進撃の巨人ー名も無き兵士ー (神野伊吹)
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進撃の巨人ー名も無き兵士ー

進撃の巨人2 のラストシーンを若干の妄想を入れつつそのまま書いてみました。
初投稿なのでガバガバな上にネタバレしかないのでご注意ください。

ネタバレNGな人は軽やかにブラウザバックしてください。

こんな物語の書き方好きや!って人に届きますように。

感想もお待ちしております。


ハンネスさんに言われ書き続けたノート。

これには自分の全てがある。

「...」

それをエレンの手元に置く。

私が居たことを忘れないでほしい。

そして、故郷をお願い。

そう願い。

「待って!何をするつもり?」

ミカサの声に顔を上げる。

「ミカサ、エレンにも伝えてね。私たちの故郷を取り戻してね...」

「まっ...!」

ミカサの声を聞き流しアンカーを射出する。

「おい!無茶だ!」

ジャンが叫ぶ。

貴方なら立派な指揮官になれる。

「他に何か手があるはずです!」

サシャの声が聞こえた。

貴女なら力ない者達を救える。

 

目の前の巨人の背後に回り込みうなじを切り取る。

もっと生きたかった。

故郷を取り戻していない。

鎧の巨人を殺していない。

でも、誰かがやらなければならない。

それはミカサでも、ジャンでもサシャでもない。

家族を哀しませることがない私でなければならない。

巨人の掌が私を叩き落とす。

「っ...!」

呼吸が出来ない。

でも立たなければ。

彼らが逃げる時間を稼がなくては。

「悔しいなぁ...」

口から出るのは悔恨。

もっと強かったらもっと足止めできたのに。

もっと強かったら皆の元に戻れたのに。

「あとは...お願いね...」

巨人の手が迫る。

目を瞑る。

間もなく来る痛みに備えるように。

 

 

 

「結局...あいつ、戻ってこなかったな...」

コニーが呟く。

ジャンが最悪の結果を口に出す。

本人だって認めたくはない。

「もう...望みは薄...」

「帰ってきますよ!きっと...!」

そんなジャンの言葉をサシャが震える声で遮る。

「そ、そうだよな...あいつ、すげぇ動きするし...!」

コニーも同意する。

しかし、希望的観測だ。

そんな二人にジャンも同意する。

「よく考えたらあんな化物女が死ぬわけないな!」

分かっている。

でも希望を持たなければ潰されそうで。

何度も自分達を助けてくれた仲間を信じたくて。

 

 

 

ページを捲る。

様々な戦いの記録。

人との交流の記録。

これは彼女の人生そのものだ。

「エレン」

ミカサの声にノートを置く。

そこは彼女の特等席。

よくここでノートに一日の出来事を記録していた。

「あぁ...今行く」

数日経つがここには誰も座らない。

ただ、毎日、皆が訪れる。

帰って来ているかもしれないと。

 

「アルミン」

壁の縁に座っていた人影に声をかける。

「エレン、ミカサ...」

アルミンは後悔していた。

自分にもう少し力があれば。

状況を打破する策を考えられる頭があったらと。

 

彼らは止まるわけにはいかない。

また一人の望みを背負ったのだ。

 

「きっと...」

 

エレンは遥か壁の向こうを見る。

彼女が命をかけた方角を。

 

「きっと取り戻すよ... 」

 

こんな当たり前の誓い。

それでも誓わなければならない。

彼女は何と言うだろうか。

当たり前だ、と笑うだろうか。

 

「俺達の故郷を...!」

 

エレンの声は朝焼けの中に消えていく。

彼女に届くだろうか。

この地獄の世界で誰よりも強くあろうとした彼女にーーー




キャラメイク出来るやん!って30分ほどキャラメイクしたら物語にいそうになって、テンション上がってやってたらオリジナルストーリーが結構良くて。
グレート


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追憶~Ⅰ~

見切り発進だったもので迷走気味ですが、生暖かい目でどうぞ

今回は訓練兵時代を共に過ごした仲間たちが中心です

主がいません、どうしよう

何とか出せる展開にしたい


立体起動装置の整備を終え、ふと顔を上げると沈んでいく夕陽が目に入る。

そういえば、あいつはいつもこんな時間まで自主訓練をしていた。

「......」

思い出すのは立体起動について聞きに来た彼女のこと。

ちょっとしたアドバイスをしただけであいつは成長していった。

動きが改善される度に礼を伝えに来て、新な教えを請うていった。

気が付いたら俺自身もあいつに教えて、共に訓練し、改善するのが楽しみになっていた。

 

夕陽が滲む。

慌てて目元を拭うとしっとりと濡れていた。

どうやら感傷的になっていたらしい。

こんな世界だ。

仲間が死ぬのは当たり前の事だと知っている。

知っていたはずだ。

 

『ジャンよりも上手くなったかも』

 

あの日、あいつはそう言っていた。

だが、あいつは戻ってこなかった。

「クソ...俺より上手くなったんじゃねぇのかよ...」

呟いた声は震えている。

 

『ねぇ、ジャン。今日も教えてよ』

 

あいつとの記憶が溢れてくる。

「...もう負けらんねぇよな...」

震える声は、それでも力強く。

「お前の...お前らの仇は絶対に取るからよ...」

失った二人の親友に。

「見ててくれよ...」

静かに誓うのだった。

 

 

 

 

あの日、私は信じたくはなかった。

彼女が死んだということを。

だから虚勢を張った。

帰ってくる、と。

 

「...」

手帳を捲る。

私が走らされたこと。

一緒に狩りに行ったこと。

故郷の言葉を話したこと。

逃げ遅れた女の子を助けたこと。

私たちとの事まで事細かに書かれている。

「まだ...帰ってこないんですね...」

分かっている。

彼女はもういない。

あんなに強くて、皆に好かれていたのに。

「あんなに怖かった教官も、ここ数日は暗い顔をしているそうですよ...」

誰も座っていない席に語りかける。

埃は無い。

きっとクリスタだろう。

まだ、みんな信じたくないのだ。

「また...来ますね...」

静かに部屋を出る。

今も信じていない。

彼女はきっと帰ってくる。

これからも信じ続ける。

明日にはあの席に座っていると。

 

 

 

 

「モブリット...彼女は本当に死んだのかい...?」

研究の合間、助手に問い掛ける。

「何度聞いても答えは変わりませんよ...」

このやり取りも数え切れないほど繰り返している。

多くの巨人を捕らえてきた、もう一人の助手。

エルヴィンに捜索をすべきだと談判したがダメだった。

分かっているんだ。

今の状況で一兵士を探しに行く余裕などない。

更に言えば望みは無い。

きっと、彼女は見つからないだろう。

でも、彼女であれば、とも思ってしまう。

「ねぇ、モブリット...彼女が何故、調査兵団に入ったか覚えているかい?」

再び助手に問い掛ける。

「鎧の巨人への復讐、でしたよね...?」

これはあの日からずっと引っ掛かっている事だ。

「そうだ。でも、彼女はどうして鎧の巨人を諦められたんだ...?」

経緯はアルミンに聞いていた。

だが、そんな事で諦められるだろうか。

目の前に復讐の対象が無防備に転がっているのだ。

如何にアニの確保が優先だとしても、彼女の実力なら造作も無かったかもしれない。

ならば何故?

「皆を危険に晒したくなかったんでしょうか...」

可能性はある。

だがあくまでも可能性というだけ。

答えは出ない。

あの優秀な助手は何を考え、何故、復讐の対象を見逃し、一人で戦ったのか。

分からない。

「最後にとんでもない問題を出していったね、彼女は...」

彼女の同期達はどう考えているだろうか。

私は立ち上がる。

「どちらへ?」

モブリットの質問に答える。

「少しヒントを探しにいってくるよ」

一日くらいなら研究を投げ出してもいいだろう。

明日明後日で埋め合わせたらいい。

それよりも今は疑問の解決が優先だった。




短めにパシパシと。
その後の話という形にしました。

どれが誰かはあえて名前をほぼ出してません。
で、一人称にしてるのは理由があります。
詳しくは言いませんが。

因みにスマホで書いてるんで2000とか3000とか4000とかの文字数は期待しないでください。

ぶっちゃけ入力だrうわ何をする!


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追憶~Ⅱ~

今回は誰が出るのやら
お楽しみに!


俺達と同じ故郷の仲間がいた。

同期の誰よりも強く、誰にも優しかった奴だ。

巨人の力にも怯えず、自分がついてる、と励ましてくれた。

あの日も俺が意識を失っている間に行ってしまった。

気が付いたときには巨人達の中に。

自分の復讐も、夢も、全て俺達に託してくれた。

 

「...」

今日も読みに来ている。

誰も座らない、彼女の為の机に。

読むときも座らない。

ここは彼女だけが座る席となったから。

「はは...こんなことまで書いてたのか...」

訓練兵時代の些細な出来事まで書いてある事に笑みが零れる。

「凄いな、お前...こんな事もやってたのか...」

様々な訓練、様々な人との交流、様々な問題の解決。

そんなやり方があったのかと、参考になりそうなことまである。

 

「またここにいたの?」

 

あの日と同じようにミカサが迎えに来る。

「あぁ...毎度悪いな...」

「気にしないで。私も来たかったから...」

ミカサは部屋の中に入り、机を撫でる。

こいつも彼女とは仲良くやってたらしい。

お互いの昔話などをして盛り上がったと手帳に書いてあったのを覚えている。

「なんか用があったんだろ?」

悲しげな瞳で机を見つめるミカサに問い掛ける。

「アルミンが呼んでいる」

ミカサは顔も上げずに答える。

最近はこうした反応をすることも多い。

彼女はミカサにとっても大きな存在だったんだろう。

手帳を置いてミカサを促す。

「行こう、ミカサ」

きっとまた来てしまうだろう。

でも、彼女を忘れたくはないから。

託されたものを忘れたくはないから。

「また来るよ...」

部屋に言い残す。

自分にも言い聞かせるように。

必ず生き残る為の誓いのように。

 

 

 

 

今日も部屋の掃除に訪れた。

蝋燭の交換や拭き掃除。

別にしなければいけないわけではない。

でも、彼女が戻ってきたとき、綺麗な方が良いじゃないか。

そんな理由だ。

ジャンやコニーは望みは薄いと言っていた。

でも、誰一人、彼女の最期を見ていない。

こんな世界だ。

それだけで十分だ。

「ふぅ...」

いつもの行程を終える。

日も暮れ、紅い夕陽が部屋に差し込んでいる。

あれから何日経っただろう。

最初は待つ事しか出来なかった。

どんなに待っても帰還報告が無くて泣いたこともあった。

そんな時、彼女との日々を思い出した。

 

『ごめん、部屋は寝るとこだと思ってるから...』

 

訓練兵時代に訪れた彼女の部屋は、呆れるほど散らかっていた。

正確には彼女の生活スペースだけ。

通常の訓練に加え、遅くまで自主訓練をしていた彼女は部屋の掃除などするつもりも無さそうだった。

そんな彼女の生活スペースを定期的に片付け始めたのは、ばつが悪そうにする彼女に呆れたからではない。

薬草探しやお見舞いに付き合ってもらったからでもない。

友としてしてあげたくなったのだ。

きっと、そうまでして復讐を成し遂げたいのだと。

彼女の生活スペースは無くなってしまった。

でも、ここは残されている。

調査兵団の中では暗黙の了解である。

誰も荒らすことはない。

確認のために部屋を見渡す。

 

「あれ...?」

 

一つの異変に気付く。

重大な問題だ。

「手帳はどこ...?!」

机や椅子の下にも無い。

「嘘...ダメ...! あれは... !」

彼女の記録。

104期の皆が共有する手帳。

彼らが持っていくはずはない。

「皆に知らせなきゃ...!」

クリスタは慌てて部屋を飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手に持った手帳はボロボロだ。

何度も捲られたのだろう。

つい頬が緩む。

忘れられてはいなかったのだと。

まだ『ただいま』は言わない。

今はこの状態で良い。

友たちの為にもまだ姿は見せられない。

その時がくれば、きっと助ける。

手帳を内ポケットに入れる。

 

「顔くらい見せてやったら良いのに」

協力者であるヒッチは呆れたように言う。

"彼女"は小さく笑う。

これで良い。

今は死んだままの方が都合が良い、と。

「相変わらずだね...それじゃ、行きますか」

暗くなり始めた町を"彼女"は歩く。

その姿は誰にも見咎められる事は無かった。




はい、出ました。


生きてます! 以上!

こっからどうしようね(´・ω・)
ノープラン過ぎる。


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記録

これで主視点で書ける!


そんな風に考えた時期が俺にもありました

ごめんて。もうちょい付き合って。
頭の中の映像がこうしろってなってるの。


あの日は私達も召集されていた。

人類の命運を賭けた大規模な防衛作戦。

「ったくさぁ...なんの為に憲兵団に入ったと思ってるんだろうね」

今じゃ最前線。

正直、巨人と向き合って戦える自信はない。

近くにあいつがいないだけでこんなに怖い。

「今、どの辺で戦ってるのかな...」

今まで何度か実戦には出た。

あいつに『ちょっと付き合って』と軽く誘われたのが原因だったけど。

散歩に行くような感じで壁外に連れ出して巨人の群れに突撃。

殺す気かと何度も思った。

でも、あいつの傍にいると勇気が湧いた。

怯えが無くなると気付く。

あぁ、こいつは私に巨人の恐怖に慣れさせようとしていると。

今回もきっと、あいつは助けに来てくれる。

そう考えただけで戦えた。

自身の周りの巨人を処理し終えると主力部隊がいる方に目を向ける。

何があったかは分からないが、鎧の巨人がエレンらしい巨人に投げられる瞬間であった。

「すご...」

素直に驚く。

これなら人類は勝てるかもしれない。

しかし、トラブルが発生する。

鎧の巨人が持ち去ろうとした目標物を発見したという伝令がきたのだ。

私達への指示は撤退。

機密なのだろうし、指示には従う。

だが、遠方から近付く巨人はどうするのか。

私は初めて上司に意見をした。

調査兵団の援護をすべきと。

 

 

巨大な鉱石のようなものを積んで走る馬車を発見する。

すぐ後ろには巨人の群れ。

マズイと思ったときには一つの影が馬車から飛び出していた。

「あの馬鹿...!」

あいつだった。

長い戦いを終えた直後だというのに無謀にも巨人の群れに飛び込む。

私が立体起動を始めた瞬間、あいつは叩き落とされた。

既に疲労困憊なのだろう。

調査兵団は憲兵団よりもキツかったはずだ。

間に合えと願う。

巨人への恐怖はない。

今、恐れているのはあいつが死ぬこと。

友達と呼べる存在が失われること。

起き上がったあいつに巨人の手が迫る。

その巨人の手にアンカーを打ち込み一気に巻き取る。

「お前らなんかにやらせるかっての...!」

そのまま振り子の要領であいつに向かう。

目を閉じている。

許さない。

こんな別れは早すぎる。

「しっかり掴まれ馬鹿!」

あいつに聞こえるように叫ぶ。

驚愕の表情を浮かべているが、さすがだ。

勢いをつけて突入した私に迷うことなく掴まった。

「あんたガスは?!」

 

『少しだけ』

 

私の質問に短く答える。

「あんたなら平気そうね! 少し後方に憲兵団の補給地点がある! そこにならガスが詰まったボンベもあるから!」

まずはそこに行こうと提案する。

するとこいつは遠慮なしに飛び始める。

 

『先に行って補給しておく』

 

正しい判断だろう。

了解の意味を込めて頷く。

あとは生き残るだけ。

僅かな木を使い、立体起動で巨人との距離を離す。

辿り着いた拠点では、補給を終えたあいつが二本のガスボンベを持って待っていた。

 

『すぐ出発しよう』

 

私のボンベ交換を手伝いながら彼女は言う。

同感だ。

おそらくまだ壁外にいるのは私達だけだ。

「あんたが無茶してなきゃこんなに焦ること無かったんだって...」

彼女は私の言葉に苦笑しながらも巨人が来る方角から目を離さない。

これだからこいつは安心できる。

「さぁ、帰ろ?」

巨人が見える前に遺されていた馬に乗る。

走りながら彼女は一つの策を語り始める。

私にはその作戦を行う意味が分からない。

だけど、こいつが言うんだから意味があるのだろう。

私はこいつを匿う場所を考えながら馬を走らせるのだった。




はい、最後まで本人の名前が出なかった。

今回は主が追憶Ⅱで何故生きていたのか、の理由になりました。

分かった人は分かったでしょう。

助けたのはヒッチさん。
主との交流で強制的に壁外に連れていかれたりしたヒッチさんも成長しておりました。


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隠匿

主「待たせたな!(cv.大塚明夫さん)」

嘘です。

でも、ついに一回、主視点です。


迫る巨人の手。

そんな窮地を救ってくれたのはヒッチだった。

私を補給地点に案内し、策にも乗ってくれた。

何だかんだでいい人だと思う。

 

「で、目的は何なの?」

ヒッチの部屋に匿われた私は布団を被り万全の状態になっている。

「てか、その格好は何なの?」

「人が来たときに視界を奪い逃げるまでを想定した、対人逃走術」

「真顔で言うの止めて...」

ヒッチは額に手を当てる。

そんなに馬鹿な事をいったつもりはないのだが。

「私が隠れた理由は一つだよ」

このままだと布団を剥がされかねないので話を進める。

「鎧の巨人であるライナーのクソ野郎に死んだと思わせるため」

「いや、隠れなくてもあの時点で死んだと思われたでしょ?」

私の言葉にヒッチは返す。

それではダメだった。

「私を知っている人、全員が死んでると思わなきゃいけないの」

自身を指差すヒッチを無視して話を続ける。

「誰かが私の生存を知ってるだけで情報は漏れる。でも、皆が死んでると思ってたらクソ野郎に情報が漏れる心配はない」

「つまり、何が目的なのよ?」

まだ伝わっていないらしい。

「私の目的はクソ野郎とその友達を削ぎ落として始末する事」

あの日、私はアルミンに諭されて復讐を諦めた。

だが、あれはあの時に限った事だ。

偶然とはいえ、私は死んだことになった。

ならば利用しない手はない。

奴等はきっと、再びエレンやアニを狙うだろう。

そうなればあとはお楽しみだ。

「あんた、その為に兵士になったんだっけ...」

同情したのか、ヒッチは悲しそうな瞳で私を見つめる。

「その為に」

私はヒッチの手を握る。

同情なんてしてほしいわけじゃない。

命の恩人で、親友で、信頼できるヒッチだからこそ頼める仕事がある。

「調査兵団の動きを私に教えて欲しい」

奴等を陽動したり、奴等に対象を奪われたときは何か変わった動きがあるはずだ。

私は調査兵団の動きから予想して動く。

目的が違った場合はここに戻れば良い。

「でも、近くにあんたがいたら生きてるのバレるんじゃない?」

それもそうだ。

だから私は。

「基本的に民衆に紛れ込むよ。似てる奴がいるとしか思われないでしょ」

そして調査兵団が壁外に出るなら追う。

「なるほど。木を隠すなら森の中ってことね」

ヒッチは頷く。

残る問題は二つ。

「食べ物はヒッチ、なんか買ってきて」

当たり前みたいに頼むしかない事が一つ。

「はいはい、分かってるわよ」

嫌がらない分、彼女も成長しているのだろう。

食事問題は解決だ。

「あとは手帳かぁ...」

「あぁ、あんたの...あれ、どうしたの?」

完全に死を覚悟していた私はエレンに託してきた。

だが、あれにはクソ野郎どもの事も書いてある。

あると無いとでは雲泥だろう。

「エレンにあげちゃった。取りに行くしかないかぁ...」

「あんたねぇ...」

さすがに呆れ顔をされる。

「まぁ、場所は聞いておく。直接取りに行くんでしょ?」

「ありがと」

行動予定は決まった。

第一目標の手帳。

そして第二目標のクソ野郎。

これからの暗躍とクソ野郎の驚いた顔を想像するだけで楽しくなってきた。

「何笑ってんの、気持ち悪い...」

「ヒドイ...」

助けてくれたヒッチには感謝しかない。

あの場で死んでいたらこんな風に話せなかった。

クソ野郎への復讐が出来なかった。

エレン達同期に二度と会えなかった。

「助けてくれてありがとね、ヒッチ」

感謝の言葉を伝える。

茶化さずに、まっすぐに。

「気にしないでよ、友達でしょ?」

ヒッチが私の頭をワシワシと撫でる。

でも違う。

伝えるのは恥ずかしいけど。

ヒッチは友達と言うけれど。

間違いなく、彼女は私にとっての同期達と一緒だ。

親友なのである。




はい、手帳を取りに行く前のお話でした。

口が悪いのではなく、ライナーが悪い。

そして、隠れて手帳を回収した理由もこちらでした。

ちょっと設定というか1話との相違があるのは元々見切り発車だから勘弁してください。


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外伝:暴力

外伝は基本的にネタです。あんまり面白くないです。

読まなかった所で何も困りません。

そしてライナー視点はここしかないかもしれません。

あと男主です。

女主のデータは次回の本編で明かします。

男主データ
ウィルヘルム・ハーネット
髪は茶。
少し長めの髪をアニやエルドのように纏めている。
身長はジャンが見上げる程。
瞳は少し小さめで、目全体が少し鋭い。
口角は下がり気味。顔の構造だから仕方ない。
額にシガンシナ区侵攻の際に負った傷痕がある。
モスグリーンのパーカーを着ている。
性格は寡黙だが、冗談は好む。


その日、ライナーは思い出した。

原作巻末でネタにされていたことを。

弄られる恐怖を。

 

 

 

「自主訓練終了っと...晩飯か...誰か誘うか」

汗を拭い、呼吸を整える。

先程まで姿が見えていたウィルヘルムはもういない。

おそらく夕食に向かったのだろう。

「ぉ、あそこにいるのは...」

発見したのはミカサとエレンだった。

「よぅ、お前たt..」

 

ーザシュン

 

聞き覚えのある斬撃音が耳元を掠める。

「......おわぁぁ!?」

慌てて下がると耳元にはスナップブレードがあった。

目の前には死んだ魚のような目でこちらを睨むミカサの姿が。

「何の冗談だ...?」

「...特に理由はない」

ライナーの問いに応えるも、彼女は目を逸らさない。

どころかスナップブレードも下ろさない。

「機嫌が悪いみたいだな...エレン、お前はどうs」

 

ードサッ

 

何があったか理解できない。

気付いたらどこかで見た格好で空を見上げていた。

「...」

これはあれだ。

アニにやられたあれだ。

二人は満足したのか立ち去る。

「何が起こってる...?」

ミカサはまだしもエレンまでが凶行に及んだ。

何かしただろうか。

「いてぇ...」

空を見上げながらライナーは呟くのだった。

 

 

 

「やれやれ...酷い目に遭った...」

ライナーは夕食の席に着いている。

もちろん、ミカサとエレンからは離れている。

「とりあえず食うか...」

二人の様子を伺いながらスプーンを掴む。

まさに、その瞬間である。

 

ーザクッ

 

聞き慣れない音。

そして手に走る痛み。

「...ぐぉぉぉお!?」

手を確認するとフォークが刺さっている。

しかも割りと深く。

顔を上げフォークの持ち主を見る。

サシャが爽やかな笑顔でこっちを見ていた。

「どういうつもりだ...!?」

痛みに耐えつつ問い掛ける。

「刺さなきゃいけない使命感に駆られまして」

満足気である。

意味がわからない。

「とりあえず抜いてくれ...!」

明らかに血は出ている。

「あっはい」

適当な返しと共にフォークが抜かれる。

何かがおかしい。

こいつらはこんな適当に暴力を振るうような奴等だったか?

手を押さえながら自問自答する。

今までこんな事はなかった。

つまり、何かのイベントか、もしくは嫌われているかだ。

前者の場合、イベントの内容が意味不明すぎる。

後者であるならば...正体がバレた可能性だ。

 

あまりにも理不尽な暴力ラッシュにライナーは冷静さを失っていた。

 

 

 

 

「畜生...まだいてぇ...」

足、首に続いて右手まで負傷。

巨人とでも戦った方がまだ怪我は少なそうだ。

ふと顔を上げるとウィルヘルムが歩いている。

立体起動装置を装備しているが、自主訓練にでも行くのだろうか。

ライナーは己の背後を確認する。

がら空き。

今日の感じだとまだ誰かに襲われかねない。

少し移動し、壁を背にする。

これで不意打ちはないだろう。

では。

「おい、ウィルヘルム! 自主訓練か?!」

距離があるため、少し大きな声で声をかける。

聞こえたのか静かに振り返るウィルヘルム。

手に持っているのは刃を潰したスナップブレードだろうか。

どんな訓練をするのやら。

そんな風に考えた瞬間であった。

 

ーストッ

 

背後の壁に何かが刺さる音。

 

ーキュルキュルキュル

 

次いで聴こえる聞き慣れたワイヤー音。

そして大きくなってくるウィルヘルム。

「なっ!?」

 

ーバキィッ

 

直後、ライナーの意識は刈り取られた。

無表情にライナーを見下ろすウィルヘルムの手によって。

 

 

 

 

「はっ!?」

目を覚ますと部屋である。

痛みはない。

「夢か...?」

おかしな夢を見たものだ。

額に手を当てる。

そこには包帯が巻かれた右手が。

「まさか...」

包帯を外す。

手の甲には3つの穴のような傷があった。

「なんなんだ...これは...!」

夢ではなかったのか?

しかし、傷が残っている。

 

ーコンコン

 

ノックが鳴る。

恐る恐るドアを見る。

扉から顔を覗かせたのはジャンであった。

だが夢か現実か分からない状況に陥ったライナーは既に冷静ではなかった。

「なんだ起きt」

「俺に近寄るなぁぁぁああ!!」

兵舎にライナーの叫び声が響いたのだった。




特に理由のない暴力がライナーを襲う


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疑念

大変長らくお待たせしてしまった事を本当に...すまないと思っている...!

御託は抜きにして

楽しむと良いね!


あの日、俺はあいつに出会った。

並々ならぬ憎悪を抱いていた瞳を忘れたことはない。

 

あの日、俺はあいつに出会った。

護衛すべき対象を護りながらも、離れたところにいる俺に肉薄してきた憤怒に恐怖を覚えた。

 

あの日、俺はあいつに出会った。

奪還間近で戦況を変えながらも、仲間を救う為に犠牲になったと聞いた時、ホッとしたのを覚えている。

 

 

アニ奪還作戦の失敗から2週間。

俺達は未だに動けずにいた。

指示を出してくる″あの巨人″からの連絡はない。

ただ街に潜み、調査兵団の動きを観察する。

「ライナー...」

声に顔をあげるとベルトルトが立っていた。

「交代か」

「君も少し寝た方が良いよ」

最近は寝れないことが多い。

理由は一つだろう。

全ての訓練で俺達を超え、異様な技術を独自に作り出していったハーネットがあっさり死んだと聞かされた。

当日はエレンに投げ飛ばされ意識を失った為、その現場を見ることは叶わなかったが、調査兵団の会話を盗み聞いたところ事実であるようだ。

首席になれる力を持ちながらも教官に直訴し、上位10人から外れる程の執念でも簡単に死ぬのかと疑ったものだ。

リヴァイ兵長や分隊長のハンジも数日の間、おかしかったようだ。

同期の連中など同一人物か疑うほどのものだった。

だからこそ信じられた。

信じたと思っていた。

4日前、俺は一人の女性を街で見掛けた。

ハーネットに良く似た女性だ。

しかし彼女は憲兵団の女性に声をかけられ共に歩いていった。

 

『姉さん、こんなとこで何やってんのさ...』

『あら、私だってたまには街を見たいのよ?』

『なら早く病気治さなきゃいけないでしょ...戻るよ』

 

聞こえた会話からすると姉妹。

身体が弱い姉が抜け出したのを発見した妹だろうか。

他人の空似。

他の人が見たらそう言うだろう。

だが、その日からだった。

夢にあの女が現れるようになったのは。

情け容赦無く高速で接近し、俺の命を狩ろうとする。

おかげで寝てもすぐに目を覚ます生活だ。

「ライナー、そろそろ忘れるんだ...! ハーネットが生きていたとして、調査兵団にも戻らない理由はなんだ!? 別人だよ!」

ベルトルトが考え込んでいた俺の肩を揺する。

分かっている。

そんなわけがない。

助けも求めず武器も持たず、彼女がこんな王の膝元で過ごしているはずがない。

あいつは俺に恨みを抱いているのだから。

エレンが巨人を憎むように、 俺は彼女の親の仇なのだから。

疑念は晴れない。

たしかに彼女が死んだ瞬間は誰も見ていない。

だが果たして本当に死んだのか。

思考は繰り返す。

ハーネットの影が俺を狂わせる。

死んで尚、俺を追い詰める。

 

「くそっ...化け物め...!」

 

巨人になれる俺の言葉として相応しくはないだろう。

 

ふと見下ろした窓の外にあの日見た姉妹がいる。

姉が妹の手を引き笑っている。

あんな顔をする女性がハーネットな訳がない。

俺はそう思い直し寝床に潜った。

 

この時、俺は彼女に話し掛けに行くべきだった。

そうすれば早急に手を打てたかもしれないのに。




ライナー編を書かざるを得ませんでした。

今までの物語を読んできた皆さんは気付きますね?
そうです、手の平クルーしてヒッチを連れて街を散策するジェミニ(女主)です。

ライナーめ、まんまと騙されたな!(ニヤニヤ)
って眺めてたらイイナー

次回は手帳を失った同期編の予定です!


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喪失Ⅰ

さぁ、こっそり生きてた主人公!
手帳を返してもらい本人はホクホク顔!
だが、そうはいかない同期達!

ご覧あれ!


俺達が共有していた手帳が消えた。

それはあいつを知る全ての人を動かすのに充分な理由だった。

 

「おい、てめぇら...全員、部屋を見せろ」

 

いつにも増して不機嫌そうに同期全員の部屋をひっくり返し掃除までしていくリヴァイ兵長。

 

「どうして...こんな...」

 

涙を流し絶望の表情で座り込んでいるクリスタ。

 

「盗んだやつ見つけたら削ぎ落とす...」

 

静かに怒りを燃やし街中を走り回るミカサ。

 

 

 

手帳が消えた日から既に10日程経っていた。

関係者全員が動いている。

未だに手掛かりは無し。

こうなってかると怪しいのはベルトルトとライナーだ。

ジェミニの手帳にはあいつらの事も事細かに書かれているだろう。

情報の漏洩を危惧したのかもしれない。

「畜生...! 仲間どころか手帳一つ守れないのかよ...!」

苛立ちが募る。

「おい、エレン。今、憲兵団の奴から聞いたんだが、例の手帳に似たのを持った女を見たってよ」

そんなとき、内地に情報収集に行っていたジャンから情報がもたらされた。

「本当か!?」

「あぁ、茶色の革の手帳なんざ珍しいから覚えてたんだと」

ジャンは休暇の申請書を作りながら答える。

もう一度行って確かめるつもりだろう。

「あまり人数は動けない...頼むぜ、ジャン...!」

「誰に言ってんだよ」

早々に書き上げ立ち上がると、休暇の申請書をヒラヒラしながら真面目な顔で応える。

「あいつの遺品一つ探せないようじゃ合わせる顔がねぇよ」

いつも以上にキツい目付きで虚空を睨むジャン。

きっと怒りもあるのだろう。

「あぁ...あいつが託してくれたモノを...見つけ出してくれ...!」

俺だってそうだ。

皆を救うために復讐すら投げ出したあいつの何かがこれ以上奪われるのはゴメンだ。

書類を手に立ち去るジャンはどこかあいつに似ていた。

 

 

 

 

「例の女がよく現れるのはここか」

内地の商店街とも言える場所。

様々な食糧品を取り扱う店が並んでいる。

「フードを被った小さめの女ねぇ...」

そんなのはそこら中にいる。

「もっと情報を集めるべきだったか...?」

今更だが、もう探すしかない。

取れた休暇は3日。

これで進展も無しで帰ったら殺されかねない。

 

「ヒッチー! これ食べたい!」

 

何処かで聞いたような声が聞こえた。

「ジェミニ...!?」

そんなはずはない。

彼女は俺達を救うために一人で巨人に立ち向かったのだから。

声の方を見るとフードを被った女が、銀髪の憲兵団の女の手を引っ張っている。

 

「あのさぁ...風邪明けで食べれるわけ無いじゃん...パンとスープって約束でしょ?」

 

呆れながらもフードの女が転ばないように注意している。

 

「...飽きた...」

 

立ち止まったかと思うと、不貞腐れた声が聞こえてくる。

声の主はフードの女。

「あのねぇ...注意しても暑いからって薄着で寝た姉さんの自業自得でしょ...」

なるほど、どうやら姉妹らしい。

俺は人の波を掻き分け姉妹に近付く。

「すいません! 少し良いですか!?」

大きめの声を出す。

その声に気付いたのか二人がこっちを見る。

と、その時であった。

 

「ぁ...」

 

フードの女がゆっくりと倒れそうになる。

手を伸ばして支えようとするが間に合わない。

それを支えたのはヒッチーと呼ばれた女。

「やっぱり...姉さんに外は早いって...」

彼女は慣れた動きで素早く″姉さん″を背負う。

「大丈夫か...!?」

「いつものこと。で、お兄さん、何の用?」

心配するなと言わんばかりに話を進められる。

ほんとに大丈夫なのか心配だが、本来の目的を達するとしよう。

「この辺に茶色の革の手帳を持った女がいると聞いて来たんだ。知り合いの手帳が無くなって...」

俺の言葉を聞くと″ヒッチー″は背負った姉のポケットから茶色の手帳を取り出す。

「これ?」

差し出された手帳は確かに似ている。

だが、綺麗すぎた。

「これは...」

違う。

空振りだった。

「姉さんさ、身体弱くて...日に当たるのも危なくてさ...いつ死んじゃうか分からないっていつも言ってるからさ...日記でも付けたら前向きになるんじゃないかって買ってあげたんだ」

ヒッチーは悲しげに応える。

そんな事情とも知らず手帳を確認してしまったのは心が痛んだ。

「そうか...お姉さん、元気になるといいな...」

「ありがとう、お兄さん」

俺は手帳を返し、姉妹を見送る。

これもジェミニが護った光景だ。

今回は空振りだったが、次は手帳を見付ける。

そしてこの光景を護る。

心を新たにし、俺は捜索に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ...知り合いでしょ? だから出歩くなって言ったでしょ? あんた、実は馬鹿なの?」

 

「...返す言葉もありません...」

 

ヒッチの言葉が心に刺さった。




ジャン!惜しいジャン!
ダミーの手帳で騙されたジャン!



ジェミニとヒッチは病弱な姉と世話焼きの妹という設定のもと生活していました。
これを窓の外から見たライナーは自滅。


では、次回お楽しみに。


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発見

皆様、大変お待たせしました

むしろ忘れていた頃かもしれません

だが、私は書き続ける!

筆がのれば...



ある時、建物の二階からこちらを伺う影を見た。

瞬間、目の前が燃えるように赤くなった気がした。

私はついに奴を発見したのだ。

勿論、ヒッチのフォローで誤魔化すことには成功する。

 

日を空け、何度か例の建物の前を通る。

確認できたのは私の仇の他、ベルトルト。

忘れもしない。

エレンが仇を仕留めようとした際、邪魔をした男。

共にいるのであれば対策を練らなければいけない。

 

 

そんな事を考えていた日だった。

私もまた、発見されかけたのだ。

相手はジャン。

何かを探しているようだった。

咄嗟に顔を隠せるようにふらついて見せる。

着いてきていたヒッチが支え、打ち合わせ通り背負ってくれる。

「この辺に茶色の革の手帳を持った女がいると聞いて来たんだ。知り合いの手帳が無くなって...」

マズイ。

まさか探すほどの事になるとは想定していなかった。

ヒッチが私のポケットを漁る。

そこには何もない。

少しすると急に重みを感じた。

「これ?」

ヒッチが取り出して見せたのは新品の茶革の手帳。

だが私のではない。

「姉さんさ、身体弱くて...日に当たるのも危なくてさ...いつ死んじゃうか分からないっていつも言ってるからさ...日記でも付けたら前向きになるんじゃないかって買ってあげたんだ」

初耳だ。

どうやら私の設定が増えたらしい。

打ち合わせなど無かったが、少し辛そうに首を凭れ掛ける。

「そうか...お姉さん、元気になるといいな...」

「ありがとう、お兄さん」

ジャンは手帳を返すと立ち去った。

ふと、ここが奴等の潜伏先の近くであることを思い出す。

フードの下から覗く。

いた。

奴もフードを被り、ジャンを視線で追っている。

焦りは禁物だ。

動くときは確実に狩る。

逃げ場も無く、巨人化する間すら与えない。

私が策謀を練っているとヒッチから声がかかる。

 

「ねぇ...知り合いでしょ? だから出歩くなって言ったでしょ? あんた、実は馬鹿なの?」

「...返す言葉もありません...」

 

心が痛い。

 

 

ジャンに見つかりかけた日から数日。

私は二つの理由で部屋に籠っている。

あの建物にいる二人を確実に狩る方法を考えていたのだ。

あとヒッチに外出禁止令を出された。

「入口から攻めるのは当然の如く窓から逃げられる...」

手帳に描いた建物の入口にバツ印を付ける。

「やっぱり窓か...立体機動装置で一気に...」

窓に丸を付けるが、奴等は二人で見張っている。

恐らく隙は無いだろう。

「手が足りないなぁ...」

瞬時に見張りを始末し、休んでるもう一人を殺す。

難易度は高い。

何せ、二人とも巨人化が可能なのだ。

「ん...? 待てよ...食料が無いと生活は...」

穴を見つけた。

どこかの時間で奴等は食料を得ているはず。

ならばその瞬間は一人、もしくは二人とも外出するはずだ。

前者であれば容易いし、後者ならば攻められない。

「ヒッチに頼んで調査かなぁ...」

奴等がどれくらい潜伏するか分からない以上、出来る限り早く行動するしかない。

 

―トントン

 

ふとノックが響く。

ヒッチではない。

素早くフードを被り日にも弱い病弱な姉を演出する。

足を引き摺るように、元気がないような足音をたて、入口に向かう。

静かに覗き穴から外を覗く。

 

「いるのは分かってる」

 

さすがに想定していなかった。

何処からバレたのか分からない。

自分の落ち度が分からない。

何故、発見されたのか。

緊張で心臓が高鳴る。

 

 

 

「何も言わなくていい、そのまま聞け」

 

 

 

人類最強がそこには立っていた。




はい。
発見したり発見されかけたり発見されたり。

そんな内容からタイトルつけました。

両手にはスナップソード、歌うのは呪詛

な主人公が人類最強タラちゃん()に見付かりました。
果たして彼の目的とは。


ついでに誰か物語の着地地点も発見してください。


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任務

はい、いきます


久しぶりの壁外遠征。

あの一件以来、調査兵団は静かだったはずなのに。

「クリスタ、大丈夫?」

ミカサの声に曖昧な笑顔を浮かべてしまう。

あの日、ジェミニを失ってから私は壁外が怖い。

今日の目的は中継地点の設営。

私たちの班は周囲の警戒だった。

「もう、誰も離さない」

かつて死地に飛び込めなかった事を悔やむミカサ。

だけど当たり前だ。

あんなこと、簡単には出来ない。

「よう、聞いたか?」

顔を上げるとジャンが馬を寄せてきていた。

「何の事?」

私が聞くとジャンは声を潜める。

「リヴァイ兵長がリヴァイ班を再結成した」

「再結成...?」

「どうやら兵長が見付けてきた奴らしいんだが、誰も顔を見たことが無いんだと」

リヴァイ兵長に見初められた兵士。

おそらく、かつてのリヴァイ班と同等かそれ以上に戦えるのだろう。

「待って、その言い方だと一人だけ?」

「実質、遊撃みたいな役割を持たせてるって話だ。つまり、兵長からの指示が無ければ味方の援護に自由に動く」

なるほど、と思う。

現在、リヴァイ班は兵長を入れて二人。

ならばいっそ他の班に混ざれるようにしてしまえ、ということだろう。

「信用できるの?」

ミカサの疑問も分かる。

アニ、ライナー、ベルトルトが敵だったのだから。

「兵長と旧知だとさ」

地下街の人間だろうか。

兵長と旧知というだけで驚きだ。

「まぁ、誰も顔を見たことないらしいけどな」

「顔を見たことない...?」

「なんでも常にフードを被ってるそうだ」

フード...かつて、アニがリヴァイ班を襲ったときと似ている。

でも、本当に誰なのだろうか。

 

 

「おい、余計な話をしてんじゃねぇ」

 

 

噂をすれば、というやつだろうか。

話題の兵長が姿を見せた。

「すみません、リヴァイ兵長! しかし、新リヴァイ班と聞いて気になっていたので!」

ジャンは果敢に話題を続ける。

「ぁ? お前らと関わることはほぼ無いから安心しろ」

どういう事なのか。

完全な裏方、ということだろうか。 

 

―シュパン

 

そんな私たちの元に噂の中心人物が現れる。

小柄で私くらいしか身長はなさそうだ。

胸元を見るとふくよかな胸。

女性だ。

「......」

彼女は無言のまま兵長に近付く。

そのまま兵長の耳に口を寄せる。

「分かった。お前は遊撃に移れ」

「...」

無言で頷くと彼女は私達を見る。

まるで観察するかのようだ。

顔は...見えない。

フードどころか覆面までしている。

青く澄んだ目が私達を射抜く。

「あの...何か...?」

勇気を出し声をかける。

「...」

だが彼女は首を横に振り、立体機動装置で立ち去っていった。

「おい、巨人が現れた。お前らはこのまま作業を続けろ。俺はエルヴィンに伝え次第、巨人どもを駆除する」

「りょ、了解しました...!」

私の言葉に満足したのか兵長も立ち去る。

「来やがったか...俺も持ち場に戻る! 気を付けろよ!」

ジャンも自分の持ち場に戻る。

残ったのは班の人達とここの護衛のミカサだけ。

周りからは戦闘の音が聞こえ始める。

「よし...!」

私はまだ死ぬわけにはいかない。

仲間達の助けになりたい。

ジェミニがそうしたように、犬死になんてしない。

だから、ジェミニ...守って...!




なんか色々文章も迷子。
若干無理矢理書くとこんなもんです。
熟成するまで待ちながら書こうと改めて思いました


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復帰Ⅰ

毎度の事ながら待たせております


突然、私の隠れ家に現れた人類最強。

彼は言葉を続ける。

「二日後、壁外遠征がある。目的は拠点の設置だ」

何故、私に言うのか。

というより、何故、私がいると確信しているのか。

「そこでお前にはリヴァイ班として活動してもらう。この事はエルヴィンも知らねぇ、安心しろ」

いや、何が安心できるのか。

私の目的はライナーのゴミ野郎を削ぎ落とすことだ。

「顔は隠させてやる。鎧の巨人が現れたら好きにしろ」

ここで気持ちが揺れ動く。

今までは奇襲だけに拘っていたが、調査兵団に、リヴァイ班に参加すればチャンスは増える。

「返事は聞かねぇ、来い。お前の同期も守れるだろ」

ついでのように言葉を残し、足音が去っていく。

悩むまでもないだろう。

ライナーを狙うチャンスが増えたことに、私の口は歪んでいたのだから。

 

 

 

 

 

「分かった。お前は遊撃に移れ」

兵長の言葉に了解の意を示す。

ふと、不審そうにこちらを見るクリスタが目に入る。

「あの...何か...?」

怖がられたのだろう。

クリスタの言葉に首を振り、私はその場を離れる。

おそらく、この任務にライナーは出てこないだろう。

それでも、一方的とはいえ、同期の仲間に再会できたのは僥倖だった。

目の前に迫る巨人の姿。

「久しぶり、そして同期の無事の為に死ね...!」

あの日以来の巨人を削ぐ感触。

懐かしいものがある。

「ウィル、この辺のは俺が狩る。設営班の援護に回れ」

近くによって来た兵長の言葉に頷く。

ウィルとはこの姿でいるときの仮の名だ。

兵長も意外にネーミングセンスがある。

これなら話に出すとしても男の名として扱われるだろう。

クリスタは女だと気付いたようだからバレるだろうが。

「今までサボったんだ、その分働けよ」

兵長の言葉に苦笑しつつ方角を変える。

まずはエレン達がいる方だ。

 

 

 

「くそ...!」

巨人が多い。

しかも奇行種だ。

「エレン! 奇行種が一体抜けた!」

コニーの言葉に振り返ると設営作業現場に奇行種が走っていくのが見える。

間に合わない。

「逃げろ!」

急ぎ、巨人にアンカーを刺す。

巻き取るがあの速さには追い付かない。

「畜生...!」

諦めかけた時だった。

 

―パシュッ

 

巨人の肩にアンカーが刺さる。

同時にワイヤーを巻き取る音。

「リヴァイ兵長...助かった...」

安堵する俺の目の前を通り過ぎたのは、暗いブロンドの髪を靡かせた知らない兵士だった。

「ぇ...」

顔をフェイスマスクで覆った兵士は流れるようにうなじを削ぎ、そのままコニーの方に向かう。

空中で別のターゲットにアンカーを刺すなんて普通じゃない。

ミカサや兵長クラスだろう。

「なんなんだ、あいつ...?!」

一瞬、あいつの目が俺を見た気がした。

どこかで見た青い瞳。

その姿を目で追うと、迫ってきていた巨人を悉く狩っている。

討伐補助とかそんなレベルの話じゃない。

一人で黙々と殲滅していく。

その戦い方はあの日、俺達が失った仲間に似ていた。

俺達を守るために犠牲になったジェミニに。




ほい、1000文字超えるとやる気スイッチが切れます。
この展開続きます。


主「お・ま・た・せ」


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考察Ⅰ

その日、人類は思い出した――

トイレが天然のサウナだということを――


結果から言えば、拠点設置は問題なく成功した。

押し寄せる巨人は殲滅され、調査兵団はほぼ無傷で帰還することとなった。

その立役者はエレンやコニーを救った素性の知れない兵士。

リヴァイ兵長曰く、"彼"はリヴァイ班の一員だという。

特徴は青い瞳に小さな背丈、そして細身の身体だった。

 

「彼は一体、何者なんだろう」

皆が考える事だ。

「たしかに気にはなるが...兵長は教えてくれそうにねぇぞ」

ジャンが僕の疑問に返す。

巨人襲来の直前、リヴァイ兵長に直接聞いたらしい。

だが答えは貰えなかったらしい。

「でもよ、アルミン。あんな奴がいたら普通はすぐに有名になるんじゃないか?」

コニーの疑問も最もだ。

エレンやコニーの証言通りの戦い方をしているならエルヴィン団長が気が付かないはずがない。

となると考えられる可能性は二つ。

「兵長が地下街で見つけてきたか...もしくは調査兵団や憲兵団の巨人討伐の経験者か...」

「憲兵団の兵士がそこまで戦える...?」

たしかにそうだ。

いくら訓練兵時代にトロスト区の戦闘に参加していたとしても、二人が見た動きは出来ないだろう。

つまり。

「地下街で兵長に認めれ、実戦で鍛えられたか...調査兵団の巨人討伐経験者か...」

それでもおかしい。

調査兵団でそんな動きが出来るのなら、エレンやミカサと共に戦うこともあったはずだ。

かと言って、実戦で鍛えられたとしてもリヴァイ班が事実上壊滅してからの短期間で育つだろうか。

「待てよ...」

「何か分かったの、アルミン?」

「そうか...クリスタ! "彼"は君を見てたんだよね?!」

「ぇ、えぇ...でも短い間だけ......ぁ、でも...男の人にしては胸が目立ったから...女の人じゃないかな」

新たな情報だ。

だけど、それよりも先に確認をしなければ。

「エレン、コニー! "彼"は立体機動の最中もフードとマスクをしてたんだよね?!」

「あぁ...」

「あんなの視界が悪くなるのにな」

二人からもイエスの回答。

これで一つの答えに辿り着いた。

「ウィルは調査兵団の兵士に顔を見られたくなかったんじゃないかな...?」

「どういうこと?」

「きっと調査兵団の中にウィルの顔を知っている人がいる...どういう理由かは分からないけど...顔を見られるとマズイんだ...!」

誰かに恨みを買っているのか、顔を見せると具合が悪いのかは分からない。

でも答えはこれしかなかった。

そしてクリスタからもたらされた情報。

「つまり、ウィルの正体は調査兵団で顔の知れた女性...! まだ特定は出来ないけど...」

「待てよ、アルミン...つまり、青い瞳の女って事だろ...?」

ジャンの声が震える。

「大丈夫だよ、ジャン。たしかに特徴は似ているけどアニが兵長に協力する可能性はない」

一瞬、誰もが思った答えだ。

「......もしかして...ジェミニ...?」

クリスタの小さな声がみんなの耳に届く。

「そんなわけないだろ! ジェミニだとしたら顔を隠す理由はなんだ?!」

「でも、誰も彼女の死の瞬間を見ていない」

「マルコだって誰にも知られずに死んだんだよ!」

ジャンがヒートアップする。

 

「うるせぇぞ、静かに飯を食え」

 

声が煩かったのだろう、兵長がウィルを連れだって傍に来た。

「す、すいません...」

兵長の背後に立つウィルも心なしか苛立っているようだ。

「こいつの機嫌が悪くなると削がれるぞ」

それだけいうと兵長は立ち去っていく。

ウィルも続こうとするが、気にするなと言うように僕の肩を叩いて兵長を追っていった。

 

「...」

"彼女"が何者であるのかの答えは出ていない。

それでも、自身の感情を押し殺してまで励ますくらいには良い人なのは分かる。

きっと、何れは明かしてくれるのだろう。

それが何時なのかは分からない。




惜しい、アルミン!

ジャンが余計なことを言ったばかりに!


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感情

ほんとは男主とアニ、クリスタをイチャイチャさせたい


アルミンが皆とウィルの正体を考え始めた時、私は同じ食堂にいた。

全くの偶然だったが、答えが私に近付くにつれ心臓が高鳴った。

直後のジャンの言葉には心が痛んだ。

彼等は何度も仲間を失っている。

マルコ、ミーナ、トーマス...訓練兵時代からの仲間達。

アニ、ベルトルト、ライナーが敵だったのも失ったのと同義だ。

そして、あの日、私は彼等から失われた。

 

「ねぇ、あんたどうすんの?」

 

顔をあげるとヒッチが心配そうにこちらを見ていた。

「どうするって...?」

「馬鹿なの? 今の状況だよ。調査兵団に入り込めたとはいえ、お仲間のすぐ傍じゃない」

あぁ、と納得する。

ヒッチには死んだことにする、以降の作戦の変移を伝えていなかった。

「兵長に見付かった時点で作戦は変わったの」

「どんな風に?」

「私はリヴァイ班の兵士として、たまに任務に参加する。重要な任務やクソ共に関与する任務にね」

それ以外の時は今まで通りで良い。

それがリヴァイ兵長との契約だった。

「じゃあ、その時が来たら...」

「うん...ライナーを...殺す...!」

私からしたらアイツを殺すチャンスが増えたのだ。

断る理由は無かった。

「オマケに給金も出て生活も楽になる、と」

ヒッチが嫌味ったらしく言う。

たしかに私が貯めてた分以外はヒッチに頼りきりではあったが。

「何かの拍子でお仲間にバレた場合は?」

そこは大丈夫。

自信を持って言える。

「相手によるけどそれぞれに対応を考えてる。皆に同時にバレた時は......逃げる」

調査兵団なんかやってたら皆に同時にバレることはまず無いだろう。

「その時はここに逃げ帰るわけね」

「ごめんね」

迷惑をかけると謝罪する。

が、ヒッチの返事は嬉しいものであった。

「何言ってんの、友達でしょ?」

あんなに巨人討伐に連れ出したのに友人と言ってくれる。

良い友を持ったと嬉しくなる。

あの日が来なければ、私はもっと多くの友の中で笑っていたのだろうか。

コニーをからかい、サシャを餌付けし、クリスタと馬の世話をし、ジャンとエレンの喧嘩を煽る。

ミカサの相談にのり、アルミンに色々教わり、ハンジさんに巨人捕獲に連行され、リヴァイ兵長と茶を飲み交わし。

今、思い付いただけでこれだけのモノを失った。

ライナーを殺したとき、私は全てを取り戻せるのだろうか。

「難しいこと考えてるところ悪いけど、ちょっと出掛けてくる。戸締まりよろしくー」

ヒッチが部屋を出ていく。

気を遣わせてしまったようだ。

ふと頬を熱い何かが垂れる。

いつの間にか涙を流していたようだ。

自身で友の元に帰るわけにはいかないと決めたというのに。

任務で顔を見たのが原因かもしれない。

でも、しばらくは。

涙を流しても良いだろう。

誰も見てはいないのだから。




うーん...


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告白

簡単なことだよ、ワトソン君。

見切り発車で書き始めた小説なんてものはネタが尽きるものさ。


調査兵団に復帰して数度目の任務。

私は窮地に陥っていた。

 

「...」

 

私の横にいるのはクリスタ。

傍に兵長はいない。

与えられた任務は補給拠点の防衛だ。

「...ぁ...あの...!」

ふいにクリスタが声をかけてくる。

声を発するとバレる危険のある私は、声を出さず、顔と目線だけで答える。

「えっと...どうして顔を隠してるんですか...?」

探りを入れるのが苦手なのかストレートに疑問をぶつけてきた。

目線を外し、言い訳を考える。

だが、答えは一つしか思い浮かばない。

「......」

思い付いた内容を筆談で伝えようとした、その時である。

「もしかして...顔を知られたくないんですか...?」

非常にマズイ事を言い始めた。

顔に酷い傷が有ることにしようとしていた。

喉が潰れていることにしようとしていた。

だが、伝える前にクリスタが踏み込んできた。

その踏み込みは確実に私を追い詰める。

「......」

焦りが心を満たしていく。

高鳴る心臓の音で、うまく頭が回らない。

「私と会ったことがありますか...?」

核心に迫ってくる。

必死に首を横に振るが、クリスタの勢いは止まらない。

「その青い目、きっと違うと思うけれど...皆、不安なんです...昔、フードを被った仲間に裏切られたことがあるから...」

その言葉に否定の首が止まる。

そうだった。

私達はアニに裏切られた。

エレンの報告で皆が知っている。

アニがフードを被ったまま迫り、リヴァイ班を壊滅させた事を。

たしかに私の姿はアニが裏切った時の姿に似ている。

 

「...ごめん...」

 

私はフードに手をかける。

「...嘘っ...!」

目を合わせたまま、マスクも下げる。

久しぶりに仲間に見せた顔。

私の顔を見たクリスタは、泣き出してしまう。

「久しぶり...クリスタ」

「生き...てた...! 良かった...あの日、帰ってこなくて...死んじゃったんだって......」

震える声で言葉を紡ぐ。

私はそれを何も言わずに聞く。

 

「なんだ、隠すのは止めたのか?」

 

兵長が補給に来たようだ。

「兵長...」

「す、すみません...こんなことしてる場合じゃ...」

クリスタが慌てて涙を拭う。

「構わない、向こうは順調だ。ウィル...いや、ジェミニ。今のうち、しっかり説明しておけ」

素早く補給を終えた兵長は、再び任務へと戻っていく。

「説明...そうだ、説明してジェミニ...!」

まだ目が赤いが少しは落ち着いたらしい。

「いいよ。私が生きてたことを隠した理由、ちゃんと教える」

兵長が戻ってきたということは、他の皆も補給にくる可能性がある。

フードを被り、マスクを戻しながら事情を話始める。

 

ヒッチの助けで生還したこと。

手帳をこっそり返してもらったこと。

ジャンを欺いたこと。

憲兵団の宿舎に隠れていること。

ライナーを始末するためにチャンスを窺ってたこと。

兵長にバレて今ここにいること。

 

かつて、一緒に笑い合ったように。

かつて、一緒に悩みを打ち明けあったように。

久しぶりのクリスタとの話は尽きなかった。

 

そして、二つ約束をした。

皆にはまだ明かさないで欲しいということ。

 

それから――

 

いつか、自分から皆に生きていたことを伝えることを。




エンディングだぞ、泣けよ。


嘘ですごめんなさい。

書いてるうちに綺麗に着地しそうかなって思ったけど、このままだと

俺たちの戦いはこれからだ!
神野伊吹先生の次回作に御期待ください

になるからまだ終わりません。


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戦友

最近、何故かBL漫画にハマり読み漁ってます。
普通に恋愛漫画で面白い。
表現力が3くらい、上がりそう。
度胸が2くらい、上がりそう。
周りの評価が5くらい下がりそう。

はい、どうぞ。


俺達はあの日から、まだウィルの正体を探っている。

少しの隙も見せないあいつは、リヴァイ班らしいと言えば聞こえは良いが、俺には誰も信用してないように見える。

常に周囲を警戒し、何時、どんなときでもマスクもフードも外さない。

兵長に聞いても《それがあいつを入隊させた時の条件だ》としか答えてくれない。

だけど、俺たちにはアニに裏切られたという恐怖がある。

顔を隠すというのは後ろめたい事があるということ。

たしかに怪我があれば隠したいのかもしれないが、声も発しないのは異常だ。

「エレン...今、僕らが持っている情報だけじゃ答えは出そうにないよ...」

アルミンの声が意識を浮上させる。

たしかにそうだ。

まだ、ウィルについては何も分かってはいない。

分かっているとしたらリヴァイ兵長に認められ、直々に勧誘されたということだけだ。

「そうなんだけど...あぁくそ...! やっぱり不安なんだよ! アニの手で目の前で殺されていったリヴァイ班の皆が...頭から離れないんだ...!」

アニが未だに硬質化しているのは確認できている。

それでも、また新しい敵じゃないのかと疑ってしまう。

 

「ねぇ、エレン...」

 

顔を上げるとクリスタが立っていた。

「何か用か...?」

不安からか苛立った声になってしまう。

「ウィルの事なんだけど...」

「何か分かったのか!?」

つい、詰め寄ってしまう俺にクリスタは少し後ずさる。

怖がらせてしまったようだ。

「わ、悪い...」

クリスタは気にしてないように首を振る。

「ウィルにね、直接伝えてみたの...皆が不安がっているって...前に似たような格好をした仲間に襲撃されたって...」

必死に訴えるクリスタの言葉をウィルは静かに聞いていたらしい。

「それで、ウィルは敵じゃないって証明してくれた...」

「顔を...見たの...?」

「どんなやつだった...!?」

俺たちの不安が取り除かれる。

そう思うと気持ちが急く。

だが、クリスタは静かに首を横に振るだけだ。

「顔は見たよ。綺麗な髪と、綺麗な目だった。でも、これ以上は言えない。ウィルとの約束だから」

クリスタが嘘をつくとは思えない。

きっと真実なんだろう。

でも、それでも...俺たちの...不安は......不安は...?

「クリスタがさ...そういうなら信じてみようよ」

アルミンが笑みを浮かべる。

「エレンだってさっきよりは良い顔してるよ?」

「......そうだな...何も分からないよりはマシになったんだ...!」

きっと、クリスタが言うのだから本当なのだろう。

それなら、ウィルという強い奴が仲間になったというのは心強い事だと思う。

「...ウィルがね...いつかきっと事情を話すって言ってたから...信じよう?」

あぁ、そうだ。

もう不安もない。

「ってもなぁ...アイツと仲良くしたくても一緒に飯も食えないし...」

新たな悩みはある。

だが、大したことではない。

ウィルは歩み寄ったクリスタに応えた。

次は俺たちが歩み寄ってやろう。

どんなに凄絶な過去を持っていても、笑ってやろう。

「一緒に訓練とかどうかな?」

「アルミン、ナイス!」

アルミンとクリスタを連れ、ウィルを探す。

まずは訓練、そして謝ろう。

ウィルが事情を話す、その時まではお互い死ねないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

「へくち...!」

「風邪?」

ヒッチがマフラーを巻いてくる。

「そんなはずは...」

 

 

そんなはずはあった。

信頼を得ようとした矢先にこの様である。




真面目に終われない病にかかりました。
医者に見せたところ手遅れだそうです。


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必然

待たせたけども

1ミリも申し訳ないという気持ちが沸いてこない

そんな外道な人間が久しぶりに現れましたよっと


調査兵団に復帰してから一月が経った。

何度か拠点設営の任務には出たが、有象無象の巨人が現れるだけで奴等に繋がる事は無かった。

 

そんな中、クリスタの発案で食事会をする事になる。

クリスタは実は私の事が嫌いらしい。顔を隠してるのに食事会とはどういった考えなのだろう。

嬉しそうに準備をしていたクリスタにこの事を伝えたところ「ぁ...!」と声をあげると固まってしまった。

徐々に眉尻が下がるクリスタを見つけたジャンがキレる問題まで発生した。

ジャンとクリスタを声を出さずに宥めるのには手を焼いた。

何ならそれが原因で参加決定したようなものだ。

 

「で? あんたはどうしたいの?」

「風邪をひく」

いつもの隠れ家、ヒッチの部屋で作戦会議。

というか、もう決まっているのだが。

「兵長に連絡は?」

それが問題である。

残念ながら兵長には簡単には会いに行けない。

兵団の傍にいてはバレる可能性が上がるからだ。

「そこでヒッチの出番。ヒッチは私の、つまりウィルの親友。なら、ウィルが風邪をひいたことを伝えに行っても違和感はない」

「それ、ようするにパシりでしょ?」

「そうともいう」

ヒッチは呆れたようにため息をつく。

申し訳ないとは思うがこれしか回避手段はない。

「まぁ、仕方ないか。じゃあ伝えてくるから留守番よろしく」

「ありがとう...ごめんね」

背に向けて声をかける。

実際、彼女には苦労しかかけていない。

「何言ってんの?」

「ごめん...」

ヒッチが私の頭をコツンと叩く。

 

「謝るな、親友なんでしょ?」

 

 

 

 

結局、ウィルは食事会には来なかった。

クリスタやジャンは交流が多いそうだが、私はほとんど会ったことがない。

 

目的を果たせず辛気臭いままあっさり終わった食事会では、私のお腹も満たせなかった。

物足りないお腹を擦り、街の食堂を目指す。

少し前なら同期の仲間も誘ったりして狩りや釣りをしていた。

人懐こく、それでいて強くて、勇気があって。

でも彼女はもういない。

あの時、見送るしか出来なかった自分を何度も責めた。

帰ってこないかと何日も待った。

哀しくて、それでもお腹は減るもので。

あの時、初めて泣きながら食事をした。

楽しいはずの食事なのに涙が止まらなくて、味なんて楽しめなかったのを覚えている。

「おじさん、いつもの」

「あいよ!」

彼女と通っていた食堂。

ここではあの時と変わらぬセットを頼む。

パンとスープと少しの肉。

二人でいつもの、と注文して笑いあったものだ。

 

「いつもの」

「ぉ、珍しい、あいよ!」

 

私と同じ事をする人がいるとは思わなかった。

ふと顔を上げる。

「ぁ...」

「ぇ...?」

あの日失った仲間が当たり前みたいに立っていた。




うっかりジェミニさん、食事会が長引くと思い食堂で素顔を晒す失態。
無理矢理だって?

こまけぇこたぁいいんだよ!


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遭遇

4ヶ月もお待たせしました。
かつての読者の方々がまだ読んでくださるのかは分かりませんが参ります!


あまりの出来事に私は理解が追い付かなかった。

突如、私の背後から聞こえてきた覚えのある声。

振り返るとそこにいた幻の存在。

皆が諦めていた戦友。

共に狩りをし、悩みを打ち明け、そして命の恩人。

「ジェ...ミニ...?」

私同様にフリーズしている彼女に声をかける。

しかしである。

 

「.................................オラァ!」

「あぶな...!?」

あろうことか彼女は拳を振るってきたのだ。

回避に成功するものの、彼女はらしくなく焦っているようだった。

「チッ...!」

舌打ちをされた。

理解できず避けただけなのに。

「ジェミニですよね...!? なんで攻撃するんですか!」

至極全うな質問をした。

「......? 誰です、それ?」

今しがた全力で殴りかかったにも関わらず惚けようとする。

彼女はどうしてしまったのか。

言動、行動が共に支離滅裂である。

巨人に襲われて記憶障害でも起こしたのだろうか。

どうするべきか悩む。

人違いだと断じて無視するか、仲間たちの元に連れ帰るか。

ふと目線を下げると手が震えている。

彼女を失った日以降、こんな事はなかったのに。

そして答えが出る。

ならばやはりジェミニなのだと。

 

「皆...皆、待ってます......帰りましょうよ...!」

 

覚悟を決め、顔を上げた時。

既に彼女の姿は無かった。

「...ジェミニ...」

やはり、幻だったのだろうか。

しかしである。

「はいよ!ってあらら、あっちの姉さんは何処に?」

店主のおじさんの言葉で幻で無かったことが証明されたのだ。

今のはジェミニで間違いない。

「ぁ、すいません、用事を思い出したとかで...私が食べます」

では、何故、生きていることを隠しているのか。

私と違い頭の良いジェミニのことだ。

きっと、何か理由があるはずである。

ならばすることは決まっている。

彼女の生存を他の皆に悟られないようにする。

それが頭の良くない私に出来る事。

それが彼女の助けになるはず。

何も考えることはない。

「ジェミニ...」

彼女が注文していった料理を食べる。

ジェミニが好きなフライドポテトと鶏肉のステーキ。

やはり掛け替えのない友の存在は良い。

さっきまであんなにも味気なかったのに。

 

今はこんなにも美味しく感じるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっぶな...」

油断大敵とはこんなことを言うのだろう。

「おかしいな...まだ歓迎会の時間のはずなんだけど...」

食事を要求するお腹を押さえつつジェミニは街を歩く。

こんなことがヒッチにバレたらまた馬鹿と言われるに決まっている。

屋台で適当な食べ物を買うことを決め、人の間を足早に歩く。

その姿は人混みの中に溶けるように消えた。




みなさん、進撃2の新作ですよ!
ストーリーモードの続きとかじゃないけど来ますよ!
ps4買わなきゃ(使命感)


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欺瞞

さてさて...ファンがいること、ファンが未だに待ち続けてくれていることに驚いている伊吹です。
非常に有難い事であり、皆様を待たせていることに猛省し、それでも上げられない自分の話にモヤッとしていました。

が!その言葉!しかと胸に響いた!
また長い間アップ出来ないかもしれませんが、なんとか漕ぎ着けました!
エイサーイハラマスコーイ!


本日の任務はジャン、サシャと共に身体を休めることである。

つまり休みだ。

「おい、ウィル」

休みというのは好きな格好でゆったり過ごしたり、買い物に出たり、そんなものだと私は思う。

「せめて目立たない格好にしねぇか...?」

私は悪くないはずだ。

たとえ、この暑い日にいつも通りフードとマスクを装備していても。

そもそも、ヒッチが私に買い物を頼まなければ二人に会うことは無かった。

匿われているから文句は言えないが心の中で愚痴るくらいは許してもらおう。

「待ってくださいジャン。ウィルは顔に怪我を負っていると聞きました。ならこの格好も仕方ないんじゃ...」

「んなことは分かってるがよ...」

ジャンの言わんとしてることは分かる。

集める視線は普段の三割増しだ。

しかし私は顔を出すわけにはいかない。

たとえクリスタと兵長にバレていても、情報が漏れる所は最低限にしなければ。

サシャにはバレそうになったが。

「まぁまぁ、フードで顔を隠さなければいけないほどの有名人と考えましょう」

バレてないよね?

サシャが妙に庇ってくる気がする。

あの日、私はたしかにサシャを襲撃し、姿を眩ましたはずだ。

つまり、他人の空似と思われたはず。

ならばバレてはいないはずだ。

「おい、サシャ。お前、妙に庇うじゃねぇか。ウィルの顔を見たんじゃねぇのか?」

「まさか! ただ、クリスタが信じたんだから私も信じようって思っただけですよ!」

「気にならねぇのか?」

「全然?」

私が声を出せないが故に話は勝手に進む。

「...お前、顔見たんだろ?」

「...見てないです」

サシャ...なんて事...。

「目を合わせろ!やっぱり見てんじゃねぇか!」

明らかに嘘をついた顔。

なんとも言えない顔をして横を向くサシャ。

「おい、ウィル!てめぇの秘密ガバガバじゃねぇか!」

たしかに。

サシャを見ると何やら穏やかな目で私を見ている。

「俺にも顔見せろよ。なぁ!」

仲間外れにされたと思ったのかジャンが強行手段に出る。

私のフードに掴みかかったのだ。

力では男には勝てない。

「ジャン!辞めてください!こんなとこで!」

「うるせぇ!気になるんだよ!」

マズイ。

今にも脱げそうになったときだった。

 

「あれ、ウィルじゃん。頼んだ姉さんの薬は?」

 

救いの手を差し伸べたのは通りかかったヒッチ。

「ぁ、あんた...」

「ぉ...おぉ、あんたか。お姉さん、まだ身体が?」

「そうなのよ。だからそこの暇人にお使い頼んだんだけどね、休憩時間に家に行ってもウィルが戻ってないって言うもんだからさ、私が探しにきたのよ」

非常に有難い援護ではある。

しかし刺々しい。

目も鋭い。

ジャンには私に対して怒ってるように見えているだろう。

「そうなら早く言えよウィル!早くお姉さんに薬届けてやれ!」

ジャンは手を払うようにする。

どうやら解放されるようだ。

ジャンに頭を下げ、ヒッチに手を振る。

私は振り向くことなく人波に突撃したのだった。

 

 

 

 

 

「お姉さん...?」

「あぁ、前回調査したときな、この子とお姉さんに会ってな。お姉さんの身体が弱いんだと...兵士しながら世話してるみたいでよ...」

事情を聞いたサシャは内心首を傾げる。

"お姉さん"とは何者なのか。

ジャンが鈍いだけなのでは、とも思う。

助け船を出したこの子、たしかヒッチという名前だったはず。

彼女がジェミニといるのを見たことがあった。

つまり、この子に匿われているのだろう。

「あのときは悪かったね」

悪びれもなく捏造話を繰り広げるヒッチに唖然としていると、ジャンは心配そうにしている。

「お姉さん、大丈夫か?」

「......最近、ちょっと酷くてね...外に出られないのよ...」

「そっ...か......そうだ! これでお姉さんになんか食わせてやってくれ...元気になるといいな...」

辛そうなジャンの顔に笑いそうになり、私は下を向いた。

きっと肩の震えは同情の嗚咽に見えるはずだ。

「ありがとね、じゃあ私はこれで」

立ち去るヒッチを見送り隣にいるジャンを見ると、ジャンは涙を流していた。

あまりの事に言葉が出ない。

「たまにしか外に出られないって...辛いだろうな......幸せそうな姉妹なのによ......なんでこんな...」

アホだ。

私は立ち去った二人の演技力にただただ感心したのだった。




ジャンくん、また騙される。
金を騙し取られる。
いや、自分から渡しただけだが。


因みに久しぶりに筆が乗った結果、書き方を忘れて拙くなっておりますが、申し訳ありません。
なんでもはしませんが、許してください。


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邂逅

なんかね、ふわっふわです。

マジで迷子。
でもついに!
なんと!

どうぞ。


ジェミニにとってのその時は、意外にも早く訪れた。

調査兵団の一部が内密に進めてなければ、であったが。

「......」

気が付いたときには既にライナーらの誘い出しが始まっており、気が付いたときには終わっていた。

「ねぇ...? ジェミニ...?」

ライナーを削ぎ落とす事が目的のジェミニが不貞腐れるのも無理はなく、余りの落ち込みように周りが焦るに至った。

その落ち込みようは正体を隠す気がないかのようで、危惧したクリスタが慰めることになったのだが。

「謝るから...ね? だから機嫌治して...」

ジェミニの機嫌は一向に戻る気配はない。

それはそうだろう。

兵長との約束ではライナーを殺させてくれるという話だったのだから。

彼女にとって、現状は約束を反故にされたようなものである。

「どうしたら機嫌を治してくれるの...?」

だが、それでもクリスタは諦めない。

ここで諦めたら、またジェミニがいなくなってしまうかもしれないから。

復讐を捨て命を懸けた。

再び得たチャンスを知らないところで潰される。

このまま放っておいたら、きっと彼女は一人で行ってしまうだろう。

そうなったらもう止まらない。

何故なら、仲間の為とはいえ、あっさり命を捨てるような人なのだ。

仲間がいなければどんなに無茶でもやるだろう。

 

「...お腹すいた...」

 

ふとジェミニが呟く。

周りを見回すとまだ人が多く、自由に食事は出来そうにない。

「待ってて、簡単に食べられそうなものを買ってくるから!」

クリスタは駆け出す。

この辺りに屋台があったはずだ。

「すみません! この串焼き二本ください!」

急ぎであるため、串焼きを手に取ると多めの金を置く。

そのまま釣りも受け取らずに再度駆ける。

大した距離ではなかった。

時間だってかかってない。

しかし、戻るとジェミニの姿はない。

周囲を見渡しても彼女と思わしき影もなく、遅かったのだと。

「ジェミニ...そんな...」

彼女は一人で行ってしまったのだと、クリスタは理解した。

 

 

 

 

 

 

この日、ライナーは気を抜いていたわけではなかった。

数日前に誘い出されてから気を張ってはいた。

だが、戦士といえど集中力が持続するわけではない。

「さすがに気が滅入るな...」

食品や飲み物の買い出しは毎度、緊張の連続だ。

それでも生きるためには必要である。

交代制がいいのだろうが、ベルトルトでは背が高く目立つ。

そのためライナーが一人で行っていた。

「そろそろ潮時か...?」

しかし目的は達成できておらず、アニの犠牲も無駄になる。

「いや、死んではいないか...」

アニの救出も、エレンの捕獲も達成していない。

このままでは役立たずだ。

「このままじゃ埒があかない...ベルトルトと相談して...」

 

「死ね」

 

「っ...?!」

ふいに襲った衝撃はライナーの腕を斬り飛ばす。

一撃で仕留めなかったのは故意か偶然か。

周囲に人の気配はなく、襲撃者が機会を窺っていた事を理解する。

「お前は...!」

「......」

立っていたのはウィルと呼ばれる調査兵団の新入り一人。

前回の任務では見かけなかった。

「はっ...手柄を焦ったか...?」

大丈夫と心で唱える。

巨人化してしまえば勝てると、そう考えるのも無理はなかった。

どこから出したのかウィルが立体起動装置を手で叩く。

「...なるほどな...」

これがあるから戦えると、そう言うのだ。

ライナーが巨人であることを知っているのだ。

「いつまで余裕そうにしてんだよ...!」

ライナーの言葉にウィルが動く。

攻撃のためではなく、フードとマスクに手をかけるために。

 

 

「...久しぶり、ライナー。そして死ね」

 

 

ライナーは唖然とするしかなかった。

死んだはずの同期が。

巨人化しても手も足も出なかった化け物が立っていたのだから。




ライナーさん、大ピンチ。
何故、ジェミニがライナーを追ってたかは次回です、次回。
いつなんだろうね。

死なないでライナー!
貴方が死んだらこの物語をどうしたらいいの!?

次回、ライナー死す!

ってなったらいいなぁ...


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悔恨

お待たせしました
なんかシリアスに

誤字、というか凡ミスを修正しました


目の前に立つ存在するはずのない女。

それはライナーを恐怖させるには十分であった。

訓練兵時代、圧倒的なセンスで自信をへし折った超人。

卒業時、上位10位を蹴り調査兵団に志願した奇人。

調査兵団時代、正体を明かした二人を憎悪と殺意に従い、容赦なく殺しに来た狂人。

そして今、大量の巨人に一人で立ち向かい生還した化物として立っている。

ライナーの脳裏に過るのは絶望。

正直、フードを被ってる時は巨人化したら勝てるとすら思っていた。

だがどうだ。今は目の前にいる女に勝つ未来が見えない。

むしろ巨人化したら蹂躙されるだろう。

 

「...フフッ...」

 

ふいにジェミニが笑う。

かつてクリスタはジェミニの笑った顔は可愛いと言っていた。

"アレ"がか?

下がる目尻も、上がった口角も、見える八重歯も、何もかもが恐ろしい。

今から人を殺そうとしているのに笑える感性が恐ろしい。

「なんで...生きてやがる...?!」

口から溢れたのは心を、頭を埋め尽くす疑問。

あの戦闘の後に一人で巨人に挑んで無事なわけがない。

「...どうでもいいでしょ...? 私は、今、あなたを殺すチャンスを得た。ただそれだけ」

脱力したのか頭が傾く。

それでも表情は変わらない。

「俺を...恨んでいるのか...?」

「そうだね...」

生き延びるために自分の過ちを振り返る。

分からない。

「何をした...ぐぁっ?!」

脚への痛みが走る。

ジェミニの手元から刃が消えている。

膝をつくライナーを尻目に悠々と刃を装着するジェミニ。

脚に深く刺さった刃は片手では抜けないだろう。

「アンタが何をしたかって...?」

慎重に、獲物を追い詰めるように、決して近付くことはない。

「シガンシナ区を忘れたとは言わせない...」

いたのか、あそこに。

ベルトルトと共に作った地獄にいたのか。

だが、なぜ、エレンほどの怒りを見せていなかったのか。

分からない。

ジェミニが分からない。

「あの日...超大型巨人が出現した日...私はシガンシナ区にいた...」

理解した。

家族がいただろう。

では何故、彼女は一人だった。

それはーー

「お前が破壊した壁の残骸に...私の親は...目の前で潰されたんだ」

因果応報。

自身が行った事により、ジェミニは家族を失った。

復讐の為に動くのは当然である。

彼女が常に大人しかったのは、目立たないため。

狂人を装っていたのは今、ここで俺を追い詰めるため。

 

 

「ライナー!」

 

だがまだ、命運は尽きていない。

ベルトルトが異常に気が付いてくれた。

ベルトルトの巨人化ならば勝機がある。

 

「あぁ、二人揃うとは好都合。ミカサたちの仇も取ろうかな」




続くよ


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