最強のパンサーに 私はなる (黒禍)
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プロローグ
ぷげらと死んでぴぎゃあと産まれた


晴天、雨雲無し、洗濯日和な昼下がり、一見平和な商店街の真ん中でーーーーーー私、黒田麗(くろだれい)は死んだ。

 

 

死因は撲殺、原因はつまらない正義感だった。 

全く…酷い殺され方をしたもんだよ。マウントとってボコ殴りとかドラマとかアニメでしかみたことないぞ私は。

でもさ、目の前で子猫が踏みつけにされてたら見て見ぬふりなんてできるわけなかったよ…。

コレが人間だったら知らん顔してたんだろうけどね…さすがに動物は見捨てられないわ。

ん?人間も動物だって?知るかそんなもん。

私のお助けリストに人間という種族は存在しておりませーーーん!!お帰りください。

今頃あの野郎は人生を謳歌してるんでしょうねぇ……ああ!忌々しい!!

呪ってやるからなあんちきしょうめ…一生治らない切れ痔に悩まされてしまうがよいわフハハ。

 

―――あ、まって、なんか凄い眠気来た。え、消える?私消える?消滅してしまうん?えっえっちょっと、まてまてまて、消えるのはちょっと、あ、いや、かなり嫌だわ。まてまてまてちょっt

 

 

 

 

 

 

 

 

『にゃあ』

 

 

 

 

 

 

 

 

一つの命が潰えた時を同じくして

新たな命が深い森の中で産声をあげた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拝啓、人間だった頃の母ちゃんへ

 

<ミー…>

 

私、なんかの動物の赤さんになりました………たぶん

 

なんでたぶんなのかって?

だって目は開かないわ四つん這いのままでうごけないやらで自分の姿がわからんのですよ

あ、でも尻尾があるのはわかるな ぴこぴこ動くし

なんでこうなったのか今は考えたくない、だって―――

 

<ピャーッ!ピャーッ!>(お腹すいたーーッ!!)

 

おい!どこかにいる今の母ちゃんよ!産まれたばかりの赤さん置いてどこほっつき歩いてんだよぉぉぉ!!

こちとら腹へって腹へって死にそうなんだよ!おーーい!おかーーーん!放置はあかーーーん!!

 

<ピャーッ!ピャーッ!ピャーーーーーッ!!>(お腹すいたよぉぉぉうわぁぁぁん!!)

 

 

 

 

ーー数十分後ーー

 

 

 

 

<ピャーッ!ピャーッ!ピャー…フゥ…フゥ…>(やっべ、赤さんの体力の少なさナメてた…)

 

これだけ鳴いても親が来ないのはおかしい

まさかコレ、親無しなの?第二の人生ハードモードなの?ヒェッ…

飢え死にだけは…!飢え死にだけは回避させて下さいお願いします…ッ!!

餓死とか一番怖い死に方だと思うのよね私。おお、怖い。

……んん?なんか背中あたりがゾワゾワするなぁ…嫌な予感しかしないぞ……

 

 

赤さんが嫌な予感を感じた直後、前方の森から声が聞こえてきた。

 

 

「おい、こっちの方から聞こえたぞ」

 

それは、人間の声だった。

ガサガサと深い茂みをかきわけて、私のいる方へと音が近づいて来る。

 

 

――げっ…人間じゃん、うわぁ関わりたくねぇ…

 

 

ほぼ動かない表情筋をこれでもかと歪める赤さんの耳に、さらに音が追加される。

 

 

「じゃあ本当って事か? あの【人食い】の子供がいるって噂は…」

 

 

んん?人食い?子供?なにこの会話、鬼でも出るんかこのへん

うーん…鬼に喰われて死ぬのも嫌だなぁ…そうだ!

 

 

――聞き耳をたてよう

 

 

【人食い】というパワーワードに惹かれた赤さんの思考は、逃げるよりも聞く事を優先した。

 

 

「でも、あのキラーパンサーが【人食い】になっちまったのは俺たちのせいでもあるんじゃ…」

 

まだ幼さの残る青年くらいの声の人間がおそるおそる意見を述べた。

すると、先ほど赤さんの気配に気づいた人間が

 

「おい!それ以上言うな…村長に聞かれたいのか…?」

 

と、焦りながらも声を潜め、青年声の人間を窘めた。

だって…と戸惑いを隠せないその青年声の人間に、気配に敏感な人間は

 

「俺だってわかってるよ…あの事件は勘違いだったって事は…」

 

声に後悔の念を滲ませていた。

それを聞いた青年声の人間が涙声になり、悲痛の感情を溢れさせた。

 

「だからって、アレは…酷すぎるだろ…っ」

 

 

ーー(つがい)の死体を晒すなんてーー

 

 

 

………は?

 

 

死体を、晒すだって…?勘違いで?うわぁ…

前言撤回、やっぱり人間が一番アウトです。

 

てか、あいつら何て言った?キラーパンサーって言ったか?聞き間違いとかじゃないよな?

それじゃあ、今の私はベビーパンサーって事になるのか…

【人食い】キラーパンサーの子供…うーん……………死亡フラグ乱立のお知らせかな?ふざけんなコノヤロー生きるわ。

てか人間達の足音が近づいて来てるから逃げたいんだけどねぇ

産まれたてほやほやの赤さんはハイハイすらできないんだよなぁ…!

…いや!まだだ!まだ終わらんよ!!せっかくベビーパンサーに生まれ変わったんだ!

キラーパンサーになって広い世界を旅するまでは終われねぇんだよ!!何番目のドラクエか知りたいし。

諦めんなよ!諦めんなお前!どうしてそこでやめるんだそこでっ!!頑張れ頑張れ出来る出来る絶対出来る!!

ムオォォォオオオォォォオォォ!!!

 

 

 

あっ

 

 

 

カサッ 「!? 誰だ!!」

 

オオオオゥノオオオォォ!!このタイミングで落ち葉踏むとかなんだよぉぉぉ!!!

っべー…マジでコレ、っべーわ…

 

 

焦ってまた音を立ててしまいそうな私の背後の茂みから

とても安心感のある声がしてきた

 

《シッ…このまま動かず、じっとしてなさい》

 

その安心感を抱かせる声をした暖かくていい匂いの何かが

私を隠すように覆い被さった

 

ああああああ!!この声と匂いッ!わかる!わかるぞ!母ちゃんだろ!?

ん?匂い?…思った以上にケモノ化してるな。

 

<ミィ>(おかん…?)

《私の可愛い子…ごめんね、すぐに来れなくて…》

 

母親の温もりとは、こんなにも安心感のあるものだったか。

そんな事をぼんやりと思っていたら、何やら人間達がそわそわと落ち着かない様子を見せ始めた。

 

「……そろそろ帰るぞ この森に入ったことがバレたら面倒だ」

 

いたの!?と赤さん改めベビーパンサーは驚愕した。

今の今まで黙って周囲を警戒していたのだろうか。

それに音の発生源が他の人間達よりも高い位置にあるようにベビーパンサーには聞こえた。

とても背が高いのだろうと思考を巡らせる。

新しい音――野太く重厚な声の人間に急かされた二人は緊張を露にした。

この森に入った事がバレたら吊るされてしまうかもな、と苦笑いしながら告げる。

するとそれに怯え、涙声をさらに悪化させた青年声の人間がひっ、と小さく悲鳴をあげて怖いから止めろと懇願した。

 

 

それから少しの間その場で一言二言話した人間達は、時間だ、という重厚な声に従い

森に入ってきた時よりも素早くその場を後にした。

 

 

……足音が遠ざかっていったな。

にしても随分酷いことする村長がいたもんだなぁ

某ど○ぶつの森の村長見習えよ…フレンドリー極めてるから。…落とし穴仕掛けたり網で叩いたりしてくるけど。

もういっそ究極の魔物使いとしてドラクエ界で名を馳せたらいいんだよ村長は。

 

《……行ったようね》

<ミーッ!>(母ちゃん!怖かったよぉぉぉ!!)

《おお、よしよし…お腹すいたねぇ 今、お乳をあげますからね》

 

喉をぐるぐると鳴らし、あやすように身体中をグルーミングしてくる母パンサーに、ベビーパンサーも喉を鳴らして答える。

精神こそ人間のものだが、肉体はやはり獣。

母親のグルーミングテクニックの前では自然と喉が鳴ってしまうのだ。

 

ふぉぉ…の、喉が、鳴ってしまう…んん~…くるるる…

グルーミングがこんなにも気持ちのいいものだったとは…!くるる…こんなの、初めてっ…くるるる…ふにゃ~

 

緊張で強張っていた全身の筋肉が解されていく感覚に、ベビーパンサーは即堕ち2コマを思い出した。

 

 

テクニカルグルーミングを受け、暫く思考を放棄させていたベビーパンサーだったが、ふと先程の母パンサーの発言が頭によぎった。

 

そういえばさっき、乳がどうのっていってたような…?

 

母パンサーのお乳発言を思い出したベビーパンサーのお腹がきゅぅぅ…と切なく鳴った。

 

…しまった、思い出したらお腹減ってきた でも赤ちゃんだからご飯は母乳だよな…

中身が二十代だとちょっとキツいものがあるかもしれんなぁ…

にしてもこのおかんパンサー、随分物腰柔らかいな。

頭がモヒカンだからもっとヒャッハーしてると思ってたよ ごめんね、おかん。

 

だいぶ失礼な事を考えていたベビーパンサーだったが、空腹には勝てるはずもなかった。

懸命に母パンサーのお腹まわりの毛を掻き分け、食欲を掻き立てる香りを放つ頂を探る。

 

――みつけた。

 

…とりあえず今は、バブみを感じていよう。

 

ベビーパンサーは今度こそ考える事をやめた。

 




初投稿です。
こんな書き方したほうが背景わかりやすいよー等といったアドバイスや感想くれたら嬉しいです。

追記・台本形式は止めた方がいいというご指摘をいただいたので修正しました。
治ってる…といいなぁ


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ベビー編
第一歩 家に帰ってママのミルクでも飲んでる


霧深く高い山を越えた先、光が遮られる程の森奥深く。

人目を避けるようにひっそりと存在する村がある。

その村の名は、サカイ村。キラーパンサーと共存共栄してきた村である。

 

そんなサカイ村には伝承があった。

 

 

【我ら境界(さかい)の民 生きとし生けるものへの感謝と畏怖を忘るることなかれ さもなくば災いが訪れるであろう】

 

これが、この村に住む人々に知られている伝承だ。

 

 

しかしこのサカイ村には、もうひとつの伝承が存在する。

それは代々この村の長となる者へ口伝として伝わる真の伝承であった。

<獣の眼>と呼称される伝承には、ある約束が記されていた。

 

【我ら境界(さかい)の民 遥か古より四ツ足の獣と絆を深めたり

 我ら境界(さかい)の民 絆をより深めんと四ツ足の獣王と魂の契りを結ばん

 

 四ツ足の獣王 境界(さかい)の民に 契約と制約を与えん

 

 心せよ 我ら四ツ足の獣 汝らの従僕に非ず 汝らが朋なり

 心せよ 我ら四ツ足の獣 朋として有る限り 汝らに狩猟と俊足の業を授けん

 心せよ 我ら四ツ足の獣 背反には報復を以て応じたり

 

 境界(さかい)の民と獣の絆分かたれし時 境界(さかい)諍界(いさかい)となりて

 永劫の苦しみが汝らの魂を縛るだろう

 

 心せよ境界(さかい)の民よ 我らの眼は汝らを視ている】

 

―――これが、この村に代々伝わる真実の伝承である。

しかして人は忘れる生き物。口伝など尚更のこと。

当然、この伝承も廃れつつあった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そして長く続いた私達の絆は、今の代の長で終わりを迎えたのよ……』

『ふーん…』チューチュー

 

ごめんね、おかん ほぼ聞いてなかった。長いんだもん。

私がキラーパンサーとして生まれてからもう…どれくらいだ? 三ヶ月くらいたったかな。

未だに主食は母乳だが、ちょっとずつ肉も食べられるようになってきた。

でもやっぱりまだお乳の方がいいな…美味いし。

なんつーかアレだ、お肉が好きです、でもミルクの方がもぉぉぉっと好きですってヤツだ、うん。

時期的にはもう乳離れの時なんだけどね…はぁ、おいちい…。

 

 

ひたすら乳房回りをフミフミと揉みしだき母乳の美味しさに酔いしれるベビーパンサー

だが、このベビーパンサー 元は20を過ぎた人間である 20を過ぎた人間である 大事なことなので(ry

そして至福の時は至福の元によって終わりを迎える

 

 

『さて、もういっぱい飲んだでしょ 訓練を始めるわよ』

『ああっ!おっぱい…っ』

 

おっぱいがいっぱい……いや、なんでもない。

最近は狩りの手伝いと一緒に戦闘訓練も受けている。母曰く、死なない為だそうだ。

…まぁ、そりゃあね、ごもっとも。でも、なんかね、尋常じゃないんだよね。

生きるためというよりは殺すためって感じがするのよね。

訓練してる時のおかんの顔…凄く怖いもん。伝説の超野菜人ばりに白目剥いて血管浮かび上がらせてんだもん。モーモン。

 

 

暗い森を抜け 草原を横切り 山を登り 断崖絶壁を飛び越え 川を渡る

―――彼女は気づいていない

己が考え事をしている間に 肉体がとんでもない成長を遂げていることを

そして その身体能力が 既に成獣(おとな)のキラーパンサーを凌駕しているということを

そんな我が子を見て 母親が嬉しそうに、寂しげに 笑っていたことを

 

 

どうでもいい事を考えてたら本日の狩場に到着してたでござる。

…硫黄臭っ!うっわくっさ!くっっっっさ!!火山地帯かよ…キラーパンサーの鼻にはキツいんじゃないのこれ…。

 

『かあさん、めっちゃくさい、よ、ここ…ゲホッ』

『あら、この程度で音を上げてたら私やパパみたいに強くなれないわよ』

 

嘘だろ…平然とドヤ顔してやがるぜこのキラーパンサー…何者だよカーチャン…。

しかも私やパパみたいに強くって言ってたな…そうだ、私 父親の事なにも知らない。

 

『ねぇかあさん』

『何?おっぱいはもう無しよ』

 

そんなー…って違う、そうじゃない。

 

『パパってどんなキラーパンサーだったの?』

『………』

 

ッヒィ!地雷踏んだ!?おかん、シワがっ眉間のシワがっ!!ヒィィィ怖い!!キラーパンサーの地雷踏むとこうなるんだね!凄いですねェ!?猫踏んじゃったどころじゃあないねェ!!ふおおおおおぉぉぉ……!

 

 

目に涙を滲ませ体を縮め小刻みに震えるベビーパンサーは母の無言の圧力に怯えていた。

 

 

『………その時が来たら、話すわ』

 

 

母の目がベビーパンサーから外されると、威圧感は消え去った。

 

 

…ちびるかと思った。

 

『う、うん…ぜったいだよかあさんっ』

『えぇ、でも…うん…そうねぇ…』

 

おっふ…おかんが悪巧みの顔をしていらっしゃる…!何する気ィ!?

 

 

ベビーパンサーは小さな体をさらに小さくし、耳をぺたんと後ろに倒してしまった

 

 

『今日…お家に帰ったら、教えてあげてもいいわ』

『え″っ…ほ、ほんとにィ…?』

 

これは条件を突きつけられるパティーンだな…うわっ…

かといって断るとあとが怖いし…ぶっちゃけおかんがこうなると選択肢が[はい]か[YES]なんだよなぁ

 

『ただし』

 

ほら来た

 

『あそこにいるエビーメタルをあなただけで仕留めてくること』

 

今のあなたにならできるはずよ。そう言っておかんは不敵に笑った。

……ちびっても、いいよね…?

 

 

ベビーパンサーは震えながら火山へと足を踏み入れた




プロローグの時点でお気に入り登録とコメントまで頂いてしまった…!
ふ、ふおぉ…!ありがとうございます!!
文法とか説明文とか色々滅茶苦茶な小説ではありますが、生暖かい目で見ていただけたら幸いです!



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第二歩 心も体も熱すぎる

今回から人間の声は「」
モンスターの鳴き声兼会話は『』で表記することにします。
わかりやすいかなーって…
あと、今回ちょっと短めです。


暑い…溶けそうってくらい暑い……。

RPGにおける第一の試練みたいなのって大抵は故郷の中だったり近くの平原だったり、多少安全な所が多いと思うんだけど…

火山って…火山って……!そんなとこ中盤とか終盤に行くとこじゃん…!

あー…でもチュートリアルで死ぬゲームもあったなぁ…ガキ…プレスターンアイコン…うっ…頭が……!

…どうしよう、本当に頭痛くなってきたぞ

イテテテテ、まるで何かに挟まれているような痛み方…………ん? 挟まれる?

そういえば心なしか視線も高くなったような…

 

不思議に感じたベビーパンサーが上を見ると…………

 

 

 

 

金属質でやたらでかいエビのような何かがいた

 

 

 

 

 

『キシャアアーーーーーーッ!!』

 

『ミギャアアアアアアアアア!?』

 

 

エビーメタルがあらわれた!

 

 

でけぇぇぇぇぇ!!あれっエビーメタルってこんなにデカかったっけ!?

いや、体が小さいから余計デカく見えるのか?うっひゃー

―――てか、いつまで私の頭を挟んでやがるんだこのやろう!HA★NA★SE!

 

 

頭を鋏でガッチリと挟まれたままじたばたともがくベビーパンサー。

爪で引っ掻こうにも届かず、前足を上げたり下げたりしている様は、実に無様で可愛らしくもある―――が、エビーメタルは違和感を感じずにはいられなかった。

なぜ、この小さなモンスターの頭を潰せないのだろう、と。

いつものように獲物を捕らえ、いつものように頭を潰し、いつものように御馳走にありつく…それが、このエビーメタルの常だった。

だがこの獲物はどんなに力を込めても痛がるだけで、死ぬ気配がない。

何より喰われる側であるはずのモンスターに宿る対抗の意思。

 

 

―――これは、獲物(エサ)じゃない

 

 

ベビーパンサーを獲物ではなく敵と判断したエビーメタルは、鋏を地面に叩きつけた。

その威力は叩きつけた所を中心に亀裂が走り、地中の溶岩を噴出させるほどのものだったが―――

 

 

『フギャッ』

 

 

―――ベビーパンサーはちょっと鳴いただけだった。

 

 

いっっっっっっっってぇぇぇぇぇぉぉぁぁぁああああ!!!

なんじゃコイツ!いきなり叩きつけよってからに!!おお痛ぇ…

絶対殴る…いや、引っ掻く せめて一回引っ掻いてから逃げてやる…っ!

 

 

『ミ゛ャヴヴヴヴヴ……!』

 

 

タンコブをつくりながらも起き上がり威嚇をするベビーパンサーに、エビーメタルは恐れを抱いた。

当然の結果だった。誰も、この自分よりもはるかに小さく、ひ弱な見た目をした生き物に己が劣るとは思うまい。

ましてや今の今まで獲物と認識していたのだから、尚更である。

 

 

―――覚悟しろよ、このエビ野郎!!

 

『ギャオォォォーーーーッ!』

 

 

 

 

鋼鉄の海老と赤さんパンサーの戦いの火蓋が切られた

 

 

 




次回・エビ之内、死す


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第三歩 赤に染まる 前編

久々過ぎる投稿。
バトルシーンと心理描写に手間取りました…。
文字だけで風景とか光景を表現するの難しい。


覚悟しろよ、このエビ野郎!

 

 

――そう思っていた時期が私にもありました

 

 

『ミ゛ャウ゛ッミ゛ャウ゛ッ』

 

 

ガキンッギャリッと一心不乱にエビーメタルの鋼鉄殻に攻撃を仕掛けるベビーパンサー。

戦い始めた頃は比較的攻撃が通りそうな腹や顔を狙っていたが 腹を狙えば鋏でたたきつけられ 

顔を狙えばそのまま噛みつかれる等カウンターを受け続けていた。

このような攻防を繰り返していくうちにベビーパンサーの動きは徐々に単純になっていった。

 

 

そう、このベビーパンサーは――ヤケクソになったのである

 

 

母の狩りに付いていく過程で肉体面は強化されていたのだが 狩りに参加していたわけではなかったため

精神面や攻撃のレパートリーといった【攻め】の技能は通常のベビーパンサーよりも劣っていた。

体力がべらぼうに多い反面攻撃力は皆無…どこぞのレベル上げ道場の卵形モンスターのようなステータスなのだ。

 

 

『ウ゛ミ゛ャアアアアアアアァァ!!』

 

かっっっっっっっっっっってェェェェェェェ!!

流石にメタルの名を冠するだけあるわ…

攻撃がッ!効いてるッ!気がッ!しなッ!いッ!!

 

 

がむしゃらに攻撃を続けるベビーパンサー。

叩いても噛みついても向かって来る小さな存在にエビーメタルは苛立ちを募らせていく。

初めこそ攻撃が通用しない事に恐れを抱いていたが

攻撃力が皆無だということを理解した瞬間、やはりコレは獲物(エサ)なのだと再認識した。

するとどうだろう エビーメタルの中で沸々と思いが込み上げてくる。

 

なぜ、こんな小さな存在に恐れを抱いたのか

なぜ、通用しないとわかっているのに攻撃を続けるのか

なぜ、自分に向かって来るのか

 

なぜ、殺せないのか

 

 

 

――オ レ は 獲 物(エサ) よ り も 弱 い ?

 

 

『ギシ…』

 

 

そんな馬鹿な事、あっていいはずがない

 

 

『ギシ…ギギギ…』

 

 

ここら一帯の火山の上位者たるオレが

 

 

『グギギギ…!』

 

『ミ゛ッ…!?』

 

 

このエビーメタルが獲物(エサ)よりも劣るなど――

 

 

『キシャアアアアアアァァァッ!』

 

 

――あってはならないのだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベビーパンサーとエビーメタルが激闘を繰り広げている頃

火山から少し離れた岩場にある崖に母キラーパンサーは訪れていた。

 

 

『あなた、久しぶりね』

 

 

崖の先端、四本の爪跡が残る岩に話しかける母キラーパンサー

その声はひどく悲しげで、そしてとても穏やかなものだった。

 

 

『あの子は…甘えん坊さんよ』

 

『それにとても賢い子だわ』

 

『ちょっと怖がりな所もあるけれど…』

 

『この間なんてね――』

 

 

延々と我が子の話を岩にし続ける様は他者からみたらおかしな行動に見えるだろう

だがその目は、確かに慈愛を湛えていた。

 

母キラーパンサーが話しかけている岩のすぐ後ろには、底が見えないほど深い谷があった。

大地が裂け、ばっくりと獣が大口を開けたようなその崖は【魔獣の墓場】と呼ばれている

己の死期を悟った魔獣達が人知れず最期を迎えるための安息の地

険しいという言葉では生ぬるいほどの山岳地帯の先にある秘境

人の手が入ったことの無いその崖は、禍々しさと穏やかさを風にのせて運んでくる。

 

 

『――なんて事があったのよ!ふふふっもうビックリしちゃって!』

 

 

普段の厳格な態度とは違い、幼獣のような感情の豊かさを露にする母キラーパンサー。

一頻り話し、満足した頃には、太陽が地平線に飲み込まれるところだった。

 

 

『さて…そろそろあの子の様子を見に行かないと』

 

 

名残惜しげに岩を見つめ、次はあの子もつれてくると告げて立ち上がると

我が子の怒号が聞こえる洞窟を目指し、火山へと足を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

両者の争いは、さらに激しさを増していた。

威力0(ゼロ)の攻撃にくわえ、体力が多く、なかなか倒せないというこの状況に

エビーメタルの怒りが頂点に達した!

 

 

巨体に似合わぬ素早さで肉薄し、ベビーパンサーを岩肌に叩きつける。

その衝撃で崩れた瓦礫に半ば埋もれた状態となった所にさらにツメラッシュで追撃を開始。

先程とは打って変わって猛攻を仕掛けるエビーメタルに、ベビーパンサーは目を回していた。

 

動きが追えず、予測もできず、攻撃も通じない。

自身の経験不足をハッキリと感じていた。

 

 

――モンスターの戦い方とは何なのだろうか

 

 

ふと湧いたその考えに、思考が埋めつくされた。

人間の時とは違う四足ならではの動き方。

魔獣としての爪や牙の使い方。

母の獲物を狩る時の、あの、動き。

 

思考の海へと落ち、ピクリともしなくなったベビーパンサーに、エビーメタルはチャンスを見出だした。

ゆっくりと近づく間にハサミを研ぎ、狙いを定め、一突き――

 

 

――その小さな体から、赤が溢れだした

 

 




ちょっとした報告と感謝

つい昨日、久々にハーメルンにアクセスしたら、しおりはさんでいただけてたり評価されてたりで
本気でビックリしました。
まだ見てくださってる方、楽しみにしてくださってる方、ありがとうございます…!!

こんな拙い小説モドキでも読んでくれてる方がいるんだなぁ、としんみりしつつ燃えました。
あらゆる所で文法やら小説の書き方やらを学んだつもりでしたが、未だに答えは見つかりません。
文法とかに拘るとどうしても堅苦しくなってしまって…。
何より私の気力が削がれます(重要)

な の で !

好きにやらせてもらう事にします!
つまり今までとほとんど何も変わらないですハイ。
適当でゆるい感じで行きたいと思います。
あと気力次第では物凄い遅筆になります。

それでもいいよって寛大な方は、今後ともよろしくお願い致します!


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