もしも呼ばれたのが (0302)
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設定集(ネタバレあり)

・自分用の設定集。設定とは一体。

2019/6/22:舞台設定について追記
(過去の私は)なんということ(をしでかしたの)でしょう
2019/8/26:間桐慎二について追記


地名 冬木市

・東京の実際の冬木市のつもりで書いていたら実は神戸だったり九州だったりした。oh……。

・特に支障はないはずなのでこのまま行きます。本当にごめんなさい。

・ちなみに地名を特定できる該当話は「アサシン(セイバー)陣営in冬木」です。in冬木してないのに。

 

オリジナル設定(というか成り行き)

・遠坂邸に幼凛と葵さんがいる。避難してない・・・・・・だと・・・・・・!?

・サーヴァント達が宝具をバンバン撃つ。ソシャゲ畑だから是非もない。でもそんなNP効率良くないでしょ。

・スキルもエネミーの時ばりに使う。効果はFGOの時と一緒だったりもっと良くなってたり。

・比較的綺麗なはずの慎二。彼も留学には行かず父と共に暮らしている。お兄ちゃん・・・・・・っ!

性癖により病みフラグ立ち

 

 

 

 

登場人物

 

セイバー(真)陣営

 

サーヴァント セイバー・リリィ

・アルトリア・ペンドラゴンの幼少期。カリバーンを抜いた時点で成長は止まるので身長と体重は同じ。

・FGOでは謎のヒロインXと師弟関係。謎のヒロインXがアサシンだということは知らなかった。

・純真。無垢。無邪気。言峰綺礼の天敵のような存在。料理は致命的。最近麻婆豆腐の作り方を覚えた。

 

宝具『勝利すべき黄金の剣(カリバーン)

・竜の息吹をビームとして出す。狙ってるのか天然なのか急所に当ててくる。自身に回復効果あり。全体宝具。

 

マスター 言峰綺礼

・所謂外道神父。Zero時点ではまだ愉悦を覚えていなかった。大体AUOのせい。

・遠坂時臣を師と仰ぐ。あまり上手くは行ってない様子。アゾット剣が頭にチラつくようになってきた。でもそれを表には出さない。

・最近衛宮切嗣のことが気になっている。でもその妻に嫌われている。本人からしてみれば言いがかりも甚だしい。

 

 

 

 

 

アーチャー陣営

 

サーヴァント ギルガメッシュ

・最古の英雄王。大体コイツのせい。天上天下唯我独尊。(オレ)様万歳。自分以外はたとえマスターだろうと皆雑種。道化は気に入ることがある。本来の時空であればセイバーに求婚していた。

・すごい英霊のはずなのにこの時空での扱いは雑。遠坂家のイチャイチャ空間に耐えられず教会まで逃げてくることもしばしば。でも綺礼にすら邪険に扱われる。リリィが救い。

 

宝具『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)

・宝物庫の鍵を開けてくれる。乖離剣エアもあるのだが、そんなものを解放された日には世界がぶっ壊れるのでやめて欲しい。全体宝具。いくぞ英雄王──武器の貯蔵は十分か。

 

マスター 遠坂時臣

・あまり出番のない可哀想な人。頻繁に家でイチャイチャしてる。間桐雁夜に恨まれている。

・始まりの御三家のうち一人。良かれと思ってやったことが裏目にでる。常に優雅たれを家訓に日々頑張ってる。でもそれを打ち消す遠坂特有のうっかり体質はもはや呪い。機械関係が苦手。というか嫌い。

・冬木のセカンドオーナー。財はそこそこあるが宝石魔術のせいで危うい。間桐臓硯の管理する間桐家のほうが安定してるほど。

 

 

 

 

 

ランサー陣営

 

サーヴァント エリザベート・バートリー

・残虐非道な吸血婦人。Fateではなにがどうなったのかアイドルと化している。何度も出てくる。恥ずかしくないんですか?

・歌の出来は最悪。声質はいいのに誰かのために歌えないので結果としてソニックブレスに。宝具として使えるレベル。使ってる。

・雨生龍之介という理解あるマスターを得た。歌に理解は得てもらえない。ここではアイドルの面よりもエリザベートという残忍な血の伯爵夫人としての面が強い。R-18G。

 

宝具『鮮血魔嬢(バートリ・エルジェーベト)

・チェイテ城が舞台。マイクを手にヒットナンバーを聞かせてくれる。相手は死ぬ。

 

マスター 雨生龍之介

・魔術師でもなんでもないただの殺人鬼。COOLなものが好き。殺した相手を作品として昇華させる。

・青髭→エリザベートになったところでやることは変わらない。にっこり笑顔でアートを作る。一日二人の女性を連れてこなきゃ行けないのが悩み。

・本来の時空では青髭の暴走時に衛宮切嗣に撃たれ、綺麗な赤を見つけられて幸せなまま死んだわけだが、果てさて。

 

 

 

 

 

ライダー陣営

 

サーヴァント アルトリア・ペンドラゴン・オルタ(水着)

・規律に厳しいメイドさん。反転した騎士王とは思えない。ジャンクも自重。主人に規則正しい生活を送らせるのが使命。

・水上バイクで突っ走る。窓を割っても気にしない。黒化ってそういうことじゃねーから。アルトリア特攻ぶっ刺さる人。

・モップに偽装したエクスカリバーで相手を薙ぎ払い、ピストルに偽装したセクエンスで足止めしてからグレネードで爆破。騎士王とは一体。最早軍人の域。

・この人ではないが新宿衣装の解放待ってる。

 

宝具『不撓燃えたつ勝利の剣(セクエンス・モルガン)

・死闘の時にしか持ち出さないはずの短剣セクエンスを軽々しく持ち出す。セクエンスとエクスカリバーを組み合わせた狙撃銃で相手を撃つ。ちゃっかりNPもリチャージする。

 

マスター ケイネス・エルメロイ・アーチボルト

・時計塔のロード。ウェイバーの師。ぞんざいに扱ってたせいで聖遺物を盗まれる。

・婚約者であるソラウが大好き。家柄とか関係なく好き。でも伝わってない。ソラウのサーヴァントに向ける感情が恋慕ではなく可愛がるそれであるためなんとかやっている。傍若無人なサーヴァントとオタクな婚約者に挟まれ最近胃が痛い。頭が薄い。

・水銀魔術を扱う。無敵礼装は強い。ジャンヌにつけると死なない。

 

ソラウ・ヌァザレ・ソフィアリ

・ケイネスの婚約者。なにがどうしたのかこの世界線ではオタクに。乙ゲーが好き。ファンディスクまで買うほど。日本に来たからには一度でいいから秋葉原に行ってみたい。

・アルトリア・オルタが可愛くて仕方ない。推し。彼女を題材にした同人誌作った。

・魔術の腕はそこそこ。ランサーの魅了に対抗できると言われたほど。

・愛が欲しい。燃えるような恋をしたい。本来の時空ではそういう理由でランサーにあえて惹かれたわけだが、此度の時空では。というかぶっちゃけケイネスとくっつけたい。

 

 

 

 

 

キャスター陣営

 

サーヴァント 諸葛孔明〔エルメロイⅡ世〕

・ウェイバーが色々あって時計塔のロードになった後擬似英霊(デミ・サーヴァント)になった。事件簿読むといい。未熟な己に喚ばれて胃が痛い。聖女もどきまで仲間になって常時頭痛が耐えない。

・ライダーが《彼》だと信じて疑わない。ライダーどころかその他の陣営もほとんどがアルトリア顔だと知った時の絶望は計り知れない。すれ違ったまま幸せにどうぞ。

・聖杯を解体した本人。アンリマユの危険性を知っている。どうにかしてぶっ殺せないか対策を考えている。なお一人じゃ無理な模様。

・FGOの過労死枠の一人。

 

宝具『石兵八陣(かえらずのじん)

・強ぉぉぉぉぉいッ説明不要!!

弱体系として最高峰。ほんと説明不要。

 

マスター ウェイバー・ベルベット

・ろーどえるめろいにせいのおさないころのすがた。しんかまえ。

・自信過剰。周りを見返したい故に命がけの聖杯戦争に参加してしまう。ヒロイン枠。

・貶されるとすぐキレる。沸点は低い。お人好し。魔術の腕は三流。この世界線では若干病む。ジャンヌが癒し(?)

 

 

 

 

 

 

セイバー(偽)(アサシン)陣営

 

サーヴァント 謎のヒロインX

・真名はアルトリア・ペンドラゴン。エイプリルフールで生まれたサーヴァント。アルトリアとセイバー死すべき慈悲はない。きのこを恨む。赤ランサーを危険枠として警戒。ギルギルマンも殺したい。

・ギャグ畑。一応今回の主人公枠の一人。この小説を書き始めた全ての元凶。こいつがいるとシリアスがシリアルになる。

・セイバーの時より切嗣と合う。それでもおふざけのせいで若干苦手にされてる。舞弥とのスイパラ巡りやアイリスフィールとの会話が楽しい。

・サーヴァント・ユニヴァースからやってきた宇宙外からの生命体。夏にフォーリナー絶対殺すOLと化した。つまり自分との被りが許せない。漢字に漢字重ねるとかいう暴挙。

 

宝具『無銘勝利剣(エックス・カリバー)

・エックス型のビームを撃つ。みんなには内緒。個人的に《無銘》が感慨深い。アルトリア特攻持ち。スキルでセイバー特攻いれたらリリィの天敵。でもリリィが可愛いからそれはしない。

 

マスター 衛宮切嗣

・所謂外道マスター。終盤で聖杯の正体に気づく。セイバーに破壊させる。最後の最後まで彼女とはそりが合わなかった。

・妻と娘が大好き。愛してる。何があっても守りきりたかった。この世界線では守りきりたい。

・舞弥は娘のような存在。でも練習台。割り切っている関係。スイパラに行くことに引きながらも許容している。

・正義の味方になりたかった。時折海の夢を見る。懐かしいあの子を幻視する。みんなに幸せになって欲しい。

 

アイリスフィール・フォン・アインツベルン

・アインツベルンのホムンクルス。聖杯の器。全ては根源に至るために。

・箱入りお嬢様。箱が物騒。夫と娘が大好き。愛してる。舞弥は複雑。嫌いではない。スイーツの話で意気投合する。

・謎のヒロインXの仮のマスター。他陣営に本当のマスターがバレないように。囮。夫の正義を理解しようとする。

・最近エスコートにハマった。

 

久宇舞弥

・切嗣の部品。全ては彼を正常にするために。練習台。納得している。

・自分の全ては切嗣のもの。彼が死ねといえば死ぬ。ただしタイミングは大事。自棄(ヤケ)な命令は聞かない。

・スイパラが好き。スイーツ大好き。ちゃんと切り替えはする。

・謎のヒロインXに対してはなんだコイツと思っている。アイリスフィールは複雑。苦手。だけど切嗣のため。スイーツの話では盛り上がる。

 

 

 

 

 

 

セイバー(偽)(バーサーカー)陣営

 

サーヴァント 謎のヒロインX・オルタ

・真名はアルトリア・ペンドラゴン。お前ほんとにアルトリア?対・対セイバー。

・和菓子大好き。謎のヒロインXのことも嫌いではない。優しくしてくれたお礼を言いたい。それはそれとして彼女は倒す。亡きアグラヴェイン卿のため。黒騎士君が友達。

・間桐雁夜のことは嫌いではない。和菓子くれるいい人。時折気持ち悪い。桜は好き。可愛い。

・文学少女。クール。彼女を持っていないのでキャラ付けがわからない。ギル祭の時は勝てなかった。最終的に令呪でゴリ押し。痛かった。

・∞黒餡子は万能(強調)

 

宝具『黒竜双剋勝利剣(クロス・カリバー)

・実はグーパンでも撃てる。Quickで武器に依存しないのがどこかのバーサーカーの宝具のよう。セイバー特攻。宿敵の謎のヒロインXには特攻が刺さらない。個人的に演出が好き。

 

マスター 間桐雁夜

・原作不憫枠の一人。この世界線では桜を早々に助けられた。・・・・・・本当に?

・幼馴染の葵が好き。遠坂時臣を恨んでいる。娘と妻は好き。いつか桜を二人に合わせてやりたい。時臣が邪魔。

・桜ちゃんを護りぬきたい。たとえ何を犠牲にしたとしても。

・最近臓硯の姿が見えないことを不審に思っている。大人しくしているだけならいいのだが。

・和菓子作りを覚えた。

 

間桐桜

・元遠坂家次女。時臣の想いで間桐に引き渡された。非道な扱いを受ける。

・誰かから貰ったリボンを大事にしている。もう、名前も覚えていないけれど。

・雁夜をおじい様に逆らった憐れな人だと思っていた。今では助けてくれた恩人。・・・・・・だけど、きっと。

・謎のヒロインX・オルタのことは姉のようにしたっている。自分に姉がいたらこんな人だったのだろうか?────もう少し気が強いのかもしれないが。

・珍しい虚数魔術の使い手。しかし最早魔術はトラウマ。二度と使いたくない。人一倍敏感なせいで聖杯戦争中は休まる時があまりない。何故か心臓が痛むときがある。

・飴がそこそこ好き。特にワカメのような色をした飴。レモン味も好き。黄色がいいらしい。

・気づかないのか。馬鹿なやつ。だからお前は駄目なのだ。コヤツを救った気になって。カカカ。さぁ、どうしてくれようか。

・────貴方こそ。気づかないんですね。もう己が万能でないということに。所詮ここはギャグ時空。シリアスは原作でやってください。────私も一応騎士王なんですからね。あまり、舐めないでください。

 

 

 

 

 

 

裁定者(ルーラー)

サーヴァント 神風魔法少女ジャンヌ

・真名はジャンヌ・ダルク。エイプリルフールで生まれたサーヴァント。オルタもリリィも水着も来たんだから実装されるべき。キャスター枠ならジークくんと一緒。

・キャスター陣営に拾ってもらった。孔明の事情を察している。それでもそのやり方は正直無いと思っている。

・基本ふざけている。語尾はワン。元ネタはあのキャラ。たまに聖女らしい一面も。

・聖杯から魔力を貰って現界。今は聖杯がごにょごにょなので現界もあやふや。内部を走る魔力は気持ち悪い。

・ルーラーなので一応務めは果たす。一度他の戦争で喚ばれたことがあるので勝手はわかってるつもり。でもあの聖杯戦争当てにならないよ。

・ルーラーで良かったと思っている。なんとか耐えきれるから。いつ孔明に《迷惑》をかけてしまうか恐れている。その時は容赦なくやって欲しい。

・「穂先に槍がついています。つまりこの旗で殴れという啓示でしょう」聖女か神かあるいは両方が脳筋。聖人系は大体脳筋。

 

宝具『我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)

・耐久宝具。弱体解除と無敵は強い。幕間のおかげでもっと強い。だからまだ耐えることが出来ている。

 

マスター 聖杯

・聖杯戦争の報酬。FGOでは特異点毎に貰える。サーヴァントを強化できる。

・頻繁に泥にまみれる。大丈夫か。

・ナニかが蠢いてるらしい。ジャンヌが辛がるほど。大丈夫、HP2万超えた聖女はまだ死なない。

・切嗣が気になっているらしい。

・早くオレを喚んで欲しい。オマエのネガイを叶えてやるから。

・安心しろって。最弱英霊だからただの魔術師にだって負けるさ。オレはイイコですよ?

・んーん、ぶっちゃけ意志無き願望器よりオレの方がいいと思いますけどねぇ?ま、出番まではなるべく大人しくしてますよ。なんか聖杯を解体したことあるやつがいるっぽいじゃん?怖い怖い。触らぬなんとやらに祟無しってさ。

・あ?誰だ、オマエ。・・・・・・へーえ。ま、オレから言えることは「なにがしたい」だけだけどな。いやほら、今出てってもオレにはなにも出来ねえし?あと単純にテメエが気に食わない。誇れよ、オレがこんなに嫌うなんてそうそういないぜ?だって全部嫌いだもんな。ハハッ。────オイ、喰われてぇのか?

・はー・・・・・・チッ。そういうことかよ、めんどくさいのう。やべ、もう口調変わってきてる。やっぱへんなの喰うもんじゃねえなぁ。しかもあのジジイ、全部寄越したわけじゃねーし。喰いつくせない、これが最弱の辛いところかね。後輩には「うそ、私の先輩・・・・・・弱すぎ?」とか言われたし。オリジナルに対抗されてるし。殻だけくれたとこには感謝してやるか。

・しっかししぶてぇなあコイツ。そろそろ抵抗辞めちゃえば?ラクになるぜ?どうせ《ヒト》はワシに勝てないんだしの。と、危ね危ね。そういう性質とはいえ殻に引っ張られ過ぎだろ。ヤダよ、あんなジジイになるとか。・・・・・・ヤダ、ね。随分と人間的になっちまったよーで。これがギャグ時空って奴?ハッ、笑えねー。

・どうやら自己嫌悪でしばらく出てこないらしい。

 




アラヤさんがアップを始めたようです。













もしかしたら随時追加。


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もしも呼ばれたのが

素に銀と鉄。

礎に石と契約の大公。

祖には我が大師シュバインオーグ。

降り立つ風には壁を。

四方の門は閉じ、王冠より出て、王国に至る三叉路は循環せよ。

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

繰り返すつどに五度。

ただ、満たされる刻を破却する。

Anfang(セット)

告げる。

告げる。

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。

誓いを此処に。

我は常世総ての善と成る者、

我は常世総ての悪を敷く者。

汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!

 

かくして、嘆願は彼らの許にまで届いた。

彼方より此方へと、旋風と閃光を纏って具現する伝説の幻影。

かつて人の身でありながら人の域を超えた者達。人ならざるその力を精霊の域に格上げされた者達。そんな超常の霊長たちが集う場所・・・・・・抑止の力の御座より来る、あまねく人々の夢で編まれた英霊たちが、そのとき、一斉に地上へと降臨した。

そして──

夜の森に、闇に閉ざされた石畳に、今凛烈なる誰何の声が響き渡る。

 

『問おう。汝が我を招きしマスターか』

 

 

 

 

衛宮切嗣は最初、何かの間違いではないかと思った。

自分が呼んだのは最強のサーヴァントであるはずの、アーサー・ペンドラゴン・セイバー。

詠唱は間違えていない。触媒も、アインツベルンが用意したというのなら本物だ。

ならば、目の前にいるこいつは一体なんだ?

 

黒い帽子からでるアホ毛。

青いジャージに短パン。青いマフラー。

そして、手には一振りの剣。

 

「どーも。サーヴァントユニヴァースからやって来ました。謎のヒロインXです。クラスはセイバー。とりあえず、ここには私以外のセイバーはいませんね?いたとして私以外のセイバーみんな死ね」

 

「は────」

思わず口を開け、目を見開く。

衛宮切嗣としてはあるまじきその姿に、同行していたアイリスフィールも口に手を当て驚いた。

「・・・・・・まて。待てよ。色々聞きたいことはあるが、とりあえずお前のクラスはアサシンだろう?」

「セイバーです」

「嘘をつくな。ステータスにはきちんとアサシンと」

「セイバーです」

「いや」

「セイバー、ですよ?」

ニッコリと微笑み、謎のヒロインXは剣を持ち直した。

これ以上は埒が明かない。切嗣はため息をつくと、部屋から出ていく。

「切嗣、どこに行くの?」

「少し連絡をね。具体的にはアハト爺の所へ」

「その必要はありません」

「何?」

自信満々なその物言いに、切嗣は訝しんだ。

「私が来たからには、もはやこの時空は一生シリアスにはなりえません。具体的に言うとプリズマイリヤとかちびちゅきとかコハエースとかFGOイベント時空とかカニファンとかです」

「何を言っているの?さっぱり分からないわ」

「安心してくれ、僕もだよアイリ」

顔を見合わせ頭を振る2人を指さし、Xはドヤ顔で答えた。

「ほら、もうそこから普段の行動と違うでしょう?」

『あぁっ!?』

「ほーらほら。いつもならそんなことはしないでしょう?」

煽るように言い続けるXに対し、切嗣は焦った様子で、

「まて、それは僕達だけなのか!?他の陣営──遠坂や間桐は!?」

「多分リンの父は『優雅たれ・・・・・・』とか言いながら髭を剃ってるでしょうし、恨めしきヒトズマンスロット(バーサーカー)のマスターは『よーしパパ頑張っちゃうぞー!ゴフッ』ってなってるでしょうね。ZERO黒です」

もはや何も言えない2人を尻目に、謎のヒロインXは付け足すように、

「そうそう。マイヤさんは今スイパラ楽しんでますね」

「舞弥ァァァ!?」

切嗣は絶叫する。スイパラ?スイパラと言ったかこのサーヴァントは。

もはや原型などとどめていない。残っているのは名前だけ、という。実に悲しきギャグ時空。

嘆き悲しんだ切嗣を見て、肩に手を置く。

「──逆に言えば、ですよ」

ふっ、とシリアス顔になるX。さっきなり得ないって言ってなかったか、というツッコミはさておき。

「この時空なら、何をしてもいいんです。そう──たとえ私以外のセイバー皆殺しにしてもね!」

「結局そこに行き着くのか・・・・・・」

「ええ。私が聖杯に望むのはそれですから。欲を言えば自ら達成したいのですが」

聖杯に望みはあるんだな、と切嗣は今更に思う。そうだ。望みがなければ来ないはずだ。

切嗣はアイリスフィールにわかるくらい微笑んだ。本人は言い張るが、本来のクラスはアサシンだ。何故かハサンじゃないのが気になるが、そんなのは気にしてももはや些細なことだろう。

アサシンならば、きっとやりやすい──衛宮切嗣は手を差し出した。

「僕は衛宮切嗣。望みは──うん。世界平和さ。これからよろしく」

口調?なにそれ?とばかりにキャラ崩壊。今更だ、気にするな。

謎のヒロインXはキョトンとして──不敵に笑って握り返した。

「私は謎のヒロインX。クラスはセイバー。望みは私以外のセイバー皆殺し。そのためには、正々堂々闇討ちをしてやりますとも」

「そうか。中々気が合いそうだ」

「ええ。私以外のセイバーがいない世界平和のためにも、頑張りましょうね、マスター」

 

「私の出番ない・・・・・・」

約一名、泥に飲み込まれそうです。




Xが出なかったので書きました。何故か続きました。
その他更新遅れてごめんなさい。許してください何でもするかもしれないし。

追記。2018年3月31日現在、何故か日刊ランキング16位に乗ってました。えっ。


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番外:愉悦と優雅

感想で愉悦はどうなるんだろうみたいなことを書かれたので書いた。
全体的に雑ですが、どうぞ。


衛宮切嗣が自称セイバーを引き、ギャグ時空に呑まれているころ。

ここでもまた、1人──いや、2人のマスターが犠牲になろうとしていた。

 

『どんな時でも余裕を持って優雅たれ』──とは、遠坂家の家訓である。

その教えを今まで忠実に守ってきた遠坂時臣だが、この時ばかりはその教えに反抗してしまった。

 

黒いリボンでまとめたポニーテール。

ぴょこんと跳ねるアホ毛。

百合を想像させる服。

 

「はじめまして、マスター。まだ半人前の剣士なので、セイバー・リリィとお呼びください。これから、末永くよろしくお願いします」

 

「・・・・・・綺礼、言峰綺礼」

思わずフルネームで呼ぶ。

「これは一体どういうことだ?君はアサシンを呼ぶ手はずになっているだろう?」

「そのはずで、真名も用意していたのですが」

当の本人も困惑しており、時臣は頭を抱えた。

セイバー・リリィはそんなマスター(暫定)の様子を見て、何か失礼なことをしてしまったと思ったのか、

「ええと、未熟者ですが、未熟者なりに頑張ります!」

頓珍漢な答えを返した。

「違う、そうじゃない・・・・・・そもそも、セイバー・リリィとは一体?君の真名はなんだね?」

「あ、はい。ええと、アルトリア・ペンドラゴンです」

『アルトリア・ペンドラゴン!?』

時臣と綺礼は声を合わせて叫ぶ。

その仲睦まじい?様子に、リリィはクスリと微笑んだ。

「なにがおかし・・・・・・いや、今は置いておこう。これは優雅ではないからな」

口に出した時点で優雅でないのでは?と綺礼は思ったが、口には出さなかった。

「その、ペンドラゴンというのはアーサー王のファミリーネームだったはずだが」

「はい、そうです。私は選定の剣であるカリバーンを抜いたばかりのアーサー。アーサー・ペンドラゴンです」

『はぁ!?』

普段感情を出さないはずの綺礼までもが驚愕に顔を染める。

「まて、待ってくれ・・・・・・君が、かの有名なアーサー王?こんな幼い少女が?」

「カリバーンを抜いた時点で肉体年齢は止まりますから」

「ううむ・・・・・・」

時臣はうなり、思考を回転させる。

アサシンを綺礼に喚ばせることで、自由に動かせるようになり、この聖杯戦争の勝利は確実なものになるはずだったのだが。

事実、時臣が呼んだのは古代の英雄王ギルガメッシュであり、今は時臣の家で待機をしてもらっているのだ。

かの王に頼み事を聞いてもらうのは骨が折れたが、何を思ったか財宝の手入れをするから出て行けと逆に追い出されてしまった。

時臣は知る由もないが、ギルガメッシュの『千里眼』は、これから起きる面白いことを予知していた。具体的にはセイバーもどきが斬りかかってきたり、時臣や綺礼がギャグ時空に呑まれるなど。

 

「ところで、マスター。私が呼ばれたということは、師匠もここにいらっしゃるのでしょうか?」

「師匠?」

「はい!私と似た顔で、カリバーンを持っていて、私を導いてくれた師匠です!」

(魔術師マーリンのことか・・・・・・?いやしかし、彼がカリバーンを持っていたというのは聞かないが・・・・・・)

綺礼もまた、知る由はない。

『慌てない慌てない、呪文噛むからね』とか言いつつ通常攻撃にエクスカリバーぶっぱなしてる通称グランドクソ野郎のことを。

まぁ今回は違うのだが。

「しかし、アーサー王よ。此度の聖杯戦争は各クラス一騎ずつの参戦となっているのです。貴女の師匠がセイバーだというのなら、会える可能性はないでしょう」

「あっ・・・・・・そうですか・・・・・・」

アホ毛を萎れさせ、肩を落とすリリィ。時臣は心苦しく思ったが、これも運命と切り替えた。

リリィもまた、知る由はない。

此度召喚されたアサシンが謎のヒロインXであり、彼女が今衛宮切嗣とアイリスフィール・フォン・アインツベルンを混沌に陥れているということを。

 

「でも、私は諦めません!私あるところに師匠あり、師匠あるところに私あり!2人で共にセイバー、ひいてはアルトリア顔?を打倒すると決めたのですから!」

『えっ』

「えっ?」

 



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番外:刻印虫おじさん

またもややっつけ。グダグダというかなんというか。
えっちゃんと雁夜の性格とかわからないよぅ。もう一度読み直すべきか。
臓硯?誰それ。
最後は文字稼ぎ


間桐雁夜は焦っていた。

魔術師として3流もいいところの自分が呼んだのはバーサーカー。

今でも刻印虫は疼くし、魔力を多量に喰われてることから目の前の少女はバーサーカーなのだろう。

 

知的な丸眼鏡。

赤いマフラー。

そして、アホ毛。

 

「ヒロインX・オルタ・・・・・・クラスはバーサ・・・・・・セイバーです。多分。それはそれとして、和菓子あります?」

 

(セイバーを名乗るバーサーカーなんて、聞いたことがないぞ!?)

そもそもバーサーカー相手に会話が成立してる事がおかしい。

狂化ランクはC。そこそこ高いので、基本理性はないと思っていたが・・・・・・。

「和菓子、和菓子ください和菓子。本場ジャパンでしょうここは!!!!」

「お、おいバーサーカー!!暴れるな!」

Xオルタはキョロキョロと辺りを見回し、和菓子がないことを知ると、雁夜の肩を揺さぶる。

「がっ、ぐっ、がはあぁぁぁ!!!」

ただでさえ刻印虫の影響でキツいというのに、バーサーカーの揺さぶりだ。雁夜の体は限界に達していた。

(くっ・・・・・・まだ・・・・・・まだだっ・・・・・・!葵さんを・・・・・・桜ちゃんを護ると決めただろう!!!)

そうだ。自分は護らねばならないのだ。だから、こんなところで朽ちるわけにはいかな「いっ!?」

「シリアスな空気を察知しました」

叩かれた頭をさすって見上げれば、Xオルタがチョップの姿勢をとっていた。

「残念ですが、そこまでです。私がいる限り、シリアスにはさせませんとも。私は甘いものが好きなので」

「は・・・・・・えっ?」

「それに」

キュピーン、という謎の効果音とともにXオルタの目が光る。

「私は感じるのです。今回喚ばれたことに、運命を」

「いや、何を言って」

「私の中の何かが叫ぶ!あの因縁のセイバー(アサシン)に出会い、勝利を掴めと轟叫ぶ!」

「えっいやっえっ、」

「だから」

混乱する雁夜に笑いかけ、手を差し伸べた。

「彼女との聖戦を行うまで、貴方は死なせません」

「・・・・・・」

雁夜は、不覚にも。

その笑顔に安心を覚えた。

「・・・・・・わかった。一先ずは君を信じよう。バーサーカー」

「セイバーです。それとえっちゃんで構いませんよ。マスター」

「いや、君はバーサーカー・・・・・・まぁいい。よろしくえっちゃゴフッ」

「ああマスターそんな!桜セイバーのごとき吐血を!?」

「ゴフッ・・・・・・そう・・・いえば・・・戸棚、に・・・臓硯の隠し持つ・・・・・・和菓子、がぁ・・・・・・ガフッ」

「えっ和菓子!」

思わず目をキラキラさせるXオルタだが、まずは目の前のマスターをと考えを改めた。

だってマスター死んだら和菓子食べ歩きも彼女との対戦も出来なくなるしね。

 

 

 

 

 

 

 

 

「マスター、早く日本に向かいましょう!明日と言わず今すぐに!」

「唐突にどうしたセイバー(アサシン)!?あと揺らすな!」

「セ・イ・バー!私のクラスはセイバーです!!!そして私を殺す対・対セイバーが日本に現れた予感!」

「そういえば君は直感持ちだったな」

「というわけでヒァウィーゴー!なんならもう1人セイバーがいる気がします!」

「ええい、何人のセイバーがいれば気が済むんだ!」

 

 

「どうしたの?お母様。イリヤ、なにか悪いことした?」

「いいえ、イリヤ・・・・・・。本来なら、喜ぶべきなのでしょう・・・・・・彼が、サーヴァントと仲良くなるなんて・・・・・・でも、あぁ・・・・・・。本当ならあのポジションは私のはずなのに・・・・・・っ」

「お母様?お母様???」

 

「切嗣・・・・・・奥さんを大事にしなさい」

「頬にクリームつけながら言われてもなぁ」

「マイヤ、そのケーキ私にも!!」

「冷蔵庫に入ってますよ」

「ちなみに経費は?」

「アインツベルンにツケました」



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番外:時計塔の主君(ロード) √1

ライダー陣営ファンの皆様に深くお詫びを致します。
これにより元ライダー陣営、ひいてはキャスター陣営が変更となりました。

ソラウさんああいってるけど意外と気が合うかもしれない。合わないかもしれない。
というかやっぱ口調と性格掴めない。

ちなみに、副題にあるようこれは√1です。2もあります。



ケイネス・エルメロイ・アーチボルトは考えた。

あの出来損ないが聖遺物を盗んだせいで、征服王イスカンダルは召喚できそうにない。

コネを使えば他にも色々と用意できるので、そこは問題ないのだが。

「『輝く貌のディルムッド』・・・・・・。・・・・・・うむ、やはりやめておこう」

「何故?」

そう決断を下したケイネスに、ソラウが問いかける。

「いや、何か嫌な予感がしてね」

「貴方ってそんなことを気にしてたかしら?」

「普段なら一笑してかかるが・・・・・・此度ばかりは、うむ。ソラウ、君もいることだし」

「あら、ありがとう」

全然そんなこと思ってない顔で婚約者は言葉を放つ。ケイネスは心に傷を負いながら、

「そこで私は、縁召喚をしてみようと思う」

「・・・・・・本気?熱でもあるんじゃないの?最近働きすぎよ。寝てなさい」

ソラウは珍しく本気で心配した。

あのプライドの塊と言っても過言ではないケイネスが、どんな英雄が召喚されるかもわからない縁召喚をしようというのだ。

「大体、縁召喚はろくなことがないと聞くわ。例えば殺人鬼にジャンショタコンの組み合わせだったり、石をつぎ込んでも麻婆豆腐がでたり柳洞寺がでたり、ひどい時は星3一体だけだったり」

「ジャンショタ?マーボー?リュウドウジ???ソラウ、君の方こそ大丈夫かい?」

「もちろん。あなたよりは正気ですわ」

普段より当たりが強い。ケイネスは涙を心の内で流しながら、

「それでも私は縁召喚にかけるよ。縁召喚は呼んだ人物に似た気質のものが集まると聞くし、私と気が合うサーヴァントが来るかもしれないからね」

 

 

 

 

 

 

 

ビキニメイド服。

黒ニーソ。

黒いパーカー。

 

「サーヴァント・ライダー。アルトリア・ペンドラゴンだ。この私が来た以上、理想の生活を覚悟してもらおう。二度寝も運動不足も許さん。掃除・洗濯は徹底的にやる。りょうり、料理も・・・・・・できる範囲で、やってみせよう」

 

KONOZAMAである。

 

「ケイネス」

「いや、ソラウ」

「ケイネス」

「縁召喚だしこんなことも」

「ケイネス・エルメロイ・アーチボルト」

「はい」

 

「少し、お話しましょうか」

「・・・・・・はい」

 

ニコリと笑った婚約者の威圧に耐えられる訳もなく、ケイネスは部屋の隅に引っ張られた。

「あのね、ケイネス。即落ち2コマじゃないのよ」

「いや、ソラウ。即落ち2コマとは」

「Shutup」

「はい」

「見なさい、あの英霊。貴方ほんとにアレと気が合うと思うの?」

「いや、まだわからな」

「そうね、まだわからないわね。でもびっくりしたわ。貴方、ロリメイドに興味があったのね」

「ロリメ・・・・・・?・・・・・・ソラウ、先程から気になっていたのだが、君のその謎の単語はなんだね?」

「うるさい、黙って。ジャパニーズ乙ゲーはいい文明だったわ」

「は?」

「イケメンに言い寄られるって、あんなにいい気分なのね」

「ソラウ?」

「はぁ、早く続きをしたいわ・・・・・・ジャパンならイギリスより早く続編でるし」

「まさか定期的に届く宅配の中身はその乙ゲーとやらじゃないだろうな!?」

「あら、勘がいい男性は嫌いよ」

「ソラウ!?」

 

「仲良きことは美しきかな、だったか?ところでマスター、この冷蔵庫の中身はいただいても?」

「ええい、貴様もサーヴァントなら主人のことを助けろ!」

「生憎と、今の私はサーヴァントである前にメイドなのでな。主な業務は掃除・洗濯・料理だ。人の修羅場に口を挟むものでないとランスロットの時で理解しているのでな」

「あら、よくわかってるわね。私の方が貴女と気が合いそう」

「そうか、奥方」

 

ちなみに、ケイネスは知ることはないが。

既にこの聖杯戦争自体が触媒となり、よほどのことがない限り特定の顔、ひいては声を持つ英霊が優先的に呼ばれることとなっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり私に無双しろと!俄然やる気が出てきましたよ!!!」

 




何故私はリリィ以外持ってないのにこれを書いているのだろう(哲学)


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番外:真ヒロイン

やったね征服王、ヒロインが増えるよ!

えっとタイムパラドラックスとかのツッコミはなしでお願いします。
なんでもするかもしれませんから。
ツッコミした方には次回、某ランサーの24時間耐久ライブツアーご招待券(強制)を差し上げますので、よろしくお願いします。まさかそんな物好きはいないと思いますが。

会話文多め。


ウェイバー・ベルベットは確かな胸の高鳴りを感じていた。

この、出来損ないが・・・・・・時計塔で馬鹿にされ続けていた自分が、師でありロードであるケイネスを出し抜き、英霊召喚を行う。

わざわざこんな辺鄙な秘境に来たのは癪だが、それも些細なことだ。

それに、なにか、運命を感じるのだ。

これから先の、自分の未来を変えるような、そんな英霊と出会える運命を。

(なんて、馬鹿馬鹿しい)

自分の考えを一笑し、触媒を用意した。

 

 

 

 

「──抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ────!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サーヴァント・キャスター。諸葛孔──帰る」

 

 

「はぁっ!?」

ウェイバーは素っ頓狂な声を上げた。いや、こいつ今なんて──

「帰る?帰るだって!?お前は僕のサーヴァントだろう!?何勝手に帰ろうとしてるんだ!!!」

「私はお前のサーヴァントじゃない!そもそも、何故私のことを喚んでいる!?私を喚んだら私が存在しないじゃないか!!!」

「何言ってんだよ!なんで僕がお前を呼んだらお前が存在しないんだ!」

「お前が彼を、あいつを喚ばなきゃ!私は私になってない!私が臣下じゃなくなれば、彼との縁がなくなれば!私が私である必要は無いからだ!」

「何わけのわからないことを!」

「訳が分からなくていいさ!ともかく、もう一度やり直せ!何だ、触媒が別なのか!?別の世界線なのか、ここは!!?」

2人して叫び合い、同時にゴホゴホっとむせる。

「ゴホッ、とにかく、お前と協力する気は無いし、従う気もない。私が仕えるのはこの世で、いや、私の生でただ1人だけだ」

「別にお前にどんな信条があろうと僕には関係ないし、こっちには令呪もあるんだ。従ってもらうぞ!」

「やだね」

「そんな子供みたいな!」

「他のマスターなら一億万歩ほど譲って従うが、お前だけは絶対に嫌だ。こんな、未熟者」

その言葉を聞いて、ウェイバーの顔がカァーっと熱くなる。

「なんだよ、未熟者って!お前と僕は今あったばかりなのに、なんでそんなことがわかるんだ!」

「わかるさ。何度でも言おう。お前は未熟者だ。見てられないほどの大バカ者だ」

──だからこそ、かの王に導いてもらい、臣下という誉れを受け取れたのに。

孔明は奥歯を噛み締めた。

押し黙った孔明に苛立ったのか、ウェイバーは地団駄を踏む。

「あぁもう、とにかく僕に従え、キャスター(・・・・・)!」

「──っ!」

天啓を得たり、とばかりに体が震えた。

「お、おい、キャスター?」

「・・・・・・もしや、あいつは既に喚ばれた?」

「おい、聞いてるのか」

「そうだ、こいつが呼んだのはキャスター。その可能性だって無いわけじゃない。あいつの事だ、マント以外にも聖遺物は残っているだろう。いや、残ってなければおかしい。彼がこのマント以外に聖遺物を用意して、先にあいつを呼んだ可能性だってある・・・・・・!」

「だから人の話を聞けよ!」

「おい、ウェイバー・ベルベット!」

唐突に名前を呼ばれたことで、ウェイバーは驚きに身をすくめる。

(ん?なんでこいつ僕の名前を知っているんだ?)

「とてもとても遺憾だが、少しの間だけ手を貸してやる。具体的に言うとケイネス・アーチボルトのサーヴァントを見るまで」

「はぁ!?なんだよそれ!」

「なんだ、文句があるのか?すべてに手を貸さなくたっていいんだぞ」

「くっ・・・・・・」

汚い、流石大人汚い。ウェイバーはこの世の理不尽さを深く噛み締めた。

 

 

「・・・・・・僕はウェイバー・ベルベット。ほんとだな、ほんとに手を貸すんだぞ!」

「わかったとも、未熟者」

「だから僕は未熟者じゃない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・自分×自分・・・・・・ケイネス、貴方の生徒、上級者ね」

「ソラウ、病院へ行こう」

 




2部始まりましたね。チヴィンチちゃんとアタランテオルタが、すごく、可愛いです。
あと極寒の地に水着で挑もうとする猛者多すぎ問題。


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番外:殺人鬼(+α)

地獄のツアーチケットを配らなくてよかった。

エリちゃんはともかく、龍之介わかんねぇ・・・・・・なぜわかんない人がわかんないものを書いているのか。
このエリちゃん、GOよりCCCとかEXよりかも。


雨生龍之介はこの上なく期待に満ちていた。

「みったせーみったせーみったせーみったせー」

フンフンと鼻歌を歌いながら、呪文を唱える。

「あれ?5回だっけ。まぁいいや」

みったせー、と。

 

どこぞのロード達がみたら激怒しそうな適当さで詠唱を終える。

龍之介は気にもとめず、後ろで怯えている少年へと話しかけた。

「ねぇ、君はどんな悪魔が来ると思う?」

「──っ──っ!」

「んで、悪魔が来たとしてさ?『チワッス、雨生龍之介は悪魔であります!』なんて言ったって、そいつが本物なら、鼻で笑われるだけじゃん?何の準備もなくて茶飲み話だけ、ってのもマヌケな話だし?だからね、坊や・・・・・・もし悪魔サンがお出ましになったら、ひとつ殺されてみてくれない?」

 

 

 

ピンクの髪に、水色の瞳。

尖った耳。

巻かれた角と長い尻尾。

 

 

「サーヴァント・ランサー。エリザベート・バートリー。あら、アナタが新しいマネージャー?よろしく、大切に育ててね♡」

 

「・・・・・・ひゅう」

龍之介は思わず口笛を吹いた。

確かに、悪魔らしい姿ではあるが。

こんなかわいい女の子だと、誰が予想できただろうか?

「えと、雨生龍之介っす。職業フリーター。趣味は人殺し全般。子供とか若い女とか好きです。最近は基本に戻って剃刀とかに凝ってます」

「あら、そうなの?やっぱり若い女はいいわよね。ここにもいる?いるならちょっとパックとして使いたいんだけど」

「へぇ、若い女の血ってちゃんと肌綺麗になるんだ。見てみたいなぁ」

「いやよ、メイク中は例え子イヌだとしても立ち入り禁止なんだから。で、いるの?いないの?」

「残念、ここにいるのは彼だけ」

龍之介は後ろを振り返る。

家族を殺された少年は、これからされることを幼いながらに拙く理解し、恐怖で顔が強ばっていた。

エリザベートは龍之介の視線の先を見ようと、ひょこっと頭を出し──顔を喜色に染めた。

「いい、いいわよ、その顔!リュウノスケが用意したの?貴方最高!子ブタにしてあげるわ!」

「お、エリちゃんも良さがわかる?いいねいいね、俺たち超気が合いそう」

子ブタってなんだ?と思いつつスルーするのが龍之介クオリティ。理解者を得られたことが優先だ。自分の呼称なんてどうでもいいだろう。

エリちゃんってなによ?と思いつつとりあえずスルーするのがエリザベートクオリティ。彼女はこの喜びを歌詞にするので手一杯だった。後で必ず追及するけど。

「よし、この喜びを歌にしたわ!オーディエンスが2人しかいないのが残念だけど──ま、これから増えてくし、いいか!」

「エリちゃん歌えるの?へぇ、そりゃいいや」

「もちろん、アタシはアイドルだもの!」

えへん、と(ない)胸を張り、エリザベートは槍兼マイクをとりだして持つ。

龍之介はどこから取り出したのか、蛍光色に光る棒──所謂サイリウムを両手で振っていた。色はもちろん、ピンク。

 

「ヒュー!エーリちゃーん!」

「子ブタ、ありがとー!そこの貴方も、死ぬ前にこのライブを聞いて逝ってね!」

 

誤字ではない。

 

「いくわよ!鮮血魔嬢(バートリ・エルジェーベト)!─────ボエー!!!!」

 

龍之介は最初、頭を揺さぶられた。

脳がこの歌を本気で拒否している。耳を塞げと警告を放つ。

だが、塞ぐまもなく脳みそがぐちゃぐちゃにかき回され、自分がどの方向にたっているのかもわからなくなった。

 

雨生龍之介、生まれて初めての体験だった。

 

(──ははっ、こりゃCOOL、だぜ・・・・・・)

 

──2時間のライブを終え、エリザベートが龍之介を見れば、彼はとてもいい顔で気絶してたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ははっ、悪いな、エリちゃん。あんな体験、初めてでさ。超COOLだったぜ!」

「当然よ!だってアタシですもの!」

「そういえば、エリちゃんって殺しに美しさを感じるタイプ?」

「子ブタ達の死を美しいとは思わないけど、殺すのは楽しいわよね。どれだけ拷問して、どんな悲鳴を轟かせるか、それが楽しみだわ!」

「俺とちょいと趣向は違うけど──うん、まぁこれからお互いに知っていけばいいよな!拷問器具って持ってる?」

「いっぱいあるわよ。そうだ、これを貸す代わりに、1日2人くらい若い女を連れてきてくれない?」

「りょーかい。できるだけカワイイ子を連れてくるよ」

「あら、わかってるじゃない」

 

 

最恐最悪コンビ、ここに結成。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マスター!ヤバいですよ、ギャグ時空なのにグロ時空になってしまいます!」

「いや、元々ここはシリアス時空だからな?実写化したら確実にR18Gのグロ時空でもあるから。君が来たからなんかグダグダになってるだけで「グダグダっていったか!?おーし、わしも参戦するぞ!」あって」

「今なにかいませんでした?」

「いや、知らないけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「残念ですがノッブ。私が出てない時点であなたに出番はありません。配布鯖はすっこんでなさい」

「だってギャグ時空じゃろう!?だったらそれこそワシらの出番じゃないか。つかんなこと言ったらあのリリィも今回配布鯖じゃね?」

「まぁ」

『是非もないよネ!』

 



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アサシン(セイバー)陣営in冬木

遅くなってすみません。新学期始まって色々忙しくて。ふぇぇ、テストやだよぅ。
それはそれとして、どうしてこう(性格)なったし。キャラ崩壊です?


白髪の美女と男装の麗人──普通に男に見える──は、人目を引きながら、その足を地へと踏み下ろした。

歩くその姿は貴族のごとく優雅に。日本には『立てば芍薬(しゃくやく)、座れば牡丹(ぼたん)、歩く姿は百合(ゆり)の花』という(ことわざ)があるが、まさにそれを体現してると言えるだろう。今、そこを通りかかった警備員が「もっと百合百合していいのよ」と呟いた。そっちの百合じゃねーから。

男装の麗人──謎のヒロインXは、白髪の美女、アイリスフィールをエスコートしながら歩く。さながら騎士のようであり、周りの女性をときめかせていた。

 

歩くこと数十分。時折迷いつつ、アイリスフィールとXは空港を出ることに成功した。なぜ羽田はこんなにに広いのか。

 

清々しいほどの青空を見上げ、アイリスフィールは空気を吸い込む。汚すぎて咳き込んだ。アインツベルン城は結界やら森やらで囲まれ綺麗な空気だったが、日本の首都東京の、国際線のある空港にそれを求めるのは酷というものだ。Xはアイリスフィールの背中をさすった。

「ゴホ、ゲホッ・・・・・・ジャパニーズはよくこんな中で生活できるわね」

「私からしたらどこの空気も一緒なんですが・・・・・・まぁいいです。そんなことより、来ましたよ、アイリスフィール。ついに、我々の生誕地、ジャパンに!」

我々の生誕地・・・・・・?と首を傾げる。Xはそんなアイリスフィールを気にもとめず、手を広げて叫んだ。

「ここから始まるんですね・・・・・・『謎のヒロインX無双』が!!!」

「パクリの上に長い。43点」

「手厳しい。というかパクリじゃなくてオマー・・・・・・えっ、アイリスフィール?」

まて、冷静に考えろ私。なんで箱入り娘が「パクリの上に長い」なんて的確な指摘ができるんだ。というか元ネタ知ってるの?えっ?

困惑するXをよそに、アイリスフィールは辺りを見回す。

「ところでアサシン。ハイヤー乗り場は何処かしら」

言ったあと、アイリスフィールは顔色を青くした。恐る恐る隣を伺えば、Xは額に青筋を浮かべ、ニッコリと笑う。その笑顔が恐ろしい。

「アイリスフィール。今なんと?」

「ところでセイバー。ハイヤー乗り場は何処かしら」

「ええと、地図を見る限りでは、ここから西に数百メートル程ですね。行きましょう」

どうやらあっていたらしい。アイリスフィールはほっとため息をつく。が、

「・・・・・・私は、セイバーですから・・・・・・」

選択肢を間違えたらバッドエンドだという。私はヒロインの方なのに。アイリスフィールは冷や汗を流した。

 

 

無事に冬木市につく。

「キリツグは既に到着しているのでしたっけ」

「ええ。カンサイ?とかいう場所にある空港に行って、列車でこっちに来るらしいわ」

バラバラに行動するのには色々と作戦があるらしい。本当のマスターがバレないようにとかなんとか。

「・・・・・・それって、ナリタ空港とかじゃダメなんですか?」

「・・・・・・切嗣には切嗣の考えがあるのよ」

わざわざ遠いところから長い時間をかけてくるだけの考えがあるのだ、多分。

ちなみにアイリスフィールは知らないが、切嗣は別行動を始めてから愛人(舞弥)と一緒にいた。キスもされた。正義の味方ェ・・・・・・。

まぁ英雄色を好むという。多少は仕方が無いだろう。彼の義息子もそうだったし、是非もないね。

何はともあれ冬木市である。

「ここが、切嗣の生まれた国・・・・・・」

良い所だ。写真やら何やらで知識だけはあったものの、肌身に感じる空気から、アイリスフィールは改めてそう感じた。

「すごい活気ですねぇ」

程なくして夕焼けが空を染めるほどの時間になったというのに、周囲は街行く人々の賑わいがあった。

 

部活帰りであろう高校生。

店の主人と値切り交渉をしている主婦。

定時で帰れるホワイト社員。

 

「そもそもブラックが無ければホワイトも何もないですよね」

「何か言った?セイバー」

「いえ、セイバーがいるから私もいるのだなぁと考えていただけです。まぁ正義は勝つので。闇討ち搦め手なんでもござれ」

「・・・・・・」

それは正義ではないのではとアイリスフィールは思ったが、正義の味方である自分の夫がそうなので黙っていた。人間の正義は難しいね。

「それにしても・・・・・・外の世界って、すごいのね」

「それは、どういう?」

「・・・・・・私、ね。一度も外の世界に出たことがないの」

伏し目がちにアイリスフィールは言う。先程の生き生きとした表情とはうってかわったそれに、Xも眉をしかめた。

「つまりは、貴女はずっとあの城で?」

「ええ。私は聖杯戦争のために造られた人形だもの」

ざわざわという雑多が耳を打つ。人々の賑わいをBGMに、アイリスフィールの独白は続いた。

「もちろん、何も知らないわけじゃないのよ?特に切嗣が来てくれてからは。彼は映画とか、写真とか、外の世界の景色や出来事をいっぱい私に教えてくれた。ニューヨークだとか、パリだとか、大勢の人が色々な暮らしをしている世界のことを。もちろんこの日本についてもね」

アイリスフィールは()びしそうに笑い、それから辺りの雑踏を、さも愛おしげに見渡した。

「でも・・・・・・この目で本当に世界を見るのは、これが初めて。だから嬉しくて」

つい、普段しないようなこともしちゃった、と茶目っ気混じりに言う。

Xはそんなアイリスフィールを見つめて、そして

「セイバー!!」

小突いた。

「!?」

唐突に頭を謎の掛け声とともに小突かれたアイリスフィールは目を白黒とさせる。

Xはそんなアイリスフィールにドヤ顔を見せた。

「フッ。アイリスフィール。私は言いましたね?」

「な、なにを?」

「『私がいる限りは、この世界はシリアスにはなり得ない!』」

「あー・・・・・・」

そういえば初日に言われた気もする。

「貴女がどんな悲惨な過去を持っていようと、私がいる時空では塵芥も同然。私は原作セイバーの如くエスコートなんてしませんよ?」

飛行場での出来事とは一体何だったのか。アイリスフィールは黙っていた。ホムンクルスは時に人間より空気が読める。

「ただ、まぁ」

Xは軽く顔を染め、頬をかいた。

「セイバーをすべて打倒した暁には、ドゥ・スタリオンII号に乗せて、宇宙空間を旅させてあげますよ」

「・・・・・・セイバー」

「勘違いしないでくださいね?あなたが居ればキリツグが付いてきて、マイヤも来て、ケーキ食べ放題になるのかなって思っただけですから」

まるでツンデレのごとく言い訳を並べるXに、アイリスフィールはクスリと笑った。

Xはムッとした顔になったが、直後に仕方がないと口角を軽くあげる。

「じゃあ、今は私が貴女をエスコートするわ。お手をどうぞ、騎士様?」

「私は騎士では・・・・・・全く。箱入りお嬢様が出来るのでしょうか?」

「あら、私だって騎士の真似事くらい出来るわ」

「それは大変ですね。夜のキャメロットのガラスを割りまくったり、盗んだ名馬で走り出したり、私の砂糖菓子を盗んだり。あとは主の妻と浮気したり胸にしか興味がなかったりする騎士の真似事ができるというのですか・・・・・・・・・!!」

「あの、セイバー?ちょっと待って、いた、痛い痛い痛い」

 



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真・セイバー陣営in教会

ギルが誰おま状態。キャラ崩壊タグをつけるべきか。でも今更だしなぁ
遠坂夫妻はイチャイチャしてます。


朝食の匂いにつられて、言峰綺礼は目を覚ました。

どうやら寝坊をしてしまったらしい。6時を指す時計を見て、綺礼はため息をつく。普段ならばこの時間には鍛錬に入っているというのに。

やはり、あの黄金王は害悪だ。召喚された時からそれは分かっていたのに、ついつい飲みに付き合ってしまった綺礼の失敗だと言える。ちなみに、ギルガメッシュ本人は途中で「英雄王キャストオフ!」と脱ぎ出したので廊下に叩き出した。恨みを買ってることは必然だろうが、生憎と裸体の男と飲む趣味はない。後、どこかでアイドルもどきの悲鳴が聞こえた気がした。きっと気のせいだろう。

 

コンコンコン。

 

控えめなノック音と、「おはようございます。起きていますか?」という声に、綺礼の意識は現実へと引き戻される。

素早くパジャマから着替え、ドアを開けた。

「おはようございます。未来の騎士王様」

「や、やめてくださいよ。私はまだ修行途中で、ちゃんと『私』になれるかもわからないんですから・・・・・・」

口ではそう言いつつ、リリィのアホ毛は前後左右にせわしなく動いていた。

(犬の尻尾か・・・・・・?)

綺礼は失礼なことを思ったが、言わなかった。言わなければ失礼でないしね。

「ところで、如何様で?」

「あっ、はい。朝餉の用意ができたのでお呼びしようと」

「・・・・・・」

仮にも未来の騎士王に、こんな家政婦のごとき真似事をさせて良いのだろうか。

確かに扱いとしては正しい。彼女らはまさしく従者(サーヴァント)であり、召使いである。如何に未来の英雄といえど、マスターは綺礼なのだから。朝餉の用意をさせるのになんら問題はない。ないのだが・・・・・・。

「朝餉にしては、少々刺激的な香りですね」

「はい!麻婆豆腐ですから!」

「麻婆・・・・・・?」

何を言ってるのだろう、この少女は。朝食から麻婆豆腐?何故だ。それに、別に綺礼の好物は麻婆豆腐という訳では無い。

「っ・・・・・・」

そう思った瞬間、綺礼は僅かな頭痛を感じた。なにか、別世界から黒髪ツインテのツンデレやオレンジ髪の正義の味方にツッコまれてるような・・・・・・。

「マスター?」

「あぁ、いや、なんでもない」

綺礼は頭を振ると、食堂までの廊下を進む。リリィもそのあとをぴょこぴょことついてきた。

「リセイさんにはもう食していただいてます!気絶するほど美味しいと言っていただけたので、味には自信がありますよ!」

でも、本当に気絶するなんて思いませんでした!と、朗らかに笑うリリィを見て、綺礼は戦慄した。

あの、父が・・・・・・。

『たとえ不味かろうとなんだろうと、相手が心を込めて作ってくれたものならば、最後まで笑顔で食べきりなさい』

と言っていた父が・・・・・・っ!

「父上・・・・・・あなたの(かたき)は必ずや」

決意を固めた綺礼を見て、リリィは首を傾げるのだった。

 

 

 

赤かった。

なんというか、赤かった。

赤を通り越して紅を通り越して赫を通り越した上のナニカだった。

「えぇ・・・・・・」

「さぁ、どうぞ!遠慮なさらず!」

困惑する綺礼に、リリィは善意100%の笑を向ける。綺礼が苦手としているそれに、思わず目を背けた。

「? どうしたのですか、マスター」

「い、いや、なんでもない」

意を決して、レンゲを手に取る。豆腐まで赤いってどうなってんだこれ。

一口分掬い、恐る恐る口に入れた。途端、綺礼の舌を焼くような感覚が襲う。

辛い。辛いとしかいいようのないくらい辛い。少なくとも人間の食べていいものじゃない。これだけで毒物として使用できそうだった。

「き、騎士王・・・・・・水・・・・・・」

「はい、どうぞ」

思わず敬語も忘れ手を伸ばす。リリィの差し出した水を奪うようにして喉の奥に流し込んだ。

「あの・・・・・・お口に合いませんでした?」

不安げな声と瞳に、綺礼は何も言えない。正直に「どうしたらこんなものが作れるのだ」と言えればいいのだが、生憎とこの言峰綺礼はまだ綺麗な方だった。幼子にそんな酷なことを言えるわけがない。

 

『ねぇ扱い違くない?私との扱いが違くない!?私も一応ロリだったんですけどー!?』

 

平行世界からのツッコミを無視し、綺礼は偽りの言葉を紡ぐ。

「いえ、すごく美味しいです」

「よかったぁ!」

花が咲くような笑顔、とはこれを言うのだろう。白百合の王に相応しい表情に、自然と綺礼の顔も「まだまだおかわりは沢山あるので、どんどん食べてくださいね!あっ、英雄王さんも呼んできましょう!」

 

「えっ」

緩みかけた顔が一瞬にして引き締まる。

拙い。それは拙いぞセイバー・リリィ。

あの天上天下唯我独尊な英雄王にこんなものを食べさせた暁には、リリィの首が物理的に飛ぶかもしれない。「我になんてものを食べさせるこの雑種が!」とか言いながら。

「あの、騎士王、それはやめた方が・・・・・・」

「何をしておるのだ雑種」

AUOはKYOでもあったらしい。綺礼は露骨に舌打ちをした。

「おい貴様、今何をした?」

「いえなにも」

「あ、英雄王さんいい所へ!朝餉ができたので、食べてくれませんか?」

「ふはははは!この我に!雑種の用意した!ものを!食せと!」

どうでもいいことだがいちいちうるさいなコイツ。

綺礼は知らず知らずのうちに黒鍵を取り出していた。無論、投げることはしないが。

「よかろう!供物を献上するがいい!」

「こちらになります。どうぞ召し上がりやがれください」

黒鍵を投げない代わりに麻婆豆腐もどきを英雄王の口に突っ込むことで溜飲を下した。

「貴様何するっ、がっはっ、ぐふっ」

英雄王ならば麻婆豆腐を口に突っ込まれたくらいでは死なないだろう。これで死んだらお笑い草だ。

「セイバー。アーチャーは貴方の麻婆豆腐が気に召したらしい。鍋ごと持ってきてもらってもいいでしょうか」

「ほんとですか!今もってきます!」

たたた、とかけてくリリィを暖かい目で見ながら、綺礼の右腕は確実に英雄王を止めていた。

「貴様・・・・・・いつか、殺す・・・・・・」

 

「・・・・・・どうせ、なんの楽しみもない人生だ。いつ殺されようが構わん」

 

ふっと笑みを浮かべ、綺礼は遠くを見つめた。英雄王が財宝で殴る。

「そうか、ならば死ね。今すぐ死ね。麻婆豆腐に埋もれて死ね」

ギルガメッシュがここまで感情を出すのは珍しい。綺礼は殴られながら思った。

「・・・・・・そういえば時臣氏はどうした」

「・・・・・・」

途端、宝物庫を閉じて英雄王は不貞腐れる。その様子に、綺礼はなんとなく事情を悟った。その上で指摘した。

「なるほど。遠坂家のイチャイチャ空間に耐えきれず逃げて・・・・・・いや、体のいいように追い出されたのか?」

「我の方から出ていってやったのだ追い出された訳では無いわこの戯けがっ!!!」

どうやら図星だったらしい。綺礼の顔に、先程とは別の笑みが浮かぶ。

 

「愉悦」

 

王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)!」

 

躊躇いもなく発射された宝物の数々を綺礼は避ける。

「礼を言うぞ英雄王!私に感情を教えてくれたことにな!」

「ええい黙れ雑種ゥ!そもそも貴様が我と共に愉悦に目覚めるのはもっとあとであろう!」

「何を言っている!それは拙いのでは!?」

メタに走り出したギルガメッシュを自重させ、綺礼は机を盾にし、

『あっ』

食べかけの麻婆豆腐が零れた。

 

「お待たせしました!」

と、間の悪いことにリリィが鍋いっぱいの麻婆を抱え戻ってくる。そこにギルガメッシュの宝物のひとつが当たった。

『あぁ!?』

ガシャーンという金属音とともに、殺人料理が床にぶちまけられた。

「あー・・・・・・いや、その、これは、ちがうんです」

綺礼はイタズラがバレた小学生のように言い訳を並べる。ギルガメッシュはいつの間にかいなくなっていた。あの野郎。

リリィは俯いていて表情は見えない。小刻みに体が震えており、綺礼は冷や汗を流した。

「・・・・・・」

「あの、騎士王?」

「・・・・・・ヵ」

「か?」

勝利すべき黄金の剣(カァァリィィィバァァァァァーン)!!」

 

 

その日、黄金の光に包まれた聖堂教会の被害総額は、ケイネス先生の魔術工房を凌駕したという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「食事を無駄にするやつは万死に値します」

「はい」




罰として綺礼は作り直した麻婆豆腐を完食し、新しい味覚を開拓したのだった。


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バーサーカー(セイバー)陣営in間桐家

どうも、Zero読み直したあとにコハエース一気読みした結果温度差で風邪ひきそうな上裂です。
アポコラボ美味しくて周回してたら遅れました。先生すまない、バルなんとかさんより早く殺して本当にすまない。
ところでアキレウス実装されましたね。某女王兼CEOがアップを始めました。
結果?爆死ですが何か。おのれ麻婆・・・・・・前回ネタにした復讐か。

いつにも増してキャラ崩壊ですし口調わかんないし性格もわかんないですけど、どうぞ。


最愛の人とその娘を命をかけて助けようとする漢、間桐雁夜は、数年ぶりにキッチンに立っていた。隣には自分が呼んだ自称セイバーのバーサーカーがいる。

「なんで・・・・・・こんなことを・・・・・・」

「文句を言う暇があったら手を動かしてください。あ、次は砂糖200グラムです」

ブツブツと文句を言いつらねる雁夜をはたきつつ、自称セイバーのバーサーカーこと謎のヒロインX・オルタはレシピ本を読み上げる。

「というか、素人の俺たちが作れるわけがないだろう」

「シャラップ。偉い人は言いました。『やってやれないことは無い』」

「偉い・・・・・・人・・・・・・か?」

疑問を呈し、しかし手は止めず、器の中をこねている。Xオルタは満足そうに笑みを浮かべ、自身も材料の用意を始めた。

2人が何をしているかというと、和菓子作りである。

初め、Xオルタは和菓子を買いに行こうとしたのだが、雁夜の説得(笑)によりその暴挙を取りやめた。臓硯の隠し持っていた甘味は世界(というか聖杯戦争における雁夜の秘匿性)を救うのだ。

ちなみに臓硯は桜用にその菓子を持っていた、と(うそぶ)き、雁夜が桜に死んだ目で見られたことは記憶に新しい。やめてくれ、大切な人の死んだ目は雁夜に効く。

それはさておき、バーサーカーの望みは和菓子である。

 

対セイバーぶっ殺、その為には糖分補給が必要だよねっ。だから私は和菓子を要求します。よこさないならマスターとの戦争も辞さない(意訳)

 

という主張を聞いた雁夜(と臓硯)は、意向にそるべく家中の本棚をひっくり返し、それでもないので鵺野(びゃくや)の家に押しかけ、甥に怖がられながらレシピ本を強奪し、今に至る。

 

「おいバカバーサーカー、それ砂糖じゃなくて塩だ!!!」

「なん・・・・・・だと・・・・・・っ!?あとセイバー!間違えないでください」

「そんな訂正はどうでもいい!あぁもう、なんでそんなドジっ娘みたいな間違いができるんだよ!俺だってそんなのは間違えないのに!」

「で、でも、私はマスターの入れていた砂糖を入れたのですが・・・・・・」

 

えっ、と雁夜は手を止める。よくよく見れば、その水色の容器は先程器に砂糖をドバドバ入れたものだった。ならばなぜまた砂糖を入れたし、というツッコミは野暮である。バーサーカーは口から砂糖を吐けるくらい甘いものが好きなのだ。片手の無い鬼も緑の弓兵にちょこれぇと要求してるしね。

 

「・・・・・・マスター?」

「・・・・・・」

バーサーカーから向けられる絶対零度の視線が痛い。雁夜はすっと目線を宙に向ける。

「『あぁもう、なんでそんなドジっ娘みたいな間違いができるんだよ!』」

ピクっ。

「『俺だってそんなのは間違えないのに!』」

ピクピクっ。

「・・・・・・私の・・・・・・和菓子・・・・・・甘いの・・・・・・魔力・・・・・・全力出せない・・・・・・マスターと戦争・・・・・・」

「わかったわかった、和菓子買ってくるよ!」

不穏なことを呟き始めたバーサーカーに両手を上げ降参する。令呪を使ってもいいのだが、こんなことに使うのはもったいない、というのが1つ。後は、和菓子を食べられなかったバーサーカーの恨みつらみが恐ろしいというのが1つ。

やったぜ(ほんとですか!)

「建前と本音が逆だ!」

いや、逆ってわけでもないな、と頭を振る。

ともかく、約束したからには買いに行かねばならない。

だが、と雁夜は自分の顔を撫でる。引きつった左側。開かない左目。醜い傷跡。何より、見なくてもわかる世界に絶望したこの右目。

こんな有様で、何も知らない一般人の前に出れるわけがない。

いや、いっそのこと堂々としてやろうか。貴様らが呑気に生を謳歌してる中、その裏ではこんな奴がいるんだぞ、と。苦しんでる小さな少女もいるんだぞ、と。

醜いと思うだろう。恐ろしいと思うだろう。それでいい。それで、平和な奴らの記憶に少しでもヒビをいれられるなら、それで「くらえ」「だっ!?」

どうやらまたトリップしていたらしい。雁夜は頭をさする。

「何度言えばわかるんですか。ここはギャグ時空です。YESコメディNOシリアス」

「・・・・・・わかってるさ」

明らかにわかってない顔で雁夜は言う。Xオルタは無表情のまま嘆息し、

「何がそんなに嫌なんですか?」

「全てだよ!人が初めて命をかけてまで守ろうと誓った矢先にこれだ!原作までと(だいたい、こんな顔で、)は行かなくても(こんな有様で、血を吐きながら)少しくらいのシリアスは入るだろう!?(外に出そうなんて馬鹿げてる!)

「マスター、マスター。建前とメタネタの位置が逆ですよ」

どうやら既に染まってるらしい。Xオルタ的にはいい兆候だとほくそ笑む。あわよくばこのまま彼女との対戦まで付き合ってもらって、そして照れ隠しをしてしまう自分を諌めてもらうのだ。

(だって、あんなに優しくされたの、初めてだったんだから。私)

今は亡きアグラヴェイン卿に祈りを捧げる。彼が逃がしてくれなければ、彼女との出会いも何も無かっただろう。

ちなみに優しくしてもらったかどうかといえば、「優し・・・・・・く?」と首をかしげざるをえない。本人がされたと思ってるならされたのだ。無理に抉る必要は無い。

(彼女と出会ったら・・・・・・倒す前に、言えたらいいな)

──私と居てくれて、私に色々教えてくれて、ありがとう。

果たして、その『彼女』がアルトリア顔と(まみ)えた際に話し合いに応じるかはわからないが、まぁ置いておこう。少女の夢は壊してはならないのだ。

「おい、聞いてるのかバーサーカー!」

Xオルタが想いを馳せてるあいだ、ずっと叫んでいた雁夜が息も切れ切れに言う。Xオルタはそんなマスターをチラ見して、

「仕方ありません・・・・・・『∞黒餡子』!」

途端、雁夜を緑の光が包む。

「な、なんだ!?」

暖かな光の奔流。数秒して、緑の光が霧散する。

なにがなんだかわからないという雁夜に、Xオルタはすっと右手を差し出した。

「マスター、どうぞ。鏡です」

「えっあっ、ありが・・・いやこれなんだよ」

「メガネです」

「それは分かってる!なんで『鏡です』とか言いながらメガネを差し出してるのかと聞いたんだ!」

「ガラスに映るからですが、なにか」

あと声真似てません。気持ち悪いです。と言葉の剣で切り刻まれた雁夜は痛む頭を抑え、渋々Xオルタのメガネを覗く。

 

──傷一つない、男がいた。

 

「は──」

口を開け、絶句する。数年前まで、頻繁に、とまでは行かなくとも毎朝顔を合わせていたやつが、そこに映っていた。

「うそだろ・・・・・・」

ぺたぺたと自分の顔を触る。何度確かめても、醜く引きつった左側も、斜めに走る傷跡もなかった。

「どうですか?私のスキル効果は」

どことなくドヤ顔で、Xオルタは問う。雁夜はボケっとしたまま素直に答えた。

「──体が軽い。こんな幸せな気持ちでいるのなんて初めてだ」

先程まで枯れていた声も治っている。刻印虫のせいで常に疼いていた体も痛くない。

「そうですか。それは、とっても嬉しいなって」

Xオルタが微笑んだ。珍しいそれに、雁夜は思わず見とれ、慌てて首を振る。

(馬鹿野郎!俺には葵さんという人が!)

 

 

 

「っ!」

「どうした?」

「いえ、少し悪寒がして・・・・・・」

「お母様、大丈夫?」

「大丈夫よ、凛」

「遠隔魔術の類かもしれない。凛、あの方法で治してあげなさい」

「はい、お父様。お母様、ぎゅー」

「あらあら」

 

 

 

微笑ましい家族の一幕を挟んで、バーサーカー陣営だ。

「マスター?どうしました?」

「いや、なんでもなっ!?」

雁夜に石が飛んできた。何事だと辺りを見回す。

「──っ!?」

いつの間にか、そこにいた。ロボットが。

「あっ、黒騎士くん」

「黒騎士くん?」

Xオルタが声をあげれば、黒騎士くんと呼ばれた彼(?)はウィーンと手(?)をあげた。

「さっきの石はこいつが投げたのか?でっ」

聞く必要はなかったらしい。答えの代わりに飛んでくる石。地味に痛いやつだ。

「ダメじゃないですか、黒騎士くん。彼はマスターです」

「────」

「へっ?ふんふん・・・・・・それでもです」

「────」

「ダメったらダメです。彼が死んだら誰が私に和菓子をくれるんですか」

「おい」

自分の存在価値は和菓子だけか、と憤慨する。が、その前に。

「なんで意思疎通ができてるんだ!」

明らかにピーピーという機械音しかなってないのに、何故か話の出来ているXオルタにツッコむ。叫んだ雁夜に、Xオルタと黒騎士くんは首をかしげた。黒騎士くんは頭にあたるのか?

「なぜって・・・・・・普通じゃないですか?」

「────」

やれやれ、という雰囲気が腹ただしい。黒騎士くんを蹴飛ばしてやろうと思ったが、それを察知したのか先手を打たれた。具体的にいえば、黒騎士くんは闇に紛れて消えた。

「あ、また消えてしまいました」

「・・・・・・結局あいつはなんなんだ」

「私の友人です」

「・・・・・・」

大丈夫かこのバーサーカーと思ったが、バーサーカーな時点で大丈夫ではなかった。

「定期的に現れる、とっても頼もしい味方ですよ」

頼もしい・・・?味方・・・・・・?

雁夜は思考を放棄した。今は、このよく動くようになった体のことが先だ。

「こんなスキルがあるなら先に使ってくれれば・・・・・・」

「忘れてました」

「・・・・・・はぁ」

未だ胃は痛むが、それを引いてもとても楽だ。今ならにっこり笑ってお菓子の魔女にだって立ち向かえる。

「・・・・・・もう、一人じゃないんだな」

「なにいってるんですか」

その声音がいたわるもので無く、若干引いてるようなものだったことに、雁夜は少しだけ泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、なにもこはくない」

「おいバカやめろ」

 



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ライダー陣営inケイネス先生の魔術工房

「帝都聖杯奇譚やったー!斬って斬って斬りまくりますよぉ!」
「まさかの魔神セイバー実装とか。しかも沖田オルタとか名前ついとるし」
「やはり沖田さん人気に出さざるをえませんでしたね・・・・・・というかノッブ要素どこにあるんです、これ?」
「それを言うたらおしまいじゃろ!!なんでわし成分がないんじゃ!?せめて声とか!宝具とか!!!」
「まぁ所詮配布鯖ということですよ。やーい、お前の家系、はーいふさばー!」
「ええい黙って聞いておれば!水着もないくせに!」
「あ、言いましたね、言っちゃいましたね!?いいですよ、沖田さんは今年水着来るんですから!!」
「極寒の地で?」
「いやもうそれ終わりましたし」
「まぁ?沖田の水着よりわしの水着の方が人気があるのは確定的に明らかじゃし?」
「ほほーぅ?しりませんよぉ、私の水着が実装されて、呟いったーとかで『やっぱ沖田さん最高!ノッブとかまじオワコンだし(笑)』とか言われても」
「おーし戦争じゃあ!!!猿ぅ、鉄砲もてぇい!」
「沖田さんの縮地にかなうとでもコフッ」


「可愛い幼馴染、妹、メイドさんに優しく、時に激しく気持ちよく起こされたい・・・・・・私の同胞諸君におきましては、一度は必ずこういう()を見たことがあるかと思います。見たことがない?前世からやり直せ」

「ソラウ」

「コホン。さて、ここで我が夫(笑)の毎朝の風景を見てみましょう。

朝6時・・・・・・私が起こしに行く。まだ寝てる

朝7時・・・・・・ビキニ姿のメイドさんが起こしに行く。寝てる

朝7時半・・・・・・メイドさんが叩き起す。起きる」

「ソラウ」

「信じられます!?信じられますか!!」

「ソラウ」

「そりゃ、私だってメイドなんかはたくさん見たわよ。たくさん雇ってるわよ。でも、彼女たちは若くないわ。可愛くないわ」

「ソラウ」

「私、学んだのよ、ケイネス。日本の乙ゲーやギャルゲーで」

「ソラウ」

「安心して、KENZENなゲームよ・・・・・・何が言いたいのかってね、ケイネス」

そこでソラウは、水を一杯飲んだ。どうやら喉が渇いたらしい。

そしてすーっと息を吸う。ケイネスは嫌な予感がして耳を塞ごうとするが、ソラウのほうが早かった。

 

「羨ましいわ!!!!!!!」

 

「それがサーヴァントに物理的にたたき起こされた(未来の)夫に対する言葉か!」

ソラウの素直な言葉に、ボロボロになっているケイネスはキレ気味に答えた。すぐに振り返り、我関せずとゴリゴリ君アイスソーダ味を幸せそうに食べているメイド(サーヴァント)を睨みつける。

「お前もだ!おい、お前だライダー!とぼけて後ろを向くな、何もいないだろう!・・・・・・なんだその目は。なんだその哀れみの目は。『見えないのか?』見えないも何も何もいないだろうと言ってるんだ!・・・・・・おい、なんだこの寒気は。なんだこれ。私は『降霊科』のロードだぞ!ナニかいるなら見えないわけが、おい、なんでお前の後ろの壺が動いてるんだ、おい!ツボに微笑みかけるな、『大したもてなしもしてやれなくて申し訳ない』!? 何がいるんだそこに!!!」

ケイネスは思わず怯えた目を向ける。

水着アルトリアオルタは気にすることなく、ゴリゴリ君アイスが当たったことに喜び、その棒を大切にしまった。

「さすが幸運B・・・・・・可愛いわぁ・・・・・・」

ソラウはどこからともなくカメラを取り出し、はにかむメイドオルタを撮り始めた。

「ソラウ!いい加減にしないといくら君でも許しはしないぞ」

いつまでもふざけている婚約者を怒鳴りつける。

ケイネスは疲れていた。あの出来損ないに触媒を奪われてからというもの、嫌なこと続きだ。まともだったはずの彼女まで気が狂ったように、所謂『オタク』なるものに染まってしまっている。自身の幸運値を疑わざるおえない。

「・・・・・・頭が痛い」

「む、大丈夫か。よもや徹夜などしていないだろうな」

「お前達のせいだ!おい、お前!サーヴァントなら偵察のひとつでもしてこい!ライダーだろう!」

「承知した」

「は?」

「ん?マスターの命令だろう?」

「あ、あぁ」

まさか素直にいうことを聞くとは思わず、ケイネスはどもる。

水着オルタは微笑み、

「『不撓燃えたつ勝利の剣(セクエンス・モルガン)』」

窓に向けてぶっぱなした。

「はぁー!?」

ケイネスはあるまじき声を上げる。みればソラウも口をぽかんと開け、ちゃっかりシャッターは切っていた。

「おい、おい!なんで私の指示なしに宝具が撃てるんだ」

「? NP(アイス)チャージはしたし、そもそも私はソシャゲ畑のサーヴァントだからだが?」

「何言ってるか理解をしたくない」

「では偵察に行ってくる。奥方、二度寝しないよう見張っていてくれ」

「もちろん」

「まて!その前に窓を壊す必要がぁーーーー」

既にオルタはいない。ケイネスは自害させようか本気で考えるが、そっとその肩に乗る手があった。

「ソラウ・・・・・・」

「落ち着いて、ケイネス。魔力消費がなく、食べ物を与えるだけで宝具が撃てるのよ?正直ここの料理は家畜の餌かと思うほどまずいけど、それで有利になるなら万々歳でしょ?」

「ソラウ・・・・・・あぁ、そうだな。私としたことが、どうかしていたよ」

ケイネスは愛しい人に微笑みかける。そうだ、どこか様子はおかしいところもあるが、この毒舌と言い、損得勘定といい、紛れもなく私のソラウだ。

 

「いいえ、いいのよ。それに、このホテルはどうせ壊される運命だと何かが囁いているし」

「えっ」

「さぁケイネス、手伝ってちょうだい。アルバムを作らなきゃ」

「ソラウ?」

「間に合うかしら・・・・・・コミックマーケット」

「ソラウ????」

 




お久しぶりです。
アポとかぐだぐだとか周ってたら遅くなりました。
沖田さん来ません。沖田さんオルタ来ました(素振り)来ました(素振り)来ました(素振り)
あ、エクステラリンク発売おめでとうございます。


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キャスター陣営inマッケンジー夫妻家

「沖田ざまぁwwww」
「黙らっしゃいヤンデレサークルの姫がっ!」
「おいバカやめろ弱小人斬りサークル」
「なんですか!なんなんですか沖田ちゃんって!!元は私の癖に!!!私とノッブの癖に!!!」
「マジで別人すぎワロタ。なんじゃあのヒロイン」
「というかなんで男の方が人気出てるんですか!アサシン!元マスター傷つけたの忘れてませんよ!」
「『信勝実装はよ』コメ多すぎるんじゃが。やめんか。いや、割とマジで」
「アレですか!ギャグ生まれだからダメなんですか!?」
「の割にはXのやつ人気あるのじゃが?」
「そうです、水着イベもですよ!知ってはいましたがやっぱり腹立ちますね!」
「お、Xに対する嫉妬か?」
「いえ、単純に私より先にノッブの水着実装されてるのが気に食わないです。今これみよがしに着てるのもすごくうざいです」
「(どっ)」
「三段突き!!」
「アーチャーに効くと・・・・・・あっ」
「・・・・・・あなた今水着でバーサーカーじゃないですか」
「・・・・・・是非も・・・・・・ない・・・・・・よネ」






















・・・・・・えっ?ジャンヌ?牛若?茨木?マジで?????


『LOSER』

青い色でデカデカと書かれた、テレビ画面に映る文字。

もう何度、この表記を見ただろうか。

「くそっ!」

苛立ちをコントローラーにぶつける。買ったばかりで新品のそれは、ウェイバーの乱暴な使い方によって幾分かの傷ができていた。

「なんで・・・・・・僕がこんなことを」

「こんなことも出来ない愚か者だからだ。物は大事にしろと教わらなかったのか?」

『WINNER』という文字の映る画面の前に座る男がやれやれと首を振った。そして、「もう一試合行くぞ」とキャラを選び出す。怒りに震えるウェイバーのことなどお構い無しに、「ほら、早くしろ」と促した。この英霊、過去の自分に対してやりたい放題である。

ウェイバーは、そんなサーヴァントの姿にキレ気味に答えた(すでにキレている)。

「うるさい!!だいたい、こんなくだらないゲームを出来るようになったからと言ってなにがあるんだ!!」

時計塔の君主(ロード)になれる」

「んなわけないだろバカにしてるのか!!」

「・・・・・・まぁ、確かにゲームをしたからロードになったわけじゃないんだが」

「というかお前ロードなのか!?どこの学科だ!?」

「現代魔術」

「は!?」

「さっきからうるさいぞ。文句があるならゲームで勝ててからにしろ」

「だから!その!ゲームを!する意味がわからないと!言っているんだ!!!!」

小さな体で叫びきったウェイバーは、ゼェゼェと息を吐きながら令呪を使うべきか熟考した。

3つしかないサーヴァントに対する強制命令権。主を──というかウェイバーを──無下に扱うこの従者は、それ以外で問題を起こすことはないだろう。魔力消費も少なく陣地作成スキルのあるキャスターはウェイバーにとって願ってもいない人材だ。

キャスター自体は聖杯戦争でハズレ扱いされるクラスだが、欲を持って三騎士など狙い、下手に慢心王や堅物王や幸運Eのランサーを呼んでしまうよりいいのかもしれない。あの陣営はどこも破綻していた。その点、この陣営の唯一の悩みはキャスターのマスターに対する尊敬心のなさだけである。自分が未熟だというのは(認めるのは本当に癪だが)事実ではあるし、仕方ないとは思う。自称ロードだし。

キャスターが(嫌々)教えてくれた真名は『諸葛孔明』。東方の軍師であり、戦略的強みのあるキャスターにぴったりだ。

そんなサーヴァント相手なので、無駄とは知りつつも、こうも簡単に令呪を切る考えが浮かぶのも仕方ない・・・・・・のかもしれない。

「おい、いつまで悩んでいるんだ」

苛立ったように孔明が声を上げる。かいた胡座がゆすられているのを見て、案外短気なのかとウェイバーは(自分を棚に上げて)思った。

「くそ・・・・・・今に見てろよ」

「生意気な口が叩けるのも今のうちだからな」

「ふん、僕だってやられっぱなしじゃないんだお前の攻撃パターンは覚えたぞ」

「ほう?その自信がいつまで続くか見ものだな」

 

 

 

 

 

 

結論でいえば、ウェイバーはまた負けた。当然の結果ではあるが、やはり悔しいものは悔しい。

夕方になり、やりきれぬ思いのまま下へと降りる。いい匂いがすれば、晩御飯の用意をしているマッケンジー夫人がいた。

「あら、もうご飯ができてますよ」

「・・・・・・」

礼も祈りもする気になれず、さっさと席について食べ始めた。夫人は少し悲しそうに目を伏せたものの、すぐにニコニコと味を聞いてくる。

「・・・・・・美味しいよ」

「それは良かったわ。ところで、今日はコウメイさんはいらっしゃらないの?」

「・・・・・・は?」

思わずフォークを取り落とす。「あらあら」と夫人が拾うが、ウェイバーとしてはそれどころでない。

「・・・・・・コウメイ??????」

「あら、貴方のお友達なのでしょう?」

「・・・・・・」

わなわなと全身が震える。なにしてんだあいつ。てか見えるってことは実体化してたのか?いつ?なんで伝わってこなかった?なんで勝手に行動した?

フツフツと怒りが沸き上がる。というか再発する。荒々しくナイフとフォークを置き、ウェイバーはたちあがった。

「ウェイバーさん?」

「あの野郎!!!!!!!!!!!」

あらん限りの声で叫んで、ウェイバーは階段を駆け上がる。背後からのウェイバーさーん!?という悲鳴に近い声も無視して、自室のドアを開けた。

「キャスター!!!」

「なんだ、騒々しい。マッケンジー夫人に迷惑だと思わないのか」

「それだそれのことだよ僕が怒ってんのはおいこっち見ろなんでマスターそっちのけで家コンやってるんだ!!!!!」

「家コンじゃないプレ駅だ」

「んなことはどうでもいいんだよ!!!!なんでお前実体化していつの間に!」

「いや、お前、私がゲーム出来てるのは実体化してるからに決まってんだろ」

「ぐっ・・・・・・」

そういえばそうだ。霊体化すると何も持てない。孔明は呆れたように眉をひそめた。

「散々一緒にゲームしといて今更ツッコむのがそこなのか?」

「う、うるさいな!お前が普段通りにしてるからだ!」

「それは馬鹿なだけなのでは・・・・・・?」

「うーーーっ!」

調子が狂い、唸ることしかできない。孔明はしばらく可哀想なものを見る目で見たあと、ふっと視線をそらした。

(まぁ私も彼にそうだったからなぁ・・・・・・実体化の魔力消費半端じゃなかった)

木っ端魔術師には大変だったなぁと過去に思いを馳せる。

「魔力消費は陣地作成でなんとかしている」

「なんとかなるのか、それ」

「私もソシャゲ畑だから、なる。魔力(NP)だからな」

「お前なんか最初とキャラ違くないか!?大丈夫なのかよ!!」

「大丈夫だ、問題ない」

キリッとした顔でいう孔明に、それは大丈夫でない!と言おうとして、

 

 

ビカッ!ドーン!

 

 

擬音にするのであれば、こう。

光の奔流が見えたかと思えば、巨大な爆発音。下からマッケンジー夫妻の驚いた声が聞こえる。

「・・・・・・! キャスター!」

「・・・・・・あそこは・・・・・・セイバーとランサーが邂逅してた場所か!」

つまりはあの倉庫である。キャスターが自分なのでなんとも言えないが、体験した通りならバーサーカーとアーチャーもいるはずだ。ライダーは・・・・・・どうなのだろうか。

(ん?アサシン脱落が先じゃなかったか・・・・・・?)

「おい、対策練るぞ!どう考えても聖杯戦争開始してるだろ、あれ!!」

孔明が訝しんでいると、ウェイバーが慌てた様子で服を引っ張ってきた。見に行くことはせず、部屋で分析をするらしい。

あるわけないな、と思いつつ、孔明は一応尋ねる。

「見に行かないのか?」

「行くか馬鹿!!!」

 

 

 

 

 

 




生きてます。お久しぶりです。
水着イベとか、シグブリュシナリオ読んでたら遅れました。てへ


ウェイバー達書きにくい・・・・・・原作でギャグ陣営扱いだからかなぁ・・・・・・


設定ガバガバなので注意してください(手遅れ)


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アサシン(セイバー)vs〇〇〇〇 in倉庫街

「消えぬ!炎の!本☆能☆寺!!!」
「いやそういうのいいですから」
「えー。ノリ悪いのぅ」
「ネタが古いんですよ。世間は既に水着ブームだというのに。・・・・・・水着・・・・・・ブーム・・・・・・」
「結局今年も来ないの乙」
「うるさいですねホントに!!なんで私よりX(?)のほうが先なんですか!」
「まぁ是非もないよネ。社長絵はあの聖女で埋まっちゃったし」
「聖女シスターズめ・・・・・・っ。いいですいいです沖田さんは途中で現れてマスターたちの財布にダメージ与えるんですから。ヒロインは遅れてくるんですよ!」
「沖田の次回作にご期待ください(笑)」
「笑うな!!」


 

時は、少し戻って。

 

 

 

 

「倉庫街、というものですかね?」

「沢山あるわねぇ。何を入れるのかしら」

謎のヒロインXとアイリスフィールは、夕暮れの倉庫街を歩いていた。

「あ、段差!お手をどうぞ!」

初日以来、気に入ったのかどうかは知らないが、アイリスフィールがやたらとエスコートしてくるようになった。Xは気恥しいと思いつつ、仕方ないかと苦笑していた。どうせすぐに飽きるだろう。

「・・・・・・むっ!?」

と、Xの目がキュピーんと光った。心なしか、アホ毛もピコピコと左右に振れている。

「・・・・・・どうしたの?」

「私のアルトリアセンサーに反応がありました!この近くに倒すべき奴がいます!」

「・・・・・・そんなものがあるのね・・・・・・」

もはや、ツッコむ気も起きない。この電波系サーヴァントに対しては適当に流していくのが吉だというのがアサシン・・・・・・セイバー(仮)陣営においての了解だった。ほら、アサシンと思った瞬間睨まれる。

「でも、近くに魔力反応なんて」

見つからないわ、と言おうとして。

 

「ん?・・・・・・貴様は・・・・・・」

 

真上から、声をかけられた。

「っ、いつの間にっ」

「ここであったが100年目っ!というか29日目っ!!!エックス(アルトリア顔死すべき慈悲はないよね)カリバー!!!!」

「やけに具体的だな!?」

憤怒の声とともに放たれたエックス型のビームがアルトリア・ペンドラゴン・オルタ・メイド・ライダーを襲う。だが、そこは流石の敏捷B。完全なる不意打ちも難なく避ける。

「えっ、ちょっ、・・・・・・えー・・・・・・」

指示を出そうとしたアイリスフィールは、いつの間にか飛び上がり、宝具をぶっぱなしていたXに戸惑いの声しか出せなかった。なんで宝具打てるの。というかそんな雑な詠唱でいいの?

こちらの疑問を読み取ったのか、

 

「新たに増えたアルトリア顔も『なんかすごいビーム』で撃ててるので、いいんです」

 

そう、ギャグサーヴァントならねっ!

 

満面の笑みで言われ、アイリスフィール(と実は盗聴器で会話を聞いていた衛宮切嗣&久宇舞弥)から乾いた笑い声が漏れ出た。これだから・・・・・・これだから、ギャグって奴は!!!

「撃っていいのは、撃たれる覚悟のあるやつだけだ・・・・・・不撓燃えたつ勝利の剣!(セクエンス・モルガン)

「! セイバー!」

「掴まってください! 支援砲撃

言われるままにしがみつけば、Xはアイリスフィールを抱え跳躍する。

「きゃーーーーーー!」

「口閉じてください舌噛みますよ!」

今までアイリスフィールたちがいた場所を、弾丸とバイクが通過した。

「ちぃっ」

メイドオルタは舌打ちし、銃口をXに向ける。だが、Xが左右へ小刻みに揺れるので標準が定まらない。

「じっとしてろ」

「照準向けられてるのに誰が!マスターもいるんですよ?」

「ええいちょこまかと・・・・・・っ!?」

メイドオルタの動きが止まる。顔だけは動かせるようで、鋭い眼光とともに威圧をのせた声が発せられた。

「おい、これはどういうことだ・・・・・・?」

「ふふふふふ・・・・・・てれてれってれ〜!支援砲撃〜」

煽るような物言いに、メイドオルタの額に青筋が浮かんだ。だが、やはり体は動かない。

「ちっ、これだからスタン持ちは嫌いだ」

「まぁまぁ惨めな姿で吠えられても私としては高笑いしかできませんけどねふはははは!」

Xさん大勝利〜とブイサイン。抱き抱えられてるアイリスフィールは、いつスタンが解けてしまうのか戦々恐々としていた。

「大丈夫ですよ、一ターン持つので」

「一ターンの基準って何!?」

「相手に3回攻撃するかじゃないですかね?」

「じゃあ、まだ大丈夫なのね?」

「多分?」

「疑問形なのが気になるけど・・・・・・まぁいいわ」

まずなぜスタン使えてるのかもわからないし、と息をつき、アイリスフィールはメイドオルタを観察する。どうやら動けないというのは本当のようで、射殺さんばかりに睨みつけてはいるが、銃を構えたまま引き金を引いてはいない。

「で、どうします?私としてはこのまま殺っちゃいたいのですが」

「そうね。少し可哀想ではあるけど、このまま脱落させちゃいましょう」

「はーい!!!」

満面の笑みと満点の声音で返事をして、Xはひみつかりばーを構える。ただし、目は笑っておらず、アルトリア顔への憎しみ(笑)で燃えていた。

「それじゃあさようなら。恨むならアルトリア顔に作られた自分と菌糸類の神を恨むんですね」

「・・・・・・すまない、マスター・・・・・・」

 

カラン、と。何かを落とす音がした。

そちらを向けば、アホ毛をピンと伸ばし、呆然と立ち尽くす──セイバー・リリィの姿。

「・・・・・・師匠?」

「・・・・・・リリィ?」

「師匠、どうして・・・・・・どうしてここにいるのですか!?」

「・・・・・・リリィ。あなたもまた、この戦争の参加者だというのであれば。私は、我が願望のために──貴女を、倒さねばなりません」

「そ、そんな・・・・・・!」

「剣をかまえなさい。私直々に、引導を渡してあげましょう───!」

 

 

今、ここに。

因縁の師弟が激突する────!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういうのいいから」

「というか因縁でもないだろう」




我が世の夏が来た!!!!!!!X水着ってまじすか!?
ジャンヌ、牛若、茨木、BB(?)・・・・・・財布が薄くなるぜ。



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セイバー対決in倉庫街

「復活!AZO復活!」
「三田先生おめでとうございます!呼符で来るとか都市伝説だと思ってました!」




ごう、と。一陣の風が吹いた。

対峙する二人の剣士(セイバー)。衣装を取り替えたら、誰もが見間違うほど似通った容姿をした二人は、今、対称的な表情をしていた。一人は殺意に、一人は悲しみに塗れている。殺意を見せる方も少しの哀愁を漂わせており、望まぬ対峙であることは明白だ。

悲痛な顔で、リリィは叫ぶ。

「いや・・・・・・嫌です、師匠!なぜ私と師匠が戦わねばならないのですか!」

「・・・・・・それが、この世の理不尽であり、この戦争のルールであるからです。さぁ、構えなさい、リリィ。貴女のマスターを守りたいというのであれば」

「そ、それは・・・・・・もちろん、守りたいですけど、でも!」

「構えないのであればこちらから行きます。本物のセイバーの力、貴女に見せてあげましょう!!」

 

「それは困る」

 

ゾワリ、と。Xとアイリスフィールの背筋に寒気が走る。

振り向けば、いつの間にいたのか怪しい神父の姿がある。Xは一度対峙するのをやめ、アイリスフィールと神父の間に入り、ひみつかりばーを構えた。

後ろから、リリィの驚く声が聞こえた。

「ま、マスター・・・・・・」

「困りますな、未来の騎士王よ。そろそろ夕餉の時だと言うのに、勝手に出歩かれては」

「あ、ご、ごめんなさい」

パタパタとリリィが駆けだし、Xに背中を向ける。そのまま神父の傍で佇んだ。瞳が揺れ、こちらを見つめる。それはまるで、『どうするのですか』と問いかけているようであった。

Xは震えそうになるのをなんとか押しとどめ、気丈に振る舞い聞きただす。

「・・・・・・貴方は、何者ですか」

神父はふっと嘲るように笑い、

「言峰綺礼。此度の聖杯戦争で「言峰綺礼ですって!?まさかあのクソ神父!?いいわ私が許可します全力で宝具ぶっぱなしなさい、殺っちゃえセイバー!!」

 

 

時が止まった。

 

なにかアイリスフィールから、クソとか殺っちゃえとか聞こえちゃいけない単語が聞こえた気がする。ギギギと、油の切れたロボットのようにXは後ろを向いた。鼻息荒く、拳を振りかざすマスター(仮)の姿。「な、なにがおこったのか略」と言いたい気分だった。まて、まてまてまて。貴女お嬢様でしょうに。

「あ、あの、アイリスフィール?」

「何をしているのセイバー!さっきは散々撃っていたでしょう?今更撃てないとは言わせないわ、一片の塵も残さず殺ってしまいなさい!!」

「ええと、その、知り合いですか?」

「知らないわ!私はこいつのことを1ミリも知らないけど私の中の何かが叫ぶの!こいつ殺せって!とりあえず殺っちゃいなさい!」

「な、なぜ、」

「貴女がセイバーとか殺しにいくのをこれからは見逃してあげるから!少しなら手伝う!」

「よーし任せてくださいねアイリスフィール!!塵どころか原子レベルで消し去ってあげますから!!あ、フォーリナーの時もお願いします!最近霊基が増えたので!」

あっけなく手のひらを返した師匠の姿に、リリィはアホ毛をブンブン振りながら蒼白で言峰にすがりつく。

「ど、どうしましょうマスター!?」

「・・・・・・ふむ。それでは貴女も宝具を撃ちますか。勝利の王よ」

「え゛っ!?」

 

 

 

そうこうしているうちにXの準備が完了した。目を閉じ、詠唱を開始する。どうやら今回は詠唱が必要らしい。基準がわからないナー、とアイリスフィールは内心思うが、とりあえず我慢した。恨めし言峰綺礼を倒すため。多少のおかしさは今更だ、気にすることは無い。

 

 

「星光の剣よ・・・・・・赤とか白とか黒とか消し去るべし!みんなにはナイショだよっ!『無銘(エックスゥゥゥ)──勝利剣(カーリバー)』!!」

「選定の剣よ、力を!邪悪を断て!『勝利すべき(カリ)黄金の剣(バーン)』!!」

 

 

 

エックス型のビームと、股間ビーム竜の息吹がすれ違い、互いの元へ届く。

「くっ、やりますねリリィ!『セイバーの星』!」

Xに無敵状態付与。ビームが着弾と同時に爆発するが、Xには傷一つない。

「ぐっ・・・・・・」

対して、リリィの方は満身創痍だった。アルトリア特攻を持つ星五宝具は刺激が強すぎる。まだ立てているのは、宝具に回復効果がついていたおかげである。

「こふっ」

桜セイバーのように吐血を始めたリリィに、言峰が駆け寄る。

「大丈夫ですか、白百合の王よ!」

「すいません、マスター・・・・・・これ以上は、少し、キツいかもしれません」

「いいのです。ここは一度撤退しましょう」

そういうと、言峰はリリィを抱き上げる。安心したのか、リリィは眠るように気を失った。そのまま踵を返そうとして、後ろからの殺気に振り向く。

「こら、待ちなさい!撤退は認めませんよ主にそこの男!リリィなら見逃してもいいですが!」

「馬鹿め、私が死んだらいずれ彼女も死ぬのだぞ?」

「暫くは大丈夫でしょう?その間にパスを繋げばいい。どこぞの魔女みたいに」

「というかまず貴方が信用出来ないわ。眠ってるのをいいことになにかするつもりじゃないでしょうね?」

険しい目を向けてくる女性二人に、言峰は面倒くさそうに息を吐いた。別に言峰は幼女趣味ではないし、サーヴァントに手を出す気もない。というかマスターの方は完全に言いがかりだ。初めてあったばかりだというのに。

「ともかく、今回の勝ち星は譲ってやろう。王も疲れているようだしな。・・・・・・ところで、貴様らは少し後ろを気にした方がいいのではないかね」

後ろ?と妙な忠告に振り向けば、青筋を浮かべたメイドの姿が。そういえばみんな忘れてたね。

「え゛っ!?もう解けたんですか!?」

「貴様、アサシンだろう?チャージ3ターンではないか」

「そういう!?そういう基準なんですか!?あとセイバー!間違えるなよ憎きアルトリア顔め!」

「それでも4ターンたってるじゃないか」

「ぐっ」

気づけば神父もいなかった。もー!!!と地団駄を踏む。

アイリスフィールは苦々しげに口を歪めた。さすがにこれ以上の魔力消費はまずい。切嗣への負担が大きすぎる。だが、彼女はライダー。逃げ切れるとも思えない。

(ここは無理にでもゴリ押しを・・・・・・いいえ、だめ。きっともう見切られてるわ。避けられしまえばそれでおしまい。かといって逃がしてもくれないでしょう)

一体どうすれば、と考える。ライダーはまだこちらを睨みつけているし、切嗣と連絡も取れない。

すると、ライダーがくるりと背を向けた。

「なっ」

「あぁ、そろそろ夕餉を作らねばならないのでな。主とその伴侶がお待ちだ。それから、好機と思って攻撃してみろ。返り討ちにしてくれる」

「くっ・・・・・・自分がアサシンでないのが口惜しい・・・・・・」

「えぇ・・・・・・」

こんなとこまでそれ引っ張るの・・・・・・?アイリスフィールは何度目かわからないため息をついた。ともかく、見逃してくれるらしい。夕餉のため、とはこれまたメイドらしい理由である。サーヴァントらしくはないが。

「次会う時が貴様の最後だ。覚えておけよ、アサシン」

そういうと、メイドオルタはどこからともなく取り出したバイクに跨り、去っていった。

「・・・・・・風紀の乱れが激しいわね」

アイリスフィールがボソリとつぶやく。

「水着で、メイドで、バイク・・・・・・バーサーランサー呼びます?」

「? 誰それ?」

「いえ、なんでも」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・帰りましょうか」

「・・・・・・ええ」

どことなく後味の悪い気分になったまま、アイリスフィールとXは倉庫街から歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

『・・・・・・僕達も帰るぞ、舞弥』

『分かりました。・・・・・・それにしても、切嗣』

『あぁ』

『・・・・・・同じ顔と声が三人分、というのは・・・・・・』

『・・・・・・言うな』

気味が悪いですね。

舞弥の呟きは切嗣に届くことなく、夕闇に溶けて消えた。




お久しぶりです。色々ありましたが、私は元気です。
AZO復刻!やったぜ!
ランスロ(狂)が欲しいです。
でも出番ないから来ないな・・・・・・というかZero鯖いないな・・・・・・Zero二次創作なのに。

ケイネス先生・・・・・・あの交換所もいずれ爆破されるのか・・・・・・今のうち交換しときましょう。


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開幕

「まさかのギル祭」
「王様はっちゃけすぎワロタ」
「いや、あの人はコハエースの時からそんな感じですよね?」
「アレと同類なのかイベント時空・・・・・・あんま大したことでもなかったわ」
「そういえばノッブはガチャしました?」
「んあ、とりあえず日本鯖の方回した。同郷のよしみってやつじゃの」
「結果は?」
「・・・・・・ガチャはほら、回転数が全てじゃし?わしまだ10連しかしてないから」
「ちなみに沖田さんは何故か孔明さん出てきました。いやまぁ?流石の沖田さんは軍師にもモテモテと言いますか?いやー、困っちゃいますねー、どこかの配布さんとは違って人気者で。すいませんねー!」
「うわうっざ。あまり強い言葉を使うものでは無いぞ、弱く見えるからな。あ、元々わしには弱かったか?ははっ、すまんのぅ!」
「うっわうっざ。というか私強いですし。クラス相性とか覆してやりますし??」
「おっおっ、試してみるか?ん?」
「えーえーいいでしょうともやってやりますよぅ!」





どっちが強いんでしょうね


「えっちゃん、こっち!」

「はい、今行きますよサクラ」

 

紫と金が揺れる。まるで姉妹のように仲がいいその姿に、雁夜は目を細めた。

 

自身に回復魔術を使われた後、雁夜はXオルタを桜のいる蔵まで引っ張っていき、桜にもかけさせたのだ。魔力が足りないというので、令呪を一画切った。後悔はしていない。もとより、桜を助けるために参加した戦争だ。彼女が助かるというのだから何も躊躇う必要は無いじゃないか。

桜はみるみる回復していった。目には未だ影が差すこともあるが、体調面では元通りと言って差し支えないだろう。メンタルはこれから治していけばいい。Xオルタも姉の真似事が出来て喜んでいるようだ。欲を言えば本来の姉に会わせてやりたいが、時臣がいるのではさせてやれない。

次なる目標はやつをどうにかすることだ。やはり、殺すしかないか。聖杯戦争で敵同士、ということは、どうせどちらかは死なねばならぬ運命(さだめ)だ。

雁夜が不吉なことを考えた時だった。

 

「マスター?」

 

感情をのせない声に、意識を引き戻される。そこには無表情な、だけどどことなくこちらを心配しているような、不思議な顔をしたXオルタがいた。少し離れたところで桜も見つめている。

 

「あ、あぁ。悪いな、少し考え事をしていたんだ」

「これから3人でおでかけなのに、ですか?」

「そうだ。久々に太陽の下を歩いたからな。浮かれたのかもしれない」

「そうですか、気持ち悪いですね」

「おまえはもう少しマスターを敬う心をだなぁ!?」

いつも通りの毒舌に、雁夜は心の中で涙を流した。何も感じるところがないのか、Xオルタはスタスタと歩いていく。ただ、その歩みは少しだけゆっくりだ。

(・・・・・・気遣ってくれてるのか?)

感情を出すのが苦手というか。ふと、縁召喚のサーヴァントはマスターに似るという話を思い出した。・・・・・・いやいや、まさかそんな。

「・・・・・・」

少し意識して口角を上げる。横を通った女性に怯えられた。

「・・・・・・ふっ」

目の端にキラリとしたものを覗かせながら、間桐雁夜は大切な人の下へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、ノコノコ帰ってきたというのか!」

「それに関しては素直に謝ろう。申し訳ない」

メイドオルタは目の前で激昂する主に頭を下げた。あのようなふざけたサーヴァントに不覚を取られたのは一生の汚点だ。いや、サーヴァントに一生も何も無いのだが。

「ケイネス、それくらいにしなさい。相手の出方がわかっただけでもお手柄じゃないの」

「ソラウ、しかしだね」

耐えかねたようにサーヴァントを擁護する婚約者。それがまたケイネスを苛立たせる。せめてもの救いは擁護対象が女性であることか。男だったら嫉妬で狂っていただろう。

「それに、ほかのサーヴァントも一体だけど確認できたわ。それもセイバーを名乗ってるらしいけど」

「何故セイバークラスが二人いるんだ?一体ずつのはずだろう?」

「いや、マスター。片方はクラスを偽装している。アサシンだ」

「そうなのか?」

確かにセイバーは優良枠だ。他のマスターたちにプレッシャーをかけるにはいい作戦かもしれないが、本物と対峙したのであれば悪手だと思うのだが。

「あぁ、私は彼女達を知っている。・・・・・・知っているが、知ってはいない」

「どういうこと?」

茶を濁すような言い草に、ソラウが聞き返す。メイドオルタはしばらく熟考した後、諦めたように息をついた。

「・・・・・・我々はサーヴァントだ。本体は座にあって、ここに居るのはあくまでも分身であるのは知っているだろう。私は別の場所で彼女たちとあったことがあるかもしれないが、それはあくまで別世界の別の私であり、今の私ではない。向こうからしてみてもそうだ。私のことは認識しているし憎きものだとも思っているだろうが、同一ではない。マスターが違うことによってステータスにも多少の差がありそうだしな」

「なるほど・・・・・・うん?憎きものだと?」

ケイネスは納得するように唸り、そして一部分に引っ掛かりを覚えた。恨みでも買ったのか?

「どうも、私の顔が気に食わないらしい」

「なんだと!?」

フッと自嘲するように笑ったメイドオルタに、ケイネスは激怒した。まさか怒られるとは思わなかったメイドオルタは目をぱちくりとさせる。

ケイネスはそんな彼女も目に入らないようで、怒り心頭といった様子で怒鳴り続ける。

「いけない、それはいけない!能力ならば許そう。環境ならば許そう。だが、人を容姿で馬鹿にするのだけは絶対に許さない!」

メイドオルタとソラウの目がケイネスに向く。正確には体の一部・・・・・・現代技術でもどうしようもない部分に。

「な、なんだ、私の頭には何も無いぞ!」

「・・・・・・そう、だな。ご主人・・・・・・」

「ええ・・・・・・『何も』無いわね・・・・・・」

「ちゃ、ちゃんとあるわボケ!」

憐れむような視線を受けて、ケイネスはエセ関西弁でツッコんだ。ロードの威厳型なしである。

「とにかく!情報を整理するぞ!」

紙!とメイドオルタに叫ぶ。「かみ・・・・・・ふっ」と笑いながら持ってきたそれとペンで、『セイバー(仮)』と大きく書く。

「ひとまずの課題はコイツだな?ライダー、知っている情報を全て出せ」

「それは構わないが・・・・・・先も言ったように、あの時とは違うぞ?」

「構わん」

「承知した」

短いやりとりの後、メイドオルタは全ての情報を吐き出す。セイバーでなくバーサーカーだ、アルトリア顔を見ると斬りつけてくる、セイバーを見ても斬る、名は『謎のヒロインX』だ、かの有名な織田信長と組んでいたことがある、基本的にポンコツである、などなど。ケイネスは頭を抱えた。

「なんだそのサーヴァントは・・・・・・そもそも、そんなやつは英霊でもなんでもないだろう?」

「ううむ、それを言われたら私もそうなのだが・・・・・・」

メイドオルタはどこか後ろめたそうに言い籠もる。・・・・・・この聖杯戦争にまともな英霊(サーヴァント)など居るのだろうか?

セイバー(真)は『英霊になる前の騎士王』である。

ランサー、アーチャー、キャスターは不明。

自分は『騎士王が反転し、なおかつ夏ではしゃいだ姿』だし、

セイバー(偽)(アサシン)は『宇宙から来たセイバーを狙うギャグサーヴァント』だ。

 

メイドオルタは知らないが、ランサーは『残虐非道なドラクル領主』であるし、キャスターは『擬似英霊(デミサーヴァント)』だ。バーサーカーもアサシンと同じくくりであり、唯一まともなのはアーチャーくらいか。・・・・・・第四次聖杯戦争は、平行世界とは別の意味で悲劇の聖杯戦争となりそうである。

「これはもう裁定者案件じゃないの?」

「・・・・・・辞めてくれ、奥方。とてつもなく嫌な予感がする」

「そう?」

「あぁ・・・・・・裁定者(ルーラー)ならまだしも、あのうざったらしい復讐者(アヴェンジャー)やら『みずぎのすがた』やらが来られても困るしな・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

予感というは、悪いほど当たるもので。

 

その日の夜、冬木市の外れで、新たなサーヴァント反応が生まれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっれー?私が呼ばれたんですか?あ、呼ばれたんだワン?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さぁ、全ての(サーヴァント)は今ここに出揃った。

真っ当な英霊など一人としていない。

皆が皆、己のためにその力を振るう狂気の戦争。

いやいや、戦争に正気などあるはずもない。

あるとすればそれは、正気の皮を被った狂気。

 

 

皆を幸せにしたい?

大切な人を守りたい?

人間らしく生きてみたい?

周りのヤツらを見返したい?

 

 

大いに結構。

オレを呼ぶために、どんどん殺し合いをしてくれよ。

 

 

 

(オマエ)願い(希望)叶える(踏みにじる)ために。

今、史上最低で最悪の、くだらない戦争を始めよう。

 




「もう二度とお前なんぞを呼ぶものか。覚悟しておけよ、災厄」


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ウェイバーちゃんの受難withキュアでピースで真っ黄色

「鬼王(笑)」
「朱裸(笑)」
「つーかJAPANならそれこそワシらの出番じゃね?納得いかないんじゃが!じゃが!」
「じゃがじゃがやめなさい、怖い虎が来ちゃうんですから。シャレにならないタイプの」
「というかイベント内でネタバレ乙。BGM仕事しろ」
「ある意味では仕事してるのでは・・・・・・?というか朱裸(しゅら)っていうか(あから)?」
「あぁ、名前はそういう・・・・・・」






なんども略


此度の聖杯戦争唯一の一般人(?)マスター、雨生龍之介は上機嫌だった。

エリザベートのおかげで「作品」にもより多くの工夫ができるようになった。一日に2人の若い女性を要求されるのが難点だったが、夜道を襲えばそれなりにはなる。最近は女性の一人暮らしも増えているし。そもそも、龍之介は異性からの関心を惹きやすいタイプだ。洒脱で剽軽(ひょうきん)、そのくせどこか謎めいた居住まい。蠱惑的で恐ろしい、妖しげな魅力は確かに女たちを惑わした。龍之介はこれをいつでも酒の肴感覚で愉しんでいたし、普段の遊びとは何ら変わらないので大した苦労でもない。それに、エリザベートは妥協すれば一週間に2度でもいいようだった。その分機嫌を取らなければならないが。さすがに毎日のリサイタルは体にクる。

「リュウノスケ!ちょっとこっちきて!」

思考をすれば影。我らがアイドルからの呼び出しだ。喜色ではなく焦りがみてとれる叫びに、龍之介は何事かと首をかしげた。彼女は慌てた様子で「工房」から飛び出してきて、龍之介の手を引く。

「どうしたんだ、エリちゃん」

「大変大変、大変なのよ!私の物なのに!」

どうも要領を得ない。エリザベートの物がどうかしたのか。

急かされるまま工房を覗けば、いつもと変わらず龍之介達の「作品」が並ぶだけだ。うん、数日経ってもCOOLなままでなにより。

「これのどこがおかしいんだ?」

「見えないの!?見えてないの!?いや無いからいいんだけど!!でもなにが見えてるの!?」

「だから、何が?」

「あぁ、もう!これだから人間は!対魔力Aくらいもっときなさいよ!」

彼女は苛立ちを含ませて地団駄を踏む。流石の龍之介も、この言い草にはムッとした。

「なんだよ。その言い方」

「だって事実じゃないの。この有り様が見えないなんて!」

「どんな有り様なのさ。普段通りだろ?」

「だからー!!!!」

半ば涙目で、龍之介のパートナーは叫んだ。

 

「私達の作品が、消えちゃったのよー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕暮れの河原で、蹲る一つの人影があった。

「うげぇ、うぇ、おえぇ、」

嘔吐く声、びちゃびちゃと音を立てこぼれ落ちる汚物。人通りはまだ多く、しかし誰も近づかない。気づかない。気づけない。

「・・・・・・大丈夫か」

眼鏡をかけた長身の男──諸葛孔明は、己のマスターを案じる声をかけた。ウェイバーは未だ気持ち悪そうにしながら孔明を睨みつける。

「な、なん、で」

「『なんで連れていったのか?』『なんでアレがまかり通っているのか?』そうだな、前者はお前に必要だから。後者は相手のマスターが殺人鬼だからと答えておこう。なにかの手違いでマスターになってしまったんだ。サーヴァントは知らないが。・・・・・・キャスターのはずがない、ならばアサシン?あんな残虐な行為を許すのはアサシンかバーサーカーか。ハサンではないようだが・・・・・・」

「なにが、ボクに必要なんだ!あんなもののなにが!」

「お前のサーヴァントが私である以上、彼のあとをなぞならければならん。そうでなくては変わってしまうから」

「っ・・・・・・お前は、一体、なんなんだよ!彼彼って!誰なんだよ、そいつは!!」

ウェイバーの怒鳴り声に、孔明はいつもの癇癪かと思った。確かになんの情報もなく連れていったのには問題があったかもしれない。だが、彼の王の代わりになってしまったからには、臣下としてしっかりとその役目を果たす必要があった。

いつもの通り流そうとして、孔明はそれが間違いであったことに気づく。

 

「もう、嫌だ。召喚したサーヴァントにすら馬鹿にされて、死体とも呼べないような肉塊を見せられて。ボクが一体何をしたんだよ。誰かを見返したいと思ってるのは間違いなのか?ボクのことを見て欲しいと願うのは間違いなのか?・・・・・・相手が殺人鬼?なにかの手違いでマスターになった?ははっ。なんだ、なんだよ。ボクはなんのために時計塔にいたんだ。なんの知識もないような一般人ですらマスターになれるのに。マスターなんて特別じゃなかったんだ。ロード・エルメロイだって参加してる。はなからボクに勝ち目なんかなかった。・・・・・・負けたらどうなるんだろう。時計塔を追い出されるのは確実だよな。アーチボルトに売られて、実験台にされるのかも。殺されるかもしれないな。嫌だな。ボクは見てもらいたいだけなのに。あぁ、でも、そうなったら見てくれるのかな。・・・・・・このまま、勝てないまま、無様を晒すくらいなら。このサーヴァントに振り回されるくらいなら」

 

それならば、いっそ。

 

顔を上げたウェイバーの瞳が陰っているのを見て、孔明はゾッと鳥肌が立つのを感じた。いつでも陣を張れるよう用意をしておく。

(くそっ。どうしたっていうんだ!? 私はこんなに病んではなかったはずだが!?)

ウェイバーは穏やかな顔で右手を掲げた。赤く発光するそれ。魔力を通された証だ。孔明はこれからされることに気づき、静止するために叫ぶ。

「待てっ!ウェイバー!」

「我がサーヴァントよ、ウェイバー・ベルベットが令呪を持って」

 

「なーにしてるんだワン?」

 

場違いな程、間延びした声が響く。ウェイバーは驚いて振り返った。

 

あざといまでの犬耳。

露出の激しい黄色装束。

アルトリア顔。

 

「だ、誰だっ!?」

「誰だかんだと聞かれたら!答えてあげるが私の情け!愛と真実の正義を貫く!ラブリーチャーミーな裁定者!みんなのお姉ちゃんジャンヌ参上!だワン!」

とぉ、と土手から飛び降りる。くるくるくるくっと無駄に三回転半。綺麗に着地した彼女は、キラッと星が飛ぶほどの横ピースで答えた。

「ルーラー・ジャンヌ・ダルク!?なんでそんな格好をしてるんだ・・・・・・!?」

あまりのショックに孔明の眼鏡がずり落ちる。ウェイバーも先程の病み具合はどこへやら、ぽかんと口を半開きにしてジャンヌを見つめていた。

 

「はいはーい、みんな大好きキュアでピースで真っ黄色、神風魔法少女ジャンヌお姉ちゃんだワンっ!てゆーか今回のイベントコンセプト的に私が呼ばれてもいいと思ってるんですけどどう思います?ぷいきゅあですよね?どうせハロウィンなんてギャグイベなんですからぶち込んでいきましょー!ほらほら、最近はまたオリジナルのキャラブレしてるよーですし?ジークくん来ちゃってますし?私呼ばれたいなー!エイプリル来ないかなー!!妹とか弟とか増えてますしー。今ならマリーと百合百合とかも吝かではありません。というわけで実装ハリーハリー。あ、そうそう、令呪での自害とかろくなことになりませんよー?特にあなたの場合は何が起きるわからないですし。だから私呼ばれてますし。でもアルトリア判定ぶっ刺さって死ぬんじゃないですかね、これ。Xさんに目の敵にされてますし。守備宝具もないですし・・・・・・ハッ、逆に考えるんだ。ルーラーもアヴェンジャーもランサーもアーチャーもバーサーカーも全員の宝具を使えると。やったー!ってんなわけないですよねワン。なんで私を呼んだし。いや、現界自体は嬉しいんですけど、こう、存在がゆらゆらってしてるんですよね。ぶっちゃけあんまり役に立たない気がしますワン。つまりこれなら天草四郎時貞の方がまだマシだったのではと。・・・・・・いや、やっぱそんなわけないですワン。というかそっちだけ女帝とイチャイチャできるのに納得いかない。やだー!私もジーク君と遊園地デートしたいー!!コーヒーカップ乗りたいー!観覧車とかも乗りたいー!!ワン!」

 

「な、なんなんだよ・・・・・・」

一人でヒートアップするジャンヌに気圧され、ウェイバーが膝から崩れ落ちる。というかキャスターの言葉が正しければコイツジャンヌ・ダルクなの?こんなのが?こんな露出狂が救国の聖女だというのか???

「は、ははっ」

乾いた笑いが漏れでる。やっぱりこんな聖杯戦争、脱落した方がいいんじゃないかと再び令呪を構え直した時、

「はーいストップ」

そっとその手を包み込まれた。そのままぎゅっと背後から抱きしめられる。柔らかな温もりと優しい声に、ウェイバーの動きが止まる。

「お姉ちゃんの話聞いてました?自害はダメですってば」

「・・・・・・だって、もう無理だ。無理なんだ。勝てないんだよ。僕なんかじゃ。だったらせめて、僕の手で」

「偉い人は言いました。諦めなければ大抵のことは出来ると」

「っ、なんだよそれ!馬鹿にしてるのか!?」

「いいえ」

ウェイバーの涙混じりの怒鳴りに、ジャンヌは優しくかえす。まるで、聖母のような声音に、全てを許されるような言葉に、ウェイバーは知らず温かいものを流した。それは、先程とは違う。怒りではなく、安堵からくるもの。

「頑張りましたね、少年。貴方はよく頑張りました。誰も褒めてくれないというのであれば、私が褒めましょう。私が認めましょう。ねえ、少年。貴方はなぜ、聖杯戦争で勝てないと断じるのでしょう?」

「・・・・・・だって、ボクは弱い。きっと、この戦争で誰よりも。一流の魔術師じゃない。殺人鬼でもない。何も出来ない愚か者が、ちょっと付け上がった結果がボクだ」

「いいえ、それは強さです。弱さを認められるその心、それが貴方の強さです」

「そんなのっ」

「上辺だけの言葉でも。確かにそれは、貴方の強さですよ。少年。貴方のその心だけは、芯だけは、誰にも馬鹿にすることはできません・・・・・・たとえ自分自身だとしても」

それを聞いて、孔明はすこし身動(みじろ)ぎをした。むず痒いし、空恐ろしい。この聖女はふざけた格好をしているくせに、まるで先導者のように人を導く。これが生まれ持ってのカリスマというやつか。

静かに、ゆっくりと頷いたウェイバーに安堵の笑みを見せた後、ジャンヌはぱっと離れる。

「・・・・・・なーんて。こんなの私には合わないんだにゃあ。オリジナルの役目ですよね?これ。私はブレてるうちに色々しちゃう側ですしー?なので煽るだけで留めますワン。さあ少年よ、大志を抱け!他の陣営をメッタメタにしてしまいなさい! 今なら私が味方につきますよ、ルーラー(笑)なので!というわけで今晩泊めてくれませんかワン?」

「まて、オマエうち(じゃないけど)に来る気なのか!?」

「ふはは、私に捕まったが運の尽き!というかこのままでは私が司法に捕まりそうなのでお願いしますワン!」

さー帰りましょー、とにこやかに手を伸ばしてくる。ウェイバーは増えた厄介事に胃を痛めながら、それでもその手を取るのだった。




原作ヒロインが病む回。えっ、ヒロインですよね?
連れてったのが自分なだけにケアが杜撰だったのかも。自分も通った道だから?

イベント!もう好きなキャラが沢山出てきて本当に楽しかったですありがとうございます。
・・・・・・ちょろっと、時間足りませんけど。周回ができない。

神風魔法少女ジャンヌはこれでいいのか・・・・・・?


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エミヤさんちwith修羅場

「虚淵大丈夫か」
「zeroやまど〇ギに慣れすぎて逆に今回が怖い」
「そしてその後に訪れるサンバサンタ」
「運営が積極的に風邪をひかせにきている・・・・・・っ」
「つーかわしのサンタマダー?サンバじゃなくて敦盛なら踊るのじゃが」
「それカルデア燃やされるやつじゃないですかーやだー」
「まあただでさえ暑いボイラー室の隣じゃしぃ?燃やされても今更っていうか」
「そういえば一番最初に燃やされてましたね。燃やされて、凍らされて・・・・・・」
「カルデア『俺が何したってんだ!』」
「色々してますよね???」



懐かしい、音がする。

穏やかで綺麗な海の音だ。

どこまでも深く、全てを包み込んでくれるような、青。僕はそれを眺めていた。

 

懐かしい、声がする。

僕の名前を呼んでいる。

活発な、聴くものに元気を与える声音。後ろから聞こえたそれに、僕はいつも通り笑顔で振り向いた。

 

「──シャーレイ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──ケリィはさ、どんな大人になりたいの?お父さんの仕事を引き継いだら、どんな風にそれを使ってみたい?

 

 

なぁ、シャーレイ。

 

 

──じゃあさ、大人になったケリィが何をするのか、アタシにこの目で見届けさせてよ。それまでずっとキミの隣にいるから。いい?

 

 

本当は伝えたかったんだ。君に、僕の夢を。

 

 

──お願い──キミが、殺して──

 

 

 

シャーレイ。僕はね。

 

 

 

 

正義の味方に、なりたかったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・くそ」

微かに聞こえる鳥の鳴き声。寝起きの衛宮切嗣は悪態をついた。

最悪の目覚めだ。なんで今更、あの時のことを。頭を振ってベッドから降りる。

もう戻れない場所。二度と会えない相手。

いまだに未練があるのだろうか。僕は『機械』でなければならないのに。『衛宮切嗣』という、一切の狂いもない機械でなければ。

最近はあのサーヴァントのせいで狂い始めている。『部品』である舞弥ですらも。そろそろ気持ちを──思考回路を正常に戻さなければ。せめて、聖杯を手に入れるまで。

 

 

アイリスフィールを殺すまで、僕は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございます、マダム」

「おはよう、舞弥さん」

朝食の用意をしていた舞弥は、まだ眠そうにしているアイリスフィールに声をかけた。そばに謎のヒロインXの姿はない。霊体化しているのだろうか?

「アサシンなら、『一日一万回感謝と恨みの聖剣素振り!』と言って外にいるわよ」

「はぁ・・・・・・」

相変わらずよく分からない。

聖杯に呼ばれるサーヴァントは正規の英霊のはずなのだが・・・・・・。到底そんな風には見えないあのギャグの塊のようなサーヴァントを思い浮かべる。故障だろうか?いやまさか、聖杯に限ってそんなことは無いだろう。

舞弥は思考を切りかえ、少し気だるそうなアイリスフィールを気遣う。

「マダム、体の調子はいかがですか?」

「大丈夫よ。彼女が呼ばれた時には欠陥品かと思ったけれど、"全て遠き理想郷(アヴァロン)"は万全のようね」

「それは良かった」

舞弥はホッと息をつく。そうだ。時が来(・・・)るまで(・・・)、彼女(・・・)には(・・)生きて(・・・)いても(・・・)らわね(・・・)ばなら(・・・)ない(・・)それが(・・・)切嗣の(・・・)願いな(・・・)のだから(・・・・)

「ただいま戻りました!」

元気な声が響きわたる。快活に笑う謎のヒロインXが扉を開けて入ってきた。アイリスフィールはそちらを向くと、苦笑いでXに話しかけた。

「おかえりなさい、セイバー。疲れたでしょう?」

「いえいえ、大量の私(謎のヒロインZ)をぶっ飛ばした時ほどでは」

「そ、そうなの」

謎だ。謎すぎる。だが、ツッコんでも理解出来る訳では無い。アイリスフィールは曖昧に微笑み、「朝食ができたようよ」と言った。

「いつもありがとうございますマイヤ!」

「いえ」

舞弥は短く答えると、ちらりと時計を見やった。既に8時を回っている。しかし、切嗣は来ない。

「あれ、マスターは?」

「そういえばまだ来てないわね。またなにかしているのかしら」

それは無い、と心の中で否定した。切嗣が行動を起こす時は必ず私にも何かある。指示はまだ出されていない。単純な寝坊と考えるのが妥当だろうか?

「すまない、遅れた」

やはりそうだったようだ。舞弥は珍しい、と思いながら切嗣の分をよそう。

「おはよう切嗣。寝坊したの?」

「・・・・・・あぁ。全く、油断していたよ。どうやら疲れているらしい」

切嗣はやれやれと頭を振った。舞弥がコーヒーを入れる。

「どうぞ」

「ありがとう」

メイドと主人・・・・・・いや、そんな大袈裟なものでは無い。だが、長年の付き合いを感じさせるそれに、アイリスフィールは僅かに瞳を伏せた。

「・・・・・・」

ガツガツとご飯をかきこんでいたXは、横目でそれを見て箸を置く。

「キリツグ。伴侶は大切にしないと、どこかの騎士にさらわれてしまいますよ」

まるで経験があるかのような物言いに、切嗣は僅かにたじろぐ。

「いや、そういう訳では」

「というか、誰がどんな風にさらっていくのです?」

「例えば・・・・・・そうですね」

Xがアイリスフィールの前に跪く。困惑する彼女の手を取って、そっと甲に口をつけた。

「我が愛しき麗しの姫君よ。どうか、私にさらわれてはいただけませんか・・・・・・みたいな具合ですかね。・・・・・・どうしました?」

黙りこくった3人にXは眉根を寄せ怪訝な声をかける。

「いえ・・・・・・まるで、本物の騎士みたい」

「この前も言いましたが、私は騎士ではありません」

「それじゃあこんなことしなければいいんじゃないかしら」

「それもそうですね」

しかし、格好はふざけているものの、所作は完全に紳士のそれだった。一体どこの生まれなのだろう。そういえばまだ真名を聞いていなかったなと、切嗣はXに問う。

「おい、お前の真名はなんなんだ?」

「謎のヒロインXです」

「違う、そうじゃない」

それが真名だとしたらどこのどいつが生み出した英霊なのか。ヒロインという単語が入っているのだから近代には違いないだろう。

「お前の本当の真名だ。・・・・・・言ってて訳が分からないな」

「・・・・・・私の、真の真名。それを聞いてしまいますか。マスター」

Xの纏う雰囲気が変わる。地雷を踏み抜いてしまったか、と切嗣が警戒し、さりげなくアイリスフィールを背後に庇う。あら、と頬を軽く染めた。

Xは目をつむり、何かをこらえるように、拳を握る。ゴクリと誰かが唾を飲む音が聞こえた。

 

それを合図に、英霊の命は厳かに告げられる。

 

「私は──ブリテンの赤き龍、聖剣の騎士王。円卓を統べし者」

謳われる二つ名。察した切嗣が認めたくないと冷や汗を流す。

「・・・・・・嘘だろ、おい」

だが、それは当たり前のことだった。なにせ触媒は全て遠き理想郷(アヴァロン)。関係の無いサーヴァントが呼ばれるはずもない。まるで騎士のような振る舞いに、『宝具・エックスカリバー』。これでほかのサーヴァントだという方がおかしいだろう。

薄々察してはいた。それでも認めたくない。このような少女が、というのもそうだし、なによりこんなふざけた存在がかの有名な円卓の王だと、信じたくはなかった。

そんな切嗣の気持ちを知ってか知らずか、Xが満を持して告げる。

「そしてなにより、きのこと社長の第一の被害者──アルトリア・ペンドラゴンです」

 

 

 

恐ろしいほどの沈黙が訪れた。

 

 

 

「・・・・・・あれ?何も無いんですか?ほら、もっとこう、『そんな馬鹿な!』とか、『こんな可愛らしく麗しく完璧な少女が!』とか、『流石銀河一のセイバーだ!』とか」

「・・・・・・あぁ、うん。よく聞こえなかったな。いや、真名は(認めたくないけれど)アルトリア・ペンドラゴン──アーサーの女性名だということはわかった。それはいい。いや、よくはないが。今は置いておこう。それで・・・・・・なんだって?きのこ?」

「きのこと社長の第一の被害者です。ちなみに第二はランサーですかね。赤いのと青いのと。赤いのは・・・・・・被害者かどうか謎ですけど」

このサーヴァントをもってしても『謎』。そんなふうに言われる『赤いの』とは一体どのような英霊なのだろうか。願わくば会うことないように。

いや、今はそれよりも、だ。きのこと社長?また電波な発言なのか。そうなのか。

「・・・・・・とにかく、お前はアーサー王なのか」

「ええ、まぁ。ブリテン一、いやさ宇宙一の美少女であり私以外のセイバー絶対殺すウーマンことアルトリア・ペンドラゴンとは私のことですが」

至極真面目に言い募る。大丈夫かブリテン。

「・・・・・・まぁその中の一人なんですけど」

「まてまてまてまて」

ボソリと恐ろしいことを呟く。その中の一人?まだ大量にコレがいるのか?

切嗣は「ふぅ・・・・・・・・・・・・」と長いため息をついた。これ以上聞いていると胃に穴が空いてしまいそうだ。アイリスフィールが優しくその背をさすった。

「もういい。この話はここまでにしよう」

「はぁ。了解しました、マスター」

頭を抑える切嗣にXは答えた。「大丈夫ですか?」と気遣いも忘れない。大丈夫じゃなくなった原因が自分ということは気づいてないらしいが。

「それで、今日はどうします?セイバーを殺しますか?アルトリアを殺しますか?」

「まずは他陣営の確認だ」

切嗣は思考を切り替える。騎士王のくせに外道戦法を使おうとし、正規の英霊であろうはずもないこのサーヴァントとは、電波な発言さえしなければ充分に付き合って行けるだろう。その条件が今のところ絶望的なのだが。まあ、それさえ分かればいい。どうせ終わったあとには何も残らない関係なのだから。

「言峰綺礼と名乗ったあの男はセイバーのマスターのはずだ。他の御三家である遠坂とマキリは確実に参加しているだろうし、時計塔のロードであるケイネス・アーチボルトがあの場にいたもう一体のサーヴァントのマスターであることも裏が取れている。アサシン、お前は何か知っているか?」

「私はセイバーで」

「アサシン」

眼光鋭く睨みつける。Xは僅かにたじろいだ。

「お前の主張も多少であれば認めよう。だが、今は作戦会議中だ。お前はアサシンで、セイバーはあの白いサーヴァントだろう」

うっ、と言葉につまった。

謎のヒロインXはセイバーである。それが彼女の存在意義であり、そうであれとプログラムされている。

だが、それはあくまで『お遊び時空』のもの。こうも真面目にやられてしまえばXもふざける余地はない。

「ほら、セイバーが2人もいたら混乱してしまうでしょう?」

アイリスフィールがフォローするように言葉を入れる。Xは目線をそらし、

「・・・・・・白いセイバーは、アルトリア・ペンドラゴン・リリィ。私の弟子です。ライダーはアルトリア・ペンドラゴン・オルタが水着を纏った姿です」

「リリィとオルタ?」

「ええ。幼い頃と、黒化・・・・・・ううむ、まぁ両方ともアルトリア・ペンドラゴンの一側面だと思ってもらえれば」

「一側面?」

「クラス適性はご存知ですよね?」

「あぁ」

当然だ、と頷く。

と、アイリスフィールは何かに気づき首をかしげた。

「・・・・・・アーサー王って、アサシンクラスの適性を持っているの?」

「・・・・・・いや」

持っていないはずだ。むしろ、持っていたらおかしい。

例えば、ランサーならばロンゴミニアドがある。騎士なのでライダー適性もあるだろう。多少無理を通せばキャスターで喚ぶことも可能なはずだ。魔術師マーリンが師であったのだから。

だが、アサシンとは。

騎士道精神溢れるあの物語の主人公が、アーサー王が、よもやこそこそと闇討ちをするだなんて到底思えない。

懐疑の目を向ければ、Xが気まずそうに目を逸らした。

「いやぁ、私は四月馬鹿で生まれたサーヴァントですしぃ・・・・・・?そんな真面目に考察されても困ると言いますか・・・・・・」

「四月馬鹿で生まれた???」

「ええ、まぁ。何故そっちに本気を持っていった、と言いますか。んなことしてる暇あったら月姫リメイクはよしろや、と言いますか。いえまぁ型月のお巫山戯は今に始まったことでもありませんけど・・・・・・」

「ツキヒメ?カタヅキ?」

「あぁいえ、こちらの話です」

先程からごにょごにょと言葉を濁す。理解できないと切嗣は苛立ちを隠そうともせず問い詰めた。

「エイプリルフールだのお巫山戯だの、本当にお前は一体なんなんだ。そんなやつが簡単に英霊になってたまるか!」

「だから、文句はきのこと社長に言ってください!私だって被害者です!」

「じゃあそのきのことやらを連れてこいよ!いいか、僕達はこの戦争に必ず勝たなきゃいけない。そういう契約だ。ふざけてないでお前にできることを全て伝えろ、アサシン!」

「何度も言いますけど私は、セイバーです!!!セ・イ・バ・ー!!誰が、なんと言おうと、私は、謎のヒロインXはセイバーだ!私だけが唯一の剣で、赤だの黒だの桜色だの果てはクラスチェンジだの!!増えに増えたセイバーを減らし、正しく戻すのが私の役割なんです!」

「お前の役割なんか知ったこっちゃないさ!」

 

 

 

怒鳴り合う二人を横目に、久宇舞弥は拙いと考えた。彼の思考が人間になってしまっている。激昂している。感情が昂っている。機械の彼ならば、無視をして話を続けただろうに。『相性が良さそうだ』なんて割り切れたかもしれないのに。あぁ、鎮めなければ。

オロオロと、どちらにつけばいいのか迷っているアイリスフィールを見る。彼女がいる。もしコレをすれば、問題になるのは確実だろう。

それ、でも。

私が、本当に、彼の、衛宮切嗣の。

 

「切嗣」

 

首に手を回し、こちらを向かせる。そのまま唇を重ね合わせた。

「なっ・・・・・・!」

「・・・・・・っ!!」

驚く2人。当然だろう、と冷静な頭で考えた。舌を絡め、歯茎をなぞり、蹂躙する。熱の篭もっていた瞳が落ち着いた色に戻った。「落ち着きましたか、切嗣」

「・・・・・・あぁ。助かったよ、舞弥」

「いえ、私は部品ですので」

アーチの出来た口を乱暴に拭い、切嗣は後ろめたそうな表情(かお)をした。舞弥がアイリスフィールを見れば、苦しそうな、それでいて諦めたような、なんとも言えない顔をしている。

「・・・・・・っ、ねぇ、切嗣」

「・・・・・・なんだい」

「・・・・・・舞弥、さん、とは、その、そういう」

「いいえ、マダム」

舞弥は声を上げた。確かに関係としてはそうかもしれないが、そこに愛は存在しない。所詮舞弥は練習台でしかなく、それをした理由故に、今切嗣とアイリスフィールの関係が悪化するのは避けたかった。

「うわー引くわー」

そんな空気をぶち壊したのはXだった。割と真面目にドン引きしており、切嗣に非難の目を向ける。

「妻の目の前で他の女とキスした挙句フォローは女性とか、ないわー」

「ぐっ・・・・・・」

曲解とはいえ事実なので言い返せない。アイリスフィールが涙目になり始めた。

「なんですか。アインツベルン城でイリヤスフィールに見せていた父親の顔は、不器用ながらもアイリスフィールを気遣う夫の姿は、全て偽りだったのですか?」

Xの物言いに、流石の切嗣もカチンとくる。彼はきちんと家族を愛している。

だから、

 

「そんなわけないだろう!僕が、僕が世界でただ一つ愛してるのは!」

 

僕の家族だけだ、と。

 

 

言おうとして、言葉は紡げなかった。

──海の、音がする。

やめろ。ダメだ。やめてくれ。

──彼女の、声がする。

違う。違うんだ。僕は、僕はアイリたちを。

──いずれ裏切るのに?

 

そうだ、僕は彼女を、この聖杯戦争で、勝って、理想で、全て、あぁ、殺せ、殺さなければ、人形を、壊して、アイリ、アイリ、愛しい女性、イリヤ、可愛い娘、ダメだ、妻を殺せ、母を殺せ、人形を殺せ、今更だ、戦争を終わらせろ、嫌だ、違う、僕は機械だ、遂行すればいい、あぁ、違う、違う、違うやめろやめろやめろやめろやめろ!!!!

 

「マスター?」

心配そうな声で、引き戻されて。

「っ、あぁ、なんでもない。馬鹿を言うなよ、アサシン。僕はきちんと彼女たちを愛している。舞弥は、娘のようなものだ」

「娘とキスを?」

「いや、それは」

「アサ、セイバー。もういいのよ」

Xの追求を止めたのはアイリスフィールだった。悲しげに眉を寄せ、それでも仕方ないと笑う。

「切嗣は私たちを愛してくれてる。事実だわ。舞弥さんとは・・・・・・そう、スキンシップのようなものよ」

だから、大丈夫、と。

Xは不服気に、それでも「アイリスフィールが言うなら」と引く。舞弥は無表情のままだ。

「・・・・・・アイリ」

「大丈夫。分かってるわ。だから、」

その口を、切嗣は塞いだ。

 

何をしていると理性が切嗣を批判する。感情に振り回されるな。お前は冷徹でいろ。コイツは終わりに殺さねばならない。

うるさい、黙れ。僕の謝罪だ。僕の愛だ。理性が言う。あぁ、壊れているな。そうだとも。サーヴァントがおかしい時点でここの僕は壊れているのさ。どうせ壊れるならとことんやってしまえ。馬鹿な。戻れるかもしれないのに。戻って何になる。僕は彼女を殺す。そうだ。だからそれまでに感情を抱く。殺す時に泣けるように。殺す時に愛せるように。理性(切嗣)がいる限り感情は抱けないぞ。分かってる。分かってるさ。それでも僕は。

 

「んん」

「・・・・・・すまない」

息苦しそうに胸を叩かれて、切嗣はアイリスフィールを離した。アイリスフィールは先程と違う理由で目を潤ませている。

「なんで、」

「僕が君を愛していることの証明だ」

「だって私は」

「それでもだ。僕は君を愛すと決めた」

──同時に、君を殺すとも。

それは口に出さず秘めておく。

真っ赤な顔のアイリスフィールが、恥ずかしそうに口を開けた。

「わ、私、も、その、ね?」

「・・・・・・あぁ」

 

「わぁお。やりますねマスター」

「・・・・・・」

三者三葉の表情を浮かべる女性陣に、切嗣はどう収集をつけるか考えた。

今日一日は作戦会議が出来なさそうである。

(・・・・・・まあ、いいか)

自分の理性と感情と、周りの関係くらいならば、問題は無いだろう。

切嗣は全てを背負うと決めたのだ。

 

たとえこの世の悪全てだろうと(・・・・・・・・・・・・・)

 

それに比べたら、この荷物達は、とても、軽い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どろりと。

 

ナニカが、蠢いて、形作って、そして。

 

「オレのこと、喚んだかい?」

 

目を、覚まして。




あーあ。喚ばれちまったらしょうがねぇよなぁ?
星0でいつまでもいない子扱い、最弱英霊のオレが来ましたよっと。
ま、運命ってやつ?たとえ平行世界でもオレはいなくならないって話でさぁ。
さてさて、まだ見ぬマスターさんよぉ。

アンタはオレに、何を望むんだい?























































メリークルシミマス、上裂です。

ぶっちゃけ書いてて何書いてるか分からなくなりました。
切嗣ってこれでいいの・・・・・・?というか割と真面目に収集つかなくなってしまった・・・。
・・・・・・短編、ですから。ですです。

虞美人に一目惚れしました。虚淵シナリオ好きすぎんよ・・・・・・本当に、あんな話が書きたいものです。
虞美人に一目惚れしました。引きました。やったァ!!!!
虞美人に一目惚れしました。項羽様福袋で引くつもりだったのに・・・ごめんなさい先輩。
虞美人に一目惚れしました。虞美人に一目惚れしました。
これだけ伝えたので満足です(満足)
縦セタメガネ三つ編みは良い文明・・・・・・っ。


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雁夜おじさんの気づきwith桜ちゃんのトラウマ

「ドジっ娘紫式部」
「訪れるフルボイス」
「ノッブの無駄にいい声帯がいろんなマスターをおそう!」
「おっお前無駄ってなんじゃ無駄って。声帯って言うの生々しいからやめんか」
「いや事実ですし」







みんな声が良くて困る・・・・・・


「マスター。起きてください、朝ですよ」

優しく、声をかけられた。シャッと音がして、瞼を閉じているのに明るくなったよう感じる。カーテンが開けられたのだろう。献身的なことだ。でもやだ眠い。間桐雁夜は自身の欲望のまま布団に潜りこんだ。

「マスター。起きてください、朝ですよ」

「・・・・・・」

痛みもなく眠れたなんて、いつぶりだろうか。いや、そもそも眠るという行為自体がいつから出来なくなっていたのか。三大欲求の内三つともまともに出来なかった雁夜は、この本能を手放す気はなかった。ふかふかの布団で何も心配せずに眠れる。あぁ、最高。ビバ平和。

「マスター。起きてください、朝ですよ」

「・・・・・・」

たとえ三回目の呼び掛けだろうと、雁夜は応じる気は無い。今までこのサーヴァントに振り回されてきたのだ。たまには休息をとってもいいでは無いか。特に、今は聖杯戦争中なのだし。

「・・・・・・マスターがその気なら」

ガチャりとドアが開く音がして、バタンとしまる。どうやら出ていったようだ。これで安心して惰眠を貪れる。

と思ったら、直ぐにまたドアが開いた。何を持ってきたのだろう?

 

「・・・・・・おじさん、起きて?」

 

雁夜は激怒した。必ず、かの邪智暴虐のバーサーカーを懲らしめねばならぬと決意した。雁夜にはバーサーカーに従う利点がわからぬ。雁夜は、バーサーカーのマスターである。台を拭き、和菓子を作って暮らしていた。けれども桜の声に対しては、人一倍敏感であった。何が言いたいかってつまり狡い。

雁夜としては桜の呼びかけでも起きたくはなかったのだが、でも桜の『起きて?』だ。これで起きなくてなにがおじさんか。おじさんと言われるのも嫌だけれども。どちらかと言うとパパって呼ばれたいななんて。

雁夜が煩悩を垂れ流していると、Xオルタが痺れを切らしたらしい。布団を剥ぎ取り放り投げると、せーの、の掛け声とともに

 

「「くぅくぅおなかがなりました」」

 

「おい馬鹿やめろ!!!!」

雁夜は飛び起きた。それはまずい。ヤバい。何がやばいってやばいことしか分からないのがやばい。トラウマレベルにやばい。・・・・・・いや良く考えれば俺関係ないはずだよな?雁夜は訝しみ、桜の方を恐る恐る向く。

なんかふよふよと人形らしき何かが浮いているのが幻視できた。桜を成長させたような少女がドレスを着て、人形が弾けて、あめだまを口に放り込んで、食べて、飼育箱で、虫が、臓硯が、甥っ子が、あ、ああ、ああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────気づけば、ベッドの上だった。

「はっ、俺は一体!?」

「気づきましたか、マスター」

「・・・・・・大丈夫?おじさん」

「あ、あぁ・・・・・・」

ズキズキと頭が痛む。何か悪い夢でも見ていたようだ。ゆっくりと起き上がれば、無表情ながらに心配そうな二人が見える。とてもよく似た表情(かお)をしていて、雁夜は苦笑した。なんの間違いでバーサーカーが喚ばれたのかと思ったが、なるほど。桜の縁に引かれてきたのかもしれない。

「本当に大丈夫ですか?後遺症などはありません?」

「あぁ、恐らくは。ってか、何があって俺は・・・・・・?」

「・・・・・・思い出さない方がいいと思います」

スっとバーサーカーが目を逸らした。桜にもふいとそっぽを向かれる。ええっ!?と驚きを露わにする雁夜を尻目に、バーサーカーはもう二度とあの手は使わないことに決めた。次は「馬鹿な人」とかどうだろうか。

「・・・・・・!?」

覚えのないトラウマが雁夜を襲う。桜は小首を傾げた。可愛いから許す。

「それで、どうしてこんなに早く起こしたんだよ」

「マスター。こんなにとは言いますけど、もう9時ですよ?お腹が空きました」

「そ、そうか。それは悪かった。直ぐに作る・・・・・・あ?」

「マスター?・・・・・・っ!?」

「・・・・・・ぁ、ぁあ、」

ピクリと、雁夜が何かに反応した。Xオルタの呼びかけにも答えない。

ビリビリと肌を走る魔力の波。禍々しく、全てを呑まんとする魔力の暴力。才能のない雁夜ですら感じ取れるのに、桜にとっては如何程だろうか。ガタガタと身体を震わせXオルタに抱きついている。当然だろう。桜にとって、最早魔術とは忌むべきものだ。自らを食し、犯し、凌辱し、なお足りない。彼女にとって魔術とはそんな認識であり、今まで落ち着いていたのはXオルタと雁夜の存在があってこそ。どうやら臓硯もいないようなので(・・・・・・・・・・・・・・・)ようやく元に戻れるかと思った矢先にこれだ。

(くそっ・・・・・・どこのどいつだ、桜ちゃんを怖がらせやがって!ぶっ飛ばしてやる!!)

「バーサーカー!出処はわかるか!」

「はい、これだけの規模です。辿っていけば自ずと」

「今すぐ行くぞ!」

「ですが・・・・・・」

Xオルタは金の瞳に不安を乗せて桜を見た。可哀想に、とても怯えてしまっている。彼女をこのままにしておくなんて出来るはずがない。

(桜ちゃんを連れては行けない。だけど、俺達は行かなくちゃならない)

できることならここでじっとしていたい。だが、これは聖杯戦争だ。逃げ続ければはい終わり、なんて簡単にいくシロモノじゃない。

(それとも各陣営の潰し合いを待った方が早いか・・・・・・?いや、だめだ。遠坂時臣は油断ならない。何より俺には情報が足りない。遠坂時臣のサーヴァントは何なのか、他のマスターがどんなやつなのか、今の戦況はどんなものなのか。そもそも俺の魔力だっていつまで続くかわからない。何もかもが足りない、俺には!)

ダンッ!と拳を壁に叩きつける。桜がビクリと飛び跳ね、Xオルタが非難の眼差しをむける。悪い、と一言呟いてから、雁夜は頭をかきむしった。

(なんだ。何してんだよ、俺は!桜ちゃんを護るんだろ!?怖がらせてどうするんだよ!冷静になれ、間桐雁夜!考えろ、どうすればいい!どうすれば桜ちゃんを護りながら戦争に勝てるんだ!?)

今なお魔力は膨れ上がり雁夜達の肌を刺す。これだけの量だ、恐らくはサーヴァントなのだろう。宝具解放でもしているのかもしれない。

(・・・・・・もし・・・・・・もし、俺にこれだけの魔力があれば(・・・・・・・・・・・・・)

彼女を護りきれるのに。

そこまで考えて、雁夜は動きを止めた。頭の中を隅から隅まで探して、引っ張り起こして、あぁ、見つけた(・・・・)

主な間桐家の魔術は操ることである。代表が臓硯の扱う虫であるし、この前までは雁夜も扱えた。だが、それだけではない。

 

 

 

間桐の属性は吸収である(・・・・・・・・・・・)

 

 

 

(・・・・・・いやいやいや。何を馬鹿なことを考えているんだ、俺は。11年前に出奔して、今までろくに魔術を学んでいなかった俺が、そんなこと出来るわけないだろう)

 

そもそも他人の魔力を吸収するなど。吸血鬼となんら変わりない。馬鹿馬鹿しい。ありえない。俺なんかに出来るわけない。練習をつんだわけでもないし。

まさか、他人をプロデュースすることが大得意(・・・・・・・・・・・・・・・・・)なやつがいるわけもあるまい。

それでも、一度思いついてしまったものは中々離れてくれない。そうしているうちにも桜は怯える。悲しむ。ダメだ、ダメだダメだダメだ!もっと、もっといい考えを!

 

──そして、あまりに呆気なく、魔力の痕跡は消えた。

 

「は?」

「え?」

「・・・・・・ぅぁ?」

まるで、シャボン玉が弾けるかのように。先程まで雁夜達を襲っていたモノは、最初から存在しなかったように消え去った。

「・・・・・・誰か脱落した、ってことでいいのか?」

「・・・・・・とりあえずサクラを部屋に運んできますね。ご飯の用意をお願いします」

ちゃっかりそんなことを言って、Xオルタは桜を抱き抱え部屋から出ていく。

「・・・・・・なん、だったんだ・・・・・・」

後には呆然と言葉を漏らす雁夜だけが残された。

 




深夜と徹夜テンションで書きあげたよ!やったね!!!
あとHFの鬱も多少入ってるよ!!わーい!!!

ホントにこんな感じなのかは知らないよ!魔術とかからっきしだし捏造マシマシです。桜ちゃん怯えるのかな?どうだろ。なんでもいいから一緒にあめだま食べよ!!!ワカメ味とレモン味なんてどう?



バレンタイン!みんな!声が!いい!あと虞美人先輩そういうとこだぞ!!!
メカエリチャンⅡ号で笑いました。なんなんあの演技力。
茶々様ずるい・・・・・・そんなん・・・・・・ずる・・・・・・。
ふちょうのしんもーしょんがくるってるなとおもいました。ばーさーかーぽくていいとおもいます。まる。



多分後日このあとがき書き直すんじゃないかなとは思います。・・・・・・書き直すのかな。どうだろ。


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関係複雑骨折地点 マッケンジー家

「プリマドンナが許されるなら敦盛も許されてしかるべき」
「寝言は寝て言って下さい。シナリオの綺麗さが違うでしょうよ」
「よく林檎はアレ通したの。八割裸じゃろう」
「いやぁ今更では?ノッブだって裸マントのくせに」
「見えてないからセーフ。というか復刻の復刻マダー?超絶可愛いウルトラグレート魔王な炎上系美少女サーヴァントを待ち望んでるマスターもたくさんいるとわし信じてる」
「似合わないですやり直し。アレは小悪魔(CV下屋)がやるから可愛いんですよ。ノッブとか(笑)超絶可愛い(笑)ウルトラグレート魔王(笑)美少女(爆笑)」
「いやほら、ぐだぐだエースきてるから多少はネ?」
「沖田さん大活躍なぐだぐだエース、ぜひ買ってくださいね!」
「ダーオカに人気とられてる人斬り(笑)が何か言っておる」
「弟に人気とられてる姉(笑)が何か言ってますね」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「「・・・・・・上等!!」」





宣伝乙。タイトルやっぱり思いつかないんですよ・・・・・・。


まだ見ぬ先へ。

 

幻の海を求めて。

 

さあ行こうぞ、我が同胞よ。

 

我に続け。我に続け。

 

まだ見ぬ先へ。

 

幻の海を求めて。

 

さあ行こうぞ、幻想(ゆめ)見るもの達よ。

 

我に続け。我に続け。

 

──いざ、浪漫のオケアノスへ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

土地を荒らされた国がある。

だが、荒らした王は何をするでもない。

何故、と問うた。

何故このようなことを、と。

王は答えた。

通りたかったからだ、と。

国の民は激怒し、悲しみ、そして項垂れた。

通りたかったと。

ただそれだけのために、我らの土地は、国は、魂は、蹂躙されたのかと。

ここを通り、何処へ行くのか、と問うた。

王は答えた。

いまだ見果てぬ夢の夢、オケアノスだ、と。

国の民は絶句し、呆れ、そして嘲笑った。

そんな御伽噺を追いかけ、はるばる遠方より来たのか、と。

王は答えた。ただ、呵呵と笑いながら。

おうともさ、と。

そうして王は去っていった。

それから幾日かが過ぎた頃。

誰かが呟いた。

 

あれは、我らの忘れていたものだと。

 

あれは、我らの夢なのだと。

 

 

さあ、武器をとれ。馬に乗れ。かの王を追いかけろ。

王とともに、東の果てへ。まだ見ぬ先へ。見果てぬ夢へ。

いざ行かん、それが男の運命(さだめ)ならばと。

我らが浪漫の、オケアノスへ!

 

 

 

 

 

 

 

 

サーヴァントとマスターは、ときたま繋がることがある。サーヴァントの生前を、マスターが夢として体験するのだ。

「・・・・・・王、か・・・・・・」

ウェイバー・ベルベットは、ベッドに寝転びながら今見た夢を反芻(はんすう)していた。

馬に乗った、王と呼ばれる赤髪の大男。到底アレを諸葛孔明だとは思えない。そもそも彼は軍師であって王ではない。

かといって、今の夢が自分の何かだとも思えない。最近は伝記も読んでいないし、やはりサーヴァントの記憶なのだろうか。

「見たのか」

「うわぁっ!?」

スっと音もなく現れた自らのサーヴァントに、ウェイバーは悲鳴をあげた。孔明は不快そうに眉を寄せる。

「・・・・・・何を驚いている」

「ば、ばばばばかっ!いきなり霊体化を解かれたらビビるに決まってるだろ!」

「・・・・・・はぁ」

孔明はさらに眉間に皺を寄せ、こめかみを抑えた。過去の自分はこんなにもビビりだったか?だったな。

「と、ところでっ。今の夢はなんなんだよ!見たのか、ってことはお前知ってるんだろ?」

「・・・・・・さぁな。貴様が意味ありげに『王、か』などと呟いていたから」

ス、と目線そらす。正直な話、何故ウェイバーが例の夢を見たのかは孔明にも分かっていなかった。自分の夢を見られてもそれはそれで困るが。

稀代の軍師・諸葛孔明。征服王・イスカンダル。本来は全く関係の無い偉人である。色々あって己の体に諸葛孔明がいるからこそ、エルメロイ二世は英霊として登録されているわけだし。

「アイツ、オケアノスを求めてた。・・・・・・征服王イスカンダル、なのかな」

「・・・・・・」

孔明は答えない。ウェイバーは不機嫌そうに眉を寄せた後、「シャワー浴びてくる」と言った。

ぱたん、とドアが閉まり、孔明は一人取り残される。

「・・・・・・はぁ」

 

「たっだいまー!シリアスな空気を察知しました、ジャンヌお姉ちゃんだワン!というか今更ですがこの語尾あのキャットと被ってるんですよねー。うむむ、新たなキャラ付けが必要ですか・・・・・・?」

 

「帰ってきたな聖女もどき・・・・・・っ」

疲れ切った顔の孔明があからさまに嫌そうな顔をした。自分がいる時点で手遅れかもしれないが、孔明が参加していた時は彼女どころかルーラーなんぞ喚ばれていなかった。本来の時空からの乖離も甚だしい。テンションも鬱陶しいし、そもそも孔明はアルトリア顔が苦手である。なぜ未熟な己はコイツを拾ったのか。

「む、もどきとは失礼な。本来であれば私だってちゃんと裁定者(ルーラー)なんですよ!現に今もパトロールしてきましたし。まぁ今回の現界では聖杯リソースがあんななのでごにょごにょ〜っとしてるわけですが。・・・・・・まだ完成しきってないからいいものの、あんなん一体どうすればいいんですか・・・・・・星/Zeroとか最弱英霊とか嘘乙って感じです。そもそも強い弱いの次元で語っていいモノでは無いでしょうに」

「・・・・・・お前も気づいていたのか?」

「舐めないでください、当たり前です・・・・・・と言いたいところですが、気づいた理由はリソースの質ですかね。私にマスターはいないので、聖杯から直にくるんですが・・・・・・あはは、正直キッツいです」

全然そんな風には見えない。が、細かく観察してみれば、笑みをつくる頬は引きつっている。語尾をつける余裕もないようだ。そういえば、拾ってくれと言った割に常にどこかへ行っているなと孔明は思い出した。

「・・・・・・クソっ、そうか。コイツは聖杯に喚ばれてるのか。・・・・・・ちっ、厄介なことになった」

「すみません。・・・・・・しかし、本当にルーラーで良かったです。彼は・・・・・・いえ、アレはまだ枠に嵌っていません。アヴェンジャーですとちょっとクラス相性的にアレでしたけど。今はまだですし。私がなんとか抑え込んでますから、黒化しないように見張っててくださいね?」

たはー、とジャンヌは頭をかく。まさかコイツ、そのために接触して・・・・・・?と孔明が訝しんだ。正直な話、それを聞いてしまえばこの聖女もどきを倒すしかない。だが、彼女は『抑え込んでる』と言った。このような例は初めて体験するため、彼女という器を壊してしまえばどうなるのかはわからない。黒き魔力も共に消滅するのか、それだけは残ってしまうのか。

「・・・・・・やってくれたな」

「いやぁ。ぶっちゃけ、一番頼りになりそうなの貴方ですから。他陣営に助けを求めることはできませんし」

 

だから、よろしくですワン!

 

「・・・・・・はぁぁぁ」

おちゃらけた表と苦しむ裏。孔明には読めてしまうそれ。・・・・・・あぁ、やはり苦手だ。

孔明は今日一番のため息をついた。

 

 

 

 

 

そして、

 

 

 

 

「・・・・・・!」

「クソっ、どうして次々と厄介事ばかり!」

ドタドタと階段をかけ昇る音がして、部屋の扉が乱暴に開いた。顔を真っ青に染めたウェイバーが怒鳴る。

「な、なんだこれ!なんだこの魔力!!」

「どこぞの馬鹿野郎が宝具でも解放したんだろうよ、真面目(冗談抜き)にな!おい、魔力を追え!いまこんなものを垂れ流しにされたらナニが起きてくるか分からんぞ!」

「起きてくるってどういう意味だよ!?ってか行く気なのか、この中心に!?どうせボク達以外にも反応してる奴がいるはずだろ!そいつ等が勝手に潰しあってくれるのを待ってた方が絶対にいい!」

「あぁクソ、コイツまだ聖杯狙ってるんだったっ!とりあえず私の言うことを聞け!理由は後で説明する!」

「お前はいつもそうだ!なんだよ、ボクがマスターだぞ!お前こそボクに従えばいいだろ!」

「ええいこのバカ!未熟者!鰻玉丼食べすぎて死んじゃえ!!!」

 

「静かにしなさい!!」

 

ウェイバーと孔明の口論がおさまる。怒りの表情を見せたジャンヌが手を叩いた。

「己同士で争って何になるというのです。さぁ、早く行きますよ。基本は不干渉でなくてはいけない私ですが、流石にこの量は見過ごせません。おそらく近隣住民にも被害を及ぼすでしょう。ルーラーとして、ペナルティを与えに行きます」

ウェイバーと接触した時点で不干渉も何も無いだろう、と孔明が嘆息した。

──ルーラーとは本来、聖杯戦争を守るために喚ばれるクラスである。部外者を巻き込むなど規約に反する者に注意を促し、場合によってはペナルティを与えたりすることで聖杯戦争そのものを守りきるためのサーヴァント。中立の審判とすら呼ばれ、それ故に所謂『聖人』の英霊が当てはめられやすい・・・・・・そのはずなのだが。

「・・・・・・って、己同士?ルーラー?」

「何を今更。最初に出会った時にルーラーだと名乗ったでしょう?」

「あの時は色々混乱してたんだよ!その後もお前がグイグイ来るから忘れてたし!」

「つまり己のせいだろう。自分の失敗を他人になすりつけるとは感心しないな。これだから自尊心だけ高いやつは。そら、さっさと行くぞ」

シレッと罵倒してから孔明は出ていった。己同士ではのところを追及されると面倒なことになるからな、と独りごちて。

「アイツ・・・・・・!」

「まぁまぁ。まずはこの事態を解決するのが優先です。上手く出来たらご褒美あげますからねー」

「馬鹿にするな!」

子供扱いにキレたウェイバーも早々に部屋を出ていこうとして、少し眉を寄せた。

 

「そういえば、あのふざけた語尾、無くなったんだな。何かあったの?顔色も悪そうだし」

 

──ジャンヌは、僅かに目を見開いて。

 

 

 

 

「・・・・・・ウェイバーさん、もしやあの語尾が気に入ってるとか倒錯した趣味をお持ちですワン?」

 

 

 

 

「もういい黙ってろお前!!!」

 

お前が使ってたくせにー!と半泣きのままウェイバーは階段を駆け降りていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・いやぁ。流石、腐ってもロードさんの少年期です。あ、腐ってもって言っちゃダメだったかワン?──さて、と」

 

一人取り残されたジャンヌは、体の調子を確かめるようにぐるぐると肩や首を回す。

時折内部に走る気持ち悪さに顔を顰めながら、それでも笑顔をつくりあげた。

 

 

「──私も裁定者(ルーラー)として、きちんと勤めを果たしませんと、ね」

 

 

例え、間違いだらけの聖杯戦争だとしても。

 




だから魔術についてからきしだって言ってるでしょ!!ギャグなのに大風呂敷広げてどうするんですか!!!第3のドゥスタリオン号になりたいの!!!???


CCC良き・・・・・・つらみ・・・・・・(語彙力ない腐女子風味)
えっ、えっーーー!!!!2回目だけどやっぱすげぇいいですよねー!!!!
BBちゃんは天使だしメルトリリスは天使だしパッションリップは天使だしキャットもスズカフォックスも天使。うーんハクノ先輩ぶち込みてぇ。
BB/GOのスロットが好きです。決してMでは無い、Mではないよ?
そしてCBC。アラフィフが腰痛来たからBBちゃんが延期してあげた説は本当に笑った。
アマサリかっけぇ・・・・・・やべえ・・・・・・コレは、これはもう交換するしかないのでは???
あとCBCだよね?オトコノコだよね?(ある礼装を見つつ)
この後インド来るんですよねぇ・・・・・・頑張りましょうね!!(諦め)










※本編のシリアス(?)をぶち壊すようなボツネタがあります。気をつけてください。
























































ウェイバーの部屋で聖女が泣き崩れていた。
「・・・・・・は?」
「・・・・・・ぐす・・・・・・うぇぇ・・・・・・つら・・・・・・」
「おい、どうした?」
あまりに尋常でない姿に、思わず孔明も心配そうな声をかける。
なにかあったのだろうか。・・・・・・もしや、聖杯の魔力に呑まれて・・・・・・っ!?
いつでも陣を張れるよう警戒する孔明に、
「・・・・・・て」
「おい?」
「・・・・・・君が・・・・・・ぎて」
「ハッキリしろ、おい!大丈夫か!」
ジャンヌがバッと顔をあげた。涙やら鼻水やらでぐちゃぐちゃになった顔に、孔明がギョッと飛び退く。

「シ゛ーク゛く゛ん゛か゛ぁ゛!!か゛っ゛こ゛よ゛す゛き゛て゛ぇ゛!!!!!」

「・・・・・・は?」

「あ゛ん゛な゛し゛ん゛し゛も゛と゛き゛と゛つ゛き゛あ゛っ゛て゛ほ゛し゛く゛な゛い゛け゛と゛ぉ゛!!!!て゛も゛シ゛ーク゛く゛ん゛か゛!!!!!シ゛ーク゛く゛ん゛か゛ア゛ポ゛い゛か゛い゛て゛イ゛ヘ゛ン゛ト゛に゛ぃ゛!!!!!!!!!!!」

「わかったわかった何一つわからないけど分かったからとりあえずうるさいから黙れ!!!」







ここのジャンヌはジークくん大好きです。神風魔法少女ジャンヌだからね、仕方ないね。アストルフォ君ちゃんにヒロイン枠取られそうだから成ったわけですし。


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絶対偶像崇拝 エリザベート・バートリー

「最初はまたわしらのイベ(ぐだぐだイベント)かと思ってたんじゃが」
「そんな予想を軽々しく飛び越え始まるシリアス」
「いやほんとあの新キャラだけが救いじゃね?殺生院が仲間とかいつ後ろから腹に仕舞われるか」
「というか徳川こそ沖田さんの出番では?何故桜顔増えてるんです???」
「第三代だっつってんじゃろ」
「イベント自体は楽しいんですけどねー。AP1とロード時間が地味にうざくてですね・・・・・・」
「そしてそんなシリアスの中始まるエイプリルフール」
「沖田さんわりと序盤の敵なの納得いきません!星五のスーパー美少女セイバーですよ!?」
「ぬかしおる」
「は?」
「水着もこんくせになにイキってんだこの人斬り(どっ」
「それを言ったら戦争でしょうよ!!!!だから!今年こそ!待ってますから!!!」
「まあその前にあるGWコラボとサバフェスのせいで全国のマスターの資金は枯渇すると思うが。是非も無いね!」


「・・・・・・飽きたわ」

雨生龍之介のサーヴァント、ランサー・エリザベート・バートリーは、開口一番そう告げた。つまらなそうに瞳を伏せ、指先で少女だったものの肉塊を弄ぶ。

「えっ?」

「だから、飽きたの。どいつもこいつも同じようなことばっかり。『助けてください』とか、『死にたくない』とか。(アタシ)、もっと刺激が欲しいのよね。そう、例えば────野外でのビッグライブとか」

「・・・・・・ビッグライブかあ・・・・・・」

龍之介は遠い目をした。あのCOOL()な歌を野外で・・・・・・無差別テロかな?確かに阿鼻叫喚は龍之介も嫌いではない。嫌いではないが、恐らくそれでもたらされる地獄は龍之介の求めるところではない。

「野外ライブよ、野外ライブ!本来ならチケットを買わなきゃ聞けないような(アタシ)の素敵な歌声が誰でも聴けるのよ!豚どもに(アタシ)の素晴らしさを再認識させるの!」

「はぁ・・・・・・」

「なあに、リュウノスケ。なにか文句でもあるの?」

「いや、文句はないんだけどさ・・・・・・何処で?どうやって?機材とかどう用意すんの?」

龍之介の疑問に、エリザベートは待ってましたと無い胸を張った。相も変わらずスレンダーな体だ。鳴かせがいもないなぁと龍之介は考える。

「ふふん!当然、この(アタシ)に万事抜かりはないわ!・・・・・・ただ、野外ライブを開くのに魔力が足りないのよねえ」

抜かりあるじゃないか、とは言わない。あくまで一般人である龍之介は魔力というゲームでよく聞くような単語に首をかしげた。

「魔力?MPってやつ?」

「えむぴー?」

「あれ、ゲームみたいなもんじゃないの?」

「リュウノスケの言うゲームでどんなものが使われてるのはわからないけど・・・・・・魔力は魔力よ」

「ふーん・・・・・・とりあえず、また女の子を連れてくればいいわけ?」

「ううん、その必要は無いの」

そうして、『血の伯爵夫人』と呼ばれた反英霊は、瞳を妖しく光らせた。

 

 

「ねえ、リュウノスケ?────(アタシ)のために、ちょっと死んでくれない?」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぁ?」

最期に、雨生龍之介が見たものは────切り落とされた己の右手と、それを嬉しそうに眺めるエリザベートの姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貴女達も!増えたのか!サクラシリーズ!!

「は?」

切嗣のサーヴァント、アサシン・謎のヒロインXは開口一番そう叫んだ。舞弥が眉を(しか)める。

「マスター!これは由々しき事態ですよ!」

「いや・・・・・・なにが?」

「アルトリア、赤・青ランサーに次いでまさかのサクラまで増えてしまったのです!くっ、聖女シスターズばかりを注視していたせいですか・・・・・・!」

「いや、だから・・・・・・なんだよ、それ」

切嗣の困惑の声に、アイリスフィールと舞弥もコクコクと同意する。

「・・・・・・ふう。一から教授する必要がありそうですね」

やれやれと肩を竦めた謎のヒロインX。どこからともなくテレビのニュース番組で見かけるようなボードを出してきた。いや、割と真面目にどこから出したんだ。

「『うそ・・・・・・このサーヴァント、増えすぎ!?』ランキングー!!!(私調べ)」

「わー!」

アイリスフィールが割と楽しそうに拍手をする。箱入りお嬢様はこういう与太番組(?)に興味津々らしい。Xも満更ではなさそうだ。

「・・・・・・切嗣、何が始まるんです?」

「大惨事だ」

これから巻き込まれるであろう茶番に、舞弥と切嗣は揃って肩を落とした。

「栄えあるというか私の中でワーストな第一位!」

「ででん!」

「『アルトリアシリーズ』!」

アイリスフィールが合いの手をかける。ペリペリとXがボードをめくると、デフォルメされた大量のアルトリア顔が現れた。どうも手描きらしい。疲れ切った、しかしやり遂げたようなどや顔でXはサムズアップする。

「夜なべしました」

「聖杯戦争そっちのけでお前は何をしているんだ!」

「おやマスター。貴方がそれを言うんです?」

「は?」

Xはにこりと笑って、

「さくやはおたのしみでしたね」

「ぐぁっ!?」

謎のヒロインXのカウンター!切嗣にクリティカルヒット!切嗣は羞恥で蹲った!

「さくやはおたのしみ?・・・・・・ああ、ええ、とても楽しかったわ!この人ったらとても可愛いんだもの!」

「マダム・・・・・・」

切嗣は戦闘不能らしい。声にならない叫びを発しながら床を転がっている。こうなると舞弥が最後の砦(唯一のマトモ枠)である。

Xがつらつらと名前を挙げ始めた。

 

「アルトリア・ペンドラゴン・セイバー、アルトリア・ペンドラゴン・オルタ・セイバー、アルトリア・ペンドラゴン・リリィ・セイバー、アルトリア・ペンドラゴン・ランサー、アルトリア・ペンドラゴン・オルタ・ランサー、アルトリア・ペンドラゴン・アーチャー、アルトリア・ペンドラゴン・オルタ・メイド・ライダー、アルトリア・ペンドラゴン・オルタ・サンタ・ライダー、謎のヒロインX・オルタ、社長セイバー、マスターアルトリア、セイバーライオン、そして私、謎のヒロインXと謎のヒロインXXです!」

 

「多い!」

アルトリア・ペンドラゴンがゲシュタルト崩壊するような多さだった。

「まだまだ。これはあくまで『アルトリアシリーズ』ですから。『アルトリア顔』であれば不肖の息子や聖女シスターズだって入りますからね」

「なんて多さ・・・・・・っ!切嗣、どうやら私には荷が重いようです!早く戦線復帰してください!」

「続いて第二位!」

「ででん!」

「『サクラシリーズ』!あ、ここでのサクラシリーズはアルターエゴの話ではないので悪しからず」

「・・・・・・?」

ペリペリペリとボードをめくれば、またもや手描きらしき少女の絵が描かれていた。どことなくアルトリアの時よりも含みがあるような笑みなのは気の所為だろうか?

 

「間桐桜、間桐サクラ、黒桜、BB、水着BB、メルトリリス、パッションリップ、キングプロテア、ヴァイオレット、カズラドロップ、ブロッサム先生、サクライダー、パールヴァティー、カーマ!」

 

「サクラシリーズでいいんですか!?」

先程とは違い、『サクラ』という名前が全然出てこない。あといま同姓同名がいなかったか?

「桜とサクラは別物ですよ。漢字とカタカナですから」

「はあ・・・・・・」

妙なこだわり?があるらしい。というか、

「間桐、ですか?」

それは確か、他の御三家の名前ではなかったか。

「ええ、間桐です。・・・・・・そういえば。ギャグ時空ですと彼女はアレな子ですが、シリアスだとヤバい子でしたね・・・・・・」

「待て待て、間桐!?お前何か関わりがあるのか!?」

切嗣が復活した。己の恥辱よりも他陣営の情報が重要だ。

()はないですけど、別の私はあったようで」

「別のセイバー・・・・・・」

「はい。・・・・・・まあ、所謂『正しいわたし』ってやつです」

「・・・・・・意外だな」

「なにがです?」

「いや、お前がお前以外を『正しい』と認識するなんて」

「いやまあ、私は正しい訳では無いですしね」

「は?」

「私は真のセイバーであって、正しいアルトリアだとは一言も言った覚えはありません」

「・・・・・・お前と話してると頭が痛くなる」

「ひどい言われようです」

アルトリアは拗ねたように唇を尖らせ、しかしすぐに幼子を諭すような、優しい笑みを浮かべた。

 

「何が正しく、何が間違っているのか。何が悪で何が善なのか。その基準は人それぞれですし、見ている側面によっても大きく変わるでしょう。物事は一方的に決めつけるべきではありません。マスター、アイリスフィール、マイヤ。どうか、それをお忘れなく」

 

「セイバー・・・・・・」

アイリスフィールが感動したように声を漏らす。

切嗣と舞弥も、表には出さないながらその言葉を胸の内で反芻していた。まさか、このサーヴァントに諭されるとは。

しかして、その感動を裏切るのがセイバーもどきクオリティ。

 

「それはそれとして、私以外のセイバーは全て悪ですけどね!変わりようのない事実です!!」

 

きらりと光る歯。満面の笑み。ピンとたった親指。ご丁寧にウインクまで。

 

台無しだよ、舞弥までもが声を荒らげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい、リュウノスケ。でも、でも、ねえ、仕方ないわよね?」

「だって、だって(アタシ)、とってもとっても歌いたいんだもの。歌って、踊って、愛されて────それが、アイドルなんでしょう?誰だって、それだけで愛してくれるんでしょう?それだけで(アタシ)を許して、認めてくれるんでしょう?」

 

 

「だから、(アタシ)(アタシ)(ワタシ)────みんなに愛される存在(アイドル)になりたいの」

 































大奥たーのしー!わーい!
いやほんと、ぐだの精神力半端ないと思いますよ・・・・・・僕は一瞬で堕落してしまう気がする・・・・・・カーマ可愛い綺麗「光」に対して卑屈なのほんとお前・・・・・・あと新キャラさんもバブみ溢れていいと思います。カルデアでも甘やかされたいなでなでされたい・・・・・・ピックアップ2ありません?あってもキアラさんと柳生さん?そっかー。

ちなみに増えすぎランキング第三位はタイでエリザベートシリーズと聖女シスターズ。
エリザベートシリーズは
エリザベート・バートリー・ランサー、エリザベート・バートリー・キャスター、エリザベート・バートリー・セイバー、エリザベート・バートリー・バーサーカー、メイガス・エイジス・エリザベート・チャンネル、メイガス・エイジス・エリザベート・チャンネルⅡ号機、カーミラでした。水着増えていいのよ?

聖女シスターズは
ジャンヌ・ダルク、ジャンヌ・ダルク・オルタ、ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ、ジャンヌ・ダルク(水着)、ジャンヌ・ダルク・オルタ(水着)、JKジャンヌ、神風魔法少女ジャンヌでした。
・・・・・・脳筋鉄壁の聖女、ツンデレ火力馬鹿、、幼女、姉なるもの、デレしか見えないツンデレ、頭悪い子、あざと犬耳・・・・・・これには座の本体も心労がマッハ。可哀想(こなみかん)
(ちなみに私調べですのであまりあてにしないでください)

それでは、今日一日、エイプリルフールを存分にお楽しみください。


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初恋青春時空 ソラウ・ヌァザレ・ソフィアリ

「大奥終了!そして"私の"イベントであるぐだくだ帝都聖杯奇譚復活!」
「おっなんじゃ?貴様ピックアップすらされてなかったでは無いか。そもそもとっくに終わっとるし」
「んーもう手に入る見込みのない配布鯖さんがなにかほざいてますかぁ?きっと新ぐだぐだイベントで沖田さんの出番ありますしおすし。というか今年こそ水着になりますし(震え声)」
「まあその前に事件簿コラボで全国のマスターの財布は殻になると思うけど、是非もないよネ」
「いや関係者擬似鯖になりすぎでは?これにはグレートビックベン☆ロンドンスターさんも胃痛不可避」
「義妹がライバルの依代になったせいで過労に拍車がかかるとか、もうそういう星の下に生まれたとしか考えられんのじゃが」
「というかルーラー実装多すぎでは?やはり4章で月のガンが来ちゃうんです?」
「まあ来てもアーツとは名ばかりの脳筋凄女や悔い改めて☆鉄拳聖裁に殴られるだけだけどね。どこにいってもあの顔は不憫な目に合うんじゃなぁ」


来るかもしれない(来るとは言ってない)桜顔可哀想(小並感)
というかライネス可愛すぎでは?引くしかない(使命感)


「と思ったら事件簿コラボも終わったんじゃが!!!」
「そして推理物!初登場で身バレした海賊さん見てますー?」
「それわしらが言えなくね?つーかイベント多すぎワロタ。この後わしらも来るんじゃろ?え?来るよね?」
「そしたらサバフェス復刻して・・・・・・?新規水着イベ(沖田さんは参加確定)で・・・・・・?」
「4章とは一体」
「漂白中にこんなのんびりしてて大丈夫か」
「大丈夫だ問題ない。一番いいマスターを頼む」
「どっちじゃ」

待たせて本当に申し訳ないと思っている。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソラウ・ヌァザレ・ソフィアリは、きっと、恋をしていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殺人鬼が己のサーヴァントに襲われる、少し前。冬木市・某三つ星ホテルにて。

スイートルームを一室どころかフロアごと貸し切ったロードが、不敵な笑みを浮かべた。

 

「ふ、ふふふ・・・・・・ふふふふふ!ついに、ついに完成した!」

 

フゥーハッハァ!と奇声をあげる。可哀想なことに、オタクな婚約者と傍若無人なメイドに囲まれ睡眠時間を多分に削られたロードはテンションがおかしくなっていた。なけなしの自由時間で工房化を終わらせたのだ。目の下のクマさえなければまさに絵に描いたようなエリートだろう。すごいぞロード。隣のメイドオルタも感心したように頷く。

 

「ああ、素晴らしいな。まさかフロアをまるごと自身の工房にするとは。────それはそれとして、頭は大丈夫か?マスター」

 

が、上げて落とすのがオルタクオリティ。冷たい瞳に僅かな憐れみの色を宿してマスターを見つめる。ケイネスの額に青筋が浮かんだ。

 

「貴様に心配されずとも私はマトモだ!そも、何故私がこんなテンションになってると思っている!?」

「徹夜のせいだろう。寝坊と夜更かしは怠惰の極み。はぁ、私が居る限りは許さんと言ったはずなのだが」

「貴様このッ、使い魔の分際で!」

 

やれやれ、と呆れたように肩をすくめるメイドオルタ。確かにその通りだが貴様に言われるのは釈然とせん!とケイネスは叫ぶ。

 

「騒がしいわね。なにをしているの、ケイネス」

 

と、そこへ彼の婚約者がやってきた。ケイネスはええい己の愛しい人だろうと関係があるか、むしろ今日という今日はハッキリと言ってやる!と意気込み後ろを向いて、

 

「・・・・・・どうかしたの?」

 

メイド服に身を包んだ(・・・・・・・・・・)ソラウの姿に固まった。背後から顔を出したメイドオルタが、ほう、と感嘆の息をもらす。

 

「似合っていると思うぞ、奥方」

「本当?ありがとう、ライダー」

「・・・・・・・・・はっ!?な、なんだソラウ!どうして使用人の服に君が身を包んでいるのだね!?」

「あら、馬鹿にしたものではなくてよケイネス。動きやすくかつ優雅。モノクロで派手すぎないところもポイント。清潔感もでるし、なにより可愛い。そう、とても可愛いのよケイネスッ!」

 

キラキラとした笑みを向けるソラウ。ぐっぐわぁ好きな人の可愛らしさに目がァっ!と目を抑えるケイネスだが、それはそれこれはこれ。メイド服(そんなもの)を貴族が着ては行けないのだ。

 

「だッ、だからといって君が着る必要は無いだろう!?君は奉仕される側の人間だ!!」

「────ほう?どうやらマスターはこの状況を理解していないようだな?」

「!?」

 

メイドオルタがにやりと笑った。

 

「少し考えて欲しい────普段、己につれない態度をとる恋人が、従者の服を着て奉仕してくれるのだぞ?」

「・・・・・・!?」

 

バッとソラウの方を見るケイネス。ソラウは頬を赤く初め、目線を逸らした。

 

「・・・・・・いや、なの?」

「いいい、嫌なわけないだろう!ほん、本当に君が私に!?君が!?!?」

「た、たまには、よ?その、どうせコミケットでは写真集に合わせてコスプレするつもりだったし、その予行練習みたいな感じで着てみようと思ったらライダーがついでにどうだって・・・・・・」

 

もごもごと言い募るソラウ。いつもの強気な彼女は影も形もない。見慣れぬ姿にケイネスは胸を抑えた。なるほど、これがギャップ萌え・・・・・・!

 

「何を言ってるかはよく分からないし分かりたくもないがとりあえずよくやったライダー!!!!」

「ふっ、私のキャラではないが、しかして主の幸せを考えるのもメイドの務め」

 

それでは偵察に出てくるので仲睦まじくな、とメイドオルタは出て行った。広い部屋に二人だけが残される。

 

「えっ・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

先程までのテンションはどこへやら、黙りこくってしまった二人。第三者がいなくなると途端に恥ずかしくなってしまうのだ。

 

「・・・・・・その、ソラウ」

「! ・・・・・・なぁに、ケイネス」

「あー・・・・・・よければ、着替えてもらっても?」

「!?」

 

ポリポリと頬をかき、虚空に目をやるケイネス。先程まで喜んでいたのに何故、とソラウは疑問に思う。もしや気に入らないことが?スカート丈をもう少し短くするべきだったのか!?己の夫は生脚フェチだったのか!?

(傍から見れば)深刻そうに俯くソラウに、何を勘違いしたのかケイネスが慌てて弁解する。

 

「いや、あぁ、もちろん君はどんな服を着ても似合うのだが、メイド服はあまりに落ち着かないというか、肌の露出が激しいというか・・・・・・それに、その、どうせ君とあの、愛しっ、いや時間を過ごすのであればっ、た、対等なままでいたいと、私は思うのだがっ、君はどうだろうか!?」

「ふぇっ・・・・・・えっ、ぁ、そっそうね!あっちでいつもの服に着替えてくるわ!!」

 

耳まで赤くしたケイネスの言葉に、ソラウは思わず変な声を漏らす。それをかき消すように大声で告げてから、パタパタと部屋から出ていった。

 

「・・・・・・わ、私は何を・・・・・・」

 

まるで漫画のように頭から湯気を出すケイネスだけが取り残された。ロードにあるまじき失態を、それでも貴族か、そもそもソラウは引いていないだろうな、などと自己嫌悪に陥っている。

・・・・・・だが、にやける口元を必死に抑える彼の姿は、まるで初めてのデートにOKを貰った高校生のようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「き、着替えてきたわ」

「あ、あぁ・・・・・・」

 

ガチャりとドアが開き、覗くのはいつものソラウの姿。普段通りの格好のはずなのに、何故だかとても可愛らしく見える。いや事実可愛いのだが。

 

「そのっ、・・・・・・、め、メイド服よりも似合っていると思う。やはり君は貴族に相応しい」

「・・・・・・あ、ありがとう・・・・・・」

 

てれてれ。てれてれ。まるで付き合いたての恋人みたいだろ。信じられるか、婚約者なんだぜ?

 

「・・・・・・ねえ、ケイネス。一つ聞きたいことがあるのだけど」

「あっ、ああ!!君の質問ならばなんだって答えよう!」

「ありがとう・・・・・・その、ケイネス」

 

少し躊躇った後、ソラウは意を決したようにケイネスの目を見る。真っ直ぐ見つめられたケイネスがたじろいだ。

 

「どうして聖杯戦争に参加しようと思ったの?」

 

「えっ」

 

まさか今更聞かれるとは思わなかったのだろう。ケイネスが思わず困惑の声を漏らす。

 

「だって貴方は貴族、しかも時計塔のロードよ。特別急いで武勲を立てる理由もない。わざわざこんな極東まで来て聖杯戦争に参加する必要なんて無かったじゃない」

「あーいや、それはだね、」

「ねえ、どうしてなの?箔をつけたかったからって、秘境の儀式なんかで?」

 

執拗に理由を尋ねてくるソラウにケイネスは思わず後ずさる。ソラウが距離を詰める。僅かに爽やかな香水が香った。こんなに近づいたなんて初めてかもしれない。

 

「君を!誰よりも愛してるからだっ!!」

 

「・・・・・・は」

 

だからだろう。気づけば何故か、彼女に対する愛の言葉を紡いでいた。

ええいこうなればやけくそだ。

ポカンとする婚約者を後目に、ケイネスは想いの丈を告げだす。

 

「君にかっこいいところを見せたかった!君を何よりも愛しく思っているのだと伝えたかった!あぁそうだとも、私は不安だったんだ!君はいつもつれない態度をとるから、もしやいやいや私と婚約したのではないかと!だから参加した!君に惚れて貰えるように!」

 

「君がどれだけ私のことを嫌いでも!私は、君を愛しているんだ、ソラウ!!」

 

一世一代の告白。だがしかし、それを聞いたソラウは照れるよりもまず先に、何かに急かされるように口を開いた。

 

「・・・・・・あいしてる?わたしを?どうして?」

 

「・・・・・・は?」

 

今度はケイネスが呆ける番だった。

 

「だって、私がどうして貴方に愛されるの?」

「なにを、」

「家柄でしょう?貴方が私と婚約した理由」

「はぁ!?」

 

ケイネスは貴族にあるまじき声を上げた。ソラウが理解できないと眉根を寄せる。

 

「違うの?だってそうじゃなきゃ私が愛されるはずなんてないもの」

「君、君は一体なにを、」

「嘘をつかなくてもいいわ、ケイネス。正直に教えて」

「正直も何も、先の言葉が私の本心だ!私は君を愛しているしとても大切に思っている!!そもそも君と婚約したのは私の一目惚れが理由だぞ!?」

「・・・・・・ぇ、は?」

 

一目惚れと聞いてソラウが顔を赤くするが、ケイネスは先程小っ恥ずかしいことを散々述べている。今更この程度のことで動じはしない。

それよりも、だ。

 

「君が愛されるわけがない!?何を馬鹿なことを言っているんだ!君のその薔薇のように色鮮やかな髪色!幼子のような甘さを残し、かつ大人の色気をも振りまく顔立ち!ルビーのような瞳!天使のような声音!その全てが私を魅了してやまないのに、その全てが人を惹き付けるはずなのに、どうして愛されないと思うのだね!」

 

「えっえっえっ」

 

まさかそんなふうに言われるとは思ってなかったのだろう。ソラウが髪と肌の区別がつかないほど赤くなる。

 

「だ、だって、今まではみんな家名しか見てなくて、お兄様もいるから私はいらない子で、」

「そんなわけが無いだろう!!たとえ君の家族が絶対にありえないがもし万が一にも君を見捨てたとして!私は、私だけは何があろうとも君を見ているのに!!」

 

ソラウはまじまじと、そもそも私を君の価値もわからないような凡夫と一緒にしないでくれ!と叫ぶ婚約者の顔を見た。

 

身分はどうだろう。

彼は時計塔のロードだ。家柄だって申し分もない。このまま順当にアーチボルトの家督を継ぐはずだ。

 

容姿はどうだろう。

金髪はさっぱりと整えられているし、顔だってカッコイイほうだし、声は低く響き渡る。体格が良い、とは言わないが、暑苦しいほどの筋肉よりは好みだとソラウは思っている。

 

性格はどうだろう。

貴族や魔術師特有の傲慢さはあるが、それはソラウにだって言えることだ。なにより、この世界ではそのくらいでなくては生きていけない。

そのくせ、彼はとても優しい。

サーヴァントの横暴を許している。使い魔でしかないはずなのに。勿体ないといえばそれまでだが、令呪を使って絶対服従にしてしまえばいいのに。

ソラウのトゲのある言葉にだって、落ち込みはすれど本気で怒ったことは無い。夫になる男性に普段からそんな口を聞けば、『いろんなこと』をされても文句は言えないのに。

 

ソラウは強い感情を持つことがない。持つことが出来ない。そうであれと教育されたし、そうしなければと思っていた。

だから、乙女ゲームを素晴らしいと思った。私に戸惑いを、焦りを、悩みを、友情を、嫉妬を、ときめきを、そして、恋を教えてくれたから。それは決して本物ではなかったけれど、確かに初めてのものだったから。

 

「ソラウ?聞いているのかね?」

 

深い蒼が、ソラウを心配そうに見つめた。

 

(・・・・・・・・・・・・ぁ)

 

────初めて私を見てくれた人。

────初めて好きだと言ってくれた人。

 

(・・・・・・もし、かして。これが、)

 

ソラウはそっとケイネスに寄りかかった。彼が固まる。

 

「ソ、ソラウ!?」

「・・・・・・ケイネス、あのね。私、おかしいの。胸がドキドキして、今にも倒れてしまいそう」

「はっ、もしや気持ち悪かったかね!?それもそうだ、自分で言うのもなんだがいきなりこんな愛の告白をされては戸惑うのも仕方が無いだろうぐわぁ」

 

自分で言った言葉にダメージを受けるケイネス。そんな彼を、氷のようではない、いつもと違う、そう、まるで熱の篭ったような、恋をしているような、そんな視線でソラウは見つめて。

 

「いいえ。確かに戸惑いはしたけれど、全然、気持ち悪くなんてないの。だって、そう、むしろ────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソラウ・ヌァザレ・ソフィアリは────きっと、彼に、恋をしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




もっといちゃつけオラァ!
ということで甘酸っぱそうなライダー陣営です。原作あんな不憫だから二次創作くらい幸せになってもいいじゃない。当小説はケイネス×ソラウ推しです(真顔)ソラウ×ケイネスでも可。
前回まで不穏なふいんき(←なぜか変換できない)だったからね、たまにはギャグ小説であるということを全面的に押し出していきたい。
あと実験的に書き方を変えてみました(セリフと地の文の間を1行開ける)。今までのとどちらの方が読みやすいでしょうか?

















────けれども。恋は、現実の前で折れてしまうのだ。


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愛憎交錯家系 『遠坂』

「おうおうおうおうあの人斬りと探偵が出てわしらが出んとはどういう了見じゃ?ん?」
「いや多分そういうところですよノッブ。というか私たちが出たらシリアスがシリアルになってしまいますよ?」
「お前は余裕そうじゃの、おき太。ピックアップもされんかったくせに」
「んーーその喧嘩はひとまず置いといてあげましょうええ沖田さんは大人ですから!どこぞのノッブとは違って!」
「思いっきり買い叩いてる件について」
「私はまだ夏があるので!どこかのオワコン魔王と違って!新鮮素材の夏が!」
「季節が新鮮素材とか意味わからんのじゃが・・・・・・つか貴様もはやネタ枠では?このままサービス終了までずるずる引きずられんじゃね?」
「はー!?そんなわけないですしだって完全無欠の沖田さんですよー!?」
「いやあ、だって貴様より人気出てる鯖いっぱいおるし・・・・・・あの魔性菩薩ですら水着予想立てられてるの意味わからんのじゃが」
「2回連続SAN値ピンチ案件やれと????正気ですか?????」






邪ンヌと紫式部パイセンの百合・・・・・・良き・・・・・・というか水着のせいで(おかげで?)紫式部と絡む口実が出来てしまった邪ンヌ。いや紫式部が同人作家と決まったわけじゃないですけど。もっと絡んでいいのよ?


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遠坂時臣は優雅にティータイムと洒落こんでいた。同じテーブルには愛しの妻と娘が座っている。

空は清々しい青に染められ、何をするにも格好の天気だった。

紅茶に口をつける。ストレートの良い香りと、僅かな苦味が口に広がった。ソーサーにカップを置き、目を閉じる。

 

「ふぅ・・・・・・優雅だ・・・・・・」

「ゆうが?」

「そうだよ。私達は魔術師であり貴族だ。どんなときでも余裕を持たねばならない。取り乱すなんて以ての外だ。いいかい、凛。『どんな時でも余裕を持って優雅たれ』という遠坂家の家訓を、よく覚えておくんだよ」

「はい、おとうさま」

 

素直に頷く娘の頭を撫でる。凛は嬉しそうに目を細めたあと、ぽつりと呟いた。

 

「さくらもゆうがにしてるかなあ」

「・・・・・・、」

 

妻の葵がなにか言おうとして、ぐっと押し黙った。時臣の目が自然と鋭くなる。

 

「・・・・・・あぁ。間桐の家も名門だからね。あの子なら上手くやっているとも」

「ねえ、おとうさま。わたし、またさくらとあそべる?」

「・・・・・・凛がいい子にしていたなら、きっと遊べるわ」

「ほんと!? じゃあわたし、いいこにしてるわ!」

「葵」

 

気休めを言う葵に鋭い視線を向ける。妻はビクリと震え、ごめんなさいと俯いた。

 

そんな未来はありえない。

そんな未来は存在しない。

何故なら魔術師だから。

何故なら敵同士だから。

 

『遠坂凛』と『間桐桜』はもはや姉妹ではない。血の繋がりなど単なる記号にすぎない。引き取られた彼女にはすでに新しい義兄がいるはずだ。兄弟が恋しいのであればそちらと上手くやっているだろう。

桜は希少な『虚数属性』で魔力量も多い。酷い扱いをされることはないだろうし、そもそも次の聖杯戦争が起こるのは60年後だ。その頃には彼女も歳をとっているのだから、参加するのは彼女の子供や孫になるはずだ。

 

つまり。

 

『間桐桜』が『遠坂』と(まみ)えることは、もう二度と無いだろう。

────いいや。そうでなくては困るのだ。

 

「・・・・・・」

 

紅茶は、少し(ぬる)くなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

謎のヒロインXオルタが和菓子を口に含みながら屋敷を歩いていると、ぼうっと空を見上げる少・・・・・・幼?女と出会った。空を仰ぐ美幼女。大変絵になる光景である。桜の目が死んでいなければ、だが。

 

「サクラ、何をしているのですか?」

「・・・・・・りぼん・・・・・・」

「リボン? あぁ、貴女がいつもつけているやつですか。・・・・・・今日はしていないのですね?」

「うん。りぼん、こわれちゃった」

「・・・・・・リボンが、壊れた?」

 

Xオルタはこてんと首を傾げた。

言ってしまえばただの布でしかないリボンが壊れるとは、一体どういうことなのだろう。破けでもしてしまったのだろうか。

 

「これ・・・・・・」

 

桜がポケットから取り出したのはいつものリボンだ。色褪(いろあ)せているものの、特に損傷はみられない。

 

「・・・・・・どこも壊れているようには見えませんが」

「こわれちゃったの。わかんないけど、こわれたの」

 

ふるふると首を横に振る桜。その目は酷く悲しげだ。

なにか彼女にしか分からないことがあるのだろう。Xオルタは桜を一撫(ひとな)でして、

 

「マスターに頼んで、新しいリボンを買いに行きましょうか」

「・・・・・・」

 

瞳を揺らす桜は、どうにも乗り気ではないらしい。余程の思い入れがあるのか、ぎゅっと赤いリボンを握りしめる。

 

「・・・・・・とても、大切なものなのですね」

「・・・・・・たいせつ?」

「違うのですか?」

「・・・・・・わかんない。わかんないの。たいせつかどうかわからないけど、でも、いやなの。このりぼんがいいのに、このりぼんじゃなきゃいやなのに、こわれちゃったの。なんでこのりぼんがいいのかわからないけど、でも、これがいいの。こわれてても、これがいいの。こわれちゃいやだけど、これじゃないとだめなの」

 

怯えたように、いやいやと首を振る。小刻みに震えるその小さな体を抱きしめた。

 

「大丈夫、大丈夫ですよ、サクラ。なにも貴女を害しません。なにも貴女を傷つけません。ゆっくりで構いませんから、少しずつ、教えてくださいね」

「・・・・・・うん」

 

こくりと頷くその姿は痛々しい。なるほど、マスターが文字通り必死で救おうとするわけだ。彼女の姿は同情を誘い、見る者に保護欲をかき立てさせる。いいや、とXオルタは考えを打ち消した。それだけではない。私がこの子を救おうとするのは、そんなちっぽけな感情だけではない。

 

その素質があるというだけで、幼き頃に運命を定められ、家族と離れ離れにされた。そこに己の意思は全くない。ただ決められたことに従うのみ。

 

────それは。それは、まるで。

 

「・・・・・・ばーさーかー?」

 

桜の声にハッと意識を戻した。

・・・・・・いけない。私は王ではないのだ。私はただの学生で、ただのヴィランで、ただの謎のヒロインX〔オルタ〕。かのライバルに復讐を誓う、少し変わっただけの女の子。そう、それだけ、それだけだ。

────それに。かの王は、アルトリアという少女は、自分で選択したではないか。たとえ、そうであれと定められていたとしても。その、全てを背負うのだと。

だが、目の前にいる少女は違う。わけも分からぬまま連れてこられた、ただの哀れなだけの少女だ。

恐らくは、一番大事であるはずのリボンですら、何故大切なのかわからないと言う。そうまでに、この子の精神は侵された。この子の心は陵辱された。あろうことか、実の親が一枚噛んで。

 

「・・・・・・ばーさーかー? いたいよ、」

「・・・・・・ごめんなさい、サクラ。だけど、もう少しだけ、こうさせてください」

「・・・・・・うん」

 

床に膝をつき、同じ高さで抱きしめる。

・・・・・・Xオルタは、決して『そういう』サーヴァントではない。聖人のように心を砕いたり、オリジナルのように非道に憤ることも無い。そのような高潔な精神を持った英雄ではない。所詮、彼女はギャグ畑。たった一度のエイプリルフール(奇跡の祭典)で生まれた偽物の偽物。ありえない霊基を持って喚ばれた、存在し得ないサーヴァント。

けれど、ああ、そんな私であったとしても。

 

この少女を救いたいと、この少女を笑顔にしたいと、そう思ったって、いいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マスター。サクラの持っているリボン、詳細をご存知ですか?」

「ん・・・・・・ああ、あの赤いリボンか・・・・・・多分、桜ちゃんの姉の、凛ちゃんがプレゼントしたんじゃないかな。あの子もよく、同じようなリボンをつけていた」

「・・・・・・サクラは、恐らく────そのことを覚えていません」

「・・・・・・は? どういうことだ、バーサーカー。直ぐに教えろ」

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





















クランクアップ! 「惑う鳴鳳荘の考察」お疲れ様でした!
もはや同人のネタを出し合う場となっていたのには笑ってしまいました。そしてえっ、結局ペパーミントの彼は一体何なの・・・・・・死・・・・・・。
皆さん小説版は買われました?いやほんとサイコー。あのシチュとかマジ聞いてない・・・・・・好き・・・・・・いっぱいちゅき・・・・・・ゲームとはまた違ったシナリオなのでほんと全マスター買って読んで・・・・・・ステンノ様(というかジュリエット)の可愛さが天元突破する・・・・・・あとまってえっ挿絵がそんな豪華だなんて聞いてない死ぬ死んじゃうまってダメだって!!!!私は死にました。でも尊さで生き返りました。オタクは忙しない生き物ですね。

さて、今回は『遠坂』と『間桐』さん家のお話です。
ふええ・・・・・・えっちゃんのキャラが迷子だよ・・・・・・なんで両家に1ミリも関係の無いえっちゃんで1番困ってるの・・・・・・訳が分からないです。

背負ってしまった少女と、背負わされた少女。
背負った少女は全てを覚えて全てを抱えて、背負わされた少女は全てを忘れて全てを捨てさせられた。
真逆であるはずなのに、それでもきっと、一番近しい。

そしてどうして間桐さん家は書くと直ぐにシリアスになるの?刻印虫おじさんもっと頑張っていこう??
こんな終わり方してますけど次回からは多分またギャグに戻りますよ。
この小説は!!ネタ&ギャグです!!!多分!!!















(このあかいりぼんは、すごくだいじなものなのに)
(でも、もう、わかんないや)
(このりぼんをみてたら、なにかがみえたきがするのに)
(とってもとってもたいせつだったひとで、きっときっと、だいすきな、だいすきだったはずのひと)
(あなたはいったい、だれだったんだろう?)


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邂逅:兄弟子(後見人)と師匠(後見人)の場合

「ようやっと4章!インド!オール信長総進撃ィ!と思ったら終わってたんじゃが!?」
「(いや投稿速度が遅いだけですね?)なんで星5ノッブが出て私はまた水着でいじられてるんです??? ちょっと公式が解釈違い」
「いや貴様が公式じゃろ。まあ星5の我が出るのも是非もないよね! どこぞの弱小サークルと違って人気者じゃし! 水着とか着ちゃうし! 再臨で色々変わるのは色欲天魔王でやったばっかじゃし!」
「はーさり気なく第三臨になってんのほんと腹立ちますね・・・・・・いーですよいーですよ! 今年の沖田さん水着はロリワンピース・中学生スク水・大人ビキニで攻めてやるんですから!」
「わしそうやって全国のマスターの財布に媚びてくのよくないと思う。 さぁて、トリップ始めた沖田は放っといてわしは呟いったーで我の応援絵でも・・・・・・TLがサバフェス一色・・・・・・じゃと・・・・・・!?」
「ちなみにその前は景虎さんと長可さんと悪魔一色でした。ノッブとかやっぱりオワコンじゃないですか(笑)(笑)(爆笑)」
「百歩譲って景虎は良いとして、こんな超美少女系魔王がいるのに男二人取るとかマスターたちの性癖歪みすぎでは??」




遅れてすいません。ちょっとユガと殿様堪能してました。今は海でループと狂気を満喫してます。


 

 

 

冬木市・とある教会にて。

静寂が支配する礼拝堂の中。二人の男が膝をつき、十字架に向かって祈りを捧げていた。

ステンドグラスが陽の光に煌めき、それぞれの色を辺りに散らす。

────その、神聖とも言えるような時間を邪魔したのは、膨れ上がりつつあった魔力の存在だった。

 

「っ!」

「父上、これはっ、」

 

言峰綺礼が父・璃正を振り返る。璃正は額に(しわ)を寄せ頷いた。礼拝堂の扉がバンと開かれ、セイバー・リリィが飛び込んでくる。

 

「マスター!」

「今から魔力を辿って行きます。サーヴァントの貴女の方が詳しくわかるはずです。案内して貰えますか」

「はい!」

「私はここに残る。綺礼、頼んだぞ」

「はい」

 

こっちです、と勢いよく駆けるリリィを追いながらも、綺礼は険しい顔を崩さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リリィに案内され綺礼がたどり着いた先は、まさしく地獄だった。いや、まだギリギリセーフ・・・・・・多分セー・・・・・・アウ・・・・・・セウトかな・・・・・・で地獄絵図にとどまっている、と言うべきか。

広々とした空き地に何人もの人間が倒れ、その中心に喜色の笑みを浮かべて立つ紅色のサーヴァント。周りを囲むのは言葉も発せぬ亡者の群れか。

唯一明るいテンションのサーヴァントが、スタンドマイク(?)を振り回していた。

 

「みんなー! 今日は(アタシ)のライブに来てくれて、ありがとー!」

『おぉぉぉおおぉぉ・・・・・・・・・』

 

「・・・・・・は? ライブ?」

 

真っ先に目の前の光景を受け入れた綺礼が零す。今なんつったこのサーヴァント。

いや、その前に倒れている人々の救出だ。まだ絶妙に人の心が残っている頃の言峰綺礼は、亡者の群れに駆け寄ろうとして、セイバー・リリィにその歩みを止められた。

 

「は、はわ・・・・・・大変です・・・・・・」

「っ、どうしましたセイバー」

 

口を抑えてマナーモードの携帯電話のように小刻みに揺れるセイバー・リリィ。顔は真っ青に染まり、あのサーヴァントやこの惨状を分かっているようだった。

 

「わ、私の思う通りなら、彼女は・・・・・・! マスター! 今すぐここから逃げましょう!」

「そんなに強いサーヴァントなのか!?」

 

ぐいぐいと袖を引っ張る彼女に違和感を抱く。彼女は(いくら未熟とはいえ)最優のセイバー。ただ相手が強いだけならばこうも怯えなくていいはずだ。一体、リリィは何を恐れて・・・・・・?

綺礼の疑問は直ぐに解消されることになる。

 

「事情があって(アタシ)のマネージャー兼1番のファンは来れなくなっちゃったんだけど・・・・・・リュウノスケの分まで、みんな楽しんでいってね!」

『おぉおおおぉぉぉ・・・・・・』

「それじゃあ次の曲、いくわよ !カモン!マイ宝具!────鮮血魔嬢(バートリ・エルジェーベト)

 

────サーヴァントが槍を地に突き立てる。槍の穂先を中心に魔法陣が広がる。地面からは禍々しい城がせり上がり、空は紫紅に塗りつぶされ、そう、まるで、あのサーヴァントの術に取り込まれたかのような、

 

(────固有結界(リアリティ・マーブル)!?)

 

────否。これは綺礼達が取り込まれているのではない。単純にあのサーヴァントが己が城を召喚しているだけだ。

綺礼は混乱の余り思い浮かんだ馬鹿馬鹿しすぎる考えを直ぐに打ち消した。

固有結界とは、術者の心象風景をカタチにし、現実を侵しながら形成する結界のことだ。真祖が扱う『空想具現化(マーブル・ファンタズム)』の亜種であり、言わば現実世界そのものを上書きするような行為。魔法に最も近い、魔術の最奥も最奥。こんな気軽に展開できていいはずがないし、そもそも辺り一帯が取り込まれているわけではないので、これは違う。

だが────だが。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

これほどの魔力は令呪のブーストがなければありえないだろう。いいや、たとえ三画全てを使ったって、こんな量はありえない。それに、令呪を三画使用するということは、サーヴァントの制御権を自ら放棄するということである。そんな馬鹿なことをするマスターがまともであるはずがない。十中八九、マスターは謀反を起こされてもう死んでいるのだろう。辺りにそれらしき人影も見当たらない。

 

「あ゛あ゛・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もうダメです、おしまいです・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・師匠、いつかまたお会いしましょう・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

そんな馬鹿なと綺礼が(かぶり)を振る横で、己のサーヴァントが絶望したように奇声を上げた。アホ毛はこの世の終わりかのように萎れ、漫画のように顔の上半分が青ざめている。それはそうだ、こんな頭のおかしいとしか表現しようのない現実に直面したら誰だってそうなる。だがサーヴァントなのだからもう少ししっかりしてもらいたい。

 

 

────そして。

魔城がその全貌を露わにする。思わず怖気を感じてしまったのは人間としては正しいのだろう。一拍遅れて、綺礼は未だ己にこのような感情があることに愕然とした。いや、そんなことはどうでもいい。

サーヴァントが突き立てた槍の先端に立つ。歪な翼を大きく広げ、ここが私のステージだと言わんばかりに叫んだ。

 

「さぁ────! 我が城チェイテで、サーヴァント界最大のヒットナンバーを聞かせてあげる! ・・・・・・フィナーレになんか、しないんだからっ!!!」

 

「チェイテだと・・・・・・!」

 

綺礼はこの城の名を知っていた。そうして、サーヴァントの真名にも見当がついた。真名が本当に綺礼の思う通りであれば、セイバーにとって分が悪い戦いとなるだろう。何せ相手は対女性を極めたようなサーヴァントだ。ここは人々を見捨てても退却すべきか、と綺礼が考えた時、

 

 

「これぞ大軍師の究極陣地────石兵八陣(かえらずのじん)!」

 

 

「なッ、ぁあァ!?」

 

どこからか詠唱が聞こえたと思えば、サーヴァント────エリザベート・バートリーであろう彼女は八卦の陣に囲まれていた。陣は直ぐに消滅したが、何故かエリザベートは動く気配がない。それどころか顔を憎々しげにゆがめ、綺礼達の後ろを睨んでいる。

振り返れば、そこには長髪で人相の悪い男が、やけにボロボロになりながら立っていた。後ろからは小柄な影が走りよってくる。背丈と髪の長さからして女性だろうか。恐らくはマスターなのだろう。

 

「新手か」

「説明は後だ! そこのセイバー! 今すぐヤツを倒せ!」

「え、っあ、はいっ!」

 

セイバー・リリィは先程の萎れようがどこへやら、背筋をピンと伸ばすとまるで犬のように命令に従った。・・・・・・先程から、サーヴァントとして本当に如何なものか。これは少しばかり話し合う必要があるかもしれない。

 

「はっ! やっ! はあっ! もっと強く!」

 

端的なやり取りで、勝敗は決した。

為す術もないエリザベートはただその聖剣に斬り伏せられるだけだった。もはや、一方的なリンチと呼ぶにふさわしかったそれは、見方を変えずとも彼女の自業自得なのだろう。

 

「・・・・・・い、や・・・・・・・・・・・・いやっ、嫌ぁ!! どうして!? どうしてよ?! (アタシ)は、(アタシ)はまだ、まだなんにも出来てないのに! まだなんにも歌えてないのに!! (アタシ)はただ、ただアイドルになりたかった(みんなに愛されたかった)だけなのにぃぃ・・・・・・っ!!!」

 

悲痛な叫びを上げ地に倒れるエリザベートの体からは光の粒子のようなものが出てきている。霊核が砕け、存在が保てなくなったのだ。そもそもマスター殺しを為した彼女は、令呪のバックアップと人々の魂で何とか顕現していたに過ぎないのだから。(────さァて。どーしてコイツは宝具を撃てたんだろうな?)

消えゆくエリザベートに目もくれず、綺礼は長髪の男をじっと見つめた。だが、長髪の男────諸葛孔明はそれに反応せず、悔しげにエリザベートを見つめている。

 

「どうかしたのか」

「・・・・・・いや。どうにか消滅させずに済ます方法は無かったのかと思ってな」

「何? お前はこの聖杯戦争に参加するサーヴァントではないのか?」

「そうだが。こちらにも事情というものはあるのさ。それとも、そんな簡単なこともわからないのかね、聖堂教会の者は」

「────貴様。何故、サーヴァントである諸葛孔明がそれを知っている」

「ほう? そちらも私の一方の真名は分かっているようじゃないか。まあ、わざわざ宝具まで晒したんだ。これで分からなきゃ真性の馬鹿だろうな」

 

「そこまで! 双方矛を収めなさい!」

 

まさに一触即発。セイバー・リリィもようやっと追いついたウェイバー・ベルベットもオロオロする中、ルーラー然とした声が辺りに響いた。CV坂本真綾は場を仕切るのに向いている。

 

「これより先はルーラー・ジャンヌ・ダルクが仕切らせてもらいます! さあ、移動しますよ!」

 

「・・・・・・その前に、ひとついいだろうか」

 

突如現れたジャンヌ・ダルクを名乗る不審者に眉根を寄せつつ、言峰綺礼は彼にしては珍しく若干戸惑ったように声を上げた。

 

「なんでしょう」

「・・・・・・いや、なに。その格好でルーラー、しかもかのジャンヌ・ダルクと名乗るのはかなりの勇者だと思ってね」

「残念ながら仕様ですワン!!!!!!」

 

渋い中田譲治と澄み渡る坂本真綾は意外と協和音だった。

 

そして、残りの三人は「お前こそ勇者では」という一言を飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




色々とそういうことにしておいて下さい。

お久しぶりです。なんか小説が滞っているのにはてなブログとか始めたバカです。頑張って探してくれてもいいのよ。
そんなこんなでもう夏ですね。ついこの間インドでムーンキャンサー実装に驚いていたのが嘘みたいです。BBのめんどくさいオタクとしては「????? ムーンキャンサーにBB以外とか解釈違いです」ってなってたんですが、まあ仲介業者が小悪魔なラスボス系後輩なら仕方ねえなあ〜〜〜〜〜〜〜ってなってます。大奥からのパールヴァティーさんが自分がいけない代わりにどうにかしてくれとBBに頼んだとかだとすごく捗ります。色々。というかインド勢血縁関係複雑すぎでは。まず同じ顔が多すぎるんだよなぁ。
オール信長総進撃は本当にオール信長総進撃で笑ってしまいました。風雲児のボイスがかっこよすぎて織田の女になる。引けてませんが。カッツとキンカン頭とサルとお義父さんと悪魔はいつ実装されるのハリーハリー。
そして息をつく間もなくルルハワ。虚無期間嫌だなとは言ったけど頭が狂うようなイベント続けてやれとは言ってないんだよなあ。よく考えると初心者はぐだイベから夏イベと、配布は貰えるけど何言ってるかわかんないイベントやらされて可哀想だなと思ってます。

事件簿アニメについて語ることはありません。とりあえず三田先生とそのほかアニメ制作に関わられた方生きててくださって本当にありがとうございます。動く師匠と拙と義妹だけで世界がこんなにも明るいです。内容はそうでも無いですが。師匠に胃痛薬差し入れたい。

さて、本文についてです。最初に話せよ。
ようやく、と言いますか、初めての脱落者です。後(ほとんど)初めての他陣営同士の話し合いの場が設けられました(なお話し合ってはない)
エリザベートについて、特に描写してはいません。彼女は推しの一人なので本当は一万文字くらい内心とかその他とか書きたかったのですが、くどくなるのでやめました。ぶっちゃけエリザベートが推しでない場合の人はそんなん読まされても辛いだけだろうなと思ったので。そんなこと書いてる暇あったらもっと話進めろよ。はい。エリザ推しの方は各々の脳内でこんなことがあったらいいな、と妄想してくれると嬉しいです。前々の話に書いてますしね。一応。
今回はやはり綺礼が1番難しかったです。多分本文でも性格が定まってません。言峰ではなくほぼオリ峰。
あかいあくまの後見人同士の邂逅も、書いてる時は妄想が膨らみましたがこのあとが辛いです。この2人が同盟組むとか絶対無理。話し合いとか論外。何故会わせたのか小一時間正座したい。した。
そんなわけで見切り発車どころかブレーキ壊れてるのに燃料投下するこの暴走列車、次回もお付き合いいただけたらと思います。
追伸。実は随分前に設定集を更新してたり。















(まずは、一人目)


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作戦会議:突撃近くのアインツベルン

「沖田さん!!!!!! 大☆勝☆利ィィィィィィ!!!!!!!!!」
「いや貴様あの水着でよいのか・・・・・・?」
「なんであろうと! 水着であることに変わりなしっ! 通常ではなく魔王の方ばかり出るようになったどこぞの配布さんとはちがうのです! 苦節何年! いじられまくって幾星霜! 私に! 『来るとしたらオルタのほうじゃね(笑)』と言われてた私に! ようやく水着!!!!!!!!」
「おうおうちょっとdis入れつつの可哀想自慢やめんか。わし関係ないじゃろ。つかあれもわしじゃし」
「全国のマスターさん引きました!? 引きましたよね! もっちろん可愛い可愛い沖田さんの水着を! 引きましたよね!!!!!!!」
「(リヴァイアサンパーカーのツンデレランサーの方が人気とか言えん雰囲気じゃなこれ)」


おめでとう沖田さん。爆死はしました。でもメルト引けたので満足です。
今回は(も?)会話文多めです。数話ぶりの主人公陣営だよ。
今話で突撃するとは言ってない。次話でするとも言ってない。


「ちょっとラスベガス滅ぼしてきます」

「まてまてまてまて」

 

紫から青へと空の色が変わる朝6時半。少し弱く光る太陽が昇る中、謎のヒロインXは物騒なことを宣言した。

 

「朝から頭が痛い・・・・・・まずラスベガスってどういうことだ」

「いや本当に許せない、元がフォーリナーのくせにセイバーになるとか喧嘩売ってるんですか? もしや私の天敵だったりします??」

「誰の話だ。そもそもフォーリナーってなんなんだ。そんなクラスはないだろう?」

「ていうかあのあざとい感じはなんなんです? 春画とか描いてたくせにかまととぶってるんですか? あざとい、さすが新セイバーあざとい。あとバニー、お前だけは許さない。絶対にだ

「・・・・・・会話が噛み合わないこの感じも久々だな・・・・・・」

「それはそれとして朝食のいい匂いですね! 味噌汁はいい文明だと思います! おはようございます、マイヤ!」

「おはよう舞弥。こいつの分の味噌汁は無しでいい。そもそもサーヴァントのくせに飯を食べるなんて、燃費が悪いにもほどがある」

「そういう効率厨なとこよくないと思います。サーヴァントだって3大欲求はあるんですからね。なによりモチベーションが上がりますし」

 

「おはようございます。切嗣、セイバー」

 

歩きながら馬鹿な会話をする二人に、朝食の用意をしながら舞弥が声をかけた。なんだかんだで相性がいい二人だなと密かに思う。口にすれば、切嗣はきっと苦い顔で否定するだろうけど。

 

「ふぁ・・・・・・おはよう、3人とも。一体何の話をしているの?」

 

眠そうにしながら、アイリスフィールも起きてきた。最近のアイリはずっとこうだ。切嗣たちはもう少し寝てて構わないと言うのだが、「私だけ仲間外れなの?」と言われれば引き下がるしかない。まだ慣れないようだが、眠たげな顔には満足そうな表情が浮かんでいるのでいいだろう、と3人は思っている。あまり無理をするようならベッドに叩き込む気でもいるが。

 

「おはよう、アイリ。いやなに、セイバーのやつがいきなりラスベガスを滅ぼすとか言い出してね・・・・・・」

「私の出番がない水着イベなど要らなくないですか?」

「あら、貴女はラスベガスで警察してたりオキタ=サンのブースターをイロイロしてたりしたらしいけれど?」

「アイリ!?」

「彼女は私であって私ではないので。そもそも私、彼女の姿を見たことがないんですが・・・・・・存在してるんですかね本当に・・・・・・というか最近彼女ばかり出てません??? 私の英霊祭装はどこへ????」

 

そんなに大きいのがいいんですかー! とご飯をかっこむXを尻目に、切嗣はやれやれと首を振った。こいつの出番などどうでもいい。それよりも大事なのは"ランサー退場"という聖杯戦争の模様だ。

 

「昨日も話したが、ランサーが敗退した。倒したのはセイバー陣営とキャスター陣営らしい。もしかしたらその2つが同盟を組む可能性がある。・・・・・・舞弥、偵察の結果を」

 

「はい。セイバーはこの前アサシンが言っていたように、アルトリア・ペンドラゴンで間違いないようです。聖剣を持っていたところも確認しました。ランサーは敗退、その全貌は知りえませんが、アイドルを自称していたようで。ここ最近の誘拐・殺人事件の犯人もおそらくはランサー陣営かと。アーチャーは依然としてしれません。ライダーはアルトリア・ペンドラゴン、マスターはケイネス・エルメロイ・アーチボルトと思われます。キャスターとバーサーカーは調査中です。あと、少し気になったのですが、近頃冬木教会近くの公園に魔力を持った金髪の男が現れています。監視にもすぐに気づいて行方をくらましているので、中々足取りが・・・・・・」

 

「ありがとう。その男についてはまた後で考えよう。キャスターの方は僕も調査しているんだが、マスターが影も形も見せなくてね。もしかするとこの聖杯戦争で一番の難敵になるかもしれないと・・・・・・アサシン? どうしたんだ?」

「いえ。ランサーでアイドル、ですか・・・・・・もう敗退したと言うならば関係はありませんがね。ええ、何でもありませんとも」

 

非常に苦々しげな顔を見せるX。あまりらしくないその姿に切嗣は眉根を寄せるが、たしかに敗退したサーヴァントのことを考えても仕方がない。それよりもまずは残っている他陣営だ。

 

「これまでで判明してるのはセイバー陣営とライダー陣営の2つだけだ。しかも相手方も僕たちのことを知っている。時計塔のロードと教会の神父を一度に相手取るのは苦しい。その上、セイバー陣営キャスター陣営と手を組んでる可能性まである。僕としてはこのまま身を隠して、徹底的に防御を固める方向で行きたい」

「しかしマスター。虎穴に入らずんば虎子を得ずと言います。作戦はガンガンいこうぜでいいのでは?」

「いいえアサシン。飛んで火に入る夏の虫、よ。いのちだいじに」

「・・・・・・・・・・・・そうですね」

 

アイリスフィールがそれを言うと中々に重いものがある。普通に心臓に悪いからやめてほしい。

 

「護りを固めるといっても、どこで? 流石にこの屋敷でドンパチするわけにはいかないでしょう。周りにも住宅はありますし、またタイガたちと揉めるのは得策ではないですよね」

「・・・・・・そうだな。ここがバレるのも拙いし。どこかいいところがあれば・・・・・・」

 

「じゃあやっぱり誘い受けよね!」

 

天然箱入りお嬢様が笑顔でまた変なこと言い出したぞ。

 

ざわつく三人。切嗣あなたの伴侶でしょうマダムをどうにかしてください男がここに突っ込むのはほらだめじゃないかそらいけセイバーお前ならやれるいや流石の私もソッチは専門外なのでおっきーがいればなんとかなると思いますけどここは素直にじゃんけんで決めましょうさいしょはぐーじゃんけんぽん!

 

「くそっ! こういうときだけ運のない!」

「ふぅ・・・・・・また一人、私以外のセイバーが消えました」

「切嗣はアサシンでは?」

 

「?」

 

発言者は一人、意味がわかっていないのかにこにことしていた。夫が他人と仲良くしているのは歓迎すべき事柄らしい。どうせ一番は私だし。

 

「はあ・・・・・・使い方が間違ってると思いたいな。誘い受けとはどういうことだい、アイリ」

「フユキの郊外にはアインツベルン城があるでしょう?」

「あぁ。だがあそこはあまりにも露骨すぎないか? アインツベルンなんだから相手からそれなりの対策だってある、今更籠城したって・・・・・・なるほど? だから"誘い受け"なわけか。紛らわしいにも程がある」

「? 誘い受けってそういう意味じゃないのかしら?」

「全然違う上に敗北する(受け)じゃないか」

「待ってください、夫婦だけでやり取りしないでもらえます? 結局どういうことですか?」

 

Xの疑問に舞弥も頷く。仲がいいのは結構なことだがほうれんそうはとても大事だ。今回はサーヴァントとの軋轢もあまりないのだし。

 

「つまりだな────」

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど。わかりました。それではアイリスフィール、私達も準備に向かいましょう」

「ええ。やっとお城以外で玩具に乗れるのね。腕がなるわ!」

 

いつになくやる気を出すアイリスフィールに首を傾げつつ──切嗣と舞弥は顔を引きつらせて──Xは己の獲物を手に取る。

ひみつかりばー。このシーズンでの相棒。まてシーズンってなんだ。

変な電波を受信しつつ、Xはそれを一振りして。アイリスフィールはどこからともなく取り出したサングラスをかけて。

 

「────頼んだぞ、二人とも」

 

珍しい切嗣の"お願い"に、笑顔で親指をたてたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところでアイリスフィール、誘い受けをどこで知ったのです?」

「この間出会った赤毛の婦人に教えてもらったの! ええと、びーえる? とかいうのの用語なんですってね」

「舞弥、至急そいつを探し出してくれ」

「この命に代えても、必ずや」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お久しぶりです。気づいたら一ヶ月たってましたね。
沖田さんとメルげふん謎のアルターエゴ・Λやったー! あと乳上バニーはちょっとあの、えっ???? 乳上じゃなくて獅子王なんですか???? しかもまた殴ルーラーですか。いえ蹴ルーラーですけど。
ラムダのペンギンもといリヴァイアサンパーカーやばくないですかね。可愛すぎるでしょ。ボイス多すぎて笑った。あとカーミラさんはやっぱりエリちゃんなんだなって・・・・・・,

今回はようやっと主人公陣営です。あまり動きを見せてませんけど。てか今更ですが原作とは(哲学)
アインツベルン使うのはいいんですけどどうやって使おうかな・・・・・・プロットは頭の中人間なんで・・・・・・。

夏も終わり、残暑が厳しくなりそうな9月に入りますが、体調にお気をつけてラスベガスとか満喫しましょうね! (ラスベガス満喫するなら家でいいのでは?)


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話し合い:想いと懐疑と宣伝と

「いやぁ、今年もこの季節がやって来・・・・・・? ・・・・・・???」
「セイバーウォーズ、じゃと・・・・・・っ!?!? えっこれわしら出るフラグなのでは?」
「マジですかやったー! 私も土方さんも特攻にいますしね! どこかの誰かさんと違って!」
「貴様がいるのはいいとしてなんであやつまで特攻なんじゃ」
「いやまあそれ言ったら色んな人がいますけどね? 紅閻魔さんとか項羽さんとか」
「ついに夫婦そろってネタ枠か・・・・・・わしらより悲惨なのでは?」






えっ?




えっ?


ジャッ。ジャッ。ジュージュー。カラン。

ジュワァ。

 

擬音ばかりが支配する空間。職人たちの汗と奇特な客達によって支えられているその店を、紅洲宴歳館・泰山という。

 

 

 

ジャンヌ・ダルク・モドキの提案により場所を移すことになったキャスター・セイバー両陣営だが、流石に互いに己の陣地へと敵を呼び込むような真似はしない。が、話し合いが決裂してもそう簡単に相手が暴れられない場所となると限りがある。あーだーこーだと話しているうちに(サーヴァントのはずなのに)セイバー・リリィのお腹がなったため、とりあえずは腹ごしらえをしようということになった。そこで言峰綺礼が提案したのがこの紅洲宴歳館・泰山である。

幸いなことに客の姿はなく、なぜか店員の姿もない。と思いきや背が小さすぎて見えなかっただけのようだ。厨房の奥からちらりとこちらを確認したあと、流暢な英語で「いらっしゃいアルー! 何名様アルか?」と話しかけてきた。いや英語のくせにアルってなんだ。

 

「私だよ店長。今日は5人だ。いつものでお願いできるか?」

「全員それでいいアルか?」

「ああ」

 

綺礼は店員、いや、店長と顔見知りらしい。勝手にウェイバーたちの分を注文している。

 

(おいおい、こんな小さな子どもが経営してるのかよ?)

 

ウェイバーは自分のことを棚に上げた。

 

 

 

 

 

 

「アイ! マーボードーフおまたせアルよ!」

「ありがとう」

 

謎のちびっ子エセっぽい中国人(?)店長がごとりとテーブルに赤い物体を置く。湯気を立てたそれは刺激的な匂いで綺礼の食欲をそそり、その赤すぎる見た目で残り四人を気後れさせていた。

 

「毎度アル! ・・・・・・それとお客さん、本当に申し訳ないアルけど私は少し野暮用があるので一時間ほど席を外したいアルよ。都合のいいことに他のお客さんもいないアルからね。食器はいつものように置いといてくれればいいアル。────何か込み合った話ね?」

 

最後の一言だけボソリとつぶやいて、ロリっ子店長はウインクをした。綺礼は僅かに目を見開いて、フッと笑う。

 

「留守は任せてくれ」

「アイヤー。それじゃ、よろしくアル」

 

ガチャリと音がした。ご丁寧に鍵まで締めてくれたらしい。とはいえ、もともとあまり客のこない店なのだが。

 

「主よ、恵みに感謝いたします。・・・・・・さて、いただきます」

「いただきます!」

「本当に食うのか!?」

「? 当たり前だろう」

 

このマグマと言っても差し支えないような見た目の麻婆豆腐を!? とウェイバーが驚愕する。が、セイバー陣営二人は何を当たり前のことを言っているんだと首を傾げるばかりだ。凡人と味覚音痴の溝は深い。いや、出身国から言えばウェイバーも味覚音痴のはずなのだが。

 

「以前セイバーに作ってもらった麻婆豆腐がとても美味くてね。それ以来、辛口の麻婆豆腐が好物になったのだよ」

「別に聞いてない! じゃなくて、そろそろ本題をだな」

「出てきてしまったものは仕方ありません。食材を無駄にするわけにも行きませんから、まずは美味しく頂いてからにしましょう。父よ、あなたの慈しみに感謝してこの食事をいただきます」

「あれ!? お前もそっちにつくの!?」

 

いつの間にかジャンヌが隣に座って祈りを捧げていた。ところでこの聖女、ここに来るまで霊体化していなかったため思い切り人に見られていたのだがいいのだろうか。通行人のすべてが不審な目で二度見していたのだが。

ちなみに、ウェイバーには日本語のため理解できなかったが、「新手のプレイかしら」「最近は水着のメイドも現れてるらしいぜ」「おお! やっとこの冬木にも美人なねーちゃんが!」『ああん?』というやり取りがなされていたとかいないとか。世の中には知らないほうが得することもある。

 

「お、おいキャスター! お前だけは・・・・・・いない!? 逃げやがったなアイツ!」

 

そして孔明はちゃっかり霊体化していた。実態があれば辛そうに胃を抑えているだろう。

そんなわけで唯一の常識人となったウェイバーだが、流石にこの赤すぎる麻婆豆腐に手を付ける気は起きない。綺礼はおろかリリィとジャンヌまで普通に食べているのを見て、(もしかして美味いのか?)と洗脳されかけはしたが、鼻の奥を焼くような匂いを嗅いで首を振った。これは普通の人間が食べていいものではない。

 

「食わんのか?」

「食うか! 僕はいらないからお前が食べろよ!」

「ならば貰うが」

 

いつの間にか完食していた綺礼がウェイバーの皿を手に取る。辛さや赤さに対する忌避感がまるで見えない。それどころかわかりやすく喜色の表情を浮かべている。マジかこいつ。

 

「教会のやつはみんなこうなのか???」

「否定はしない」

「しろよ!」

 

スプーンを口に運びながら神妙な顔で頷く綺礼に、ウェイバーはもう何度目かもわからないツッコミを入れる。貴重なツッコミ役なので頑張って欲しいが、流石のウェイバーもいい加減疲れたようだ。そのままぐだりとテーブルに突っ伏してしまった。

 

「何をしている。話し合いをするのではなかったのかね?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もういいや」

 

だらしない姿に綺礼が眉をひそめ、ウェイバーは白旗を上げた。もうどうにでもなれ。

 

「────さて。早速だが、私の方から一つ提案がある」

 

スッと隣に気配が顕れたと思えば、孔明が実体化していた。まるで最初からシリアスだったかのような雰囲気を醸し出している。

 

「此度の聖杯戦争でもう誰も脱落させない(・・・・・・・・・・・)というものだ」

「────ほう?」

「いいか、説明してる暇はないから単刀直入に言うぞ。冬木の大聖杯は酷い汚染を受けている。ルーラーがその証拠だ」

 

孔明は横目でジャンヌを見た。汚染されているというのは何も姿形の話ではない。いや確かにそれもそうなのだが。

 

「彼女がかね?」

「ええ。私はルーラー、マスターは聖杯です。喚ばれたときから感じていましたが、先程ランサーが敗退した際に余計濃くなりました────人類悪です」

「ヤツはサーヴァントの魂を取り込んでいる。サーヴァント同士が争えば争うほど、ヤツの力は強大になるということだ」

「なるほど。では、こちらからも一つ質問がある。────貴様、何故そのことを知っている? まるで一度体験したかのような口ぶりだな」

 

綺礼の眼光が鋭く細まる。それは、一切の虚言を許さない。異端を狩り尽くす代行者(ハンター)の目。

 

「────今の私たちとそちらはまだ敵だ。話す理由はない」

「信用に関わるが?」

「それでも、だ。マスターにも語っていないことを何故貴様に話さねばならん」

「・・・・・・いいだろう。ただ、この場で結論を出すことはしないがな」

「それは承知の上だ。3日後、教会に向かう。それまでにどうするかを決めておいてくれ」

 

それだけ言って孔明は立ち上がる。そろそろ1時間が経とうとしていた。つまりあの店長が帰ってくる時間だ。

 

「行くぞ、マスター、ルーラー」

「ええ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・帰ったら絶対に説明してもらうからな」

 

最後まで蚊帳の外だったウェイバーはむくれていた。そんな彼にやれやれとため息をついて、孔明は店を出ていった。

 

「・・・・・・さて。我々も帰るぞ、セイバー」

「あ、はい! ですが、お皿は洗わなくていいんですか?」

「・・・・・・」

 

この根っからのいい子め。純粋な瞳にむず痒くなって視線をそらしてから、綺礼もまた、溜息をつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

商店街を歩きながら、ウェイバーは孔明とジャンヌに対し文句を言っていた。

 

「結局どういうことなんだよ。どうして聖杯が汚染されてるなんてわかるんだ!」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「おい、聞いてるのか!」

「・・・・・・・・・・・・・・・ん。ああ、すまん。そこの本屋に貼ってある先日発売された文庫版の『ロード・エルメロイII世の事件簿 case.アトラスの契約(上)』のポスターに気を取られていて聞いていなかった

「え、ああ、すいません。そこの本屋で売っている少し前に発売された文庫版『Fate/Apocrypha 外典:聖杯大戦』に気を取られていて聞いていませんでした

「お前らなあ!」

 

まごうことなきダイマだった。

そしてこの場で話すつもりがないことも明らかで、ウェイバーはガックリと肩を落とすのだった。

 

 

 

 




お久しぶりです、いつかこの挨拶を言わなくなるといいですね。

さて、やっと書けましたこの2つの陣営。全部にちゃんと見せ場を出して書き分ける虚淵さんはやはり神なのでは?
なんだろう、どうしてもウェイバーが割りを食ってしまうんですよね。もうちょっと「彼らしい」ところを書きたいなあ、と思ったり。まあ次回は多分バーサーカーとライダー陣営になると思いますが。多分。

さてFGOのお話ですけどハロウィンは!?!?! なぜ俺の推しの機会を奪うんです!?!?!? って思いましたけど特攻にいたのでなんとか一命を取り留めました。危ないところだったぜ・・・・・・。あとイシュタル(仮)がアヴェンジャーなのメタ視点でいうと遠坂凛が妹に常に負け続けてるので最高ですね。妹が姉より強いんですよ〜〜〜〜〜〜〜〜最高〜〜〜〜〜〜〜〜〜。

それでは、また次回に。感想お待ちしてます。にゃーんでいいので。


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温度差 〜闇堕ち幼女と金ピカを添えて〜

「セイバーウォーズ2お疲れさまでした。みんな大好き今年の夏に水着にもなった沖田さんが出なかったことに関しては後で運営に抗議のメールを送っておきますので」
「おいバカやめろ、というか出ない方が幸せじゃね? 貴様これ以上ギャグ掛け持ちしてどうしたいの?」
「まあ? 今沖田さんはアーケードで立体化して大人気! ですので? 仕方ありません、許してあげましょうか!」
「いやあれわしのイベントじゃし・・・・・・」


星4交換は我が王(剣)にしました。ずっと第一再臨で使い倒します。
あとタイトルに関してはいいの思いつかないので募集します。
とどのつまり感想ください。



 

 

 

 

「なにをしているんですか?」

 

早朝。雁夜の部屋から聞こえたガサゴソという音にスリッパを構えながら侵入したXオルタは、机に向かって何やら作業をしているマスターを見つけた。良かった、黒光りするヤツなんていなかったんだ。

 

「ん、ああ。少し爆弾をな」

「ばくだん」

 

何でもなさそうな顔で告げる主に、キョトンとした顔でXオルタは繰り返した。爆弾。爆弾と言ったかこの男。

 

「・・・・・・自首してください。今ならまだ間に合います」

「何を言ってるんだよ。俺が見つかるようなヘマをするわけ無いだろ。大丈夫、ジャーナリスト時代の杵柄があるから」

 

違うそうじゃない。

 

「・・・・・・マスター・・・・・・前々から、怪しいとは思っていたんです。それでもマスターだから、サクラを思う心は本当だからと自分を納得させてきましたが・・・・・・」

 

Xオルタは無表情のまま首を振った。サクラには「マスターは遠くに行ってしまいました」と伝えよう。なんだかんだでサクラはカリヤに懐いているので、それで悲しむようならば「大丈夫、いつか戻ってきますから。それまでは私とふたりで過ごしましょう」と言えばいいだろう。定期的な和菓子とオルトリウムとオルトリアクターの補充さえあればどうとでも生きていけるのだから。

 

「ところでマスター、事情聴取があったときのためにお聞きしますが、それはなんの用途で使うのですか?」

「事情聴取だなんて大げさな。ちょっと時臣を爆発するだけだ

「・・・・・・ヒトの名前である時点でアウトですが一応訪ねますね。トキオミとは?」

桜ちゃんと凛ちゃんの父親だ。片親になるんじゃないかって? 大丈夫、アイツがいなくなったら俺がふたりの父親(葵さんの夫)になれるからさ

「さようならマスター。特に悲しくもありませんが」

 

爆弾魔でロリコンで人妻好きなど救いようがない。ここで消しておいたほうがサクラ、ひいては宇宙(ユニヴァース)のためだろう。Xオルタはそっと邪聖剣ネクロカリバーを構えた。

 

「そういえば、そもそもなぜそんなにもトキオミを敵対視してるんですか」

 

「だってアイツだけイベント(アイツさえいなければ)出るのずるくないか!?(葵さん達は幸せになれたんだ!) 俺の出番は(だから俺が泥を被る)!」

 

「イベントとか面倒なだけでは?」

 

イベント冒頭で皇帝の位を蹴っ飛ばした少女は生粋の面倒くさがりだった。(セイバー絶対殺すウーマンとして)やる気の満ち溢れているXのコピーとは一体。

 

「・・・・・・なに、してるの?」

 

と、扉が開いて眠たそうな桜が入ってきた。どうやら隣りにあったはずの温もりが消え去って不安になったらしい。トコトコとXオルタのもとに歩いてくる。

 

「・・・・・・いえ、その、マスターがですね」

「おはよう桜ちゃん。何も心配はいらないよ」

 

まさか貴女の父親を殺そうとしていますなんて言えるはずもなく、Xオルタは口ごもる。犯人(未遂)はそんなXオルタを気に求めずにこやかに挨拶をした。娘に嫌われる父親にはなりたくない。

 

「・・・・・・? そう、だ。ねえ、かりやおじさん」

「ん? どうしたんだい?」

 

おじさん呼びもあと少しだし堪能しとくか、などと煩悩に塗れながら返事をした雁夜は、次の言葉に固まった。

 

「おにいちゃんはどこ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと宇宙(ユニヴァース)滅ぼしてきます」

 

「天丼は美味しくないわよ」

「むっ・・・・・・」

 

静かなアインツベルンの森の中。Xの殺意が滾る宣言を、アイリスフィールは慣れた様子であしらった。その適当な態度にXは口を尖らせ、すねたようにそっぽを向く。本気なのに。

 

「私のイベントなのに私が全然活躍できなかったんですよ! 活躍というかあのレッドデボーに美味しいところを取られたというかやっぱりロリがいいんですか!?!? この前はバニーで大騒ぎしてたくせに!」

「私にそれ言う? ZEROコラボで切嗣だったならまだしも、『唯一のヒロイン枠』とか呼ばれてる男の子の成長した姿に出番を取られた私に? 5人に分裂してギャグ枠にされた私にそれを?」

「いや分裂もギャグ堕ちも私が先で・・・・・・いえなんでもありませんすいませんでした」

 

目が笑ってないアイリスフィールにXは土下座する勢いで誤った。なぜ我々は正ヒロインのハズなのに扱いがアレなのだろう。

 

 

「こほん。まあいいのよ、"私たち"は関係ないのだもの。・・・・・・それより、今考えるべきはこれね」

「ええ・・・・・・」

 

二人は目の前の城を見上げた。結界に守られているため損傷もなく野生動物に荒らされた形跡もない、まさに中世と言っても過言ではない、荘厳な城。普通に素晴らしい、のだが。

 

『大きい・・・・・・』

 

そう。すごく大きいのである。

 

「待ってくださいこんな大きい城に細工を施すんですか? 今から私達二人だけで??」

「そういえば私達、誰もこの城に来たことがないのよね・・・・・・実物がこんなに大きかったなんて・・・・・・」

「まあドイツの本拠があれだけ大きい時点で推して知るべきでしたがでも別邸ですよ? まったく、これだから貴族ってやつは」

「・・・・・・」

 

一応彼女も王様のはずなのだが、まあブリテンは貧窮していたので是非もないだろう。キャメロットは栄えていたらしいが。

 

「ともかく、片っ端からつくっていくわよ。時間は有限なんだから」

「考えすぎでしたら申し訳ないんですけど貴女はどうしてそう微妙に反応しづらい言葉を使うんですか・・・・・・」

「?」

 

それはともかく。

エントランスから城内に入った二人は、微弱な魔力の流れを頼りに地下室の入り口を探し始めた。

これから二人がやることは単純だ。この前アイリスフィールの発した誘い受け────いやあれは単に言葉を間違えていただけだが────つまり、「攻められないなら迎え撃てばいいじゃない」作戦である。

アインツベルン城は人には言えない用途に使われることもあり、無数の地下室が存在している。そこで城のいたるところにトラップを仕掛けバラバラに地下室に落とし、戦力を分散させてしまえ、ということだ。

アインツベルン城におびき寄せる時点で当然向こうもそれなりの対策をしてくる。サーヴァントの力を持ってすれば突破できるほどの地下室であるし、あくまでも気休め程度の罠にしかならないが、まあしないよりはましだろう、という話になった。アウェイよりもホームの方がやりやすいというのもある。

 

「まあ、まずは他の陣営が来てくれるかどうかですけどね」

「そこは切嗣と舞弥さんの出番よ。あの手この手でおびき寄せてくれるはずだわ」

「・・・・・・あの、アイリスフィール。ひとつ聞きたいのですが」

「なぁに?」

「その、マイヤのことはもう・・・・・・?」

 

Xが珍しく遠慮がちに問う。前回のひと悶着から時間が流れ、少なくとも表面上は仲良く付き合っているアイリスフィールと舞弥を蒸し返す後ろめたさもあるし、彼女が経験してるわけでないとはいえ、本体に深く刻み込まれた"それ"を自分が聞いていいのかという葛藤もあった。だが、アイリスフィールひとりが我慢して丸く収まっているように演じるならば、サーヴァントとして、そしてアイリスフィールを大事に思う者の一人として、切嗣たちに一言伝えるべきだろうと思い聞いたのだが────アイリスフィールは最初、何を言われたのかわからない、という顔をしたあと、とてもおかしそうに笑った。

 

「あら、セイバーったらまだ気にしていたの?」

「まあ・・・・・・それは・・・・・・」

「ありがとう。でも大丈夫よ。・・・・・・だって私、知ってるもの。あの人は私とイリヤのことをいつも特別に思ってくれているって」

「特別、ですか」

「ええ。・・・・・・あの人の『一番』は、世界平和でしょう? だから私達は特別なの。さっ、次に行きましょう?」

「・・・・・・そうですね、アイリスフィール」

 

言葉の裏に秘められた複雑な感情を暴くような真似はしない。それは探偵の領分であり、一介のセイバーに過ぎない己の仕事ではない。彼女が気にしていないのならば、それはそういうことにしておくべきだ。

 

 

 

 

 

 

城内を歩きながらトラップをかけて回る。

 

「これでラストかしら」

「ええ、そのはずです。お疲れさまでした、アイリスフィール」

「私は何もしてないわよ。力仕事の殆どは貴女じゃない」

「サーヴァントとして、そのへんはまあ」

 

仕事終わりの気の緩みだろう。雑談をしながら特に警戒もせず城の出口へ向かう。それもそうだ、この城には結界と今張ったばかりの罠がある。並大抵の人間が入ってこれるはずがない。

そう。人間は(・・・)

 

「ほう。ここが貴様らの別邸か。(オレ)の城と比べるのも烏滸がましいほどだが、紛い物の住み着く場所としては丁度良いだろう」

 

「────っ!? アイリスフィール! 私の後ろに!」

 

なんの気配もなかった。虚空にはなにも存在しなかった。けれど、彼は突然として目の前に顕れた。まるで最初からそこにあったかのように。黄金の鎧を身にまとい、絶対の捕食者として真紅の瞳をセイバー(アサシン)に向ける彼は、そう、────アーチャー・ギルガメッシュ。この世、最古の英雄王!

Xがひみつかりばーを構えた。ギルガメッシュを睨みつけ、仇敵に出会ったかのような殺意を向ける。

 

「────その、いるだけで眩しくて邪魔で悪趣味な金ピカの鎧は! ええ、ええ、忘れもしません! 私のリリィに求婚とかしやがる駄目な方の英雄王────!」

 

「我そんなふうに思われてるの?」

 




おかしいな。騎士王と英雄王のかっこいい邂逅を書こうと思ってたのにな。
これも全てセイバーウォーズ2ってやつが悪いんだ!
なんというか、Sイシュタル系統の遠坂凛あじが強すぎてもしや我々は知らないうちにUBWを見ていたのでは? という気分になりました。過去と未来の己(広義)対決ですし。


さて、皆様のピックアップ具合はどうでしょうか。私はXを、妹はXオルタと柳生さんと茨木を引きました。割合おかしくない?
Xが引けなかったとこから始まったこの短編──短編? まあいつの間にか連載になってしまっていたのは些細な問題でしょう。みんなの愛と勇気が冬木市を救うところまで続けるつもりではありますので、これからもどうぞよろしくおねがいします。

こんどこそライダー陣営を・・・・・・の前にアーチャーとアサシンの話ですね。はい。
それではまた。


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温度差〜慢心、環境の違い編〜

「帝都コミカライズやったー!」
「漫画をコミカライズとは(哲学)」
「んーまあ同じなのは我々サーヴァントのみでマスターは変わるそうですし? あの聖杯戦争を更にコミカライズ、というわけではないそうなので」
「まあどうせわしが勝つことは一億年と二千年前から決まってるのでいいんじゃが」
「はあ? あのかっこよすぎる沖田さんを見た上で言ってるんですかこの魔王(笑)」
「触媒がラノベな幕末天才剣士(笑)さんじゃないですかやだー」
「は?」
「お?」

TYPE-MOONコミックエースで絶賛連載中ですってよ奥さん! 過去に発売されたTYPE-MOON作品も連載されてますよ! もちろんZeroもね!


「────その、いるだけで眩しくて邪魔で悪趣味な金ピカの鎧は! ええ、ええ、忘れもしません! 私のリリィに求婚とかしやがる駄目な方の英雄王────!」

 

「我そんなふうに思われてるの?」

「むしろそれ以外にどう思えばいいと?」

 

 

「────英雄、王・・・・・・っ!?」

 

まるで漫才のようなやり取りを繰り広げる2人の後ろで、アイリスフィールが戦慄していた。お願いセイバー(アサシン)、少し黙ってて。

だって、英雄王だ。英雄王。「英雄」と「王」の素質を兼ね備えるものこそ多々いるが、個を指して「英雄王」と呼ばれる人物など、彼女は世界で一人しか知らない。

天上天下唯我独尊。神々にすら疎まれ(怖れられ)、泥人形エルキドゥだけを唯一の友とした孤高の王。

 

「最古の英雄、ギルガメッシュ・・・・・・!」

 

その真名を呟いた瞬間。アイリスフィール目掛けて財宝が飛び出し、Xが咄嗟にそれを弾いた。

 

「アイリスフィール、怪我は!」

「だ、大丈夫」

「・・・・・・おい、そこの」

 

ギルガメッシュから不機嫌そうなオーラが漏れていた。Xに拒否され肩を落としていたときとはまるで別人のような姿に、アイリスフィールが僅かに強張る。ギルガメッシュはその紅玉のような瞳に凍てつくような冷たさを宿し口を開いた。

 

「貴様、誰の赦しを得て(オレ)の名を呼んでいる? 只人ですら地に額をこすりつけ、なおかつ(オレ)が許さねば雑音を生み出すことすら極刑に値するというのに。貴様はその紛い物風情の身で軽々しく」

「それ以上、私のマスターへの侮辱はよしてもらいましょうか、アーチャー。────二度目はない」

「・・・・・・ほう?」

 

嘲笑を浮かべることすらせず、ただ淡々と己にとっての絶対──いや、彼自身がルールそのものなのだから、この世の真理であると思っている──を言い募るギルガメッシュへ、Xは本気の殺意を向けた。そんな彼女に眦を釣り上げ、ギルガメッシュが薄く笑う。

 

「はっ。そういえば貴様も騎士王の紛い物であったな。まあ良い。不敬を許す。気の強い女を(オレ)に従わせるのも気分がいいからな」

「・・・・・・この外道が」

「何を言う。(オレ)がルールだ。(オレ)が道理だ。ならば、貴様らの方が外道と呼ばれてしかるべきではないか?」

「────なるほど。もはや言葉は不要らしいですね」

 

アイリスフィールを後ろにかばったまま、Xはひみつかりばーを掲げた。ギルガメッシュは余裕の笑みを崩さない。

 

「無理よアサッセイバー! 今は一旦引くべきだわ! 気配遮断を使えるでしょう!」

 

 

「セイバーが気配遮断なんて持ってるわけないでしょう!」

 

「!?」

 

後ろを振り向かずXは堂々と答えた。アイリスフィールが目を白黒させる。

 

「安心してくださいアイリスフィール、貴女を傷つけさせなんてしませんから」

「かっこいいけれどちょっとまって! 気配遮断ないの!?」

「誇り高き最優のセイバーにそんなものは必要なし! よってありません! ────なので、しっかり捕まってくださいね!」

「え?」

 

Xは困惑するアイリスフィールを横抱きにすると、ギルガメッシュをにらみ続けた。そんな姿にギルガメッシュが哄笑をあげる。

 

「ふはははは! (オレ)を前にしても平伏するどころか殺意を向けてくる、貴様もやはり騎士王の端くれで「やかましい! 今は見逃してあげますが、次に会ったらただじゃ済ませませんからねー!! ────三十六計逃げるに如かず! カモン! ドゥ・スタリオンⅡ号!」

 

偉そうにふんぞり返るギルガメッシュを遮りXが愛機を呼んだ。どこからともなく現れたそれにいそいそと乗り込むと、ダメ押しとばかりに「ばーかばーか!」と罵倒してから、本来ついてないワープ機能で虚空へと消え去った。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おのれサーヴァントユニヴァァァァァァース!!!!!」

 

騎乗EXには勝てなかったよ・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって三ツ星ホテル。聖杯戦争中だとは思えない優雅さで紅茶を飲むケイネスたちに給仕していたメイドオルタが、何かに気づいたように声を上げた。

 

「むっ」

「どうしたの、ライダー?」

「アサシンのくせに私より騎乗スキルが高い"私"が忌々しい黄金のアーチャーをコケにした気がする。よくやったぞ私」

「やけに具体的だな・・・・・・」

 

というかライダー的に騎乗スキル負けてていいのか。ポツリとケイネスが漏らすと、メイドオルタは眉をひそめて否定した。

 

「確かに私の騎乗スキルはBだが、ヤツはEX、つまり特定の乗り物しか乗りこなせん。万能型か一点特化型、ライダーとしては前者のほうがいいに決まっているだろう」

「そうなのか・・・・・・だが、ランクは高ければ高いほどいいとは思わんかね?」

「マスター」

 

やれやれ、と肩をすくめてメイドオルタがポットを置いた。抜け目なくソラウがシャッターを切る。

 

「確かにステータスは最もわかりやすい"強さ"だ。かくいう私もセイバーならば敏捷と幸運以外はトップランクだったからな。・・・・・・だが、そうさな。例えばマスター、サー・ランスロットのことは当然知っているだろう?」

「あ、ああ。まさかお前から言われるとは思わなかったが・・・・・・」

「彼は最優の騎士だった。その息子であるサー・ギャラハッドは聖杯を見つけた。サー・ガヴェインは勝利の剣(エクスカリバー)と同等と言わしめる聖剣を持っていた。他にも、円卓の騎士たちは様々な逸話を有している。・・・・・・言いたいことがわかるな、マスター?」

「・・・・・・それはわかるが」

「ならばいい。当然だが強さは大事だ。最重要事項と言っても過言ではないだろう。私とて、当然強き者の方が好きだからな。・・・・・・だが、あまりそればかりに固執するべきではない。私のマスターならばそのくらい肝に銘じておけ」

 

ふざけたサーヴァントのくせに尊大な態度を取りやがって。ケイネスはそう言いそうになるのをグッとこらえた。相手は(いくらふざけた格好をしているとはいえ)アーサー王であるし、言っていることにも一理あったからだ。

と、いままで黙っていたソラウが口を開いた。僅かに頬を染めながら。

 

「でも、あなたのそういう強さに貪欲なところ、・・・・・・ええ、好きよ。私は」

「、えぁ、あ、ありがとう、ソラウ・・・・・・そ、その、私も君の素直に好意を伝えてくれるところを、好ましく思う。もちろん、君のすべてを愛してはいるのだが」

「ケイネス・・・・・・」

「ソラウ・・・・・・」

「んんっ」

 

放っておけばいつでもどこでも恋愛小説の主人公と化すマスターたちをジト目で見つめ、わずかに眉をひそめた。

 

「夫婦仲が良いのは大変喜ばしいが、TPOを弁えるべきだな、マスター。それとも、私がまた偵察にでも行ってくるか?」

「あ、あぁ。使い魔によれば他の陣営も動きを見せているようだからな。やはり英国紳士たるもの、堂々と対峙し、その上でねじ伏せるべきだ。だが、今回は本当に偵察だけでいい。戦闘になりそうになったらすぐに戻ってくるんだ」

「敵に背を向けるのは恥ではないのか?」

「戦略的撤退、という言葉を覚えておくべきだな。ライダー。聖杯戦争とはつまり、どこまで己の技量で戦えるか、だ。頭脳戦なのだよ。私のサーヴァントであればそのくらい肝に銘じておきたまえ」

「むっ・・・・・・」

 

言葉を返され、すねたようにそっぽを向くメイドオルタ。してやったりと笑みを浮かべるケイネス。仲が良いわねと写真を撮るソラウ。

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「?」

 

ブレない彼女を微妙な顔で見つめながら、主従の中には確かに奇妙な連帯感が生まれているのだった。






クリスマスお疲れさまでした! サンタ婦長可愛すぎか?? 聖杯上げました。
アトランティスお疲れ様でした! シャルロット・コルデー貴様・・・・・・聖杯上げました。
おかしいな、あれだけあった聖杯がもう消えましたね。なんででしょうね。

あと関係ないですけどカプさば買いました。シロウとサクラの会話愛おし過ぎて延々と聞いてられますね・・・・・・今ならワンコイン以下ですよ! レアルタヌアもUBWとHFがそれぞれ1000円以下ですよ! 好きなルートから始められますよ奥さん!!! フルボイスですよ!!!!!

今回はアーチャー&アサシンとライダー陣営でした。ギルガメッシュもメイドオルタもあれであってるのか全くわかりませんね・・・・・・おかしいな、と思ったら遠慮なく教えていただけたら嬉しいです。どんなに細かいところでもいいので。あとケイソラはこれからも軽率にいちゃつかせていきます。ソラウカメラマンみたいになっちゃったな・・・・・・。

アンケートにご協力いただければ幸いです。なお本当に参考程度でしかないので、反映されるとは限りません。どうせ全エンド書く気なので。本編としての終わりはどうしようかな、と。なお1番と2番は合体する可能性があるものとします。

それでは良いお年を。お体に気をつけてください。


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幕間の物語
幕間:お兄ちゃん


どうしてこうなった\(^o^)/
違うんです、ただ深夜帯に筆が乗っただけなんです。ほんの遊び心だったんです。
あっ、初の一人称です。


僕、天才少年たる間桐慎二には、僕とは似ても似つかないくらいどんくさい妹がいる。まあ、血は繋がっていないから当然なのだけど。

僕が妹────桜と出会ったのは、少し前の話だ。彼女は唐突に現れて間桐の姓を名乗り、僕の妹になった。その時、聡明な僕は(魔術師の家系に他人を、しかも小さな女の子を入れるなんて)と憤慨したのだけど、後で父様に(いやいや)教えて貰ったところ、彼女も魔術師の家系だったらしい。遠坂っていう、魔術師の中でも上位に位置する家の娘。それを聞いて、(今思えば情けないことに)僕は桜に対して警戒心を抱いてしまった。何故そんな奴がもう跡取り(つまり僕のことだ)のいる間桐にやってきたのだろう。もしかしたら、僕の立場を脅かすのだろうかと。

そんな予想に反して、桜はとても大人しいやつだった。いつも俯いているし、何かに怯えているし、時たま僕のことを見たかと思えば、目が合うと直ぐに逸らす。

そんな態度に腹が立った僕は、一度だけ桜を問い詰めたことがある。

 

「おい、桜!」

「っ・・・・・・なん、で、しょう。しんじ、お兄様」

「お前、なんで目を逸らすんだ。言いたいことがあるなら言えばいいだろ。・・・・・・僕はお前の、お兄ちゃんなんだから」

「・・・・・・ぁ、・・・・・・いい、え。ごめんなさい、しんじお兄様。なにも、なにも、ありません」

 

そうやって、またふいと目を逸らした桜に、どうしようもなく怒りが湧いてきて。

きゃあ、という悲鳴も無視して、僕は桜を僕の部屋に連れ込んだ。

 

 

 

桜が逃げないようにドアに鍵をかけて、桜を僕のベットへ座らせる。桜は何かを諦めたような、それこそもう助からないような、そんな絶望した瞳で床を見つめていた。僕はそれが気に食わなくて、桜の隣にドサリと座った。桜がビクリと震えたのがわかった。

 

「そんなに怖がらなくても、とってくったりはしないぞ」

「・・・・・・なにも、しないのですか?」

「はぁ?」

 

信じられないものを見るように、桜が僕を見つめた。その時、初めて目が合ったまま見つめあったのだけれど、僕はそんなことにも気が付かないで、桜の言ったことの意味を考えていた。

 

「どうして僕が桜に対して何かをしなきゃいけないんだ? というか、なにかってなんだよ」

「・・・・・・それ、は、・・・・・・痛いこと、とか」

「するわけないだろ。だって、僕は桜のお兄ちゃんなんだぞ」

「・・・・・・・・・おにい、ちゃん」

「そうだよ。そもそも、ずっと思ってたんだけど、僕のことを『慎二お兄様』なんて呼ばなくていいんだぞ。そりゃあ、僕は当然、将来的に凡人たちに様をつけられるくらい偉くはなるけれど、お前は僕の妹なんだから」

「・・・・・・いもうと」

「うん」

 

桜は何度か「妹」と呟いて、やがてポロポロと泣き出した。僕がギョッとしてのぞき込むと、桜は自分が泣いていることにとても驚いてるようだった。

 

「あ、れ、・・・・・・わたし、どうして、」

「おい、桜? どうしたんだ? どこか痛いのか? あっ、そうだ、ばんそうこうを持ってきてやるよ。ちょっと待ってろ」

 

僕が立ち上がると、桜は僕の服をギュッと掴んだ。ビックリして振り向けば、桜もびっくりしていて、慌てて手を服から離していた。

────僕のパリッとしたシャツに、しわを残して。

 

「ぁ、ぃゃ、ごめ、ごめんなさい、────ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

「うわっ!?」

 

まるで人が変わったかのように、うわ言のように謝罪を続ける桜。そんな桜が怖くなって、どうして謝ってるのかが分からなくて、部屋から逃げようとして、────僕は、お兄ちゃんなのだと思い出した。

 

「おい、桜」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

「桜ってば」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

「っ、桜!」

 

少し声を荒らげてしまって、桜が可哀想なくらいに怯えた。今まで妹も、姉も、兄も、弟も、母親も、何もかもを知らなかった僕は、こんな時、どうすればいいのか分からなくて、

 

「桜っ!」

「ごめんなさいごめんなさいごめ、・・・・・・? ・・・・・・・・・!?」

 

桜の小さな体を優しく抱きしめた。

初めて触れた桜はとてもふわふわしてて、僕よりもすごく小さくて、護ってやらなきゃな、と思うには十分すぎるほどだった。

 

「大丈夫。大丈夫だぞ、桜」

「しんじ、おにいさま、」

「だから、お兄ちゃんだって言ったろ。慎二お兄ちゃんだ」

「・・・・・・しんじ、お兄ちゃん」

「うん。どうしたんだ、桜」

「・・・・・・わたし、なんか、を、抱きしめていると、お洋服がしわしわになっちゃいますよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・は」

 

初めて。初めて僕は、間抜け面、というものを晒したのだろう。

 

「・・・・・・・・・は、はは、あははははは!」

「おにい、ちゃん?」

「はははははは!! 馬鹿だなあ、桜は! そんなことを気にしてたのか?」

「・・・・・・は、い」

「洋服なんて洗えば直ぐに綺麗になるんだぞ。お前が気にしなくてもいいんだ」

 

妹が謝っていた理由が可愛くて(それにしてもあの謝りようはないと思うケド)僕は思わず大声で笑ってしまった。父様に「はしたない」と怒られるかもしれないけれど、それよりも面白かったのだから仕方ない。

 

「桜。桜。僕の、僕の初めての、大切な、大事な妹。大丈夫。僕はそんなことでお前を怒らないし、そんなことでお前を嫌いになったりしない。だって、────だって、僕は、お兄ちゃんなんだから!」

 

桜はキョトンと目を丸くして(そんな顔も初めて見たからまた笑ってしまった)それから、ふわりと、まるで桜の花が咲くように、僅かに、ほんの僅かにだけれど、確かに僕に向けて笑った。

 

「────はい。しんじお兄ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

それから少しして、僕は桜に会えなくなった。父様に聞いても教えてくれないし、爺様は少し(本当はかなり)怖いから、僕はそのまま過ごしていた。桜に会えないのは寂しいけれど、あいつも魔術師としてこの家に来たからには色々とあるのだろう。僕もすごい魔術師になるためにたくさん勉強して励んでいた。

そんなある日、おじさん────間桐雁夜が家にやって来た。父様は「今更ノコノコと何しに帰ってきた!」と、僕の知らない顔で怒鳴っていて、それに対して雁夜おじさんも「お前こそどうして桜ちゃんを! 堕ちるとこまで堕ちたのか!?」と怒鳴り返していた。

父様のあんな顔も、話題に出ていた桜のことも気になったけれど、二人は僕を見つけると部屋に追い返してしまったから分からない。

 

 

 

 

 

 

 

そこからまた数日たって、父様は僕に「海外へ行け」と言った。立派な人間になるために勉強してこい、と。

普段ならそれに従った。僕は父様のことをすごく尊敬していたし、立派な人間にもなりたかったからだ。

でも────どうしても、桜のことが頭の片隅をちらついた。

 

「父様。桜は今、何をしているのですか?」

「・・・・・・お前が知る必要はない」

「何故ですか? だって、僕は桜の兄です。兄なら妹に対してお別れを言う権利があります」

「・・・・・・桜のことは忘れなさい」

「・・・・・・・・・え? 父様、今、なんて、」

「桜を忘れなさいと、そう言った」

 

僕を見下ろす父様の目は、驚くほど冷たかった。あれは、そう、雁夜おじさんを見ていた時の目だ。

 

「・・・・・・っ、そんなこと、出来ません」

「何故だ? そもそも彼女は間桐の家の子供じゃない。お前が帰ってくる頃には全てが終わっているだろう。忘れても何も支障はない」

「全てが、全てが終わるって、どういうことですか!? 桜はいなくなってしまうのですか!?」

「しつこいぞ、慎二」

「いいえ、引きません。引けません。だって、だって桜は僕の妹です。僕は妹を忘れるほど、薄情な人間にはなりたくありません」

 

僕が父様に反発したのは、これが最初で最後だった。いつまでも引く様子のない僕に痺れを切らしたのか、父様が僕の腕を掴んで、

 

「カカカッ。よいではないか、鵺野」

「・・・・・・! お父様」

 

いつの間にか、僕達の傍には爺様が立っていた。爺様はその虫のような目を僕に向けて(サッとそらした)ニヤリと笑った。

 

「素晴らしい。この歳で妹を────血の繋がりのない妹を案じる心を持っているとは。のう? そうは思わんかね、鵺野」

「・・・・・・は。しかし、これからこの家は、」

「貴様に一つ家をやる。これからの間はそこに住めばよかろう。────()()は怠るでないぞ」

「! ・・・・・・っ、はい。わかりました」

 

────父様が怯える姿は初めて見て、同時に、父様があまり僕を爺様に会わせようとしない理由も何となく理解した。

 

「クカカカッ。うむうむ。励めよ、慎二」

「はい。お爺様」

「クカカカカッ」

 

独特の笑い声を上げて、爺様は廊下の奥の、闇の中へと消えた。握りしめた掌を開いて、僕は自分が汗をかいていたことを知った。

 

「・・・・・・慎二」

「はい、父様」

「・・・・・・荷造りをしろ。引越しのためのな」

「っ、はい」

 

途端、僕からは恐怖も不満も吹っ飛んでいて、ただ「桜の傍にいれる」ということだけが心を支配していた。

────今にも倒れそうで、僕のことを憎まんと努力する父様に、気づくことも無く。

 

 

 

 

 

 

 

桜。桜。僕の、たった一人の妹。

大丈夫だよ。僕が間桐の跡取りになったら、お前にはいっぱいいっぱい、楽しいことをしてやるからな。

誰の顔色を伺うことも無く、むしろ他人を手足のように使うことが出来て、何不自由無く過ごさせてやる。もちろん僕はお前よりも上だけれど、でも、だって、兄妹だから、少しくらいはわがままだって許してあげる。なんだってさせてあげる。洋服にシワをつけたくらいで怯えなくて済むようにしてあげる。

桜。桜。

僕の、大事な、大切な、妹。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いやほんとどうしてこうなった・・・・・・? ルルハワ周りまくって疲れちゃったかな。
間桐慎二が誰おまです。綺麗な慎二とかいうレベルではないので注意してください。そういうことは前書きに書けよ。はい。
そんなわけで間桐家幼少期妄想。公式でお兄ちゃん頑張ろうとしていたらしいし二次創作ならもっと頑張らせていいよね! 病んじゃった感じになったのはご愛嬌。
多分ここに書いたことはあまり本編に影響しませんよ。いやほんとほんと。あったとして後日談で遠坂さん家のあかいあくまと姉兄対決するくらいでしょうか。多分。


































街を歩いていた。何気なく歩いていた。気晴らしの散歩のつもりだった。
いい加減桜に会いたいな、と思った。雁夜おじさんが来てからは桜に一切会えなくなってしまったから、せめて電話くらいでもしたいなと思っていた。
桜は今頃何をしているのだろう。
僕が勉強を頑張っていることを言ったら尊敬の眼差しを向けてくれるだろうか。
ああ。桜に会いたいなあ。


「とても仲のいい姉妹ねえ」
「ここのところよく見かけるわよね。お父さんらしき人は少し不気味だけれど、あの二人は懐いているようだし」
「義家族なのかしら。なにか複雑な事情がありそうだけれど、妹さんもお姉さんも礼儀正しいから、あまり首を突っ込みたくはないわよね」


そんな会話が耳に入って、妹かあ、ともう一度想いを馳せた。
何気なしに主婦達の視線を追いかけて、そして、



「えっちゃん、こっち!」
「はい、今行きますよサクラ」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さく、ら?


────僕の視線の先で、紫の髪が楽しそうに揺れた。


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幕間:いつかの話

ボックス600とか言ってる人は寝てください。

そして交換所とショップの温度差でグッピーが死ぬ。
あ、また幕間です。本編進めろよ。はい。


────衛宮家の居間だ。キッチンが同じ部屋にある。紫の髪を揺らす少女と、橙色の髪をした少年が並び立って料理を作っている。談笑しながら手を動かすその姿はとても仲が良い。白髪の少女が────ああ、あれはイリヤスフィールだ。アインツベルンの城に置いてきた彼女だ。恐らくは、もう二度と会うことのできないだろう彼の娘だ。

彼女は微笑ましげに、それでいてどこかむすりとした顔で二人を見ている。

 

「サクラばっかりずるいわ」

 

イリヤスフィールが口を尖らせて言った。同調するように黒髪の少女が口を開く。

 

「士郎ばかりずるわよね。ま、私は桜の姉だから、いつでも桜と料理ができるけれど?」

「それは聞き捨てならないな、遠坂。桜は僕の妹だぞ? 血縁だけの姉は呼んでないね」

「・・・・・・それは宣戦布告と受け取っていいのかしら、間桐くん」

「お好きなように」

 

ふん、と鼻を鳴らし合う二人。遠坂と間桐。どちらも御三家だ。あそこには確かに子供がいるが、このくらいの年頃だとは聞かない。精々が小学生ほどのはずだ。あとで洗い直す必要がある。

 

「もう、姉さんも兄さんも変なことで喧嘩するのはやめてくださいよ。どっちも私の大切な人なんですから」

「そうだぞ、二人とも。妹に心労をかけるなよ」

「・・・・・・衛宮にだけは言われたくないセリフだね」

「それには同意するわ。貴方が一番桜に苦労をかけてるんじゃないかしら、士郎?」

 

お膳を運びながら台所にいた二人がやってくる。衛宮。衛宮と言ったか、間桐の少年は。ここは衛宮の家なのだから家人がいるのは当たり前ではあるが、彼にこんな息子がいるはずない。そもそも、髪色も瞳の色も何も似ていないのに。

 

「そうなのか・・・・・・」

「そ、そんなことありません! 先輩のことを大変だなんて思ったことは一度も! む、むしろ先輩が頼ってくれるのは嬉しいな、なんて・・・・・・

 

見るからに落ち込む衛宮と、慌てながらフォローをする────話の流れから桜だろう。遠坂の血と間桐の家名を持つ少女。魔術師同士で子供を明け渡すなどそう珍しくもない。しかし大抵、そうなった家は売られた方がコンプレックスを持つか売ったほうが罪悪感を持つかの2択なのだが、この姉妹にはそういうものは見受けられなかった。むしろ遠坂は間桐と妹を取り合っている。

 

「・・・・・・ねえ士郎。私、貴方に私のことを『義姉さん』なんて呼ばせる気はないから」

「は? 何言ってるんだよ遠坂。なんで俺が遠坂の弟にならなきゃいけないんだ」

「・・・・・・一応言っておくが、僕も『義兄さん』なんて呼ばせないからな」

「慎二も急にどうしたんだよ。二人ともまだ寝ぼけてるのか?」

「も、もう! それ以上ふざけるなら朝ごはんあげませんからね!」

 

顔を真っ赤にして叫ぶ桜。なるほど、そういう仲なのか。衛宮も隅に置けない。彼の息子とは思えないくらいだ。

 

「って、イリヤはどこいったんだ?」

「あれ、そういえば・・・・・・気配遮断なんて持ってないわよね?」

「イリヤはアサシンじゃないぞ」

 

気づけばイリヤスフィールはいなかった。皆が話している間に出ていったらしい。ふすまが開きっぱなしだ。やがてドタドタと廊下を走る音がして、茶色の髪の女性とイリヤスフィールが入ってきた。

 

「桜ちゃんが私の妹になるんだって!?」

 

「はあ!?」

「な、ななななな!?」

 

目をランランと輝かせた茶髪の女性がトンデモ発言をかます。その横でイリヤスフィールがうんうんとうなずいていた。

 

「おはようございます藤村先生。朝から何言ってるんですか?」

「おはよう遠坂さん。私は士郎の姉でしょ? じゃあ桜ちゃんは私の妹になるじゃない!」

「む、シロウは私の弟よ。タイガなんかには渡さないんだから」

「なにおぅ!」

「なによぅ!」

 

呆ける四人をそっちのけでドタバタと喧嘩を始める。ふじむらたいが。なるほど、あの"組"の孫娘だ。度々切嗣と話をしているのを見かける。もう少し髪は長かったはずだが。

 

「ほら、くだらない話は終わりにして朝飯食べよう。せっかく桜が作ってくれたのに冷めちまうぞ」

 

パンパンと衛宮が手を叩いて場を仕切った。二人も喧嘩をやめて──ガルルとにらみ合いはしたまま──席につく。

 

「一体どうしたんだよ。いきなり妹だの弟だの言い始めてさ」

「知らぬは本人ばかりなり、ってね。まあいいさ、まだ先のことだろ。それよりもほら、早く用意をしてくれない?」

「兄さん、食べたいならちゃんと自分で準備してくださいよ。人数分は大変なんですから」

「手伝うわよ、桜。"私は"姉だし」

「・・・・・・わかったよ、手伝えばいいんだろ。"僕は"兄だしな」

 

張り合う二人に衛宮はくすりと笑って、「じゃあ俺は切嗣たちを起こしてくるよ」と居間を出ていった。ガヤガヤと騒がしさが続いている部屋を離れ、衛宮のあとをついていく。

 

 

 

衛宮がふすまを開けて一室に入れば、すでに起きている切嗣とアイリスフィールがいた。

 

「おはよう、切嗣、母さん。珍しいな」

「おはよう、士郎。イリヤと大河ちゃんは朝から元気だね」

「おはよう。ふふ、仲がいいのはいいことよね。私もなにか親近感を感じているからゼッちゃんには嫉妬しないし・・・・・・

 

アイリスフィールの電波は健在のようだ。つまりあれはアサシンのせいではないということである。頭が痛い。

 

「なるほど、喧嘩で起きたのか。いや、藤ねえたちが急に変なこと言い出してさ」

「変なこと?」

「ああ。桜が妹になるとかなんとか。遠坂と慎二も俺が弟になんて言い出すし」

「・・・・・・それは・・・・・・」

「ねえ・・・・・・」

 

衛宮の言葉に意味ありげに視線を交わす二人。一人意味がわかっていないのは衛宮だ。鈍感を演じているのか素なのか。

 

「うふふ、でも楽しみだわ。みんなが本当の家族になったらきっと素敵な毎日になるわよ」

「今以上に騒がしくはなりそうだけどね」

 

幸せな日々を夢想するアイリスフィール。やれやれと肩をすくめる切嗣。二人が楽しそうならいいかと優しげな眼差しを送る衛宮。

 

「もー! シロウ遅い! ご飯冷めちゃうじゃない!」

 

しびれを切らしたのか、頬を膨らませたイリヤスフィールが乱入してきて、そのまま切嗣の胸にダイブした。見たことのない、幸せそうな顔で受け止める切嗣。アイリスフィールと衛宮は笑顔を浮かべる。

 

幸せな家族が、たしかにここにあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

舞弥は目を覚ました。天井をしばらく見つめ続ける。珍しいことに、見ていた夢を鮮明に覚えていた。いや、そもそも舞弥は夢を見ること自体があまりない。

一体何なのだろう。未来の景色だとでも言うつもりか。舞弥には夢見の力などないのに。けれど、あれが未来ならば、切嗣があのように笑うのなら、それは素晴らしいことだとも思う。

最愛の妻と娘、そして新しくできたらしい息子に囲まれ、世界の幸福を一身に受けている彼。あの未来を彼が望むならなんだってしよう。だって、私は彼の望みを叶えるための部品なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────たとえその世界に、私が存在していないのだとしても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




《ハッピーエンドルート》
「ただいま戻りました。もうお腹がペコペコです」
「おかえりなさい。今日も言峰神父と走ってきたんですか?」
「訂正してください桜。一緒に走っているわけではありません。あの男が私の後をついてくるのです」
「綺礼のやつ、貴女と走るのが楽しいみたいよ。『私について来れる人間がいたとは』なんて気持ち悪い笑みで話してくるんだから」
「あの男にだけは負けないと決めているので。そして凛、私がついていってるのではありません。あの男が私についてきているのです」
「はいはい」
「はっ、よくあんな神父とつるめるよね。もしかして好きなんじゃないの?」
「は?」
「目がマジなんだよ怖いなあ! ちょっとした冗談だろ!」


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