう」

 

「…なんだと……?…」

 

「『常世総てのセイヴァー』…?」私は疑問に思い呟く

 

「おや、自分のマスターに話しておりませんの?彼女は赫月様の…」

 

「やめろ!」

 

「余計なマネでしたわね、…彼女は私達の支配特異点を次々と、『救済』していますわよ救済者のクラスに恥じない勢いで」

 

 

「……『救済者』」

 

「あれの狙いも『禍神転生者』、次元聖杯戦争及びクロスオーダーを進めればいずれ邂逅できましょう……話が過ぎました此度の特異点は幕引き……貴方様の勝ちですわ」

ドロリと血溜めとなり消える

 

「セイバーくん……」

 

「すまない、いずれ必ず話すリツカ」

 

 

第1特異点は終わった

 

地下大空洞へは全滅したと思われた護廷隊が到着

 

満身創痍の苺花ちゃんは四番隊につれられ治療へ向かっていく、気絶している石田竜鳴も運ばれる

 

傷が深いセイバーくんも同様、治療を奨められ連れられていく

白野さんも拉致られていく、大丈夫だというが断れきれずそのまま

 

四番隊隊長虎徹勇音の懇願は断りづらそうだ

 

比較的軽傷者の私は仔細を聞きたいと一番隊総隊長

京楽春水に捕まってしまった

 

転生者のことも含め説明する、多分この人にたいしてウソは通じないと思ったからだ

 

案外すんなりと受け入れられた、それほど黒崎一勇の変容は異常だったのかもしれない

 

「…君達には感謝しているよ、護廷十三隊としては黒崎一護並びに一勇くん……彼らを救えなかったことはやり切れないけどね」

自嘲気味に笑う総隊長さん

 

……これからは尸魂界並びに現世は大変になるだろう

 

再興しなければならない

 

空座町の結界は解けたのだ、外界に晒されるのだ……復興の手が入るのだ

前へ進むのだろう

 

 

それから1週間、私達はまだ尸魂界に滞在していた

 

セイバーくんと白野さんは如何せん完治していない手前、帰るとは言い辛かった

 

……カルデアに帰れば治療も出来るのだが

 

一目、阿散井ルキア…もとい朽木ルキア十三番隊隊長にあっておきたかったから彼らに無理言って残っていたのだ

 

「あまり……感情移入過ぎるなよリツカ」

彼の言葉に首を傾げる

 

 

あまりの忙しさに時間が取れない隊長達に無理をいい面談を許された

十三番隊隊舎の一室

「……藤丸立火殿だな、此度は娘が世話になったな」

薄く笑うルキアさん

おお、原作の最後の初々しさはなく隊長の貫禄が在るなぁ……可愛いけど

 

「あ、いえ……苺花ち……さんの具合の方は?…」

 

「うむ、そろそろ副隊長業務に戻りたいと騒ぎだすぐらいには元気だぞ」

 

「そ、そうですか……よかった」

安堵する

 

「して、わざわざこの時期に面談を申し込んでくるのだ、用があるんだろう」

 

「はい」

 

黒崎さんに会ったこと、力を借りたことを搔い摘まんで話す

 

「ふむ…あやつらしいのぅ」

 

「信じるんですか?」

 

「…………あやつの力を使い戦っていたことは苺花からは聞いている……ま、一護のやつがやりそうなことだしな」

笑うルキアさん

ただ伝えたかった、黒崎一護さんの思いは成就されたのだと

 

ルキアさんに伝えれば報告になるかなと思った

 

 

三日後

セイバーくんと白野さんは帰還が許されるぐらいには回復した

 

「……あそこの隊長は心配しすぎだと思う」

 

白野さんはげんなり気味に言う

 

「……じゃぁ、藤丸さん私は次のレイシフトが二日前に来たから行かなきゃならない……凛とラニにどやされる前に帰らなきゃ」

 

「今回はありがとうございます白野さん」

 

「頑張ってね、今回みたいに助けれる訳じゃないし…まぁ何かあったら連絡して……これ一応連絡先ね」

 

白野さんは、去る

 

 

「さて、我々も帰るか」

 

「その前に教えて……セイバーくん……この特異点はどうなるの?…」

 

「…………本来の次元へ収束する、『禍神転生者』の干渉を、なかったことにする修正力が、発生するはずだ」

 

「そっか……」

彼、彼女らの苦しみ、絶望はなかったことになる

 

「……だから感情移入はするなよと言った」

 

「うん……」

 

それでも彼女らは生きていたのだ

 

「……『隷属転生者』は」

 

「本来の世界には帰れないが……輪廻転生の枠には戻れるはずだ」

 

「……よかった……」

 

 

 

 

「お~い、……よかったまだいたか」

赤毛の少女が駆けてくる

 

「……あ、苺花ちゃん具合はいいの?」

 

「……ばっちりだ、そうだ石田の奴も目が覚めたってさ。気にしてただろ、後遺症もなさそうだ」

 

「よかった…………苺花ちゃん私達帰るよ」

 

「そか、なら門を開けて案内するぜ」

 

「ううん、……この世界から帰るよだから大丈夫」

 

「……信じられないけどやっぱりそうなんだな…………まぁ……世話になったあんまり話せなかったけど……友達だぜ立火」

 

やめてよ、……泣きたくなる……

 

「……うん、友達……」

涙腺は崩壊する

 

「ばっか、泣くんじゃねぇよ……また会えるってきっと」

 

「……うん」

キミの前向きのコミュニケーション能力がうらやましいな

 

「バイバイ、苺花ちゃん」

 

ドクターロマニの声が聞こえた、全く連絡なかったくせに……

 

私達は光にかわり霧散した

 

私達の初めてのクロスオーダーは終わった

 

彼女は居なくなるかもしれないけど……私は覚えていようと思った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある、特異点

 

「ああ、エスデス様……お慕い申し上げます……」

 

とある帝国に少女は恍惚の表情を浮かべ現れた

 

これは悪鬼の物語だ




第1特異点終了、無理矢理まとめた感じに…未熟っぷりに前話は難産でした

次回からは第2特異点へ行きたいです


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第二空想特異点『帝都聖杯鬼譚・夜烏を斬る』
第1話「転生者が斬る①」


その帝国は腐っていた、あらゆる理不尽が是とされている世界はあった

 

それでも

理不尽が蔓延する、この千年帝国にて悪を斬る暗殺者達がいた

 

理不尽を打倒し悪逆を挫く

 

悪を以て悪を斬る

 

 

この腐りきっている世界を変えようとしていた集団は居たはずだった

 

……筈だったのだ

 

 

「…………ナイトレイドちゃぁん?…ふっふー待っててネ~……エスデス様のために……刈り尽くして差し上げるわぁ」

 

一人の異分子にてそれはさらに混迷を極めていた

 

悪鬼はそこにいる

 

 

カルデアに帰還して二日が経った

 

…身体を休めるようにとすぐさまのレイシフトはやめてくれた

 

当たり前だのクラッカーや、ロマニェ……

 

それだとブラックカルデアも真っ青のブラックぶりと思う

 

第1特異点を終えていろいろ考えてしまう『禍神転生者』、『隷属転生者』、『禍ツ聖杯』……そして彼が追っているという『崩界のアヴェンジャー』に『常世総てのセイヴァー』……わからないことだらけだ……けど私は私なりにしたいことは、出来た……『隷属転生者』みたいな被害者を助けたい……力が必要だせめてマスターとしてサポート出来るように

 

 

例のクラスカードは手元にある

 

セイバー・黒崎一護

 

……セイバーくんの話で特異点クリアすれば『禍神転生者』の、干渉はなくなり本来の干渉が無かった次元へ収束する

 

ならこのクラスカードの効力も消えると思った

 

が残っている

 

私のギフトスキルの効力かはたまた黒崎さんの意志が介在しているのかはわからないけど

 

「……よろしくお願いします、黒崎さん」

 

カードへ向け会釈する

 

…………職員に見られた恥ずかしい

 

 

 

休息も十分に取れカルデア内を散策していたら

 

「……召喚?」

 

 

ドクターロマニに呼ばれた、そこは召喚の間

 

「うん、次の特異点へのレイシフトに控えてサーヴァントを召喚しとこうと思ってね……本来、特異点はチームを組んで望むべきだったんだ」

 

「……一人を連れて行かせたのはドクターですが?」

 

「…んん……」

 

ごまかしやがったこいつ

ドクターにたいする信頼度は正直無いです

ドクターはそんな私の視線に気付き気まずそう……反省するです

 

「これを使ってね……」

と1枚の札を渡される

 

「呼符と呼ばれるものだよ、聖晶石三つと同等……サーヴァントか礼装を呼べる」

 

「……せめてもう、1枚……」

 

あの死に物狂いの、特異点の報酬は無いんですか……ですか…さて、気を取り直して

 

 

「……抑止の輪より来たれ!!天秤の守り手よ!!」

 

呼符の、効果で詠唱は省略される

 

 

召喚の間の座に魔力は加速し光を収束する、魔法陣は光を放つ

 

 

「…桜のセイバー召喚に応じ参上致しました」

 

「魔人のアーチャーここに推参!!」

 

……んん?……二人?

 

 

「ノッブ!!?」

 

「沖田、貴様何で一緒に呼ばれるんじゃぁぁ!?」

 

「知りませんよ!?」

 

 

1枚で2体のサーヴァント呼べた

 

桜色の着物姿の剣士になんとも言い難い戦国武将な黒髪の少女

 

沖田総司に…織田信長、日本産きっての有名サーヴァントだろうね

 

「あー、桜さんに魔人さん?……喧嘩は辞めてね?」

 

 

二人っきりのクロスオーダーも賑やかになりそうだった

 

 

 

 

 

 

 

喧嘩はすぐさま収まる……1枚の2体召喚だ

彼女らも、混乱する私だってする

イレギュラーだろう

 

 

「う~む、……当たりが出たからもう、一体的な?」

 

「ガチャガチャかなんかですか私達は」

 

「是非もないよね!」

 

 

是非もないよね頂きました

 

 

「あの、沖田さんよろしいですか?」

 

「あ、はいマスター?」

 

「立火と呼んでね……こほん、結婚を前提に付き合ってください沖田さん」

 

「はい?」

 

手をぎゅっと握る、柔らかい

 

「キマシタワーじゃのう…あ、お茶貰える?」

 

「あ、えと立火?」

 

「……可愛い」

可愛すぎるだろ沖田さん、あー幸せ絆レベル上げなきゃ(使命感) 

 

「あ、ありがとうございます……しかし会ったばかりですしその……ねぇ」

 

「満更じゃねぇぞこの人斬り……あ、この煎餅うまいのぅ」

 

「厳選して買ったからね」

 

「有能じゃのぅどくたー、わしのお菓子大臣認定したる……だからどんどん貢ぐんじゃ」

 

この魔王の適応能力にはびっくりだよね正直

「沖田、そんなだからチョロインとか言われるんじゃぞ」

「言われてませんけど!?」

 

 

 

閑話休題

 

 

「……第2特異点?」

 

「うん、無事……捕捉出来たようだね…………前回の『禍神転生者』と同じ反応がこの特異点からも検出されたよ」

 

レイシフトルームに移動する

 

「………おそらく、この特異点も……『禍神転生者』で次元聖杯戦争の参加者がいるはず」

 

「……じゃぁ、とりあえずセイバーくんも……呼んで」

 

 

「……!待って…!妨害だ…!この特異点へのアクセスが不安定になっている……サーヴァントも2体いる、彼女らと先に行ってくれ!!」

 

「……え、でも…セイバーくんを……」

 

「先に行ってアクセスを安定させるんだ…!必ず後で彼も送る!」

ドクターはレイシフトを安定すべく固定しようとする

 

「立火、必ず私達が守ります」

沖田さんは私の不安を察してくれたのか言ってくれる

 

「儂らの初陣じゃ!目にものを言わせてやろうぞ!!なに、立火この第六天大魔王・織田信長がついておるんじゃ!大船に乗ったつもりでいるが良い!!」

二人のサーヴァントは私を見つめ強く頷く

 

……良い子達なんだろう

 

「……うん、お願い……!!」

 

「レイシフト始めるよ」

 

 

2回目のレイシフトが始まる

 

覚悟は……決まっている。次こそは助けるんだ

ごめんね、セイバーくん先行ってる

 

「…………次の世界は『アカメが斬る』だ、武運を祈るよ立火ちゃん」

 

 

…え?『アカメが斬る』……?……死亡フラグ乱立している世界じゃないですか…?!ダークファンタジーェ…

 

 

光に変わる

 

レイシフト施行、……うぅ、やな予感しかしない

 

 

 

特異点へ接続・再結晶

実体へ変換

 

 

特異点へ到達・レイシフト完了しました

 

 

レイシフトは終了、……どうやら森の中のようだ

 

「森のようですね立火」

あたりを見渡す沖田さん

 

「………………きをつけぃ沖田に立火……来るぞ」

 

アーチャーは抜刀している

 

「え……?」

 

 

「囲まれてるようじゃのぅ……抜け沖田」

 

「はい」

沖田さんも抜刀

 

「がぁぁぁぁぁあ!!」

咆哮と共に化け物共が現れる

 

「き、危険種……だっけ……」

 

この世界に生態系として君臨している危険種…それも複数に囲まれていた

 

 

「…腹を空かしているのかの、儂はうまくないぞ」

 

「私だってそうです、病弱スキル持ちですよ」

 

襲いかかってきた2体を同時に切り捨てる二人

 

 

ぜ、前途多難だ、レイシフト先はあれほど安全なところにってぇ!

 

 

一閃が連続的に起こる

「大丈夫か?お前達」

 

危険種達を一瞬で斬り捨てる黒髪の少女がいた

「あ、えと……」

 

「……こんな所にいるなんて……帝国の人間ではなさそうだが」

 

『アカメが斬る』の主要キャラクター……アカメその人だった

 

 

 

第2空想特異点『帝都聖杯鬼譚・夜烏を斬る』



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第2話「転生者が斬る②」

暗殺者集団・ナイトレイド

 

その実はこの世界の中心都市、最も力を持つ『帝国』の悪政に立ち向かう革命軍の裏から要暗殺人物を狩る実働部隊なものであろう

 

その中心人物のアカメ

 

一斬必殺のアカメだ

 

そのアカメに初っぱな出会うなんてついてるのか

 

…いや、アカメに転生している可能性も否めない

 

クラス名を名乗るなんて理由はそもそも無いのだ

 

虚影のアサシンは慢心と自己顕示欲の塊だったんだよねぇ

 

……どう立ち回るか得策なのかはわからないけどね

 

情報……この世界の情報が必要、セイバーくんならそういう筈

 

アカメは転生者ではないと信じていこううん

 

どの、時点の『アカメが斬る!』であるか知る必要もあるしね

 

…なら、主要キャラクターであるアカメに接触するのはありがたいはずだ

 

 

「あ、ありがとうございます…あはは、道に迷ってしまいまして」

無能を演じる……あ、いや事実無能だし

もちろん敵意もないから友好的に行こう

 

 

「……こんな所に、女子三人とは無警戒だな」

首を傾げるアカメ

 

「護衛の二人が有能ですので…あはは」

 

沖田さんとアーチャーは脇に控えてくれていた

 

 

「……ここはどこですか?」

 

「フェイクマウンテン、危険種がうろうろしているぞ……何故こんな所に」

 

うわ~、よりによってフェクマ…森じゃない山じゃん

 

いや森だけど

 

「……た、旅をしてまして……道に迷いまして」

 

「後ろふたりは格好から東洋の生まれか、珍しい……」

 

私の毒気のなさに警戒心は多少薄れているようだ

 

 

「アカメ!……いきなり行くなよ」

 

男の子が現れた……この風貌からタツミくんかな?

 

「ん、……迷子がいてな危険種に囲まれてた」

 

「あ、どうも……」

 

「迷子ぉ!?……こんな所にか」

 

フェイクマウンテンに居るのはやっぱり不自然なのだろうか

 

「あはは、ねぇ沖田さん力試しにこっちから行けば近道になるって……」

 

「あ、いや……えぇえ……?」

 

「沖田は仕方ない奴じゃのぅ……うんうん」

アーチャーも援護射撃してくれた

さすがはアーチャーだ(意味深)

 

 

 

「リツカに、オキタにオダか……まぁ方向音痴なのは仕方ないけど……旅をするなら女の子三人なら気を付けた方がいいぞ」

軽い自己紹介をしたあと

わりと常識人よりなタツミくんはそう言ってくれる

 

「沖田さんとノブは有能だから大丈夫、下手な男の人より強いよ?」

 

「……腕に覚えはあるようだけどこのご時世気を付けた方がいいぞ本当」

タツミくんはそう付け足す

 

「やっぱり……帝国ってそんなに腐敗しているの?」

 

「……!?……旅の人でもあいつらの腐敗政治は知っているのか?」

 

タツミくんはびっくりしたような顔をする

 

あ、うん…私は物語として知っている

 

トップの傀儡政治から末端の役職まで腐りに腐りきっている腐敗政治

 

蹂躙、搾取は当たり前

 

 

「風の噂でよく聞くよ、遠方からここまで来たけど……腐りきっているってね」

 

 

「あぁ……」

 

 

 

「見つけたぜぇ!!ナイトレイドぉお!!ははっほんとにいやがった!!」

 

囲まれていた………帝国兵?

 

「……帝国……ち、何人目だ……今のアジトかぎつけられたんだ……」

 

「やはりラバがいないのは痛手だ……葬る!」

 

ラバックがいない……?ならもうそんな終盤?

 

「儂に任せよ、これだけ当たりやすく的になっているんだからのぅ………」

 

アーチャーが前に出る

二丁の火縄銃を構えるアーチャー

 

 

「…オダ?…」

 

 

「沖田、援護は任せたからの」

 

「はいはい、……助けられた恩義もあります」

抜刀

 

「見よ、これが魔王の三段撃ちよ!!」

 

飛び掛かってくる帝国兵……いや暗殺者を撃ち抜く

 

三人とも眉間、伊達にアーチャークラスじゃないってわけだね

 

「……フゥ…は!!」

背後から現れた暗殺者をチラ見もせず斬り捨てる沖田さん

 

「……バレバレです」

 

「うぅ……こんな奴らナイトレイドにいたか?」

 

「……いや、ナイトレイドじゃ……」

 

「ち、撤収だ…撤収!!」 逃げ出す暗殺者達

 

 

「逃がすかよ」

 

鎧姿に変身したタツミくんが残りの奴を制圧

 

 

「大した物だな、……だが我々がナイトレイドという事を知ってしまったか」

 

「どうするよ、アカメ」

 

 

「…………私達をナイトレイドに入れてくれませんか?そのために来たんだ」

 

私はそう言い放つ………ナイトレイドに入れば一番早い

 

ナイトレイド内に転生者がいたら早いしいなくても……恐らく帝国に与する筈だ

 

「え、マジか?」

 

「本気か…?……帝国に与してない証明も出来ないだろう……我々ナイトレイドも瀬戸際まで来ている密偵もごめんだが」

 

 

「私達はある人物を探しに来たんだ、……おそらくコードネームだろうけど」

 

賭けだ

 

「……キャスター、ライダーもしくはランサー、アーチャーと名乗っている人物はいませんか」

 

「!!?」

二人の表情は、変わる……特にアカメからは憤怒に近い表情

 

「……『屍竜のライダー』……そう名乗っている奴がイェーガーズにいる……」

 

騎兵の……サーヴァント

しかもイェーガーズにいるのか

 

「帝国最強の将軍エスデスの懐刀にしてイェーガーズの隊長をもこなしているエスデスのお気に入り」

 

 

「……そして私の妹クロメを殺して八房を奪った女」

抑えきれないのか冷たい怒りを纏うアカメ

 

「奴を知っているのかリツカ」

 

……地雷原踏んだ?もしかして



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第3話「転生者が斬る③」

屍竜(しりゅう)のライダー』

 

称号持ちのサーヴァント。おそらくはこの特異点の『禍神転生者』

 

『禍神転生者』は大なり小なりその特異点へ影響を及ぼす

 

早い段階でこの特異点での立ち位置を確認出来たのは僥倖だ

 

……だけど、もう主要キャラクターを殺していた

 

しかも……アカメの妹、クロメ

 

帝具『八房』も奪っている……死者行軍の名を冠しているそれは……やな予感する

 

 

けど、まずは目の前の問題……ナイトレイドに入る事だ

 

 

「私達の目的はその『屍竜のライダー』と名乗っている女を倒す事です、…現状の帝国に関しても力添えはしたいと思ってる」

 

「……ボスに聞いてみなきゃわからねぇな?な、アカメ?………アカメ?」

 

「本当に……その『屍竜のライダー』と繋がってたりはしないのか?」

 

「……まぁ、簡単に信用はして貰えないよね……」

さっき会ったばかりでしかも怨敵の事を知っているなら警戒は当然

 

「……とりあえずアカメ、ボスに連絡して指示仰ごうぜ……ナイトレイドとしても戦力がたりねぇ今手を貸してくれるなら良いじゃねぇか?」

 

ナイスアシストタツミくん、後でなでなでしてあげよう……彼女持ちかリア充爆発しろ

 

……それほどナイトレイドが困窮しているのかな?現状何人残っているのか……

 

 

「タツミ……そうだな、私のしたことが私怨を優先してしまった……リツカ達が帝国の現状を変えようと思ってくれたなら大いに助けになるな……すまない」

 

「い、いや仕方ないよ……うん」

 

「……じゃぁおれ、ボスに連絡入れてくる」

先に行くと鎧姿に再びなるタツミくん

 

走り出すタツミくん、速い

 

「……あれが『帝具』ですかね」

レイシフトしたと同時にサーヴァントに与えられる最低限のレイシフト先の知識をなぞらえて沖田さんは呟く

 

「みたいじゃのぅ…かっこいいのぅ欲しいのぅ」

 

「またノッブの、ほしがりが始まった……」

 

 

『帝具』…先の帝国の祖先『始皇帝』が造らせたという超常の武具

 

 

「『帝具』使い同士の戦いはどちらか必ず死ぬとされている……」

 

アカメがそう呟く

 

「……聞きにくいんだけど良いかな?…」

 

「なんだ?…」

 

「『屍竜のライダー』…………人相は知らないんだ、どんな女なの?」

 

「……前に一度、対峙したことがある……不愉快な女だ、いわゆるゴシックロリータという衣装を纏った私かお前達くらいの年頃の女だ」

 

「よく笑う女だ、不愉快な笑い声だったのは覚えている」

 

「……2つの『帝具』を所有している、奴本来の『帝具』と『帝具』八房」

 

本来有り得ない帝具の2個持ちを平然と行うらしい

 

ん、原作じゃウェイブ君が同時発動やってるけど負荷やばいらしいしねぇ

 

相性度外視…『禍神転生者』ならやりそう

 

……思った以上厄介そうだ……

 

 

 

 

帝国、イェーガーズの詰め所

 

そこに兵舎に似合わない少女趣味な格好の少女が椅子に座っていた

 

「シュラくぅん?好き勝手やってくれたねー?……まぁワイルドハントはもうイェーガーズの配下だからよろしくね」

ニヤニヤクスクス笑いながら話しかける

 

椅子かと思ったそれは男だった

 

……ワイルドハントの頭にてオネスト大臣の息子シュラ

 

「てめぇ…………大臣の息子だぞ!?こんなことして……わかってんのか!?」

 

「……いやぁ大臣快諾してくれたよぉ?無能な息子を鍛えてくれってさぁ!?ははは見限られてんじゃん!?笑える!」

けたけた笑う

 

「まぁ、大臣も私のお願い断れないっしょ?……知ってる?私への暗殺失敗数昨日で666回目…悪魔の数字達成~」

 

「あ、悪魔が……」

 

「小悪魔ちゃんでよろしくぅ~」けたけた笑う

よく笑う少女だった

 

「隊長……それ位にしては」

 

「そだね、ランお疲れさま~……ウェイブ君ご飯~」

 

「あ、ああ……」

 

「それと以蔵くんもお疲れさま~ワイルドハントへの密偵……まぁ必要性あったかはあれだけど~」

 

「姫さんは遊びが過ぎるがか、……まぁ儂も遊べたからよかったがの」

 

和服を着た侍姿の男が脇から現れる

 

「イゾウ……てめぇ…!お前が間者だったのか」

 

「以蔵じゃ、……最初から姫さんの味方よ異国で会ってからの」

 

岡田以蔵そう名乗っている男は皮肉げに笑う

 

 

「そそっー、そんな前から布石打っといたのさ……最初からシュラくぅんは私に負ける運命なのさ!?」

くるっとターンしてわらいこげる

 

「……あ、錬金術師ちゃんはイェーガーズに貰うからスタイリッシュ居なくなったのいたいしね趣味も合いそーよろしくぅ」

 

よくしゃべる少女だ

 

 

「……『屍竜のライダー』に忠誠を誓えシュラくぅん?てめぇに拒否の二字はねぇ…死ぬまで使い潰す……エスデス様の役に立てよ」

シュラの頭を踏み言い放つ

 

 

この場に君臨している少女こそ『屍竜のライダー』だった




アカメのイゾウをコハエースの岡田以蔵へ

やりたかった


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第4話「試験を斬る」

「君達がナイトレイドに入りたいと言った者達だな」

 

イケメンな雰囲気をもつスーツ姿の義手の女性は煙草を吸いながら聞いてくる

 

ナジェンダ、元将軍のナイトレイドのボス

 

アジトとは別の洞窟まで案内された

 

まぁ入る事が決まってないからアジトになんて行かないよね当然

 

「はい、ある目的のためです。もちろん帝国の現状を変えるため力添えしたいと……この帝国近くまで来ました」

 

 

ここまで来る間念話で打ち合わせしていた

 

田舎の小さな子爵の娘……正義感が強く二人の護衛を連れ上京

 

そして『屍竜のライダー』を追っている

前半はそういう設定、……ナイトレイドの情報網で看破されるかも知れないが……レイシフトしてきたなんて通じない

 

「ふむ、………聞いた話だと護衛二人が主に戦闘という事だが」

 

「はい……」

 

「……私達は立火の気持ちを汲んでこの場にいます、闘えないのであれば入れれないというならばご容赦を」

 

「儂ら二人が立火の剣にて盾じゃ」

ふたりは挟むようにとなりにたちそう言ってくれる

「……そういうわけじゃないさ……ただ我等は革命軍とは言え裏の顔……修羅の道だ、覚悟があるかと問いたい」

 

「革命の日は近い、生半可な覚悟の者を引き連れ足を引っ張られても困る」

 

威圧感を感じる……これが上に立つ者の貫禄と暗殺者達をまとめあげる凄みか……

 

 

「……わ、私だって生半可な気持ちで来たわけではありません…私は……『屍竜のライダー』を倒さなきゃならないのです……!」

虚勢をはり睨みつける

足が震えるし脂汗が凄い

 

「……あいつらが居るから泣かなければならない人達がいる…!……私は…!」

 

 

「……君の気持ちは分かった……私はこう見えて将軍の経験もあって人を見る目があってな……清濁の判断は出来るさ…君の目は清すぎるな、あと嘘が下手だ……あえて聞くまい……あぁ帝国に関わる者特有の腐った目はしていないようだ」

ふ、と口元を緩めるナジェンダさん

 

 

「だが、気持ちだけで何とかなる世界でもないからな……試験をしよう……水準に達しなければ後援の方に下がって貰おう……ここまで来たんだただでは帰すまい」

 

「……は、はい」

 

気迫に押されている…

 

「君の護衛二人がナイトレイドに所属したり得るか……試させて貰う……主の君をこの汚い世界でもなお護れる力があるかどうかをな」

 

 

「望むところです」

 

「是非もなし。むしろ入って下さいと懇願させてやろうじゃないかの」

 

ニヤリと笑う沖田さんと信長……召喚間もないのに……この子達ってば……

 

「この世界の戦いは……いやこれからの革命の戦いは『帝具戦』は基本だ…帝具使いの2人を相手にして貰おう……アカメ、タツミ!」

 

 

「…………ああ」

 

「任せろ、ボス」

 

「一斬必殺『村雨』と悪鬼纏身『インクルシオ』だ」

 

斬った傷口から呪毒が汚染する妖刀と進化し続ける竜を素材にした鎧

 

厄介に過ぎる

 

「剣士同士私はアカメさんと戦います」

 

「なら儂はタツミかの、……まぁ是非もないんじゃないかなぁ!?……俊敏な貴様が向いておろう沖田」

 

沖田さんは『乞食清光』を抜刀

桜色の着物を脱ぎ捨て動きやすいあの和装になる

脇、絶対領域……

 

「立火の視線がやらしい気がします」

 

「是非もないよね!……沖田は見せたがりじゃしなぁ」

 

「違いますよ!?」

 

信長は『圧切長谷部』と火縄銃を構える

 

 

互いにアカメとタツミと対峙する

 

「………巫山戯ちゃ居るけど、……あの2人隙がねぇな」

 

「……腕に覚えがあるのは事実のようだな」

 

「行くぜ!!……インクルシオぉおお!!」

 

タツミの背後に鎧が現れ竜が顎を大きく開ける

 

………………まだ、あの無理な進化体にはなってないようだ

 

ラバックが不在、インクルシオは進化していない………斜め読みだったから時系列は曖昧だ

 

 

「……行くぞオキタ」

 

「……いつでもどうぞ」

 

沖田さんとアカメはお互いに合図もなく加速

 

共に高速戦を得意とする刀使い

 

距離、間合いを図りながら打ち合う

 

アカメの帝具の性質上短期決戦型

暗殺者という職業的には長期戦は望ましくない

 

力を見せるにはアカメ相手に生存し続けること…………だと思う

 

……寄贈知識群こと脳内Wikipediaが在ろうとも私は戦闘に関しては素人だ

 

 

…………それでも初めて見る沖田さんの戦闘は

 

 

沖田総司は天才だった

 

 

 

セイバークラス

 

アルトリア、モードレッド等ど派手な宝具を持つサーヴァントが多数いる中

 

彼女のは、彼女の生き様と、剣技を昇華したもの

 

 

アカメの刀は一斬必殺、さすがに寸止めはするだろうが……沖田さんはいなしている

 

常に間合いを図りアカメの剣を視界から外さない

 

隙を作らず、視界外からの攻撃にさせていなかった

 

「やるな……」

 

「……ふふ、仮にも剣一つで生きてきた身ですから」

 

 

 

「……おお、アカメ相手に」

 

 

「よそ見している場合か、儂も舐められたものじゃの!!」

タツミに近づき顔面に向け火縄銃を発砲

 

 

「おっと…顔面に、向かって打つか!?」

 

「……鎧相手に効くか試すかあるまいて」

 

軍服の、少女はニタリと笑う

 

 

 

「予想以上やるようだな、…アカメ相手に立ち回る剣士はそういない」

ふむとナジェンダさんは頷く

 

「沖田さんは天才剣士ですから」

 

「しかもあのオダという少女は思い切りが凄いな」

 

思った以上に好印象

 

まぁ当然、幕末を生きた新選組の天才剣士

 

と戦国時代を天下布武せんと走り抜けた大魔王

 

 

過去の英雄なのだ……アカメ達も現在を生きる影の立役者だろうとも引けはとらないはず

 

 

「…ちょっとした手品をお見せしましょう」

独特の構えをする

 

「『一歩、音越え二歩、無間三歩、絶刀』」

 

 

「!?」

 

音もなく距離を詰め、彼女の剣技の歩法だけを切り出す

 

一瞬にして間合いを詰め、アカメの目の前

首筋に剣を突きつける

 

「油断したつもりは無かったんだが……」

 

「あなたはきっと本番にこそ強いタイプなんでしょう……失敗は許されないでしょうから」

 

刀を収める

 

「これで証明になりますでしょうか」

 

「……ああ、正直驚いて入る……技巧派だな」

ナジェンダさんは感心する

 

 

さて

信長は……

 

「あははは、今回は儂の方が一枚上手だったようだの!!……性格がまっすぐ過ぎなのじゃ!!性格の悪さで儂に勝とうなど三千世界甘いのじゃ!!」

 

「く、くそ」

 

タツミくんは見てなかったけどおそらく信長の搦め手にやられたのだろう

 

 

「ノッブ自分で言いますか自分で」

沖田さんは溜息をついた、三千世界甘いのじゃってなに

 

 

「とりあえず見せて貰った、いいだろう……お前達をナイトレイドに歓迎しよう」

 

 

真の意味で第2特異点が始まるのだった



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第5話「悪女が斬る」

『屍竜のライダー』

 

帝国最強の将軍エスデス主導の元秘密警察イェーガーズ結成された際に招来された6人の帝具使いの一人…に成り代わった女

 

本来の暗殺者部隊より抜擢されたクロメから帝具を奪いイェーガーズの詰め所に現れた

 

圧倒的強さにてこれを認めさせる

 

6人の帝具使いの中でも群を抜いて強かった

 

 

模擬戦でも他のメンバーをも退けている

 

エスデスは弱肉強食はあると常々言っている、弱いモノは淘汰されると

 

……その言葉を体言するかのようにイェーガーズのメンバーとして破竹の勢いで事をこなしている

 

本来ならばエスデスがその任を帯びている隊長の役職まで任せられるまでになった

 

 

……オネスト大臣以下将官に危険人物扱いされるほどに

 

 

「……これはこれはオネスト大臣、貴方自ら視察ですかぁ?」

 

ニタニタ笑う

 

「ぬっふふふ、まさか…我が愚息の晴れ舞台見に来ただけですよ」

 

 

「貴方も性格の悪い……自分の息子がこう扱われてんの、何も感じないんですかぁ?」

ジャラリと首輪に繋がれたシュラを引っ張り倒れ込んだシュラの頭を踏みつける

 

「……そこにいるのは既に負け犬です、そこから這い上がれれば多少なりとも評価しましょうが…………貴女ですからねぇ」

しみじみと呟く大臣

 

 

「私だもんねー…これは性分だから仕方ないですよぉ?……こうプライドの高い人ってこう折りくなりません?」無邪気に笑う少女

 

「まぁわかります」

 

「…………んふふ♪ここはプライドの高い人ばかりだから退屈しませんね」

 

「私が言えた義理ではありませんが敵を作りすぎると足元掬われますよ?」

 

「あらぁ、その論理だとオネスト大臣は既に掬われてません?…んふふ……暗殺666回も失敗してそうなれば世話ねぇわ…………んふふ失礼します、シュラくぅん行くよー君の痴態をみんなに見て貰うのだ」

 

「くっ……」

 

「…………今まで聞けませんでしたが貴女の望みはなんですか『屍竜のライダー』さん」

ぼそっと呟くオネスト大臣

 

 

「……『戦争』……エスデス様に戦いを献上する私はそのために来たのだから…………アデュー」

軽くウィンクして、歩き始める

 

 

 

「まぁた遊び回っているがか、姫さん悪趣味じゃのぅ」

 

岡田以蔵が影から現れる

 

「そうでもないよ、こうやって宣伝してるのさイェーガーズに『屍竜のライダー』に歯向かえばどうなるかを見せつける……汚い政治には汚い政治。エスデス様は戦闘が本分、こっちは任せて欲しいのよ~ん……いつオネスト大臣が強硬的な手段とるかわからないしね」

 

「イェーガーズのメンバーにも姫さんのやり方には疑問持つやつがいるみたいじゃがの」

 

 

「……ランにウェイブくんかぁ……正義感を煽れば使いやすかったセリューがいないのは痛いねぇ……」

 

 

「ま、あの2人は抜けられないよ特にランは、まぁ……離反したら離反したで……ワイルドハントという手駒も居るわけだし」

 

「悪女じゃのぅ」

 

「傾国の美少女といいたまえよ、以蔵くん……で、あれの調子どう?」

 

「順調っちゃ順調ぜよ、……おまん、ええんかそこんきいちょるが?」

 

シュラをチラ見しながら聞いてくる

 

「これにはもうどうする事は出来ないよ、帝具は没収したし……いる?シャンバラ」

 

「儂は『帝具』とやらは信用できないがよ、…儂が生きるは剣よ……外道の剣と言われてるがの」

 

 

「……まぁ、以蔵くんはサーヴァント。英霊が下手な帝具使いに遅れはとらないよね」

 

 

「ああ、あのアカメちゅう暗殺者斬り捨ててやるがや」

 

ニヤリと笑う

 

「ナイトレイド狩りもそろそろしなきゃだしねぇ……んふふ…『八房』の死体ちゃんお披露目したいしねぇ」

 

「…それに関しては趣味が悪いとしかいえんだが…姫さん」

 

「褒めるなよ、照れるぜ」

ニタァァァと、亀裂のような笑みを浮かべる

 

 

「おお、アリスこんな所にいたのか探したぞ」

アリスと呼ぶ声が聞こえた

アリスはもちろん偽名、イェーガーズ内でしかつかってはいないが

 

そう呼ぶのはもちろん1人しかいない

 

「ああ、エスデス様いらしてたんですね!?」

さっきまでの悪女っぷりもどこへやら恋する乙女がごとく水色の髪をした軍服の女へすり寄る

 

……帝国最強エスデス

 

帝国2強の1人の氷の女

 

 

「……うむ、先程遠征から帰還してな……おやシュラじゃないか……なるほどワイルドハントを抱き込んだか」

 

「好き勝手してたのでお灸を据えちゃいましたぁ、抱き込んだというか半分潰しちゃいましたけどね」

 

あはは~と笑う

 

「無駄な帝国内での派閥間の争いが無くなって僥倖だ……よくやったアリス」

 

「お褒めにあずかり光栄ですぅ」

さっきまでの下卑た笑みではなく乙女の充ち満ちた笑顔

 

「まぁ、私も遠征から戻ってきたし…そろそろナイトレイド達を本気で狩ろうと思う」

エスデスは獲物を狙う猛禽類のような目をする

 

「良いですねぇ、私のコレクション完成させなければなりませんし」

 

ライダーも、同様な目をしケタケタ笑う

 

次の玩具を待ち望むかのように

シュラに対しても興味を既に無くしたのか首輪に繋がれた鎖の持ち手は離している

あまりにも飽きが早かった

 

シュラに対して興味はない

 

「女は怖い生き物ぜよ、姫さんは飽きやすい我が儘じゃぁ……ワイルドハントという利用価値があるとまだ判断しちょる……せいぜい捨てられないよう頑張るぜよ……しないと這い上がるのも無理じゃぞ」

多少なりとも同情があるのか以蔵はそう囁く

 

 

「…………ったりめぇだ……このまま終われるかよ……」

 

既に談笑し始めその場を離れていくエスデスとライダーの背中を睨みつけるシュラはあまりにも滑稽と、以蔵は皮肉る

 

「せいぜい頑張るがか……『禍ツ聖杯』の餌になりたくなければの」ぼそと以蔵は吐き捨てた

 

 

イェーガーズ残り(ワイルドハント含め)9人



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第6話「初任務を斬る」

どうも、立火です  

 

やっぱり女の子同士っていいよね  

 

前世が隠キャ(誤字にあらず、陰ではない絶対にだ)なぼっちガールだった私はガールズトークには憧れる

 

ノット腐でまあライトオタだった私はガチ勢にもなじめず結局そっち方面でもぼっちを極め一人遊びに長けていた

 

「沖田さん、結局土方さんのこと好きだったの?」

 

史実男性だった沖田総司が女性なわけで恋愛脳だだ漏れるわけですよ

 

「だ、誰があの漬物バーサーカーを!…し、新選組のみんなは家族みたいなもんです土方さんも、近藤さんも」

 

「ふーん、なら沖田さん貰っても問題ないか……宜しくね」

 

「あ、え、こちらこそ……?」

 

「いちゃつくならよそでやってくれんかのぅよそで」

 

隙見て、絆レベル上げなきゃならんのだ

ノッブも攻略してやるから待ってろ……藤丸立香要素で微妙にコミュ力上がってる?駄目な方に

 

 

 

 

しかし沖田さんと信長のステータス表1枚で一括なのか

1枚の呼符で呼んだ意味が在るのだろうか

 

 

「…そろそろ目的地ですよ、立火気を引き締めて下さい」

 

あ、はい

……いろいろ現実逃避してました

覚悟はしてましたけどこわいもんは怖い

 

 

帝国の帝都への斥候任務、……顔がバレてない私達に相応しい任務だった

 

初任務を言い渡された

 

ワイルドハントの暴挙のせいで密偵達の任務も滞っているらしい

 

ワイルドハントの掃除、もしくは今の帝都状況を調べる

 

必要ならばアカメ達も召喚するとナジェンダさんはいっていた

 

…………まずナイトレイドの残存人数がおかしい

アカメ、タツミ、ナジェンダさん……だけ

 

シェーレ、ブラートはそのイェーガーズ結成の際に奴は現れたから仕方ないけど……

 

 

ワイルドハント暴走時期に………チェルシー、スサノヲ、ラバック………マイン、レオーネがいない

 

 

大将軍ブドーも生きているという

 

 

これは既に『屍竜のライダー』が本来の漫画のシナリオに干渉し十二分影響が出ていた

 

そもそも『ワイルドハント暴走時期』も時間的にはずれているのかもしれない

 

 

………………やばい、……確かにナイトレイドも相当切迫詰まってるのでは

 

アカメが言うにはDr.スタイリッシュ、ボルス、セリューは既に落ちている

残りはウェイブ、ラン……『屍竜のライダー』

そしてエスデス

 

 

今回のターゲット、ワイルドハント

 

オネスト大臣の息子シュラ

人斬り剣客イゾウ

吸血鬼な錬金術師ドロテア

狂った歌姫コスミナ

シリアルキラーチャンプ

海賊エンシン

 

立場的にはイェーガーズに似ているらしいがイェーガーズとは違い大臣の息子の立場を利用し好き勝手やっている

 

帝都に不和を持ち込み乱しているんならイェーガーズ残りのやつも動く可能性がある

 

…先回りするなら顔が割れていない私たちで先手を打てる

 

「…………やるしかない、沖田さん信長」

 

「はい!」

 

「是非もなし」

 

私はともかく和装の沖田さん、軍服の信長は目立つ

特に信長

 

変装だ、変装!

 

帝都周辺に来ていた私達は変装していた

 

私は帝国の一般人女子な格好……を目指す

カルデア制服すら実は着てない、パーカーに短パンだったからそのままいけるって

非番の日にレイシフトしたから仕方ないって

 

沖田さんも似たような格好

洋装に変えればそんな目立たないはず…別にペアルック目指したわけじゃないんだからね?本当本当

 

問題、信長

 

「………だれ、君」

 

 

あの軍帽無くなったら特徴ないな

 

 

「な!?儂が無個性だと言いたいのか!?」

 

「ノッブのキャラクターに比べたらちょっとパンチないですよね、軍帽のあれ半分ノッブですからねぇ」

 

「是非もないかなぁ!?」

 

「まぁまぁ、任務だから目立っちゃ駄目なんだし普通に可愛いよ信長」

 

「ふ、ふむならいいんじゃが」

 

私の好みでワンピース着せたけど普通に可愛いわ

戦いにくい?知りません

 

 

 

こうして変装し帝都への侵入した

 

…活気に溢れてはいなかった

ゴーストタウンとは言わないけど……なんだか人に元気がない

店もまばらに閉まっていた

 

 

「…………………」

 

これが、現在の帝国

搾取される側の帝国民

今となって地域差もくそもないだろうけど現状一番ダメージを喰らうのは彼らだ

 

 

…いけないいけない、感情移入し過ぎると……早く『屍竜のライダー』を倒しこの特異点は消して本来の世界で革命して貰わねば……うん

 

……そう考えると、最短で屍竜のライダーを倒したい

 

エスデスやブドー大将軍まで相手にしたら大変になりそうだ

 

 

「…………目立たないようにしないとね」

2人は頷く

 

ワイルドハントを、さがす

 

難しくはないだろう、最近好き勝手やっているならなおさら……そして女好き

 

沖田さんと信長は可愛いからしかたないね

 

 

あちらから絡んでくる可能性はある

 

 

「た、旅の方かな?」

 

「はい?」

話しかけてきたのはボロボロの老人

 

「ひ、引き返した方がええ、若いおなご三人なんて格好の的じゃ……早くお逃げなさい」

 

「あ、えと……」

 

「さっきも奴らが近く暴れてたんじゃ、はようお逃げなさい……ぎゃ!?」

 

 

「あぁん、……ジジィ何やってんだぁ!…………へぇ……若い女が3人こんな所にまだ居たのかぁ?ラッキー……憂さ晴らしさせてもらうぜ」

 

老人を、斬り捨てながら現れたのは

 

ワイルドハントのエンシンだった

 

 

………早く見つけられたね

 

「変装の、意味あまりなかったけど……」

 

「……やって2人共」

 

「何だぁ!?てめぇらやるつもりかぁ……いいぜ、三人まとめて俺のペットにしてやるぜ」

下卑た笑みを浮かべる

 

「………下品なやつじゃ、儂を侍らそうなぞ三千年早いわぁ!」

火縄銃を召喚、信長は容赦なく発砲

 

肩を撃ち抜く

 

「……ぐっ……てめぇ…」

 

「……ワイルドハントのこと洗いざらい吐いて貰うよエンシンさん」

 

「動いたら斬ります」沖田さんがエンシンの喉元に刀を突きつける

 

 

「…………てめぇらナイトレイドか?」

 

 

「……さぁ、ナイトレイドとは限りません」

 

 

「いやぁ……あのくそ女言うとおり釣れるたなぁ……汚名返上、名誉挽回……狩らせて貰うぜ」

 

「……!?」

沖田さんに……視界外より炎を纏った玉が投げつけられる

 

超反応でなんとか、かわす

 

 

快投乱麻!?……チャンプか!?

 

巨体ピエロのシリアルキラーの姿がそこに在る

 

1人じゃないか……

 

 

 

元々6人が標的、情報収集したかったけど対敵してしまったから仕方ない

交戦になるよね

 

私は三つの礼装を自身の擬似魔力回路に接続

 

これは白野さんに教えて貰ったカルデアのマスターの戦い方

 

ガンド、膂力強化、宝具威力強化のコードキャストが使用可になる

 

令呪も一画で霊器蘇生、重装夢幻召喚

三画で強化蘇生or重装夢幻蘇生

 

 

……今、私に出来ることの確認

 

「よし、行くよ…!」

 

 

「てめぇらがナイトレイドか…!殺す!」

 

憎悪に顔を歪める褐色の男が現れる

 

 

「……シュラ…!」

 

「俺を知っているならナイトレイド確定だ!?犯して吐かせてナイトレイドの残党刈り尽くしてやる!あの女の前になぁ…!」

 

 

ナイトレイド(新参)対ワイルドハント三人



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第7話「邂逅を斬る」

3対3、実際は2+α対3

 

マスターとして2人をサポートするけど

 

サーヴァント戦ではないし相手は私も狙いを定めてくる

 

しかし沖田さんと、信長は自然に私をまもってくれていた

 

 

沖田さん対シュラ

 

信長対エンシン、チャンプ

 

 

と自然に、対峙になっていた

 

対多数を、得意とする信長は2人を相手にするも圧倒していた

 

最大数には全然達していないが信長のまわりには火縄銃が浮遊する

 

簡易版「三千世界」

 

「デブと、エロ猿が儂の相手になるとおもうなよ!」

 

クライ、クライ、クライ!

 

火縄銃を発砲し牽制する

 

 

「くそ、何だってんだ『帝具』か!」

エンシンはかわしながら毒突く

 

「ぶほ…やっぱり適齢期越えた腐りかけの女はだめだ」

 

 

肩で息をしながらそんなことをつぶやくチャンプ

 

ロリショタの変態はちょっと無いです(真顔)

 

 

 

エンシンとチャンプの帝具

 

月光麗舞『シャムシール』真空の刃を発生させる曲刀、満月時に最大威力になる

 

快投乱麻『ダイリーガー』六つの玉の帝具

六属性を投げつける際に発動する

 

前者は今は日中であるから問題ない

ダイリーガーは厄介で在るが巨漢であるが故動作に隙がおおく信長には当たらないようだ

 

 

「…沖田さんは」

 

 

 

沖田さん対シュラ

 

シュラは帝具を使用せず徒手空拳で沖田さんに攻撃をくわえている

 

沖田さんは、俊敏な英霊に入っているためシュラの攻撃を見極めいなしている

 

「……ちぃ、……すばしっこい女だ……!」

 

シュラはあらゆる格闘技の良いところを組み合わせ戦う天性の才能を持っている

 

「……あなたは色々なものを習得しているようですね、まぁ私は剣士……詳しいことはわかりませんが」

 

縮地、シュラの意識の外側に間合いを詰める

 

「……一つの物を極限に極めた方が良いですよ」

 

 

 

「アカメクラスの剣士かぁ……なぁ!」

砂を投げつけ目眩ましするシュラ。

 

「ぐ……がぁ!?」

その、隙をつき回し蹴りを沖田さんの腹部に放つ

 

「な、卑怯な…」私は呟く

 

「はっはっは!これは殺し合いだぜ姉ちゃん……試合じゃねぇんだ…何しようが勝っちゃいいんだよ!……さっさとナイトレイドの奴らの居場所はいてもらうぞ!」

 

私の方へ走り出すシュラ

 

「立火!」信長が声をあげる

 

 

私は構える、まだ試してないけど……

指先に魔力を集中、魔術回路を起動させる

擬似的魔術回路を起動させるという未知な感覚が襲う

ある魔術行使を、行うという行為を連想する

 

『ガンド』

 

 

シングルアクション(一工程)の魔術行使

相手にバッドステータスを与える呪術弾を指先から放つ

 

最上級の、ガンドは『フィンの一撃』と呼ばれるがこれは礼装により使用できるためスタンさせる程度

けど物理威力はそれなりにあるはず

 

シュラに、狙いを定め放つ、多少ぶれるのは致し方ないが

 

三つのガンドを射出する、反動はない

 

「何だぁそりゃ!」三つとも一振りにて弾かれた

 

 

弾いたね……?

 

「ぐ、なんだこりゃ…」弾いた右腕がスタン

 

強い痺れではないが違和感を覚える程度のスタン

 

私はすかさずガンドを両足の腱を狙い放つ

 

 

 

「ぐ…」

 

足を奪う、素人の私でもそれは有効だと、分かる

 

 

ステータスの俊敏さはどのゲームでも重要だしねうん

 

 

「お見事、立火」

沖田さんは立ち上がりシュラを倒し組みふせる

 

「う、うん」

 

ハァァァァ…と脱力するうまく行って良かった……うまくいったんだよね……?

 

「……抵抗しないでください、筋一つ動かせば首を刎ねます」沖田さんはシュラな首下に刀を突き付ける

 

「やってみろ女…!」

 

「……他のワイルドハントはどこ…!?」

 

「知らないなぁ?」

 

 

「……さっさと吐いた方が身のためじゃぞ」

 

蜂の巣になったエンシンとチャンプを投げ捨てる信長

 

「ちぃ……役立たず共め……」

舌打ちをし顔を歪めて吐き捨てるシュラ

 

 

 

 

「なっさけないな~、チャンスあげたのにそのざまかぁ…」

突然の少女の声にまわりの視線が集中する

 

「けど、面白いものが釣れたようだねぇ……カルデアのマスター」

 

 

「……てめぇ…ライダー何しに来やがった…!まだ俺は…!」

 

「……黙ってろよゴミ、組み伏せられしかもサーヴァントじゃなくてマスターの魔術行使如きにやれてちゃざまぁないわ……しかしカルデアのマスター?転生者のサーヴァント連れず私を倒しに来たのかな?…あぁ自己紹介がまだだったね……このアカメが斬る!の特異点の『禍神転生者』の屍竜のライダーだよ、よろしくねぇ」

 

金髪碧眼の青と緑を基調にしたゴシックロリータと呼ばれる服装をした少女は馬鹿にしたような笑みを浮かべ私の前に現れた、私と同じくらいの年代であろうが小柄で華奢である体躯をしているため幼くは見えるがおぞましく見えた

 

「憑依…転生じゃない……?」

 

「あぁ、前回の特異点のやつは憑依転生だったんだね、…私は私自身であの方に仕えたいからねぇ…まぁ元々容姿には困ってないからね…特典だけ貰って…転生したんだよ」ニヤニヤ笑う

 

「さて、せっかくカルデアのマスターだし……以蔵君もそこのサーヴァントらに用あるようだしぃ?」

 

ライダーの、後ろから和装の男が現れる

 

 

「久しぶりじゃのぅ、沖田ぁ、織田ぁ…セイバーとアーチャーが組んどるちゃぁ…世も末じゃのぅ……」

 

 

「岡田以蔵……!?」

 

「アサシン!?…」

 

驚愕する2人……知り合い?

 

 

「……岡田以蔵じゃぁ、そっちの2人には聖杯戦争で世話になってのぅ……なぁ?…色々な世界まわってのぅ……試させてくれやぁ……?」

剣を抜く岡田以蔵

 

「……顔見知りらしくてねぇ……まぁ以蔵くんには色々頑張って貰ったしぃ?……話しよっかカルデアのマスター?」

 

「話……?」

 

やばい、二人は……岡田以蔵というサーヴァントを相手にしている

 

「そ、話」

不気味に笑うそれ、ただの少女の風体だが

悪寒が走る、警戒心がフル稼働していた

 

「……この特異点諦めてくれない?カルデアのマスター?私はただ、エスデス様に戦いを献上したいだけだから」恍惚の表情を浮かべながら言ってくる

 

「……戦いを献上?」

 

何を言っている、理解が出来なかった

 

「エスデス様はさぁ、戦いが好きなの……腹心としては手を患わせず準備したい訳よ、分かる?」

 

「わからない…」

 

「そ、残念……私の恋心は私だけのもの……わかってもらおうだなんて思ってないし邪魔者は殺すだけ」

 

 

「そんなことの為にこの世界の本来死ぬべきじゃない人も巻き込むの……?」

 

私は吐き気を飲み込みながら此奴の自分勝手な言い分に苛立ちを覚える

 

ああ、『禍神転生者』はこんなんばかりなのだろう

 

「そんなこと……?そんなこととか言った?ねぇ言った?」

がっと私の首を絞めるライダー

 

 

「立火!?」沖田さんがこっちの異変に気付く

 

「にがすがよ!」

以蔵が沖田さんを蹴り飛ばす

 

 

 

 

「ぐっ……」

苦しい、くそ……

 

「私の崇高な恋心がそんなこと!?そんなことって言った!?ああ、言ったね!?つまりなんだ自殺志願者か!?ああ、殺してあげるよ!?」

 

首を掴む力が強くなる……ぐ、ぁ…

 

 

「屍竜の、ライダーぁぁぉぁぁぁぁ!!!!!!」

 

突然の咆哮、一閃

 

 

ライダーは私を離し後退、その間に人影が舞い降りた

 

 

「大声なんて、らしくないねアカメちゃん」

 

「……葬る」

 

「げほ……げほ…!」

 

アカメちゃん…?

 

ライダーとの間に割って入ってきたのはアカメちゃんだった

 

物静かな雰囲気を持つ彼女にしては殺意と激情を纏っていた

 

「……」

ただただ睨みつけるアカメちゃん

 

「……熱烈な殺意だねぇ……まぁ、……仕方ないかねぇ…ふふふ……」

さっきまでの、豹変は影を潜めいやらしい笑みを浮かべるライダー

 

「………」

 

 

「キミの相手は私じゃない彼女だよー?」

 

「………!!?………クロメ…?」

 

 

「死者行軍『八房』……まさか使い手自身が死体を操られるなんて意趣返しみたいでしょ!?」

腹を抱え笑い転げるライダー

 

彼女の前に現れたのはアカメちゃんの最愛の妹

 

 

クロメだった、瞳に覇気は無く屍臭を纏い青白い肌をしゆらりと現れる

それでも剣を握り死者にないはずの敵意を向けている

 

「……クロメ………ライダー、貴様本当に性格が悪いようだな」

 

「……人の嫌がることは積極的にやるって育てられたんでぇ」

 

 

「…………葬る、せめて安らかに眠らせてやるぞクロメ」

村雨を下段に構える、握る手に力が入る

 

 

死体のクロメも剣を構える

 

 

「アカメちゃん!?」

姉妹で殺し合うなんてと呟く

 

 

「元々、妹とは最悪殺し合うことになると帝国を抜けた時点で覚悟してた………が、操り人形になっているならば……休ませてやるのが姉の勤めだ」彼女の独白には覚悟が聞いて取れた、長年培った覚悟だろう

 

「ライダーぁぁぁ!!」

私は咆哮する

ぎりぃっと奥歯を噛み締める

 

「姉妹同士が殺し合うなんて劇的じゃない?アカメちゃんも私のコレクションにくわえてあげるよ」

 

ニタァァァアと嫌らしい笑みを浮かべ侮蔑する

 

 

「…何でこんな事を……!?」

 

「楽しいからに決まってんじゃん、『禍神転生者』に君たちみたいな正義感や倫理観が在るとでも?だからこそ『禍神』に選ばれるのさ!!」

 

この禍神転生者は愉悦に、狂っていた

 

「止めたきゃ止めてみな、カルデアのマスター?私は止まらないから」

腕を広げ宣言するように言い放つ

 

 

 

 



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第8話「外道を名乗る」

アカメちゃんとクロメは打ち合う

 

クロメは生前のパフォーマンスのままアカメちゃんと戦っている

 

むしろ死体であるからこそ無理な駆動を可能としていた

 

クロメは、対アカメちゃんに使い捨てるように

 

「…………」

 

持たされた刀は八房ではないがそれなりの刀であるようだ

 

帝具や臣具ではないが最新鋭の技術を持たされた武具

 

それに薬によるブーストは死体でありながら作用していた

 

それはライダーの性格の、わるさゆえにだろう

 

一閃、一閃打ち合い互角に戦っていた

 

 

「クロメちゃんはアカメちゃんに戦えるよう改造しているのさ、八房をちょい改造してね」

 

 

 

「ま、村雨対策はやっぱり死体だねぇ……命なんて在るから一斬必殺されるんだよ」

 

傷口から呪毒を送り呪殺する村雨には既に死んでいる死者は有効であった

 

既に死んでいれば『呪殺』出来ない

 

ならば生ける屍となっているならば動けぬよう壊さなければならない

 

 

クロメは猛攻を加える、無機質な殺意が一閃を繰り返し与える

 

アカメちゃんは、その猛攻をいなしかわし続け機を狙う

 

「冷静、冷静だねぇ!アカメちゃん!それじゃつまらないよ!!劇的に!!ドラマチックに殺してあって頂戴!!」

 

 

 

「アカメ!!」

空より鎧の男が降ってくる

 

「タツミくん!!?」

インクルシオを纏ったタツミくんがピリピリした殺意を放つ。

 

「ナイトレイド・タツミかぁ……ふふふ、悪鬼纏身インクルシオかぁ……いいよほしいなぁ……タツミくんはエスデス様の思い人……死体には出来ないけどその帝具は貰うよ」

ニタァァァアとまた笑う、インクルシオを新しい玩具に狙いを定める

 

「『八房』は使い手自身を倒せばいいんだろ!!!」

 

タツミくんは構える、迷い無く大地を蹴り跳躍

 

鎧の力が膂力を上げる

 

怒りが力をブーストする

 

「…相応しい相手をあげよう、私よりね……泣いて嬉しくなるんじゃなぁい?帝具『八房』死者行軍展開」

大仰に八房を抜いて言い放つ

 

「ナイトレイド・ブラート」

 

 

え?

 

 

ライダーの前に阻むようにあり巨体

 

 

インクルシオの先代装着者

 

 

そしてタツミくんにとって師匠みたいな人

 

特徴的なリーゼントに筋肉が鎧のようにまとった肉体

それは生前と代わらず隆起していた

 

「あ、兄貴……!!?」

 

「ブラート……?」

二人は驚愕する…クロメは可能性はあったけど彼は

 

 

「……」

 

ライダーを護るかのようにアカメちゃんとタツミくんを阻むように立っているブラート

 

 

「……あ、兄貴の死体は……俺が……埋葬したはずだ……俺が……この手で!!」タツミは否定しようと叫ぶ

 

「……それ本物かなぁ……?……ふふふ入れ替わるタイミングなんていくらでもあるし……ねぇ」

 

煽るように馬鹿にするように

 

「知らない誰かを泣きながら埋葬してたとしたらウケるねタツミくん?」

ニヤニヤクスクス嘲笑うかのようにまだ笑う

 

 

「貴様ぁぁぁぁぁ!!」

インクルシオは怒りに呼応し爆発的な推進力をえて突進する

 

タツミくん……ライダーしか見えてない!!?

 

 

「………………バーカ」

 

死体のブラートがインクルシオを纏ったタツミくんを殴り飛ばす

 

「視野が狭いよ、タツミくん……今の相手は私じゃなくてキミの兄貴でしょう?熱烈なラブコールは結構だけどほらほら師弟対決ぅ…越えたところ見せなきゃ」

 

小柄の悪魔はねちねちと煽ってくる

 

こ、こいつ……く、くそ…アカメちゃんはクロメと

 

沖田さんと信長は岡田以蔵と名乗るサーヴァントに二人とも

 

対峙している

 

 

 

「姫さんはほん、性格の悪い人がか……まぁ面白い人ではあるがのぅ」

 

「…その下についている貴方も大概ですが」

沖田さんは吐き捨てる

 

「……儂は彼女に召喚されたサーヴァントじゃ、逆らえんわ…きさんらに復讐できるだきゃ感謝しとるがのセイバー、アーチャー……儂は人斬りよきさんらを斬り捨てる為なら誰にでもつこうが知ったこったではない」

 

「『隷属転生者』か」

 

「あほか、織田ぁ……儂は儂じゃ!!『転生者』ですらないわ!!チェストォオ!!」

 

上段から振りかぶる岡田以蔵

 

信長は咄嗟に火縄銃で受け止めるが火縄銃はすっぱり斬り捨てられる

 

「……『禍神転生者』に魂売ったかアサシン!」

 

 

「魔王が何をなまっちょろいこといっとるんじゃぁ…………そんなことどうでもよかわ……とりあえず死ねや」

 

信長は『圧切長谷部』を召喚、抜き構える

 

 

「アーチャーが接近戦とは笑わせる!」

 

 

「抜かせ!あの聖杯戦争の負け犬が!……沖田ぁ、立火のところへゆけぃ!!こいつは儂が引き受ける!!」

 

「はい!!」すぐに沖田さんは私の方へ走り始める

 

 

「行かせるがよ!!」

 

超上段に構える岡田以蔵

 

 

 

「わが宝具『始末剣』を喰らえぃ!!」

 

岡田以蔵の姿が消える

 

 

 

「雲耀【瞬光】!!」

 

岡田以蔵は一瞬で信長の前まで間合いをつめ斬り捨てる

 

「がっ!!?貴様ぁ……」

 

「ノブ!!?」

 

「儂は剣の天才じゃぁぁぁ!!いろんな世界にはこんな剣もあったのよぉ!!」

狂ったように高笑いをする岡田以蔵

 

信長の返り血を浴びながら笑う

 

人斬りは笑っていた

 

 

 

 




以蔵さん実装とかムネアツ


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第9話「悪魔が嗤う①」

沖田さんの縮地とは違う光速の上段から居合

 

蜻蛉の構えから放たれる剣は消えたように見えた

 

実際、信長は反応出来ず斬り捨てられる

 

 

雲耀【瞬光】

 

とある漫画の少女が、放つ示現流の秘奥の剣

 

それを再現した彼の宝具『始末剣』

 

人斬りの彼はあらゆる流派の剣を真似出来た剣の天才

 

それが宝具となっている

 

『禍神転生者』をマスターしていることで質が上がっている

 

騎士王のエクスカリバーのような剣の力に依存するような剣や沖田さんの対人魔剣は再現できないとされているはず…本来の彼であれば

 

 

「……地を這う気分はどうじゃ……魔人よぉ!!」

 

嘲笑うかのように地に伏せる信長を見下す

 

 

「立火、すいませんしばしお待ちを……ノブ!」

 

縮地を使用して駆ける

 

「……来るな!!沖田ぁ!!……儂はまだいきとる!!……」

 

 

「は、しぶといのぅ……史実通りに燃やし殺したろうかぁ!!」

 

「貴様じゃ儂を燃やし殺そうなど役不足じゃぼけ!!」

 

ふらふら血を流しながら立ち上がる信長

 

 

「信長、無茶は……」

 

 

「は、死ぬわけなかろう。儂の力まだ十二分にみせとらんわ……全く近代の英霊は波旬がきかんくて困るわ」

苦笑しながら岡田以蔵を睨みつける

 

 

「じゃがな、…魔王が魔王所以の力を見せつけてやろう立火!!宝具を開帳する!!よいな!!?」

 

「う、うん思いっきりお願い!!……無理はしないで」

 

「保障はできんの………沖田後は頼んだ」

 

小声でぼそっと呟く

 

 

「見せて貰おうかのぅ!!織田信長ぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

「沈め、岡田以蔵」

 

 

 

「わが『三千世界(さんだんうち)』になぁ!!!!」

先程と比べ物にならない火縄銃の数へ増える

 

信長を中心にそれは展開、三段撃ち

 

かの長篠の戦いで使用した戦術が宝具化したもの

 

大量の火縄銃を展開し火縄=カタばりなアクションが可能となる

 

 

「相変わらずおぞましい数じゃのぅボケ!手負いでどこまで持つか楽しみじゃぁ!」

 

「すぐに蜂の巣にして、そこのライダーへの手土産にしたるわ!アサシン!」

 

狙いを定め展開した火縄銃は岡田以蔵を囲む

 

岡田以蔵は疾走し加速する

 

歩法を完璧にものにし駆ける

 

サーヴァント戦に限らず足に特化した戦い方は極端に極めれば厄介に尽きる

 

対し信長は物量にものを言わせるタイプ

元々軍を率いて戦う一騎当千の戦士ではなく軍略を敷く将タイプなんだよね

 

疾走、加速

 

岡田以蔵は止まらない…止まったら恰好の的ゆえに

 

 

 

 

アカメ対クロメ

 

タツミ対ブラート

 

 

 

「アカメの妹に飽き足らず兄貴まで、くさってんなライダー!」

 

 

「……死者使いだしねぇ誰うま」ケタケタ嗤うライダー

 

 

「そのニヤケ面黙らせてやる……!」

 

 

「落ち着けタツミ……相手の思う壺だ」

アカメちゃんは冷静に窘める

 

「けど!」

 

「私達の手でブラート、クロメを解放してやろう……死者への冒涜だ……クロメもあの帝具の使い手だったが……あんな奴に操られる道理はない」

 

「それと、そんなタツミはブラートは望んでない。奴の言うことは癪だが……ブラートにお前の成長したところ見せてやれ」

 

「……ああ、すまねぇアカメ……行くぜ兄貴…!今度こそゆっくり休んでくれ!」

 

タツミくんは、落ち着きを取り戻し駆ける

 

「……クロメ、こちらもいく……葬る!」

アカメちゃんも同時に駆け出しクロメに対して攻めに出る

 

「ふーん、絆だねぇ…………理解出来ないやねぇシュラくん」

 

倒れ込むシュラに対して椅子代わりにしているライダー

 

「…だろうよ……どけや!」

 

「む、反抗的……そだ、これシュラくんにあげよう」

 

禍禍しい欠片を取り出す

 

「試作品の一つさ、試させて貰っていいよね…?最後のチャンスさ……私を殺せるかもよ?」

クスクス嗤いながら差し出す

 

「……なんだそりゃ…………悪魔かよてめぇ…」

 

 

「屍の竜の騎兵だよ私は」

シュラの口の中に突っ込む

 

 

「屍竜のライダー……!」

 

沖田さんは前に出てライダーの近くへ来る

 

 

「沖田総司、ありゃ以蔵くんはアーチャーとか……ふふふコレクションをサーヴァント相手に使うのはドラマチックじゃないしねぇ……私が相手にしてあげよう」

 

『八房』を構える

 

「『八房』発動中は出力は何割か落ちるけどいいハンデかな……私の『帝具』は使わないであげる」

 

「…死ぬ言い訳に持って行きなさい……ライダー!」

 

誓いの羽織を纏う、『新選組』を象徴する浅葱色の羽織

 

ステータスを上昇させ『乞食清光』を彼女の愛刀である

『菊一文字則宗』へ位階をあげる

 

「へぇ、沖田総司……可愛いわコレクションに入れたいけどサーヴァントを八房に捉えるか出来るかわからないしいいか」まじまじと沖田さんをねめ回しながら呟く

 

 

「ただひたすらに斬るのみ……覚悟を」

 

彼女独特の構えをしライダーと対峙する

 

 

 



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第10話「悪魔が嗤う②」

(やっぱり兄貴は強い…)

 

死体のブラートと対峙するタツミくんは攻めあぐねていた

 

死体とはいえ自身の理想形の完成された強さ、同じ帝具持ちとしての到達点と対峙するのは難易度は高い

 

インクルシオを装着していたならば闘いになってたかどうか

 

(弱気になってるんじゃねぇ…!)

 

私の視点からも同じ考えに至ったであろうタツミくんは頭を振る

 

「勝つんだよ…兄貴に……力を貸せインクルシオ!!」

 

呼応するかのように十字の瞳は爛々と輝く

 

インクルシオの副武装の槍ノインテーターを構える

 

勝つ可能性が在るとすればインクルシオの強制覚醒

 

「らぁぁぁぁあ!!」

 

猛然と膂力に任せ突進する、それに反応するようブラートは迎撃する

 

「ぐっ…」

技術以前に膂力自体がブラートの方が上、死体故にリミッターなどない

 

吹き飛ばされはしなかったが拮抗は出来ず踏みとどまる

 

 

「……兄貴…!」

 

だがインクルシオの鎧の筋肉は呼応し拮抗に至る

 

(叫べ、熱い魂で!!)

 

 

「でぁぁぁぁあ!!」

 

インクルシオの力より膂力が増す、拮抗する力はせめぎあい遂には押し返す

 

 

「どうだ、兄貴!!…いつまでもあの頃の俺じゃねぇ!!」

 

タツミくんは咆哮、ブラートを解放すべく攻める

 

ノインテーターを振りかぶる、ブラートも剣を使い打ち合う

 

剣閃は繰り返し金属音が響く

 

進化する竜、停滞する死体…タツミくんの魂がその差を埋める……これなら……!

 

 

笑い声が聞こえた気がした

 

視界外からタツミくんに対し衝撃波が放たれタツミくんは吹き飛ばされる

 

え?

 

「誰……!!」

 

「ぐっ………誰だよ……邪魔をして……!!?」

 

タツミくんはすぐに立ち上がりその方を向き驚愕する

 

「マイン……!!?」

 

ピンク髪を二つくくりにしピンクのワンピースを着た少女がいた

ライフル銃のような帝具を構える

 

 

 

「お前まで……なんで……」

 

さっきまでの勢いは無くなり呟く

 

 

 

アカメ対クロメも戦況はアカメちゃんに傾いていた

 

覚悟を決めクロメの動きを見切ったアカメちゃんがいざ決定打を下そうとした瞬間二つの人影が降りてくる

 

見知った姿はアカメちゃんを殴り飛ばす

 

 

獣の如き力にアカメちゃんはガードはするが吹き飛ばされる

 

「この動きは………」

 

見知った動きに、嫌な予感は的中する

 

視線の先には親友の姿がある。

 

金髪の野性味のある妖艶な女

 

「お前もかレオーネ…ラバックまで……」

 

糸を扱う緑髪の少年もレオーネの隣にいた

 

いずれもナイトレイドのメンバー

 

さっき奴が言ってたコレクションとはそういう意味か……

 

「どこまでも……私達を愚弄したら気が済むのだライダー……」

 

至上の仲間達を悉く死者行軍に加えられる絶望感、苦痛は計り知れない

二度失う喪失感を味わう事になるとはだれが思えようか

 

「葬る……必ず葬るぞライダー…!」

 

アカメちゃんの憤怒はこちらから見ても感じて取れた

 

あまりにも悪趣味だライダー…!

 

 

「レオーネ…ラバック…お前らも解放してやるからな」

 

アカメちゃんは構える

 

 

 

 

 

織田信長対岡田以蔵も佳境に入る

 

元々信長は手負い、……無数の火縄銃群は常に移動し続ける岡田以蔵を捉えられてはいなかった

 

短期決戦を強いられている信長に対し岡田以蔵は信長の消耗を狙いながら機を狙う

 

始末剣、……無数の剣理は何をしてくるか分からない不確定要素が警戒を常に強いてくる

 

セイバー色がつよく擬似的なダブルクラスの岡田以蔵でも本来はアサシン

 

暗殺者程の気配遮断スキルは無くとも撹乱するには信長に対し有効であったようだ

 

「……逃げの一手か、つまらぬなアサシン」

 

「きさんは手負いの獣よ、魔人よぉ?その三千世界が消えた瞬間がきさんの死に際よ」

 

「………人斬りがつまらぬ戦いをする臆病者め……儂と対峙するのが怖いかぁ……く、所詮はアサシンクラスの暗殺者程度に収まるただの剣狂いじゃな岡田以蔵」

 

 

「もう一度いうてみぃ…織田信長……」

 

 

「安い挑発に乗るとは小さい男じゃのぅ…人斬りとして沖田に負けるじゃのて」

 

 

「弁舌が前程ないぞ、織田信長…挑発にのってやるがか……斬り捨てたらぁ魔王……あぁ、傷が滲んで可哀相にのぅ……死ねや! 始末剣」

 

 

停滞し動きを構える

 

 

あの、閃光の居合が来る……!?

 

「………逃がすか!!三千世界に屍をさらすがいい!!天魔轟臨!!これが魔王の三段撃ちじゃぁ!!」

 

信長は好機とみ、全弾火縄銃群より岡田以蔵に向け発砲する

 

弾幕となって放たれたそれらは岡田以蔵を逃がさないと面となって攻撃する

 

「相変わらず怖い宝具じゃぉ…じゃが手負いのきさんじゃ本気は出せまい」

 

 

雲耀【瞬光】

 

閃光の如き居合は弾幕の隙間を縫い進む

多少の被弾は省みず一閃

 

 

ガン!!

 

「手応えがなかぁ……やるなぁ……魔王」

 

『圧切長谷部』と火縄銃で何とか防ぐ

火縄銃は衝撃で破砕する

 

「儂を誰だと思っている第六天大魔王・織田信長じゃぞ…!立火を守り貴様らを排除せねば儂の名が廃るわ!!」

 

周囲を浮遊する火縄銃は発砲する

 

岡田以蔵は、後ろへ飛び後退

 

「おーおー、大した名乗り上げじゃ……すぐに死んじゃ面白くなか……せいぜいたのしませろや織田信長ぁ!」

 

 

 

 

 

 

沖田さん対屍竜のライダー

 

帝都入り口近くの広場にて3組の戦いを繰り広げている中。門近くに屍竜のライダーは不敵に笑っていた

 

 

「善悪関係なく、ひたすらに斬るのみ?君らからしたら私達は、邪悪かね」

 

「……ただの戦場ならば善悪はありません、けど貴方達を謀り欺き惑わし壊し殺す人理悪です、……私とてただの人斬り……しかし貴方のような人理悪見過ごせる訳には行きません」

 

 

「正義の味方ごっこなら……よそでやりな!!正義狂いども」

 

ライダーはゴシックロリータの衣装をたなびかせ戦場に相応しくないような恰好で跳躍

 

ライダー……騎兵のサーヴァント。機動力に特化したクラス、しかしそれは騎乗スキルによって発揮されるはず

 

『禍神転生者』に、常識は通じない

通常の、サーヴァント戦の常識は捨てないと行けないだろう

 

沖田さんも疾走加速する

間合いを計るように疾走

 

 

「最速のセイバー……ふふふ………足でライダークラスに勝てるかなぁ!!?」

 

ライダーは加速

さらに空間を蹴り跳躍を繰り返す

 

沖田さんの真上からさらに空気を蹴り『八房』で斬り付ける

 

『菊一文字則宗』で防ぐが加速し少女ながら重い一撃に眉をひそめる

 

「……すきありぃ!!」

 

沖田さんの脇腹を蹴りつける

 

「がっ……!?」

 

「私は剣士じゃないし、性格悪いからねぇ……隙見せた君が悪いからねぇ?」

ケラケラ嗤いながらまた上空に空間を蹴りながら上がっていく

 

「……あなたに正道の戦い方は期待してませんよ……死体を操り、私達に恨みを持つ英霊を当てる……あなたには」

 

「以蔵くんに関してはたまたまさ……いや運命がそうさせたんじゃなぁい?因縁ってやつだよ」

上空に留まるライダーは薄く嗤う

 

常に笑顔が張り付き気持ち悪い

 

 

「死体に関しては察しの通りナイトレイドを集めてる……ふふふ…完成すればエスデス様の勝ちさぁ……!アカメちゃんを手に入れたら完成さ…!!タツミくんは献上しなきゃならないから死者行軍に入れられないのは残念だけどね………死者行軍『夜烏』が完成すれば面白いだよ……『死烏』デスレイドとか名付けて使ってあげるよ……!」

 

主要メンバー全員が奴の軍門に下ればこの特異点は終わる…………

 

エスデス、ブドー……あの至高の帝具を倒せる筋書きは完全に破綻してしまう

 

「…ライダーを排除してこの特異点を無くさないと……」

私は焦燥に駆られる

 

沖田さん……!

 

対峙出来ている今、『八房』で出力がおちている今

 

エスデスもブドーもいない今がチャンスなんだ…

 

 

「沖田さん……たのむよ……」



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第11話「悪魔が嗤う③」

沖田さんオルタほしい……


4者4様の戦いは続く

 

アカメちゃん、タツミくん、沖田さん、信長に共通するのは劣勢にあることだった

 

アカメちゃんはクロメ、レオーネ、ラバック

 

タツミくんはブラート、マイン

 

信長は岡田以蔵

 

そして……沖田さんは屍竜のライダー

 

それぞれ相手にしていた

 

アカメちゃんは3人相手にしながら持ち前の俊敏さを武器にいなしているがレオーネ、ラバックが加わった事に形勢は元に戻っていた

 

タツミくんはブラートに対しインクルシオの強制覚醒により何とか相手にしていたがマインの登場に勢いが減退していた

 

……明らかにマインに対し二の足を踏んでいるが元々彼女は後衛、前衛のブラートを突破しなければ彼女に攻撃出来ない

 

信長は………失血により顔色が良くない

 

三千世界の勢いは変わらないけど明らかに無理している

 

岡田以蔵嗤いながら煽っている

 

彼の剣は……多種多様の技の運びがみえる

 

示現流、北辰一刀流などの現存する剣術から架空の剣術まで操っていた

 

信長の三段撃ちをかわし被弾しても意に介していなかった

 

 

そして沖田さん

 

屍竜のライダーは空間を蹴りながら多角的に沖田さんを攻撃していた

 

彼女の攻撃範囲は対象を囲むように円を描く

 

死角をつくいやらしい攻撃を繰り返していた

 

明らかに遊んでいた

 

……ライダーを倒せば形勢は変わる

 

しかし要は強いのは常だ……多分

 

 

(沖田さん!沖田さんのタイミングで宝具を使用して!!遊んでいる今がチャンス……宝具の使用を許可します!!令呪で補佐する!)

 

念話で沖田さんに連絡する

 

油断して、慢心し遊んでいる今が好機と

 

(了解しました……!立火……!)

 

 

「…ライダー…!」

 

沖田さんは、一度後退しライダーの攻撃範囲を離脱する

 

 

「ありゃ逃げるの?…それとも使う?いいよ?」

ニタァァと構えを解き無防備になる

 

(誘ってる…!?)

 

「……いいでしょう、どうせジリ貧です…」

 

 

使うしか…

 

「令呪を持って命ずる沖田さん!」

 

令呪で宝具威力をブーストさせる

 

 

「我が剣受けてみなさいライダー…!」

 

構え、令呪の魔力が沖田さんの魔力を高める

 

『一歩音越え』

 

沖田さんの姿は消える

 

 

それでもライダーは嗤う

 

 

『二歩無間』

 

 

二歩目を踏みライダーとの間合いを詰める

 

 

『三歩絶刀』

 

ライダーの目の前に現れても奴はまだ無防備、嗤う嗤う嗤う嗤う嗤う

 

 

『無明三段突き…!』ライダーを同時に三回突く

 

 

『平晴眼』の構えから踏み込みの足音が一度しか鳴らないのにその間に3発の突きを繰り出す、秘剣『三段突き』。超絶的な技巧と速さが生み出した、必殺の『魔剣』。

平晴眼の構えから“ほぼ同時”ではなく、“全く同時”に放たれる平突きで、放たれた『壱の突き』に『弐の突き』『参の突き』を内包する。放たれた三つの突きが“同じ位置”に“同時に存在”しており、この『壱の突きを防いでも同じ位置を弐の突き、参の突きが貫いている』という矛盾によって、剣先は局所的に事象崩壊現象を引き起こす。事実上防御不能の剣戟であり、また結果から来る事象崩壊を利用しての対物破壊にも優れる

 

 

それが彼女の宝具、『無明三段突き』

 

 

それを無防備に喰らったライダーは明らかにダメージは深かった

 

腹部は三度の突きを喰らい穴が空いていた

 

 

「やった!!?」

 

明らかに致命傷の筈

 

 

けど沖田さんは構えを解かないでいた

 

「沖田さん…?」

 

 

「……来ないで下さい立火、……嫌な予感なします……この『禍神転生者』はこれで終わるとは思えません」

 

事実死体達はまだ稼働している

 

 

「…ぴんぽ~ん、うぅんやっぱり痛いなぁ破壊したという結果事象か……痛い痛い」

 

巻き戻ししたかのように立ちあがる

 

 

ぐにゅるぐにゅると、異音を立てながら傷口は再生し塞がっていく

 

「宝具で傷つけた傷が治った……?」

 

 

「『超再生』とでも……言おうか私の転生特典さ」

 

ニヤニヤ嗤う

 

「私を殺したきゃ……一撃で吹き飛ばすしかないよ?ビーム撃てないセイバーさん」

 

「……」

 

心臓を狙うべきだった……?いや心臓でも超再生するかもしれない

 

 

 

「いい加減飽きてきたし絶望して貰おうか残りの死体もだそう」

 

 

眼鏡の女性と飴を舐めている女性現れる

 

 

残りのナイトレイドのメンバー、シェーレとチェルシー

 

 

「スサノヲも用意したかったけどあれ生物帝具だし私と相性悪く拒否られたから使えなかったよ」

 

 

シェーレは彼女の帝具、巨大鋏の『万物両断エクスタス』を構えている

 

「チェルシーはだまし討ちだから今は必要ないけど彼女も居るってアピールしなきゃね」

 

「行って」

 

ふたりは跳躍

 

 

「行かせません!!」

 

 

「行かせるがよ……!」

 

岡田以蔵……!?

 

 

信長は……!!?

 

「す、すまぬ……まさかそいつ……も超再生持っているとは予想外じゃった……」

 

信長は倒れ伏せていた、血だらけ…!?

 

手当てしなきゃ…!

 

 

「アサシン…!?」

 

 

「魔王は儂の剣に負けたわ!!次はきさんの番じゃ…!!セイバー…!」

 

 

「任せたよ以蔵くん、さて私はアカメちゃん達をコレクションにくわえなきゃねぇ…!」

 

打ち合うふたりを横目に散歩でも行くかのような軽さでアカメちゃんとタツミくんのほうへ悠然と歩く

 

 

く……止めれない……

 

 

 

アカメちゃんとタツミくんは背中合わせにナイトレイドもといデスレイドのメンバーに囲まれていた

 

ブラートは剣を構えマインは『浪漫砲台パンプキン』を構え、レオーネは『百獣王化ライオネル』で獣の如き膂力を

ラバックは『千変万化クローステール』で逃がさないと糸の結界を

シェーレは『万物両断エクスタス』を両手に持ち突き出す

 

クロメと、チェルシーもさらに逃がさないとまわりを囲む

 

 

七人の死体が二人を囲む

 

『八房』の骸人形は最大8体……あと1枠控えてるのかはわからないがナイトレイドメンバーは死亡者はこれで全員

 

アカメちゃんで残りの1枠を埋めたいのか

 

「…素晴らしい光景だと思わない?アカメちゃん、タツミくん」

 

八房の現在の骸人形達の主、屍竜のライダーは二人の前に現れる

 

「かつての死んだと思った仲間達と再会して殺し合うなんて冒涜的で屈辱的かな?あぁ、すぐにアカメちゃんはこの死者行軍に加えてあげるから安心して寂しくはないよ……タツミくんはエスデス様の寵愛を一身に受けられるなんて羨ましいなぁ」

 

「みんなを解放しろ!イカレ女……!」

 

 

「やーだね、ナイトレイドは今日で終わる……んー、革命軍の質下げちゃったなぁ……最終決戦の質も下がってエスデス様に怒られちゃうかな失敗失敗」

 

 

「……さて、死ぬ覚悟はあるかなぁ?アカメちゃん」

 

ニヤニヤ嗤いながら手を上げる

 

 

「やれ、デスレイド…死烏達」

 

手を振り下げるとともに骸人形達の一斉攻撃が始まる

 

 

「……させません!」

 

一歩音越え、二歩無間、三歩絶刀……!

 

 

「にがすがよ、きさんはここで指くわえて見とれ……!『始末剣』」

 

アカメちゃんのほうへ向かう沖田さんの背後から剣を構える

 

 

雲耀【迅雷】

 

雷が如き一撃が放たれた

 

音越えの、縮地に追いつき横に回り稲妻のような一撃を上段から放ち【菊一文字則宗】を地面に叩きつける

 

【菊一文字則宗】は真っ二つに折れた

 

沖田さんはその勢いで前のめりに倒れてしまう

 

「これでおわりじゃぁ……獲物のない人斬りは翼のない鷹よ……雲耀使いは二の太刀不要……まぁ真の使い手には、敵わんがの……きさんはここで見とれこの特異点の、終わる様をのぅ……シュラに使ったあれ使うまでなかったな」

 

岡田以蔵は剣を収め沖田さんを踏みつける

 

 

「ぐ、終わりにはさせません……立火!」

 

 

「………やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい

どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう」

私はパニックになっていた、焦燥が思考を掻き乱す

 

信長も、沖田さんも行動不能……!どうしよう!?

 

「立火!?」

 

「きさんの、主は自棄をおこしとるの……未熟なマスターよ……あぁ終わりだが」

岡田以蔵は嘆息する

 

 

 

 

沖田の番

 

立火はパニックを起こしていた

 

……く、刀が折れたからなんですか、信長が戦えない分私が動かないと……

 

ぐ、手が動かない……先ほどの雷が如き一撃を刀で受け痺れているようだ

 

だからなんですか……私は彼女のサーヴァントだ

 

……手はないか

 

アカメとタツミは七人の骸人形達の一斉攻撃をギリギリいなしている

 

 

……けどまわりは糸による結界張られ離脱は厳しいよう

 

あれは時間の、問題だ

 

仮に骸人形達を倒せたとしても……屍竜のライダーがいる……私が彼女を引き留めていれば……!

 

 

 

 

アカメ、タツミの番

 

 

「………タツミ」

 

 

「なんだ、アカメ」

 

背中合わせの二人は疲弊しきっていた

 

最愛の仲間と妹を敵になり憎悪、悲嘆様々な感情が去来する

 

屍竜のライダーは許さない

 

 

「私が骸人形になったら斬ってくれ……迷うな頼む」

 

「……そんな弱気にな!?」 

タツミは、叫ぶ

 

「……ナイトレイドを頼むタツミ……奥の手」

 

 

「ピンチ…ピンチ…」

ブツブツと、呟くマインの骸人形が大火力の射撃を放ってくる

 

奥の手の、発動を阻み…アカメの左腕は炭化する

 

「ぐ……」

 

「……アカメ!?」

 

 

「村雨の奥の手は、厄介だからねぇ使わせないよ……マインちゃんは、ちょっと改造しててね常にピンチと誤認させていつでもパンプキンは最大火力級の威力」

ね?厄介でしょう?と玩具を自慢するかのように嗤う

 

「てめぇ……!」

 

 

「インクルシオは厄介だからねぇ……ブラート拘束」

タツミを拘束するブラート

 

「炭化した左腕でどこまでやれるか」

 

3人はアカメに襲いかかる

左腕をつかえないアカメは対処しきれないがなんとかかわしつづける

 

「アカメ……インクルシオ……理不尽に打ち克つ力を俺に…!」

 

「駄目だよ」ライダーがタツミの腹部を貫きインクルシオが強制的に解除される

 

「な…!?…」

 

 

「…ふふふ…アカメちゃんの死に様眺めてよ?」

 

 

「レオーネ…クロメ………」

 

村雨を握る力は弱まる…満身創痍とはこれだろう

 

左腕は使い物にならない、片手で村雨を握るも視界が霞む

 

 

「ラバック、拘束」

 

クローステールの糸で拘束される、く……気がつかなかった……

 

 

「ここまでだねぇ……アカメちゃん……」

八房に握り近づいてくるライダー

拘束されて、抵抗出来ないアカメの頬を撫でる

 

 

「これで8体目……ナイトレイドは終わりだね」

 

 

「私はお前に、屈しない」

 

満身創痍でも眼は死んでいない

「骸人形になっても貫き通してみな」

 

ニタァァと嗤うライダーはアカメの心の臓を八房で貫く

 

「アカメ…!」

 

 

「アカメさん…!」

 

 

即死と共に『八房』の呪いが発動する

 

アカメは糸が切れたように倒れ込む

 

 

「アカメぇぇえぇえ!!!!!!!!!!!!!!

タツミの慟哭の咆哮が、響き渡る

 

 

 

「あっははははははははははは!!!!!!!!!!」

 

ライダーの笑い声も響き渡る

 

 

 

 

私の番

 

 

終わった…アカメちゃんが死んでしまった

 

破綻する、破綻してしまった

 

 

私じゃ……何も救えない……

 

助けて……セイバーくん……

 

 

 

「……まだ終わってないぞリツカ」

 

 

………遅いよ、セイバーくん……いや、先に来てた私がバカだった

 

 

「無駄ではないよリツカ…遅くなってすまない」

 

剣環展開・連続層射

投影した剣群で屍竜のライダーを貫く

 

 

「がふ、…」

 

「貴様が『屍竜のライダー』か……貴様を殺し尽くしてやる」

 

 

「……君が『赫月のセイバー』かぁ……んふふ……」

 

ゆらりと剣を引き抜き再生する

 

 

「全てが遅すぎるね、『赫月の』」

 

 



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第12話「悪魔が嗤う④」

『赫月のセイバー』

 

黒い外套を纏う青年くらいのサーヴァント

 

立火のメインサーヴァント

 

彼の背中には力強さを感じる

 

 

「……沖田総司だったか」

 

「え?あ、はい……召喚してすぐのレイシフトでしたので…」 

 

「……挨拶はいい、まだ動けるなこれを使え」

 

 

私の前に刀が刺さる

 

 

『菊一文字則宗』……!!?

 

 

「投影した紛い物だがな、この戦闘中くらいは持つ……いけるな」

 

 

「はい、ありがとうございます赫月さん!」

 

私は剣を抜き立ちあがる

 

……私はまだ戦える!!

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい、セイバーくん……先走って……結局何も救えなくて……君を待ってれば……」

俯き彼を見れなかった

 

 

「違うぞリツカ…それに沖田と織田彼女らの気持ちもないがしろにして居るぞそれは…彼女らも君のサーヴァントだ」

 

「……うん」

 

「……何も救えなくてなんてない、奴を排除すれば解決する……迷うな君は。我らは君の剣にして刃……」

 

 

「そうです、私は貴方のサーヴァント……ノブも同じ気持ちのはずです」

私の膝で眠る信長を見る…うん

 

 

 

「信頼……友情。絆……気持ち悪いなぁ……!そんなもの死の前には無力なんだよ偽善者ども」

 

初めてライダーの笑顔が剥がれ気持ち悪いと吐き捨てる

 

 

「……とりあえず赫月さん、……タツミくんを助けます……あと村雨を……あれを回収します」

 

 

「……隙を狙え沖田、己は『屍竜のライダー』の相手をする骸人形達もなんとかしよう」

 

ライダーに付き従う7体の骸人形

 

「……儂も忘れては困るがか沖田に赫月の」

 

岡田以蔵も剣をぬく 

 

「先程のような遅れは取りませんよアサシン…」

 

 

「なんどやっても同じや…!」

 

 

「私は虚影のアサシンみたいな雑魚とは違うよ、赫月のセイバー?まぁ私の骸人形に勝てたら相手にしてあげる」

薄っぺらい笑みを浮かべながら7体の死体、骸人形達をセイバーくんと対峙する

 

「…………投影、開始」

 

 

干将莫耶を、投影する

黒と白の中華双剣を構えるセイバーくん

剣群も、展開

 

「すぐに引き摺りだしてやろうライダー」

 

7体の骸人形は動き出す

セイバーくんも疾走

 

「『禍神殺し』の力見せて貰おうかぁ赫月ぃ…!」

 

 

 

7体の骸人形

ブラート、マイン、シェーレ、レオーネ、ラバック、チェルシー、クロメは一斉にセイバーくんを攻撃する

 

 

全投影連続層射(ソードバレットフルオープン)

 

剣環はセイバーくんのまわりに浮くように射出

 

マインのパンプキンを後方に弾き飛ばす

 

ラバックのクローステールの糸を干将莫耶で切り落とす

 

背後からのシェーレのエクスタスを剣環で地面に叩きつける

 

レオーネの獣の憤激をいなしクロメと、チェルシーを壁に剣で縫いつける

 

 

ブラートの一撃を干将莫耶で受ける

 

 

「……へえ、流石は『禍神転生者』に歯向かうだけはあるね…」

つまらなさそうに吐き捨てるライダー

 

 

「……新作お気に入りを見せてあげるよセイバー…!」

 

骸人形達を消す

 

「君に、ナイトレイド達見せても仕方ないからね」

 

「……アカメちゃん起きて」

 

ゆらりと倒れていたアカメちゃんがゆっくり起き上がる

 

傷だらけで痛々しい、左腕は炭化しているためだらりとしている

 

生気の無い、瞳がこちらにむける

 

骸人形アカメは右腕で村雨を構える

 

「……終わったら修復しなきゃねぇ」

 

 

「死者を冒涜するのが好きなようだな」

 

 

「私は屍を、貪る竜のライダーさ!」

笑いながらターンをする

 

 

「笑えねぇ、やはり『禍神転生者』は、殺し尽くしてやる」セイバーくんの言葉には嫌悪と侮蔑が混ざる

 

「君にできるかねぇ、私を倒せたとしても『血怪』も居るし…アーチャーもランサーも頭おかしいよ?」

 

くくっと嘲笑を乗せてセイバーくんへ視線を向けるライダー

 

「アカメ…奥の手!!」

 

アカメちゃんは、ライダーを突き刺す

 

「強制発動『役小角(えんのおづの)』」

 

アカメちゃんの体には呪詛による強化が刺青のように展開する

 

「村雨の、奥の手だよ『赫月のセイバー』?勝てるかな?」

 

…エスデスと、互角に戦える強化されたアカメちゃんが立ちはだかる

 

「つくづく腐ってる………貴様は」

 

 

 

 

「きさんは……儂には勝てんのじゃぁ沖田ぁ!!」

 

 

「……他人の剣に頼るあなたに人斬りを名乗る資格はありません」

 

 

「人斬りは人斬りじゃろうが!!?悪名に美徳も糞もあるわけ無かろうが!」

 

「『新選組』としての矜持はあります、人斬りは所詮は人斬りなのは認めましょう……業を背負うか否かです岡田以蔵」

 

「きさんとはあわんわ沖田総司……悉く儂の剣に散れ」

 

 

「『人斬り以蔵』、……いいでしょう。『禍神転生者』に与した時点で相反するのです」

 

沖田さんと岡田以蔵は打ちあう

剣戟につぐ剣戟

 

殺陣と呼ぶには高速の剣戟

 

英霊の剣士の戦闘だった

 

「わしぁ…前々からきさんが気に食わんかったわ!『新選組』で天才剣士とちやほやされたきさんがなぁ!!……しかも女の身と知った時は愕然としたが!!」 

 

 

「…男尊女卑が罷り通る世界ですから、腕一つで私は駆け抜けてきましたよあなたにとやかく言われる筋合いはない」

 

「じゃろうよ、強い女などいろんな世界におったわ…織田信長が女だと知った時は腰抜かしたわ」

 

上段に構える

逆蜻蛉の、構え

 

「………ですね」

沖田さんは警戒して『平晴眼』の構えを取る

 

 

「儂は前回の聖杯戦争に、きさんらに負け敗者となったのが気に食わん……儂の剣のが、最強なんじゃ!!外道と言われようがの!!」

 

 

くる………!!

 

 

 

「…………」

 

閃光の居合いかはたまた先程の雷のような一撃か

 

どっちでもない剣理か

 

どれが来ても言いように沖田さんの集中力はこちらに伝わるぐらい高まる

 

 

セイバーくんと奥の手を発動したアカメちゃん

 

機を狙い睨み合う沖田さんと岡田以蔵

 

対峙する2組の緊張感が高まる中、一つの暴風が立ち上がる

 

「………!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

俺は何をしている……兄貴を……マインを…皆を救えなくて何をしている…!

 

しまいにはアカメまで死なせてしまった

 

ナイトレイドはボスと、新人除けばもう俺1人だ

 

無力感が、俺を苛む

 

………最初にイエヤスとサヨを失った時に決めたじゃねぇか

 

シェーレを失った時にアカメと約束したじゃねぇか

 

兄貴を失った時には強くなると誓ったじゃねぇか

 

 

チェルシーを、ラバを、姐さんを、スーさんを

 

 

マインを失った時に俺は……最後までやりきるって決めたじゃねぇか……!

 

 

怒れ、怒れ、、怒れ……!!

 

 

『インクルシオ』!!お前の体はまだ生きてるんだろ?

 

どれだけ苦しくても痛くても構わない

 

限界まで力を引き上げてくれ

 

 

アカメを……アカメ達を俺は……救うんだ…!

 

だから

 

 

帝国に!不条理に打ち勝つ力を!!あの女のニヤケ面を黙らせる力を!!!

 

 

「俺に寄こせ!!!!インクルシオォォォオ!!!」

 

 

 

クローステールの拘束する糸を引き千切り俺は立ち上がる

 

 

「!!?……へぇ……タツミくん……進化したんだ」

 

 

「……あれは……進化したインクルシオ……?」

 

 

より竜の姿に近くなった人型の竜のような鎧を纏う

 

力が湧き出る

 

 

「『屍竜のライダー』ぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」

 

爆発的推進で、跳躍しライダーにノインテーターを打ちつける

 

ライダーは受け止めるが余波が地面を陥没させる

 

「殺してやる!!ライダー!!」

 

 

「…やってみ?最後の烏」

 

不敵に嗤うライダー、小柄な少女は鎧を纏う俺に余裕綽々と構え挑発してくる

 

 

 



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第13話「悪魔が嗤う⑤」

暴風と呼べる災害が如き猛攻

 

インクルシオの強制覚醒による膂力増大がライダーを襲う

 

激烈、苛烈な攻撃を繰り出すタツミくんは先程とは大分かけ離れていた

 

 

怒りに囚われている、復讐に憑かれていた

 

けど私には止められなかった

彼の心中は彼にしかわからない

けど……

 

 

「ライダーぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」

 

 

「熱烈なラブコールだね……!タツミくん…!」

 

猛攻を全て1ミリ以下でかわす

 

嵐のような攻撃を全てがライダーには届いていない

 

 

「足りない……まだ足りない……!」

 

タツミくんは止まらない……止まれない

 

暴走する感情はアクセルをベタ踏みで強制覚醒していく

 

 

「お」

 

「らぃいぃだぁぁぁぁ!!!!」

 

さらに進化したインクルシオはライダーの頭を掴み帝都を囲む外壁へ叩きつける

 

 

外壁は破壊、制御できない力はライダーを吹き飛ばす

 

 

「ぎゃひ……!!アカメちゃん…!」

 

民家の壁に埋もれたライダーはアカメちゃんを呼ぶ

 

 

セイバーくんの前にいたアカメちゃんは駆ける

 

「ち…!」

 

アカメちゃんの強化された瞬発力はセイバーくんを突き放す

 

放たれた剣環は洗練された動きで躱される

 

アカメちゃんはタツミくんに斬り掛かる

 

「……アカメ……!」

 

 

「………………」

無表情に斬り掛かるアカメちゃんにタツミくんは一瞬躊躇するがすぐに応戦する

 

 

「痛いなぁ、……インクルシオ怖いねぇ」

 

立ち上がりすぐに傷は再生していくライダー

 

 

「剣弾」

 

射出した剣環がライダーを貫く

 

「剣雨」

 

さらに豪雨のような剣環がさらにライダーに降り注ぐ

 

「ぎゃは……!」

 

 

「これでも死なねぇのか『禍神特典特性』はやっかいだ」

 

我が骨子は捩れ狂う

 

「偽・螺線剣!!」

 

セイバーくんはライダーを壁にガラドボルグと剣で縫いつける

 

「何もさせないぞライダー」

 

 

「こっちも何もさせないよ…セイバー?」

 

ライダーがなにかを呟くとセイバーくんの動きが止まる

 

 

「ふたりの殺し合い邪魔しないでよセイバー?」

剣群に、ガラドボルグに、つらぬかれたまま悪魔は嗤う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私が骸人形になったら殺してくれ』

 

アカメの生前の言葉を思い出し多少俺は冷静になった

 

けど嵐のような濁流のような終末のような感情は俺の中で暴れていた

 

「……救うんだ………」

 

死に、骸人形にされた仲間たちを解放するには再殺しなければならない

 

再び殺す

 

仲間を再び殺すという屈辱

 

だけどやらなきゃならない……1人生き残った俺の責務だから

 

「アカメ…すまねぇ……インクルシオォォォオ!」

 

進化!進化!進化!進化!進化!!

 

 

アカメとの差はまだまだある

アカメはこのナイトレイドの中で最強に近い兄貴とは別の強さを誇る

 

しかも今まで見せなかった村雨の、奥の手を使用していた

 

差を埋めるべく俺は進化を続ける

 

肩甲骨から翼が生える

 

筋肉は隆起して体全体が今までとくらべごつくなる

 

空中戦に対応出来るよう、進化をする

 

ぐ……体全体が、むしばまれるように痛い……あぁライダーを倒しエスデス……帝国に勝つまでおれは……

 

 

保たせるんだよ……!俺は……俺だ!

 

 

目の前に居る、アカメは無感情に構えている

 

 

死体になっても隙は無かった

死体になってそこで成長は止まってしまうがアカメはほぼ暗殺者として、完成した強さを持つ

 

ああ……対峙してわかる

アカメと今まで対峙してきた奴らの気持ちが

 

けど越える……超えなければ俺は……皆を救えずナイトレイドの悲願を成就できない

 

 

激流の、感情と悲嘆の感情とナイトレイドとしての責務が入り乱れる

 

 

「アカメぇえええ!!!!!」

決意と泣きたい気持ちの混ざった咆哮

 

ノインテーターは形状を変え穿つことに特化した形となる

 

突進、竜のそれを思わせる迫撃がアカメを襲う

 

 

アカメは消える

 

!!?

 

 

「……!!」

後方斜めからの、一撃を竜の本能で防ぐ

 

気配がねぇ…!

 

鎧で村雨を防ぐ

 

生身だったら即お陀仏だった……

インクルシオの鎧……それが対村雨の対抗策

 

アカメはすぐに、後退

次撃へと備える

 

…………神経を研ぎ澄ませる

インクルシオと同化している俺ならアカメの気配でも…

 

下!!右!!左!!斜め上!!

 

と放たれる一閃を竜の超反応で防いでいく

 

 

「………ふぅ」

俺も後退して、距離を取る

 

…………防いでいるだけではだめだ……!!

 

上へ翼を羽ばたかせ上昇

 

アカメがこれない攻撃圏外へと昇る

 

 

「……………ぐ…!」

竜からの侵食の痛みが疼く

 

「……保てよ俺……」

 

滞空し下を見る

 

アカメは此方を見上げ迎撃の構えをしている

 

 

「……」

 

アカメの表情を見える

 

無表情だったそれは……俺には悲しげに見えた

 

『殺してくれ』

 

と言った気がした

 

 

「ぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」

 

せき止めてたダムが決壊するようにみんなの思い出が流れ出す

 

 

 

「……死なないって……約束した」

 

 

アカメ……姐さん……兄貴……シェーレ……ラバ……チェルシー……スーさん…………マイン……

 

 

 

「助けるんだよ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ……ぞくぞくするよ、ねぇセイバー?絆で結ばれた仲間が殺しあう姿は美しいとは思わないかい?」

 

 

「…」

 

剣を引き抜きガラドボルグも引き抜き回復、再生していくライダーを侮蔑の眼差しを向けるセイバーくん

 

 

「そうは思わないかい?藤丸立火ちゃん?」

 

 

「思わない、……お前の性根は腐ってるライダー」

 

私は震える手を抑えながら睨みつける

 

 

「ま、わかってもらえるとは思ってないけどね」

外見的には見た目麗しい少女は表情を歪めて嗤う

 

その笑い方がいちいち癪に障り異次元の生物だと認識される

 

ゴシックロリータな衣装まで再生していく

 

「『禍神転生者』と君らは常識が違う…君ら的には歪んだ悪癖、…排他的な汚れた倫理観を持っている。…………そして歪んだ欲望を持っている。……『禍ツ聖杯』はそれを叶えるためのものさ。」

 

 

「通常の願望機『聖杯』も魔力の塊だろう?『禍ツ聖杯』は歪んだ欲望の塊さ。人間の欲望は際限ないものさ……しかも『禍神転生者』になり得るような愚図限定で搾取し続けるならどうなる?高純度の悪意はそこに集まる…まるで『この世全ての悪』……悪意を持つ魔力は力となり願望すら叶える」

 

「悪意を持つ欲望をね」

 

 

「……『禍神転生者』はそれを奪い合うのね……」

 

「『禍ツ聖杯の欠片』はそれぞれの『禍神転生者』に一つ持っている…今は血怪の女狐が二つねいまは」

 

 

「お前の欲望は……!」

 

 

「秘密だよ、立火ちゃん……ふふふ」

 

 

「今はまだその時じゃない……まずは『特異点』を完成させなければならないの……陣地をね……『支配特異点』を、完成させてから『禍神転生者』は『次元聖杯戦争』を始める」 

 

 

「『赫月のセイバー』は異分子だよ、…『崩界のアヴェンジャー』はゲームだと言ってたけどね」

 

「『アヴェンジャー』……?」

 

「おっと、喋りすぎた……いけないいけない……」

 

 

「クライマックスを見ようじゃないか…君たちの絶望もまた『禍ツ聖杯』の力となる」

ニヤニヤクスクス笑いながら空を見上げる

 

 

 

タツミくんは進化を続ける

インクルシオの原作における最終進化体に到達する

至高の帝具に対する為に本来至る境地

 

「……あぁかめぇ…!」

 

自我の崩壊も始まる……進化のアクセルはベタ踏みでブレーキは壊れている

 

 

浮遊するタツミくんは竜へと近づく

 

 

「…………」

 

それと、地面から見上げる『役小角』を発動している骸人形のアカメちゃんは迎撃の構えを崩さない

 

 

 

「セイバーくん!!」

 

止めないと…!

 

 

「無駄だよ、『固定』しているからね……サーヴァント相手だとあんまり持たないけどね……まぁこの戦いくらいはもつよ」

 

……くそ、、くそ

 

 

「立火…!」

 

沖田さん!!?

 

 

「岡田以蔵は!!?」

 

 

「……なんとか、引き分けました…!」

 

「……沖田さん、血……」

 

 

「これくらい大丈夫です、……………とは言えませんが……!」

 

脇腹から血が滲んでいた

 

岡田以蔵の魔剣に対抗してこれならまだ……

 

 

「沖田さん……悪いけどまだ無理して貰う」

軽く応急処置し止血する

 

「はい」

 

愛刀を手に沖田さんは立ち上がる

 

 

「………『屍竜のライダー』!!」

 

 

「以蔵くんが打ち負けるとは予想外……まァいっか……ふふふ……ほら、タツミくんは終わったよ」

 

 

え?

 

 

見上げるとタツミくんは完全に竜となっていた

咆哮と共に周囲を威圧する

 

「あぁかぁぁめぇ…!!!!!」

 

アカメ、アカメ、アカメアカメと現状彼はアカメしか見えていない

 

 

「竜となり果てたタツミくんと骸人形のアカメちゃん……素晴らしい対決だなぁドラマチックだよ」

恍惚の表情を、浮かべるライダー

 

 

竜となり果てたタツミくんは咆哮し駆け抜ける

 

そのまま、勢いをつけ落下

 

爆音と共にアカメちゃんのいた場所へ落下する

 

 

アカメちゃんは回避

 

タツミくんは竜の知覚で追尾し襲いかかる

 

アカメちゃんは超反応で、回避し続ける

 

 

 

 

 

 

アカメの残存思念はまだこの世に残っていた

 

強烈な思い残し、未練がそうさせたのか

 

 

体は既にライダーへ制御権は奪われている

そもそも残存思念だ、ただ眺めているだけ

 

 

ああ、でも……タツミがあそこまでしているんだ

 

足搔いてみせる

 

 

『タツミ、私を殺してくれ』

 

竜となってもお前はお前だ

 

 

一時的にでも止めてやる

 

 

 

 

『………私たちはナイトレイドだ』

 

 

 

アカメの動きが一瞬止まる

 

その一瞬でアカメを掴み叩きつけるタツミくん

 

 

「なっ!!?…………アカメちゃん!!……くそ!!いうこと聞きなさい!!タツミくんをやりなさい!!」

 

 

 

 

地面に叩きつけられるた骸人形のアカメは活動を停止する

 

 

「あぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁあ!!」

 

タツミくんの咆哮は慟哭のそれだった

 

 

ザシュ

 

 

タツミくんの目に刀が刺さる

 

 

「え、あれって………村雨…?」

 

なんで…?……さっき叩きつけた勢いで村雨が飛んでしまったのか…?

 

眼球は鎧を纏っては居ない、竜の眼球とは言え容易く貫き呪毒がたちまち身体に廻る

 

 

「……が……み……んなを……助けなきゃ……」

 

力尽き、宙より落下する巨体

 

 

アカメの死体の隣に叩きつけられる

 

並んだ二人の死体に私たちはただ眺めている事しか出来なかった



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第14話「悪魔が嗤う⑥」

沼地のように重く沈んでいるような感覚

 

泥を纏っている気がする

 

視界は濃霧が遮り先が見えない

道の先に何があるかわからない不安

 

知っているこの感覚の名は

 

 

『絶望』と

 

 

軽重の差があるとこの感覚の経験はある

 

 

つまらない事だろうとも藤川五火にもあっただろう

 

 

藤丸立火になってからこの感覚は重かった

 

 

 

………救えなかった

 

 

それがこの『絶望』という泥の正体

 

 

その、汚泥はけして消える事の無い足枷となって私にのし掛かる

 

 

汚泥は嘲笑うかのように私に纏わり付く

 

『無能』『役立たず』『死んでしまえ』

 

 

シネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネ

 

 

『死ね』

 

 

ああ、…………『死のう』

 

 

 

 

『役立たず』には『死』を

 

 

 

 

「立火!!」

 

呼ばれた気がした、汚泥を裂くような声に私は縋る

 

「起きてください立火!」

 

光を照らしてくれるような声に縋る

 

ああ、『絶望』は怖い

 

助けて

 

汚泥は私に纏わり付く、増殖し逃がさないと私を取り込もうとする

 

 

助けて、助けて、助けて、助けて

 

 

心の弱さを隙をつき汚泥は纏わり付く

 

 

 

『絶劔・無窮三段!!!』

 

 

汚泥を吹き飛ばす一閃

 

私を抱え離脱する

 

顔は見えない、誰だろう……?なぜか安心感があった

 

 

『……ここで倒れるのか?藤丸立火』

 

 

『……絶望如きで歩みを止めるな藤丸立火』

 

 

『………………貴様達の敵は『絶望』そのものだ』

 

 

『…………いずれ私を呼べ藤丸立火、ことごとくを斬り捨ててやろう』

 

声は不器用ながら私を気にしてくれていた

 

 

『またな……マスター』

 

 

私の意識は沈む、……覚醒する

 

 

 

 

 

 

覚醒し、目を覚ますと眼前に涙ぐむ沖田さんと信長がいた

 

「沖田さん……?信長……?」

 

「よかった立火目を覚ましたんですね」

ぎゅっと手を握る沖田さん

 

「心配かけるんじゃないぞぅ立火」安心したかのような顔をする信長

 

「私、眠っていた……?…何これ……」

 

手に二枚のカードを握っていた

 

アサシンとランサーのクラスカード

 

「何があったの…?」

 

このクラスカードは、もしかして

 

 

 

「連れ、目を覚ましたか?」

一人の黒髪の男が入ってくる

 

「……君は……?」

 

確か、……ウェイブくん!!?イェーガーズ?アィエエナンデイェーガーズナンデ!?

 

「……あ、いや敵じゃねぇよ。ナイトレイドなら俺の事知っているよなイェーガーズのウェイブだ……元だがな」

 

 

「……えっと」

理解が追いつかない

 

 

「私が話そう。目を覚ましたようだなリツカ」

ナジェンダさんが後ろにランを連れ入ってくる

 

ランも居るんだね……離反?

 

ここはナイトレイドのアジトみたいだ

「すいませんナジェンダさん……アカメちゃんとタツミくん……」

顔を伏せナジェンダさんを直視出来ない

 

「いや、……きみのせいじゃないさ……ライダーの勢力が私の予想を越えていた。まさかブラート達を骸人形にしていたとはな」

 

 

「…」

 

「それに君たちが『村雨』と『インクルシオ』を持って帰って来てくれたとは不幸中の幸いだこの『帝具』が帝国側に渡ればこちらに勝ち目はなくなる」

 

 

「しかし、使い手が…」

 

 

「『村雨』に関しては君が使えオキタ」

 

「はい、先程の戦いでは使えました。相性は悪くないようです……私の獲物も折れましたし、アカメさんの意も汲みたいです」

 

「いいなぁ『帝具』儂も欲しいなぁ……『インクルシオ』と相性よくなさそうじゃしぃ」

ぶーたれている信長…

 

えと……そもそも

 

「あれからどうなったんですか?……途中から記憶ないんです」

私はそう言うとまわりはこちらに注目する

 

え?変なこと言った?

 

「…覚えていないんですか?…立火?」

沖田さんはこちらの顔を覗く、やめて可愛いから

 

「一種のトランス状態だったかも知れないな」

 

壁に寄りかかっていたセイバーくんがこちらに来て二枚のカードを指さす

 

 

「激情に駆られたお前はカードとなったあの二人を己と総司に『重装夢幻召喚』を施した」

 

 

 

『W重装夢幻召喚』!!!!

 

そう叫んだ記憶が微かに蘇る

令呪の二画使用、激情にまま行った気がする

 

自分の手にはもう令呪は再び刻まれていた…一日は経っているのか……

 

この二枚のカードは

 

『アサシン・アカメ』と『ランサー・タツミ』の二人をクラスカードになっていたのか

 

クラスカード化…?

 

 

「恐らく、強い未練、悔恨があるものをクラスカードに出来る……君の力だ」

 

「託された…?」

 

「恐らくな」

 

「うぇ…」涙が溢れ泣き始める

止まらない

 

沖田さんは抱き締めてくれた、私は激情にままに嗚咽する

 

 

しばらくして落ち着いた私に続きを説明してくれた

 

「何とかライダーを撃退する事に成功したんだが……シュラというやつが『禍ツ聖杯』に取り込まれていた……『命を繋ぐモノ』とよばれるそれになっていた」

 

「……そこの赫月とやらに君らの正体、目的は聞いた…にわかに信じがたいが……『屍竜のライダー』そして私もその『命を繋ぐモノ』を見た瞬間信じるしかなかった」ナジェンダさんがそう呟く

 

シュラは暴走していたがライダーが抑えていたと

 

「俺たちは元々隊長のやり方について行けなくなっていた」

 

「……ですからこの機に離反しその現場の傷だらけの君たちを抱えて離脱しました」

ウェイブくんと、ランさんはそう言う

 

 

なるほど……

 

 

「『屍竜のライダー』の、目的はエスデスに戦いを献上すると言ってました」

 

「けど、『命を繋ぐモノ』を見た以上それだけには思えんな」

とセイバーくんが言う

 

「事態は待てば悪化してしまう、……ナイトレイドは壊滅してしまった……彼らの遺志は私が継がねばならん。革命はせねばならない」

ナジェンダさんはそう、宣言する

 

 

「ウェイブと、ランからの内部情報を利用し私達革命軍は近々『革命』を仕掛ける!君らは『屍竜のライダー』を倒したいのだろう!!ならば力を貸してくれないか」

 

「私達はナイトレイドに入れて貰いました……彼らの遺志は継ぎたいです」

 

「無論じゃぁ!!岡田以蔵にしっかり返さねば腹が納まらん」

 

「もちろんですとも」

 

 

「リツカの、意志は己の意志でもある。」

 

 

私達は、うなずき合う

 

 

 

 

絶望は、少し晴れた気がした



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第15話「渇望を斬る」

帝国・イェーガーズ詰め所

 

 

「ウェイブくんとランくんが離反かぁ」

 

「じゃて、どうするんじゃ?ワイルドハント私だけじゃぞ」

 

「コスミナちゃんは悲しい実験の犠牲になりましたとさ

 

詰め所の、地下にてエスデスすら知らない大層な施設があった

 

そこに『屍竜のライダー』と元ワイルドハントのドロテアがいた

 

「シュラくんとコスミナちゃんは『命を繋ぐモノ』の試作品になったんだよ」薄く嗤うライダー 

 

巨大な水槽の中に薬液に浮く『黒い人型』2体

 

「錬金術にもこんなのはないぞこれはなんじゃ」

薄気味悪く見上げるドロテア

 

「一種の魔力生命体さ、この世界の生物帝具に似たものと思ってくれればいいよ、…位階は圧倒的にこっちが上だけど」

 

「こんなモノを作ってライダーはどうするつもりじゃ?…」

 

「『不死』という永久機関を作りたいのよ…私も再生能力持ってるけど…それとは段違いのね。ドロテアちゃんも『永遠の命と若さ』は錬金術師の悲願でしょ」

 

「そうじゃが…まさか…たどり着いたのか?…」

 

「んふふ、理論上はね…」

 

意味深に嗤う

 

相変わらずよく嗤う女だとこいつも薄気味悪く思うドロテアだが『不死』への渇望からかソレからは目をはなせないでいた

 

『いつまでも若く永遠の命』を持って降臨し続ける渇望

 

見た目年齢には少女と改造しているが老いていく我が身が憎い

 

老化とは『衰退』だ

 

活力を失い目的を失い意味を失う

 

 

故に渇望している『若さ』を。それを維持できる『不死』を

 

錬金術師となり何年たったか『賢者の石』という秘儀にまでたどり着いたが『不死』には至れなかった

 

だが此奴は、至れたという

 

どんな悪魔染みた邪法でもあるというのか

 

だが、ドロテアにとって邪悪なものであっても魅力的に思えた

 

渇望し崇拝し問い続けた半生の答えは得たというのか此奴は

 

 

「……『不死』になってどうするんじゃ?ライダーは?」

 

老化を恐れ即物的だと、自身を思うドロテアは底が知れない少女の形をした怪物に問う

 

そもそも利用するためにドロテアを得るためにワイルドハントを潰した女が私と似たような理由ではある訳がなかった

 

「聞く?聞いちゃう?まぁそういう流れかな…………『エスデス様を不死』にする」

振り向きドロテアをまっすぐ見るライダーは本気の顔だった

 

「エスデス将軍を……?ライダーにとってそこまでの存在なのか」

 

「言うならば現人神かなぁ……私にとっての絶対神、崇拝対象だよドロテア」

恋する乙女を超える一途さ

 

「エスデス様を不死にして、永遠に戦いを謳歌していただく……いくらでも、闘争を、戦争を私は用意するの」

 

「ああ、……本当の『最強』にして『次元聖杯戦争』を勝ち抜き……ふふふ」

最後の一言はドロテアに聞こえないように呟くライダー

 

「…………この渇望を、成就するには沢山の命が必要だ……『反乱軍』との全面戦争は好機。……ねぇ大臣?」

 

「…………大臣?」

 

ライダーに傅いている丸々と太った巨漢の男

 

すべての、元凶

 

オネスト大臣は既にライダーの、手に落ちてた

 

 

「……大臣も陥落させたのかライダー」

 

 

「最初からだよ、最初からこれは私の家畜……オネスト大臣という性質上対立している体を取ってたけどね」

 

『隷属転生者』と、よくわからないが言っている

 

最初から帝国はライダーの手の内にあったといえた

 

「至高の帝具を使用して、革命軍を殺しまくろう……協力してくれるよね……?ドロテア……?不死になりたいでしょ……?」

 

どうせ断ったら他のワイルドハントのメンバーと同じ末路になる。それも『不死』になれるなら断る理由はなかったし今更引けない

 

「も、もちろんじゃ」

 

「よかったよかった、同じ野望を持つ同士よろしくねー」

 

悪魔のとの契約を結んでしまったような気がするが…ワイルドハントが負けた時点で賽は投げられていたのだ

 

 

「さぁて、『赫月のセイバー』に立火ちゃん。君らの足掻き期待しているよ」

 

三日月型に笑みを浮かべる

 

 

 

 

 

ナイトレイド全滅

 

それは少なからず『反乱軍』の中に衝撃を与えた

 

それだけアカメ達の活躍は縁の下の力持ちだったのだ

 

 

だがイェーガーズのウェイブ、ランの離反は革命を一押しする有用な情報をもたらしてくれた

 

一軍人に過ぎなかった彼らのふたりの離反

 

彼らの上司であった『屍竜のライダー』の現状の帝国における影響力はエスデス将軍の力も在りかなりのものであったようだ

 

 

革命のため攻め込むのは今である

 

この機を逃すとより帝国を盤石の体制をしかれナイトレイドのしてきたことが無駄になってしまうのだ

 

それに反乱軍本隊も革命のため準備を整えていた

 

『安寧道』の反乱、他民族の侵略に便乗して進軍は始めている

 

「反乱軍本隊はこのまま進軍をすすめていく。ウェイブやランが、もたらしてくれた情報は優位に持って行ける」

 

ナジェンダさんは煙草を吸いながら地図を広げる

 

 

「私たちはエスデス、ブドーそして『屍竜のライダー』を討ち取る」

 

 

「前線に出てくるであろうエスデス将軍はともかくブドー大将軍まで来ますかね」

 

「指揮をとるブドーはおそらく本丸にいるだろう、皇帝も守護しなければならんから…ふむ、ブドー大将軍はエスデスのあとになるな」

 

ナジェンダさんは、考え込む

 

 

 

私たちとしては『屍竜のライダー』の排除が最優先

 

この特異点から『禍神転生者』である彼女を排除し本来の『アカメが斬る!』世界に収束させる

 

『ナイトレイドが全滅』という最悪の世界線をなかった事にしなければならない

 

けど『屍竜のライダー』との戦闘の前にはエスデス将軍との戦闘はたぶん避けれないだろうしこの戦争に参加する以上可能性は高い

 

エスデス将軍

 

帝具『デモンズエキス』の最強の氷使い

 

帝具の性能もさながら戦闘センスも高い

 

トップサーヴァントに匹敵するとにらんでもいい

 

単純な戦闘力ならライダーより上

 

 

セイバーくんをぶつけるしかない……ならライダーは沖田さんと信長を……

 

 

「……むむむ」

 

 

いや、『村雨』を託された沖田さんを……

それに信長の『宝具』も有効かも……?

 

「エスデス将軍に沖田さんと、信長……『屍竜のライダー』にセイバーくんをぶつけたいと思います」

 

 

「………君らに頼る以上君らの戦闘力を把握しきれてないがリツカ。君がベストだと思うのだな」

 

「……はい」

 

自信は…ない

 

「我々は全力でサポートしよう。ウェイブとラン……離反してきたお前たちも手伝って貰おう」

 

 

「はい、私は元々中から帝国を変えようとイェーガーズにいました……けど今の隊長、ライダーにはついて行けませんし変えられないと踏んで此方に来ました。全力でサポートしましょう」

 

「だな。俺は海軍の恩師に応えるために帝国に居たが間違っているよ今の帝国は」

ふたりは力強く頷く

 

「セイバーくん、沖田さんに信長。……よろしくね」

 

三人も、頷く

 

 

『革命』の日は近づく



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第16話「幕間を斬る」

「………………儂も『帝具』が欲しい」

 

革命の、進軍が迫る中唐突に信長が声をあげる

 

「…『帝具』は貴重なモノですし戦力の分散を考えれば…戦う手段のあるノブには、不要では?」

 

沖田さんが冷静な意見を述べると信長は嫌そうな顔をしている

 

「もらえた奴はうらやましいのぅ沖田」

ぶーたれる信長

 

「貰ったわけではありません借り受けただけです」

 

「同じ事よ、此度の戦いで使えるのだからの」

 

睨み合いをする2人

 

「じゃぁ、奪えばいいじゃん」

 

 

「お、名案じゃなよこせ!沖田!」

 

「り、立火!?」

 

「違うよ、敵から」

 

私は指を立てて言う

 

「「あ」」

と、二人は固まる

 

「帝国の帝具持ちから奪えば、戦力削げるし信長の物欲も満たせて皆平和」

 

我ながら名案

 

「ま、儂と相性良いかわからんがものは試しじゃな」 

 

「なるほど、それは名案ですね」

 

「沖田ぁ、帝具持ちをどれだけ倒せるか勝負せぬか?」

 

「…戦争は遊びじゃありませんよノブ」

 

「ほう、負けるのが怖いのか」

ニタニタ笑う

 

「カッチーン……良いでしょう、後でほえ面かかないで下さいね」

 

 

「何をやってるんだこの二人」

セイバーくんは溜息をつく

 

「あはは……重たい空気よりは私はいいよ。今は賑やかなの嫌いじゃないし」

セイバーくんの隣に座る

 

「まぁ……緊張しているのかリツカ」

 

「緊張というか……まぁ、正直これから戦争しにいくわけだし……怖いっちゃ……怖い」

ぎゅっと自分の手を握る

 

「……後ろのふたりは戦地常在な人生を生きてた訳だが……リツカは一般人だったのだろう。当たり前の感覚さ」

私を気づかってかそんなことを言ってくれるセイバーくん

 

「そうかな……」

転生前はただの会社員だった私にはやはりクロスオーダーは荷は重い

 

けどやっぱり許せないから

 

『禍神転生者』が

 

 

あまりにも『邪悪』だから

 

 

「…………うじうじしてても仕方ないか」

よしと自分自身に渇を入れる

 

 

虚影のアサシンより恐らく屍竜のライダーは強いし一筋縄じゃいかないのが見え見えだった

 

どうあがいても性格の悪い女だった

 

 

けれどセイバーくんもいるし沖田さんと信長もいる

 

「負けられない……!」

 

「信長には、帝具は用意出来ないけれど……クラスカードが一枚あるでしょう。アサシンとランサーの他に」

にんまり笑う私

 

「……彼の力を信長に使うのか?」

 

「うん、今回はクラスカード二枚はセイバーくんと沖田さんが使うし。重ねて使うのは無理だろうし……信長に使ってどうなるかわからないけど……いい?」

 

信長をまじまじと見つめる

 

「いいじゃろう、どんな感じになるかわからんが承った。クラスは、アーチャーだが剣の心得くらいはあるわい」

ニヤリと快活な笑みを浮かべ答えてくれる

どんと任せろと信長は笑ってくれた

 

「岡田以蔵に目のものを見せてやるなら何でもいいじゃろう」

 

 

会議室

 

 

「少しまずいことになった。例の氷騎兵はもはや実戦に投入していいレベルになったようだ」

とナジェンダさんは顔をしかめる

「……氷騎兵?」

沖田さんが首を傾げる。可愛い

 

「エスデスの氷から生成された兵士だ。…奴は部隊まで自前で用意出来るようだ」

 

空気中の水分から氷の生成する

まるでそれは無から兵士を用意するというやられた側からしたらたまらない悪夢の所業だ

 

疲弊を、知らず恐怖を抱かない感情のない兵士

 

よくよく考えれば厄介な代物だ

 

「……氷の兵士じゃと?」

 

ニヤリと笑う信長

 

「…………氷の兵士は儂が請け負おう。我が波旬で焼き払ってくれるわ、前回の戦いの無様、雪辱晴らしてやるわ」

 

「対抗手段があるんだな?」

ナジェンダさんは確認してくる

 

 

「儂の奥の手みたいなものじゃ、氷相手に有効と踏んではいるがの」 

 

確かにもう一つの宝具は有効かもしれない

 

「よし各々の役割確認したな、……此度の革命は厳しい戦いではある。背水の陣なんだ我らは。君達に頼るのもすまなくは思うが利害は一致している」

ナジェンダさんは再度確認するかのように宣言する

 

 

「明朝、反乱軍は仕掛ける。進軍し帝国を墜とす。」

 

ナジェンダさんは宣言する

 

 

「ターゲットはオネスト大臣。エスデス、ブドー、『屍竜のライダー』が最優先。出来れば将官共も葬りたいところだがな…この4人を葬ればなんとかなる!」

 

「各個撃破を頼む!」

 

明朝……『革命』の日が始まる

 

 

 

 

 

 

帝国、宮殿

 

「大臣、大丈夫なのだろうな」

幼い皇帝は不安そうな顔をする

 

「大丈夫ですぞ、ブドー大将軍もエスデス将軍もおられます」

笑顔で答えるオネスト大臣

 

皇帝の間には幼き皇帝と隣にオネスト大臣

 

エスデスに『屍竜のライダー』が控えていた

 

ブドー大将軍は兵を編成するのに不在

 

「大丈夫ですよー、皇帝様。私も秘密兵器ありますし」

 

「ら、ライダー殿がそう言うなら安心だな」

 

至高の帝具を使って貰わねばいかないしねぇとの言葉は飲み込む

 

「…失礼。報告があります」

羅刹四鬼最後の一人のスズカが現れ頭を垂れる

 

「……明朝、反乱軍は動くようです」

 

「ふっふっふ、ようやく来ますか。ナイトレイドがいない状態で」

オネスト大臣は笑う、傀儡には演出して貰わなきゃねぇとライダーは小さく笑う

 

「……私を楽しませてくれるやつはいるかどうか、タツミとアカメがいないのでは楽しみが半分だな」

嘆息するエスデス

 

「……きっと頼ませてくれるやつ居ますよエスデス様」

 

「そうだな。愉しまねば。……きっとまだ見ぬ猛者が居るに違いない」気分を変え言ってくる我が主に申し訳なさがあるが

 

(永久の戦いと更なる猛者をご用意致しますからしばしお待ち下さいエスデス様ぁ……)だからたくさん殺して下さいエスデス様

と薄く笑う

 

 

全ては明朝、始まる



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閑話「悪望の澱」

「……『禍神転生者』が教会とは笑えねぇ冗談だな」

 

そこは教会だった

 

神を崇め救いを求め信仰心を司る場所

 

 

一人の神父がいた、教会の入口があき一人の青年が入ってくる

 

 

「お前が訪ねてくるとはな、アーチャー」

 

「……始まりはいつもここだ」自嘲気味に笑う

 

「ああ、いつもお前の戦いはここから始まる……どうした他の参加者は自陣構築に勤しんでるぞ?」

 

「…………俺には必要ない、……ただ他の奴らを刈り尽くすだけだ」

 

アーチャーは興味がないとばかりに吐き捨てる

 

「…………『常世総てのセイヴァー』が来たぞ」

 

「……ほう、あの災害染みた救済者と出くわしたのかね…」

アーチャーの言葉に興味を示したのか振り返る神父

  

「…潔癖染みた白い女だったな、セイヴァークラスはやはり化け物だな」 

 

「……あれは『正義』そのものだ、気に食わないかね?……自身の叶わなかった理想を体現した者にあった感想はどうかね」

 

「テメェには関係ないだろう『崩界のアヴェンジャー』」

殺意を纏うアーチャー

 

「ふむ、確かに関係はないがな、……だが理想に破れたものの苦渋はいつ見ても飽きぬものでな」

くっと笑う『崩界のアヴェンジャー』

 

「………、……『屍竜のライダー』のところに『赫月のセイバー』らがいる。……『禍ツ聖杯』の孵化も近い」

 

「……あの少女は不死に拘っていたな、くっ、なら結末はならひとつだな」

 

 

「必ず命は摩耗する。あぁ私は『赫月のセイバー』にかけようじゃないか」

 

「……『禍神転生者』がそれでいいのかよ」

 

「私は監督役だ。常に、中立だがな。何個人的な感想だ…あれはお前にも少なからず縁があるだろう。いずれ相対するとは思うがね、『鉄心のアーチャー』」

 

 

「………その名は捨てた、この身はアーチャーの座に埋まるただの亡霊だ」

 

「……あの災厄の地にて再びまみえる事を期待しよう」

 

 

「お前はこの次元聖杯戦争に何を望む、『崩界のアヴェンジャー』」

 

「善悪問わず願望のいく果てを見てみたくてな、どうなるか気になるではないか、願望とは際限ないものだ。更なる願望に飲まれるか否か」

 

聖職者がごとく宣う、いやこいつは仮にも神父であった

 

「切望、渇望、祈り、…5欲を超える欲求、欲望を少なからず『禍神転生者』は持っている」

 

 

「『悪望』と仮に呼称するがそれでもそれは純然たる願いだ…なれば私はそれを祝福し見守ろうではないか」

 

「かわらねぇな……クソ神父」

 

理解できないと吐き捨てる

 

「元よりこの次元聖杯戦争は『禍神』共の娯楽だ」

 

「…………お前は『禍神』擬きだろうよ『この世の全ての悪』」

 

 

『崩界のアヴェンジャー』の足元から噴出する泥は悪意を持っていた

 

死ねという単純明快な悪意がそこにあった

 

それでもそれはすぐさま消える、それは氷山の一角で砂漠の一握の砂

 

「……………」

 

邪悪はそこにある、救えぬ泥を纏い神父はただ行く末を見定める

 

「……良い苦渋をな、少年」

 

「テメェこそ後悔するなよ」

 

「後悔などするものか、どのような結末に至ろうともそれは一つの結末に過ぎない」

 

教会の扉は締まる、アーチャーはこの教会のみが存在する特異点を去った

 

「…………よかったので?」

 

血溜まりが女の形を執る、赤い着物の鬼が教会のイスに座る

 

 

「構わん、全て思い通りでは意味が無い。言っただろう私は悪望の果てが見たいと。あれの歪さにも期待しようどのような結末になるかをな」

愉悦とばかりに鉄面皮を歪ませ微かな笑みを浮かべる

 

 

「……物好きですこと、理解はできますけれど趣味は合いませんわね」

赤の鬼こと、『血怪のバーサーカー』は呆れた顔をしながら薄く笑う

 

また血霧となり消える

 

「……此度の結末に期待しているぞ、『赫月のセイバー』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つまらない女の話だ

 

つまらない女だった

 

つまらない人生だった

 

つまらない毎日だった

 

そんなつまらない繰り返しの中

ふと、鏡に写った自分を見て戦慄した

 

何もなく誰に愛されなく終わる人生なのか

 

 

鏡に写った日々劣化していく自分に激しい嫌悪と恐怖を感じた

 

 

ああ、このまま劣化し朽ち果て腐るなんて嫌だ

 

 

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ

 

 

嫌だ

 

「美しい漫画や物語のヒロイン、キャラクターに憧れた」

 

 

なにせ、劣化しない

腐らない腐らない腐らない

 

ああ、羨ましい

 

 

「このまま朽ち果てて死ぬなんて嫌だ……醜く腐るなんて……嫌だ」

 

 

 

醜く腐りいく人生に絶望した、嫌だ嫌だ嫌だ

 

 

盛者必衰?嫌だ永遠に美しく生きていたい

 

 

「………………ぁぁ……」

 

氷のように美しい彼女みたいに

強く輝いていたい

 

 

絶望は、切望へ

切望は、渇望へ

渇望は、悪望へ

 

 

『なら、奪えば良い。不死を。永遠の美しさを』

 

 

『転生を、ただの転生じゃないよ』

 

目の前の、闇からうまれたそれはかつて、一番美しく愛らしかった時代の私

 

少女の形をした闇は醜く爛れる私に囁く

 

 

『……私はキミの願いを祝福しよう』

 

 

『さぁ始めようよ、手を取って私。奪うんだ。命を』

 

 

『ここがキミの禍神転生だ』

 

その、闇は私と混じり合う…ああ

 

 

「奪い尽くしてやる……」

 

かつて、愛らしかった時代の私への姿になる

この、姿をまた醜く爛れることのないように

 

奪うだけ



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第17話「狼煙を上げる」

夢を見る

 

夢を見る

 

 

夢を見る

 

一人の人生を追体験する、目の前に居た黒髪の少女

 

それはマスターとサーヴァントの繋がりに似た繋がりだった

 

 

その人物の祈りを、願いを、未練を、後悔を

 

苦渋の決断を

 

 

始まりは……小さな妹の手を握り始まる

 

かつての親兄弟同然の仲間と切磋琢磨する半生を

 

世界のおかしさを感じ妹を捨て離反した苦渋の決断からの半生を

 

彼女の、心中とともに追体験する

 

 

「…………ああ、オキタ……出会って間もないお前に頼むことでもないんだがな…まだやり残した事があるんだ。お前は私に似ている気がするんだ」

アカメは後悔を拭いきれずまだ未練があったと悲しげに笑う

 

 

「…………死ぬことが怖いんじゃない。この稼業やっている以上因果は応報する……いずれ我が身に帰ってくると覚悟はしていた」

 

けどとアカメは話す

 

「みんなの死を無に返すような最後にはしたくないんだ」

 

彼女の、言葉に私は新選組の仲間を思い出す

 

 

「だから、……私の遺志をお前に託したいんだ。『村雨』を扱えるお前に………頼めるか」

 

そんな……悲しげに言われては断れないじゃないですか

と沖田は思う

 

けど彼女の、悲嘆も未練も総て理解できる

 

…………私も、彼らと一緒に最後まで戦いたかった

 

「もちろんですとも……アカメさん、あなたの未練晴らせて頂きます」

 

「それなら……安心だな」無表情で表情筋の乏しい彼女は、それでも微かに安心したように笑う

 

アカメは消える……私は託されたんですね

 

 

 

 

 

「沖田さん?」

 

「すいません少し寝てました……」

 

「泣いてる……?」

立火が覗き込んでいる、

 

「いえ、欠伸を噛みしめてるだけですよ」

 

進軍する馬車の中で少しねていたようだ

 

私たちは前線へ向かっている、ノブはまだかと気を昂ぶらせているようだった

 

「……すいません立火」

 

「あ、いやうん。大丈夫ならいいんだけど」

 

「大方だんごでも喰い損ねた夢を見たんじゃろ。わりかし食い意地が張ってるからな此奴は」

馬鹿にするように笑うノブ

 

「カッチーン」

私は剣を抜きノブに、突き付ける

 

「あ、あほ!!『村雨』で軽く斬ったら死ぬわ!!」

 

「お、沖田さん!!?」

 

しまったつい癖で、挑発するノブが悪いから是非もありませんね

 

「…」ジロリと赫月さんに睨まれる

 

「すいません……」

赫月さんって少し恐いですねって立火に言うと

 

「え、優しいよ」

あ、紳士は紳士みたいですけど私とノブのケンカはあれかな……

 

「そろそろ前線へつく、気を引き締めろ」

 

「とっくに引き締まっているわぃ!先陣は氷の兵士が居るならば儂が切ろう。よいな赫月」

覇気に満ちているノブはそう言い放つ

 

 

「構わない、しくじるなよ信長」

 

「は、誰に言ってるんじゃ、第六天魔王織田信長じゃぞ」

軍服の少女はニタリと笑う

 

 

 

 

 

 

立火の番

 

 

………戦争は始まっていた

 

明朝、……反乱軍本隊は進軍していた

 

帝国軍も反撃するため帝都を守るように展開している

 

突き進む

 

 

この、馬車は進軍する本隊とは別にエスデスがいる隊を目指し進んでいる

 

 

「ランさんとウェイブくんは斥候と哨戒…帝具持ちを撃破しつつ遊撃と情報集めを繰り返してくれてる」

 

「帝具『グランシャリオ』と『マスティマ』でしたっけ……機動力を持った帝具らしいですね」

 

翼の帝具とインクルシオと同タイプの鎧の帝具

 

機動力を持った帝具をもち離反していて元帝国側

地理に詳しい彼らは適任

 

最新の戦場の情報を共有出来る

 

 

まずの、狙いは前線で出てくるのあろうエスデス

 

何をしてくるかわからないライダーはエスデスに注力しながら対応できるよう心構えしなきゃならない

 

 

禍ツ聖杯の孵化『命を繋ぐモノ』にも気にかけなければならない

ライダーの狙いは多分それ

 

前回のアサシンの『境界を食らうモノ』と同質の化け物と考えてもいいとセイバーくんは言っていた

 

……とりあえず目の前の戦いに集中しなきゃならない

 

エスデスは、この特異点のアカメが斬る!のラスボス枠

 

簡単にはいかないはず……いや、いかない

 

 

馬車が、進軍する中緊張は強くなる

 

少しで前線

 

 

「………来るぞ、立火」

 

信長は真っ先にその殺意に気付く

 

 

「沖田、赫月。立火を頼んだぞ…儂は此奴らを引きつけよう」

 

馬車を吹き飛ばされる

セイバーくんは私を抱え離脱、沖田さんも離脱

 

 

信長は赤く煉獄がごとく燃え始める

 

目の前には大量の、氷の兵士

 

氷騎兵にやられたであろう反乱軍の兵士であろう死体が転がっていた

 

前線の、一部の惨状

 

「いけ、立火構うな……すぐに追いつくじゃて」

 

 

「悪いのぅ……丁重に葬ってやることができなんだ。火葬で我慢してくれ」

 

「信長!待ってるから!」

 

「了解じゃてマスター」

 

信長は燃え上がる

 

「三界、神仏纏めて灰燼と帰せ!!儂は第六天魔王じゃ!!」

 

 

      『第六天魔王波旬!!』

 

 

信長の背後に燃える黒いガシャドクロが現れる

 

まわりは燃える燃える燃える

 

 

「吹き飛ぶが良いわ!!」

 

火炎の波が氷騎兵を飲み込み溶かしていく

 

「ははは!あの日を思い出すわい!」

 

 

「……大した炎だな、私の氷騎兵を一瞬で吹き飛ばすとはな」

 

「こんな前線に居るとはな…沖田め、読み違えたか」

 

白い軍服の女が燃え盛る火炎の中に表情を変えずにいた

 

 

帝国最強の女、エスデス

 

 

「信長!?」

 

「私も残ります。…赫月さんは『屍竜のライダー』を……立火ご武運を」

 

「……沖田さん達こそ」

 

「ええ」

沖田さんは、踵を返し燃える信長の元へ

 

「儂ひとりで十分だというに」

 

「…立火の判断です」

 

 

「ほう、『村雨』を持った剣士か、愉しませてくれ」

 

不敵に笑うエスデス

 

 



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第18話『最強を斬る①/剣鬼を斬る①』

「気を引き締めて行けよ沖田、こうなった以上攻め手は貴様に任せる。その即死の刃が鍵じゃ」

 

轟々と燃える信長は沖田に声をかける

 

「…彼女を倒すことそれがアカメさんの無念を晴らすことです譲る気はありませんよノブ」

 

『村雨』を抜き構える

 

「貴様らナイトレイドの残党か、くく、面白いつまらない戦争になるかと思ったが少しは楽しめそうだな」

 

エスデスはゆるりと構える

 

氷使い

 

波旬を発動中ならばアドバンテージなり牽制になるはず

だがエスデスは歯牙にもかけていなかった

 

……ちっと信長は軽く舌打ちする

 

いきなりのボス戦に驚いたが無駄な消耗した状態ではないのが僥倖

 

「焼き殺してやるわ!!」

 

火炎の波がエスデスを、襲う

 

信長の攻撃と同時に沖田も大地を蹴る

 

 

『村雨』は所謂妖刀の類の帝具

 

相性が良い使い手は数少ない

故に修羅の道をゆく使い手が多い

 

『新選組』一番隊隊長沖田総司

 

天才剣士は相性が良く手に馴染んでいた

 

かつては倒幕に燃え走り続ける人生だった

 

奇しくもアカメと重なるようだった

 

 

暗殺者ではなく剣士、太刀筋は王道をゆく正々堂々としたモノだった

 

エスデスに斬り掛かる

 

袈裟、逆袈裟

 

上段、下段

 

と斬り掛かるがエスデスは超反応で躱す

 

「ほう、…やるな………くく」

 

エスデスも剣を抜き構える

氷が使えない……十二分に使えないはずの現状を利用しなければならない

 

信長の波旬は燃える

 

沖田達が対峙するこの、戦場を囲むかのように燃え続ける

 

「……短期決戦じゃぞ。熱は酸素を奪う。波旬状態の儂は平気でも貴様は違うからな沖田」

 

「分かってます……」

 

沖田は構えるがエスデスの隙はなさ過ぎる  

 

あったとしても明らかに誘いだった

 

「……」

 

読み違える訳にはいかない

 

攻め手を増やし城塞が如き守りを崩し一太刀を入れる

 

『村雨』が勝利の鍵だ

 

再び攻める

 

煉獄のような焦熱の波濤を信長は纏い沖田と共にエスデスを囲む

 

エスデスはいなしかわし反撃してくる

 

「ぐ」下腹部に衝撃

 

肘鉄を下腹部に喰らい蹲る

 

「沖田ぁ!!」

 

焦熱の波濤がエスデスの追撃を阻む

 

「大丈夫ですこれくらい…………」

立ち上がり構える

 

「やはり一筋縄ではいかぬか…………では、あれを使うか」

 

「あれ?」

 

「あれじゃ」

ニタァァァと笑う信長

 

「嫌な予感しかありませんけど」

顔が引きつる沖田

 

 

 

 

 

 

立火の番

 

「……大丈夫かな、ふたりとも……」

 

「あれでも歴然の猛者だ、沖田総司に織田信長だ」

 

セイバーくんは私を抱え森の中を走り続ける

 

「……いつでも『重装夢幻召喚』できるようにしとけよリツカ…あれのデメリットは持続時間と魔力消費だリツカへの負担はある、使うタイミングは見定めろ」

 

凍結解除といい、襲いかかる帝国兵を剣弾が貫く

 

 

「多分遠隔発動も可能だと思う、二人にクラスカード持たせているよ」

 

ここにはランサーのカードとインクルシオの鍵の剣

 

「反乱軍には適応者がいなかったらしい、……ランサーのクラスカードあればインクルシオも使える……はず」

 

「インクルシオか……タツミを食った後の状態でクラスカードになってるから……イマイチ危ない気がする」

 

鍵の剣から禍々しさを感じる

 

私はタツミくんのクラスカードを取りだす

 

 

『アヴェンジャー・タツミ』

 

「……え?……アヴェンジャー……?」

 

クラスカードが変化していた、禍々しさを纏うカード

 

「復讐者のエクストラクラスにかわってる……だと」

 

アヴェンジャー

『復讐者』のエクストラクラス

七つの座以外のクラス

 

『ルーラー』『アルターエゴ』『フォーリナー』『セイヴァー』と並びエクストラクラスの一つ

 

特定の人物や世界そのものに対し深い憎悪や復讐心を持つ英霊が分類されるクラス

 

 

「……姫さんに対する復讐心じゃろなぁ……くく、面白いもんじゃなぁ」

 

「……!?」

 

和装の男が下卑た笑みを浮かべ茂みから現れる

 

「岡田以蔵……!」

 

セイバーくんは私を背後におろし構える

 

「織田と沖田がいないのは残念がか、……きさんで我慢してやるわ、そのカードは姫さんに近付くにつれ暴れ始めるじゃろ」

刀を抜く

 

「ま、きさんらはここが墓場じゃがの!!」

踏み込み上段から斬り掛かる

 

干将莫耶を投影、

干将で弾き飛ばす

 

「は、やりおるの!!きさんにも興味が出て来たわ!!『赫月のセイバー』!!」

 

「俺はお前に興味はねぇ……千弾くれてやる」

両手を広げ既に用意していた投影物を展開

 

     『全投影連続層射』

 

 

宙に浮く剣の群、狙いはすべて岡田以蔵

 

「まて、きさんセイバーじゃろ!!」

 

 

「凍結解除」

 

剣の雨が降り注ぐ

 

「ぎゃが!!ギャギ!!?」

剣の群は容赦なく岡田以蔵を貫く

 

「あいつの飼い犬如きに手間取っている場合じゃないんでな、行くぞリツカ」

 

 

 

 

 

 

      『雲耀・瞬光』

 

 

 

閃光がセイバーくんを斬り捨てる

 

 

「……いったじゃろう、いかせぬとなぁ」

剣の雨に貫かれて穴だらけの岡田以蔵は立っている

 

巻きもどしのように再生していく岡田以蔵

 

「貴様……」

 

「ほんと不死になりよったわ、姫さんの実験体とはきにいらんがの」

完全に元に戻り下卑た笑みを浮かべ再度構える

 

不死の侍は躙り寄る

 

「不死だなんてどうしたら……」

 

おぞましさを岡田以蔵から感じ悪寒が走る

 

 

「不死とはどうせからくりがあるだろう、実験体とかぬかしてたし不完全だろ……燃やし尽くてやろう」

 

隕鉄の鞴『原初の火』を投影

 

「…くく、なら打ち破ってみるがええが。儂が斬り捨てる前になぁ!!」

 

狂気に狂う、剣に狂った剣鬼は大地を蹴り斬り掛かる

 

隕鉄の鞴は火焔を上げる、セイバーくんは下段から打ち払い岡田以蔵の攻撃を防ぐ

 

「防ぐ…ぎゃ!!」

眉間に剣弾を撃ち込みさらに鞴で叩きつける

 

 

「不死で慢心してるのか防御が、おろそかだぞ」

 

「そう思うのはきさんだけじゃ『赫月』」

巻きもどしのようにまた再生していく

 

「ちぃ……」

 

剣弾は抜け落ち霧散する

 

不死…………いたっ!……なにこれ

 

私の左手の甲が焼けるように痛かった、左手の甲を見る

 

…………令呪?

 

令呪に、似た紋様が左手の甲にも刻まれていた



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第19話「最強を斬る②/剣鬼を斬る②」

『みんな守れなかった』

 

悔恨と未練が逆巻く

 

『救えなかった』  

 

憎悪や殺意が渦巻き、死んだ後も離れなかった

 

 

『屍竜のライダー』

全ての根の邪悪、奴への憎悪、殺意のみが俺に残っていた

 

インクルシオに食われタツミという自我は無くなった

 

けどこの暴風雨のような殺意と憎悪のみは逆にインクルシオに伝播した

 

クラスカードというものに残った

 

『アァコロシテヤルゾライダー』

 

ただ機を待つ、殺意という刃を研ぎながら

 

憎悪という煮をぐつぐつと煮立てながら

 

殺意は刃で憎悪は煉獄の釜だった

 

憎悪は存在理由で殺意は動力だ

 

『……ライダーハオレニコロサセテクレ』

 

『アヴェンジャー・インクルシオ』とクラスカードへ変化する

 

 

 

 

 

沖田総司・織田信長対エスデス

 

 

「ちと、準備がいる。一旦波旬をきる。持たせろよ沖田」

近くに居る沖田に目線を送る

「……はやくしてくださいよノブ、そもそも何するつもりですか」

 

「さきの聖杯戦争の遺物じゃよ、……キャスターめやらで使う機会が無かったので死蔵していたのをおもいだした。作らせてたやつをの」

波旬をきる、ところどころ焼かれている信長

ち、そもそも波旬は諸刃の剣

 

「……ガス欠か、くくく私の氷を封殺していたがよかったのか」

エスデスは笑う

 

「……頼みますよ」

構え直しエスデスに対して打ち込む沖田

 

「策を十二分に労せ、私を楽しませろナイトレイド!!」

 

波旬は無くなったが残り火は囲んでいた、それでも波旬の火力に比べ心許ない

 

エスデスは氷を精製、恐らく全開時ほどではないだろうが精製できている

 

矢のように氷を射出してくるエスデス

 

縮地、直感を使用し回避

 

下段、中段、上段と繰り返し打ち込む

 

超速の打ち込みを苦も無く対応し弾くエスデス

 

「…トップサーヴァント級という立火の読みにも納得です」

 

表のグランドオーダーで活躍するトップサーヴァント達にも引けをとらない強さ

 

「いつの時代、世界にも化け物は居ると言うことですね」

 

 

「……私に瞬殺されないとはさすがはアカメの『村雨』を持つだけはあるな。」

笑うエスデス

「貴女を倒してくれと託されましたから……彼女の遺志に報いさせていただきます」

 

平晴眼の構え

 

呼吸を整える沖田

 

「……く、なら十二分楽しませろ」  

 

エスデスも挑発するように構える

誘っているのか先程ような堅固な守りではない

 

「…………『一歩音越え』」

 

沖田の、姿は消える

 

エスデスは一瞬眉をひそめるがすぐに対応する

 

「『二歩無間』」

 

空を蹴り間合いを背後より詰める

 

一歩目で音を越え、二歩目で間を無くす

 

 

 

 

「『三歩絶刀』」

 

エスデスの目の前にて姿を現す

 

 

      「『無明三段突き』!!」

 

 

 

「ああ、見えてるぞ……なるほど『同時に』、『三度突く』のか、恐ろしい技だな」

 

ニヤリと笑うエスデス

 

剣ははじかれ穿っていたのは地面だった

 

「な!!?」

 

 

エスデスに向けて放たれた魔剣はエスデスを傷つけるに至らなかった

 

(見切ったのか、初見で私の剣を……!!?)

 

 

なんて……化け物…!

 

と内心毒づきながら歯軋りする

自身の最大の技を否定され打ち破られるのは酷くむかつきますねと軽く舌打ちする

 

「ノブ…!」

 

沖田は後退し距離を取る

 

 

「ああ、準備ができたぞ」

 

「なんですかそれは!!?」

 

「88㎜対空射砲台……通称アハトアハトじゃ。……くくく、進化した銃火器の近代の科学力は素晴らしいのぅ……あの時にこれがあれば『天下布武』し放題じゃったのぅ」

 

強大な砲台がそこにあった

 

対戦車用の 砲台、無機質な殺意がそこにある

 

かつての第二次世界大戦でドイツ軍が使用した88㎜野戦空射砲

その88㎜という大口径からアハトアハトと呼ばれた

 

対航空機で高速の弾速もゆうし対戦車としても設計された

 

 

「かの少佐も素晴らしいといっていた」

 

「ほぅ」

 

「死ね、エスデス」

信長は簡潔な言葉と共にアハトアハトを発射させる

 

爆音が響き渡る

重々しい爆音共に閃光が放たれた

 

「素晴らしい!!素晴らしい威力じゃのぅ!!これはただの砲台ではない!!魔術的に手を加えておる対英霊砲台じゃ!!貴様のような相手にも有効の筈じゃ!!」

 

「……騎乗スキル持ちとかに放つモノじゃないですか」

 

「オーバーキルになれば上々じゃ、慢心なぞ捨て置け沖田」

 

「貴女からそんな言葉聞くとは思いませんでしたねノブ…これで終わるとは思いません」

 

軽口をお互い叩きながら構える

 

「はははは!!大したこと威力だな!!」

 

黒煙が晴れると何層にも張られたであろう氷の壁を抉るのみにとどまる惨状だけがエスデスの前にあった

 

「…ちぃ、化け物め」

 

「ノブ…次弾を!!」

 

「急かすではない!」

 

「させるか」エスデスは再射させないため即座に距離を詰めアハトアハトに触れる

 

野戦空射砲台を凍らすエスデス

蹴り飛ばし破砕される

 

「ちぃ!!」

 

ふたりは跳躍し左右に飛ぶ

 

「…ふふ、これで終わりか楽しませろ」

 

獲物を狙う嗜虐的な笑みを浮かべる

 

 

「仕方ない……この段階で使うつもりはなかったが……立火使うぞ」

 

クラスカードを取りだす

剣士のカード

 

「儂が先に使う、立火への負担を考えてな。先のW重装夢幻召喚は立火はフィードバックで気絶しておる」

 

「はい仕方ないですね」

 

信長は魔力をカードにとおしかざし略式発動する、既にマスターである立火から使用許可はおりている

 

 

「『重装夢幻召喚(インストールアームド)』!!」

 

 

セイバー・黒崎一護

 

 

英雄を纏う

 

光を放ち姿を変える

 

死神のすがたとなり身の丈程の大刀を構える

 

「セイバーとアーチャーのWクラスじゃ」

 

「よくわからんが…楽しませてくれるようだな…一応名前を聞いとこうかナイトレイド」

 

「織田信長」

 

「沖田総司」

 

「オダにオキタか覚えておこう」

ニヤリと笑い氷の矢を展開して放つエスデス

 

「……儂が攪乱する。機を待て沖田、『村雨』で斬る機会をな」

 

沖田は無言で頷き大地を蹴るふたり

 

 

 

 

『赫月のセイバー』対岡田以蔵

 

 

蹂躙と再生を繰り返しいたちごっこになっていた

 

セイバーくんの攻撃は緩まない

 

けどその度再生をし立ちはだかる

 

不死がなければ…とうにおわっていたのかもしれない

 

「ががっ……魔力切れがちかいんじゃないか………?」

 

「そちらも……再生にもエネルギーがいるんじゃないか」

 

「残念じゃけぇ、儂の魔力とはあまり関係ないぞ……わりかし燃費良くてなぁ……くくく」

ニタニタ笑う岡田以蔵

 

ふたりは距離を取り対峙する

 

…………まるで流体物質を相手しているようで効果がない

糠に釘だ

 

「……ぁ」

 

令呪が輝き一画減る。信長が重装夢幻召喚使用したようだ

 

「………信長がつかったか」

 

「ごめん、タツミ君の使えないかも」

 

「いや、アヴェンジャーのカードになった時点で使うつもりはない……恐らく己もインクルシオに取り込まれる」

依然として私のカードホルダーから禍々しさを放っているアヴェンジャーのクラスカードに視線がいく

 

「…………」

 

 

「……岡田以蔵め……こいつをクリアしなければ『屍竜のライダー』も倒せそうにない」

 

「正論よなぁ、姫さんも不死になってるがか」

 

だよね……不死に……不死かぁ

 

「不死にも種類があるがな……術式なら良いんだが……呪いの類なら厄介だな」

 

鞴は霧散する

 

「………投影開始」

 

セイバーくん?

 

「……何を創り出しても無駄じゃぁ……負けて死ね『赫月のセイバー』、…『不死』を得てすべてを殺し尽くす」

 

「……禍神に与して何を望む?岡田以蔵」

 

 

「知れたこと、儂の剣が最強だと証明するだけじゃぁ…『人斬り』は斬ってこそ『人斬り』よ。儂は禍神なんぞ与するつもりはねぇが……姫さんとも利用されてようがこちらも利用してるだけのことよ。主従なんざ真っ平ごめんよ」

 

「だが、沖田と織田は先の戦争で気に食わんかったからのぅ……ランサーや坂本がいないのは残念だがなぁ」

ぺっと、唾を吐き捨てる岡田以蔵

 

「つまらんおしゃべりは、おしまいじゃ……潔く死ねや」

上段に構える

 

 

 

「……そうだな、お前がどういった理由があろうとも『禍神転生者』といただけで万死に値する」

 

 

 

「転写投影」

 

 

 

 

『斬魄刀』を一振り投影する

 

 

ただの一振りの『浅打』を投影する

 

「斬魄刀…?」

 

「ただの刀じゃ………」

 

「焦がせ、『火神楽』」

 

解号を静かに呼ぶと『始解』する

 

 

赫杓と燃える赤い刀へ変化する

 

「……知らない……斬魄刀…?」

 

 

「そんな赤い刀で『不死』を攻略できるわけなか!!」



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第20話「不死姫が踊る①」

エスデス将軍の不在

 

オダとオキタの足止めにより前線にはエスデス将軍がいないことが功を成していた

 

ブドー大将軍も皇帝と宮殿の守護のため宮殿を離れられないため前線には来ないだろう

 

反乱軍の帝具持ちを中心に進軍する

 

 

「……藤丸さん達、うまく足止めしてくれてますね」

 

「エスデス将軍と交戦しているようだな」

 

マスティマとグランシャリオの機動力で遊撃しているランとウェイブは一旦あつまっていた

 

「……そうですね、…………倒せるといいのですが……」

なまじエスデス将軍の力を間近で見ていたせいか不安は残る

 

正真正銘の怪物、戦いを好み戦場を生き恐らく生涯戦場にあるだろう戦闘狂のドS…彼女の戦いを何度か見たが……未だ底が知れない

 

「彼らの力もまた……未知数ですが」

 

「『帝具』を持たない身で渡り合い、俺たちの知らない力を持っている…離反した身だ、奴らを信頼しようぜラン」

 

「ええ、そうですね」

一抹の不安を感じながら祈るしか無かった

 

 

 

 

宮殿

 

「ふぅむ、……エスデス将軍が足止めされてうまく攻め切れてないようですなぁ」

 

オネスト大臣は忌々しげに話す

 

「そーですねぇ忌々しいですねぇ」

 

「エスデス将軍を足止めできるほどの敵がいるのか……大丈夫か大臣」

不安そうな皇帝はポツリと言う

「大丈夫でしょう、彼女は戦いを楽しむ傾向にありますが……仕事はいつもこなしてくれてます」

 

「う、うむ……ならいいのだ」

 

 

「…………『至高の帝具』使うタイミングでは?エスデス様もいない今…皇帝様の『覇』を示すにはいい機会かと」

『屍竜のライダー』はそう進言する

 

「そうですねぇ…………確かに戦況は一気に変わります。あれは皇帝にしかつかえませんし」

 

「あ、え……?」

幼い皇帝は困惑する

 

「ですから皇帝閣下、愚鈍な反乱軍を滅ぼし『覇』を示すのです。あなたの代で千年帝国を終わらす訳にはいかないでしょう?」

 

「う、うむ……そうだな……」

 

悪魔の囁きのようにオネスト大臣は幼い皇帝を鼓舞する

 

「貴様、幼い皇帝を戦場にだすつもりか?大臣、恥を知れ」

 

ブドー大将軍が入ってくる

 

(あー本来の世界軸じゃ死んでるから異議申し立ても無かったんだったか、面倒くさいなぁ)

 

ライダーはブドー大将軍を見て軽く舌打ちする

顔は笑顔のまま

 

………………殺すか、『至高の帝具』さえあればいらないし…死体にしたほうが好都合だね

 

「まぁ。そうですねぇ……ブドー大将軍今までお疲れさまでした」オネスト大臣は下卑た笑みを浮かべる

 

「死んで貰いますね☆」

 

 ライダーは『八房』を抜刀

 

「きさまら!!」

 

「大臣!!?ライダー殿!!?」

 

 

「……宮殿を戦場にしたくないが致し方なし!!『アドラメレク』!!」

雷を纏うブドーはライダーへ向け雷撃を放つ

 

「ぐぎゃ!!」

雷撃をまともに食らい、窓より外へ吹き飛ばされる

 

「……これで終わるわけはないな!!小娘が!!」

 

ブドーは知っていた

彼女の狡猾さを、大臣を相手取り暗殺され続け撃退し続ける事を

 

ブドーは相手を侮らず追撃し中庭に落ちたライダーをおう

 

「だ、大臣……?」

 

「……ブドー大将軍はあなたの『覇』に反対しているのです。ですが守られている皇帝に誰がついて来れましょう。この一大事に『覇』を示す事こそ皇帝の職務ですぞ!『至高の帝具』を持って悪徒に裁きを下し千年帝国の礎を築くのです」

 

「そ、そうだな…余は父上や先代の皇帝達に恥じぬ皇帝にならなければならぬ!!」

 

「さすがですぞ、さぁさぁ…『至高の帝具』を起動させましょう」

ニヤリと下卑た笑みを皇帝に見えぬよう浮かべ皇帝を促す

 

 

中庭

 

「…小娘、死んでないのは知っている。」

 

中庭の花壇に倒れ焼き焦がされ倒れるライダーの姿がある

 

「……ばれた、さすが百戦錬磨の大将軍。」

立ち上がり再生

 

「……その再生力……『帝具』か」

 

「…さぁ、どうでしょ……私の帝具は『八房』ですよ。」

 

「貴様がもう一つ帝具を隠し持っているのは知っている……二つの帝具を扱うとはにわかに信じがたいがな」

ブドーは吐き捨てるように言う

バチバチと帯電し臨戦態勢を崩さない

 

雷神憤怒『アドラメレク』

天候をも操る雷撃系の帝具

攻撃力、攻撃範囲、速度

全帝具において恐らく最強にちかい

 

「いいですねぇ、その帝具……貰いますね」

 

「貴様には扱いきれん諦めろ」

 

ライダーへ向かい雷撃、稲妻が落ちる

 

まともに食らい全身が炭化する

 

即座に再生。服まで元通りになっている

 

「気色悪い小娘だ」

嫌悪感を示し眉をひそめるブドー

 

「あら、こんな麗しい乙女に対してそれは酷い言い草。」

八房を振るうが鎧でガードされる

 

「……気色悪いのは貴様がエスデスの下についた時初めて見たときから変わらん……何を企んでるかわからん笑顔でいたからな……とんだ狸よ、大臣すら貴様の手中か」

エスデスが、結成した帝具持ちの少数精鋭の秘密警察イェーガーズに入ってきた異物。調べても元の所属部隊がどこかは判らなかった。エスデスは意に介して無かった。強ければよいと弱肉強食を体現している奴には細かい事だったであろう。

私としてはどこかわからない異物として目を光らせてはいた

最初に目に入ったのはイェーガーズに入ってから幾分かたってからだ…目立つようになってきた頃合だ

大臣にも目をつけられ厄介になるであろうと大臣に暗殺されようとなったが全て撃退し続ける

……明らかに異常であった、いずれ手に余るであろうと確信した

 

「『千年帝国』の継続、それは貴方の職務でしょうブドー大将軍。………私が貴方を使って差し上げます我が骸人形としてね」

 

「貴様、帝国を乗っ取るつもりか!!」

 

「……盤上の駒が吠えるなよ、ここは私の『支配特異点』になるんだ。笑わすなよ……あぁ細君は『至高の帝具』という兵器として使ってやるから安心しろよブドー」

 

「やはり貴様は……ここで死ね!!『雷神招来!!』」

 

中庭の上空に、黒雲が現れ雷雲となり稲妻が幾重に降り注ぐ

 

 

「……貴様という異物を排除してやる『屍竜のライダー』」

 

 

「出来るならどーぞ」

 

馬鹿にしたような笑みを浮かべ嘲る

見た目は少女だが最初からブドーには少女の皮を被った怪物にしか、見えてなかった

 

おぞましいそれは笑う

 

「灰すらのこさん、死ぬが良い」

 

全雷撃を集中させライダーを狙いうとうとするが既に姿が無かった

 

 

「ごめんなさーい、やっぱりいらないや」

 

 

背後に立っていた、いつの間にか

雷撃の速度を超えているのかこいつは

 

 

「……これ、なんだ?ブドー」

 

手には未だ脈動する心臓を持っていた

 

誰のだ、

 

「……貴様……」

 

 

「じゃね、永遠にさようなら。」

下卑た笑みを浮かべ手に握られたブドーの心臓を握りつぶす

 

ブドーの体は崩れ落ちる

 

「あっははははは、異を唱えなければ死ぬこと無かったのに、……あぁ私に不信感を抱かなければよかったのにねぇ……ああ、ドロテアちゃんいたの?」

 

「ブドー大将軍、殺してよかったのか」

 

「よくよく考えたら死体じゃ大将軍職出来ないしねぇ……暗殺されたことにしよ。」

 

「……じゃが……どうする」

 

「『至高の帝具』に『命を繋ぐモノ』を混ぜ込む作業は終わった?」

 

「あ、あぁ…もうしばらくで終わる」

 

「じゃ、『至高の帝具』で蹂躙して終わりだね……私も出るし」

 

「……こんなとこで躓いてる場合じゃない、……『次元聖杯戦争』を勝ち抜かなきゃ……腐る前に……擬似的な『不死』を本物にしなきゃ……」

 

ぼそりとドロテアに気づかぬよう呟いた



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第21話「剣鬼を斬る③」

「焦がせ、『火神楽』」

 

解号と共に赫杓と燃える赤い刀がセイバーくんの手に握られている

放たれる熱気と霊圧は紛れもなく

 

 

斬魄刀、死神の力の象徴

 

「…誰の……斬魄刀……?」

 

知らない、炎熱系斬魄刀は『流刃若火』と『剡月』だけだった気がする

 

「己のだ、『浅打』を投影し己の魂を転写した」

 

まぁ斬魄刀擬きだと呟いた

 

その赤い刀を見て岡田以蔵は眉をひそめる

 

 

「……きさんのギフトスキルかぁ……?」

 

警戒するかのように下段に構える岡田以蔵

 

「…………さてな、岡田以蔵……」

 

一瞬で間合いを詰める…『瞬歩』!!?…………黒崎さんをインストールしているのは信長じゃ…

 

         『剡呪点睛』

 

焔を纏う剣戟を撃つ、討つ、伐つ

陽炎のような残炎をあとにしながら打ち付ける

 

「きさんが……タダの燃えちょる剣じゃぁ……!!」

 

剣戟を刀で打ち返し防ぐ

 

「…………」無言で顎をくいとするセイバーくん

 

 

「……!?」

岡田以蔵の刀が打ち返した箇所が燃える

すぐに燃え広がり刀は灰となる

 

「きさん…!」きっと睨みつける岡田以蔵

 

憤怒の表情浮かべる

 

 

「獲物をやられたくらいでぎゃあぎゃあ騒ぐんじゃねぇ、『人斬り』……まさか武士道に反するとかほざきゃあしないよな?…」

セイバーくんらしくなく挑発する

 

「あほくせぇ…!……つくづく気に食わん男よのぅ『赫月のセイバー』!!」

腰に差したもう一振りの刀を抜く岡田以蔵

 

烈火のような怒気を纏い構える岡田以蔵に対して構える赫杓の刃とは対象に冷静なセイバーくん

 

お互いの距離は三間程、……すぐに動き斬りあう

 

回避と回避

 

岡田以蔵は先程とは打って変わり打ち合う事無く回避しながら斬りあう

 

燃える赤い刀を警戒する

 

 

「…………セイバーくん…………」

 

烈火と零下の殺意はぶつかり合い場を焦がす

 

私の目には終えない速度の領域で打ち合う

 

瞬歩と岡田以蔵は恐らく縮地と並ぶ歩法で並びついていく

 

 

「気にくわねぇ……気にくわねぇが!!『赫月のセイバー』!!」

 

距離を通り上段に構える、集中力、威圧が高まる

 

閃光の居合いか雷の一撃か……!……構えが微妙に違う……?

 

 

    

 

 

岡田以蔵の姿が消える

 

 

すぐさま間合いを詰められる

 

下卑た笑みだ、屍竜のライダーと共通する笑みを浮かべる

 

即座に反応、迎撃しようと赫杓刀を振るうが空を切った

 

 

「セイバーくん!!」

 

真横にスライドするように移動していた

 

      

 

     『雲耀・疾風』

 

 

竜巻が如き一撃を振るう

 

3種類の雲耀の一つ

 

雲耀全ては二ノ太刀要らずの『魔剣』

 

 

「死ねや!!セイバー!!」

 

躱せない、躱せないと思った一撃が空を切る 

 

「あ…!!?」

 

岡田以蔵の一撃は地面を砕くだけに終わる

 

残すばかりは残炎、陽炎のように微かに炎がその場に残る

 

     『剡呪点睛・穿狼』

 

 

矢のような刺突が岡田以蔵を貫く

 

岡田以蔵の背後、50メートル離れた場所からそれは放たれていた

 

「きさん、…………ち、……」

 

憎悪の表情を浮かべさらに睨みつける岡田以蔵

 

胸を貫かれたが修復するが……傷跡は燃えて焦がしている

 

 

「……再生はするが、そこの傷をつけた箇所には燃え焦がす呪いが付与させた、呪いまで再生しないようだから問題無用の再生、時間回帰、事象拒絶ではないようだな」

 

再生→燃える→再生→燃えるの繰り返しを行われているよう

 

「…ぐっ……たかがこれぐらいの傷を付けたくらいで喜ぶんじゃなか!!……ち、姫さんめ使えというんか」

軽く舌打ちすると魔力が増幅する…!!?

禍禍しい魔力の展開……宝具の開帳……!?

 

     禍神宝具『始末剣・剣理無天』

 

 

突如の宝具展開、異様な禍禍しさを岡田以蔵が内包する

 

異様な殺意がこちらの身体を弛緩させる

 

 

『禍神宝具(イーヴィルファンタズム)』……?

 

 

「…………禍神の恩恵を受けた宝具か」

 

セイバーくんは顔を顰め睨みつける

 

「そうじゃ、儂は使いとう無かったがのぅ……姫さんの力の恩恵じゃからなぁ……儂は儂の力でなぁ……だがなぁ……姫さんは儂に負けはゆるさんらしいぜよ」

真っ赤に爛々と輝く眼に闇のような魔力を沼のように纏った異様な姿だった

 

 

「……『赫月のセイバー』とカルデアのマスターを殺せ……姫さんも本気らしいぜよ」

 

くっとヘラヘラ笑う岡田以蔵、燃える傷跡は崩壊と再生を繰り返すが意に介していない

 

「……『始末剣・剣理無天』は全ての剣理を同時に出せるのよ、このようになぁ!!」

 

 

      『雲耀・瞬光』『雲耀・迅雷』

 

『始末剣・剣理無天』…剣理の模倣の宝具『始末剣』を悪成長させたもの。同時に剣理を発現させるという物理法則を無視する悪理

一瞬にて間合いを詰め閃光の一撃で『火神楽』をはじき飛ばし不可能な稼働をし稲妻が如き一撃をセイバーへ放つ

 

「ぐっ!!?」

 

「…赤い刀を握って無ければ炎になれんようじゃのぅ!!」

 

高笑いをしながら次撃を加えたあと蹴り飛ばす

 

セイバーくんは崖に叩きつけられる

 

「……儂の剣理の檻から逃げられんぞ!『赫月』ぃ!!」

 

「セイバーくん!!……いた……!…」

 

え……?何これ……?さっきいつの間にか刻まれた紋様が拡大している……?

 

 

袖をまくると私の腕に肘までに刻まれた刻印があった

 

……『魔術刻印』…?私はメイガスでもウィザードでもない…のに

 

 

「リツカ……?」

 

 

知らない知識がまた更新されていく

 

寄贈知識群…更新……その刻印の名は

 

 

魔術刻印『凍結させる左腕(フリーズレフト)』

 

 

頭が異様に冴えていた 

自分が自分じゃない違和感、高揚感

 

違和感はイヤな感じではなく万能感にちかい

 

魔術回路は本来無いはずの私の身体に魔術刻印が擬似的な魔術回路を生成し魔力を走らせていた

 

セイバーくんに岡田以蔵二人とも此方を見る

 

いきなりの私の変容に視線が集まる

 

 

「……リツカ……?『あの時』のようなトランス状態か」

 

『力を貸そうじゃないか、藤丸立火』

 

 

 

 

『キミは禍神を殺さなければならない』

 

頭に響く声と同時に私は私じゃなくなった

 

「……『赫月のセイバー』、アサシンの機能を停止させる。」

 

私の口は私の意思を無視し言葉を並べる

 

魔術刻印はいつの間にか私の顔まで浸食していた

 

え、……身体も……動かせない

 

 

「リツカ…?…お前は誰だ」

 

 

「安心しろ、『赫月のセイバー』……キミ達を補佐する者だよ。……この子はまだ未熟だ『禍神殺し』として成長して貰わなきゃならない」

 

え、『禍神殺し』……?なに……え、わからない……

 

「『禍ツ聖杯』の孵化がもう近い……『イーヴィルサーヴァント』に手こずっている場合じゃないよ」

 

 

 

「藤丸立火。………今さらだけど……キミの在り方の手本を見せよう」

 

全身に魔術刻印を展開し魔力が十全に走り抜ける

 

 

「…………きさんが『禍神』共の天敵か」

 

 

「さてね。岡田以蔵、…キミは本来のキミじゃないよ『禍神』に染まった別方面のサーヴァント……オルタナティブではなく『イーヴィル』……キミらの言い方じゃ悪望だったか」

 

……悪望……?

 

「……関係なかぁ!!儂は儂じゃ!!」

 

 

「まぁ滅するだけだよ『転生者権限術式(リバーサーキャスト)』……『氷縛式・歩』」

 

私の身体を刻む刻印が輝く、左腕を振るわれる

 

「な、動かん…!!?」

 

「キミの足の機能を奪った」

 

私は……私じゃない口はそれを言う

 

 

「……次はその『不死』の術式の機能を奪うよ、『転生者権限術式』『氷縛式・不死』」

 

「たかが術式如きが『禍ツ聖杯』の機能を奪えるわけなかぁ!!」

 

 

「試してみるがいい、藤丸立火。これがキミが至る到達点だ」

 

術式を展開し術式の網が岡田以蔵を縛る

 

「やれ、……『赫月のセイバー』」

 

 

「……こんな終わり方は認めんぜよ!!儂はここで終わるわけにはいかんのじゃ!!儂は!!」

 

 

      『剡呪点睛』!!

 

赫杓と燃える袈裟切りをセイバーくんは放つ

 

袈裟切りを喰らった岡田以蔵は再生をせず燃える

 

「赫月ぃ!!藤丸立火!!儂は認めん!!認めん!」

 

呪いの咆吼のように怨嗟を叫ぶ岡田以蔵

 

血涙を流し憎悪の表情をこちらに向ける

 

「儂はきさんらに負けた訳じゃないぜよ!!」

 

と言ったと同時に燃え尽き霧散する

 

「………」

 

私はガクッと力が抜ける。岡田以蔵が居なくなったと同時に私の中から超越した魔力が消え刻印は右腕の令呪と同じくらいのが左腕に刻まれていた

 

力が入らない。行き過ぎた知識と魔力行使の後がのこる

 

『禍神殺し』……?……何だろうこの納得のいかない感じ……

 

「私はクロスオーダーの適正マスターとして転生しただけじゃ無いの…?」

 

「…………リツカ、戸惑いも納得いかない感じも分かる……けどまだ『屍竜のライダー』がいる。」

 

「うん、わかってるよ……行こう」

 

ふらふらしながらも立ち上がる

先程までの高揚感はなく訳が分からない不快感しかなかった

 

 

 

 

 

 

 

「こんなものか、オキタにオダ!私は満足してないぞ?」

高笑いをし信長を掴むエスデス

 

沖田は地面に突っ伏していた

 

「沖田…………く、力の差がこれほどとはな……」

 

周りの波旬による炎は焼け野原にしていたが既に鎮火し凍てつく凍土と化している

 

「……ノブ……」

フラフラと立ち上がるが利き腕は凍結し左手で村雨を握る沖田

 

「は、お互い満身創痍じゃの、……やはりラスボス生半可には行かぬか……」

皮肉げに笑う信長

 

「ここまでなら残念だ、いやなになかなか楽しめたぞ」

エスデスは笑い信長の首を断とうとする

 

「…………融合宝具…卍解『天を鎖す三千世界(さんだんてんうち)』」

 

二丁の黒い火縄銃を構える

 

「…まだじゃな、儂の死力をくらい楽しめよエスデス!!」

 

発砲しエスデスを引き離す

 

      『月牙天衝』!!

 

銃口より放たれる『斬撃』

 

 

「…………ほう、斬撃を撃つとはおもしろいな」

 

「死力を尽くすのだ、儂のような、天下人がなぁ……ただで死ねると思うなよエスデス」

信長は笑いエスデスも笑う

 



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第22話「最強を斬る③~魔神降臨~」

帝国最強の、女エスデス

 

氷の帝具を扱う。雷の帝具『アドラメレク』と並び天候をも操る危険種の血の帝具『デモンズエキス』を内包する女

 

つまりエスデス自身が帝具となっているに等しい

そのため『帝具』を『破壊』するという選択肢はない

 

 

それ以前に『帝具』の有無関係なくこの女は強すぎる

 

破壊する選択肢があったとしても…………変わらなかったかもしれない

 

戦うために生きる怪物を前にして沖田は……歯軋りする

 

(なんですか、この人は……)

 

 

氷の能力を捨てても攻撃力、回避能力、状況判断力その他全て戦闘に必要な能力全て超越した力を持っているの断言していい化け物

 

 

神代の英霊でもつれてこいって言われても違和感はない

 

……いや、そこまでは言い過ぎ……かな

 

 

彼女が人間であること

 

 

死ねば死ぬ、…………『屍竜のライダー』の狙いは彼女を『不死』にすること

 

まだ……なってはいないようだ……多少信長が傷を付けたが回復するような、様子はない

 

 

逆に言えば……今が最後の機会だと……いうことだ

 

 

『不死』になれば『村雨』でも殺せなくなる

 

「…………ノブ…………………………!!」

 

 

 

 

 

 

融合宝具『卍解・天を鎖す三千世界』

さんだんてんうちは信長の宝具に『黒崎一護』の卍解の力を内包し融合させた宝具

 

黒い火縄銃はその証。黒い刀『天鎖斬月』を彷彿させる

 

力の融合は英霊が英霊を纏う『重装夢幻召喚』の恩恵

 

『禍神転生』に対抗するための力

 

黒い火縄銃は彼の技『月牙天衝』の斬撃を弾丸として放つもの

 

「うてぃ!」

 

信長は『天鎖斬月』の特性高速戦闘で場を掻き乱しながらエスデスを攻める

 

火縄銃の数も本来の『三千世界』よりは少ない

 

高速戦闘しながら全て操るにはむずかしく最少に抑える

 

放つのは『斬撃』

 

点ではなく線の放射だから中々に難しい

 

が囲む

 

自身が持つ二丁、エスデスの背後をとる二丁が対角線でエスデスを囲むように撃ち抜く

 

がエスデスは氷で防ぐ

 

 

「はは、中々に面白い趣向だなオダ……つくづく惜しい。見た目は麗しい少女だ……私の下につけば悪いようにはしないが?」

 

「儂が下につくような女に見えるか」

 

 

「見えんな」エスデスは笑いはっきりと言い捨てる

 

 

「儂は魔王じゃ。しかもおおうつけもんじゃて…下につくとなれば必ず主人を食い殺す。そんな女よ」

 

くくっと笑う

 

「儂の死に様は反乱よ……くくっ……そんな提案するだけあほぅじゃ!」

 

二丁の黒い火縄銃は『黒い月牙』を放つ

 

威力は先程より段違い。先程挟んだ氷の壁を砕き吹き飛ばす

 

と同時にエスデスの、眼前には信長

 

間合いを詰める

 

信長は仮面を付けていた

 

「……虚化!?」

 

沖田にも『彼の力』の由来、世界の知識を信長と共にマスターの知識として共有していた

 

相反する力と共に壁を越える力

 

『死神の虚化』

 

 

増幅する力と共に信長は次撃を放つ

 

二丁の黒い火縄銃には本来の火縄銃のリロードする作業はいらない

 

魔力……今は信長の霊力を喰らって装弾している

すぐさま装弾、発砲したらすぐに自動的に魔力を喰らい装弾している模様

 

次弾は初めてエスデスを大きく傷つけた

 

肩を斬りつけるよう切り傷が出来、鮮血が舞う

 

「く、……さすがに驚いた」

エスデスは反射的に後方へ大きく飛ぶ

 

肩の切り傷を凍結し止血する

 

「儂的には浅くてショックだがな」

仮面をつけ黒い眼で睨めつける信長

 

「私を傷つけた奴なんて久しぶりだ、誇るがいい」

 

「その情報もいらなかったな………」

 

「なに、……褒美にもう少し本気を出してやろう『氷嵐大将軍』!!」

 

エスデスは叫び天候が変わる

少しずつ吹雪いていく

 

BLEACH的に言えば…氷輪丸の天相従臨に似ていた

 

 

「ここら辺一帯を吹雪にする。吹雪けば吹雪く程氷の威力は上がる。……耐性のない貴様らは体温が低下し思った通りは動けまい。さぁ先程の炎の力でも出せばなるまい?」

薄く微笑する。蛇のように獲物に狙いを定める

 

戦いを愉しんでいる

 

「……戦いを楽しむの理解出来んな。」 

 

「貴様ほどの強者に理解できんとはな」

 

「…………儂は『結果』が欲しくて生前戦ったわ。『天下布武』するためにの。そのために『敵』を倒し打ち負かしてきた」

じゃがと続ける

 

「エスデス、貴様は『結果』より『過程』に重きをおいてるの、……強者たる所以かもしれぬが……貴様、貴様がたのしめれば最悪、『帝国』が滅んでも構わぬようじゃの」

 

「…否定は出来んな、『帝国』が一番私に戦いをもたらしてくれてるからな。利害の一致……そもそもブドーほどの忠誠心はないな」

くっとエスデスは笑う

 

そんなわかりきった事をと言わんばかりに

 

 

「…………この嵐を止めなければ……反乱軍の進軍にも影響をも出よう……なればもともとの手筈通り死力を賭して儂は貴様を殺すぞエスデス」

 

信長は魔力を……彼から流れてくる霊力を集中する

自身の魂とより濃く深く…融合させるために

 

「力を貸せ、顔も知らぬ英雄よ……儂が儂であるために…我が主にて友、立火のためにも」

 

 

「来い、オダ…死力を尽くし私を殺してみろ」

 

信長から放たれる殺意に沖田もぴりっと震える

 

(……ノブ……)

 

 

魔力の放流は自身の身体を駆け抜け余波として溢れて出る

 

(倒せ、倒せ、倒せ)

 

 

 

 

『護る!!』

 

 

迸る魔力は、再び火炎の波濤へと変異する

 

まだ猛吹雪の中のか弱い焔であるが信長の意思のように硬く燃え続ける

 

 

    融合宝具『虚現式・第六天魔王波旬』

 

 

その姿は黒崎一護の『完全虚化』した姿だった

 

炎の霊圧は纏うそれは霊圧を全て『完全虚化』したもの

 

波旬の際に出る際の髑髏を完全虚化し信長はそれを纏っていた

 

『がぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!』

 

咆吼する。まるで獣 

咆吼は猛吹雪を吹き飛ばす

 

 

 

「………狂化付与……まるでバーサーカーですね…」

 

沖田は唖然として呟くと同時に角に霊圧が収束する

 

    『煉獄虚閃(インフェルノセロ)』

 

 

膨大な熱量を持った虚閃が放たれる

 

猛吹雪を断つように一閃が放たれ、跡は吹雪に負けず燃えている

 

「はっははははは!!大した威力だな!!!自我を捨てて私に、掛かってくるか織田信長!!」

 

 

完全虚化した信長はエスデスをねめつけ、狙いを定める

 

 

「………………!?」

 

その、瞬間エスデスはしばらく忘れていた悪寒が奔った

 

それはまずいとエスデスは理解する

 

あれはエスデスを殺せる攻撃だと理解する

 

 

……今までここ何年間は無かった感覚

 

 

命の危険を脅かすモノ、生命の危機

常に奪う側であったが故の長らく忘れていた感覚

 

 

     『摩訶鉢特摩(マカハドマ)!!』

 

 

反射的に『空間』を凍結する

 

8大地獄の第八『大紅蓮地獄』の名を冠するエスデスの奥の手

 

『空間』を固定して凍結させるという理不尽

 

 

「くっくく、使わざる得なかったぞ織田信長……恐ろしい女よ…………そんな貴様に敬意を表し……殺してやろう」

 

 

エスデスは固まる信長に近付き剣で貫く

 

 

 

その次の瞬間、凍結は解除される

 

「がはっ!?」

信長は吐血する、自身の貫かれた姿を見る

 

完全虚化は解けていた

 

 

「ノブ…!!?どうして……!?」

 

沖田は驚愕し唖然とする。攻めていた信長が貫かれていたのだから

 

「ぐっ…………『時間』を『停止』させたなぁ…!?…つくづく化け物よなぁ…!?」

 

「…………時間停止…!?」

沖田は信長に駆け寄る

 

 

「ほう、感づくとはやはり惜しいな……だが、ここで二人とも殺してやろう。仕事くらいはしなくてはな」

 

 

「なに、終わったとおもっとるエスデス…必ず貴様を殺す者は現れる。」

 

 

「…………ノブ……?…」

 

 

「ああ、沖田……霊核を儂はつぶされた。…………長くない。……死に際だからじゃろうか…思い出したわぃ……」

吐血しながら霞む眼で沖田を見る

 

「……何がですか」

 

 

「貴様とは長い付き合いよ……仇敵に看取れるとは気に食わんがなぁ。…………何故、儂らが1枚の呼符で呼ばれた理由よ」

 

「…………理由……?」

 

 

「先の『帝都』での聖杯戦争でキャスターめの『人造の神』との戦いよ……覚えとるな」

 

沖田はええと頷く

 

 

「……儂らは『織田信長』と『沖田総司』としてではなくあの煉獄のような『抑止の守護者』として呼ばれたんじゃ」

 

「……抑止の守護者」

 

 

「……儂を取り込め沖田。お膳立てはすんでいる。一度融合しているから『聖杯』はいらぬ」

 

信長は霧散する

 

 

「消えたか、……何やら戯言を言っているようだったが……?」

剣を向け構えるエスデス

 

 

「…………ノブは私の中にいますよ……ええ、私も思い出した。…………我は……いや、我等は抑止の守護者」

 

魔力が迸る。噴出する魔力は沖田を包み込む

 

 

姿を変える

 

長い白髪に褐色の肌……煉獄のような赤の衣装を身に纏う

 

「……ほう」

 

 

「……貴様を殺す。『人類』の敵としてな」



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第23話『魔神が斬る!』

「…………信長……沖田さん……?」

 

走っていたが立ち止まり彼女たちが戦っているだろう後方へ振り向く

 

「どうした?リツカ……?」

セイバーくんも立ち止まる

 

 

「……いや……彼女たちの反応が一つになって……」

 

 

彼女らのステータス表を見る

 

 

「………抑止の守護者……?」

カウンターガーディアン……森羅万象の守護者

ところどころは検閲され読めなくなっていたが

 

 

『魔神』と呼ばれるサーヴァントだった

 

呼符は二人ではなく守護者たる彼女を呼んでいた

 

合点がいった。二人が呼ばれた理由も

 

マスターとサーヴァントの繋がりで彼女の強さも

 

 

「…何でも無い、沖田さん達なら大丈夫……行こう」

 

 

 

 

 

「セイバー・アンインクルード」

 

黒崎一護のカードが排出される。

 

 

「貴様が何者か分からんが……愉しませてくれそうだな」

 

エスデスは『魔神』のサーヴァントをみて嗤う

 

 

依然周りは猛吹雪であるが『魔神セイバー』は意に介してはいない、ゆらゆらと炎を身に纏っている

 

セイバーのカードを掴み仕舞う。

 

刀を抜く。自身の黒刀『煉獄剣』ではなく『村雨』を構える

 

 

大地を蹴る。音越えの縮地を行い距離を詰める

 

沖田総司時とは段違いの速度、『極地』と呼ばれる空間を飛ぶ歩法

 

剣戟を2連放つ、殺意が含まないそれをエスデスはギリギリでかわす

 

「よく、躱したな」

 

「…………」

 

エスデスの目付きが変わる。

エスデスの思考から遊びが消える

 

 

(……初動が見えん……先程とは比べ物にならないな)

 

 

 

「慢心を捨てたか、氷の女よ……だが既に遅い」

 

深く身体を沈ませ下段から斬りつける

エスデスは氷の壁を生成して防ぐ

 

『魔神セイバー』は直ぐさま3連の剣戟を放つ

 

 

氷の壁が瓦解。『魔神セイバー』はエスデスを蹴りつける

 

エスデスは『魔神セイバー』の足を掴み投げ付ける

 

     『ヴァイスシュナーベル』!!

 

無数の氷の剣を生成して『魔神セイバー』へ向け放つ

 

魔神セイバーは全てかわす。

 

「…『一歩絶刀・絶劔三段突き』」

 

 

「『氷鎧』!!」

 

魔神セイバーは3歩の踏み込みをせず『三段突き』を放つ

 

「ぐっ……」

エスデスを纏う氷の鎧は三段の突きで瓦解し破砕する

 

「…」

 

魔神セイバーは涼しげな表情し一瞬で後退

 

 

「やはり世界は広い。……まだまだ貴様のような強者はいるのだな……帝国を出て強者を探す為世界が回るのも悪くない」

 

エスデスの動きに遊びはなくなったが『魔神セイバー』との戦闘の高揚感からか愉しそうだった

 

「まるで『狂兵』だな、氷の女……貴様が現時点の限界値だよこの世界のな『最強』。いい加減今までの因果の支払いを済ませたらどうだ?」

 

 

「支払いは踏み倒してこそだ、『魔神』とやら!!なら貴様が私から取り立てみるか!?」

 

巨大な氷の塊を生成する

 

上空から振り落とす

 

 

「……取り立てるのは私だが『ナイトレイド』達の意思を継いでだ」

 

 

      『絶劔・無明連惨』

 

『煉獄剣』を抜き50ほどの斬撃を放つ、最後に中心に一突きを入れる

 

巨大な氷を砕く、砕かれた氷が雹のように降り注ぐ中カードを取りだす

アサシンのクラスカード

 

 

 

 

      『重装夢幻召喚』

 

 

 

アカメの力を纏う

彼女の研鑽した技の極地。派手な宝具などは無い

 

しかし暗殺者の技は『山の翁』たちに匹敵する

 

 

 

『魔神セイバー』の頭髪は黒髪へ変わる

 

真っ赤な瞳はアカメのようだった

 

 

エスデスは対峙しているが『魔神』の存在は希薄だった

 

踏み込みは苛烈で『セイバー』ただ住まいや気配動きは希薄で『アサシン』

 

ダブルクラス……別種のクラスカードをインクルードした場合ダブルクラスとなる

 

先程黒崎一護をインクルードした信長はセイバーとアーチャーのダブルクラスだった

 

もちろん『相性』もある

英霊同士の相性もあるがクラスだけを見ると『三騎士』同士のクラスは反発しあう

他のアサシン、キャスター、ライダーはサブクラス適正あるため三騎士と迎合しやすい

エクストラクラスやバーサーカーは不確定要素が多いが

まぁこれら全て一概にはいえない

『魔神セイバー』はセイバークラスとアサシンクラスのダブルクラスは相性は抜群だったようだ

 

 

「…村雨奥の手『役小角』……これが発動容易くするとは我も業が深いらしい」

 

魔神セイバーの身体に刻印が広がる

 

 

「…………いくぞ、『アカメ』の意思だエスデス」

 

『魔神セイバー』の姿がきえる

 

 

(気配も消えたか……)

 

『極地・陽炎』

左から剣戟のみがくる

 

上下左右から連続した斬撃をエスデスにぶつける

 

超人染みた反応速度で弾くエスデス

 

全て致命傷の、即死の刃

 

一撃でも食らえば終わる

 

 

そんな鬼気迫る状態でもエスデスは笑いながら弾いていく

 

 

「私は死なん…!私をさらに愉しませろ!『魔神』!!」

 

「戦闘狂め」

 

剣戟は増える。上下左右全角度から打ち込まれるエスデスは剣と生成する氷で弾く

 

降る猛吹雪すら操り剣戟を弾いていく

 

 

 

「…………!?」

 

首を狙う剣戟を氷の腕が背中からはやし掴む

 

「捕まえたぞ『魔神』」

 

 

直ぐさま斬撃を3連放ち氷の腕を切り刻む

バターのようにスライスされる

 

「………ち、速いな。こと速度に関してはそちらが上手か……なら全て粉砕してやろう」

 

猛吹雪である天候を操る

雪を全て雹へ変え全て刃状に形成する

 

「いくぞ!!」

 

全て雹の矢となり面となり半径百メートル飛来する

 

 

 

「……エスデス、最強の女よ。これ以上続けても貴様を愉しませるだけに過ぎない。」

 

 

「貴様はこの世界においても手に余る存在だ、『屍竜のライダー』によりさらに厄介になる前にここで死んで貰おう……ナイトレイド達の意思もある」

 

 

 

「因果は応報する。貴様が奪ってきたツケを払えエスデス。」

 

 

構える魔神セイバー

 

 

 

『塵刹を穿つ、無辺の光をもって天命を断つ』

 

 

 

 

       

 

 

 

 

      『絶劔・無窮三段』

 

 

 

 

怒濤の一撃は吹雪ごと吹き飛ばす

 

雹の矢の雨も吹雪も吹き飛ぶ

 

 

エスデスの右腕をも飲み込む

 

「がっ……!?」

 

 

「これで貴様を守るものはない。先に地獄へ行け鬼共と戯れろ」

 

 

『煉獄剣』を握る逆の手。つまり左手に逆手に『村雨』を握る

 

 

この時の『魔神セイバー』は自身に憑依しているアカメの存在を強く感じていた

 

彼女の願い、祈り、決意、後悔を乗せる

 

……そんな彼女に激しく同調する沖田総司も

 

 

「終わりだ!!エスデス!!」

 

エスデスの、胸に刀を『村雨』を突き立て貫く

 

「な……にぃ……」

 

貫いたと、同時に『村雨』の呪毒が流れ込む

 

「させるか…!」

 

エスデスは自身を凍らせる

 

「…………これが私の最後か、ただ強いだけでは……足りないか」

 

 

「……誰にでも負けられない理由があるだろう。だが愉しむ貴様と必死に戦う彼らとは違うのだ。我は『抑止の守護者』人々の祈りより座より現れる。……『帝国が蹂躙する運命』を斬り捨てた」

 

 

「私は『運命』を『殺す』モノだからな」

 

 

「なら私はここで死ぬ定めか…なら私は私の意志で死ぬことにする」

 

エスデスは笑いもせず自身をさらに凍らせ粉々に砕け散る

自分自身で決着をつけた

 

 

「貴様なら…そうする事であるのも折り込み済みだ」 

役目を終えたかのように村雨がぱりんと根元から折れた

 

『重装夢幻召喚』も解ける

 

『役小角』の刻印もきえる

 

「……その呪いも持っていくのかアカメ」

 

アサシンクラスカードは消えた

 

 

 

吹雪はやみ晴れ、太陽が見えた

 

 

 

 

 

 

帝国軍前線の基地

 

「……エスデス様が負けた……?」

 

「はい、……赤い女とたたかいまして……その……」

 

『屍竜のライダー』は愕然としていた

 

最も敬愛する現人神にも等しいエスデスが負けた…?

 

 

「……あり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ない」

 

 

「あり得ない!!」

 

いつも飄々として笑っている『屍竜のライダー』の憤怒する。あまりの憤怒に周りの兵士は萎縮する

 

 

まわりからみても彼女はエスデス将軍のためにあったのだと

 

「全て予定が狂う…狂っちゃう………はは、エスデス様を仕方ない……『八房』で……死体は!?エスデス様の死体は!」

 

「……エスデス将軍は自身を凍らせ……死体も残さなかったらしく……」

 

「……は?」

 

確かにあの人ならやりかねない……

 

 

「……………蹂躙するんだよ『至高の帝具』で!!エスデス様を殺したやつごと殺し尽くす!!」

 

 



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第24話「不死姫が踊る②」

帝国最強の2強の死

 

エスデス将軍の敗死とブドー大将軍の暗殺

 

帝国軍と革命軍両方に衝撃を走らせた

 

両軍の士気に大いに影響を与えた

 

 

エスデスの死に鼓舞され士気が上がる革命軍におされまた士気の落ちた帝国軍は後退を余儀なくされる

 

 

帝国軍の最終防衛ラインを突破するのも近い

 

 

「まさかやってくれるとはな…あの怪物もやはり人間だったというわけか」

 

ナジェンダはまさかの成果に身震いする

期待してなかったわけじゃなかった

 

何度も対峙し苦汁を舐めさせられた相手

 

 

あのエスデスを倒してみせたのだ……あの異界の人間たちは

 

「ええ、私も驚いてます……あのエスデス将軍が倒されるとは」

 

「あ、あぁ……離反しといてなんだが……あまり倒せるイメージは無かった」

 

エスデスを知るランとウェイブは開いた口が塞がらないと言わんばかりに驚愕する

 

 

それほどエスデスという人間は怪物だった

 

 

「2強がいない今が攻め時だ……あとはオネスト大臣に『屍竜のライダー』。このまま討ち取るぞ」

 

「……」

 

 

「どうした?ラン」

ウェイブがランが考え込んでいるのに不思議がる

 

「いや……やな予感がしましてね……彼女は盲目的なエスデス将軍信者です。元々やり過ぎる残忍な性格です……エスデス将軍の死に黙っている訳はありません」

 

「確かにな……何か企んでイェーガーズに入ってきた節はあったからな、エスデス将軍絡みでだから破綻しちまってるかな」

 

「はい…良くないことが起きそうですが」

 

不安げに考えこむ

 

「………後手に回るわけには行かない。このまま攻めこむ。勢いが無くならないうちにな。体勢を立て直されぬようにな」

ナジェンダは力強く宣言する

 

士気は伝播するように燃え上がる

 

進軍続ける。

 

 

 

 

 

 

 

私の番

 

 

「エスデス将軍に勝った!!」

 

帝都近くまで来ていた私は『魔神セイバー』からの連絡を受けエスデス将軍の討伐の知らせを聞いて歓喜する

 

「まさか2人でひとりのサーヴァントだったとはな」

 

「…だから一枚の呼符で呼べたんだねぇ…よかった」

 

安堵してへたれこむ

 

 

ふたりの勝利で先程までの不快感は、多少払拭し安堵する

 

「…2人と合流するか?いやもう一人か」

 

「うん、信長の霊核破損してるらしいから戻れるかはわからないって」

 

 

「そうか、とりあえず……進むか。今はこちらが優勢だ……『屍竜のライダー』に何かをされる前にこちらから叩こう」

 

 

「それでセイバーくん……これ」

 

アヴェンジャーのクラスカードを取りだす

先程のより禍禍しく闇を纏っている

 

「……先程置いてこなかったか、『屍竜のライダー』には近づけさせないために」

 

「うん…………戻ってきてる。さっきから『重装夢幻召喚しろ』ってるうるさいの……」

 

纏っている闇は私の腕に巻き付いている

 

 

「……残り一画だろう令呪……別のカードをインストールするか」

 

「……『魔神セイバー』が持っている」

 

「やはり合流が先か」

 

「……そうだね」

 

 

「リツカ、間違っても同調するなよ…もってかれるぞ最悪『重装夢幻召喚』じゃなくても受肉する可能性あるぞ」

 

「うげ」

 

もはや、呪いのアイテムじゃないか

 

……それだけタツミくんの怨みは深い……まぁわかるけど……やば、同調しかけた

 

 

でもタツミくんの無念……どうにか晴らしてあげたい気もする

 

 

「リツカ、帝国軍が撤退したらしい」

 

 

「え?なら…………あれ、来るんじゃぁ……」

 

完璧もはや原作とは展開が違うけど…来るなら……あれだろう

 

ダン!!

 

 

私がそう思ったと同時に爆音は響き渡る

 

 

振り向き見上げると帝都の中心には巨大な人型、皇帝を模したロボットがいた

 

 

あれは……『至高の帝具』

 

 

護国機神『シコウテイザー』だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前線の革命軍はその巨体に圧倒される

 

圧倒的存在感を放つそれは『帝具』の領域を越えた兵器だった

 

「な、なんてデカさだ……あ、あれも『帝具』なのか!!?」

 

 

「ひ、ひるむな!!見かけ倒しだ!!各隊散開し進軍せよ!!」

 

 

前線の各隊が散開する前にシコウテイザーはエネルギーを、収束し衝撃波を放つ

 

絶大な威力を誇るそれは前線の各隊を一瞬で蒸発された

 

 

「ぶ、ブットビスギィ!!?私を笑わせないでくださいよ!!」

その様を見て馬鹿笑いするオネスト大臣

 

「……本当、大した威力だね……皇帝陛下には頑張って頂かないと……」

『屍竜のライダー』はぐつぐつと煮える憤怒を抑えながらそう呟く

 

「私も出るよ、ドロテアはどうする?」

 

「『シコウテイザー』のバックアップもあるし残る」

 

「『粛清モード』だっけ?まぁ『命を繋ぐモノ』へと変換されるまで宜しく」

 

今までの飄々とした態度はなく淡々として不気味で恐いと感じていたドロテアは頷く事しか出来なかった

 

 

すぐに『屍竜のライダー』は跳躍し走り出す

 

「あぁ、多分この世界は終わりじゃな…あの怪物に喰われて終わる」

 

ドロテアは諦めの境地に至った心境で見送る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…くそ!あれが……『至高の帝具』か!!」

グランシャリオを纏ったウェイブは前線を吹き飛ばすシコウテイザーを視認した

 

「…やな予感とはこれでしたか…………」

 

マスティマで浮遊してシコウテイザーの、姿を見るランは冷や汗を流す

 

 

「………あの、巨体を相手する手段があるのか……」

 

軽く舌打ちしナジェンダ全軍に一時撤退を指示する

 

 

「仕方ない、遊撃と撹乱に出る!」

ウェイブは跳躍し向かう

 

「ウェイブ!!?」

 

「時間稼ぎしなきゃならないだろ!!」

 

 

その瞬間、紅い軌跡を残し超加速する流星が如き朱がシコウテイザーへ向かう

 

 

 

       『極地無明三段突き』

 

 

 

 

シコウテイザーの右腕を切り落とす

 

 

 

「え!!?」

 

 

「な、なんだと!!?」

操縦者たる皇帝は驚愕する

 

あれだけの質量のシコウテイザーの右腕を切り落とす

 

 

「ち、胸を貫くつもりだったのだがな」

 

白髪の褐色の紅い女だった

 

 

シコウテイザーの上空から見下ろす『魔神セイバー』

 

 

「……オキタ……か?」

 

 

藤丸立火の護衛の沖田総司の面影を残しているようにウェイブは思う

 

 

「我がこのデカブツを引き受けよう…体勢を整えろ『革命軍』」

此方を見ずに黒刀を構える

 

 

「あ、あぁ……すまないが頼む!!」

 

ウェイブは、後退

 

 

「させないよ、……逃がさない……キミらはここで終わりだよ……」

 

 

「……隊長……いや、『屍竜のライダー』!!」

 

 

シコウテイザーの前に金髪碧眼の見慣れた少女が現れる

 

表情は無表情。いつもの飄々としている雰囲気はない

 

「ウェイブ、ランキミらの離反はどうでもいいや……それよりは……キミだ……エスデス様を殺したキミだ」

 

『魔神セイバー』を向け鋭利過ぎる殺意を向ける

 

「……キミのせいで私の願いは台無しだ。半分ね……」

 

 

「……死ね。殺してやる。『魔神』……抑止の守護者如きが出る場面じゃないよ!」

 

ぎょろっと眼球が備えた籠手を装着する

 

 

「……『帝具』!!?」

 

 

「……あれが……『屍竜のライダー』の『帝具』!?」

 

「身代死竜『サクリファイス』、私の可愛い可愛い帝具さ!!」

 

 

『屍竜のライダー』は『八房』も抜き加速する

 

「…『禍神転生者』、全て葬る。もろとも穿つ」

 

『魔神セイバー』は迎え撃つ

 

 

 



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第25話「不死姫が踊る③」

褐色の女と金髪碧眼の少女は朱い軌跡と金色の軌跡を残し光速で撃ちあう

 

 

「…流石、エスデス様を殺しただけがあるね!!」

 

 

「騎兵のサーヴァントだ、足に自信があるようだな。私の極地についてくるとはな」

 

 

朱い閃光と金色の閃光は激しく打ち合う

 

 

帝都上空での、空中戦は初撃から激しさを放つ

 

『屍竜のライダー』は『八房』の鋒を向け連続した突きを放つ

 

『魔神セイバー』は黒刀『煉獄剣』で受け流す

 

 

殺意は純度を高め、周囲を威圧する

 

『シコウテイザー』に乗っている皇帝すらその様を見守る

 

      『無明・絶劔乱舞』

 

 

 

無数の連続した突きを放つ『魔神セイバー』

 

余裕綽々とばかりにかわす『屍竜のライダー』

 

 

「……のったな」

 

一瞬、『屍竜のライダー』の視界から消える『魔神セイバー』

 

「!?」

 

 

      『極地・陽炎』

 

 

下から背中を蹴り上げる。上空へ勢いよく吹き飛ばす

 

 

「ぐ!!?」

 

 

 

「吹き飛べ」

 

 

 

 

      『絶劔・無窮三段』

 

 

 

怒濤の一撃を『魔神セイバー』は『平晴眼の構え』から放つ

 

黒い一撃は『屍竜のライダー』の上半身を吹き飛ばす

 

 

「ライダー殿!?」

 

 

吹き飛ばされ浮力を失い落下する『屍竜のライダー』をシコウテイザーを操り左手の平で受け止める皇帝

 

「如何に再生力持ちとて頭を潰せば……」

 

 

「よくもライダー殿を」

 

 

 

「前の私ならそうかもね……!!」

 

ライダーの下半身の切断面からぶくぶくと不快な異音を立てながら再生していく

 

「やぁ…あ、皇帝様こっち見ないでねぇ上半身裸だからさ☆」

 

ばっと服も再生させ纏う

 

 

「あ、え…ら、ライダー殿…?」

 

 

「いやん、そんな化け物みたいに見ないでくださいよぅ…すぐにこちら側にお招きしますからねぇ」

ニタニタ笑いながら一礼する

 

「それがそいつの正体だ幼き皇帝…不死の怪物」

 

「どうせなら…不死の姫君とでも呼んで欲しいものさ」

 

 

「……帝具の力か?」

 

「命をストックする帝具、身代死竜『サクリファイス』…未知のジャングルに存在している危険種『サクリファイスドラグーン』を元にした帝具さ」

 

「…それだけで不死とは言えないな」

 

 

「もちろん、不死者が自分の不死の種を教えるわけないだろう」

 

帝具の籠手はライダーと既に一体化し右手の甲にぎょろっと眼球があるのみ

 

「さて、攻撃力はキミのが上だがね…私をコロセルカナ?」

 

シコウテイザーの、手のうえから邪悪な笑みを浮かべ『八房』を構える

 

「………ち」

『魔神セイバー』は軽く舌打ちし構え直す

 

 

 

 

 

 

 

 

「……シコウテイザーの近くに『魔神セイバー』さんがいる…ライダーと交戦中みたい……」

 

「…………リツカ、キミはそれを持って…革命軍と合流…!?」

 

「……ダメみたい…後退しようとすると闇が強くなる…みたい」

 

セイバーくんが、後退を進言するだけで私を纏うカードから発せられる闇が力が強まる

 

「……アヴェンジャーのカードの復讐の呪い…か」

 

「…『屍竜のライダー』との戦闘は避けられない…だから…」

 

 

「…このアヴェンジャーのカードをインストールせざるを得ない…か」

 

おそらくそうなるだろう

けど『魔神セイバー』さんがいくらエスデス将軍を倒せるほどの強さを持っているとしてライダーとシコウテイザーの相手は同時には出来ない

 

「わかった。リツカ。己がインストールして御してやる」

 

セイバーくんは覚悟を決めたのかそう言ってくる

 

「貸せリツカ。アヴェンジャーのカードを…聞けタツミ」

 

手を差し出しアヴェンジャーのカードへ語り掛けるセイバーくん

 

「貴様の後悔、貴様の未練。果たさせてやる」

 

 

アヴェンジャーのクラスカードを渡す

 

「多分…令呪の縛りすら必要無いかも知れない…気を付けてセイバーくん」

 

「己の意志力とこいつの復讐心の勝負さ。…リツカキミは下がって」

 

「私も行く…マスターだからね…最悪令呪で止めるから…」

 

「わかった、無理はするなよ」

 

 

「セイバーくんこそ…」

 

 

「では行くぞ」

 

カードを掲げる

 

     『重装夢幻召…』

 

 

     

      『強制夢幻召喚(ギアスインストール)』

 

 

セイバーくんが重装夢幻召喚を宣言すると同時に闇がカードから噴出する

 

「ぐっ!?此奴の復讐心はここまで…!」

 

「セイバーくん!?令呪をもって命ず…きゃ!?」

 

私まで闇は吹き飛ばす

 

「…リツカ!?…」

 

 

アアライダーコロシテヤル

 

 

セイバーくんの体を竜の鎧が浸食する

 

「ちぃ…!此奴、取り込む気か…!?」

 

 

「だが、易々と受け渡すと思うなよアヴェンジャー!己にはやるべきことがあるからな」

 

歪な姿になる

 

竜の鎧が半分程浸食する所で止まる

 

「せ、セイバーくん…?」

 

 

だんっと私を軽く見た後跳躍し飛翔する

 

シコウテイザーのほうへ向かっていく

 

鎧の片翼を翻して飛んでいく

 

 

「…わ、私もいく…!」

追いかけるように私も走り出す

何かあったら私もしなければならない

 

「…私は私であるために…!」

 

 

 

 

 

「アハハ、これで何回目カナァ?」

 

数えるのは途中で辞めた。

 

数えるのが億劫になるくらい回数目の再生

 

 

「………………………………化け物め」

 

目眩がする。理不尽な再生力に吐き気がする

 

 

だが

 

「貴様程度の邪悪。掃いて捨てるほどいる」

 

「流石、守護者。ならやってみなよ?」

 

今までのダメージもなく服も新品同様で宙へ浮くライダーは馬鹿にしたように言う

 

 

「……な、なにものなのだ…ライダー殿は………」

 

目の前で何回、何十回の再生を目の当たりにしたシコウテイザーに乗る皇帝は唖然として恐怖する

 

「あらま、皇帝閣下には刺激が強すぎたのかしら?」

 

「当たり前だ、化け物。貴様のような常識を逸した存在を容認出来るはずもなかろう」

 

『魔神セイバー』は吐き捨てるように言う

 

「…なら仕方ない。予定を繰り上げようかな?ドロテア?OK?」

 

『ああ、…『殲滅モード』へ切り替えるぞ』

 

 

「な、何をするつもりだ…!?ライダー殿!?」

 

 

 

右腕を失っているシコウテイザーにワラワラと闇が纏う

 

 

「これ以上、皇帝閣下にはシコウテイザーの操縦ができそうにありませんので、………そのシコウテイザーの動かすシステムになって貰います。…ふふふ…よかったデスネ貴方にしか出来ないことですよ傀儡の王様?」

 

「だ、大臣!?大臣!助けてくれ!!」

 

ワラワラと湧き出る闇は蛆虫のようにシコウテイザーを浸食する

 

「あ、大臣は最初から私の傀儡ですよ閣下?ンフフ」

 

その言葉を最後に闇はシコウテイザーに浸食し終わる

 

真っ黒な夥しい姿をしたシコウテイザーの形をした闇がそこにはあった

 

おそらく幼き皇帝は今の言葉を最後に絶命しシコウテイザーの一部と落ちただろう

 

「………度しがたいなライダー」

 

「私程度の邪悪掃いて捨てるほどいるのでしょ??守護者?……私程度の所業なんて可愛いものさ」

 

「……『禍神転生者』はいつもそうだ。いや人理悪を含むきさまらはいつもそう。……命を盤面の駒程度にしかみない」

 

「………盤面の駒だろう?いくつもある平行線のたかだが命一つに目くじら立てて馬鹿らしくない?」

 

「好き勝手して良い理由ではないな。貴様のような奴を排除するのが我等だ。議論するまでもない」

 

 

「そだね、……特異点を荒らす害虫が私達。排除するのが君たち守護者。何も変わらないよ………私は望みを叶える為なら何でも利用し使い捨てる。ただスケールが違うだけさ。」

 

「……そろそろ目障りなんだ。この世界の人間を殺し尽くし命をストックしなきゃ……さっきで大分減らされたし……ね!!」

 

シコウテイザーの右腕が生え闇が浸食するようにこちらへ向かってくる

 

やな予感がびりびりしている

あれに触れてはいけない

 

『極地』で瞬間跳躍を何回か繰り返して後退する

 

「逃がさない」

 

闇が自動追尾するように此方へ向かい這うように浸食する

 

 

 

      『絶劔・無窮連段』

 

 

2連の無窮三段を放つが一度霧散して闇は再集結し『魔神セイバー』の背後を取る

 

「!?」

 

 

「頂きます」

 

 

闇は『魔神セイバー』に纏わり付く、虚脱感が全身を襲う。こいつは魔力を吸い上げるのか……四肢の動きが鈍くなるのを感じる

 

 

「守護者なんて、極上の魔力なんて禍ツ聖杯の大好物だよねぇ」

 

 

「……禍ツ……聖杯……だと……」

 

 

「『命を繋ぐモノ』ライフコネクター……『命』を司る『禍ツ聖杯』さ。私の悪望を形になったものさ」

 

 

「ぐっ……」

 

泥沼のような闇が魔力を吸い上げる

 

「……『禍ツ聖杯』は悪逆の願望機。これはそれの欠片だ。次元聖杯戦争はそれを奪い合い殺し合う……キミらの聖杯もよこすんだ」

 

 

「……知らないな……」

 

 

「やはり、参加者たる『赫月のセイバー』に聞くしかないか。もうキミには用はないしエスデス様を殺した罰受ければいいよ」

 

 

闇の腕が『魔神セイバー』を締め上げる

 

 

「力が入らない……ぐっ…」

 

 

『魔神セイバー』は光となり霧散し沖田と信長に分裂する

 

 

「……融合解けてしまった……」

 

沖田と信長が落下する

 

 

「…………ノブ……このままじゃ地面に叩きつけられてしまう、……」

 

信長は、気絶したままのようで自由落下してしまう

 

沖田は力が入らず見ることしかできない

 

「くそ、」

 

 

「へぇサーヴァント同士の融合体だったんだねぇ……そんなことが出来るんだねぇ…沖田ちゃん」

ニヤニヤ笑いながら見下してくる

 

 

「く」

 

悔しい、すんでのところで何も出来なくなるなんて……立火……申し訳ありません…… 

 

 

目をつぶる。意識がもはや沈みそうだ

魔力枯渇の影響か

あの闇に食われて座に戻ることすら叶わなくなるのか

 

願わくは……『赫月』さん、……此奴を倒して下さい

 

 

 突然、浮遊感が失われる

 

がっちりと捕まれてるのがわかった 

 

 

目を開ける

 

 

『彼』がいた。立火のメインサーヴァントたる剣士のサーヴァント

 

竜の鎧が半分浸食する異様な姿を晒した彼は信長と沖田を抱える

 

 

「……続きは……引き継ごう」

 

 

「……来たかな、『赫月のセイバー』キミの欠片を寄越しても良いんだよ?」

 

 

「………………悪望なんざねぇが貴様らに渡すものでもねぇ『屍竜のライダー』」

 

二人を地上へ降ろしライダーとシコウテイザーの形をした闇を見上げる

 

 

 

「『赫月のセイバー』、キミは私の糧となり血肉となり礎となるんだよ。私の願望は叶い、私は永遠となる……私が勝者になるんだ!!」

 

 

「貴様如き『崩界』や『血怪』に敵うとは思えないけどな……」

 

 

「赤い鬼もクソ神父も潰してあげるよ」

 

歪に、嗤う



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第26話「不死を斬る」

転生者のクラス

 

リバーサー

 

己、『赫月のセイバー』を含む『次元聖杯戦争』の参加者が持つサブクラス

 

 

転生特典というサブクラススキルを保有させるだけのモノではあるが『転生者』においてこのギフトスキルは要にして前提なのだ

 

『屍竜のライダー』のギフトスキルは『再生』

 

 

これを『不老不死』へと昇華する

 

『命』を否定する古今東西からある『悪望』

 

永遠の権力を望む権力者、永遠の美を求める傾向の女は古来から存在はしている

 

 

目の前にいる『禍神転生者』はそれに迫るスキルを既に有しているようだった

 

 

前提…………『不老不死』が、この『次元聖杯戦争』を戦い抜く前提だった場合面倒くさいことになる

 

 

『不老不死』がからくりなしの理不尽なスキルだった場合

 

手の内は……ない

 

 

「その、『不死』のからくり暴いてやる」

 

 

内に暴れるアヴェンジャーを、抑えつけながら投影し『火神楽』を構える

 

 

 

「……インクルシオでも使った?タツミくんの怨念めっさついてるねぇ呪いのアイテムじゃん」

 

嘲いシコウテイザー型の闇は流動化しこちらへ敵意を向ける

 

「……『禍ツ聖杯』か、……孵化しているのか」

 

 

「孵化した禍ツ聖杯の欠片は初めてかなぁ……?」

 

 

「前回は孵化は阻止したからな……ち、今回は遅かったか」

 

 

「つくづく『虚影のアサシン』は無能だったようで、……知っていると思うけど……『禍ツ聖杯』は持ち主の願望を叶えるモノ、そして『欠片』は願望を叶えるため最適化するための『力』になる」

 

 

     『剡呪点睛』!!

 

 

炎の斬撃が飛来する。ライダーの腕を切り落とすが闇が纏い即座に再生する

 

 

「ね?」

 

 

「………それと貴様は繋がっているというわけか。再生力は段違いだな」

 

 

「……もう、キミに打つ手あるのかな?……キミに時間はなさそうだけど?…」

 

 

ち、感づいてやがる……アヴェンジャーを抑えつけながらは時間制限がある

 

 

まるで猛獣を抑えつけているようで逆に余力がない

 

「……は、貴様が気にすることでもねぇ…!!」

 

手綱を緩める

自我を潰されないぎりぎりの範囲で緩める

 

隙間からまるで暴風雨のように溢れる殺意が己の内側を暴れる

 

ああ、やらせてやるから……お前は黙ってろ

 

己がやるから力を貸せ『タツミ』

 

 

 

鎧が浸食を再開、己は外見的にはインクルシオを纏った姿になる

 

凶暴な竜の人型。殺意の放流を解き放つ

 

超現実離れをした推進力を得てライダーに蹴りを入れ吹き飛ばす

 

闇は反応出来ない、吹き飛ばされたライダーをさらに上から下へ蹴り落とす

 

超現実離れをした膂力でライダーを吹き飛ばす

 

 

闇は遅れてライダーを包む。再生する

 

シコウテイザー型の闇は己を阻むように立つが己は剣環を展開し容赦なく降り注ぐ

 

 

剣の豪雨は次第に勢いも増し闇を一部晴らしライダーの姿を晒した

 

推進し再生を完了しているライダーの首を掴み眉間から剣を貫く

 

脳汁をまき散らして帝都の壁に縫いつける

 

「ライダーァァァァァァァァ!!!!」

 

内なる殺意が咆哮を上げる

 

己ではなく『復讐者』の意志が殺意が次第に浸食をし咆哮をする

 

くそ、少し委ねたらこれだ、意志じゃなく力を貸せ……『重装』ではなく『強制』の術式故に抑えつけながらはもう厳しくなってきた

 

 

「へぇ、……『アヴェンジャー』になってまで私を殺したいってかぁ」

 

 

間近で聞くライダーの声だけでインクルシオの血潮が沸騰するほど殺意が膨れ上がる。奴の存在を認識して顔を見、声を聞くだけでインクルシオは殺意を爆発させれるのだ。すぐさま行動へ移して剣環で

 

眼球を貫く。喉笛を貫く。右まぶたを貫く。

 

右腹を貫く。子宮があるであろう場所を貫く

 

不快に思う度に殺意は膨張していく

 

暴風雨は既に自身を溶かそうと自我を削る

 

 

ただ、殺意が己の自我を浸食を始める

 

いや、同調なのかもしれない

 

『己』も『アヴェンジャーの殺意』の一部に成れと言わんばかりの同調圧力に近い何かを感じた

 

 

己は…………『赫月のセイバー』

 

 

真名は…………××××……

 

 

 

浸食を抵抗する中とあるヴィジョンが流れる

 

 

誰か…たいせつな誰かを……失い……

 

 

 

失わないためにここにいるはずなのだ

 

 

己は…………己だ

 

 

 

殺意の放流をなぎ払う

 

 

意識は再び己へと戻る

 

 

 

 

 

 

剣の雨を一身に受けたライダーの姿がある

 

無事な場所はない

 

すべて貫かれ言わば『剣山』になっているライダーがいた

 

 

「はぁ……はぁ……く、……」

 

息を整える。闇が行動しライダーを、包み込む

 

 

殺意は一度低下した。一端の小休憩といわんばかりの間がある

 

嵐の間の、静けさに一度落ち着く内側を感じ己は後退する

 

「……これだけの、猛攻でも再生をするのか」

 

 

「いやいや、百回は殺されたかなぁ……いやはや再生をするとはいえ痛いのは痛いからねぇ……」

 

 

シコウテイザーの手の平には剣山の剣は霧散し時間が逆行したかのようにダメージの形跡すらないライダーがいる

 

「………………まぁいい加減目障りだし……タツミくんに、めんじて攻撃させたわけだ……そろそろ幕を引かないかな。キミという異物を排除し『次元聖杯戦争』の幕開けをね」

 

 

 

 

 

 

「禍神宝具『永遠たる不死帝国・八房(エーヴィヒライヒ・アハト)』」 

 

 

領域宝具の展開。禍禍しさが帝都の周辺を包み込む

 

 

「…禍神宝具……!!?しかも領域……固有結界か!?」

 

 

「……厳密には違うけどね、……私の帝国の力を見せてあげる」

 

 

帝都の周辺の死体を動かす

 

 

帝国兵士、革命軍兵士、逃げ遅れた一般人、戦力とされた危険種

 

等々がワラワラと動き出す

 

 

「…………『八房』…!?」

 

「正解、私の宝具は『八房』の効果範囲の拡張と増強……領域圏内の死体を強化し蘇生する骸人形としてね!!」

 

 

骨の竜のような弩級の危険種が数体、骸人形として己に襲いかかる

 

デスタグールだったか、…

 

 

 

     『剡呪点睛・烈風』

 

 

爆風の斬撃を放ち吹き飛ばす

 

一体が瓦解するが残り2体は意に介さず襲いかかる

 

 

「くっ……!」

 

 

「……さて、不死の軍団相手にいつまで持つかな?……君じゃなくて……君のマスターがね」

 

金髪碧眼の怪物は嗤う。

 

離れて良かったのかいと言葉にせずとも嘲い嗤う

 

 

「リツカ!!逃げててくれ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の番

 

 

「ひ、死体が動き始めてる……こ、これもライダーの力!!?」

 

森の中を走る。死体が骸人形として再び活動を開始していた

 

敵味方関係なく、人間危険種関係なく生者を敵として認識しているようで私を狙う

 

まだ動きは緩慢

 

 

「……ば、バイ〇は勘弁願いたぃい…!」

 

 

ガントを放ち無力化できるか試す

 

兵士の骸人形には、効果はあるが死者相手には効果は薄い

あくまで威力がある豆鉄砲程度には

 

 

「ひっ!?」

 

唯一の、攻撃手段であるガントがあまり効果をなさないからか拠り所を失い足が震える

 

「さ、さっきの力あれば…けど、やっぱり私は……ただの人間…………セイバーくん、沖田さん、信長……」

 

セイバーくんらを求めて逃げる

 

 

走る、走る、走る

 

 

帝国兵士、革命軍兵士の骸人形は私を追ってくる

 

さながら地獄絵図だ。

 

怖い、怖い、怖い

 

 

私は…………サーヴァントの彼らに守られていたからこそ『禍神転生者』を倒そうなんて大層なこと言ってるんだろうか

 

 

そもそもなんで私は…私が選ばれたのだろうか

 

恐怖で思考が麻痺し鈍化する

責任を転嫁する

 

 

『理由』がまた欠如しているのか 

 

『隷属転生者』を救いたい

 

足りない……?

 

 

 

『正義の味方』ならば義憤として十分だろうけど『藤川五火』は所詮は『救われる側の大多数』の一人に過ぎない

 

私が転生した『藤丸立香』も十二分に、『英雄』なのだ

 

表の彼は最後のマスターとして『人理焼却』に挑む彼は『英雄』なんだ

 

 

女性の『彼女』に成り代わった『私』は何なんだろうか

 

 

『禍神殺し』って…なに…? 

 

木の蔦に足を取られ転倒する。骸人形は迫る

 

 

 

 

「いくら無様でも弱くても『救いたい』なら十二分に『英雄』だと思うよ私が保障してあげる」

 

 

 

 

純白にて純潔

 

救い難き、けして汚されぬ『白』がそこにいた

 

 

優しい声音が、私のぐちゃぐちゃな恐怖に染まった思考に優しく囁く

 

 

「………キミの迷いは『救ってあげる』。彼の助けになるならね。私は『総てを救わなければならない』」

 

 

 

白。白。白。白。白。白。白。白。白。白。白。

 

 

純白は『力』となって穢れを払う

 

白を浴びた『骸人形』は力を失い灰になる

 

 

 

「救われぬ『魂』に救済を…『命』を奪われた人形達には私が『救ってあげる』」

 

辺り周辺の骸人形は灰になる

 

 

 

「…キミは……?」

 

 

「『常世総てのセイヴァー』。ただの『救済者』だよ」

 

優しく聖女がごとく微笑む総てが白い女は私に優しく手を差し伸べた



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第27話「救済者が救う」

第二特異点ラスト3話連続投稿①


白く美しい。それも、同性の私でも目を奪われるほどの

 

穢れなき純白の神性も帯びた『サーヴァント』、クラス名を名乗ったからサーヴァントと分かったけれど人間離れした存在感は人間ではないのは明白だった

 

白銀の長髪に銀眼にサーヴァントにしては簡素な白の無垢なワンピースを着ていた。幼さを残しながらも凛々しい顔をした純白のサーヴァントは周囲の色彩を奪い白へ塗りつぶす

 

 

『常世総てのセイヴァー』

 

 

『救済者』のエクストラクラス『セイヴァー』

 

 

裁定者(ルーラー)』『復讐者(アヴェンジャー)』『別人格(アルターエゴ)』『異界来訪者(フォーリナー)』『月の癌(ムーンキャンサー)

 

と並ぶエクストラクラスにて最強の善のクラス

 

 

……セイバーくんが探す一人である彼女と私は対峙していた

 

敵意はない。むしろ救われたばかりだ

 

けど私の無知は警戒はしていたが……彼女の白はすぐに私の警戒を溶かす

 

 

存在そのものが『救済者』、救うために『彼女』はあると言わないでもわかる

 

けど彼女と対峙するだけで私の中の何かはざわめく

 

「……怯えなくてもいいのに、貴女を害する気は無いわ。私の『救済』を邪魔しない限りは……ね」

 

薄く笑う。邪魔するならばと意味合いくらいはわかる

 

 

「けどこの特異点は貴女達が先に来てたわけだし貴女達が失敗したら『禍神転生者』殺してあげる。」

 

横取りなんて無粋だものねと付け足す

 

 

「………………貴女の狙いは『禍神転生者』?…なら」

 

 

「協力なんて無理よ、私と貴女じゃ在り方は違うもの。それにあの人の望みは『私を殺すこと』ふふふ、そうよねぇ、『藤丸立火』さん」

 

振り返る彼女はあくまで優しく笑う

 

あの人……?

 

 

「今、助けたのもあの人を召喚した貴女を一目見ときたかったのもあるし……まぁたまたまだけど。」

 

 

「……『何者であれ貴女は迷うべきではないんじゃない』」

 

「……へ」

 

 

「迷ってるようだからアドバイスよ。……『救済者』っぽく迷い人を導いてみたたわけ」

 

 

彼女の言葉はストンと入ってくるようだった

 

「ま、いずれ貴女はあの人と一緒にいる限り私と対峙するでしょう。……この戦い残りわずかだけど見学させて貰うわ」

 

周りを浸食していた白が消え色彩を取り戻す

 

 

周りには骸人形はいない

 

彼女は羽根を残し消えていた

 

 

「………うん、迷ってる場合じゃない…ね」

 

再び私は走る

 

逃げる為に走るのではなく戦う為に走る

 

 

彼女と対峙したせいか私の中の何かは活性化していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

己の番

 

 

「おー保つねぇ『赫月のセイバー』」

 

「クソ……」

 

鎧は砕け『アヴェンジャー』のクラスカードは解けカードはぼろぼろになっていた

 

『強制夢幻召喚』は解けていた

 

インクルシオの鍵は折れていた

 

囲むは大型の危険種達の骸人形

 

骨の竜のような危険種3体、蛙のような危険種2体

 

鵺のような危険種10体以上等々に囲まれている  

 

 

そしてナイトレイド達の骸人形もいた

 

 

我が身は既に死に体。いくら対多を得意とするエミヤの力でも固有結界を展開する暇もなくましてや再生を繰り返す骸人形達

 

ライダー程の再生力ないにしても『命を繋ぐモノ』の近くにいて恩恵を受けていた

 

 

「命のストックか……やっぱりてめぇの命は無限ではねぇな……?」

 

「今さら気づいた?……サクリファイスは元々ストック数は最大5だけど『命を繋ぐモノ』と融合して限界値はない。今のところ5000程のストックがある……そして殺傷力が高いシコウテイザーとさらに融合してすぐにストック出来る。」

 

 

「…………………なるほど単純な仕組みだ。」

 

 

「この特異点という限界値あるけどそれは支配特異点を増やせばいい。……平行世界なんて腐るほどあるし。」

 

 

「貴様の『禍ツ聖杯』に願う願いは『不老』か」

 

 

「男のキミにはわからないでしょう?醜く爛れ劣化していく恐怖は……強く美しく私は『永遠』になるんだ!!」

 

 

 

「浅ぇ……」己は不快感を隠さず吐き捨てる

 

自身の『命』と『美醜』に固執する『生き汚さ』と『貪欲』さに吐き気が催す

 

「は?」

 

 

「浅ぇっていったんだよババァ……やっぱり貴様はあの怪物達に足元に及ばない小悪党だよ」

 

 

「既に死に体のキミがよくほざいた!!簡単には殺してあげない。惨たらしく殺すことを誓ってあげる『赫月のセイバー』!!」

 

可憐の少女の顔をした怪物は憤怒し骸人形達へ命ずる

 

命令に従う無数の、骸人形達は襲いかかる

 

 

 

「令呪をもって命ずる『赫月のセイバー』、……………傷を癒やし私と共に戦え」

 

 

 

「……リツカ?」目を見開く

 

 

「……お待たせ、セイバーくん。私も戦う」

 

「なんで来た、リツカ!……このままでは……己を切り捨て次のサーヴァントを召喚すべきだ!!」

 

 

「…………私のサーヴァントは君だよ、セイバーくん。沖田さん達を見捨ててなんていけないしね」

 

リツカの足元には気絶しているふたりがいた

 

総司と信長

 

 

 

「よく生きてこれたねぇ無能のマスター!!一緒に死にたいなんて、健気だねぇ……ふふふ、お望み通り一緒に殺してあげるよ!!」

 

 

「リツカ!」

    

己は叫ぶ。先程別れた際とは違う雰囲気を纏うマスターに

 

 

 

 

 

私の番

 

 

「…………こいつはほっとけないよ。セイバーくん。………私は此奴らを許容出来ない。そのために私は転生したんだろうし」

 

 

 

寄贈知識群更新します。転生者権限の項目の閲覧を許可します

 

 

転生者権限術式行使に相応しい魔術回路を添付します 

 

 

術式行使者対象『禍神殺しNo.9(かしんごろしナンバーナイン)』藤丸立火

 

現在10パーセントの魔術回路を展開します。術衣『黒き翼』形態へ移行

 

 

制裁対象『屍竜のライダー』決戦術式(ファイナリティコードキャスト)の行使を推奨します

 

ではよい『制裁』を。

 

 

 

頭の中に響く言葉。私の中にいる何かは『寄贈知識群』が捕捉してくれた

 

多分『彼女』の神性に当てられたのだろう。覚醒したんだと思う

 

 

私は…………戦える。セイバーくんをサポートできる

 

 

溢れる魔力が擬似魔術回路を走る

 

 

溢れる魔力が黒い片翼のような形をなり余剰魔力となり迸る

 

魔力をガチャリと装填

 

 

「…………キミは……なんだ……?カルデアのマスター」ライダーは顔を顰める

 

 

「……『禍神殺し』の『9番目』」

 

 

「……!!?……へぇ実在したんだ…ソレが紛れ込んでるのはクソ神父も予想外なんじゃないかな」

 

激しく嫌悪感を示し敵意を放つライダー

余程相性が良くないらしい

 

一部閲覧を許されただけで全容は分からないけど

 

『禍神転生者』にとって都合が悪いらしい

 

 

「セイバーくん、……行くよ」

 

片翼のような魔力を迸らせセイバーくんへ補填する

 

 

 

「……ああ!…質問はとりあえず生き残ってからにしよう…!」

 

マスターとサーヴァントの繋がりから魔力を充填する

 

令呪の効果でセイバーくんのダメージは回復していた

 

セイバーくんは投影を行う

 

 

 

エクスカリバー・イマーシュを投影

 

 

極光剣・永遠ノ光(エクスカリバーイマーシュ)!!!!」

 

 

迸る光の濁流。有り余る魔力の波濤。輝ける星の偽光

 

 

その輝きは骸人形の群れを吹き飛ばす

 

 

正の極致の聖剣の模造品は骸人形にたいして絶大な威力を有していた

 

残存魔力はまだまだある

 

 

「ち、シコウテイザー!!呑み込め!!」

 

闇が噴出し呑み込もうとする

 

 

 

「セイバーくん!!聖剣の連続投影を許可する!!太陽の聖剣を投影して!!」

 

 

「応…!投影開始…!」

 

 

もう、一つの『聖剣』を投影する。普段のセイバーくんなら固有結界を展開せねば投影は難しい

 

けど術衣『黒き翼』の魔術回路形態が彼のサーヴァントとしての規格を底上げする

 

 

 

 

「投影終了……『転輪剣・太陽ノ裁き(エクスカリバーガラティーン)』!!」

 

太陽が如き一撃は呑み込もうとする闇を両断し霧散させる

 

 

「…ち、……英霊としての規格が一時的に上昇し強化してるのかな……うざったいねぇ!!マインちゃんピンチだよ!!」

 

ピンクの少女の骸人形は浪漫砲台パンプキンを構える

 

 

 

叛逆剣・赤雷ノ咆哮(クラレントブラッドアーサー)!!」

 

瞬時に叛逆剣クラレントを投影する

 

紅い稲妻はパンプキンが放つ最大火力を鍔迫り合い僅差で爆発する

 

「聖剣連続投影!!!!!!反転極光剣・卑王鉄槌(エクスカリバーモルガン)!!!!」

 

 

禍々しい反転極光は骸人形達を吹き飛ばし無力化する

 

 

正と負の2対の極光剣。太陽の如き転輪剣。赤雷の叛逆剣。

 

怒涛の魔力行使。いくら投影物とはいえ

いや投影物だからこそ生半可な魔力消費量ではない『聖剣』の連続投影

 

普段ならば魔力枯渇でここで終わる

 

 

だが私の身体からは余剰魔力は黒い翼となり依然と迸らせている

 

 

「…………どこから……カルデアから引っ張って来てるわけか」

 

 

「……キミの不死性は散々見てきてる。キミには相応しい最期を与える」

 

「…怯えてた弱小マスターが今更力を付けて慢心とは笑わせる。私の不死の帝国は死体がある限り尽きないわ!この戦いでいくらこのシコウテイザーが殺したと思う!!?」

 

 

 

 

 

 

 

      『決戦術式・絶対なる永久凍土(ファイナリティ・アブソリュートゼロ)

 

 

 

 

 

総て、『凍結』する

 

 

視界に映る総てを凍らせ凍結させ『奪う』

 

 

 

「……………キミの『不死』の機能を奪うだけの術式だよ、屍竜のライダー……いやアリスレス・ロストワンダー」

 

 



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第28話「不死姫を斬る!!」

連続投稿②


凍結する骸人形達を尻目に私は告げる

 

 

『決戦術式』

 

 

対『禍神』用の『ただ一度』のファイナリティ・コードキャスト

 

転生者権限の術式の『権能剥奪』もしくは『機能破壊』

 

 

討伐もしくは制裁対象の『転生者権限』に対する『特効』術式

 

行き過ぎたギフトスキルを壊す為だけの『力』

 

 

『屍竜のライダー』の『再生力』及び帝具『サクリファイス』の『命の貯蔵』の機能を『凍結』する

 

『禍ツ聖杯』の力に干渉は出来ないが『屍竜のライダー』の『不死性』の根幹はそこにあると判明したのでそこをつく

 

「…………なにをした…!!?なにをしたの藤丸立火…!?」

 

「……キミの『不死』を奪っただけだよ」

 

 

「奪った……だって?返せ!!『禍神殺し』が!!?私の『永久』を返せ!藤丸立火!!?」

 

 

「……………………散々奪ってきたくせに……セイバーくん『卍解』して」

 

 

「リツカ?」

 

「出来るでしょあの斬魄刀の『卍解』……こいつに引導を渡して。命の重さを。奪われる恐怖を。骨の髄まで分からせてあげる」

 

黒い片翼のような魔力はより噴出し威圧感を放つ

 

「……リツカ?……なのか」

 

 

「……当たり前だよ、セイバーくん。私は私。」

 

 

 

 

 

 

『疑うなんて可哀想だよ。セイバーちゃん……彼女はただ『救済者』に当てられて覚醒しただけだよ。

 

 

 

!!?

 

 

おぞましさを内蔵する声音。へらへらしながらおぞましかった

 

 

『災害のような『救済者』を目の当たりにして私も出来るなんて錯覚しただけだよ。あれはそういう存在だからね、『彼女は悪くない』』

 

学ランをきた少年は笑う

 

 

「……『崩界のアヴェンジャー』……?」

 

 

『久しぶりだねぇ『屍竜のライダー』ちゃん。あれせっかく『不死』を手に入れたって聞いたから祝いに来たのに……もう、なくなったって?笑えるねぇ』

  

 

「……うるさい」

 

『あれ、笑って笑って。いつもニコニコ笑っていた君が僕は好きだよ』

 

 

「うるさいってんだよ!!『禍負荷』が!!!!」

 

嫌悪感を隠さずライダーはそのおぞましかった存在をねめつける  

 

『傷付くなぁ。僕の豆腐のようなメンタルは傷付きやすいのに……ねぇそう思うでしょう?立火ちゃん。うんうん黒い翼が中2臭くて可愛いよ。ジャン〇っ子の僕には心躍るなぁ』

へらへらと笑いながら近づいて私の手を握り握手しぶんぶん上下する

 

 

唖然。いきなり現れて場を掻き乱すおぞましい何か

 

 

『崩界のアヴェンジャー』…?それって…?

 

「………………誰だ貴様は……『崩界のアヴェンジャー』だと…?『崩界のアヴェンジャー』は神父だろうが!!」

 

セイバーくんはいきなり叫ぶ

 

 

『うそつき扱いかい?『崩界のアヴェンジャー』を名乗って、かたってるわけじゃないよ……なんていたって僕も『崩界のアヴェンジャー』さ。嘘をついてないよ『赫月のセイバー』ちゃん』

 

 

 

 

『だから僕は悪くない』

 

 

『彼は僕で僕は彼でもあるのさ『禍負荷』を司るのが僕で『愉悦』が彼さ』

 

 

「何をしに来たかって聞いてんだよ!『崩界のアヴェンジャー』監督役がまさか手を出すなんて言わないよね」

 

ライダーは不機嫌さを隠さず言う

 

 

「『この世全ての禍負荷』が!!?」

 

 

『助けに来たってのに随分な言い草だねぇ、『赫月』ちゃんの参戦は僕は面白くないって思ったしねぇ……立火ちゃんみたいなのも混ざり込んだしねぇ』

 

僕は神父とは違うだよもへらへら笑っている

 

 

「キミみたいなひねくれ者のいうことなんて信用できるか。いずれ殺すつもりだったしね」

 

 

『君が僕を?笑わせるねぇ……僕は既に負けてるしねぇ……』

 

 

『嫌がらせを一つしてあげようライダーちゃん』

 

 

『…『致死武器(スカーデッド)』……僕の『禍負荷』の1つさ…………無くなったものをあったことにするマイナス、古傷を再生させる『禍負荷』……再生力を失った君に今まで再生した古傷に耐えられるかな?かわいい後輩の『過負荷』さ』

 

 

「は……?へ…?やめろ……!『崩界のアヴェンジャー』!!!!私は……こんな所で」

 

 

『だーめ』

 

 

「ぎゃび!!!?」

 

何十回何百回何千回分の再生した『古傷』が再現される

 

ライダーは肉塊になり血飛沫をなりその命を終わらす

 

 

唖然。その『禍負荷』は突然乱入し私達の敵をいとも簡単に奪う

 

 

『あれ、もうちょっと派手なの期待してたんだよねぇ…ああ、汚ぇ花火だって有名な台詞やりたかったのに』

 

まるで花火が予想より呆気なかったように言う

 

『ねぇ君もそうおもうよねぇ立火ちゃん』

 

 

「お前は……なんだ」

 

 

『いや君は僕を知っている。この『姿』を君は知っているだろう』

 

 

「『めだかボックス』の……球磨川禊……」

 

 

『正解だよ立火ちゃん。『崩界のアヴェンジャー』はその彼を模しているのさ……この『崩界のアヴェンジャー』の一人はこの『僕』なのさ』

 

『改めて自己紹介を。『崩界のアヴェンジャー』……『禍神転生者』は『真名』ではなく『禍神名』もしくは『禍ツ名』持つ』

 

 

『僕は『この世全ての禍負荷』の球磨川禊。一人の『崩界のアヴェンジャー』さ』

 

 

 

『大嘘憑き【オールフィクション】、この特異点は『無かった』ことにする』

 

 

「え……?」

 

『よかったんじゃない?主要キャラいないし。どうせライダーちゃんがいなくなったらこの特異点は本筋に収束する修正力が働くんだから。僕が引導を渡しても問題ないでしょ』

 

 

「やめろ!!貴様が関わっても『悪干渉』だ!!ねじ曲がる!!」

 

セイバーくんは叫ぶ

『……あ、ばれた?どう足搔いてもバットエンドになる世界っていいでしょう?』

 

 

 

「看過出来ないわ、『崩界のアヴェンジャー』……貴男が関わってどれだけの特異点が駄目になったか数え切れないわ」

 

 

白が『崩界のアヴェンジャー』を崩す、穢れなき純白が泥より濁る『禍負荷』を吹き飛ばす

 

 

「……真白……?」

 

 

「その名で呼ばないで火月『兄さん』」

 

セイバーくんは唖然と呟く



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第29話「兄妹が邂逅する」第二特異点・了

連続投稿③


白。白。白。白。

 

 

圧倒的な『白』に再び私は会う

 

「兄さん、……いえ今は『赫月のセイバー』だったわね…………何しにここにきたんです?」

『常世総てのセイヴァー』は先程会った際とは雰囲気がうってかわり冷ややかだった

 

「……お前を……止めに……!」

 

 

「……あの子を救えなかった弱いあなたに私を止めると?笑わせないで下さいね」

セイバーの激昂に対しさらに冷ややかな対応をする

 

「……!」

 

 

「あなたは弱い。『屍竜のライダー』如きを殺しきれなかったあなたが私を止めると?『救済』の邪魔です」

 

 

『救済者』は、らしからぬ辛辣な言葉を投げつける

 

 

「私は『総てを救わなければならない』」

 

 

「…………ああ、お前は昔からそうだった…………だからあいつのことに気づけなかったんだろ!!!」

 

 

「……だからあの子を『救う』のよ『赫月のセイバー』」

 

白の女はセイバーくんを糾弾する

 

 

「……………お前を止める……『常世総てのセイヴァー』」

 

 

「………………『卍解』」

 

投影した『火神楽』は燃え尽きる

 

 

「…………『赫杓禍滅焔神楽(かくしゃくかめつのほむらかぐら)』」

 

辺り一面燃え始め炎の大樹が燃え盛る

 

 

 

「…………見かけ倒しの『火』ね。『赫月のセイバー』」

 

 

「……『常世総てのセイヴァー』!!!!」

 

燃え盛る炎は彼の激情がごとく赫杓と燃える

 

 

「『個は総てのために(ワンフォーオール)』」

 

 

ばちばちと力の放流が彼女の右の細腕に走り抜ける

 

    

 

 

    『デラウェアスマッシュエアフォース』

 

 

コインを指で弾くように空気を弾く。

 

膨大な質量の空気が嵐となり吹き飛ばす

 

 

一瞬で燃え盛る炎は鎮火しその威力を失う

 

ただの圧倒的な力での暴力的なまでの鎮圧だった

 

 

 

「ケーキの蝋燭の火かな?『赫月のセイバー』」

薄く笑う。

 

 

 

 

え、ワンフォーオール…?

 

 

それは……『僕のヒーローアカデミア』…?

 

 

 

セイバーくんも吹き飛ばされ壁に埋め込まれた

 

「ぐっ……!」

 

 

 

「……そんなモノですか、『赫月のセイバー』。あなたは……私の『救済』の邪魔をしないでください」

心底冷たい表情をセイバーくんへ向ける

 

「いやだね……確かに……己は……俺は……弱い……けどお前を止めるぞ……真白…!!」

 

 

「はぁ、すきにして下さい。……あなたを相手にすると感情的になってしまうわ……あなたの過去に対する妄執から救ってあげます」

軽く嘆息する

やれやれと言わんばかりに

 

 

 

『僕の『絶命』を無かった事にした……いやぁまさか君がいるとはね『常世総てのセイヴァー』ちゃん』

 

 

「……やっぱり生きてたか『崩界のアヴェンジャー』」

無表情で呟く

 

『生き汚さが僕の欠点でね。ONE PIECEが終わるまでは死ねないからね』

へらへらと笑いながらパッパッと服を叩く所作をする

 

 

「……次は『無かった』ことに出来ないほど『否定』してあげましょうか?『禍負荷』の『禍神転生者』」

 

 

『遠慮させて貰うよ『救済』の『転生者』……とりあえずは今回は幕引きだよ。くだらない幕引きにしたのは『神父』に対する意趣返しだと思ってくれて良いよ。そこの『禍ツ聖杯』の欠片は好きにするといい』

 

意味深に笑う『崩界のアヴェンジャー』

 

『『赫月のセイバー』ちゃんに立火ちゃん……これからの『禍神転生者』は2人とは違う。この意味をよく考えてね……お、なんか黒幕っぽく無いかな?『セイヴァー』ちゃん。え、っぽくない?』

 

 

「貴方達は何を考えてるの?」

 

 

『言っても無駄さ『禍神殺し』………君にはけして理解は出来ないよ。プラスである君にはね……強いて言うなら『存在』が違う』

 

 

『人には人の価値観が、鳥には鳥の価値観が、魚には魚の価値観が………神には神の価値観がある』

 

 

「禍神は禍神の価値観がある……わけね」

 

 

『そうだね、けして理解しあいまじわる事は無い』

 

 

『だから僕は悪くない』

 

 

理解は……しあえない……わかりきっていた

 

『だから総てを救う…と言う君も理解は出来ないよ『常世総てのセイヴァー』……『総てを塗り潰す純白』』

 

 

「…貴方も『禍神』に与する総てをも『救済』してあげるわ」

 

あまりにも当たり前に言い放つ白い彼女

 

今までおふさげで言い場を乱してきた『禍負荷』は巫山戯ず言い捨てる言葉に生真面目に返答する

 

 

『……じゃあね、残りの次元聖杯戦争を宜しく』

 

 

『禍負荷』は唐突に消える。まるで最初からいなかったように

 

 

あまりにも納得のいかない終幕。あまりにも理不尽だがこの、特異点としては異物を排除出来た結果になる

 

『常世総てのセイヴァー』さんも此方を一瞥しセイバーくんの制止を無視し羽根となり霧散する

 

 

『屍竜のライダー』は確かに消えた。

 

 

けど………これは『敗北』だった

 

「立火…?」

 

「沖田さん…終わったよ…一応ね」

上手くは笑えてはいなかったぎこちない笑顔を目を覚ました沖田さんに向ける

 

それからは激動の展開を迎える

 

 

『帝国』は皇帝を始めブドー、エスデスなどの主要キャラを失った結果となり千年続いた栄華は失墜して没落する

 

生き残りであったオネスト大臣は『隷属転生者』であったが処刑は免れなかった

 

歴史に残る凄惨な処刑であったと人伝に聞いた

 

…『隷属転生』された人物は知らない

 

悪人であったろうが善人であろうが『オネスト大臣』の悪名の泥を被って処刑されたことを考えると………痛ましかった

 

 

それからは正史と同じように『革命軍』の面々が『帝国』を再興し彼らが臨んだ優しい国へと向かって行くだろう

 

 

けれど……そこには影の功労者である『ナイトレイド』達がいない

 

 

 

本来生き残ったアカメ、タツミ、マインはいない

 

 

それからしばらくは、この特異点にとどまっていた

 

沖田さんと信長の療養も兼ねていた。セイバーくんも思うことがあるのだろう。留まることに反対はしなかった…私もいろいろありすぎて1つ1つ噛み締めて処理しなきゃ……受け入れられなかった

 

正と負の究極点の遭遇。『救済者(常世総てのセイヴァー)』と『禍負荷(崩界のアヴェンジャー)』との遭遇。セイバーくんの『目的』である2人

 

『救済者』との遭遇で覚醒と希望を

 

『禍負荷』との遭遇は喪失と絶望を

 

 

怒涛の展開に気持ちの整理の時間が欲しかった

 

 

 

とある墓場

 

そこは人知れない……かつてのアジトの外れの丘の上だった

 

死体はないけれどナイトレイドの面々の墓碑があった

 

 

「………………ごめんなさい」

 

彼女達の未練は果たされただろうか

 

彼の復讐は果たされただろうか

 

わからない

 

 

「ごめんなさい……」

 

何に謝っているのかはもはや分からなかった

 

いずれ無くなる『悪干渉』の結果にか

 

分からない。

 

 

藤丸立火の『戦う理由』にはこの結果はあまりにも重かった

 

 

「……立火、来ていたのか」

 

不意の言葉に振り返る

 

 

「ナジェンダさん……?」

 

振り返ると花束を抱えたナジェンダさんがいた

 

「………帝国復興に忙しいでしょう」

 

「…………忙しいさ。だが週に一度位はここに来るようにはしている」

 

墓前に花束を備え一服するナジェンダさん

 

「墓前ですよ…」

 

「忙しくて吸う時間すらなくてな……仲間の前位良いだろう」ふぅっと紫煙を吐き出すナジェンダさん

 

 

少し気まずい沈黙

 

 

「……立火、お前にはいやお前たちには感謝している」

 

 

「……え、いや……結局……」

 

 

「それでもだ。お前達の事情は詳しくは知らんが…………『革命』は成功した」

 

 

「仲間たちは死んだ。あいつらが享受すべき幸せもあっただろう……だがな全員が全員覚悟していたのさ」

 

2本目の煙草に火をつける

 

「過去に執着すればそこで歩みは止まる。生き残った我々にすべき事はあまりにも多い」

 

進まなければならないと再び紫煙を吐き出す

 

 

「お前の迷いは分からないが…………気にしすぎるな。おっと……やれやれもうこんな時間か……行かなきゃならん……立火、いずれな」

 

煙草を消し迎えの軍人の方へ向き軽く嘆息する

 

 

無言のまま見送る。

 

 

………私の迷いは多分無くならない。悪干渉された特異点はいずれ崩壊する

 

『禍神転生者』がいなくなっても修正力が働き収束し無かったことにされる

 

 

私の迷いは…無くならないと確信めいていた

 

 

 

自分の、中の与えられたおぞましいなにかにも嫌悪して

 



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第三空想特異点・禁忌邪神都市『極彩たるアーカム』
No.1「無限なる極彩~暗き外側からの侵略~」


極彩色の暗黒はそこにいる

 

害宇宙的恐怖を内包したそれは『魔人』と呼んだ

 

 

 

「きしし」

 

その声は私の正気を奪う

 

私はそれから逃げていた。私には脅威だった

 

いや耐性のない存在には脅威でしかない

 

あらゆる存在を騙して食らう

 

狂気の存在

 

 

私は逃げていた。ただ逃げるのではないけれど

 

 

私は…私を使ってくれる『主』を求めてこの狂気の世界から逃げ出したかったのだ

 

……私はいずれあの禍動破壊神が必要なのだ

 

 

これは荒唐無稽な御伽噺に縋る物語だ

 

 

 

 

 

 

平行人理継続保障機関『カルデア・リバース』

 

第二特異点から戻ってきて早2週間が経過していた

 

怪我は治っていた

 

沖田さんと信長も元気になった。……信長の霊核の破損も『魔神セイバー』になった際に修復した

 

というより2人で1人という状態で解決したらしい

 

……再び『魔神セイバー』になれるなら心強かった

 

むしろセイバーくん、『常世総てのセイヴァー』さんと会ったあとからまともに話が出来ていない

 

『禍神殺し』について話そうと思ったけど……最近見かけなかった

カルデア内にはいるのは分かるし有事には来てくれるだろうけど

 

 

「避けられてる………かな」

 

 

「とは思いませんけど…彼の事情も詳しくは存じ上げませんしねぇ」

 

「……儂は寝てたから知らんじゃが……『常世総てのセイヴァー』じゃっけ?化け物みたいならサーヴァントと因縁があるんじゃろ、思い詰めてるんじゃなかろうか」

 

食堂で沖田さんと信長と食事しながら話す

 

この2人とほとんど行動を共にしていた

 

職員もいるけど…彼らはNPCだからね

 

「立火も、思い詰めては心労がたまりますよ」

 

「うん、ありがとう沖田さん……結婚しよ……」

 

「へ、……いや……えー」

 

「………………………………砂糖吐いてくるじゃて」

 

 

…次の特異点はまだ来ていないが…あまりにも万全とは言い難い現状

 

「…………私自身もまだ……気持ちの整理出来てないんだよね」

 

『禍神殺し』という自分の、中に眠る何か

 

 

そして覚醒した時の自分とは言い難い『禍神転生者』に対する衝動

 

あまりにも『藤丸立香』から逸脱した力にやっぱり困惑する

 

「……………………はぁ」

 

 

陰鬱だ、何も解決出来ない現状

 

いろいろうじうじ考えて沖田さんと信長にも心配と迷惑かけてさらにへこんでしまう

 

 

「立火ちゃんいたいた、…うわなに暗いね」

 

 

「……レイシフトしている間一切連絡無かったドクターロマニさんじゃないですか」

 

「……空想特異点は妨害されてて連絡できないから仕方ないじゃないか」

 

「ま、連絡出来たとしてもあれだしいいですけど」

 

 

「僕に当たり強いのはなんでかなぁ……ま、いいや。……『召喚』はしないのかぃ」

 

 

召喚…確かに戦力は十分とは言えない

 

レイシフト出来るサーヴァントもサブ含めてもう何人かいてくれたら助かるよね

 

 

あの『禍負荷』が言うならあの赤いバーサーカーを筆頭にアーチャー、ランサー、キャスターはライダーとアサシンとは比べ物にならないらしい

 

境界を破壊しようとしたアサシン、『不死』のライダー

2人とも弱いわけじゃなかった

 

それより強いならばやっぱり『禍神殺し』の力は必要だしサーヴァントもセイバーくん達だけでは……不安だ

 

チームを組めるの出来るなら多いにこしたことはない

 

 

ってなわけで召喚しますか

 

 

 

 

己の番

 

 

 

『真白』いや『常世総てのセイヴァー』は己の妹『だった』

 

妹だったモノは既に『救済』という怪物へとなり果てていた事に実際直面して愕然とした

 

止めると誓った、救えなかった『あの子』の為にも

 

 

 

……それでも己は弱かった。あの『怪物』達に対抗出来るだけの力が欲しい

 

…己がやらなきゃならないのだ

 

…己は償わなければならない。あの子の為にも

 

この気持ちが燃え尽きる前に

 

 

 

 

 

 

『緊急事態発生!緊急事態発生!カルデア内に侵入者!パターン『禍神転生者』!!』

 

 

突然の警報。赤いランプが館内を照らし非常事態を知らせる

 

「……『禍神転生者』…!?」

 

 

このカルデア・リバースに侵入者!?

カルデアは雪山…いや次元を超えるあいつらには関係ない

 

…けど『森羅万象の守護者』の加護はカルデアリバースには在るはず…干渉は難しいはず

 

「……『キャスター』か…!」

 

アーチャー、ランサー、は考えにくい…魔術的干渉をしてくるなら常套手段はキャスターだが『聖杯戦争』の常識すら通じないやつらであるから断定は出来ないが

 

バーサーカーは…『血怪』は知っている

ストーカー染みたやつではあるが劇場型だ

 

奴の特異点で相見えるはず

 

とりあえずリツカ達が心配だ。

直ぐさま駆ける。部屋を出ると腐臭

 

これは…狂気の臭いだった

 

視覚的には変わりないが全体的に空気が重く感じた

 

死の臭いではなく『精神的』にくる気がした。雰囲気がうってかわりいつもとはちがう廊下であった

もはや見慣れたカルデアリバースの廊下も『異質』に感じた

 

…『異界化』?

 

魔術師の工房には外敵を遮断するため『異界化』するという魔術的罠も存在している

 

それにしても濃厚に過ぎた。

 

サーヴァントすら『狂気』に陥りそうなほど濃厚な瘴気であった

 

 

「ぐるる…!」

 

 

廊下の先に……聞こえるはずのない唸り声

 

それは黒い犬だった。「太く曲がりくねって鋭く伸びた注射針のような舌」と、「原形質に似ているが酵素を持たない、青みがかった脳漿のようなもの」を全身に滴らせていた

 

それはこの世のモノと思えない犬だった

常に飢えたように涎を撒き散らす

 

「…………異形……?」

 

敵意と害意……獲物というそれしかなかった

 

職員は居たはず……喰われたか?……マズいマスターであるリツカも十分に極上の餌になり得るはず

 

あれは……獲物をけして逃がさない狩人だろう

 

「……投影、開始」

 

干将莫耶を投影。黒白の双剣を構える。

 

同時に幾つものの剣環を凍結待機。いつでも射出しても良いように神経を研ぎ澄ます

 

黒い犬のようなものは此方を食い殺す為に隙を窺う

 

増殖し2体になりぐるる…っと唸り声をならす

 

直線を描き襲いかかる2体の黒い犬のようなもの

 

干将莫耶を構え迎撃する

 

 

 

 

私の番

 

 

腐臭、腐臭、腐臭

 

腐臭を放つ館内を目の当たりにし吐き気を催す

 

死体は無い。死体ごと喰われたのかNPCの彼らはこう消えるのかは分からないけど

 

無いはずの死体に濃厚に残る腐臭は私の正気を削る

 

「立火…!!」

 

 

「え、……」

背後から襲いかかる黒い犬のようなもの

涎を撒き散らし食い殺すかのように飛びかかる

 

「…無用心なマスターだな、異常事態なんだからもっと警戒なさい」

 

「ご、ごめんランサー……」

 

ランサーと呼ぶ彼女は黒い犬のようなものを穿つ

 

紅いエネルギー状の槍は黒い犬のようなものを壁に縫い付ける

 

「……とんでもないマスターに引かれたモノねこの私が」

 

ピンクのドレスに黒い翼…蒼い髪をした少女は軽く嘆息する

 

「…………まぁ良いわ。私を使役出来るのだからせいぜいうまく使いなさいマスター立火?」

 

ランサー、この異変が起こる前に召喚したサーヴァントの一騎

 

私は彼女を知っていた

 

『永遠に幼き紅い月』レミリア・スカーレット

 

『東方プロジェクト』に登場する吸血鬼の少女

 

……けど……幼い…かな?

見た目年齢は明らかに十代後半……原作は見た目年齢は十代前半位がせいぜいだった

 

見た目年齢上がってるせいかかりちゅまなんて言えなくすごくカリスマだった

 

「何を呆けてるの立火。せっかく彼女らが足止めしてくれてるのだから逃げなさい…多分その『本』が狙いよ」

 

 

あ、うん…私の手には古ぼけた装丁の本がある

 

……この本がもう一騎の召喚したサーヴァント

 

まぁ…ナーサリーライムの例があるから本がサーヴァントというのは違和感は無いけど……今のところ反応しない

 

 

多分キャスターのサーヴァント。…ただの本の筈がない

 

 

「きしし、そうだよ。ただの本なわけないよ……力のある魔道書さ。『神』をも召喚するね」

 

当然現れる声に振り返る

 

「君たちを『斬魔大戦』に誘う魔道書さ。きしし」

 

蒼い髪をした黒い際どい衣装をし左右違いの瞳をした異形の少女がいた

 

直感が働く…いや『禍神殺し』が訴える

 

こいつは……『禍神転生者』だ

 

「初めまして、藤丸立火。…『極彩のキャスター』にて『無限のフォーリナー』さ。きしし好きに呼んでよ」

 



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No.2「斬魔大戦①~魔人×魔人。異端なる空より来たる」

左右違いの瞳をした異形の少女がいた

 

人の姿をしていても異形と感じていた

 

特にあの目は駄目だ。あらゆる『魔眼』を超越したもの

 

極彩色の暗黒はそこにある

 

『禍神殺し』は最大級の警報を鳴らしていた

 

呼吸は荒く冷や汗は止まらない…けど殺意は未だ溢れる

 

「落ち着きなさい。立火…はしたないわよ」

 

ランサーが窘めてくれた。不思議と安心感がある

 

「ごめんランサー…けど…こいつはやばいよ」

 

「理解しているわ。私でもどうにか出来るかどうか」

 

ランサーは紅い槍を構える。エネルギー状の紅い弾幕が周囲を浮遊する

 

「おっと…今は戦闘するつもりは無いよ。私自身は争いはすきじゃないしね。きしし。……私の支配特異点に招待しにきただけさ」

戦闘の意志はないよと言う

 

「……これだけの腐臭を放つ異形をけしかけといて戦闘の意志はないよって言われて納得出来るとでも?」ランサーは槍の、鋒を突き付け言い放つ

 

「『ティンダロスの猟犬』は次元を越えて獲物を狙う異形だよ…ここの場所へ来るのに必要でね。まぁ飢えてるからてなづけるのは難しいからねぇ」

 

『ティンダロスの猟犬』……さっきの犬のようなものはそう言うのか

 

……寄贈知識群に該当しない外側の知識のようだった

 

「……『斬魔大戦』って」

 

「荒唐無稽な御伽噺になれなかった物語。神殺しになれなかった物語だよ」

 

「…………あの人……達は……まだ……負けてない……負けないんだ」

 

「……起きたかい。『異界のキャスター』」

愉快げに笑う異形の少女。

 

「…最悪の目覚めだよ…………………………『無限のフォーリナー』……」

 

紫の、長髪に黒いノースリーブのフリフリしたワンピースを着た金眼の少女が私の隣に居た

 

私の手元の古ぼけた装丁の本は頁となり舞い少女となった

 

「…『異界のキャスター』……?」

 

 

「ご機嫌麗しゅう…マイマスター。召喚に応じ参上したよ。…………私をキャスターとあれをフォーリナーと呼んで欲しいな。けどごめんなさいマイマスター。……私は…マイマスターを巻き込まなきゃいけないんだ。」

 

幼さを残す紫のキャスターは此方を見上げ悲しげな表情をする

 

「私は……『斬魔大戦』をやり直さなきゃならないんだ……」

 

 

「…きしし、その割には私の特異点から逃げ出したようだけど」

馬鹿にしたような笑みを浮かべる『無限のフォーリナー』

 

「…逃げてなんか無い……!……我が主……藤丸立火さん、マイマスター、マイロード。私と契約して」

 

「…貴女のクロスオーダーも手伝います。……だから私と契約して『あの人達』を……救って」

 

縋るように私に近付く。

 

え、……召喚したし…マスターとサーヴァントとして繋がりがあるのは分かる

 

けどそれ以上の契約って…でも目の前の少女は初めて会った私に縋る程追い詰められていた

 

「…『契約』…して下さい。マイマスター」

 

『斬魔大戦』も分からないけど…目の前の『無限のフォーリナー』は『敵』で…この子の『敵』だ

 

この子、『異界のキャスター』は私が召喚した『サーヴァント』だ

 

「……随分お人好しのマスターに召喚されたようだ」

ととなりのランサーも嘆息していたけれど

 

 

これは私が選んだ道だ

 

 

「……ん。」

『異界のキャスター』は私の唇に唇を躊躇いなく重ねる

 

「……は?」

ぽかんとするランサー。まて私も理解が追い付かない

 

ごめんなさい沖田さん…

 

えぇええええええええええええええええええええええええ!!?

 

「……んは…契約は完了した。…………これで貴女はマギウスです。マイマスター。……私の真名は『ネクロノミコン異界言語版』魔導書のキャスターです」

 

ネクロノミコン…異界言語版…?

 

マギウス…?…いや私のファーストキス……まぁ可愛いし良いけど……

 

「この世界の『魔術』とは違う『魔術』…秘匿されるべき神秘ではあるけど…此方は畏怖すべき『神秘』…『外なる神々』の知慧…その記述を記載された『魔導書』なのマイマスター。………」

 

 

「…そして君は『魔人』だ。『D』の魔人、『異界の紫』ネクロノミコン異界言語版。」

 

「…そうだね。『無限なる極彩』『Y』の魔人の寄車むげん。」

 

きししと『無限のフォーリナー』こと寄車むげんは笑う

 

 

「あいつは『あの子』の傍離れないだろうし…きししししし。これは私の趣味じゃぁないけど別の『N』の魔人も用意したさ」

 

「……………『禍神転生者』よね、貴女は」

私は睨みつける

 

「……問題なく『禍神転生者』だよ。…さてゲームだよこれは…君達には私の『支配特異点』を救ってみな。きししししし!!」

愉快げただ愉快げに笑う『魔人』

支配特異点……という事は既に特異点は此奴の支配下ということ

 

「………『魔術』とは感情を理性で制御し昂ぶる魂を魔力に融合させ精錬、精製するものマイマスター。…怒ってくれてるのでしょ…今の貴女は魔術師。…サポートはする…」

 

マスターとサーヴァント…けど前提すら逆転する

 

マギウスとグリモワール

 

『魔導書』は主に力を与える存在。

 

いくら、少女の姿を持ち超常の存在とは言え『書物』

 

彼女が再び頁となり霧散して舞う

頁の嵐となり私の周りを舞う

 

………『マギウス』となる

 

黒い術衣が私は纏っていた。……奇しくも『禍神殺し』の術衣『黒い翼』あの時に似ていた

 

「うん、魔力の相性抜群みたい…よろしくねマイマスター」

ちょこんと肩にマスコットのように縮んだ『異界のキャスター』ことネクロノミコン異界言語版ちゃん

…きゃわわ!!

 

 

「戦えるのかしら立火。…」

 

「…あくまで私は写本。オリジナルの母上には及ばないけど…魔術師ではないマイマスターを魔術師たらしめる位は出来る」小さいキャスターはふんすと鼻を鳴らす

 

「マスターの強化は私たちサーヴァントの強化なる…ま、お前は逆みたいだけど」

 

「…同時期召喚のよしみでよろしくねランサー」

 

「まぁ足をひっぱらないで頂戴ねキャスター」

 

「…戦うつもりはないんだけどねぇ…遊んであげるよ」

 

ワラワラと沸いてくる黒い犬のようなものは数十体と増殖する

 

「行くよ。マイマスター。」

 

ネクロノミコン異界言語版の声にぐ、と下腹部に力を入れ構える

 

 

 

己の番

 

 

「全弾くれてやる!!」

沸いてくる黒い犬のようなもの共を降り注ぐ剣雨でなぎ払う

 

「ワラワラと沸いてきやがって…………ち、…」

 

癌細胞のように増殖する黒い犬のようなものははぁはぁッと、涎を撒き散らし襲いかかる

 

干将莫耶で打ち払い斬り捨て剣雨を打ち付ける

 

「………ち」

狭い廊下で囲まれてしまう

 

 

「…はっ、テメェが『赫月のセイバー』か!!」

突如の下腹部に衝撃が走り吹き飛ばれる

 

「がっ!!」

 

 

「…主、荒っぽいと申し上げる」

 

「は、敵に何甘いこと言ってやがる!!ラキぃ!!」

 

「…我の名前を省略するなと申し上げる主」

 

不良の風体をした青年と彼の半分程しか背がない灰色の少女がいた

 

 

「…誰だ貴様ら」

己は体勢を立て直して2人と対峙する

 

 

「『転生者』だよ、『赫月のセイバー』…テメェのセイバーのクラス寄こせや!!」

 

いきなり剣を抜き斬り掛かってくる不良の青年



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No.3「斬魔大戦②~殺意の牙、憎悪の爪、我は座なしの亡霊」

『転生者』と名乗った男は剣を構え斬り掛かってくる 

 

「ラキぃ…テメェは手を出すんじゃねぇぞ!!」 

 

「マギウス化はしない。…好きにするといいと申し上げる。…負けそうになって泣きつくなら考えると申し上げる」

無表情に機械的に返答するラキと呼ばれた灰色の少女

 

「…ち、…『剣士』のクラスを寄こせとか訳分からないことを…!」

 

「…死ね!!ってことだよ!『赫月のセイバー』!!…次元聖杯戦争の参加権を寄こせや!!」

下段から切り上げ蹴りを入れてくる不良の青年   

 

「……次元聖杯戦争に参加するつもりか…」

 

「ああ、殺しまくれるからなぁ!!」

 

魔力の増大は検知

 

いや……これは…『霊圧』!!? 

 

 

「名乗ってなかったなぁ…『赫月のセイバー』!!……『無貌のクラスレス』…てめえを殺す男だ!!!!!!」

 

エネルギーが収束し放たれる…『虚閃』

 

 

そう、…『虚閃』だこれは…だが威力が第一特異点からで戦った『破面』の英霊のそれは段違いの威力があった

 

「ぐ…クラスレスだと…?」

 

「今の俺には枠がねぇのさ…!!まぁサーヴァントじゃなくて『転生者』だからサブクラスのリバーサーしかねぇ…それじゃ参加資格がねぇだとよ…まぁ殺しやすそうなテメェがセイバーで好都合。だからくれよ」

 

「やれんな。己には己の事情がある」

 

「よぇえやつは何も言えねぇがなぁ!!」

再び虚閃を乱射する

 

「…ちぃ…『識天覆う7つの円環(ローアイアス)』!!」

 

7つの花弁の盾を展開し弾くが一撃一撃でローアイアスを削る

 

こいつ…戦闘力に極振りした『転生者』か

 

「…『禍神転生者』か」

 

「あ、ちげぇよ『転生者』つったろ!!」

 

禍神転生者ではない…だと…『隷属』か?

 

 

「……『隷属』じゃねぇぞ『赫月』ぃ…………軋れ『豹王(パンテラ)』!!」

 

 

帰刃!!?やはり

 

 

『グリムジョージャガージャック』に転生してやがる…!!

 

 

「いきなり『帰刃』とか…切り札だろうが…!」

 

「………『帰刃』はもはや切り札たり得ませんよ。『赫月』様…まぁそれすら貴方は及びませんが……と申し上げる」

灰色の少女は無機質な表情をし此方に向け淡々と言う

 

「はは!!『無貌のクラスレス』……グリムジョージャガージャックだ……まぁここでテメェは死ぬ」

 

『霊圧』が上昇し、極大値まで上がり収束

 

刃に内包された、本来の姿へ回帰する

 

豹の虚の姿を纏う人型へと変異する

 

「行くぜ『赫月』」

 

な……に…?

 

迎撃の剣環を射出する間もなく吹き飛ばれ壁に叩きつけられる

 

「遅ぇよ…テメェみたいな中途半端な『転生者』が無駄に枠を潰してるなんていらつくぜ」

 

「内包された英霊の力もギフトスキルも総て中途半端!!…『転生者』の意味あるかテメェは」

 

さらに蹴りつけ壁に埋められる

 

『無貌のクラスレス』グリムジョーへ転生した『転生者』は不機嫌に踏み付ける

 

「無駄だから寄こせや」

 

「譲渡推奨。我々のがその参加権有意義に使える…と申し上げる」

 

「…死ねや。『王虚の閃光』」

 

 

      『絶劔・連斬』

黒い斬撃が飛来。

 

虚閃を放とうとした腕を弾く

 

「あ、誰だ!?」

 

 

「大丈夫か?『赫月の』」

 

「あ、あぁ…『魔神』か」

 

 

煉獄のような女が己を抱え距離を取る

 

再び融合していたのか…『魔神セイバー』

 

彼女は『煉獄剣』を構え奴と対峙する

 

「ち、他にサーヴァントがいたのか」

 

「………藤丸立火のサーヴァントは他に二騎居ると申し上げたはずと申し上げる。…新たに二騎召喚したようですが…」

 

「申し上げる申し上げるうるせぇぞラキぃ……ち、興醒めだ。」

軽く舌打ちし『帰刃』をとく『無貌のクラスレス』

 

「よぇえテメェを殺してもつまらねぇからな『赫月の』……次までマシになってやがれ。『禍神殺しNo.6』『無貌のクラスレス』だ、覚えとけ無能」

 

「我を使うまで期待したいですがと申し上げる。」 

 

「我は魔導書『グラーキ黙示録』……彼女によろしくと申し上げる」

 

忽然と消える2人

 

 

「すまん……助かった」

壁により掛かり息をつく己

 

「構わない。……立火が心配だ…新たに2騎のサーヴァントを召喚をしたみたいだが……向かわなければ」

 

「己も行く」

 

無理はするなと言うが立ち上がりリツカのいる場所へ向かう

 

 

 

 

私の番

 

「マギウスウィング!」

術衣を翼に変形し斬り掛かる

 

「…いきなり扱えるとは才能あるねマイマスター」

 

「……多分ギフトスキル。『転生者権限』の一環だと思う」

無数に沸いてくる『ティンダロスの猟犬』はすでに増殖を繰り返し2頭や3頭の頭蓋を癒着した異形となり襲いかかる

 

既に『ティンダロスの猟犬』といっていいのすら分からない

 

「…ティンダロスの猟犬とは言い難いかも…根幹は一緒。曲線と曲線を繋いで移動するから気を付けて

 

「雑魚が…いくらいても雑魚よ。」

 

紅の弾幕を放ち穿つランサー

ぶちまける脳漿に顔色を変えずさらに槍を振り回す

 

彼女の周りの猟犬達の死骸は既に100をゆうに超える

 

瘴気を纏う廊下の中でも一輪に咲く可憐な花のような美しさはあった

 

「ランサー、やるね」

 

「どうも。………まだやるかしら『魔人』」

 

 

 

      『エンブリオ・ファンタズム』

 

空間が歪み割れた

 

「まだやるって何が?きししし」

 

 

100体を越える『ティンダロスの猟犬』に囲まれた廊下

左右上下に猟犬は此方を見ていた

え?さっきまで…全部死体が転がってたのに………

 

 

「気を付けたのに…!!」

ぎりぃ…と歯軋りするマスコット化していない『異界のキャスター』

 

私もマギウス化がいつの間にか解けていた

 

 

「きししし!!」

『無限のフォーリナー』は笑う

 

「もう鎮めてあげて『暴君』」

 

 

「……」

 

無限のフォーリナーの足元より人型が現れる

 

全身を赤と黒のレザーの拘束具を身の纏った少女

 

顔もベルトを基調とした拘束具で表情は見えない

 

口元も塞がれていた

 

直感で分かる。被虐されてるから拘束されてるんじゃない

 

拘束しなければ『やばい』存在だからこその『拘束具』だと

 

「立火!!逃げなさい!!!」

 

ランサーは即座に戦闘体勢をとり私の前に立つ

 

けど混乱と驚愕と畏怖で身体は硬直している

 

「……」

 

拘束具の少女は二挺の拳銃を構える

 

暴力的なまでの赤と鋭利過ぎる銀

 

自動式拳銃と回転式拳銃の銃口は此方まで向けていた

 

小柄な少女が構えるには無骨過ぎる大経口

 

おそらくは何らかの魔術兵器だ…いやあんな大経口魔術兵器じゃなくても私は防げない

 

ランサーは防げる…?いや相手はあんな驚異的な魔力がただ漏れだもの………無理、無理、無理

 

『異界のキャスター』がなんか言ってるけど分からない

 

逃げる?逃げる?

 

逃げなきゃ

 

 

…ランサー……?

 

ランサーがわたしの前に立っている

 

ランサー!!?……言葉にならない……

 

ランサーは此方を見ない。

 

     

     紅魔『スカーレットデビル』

 

 

札を翳し弾幕を展開する

 

『スペルカード』…彼女達の『力』の顕現にてルール

 

けど彼女らの『ルール』は適応しない『戦争』だこれは

 

『黙りなさい立火』

 

彼女からの威圧的な念話

 

 

『弾幕ごっこに縛られない『レミリア・スカーレット』の力見せてあげる』

 

 

    神槍『スピアザグングニル』

 

高密度の真紅の弾幕に真紅の槍を構える

 

無機質の二挺の殺意に弩級の真紅の殺意が応報する

 

「来なさい。拘束具の化け物。…縛られた貴女の力…この『紅夜のランサー』がねじ伏せてあげる」

 

 

『紅夜の』それが彼女の『二つ名』

称号持ちのサーヴァント

 

魔力が増大。銃声。マズルフラッシュ

 

銃声は2発。夜鷹の叫び声を思わせる銃声。命を奪うだけの無機質の音だけが響く

 

 

「ランサー!!!!?」

 

「……馬鹿みたいに声をあげるんじゃないわよ立火。はしたないわよ。……………………………………く、馬鹿みたいな威力ね。」

 

「ランサーよかった……無事……………………え」

 

 

血の臭いがした。ランサーの肘から下がなかった。

 

だらだらと出血していた

 

「大丈夫よ。これくらい……死にはしないわ」

涼しい顔をしながらも微かに額に脂汗をかく

 

「けどランサー……!」

 

「黙りなさい。敵が待ってくれるとでも?立火」

 

彼女の言葉にはっと我に返る。

 

目の前には『暴君』と呼ばれた拘束具の少女

赤と銀の拳銃は構えている

銃口からは硝煙。いつ次弾が放たれるかは分からない

 

「ち、…たいしたダメージは無いのね」

掠り傷は多少受けているがランサーに比べてあってないようなもの

 

 

「…きししし!まだやるかな。『紅夜のランサー』」

 

「…参ったと言えば見逃してくれるのかしら?」

 

 

「きししし。言えるのかな?プライドの高そうな君に…それに…ねぇ私はキミらを『巻き込みに来たんだよ』」

 

「……『Re斬魔大戦』にね」

 

 

「…もう一度起こすのか…!」

隣の『異界のキャスター』は激昂する

 

「…きししし!元々あれはそういうものだろう『異界のキャスター』」

意味ありげに笑う『無限のフォーリナー』

 

「今日は此処まで…君達は来なきゃならないしねその子の為に『次元聖杯戦争』の為に」

 

『暴君』と呼ばれた拘束具の少女は二挺の拳銃を下ろし霧散させる

 

向けられていた殺意もなかったように無になり消える

 

「…『暴君』もお前の手に落ちているんなら。…あいつも面白くないんじゃない?」

 

「…そうだろうね。だからあいつの『影』も参戦してくるだろう。まぁ全ては私の『特異点』に来てからにしよう。きししし!待ってるよ…藤丸立火。『異界のキャスター』…『赫月のセイバー』」

 

 

「リツカ!」

 

「セイバーくん…」

 

「…『禍神転生者』!?…『支配者』級か…!」

 

「『支配者』級…?」

 

「『支配特異点』を持つ『禍神転生者』…先の2人は『支配特異点』を作る段階の下位の『禍神転生者』…比べものにならないぞ」

 

「…『支配特異点』をわざと持たない『鉄心のアーチャー』みたいなのも居るけどね…数多の『支配特異点』を持つ『崩界のアヴェンジャー』や『特異点』を食らう『血怪のバーサーカー』に比べたら若輩者だよ」

 

薄く笑いセイバーくんへ目を向ける

 

 

「私はキミに大して興味は無いけれどね。『赫月のセイバー』…まぁ来るなら拒まないよ。正規の参加者だ」

好きにしたら良いと大した興味は無いと切り捨てる

 

「………己はテメェらを殺す。絶対殺す。…咲良を殺したんだ。………『禍神転生者』は許さない」

 

 

咲良…?

 

「…きししし、そっか…君は…私達に『奪われた』人間か…だからどうしたのかな、森羅万象『人』は奪い奪われるもの。…我等『禍神転生者』は常に『奪う』者…盤上の駒程度気にすることもないでしょ」

 

『虚影のアサシン』も『屍竜のライダー』も似たような事を言っていた『禍神転生者』の当たり前の論理

 

ぎりぃ…

 

「…巫山戯るな!!『聖剣投影』」

 

「『極光剣・永遠ノ光(エクスカリバーイマーシュ)』!」

 

セイバーくんは『聖剣』を投影する

 

光の斬撃を放つ

 

「…『機神召喚の章』の閲覧を許可する」

 

 

「…………いあ」

 

 

『暴君』の手には本。『題名』のない『魔導書』

 

魔導陣が展開する。神を敬い恐れ冒涜する術式

 

 

「最後に『神』を見ていくといいよ。君らが使役し打倒すべきものをね」

 

「…『鬼械神(デウスマキナ)』をこんな所で呼ぶ気!?」

『異界のキャスター』は驚愕し狼狽する

「安心しなよ、腕だけさ」

 

デウスマキナ…?デウスマキナ!?

 

 

 

「……『無銘なる1(ネームレスワン)』」

 

魔導陣から出てくるのは鬼械の腕だった

 

腕とはいい異様な腕、手指は見当たらず砲口のない砲台のようだった

 

腕とは言え充分な異様だった

そのデカさはカルデアの天井を突き破る

 

聖剣の光の斬撃を簡単に弾く

 

「…デウスマキナ!?」

 

 

「そう!神の模造品、機械仕掛けの神!最高位の魔導書のみが召喚せしめる『鬼械神』それがデウスマキナ。全てを台無しにする荒唐無稽の存在」

 

 

一部分だけでも巨大で強大だった。

 

異様にて威容の存在感に私達は弛緩する

 

一騎当千であるサーヴァント達でも尺度が違う

 

「…キミの『鬼械神』でも呼ぶかい?」

『異界のキャスター』に視線を向ける

 

「…私のデウスマキナは紛い物。……デウスエクスマキナのネームレスワンには勝てない…今では」

歯軋りし睨めつける『異界のキャスター』

 

「……私の『支配特異点』では『鬼械神』は必須だ……ふふ、どう打倒せしめるか楽しみだよ」

 

威容の機械の腕は消える

魔導陣も、霧散

 

威容が破壊した痕跡のみ残す。天井は突き破り私達の気分とは正反対で晴天の空が見える

 

外から入る寒気とは別に寒い。…………

 

「では始めるとしよう。参加者諸君。ようこそ。我が特異点『アーカムシティ』へ」

 

 

……絶望の大暗黒時代で大混乱時代の大黄金時代の櫃夢

 

 

『デモンベイン』の世界へ『ダインフリークス』の魔人が招き入れた

 

 

第三空想特異点・禁忌邪神都市『極彩たるアーカム』



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No.4「斬魔大戦③~櫃夢へ来る~」

マサチューセッツ州アーカムシティ

 

19××年合衆国東北部太平洋岸に位置するこの街はかつてない好景気だった

 

科学と錬金術の進歩と復古により人々の生活レベルは向上し様々なビジネスで成功者を生み人口も爆発的に増加していた

経済は発展し自他認める世界の中心

 

それがアーカムシティだった

 

 

覇道財閥、それがアーカムシティでも知らないものは居ないあらゆる業界につうじその総てに絶対の発言を持つ絶対的な支配者だった

 

かつては田舎町に過ぎなかったアーカムシティを経済的な発展を遂げたのも覇道財閥の創始者の偉業であった

 

……アーカムシティ……大暗黒時代で大混乱時代にて大黄金時代の『デモンベイン』の舞台である

 

 

 

私達は強制的にレイシフトしていた

 

私、立火…『異界のキャスター』『紅夜のランサー』『赫月のセイバー』の4人は街の裏通りにいた。日本の街並みではなく合衆国……しかも現代ではないようだ

 

『魔神セイバー』はカルデアリバースに取り残された模様

まぁ何故か分からないが『無限のフォーリナー』による強制的なレイシフトだ致し方ない部分はあるが今回はお留守番だ

私のレイシフトのパーティーコストかなぁ…?

…うぅ、沖田さんという癒しが…

まぁ3人も居るし…

 

「あ、ランサー……手当しなきゃ…」

 

「既にしてるわ。吸血鬼であるからある程度回復するから気にしないで頂戴」

 

ランサーは涼しげに言う。既に止血している

まだ再生はせず片腕がない彼女は痛々しかった

 

「でも…」

 

「でももヘチマも無いわ。本人が平気と言っているもの…マスターならドンと構えてなさい。敵地よ此処は」

ピシャッと言い放つ彼女にわたしは言い淀む

 

「ランサーの言うとおり……敵地だよ……とりあえず拠点となる場所に行きましょ……私が拠点としてた場所があるから行きましょマイマスター」

 

「拠点あるの?なら有り難いな……いこ、セイバーくん……セイバーくん?」

私はセイバーくんへ視線を向ける

「あ、あぁ……そうだな……」

 

アーカムシティの裏通りにレイシフトにした私達には『異界のキャスター』ことネクロノミコン異界言語版の先導にて歩き始める

 

 

覇道財閥の豪邸に構えた執務室に1人の少女は執務机にすわり控えている執事に声をかけた。その表情は硬く陰鬱としていた

 

「……代わりの魔導書は用意できましたか?」

 

「いえ……やはり彼女程の魔導書は……そもそも『デモンベイン』を失ってはやはり『ブラックロッジ』に対抗出来る手段は…厳しいかと…お嬢様」

 

「分かってる…分かってます…!…けどこれ以上は…!」

 

現在の覇道財閥総帥…覇道瑠璃は既に憔悴しきっていた

 

 

ブラックロッジ……『黒い聖域』の名を冠するカルト教団は日常的にテロを行うアーカムシティを脅かす犯罪組織だ

 

その名を聞くと泣く子は黙りテロリストも泣いて逃げるほどであるあらゆる犯罪に関与しアーカムシティの治安を脅かす

 

真に脅かす理由は破壊ロボットの破壊活動

 

その破壊ロボットは科学と錬金術の叡智

 

その脅威は治安警察の手に余っていた

 

だがその破壊ロボットの脅威すら赤子に感じるほど『ブラックロッジ』の幹部達『魔術師』達は恐ろしい

 

その魔術師達に『彼』と『彼女』は敗北し我々の切り札たる『デモンベイン』を失ってしまった

 

 

いや……『デモンベイン』はいる…居るけど……私達の技術では直せないほどブラックボックスの部分の破損をしてしまった

 

そのブラックボックス部分の破損は今の世界の最高水準の技術力を持つ覇道財閥でもどうしようもなかった

 

「……御爺様…私達はどうしたらよろしいのでしょうか……?」

 

齢まだ若輩たる覇道財閥総帥の少女は小さく弱音を吐く

 

 

 

 

大十字探偵事務所と書かれたくたびれたマンションの一室へ来ていた

 

「此処が…拠点?」私は入口から入り見渡す

探偵事務所と書いてあったが自宅と兼ねているようだった。

 

既に人が住んでいた形跡はなかったが綺麗に整とんはされていた。

 

住人はいなく…けどいつ帰って来ても良いように維持はされていたようだ

 

「……………………そう、私の大切な人たちが生活していた場所…………」

 

ネクロノミコン異界言語版ちゃんは愛しそうにソファに腰を下ろす

 

私は…………知っている

 

『魔導探偵』を『神殺しの刃』を『白き王』を

 

本物の『正義の味方』

 

大十字九郎とネクロノミコン『魔物の咆哮』たるアルアジフを

 

「キミは…………」

 

 

「…大十字さん達も居ないのに掃除なんてお嬢様も未練がましい…………って誰ですか貴方たちぃ!?」

 

ガラララっと入ってくる褐色の幼女のメイドが悲鳴をあげる

 

あ……鉢合わせてしまった。言い訳を…ランサー?我関せずの構えを!?

 

がお~、たべち…………ほんとすいませんでした、睨まないで



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No.5「斬魔大戦④~切なる叫びを胸に~」

ソーニャ…だったか覇道財閥のメイドが闖入してきた

 

いやいや私達の方が不審者かな、…き、拠点とか言ってなかったか!?許可なしかぁ!?キャスター!?

 

「母上の写本たる私が使用しても問題ないでしょ、…いつもは結界張ってたし…今のタイミングは神懸かりにイレギュラーだから仕方ない?よね」

 

責任転嫁してるよこの子!?居直ってるだけか!?

 

つか慌ててるの私だけ!?

 

 

 

「……」

我関せずを徹してるランサーはどこから出したのか紅茶を飲み始めてるし…片腕なのに器用ね、使い魔?はへー便利ね

 

セイバーくんもセイバーくんで我関せずですか…………うん

 

「な、何ですか!貴方たちは!治安警察呼びますよ!?」

ソーニャちゃんが声高に言い放つ

「あ、困る…あ、私達は怪しい物ではないですよ?」

 

説得力ねぇ…身分証明できんし…

 

 

「あ、面倒……いや覇道財閥に接触したかったし……多忙のお姫様には通常のアポじゃいつ会えるか分からないし……ちょうどよかった」

 

 

「『蜘蛛神の章』閲覧……アトラックナチャ『レプリカ』」

キャスターの腕が霧散しページとなる

 

ページから赤い糸が放たれソーニャちゃんを拘束する

 

「………ぇ…………?魔導書…?」

 

「理解が早い。助かる。……私達は『デモンベイン』を知っている。ブラックロッジも知っている。『マスターオブネクロノミコン』も知っている。…もちろんブラックロッジとは敵対している。お分かりかな?」

 

 

「ちょ、ちょいきなり言われても!?…というか何で縛ったんですか!?」

 

「そりゃ治安警察なんて呼ばれたくないし。……ねぇマイマスター」

 

「まぁ、……でも縛らなくても…」

 

「甘いよマイマスター。カフェラテのように甘いよマイマスター」

 

カフェラテは此処に置いてけってか喧しいわ

 

「……『覇道瑠璃』に会いたい。魔導書も必要でしょ。……覇道財閥も」

 

「……何が目的何ですか?」

ソーニャちゃんは脂汗を書きながら此方を見てくる

 

脅しに近いというか脅しだよねぇ!?

 

 

「…………『デモンベイン』を取り戻し『ブラックロッジ』に打倒する。」

 

 

「…ぇ」

 

「信用しろとはいえないけど……私は……私はあの人達を……取り戻したいだけ」

 

 

沈黙。その声には悲痛さが内包していた

 

悲痛なほどの切望する『願い』だった

 

「…………私だけじゃ判断出来ません…私は一介のメイドですからー…」

 

だよねぇ…

 

突然の警報…避難勧告が放送された

 

「あ、…い、いつもの破壊ロボット……」

 

 

「ドクター……いいとこに来た。…行くマイマスター」

 

 

「あ、えと…!?」

 

「ランサーとセイバーはいつでも手出し出来るよう配置していて…まぁ…必要はないだろうけど」

 

紫の髪を翻し黒いワンピースの少女は駆ける

 

私の手を掴みすぐマギウス化する

 

 

「…アルさんと一緒…」

拘束を解かれ呟く

 

「やれやれ…人使いの荒いこと」

静観していたランサーは優雅に立ちあがる

 

「…さて立火のメインサーヴァントさんはどうするのかしら?」

 

「そりゃもちろん行くが」

 

「精々足を引っ張らないで頂戴。死に急ぐ貴方は立火の足枷にならないことを祈るわ『赫月のセイバー』」

 

「…貴様に何が分かる…」

 

「…『運命を操る程度の能力』を持つ私には貴方の『運命』の性質くらいは初見で少しは……ね。……私は『紅夜のランサー』……同じマスターに召喚されたのだから仲良くしようじゃ無いか」

クスリと少女には似つかわしくない妖艶な笑みを浮かべる

優雅に歩を進めるランサー

 

「……ち」

 

軽く舌打ちしモヤモヤを抱えながら動き始める『赫月のセイバー』

 

 

 

アーカムシティの中心街

 

「ドォォクタァァァァ!ウェエエストォォ!地を這う虫螻の皆さん!!今日も我輩の鬱憤晴らしに付き合って貰うであーる!!鬱憤?たまらないんじゃないかって我輩のガラスハートは飴細工でありますですし…え?ガラスハートじゃないじゃんって喧しいわ!!」

 

 

「博士うるさいロボ」

 

「Σ( ̄□ ̄)!」

 

馬鹿でかいドラム缶のうえに騒音よろしくの音程でギターを弾きならす白衣の変態がいた

 

ドクターウェスト…ブラックロッジにこの人ありと言うのか言わないかはしらないが表だって破壊活動を行うドラム缶にしか見えないそれは

 

破壊ロボット…科学と錬金術の結晶

 

 

 

アーカムシティにすむ住人は巫山戯た見た目のそれでも充分破壊の象徴で脅威だった

 

「にっくき大十字九郎がいない今、なんだか張り合いがないのであーる。我が輩が倒した訳でもなし…青瓢箪の嫌味を聞くだけで我が輩の胃に穴があくのであーる…懐かしき大十字九郎との闘争の日々…は、失って気付く初めて気付く気持ちもしかして」

 

「博士キモいロボ、…ダーリンはエルザのものだロボ」

 

破壊ロボットの操縦席にいるロボが語尾の緑髪の少女はドクターウェストの最高傑作の人造人間…まぁロボット三原則は搭載されてないが

 

 

 

「ドクターウェスト、いい加減好きにはさせないぞ」

 

 

「来たな、メタトロン。アーカムシティの守護天使も傷だらけであるなレッツプレイ」

 

「私は彼らの分もアーカムシティを守らなきゃならない」

 

白い天使を思わせる装甲を纏った人型が舞い降りる

『契約の天使』の名を冠する改造人間は傷だらけのまま戦場に立つ

 

「…お前も学習しないなぁメタトロン…ウェストが暴れたらお前が来るのは分かりきってるから己が来るとは明白じゃないか…さぁ殺し合おう」

 

「…くっ…サンダルフォン…」 

黒い破壊の天使、装甲を纏った改造人間

 

黒い天使は狂気を内包した殺意と闘気を放つ

 

「ああ、敗北した正義の味方とやらの呪いなど捨てろ!!お前は己という呪いだけに縛られればいい!!負け犬の事など唾棄し吐き捨てろ!!メタトロン!!」

 

「私は…彼らの意思を…捨てることなど…出来ない!!」

メタトロンはビームサーベルを両手から展開する

 

「メェェタァァトォォロォォン!!!!!」

 

天上天下と構えをし咆哮する。

 

同時に駆け光の剣と破壊の拳は交差する

 

 

 

覇道財閥、司令室

 

 

 

治安警察の抵抗などもはや破壊ロボットの前には無力なのは大分昔に歴然だった

 

メタトロンも黒い天使の襲撃でドクターウェストへの迎撃をなせて居ないのがつらい

 

覇道瑠璃は顔を蹙める

覇道財閥の私設兵団も破壊ロボットに対抗出来ない

 

「…破壊ロボットですらこれでは……奴らが来たら一環の終わり」

 

デモンベインがいれば…あのようなガラクタ敵ではないのに…!!

 

「…司令、避難終了したようです」

 

「ええ…ありがとう…ドクターウェストが飽きるまで耐えなければならないのが腹立たしいですが」

 

傍らに控える執事…ウィンフィールドの言葉に応える

 

「メタトロン様も黒い天使…サンダルフォンに足止めされているようです」

 

「彼女だけに頼り切りなのは心苦しいですが…打つ手がない…」

奥歯を噛み締め苦汁をなめなければならないのかと顔を顰める

 

「司令!霊圧値の増大を検知…!……『招喚』です!」

 

オペレーターのメイドの一人、マコトは冷静ながら声には驚きを含んでいた。計測機器が霊圧値の増大を知らせる

 

 

…『招喚』!?もしかして『逆十字』!?

 

絶望的な予感を感じ身体を抱きしめる覇道瑠璃は司令室のモニターに映る状況を凝視する

 

『招喚』…すなわち『鬼械神』……!それを操るのは…ブラックロッジしかいない…

 

天に描かれる五芒星の魔導陣

 

…似ている…『虚数展開カタパルト』の転移に

 

 

「…司令、この霊圧値…酷似しています」

 

 

「何に…ですか?」

 

 

「……デモンベインにです」

 

「!?」

 

「なんやて、ありえへん!なんかの間違いや!デモンベインは唯一無二のモノや…!」

眼鏡をかけた関西弁の女性オペレーターチアキは目の前の計器を否定するかのように叫ぶ

 

「……ですが…敵か味方か…それが重要ですね…逆十字の鬼械神の霊圧値とは違うのでしょう?」

 

「デモンベインのそれと酷似しているならば…逆十字の鬼械神の霊圧値とは違うはずです…断言は出来ませんが」

マコトは冷や汗をかきながら呟く

 

「…デウスマキナ…」

 

「…顕在化します!!」

 

爆音と共に実体化する。我等が切り札たる『魔を断つ剣』と同じ霊圧値を持つアンノウンが上空の魔導陣から飛来する

 

 

 

 

それは巨大な機械の人型。機械の威容

 

漆黒。深淵より深遠の黒。

 

その巨人は…………『魔を断つ剣』に酷似していた

 

 

……一目見て違うとは分かるけれど……それは何故か『デモンベイン』に酷似していると感じてしまう

 

 

50メートルの黒い巨人は破壊ロボットの前に立ちはだかった



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No.6「斬魔大戦⑤~黒き祈り、紛い物の夢~」

摩天楼を疾走する

 

黒い術衣を纏った私は跳躍した…いや飛翔していた

 

黒い術衣はワンピースみたいな格好をしていたがページが形成していた

私の肩までしかなかった髪の毛は腰辺りまで伸び銀髪になっていた

……マギウス……魔導書と契約し魔力を行使するに最適する姿だ

 

……疑似魔術回路を形成した時の感覚は似ていた

 

身体中の血管に血液以外のものを流す感覚

 

本来無いはずの回路に接続する感覚は酷似していた

 

術衣はページを展開し翼を形成する

 

「…ほんと、初めてなの?マイマスター。」

 

「…初めてだよ…いやなんかしっくり来るし……『転生者権限』かなぁ」

 

第二特異点で10%の『禍神殺し』の力を解放した以来…不思議な感覚は残っていた

 

多分あの力はオンオフで切り替えられない

 

今のところ不都合はない。…理解できない不快感はあるけれど…必要なものだろう

 

……って話がずれた

 

私はキャスターに強制的に連れられマギウス化して摩天楼の中を飛翔していた

 

「………………………どこ行くのキャスター」

 

「ドクターウェストが暴れてる。……母上達が居ないから代わりにやらないと。あと覇道財閥に味方だってアピール出来る」

 

「状況説明とか」

 

「あと。マイマスターなら即時理解して。寄贈知識とやらがあるでしょう?」

 

「理解と納得は別だってぇ!!状況を飲み込みたいの!!」

 

「世界と世間は待ってくれない」

 

「知ってた!!」

 

巨大なドラム缶が見えた。高層ビルの屋上に降り立つ

 

…破壊ロボット。

 

スーパーウェスト無敵ロボ。バージョンはいろいろあるらしいからどれかは知らない

 

巫山戯たデザインはしているとは思う。 

 

 

正義の味方を失っている世界には充分な脅威

 

「ドクター。笑って居られるのも今のうち。………私はマスターを連れて舞い戻った………マイマスター。見せてあげる…………『鬼械神』を」

 

 

マスコットサイズになっているキャスターは術式を紡ぐ

 

『招喚』の術式を

 

 

神の模造品。機械仕掛けの神を招喚する術式を紡ぐ

 

 

「……私の鬼械神は……『魔を断つ剣』の模造品。」

 

 

「……私はあの人達の『影』だから」

 

 

魔力が迸る。彼女と共に『招喚』の句を紡ぐ

 

ネクロノミコン異界言語版が『鬼械神』を呼ぶ句を

 

 

私は『異界のキャスター』の口上に重ねて言い放つ

 

 

『劣悪の空より来たりて漆黒の祈りを胸に』

 

『我が手は偽りの剣を執る』

 

 

『汝、偽りの翼』

 

 

『レイドクロー!!』

 

言葉は力となり術式を紡ぐ。零から壱へ

 

鬼械神レイドクローが顕在化する

 

漆黒の鬼械神。『奇襲する烏』の名を持つ鬼械神

 

それは烏を思わせる装飾をされた無骨な機械の巨人

 

だが…『魔を断つ剣』を確実に模していた

 

 

『レイドクロー』は破壊ロボットの前に顕在化する

 

実体を持ち質量を得る。神の実体化にごっそり魔力を持っていかれる

 

きっつ…!!

 

これは…そうだ…キャスターは今はサーヴァント。

 

これは『宝具』の使用に相当する

 

偽神の招喚は………………召喚系の『宝具』の最高位に分類されるはず

 

ステータスを見る

 

 

宝具『機神召喚の章・黒き偽翼(デウスマキナ・レイドクロー)』

 

「大丈夫?マイマスター」

 

ここはレイドクローのコックピットのようだった

球体の結界の中に私達はいた

 

黒い帯は私の両腕両足が繋がっていた

 

恐らく…レイドクローの操作に類するものだろう

 

レイドクローに接続している感覚があった

 

サブパイロットの椅子に座っているキャスターの声にようやく気付く

 

「ごめん…招喚の魔力持ってかれてめまいしてた」

 

「……ようだね。デモンベインとは違って一応曲がりなりにもレイドクローは生粋の鬼械神。…零から1へ顕在化は初めてじゃきついよね…でもマイマスターは初めてでそれですんでるのはすごいよ」

 

「下手してたらやばかったの!!?」

 

 

「マイマスターの潜在能力に信頼してた」

 

「ついさっきあったばかりの信頼感!!」

 

「目の前を見てマイマスター。ドクターは気付いてるよ」

 

球体の結界のコックピットに映るモニターには不細工なドラム缶……破壊ロボットが鎮座していた

 

 

 

 

「き、貴様なにものであるか!!…………デモンベインににているのであーる!!!!」

 

「…でも真っ黒で烏みたいロボ」

 

かつての仇敵デモンベインを真っ黒にし黒い翼をはやしたようだった。その姿の巨人にドクターウェストは困惑する

 

 

「反応ないであーる。あのようなロボット。ブラックロッジでもみたことないのである!!」

 

「………あの女の隠し球の可能性もあるロボよ?」

 

「此方を敵意を感じるのである。我が輩のシックスセンスが言っているのであーる。デモンベインに似ているのだ敵に決まっているのである!!」

 

「科学者にあるまじき発言ロボ」

エルザは嘆息し呆れる。まぁいつものことだ

 

「黒いロボットよ!我が輩のドリルの餌食になるのであーる!!」

破壊ロボットの腕のように付けられた2対のドリルは黒いロボットを穿つ為に唸る

 

「レッツプレイ!!」

 

 

 

 

「黒い……デモンベイン!!?いや……違う!!?」

メタトロンは突如現れた黒い巨人の姿に懐かしい既知感を覚え困惑する

 

覇道財閥…!!?いや彼らの隠し球ならとうに出している……デモンベインは敗北しその姿は…脳裏に刻まれ覚えている

 

「余所見をするな!!メタトロン!!黒い巨人が来ようとも己達の殺し合いには関係ない!!」

 

サンダルフォンの拳はメタトロンの脇腹を穿ち高層ビルに叩きつけられる

 

「が!!?」

 

「あれがデモンベインなわけないだろう!!?あの日今日に似た夜に『逆十字』共にあの異形の女の禍禍しい『鬼械神』に『魔を断つ剣』は敗北したのだろうが!!無駄な期待、希望を持つな!!メタトロン!!」

 

「……お前に……言われるまでもない…!!…」

 

右手をビーム砲にかえビームがサンダルフォンを貫く

 

「そうだ!…己を己だけをみろ!メタトロン!」

 

「……邪魔するぞ。黒い天使」

 

「誰だ…邪魔をするな!」

 

 

覇道財閥司令室

 

「アンノウン…破壊ロボットと戦闘に入りました」

 

「あかん、ドリルが来るで!」

 

「あれが…『鬼械神』ならば破壊ロボットの攻撃では傷付かないはず」

 

もはや今は謎のアンノウンに託すしかない

 

破壊ロボットと敵対する以上……味方のはず

 

「……そう言えばソーニャは?」

 

「九郎ちゃんの事務所の掃除にいってはるはずですわ」

 

「タイミングの悪かったですわね…ウィンフィールド迎えを…」

 

「はっ」脇に控えている執事に命令する覇道瑠璃

 

「必要ないわ」

 

「ただいま戻りましたぁ…」

 

司令室に戻ってきたメイドの一人ソーニャの隣にはピンクのドレスを纏う少女

 

「何者!?ブラックロッジ!?」

 

ウィンフィールドはボクシングスタイルで構える

 

「この子を送り届けてあげたのに不躾ね。まぁ躾がいきとどいていて大いに結構。うちの咲夜を思い出すわ」

薄く微笑む

 

「お嬢様、ウィンフィールド様敵じゃないんですぅ!」

慌てて間に入るソーニャ

 

「しかし確証がありません。」

きっぱりと信用は出来ないと切り捨てる

 

「…やるつもりならすでにここは血の海だけれども?……あら、我ながら下品な事言ってしまったわ。」

 

その言葉で警戒心で弛緩する場にピンクのドレスの少女は優雅に構える

 

「…『赫月』に任せればよかったかしら。まぁあの無頼漢より私のがマシだな。……あの黒い巨人の搭乗者の護衛よ私は」口下手なのよね私はと嘆息し口を再度開く

 

「ほ、ほんとなんですお嬢様……『魔導書』がいて『ブラックロッジ』に打倒すると」

 

 

「……ほんとですか?」

眉をひそめる覇道瑠璃

 

「…倒すべき敵がブラックロッジにいるし。うちの『魔導書』は前任の2人に固執しているしね」

 

 

「……貴方達の名前は」

 

 

「我が主の名前は『藤丸立火』……魔導書の名は『ネクロノミコン』の異界言語版。」

 

 

「…………ネクロノミコン!?」

 

ピンクのドレスの少女『紅夜のランサー』を名乗る少女の言葉にその場全員驚愕する

 

『彼女』と同じ名前の『魔導書』の名に



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No.7「斬魔大戦⑥~交錯する鋼と鋼~」

黒い巨人・レイドクローは破壊ロボットのドリルの回転の攻撃を躱す

 

レイドクローの操作は術者とリンクする

 

レイドクローは私の動きをトレースし動いてくれていた

 

ドリル!?ドリルぅうう!?

 

痛覚までリンクしとそうで危機感マックスなんですか!?

 

「何故に疑問視?安心してマイマスター。破壊ロボットのドリル如き効かない…仮にも鬼械神だし」

 

「武器!武器とかないの!?」

 

 

「…ごめんマイマスター。…アトラックナチャとニトクリスの鏡しか使えない。バルザイの堰月刀とかはまだ使える位階にはいないんだ…ごめん」

 

 

「必殺技は!?」

 

「…ごめん」

 

 

「私はまだ生まれたばかりの写本。…しかも実体化を先延ばしで出来るようにしたから…まだ十二分に模倣出来ていない」

 

 

ただ使命感にかられた生まれたばかりの少女にみえた

 

 

「なら殴るだけだ!!」

 

「…マイマスター?」

 

契約した時に縋られた筈だ。頼られた筈だ。

 

 

頼られたのは初めてだった。藤川五火の時なんて兄に頼り生きてきた

 

藤丸立火になってもセイバーくんや沖田さん、信長に頼ってばかりだ

 

…なら頼ってくれた小さいこの子には…弱音は吐けない

 

いや多少ははくかもしれない…けれど

 

 

「女の子にも意地はあるんです!!」

 

 

拳を握り大きく振りかぶる

 

レイドクロー…黒い巨人は応えてくれる

 

不細工なドラム缶をべこべこになるまで殴り潰す!!!

 

黒い拳は破壊ロボットの顔面?を捉える

 

顔面?どこだ?そこか

 

 

「顔パンだとぉおお!!?」

 

 

「死んで!!」

 

左のストレートを放つ。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る!!

 

 

「マイマスターってば意外に脳筋?」

 

…武装無いって言うから

 

 

黒い巨人は破壊ロボットに接近して打撃と殴打を繰り返す。鈍い音を繰り返す

 

「の、脳筋であるか!!?美学がないのであーる!!」

 

 

「…レッツプレイロボ!!」

 

 

レイドクローでさらに殴打を繰り返そうとするが破壊ロボットの全門砲台が展開する

 

 

「『ジェノサイドクロスファイヤー』!!」

 

全門より火力満載な弾幕が放たれる

 

ヒヒロカイネの装甲を傷つけるまでには至らないが距離をとらざる得ない

 

「きゃ!?」

 

 

「さらにデモンペインの時より搭載しているロボ!『我、埋葬にあたわず(ディグミーノーグレイブ)』ファイヤ!」

 

中央の砲台からビームが放たれる

 

「第5の結印はエルダーサイン、敵意と悪意を払うモノなり!!」

 

五芒星の魔導陣を展開し威力を殺ぐ。

 

「不完全な結印で悪いけど」

 

 

「拡散ビームロボ!」

ディグミーノーグレイブを拡散しレイドクローに降り注ぐ

 

「きゃ!?」

不完全なエルダーサインを越えレイドクローにダメージを与える

 

「近付かせないのである!蜂の巣にしてやるのである!」

 

「はめぷれいとはせこいロボ」

 

「頭脳プレイと言って欲しいのである!黒いロボット」

 

 

 

 

 

近づけない…破壊ロボット…ドクターウェストは完全に遠距離攻撃しかしてこない

 

「く、悪知恵…」

 

「むしろ常套手段でしょう…此方に武装が無いことに勘付いてるかも」

 

武装…いくら巨大な質量を持つ『鬼械神』でも武装がなければ破壊ロボットに対抗出来ない

 

 

『推奨・重装夢幻召喚。『異界のキャスター』を介し『鬼械神』に纏わせる』

 

 

え?

 

 

『推奨・重装夢幻召喚。クラスカードの使用を推奨』

 

 

疑似魔術回路が再び接続される

 

マギウスと化している今は『禍神殺し』とたり得る

 

ギフトスキル『識者』…寄贈知識群、脳内ウィキペディアと呼んでたそれは現状の打開策を推奨してくる

 

「マスター?マイマスター!」

 

動きを止めた私にキャスターは声をかけてくる

 

 

黒い巨人は棒立ちとなり破壊ロボットの的になっている

 

「マスター!?」

 

 

 

「…………ごめん、…令呪をもって命ずる」

 

 

『訂正・そのマギウス形態ならば令呪の補助は不要。』

 

なら…よし

 

        『重装夢幻召喚』

 

 

クラスカードをキャスターへと接続。黒い死魄装姿にキャスターはなる

 

 

「…これは…?」

 

「…説明は後だよ。キャスター…その力を…レイドクローに纏わせて。出来るはず」

 

雰囲気の変わった私にキャスターは驚愕するが構ってはいられない

 

「……勝ちたいンでしょキャスター……?なら私の力も貸すから」

 

「…………うん。ドクターに躓いてるようじゃだめ」

 

 

 

司令室

「アンノウン、被弾。沈黙してはりますわ!何してんねん!恰好の的やで!」

チアキは叫ぶ

モニターに映る黒い巨人。アンノウンは破壊ロボットの弾幕の的とかしていた

 

沈黙。展開している魔導陣は威力をそいではいる

 

「…っ」

 

「無様ね。立火…まぁ最初から器用にこなせるような子じゃなさそうだしね」

髪の毛をくるくると弄りながら少し苛立ち嘆息するランサー

 

かつかつと出口へ歩いて行く

 

「どちらへ?」

執事ウィンフィールドは聞く

 

「援護よ。……心配なら無用よ此方も人外」

 

黒い翼をはやした少女は薄く笑う。その翼は人外の証

 

まるで…物語の中の夜の民のように感じる

 

 

「アンノウンの霊圧値の増大を検知!……これは」

マコトは計測機器の検知を伝える

 

 

「へぇ…立火やるじゃない」

 

ランサーは横目でモニターを見て自身の主に呟く

 

 

 

 

摩天楼上空

黒い天使の攻撃を阻むのは赤い刀だった

 

「誰だ貴様。己とメタトロンの戦いを邪魔するならば…殺すぞ」

黒い天使は殺意と闘気を隠さず噴出する

邪魔立てされたのが気に食わなかったらしい

 

「……白い天使さんはこの街の正義の味方らしい。足止めしてる貴様こそ邪魔だと思うが」

己、『赫月のセイバー』は白い天使の前に立ち塞がる

 

「お前は…」

 

「…ただのお節介さ。あそこの黒い巨人の関係者とでも言っとく」

 

「…お前達は…」

 

「…『悪の敵』さ。…なら味方とでもしとこう」

 

「…邪魔だてするなら殺すだけだ。貴様がだれであろうがな!」 

 

「…己は強くならなきゃならない。糧とさせて貰うぞ黒い天使」

業っ!と燃える赤い刀『火神楽』を構える

 

 

 

 

レイドクローの手には身の丈程の大刀を『鬼械神』サイズに再構築したものが握られていた

 

 

「…セイバーのクラスカードから情報を抽出し『鬼械神レイドクロー』用の武装に再構築し変換した。まだまだ私も未熟だから『卍解』とやらの解析までは出来なかった…ごめん」

 

「十分。…あの鉄屑を切り捨てるには」

 

第二空想特異点で感じた高揚感を軽く感じている

 

斬魄刀『斬月』ならば切り捨てるだろう

 

 

 

 

 

「な、なんであるか!あの馬鹿でかい刀は!」

 

身の丈程の大刀を構えた黒い巨人は此方を狙ってくる

 

「博士!どうせ刀ロボ!遠距離攻撃を続けるロボ!」

 

「分かっているのである。セオリーとはいえ美しくないのである!」

 

「『我埋葬にあたわず』ファイヤ!」

 

「ぐぬぬ、どこの馬の骨か分からぬ輩に我が輩の邪魔をさせぬのであーる!エルザ!火力マシマシでアブラカタメでプレゼントしてやるのである!」

苛立ちながら喚くドクターウエスト

 

再び放たれるビームは黒い巨人に迫る

 

 

「…………」

 

考えれば自身で戦うのは初めてだ

 

セイバーくんに沖田さんに信長に守れてばかりだ

 

黒崎さん…………力を貸して下さい

 

 

これが『月牙天衝』の感覚。キャスターを通じ使用する

 

自身の霊力……魔力を喰らい鋒から斬撃をはなつ

 

 

レイドクローを介し使用する

 

 

     「………『月牙天衝』!!」

 

レイドクローは両腕で構えた大刀を横殴りに振るう

 

斬撃は飛来し放たれる。超高密度の斬撃波はビームを弾き破壊ロボットを横に両断した

 

 

「ひぃ!!??」

 

「脱出ロボ!!」

 

 

両断された破壊ロボットは沈黙。搭乗者である白衣の男はおぼえてるのであーる!!と捨て台詞はいて逃げていく

 

「マスター、戦闘終了だよ……初陣にしては悪くないんじゃないかな?」

軽く微笑むキャスターはサブパイロット席から見上げてくる

 

「………………うん。疲れた」

 

どっと虚脱感に襲われ力が抜ける。先程までの高揚感はもうない

 

「…さっきのは今は聞かないよマイマスター……貴女は…私を助けてくれた……ありがとう」

 

「…いえ……無力な私から卒業したかったし…頼られて嬉しかったし」

 

「改めてお願いします。我が主。マイマスター。」

 

 

 

 

 

 

黒い巨人は……破壊ロボットを両断し沈黙させた

 

デモンベインを喪ってからの初の勝利だった

 

アンノウンはまだ何者かは分からない…けれど『ブラックロッジ』を打倒する…そう宣言した『魔導書』がいるらしい

 

ならば…紛れもないこちら側の勝利ではないだろうか

 

覇道瑠璃はそう思う

 

歓喜の声をあげるメイド達の声の中考え込む

 

「ウィンフィールド。『藤丸立火』なる人物を招いて下さい」

 

「はっ」

 

 

これが反撃の狼煙になると信じて



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No.8「斬魔大戦⑦~魔人舞踏・暗黒達は踊る~」






夢幻空母

 

そこは犯罪組織『ブラックロッジ』の根城だった

 

祭壇には6人の幹部達が集結していた

 

『逆十字』…アンチクロスと呼ばれる達人級(アデプトクラス)の魔術師達。

 

『ブラックロッジ』の大幹部達が集結し顔を合わせていた

 

「おいおいおいおい。なんだありゃ!!僕たちに刃向かう魔術師でもいるとか言うのかよ!!」

スラム街にいるような風貌の小柄な少年は悪態をつく

 

「見苦シいゾクラウディウス」

大木のような男は諫めるが

 

「ああ??まぁたビビってるんでちゅかぁ?カリグラチャァン??」

 

「コロす」矮躯と巨躯と対照的な二人は構え殺意をぶつけ合う

 

「いつまでも程度の低い争いをするんじゃない2人とも」

褐色のスーツ姿の男はやれやれと嘆息する

侮蔑を含んだ声音に言い争う2人が殺意を放つ

 

「確かにあの見たことない鬼械神気になるわねぇ」

いつものことと特に意を介さず仮面を付けた道化師はうーんと唸る

 

「確かに確かになぁ……デモンベインに似ている気がしたがなぁ。デモンベインは混ざり物の鬼械神。一見したが生粋の鬼械神にみえた…いかん、いかんなぁ我々の計画の障害にならなけばいいがなぁ」

顎髭を蓄えた初老の紳士は同意した

 

「…あの『魔人』の手のものとは考えられぬか?…なにぶん何を考えておるか分からぬが」

侍のような風体の男は考え込む

 

「ティトゥスちゃん、『無限』ちゃんのことぉ?大導師様を無力化した上に私達に好きにさせてくれるじゃない?」

 

「ティベリウス。なにか企み無ければそのような得になら無いことをしない…当たり前だろう」

褐色肌の男の言葉にそうねぇっと呟く道化師ティベリウス

 

「…C計画に用があるのかしら。アウグストゥスはどう思うわけぇ?私腐ってるから難しいこと苦手なのよね」道化師はケタケタ笑う

 

「…我々を謀っていた大導師を無力化したことは感謝しよう。だがらっといって百%信用出来るかと言えば…否だ。」

 

「そもそも大導師の代わりを務めて貰わなければならない…Cの降臨を行うにはそうしなければなるまい。なるまいて」

初老の紳士は演技がかった台詞を言う

 

「そうだね。ウェスパシアヌスの言うとおりだ。きしし」

 

 

「「「!!?」」」

 

「『無限のフォーリナー』てめぇいつから!!」

クラウディウスは吠える

 

「……いつから?…最初からって言ったら?きしし!!」

『無限のフォーリナー』はいつかの際どい姿ではなく眼帯をした女子高生の恰好をしていた

 

『逆十字』という超人が一堂に会する場にはあからさまに場違いだった

 

「警戒しなくていいよ同胞諸君。私もC計画に興味あるんだ。勿論大導師マスターテリオンの代わりは務めるよ。計画の中枢ユニットには『暴君』と『ネームレスワン』を使用する」

 

「君たちは好きにしたらいい。世界征服。研究。凌辱蹂躙。破壊活動。強者との決闘。君らの野望は邪魔はしないよ」

 

「…なら貴殿との決闘を申し付けると言ったら??」

 

ティトゥスは刀を抜き『無限のフォーリナー』の首に突きつける

 

「…ティトゥスちゃん!!?」

ティベリウスの仮面は驚愕の面へと変わる

 

「君たちは私には勝てないよ。けしてね」

 

『無限のフォーリナー』はいつの間にか祭壇のかつてマスターテリオンがすわっていた座に鎮座していた

 

ティトゥスが刃を突き付けていたのは金髪の赤い服に水晶のようなものがついた翼の眼帯をした少女に変わっていた

彼女が刀にふれると粉々になった

 

「…………きしし!警戒しなくていいよ。彼女は僕の護衛みたいなものさ。ウェスパシアヌスキミの月児計画を真似てみたよ」

 

「彼女は『暴君』と同等の力を有しているから仲良くしてあげてね」

 

「……お姉様…」

 

「うんうん、お姉様にも会わしてあげるからねぇ。」

 

「……利用しあう仲なら理解してくれるかなぁ『逆十字』の皆」

 

「良いだろう。……謀っていた大導師よりは信用出来るだろう。異議はないかね同胞諸君」

 

アウグストゥスの言葉に渋々ながら頷く一同。超人たる魔術師達でさえ『魔人』と言わしめる異形の少女がは納得したように笑みを浮かべる

 

 

 

 

夢幻空母・廊下

 

「……」

 

「サンダルフォン、機嫌悪そうであるな」

 

「そういう貴様はみすみす負けたようだな。デモンベインの時の二の鐵をふむわけか」

 

「にゃにおぅ!!?」

 

黒い天使サンダルフォンに廊下で遭遇するドクターウェスト

 

「察しの通り己は機嫌がわるい。失せろ。せいぜいあの黒い巨人の対策なりしてればいい」

本気で機嫌悪そうであるなっと察しがついたウェストは渋々ながらその場を離れる

 

ウェストはきちがいではあるが愚鈍ではない

 

ウェストはさる。

 

サンダルフォンは静寂の廊下で闘気を剥き出しにする

 

地面は陥没する

 

「……『赫月のセイバー』、己が空に至る道を邪魔だてをするならばメタトロンの前に殺してやる」

 

付けられた胸の傷はすでに修復していたが痛む

 

 

 

 

 

アーカムシティの裏通り

 

夜鷹の鳴き声と野良犬の唸り声が響く

 

「いるかい?エセルドレーダ」

 

裏通りにいる黒い犬達に声をかける   

 

黒い犬達はぐるると威嚇する。声の主に掛け値なしの最大級の警戒、威嚇する黒い犬達を軽く撫でる闇の少女

 

黒いゴシックロリータに闇色の髪の毛した少女は犬達に大丈夫と告げる

 

「…何のようかしら?ナイア。私は機嫌がわるいのだけれども……マスターを殺したあの女を殺せる方法でも教えてくれるのかしら?」

 

声をかけた主もまた闇だった

闇は人型の妖艶な女と形どる

 

「あれは『Y』の魔人だ。僕以外のアウターの恩恵を受けているからね簡単にはいかないよ」

 

「…『Y』……マスターすら倒す相手ですもの…納得はしないけど理解は出来るわ」

 

「終わるわけにはいかないだろう?僕としてはこの無限螺旋に介入されたのは些か不愉快だしね」

女の顔は闇となり憤怒を示す

 

「私としてはマスターを解放するまたのない機会だわ。…不本意だけどかりそめの主を探すとするわ。…傀儡では敵わない。大達人級の魔術師なんていないかしら」

 

「これなんてどうだろう」

 

「……相変わらず趣味の悪いこと……ナイア××××××」

一枚の写真を渡され一瞥する

 

「ま、一度直に見てみるわこの『ナコト写本』のかりそめの主に相応しいか」

 

 

暗黒達はしかと準備をし暗躍していた

 

 

……………斬魔大戦開幕・了



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No.9「斬魔大戦⑧~微かな光~」

覇道邸前

 

そこは豪邸と言わんばかりの巨大な門を目の当たりにしていた

この世界有数の財閥のトップが住んでいるのであるのだから当然……当然なのだ

 

「…立火、そのアホづらで入ったら恥ずかしいからやめて頂戴ね。マナーとかは流石に期待してないけどかりにも私のマスターなのだから…な?」

アホづらちゃうわい!庶民だから仕方ないだろう…いや恐いから辞めて…笑顔ですごまないで

 

……ランサーも1つの館の主でお嬢様だものね

 

張り合って……ませんよねすいません調子乗りました

 

セイバー君に助けを求めても自分でなんとかしろって…冷たい

 

沖田さんと信長…………彼女らの優しさが懐かしい

 

はい行きますよ行きます。睨まないでランサー

 

キャスターは……本になっていた

 

鬼械神の招喚の魔力消費がそれなりにきついらしい……一度本になり温存したいと

 

私の鞄の中にいる

 

「……お邪魔します~」

 

「藤丸様ですね、お待ちしておりました…此方へ」

 

眼鏡をかけた執事が控えていた

 

ウィンフィールドと名乗ってくる

 

はへーよろしくお願い致します

 

 

執事ウィンフィールドさんの先導のもと覇道邸を進んでいく

 

はへー、長い廊下。カルデアより全然広い気がする

カルデアですら迷子になるもの

 

ランサーは諦めたのか何も言わなくなったけど怖ー

 

キョロキョロせず着いていく

 

 

「こちらでお嬢様がお待ちです」

とある入口につきウィンフィールドは扉を開き中へ促す

 

中に入る面談室なのか広い応接間に案内される

 

メイド達を控えさせた東洋系の年若い少女が座り待っていた……世界有数の財閥の総帥にしては年若く麗しい少女であり私より少し上くらいか……聡明であることが窺える

 

「お待ちしてました。…覇道財閥総帥覇道瑠璃と言いますわ」

 

「ふ、藤丸立火です」

 

「おかけになってください…黒い巨人の搭乗者が私とそう変わらない女性でビックリしましたわ」

 

私はソファーに腰をかけるがランサーとセイバーくんは後ろに立ち控えてくれる

 

「…はは」

 

「して、単刀直入に申し上げます藤丸さん…味方か敵かですが」

 

「…私が申し上げたはずだけど」

後ろのランサーが不機嫌に威圧するがやめて

 

「…念の為藤丸さんに意思確認です」

 

「『ブラックロッジ』と敵対する以上味方だと思います」

 

「ありがとうございます。…して『魔導書』はお持ちですよね」

 

 

「あ、はい…キャスター?」

 

「初めまして、覇道瑠璃…私はネクロノミコン『異界言語版』。貴女達が知る『アルアジフ』の写本…母上の娘みたいなものです」

 

キャスターは私の鞄の中からページを舞わせて少女となり隣に座る

 

「…『アルアジフ』の」

 

「ええ、母上の死ぬ前に父上が書いた写本」

 

「父上…?」

 

「…大十字九郎。デモンベインの搭乗者。マスターオブネクロノミコンが書き残した写本です」

 

「故に私は彼等の遺志を継がねばならないの。」

 

強くかたく言い切る彼女に場は弛緩する。彼女らはキャスターの言葉を噛み締め飲む込むようだった

また瑠璃さんも意を決したように口を開く

 

「そうですか…ならば私達は全力で貴女方を支援しなければなりません」

 

「ありがとう…お願いというか提案なのだけど」

キャスターは真剣な顔で言う

 

「はい、私達に出来る事ならば」

瑠璃さんも真剣に応える

 

 

「…我が『鬼械神』レイドクローは写本の『鬼械神』故に…『逆十字』の『鬼械神』に現状敵わないと思う。…先の破壊ロボット戦でも苦戦する始末。マスターの力が無ければ…それも不確定要素」

 

 

あの大刀も『魔導書』の力ではなく私『藤丸立火』による恩恵……私が持つクラスカードだが

 

 

 

「武装ですか…しかし『逆十字』に通用する魔術兵器は…我々でも難しいかと」

 

 

「…第一近接昇華呪法・断鎖術式機構さえあれば」

 

レムリア・インパクトとアトランティスストライク

 

「…その2つはデモンベイン固有の機構。…簡単に一から作るには…正直…」

 

 

「…違う、覇道瑠璃……『デモンベイン』を復活させるの…あるのでしょう?折れた『魔の断つ剣』が」 

 

 

「………………!!?」

 

この場の視線がキャスターに集中する

 

 

「…どうなの?覇道瑠璃?正直『逆十字』共を駆逐するのはデモンベインが一番だと思うの」

 

金の瞳が瑠璃さんを指す。糾弾はしない

 

それは懇願にも近かった

 

 

「……………………『復活させる』と申しましたね」

 

瑠璃さんも覚悟を決めたのか此方を見定めるかのように視線が射貫く

 

「………正直『賭け』ではあるし…出来るかは分からない。…どのようにデモンベインが破損しているかは知らない」

 

「…………提案とは」

 

「我が『鬼械神レイドクロー』を依り代にデモンベインを修理したい」

 

「…え」

瑠璃さんは驚愕したようにキャスターを注視する

 

「我が『レイドクロー』はデモンベインを模倣したデウスマキナ。我が父上もそう設計して写本…私に理念が積み込んである…基本は『アイオーン』と『デモンベイン』が融合したもの」

 

そもそもレイドクローはraidcrow

レプリカのR、アナザーのA、イミテーションのI

そしてデモンベインのD、烏のC…九郎からもじっている…ってキャスターは言っていた

 

「デモンベインの模造品という意味を持つから…基本構造は酷似していると思うの」

 

…なるほど

 

「即断は出来ませんが……試してみる価値はあるでしょう……『魔を断つ剣』が復活するのであれば…………是非もありません。……………………チアキ、検証を」

 

「はい、分かりましたわ」

眼鏡をかけたメイドが返事をする

 

 

 

アーカムシティのとある教会

 

そこは小さいながら孤児院を兼ねていた

 

シスターである女性と子供3人慎ましく過ごしていた

 

 

かつては…一人の青年、と少女が食事をたかりに来ていたことは…懐かしく思う

 

…あしながおじさんによる匿名の入金もばったり無くなったのは彼がいなくなったと同時に無くなったので彼の不器用さには微笑ましく思う

 

……シスター、ライカ・クルセイドは限界は近かった

 

「…ライカお姉ちゃん」

 

子供達は生傷の絶えない私に勘付いているのかもしれない

 

それでも…私は彼が愛した世界を守らなきゃならない

 

 

……私の『贖罪』だから

 

 

「………大丈夫よ、ほらジョージ、コリン、アリスン寝なさい。もう夜は遅いんだから」

 

 

黒い巨人と……私を助けてくれた『黒い外套の青年』

 

…………お役御免になれるかな、いや私は降りられない絶対に 

 

嗚咽する。それでも『過去』はライカ・クルセイドを苛み続ける 



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No.10「斬魔大戦⑨~折れた剣~」

「気にくわねぇ!!気にくわねぇ!!」

 

矮躯の小柄な少年……『逆十字』が1

クラウディウスは苛立ちを抑えきらず荒れていた

 

もちろん『無限のフォーリナー』にである

 

たかが女1人に振り回されるのがだ

 

「………アれはおなごのカワを被った『魔人』だ、侮ナクラウディウス」

 

大木のような巨躯の男もまた『逆十字』カリグラ

 

カリグラは侮ると侮蔑する

 

「……ァア??あの女に惚れちゃったんでちゅかぁ?童貞臭いカリグラちゃぁん?」

 

「…」

 

カリグラは拳を振るう。クラウディウスは躱す

 

廊下の壁を円状に穿つ

 

「ああ、やるってのかカリグラ!!!!」

 

クラウディウスは風を纏う。

 

「全く…その無駄な体力を有効活用してほしいものだな」

 

褐色肌のスーツ姿の男が間に入る

 

 

「アウグストゥス、テメェ…」

クラウディウスは憤怒を擁しにらみつける

ただの人間ならそれだけで発狂するような殺意だがアウグストゥスは涼しげな表情

 

「クラウディウス、カリグラ……その鬱憤晴らしてみないかね?あの黒いデモンベイン擬きで」

 

「ぁん?アテでもあるのかよ」

 

 

「大導師がいなくなった今、C計画の準備をあの女を組み込まねばならないのだ。もうしばらくかかるやもしれん。小さな不安要素でも排除せねば……あれが覇道財閥のかあの女のものかは知らぬが…我々にとっては邪魔にしかならん……ならば」

 

 

「ツブセとでもいうわけ力」

 

「しかり、キミにしては勘がいいんじゃないかカリグラ」

 

ニヤリと笑うアウグストゥス

 

「いいダロウ、ねじ伏せてヤロウ……」

 

「カリグラ、テメェ僕の獲物だ早い者勝ちといこうじゃないか」

 

「…暴れていれば覇道財閥のものなら黙ってはいるまい…いい加減覇道財閥も目障りだ。いい機会だ…殲滅してしまえば良い」邪悪で酷薄な笑みを浮かべるアウグストゥス

 

魔術師達は動き始める

 

 

 

 

 

 

覇道財閥の格納庫

 

覇道財閥の中でも機密事項も機密事項であろう

 

そこに案内される…信用されていると踏んでいい

 

「…此方にデモンベインは格納されてますんですわ」

 

メイドのチアキさんが先導して案内してくれる

 

はへー、機密事項って聞くとドキドキするわ

 

キャスターは着いてくる

 

ランサーとセイバーくんは少し外を警戒すると離れていた

 

…き、絆レベルェ…

 

 

 

『魔を断つ剣』

 

鬼械神デモンベイン

 

生粋の鬼械神ではなく魔術と科学の混血児

 

最弱で無敵の鬼械神

 

この世界の主人公『大十字九郎』とヒロイン『アルアジフ』と『デモンベイン』の三位一体は物語の要

 

だが2人はいなく…デモンベインも此処に修理出来ずくすぶっているという

 

主人公不在で巨悪の打倒

 

 

「…マスター、やらなきゃならないんだ…」

横を歩くキャスターは横目に見る

 

「…そうだね」

 

私も『無限のフォーリナー』に打倒しなければならないんだった

 

この特異点の『禍神転生者』

 

 

思考が途絶える。案内役のチアキさんの声に目の前のことに集中する

 

「此処や」

 

 

巨大な扉。この世界の叡智が収束している場所

 

チアキさんは開く

 

巨大な扉は重厚な音を立てながら開かれる

 

 

 

 

 

覇道財閥周辺

 

 

「無駄に広くて警護しにくいわね。私兵はいるけども『転生者』やその魔術師とやらには意味が無い雑兵だわ」

 

「……」

 

「無視かしら。嫌われたモノね。………私的感情で動くと立火の死を招くわよ少年」

 

「…ち」

 

「『禍神転生者』がそんな憎いのかしら?」

ランサーは己に問う。愚問あまりにも愚問

「当たり前だろうが。自身の悪望のまま弱者を喰らい特異点すら喰らう化け物だろう!!」

 

「復讐のまま行う転生者も大して変わらない気もするけど…鏡を見てみたら?」

侮蔑を含んだ眼差しが刺さる

 

「なん…だと…!?」

 

同じだと…この女は何を…

 

「復讐は所詮自己満足、違う?お前の事情なんて毛ほど興味もないが。大方大事な人でも殺されたのでしょう」

 

興味もないとばかりに淡々と斬り捨てる

 

「貴様に…何が…分かる…!」

 

剣弾を投影し射出する

 

「…未熟」

 

ランサーは2対の朱槍を取り出し剣弾を弾く

剣弾は弾かれ霧散する

 

「……煽られ激情を呈するとは未熟。お前を転生させた森羅万象もお前を手助けする英霊もあまりにも不快ね」

 

朱槍は首元に突きつけられる

冷たい殺気を放つランサー

 

「……立火のサーヴァントの中では地力では最弱かしら?『魔神』はもちろん『紅夜』の私にすら劣る。……『異界』のあの子の方が在り方として『上』ね……くく、『足を引っ張るなよ』少年」

 

吸血鬼の少女は見下す。

 

「貴様…!」

 

「頭を冷やせ、愚物……本当に立火を殺すわよその軽率が。『禍神転生者』を舐めてるのか?」

朱槍の鋒が喉に軽く突き刺さる

流れる血

 

 

 

「私はお前のその無様な『運命』が確定したら殺してやる…メインサーヴァントとは認めない。」

 

氷点下に感じる冷酷な眼差しを向け断言してくる『紅夜のランサー』

 

「…ふっざけろ!!!!己は…俺は…真白を止め…咲良を…!!」

 

 

「…『災厄者』ディザスターのクラスに堕ちてからでは遅いわよ『赫月のセイバー』」

 

 

ディザスター…?

不可解な聞き慣れない名前に抜こうとした手が止まる

 

「…アヴェンジャーではないのか」

 

「ようやく冷静になったわね。初耳かしらディザスターのクラスは」

 

「エクストラクラスか」

 

「『裁定者』『復讐者』『別人格』『月の癌』『異界来訪者』『救済者』につぐエクストラクラス『災厄者』……これは次元聖杯戦争自体を壊すクラス。一部では『ビースト』なんて呼ばれてるがね」

 

 

ディザスター。

 

 

「ただの…災害よ。」

 

 

 

 

 

 

開かれた扉の中は格納庫。様々な機器類がありこの世界の叡智が集約しているのだろう

 

圧倒される。科学の力に

 

けれどそれを吹き飛ばず存在感。威容があった

 

『機械仕掛けの神』

 

『魔を断つ剣』

 

いくら折れた刃とてそれは気高く清廉だった

 

「デモンベイン……」

 

上下半身断たれ、右腕も繋がらず凄惨な姿がある

 

鬼械の神、傷だらけの神

 

しかし何故だろう。私には泣いているように見えた

 

水銀の血は流れていない。けれど泣いている

 

 

「…そうだね。悔しいよねデモンベイン。」

 

キャスターは呟く。見上げる。格納庫に収められた傷だらけの巨人を

 

 

「力を貸して欲しいの。『魔を断つ剣』よ」

 

「どや?いけそうか?」

 

「ひと目見ただけじゃまだ判らない……応えてくれるなら」

きゅっと拳を握る

 

詳しく教えてと、言葉を出した所で赤くアラームが、響く

 

「な、なに!?」

 

 

「あかん、侵入者か!?」

 

 

「……『ブラックロッジ』!?…」

 

「…多分……『逆十字』…マイマスター迎撃に行くよ!!」

マギウス化し駆け出す



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No.11「斬魔大戦⑩~超人侵攻・凶風と水塊~」

「オィオィオィ、しっかりしてくれよぉ!!!仮にも僕たちに楯突く覇道財閥だろうがよぉ!!あのインスタント魔術師しか骨のあるやつがいないのかよ!」

 

覇道邸の庭で禍禍しい風が鎌鼬となり覇道財閥の私兵を切り刻む

 

矮躯の魔術師は陰惨な笑い声をあげ風を纏い覇道邸へ侵攻する

 

護衛の兵隊達はバラバラに刻まれ死体の山となる

 

 

「ひゃははははは!いいストレス発散になるぜぇ!」

 

クラウディウスは猛攻を続ける。禍禍しい風が絶えず吹き荒む 

 

「……あら、魔術師とやらは下品なのね。…」

 

はぁ、と嘆息し吹き荒む風を受けても平然としている

 

ピンクのドレス姿の黒い翼を生やした少女は矮躯の魔術師の前に立つ

クラウディウスの、侵入を阻むように覇道邸の内門の前に立つ

 

クラウディウスは眉をひそめる

 

「だれだてめぇ」

 

 

「名乗る者でもないわ。」

 

 

「ぁん?!僕の邪魔するなら死ねや!」

 

鎌鼬を放ち断ち殺そうとするが弾かれる

 

 

「……そよ風かしら?」

にやりと好戦的な笑みを浮かべる

 

「しかし風とは相性が悪いし日光は嫌ね」

 

日傘を差しながら嘆息する

 

「だから………変えさせてもらうわ『異変再現・紅霧』」

 

「!?」

 

 

周り一帯が赤い霧に覆われる

 

「ようこそ、我が異変領域へ…咲夜」

 

「はい、お嬢様」

 

霧が1人の銀髪のメイドと形作る。咲夜と呼ばれたメイドは主たる少女に会釈しクラウディウスを一瞥する

 

「…テメェ…魔術師か?」

 

クラウディウスは警戒する

 

「違うわ。強いて言うなら『怪物』よ…咲夜、今はただのサーヴァントとして召喚された身。力を貸してくれるわね」

 

「随意に。この身この魂総てお嬢様のモノです…何処までも着いていきます」

 

「我がマスターの障害たる敵よ。咲夜…排除しようじゃ無いか」

 

「御意」

 

と返答と共にメイドは消えた

 

 

     メイド秘技『殺人ドール』

 

 

大量のナイフがクラウディウスをいつの間にか囲んでいた。

 

「はぁ!?」

 

時が止まったように静止したナイフ群

 

一瞬メイドをクラウディウスが視認したと同時にバラバラに射出する

 

「…ちぃ!?」

 

纏っていた風でいくらか相殺したかあまりにも数が多いナイフに傷つけられたクラウディウスは憤慨する

 

「テメェら殺して犯して豚の餌にしてやらぁ!」

 

「下品の極み」

 

 

 

 

己の番

 

侵入者と聞いて己は駆けていた

 

正門の侵入者はランサーが対応する。だからマスターたる立火のもとに行けとランサーに有無言わさず言われた

 

あの女の言葉は気に食わないがそうも言ってはいられない

 

確かに……………『真白』と再会してから思考は『真白』に囚われていた

 

彼女は『正義』に狂っている。元々正義感は強い奴だったがあそこまで潔癖だったわけではなかった

 

あまりにも差がありすぎた現実に俺は絶望し渇望していた

 

……………そしてあの『立火』を畏怖し羨望していた

 

黒い翼を生やし逸脱した力を扱った彼女に

 

 

 

「考えるな…目の前のことだけを考えろ」

 

廊下を駆け角を曲がるとそこは血生臭い凄惨な場だった

 

強大な力を振るわれ爆ぜた死体、死体、死体

 

それは有り余った怪力により果実のように顔を潰された死体ばかりだった

 

「ツマラヌものばかりダ、黒い鬼械神を操ル魔術師をダせ」

 

髑髏のマスクを巨大な隆起した筋肉を纏う巨躯の男は護衛の兵隊を掴み問いただす

 

己は瞬時に敵と判断し干将莫耶を投影し腕を切り崩す

 

分厚く切り落とすには至らないが兵隊を離させることに成功し魔力を籠めた蹴りを放つ

 

がまるで大木を蹴るようで吹き飛ばすには至らない

 

「ちぃ!」

 

「…骨のアるやつ、貴様が黒い鬼械神を操ル魔術師か」

 

 

(狙いはリツカか…!)

 

巨躯の男の言葉に肯定も否定もせず投影する

 

斬魄刀『火神楽』を投影する

 

赤い刀。炎熱系の斬魄刀。燃える刀

 

      『剡呪点睛・波濤』

 

刀身が炎の波濤を纏い振るえば火焔の波濤が放たれる

 

「…炎力!」

巨躯の男は拳を振るい火焔の波濤を吹き飛ばす

 

「テメェは『逆十字』とやらか!」

 

「『逆十字』カリグラ、ダ。死ぬマで覚えてレバいいぞ。」

 

「…なら、貴様が死ぬまでは覚えてやる魔術師。…『赫月のセイバー』貴様をここで死ぬ。焦がせ『火神楽』」

波濤の威力が上がる

 

 

「炎使い力、相性がイイようダ。」

カリグラと名乗った巨躯の男はにやりと笑い水柱を放つ

 

「我が魔導書は『水神クタアト』…水使いダ」

 

炎の波濤と水柱はせめぎ合いぶつかり合う

 

「手をばらしていいのか」

 

「どうせ死ぬダから関係ないダロう」

 

 

 

 

私の番

 

 

「…セイバーくんとランサーが交戦!」

 

「…生身の戦いならサーヴァントは遅れは取らないはず…けど『鬼械神』戦は流石に別。対城宝具でも無理。対界宝具レベルは必要…難しいかも」

 

マギウス姿で駆ける。サーヴァント2人の繋がりから戦闘が始まった事を察する

 

「…レイドクローで『逆十字』の鬼械神はきついの?」

 

 

「きつい…かも。魔術師としても魔導書としても位階が違う。おそらく『無限のフォーリナー』による、恩恵はあるかも」

 

マスコットサイズに縮み私の肩に乗るキャスターは苦渋の表情をする

 

「それでも…デモンベインを守らないと…本当に勝ち目が無くなるのは…きつい」

 

 

「……なら、『鬼械神』を招喚させない」

 

 

「……させる前に倒す」



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No.12「斬魔大戦⑪~焔と従者・裂戦~」

「……状況を!」

 

覇道瑠璃の一声は更なる緊迫感を孕ませる

 

司令室には緊張が走る

 

再び『逆十字』の侵攻、大十字九郎とアルアジフの喪失から…襲われなかったのが不思議なくらいだ

 

「……正面に1人、1人は既に侵入を許してしまいました。被害状況は死亡者多数」マコトは冷静に答える

 

「…2人…ですか」

 

「『逆十字』と思われます。…藤丸さんの護衛の2人が迎撃に出て対応してくれてます」

 

「…あ、あの時の二の舞になっちゃいますぅ…」ソーニャは涙目になっていた

 

『逆十字』の道化師ティベリウス、侍ティトゥスの襲撃

 

あの時は大十字さんがいました

 

大導師マスターテリオンの気紛れの撤退命令もありなんとかなりましたが

 

 

今回は…潰しに来ているでしょう。

 

 

と、瑠璃は歯軋りする

 

「潰されるモノですか……!」

 

 

 

 

十六夜咲夜VSクラウディウス

 

凶風を操る魔術師クラウディウスは苛立ちを隠さず風を纏うベイゴマなどの玩具を使用して咲夜を付き狙う

 

超常の速度で攻撃しあう

 

クラウディウスは『逆十字』の中では最速

 

クラウディウス自身もスピードに関しては自信はあった

 

しかしその十六夜と、名乗ったメイドの女を時折見失ってしまう

 

ナイフの攻撃はたいしたことない

 

数だけの暴力だ

 

しかしメイドを見失い、かついつの間にか大量のナイフに囲まれていたという結果に苛立ちを覚える

 

「しゃらくせぇ戦い方をするんじゃねぇぞ女ぁ!」

 

「気の短い人。戦闘とは如何に自分の得意をぶつけるものでしょう…?」

 

姿を現した銀髪の青いメイド服を着た少女は薄く笑う

 

ナイフをジャグリングのようにし手遊びする余裕すら見せ煽る

 

「テメェ!いぁいあ!ビヤーキー!!」

 

風が小規模の竜巻となり次第に竜巻は化け物を形成する

 

ビヤーキーまたの名をバイアクヘーと呼ばれる

 

ハスターの眷属

 

「僕の魔導書『セラエノ断章』は風の力を扱う外なる神の記述を記した魔導書さ!」

 

体長3メートル程の蜂と翼竜を掛け合わせたような化け物が2体召喚された

 

「こいつはビヤーキー!ハスターに従う奉仕種族さ!ひゃははははは!餌になるがいいぜ!」

 

この世ならざる化け物を直視した咲夜は軽く頭痛がする

 

「まず正気を保てるかよ人間!ひゃははははは!」

 

 

「……咲夜。今の貴女は我が『異変再現』の産物。サーヴァントみたいなものよ」

 

後ろに控えていたランサーはジロリと自らの従者を叱咤する

 

「心得ております。お嬢様……この身は仮の身。惜しくはありませんし総てお嬢様のため」

 

揺らいだ正気を忠誠心の高さで持ち直す。そもそも擬似的なサーヴァント

 

「宜しい。スカーレット家従者に恥じぬ戦いを期待するわ可愛い咲夜」

 

「もちろんです」

 

周りの赤い霧の濃度が増す

 

「ギャアァァァ×▲〇!」この世ならざる咆哮をするビヤーキーと呼ばれた化け物は亜音速で飛行する

 

視認できないそれは咲夜並びにランサーを捕食せんと迫る

 

「見えねぇだろ!!餌になっちまいなぁぉぁぁぁあ!!」

クラウディウスは嘲笑する

 

 

「お嬢様、ご無礼を」

 

 

      『咲夜の世界』

 

 

 

スペルカードの発動。自身以外の時間凍結

 

 

化け物2体は彼女の主を挟み撃ちするように停止していた

 

「ようこそ私の世界へ。お嬢様を狙って攻撃するとは……度し難いですわ化け物の分際で」

 

大量のナイフを構える咲夜。

 

 

    幻葬『夜霧の幻影殺人鬼』

 

殺人ドールの強化スペル

連続、断続的にナイフを投擲射出する

 

2体のビヤーキーは静止したままナイフを受けていく

 

百を超えるナイフは化け物を貫きハリネズミのようにしていく

 

 

「そして、時は動き出す…ですわ」

 

時間凍結の解除と共に2体のビヤーキーは血液を盛大に撒き散らし地面に叩きつけられる

 

ランサーは左右のビヤーキーの凄惨な姿に顔色を変えず薄く笑う

 

「はぁ!?」

クラウディウスは驚愕

 

招喚し一分も立たない凄惨な現状に呆気に取られる

 

「…ちぃ!なんだってんだ!」

 

「…………時間停止じゃないかなクラウディウス」

 

「あん、出てくんじゃねぇよハヅキ」

 

「不甲斐ないマスターに、しかたなぁく出て来ただけだよ仮にもマスターだしね」

 

頁が舞い少女と形作る。

クールな雰囲気を持つ紫色の衣装を纏う少女はぶっきらぼうに言い放つ

 

ハヅキと呼ばれた彼女はおそらく『異界のキャスター』と、同じく『魔導書』

 

クラウディウスの言う『セラエノ断章』の精霊

 

「ドマリニーの時計と同じか」

 

「さぁ、マスターオブネクロノミコンは使ってたけど…私たちとは戦闘体系違うみたいだからなんとも言えないけれど…ビヤーキーを倒せる位には狂気耐性と戦闘力はあるみたいね」

 

「うっせぇよ優等生」

 

「頭使ってよ劣等生くん」

 

 

「…うざってぇ…総て吹き飛ばしてやろうじゃねぇか…!」

 

「はぁ…」

ハヅキと呼ばれた彼女は溜息をつき頁へ戻る

 

収束する風、烈風、凶風、血風

 

「…『逆十字』舐めるんじゃねぇぞ!!」

 

 

 

 

 

 

覇道邸廊下

 

『赫月のセイバー』vs『逆十字』カリグラ

 

焔と水を纏う斬撃と打撃

 

 

「…意地になっテルな、炎使い」

 

「ち、…」

 

焔の波濤は鎮火しつつあるも勢いを喪わないよう燃え上がろうとする

 

廊下は水浸し、焔で水蒸気とかし蒸し暑くなっていた

 

巨体のカリグラの側には黒髪ぱっつんのロング髪の少女が控えていた

 

彼女が水を操る

 

魔導書『水神クタアト』の精霊。ミナツキと名乗った彼女は薄く笑い此方を嘲る

 

水を操る所作は優雅であり主のサポートに徹していた

 

「ミナツキ…よけいなコトを」

 

「……考えて動くのは苦手でしょうに。気にしない」

 

「……」

 

「ごめんなさいね。炎の人。うちの主考えるの苦手でしてね…さて既に鎮火しつつあるようですが…水量はまだまだ行きますわよ」

彼女自身が水となりカリグラの周りを舞う

 

 

「それに…君が『赫月のセイバー』かしら。『無限』様の足下にも及ばない蒙昧ですわね…ねぇカリグラ?」

 

 

「………………テメェは…」

 

 

「察しの通り『隷属転生者』まぁ…望んで隷属にしてはりますが」

 

薄く笑うミナツキ。水神クタアトの精霊

 

「……『無限』様に楯突く蒙昧如き。わたくし達が葬り去ってやりますわ…行きなさいカリグラ。」

 

「……きサま、…『魔導書』の分際デ魔術師に指図ヲするな」

 

「……盤上の駒如き口答えをしないで下さいな。『強制術式(ギアスルール)』」

 

「グ……」

 

「勘違いも甚だしいですわよ魔術師。『書』が『術者』を選ぶのですわよ」

 

 

「そうね同意するわ。今回に限っては…『水神クタアト』」

 

黒い犬が廊下に佇んでいた。黒い犬からは少女の声音でミナツキの言葉に同意する

 

 

「貴女は………『ナコト写本』、生きてらしたのね」

 

 

「…マスターを退場させた恨み晴らすまでは死ねないもの」

 

闇色の少女に黒い犬は変換する。どす黒いオーラを纏う

 

「主を失った『書』がどのような用事かしら。如何に最古の『魔導書』とて、主なしでくるなんて無謀もいいところ」

 

「…『ナコト写本』……大導師マスターテリオンの魔導書生きてイタのか」

 

 

「…脳筋の愚図がどこぞの女に唆されてマスターに謀叛するなど恥を知れ。さんざんマスターの威光の恩恵を受けてきた分際で。」

怒気を纏う『ナコト写本』の精霊。エセルドレーダ

 

 

(こいつ…敵対しているのか)

 

 

 

「そこの男。強くなりたいのでしょう?素材は悪くないわ『使ってあげる』」

 

 

なに…!?

 

いつの間にか頁が舞い己を囲んでいた

 

「我が名は『ナコト写本』エセルドレーダ。仮初めの主に認定してあげる」

 

目の前に年端もいかぬ闇色の少女

 

「名乗りなさい。名は大事よ」

 

「巫山戯るな…!」

 

 

「頑固ね、まぁすぐにどうでも良くなるわ」

 

 

少女の形の闇は甘く囁いた




年内最後の投稿です  

細々と投稿しますので宜しくお願いします  

よいお年を


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No.13「斬魔大戦⑫~朱の孤高・甘き毒~」

駆ける。駆ける。駆ける。

 

マギウスと化した私は駆けていた

 

だけど迷っていたどちらの戦闘へ参加するかを

 

正面の門のランサーか廊下のセイバーくんか

 

 

「ランサー!聞こえる!?」念話を送ると即座にランサーからの返答がある

 

『聞こえているわ立火…此方は大丈夫よ。あの『赫月』の方へ往きなさい。例え『鬼械神』呼ばれる自体になろうともなんとかしてあげる』

 

「でも」

 

『でもも糞も無いわ。現状まだ私自身が戦闘してないもの…優先順位的には彼の方よ…周りの目を見えず視野狭窄に陥ってるサーヴァント役に立つとでも?』

 

「……任せたよランサー」

 

『了解したわマスター』

 

 

「セイバーくんのほうへ行くよキャスター!」

 

「判ったよマイマスター」

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

「……さて、咲夜変わってあげましょうか?」

 

 

「………申し訳ございませんお嬢様」

 

 

「謝らないで頂戴。十全の貴女を顕現させなかった私の落ち度」

 

屋敷の壁に叩きつけられまるで暴風を浴びせられたような咲夜の姿があった

 

「ひゃははははは!粋がって僕たちに逆らうからさ!従者がやられて悲しいのか!!?女!!?」

 

 

「……」

 

まるで彼自体が暴風、台風かのように荒々しい風を身に纏っていた

 

まるで削岩機と言わんばかりの暴風を纏っていた

 

「……嫌な風」

 

暴風により紅い霧も意味を成さない

 

「従者の後を追わせてやるぞ!!ひゃははははは!」

 

 

 

「……貴女の血使わせて貰うわ可愛い咲夜」

 

 

「御意に…」

 

 

 

     『血塗られた鎗世(ブルート・ランツェ)

 

 

咲夜の身体から流れた血液が幾つもの鎗を形成する

 

 

「我が鎗を受けて死になさい糞ガキ」

 

 

ランサーの周りを浮遊する血の鎗。無数の血の鎗はクラウディウスへ殺意を向ける

 

 

「やってみろやぁぁ!ひゃははははは!今の僕は台風さ!」

 

「…………『血槍・乱舞』」

 

2対の血の鎗を構えて駆ける

 

浮遊する血鎗も彼女に追随する。暴風に怯むこと無く駆ける

 

『紅夜のランサー』の力を魅せると駆ける

 

クラウディウスは向かってくる彼女を暴風の鎧を削岩機のようにし迎え撃つ

 

「……」

 

薄く笑う。跳躍し上空へ移る

 

だが円状の風の鎧を纏うクラウディウスは最早死角はない

 

 

       『血葬・使魔鎗』

 

無数の血の蝙蝠は鎗と成りクラウディウスへ向け降り注ぐ

 

「無駄だ無駄無駄!ひゃははははは!」

 

台風の鎧は総ての使い魔の鎗を弾いていく

 

 

    スペル発動とランサーは呟く

 

 

   紅符『不夜城レッド』

 

 

十字架の朱色のオーラを纏う。

 

 

「力ずくってはしたなくて嫌いなんだけど。まぁ畜生に上下関係を分からせるには手っ取り早いのよね」

 

嘲笑。あからさまな挑発を言葉に乗せクラウディウスへ向けるランサー

 

「ああ!!?追い詰められてるのはどっちだ女ぁ!!!」

 

「そうやってすぐに挑発に乗る奴が畜生と言わずなんという」

 

ククッと笑う片腕の少女は見下す

 

「強者は常に感情を制御し優位にたたねばならない。感情に支配され欲求に飲まれ蹂躙するのはただの獣だ。畜生以下のそれよ魔術師」

 

「僕を殺してから能書きを垂れろ!!!!」

 

朱色のオーラと台風の鎧は拮抗。激昂するクラウディウスとは対象にランサーは無表情

 

「結果など既に見えている。お前の敗北の『運命』はな」

 

 

 

    『極刑(カズィクルベイ)

 

 

クラウディウスは不意に腹部に衝撃を感じ貫かれる

 

「な……にぃ…!!?」

 

 

「……」

 

眼前の憎たらしい少女は加虐的な笑みを浮かべる

 

こちらに手を翳していただけ

 

 

自身を貫いていた血の鎗は無数に地面から生え貫いていた

 

「…テメェ…!」

 

「はっ、…だから獣と言っているのよ。地面から攻撃なんて予想しなかったかしら?くっ浅いわよ糞ガキ」

 

「…ぐっ…殺してやる…!」

 

貫かれたまま咆哮。暴風が如き殺意を向けてくるクラウディウス

 

 

「……(…来るかしら『鬼械神(デウスマキナ)』とやら)」

 

 

 

「いあ!!いあ!!『ロードビヤーキー』!」

 

暴走した激情に駆られた少年はその感情のまま神を招喚する

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 

ミナツキは憔悴していた

 

 

嫌悪していた、憎悪していた

 

 

畏れていた

 

ただ吾等に葬られた大導師の腰巾着。それが目の前にいた闇色の少女に対する印象だった

 

私にも『魔導書』としての矜持はあった

 

たかが一冊の書物。術者で決まる

 

 

あの『魔人』といたからこそその位階にいたと自分に言い聞かせてたのかもしれない

 

 

 

世界最古の魔導書『ナコト写本』

 

大導師マスターテリオンの『魔導書』、マスターテリオンの一番の狂信者たる彼女が彼女の唯一たる主を奪われたと吾等に殺意を向けてくる意味を今更ながら知る

 

 

「今更、マスターに反旗を翻したこと後悔しても遅い」

 

彼女はアルアジフとは違いマスコット化せずマギウス化した傀儡の主の隣に立つ

 

傀儡の主故総てを受け渡してはせず洗脳しなければならない

 

傀儡の主に選ばれたのは……『赫月のセイバー』

 

「中々悪くないわ『赫月』、潜在能力はマスターや憎き『神殺しの刃』に及ばないものの『逆十字(アンチクロス)』共とは比較にならないわ」

 

『ナコト写本』エセルドレーダはセイバーの腕に抱きつき甘く囁く

 

甘い毒。抗い難い洗脳の毒がセイバーを侵略する

 

「強くなりたいのでしょう?私が強くしてあげるわ『赫月』…お前の妹も咲良という少女も救いたいのでしょう」

 

「てめぇ…己の中を見やがったな…!」

 

抗い難い毒に耐えながら闇の少女を睨みつけるセイバー

 

 

「…ふふふ、…総てのは『マスター』の為よ」

 

 

 

「受け入れなさい。比類なき力を振るうため。あの女を排除するために。そこだけは利害が一致しているでしょう?お前は力が欲しい。私は主がほしい。…ふふふまずはカリグラを潰しなさい」

 

 

「くそ…」

 

甘い毒は思考を塗り潰していく。ただ『強くならなければならない』という義務感だけ残す

 

 

刹那、エセルドレーダだけを残しセイバーがきえる

 

 

「!?」

 

ミナツキは見失う

 

同時にカリグラの腕が吹き飛ぶ

 

「…カリグラ!?」

 

セイバーは先の位置の直線上にいた。つまりミナツキ達の背後

 

マギウス化真っ黒なコートのような術衣を纏うセイバーは干将莫耶を握る

 

ハイライトのない無機質な眼差しがミナツキ達を貫く

 

「お、おデのうでぇえ!?いでぇえ!?」

 

鮮血のまう左腕を押さえるカリグラ

 

 

「クスクス」

 

クスクスと馬鹿にするように笑うエセルドレーダ

 

いつも表情の変化に乏しい少女は愉しげに笑う

 

嘲笑。

 

 

 

「ゆるさねぇ…ヨクモおデのウデを…コワセ!クラーケン!コワセ!!」

 

 

巨体の男は憤怒と共に神を招喚する

 

 

2体の『鬼械神(デウスマキナ)』の顕現。奇しくも立火の到着を待たず招喚される



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No.14「斬魔大戦⑬~機神招来・劣悪の空より来たる~」

「きしし、初の『鬼械神(デウスマキナ)』戦だ。此処を超えなければこの特異点をクリア出来ないよ」

 

覇道邸上空に不釣り合いな女子高生姿の『無限のフォーリナー』は上機嫌に見下ろす

 

 

喜劇を見ているかのように嗤う

 

 

彼女は愉しげに嗤う。彼女はこの物語のキーパーだ

 

「きしし、この荒唐無稽なお伽噺を冒涜しけなして貶めるかは君らに掛かっている!!『禍神殺しの9番目』のマスター!!きしし!!」

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 

 

『鬼械神』の顕現。神の招喚。

 

 

二つの威容は覇道邸の広すぎる庭園に顕現される

 

 

クラウディウスの『セラエノ断章』、ハスターの力を有する『ロードビヤーキー』

 

カリグラの『水神クタアト』が招喚する水の力を持つ『クラーケン』

 

 

強壮たる魔術師が招喚する『鬼械神』2体が降臨した

 

 

かつて九郎達が戦った忌々しい『逆十字』の『鬼械神』が再び瑠璃達の前に立ち塞がる

 

緑色の装甲で一応人型ではあるものの、頭部は持たず三角形に張り出した胴体、翼から生えた手、板状の脚など、地上での行動に適さない飛行特化の機体ロードビヤーキー

 

無骨で両腕に目が行くあからさまな近接特化のクラーケン

 

空中戦地上戦と正反対な箇所を得意とするだろうとわかる

 

 

「ひゃははははは!殺してやる!殺してやるぞ!!女ぁ!」

 

 

2体の50メートル級の機械の巨人。大してあまりにも矮小の人影に殺意を向ける

 

 

先程までクラウディウスを圧倒していた藤丸さんの護衛もこのサイズ差にはどうしようもないだろう

 

瑠璃はすかさず撤退してくださいと放送で言うが反応は無かった

 

此方を一瞥もせず『紅夜のランサー』は背部の黒い翼を広げ飛翔する

 

まさか戦闘するつもりですか!!?

 

『紅夜のランサー』は飛翔しロードビヤーキーの周りを旋回する

 

 

「生身で『鬼械神』の相手など無謀過ぎます…藤丸さんはどちらに…!!」

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 

「さて、でかいわね…」

 

2体の鬼械神周りを撹乱するように旋回する

 

サイズ差は圧倒的だがそのサイズ差ゆえに此方を捉えにくいだろう

 

事実、魔力を充填し射出しているロードビヤーキーのやらの腕は此方をとらえきらず被弾していない

 

恐らく機体の形状から最速の機体だろうが

 

もう一方の『赫月』の相手だったであろう鬼械はあからさまな鈍重そうな鬼械神だった

 

……まぁ此方は対界宝具や対城宝具を持たない

 

「………仕方ない『解放』するか最悪の場合」

 

短気な性格見て取れる。すぐに痺れを切らすのは目に見えている

 

範囲攻撃に切り替えれたら分が悪い。

 

 

そう思考をしていたら無骨な方の機体が腕を伸ばし捉えようとしてくる

 

いや実際伸びていた。まるで蛇のように捕食しようと迫り来る

 

ワイヤーアームとか言うのかしら驚いたわと冷や汗を流しつつ回避する

 

「ぐっ…チョコマカと…」

 

「ウドの大木ぅ!!!!僕の獲物だ横取りするんじゃねぇ!!」

 

 

連携は最悪なのが救いだわと一度距離を置く

 

 

『紅夜のランサー』は一度屋敷の最上階の屋根の上に立ち2体を見上げる

 

 

『運命を操る程度の能力』

 

けして『当たらぬ』運命を自身に付随させる

 

だが『運命』は絶対ではない

 

可能な範疇で運命操作。いくらかつてのとは違うとしてもそれは絶対ではない事は『絶対』なのだ

 

『運命』は小さな小さな小石でも容易く変わる

 

 

     『血塗られた槍世(ブルートランツェ)

 

 

血液を槍へと変える。

 

巨大巨大巨大な血槍。この屋敷の惨状を利用する

 

彼等に殺された死体から徴収する

 

まるで死体が応報せよ、逆襲せよと呪いを吐く

 

 

 

「ああ!!?『鬼械神(デウスマキナ)』とやる気かぁ!!?」

 

ロードビヤーキーは此方に腕を向け魔力弾を放つ

 

 

    禍神宝具『逆襲禍神槍(リベンジ・ザ・グングニル)

 

 

2対の巨大な血槍を創成するランサー

 

狙いは2体の神の威容。機械仕掛けの神

 

一発目の血液の槍を思いっきり振りかぶり魔力を込め射出する

 

巨大な血液の鎗はロードビヤーキーとクラーケンに狙いを定める

 

「あぁ!!なんだそりゃ!!?」

 

 

禍神宝具(・・・・)『逆襲禍神槍』

 

『紅夜のランサー』が扱う『宝具』の一つ『血塗られた槍世』からなる禍神宝具

 

血液で槍を創成する。血液の元となった者の未練や怨念を喰らい威力に還元する『因果還元』スキル

 

彼女のスペル、神槍『スピア・ザ・グングニル』を元にしている

 

 

「……私らしくはないのけれど、優雅じゃないもの。だが強者たるモノ喰らった者達の因果背負って行きなさい」

 

リベンジ・ザ・グングニルはロードビヤーキーの左腕を貫く

 

ロードビヤーキーが放った魔力弾は外れる

 

 

ロードビヤーキーの貫いていた左腕からは水銀の血が噴出する

 

「てめえ!!生身の分際で!!」

 

クラウディウスはさらに激昂。そして僅かながら驚愕

 

生身で『鬼械神』を傷付ける。当然の法則を無視する所行

 

まるであの『大導師』のようではないか

 

「此処で殺すぞカリグラ!」

 

 

「ァァ!」

 

 

ロードビヤーキーは上昇する。スクリーミングバード

 

自身の最大威力の必滅技。それで覇道の屋敷ごと潰す

 

 

 

 

「駄目だよクラウディウス。お姉様は私が殺すんだから」

 

 

突如の声。ランサーは聞き覚えがあった

 

むしろ馴染み深い最愛にて最悪の声

 

「……てめぇ邪魔する気かよ!!?『絶壊(ぜっかい)のバーサーカー』!!」

 

『絶壊のバーサーカー』と呼ばれた少女はいつの間にかランサーの目の前、庭園の中心に立っていた

 

金髪のサイドテールに眼帯に奪われた視界、拘束された腕

 

紅いドレスに様々な色彩の水晶が付いた異形の翼のランサーと変わりの無い齢の少女が立っていた

 

「邪魔しているのはそっち、その神様ごと『壊す』よ?」

 

 

腕の拘束具は粉々に砕ける

 

「それに、お前たちに相応しい相手はすぐ来るでしょう?神様は神様同士やればいい?ねぇお姉様」

 

 

「…………そうね、久しぶりの再会ですもの。邪魔だては無粋よね……すぐに来るわ」

 

「再会を祝して殺し合わなきゃ嘘でしょお姉様!!」

 

 

「そうね、フラン(・・・)

 

 

悪魔の妹フランドール・スカーレット

 

レミリア・スカーレットの最愛の妹

 

これが目の前のサーヴァントの真名。真名看破するまでも無い

 

「………中々面白い趣向ね『無限のフォーリナー』とやら」

 

 

「僕らを無視して盛り上がってるんじゃねぇ!!」

 

ロードビヤーキーは急降下し加速しようとする

 

 

その時五芒星の魔導陣が輝く。ロードビヤーキーの急降下を阻むように展開する

 

 

「ほら、くると言ったでしょう?」

 

 

 

 

      『劣悪の空より来たりて』

 

 

       『黒き祈りを胸に』

 

 

     『我等は偽りの剣を執る』    

 

 

 

      『汝、偽りの翼』

 

 

      『レイドクロー!!』

 

 

漆黒の巨人が顕現する。改めて対峙しクラウディウスは思う。

 

かつて自分らがガラクタにした『魔を断つ剣』が

 

まだ折れぬと亡霊としてまた我等に刃向かうのかと

 

 

「あー!!どいつもこいつも気に食わねえわ!!!!とりあえず死ね!!亡霊が!!」



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No.15「斬魔大戦⑭~機神咆哮~」

2度目の『招喚』、宝具『機神招喚の章・黒き偽翼』の使用

 

神の顕在化は私の魔力を喰らい行われる

 

黒い偽りの刃は黒い巨人として『劣悪の空』より顕現する

 

2体の本物の『鬼械神(デウスマキナ)』の前に立ち塞がる

 

2体の関心はランサー達から私達にうつる

 

…あの金髪のサーヴァントが気になるけれど目の前の2体の『鬼械神』が優先

 

初の『鬼械神』戦が1対2とは聞いていない

 

焦燥。恐怖。様々な感情が私に去来する

 

「…マスター、理不尽は常。正気を持たせて…」

 

「分かってる…」

 

キャスターの懇願に近い叱咤で気を紛らわせる

 

モニターの先の2体の『鬼械神』に意識を向かせる

 

緑色の装甲をした飛行形態した機体ロードビヤーキー

 

無骨な腕を持つ巨人クラーケン

 

どちらも現状、一体相手でも、厳しい

 

 

「やっぱり覇道の手のものだったなぁ!!?テメェがデモンベイン擬きの黒い『鬼械神』かぁ!!?蜂の巣にしてやらぁ!!今の僕は機嫌が悪いんでなぁ!!」

 

ロードビヤーキーと呼ばれた機体は長い腕を此方に向けライフルのような魔術兵器を召喚し魔力弾を連発する

 

高密度の魔力弾が被弾する

 

「マスター!!」

 

キャスターの声かけと共に『重装夢幻召喚』を即座にし『斬月』を構えるレイドクロー

 

現状唯一無二の兵葬となる。

 

レイドクローの身の丈ほど大刀を振りかざす。魔力弾を弾く

 

宝具級の『招喚』と『重装夢幻召喚』の魔力消費を感じるがなり振り構ってはいれなかった

 

2体の威容との対峙に死の予感は変わらず迫っている

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

姉妹の異界での対峙は穏やかなモノではなかった

 

殺意と殺意の応酬

 

かつての姉妹の喧嘩の『弾幕ごっこ』の範疇を超えていた

 

    禁忌『フォーオブアカインド』

 

 

フランドールの十八番。4人へ分裂するスペル

 

かつてよく多用していたスペル

 

4人の『絶壊のバーサーカー』は『紅夜のランサー』は絶えず上下左右から攻撃を加える

 

片腕のランサーは『血塗られた槍世』の血液の槍を無数に創成しいなしていく

 

「あははっ片腕でよくいなすねお姉様は!!?」

 

かつてと変わらず楽しそうに攻撃を繰り返す

 

お互いサーヴァントと化しており強さも以前よりは増している

 

「……変わらないわねフラン」

 

「変わらないよお姉様は!!」

 

応酬する弾幕と弾幕

 

 

「そ、なら勝敗も変わらないわねフラン」

 

「お姉様の敗北でね!!」

 

 

「甘い。殺されて懺悔なさい。姉に楯突いてしまった事に」

 

1つの朱の槍を創成する

 

「私が怖くて幽閉したくせに!!」「お姉様は所詮お姉様」「妹より優れた姉など」

 

 

「「「「いない!!」」」」

 

 

 

「認めよう。謝罪するわフランドール。かつては貴女の狂気。『あらゆるものを破壊する程度の能力』を疎い畏れ排斥しようと幽閉した。そして『殺したわ』」

 

 

「貴女がどの特異点のフランドール・スカーレットかしらないけれど……私は『フランドール』を殺した最悪の姉よ?」

 

「あはっ♪面白い事言うねぇお姉様、なら幾星霜あらゆる平行世界のお姉様を『壊し』続けた最悪の妹を受け入れてくれるよね♪」

 

喜び、狂気が入り混じった破綻した笑顔で弾幕を展開する

 

「ええ、遊んであげる来なさいフランドール」

 

 

「あはっ♪お姉様大好き♪」

 

破綻した意味のない言葉と弾幕の応酬

 

    禁忌『レーヴァテイン』

 

必殺のスペルを四度連続使用。分身含め『絶壊のバーサーカー』は赤いレーザーを振りかぶる

 

手には悪魔の尻尾のような異形の剣

 

四方向から怒濤の炎のレーザーがランサーへ迫る

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 

「…あの女の手駒が来てるとはね。あの黒い『鬼械神』の性能を見極めましょう」

 

エセルドレーダは覇道邸の屋根に座り状況を見定める

 

隣に立つのは『赫月のセイバー』

 

黒いコートのように術衣を纏い立ち尽くす

 

「…………レーヴァテイン……」

 

 

「……?どうかしたかしら?」

 

「いや……何でも無い……」

 

『絶壊のバーサーカー』とやらが持つレーヴァテインと呼ばれたそれ自体には感慨はない

 

だがその『呼称』には既視感があった

 

けれど霞がかかった思考では解が出ないと頭を振る

 

 

意識は神の機械共の一方的な蹂躙へ注視する

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

「ひゃははははははは!!たいしたことねぇじゃねぇか!!鈍間がよ!!大十字九郎とアルアジフ以下で嬲りがいねぇじゃねぇか!!?なぁカリグラぁ!!」

 

 

ロードビヤーキーはライフルのような魔術兵器を此方に向けめった撃ちしてくる

 

素早く飛行するロードビヤーキーは此方を捉える事は出来ずにいる

 

クラーケンの蛇のようなワイヤーアームに捕まれている

 

爆発的な推進力を持たぬレイドクローでは逃げ切れなかった

 

「……くっ、マスター」

 

展開しているエルダーサインはひび割れ瓦解寸前

 

ワイヤーアームに捕まれている部分もひび割れ破損し始めている

 

や、やっぱり2体の鬼械神の相手なんて…厳しいんだよ…

 

折れそうな心にもひび割れ始めている。

 

固定され上手く振りかぶれず『月牙』も放てない

 

 

「マスター……私は…諦めない。弱くてもあの人達の娘なんだ…………『九朔』にもなれない半端な写本でも…私は『魔を断つ剣』に…」

 

悔しそうに苦しげに呟くキャスター

 

私が折れて……どうするっ!!

 

 

禍神殺し……………『解』をよこせ!!現状を打破する力を

 

 

『解・虚化を推奨…『鬼械神レイドクロー』を虚化』

 

 

禍神殺し10%起動・疑似魔術回路接続

 

セイバーのクラスカード『黒崎一護』よりアップロード

 

『異界のキャスター』へ添付

 

 

鬼械神の『(ホロウ)化』実行します

 

 

 

重装夢幻召喚・二重礼装(インストールアームドダブル)】起動

 

 

黒崎一護を纏うキャスターを虚化する

 

白い髑髏のような仮面がキャスターの顔を覆う

 

『死神の虚化』、黒崎一護が物語の中盤で得た虚の力を得る力

 

霊力の上昇は著しく。身体能力なども強化される

 

上昇した霊力値はレイドクローの機動力へ加算する

 

「マスター……??」

 

「いいから、まずこの拘束解かないと…!!」

 

レイドクローの顔にも仮面が現れる。レイドクローの全身を巡る魔力は増大

 

「キャスター、弱音はいくら吐いてもいいよ…私だって強くない。」

 

けれど

 

「だから一緒に……やろう!!」

 

「……うん!!」

 

 

『クラーケン』の拘束を無理矢理振り払う

 

「ヌッ…!!?コイツ……!!」

 

 

「マスター、両腕小破…けど戦闘に支障なし!!」

 

「上等!!!」

 

 

レイドクローは『斬月』を構え直す。拘束を解いたついでに横殴りに振り払う

 

クラーケンに対し勢いを付け斬るというより打撃する

 

 

「私が、」

 

「私達が」

 

 

 

 

 

『魔を断つ剣だ!!』

 

 

レイドクローはさらに斬月を振り払う。月牙が噴出しクラーケンを袈裟切りする

 

黒い巨人は反撃する



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No.16「斬魔大戦⑮~禍神の摂理に挑む者達・魔を断つ剣未だ折れず~」

怒濤の砲撃のような焔の弾幕の四連射

 

禁忌『レーヴァテイン』の応酬。狂戦士のクラス補正による威力補正を加味してもこれはやはり

 

 

『禍神恩恵』スキル、『禍神』による『転生者』が受ける邪悪なる力だ

 

 

「……『禍神転生者』に成り下がっているのねフラン」

 

 

「それはお姉様も一緒でしょう??あはっ♪それがクロスオーダーのマスターのサーヴァント?」

 

「笑えないんだけど」

『フランドール』は侮蔑する。

レーヴァテインの放射はランサーを焼いていた。満身創痍とまで行かないもダメージ量としては相当

 

「私は感謝しているわ。あの人に…フランドール・スカーレットとしてあの小さい館で終わるなんて」

 

「耐えられない!!」感情の発露。

 

更なるレーヴァテインの連続放射。黒い尾のような歪な剣を無造作に振り払う

 

「………そうね、私は貴女の世界を狭めた。…けれども責任は果たさせて貰うわよ」

 

ランサーからは魔力の高まりを感じる。

 

 

      『鎖せ』

 

 

 

 

      『黒翼大魔(ムルシエラゴ)

 

 

黒い雨のような濃い霊圧(・・)が噴出する

 

「!!?」

 

 

雨のような濃い霊圧が降り終わると白いドレスのような礼装を纏うランサーがいる

解放と共に失った片腕は超速再生する

 

「……へぇ?多少は楽しめそうだね」

 

爛々と赤く輝く濁った瞳。狂気に歪み口角が上がる

 

『絶壊のバーサーカー』の歓喜と共に魔力は上昇した

 

宝具『そして誰も居なくなった(ロスト)

 

 

『絶壊のバーサーカー』の宝具

 

 

『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』を宝具化したもの

 

ああ、いつもの通り『レミリア・スカーレット』を破壊しよう。あの人から私を解放するために

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

覇道財閥司令室

 

 

「鬼械神レイドクローの霊圧値増大。あの仮面のような装甲が魔力源の模様です」

 

オペレーターのマコトは淡々と機器類を見ながら言う

 

「…せやかて、レイドクローのデータはデモンベインに酷似しているがほぼ兵葬を持たぬデモンベインのようなものですわ。…藤丸ちゃん側がレイドクローのデータは開示してくれてるんですが」

 

「…第1近接昇華呪法と断鎖術式機構ですか」

 

たしかにかつて大十字さんたちは主にこの二つを駆使して打倒してきた

 

 

…それ無しに『逆十字』達に打倒出来るのだろうか

 

瑠璃は何か出来ないのかと歯軋りする

 

それでも魔を断つ剣たろうとする彼女らを見守らなければ彼等に申し訳が立たない

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

白い装甲天使メタトロンことライカ・クルセイドは困惑していた

 

黒い巨人に

 

あまりにも彼らに似ている

 

 

手助けすべきだろう。しかしあの黒い天使は確実にくるだろう

 

そのうえ我が身は疲弊していた。自己治癒力も摩耗し回復しきれていない装甲が物語っていた

 

見守らなければ。彼らが彼らで『逆十字』に打倒出来るのかを

 

ひどく言い訳がましい我が身を呪う

 

ライカ・クルセイドはもう終わり始めていた

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

斬魄刀戦術を主に置き黒崎さんから技術をアップロードする

 

私、藤丸立火をもちろん実体化して年月が浅いキャスターは戦闘技術は拙い

 

だが歴戦の主人公たる黒崎さんからのアップロードとすぐものにする『転生者権限(ギフト)』スキルで私の力となりキャスターとレイドクローに伝播する

 

達人級(アデプトクラス)と呼ばれる魔術師達に追いすがる

 

黒崎一護の始解『斬月』の力は『月牙天衝』に尽きる

 

霊圧硬度の高さ

 

彼の霊力の高さで物を言わせるごり押しと言って過言ではない

 

鍔も柄もハバキもない出刃包丁みたいな巨大な大刀

始解『斬月』を鬼械神サイズの魔術兵器として振るう

 

「…月牙…天衝っ!!!!!!」

 

飛ぶ斬撃は飛行するロードビヤーキーを捉えられない

 

 

始解状態の虚化による黒い月牙も当たらなければ意味は無い

 

上空のロードビヤーキー、正面にはクラーケン

 

2体の鬼械神の魔力弾と水弾を弾きながら月牙をはなつがやはり防戦一方だ

 

「息を巻いたがいいがやっぱり口だけのようだなぁ!!?僕たちブラックロッジに逆らう自体が間違いなのさ!!」

 

クラウディウスの嘲笑が頭上より響く

 

くっ…馬鹿にして…いくら黒崎さんからの力をアップロードしても鬼械神の地力自体に差がある上に一対二

 

「マスター…頁の力を使うよ。一体捕縛すれば…」

 

「アトラックナチャ…だっけ??捕縛術式…きくの??」

 

「…分からない。けれどもやらないと」

 

 

「そだね」

 

やる前から諦めるなんて…藤川五火時代の悪い癖!!

 

「……いくよ!!」

 

 

 

 

鬼械神ではサイズ、重量を考慮しても『瞬歩』を再現出来ない

 

五十メートルの4,000トンを超える巨体では難しい

 

戦闘において機動力は重要。故に歩法を模倣する必要はある

 

レイドクローの模倣のもとの鬼械神デモンベインは断鎖術式機構という時空間歪曲による爆発的推進力をえるという機動力を有していた

 

がレイドクローはそういった機構を有していない言わば空の状態の機体

 

見様見真似でも構わない

 

レイドクローの脚部に魔力を集中する。ちょうど良く魔力の放出口である機構はあるようだ

 

 

魔力を、収束させ爆ぜる

 

 

爆発(エクスプロージョン)

 

断鎖術式ほどの推進力は得られないが無しと有りでは大分違う

 

推進力を得たレイドクローはクラーケンを狙う

 

 

「挽き潰してやるゾ!!」

 

カリグラはクラーケンを操る

 

「馬鹿正直に…!!なにか企んでますわよ!!」

ミナツキの声を無視してレイドクローへワイヤーアームで、掴みかかる

 

 

脚部シールド疑似機構

 

「エクスプロージョンストライク!!!!」

 

再び魔力を脚部に収束させ爆ぜる。その勢いのまま回し蹴りを放ちワイヤーアームを弾く

 

「ヌッ!!?」

 

「ほらいわんことない!!」

ミナツキのヒステリック染みた非難をよそにクラーケンはぐらつく

 

捕縛結界(アトラックナチャ)!!」

 

赤い蜘蛛の巣状の捕縛術式を展開してクラーケンの巨体を縛り上げる

 

 

「よしっ!!」

 

ロードビヤーキーに視線を向け飛翔している緑色の鬼械神からは殺意が放たれている

 

レイドクローは『斬月』を構え直す

 

霊圧を噴出させ月牙を刃に纏わせる。

 

「てめぇ!!!!雑魚は雑魚らしく縮こまってろやぁ!!」

 

窮鼠猫を噛むと言わんばかりの私達の反撃に気に食わないと、激昂するクラウディウス

 

 

怒りは視野を狭めるよ

 

 

「……月牙…天衝っ!!!!!!」

 

『斬月』を振りかぶる。飛来する斬撃波

 

「!!?」

 

ロードビヤーキーは回避が間に合わない。月牙を直に被弾する

 

爆音が響く。確かな手応えを感じる

 

「はぁ…はぁ…」

 

今の月牙に使用した魔力量は多い。眩暈がする。吐き気がする

 

キャスターに通し『鬼械神』、ランサーも戦闘中

 

消費する魔力量は相当量だろう

 

セイバーくんも…ん…?あれ??セイバーくんへのパスが曖昧

 

「マスター…?大丈夫?」

 

キャスターの金色の綺麗な瞳は不安げに此方へ向ける

 

「大丈夫…!!?」

 

 

背部に衝撃が走りレイドクローは膝をつく

 

「…ディスペル完了ですわ。このようなお遊びのような術式でクラーケンを止めると思わないでくださいまし!!」

 

アトラックナチャを無効化したクラーケンが殴りつけてくる

 

「……やっぱり…ごめんなさいマスター」

 

 

「謝らないでキャスター……!!」

 

 

 

「ふっざけやがってぇぇえ!!!!!!デモンベインでもない雑魚の紛い物が僕を傷付けるだとぉ!!!!」

 

頭上に傷を斜めに付けられたロードビヤーキーがいる

 

(浅い…)

 

 

込めた魔力量がたりなかったのか装甲が予想より厚かったのか倒すには明らかに足りない

 

「もう遊びはいらねぇ!!!!これ以上抵抗するなよ!!!」

ロードビヤーキーは上昇。上昇。上昇。上昇。上昇。上昇。

 

 

何をする気だ。

 

「……スクリーミングバード……ロードビヤーキーの必滅技。父上が残してくれた記述から判断出来る」

 

 

スクリーミングバード…超加速からの突撃。

 

単純明快な奥の手だが…今のレイドクローに防ぐ手段はない

 

背後には覇道邸…くそ!!!!クラーケンの拘束してきたならば…躱せない

 

 

「躱せないヨナ??」

 

「躱せないでございますわね」

 

『水神クタアト』の主従からの嘲笑。ああ躱せないよ!!

 

「第5の結印はエルダーサイン!!敵意と悪意を払うものなり!!」

 

キャスターは泣いていた。自分の無力に

 

ああ、ゴメンねキャスター。情けない弱いマスターで

 

『禍神殺し』……憎むよ。自身の無力に

 

 

「木っ端みじんになっちまいなぁぁぉぁぉ!!!!

 

 

衝撃。衝動と共に意識は暗転する

 

 

 

 



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No.17「斬魔大戦⑯~光指す世界に涙救わぬ正義無し~」

夢を見る

 

根源の夢を見る

 

アテのない誓いの夢を見る

 

呪いのような夢を見る

 

それは魂に刻まれた誓いのような呪いだった

 

 

魂のまだない私はそれでも覚えている

 

私の存在理由(レゾンデートル)、ただ一つの存在価値

 

存在意義。

 

 

 

小さな小さな探偵事務所が始まりだった

 

産声すらあげていないけれどそれでも始まりだった

 

 

螺旋の呪いを刻まれてチクタクと時計の音は響く

 

肌寒い室内は住人の心情のよう

 

住人は深い深い息を吐く。眉間に皺を寄せる

 

精悍な青年も20代半ばにしては老けて見えた

 

傷だらけの身体に鞭を打ちペンを進める

 

羊皮紙に魔力を込め書き進める。傍らにはボロボロの書物。それを写す

 

その書物は彼の半身。伴侶。

 

傲慢無礼の物言いは今はもう懐かしく恋しかった

 

無心で書き進める。彼の僅かな残り火を魔力に変えて

 

命を燃やす

 

彼は魔術師としては三流だったのかもしれない

 

いつも行き当たりばったりで彼女にも振り回され

 

それでも…魔を断つ誓いは本物であったと自負していた

 

「…けれど俺は…今回の俺では駄目だった…」

 

無限の螺旋に気付いた

 

邪神の坩堝にも気付けた

 

 

けれど忘れてしまう。それでは駄目だ

 

「だから『お前』に託す」

 

まるで子供を見るような眼差しで書き終えた写本を見る

 

ボロボロの書物は灰になり霧散する

 

「……頼む。あの女が関わってからおかしくなった」

 

「頼むぞ……×××」

 

青年は………そのすべての魔力を注ぎこみ死に絶えた

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

失敗した

 

救えなかった

 

 

失敗した

 

 

救えなかった

 

 

失敗した

 

 

救えなかった…また。数え切れないほどの失敗を重ねる

 

リセットは零からそれは根底の誓約。干渉出来ただけ御の字であったが

 

 

必ず……救えない(・・・・)

 

その人たちの死はその世界では前提条件だった

 

私の干渉出来る無限螺旋の世界は必ずあの人たちは死ぬ

 

 

何故…何故と嘆く。高すぎる絶望の壁はこんなにも私を阻むのか

 

なんのために生まれたんだろう

 

救えなかったらいみはないのに

 

 

「きししし。可哀想に。キミは前提すら間違えているのさ」

 

邪悪は嗤う。嘲笑う。袋小路の誓いを嘲笑う

 

 

お前が……お前が……!!

 

「きししし。可哀想に神殺しの刃は。思いを伝えられなかったのか。死しても頼られているなんて正義の味方冥利に尽きるけどね」 

 

 

何を言って……!!??

 

 

「気づけないならこの無駄な繰り返しをしてればいいさ。…私は『B』を降臨させなきゃなら無い…『C』すら踏み台に過ぎないのさ」

邪悪な魔人は邪悪に嗤う

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいマスター……私のわがままに巻き込んで……やっぱり私じゃ駄目なんだ………気付いてた。私が新しい『神殺しの刃』になってくれと言われてることには」

 

キャスターは私の胸元で泣いていた

 

暗い。四肢は痺れて動かない。

 

 

「私じゃ、……あの人達にはなれないよっ」

 

 

「…………」

 

子供がないている。ああ、これはただの親のプレッシャーに覆い潰されてる子供みたいだ

 

かつての自分と重なる。

 

 

『汝、魔を断つ剣となれ』

 

この責任はこの矮躯の細い少女の肩に掛かっているとなれば……あまりにも可哀想じゃないか

 

かつての自分と重なる。……いやスケール的に重さが全然違うのは重々承知だ

 

 

 

出来過ぎる兄のようになれという親からのプレッシャーは思春期にかつてあった

 

それとは比べ物にならない親からの『期待』

そうなるために生まれたという『責任』

 

 

生まれたばかりのこの子は親を頼るのは当然だと思う

 

……………手前勝手ながら貴方達の力はこの子と私には必要なのだ

 

「……いいよ、キャスター……」

 

 

「…神を殺すのは『私』だ」

 

 

『禍神殺し』30%の解放を承諾。術式『天威無法』を解放

 

重装夢幻召喚のスキル変化を承諾しますか?イエス/ノー

 

→イエス

 

幻装夢幻召喚(インストールファンタズマ)』へクラスアップ

 

疑似魔術回路を更新

 

「力をかしてもらうよ」

 

キャスターの肩を抱く

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

「藤丸さん!!藤丸さん!!」

 

覇道瑠璃は取り乱している。いつもの総帥。司令としての仮面は剥がれている

 

目の前のモニターの惨状に対して全員同じ気持ちだ

 

執事のウィンフィールドとオペレーターのマコトは沈痛な表情

 

チアキは毒づく。ソーニャは泣いていた

 

また負けるのかと

 

もう、うつ手は無いのか

 

 

モニターにうつるのは半壊の黒い巨人。右手はちぎれ蹲っていた

 

覇道邸への、破壊をくしくも防いでくれていた

 

 

先程から連絡を試みるが反応はない

 

 

「…私達は何も出来ないのですか…見知らぬあの人を見殺しにすることしか…!!御爺様…大十字さん…アル…!!」

 

 

 

「…!!?…なんでや…!!?ありえへん…!!?」

 

 

突然狼狽する声をあげるチアキに視線が集中する

 

「…どうしましたかチアキ」

 

 

「……虚数展開カタパルトが稼働してはります(・・・・・・・・・・・・・・・・・)!!」

 

 

 

「え…??」

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

斬魔の誓いを謳う。

 

 

目の前の巻き込んでしまっただけのマスターは何をしたんだろう

 

死にかけの傷だらけの身体の筈だ

 

枯渇した筈の魔力は私に逆流するほど流出していた

 

マスター貴女は何者なんですか

 

私の手を取り微笑む貴女は…

 

 

「ありがとうございます。私を私にしてくれて」

 

 

謳いあげる。『彼』を呼ぶ誓いを

 

水銀の涙を流して流血を舐めていた『人間のため』の最弱無敵の鬼械の神を

 

 

     『憎悪の空より来たりて』

 

 

      『正しき怒りを胸に』

 

 

 

     『我等は魔を断つ剣を執る!!』

 

 

      『汝、無垢なる刃!!』

 

 

       

      『デモンベイン!!』

 

 

 

天空に五芒星の陣が展開する。力強い光を放つ

 

邪悪を打ち克つ力を

 

光指す世界に涙救わぬ正義無し。ああ待たせたなと力強く私に声をかけてくれたような気がした

 

レイドクローは霧散する。その五芒星に吸い込まれる

 

それが…父上が命を燃やして残した渾身の『奇跡』だ

 

 

再構築する。レイドクローを媒体に

 

傷だらけの鋼を。ボロボロの刃金を

 

自己修復機構(メリクリウスシステマ)はフル稼働

 

2体の機械は混ざり合う。デモンベインとなる

 

 

 

     『すまない、九流(くる)

 

 

 

 

  『お前に背負わせてしまった俺らの弱さを呪う』  

 

 

   『親らしい事なんて出来なかった』 

 

 

その言葉だけで救われる。任せて下さい父上、母上

 

 

 

 

     『デモンベイン・レイドクロー!!』

 

 

偽神は降臨する。俺たちの世界をよくもやってくれたなと継ぎ接ぎのような2体の機械が混ざり合ったようなデモンベインが陣より飛来する

 

清廉なる殺意を纏う。

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

「デモンベイン!!??僕らに殺された筈だろうが!!?インスタント魔術師がよぉぉ!!!!」

 

 

クラウディウスは吠える。目の前のものを否定するように

 

因果応報させてやる。地べたに這いずり回り血を啜れクソガキ

 

「…断鎖術式解放!!壱号ティマイオス!!弍号クリティアス!!」

 

エーテルダンサーモードへ移行

「時空間歪曲!!」

 

デモンベインレイドクローの脚部シールド機構起動。脚部シールド周囲の時空間を歪曲させ時空間が戻ろうとする力が爆発的な推進力を生み出す

 

巨体は爆発的な推進力を得て背後のクラーケンに回し蹴りを放つ

 

時空間歪曲エネルギーを叩きつける。即ち近接粉砕呪法

 

 

    『アトランティスストライク!!』

 

強烈な回し蹴りはクラーケンを吹き飛ばし装甲にヒビを入れる

 

強固な装甲を持つクラーケンにダメージを与える十二分な威力

 

「グヌ!!?」

 

 

「『凍てつく荒野より飛び立つ翼を我に!!シャンタク!!』」

 

デモンベインレイドクローの背部装甲に鱗状の翼が現れる

 

飛行ユニット『シャンタク』

 

 

フレアを吹き出しデモンベインレイドクローは上昇。

 

ロードビヤーキーがいる高度へ上昇する

 

「空中戦だ!!クソガキ!!」

 

 

「クソアマァ…殺してやる」

 

 

 

 

 

デモンベインレイドクローを見上げる人影

 

赤いゴスロリの少女が呟く

 

「…デモンベイン…」

 

光のない瞳が見上げていた



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No.18「斬魔大戦⑰~破神昇華・渇かず飢えず無に還れ~」

魔を断つ剣再臨

 

姿を多少変えてもその勇姿は何ら変わりなかった

 

祖父・覇道鋼造から受け継がれ大十字九郎へ

 

更に彼女らへと確かに引き継がれたと実感する

 

 

魔を断つ剣。無垢なる刃。一度折られた剣は継ぎ接ぎながらも修復され今一度戦場へ舞い戻る。

 

今が…今こそが…反撃の狼煙だと実感する

 

「今より全力で彼女らをサポートします。デモンベインならば我々のサポートが必要です。気合を入れなさい貴方達!!」

 

 

号令により叱咤する

 

「「「了解(ヤー)」」」

 

オペレーター達の返答と共にさらに気を引き締める

 

泣いてばかりはいられない。と覇道瑠璃は自分の職務に意識を向ける 自分自身にも叱咤するように

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

デモンベイン

 

忌々しい最大の仇敵の復活に忌々しいながらも胸にすっと降りてくる郷愁の気持ちがエセルドレーダにはあった

 

ああ、あの女にマスターの物語を奪われたのだと憤慨していたのかもしれない

 

「皮肉ね。まさか憎たらしいあの鬼械神の姿を今一度見て安堵するなんて」

 

闇の少女は隣に居る傀儡の主に見えないよう自嘲的に笑う

 

「ふふふ、けれど復讐の権利は渡さないわよ藤丸立火?マスターを復活させなければならないもの」

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

デモンベインの復活に沈んでいた心は今一度光の差したことに実感する

 

ライカ・クルセイド見上げていた

 

再びの彼の勇姿に心奪われる

 

折れた心はあの継ぎ接ぎのような機体のように継ぎ接ぎされる

 

自己修復にて再度自身の装甲を修復させる

 

まだ、戦える

 

自身の過去にけじめをつける位には

 

「…メタトロンとしてまだ戦える」

 

 

白の天使は涙を拭い戦場へと戻ろうと誓う

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

2体の機体は空と言う、戦場を舞う

 

死風を纏うロードビヤーキーとフレアをならし断鎖術式を駆使して舞うデモンベインレイドクローは激戦を演じる

 

「力を…与えよ…!!」

 

炎が走り錬鉄する。

 

デモンベインレイドクローの手には円月ような剣が召喚される

 

《バルザイの偃月刀》

 

魔法使いの杖の役割も兼ねる。魔力増幅させる魔術兵器でもある剣を錬鉄する

 

もちろん刀剣としても優れ投擲武器としても使用出来る

 

それを五つ錬鉄する

 

双剣みたく二刀流に構える。残り三つは投擲武器として放っていた

 

三つの偃月刀はロードビヤーキーを狙う。回転し鋸のように引き裂かんと獲物を狙う

 

「しゃらくせぇ!!!!」

 

ライフルで魔力弾を放つがそれすら両断する偃月刀

 

「ちぃ!!」

 

飛翔する速度はロードビヤーキーの方が上だった

 

飛翔特化の機体だけのことはある

 

レイドクローの頃は為すがままだったロードビヤーキーの攻撃もデモンベインと融合した今なら引けをとらないどころか圧倒出来る

 

今の私は達人級(アデプトクラス)の彼らの肩を並べることが出来ている

 

2枚のクラスカードの恩恵だ

 

キャスター《タイプメイガス》の大十字九郎

 

キャスター《タイプグリモワール》の魔物の咆哮(アルアジフ)

 

 

幻装夢幻召喚(インストールファンタズマ)』の術式の効果

 

その特異点の力にアクセスし借り受ける『重装夢幻召喚(インストールアームド)』上位スキル

 

 

だからこそあの『三位一体(デモンベイン)』を再現出来ている

 

英霊に英雄を纏わせる夢幻召喚なんだけど『異界言語版(タイプグリモワール)』のサーヴァントだから特殊な例なのは割愛

 

 

「チョコマカと…クトゥグァとイタクァが使えれば良いんだけど」

 

「あの2柱はちょっと…まだ私達には扱えないかな…手綱をまだ握れない」

 

あの二挺の拳銃は失われている。赤の自動式拳銃と白銀の回転式拳銃

 

 

「うぜぇ!!うざってぇ!!なんなんだよ!!なんなんだよ!!!!ありえねぇだろ!!デモンベインは僕たちが殺しただろが!!てめぇはまるで」

 

クラウディウスは何度目か分からない激昂をする

よく疲れないなとどうでも良いことを考える

感情の怒りと憤怒は違う

 

「…大十字九郎とアルアジフみたいだって?」

 

私は…私にはらしからぬ底冷えた声音だった

 

 

「それは光栄だね、…でも私は彼等を纏うだけの『禍神殺し』だ」

 

「私は『無限のフォーリナー』を殺す。必ず殺す。」

 

 

「…あの女を、知ってやがるのか」

 

 

「知ってるは語弊はあるね。…まぁ君らには関係ない」

 

「マスター…?」 

 

「大丈夫だよキャスター、必ず殺すから」

 

薄く微笑む。最初に感じた気弱な雰囲気は今の彼女からは感じない

 

「てめぇもか…僕たちを馬鹿にしやがって…ブラックロッジの逆十字(アンチクロス)だぞ…僕達を恐れ小さく震えてろよ!!クソアマァ…!!」

 

「…良いけど躱せる?」

 

 

「…は??」

 

飛来する偃月刀はロードビヤーキーの脚を斬り捨てる

 

「速いね。本当は翼を斬り捨てるつもりだったんだけど…やっぱり魔術師だね」

 

「てめぇ…やりやがったな巫山戯るな巫山戯るな巫山戯るンじゃねぇぇぇ!!」

 

 

ロードビヤーキーを怒りのままクラウディウスは上昇させる

 

先程レイドクローを沈めた必滅技(スクリーミングバード)

 

 

……ならばこちらも必滅技だ

 

 

「瑠璃さん、ヒラニプラシステムアクセス」

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

「デモンベインレイドクローパイロットより第1近接昇華呪法解凍要請来ました」

 

 

「ヒラニプラシステム発動。言霊を暗号化ナアカルコードを構成せよ」

 

瑠璃は万感の思いで言霊を吐く。待ちに待った解凍要請

 

デモンベインの必滅技

 

第1近接昇華呪法

 

「了解」

 

 

 

 「『そはベテルギウスの浄化の炎、解き放たれし巨人の右手、完全なる勝利の剣、ナアカルコード送信、術式解凍』!」

 

術式は解凍される

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

第1近接昇華呪法の術式は解凍され承認された

 

全身を巡る魔力。

 

巡る。巡る。巡る!

 

 

魔力だけではなく『斬魔』の願い誓いを祈りを巡るようだった

 

デモンベインレイドクローの全身に術式の文字が輝く

 

 

超高密度の情報が、私の意思と関係なく脳内を駆けめぐり疾走する

 

情報が圧縮と膨張していくが『禍神殺し』の寄贈知識検索エンジン『識者』が処理をする

 

デモンベインレイドクローの魔術回路をさらに、疾走

 

情報の洪水が終わると視界はクリアになり世界は拡大する

 

世界を見通すかのような感覚に陥る

 

「うぉおぉお!!」

 

私は声をあげ、デモンベインレイドクローは凶暴な咆哮をあげる

 

重ね合わせた両腕を天に掲げるとこぶしから光が迸る

左右に広げ振り下ろす。両足を大気に食い込ませ踏ん張る

デモンベインレイドクローは光を纏う。後光のごとく五芒星を、背に纏う旧き印(エルダーサイン)

 

オーバーロードする魔力を操る

 

 

     『光指す世界に!!』

 

      

     『汝ら闇黒住まう場所なし!!』

 

 

 

ロードビヤーキーは下降する!!死を纏う風を圧縮しさらに纏い音速を超えてデモンベインレイドクローへ突撃せんと下降する

 

     『スクリーミングぅぅうバァァァドォォオ!!!!!!!!!!!!』

 

 

 

     『渇かず飢えず無に還れ!!!!』

 

その突撃に合わせ右腕を向ける

 

右手のひらに組み込まれた機関は覚醒し必滅技を繰り出す

 

デモンベインの必滅技。第1近接昇華呪法

 

 

   『レムリアインパクトォォオ!!!』

 

 

獅子の心臓(コルレオニス)』よりくみ上げられた無限熱量をぶつける必滅技。

 

その、無限の熱量を突撃してきたロードビヤーキーに叩きつける

 

その溢れ出る熱量。苛烈なまでの殺意をロードビヤーキーの質量による殺意を帳消しにしたうえでそのエネルギーごと失滅させる

 

 

「助けてくれよ!!カリグラ!!」

 

今更泣き言なぞ…遅いよ。キミに殺された人々の呪いを受け噛み締めて

 

 

「昇華!!」

キャスターの、声が響く

 

必滅の結界は収束し圧縮する。塵すら残さずに

 

無音。先程までの暴風すら一切合切残さない

 

「これが、デモンベインだ!!魔を断つ力だ!!私はお前達を父上母上にかわって滅ぼし尽くしてやる!!反撃の狼煙だ!!!!」

 

キャスターは咆哮する。決意と決別に

 

 

あとはカリグラだ

 

地上へ舞い降りる

 

凍結するクラーケンがいた

 

 

 

      『ハイパーボリアゼロドライブ』

 

 

赤い腕が極低温の刃を纏いクラーケンを貫いていた

 

 

「な、ナコト写本…貴様っ…!!」

 

 

「ご退場遊ばせ。下等な魔導書さん」

 

クラーケンは粉々に砕けカリグラとミナツキも必滅し絶命する

 

氷の塵となり霧散する

 

 

「え…??リベル…レギス…??」

 

 

赤い赤い赤い深い赤の闇を纏う深紅の機体が闇から現れた

 

「ご機嫌よう。現マスターオブネクロノミコンさん。写本でも今の貴女なら差し支え無いわね」

 

闇の少女と見知った姿の青年がリベルレギスの掌の上に現れた

 

え…?なんで…?

 

 

なんできみがそこにいるんだよ!!

 

 

「セイバーくん!!??」

 

 



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No.19「斬魔大戦⑱~涙拭って今吠えろ~」

私は彼の事を知っていたのだろうか?

 

否、名前すら知らない

 

既存のキャラクターではない転生者のサーヴァント

 

戦う理由すら知らない

 

知らなすぎていた

 

ねぇなんで教えてくれないのだろう?

 

『常世総てのセイヴァー』って??

 

『崩界のアヴェンジャー』って???

 

 

冬羽野咲良(とわのさくら)さん』って誰なのかな?

 

 

前回の特異点から多少の軋轢を感じていた

 

『禍神殺し』の力に覚醒してからだ。彼の目が変わったのは

 

『そもそも信用されていたのかお前は』

 

うるさい

 

『一蓮托生とか恥ずかしいね』

 

うるさいってば!!

 

『………中身のないお前が理解出来るわけないだろう?』

 

うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい

 

『隷属転生者を救いたいとか偽善者が笑わせる。『禍神殺し』とかわけの分からない力を与えられただけの人形に過ぎないお前が』

 

本気で誰かを救いたいの願った事も無いくせに

 

救えてもいないくせに

 

「やめてよ…」 

 

 

「救いたいのは本当なんだよ…………信じてよ…」

 

 

   嘘だ!!

 

ありったけの自己否定がぶつけられる

 

 

藤川五火時代の当たり前のこと。私は私を肯定出来ない

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

「藤丸さん、大丈夫でしょうか」

 

覇道瑠璃は困惑していた。あそこまで力強くデモンベインレイドクローを駆った彼女がこんなにも塞ぎ込んでいる

 

2日間。『ブラックロッジ』は沈黙していた

 

二人の『逆十字』失った今。この沈黙は怖いものがあった

いつ異変が起きてもおかしくは無い

 

デモンベインレイドクローのパイロットである彼女が動けないのは好ましくない

 

が彼女の心的ダメージを回復させる声かけが出来るほど仲が深くないのも事実で歯痒かった

 

彼女の双肩に頼らざる得ない身としては……悩み抜いていた

 

彼女に貸し与えていた居住地まで赴き扉の前でどう声かけしようか思案する

 

「…………」

 

そもそも友人というものが少なかった自分自身に頭を痛めている

 

祖父と両親を失ったあとは帝王学を学び覇道家総帥として奔走する日々であり社交界でも他のお嬢様という人種とも些か違う立場でも有り交流を深めてはいない

 

「……まさかのぼっち説」

 

思考が飛躍してしまい頭を振る瑠璃は溜息をつく

 

 

「……いつまでそこにいるのかしら?覇道瑠璃」

 

「うぎゃ!!?………ら、ランサーさん…?」

 

淑女らしからぬ声を出してしまい咳払いをし振り返る

 

「……ふん、うちの馬鹿マスターなら心配無いわよ」

 

先の戦闘にてあの金髪の少女に傷付けられた傷はもはや見当たらないランサーの姿に目を見開く

 

 

「え?…それはどういう…」

 

 

「今から殺してでも立ち直らせるから」

 

物騒な物言いをし『紅夜のランサー』をなのる藤丸さんの護衛は涼しい顔で藤丸さんの部屋のドアを蹴破る

 

「え、え!!?」

 

 

ドアは開きかつかつと不躾に部屋に入るランサー

 

怜悧な視線が射貫くのは部屋の隅っこで縮こまる藤丸さんの姿だった

 

年相応に可愛らしい容姿であった彼女の面影は薄れ髪の毛は乱れ何より隈が酷く目に光がなかった

 

「無様ね。立火」

 

ランサーはその姿に心底落胆し見下す

 

「貴女……!!藤丸さんの護衛なのでは…!!?」

 

 

「……子守とは違うのよ覇道瑠璃。この子を叱咤出来ないのであれば黙って頂戴。」

 

 

「それでも…!!彼女は傷付いているのでしょう!!?もうひとりの『赫月のセイバー』さんが敵に回ってしまったのでしょう!!?」

 

 

「黙りなさい。覇道瑠璃」

 

圧倒的重圧の視線にぐっと黙らざるえず口を噤む

 

 

「…『赫月のセイバー』があの古本女にとられて悔しいって訳じゃないんでしょう立火。私はあの場面に立ち会ってはいないわ」

 

 

「…………『禍神転生者』が私に説教?」

 

虚ろな瞳でランサーへ視線を向ける藤丸さん

 

 

「気が付いてたの」

 

 

「…こんなにもキミを殺したいんだもの。気付くよ」

 

 

「私の目的が終われば殺されてあげるわよ。私は妹を救えればそれで良い。そのために『禍神転生者』にまで堕ちたのだし召喚にも応じたのだから」

 

「信用出来ないよ…」

 

「サーヴァントは何かしら思惑があるのは当然。『禍神』なら、尚更。お前はサーヴァントと友達ごっこがしたいのか」

 

「…ビジネスとかに割り切りたくはないよ…けれど私はセイバー君も沖田さんも信長も、…ランサーとも友達として…信用していたかった」

 

膝を抱える藤丸さんの姿に私は居づらくなり退室する

 

彼女らの問題で私には私達には解決出来ないだろうと、身を引く

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

「私の中の知らない何かが怖いんだ。知らない情報。知らない感情がじわりと私の中に当たり前にいすわるんだよ…それが藤丸立香なら彼女に居座った私だから納得する」

 

私は手の平をみて、ぎゅっと握る

 

「でも、明らかに藤丸立香ではなくて別の物なんだよ…『識者』も明確には教えてくれないし」

 

「そんなんだからセイバーくんにも見限られて…」

 

 

「…………禍神殺し計画。神共の我等を殲滅せしめんとする走狗を生み出す計画があったらしいわ」

 

「…?」

 

「転生者がありふれた現状を打破する事が根幹にあるようだけれど」

 

「過剰な転生者権限による転生者の暴虐。それを取り締まるクロスオーダーマスター。」 

 

「……そして根幹より悪の『禍神転生者』」

 

 

「クロスオーダーマスターの手だけでは余る現状に。根源悪の『禍神』すら殺す『転生者』を生み出す事を思い付く…その9番目が貴女よ立火お分かり?」

 

「…なんで知ってるの?」

 

 

「『禍神殺し』は何人か殺されてるわよ。生き残っているのはNo.6とNo.1と…No.Extra」

 

 

「…『赫月のセイバー』よ」

 

知っている。あの時…そう言っていたから

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

リベルレギス。『デモンベイン』シリーズのボスキャラ

『聖書の獣』大導師マスターテリオンの愛機。彼の魔導書『ナコト写本』が召喚する最強の深紅の鬼械神

 

ナコト写本の精霊エセルドレーダ。闇の少女の隣にはマスターテリオンではなく見知った青年だった

 

『赫月のセイバー』…私のメインサーヴァント。私の初めてのサーヴァント。私の…

 

 

「答えてよ!!?セイバーくん!!」

 

禍神殺しの戦闘高揚は霧散する。無様に叫ぶだけ

 

デモンベインレイドクローのモニターカメラをアップにするが彼の表情は無表情

 

目に光が無かった

 

 

「私が貰ったわ藤丸立火?中々いい傀儡だわ。貴女のもとで腐らせとくのも勿体ないでしょう?」

 

クスクスと笑う闇の少女は嘲る

 

「この…!!」

 

 

交錯するデモンベインレイドクローとリベルレギスの拳

 

相殺される衝撃

 

「怒りのまま殴るのは猪と同じよ。藤丸立火?ふふふ」

 

「マスター!!?落ち着いて!!」

 

 

「セイバーくんを返せ!!!」

 

 

「…………返せとは笑わせるリツカ。己はキミの所有物ではない」

 

セイバーくんの声にしては冷たかった

 

「操られてるんじゃ……」

 

芯まで冷えるような感覚に指先が震える

 

 

「操られてるさ。けれど自我は残されてるよリツカ」

 

黒いコートのマギウススタイルの彼は自嘲気味に呟く

 

かつてのマスターを見る目では無かった

 

「きみといては『咲良』を救えない。『真白』を殺せない。己は弱いままだ」

 

 

「己はその『禍神殺し』の力を畏怖し嫉妬しているんだ。リツカ。己はきみと決別する」

 

 

「なんで!!?私はこの力は望んだわけじゃない!!怖いんだよ!!セイバーくん!!助けてよ!!」

 

 

「なら尚更だ。失敗作『禍神殺しNo.1』として成功例のキミを妬ましく思う。己に固執する理由が分からないな。『魔神』の彼女をメインに添えて新たに召喚するといい」

 

「私は…君と……!!」

 

 

「どちらにせよ。私達は現状貴女達と敵対するつもりは無いわ。『無限のフォーリナー』と敵対する同士協力は無理として邪魔はしないで欲しいわ。」

 

エセルドレーダは会話を阻む。

 

「……貴女達『転生者』の干渉はウンザリだわ。私とマスターの物語を阻まないで欲しいわ。どうしてもというならマスター復活後殺してあげる」

 

弩級の殺意を放った後消える

 

 

「セイバーくん!!」

 

私の叫びは虚しく木霊するだけだった

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

『禍神殺し』

 

禍神すら殺す転生者を狩る転生者。

 

その、9番目…か

 

ぼんやりと考える。ランサーの侮蔑するような見下すような視線は気になるがそれどころではない

 

「立火。どうするの?いつまでそうして塞ぎ込んでいるのかしら」

 

『禍神転生者』にしては私を見捨てずにいるのは他の『禍神転生者』とは違うのかもしれない 

『禍神殺し』という私が有用だからかも知れないけれど

 

「…マスター……」

 

キャスターもいつの間にか来ていた。ゴメンね。啖呵切った癖にこの様で

 

「マスターに私は救われた。私を私にしてくれたの……それは分かって欲しい」

 

紫の髪を揺らし金の瞳でこっちを縋るように見てくるキャスター

 

「……キミを救ったのは『禍神殺し』だ…弱い私……じゃない」

 

「…………貴女だよマスター立火。私を救ってくれたのは貴女。貴女が決めつけないで。救われた私が言うのだからそれだけは否定しないで」

 

「…………そう、ダヨネ…………」

キャスターはゆっくり抱き締めてくれた

 

暖かい。認めてくれる人がいるなんてそれは素晴らしい事なんだ

 

……かつては認めてくれる人は、いなかった

 

認めて欲しい人はいたけれど

 

………それ以上に認めていないのは自分自身だった

 

「マスター立火。」

 

 

「立火。どうする?あの古本女は『獣』の復活が狙い。…ならばあの馬鹿はそれまでの使い捨てなのは自明の理」

 

「そうだね、……『ナコト写本』は5000年を生きる狡猾な魔導書で『獣』の狂信者……あの人のことなんてどうでも良いはず」

キャスターはランサーのことばに追随する

 

「…自我はあると言ってるけど正常な判断は出来ず…『咲良』さんって人を救いたい強くなりたい気持ちだけで操られてるのか」

 

多分私を畏怖して嫉妬しているのは本当だろう

 

でも…私達には話し合いが足りなかった

 

私は甘えていたんだ。彼の彼女らの優しさに

 

殻を被りすぎていた自分自身と決別する

 

藤川五火を『殺さなければならない』

 

 

『彼女』はきっと『禍神殺し』に押し潰されるだろう

 

だから私は『藤丸立火』にきちんとならなければならない

 

「……一発殴って目を覚まさせてやる!」

 

 

涙拭って今吠える。

 

セイバーくん!!待ってろ!!!!

 

 



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閑話「どうしようもない私へ」

つまらない女の話をしよう

 

 

どうしようもない女の話をしよう

 

 

越えられない壁はそこにはあった

 

越えられない壁なんかないと人は言うけれど

 

 

それは欺瞞で綺麗事だ

 

私は綺麗事が嫌いだった。下を見て安心するような性格でもなかったし傷の舐め合いをするような弱い人間は嫌いだった

 

それでも『才能』の壁は私を阻んだ

 

それで折れるような気質ならどんなに楽だったろうと今なら夢想する

 

残念ながら私は意地っぱりの負けず嫌いの…妬ましさをもつ面倒くさい人間だった

 

「〇〇さんはなんでそう頑張れるの…正直異常だよ」

 

「逆にきくけど…なんで頑張れないの?」

 

理解はされず面倒くさい気質で敵は多かった

 

「……どうせ、妹さんには勝てないくせに」

 

そうだ、私は妹には『才能』では勝てない

 

 

『理解』は早かった

 

けれど『納得』は出来なかった

 

ぐつぐつと煮える地獄の釜のような『嫉妬』が私の中に沈殿していくのを目をそらしながら足搔いていた

 

 

妹は2つ下で私とは違い天真爛漫で周りからは好かれるような私とは正反対の愛らしい少女だった

 

幼い頃から私の後を追いやることなすこと私の真似っこだった

 

食事の好みもお洒落の好みも異性の好みも

 

私の『真似っこ』だ

 

私より料理がうまく私よりお洒落で愛らしく私の初恋も奪ったとしてもそれは別に構わなかった

 

けれど中学の頃から始めたものがある

 

今はソレヲ口にするだけで嫉妬で狂いそうになるから口にはしないけれど

 

「…あ、お姉ちゃんこれやるんだって?なら私も始めよっかな?お父さんいい?」

 

はじめるにはそれなりに初期費用がかかるもの

私の家はかなり裕福ではあり私より猫かわいがりされてる妹がおねだりするならば厳格な父さえもう籠絡されているのでそのおねだりは口にしただけで決定事項だった

 

「仕方ないなぁ…ほらお姉ちゃんに習いなさい」

 

「はーい、お父さん大好き♪お姉ちゃん教えて」

 

 

私の熱意までは『真似っこ』出来ない癖にいとも容易く侵略してくるのは常だった

 

『料理』も『お洒落』も『恋愛』も生きていく上で必要なもので熱意もくそもなかった

 

私の中ではそうだった。だからこの子がいくら真似っこしても嫉妬したりはしなかった

 

「そうね」

 

私は妹のこの『侵略行為』に抵抗する術はない

 

「……××は器用だからすぐ覚えるわ」

 

私の熱意と努力を踏みにじりやめた習い事は幾つもあった

 

周りから見れば飽き性と思われるだろうけどそれなりに努力し到達点には至っていたので様々なことに挑んでいる子としてみらている

 

妹のような『天才』を見てやはり絶望する

 

後追いの筈の妹はいつの間にかさきにいるのは常だった

 

「…………」

 

私の熱意を踏みにじるのかと激昂したこともあったが妹はただ首をかしげるだけ

 

責められるのはいつも私だった

 

中学の時にはじめたもの。世界で活躍する先駆者は努力で天才達と戦い駆け上がっていったという

 

『天才』と競い打ち負かすというものに心躍った

 

私も妹に負けることなんかないと

すぐ諦めていた自分を恥じた

 

その努力に没頭する

 

妹も始めたそれはすぐに妹に越えられたけれど

 

努力すればいずれ結ぶと粉骨砕身で寝る暇遊ぶ暇を惜しんで努力した

 

私の敵は妹だけだった

 

 

いつの間にか高校生になっていた

 

この頃は両親は多忙でよく海外にいっていた

 

年頃の姉妹二人を残して不在のことが多かった

 

その事に関しては不満はなかったけれど後悔はあった

 

…私の暴挙を止める人間がいなかったことに

 

 

努力は裏切らない筈じゃないのか

 

 

壁を感じる

 

『絶望』と『才能』の壁だ

 

そして理解する

 

 

あの、あこがれた先駆者も私からすればただの『天才』だった

 

凡人。ああこの上もなく凡人

 

私が足搔いていたから妹も飽きずそれを続けていた

 

真似っこ…異常だと私は妹を変人だと思っていた

 

けれど今や『天才中学生』と世間を騒がせている

 

 

私はただの姉でお姉ちゃんがやっていたから自分がいるという美談すら掲げられている

 

吐き気がする。

 

『天才』が侵略行為するな

 

 

 

 

『天才中学生』が表舞台から消える

 

テレビ業界ならそんなことは、常だったがピタリと消えてしまった

 

愛くるしい風貌で人気絶頂でその分野においていずれ牽引していくだろうとまで言われた天才の突然の失踪

 

何か事件にでも巻き込まれたのではと世間をはじめとして騒がせた

 

 

「××ですか?体調を崩してまして…すぐに復活しますのでお待ち下さい」

 

姉である私はそう答える。事件ではないとそう弁明しながら

 

 

その、姉である私が原因故に

 

 

「…お姉ちゃん…どうして…」

 

妹はベッドに縛り付けていた。動けないように

 

『侵略』してこないように

 

居座られたくないから

 

「いい加減限界よ、負けず嫌いは自称するけれど…もうこれ以上は無理だから」

 

やめるという選択肢はない

私が次に何か始めればこの子は『天才中学生』という立場を容易く捨て『真似っこ』してくるだろうという予感がある

もう強迫観念に陥ってはいただろう

 

「…なんで…」

 

「……貴女頭良いくせに私の気持ちだけは分からないわね」

妹の天真爛漫さに吐き気がする

 

「部屋に閉じ込めるわ。………私の邪魔をしないで」

 

 

限界を迎えてしまった私は妹を部屋に閉じ込める。身体の自由奪うため足の腱をきる

 

「ぎゃ!!?お、お姉ちゃん…!!?」

 

愛くるしい妹の顔が苦渋に歪む。それは、その様が私の心を幾何か救ってくれた  

 

破綻した、破綻してしまった

 

「なら責任をとりなさいよ××」

 

 

いずれ必ずこの監禁生活は破綻することを当時の私はもう気付けてはいなかった

 

 

 

「………お姉ちゃん……」

 

「…なに、トイレならオムツにしなさい」

 

「…………」

 

妹は衰弱していた。食べるのも一日一食

排泄はオムツに

日々衰弱していた

 

日々監禁生活のため世話に気をとられる

 

熱意はとうに霧散した。ただただ妹に、優位を取れる事に優越感を感じるために

 

「…………〇〇さん」

 

妹の担任だ

 

「…××さんは、御在宅ですか」

 

「妹は伏せてます。いろいろプレッシャーだったのでしょう…回復次第登校させますので」

 

「……本当ですか?」

 

疑いの目で見ている。この時初めて破綻することに気付いてしまった

 

当たり前だいずれ両親も帰ってくるだろうし

担任も、あわせてといってくるだろう

 

妹の部屋は酷いにおいだ

世話も次第に雑になってきた

 

 

「…………ごめんなさい…………お姉ちゃん……」

かほそい声が小さく謝罪する

 

「………………」

 

「…………最初は……ただ褒めて欲しかっただけ……なんだよ……?」

 

「…………次第に…………お姉ちゃん………………より上手く出来て調子に…………乗っちゃって…………」

 

かほそい声が謝罪を重ねる

 

「…………お姉ちゃん……代わる代わる新しいことするから……意地になって……」

 

真似っこしたというのか、褒めて欲しいという純粋な理由で

 

「………追い詰めてごめんなさい。許してとは言わないけど………うぅん」

 

 

「それでも………こんなことしたお姉ちゃん…許さないよ………」

かほそい声が謝罪と共に呪いを吐く

 

好きだからこそ呪う。と彼女の目はいっていた

 

 

妹はそのまま息を引き取る。呪いを残して

 

 

妹もまた、普通の少女だったことに気付く。真似っこを異常にする変人だと決めつけてた

 

褒めてあげたのはいつだっけ…?

 

ああ、まだ低学年の時か……

 

満面に笑みを、うかべた妹の顔を思い出す

 

現実は被害者の衰弱していた妹に酷い顔をした加害者の姉

 

「……どうしてこうなったのだろう」

座り込み俯く。妹の手を握る

 

「……………」

 

ふとかつて夢想した『転生』、別の誰かにあるといういつもの私なら侮蔑する逃げのはず

 

夢想する。今一度やり直すのは繰り返す自信はあった

 

故に夢想した。別の誰かになることを

 

 

 

 

 

 

「皮肉ね。……私は立火にも『赫月』にも大層なこと言えない癖にね」

気質だけは、どうにもならないと自嘲的に笑う

 

 

こうして私は『レミリア・スカーレット』に転生し『禍神転生者』に堕ちた

あの子の呪いが『禍神』を喜ばすためのものだと思う

 

彼女の魂もまた『隷属転生』している

 

『フランドール・スカーレット』に呪いだけが切り分けられて

 

小さな戦いが『斬魔大戦』の影にて、行われる

 

『どうしようもない私』への『呪い』を重ねて

 

『紅夜のランサー』の『運命(呪い)』の話



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No.20「斬魔大戦⑲魔人×邪神~極彩色の暗黒~」

Dr.ウェスト

 

世紀の大天才科学者としてブラックロッジお抱えの変態である

 

奇天烈できちがいなどと風評される彼だが矜持はあった

 

そもそもとして何故彼がブラックロッジなどというテロリスト集団にいたのか

 

もちろん元々死者の蘇生などをメインに研究をしていた異端者だ

 

自由に研究出来れば問題なかったのだ

 

大導師(グランドマスター)御自らブラックロッジ招き入れた人材であった

 

それ故大導師個人にも彼なりに恩義を感じていた

 

怪物であろうとも化け物であろうとも畏怖していたのは事実であるがそれもまた事実であった

 

だが、『逆十字』共が取り仕切る今本来ならば…彼はブラックロッジいる必要性はない

 

リーダーシップを発揮する逆十字が1。アウグストゥスとは折り合いが悪く大導師存命のときも衝突は常だった

 

 

引くならば今か

 

Dr.ウェストは考える。

 

量産型破壊ロボットの量産に乗り出してる今こそ

 

大十字九郎亡き今。心が躍らず。

 

…………しかし、黒を纏う新たなデモンベインが復活した

 

大十字九郎が、復活したわけでは無い

 

がデモンベイン。『魔を断つ者』。我等が仇敵

 

 

「吾輩はどう動くべきであるか」

 

 

「Dr.はDr.の思うままに動くべきだよきしし!!」

 

いつの間にか彼の研究室にいる。

 

少女の形をした魔人(フリーク)

 

大導師と同じかそれ以上の人外(アウター)

 

逆十字共より遙か深い闇を纏う存在

 

年端のいかない女学生の見た目の化け物はケタケタ嗤う

 

おぞましく思う。事実エルザも警戒していた

 

機械人形である彼女も不快を示すおぞましさ

 

「きしし、Dr.が離反しても責めはしないよ。逆十字達にも文句を言わせないよ」

 

蒼髪の短髪に眼帯。制服姿には、アンバランスな極彩色の瞳はすべてを見透かすようだった

 

極彩色の暗黒はそこに居る

 

まるで百足や蛾、ゴキブリなどのおおよそ人が嫌悪感を催す害虫が集合し少女の形をとっているかのような嫌悪感を示す

 

それが寄車むげんという魔人の害的要因であった

 

元々の『寄車むげん』よりなおおぞましさを有すると訳が分からない事を思考する

 

「吾輩は今のブラックロッジは主義に反するのであーる。青瓢箪とも性が合わないであるからして」

 

けして、貴様から逃げるわけではない

 

「そもそもとしてこの量産型には美学がないのである」

 

 

「いいよ、Dr.はそれでいい」

 

 

Dr.ウェストはこうしてブラックロッジから離脱することなる

 

きししという歪な笑い声が頭から離れないが

 

 

それはけして、逃れない(極彩色の暗黒)

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

アーカムシティの外れの荒野

 

『赫月のセイバー』は霞がかった思考に没頭する

 

『咲良』を救う。『真白』を殺す

 

 

だから強くならなければならない

 

強くならなければならずそのためにマスターを切り捨てた

 

1を救うため全を切り捨てる

 

正しいことの筈だ

 

()は咲良を救えなかった。救えるはずだ

 

だから救わないと

 

 

「ふふ、そうよ『赫月のセイバー』だから力をあげる。ふふマスターを復活させれば更なる力をあげる」

 

 

 

「なっさけないわね!!!!たかが盤上の駒如きに操られてるなんて」

 

侮蔑する怒号。

 

振り向くと茶髪の少女と……グラーキ黙示録と名乗っていた無表情の灰色の少女

 

「まぁ仕方ないか所詮は『No.1』。…ただ一人の失敗作。そんなやつが『次元聖杯戦争』の枠に選ばれるなんて理解に苦しむわ」

茶髪の少女は吐き捨てるように言う。見覚えがある

 

 

「忘れたとは言わせないわよ。『禍神殺しNo.6』『無貌のクラスレス』……あんたを殺す女だと」

 

彼女の身体は紫電する

 

茶髪に女子中学生の制服姿にルーズソックス

 

『御坂美琴』『超電磁砲(レールガン)』と呼ばれた電撃姫

 

『とある』シリーズのヒロインの一人

 

いやそれはどうでも良い…『無貌のクラスレス』の姿が前回と違う

 

奴の宝具か。まぁいい邪魔をするなら殺すだけ

 

「知り合いかしら?まぁいいわ…邪魔だてするなら殺しなさい『赫月』」

 

「ああ」エセルドレーダの言葉にただ首肯する。甘い毒は

思考を遮る

干将莫耶を投影する。霞がかった思考は疑問を切り捨てる

邪魔は排除するだけ

 

「さぁ、私達の道を阻む者は殺しなさい」

 

 

「私達の殺し合いに口出しするんじゃないわよ、盤上の駒如きが」

 

「…『転生者』め」

エセルドレーダは舌打ちする。『転生者』への嫌悪感

 

「…物語を陵辱する『害虫』如きに」

 

 

「思い知らせなさい!!『赫月』!!」

 

彼女の激情と共に投影する剣雨(ソードバレット)を展開させる

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

「……今のあれに干渉は得策じゃないと申し上げる」

 

「なに、私が負けるとでも?」

 

 

「…………いえ、無駄かと。意義を問います。『禍神転生者』の殲滅が貴女の『存在理由』『No.1』と『No.Extra』に固執する理由が分かりません」

と、申し上げると話を区切る

灰色の少女は無表情に無感動に機械的にその違和感と齟齬を指摘する

 

「気に食わないだけよ全てが」

吐き捨てる

「ああ、全てが気に食わないだけ」

 

ただ感情的に吐き捨てる

 

私は何もかもが気に食わないだけ

 

宝具『絶対能力(レベルシックス)雷神少女(ガールザトール・ライトニング)

 

宝具の開帳

 

電撃使い(エレクトロマスター)から雷そのものに

 

紫電する身体。

 

雷電する雷霆。それは『御坂美琴』ではなく彼女を模した何か

 

『無貌のクラスレス』たる宝具『無形なるモノ(ジ・オール)

 

この『転生者権限』が『常世総てのセイヴァー』ましてや出来損ないに劣るわけない…!!

 

 

「きしし…!!乱闘大いに結構!!」

 

極彩色の暗黒はそこにいる。どこにでもいる

 

『害虫』が如く

 

「やぁ、混ぜてよ」

 

奇抜で蠱惑的な黒い衣装で、片眼をつむりアイスをかじる魔人がいる

 

「…『無限のフォーリナー』っ!!」

 

リベルレギスの腕を部分召喚しエセルドレーダは憤怒にもえる

 

捻りつぶさんと腕は『無限のフォーリナー』を狙う

 

 

「………『N』の魔人は君かな?」

 

エセルドレーダに目を向けず此方へめを向ける

 

攻撃されているのも気にかけず此方へ笑いかける

 

 

「何を言っているの?」

 

「キミの『無貌』の力。似ているからねまさかと思うけどね。識らないなら良いよ」

 

リベルレギスの拳は止まり分解される

 

「そうさ、干渉されては邪神の名折れ。僕の力を混ぜさせて貰ったのさ。」

 

 

「…お初にお目にかかるね。ナイアルラトホテップ。無貌の、神さま」

 

「随分遊んでくれるじゃないか。『Y』の魔人。ヨグソトースの眼」

闇が妖艶な女を形取る

 

「きしし!!鴉の世界に興味持ってさ。またまたこれが歪みに歪み鴉も生まれなくなってねぇ…」

 

「けれど『D』は再誕した。『獣』の代役もいる」

 

 

「『斬魔大戦』の開幕といこうじゃないか!!」

 

 

「白き王も黒き王も不在の喜劇だ」

 

 

きしし!!と嗤う。『魔人』は嗤う



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No.21「斬魔大戦⑳~BIG “C”~」

アーカムシティ第十三番閉鎖区画、通称『焼野』

 

とある事件にて重度の魔力汚染されたかつてプロヴィデンスと呼ばれた壊滅した都市の一画

 

そこはブラックロッジが根城にしていた

 

 

夢幻空母・祭壇

 

 

「審判の時は来た!我々の手でかつて大導師すらおこし得なかった『C』の降臨させる時が来たのだ!!我々の苦渋を!!我々の怒りを世に知らしめるのだ!!」

 

『法の言葉はテレマなり!!』

 

『法の言葉はテレマなり!!』

 

逆十字アウグストゥスの演説により熱狂する信徒達を見下すように逆十字達の内心は冷め切っていた

 

 

C計画。我々の悲願。

 

逆十字2人の戦死。それは計画に不備をきたすのではないかとアウグストゥスを糾弾した

けしかけたのは彼だ

 

『無限のフォーリナー』は糾弾するどころか気にせずそれどころか計画の実行を早めた

 

「きしし、問題ないよ。むしろ支障をきたすのかい」

と煽ってくる始末

 

彼女の実力は大導師を下したもの。それは火を見るより明らかだ

 

「きしし、私には彼のようなカリスマはなくってね。そこら辺は任せたよアウグストゥス」

 

 

確かに機は熟している。これを逃してはいけないはずだ

 

デモンベインの復活が気掛かりではあった

 

『逆十字』を下している。

 

不安要素はいくつかあるがこれを逃しては我々の次の機会はいつになるのかは分からない

 

 

「………拙者が出よう。降臨時のデモンベインの迎撃は拙者が担う」

 

侍然としたティトゥスは刀を握り言い放つ

 

 

「いかん、いかんなぁ…Dr.が残した破壊ロボットがあるだろう?」

 

紳士然とした男ウェパシアヌスは言う

 

「新しいデモンベインの魔術師は女の子なんでしょう?ぐふふっあたしに任せて欲しいわぉ」

 

下卑た笑みを仮面で表現する道化師ティベリウスは舌なめずりする

 

「Dr.の破壊ロボットは蹂躙用だ。デモンベイン相手には時間稼ぎにしかなるまい」

 

「アウグストゥスどうするのかね?」

 

「認める認めよう。私の不備だ。……もう引き返せないのであろう?C計画を執り行う。暴君もありメインの儀式は『無限のフォーリナー』が執り行うのだ。クラウディウスとカリグラの分は我々が担うしかあるまい」

 

手には『セラエノ断章』『水神クタアト』があった

 

「降臨してしまえばあの『魔人』などに遅れはとるまい」

 

「汝、欲するとこに行え。それに忠実にいこうじゃないか」

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

ライカ・クルセイドという女性が訪ねてきた

 

大十字九郎さんと知己で孤児院を営むシスター

 

メガネを、かけた金髪の20代半ばの女性だった

 

 

その、正体はムーンチャイルド計画試験体四号

 

アーカムシティの正義の味方

 

白い装甲天使『メタトロン』だ

 

 

「初めまして…ライカさん…でしたっけ」

 

私、藤丸立火に合いに来たとのことだけど…何かなぁ?まだ隈も取れてないし恥ずかしいんだけど

 

女子か…女子だわ。若い10代の身体はケアが楽で違うわうんうん

 

脱線しましたすいませんランサー

 

「…初めまして藤丸立火さん…でしたよね」

 

こんなにも陰鬱な女性だっただろうか

 

「あのデモンベインの操縦者で……九郎ちゃんの跡を継いだということですよね」

 

ライカ・クルセイドとしては詳しくは知らない振りをしていたけれどメタトロンである彼女は当然知っている

 

「そうですね、………キャスター?」

 

「はい、マスター」

 

キャスターは顕在化する

 

「…アルちゃんと一緒…?」

 

「知らない振りをしなくて構わないよミス・ライカ…いやメタトロンさん」

 

「…知ってたの?」

 

「…イエス。私は大十字九郎に書かれた『ネクロノミコン』の写本。かつての大十字九郎からの知識で識っている」

 

「九郎ちゃんに正体は明かしてはいないのだけれど」

 

不信に思うライカさんは眉をひそめる

 

「貴女の識っている大十字九郎と私が言う大十字九郎は別…まぁ言っても仕方ないのだけれど」

キャスターは軽く嘆息する

 

「して、そのメタトロンさんはどういったご用事で」

 

 

「いや、…まぁわざわざ覇道邸まで来たから仰々しくなっちゃったわね」

元来のお茶目なシスターの顔で笑う

シスターの彼女もメタトロンの彼女も彼女のはずとキャスターは思う

 

父上が守りたかった日常の一人

 

「…九郎ちゃんをつぐ人を一目見たかったのよ正直…私は折れ掛かっていたの」

 

ただ1人アーカムシティを守る事に

 

「九郎ちゃんがやる前と変わらないのだけれど…」

 

九郎ちゃんがいたことにどうも比べていた事に気付く

 

「皮肉だよね、最初は九郎ちゃんが無茶するのは反対だったのに…いなくなったらいなくきつくなるんだから」

自嘲的に笑う

 

「……大十字さんみたいにはなれませんし大十字さんにはなれません」

 

「……けれど『ブラックロッジ』は、倒しますよ」

 

藤丸立香ならこういう筈だ

 

魔術師でもない彼は人類最後のマスターとして迷いは無いはずだ

 

「そっか、安心したよ…えっと立火ちゃんで良いかな?」

シスターらしく朗らかに笑う、まるで安堵したかのような

 

 

「ええ、はい」

 

「よろしくね、…メタトロンとして手伝うから」

 

握手を求めれ握手を交わす

 

 

「ふ、藤丸さぁぁぁん!!た、た、大変ですぅぅう!!」

 

慌ただしくノックもなく入ってくるソーニャちゃんに視線が集中する

 

「な、なに…?ソーニャちゃん…なんかあった…?ゴキブリでも出た?」

 

「ゴキブリなんか覇道邸にでぇへんよ、誰か掃除しとるとおもっとんねん」

 

「業者でしょう」

 

業者でした

 

冷静にノリツッコミするチアキさんとマコトさんとの温度差に頭が痛い

 

キャスターはマコトさんから距離を取る

うん、がちのペドフィリアから離れた方がいいようん

 

 

「巫山戯てる場合じゃないですぅ!!空!!空が!!」

 

 

「空…?」

 

確かに暗いような…?日没には早すぎるよね

 

窓から空を見上げる。ランサーとキャスターそしてライカさんが続く

 

 

宙に浮かぶ球体だった

あまりにも巨大な球体

 

「……『夢幻空母』……!!?」

 

ブラックロッジの根城が宙に浮いていた

 

 

「愚鈍なる覇道財閥及びアーカムシティ市民らに告ぐ。」

 

 

「諸君らの愚鈍さで、栄えある今日という日を迎えることが出来た。我々ブラックロッジが力を蓄え今日という日を迎えることがのは諸君らのおかげだ」

 

上空より男の低い声がアーカムシティ全域に響き渡る

 

「ささやかながら諸君ら礼をしたいと思う。此度の儀式の生け贄に諸君らを、選びたいと思う。大いなるCの降臨を諸君の血と涙で彩って頂きたい」

 

この声は黒い月のような球体。ブラックロッジの根城『夢幻空母』より放たれたようだ

 

「逆十字のアウグストゥス……大導師マスターテリオンの真似事か」

 

キャスターは憤怒の表情で上空に鎮座する『夢幻空母』を睨みつける

 

「……『C計画』……?」

 

 

「『神』を降臨させる奴らの悲願。マスターテリオン不在でやるつもりか……『無限のフォーリナー』……多分『ナコト写本』も黙ってないはず……」

 

 

「とりあえず出るよ!!!!キャスター!!ランサー!!」

 

「ええ、あの子も…いるはず」

 

 

「イエスマスター!!」



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No.22「斬魔大戦Ⅱ①されど魔人は機械と踊る」

セラエノ断章の精霊ハヅキは困惑している

 

デモンベインの必滅技『レムリアインパクト』にてロードビヤーキーごと必滅したはず

 

「我が主のお力よ。セラエノ断章」

 

「水神クタアト…お前も必滅したはずじゃ」

 

カリグラの魔導書の少女は此方を向いていた

 

私同様『無限螺旋』では『精霊』としては役割は無いはず。名前すらないはずの

 

「……『無限のフォーリナー』か」

 

「無限様…よ」

 

陶酔。心酔。即ち『狂信者』

 

「…………極彩色の、眼」

 

私の周りには他に四人の少女

 

金髪の眠たげな寝間着のような恰好の『金枝篇』

 

貴族のような恰好で、おっとりとした少女の『屍食教典儀』

 

虚ろな目をしたカラフルな、格好をした『妖蛆の秘密(デ・ウェルミス・ミステリイス)

 

クールな雰囲気を持つ群青色の髪色をした『エイボンの書』

 

逆十字達が所有する魔導書の精霊達が一堂に会していた

 

 

「……魔術師達なしでこうも集まるとは今までにないんじゃない?」

 

「…私達の、自我なんて『逆十字』には不要だもの」

眠たげに、あくびに噛み締めながら呟く『金枝篇』

 

「そうですね、私達もその方がいいもの」

同意する『屍食教典儀』

 

「そうか?つまらんがな我は」

皮肉げに吐き捨てる『エイボンの書』

 

「……」

我関せずに虚空を見つめる『妖蛆の秘密』

 

「役割を与えられたのでございますわ。『C』の降臨は我々が、行うわ」

水神クタアトが口火を切る

 

「我等『逆十字』の魔導書は『無限様』の管理下にあり恩恵を受けている」

 

「だから…?」

彼女の心酔は理解できない。むしろ私は思い出してしまった

 

『邪神狩人』たる父親を

 

盲目で、強くパワフルな教授を

 

この『無限螺旋』では排斥された魔術師を

 

「馬鹿な考えは止しなさい『セラエノ断章』。私達は私達の役割をこなすのよ。『C』の降臨を。『B』の開花の為に」

 

「『B』…?」

 

知らない言葉。検閲。検閲。検閲。

 

「思考なんて、要らないわ。…貴女のダディの教えなんてこの世界では不必要で唾棄すべきものだわ。私達は魔導書。総ては無限様の意のままに。Cの降臨を。Bの開花の為に」

 

思考はかすみ痺れていく。

 

ダディ…ごめんなさい。…………頼んだよ。名も知らぬ『魔を断つ者』よ

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

「正しき怒りと憎悪に応え!!」

 

 

「我等は魔を断つ剣をとる!!」

 

「汝、無垢なる刃、汝偽りの翼」

 

 

「デモンベイン・レイドクローっ!!」

 

 

黒い月から舞い降りる無数の破壊ロボットを打破すべく黒いデモンベインは再臨する

 

量産型破壊ロボット。ドラム缶型の破壊ロボットのサイズよりさらにコンパクトではあったがその破壊力は引けをとってはいなかった

 

もちろん『鬼械神』ほどの脅威ではないが

 

自動操縦さらにその量産型ゆえの『数の暴力』は、アーカムシティを蹂躙するには十分だった

 

 

「手が回らない……!!」 

 

くそ…範囲攻撃する、方法さえあれば

 

 

『クトゥグァ』と『イタクァ』

 

炎の獣と氷の竜

 

「ダメ……マスター!!あの2柱は二挺の拳銃という指向性を持たせて制御しているんだ」

 

「『神性』『旧支配者』を制御すべき手段はないよ…逆にアーカムシティを更地にしてしまうかも知れない」

 

 

「うへぇ……」

 

いずれ制御しなければならない

 

「ジリ貧よ、このままでは。神とやらの降臨……させるわけにはいかないでしょうに」

 

デモンベイン・レイドクローの肩にはランサーがおり溜息をつく

 

ランサーも生身ながら破壊ロボットを撃破している

 

あまりにも数が多い

 

「セイバーくんがいない今、沖田さん達呼びたいけどね」

 

「『支配特異点』は奴の拠点。連絡出来ないわね。」

 

 

「……泣き言は言ってられないっ!!すべて……叩くっ!!!!!!」

 

力を与えよ……!!

 

バルザイの偃月刀の無数錬鉄する

 

ああ、セイバーくんのソードバレルの真似事をする

 

「ぐっ…」

 

連続錬鉄のフィードバックに頭痛する

 

七つの偃月刀がデモンベイン・レイドクローの周りを浮遊する

 

鋸のように回転させ破壊ロボットに向け投擲する

 

七つの偃月はあたり一面の破壊ロボットをスライスする

 

 

「よし、…!!これなら!!」

 

脚部シールド機構を、起動させ移動する

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

ライカ・クルセイドも街中をかける

 

子ども達の安否確認をしなければ

 

 

「変・神っ!!」

 

白い装甲天使メタトロンに変神する

飛翔し駆け抜ける

 

無数の破壊ロボットが邪魔をする

 

「『天帝神罰剣・十字断罪(へヴンズセイバー・スラッシュクロス)』」

 

ビームセイバーを展開して破壊ロボットを十字に切り裂く

 

「私の邪魔を…するなっ!!!!!!」

 

突撃し、そのまま破壊ロボット達を切り裂いていく

 

 

「『天帝神罰砲・十字浄火(クロスファイヤ)』」

 

ビームセイバーを展開していた両腕をカノン砲へ切り替え四方八方へ爆撃する

 

無数の破壊ロボットを沈め乱舞する

 

教会へ到着する破壊ロボットに囲まれていた

 

 

その場面に激昂する。その感情のまま破壊ロボットを切り裂いていく

 

「大丈夫かっ!!?」

 

「メタトロン!!?」

 

三人の子供の安否に安堵する

 

ジョージ、コリン、アリスンの無事に喜ぶ

 

「……シェルターまでは送っていこう」

 

「そのまま、己が逃がすと思うか?」

 

黒い装甲天使サンダルフォン

 

「くっ…サンダルフォン…」

 

子ども達の前に立つように構える。

 

 

「といきたいところだが貴様の不抜けた顔が抜けた事に免じて見逃しやる。」

 

 

「なに…?」

 

「あの己達の戦いを邪魔した『赫月のセイバー』にお返しをしなければ気が済まなくなったのでな。己が空にいたる道を邪魔をした報いをな」

 

(サンダルフォンが、私以外に興味をもつなんて…)

 

「貴様を殺すのはそれからだメタトロン」

 

翻り飛翔し消えるサンダルフォン

 

「……とりあえずシェルターへ」

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

「……ふふっ」

 

ガリ〇リ君ソーダ味の封を切り齧り付く『無限のフォーリナー』

 

無限空母の量産型破壊ロボットを射出した射出口に強風に晒されながらも気にせず破壊ロボットに蹂躙されるアーカムシティとデモンベイン・レイドクローの勇姿を見下ろす

 

「んー、やっぱりガリガ〇君の爽快感はいいねぇ」

 

「よく、そんなとこで食べられますね」

 

「『絶壊』ちゃんも食べる?」

 

「貰いますけど」

 

封を切られていないアイスを受け取り金髪の少女『絶壊のバーサーカー』は封を切り齧り付く

 

「つめたっ」

 

「きしし、そりゃそうさ」

愉快そうに笑う眼帯をした女子高生の少女

 

「見えますよパンツ」

 

「いやん」

わざとらしく隠す動作をする

 

「…いかないのかい?『絶壊』ちゃん」

 

「お姉様ですか?今は気分が乗らないので」

バーサーカーには相応しくない冷めた態度でアイスを噛みくだく

 

「あー、勿体ない食べ方して……取り返しつかなくなっても知らないよ?」

 

「そうなったら取り返し付けてくださいよ。『むげん』様」

不敵に不遜に笑うバーサーカー

アイスをすべて噛み砕きアイスの棒まで粉々にする

 

「お姉様が最高最悪最低に踏みにじれるやり方思い付くまでとっときます。私を転生させた責任はとってくれるよね?むげん様」

 

「考えとくよ。さて、…私も混ぜってもらおっかなー?魔導書ガールズに『C』の降臨は任せてるし。逆十字達は余計なことさせないためにも私が遊ばせてもらおっかなー」

 

「…『鬼械神』持ってるんですか?お気に入りの『暴君』は中枢ユニットで使えないんでしょう?」

バーサーカーは首をかしげる

 

「……きしし。『むげん』ちゃんには不可能は無いのだ。『異界のキャスター』への嫌がらせで前々から考えていたんだよね」

 

「あの、『鬼械神』を見たときどんな顔をするか考えただけでゾクゾクするよきしし!!」

 

そのままダイブする『無限のフォーリナー』

 

 

「きしし、夕飯までには帰るよ」

 

近場まで遊びにいく女子高生のノリで戦場までスカイダイビングをひもなしで降りる

 

 

「あー、行ってらっしゃい…………なんか食べながらお姉様殺す最高最悪最低の方法考えよっ」

 

暢気に踵を返し、歩き始める『絶壊のバーサーカー』

 

 

『魔人』は降り立つ




無駄に1年立ちました

出来れば完走したい所存です


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No.23「斬魔大戦Ⅱ②魔人は禍福を糾える」

「るる、……いえ……いぁ、かみさま……」

 

虚ろな眼をした左右違いの瞳に左右違いの色をした衣装を纏うギンの髪をした少女は異界の歌を歌う

 

ここは無限空母祭壇

 

中枢ユニットには『鬼械神ネームレスワン』そして最後の逆十字『暴君ネロ』が祀られていた

 

祭壇の上には先程の少女『ルルイエ異本』の精霊

 

その様を逆十字達は見守る

 

「順調のようだな」

 

「気味が悪い位になぁ…デモンベインも破壊ロボットに手間取っているようだ」

 

「本来拙者達がやるべきだったことが『魔導書』共で代行出来るようだな」

 

「……精霊化の恩恵らしいけどねん、『鬼械神』を召喚できないのわぁちょぉぉっと気に食わないけどぉお」

不満そうな仮面をつけ不満そうにしているティベリウス

「最悪何かあれば中断して召喚すれば良い。儀式の成功がなにより最優先だからな」

 

逆十字の魔術師は儀式の様を眺めながら呟く

 

酒池肉林。阿鼻叫喚

 

信徒達は『C』の降臨の贄に過ぎないのだ

 

「……『ナコト写本』が生きていたのは意外だったな。大導師共々『無限のフォーリナー』に吹き飛ばされたものだと思ったのだが」

 

「やはり、我々の手でやるべきだったのではないのか」

 

「そうだなぁ、いかんいかんなぁ…『無限のフォーリナー』の手の平で踊らせられてる感が否めないのだが」

ウェスパシアヌスは眉をひそめ呟く

 

「胡散臭いってことぉ?」

 

「何もかもだな、あの魔人の好きにさせている現状良くないな。『C』の降臨後奴に『C』の制御権を握られてしまったら事だ」

 

アウグストゥスは論じる

 

「賽は既に投げられている、だよ『逆十字』諸君」

 

「誰だ!!?」

 

「おっと、大導師の古い友人さ」

 

闇の女は戯けてそう言う

 

「貴様は…大導師の周りによくいた…ナイアという女」

アウグストゥスは睨みつける

 

「ほう、覚えているとは意外だね…」

 

「して、何用かね?大導師縁の君に信用出来ないのだがね?」

 

「うわ、直球ぅ…ふふふ、普段なら僕も君らに接触はしないのだけど今回(・・)は特別でねぇ、僕も『無限のフォーリナー』が邪魔でねぇ」

 

「なに…?」

 

「一枚噛ませて貰うとさせて貰うよ」

 

女の顔は闇と変わり嗤う

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

「渇かず飢えず無に還れっ!!」

 

 

「レムリア・ディレイ・インパクトっ!!」

 

 

「一斉昇華っ!!」

 

 

複数の無限熱量は破壊ロボットたちを一斉に消滅させる

 

『アトランティス・トルネード・ストライクっ!!』

 

回転をかけた時空間歪曲エネルギーを叩きつけ複数の破壊ロボットを粉砕する

 

「この区画はあらかた片したよマスター!!」

 

「けど降ってくるのを仕留めなきゃ!!」

 

シャンタクを召喚し飛翔する

 

バルザイの偃月刀を投擲する。

 

「…これがデモンベインだ!!魔を断つ剣だ!!この鋼鉄!!この魂!!お前達を討ち滅ぼす破邪の力だっ!!降りてこいっ!!『無限のフォーリナー』!!」

 

「…呼んだ?」

 

きししと、嗤う魔人(フリーク)は目の前にいた

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

『禍福を糾える縄の如し』

 

 

幸福と災いは交互に来るとされ縄のように表裏一体となっているとされている故事だ

 

私はこの言葉が好きだ。実に的確であるし語呂も素敵だ

 

私、『無限のフォーリナー』は『因果を螺旋曲げる』力を持つ。正確には『時間と空間』の操作だが

 

この禍福が糾える縄ごとねじ切ることも出来る

 

この禍福すら意のままに操る力を持つ

 

 

あの『禍負荷』の『過負荷(マイナス)』に迫る力だ

 

 

因果もまた縄の如く捻り捩れて絡まっていくものである

 

 

数多の登場人物の善因も悪因も収束し絡めていく 

 

物語はそう言うものであり世界もまた果に絡めていく

 

 

寄車むげんは元々『ダインフリークス』に存在する『探偵少女Y』という役割(ロール)

 

 

さらに『禍神転生者』

 

キャラクターへの転生者は元々持つ力を増幅させる傾向にある

 

さらに、設定に過不足が存在する場合好き勝手に解釈し盛る

 

『ダインフリークス』は全3巻の『機神咆哮デモンベイン』に多少繋がる部分のあるそう長くない物語だ

 

邪神災害(ヘルハザード)』の三人の魔人の話

 

寄車むげんも『ニトロブラスターズ』という格闘ゲームに露出する程度。しかもプレアブルキャラクターでもない。サポートキャラクターとしての登場するだけである

 

情報は少ないし明確にされた設定も少ない

 

時間と空間操る外なる神『ヨグソトース』の眼を持つ極彩色の色に感染した『魔人』

 

 

『無限のフォーリナー』は『寄車むげん』でも転生前の『紬白菊(つむぎしらぎく)』でもない

 

 

「私の悪望は…………だ」

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

「きしし、ちょぉおっと空気読んで欲しいなぁ」

 

「黙りなさい。『無限のフォーリナー』…殺されなさい。マスターに地面に頭を擦り付けて醜く詫びなさい」

 

『鬼械神リベルレギス』に『ナコト写本』

 

という事はセイバーくん……!!

 

「きしし、やだね。ようやく退場させれたというのに……面倒臭いし」

 

「面倒ですって…恥を知りなさいっ!!」

 

激昂。リベルレギスの腕から雷が放たれる

 

「…面倒臭いおんなだこと」

 

きひっと、皮肉っぽい笑い方をする

 

「禍神転生スキル『影重召喚(かげえしょうかん)』」

 

「『二闘流(トゥーソードトゥーガン)』&『違えた血(アナザーブラッド)』」

 

「これから『C』の降臨を執り行うから邪魔しないでくれるかな?」

 

「お二人の相手してくれるかな?『九朔』?」

 

『無限のフォーリナー』の影から現れる二人の少年少女が立ち塞がる

「………御意」

 

「誰…?知らない…!!無限螺旋にはそんな人間知らないわっ!!」

 

放たれた雷は機械の腕が弾く

 

銀髪の少年騎士と赤い血が如き少女

 

二人は表裏一体まるで『禍福を糾える縄』のような二人

 

無限螺旋に存在しない二人

 

 

「兄様…姉様…?」

 

『異界のキャスター』は呟く。本来邂逅する筈のない二人

 

 

『憎悪の空より来たりて』

 

二人は聖句を謳う。

 

斬魔の意思を。先程自身も吠えた破邪の意思を

 

 

『正しき怒りを胸に我等は魔を断つ剣を糾えるっ!!』

 

『汝、無垢なる翼×汝、穢れた翼』

 

 

『デモンベイントゥーソード・オルタナティブっ!!』

 

 

『デモンベインブラッド・オルタナティブっ!!』

 

 

二刀のデモンベインと鮮血のように堕ちた赤いデモンベインが上空の螺旋状に描かれた五芒星より顕現する

 

どちらも『魔を断つ剣』の『別側面(オルタナティブ)

 

 

「感激でしょ、泣いて御礼言ってくれても良いんだよ『異界のキャスター』」



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No.24「斬魔大戦Ⅱ③魔人は捩れて螺旋る」

大十字九朔と大十字紅朔

 

『二闘流』と呼ばれた少年と『違えた血』と呼ばれた少女

 

二人は『自分』であり『別存在』であった

 

それでも(彼女)は大十字九郎とアルアジフの息子()だった

 

 

だが、この『無限螺旋(斬魔大聖・機神咆哮)』とは無縁のはずだ

 

 

「兄様、姉様は関係ないだろっ!!!!『無限のフォーリナー』っ!!」

 

激昂。キャスターらしからぬ憤怒

 

「…きみをどう虐めるか考えた結果だよきししっ!!」

 

いやらしく皮肉っぽい笑い方をする

 

「キャスターっ!!落ち着いて!!」

 

 

「でも、マスターっ!!」

 

「わかってっ!!死ぬよっ!!?」

 

 

 

     『ロイガー&ツァール改』

 

トゥーソードはその名前の通りの双子剣を構える

 

本来の双子剣より太く堅く機械的な双子剣

 

「断鎖術式解放、ティマイオスクリティアス。時空間歪曲」

 

 

『アトランティス・ストライク・ブレイドダンス』

 

アトランティス・ストライクを叩き込まれた後連続した斬撃をぶつけてくる

 

「……外道、断つべし」

 

「…兄様……っ!!?」

 

「貴様など知らん。紅朔だけで手一杯だ」

 

 

駄目だ、キャスターは取り乱している

 

ダメージは…大丈夫『自動修復機能(メリクリウスシステマ)』の範囲内

 

私が…頑張らないと

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

「お初にお目に掛かるわ。『ナコト写本』」

 

「忌々しいわね…赤いデモンベインなんて」

 

忌々しげに呟き吐き捨てるエセルドレーダ

 

「ふふふ、……アナザーブラッド。血の怪奇と言うわ。まぁ今は大十字紅朔となのってはいるけど」

 

「大十字……まぁその姓だけで殺してあげる理由なるわ。けれど私が一番殺したいのはその憎たらしい女よ」

リベルレギスは覆うような装甲を変形させ翼を広げる

 

 

「遊びましょう。ミス『ナコト写本』?」

 

血の『バルザイの偃月刀』を複数構える

 

「『血風纏い放て』」

 

血液の刃が無数放たれる

 

 

「…不愉快よっ!!『赫月』!!」

 

 

「……がなるな…投影開始(トレースオン)

 

 

       「『叛逆剣(クラレント)』」

 

 

鬼械神サイズの赤雷纏う聖剣を投影し血液の刃を振り払う

 

クラレントを構えるリベルレギス

 

バルザイの刃を無数構える赤いデモンベイン(デモンベインブラッド・オルタナティブ)

 

「…リベルレギスと闘えるなんて思ってもなかったわ。光栄よっ…けれど大導師じゃないのは残念ね」

 

「マスターだったらすぐ死んでたわよ下等な魔導書風情が」

 

赤雷と血刃が、交錯する

 

憎悪のような闇の真紅と鮮血のように深紅の刃金と刃金がぶつかる

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

覇道財閥司令室

 

 

「デモンベインが…2体!!?」

 

「り、リベルレギスがいますしなにがなんだか!!?」

 

「み、味方…じゃありませんよね」

 

「司令…気を確かに」

 

2体の更なるデモンベインの『招喚』に取り乱し騒然となる司令室

 

瑠璃は取り乱し腰が抜けそうな所をウィンフィールドが支える

 

2体の『鬼械神(デウスマキナ)』は明らかに敵対態勢をとっていた

 

リベルレギスに対しても敵対しているためリベルレギスに関しては藤丸さんには、悪いが状況的に捨て置く

 

騎士のような二刀のデモンベインはともかく赤いデモンベインはデザインはデモンベインそのまんまだ

 

「何処まで人を馬鹿にすれば良いのですか!!?」

 

「……司令、さらに悪い知らせが」

 

電話を取っていたウィンフィールドが言ってくる

 

 

「……なんですか……………?」

 

瑠璃は自分に鞭を打つように立ち上がる

 

 

「…………………合衆国はアーカムシティに対して核を使用する決定をしたようです」

 

「…は?」

 

 

「か、か、か、かくぅ!!?」

 

 

「はい、…………破壊ロボットの蹂躙に対して米軍の攻撃があったようなのですが悉く撃墜されていたようです」

 

「通りで援軍の要請したにもかかわらず一切合切来てませんものね……しかも連絡を決定後に寄こすとは……恥知らずどもめ」

 

こめかみをヒクヒクさせながら瑠璃は盛大に嘆息する

 

四体の『鬼械神』ごと夢幻心母を焼き払うつもりか

 

アーカムは当然放射線まみれの死の大地に化す

 

「汚名は覚悟という訳ですか………けれど通用するとは思えません」

 

「…でしょうが合衆国はわかってはいないでしょう」

 

「…………藤丸さん…頼みます……」

 

 

結局見守る事しか出来ない

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

「そろそろ盛大な横槍があるから行って来るよ頼んだよ『九朔』」

 

『無限のフォーリナー』は飛翔する

 

 

夢幻心母上空まで、上昇

 

 

「ただいま」

 

 

強風に晒され酸素も薄い空に留まる。

 

合衆国は『核』の使用するタイミングだろう

 

必ず使用してくる。いつの『無限螺旋』でもそれは一緒だ

 

人類は使用せざるを得ない

 

『核』は人類最大の攻撃力を持つ人類の『罪』で『呪い』だ

 

それをどうこう議論するつもりは無いけれど

 

「いっつも邪魔なんだよ、君たちに役割はないのにさ!!より絶望を深くするだけの調味料でしかないのに!!」

 

大導師マスターテリオンみたくうたって踊ったりはしない

 

飛来する弾頭。亜音速で飛来する弾頭

 

狙いは夢幻心母

 

 

『無限のフォーリナー』は生身で立ちはだかる

あらゆる物理法則も物理的干渉を無視して否定し螺旋曲げる

 

「…………『我は世界を螺旋る者なり』」

 

 

飛来する弾頭は『無限のフォーリナー』に着弾する瞬間瓦解する

 

部品一つ一つに粉々に綺麗に分解され瓦解する

 

 

粉々になった『核』だった部品達は強風に晒され飛ばされていく

 

「きししっ!!科学の叡智も無様だねぇっ!!」

 

 

ケラケラ笑いながら見下ろす

 

「絶望しているお偉いさんの顔をみたいところだど猟犬の餌になってるだけだしカットカット」

 

また重力に身を任せ落下する

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

『C』

 

 

強大な力を持つ外なる神の一柱

 

 

深海に古代より眠る古き神

 

「るる……いえ…いぁかみさま……」

 

 

その外なるの神の降臨。それが『黒い聖域(ブラックロッジ)』の悲願

 

 

『ルルイエ異本』の唄は続く

 

 

『逆十字』の役割代行をこなす魔導書たちも六芒星を描く所定の位置に付いている

 

『C』招来の呪文を紡ぐ

 

この世ならざる言葉で紡ぐ。

 

深淵より深遠。正気を殺ぐ異界の唄を紡ぐ

 

冒涜者達は世界を侵す為神を下ろすのだ

 

 

『悲願』

 

人は理解されないモノを排斥するだろう

 

その根源は恐怖。その理解できないものに対して人は恐怖するのだ

 

人は理解出来ないモノを自分達の枠組みから排斥する

 

その行為自体自分達を貶めてしまうことも知らずに

 

排斥された者達は『異端なる力』有するのは常だ

 

 

『魔女狩り』その例が最たるものだ

 

 

その排斥された者達は贄に狂気が神を下ろし世界を侵すのだ

 

 

その行為自体も冒涜であることも知らずに

 

 

神は目覚める



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No.25「斬魔大戦Ⅱ④神への嘆願、目覚め」

鬼械神2体の実力は、ほぼ変わらない

 

だが騎士のデモンベイン(デモンベイントゥソード・オルタナティブ)は容赦ない連続攻撃を、繰り出してきている

 

『転生者権限』による技術最適化によりデモンベインの操縦はこなしていくが防戦一方を強いられている

 

 

『魔導書』たる彼女の集中力の低下により精度が落ちているのも一因だろう

 

「……キャスター……」

 

 

「……許して……許して…私は……貴方達と戦うつもりなんて……許して……許して…」

 

サブパイロット席で縮こまるように自分を抱き締めるキャスター

 

(彼女)ネクロノミコン異界言語版(大十字九流)なんて知るはずもない

 

彼女は彼らの物語(機神飛翔)に一切合切縁はない

 

 

複雑怪奇の縁は存在しないのだ。彼らと彼女は本来けして交わる事は無い

 

ネクロノミコン異界言語版という歪な存在はそれを物語る

 

言うならば『無限のフォーリナー』を排除するための役割の駒

 

物語の彼らの願いの結晶

 

その、彼らの子供達からの否定がこの子には突き刺さるのだ

 

「……キャスター…っ!!この子らは多分違う!!『無限』が君を陥れる為の傀儡の人形だ!!」

 

「で、でも…そ、そ、それでも…わ、私には……戦えない…………」

 

震えて弱々しく縮こまるキャスター

 

「…………私がやる…だから……いややらせて『九流』」

 

真名を呼ぶ。大十字九流

彼女の真の名を

「は……い…………」

 

縮こまるキャスターは弱々しく頷く

 

 

騎士のデモンベイン(デモンベイントゥソード・オルタナティブ)は双子剣をけし二挺の拳銃を構える 

 

赤い自動式拳銃(モーゼル)と銀の回転式拳銃(マテバ)を構える

 

 

殺意が充填される。容赦なく冷徹で邪悪を討ち滅ぼすためのそれ

 

キャスターは多分耐えれない

 

 

大十字九朔。彼からの殺意を

 

 

 

     『幻装夢幻召喚(インストールファンタズマ)三重礼装(トリプル)

 

 

 

「キャスター……これが『卍解』だよ」

 

 

飛来する『斬月』をキャッチし構える黒いデモンベイン(デモンベイン・レイドクロー)

 

「……『天鎖斬月』」

 

霊圧は収束する。黒い刀を構える漆黒の巨人(デモンベイン・レイドクロー)

 

 

冷徹無比の殺意の銃口とそれを迎え撃つ漆黒の鋒

 

(戦闘は慣れてない。殺意も向け慣れてない…けれど不思議だ怖くない。)

 

ああきっと『禍神殺し』の力で不要な感情を削ぎ落とされてるのだろうか?

 

今は気にしない。私を認めてくれたこの子を

 

 

泣かせたくないから。

 

「…月牙っ…!!」

 

 

「『魔を断つ剣』を冒涜するとは度し難い。『我、視線は敵を射抜き!殺意は引金を絞り!!魂は弾丸に宿る!!『銃鳴葬送曲(ブラストブリッツクライクライクライ)』』

 

二挺の拳銃より放たれた連続掃射。殺意の弾丸は狙う

 

 

「……天衝っ……!!」

 

『天鎖斬月』を振りかぶり放つ黒い月牙で迎え撃つ

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

「ハイパーボリア・ゼロドライブっ…!!」

 

 

「…レムリアインパクトっ…!!」

 

 

ぶつかり合う極々々低温の刃と無限熱量の崩壊が相殺される

 

相殺の反発で2機を無理矢理突き放す。

 

リベルレギスと鮮血のデモンベイン(デモンベイン・ブラッドオルタナティブ)

 

憎悪のような重油のように重く濃厚な殺意を飄々と躱す赤いドレスの少女

 

 

「…ふふっ。魔術は高ぶる魂を制御しなんたらじゃないのかしらぁ?ミス『ナコト写本』?」

 

「………………」

 

静かな激昂より放たれる重力弾『ン・カイの闇』

 

ひょいひょいかわし血の顎が咀嚼し飲み込む

 

「…ちっ……」

 

本来のデモンベイン・ブラッドならリベルレギスには敵わない筈だ

 

所詮はデモンベインの紛い物

 

『聖書の獣』『七頭十角の獣』『金色の闇』たるマスターテリオンが操縦していないとなれば雲泥の差でもある

 

『転生者』である『赫月のセイバー』の筋は悪くない

 

何よりエセルドレーダは苛ついていた

 

焦燥。焦り。

 

『C』の降臨。本来の筋書きでは彼女自身は全然問題無くマスターテリオンは復活する

 

 

だが『C』が、降臨してしまえば手遅れで致命的になる予感があるのだ

 

「『血の怪奇』なんて訳分かんないものに関わってらんないのよ」

 

違えた血(アナザーブラッド)』を見ていない

 

「屈辱。ふふっでも私の役割は足止めだもの。ふふっ嫌がらせは好きだし…貴女の鉄面皮が焦燥に歪むのは直に見れなくて残念よ」

 

断鎖術式解放

 

 

『アトランティス・ツイン・ストライク』

 

エーテルダンサーモードへ移行。時空間歪曲エネルギーによる2連の粉砕蹴撃を放つ

 

リベルレギスは防ぐ。魔力の楯にヒビが入り破砕する

 

「あら?粉砕したつもりだったのだけれど」

 

「舐めるんじゃ無いわよ…生まれたばかりの小娘風情が」

 

「…」

主導権はもはやエセルドレーダにいまはあるため『赫月のセイバー』は思考を零にする

 

鉄面皮で表情に乏しい少女とは思ったが『マスターテリオン』とやらに関しての感情は激流のよう

 

興味は無い。ただ強く

 

 

ただ強く

 

 

逆にこの、女を利用するのだ。

 

 

「……投影…開始」

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

残骸。火災。あらゆる災害を捨て置き『紅夜のランサー』はアーカムの摩天楼を飛翔する

 

蹂躙する破壊ロボットを葬りながら進む

 

 

別に彼女は正義の味方ではないのだ

 

まがりなりにも『禍神転生者』

 

 

妹の救済以外どうでも良い。むしろ

 

「私には相応しくないもの。」

 

血塗られた槍世(ブルートランツェ)』で徴収した血液で作り出した槍を2対構え進む

 

 

「お嬢様っ!!」

 

 

美鈴(メイリン)、片したのかしら?」

 

緑色の中華服に身に纏った赤毛の華人が並走してくる

 

 

「あらかた片しました!!」

 

「ご苦労様。ああいった手合いは咲夜よりお前のが向いているな美鈴」

 

「恐縮です。まぁ咲夜さんでも問題無かったでしょうけど」

 

紅美鈴(ホンメイリン)、ランサーがかつて住んだ館の門番を務めた女性

『気を使う程度の能力』を有する近接戦闘のプロである

 

禍神領域宝具『異変再現・紅霧』の効果の一端としてかつての従者二人と友人のパチュリー・ノーレッジをサーヴァントとして顕界させることが出来る

 

 

「パチェは呼べないわね」

軽く嘆息しながら愛しき友人の名を潰く

 

「パチュリー様は体力ないですからねぇ」

 

飛翔する二人。目指すは夢幻心母

 

 

『絶壊のバーサーカー』は出て来ていない。なれば居城にいるはずだ

 

「咲夜」

 

紅霧がメイドを形取り二人に並び飛翔する

 

 

「私の邪魔を一切合切斬り捨てなさい。良いわね?」

 

 

     「「御意っ!!」」

 

 

 

 

     『咲夜の世界』

 

 

    光符『華光玉』

    

 

咲夜が時を止め美鈴が光の玉のような気でふってきた破壊ロボットを撃ち落とす

 

 

降るガラクタの間を縫ってランサーは飛翔する

 

 

夢幻心母が近付いてきた際夢幻心母の裏側に逆さに立った侍のような男がいる

 

 

「このままでは、つまらぬところであった。侵入者相手仕ろう。」

 

二刀を引き抜く

 

「拙者は『逆十字(アンチクロス)』の末席を連なるティトゥスというものだ。名を聞こう戦士よ」

 

「名乗るほどではないわ。ただ『絶壊のバーサーカー』なる少女を出しなさい」

 

「なるほど。ではそうかと教えてはつまらぬ。拙者を斬り捨て吐かせて見るが良い」

 

「そうね、吐かせるのは得意だわ」

 

薄く笑う

 

「けれど気は長くは無いわ。早めの自白を推奨するわ魔術師(メイガス)

 

 

「それはお主の力量によるな。吐かせてみろ夜の民」

 

二刀と二槍が交錯する。

 

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

踊れ踊れ。

 

 

役者は揃った。道化しかいない喜劇だ。

 

 

『無限のフォーリナー』は宙を舞い口ずさむ

 

 

ああ、あの桜を咲かせる為に愚鈍に眠る深海の神を蘇らせよう。

 

総てはあの『純白』を穢すため

 

 

 

巡れ巡れ。流転を巡れ

 

 

神は其処にいわすのだ

 

 

海底に眠る神よ。我が祈りを聞き入れ給え

 

 

巨大な歪な姿をした『鬼械神』ネームレスワンが上空に現れ天を仰ぐように機械の腕を広げる

 

『ああ、汝死して横たわりながら夢見るものよ。汝の僕が呼びかけるのを聞き入れ給え』

 

少女の、声音が響き渡る

 

そのこえに答えるようにどこからともなく聞こえてくる

ああ、強壮たるクトゥルーよ、我が声を聞きたまえ。夢の主よ我が声を聞きたまえ

 

ルルイエの塔に封じられしも、ダゴンが汝の縛めを破り汝の王国は再び浮上するであろう。

 

深きものどもは汝の秘密の御名をしり、ヒュドラは汝の埋葬所を、知れり

 

吾に汝の印を与え給え、汝がいずれ地上に現れる事が知りたいがため

 

死が死するとき、汝のときは訪れ汝はもはや眠る事無し

 

我に波浪を鎮める力を与えたまえ。汝の呼び声が、聞きたいがために”

 

 

魔導書の少女達の声が重なり響き渡る

 

 

ネームレスワンの機体が光を放つ。目が眩むほどの光を収束させネームレスワンの、掌へ集まる

 

ルルイエの館にて死せるクトゥルー夢見るままに、待ち至り!!

 

されどクトゥルー蘇りその、王国が地球を支配せん!!”

 

 

ネームレスワンが収束し放った光が柱になり夢幻心母へ突き刺さる。超高密度で複雑な魔術式が幾重にも重なり合い螺旋状に包みこむ

 

複雑な術式は解を導き出し夢幻心母に驚異的な変容をもたらす

 

無機質な肉の芽は若い草のように、芽吹き肉の蔦が夢幻心母を侵略していく

 

神への変容は人を狂気へ導く

 

耐性を持たぬ者は、発狂し廃人へ堕ちていく

 

「おー…まいがー…」

 

目の当たりにした神の降臨に正気を奪われる

 

アーカムの住人の直視した大半は恐怖を植え付けられる

 

 

 

 

神は降臨した



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