勧善懲悪BanG Dream! (光の甘酒)
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第1章-外道ビジネス!狙われたPastel*Palettes-
第1話 俺たちは必要悪


一回原作やキャラを崩壊させた作品を書いてみたい!ということで生まれたのがこれです。
セリフ多めで読みやすいものを心がけます。

たまにキャラの性格がぶっ飛んでたりしますので、イメージを大事にしたい方はご注意ください。
ではどうぞ!

※1回で1話を勢いで書ききってるので筆が乗らないと更新が遅れたり、誤字脱字が多い仕様となっておりますのでよろしくお願いします。

※筆者は頭がアレなので作中に淫夢語録が飛び出します。ご注意ください。


俺の住むこの町は腐っている。ゆえに自分の身は自分で守らなければいけない。

カツアゲや空き巣なんてのは可愛いもので、半月に一度はどこかしらで強盗事件は起こるわ、ヤンキー同士の喧嘩どころかどうみてもその筋の方々の争いがあるわ、最近だと女子高生が連続していなくなっている。ええ、もう見事なまでに腐っているのだ。

ただ、変な話、ここまで治安が悪いといっても日常生活に支障はない。

ようはそういう奴らが集まる場所に行かなければいい話だし、事件が起こるといっても後々報道や回覧板で知るレベル。

でもやっぱりこの町は腐っている。

そんな腐った街に嫌気がさしているというか、地元がそんな街だなんて誰が誇れるかってんだ。

 

 

 

「へっへっへ・・・もう逃げられねえぜ」

「いや!やめて!」

 

 

とある裏路地で男4人がきれいな金色の髪をなびかせた女子高生を壁際に追い詰めニヤニヤしていた。

 

 

「あきらめて俺たちの商品になりな。なあに相手は金持ちの紳士の方ばかりだから安心しろ」

「いやよ!なんで私が・・・私がそんなこと!」

「てめえがお高く止まってんのがわりいんだよ!わりいけどこっちも仕事でよ。観念しな」

「いやあ・・・いやあ・・・」

「さすがは芸能人、改めてみるとやっぱかわいいじゃねえか。売り飛ばす前に俺たちで味見しようぜ」

「俺はパス。ゲーノージンっても女子高生に興味ねえよ」

「俺もさっきちげーので抜いたばっかだわ。お前らに譲るわ。あ、カメラは俺が回そうか?」

「お、いいか?芸能人の裏ビデオとか高く売れるぜー?」

「ひゃっはっはっは!じゃあ俺たちが2人でいただくとするか!子役出身の現役アイドルを抱くなんてそうそうできる経験じゃねえぜ!」

「ひぃっ・・・!」

 

 

カチャカチャと男たちは自分たちのベルトを緩める。

高笑いをし、逃げようとする女子高生の手を掴む。

 

 

「あんま時間ねえから早くしろよ」

「はいはい。オラ!てめえ何逃げようとしてるんだ!俺の腕見てみろよー。すげえだろ?鍛えてんだぜ?」

「まーたハジメの筋肉自慢が始まったよ。終わった後ガクガクになってアヘ顔さらさせるんだから意味ねーよw」

「うるせえよケンイチ。さあ始めようぜ」

 

 

男が二人その女子高生に向かい、一人がカメラを回していた。

 

 

「さあ楽しもうぜ~」

「いやあああああああああ」

「まちなさい!」

「あ?グエッ!!!」

「おい、タクミどうした!?」

「このひと、タクミさんっていうんだ」

「いてえじゃねえか!なんだてめえら!?」

「どうもー通りすがりの正義の味方です!」

「日菜、私たちは正義の味方ではないわ。むしろ悪。いや、必要悪ねこの場合」

「ヒツヨーアク?なになにおねーちゃんあとで教えて!」

「だあああああてめえら俺を無視して進めてんじゃねー!」

 

 

男たちはそれをみて激昂する。

当たり前だ。誰しも楽しんでいるところを邪魔された怒るだろう。ましては気性の荒い奴らだ。

 

 

「ん~てめえらよく見たら・・・その体系・・・声色・・・おめえらも女子高生か!変なお面付けてるけどまるわかりだぜ!」

 

 

その声と同時に男の股間がピンと突っ張っる。

 

 

「うわっあのちょっと本気でひく」

「まあ元気ね!それにすごいに肉体!普段から鍛えるのが趣味なのね!」

「あはははは!男の人の体って面白いね!」

「こら、はしたないわよ。まったく汚いものを見せないでぐださるかしら?」

「てめえら俺たちをなめてんのか・・・?」

「えっ・・・そんな汚らしいことをするはずないじゃないですか・・・」

「あ、おねーちゃん本気で嫌そうな顔してる」

「お面で見えないくせに適当なことをいうんじゃないわ」

「妹の勘だよ!」

「だああああああああああああ!いい加減にしろ!置いてぼりにしてんじゃねえ!」

 

 

と、そんなやりとりをしているうちに当初追い詰められていた女子高生はうまく逃げおおせていた

 

 

「あれ!?おい、アイツがいねえぞ!逃げられた!」

「マジかよ!?」

「てめえらよくも・・・!」

「待てよ、ちょうどこっちは4人だ、こいつらに慰めてもらおうぜ?」

 

 

そういって女子高生はパス、と言っていた男までもがキレた表情で迫ってきていた。

 

 

「あらいやだわ。なんでこう、獲物に逃げられたオトコって同じ事ばかり言うのかしら?」

「きっと脳みそが男性器でできているのでしょう」

「てめえらの本気で立場わかってんのか・・・?穴に突っ込んでビデオ回してばらまいてお前らも売り飛ばしてやる!」

「まあ!やっぱりあなたたち最近の女子高生失踪にかかわっているのね!」

「すぐ失踪する側にならてめえらには関係ねえよ!」

「こころ、もうやってもいい?」

「んーそうね、話はあとでじっくり聞くことにしましょう!」

「そんなに穴に突っ込むのが好きなら、いいよ?あ、突っ込まれるのは自分のだけどね」

「よーし、じゃあいきますか!」

「ええ」

 

 

そして同じ雰囲気をする少女二人はもっていたギターケースからギターを取り出した。

 

 

「あら、みんなだけずるいわ!おたえ!私もくれるかしら?」

 

 

そういっておたえと呼ばれる少女は持っていたギターケースから何かを取り出す。

それは棍棒、そしておたえ自身もギターを取り出した。

いや、厳密にはギターの形をした何かではあるが。

 

 

「さて、いっくよー!」

「ハッピー!ラッキー!スマイル!イエーイ!」

「さっさと終わらせましょう」

「そうだね」

「「「「なめんなゴルァアアアアアアアアアアア!」」」」

 

 

 

 

「ここで問題よ!いくら鍛えていても絶対に鍛えることができない部分、どこかしっているかしら?」

「あ゛?」

「正解はお〇んち〇よ!」

 

 

カキーン!!!

 

 

「ぎゃあああああああああああああああ」

 

 

 

「てめえギターをそんな風に扱っていいのかよ!?」

「あ、これギターの形をしたなにか」

「は?」

「ハナゾノランドにあなたは必要ないかなー・・・」

「何わけわかんねえこと言ってんだゴルア!」

「銀河を砕く旋律!!」

 

 

ガキーン!

 

 

「ぎゃあああああああああああああ」

「あ、砕けたの金の玉だった」

 

 

 

 

「おねーちゃん明日の朝ごはんなんだっけ?」

「塩サバを買ってあるわ」

「わあ!いいねえサバの塩焼き!私大根おろしを乗せて醤油かけるのスキなんだー!」

「塩分過多よ。もっと健康に気を使いなさい」

「はーい!」

「オイコラガキども!俺たちのこと無視してんじゃねえ!!!!!」

「なめるのもいい加減にしやがれ!!!!」

「あら?まだいたのですか?」

「そうだよー。おねーちゃんとの会話を邪魔しないでくれるかな?」

「お前らから絡んできたくせに何言ってやがる!?」

「しかしそれ、汚いですね。去勢してしまいましょうか」

「あーおねーちゃんあたしたちにそんな技術はないよ?」

「それもそうねじゃあ・・・」

「うん」

 

 

「「当分使えない感じで我慢してあげますか(あげる)」」

 

 

ガギーン!!

 

 

「「ぎゃああああああああああああああああああああああ」」

 

 

 

 

『次のニュースです。

本日朝6時半ごろ、某商店街の裏路地で全裸になり近くのフェンスに磔状態で意識を失っている男性4人が発見されました。

警察によりますと、男性たちの重症ではあるものの命に別状はなく、肛門には鉄製の棒が刺さっており、大きな看板には「僕たちは少女を誘拐して売り飛ばしてた極悪人です。反省しています」とかかれているとのことです。

また、近くに落ちていたボイスレコーダーには男性たちが最近頻発している少女連続失踪事件に関与をうかがわせる内容が録音されており、警察ではなぜこのような状況になったかを含め、意識が戻り次第男性たちから話を聞く方針です

続いてのニュースです。豊穣を祈るとされている全国おっぱいマウンテンフェスティバルが今年も開催され・・・・』

 

 

日曜日の朝、学校は休み。体調を崩していた俺はまあまあ回復し、押しかけてきた幼馴染とともにち朝食を食べている。

 

 

「みて!みんな!私たちのエモノがニュースになってるわ!また一人、尊い命が救われたのね!」」

「ほんと。まさか翌朝すぐ報道されるなんて思わなかった。」

「はぁ・・・はしゃぎすぎです。それにそう大した相手でもなかったでしょう?」

「それもそうだねー!あ、おねーちゃんそこのお醤油とって」

「お前らよ・・・いっつも騒ぎをでかくしすぎなんだよ!!俺が目指してんのは人知れず人を救い、クールに去る。そんなヒーロー像なの!」

 

 

俺の名前は神剣奏也(かみはや そうや)。ごく一般の高校生である。

 

 

「奏也も寝てないで一緒に来ればよかったのに!」

 

 

そういうのは弦巻こころ。俺の幼馴染その1。

はちゃめちゃな性格をしていてこいつの通っている高校では「花咲川の異次元」とまで呼ばれているらしい。

 

 

「それで奏也はもう大丈夫なの?」

 

 

こいつは幼馴染その2、花園たえ。ド天然ののんびりマイペースな奴だがたまにグサッと確信を突くことを言ってくることがある。あと地味に怒ると怖い。

 

 

「奏也、病み上がりなのですから無理はしないように」

「そうだよー!早く元気になってくれないと奏也で遊べないじゃん!」

「俺『と』遊ぶんじゃなくて俺『で』遊ぶの!?怖いわ!!!」

 

 

この同じ顔をした姉妹は氷川紗夜と日菜。幼馴染その3,4だ。

紗夜は風紀委員をやっているらしいがこんなやばい女が風紀委員やってる学校やばくないですかね・・・・?

 

 

「大丈夫です、外ではちゃんとしておりますので」

「心を読まないでくれますかね?」

 

そして日菜のほうはなんと芸能人。

Pastel*Palettesというアイドルバンドのギターを務めている。

 

 

この町は腐っている。自分の身は自分で守らなければならない。

これは俺たちがガキの頃聞いて、そして今に至るまで胸に留めている言葉だ。

ガキの頃、近所に住んでいて俺たちがよく遊びに行ってた格闘家のオッサンがこれを教えてくれた。

当時から治安が悪くどこどこで事件があった、という言葉をよく耳にしていたので、

幼馴染全員そろって「そういうものだ」と刷り込まれていた。

そしてその格闘家の教えの元、4人そろって力を磨いたのだ。

そのため、ぶっちゃけると俺たちはそこいらのヤンキーなんか足元に及ばないくらい強い。

しかしその格闘家、とんでもねえゲス野郎で教えてもらっていたのは、いわゆる正当な空手のような武術ではなく実践のケンカで勝つ技術、そして力に任せて武器を奮い敵を圧倒する技術だったのだ。

 

 

「あ?んなもん勝てばいいんだよ勝てば。過程より結果だ!」

 

 

その技術がケンカの技術だとしった俺たちはオッサンに抗議にいった。

そこで言い放ったのがこれだ。

当時12歳のガキにとんでもねえことを言いやがる奴だった。

なお、オッサンは町内で議員を務めた経験もある”表向きは”立派な大人で、

俺たちが通っていたことについては「元議員の立派な方に遊んでもらっている」程度にしか親も思っていなかっただろう。

実際オッサンに鍛えられていることは絶対にいうなと口止めされていたし、

そうでなければこころの親父さんが黙っているわけわけない。

そんな感じで開き直った俺たちは結局そのまま通い続けたのだ。

 

 

「頼むからよ・・・足がつくことだけは勘弁してくれよ?」

「あ、もしもし美咲?あとちょっとしたらそっちへむかうわ!」

「ふう。サバおいしい」

「日菜、大根おろしもう少しくれるかしら」

「うん!はい、おねーちゃん!」

「てめえら話をきけええええ!」

 

 

うん、こいつらは少し・・・いや超マイペースだ。

こんな感じで俺の苦労は絶えない。

そういえば、俺たちがなにをやっているのか説明しよう。

俺たちは「悪党狩り」をしている。

治安が悪いといっても俺たちの地元。地元で罪のない人がひどい目に遭っている現状が許せなかったのだ。

もちろん、それだけじゃない。実は俺たちの『一応』恩人であるオッサン。

あのオッサンはこの町で事件に巻き込まれ、そして死んだ。

俺たちはその犯人捜しも兼ねてこの町の平和を守る、自警団みたいなことをやっているのだ。

闇夜に紛れてパトロールをし、犯罪を見れば”私刑”で叩く。

この行為を法律が許さないのはわかっている。だが法律とはいつでも加害者の味方をするものだ。

この腐った町では『国の法律』ではなく、『俺たちの法律』でないと生きていけないのだ。

ゆえに俺たちは正義の味方ではない。悪を狩る悪、必要悪なのだ。

昨晩起こった出来事はそんなことの1ページだ。

 

 

「さて、あたしはそろそろいくよ!今日はパスパレの練習なんだ!」

「私もRoseliaの練習があるのでそろそろ」

「あ、私もポピパの練習があるんだった」

「あら、みんなは今日バンド練習なのね!私もだけど!」

 

 

ちなみに皆それぞれバンドに属している。

紗夜は本格実力はバンドとして名高いRoseliaのギター、たえはPoppin' Partyと呼ばれる最近実力をつけているバンドだ。

そしてこころはハロー!ハッピーワールド!というもの。

みんなを笑顔にするためのバンドらしい。

 

 

「ってお前ら人の話聞いてたか!?」

 

 

そんなことを叫ぶが、すでに皆の姿はなかった。

ほんとマイペースすぎやしませんかね・・・?

 

 

 

 

「お疲れ様ー!」

「日菜ちゃん!お疲れ様!」

「アヤさん、ヒナさんお疲れです!」

「でも今日千聖さん来ませんでしたねー・・・体調を崩されたとのことですが」

「うーん、心配だよぉ・・・」

 

 

パスパレの練習が終わったあと、今日練習を休んだ千聖ちゃんのことをみんな心配していた。

 

 

「(そういえば昨日襲われていた子・・・たしか・・・)」

 

 

あたしはふと昨日のことを思い出した。

確か、おの男の人たちは「芸能人」と言っていた。暗くてよく見えなかったがあの髪の色、雰囲気。もしかして・・・・?

 

 

「ごめんみんな、そういえば今日おねーちゃんと約束があったんだった!先帰るね!」

「あ、うん!日菜ちゃんまたね!」

「また明日です!」

「日菜さん、お疲れっすー!」

 

パスパレのみんなに別れを告げ、そのまま千聖ちゃんにメッセージを打った。

 

 

 

 

ここはとあるカフェ。

あたしはここで人を待っていた。

 

 

「ごめんなさい、日菜ちゃん。お待たせ」

「ううん、体調悪いのにごめんね?」

 

 

そこにやってきたのは千聖ちゃんだ。

その顔はものすごく疲れており、コンディションに気を遣う千聖ちゃんらしくない、ひどい顔だった。

 

 

「単刀直入に聞くよ千聖ちゃん。なんでさらわれそうになったの?」

「・・・・!メッセージを見たときもしやと思ったけどなぜ知っているの・・・・?」

 

 

『千聖ちゃんのこと、守ってあげられるかもしれない。心当たりがあるならカフェにきて!』

 

 

こんな文面。昨日の人が千聖ちゃんならピンとくるしこなければ本当に体調不良。そう思ったんだ。

 

 

「実は・・・あの日声をかけられたの」

 

 

 

 

「ちょっとお嬢さん、少しいいですか?」

「はい?」

 

 

振り向くとそこにはちょっとガラの悪そうな男の人が4人いた。

 

 

「白鷺千聖さんですよね?いやー俺ファンなんですよ!」

「ありがとうございます!」

 

 

本当にファンかもしれない。人を見かけで判断してはダメと思い、営業スマイルで返した。

 

 

「それでそんなスペシャルな芸能人である白鷺さんにぴったりなパーティがあるんですよ!一緒に来ませんか?」

「え?あの、そういうのは・・・」

「うるせー黙ってついてこい」

「え?」

「おら、早くしろ!フヒヒヒ・・・」

「あーあーこいつの悪い癖が出ちまったよ・・・」

「まあいいや。早くしろよ」

「い、いや!」

 

 

これは不味い・・・そう思った私は直感的に逃げ出した。

しかし逃げれば逃げるほど地の利がなくなりそのうちに袋のネズミ。

そのまま追い詰められてしまった。もうだめ!そう思ったところでそこで現れたのが誰か。

その人ともめている間に私はなんとか逃げ出した。

 

 

「話に聞いたところによると、若い女性ばかりを狙った人身売買の元締めをやっている人がこの町にいるらしいの・・・昨日の人たちはその手下だったのね」

 

 

暗い顔で話す千聖ちゃんをあたしは抱きしめに行く。

 

 

「それは・・・怖かったね。千聖ちゃん、もう大丈夫、大丈夫だから。早く千聖ちゃんとまたバンドがやりたいない。やっぱ千聖ちゃんがいないとるん♪ってこないよ」

「うう・・・日菜ちゃああん・・ありがとう・・・」

 

そしてそんな千聖ちゃんを見てあたしは拳を強く握ったのであった。

 

 

 

 

あの騒がしい朝から時間は進み今は夕方。

突然、俺たちは日菜に集められた。

集められたというか俺の家に集まったというのが正しいが。

 

 

「んでどうしたんだ日菜?急に俺たちを呼び出して」

「んーとねえ」

 

 

そして日菜は口を開きこう言った。

 

 

「久しぶりにブチッ♪って来ちゃったんだ!だから・・・ぶっ潰したいやつらがいるの」

 

 

日菜の顔はめずらしく怒りに満ちており、そう言い放ったのであった。




いかがだったでしょうか。
ハチャメチャですがこれからも引き続きよろしくお願いいたします!


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第2話 ハピネスっ!ハピィーマジカルっ♪

続きになります!


ちなみに俺たちは悪党狩り、闇夜に紛れてパトロールをしているとさっき言ったな。

あれは俺たちのやっているのことの一部に過ぎない。

この町で行われている犯罪、今回の女子高生拉致なんてまさにそうだ。

こういったことをやらかす奴らを叩きのめすために計画を立て、実力行使で潰す。

警察がなかなかただし出来ないような奴らを潰すのだ。

一部の悪党は俺たちのことを風のうわさ程度で知っているだろうがまさか女を4人も含む高校生がやっているだなんて想像だにしないだろう。

 

 

「ぶっ潰したい奴らがいるの」

 

話を戻そう。

日菜は怒りに満ちたオーラを出し、そう言い放った。

 

 

「日菜、要領を得ないわ。きちんと説明して頂戴」

 

「うん、わかったよおねーちゃん」

 

 

 

 

「千聖ちゃんはあたしにいろんなものをくれたんだ。それにパスパレもいい方向に進んでいると思う。それをあんな身勝手な理由で壊すのは絶対に許さないよ・・・!」

 

「なるほどな・・・そう言うと思ってもう手は考えてある。どっちにせよ女子高生使った外道ビジネスなんざ見逃すつもりないしな。さて、そろそろ来る頃だ」

 

ガチャッ「奏也、いる?」

 

「あれ?蘭ちゃん」

 

「こんにちは、日菜さん」

 

 

現れたのは協力者である美竹蘭。

普段はフツーの女子高生をやっているが、その正体はこの町トップクラスの情報通。

時間をかければコイツ調べられないことはないんじゃないかって思う。

 

 

「美竹さんが来たということはもう掴んでいるのですね」

 

「さすが、奏也は仕事が早い」

 

「素晴らしいわ!それで、その不届きモノは一体どこのどいつなのかしら?」

 

「うーん、昨日の今日で調べたから本体まではたどり着けなかったけど下請けならわかったよ」

 

「ほんと!?」

 

「日菜さん、最近日菜さんところの事務所に新しいスタッフ入ってきてない?」

 

「1か月くらい前に一人入って・・・・まさか」

 

「うん、そのまさか。そいつが白鷺さんのスケジュールや行動範囲を昨日の奴らに流して指示をしてたみたい。それに、それだけじゃないよ」

 

「蘭、どういうことだ?」

 

「んー・・・この人、スケジュールや行動範囲を調べていたの白鷺さんだけじゃない。パステルパレットみんなのことを調べてた」

 

「ん、ってことはその人たちの狙いってもしかして」

 

「花園さんは勘がいいね。そ、ターゲットは白鷺さんだけじゃないってこと。白鷺さんからスタートして、丸山さん、若宮さん、大和さん・・・そして日菜さん。パステルパレットを崩した後徐々に、一人ずつ狙っていく算段みたい。つまりこれは白鷺さんだけじゃなくてパステルパレット全体、日菜さんもターゲットに入っているってこと」

 

「・・・・・」ギリッ!

 

 

日菜は何でもっと注意してなかったんだろうといった顔で、拳を握り、歯をかみしめる。

 

 

「日菜、体の力を抜きなさい。怒りに任せて無謀に立ち向かっても必ずアラが出るわ」

 

「紗夜の言うとおりだ。それにそういうことならまだこういうことは続くだろ。ならば早いとこ大元を叩かないと被害が拡大しちまう」

 

「よっし、次のターゲットは決まりね!どんな作戦でいこうかしら?」

 

「日菜と同じ事務所にいるってのを使わない手はないよね」

 

「今回は日菜と俺と・・・そうだな、こころ。このメンバーでいこう」

 

「えー?私は留守番?」

 

「私もですか。まあ、奏也のことですからちゃんと考えがあるのでしょうけど」

 

「まあな。日菜、これを」

 

「これは?」

 

「盗聴器だ。これを身に着けて挑んでくれ。作戦は・・・・」

 

 

 

 

「やあ氷川さん、僕に相談って何かな?」

 

 

さわやかな顔してスタッフの吉田さんは言う。

こいつが千聖ちゃんを・・・・・

 

 

「突然すみません、ちょっといろいろあって・・・」

 

「ふーん」

 

仕事の後に相談したいことがある、あなたにしか言えないことなの・・・我ながらいい演技だったと思う。

そして今いるのは吉田さんが人目を盗んで話すならココといって連れてきたバーだ。

ちなみにここの店員が全員グルで、地下室があってここに拉致した女子高生を閉じ込めるのに使っているのも蘭ちゃんの調べで分かっているけどね。

向こうからしたらカモがネギをしょってきたっていう感覚だろうなー。しょってきたのはダイナマイトだけどね!!

見渡してみたら今お客さんはあたしと吉田さんだけ。

向こうに言わせれば絶好の機会というやつだね!

 

 

「千聖ちゃん・・・今日も練習来なかったんですけど何か気づいたことないですか?」

 

「それをなんで僕に聞くのかな?」

 

「うーん、吉田さん特別みんなのこと見ててくれた気がしたし、なんとなく、かな?」

 

「ふーん・・・じゃあ教えてあげようか」

 

ガチャンッ!

 

「え?なんでカギを閉めるんですか!?」

 

「教えてあげるためだよ」

 

「どういうことですか!?」

 

 

この演技力、彩ちゃんにも見せてあげたいなあ。

 

 

「近頃ここらで起こってる女子高生失踪事件を知ってるかい?」

 

「うん」

 

「ありゃ僕・・・俺たちの仕業だ」

 

「え!?」

 

「クックック・・・!白鷺は逃がしちまったがオメエはまさにネギをしょったカモ!わざわざそっちから来てくれてご苦労さん!!!!」

 

うわ、ほんとにネギをしょったカモとか言われちゃったよ。

最初からバレてることをみるのってこんなに面白かったんだね!

 

「おいお前ら、今夜の仕事は楽だぞ!」

 

 

すると周りには店員さんが4人、私を囲っていた。

 

 

「ぷっ・・・くく・・・あーっはっはっはっは!おっかしーほんと!」

 

「恐怖で狂ったか?」ニヤニヤ

 

「ところで吉田さん、今何時?」

 

「あ?21時だが?」

 

「あ、じゃあそろそろか」

 

「は?」

 

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!

 

 

「華麗に参上したわ!!」

 

「おい・・・もっと静かに壊せよ!どっからそんなデカイハンマー持ってきたんだよ!!」

 

「そんなことはどうでもいいじゃない?肝心なのは結果よ?」

 

「オッサンみてえなこと言いやがって・・・・」

 

「二人とも時間ぴったりだね!」

 

 

時間ぴったりにミッシェルのお面をつけた二人がドアをぶっ壊して入ってきた!

 

 

「なんだこのお面ヤロウは・・?こんなやつゲストに呼んだ覚えねーぞ」

 

「お、日菜。いいタイミングだったろ?」

 

「これ以上にない最高のタイミングかなー!」

 

「ま、盗聴器を通じて聞いてたからいいもクソもないけどな」

 

「あはは、それもそうか!」

 

「人を無視して話を進めてるんじゃねえ!なんだおめえら!?」

 

「どうもー通りすがりの悪党狩りでーす。えーっと吉田さん?だっけか。聞きたいことがあるんですがいいですかね?」

 

「かまわねえ・・・やっちまえ!!!」

 

「「「「「オラア!」」」」」

 

 

店員4人が二人に襲い掛かる。

 

 

「オイオイオイオイオイオイ・・・・まだ返事を聞いてないんだが?俺は聞きたいことがあるんですがいいですかね?って聞いたよな?なんで返事もしねえで遊びに来てんだオラァァァァァァ!」

 

 

ドゴオオオオオオ!

 

 

「グオオオオオオ!」

 

 

奏也は近くにあったカウンターチェアをぶん投げ、それは並んでいた二人の顔面に大ヒット!

 

 

「おねんねしてろオラァァァ!」

 

 

その店員の一人は叫び声をあげながら後方へ吹っ飛び、吹っ飛ばなかったもう一人は奏也から強烈なパンチを顔面にもらい、吹っ飛んだ!

 

 

「な、なんだと!?」

 

 

それを見た吉田さんは驚愕の声を上げた。

 

 

「あら?奏也にスイッチが入ったみたいね!普段はクールにしろって言ってるくせにスイッチが入った奏也が一番タチが悪いから面白いわ!」

 

「なによそ見して喋ってんだオラッ!」スカッ

 

「まあ!人が解説してるときに殴りかかるなんて失礼ね!」ドゴォ!

 

「ふぐおおおおおおお」

 

 

そしてさらに二人がこころんに襲い掛かる。でもこころんはすんなりと交わし、カウンターでハンマーを一人のお腹に叩き込んだ。

 

「てめっ!よくも!」

 

「きーみのたのしいーツーボはどこだろー?」

 

「おいお前、なに歌って・・・」

 

ハンマーを捨て、懐からメリケンサックを取り出し装備したこころんは歌いだした。

 

「ツン!(ドゴッ!)ツン!(バギッ!)!チュ!(メキメキ!)チュ!(ゴキゴキ!)さーがそうよボークとー♪」ドゴドゴドゴ!

 

「ぎゃああああああああ」

 

「これがみんなを笑顔にする魔法!ハピネスっ!ハピィーマジカルっ♪よ!!」

 

「た、ただのメリケンパンチじゃねえか・・・」ガクッ・・・

 

「タイトル回収ね♪」

 

 

そんなこころんはあっという間に二人を片付けた。

 

 

「く、くくく、クソ!お前ら!これがみえねえか!」

 

 

すると吉田さんは私の首に手を回し、どこからか取り出したナイフを私に突き付けた。

 

 

「ガキどもめ・・・・!人の店を、ビジネスをめちゃくちゃにしやがって・・・!オラ!てめえら武器を捨てろ!」

 

「はいはい」ドガッ

 

「しかたないないわね:カラン

 

 

奏也は持っていたカウンターチェアを、こころんはメリケンサックを床に放った。

 

 

「クックック・・・不意打ちを食らってしてやられたがもうやらせねえ!手始めにてめえらで裏ビデオ撮影だ!そこの男!男優に使ってやるから感謝しやがれ!とりあえず日菜、てめえに俺の如意棒ぶち込んで、めちゃくちゃにして、てめーら全員その筋に売り飛ばしてやる!」

 

 

あきれた。ほんとゲス野郎ってやつなんだね!

 

 

「日菜」

 

「いいわよ?」

 

「はーい!」

 

 

二人がアイコンタクトを送ってくる。

 

 

「あ?てめえら何言って・・・いででででで!」

 

「もう遊ぶのは飽きたかなあ」

 

 

私は吉田さんが手にを捻り、その手から脱出する。

 

 

「よくも・・・」

 

ドゴッ!バキッ!

 

 

そして私は拳を近くのテーブルに振り下ろすと、そのテーブルは大きな音を立てて砕け散った。

 

 

「さて、ここで問題です!これからめちゃくちゃになるのは私とあなたどっちでしょう?」

 

「え、、、あ、、?ウソだろ・・・・?そのテーブル集成材だぞ・・・・?」

 

 

 

 

ジャー!ゴボゴボ・・・

 

 

「あばばばばばばばばばばば」

 

「どうだ、おめえの店のトイレの水はうめえか?もっと飲ませてやるよ」

 

あのあと一撃で吉田をぶちのめした日菜はすっきりした顔で「よし!尋問しようか!」と笑顔で言い放った。

とりあえず全裸にしてア〇ルに便所ブラシとビール瓶を突っ込んで写真を撮ってやったが口を割らない。多分喉が渇いちゃって言葉が出ないんだね。

とりあえずこいつの店のトイレの便器に顔を突っ込んでお水を飲ませてあげることにした。

 

 

「さて、喉は潤ったか?じゃあ喋ってもらおうか」

 

「だ、だれが・・・」

 

「そうか、まだ飲み足りないか」

 

「あばばばばばばばばばばばば」

 

 

ジャー!ゴボゴボ・・・

 

 

「ゲホッ!ゲホッ!」

 

「強情を張っても何一つ得はないぞ?」

 

「奏也、この人の上着から免許証ができたわ!」

 

「!!!」

 

「まあ何をするにしても偽名だろうしな。こころ、それをよこしてくれ。名前は・・・好崎誠一ねえ。おめえ「好」「誠」ってポジティブな感じが2つも入ってるくせにゲス野郎じゃねえか!とりあえずもう一杯飲んどけ」

 

「あばばばばばばばばば」

 

「はっはっは!そんなにうめーか!よしよし、おかわりもあるぞ。もう3杯目だけどな」

 

 

奴の頭を掴み、上にあげにらみつける。

 

 

「さてと。あのな本名も割れちまったしおめえはもう終わりだ。元締めの連中にお前も使いッパシリさせられてんだろ?だったおとなしく吐いちまって俺らが潰すの待って自由になったほうがよくねえか?」

 

「そ、それは・・・」

 

「あ、選択権はねえよ?いわねえと本名と一緒にさっき撮った写真をばらまいてやる。そうなるとお前、もうこの町にはいられねえよな?これは俺たちなりの譲歩だと思ってくれると話早いんだがなあ」

 

「わ、分かった・・・いう、いうからもう勘弁してくれ!」

 

「最初からそうしときゃ3杯も水のまなくて済んだのにね」

 

「このビジネスをやってるのは畜生組の五味葛(ゴミクズ)ってヤクザだ。だが今は奴はここ最近ノルマが足りないことが続いて、次しくじったらもう後がなくなる。それで上納金を集めるために必死になってんだ」

 

「ふむ。じゃあそいつも結構崖っぷちってことか。んで?そいつはどこにいる?」

 

「毎週水曜日に商店街外れのヘルスラッシュっていうバーで報告会をやってる・・・」

 

「じゃあ近いうちに潰すから、お前はそれまで適当にやっててくれ。裏切ったらわかるな俺たちにはほかにも仲間が大勢いる。俺たちに何かあったり、明らかにお前が裏切っていたことがわかったら・・・わかるよな?」

 

ま、ハッタリだけど。俺たち5人しかいねえけど。

 

「わ、わかってる!だからもう帰ってくれ」

 

「ねえ、吉田さんひとつ聞いてもいいかな?なんでパステルパレットだったの?」

 

「んなもん、金になるからに決まってるからだ。未成年のアイドルバンドなんて買い手がいくらでもいるし、どうせ業界的にみても変わりはいくらでもいるからよ」

 

「そっか・・・・」

 

 

そして日菜は拳をトイレのタンクに向けて放ち、タンクを破壊した。

 

 

「あなたはコレで勘弁してあげる。もう二度ととあたしたちにかかわらないで」

 

「ひ、ひいいいいいい」

 

 

その光景を見た好崎失神したのであった。

 

 

 

 

「まああああああああああたやっちまったああああああ」

 

「わわっ!奏也!急に叫ばないでよもう」

 

「なんで俺は・・俺は・・・クールにやりたいのに・・・」

 

「あっはっは!ムリムリ!だって奏也、仕事の時いっつもあんなんになって抑えたことないじゃん!」

 

「今日も尊い命が救われてよかったわ!吉田さんのプライドは死んじゃったけど!」

 

 

そして、俺たちは家に帰る。

畜生組の五味葛。そいつをぶっ潰す最後の計画を立てるために。




次でこの話は終わります!方式としては2~3話完結のシナリオ方式になりそうですね。
引き続きよろしくお願いいたします!


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第3話 悪の美学

「これってバンドリでやる必要があるかという質問。それは絶対にしてはいかんぞ」

「誰にっているのかしら?奏也?」




「奏也、畜生組のこと調べておいたよ」

 

「サンキュー蘭。ええと・・・こいつらマジで崖っぷちじゃねえか」

 

「ええ。多分、今回上納金ノルマが達成できなかったらどっかで強制労働コースね。だけどそれじゃ多分済まない。こいつはルール違反を犯している」

 

「ほう、ルール違反」

 

「この町は畜生組のシマじゃない。別の組がやってて、それは畜生組の上位組織なんだよ」

 

「あー、つまりお上の領域に手をつけちゃったわけか」

 

「ええ、ばれていないみたいだけどこれが露見したら五味葛は間違いなく制裁をもらうことになる」

 

「お上のシマで稼いだ金を上納金にしようとしてんのか・・・ひゅー、あぶねえ橋渡ってんなあ。うん、これなら俺たちが潰しても支障はなさそうだむしろ・・・」

 

「気に入ってくれた?」

 

「バッチリだぜ。いつもサンキュー、蘭!」

 

「うん。じゃあ私はこれで」

 

「というわけだがみんな話は聞いてたか?」

 

「あ、おねーちゃんそっちいったよ!」

「任せなさい」

「・・・あ、落石うまい」

「よし、これで終わりね!」

「お前ら!?絶対話聞いてなかったよな!?」

 

そこにはモンスター●ンターを4人でやっている姿があった。

ご丁寧にテレビとP●4を一人1台ずつ持ち込んでやってる。電気とスペースの無駄使いだゾ。

 

 

「うーん、ゴミ球ばっかだなあ・・・・」

「私も大したもの出ませんね」

「あ、英雄でた」

「猛者が2つ出たわ!しかも私の使ってるランスのものよ!これでイビ●ジョーランスがカスタム強化できるわ!」

「だああああ!お前ら!人の!話を!きけええええ!」

 

「なにかしら奏也、突然叫んで。私のハンターライフを邪魔する権利なんて誰にもないわ」

「きっと奏也は一人だけ仲間外れにされて悔しがっているのよ!」

「あ、そうなんだー!私変わってあげようか?」

「だからお前らなあ!・・・とりあえず1戦いくか」

 

 

「ぬわああああああん疲れたもおおおん!」

 

 

結局あの後がっつり3時間ほど狩りにいそしんでしまった。

 

 

「やめたくなるわねえ、ハンターライフ!」

「どうすっかな私もなー」

「あなたたち、とりあえず淫●語録を使って尺稼ぎをしようなんて読者の皆さんに失礼よ」

「あー、おねーちゃん真面目ー!」

 

 

ああ、確かにそうだ。ま、でもここの住人淫●ネタ好きな人多いからま、多少はね?

 

 

「じゃねええええ!次の計画だっつの!なに遊んでだよ!」

 

「そんなこといって一番ゲームに勤しんでいたの奏也ではありませんか」

 

「どの口が言うのって感じだよねー!」

 

「はい!もういいから!話すぞ!」

 

 

 

 

「というわけだ。奴らは崖っぷち。そのあとのことも考えると俺たちに危険が及ぶ可能性は限りなく低い」

 

「つまり好き放題やってしまってかまわないということね!!」

 

「・・・一ついいですか、奏也」

 

「なんだ?紗夜」

 

「五味葛の存在は明るみに出すのですか?」

 

「鋭い質問だな、紗夜。その通り、五味葛を潰したことは明るみに出す。そうすれば上位組織は畜生組が自分たちのシマを荒らしていたことに気が付くだろ?畜生組としては部下が勝手にやったことだが上位組織にしたら関係ねえ」

 

「あ!!五味葛一人を潰すだけで畜生組がつぶれる!!」

 

「ご明察。たった5人の高校生にヤクザの組が一つ潰れるのって痛快だと思わないか?」

 

「さすがは奏也素晴らしいアイディアね!!そうと決まれば早速実行あるのみよ!!」

 

「でも次の相手って崩れとはいえ一応本物のヤクザさんなんだよね?いつものノリで大丈夫??」

 

「調べたところによると奴らが集会に使っているバーは狭い。これが見取り図だ」

 

「なんでこんなものまであるのですか」

 

「蘭が一晩でやってくれた」

 

まるで殺人ノートの偽物を一晩で偽造したかのようなノリで話す。

マジで蘭、何でもできるな・・・

 

「蘭ちゃん、すごいね」

 

「ふむふむ・・・えーっと地下にいくとバースペースがあって、その奥のVIPルームに奴らがいるって感じかな?」

 

「好崎によるとそんな感じだ。真正面から攻撃を仕掛けて一気に叩くぞ。集会の日は一般客はまずいないらしい」

 

「おー!」

 

こうして俺たちは奴らが巣食うバー「ヘルスラッシュ」へ向けた足を進めたのであった。

 

 

 

「吉田が受け渡しに来なかった?どういうことだ」

 

「いつもの集金にいったんですが・・・来ませんでした」

 

「・・・!?奴の店は!?」

 

「それが・・・」

 

「なにぃ!?めちゃくちゃになっていただと!?」

 

「ええ。吉田一味は行方不明、店に金は一銭も残ってませんでした」

 

「五味葛さん、ヤバいっすよ・・・吉田のカネを次の上納金の当てにしてたんじゃ・・・期限今日までっスヨ!?」

 

「もしかしてバレてんのか・・・?なんとか・・・なんとかしなければ・・・」

 

「お、俺は抜けます!」

 

「俺も!責任は五味葛さんだけでとってください!」

 

「あ゛!?てめえら待ちやがれ!?」

 

「おい、アイツらを止めろ・・・!」

 

「おい!てめえら待ちやがれ!!」

 

「そうはイカの金太郎アメ」

 

「なんだテメエ・・ぐあッ!!」

 

「奏也、ネタが古い」

 

「まったくです。ただでさえ冷房が効きすぎていて寒いのに・・・あなたのせいで寒さ倍増です」

 

「ひでぇいいようだな!?」

 

「なんだてめえら!?」

 

「えっと、あんたが五味葛?畜生組の?俺たちゃ通りすがりの悪党狩りだけどヨ、間違いねえか?」

 

奏也は五味葛に対して問いかける。

 

「おい、ここがどこかわかってんのか!?」

「ガキの来るところじゃねえ!」

 

側近と思しき二人が奏也を囲う。

 

「あのよぉ・・・・俺はなあ・・・・・

【あんたが五味葛さん?】【畜生組の?】【間違いねえか?】って聞いてんだよ・・・・・」

 

奏也がうつむきプルプルと震えだす。

 

 

「それにも答えずステレオでビービービービー横からグチグチグチグチグチピーチクパーチク言いやがって何様のつもだオ゛オ゛ン!?!?!?!?!?」

 

 

バキッ!ドゴッ!!

 

「「ぎゃあああああ」」

 

 

そのまま奏也は側近たちを瞬殺していく。

 

「わっ、奏也。最初からクライマックス」

「まったく荒っぽいですねこの中では私が一番クールなのではないでしょうか」

「紗夜さん、私も負けてない」

「ギターのネック掴んで喋りながらヤクザをボコボコにしてるおめえらに言われたくないんだが・・・?」

「奏也、これはギターじゃない。ギターの形をした何か」

「そうですよ、ギターを武器に使うなんて、そんなの音楽に対する冒涜です」

 

そんな会話をしている間に、たえと紗夜は五味葛を除く一味を全員倒してしまっていた。

 

「うーん、曲りなりとも本物のヤクザさんなのに、ここまでボコボコにできるとは思わなかった」

「花園さん、この人たちが弱いのではなく私たちが強すぎるのよ」

「おい!!!!他に誰もいねーのか!!」

「おーい!表の奴らも片付けてきたよー!」

「とりあえず服をひんむいて全員縛り付けておいたわ!」

 

 

五味葛は叫ぶが帰ってきたのはやたらテンションが高い少女二人の声だった。

 

 

「さて、終わりだなあ五味葛」

 

「お前ら一体何なんだ・・・・?もしかして組の制裁か!?」

 

「んーある意味ではそうかも??」

 

「ええ、広義の意味で考えるとそうかもしれませんね」

 

「おねーちゃん、コーギの意味って?」

 

「あなた、何でもできるくせに勉強が足りないわよ」

 

「むーいいもーん、あとで調べるもーん」

 

「あら?こんなところにお金がいっぱいあるわ!」

 

「その金に触るんじゃねえ!!」ジャキッ

 

 

五味葛は激昂し、懐から銃を取り出した。

 

「もしかしてと思ったが・・・本当に持っていたとは」

 

他の4人は予想していなかったようで、その銃に対し、少し顔が引きつった。

 

「そ、そんなんおもちゃでしょ?」

「ひ、日菜落ち着きなさい。曲りなりともヤクザよ・・・・あれ?」

「紗夜さん、それだと」

「本物の銃ってことになるわね!恐ろしいわ!!」

「「「こころ(こころちゃん)なんでそんなテンション高いの!?(高いのですか!?)」」」

 

「今さら怖がっても遅せえ・・・全員ぶっ殺してやる。まずはてめえからだ男!!・・・っておいその汚ねえで俺の銃に触るんじゃねえよ」

 

「撃てるものなら撃ってみな」

 

「奏也!?」

 

 

紗夜が叫ぶが奏也は表情を崩さない。

 

 

「諦めがいいじゃねえか!死ねえええええ!!・・・・アレ?」

 

「どうした?早く撃って来いよ?」

 

「な、なんで引き金が動かねえ・・・?」

 

「遊底(スライド)が動かねえと銃のトリガーは引けないんだぜ?勉強不足だな」

 

「ば、馬鹿なそんな馬鹿力があるわけ・・・!」

 

「・・・フンッ!」ボキッ!

 

「ぎゃああああ!指があああ!へんな方向にぃぃぃぃぃ!」

 

「さてと。おい五味葛。お前がやっていた女子高生を使った外道ビジネス。お前は被害者の女の子たちの気持ちを考えたことがあるか?」

 

「あ??んなもんねえよ・・・メスガキなんていくらでもいるし日本での行方不明者は年間8万人もいるんだぜ・・・?俺がちょっと間引きしたくれえじゃ関係ないだろ」

 

「なあ五味葛さんよ。お前にとっては8万人の中の一人かもしれねえけどなあ、その女の子の関係者・・・親や、兄弟・・・そして一緒に頑張っている友達にとってはなあ、1人しかいねんだよ」

 

奏也は大きく深呼吸する。

 

「それをよぉ・・・てめえらみたいな外道の金もうけの道具にされたちゃたまんねえよなあ!!!!」

 

 

奏也は五味葛の胸倉をつかみ、怒りに満ちた表情をし、全身に血管を浮かせながら叫び、そして拳を奮う。

もう何発殴ったかわからない、五味葛の顔はボロボロになっていた。

 

 

「俺たちだって悪だ。俺たちのやっていることは正義でも何でもない、ただの私刑だ。だけどよ、悪にも美学があんだよ。それを履き違えたら・・・終わりだ」

 

「あがが・・・ヒューヒュー・・・」ピクピク

 

「奏也、その人もう聞こえてないよ」

 

「しかしさすがですね。銃のことを予測していたとは」

 

「うーん、悔しいけどまだまだ奏也にはかなわないわね!」

 

しかしそんな中、日菜だけが奏也に対し潤んだ目を向けていた。

 

「奏也・・・そのありがと」

 

「何がだよ日菜?」

 

「さっきのアイツへのお説教、あたしと千聖ちゃんのことだよね」

 

「・・・ばれてたか」

 

「さすが奏也だね。おいしいとこ持ってかれちゃったな」

 

「んなことねえよ。さてと、ずらかるぞ。と、その前に」

 

「奏也?そいつの携帯なんて取り出して何やってるの?」

 

「あ、もしもし!?警察ですか・・?事件です。商店街裏のヘルスラッシュっていうバーで乱闘が・・・!」

 

そして通話を終えた奏也は皆に向き直る。

 

「これで明るみになるだろ。よっしゃ、じゃあ帰るぞ」

 

こうして、この町に巣食う外道は一つ取り除かれた。

この後、畜生組は上位組織の制裁を受けることとなり、五味葛は逮捕された。

それどころか五味葛から女子高生を買っていた奴の中には現役の国会議員なども含まれており一時期世間をにぎわすこととなる。

そしてこの事件を明るみに出し、解決したのが5人の高校生であるだなんて誰も知らないのだ。

 

 

第1章 -完-

 




なんだこれは・・・たまげたなあ・・・
自分自身、こんなものが仕上がるとは思ってなかったわ・・・
結構セリフ重視で書いてるんですけど地の文やキャラ視点の解説多いほうがいいですかね?

次章もよろしくお願いいたします!


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第2章-商店街に巣食う悪!Mission:Go to the rescue of 羽沢珈琲店-
第1話 バカのバカげたバカ騒ぎ


第2章スタートです!!




「よし、今日も練習終わり!みんなどっかよっていかない?」

 

「お、いいね!りみは?」

 

「私も大丈夫だよ。有咲ちゃんとおたえちゃんは?」

 

「私も大丈夫」

 

「あんま遅くなんねーならいいぞー」

 

 

私はポピパの練習を終えた後、同じメンバーの戸山香澄の寄り道提案に賛同し、同級生の家がやっているカフェに行くことになった。

同行するのはりみこと牛込りみ、沙綾こと山吹沙綾、そして有咲こと市ヶ谷有咲だ。

 

「さーて今日は何食べよっかなー」

 

「でも香澄、少し太ったって言いてなかったー?」

 

「う・・・」

 

「そういえば、新作のチョコレートラテがあるって聞いた」

 

「チョコレートラテ!?私、絶対それにする!」

 

「りみのチョコ好きは相変わらずだなー」

 

 

そんな何気ない会話をしながら歩いていると、どこからか声が聞こえた。

 

「ヘイヘイオタクくん。いいからさっさと小遣いくれよー」

「そうそう、さっさとくれれば痛い目見なくて済むぜー?」

「おいおい、このオタクくん泣きそうじゃん」

 

 

通り道の少し目が付きにくいところで3人のガラの悪そうな男の人たちがカツアゲがをしていた。

 

「やだ・・・カツアゲ」

 

「みんな、早くいこ・・・」

 

 

沙綾とりみが嫌なものをみちゃった、という感じで促す。

 

 

「でもあの人・・・大丈夫かな?」

 

「香澄、私たちじゃなんにもできない。さっさといくぞ」

 

 

香澄は心配そうにそっちを見るが、有咲は早くいくことを促す。

うーん、さすがに真昼間から素顔さらして懲らしめるわけにもいかないからなー

 

 

「ってあれ・・・?」

「ん?どうしたのおたえ?」

「あ、いやなんでもないなんでもない」

 

 

その絡まれている人。

あれは間違いない、奏也だ。いつもの自信にあふれた鋭い目つきではなく、髪の毛はペタペタで眼鏡をかけていて、きょどきょどしてなんというか「俺オタクです!」って感じを醸し出してる。

そういえば高校に上がって学校が分かれてからはアジト(というか奏也の家)以外で奏也をみるの初めてかもしれない。

ま、奏也なら返り討ちにしておしまいかな。

 

「オラ!財布出せ!」ドゴッ

「ひえっ!すみませんすみません、すぐ出すのこれ以上殴らないでください!」

 

 

と、思っていたら情けない声を出して奏也は財布を出す。

 

 

「チッ1万だけか。ま、コーコーセーならこんなもんかよ」

「んじゃ、一人1発で勘弁してやるか」

「そうだな」

「は、話が違います・・・!」

 

ドゴドゴドゴ!

 

「よーし、この金でパチンコいこうぜ」

 

 

そんなことを言って男たちは去っていった。

 

 

「あの!大丈夫ですか!?」

「ちょま、香澄!?」

 

 

その光景を見ていたたまれなくなったのか香澄が奏也に駆け寄る。

 

 

「ああ、大丈夫だよ、君は優しいね」

「ケガとかは・・・・?」

「顔は殴られなかったからヘーキだよ」

「・・・なんでやり返さなかったの?奏也」

 

 

そんな優男を演じる奏也に一言。

 

 

「は?えっ・・・おたえ、お前なんでここに」

「この子たち、バンドメンバー」

「マジかよ・・・」

「え?おたえ知り合い?」

「うん、一応幼馴染」

 

 

うっそー・・・といった感じの表情をみんなしてする。

 

 

「それにその恰好はなに?」

「これは俺の日常生活での格好だ。必要以上に目立つ必要はないだろ」

「あのー・・・一応自己紹介いいですか?」

「あ、ごめんよ置いてけぼりにして」

「いえ!私は戸山香澄!Poppin' Partyのボーカル&ギターです!」

「私は山吹沙綾です。ドラムやってます!」

「あの、牛込りみです・・・ベースやってます」

「市ヶ谷有咲です。担当はキーボードです」

「神剣奏也。おたえとは小さいころからの付き合いでね。あとおたえと同学年ってことは俺と1つしかかわらないし、敬語はいらないよ。おたえもいつもこんなだし」

「こんなとは失礼だよ?」

「しかし俺の日常スタイルをおたえにみられてしまう日がくるとは・・・油断はできんな」

「こころとか日菜とかにみせたら面白そう」カシャ

「写真撮るな!絶対にやめてくれ。お兄さんとの約束だ」

 

 

そのノリは二人がすごく親密な関係にあることが一目瞭然であった。

 

 

「はえー・・・仲いいんだねー・・それよりも大丈夫?殴られてたし、お金まで取られちゃって」

「んー?ああ、お金ってこれのこと?」

 

 

そこにはさっき盗られたハズの財布を持つ手があった。

 

 

「え?なんで?」

 

 

香澄はそれをみて驚く。これには私もびっくりだよ。

 

 

「盗られたあともっかいスった。あとついでにこれ戦利品」

 

 

そしてさらに、懐から財布が3つ出てきた。

 

 

「あ、さっき殴られたとき」

「さすがはおたえ、ご明察。ご丁寧に一人ずつ殴て来たくれたからな、その隙にパクった」

「奏也がタダでやられるわけないとおもったよ」

 

 

そんなやりとりをみて他の4人はなんとも不思議な表情をしていた。

 

「おおー・・・カッコいい」

「この人何者なの・・・?」

「普通じゃないよね・・・」

「すげえ・・・」

「まあでも、盗んだ金使うのも後味わりぃしその辺に捨てとくか。運が良ければ警察に届けられるかもな。んじゃ、俺は帰る」

 

 

じゃあな、と踵を返したところで香澄が一言言い放った。

 

 

「あの!よかったら一緒に来ませんか?おたえの昔を知ってる人珍しいし、いろいろ話を聞かせてください!」

「そうだねえ、ここで会えたのも何かの縁だし」

「わ、私も大丈夫」

「まあ、みんながいいなら・・・」

「と、いうわけ。奏也、そんなに遠くないしどう?」

 

 

 

 

「いらっしゃいませー・・・あ、香澄ちゃん!」

「やっほーつぐ!空いてる?」

「うん!大丈夫だよ!」

 

話に聞くとこの子は羽沢つぐみさん。

実家がこのカフェで、学校で生徒会役員、さらに幼馴染でバンドまでやっているというとても頑張り屋さんだそうだ。

 

「この方は?」

「おたえの幼馴染なんだってー!」

「へーそうなんだ!よし、ご注文聞いちゃおうかな」

 

 

そして注文を取り、羽沢さんは元気に厨房へ戻っていった。

 

「こりゃうまい・・・!」

 

 

出されたコーヒーは今まで飲んだコーヒーの中でも格別だった。

近所にこんなコーヒーを出す店があったとは・・・リサーチ不足だった。覚えておこう。

そして次々とオーダー品が届けられ俺たちは話に花を咲かせたのであった。

 

 

「んん?蘭?」

 

「あれ・・・奏也じゃん」

 

お手洗いに立つと、違うテーブルで見慣れた赤メッシュがいた。蘭だ。

聞くところによる羽沢さんは蘭のいるバンドのメンバーらしくて、ここで他のバンドメンバーと待ち合わせしているとのことだった。

 

「そんなら邪魔しちゃわりぃな。またなんかあったら呼ぶわ」

 

「うん」

 

 

しかし、そんな会話をしていると突然怒号が鳴り響いた。

 

 

「オイゴラァ!水くれえ早くもってこいや!」

「ガキの店員だからって甘えんじゃねえぞ!」

「す、すみません!!ただいま・・・・!」

 

 

そこにはなんともまあイキってる男二人組が。

 

 

「すみませんですみゃー警察はいらねえよ」

「おいおい俺たちがこんなんじゃ警察に捕まる側だっての」

「それもそうか」

「「ひゃっひゃっひゃっひゃ!」」

 

 

バカでかい声で机にきたねー足をのせてバカ笑いしてるバカ二人組は明らかに調子に乗っていた。

まさにバカのバカげたバカ騒ぎ。

その様子を見てほかの客が何組か、早々に会計を済ませて帰ってしまうくらいだ。

 

 

「ひどいね・・・つぐが可哀そう」

 

「ああ、確かにな」

 

「奏也・・・何とかしてあげられない?」

 

「してやりたいのは山々だが・・・今俺は日常モードでな。この格好で目立つわけには・・・」

 

「やっぱその恰好そうだったんだ」

 

すると店長・・・羽沢さんのお父さんが厨房から出てきた。

 

「お客様・・・他のお客様のご迷惑になりますので・・・」

 

「ああん!?なんだジジイ!?」

 

 

そしてそこから始まる理不尽クレーム攻撃。

なんかちょっとムカついてきたぞ。俺はそいつらを横目にいったん外にでて、店の中にも聞こえるようなデカイ大声でいった。

 

 

「おまわりさん!こっちです!男たちが暴れてます!」

 

 

叫んだあと中をうかがう。

 

 

「なにぃ・・・?おいジジイ!てめえかサツを呼びやがったのは!?」

 

「いえ、私はなにも・・・」

 

「サツが来たらだりいぜ。今日はずらかろうぜ」

 

「チッ・・・!今日は勘弁してやる!」

 

 

そしてそそくさとバカどもは立ち去った。

 

 

「あんな感じで大丈夫でした?」

 

そのあと俺は店に戻る。

 

 

「さっきのはあなたが・・・ありがとうございました!」

 

 

話に聞くとさっきのバカどもはここ最近この商店街の飲食店に出没しては因縁をつけ飲食代をタダにさせたり、迷惑料と称して金を巻き上げている小悪党らしい。

 

 

「お助けいただいたお礼に今日のお代は結構です!」

 

「そういうわけにはいきませんよ。そうですね・・・また今度来ますので今日と変わらないおいしいコーヒーを飲ませてくださいよ」

 

「そんなことでよろしければいつでも!」

 

 

そんな感じで店長さんと仲良くなった。

 

 

「さすが奏也、あれはいい手だった。でもそのあとのアレはちょっとクサイかな」

 

「ひでえいいようだな!?」

 

「すごいね~!それとあの後の『今日と変わらないおいしいコーヒーを飲ませてください』のくだりシビれちゃうねえ!」

 

「・・・おれはいじられてんの?」

 

「ごめん奏也。これが香澄なの。からかっているつもりないと思う」

 

 

結局そのあとの話題は俺いじりが中心となってしまったのであった。

 

 

 

「つぐみ、そろそろお店を閉めようか」

 

「うん、お父さん」

 

夜、羽沢珈琲店はクローズ作業をしようとしていた。

 

 

「あ、裏にゴミをだしてくるね!」

 

「ああ、頼むよ」

 

つぐみはゴミを裏に出すため、店外に出た。

今日はいろいろあったなーと思いながらも事なきを得てほっとしていたのだ。

さて、明日からもお店、生徒会、Afterglowと精いっぱい頑張ろう!

そう思っていた時、飛び込んできたのはガラスの割れる音だった。

 

 

ガシャアアアアアアン!

 

「なんだお前たちは・・・!?やめ、やめろおおおおお」

 

「え!?」

 

その声に驚き、つぐみはすぐに店に戻る。

 

そこには・・・・

 

 

立ち去る2人の影。そして割られたガラス。

さらに・・・・・

頭から血を流し、傷を負った父の姿があったのだ。

 

「お父さん!!お父さあああああああああああああああああん!!!!!」

 

 

こうしてまた一つ、この町に涙が流れてしまった。

 

 

 




ここから他のバンドリメンバーもどんどん登場していく予定です!
ご感想や、もっとこうしたほうが読みやすいなどありましたらよろしくお願いいたします!


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第2話 お家を労わって差し上げろ

★この話に出てくる専門用語の解説★


●住宅ローン減税

住宅ローンを組むと10年間、借入金額の一定割合が返ってくる制度。
金は持っているが、減税をガッツリ受けるためにあえて住宅ローンを借りる人は意外と多い。

●団体信用生命保険

住宅ローンに付帯する保険で、万が一返済期間中に死んでしまったらローンがチャラになるもの。

●犯罪被害者給付金

犯罪の被害に遭った本人や親族に支払われる給付金。大体1000万くらい。
(条件満たしてなかったり法改正とかあったらスミマセン、仕様ということで)

●ケッチャコ・・・

仮面ライダー剣にて相川始が言い放った言葉。
決着を・・・と言ってるらしいが活舌が悪すぎてケッチャコ・・・にしか聞こえない。
オンドゥル語が始に感染した瞬間であった。


こんな感じでよろしくお願いいたします!


-病院-

 

羽沢さんから蘭へ突然連絡が入った。

お父さん、店長が何者かに襲われて重傷を負ったと。

それで俺と蘭はすぐさま病院に駆けつけたのだ。

 

 

「つぐ!!」

 

「蘭ちゃあん・・・・」

 

「お父さんの容体は!?」

 

「骨が何本か折れてて・・・頭は何針か縫ったけど命に別状はないって」

 

「そっか・・・」

 

「うん」

 

「こんにちは、羽沢さん」

 

「あれ・・・昨日のおたえちゃんの幼馴染さん」

 

「そういえば名前、教えてなかったね。俺は神剣奏也。その、お父さんのこと大変だったね・・・」

 

「命が助かってよかった・・・でもね、でもね・・・お父さんの腕が・・・バリスタの腕が・・・・!」

 

「・・・・まさか」

 

「特に複雑な折れ方をしてて、明らかに集中的に狙って攻撃を受けてるって・・・!治るのには時間がかかるし、仮に治っても以前みたいに動かせるかどうかはわからないって先生が・・・」

 

「そんな・・・」

 

 

蘭はどう言葉をかけていいのかわからない表情をする。

 

 

「お店・・・うちのコーヒーを楽しみにしてくれる人いっぱいいるのに・・・商店街の人たちのいために・・・支えてくれるみんなのためにこれからって時に・・・ううん、こういう時だからこそ私が頑張らないといけないんだね!

・・・こういう、とき、だから、こそ・・・・・」

 

羽沢さんは明らかにこらえている。

その方は小刻みに震え、うつむき涙をこらえているのがまるわかりだ。

 

 

「「「つぐ!」」」

 

 

その声のするほうを見ると、女の子が3人立っていた。

 

「聞いたよ、親父さんがケガをしたって!」

「大丈夫!?」

「つぐ・・・すごくつらそう」

「巴ちゃん・・ひまりちゃん・・・モカちゃん・・・うええええええええん」

 

聞いたところによると彼女たちは同じバンドメンバーらしい。

その姿をみて緊張が解けたのかついに泣き出してしまった。

そして、この場は彼女たちに任せたほうがいいだろうと思った俺はその場を後にした。

 

 

 

外で時間をつぶしていると蘭から連絡が入る。

そして指定された場所へと向かったのだ。

 

 

「奏也、私の言いたいことわかるよね」

 

 

そこにはブチ切れて、怒りに満ちた表情を浮かべている蘭の姿があった。

 

 

「ああ、キレたぜ、俺も・・・・!」

 

「やるよね?」

 

「やるしかねえよな?」

 

「・・・つぐの話によるとあの時、逃げる二人組を見たみたいなの」

 

「あの時のバカどもか!!」

 

「おそらくね。確証はないけど。とりあえず調べてみるよ」

 

「ああ、頼む。俺は他のメンバーに声をかけておく」

 

「うん、1日で調べ上げてやる・・・・!」

 

「任せた。報告を待っている」

 

 

 

 

そういえば説明してなかったな。俺の家は敷地面積約45坪、建物面積約35坪の3LDKの一軒家だ。

数年前両親が住宅ローンを組んでマイホームを購入。

郊外だしで特別大きいわけではなくいたって普通の家なのだが、その両親はすでにいない。

 

数年前、この町で起こった連続通り魔事件に巻き込まれ二人そろって亡くなってしまったのだ。

団体信用生命保険でローンは帳消しになったが両親を失った俺の悲しみはすごいものだった。

 

しかし、そこに待ち受けていたのは相続の問題。実は両親は住宅ローン減税を利用するためにローンを借りていただけで、元来贅沢嫌いで貯金が趣味だと豪語していただけあって、かなりの蓄えがあったらしくかけていた生命保険もあり莫大なカネが俺に転がり込んできた。

 

しかし相続税の問題や、名前もしらない親戚ども(当然、相続権はない)がこぞって現れ、無知なガキである俺から金をむしり取ろうとしてきたのだ。

そんな時、力になってくれたのはオッサンだ。

 

「てめえらハイエナ野郎共がっ!こいつが両親を失って悲しんでるのに慰めの言葉もねえのか!」

「なんだあんたは!これは家族の問題だ!」

「家族だぁ?奏也、こいつら知ってるか?」

「・・・知らないよ」

「だ、そうだ。帰れ!」

「私たちは血がつながってんのよ!ほら奏也・・・小さいころ遊んであげたでしょ??」

「そこまでいうならお前らの続柄教えな・・・ってお前ら全員相続権ねえじゃねえか!!」

 

 

そこからは有識者であるオッサン無双。カネのニオイに釣られてきた奴らを次々と論破し、引き下がらせた。

このあたりはさすがは元議員といったところであった。

その後、相続税の処理や銀行口座の開設や貯金の方法から葬式の手配まですべてオッサンがやってくれた。おかげで両親が残してくれた遺産、そして国から給付を受けた犯罪被害者給付金という莫大な貯えがある。

 

「オッサン、世話になったお礼だよ」

 

 

そういってガキだった俺はこっそり引き出しておいて100万の札束をオッサン委渡そうとしたことがある。

 

 

「バーカ、んなもん受け取れっかよ。その金はお前の父さんと母さんがお前のために残した大事なもんだ。俺は俺のやれることをやったにすぎねえ、見返りなんて求めてねえんだよ」

 

 

俺はすぐにオッサンにとんでもない失礼を働いてしまったことに気づいた。

悔しいがこの時のオッサンはメチャクチャかっこよくて、この部分は真似したいと必死に勉強し、より一層鍛錬に取り組んだ記憶がある。

 

さて、俺のどうでもいい過去を話したところでそろそろ〆に入ろう。

とどのつまり俺は広い家に一人住まい。そこに幼馴染のひいき目に見てもかわいい女の子が4人も出入りしている。

まるでギャルゲーの世界であるが現実はどうだ、そんないいもんじゃない。

1人は頭ハッピーワールドで1人は頭ハナゾノランド。

姉妹の片割れはカタブツに見えて頭のネジがぶっ飛んでるし、妹はルンルンしすぎて意味わかんねえ。

 

男:女=1:4の幼馴染というシチュエーションにありがちな

 

「私・・・奏也のこと好きだったんだよ!」

「私も!」

「え?あなた達もですか?」

「えー?いくらおねーちゃんでも奏也は渡さないよ!」

 

 

みたいな俺一人をめぐって争いが起こったりなどは微塵もない。

むしろ俺はあいつらに男と認識されていないし、俺もあいつらのことを女性としてみたことがないのだ。

そう、女性というかもう「幼馴染」以外の何物でもないのだ。

 

こんな感じで俺は今日も変態幼馴染軍団と集まり、今後の計画について話すのだ。

 

 

「誰が変態幼馴染軍団ですか!!!!」

 

「こころの声読まないで!?」

 

「あら、呼んだかしら?」

 

「頭ハッピーワールドは口をつぐめ!!」

 

 

 

「・・・というわけだ」

 

「あの時の二人組がそんなことを・・・?」

「またひとつこの町に涙が流れてしまったのね。つぐみが心配だわ」

 

 

ドン!バキッ!!!

 

 

その刹那、日菜と紗夜壁をぶん殴る様を垣間見た。

その拳は壁に吸い寄せられ、プラスターボードは無残に飛び散った。

 

 

「ええええええ・・・・ちょっとそこの姉妹!何しちゃってくれてるんですか!!」

 

「なんですか・・・?」ギロッ

 

「なにかな・・・?」ギロッ

 

「ヒェ・・・」

 

 

そこには目から光が消えた氷川姉妹が鬼の形相でこちらを見ていたのだ。

 

 

「まあ、怖い顔!相当ぷんぷんしてるわね!」

 

 

空気を読まずにこころが言う。

ヤメテ・・・そのシワ寄せ俺に来るんだからヤメテ・・・

 

 

「ねえ、つぐみちゃん何も悪くないよね・・・・?」

 

「ハイ!その通りであります!!」

 

「ふざけないでください」

 

「ハイ(白目)」

 

 

怖い!紗夜さん怖すぎ!!

 

 

「あんなに一生懸命でみんなのために頑張る羽沢さんをそんな目にあわせるなんて・・・!」

 

「おねーちゃん、あたしも同じ気持ちだよ」

 

紗夜はかつてお菓子教室でつぐみとともに過ごした時間を思い出し、それによってもっと日菜と仲良くなれたこと、そして羽沢珈琲店のあたたかさを知っている。

それを理不尽に、自分勝手な理由でぶち壊したやつらに怒りを抱いているのだ。

そして日菜は、つぐみは普段みんなのために生徒会も、どんな頼まれごともこなし頑張っているのを知っている。そして一緒に天体観測をしたのを機に星についていろいろと話すようにもなっていた。さらにAfterglowによるパスパレの楽曲提供など数々の交流があり、日菜に中では大切な仲間という認識があったのだ。

 

「奏也、今回は私(あたし)たちにやらせて」

 

 

氷川姉妹は顔を上げ、力強くそう宣言したのであった。

 

 

「・・・わかった。相手はちょうど二人。それに奴らは他の商店街の店にも迷惑をかけている。どちらにせよこの町には必要のないゴミだ。俺たちで片付けてしまおう」

 

 

・・・そして壁をちゃんと直そう。

 

 

 

 

「奏也、入るよ」

 

 

後日作戦を練るということでいったん解散となった数時間後、蘭が訪れた。

 

 

「蘭か」

 

「あいつらの身元が割れたよ」

 

「馬面幸助、榊原一輝・・・なんでこう、悪党の名前ってポジティブな漢字入るかねえ」

 

「それと、こいつら飲食店から金を巻き上げるだけの小悪党じゃなかったよ」

 

「なに?」

 

「こいつらはこの町にある雑居ビルの一室を拠点に、中年とか年配の方がやってる店で強盗事件を引き起こしてる。それもそれは金だけが目的じゃない。小金を奪ってその店主をボコボコにしてストレスを解消してる、正真正銘のクズだよ」

 

 

「なんだと・・・?」

 

「あと、これを聞いて」

 

「これは・・・?」

 

「奴らの雑居ビルに仕掛けた盗聴器の声を録音したものだよ」

 

 

 

「しかしこの前のコーヒー屋のジジイムカついたぜ」

「ああ、昼間散々バカにしやがったからターゲットにしてやったのにヨ、金もださねえかよぉ」

「そうそう、おとなしく金だけで出してればもっと優しくしてやったのによ」

「必死こいて金渡さねえからやりすぎちゃったぜ。やめろぉぉぉなんて情けねえ声出しやがって。病院運ばれて重傷らしいぜ?」

「あのバカ腕を折っても全然離さなかったしな」

「ま、さびれた商店街のちいせえコーヒー屋が潰れたところじゃあ、俺らには関係ねえよな」

「そりゃそうだ。ひゃっひゃっひゃっひゃ!!」

 

 

 

 

「こいつあ想像以上のゴミ野郎だな・・・・!」

 

「私も聞いたとき、正気じゃいられなかったよ。こんなやつらのためにつぐは・・・・!つぐはほんと頑張り屋で、いつも私たちを引っ張ってくれて、縁の下の力持ちで、何か決めるときはいつもつぐがやろう!っていってくれて・・・ほんとに、本当にいいやつなのに・・・・!」

 

「ああ、こいつらは」

 

「許せませんね」

 

「許せないね」

 

 

バキバキバキ!!!!

ものすごく不吉な音がする。

さっき聞いた音だ。そしてその音はこの部屋の中から聞こえる。

俺は恐る恐る音のほうを向くと、そこには入り口のドアを粉砕する氷川姉妹の姿があった。

 

 

「お前ら、何でここに?」

 

 

「蘭ちゃんが見えたから戻ってきたの」

 

 

「頼むから家さんを労わっておくれ・・・・」

 

 

怖いので突っ込むのを少しにした。

てかヤバい。うん、ブチ切れる気持ちはわかるし俺もハラワタが煮えくり返っている。

でも俺の家関係ないやん・・・直すのにいくらかかると思ってんのよ・・・

まあいいけどさ。

 

 

「それで・・・・今回はどうするつもりなのかな?」

 

「奏也、考えを聞かせてください」

 

「そうだな・・・蘭。この町にヤミキンはあるか?」

 

「あるにはあるよ。この前かかわった畜生組の上位組織の経営だね。えーっと従業員数は・・・少ないね、3人。末端だね」

 

 

パソコンをカタカタ叩きながら蘭が言う。一体その小さな箱にどんだけの情報量が詰まってるんだ・・・

 

 

「どうするの?」

 

「奴らは強盗だろ?そんなら、次はここに強盗してもらおうじゃねえか」

 

 

そこで俺は思いついた方法を話したのであった。

 




次回、ケッチャコ・・・・

引き続きよろしくお願いいたします!


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第3話 3回鳴くんだよ。あくしろよ

第2章、完です!

※ミスが発覚したため4/7投稿しなおしています。


「さて。今日稼いだ金の計算とデータの打ち込みすっぞ」

 

「オウ」

 

 

雑居ビルの一室、二人の男がそんな会話をしていた。

 

 

「ったくちょりーよな。しなびたオッサンぶん殴るだけで小金を稼げるうえに報酬まで貰えるんだ。やめられねーぜ」

 

「全くだぜ。マジメに働いてるやつなんざバカだよ、バカ」

 

「あのコーヒー屋のジジイみたいにな!ひゃーっはっは!」

 

 

その会話をしている中、ぶった切るように二人のお面をかぶった影が部屋に入り込む。

 

 

「失礼、馬面さんと榊原さんのお部屋はこちらでよろしいでしょうか?」

 

「ああん・・・?なんだおめえその変なお面・・・ピンクのクマ?」

 

「このクマ、最近商店街では流行ってるやつだぜ。どっかのバンドのマスコットキャラクターらしくそこらじゅうでお面配ってるぜ」 

 

「んでそのクマ野郎・・・しかも女が何の用だ?そんでなぜ俺たちのことを知っている!?」

 

「そんなことはどうでもよろしい。私たちはあなたたちを懲らしめねばなりません」

 

「と、言うわけでおとなしく・・・してね}フッ

 

 

二人の目から光が消える。

 

 

ドゴッ!ドゴッ!

 

 

「う、嘘だろ!?女のパンチでテーブルが粉々になりやがった・・・・!」 

 

「なんつーバカ力・・・!」

 

「あなたたちの声を聞くことすらおぞましい・・・・!」

 

「うん、なんか全然るん♪ってこないなあ。むしろ・・・イラッって来ちゃうかな」

 

「時間がないわ、やってしまうわよ」

 

「わかったよおねーちゃん」

 

 

「「ぎゃああああああああああああああ」」

 

 

「このパソコン、さっきまで何か打ち込んでたしなにかありそうね」

 

「蘭ちゃんならわかるかも、もってかえろっか!あと奏也の言う通りこれをココにおいて・・・・」

 

 

 

 

「おい、おい起きろ!」

 

「ん・・・?」

 

 

馬面と榊原は目を覚ます。

 

 

「ここは・・・アジトか?」

 

 

「なんだ?ドアが開かねえ・・・」

 

 

「お、おいこれみろよ!」

 

 

ドアに苦戦する榊原であったが、馬面が呼ぶほうを見てみる。

 

するとそこには数千万にもなる札束が置いてあったのだ。

 

 

「すげえ・・・なんでこんなもんがここに?」

 

「・・・でもよ、俺たちのアジトにあったってことは俺たちのもんってことでいいんじゃねえか?」

 

「それもそうだな!よっしゃー!金だー!」

 

 

馬面と榊原大喜びする。

 

全く心当たりのない大金が目の前に置いてあったのだ。真っ当な人間ならば困惑するところであるが、汚いことをして生き延びてきた二人は真っ先に自分にものにしてしまおうという考えが浮かんだのだ。

 

しかし、喜びは束の間・・・・

 

 

ドンドン!

 

 

オイゴラァ開けろォ!

 

 

ドガッ!

 

 

「な、なんだてめえらは?」

 

「部屋間違えてんじゃねえか!?」

 

 

突然ドアを蹴り破ってきた男たちに対して抗議する二人。

 

 

「アニキ!ありました!」

 

 

そのうち若いのが一人、さっきの金を手に取りそういう。

 

「てめーらその金に触るな!」

 

「そうだ、俺たちの金だぞ!?」

 

 

当然、二人は抗議する。自分たちでも身に覚えがないのに強欲な奴らである。

 

 

「ほう、これがお前らの金・・・ねえ。そうだ、ここでちょっと話をしようじゃないか。昨日の夜な、うちの組が運営する金貸しに強盗が入ってよ。金庫にあった金が3000万ほど盗られてるんだわ。いちおー全部のナンバーを控えてあってな」

 

 

「アニキ!間違いないっす!ナンバーが一致しました!」

 

「「!?」」

 

「ほう・・・なんで俺たちの3000万がここにあるのかねえ?」

 

「し、しらねえ!」

 

「そう、目が覚めたらここにあったんだ・・・!そうだ!あの女ども!」

 

「あのよぉ兄ちゃんたち。そんなことは俺たちには関係ねぇ。俺たちの奪われた金がここにあってお前らがここにいた。それだけで十分だ・・・・それでなあ兄ちゃんたち・・・・」

 

 

 

「ヤクザの金に手を出してタダで済むと思うなよ?」

 

 

 

「ひ、ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」

 

 

 

 

「いやー奏也えげつないこと考えるねー」

 

「ええ。変装して闇金に強盗しかけてその金を奴らのアジトに置いておく」

 

「そしてその闇金の人たちに金のありかをリークする。あの人たち、どうなったんだろ?」

 

「さあ?まあゴミがどうなろうと俺たちの知ったこっちゃねえよ」

 

「それもそうね!また一つ、この町から穢れが消えたのね!あ、ふたつだったわ!」

 

「奏也、ありがと。これで商店街も平和になるし、少しはつぐも救われるかな・・・・」

 

「さあな。あとは羽沢さんの心次第だよ」

 

「そういえば、このノートPC、蘭ちゃんに預けておくよ」

 

「これは?」

 

「うん、なんか色々打ち込んでたし・・・・それになんかあの人たち雇われだったんぽいんだよねー。もしかしたらバックの悪い奴らのことわかるかも」

 

「わかった。時間があるときに解析しとくよ。じゃあ、私はつぐに会いに行くから」

 

「おう、またな」

 

 

 

こうして一連の事件は一応収束した。

 

あの二人、生きてるといいなあ・・・・

 

 

 

 

「つぐ、入るよ」

 

「蘭ちゃん!」

 

「遅くなってごめん」

 

 

蘭がつぐみの部屋に行くと、Afterglowの面々がそろって何やら難しい顔をして

 

 

「お父さんの手術ができそうな医者が見つかったって?」

 

 

とは言ったものの、手引きをしたのは蘭だ。

 

持ち前の情報網でものすごく腕のいい外科医をみつけ、つぐみがそれを確認するよう仕向けた。

 

 

「それが・・・」

 

 

しかし蘭は知っていた。その医者はモグリで医師免許を持たない。

 

しかも法外な治療費を請求してくることで有名で、1回の手術に1000万、3000万、5000万円、1億円という金額を吹っ掛ける。

 

しかし、それは命とはそれくらいの値打ちがあるものだという考えのもとである。

 

 

 

「連絡をしたら・・・治療費は1,000万円だって」

 

「・・・足元見やがって」

 

 

今回、つぐみが提示された金額は1,000万円。

 

しかし1,000万円で必ず治すと約束はしてくれた。

 

 

 

「1,000万円なんて、個人経営のカフェにそんなお金・・・」

 

「かき集めるしかない」

 

 

そこでAfterglowのドラム担当、宇田川巴が言葉を発する。

 

 

「商店街のみんなにカンパをお願いしよう」

 

「でも・・・それで1,000万円なんて大金集めるなんて・・・!」

 

 

それを発するのはAfterglowのリーダーでベース担当の上原ひまりだ。

 

いつも明るい彼女だが今回ばかりは困惑しているようだ。

 

 

「ひーちゃん。集まるかどうかなんてやってみないとわからないんじゃないかなー」

 

「モカ・・・」

 

 

そしてギター担当の青葉モカが言う。

 

 

「やろう・・・・っ!お父さんのため、うまくいくかわからないけど、可能性があるなら私は精いっぱい頑張りたい!」

 

「つぐがそういうならやらない理由はないよな!」

 

 

 

巴のその言葉にみな賛同し、商店街へ出かけて行ったのであった。

 

 

 

 

「お願いしまーす!」

 

「羽沢珈琲店を助けるためにお願いしまーす!」

 

「おや、つぐみちゃん。どうしたんだい?」

 

「副町長さん!お父さんの腕を治せるお医者さんが見つかったんだけど手術代が・・・!」

 

 

副町長はその話を聞いて驚いた顔をしていた。

 

 

「なるほど、話は分かった。よし、俺も協力しよう!みんなにも声をかけてくる・・・!」

 

「ありがとうございます!」

 

「それと大金になるから大人が管理したほうがいいね。私が預かろう。金のある所には悪い奴も群がるから高校生だけだと危険だ」

 

 

それから数日、副町長を通したネットワークで商店街の人たちはもちろん、町中に、そして町外にもその運動は広まり、次々と寄付が集まり目標の1000万円はあっという間に集まった。

 

 

「つぐみちゃん、手術は明後日だったね。このお金は私が責任をもって病院に持っていこう」

 

「わかりました。よろしくお願いします!」

 

 

これで父親の腕は治る。つぐみは一安心し、その日は枕を高くして眠ることができたのであった。

 

  

 

 

-翌朝-

 

 

「えっ!?副町長さんが襲われた!?」

 

 「ああ、昨日お金を持って帰る途中、夜道を強盗に襲われたらしい!このこと、結構有名になってたから行きずりの強盗の仕業だろうって警察が・・・」

 

 

巴は先ほど聞いたニュースをつぐみに伝える。

 

 

「それで、副町長さんは大丈夫だったの!?」

 

「ああ、ケガは軽くてもう家に帰れるみたいだ。今は病院にいるらしい」

 

「私、いってくる・・・!」

 

「おい、つぐ!」

 

 

 

 

 

「副町長さん!」

 

「つぐみちゃん・・・・」

 

 

そこには頭に包帯を巻いた副町長がいた。

 

 

 

「すまない!!!!!」

 

 

そして間髪入れず土下座をする副町長。

 

その様子を見たつぐみは驚きの表情をする。

 

 

「つぐみちゃんたちが集めた大事なお金・・・奪われてしまった・・・・!責任を持つと言っておきながらなんて不甲斐ない・・・!」

 

「ちょ、副町長さん!頭を上げてください!なくなってしまったものは仕方ないです・・・それに悪いのは盗った人ですよ。こっちはまた方法を考えますから・・・」

 

「すまない、本当にすまない・・・」

 

 

 

泣きながら謝罪する副町長をみていたたまれなくなったつぐみはその場を後にした。

 

そしてその先にはAfterglowの面々がいたのだ。

 

 

「あはは・・・お金、盗られちゃったって・・・」

 

「つぐ・・・・」

 

 

 

蘭はそんなつぐみを見て悲しい気持ちになる。

 

いつだって縁の下の力持ちとしてAfterglowを牽引してきたつぐみ。

 

元気いっぱいで、頑張り屋で、みんなを笑顔にしてくれるつぐみがこんな悲しい表情をしてくれるのだ。

 

 

 「せっかく、みんなが協力してくれて集めたのに・・・もう、もう無理なのかなあ・・・・・」フラッ

 

「お、おいつぐ!」

 

 

 

そしてそのまま、精神的にも肉体的にも疲れ果てたつぐみはそのまま倒れてしまった。

 

それを受け止める巴は「救急車!」と号令する。

 

この光景を見ていた蘭は、漠然と不安を感じていた。

 

 

 

 

 

「これは・・・・!」

 

 

その後、蘭は紗夜と日菜が回収してきたパソコンのデータを見ていた。

 

そこには信じがたいことがたくさん書かれていたのだ。

 

「じゃあ、一連の事件の首謀者は・・・・!」

 

 

ある確信を持った蘭はそのまま電話をつなげ、奏也にある事実を告げたのであった。

 

 

 

-同日夜-

 

 

「全く本気で殴りおって。かなり痛いんだぞこれ」

 

「んなこと言ったってリアリティが必要だといったのは副町長さんじゃないっすかー」

 

「まあいい。おかげで1000万のアガリだ。ほら、お前にも分け前だ」

 

「ちぇー。危ない橋わたったのにたったの100万ですか?」

 

「これからももっと協力してくれれば相応の対価を出す。俺の頭を小突いただけで100万なんだ、文句を言うな。今まで使ってた二人が急に連絡がつかなくなってな・・・君にもうけ話を持って行っただけありがたいと思ってほしいものだな」

 

「冗談っすよ。しかしあんたも悪い人っすねー。あのつぐみって子、悪い子じゃないんでしょ?」

 

「娘は確かにいい子だけどな。奴の父親は昔からムシが好かんし現町長支持派だからな。今までも気にいらないやつはどんどん排除していったんだ。今さらこのやり方は変えられんよ」

 

「こんなんが副町長やってんっすからヤバい町っすよねーここも」

 

「まあでも、あいつらがここまでやってくれたのは予想外だったけどな。聞くところによると個人的に頭に来たとは聞いているが」

 

 

副町長はキャバクラでこんな会話をしながら一人の男と飲んでいた。

 

ちなみにキャバクラというのはちゃんとしたところを選べば譲たちは三サル(見ざる・聞かざる・言わざる)を徹底する。

 

 

「まあいい。これでだいぶ俺に歯向かう奴も減ってきたしな。町長選も近いし、俺が立候補し当選するシナリオは徐々に出来上がりつつある」prrr

 

 

 

そこで一本の電話が鳴り響く。

 

 

 

「非通知・・・?誰だ。もしもし」

 

「どうもー副町長さん!お元気ですかねー?」

 

「誰だ君は?」

 

 「例の二人の末路を知る者ですよ。そんでもって、あなたが町長になるためにコソコソやってることをすべて知る者です」

 

「な、なにぃ!?」

 

「あんた脇甘いっすよ。あんなチンピラにやばーい証拠預けちゃうんですから」

 

「な、なんこのとかな・・・?」

 

「今さらとぼけてもおせえよ。心当たりがあるんならヨ、今から指定する場所へ来てくれや」

 

「・・・・・・」

 

「どうしたんスカ?」

 

「ヤバイことになった。もう100万やるから付き合ってくれ」

 

 

 

 

 

 

「私だ!!」

 

 

 

待っていると副町長が一人の男を連れてやってきた。

 

俺はいつも通り、ミッシェルのお面をつけその場に行く。

 

 

「よっ!意外と早かったなあ。心当たりあるあるって感じか?」

 

「一体お前は何なんだ!?」

 

「通りすがりの悪党狩りだ。さて副町長さんよ。あんた結構やばーいことやってるみたいだな。あんたが使ってた二人組が狙ってた人達、奴らのパソコンにリスト化されてたから確認したらよ、みーんな現町長支持派で支援してた人ばっかでなあ。偶然じゃねえって思っていろいろ掘ってみたら出るわ出るわ汚職の山が」

 

 

俺は蘭からもらった紙切れに書かれた文字を順番に読み上げる。

 

 

「えーっと。まず町予算の不正捻出に、視察を装った旅行・・・おいおい公共事業の入札情報を業者にも漏らしてんのかよ。賄賂もたんまりだ。副町長の立場を余すところなく使ってわりーことしてんなー」

 

「貴様・・・!ふっ・・・そんなことはどうでもいい。不安要素は取り除かねばな・・・おい、こいつを始末してくれ。やれば今回はさっきの100万とは別に400万くれてやる。今回のアガリの半分だ」

 

「え?マジでこんな弱そうなクマお面ヤロウをブチのめせば400万くれるんっスカ?」

 

「ああ、疑わしきは罰する。それが俺の流儀だ」

 

 

そんなことを言いやがる。推定無罪の原則を言うものを知らんのか?

 

ん?待てよ?

 

 

「今回のアガリの半分で400万+100万あれ?ってことはもとは1000万。もしかしておめえ・・・その1000万は」

 

「ああ、羽沢のガキからかすめた金だ・・・今から始末される貴様には関係ない。この男は俺が用心棒の一人に雇ってる腕利きだ。今ソレを胸の中にしまうというなら命だけは助けてやる」

 

「・・・冗談抜かすんじゃねえよ」

 

 

その言葉を聞いて俺は余計にキレた。

 

そうか、羽沢さんが必死になって集めた金は・・・

 

 

「それならば仕方ない。殺れ」

 

「今夜はラッキーだぜ!オラオラー!オラオラー!!!」

 

「ふんっ。浮かれおって・・・まあいい、さっさとやってしまえ」

 

 

ボゴッ!!!!

 

 

「あ、、、が、、、ッ」ドサッ

 

「オラオラオラオラうっせーなあ。空条承●郎にでもなったつもりかよ。この弱さ、オールEだなあ」

 

「」ピクピク

 

「ば、バカな!」

 

「一撃でこれとはたまげたなあ。仮にも汚職やってるやつが連れてくるくらいだからちょっとくらい苦戦するかもと思っていたが」

 

「んで副町長さんよ?胸の中にしまえばどうのこうの言ってなかったっけ?」

 

「ヒエッ・・・!」

 

 

あーあー副町長の奴完全にビビってやがる。

 

 

「とりあえず・・・一発殴らせろよ」ドゴッ

 

「ぎゃあああああ痛い痛い痛いぃぃぃぃ!頼む!殺さないでくれ!!」

 

「命までとりゃしねえよ。だが盗ったもんは返してもらわねえとなあ。1000万、すぐ返せるんだろ?オオン?」

 

「お、俺の自宅にある・・・!」

 

「いいてえことはわかるな?」

 

「す、すぐにぃぃぃぃ」

 

 

俺はそういう副町長についていくことにした。

 

しかしなんか胸騒ぎがする。というより殺気じゃねえかこれ。

 

 

「オイコラ、テメエ何しやがった」

 

「フハハハハハハハ!バカめ!用心棒はあの男だけじゃないのだよ!」

 

 

高笑いする副町長。近くから屈強な男が4人現れた。

 

 

こんなこともあろうかと緊急通知装置を採用してるのだよ!スイッチを押せばばこいつらに伝わってすぐに来る!貴様は終わりだ!さっさとその書類をこっちに渡し、そのまま死ね!」

 

 

あららー、つまるところ罠にかかってしまったわけか俺は。

 

 

「くっ・・・汚ねえぞ・・・!」

 

 

とりあえず計画が成功してドヤ顔をしている副町長が調子に乗っているので少しだけのっかってやった。

 

 

「フッフッフ・・・何とでもいえ!」

 

「なーんて。いうとでも思ったんか?」

 

「何?」

 

 

「「「「ぐああああああ」」」」

 

 

そんな会話をしているとさっきの屈強な男たちは声を上げ倒れる。

 

 

「あなたの言う通り!ばっちり仲間を呼んだわね!」

 

「さすが、読みが深い。私もそこだけは見習いたいな」

 

「だけって・・・含みある言い方しやがって」

 

「それで?この人が一連の事件の首謀者ですか?」

 

「あー!この人知ってる!副町長さんだー!」

 

 

 

この状況を見越して呼んでおいた変態幼馴染軍団が勢ぞろい。

 

そして倒れる用心棒たちを見て、さらに俺の手のひらの上で踊らされていたことに気が付いた副町長は青ざめた。

 

 

「か、金はいくらでもやる!1000万もかえす!だから見逃してくれ!たのむ!!」

 

 

そして地べたにはいつくばってコメツキバッタみてえに額を地面に擦り付けて土下座をする副町長。

 

変わり身の早さに草生えるわ。とりあえず1000万円は回収した。

さて、こいつには暴力で制裁してもなにも面白くないな・・・

たまには趣向を凝らしてみるか。

 

 

「とりあえずよお前、犬の真似しろよ。あくしろよ」

 

「えっ・・・犬の真似・・・?」

 

「そうだよ。3回ってワンッて鳴くんだよ」

 

「くっ・・・なんて屈辱的な」

 

「(書類)ばらまくぞこの野郎!」

 

「やれば勘弁してくれるんだな・・・・?」

 

「おう、考えてやるよ(勘弁するとは言っていない)」

 

「・・・ワン」

 

「ヘッヘッヘ・・・3回だよ3回」

 

「く、くぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

 

「オラ、3回鳴くんだよ。あくしろよ」

 

「ワンワンワン!」

 

「バッカじゃねえの(嘲笑)おい、カメラ回してるか?」

 

「バッチリよ!」

 

「さて副町長さん。こんなんじゃ終わらねえぞ。今の映像、ばらまかれたどうなるかねえ?」

 

「貴様・・・!汚いぞ・・・!」

 

「なんで自分がこんな目に遭ってるか胸に手を当ててよ~~~く考えてみな?おめえはよ、ただただ自分の欲望のために権力にしがみつき関係ない人を巻き込んだ。殆どの人が自分の店を切り盛りするのに必死で、生きるためにアイディア捻りだして、飯作ったりコーヒーの淹れ方を鍛えたり・・・命削ってやってんだよ。それをおめえみてえに楽して甘い汁を吸うだけの寄生虫に栄養とらちゃたまんねえよな!?それに傷つくのは本人だけじゃねえ、家族が、周りの人が、それをみた友達が・・・・悪の連鎖みてえにどんどんどんどん傷は広がっていくんだよ!!!」

 

「ひっ・・・・!」

  

「さらにゆるせねえのはテメエのやり方だ。善意の副町長を演じて被害者の娘に付け入り、協力するふりをして金を集めるだけ集めて最後は掠め取る・・・何をも知らない女の子を!父親のために必死に頑張ってる女のことを・・・・!テメエみたいなクソ野郎のことはよぉ・・・・吐き気を催す邪悪ってって言うんだよゴルアアアアアア!」

 

 

「あがががががが」

 

 

胸倉を掴み、そのまま片手で空中に持ちあげる。そして空いたほうの片手で俺は電話をかける。

 

 

「俺だ。例の書類をマスコミ各社に、そんで今から送る動画を編集してYou ●ubeにアップしておいてくれ」

 

「そ、そんな!話が違うぞ・・・・!」

 

「あ?俺は考えてやるって言っただけで勘弁してやるなんて一言も言ってねえぞ?」

 

「そ、ん、な・・・・」ガクッ

 

「あ、失神しちまった」

 

 

ま、いっか。さて終わったことだしこの金早く羽沢さんに返す準備しないと。

 

と考えていたら変態幼馴染軍団が俺のほうを見てなにか言っていた。

 

 

「いやーほんと奏也は怒らせたくないや!」

 

「ええ、絶対敵に回したくないわ」

 

「私たちじゃ絶対思いつかないことやってのけるよね」

 

「奏也はさすがだわ!ほんとあなたと一緒にいると飽きないわね!」

 

「これは褒められてんのか?けなされてんのか?まあいいや。よし、帰るぞ、変態幼馴染軍団」

 

 

 

「ねえ奏也」

 

 

「誰が」

 

 

「変態幼馴染」

 

 

「ですって?」

 

 

「ヤベッ、心の声漏れてた」

 

  

 

「「「「待ちなさーい!」」」」

 

 

「ちょちょ、タンマタンマ!」

 

 

 

 

 

翌朝つぐみは病院のベッドで目を覚ました。

 

 

「お金、用意できなかったな・・・・」

 

 

目を覚ました途端、倒れる前のことを思い出し涙ぐむ。

 

 

「やだ、らしくないなあ・・・あれ?」

 

 

しかし枕元に一枚の紙が置いてあることに気が付いたつぐみはそれを読む。

 

 

「Under the bed・・・ベッドの下?・・・え?これって・・・!」

 

 

ベッドの下にあったのは紙袋。そしてその紙袋の中には・・・札束が詰まっており、かつて盗られたはずの1000万円が入っていたのだ。

 

それを見た瞬間つぐみは号泣、その声を聞いて偶然見舞いのために病室の近くに来ていたAfterglowの面々が集合、つぐみから話を聞いて大喜びをしたのであった。

 

そして、つぐみの父の手術は無事成功。リハビリをこなせば以前と変わらないくらいに腕は動かせるだろうということであった。

 

 

 

 

 

「結構クールなことやるじゃない、奏也」

 

「ま、これが本来俺が目指してた感じなんだけどな。変態幼馴染軍団のせいでハチャメチャになってるけどな」

 

「あらためて、つぐのこと助けてくれてありがとね」

 

「大したことじゃねえよ。羽沢さんの親父さんのコーヒーが飲めなくなるのは勘弁だしな」

 

「ふふっ・・・そういうことにしておいてあげるよ」

 

「さて、俺はそろそろ帰るわ。羽沢さんによろしく言っておいてくれ」

 

「うん。また何かあったらよろしく」

 

 

こうして商店街を巻き込み、知らぬ間に汚職事件にまで発展していた悪意は(社会的に)死んだ。

 

だがまだまだこの町のゴミは掃除しきれていない。

 

ちなみに副町長は汚職で逮捕。しかも俺たちが撮影したアノ映像まで流れてしまったので、動画でやっていた内容から汚職ホモ副町長という不名誉なあだ名までついてしまった。ネーミングセンスなさすぎじゃないですかね・・・?

 

 

 

さて今回の物語はここまでだ。

 

俺はまた、この町の平和のため悪党狩りを続けるのである。

 

 

 

第2章 -完-




うわあああ9000字近く行ってしまった・・・・!
読みづらくてスミマセン。


★作中の元ネタ★

●医者●

手塚治虫氏のブラック・ジャックが元ネタです。
これはすぐに分かった人がほとんどではないでしょうか。

●推定無罪の原則●

逮捕されても裁判で有罪が確定するまではその人は無罪であると扱われる絶対原則。
ほんとに犯人かもわからないのに捕まった人の過去や生い立ちを荒らしたりプライベートを荒らしたりするマスゴミには頭にキますよ(野獣先輩並感)
絶対知ってないとおかしいのになぜか学校で教えないので知らない人が多い。
悲しいなあ・・・


●副町長が動画を取られていたやり取り●

有名なホモビデオ、真夏の夜の淫夢第1章、ヤクザのTNOKとサッカー部員(大嘘)TDNらのやりとり。
まあここの住民知ってる人多そうだしそんな詳しく解説しなくていいから(良心)


●吐き気を催す邪悪●

ジョジョの奇妙な冒険 第5部黄金の風でブチャラティがディアボロを形容するときに用いた言葉。実は第3部で空条承太郎も同じような言葉を使ってるが、吐き気を催す邪悪という言葉はブチャラティが初めて使った。
作者はジョジョファンである。




1章はパスパレ、2章はAfterglowでした!次回はRoseliaです!

感想はとっても励みになりますので好意的なものでも批判的なものでもどんどんお願いします!

引き続きよろしくお願いいたします


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第3章-好きだけではやっていけないこともある。今井リサの苦悩-
第1話 俺、これでもオタクですよ?


第3章、Roseliaパートスタートです!


「どうだったかしら?私たちの演奏は?」

 

「うーむ、さすが上手いな。ていうか紗夜・・・お前ギター弾くとカッコいいじゃん」

 

「それは褒められてるのかしら?」

 

「あたり前田の缶コーヒーだ」

 

「いちいちネタが古いわね」

 

 

なんで俺がここにいるかというと、紗夜の所属するRoseliaの出演するイベントがあったからだ。

出演者には各1枚、身内用の観覧チケットが配られるということで紗夜から貰った。

ちなみに日菜はパスパレの仕事、おたえはポピパのメンツと遊びに行く、こころはハロハピで水族館に遊びに行ったらしい。

チケットを余らせるのは勿体ないので、ということで俺が呼ばれた次第だ。

 

 

「さすがは注目度No.1の実力派バンドだ」

 

「私たちは常に最高の演奏を求めるだけよ」

 

「ま、紗夜って完璧主義なところあるしなあ」

 

「あれー?紗夜??そちらはどなたさん?」

 

 

すると後ろから明るい声が聞こえてきた。

振り返るとそこにいたのはステージでベースを弾いていた人だ。

同じRoseliaのメンバーだろう。

 

 

「今井さん。コレは一応私の友達よ」

 

「ひでえいいようだな。小学校1年生からの付き合いじゃねえか」

 

「ってことは例の幼馴染の男の子かあ!ってアレ・・・?どっかであったことない?アタシたち?」

 

 

なんかナンパみたいな・・・

アレか?これは逆ナンというやつか!?

 

 

「何を馬鹿な事考えてるの?」

 

「だから心の中読むんじゃねえよ・・・」

 

 

前から思っていたが、幼馴染共はどうも鋭い。

最近は特に思っていることをドンピシャで当てられるので迂闊にへんなこと考えらんねえなと思う。表情でわかるのだろうか?

 

 

「ん?よく見たらコンビニのアルバイトしてる・・・?」

 

「やっぱり!なんか今日はかなり雰囲気違うね。キミが紗夜の幼馴染だったんだ!」

 

 

やはり。学校帰りによく寄るコンビニでアルバイトをしている女の子のようだ。

 

 

「しかしよくわかったな、見てくれ全然違うのに」

 

「まあキミ割と常連だし、声色一緒だし、あとか直観かなー。それにしてもほんと、いつもと随分雰囲気が違うんだね?」

 

 

自分でもこの様変わりに驚いていたところなのに、まったく交流がない状態から見破るとは素晴らしい観察眼だ。

 

 

「ってか紗夜が言ってたほど変な人じゃないじゃん」

 

 

ちなみに今日は以前おたえに指摘されたオタクっぽい恰好ではない。

髪はセットし、眼鏡も変えている。

 

 

「おい、紗夜。普段俺をどんなふうに言ってるんだ・・?」

 

「細かいことはいいじゃないですか」

 

「よくねえ!」

 

「あはは、二人とも仲いいねえ~さすが幼馴染!」

 

 

実は以前、おたえに俺の日常スタイルをみられた後、おたえは何のためらいもなくソレを撮影したものをこころや日菜、そして紗夜にみせやがった。

その時のやり取りはこんな感じだ。

 

 

「普段の奏也はなんだかパッとしないわね!」

 

「うん、なんていうか「オタクです!」みたいな?」

 

「日菜のファンにいそうな恰好ね」

 

「あー!おねーちゃんファンの人馬鹿にしちゃだめだよー?」

 

「馬鹿にしているわけではないわ。気に障ったならごめんなさい」

 

「ううん、全然いいよー!」

 

「で、みんな。コレ、どうしよう?」

 

 

そんなやり取りの後、おたえが邪悪な笑みを壁ながらみんなに問いかける。

 

 

「そんなの決まってるわ!」

 

「うん!改造しちゃお!うーん、るんっ♪ってしてきたよ!!」

 

「確かに、必要以上に目立つ必要はないけど・・・こんなオタク男子が幼馴染なんてイヤね」

 

「紗夜さんめっちゃ辛辣なんですけど!?」

 

 

今に始まったことじゃないけど俺の幼馴染に遠慮がなさすぎる・・・

まあ、それが仲のいい信頼の証ともとらえることができるわけだが。

 

 

「と、いうわけでー・・・・」

 

 

こころがキラキラした目をして近づいてくる。

 

 

「奏也、逃げちゃダメだからね?」

 

 

ニッコニコの日菜も同様だ。

 

 

「大丈夫、おとなしくしていれば痛くしない」

 

「痛いの!?」

 

「奏也、あきらめなさい」

 

 

「あの、拒否権というものは・・・」

 

 

「ないわ」

「ないよ」

「ないね」

「ないわよ」

 

 

「やめたくなりますよぉ~幼馴染ぃ・・・」

 

 

ガシッ!

 

 

「ギャアアアアア」

 

「暴れないで・・・暴れないで・・・・」

 

 

おたえがそんなことを呟きながら俺の拘束を強める。

 

 

「4人に勝てるわけないでしょう?」

 

「馬鹿野郎お前俺は勝つぞお前!」

 

「縛らなきゃ(使命感)」

 

「あれ?ひ、日菜お前縄なんてどっから持ってきて・・・」

 

「私たちが奏也を芸術品に仕立て上げてやるわ!」

 

「フザケンナヤメロバカ!」

 

どこかで見たようなやり取りが繰り広げられた後、さんざん遊ばれた。

俺で遊ぶのに満足した4人はボロ雑巾のようになりながらピクピク痙攣しながらたわってる俺を放置し、モンスター●ンターに勤しんでいた。

 

 

「あら?そういえば奏也はなんであそこに横たわっているのかしら?」

 

「・・・あ」

 

「そうしたの?おたえちゃん?」

 

「そういえば、当初の目的忘れてた」

 

「そういえ奏也の日常スタイルをもっとマシにするとか言ってたような」

 

「まあ大変!それをやるのを忘れていたわ」

 

「モウ・・・カンベンシテ」

 

 

とまあこんなやりとりをした後出来上がったのが今の俺。

 

 

「いいわね!奏也、いい感じよー!」

 

「うん、バッチリだね」

 

「なんか頭よさそう!」

 

「思いのほかマシになったわね。さすが私たちだわ」

 

 

鏡をみると驚いた。

 

 

「え?マジ??これ、ほんとに俺??」

 

 

ビックリ、そこにはインテリ系のお兄チャンがいた。

 

「私たちが慣れちゃってただけで奏也って素材は悪くないからね」

 

「マジ?俺自信もっていいの??」

 

 

中学の頃は基本こいつらと一緒いたせいもあって女子に声を掛けられるなんてことはなかったし、高校に入ってからはこいつらが言うオタクっぽさのせいかまさに皆無だ。

とまあ、こんな感じで俺の見た目は劇的ビフォーアフターしたわけである。

さて、回想はこの辺にして本編に戻りましょうかね。

 

 

「リサ?紗夜?何をしているの」

 

「リサ姉、紗夜さん!早くファミレスいこっ!」

 

「あこちゃん、友希那さん、待ってぇ」

 

「おー!友希那、あこ、燐子!」

 

「紗夜と・・・失礼、どなたかしら?」

 

「おおー頭よさそうなイケメンだー」

 

「確かになんか雰囲気のいい人だね、あこちゃん」

 

 

違う女の子が3人合流する。

さっきステージで見た同じRoseliaのメンバーだ。

 

 

「あ、この人がいつも紗夜のいってる幼馴染の男の子!」

 

「どうも、神剣奏也っていいます」

 

「ご丁寧にどうも。紗夜の幼馴染ってことは同年代かしら?敬語はなくて結構よ。私は湊友希那。Roseliaのボーカルよ」

 

「次アタシー!えっと、改めまして今井リサ!ベースだよ。いちお、友希那とは幼馴染!奏也くんと紗夜みたいな感じかな!」

 

 

いきなり名前呼びか。まあ今井さんいい人そうだしコミュ力の塊っぽいしいっか。

 

 

「えっと、俺もリサさん・・・でいいのかな?」

 

「さんなんていらないよーリサでいいよー」

 

「じゃあ俺もくんいらねえや」

 

「了解!奏也ね!」

 

 

あっという間に距離が縮んだ気がする。

これはリサだからなせる技かもしれない。

 

 

「はーい!次あこ!宇田川あこです!ドラムやってまーす!」

 

「あれ?宇田川ってもしかしてAfterglowの・・・?」

 

 

聞いたことのある名字が飛び出して、気になったので思わず聞いてしまった。

 

 

「えっ!?お姉ちゃんのこと知ってるんですか?」

 

「Afterglowのボーカルと知り合いでね。そのツテで知り合ったんだ。なるほど、姉妹でドドラマーか。カッコいいね」

 

「へー!蘭さんと!ありがとうございます!私のことはあこって呼んでください」

 

 

「じゃあ俺も好きに呼んでいいよ」

 

「じゃあ奏也さんで!」

 

 

しかしRoseliaすげえな・・・コミュ力のお化けかよって思う。

 

 

「あの、白金燐子です。その、キーボードを少々・・・」

 

 

と思っていたらこっちは打って変わっておしとやかだ。

それでいてきれいで繊細なまるでガラス細工のような美しさを持つ美少女がそこにいた。

ま、俺の目線はその豊満なおっぱいにくぎ付けなわけだが。

変態幼馴染軍団のお乳はそんなに立派じゃないからね、仕方ないね。

 

 

ゴスッ!!

 

 

「痛え!?紗夜、いきなり何しやがる!」

 

「いえ、今何かすごく失礼なことを思われてる予感がしたものですから」

 

 

やべえ、紗夜さんの第六感やべえ・・・

 

 

「奏也は参加者枠で私たちのライブを見に来てくれたんですよ」

 

「お、みててくれたんだ!どうだった?ケッコーイケてるでしょ、アタシたち」

 

「ああ、みんなケッコーイケてたよ」

 

「お、ノリいいねえ!」

 

「それに普段の紗夜から想像できない姿も見られたしな」

 

「え?紗夜って普段からあんな風にカッコよくないんですか」

 

「ああ、普段の紗夜は・・・・って、いででででででで!コラつねるんじゃねえ!」

 

 

発言をしようとしたところで紗夜にものすごいパワーで腕をつねられた。

プラスターボードやドアを片腕で粉砕してしまうパワーから放たれるそれは俺じゃなかったら肉がちぎれているだろう(適当)

 

 

「え?奏也?なんのことですか?(すっとぼけ)」

 

 

こんなことを言いやがる。

見てろ・・・こうなりゃ意地でも普段の紗夜を暴露してやるぜって・・・

 

 

「いでええええええええ」

 

 

思いっきり足を踏まれた。

 

 

「まだ何も言っていなんだが!?」

 

「先手必勝というやつよ」

 

「理不尽だ・・・」

 

 

ダメだ、本当にこれは言っちゃダメな奴だ。俺の直感がそう告げている。

 

 

「わーったよ・・・・」

 

「わかればいいのです」

 

「えっとーほんと奏也さんと紗夜さん、仲いいんすね!えっと・・・もしかして付き合っていたり・・・?」

 

 

「「あ゛?」」

 

 

突然あこから飛び出たとんでもない言葉に俺と紗夜はドスの利いた声で思わず返してしまう。

 

 

「うわっ、怖っ・・・!でも息ピッタリじゃん」

 

「ぐぬ、偶然です。コレはただの幼馴染、それ以上でもそれ以下でもないわ」

 

「ああそうだぞ、リサ。冗談はよしてくれ」

 

「はいはい、そういうことにしておきますよー。あ!そうだ、私たち、この後ファミレスで打ち上げやるんだけどさ、せっかくなら奏也もこない?」

 

 

マジか、どんだけコミュ力の塊なんだよリサって。

 

 

「そうですね。これも何かの縁です。他の人はどうかしら?」

 

 

紗夜が他のメンバーに問いかける。

特に嫌な顔をしているメンバーはいないようだ。

 

 

「私は構わないわ」

 

「あこも!」

 

「みんがそういうなら・・・それにいい人そう」

 

「よし、決まりっ!じゃあ早速行こっか!」

 

 

こうしてRoselia+俺という異色のメンバーでファミレスに向かうことと相成ったのであった。

 

 

 

ファミレスにつき難なく着席をする。

そして各々が注文するものを決めるところだ。

 

 

「あこはハンバーグセット!」

 

「わたしはドリアにしようかな・・・」

 

「んーアタシは今日家でごはん食べるからケーキセットかなー。友希那は?」

 

「私も友希那と同じでいいわ」

 

「私もそれで」

 

「あれ?紗夜ポテト食わなくていいの?」

 

「えっ!?あ、そんな産地も分からなくて添加物たっぷりのもの・・・!」

 

 

あーなるほどね。外での紗夜の立ち振る舞いが何となくわかってきた。

仕方ねえな。

 

 

「じゃ、俺頼むわ。ちょっと多いかもしれないしそん時は手伝ってくれ」

 

「し、仕方ありませんね!ちょっとだけですよ!」

 

顔を赤くさせツンデレのように言い切る紗夜。普段ではなかなか見ることができないので新鮮な感じがする。

なかなかどうして、可愛いじゃねえか。本性は別だが。

 

 

「っていてえ!足!足踏んでる!」

 

「あ、すみません。気づきませんでした」

 

 

また失礼なこと考えてたでしょ!って感じの顔してる。

スミマセン、考えてました。

その後、注文したものがどんどん運ばれてきて、談笑に花を咲かすのであった。

ちなみに俺の頼んだポテトは結局半分以上紗夜に食われてしまったことを付け加えておく。

 

 

「あ、ごめん。私ちょっとお花積んでくる」

 

 

話の途中、そういってリサが離席した。

 

 

「いやーでも奏也さん、イケメンな雰囲気に反して結構面白い人ですね!」

 

「え?俺?イケメン?マジで?」

 

カタコトになってしまった。

変態幼馴染軍団が魔改造してくれたこの外見は思いの外ウケがいいみたいで俺自身も驚いてる。

 

 

「確かに。それに紗夜が心から信頼しているのがわかるわ」

 

「湊さん、目が節穴になっているのではないですか?」

 

「ふふっ、そういうことにしておいてあげるわ」

 

「へー、じゃあ燐子さんもやってるんだ。武器は?」

 

「私は弓です」

 

「マジで?俺もそうなんだよねー。ちなみに竜の一矢を何回も使うやつは即蹴る」

 

「あ・・・私もです。まともに弓を運用してたら一矢なんて打つタイミングほぼないのに、横からとか距離・タイミング関係なしに打つ人下手な人多くて・・・」

 

 

そんな三人を横目に俺は白金さんとモン●ン談議に花を咲かせていた。

紗夜がさっきからこちらをチラチラ見ている。

多分今紗夜に話をもっていっても「みてないです」と返されるだろう。嘘つけ絶対見てたゾ。

おそらくあいつはイメージを守るためゲームをやっていること自体みんなに秘密にしているのだろう。

同じグループ内で共通の趣味があるのに残念なことだ。

 

 

「と、ごめん。俺もお手洗い」

 

 

ドリンクバーを飲みすぎたか尿意がやってきた。

席を立ち、お手洗いへ向かう。

トイレのある通路に入るためドアを開けると、出てきた人とぶつかってしまった。

 

「すみません!あれ?リサ?」

 

「あ、奏也」

 

ぶつかったのはリサだ。それになぜか浮かない顔をしているように見える。

さらにぶつかった拍子でリサの持っていた携帯が床に落ちてしまう。

その画面は着信中であることを示す表示に代わっていた。

 

 

「着信来てるぞ・・・非通知?」

 

 

そして間もなくその着信は切れる。

そしてその後。画面が切り替わるわけだが俺はそこでとんでもないものを見てしまった。

 

 

【不在着信810件】

 

 

「・・・・なあリサ、この携帯バグってないよな?」

 

「えっと・・・その」

 

 

珍しく歯切れが悪くなる。これは普通じゃない。

 

 

「良かったらこの後、話聞こうか?Roseliaの面々には秘密でさ」

 

 

俺は直感した。あの着信数、そしてあの顔。

おそらくリサはなにか厄介なことに巻き込まれている。

そして恐らく、リサの性格からしてRoseliaのみんなに心配かけまいと秘密にして、気丈に振舞っているのだろう。

そうであればリサの身に何かあってからでは遅い。俺はその後、リサと話す約束を取り付け解散後にまた会うことにしたのであった。

 

 

 

「単刀直入に聞くぞ。リサ、誰かに嫌がらせを受けているな?」

 

「・・・・うん」

 

 

解散後、帰宅するふりをして解散した後場所を移してリサと合流し話を聞いていた。

 

 

「心当たりはあるのか?」

 

「実は・・・」

 

 

そして、俺はリサから今リサの身に起こっていることを聞いたのであった。

 

 

 




第3章はリサ姉ヒロイン回!
頑張って書き上げていきます!

★評価のお礼★


ボーマンダたかゆきさん、★10ありがとうございます!
励みになります!


★元ネタ解説★

●竜の一矢
モンスターハンターワールドで使える弓の大技。
発射前の硬直時間が長いうえに適正距離で敵の頭からケツまで全段ヒットさせないとただのカス技に成り下がる諸刃の剣で、弓をまともに運用していたら使う機会はほぼない。適正距離も敵の向きも関係なしに打つゴミハンターは†悔い改めて†

●着信数810件
やけに多くないですかね・・・?いくらなんでもそこまでたまる前に不在着信リセットすると思うんですがそれは・・・・
数字の元ネタは言うまでもなく野獣(810)


引き続きよろしくお願いいたします!


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第2話 チンアナゴって硬くて強いんです(大嘘)

第2話、よろしくお願いします。


道を歩いていたら男の子が5人に囲まれていた。

5人はみんな同じ学校の制服を着ていて、いかにも学生ヤンキーグループといった感じだ。それに対し男の子はいたって普通である。

 

「オラオラ渡瀬クンとやら!早いとこ俺たちにお小遣いを渡せよ」

 

「ん?渡瀬と渡せをかけたの?つまんねーwww」

 

「うるせーよwwwおいおい渡瀬クン、おめえせいでツレに笑われちまったじゃねえか」

 

「そ、そんな、ボクは悪くないじゃないか・・・」

 

「おめえが渡瀬なんて名前してるのがわりーんだよ」ボゴッ

 

「痛い!や、やめてくれよ・・・!」

 

一人が殴り始め、それに便乗する形で次々と容赦のない暴力が起きる。

でも通行人は誰も止めることなく見て見ぬふりをし通り過ぎる。

確かに5人もいるし余程腕に自信がないとあそこに入っていくなんて無理なんだけど、アタシは放っておけなかった、というか体が勝手に動いちゃったんだ。

 

「おまわりさん!こっちですこっちで高校生が乱闘してます!」

 

「あ?サツだぁ・・・?」

 

「チッ・・・めんどくせえな」

 

「おい、次までにちゃんと金を用意して来いよ!」

 

警察なんて本当はいない。

とっさに思いついた方法がこれ、ヤンキー系のマンガとかでよくある手法だ。

そうしてその人たちは走って逃げて行った。

 

 

「大丈夫?」

 

「あの・・・ありがとうございます。それで、その、警察は・・・?」

 

「あ、ほんとは呼んでないから安心して。あいつら、酷いね」

 

「ボクの家がお金持ちだからって・・・ああやって待ち伏せして、ああやって毎週毎週お金をせびってくるんだよ・・・」

 

「最低じゃん・・・親とかには?」

 

「いえないよ。心配かけたくないし」

 

「んー気持ちはわかるけどさあ。警察とかは?」

 

「警察に言ったら親にばれるじゃん!あんた関係ないんだからほっといてくれよ!」

 

突然大声で怒鳴られる。

確かにアタシたちはたった今顔を合わせ、偶然居合わせただけ。この人にはこの人なりの考えがあるだろうし、理屈では解決できないことがあるのかもしれないね。

 

「確かにアタシが口出しする問題じゃなかったね。ごめんね、でも限界になったら色々考えたほうがいいよ。それじゃ、アタシはこれで行くから」

 

「・・・怒鳴ってごめんなさい、ありがとうございました」

 

「ん、素直でよろしい!じゃあ、またね!」

 

 

 

 

「いらっしゃいませー」

 

場面は打って変わってバイト。いつも通りレジを打ってると、見覚えのある人が来た。この人・・・前カツアゲしてた人の中の一人だ・・・!

まずい、この前私が警察を呼ぶと演技をしたとき顔を見られてるはず。

 

 

「おい、早くしろよ」

 

「あ、すみません」

 

アレコレ考えていたらその人がレジにやってきた。

 

「あ、スミマセン!」

 

「いいから、はやくしろ」

 

 

そのままフツーにレジを打っていく。

そして会計終了まで何事もなく、その人は出て行った。アタシの顔覚えてないのかな・・・?

 

 

「んー?リサさーん、どうかしたのー?」

 

「あ、うん。なんでないよ、モカ」

 

 

バイト仲間のモカが気にする様子だけど特に何かされたわけじゃないし、余計な心配をかけたくなかったので何も言わなかった。

・・・けどここからだ。おかしくなり始めたのは。

まず町を歩いているとつけられているような気がしているし、バイト中も怪しい男がコンビニの前を見張っているというのを店長に聞いた。

念のためということで店長に送って行ってもらったことがあったけど、その夜誰かに店長が襲われたらしい。うまいこと逃げられたらしく軽いけがで済んだらしいけど、あの男の人が店に来てから立て続け。明らかに狙われてるのはアタシだし、どう考えても偶然とは思えない。さらに最近になって非通知の不在着信まで来るようになった。

電話に出ても無言、切っても切っても、着信中に電話からも着信があり気が付いたら十分少々で二けたの着信だ。

正直、精神的に参ってしまっていた。でもこんな卑怯なことをする奴らに負けるわけにはいかない。それに友希那達Roseliaのメンバーに心配をかけるわけにいかない。と、そんなところで声をかけてくれたのが奏也だ。

紗夜が信頼しているせいか、奏也本来の持ち味なのかついこの人に相談しようと思ってしまった。

 

 

 

「ってわけかな。これが1か月くらい続いている感じだよ」

 

「・・・大変だったな」

 

「うん・・・」

 

「警察や親には?」

 

「言えないかな・・・心配かけたく無いし。うーん、渡瀬って人の気持ちが痛いほどわかるなー」

 

「渡瀬・・・ああ、カツアゲの被害者か」

 

「うん。確かにこういうこと、親とかRoseliaのみんなとかに知られたくないや。ほんと、理屈じゃ解決できないことあるんだねー」

 

 

明るくふるまっているようだが、リサの顔は落ち込み気味だ。

まだまともに話して1日目だが、リサはRoseliaみんなから絶大な信頼を得ていて、めちゃくちゃいい奴だ。それに今日一日観察していたら、多分Roseliaはリサというムードメーカーがいないと絶対に回らないだろう。

つまり、リサが不幸ということはRoseliaが不幸、しいては紗夜という俺の大事な幼馴染にまで不幸が及ぶということだ。

それにそんなことをするゲス野郎をこのまま野放しにするのはどうだろうか。

 

 

「ひとつ、方法がある」

 

「え?」

 

「俺の知り合いに探偵みたいなやつがいてな。そいつに犯人を調べてもらい、直接叩く」

 

 

ま、蘭のことがな。リサも蘭のこと知っているようだし、まさか蘭がこの町一番の情報屋だとは思うまい。

 

「で、でも相手は平気でカツアゲするようなアブナイやつだよ?どうやって?」

 

「そういうガラの悪い奴らを懲らしめる人も心当たりがある」

 

「ほんと!?」

 

「ああ。ちょっと俺のほうで当たってみる。ちなみにコレ、一応秘密な。わかってると思うけど。それまでは十分に注意してくれ。あとこれを預けておこう」

 

 

俺はとあるものを手渡す。

 

 

「防犯ブザーだ。防犯ブザーははシンプルイズベスト。ヤバいと思ったら線を引っこ抜いてできるだけ遠くに投げろ。それと線を引っこ抜くと内蔵されているGPSから俺の携帯に現在地が送られてくるスグレモノだ。使わないに越したことはないが・・・・一応持っていろ」

 

「うん!ありがとう!!」

 

どうやらリサは少し元気になったようだ。俺に話したから、というより今まで誰にも相談できずにモヤモヤしていたのと、俺が具体的な解決策を示したのが良かったのかもしれない。

そしてそのあと、一応リサを家まで送り、俺も帰路に就いたのである。

 

 

ので、あるが・・・・

 

 

さて状況を確認しよう。

リサの家からの帰り道、街灯が少なく比較的暗い一本道の路上。

 

 

「あー、そういえばリサを家まで送った店長さんが襲われたっていってたなー」

 

 

そんなところを俺は歩いていたわけだが、知らねー間に前方後方の道をふさがれていた。

うん、間違いない。5人組でマスクで顔は隠していて、手には鉄パイプ。しかし参ったな、今どうもケンカするテンションじゃないんだが・・・・

しかしまあ、道をふさがれていて逃げることもできないか。

 

 

「うーん、どうしたもんかなー」

 

「なにブツブツ言ってやがる?死ね!」

 

「あぶねえ!」

 

 

うわっこいつ喋りながら鉄パイプ振ってきやがった!

人が考え事してるのに失礼しちゃうわ!

 

 

「今のを避けやがっただと?てんめー・・・」

 

「ヘイ!なにか楽しそうことやってるわね!」

 

 

ゴス!

ゴス!

ゴス!

 

 

「ん?なんだ?」

 

 

そこで見たものは暗闇の中、チンアナゴを振るう変なマスクをかぶった少女であった。そのチンアナゴの餌食なった3人はその場に崩れ落ちる。

 

 

「なんだと!?てめえなにもん・・・グオ!」ゴス!

 

まあ怖い!鉄パイプなんて握って物騒だわ!」

 

 

セリフを言い終わる前にまた一人、チンアナゴの餌食となる。

ってかこいつは・・・

 

 

「よう。鉄パイプが物騒っていうが。そんなもんで4人を殴り倒すなんてお前こそ物騒だぞ」

 

 

「あら、奏也!ごきげんいかがかしら?水族館のおみやげを持っていったのに家にいないんですもの!それで何かあったのかもって思ってきてみたら案の定だったわけね!」

 

 

その正体はこころだった。

どうやら俺に今日遊んできた水族館の土産を持ってきたら家にいなかった。

なにかあったか?と思い探してたら偶然敵に囲まれる俺を発見。

いつものミッシェルのお面はないので偶然持っていたハロハピのお面をかぶって参戦したという具合らしい。

 

 

「せっかく色々買ってきたのに。あ!そうだわ、今日ペンギンが脱走してそれを花音が・・・」

 

 

「おいテメエ!突然割り込んできて仲間に手を出したくせに・・・俺を無視して話を進めんじゃねえ!」

 

 

「そうそう、これみてみて!このチンアナゴのぬいぐるみ、水族館に売ってたんだけど中に鉄芯を入れて表面を硬化させてみたの?素晴らしいと思わない!?」

 

「あらやだこころちゃんったらチンアナゴに硬い棒(意味深)を突っ込むなんて卑猥ね」

 

「今日も下ネタがキレッキレね!ちなみにあなたの分も作ってあるわ!帰ったら渡すわね!」

 

「・・・ビジュアル的に俺が振り回すのは無理があんだろ。」

 

「おいてめえら!!!無視すんなゴルァ!」

 

 

気づいている読者の方々も多いと思うが、変態幼馴染軍団は敵を前にしてもガン無視して独自のペースで会話を続けることが多々ある。

それでいて敵の動きをすべて見切っていてちゃんと倒すのは大したもんだと思う。

 

 

「あら?あなたは誰かしら?」

 

「さっきお前がぶちのめした奴の残りだぞ」

 

「まぁ!影が薄すぎて気づかなかったわ!」

 

「このクソアマ・・・不意打ちで勝ったからってチョーシこいてんじゃねえぞ」ピキピキ

 

 

暗闇であるがなんとなく青筋を浮かべているのが想像できる。

まあこいつがキレたところでこころには敵わないだろう。

しかし、そこで予想外のことが起きた。

 

 

「おいお前ら!何をしている!」

 

 

なんとそこに現れたのはリアルお巡りさん。

おいこらクソマッポ、普段仕事しねえくせにこういうときだけ真面目にお仕事しやがって・・・ツンデレかよ

 

 

「逃げるぞ」

 

「了解よ!」

 

「あ、おい待てい!」

 

 

警官が必死に呼び止めるが、俺たちはRPGでめんどくさい敵に当たって逃走確定アイテムを使ったかのような猛スピードで逃走を開始した。

 

 

「おらっ!どけ!」

 

俺は相手の男を押しのけ、逃げる。

それと、男のほうはなんと男はその警官をぶん殴って気絶させ、他の4人もこころに打たれたところをかばいながら逃走していったようであった。あらやだ、見かけ通り野蛮ね!まあ、警官を助ける余裕もないし、これで捕まったら本末転倒なので逃げることにした。仕方ないね。

 

 

 

「すまんこころ、助かった。日常スタイルだったし、正直ケンカのテンションじゃなかったんだよな」

 

「チンアナゴの威力を試せたから大丈夫よ!」

 

「相変わらずクレイジーな奴だぜ」

 

「それで?なんで奏也は襲われていたのかしら?」

 

「・・・今から言うことは他言無用で頼むぞ」

 

 

俺はこころに今日あったことを説明した。

 

 

「と、いうわけでな」

 

「なるほど、リサが困っているのね!これは助けるしかないわ!」

 

「お前ならそういうと思ったよ。今回はリサの意思を尊重して俺たちだけで動く。他のメンバー、特に紗夜には絶対に秘密だ。明日蘭に調査を依頼する」

 

「でも相手の目星はついているのかしら?」

 

「実はこんなものを持っておりまして」

 

 

俺は持っていたあるものを懐から取り出した。

 

 

「あら?お財布?」

 

以前他のヤンキーにやっとことと同じ、去り際に押しのけた際、男から財布をスっておいた。俺は財布を開示し、身分が分かるものを探す。

 

「あったぜ。夢先圭吾。夢も何もないことしてやがるのになにが夢だ。アホくさ」

 

「住所もバッチリね!年齢は・・・あら、17歳。奏也と同じね」

 

「マジかー。未成年って色々めんどくさいんだよなー」

 

「でもやるんでしょ?」

 

「ま、やるな」

 

 

もちろん、手加減するつもりなんざ微塵もない。

ガキならなおさらやっちゃいけないことといいことの違いを体で覚えさせる必要があるだろう。

 

 

「ガキっていうけど奏也も同い年よ?」

 

 

こころがグサッと一言。容赦ねえな・・・

 

 

「・・・そうだな。てか心の声を読むんじゃねえ」

 

「こころは私よ?私の声ってどういうことかしら?」

 

「何番煎じだよそのネタ!」

 

 

とりあえず蘭に調査を依頼し、まずは奴を完全に特定する。

そこからはいつも通り動き、目的や他に動いている奴を聞き出して始末するという算段を立てた。

 

 

「さて、いっちょやりますか!」

 

「ねえねえ奏也、これがあなた用に作ったチンアナゴよ!我ながらいい出来だわ!」

 

「こころさん?人の話聞いてました?」

 

 

難しいことは奏也に任せたわ!といわんばかりのこころである。

まあ、直前にもっかい話せばいっか・・・

こうして今井リサ救出作戦がスタートしたのであった。

 




武器がチンアナゴなのは、以前水族館へ行った際チンアナゴのぬいぐるみが売っていたのを私が覚えていたからで特に意味はありません。


仕事の都合で少しの間県外に出るので次話は少し時間がかかります。

引き続きよろしくお願いいたします。

★評価のお礼★

スイカのパンジャンドラムさん
いつも&★10ありがとうございます!引き続きよろしくお願いいたします!


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第3話 金!暴力!〇ックス!

元ネタを調べるのは自己責任でお願いします。




「リサ、ちょっといいかしら?」

 

「あれ?友希那?どうしたの?」

 

 

学校が終わったところで友希那が声をかけてきた。ちなみにRoseliaの練習は今日は休みだ。

 

 

「ちょっと話したいことがあって。どこかでお茶でもどうかしら?」

 

「そーだなー。つぐみのところ・・・はつぐみのお父さんがまだ復帰してないから、いつものファミレスしよっか?」

 

「それでいいわ」

 

 

よくわからないけど、友希那に誘われたなら行かない理由はない。

うーん、しかし話ってなんだろ?ま、聞けばわかるか!

 

 

 

「リサ、あれこれ考えても仕方ないからストレートに聞くわ。あなた、ここ1か月くらい、私に何か隠し事してるわね?」

 

うっそ、気づかれてたってか表に出てた?まずったなー・・・

一番心配をかけたくない相手に感づかれるとは・・・

しかもこの友希那の顔、追及モードに入ってる。こうなった友希那に対してごまかしをするのはほぼ不可能だね。うん、長年の付き合いだからわかる。

 

 

「ねえ、友希那。私がなんでもないよっていったらなんて返す?」

 

「バカ言わないで、あなたの変化に気づかない私じゃない.。甘くみないで・・・って返すわ」

 

「だよねえ」

 

「親友が困ってるなら手を差し伸べるのは当たり前よ」

 

「おお・・・・」

 

「なにかしら?」

 

「いやー友希那がデレもせずここまで言うってことは・・・ほんとに心配かけちゃってたんだなって」

 

「わ、私だってこういうことくらい言うわよ///リサ相手だし・・・それで?どうしたの?」

 

「・・・他のメンバーには絶対秘密にしてね?」

 

 

観念したアタシは友希那がにすべて話した。

いままでやられたこと、奏也に相談して動いてもらっていること。

多分余すことなく伝えたと思う。

 

「・・・・ムカつくわ」

 

「ごめん・・・」

 

「いえ、あなたではなく相談してもらえなかった自分と・・・自分を差し置いて相談を受けた神剣くんにね」

 

「えっと!悪いのはアタシで!」

 

「ふふっ、冗談よ」

 

「ゆーきーなー!」

 

「それはさておき、今は待つしかないようね」

 

「うん。なんとかしてくれるって言ってたけど具体的にどうすればいいのかわからないしね」

 

「とりあえずリサが何に悩んでいるのかわかって少しだけ気が軽くなったわ」

 

「ごめんね。ありがと、友希那!えい!」

 

「きゃっ!リサ、何するの!?」

 

「んー友情のハグ?」

 

 

やっぱ友希那は特別で、すごい。友希那は少しだけ気が軽くなったっていってるけど、アタシはかなり軽くなった。

 

 

「うーん、こんなことなら最初から友希那に相談しておけばよかった」

 

 

こんな気持ちで一日を終え、相変わらずいたずら電話はやまないけど、その夜はゆっくり眠ることができた。

 

 

しかし次の日。友希那と急に連絡が取れなくなったのだった。

 

 

「はいドーン!」

 

「ぎゃあああ」

 

「これで何グループ目かしら?」

 

「さあ、忘れちまった」

 

俺たちは今町のヤンキーに片っ端から話を聞いている。

すぐに奴のことを蘭に調べてもらおうと思ったんだが、なんと蘭が季節外れのインフルエンザにかかっているらしく、動けない・・というか過保護な親父さんから手厚い看病を受けているらしい。

と、いうわけで俺たちはまさに自分たちの足で情報を集めているのだ。

しかし、俺とこころはミッシェルのお面に手にはチンアナゴというスタイル。

ピンクのクマがカッチカチになったチンアナゴを手にヤンキーどもをボコボコにしてるんだから、端から見たら完全に変態だ。

素直に話を聞いてくれるわけでもなく、大体ケンカになる。仕方がないのでぶちのめして話を聞いている次第だ。

 

 

「わかった!話を聞くから!勘弁してくれ!」

 

「最初から話を聞いてくれりゃ殴んなくて済んだのによ」

 

 

ま、そういうわけにはいかないんだろう。ヤンキーってのはメンツを大事にするからな。ただその分、力の差をわからせてやれば従順になる奴は多い。非常にシンプルで分かりやすい世界だ。

 

 

「んで、俺らが探してんのはコイツ。いっつもどこにいるのか知らない?名前は夢先圭吾」

 

 

俺は夢先のから拝借した原付の免許の顔写真部分をアップにした紙を見せた。

 

 

「こいつ・・・夢先・・・?知ってっけどよ・・・こいつらここらでもやべえ奴だよ。錯乱墓高校の2年だがこの学校自体ヤンキーの巣窟でヨ、俺らみたいな小物ヤンキーじゃ相手にならねえ」

 

「ふむ。じゃあいつもタムロしている場所も知らんのか?」

 

「こいつらの学校、ヤバくてな。学校自体がアジトみてえなもんで、学校内でも学校外でも好き放題やってるほんとにヤバイ集団だよ。教師ですら手が付けられなくて職員室にこもりっきりで、校内でケンカが起きようがが生徒が暴れようが見て見ぬふりするようなところって話だ。そんなヤバイ学校を夢先ってやつは2年にもかかわらず番張ってんだ。悪いことは言わねえ、こいつを探して何するかは知らねえけど触れないのが吉だぜ。こいつらは本能で生きてる。」

 

 

本能・・・金!暴力!セックス!的な?

 

 

「なるほどな。ありがとよ、いい収穫だった」

 

 

そしてそいつから話を聞き終わった俺は次にどうするか考え、こころに告げた。

 

 

「よし、こころ。学校に殴りこむぞ。そのための右手・・・そのための拳だ」

 

「あら、ワイルドな答えね!了解よ!」

 

ヤンキーは力の差をわからせてやれば従順になる奴は多い、非常にシンプルで分かりやすい世界。

それならば・・・・

 

 

「学校に乗り込んで夢先をボコれば、全部解決じゃないか」

 

 

そう、ヤンキーの巣窟で、夢先の下についている奴の目の前で番を張ってる夢先をボコる。これ以上にないくらいのアピールになるだろう。

そう考えた俺は錯乱墓高校へこころと二人で向かったのであった。

 

 

「ひゃー・・・すげえところだな」

 

町のはずれにある錯乱墓高校。その光景は異様だ。

校門にはスプレーの落書きで埋め尽くされており、校庭には人ひとりいない。

昇降口に見張りと思しき奴が5人くらいのヤンキーすわりでいるだけだ。

 

 

「なんで高校の入り口に見張りがいるんですかね・・・・?」

 

「まあでも、乗り込むしかないわね!よし行くわよ!ハッピー!ラッキー!スマイル!イエーイ!」

 

 

こころはそう高らかに宣言して昇降口に突っ込んでいった。

 

 

「っておい待て!ちゃんと作戦を練ってだな・・・!」

 

 

が、その声は虚しくも届かず、こころはものすごいスピードで駆けていきあっという間に昇降口にたどり着いてしまった。

 

 

「・・・ん?オイおめえらなんだコラ!」

 

「ピンクのクマ・・・・?そんでもってるそれはなんだ?」

 

 

仕方ねえからそのまま無理やり突破する方向へシフトした。

 

 

「夢先ってやつに用があるんだが、呼んでくれないか?」

 

「あ?なんだてめえふざけてんじゃねえぞ?夢先さんになんの用だコラ」

 

「いいから案内しロッテ。あんま余計な体力使いたくないんだが?」

 

「何言ってやがるテメエ・・・うぐぉ!」ドガッ

 

「日本語わかるか?」

 

 

一人のみぞおちに拳を入れる。

ガハッ・・・と息を吐いてその場にうずくまる仲間を見て違う奴がキレる。

 

 

「いきなり何しやがっ・・・あがっ!!」

 

「じれったいわね~!さっさと言っちゃえば楽よ?」

 

 

と、その男が言葉を言い終わる前にこころがそいつを静める。

ふざけた言動してるくせに容赦ないんだよなーこころって。無邪気に笑いながら敵をボコボコにするタイプってところか。

 

 

「このアマ・・・おい、お前らやっちまえ!」

 

 

さらにそいつの合図で残りの3人も一気に襲い掛かってきた。

・・・が、素人のヤンキー高校生3人くらいなんでもなかった。各1撃ずつ、拳とチンアナゴでぶん殴り、静める。

 

 

「いいから、夢先のところに案内しろよコラ」

 

「ひ、ひぃぃぃぃぃ」

 

力の差を思い知ったのかそいつらは俺たちに対し恐怖を抱いているようだ。

 

 

「おいテメエら!いきなり人ン学校に乗り込んできてどういうつもりだ!?」

 

 

取り巻きを4人連れたリーダーっぽい男が現れた。

しかしこいつら、5人一組で行動しなきゃいけないってルールでもあるんですかね?

 

 

「俺たちは夢先ってヤローに用があってきただけだ。おめえみたいなのは用はねえ。夢先を出しな」

 

「夢先さんを?そいつはできねえな。夢先さんみたいなすげー人におめえみたいな得体のしれないやつは会うことすらできねえんだよ」

 

「すげー人ってさぁ・・・社会のゴミの一端を担ってるただのカスじゃねえか。何を偉そうに」

 

「キサマァ・・・・!!」ピクピク

 

 

挑発すると青筋を立ててこちらをにらんでくる。単細胞だねえ。挑発に乗って焦って、怒ってもいいこと何一つないのになあ。

 

 

「いっとくけどその人は夢先さんに次ぐ実力者だ!おめえみたいなのがかなうわけねえ!」

 

 

と、そこでさっきボコったやつが倒れながらそういう。

 

 

「ふぅーん。まあいいや。それならお前をぶちのめしちゃえば夢先にリーチってわけだ」

 

「寝言は寝て言え!よし、せっかくたった二人で・・・しかも一人は女でこの学校に乗り込んできたんだ。その勇気に敬意を表してタイマンしてやろう」

 

 

うわっ・・・今時タイマンって・・・。シチュエーションに酔ってやがる。

まあでもそれは好都合だ。少ない体力で力を誇示できるしいいかもしれない。

 

 

「いいぜ、かかってこい」

 

「そのクマのお面剝いで顔さらして、死ぬまで追い詰めてやるぜコラアアアア!」

 

「そう・・・(無関心)」ドゴッ!

 

「あ・・・・がっ・・・・!」

 

「大口叩く割には大した事ねえな」

 

 

うん、ごめん一撃。作者の戦闘描写が苦手とかいう裏事情は置いておいて、とりあえずこの学校のナンバー2はぶちのめした。

 

 

「嘘だろ・・・」

「マジかよ・・・」

「冗談じゃねえ・・・」

「うちの学校のナンバー3が一撃で」

「夢先さんがいないのにこんなこと・・・俺たちのメンツが・・・」

ザワザワザワ

 

ギャラリーが騒いでいる。うまくいったようだな。

これで夢先に・・・ん???まて、今夢先がいないとかこいつはナンバー3とか聞こえなかったか?

 

 

「おい、そこのお前」

 

「あ?」

 

「夢先は今いないのか?」

 

「残念だったな!最初から夢先さんはいねえよ!」

 

「・・・そうか。それとこいつはナンバー2じゃないのか?」

 

「あ?んなことなんで言わなくちゃいけねえんだよ」

 

「・・・こころ」

 

「わかったわ!言いたくなるまで私と遊びましょ!」

 

 

するとこころはそいつで遊び(意味深)はじめた。

 

 

「ひいいいいいいいい!言います言いますから!」

 

「最初からそうすればいいのよ!」

 

「この夢先さんは表向きは番長ですけど・・・実は・・・」

 

 

そこで俺は衝撃的な内容を耳にしたのだ。

 

 

「んだと!?じゃあ、リサを狙っていたのは・・・!」pppppp

 

 

しかし、そこで突然携帯がなった。

 

 

「これは・・・リサに渡した防犯ブザーのGPS!?」

 

 

俺たちがここで遊んでる間、リサには危機が迫っていることに俺は気づけていなかった。こうしてはいられない、GPSの場所に行かねば・・・・!

 

 

「リサが危ない!行くぞ!」

 

「わかったわ!」

 

「おおっと!お前らタダで帰れると思うなよ?頭がいねえときに自分らの学校で好き放題やられてよぉ・・・夢先さんたちに言い訳がつかねえんだよ。てめえら強いけどヨ、今度は5人や6人じゃねえ今。学校に残ってるやつら全員で相手してやるよ」

 

しかしそこで残っていたヤンキーたちが俺たちの前に立ちふさがる。

 

 

「ちっ!めんどくせえ!」

 

 

学校の中からゾロゾロとヤンキーどもが出てくる。人数はざっと30人くらいか・・・・負けることはないだろうが時間がかかりすぎる。

くそっ・・・しかしやるしかないか・・・!

 

 

「へっへっへ・・・!じゃあ、死ねや!」

 

「こころ、できるだけ早く片付けるぞ・・・!」

 

「結構な大所帯ねえ!ま、なんとかなりそうね!」

 

 

 

「私たちも混ぜてもらってもいいですか?」

 

「ふう、探すのに時間かかっちゃった」

 

「日菜が適当に道案内するからよ」

 

「あはは、ごめんねおねーちゃん!」

 

 

聞きなれた声。奏也が後ろを向くとそこには変態幼馴染軍団が勢ぞろいしていた。

 

 

「お前ら、なんでここに・・・?」

 

「今井さんが前からおかしかったのは気づいていましたし、それに最近奏也と弦巻さんがコソコソやっているのを知っていましたからね。私たちなりに色々調べてわけです」

 

「そしたら奏也たちが倒した人たちに話を聞いたら錯乱墓高校に乗り込むって言ってたと聞いて私たちも来た」

 

「それで来たらナイスタイミングだったというわけだね!でもあの人痛くなかったかなー」

 

「ばれてたのか・・・・っていうかあいつらまた殴られたのか・・・」

 

「隠すならもっと上手くやったほうがいいよ。私たちに隠し事なんて、甘い」

 

「ええ、花園さんの言うとおりね。甘々よ」

 

「甘々でこの前彩ちゃんと食べたパンケーキみたいだったよ」

 

散々な言われようだ。やっぱこいつらに対して隠し事は向いてないかもしれない。

これはあとでお説教くらうなあ・・・と奏也は考えていた。

 

 

「それで?今井さんが危ないんでしょう?ここは私たちが引き受けるから奏也はそっちへ行きなさい」

 

「いいのか・・・?すまない!頼む!!」

 

奏也は駆ける。そしてあっという間に錯乱墓高校を離脱し、GPSが示す地点へと移動を開始したのであった。

それに先ほど錯乱墓高校のヤンキーから聞いた情報。それを聞いた奏也は、あることに対する確信めいたものを抱いていた。

 

 

「さて、私の友人がお世話になったそうですね。代わりといってはなんですがお相手いたします」

 

 

紗夜は冷静にそういう。しかしそのお面の下の表情は怒りに満ちており、ギターの形をした何かを握る手には力が入っていた。

 




長くなったのでもう1話続きます。


★元ネタ解説★

●金!暴力!セックス!
●そのための右手・・・そのための拳
淫夢ファミリーの代表格のひとつであるKBSトリオが放った必殺の一言。
こいつらは3つで一つであり、一人でも欠けるとただのクソザコナメクジである。

●そう・・・(無関心)
またまた淫夢(ry
患者役が「肩を痛めた」と言ったのに対し、医者役が「野球か何か?」と聞いたところ「ボクシングです」という答えが返ってきて、それに対し放った一言。
自分から聞いておいてテキトーすぎやしませんかね・・・?

●錯乱墓高校
名前の元ネタはさくらんぼ小学校。これも淫夢・・・たまげたなあ
教員が機能してなくてヤンキーが牛耳ってる学校ってヤバイ・・・ヤバくない?

モデルはかなり昔のツッパリマンガである「今日から俺は!」に登場する開久高等学校。
時代を超えても面白いし今度実写化するらしいから興味ある人は見とけよ見とけよ~(ステマ)


引き続きよろしくお願いいたします。


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第4話 ヤメロォ!(建前)ナイスゥ!(本音)

Wao!(ネイティブ)ここでサブタイトル回収






「クソッ!俺としたことが!」

 

 

俺はリサから送られてきた情報が示す場所へ走った。

完全に舐めてかかっていた。ろくに下調べもせず相手が素人ヤンキーだからと力でねじ伏せれば何とかなるだろうと楽観視していた。

だが事実はどうだ?目的の敵は補足できず、いないところに殴り込み気が付いたら守るべきリサに危機が迫っている。それにさっき敵から聞いた情報が確かなら・・・

それが指し示す答えは・・・・

当然、リサへの電話は繋がらない。とにかく走って、早くたどり着いて直接助けるしかない。

 

 

「待っていてくれ、リサ!」

 

 

俺はらしくなもなく焦り、ひたすら走ったのであった。

そう、汗による湿り気と走った時の風でお面が飛んでなくなっているのに気づかないほどに。

 

 

 

「あら?」

 

授業を終えると、リサからLIN●が届いていた。

 

 

「ちょっと用事あるから練習に先行ってて!」

 

 

何かあるって言ってたかしら?

でもリサは友達も多しし予期せぬ用事が入ってもおかしくはないわね。

 

 

「了解」

 

 

私はそう返信をしてスタジオへ向かった。

 

 

「・・・!?ん!?」

 

「暴れんな・・暴れんな・・・」

 

「んー!んー!」

 

「落ちろ!・・・落ちたな」

 

 

でもその途中、後ろから口を塞がれたんだと思う。必死に抵抗した。でも相手の力強く、そしておそらく副数人いたそのせいで抵抗もむなしく意識を失ってしまったのだ。

そして目を覚ますと・・・

しらない間に移動させられていて、その目の前にたくさんの人がいた。

 

 

 

アタシはちょっと先生に頼まれごとをされてしまい、友希那に先にスタジオに行くようにいくようにLIN●を送り、仕事をこなした。

しかしそれはすぐにに終わってしまい、今ならまだ友希那に追い付けるかも!と思い電話するが繋がらない。

 

「うーん、もう着いちゃったのかな」prrr

「って思ってたら友希那からだ。もしもーし、友希那ー?」

「あー今井リサさんっすか?」

「え・・・?あなた誰??」

 

 

その声の主は友希那ではなかった。でも確かに友希那から着信が来ている。

もしかして友希那、携帯を落としちゃったりでもした?

 

 

「この携帯の持ち主さん?なんか体調悪そうなのを見つけたんですけど、さすがに見ず知らずの俺がなんかするの悪いと思ってかけさせてもらったんすよ。今から来られます?」

 

 

え・・・?友希那大丈夫なの?

こうしちゃいられない、すぐにいかなきゃ。

 

 

「あ、ありがとうございます!それで・・・場所は?・・・わかりました」

「じゃあ、待ってるんで」

「リサ・・・?来ちゃダメ!!」

「チッ・・・!うっせーな!」ガチャッ

「・・・・は?」

 

 

今の声、友希那だよね?それにあの声のトーン・・・

もしかして何か危ない目に遭ってるんじゃ・・・!?

・・・ちょっと待ってもしかしてこれって、私が受けている嫌がらせの延長・・・?

なんてことなの・・・ついに友希那を巻き込んじゃたの・・・?

 

 

「いこう、いかなきゃ!」

 

 

そう思い携帯をしまうとポケットに何か当たった。

 

 

「これは・・・奏也からもらった防犯ブザー?」

 

 

へー音量調節までできるんだ・・・ってそうじゃない!早くいかなきゃ!

そして私は駆けだす。一目散に指定された場所を目指すのだ。

 

 

「・・・あれ?ちょっと!君はこの間の・・・!」

「え?」

 

 

すると突然声をかけられた。

その方を向いてみるとそこにはどこかで見たような顔がいた。

確か・・・渡瀬君・・・だったかな?

以前不良にカツアゲされていた子だ。・・・思い返せこの人助けてからだよね、こうなってるの。

だからといってこの人が悪いわけじゃない。悪いのはこんな手段しか取れないアイツらだ。

 

 

「ごめんなさい、アタシ、ちょっと急いでて!」

「そんなに急いでどうしたの?」

「えっと、その・・・友達が」

「・・・詳しく聞かせて」

 

 

そういわれてアタシはつい話してしまった。

友希那がなにか危ない目に遭っていること、そしてそいつらの目的はアタシであること。

不安な気持ちもあったのか話してしまったのだ。

 

 

「・・・・僕も行く」

「え?」

「だから、僕も行くよ。話を聞いているともとはといえば僕を助けたせいでこうなってるんでしょ?」

「でも、結局悪いのはアイツらで!」

「そうだよ。でもやっぱ僕も男だしさ、たまにはこういうことしたいじゃん」

 

 

そういわれ不安に押しつぶされそうになっているアタシはつい

 

 

「お願いします!助けてください!」

 

 

そう言ってしまったのだ。

そして指定された場所についた。人気の少ない広場だ。

 

 

「やっと来たか」

「友希那は・・・友希那は無事なの?」

「安心しろ、なんもしちゃいねえよ。オラ、帰っていいぞ」

「友希那!!」

「リサ、ごめんね・・・」

「ううん、友希那が謝ることなんてないよ!」

 

 

足元をふらつかせながら友希那はアタシのほうへやってきた。

アタシはそれを抱きとめる。

 

 

「さーて今井さんよ、この前はよくも邪魔してくれたな」

「今までチマチマ嫌がらせをしていたのもあんたたち?」

「そりゃそうだべ、それ以外にないっしょ」

「腐った性格してるね、あんたたち」

「なんとでも言いやがれ。さて、おいお前ら!処刑の時間だ!」

 

 

すると周りにいた4人の男もこちらにやってくる。

みんなこの前見た顔だ。なぜか数人はケガをしている。

 

 

「さて・・・お楽しみだぜ」

 

 

まずい・・・

まって、そういえば奏也からもらった防犯ブザー!

確かこれ奏也の携帯に連絡行くんだよね!?

なら音量をゼロにして・・・よし!

これで少なくとも私が危ないってことは伝わったはず。それならきっと奏也は例の強い人を連れてきてくれるはずだ。

それまでアタシが耐えれば・・・・!

 

 

「えらく余裕じゃねえか・・・?強がっていられるのも今のうちだぜ

「まてっ!」

 

 

そこで存在がなかったかのように気配を消していた渡瀬君が声を上げた。

そしてその声に驚いた不良たちはすぐにその顔を安堵、そして侮蔑の顔に変えた。

 

 

「お?お?お?渡瀬クンじゃん!どったの?まだ集金日じゃないべ?」

「先払いかな?いい心がけだ!」

「おら、早いとこ出すもんだして帰んな!俺たちはこれからお楽しみだからよ!」

「そうだよ(便乗)」

 

 

奴らが好き放題いう。

 

 

「ふざけんな・・・!ここなら人目もない・・・もうお前らの好きにはさせない」

「あ?何言ってくれちゃってんの?オラァ」

 

 

次の瞬間、一人が渡瀬君に殴り掛かかる。

 

 

「・・・!」

「ぐあああああああ!」

 

 

私は目をつむる。そしてその刹那男の悲鳴。

しかしそれは渡瀬君のものではなく殴りかかった男の悲鳴だったんだ。

 

 

「て、てめー渡瀬・・・ぶっ殺してやる!」

「ただで済むと思うなよ」

「俺たちを本気にさせやがって・・・知らねえぞ!」

「そうだよ(便乗)」

 

 

だけどそこから渡瀬君の一人勝ち。正直相手になっていない強さだった。

次々と不良はダウンしていく。

そしてついに最後の一人まで下したのだ。

 

 

「なんで・・・?そんなに強いのに・・・」

「あんまり暴力とか好きじゃないし、目立ちたくないからね。でも今回は事情が違ったから仕方なく・・・ね。無事でよかったよ」

 

 

なんかあっさり片付いちゃった。アタシと友希那は安心からか脱力してしまい、地面にへたり込んでしまった。

 

 

「大丈夫?立てる?そっちの人も」

「だ、大丈夫」

「ええ、問題ないわ」

 

 

手を伸ばす渡瀬君。アタシはその手を掴もうと手を伸ばす―

 

 

 

「待てゴルァ!!!」

 

 

すると大きな声が響いた。びっくりしてそっちをむくと息を切らした奏也がものすごい形相でこちらを見ていた。

 

 

「そ、奏也!ごめん、何とかなったよ!」

「なに・・・?なぜ俺のことを・・・・あ」

 

 

奏也は自分の顔を触り、何かがないことに困惑した様子でしまったという顔をする。それと同時にでも後には引けないという雰囲気も伝わってきた。

 

「敵は・・・なんとかなったのか?」

「うん、まあね。この渡瀬君が助けてくれて・・・」

「渡瀬・・・?そっか・・・お前が渡瀬か」

「えっ!?ちょ、奏也!?」

 

 

そうつぶやいたかと思ったら奏也は拳を握り渡瀬君のほうへ向かってかけた。

そしてそのままその拳を放ったのだ。

 

 

「何してるの奏也!?渡瀬君アブナイ!」

 

 

しかし渡瀬君はなんとバク転をしてそのパンチを回避した。

 

 

「いきなり殴りかかってくるなんてずいぶんな挨拶じゃないか、ソウヤくんとやら」

 

「そうだよ!アタシたちを助けてくれたのにいきなり殴りかかるなんて・・・!」

 

 

 

「そいつなんだよ」

「え?」

 

リサは意味が分からないという顔をする。

 

 

「そいつがリサに嫌がらせをして、友希那をさらって、リサを襲わせた張本人なんだよ」

「は・・・え・・・?」

 

 

本気で意味が分からないという顔をする。

横にいる湊さんも同様だ。

 

 

「おいおい、いきなり来たかと思ったら冗談はよしてくれ。なんで俺がこんなやつらと・・・」

「殺気が隠せてないぜ?こに倒れている奴らと同じ錯乱墓高校でそこのNo.1・・・渡瀬龍清クン?」

「・・・・貴様」

「おっと、やっとその気になってくれたか」

 

 

渡瀬の雰囲気が一変する。

 

 

「あのカスめ・・・ペラペラしゃべりやがって」

「なんで・・・?なんでこんなことを・・・・?」

「俺は知ってるぜ?お前さん、最近気になる女の子ができて絶対モノにしてやるって意気込んでたらしいじゃねえか」

「おい貴様ァ!その話はヤメロォ!」

 

 

今までにないくらい渡瀬が声を荒げる。

リサと友希那はビクっとるが俺が動じない。

 

 

「ひ弱な野郎を演じて存在を相手に知らしめ、そして相手が精神的に追い詰められ、危機に陥ったところを華麗に救出。いいシナリオだ。感動的だな。だが無意味だ」

 

 

リサから聞いた嫌がらせ。あれはつまるところストーカー行為だったわけだ。

この日のために今まで書かれた話が(メタ発言)全部演技でこいつの差し金だと思うと末恐ろしい。

 

 

「だけどよぉ・・・そんなことしなくてもよ、もっとストレートに行けなかったかよ。仮にも不良がよ、頭使ってこんな回りくどいことしてバレちまうんだから世話ないぜ」

「黙れよ・・・・」

「それによ、それすっげえ女々しいし人の迷惑を考えないスタイル。最低極まりないぜ」

「黙れっつってんだろうがあああああああ!」

「うぉ!?ブチきれた!?なんで!?」

「そりゃブチ切れるよ・・・・っていうか奏也前と雰囲気違わない?」

「ええ、挑発のバーゲンセールだったわ。確かに全然違うわね・・・」

「あら、そう?」

 

 

思ったこと言っただけなんだけどなあ。

顔割れちゃったから仕方ない、今回は「神剣奏也」としてこいつらを戦おう。

ミッシェルのお面で襲撃かけちゃってるからなあ、今度から使えねえや。あーあ、やらかした。

 

 

「物事には順序ってのが・・・ドラマ性ってのが必要なんだよ。それがあってその思いはより良いものになる。過程が大事なんだ。そしてその過程は結果をより確実なものにすする」

「じれってえなー・・・ストレートに好きだけじゃいかんのか?」

「好きだけではやっていけないことがあるんだよ!!!」

 

 

Wao!(ネイティブ)ここでサブタイトル回収かよぉ!

しかもそれお前が言うべきセリフじゃないよね?ないよね?

 

 

「圭吾たち起きてくれ!」

「あれ?龍ちゃん、もう終わり?てか結構本気で殴ってきたなー。演技派だねえ、龍ちゃんは」

「すまん・・・ばれた。こうなっては仕方ない。ここにいるメンツには痛い目に遭ってもらって、全部忘れてもらうことにする」

 

 

どうやらこいつら、本当はものすごく仲が良いみたいだ。

そりゃ同じ高校のNo.1とNo.2だもんね、当たり前か。

 

 

「りょーかい!錯乱墓No.2の俺が相手だぜ!ってお前この前の夜の・・・?ちょうどいい、復讐してやるぜ。オラオラー!」

「突撃隣の晩御飯!」

「ひでぶっ!?」

 

 

その時間、奴が立ち上がるまで3秒、走り出すまで1秒、走り出して4秒、そして俺の拳が炸裂するまで2秒。

計10秒で夢先は吹き飛び、そのまま意識を次元の彼方へと飛ばした。

 

 

「・・・・・」ピクピク

「圭吾が一撃・・・?んなバカな・・・」

「バカも何も実際に目の前で起こってるこった。現実逃避はみっともないぜ?」

 

「オラア!」

「ふんっ!」

「死ね!」

「そうだよ(便乗)」

 

続く4人が追撃を仕掛ける。しかしこいつらの動きはいかにもド素人の高校生。

あの夜こころが倒した4人だろう。

こころに勝てないようじゃ俺に勝てるわけがない。

 

 

「そう・・・(無関心)」

 

 

ドゴ!ドゴ!ドゴ!ドゴ!

 

まるで作業のようにぶん殴ると勢いよくスクリューしながら地面に吸い込まれる4人。まるで煬帝に国書を投げつけられて吹っ飛ぶ聖徳太子みたいだあ(ギャグマンガ日和)

 

 

「えーっと、これだけ?」

 

「お前・・・一体何なんだ。こいつらは曲りなりとも錯乱墓の一員。しかも圭吾はここら辺の高校じゃ恐れられてる暴れ馬だ。それをこんなにあっさり・・・こんな強い奴がいたら俺が知らないわけがない」

「実際知らなかったんだろ?井の中の蛙って知ってるか?お前が知っている世界がすべてではない。世界は広いんだよ」

「ああ、認めるよ。お前は強い。強い・・・強い強い強い強い強いいいいいいいいいい!」

「うわ、えっとあのいきなりそういうの勘弁してくれませんかね?」

 

 

やべえよ・・・やべえよ・・・これあれだよ。狂っちゃったパターンだよ。

 

 

「滾る・・・!燃える・・・!こんな感覚は久しぶりだ!久しく俺にかなう奴なんていなかった!でもお前は違う!楽しませてくれそうだ・・・ああ、間違いない・・・ッカッカッカ・・・・フッフッフ・・・アーッハッハッハッハッハッハ!」

「おい、誰かそこの頭のおかしい奴を止めろ!」

「やべえ、龍ちゃんが本気になりやがった。あの本気は・・・俺も今までの人生でも数えれるくらいだ」

「たかだか数年のヤンキー人生で大げさに語るんじゃねえ!あとら抜き表現だからなそれ!あとやられたからって地面にはいつくばって解説役のためだけに意識取り戻してんだじゃねえ!」

 

 

なんかよくわからん。えっと・・・これ、ぶちのめして終わりでいいの?

 

 

「フッフッフッフ・・・フヒッ!さあ始めようぜソウヤくんとやら!!最高に楽しい最高にエキサイティングな1戦だ!」

「あーあーもう完全に出来上がっちゃってるよ・・・酒でも入れたんかこいつは」

「ヒャーッハッハ!行くぜぇえええ!ヒャッホウ!!!!」

 

 

 

 

ゴキッ!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

「ひゃ・・・ひゃ・・・ひゃっほぅ・・・・」ガクガクピクピク

 

 

一瞬。その時起こった出来事を語るには一番ふさわしい一言だろう。

確かに今までまで戦ったやつらとか気迫が、殺気が違う。しかし所詮は高校生だ。

いつも成敗しているゴロツキやヤクザもどきとはレベルが違う。

 

 

「盛り上がってるところ申し訳ねえけどヨ。付き合ってやるほど寛大な心を持ってるわけじゃないんだよなあ、俺って」

 

「ウソだろ・・・龍ちゃんが・・・本気を出した龍ちゃんが一撃で・・・・」

 

「おまえんとこのアタマが目を覚ましたらいっとけ」

 

「へ・・・?」

 

「今後一切、リサに近づくな。こいつ本人も、おめえら錯乱墓の連中も、お前らが駒に使うヤンキー共もだ。リサに何かあったら・・・お前ら全員、同じ目に遭わせてやる・・・・!」

 

「は、はははははい!」パクパク

 

「あと俺は平和に生きたいんだよ。俺のことも誰にもいうんじゃねえ・・・・わかったらそのゴミ連れて早く消えやがれ!!!!!」

 

「はいいいいいいいいいいいいい!」

 

「終わったの・・・・?」

 

「・・・ああ。変なとこ見せちゃったな」

 

後ろで空気と化していたリサと友希那に視線を向けコンタクトをとった。

その顔は驚きと安堵が入り混じった表情。リサは心なしか顔が赤い気がする。

 

「ううん、いいの。それに最後の・・・その嬉しかった」

 

「・・・・?リサ、もしかしてあなた」

 

「友希那!何も言わないで!」

 

「・・・・?まあ無事だったならなんでもいいさ。あと二人にも頼む。基本的に俺はあんまり目立ちたくないんだ。今日のこと、他の人には秘密にしておいてくれないか?」

 

「助けてもらったんだし、それくらいお安い御用だよ」

 

「愚問ね。一応、あなたは恩人になるのかしら?ならば尊重するわ。それにリサのためにも・・・」

 

「ゆーきーなー!」

 

「ふふっ。ごめんないさい。リサが可愛くってつい」

 

「うー!」

 

「・・・・なにをうめいているか知らんが帰るぞ。送っていこう」

 

 

そして俺は片手間で紗夜たちに確認の連絡を打つ。

あいつらに限って負けるなんてことはないと思うが念のためだ。

 

 

ブーブー

 

 

返事早えな。

 

 

「とっくに終わってますよ。宇田川さんと白金さんには今日の練習は3人が急用で休みと伝えておいたので安心してください・・・と伝えたいので私に連絡するように仕向けてください」

 

「そうだね!・・・・あ!今日の練習!!」

 

「そういえば・・・・」

 

二人も練習の存在をちょうど思い出したようだ。

 

「あー・・・そうだな。今からでも紗夜あたりに連絡してみたらどうだ?」

 

紗夜に言われたとおりに誘導する。

うーん、この猿芝居。

 

「それもそうだね!・・・え?休み?うん、うん・・・わかった。ありがと」

 

「どうしたの?」

 

「なんかね、紗夜に急用が入っちゃって、アタシたちも来ないから今日の練習はなくなったって」

 

「そうなの・・・まあ、そういうことなら仕方ないわね」

 

「んー?いつも友希那らしくないなあ。いつもならもっと厳しいこと言うのに」

 

「・・・私もさすがに今日のことで参ってるのよ」

 

「だよね、ゴメンね。じゃあ、帰ろうか!・・・その奏也も・・・///」

 

「・・・?なにモジモジしてんだ?まあいいや、帰るか」

 

 

 

こうして今井リサストーカー事件は幕を下ろした。

素顔さらしちまうわ、今まで見たいな極悪人が相手じゃなくてタチの悪いヤンキーが相手だったけど・・・まあ、またこの町に笑顔が戻ってよかった。

ちなみにあのあと錯乱墓高校はどうなったかであるが、トップが一撃でやられただけでなく、たった4人の女に錯乱墓が全滅されられたという話が広がりハバを利かせていた錯乱墓に不満を抱いていたヤンキー共の怒りがついに爆発。

錯乱墓以外が連合を組み、錯乱墓VSその他のヤンキー全部というまるで戦国時代の日本全国VS北条みたいな感じになってしまったらしい。もっともヤンキー側には豊臣秀吉のような大将クラスはいない烏合の衆であるようだが。

それでも力で力をねじ伏せるヤンキー社会ではその戦力差は大きく、それをもって錯乱墓の天下は終わりを告げたようであった。

 

今回はここまでにしておこう。

まだまだこの町はよくならないしオッサンが死んだ事件の真相もわからないままだ。

あ、オッサン忘れてたやつ・・・まさかいないだろうな?

まあいい、こうして物語は次の章へ進むのである。

 




Roselia編ありがとうございます!リサさんの心境に変化があったようですね。
クセが強いので受けが良くないと思っていたのですが、自分が思っていたよりたくさんの方に読んでいただいているようで。
感想とかお気に入りとかもっといっぱいしてもいいんですからね・・・?

よっしゃ、次回はハロー、ハッピーワールド!編です。
ヒロイン誰にするか決めてねえから期待して見とけよ見とけよ~
というのは程々にしておいて、引き続きよろしくお願いいたします!

★元ネタ解説★

●落ちろ!・・・落ちたな
受験シーズンになると全国の受験生へ向けてKBTIT先生から放たれる激励の言葉(大嘘)

●そうだよ(便乗)
迫真空手部員・MUR大先輩の伝家の宝刀。もはや説明不要ってそれ一番言われてるから。

●感動的だな。だが無意味だ
ニーサン(^U^)こと海東純一が放った一言。その時の声のトーンや言い回しは独特で癖になる人がたくさんいるとかいないとか。あ、仮面ライダーディケイドね。

●ヤメロォ!(建前)ナイスゥ!(本音)
嫌よ嫌よも好きのうち(説明放棄)


これって説明になってるんですかね・・・?


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第4章-守るものには笑顔も入っている。奥沢美咲の想うコト-
第1話 スポンジボ●の思い出


ちなみにこの作品、プロットとか特になく、なんとなくの方向性だけ先に決めておいて1話1話その場で考えて勢いで書ききってしまってます。
故に誤字脱字が多かったりガバガバ展開だったりしますのその辺は大目に見てください、何でもしますから!





俺の名前は神剣奏也!どこにでもいる普通の高校生さ!ちょっと違うとしたらちょっとケンカに強いくらいかな!

 

・・・とかいうこの後公園のベンチに座る青いツナギの男に遭遇しそうなノリはこれくらいにしておこう。

俺は今公園のベンチではなくイベントスペースにいる。

イベントスペースといっても小さなステージがあるくららいでキャパも20~30人くらいの小さいものだ。ヒーローショーに使うようなものをかなり小さくしたものといえばわかりやすいだろうか。

 

 

「さあ!みんなを笑顔にするわよ!ハッピー!ラッキー!スマイル!イエーイ!」

 

 

そう、今回はこころが所属する「ハロー、ハッピーワールド!」、通称:ハロハピのライブが行われるということで声がかかり、観に来たのだ。

 

 

「じゃあいくわよ!えがおのオーケストラっ!」

 

 

そして奏でられる音楽。なるほど、これは楽しい。Roseliaは肌で感じる本格的な演奏、パスパレはかわいらしさ満点な華やかな演奏だ。

それに対しハロハピは盛り上げ、みんなを楽しませる、笑顔にすることを重視にした演奏だ。

ボーカルのこころ、ベースは商店街の肉屋の娘さんか?肉を買いに行くとたまに見る気がする。そしてドラムの人は控えめそうな印象とは裏腹に力強い音を奏でる。ギターの人は確か山吹さんと商店街のブライタルイベントに出演し、天才高校生役者としても有名な瀬田薫さんか。そしてミッシェル。あれってマジですげーな・・・中の人大変だろうに。

っていうかこれだけの人材を集めたこころってやっぱすげーわ。

 

 

「みんな順調に笑顔になっているわね!じゃあ次は・・・・」

 

 

こころがMCをする。しかしそこで変なのが乱入してきたのだ。

 

 

「おうおうおうおう公園でうるせーぞおめーら!」

 

「そうだそうだ、公共の場で騒音はやめてよ!」

 

 

そういって乱入してきたのは若いカップル。いかにもDQNという風貌で手もつのは大量の酒が詰まったコンビニ袋。そしてこいつら自身も酔っぱらっているように見受けられる。

なんというか足取りがおぼつかない。ちょっと足を引っかければ間違いなくコケそうだ。

推察するに日曜なのをいいことに近くでDQN仲間と集まって昼間から酒盛りをしていたのだろう。女性もいるのをみると乱パかもしれないが今の俺には関係ない。

それで酒が足りなくなり買い出しに出た帰り、酔っぱらっているのが災いして取り掛かった公園でライブをやっているこころたちを疎ましく思って因縁をつけ始めたと。

 

 

「あら!あなたたちも混ざりたいのかしら?」

 

「ああ、なるほど!私たちの奏でる音色は異世界の人まで引き寄せてしまうんだね!ああ、儚い・・・」

 

 

うーん、このひとおかしい(確信)

えっ何いってんだあの人???

というかDQNを異世界人に例えるとは・・・

確かにああいった人種は女子高に通っている人からするとそう見えるかもしれない。

ううむ、例えが言いえて妙すぎる。

・・・そんな場合じゃなくない?これ?

子供とかすんごい怖がってるよ?観客も「えっ・・やだどうしよう」って感じになってるし。

 

 

「こころん、薫くん、その人たちはそういうんじゃなくて・・・」

 

 

MCでは結構はちゃけていた肉屋の娘がまっとうなこという。確かにそういうんじゃない、ナイス突込みだ。

ドラムの人は目が点になってあわあわおりどうしていいかわからない状態だ。

そしてミッシェルは・・・

 

 

「みんなー安心してー。怖い人はミッシェルがやっつけちゃうよー」

 

 

キヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアシャベッタアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!

 

とまあ一昔前に流行った某ハンバーガー屋のCMの真似事は置いておこう。

女の子の声でそういうとミッシェルが男たちの前に立ちふさがったてところから再開再開!

 

 

「ミッシェルーがんばれー!」

「わるものやっつけてー!」

 

 

その様はまるでヒーローショーだ。

さっきまで怖がっていた子供たちだけでなく、その場にいた主婦の方、女子高生などみんなが一斉にミッシェルを応援しだしたのだ。

 

 

「ああ?なんだこのクマ?やっつけるだと・・・?やれるもんならやってみろコラ!」

 

 

想像以上の声援にいたたまれなくなったのかそういって殴り掛かる男だが、足を引っかけられたみたいでコケてしまった。

顔面から顔に突っ込む男はものすごく痛そうだ。俺だったら絶対に嫌だね、無様だし痛いし。

 

 

「ちょっとーはやくそのキモイクマやっちゃってよー?なに遊んでんのー?」

 

「チッ・・・!酒が回りすぎてんのかよ」

 

 

そんなことを呟いて言い訳をする男。正気を失って暴れまわると面倒だし・・・しゃーないここらで助け舟を出すか。

 

 

「コラー!ライブの邪魔をするなー!かーえーれ!かーえーれ!」

 

 

ここで始まるは俺渾身の帰れコール。

予想通りみんなそれに乗ってくれた。こういうとき女性子供の一体感は素晴らしいと思う。

 

 

「かーえーれ!かーえーれ!」

 

「う、うるせえお前ら・・・黙れ!」

 

「かーえーれ!かーえーれ!」

 

「ねえ、こいつらキモイ。もういいよ、みんな待ってるしいこ!」

 

「クッソ・・・今日は勘弁してやらあ」

 

 

そんな捨て台詞を言って男たちは逃げるようにその場を後にした。

いやあカッコわりぃなあ・・・・

 

 

「さっすがミッシェル素晴らしいわー!さて、悪い子もいなくなったところでライブの続きをするわよ!」

 

そんな感じでライブは続き、大盛況で終わった。

後片付けをし、こころたちと合流すべくそっちへ向かう。

 

 

「あら奏也!どうだったかしら?私たちのライブは?」

 

「ああ、いいものを見させてもらったよ。アクシデントもばっちり乗り越えてさすがだった」

 

「あれはミッシェルのおかげね!それと、最初声を上げてくれたの奏也よね?助かったわ!」

 

「ああ、帰れ帰れコールのことか。お役に立ったなら何よりだ」

 

「さて、じゃあ奏也にハロハピのメンバーを紹介するわ!みんな!」

 

 

ここでようやく自己紹介だ。こころの他に4人の女の子がいる。それぞれが話し出すのを俺は聞くことにした。

 

 

「私は瀬田薫。2年生、ギター担当さ!君の今日の活躍は素晴らしいものだったよ」

 

「お褒めにあずかり光栄だ。俺も2年だからタメか。俺は神剣奏也。こころの幼馴染でな、その縁でここにいる」

 

「幼馴染という縁が奏也を呼び込み、その結果起きたのが今日の奇跡ということか!運命とは必然、こうなることは最初から決まっていたんだね!ああ、儚い・・・」

 

「あの、何が儚いのかわからないのだがどういうことか教えてもらってもいいか?」

 

「つまり・・・そういうことさ」

 

「あっ・・・(察し)」

 

 

あ、ダメだ。この人も頭ハッピーワールドだわ・・・

なんでこう、才能のある人間ってのは変態が多いんだ?

 

 

「えーっとそっちの人は・・・肉屋の」

 

「あ!?知ってるの!?はぐみはね、北沢はぐみっていうんだ!ウチのコロッケはおいしいよ!はい、これお裾分け!」

 

 

そういって出されたのはコロッケだ。一口食べるとサクッサクの衣と肉汁が広がり、それを受け止めるポテトの風味と舌ざわり。控えめに言ってもうますぎるコロッケだった。

 

 

「なんだこれ・・・・ありえねえ・・・」

 

「え・・・?おいしくなかった・・・?」

 

 

シュンッって顔をする。

おいお可愛いぞこの子。っとそんなこと言ってる場合じゃない。

 

 

「逆だ逆、そうじゃなくて美味すぎるってことだ」

 

「ほんと!?よかったら買いに来てね!サービスするから!」

 

「ああ、よろしくな」

 

「次は花音ね!」

 

 

そして次に紹介されるのはドラムの子。

 

 

「えっと松原花音です。ハロハピではドラムをやってて・・・その今日はありがとうございました。ああいうのに慣れてないからどうしていいかわからなくて・・・」

 

 

ものすごく控えめな子だ。この部分は燐子さんに通ずるところがあるかもしれない。

しかしその表情とは裏腹に、彼女の叩くドラムは自信にあふれてて力強いものだったのを覚えている。

 

 

「よろしく。自信にあふれた力強くていいドラムだったよ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 

そう言ってあげると安堵し、ほほ笑んだ。

うーん、この子も可愛い。なんというか俺が知っている女の子って全体的にかわいい気がする。

 

 

「それで・・・美咲!」

 

「あーはいはい。えっと、奥沢美咲です。ハロハピでの役割は・・・・うーんなんていったものか・・・」

 

 

そこにいたのは無気力系の美少女。奥沢美咲と名乗るこの子の声、間違いなくミッシェルのものだ。この子がミッシェルの中の人か。

そう考えるとすごい度胸だ。TDN女子高生とは思えない。

 

 

「美咲はね!ミッシェルの代理人よ!ミッシェルのスケジュールを調整したり、呼んできてくれるの!」

 

 

奥沢さんの言葉を遮りこころが声を上げる。

そこで違和感を感じた俺の感性は狂っていないと思う。故に俺も声を上げた。

 

 

「・・・・え?ミッシェルってこの」

 

「あー神剣さん神剣さん。いいんです、このまま話合わせてくれれば」

 

 

奥沢さんでしょ?って言おうとしたところで奥沢さんから直々にストップが入った。

 

 

「どういうことだ・・・・?」

 

「あの3人、ミッシェルの正体が美咲ちゃんって気づいてないの」

 

「・・・・は?」

 

 

松原さんから聞いた内容はこころ、瀬田さん、北沢さんは色々あってミッシェルの正体に気が付いていないと。

頭ハッピーワールドすぎやしませんかね・・・?

 

 

「これが私たち、ハロー、ハッピーワールド!よ!」

 

 

ということらしい。なんだよこころ、普段ぶっ飛んでるくせにいいバンドやってんじゃねえか。

一通り自己紹介が終わった後、みんなでカフェでお茶を飲んだ後解散となった。

 

しかし・・・俺は覚えていた。

ライブ中に乱入してきた奴が去り際に。

 

「ちくしょう・・・覚えてろよ・・・今夜・・・」

 

とつぶやいていたのを。

そしてさっきから気づかれないように俺たちの後をつけている奴らがいることを。

・・・まあ俺に気づかれているわけどね。

 

 

 

 

「じゃあ私はこっちね!美咲、花音、奏也!また今度会いましょう!」

 

 

解散の流れになり、瀬田さんと北沢さんはすでにわかれた。そして分かれ道になったこころが離脱する。

 

 

「じゃあ俺もこのあたりで。気を付けてな」

 

「あ、はい。今日はありがとうございました」

 

「ドラムほめてもらってうれしかったです。またお願いします」

 

 

ま、ここで俺も後ろからついていくんですけどね。

当然、奥沢さんたちをつけている奴らの後ろをだ。うん、今日いた酔っ払いの男1人と他2人、計3人か。3人・・・空手部の部員とかじゃねえよなあいつら。

そんなことを考えていると、一人が声を荒げる。

 

 

「おい!待ちやがれ!」

 

「・・・え?あ、今日の・・・」

 

 

それを見て奥沢さんが今日のライブを妨害した奴だと認識する。

しかしどういうことか、特に焦る様子は見受けられない。

 

 

「テメエ今日のクマの中身だろ?お礼に来たぜ」

 

「み、美咲ちゃん・・・・」

 

 

松原さんがおびえた様子で奥沢さんの袖をキュッと掴む。

 

 

「あーはいはいなるほど。お酒の力で気が大きくなって、イキって乱入したのはいいけど得体のしれないクマに転ばされて恥をかいたからそれとは無関係なお仲間を連れて女子高生にお礼参りに来たってことですかーすごいですねーわーぱちぱち」

 

「え・・・・!?美咲ちゃん!?」

 

 

っておいマジかよ。奥沢さんメッチャクチャ挑発してんじゃねえか・・・・

あ?俺もいつもしてる?しらんがな。

しかしそんなこと言ったら・・・

 

 

「テメエクソガキィ!もうシラフだからどうなっても知らねえぞ・・・?」

 

 

こうなるに決まってるってそれ一番言われてるから。

そしてまずい、殴りかかった。俺もいかねば・・・!

 

 

「別に酔っぱらってなくてもあなたそんなに強くないですよ」ドゴッ!

 

「うぐっ・・・ガハッ・・・!」ドサッ

 

「なんだと・・・・?」

 

 

無気力な言葉とは裏腹に放たれる強烈な一撃。

優しい暴力とか中途半端なシメ技とかそんなちゃちなもんじゃねえ。

もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ・・・

 

 

「おい、女子高生だからってそんなふうに遊ばなくていいんだぜ?おい?」

 

「あのーそっちのお二人さんはこの件に関係ないと思うんですけど・・・やります?」

 

 

ひきつった笑顔で対応する奥沢さん。

できればやりたくねえなあという雰囲気がひしひしと伝わってくる。

 

 

「酒抜けたばっかでまだカンが鈍っただけだろ!オラア!」

 

「ものごとに対していいわけばっかする人って決まって強くなれないんですよ」

 

 

ゴカッ!バキッ!

 

 

強い。助けに行こうとしていた俺の足は止まり、その立ち振る舞いに見とれていた。

そして俺や幼馴染たちと変わらぬ速さで敵を撃沈したのであった。

 

 

「美咲ちゃん・・・?」

 

「花音さんごめんなさい、怖いとこ見せちゃいましたね。もう大丈夫ですから」

 

「でも美咲ちゃん、どうして・・・?」

 

「ちょっと昔から格闘技習ってるだけですよ。深く聞いてくれないと助かるんですけど・・・」

 

 

格闘技。空手でもなく格闘技という言葉を使った。

普通、格闘技をやっている人間は空手ならからて、テコンドーならテコンドーと固有名称を用いるのが普通だ。それをぼかして格闘技っていうのは「名称がない」からだろう。

名称がないケンカに勝つための格闘技・・・・どっかで聞いたことありませんかね?

すぐさま俺は出ていく。あの身のこなし、動き、クセこれはまさか・・・・

 

 

「ん?まだ仲間が・・・って神剣さん?」

 

「奥沢さん・・・」

 

「あー・・・もしかして見てました?」

 

「ああ。なあ、もしかして君は・・・」

 

 

俺は確信を持つ。そして言葉をつづけようとしたところで奥沢さんが俺の言葉を上書きした。

 

 

「やっと思い出したんだ。久しぶりだね、奏也くん」

 

 

そこにいたのはハロー、ハッピーワールド!の奥沢美咲ではなく、俺の昔の記憶が呼び起こした中にいた少女。

幼き頃に出会い、そしてともに鍛錬したことがある少女だったのだ。

 




★元ネタ解説★

●青いつなぎの男

ご存知くそみそテクニックに登場する阿部さん。
「やらないか」という名台詞で表したほうが分かりやすいかもしれない。
元ネタも知らないのに使う奴は†悔い改めて†

●キヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアシャベッタアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!

一時期マクドナルドのハッピーセットではスポンジボブが喋るストローだのコップだのおもちゃだのが配布されていた。
それを聞いて喜ぶ子供の画を取りたかったのだろうが、実際CMで放映されたのは、おもちゃが喋るのをみて大騒ぎしている・・・どころか発狂しているという言葉がふさわしい子供たちの姿であった。
『キヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアシャベッタアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』と叫びながら目ん玉をひん剥いて暴れ、アヘ顔で顔をブンブン振るうのを全国のお茶の間に晒した子供たちはこれを自身の黒歴史にしているに違いない(確信)
まさにハッピーセットではなくハッキョーセットといえるだろう。


ハロハピ編のヒロインは美咲に決まりました!
しかもこの美咲さん、今までとはちょっと違いますね。
引き続きよろしくお願いいたします。


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第2話 たこ焼き職人


過去のことは流し見で結構でございますよ


俺がオッサンのところで稽古を受け始めたのは小学校4年生からだ。

そして俺たちの通ってた小学校は4年生になると毎週月曜日と金曜日にクラブ活動があった。

ま、俺はどうにも面白さを見いだせず最終的には所属だけとなったが、俺のように所属だけして参加しないやつは一定数存在する。他の幼馴染は真面目にクラブ活動に参加していたため月、金は幼馴染たちとも完全に別行動になっていた。

そして水曜だけはオッサンが仕事でいなかったため、結果火曜日と木曜日に幼馴染たちとオッサンのところに行き稽古をしていたというわけだ。

ちなみに当時は何の仕事をしているか知らなかったが、どうやらどっかの団体の特別顧問をやっていたようで、その辺はさすが元議員といったところだろう。

さて、こんな感じでクラブ活動に参加するのをやめた俺は、月・金は一人でオッサンのところに行くようになった。俺が他の4人と比べてずば抜けて強いのはそのため。他の奴らの2倍稽古をしていたから当然といえよう。

 

「オッサン、来たよ」

 

「おお奏也か。おめえクラブ活動はどうした?」

 

「つまんないからやめた。オッサンのところで稽古してるほうが有意義だよ」

 

「おー言ってくれるねえ。いいだろう」

 

「おじいちゃん、その人誰?」

 

「あ、美咲すまん。こいつは奏也っていうんだ。お前の弟弟子ってとこだな」

 

「どうも」

 

「どうも」

 

そこにいたのがオッサンの孫らしいミサキという少女だった。

無気力な女の子だったが顔は整っている。

 

「・・・そうだな長らく俺だけが稽古相手だったし奏也、美咲、今日からお前ら二人で稽古してみるか?」

 

 

ミサキは俺たちと小学校は異なるが、俺たちとは逆に月・金とオッサンのところに通って鍛錬をしていたらしい。長らく稽古相手がオッサンしかいなかったため月・金通いがデフォになった俺を稽古相手に抜擢したと。

ちなみにミサキの存在は幼馴染たちには言わなかった。理由は単純、なんとなくこっ恥ずかしかったからっていうガキらしい理由だ。

そんな調子で稽古を月・金はミサキと火・木は幼馴染たちとおっさんのところで稽古していた。

つまりミサキは俺にとっては同門で姉弟子、他の幼馴染にとっては同門姉弟子なのに存在を知らなかったということになる。

まあ正式に道場みたいな形で開いていたわけでもないしな。

 

 

 

「以上が回想である。みんな分かったかな?」

 

「奏也くん、誰に向けて言ってんの?」

 

「ま、多少はね?」

 

「会話になってない・・・ならなくない?」

 

「そういや美咲、中学に上がると同時にこの町から出て行ったんじゃなかったっけ?」

 

「まあね。でも自分なりに稽古は続けてたよー。部活が終わったあとの夜とか走ってこっちの町まで着たりとかも実はしてた」

 

あれ、聞いた引っ越し先、電車で1時間くらいかかるんじゃなかったっけ?

部活終わりに走るとか軽く補導時間圏内なんですが大丈夫なんですかね・・・?

なんかこう、俺に知り合いって色々おかしい(確信)

 

 

「それでまた高校がこっちにしたから戻ってきただけだよ。そのうち会うかなーと思ってたけどまさかこんなところで再会するとはね」

 

「せっかく帰ってきのにそのうち会えればいいやでよかったのか・・・悲しいなあ」

 

「別に感動的な別れをしたわけでもないしそんなものでしょ」

 

「お、そうだな(適当)」

 

「んーそんなチャラチャラしてたっけ奏也くん」

 

「人ってのは時代の流れで変わるんだよ」

 

「そう・・・(無関心)」

 

 

自分から聞いておいてなんて奴だ・・・

 

 

「あのー・・・そろそろ喋ってもいいですか?」

 

「あ、花音さんごめんなさい!おいてけぼりにしちゃって・・・」

 

 

そこで声を出したのは松原さん。完全に美咲と二人で話してた。すまんな。

 

 

「大丈夫だよ。えっと・・・美咲ちゃんと神剣さんはお知り合いなんですか?」

 

「こいつのじいちゃんに小さいころ遊んでもらっててな。一応幼馴染になるのか?俺たち?」

 

「そだねー。奏也くんは完ッッッ全に私のこと忘れてたけど」

 

「ね、根に持つんじゃありませんわよみさきち・・・・」

 

「そのあだ名やめんか・・・まあ私も結構雰囲気変わったらしいし、私も最初は奏也くんわかんなかったからおあいこってことで」

 

「ふふっ、美咲ちゃん楽しそう!仲、よかったんだね!」

 

 

松原さんは嬉しそうにそんなことをいう。

んー確かに思い返してみても美咲って変態幼馴染軍団と違って常識人だし気が合ったのも覚えてる。

え?紗夜は常識人じゃないかって?カタブツの皮を被った変態は常識人とはいいません。当たり前だよなあ?

 

 

「美咲、さっき見てたけどめっちゃ強いよな・・・やっぱあのオッサンって実はかなりすごい人なんじゃないか?教えを受けた俺たち全員メチャクチャ強いし」

 

「んーどうだろね。・・・ていうか全員って?・・・あ、奏也くんうしろ」

 

 

そういう美咲。とりあえず俺は後ろからかすかに殺気が漂ってくるを感知した。

とりあえず適当にパンチを放つと慣れた感触があった。

 

 

「ぎゃああああああああごあああああああああ!!!」ジタバタ

 

「あ、すまん。みてなかったから手加減できんかった・・・・」

 

 

その拳は意識を取り戻した男のうちの一人の顔面に炸裂し、鼻が折れたのか鼻血をスープカレーのごとく流しながらのたうち回る男がいた。

そんな光景をみて松原さんはうわっ・・・この人ヤバい人だ・・・みたいな顔をする。まあ広義の意味ではヤバい人かもしれないが・・・

 

 

「ってこれは・・・」

 

 

吹き飛んだ男の懐から何かが出てきた。

 

 

「おいおいマジかよ・・・メリケン粉ならたこ焼きパーティでもやるのかと思うがこいつあ・・・」

 

「うわーやばいもん見つけちゃってんじゃん・・・めんどくさ」

 

「え?え?」

 

 

その懐から飛び出した白い粉の正体を察した俺と美咲。松原さんは何がなんだかわからない状態だ。

 

 

「んー・・・とりあえず見過ごせねえわな。とりあえず俺は警察呼んだり色々するから、松原さんと美咲はもう帰れ。変な噂たったらめんどくさいだろ?」

 

「んー・・・それもそうだね。花音さん帰りましょうか。ここで見たことは全部忘れて」

 

「え・・・?うん、そうだよね、足を踏み入れちゃいけない世界ってあるもんね」

 

「理解が早くて助かるよ。まあこの後は警察に任せるつもりだから俺の出番もそうないけどな」

 

「すまん美咲、松原さんをちゃんと送ってくれ」

 

「はいはい。じゃ、またね奏也くん」

 

 

そんなこんなでその場を後にする美咲と松原さん。

さて、俺も【仕事】しますかね。

 

 

「えっと・・・こいつの財布は・・・あった。えっと免許証は・・・」

 

俺はその男の免許を抜き取り住所を記録した。

その過程で懐から結構な量の粉がパケに小分けされて出てきた。

うーん、これは自分で使うだけじゃねえなあ。

とりあえず俺はそしてその場はそれで終わりにした。多分こいつらは運び屋だろう。こいつらを今警察に突き出してもトカゲのしっぽ切りでおしまいだ。

ならばこいつらに制裁を加えて運び先や仕入れ元を吐かせたほうが社会のためになるだろう。

そしてそいつらが目を覚ますのを見届け、アパートの一室に入っていくのを見た俺は馬のマスクを被った。よくドン●で売ってるやたらリアルな奴だ。

ミッシェルのお面は流通していたとはいえこの商店街周辺だけだったし、今度は流通品。このマスクのせいで足が付くことはないだろう。

ちなみに結構な遅い時間になったし、今から他の幼馴染を呼ぶのも骨が折れるし今夜は俺だけだ。そして部屋の前。うん、これはモニターホンではないな。

 

 

ピンポーン

 

 

「はーい」

 

「あーすみません宅配便ですー!」

 

 

ガチャッ

 

 

「お届けに上がったのは地獄への片道切符だけどな」

 

「なんだこのウマ!?ぎゃあ!」

 

「どうした!?」

 

「うわ!馬!?」

 

 

手始めに出てきた奴をぶん殴ると残りの二人も奥から出てきた。

 

 

「おいおい騒ぐんじゃねえよ。おめえらだってヤバーイ粉持ってんだろ?」

 

「なんでそれを!?」

 

「まま、そう焦んないで」

 

 

某神のような口調でいさめる俺。大声出されたら困るのは間違いなくこいつらのほうだし、案の定「確かに今はやべえ・・・」って声が聞こえる。

 

 

「とりあえずヨ、選択肢やるよ。俺の質問に余すことなく全部答えるか、切符を切って地獄へ行くか」

 

「てんめー・・・だまってりゃ調子に乗りやがって」

 

「やっちゃうよ・・・?やっちゃうよ・・・?」

 

「やっぱそうなっちゃうのね・・・」

 

「てめえをぶっ殺せば全部終わりなんだよ!オラァ」

 

 

 

 

チリチリ・・・

 

「ぎゃあああ熱い熱い!」

 

「うーん、なるほど。髪の毛ってこんな風に燃えるんだあ。すっごーい!」

 

「やめろ!俺の!俺の髪が!」

 

「髪なんて必要ねんだよ!」

 

 

俺は雑魚二人は即座に眠らせてリーダーと思われる男から優しく(意味深)話を聞いていた。まったくガスコンロで髪の毛を燃やしてるだけなのに大げさだぜ。

 

 

「もう、ヤメテクレ・・・」

 

「んじゃ俺の言うこと聞くか?質問に答えるか?」

 

「いうこと・・・いうこと聞くから・・・!」

 

「しゃあねえな」

 

 

そう言って力を緩め、ガスコンロから頭を離してやる。

しかし奴がとった行動はとんでもないものであった。

 

 

「誰か助けて!」

 

「あ゛ーあ゛ー!?ざけんじゃねえぞオオイ!誰が大声出していいって言った!?」

 

 

なんとそいつはすぐさま身を翻し逃げようとした。

俺はすぐさま首根っこを掴み引き寄せる。

 

 

「ウソツキの小学生みたいなマネしやがって・・・怒らせちゃったねー俺のこと・・・お馬さんのこと本気で怒らせちゃったねー・・・・」

 

「ひ、ひいいいいい」

 

 

その後、どうなったかは想像にお任せしよう。

紆余曲折あり、俺は粉の受け渡しリストを入手した。

ちなみに粉は全部トイレに流しておいた。救急車と警察呼んでやったしまあなんとかなるでしょ。

そこには見慣れた文字・・・羽丘女子学園のある生徒の名前が書かれていた。

 

 

「うーん、女子高生にシャブ売りつけるとは世の中腐ってやがるなあ。さあて明日になったら幼馴染たちに召集かけなきゃなー」

 

そんなことを考えながら俺は帰宅したのだ。

 

 

「しかしこのマスクメチャクチャゴムくせえな・・・」

 

 

 

 

翌日、瀬田薫はいつも通り女子生徒から黄色い声援をかけられていた。

 

 

「きゃー!薫さまー!」

 

「はっはっは!子猫ちゃんたち。そんなに名前を連呼されると照れるよ」

 

「あのっ!薫様!」

 

「おや?どうしたんだい?」

 

 

ある程度の人が掃けたあと一人の女子生徒が薫に向かって声をかけてたのだ。

 

 

「突然すみません、実は薫様に個人的に相談したいことがあって・・・お時間はありますか?」

 

「ああ、今日は大丈夫だよ。それで、どこで話そうかな?」

 

「あ、ありがとうございます・・・こちらです」

 

 

 

あれ?あれは薫さんと同じ学校に人かな?

私は歩いていると薫さんを見つけた。真面目そうな人と一緒に歩いている。

しかしその向かう方向、明らかに人通りの少ない方向だ。私は気づかれないように後をつけるが薫さんもなにか不穏な空気を感じているようだ。

 

 

「なあ子猫ちゃん、その喫茶店というのは本当にこっちなのかい?こっちのほうはあまり・・・」

 

「ごめんなさい・・・ごめんなさい薫様・・・!」

 

「え?いったい何を言っているんだい?」

 

「よしよし、よく連れてきたな!これは約束のもんだ」

 

「あ、ありがとう・・・ございます」

 

突然男が4人現れた。風貌はホームレスのようだが私にはわかる。雰囲気が違う、明らかにカタギの人じゃない。そしてそのうちの一人がその真面目そうな子に白い粉の入ったパケを渡したのが見えた。

 

「き、キミ!どういうことなんだい・・・!それにそれは・・・!そんなものに手を出しちゃいけない!」

 

「私にはこれしかないんです!これがないと生きていけないんです・・・!何でも持ってる薫様にはわからないでしょうね・・・」

 

「はいはい、お話はそこまでだぜ。お前にゃ恨みはないけどよ。俺たちも仕事だからさ、おとなしく捕まってくれや」

 

「私をどうするつもりだ・・・!?」

 

「シャブ打ってちょーっと閉じ込めるだけだ。おい連れてけ」

 

「くっ・・・!やめてくれええええ!」

 

 

いけないなこれは。んーでもあの人たちヤバい筋の人だろうし・・・

4人くらいなら勝てそうだけど素顔をさらしていくわけには・・・・

 

 

「お困りかな?」

 

「あれ?奥沢さんだ」

 

「はっ・・・!?えっ・・・!?・・・・変態だ・・・!」

 

 

「誰が変態だ!」

 

「そうだよ、変態なのはこっちの人だけ。私は普通」

 

「お前が普通とか冗談はよしてくれ」

 

 

現れたのは馬のマスクを被った二人の男女だ。

変態。いやこれ変態でしょ・・・・

でもその声の主は奏也くんと花園さんだった。

 

「そんなもん被って何してるの奏也くん、花園さん・・・」

 

「しらんなあ・・・俺たちは通りすがりの悪党狩りだ。義によって助太刀致す!」

 

「そんな大好き侍みたいにいわれても奏也くんにしか聞こえない・・・」

 

「奥沢さん、これ」

 

 

花園さん(?)から渡されたのはなんと二人とは色違いの馬マスク。

 

 

「いやー本当はもう一人呼んでたんだが急用でな。マスク余ったし混ざってくか?美咲」

 

「・・・・そうだね」

 

 

私は薫さんにあんなことをするのが許せなかった。

そのせいかな。似合いもしない怒りを抱き拳に力が入り、気が付いたらマスクを受け取って、それを被っていた。

 

 

「ゴムくっさ!!!!!!!」

 

「いいツッコミだね」

 

「ああ、幸先がいい。じゃあ、いこうか!」

 

 

そして私たち3人は薫さんを助けるべく突入したのであった。

 




★元ネタ解説★


●お、そうだな(適当)
迫真空手部MUR大先輩が野獣先輩に放った一言。
KMRに因縁をつけたくて仕方なかったのか「夜ラーメン食べに行きましょう」という野獣先輩の提案に適当に返答している。

●髪なんて必要ねえんだよ!
KBTIT先生が不良の髪をバリカンで刈っているときの一言。
場合によっては「神なんて必要ねんだよ!(無神論者)」という誤字があてられる。

●いうこときくから→誰か助けて→ざけんじゃねえぞ
かわいい小学生(大嘘)の「ひで」と優しいおじさんのほのぼのとした1コマ(大嘘)


というわけで薫君も巻き込まれちゃってます。

引き続きよろしくお願いいたします!


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第3話 なかよしこよしのアニマル3人組

「待ちな」

 

俺たち3人はクソ共4人の前に立つ。そして無理やり瀬田さんを引き寄せ、奴らから避難させる。

 

「俺たちは君の味方だ。安心してくれ。とりあえず逃げるんだ」

 

「恩に着るよ、すまない・・・」

 

 

そのまま瀬田さんは走って逃走をした。ちなみに薫をハメた女子生徒のうまく逃げおおせたようだ。あいつのことはあとで調べるとしてとりあえず一安心。

さて・・・

 

 

「なんだお前らふざけたカッコしやがって・・・」

 

 

するとずいぶんなご挨拶・・・ってわけでもないか。突然クッソリアルな馬のマスクを被ったなかよしこよしのアニマル三人組(大嘘)が現れたら誰だって動揺するだろう。

 

 

「通りすがりの悪党狩りって言ったところだよ」

 

「あ、おい待てい。それ俺のセリフだゾ」

 

「細かいことはいいんじゃないかな?」

 

「それもそうか」

 

 

まあたまにはおたえにセリフ譲るくらいいいか。

 

 

「おい!!お前から割り込んできて無視して話進めてるんじゃねえ!!」

 

 

はっ、いかんいかん。おたえのペースに巻き込まれていた。って今回は俺も乗っかってたか。

 

 

「ああ、すまんすまん、いくらお前らが存在価値のない生ゴミだとしても失礼だったかな」

 

「ええ・・・結構ひどいこと言うんだね」

 

「うん、スイッチはいるといっつもこんな感じだよ」

 

「昔はこんなに口悪くなかったような・・・・」

 

 

初めて俺たちに同行する美咲に対しておたえはそう返す。

俺ってそんなに口悪いかなあ?(無自覚)

 

 

「ま、今は今だ。そんなことよりゴミ掃除せにゃいかんでしょ。ってんー???お前・・・とお前。どっかで見たような・・・・」

 

 

そう、そのうちの二人はどっかで見たことある。

んー・・・どごだったか。・・・ってあ!そうだ!

 

 

「お前ら五味葛の手下じゃねえか!俺らがカチコミする前に逃がした奴ら!」

 

 

そう、1章のラスボス、五味葛のアジトに突入する寸前。奴のバーから2人逃げるのを見たのだ。

暗かったけど街灯で顔はくっきり見えたので覚えている。

あの時は追いかけてる時間も惜しかったから捨て置いたけどまさかこんなところで再会するとは。

 

 

「たまげたなあ」

 

「なんだと・・・?ってことは五味葛さんが潰されたのはまさか」

 

「お前らが・・・?」

 

「あ、私は新入りなんで知らないですはい」

 

 

とっさに美咲がそんなこというが敵は聞いていないようだ。

 

 

「どっちにせよ俺たちのことを知ってて顔を見られちまっなら生かしちゃいられねえな」スッ

 

 

そして懐から出したのはドス。キラリと刃が光り、切れ味のよさを物語っている。

 

 

「おードスだドスだ」

 

「リーチなら私が勝ってる。今日も銀河を砕く旋律を奏でようかな」

 

「っていうか二人ほんと動じないんだね。私、地味に緊張してるんだけど・・・」

 

ギターの形をした何かを携え、おたえはやる気十分のようだ。

それに対し美咲はこういった相手での実戦は初めてなんだろう。

緊張した面持ちだ(見えないけど)

 

 

「お前なら大丈夫だ。よし、行くぞ。と、その前に。おいそこのお前。今生かしちゃ置けないって言ったよな?」

 

「それが何だってんだ?」

 

「つまり俺を殺す気でいると。そういうことだな。なら、覚悟は決まっているんだろうな?」

 

「あ?なーにが?」

 

 

青筋を立てながらドスを構えに睨みつけてくる男はイライラしながら言う。

 

 

「殺すってこたあ殺されるかもしれないって覚悟をだよ」

 

「んなもんしるか!死ね!」

 

「おっと・・・うお!?」

 

 

回避したが服の袖が少しかすってしまった。

しかしそのかすった袖はスパッと切れてしまったのである。

 

「おお・・・・すげえ切れ味。やりますねえ!」

 

「次はてめえの肉を切ってやるよ。オラア!」

 

「サービスは1回だけだ。2度目はない」ガシッ

 

「なっ!?離せ!」

 

「やだよ。そーい!」

 

 

やつの腕をドスごと掴み、そしてそのまま放り投げた。

勢いよく空中を舞った結果コンクリート製の壁におもいっきりぶつかり、そのまま落下してさらに地面で全身を強打したようだ。

 

「あ・・・っ・・・ガハッ・・・!」

 

そしてそのまま動かなくなる。

一丁上がりだ。

 

「ア、アニキ!てめえ、よくもアニキを!」

 

 

「ふぅん。お前、こいつの舎弟だったのか。しかしお前ら、あの日逃げたということは組を抜けたということだろう?なぜこの町にいる?」

 

「この町は結構好き放題やってもばれにくいからな。そんなこたあどうでもいい。アニキの仇、取らせてもらう!」

 

「仇っておまえ死んでないやんけ」

 

 

 

「これはギターの形をしたなにか。演奏はできないけどすべての部位が鋼でできているの」

 

「何が言いてえ?」

 

「んー・・・どれだけ叩いても壊れないってことかな。叩いた対象以外は」

 

「女に何ができるってんだ?オラ、これドスだ!なんで動じねえ!」

 

「・・・・?なんで動じる必要があるの?」

 

「声はボケっとしてるのに気配が・・・」

 

「さて、と」

 

 

 

「あなたはハナゾノランドの住人にふさわしくないかな」

 

 

 

ドガッ!バキッ!ゴンッ!

 

 

 

 

「うっわー・・・二人とも派手にやってるなあ。まあでも私も聞きたいことあるからいいか・・・ねえ、聞いてもいいですか?」

 

「あ?」

 

「なんでさっきの人狙ったんですか?」

 

「なんでそんなことお前にしゃべる必要があるんだよ」

 

「ま、そーですよね・・・んじゃ、聞き出し方を変えなきゃ」

 

「なんだと・・・?えっ!?ぎゃああああああああああああああああ」

 

「あーうん、痛いですよね、腕が変な方向に曲がってますし」

 

「お前なんなんだ・・・俺たちのことも怖がらねえ、容赦がねえ・・・小柄だしガキなのもわかる・・・なのに何なんだあああ!」

 

「うーん、通りすがりの悪党狩り・・・だっけ?でも私にはそんなの関係ないや」

 

 

 

 

「片付いたか?」

 

「うん」

 

「まあね」

 

 

ひとまず終わらせる。こちらは全員無傷(俺の袖以外)

そして敵は全員ノビている。

 

「うーん・・・奥沢さん、すごいね。強い。こういうこと慣れてるの?」

 

「あー・・・いやそういうわけじゃないんだけど」

 

「おたえ、その辺のことは後で説明する。美咲もそれでいいか?」

 

「奏也がそういうなら」

 

「やっぱそうなるよねー・・・まあ仕方ないか」

 

 

よし、ひとまず幼馴染たちはこれでいい。

おっと、奴らにも話を聞かなきゃな。

 

 

「起きろオイコラ。おい!」バシャッ

 

 

往復ビンタを連続でお見舞いし、顔に水をぶっかける。

するとリーダー格が目を覚ます。

 

 

「・・・あ?おめえらこんなことしてタダですむと・・・・」

 

「タダですまねえのはおめえらのほうじゃねえの?ヤクザ崩れだろうに組のシマで女子高生にシャブ売るなんてよ。お前の元親玉がやったことを忘れたのか?」

 

 

「ま、まさかお前組の制裁・・・・!?」

 

「さあ、それはどうだろうなあ」

 

 

お、勘違いしてくれてるっぽい。これはいいかもしれない。

 

 

「ちょっと聞きたいんだけどいいかな?」

 

 

すると急に美咲が口を開く。

 

 

「あなたたちって誰かに頼まれてやったんですか?別にクスリ売るだけなら欲しい人に売ればいいだけなのに、わざわざ他の女子高生使ってまで薫さ・・・あの女子高生を狙うなんて。それに仕事って言ってましたよね?その辺はどうなんです?」

 

 

確かにそうだ。わざわざあんな回りくどい方法を使って、しかも全く買う気のない瀬田さんを狙った理由。それが不明すぎる。

誰かに頼まれて、何かの思惑があって瀬田さんを狙ったのだとしたら合点がいくし、そうなるとこの件には黒幕がいるはずだ。

 

 

ドゴッ!!!

 

 

「なんというか・・・いったほうが身のためだと思いますけど・・・・」

 

 

口調は無気力だがその表情は違う。そして放たれた拳はコンクリートの壁を砕いた。

 

 

「か、勘弁してくれ・・・!確かにシャブは売ったが組のシマは荒らしてない・・・・!頼まれただけだ!」

 

 

お、これは無駄な力を使わず話は聞けそうだ。ナイスアシストだぜ、美咲。

 

 

「ほう、では誰に頼まれてなんでこんなことをやってるか聞こうか」

 

「依頼人の指示でよ、指定された奴を拉致ってシャブを打つ。そんで依存症にさせて、買わなきゃいけない体にしちまって継続的に売る。それが俺たちの仕事だ」

 

「羽丘女子の生徒ばかりなのはその依頼人の指定ってことだな?」

 

「そうだよ!俺らはただシャブを仕入れてあとは依頼通りこなしただけだ!」

 

「さて・・・じゃあその依頼人の名前を聞かせてもらおうか」

 

「顔や名前は知らねえ・・・」

 

「・・・隠すとお前らのためにならんぞ?」

 

「本当だ!やり取りはいつもメール、報酬も振込だから顔を合わせたことがないんだ!」

 

「なるほどだ・・・ではそれに関する情報一切をこちらに寄越せ」

 

「くっ・・・それは・・・」

 

「どうなっても知らんぞ・・・?」

 

「わかったわかったわかったよもう!渡すから命だけは・・・命だけは!」

 

 

とりあえず奴からやり取りに使ったという携帯をぶんとり、中を確認する。確かに依頼内容が記載されたものが出てきた。

被害者は思いのほか多くない。まだ数人ってところだ。

 

 

「なるほどな、これは有力な情報だな」

 

「それじゃあ!」

 

「ああ、俺たちはお前らを悪いようにしない」

 

「本当か!?」

 

「ああ。その代わり、俺たちが現れたことやかかわったことは他言無用だ。いいな?」

 

「わかったから!」

 

「じゃあそこで伸びている奴を連れてさっさと消えろ」

 

「ひ、ひいいいいいいいいいいい」

 

 

 

 

「・・・よかったの?逃して?」

 

「うん。奏也の判断だから間違いないとは思うけど、結局実行犯だしあの人たち」

 

「うーん、ソウダナー・・・・」

 

 

そこで俺は電話をかける。電話先は蘭だ。

 

 

「もしもし蘭か?支給調べてほしいものがある。ああ、携帯とネットバンキングの口座と・・・あとあヤクザにチクってほしい情報が・・・」

 

 

蘭に依頼を果たした後電話を切ると美咲がこっちを驚いた顔をしていた。

 

 

「ん?どしたの美咲?」

 

「えっ・・・いやーあの悪いようにはしないって言ってたけどさっきの明らかにあいつらをチクるって言ってたよね?」

 

「うん、私もそう聞こえた」

 

 

おたえも同調する。ああ、なんだそんなことか。

 

 

「俺は”俺たちは悪いようにしない”って言っただけだぞ?俺たちが情報を与えたヤクザがどう動くかなんて、俺の知ったこっちゃねーよ。人の人生をダメにした報いは受けてもらわないとな」

 

「・・・・・!」

 

「おいみさきち、そのこいつ・・・屁理屈言ってやがる・・・!みたいな顔やめロッテ」

 

「ソッチこそみさきちはやめんか・・・ああ、でもうん、そうだね。なんというか奏也くんがどんな人なのかがだんだんわかってきたよ」

 

「さすがは奏也」

 

「ま、いいじゃん。後のことはプロの方にお任せしましょう。さて、美咲。今から俺たちのアジトに行く。そこでみんなを紹介して俺たちがやっていることを説明するぞ」

 

「あ、私も奥沢さんのこと気になってた」

 

「まあ私も気になってはいたけどさ・・・

 

 

そして俺は他の幼馴染に集合の連絡をして、そのままアジト・・・まあ俺の家だが。そこへ向かい、美咲に対し、そして幼馴染たちに対して色々説明をするのであった。

 

 




3話に収めたいのについ多くなってしまう・・・

もう1回続きます。

引き続きよろしくお願いいたします!


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第4話 迫真の断熱ドア

「えっ、奏也くん一人暮らしなの?」

 

「ああ、大したところじゃないけど入って、どうぞ」

 

 

ガチャッ!コン!(迫真)

 

 

「あ、お邪魔しまーす」

 

やたら丈夫な防火仕様ドアくんの迫真の開閉音を聞き、美咲を玄関に招き入れる。

 

「悔い改めて」

 

「・・・は?(威圧)」

 

「・・・いいよ上がって!」

 

 

聡明な諸君なら114514回くらい見たであろうやり取りをしたのち、美咲を家の中に招き入れるが、少し落ち着かない様子のようだ。

おたえはちょっと家に戻らなければならないといってすぐまた合流するようだ。

他の皆ももう間もなく来るだろう。

 

 

「まー聞きたいこといっぱいあるけど結構ああいうことやってたりするの?」

 

「まあな。相変わらずこの町は治安がワリィからよ」

 

「まあ、確かに戻ってきて1年目でこんなことに巻き込まれるなんて思ってなかったけどね」

 

「それにあのミッシェルな」

 

「あー・・・うん。なりゆきで」

 

「難儀だねえ。それにあのメンツ、変態が二人に中間が一人、まともが2人ってとこか?頭痛くなりそうだが楽しそうだな」

 

「まあ・・・楽しくないといえば嘘になるかな。なんだかんだ言って私の居場所だし」

 

「ほう・・・こころたちが聞いたら喜びそうだな」

 

「・・・絶対に言わないでよ?絶対調子乗るし」

 

「ああ」

 

 

ガチャッ!コン!(迫真)

 

 

「奏也ー!来たわよ!話したいところって何かしら?って美咲じゃない!」

 

「奥沢さん?なぜここに?」

 

「やっほー!あれ!美咲ちゃんだ!」

 

「や、さっきぶり」

 

 

するとタイミングよく勢ぞろいだ。

知っているおたえ以外は美咲がいることに驚きを隠せていない。

 

「え!?こころ!?なんでここにいるの!?」

 

「美咲こそ!みんなに紹介したい人がいるって奏也から連絡があったから飛んできたのよ!まさか美咲とは思わなかったわ!」

 

 

この野郎・・・面倒持ち込みやがって・・・って顔で美咲が俺を睨む。

まま、そう焦んないで。

 

 

「さてと。皆美咲のことは知っているようだが改めて紹介しよう。奥沢美咲。俺たちの姉弟子にしてオッサンの孫にあたる」

 

 

「「「「えーっ!?」」」」

 

 

 

その後、俺たちが幼少期に一緒に稽古をしたことを話した。

皆当然知らなかったようで、さらに驚きを隠せないでいる様子だ。

こころ以外は・・・・

 

 

「すごいわ美咲!まさか先生のお孫さんが美咲だったなんて!そしてその美咲が全く関係のないところでハロー、ハッピーワールド!のメンバーとして活動しているなんて・・・運命だわ!」

 

「あーはいはい、薫さんみたいなこと言ってないで・・・私もまさかこころ達がおじいちゃんの弟子だったなんて驚きだよ。それに氷川さんたちまで・・・」

 

「確かに驚きですね。しかし・・・先生のお名前は奥沢ではなかった気がしますが・・・」

 

「あ、それお父さんの姓です」

 

「なるほど、そういうことでしたか」

 

納得した、といった感じで紗夜がうなずく。

最初は驚いていたが今は紗夜が一番冷静だ。ちなみにこころはすでに順応しておりまるで昔からの仲間かのように美咲を扱っているあたりすごい奴だと思う。

おたえはマイペースに話を聞いている感じだ。

日菜は新しい発見に目をキラキラ輝かせている。

 

「さて、紹介はこれくらいにしておいて皆を集めたもう一つの理由を話すぞ」

 

ここで俺は先ほどまでかかわっていた事態を話した。

瀬田さんが狙われたこと。そして羽丘女子にはクズ共の手によって薬物依存にさせられた被害者が存在すること。そして裏で手を引いている黒幕がいること。

 

「・・・とまあ、こんな感じだ。とりあえず売人やってたゴミは廃棄場に連絡しておいたから大丈夫だと思う。問題はその黒幕のほうだな。今蘭に洗ってもらっている」

 

 

「えー・・・うちの学校でそんなこと起こってるのかー・・・それは全然るんっ♪てこないなあ・・・」

 

 

日菜は口ではだるそうに言いつつもその雰囲気から強い怒りを感じる。

そりゃ自分たちのテリトリーでそんなことが起こっていたとなればそうかもしれない。

 

「・・・・」

 

 

そして俺はさっきから違和感を感じていた。

それはなにか?そう、先ほどから沈黙してるこころだ。こころは作戦会議中だろうが何だろうが好き放題やって引っ掻き回す。しかし今回は珍しく黙っているのだ。

顔はいつも通りニコニコしており、話は聞いているようであるが・・・

 

 

「なあ、こころ。今日はやたらおとなしいじゃねえか」

 

「・・・・」ニコニコ

 

「こころー?どうしたのー?」

 

 

美咲も明らかにいつもと違うこころの様子をみて顔を覗き込む。

 

 

「ってうわ!?」

 

「えっどうした美咲?ってうお!?」

 

 

そしてこころは目を開く。

しかしその目は瞳孔が開いており、光は失われていた。顔は笑っているが体中からドス黒いオーラが漂ってきている。

 

 

「ねえ、奏也」

 

「は、はい!なんでありましょうか!?」

 

「薫はなにか悪いことをしたのかしら?」

 

「いえ!何もしておりません!理不尽で、勝手極まりない黒幕のせいであります!」

 

 

軍隊の上官に対するような口ぶりになってしまった。

これは間違いない。俺もこいつと10年付き合ってきて1回しかみたことのない、怒りが頂点に達したこころ・・・俺は”シャドウこころ”というクッソダサいあだ名で呼んでいる。

 

実はこころは小学生のころ、あの性格と金持ちということが災いしていじめにあっていたことがある。俺たち全員クラスが違ったためこれは間接的に聞いた話ではあるが。しかし当の本人はあの性格でいじめを全くいじめだと気づかず、むしろ遊んでくれているとまで思っていて全く気にしていなかったとか。

 

ちょうどそのころ、学校の取り組みの一つとして一人一つ、鉢をもらって花を育てるということをやっていた。モノを作る、育てるという経験がゼロだったこころはそれが大層楽しかったらしく、さらにああ見えて天才肌であるため花もきれいに咲いたのだ。

しかしそれに対しいじめ側は、いじめが全く通用しないうえにこんな時まで自分たちの上をいくこころを見て面白くないと感じたようで、なんとこころが育てた花を踏みにじり、こころを罵倒し、大笑いした。

 

 

「きゃああああああああああああああああ」

「つ、弦巻さん落ち着いて!」

「ごめんなさい!ごめんなさい!!」

「やめてええええええええ!!!」

 

 

ある日、突然悲鳴が上がった。そこに弦巻という声を聞いた俺はすぐに現場にいくと、こころがいじめっ子たちを地面に侍らせ、頭を踏み、瞳孔の開いたニコニコした顔で立たずんでいたのだ。

 

 

「あなたちは私の大事なものを奪ったわよね?だったら私も奪う権利があると思わない?」

 

「ごめ゛ん゛な゛ざい゛・・・・ゆるじでええええ・・・」

 

「あら?私はやめてって言ったわよ?やめてって言ったのにやめなかったのに自分たちだけやめてもらえるなんて都合がよくないかしら?」

 

「こころ!落ち着け!」

 

「あら奏也?今ね、私のお花にひどいことをした人たちに話を聞いてるところなの。もし奏也も邪魔するっていうなら・・・・奏也からもお話し聞かなきゃいけないわよ?」ギロッ

 

「・・・!」ゾクッ

 

 

結局あの後、俺たち幼馴染と一緒にもう一回花を育てるということで落ち着かせ何とかなった。ちなみにその時育てた花は繁殖に成功し弦巻家の庭の一角でプチ花畑みたいにまでなっている。

しかし、あの時みたこころの冷たい目はいまでも忘れられない。

 

 

「え?こころ?どうしちゃったのこれ・・・」

 

「こころがガチギレしてるんだよ・・・こいつは大事なものを壊されることをトリガーに怒りが頂点に達するとこうなるらしいんだ。いつものこころから笑顔をなくして凶暴性を加えた感じになる」

 

「うっそ・・・あのこころが信じられない・・・」

 

 

10年以上の付き合いになる俺たちですら見ることがほぼないからな。

美咲が知らないのはある意味当然だ。

 

 

「奏也?それでいつ黒幕と遊ぶのかしら?」

 

「・・・まだ蘭が調べている。それとな、こころ。お前は今回の作戦から除外する」

 

「・・・!?奏也の言っている意味がわからないわ。なんで?私の大事なものを壊そうとした・・・薫を、ハロハピを壊そうとした。ってことは自分が壊される覚悟もあるってことよね?なんでダメなの?ねえ?ねえ?ねえ?なんで?なんで?なんで?」

 

「お前がその状態だからだよ。そんな状態じゃおめえ、怒りに支配されてどんなヘマやるかわからねえし、加減ができずに下手したら殺しちまうかもしれない。俺たちの力は悪を断つための力だが・・・俺たちの手で、命を直接奪ってはならない。今のお前にはそれを約束できるように見えないんだよ」

 

「わからない・・・わからないわ!じゃあ下手をうたなきゃいんでしょ?殺さなきゃいいんでしょ?そんなの簡単よ。奏也がダメっていうなら奏也を倒してでもいくわ!蘭から返事を待つ時間も惜しいし私が独自で調べるわ!」

 

 

そんなことをおっしゃりやがる。目は相変わらず光が失われたままだ。

 

 

「ちょっと!こころん!奏也!ケンカはダメだよ!!」

 

「日菜に同意ね。敵がいるのに仲間同士争っている時間はないわ」

 

「日菜も紗夜も邪魔をするのね?なら・・・」

 

やばいな。こころは今怒りで目が曇っている。

このままだとマジで単独行動するような状況になりかねん。

仕方ない、ここは俺が・・・

 

 

「・・・・こころ、そこまでだよ」

 

「え?美咲・・・?」

 

 

と、思っていたら美咲が声を上げる。

これには全員驚きの色を隠せない。

 

 

「こころ。今回のこと、こころの気持ちよくわかるよ。理不尽な理由で薫さんが狙われて、こころ・・・ううん、私たちのハロハピが壊されそうになった。それに対して怒っているのは・・・こころだけだと思う?」

 

「じゃあ美咲、あなたも一緒に行くのよ。それならいいでしょ?」

 

「いや、ダメだよこころ。こころとの付き合いは奏也くんほど長くないけどね、ハロハピの一員としてこころのことは精いっぱい理解しようとしたつもり。その目から見ても今のこころはダメだと思う」

 

「そう・・・美咲も私の邪魔をするのね。じゃあ、力づくでいってもいいかしら?」

 

「・・・いいよ」

 

「・・・え?」

 

「いいよ、こころ。おいで?」

 

「み、美咲ちゃん!?」

 

「日菜さん、大丈夫です。奏也くんも、花園さんも、紗夜さんも。ては出さないでください」

 

 

美咲には何か考えがあるようだ。飛び出そうとした俺は踏みとどまり、そのさまを見守る。他の3人もそんな感じだ。

 

 

「そう・・・じゃあ行かせてもらうわね」シュッ

 

 

こころが歩みを進める。そしていつもの戦闘時の雰囲気を身にまとい、出口へかけようとする。

・・・・あれここって室内だぞ?20帖のLDKとはいえ。

 

 

「こころ・・・」ドゴッ!

 

「・・・・ぐっ!美咲・・・」

 

 

しかしとんでもないものを見た。美咲はこころを視界から外さず適切に捕捉した。そしてそのまま、目にも止まらぬ速さでこころに一撃、無力化するためのパンチを放ったのだ。

 

 

「ねえ、こころ。あとは私がやっておくから。今はゆっくり休んで?きっとなんとかするからさ」

 

「・・・みさき・・・・ごめんね・・・・わたし・・・」ガクッ

 

 

こころは最後に冷静さを取り戻したように見え、そのまま眠りについた。

この様子なら目を覚ましても大丈夫だろう。

 

 

「ふう・・・あれ?みんなどうしたの・・・?」

 

 

纏っていたオーラを解除し、美咲が素に戻る。

いやあどうしたもこうしたもないぞこれ。あのこころを一撃で無力化するとは想像以上だ。

 

 

「いやあ・・・・これは・・・」

 

「ええ、驚いたわ・・・」

 

「こころが手も足も出ないなんて・・・」

 

「さすがは俺たちの姉弟子といったところか」

 

「えっ・・・急に褒められると困惑するんですけど」

 

「よし、じゃあ作戦を立てるぞ!今回はメイン行動は羽丘生である日菜に任せる」

 

「はーい!まかされたよ!」

 

「そして戦闘になった場合は美咲と俺だ」

 

「うん、了解」

 

「それと紗夜とおたえ。お前たちはこころについていてくれ。もう大丈夫だと思うが万一の時は頼む」

 

「わかった」

「了解です」

 

 

作戦はこんなもんか。

 

 

「さあ、ミッションスタートだ!」

 

 

ガチャッ!コン!(迫真)

 

 

「奏也・・・ってあれ、みんな揃ってる」

 

「お、蘭か」

 

「頼まれてたものの結果出たよ」

 

「早すぎやしませんかね・・・?」

 

「ま、案外隠ぺいがザルだったから。それで、多分黒幕はこいつで間違いないと思う」

 

「ほう・・・っておいおい、これマジ?」

 

「多分ね。まさかこの人とは・・・・」

 

「よし、さっそく明日行動に移そう。そうだな・・・じゃあ日菜・・・」

 

 

こうして最後のすり合わせが始まった。

これで終わらせる。ここにいる皆はその気持ちを表情に出し、翌朝を迎えるのであった。

 




こころにすげー違和感を持った方。多分間違っていません。
ま、設定からしてキャラ崩壊してるし多少はね?
あと最近紗夜さんが空気になっているのでそろそろ・・・

あとスミマセン・・・
想像以上に長くなりました。次こそがハロハピ編ラストです!
引き続きよろしくお願いいたします!


★元ネタ解説★

●美咲が神剣家に入るときのやり取り
人によっては親の顔より見たかもしれないご存知真夏の夜の淫夢第4章「野獣と化した先輩」の冒頭部分。
独自のイントネーションや「悔い改めて」に聞こえる「いいよ上がって」や「入って、どうぞ」など野獣先輩の華々しいデビュー作となった。
でもクッソ汚いから元ネタを見る際は自己責任で、どうぞ。

●114514
いいよ!こいよ!→114!514!


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第5話 やっぱ自分は王道を往く・・・ですかね

第4部ハロハピの章、これにて完結です!


「副会長さーん!」

 

「・・・えっと確か氷川さん」

 

 

私が声をかけたのは羽丘女子学園2年生、生徒副会長の斎宮いつきさんだ。

そう・・・蘭ちゃんが正しければこの人が・・・多分黒幕ってやつらしい。

 

 

「これ、よくわからないけど副会長さんに渡してって言われて持ってきたんだけど」

 

「・・・手紙?いったい誰が」

 

「うーん、あたしもよくわかんないんだよねーさっき校門でいきなり渡されてさ。なんか普通っぽい男の人だったよ。ラブレターじゃないのー?」

 

「・・・よくわかりませんがありがとうございます」

 

「確かに渡したからねー!」

 

 

奏也の作戦はシンプル。それっぽいことを書いた手紙を副会長さんに渡して動向を見る、以上!

これって作戦っていえるのかなあ・・・・

ま、奏也が間違えることなんてないから多分大丈夫かな!

内容は運び屋は潰したこと、裏で副会長さんが手を引いているとわかっていること。バラされたくなかったら指定する場所にくること。

そこからは奏也と美咲ちゃんがやるって感じ。

さて、残念だけど私はこれから急に仕事が入ってしまった。日常も守れ。奏也にそう言われたから私はこれで退場。

 

 

「奏也・・・頼んだよ」

 

 

 

 

とある廃工場の広場。俺たちはそこに斎宮を呼び出していた。

 

 

「・・・くるかなあ」

 

「きっと来るさ。蘭が挙げてくれた証拠もご丁寧に手紙につけてやったんだ」

 

「ていうか美竹さんまで何者なの・・・?」

 

「さあ・・・俺もアイツの情報網がなんなのかイマイチわかってないんだよな。以前調べようとしたら謎の力が働いてまったくわからなかった」

 

「謎の力」

 

「つまりそういうことさ」

 

「・・・どっかで聞いたようなくだりだよそれ」

 

「コレがまた結構汎用性高くてな」

 

「薫さんが二人いるみたいだ・・・」

 

「っとおでましだぜ?」

 

 

そして人影が近づいてくる。

羽丘女子の制服を着た女性とが一人近づいてきた。

 

 

「馬・・・あなた達ですか?あんなものを私に寄越したのは」

 

「その通りだ。斎宮いつきさんよ、お前がやったことはまるっとすべてお見通しってやつだ」

 

 

昔の推理ドラマの仲間由●恵のような口調で告げる。

 

 

「まったく心当たりがないのですが・・・・」

 

「あーとぼけても無駄だと思います?こんな物騒なところにまでわざわざ来るって自白みたいなものですし・・・」

 

「その通りだな。ここにお前が来た。それがなによりの証拠だ」

 

 

「・・・・・ふう。ま、もらったお手紙をみた時点で言い逃れはできないかと思いましたけど。一応言ってみただけです」

 

 

雰囲気が変わる。それは生徒会副会長:斎宮いつきではなく、物騒な何かだ。

やはりただ者ではないのであろう。

 

 

「それで?なにが聞きたいワケ?忙しいから手短に頼むわ」

 

「潔いじゃないか。まず、なぜこんなことをした。何の罪もない女子高生を薬漬けにして人生を破滅させて・・・そんなことをしても大したカネにならないし、むしろチンピラ二人に金を払っていたんだから赤字だろ?」

 

「私ってさ、常に上に立つ人間である必要があるの。羽丘女子学園はいわば私の築く王国。思い通りに作って、支配して・・・私のこれから始まる飛躍の第一歩なの。生徒会をやっているのも学園の内部事情を知るためだし、今回のことだってそう。ターゲットにしたやつらは私にとって目障りだった、それだけの理由よ。私の描くシナリオに必要のない奴を間引きしてるだけ。私より優秀と褒められる人、私にたてつく人、そして私より目立つ人」

 

「たったそれだけのために人の人生をめちゃくちゃにしたの・・・・・?薫さんや、他の人も・・・・!」

 

「ああ、あなた瀬田さんのお知り合い?人生?そんなこと私の知ったことではないわ。あなたは道を歩いているとき、踏みつけた雑草や目に見えない小さな虫に対して罪悪感を感じるかしら?」

 

「いままで食ったパンの枚数を覚えているか?みたいに聞かれてもな。うーむ、控えめに言ってド外道だなあ」

 

「なんとでもいいなさい。ひとまず・・・あなた達も私の王道には邪魔ね」

 

 

ブオンブオン!

 

 

「なんだぁ?うるせえな」

 

「・・・!奏也くん!あれ!」

 

 

美咲に言われ音のするほうを向くと、数十台のバイクとともに大量の男たちが割り込んできた。

おいおい、こんなこと聞いてないぜ。

 

 

「アネさん!すみません、おまたせしやした!」

 

「いや、ちょうどよい時間だったぞ。今日はアイツらよ」

 

「馬・・・?ふざけたカッコしやがって、てめえらか!アネさんを困らせやがったのは!」

 

そのうちのリーダー各と思われるところが激昂しながら俺たちに言葉をぶつける。

見るからにガラがわりぃ、こりゃあ暴走族かあ?

 

 

「自己紹介させてもらうわ。斎宮いつき。”神滅栄鬼(クラッシュ・ゴッド・オーガ)”のリーダーをやっているわ」

 

 

”神滅栄鬼”といえばこのあたりでヤバイといわれている暴走族じゃねえか。

こんな姉ちゃんがリーダーってことは・・・こいつ、多分この中で一番つええってことか。

しかしなんで暴走族だのヤンキー集団だのはクッソ中二臭い名前つけたがるかねえ・・・・

 

 

「よく恥ずかしくねえな、こんな名前つけて」

 

「私が付けたんじゃないわ!・・・コホン。今日は急な召集で悪かったわね。何人?」

 

「42人っす!アネさんが緊急で呼ぶくれえだからどんなヤバい奴らとの戦争かと思ったら変なウマ2匹じゃねえっすか!楽勝だよ」

 

「そうね。そいつらにしゃべられたら困るから喋れないようにしてあげて。家に帰さなくてもいい」

 

「了解っす!オラァ!行くぞてめえら!」

 

 

鉄パイプ、角材・・・いろんなエモノを持って男たちが突撃してくる。

 

 

「美咲、使うか?」

 

 

俺は近くに落ちていた廃材を広い、美咲に使うかどうか訊ねた。

 

 

「んー・・・人数多いし、ないほうが動きやすいかな」

 

「了解。確かに人数が多い。消耗を最低限にせねばならんから一人1撃、多くても2撃で仕留める、いいな」

 

「うーん、やってみる・・・」

 

 

無気力な声で美咲は返答をするがにじみ出るオーラは闘志そのもの。

怒り、闘志・・・いろんなものが入り乱れてものすごく好戦的になっているのがわかる。

 

 

「一斉に来るぞ・・・美咲!やられんなよ!」

 

「奏也くんこそね・・・!」

 

 

そこからは乱戦。

全神経を張り巡らせ、360度から襲い来る気配・殺意を察知し的確に攻撃を繰り出す。基本は一撃で急所を突き意識を刈り取るのが基本だ。

・・・しかし、いかんせん人数が多い。倒して回避、倒して回避。基本はその繰り返し。しかし動きは完全にケンカ。力任せに何も考えずに突っ込んでくるからシンプルで読みやすいのが救いか。

 

「美咲!今何人だ!」

 

「こっちは4人!そっちは!?」

 

「こっちは7だ!畜生、まだ半分も行ってないのかよ!」

 

物量攻めは戦った経験がないがここまでとは・・・

2人で42人、一人頭21人倒す計算だ。これは思いのほかキツイぞ・・・

以前錯乱墓を潰したこころ、おたえ、紗夜、日菜で4人だったうえに、主力クラスを叩きのめした段階で相手が投降したと聞く。あいつらがあっけからんとしてたので、暴走族共が集まったところで大丈夫だろうと俺自身乱戦を舐めていた。まあなんとかなるだろうと。

しかし実際はどうだ、今回はヤンチャ盛りの暴走族。素人高校生とは一味も二味も違う。今のところ一撃では仕留めているが動きが早くパワーも違うし回避にも体力を使う。美咲のほうをチラッとみると、むこうもなかなか辛そうだ。

 

 

「よそ見してんじゃねえぞオラ!」ドガッ

 

「ぐっ…!いてえなこの野郎!!!!」バキッ

 

「うぐぉおお!」

 

 

油断した。これは完全に油断だ。不覚にも角材での一撃を頭に受けてしまった。

一瞬視界が揺れ、脳が震えた。

すぐさま反撃し、静めるがダメージは残っている。

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・オラァ!」

 

 

美咲はなんとか攻撃を受けずに済んでいるようだ。

しかし俺は最初に受けた一撃が尾を引き、明らかに動きが鈍くなっている。

その後も何回か攻撃を受けてしまい、ダメージはしっかり蓄積されていったのだ。

そしてやがて42人全員を静める。

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・・おわった・・・?」

 

「その、ようだな・・・・畜生、頭いてえ」

 

「これは驚いた。まさか二人で倒しちゃうなんて。でもねえ・・・残念だけどこれで終わりじゃないんだよ」

 

ブオン!

 

 

「アネさん!うお!?なんだこいつら全員やられたのか!?」

 

「遅い!遅刻!」

 

 

その後、もうひと塊きやがった。

今度は17人ほどらしい。さっきの42人を加えて69、リーダーの斎宮で70人。結構な大所帯じゃねえか。

倒せねえことはないと思うが骨が折れるぞこれは・・・・

 

 

「あいつらだいぶ疲弊してるからサクッとやっちゃってよ」

 

「わかった。おら!おめえら行くぞ!」

 

あーもうわかったわかったわかったよもう!

やりゃーいいんだろやりゃあ!

早いとここいつらぶちのめして家に帰って風呂に入って板チョコでも齧りながらゆっくりてえわ・・・

 

 

「ぐあああああ」

 

「なんだてめ・・・ぎゃあああああ」

 

「なんだ!?お前らどうした!?」

 

しかし攻撃は始まらなかった。

後ろのほうにいた奴らが悲鳴を上げたのだ。

 

 

「助けに来たわよ!」

 

「こころ・・・?」

 

「ごめん、奏也。こころがいくって聞かなくて」

 

「ま、私たちから見てももう大丈夫だと判断したので連れてきたわけですが」

 

「おたえ・・・紗夜・・・」

 

そこにいたのはなんとこころ、おたえ、紗夜だった。

待機命令だしてたのに助けられちまったな。俺の見立てもまだまだだ。

今回のことは今後の反省材料だな。

 

 

「奏也にしてはだいぶ苦戦しているようね。そんなにボロボロになって、なかなか見られない姿じゃないかしら?」

 

「ちょっと油断しただけだ。まあ俺が悪いな」

 

「・・・奏也が素直すぎて気持ち悪い・・・・」

 

「気持ち悪いとはなんだ!」

 

こんな状況なのに紗夜もおたえもひでえいいようだが、こいつらと話していると不思議と落ち着く。

頭がグラグラしてたのも徐々に収まってきたし、もういっちょやるか。

 

 

「奏也・・・昨日は迷惑かけたわね」

 

「んだよ、しおらしくしやがって・・・お前にそんなの似合わねえ。いつもみたいにムチャやって俺を笑顔にしてくれ。お前が守るものには俺の笑顔も含まれてんだ」

 

「奏也・・・!わかったわ!よーし、いくわよ!」

 

 

そこからは勝負が早い。増援できた17人は一瞬で蹴散らされた。

途中、疲弊からかとどめを刺しきれなかった最初の42人のうち何人かも起き上がってきたが一瞬だ。

 

 

「さてと」

 

「残りは斎宮さんだけだね・・・・」

 

「あんたたち・・・いったいなんなの!?」

 

「とおりす・・・」

 

「通りすがりの悪党狩りよ!」

 

 

こころにセリフを取られてしまった。ま、今回は譲るか。

 

 

「まって・・・まさか錯乱墓高校がやられたのって・・・!」

 

「んなことはどうでもいい。さて斎宮さんよ。これであんた一人だ。おとなしく降参しな。ボコられてからバラまかれるのと痛い目に遭わずバラまかれるのどっちがいい?」

 

「・・・ひとつ勘違いをしている。私がやられること前提で話をしているが、そもそもそれが違う。私は”神滅栄鬼”を束ねるリーダー!こんなことで私の王道を阻ませない!」

 

 

斎宮は戦闘態勢に移る。かなり自信があるようだ。

 

 

「・・・・なにが王道なのかな。あなたがやってること・・・邪道どころじゃない外道だよ。今回のことでそれだけの人が傷ついたのかな?」

 

 

「・・・美咲?」

 

「奏也くん。私がやる。こころ、いいよね?」

 

「ええ、あなたに任せるわ。いっちょやっちゃいないさい美咲!」

 

 

 

 

体は疲れている。でも不思議と心は軽い。

元気になったこころをみたからかもしれないし、奏也くんの激励があったからかもしれない。

うーん、私ってやっぱこころやハロハピのこと自分が思っている以上に大事みたい。

だからこそそれを脅かす要素は消さなきゃ。

 

 

「じゃあ、斎宮さん。いくよ」

 

「あんたが相手ってわけ?あんだけ動いた後に大丈夫?」

 

「あーうん。多分。っていうかおしゃべりが過ぎない?」スッ

 

「え?・・・・ふぐぅ!バカな・・・・こんな・・・わたしが・・・どこからこんなちからが・・・・!」ドサッ

 

 

あの時こころを止めたのと同じ。目にもとまらぬスピードで距離を詰め、一撃で仕留める。おそらく美咲の集中力が極限まで高まった結果出せる技なだろう。

 

 

「‥‥終わったよ」

 

「美咲―!!!!!!」

 

「うわっ!こころ急に抱き着かないで」

 

「美咲!すごいわ!すごいわ!美咲ー!」

 

「あーもう暑苦しいからあ」

 

 

こうして騒動は幕を閉じた。

その後どうなったかというと、まず俺はアドレナリンのせいで気づかなかったがマスクを取ると頭から血が結構出てて大騒ぎだった。まあ、実際の傷は大したことなかったわけだが。頭って血が出やすいからね、しょうがないね。

他の4人はめだったケガもなく、美咲が戦闘後にこころの相手をしてさらに疲れたってことくらいか。

 

さて、”神滅栄鬼”の連中だが全員病院送りで事実上の壊滅。

そいつらの口から暴走族を潰した正体不明の5人組の存在が語られ、”unknown”という名前でヤンキー・暴走族界隈で有名になっているらしい。

また恥ずかしい名前つけやがって・・・

 

そして斎宮いつき。実はこいつ、弦巻家に次ぐこの町の金持ちのご令嬢。蘭に頼んでマスコミリークした情報は見事にもみ消された。

まあ本人は海外留学という名目で羽丘を辞め海外に逃がされたし、日本から消えたらしいから良しとするか。

そして無理やりクスリを打たれた子たち。これも斎宮家が相当な慰謝料を払い、さらにしかるべく治療機関の紹介でなんとか話をまとめたとか。

これで依存症を治してくれることを願うばかりである。

 

 

「さあ、今日もみんなを笑顔にするわよ!」

 

 

そしてまた今日もその声が響き渡り、笑顔が広がっていくのだ。

相変わらずこころは騒がしいし、美咲はミッシェルをこなしているし、瀬田さんもバッチリ回復したみたいだ。

 

さて、今回はこれくらいにしておこう。

俺はまた、次の物語を語る準備をしておくことにするか。

 

 

第4章 完

 




★元ネタ解説★

●お前のやったことは~
仲間由紀恵氏と阿部寛氏が主演を務めたミステリードラマ「トリック」にて仲間由紀恵氏が演じる山田奈緒子が犯人を追い詰めるときに放つ言葉の一つ。パターンが多々ある。

●いままで食ったパンの枚数~
ジョジョの奇妙な冒険第1部ファントムブラッドにてジョジョが、吸血鬼と化したディオに、自分のために何人の人間を犠牲にしたのかという質問をしたところ、ディオから帰ってきた答え。


想像以上に筆が乗りまさかの5話まで行ってしまいましたが無事終わりました!
次回はポピパの章、頑張って書きます。

感想・評価は励みになるのでぜひお願いします!
もっと書き方をこうしたほうがいいなどのアドバイスも大歓迎!


引き続きよろしくお願いいたします。



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第5章-闇の中にある闇!闇×闇×闇!-
第1話 こ↑こ↓


「ふう・・・授業終わったなあ。早く香澄たちと合流するか」

 

 

少し早めにすべての授業を終えた市ヶ谷有咲はこのあと控えるPoppin'Partyの練習のため、メンバーと合流する前にお手洗いによっていた。

 

「さぁてと、さっさと済ませていくか―ってん・・・?」

 

 

個室のドアを開け、そこに鎮座する洋式便器に向かう有咲であるがある違和感に気が付いた。

 

 

「今何か光って・・・?」

 

 

そう、便器の手間。そこに何か光ったような気がしたのだ。

 

 

「うーん、あんま気が進まねえけど・・・あ、そうだ」

 

 

有咲は何かを思いつき、身を翻し掃除用具入れに向かったのだ。

 

 

「えっと・・・お、あったあった」

 

 

取り出したのは便所ブラシ。有咲はそれを携え再び個室へと向かった。

そしてその光った箇所を目がけて便所ブラシを放ったのだ。

 

 

ボチャンッ!

 

 

すると落水音とともに何かが落ちた。

それは・・・小型の盗撮カメラだったのだ。

 

 

「えっ・・・ウソだろ・・・?」

 

 

有咲は戦慄した。自分が通うこの高校にこんなものが仕掛けられているなんて思っていなかったからだ。

 

 

「やだ・・・・!そんな・・・!」

 

「あれ・・・?有咲?」

 

「おたえ・・・!」

 

 

 

授業が終わって放課後。これからポピパの練習だけど、私はちょっとお手洗いに行きたくなっちゃって向かった。

そして扉を開けると個室のドアが半開きになっていって、誰かの体が出ていた。

どうしたのかな?それにこの後ろ姿は・・・

 

 

「あれ・・・?有咲?」

 

「おたえ・・・!」

 

「どうしたの?そんなとこで」

 

「あのな・・・おたえ!実はこれ・・・!」

 

「・・・これは」

 

 

有咲が指さす先、トイレの中に沈むそれは明らかに小型の盗撮カメラだった。

 

「なにか光ったと思ってそれでつついたら落ちてきて!どうしよう、こんな・・・」

 

「有咲、落ち着いて。私たちで判断するのは危ない。とりあえず先生に言いに行こ?私、呼んでくるからちょっと待ってて。あ、騒ぎを大きくするのもあれだし、落ち着いて待っててね」

 

「わ、わかった」

 

 

 

 

私は職員室に向かう。と、その途中、教頭である東さつき先生に出会った。

 

 

「教頭先生」

 

「あら、どうしたのかしら?えっと・・・」

 

「花園です。1-Aの花園たえです」

 

「花園さんね。それでそうしたのかしら?焦っているみたいだけれど」

 

「実は・・・」

 

そして私はさっきトイレで起こった事態を話した。

すると教頭先生は顔色を変えてすぐに向かおう、といった。

 

「有咲、教頭先生連れてきた」

 

「あなたが発見者の市ヶ谷さんね。モノは?」

 

「ここです」

 

 

こうして私たちは教頭先生にカメラを託し、教頭先生は校長先生に話を通してくれると約束してくれた。

しかしその後、警察が来たわけでもなく盗撮の話が告知されたわけでもない。

私はここで直感したんだ。あ、これもみ消されたなと。そういえば今の校長先生は今年定年だし、教頭先生も大事な時期らしい。

定年間際に問題が起これば退職金は減るし教頭先生も校長になるための推薦ももらえなくなる。

仲のいい先生に聞いてもその話はするなって釘を刺されてしまった。有咲も同じみたいだ。

闇が深いなあ教育の世界って。

 

 

 

「ってことが結構前にあったんだけど」

 

「長い回想お疲れさん」

 

 

おたえから話を聞いた内容はまあこんな感じだ。

さすがに他のメンバーや一般人を巻きこむわけにはいかなかったから俺たちだけに話したということだ。

その話を俺のほかに紗夜、日菜、そしてすっかりここの住人になってしまった美咲が聞いていた。

ちなみにこころはしばらく来られないらしい。家の用事らしいが、美咲によるとハロハピの練習にもあまりこられていないらしい。それをみると忙しいのは本当みたいだ。

 

 

「なるほど・・・そんなことが。しかし腐っているわね」

 

「おねーちゃんの気持ちもわかるけどさ。んー・・・その辺は仕方ないんじゃないかなー。立場や権力に固執する人ってやるときはとことんやるからねー。芸能界でもそういう話珍しくないしさ」

 

 

日菜はこう見えてリアリストだ。率直に意見を述べる。

 

 

「まー確かにねー・・・今に始まった話じゃないけど。それにこの町自体闇の塊みたいなものだし」

 

「美咲が言うこともわかるな・・・闇の中にある闇ってこれもうわかんねえな」

 

 

闇×闇×闇!ヤミづくしで嫌になるぜ。

同じ闇でも金髪ツインテールの闇なら大歓迎だけどよ。

 

 

「で、これを見て。あ、奏也はダメ」

 

するとおたえは持参していたノートパソコンを開き、あるページを開いた。

どうやら動画を再生するサイトのようだ。

 

 

「なんでだよ」

 

「女子高生がおしっこするところ見るのが好きな変態ならあれだけど」

 

「ああ、そういうことか」

 

「そ。」

 

「奏也、花園さん、どういうことかしら?」

 

紗夜は今のやり取りをみて疑問を感じたようだ。

ま、俺とおたえの会話ってわりと具体的な言葉がなくても通じるから他の人からみたら違和感があるかもしれない。

 

 

「これは盗撮動画を見られる有料サイト。これみて」

 

 

『ガチ盗撮!花の女子高生、花びらから放たれる美しき聖水!!』

 

 

「ひどくセンスのないタイトルですね・・・ってこれ、この制服は・・・!」

 

「うちのじゃん・・・」

 

 

タイトルにあきれる紗夜とその後に判明した事実に驚きの顔を隠せない美咲。

 

 

「やっぱそういうことか。犯人は盗撮動画をこ↑こ↓に売って金を儲けているわけだ」

 

「そういうことになるね。バックログも全部見放題だったから全部チェックしてカメラが仕掛けられている場所の周期を予測してみたの。そしたら次にカメラが仕掛けられる可能性がある場所の候補は3箇所だね」

 

「3か所・・・ああん、なるほどね。それで私たちに話したんだ」

 

「あ、そっかおねーちゃんとおたえちゃんと美咲ちゃんで3人。つまりそういうことだね?」

 

「なるほど、そういうことですか」

 

「気づいたみたいだね。とりあえず1週間張ってみよう」

 

「それでよおたえ。なんでお前有料の違法サイト見られるんだよ・・・?」

 

「あ、これ蘭ちゃんに頼んで見られるようにしてもらった。IPを完全に隠匿して課金しなくてもアクセスできる特殊仕様。犯罪サイトに払うお金はないよ」

 

「マジかよ・・・蘭すげえな・・・ま、学内の手伝いはできないけどなんかあったら言ってくれよ。力になるぜ」

 

 

 

あれから3日経つがカメラを仕掛ける人はやってきません。

そもそも相手の目星もつかない。男性教師の仕業なのか、生徒がお小遣い稼ぐのにやっているのか、それとも外部からの侵入者がいるのか。

それすらも実際に捕らえてみないとわからないというのがつらいところです。

 

 

「氷川さん、最近見回りが熱心ね」

 

「委員長。ええ、まあ仕事ですから」

 

 

声をかけてきたのは風紀委員長の津藤美沙先輩です。

 

 

「・・・もしかしてあの噂のせい?」

 

「あの噂、とは?」

 

「ほら・・・なんか盗撮があったとか、この学校で」

 

「・・・そんな噂があったのですか?」

 

「あんまり広がってないけどね。なんか学校側が隠してるんじゃないかって噂になってるよ」

 

 

なんと。私たちが知らないだけで結構噂になっていた・・・?

 

 

「そうなのですが。そのことは知らなかったので違いますよ。すみません、この後バンドの練習があるのでこれにて失礼します」

 

当たり障りのない回答をしたところでそろそろ出ないと練習に間に合わなくなることに気が付いた。

 

 

「あ、Roseliaってやつ?あなたみたいな真面目な人がバンドやるなんて意外ね」

 

「バンドがチャラチャラしているっていうのは偏見ですよ。よかったら今度ライブにご招待します」

 

「そうね、機会があれば」

 

「では、失礼します」

 

 

 

一向に敵は現れない。ま、焦っても仕方ないしそれ以外は日常を謳歌しようかな。奏也も常々それを言ってるしね。

そんなこんなでポピパのスタジオでの練習を終えた私たち。

CiRCLEから出るとタイミングよくRoseliaの面々と出会った。

どうやら白金先輩とあこちゃんはちょうど帰ったみたいでリサ先輩、湊先輩、紗夜さんがいる。

 

「あれー?ポピパのみんなじゃん!」

 

「あ、リサ先輩!Roseliaの皆さんも練習終わりですか?」

 

「香澄は今日も元気だねー!そだよー!」

 

「なんだ、お前たちもいたのか」

 

「え・・・?そ、そそ奏也!?」

 

「なんだよリサ、そんなに大声出して驚いちまうじゃねえか。ま、確かに俺がいるほうが珍しいか・・・」

 

 

奏也はスタジオに向かう途中で偶然捕まえた。

ま、捕まえたのは香澄だけどね。

 

 

「だってその、心の準備が・・・」

 

「・・・?何の準備だよ?」

 

「な、なんでもない!」

 

 

んー・・・これってもしかしてリサ先輩は奏也のこと好きなのかな?

だとしたらリサ先輩可哀そうだなー・・・奏也すごく鈍感だし。ほら、今もわかってない。

 

 

「・・・・」

 

 

と、そんなことを考えていると湊先輩が後ろでニコニコしながらリサ先輩と奏也のやりとりを見ていた。

あ、湊先輩も知ってるんだね。

 

 

「痴話喧嘩は程々に、時間も時間ですしそろそろ帰りましょう」

 

「紗夜!ち、痴話喧嘩だなんて!」

 

「それはさておきそろそろいい時間なのは間違いないな」

 

 

奏也はあっけからんという。ここまで鈍感だと逆に面白いなあ。リサ先輩には悪いけどね。紗夜さんもこの挙動をみて私と同じことを考えているみたいだ。なんだか不思議な表情を浮かべている。

そしてなにも気が付いていない奏也、紗夜さん、リサさん、湊先輩とポピパで別れ、帰ることになった。

 

 

 

 

「リサもっと奏也くんにくっつきなさい」ボソッ

「そ、そんなんムリ!」

「あ、今井さん。やはりそういうことなんですか?」

「さ、紗夜までえ・・・」

 

なにやら後ろで3人が内緒話をしており俺が置いてけぼりになっている。

何を話しているのか気になるところであるがリサは赤面している。ああ見えてリサはぴゅあっぴゅあなので、あの反応を見るに何か卑猥な話でもしているのだろうか?

女性同士だったらそういう話も普通ってよく聞くからね(偏見)

 

prrrrr

 

 

なんてしょーもないことを考えていたら電話が鳴り響いた。発信元は・・・美咲?

 

 

「もしもし?」

 

「奏也くん!無事!?」

 

 

美咲には珍しい慌てた感じの声だ。

 

「どうした美咲?そんなに慌てて」

 

「紗代さんに電話しても出なくて・・・さっき白金さんから紗夜さんは奏也くんと一緒にいるって聞かされたから!」

 

「なるほどな。んで?紗夜に伝言でもすればいいのか?」

 

「違う、もし今紗夜のほかに誰かいるなら逃げて、人の多いところに」

 

「なんでまた」

 

「さっき、襲われたんだよ私。それで襲ったやつ言ってた。最近コソコソ嗅ぎまわってるらしいな、始末させてもらうって」

 

「なんだと・・・?」

 

「戦うのもあれだから私はうまいこと逃げたけど、そっちにもいくかもしれない。もし他に人がいたら―」

 

「・・・・あー美咲。忠告は感謝するのだがもう遅いみたいだ」

 

「え?」

 

 

ここは1本道。その1本道を両サイドから4人ずつくらいに囲まれてしまっていた。

 

 

「また後でかけなおす」ピッ

 

 

「え・・・?なに!?なんなの?」

 

「あまりいい雰囲気ではなさそうね・・・」

 

「奏也、これは一体」

 

「ああ、こいつらは・・・」

 

 

するとそのうちの一人がしゃべりだした。

 

 

「氷川紗夜。お前、最近色々と嗅ぎまわっているらしいな。個人的な恨みはないが始末させてもらう」

 

 

この声・・・女?一人だけ覆面を被っており、こいつがリーダー格っぽい。

しかしその声は女であった。

 

 

「狙いは私ということですか・・・しかしなぜ?・・・まさか」

 

「なぜかは想像に任せる。あと他の奴らも当分喋れないようにしないとねえ。やれ!」

 

「オウ!オラアアア!」

 

 

さて、やるか。少なくとも俺はリサと友希那さんに戦うところを見せてしまっているので心置きなくいけそうだ。

 

 

「紗夜、俺が。リサと友希那さんを頼む」

 

「ええ、わかったわ」

 

「奏也!8人だよ!無理だよ!逃げよう!」

 

「こう退路塞がれちゃそうもいかねえさ。俺がスキを作るから。その間にお前らは逃げな」

 

 

さあ、バトル開始だ。

 

 

 

 

一方その頃。ポピパで帰宅中、知らない間に5人くらいの男の人に囲まれてしまった。

 

 

「花園たえだな。お前、最近余計なことで嗅ぎまわってるみたいだな」

 

「・・・・?なんのこと?」

 

「とぼけても無駄だ。それにそこにいるのは情報に遭った通り市ヶ谷有咲か」

 

「えっ!?私!?」

 

 

有咲を知っている・・・・

それに嗅ぎまわってるって。合点がいった。あれのことかあ。

 

 

「えっ・・・この人たちなんなの・・・?こわいよ香澄ちゃん・・・・」

 

「りみりん、大丈夫だから・・・!あの!おたえが何かしたんですか!?」

 

「何かした、というより何かしようとしているといったほうが正しいか。この件から手を引け。そうすれば勘弁してやる」

 

「んーいやだっていったら?」

 

「お前ら全員裏AV出演コースだ」

 

「えーえぶい・・?AVってあれだよね・・・えっちなやつ・・・」

 

「いやだよぉ!」

 

「おたえ、よくわかんないけど分が悪いよ。手を引いて許してくれるなら・・・・」

 

 

沙綾はそういう、うん、そうだね。普通ならそれが正しい。

でもこれは普通じゃないんだ。こんなことをする奴らが約束を守るなんて思えない。

そしてまさかポピパのみんなを巻き込むことになっちゃうなんてこれは私のミス。奏也なら絶対やらないよね。

 

 

「おたえ!まさかあのこと、あれから一人で・・・?」

 

「うん、ごめん有咲。みんなに相談しておけばよかったよね・・・」

 

「・・・んで?どうすんだ?」

 

 

男の人は継続して私に質問をする。

そんなの決まってるよね。こうなっては仕方ない。

 

「ねえ、みんな。今から見ることは忘れてほしいの」

 

「え・・・?おたえ、それってどういう」

 

「ごめんね。後で説明するよ、香澄」

 

 

今日はギターの形をした何かはないけど大丈夫。

さっさと済ませて奏也に相談に行こう。うん、そうしよう。




ポピパ編をやるといったな、すまん、ありゃ嘘だ。
っていうのはさておき、ポピパ編より前に違う話を思いついたのでこっちを先にやります。
ちょっと趣向を凝らして話の主体を奏也ではなく幼馴染に向けてみました。
今回はおたえが担当です。

引き続きよろしくお願いいたします。


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第2話 なかまとともだち

「オラア!」

 

「うぉ!はええなおい!」

 

 

こいつは驚いた。これは素人の動きじゃねえぞ。ケンカじゃなくてこれはなにやかってるな・・・

動きを見るに売れないボクサーやレスラーといったところか。動きに正当性がある。売れなくて、志を捨ててこんな雇われをしなきゃならねえってのは悲しいなあ。勝てないほどではないが結構タフだぞこいつ。一撃では沈まない。

リーダー格の女は傍観しており、実質1 VS 7。倒したのは2人だが状況は乱戦。他の3人に危害が及ばないように動く必要があるのでなかなかどうして、好きに戦えない。

 

「ちょこまかと・・・こざかしい真似をせずさっさと死ね!」

 

「7VS1はこざかしくないのかよ・・・・」ドゴッ

 

「うごっ!」ドサッ

 

3人。あと半分かあ・・・

 

「おら、まとめてかかってきやがれよ」

 

 

 

 

「奏也すごい・・・・!」

 

 

恐怖の最中にあるはずの今井さんですが、奏也が戦う姿をみて目を輝かせています。やはりそういうことなんですね、今井さん。奏也は今まで浮いた話が全くなかったので、そう思ってくれる女性が現れたのは素直に喜ぶべきでしょう。・・・当の本人は全く気が付いてないですが。

 

 

「んなしゃらくせえマネしねえでも女とっ捕まえちまえば終わりだろぉ!!」

 

「畜生、待ちやがれ!その子たちに手を出すな!」

 

しかし戦闘中のうちの一人がこちらに視線を向けてそう言い放ちました。

そしてそのまま湊さんのほうへ迫っていったのです。

 

 

「きゃあ!離して!」

 

「友希那!」

 

「湊さん!」

 

 

そしてその男に湊さんは腕を捕まれてしまった。

抵抗するが力が強いようで微動たにしない。

 

 

「い、痛いわ!離して!」

 

「へっへっへ・・・うるせえよ・・・お前はターゲットじゃねえが予想外の収穫だぜ。おいお前らもそこの女捕まえろ!」

 

 

奏也に倒されたのが2人、交戦中が2人。そして残りの三人がターゲットを奏也から私たちに向けてた。

 

 

「おらあ!おとなしくしろ!」

 

「いや!」

 

「今井さん!」

 

 

今井さんまで捕まってしまった・・・・

私のせい・・・?もっと警戒して、もっとちゃんと調査して入れば二人は・・・

いや、今は悔いている場合ではないですね。今この状況をどうするべきか、です。

 

 

「お前は俺だ!おとなしくしろ」グイッ

 

「・・・・・」

 

 

無言の私は腕を掴まれる。その体は脱力している・・・ように相手には見えているでしょう。

 

「ほう、もう諦めてるか。いいねえ」

 

「・・・・らないで」

 

「あ?なんだって?」

 

「汚い手で・・・触らないで!」ドゴッ

 

「ぐおおおお!このガキィ・・・!え・・?ぐあああああ」ドゴドゴ!

 

 

掴む手を翻し、不意打ちの一撃を奴に腹に、そして継続して連続攻撃を繰り出し、黙らせます。

 

 

「え!?おい何やってんだよ!?」

 

「今井さんと湊さんを離しなさい・・・・」

 

「てめえ、このクソガキ・・・!」

 

今井さんを掴む男は私に怒りの表情を向け叫ぶ。

でもそんなものは関係ありません。

 

 

「離せと言っているのが・・・わからないのですかあ!」シュッ

 

「なんだと・・・?ぐおおおおお!」ゴスッ!

 

「えっ・・・?紗夜・・・?」

 

 

驚きの表情を見せる今井さんですが今は湊さんを助けるのが先です。

 

 

「あなたも・・・離しなさい。私の・・・私の”仲間”からその汚い手を…!離せと言っているのが分からないのですかあああああああああああ!」

 

「ふざけんな・・・!なんだこのメチャクチャな・・・・聞いてねえぞ・・・女を一人黙らせるだけの簡単な仕事って・・・・!」

 

「聞いてねえのはその意味不明な言い訳ですよ。さっさと・・・眠りなさい!」

 

「ぎゃああああああああああ」ドゴ!ドゴ!

 

沈む男、そして徐々に冷静さを取り戻る私。いけませんね、思わず本気を・・・

っとそんな場合ではないですね。

 

 

「今井さん、湊さん。申し訳ありません、私のせいで」ペコッ

 

「大丈夫だけど・・・理解が追い付かないわ・・・」

 

「アタシも・・・」

 

「詳しいことはまた後程。それより今は奏也のほうを・・・」

 

「あーそっちはやってくれたみたいだな。こっちも終わったぜ」

 

 

私がやっている間に奏也のほうも終わったみたいですね。

リーダーっぽい女性が立ちすくんでいます。

しかしあの声どこかで聞いたことがあるんですよね・・・

 

 

「さあて、頼みの綱はみんな寝ちゃったぜ?それともほかに秘策でもあんのか?」

 

「くっ・・・!」

 

「何もないみたいですね」

 

「くそっ・・・・聞いてない。こんな知り合いが一緒なのも・・・氷川紗夜がこんなに強いのも・・・聞いてない・・・・くそおおおお」ボフン!

 

 

次の瞬間、白い煙があたりに立ち込める。

 

 

「うお!?煙幕だあ!?時代錯誤も大概にしろ!」

 

「これは…!催涙効果があります!みなさん、目をつむって、衣服で口と鼻を覆ってください!そしてできるだけ地面に近い姿勢を!」

 

「う、うん・・・!」

 

「強烈ね」ケホッケホッ

 

「畜生!逃げんなオラア!」

 

 

しかし煙が明けることには倒した男たちが横たわっているだけで女性の姿はいなくなっていました。

 

 

 

「ぐあああああああああああ」

 

「3人」

 

 

襲い来る敵のうち3人を沈めた私は4人目へと取り掛かろうとしていた。

 

 

「おたえすごい・・・!強い・・・!」

 

「こんなおたえちゃん初めて見た・・・!」

 

「天然で何考えてるかわかんねってときあるけどこれは・・・」

 

「あんな大きな男の人相手に・・・」

 

 

ポピパのみんなが何かをつぶやいている。

でも今は目の前の敵に集中!

 

 

「はあ!」ゴスッ!

 

「うごおおおおおお」

 

「4人。あと・・・1人!」

 

 

しかしその敵は目の前にいなかった。

一体どこに・・・?

 

 

「おい、これ以上動くなあ!」

 

「えっ!?」

 

「きゃあああああああ香澄ちゃん!」

 

「お、おい香澄!」

 

「香澄!」

 

「散々好き放題やってくれやがって・・・!これ以上動くとこのガキの首へし折るぞ!」

 

 

男は香澄の首に自信の腕を巻き付け。こちらを威嚇してきた。

それをみて私は、そのまま歩みを進める。

 

「お、オイコラァ!これが見えねえのか!」

 

「おたえ・・・!私はいいから・・・!」

 

「香澄を離して・・・」

 

「う、うるせえ!とまれ!」

 

「香澄を・・・私の大事な”友達”に・・・!痛いことをするなあ!」シュッ

 

「何!?うおお!」

 

 

突っ込み相手を翻弄し、うまいこと香澄を助け出す。

 

 

「香澄!」

 

「おたえええ!怖かったよぉ・・・・!」

 

「もう、大丈夫。さて」

 

 

あたらめて敵に向き直る。

 

 

「覚悟はできているかな?」

 

 

「ぎゃああああああああああああああああ」

 

 

 

 

 

 

その後、俺の家を舞台にうちし、説明をした。

俺、紗夜、友希那さん、リサ、ポピパメンバー、美咲の総勢10人。この家にはかつてない大所帯だ。

 

「と、いうわけ。悪いのは私たちだよ」

 

「本当に申し訳ありません。みなさんを巻き込むようなことになってしまい」

 

「面目ない・・・」

 

 

説明を終え、おたえ、紗夜、美咲は皆に頭を下げる。

ちなみに悪党狩りのことは言っていない。

話したのは盗撮事件を調べていたこと。それと実は俺たちは格闘技の同門で強いことだけだ。

 

 

「ううん、気にしないよ!それよりもおたえがあんなに強いなんて驚いちゃった!」

 

「修行の成果」

 

 

そんなこと全く気にしないという様子で会話を続ける面々。

あんなことがあった後なのにすげえな。

 

「紗夜も。すごかったわね」

 

「うんうん!それにあの時の紗夜、私の仲間を離せ!って言って怒ってくれたよね。嬉しかったよ」

 

「あ、あれは言葉のはずみで・・・!・・・まあ、間違いではないですが・・・」

 

「紗夜ー!」

 

「い、今井さん!急に抱き着かないでください!」

 

 

こっちはこっちで華やかだ。うーん、女の子同士って美しい。

 

 

「さて、さっき3人が言った通り。君たちを巻き込んでしまったことは本当に申し訳なく思っている。さっきの奴らはバッチリ懲罰しておいたが結局のところ黒幕がまだつかめない。このままではまた無関係な君たちを危険にさらしてしまうわけだが・・・正直手を引くべきなのかとも考えている」

 

「うん。私の見立てが甘かったんだ。もっとちゃんと考えていれば・・・!」

 

 

おたえも悔しそうだ。今回の主導にしてリーダー的存在なのはおたえだ。

何も関係のない人を巻き込んでしまったのが悔しいのはよくわかる。かくいう俺ももっとたくさん手伝ってやればよかったと思っている。

 

 

「そんなことないよ!!」

 

「え?香澄・・・」

 

 

そこで声を上げたのは香澄ちゃんだ。突然の大声におたえはびっくりしている。

 

 

「おたえたちはみんなのために、花咲川のために頑張ってんでしょ?それの何が悪いことなの?」

 

「・・・そーだな。私も当事者のくせに知らないふりしすぎたし。おたえにばっか負担かけてたんだな」

 

「そうだよ。困ってるときはお互い様だよ。こんなの迷惑だなんて思わないよ?」

 

「うんうん、確かに怖かったけどさ。おたえ、ちゃんと助けてくれたじゃん?それ十分だよ」

 

「みんな・・・」

 

「ここまでやったなら気にしないで最後までやろうよ!もちろん私たちできることは手伝うよ!」

 

「香澄・・・ありがとう、その気持ちだけもうれしい」

 

 

おお、なんという美しき友情。

 

 

 

「紗夜も、いつまでもそんな顔してないでさ。危なかったけど、紗夜がアタシたちのこと仲間って言ってくれてうれしかったのも一緒だよ?」

 

「そうね。仲間ならこういう時でも支えあうものよ」

 

「友希那、ほんと丸くなったね~」

 

「り、リサ!ちゃかさないで・・・」

 

「今井さん、湊さん・・・」

 

 

こっちはこっちでいいなあ。これがアニメなら青いバラが周りに咲いてそうだ。

 

 

「なんかいいねこういうの」

「ああ」

 

 

その光景を見ていた俺と美咲はなんだかいい気分になっていた。

各々、友情を再確認したものだろう。

 

 

「さて、手を引くっていうのはなくなったな。ひとまず今日はみんなお疲れだ。後日作戦を練り直す。とりあえず今日は解散だ。各々、気を付けて、人で外出するのは極力控えるようにしてくれ」

 

 

こうして1日が終わった。

各々帰宅し、次に備えるべく休む。はずだったんだが・・・・

 

 

 

 

「リサの家、友希那さんの家に近いんだっけ?」

 

「そ、そうなんだよ!友希那も一緒にくればよかったのにねー!」

 

 

そこはかとなく様子の変なリサと並んで歩く俺。

突然友希那さんにリサを送ってくれないかと頼まれた。なんでも友希那さんは紗夜と用事があるようで、別口で帰ると急いで行ってしまった。

と、いうわけで今に至るわけだ。

 

 

「リサはベース歴長いのか?」

 

「一応ね。でも高校に入ってしばらくはやってなかった。でも友希那がバンドを結成するって言ってね。友希那を支えたくて、ブランクを乗り越えて、やってるんだ」

 

「その話は少し聞いたことがあるな。友希那さん、孤高の歌姫とか呼ばれてたんだっけか?」

 

「そうそう!でもずっと一人で歌い続けていた友希那がバンドを始めるって聞いて。やっぱり友希那の力になりたいなって思って」

 

「本当に好きなんだな」

 

「え!?す、好き!?」

 

「友希那さんのことだ」

 

「あ、あー!友希那ね!友希那、うん。大好き。大事な大事な友達だよ」

 

「リサたち見てるとな、友達っていいなって気になれるよ。こんな心から信頼しあって、お互いでお互いのこと好きでいられる関係ってさ」

 

 

こんなことペラペラしゃべるなんて俺らしくねえな。

リサの明るさに毒を抜かれているのだろうか。

 

 

「奏也は?その、友達っていうと紗夜でしょ、たえちゃんでしょ、あと美咲ちゃん?」

 

「その辺は友達っていうよりなんというか”幼馴染”なんだよなあ。出会ったばかりの頃は友達だったかもしれないが・・・今となってはそのあたりを超えたなんかよくわからんもんだ。まあ特別っちゃ特別だな」

 

 

そう。あいつらは特別も特別。心から信頼できて振り回されてもまあいっかって思えて、そしてずっとずっとこんな関係が続けばいい。そう思える。

 

 

 

「・・・そういう意味ではリサ。お前が俺にとって初めてに友達らしい友達かもな」

 

「え!?あ、アタシ!?」

 

「ああ。あとそういう意味では友希那さんもかな。なんつーか俺ってさ、アイツら以外の女の子との接点、今まで全くなかったからな。今はあいつら経由でバンドメンバーの子たちとも交流ができたけど、その中でもリサと友希那さんだけは何か”違う”って感じがするよ」

 

 

そうだ。リサは初めて素顔を晒した俺を見せた相手(物理的に。)あれから描写がない(メタ発言)だけでところどころ交流がある。

本当にいい奴なんだ。見た目のせいで色眼鏡で見られるかもしれないが、これほど友達想いでいい奴はなかなかいないと思う。

 

 

「そうなんだ。特別・・・ってやつ?」

 

「特別・・・うん。そうかもな」

 

「ふふっ・・・!そうなんだ!」

 

「なんか嬉しそうだな」

 

「えーそうかなー?」

 

「ま、これからもよろしく頼むぜ」

 

「うん!」

 

 

そしてそろそろリサの家に着くころ。当然リサが振り向き、俺の目をまっすぐ見た。

 

 

「・・・ん?どうしたリサ」

 

「えっと・・・奏也・・・あのね。私ね・・・」

 

 

いやにモジモジしている。なんというかいつものリサらしくないな。

もしかして体調でも悪いんだろうか。

 

 

「あの!アタシ、奏也のこと!」

 

 

と決意したかのように見えたリサはまっすぐこちらをみて言葉を出そうとした。

 

 

ブオオオオオオオオオオオン!!

 

 

「あぶね!」

 

 

と、その刹那。この細い道をそれなりのスピードで走るバイクが横切った。

思わずリサを引き寄せてしまった俺は抱き着くような姿勢になっていることに気が付いた。

 

 

「わ、わりぃ」

 

「う、ううん//大丈夫・・・・」

 

「そっか」

 

うーん、ちょっと気まずい。あれ?ぼくったらいつからこんなに大胆になったのかな?参ったなあ、ちょっと恥ずかしくなってきたよ。

 

「そ、それでリサ!さっきなにを言いかけたんだ?」

 

「え!?あー・・・うん。やっぱなんでもない!また今度!じゃあ送ってくれてありがとうね!またあそぼ!じゃあね!」

 

 

そして矢継ぎ早に言葉を重ねたリサは走って家に中に入って行ってしまった。

 

 

「なんだかなあ」

 

 

それを見届けた俺はなんとなーくモヤっとした、よくわかならい思いを抱き、そのまま帰宅したのであった。

 

 

 

 

「たえ、なんかお手紙来てるよ」

 

「あ、うんありがとう」

 

 

翌朝、お母さんから声をかけられた。

差出人は・・・書いてない。

 

 

そして封筒を開ける。するとそこには・・・・

 

 

「本日18:00 花咲川 屋上 決着を 他言無用 言ったら何が起きても責任は持たない」

 

 

向こうから真っ向勝負を仕掛けてきた瞬間だったんだ。

 




なんでわけのわからないラブコメ要素入ってるんですかねえ・・・
リサ姉可愛いからね、仕方ないね。
ま、これも物語の一つということで・・・

そんなこんなで引き続きよろしくお願いします。
ちなみにワタクシ、GWはすべてお仕事です。助けて!


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第3話 きょうしつおな〇ー

「あら?花園さん?」

 

「あ、先生」

 

放課後、先生にあった。私が仲よくしてて、以前盗撮事件のことを聞いた佐藤睦美先生だ。

あの時はそのことから手を引けといっていたが、まあ教頭先生や校長先生から箝口令を敷かれていただろうから仕方ないよね。 先生にも立場ってものがある。

 

 

「なんでこんな時間に・・・もしかしてまだあのことを?」

 

「・・・あのこと?・・・ああ、違いますよ。安心してください」

 

 

とっさに嘘をつく。私がまだ動いていると知られたら先生も監督不行き届きとかで不利益被るかもしれないからね。

表向きだけでもかかわっていないことを言っておかなきゃ。

 

 

「それならいいけど・・・まだ気にしてるなら少しでも早く忘れるようにね?花園さんがこれ以上危ない目にあったら先生も嫌だし」

 

「うん、わかったよ。ありがとね先生」

 

「気をつけて帰るのよ」

 

そういって先生は立ち去る。

・・・・さて、行こうかな。

 

 

18:00。私は指定された通り、屋上へと向かっていた。正直罠だとわかっている。でも相手の正体がつかめない現状を鑑みると、向こうから接触を図ってくれるのは大きなヒントだ。

本当は奏也と相談したかったんだけどなぜか奏也は今日連絡がつかない。

 

 

「これってあれだよね・・・どう考えても罠だよねえ・・・」

 

「ええ、まず間違いなく。ですが逆にチャンスととらえるべきかもしれません」

 

「あ、紗夜さんも同じこと考えてたんだ。そうだよね、プラスに考えよう」

 

 

連絡が付かないのは仕方がないので同じく呼び出されたという紗夜さんと奥沢さんとともに、今屋上のドアの前にいる。

ちなみに2人も奏也に連絡がつかないらしい。もしかして何かあったのかな・・・?

奏也なら大丈夫だと思うけどさ。

 

 

「さすがくぐってきた修羅場が違うなあ・・・二人は。じゃあ、開けますよ・・・・」

 

 

奥沢さんが屋上のドアを開けるとそこには仮面をした女性が一人たたずんでいました。

 

 

「あなたは・・・・!」

 

「紗夜さん知ってるの?」

 

「ええ、この前私たちを襲ってきたグループのリーダー格ですよ。あの時は逃げられましたが・・・まさかそちらから来ていただけるとは」

 

「ようこそみなさん。色々お世話になったみたいですね」

 

 

あっけからんと仮面の女性は言い放つ。

 

 

「そちらから姿を現してくれるなんて好都合」

 

「そうだね。それにいったい何の目的で呼び出したのか聞きたいね」

 

「まあ十中八九罠でしょうけど・・・まあいいです要件を聞きましょうか」

 

 

私たちは各々、思っていることを口にする。

それを聞いて相手は突然笑い出したのだ。

 

 

「あーっはっはっは・・・あーおかしい。罠ってわかっててきたの?それにずいぶん余裕じゃない。後ろ、見てごらんなさいよ」

 

 

するとどこから現れたのかガラの悪そうな男がぞろぞろ、物陰から現れた。

 

 

「ふいー・・・やっと出番かよ」

 

「狭いところに押し込めやがって・・・お、女子コーセー3人か!」

 

「けっこー可愛いじゃん。ワクワクしてきたぜ」

 

「マジでこいつらをヤレば金までくれるのか?」

 

「ワリがいいぜ」

 

 

好き放題いいながらゾロゾロゾロ現れる。

うーん、格好とか雰囲気に規則性がないし、お金に釣られた寄せ集めって感じかなあ。

 

 

「あーっはっはっは!あんたたちで裏ビデオ撮影会をやるって人を集めたのよ!いつまでもおしっこするだけの動画じゃ顧客も飽きるからね。そろそろホンモノ女子高生の本番ってのもいいと思って」

 

「うーん、いっぱい人がいる」

 

「そうだね。なんていうかよくこんなに集めたなって感じ」

 

「まったく、無許可で男性を校内にいれるのは校則違反なのに・・・風紀委員として見逃せませんね」

 

 

私たち3人は臨戦態勢をとる。相手はガラの悪い男が21人ほど。よく目立たずこんな人数を呼び込めたなあ。

 

 

「なんでそんなに余裕そうなのよ!」

 

「なんだこいつらナマイキ言いやがって・・・」

 

「こちとら女子コーセーとヤレて金まで貰えるって聞いて深夜から待ってたんだ。たっぷり楽しませてもらうぜ」

 

 

そんなことを考えていたらそんなことおっしゃった。うわー・・・深夜から待ってたんだあこの人たち・・・ちょっと引くかも。

 

 

「ねえ、1人で何人倒せるか競わない?」

 

「いいけど・・・花園さん楽しんでる?」

 

「せっかく夜から楽しみに待っててくれたんだし、私たちも楽しまなきゃ損かなって」

 

「まあ、割り切りは大事ですよね。では一番多く倒した人が一番少ない人に飲み物を買ってもらうというのはいかがでしょう?」

 

「シンプルだね。オーケー、わかった」

 

 

こんな感じでルールも決まった。

さ、ジュース目指してがんばろー

 

 

「あんたたち・・・えらく余裕だけど21人のヤンキーよ!?なんでそんなに余裕なの!?」

 

「わっ、急に大きな声出してびっくりした。なんで余裕かって?そうだなー・・・別になんとも思ってないからかな?」

 

「もういい、やっちゃって!」

 

「ヒャッハー!女子コーセーだぜええええ」

 

 

 

 

「そんな・・・・うそでしょ・・・・!?」

 

「紗夜さーん。何人?」

 

「私は7人ですね。奥沢さんは?」

 

「あー・・・私も7人だ。ってことは・・・」

 

「うん、私も7人。引き分けかー。ジュースはまた今度だね」

 

 

屋上に積み重なる死屍累々。それを作り上げた3人はまったく興味を示すことなく、賭けの話をしている。

なんで・・・なんでこいつらはこんなに余裕そうなのよ!それにあの動き、強さ・・・金で集めたとはいえ屈強なヤンキー共21人をたった3人で倒すなんて・・・

私は夢でも見ているの・・・・?

 

 

「さて。その仮面、とってもらおうかな」

 

「ひっ・・・やめて!近寄らないで!」

 

 

そして私はポケットから煙幕を取り出し・・・

 

 

ガシッ!!!!!

 

 

「え!?」

 

「同じ手は効きませんよ。その煙幕、そのせいで前回は逃げられましたね」

 

「離して!」

 

 

氷川さんに腕を掴まれ、煙幕の発動はかなわなかった。

やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい

これを防がれたら私にも手立ては・・・・!

 

 

「んー・・・とりあえずさ、顔を合わせないで話すのは失礼。奥沢さん」

 

「はいはい、じゃ、とりましょうねー」

 

「やめてー!!!!」

 

「・・・・あなたは」

 

 

そして仮面を取られた私は素顔を晒してしまった。

 

 

「委員長・・・・」

 

 

 

 

「委員長・・・・」

 

 

なんとそこにいたのは風紀委員長である津藤美沙さん。

なんてことでしょう・・・信頼していた委員長がまさか盗撮犯だったなんて・・・

 

 

「委員長・・・なぜこんなことを」

 

「・・・・・」

 

「だんまりですか・・・・」

 

「じゃあ、とりあえず。みんなの気持ちを味わってもらおうかな」

 

「え・・・?花園さん?なにするの?」

 

 

奥沢さんが疑問の声を上げる。

私はなんとなく花園さんがやらんとしていることは想像つきますが・・・

女性相手にやるのはあまり気が進みませんね。それは花園さんも同じでしょうけど。

 

「何ってせっかく私たちのために高画質のカメラ持ってきてくれてるんだし、この人の体に聞いてみようと思う」

 

 

そのことをいうと一転、委員長の表情が変わりました。

そして暴れだし、叫んだのです。

 

 

「いやあ!それだけはやめてえ!」

 

「・・・・できれば私もやりたくない。話してくれるなら考えてあげるよ」

 

「ううっ・・・!話すからあ・・・裸にするのだけはやめてえ・・・」

 

 

「はじまりは私に送られてきた1つの動画だった」

 

「動画ですか・・・一体なにが映されていたのでしょう?教えてください、委員長」

 

「えっと・・・その・・・言わなきゃダメかな・・・」

 

 

顔を赤くしてうつむきながらそういう。事件の全貌を明かすにはいってもらうほかないよね。

 

 

「えっと・・・その・・私の・・・・い・・・いよ」

 

「え?聞こえない。もっとはっきり言ってもらわなきゃ」

 

「うううううううう!私の自慰行為よ!!!!!!!!!」

 

 

そう叫ぶ津藤さんは涙目で顔が真っ赤。そしてそれを聞いた紗夜さんと奥沢さんも魂が抜けた表情をしていた。

 

「えっ・・・その・・・委員長・・・自慰行為というのはいわゆる、その・・・」

 

「オナ〇ーのことだね」

 

「花園さん!!なんでそんなアッサリと!?」

 

「うううう・・・・うえええええん!」

 

 

さっきまでの威勢はどこへやら、泣き出してしまった。これでは完全に私たちがいじめているようにしか見えないなあ。

 

 

「・・・でもそれって家に盗撮カメラでも仕掛けられてたのかな?」

 

 

奥沢さんが疑問を口にする。確かに。オ〇ニーを撮られるなんて自室しかないのに。

 

 

「・・・・学校の教室よ」

 

「・・・・は?」

 

「えっと・・・私・・学校の教室でしか興奮しなくて・・・その・・・」

 

「こいつぁたまげた・・・風紀委員の長が・・・学校で・・・自慰行為・・・」

 

「紗夜さん!?」

 

 

紗夜さんが奏也見たいな口調で驚きを口にする。そしてそんな紗夜をみて奥沢さんまで驚く。

まあ確かにこれは予想斜め上だよね。学校でオナニ〇だもん。

 

 

「変態で悪かったわね!!でも・・・それを動画に撮られてて、協力しなきゃこの動画をバラまくって!」

 

「なるほど。委員長も脅されている側だったのですね」

 

「でも、さっきまでの委員長さん、かなりノリノリだったような」

 

「奥沢さんの言う通り。脅しで動いていたわりには楽しそうだった」

 

「やっているうちに・・・慣れてきちゃって。それに脅されているとは言えお金ももらってたし・・・でも信じて!決して楽しんでやってたわけじゃないの!お金はもらえる、謎の自信がついていたのも本当・・・でも、ずっといつか動画をバラまかれるんじゃないかって、潜在的な恐怖で今も夜は眠れてない・・・!ムシのいい話なのは分かってる・・・私のことも・・・助けて・・・今までこんな話誰にも言えなくて・・・・あなた達だけなの!!」

 

 

涙で顔をグズグズにして大きな声で津藤さんは叫ぶ。

その声は悲痛でとても演技には見えないけど・・・こんなとき、奏也ならどうするんだろう。

 

 

「・・・とりあえず黒幕の名前を教えてくれませんか?」

 

「そうだね・・・結局はそこを叩かないと終わらないわけだし」

 

「と、いうこと。津藤さん、答えてもらっていいかな」

 

「わからないわ・・・わからないのよ・・・!指示はすべてメールだし・・・あ、でもあなたたちは仕留めたら連絡を寄越すようにって。多分、今夜カメラを仕掛けるつもりなんだと思う」

 

「ってことは今この瞬間も学校のどこかで待機しているってことになるのかな。よし、じゃあ津藤さん。私たちを仕留めたってメールを送って」

 

「え?」

 

「なるほど・・・私たちを倒したことにして油断を誘うのですね。そして仕掛けに来たところを捕らえると」

 

「それが一番よさそうだね」

 

 

3人は同意する。よし、これで行こう。

 

 

「津藤さん。あなたがやったことは許されることじゃない。でも事情もあるし・・・約束してもらえるかな。黒幕を捕まえてあなたも解放してあげる。そしたら二度とこんなことはしない。いいよね?」

 

「わかったわよ・・・だからお願い!」

 

 

 

さて、じゃあ総仕上げに行こうかな。

こうして、私たち3人はそれぞれの設置予測ポイントに向かったのだった。

 

 

 

 

「よう、リサ」

 

「そ、奏也!いらっしゃい」

 

「あれー神剣さんだー」

 

「青葉さんもいたのか」

 

 

終業後、俺はリサのバイトするコンビニに寄って晩飯を買っていた。

今日は自炊するのがめんどくさいし、買い置きも欲しいからそれなりの量のカップ麺を買った次第だ。

 

 

「奏也、一人暮らしだっけ?」

 

「ああ。そうなるな」

 

 

品出しでレジを離れた青葉さんの背中を見送りながら、リサにレジを打ってもらう。

 

 

「こんなカップ麺ばっかじゃ栄養偏っ寄っちゃうよ?」

 

「うーむ、自覚はしてるんだがな。あ、たまには自炊もするぞ!」

 

「へーそうなんだ。何作るの?」

 

「具なしペペロンチーノとか・・・?」

 

「栄養バランスボロボロじゃん!」

 

SAOのキリトみたいな得意料理をさらけ出した後、リサに突っ込みをもらった。

 

「あのさ、奏也。もしよかったら・・・こ、今度アタシがなにか作りに行こうか?」

 

「え?」

 

心なしか顔を赤い気がするリサから大変魅力的な提案をいただいた。

 

「そうだな・・・たまにはいいかもしれんな。でもいいのか?わざわざ来て作るのってめんどくさいだろ?」

 

「全然全然!それくらい大したことないから、ほんと!」

 

「そっか・・・じゃあリサの都合のいい日でいいからまた来てくれ」

 

「明日!!」

 

「おお?」

 

「明日でどう?急、過ぎるかな・・・」

 

「・・・じゃあお願いしようかな」

 

「・・・!!ほんと!?」

 

「なんなら明日一緒に買い物にでも行くか?」

 

「えっ!?い、一緒に買い物・・・?」

 

「あ、さすがにそれはあれか・・・リサ友達も多いし俺みたいなのと二人で買い物したら・・・」

 

「大丈夫だから!あ、でも明日はRoseliaの練習が・・・」

 

「いいよ、練習終わるまで待つから。またどっかで待ち合わせするか」

 

「わかった!楽しみにしてるね!!」

 

 

 

勢いであんなことを言ってしまったがよかったのだろうか。

買い込んだカップ麺の入った袋をぶら下げ、帰りながら俺は考える。

まあ俺もリサと一緒にいるのは楽しいし、女の子の手料理なんて人間らしいものは口にしてなかったしたまにはいいかもしれない。

 

 

「ん?」

 

 

そんなことを考えていると携帯が震えた。メッセージを受信したようだ。

差出人は・・・おたえ?

 

 

「ちょっと相談したいことがあるんだけどいいかな?」

 

 

ふむ。一体何だろうか。あれ、よく見ると紗夜と美咲からも同じようなメッセージが届いて・・・・

 

「ってオイオイなんじゃこりゃ」

 

 

携帯の画面に夢中になっているとあら不思議。

知らない間にたっくさんの男どもに囲まれていた。

 

「神剣奏也だな?昨日は世話になったぜ」

 

「お、昨日ぶちのめした変態じゃん」

 

「バカにしやがって・・・仕返しに来たぜ。昨日とは違うから覚悟しやがれよ」

 

「んなこといったってたかが4人で何ができんだよ?」

 

「4人?お前、これがそう見えるのか?」

 

 

ゾロゾロゾロゾロゾロゾロ

あーうん。これはあれだ。地面に落ちているアメに群がるアリみたいな。

烏合の衆がゾロゾロと現れる。あれ?これ結構多くね?10人とかそこらじゃねえ、20とか30とかいない?

 

「うーむ。これってさあ、今日はお腹痛いから見逃してくれっていったら聞いてくれる?」

 

「んなわけねえだろ・・・やれ!」

 

「やっぱそうですよねえ!」

 

 

しゃーない・・・これやるしかないのか・・・

 

 

「いいぜ、かかってきな」

 

 

ものすごくイレギュラーではあるが仕方ない。

ぶちのめして早いとこおたえの相談とやらに乗ってやるか。

明日はリサの手料理もあるしな。なるべく無傷で終わらせよう。

 

 

ということでバトルスタートだ。

 

 

 




モブキャラならまあいいよねってことでちょっと過激な感じ?
3話で納めるつもりが4話までいっちゃいます。
引き続きよろしくお願いいたします!

お気に入り登録、しおり、感想、評価、すべて嬉しいです!皆さま応援ありがとうございます。
引き続きよろしくお願いいたします!


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第4話 げどう×げどう 

掃除道具入れに入り、息をひそめ気配を待つ。正直私の中では黒幕の正体について心当たりがあった。

ちなみに、どこに現れてもいいように、各々空メールを送れるようにしてある。

どこのトイレがアタリかわからいので、アタリを引いた人がメールを送信し、受信した人はその場所へ向かうという算段だ。

 

 

「うーん・・・」

 

 

しかし狭いなあ・・・。トイレ掃除はトイレ本体だけでなく道具入れまできちんと整頓するように風紀委員広報を紗夜さんに出してもらわなきゃ。

 

 

ガチャッ!ゴン!(迫真)

 

 

そんなことを考えているとトイレのドアくんが迫真の音をたてて開いた。

私がアタリを引いたようだ。

すぐさまメール送信ボタンを押し、気配をうかがう。

 

 

ガチャガチャ・・・

グッ・・・ウィーン・・・

 

 

うーん、明らかに怪しい出してる。

 

 

「よしっ!」

 

「いやよくないでしょ」

 

 

仕掛け終わったタイミングで外へ出る。

そしてそこにいる黒幕に声をかける。

 

 

「誰だ!?」

 

「やっほ、先生。できればこんなところで会いたくなかったよ」

 

 

そうそこにたたずんでいたのは・・・佐藤睦美先生。その人だった。

 

 

「は、花園さん?えっと、どうしたのかしら?こんな時間に。下校時刻はもう過ぎているわよ?」

 

「んーそうだなー。そこに仕掛けられたカメラの確認と、それを仕掛けた人をひっとらえるため・・・・かなあ」

 

「な、なんのことかしら?先生はただ見回りの途中で用を足してただけで・・・」

 

「じゃあ私はトイレ掃除でもしようかな。先生、少しどいてもらっていいですか?」グイッ

 

「あ、ちょっと!」

 

 

そしては私は便所ブラシを手に先生が出てきたトイレへ入る。無論、抵抗する先生を押しのけてだ。

 

 

「じゃあきれいにしますねー・・・せいっ!」ボチャン!!

 

 

ブラシを便器に突っ込みかき回すと、何かが落ちてきた。

 

 

「先生、これ・・・・なんだかわかります?」

 

 

それは言うまでもなく盗撮カメラだ。

私は便器に手を突っ込むことをためらいもせず、カメラを拾い上げる。

そんなもの後でしっかり洗えばいい話だもんね。それよりは今は相手にインパクトを与えることが大事。

 

 

「くっ・・・!」

 

「先生が仕掛けたんじゃないっていうなら再生してみる?先生を含めいろんな人がおしっこするとこ映ってたら先生はシロだし、逆に何も映ってなかったら・・・わかるよね?」

 

「・・・・さっきの倒したって連絡はフェイクだったのね・・・どうして私だとわかったの?」

 

 

観念したのか先生は私に問いかける方向へシフトした。

 

 

「んー正直、今日まで先生を微塵も疑ってなかったよ?てっきり津藤さんが犯人だと思ってたし」

 

「え・・・?じゃあなんで?」

 

「今日さ、先生と会ったよね?あの時【これ以上花園さんが危ない目に遭ってほしくない】って。先生はそう言ったけど・・・でもそれっておかしいんだよね。なんでこの問題をめぐって私が危ない目に遭ったのか知ってるのかなーって。このこと知っているのその場にいたメンバーとけしかけた張本人しか知らないはずなのに。それで、津藤さんも操られてたって聞いて確信めいたものを感じたってところかな」

 

「たった・・・たったそれだけで私に疑いを向けたの・・・?」

 

「そ。私って重箱の隅つつくの得意だし」

 

「あなた何者なの・・・!?あの人数を難なく倒して、私にまで迫るなんて・・・!一体何者なのよ!」

 

「通りすがりの悪党狩り・・・ってところかなあ。とりあえずさ、先生。先生がやったことは許されないよ」

 

 

「許さない?だからなんなの?私がやったなんて証拠、どこにもないじゃない。あなたが持ってるそのカメラだってあなたは素手、私はこの通り手袋。あなたの指紋しか残ってないわ。この状況で私があなたが犯人で見回り中偶然見つけて捕まえたっていったらみんなそう思うでしょうね」

 

「なんでこんなことしたの・・・?」

 

「お金のためよ。最初はね。でも途中から目的が変わったわ」

 

「もしかして校長先生と教頭先生?」

 

「よくわかったわね。あのハゲ校長はセクハラばっかしてくるエロオヤジだし、教頭のババアは私が若いからってパワハラばっかしてくるし・・・クズばっかなのよ」

 

「なるほどね。ぞれでいずれ問題を明るみにして責任を全部津藤さんや私たちを襲った男の人たちに押し付けて、校長先生・教頭先生を失脚・自分だけ助かる算段だったんだ」

 

「そこまでわかるなんてすごいわね!探偵に向いているんじゃないの?」

 

 

よし、これくらいかな。

 

 

「言質はとれたね。紗夜さん、奥沢さん、もういいよ」

 

 

ガチャッ

 

 

「ですね。いい画が撮れました」

 

「面白いくらいペラペラしゃべったねー・・・ここまでうまくいくなんて思ってなかった」

 

「えっ・・・・?えっ・・・・!?」

 

 

そこに現れたのは紗夜さんと奥沢さん。

実はハズレを引いた人は合流後すぐにトイレに突入せず、スマホのボイスレコーダーと動画モードでアタリを引いた人と黒幕の応酬を録画・録音する算段を立てていた。そして見事それはあたり、先生の自白、私に犯行を押し付けようとしたこと、そして当初の計画や狙いはすべてカメラに収められた。

 

 

「ってことなんだけどさ、先生。何か言うことはあるかな?」

 

「うっ・・・くくっ・・・・!」

 

 

歯をギリギリとかみしめ、ものすごい表情で先生は言葉を失うのが分かる。

チェックメイトってやつだね。

 

 

「何もなさそうですね」

 

「そうだね。で、花園さんこの人どうするの?」

 

「そうだなー・・・せいっ!」ゴスッ

 

「うっ・・・」ドサッ

 

「過激ですね」

 

「この人がやってきたこと考えると・・・あとは流れに任せるのがいいと思う」

 

 

 

 

「あれ・・・・?ここは」

 

「よう、お目覚めかよ、センセイ」

 

「えっ!?」

 

 

佐藤は目を覚ましたら見覚えのない廃雑居ビルの一室にいた。そしてさっき屋上にいた21人に囲まれていたのだ。

 

 

「目を覚ましたらよ、こいつが黒幕で、用が済んだら俺たちもろとも警察に売るつもりだったっていうことがわかってなあ・・・おいてあった動画をバッチリ見せてもらったよ」

 

「え・・・・ちがっ・・・」

 

「まあアンタの言い分なんて聞くつもりはねえ。おい、カメラ持ってこい!」

 

「女子コーセーと本番するのは逃したが・・・若い女教師ってのも悪くねえな」

 

「いや・・・やめて・・・」

 

「おいおいおいおいおい・・・俺たちが言えた義理じゃねえけどよ。あの女子コーセーたちも同じような目に遭わせようとしてたんだろ?こういうことやるならやられる覚悟もあるはずだから好きにしてもいいよな?」

 

 

そう、おたえたちの手引きで撮影に使ったこのビルはヤクザが管理している物件。

厳密にはここを使うように仕向けただけなので、こいつらに「おたえに手引きされた」という自覚はない。

 

 

「いやあ・・・やめてえ・・・なんでもするからあ・・・」

 

「ん?今何でもするっていたよね?」

 

「じゃあ俺たちの裏ビデオ撮影会に参加してもらおうぜ。なんでもするんだろ?安心しろよ。終わったらちゃんと帰してやるから」

 

「いやああああああああああああああああ」

 

 

バンッ!

 

 

「おいてめえら!全員そこを動くな!!」

 

 

入ってきたのは多数の男たちだ。

 

 

「なんだてめえら!?人の楽しみを邪魔すんじゃねえ!」

 

「・・・・うちの組のシマで裏ビデオ撮影たあ度胸あるじゃねえか」

 

「最近よぉ・・・シマを荒らす不届きモンが増えていてなあ・・・・俺たちの管理してるビルで裏ビデオ撮影会が開かれるって聞いてきてみたら・・・ドンピシャじゃねえか」

 

 

現れたのはこの町をシマにしている暴力団”外道会”だ。

かつて畜生組や1章で逮捕された五味葛を擁していたり、2章で奏也達に末端のヤミキンが強盗された奴らである。

さらには前章でシマ内で畜生の残党が女子高生相手にクスリを売っていたりととにかくシマを荒らされていることに腹を立てていた外道会はいつもより過敏に、そして血の気が多くなっていたのだ。

 

 

「女・・・おめえ拉致られたのか?俺たちは女には優しいからよ。アンタは見逃してやる。但しよ・・・・」グイッ

 

 

佐藤の顎を持ち、男の一人は言う。

 

 

「ここで見たこと、聞いたことはすべて忘れろ。そして明日にでもこの町から出ていけ。いいな?」

 

 

「は、は、ははははいいいいいいいい」

 

「じゃあ、お前らは全員強制連行だな」

 

「おい、うそだろ・・・おい・・・い、いやだああああああああ」

 

 

 

 

「ふう、もう結構遅い時間になったね」

 

 

すべてが終わるころには夜の8時を超えようとしていた。

一応、各々遅くなると家には連絡してあるので大丈夫かと思う。

 

 

「しかし花園さん、鬼だね・・・」

 

 

さっきまでの出来事を顧みて奥沢さんがそう口にする。

 

 

「そりゃそうだよ。佐藤先生は卑怯な手で自分たちの教え子を金もうけの道具に使った外道だし、あの男たちはお金をもらって女子高生をレ〇プして撮影しようとした外道だよ?救いなんて必要ないと思う」

 

「は、花園さんは怒らせないようにしよう・・・・」

 

「大丈夫。人の道を外れなければ敵に回ることはないよ」

 

「しかし、委員長はあれでよかったのですか?」

 

「心を入れ替えて自首して、やり直すって言ってるしこれ以上はいいと思う。話をきいてみたらなんかマインドコントロールされてるっぽかったし」

 

「ですね。まあ、今回の指揮を執っているあなたに従いましょう」

 

「それにして奏也、まだ連絡がつかない。ほんとに大丈夫かな?」

 

「あ、そうですね。もう一回かけてみますか」

 

 

そうして紗夜さんは端末を操作して奏也に連絡をするのであった。

 

 

 

 

「せーい!」

 

「うごおおおお!」ドサッ

 

「ゼェ・・・ゼェ・・・何人倒したのかもうわかんねえ・・・」

 

「おまえ・・・なんなんだ・・・」

 

 

ほぼ全員倒したと思われるところで残ったうち、リーダーの男が聞いてくる。

 

 

「なんでもねえよ。ちょっとケンカが強い高校生さ」

 

「ちょっとどころじゃねえぞこの強さ・・・ありえねえ」

 

「現実を見ろ。実際にいるんだからよ」

 

「それもそうだな・・・・」

 

「俺はよ、ただ単に自分の生活が壊されず、平穏に生きたいだけなんだ。ただしその平穏を脅かす異分子は問答無用で叩き潰す。今回のお前らみたいにな」

 

「なるほどな・・・高校生のくせに大したもんだ」

 

「わかったんならもう俺にはかかわるな。俺を街で見かけても、何かしてても一切関わるな。それだけ守るならこれ以上どうこうするつもりはねえ」

 

「そうか・・・じゃあよ、神剣。最後に俺とタイマンしろ」

 

「あ?タイマンだあ?」

 

「どのみち残ってるのはほんの数人だ。俺とお前で決着をつけてそれで終わり。どうだ?」

 

「こんだけ疲弊させといて決着もクソもねえだろうよ・・・でもそうだな。それで終わるなら乗ってやるぜ。・・・そうだな、俺がこのコインを投げる。地面についたらバトル開始だ」

 

「いいだろう」

 

 

 

 

勝負は無論、俺の勝ちだ。

一瞬・一撃で勝負を決め、その後奴の意識が回復するのを待った。

 

 

「こんな力見せられたんじゃ仕方ねえな。わかった、今日限りでお前にかかわるのはやめる。神剣奏也。あんたみたいなやつと戦えてよかったぜ」

 

そういって奴らは退却していく。

・・・なんかすげえいい話みてえになってるけどお前らが金で動いて女子高生を襲うクソ野郎なうえ、数十人で攻めてきた卑怯くせえ手を打ってきたことは忘れねえからな?

 

 

とまあこんな感じで突然始まりあっという間に終わった大乱闘スマッシュブラザーズであった。

もう夜中じゃねえか・・・うわ、せっかく買ったカップ麺どっかに落としてきちゃったよ。

 

 

「ん?」

 

 

すると携帯が震える。紗夜からか・・・ってうお!?不在着信の数がものすげえことになってる!?

さっさと帰るか・・・おたえたちの用事が何だったのか気になるし。

 

「もしもし紗夜か・・・実はな・・・」

 

 

帰るか、我が家に。

 

 

 

 

そしてエピローグだ。俺が遊んでる間にどうやら花咲川女子学園盗撮事件は終わっていたようであった。

 

まず風紀委員長の津藤美沙。佐藤の呪縛が解けると、佐藤に脅されていたとはいえ自分がやってしまったことに罪悪感を感じたようで自首し、すべて警察に話すことにしたらしい。当然、おたえたちの部分は避けてだ。

これにより花咲川学園盗撮事件は一時期ワイドショーをにぎわせた。

一介の女性教師が立場を利用して盗撮を行い、金を稼いだことはもちろん、生徒を脅迫・マインドコントロールして手駒につかうという悪どさが際立ったためだ。

また、このことを隠蔽しようとしていた学校側も責任追及がされ、校長・教頭ともに処分を受けることとなった。

 

そして犯人とされた佐藤睦美教諭。郵送で退職届が届き、そのまま行方が分からなくなっているらしい。津藤から語られた黒幕であったにもかかわらず身柄を確保できていないので、警察が躍起になって探しているらしい。

そして名もなきヤンキー21名は完全に姿を消した。多分外道会の制裁を受け、どっかで強制労働でもさせられているのだろう。

 

この騒動を解決した陰におたえたちがいることは明らかにされていない。

細かい証拠はないし、存在を語りうる人間は全員いない。

ほぼ俺抜きで完全にやり遂げ、花咲川に平和を取り戻したのだから大した奴だ。

 

しかし最近、顔出しで事件に絡むことが多くなっているな・・・

相手がヤバい奴らじゃないからまだいいが・・・この辺のルールは今一度決めておいたほうがいいかもしれないな。

 

そんな感じでこの物語は終わりだ。次はどんなことが起こるかはわからないが、まあ気ままにやるさ。

 

さて、リサとの約束があるしそろそろ行くか。

たまにはいいもん食わねえと体に悪いしな。

 

 

第5章 完

 




ちょっと新しい(?)試みではありましたがいかがだったでしょうか?
幼馴染サイドを主眼におくとこんな感じかな?って思って書き上げました!
ニッチな部類に入ると思うのですが見てくださる方がたくさんいてうれしく思います!
引き続きよろしくお願いいたします!


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第6章-彩のこころ-
第1話 まんまるお山に彩を?知ら管


パステルパレット編第2弾です。
1章はあまりパスパレキャラが出なかったのでやっちゃいます。
時系列はAtoZリリイベのあとではあるとお考え下さい。


「ねえ奏也、ちょっとお願いがあるんだけどいいかな?」

「なんだよ」

 

ある日、俺のもとにかかってきた1本の電話。

それは日菜からのものであった。

 

 

「実はさー・・・ちょっとバイトしない?」

 

「バイト?」

 

「うん。実は3日後の日曜日にあたしたちのリリイベがあるんだけどさ。スタッフさんが集団食中毒で寝込んじゃって人手が足りないんだ。そういうわけであたしたちメンバーも信用できる人限定で助っ人を探してるんだけど・・・どうかな?」

 

 

なるほど、バイトか。正直金には困っていないが気分転換にいいかもしれない。

それにパスパレはテレビではみているが実際にあったことはまだない。

日菜がお世話になっている人たちだし、人脈というのはいつどこでつながるかわからないのもあるので知り合っておくのもいいかもしれないな。

 

 

「ああ、いいぞ。詳細は?」

「やったー!奏也ありがと!詳細はこの後送るね。前日に事前に顔合わせと確認があるみたいだから確認しておいてね!」

 

 

 

というわけで俺はPastel*Palettesのリリースイベントの助っ人として参加することが決まったのである。

 

 

 

 

「というわけです」

 

リリイベの前日。事前説明ということで今回緊急招集された人たちが説明を受けている。そして各々の担当へと振り分けられ、担当業務の説明へと移行する。

 

 

「神剣さんは【はがし】を担当してもらいます」

「はがし?」

「ええ。ミニライブ後に購入者に対してに応じてブロマイドにサインを書いて手渡しをしますよね。サインを書いている間はファンの方とメンバーが自由に会話をします。しかし、ファンの方は当然たくさんお話をしたいと思いますよね。それで書き終わってもなかなか離れてくれない人がほとんどなんです」

 

そりゃそうだろうな。いつもは遠くの存在であるアイドルが目の前に来るのである。

すぐに切り上げろというのは無理な話だろう。

 

 

「そんな人に対し、肩をたたいたり、手を引いたりして、サイン会を円滑に進めるために文字通りファンの方を「はがす」のがはがしの役割です。あとはその方が危険なものを持っていたり、メンバーに触れようとした時など、緊急時に動く護衛という役割もあります」

「なるほど。はがすまでに時間の目安とかはあるのですか?」

「そうですね・・・今回はメンバーがサインをして手渡ししてから3秒ほどを目安にしましょうか」

「わかりました」

 

ファンを確認→」危なくないか目を光らせる→ブロマイドを渡して3秒経っても離れなければはがす。

この流れでいいみたいだな。

 

 

「神剣さんは丸山さんのコーナーを担当してください」

「丸山さんというとボーカルの方ですね」

「そうです。とりあえず説明は一通り終わりました。何かご質問はありますか?」

「大丈夫です。明日はよろしくお願いします」

 

 

こうして俺はある程度の説明を把握し、そしてリリイベ当日を迎えたのであった。

 

 

 

 

「彩ちゃん!その、あえて本当にうれしいです!」

「わぁ~ありがとう!こういうイベントは初めてなのかな?」

「はい!ずっと行きたかったんですけどなかなか勇気がわかなくて・・・でもほんと、来てよかったです!」

「ふふ、ありがとう!はい、どうぞ」

「ありがとうございます!実は彩ちゃんの~・・・」

 

 

さて、そろそろか

 

 

トントン「はいではそろそろ」

 

 

そのまま肩に手をかけ文字通り「はがす」

 

「また、どこかで!」

「は~い!またね!」

 

 

とまあこんなことを延々とやてるわけだがやはりアイドルのファンというのはすごい。しかしそれ以上にプロのアイドルはすごい。

丸山さんは一人ひとり真摯に質問に答え会話をしてファン本位の姿勢が伝わってくる。白鷺さんは回答自体は優等生だが身に着けているものや白鷺さんをイメージした服でくる子など細かなところをよく見ており、気づいてもらえたファンは嬉しそうだ。

そして若宮さんは天真爛漫なキャラでファンと楽しく会話をしており、大和さんはニッチな話題からテンプレのやり取りまで話術がすごい。

そして日菜は相変わらずだ。たまに質問が込み入りすぎて困惑するファンもいるがそれも含めて日菜の魅力だとファンの間では評判らしい。

 

 

「次の方ー」

「あ、今日も来てくれたんですね!」

 

 

どうやら丸山さんが認知しているファンみたいだ。

30歳前半くらいだろうか。外見は割と普通の人だ。

 

 

「彩ちゃんに会うために生きてるからね(笑)」

「もう~またそんな冗談いってぇ~!でもありがとうございます!」

 

 

なるほど。この人はあれか。おっかけという奴か。

アイドルに認知してもらえるとは羨ましい限りである。

 

 

「はい、またどこかでお会いしましょう!」

「ありがとう、これも大事にするね」

 

 

そしてその人ははがすまでもなく、丸山さんから離れていった。

引き際までわかっているところをみると熟練の雰囲気が伝わってきて感心をするばかりであった。

 

 

その後も順調にお渡し会は進み、無事終了することができた。

ただ、ちょっとマナーの悪いやつがちらほら見受けられた。まあ数が多いと絶対にそう言う奴は出てくるのだろうが、ちょっと目に余る部分があった気もする。

ま、それは置いておこう。とりあえず日菜に呼ばれているので楽屋のほうに向かうことにした。

しかしアイドルの楽屋か・・・本人に呼ばれたとはいえ緊張しちまうな。

そして楽屋の前に到着し、コンコンっとドアをノックする。

 

 

「どうぞー!」

 

 

ふわふわの可愛い声で招き入れられ、俺は楽屋に入っていった。

 

 

「失礼しまーす」

「奏也!今日はありがとね!」

「たまにはこういうのもいいさ。んで?こんなところまで呼び出して何の用事だ?」

 

 

そう問いかけると日菜は突然うつむき、モジモジしだし、そして言い放った。

 

 

「実は・・・あたし・・・奏也のこと好きだったの!」

 

 

「「「「えー!?」」」」

 

 

そしてなぜか他の4人が一斉に驚きの声を上げる。

 

 

「ひ、日菜ちゃん!?どういうこと!?」

「あ、彩ちゃん落ち着きなさい!」

「そういう千聖さんもだいぶテンパってるっす!!」

「マヤさんも顔真っ赤です!」

 

 

どう考えても日菜の冗談なんだがこの4人・・・ピュアやなあ・・・

というか俺だから冗談ってわかるだけで他の人からしたらそうじゃないのか。

 

 

「おい日菜。俺にしか通じない冗談はやめろ」

「え、やっぱわかる?うーん、結構いい演技だったと思うんだけどなあ」

「まあな、それは認めるが」

 

 

うつむき、顔を赤くしてたはずの日菜はいつの間にかいつも通りの佇まいに戻り、あっけからんとしていた。

確かに演技の腕はあがっているな。

 

 

「え・・・・?冗談????」

「日菜ちゃん・・・心臓に悪いわ・・・」

「おー!彩ちゃんはともかく千聖ちゃんを騙せたってことは演技の腕上がったのかな?」

「いや~日菜さんすごかったッス!」

「ハイ!ヒナさん、本当に恋する乙女みたいでした!」

「あはは!ありがと!奏也もこれくらい純情だと面白いのにな~」

「ムチャいうな。今さらお前にときめいたりするかよ」

「それもそっか!」

 

 

とまあ完全にいつものノリではあるが考えてみればさっきから会話に参加しているのはあれだ、パスパレのみなさんだよな。

 

 

「それで日菜ちゃん、この方は・・・・?」

「あ、さっき私のブースにいたスタッフさんだ!」

 

 

おっと、ようやく紹介か。

 

 

「みんな、紹介するね!あたしの幼馴染の奏也!」

「えっと、神剣奏也です。”かみはや”は神の剣と書いて、奏也は”かなでる”に”なり”です」

「あ、じゃあ日菜ちゃんがいつも話をする幼馴染の男の子ってこの人なんだ!私は丸山彩!パスパレのふわふわピンク担当で~す!」

 

 

そう言ってポーズをとる丸山さん。

・・・なんだ、この何とも言えない独特のポージングは・・・

 

 

「あはは!奏也固まってる!彩ちゃんのポーズ変だもんね~わかるわかる!」

「うー・・・日菜ちゃんひどいよぉ~」

 

 

このやりとりで丸山さんのキャラが少しわかった気がする。っていうかさっきみてたステージと全然雰囲気変わらないのな。すげえ。

 

 

「よろしく、丸山さん」

「彩でいいよ!よろしくね、奏也くん!」

 

 

なんというかなんで俺の幼馴染の友達はこんなにコミュ力が高い連中が多いのだろうか。しかも相手はアイドルのセンターだぞ。名前で呼び合うとかどんな贅沢だよ。

 

 

「うん、確かに丸山さんは彩って感じだな。よろしく、彩」

「奏也くんまでなんか扱いが雑になってない!?」

「ソンナコトナイヨ」

「ぼうよみー!」

 

 

アカン、この子めっちゃ可愛いわ。初対面のはずなのに全然取り繕う必要がない。なんというか実家のような安心感がある。

 

 

「はいはい彩ちゃん、進まないからとりあえず回してしまいましょう。改めてまして、私は白鷺千聖といいます。担当はベースです」

「よろしくお願いします」

 

 

打って変わって白鷺さん。こちらは警戒心がヒシヒシと伝わってくる。そういえば日菜から聞いたことがあるな。1章の五味葛事件以来、ちょっと男性恐怖症気味らしい。まあ芸能界にいるとはいえ、女子高生がレイプ未遂にあったのだから当然といえば当然かもしれない。幸いパスパレのスタッフは女性ばかりなので仕事にあんまり影響は出ていないが、外では影響することがあるとか。

 

 

「白鷺さんが一番芸歴長いんでしたよね?」

「ええ、一応子役時代からみるとそれなりには」

「なるほど。あと差し支えなければ敬語はなしでいいっすよ?日菜とタメなら俺ともタメなので」

「・・・そうねそれくらいは良さそうね。よろしく、神剣君」

「はいよ、よろしく」

 

 

やっぱりちょっと引いているところがあるな。

五味葛の野郎、純真な女子高生を穢しやがって・・・・

 

 

「次はジブンっすね!ジブンは大和麻弥っていいます!ドラム担当で機材いじりが趣味ッス!彩さんや千聖さんと同じく高2なので、自分もタメで大丈夫っスよ」

「はえー。ってことは趣味が結構生きるのところもあるんじゃないかな。いいね。わかったよ。大和さんもタメでいいぞ?」

「ジブンはこれしかできないんですよねー。まあ気にしないでください!あと自分のことは麻弥で結構ですから!」

「了解、よろしくな」

 

 

元気がよくて大変よろしい。

さて、次は・・・すげえ。すらっとしててあとハーフだったかな?若宮イヴさんの番だ。

 

「ハイ!若宮イヴです!キーボード担当です!ソウヤさんのお名前はすごくカッコイイですね!神様の剣だなんてブシドーを感じます!」

「名前を褒められたのは初めてだな。えーっとイヴさんでいいのか?」

「いえ、ワタシだけみなさんより1つ下なのです!もっと仲良くなるために呼びすてでお願いします!」

「・・・マジ?普通にタメか年上だと思ってた・・・」

「ま、イヴちゃんハーフで大人っぽいし、背も高くてかっこいいからね!気持ちはわかるよ」

「そういうお前は落ち着きがなさすぎだ。どっちが大人かもうこれわかんねえな」

 

 

これは俺が日菜という人間を知りすぎているからかもしれんが、そう思ってしまう。

 

 

「そういうソウヤさんもすごく大人びてます!見たとき大学生くらいかと思っちゃいました!」

「マジ?確かに年上にみられることは多いが・・・そこまで?」

「あー確かに小さいころから一緒だからあまり気にしないけど制服着てないと普通に大人みたいだよ奏也」

「実は私もそう思ってた!」

「私もね」

「ジブンもっす!」

「ま、老けてるとかそう意味じゃないし、プラスにとらえていいと思うよ!」

「そうなのかねえ・・・」

 

 

まあ確かに悪い感じは伝わってこないしいいのかな。

 

 

「さて、そろそろあたしたちも帰る準備するから奏也は外で待ってて!」

「あいよ。適当に事務所の外ぶらついているから済んだら連絡をくれ」

「はーい!」

 

 

パスパレメンバーの着替えをガン見するわけにもいかねえしでるか。

楽屋を出ると、そこではスタッフさんが慌ただしくしていた。

 

 

「お疲れ様です。どうかしたんですか?」

「あ、神剣さん。お疲れ様です。実は・・・」

 

 

聞くところによると、この会場は関係者出口が公道に接しており、出入り口も一つしかないため、出待ちをしている人が出てしまっているらしい。

数はそんなに多くないが、このままではパスパレメンバーがここから出ることはかなわなくなってしまう。

普段はこういうことがないためスタッフも油断しており、予想外の事態にてんやわんやしているみたいだ。

 

 

「じゃあ、僕が外の様子を見てきますよ。ちょっとヤンチャされても腕っぷしには自信ありますし」

「本当?でも一応、絡まれてもあまり過激なことにならないようにね?」

 

「わかってますよ」

 

 

そして俺は正面から回り込んでその場へ行く。

そこにはファン数名がおり、そのうちの二人が口論をしていた。

一人がわめき散らしており、もう一人はそれを諫めている感じで・・・リリイベの時に丸山さんに認知してもらってた男の人だった。

 

 

 

 

 

「またあんたか!そんなの別に俺の勝手だろ!人も少ないしいいじゃないか!」

「少しでもこういったことをしてしまうと前例ができてしまう。それが広がれば今後のイベントで絶対マネする奴が出てくるだろう?そうなればメンバーには迷惑だし、トラブルが起こればイベント開催にも影響が出てくるのがわからないのか?」

「は?楽しみ方なんて人それぞれだしお前が勝手に俺たちを厄介って決めつけてるだけだろ?」

「答えになっていない。とにかくここから散り給え!」

「スタッフでもねえくせに偉そうに!あんた、彩にいくら使ってる?俺はなあ・・・」

 

 

一人の男はそのままいかに金を使い、全力で応援しているか一人の男が熱弁しているが、対する認知されている男性は飽きれた顔をしてそれを聞いている。

 

 

「いいたいことはそれだけかい?使った金額でファンの愛を図るなど浅はかだな・・・結局自分の欲求を金で満たしていて自己顕示欲が表に立った、愚かな人だよ君は。メンバーの迷惑も考えないで行動して・・・君のような人間はファンとはいわない」

「な、な、なんだときっさまあ~!!!俺は彩と心が通じ合ってるんだ!きっと彩も俺に見送られて帰りたいに決まってる!」

 

うっわ~~~~~(ドン引き

このひと、おかしい(確信)

こいつはやべえ・・・・何言ってるのかさっぱり理解できない

おっとそろそろ出ていくか。ファン同士が暴力事件を起こしたとなればメンバーにも影響が出る。

スタッフとしての仕事を全う致しますか。

 

 

「お客様、いかがなさいましたか?」

「チッ・・・スタッフかよ・・・知り合いのメンバーにちょっと帰り際に挨拶するだけっすよ」

「申し訳ありませんがお客様、お知り合いといえど出待ち・それに類する行為は禁止とさせていただいておりまして・・・このようなことをされては困ります」

「ほら、スタッフさんもそういっているじゃないか。いい加減、あきらめろ」

 

 

男性のサポートが入り、口論をしていた男以外は「スタッフがでてきちゃな・・・出禁とかになったら困るし・・・」などと口にして帰っていった。

 

 

「ク、クソッ!ド底辺にうごめくゴミムシが・・・去年の年収5000万の俺に指図するのか・・・許せん!覚えていろ!」

 

 

他の出待ちメンバーが返るのをみてバツが悪くなったのか、そんなわけのわからない捨て台詞を吐いてその男は消えていった。

しかし年収5000万か。会社でも経営しているか、それとも株などで一発あてた成金か・・・まあどうでもいい。

 

 

「人としてのマナーは収入と関係ない。そうやってでかい声で年収自慢をするなど自己顕示欲の表れでおろかの極み。ではスタッフさん、お疲れ様です」

「いえいえ、しかしあなたはなぜここに?」

「ん?あなたはさっき彩ちゃんのブースではがしをやっていた!この会場はここしか出入り口ないし、さっきのやつ・・・近頃ファンの中で話題になっているいわゆる”厄介”という奴でしてね。俺とは犬猿の仲なんです。奴がこの機会を逃すわけないと張っていたら案の定でしたよ。奴も彩ちゃん推しで認知をもらっているようなのですが、それが付け上がる自信の根拠になっているようですね」

 

 

厄介。オタク界隈において特にマナーが悪く、他人の迷惑を厭わずわめいたり、叫んだり、暴れたりする奴の総称だとか。

ライブ中に迷惑なクラップや空気を読まないイエッタイガーなどの、所謂”害悪コール”をやったり、会場内だけでなく中には会場外の一般の人の目があるところやひどい奴だと街中でもマナーの悪い行為を繰り返す者もいるとか。

しかも恐ろしいことに中にはマナー違反であることや、人の迷惑になっていることを自覚してやるバカ野郎が多いということだ。

悪いことをあえてやる俺はカッコイイとでも思っているのだろうか?ちっぽけな自己顕示欲を満たすために人に迷惑をかけ、あまつさえそれがカッコイイ・気持ちいなどと思っているのだろうから、ほんとにゴミ以下のガキだ。

楽しみ方は人それぞれというのは俺もそう思う。しかし自分のことしか考えていないのは単なるオナニーと一緒だな。

 

 

「ま、奴には今後も気を付けるようにしてください。それでは俺はこれで」

「ええ、助かりました。ありがとうございました」

 

 

その人と別れ、会場に戻る。

 

 

「出待ち勢、いなくなりましたよ」

「本当!?よかった、神剣君なかなかやるわね。・・・あの人いた?」

「あの人?」

「ほら・・・・」

 

 

話を聞くとさっきの年収5000万円野郎だ。

なるほど、スタッフの間でも有名なのか。

 

 

「もしかしてあの人の話?」

「彩か」

 

 

楽屋から彩が出てきた。どうやらあの輩は事務所・メンバーで共通の問題でなっているみたいだな。

 

 

「あの人・・・私を応援してくれるのはすっごく嬉しいんだけどちょっと勢いがありすぎるというか・・・定期的に事務所にプレゼント送ってきたりするし」

「ファンからのプレゼントって嬉しいもんじゃないのか?」

「それが・・・アクセサリーとかブランド物のバッグだったり、とにかく高価なものばかりなの。そんな高いもの受け取れないからいつも事務所経由で返してるんだけど、受取拒否されていっつも事務所に戻ってくるの。一応、使わずに事務所が保管してるんだけどね」

「ふむ。確かにちょっと異質だな」

「それにね・・・最近は服とか靴とかも送ってくるんだけど・・・サイズがぴったりなの・・・」

「こわっ!!え?それやべーやつじゃん!警察とかには・・・?まあ無駄か・・・」

「その通り、一回行ったけどそれだけじゃストーカーとは認定しづらいって」

 

 

やっぱりな。あいつらってストーカー関係は明確な証拠がないとあまりすぐ動かねえからな。彩の事務所は中堅であまり大きな規模でないというのもあると思う。

これがジャ〇ーズやAK〇48クラスだったらサクッと動いてストーカーに警告状でも渡すところだろう。

現在はストーカー規制法もあり昔よりは動くようになったが、外れの警察署を引くと、動くころにはストーカーが過熱していたりすでに事件が起こったあとだったりと手遅れであることが多い。

これは警察が解決しづらい事件の被害届を受理しないという事情もある。

被害届を受理して検挙できなければ検挙率が下がり、その警察署の成績に関わるからだと言われている。

例えば、空き巣に入られた、誰誰に殴られたなどわかりやすいものは即受理だろう。高い税金を払っているのになあ・・・

 

 

「いままではリリイベだけだったけどまさか出待ちで接触を持ってくるなんて・・・事務所としても少し注意をしたほうがいいかもしれませんね」

 

 

白鷺さんも楽屋から出てきながらそういった。

 

 

「わかりました。このことは社長に相談し、対策を考えます」

「よろしくお願いいたします!」

 

 

そんな感じで話はまとまった。

そしてそのまま解散となり、俺も帰ろうとした・・・のだが

 

 

「あ、奏也!待って!」

 

 

突然、日菜に呼び止められた。




と、いうわけでパスパレ第2弾です。はがしなどの内容はイメージです。実際とは異なる場合があります。
ポピパ編を、待ってくださっている方々、申し訳ありません。
メインヒロインは丸山彩ちゃんです!
引き続きよろしくお願いいたします!


★元ネタ紹介★


●厄介

劇中で説明した通りですが、ワタクシ恥ずかしながらアイドル現場を知らないのでどちらかというと声優ユニットなどのライブに湧く厄介の説明となっております。

●イエッタイガー
元々は地下アイドルから認知を貰うために「イエッタイガー!」と叫ばれていたといわれている。また、ツイッターなどでは家虎と表記されることも多い。
しかし、現在では元ネタや意味も知らず自分が叫びたいだけ・気持ちよくなりたいからというオナニーのためだけにサビ前や落ちサビ前の音がなくなるタイミングで叫ぶ大バカ野郎が非常に多く、オタクライブ現場における大きな問題の一つとなっている。
別にやるなっていうわけじゃねえ、空気を読めっていうだけだ。


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第2話 ネットの世界ってこえーなあ・・・

「ごめんね、奏也くん」

「いいって。さっきの奴ヤバいのは見てわかってるし。なにより日菜の頼みだしな」

 

 

俺があのあと日菜に呼び止められたのは、事務所の方針が決まるまで護衛として彩の送り迎えをしてくれないかということだった。

こういう事態に不慣れな事務所もどうしたらいいかわからないということで、日菜から信頼をされていて格闘技経験がある(日菜がぼかして事務所に伝えたことだが)、そして奴にスタッフとして認識されている俺にひとまずバイトの延長としてやってくれないかということだった。もちろん危険が伴うので手当は出すし、方針が決まるまでの短い間という条件だ。

まあ日菜の頼みだし、せっかく知り合った子が危ない目に遭うの気分が悪いし、なにより例の年収5000万野郎はのヤバさを目の当たりにしたのでOKした。

今は目立った事件もなく暇だしな。

 

 

「奏也くんって日菜ちゃんとほんと仲いいんだね」

 

「まーもう10年くらいの付き合いになるしなあ」

 

「もしかして好き・・・とか?」

 

 

なんてことを顔を赤くして言いやがる。

 

 

「んなわけあるか。彩も聞いてたろ?今さらあいつにときめかねえさ」

 

「そ、そうだよね!今日の日菜ちゃん、ほんと、なんかすごかったからさ!」

 

「あいつのいつもの手だぞ。彩はピュアだなあ・・・そういうところ可愛くていいと思うぞ」

 

「かわっ!?もう、そういうの急にやめてよ~でもアイドルとしてそう言ってもらえるのは嬉しいな」

 

 

別にアイドルとして言ったわけじゃないんだがなあ。ま、いっか。

 

 

「でもなんか不思議だな。奏也くんとは今日初めてあったはずなのになんか長い付き合いみたいに感じるよ」

 

「そうだな。案外日菜のおかげかもな」

 

「日菜ちゃんの?」

 

「ああ、あいついつもあんな感じだし俺たちともすぐつないでくれたし」

 

「ふふっ・・・確かにそうかもね」

 

「それに長い付き合いみたいってのもなんとなくわかる。なんつーか彩って見てて安心するんだよな。実家のような安心感的な」

 

「なーに?奏也くんアイドルを口説いてるの~?」

 

「んなわけあるかい」

 

「冗談だよ。日菜ちゃんみたいだったかな?」

 

「あいつの冗談はもっとえげつない」

 

「あっはっは!確かに!」

 

 

そんな他愛のない話をしながら歩みを進める。

すると丸山家の近くまで来たようで彩が合図をした。

 

 

「家はこの辺か?」

 

「あ、うん!ありがとね!」

 

「いいって。一応、仕事でもあるからな。んじゃ明日学校終わったら迎えにいくからよ」

 

「うん、なんか変なことに巻き込んじゃってゴメンネ」

 

「まあ困ってるなら見過ごすわけにはいかねえさ。あ、そうだ。これやるよ」

 

「これは・・・防犯ブザー?」

 

 

そう、かつてリサに渡したものと同じの俺お手製の防犯ブザーだ。

 

 

「それは防犯ブザーの役割だけじゃなくてな、抜くとGPSが働いて俺の携帯のアラームが鳴る。そして所在地を教えてくれるモンだ。一人の時とかヤバいと思ったら抜いてぶん投げて逃げろ」

 

「すごい・・・うん!ほんと何から何までありがとね!」

 

 

こうして彩は家に入っていった。

ま、しばらく警戒しておくか。事務所も何かしらの対策を取ってくれるみたいだしな。

 

 

 

幼馴染(6)

 

Soya:すまん、俺はしばらくすぐ家に帰れない

ヒナ:あ、あれだね!

氷川紗夜:ああ、日菜から聞いてるわ

こころ☆:あら?なにかあったのかしら?

たえ:私は聞いてないかな

奥沢:私も

Soya:今日バイトでパスパレの手伝いをしたんだがな

ヒナ:彩ちゃんがストーカーにあってて事務所からの仕事で彩ちゃんの護衛をすることになりました~!

Soya:ストーカーって決まったわけじゃねえさ。でもま、そういうことだ

たえ:なるほど。どういうこと。

奥沢:まあ奏也くんがいれば彩先輩も大丈夫だね

こころ☆:わかったわ!じゃあしばらく悪党狩りはお休みね!

氷川紗夜:そういうことになりますね。奏也、何か手伝うことがあったら言ってください

Soya:ああ、みんなすまないがよろしく頼む。

ヒナ、氷川紗夜、たえ、こころ☆、奥沢:スタンプ(OK!)

 

 

まあこんな感じでメッセージアプリで彩のことを幼馴染たちに告げた。

 

「そういや腹減ったな・・・飯でも買いに行くか」

 

 

家に何もなかったのでコンビニに飯を買いに行く。夜だからリサはいねえけどまあいいだろう。しばらく歩きコンビニに入り適当な弁当を見繕ったところで見覚えのある姿を見つけた。向こうも同様のようで笑顔でこちらに近づいてきた。

 

 

「どうも、スタッフさんじゃないですか!」

 

「あ、どうも」

 

 

そこにいたのは今日のリリイベで厄介を追い返していた人だった。

せっかくなのでコンビニの前でコーヒーでも飲みながら話すことにした。

 

 

「こんなところで会うとは奇遇ですなあ~!スタッフさんならいいかな、自己紹介をいたしましょう。俺は楠文哉(くすのきふみや)といいます。パスパレはデビュー当時からのファンで彩ちゃん単推しです。改めてよろしくお願いします!」

 

「神剣奏也です。しかし丸山さんに対する愛がすごいですね」

 

「実は俺、かつてブラック企業に勤めていましてね。そりゃもうボロボロでしたよ。しかも上司に無理やり押し付けられた仕事で大きな失敗をしてしまって、俺だけのせいじゃないのに社内では俺だけ失敗者の邪魔者扱い。もう限界でした。そしてたまの休みも何もすることがなくて、なんとなくパスパレのデビューライブに行ったんですよ。しかしパスパレ躓いてしまった」

 

 

その話は日菜から聞いている。事務所の方針で口パク+エア演奏をやらされ、結果機材トラブルがおきそれがバレてしまったと。

 

 

「それをみた俺は思いました。この子たちも俺と同じだと。失敗してアイドルの世界から追い出される。でもそのあとです、世界が変わったのは。メンバーが街頭で、手渡しでチラシを撒いて、雨の日でも欠かさず撒いて・・・特に彩ちゃんは一生懸命でした。それをみた俺はこのままじゃいけないと思って仕事を辞め、今はちゃんとした会社で働いています。そのあとパスパレを・・・彩ちゃんを追い続け、その都度元気をもらってます」

 

 

楠さんは彩への愛をすごく熱弁する。

いやあ、これはすごい。次から次へと言葉が出てきている。

 

 

「しかし人気が出てきたのはいいのですが・・・最近マナーが悪いファンが増えてきてて・・・」

 

「厄介、というやつですか。それにあの年収5000万円の人、色々すごかったですね」

 

「彼はその筆頭ですね。どうやら株で一山あてたらしくものすごい羽振りがいいようです。しかし自分本位で他の人の迷惑を考えていない。ファンが迷惑をかけて問題が起こればパスパレにも影響するというのに・・・それがわからないみたいです」

 

「確かに色々発言がヤバめではありましたしね」

 

「それにこれ、奴のツイッターです」

 

「どれどれ・・・」

 

 

”せっかく彩に挨拶してやろうと思ったのにいつものジジイに邪魔された!”

”彩が俺の送ったネックレスを身に着けて楽しそうにしている姿を想像して抜いた”

”今日は彩に贈り物をしました!でも公の場で身に着けると俺との関係がバレちゃうから身に着けてくれないよー”

”カルピスを彩の聖水で割って飲みたい”

”今度に彩にもっといいものをプレゼントしてあげることにする”

 

 

やっっっっべええええええええええええええええええ!

なんじゃこりゃ、普通じゃない。普通じゃないよこんなの。

こんなん彩が見たらショック死しそうだ。厄介+変態って始末悪すぎんだろ!!

リプライ(返信)をみると批判する奴、賛同する変態が半々くらいだ。

ネットの世界ってこえーなあ・・・

 

 

「ひどいでしょう?こういうことをツイッターだけでなく一般人がいるところで平然と叫んだりしてるんです。こいつのせいでパスパレファンの品位が落ちるんですよ」

 

「なるほど・・・事務所にも報告しておきますよ」

 

「よろしくお願いします。・・・そろそろいい時間ですね、俺はこれで」

 

「ええ、では。これからも丸山彩の応援をお願いします。あなたのような純粋なファンなら大歓迎ですよ」

 

「ありがとうございます、では」

 

 

うーむ、世の中にはいろんな奴がいるんだなー(白目)

しかし思ったよりヤバい奴だ。警戒を強めたほうがいいかもしれないな。

 

 

 

 

「ねえなんで男の人が・・・?」ヒソヒソ

「でも結構カッコよくない?」ヒソヒソ

「でも校門の前で何を・・・」ヒソヒソ

 

 

うーむ、たいっへん居心地が悪い。俺は学校が終わった後、彩を迎えに花咲川の前に来ていた。ちょっと待ってて!と連絡を寄越した彩を待ち早20分。

一向に出てくる気配はない。そのため下校する子たちのヒソヒソ話の格好のネタと化している。

 

 

「奏也くーん!ごめんねえ~!」

 

 

やっとお出ましか。

 

 

ウソ、丸山さん?

え?彼氏??

うそーアイドルにスキャンダル!?

 

 

「ち、違うよみんな!この人は事務所の人で!!」

 

 

あたふたしながら彩が否定する。かわいい。彩はアドリブや不意打ちに弱いと日菜から聞いているが確かにその通りのようだ。

 

 

「う~・・・」

 

「ま、そういう日もあるわな」

 

「楽観的すぎだよぉ!」

 

 

さて、今日も一日お仕事だ。

 

 

 

 

「おはようございまーす!」

 

「お疲れ様っす」

 

「あ、丸山さん、神剣君・・・・」

 

 

事務所に入るとスタッフさんが浮かない顔をしている。

 

 

「どうかしたんですか?」

 

「あっと、その・・・」

 

 

目の前にあるのは箱。どうやら宅配便で送られてきたようだ。

差出人は・・・宮野健一?

 

 

「誰ですか?」

 

「宮野さん・・・あの、例のちょっと過激な」

 

 

・・・なるほど年収5000万円野郎か。

 

 

「今度は何を送ってきたんですか?」

 

「あ、丸山さん開けないほうが・・・!」

 

 

スタッフの静止する声はすでに遅く、彩は箱を開けてしまった。

普通はタレントの前に必ずチェックし、安全を確認してから存在を知らせるものだが、今回はタイミングが悪かった。

そして箱から出てきたのは・・・・女性用の下着だった。

センスは悪くないデザインであるがそれが熱狂的なファンからプレゼントで届くというのが異常性を際立たせている。彩の顔を見るとサイズも大体合っているようだ。

さらにご丁寧にお手紙付きだった。

 

 

”絶対彩に似合うと思う。でも俺たちの関係はヒミツだから俺にもらったなんて他の人に言っちゃダメだよ?次会うときに着けてきてね♡”

 

 

「彩、見なくていい。見なくて・・・・」

 

「う、うええええええんもうやだよぉ・・・・」

 

 

いくらファンといえどタレントを傷つけていい理由にはならない。彩はファンを大切にする姿勢を絶対に崩さない、強い意志を持つ子だった。

しかしさすがに限界が来てしまったのか彩は泣き出してしまった。

話を聞くとここまで過激なものは初めてだが予兆はちょくちょくあったらしい。

 

 

「彩、大丈夫だから。な?」

 

「奏也くうん・・・・」

 

「とりあえず彩を別室に。いったん状況を整理しましょう」

 

 

 

 

「こんなもんでどうでしょう?」

 

「神剣くん、本当にただの高校生?」

 

とりあえず俺が提案したこと。今後一切、こいつからのプレゼントは受け取らないこと。一度受け取ってしまうと返送が困難になる。受取を拒否すれば運送屋さんに負担はかけてしまうが少なくともこちらが受け取る義務はなくなる。

次にツイッターの話。かなりヤバいことをツイートしており、下着まで送ってくる異常性を鑑みるとストーカー規制法に触れるのは時間の問題なので、事務所は奴が起こしたアクションをこと細やかに記録して、警察へ被害届を出す準備を怠らないこと。証拠があれば動いてくれる確率は上がるからね。

そして彩本人の身の安全。事務所はこういったことに不慣れらしいので今まで通り俺が護衛することを買って出た。

 

 

「正直、助かるわ・・・社長には私から進言します」

 

「わかりました。それと、この厄介に詳しい人を知っています。その人にも話を聞いてみようと思います」

 

「わかりました。こんなことに巻き込んでしまって申し訳ありませんが引き続きよろしくお願いします」

 

「乗り掛かった舟ですよ。では」

 

 

 

「彩、帰るぞ」

 

「・・・ねえ、私、どこかで、間違ったのかな・・・・?」

 

「どういうことだ?」

 

「私の、あの人への対応とか・・・私ね、研究生時代が長くてずっと芽が出なくて。パスパレに選ばれなかったらアイドルやめるところだったんだ」

 

「そういえばそんな話を聞いたことあるな」

 

「でもパスパレで活動することができて、でも失敗しちゃって・・・それでも今はこうやって続けている。やっぱりそれはメンバーのみんなや、事務所の人たち、そして支えてきてくれたファンの人たちのおかげなんだ。だから私はファンを大切にする。でも・・・それがこんなことにつながっちゃって・・・・私のやり方、間違ってたのかなって」

 

 

目に涙をため、彩は言葉を吐く。

 

 

「らしくねえな」

 

「え?」

 

「彩は信念を持ってやってきたんだろ?ならそれを簡単に曲げたり、疑問を持っちゃダメだ。彩は悪くない。悪いのは宮野、ただそれだけの話だ。出会って間もない俺がいうのも何だが・・・俺は何事にも一生懸命でファンを大事にして、ちょっとドジで本番に弱くてアドリブにも弱くて不意打ちにも弱い丸山彩が好きだぜ?それが彩らしさ・・・個性であり彩にしかない魅力だ。彩、自分のこころに問いかけてみろよ。お前はどうしたい?」

 

「結構ひどくない!?でもそっか・・・私のこころ・・・そうだよね!」

 

「俺のできることだったらなんだってやってやるさ。まずはこれを乗り越えて・・・いつも通りやればいいさ」

 

「うん!なんか元気貰っちゃったね!」

 

「よし、帰るか」

 

 

 

「奏也くん・・・・その、今日はありがとうね」

 

「なんだよかしこまって」

 

「奏也くんが励ましてくれなかったらちょっとヤバかったかもなーって思って!日菜ちゃんは羨ましいな・・・こんな素敵な幼馴染がいて・・・

 

「ん?なんか言ったか?」

 

「なんでもない!当分護衛ってことは奏也くん、当分一緒に帰ってくれるんだよね?」

 

「まあそういうことになるか・・・今日みたいに勘違いされたらアレだしどっかで待ち合わせする方式に変えるか?」

 

「あー・・・確かにそのほうがいいかも。・・・勘違いは別にされちゃってもいいかも

 

「彩?」

 

「う、ううん!なんでもない!じゃあ、また明日からよろしくね!」

 

「ああ、じゃあな」

 

 

そうして彩は家の中に入っていった。

そして俺はすぐさまスマホを取り出し、ツイッターを開く。

教えてもらっていた楠さんのアカウントにダイレクトメッセージを送り、少し話を聞きたい旨を伝えると、OKの返事が来た。

 

 

 

 

待ち合わせのコンビニ。しかし約束の時間になっても楠さんは来なかった。

ツイッターを見る限り、結構な頻度でツイートしているのも止まってしまっている。

 

”何かありましたか?とりあえず店の中にいますね”

 

 

メッセージを送るが音沙汰がない。

結局約束の時間を30分過ぎても来なかった。

 

 

「仕方ないな」

 

 

”いったん帰ります。もし近くに来るようでしたら連絡をください”

 

 

そうメッセージを送り、俺は帰ったのであった。

そしてその夜、楠さんから返事が来ることはなかった。

 

 

 

「次のニュースです。昨晩、●●区の路上で会社員の楠文哉さん(31)が頭などから血を流しているのが発見されました。目撃者によると複数の男性に囲まれ集団で暴行を受けていたとのことで、病院に運ばれましたが意識不明の重体とのことです」

 

 

俺はそのニュースをみて朝飯のためにいれたミルクの入ったカップを床に落としてしまった。

 




ストーカーってヤバいですよね・・・
リサ編とは違ったヤバさをもったタイプで現実ではこちらの方がストーカーと呼ばれがちかと思います。

話の性質上の問題もありますが、変態幼馴染軍団の出番はほぼないって感じの試みをしているところです。
なーんなラブコメみたいになってますねーどうなることやら。
彩ちゃん可愛いからね、仕方ないね。
引き続きよろしくお願いします。


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第3話 アイドルってやっぱり●●NGだよね?

あれ?ルートが増えちゃったよ!


俺は学校をサボって病院に行き、楠さんのとことに向かった。

しかし楠さんは集中治療室におり、他人に襲われたこともあってか親族以外面会謝絶ということで追い返されてしまった。

仕方ない、楠さんは心配だが今は自分の力で調べるしかないか。

軽く調べたところによると楠さんは4人の男に襲われたらしい。警察の発表ではカツアゲがエスカレートした結果だろうということだが、それんしてはやり口が残虐すぎる気がする。

 

「とりあえず、彩の学校が終わるまで時間潰すか」

 

 

学校へ行けと思った諸君。すまんが俺は遅刻が大っ嫌いでな。

遅刻の文字が出席簿に刻まれるくらいなら欠席が刻まれた方がマシと考えるんだよな。わかる人いねえかな・・・いないか?

 

 

 

「奏也くん!お待たせ!」

「大して待ってねえさ。さ、いこうぜ」

 

あれから1週間、情報が少なすぎて蘭でも調べるのに難航しているらしい。

焦っても仕方ないので俺は当面の仕事である事務所の仕事と彩の護衛を続けていた。

いつも通り彩と待ち合わせして事務所に向かうのもすっかり慣れたモノだ。

他愛のない会話をするがそういえば最近彩との距離が近い気がする。

それだけ俺に気を許してくれているということなんだろうか?そういえば最近白鷺さんも軟化してきて、名前で呼ぶことを許してくれたりもした。”千聖さん”だけどな。

 

 

「それでねー、麻弥ちゃんったら・・・・ってあれ?」

「どうした彩・・・ってオイ」

 

 

見た先、目の前には進路をふさぐヤロウ4人。覆面レスラーが付けているようなマスクを装着している。

おいおいこんなん聞いてねえぞ。

 

 

「神剣奏也だな?」

「恨みはないがくたばってもらう」

「すまんな」

「とりあえずやっちゃおうぜ?」

 

 

うん、狙いは俺のようだ。なぜ狙われるか・・・そして4人の男、暴力・・・

 

 

「楠さんをやったのもテメエらか?」

 

 

俺は思っていた疑問を口にした。

 

 

「答える義理はないね」

「そうかよ。彩、一人で逃げろ。もうすぐ事務所だ」

「で、でも!」

「いいから。俺は大丈夫だ。それに・・・彩がいてもこいつら相手じゃ何もできない。いうことを聞いてくれ」

「・・・わかった!絶対無事でいてね!」タタッタ・・・

 

 

彩そうして走り去る。さて、ゲーム開始だな。

 

 

「いいぜ?かかってこいよ」

 

 

 

 

どうしよう、奏也くんが・・・!奏也くんが・・・!

とりあえず事務所にいって、警察に連絡して・・・それから・・・

 

 

「あ、彩!」

「え?」

 

 

名前を呼ばれてそこにいたのは・・・ストーカーの宮野さんだった。

 

 

「えっ・・・?うそ・・・どうして・・・?」

「だってさぁ~せっかくプレゼント送っても拒否されるからさ?直接持ってきたんだよ。みなまでいうな、わかってるよ。本当はほしいのに事務所の圧力で止められてんだろ?ま、俺みたいな一般男性と付き合うと大変だよな~」

 

 

この人・・・何をいってるの?

 

 

「え・・・?あの・・・意味がよく」

「おいおいおいおいおい、今はいつも一緒にいるスタッフもいねえし隠す必要はないだろ?せっかくカレシがプレゼント持って会いに来てるんだからよーちょっとは喜べって」

 

 

これは・・・明らかにまずい。あ、そうだ!奏也くんに持たされてるボイスレコーダー!万一奴が接触を持ってきたら証拠になるから回せって・・・・

 

 

カチッ

 

 

「そんな・・・!私にお付き合いしてる人なんていません!それにその・・・・いい加減付きまとうのもやめてください!事務所の人も、メンバーも、そして私も・・・!みんな迷惑してます!」

 

そして続ける。

よし、言えた。今までは一方的な贈り物してきただけで言葉をぶつけることはなかったけ、さすがに直接言えば・・・

 

 

「そっか・・・まあ付き合ってればケンカの一つもあるよな。うん、恋人らしくていいじゃないか!俺は受け止めてやんよ!」

 

 

全く通じてなかった・・・・・

 

 

「事務所からそういえって言われてるんだね・・・可哀そうに。大丈夫、俺が解放してあげるよ。彩、一緒に逃げよ?」

 

 

私はあなたから解放されたいよ。

 

 

「いや・・・こないで・・・!」

「嫌よ嫌よもスキのうちってか~?ホラホラ、今日はいいディナーとホテル予約してあるんだ。彩がみたこともないようなすごいごちそうも沢山だよ?」

 

 

ジリジリと近づき、目をギラギラさせながら近づてくる。

こわい・・・足が震えて・・・動けない・・・

 

 

「やめてえ!奏也くん、たすけてえ!」

「奏也くん・・・?ああ、あのスタッフか。あいつなら今頃ボコボコだよ」

「え・・・?まさかさっきの4人はあなたが・・・!?」

「いつも突っかかってきたオッサンも黙らせたし、あのスタッフもいずれそうなる」

「そ、そんな・・・・」

 

 

もう、ダメなの・・・?おわりなのかなあ・・・・・

さらにジリジリと・・・そして背中には塀が。逃げ場をなくした私は腰が抜け、その場に座り込んでしまった。

 

 

「よお、待たせたな」

「なにぃ!?」

「奏也くん・・・!」

 

 

そこに現れたのは傷一つない奏也くんの姿だった。

 

 

 

 

死ぬほど弱い4人をボコボコにしたあと、覆面と服を剝いで免許証を奪った後、とりあえず手あたり次第全裸写真を撮影してやった。

こいつらのせいで俺のデータフォルダがクッソ汚い野郎の全裸写真で温まるってどんな罰ゲームだよ。

 

 

「さあて、色々と詳しい話を聞かせてもらわなきゃな~」

「ヒィィィィ!やめてくれ~」

「あ゛あ゛!?自分がやられた時だけ調子のいいこといってんじゃねーぞ!?」

「頼まれただけなんだよ~」

「頼まれた・・・・?おい、そいつはまさか」

 

 

 

”奏也くん、たすけてえ!”

 

 

 

今の声は・・・彩?

そう遠くないとこから聞こえた悲鳴に即座に反応した俺は頭の中で優先順位を組み立て、行動に移した。

 

 

「チッ・・・今は見逃してやる。その汚ねえチ〇コしまってとっとと消えやがれ!」

「あわわわわわわ」

 

 

それで退却していった奴らだったが、とりあえず名前とかわかってる、あとで”うっかり手を滑らせて”ネットにやつらの恥ずかしい写真をUPしてやろう。

 

 

「くだらねえこと考えてる場合じゃなかった。いかなきゃ」

 

 

 

俺は走り、そこで見たものは彩を壁際に追い詰め、クッソ汚いしたり顔をしている宮野の姿であった。

さて、いくか。

 

 

「よお、待たせたな」

「なにぃ!?」

「奏也くん・・・!」

「な、なぜお前が!?あいつらは何をしている!?」

「ほぉ~・・・やっぱりあいつらはてめえの差し金かよ。ちょっと遊んでやったら急にストリップ初めて逃げてったぜ?変態の雇い主は変態ってところかよ」

 

 

まあストリップさせたのは俺なんだがな。とりあえずこれで全部こいつの仕業というのがわかったな。

 

 

「貴様ァ・・・!貴様か!事務所の奴らに余計な知恵をつけて・・・彩とずっといやがって・・・!許さん、許さんぞぉ・・・」

「別に許してもらおうなんて思っちゃいないさ。とりあえずどうする?俺とも遊ぶか?」

「スタッフがファンにこんなことをやってもいいのかよ!?」

「都合のいい時だけスタッフだのファンだのいってんじゃねえぞコラ。それに俺は正規のスタッフでもねえ。この意味、わかるよな?んで?どうすんだよ、俺と遊ぶのか?遊ばないのか?」

「く・・・くっそぉぉぉぉぉぉ!覚えてろぉぉぉぉぉ!」

 

 

そして宮野は捨てセリフを吐いて走り去っていった。

 

 

「うええええええん・・・怖かったよぉぉぉぉ・・・」

「ごめんな、もうちょっと安全を考えるべきだった」

「ううん、奏也くんは悪くないの・・・・!」

「とにかく、彩が無事でよかったよ。とりあえず事務所へいこう」

「うん、あの・・・えっと・・・」

 

 

彩がモジモジして立ち上がらない。

 

 

「どうかしたか?」

「あの・・・腰が抜けちゃって・・・立てないの///」

 

 

 

 

「あの、奏也くん。私・・・重くない?」

「んーわっかんね。力には結構自信あるし普段稽古してるからなー」

「そこは重くないって返すところだよー!」

「(女心がわからなくて)すまんな」

 

 

彩をおぶって事務所へ向かう。せいぜい5,6分の距離であるが彩が歩けないのだから仕方ない。

 

 

「しかしついに直接来やがったな・・・彩。疲れてるところ悪いが事務所に言って警察に被害届を出す方面で話をしよう。警察が受理すれば警告や逮捕まで持っていけるしな」

「奏也くん、本当になんでも知ってるんだね、すごい・・・それにさっきの奏也くん、なんかすごくなんていうか・・・カッコ・・・うー・・・なんかわかんなくなってきたあ・・・」

 

 

なんか背負ってる彩の体温が上がっている気がする。

まあ暑いしね、仕方ないね。

 

 

「よし、事務所についたぞ」

「え、もう着いちゃったんだあ・・・」

「なんで残念そうなんだよ」

「・・・!なんでもない!//」

 

 

よくわからんがまあええか。事務所に入るとパスパレのみんなもスタッフもそろっているようだった。

 

 

 

 

事務所で話をして今後の方針を決める。話を聞くところによるとプレゼントはすべて止めたが事務所に無言電話や意味不明なクレームの電話、中にはものっすごいお下品な言葉を並べるものもあるらしい。メールフォームもそういう系統でいっぱいでになってしまっていると。

 

 

「ふむ。これだけあれば被害届行けそうですね。彩、ボイレコは?」

「はい、これだよ」

 

 

そしてボイレコを受け取って再生する。

それをその場にいる全員で聴くと全員が顔をしかめた。

 

 

「なにこれ・・・・!ひどい!勝手すぎるよ!」

「ええ・・・彩ちゃん、よく耐えたわね。えらいわ」

「ファンの方は大切ですが、これはおかしいです!」

「ですね~ちょっと目に余るっすね」

 

 

パスパレメンバーもドン引きの様子だ。

そりゃこの内容を聞いたら誰だってそうだろう。一方的に付き合っていると思い込んでキモチワリィ言葉をつらつらと並べる。

彩も一人でよく頑張って耐えたものだと思う。

 

 

「では、被害届を出す方向で社長に話をします。神剣君・・・もう社員になっちゃわない?」

「冗談はよしこちゃんですけど被害届を出す方向でいいと思います」

「ネタが古いよ奏也くん・・・」

 

 

そんなやり取りののち、社長さんからはすぐにGOサインがでた。

行動は早いほうがいいということで、すぐに行くことになった。

そしてなぜか俺が主導になって警察に話をし、手続きも手伝う羽目になったのであるが。

 

 

 

 

「警察、うまくいってよかったな」

「うん、ほんとありがとうね!」

 

 

あのあと、警察は被害届を受理してくれて、これだけ証拠がそろっているならすぐにでも署長名義で警告を出してくれるということであった。

一歩進んだことで私は心が軽くなっていた。

でもストーカー対策をしたということはもう奏也くんと二人きりで帰ったり、学校の後仕事に行ったりできなくなるってことなのかなあ・・・・

ってアレ!?なんで私こんなこと考えてるの!?

 

 

「これでひと段落だな。まだ油断はできんが」

「そ、そうだよね」

「もうちょっと今まで通りのほうがいいか?「うん!おねがい!」

「うお!?ビビった!」

 

 

思わず大声が出て顔が赤くなっちゃう。

でもその申し出はすごく魅力的で食いついてしまった。

 

 

「家についたな。とりあえず今日はゆっくり休めよ」

「うん、ほんと色々ありがと!」

 

 

別れたくない。もっと一緒にいたい。

 

 

「奏也くん!」

「ん?なんだ?」

 

 

特に用事もなく呼んでしまう。そしてそれに反応する奏也くんの顔を見ると心が跳ねるのが自覚できてしまった。

これって、そういうことなのかな・・・

 

 

「なんでもない!じゃあ、おやすみ!」

「ああ。お休み、彩」

 

 

私の長い長い一日は終わったのでした。

 

 

 

諸々あった日の夜。奏也から事後報告を受けた。

まあ奏也一人でもやれたようであたしも安心だ。まあ今回は私が表立って動けないから奏也に任せるしかないってのもあるけどね。

そんなことを考えていたら彩ちゃんからメッセージが届いた。

 

Aya:ねえ日菜ちゃん

ヒナ:んー?どうしたの彩ちゃん?

Aya:アイドルってやっぱり恋愛NGだよね・・・・?

 

 

なんかるるるるんっ♪ってきた!これは面白いことになりそうかも!!

あれ・・・でもなんか最近そんな話を聞いたような・・・

ま、いっか!明日彩ちゃんと話すの楽しみだなー!

 

 

 

「警告だとおおおおおお・・・・?なぜだ?彩、なぜだああああああ・・・・彩あああああああああ・・・・おのれ、おのれ神剣奏也ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!許さん、俺の邪魔をする神剣奏也も、付き合っているくせに事務所の言いなりになって俺を拒否する彩も・・・・許さん許さんぞおおおおおおおおおおオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア・・・・いや、いい。彩。俺が、俺がその呪縛から解き放ってあげるね。クックック・・・クフッ・・・ブヒッ・・・・ふひゃ・・・あーっはっはっはっはっは!」

 

 

とまあこんな感じで狂った笑いが響いていることなど、この時の俺も、彩も知る由はなかった。

 




狂ったやつ書くのって楽しい・・・・(トリップ
ここまで鈍感って奏也くん大丈夫なんですかね?
リサといい女難の相が見えてこないか若干心配ですねえ・・・これは


引き続きよろしくお願いします!

お気に入り、評価は本当に励みになるので気が向いたらよろしくお願いします!


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第4話 偶然(偶然とは言っていない)

警察より事務所に宮野に警告を与えたことが告知されてから1週間。あれから気味の悪いプレゼントやストーカー行為は鳴りを鎮めていた。

しかしまだ1週間。まだ油断はできないので俺は相変わらず彩の送り迎えは続けていた。しかし今まで抱えてたストレスを感じなくなったのか彩は明らかに笑顔が増えてるし、メンバーも胸のつっかえがとれた感じになっている。スタッフも悩みの種だった宮野がおとなしくなり仕事が進んでいるようだ。

 

 

「どうだ、彩。あれから周りで変わったことや変なことはないか?」

 

「全然!なにもなくて気味が悪いくらいだよ(笑)」

 

「何もないのはよいことだ。警察の警告が効いているみたいで何よりだな」

 

 

そのまま他愛のない話をしながら進む。しかし今日はいい天気だな。漠然と、なにかいいことが起こる予感がする。

 

 

「おーい!彩ちゃーん!奏也ー!」

 

 

・・・前言撤回。俺は目線の先にある騒がしい天才幼馴染の姿を見て、ものすっごく嫌な予感を抱えたのであった。

 

 

 

 

 

彩ちゃんのストーカー事件がひと段落したあの夜、彩ちゃんが突然言い放った「アイドルって恋愛NGなのかな?」って言葉。

これってやっぱそーゆーことだよねえ?

ま、奏也って普通に見たらカッコイイ部類だと思うし、それに女の子って守られるってことに弱い子多いから自分の日常を脅かしていた存在を退治したってのはすっごく大きい要素だと思う。

あたしは奏也を「男の子」「友達」ってより恋愛がないだけの言葉にできない深い関係って・・・言ってしまえば「深友」いう認識だ。あたし(っていうか筆者)の造語だけど、親友以上恋人未満って感じの意味かなあ。

だから今さらどうとも思わないけど、彩ちゃんみたいな子は今回のことでコロっと好きになっちゃっても仕方ないのかもね。

うーん、すっごくるるるんっ♪って感じ!それに奏也、今まで浮いた話聞いたことなかったからもしかして彩ちゃんが人生初の彼女になったりするのかな?

当然、お忍びになるだろうけどね。

そんなことを次の日に彩ちゃんに話したら彩ちゃんは顔を真っ赤にして否定してたけど、わかりやすすぎて面白かったよ!

うまくいくと嬉しいなあ。奏也と彩ちゃん、大好きな人同士がくっついたらあたしもうれしいし。

 

 

「っと。そんなこと考えてたら」

 

 

見つけたのは彩ちゃんと奏也。後ろから見ると結構いい感じじゃない?

特に彩ちゃんはすっごく楽しそう。あんな姿見せつけられたら否定に説得力なんてないよ?

 

 

「しかしなー」

 

 

そう、肝心の奏也はなんていうか・・・完全にいつも通りって感じ。

彩ちゃんすごく頑張ってるの後ろから見ててもわかる。でも奏也は言動も、表情も、完全にフツーだ。

仕方ない・・・ここはあたしがいきますかー

 

 

「おーい!彩ちゃーん!奏也ー!」

 

 

後ろから二人を呼ぶ。すると同時に振り返り、彩ちゃんは友達に会った時の顔をし、奏也は・・・露骨に嫌そうな顔をした

 

 

「げっ日菜!」

 

「げっ!ってなにさー」

 

「いやー今日って天気いいじゃん?なんかいいことありそうだなーって漠然と考えてたんだけどさ」

 

「へー奏也ってそんなロマンチストだっけ?」

 

「んなことねえよ。そしたら日菜が現れたからよ。俺の勘は外れたなーと」

 

「ふーん・・・ってどういうこと!?」

 

 

結構強めの力で奏也を小突く。痛い痛いといいつつ奏也には効いていないようだった。

 

 

「てっきりあたしはせっかく彩ちゃんとの放課後デート気分なのに邪魔されて怒ったのかと思ったよ」

 

 

ここで軽いジャブを打つ。さて、ふたりはどんな反応をするのかな??

 

 

「ひ、日菜ちゃん・・・そんな、で、デートなんて・・・!」

 

 

うわー彩ちゃんわかりやすい!火を見るより明らかとはこのことだね。

 

 

「そうだぞ日菜。事務所に向かうだけでデートもクソもねえし、俺みたいなのとそんな風に見られたら彩に悪いぞ。なあ、彩?」

 

「え!?あ、私!?えっと・・・その・・・まあアイドルとしては・・・うん・・・別にいいのに・・・

 

 

ニッッッッッッッッッブ!鈍いとかそんなレベルじゃねえ!・・・っと驚きすぎて奏也みたいな口ぶりになっちゃった。

あたしのジャブを受けた彩ちゃんをみてその反応かあ!これは想像以上だなあ・・・

でも、前々から考えてたけど奏也がこうなったのってある意味あたしたち幼馴染のせいかもしれないしなあ・・・多分奏也の女性観はあたしたちが元になって形成されているんだと思う。ずっと昔からあたしたちと距離感ゼロで接してきたから女の子と接することに抵抗がないうえに感覚がマヒしてるんだろうね。近すぎたが故の弊害かー。うーん、今になってそれが影響してくるとはなあ

 

 

「ふーん。ま、いいや。これから事務所でしょ?あたしも一緒していい?」

 

「うん!(構わんぞ)」

 

「あはは、息ぴったりだねー。じゃ、行こっか!」

 

 

 

 

「と、いうわけで今週の日曜日は完全にオフになります。みなさんゆっくり休んでください。特に丸山さん。あのことが解決しても仕事が続いて休む暇なかったでしょう?ゆっくり羽を伸ばしてくださいね!」

 

 

練習が終わった後、スタッフさんからそんな告知がされた。

 

 

「久々の日曜オフね。久しぶりに花音とお茶にでも行こうかしら」

「ジブンはずっと前から行きたかった楽器屋さんに行くッス!」

「ワタシはツグミさんとおでかけです!」

 

 

各々予定を立てているようで嬉しそうだった。

私は特に何もないなー・・・

お、思い切って奏也くんを遊びに誘ってみったり・・・うー!ムリムリ!そんな度胸ないよぉ~・・・

 

 

「ねえ、彩ちゃん!」

 

「うわっ!?日菜ちゃん!?」

 

 

そんなことを考えていたら日菜ちゃんが話をかけてきた。

すごくニコニコしてて嬉しそう。これが日菜ちゃん流にいうるんっ♪ってやつなのかな?

 

 

「あはは、日菜ちゃん驚きすぎー!それでね、次の日曜日、奏也と買い物行こうって話してたんだけどさ」

 

あ、そうなんだ・・・

日菜ちゃん奏也くんはそういうのじゃないってわかってるんだけどやっぱちょっと妬けちゃうな・・・

 

 

「そんな露骨に落ち込んだ顔しないでよー」

 

「え!?そ、ソンナコトナイヨ?」

 

「あはは、棒読み!それでね、彩ちゃんも一緒に来ない?って思っ「絶対いく!!!!!!!」

 

 

日菜ちゃーん!!!!

今日ほど日菜ちゃんが輝いて見えた日はないよー!

 

 

「すごい反応速度だね!じゃあ決まりで。あとでグループ作るから、そこでどこ行くか話そ!」

 

 

何気にいつもの送迎デート以外で初めてのおでかけ。日菜ちゃんも一緒だけど、いきなり二人はハードルが高いからちょうどいいかもしれない。

うーん、すごく楽しみだよー!

 

 

 

 

「あれ?奏也?」

 

「リサじゃないか。今日は友希那さんと一緒なんだな」

 

 

彩たちとの待ち合わせに向かう途中、俺はリサと友希那さんに会った。

 

 

「二人はお出かけか?」

 

「うん!友希那と買い物に行くんだ!」

 

「へーデートかよ。羨ましいな」

 

「女の子同士でデートも何もないわ。・・・そういう奏也くんはこんな日曜の朝から何をしているのかしら?よかったら一緒にいく?そうすればリサも喜ぶし」

 

「友希那!?」

 

 

友希那さんのお誘いに対し、リサがなぜかあたふたする。

そういやリサって結構友希那さんにあたふたさせられている場面が多い気がする。

意味まではわからないが。

 

 

「よくわからんがすまんな。今日は俺も出かける用事があるんだ」

 

「相変わらず鈍いわ・・・でもそういうことなら仕方ないわね」

 

「そ、そうだよ!奏也にだって予定があるし!」

 

「ちなみに誰とどこへいくのかしら?」

 

「いやに食いついてくるな・・・ま、リサと友希那さんならいいか。日菜と彩と買い物に行くんだよ」

 

「彩!?」

 

「どうしたリサ?」

 

「彩ってあの彩?パスパレの?」

 

「あ、そっかリサは知らないんだったな。今俺、パスパレの事務所の手伝いしててな。一応、彩担当で色々サポートしてるんだ」

 

 

嘘は言ってないな。一応ストーカー事件はオフレコ扱いだし。

 

 

「んで最近大きい仕事がひと段落してな。久々の日曜休みってんで遊びに誘われたわけだ」

 

 

日菜に、だけどな。

 

 

「思わぬ伏兵がいたわね・・・」

 

「友希那あ・・・・って違う!ふ、ふーんそうなんだ!まあ、楽しんできてよ!」

 

「・・・・?ああ。まあちょっとショッピングモールに行って買い物するだけだからそんな大したものんじゃないよ」

 

「世間一般ではそれはデートって言うんじゃ・・・」

 

「おっと時間がマズイ。じゃあ、俺は行くから二人もせっかくの休日、楽しめよ!」

 

 

 

 

「・・・リサ、大丈夫?」

 

「・・・はっ!大丈夫大丈夫!奏也だって色々交友関係あるし、日菜も一緒なんでしょ?そんな深く考えることないって!」

 

「・・・・無理してるのバレバレよ。何年親友やってると思ってるの?」

 

「う、友希那あ・・・」

 

「ショッピングモールに行くって言ってたわね」

 

「あ、そういえばアタシたちがいくのも」

 

「・・・偶然よ、偶然目的地が一緒で、偶然後ろを歩くだけよ」

 

 

もっともらしい言い訳をして友希那は笑った。

えーこれってアリなのかなあ・・・・

でもアタシも気になるし・・・

 

 

「うん、偶然、偶然だよね!」

 

「覚悟を決めなさい、リサ」

 

 

そういって歩みを進める。

 

しかしそこで見たものは・・・

 

 

キイイイイイイイイイイイイイ

 

 

「彩あー!」

 

「えっ!?」

 

 

ドガッ!!!!

 

 

「奏也くーん!!!!」

 

「オラ、車に乗れ!」

「オイ、奴の携帯が」

「んなもん捨てとけ!」

 

「いやだぁ!はなしてよぉ!奏也くーん!目を開けてえ!」

 

「うるせえ!おい、早く出せ!」

 

 

ブロロロロロロロ

 

 

奏也と彩に突っ込む車。

そして彩をかばい車にはねられる奏也。

そして・・・二人を連れ去った車が去ったあとには奏也のスマホだけが取り残されていた。

 




お気に入り50件突破ありがとうございます!
ニッチな作品なので正直1桁も覚悟してたのですが、思っていたより多くの方に読んでいただけているようでうれしいです。

励みになるので、もしまだという方はぜひどうぞ!


複数ヒロインとなるこれらの話を書くためだけに、あまり接点のなかったギャルゲーをいくつかプレイしましたが、案外面白いのですね。
話の進め方など色々参考になります。

次回、丸山彩編終了です。

引き続きよろしくお願いします!


●評価のお礼●

OZU☆さん
★3評価ありがとうございます!まだまだ精進します!


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第5話 武器が無いならとってしまえばいいじゃない?

「よう、彩。待たせたな」

「あ、奏也くん!」

 

 

約束した時間の10分前。ショッピングモールに向かう途中、俺と彩と日菜の家から向かう途中にちょうど合流できるT字路がある。

どっかの広場に行くより効率はいいし、現地集合にすると人は多いしで地元民ならえはの待ち合わせ場所といったところか。

 

 

「日菜は?」

「まだ来てないみたい」prrrr

 

 

と思ったら彩の携帯が鳴った。

離しを聞く限り電話の相手は日菜のようだ。

 

 

「えっ!?えー・・・うん、そ、そんな・・・///」

 

 

なにやら話しているが彩が何やら困惑している。

 

 

「どうした?」

「え!?あー・・・えっと、日菜ちゃん遅刻するから先に行ってて!」

「なに?家もそう遠くないしなら日菜を迎えに・・・・」

「あー!大丈夫!!寝起きだからってまだ何もしてないんだって!!」

 

 

ものすごく焦った様子で彩がいう。

まあ彩は優しいから日菜に気を使っているんだろう。

 

 

「そういうことなら仕方ない、とりあえず二人でいくか」

「う、うん!」

 

 

こうして二人で歩みを進める。

 

 

「そういえば、今日イベントスペースでなんかやるみたいだぞ」

「え?そうなの?どこ情報?」

「えっとだな・・・」

 

 

俺は自身のスマホを取り出し昨日見た該当ページを彩に見せる。

 

 

「これだな」

「へー・・・ってこれPoppin's Party!」

「そ。おたえから見に来てくれって言われてな。ちょうどよかったよ」

 

 

そう。日菜から誘いがあったと同時におたえからもお誘いがあった。

なんでもポピパがをショッピングモールのイベントスペースで行われるバンドフェスに出演するというのだ。

幼馴染としては観に行かない手はなかったので、日菜の誘いに便乗して観に行くことを決めた次第だ。

 

 

「さて、もうちょっと歩かねばならんが・・・・はっ!?」

「どうしたの奏也く・・・ええ?」

 

 

驚く目線の先。そこには道路幅約5mのこの道にそぐわないスピードで走ってくる車であった。

 

 

「あの助手席にいるのは・・・・宮野!!」

 

 

 

 

 

 

「キェアアアアアアアアアアアア死ねええええええええええええ神剣奏也ああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

まずい、思いっきりこちらに突っ込んでくる。

こうなれば・・・・

 

「彩あー!」

「えっ!?」

 

 

ドカッ!

 

 

畜生・・・あの野郎マジで撥ねやがった・・・・・!

俺は空中に舞いながら彩が車にぶつかっていないことを確認し受け身の準備に取り掛かったのだが・・・思いの他飛距離があり、受け身をとる前にブロック塀にぶつかってしまい、地面へと落下してしまった。

 

 

「ぐぉ・・・・!」

 

 

そのままの勢いで地面にたたきつけられ衝撃を受ける。

やっべ、背中を打っちまって体に力が入んねえ・・・

車で突っ込んでくるなんてなんてムチャしやがるんだバカヤロウ野郎・・・

そして目がかすむがその先に俺は・・・リサと友希那さんがおびえた顔でこちらをうかがっているのが見えた。

 

 

「オラ、車に乗れ!」

「オイ、奴の携帯が」

「んなもん捨てとけ!」

 

 

奴らもリサたちに見られたことを自覚したのか焦り始めた。

いけねえ、言葉が出ないし体がいてえ。

これはもう拉致られるのは避けられないだろう。

だとしたら下手に意識があるとどんな目に遭わされるかわからん・・・意識を失ったふりをしておこう。まずは体の痛みを引かせ、動けるようになるのを最優先にせねば。

そして俺は渾身の力を振り絞り、自らの持つスマホを力いっぱいリサたちのいる方向へ投げた。

 

 

「いやだぁ!はなしてよぉ!奏也くーん!目を開けてえ!」

 

 

彩、ワリィな、起きてんだけど今は耐えてくれ。

 

 

「うるせえ!おい、早く出せ!」

 

 

そして宮野の掛け声とともに車が出発したのであった。

つまるところ俺と彩は、宮野率いる野郎どもに拉致されてしまったのであった。

 

 

 

 

私たちをさらったワンボックス車に乗るのは運転手に一人、助手席に宮野さん。そして後部座席に私、奏也くん、そしてもう4人。

 

 

   前

宮野  運転手

男  奏也  男

男  彩   男

 

 

こんな感じだ。依然として奏也くんは目を覚ます気配はない。

 

 

「ありゃりゃーもしかして死んじまったかぁ~?貧弱な野郎だぜ」

 

 

宮野さんはクックックと笑うと楽しそうにそういった。

 

 

「な、なんでこんなことを・・・・」

「あー彩。待たせたねえ・・・・助けに来たよ?この男と、事務所と・・・すべてのしがらみから逃げて俺と一緒になろ?」

「そんな・・・あなたには警告が・・・!」

「警告・・・?あー警告ねえ。あったねそういえば。大丈夫!事務所と神剣奏也に言われて無理やり、嫌々なのに被害届出されたんでしょ?俺はわかってるから大丈夫だよ!」

 

 

なにもわかってない・・・・

正直楽観視しすぎていた。もう大丈夫だろうと・・・でも甘かったんだ。

私のせいで奏也くんがこんな目に・・・

 

 

「ごめん・・・ごめんねえ・・・・・」ポロポロ

 

 

涙が止まらない。私はこれからどうなっちゃうんだろ・・・

 

 

「ありゃりゃ、彩ったら泣き出しちゃったよ。おい、とりあえずアイマスクをつけて差し上げろ!さて彩。これから俺たち二人が一つになるわけだが・・・その前に大事な儀式があるんだ」

「儀式・・・?」

 

 

アイマスクをつけられた私は問い返す。

 

 

「そ。君の目の前で神剣奏也を殺す。そうすれば君を縛る鎖は切れ、俺たちを邪魔するものは減る。最高だろう?今向かっているのはその会場さ!大丈夫!この日のために買っておいた廃工場だから誰も邪魔しないよ!」

「やめてええええええええええええ」

 

 

 

 

 

うーむ。好き放題言ってくれやがる。

しかし俺も甘かった。警告くらいで安心していたがそうはイカの金太郎アメ。

まさか車で突っ込んでくるムチャやりやがるなんて予想だにしなかった。

俺を殺すだの物騒なことを申しているがそう簡単にやられてたまるかよ。

おっとこれは死亡フラグか?

そんなことを考えていると車は廃工場へ到着し、俺たちは降ろされた。

 

 

「オラァ」

 

 

俺と彩は廃工場にの地面に降ろされた。

畜生、乱暴に投げやがって・・・けが人をもっと労われっての。

 

 

「おい、縛るもんもってこい!」

 

 

宮野の声が鳴り響くと、周りにいた男・・・さっきの車の5人がロープを持ってこちらへ歩んでくるのが分かった。

 

 

 

 

車から下ろされ乱暴に扱われる。奏也くんは相変わらず目を覚まさない。

どうすればいいんだろう。もう、私ダメなのかな・・・・

 

 

「よし、まずは彩から縛れ」

 

 

その言葉を聞き、私は思わずポケットに手を入れてしまう。

・・・・これは。そうだこれは・・・!

そういえばあの時!奏也くんは・・・・!

 

「おい、ポケットから手を出せ!」

 

 

男の人が無理やり私の手をポケットから出すとあることが起きた

 

 

 

ピピピピピピピピピピピピピピピピピ!

 

 

 

けたたましい音が鳴り響き、相手は驚く。

そう、いつでもならせるようにとポケットに入れるのが癖になっていた奏也くんお手製の防犯ブザー。それの栓が抜けたのだ。

そして私は思い出した。奏也くんはなぜか必死になって自分のスマホを投げていた。そしてその先にはリサちゃんたちがいたような気がする。

そうだ、奏也くんがああしたのは、私がこれに気づくことに賭けてたんだ!

私がこれを鳴らせば奏也くんのスマホには緊急連絡のアラームとGPSによる位置情報が送られるっていってたから、リサちゃんから誰かの手に渡れば・・・

 

 

「おい!なんだこれは!防犯ブザー!?うるせえ!ぶっ壊せ!」

 

 

バキッ!

 

 

しかしすぐに壊されてしまった。

お願い、今ので誰か気づいて!

私はそう祈るばかりでした。

 

 

 

 

「あーもしもし?彩ちゃん?」

「日菜ちゃん?どうしたの?待ち合わせ、もうすぐだよ?」

 

 

奏也と彩ちゃんと出かける当日、待ち合わせまであと10分。

でもあたしは起きたばかりだ。

つまるところ完全に寝坊したってわけだね。あはは・・・

 

 

「ごっめーん寝坊しちゃってさー。遅れていくから奏也と先に行っててくれない?それにぃ~二人きりでデートするチャンスだよ~?」

「えっ!?えー・・・うん、そ、そんな・・・///」

「できるだけ遅れていくからさ!じゃ。また後でね!」ピッ

 

 

まあこうなっては仕方ないよね。今は9時50分。ゆっくり準備してお昼ごろにはいくかな~

彩ちゃん、楽しんでくれるといいな。

その後朝ご飯を軽くため、お出かけするために着替えて、お化粧をしていた。

んーもうちょっとゆっくりしたらさすがに出かけようかな~

 

 

ピンポーン!

 

 

ってことを考えていたらインターホンが鳴る。

そういえばおとーさんとおかーさんは二人でお出かけ。おねーちゃんは一日弓道の稽古があるって言ってて、あたししか家にいないんだった。

はいはい、今でますよっと

 

 

「はーい?」

「あ、ヒナ!紗夜、いる??」

 

 

そこにいたのはリサちーと友希那ちゃんだった。

 

 

「おねーちゃんは今日一日弓道に稽古って言ってたよ?近頃顔を出せてないから今日は一日集中するんだって」

 

 

「道理で電話に出ないわけね・・・」

 

 

なんだかリサちーも友希那ちゃんもただならぬ様子。

ちょっと聞いてみようかな。

 

 

「そんなに焦ってどうしたの?」

「えっと・・・その・・・!」

「リサ。日菜にも聞いてもらいましょう」

「そうだね!実は奏也が・・・奏也が・・・!」

 

 

そこで聞いた話。それを聞いた私は血の気が引く音が聞こえた。

おそらくそんなことをするのはあのストーカーさんだ。警告くらいじゃ引かなかったってことだね。

そして奏也が車に撥ねられ連れ去られたということ。さすがの奏也でも車相手だと厳しいんじゃないかなって。

リサちーはおねーちゃんの強さを知っている。気が動転してそのことを思い出し、真っ先にあたしの家に来ちゃったということだね。

 

 

「リサちー・・・場所は?」

「えっと・・・」pppppppppp

 

 

 

するとリサちーのカバンの中から音が鳴り響く。

 

 

「これは・・・奏也のスマホ・・・?」

「・・・・!!ちょっと貸して!」

 

 

リサちーからひったくるようにスマホを受け取ると、そこには「緊急事態 丸山彩」というアラームの文字とともにマップが表示されていた。

ここから車で30分くらいいったところにある廃工場のようだ。

 

「リサちー。友希那ちゃん。ふたりは警察と消防に連絡して救急車を手配して。場所はここ」

「・・・ええ、わかったわ」

「ヒナは・・・?」

 

 

リサちーに聞かれてあたしは深呼吸し、顔を上げる。

 

 

「あたしは・・・先に行く」

 

 

そして二人の返事を聞かず、あたしはタクシーを拾いそしてその廃工場へと向かったのだった。

こんなの・・・・こんなのぜんっっっっっっぜん!るんっってしないよ。

彩ちゃんに奏也。あたしの大好きな二人にひどいことをするなんて。あたしは絶対に許さない。

 

 

「待っててね、奏也、彩ちゃん・・・・!」

 

 

 

 

「やっと・・・気づいてくれたか」

「奏也くん!」

 

 

防犯ブザーの音とともに俺は口を開く。

 

 

「しかしワリィな・・・体の節々が痛くってよ・・・あんま動けねーんだわこれが」

「ううん、よかった・・・目を覚まして」

 

 

彩は俺がしゃべるのをみて安心したようだ。目には涙が浮かび笑ってくれた。

余計な心配をかけてすまなかったという思いがある。

 

 

「おい彩ァ・・・なんでそんな奴にそんな嬉しそうな顔をする・・・なんでそんなに奴の名前を呼ぶ・・・彩は俺だけの・・・俺だけのものなんだ・・・・」

 

 

ゆらゆらと宮野は彩に近づく。正直体の痛みがまだとれていないが相手は宮野含め車に乗っていた6人。そしてこの工場に待機していた4人。さらに外の見張りは2人。合計12人。いけるか・・・?

 

 

「彩は俺だけを見ていればいいんだ。くだらない事務所とのしがらみも、神剣奏也も必要ない!俺が!俺だけがいればいい!俺が彩を娶って彩と幸せな家庭を築いて彩の髪をなでて彩の胸に飛び込んで彩の唇を奪って彩の処女も俺が!ねえ彩?子供は何人ほしい?俺は3人くらいかなあ。あ、それと新婚旅行はどこ行こうか?外国でもどこでも好きに連れて行ってあげるよ・・・子供は成績にこだわらずのびのび育ってほしいね。ねえ、返事してよ彩・・・彩・・・・彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩彩ああああああああああああああああああああああああああああーひゃっひゃっひゃっっひゃっひゃっひゃ!」

 

「いやああああああああああああああああああああああああ」

 

 

こいつダメだ・・・・

気色ワリィ妄想を垂れ流し、無抵抗な彩に顔を近づけ、クッソ汚いしたり顔で熱く語る。

想像以上にヤバイやつだった。今まで処理した奴らが暴力的な意味でヤバイならこいつは精神的なヤバさ。ヤクザに比べるとちっぽけな存在だがこういう場面での気色悪さ、怖さはすごい。

 

 

「そ・の・ま・え・に」

 

 

ニタァと笑い俺の方を向く。

 

 

「まずはそいつを処分しないとなあ・・・そいつがいる限り俺と彩は笑顔になれないんだもんなあ・・・・ああ、ブルッってきた。武者震いかな?」

 

 

殺意の目を俺に向ける。その手には日本刀が握られていた。

日本刀をこんなことに使うんじゃねえ。バチ当たりな野郎め。

 

 

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

 

 

しかしそこで外から男二人分の悲鳴が鳴り響いた。

 

 

「なんだ!?おい!誰か見てこい!」

 

 

ガラガラガラ

 

ゴスッ

 

「うごおおおおおおおおお!」

 

 

そして様子を見に行った1人が扉が開くと同時に断末魔を上げる。

 

 

「ここかな?ねえ?あなたがあたしの大事な人をさらったの?」

「・・・よう日菜。早かったじゃねえか」

「なーに奏也?そんなボロボロになっちゃって。しかも縛られてる!そんな醜態見せないでよ。奏也はあたしの強さにおける目標なんだからさ」

「んなこと初めて聞いたぞ」

「そりゃいうわけないよ」

 

 

そこに現れたのは・・・日菜だった。

 

 

「氷川日菜・・・?なぜパスパレのメンバーがここに」

「そんなことはどうでもいいよ。あなただよね?彩ちゃんに付きまとって、挙句奏也までひどい目に合わせ今もなお・・・それは続いている。あたしの大事な・・・大好きな二人に・・・・そんなことするのは絶対に許さないよ」

 

 

日菜の顔は珍しく怒りに満ちていた。

 

 

「え・・・日菜ちゃん・・・?」

 

 

彩も驚きを隠せないでいる。

そりゃそうだろうな。いきなり仲間が現れて屈強な男を一撃でぶちのめしたんだから。

 

 

「フンッ日菜には興味がないが裸にひん剥いて動画でも撮れば何かに使えんだろ・・・おい、日菜を捕まえろ!」

「オラァ!おとなしくしろ!」

 

 

もう一人男が日菜へ向かう。

さっき別の男が1撃でぶちのめされてたのを見てなかったのか?

 

 

「日菜ちゃんッ!アブナイ!!!」

「・・・・汚い手でさわらないで」

 

 

彩はそんな心配の声を上げるが心配はご無用だ。

日菜はゴミを見るような目で向かってきた男を一撃で静めた。

 

 

「さて、痛みも引いてきたし俺もいくか」

「えっ?」

 

 

俺は腕に巻かれていたロープをほどき、自由の身となった。

正直体は痛いが当初の動けないほどの痛みではなくなっている。

そしてなにより日菜が来てくれたならもう安全だ。奴らが拳銃でも所持していない限りは平気だろう。

 

 

「なぜだ!?腕を縛っていたはず・・・!」

「腕を縛られるときによ、ロープの一部を拳で掴んでおくとよ、そこを緩めるだけであら不思議!簡単にほどけちゃうのデース!」

 

 

片目が金のウィジャド目をもつのゲームデザイナーのような口調でちょっとおどけて見せてウケを狙ったが宮野のお気に召さなかったようだ。

 

 

「さてと・・・今までのちかえしをたっぷりさせてもらおうじゃないか」

 

 

あ、噛んじゃった・・・カッコつかねえなあ

 

 

「おい、お前ら!全員で殺れ!殺れえええええええええええええええ」

 

 

「おっと一斉攻撃かよ」

 

 

まあ体いてえし今日は受け技中心でやるか。ちょうど色々試してみたいし、背中をコンクリートで打つ痛みをこいつらにも味わってもらおう。

 

 

「なあ宮野。水戸黄門の定番ラストってどんなんか知ってるか?悪代官が手下を大量にけしかけて成敗されるんだぜ?」

 

 

そこからは大して時間はかからなかった。日菜が見張りを含め4人撃破してくれていたので宮野を除いてあと5人。所詮は金で雇われたチンピラだから弱い弱い。

日菜は一撃で仕留めるし、俺は受け技の後投げ飛ばしたりしてダウンさせた後、みぞおちに渾身の一撃を放ち、意識を奪った。

 

 

「奏也ーこっちは終わったよー」

「こっちもだ。さてと・・・一人残っちゃったねえ宮野くん」

 

 

戦闘には参加せずブルってた宮野がこちらを見る。

 

 

「おまえら・・・いったいなんなんだ・・・!高校生のくせに・・・アイドルのくせに・・・!」

「通りすがり・・・でもねえかこの場合俺たちは「悪党狩りだよ!」

「最近お前らん中ではセリフ奪うのはやってんのか?」

 

 

またしても俺のセリフをとられてしまった。

 

 

「ち、ちくしょう・・・殺す・・・お前らは殺してやる・・・殺して彩と一緒になるんだ・・・!」

「まーだそんなこと言ってんのかてめえは」

「でも奏也、日本刀はちょっとずるいと思わない?」

「確かになあ。仕方ない、アレをやる」

「アレを・・・?大丈夫なの?」

「ダメならどっちみちダメだろうよ。なにもしなくてダメならやった方がいいだろ。もし俺が失敗したら・・・その時は彩を連れて全力で逃げてくれ」

「・・・・失敗のことなんて言わないでよ、バカ」

「ま、なるようにしかならんさ」

 

 

俺は思い出す。オッサンとコレをやった日を。

 

 

「何俺をほったらかしにしてごちゃごちゃいってんだコラァ!!!死ねええええええええええええ」

 

 

さあ・・・・いざゆかん

 

 

 

 

 

一瞬の出来事だった。今、宮野さんが持っていた刀は奏也くんが持っていて、その切っ先は宮野さんの喉元に向けられている。

5人いた怖そうな男の人は一瞬で日菜ちゃんと奏也くんに倒され、そして日本刀で斬りかかった宮野さんは一瞬で奏也くんに圧倒された。

素手の奏也くんに向けられた刃をみて私は目を背けそうになった・・・でもそこからは神秘の世界だった。

 

奏也くんは斬りかかる宮野さんの懐に飛び込んで宮野さんの日本刀を持つ手を自分の両腕で挟み、そのまま圧倒的な力でネジり、そのまま倒してしまった。

倒れたその隙を見て奏也くんは刀を奪い、そのまま倒れこんだ宮野さんに向けたのだ。

 

 

「す・・・すごい・・・」

「ふう、うまくいったみたいでよかったよ」

「今のは・・・なんなの・・・・?」

「えーっとね。確か無刀取りだったかな?あたしたちに稽古をつけてた先生が時代劇好きでね。でも弟子の中だと奏也しかマスターできなかったんだ。それでも失敗することあったから完璧じゃなかったけど」

「えっ!?じゃあ失敗してたかもってこと!?それに弟子って・・・?」

「んー・・・そうなるね。だから心配してたけど杞憂だったみたい。あ、その辺は後で説明するね」

 

 

日菜ちゃんもなんだけど、奏也くんって本当に何者なんだろう・・・?

 

 

「おい宮野・・・本当にこれで終わりだ」

「ヒッ・・・ヒィィィ殺さないでくれえ・・・・」

「あ?調子いいこと言ってんじゃねえぞ?俺のこと殺すって言ったよな?俺のことを殺しにかかるってことは逆もまた然り。違うか?」

「バカなあああ俺があああおれがしっぱいするなんてええええ」

「バカ野郎。てめえみてえに自己顕示欲を満たすためだけにたくさんの人に迷惑をかけやがって・・・血がにじむような努力をして、頑張って、躓いても立ち上がって、必死に・・・本当に必死に頑張ってる子を傷つけて、脅かして・・・てめえに何の権利がある!?あの子の努力を!頑張りを!想いを!踏みにじる権利はてめえだけじゃねえ・・・誰にもないんだよ!!」

 

 

そして俺は日本刀を振り上げる。

 

「ヒィ・・ヒィ・・ヒイイイイイイイ」

「覚悟を決めろ」

 

 

そして俺は刀をそのまま振り下ろした。

 

 

「いやだあああああああああああああああああああああああああああ(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!!)」

 

 

が、切っ先が奴の額に触れる程度で止める。

奴は涙と鼻水で顔をグチャグチャにし、股間からは黄色い水たまりができており、さらに香ばしいにおいが漂ってきたのだ。そしてそのままショックのせいか失神してしまった。

うーん、汚い(確信)

 

 

「てめえみたいなクソの命でも奪っちゃなんねえのは難儀するぜ。文字通りクソしやがったけどな」

 

 

 

さてエピローグを語ろうか。

 

まず警察が到着し、前々から犯していたストーカー行為と警告を無視し凶行に及んだということで宮野は逮捕された。罪状はわかっているだけでもストーカー規制法違反、傷害(楠さんの件含め)、未成年誘拐、監禁、強制わいせつ、殺人未遂とフルコースだ。しかも去年の株の売買での脱税が発覚したらしく、重い追徴金とさらなる処罰がされるだろうから、間違いなく実刑判決が出て豚箱の中で当分は臭い飯を食うことになるだろう。

 

そして俺たちであるが、誘拐現場を見たリサと友希那さんの証言と現場の状況から一転攻勢をして頑張って戦い、正当防衛の末勝利したと結論付けられた。

この事件は未成年アイドルがストーカーによって攫われたという芸能界を揺るがす大事件なのであるが、こころのコネで日菜が戦った件も含め報道規制がしかれ、報道されずに済んだ。

改めて弦巻家のすごさを思い知った次第である。

 

ちなみに日菜ことは彩に説明した。とはいっても悪党狩りのことは当然伏せてだが。彩は驚いていたが納得したくれたのと、他言は無用であるということを約束してくれた。

なおリサと友希那さんは、紗夜がそうなら日菜もそっかーと案外驚いていなかったのが印象的である。

 

その後、俺と彩は救急車で病院に運ばれた。俺は、車に撥ねられたケガは案外大したことなかったがブロック塀にぶつかったときの打撲が結構痛くて治療を、彩は特に外傷はないがショッキングな出来事があったから念のためといった具合だ。

ちなみに彩はすぐに退院したが、俺は打撲だけかと思ったら肋骨にヒビががはいっており、出来事が出来事なのに少し入院するハメになってしまった。

 

 

 

「でね、今日日菜ちゃんったら・・・」

 

 

私は奏也くんのお見舞いに来ていた。私が先に退院したけど、奏也くんは色々検査もあるらしくて1週間くらいは入ってなきゃいけないってことだった。

私が巻き込んだせいで・・・

 

 

「はは、あいつは相変わらずだ」

「ねー!酷いでしょー?」

 

 

会話は楽しい。でもどうしても奏也くんを巻き込んで、私のせいでケガをさせてしまったことが後ろめたく感じてしまう。

 

「それでね・・・それで・・・」

「なあ、彩」

 

 

すると奏也くんが話を中断してきた。

 

 

「何かな?」

「なんつーかさ、あんま無理するなよ」

「え・・・?」

「俺がこうなったのはお前のせいじゃあない。俺が勝手にやったことだし、誰かが悪いんだとしたらそれは宮野だ。だからよ、そんな無理するな。いつも通りの丸山彩でいてくれよ」

 

 

びっくりした。気づいていたの・・・?普段鈍いくせにい・・・・

 

 

「ってうお!?なんで彩泣いてんだ!?」

「な、なんでもない!」

 

 

その気持ちが嬉しくて、涙が出てしまった。

ダメだ、想いが抑えられそうにないよ。

 

 

「奏也くん!あのね・・・!私、私・・・・!」

 

 

 

ガラッ!

 

 

「奏也ー調子はどうかなー?」

 

 

しかしそうは問屋が卸さなかった。

病室に入ってきたのはリサちゃんだった。

 

 

「おう、リサか。まあどうってことねえんだけどよ。検査検査うるさくてまだ抜けられそうもねーや」

「そうなんだ。お、彩も来てたんだね!クッキー焼いてきたんだけど、みんなで食べない?」

 

 

うー・・・なんで私っていっつもこうかなー

肝心なところでうまくいかないよぉ~・・・

リサちゃんは悪くないけど。

そのあとは他愛のない話をして時間が過ぎてゆく。

 

 

「すみませーん、そろそろ面会終了です」

 

 

すると看護師さんが病室にやってきて面会終了を告げた。

 

 

「あ、もうそんな時間?じゃ、アタシたちは帰ろうか、彩」

「うん、そうだね。奏也くん、またね」

「おう、いつもすまんな。また」

 

 

病室を出て、リサちゃんと話しながら病院の外へ行く。

するとリサちゃんは私に向き直り、真剣な表情できいてきた。

 

 

「彩もさ・・・奏也のこと好きなの・・・?」

「えっ!?」

 

 

突然の言葉に思わず驚きの声で返してしまった。

 

 

「えっと・・・そのぉ・・・ん?私”も”?ってことはまさかリサちゃんも・・・?」

「・・・う、うん///」

 

 

リサちゃんがいつもと違った雰囲気だ。顔を赤くしてモジモジしてて・・・可愛いなあ・・・

 

 

「私も・・・うん、好きだよ」

「そっかー・・・そっか。これってアレ?恋のライバル的な?」

「言葉に出すとなんか恥ずかしいね(笑)そんなの、少女漫画だけの話だと思ってた」

「ホントだね。アタシがまさかこんな風になるなるなんて・・・いやー人生わかったもんじゃないね!」

 

 

相手がリサちゃんだからかな?なんか不思議と嫌な感じはしない。

それは向こうも同じ感じみたいだ。

 

 

「アタシ、負けないからね」

「私も。絶対振り向かせて見せるよ!」

「恨みっこなしだね」

 

 

二人で握手を交わす。これからどうなるかわからないけど、私は私にできることをやう。

 

 

「さぁて、あとはあのニブチンをどうやってっていう課題あるけど・・・」

「ほんとほんとー!!なんなのあれー!?ねえねえ聞いてよリサちゃん!この前奏也くんったらさー」

「えーそうなの?アタシの方もさー・・・・」

 

 

アイドルも、恋も全力で一生懸命やりきる!それが丸山彩の在り方だから!!

だから、見ててくださいね。

 

 

第6章 完




なげええええええ1万字超えるとか冗談はよしてくれ(タメ口)
2分割も考えましたけど6話になるにもあれだしキリが悪いので諦めました。

と、いうわけで第6章 彩のこころ終了です。
クッソ慣れないラブコメ要素とか強めでしたけどいかがだったでしょうか?
彩ちゃんとリサ姉は絶対にケンカさせたくなかったのでこの二人がどうなるかはまあ後程いずれ・・・

あとすみません、幼馴染でないとか言ってましたけどガッツリ日菜出ちゃいました。
仕方ないね。

しかし奏也くん、思い付きで無刀取りまで使わせましたけど、一体どこまで強いんですかね・・・?


★元ネタ解説★

●片目が金のウィジャド目をもつのゲームデザイナー

ワタシデース★インダストリアルアリュージョン社CEO、ペガサス・J・クロフォードデース!
決闘者王国では遊戯ボーイに負けたあと、原作では獏良ボーイにミレニアムアイを奪われて死んでしまマシたが、アニメでは生きていマース!
でも劇場版で時空改変前にまたしても死んでしまいマシタ★アンビリーバボゥ!
そういえばトムが使った飛行エレファントが今度カード化するようデース!

●ちかえし

またしても淫夢語録。ワガママな芸能人役の男にマネージャー役の男が切れてホモレ●プに至る前に発した言葉。仕返しっていいたかったらしい。

●無刀取り

日本最強剣豪の一角である上泉信綱の弟子である、柳生石舟斎が開祖として知られる柳生新陰流にある剣術。
近年ではよく似た行動がよく時代劇でも用いられる。


●ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!!

授業中に出したら中学生活終わるナリ。そうだ!大声を出して音をかき消すナリ。


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最終章-宿命のディープレッド-
第1話 昼飯にコロッケでも食ったのか?


ガルパのバンドストーリー、Poppin's Party第2章を読んでおくと少しだけわかりやすいかもです。読まなくもついてはいけます。





「ここ最近頻発している通り魔事件。警察では同一犯の犯行とみて捜査を進めているようですが、依然手掛かりはつかめていないとのことです」

「いやーしかし怖いですね。確か数年前にも同じような事件が起きたのでは?」

「はい、確かに起きていますね」

「同一犯の可能性は?」

「当時の犯人は逮捕されましたので違うのではないでしょうか。同じ町で同じ手口でやることは考えにくいですしね。しかし当時の犯人として逮捕された方は一貫して無実を主張しており、」

「確かにそうですねー」

 

 

俺はテレビのコメンテーターが喋る傍ら、ネットである事件の記事を見ていた。

 

 

【花咲川・羽丘連続通り魔事件】

 

数年前に花咲川・羽丘エリアで起きた連続通り魔事件。

6人が犠牲になり、治安の悪いところに行かなければ日常生活は安全のはずのこの町は、一時期恐怖に支配されていた。

誰でも、外を歩くだけで死の恐怖があるのだから当然だ。

 

 

:被害者リスト:

 

神剣祐也

神剣かなえ

 

 

そう、その中には俺の両親がいた。そしてその恐怖が今、この町に蘇ろうとしている。

俺は確信していた。こいつは・・・あの時と同一犯だと。

俺は被害者遺族として当時捕まった犯人の裁判はすべて傍聴した。そして一緒に調べていたおっさんはツテで得た色々な情報を調べたのだ。

そして俺たちは一つの結論に達した。

 

 

「なあ奏也、あいつぁ犯人じゃないぞ」

「なんだと・・・・?」

 

 

その後、確信を得るためにもうひと調査行ってくるといったあと・・・

オッサンはゆきずりの強盗に遭い命を落とした。

俺は確信した。オッサンは何かを掴み、そして口封じのために殺されたのだと。

あの滅茶苦茶な強さのオッサンの命を奪われるなんてよっぽどのことがないと考えられない。

似たような手口、そしてこの町での凶行。俺の両親とオッサンの死になにか関係があるに違いがない。

 

 

 

 

「いやー奏也くん、今日はありがとう!」

「いんや構わないっすよ。ちょうど暇でしたし」

 

 

俺はCiRCLEにいる。

まりなさんが予約管理のミスをしてしまい、どうしても人手が足りなくなったということで手伝いに来た次第だ。

まりなさんとは幼馴染が所属するバンドのツテで知り合い、何かあればこのような形で手伝いに来ているのだ。

 

 

「あ、奏也だ」

「かっみはやせんぱーい!お疲れ様ですっ!」

「香澄ちゃんは今日も元気だなあ」

 

 

スタジオから練習を終えたポピパメンバーが出てくる。

おたえ、香澄ちゃんに続き、りみちゃん、沙綾ちゃん、有咲ちゃんもだ。

 

 

「奏也くん、今日はもう上がっていいわよ」

「いいんですか?」

「ええ。ポピパでちょうど一区切りついたし、あとは私だけでも大丈夫そう」

 

 

 

まあ確かに予約リストを見てももう大丈夫そうだな。

 

 

「じゃあこれで上がりますわ」

「奏也終わり?」

「ああ、そのようだ」

 

 

するとおたえは有咲ちゃんに声をかける。

 

 

「有咲、奏也もいい?」

「私は別に構わねーぞ?」

 

 

何やら示し合わせているようだが、俺なんも聞いてないぞ。

 

 

「今から有咲の家でお茶するんだけど奏也も来ない?」

 

 

 

 

というわけで来たのは市ヶ谷家。流星堂という質屋をやる横には大きな蔵があり、そこに入って何すんだよと思っていたらなんと蔵の中は整理され、部屋のようになっていた。聞けばここはポピパの練習場所らしく、スタジオを使う以外はここでやるらしい。うむ、確かに防音もしっかりしているようだ。

 

 

「なんつーかすげえな」

「でしょ!すごいんだよね、ここ!遠慮なく使ってくださいね!」

「お前の部屋じゃねえだろ!?つーかなんで香澄が誇らしげなんだよ!?」

 

 

有咲ちゃんも相変わらずだ。香澄ちゃんに対しては強気だけれどその言葉の裏には大好きの気持ちが込められているのを俺は知っている(おたえ談)

 

 

「まあまあ有咲落ち着きなって。香澄のいうことにツッコミ入れてたらキリないよー?」

「さーやひどい!りみりーん!有咲とさーやがいじめる~!」

「あはは。でも香澄ちゃんの気持ちもちょっとわかるな。なんていうか、私たちポピパの帰る場所って感じがするし」

「はぁ!?りみ、そ、その、急に何ってんだよ・・・///」

「あー!有咲照れてるぅ~!かわいいー!」

「暑苦しいからはなれろぉ~!」

 

 

有咲ちゃんにハグする香澄ちゃんに対し、口では文句を言っている有咲ちゃんだがその雰囲気は嬉しそうだ。

なんというかポピパってホント仲がいいんだな。みていてほっこりする。

しかもこの香澄ちゃんと有咲ちゃんを眺めてるとなにか違う道に目覚めてしまいそうだなあ。

 

 

「・・・・ていっ」ゲシッ

「いてえ!」

 

 

そんなことを考えていたらおたえに脇腹を小突かれた。

どうやら心を読まれていたようだ。

 

 

「なんていうかさ。ほんと君たち最高に仲がいいんだね」

「はい!私たちは5人でポピパですから!!!何があっても一緒です!」

「おお、言い切った。いいね、こういうの」

 

 

おたえもいい友達を持って幸せ者だ。

 

 

「そういえば奏也。ちょっと最近気になることがあるの」

「藪から棒にどうしたおたえ?」

「奏也ってよく鈍感とか言われたりしない?」

「感覚は人一倍鋭いつもりだがな」

「あー・・・ダメだこりゃ」

 

 

マジで意味が分からない。そういえば最近日菜にもそんなことを言われる気がする。

 

 

「おたえ、もしかしてそういうこと?」

「さすが、沙綾は鋭い」

「あ、私もなんとなくわかっちゃったかも」

「あー確かになー」

「え?なになに?どういうこと?」

 

 

どうやら香澄ちゃん以外は意味を把握しているようだ。

そしておたえたちは香澄ちゃんに耳打ちをして何かを教えている。

完全に蚊帳の外じゃあないかこれでは。

女子高生5人に男一人ってのもアレなのにこの仕打ちはないぜ。

 

 

「あー!そういうことか!なるほどねー!」

 

 

どうやら香澄ちゃんも理解したようだ。

うむ、俺だけ仲間外れ。悲しいなあ・・・・

 

 

「ね、奏也。ちょっとテストみたいなのやってみない?」

「ほう、どんな?」

「とある項目について奏也のレベルがわかる」

「ほう、面白そうだな。いいぞ、かかってこい」

 

 

レベルを図るといわれたら黙ってられない。男とは常に向上を目指すもの。

どんな項目かはしらんがここは高レベルを叩き出してあっと言わせてやる。

 

 

「んーじゃあ私から第一問ですね!ある女性と待ち合わせをしていました。あなたは待ち合わせ時間15分前に到着し、女性は時間ぴったりに到着し、『ごめんね、待たせちゃったかな?』と言ってきました。それになんと返しますか?」

「んー・・・時間通りだから気にするなかねえ」

「えぇ・・・初級から・・・?」

 

沙綾ちゃんはなにか微妙な顔をしている。

 

「私から第2問いきます」

「次はりみちゃんか」

「女性と出かけていたら女性が靴擦れを起こしてしまい、途中からおぶって歩くことになりました」

「いや履きなれてない靴で来るなよ」

「奏也、黙って」

「ハイ」

 

 

なんかおたえがこえーんだが・・・・

 

 

「えっと・・・続けますね?その時女性に『重くない?』って聞かれました。どう返答しますか?」

「体重のことはデリケートだからな。重いとも軽いともいわずごまかす」

「あ、そうなんですか・・・」

 

 

あ、でも以前彩にもそのことについてなにか言われたような。

なんかみんなの顔が引きつってきたぞ?

 

 

「じゃあ私から第3問!誕生日に女の子から手作りのマフラーを貰いました!それをどう捉えますか!?」

「よっぽど作る時間があって暇だったんだろうなみたいな・・・手作りは嬉しいけど」

「ええ・・・ほんとに・・・?」

 

 

「第4問ね。会った女性がなんだか様子がおかしいです。でも心当たりはありません。なぜだと思いますか?」

「うーん・・・・生理?」

「ハァーーーーーー(クソでかため息)女の子なめてんの?」

 

いやだから怖いですって!

 

「じゃ、じゃあ私から第5問だなー。ある女性とお昼から会う約束をしていました。待ち合わせ場所で合流すると女性の唇はいつもよりぷりっっとして光っています。なぜでしょう?」

「・・・・昼飯にコロッケでも食ったのか?」

「そうくるかァァァァァァ!」

「お、有咲ちゃん渾身の突っ込み」

 

 

「そこは今来たっていうところですよ!」

「とりあえず重くないっていうところです!」

「どう考えても好意持ってるでしょ!?」

「とりあえず悩みあるの?とか何か悪いことしたの?とか聞こうよそこは」

「どう考えてもグロスだろ!」

 

 

「それでなんのテストだったんだ?」

「「「「「ここまで言ってわかってないの(かよ)!?!?!?!?」」」」

 

 

結局答えは返ってこない。そう思っていたら全員がこちらに向き直りそしてさらに言い放った。

 

 

「「「「「0点!!!!」」」」」

 

 

内容もよくわからないまま俺は0点を言い渡されてしまったのである。

イミワカンナイ

 

 

 

 

 

「あ、そうだ。今日食べようと思ってうちのパン持ってきたんだよ!」

 

 

結局謎のテストの内容は明かされず、別の話題に切り替わり各々談笑していた。

そんなとき沙綾ちゃんが声を上げたのだ。

 

 

「おー!さーやんちのパン!」

「わぁ~!チョココロネある!?」

「あはは、あるよ~りみのために持ってきた」

「練習が終わってちょうど小腹がすいてたから嬉しい」

「あ、そんなら私お茶入れてくる」

 

と有咲ちゃんが立ち上がる。

 

 

「あ、そんなら手伝うよ」

「いえいえ!先輩に手伝ってもらうわけには・・・」

「俺なんもしてないし、6人分となりゃ結構な量でしょ?男では使えるときに使うもんだよ」

「それですね・・・それじゃ、お願いします」

 

 

 

 

「紅茶?」

「あ、はい。せっかくなんで」

 

 

そういって有咲ちゃんは用意をしている。

 

 

「ポピパは楽しい?」

「え?あ、はい。楽しいですよ。最初はいやいやって感じだったけど・・・なんか香澄のペースに巻き込まれちゃって知らない間にって感じで」

「それで有咲ちゃん、その知らない間に香澄ちゃんのこと大好きになったわけか」

「なっ!?そ、そ、そそんなこと!あいついっつもくっついてきて暑苦しーし、いっつもうるさいし、思い付きで私を巻き込むし!」

 

 

そんな風に文句ばかりいう有咲ちゃんであるが口元は緩み、顔は赤い。

うーん、女の子同士って美しい。

 

 

「でも・・・大好きなんでしょ?香澄ちゃんだけじゃなくて他のみんなもさ」

「なっ・・・!?いやに攻めますね神剣先輩!?」

「はは、ごめんよ。でもいいな。俺もおたえとは幼馴染だけどこんな風に楽しくワイワイ何かをやるってことなかったからなあ」

 

「・・・まあ今が楽しいのは本当ですよ。実はちょっと前、ポピパメンバーでケンカっていいうか・・・。ちょっとすれ違いがあって。とはいっても私が意地張ったのがそもそもの原因なんですけどね。でも・・・この出来事で、私にとってポピパがいかに大事な存在で、かけがえのない場所なのかわかったんです。だから私は・・・これからもポピパがポピパであるために。この変わらない日常を守るために頑張りますよ」

 

「・・・驚いた。これメンバーが聞いたらすごいことになりそうだね」

「な!?ナシで!それだけはナシで!あーもう、こういう話できる人がいなかったせいでつい口が滑ったー!」

「ま、恥ずかしくてメンバーには言えないよね。有咲ちゃんの性格から行くとさ」

 

 

なるほど。みんなに対してはあんな口調でも有咲ちゃんはポピパのことを本当にお大切に思っているんだな。おたえは本当にいい友達をもった。

さて、お茶が入ったようだ。とはいっても俺は何もやっていないが・・・

 

 

「じゃ、運んじゃうか」

「ナシですからね!!!!」

 

 

そしてカップを3つずつのせお盆を持ち上げる。

そして部屋を出る前、俺はナシを叫ぶ有咲ちゃんにこういった。

 

 

「あ、そうだ。有咲ちゃん。おたえのこと、これからもよろしくね」

「・・・・?はい」

 

 

突然の発言に意図がわからないといった具合だが有咲ちゃんは頷き、そして俺たちは蔵へと戻っていったのであった。

 

 

「で、ナシですからね?」

「わかってるよ」

 

 

 

 

「有咲!じゃーねー!」

「おじゃましました」

「ありがとね、有咲ちゃん!」

「また明日ねー!」

「お邪魔しました。またね、有咲ちゃん」

 

 

いい時間になってきたのでみんなを見送る。

みんなの後ろ姿を見ていると少し寂しい気分になるけど平気だ。明日も学校に行き、一緒にお昼を食べて、放課後は練習。

この楽しい毎日は変わらない。

 

 

「さてと、片付けるかー」

 

 

みんなが帰った後の片づけをする。神剣先輩は片づけの手伝いも申し出てくれたけど断った。

それに私はこの時間が嫌いじゃないのだ。この散らかりはみんながここで楽しく過ごしてくれた証。それを感じながら片付けるのはなんかいい感じなのだ。

 

 

「・・・・ん?」

 

 

しかしそこで見つけたのはスマートフォン。これは香澄のやつだ。

 

 

「ったくしゃーねーなー」

 

 

時間を見る。少し遅めの時間ではあるが香澄の家なら行って帰ってきてもそんなに時間はかからない。

そ、それに香澄もスマホをなくしたと思って不安だろうしな!

しゃーない、届けてやるかー

 

 

「ばーちゃーん、香澄が忘れもんしてるから届けてくるよー」

「こんな遅くにかい?」

「香澄の家なんてそんなかかんないからすぐ帰ってくるしさ」

 

 

そんなこんなで家を出る私。

夜道を歩き香澄の家に向かう。しかしその道中。二人の人影があったのだ。

一人は地面に倒れているようでもう一人はかがんでその人に何かしている。

もしかして急患人!?大丈夫かよ!?

 

 

「どうかしたんですか!?」

 

 

私が声をかけるとかがんでいる方の人はぴくっと体を動かす。

その人はフードを被っており、マスクをしているのか顔がよく見えない。

しかしそんなことはどうでもいい。それよりも・・・横たわる人のお腹からは血が流れ出ていて、フードマスクの人の手には・・・

 

 

「うそ・・・だろ・・・」

 

 

街灯に照らされ、赤に染まった刃物が・・・その恐ろしさを強調していた。

 

 

「まさか・・・連続通り魔・・・?」

 

 

そしてその人物は・・・狙いを私の方へ向けて

そして、近づいてきたのであった。




最終章はPoppin' Party編です。
正直、かなり難産っぽいんですよねえ・・・これ

頑張って走り切りますので最後まで応援よろしくお願いします!

★評価のお礼★
lllyasさん★8評価ありがとうございます!


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第2話 実は私、趣味がトレーニングでね

 

「いやだ・・・こっち来るなよ・・・・」

 

 

血まみれの刃物を持ったソレはジリジリと近づいてくる。

そっか・・・私の足がすくんで動けないのをわかってやってるんだ・・・・

私は・・・これで終わりなのか?少し前なら一人で生きていただけだった、私がどこで何をしようと勝手だった。でも今はみんながいる。そう、私は一人じゃなくなったんだ・・・・!

 

 

「いや、いやだぁ・・・たすけて・・・助けてよ香澄ぃ・・・・」

 

 

そこで出てきたのは香澄の名前だった。強引だけどいつだって私を、私たちを引っ張り、導き、そして助けてくれた香澄。

もう・・・香澄の声を聴くことはできないのかな・・・・?

 

 

「火事だあああああああああああああああああああああああああああああああ!」

「!?」ビクッ

 

 

その時、聞きなれた声そう叫んだ。

 

 

「有咲!こっち!早くッ!!!!!!」

「え・・・?なんで・・・香澄・・・?」

「いいから!逃げよう!!!」

 

 

すくんでいた足なんてお構いなしに香澄は私の腕を引っ張る。

 

 

「え・・・?火事?」

「キャアアアアア!人が倒れてる!」

「あそこに刃物持ってる人がいるぞ!」

「警察だ!警察を呼べ!」

 

そしてその香澄の声を聞いた近くに民家の人が窓を開け外の様子をうかがう。

それに犯人が怯んでいる間に私たちはとにかく逃げだしたのだ。

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・香澄・・・なんで・・・」

「人の注目を集めたいときは泥棒!とか叫ぶより『火事だ!』って叫ぶのが一番いいってマンガで読んだたから・・・」

 

 

私たちはとにかく全力で走って私の家まで帰る。

 

 

「そうじゃなくて、なんであそこにいたんだよ」

「スマホがないことに気が付いて・・・最後にスマホ出したの有咲の家だったから・・・」

 

 

香澄も取りに来る途中だったのか。

 

 

「あの、さ・・・香澄。ありがとな・・・その、助かったそ、うれしかった」

「あ、有咲が素直だ・・・!」

「はぁ!?私だってお礼するときはちゃんとするから!」

 

 

香澄のことだ多分このあたりで「有咲~!」っていって抱き着いてくるんだろうなー

構えるか。

 

 

「・・・・・あれ?」

 

 

おかしい来ないぞ。香澄のほうを見るとなにやら様子がおかしかった。

 

 

「あ、あはははは。いまさら足が震えてきちゃった」

 

 

そしてそのまま香澄はその場にへたり込んでしまった。

 

 

・・・・ほんと、ありがとな

「え?有咲なにか言った?」

「な、なんでもねー!今日遅いし、あいつがまだうろついてるかもしれないから・・・きょ、今日は泊って行けよ・・・」

 

 

そんな感じで、香澄に再びウチへ上がってもらう。

そのあと、ばーちゃんに事情を話し、警察へと連絡したのちお巡りさんが家やってきた。

時間も遅いし、明日学校を休んで警察署で事情聴取をさせてくれとのことで、お巡りさんはそのまま帰って行った。

 

 

「わーい!有咲の部屋!」

「だー!暴れるなよー!」

 

 

 

 

場面は変わって有咲の部屋。

私の家には警察から連絡がされ、そのあとお母さんから電話がかかってきた。

とりあえず大丈夫だよってことと、明日事情聴取があるから保護者として来てほしいということを伝えた。

あーちゃんにもだいぶ心配をかけちゃってるみたいだ。

 

 

「さ、けっこー遅いし、そろそろ寝よっか!」

「あ、ああそうだな・・・」

「有咲?」

 

 

有咲は少し顔を赤くしている。そしてその体を見ると少し震えていた。

 

 

「あーりさ」ギュッ

「わ!なんだよ香澄!いきなり抱き着くなあ!」

「有咲、怖かったよね。大丈夫だよ。今日は私が一緒にいるから・・・」

「・・・・・かすみぃ・・・・」

 

 

私がそういうと有咲は泣き出してしまい、そのまま顔を私の胸にうずめた。

いっつも強がってる有咲だけど私はその弱さを知っている。やっぱり、有咲は怖いのを我慢してたんだね。そりゃそうだよ。直接刃物を向けられて、危ない目に遭ったんだし。

 

 

「こ、今夜は一緒の布団で寝てくれねーか・・・・?」

「もっちろん!なんかいーね!こういうの!」

 

 

 

うお!こんな有咲初めて!

でもうん、気持ちはわかる。私だって怖かったもん。でも有咲はそれ以上だったろうな。

そして私たちは眠る。有咲がほんとに無事でよかった。

 

 

「・・・・だいすき」

 

 

寝息を立てる有咲の顔を横目に、私はそうつぶやき、まどろみの中へ意識を落としていったのだった。

 

 

 

 

翌日おたえから連絡をもらい警察署へ向かった。

香澄ちゃんと有咲ちゃんが例の通り魔に襲われ、事情聴取を受けているというのだ。

 

 

「おたえ!」

「あ、奏也!」

「神剣先輩、こんにちは」

「こんにちは、神剣先輩」

 

 

そこにはおたえ、沙綾ちゃん、りみちゃんもいた。皆事情を聴いて心配になってきたようだ。

しばらく待合室で話しながら待つと、奥から香澄ちゃんとお母さん・お父さん、有咲ちゃんのおばあちゃんが出てくる。どうやら終わったようだ。

 

 

「あ!みんなー!来てくれたんだ!」

 

 

香澄ちゃんはあっけからんとそんなことをいう。

 

 

「香澄!有咲!大丈夫だったの!?」

「わわっ!さーや、大げさだなあ」

「香澄ちゃん、でも通り魔に襲われたって・・・」

「りみりんもそんな心配しなくて大丈夫だよ~!私も有咲もケガしてないしさ」

「そーだな。でも心配かけちゃったっと思うから、そこはごめんな」

 

 

二人とも意外と平気そう・・・いや、そうでもない。

気丈にふるまっているがかなり疲れているようだ。そりゃ通り魔に襲われた上に神経を使う警察の事情聴取を受けたら疲れるのは当たり前だ。

おたえも黙っているがそれには気づいている雰囲気だ。

警察の事情聴取というのは、おこったことをすべて話、それを一言一句聞き逃さずに刑事が調書に記していく。

そしてすべて終わった後読み合わせをして、間違いがないかを確認までするのでとにかく時間がかかるのだ。

俺(というか筆者)も昔、油断してコソドロに財布から1万を抜かれたことがあり、被害届を出したとき調書を書いたりするだけで2時間も時間をとられた記憶がある。

当然担当する刑事の力量にもよるのだろうけど。

 

 

「とりあえず無事ならよかった。今日は練習なしでいいよね?有咲も香澄も疲れてるだろうし」

 

 

おたえが提案する。まあそりゃそうだわな。

 

 

「えー?私は全然平気だよー?」

「ダメだよ香澄ちゃん・・・今日は休んだ方が」

「そうだよ?無理してもしょうがないし、しっかり気持ちを落ち着けてからだよ!」

「有咲もそれでいいよね?」

「そうだなー・・・さすがにちょっとしんどいや」

「そっかー・・・まあそうだね!わかったよ!」

 

 

どうやら意見がまとまったようだ。

こうして皆はそれぞれ帰宅した・・・のだが。おたえに呼ばれ、再び外に出るのであった。

 

 

 

 

「ようおたえ、どうした?」

「あ、奏也。えーっとね、今回のこと。香澄か有咲のこと。さっき有咲のおばあちゃんと香澄の親御さんと話した。有咲は私が、香澄は奏也がしばらく送り迎えすることになったよ」

「ほーん、そうか・・・・ファッ!?」

 

 

なっ”た”?

 

 

「格闘技経験者の信頼できる知り合いっていったらOKだって。それで挨拶したいから来てほしいって香澄のお父さんが・・・」

「あ、おい待てぃ。おい。どういうこったよ(困惑)」

「・・・・?」

「・・・・?じゃねえ!本人の承諾はどうした!?」

「・・・・いる?」

「いるわボケェ!」

 

 

 

 

っていうことを話したがおたえに通じるわけもなく、そのまま俺は戸山家に向かう羽目になった。

まあ通り魔の事件について関心はあるし、いいっちゃいいんだけどな。

 

 

ピーンポーン

 

 

「はい?」

「あ、花園さんからご紹介にあずかりました神剣と申します」

「入ってください、どうぞ」

 

 

そして俺は戸山家に招き入れられる。

通してくれたのはおそらく香澄ちゃんの妹さんだろう。確かあーちゃん・・・・明日香さんといったか。

 

 

「失礼いたします」

「お、キミだったか」

「あれっ?神剣先輩?」

「どうも、香澄ちゃん。先ほどはどうも」

「そうか、さっき警察署にたえちゃんたちと一緒にいた男の子か」

 

 

この人が香澄ちゃんのお父さんか。

優しげな雰囲気だがガタイがいい。いかにも一家の大黒柱という雰囲気だ。

 

 

「お茶をどうぞ」

「あ、お構いなく」

 

 

香澄ちゃんのお母さんわけえな。

 

 

「それで、たえちゃんから話を聞いているが・・・君が香澄のボディガードを買って出てくれたと」

「えーまーはい、うんそんな感じです」

 

 

買って出たってか事後承諾の強制なんですはそれは・・・

まあいいか。ここまで来たらやるしかない。

 

 

「格闘技をやっていると聞いたのだけれど、何をやっているのかな?」

「そうですね・・・んーなんというか名前ないんですよね。僕の師匠が創始者で、我流ですから」

「なるほどねえ・・・本当に大丈夫なんだろうね?好意はすごくありがたいのだが、気がついたら二人とも通り魔にやられましたじゃね」

「お気持ちはわかります」

 

 

結構慎重な人みたいだ。まあ大事な娘さんが通り魔に襲われた上に、娘の友達の紹介とはいえ知らねえ男が来たら警戒するもんだわな。

 

 

「よし、こうしよう。今から庭で私と一勝負行こうじゃないか」

「・・・・え?」

「お父さん!?」

 

 

香澄ちゃんと明日香さんは驚いている。

 

 

「え?だってお父さん、神剣先輩は高校生だよ!?」

「そうだよ、いくら私のためって言ってもお父さんが相手なんて!」

 

 

 

話が見えない。どういうことだ?

 

 

「まあいいじゃないか。別に勝てと言っているわけじゃない。神剣君、実は私、趣味がトレーニングでね」

「道理で立派なお体をお持ちだと思いましたよ」

「鍛えるばっかりで最近使う場面がなくてな。娘たちがもっと小さいころは二人を両肩に乗せて散歩したものだが・・・ちょっと遊び相手になってくれないか?」

 

 

なるほど、そういうことか。暇つぶしついでに俺の力量を図ろうということだろう。

 

 

「いいですよ」

「では庭に行こう」

 

 

そして掃き出しから庭に出ると、戸山さんは何やら持ってきた。

 

 

「おとーさん!神剣先輩にケガさせないでよ!おたえの大事な幼馴染なんだから!」

「わかってるよ。では神剣君、ルールは簡単だ。このバルーン帽子をかぶり、先に頭の上の紙風船を潰したほうが勝ち。そこに至るまでは何をやってもいい。ただし、動きが止まるほどのパンチやキックが一撃でも入った場合、風船が無事でも負け。いいかな?」

「シンプルでいいですね。わかりましたよ」

「手加減はいらない。男の勝負だ・・・いいね?」

「わかりました、では本気で」

 

 

向こうがそうおっしゃるなら仕方ない。では、いきますか!

 

 

「香澄!スタートの掛け声を頼む!」

「わわっ、じゃあはじめ!」

 

 

スパァン!

 

 

一閃。俺は掛け声と同時にかけ、そして頭上の風船目がけ一撃を放った。

動こうとしていた戸山さんは動きが固まり、残ったのは戸山さんの頭上でつぶれた風船だけだ。

 

 

「これはさすがに予想外だよ神剣先輩」

 

 

 

「神剣先輩ってすごいんですねっ!!」

 

 

香澄ちゃんのお父さんを文字通り瞬殺したあと、無事パパ試験には合格したようでボディガードの任を与えられた。

そして玄関先で香澄ちゃんに見送られる。

 

 

「まあ俺も鍛えてるからなー」

「おたえから神剣先輩はおたえより格段に強いって聞いてて、ほんとかな?って思ってたけどまさかお父さんを一瞬で倒すなんて!くぅ~カッコイイな~!!!」

「はは、ありがとね。じゃあ明日朝と学校帰りに迎えに行くからさ。・・・校門の前だ色々と誤解を受けるし待ち合わせ場所を決めておこうか」

 

 

これは彩の件で学んだ。なにより女子高の校門は不審者扱いされるからすごく居心地が悪いしな。

 

 

「はい!じゃあ明日からよろしくお願いします!!」

 

 

こうして俺の戸山香澄期間限定ボディガード生活がスタートしたのであった。

 

 

 

 

 

CiRCLEでのポピパの練習が終わり、解散する。

手筈通り有咲ちゃんはおたえが、香澄ちゃんは俺が家まで送っていく。

途中の公園でクレープの移動販売車が見え、香澄ちゃんが食べたいといったので俺が買いに行くこととなった。

 

「んじゃ買ってくるから香澄ちゃんはここで待っててよ」

「はーい!なんか放課後こうやって一緒に帰ってクレープ買うってデートみたいですね!」

「そうか?仲が良ければそれくらいやると思うけど」

「わわっ!予想外の返事!」

 

 

別に小さいころからおたえやこころ、紗夜や日菜とやってきたことだし別にそうでもなくないか?

ま、いいか。

 

「絶対動かずここにいること。まあこんな人目に付くところに来るとは思えないが」

「わかりました!」

 

 

そして俺はクレープを注文し、待ち時間で香澄ちゃんの方をみる。

すると学生服を着た男が一人、香澄ちゃんの前に立ち何かを話していた。

ナンパか何かだろうか?あまり香澄ちゃんはいい顔をしてないな。

 

 

「お待ちどうさまー」

 

 

ちょうどクレープが来たな。さ、戻るか。

 

 

クレープを2つ持ち、香澄ちゃんのところに戻り、二人の方を見ると香澄ちゃんは沈んだ表情で、いつもの元気さのかけらもなかった。

一体こいつは何をしやがったんでしょうかね?

 

 

「クレープお待たせ―っと、あんた誰?」

「あ?お前戸山の彼氏か?」

「まあそんなようなもんだ。俺、こいつから離れられないんだよ・・・」

 

 

ナンパだったことを考慮し、ちょっと脚色する。

ま、ボディガードだから間違っちゃいないな!

 

 

「へー彼氏なら知っておけよ?こいつ小学校のころ陰キャでよ、変な歌うたってはいじめられてたんだ」

「そう・・・(無関心)んで?それが?」

「は?人の話聞いてなかったのかよ?こいつマジで変な奴だし、突然わけのわからん歌とか歌いだすから気をつけろってことだ!」

 

 

こいつは何がいいたいんだ・・・?

どうも要領を・・・ああ!こいつが当時のいじめっ子ってことか!

 

 

「それでさぁ、それが何の関係があるわけ?香澄ちゃんが変なのはすでに知ってるしそれによって迷惑被ったことねーんだが?」

 

 

それを聞いて香澄ちゃんが顔を上げ俺の方を見る。その表情は心なしか嬉しそうだ。

 

 

「せっかく人が教えてやったのに・・・なんだその態度は?あ゛?」

「聞かれてもないことをしゃべってそれで恩を着せるってお前はどんな大物国会議員だよ。世間一般ではそれ、”余計なお世話”っていうだぜ?あ、漢字わかる?”余計”の”余”に”余計”の”計”で”余計”って書いて、お世話は・・・」

「テメェ、バカにしてんのか!?」

「まだ最後まで説明してないのにぃ」

 

 

おっと、ちょっと煽っただけでこれかよ。最近の若者は堪え性がないなあ(最近の若者並みの感想)

 

 

「クレープ溶けちゃうからもういいよ。帰って、どうぞ」

「この野郎・・・・!」

「ちょ、ちょっと神剣先輩、島田くん・・・!」

 

 

ああ、こいつ島田っていうのか。

 

 

「香澄ちゃん、ちょっとクレープ持っててくれるかな」

「え?あ、はい」

「さて、島崎君。もうよくない?」

「島田だコラァ!」ガシッ

 

 

俺は飛んできた拳をそのまま掴む。

当然、島居君は抵抗を試みるが、がっちりホールドしているため動かない。

 

 

「う、腕が動かねえ・・・」

「もうわかったろ島根くん。もう、帰って、どうぞ」

「だから島田だって・・・イデデデデデデ!わかったわかったわかったよもう!」

 

 

少し力を入れたらこれか。貧弱貧弱ゥってか?

 

 

島山くんを見送った後香澄ちゃんとクレープを食べながら歩く。

うーん、やっぱクレープってうまいな。体に悪いのわかっててもついパクパク食べてしまう。

女の子を魅了してやまない理由が男の俺でもわかるってもんだ。

 

 

「それにして神剣先輩ってホントに強いんですね。島田くん、昔からかなりヤンチャだったんですけど」

「まああれなら香澄ちゃんのお父さんの方が114514倍強い」

「あはは!そうなんだ!・・・でもあの話聞いて私を見る目変わったりしませんか?」

 

 

ちょっと不安そうな顔で聞いてくる。なんというか香澄ちゃんらしくないな。やっぱり気にしている。

 

 

「さっきもいったけど香澄ちゃんが変な子なのは知ってるしさ」

「あー!酷いですー!」

「まあでもそれで俺が迷惑被ったわけでもないし、大事なのは今をどう生きるかでしょ?例えば友希那さんみたいに音楽をひたすら追求するのも、彩みたいに一生懸命アイドルであり続けるのも全部その人だけの生き方だ。香澄ちゃんはキラキラドキドキしたいんでしょ?それでいいじゃないか。それが戸山香澄の生き様なんだからさ。過去のことなんて今に至るまでの通過点に過ぎないよ」

「・・・・・」

 

 

あれ?黙っちゃった。何か変なこと言ったかな?

 

 

「なんていうか・・・神剣先輩すごいなって。うーん、これはモテるのも納得だなー・・・

 

「え?」

「あ、何でもないです!そろそろ家ですね!今日はありがとうございました!」

 

 

こうして一日は終わった。さて、俺も帰るかなあ・・・・

 

 

 

ピロン!

 

 

すると幼馴染のトークルームにメッセージが。

 

 

たえ:みんな、今日時間ある?よかったら次のターゲットについて話をしたいの

 

 

ついに来たかあ・・・そろそろだと思っていたが・・・

 

 

Soya:了解。各々、来られる時間を連絡してくれ。家の鍵は開けておく。

 

 

さて・・・どうでるか。

その後約1時間して、幼馴染軍団は俺の部屋に勢ぞろいしたのであった。

 




遠藤ゆりかさん、今までお疲れさまでした。



さて、ポピパ編ヒロインは有咲と見せかけて香澄です!
香澄ヒロインの小説って少ない・・・少なくない?
ちなみに香澄が小さいころいじめられてて物静かな子だったというのは、
小説版の設定を輸入&アレンジしたものになります。


★評価のお礼★

ハッピー田中さん ★9ありがとうございます!


そしてついに評価ゲージに色が付きました!
引き続きよろしくお願いします!


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第3話 通い妻?

「全員揃ったな」

 

 

この全員が揃うのは随分久しぶりな気がする。

 

 

「聞いている人もいると思うけど、近頃出ている通り魔に香澄と有咲が襲われた」

「ああ、おたえの言う通り。念のため香澄ちゃんには俺が、有咲ちゃんにはおたえが警護で付いている」

「なるほど。それならひとまずは安心ですね」

 

 

皆すでに知っているようで紗夜がそう返す。

そう、ひとまずは安心なのだが・・・

 

 

「それで奏也、今回はどう動くの?」

「そうだな・・・今回は単独犯っぽいし俺一人でいいだろう」

 

 

そらきた。俺はまだこの事件の犯人が両親の仇、そしてオッサンの仇である可能性があることを言っていない。

確信が持てるまで一人で動くつもりでいたのだ。確信もないのに言ってしまっては確実にこいつらは熱くなる。そうなれば冷静でいられないだろうしこころあたりはまた一人で暴走するかもしれないしな。

 

 

「やっぱり!そういうと思っていたわ!」

「うーん、こころの言ったとおりだったね」

 

 

しかし俺にとっても予想外のことがおきた。

ここで声を上げたのは意外にもこころと美咲だったのだ。

 

 

「どういうことだ?」

「あー・・・奏也くんごめん。実はこころと私は奏也くんが何考えてるのわかってたりするんだよね」

 

 

その声に対し、氷川姉妹が発言する。

 

 

「やっぱり何かあるのですね」

「あ、やっぱそーなんだ!なーんか奏也の様子がおかしかったからあとでいっぱい追求しようと思ってたのになー」

「さらっとこえーこというなうよ・・・」

 

 

日菜はニッコニコだったが発言がクレイジーだった。

そしておたえもバレバレ、といった感じでこちらを見る。

やっぱりこいつら相手に隠し事は絶対ムリみたいだ。

 

 

「じゃあそろそろゲストを呼んでもいいかしら!蘭!入っていいわよ!」

「どうも」

 

 

そういって入ってきたのは蘭だ。

どうやら最近こころが家の用事とかであまりこれなかったりしたのは、実は同じくこころもオッサンの死に疑問を持っており、こころはこころでこの事件のことを調べていたからということだった。そしてその段階でオッサンの孫である美咲や情報通の蘭を巻き込み、オッサンの自宅や書斎を調べていたらしい。ちなみに黙っていたのは確信のない状態で明言しては余計な混乱を招くと美咲に言われていたからだとか。

つまるところ俺と全く同じことを考えていたとか。

 

 

 

「それで、何か分かったのか?」

「それなんだけどさー・・・おじいちゃんの家なんだけど、肝心なもの全部盗まれてたんだ」

「なんだと・・・・?」

「書斎のファイルが一部抜けてたり、カテゴリーによってはごっそり抜けてたりって感じだったね。普通の奴の行動じゃないよ、これは」

 

 

蘭がそう断言する。確かに普通じゃない。強盗事件で死んだ元議員の家に侵入し資料を盗むなど普通なら考えられない。

 

 

「それでは手詰まりじゃないですか」

「って普通ならそう思うわよね、紗夜!でもそこはアノ先生よ?」

「と、いうことは他に手掛かりがあるんだね?」

「その通りよ日菜!先生の書斎に遭ったカラクリ本棚は覚えてるかしら?」

 

 

カラクリ本棚。ある日俺が偶然発見した仕掛けだ。

オッサンの部屋の本棚が回転し、動くと地下に続く階段があるアレか。

発見当時はよく遊び場にしたものだ。

 

 

「・・・・ん?待てよ?ってことは」

「奏也くんが考えている通りだと思う」

「そこにあったんだな?盗られたと思われる資料と同じものが」

「その通り。おそらく盗まれたのはコピーかなあ。原本はバッチリ」

 

 

さすがだぜオッサン。抜かりがない。

 

 

「よしわかった。では後日、各々予定を合わせてオッサンの家にみんなでいこう」

「「「「「了解!!」」」」」

 

 

 

オッサン。名を荒神連也(あらがみ れんや)という。長きにわたって議員を務め、町民の信頼は厚い。

元格闘家というものすごい異例な経歴を持ち、最初はこんなチンピラになにができるんだとバカにする人ばかりだったとか。しかし荒っぽくて口が悪いが主張は芯が通っており、初当選すると公約をバリバリ有言実行し、その後連続で出馬・当選しいつだってこの町のことを考えてきた偉大な人物・・・・というのが俺が両親から聞かされた話だ。

俺が出会ったころには現役を引いており、そこからは気ままに子供相手の遊び相手になりながら過ごしていたという。そしてその遊び相手をしてもらっていた子供こそが俺たちだ。

じいさんの幽霊が住むでっかい家があるという、子供にありがちな理由で「探検しよう」という運びになり、オッサンの家に不法侵入したのが始まりだった。

 

 

「うわああああああジジイの幽霊だあああああああああああ」

「誰がジジイの幽霊だ!」

「うわあああああああ幽霊が喋ったあああああああああ」

「ゆゆゆゆゆゆゆ幽霊なんているわわわわわけ」

「あははは!おねーちゃんブルブルしてるー!」

「まあ、最近の幽霊は足がついているのね!」

「あくりょうたいさんあくりょうたいさんあくりょう・・・・」

「誰が悪霊だ!」

「うわあああああああジジイが喋ったああああああああああ」

「もはやただのジジイになってるじゃねえか!!!!」」

 

 

うん、これが俺たちの出会い。

そっからなぜか仲良くなった俺たちはジジイの暇つぶしという名目で俺たちはオッサンの技を伝授され、今に至るというわけだ。

とまあこんな感じで、昔から遊んでくれて両親が死んだときもすごく助けてくれた俺にとっても恩人だ。

ちなみに俺のこの喋り方はオッサンの影響がかなり強い・・・と幼馴染たちには言われる。

 

 

「とまあ、最終章で初めてオッサンのこと詳しく語ったけどわかってくれたかなな?」

「奏也先輩、誰に向かってしゃべっているんですか?」

 

 

いつも通り香澄ちゃんと歩く帰り道。

あ、そういえば香澄ちゃんが俺のこと名前で呼ぶようになった。おたえは呼び捨てにしているし、なんかそうしたくなったらしい。

まあそういうこともあるよね。

ちなみに今日はポピパの練習は休みだ。理由は大きく分けて二つ。一つ目は沙綾ちゃんが家の手伝いでどうしても帰らなければいけないくなったということと・・・香澄ちゃんが補習になってしまったということだ。

 

 

「ほんっとごめんなさい奏也先輩!待たせちゃって」

「ま、今日時間があるしいいさ」

「あ、そういえばあの漫画の発売日今日だった!奏也先輩!本屋さんに寄っていいですか!?」

「ああ、いいよ」

 

 

次から次へと行動を変える。エネルギーの塊みたいな子だ。こんな子が以前島袋君がいってた陰キャだったなんて信じられない。そういえばあれから島江くんは姿を見ない。見る必要もないけどな。

 

 

香澄ちゃんが本を選んでいる時間、俺は雑誌を立ち読みする。

ふと手に取ったのはいわゆる三流ゴシップ記事。芸能人のどうでもいいゴシップや誇張記事が面白おかしく書かれている。これ書いてるやつ楽しんでそうだな~・・・

しかしそこでふと目に留まった記事。

「あきれた!警察またまた不祥事!!外に厳しく身内に甘い警察の体質はどうなっているのか!?」

内容を読むとすげえ、この記者相当警察が嫌いみたいだな。なんというか悪意が滲み出ている。不当な職務質問でもされたことあんのか?

 

 

「奏也せんぱーい!お待たせしました!」

 

 

どうやら香澄ちゃんはコミックを買ってきたようだ。

 

 

「よし、じゃあ行こうか」

 

 

俺と香澄ちゃんは本屋を出て再び帰り道を歩く。

この光景も結構慣れたものだ。珍しいものを発見したり、不意にどこかいってしまったり、本当に戸山香澄をいう女の子は油断ならない。そしてそれと同時にそれを見ていることに対して楽しさを感じている自分がいることにも気が付く。

 

 

「香澄ちゃんって。なんていうかほんとすごいね」

「えー?なんですかそれー?」

「なんていうか見てて飽きないや」

「えへへー、褒められたー」

 

 

屈託のない笑顔をこちらに向け笑う。それが嬉しかったのか香澄ちゃんは走り出す。しかしその先には・・・1台の車が迫っていた。

 

 

「香澄ちゃん!!!」

「えっ?」

 

 

普通に運転していれば大丈夫だ・・・普通ならな。しかしその運転手はスマホを見ながら運転しており、香澄ちゃんの視界に入る頃には手遅れの距離まで来ていた。

その光景を見た香澄ちゃんは足がすくんでしまい動けない様子であり、迫り来る車を凝視していた。

俺はすぐに飛び出し、そして香澄ちゃんを抱くと思いっきり跳躍した。

 

 

キイイイイイイイイイドンッ!

 

 

車の範囲から俺たちが逸れると、車はそのままガードレールに突っ込み停止する。

そして俺は香澄ちゃんを抱いていたせいでうまく受け身がとれず、右腕を地面に強く打ち付けてしまった。

 

「ってえ・・・・」

「奏也先輩!大丈夫ですか!?」

「なんとかね」

 

 

しかし右手が痛すぎる。この感じ・・・骨はイってない。よくて打撲、悪けりゃ捻挫かなあ・・・・これから大事な時期なのに運がねえぜ。

 

 

「それより運転手!大丈夫か?」

 

 

運転手は頭を強く打っているようで意識がなかった。

 

 

「おい、誰か手伝ってくれ!そのあなたは警察に電話を、そっちのあなたは救急車をお願いします!他の人はこの人を車から出すのを手伝ってください!」

 

俺は目撃していた通行人にそれぞれ指示を飛ばした。

ちなみにこういうケース、「誰か警察と救急車を!」という指示はあまりよくない。

「誰か」と指示対象を明確にしないことで「誰かが通報してくれるだろう」と考えで通報しない人が出てしまい、下手すると通報しない人ばかりになり結果的に通報が遅れてしまうということになりかねない。故にこういった場合は誰かしらを捕まえて「その人に対し指示をする」のが好ましいのだ。他にも見ている人が通報するかもしれないが、通報が重なる分には全く問題ないからな。

 

 

「意識がねえな・・・そこの人!あっちの自販機にAEDが入ってたと思うから持ってきてください!」

 

 

右手はかなり痛いがいまは人命救助が先だ。いくらながら運転するバカ野郎でも命を落としていい理由にはならない。俺は救急車が到着するまでにできる限りのことをしたのであった。

そして到着し、俺の右手の処置が終わったのち警察の事情聴取を受けることとなった。

 

 

 

 

すごい・・・・

奏也先輩は私を助けてくれた後、すぐさま状況を確認して的確に事故の処理を進めていた。

一つ一つの指示が的確で本当にカッコよかった。

そして、その後奏也先輩のケガの処置を病院でやったあと、お巡りさんがやってきて事情聴取が始まったのであるが、その場面でもお巡りさんの質問一つ一つにしっかり答え、それはすぐ終わったのだ。

 

 

「まさかこんな短期間で2回も車に突っ込まれるなんて思ってなかったぜ。香澄ちゃんも2回も警察に話をきかれるとは、香澄ちゃんもびっくりだよね」

「あの、奏也先輩・・・・ほんとごめんなさい!」

 

 

そもそもこんなことになったのは私のせいだ。

 

 

「なんで謝るの?」

「だって私がふらふらしてて、それで車が・・・私がしっかり歩いていたら奏也先輩もケガすることなかったのに!」

「なんだそんなことか。香澄ちゃんがケガ一つない、それだけで十分じゃないか。今の俺の役割は香澄ちゃんを守ることだ。俺は自分のやるべきことを全うしただけだよ。だからそんなに気にしなくていい、むしろ君を助けることができて誇らしく思うよ?」

「奏也先輩・・・・」

 

 

なんでこの人はこんなにカッコイイんだろう。なんで何の見返りもなくこんなに私を助けてくれるんだろう。

えっ!?やだ!私ったら何考えてるの!?

 

 

「そういえば奏也先輩、右利きですよね?怪我しちゃって・・・あの、私に何かできることありませんか!?」

「2~3日で治るし大丈夫だよ?」

 

 

 

「でもっ・・・でもっ!」

 

 

香澄ちゃんは泣きそうな顔で訴える。

確かに右手は痛く、包帯で固定されている。ちなみに打撲で済んだようで、2~3日で動かせるようになり1週間もすれば痛みも引くだろうということだった。

 

 

「・・・そういえば奏也先輩って一人暮らしでしたよね?」

「そうだけど?」

「ならその手じゃ一人で色々やるの大変ですよね!私、先輩の家にいって色々お手伝いします!!」

 

 

こうして、香澄ちゃんの疑似通い妻生活が始まったのであった。

意外や意外・・・・と言ったら失礼だろうか決して器用ではないが香澄ちゃんは一生懸命やってくれた。

さて、その様子を期待してくれていた諸君、その描写はお預けなんだ。すまんな。

 

 

「結局帰るときに送ってもらうって変な感じですね(笑)」

「ま、しゃーないよ。俺のところの帰りに香澄ちゃんになにかあったら気分が悪いしね」

「あ、そうだ。今日のことお父さんに話したらしっかりお礼をさせてほしいっていってました!」

「そうか・・・」

 

 

香澄ちゃんのお父さん、結構強烈なキャラしてるからなあ・・・

まあいいんだけど。

 

 

「・・・・香澄ちゃん少し下がってて」

「え?どういう?」

「おうゴルァ!んな暗闇ン中いないで出て来いよ」

「ばれちまったか」

 

 

出てきたのは奴だ。えーっと・・・名前なんていったっけ・・・・?

 

 

「し、島田くん!?」

「そうだ!島出くんだ!」

「島田だっつってんだろ!この前は舐めた態度とってくれたからお礼に来たぜ。おめえ右手ケガしたんだってな?事故見てたぜ」

 

 

通り魔だったらひっとらえてやろうと思ったがただの雑魚でがっかりだよ。

 

 

「つまり俺がケガしたからお礼をしようと待ち伏せしてたってこと?おめえ色々腐ってんな・・・」

「何とでもいえ!俺はおめえをぶん殴ってスッキリしたい、それだけの話だ」

「オナニーなら家でやってくれよ」

 

 

自分が気持ちよくなりたいだけで人に迷惑をかけるとはクズだねえ。

この前の1件でこいつの力量はわかっている。ぶっちゃけ利き腕が使えなくても大したことない。

 

 

「どうでもいい!いくぜ!」

「奏也先輩!!」

「あー香澄ちゃん大丈夫大丈夫。おい島戸くん、お前は左手1本で倒してやるよ」

「島田だあああああ!畜生、死ねえええ!」

 

 

明らかに俺の左手を意識して突っ込んでくる島下君。俺はすかさず・・・

脚を上げそのままパワーを込めて蹴りをぶち込むことにした。

 

 

「ウグォォォォォォォォォォォォ!!!!て、てめえ左手しか使わねんじゃなかったのかよ・・・!?」

「はぁ?そんなこと信じたの?さてはバカだな、おぬし」

「テメエ・・・卑怯だぞ・・・・」

「オイオイオイオイオイオイオイ特大ブーメラン刺さってるぜ?人のケガのタイミング襲ってきた卑怯モンはどこのドイツだよ?島上君ってすげえよな、最後までバカタップリだもんな!」

「トッポみたいにいいやがって・・・・ちくしょおおおおおお・・・・!」

 

 

立ち上がり再び迫ってくる島吉くんに今度は宣言通り左手の拳をぶち込み、ダウンさせた。調子が悪いせいで意識を奪うまではいかなかったようだがまあ仕方ないね。

 

 

「卑怯なことする奴はいつまでたってもそのままだ、体に刻んでおきな。香澄ちゃん、いこうか」

「えっ!?あ、はい!」

 

 

そうして俺たちは再び歩みを進める。

その後戸山家で手厚い歓迎を受けた俺は割と楽しい時間を過ごしたのであった。

 

 

 

 

「畜生・・・あの野郎・・・メチャクチャだ・・・」

 

 

島田は奏也に負けた後、ブロック塀にもたれ次はどう襲ってやろうか考えていた。

奏也本体ではなく香澄を狙ったり、凶器を持ち出したりと色々アイディアを考えているようだ。

 

 

「次こそは・・・次こそは・・・」

 

 

しかし島田はまだ気づいていない。座り込む島田に・・・奴が近づいているのを。

 

 

「あ?なんだテメエ怪しいカッコしかがって・・・見せもんじゃねえ!・・・・っえ?」

 

 

ソレが島田に近づいたときはもう遅かった。島田は自らの腹に衝撃が走り、そして強烈な痛みが走るのを感じ取った。

 

 

「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああいてえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」

 

 

 

 

「あ、奏也先輩おはよう~!」

「おはようございます、神剣先輩」

「あら、神剣君、おはよう」

 

 

なし崩しに戸山家に泊まることになった俺は翌朝戸山家の食卓にいた。

今日は日曜日であるが香澄ちゃんのお父さんは休日出勤とかですでに家にいない。

出された朝ご飯を食べながらテレビをみていた。

 

 

 

「次のニュースです。本日未明、●●区の路上で同区内に住む島田英二さん(15)が腹から血を流して死亡しているのが発見されました。警察はその手口から見て同区で頻発している連続通り魔事件の被害に遭ったとみて捜査を進めています」

 

 

俺はそのニュースを見て、驚愕する。そして香澄ちゃんは持っていたカップを落として割ってしまった。

 

 

「島田君が・・・?それに、この場所・・・昨日私たちが通った・・・じゃあ、ちょっと時間かずれていたら私たちが・・・・?」

「香澄ちゃん、落ち着こう」

「いや・・・・」

「香澄ちゃん!」

「いやああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 

 

楽しい色の食卓は、絶望のディープレッドカラーに染まってしまったのであった。

 




うーん、難産!


そして突然UAが増えてお気に入り件数がすげえ増えた・・・
一体何があったんでしょうか・・・・


お気に入り登録してくださった皆々様方ありがとうございました!


引き続きよろしくお願いします!

★評価のお礼★

サク&いずみーるさん ★9ありがとうございます!
そしていつも感想もいただき重ねてお礼申し上げます!


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第4話 ポピパのことを世界で一番好きなの私だから

香澄ちゃんが取り乱してから数十分、ショックで気を失っていた香澄ちゃんを明日香ちゃんと香澄ちゃんのお母さんと介抱し、ベッドに運んだ。

 

 

「ごめんね神剣君」

「いいですよ。とりあえず僕が見ているので」

 

 

香澄ちゃんのお母さんはそう言って部屋を出た。意識を失っている娘の部屋に男の俺を一人残すのはいささ注意が足りていないとも見えるが、それだけ俺のことを信頼してくれている証であるのでそれは純粋に嬉しかった。

それに香澄ちゃんも本当に辛いのだろうと思う。少しタイミングがずれていたら自分が被害に遭っていたかもという恐怖心、これは以前有咲ちゃんを助けたときのことがフラッシュバックしたのもあるだろう。まあ、俺が一緒なら絶対に死なせないがね。

そして自分をいじめていたヤツとはいえ、名前も顔も知っている人間の命が奪われたこと。

この町に住んでいると「~で事件がおきた」という情報は回覧板やニュースを通じて入ってくる。

しかしどれも名前も顔も知らない人が被害に遭っているため「まあ怖いわね」で済んでしまっており、所詮は他人事と思う人が大半であるのだ。そんな中で自分の知る人間が被害に遭い、あまつさえ命まで落としてしまったという事実は重く、身近な日常でも十分起こりうることであるということを現実に思い知らされたということになる。

もし被害に遭ったのが島田ではなくポピパのメンバーだったら?もしこれが自分の家族だったら?

そう考えてしまうのはある意味当然で、15歳の少女にはあまりに重く、そして残酷なものであることは想像に難くない。

 

 

 

「んっ・・・」

「おはよう、香澄ちゃん」

「そうやせんぱい・・・・?」

 

 

どうやら眠り姫がお目覚めのようだ。

刺激しないようにゆっくり声をかける。

 

「あれ・・・・わたし・・・・?」

「あんまり急に起き上がらなくていいよ。ゆっくりしてなよ」

「あ、はい・・・」

 

 

ボーッっとしたまま香澄ちゃんは生返事をする。

しかし徐々に覚醒し、表情が変化するのにそう時間はかからなかった。

 

 

「奏也先輩・・・・奏也せんぱいぃぃぃぃぃ・・・」

 

 

その後覚醒するなり大泣きを始める香澄ちゃんは泣き止み、冷静になるのに30分以上も要したのである。

 

 

「あのっ・・・すみませんでした!」

「いいよ。とりあえず今日は一日ゆっくり休もう」

「はいよ。じゃあ俺は帰るから、戸締りをしっかしりてね」

「はい!」

「それじゃあ・・・」ギュ

 

 

しかし俺が歩みを進めることはかなわなかった。

 

 

「あれ・・・?なんで私奏也先輩の袖なんて掴んで///すみません!今日はありがとうございました!おやすみなさい!」

 

 

そのまま某ラッコアニメの焦るときの効果音をならしながら怒涛の勢いで家の中に入っていってドアを閉めてしまった。

 

 

「一体なんだったんだ・・・?」

 

 

 

Soya:通り魔で死者が出たのは知っているか?

氷川紗夜:ええ

ヒナ:島田って人?

Soya:そうだ

たえ:それがどうかしたの?

 

 

その夜、俺はトークアプリで島田が昔香澄をいじめていたやつで最近絡んできたこと、俺がボコったこと、そしてそれを受けて香澄がショックを受けて体調を崩してしまったことを話した。

 

こころ☆:放置しすぎるのもあまりよくないわね?

奥沢:そうだね。おじいちゃんの家を調べる日程早く決めたほうがいいかも

Soya:俺もそれを提案しようとしていた

 

 

結果、各々予定を調整して1~2日以内に決めていこうということになった。

そして香澄ちゃんは次の日も学校を休んだ。

迎えに行こうと家を出たときにメッセージが届き、まだ体調が戻らないからということだった。

事情が事情なのでポピパの中でも、その日はお見舞いはもうちょっと様子を見てからということになったみたいだ。

 

 

「明日はいけそうです!!」

 

 

そんなポジティブなメッセージが届いたのはその日の夜。

それを聞いて安心した俺は翌日いつも通り向かいに行くべき就寝したのであった。

 

 

 

 

「あれ?おたえ・・・とポピパのみんな?」

 

 

朝戸山家に来るとポピパの4人も来ていた。

 

 

「香澄、昨日休んだから。今日は来られるって言ってたしせっかくだから一緒に行こうと思って」

「なるほどな。その方が香澄ちゃんも喜ぶかもな」

 

 

そして俺はインターホンに押す。

 

 

「はーい!奏也先輩?」

「うん。あとポピパのみんなも来てる」

「わっ!そーなの?もうすぐ行くから玄関まで入ってて下さい!」

 

 

その導きに応え、俺たちは戸山家の玄関までお邪魔する。

 

「ごめんねーお待たせ!」

 

 

そしたらそんなに時間がたたずに香澄ちゃんが出てきた。

 

 

「香澄にしてははえーじゃねーか」

「あー!有咲ひどい!奏也先輩が来るようになってからは寝坊とかしてないんだよ!」

「あはは、さすがの香澄もその辺は大丈夫かあ」

「でもよかった、香澄ちゃん元気そうで」

「そうだね、やっぱ香澄がいないと」

「えへへー照れるよー」

 

 

よかった、思ったよりも元気そうだ。

 

 

「さて、時間もないしそろそろいくぞ」

「「「「「はーい!」」」」」

 

 

5人は元気に返事し、ぞろぞろと外へ出る。

・・・そう一人を除いては。

 

 

「あれ?香澄?どーしたんだよ。早くいくぞー」

「そ、そうだね!うんうん、今、行くから・・・」

 

 

そう言いながらも一向に足が動く気配がない。

それにしびれを切らしたのか、有咲ちゃんが香澄ちゃんに歩み寄り、手を引く。

 

 

「ほら、いくぞー」

 

 

しかし手を引いたその刹那。

誰も予想していないことが起きたのだ。

 

 

「い、いや!」バシッ

「・・・・え?」

 

 

手を振り払われた有咲ちゃんはもちろん、その場にいた全員が驚きの表情を隠せてない。それはそうだ、あの香澄ちゃんが親友の手を振り払ったのだから。

 

 

「いやっ・・・おそとは・・・お外はいやぁ・・・・・」

 

 

そこにいたのはさっきまでの元気いっぱいの戸山香澄ちゃんではない。

その表情は外に出ることに怯え、あの日の夜-

島田が犠牲になり、震えあがっていた日のものであった。

 

 

「お、おい香澄・・・」

「・・・・あ」

 

 

そして自分がやってしまったことに気が付いたのか香澄ちゃんは目に涙をため、震えだした。

 

「ごめっ・・・有咲・・・!そ、そんな、そんなつもりじゃ・・・」

「香澄、おい香澄!落ち着けって!なっ?」

「ごめん、ごめんね有咲・・・ごめんね・・・・・!」

「香澄!!」

 

 

そして香澄ちゃんはそのまま身を翻し、家の中に戻ってしまった。

 

 

「香澄!!」

 

 

すかさず有咲ちゃんはその後を追い、ポピパのメンバーと俺も後に続く。

自室へと戻った香澄ちゃんは布団を頭にかぶり、震えていた。

 

 

「なあ香澄。どうしたんだよ?こんなの香澄らしくないぜ?」

「あ、有咲・・・怒ってない・・・?」

「んなことで怒るかよ。話してみ?力になれるかわかんねーけどさ。その・・・友達・・・なんだからさ」

「あ、有咲あ・・・・」

 

 

そして香澄ちゃんは島田の事を語りだす。かつの交流、犠牲になる前まで話していたことまで。

 

 

「いままでこういう事件とかってさ・・・他人事だと思っていたんだ。でもね、こうやって知っている人が犠牲になって・・・ほんとは昨日も学校に行こうとしたんだけど、どうしてもお外に出るのが怖くて・・・こんな事件は身近なんだ、これで狙われたのが友達だったら?家族だったら?ポピパのみんなだったら?って思いが外に出る怖さを一緒にあふれてきちゃって・・・それでこんなことになってるんだと思う」

 

おおむね俺の予想通りだったようだ。もう少し俺が気を使ってケアしてあげるべきだったんだな・・・

不覚だ。

 

 

「ばーか」

「は、ばか!?ひどくない?」

「私・・・私たちはいなくなんねーよ。その・・・私たちは5人でポピパっていつもいってんじゃん。誰一人欠けることなんてありえねーしずっと一緒でいるっていつも言ってんじゃん・・・・なんでもっと私たちの事頼ってくんねーんだよ?」

「そうだね。香澄、私たちはいなくならないよ。もっと仲間の事信用してもいいじゃない?」

「さーや・・・・!」

「そうだね。それに今の私たちにとっては今香澄ちゃんが欠けてる状態なんだよ?」

「りみの言う通り。5人でポピパなんだから、まずは香澄が戻ってこないとダメ」

「おたえ・・・・」

 

 

やっべえ泣きそう・・・・

なんだこのいい子たちは・・・・いい子たち過ぎて汚い俺の存在が浄化されそうだよ・・・・

 

 

「みんな、ありがとう!!!!!」

 

 

その瞬間、戸山香澄は完全復活を遂げたのである。

 

 

「しかし有咲・・・あんたほんと香澄のこと好きなんだね」

「なっ!?そんなんじゃねーし!!!」

「そういえばこの前ポピパが世界で一番好きなのは私とか言ってたらしいじゃん」

「なぜそれを!?」

「有咲ちゃんのおばあちゃんから聞いた。盆栽の世話をしながら語りかけてたとか・・・・」

「ばあちゃんめええええええ」

 

 

そんなことを暴露したら茹でタコなんて軽く凌駕するレベルで顔を真っ赤にする有咲ちゃんの姿がそこにあった。

 

 

「あーりさー!」

「香澄!きゅ、急に抱き着くんじゃねえ!」

「あーりさ!」

「沙綾まで!?おい、暑いから離れろ!」

「りみ、わたしたちも」

「そうだね、おたえちゃん!」

「「えーい!!」」

「おーまーえーらー!」

 

 

俺はその尊い光景を見て、まるで無我の境地に達した修行僧のような表情をしていた。

 

 

「・・・・?奏也、鼻血出てるよ・・・?」

 

 

と思っていたら煩悩の塊でしたスミマセン許してくださいなんでもしますから。

 

 

「ああ、尊い・・・・」

 

 

瀬田さんのようなセリフを吐きこれからきたるべく宿命へ向けて、ひそかに覚悟を固める俺であった。




ワイ、ポピパちゃんの仲いい感じ大好きやねん・・・

「ポピパのことを世界で一番好きなの私だから」という有咲のセリフは実はこちらも小説版(のコミカライズ)が元ネタです。
こっちの有咲はアニメ・ガルパとは性格が全然違いますがマジでいい子です(ステマ)

最終章ということで多分5話じゃ収まる気がしていないので、終わるまでお付き合いくださればと。
引き続きよろしくお願いします!


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第5話 箸休めの愛してるげーむ

「さあ、集まったな」

「しっかしすごい量だね・・・おじいちゃん片付け下手だったからなあ」

「先生が適当だったのはすでにわかっていることですから、文句を言っても始まりません」

 

そして翌日。俺たちはオッサンの自宅の書斎地下にある隠し部屋に来ていた。

隠し部屋といってもかなり広い。広さ約15帖ほど。しかも書類や本が詰め込まれているためこの中から目的のものを探すのはなかなか骨が折れそうだ。

・・・と思っていたのだが一角だけ明らかに整理されており、ただならぬ雰囲気を出す場所があったのだ。

 

 

「美咲、ここか?」

「うん多分ここ。見るならみんなでって思ってまだ手を付けてないよ」

「よし、引っ張り出すか」

 

 

とはいっても膨大な量だ。俺、美咲、こころ、おたえ、紗夜、日菜、蘭全員でやっても外に出すのにものすごい時間がかかってしまった。

そして外に出すと8帖の部屋が半分埋まってしまった。

物理法則とか無視してない?地下倉庫は四次元ポケットかなにかか?

しかしそんな膨大な資料であるが背表紙にはしっかり「花咲川・羽丘通り魔」と書かれているものも混在している。

・・・しかし途中から背表紙を書くのがめんどくさくなったのだろう。背表紙が書いていないファイルの方が圧倒的に多い。

 

 

「こっから探せってかよオッサン・・・(困惑)」

「おじいちゃん・・・・」

「「「「先生・・・」」」」

「あ、私は名前くらいしかしらないや、この人」

 

 

そういやこの中で蘭は唯一関わりが薄いんだったな。

 

その後は各々放課後にオッサンの家にきて、交代で資料漁りをすることになった。

 

各バンド練習もあるし、俺とおたえは香澄ちゃん・有咲ちゃんのの護衛継続もあるからな。全員が全員毎日缶詰で資料を漁るのは難しいところがあるのだ。

そして蘭は警察関係の情報を仕入れるツテがあるということで事件の状況などを担当する。マジで情報源どこなんだ・・・?

 

 

「各々役割分担にしたがって頼む」

「「「「「「了解!」」」」」」

 

 

俺たちの因縁をめぐる一連の事件は、確実に真相へと向かっているのが感じることができているのだ。

 

 

 

 

「ねえおねーちゃん」

「なにかしら?日菜」

 

今日の資料漁りは私たち姉妹が担当だ。

ただ探すだけでは疲れてしまうので、こうやってところどころに会話を挟みながらやっている次第である。

 

 

「リサちーって奏也の事好きなんだっけ・・・?」

「そうのようね。なぜか本人より湊さんの方が頑張ってるけど」

「あー・・・そうなんだねー」

 

 

日菜は煮え切らない顔をする。

もしかして日菜は奏也のこと好き・・・とか?いや、ありえない。

私がそんな日菜の変化を見逃すわけがないし、そんな素振りは全くないと断言できます。

 

 

「言ってなかったけどさー・・・実は彩ちゃんも何だよね」

「・・・・・はい?」

「だからさ、彩ちゃんもなの。奏也のこと好きなの」

「・・・・なんですと?」

 

 

聞いてない!そんなこと聞いてませんよ!

 

 

「奏也のくせにナマイキね」

「ね!そう思うでしょ!?よりによってリサちーみたいないい子と彩ちゃんみたいな可愛い子なんて贅沢極まりないよ!」

「・・・でも日菜、問題は共通してそうね」

「・・・・うん」

 

「「あのニブチンめ・・・・」」

 

 

これは私たち姉妹でなくとも思っていることでしょう。

 

 

「あ、でもリサちーと彩ちゃん、お互いに気持ち知ってるみたいだよ?そのうえで仲よくしているみたい」

「なんと。まあ確かにあの二人がこんなことで険悪になるのは考えにくいことですがね」

「ねえ、おねーちゃん。おねーちゃんはリサちーの味方なの?」

「・・・・現状はそうね。でも最終的にどっちかの味方につけといわれたら私はどちらにもつかないと思うわ」

「あ!あたしと一緒だ!今は彩ちゃんの事助けているけど・・・どっちかの味方になれっていう選択肢が出てきたら全力ブッチしてあとは流れに任せるかなー・・・結局、そんなものは本人たちでしか解決できないわけだしね」

「リアリストね。まあ、そのあたりに関しては同意だわ」

「ふふっ!やっぱり私たちは姉妹だね!」

 

 

日菜がぱぁっと目を輝かせていう。

 

 

「ええ、そうね。ねえ日菜、この事件が解決したらその・・・久しぶりに二人で旅行にでも行かないかしら?」

「えっ!?おねーちゃんがそんなこと言うなんて珍しい!」

「い、嫌ならいいのよ・・・せっかく二人きりの姉妹なんだしたまにはそういうのがあったっていいかと思っ「絶っっっっっっっ対いく!!!!!」

 

 

私の言葉を遮り、日菜は大声で言い切った。

 

 

「やったー!おねーちゃんと旅行!るるるんっ♪って感じだ!どこがいいかなー?おねーちゃんはどこか行きたいところある!?」

「ひ、日菜、気が早いわよ」

 

 

私の提案を大喜びでOKしてくれた日菜をみて思わず嬉しくなってしまう。

かつて日菜に抱いていた感情。なんでもできる妹とそれだけ努力をしても追い付けない姉。それが原因で私が一方的に日菜に劣等感を抱き冷たく当たってきたこと。でもそれはもう昔の話。

まだ少し素直になれないところはあるけど昔のように仲のいい姉妹に戻れているのは間違いない。

 

 

「あ、でも凶悪事件を追っててこのタイミングって”この勝負が終わったら結婚しようぜ・・・”みたいな死亡フラグ?なんちゃって!」

「日菜、何を言っているの?」

 

 

そう、自信をもって私は日菜に言い放った。

 

 

「私たちに・・・奏也がついている私たちに死亡フラグなんて概念は存在しないわ」

「ふふっ!そうだよね!!」

 

 

しかし今日で何日目になるだろう。本当に手掛かりが見つからない。

 

 

「うーん・・・資料探しも飽きてきたなあ。そうだ!」

「飽きたってあなた・・・それにどうしたの?急に大声を出して」

「ふっふっふ・・・るるるんっ♪ってすることを思いついた!!」

 

 

日菜は不敵に笑うと。そう言い放ったのである。

 

 

 

 

「なんだよ日菜?急に家に来て」

 

 

俺は夕方突然やってきた氷川姉妹に困惑していた。

 

 

「今日ね、奏也の家に泊まるから!」

「と、いうわけです。悪いわね、奏也」

「年頃の娘さんが二人で一人暮らしの男の家に来るもんじゃねえよ」

「大丈夫!二人じゃないから!」

「は?」

 

 

ピィンポーン!(迫真)

 

 

他にも誰か来たようだ。

一体誰だ?

 

 

「はーい」

「えっと・・・日菜ちゃんにここに来るようにいわれたんですけど・・・」

「え??彩???」

「えっ!?奏也くん・・・・?」

「私もいるわよ」

「・・・と、千聖さん」

 

 

なんとそこにいたのは彩と千聖さんだった。

 

 

「おい日菜、これはどういうことだ・・・?」

「まま、いーからいーから!彩ちゃーん!千聖ちゃーん!入ってーどうぞー!」

「あ、おい待てい、ここ俺の家だゾ」

 

 

そんなことは全く聞かず、彩と千聖さんは中に入ってきた。

 

 

「え?あの??日菜ちゃん???え????」

「あははー!彩ちゃんめちゃくちゃ緊張してる!」

「そりゃそうだよ!うぅ・・・こんなんならもっとマシなメイクと服装してくればよかったあ・・・」

「それで日菜ちゃん?これはどういうことかしら?」

「そうだぞ日菜、説明してもらおうか」

 

 

3人で日菜に詰め寄る。しかしその後、日菜は罪悪感ゼロの顔で言ったのだ。

 

 

「えーっとね、最近同じことばっかやってて飽きちゃったからさ、なんか楽しいことしたくて呼んだの!」

「・・・・それだけ?」

 

 

それを聞いて千聖さんはため息をついた。

しかし日菜のムチャぶりは慣れたといった様子で話を進める。

 

 

「でも知り合いの家借りられるからお泊りの用意持って来いって!まさかそれが奏也くんだったなんて・・・///」

「そうだぞ、日菜。いくらお前らがいるとはいえ女の子が男の一人暮らしに泊まり込みなんてけしからんぞ。なにかあったらどうするんだ?」

 

 

今一度注意する。そうだ、もっと考えるがいいぞ日菜よ。

 

 

「え?奏也みたいなニブチン野郎が何かできるっていうの???」

「そうね、奏也みたいな鈍感無神経野郎が女の子に何かできるとは思えないわ」

「ええそうね・・・奏也くんって相当アレだし」

「それは同意かな・・・だって奏也くんだし」

「あれぇ!?なんで俺が叩かれてるの!?俺何かしちゃったんですかね・・・?」

 

 

「「「「「何かしないから問題なのよ(なんだよ)」」」」」

 

 

なんだこれは・・・これがオンナの結束力という奴なのか・・・・

イミワカンナイ。。。つよぃ。かてなぃ。。。。。もうマヂムリ。。。。

 

 

「脳内でアホなこと考えてる奏也はまあどうでもいいからさ!せっかくだからこのお泊り会、楽しくしようよ!!」

「扱いがひどすぎる・・・・」

「・・・まあいいわ。どっちにせよ両親には友達の家に泊まるといってきてしまったし」

「そうだね・・・私もそうだし」

「うむ、どうやら俺のことは信頼してくれているようだな。まあ来てしまったものは仕方ない、歓迎するぞ。ま、実際なんにもしないから安心してくれ」

 

「「「「「信頼の理由をもっと考えろ鈍感」」」」」

 

「ヒェッ・・・・」

 

 

 

 

「さて、彩ちゃん!ここから紙を一枚引いて!」

 

 

そして日菜は箱を取り出しそこから1枚の紙を選ぶよう、彩に促した。

 

 

「これを・・・?えーっと・・・」ガサゴゾ

 

 

そして彩は紙を引き当て、それを開示する。

 

 

「んー・・・”愛してるげーむ”?」

 

 

彩が取り出した紙にはそんな文言が書かれていた。

愛してるゲーム。指定された二人をAとBとすると、AとBが見つめあいAがBに向かって愛してると愛を囁く。それに対しBが照れたりしたらBの負け。逆にBが負けなかったら「もう一回言って」「私も愛してる」などと言い返すことが可能で、逆にそれに対しAが照れたりしたら負け。

勝敗が付くまでこれを繰り返すというものだ。

ちなみにローカルルールがあるようで、お互い交互に愛を囁き続けるパターンなど色々あるようだ。今俺が説明したものも人によってはローカルルールに扱われるらしい

 

 

「あ、愛してるゲーム・・・?」

「日菜ちゃん・・・これは・・・」

「あれー?なんで二人とも引いてるの?二人はアイドルでしょ?役者でしょ?これくらいこれからいくらでもいう機会あるのにこんな素人のお遊びに抵抗を持つの??」

「やるわ」

「がんばるっ!」

 

 

日菜のわかりやすい挑発に二人は乗ってしまった。

あれーこれって俺もやるんだよね・・・・?そして紗夜はすでに諦めているようだ。

 

 

「じゃあみんなこっちの箱から1枚ずつ引いて!AとBって紙を引いた人がアタリね!」

「うう・・・緊張するなあ・・・」

「どんな結果になってもやり遂げるのよ、彩ちゃん」

「なんで私まで・・・・」

「紗夜、あきらめろ・・・ああなった日菜はもう止められん」

 

 

「じゃあみんな紙を開いて!せーのっ!」バッ

 

 

一斉に紙を開く。

 

 

「俺はハズレだな」

「私もね」

「よかったぁ~なにも書いてなよ~!」

「ん?ってこたあ・・・・」

「あー!あたしとおねーちゃんだ!あはは、仕掛け人がファーストプレイヤーなんて運命のいたずらってすごいね」

「相手は日菜・・・ですか。まあ日菜なら・・・」

「じゃああたしがBだからおねーちゃんがAね。よーし、絶対負けないよー!」

 

 

そして二人は向き合う。

 

 

「よーしおねーちゃん!どっからでもかかってきてよ!」

 

 

ものすっごいニコニコと挑発する日菜であるが、紗夜はすでに顔を赤くしていてモジモジしている。うーん、やる前から勝負がついてしまってないか?

 

 

「じゃあ・・・やる・・・わね。・・・日菜」

「うんうん、なーに?おねーちゃん!?」

 

 

そして紗夜は日菜の両肩を掴みしっかり目を見た。

 

 

「えっ・・・?おねーちゃん結構本格的だ・・・「日菜」

 

 

そして紗夜は日菜の言葉を遮った。

 

 

「疎遠になってしまった時期もあったけど・・・日菜とわかりあえて、今もこうやって仲良く話して、遊んで、とても幸せよ。日菜・・・あなたを愛しているわ。今も、そしてこれからも」

「・・・・・・・」ボー

 

 

日菜が表情を固定したままフリーズしてしまった。

そしてそのさまを見ていた彩と千聖も驚いているような照れているような・・・顔を赤くしている。

 

「・・・・おねーちゃん・・・おねーちゃん!おねーちゃんおねーちゃんおねーちゃんおねーちゃん!!!!!あたしも!あたしも好き、好きだよ!愛してるよおねーちゃん!ねえねえ、もっかい!もっかい言って!」

「い、いやよ・・・・///」

「えー?もっかいだけ、ね?録音するから!!!」

「なおさらイヤよ!!!」

 

 

あー・・・・・・

さよひな・・・・・尊いナァ・・・・・・

 

 

ゴスッ!

 

 

「いてえ!?」

「奏也くん、ぼーっとしてないで勝敗を告げてあげなさい」

「千聖さん!?いま俺の事殴らなかった!?」

「なんのことかしら?」

 

 

うお・・・でた、千聖さんのよそ行きスマイル。こうなった千聖さんは勝てない、追及してもムダだ。

 

 

「わかりましたよ・・・・あー、紗夜、日菜。悪いがそこまでだ」

「えー?」

「まあ続けたい気持ちもわかるがな。こわーい鬼さんがいるからな」

「奏也くーん?それは誰の事かしらー?」

「ナンデモナイヨ!」

 

 

この勝負・・・先に照れたのは紗夜か

 

 

「勝敗は予想通りだったが・・・紗夜の言動は意外だったな」

「勝つためですから」

「え・・・?おねーちゃん、さっきの演技だったの?」

 

 

日菜が割とマジでショックな顔してる。

 

 

「そ、そんなことないわ!ほんとよ・・・」

「おねーちゃーん!大好きー!!!!!!」

 

 

以下、無限ループ禁止な。

 

 

 

 

そんな感じで第2ラウンドへ突入したわけだが・・・

 

 

「俺か・・・・」

「私がBね」

 

 

あろうことか俺と千聖さんが当選してしまった。

 

 

「まあ、さっさと済ませてしまいましょうか」

「千聖さん・・・俺に慣れてくれたのはいいんだけど扱い悪くないですかね?」

「千聖ちゃーん!頑張ってー!」

 

 

彩が応援する。そのあと日菜がなにやら彩に耳打ちして彩が赤くなっているのが見えた。

 

 

「まったく・・・どうせ当たるなら彩ちゃんの方が・・・」

「なんだ?千聖さんは彩とやりたかったのか?」

「ハァー(クソでがため息)ほんと奏也くんは奏也くんね・・・・」

「よくわかんないけどこわいよ千聖さん」

 

 

そして俺たちは向き合う。

 

「じゃあ奏也VS千聖ちゃん・・・スタート!」

 

 

「千聖さん・・・愛しています」

「ありがとう。私も愛しているわ」

 

 

さすが手ごわい。千聖さんは完全に女優モードに入っている。

 

 

「うう・・・千聖ちゃんいいなぁ・・・」

 

 

何か聞こえた気がするが気のせいだろう。

さて2回戦だ。

今度は完全に切り替えていく。

 

「千聖さん・・・・・」

 

 

ジッと千聖さんを見つめる。

まだ言わない、ジッと・・・ジッと千聖さんを見つめる。

 

 

「ううー!いいなぁ!」

 

 

何か聞こえた気がするはこっちに集中だ。

見つめ続けたのが効いたのか千聖さんの雰囲気が変わった気する。

よし、やるならここだ!

 

 

「千聖・・・愛しているよ」

「ありがとう、私も愛しているわ」

 

 

その結果・・・ダメみたいですね。

 

 

「ダメだ、千聖さんに勝てる気がしねーわ。俺の負けでいいよ」

「ふふっ・・・楽しかったわ」

 

 

最後まで勝てない。さすがは女優だ。

 

 

「あれ?千聖ちゃんさっき少し顔を赤くして・・・」

「赤くなんかしてないわ」

 

 

その彩の言葉を千聖さんは早口で取り消した。

 

 

「え?でもさっきやっぱり・・・」

「赤くなんかなってないわ嫌だわ彩ちゃん何言っているのかしら夢でも見たのかしら」

「ち、千聖ちゃん・・・やっぱり」ガシッ

 

 

そこで俺はとんでもないもんを見ちまった。

 

 

「彩ちゃん・・・・?まだ目覚めてないのかしら?」

「ぐぇぇぇぇぇ・・・わかったわかったわかったよもうミテナイワタシナニモミテナイ!」

 

 

それは・・・

 

美少女が美少女にアイアンクローを炸裂させ黙らせるところだった。

 

 

「芸能界って色々あるんだね・・・・」

 

 

 

 

「時間もいい感じだし、やるなら次でラストかね」

「じゃあ最後のくじ引き行ってみよう!」

 

 

そして一斉に紙を開く。

 

 

「あ、私がA・・・・」

「ふむ・・・Bは俺か」

「えっ!?奏也くん!?」

「相手は彩か。千聖さんには負けちまったし勝ちてえな」

 

 

彩とはいえ相手は現役アイドル。千聖さんほどじゃないにせよ手ごわいに違いない。

 

 

「ねえ日菜ちゃん。彩ちゃんどう思う?」

「うん千聖ちゃん。彩ちゃん・・・アレだよね」

「ええ、アレ・・・ですね」

 

 

何やら3人は話しているがまあいい。

 

 

「よっしゃ、どっからでもかかって来な」

「えっ・・・うー・・・・その・・・奏也くん!好きです!愛しています!!」

「ああ、俺も愛しているよ」

 

 

そして俺は満面の作り笑顔で彩を迎え撃つ。

さあ彩よ、どう出る!?

 

 

「あああああああああああああああ!もぅ無理ぃ~~~~~~~~~うううううううううう!!!!」

 

 

そしてその反応とは・・・

まさに瞬殺とも呼べる速度で照れて暴れまわる彩の姿であった。

 

 

「「「やっぱりな」」」

 

 

他の3人はわかっていたかのように声をそろえてそう言い放ったのを、俺は聞き逃さなかったのである。

 

 

 

 




あんまり暴力ばっかだとあれなので箸休めです。
ポピパ編なのにポピパメンバーが名前しか出てこない・・・出てこなくない?

まあそういう日もある。
次回は今井リサさんと湊友希那さんを神剣家にお招きいたします。


そしてすごいスピードでお気に入りが増えて嬉しいです!
お気に入りしてくださった皆様ありがとうございます!
引き続きよろしくお願いいたします。


★評価のお礼★

鮫田鎮元斎さん ★8ありがとうございます!
江戸川シューズさん ★10ありがとうございます!


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第6話 絶対に笑ってはいけない神剣家

\デデーン 全員 アウトー!/






「奏也ー!今日も来たよー!」

 

 

彩と千聖さんが来た翌日。また日菜と紗夜がやってきた。

 

 

「お前ら連チャンだけど親御さんは大丈夫なのか?」

「その辺は抜かりないよ!バンドの合同合宿っていってあるから!」

 

 

まあそうだわな。特にカタブツな紗夜が許すあたりその辺はちゃんとしているのだろう。

 

 

「ちょっと紗夜!これはどういうこと!?」

「すみません今井さん。でもまあ、いいじゃないですか」

「そうよリサ。せっかくだからこの機会をしっかり生かしなさい」

 

 

そして日菜に続き、後ろからもう3人分の声が聞こえてきた。

 

 

「引き続きお邪魔します」

「こんばんは、奏也くん」

「お、おじゃまします・・・」

 

 

それはリサ、友希那さん、紗夜だった。

なるほど。今日連れてこられたのは二人だったか。

 

 

「また日菜の思い付きか?二人も付き合わされて大変だな」

「えつ!?ま、まあたまにはこういうのもいいかなって・・・?」

「あはは、リサちーあたふたして彩ちゃんみたい!」

「ヒナのせいでしょ!」

「何をもめているかは知らんがまあ入れよ。歓迎する」

「ハァ・・・あなたは相変わらずなのね」

「・・・なんで友希那さんは憐れむような眼で俺を見てるんですかね・・・?」

 

 

 

 

「さあリサちー!この箱から1枚引いて」

 

 

日菜は彩の時と同じ、箱を出した。リサは困惑しながらもその箱からカードを1枚引く。

 

「とはいっても2枚うち1枚は昨日彩ちゃんが引いちゃったから残ってるのは1種類なんだけどね」

「”絶対に笑ってはいけない神剣家”?」

 

 

もはや説明不要。これは年末に大人気なアレだ。

 

 

「え?これをやるの?私も?」

 

 

そこで声を上げたのは友希那さんだ。

どうやら友希那さんは自分まで巻き込まれるのを予想していなかったらしい。

 

 

「くっ・・・リサ・・・と思っていたのに・・・予想外・・・」

 

 

なにやらブツブツいっている。まあ最近こう言ったシンプルな娯楽はなかったしいいか。

紗夜はすでに諦めていてリサはこういうノリが好きなのか結構乗り気のようだ。

 

 

「しかし一晩中やるわけにもいかないでしょう。時間はどうするのですか?」

「そうだねー・・・じゃあとりあえず30分!それで一番多く笑った人が一番少なく笑た人のいうことを1つ聞く罰ゲームもアリってことで!」

「ふむ・・・まあそれくらいペナルティがあったほうが面白いかもしれんな。ただ過激な奴や倫理的にアウトな奴はダメだぞ。みんなもそれでいいか?」

「ダメといってもやるんでしょう?」

「ああ・・・こうなった日菜は止められないだよ・・・友希那さん諦めてくれ」

「ハア・・・わかったわ」

 

 

全員準備はできているようだ。

 

 

「よーし、こころーん!いいよー!」

 

 

日菜がそう叫ぶと持参していたスピーカーからこころの声が流れる。

 

 

「よーし、じゃあいくわね!スタート」

「えっ・・・こころが絡んでるとか嫌な予感しかしてこなくなった・・・」

 

 

しかしそんな俺の心配は無情にも切り捨てられ、スタートしたのであった。

 

 

 

「何も起こらないな」

「何も起こらないね」

「あはは、楽しむためにあたしにも内容は知らされてないんだ」

「あら、日菜そうなの?」

「まあそれはそれでいいと思うわ」

 

 

カチッ・・・ブゥーン

 

 

すると部屋のテレビが突然ついた。

 

 

”えーがおーひーとーしーずーくー”

 

 

「あれ?これは・・・・」

「陽だまりロードナイトだね」

 

 

流れてきたのはRoseliaの曲”陽だまりロードナイト”だ。

そしてテレビにはあこちゃんと燐子さんが映し出される。

・・・なぜか二人はオフィス風の場所で仕事をしているキャリアウーマンみたいな恰好をしていた。

 

 

『うう・・・今日も仕事が終わらないよぉ・・・りんりん・・・』

『あこちゃん・・・もう少しよ・・・』

『もう・・・日が沈んで夜になっちゃう・・・よぉ・・・』

『あこちゃん・・・』

『りんりん・・・』

『『それでは聞いてください』』

 

 

『『陽 だ ま り 労 働 ナ イ ト』』

 

 

「「「ブフッwwwwwww」」」

 

 

\デデーン 湊 今井 紗夜 アウトー!/

 

 

「テンチューです!」

 

「え!?イヴちゃん!?どうしてここに!?」

「イヴちゃん・・・ノリノリで竹刀持ってノリノリで追いかけてくるよ!」

 

 

バシッ!「あひっ!」

バシッ!「きゃあ!」

バシッ!「痛くないです痛く!」

 

「これにてゴメン!」

 

「ひ、陽だまり労働ナイトはずるいよ・・・・!ククッ」

 

\デデーン 今井 アウトー!/

 

「え!?これもダメなの!?」

「オカクゴを!」

バシッ「あんっ!」

 

 

「ふ、不意打ちだったわ・・・」

「何気に宇田川さんも白金さんもノリノリで演技してましたね・・・」

「さて、次の映像がはじまるぞ」

 

・・・・これは

 

 

「あ、これうちの事務所だ」

 

 

ん・・・まてよ・・・ってことは

 

 

「ヤバイ・・・奴が・・・奴がくるぞ・・・!」

 

 

ガチャッ

 

 

『お疲れ様でーす!あれ・・・?誰もいないのかな?』

 

 

でた・・・最強の戦士・・・丸山彩!

 

 

『うーん誰もいないなー。そうだ!せっかくだしMCの練習でもしよっかな!』

「くっwww」

 

\デデーン 神剣 アウトー!/

 

「ブシドー!」

バシッ「ぐお!」

 

「今笑う要素あった?奏也?」

「いや・・・誰もいないのにメチャクチャ喋ってるのでもう・・・」

「続きがある見たいだよ」」

 

 

『うーんMCは練習もいいけど・・・そうだ!この前の日菜ちゃん、紗夜ちゃんの真似してたよね!私だって・・・』

 

 

すでに嫌な予感しかしない。

 

 

『ン゛ン゛(咳払い) フライドポテトォ!(変声)』

 

 

「「「「「「ブフォwwwwwww」」」」」

 

 

\デデーン 神剣 今井 湊 日菜 アウトー!/

 

「セーバイしてくれます!」

バシッ「あ゛!」

バシッ「んぐ!」

バジッ「あひっ!」

バシッ「ああん!」

 

「そんなにポテトポテト言ってないです!丸山さん・・・次に会ったときは・・・ブツブツ」

 

 

うわあ、彩の奴気の毒に・・・

 

 

 

『ふ~、いまの完璧に紗夜ちゃんだったね!そういえば昨日の紗夜ちゃん・・・可愛かったなあ』

 

 

「昨日の紗夜?どういうこと?」

「今井さん、それはあなたが知らなくていいことです」

「えー気になる~」

 

 

『あんな風に言ってもらえて日菜ちゃんも嬉しかったろうな・・・紗夜ちゃんは芋と妹が大好きなんだね!』

 

 

「「「「「もうやめてwwwwww」」」」」

 

 

\デデーン 全員 アウトー!/

 

 

「正義のテッツイです!」

バシッ「ぬごぉ!」

バシッ「んあっ!」

バシッ「ああ!」

バシッ「るんっ♪」

バシッ「痛くない痛くない痛くない」

 

「ま、丸山彩が強すぎる・・・・!」

「しかもこれカメラに気づいていないんでしょ・・・・?」

「すごいわね・・・・」

「あはは、彩ちゃんはすごいなー!」

「笑ってないで!これは危険すぎます!」

 

 

だが無慈悲にも映像は続く。

 

 

『アヤさん!』

『あ、イヴちゃん!お疲れ様!』

『お疲れ様です!』

『実はアヤさんにお願いしたいことがあるのです!』

『えー?なになに?』

『今パスパレでは演技力とリアクション力を鍛えるためにヌキウチでテストをして撮影しているみたいなんです!』

『えっ!?そうなの?』

『これが台本です!』

『えーっと何なに・・・妻:イヴ 夫:彩で、仕事帰りの夫が妻に出迎えられる。妻はアツアツのおでんを夕飯にだし、夫にアーンして食べさせる。それに対するリアクションをせよ』

 

「ふふっw」

 

 

\デデーン 日菜 アウトー!/

 

 

「レッツブシドー♪」

バシッ「るるるんっ!」

 

「細かいっ!彩ちゃん目が点になってるよ!」

 

 

『※なお、おでんは冷めているものを使うため熱いのを想像しリアクションせよ かあ。うん・・・と、とりあえずやってみよう!』

『ワカリマシタ!じゃあカメラを回して・・・ではスタートです!』

『ただいまー!いやー今日も疲れたよ!』

『アナタ、おかえりなさい!』

『イヴ!今日の夕飯はなんだい?』

『アナタの大好きなおでんです!』

『お、それはいいなあ!さっそく持ってきてくれ!』

『はーい!』

 

 

”グツグツグツグツグツグツグツグツ!!!”

 

 

\デデーン 全員 アウトー!/

 

 

「あったかおでんです!」

バシッ「むしろアツアツ!」

バシッ「にゃっ!」

バシッ「あんっ!」

バシッ「るるるるんっ!」

バシッ「いたくないですいたくない!」

 

 

「ヤバイよ!あのおでん明らかにアッツアツだよ!」

「冷めているとは何だったのかしら・・・?」

 

 

『あのぉ・・・イヴちゃん』

『なんでしょう?』

『このおでん・・・湯気、出てない?』

『・・・・!出てますね!』

 

「「ククッ・・・!」」

 

\デデーン 紗夜 アウトー!/

 

 

「ホカホカおでんです!」

バシッ「いったっく・・・ないです!」

 

 

「湯気が出てるって・・・あっけからんといわないで!」

「イヴちゃんの反応が純粋すぎて・・・あーもうだめ!我慢できないよwwww」

 

\デデーン 日菜 アウトー!/

 

 

「出ますね!」

バシッ「るんんんっ!」

 

 

『これって絶対熱いよね・・・・』

『でも台本には冷たいと・・・あっ!アヤさん!これは冷気です!』

『あ!そういうことか!』

『そういうことです!つまり・・・』

『このおでんは・・・』

『『熱くない!』』

 

 

「「「「んふっwwwww」」」」

 

\デデーン 神剣 湊 今井 紗夜  アウトー!/

 

 

「ゴートゥーヘヴンです!」

 

バシッ「ひでぶっ!」

バシッ「にゃにゃあ!」

バシッ「あひんっ!」

バシッ「もう・・・いたいで・・・いいです」

 

「どうみても湯気がモンモンなんですがそれは・・・」

「熱くない!って二人そろってドヤ顔はずるいよ!」

「丸山さん・・・かなりの強敵ね・・・」

「敵に回すとこうも丸山さんが恐ろしいとは・・・・」

 

 

『はい、じゃあアーンです!アーン』

『アーン!』パクッ

 

 

『あふぅい!』

 

\デデーン 神剣 今井 アウトー!/

 

 

「アツゥイ!です!」

バシッ「コボォ!」

 

 

「熱いのは当たり前なんだよなあ!」

「当たり前なのに本人たちはマジメにやってるのがもう・・・!」

 

 

『い、いふひゃん!あふい!あふい!(イ、イヴちゃん!熱い!熱い!)』

『え?アヤさんなんでしょう?あ、そうだ!ここでリアクションです!ブシドーの精神を見せてください!』

『へっ!?あ゛ー!あ゛ー!』

『アヤさん!大丈夫ですか!?』

『だ・・・・・』ゴクンッ

『だ・・・・?』

『だーいーじょーおーぶだよーせなーかはー(はなまるアンダンテ)』

 

 

「「「「「ムリッwwwww」」」」」

 

 

\デデーン 全員 アウトー!/

 

「レッツブシドー♪」

バシッ「アツゥイ!」

バシッ「にゃにゃにゃあ!」

バシッ「あんんっ」

バシッ「るるるるるるんっ!」

バシッ「おしりが・・・・いたい・・・・」

 

『アヤさん!これでいいみたいです!』

『これで終わり!?やったーぁ~うまくできたかな?』

『ハイ!バッチリです!』

 

 

 

そしてテレビは消えた。

 

「テロップ付きは卑怯すぎる・・・・!」

「丸山さんが人気がある理由がわかったわ・・・」

「彩・・・芸能界で頑張ってるんだね・・・」

「彩ちゃん今日もキレッキレだったなぁ~!」

「日菜はいつもアレをみているのかしら・・・?」

 

 

 

「・・・・手ごわい相手であった」

「も、もう終わったのね・・・?」

「あーもうお腹痛いよ!」

「あははは、すごくるんっ♪とする時間だったよ」

「日菜はそればっかりね・・・まあいいけど」

 

「それはどうかしら!?」

「「「「「え?」」」」」

 

 

ゾロゾロゾロゾロゾロゾロゾロゾロゾロゾロ

 

 

「なんっっっっじゃこりゃあああああああああああああ!!!!!!!!」

 

 

こころの声がしたと思ったら・・・

大量のミッシェルが部屋になだれ込んできてそのまま部屋はピンクのクマに埋め尽くされ、カオス・フィールドと化しもはや何が何だかわからない状況になって・・・そのまま気が付いたら夜が明けていたのであった。

 

 

 

さてそんな悪夢が俺を襲ってからさらに1日。俺がオッサンの家で資料を漁っているとき、蘭が掴んだ情報を持ってやってきたのだ。

 

 

「奏也、一つ気になることがある」

「ん・・・?なんだ?」

「この通り魔事件、警察はロクに捜査していない」

「・・・・なんだと?」

「まだわからない・・・でもその答えがその埋もれた資料の中に埋まっているかもしれない」

「なるほどな・・・ってうぉ!?」

 

 

よそ見していたら資料の束を崩してぶちまけてしまった。

 

 

「何やってるの奏也?」

「ワリィ・・・ん?」

「どうしたの?」

 

 

俺は偶然ぶちまけて開いてしまった資料を見ると気になる項目を見つけた。

とある人物について細かくまとめられている。

 

「このファイルは異質だ。今までの資料で特定の人物がまとめられているモノはなかったはず・・・・」

「ええっと・・・名前は”荒神”琢磨・・・!?これは・・・・」

 

 

読み進めていく。するとそこに書いてあるのはオッサンのある種の日記だった。

どうやら荒神琢磨はオッサンの甥っ子のようでそれに対すること綴られている。

 

 

”琢磨が幼少の頃より、周辺で原因不明の傷害事件が起こっていたことは把握していた”

”小学生時代、中学・・・高校・・・そして現代”

”あの子の異常性にはもっと早く気付くべきだった”

”まさか・・・幼少より人を傷つけることで快楽を感じるなどとは・・・!”

”傷害・・・いや、今は殺人か”

”勇馬はダメだ・・・奴は自分の息子の保護、そして自らの保身に走りすぎている”

 

 

勇馬、とはオッサンの弟のようだ。

 

 

”こうなれば、直接俺が動くしかない。俺が止めねば・・・・”

 

 

「荒神勇馬・・・」

「どうした?蘭?」

「・・・・!まさか!」

 

 

そういうと蘭は手に持っていたタブレットを操作し、あるページを開いて声を上げる。

 

 

「あった…!荒神勇馬。警察官僚・・・階級は・・・警視監!」

「なんだと・・・・じゃあ警察がまともに捜査していないのは・・・!」

「・・・もう犯人が分かってるんだろうね。でも官僚の・・・しかも警視監の息子が犯人となるとそうやすやすとは動けない。それにおそらく、本人からの圧力もあるはず。所轄は権力者が関わっている事件について、圧力が掛かったら絶対に逆らえない」

「ってこたぁ・・・捕まった犯人はスケープゴート!」

「だろうね。おそらく何らかの取引があったと考えるべき」

「オッサンはそれが分かってて、自分が動くしかないって思って・・・」

「結果・・・消されたんだろうね」

「自分の弟に・・・甥に・・・なんてこった・・・・」

「・・・ん?奏也、その日記、続きがあるよ」

 

 

”これから勇馬・琢磨に最後の接触をはかる”

”もしこの事実が公表されることなく闇に葬られたのであれば俺はこの世にいないだろう”

”上に残した情報は全くのダミー情報だ。それを掻い潜り、これを発見したのが勇気ある者ならばこの事実を公表し、この町を恐怖に陥れる元凶を断ってほしい。そうでなれば・・・・永遠に闇に葬られるか”

”同時収容してあるファイルは動かぬ証拠だ。これをうまく活用し公表してほしい”

”と、いったが俺はお前に向けてこのメッセージを書いているんだがな。頼んだぞ・・・・奏也”

 

 

「オッサン・・・・」

「・・・・やるよね?」

「ああ、みんなを集めよう」

 

 

さあ、総仕上げだ。

俺は書類を持ち家に戻った。そして皆を集めたのであった。

 

 

 

 

「まさかこんな・・・・」

 

 

紗夜がそう呟き、他のみんなは絶句している。

 

 

「この荒神勇馬って人知ってるわ。お父様のパーティで何度か会ってるもの」

「なに!?」

「話したことはないわ。けどまさか先生の弟とは・・・」

「それで奏也くん、どういう方向性で行くの?」

「そうだな・・・まずは公表する」

「それが一番だね!こういう悪い奴は一気に叩かなきゃ!」

「うんうん、私もそう思う」

「しかし公表するとはいってもどうやってやるのですか?」

 

 

紗夜の質問に俺は答える。そう、この公表の仕方が重要なのだ。

 

 

「これを見てくれ」

「これは・・・よくある三流ゴシップ記事じゃないですか。これがどうしたのです?・・・ああ、これは」

「そうだ。この記者の記事だけやけに警察を憎んでいるだろう?まずはこいつに情報を流す。流すといってもジャブ程度だな。渡す情報はゆさぶりをかける程度でいいんだ」

「でもさ奏也、それだと見逃したりするんじゃないかな?」

「日菜、それはない。奴らはこの事件の真相をもみ消そうと必死だ。三流週刊誌でも真に迫るタイトルで公刊するとなればまず目につく。そこからどう動くかを探るんだ」

 

 

そう、奴らが見逃すはずがない。むしろそういった内容の記事がでいるという話がでたら新聞の1コマでも確認するだろう。

 

 

「じゃあさっそく情報を提供しよう。この記事を書いているのは・・・足立という人みたいだ」

 

 

 

 

「クックック・・・・こいつはすげえ隠し玉だ」

 

 

情報を受け取った記者は不敵な笑いを浮かべていた。

 

 

「こいつを記事にしろといきなりもってこられたときは何事かと思ったが確かにこいつはすげえ・・・まさか警察官僚の息子が殺人犯とはな!」

 

 

そしてその記者はある所に電話をかける。

 

 

「もしもし、わたしゃ週間文夏の足立ってモンですがね、警視監さんにお話があって・・・あー!皆まで言うな!警視監さんには”息子さんの件”っていえばわかりそうなもんですがねえ・・・いいですよ?このまま切っても・・・ええ、へへっ」

 

 

電話をつないだ人間はやむを得ず電話を替わったようだ。

 

 

「もしもし」

「あーどうも荒神警視監殿!わたしゃ週間文夏の足立ってモンですがね」

「ああ、あの文夏砲とか寒いことをやってる三流ゴシップか・・・そんな社会の底辺に蠢くゴキブリ風情が私に何の用だ」

「あれれ?そんな口効いていいんですか?息子さんの件・・・やってることがばれたらヤバイんじゃないですか?」

「・・・なんのことだ」

「おー!あくまでとぼけると!いいですよ?来週の記事を楽しみにしててください!」

「・・・・いくらだ?」

「さっすが警視監殿は話が早い!とりあえず1000万。受け渡し場所は・・・」

 

 

そう、これこそが奏也の誤算。

この足立という記者、正義感から警察をバッシングする記事を書いていたのではない。その本性は強欲で取材には手段を択ばない、最悪の場合今回のように取材対象まで脅すクズだったのである。

 

 

「へっへっへ・・・思いがけないATMが手に入ったぜ。誰か知らねえが感謝しねえとな」

 

 

 

 

 

 

「うぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 

 

 

 

 

俺は朝起き、朝食をとりながらニュースをつける。

 

 

「今朝未明、●●区の路上で同区内に住む雑誌編集者 足立賢明さん(40)が遺体で発見されました。警察は付近のビルから飛び降り自殺をはかったとみて捜査をしています。次のニュースです・・・・」

 

 

「足立が死んだ・・・・!?」

 

 

自分が全く想定していなかったことを目の当たりにした俺は、正直かなり混乱していたのであった。

 




前半からの温度差よ!
絶対に笑ってはいけない神剣家、いっかいやってみたかったんですよね・・・
少ない脳みそで捻りだしたネタはいかがだったでしょうか?
ダチョウ俱●部が元ネタになっている感じですかね。

そしてだいぶクライマックス感でてきてますかね?


あとなんかランキング入りしてたみたいでめちゃくちゃ嬉しいです!
最後まであと何話になるかわかりませんが走り抜けます!



★評価のお礼★

漆黒の闇さん ★10ありがとうございます!
桜歌787 ★9ありがとうございます!
IT06 ★3ありがとうございます!


引き続きよろしくお願いいたします!


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第7話 いともたやすく行われるえげつない行為

 

「弦巻さん、ご用件は?」

 

 

足立が殺された翌日の朝、俺は弦巻豪さん・・・こころのお父さんに呼び出されいた。

 

 

「通り魔の件から手を引き給え」

「なっ・・・・!?」

「私が今まで君たちがやっていたことを知らないと思っていたのかい?」

「・・・全部知ってたんですか」

「ああ。それを踏まえた上での忠告だ」

「・・・なぜ止めるのです?」

「なぜだと思う?」

 

 

その言葉を聞いた瞬間俺はこころのある言葉を思い出した。

”この荒神勇馬って人知ってるわ。お父様のパーティで何度か会ってるもの”

 

 

「・・・まさか!荒神勇馬とつながりが・・・!?」

「だとしたらどうする?」

「あんたをつるし上げて奴のことを吐かせる・・・・!」

 

 

俺は戦闘態勢に入った。

しかしその瞬間、大量の黒服の人が俺に一斉に襲い掛かってきたのである

 

 

「神剣奏也!おとなしくしろ!」

「おとなしくしろって言われておとなしくする奴がいると思ってんのかよ・・・・!」

 

 

 

俺は構わず黒服を迎撃する。

さすがはSPとして訓練を受けたエージェントだ。しかし俺の動きも負けていない。

厳密には、動きの完成度では負けているのだろうが、俺のほうはオッサン仕込みの我流。

時に力任せに制圧し、時にイレギュラーな動きをする。そういったテクニックで翻弄しつつ、敵を倒すのだ。

 

 

「オラァ!」

「くっ・・・貴様!もっと人を呼べ!」

「キリがねえ!」

 

 

ダメだ、今までの奴とはレベルが違いすぎる・・・このままでは物量で負ける。

ならば・・・総大将を狙うのみ!

 

 

「オラァ!」

 

 

そして俺は素早く移動し、弦巻さんの背後に回るとそのまま人質にとることに成功した。

 

 

「動くな!動くと大将のクビがポッキリいっちゃうぜ?」

「キサマァ!」

 

 

よし、このまま情報を聞き出して・・・

 

 

「・・・・なるほど。いい動きをする」

「なんだと?」

「だがまだ若いな・・・ふんっ!」

「なんだとぉぉぉぉぉ!?」

 

 

次の瞬間、俺はあっという間に一転攻勢をくらい弦巻さんに拘束されてしまったのである。しかし俺も負けられない。すぐさま拘束を解き、反撃に出る。

 

 

「よせっ!ここは私が相手をする」

 

 

動こうとする黒服に制止をかけた弦巻さんはそのまま俺に向かってきた。

 

 

「そんな遅いパンチじゃ私にはあたらないぞ?」

「おっさんのくせになんて動きしやがる・・・・」

 

 

いや・・・まて・・・この動き・・・まさか!?

 

 

「つ、弦巻さん!あんたまさか・・・・!」

「チェックメイトだ」

 

 

そしてその瞬間。

俺は弦巻さんの一撃をくらい・・・そのまま意識を手放した。

そう・・・俺は敗北したのだ。

 

 

 

 

「目が覚めたかね?」

 

目を覚ました俺はベッドに横たわっていた。そしてその傍らからは弦巻さんの声がした。

 

「弦巻さん・・・あなたは・・・・もしかしてオッサンの・・・荒神連也先生の・・・」

「・・・ああ、元弟子だ」

「やはり・・・あの動き・・・」

「まずは先ほどの無礼を許しておくれ。君の実力を試しておきたかったのだよ」

「それであんな挑発を・・・黒服の人まで使って一体何のために?」

「奏也くん、君には改めてこの事件解決のために動いてもらいたいからだ」

「・・・わけをききましょう」

 

 

実は弦巻さんはオッサンが死ぬ前、情報収集にあたっていた。

しかし迎えたのはオッサンの死とスケープゴートの逮捕による収束。

この結果に納得できない弦巻さんは独自に調査を続けていたらしい。しかし、ある日それが敵側に察知され、バレてはいないものの警戒されているのが今の現状ということらしく、事件は解決したいが弦巻の人員を使えばそれが完全にバレてしまう恐れがあるとのことだ。

そこで俺という存在がいた。俺ならば敵に全くマークされていないし、フットワークが軽い。

つまり弦巻さんは俺に弦巻家の臨時エージェントになれといっているのだ。

 

 

「なるほど・・・話はわかりました。こちらとしても弦巻家のバックアップを受けられるのはありがたいので」

「君ならそう言ってくれると思ったよ。・・・では、入ってきてくれ」

「え・・・?」

「失礼します」

 

 

弦巻さんの掛け声で入ってきたのはなんと蘭だった。

 

 

「彼女は当家お抱えの情報屋の家系でな。華道の家元という表の顔の他に、その気になれば総理大臣の預金残高までも調べることもできる情報屋という顔も持っている。君ともすでに交流していると思うがね」

 

 

マジかよ、美竹家半端ねえな。

 

 

「そうだったのか・・・・道理ですげえ情報収集能力だと思ったぜ。ん?ってことは俺が蘭と知り合ったのは弦巻さんが仕向けた必然だったわけか。・・・ってことは俺があの日、荒神の情報を発見したのも発見しやすいように資料の位置調整をしていたな?」

「ゴメン、そうなんだ。落としたのは予想外だったどさ」

「いいや、構わんさ。むしろ正体がわかってスッキリしたぜ。それと弦巻さん、もうちょっと聞いてもいいですか?」

「ああ」

 

 

俺はかねてより気になっていたことを聞いた。

 

 

「なぜ俺たちの悪党狩りを知っていながら止めなかったのか・・・です」

「ふむ。そのことかね」

 

 

これが最大の謎だ。弦巻はおそらく蘭を通してすべて知っていたのだろう。

しかもこころまで実働で動いている。自分の娘が危ないことに手を出しているのはふつう見過ごせないだろう。

 

 

「それは・・・君を信じていたからだ」

「おっしゃってる意味がわかりません」

「いずれこの事件は再発し、君たちがかかわってくるのは間違いないと私は踏んでいた。しかし君にそれに対応しうる力はあるのか?君が今まで解決したモノ程度でつまずいているようではとてもじゃないが任せることはできない。そう思ったのだよ。さすがに車に撥ねられたときは肝を冷やしたがね」

「なるほど・・・しかし今こうやって呼び出されているということは・・・」

「ああ、合格だよ。しかし・・・君はもっと強くなる必要がある」

「・・・・?」

「こころや他の子たちは・・・この作戦から除外するんだ」

「いままでの作戦はアイツらがいたからこそです!確かに弦巻の人間であるこころは考慮する必要がありますが・・・・!」

 

 

俺は突っかかる。俺一人の力じゃない。みんながいてこその作戦成功だ。

 

 

「なあ奏也くん。現実的な話をしようか。蘭さん、言ってあげなさい」

「・・・はい。ねえ奏也、まずはゴメン。私はみんなで解決したい・・・って思って動いてたけど父さんや弦巻さんの話を聞いて・・・ね。だから、アンタの知ってる美竹蘭じゃなくて、弦巻家の情報屋・美竹蘭としての言葉で聞いて。この件にみんなを巻き込むってどういうことかわかる?」

「どういうこと・・・とは?」

「奏也、あんたは足立という死人を出したことをもっと深刻にとらえるべき。アンタなら情報の重要性を理解して方向性をもっと相談してくれると思ってたのに・・・私に相談もしないで勝手に情報を流してさ。その結果が足立という死ななくてもよかった人が死んだ」

「くっ・・・・!」

「それにヤクザなんかよりも質の悪い「国家権力」を敵に回すとどうなるかってことを理解してる?ヤクザと違って警察はあらゆる情報を手に入れることができるし、その気になれば人ひとりの命なんて思いのままだよ。

今はまだ奏也たちの存在は露見していないが、露見した場合は消されるか一生マークされて生きていくハメになる」

 

 

確かに・・・言われてみればその通りだ。あの時の俺は両親・そしてオッサンの仇を打てると舞い上がっていた節がある。

こんな簡単なことに気づかずに俺は・・・・

そうだ、アイツらは・・・あいつらを巻き込んじゃいけない。

 

 

「ひとまず話はこれで終わりだ。君がこちらの条件をのんでくれるなら弦巻家として全力でバックアップしようじゃないか」

 

 

こうして話は一旦終わった。

俺は考えることが多すぎるこの現状をどう消化したものか自問自答しながら、帰路に就いたのであった。

 

 

 

 

その後幼馴染たちと合流した。そこには現実を目の当たりにし、少し恐怖を覚えている面々の姿があったのだ。

情報を渡した足立がすぐに消された。この事実はつまり、真相を暴こうとするものは容赦なく消されるということを意味する。そのことを薄々感じているのだ。

 

 

「しかしなんであの記者の人は消されたんだろ?」

「・・・おそらくあのネタを使って荒神本人を脅しにかかったのだろう」

 

日菜の疑問に答える。

 

 

「・・・・少し冷静になったほうがいいようだ」

「冷静になる・・・とはどういうことでしょうか?」

「いつものノリで何とかなるだろう、これでオッサンの仇が討てる。みんな、なんとなく気軽に考えていたんじゃないか?」

「「「「「・・・・・」」」」」

「これで分かった・・・こんな疑わしきを罰する、えげつない行為はいともたやすく行われるんだ。少し間違えれば消される。特に俺みたいな身寄りのない奴ならまだしもお前らはお前らの場所があるんだ」

「奏也らしくないなあ・・・いつもならもっと堂々としてるのに!」

「うん、なんか変」

「そうよ!私たちの存在がバレたわけじゃないなら打てる手はいくらでもあるわ!」

「もしかして奏也くん・・・私の事気にしてる?」

 

 

美咲が閉じていた口を開く。

その通り。荒神勇馬・琢磨がオッサンの弟・甥だとすると美咲はこの二人の親族ということになる。

犯罪者とは言え親族を私刑にかけようとしているんだ。気にしないほうがどうかしてる。

 

 

「それもある」

「それなら気にしなくていいよ・・・お父さんやお母さんもほとんど関係が切れちゃってるみたいだし、私自身存在を知らなかったくらいだしさ・・・」

「だがそれだけじゃないんだ。・・・それでな。この件はしばらく様子を見ようと思う」

「「「「「「えっ!?」」」」」

 

 

まあそうなるわな・・・・

ここで俺は蘭に聞いた、足立を死なせてしまったことの意味と国家権力を敵に回すとどうなるか・・・ということを話した。

 

 

「「「「「・・・・・・」」」」」

 

 

その話を聞いてみんなが黙る。

 

 

「わかってくれたか?まだ俺たちは動くべきではなかったのかもしれない」

「で、でも奏也くん!」

「すまんが俺はこれから用事があってな。もうすぐ出ていかねばならんから話はこれで終わりだ。また何かあったら召集する」

「奏也!まだ話は終わってないよ!」

「いいから!・・・用事があるといっただろう。早く出て行ってくれ」

「奏也・・・!」

「日菜、気持ちはわかるけど今は引きましょう」

「・・・・そうだね。今はみんな冷静じゃないし、頭を冷やしたほうがいいと思う」

「・・・・納得いかないけど仕方ないわね。奏也!また来るから待っているのよ!」

 

 

強引ではあったが〆ることができた。

不満げな顔をする幼馴染たちを家からだし、俺は弦巻さんに連絡を取る。

 

 

「どうも、神剣です・・・ええ、お受けします。詳しく話を・・・わかりました」

 

 

そして俺は電話で指定された場所へ向かうべく、準備を始めたのであった。

 

 

「すまない・・・・でもわかってくれ・・・・」

 

 

 

 

「ぜっっっったいおかしい!」

 

奏也の家を追い出された後、つぐみちゃんのお店で私たちは話していた。

 

 

「ええ、日菜の言う通りよ。あんな奏也、初めて見たかもしれません」

「やっぱそう思う?なんというか今日の奏也・・・焦り?隠し事・・・?とにかくなにかおかしかった」

「あー・・・付き合い短い私でもわかるってことはやっぱみんななら一目瞭然だよね」

「ほんっと頭にキちゃうわ!」

 

 

あたしはちょっと困惑していた。

確かに今回の件を甘く見ていたのはあるけど、それにしてもあの強引な奏也はいただけなよ!って。そもそもあんな奏也初めて見た。奏也はすごく強くて、作戦も冷静に、綿密に練って、突然のトラブルにもすぐさま対応できる。そんな人のはずなのに。

これはあたしだけじゃない。みんな同じことを考えているようだね。

 

 

「ねえ、みんな!奏也、これから用事があるいっていってたわよね?なら後をつけてみない?」

「こころ、さすがにそれは・・・・今回の件に関係ないかもしれないし」

「でも美咲も気になるわよね?」

「・・・それはそうだけど」

「・・・・いこう」

 

 

するとおたえちゃんが言った。

 

 

「このままモヤモヤしてても仕方ないし、何もなければそれでいい。でも奏也が私たちに隠れて何かをしようとしているなら・・・それは知っておきたい」

「・・・・そうですね。私たちが何かをするかどうかはおいておきましましょう。現状を把握するのはいいかもしれません」

「きまりだねっ!」

 

 

そんな会話をして私たちはすぐさま羽沢珈琲店を出た。

さあ、奏也。奏也が今何を抱えているのか、それを教えて・・・・!

 

 

そして家から出る奏也を発見し、隠れてそのまま奏也の様子をうかがう。

すると・・・そこに1台の大きい車が現れた。

 

 

「あれは・・・うちの車だわ!」

「えっ!?こころの家の・・・?あ、言われてみればそうだ」

 

 

そして奏也はそのまま車に乗り込み、そのまま発進してしまったのだ。

当然追い付けるはずもなくそのまま・・・奏也を見失ってしまった。

 

 

「でもうちがかかわっていることはわかったわ!これなら何か調べられるかも!」

 

 

そしてただならぬ気配を察知したあたしたちは・・・弦巻家へ急いだ。

 

 

 

 

「まさかこんなデカイ車が来るとは思いませんでしたよ」

「ここなら移動しながらだし誰かに話を聞かれる心配がない。さて、まず奏也くんにやってもらいたいことがある」

「なんでしょう?」

「足立記者を殺した実行犯。こいつはもう調べがついている」

「なんですって・・・・!?」

「こいつは荒神勇馬個人とつながりのある殺し屋だ。ほぼ専属といってもいいね」

「ってこたあ俺がやるのは・・・」

「こいつの始末だ。ああ、安心してくれ。奏也くんに殺しはさせない。捕縛するだけでいい」

 

 

やっぱりな。この話の流れからしてそうなる気はしていた。

 

 

「おそらく奴らは足立のことは目の前に飛ぶハエくらいにしか思っていないだろう。しかし再び自分を脅し、なおかつ腕利きの殺し屋が失踪するような事態になったら・・・?」

「そういうことですか!」

「君は話が早くて助かるよ」

 

 

真相を知る者が現れたのはイレギュラーな事態だが、俺が足立に渡した情報自体は大したことない。

もしかしたら荒神琢磨かも・・・?といった揺さぶる程度の少ない情報だ。

見るものが見れば単体で効力がないことなんてわかってしまう。

しかしもっと真に迫る情報を持つ者が脅迫してきたら・・・・?

足立のような小物でも潰す用心さを持っているのだから間違いなくそちらも潰しにかかるだろう。

そしてそこで懇意にしている殺し屋が姿を消す。そのあとうまくやれば本人を引っ張り出せるかもしれない。

 

 

「奏也くん・・・・ひとつ聞いてもいいかね?」

「・・・・なんでしょう?」

「君は・・・死ぬ覚悟はあるのか?」

 

 

そう、相手は今まで何人も殺してきたプロに加え、国家権力を振りかざした大ボス。

 

”失敗”

 

それはすなわち”死”を意味する。

 

 

「弦巻さん、人を傷つけんとする者は自分も傷つけられる覚悟がないといけないんですよ」

 

 

天然で怒ると怖いけどいつだって真実を見抜いていたおたえ。

ハチャメチャでいっつも巻き込まれてばっかだったけど、本当に仲間を大切に思うこころ。

他の人のことがわからないといいながらも、人のために力を惜しまない日菜。

カタブツに見えて意外と抜けているところもあるが、芯が熱い紗夜。

思いがけぬ再会を果たし、今もこうやって縁がつながっている美咲。

そして蘭、リサ、彩、香澄ちゃん・・・・そしてたくさんの人たち。

みんなの笑顔を浮かべる。

 

 

「俺の命ひとつであいつらの笑顔が、町の人たちの笑顔が戻るなら・・・喜んで捨てますよ」

「そうか・・・」

「まあもっとも・・・・・」

 

 

「死ぬ気なんぞさらっさらありませんけどね」

 

 

オッサン、父さん、母さん。

俺、やるからさ。そっちで見守ってくれよな。

 

 

「よし、ではこれから実行する内容を伝える」

 

 

こうして俺の命を懸けた最終戦が始まろうとしていた。




次の展開どうしよ(考えてない)

まあこんなノリでここまで続いたんです、なんとか走り切ります!


★元ネタ解説★

●総理大臣の預金残高も調べられる
恨み屋本舗というコミックに登場する情報屋の文言だけお借りしました。

●いともたやすく行われるえげつない行為
ジョジョの奇妙な冒険7部 スティールボールランのボスであるファニーヴァレンタイン大統領のスタンド名、D4C。



★評価のお礼★

銀シャケさん ★9ありがとうございます! 


引き続きよろしくお願いいたします!


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第8話 無限ディープレッド

※今までのお話より残虐な描写が多く含まれます、ご注意ください※


俺は顔に久しぶりになる馬のマスクを被り、ある廃倉庫に来ていた。

 

 

作戦・・・と呼べるものかどうか。

なんというかシンプルだ。秘匿回線を使い、おそらく足立がやったのと同じように直接荒神に脅しをかけたのだ。

 

 

「キサマ・・・」

「俺が何者かなんてどうでもいい。ただ足立が持っていたようなしょぼい情報と同じだと思うなよ?」

「・・・いくらだ?」

「5000万。とりあえずそれだけ用意しろ。場所は・・・・」

 

 

まあこんな感じだ。

もちろん持ってくるのは金ではなく俺を消すための凶器だろうがな。

そんなことを考えながらそして倉庫の扉が開いた。

 

 

「よう、ようやくお出ましか?」

「金を持ってきた。どうすればいいんだ?」

 

 

そういう男であるが明らかにそれらしいものは持っていない。

とりあえず挑発してみるか。

 

 

「おいおい小切手かよ?現金だろ、ここはよ?」

「・・・・・・」

 

 

なんてことを相手に行ってみるが反応を示さない。しゃーねえ。

 

 

「まあなんでもいい、さっさと出してもらおうか」

「ああ・・・ただし出るのは・・・貴様のハラワタだけどなあ!」

「・・・・!」

 

 

刹那。奴はもすごいスピードでナイフを繰り出してきた。

俺はなんとか回避する。しかしこれは予想外だな・・・

初めから飛ばしていかないとマズイかもしれない。

 

 

「今のを避けただと・・・・?貴様、何者だ?」

「通りすがりの一般人だよ。さて、そういうことをするということは・・・・覚悟はしているんだろうな?」

 

俺は近くに落ちていた鉄筋を拾い上げ、攻撃を仕掛けた。

 

 

「・・・・!」スッ

「・・・・くっ!」

 

 

しかし奴は明らかに俺の動きを見切っていた。

そして俺もその挙動を見て攻撃が当たらないように回避を繰り返す。

 

 

「いいぜいいぜ・・・!今までの奴らはアッサリ死に過ぎてツマンネーと思ってたからなあ・・・」

「いままでの奴ら・・・?」

「ん?俺が最近襲ったやつらだよ」

「・・・・まさかお前は」

「ん?あーそっか。そういうことか。脅しに来たってことはお前、俺の事知ってるんだったな」

「荒神琢磨・・・お前が」

 

 

そう・・・情報を得ていた荒神警視監お抱えの殺し屋。

それは紛れもなく荒神琢磨本人だったのだ。

 

 

「俺は昔からよぉ・・・生き物を傷つけるのが楽しくて楽しくて・・・ガキんころから虫だの野良の動物だのをいたぶって遊んでたり、同級生をボコって遊んでたりしたんだがな。さすがにやりすぎちまって問題になったことがあってよ」

「・・・・なるほどな。それで通り魔、そして殺し屋か」

「おおっ!話がはえーじゃねえか!その通り。それでも衝動は抑えられねえ、年を重ねるごとに衝動は強くなっていった。虫から動物へ・・・動物から人へ・・・気が付いたら通り魔だ」

 

 

オッサンの言ってた通り、人を傷つけることで快楽を覚える異常者だというのは本当のようだな。

 

 

「だがある日親父にバレちまってなあ・・・無理やり海外に飛ばされそうになったんだが、ここで俺は親父にこういったんだ。【俺をどうにかするなら俺は自首する。俺の趣味がばれたら親父もタダじゃすまねえだろ?そうだ、親父にとって都合が悪い奴はついでに殺してやるよ】ってね」

「・・・つまりお前は実の親を脅したわけか!」

「でも結局俺が親父にとって都合の悪い奴を殺したおかげで今の地位がある。結局win-winなんだよ。それを邪魔しに来やがって・・・許さねえぞキサマ」

 

 

当初はこいつを殺し屋から捕縛して情報を集め、徐々に本人をおびき出す算段だったが・・・殺し屋が荒神琢磨本人というのは思わぬ収穫だ。

こいつの言うことが本当ならば荒神警視監は親子で殺人(厳密には親父は教唆だが)を行っていたことになり、この事実はさすがに隠ぺいは難しいだろうし、世の中は大騒ぎになるだろうから確実にこいつらを終わらせることができるだろう。

 

 

「つまり、てめえを捕らえれば全部解決ってわけだ」

「できれば・・・の話だがな!」

「くっ・・・!」

 

 

やはりヤバイ。こいつは今までの奴らとは違う。

さすが単純に人を殺めるために技術を磨いてきた人間といったところだ。

 

 

「テメエみてえなあぶねえ奴は飛び道具を使ってくると相場で決まってそうなモンだがな」

「・・・・近接戦闘ではナイフの方が強い。それに俺は銃を好まん」

「そうかよ!」

 

 

ナイフ、鉄筋の他、拳や足技も駆使し戦闘を続ける。

何発かは当たるが逆にこっちも何発かもらう。

一進一退ではあるがこれは・・・若干ではあるが俺の方が不利だった。

 

 

「ぐぉっ!」

「・・・ハハッ」

 

 

重い一撃を受けてひるんでしまう。

 

 

「やってくれるじゃねえか・・・・」

「もう諦めろ、確かにキサマは骨があるが・・・俺には勝てん」

「んなことテメエが決めるこっちゃねえよ!」

「フンッ!」

「ぐあっ・・・!」

「まずはその暑苦しいマスクをとったらどうだ?」

 

 

追撃を受けてしまった俺は、そのまま・・・マスクをとられてしまった。

 

 

「くっ・・・!」

「ほう・・・なかなかいい顔してるじゃねえか。あとでケツ貸せや」

「お前ホモかよぉ!」

 

 

なんつータイミングで言ってくるんだこいつは・・・・

 

 

「ん・・・・?キサマどこかで・・・・お前はオジキのところに出入りしてたガキ!神剣奏也か!」

「俺のことを知ってるとは・・・光栄だよ」

「そりゃよぉ・・・オジキを殺したとき、キサマをダシに使わせてもらったからなあ」

「なんだと・・・・?」

 

 

こいつ・・・今何と言った?俺をダシに使っただと?

 

 

「いくら俺でもあんな化け物みたいなオジキに勝てるわけないからよ。一言つぶやいたわけよ【俺が死んだらどうなるかな?オジキが可愛がってるガキ・・・神剣奏也といったか?あいつがどうなっても知らねえぞ】ってな」

「テメエ・・・・」

「まま、そう怖い顔すんなって!あ、そうそう。お前の両親を殺したときもよ、お前の両親に同じようなこと言ってやったんだよ。キサマの親、親父にとって都合の悪いポジションにいたらしいからよ~・・・でもな?約束通りキサマに手を出さずにいる俺、約束守って偉いだろ?」

「クソ野郎のくせになに言ってやがる・・・!」

「いやーあれは傑作だったねえ。あの後ナイフで心臓えぐってやったら餌を欲しがる鯉みてえに口をパクパクさせながら逝っちゃったからよぉ・・・うぉ!思い出しただけでブルってきたぜ」

「もう・・・口を開くな・・・・!」

「おっと戦闘再開ってか?言っとくけど今回はキサマからちょっかいをかけてきたんだ。死んでも文句言うんじゃねえゾ?」

「言ってろ・・・!」

 

 

体勢を整え、攻めに転じる。

 

 

「うぉ!?なんか急に強くなってねえか?」

「テメエのおかげだよ」

 

 

俺はいまだかつてないくらい力がみなぎっていた。

これは怒り。俺の宿敵とも呼べる相手が・・・オッサンと父さんと母さんの仇が目の前にいる。

そしてさっきの奴が語ったリアルな犯行模様は俺の怒りのツボを刺激するのには十分だった。

そして怒りに任せて動くとよくないと聞くが、実は俺は逆だ。

怒れば怒るほど冷静に状況判断ができるようになり、最善の一手を選択できるのだ。

 

 

「ぐはっ!」

「こんなもんじゃねえぞ!」

 

 

俺の一撃を受けてひるんだ琢磨に追撃を加える。容赦しない。

今までの俺の中でも最大レベルの速さとパワーだ。

 

 

「あめえよ!」

「・・・・くっ」

 

 

しかし奴も負けていない。持ち前の身体技能であっというまに体勢を立て直したのだ。

 

 

「ヒャハッ!」

「なんだとぉぉぉぉぉ!?ぐああああああああああああああああああ」

 

 

そして俺は・・・奴のフェイントにまんまとハマった俺は奴がナイフを投げるのを見抜けず。

腹でそのナイフを受けてしまったのだ。

 

 

「ヒャーッハッハ!刺さった!刺さったあああ!」

 

 

奴は勝ちを確信したのか、ジリジリと俺に歩み寄ってきた。

これは油断しているな・・・

正直死ぬほど腹が痛いし足に力が入んねえ。でもここしかない。ここで奴にカウンターを叩き込んで・・・・そのまま力任せに一気に叩き潰す!

 

 

「死ねえええええ!」

「オラアアアアアアアアアアア!」

 

 

そして俺は自身の腹に刺さるナイフを抜き、そのまま無防備に突っ込んでくる奴の脇腹に突き立てた。

 

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア」

「ハァ・・・ハァ・・・刺される側の気持ちはどうだ?」

「いてえ・・・いてえよぉぉぉぉぉぉぉ!」

「おまけだ」

 

 

そして俺は持っていた鉄筋をそのまま奴の方に刺すように、目いっぱいの力を込めて放った。

 

 

「うぎゃああああああああ鉄筋が腕にぃぃぃぃ!」

 

 

そして腕には鉄筋・腹にはナイフが刺さったオブジェのような姿になった琢磨は・・・痛さで悶え苦しんでいた。

 

 

 

「ざまぁ・・・・みやがれ・・・・っ!」

「いてえ・・・いてえ・・・ちくしょう・・・いいぜ、ここは引いてやる・・・だがこのままで終わると思うんじゃねえぞ!」

「ま、待ちやがれ!」

 

 

なんて野郎だ、この状況で動けて逃走を図れるなんてなんてタフな野郎なんだ。伊達に警視監直属の殺し屋はやってないってか・・・

しかもあの様子、どうやらあらかじめ逃走手段を用意していたようだ。

 

 

「おまえは・・・ほっといても死ぬな。調べたところによるとここは遺棄された廃工場で誰も来ないようだし・・・今は自分のケガで手いっぱいでな。そのまま死ねや。覚えてたら警官派遣してやるよ・・・もっとも、その頃には腐った肉塊になってるだろうがな・・・・!じゃあな・・・・ぐぉぉぉぉ」

「ち、く・・・・しょう・・・・・」

 

 

そして荒神琢磨はそのまま姿を消した。

止まらない。血が止まらない。琢磨は俺が刺したナイフと鉄筋がいわば傷口のフタになっていて出血は少ない。

しかし俺はどうだ?ナイフは抜かれ血があふれ出るばかりである。

 

 

「ハァ・・・ハァ・・・弦巻・・・さん。すみません、逃がしました」

 

 

俺は手に持っていた携帯で近くに黒服を待機させているはずの弦巻さんに連絡を取ったのであった。

 

 

 

 

「お父様!」

 

 

私はこころ、紗夜さん、日菜さん、花園さんとともに、こころのお父さんに会いに来ていた。目的はもちろん、奏也くんについて聞くためだ。

そしてそこにはこころのお父さんと・・・美竹さんがいた。

 

「こころ・・・・」

「あら?蘭までいるのね。好都合だわ!お父様!奏也に何をやらせているのかしら?」

「大したことじゃなあない」

「・・・それは通じないんじゃないですか?私たち、もう大体見当はついてるんです」

「そうですね。奏也は例の通り魔事件に一人で挑んでいる。違いますか?」

 

 

紗夜さんが冷静な口調で詰め寄る。日菜ちゃんや花園さんも同じ感じだ。

 

 

「違う・・・と言ったら?」

「お父様!」

 

 

ピーピー

 

 

すると突然、こころのお父さんの近くに置いてある機械が鳴った。

 

 

「くっ・・・タイミングが悪いな・・・仕方ない。こころ、ちゃんと説明するから今はコチラをやらせてくれ。頼む」

「・・・・わかったわ」

「こちら弦巻。奏也くん、終わったのか?」

『ハァ・・・ハァ・・・弦巻・・・さん。すみません、逃がしました』

「逃がした・・・!?して、敵は?」

『一矢は報いましたよ・・・腹にはナイフ、腕には鉄筋をぶっ刺したまま逃げていきました。当分・・・下手したら一生通り魔みたいなことは無理かもしれませんね・・・』

「そうか、それはよかった。が、逃がしたということは奏也くんの存在は奴らに露見したということ・・・・して奏也くん、君は無事か?迎えを寄越そう」

『あー・・・それなんですけどね。迎え、間に合いますかねえ?』

「・・・?どういうことだ?

『いやあ、止まんないんですわ、血が』

「何だと!?」

「奏也!どういうこと!?」

「日菜、気持ちはわかりますが落ち着きなさい!」

 

それを聞いた日菜さんと紗夜さんも声を上げる。

 

 

『その声は・・・日菜と・・・紗夜・・・?なんでお前らがここに・・・』

「そんなことはどーでもいいの!奏也!どういうこと!?」

『声でけーよ・・・傷に響くだろうが・・・・刺され、ちまってよ・・・抜いちまったもんだから・・・無限ディープレッドって感じだ。当分ケチャップには困りそうもないぜ・・・』

「刺され・・・!?奏也・・・ねえ奏也!?」

『・・・・・』

 

 

すると奏也くんからのレスポンスがなくなった。

 

 

「お父様!!」

「ああ、近くに倒した敵を回収するために用意ししておいたSPを待機させてある!」

「おじさん!場所は!?奏也がいる場所はどこ!?!?!?」

「うん、すぐ行く」

「ええ、無論ね」

「しかしまだ敵の仲間がいるかもしれん・・・」

「敵は逃げたって言ってました。かなり満身創痍みたいですし大丈夫では?」

「・・・・場所は」

 

 

 

それを聞いた私たちはすぐに指定された廃倉庫へ向かったのであった。

 

 

 

 

5人が倉庫に到着すると、黒服が応急手当てをしていた。

 

 

「うそ・・・だよね奏也・・・?」

「そんな・・・・・」

「くっ・・・」

「そ、奏也・・・冗談は・・・よくないわ・・・!」

「奏也くん・・・・!」

 

 

そして5人が見たのは・・・

おびただしい量の、深紅の海に横たわる奏也の姿であった。

そして・・・その深紅の海を作り出しているのは紛れもなく奏也本人であった。

 

 

「いや・・・・いやあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

倉庫に日菜の悲鳴が響き渡る。

そしてそれに呼応するかのように他の4人も声を上げ、泣き、叫び、動揺したのであった。

そしてそのうちに車が到着し、奏也は弦巻の息のかかった病院にひそかに運ばれたのであった。




ここのところめっちゃくちゃ仕事が忙しくてですね・・・
しかもかなり難産で果たしてクオリティを保てているでしょうか?


終わりが近づいてきているのを実感しています。
次はどんな展開にしたものか考えておきます!

引き続きよろしくお願いいたします!


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第9話 Go to the rescue of Soya

一部公式設定を無視したオリジナル設定や実際とは異なる制度などが登場します。
なお、作者に医療の知識はございません。今までのウンチクとは別に、フィクションということでお願いします。


「患者は17歳男性!腹部の刺し傷からの出血が酷く、血圧がかなり低下しています!」

「輸血の準備だ!患者の血液型は!?」

 

真冬の日暮れ。日が沈むのは早く、まだ18時にも関わらず外は真っ暗だ。

・・・どうしてこんなことになってしまったんだろう。

神剣奏也という人は絶対に負けない、絶対に倒れない。

あたしの強さの目標であり憧れだった。でもその奏也が今生死の境を彷徨い、明日をも知れない状態になっている。

みんな目を腫らし、顔をぐずぐずにして黙り込んでいる。もちろんあたしもだ。

あたしたちは・・・何もできない。ただただ、病院の先生が行う処置の様子を耳で聞いているだけ。

 

 

「なんだと!?それは本当か!?」

 

 

そこでお医者さんの怒号が響く。何かあったのかな・・・?

 

 

「申し訳ありません、この中に・・・」

 

 

話を聞くと奏也の血液型は通常のA・B・O・ABに分類されるものではなく特殊なもの(いわゆるRh-とかボンベイタイプとか)らしい。しかし最近同じ血液型の人が大きな事故に巻き込まれ、最寄りの血液センターにも十分な量のストックがないというんだ。

 

 

「ちょっと待ってください・・・それじゃあ、このままだと奏也は・・・・」

「・・・・非常に危険な状態になるでしょう」

「「「「「・・・・・・!」」」」」

 

 

おねーちゃんがそれを口にするとお医者さんは躊躇なく、しかし言い辛そうにそういった。

 

 

「いやあ!奏也あ!目を開けてよぉ!」

「そうよ!こんな時まで寝てるなんてとんだ寝坊助さんだわ!!!

 

 

その言葉を聞いたみんな。その中でたえちゃんとこころが叫ぶ。

おねーちゃんはこの世の終わりのような顔をしてその場にへたり込み、美咲ちゃんはどうしていいかわからない表情で固まり、そしてあたしはなにも考えられなくなっていた。

 

 

「くっ・・・この時間は診察も終わってるし、血液提供者がほとんど募れない・・・!このままじゃ・・・もって30分でしょう・・・」

 

 

そして追撃といわんばかりにお医者さんは現実を突きつけてきた。

 

 

「どうにか・・・どうにかならないの・・・!?」

 

 

もう・・・手は残されていないの?

もう奏也と話すことも・・・彩ちゃんを奏也のことでからかって笑うことも・・・

・・・・・待って

 

 

「彩ちゃん・・・・!」

 

 

私はあることを思い出し、すぐさまスマホを開いてパスパレの公式ページに飛ぶ。

見るのは彩ちゃんのプロフィール蘭だ。

 

 

「あった・・・・!先生、この血液型!」

「・・・・これは!」

 

 

そう、そのプロフィールに書かれていた血液型。それは奏也のものと同じだったんだ。

 

 

「・・・そういえば!この血液型の名称、どこかで見たことがあると思ったら!」

 

 

おねーちゃんも何かを思い出したようですぐ電話をかけ始めた。

 

 

「今井さん!つかぬ事を聞きますが血液型は・・・」

 

 

おねーちゃんはどうやらリサちーに電話をかけているようだ。

 

 

「すぐに迎えを送るよう頼みます!今井さん、奏也を助けて・・・!」

 

 

そして電話を切ったおねーちゃんはお医者さんに告げた。

 

 

「私の友人が・・・同じ血液型のようです。すぐに来るようにお願いしました」

「よく思い出せたね!おねーちゃん」

「以前、Roseliaで血液型占いのようなことをやったことがあって。その時に今井さんが言っていたのをなんとなく覚えていたのよ」

「これで二人分・・・!あと1人いれば間違いないのだが・・・!」

 

 

一人から採血できる量は限りがある。安全を確保するにはできるだけ多くあればあるに越したことはないらしい。でも、奏也の血液型、2人そろっただけでもすごいのに3人なんて・・・・

 

 

「今、香澄に話をつけたよ。来てくれるって」

「えっ!?香澄ちゃんもなの!?」

「うん。香澄から聞いたことがあるんだけど、香澄って小さいころ、昔輸血が必要なくらいの大きい交通事故に遭って、血液型が特殊なせいで輸血に苦労したんだって。確かその時聞いた血液型が・・・って思ったらアタリだった」

「これで三人・・・・!先生!足りますよね!?」

「ええ、3人分もあれば十分でしょう」

 

 

すごいすごい!これはもはや運命って言えると思う!

もしかして奏也が彩ちゃん、リサちー、香澄ちゃんに出会ったのはこの日のためだったのかもしれない。

 

 

「よし、こころちゃん!さっそくお父さんに言って3人を迎えに行って!」

「わかったわ!10分で連れてくるから待ってて!」

 

 

 

 

「奏也!」

「奏也くん!」

「奏也先輩!」

 

 

そしてしばらくして3人が到着した。

 

 

「日菜ちゃん!奏也くんは!?」

「今手術室だって・・・それよりも彩ちゃん!」

「う、うん!輸血だったね!」

 

「紗夜・・・何があったの?」

「詳しいことは後程。今はこっちが優先です!」

「そうだね!わかったよ!」

 

「・・・ねえおたえ。奏也先輩・・・そういうことだよね?」

「香澄・・・・」

「また・・・私の知ってる・・・しかもすごく大事な人が・・・・」

「香澄!」

「・・・!?」ビクッ

「気持ちはわかるよ。でもね、大事なのは今、それを考えるのは後だよ。今は一刻も早く奏也を助けないと・・・後悔が増えるでしょ?・・・香澄はそれでいいの?」

「・・・・絶対嫌だ!」

「うん。じゃあ今やれることをしよう?」

 

 

「それではお三方、こちらへ」

 

 

そして3人は、看護師さんに連れられ別室へ行った。

そしてしばらくして、奏也の手術が始まったのだった。

 

 

 

 

あれから何時間経っただろう。手術中のランプは未だ点灯しており、待合の椅子にはみんながひたすら祈るような格好で座り込んでいた。

 

 

「みんな、少し休んだ方がいいよ。特に丸山さん、今井さん、香澄は血を抜いてるんだし」

 

 

諸々の手続きをやってくれてた蘭ちゃんも加わり、そういう。

たしかにみんな疲労困憊といった感じだ。特に血を抜いたこの三人はキツそうだね。

 

 

「あっちの病室が丸々空いてるから、ベッドとか自由に使っていいってさ」

「でも・・・」

「彩ちゃん、気持ちはわかるけどさ。疲れてるだろうし休んできなよ?何かあったら呼ぶしさ」

「香澄もだよ」

「今井さんもどうぞ」

 

 

こんな感じで3人は空いているという近くの病室に行った。

加えてあたしたちも交代で休むということになり、先にこころちゃん、美咲ちゃん、たえちゃんが一緒に向かった。

つまり、この場にはあたし、おねーちゃん、蘭ちゃんが残ったわけだ。

 

 

「聞かないの・・・・?」

 

 

沈黙を最初に破ったのは蘭ちゃんだ。

 

 

「うーん、聞きたいといえば聞きたいけどさ。今はみんな疲弊してて冷静に話なんて聞けないだろうし、まず奏也が助かったら・・・かな」

「ええ。それにあなた方が無理やり奏也にやらせたのではないのでしょう?冷静じゃないときに話を聞いて判断が鈍るのはよくないですからね」

「紗夜さん・・・日菜さん・・・・」

「今は信じて待とうよ」

 

 

 

 

あれからしばらくして、各々が休憩を終えて手術室の前に戻ってきたタイミングだった。ついに手術中のランプは消え、その扉が開いた。

 

 

「先生・・・!」

 

 

あたしは真っ先に先生に詰め寄る。

 

 

「手術は成功しました」

 

 

その言葉を聞いた瞬間、みんな喜びの声を上げる。

しかしあたしはそうしつつも先生の少し浮かない顔に違和感を覚え、質問を重ねたのだ。

 

 

「それで・・・奏也の意識は・・・・?」

「・・・意識はまだ戻りません。それに手術は成功しましたが経過を見てみないことには何とも言えないところがありまして・・・・」

 

 

やっぱり。なんとなくそんな気はしてた。

喜びも束の間、といった感じであったけど、ひとまず命が助かったことにはみんな安堵した様子だった。

 

 

その後、リサちー、彩ちゃん、香澄ちゃんには「奏也は通り魔に襲われて負傷したということ」のみを伝えた。

そして蘭ちゃんから、お見舞いは大丈夫だけど奏也がここに入院していることは誰にも秘密であるということが付け加えられたのだった。

 

 

 

 

「こんにちは!奏也くん、お見舞いに来たよ!」

 

 

私は練習の後、奏也くんのお見舞いに来ていた。

 

 

「今日はね、いっぱい練習したんだよ?でもパスパレのみんなを心配させちゃったんだ。千聖ちゃんになんだか上の空よ?って。しかも日菜ちゃんは今日はお休みでね・・・・う・・・うええええええん・・・・」

 

 

気丈にふるまったつもりが、私はたまらなくなり泣いてしまう。でも泣いた私にかけられるいつもの優しい声は聞こえてこないままだ。

 

 

「なんでなのお・・・・どうして奏也くんがこんな目に遭わなくちゃいけないのお・・・・・・・」

 

 

いつだって私を守ってくれて、いつだって私を笑わせてくれた奏也くん。その奏也くんにいくら問いかけて帰ってくる返事はない。

いつでも聞けた声が聞けないということの辛さを全身で感じていた。

 

 

「でも、このままじゃいけないよね!」

 

 

そうだ、奏也くんはきっとすぐに目を覚ますはず!

ここで私が落ち込んで奏也くんが起きたときに怒られてたんじゃ奏也くんに悪いよね。

 

 

「私らしさ・・・だったよね?奏也くん。私、頑張ってるから。待ってるから。奏也くんも・・・がんばれ!」

 

 

正直から元気かもしれない。でも私は無理やり自分を奮い立たせ、そう宣言しました。

 

 

 

「リサ、紗夜。どうしたのかしら?」

「え・・・?」

「湊さん、どう、とは?」

 

 

突然友希那がそう声を上げた。

とぼけるふりをしてみるがアタシにもこうなっている原因はわかってる。

もちろん、紗夜も同じ気持ちだと思う。

 

 

「あなたが一番わかっているのではないのかしら?今日の音、これは何かしら?あなた達らしくもない・・・ひどい音よ」

「友希那さん!そこまでいわなくても・・・・」

「いえ、いいんです宇田川さん。とぼけるような真似をして申し訳ありません。今日は体調が悪いようです」

「リサも?そうなのかしら?」

「え!?アタシは・・・・」

「・・・・なにかあったのかしら?」

 

 

参った。友希那には隠し事できない。もうさすがに奏也のことは知らないだろうけど何かを見抜いた目だ。

 

 

「紗夜・・・・」

「今井さん・・・いたし方ありませんね。お話しします。ただし、このことは一切、他言無用でお願いします」

 

 

アタシたちは奏也のことを話す。

通り魔に襲われ、意識不明の重体で入院していること。

そしてなんらかの都合で病院は関係者以外に他言無用であることを。

 

 

「奏也くんが・・・・!?」

「うん・・・」

「そんな・・・!奏也先輩・・・」

「うう・・・」フラッ

「白金さん!しっかり!」

 

 

紗夜がふらつく燐子を受け止める。

 

 

「でも事情があって私たちは病院を知ることはできないということね・・・口惜しいわ・・・」

「申し訳ありません・・・」

「ごめんね友希那・・・」

「構わないわ。そうね、今日はもう練習になりそうにないし二人でお見舞いにでも行ってきなさい」

「いいの?」

「ええ。早くいつもの二人に戻ることを願うわ」

「・・・ありがとう、友希那」

 

 

 

 

「え?紗夜は今日行かないの?」

「ええ・・・実は日菜がちょっと体調を崩してて。今日は今井さんだけでいってきてください」

「そっか・・・うん、わかったよ!

 

 

そして病院へ向かい、病室に入る。

 

 

「あれ?彩?」

「リサちゃん!?」

 

 

そこには彩がいたんだ。そしてもう一人、病室へ入ってくる気配がした。

 

 

 

 

「奏也先輩・・・どうかな?」

「どうだろ・・・・手術は成功したんだし、あとは目が覚めるのを待つしかないよ」

「うーん、そうだよね・・・」

 

 

私はおたえと奏也先輩のお見舞いに来ていた。

病室へ向かうべく、廊下を歩きながらそんな会話をしていた感じだ。

 

 

「大丈夫。奏也には香澄の血が流れてるんだから。香澄の元気いっぱいのキラキラドキドキの血があれば意識不明なんて屁の河童」

「ぷっ・・・なにそれ・・・・でもそうなんだよね。今、奏也先輩の中には私の血が流れてるんだよね///」

 

 

うわっ!そう思うとなんか恥ずかしい!

不謹慎だけどちょっと嬉しいと思っちゃった・・・・

 

 

「・・・・ねえ香澄」

「・・・・?なに?おたえ?」

「香澄はさ、奏也のことが好きなんだね」

「え!?!?!?!?!?!?!?!?!?」

「うーん、その反応。やっぱそっかー・・・・」

「え、あの、違うの違うの!」

「・・・・違うの?」

「うー・・・違わないけど違うのー・・・・おたえのばか!」

「ばかって言われた・・・」

「えっと、その、それはそうじゃなくて!」

 

 

顔から火が出てるみたい・・・・・

なんでバレたんだろ・・・・

 

 

「で、好きなの?」

「・・・・好きです///」

「そっか。うん、応援する。でもね香澄、最後は自分で・・・・自分たちで決めることだから」

「え?それってどういう意味・・・・?」

「秘密。あ、私飲み物買ってからいく」

「じゃあ私も・・・」

「香澄は先行ってて。少しの間奏也の寝顔を独り占めしててよ」

「・・・・///おたーえー!」

「あはは、その怒り方、有咲みたい」

「もう!」

「香澄はなにがいい?」

「・・・・カル●スウォーター」

「りょーかい」

 

 

そういっておたえはぱたぱたと自販機へ向かった。

うわー・・・なんだろこの気持ち。でもずっと自分で秘めていた想いが誰かと共有できてうれしい気持ちもある。

そんなことを考えて病室へ入ると、そこには彩先輩とリサ先輩もいた。

 

 

「あれ?香澄ちゃん?」

「彩先輩!リサ先輩!」

「香澄も来たんだ」

「はい!おたえも一緒で・・・・」

 

 

そういった瞬間。私たちの注意は全く違う方向へ向かった。

 

 

 

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!

 

 

「「「えっ!?」」」

 

 

それは病院の駐車場に止められていた車が突然爆発した音で・・・

その炎は勢いよく天へと昇って行ったのだった。

 




前回から日が開いて申し訳ありません・・・
仕事がクッソ忙し上に超難産でございまして・・・


動きの鈍い話だったかと思いますが、次回は思いっきり動かすつもりです。


しかし前話はかなり衝撃的だったようですね・・・・
お気に入りがゴリっと減って、そして同じくらいお気に入り登録がされ±0って感じに落ち着きました。
かなり賛否があったようで驚いてます。

よろしければ感想などお聞かせください!

引き続きよろしくお願いいたします!


★評価のお礼★

ビエンさん ★1ありがとうございます!精進します。


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第10話 魔法カード発動!死者蘇生! 

ちょっとくらいオカルト要素があってもいいかなと思いまして。


「おいコラ奏也、起きやがれ」

「んだようっせぇな・・・・」

 

 

かけられた声に反応し、俺は目を覚ます。

いや、覚めてはいない。目を開けたつもりだが目に映るものはなく無限に闇が広がっている。

 

 

「真っ暗じゃねえか」

「そりゃ現実じゃねえからなあ」

「・・・その声はオッサンか?」

 

 

そうだ、この声はオッサンだ。

 

 

「なんだよ」

「いやよ、ぶらついてたらおめえが見えたもんでよ。つい声をかけちまっただけだ」

 

 

すると暗闇にすうっとオッサンの姿が映し出された。

 

 

「そうかよ。しっかしリアルな夢だなあオイ。うさんくさいところまでオッサンの再現度バッチリじゃねえか」

「この野郎・・・・お前が夢だと思うんならそれでいい。しかしよぉ奏也・・・おめえコッチにくるの早すぎねえか?」

「・・・なんだと?」

「覚えてねえのか?」

「・・・・・なんか猛烈に腹が痛くなってきたぞ」

「そりゃおめえあんだけブスリと刺されりゃなあ」

「あーそうだ。俺、琢磨の野郎に刺されたんだったな。うえっ、当分トマトケチャップは見たくねえぜ」

 

 

そうだ、俺は刺されたんだ。そんで弦巻さんに連絡して日菜と少し話したような覚えが・・・アレ?

 

 

「俺は死んだのか?」

 

 

純粋な疑問。もしこれが夢じゃないとしたら。目の前に死んだオッサンがいるということはそういうことなのかもしれない。

 

 

「いんや、死んでねえよ。まあ境目ってとこだな。死ぬかもしれねえし、死なねえかもしれねえ」

「なるほどなー。んで、俺はどうやったら生き返れるんだ?」

 

 

俺は疑問を口にする。夢かもしれないが、死んでなお俺に干渉してくる無茶をやるオッサンだ。それくらいの方法は知っているだろう。

 

 

「さあな」

「なるほど、そうやるのか・・・って!知らねえのかよ!?」

「んな方法知ってたら俺が生き返るわ!おめえバカじゃねえのか?」

「このオヤジ・・・・!」

「おっ?暴力?暴力?なんでもかんでも暴力なんて最低だなおめえ」

「その暴力を継承させた張本人が何言ってやがんだあああああ」

 

 

もうやだ、この霊体のオヤジ!

 

 

「だがよ奏也。おめえはこっちに来るには早すぎる。俺は肉体が死んでしまったから何にもできなかったが肉体が生きているおめえはまだ戻れるはずだ」

「それがどうやるのかわかんねえだろうがよ・・・・」

「まあ実際問題これは。気力の問題だ。向こうの肉体は生きているんだ、こっちにいるお前が生きたいと心の底から願えばむこうへ戻れるはずだ」

「さっきから思ってるはずなんだがなあ・・・・」

まだ意思が弱いんだ。・・・・それならばあれを見ろ」

「なに・・・・?」

 

 

 

 

爆発音が鳴り響いた後、病院の駐車場には炎が上がっていた。

 

 

「えっ・・・?どういうこと」

「彩!香澄!煙が来たら危ないから窓を閉めて!」

 

 

リサちゃんの掛け声でハッとし、窓を閉める。

そうだ、ここには病人がいるんだった。

 

 

「でも外で一体何が・・・・」

 

 

「それはワタクシが説明いたしましょう」

 

 

病室の扉が開き、私たち3人が振り向くと、帽子を深くかぶってコートを着込んだ男の人が入ってきた。

 

 

「フム・・・神剣奏也だけかと思っていましたがオマケが3人もいるとは予想外ですね。始末する人数が増えてしまったではないですか。料金外ですが致し方ありませんね」

「ど、どういうことですか!?」

「おやその髪型・・・ネコちゃんみたいで可愛いですね~私は猫が好きでしてねえ」

「そ、それよりもどういうことなんですか!?」

 

 

香澄ちゃんがきいたことに返答はなく、話が進まなかったため思わず大きな声を上げてしまった。

 

 

「おっとワタクシとしたことが質問に質問で返してしまうとは・・・・よろしい。ご説明しましょう。あの車はワタクシが爆破しました。ああすれば人々の注意はあちらに向きますからね」

「なんでそんなことを・・・・?」

「そこに眠る王子様を抹殺するためですよ。全く、眠れる王子様を抹殺するだけの簡単なお仕事だったはずですが・・・おまけが3人もいるとは」

「ま、抹殺!?」

 

 

突然飛び出す物騒な単語に驚きを隠せない私たち。

それでも男の人は容赦なく話を続ける。

 

 

「そうですね・・・猫耳のアナタ!猫好きの私に免じてアナタは最後にして差し上げましょう!」

 

 

そして男の人の手には・・・・

キラリと大きなナイフが光ったのだ。

 

 

「きゃ、きゃあああああああああああああああああああああ!」

「いや!こないでえええええ!」

 

 

男の人は無言で歩みを進める。私たち三人は腰が抜けてしまい、その場にへたり込んでしまった。

 

 

「何をしているのっ!?」

 

 

しかしそこで・・・聞き覚えのある声が聞こえた。

 

 

「お、おたえ!?」

 

 

香澄ちゃんがその人の名前を叫ぶ。そう、それはおたえちゃんだった。

 

 

 

 

 

「あなた、何者・・・・?それに私の友達に何をしようとしたの・・・・?」

「おや・・・アナタはまとっている雰囲気が違いますね」

「そんなことはどうでもいい。あなたは何?ここで何をやっているの?」

「質問が多い女性はめんどうですねえ・・お答えしましょう。私の目的はそのに眠る王子様の抹殺」

 

 

抹殺・・・・?

 

 

「・・・まさか荒神の・・・・」

「!?なんと!?うーむ・・・これはいけませんねえ・・・・」

 

 

一瞬ビクッてなった。ってことはやっぱり・・・

 

 

「決めました。余計なことを話される前にアナタから抹殺しましょう」

「・・・・!」

 

 

ヒュンッっとナイフが振るわれる。

しかしそれを見切った私は避けて、カウンターで一撃の蹴りを放った。

 

 

「ぐぉ!・・・なーんちゃって。いい蹴りですねえ。しかもナイフを避けるとは。だが・・・ワタクシには無意味です」

「えっ・・・!?あぐっ!」

 

 

そういい終わった奴はすごいスピードで蹴りを放ち、それをもろに受けた私は後方に吹っ飛び、壁にたたきつけられてしまった。

 

 

「くっ・・・・」

「蹴りというのはこうやってやるものです。おや、叩きつけられた衝撃で動けないようですねえ」

 

 

その通り、もろに衝撃を受けた私は体に力が入っていなくなっていた。

 

 

「なんで・・・こんな・・・なぜここが・・・・」

「その様子だと神剣奏也が一人の男と交戦したのは知っていますね?結果は相打ちとなったわけですが、念のためにと去り際に片方の男は神剣奏也に発信機をしかけたのです。それでギリギリ帰還を果たしたその人に、ワタクシの依頼主は神剣奏也のことや発信機のことを聞き、余計なことを話される前に急ぎワタクシを派遣したというわけです」

「あなたも・・・・殺し屋・・・なんだね」

「ザッツライト!と、いうわけです。まずはあなたから先に送って差し上げますよ」

 

 

奴がナイフを構えなおし、ジリジリと私のほうへ歩いてきた。

 

 

「では・・・さようなら」

「・・・・!」

 

 

私はもうだめ・・・そう覚悟し目を瞑った。

 

 

「おたえー!!!!!!」

「なにぃ!?」

 

 

しかしそこで香澄が渾身のタックルを放ち、奴の足に当てる。

 

 

 

「この・・・クソガキがあ!」

 

 

 

それに起こった奴はさっきまでの丁寧な口調とは打って変わって乱暴な口調になり、香澄のほうを向いた。

 

 

「最後にしてやるといったのに・・・・いいでしょう。お望みならあなたからあの世に送って差し上げます!」

「香澄―!!!!!!!!!!!」

「たす・・・けて・・・そうやせんぱい・・・・」

 

 

消え入るような声で香澄がそういうのが聞こえた気がする。

しかしそれに対する返答はもちろん・・・・

 

 

「ああ、寝起きだけどやってみるわ」

「えっ!?」

 

 

そこには・・・・

 

 

「寝坊しちまってすまねえな。ちょっと待っててくれ」

 

 

そこには目を覚ました奏也が・・・奏也が起き上がっていたんだ。

 

 

 

「行くのか・・・?」

「ああ。今なら向こうに戻れる気がする」

「そうか・・・・」

「あいつらがあぶねー目にあってんのに寝てるわけにはいかねえだろ」

「そうか・・・ならば、奏也。これだけは言っておく。ここで起きたことは夢みたいなもんだ。目を覚ませば記憶から消える」

「なんだ、そうなのか」

「生者の口から死人の言葉が語られちゃいけねえ。そういうルールなんだよ」

「そいつは残念だ。なあオッサン・・・忘れちまうかもしんねえけど。もう一回アンタと話せてよかったよ」

「なんだよ急にかしこまって気持ちわりぃ奴だな」

「ひでぇな!?でもまあ、そのほうがオッサンらしいか。でもやっぱこれだけは言わせてくれ」

 

 

俺はスゥっっと息を吸い込み、そして叫んだ。

 

 

「今までお世話になりました!!!」

「・・・・バッカやろう」

 

 

オッサンは急に後ろを向いてしまった。その肩は心なしか震えている気がする。

 

 

「おら、さっさと行け」

「ああ」

 

 

そして俺は意識を集中する。さて、すぐ戻るからみんな待っててくれ。

 

 

「奏也」

「なんだよ?」

「また、いつになるかわからない遠い未来・・・・」

 

 

 

お、オッサンがガチトーンで話し始めたぞ?

なにかかしこまったことでもいうつもりなんだろうか?

 

 

「おめえが死ぬのを楽しみに待ってるぜ?」

「最後の言葉がそれかよ!?!?!?!?!?!?」

 

 

全くい最後の最後までこのオッサンは・・・・まあい。

そして俺はそのまま・・・暗闇から脱したのであった。

 

 

 

 

「寝坊しちまってすまねえな。ちょっと待っててくれ」

「奏也・・・・!?」

「奏也・・・・」

「奏也せんぱい・・・・・」

「奏也くん・・・」

「おたえ、リサ、香澄ちゃん、彩。どうしたんだそんなハトが機関銃を食らったような顔をしやがって」

 

 

しかしなんで俺はこんなここに至るまでの光景を見てきたかのような言葉を発してしまったんだろうか。

なんだか懐かしい夢をみていたような気がする。

 

 

 

「だって・・・だって・・・・!」

「お、おい彩!いきなり泣き出すのは勘弁してくれ!」

「これぐらい許してよ・・・バカ奏也!」

「リサまで!?」

「奏也せんぱあああああい!よかったよおおおおおお」

「香澄ちゃん!?」

 

 

数秒で3人の女を泣かせるって俺どんなクソ野郎なんだよ・・・・?

 

 

「さて、感動の再会はもうよろしいでしょうか?」

「あ゛?人の病室で随分と物騒じゃねえか。ナニモンだテメエ?」

「しかし目が覚めるとは・・・・?まあいいでしょう。私は・・・・」

 

 

奴は余裕綽々と言った感じで堂々と自己紹介、そしてここに来るまでの経緯まで話してくれた。

 

 

「あちゃー発信機かあー!油断したなあ。まあ死にかけてたからしゃあねえか。だってよ・・・・お前を黙らせればそれで解決なんだろ?」

「そんな満身創痍でバカなことを・・・・死になさい!」

 

 

奴から殺気を感じたかと思えばナイフを構え、俺に放ってきた。

しかし不思議だ。さっきまで寝てたはずなのに体が軽い。奴の動きが手に取るようにわかる。

 

 

「遅せえな」

「なに!?」

 

 

速さ・・・動き・・・これはなら琢磨のほうが1145141919810倍強い。

俺は近くにあった点滴スタンドを手に取り、そのまま奴のナイフを持つ手に渾身の一撃を放った。

 

 

 

ボキッ!

 

 

「ぎ・・・ぎゃあああああああああああああワタクシの腕がああああああああああああああ」

「殺し屋っていっても強さはピンキリなんだなあ。寝起きの俺にやられるようじゃ大したことねえぜ」

「許さん・・・許さんぞ神剣奏也あああああああああああああああ」

「許してもらわなくて結構。それによぉ・・・この状況・・・てめえこの子たちに何しようとした・・・・?」

「そんなもの!決まっているだろう!!ワタクシを見たものはすべて抹殺!抹殺あるのみです!」

「そうかよ・・・じゃあ俺は抵抗させてもらうぞ」

「抵抗・・・どうやって・・・?」

「 拳 で 」

 

 

俺は今出せる力をすべて開放し、奴に拳を放った。

 

 

「これは彩を泣かせた分!」ドゴッ!

「ふぐおおおおおおおおお」

 

「これはリサを泣かせた分!」バキッ!

「ぎゃあああああああ」

 

「これは香澄ちゃんを泣かせた分!」ゴキッ!

「ぶがああああああああ」

 

「そしてこれは・・・・おたえがやられた分!」ゴスッ!

「ひぎゃあああああああああ」

 

「そしてこれは・・・・今までてめえが命を奪ってきた人たち全員分だゴルァァァァァァァ」ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴ!

「なんでもありじゃないですかあああああばばばばばばばばばばばばばばばばばば」

「オラア!」

 

 

ガシャーン!!!ドサッ!

 

 

「あひっ・・・あひっ・・・・」ガクガク

 

 

最後の一撃で吹っ飛んだ奴は窓を突き破り、2階から下へと転落し、体をピクピクさせていた。まあ草がクッションになったっぽいし死にはしないだろう。

 

 

「おたえ。弦巻さんを呼んで奴を回収してもらってくれ」

「う、うんわかったよ」

 

 

ふう。寝起きで動いたら疲れた。

 

 

「さて、お前らなんともないか?」

「奏也くん!うん!・・・・・うん????????」

「おいどうしたんだ彩。ハトがレールガンくらったような顔しやがって」

「そ、奏也・・・・」

「なんだリサまで」

「あの・・・奏也せんぱい・・・・その・・・・おなか・・・・」

「え?おなか?」

 

 

俺はそういわれ特に何も考えず自分の腹を触った。

するとその触った手は・・・・深紅に染まっていたのだ。

 

 

「なんじゃこりゃぁああああああ!」

 

 

俺は往年の松田優作のような大声を上げ、そのままパタンと意識を失ってしまったのである。

そして次に目を覚ますと傷口が開きかけてる、無茶するんじゃねえと医者にこっぴどく叱られたのであった。

 




と、いうわけで神剣奏也くん、復活でございます。
なんだかんだ10話まで行っちゃいましたね。あと何話続くのでしょうか。
引き続きよろしくお願いいたします!


★元ネタ解説★

●拳で
ツイッターで一時期流行った21歳の彼

●なんじゃこりゃぁあ!
故松田優作氏の代表作「太陽に吠えろ」で松田優作氏が演じるキャラクターが死ぬ際に放った言葉。
ドラマは知らないけどこのネタは知っているという人は案外多い。


★評価の御礼★

生ナマコさん ★9ありがとうございます!


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第11話 束の間の平穏

平穏回です






荒神が放った刺客を葬ってから(とはいえ殺していないが)数週間が経った。

無事生還を果たした俺を見た幼馴染たちは泣きわめき、彩・リサ・香澄ちゃんもものすごいことになっていた。

それだけ俺はあいつらの中で大きな存在になれているというのは不謹慎ながら純粋に嬉しかったし、あいつらのあんな姿は二度とみられないだろう。もっとも、もう見るようではいけないのであるが。

 

 

「・・・というわけだ」

 

 

そして俺は今幼馴染たちに今回に至った経緯を説明した。

俺はあの襲撃を受けた後開きかけた傷に応急処置を施し、発信機を破壊したうえで即座に、そして秘密裏に違う病院へと運ばれた。

その後絶対安静を貫き、だいぶ傷の方もよくなってきた次第だ。

どうやらあいつらの中では俺がある程度落ち着くまでは今回の件について話をしないという取り決めがあったらしく、それが解かれたのが今というわけだ。

 

 

「バカッ!!!!!!!!」

「あ、はい」

 

 

説明を終えると開口一番にこころがそう言った。

 

 

「まーまーこころちゃん、落ち着きなよ。私が奏也だったら同じことをしてた。こころちゃんだってそうでしょ?」

「それは・・・・」

 

 

こころは俺に対して、というよりも自分の家が関わったことの方が気に食わないらしく、この中では一番怒っていた。

美咲はこころをなだめており、紗夜は日菜と同じ意見のようだ。そしておたえはともに襲撃者と戦っただけあってこの中で一番落ち着いている。

 

 

「そうだけども!お父様もお父様よ!なんで奏也だったの!?」

「こころ、落ち着け。弦巻さんは悪くない。それに弦巻さんのバックアップがなかったら奴を手負いにすることはできなかったし、俺は間違いなく死んでいた。感謝こそすれど怒る道理はないぜ」

「でもっ・・・・!」

 

 

こころの気持ちはわからなくはない。

自分の親が関わって俺が死にかけた。その事実のみが重くのかかり、こころなりに責任を感じているのだろう。

 

 

「落ち着けって。こころらしくないぜ?お前はみんなを笑顔にするのがスタンダードスタイルじゃなかったのかよ?俺も笑顔にしてくれ。腹が痛くて表情が曲がりそうなんだ」

「奏也・・・・・いいの?わたし・・・許してもらっていいの?」

「許すも何もこころ、なんも悪くねえじゃん。俺が俺の意思で弦巻さんに協力し、俺の意思で琢磨と戦い、傷を負った。全部俺の責任じゃねえか。どこにこころが悪い要素があるっていうんだ?」

「奏也・・・・そうよね!うん!ありがと!奏也・・・ありがと・・・・」

 

 

こころは次第に声を小さくし、そしてそのまま涙に目をためてその場にへたり込んでしまった。

 

 

「お、おいこころ・・・・まるで俺が泣かせたみたいじゃねえか」

「泣いてないわよ!!!」

 

 

いや、泣いてるし。・・・待てよ?

 

 

「スマイル狂のこころが泣く姿なんて見るのは生まれてはじめてかもしれん・・・・」

「だから泣いてないわよ!!!!!」

 

 

とまあそんなやり取りをみて次第にみんなに笑顔が戻ってきた。

さすがこころは偉大だな。

そんなことを考えながら面会時間が終了を迎えたのであった。

 

 

 

 

「奏也~!」

「お、リサか」

「私もいますよ」

「おう、紗夜。いつもすまんな」

 

 

どうやらリサと紗夜が見舞いに来てくれたようだった。

 

 

「調子はどう?」

「だいぶいいな。飯も普通に食えるくらいにはなった」

「そっか!じゃあこれもいいかな??」

 

 

そういってリサが取り出したのは小さな袋だ。

 

 

「それは?」

「クッキー!食べられるかなーって思って持ってきたんだ」

「今井さんのクッキーには心を落ち着かせる効果がありますのでおススメですよ」

「なるほど。ちょうど甘いものが欲しいと思っていたところだ。いただこうかな」

「ほんと!?ちょっと待ってね~」

 

 

そう言ってリサは袋からクッキーを取り出し、俺に差し出してきた。

 

 

「ありがと・・・ってあれ?」

 

 

俺がクッキーを受け取ろうとしたらリサはなぜかクッキーを引っ込めてしまった。

心なしか顔が赤くなっている気がする。

 

 

「そ、奏也・・・ひ、ひとりじゃ食べられないだろうし・・・食べさせてあげるよ///」

「えっ、別に普通に食えるんだが・・・・」

「いいの!ほら!あーん」

「奏也、空気を読みなさい」

「それってどういう・・・・リサちょっと待っ・・・むごぉぉぉ・・・う、うもう!」

「どう!?おいしい!?」

「うごごごご・・・・・・うまいなコレ」

「ホント!?」

 

 

無理矢理クチに突っ込まれたクッキーであったが、しっかり咀嚼し味わうと大変美味いものであった。

 

 

「うむ。リサは料理もできるし本当にすごいな。嫁にもらう人がうらやましいぜ」

「よ、嫁!?」

「ハァ・・・また奏也ったら・・・・」

 

何やら動揺しだすリサとなにやらあきれる紗夜。

え、なんか変なこと言ったかな。一般的な意見を述べただけだと思うのだが・・・

 

 

「どれ、もう一つ・・・・」

 

今度は先手必勝で俺から手を出した。しかし、袋から取り出したクッキーは少し形が悪いようにも思える。

まあすべてがすべて綺麗に焼けるとも限らないし、運んでくる途中に割れたのかもしれない。

 

 

「ん・・・?なんかさっきのと味が違うな」

「・・・おいしくないですか?」

 

 

すると紗夜が唐突に問いかけてくる。

その表情は心なしか緊張しているようにも見える。

 

 

「いんや。フツーにうまいぞ。こっちはこっちで好きな味だ」

「だってさ~!よかったね、紗夜」

「い、今井さん・・・」

「もしかしてコレ、紗夜が作ったのか?」

「ええ、そうだけど・・・今井さんよりは上手にできなくて」

「でもま、美味いしさすがは紗夜って感じだ。教える人も、作る人も上手いっていう好例だな。それに紗夜の手作りクッキーなんて死ぬまでにあと何回食えるかわからんからな、しっかり味わわせてもらうさ」

「そんな大げさな。それに言えばいつでも作ってあげますよ」

 

紗夜は少し顔を赤くする。そしてその表情は嬉しそうだ。

そして2つ目、3つ目を口に運ぶ。うむ、美味い。

 

 

「むぅ~紗夜のばっかり・・・そ、奏也!アタシの方もさ、もっと食べてよ!」

「リサのクッキーはさっきリサが俺の口に全部詰め込んだんだぞ・・・?」

「あっ」

 

 

ドジっ子リサちゃんかわいい。そんな感じでこの平和な病室の一風景。

その穏やかさを感じ、今日も一日過ぎていくのであった。

 

 

 

 

「奏也、きたよ」

「おう、おたえか」

「奏也せんぱい!こんにちは!」

 

 

翌日、おたえと香澄が見舞いに来てくれた。

 

 

「なんだその手に持つでっかいバスケットは・・・・」

「これ?お見舞いの品のね、パン」

「なんで3人しかいねえ病室に8人分はあろうというパンを持ってくるんだよ!?」

「奏也男の子だからいっぱい食べると思って」

「腹刺されてちょっと前まで安静だった奴が8人分のパンを食えるか!!」

「大丈夫、私と香澄もいるから実質6人」

「それでも多いわ!」

 

 

なんで文句言われてるのかわからないといった顔で首をかしげるおたえ。

普段ならこれくらい食えるがさすがに今はなあ・・・この天然ちゃんめ

 

 

「あー・・・やっぱ多かったよね。だから言ったじゃん、おたえ」

「香澄(ちゃん)が正論を言っている!?」

「わーっ!二人してひどい!!」

 

かなりたくさんの種類がある。どうやら沙綾ちゃんの家のパンらしく、病院の都合でおたえと香澄しか見舞いに来れないと言ったら持たせてくれたらしい。

沙綾ちゃんもりみちゃんも有咲ちゃんも明らかに多すぎだろ!と突っ込んだらしいがおたえが強行して持ってきたらしい。

やりますねえ!

 

 

「ほら、香澄」

「えっ!?でも・・・」

「いいから、こういう時にアピールしないと」

「どうしたんだ?」

 

 

おたえが香澄ちゃんに合図をすると香澄ちゃんは突然モジモジし始める。

ん・・・・?なんか昨日も見たぞこの光景。

 

 

「そ、奏也せんぱい!どのパンを食べますか!?」

「えっ?ソウダナー・・・じゃあそのメロンパンで」

「わかりました!」

 

 

すると香澄ちゃんはバスケットからメロンパンを取り出してくれた。

 

 

「はい!奏也せんぱいはケガで食べにくいでしょうから私が!!!!!!」

「・・・なんかヤケクソになってない?」

「いいですから!ほら!あーんしてください!」

「手はケガしてないし普通に食べられる・・・・えっ」ガシッ

 

 

言い切ろうと思ったらおたえが俺の後ろに回り顔をホールドしてきた。

 

 

「あの、、、おたえさん?」

「なに?」

「なにをやってらっしゃるのでしょうか?」

「奏也が食べやすいように顔を固定しているの」

「あの別にそういうのは・・・・」

「香澄、今だよ」

「うん!はい、あーん!」

「せめてちぎってくれ・・・・むぐぐぐぐぐ・・・う、うもう!」

 

 

あれー?なんかこの光景見たことあるぞー????

 

 

「なんかそれ・・・楽しそう。私もやりたい・・・」

「えっ」

 

 

そういうとおたえは俺のホールドを解いたが、バスケットからパンを取り出し俺にジリジリ近づいてきた。

 

 

「はい・・・奏也・・・あーん」

「あの、拒否権というものは・・・・?」

「あると思う?」

「(拒否権は)ないです」

「よくできました(ニコッ」

「ぐももももももももももも」

 

 

その後、俺は交互にパンを詰め込まれまくって結局役6人分を食べきってしまった。

まあ美味かったからいいけどな。それにしても今病人にあーんを称して食い物を詰め込むのが流行っているのだろうか?

なんだかんだ平和だ。そして今日も一日、穏やかに過ぎていったのだ。

 

 

 

 

「こんにちは~」

「奏也ー!来たよ!」

 

 

さらに翌日、見舞いに訪れたのは彩と日菜だ。

 

 

「はーい、これお見舞いのシュークリーム!今限定出店してる有名店のやつなんだよ~」

「これはうまそうだな」

「うんうん!・・・あれ?彩ちゃん、お茶が入ってないよ?」

「あれ!?あー・・・持ってくるの忘れちゃったかも・・・・」

「もう~彩ちゃんったらドジだなあ~」

「ご、ごめんね!」

「まあいいだろ。このままでも十分うまそうだ」

「これはお茶と一緒に食べるのがいいんだよ!そうだ、下の自販機で買ってくるよ!」

「それなら私が・・・・」

「いいのいいの!彩ちゃんは奏也と待っててよ!行ってくるねー!」

 

 

慌ただしく日菜は病室を出ていく。そして残された俺と彩はしばし談笑へと勤しんだのであった。

 

 

「でねー!それで麻弥ちゃんが椅子の下にある隙間に挟まってたんだー!」

「麻弥さんそんな趣味があったのか・・・・」

 

 

彩の話は聞いてて楽しい。思わず気が抜けて顔の筋肉も緩んでしまう。

 

 

「あれ?奏也くんどうしたの?」

「ん?ああ、彩の話は楽しいなと思ってな」

「えー?ほんとー?」

「ああ、なんというか実家のような安心感があるな」

「実家!?あの、奏也くんそれってどういう・・・・」

「彩、急に立ち上がったら・・・・」

 

 

ゴキーン!

 

 

「ぬ゛ごお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛・・・・・・」

 

 

その刹那、彩は近くにあった点滴スタンドにぶつかってしまい、そのまま倒れてきたスタンドが彩の頭にクリティカルヒットしたのであった。

 

 

「アイドルがなんちゅー声出すんじゃ・・・・」

「い゛だい゛・・・・」

 

 

なんというか彩だなあ・・・・・

 

 

「大丈夫か、彩」

 

 

そして俺は彩がぶつけた頭をなでる。

 

 

「うん・・・・ってあれ・・・?」

 

 

大丈夫そうだが彩は何かに気づき、ふと動きが止まる。

 

 

「そ、奏也くん・・・・いま、何をやって・・・・///」

「ん?ああ、痛そうだからちょっとな。痛いの痛いの飛んでけってか?」

「あ、あ、あ・・・・・///」

 

 

すると彩の顔がみるみるうちに赤くなり・・・・わたわたしだした

 

 

「おい、彩落ち着けって!」

「きゃーっ////」

 

 

そして次の瞬間。彩は近くにあったコードに足を引っかけて躓き、俺へ向けてダイブしてきたのだ。

 

 

ドサッ

 

 

「ご、ごめんね・・・・////」

「お、おう」

 

 

ガラガラガラ(迫真

 

 

「ごめんねー!自販機が故障しててちょっと遠くの自販機までいってたよ・・・・・って」

 

 

その刹那、お茶を抱えた日菜が戻ってきてたのだ。

 

 

「違うぞ、日菜。これはな、いわゆる事故という奴だ。うむ、そうだ事故だぞ」

「日菜ちゃん!?!?!?!?違うの!!!!!」

「・・・・・ごゆっくりー」

 

 

ガラガラガラ・・・・

ニヤニヤした顔で冷静にドアを閉める日菜。

 

 

「日菜ー!」

「日菜ちゃあん!まってぇー!」

「っておい彩!急に立ち上がったらさっきの二の舞いに・・・・」

「きゃあっ」

 

 

ゴキーン!

 

 

「ぬ゛ごお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛・・・・・・」

 

 

再び点滴スタンドで頭を打った彩はアイドルにあるまじき声を上げながらふらつき、そして立ち上がり・・・・

 

 

「きゃあ!」

 

 

そして再びコードに躓き、俺へと飛び込んできたのであった。

 

 

「んごおおおおおおお・・・・」

 

 

しかし、彩はあろうことか俺の傷口の部分に降ってきて・・・

 

 

「ぬ゛ごお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛・・・・・・」

「んごおおおおおおお・・・・」

 

 

俺は腹の痛みで、彩は頭の痛みで二人してベッドの上でうめき声をあげながらうずくまるという、なんとも不思議な光景が繰り広げられたのであった。

 

 

ちなみに俺は傷口が開くということもなく、彩も特にケガをしたわけではないからまあよかった。

その後、彩から死ぬほど謝られた。

 

 

 

 

「さて、これからのことを話そうか」

 

 

それから数日、俺や幼馴染たち、そして蘭と弦巻さんは俺の病室に勢ぞろいして、今後荒神たちをどう攻めるかの話し合いが行われた。

 

それは荒神との決着が着実に近づいていることを感じさせるのであった。

 

 

 

 




うーん、1週間かかってしまいましたね。。
話のアイデアが降ってこないのと仕事が死ぬほど忙しいのが原因ではあります。
ちょっと遅めになるかもしれないのでよろしくお願いいたします!

次回、再びうごきだします!
引き続きよろしくお願いいたします!


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第12話 栄光なる勝利

「荒神琢磨を通り魔として告発する証拠まではあるが・・・・」

 

 

時は今後の対策会議。

荒神琢磨を通り魔事件の犯人として告発する。これが当初の目的であったが今は事情は違う。奴の犯行は身勝手な理由の他に実の父親である荒神勇馬による殺害依頼も含まれている。

つまり糾弾すべきは琢磨だけでなく勇馬の方もなのだ。このまま琢磨だけを世間で吊るし上げても勇馬は依願退職をして国民の血税から捻出されるものすごい額の退職金を貰い、形だけ責任をとることで終わってしまうだろう。もしくは警視監の地位を利用し、事件自体を握りつぶすかもしれない。

 

 

「奴も殺人教唆でしょっ引かなければ意味がないですね。それをやるには現場の警官でも動かざるを得ないような強い証拠をつかむしかないわけですが・・・」

 

 

「うむ、奏也君の言う通りだ。それをどう掴むかだが・・・」

「それはそうと琢磨さんの方はいまどうしているのです?」

 

 

紗夜が疑問の声を上げ、それに対して蘭が返答をする。

 

 

「琢磨の方は私の方でも調べていますけど・・・・奏也が雲隠れしているのと一緒で向こうも隠れて治療を受けているようですね。一応警察にも協力者がいますので調べてもらっているところです」

「なるほどねー、確かに琢磨をひっ捕らえて吐かせて言質とるのが一番早いもんねー」

「さすが日菜は察しがいいな」

「でもさ・・・・そう悠長なことを言ってられないんじゃないかな」

「美咲?どういうことかしら?」

 

 

次なる発言は美咲とこころ。そう、美咲の言う通りなのだ。

 

 

「あのね、向こうも奏也の正体を知ってて今頃血眼になって探しているわけだよね?そうすると人員が多い向こうの方が有利。見つかったら今度こそ奏也が消されるだけじゃなく、私たちの存在まで露見する恐れがある。そしたら私たちも日の当たる場所を歩けなくなるってことだよ」

「さすが花園さんは察しがいいね。うん、そういうこと」

「となると琢磨を見つけてから動くなんて悠長なことは言ってられないわけか・・・・」

 

 

うーん、頭が痛くなる。

 

 

「弦巻さん。今んとこ俺の正体しかばれてないですよね?」

「ああ」

「じゃあ俺が行くしかないっすねー」

「奏也!?バカなこといわないで!お父様、もう一回いけだなんて言わないわよね!?」

「・・・・・・」

「お父様!?」

「こころ、それにみんな聞いてくれ」

 

 

興奮するこころをなだめ、みんなに向き直る。

 

 

「俺はここまでやられてよ・・・コソコソ逃げ回って空気を読むほどできた人間じゃねえ。それによ、そうしている間に琢磨は復活してまた犯行を重ねるかもしれない。それじゃダメだろ」

 

 

今、奴は俺しか眼中にない。失敗しても犠牲になるのは俺だけだし、上手くいけば巨悪が一つ消える。

どっちに転んでも弦巻陣営に大きなデメリットはないのだ。

・・・なんてこと言えばみんな絶対に反対してくるだろうから言わねえけどな。

 

 

「向こうが俺を探してるってんなら・・・俺から見つけてもらうまでだ」

 

 

俺は思いついた作戦を話し出した。

 

 

「なるほど・・・しかし奏也、それは一人でやるにはあまりに無謀なのでは?」

「そこは何とかするしかねえよ」

「いいえ!奏也!今度こそ一人で抱えるのはなしよ!」

 

 

こころが割り込み、強くそう言う。

しばらく説得を試みるが全く聞く様子がない。

考えてみればこころも、他の奴らも師匠を。さらに美咲は祖父を殺されているのだ。

確かに逆の立場で考えると、黙ってみていろと言われたらそうはいかないと思うだろう。

 

 

「・・・・必ず顔は隠すこと。それとヤバいと思ったらすぐに離脱すること。それだけは絶対に守ってくれ」

 

 

そして俺は高らかに宣言する。

 

 

「さぁ、最後の戦いだ。お前らもこのまま黙っているのはすっきりしねえだろ?そんなら全員で思いっきり弾けようじゃねえか」

 

 

 

 

「こんばんはー!荒神警視監殿!あなたが殺し損ねた神剣奏也です!!!!」

「なんだキサマ!?!?!?」

 

 

さて、ものすごくおかしなテンションで俺は今、懐かしき馬のマスクを被り荒神勇馬の前にいる。

あの決起からさらに1週間ほど。

全治数か月はかかるとされていたがm1か月足らずで完治とまではいかないが驚異的な回復力を見せたらしい俺はすぐさま戦線に復帰し、そして荒神勇馬に直接対決を仕掛けていた。

そう、ここは荒神の自宅。俺は今、荒神勇馬の部屋に入ったわけだ。

 

 

「まあ不法侵入っちゃ不法侵入だけどよ・・・てめえがやったことと比べれば軽いわな」

 

 

警視監の家となるとものすごい豪邸だったり、何人もの警備員が寝ずの番で見張りをしているイメージがあるが、実は特別豪邸であるわけでもなく、警備員がそこら中に配備されているわけではない。

監視カメラこそは設置されているが実はそれ、すでに蘭による遠隔操作で全く機能していなかったりする。(いわゆる延々と同じ景色が映っている状態になるというやつだ。もちろん遠隔操作の痕跡を蘭が残すわけがない)

さらに警備はセ●ムだから通報したとしても警備員が来るまで時間がかかる。

さらにさらに荒神勇馬の奥さんは旅行に行っており、今この家には荒神勇馬1人だけというのは確認済みなのだ。

つまり今夜の荒神邸は丸裸。攻めるには絶好の機会であった。

 

 

「てめえが血眼になって俺を探しているだろうからよ、こっちから出向いてやったぜ」

「キサマ・・・」

「琢磨はどこにいる?」

「そんなもの・・・私が言うとでも思ったか?」

「だろうねえ。さて、今日は話し合いに来たぜ」

「話し合いだと・・・・?ふぅ・・・私を直接攻めてくるとは予想外だ。キサマを探すために割いた人員と時間と金を返してほしいくらいだね。それにふざけや格好をしおってからに・・・」

「これ以上使う必要がなくなったと感謝してほしいくらいだがな」

「ふんっ・・・・」カチッ

 

 

鼻で笑うように勇馬は近くにあったスイッチを押した。

しかしだからといって何か起こる様子もなく、勇馬は違和感を顔に浮かべている。

 

 

「おやおや?警備のスイッチが機能してねえみたいだな」

「・・・・何をした」

「さあ?偶然壊れたんじゃねえのか?」

 

 

ま、幼馴染たちがこの敷地内にいて、”偶然”警備システムを妨害する電波を発する機械を持っていただけだ。勇馬に絶対に顔を見せないのを条件に、久々に登場する馬のマスクを被り、外で工作をお願いしてあるってことだ。

 

 

「さて、いい加減話し合いを始めようじゃねえか。さて、俺はこの通りピンピンしてるぜ?」

「しぶとい奴だ。キサマも両親もめんどくさい奴らだったが・・・まさか親子に渡って私に盾突くとは・・・なんの因果だ」

「・・・・なんで父さんと母さんを殺した?」

「あとで殺した兄と一緒だよ。彼らは兄とともに琢磨のことを調べていた。おそらく今キサマが持っている情報もキサマの両親が集め、兄に渡したものだろうな」

「・・・・・!」

「それに・・・今さらそれがどうしたというのだ?キサマの両親は不幸にも連続通り魔に襲われただけ。そして兄もこれまた不幸にも強盗に襲われただけ。私が手引きをした証拠なんてどこにある?」

「やっぱそうくるかよ。コレ、なにかわかるか?」

「・・・・やはり録音していたか」

 

 

俺は電源の入ったボイスレコーダーを懐から取り出す。

 

 

「察しがいい割には冷静じゃねえか。何か秘策でもあんのか?」

「秘策・・・?そんなもの、ない。キサマを黙らせればいいだけの話じゃないか」

「あんたエリートのくせに血の気多いじゃねえか。この親にしてあの子ありってところか」

「あんな出来の悪い失敗作と一緒にしないでもらいたいな。さあ、それを渡せ」

「させるかッ!」

「所詮ガキだな。琢磨はこんなやつに負けたのか?」

 

 

この野郎、つえーじゃねえか・・・!

ま、琢磨ほどじゃない。多分若いころは相当強かったんだろうが、やはり寄る年波には勝てないといった具合だ。

 

 

「伊達に何十年も警官をやってねえな・・・!」

「当たり前だ。お前のような社会の底辺に跋扈する蛆虫とは住んでる世界が違う」

「いってくれるじゃねえか」

「想像してみろ?なんでもできる優秀な兄を持ち、子供の頃から比べられた。そんな中で私は一心不乱に勉強しついにはT京大学の法学部に首席で合格。周りのバカどもがくだらんサークルだの宅飲みだのして女と猿のようにセックスしている間にも私は剣道と柔道で体を鍛えとにかく勉強し・・・そして盾突くものはすべて排除し、息子まで利用し、ついに今の座を手に入れた。この努力ッ!キサマのようなガキにはわからんだろう!」

「そうかよ。大層ご立派な経歴をお持ちのようだが今やっていることはただの人殺し。つまり犯罪者だ。過程がどうであれその事実は揺るがねえし堕ちたら終わりだ」

「クチの減らないガキだな・・・!」

「それだけが取り柄なもんでね」

 

 

それに・・俺は知っている。優秀な妹を持ち劣等感に苛まれつつもしっかりと向き合い、今を手に入れた奴がいるってこともな。

 

 

「だから・・・そんなもんは努力だなんていわねえよ」

「ふんっ!」

「しまっ・・・!」

 

 

バキッ!

 

 

少しの油断。それがこの結果を生んでしまった。

ボイスレコーダーは奴に弾き飛ばされ、そしてそのまま踏まれて大破したのだ。

 

 

「ふふ、ふはははは!これで証拠は消え去った!しかし貴様らが握っている証拠はゆるぎないしどうせ仲間がいるのだろう?琢磨はもうダメか・・・まあ奴はもうこの日本にいないし私が形だけ責任をとって終わることにするか・・・ガキのくせに大した奴だ。私と痛み分けをするとは。正直ハラワタが煮えくり返る思いだがここは冷静に、最善の一手をとることにしよう」

「・・・ちょっと待て、今何と言った?琢磨がもういない・・・?」

「こんなこともあろうかとすでに海外に逃がしてある。ケガの治療も必要だしなあ・・・」

 

 

なんてこった・・・もう1つの標的である琢磨は・・・もういないだと・・・?

 

 

「ふんっ。そんなものもう関係ないどうせお前はここで死ぬんだからな。琢磨ではなく私が直々に粛清してやろう」

「・・・・・・フフ、フフフフフフフ」

「な、なにがおかしい!?」

「なあ警視監殿。窓の外、見てみろよ」

「なに・・・?」

 

 

そう・・・そこには・・・スマートホンが1台、録画モードで顔を出していた。

 

 

「キサマアアアアアアア!ボイスレコーダーは囮だったのかあああああ!」

「今頃気が付いてもおせえよ。んじゃ、俺はあれをマスコミと警察に売り込み行くからよ、じゃあな!」

 

そう、ここまではすべて作戦通り。奴に苦戦するフリをするのも、ボイスレコーダーを破壊されるのも。

俺はそのままの勢いで俺は窓に向かって飛び出し、そのままぶち破って逃走を開始した。

 

 

「ま、待たんかキサマアアアアアア!!!」

 

 

その声を後ろに、俺は外でスマホを使い録画していた日菜と妨害電波を出していた紗夜を伴い、逃走を開始した。

 

 

「奏也!コレ!」

「ああ、サンキュ!」

「よし、走るぞ!」

 

 

 

 

俺はある広場へ来ていた。

人はおらず、街灯も少ないため夜はまず人が寄り付かない。

そこに俺、紗夜、日菜、そして合流したおたえ、美咲、こころで奴が追い付いてくるのを待った。

 

 

「よう、遅かったな。警視監殿でも歳には勝てねえか」

 

 

ようやく表れた奴の手には刀が握られていた。

 

 

「キ、キサマ・・・どこまで私をコケにするつもりだ・・・」

「あなたが荒神警視監ですか。なんというか生理的に無理なご尊顔ですね」

「お、おんな・・・?そうか、キサマの仲間か・・・・!」

「その通りよ!さて、あなたももう終わりね!」

「この人すごーい!雰囲気でお腹の中がまっ黒ってわかるよ!」

「確かに。おまわりさんのはずなのに悪いオーラしか出てない」

「まあキャリアだから現場の苦労も知らなさそうだしねー・・・・」

 

 

みんな好き放題いうなあオイ。しかし一見冷静に見えるが幼馴染軍団も怒りのオーラが隠せてない。

さらにそれを聞いて勇馬も青筋を浮かび上がらせ見るからに怒っている。

なんだこのアングリーゾーンは・・・

 

 

「どうどう、そんなブチ切れちゃ血圧上がるぜ?心臓に悪いから落ち着きな」

「誰のせいだと思っておる!」

 

 

うん、ごもっとも。

 

 

「さてと。決着をつけようじゃねえか。さすがの警視監殿でも1VS5は厳しいんじゃねえか?」

「・・・・馬鹿め。ジジイだと思って舐めていると痛い目を見るぞ。この荒神勇馬、ガキと女ごとき何人束になっても負けんわ!」

「おいおい、それ・・・フラグだぜ?無理すんなよ。まずは俺一人で相手してやろうか?」

「黙れ!よかろう・・・まとめてかかってこい!」

「みんな、聞いたよな。一斉に行っていいってよ?」

 

 

俺はみんなの方を向き(マスクで見えないが)クッソ汚いしたり顔をした。

 

 

「わわっ!マスクしてるのにすんごい悪い顔をしてるのがわかるよ!」

 

 

日菜は察したようだ。

 

 

「じゃあ、行こうか!」

「「「「「先生の(おじいちゃんの)仇!」」」」」

「こんガキどもめええええええ!」

 

 

 

 

「グオォォォォォォォォォォ・・・・・」

 

 

勝負は一瞬だった。

奴の刀を使った先制攻撃。俺が無刀取りをしたあと容赦のない一撃を入れ、ふらついたところにこころが第2撃。

続いて紗夜&日菜&おたえがギターのような何かで連続攻撃を加え、ラストに美咲が本気でどついた。

その結果奴は地面にうずくまって蠢いている。

意識を失わないだけ大したもんだぜ。

 

 

prrrr

 

 

「おっと・・・もしもし?」

『奏也?そろそろだよ』

「ああ分かった」ピッ

 

 

電話の主は蘭だ。そう、蘭に頼んでおいたあることの発動がもう間もなくということなのだ。

 

 

「さて警視監殿。俺たちはそろそろいくぜ。ああそうだ。そんなにこの動画が欲しいなら・・・くれてやるよ」

 

 

俺はうずくまって動けないやつから少し離れたところに、リピート再生モードにしたスマホを最大音量にし置き、そしてそのまま全員で立ち去ったのであった。

 

 

 

 

「ぐおおおおお・・・」

「動くなっ!!!!」

 

 

奏也達が立ち去ってちょっとしたあと、荒神勇馬に向けて放たれたその声。

 

 

「なんだキサマら・・・・!」

 

 

勇馬が顔を上げると、そこには10数人の警官が拳銃を向け、勇馬を取り囲んでいた。さらに、勇馬は気づいていないが、後方にはマスコミと思しきカメラを持った人間が複数存在する。

 

そう、これは蘭が「広場に日本刀を持った不審な男がいる。かなり興奮しているようだ」と通報。その後警察無線を盗聴し、現場に来る時間を監視して奏也達を退却させたというわけだ。

 

そしてマスコミ。マスコミには独自の情報網を用い、「通り魔事件の犯人が広場に追い詰められている、これから逮捕劇があるようだ」と情報を流す。

すると特ダネに飢えているマスコミ各社はこぞって取材班を派遣したのだ。

 

 

「動くな!刀を捨てろ!」

「ふんっ!キサマらのようなクズ警官に指図されるとは・・・・!」

「なにっ・・・・?あ、あなたは!荒神警視監殿!」

 

 

警官の一人が荒神勇馬に気づいたようだが時はすでに遅し。

 

 

「ん?これはなんだ?動画か?」

 

 

そして奏也達が残した動画の存在に気付いたマスコミはその動画をカメラに収める。

ちなみにこれはすべて生放送だ。故に警視監が刀を持って広場にいたことも、奏也が残した動画の内容もすべて生中継。

 

 

「おいスクープだ!通り魔は警視監の息子!しかも警視監が殺人教唆を・・・・!」

「お、おのれえええええええええええええええええええええええええ!」

 

 

こうして、どうやっても事件をもみ消せない状況を作った奏也達。

しかも生放送のカメラを通しその模様は全国ネットで放送されてしまった。

深夜にもかかわらず、瞬く間に番組のキャプチャがツイッターで拡散され、警察には問い合わせが殺到したのである。

 

 

そして翌日。

荒神勇馬の殺人容疑での逮捕。

さらに荒神琢磨の全国指名手配。

そして、それらを告知する警察による緊急記者会見が開かれたのであった。

 

 

その知らせは神剣奏也一同の・・・勝利を表すものであった。

 

 

 

 

 

 




またまた日があいて申し訳ありません!
そういえばパスパレ2章・・・素晴らしいですね。
これに関する話も書きたいなあと思う今日この頃。

さて、物語が一区切りつきましたね!
次回かその次あたりで最終回になりそうな予感。
よろしければ最後までお付き合いくださいませ。

引き続きよろしくお願いいたします!

★評価のお礼

里見@元エレメンタルさん ★10ありがとうございます!
一二三之七氏さん ★2ありがとうございます!
あんさんぐさん ★0ありがとうございます!


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第13話 いろんな意味での決着

「皆さん、ご卒業おめでとうございます」

 

 

さて、荒神勇馬が逮捕されからすでに1年が経過していた。

逮捕された荒神元警視監は完全黙秘の構えを貫いているらしい。この様子だと裁判はかなり長期化しそうである。

そのおかげというのも変だが、確固たる証拠がないため俺は身柄を拘束されることもなく過ごせている。

また、海外に逃げたという琢磨は逃げた国は判明したらしいが未だ捕まっていない。これは弦巻さんと蘭の方に調べてもらっている。

 

さて、そんな俺が今出席しているのは高校の卒業式。

もちろん、俺は卒業生だ。このエリアの高校は卒業式の日程をすべて合わせる慣例になっているため、幼馴染からは紗夜、日菜が。そしてリサ、彩も今日で高校卒業だ。

 

 

「ではあるからして、卒業生の皆さんはわが校のを卒業したという誇りを胸にこれからの・・・」

 

 

瞼が重くなるような話を校長が話している。俺はそんな校長の話などには全く耳を傾けず、もうすぐやってくる俺の出番のことを考えていた。

 

 

「答辞・卒業生代表、神剣奏也」

「はい」

 

 

うちの高校は成績で答辞を述べるものが決定されるシステムだ。

とまあ俺が卒業生代表に選ばれてしまうってんだから、本当に学力と人間性は関係ないってはっきりわかんだね。

 

 

 

つつがなく答辞を済ませ、卒業式は無事に終了。

そこそこ仲の良かったクラスメイト達としばし歓談をし、そろそろ待ち合わせの時間が近づいてきたので帰ることにした。

このあとはCiRCLEで卒業パーティと称した催しが開かれ、ガールズバンドパーティに参加したバンド全員が集まるのだとか。

ポピパ、Roselia、ハロハピ、パスパレ、Afterglowには世話になったからとオーナーがサービスしてくれるらしいとまりなさんから聞いた。

 

 

「んじゃ、俺はこれで」

 

 

校庭を後にし、俺は歩みを進める。

 

 

「・・・・・」

 

 

しかし後ろには俺をつけてくる気配。しかしこれは危害を加えようとかそういった類のものではないと思うが・・・・

 

 

「誰だ?」

「えっ!?」

 

 

そこにいたのはクラスメイトの女の子だった。

 

 

「なんだ君か・・・どうしたんだ?帰る方向が一緒とか?」

 

 

明らかに後をつけられているのはわかっていたが探る意味も込めてあえてそう聞く。

あとをつけるからには必ず理由があるはずだからな。

 

 

「えっと・・・実は神剣君に伝えたいことがあって・・・・」

 

 

 

 

「ねえ千聖ちゃん、何時までにつけばいいんだっけ?」

「まだ大丈夫よ」

「うーん、楽しみだなー!」

「でも彩ちゃん、また泣いちゃうんじゃない?」

「な、泣かないもん!」

 

 

今日は卒業式。私たちは今日、高校を卒業した。

そしてこのあとはCiRCLEで5バンドが集まって卒業パーティが開かれるのです。

そこへ千聖ちゃんと私は向かっていました。

 

 

「あれ?あれは奏也君じゃないかしら?」

「えっ!?あ、ほんとだおーい奏也く・・・」

「待って、誰かと一緒にいるわ」

 

 

千聖ちゃんの言う通り、そこには見知らぬ女の子がいた。

なんだかかわいい子・・・奏也くんと同じ学校の人かな・・・?

 

 

「あの雰囲気・・・・」

「う、うん」

 

 

その女の子は少しうつむき、顔を紅潮させモジモジしている。

間違いない、この雰囲気は・・・

 

 

「告白ね。彩ちゃん、いくわよ」

「えっ!?」

 

 

千聖ちゃんはギリギリ声が聞こえて、向こうから見えない位置に移動した。

 

 

「ここからなら聞こえるわ」

「ち、千聖ちゃん・・・盗み聞きしちゃ悪いよお~」

「何を言っているの?ライバルの動向よ?勝つためにはあらゆるチャンスを生かさないといけなのよ?」

「ち、千聖ちゃんが怖い・・・」

「ほら、話が始まるわ」

 

 

『神剣君、ごめんね。帰るところだったのに』

『いや、いいよ。それで、話って何?』

『えっと・・・その・・・神剣君・・・ずっと好きでした!』

 

 

「いったァ!」

「えっ!?ち、千聖ちゃん!?」

「はっ!?コホン・・・失礼、少し興奮してしまったわ」

「少しじゃないような・・・・」

 

『・・・・・ごめん、気持ちは嬉しいけど応えられそうにない』

『・・・ッ・・・理由を聞いてもいいかな・・・?』

『失礼な物言いになるけど、俺は君のことをよく知らないし、それに・・・』

『海外へ行くから・・・かな?』

 

 

「えっ!?」

「海外!?彩ちゃん、奏也君から何か聞いてる!?」

「き、きいてないよ!?」

 

 

『でも、誰かと付き合ってるとかじゃないんだよね?私、遠距離でもいいよ・・・?』

 

 

「攻めるわね・・・・」

「うん・・・・」

 

 

私たちはその様子を見ながらもさっきの一言、海外に行くということが頭から抜けず若干上の空になっていた。

 

 

『・・・・俺はやるべきことがあるんだ。具体的にはいえないけど。何年かかるかわからないし、それまで恋愛とかそういうのは考えられないと思う。だからごめん』

『・・・そっか。わかったよ。話、聞いてくれてありがとね』

『ああ。それじゃあ』

『うん。じゃあね』

 

 

その女の子は目に涙をうっすらと浮かべながらその場を立ち去った。

そして奏也くんはそのままCiRCLEに向かい、私達もそのまま後を追ったのでした。

 

 

 

 

「ではRoseliaから友希那ちゃん、リサちゃん、燐子ちゃん、紗夜ちゃん。パスパレから千聖ちゃん、彩ちゃん、日菜ちゃん、麻弥ちゃん。ハロハピからは花音ちゃん、薫ちゃん。みんなの卒業を祝ってカンパーイ!」

 

 

「かんぱーい!」

 

 

まりなさんによる乾杯の音頭がとられた後、各々雑談が始まる。

 

 

「うえーん、あこ以外みんな卒業なんてえー!」

「・・・・そもそもバンドは続けますし宇田川さんは中学生じゃないですか。私たちが大学生、宇田川さんが高校生に上がるだけであまり変わらないのでは?」

「あ、そっか!紗夜さん頭いい!」

 

「あたしたちもそうだよねー!事務所で芸能活動するのは変わらないから高校生じゃなくなったってだけでイヴちゃんとは相変わらずだねー」

「ハイ!これからもよろしくお願いいたします!」

 

「よーし!シャンパン(ノンアル)あけるぞー!」

「おートモちんやる気だ」

 

「あ、有咲のこれもーらい!」

「ちょ、そこにいっぱいあるだろ!?」

「有咲のが欲しかったんだよー」

 

「うわーん!かのちゃんせんぱーい!」

「うう・・・花音さんが卒業してしまうなんて・・・私一人でこころとはぐみを抑えられるかな・・・」

「また集まってバンドはやるわけだし・・・美咲ちゃん頑張ってね?」

 

 

各々自由に会話を楽しんでいるようだ。その様子を見るだけで楽しい。

 

 

「ねえ、奏也君。少しいいかしら?」

「ん?ああ、千聖さん。どうした?」

「・・・・海外に行くというのは本当かしら?」

 

 

その一言に会場の会話が止まった。

 

 

「・・・・どこでそれを?」

「ごめんなさい。実はさっき・・・・」

 

 

千聖さんは俺がクラスメイトの子に告白されているのを聞いていたようだ。

うーむ、気づかなかった。俺もまだまだか・・・

 

 

「・・・まりなさん、少しマイクをお借りしてもいいですか?」

「え、ええ」

 

 

まりなさんからマイクへ向けられ、ステージの上に上がる。

そして注目が集まる中、俺は話を始めたのだ。

 

 

「あー・・・みんなにいうのが遅れて申し訳ないんですけど・・・俺は海外の大学に行くことになってます」

 

 

”えーっ!?”

 

 

みんな一斉に驚きの声を上げる。

その中でも幼馴染たち、彩、香澄ちゃん、リサは特段ものすごい驚いた顔をしていた。

 

 

 

 

みんなに別れの挨拶をし、質問攻めにあったあと、パーティは終わった。

しかしそのあと、何人かに呼び出されてしまった。

まずは彩、香澄、リサだ。

 

 

「奏也くん・・・海外ってやっぱ本当なんだね・・・・?」

「ああ。いうのが遅れてすまなった」

「そんな・・・もっと奏也せんぱいと一緒に・・・いたいです」

「・・・・ごめんね」

「どうして・・・どうして海外なの奏也?」

「・・・・やらねばならないことがあるんだ」

「外国へ行ってまでやらなきゃいけないことってなんなの・・・・?」

 

 

リサは涙目になってきいてくる。彩も香澄ちゃんも同じで、気になって仕方ないという顔をしていた。

 

 

「それは・・・いえない。でも、俺がやらなきゃいけないことなんだ。何年かかるかもわからない。卒業しても日本に帰ってくるかもわからない。それでも・・・」

「奏也がやらなきゃいけないことなんだね・・・?」

「そうだ」

 

 

力強い目で3人の目を見る。

 

 

「・・・奏也くん。少しだけ少しだけ3人で話をさせてもらえないかな」

「・・・わかった。じゃあ部屋の外にいるから。10分くらいで戻ってくる」

「彩?(彩先輩?)」

「リサちゃん、香澄ちゃん。ちょっといいかな?」

 

 

そして俺は部屋を出て・・・そこで幼馴染たちに捕まったのであった。

 

 

 

 

「どういうことなの奏也!?」

「そうです!一から説明しなさい!」

「・・・・・奏也?」

「さすがにこれは寝耳に水だよ奏也君」

「そうよ!なにを考えているか白状しなさい!」

「聖徳太子じゃねえんだから同時にしゃべらんでくれ・・・」

 

 

出会った刹那、追及の嵐が始まった。

 

 

「お前らにもいうのが遅れて悪かった」

「それで、奏也はいつからいくのですか?」

「・・・・1週間後」

「「「「「一週間!?」」」」」」

「・・・すまん」

 

 

とりあえず謝っておく。まあ言うのが遅れてしまったのはマジで申し訳ないからな。

 

 

「とりあえず理由を聞かせてくれるかな?奏也が理由もなく海外いくなんて思えないもん」

「・・・・私はなんとなくわかった気がする」

「美咲!?それは本当かしら!?」

 

 

驚いた。美咲は見当がついているようだ。

 

 

「・・・・琢磨さんでしょ?」

「・・・ご名答だ」

 

 

その言葉を聞いた瞬間、みんななんとなく察した顔をした。

そう、荒神琢磨。1年前に海外に逃げそのまま行方をくらましている凶悪な殺人鬼。俺が進学先に選び、これから生活するであろう国は琢磨が逃げ込み、生活している国なのだ。

 

 

「琢磨を逃がしたのは俺の責任だし、アイツだけは俺の手で止めなきゃなんねえ。たとえ何年かかっても・・・・これだけは俺がやらねばならんことなんだ」

「・・・向こうに行ってどう探すつもりですか?」

「弦巻さんのツテでそういう情報が入ってくる機関でバイトしつつ鍛えてもらうことになっている」

「また、お父様が絡んでいるのね・・・」

 

 

こころが複雑そうな顔をしている。

 

 

「こころ、そんな顔するんじゃねえよ。弦巻さんに頼んだのは俺だし、提案したのも俺からだ。それに・・・俺はもともとしばらく日本を離れたほうがいいんだ」

「どういうことかしら?」

「今は荒神勇馬が黙秘を貫いているから俺が捕まることがないが・・・実は監視はずっとついている。このままじゃ悪党狩りなんてできないし、ちょっとでも動けば、それにこじつけて俺を拘束する可能性もある。どちらにせよ、ほとぼりが冷めるまで離れたほうがよかったんだ」

「そうだったのね・・・・」

 

 

そして俺は改めて言う。

 

 

「だから・・・その間。こっちのことはお前たちに任せたい。いつか俺が帰ってくるその日まで、この町の悪党を狩ってほしい。これはお前らにしか頼めないことなんだ」

「・・・・ふう。そう言っているけど、どう思うかしら?日菜」

「そうだね、おねーちゃん。奏也のこの顔みたらね、こころちゃん」

「そうね!ここまで言われたら仕方ないわね!美咲もそう思うでしょ?」

「うん。私たちは私たちでやれることをやる。花園さんもかな?」

「もちろん。奏也がそう決めたなら私たちはそうするだけだよ」

「お前たちならそう言ってくれると思ったよ」

「あ、でもさ。奏也」

 

 

最後に日菜が言った。

 

 

「彩ちゃんたち。ここだけはちゃんと決着つけていきなよ?」

 

 

 

 

幼馴染たちとの話が終わったところでちょうど10分。俺は彩たちのいる部屋に向かった。

 

 

「待たせたな」

「ううん。いいの」

「うん、そうだね」

「ちょうど話がまとまったところなので」

 

 

そして3人は俺の目をまっすぐ見て、そして口を開いた。

 

 

「私(アタシ)たち・・・・奏也(くん・せんぱい)のことが・・・・」

 

 

「「「好きです」」」

 

 

3人の少女はとても真剣な眼差しで、確かにそう言い放った。

 

 

「でもね。わかってる」

「だから私たち、決めたんだ」

「これを私たちなりのケジメにして・・・それでね・・・奏也せんぱい・・・」

「こ、こら香澄・・・泣かないって約束した・・・じゃん」

「そう言ってるリサちゃんも泣いてるよぉ・・・・」

「あ、彩こそ・・・・」

 

 

またしても3人の女の子を泣かせてしまった。俺はなんてクソ野郎なんだ・・・

しかし3人が言ってくれた言葉。

 

 

”好きです”

 

 

なんて温かい言葉なんだろう。さっきもクラスメイトから同じ言葉を言われたが明らかに違う感覚だ。

そっか・・・俺が鈍感鈍感いじられてたのはこういうことだったのか・・・・

 

 

「まずは返事、かな。初めに・・・ごめん。俺はみんなの想いに応えられそうもない」

 

 

変に期待させてはいけないと思い、結論からしっかり述べるところからスタートする。

 

 

「正直、みんなに好きって言われてすげー嬉しい。とにかくうれしいんだ。でも・・・今の俺には・・・」

「うん、わかってる。さっきの奏也の顔を見たら。今はやることがあるんでしょ?」

「・・・そうだ。それが何年かかっていつ帰ってくるのかも皆目見当がつかない」

「だからさっき3人で話したの」

「これをケジメにして一旦リセットしようって。それで・・・・いつか奏也せんぱいが帰ってきたら。また想いを伝えようって」

「いいのか?もしかしたら帰ってこないかもしれない。向こうに家族を設けて永住するかもしれない。みんなにも好きな人が別にできるかもしれない」

 

 

正論になってしまうが俺はいう。不確定要素の多い俺なんかのためにみんなの人生に影響を与えてならないとおもったからだ。

 

 

「その時はその時だよ」

「うん、それにね・・・今のこの想い。今の私たちはこの想いしか知らないから」

「せめて、今はこの想いを大事にできるように。そうしようって考えたんです」

「・・・そうか」

 

「だから!この話はこれでおしまい!最後に・・・私奏也を好きになって本当に良かったと思う!ありがとね☆」

「私も!奏也くんがいなかったら今頃こうやってアイドル続けられていたかもわからない。本当に好きになってよかった。ありがとね!」

「私も助けてもらってばかりで・・・守ってもらってばかりで・・・それでも一緒にいてくれて・・・ありがとうございました!」

 

 

「ああ。俺も君たちに出会えて本当によかった。またいつか・・・会おうな」

 

 

話が終わり、俺はその部屋をあとにした。最後まで気丈に振る舞う彼女たちの姿はとてもまぶしく、俺なんかを好きになってくれたことに感謝しつつ、そして応えられなかったことに謝りつつ俺は帰路についたのであった。




なんというか消化パートって感じでしたね。

次回、本当に最終回です!

番外・・・続編・・・この辺はふんわりとした構想はあるのですがまだ文字に起こせてない感じです。
その気になればやりますのでまずはこちらの最後を見届けてくださるとうれしいです。

では、引き続きよろしくお願いいたします!


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最終話 勧善懲悪BanG Dream!

構想こねこねから早1か月。
最終回です。よろしくお願いいたします。





目まぐるしく過ぎる季節。

あたしの幼馴染、神剣奏也が旅立ってから早くも6年の年月が経った。

まだまだではあるけどあたしたちは悪党狩りを続けていたため、ある程度この町の治安もよくなったといえる。

しかし最近、各々仕事とかでそう頻繁に会えるものではなくなってしまっていた。

 

そしてあたしももう24歳。

パスパレはベテランとまではいかないけどアイドル業界ではそれなりの地位が出来上がってきた。

 

 

「奏也・・・なにしてんだろ」

 

 

肝心の奏也はというものの、旅立ってから4年が経過したあたりで連絡が取れなくなってしまっていた。

 

 

-2年前-

 

 

「え・・・?連絡が取れなくなるの?」

「ああ。どうもこれから行くところは普通の携帯とかじゃ電波が入んねえらしい。琢磨の野郎・・・めんどくせえところにいきやがって・・・」

 

 

突然テレビ電話がかかってきたかと思ったらそんなことを言われた。

どうやら大学卒業以後、敵を追って国を移動するらしく、その国は未発達な部分が多いためうまく連絡が取れなくなるらしかった。

 

 

「まあ奏也なら心配ないでしょうが・・・気を付けてくださいね」

「ああ。連絡が取れるようになったら真っ先にお前らに連絡するから」

「なんか奏也、本格的にエージェントって感じ」

「茶化すんじゃねえよおたえ」

「でもやってること完全にソレだよ・・・」

「美咲の言う通りね!一応お父様の会社の所属になるのかしら?」

 

 

奏也は卒業後、そのまま向こうでお世話になっていた会社に就職したらしい。

なんでも扱い上は警備会社だけど実態は民間の軍隊みたいかところだとか。

ただでさえ強い奏也がプロの訓練を行けるんだからヤバイことになってそうだ。

 

 

「まあな。一応弦巻さんとこの社員で、出向でコッチにきてる扱いになるらしい。琢磨を片付けたら日本に戻るさ」

 

 

それが最後に交わした言葉。あれから2年間、一度も連絡はない。

 

 

「でも奏也なら・・・大丈夫だよね」

 

 

そう言ってテレビをつける。

なんか緊急特番になってる。なんだろ?

 

 

『当局によると某国でテログループの日本人リーダーが拘束されたとのことです。拘束されたのは国内で指名手配となっていた荒神琢磨容疑者の模様です。荒神容疑者は国内で連続通り魔事件の・・・・』

 

 

「・・・・・え?」

 

 

『繰り返しお伝えします。当局によると某国でテログループの日本人リーダーが拘束されたとのことです・・・・』

 

 

「ええええええええええ!?」

 

 

そのニュースを見たあたしは久々に、幼馴染みんなで集まることにした。

 

 

 

 

「みんな、久しぶり!」

「しょっちゅう電話をかけてくるせいで日菜とは全然久しぶりって感じがしないわね」

「おねーちゃんは会って話しても相変わらずだ!るんっ♪ってするよ!」

「あなたのソレも相変わらずね」

 

 

やわらかい表情で笑うのおねーちゃんは大学在学中にプロデビューした。

Roseliaはデビュー時から絶大な人気を誇り、若い人を中心に一気にファンを増やした。

ちなみに金曜の夜にやっている音楽報道番組でパスパレとRoseliaで共演したこともある。そんなおねーちゃんたちでもまだまだ頂点には届かないらしい。

 

 

「ホント。みんな変わらない」

 

 

おたえちゃんは今、ライブハウスの店長をやっている。

おたえちゃんは大学在学中はCiRCLEでバイトをしていたんだけど、ちょうど大学卒業のタイミングで事業が好調に好調を重ねたCiRCLEはもう一つライブハウスを作った。オーナーやまりなさんに気に入られていて腕も確かなおたえちゃんは、なんちとバイトからそこの店長に大昇格を果たしたのだ。

 

 

「美咲ー!次の予定はどこだったかしら?」

「あーはいはい。次は小原グループの社長さんと会う予定。ちょっと距離あるよ」

 

 

そしてこころちゃんと美咲ちゃん。

こころちゃんは大学在学中から実家のグループ会社をいくつか任されている。

大学で経営の事しっかり学んだのに加えて元々持っていた型破りな手法でバンバン業績を上げているようだ。

そして、そんなこころちゃんを支えているのは美咲ちゃん。

美咲ちゃんは学生の頃からこころちゃんの仕事を手伝ってて、なんとそのままこころちゃんの秘書になっちゃった。

 

 

「間に合わなかったら自家用ジェットを使えばいいわ!」

「あれ調整とか結構大変なんだから思い付きでいうのやめて!?」

 

 

美咲ちゃん以上にこころちゃんのことをわかってる人はいないってことで大抜擢だったとか。

ここまで上手くいってるのは型破りで前衛的なこころちゃんの手法と細かな調整とすり合わせが得意な美咲ちゃんのバランスがベストマッチしているのかもしれない。

 

 

「それで、今日集まったのは昨日のニュースの件ですね」

 

 

おねーちゃんが本題を切り出す。

ちなみにここは奏也の家だ。奏也の留守中、当番制で定期的にみんなで掃除しているためカギを預かっているんだ。

 

 

「うん、そうだよ。昨日のニュース・・・琢磨さんが拘束されたって。ってことはさ、奏也・・・やり遂げたんだよね?」

「奏也ならやってくれると思ったわ!!こっちに戻ってきたら美咲と一緒に私の手伝いしてくれないかしら?」

「こころ、気が早いよ」

「あら?物事はポジティブに考えなきゃダメよ?そうすれば物事がもっと楽しくなるわ!!」

「ふふっ・・・弦巻さんは相変わらずですね」

「うん。やっぱこのメンバーは安心する。あとは奏也が戻ってくれば完璧」

「あ、そうだ・・・・」

 

あたしはテレビをつけてみてた。

最近はつまらないニュースばかりだったせいもあり、日本の凶悪犯が海外でテロリストになった末拘束されたというニュースはインパクトがある。

昨日からこの話題で盛り上がっていて新情報がどんどん出てきているから、もしかしたら新しい情報が出たんじゃないかと思い、。

 

 

『ただいま入った情報です。荒神容疑者を捕らえるにあたり、25歳の日本人と思われる男性が犠牲になったとのことです・・・・・これにあたり・・・』

 

 

そのニュースを聞いた瞬間。全員の顔に緊張が走るのがわかった。

 

 

「まさか・・・奏也じゃないわよね?」

「まさか・・・違うでしょう」

「まさか・・・ね。奏也がくたばるわけない」

「ちょ、ちょっとお父様に聞いてみるわ。やり遂げたのならお父様に連絡の一本も入っててもおかしくないわ!」

 

 

珍しくこころちゃんが動揺してる。

でも気持ちはわかるあたしも正直気が気でない。

 

 

「どうしましょう・・・?お父様でも連絡が取れないですって・・・・!」

「「「「そんな・・・・!!」」」」」

 

 

それから1週間たっても―

奏也からは連絡もなく、こころちゃんのお父さんにも連絡がないとのことだった

 

 

 

さて、この視点は私が担当しましょう。おっと、これはメタ発言でしたね。

私は今日、奏也の家を掃除する当番なので、こうして奏也の家に一人で来ています。

 

 

「ふう、こんなものですかね」

 

 

掃除を終えて一息をつく。

さて、買っておいたフライドポテトでも食べましょうか。

冷めているので電子レンジを借りましょう。

 

 

「・・・・・・?」

 

 

なんでしょう、この感じ。

 

 

「人の気配・・・?」

 

 

下のLDKから気配がします。

玄関ドアは鍵を閉めておいたはずですし、この家に入れるのは私と合鍵を持っている日菜、弦巻さん、花園さん、奥沢さんだけのはず。

とすると・・・・

 

 

「空き巣・・・でしょうか?」

 

 

それならばこうはしていられません。

 

 

「取り押さえねば」

 

 

私はそのままLDKの方へ向かう。すると冷蔵庫を漁る男の影が・・・確かに見えたのです。

 

 

「動かないで・・・!」

 

 

私は後ろから腕を押さえ拘束し、制圧する。

よし、このまま取り押さえて・・・

 

 

「それはこっちのセリフだぜ盗人野郎・・・人が留守している間によ・・・・」

「なんですって・・・!?」

 

 

刹那、相手に1本で一転攻勢をされてしまい、逆に私が床に組み伏せられてしまいました。

 

 

「あぐっ・・・・!離しなさい!」

「喋るな。質問への回答以外、発言は許さん・・・・ってあれ?」

「え・・・?」

 

 

何かがおかしい。その違和感の正体を探るとそれは聞き覚えのある声であることに気が付きました。

 

 

「って紗夜・・・・?」

「まさか・・・まさか!」

 

 

鍛え上げられた体、片腕一本で私を制圧する腕力。

これは・・・・まさかまさか・・・・?

 

 

「奏也・・・?」

「・・・マジかよ」

 

 

ここで私は・・・6年間離れ離れになっていた幼馴染である神剣奏也に再会したのでした。

風貌が荒々しくなっており、それは向こうでの過酷な訓練・生活をうかがわせました。

 

 

 

 

「散々心配させておいてひょっこり帰ってくるなんてどういう了見なんですか!!」

「なんで俺怒られてるの!?!?!?!?」

 

俺が行ってた国は携帯を使えないため、長時間使用しなかったことによりバッテリーがダメになり壊れてしまっていた。

話を聞くところによるとそれで直接連絡が取れなかったため、結構心配させてしまたらしい。

どうやら向こうでの俺の上司が、後処理が終わったあとに俺が帰国すること弦巻さんに連絡するはずだったのをすっかり忘れていたらしい。

さらに間が悪いことに俺と同じ年齢の日本人が犠牲になったというニュース(実際は日本人ではなかった)が流れてしまい、俺が死んだんじゃないかと騒いでいたというオチ・・・というわけだ。

 

 

「まあそれに関しては悪かった・・・っていうか完全に上司のせいなんだよなあ」

「まあいいでしょう。奏也・・・まずはこれを言っておきます」

 

 

紗夜は柔和な笑みを浮かべながらゆっくりといった。

 

 

「おかえりなさい」

「ああ、ただいま」

 

 

うん、日本に帰ってきた。そんな感じがする。

 

 

「あ、フライドポテト食べますか?」

「紗夜は相変わらずだなあ」

 

 

そんな雰囲気のまま、フライドポテトを電子レンジであっためて紗夜はそういったのだ。

 

 

 

 

「奏也ー!」

「こころ!感動の再会に見せかけてタックルしてくるのはやめろ!」

「あら、いいじゃない。今のあなたは私くらいじゃビクともしないでしょ?娘に久々にあった父親って考えれば楽しくなるわ!」

「誰が親父じゃ!まだ25歳じゃい!」

「こころ・・・九州出張から無睡でとんぼ返りしてよく元気残ってるね・・・」

「美咲の体力がなさすぎなのよ!」

「こころの無尽蔵なパワーと一緒にしないで!?」

 

 

こころは相変わらずだ。これで会社をいくつか任されててそれが急成長してるんだってから驚きだ。

そして美咲も苦労が絶えないだろうなあこれじあ・・・

 

 

「でも奏也アレだねー。最初は誰!?って思うくらいだったけど、喋ったらいつもの奏也!ってかんじだ♪あ、でも彩ちゃんあたりがみたら気絶しそう(笑)」

「彩か・・・元気してるか?」

「うん!彩ちゃんはいつも通りだよ!」

 

 

敵を作りやすいアイドル業界であるが、彩は先輩にも後輩にも慕われているらしい。ただ相変わらずな性格なのでとちるときはとちる。

ツイッターのハッシュダグに #丸山とちった が存在するほどだとか。

 

「そういえばRoseliaはプロになったんだったか?さすがだな」

「いえ、まだまだ頂点には遠いですよ」

「リサは・・・どんな感じだ?」

「今井さんは相変わらずですよ。Roseliaの精神的支柱で彼女がいないとRoseliaは回りません」

「そうか・・・頑張ってるようで嬉しいよ」

「今度ライブに招待するので遊びに来てくださいね」

 

 

あとでRoseliaが出ている動画を見せてもらったが皆相変わらずだ。

ただ、雰囲気はかなり良くなったように思える。

 

 

「さて、いよいよ私の番だね」

「順番待ってたのかおたえ・・・・んで?どうなんだ?」

「うーん、店長としてはぼちぼち。ポピパとしてもぼちぼち」

「どっちもぼちぼちじゃねえか」

 

 

ポピパはプロの誘いもあったらしいが、沙綾ちゃんの実家の問題とおたえのライブハウス就職、他のメンバーがそこまでを望まないということで自ら流したらしい。

ということで今はアマチュア社会人バンドという立ち位置に収まっているとか。

 

 

「香澄も元気してるよ」

「なにも聞いてないんだが・・・」

「でも、気になってたでしょ?」

「おたえにはかなわねえなあ」

 

 

香澄ちゃんはなんと学校の先生になったらしい。

精神的にも成長し、あのキャラを保ちつつバッチリな距離感で生徒とも接するため、保護者にも生徒にも同じ職場の先生にも評判がいいとか。

 

 

「奏也くん、久しぶりだね!」

「弦巻さ・・・社長」

「あら?お父様じゃない!」

 

 

本来であれば俺から出向くところではあるが、連絡したら来てくれるとのことだったので来てもらった。

 

 

「帰国早々で悪いがやってほしい案件がある。これなんだが警察じゃ手が出せないらしくてね・・・」

「なるほど」

 

 

俺は書類を受け通り目を通す。

 

 

「ふむ。このレベルだと俺一人じゃ手に負えますね・・・・」

「やはりそうか。ならば作戦に必要な人員を用意してもらって構わない。とりあえず準備をしてくれ」

「わかりました」

 

 

そういって弦巻さんは出ていく。

 

 

「ねえ奏也?話は聞かせてもらったわよ?」

「こころ・・・・考えてることはわかるけどさ・・・とりあえず休ませて・・・」

「もちろん、やるんだよね?あたしたちも!」

「今さら仲間外れにするのはナシですよ。それにあなたがいない間にも私たちだけでやっていましたからね」

「その通り。久々の勢ぞろいで腕が鳴る」

 

 

みんなはキリッっとした表情(1名除いて)で俺に問いかける。

・・・そうだな。そうだよな。

 

 

「ああ。よし、じゃあ作戦について打ち合わせをしよう」

 

 

 

 

「ぎゃあああああああああああああああああああああ」

「な、なんだお前たちは・・・この力・・・普通じゃねえ!!」

 

 

 

全員そろって俺たちは今日も悪党を狩る。

各々進んだ道は違えども、この町を想うこころは同じだ。

 

 

「おまえら・・・・お前ら何なんだあああああ!?」

「俺たち?俺たちは・・・」

「私(あたし)たちは・・・・」

 

 

そして、高らかに。こう宣言する。

 

 

「通りすがりの悪党狩りだ」

 

 

~Fin~

 




ぬわああああああああああああああん疲れたもおおおおおおおおおん

息抜きに違う話を書きながら構想をこねこねして悩みに悩んだ結末。
いかがだったでしょうか?

実は色々案はあったんですね・・・
奏也は遠くで頑張ってる・・・帰ってこないままで終わりにするですとか、奏也が敵と相打ちで死亡してしまうパターンですとか・・・
でも結局、それのいいところを織り交ぜた誰も不幸にならないこんな感じに収まりました。


もともとが趣味全開・ニッチな層を狙った話で、ハーメルンのバンドリ小説にはなさげな展開など異色づくしにも関わらずたくさんの方に読んでいただいて嬉しい限りです。

本当は10話くらいで打ち切りにしようかと思っていた時期もありましたが、ここまで続けられたのは皆さまのおかげです。

UA、お気に入り、評価に一喜一憂したり、たくさん感想もいただいたり・・・
とても思い入れの深い作品になりました。

文章も読みづらいところがあったっと思いますが本当にここまでご支援いただけて嬉しいです。


さて以下はお知らせです!

1.後日談を執筆します。

彩、リサ、香澄にそれぞれスポットを当てた後日談・・・いわゆる彩ルート、リサルート、香澄ルートといったところでしょうか。
こちらを気まぐれに書いていこうと思います。
ギャルゲーでいうと今までの本編が共通ルートでこれから個別ルートに入るという感覚ですかね?
需要があるかはわかりませんが、よかったら読んでくださると嬉しいです!


2.別作品もよろしくお願いします!

現在下記の小説を連載しております。

・本作のパラレルワールドで設定が異なる、丸山彩がヒロインとなる”彩のこころ”

・これまた趣味全開で、完結寸前ですが日菜が主人公を務める”偽りの幸せとクズの結末”
実はこの小説、本作と同一世界線という裏設定もあったりします。



と、いうわけで今までありがとうございました!
そして引き続きよろしくお願いいたします!!


★評価のお礼★

将太さん ★10ありがとうございます! 


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戸山香澄個別ルート-澄み渡るキラキラの香り-
第1話 戸山香澄との再会


初めに言っておきます。


とっっっっっても汚いシーンが一部ございます。
次からはないと思うのでお兄さん許してぇ


切らないでください、なんでもしますから!!





「そういえば香澄ちゃんが先生やってる学校ってこの近くなのか?」

「そうだね。でも近くって言っても香澄の実家からは結構離れてるから今は一人暮らしらしいよ。なんで?」

「さすがに日本に帰ってきて挨拶なしはいかんと思ってな」

「なるほどね。確かに会ったほうが香澄も喜ぶかも。ちょっと連絡とってみる」

 

 

おたえと会話する平和な日。

ちなみに今の俺は基本的に会社から仕事の命令が下るまでは必要な訓練・トレーニングにさえ参加すれば自由にやっていいことになっている。

ちなみ仕事の内容であるが、たとえば警察が手出ししづらい悪党の排除やSP的な護衛の仕事など様々だ。まあ一言で言えば裏の仕事だね。

ぶっちゃけ向こうで6年間稼いだ給料は必要な分だけ使ってあとは貯金してたし、もともと持っていた親の遺産とかも投資に回していたら現在進行形で増えまくっているので一生遊んで暮らせるくらいの金はある。

まあ、働かないと人間は腐ってしまうし、何より弦巻さんには恩義もある。

俺が今できることは弦巻さんに恩を返し、この町を守ることだろうと考えた結果が今の現状、というわけだ。

 

 

「香澄、教育実習生が実習を終えるらしくてさ。職場の飲み会があるんだって。その後でよかったら会おうって」

 

 

ちなみに奏也がいることは伝えてないけど、とおたえは続ける。

 

 

「だって、サプライズがあったほうがいいじゃん?」

 

 

そういうおたえの顔はなんだか嬉しそうに感じた。

 

 

 

 

夜。香澄ちゃんから伝えられていた居酒屋がある近くで俺とおたえも軽く飲んでいた。

そういや俺が日本を出たのが18の頃だからおたえと酒を酌み交わすってのもなんだか感慨深い。今度は幼馴染全員を集めて飲もうかな。

 

 

「奏也。ぼちぼちいこっか」

「ああ、そうだな」

 

 

会計を済ませ外へ出る。そして香澄ちゃんが飲み会をやっているという居酒屋付近へと向かったのだ。

するとちょうど居酒屋から出てくる一同。

しかしそこには俺の知っている元気な香澄ちゃんの姿はなかった。

 

 

「本当に大丈夫かい?」

「ダイジョーブッスヨ!戸山センセーは俺たちが駅まで送りますから!」

「そうですよ!任せてください!」

 

 

そこには完全に酔いつぶれていると思われる香澄ちゃん。

そして軽そうな男が2人、香澄ちゃんの肩を抱いている。おそらく教育実習生の大学生だろう。

そして、明日が日曜日だからか他の教員も結構酔っているようだった。

 

 

「おたえ」

「うん、なんとなくわかった」

 

 

俺とおたえは考えていることが一致しているようでアイコンタクトを取り、解散した教員集団から香澄ちゃんの肩を抱いて歩き出す教育実習生のあとをつけた。

向かっている方向は明らかに駅ではない。その先は間違いなくラブホ街の方面だ。

 

 

「早く戸山とヤリたいぜ~。しかしセンコーってバカだよな。戸山のグラスに混ぜ物しても全然気づかねえし。ヤリサーにいるときと変わんねーぜ」

「全くだ。JKや若い女教員を喰う!まさに教育実習の醍醐味だぜ」

「「ガハハハハハハ!!」」

 

 

そんなゲッスい会話をしながらホテル街へ向かうバカども。

 

 

「あいつら・・・」

「どうどう。考えがある。もうちょっと押さえろ」

 

 

そして奴らはラブホに入る。

受付を済ませてエレベーターに乗ろうとしたところで俺たちもカップルを装い、無理矢理同じエレベーターに乗る。

 

 

「チッ・・・空気読めよ」

「はは・・・すみません」

 

 

まあ普通部屋にいくエレベーターで他のカップルにかち合うなんてありえねえからなあ。気まずいし。気持ちはわかるけどこの後のことを考えるとしゃなーない。

 

 

「何階?」

「あ、同じです」

 

 

そして目的の階につき、奴らが部屋のドアを開けた瞬間、俺たちも突入する。

 

 

「なんだおめえら!?」

「とりあえずさ、部屋入れよ」

「「ぐえっ!!」」

 

 

俺は奴らを蹴り飛ばし、部屋に入れる。おたえは香澄ちゃんをキャッチしやつらから遠ざける。これで・・・

 

 

「準備完了だ」

 

 

「いてえなこの野郎!」

「何しやがる!?」

 

 

怒り心頭のお二人さん。そりゃそうか、これからキモチイイことしようとしてたのに邪魔されたんだからな。

 

 

「それで奏也・・・この人たちどうするつもり?」

「まあセックスはさせてやるよ」

「え!?」

「ただし・・・・」

 

 

俺は拳をバキバキと鳴らしながら奴らに近づく。

 

 

「ヤルのはてめーら二人、だけどな」

「あっ・・・(察し)」

 

 

どうやらおたえは察したようだ。

 

 

「多分絶望的に汚いと思うですけど(名推理)それでもいいなら見とけよ見とけよ~」

「そんなもの見せなくていいから(良心)」

「お、そうだな。じゃあ先に外に出てな」

「ん、了解。ほら、香澄大丈夫?」

 

 

おたえはとりあえず香澄の肩を抱きながら外へ出た。

 

 

「ちょっとちょっとちょっと何してくれちゃってんの~?」

「俺たちを怒らせたらどうなると思ってんだ?ああん?」

 

 

ほう・・・そんなことをおっしゃるか

 

 

「別にどうもならんでしょ。さて・・・じゃあ約束通りお前らにもヤらせてやるよ」

 

 

俺は再び拳をバキバキと鳴らし・・・奴らに手を伸ばした。

 

 

 

 

 

「「ぎゃあああああああああああああああああああああ」」

 

 

「うわっ・・・きたねえなあ・・・」

 

 

俺のスマホにクッソ汚い動画が入ってしまった。どんな罰ゲームだこれ。

あ、考えたの俺だった。

ついでにやつらの免許証、学生証の写真を撮るのも忘れない。

 

 

「とりあえずよ~あの子には二度と近づくな。なんかやろうもんならこの動画をネットの海に放流してお前らの大学、家、ここらの学校全部にバラまくから」

「ひぇっ・・・それだけは勘弁を・・・・」

「そんなことされたら生きていけねえ!何なんだよお前・・・!」

「俺か?まあ通りすがりの悪党狩りって感じかねえ。とりあえずいいな?今日のことは忘れろ、そしてあの子に二度と近づくなよ?」

 

 

「「は、はいいいいいいいいいいい」」

「じゃあ俺帰るから。ここの支払いよろしくぅ!」

 

 

絶望的に汚い格好をさせた奴らを背に俺はホテルを出て、外に待機していたおたえと眠っている香澄ちゃんと合流したのだった。

 

 

「終わった?」

「ああ」

 

 

とりあえず俺の家の方が近いため、一旦俺の家に寝かせることにした。

俺の家につくと空いている部屋に布団を敷き、香澄ちゃんを寝かせる。

 

 

「俺が一人でみるわけもいかないからよ、悪いが頼めるか?」

「うん、わかった。あ、お風呂と着替えだけ借りてもいい?」

「好きに使いな」

 

 

とりあえずおたえも明日は休みらしいので、香澄ちゃんを見るために泊まってもらうことにした。

 

 

そして夜は開ける―

 

 

 

 

うー・・・頭がガンガンするぅ・・・

 

昨日の教育実習生の送別会。教育実習生の子の一人にもらったお酒を飲んでから記憶がない・・・・

私ってこんなにお酒弱かったかなあ・・・・

目を開けると見慣れない天井。あれ・・・?昨日どうやって帰ってきたんだっけ・・・?

 

 

とりあえず状況を把握しようと周りを見渡す。

 

 

「え?おたえ?」

 

 

横にはおたえが寝ていた。あれ・・・?確かに昨晩はおたえと約束してたけどこれって飲み会で記憶をなくすまで飲んでおたえと合流したってことなのかな・・・?

外はすっかり明るい。時計を見ると朝の8時を回っていた。

 

 

「・・・・あ、香澄。起きたんだ」

「あ、おはようおたえ!」

 

 

朝の挨拶を交わすと、おたえが話を始める。

昨日、何があったのかを。

 

 

「うそ・・・あの子たちが・・・?」

「うん、香澄、危なかった」

 

 

あの子たちがそんなことをしようとしたんてショックだよ・・・

でもくよくよしててもしょうがないよね。

それに今後はこういうことにならないように気をつけなきゃだ!

 

 

「ありがとうおたえ!おたえがいなかったら私は今頃・・・・・」

「それなんだけどね。直接助けたのは私じゃない」

「え?それってどういう・・・?」

 

 

聞こうとした瞬間、ドアが開いた。

 

 

「お、二人とも起きたか」

「コラ奏也、女の子の部屋をノックもなしに開けない」

「わりぃわりぃ」

 

 

そこに現れたのは―

雰囲気が変わっているけど間違いない。

私がずっと会いたかった、あの人だ。

 

 

「奏也・・・せんぱい?」

 

 

神剣奏也せんぱい。

その人だったんだ。

 

 

「奏也せんぱい!」

 

 

私は興奮のあまり立ち上がろうとした。

が、次の瞬間強烈な頭痛におそわれちゃった・・・・

 

 

「あぅ・・あたまい゛だい゛・・・・・」

「とりあえずおかゆ、作ったから。食べたら薬飲もうか?」

 

 

奏也せんぱいは相変わらず優しい。

でも、これだけは言っておかないと。

 

 

「奏也せんぱい―おかえりなさい!」

「ああ、ただいま。香澄ちゃん」

 

 

こうして私は。奏也せんぱいと再会を果たした。

すっと・・・ずっと待ってた人。

ずっと変わらないこの想い。今度こそ、成就させるんだ!

 




個別ルート第1弾は香澄編です!

ちなみに実際のラブホはこんなセキュリティガバガバじゃないです多分。
演出上のガバガバとお考え下さい。

それでは引き続きよろしくお願いいたします!


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第2話 奏也のあたらしいがっこうせいかつ

モブ見分け表


加藤先生・・・38歳妻子持ち 現代文担当
成瀬先生・・・30歳独身 日本史担当
下田先生・・・26歳独身 体育担当


モブキャラが多くなるのでこんな感じで今後は見分け表みたいなのをアップします。




さて、香澄ちゃんと再会してからであるが特に日常が変化するわけではなかった。

香澄ちゃんもおたえも基本多忙でなかなか会えるもんじゃない。

俺は相変わらず訓練だけ参加し、仕事が来る日を待ってるニートみたいな日々を送っていた。

・・・のだが遂に弦巻さんからお呼びがかかったのだ。

 

 

「神剣です」

「入りたまえ」

 

 

ノックし、応答を確認したのち社長室に入る。すると弦巻さんは開口一番にこういった。

 

 

「奏也君、確か君は教員免許を持っていたね?」

「一応は。多分こっちでも使えると思います」

「そうか、ならば話が早い」

 

 

俺は向こうにいる間、潜入や作戦に必要になりそうなあらゆる資格を取っていた。

その中に教員免許も含まれている。しかも会社の力を使ってとった、対応する国ならどこでも使える特別製だ。日本でも問題なく使えるだろう。

 

 

「実はね、行ってほしいところがある」

 

 

そういって弦巻さん資料を1枚俺に差し出す。

そこには地区内にある高校の名前が書かれていた。

 

 

「三科高等学校・・・・三科!?」

「ああ、そこに臨時教員という形で入ってほしい」

「弦巻さん・・・三科って」

「君の母校だろう?」

 

 

そう、三科高等学校。俺が通っていた母校である。

卒業して6年。まさかこんなところで、しかも仕事でこの名前を見ることになるとは・・・・

 

 

「しかし弦巻さん。ってことはコレ、潜入ですよね?一体ココで何が起きてるんですか・・・?」

 

 

そう、わざわざ俺を呼んで行けというものだ。俺の母校で一体何が起きてるっていうんだ・・・?

 

 

「特段何もないよ」

「なるほど、特段何もない・・・・ということは俺はここで何の工作をってえええええええええ!?」

 

 

弦巻さんが言い放った言葉はあまりに予想外で、思わず変な声で驚嘆してしまったのであった。

 

 

 

 

弦巻さんの指令から1週間ほど。迅速に準備を済ませ、俺はかつて通っていた母校・三科高等学校に来ていた。

どうやら弦巻さんとこの高校の校長は長い付き合いらしい。そして現在、マジで教員不足で知り合いがいれば非常勤でもいいから紹介してくれと頼まれたらい。

そこで教員免許を持っていて今現在手を持て余している、さらに卒業生で学校に詳しい俺に白羽の矢が立ったというわけだった。

 

 

「まあ暇だったしいいか・・・さて、久しぶりに母校の門をくぐろうかね」

 

 

そして俺は母校の門をくぐる。そして総合受付で手続きをし、そのまま職員室に連れていかれたのだった。

 

 

「今日から非常勤で英語を担当します神剣奏也と申します。至らぬ点が多いかと思いますが何卒宜しくお願い致します」

 

 

挨拶は無難でいい。今回は潜入じゃないし別にターゲットがいるわけでもない。目立つ必要も、目立たないようにする必要もない。ごく普通にやればいいだろう。

しかもここが母校といっても知っている先生は卒業後の6年で入れ替わり、俺が在学中にもいた先生もいるがほとんど俺と関わりがなかった人ばかりだ。多分向こうも俺が卒業生だと気づいていないだろう。

 

 

「え!?奏也せんぱい・・・・?」

「うっそ」

 

 

そんなことを考えていた矢先、職員室に響く聞き覚えのある声。

声がする方向を見ると、見覚えのある顔が驚きと喜びに満ちた顔でこちらを見ていたのだ。

そう、目線の先には香澄ちゃんがいたのだった。

 

人の縁とはどうつながるかわかったもんじゃないってのが持論だけどよ・・・

まさかこんなところで香澄ちゃんと縁がつながることになるとは予想だにしていなかったわ。

 

さて、こうして俺と香澄ちゃんは期間限定ではあるが『職場の同僚』というポジションにはまっていったのである。

 

 

 

 

「戸山先生~次は何飲みます!?」

 

 

時は移って飲み会。俺の歓迎会と称された飲み会は前回レイパー実習生の送別会をやった居酒屋と同じだ。

どうやらここが三科高教職員御用達らしい。そして今の状況、主役(のはず)の俺そっちのけで香澄ちゃんが独身男性教員たちに囲まれていた。

 

 

「戸山先生、すごいでしょ」

 

 

その様子をぼんやりと眺めている中、話をかけてきたのは妻帯者らしい中年の加藤先生。

 

 

「神剣先生は戸山先生とは知り合いなんですっけ?」

「高校時代の後輩でして。もとは“友達の友達”だったんですけどね。しかし本当にすごいですね、皆さん」

「彼女、久々の若い女性教員ですから。これを逃すまいとみんな必死なんですよ」

「なるほど」

 

 

飢えてるなあ、男性諸君。

まあ気持ちはわからんではないわ、中には30超えている人もいるし。

つまり何かしら名目をつけて飲み会を行っているが、その実態は香澄ちゃんへのアプローチ大会ってわけか。

男って悲しい生き物だなあ(諸行無常)

聖職者が性触者にならなければいいが。

 

 

「あら加藤先生?独身の30はもうオバサンってことかしら?」

 

 

 

そして会話に割り込む形で現れたのは成瀬先生。

話を聞くに香澄ちゃんが入ってくる前まで最年少の女性教員だったとか。

 

 

「こ、これは成瀬先生・・・ハハッ、参ったな・・・・」

 

 

そんなツッコミ入れられた加藤先生は気まずそうに席を移動し、隣には成瀬先生が座る形になった。

 

 

「神剣先生ってここに来る前は何をされていたんです?」

「ちょっと海外で仕事をしていまして」

「まあ海外!すごい!!」

 

 

その話をした瞬間、成瀬先生のアプローチがもの凄いことになった。

アカン、この人も男に飢えてる。

酒がガボガボ入り、その最中(無理矢理)LI●Eを交換させられたり謎のボディタッチを食らったりと結構すごい目にあった。

まあ成瀬先生もだいぶ出来上がっていたみたいだし海外にいた時の同僚の1919810倍上品な飲み方するしまあいっか・・・・

 

 

ってなわけであっという間に時間は過ぎ。お開きの時間になったのだ。

オリキャラとモブだらけの話が続いたが・・・お待たせしました諸君!!

やっとメインヒロインである香澄ちゃんと絡むよ!(メタ発言)

 

 

 

「戸山先生、今日こそ駅まで送っていきますよ!」

「あはは、大丈夫ですよ!今日からは奏也せんぱ・・・神剣先生が帰る方向一緒ですから!」

 

 

私はいつも通り同僚の下田先生のお誘いを躱す。

それに今日からは奏也せんぱいが一緒。退屈な帰り道がこんなにキラキラする帰り道になるなんて思わなかったよ。

 

 

「そうですか・・・神剣先生。戸山先生とはお知り合いなんですよね?もしかして昔付き合ってたとか・・・?」

 

 

えっ!?何を言い出すの!?

そんなそんな!確かにそれだったら嬉しいけど・・・残念ながらそんな事実はないんだよね。

 

 

「違いますよ。ただの仲のいい先輩、後輩ってだけです。あったのも6年ぶりですしね」

 

 

その言葉に少し心がチクッってする。

奏也せんぱいが社交辞令的な意味で“ただの”先輩・後輩って言ったのは理解できる。

頭ではわかってるけど、体が納得していなかった。

私たちは“ただの”先輩後輩じゃないとおもったから。

 

 

「まあそうですよね。神剣先生、ちょっと・・・・」

 

 

するとその先生は奏也せんぱいを引き寄せ、耳もとで何か言っていたのが見えた。

それを聞いた奏也せんぱいは表情一つ変えず、“わかりましたよ”とだけ呟いた。

 

 

「くれぐれも。では、今日はこれで」

 

 

目が離れた途端、奏也せんぱいがめんどくさそうな顔を一瞬したのを私は見逃さなかった。

なにはともあれ、奏也せんぱいと肩を並べて帰路へとついたのだ。

 

 

「香澄ちゃん、しっかり先生やってるんだね」

「あー!奏也せんぱいまでそんなこというんですかー?有咲とかにもしょっちゅう言われるんですよねー・・・・」

「有咲ちゃんか。懐かしいね、ポピパのみんなは元気にしているかい?」

「うん!みんな元気元気ですよ!有咲は流星堂を継ぎつつネットビジネス?が結構うまくいっているらしいですし、さーやのパン屋さんも大好評っ!って感じで!あ、りみりんだけはお仕事としてベーシストやってるんですよ!」

「なるほどなあ~」

 

 

あー楽しいなあ。

ここ最近ずっと張りつめてたから疲れ気味だったけどこの人とこうやって並んで話すだけですごく安心する。

気を遣う必要もなくて、何を言ってもちゃんと返してくれて、甘えさせてくれる。

帰ってきたんだ。やっと、お帰りっていえた。しかも同じ職場で再会できるだなんていい意味で予想外!って感じ。

 

 

「ところで、奏也せんぱいはなんで三科に?」

「あーそれはねえ」

 

 

奏也せんぱいから理由を聞いた私は少し安心した。

特に特別な事情があるわけでなくて本当にただの助っ人であることが語られたからだ。

昔みたいに危ないことのために来たわけじゃない。

 

 

「と、いうわけでこれからよろしくお願いしますよ?戸山先生!」

「あー?そういうこといいますー?はい、よろしくお願いします、神剣先生!」

 

 

疲れた体に鞭を打ち、笑顔で返答する私であった。

 

 

 

 

 

香澄ちゃんと別れたあと。俺は今日会ったことの脳内復習を始めていた。

 

 

「下田先生とかいったっけ、あの人」

 

 

帰り際に香澄ちゃんに執拗に絡んでいた男性教師。

あの人から帰り際に言われた言葉。

 

 

『俺のこと、応援してくだいさいね?手を出したりしたら・・・許しませんよ?』

 

 

半ば脅しのようなあの言葉。まあ真っ当な手段を用いて真っ当に職場恋愛してくれるなら俺はそれでいいと思う。

しかしなあ、少なからずああいう一面見ちゃうとね。

 

 

「抗いたくなるじゃねえか」

 

 

多分、日菜あたりに見られたら邪悪な笑みと揶揄されるであろう顔をして、俺は職場での立ち回りをどうしようかを検討していた。

それともう一つ、気がかりなことがある。

 

 

「香澄ちゃん、明らかに疲れてるよな」

 

 

そう、香澄ちゃんは俺の知っている香澄ちゃんとは違っていた。

まあ6年もたてば人は変わるし、大人になったといえばそれかもしれないがなんか冷めていたように見えたのだ。

 

 

「この辺も探っていくしかないのかね」

 

 

ここでふと、昔香澄ちゃんが俺のことを好きだと言ってくれたことを思い出した。

あれから6年。あの子はどう思っているんだろうか?まあ考えてところで仕方のないことではある。時の流れに任せ、なるようにしかならないから。

でも、もし香澄ちゃんが何かに困っていて疲れているのだとしたら俺はあの子を助けるために全力を尽くそうと思う。

 

 

さあ、新生活が始まる。いささか性に合わないけどな。

 

 

とまあ、こういう決意をした俺だったのであるが予感というのは当たるものである。

まさか学校での香澄ちゃんがあんな大変な目に遭っていたとは。

この時の俺は予想だにしていなかったのだ。




めちゃくちゃマイペースですが引き続きよろしくお願いいたします!


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第3話 さくらんぼの思い出

大人ってゲス野郎ばっか(偏見)





さて、件の飲み会から2日休みが明けて実質初出勤の今日、俺はあるモノを目にしてしまう。

 

 

「戸山先生!この報告書、間違ってますよ!」

「あれ・・・?出す前には確かに・・・」

「言い訳無用!チヤホヤされていい気になってるんでしょうが仕事は別です!」

「わ、私べつにチヤホヤなんて・・・!」

「おだまりなさい!いいから早く直してくださいね、今日中に!」

「わ、わかりました・・・・」

 

 

こんな感じで成瀬先生が香澄ちゃんにつらく当たってるところであった。

 

 

「ね、酷いでしょう?成瀬先生、戸山先生が赴任してきてからあんな感じで」

「何か理由があるんですか?」

 

 

その様子を見て、隣の席に座る加藤先生は俺に話しかけてきた。せっかくなので疑問を口にしてみることにしたのだ。

 

 

「そりゃあ戸山先生が来るまで成瀬先生が職員室のアイドルでしたからね。それが急に若い子が来て男性職員の目を全部奪っていったんですから。嫉妬でしょう」

「なるほど・・・」

 

 

うーむ、女の嫉妬というのは怖い。特に立場が上の成瀬先生だ。仕事を絡めながら上手いことやっているみたいだ。

しかしこれはよくないな。このことは間違いなく香澄ちゃんの疲れた様子の原因の一端を担っているだろう。もはやパワハラといっても差し支えない。

しかしストレートに香澄ちゃんをかばうと俺のいないところで香澄ちゃんがどんな目に遭うか・・・・

少し手段を講じてみよう。香澄ちゃんには少し我慢してもらうことになるが様子見だな・・・・

 

 

そんなことを考えていると下田先生が香澄ちゃんの方に近寄り、話しかけていた。

俺は耳を澄まし、その会話を聞き取る。

 

 

「戸山先生。成瀬先生、相変わらずひどいですね・・・」

「そんな!私が悪いんです!」

「いえいえ、さすがにあれは目に余りますよ!なんなら少しお手伝いしましょうか?放課後は体育教官室にずっといますので、書類を持ってきていただければ手伝えるところは手伝います」

「えー・・・でも悪いですし・・・」

「そんなことありませんから!ねっ!?」

「わ、わかりました・・・じゃあ・・・・」

 

 

ありゃ。香澄ちゃん、全然乗り気じゃなさそうなのに勢いに押されちゃったなこれは。

うーむ、普通なら同僚の仕事を手伝うほほえましい職場風景なんだが相手があの下田先生だからなあ・・・

しかも体育教官室なんて中でやりたい放題じゃん。

こいつあくせえ、ゲロ以下の臭いがプンプンするぜ!

 

 

「動きますかね」

 

 

俺はひそかにそう呟き、放課後まで仕事をしたのであった。

 

 

 

 

「下田先生っ!失礼します!」

「やあ、戸山先生!」

 

 

私は放課後、書類を持って下田先生の待つ体育教官室にやってきた。

正直乗り気じゃないんだけど職場の人間関係や空気を悪くするのは後々デメリットになるし、なにより下田先生は親切で言ってくれているはず。

無下にするのもなんか申し訳なくて、なし崩しに来てしまいました。

とりあえずその雰囲気を気取られないように元気に体育教官室に入ったわけだ。

 

 

「じゃあ、はじめましょうか!」

 

 

あくまで体裁を崩さず、いつも通りの元気な私でいる。

そしてしばらく仕事を進め、終わりの目処がついたところで休憩にしましょうと下田先生がお茶を淹れてくれた。

 

 

「いやーしかし成瀬先生・・・ちょっと戸山先生にキツすぎないですかね?」

「私が未熟なだけですよ~」

「戸山先生は優しいですね」

 

 

他愛のない話。下田先生の口からは成瀬先生の悪口が多めに出てくる。

確かに成瀬先生にはあまりいい感情をもっていないけど、やっぱ陰口とか悪口はやだな・・・・って思う。

 

 

「そういや戸山先生、神剣先生と知り合いなんでしたっけ」

「あ、はい!高校生の頃お世話になって!ずっと海外行ってたらしいんですけど最近帰ってきて、しかも同じ職場なんてびっくりしました!」

 

 

そこからはじまる奏也せんぱいに関する話。私はついつい楽しくなり、奏也せんぱいがいかにいい人かをいっぱい話した。

そしてその話の途中、急に真剣な表情になった下田先生は私の目を見つめ、離し始めた。

 

 

「戸山先生・・・実は僕・・・戸山先生のことずっと気になってたんです」

「えっ!?」

 

 

突然の告白。

どうしていいかわからずあたふたする。

え、これほんとにどうすればいの!?

 

 

「えっあのっ・・・そのっ・・・」

「好きです、付き合ってください!」

「あのっ・・・ごめんなさい・・・」

 

 

そしてつい出てしまった謝罪の言葉。

私の心は決まっている。だから深く考えることもなく、無意識にこの言葉がでてしまったのだ。

 

 

「あの!私、下田先生のことそういう風にみたことなくて!それにその・・・私、好きな人が・・・」

「神剣先生ですか?」

 

 

奏也せんぱいの名前を出された瞬間、火を噴いたように顔が赤くなるのがわかる。そしてそれと同時に、下田先生の表情が曇るのがわかった。

 

 

「やっぱり・・・・さっきから神剣先生の話をする戸山先生、楽しそうでしたから」

「あの・・・えっとですね・・・・・・っ!?」

 

 

言葉を返そうとした瞬間、突然強烈な眠気が襲ってきた。

頭が揺れ、視界が歪む。そして必死に見開いた目の先には・・・したり顔をした下田先生がいて、そして私の意識はまどろみの中に溶けていった。

 

 

 

 

朝の下田先生と香澄ちゃんのやり取りをみて不信感を覚えた俺は、日中誰もいない時間帯に体育教官室に忍び込み盗聴器を仕掛けていた。

しかし初日ということ仕事が長引き、電源を入れたのが今。最初から会話を聞くことが叶わなかったわけだが・・・・

 

 

「戸山先生!戸山先生ー!ふふふ・・・寝たか。さすが睡眠薬は強力だぜ」

 

 

なんと大変。どうらや加藤の野郎は香澄ちゃんに睡眠薬を盛ったみたいですねえ

睡眠薬を盛るってお前、●獣先輩の専売特許ってそれ一番言われてるから。

 

 

「とりあえずハメ撮りでもしてそれをダシに色々と・・・」

 

 

さらに物騒なことつぶやいてやがる。さて、そろそろいきますかねえ

ガチャッ!

 

 

「どうもー下田先生!ちょっと聞きたいことがあってですねえ!」

 

 

俺は体育教官室のドアを勢いよく開ける。

さて、ドアを開けるとそこには寝息を立てながら可愛い顔で眠る香澄ちゃん。そしてズボンを脱いでパンツ1枚になって、間抜けヅラで香澄ちゃんのブラウスのボタンに手をかけようとしている下田がいた。

 

 

「ありゃ、ストリップ大会中でしたか」

「神剣先生!?なんでここに!?鍵がかかってたはずじゃ・・・」

「カギ?そんなん掛かってたんですかね?力づくでドアノブ回したから気づかなかったです!!!」

「この野郎・・・!」

 

 

怒りに顔を染める下田。そして下半身もエレクトしてビンビンな下田。

これからお楽しみって時に邪魔されて怒る気持ちもわかるけどね。スマンがそれ以上はダメですよ。

 

 

「そんなエレクトした汚ねーもんみせんでくださいよ。それにアンタ今何しようとしてるんです?それ、犯罪ぞ?」

「黙れ!お前がいるせいで俺は・・・」

「あんたの恋が叶わないのと俺がいることに因果関係なんざねーよ。それにこういうことするビチグソ野郎が何偉そうなこと言ってるんですかって感じですよ」

「てめえ・・・先輩にナメた口ききやがって」

「うわ!さすがにここで先輩だの後輩だの持ち出してくるのは予想外だったなあ・・・まあでも、見ちゃったもんは見過ごせないな」

 

 

まあ盗聴してたからきたんだけどね。

 

 

「俺をナメるなよ・・・俺を誰だと思っている?」

「うーん・・・誰っていわれてもなあ」

「お前も教師の端くれなら”錯乱墓高校”くらい聞いたことはあるだろう?」

 

 

ふむ。錯乱墓高校。読者の諸君は覚えておいでだろうか。

かつては伝説のヤンキー高校として名を馳せていたが、7年ほど前に一人の男にアタマとNo.2、No.3を倒された上に、たった5人に学校を制圧され一気に地位を落とした。

そして何を隠そうそのTOP3を倒したのは俺で学校を制圧したのはおたえたち幼馴染。俺が知らないわけないんだよなあ。

詳しくは本編第三章を参照だ。”さんしょう”だけにな(激寒)

 

 

「知ってますよ。でも今は廃れちゃってますよね?」

「ああ。だが廃れる前、俺はアタマをやっていた。つまり・・・ケンカは大得意ってことだ。おい神剣、言ったよな、俺の邪魔をするなって?お前わかりましたっていったよな?」

「犯罪の邪魔をするななんてことに同意した記憶はねーよ。それにアンタ・・・錯乱墓高校のOBでしかもアタマかよ・・・」

「ビビったか?」

 

 

こいつが26歳ってこたあ俺の1個上・・・いや、廃れる前に卒業してるってことは2個上か。

ということはアイツらのことも当然知ってるってこった。

 

 

「とりあえずお前が今見たモンは全部忘れさせてやる。そんで恥ずかしい写真でも撮って俺のパシリにしてやんよ」

「そいつは光栄だ。ぜひお願いしたいね。ただし・・・・」

「あ?なんだよ?」

「パシリになるのはお前だ」

 

 

 

 

「さっさとぶちのめしてやる!」

 

 

うーむ、見るからにおキレになっていますわね。

まあ関係ないけどそれに・・・

 

 

「なんだよオメー。なんか雰囲気が大した事ねえなあ。まだガキの頃の渡瀬や夢先の方が殺気があったぜ」

「え???なんでお前アイツらのこと知って・・・?」

「そりゃ一緒に遊んだ仲だからな。一撃で寝ちゃったけど」

「ちょっと待て・・・龍清と圭吾が一撃でやられて・・・しかも神滅栄鬼をやったのもおんなじ奴だって噂だ・・・まさか・・・まさかああああ・・・!」

 

 

あ、こいつ察したようだな。まあさっきのヒントで察しなかったら脳みそ足りねえどころじゃないと思うが。

 

 

「お前が”unknown”なのか!?」

「うわっ、その恥ずかしい通り名まだ残ってたのかよ!?7年前だぞ!?」

 

 

思わぬ反撃を食らう俺。だがしかし、やることは変わらんな。

 

 

「さて、おしゃべりは終わりだ。よし、ここでお前に選択肢をやろう。俺にやられて恥ずかしい写真を撮られて奴隷になるか、恥ずかしい動画を撮られて奴隷になるか」

「せ、選択肢がないじゃないか・・・」

「ブッブー時間切れーじゃあ両方お見舞いしちゃいまーす」

「く、くるなあ・・・こっちへ来るなあ!」

 

 

ごめん、それ無理。

 

 

「とぼけたこと言ってんじゃねえぞコラ。てめえ香澄ちゃんに何しようとした?意識奪って辱めようとした外道野郎のくせにいっちょ前にブツクサいってんじゃねーぞ」

「た、助けてくれ~なんでもしますから~!」

「ん?今何でもするって言ったよね?じゃあ・・・」

 

 

「ぎゃああああああああああああああああああああ」

 

 

お仕置き完了。

 

まーた俺のデータフォルダがクッソ汚い写真と動画で埋まるのかあ・・・壊れるなあ

 

 

「とりあえず、このことバラしたらどうなるかわかるよね?」

「わかったわかったわかったよもう!バラまくんじゃねえぞ!」

「んん?それが人にものを頼むときの態度??」

「ば、バラまかないでください・・・よろしくお願いいたします」

「よろしい」

 

 

まったく、俺はなんでこんなことやってんですかね・・・?

別に悪党狩りでも潜入でも何でもないただのバイトみてえなもんなのに。

 

 

「ううん・・・」

 

 

そこで香澄ちゃんが目に入る。

その寝顔を見た瞬間、そんな気持ちはどうでもよくなった。

 

 

「ま、いっか。守れたし」

 

 

そんなことを考えながら俺は香澄ちゃんを抱きかかえ、体育教官室を後にしたのであった。

 

 




引き続きよろしくお願いいたします!


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第4話 飲みにケーションなんて悪習やで

香澄とシリアス路線ってなんか似合う・・・似合わない?




下田騒動から1日。

香澄ちゃんは睡眠薬を盛られたせいか前後の記憶がはっきりしておらず、とりあえず俺たちは昨日のことを香澄ちゃんに告げないことを約束した。

香澄ちゃんは改めて下田の交際の申し出を断り、現在に至る。

 

 

「神剣先生、コーヒー買ってきました!!」

「ありがとうございます」

 

 

放課後の職員室。俺は下田の買ってきたコーヒーのプルタブを開け一息。

あ、ちなみにコレは俺が命令したとかじゃないよ?

下田が勝手に俺を怖がって勝手に俺の機嫌を取ってるだけだ。

奴からしてみれば、フられた事実よりもアイツの弱みである恥ずかしいデータをたくさん持ってるいる俺の方が気がかりで、さらにヤンキー出身の奴からすると圧倒的な力を見せつけられて逆らう気をなくしてるのだろう。

 

「そういえば戸山先生は?」

「戸山先生なら部活ですよ。顧問を3つ掛け持ちしてるんで大忙しです」

「・・・・3つ!?」

 

 

思わず驚きの声を上げてしまった。

1年目の女性教師が受け持つ量じゃないぞ・・・・?

 

 

「ホラ、成瀬先生いるじゃないですか。それと教頭先生」

 

 

教頭先生。仕事一筋で未だ独身の女性だ。

話すとメチャクチャ優しそうなおばさまって感じだった。

 

 

「成瀬先生と教頭先生・・・二人して戸山先生に当たっているんですよ」

「女の嫉妬・・・という奴ですか」

「おそらくは・・・・」

「それに成瀬先生は戸山先生にミスばっかりといってますけどアレ多分ウソですよ。難癖付けたいからミスを捏造してるんだと思います」

 

 

なんてこった。パワハラもここまでいくとヤバイな。

ここは調査報告をまとめて弦巻さん経由でなんとかしなければ。

 

 

「それはいけませんね・・・とりあえず何の部活を?」

「ええとですね・・・」

 

 

俺は下田に話を聞き、ひとまず香澄ちゃんのいるであろうところに向かった。

するとちょうど廊下を歩く、部活がすべて終わったであろう香澄ちゃんを見つけたのだ。

 

 

「香澄ちゃん~!次はおれの勉強見てよw」

「コラ、戸山先生でしょ?」

「ワリィワリィ、んじゃあね香澄ちゃん!」

 

 

フレンドリーに話し、去っていく男子生徒。

しかしいささかフレンドリー過ぎないか?まあこれが香澄ちゃんの持ち味なんだろうしいいところでもあるが・・・

とりあえず声をかけようとしたどのとき、違う声が響いた。

 

 

「戸山先生!なんですか今のは!?」

「は、はい!?」

 

 

そこにいたのは成瀬先生であった。

 

 

「あなた教師でしょう!?あんな男子生徒のヘラヘラして恥ずかしくないんですか?」

「わ、私ヘラヘラなんて・・・・」

「言い訳無用!生徒に色目を使う、仕事はミスばかりする・・・そんなので教師が務まると思っているんですか?」

「色目!?そんな、私・・・」

 

 

うん、これはよくない。

仕方ない、そろそろ仲裁に入るか。

と思っていたら・・・それだけは終わらなかった。

 

 

「なにをしてるのですか?」

「教頭先生・・・」

 

 

そこに現れたのは教頭先生。

俺が知っているにこやかな物腰のやわらかい上品なおばさまといった感じだ。

 

 

「戸山先生が・・・・」

 

 

今あったことを脚色し、捏造して話す成瀬先生。

 

 

「なるほどねえ・・・・まあまあ成瀬先生。戸山先生もお若いんですからちょっとした出来心くらいありますわよ~」

「そうですかね~」

「えっ・・・私ほんとにそんなこと・・・・!」

「まあまあまあまあわかってます、わかってますよ。あまり過激にやりすぎないでくださいね、戸山先生。じゃ、行きましょう成瀬先生」

 

 

そういって去っていく成瀬先生と教頭先生。

なんというかすげえ性悪女だなあオイ。

 

 

「なんでだろ、私は私なりに一生懸命やってるだけなのに」

「香澄ちゃん・・・いや、学校では戸山先生かな」

「奏也せん・・・神剣先生」

 

 

俺は明らかに落ち込んでいるらしい香澄ちゃんに声をかける。

 

 

「ごめん、みちゃった」

「そう・・ですか。あはは、大丈夫です!私が、私が頑張れば・・・・ううっ・・・」

 

 

香澄ちゃんは涙を隠せていなかった。

 

 

「よし、とりあえず今夜飲みに行くか!」

 

 

飲みにケーションなんぞ悪習だと思うが、結局のところ適切なタイミングで誘えるかどうかだと思うんですよね。

やれ上司に付き合えだの、給料も出ないのに週末は職場の飲み会で実質サビ残になるだの・・・・つまり”押し付ける”のがよくない。

ただそれだけなのにいまだに”付き合って当たり前””酒を一緒に飲めば誰とでも仲良くなれる”だなんて思ってる頭バッドワールドの老害は多いよね。

まあそれはいい。とまあこんな感じで俺は香澄ちゃんと夜の街へ消えていったのであった。

 

 

 

 

「わたしだってぇ!精いっぱいやってるんれすよー!」

 

 

う~~~~~む。

香澄ちゃんがこんなに酒癖悪いだなんて想定外だった。

ものすごいペースが早くてオイオイ大丈夫かよと思い始めたときはすでに遅し。

完全に出来上がっていたのだ。

 

「ちょっとぉ、聞いてるんれすか奏也せんはい!!」

「き、聞いてる聞いてる」

 

 

さっきからずっとこんな感じだ。香澄ちゃんのヒートアップが止まらない。

 

 

「なんで成瀬先生はこんなに私にキツイんですかあ!仕事だってちゃんとやってますよぉ!!!!!」

 

 

その後は香澄ちゃんは本音をボロボロとこぼし、俺が言葉受けのサンドバックになることで時間がどんどん過ぎていったのだ。

 

 

 

 

さて、明日も普通に仕事があるわけでして。

結構早めの時間に店を出た。時間は大体21時ごろ。

 

「おーい、香澄ちゃん?」

「うにゅぅ」

「うにゅぅってアンタ・・・・」

 

 

香澄ちゃんは店を出てしばらく歩いていたら眠ってしまった。

倒れこむように地面に座ろうとする香澄ちゃんをキャッチすると俺は家まで送っていこうと考えたのであるが・・・

 

 

「香澄ちゃんの家知らねえ・・・・」

 

 

そう、いつも駅で別れていたので香澄ちゃんの部屋の場所を知らないのだ。

おたえなら知っているだろうとさっき連絡を取ったのであったがどうにも捕まらない。

 

 

「仕方ないかあ・・・」

 

 

やむを得ず俺の家に連れてくる。

この前の教育実習生事件もあったし少し用心が足りないのではとも思ったが、そこは俺が相手ということで少しは安心してくれたのかもしれない。

そうだとしたら嬉しいものだ。

ひとまず香澄ちゃんを空いているベッドに寝かせ、もう一度起こすことを試みた。

 

 

「おーい、香澄ちゃーん」

「うにゃぁ」

「ネコかアンタは」

 

 

そういえばさすがに例の猫耳型の髪はやっていないな。

長く伸びて部分的にまとめられた髪はとてもきれいだ。

そしてこうやって寝顔を見ているといつものパワハラにやられ冷めた感じになっている香澄ちゃんではなく、かつての香澄ちゃんのようだ。

そのギャップに思わず心が跳ね、その顔に見とれてしまう。

香澄ちゃん、普通に可愛いからなあ。

 

 

「うゆ・・・・?」

「あ、起きた?」

「あれぇ・・・?なんで奏也せんぱいが私の部屋にいるの~?」

 

 

どうやらまだ酒が残っているうえに寝ぼけているようだ。

 

 

「あ~そっか~これは夢か~。なら好きなのことやってもいいってことかなあ?」

「え?香澄ちゃん何を言って」

 

 

刹那。

俺の体は香澄ちゃんにより抱擁され完全に”抱き着かれている”という格好になっていた。

 

 

「えへへ~奏也せんぱいだあ~♪」

「えっ・・あの」

「うーんあったかーい!それにすごくぬくもりがあって奏也せんぱいの匂いもいっぱいだな~」

「あっあっあっ」

 

 

抱き着かれ、胸に顔を埋められ、ネコみたいにスリスリされることにより、緊張してどもりまくるオタクみたいになる俺。

今のこの状況・・・なんだこれ・・・

香澄ちゃん可愛すぎるでしょ・・・・いやまあ向こうは多分夢と思ってるんでしょうけど。

まさに昔の・・・俺の知っている香澄ちゃんがそこにいた。

やっぱ香澄ちゃんはこうでないとな。っとそんなこと言ってる場合じゃねえ、さすがに酔って寝ぼけている女の子にこんなことさせるわけにはいかないからね。

そろそろ何とかしなきゃ。

 

 

「・・・香澄ちゃん、そろそろ」

「ん~夢のくせに意見するなんてナマイキだぞぉ!夢のくせに・・・・・・アレ???????」

 

 

徐々に目を開く香澄ちゃん。

目を開ききったところでこれは夢ではないと認識したようで、ただでさえ酔って赤くなっているかがメチャクチャ真っ赤になった。

 

 

「そ、そそそそそそ奏也せんぱい??????」

「あ、なんていうか・・・おはよう?」

「いやああああああああああああ忘れてえ!忘れてください~~~~~~~~~!」

 

 

その後はしばらく、布団を抱いてベッドでゴロゴロ転がりながら悶える香澄ちゃんの姿を堪能することができたのであった。

 

 

「取り乱しました・・・・・」

「あ、うん。まあそういう日もあるよね・・・」

「その気遣いがむしろ痛いですぅ!!!!」

 

 

そして落ち着くと、こんなやり取りをしてある程度酔いがさめた香澄ちゃんから話を聞いたのであった。

 




これ何話までいくんでしょ。
多分あと2~3話かなあ。


香澄は年齢を重ねたのと境遇でかなりクールになってますね。
意外にこういうキャラも似合うのではと勝手に思ってます。

引き続きよろしくお願いいたします!

★評価のお礼★

なるとさん ★10ありがとうございます!


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第5話 汚濁のシンデレラ

俺は香澄ちゃんから聞いた話をまとめる。

まずパワハラのこと。最初は成瀬先生もすごくいい先生だったらしいが徐々に当たり方がきつくなってきたらしい。この辺は加藤先生や下田に聞いた通りだ。

 

徐々にひどくなっていき、例えばちゃんと終わらせた仕事を終わってないといったり、隅々まで確認してから提出したはずの書類を”本人の覚えがない”ミスを連発したものにされていたりと、どんどんエスカレート。

 

一度、他の男性教師がよかれと思って教頭に相談にいったらしいがこれがダメだった。

 

”男性教師に優しくされて教頭にチクった新米教師”と”新米教師をいびる先輩教師”

 

の図式が出来上がったことが成瀬先生のプライドを傷つけたようだ。

なんと成瀬先生は教頭が独身女性というところに目をつけて丸め込み、直接的なパワハラは成瀬先生が、それをサポートする形で教頭が動いているらしい。

 

ちなみに校長(弦巻さんの知り合い)は違う学校と校長を兼任しているため、実質副校長がトップだとか。

しかしながらその肝心の副校長も教頭の言いなりらしい。。

 

しばらく見ない間に腐ってんなあ・・・人手がないのも原因かもしれんが。

 

 

「それでですねえ~・・・」

「やっぱメチャクチャ飲むんだね」

 

 

前回香澄ちゃんが酔いつぶれてから、俺たちは週末に俺の家に来て一緒に酒を飲みながら香澄ちゃんの愚痴を聞くのが日課になっていた。

いや~今日もいい飲みっぷりだ。

 

 

「こうやって奏也せんぱいが話を聞いてくれるようになってからマシになりましたけどぉ~・・・飲まなきゃやってらんないですよー!」

「キラキラや・・・ドキドキは?」

 

 

俺はつい聞いてしまう。

再会してからというものの、香澄ちゃんの口癖のようになっていたキラキラやドキドキ。それが一度もなかったためだ。

 

 

「・・・もう、忘れちゃいました」

「え・・・?」

「キラキラだとか、夢だとか、希望だとか・・・。教師になれるって決まって、門をくぐったときには確かに感じてたはずなんですけどね・・・」

 

 

香澄ちゃんが暗そうな顔をする。

違う、俺はこんな顔がみたいんじゃないんだ。

俺は最近ずっと考えている。今の香澄ちゃんをみていると心が痛い。

 

 

「あ、ごめんなさい!こんな話ばかりして・・・・」

「いや、いいよ。・・・そういえばポピパのみんなは何か言ってるの?」

「・・・・みんなには相談してないんです。心配かけたくないから」

 

 

こういう優しさは香澄ちゃんだなぁ・・・・

 

 

「ほんと、毎回毎回ごめんなさい。あ、私ちょっとお花摘みに行ってきますね!」

 

 

席を立つ香澄ちゃんを見ながら俺はさっきの言葉が反芻していた。

 

 

”忘れました。キラキラだとか、夢だとか、希望だとか”

 

 

昔見たキラキラや夢や希望を歌う彼女の姿はそこにはない。

これも時間の経過と社会の荒波に飲まれた結果の摂理か。

人は変わるものだ。なら仕方ない・・・

 

 

「んなわけねえよなあ?」

 

 

俺は自問自答する。

このままでいいか?

 

-いいわけないでしょ。

 

なんで俺がこんなことを考える?

 

-あんな香澄ちゃんを見たくないからだ

 

なぜ?これが現実。なぜ俺がここまで考える?

 

-香澄ちゃんはキラキラしてて星の鼓動を感じて、輝いている姿が一番きれいだ。その彼女からきらめきを奪ったこの環境を許せないからか?

 

なぜそこまで彼女にこだわる?

 

-決まってんでしょ

 

 

「香澄ちゃんのことが好きだからだよ」

 

 

以上、自問自答。

これこそ俺が出した回答。

倫理的にどうかだとか、パワハラがどうかだとか・・・

そんなことどうだっていいのかもしれない。

下田から助けたときだって、今だって、色々理由はつけているが行動原理は一緒。

すなわち香澄ちゃんへの恋愛感情。これこそが正体だったのだ。

 

 

「やっべえなあこれ・・・・」

 

 

香澄ちゃんへの好意を完全に認識した瞬間、俺は恥ずかしくなってきた。

そしてそれと同時に不安も襲ってきた。

 

 

”今の香澄ちゃんは俺のことどう思っているんだろうか?”

 

 

6年前、香澄ちゃんは俺のことを好きだと言ってくれた。

でも俺はそれを俺の都合で断った。

あの選択は間違っていなかったと思っている。しかし、使命がなくなった現状をみるとどうだ?

もう俺に断る理由はないし、それに今はハッキリと香澄ちゃんのことが好きだといえる。

だがそれは・・・・香澄ちゃんが俺のことを好きでいてくれていることが前提だ。

6年も放っておいたら他に好きな人がいてもおかしくない。

 

 

「うーむ・・・」

 

 

だが、考えるのはあとだ。

今はまず、やるべきことがある。俺は懐から携帯を取り出して、ある番号にかける。

 

 

「あ、弦巻さん。どうも、神剣です。あのぉ・・・ちょっと聞きたいんですけどね」

 

 

俺は弦巻さんに向かって、堂々と言い放った。

 

 

「人手不足ってことで俺が来てたと思うんですけど・・・今いる教員の人数、減らしちゃってもいいですかねえ?」

 

 

こんなことをいいながら、俺は脳内で次の一手を練っていたのであった。

 

 

 

さて時間は飛んで数週間。俺は秘密裏に色々と情報を集めていた。

 

 

”教員の人数を減らしていいか”

 

 

この質問に対し困惑していた弦巻さんであったが、事情を話したらやりすぎない範囲でやれと言われた。

どうやら校長先生も教員内でのパワハラの噂を聞いて気になっていたらしい。

弦巻さんから確実であることが伝えられると、うなだれた様子で”責任は取るから任せる”とお返事をいただいたた。

このご時世、保身のために不祥事をもみ消す輩が多いのに立派な校長先生だ。

そして、こうやって確約を得た俺は色々と調査を進めておいたのだ。

 

 

「失礼します」

 

 

そして俺は今校長室にいる。

迎えてくれるのは副校長と教頭。さて、いくか。

 

 

「神剣先生、話とはなんでしょう?」

 

 

副校長が第一声。

 

 

「教員内で行われているパワーハラスメントの相談です」

「パワハラだなんて人聞きの悪い・・・成瀬先生は後輩の指導が熱心なだけじゃないですか」

 

 

そんなことを抜かす教頭。

ああ、やっぱこいつらダメだわ。

 

 

「誰も成瀬先生のことだと言っておりませんが?」

「くっ・・・噂できいているだけです!」

 

 

ははあ・・・・あくまでシラを切ると。

まあ教頭は加担しているし当然といえば当然か。

 

 

「いいですか、神剣先生。私たちはパワハラの事実なんぞ知りませんし、知りたくもありません。困るんですよ、こういうことをされては・・・悪いことは言いません。平穏な教員生活を続けたかったらこのまま回れ右をし、口を噤むことです」

「・・・脅しですか?」

「さあ?どう捉えるかはあなたの勝手です。明日、あなたの机が職員室にあるといいですねえ」

「・・・・わかりました。今日はこれで失礼します」

「今日は?次はありませんよ。早く退室して下さい」

 

 

促されままに俺は退室する・・・・かと思ったかバカめ。

 

 

「でも、そちらがその気なら・・・こちらにも考えがあります。このまま副校長と教頭の椅子に座ってられるといいですね」

「なっ!?臨時教員が生意気なことを!」

「おっと、口が過ぎましたね。失礼します」

 

 

これは布石だ。何の布石か?それは夜までのお楽しみってやつさ。

さて、めんどくさいから時間飛ばすぞ(メタ発言)

 

 

 

 

夜。俺はイヤホンを装着し、録音しながらある音声を聞いていた。

 

 

『まったく神剣には困ったものだ。余計なことを嗅ぎまわりおって』

『まったくですわね。このままパワハラの事実が漏れず、何事もなければ私たちはそろって校長になれるはずですのに・・・』

『しかし教頭・・・あなたも少し戸山先生をいじめすぎでは?神剣みたいなのがまた出てくるとも限りませんよ?』

『大丈夫ですわ。話を聞くに神剣先生は戸山先生と仲がいいらしくて。それで突っかかってくるのかと』

『なるほど・・・じゃあいっそあいつらが校内で不純異性交遊をしていると噂を流して自主退職に追い込むか?』

『それもいいかもしれませんわね。ねえ、副校長・・・そろそろ』

『未来の校長先生といっていただきたいですね、フフ・・・』

 

 

さて、中年二人のおせっくす実況中継なんぞ極力聞きたくないので、イヤホン音量を下げる。

ズバリ今の会話は盗聴器からの音声だ。

本日副校長たちに仕掛けた盗聴器はバッチリと俺にその様子を伝えてくれた。

ちなみに俺がいるのは奴らがよろしくやっているラブホ街の付近のファミレス。色々と調べているうちに副校長(妻帯者)と教頭が不倫をしており、ほぼ一定のペースでこのホテルでよろしくやっているのが分かった。

そしてその日を狙って俺は奴らを煽ったのだ。そうすれば絶対パワハラ、しいては俺に関する会話を確実にすると思ったからね。

そして俺は奴らの情事が終わり、ホテルを出ようとするタイミングで歩き出したのだった。

 

 

 

 

パシャッ!

 

 

「ぬわっ!?」

「な、なんですか!?」

「どうもー!副校長、教頭先生!」

「な、か、か、神剣先生!?」

「なぜここに!?」

 

 

いやー驚いてくれてるねえ。この日のためにカメラを用意しておいてよかったぜ。

 

 

「なぜ?さあなんででしょうねえ?言いましたよね?こちらにも考えがあると」

 

 

多分今俺はメチャクチャ邪悪な笑みを浮かべていると思う。

そしてそのまま話を続けた。

 

 

「これがその答えですよ」

「な、キサマ・・・・!」

「さて、シンデレラ城の鐘が鳴るにはまだ早い時間ですけど、仕舞にしましょうか。もっとも、ガラスの靴を残して帰ることは許しませんがね」

 

 

お城のホテルを背景に言い切る俺。ちょっとポエマーっぽいかな?まあいいや。

さて、畳みかけるか。

 

 

「も、目的はなんだ!?金か!?」

「金?んなもんに興味はねーですよ。あいにく不自由してないもんでね」

「で、ではなんですの・・・・?」

「俺はこれから学校でひと悶着起こす。成瀬の排除だ。それの邪魔をしなければこの写真を公表することは考えてやる」

「なっ!?そんなことをしたらパワハラが明るみになる・・・そうしたら私たちの校長への道が・・・!」

「そ、そうです!」

 

 

まぁだそんなこというか。

しょうがない、現実を見せつけてやるか。

 

 

「は?なに下らねえこといってんだジジイ共。成瀬が潰れて副校長、教頭としての責任を普通に問われるか、不倫の事実が明るみになって社会的に死ぬのか・・・どっちがマシか考えりゃわかんだろ?」

「くっ・・・・!」

「ぐぬぬ・・・」

「俺が動いている間に黙っていればいい。特に教頭、成瀬に泣きつかれても無視しろ。俺が提示する条件はそれだけだ」

 

 

顔に汗を滲ませ、歯をギリギリと食いしばって悔しそうな顔で二人は返事をする。

 

 

「わ、わかった・・・」

「わかりました・・・」

「変な気を起こすなんて考えんじゃねえぞ?」

「しかし・・・お前は何者なんだ?こんな・・・ただの教師じゃないだろう・・・?」

「なんだそんなことか。俺は・・・」

 

 

久しぶりだなコレ言うの。

 

 

「通りすがりの悪党狩りだ」

 

 

さて、最終話に向けて走り出そうじゃないか。

彼女の・・・キラキラを取り戻すために。

 

 




ペースが空いて申し訳ありません・・・
仕事がめちゃくちゃ忙しくてなかなか・・・

さて、香澄ルートはついに終盤です!
キラキラを失った香澄はガルパコラボのロミオとシンデレラのMVの雰囲気を想像してもらえるといいかもです。

引き続きよろしくお願いいたします!


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第6話 期待と決意





「と、いうわけで今噂になっている教員内でのパワーハラスメントを調査いたします」

 

 

週末の臨時職員会議。俺と弦巻さんの計らいで校長が戻ってきたのであるが、突然このような話を始めた。

まあその校長に臨時職員会議を開くよう提言し、それが実現している形だ。

副校長と教頭は気まずそうに、顔を伏せている。そして他の教員もついに来たか・・・という顔をしている。

香澄ちゃんもものすごく驚いた顔しているね。まさかこんなに大きな騒ぎになるとは予想外だったのだろう。

そして肝心の成瀬。みるからに脂汗ダラダラで緊張・動揺しているのが分かる。

 

 

「授業に差し支えのない範囲で、週明けから何日かにわけて先生方には聞き取り調査を行います。申し訳ありませんがご協力をお願いします」

 

 

これにて臨時職員会議は終了。終わったら即座に校長室に行く。

 

 

「校長、ありがとうございます」

「なあに、弦巻を通してキミが教えてくれたおかげだよ。やはり兼任なんてするもんじゃないね。見るべき問題点が見えなくなる。私の進退は気にしなくていいから好きにやってくれたまえ」

「かしこまりました」

 

 

さて次だ。俺は空き室に呼び出してある副校長と教頭のもとへ向かう。

 

 

「今日の校長の話・・・君がリークしたのか!?」

「愚問でしょう」

「こんな騒ぎなるなんて聞いてないぞ!」

「そうですわ!」

「・・・・あのさあ、まあだ保身のこと考えてんの?やるからには徹底的にやらなきゃ意味ないの。校長は自分の進退は気にするなっていってたぞ?それに比べて醜いなおめえら」

「くっ・・・・」

「多分教頭に成瀬が泣きついてくるでしょう。手筈通り、手を貸さず無関心を貫いてください」

「・・・わかりました」

 

 

さて、一気にたたみかけるとしようか。

 

 

 

 

「なんなのよもう!」

 

 

成瀬はとにかく焦っていた。

教頭の後ろ盾があり、事実上トップの副校長も教頭の傀儡になっていたので表面化しないと慢心していたからだ。

 

 

「まさか校長が一時的に帰ってくるなんて・・・・!とにかく教頭と裏を合わせて・・・あ、ちょうどいいところに!」

「な、成瀬先生」

 

 

ちょうど鉢合わせた教頭と成瀬。当然成瀬は教頭が協力してくれるものと思い早速対策を練ろうと話を始める。

 

 

「今朝の校長の話・・・!対策を考えないとこのままでは・・・・」

「成瀬先生。何を言っているのですか?今日の校長の話しは私としても寝耳に水でして・・・・なぜあなたがそんなに焦っているのか存じ上げませんし、私がやることは粛々と対応するだけです」

「教頭!?・・・・!?まさか教頭・・・・私を切り捨てるつもりですか?」

「切り捨てる?いったい何のことを言っているかわかりませんが、やましいことがないのなら堂々としているといいですよ。では仕事がありますので。失礼します」

「教頭!?教頭!!!!!!くっそおおおおおおおおおおおおおお」

 

 

成瀬はここで悟った。自分は捨て駒にされるのだと。

すべての罪を被されて終わるのだと。

 

 

「そうはいくか・・・・!ならば!!」

 

 

思い立った成瀬はすぐさま行動する。

そこで見たのは奏也と香澄が会話しているところだった。

 

 

「まさかこんなことになるなんて・・・・」

「なるべくしてなっただけだよ」

「とにかく今はいいことを考えよう。そうだ、明後日の日曜日、せっかくだから出かけない?気分転換にさ」

「・・・・!ぜひ!」

 

 

その光景をみて成瀬は爪が食い込むくらい拳を握る。

そして奏也が立ち去るタイミングを見計らい、ニコニコしている香澄に近づく。

 

 

 

 

職員会議の後いろいろ不安になったけどさすが奏也せんぱい。しっかり私をフォローしてくれる。

しかも遊びにまで誘われちゃった!

最近疲れがたまっていてお酒に逃げていたしいい気分転換になると思う。

久々に温かい感情を思い出している気分だ。

 

 

「戸山先生」

「・・・!?成瀬先生・・・」

 

 

表情がすこしにやけちゃっていたであろうところで突然成瀬先生に話しかけられた。

 

 

「明後日、宿直お願いしますね」

「えっ!?でも先週も・・・・!」

「は?(威圧)仕事は用意してあります。宿直をしながらでも終わる程度です」

「で、でも今週は予定が・・・・」

「未熟者のくせに何を言っているのですか?そういうことは一人前になってから言ってください。ではよろしくお願いしますね」

 

 

その申し出に逆らえない私。

奏也せんぱい・・・ごめんなさい・・・

 

 

 

 

「話は聞かせてもらったよ」

「えっ!?」

 

 

そういえばどこに行くかを話してなかったというクソマヌケなことをしたなあと思い引き返すと成瀬と香澄ちゃんが話しているのが見えたので物陰からうかがわせてもらった。

 

 

「まったく、パワハラの調査入るって言ってるそばからパワハラするって何考えてるんだろうね」

 

 

まあこれは予想だが、俺の命令で保身モードに入った教頭は成瀬にとっては使い物にならない。すると次に奴が打ってくる手はなにか?

もちろん、パワハラ被害者への干渉だろう。

被害者である香澄ちゃんに対し、何らかの手段を用いて”パワハラ被害を受けていない、あれはれっきとした指導だ”と言わせる。

これしかない。ならばこの宿直命令には絶対裏があるはずだと俺は踏んだのだ。

 

 

「日曜日の宿直、仕事を押し付けられたんでしょ?俺も手伝うよ」

「え!?でもせっかくのお休みなのに・・・」

「この日は香澄ちゃんのために時間を使うって決めてたからさ。それに終わった後でも少しくらい遊べるでしょ?」

「奏也せんぱい・・・・」

「だから俺にもやらせてよ。早く終わればきっちり定時で上がってその分遊ぶ時間が増えるでしょ?」

 

 

 

こんな感じで手伝う確約を得た。

さて、あとは成瀬がどうでてくるかだな。俺は色々とパターンを予想しながら帰宅し、そしてついに当日を迎えたのであった。

 

 

 

 

「こんなもんかな」

「奏也せんぱい・・・・すっごく手際がいい・・・・」

 

 

成瀬に与えられた(押し付けられた)仕事を二人でやると定時より2時間も早く終わった。

でもこれ明らかに香澄ちゃん一人だと残業コースの量だったな。

今必要とは思えない生徒名簿の作成とか明らかに今年使うとは思えない書類の作成なんて嫌がらせの極致だ。

 

 

「時間余ったし定時までおしゃべりでもするか」

「はい!ありがとうございます!」

 

 

こうやって二人でいると香澄ちゃんはすごく明るい。

まるで昔に戻ったような感覚で会話を続ける俺たち。

 

 

「あまり話聞けてなかったんですけど・・・奏也先輩、帰ってきたってことは・・・やるべきこと、成し遂げたんですよね?」

「おっと急だね」

「す、すみません・・・」

「うや、いいよ。そうだね、向こうでやるべきことを終えた。だから戻ってきたんだ」

「じゃあこれからはずっと日本ですか?」

「仕事で海外に飛ばされることはあるかもしれないけど基本はそうだな。まさか一発目に母校にぶっこまれてそこで香澄ちゃんと同僚になるだなんてさすがに予想してなかったけどね」

「ほんと、偶然ですよね!!」

「香澄ちゃんはなんで先生に?」

 

 

俺はかねてから思っていた疑問をぶつけてみることにした。

すると香澄ちゃんの顔に少し影が入ったような気がしたが、話しを始めてくれた。

 

 

「私、バンドやってたじゃないですか。それを通していろんな経験をして、キラキラドキドキした高校生生活を送って。そんな体験をいろんな人に知ってほしくて!・・・でもそれもわからなくなっちゃってます・・・・」

「成瀬先生だね?」

「・・・そうです」

 

 

まあ飲みに行って酔った香澄ちゃんから愚痴を聞きまくってるからね。

でも今日はいつもと違いシラフだ。

 

 

「私、頑張ってるつもりです。やるべきこともちゃんとやっているはずなんです。最初はこれが社会人!って思って頑張ってたんですけどどんどんどんどんエスカレートしていって。今は我慢の毎日です。生徒達にはできるだけいつも通り振る舞っているつもりですけどね。でも、キラキラだとかドキドキだとかを伝える以前にいかに成瀬先生を対策するかで頭がいっぱいになっちゃって。ほんと何やってんだろうなー私」

 

 

自虐するようにいう香澄ちゃん。

やっぱり違うなあこれは。

 

 

「俺はね、やっぱ香澄ちゃんはは笑って、キラキラしてるべきだと思う。でも今の香澄ちゃんは黒ずんで、灰色だ」

「・・・・ッ・・・そう、ですよね。自覚はあります」

「でも俺はそんな香澄ちゃんをこれ以上見たくない。だから・・・助けるよ、キミのことを。全力でね」

「助けるってどうやって・・・・まさか急に校長先生が出てきてああなったのは奏也せんぱいが!?」

「俺の得意分野と昔やってたことを思い出してみてよ」

 

 

ようやく香澄ちゃんは察したようだ。

 

 

「今の俺は香澄ちゃん、キミのためにだけに動いている。また香澄ちゃんの心の底から笑った顔が見たいんだよ。キラキラドキドキを振りまくあの笑顔が見たいんだ」

 

 

やっべええええええ言ってて死ぬほど恥ずかしい!!!!

だが長年の訓練で鍛えたポーカーフェイスは崩れていない。

端からみたら真剣な顔で淡々と言っているように見えるはずだ。

 

 

「そのためだったらなんだってする。今俺はそのためだけにここに存在しているといっても過言ではないんだ」

 

 

それを聞く香澄ちゃんは心底驚いている。

そして口を開くと、一つの疑問をぶつけてきた。

 

 

「なんでそこまで私のことを助けてくれるんですか?確かに私たちは仲のいい先輩後輩で・・・でもそれだけじゃここまでしてもらう理由がありません」

「そんなことは・・・いや、そうだな」

「・・・・ねえ奏也せんぱい。これって・・・期待、しちゃってもいいんですか・・・・?」

 

 

潤んだ目。真剣な眼差し。そして切なさで彩られるグラデーションのような表情。

そのしぐさに貫かれた俺は覚悟を決めた。

 

 

「期待・・・そうだな。それが香澄ちゃんの考える期待にかなっているかはわからないけどさ」

 

 

いうぞ・・・言えよ俺。

ほらさっさと言っちまえよ。

 

 

 

「もし、かなっているなら。言わせてもらっていいかな」

「は、はい・・・・」

 

 

「俺は―」

 

 

 

大きく息を吸い、そしてゆっくりと、彼女を目をまっすぐ見つめていった。

 

 

「香澄ちゃんのことが好きだから。だから助ける。好きな人を助けるのに理由なんていらない」

 

 

その刹那、香澄ちゃんの表情が崩壊した。

崩壊という書き方をすると語弊があるかもしれないな。比喩表現で表すなら咲みだれる涙の花。しかし確かに感じる春の気配。

そして隠せぬ幸福感。

 

 

「私もずっと・・・あの日奏也せんぱいが旅立ったあの日から・・・・」

 

 

香澄ちゃんは震える声で言う。

 

 

「ずっとずっとこの日を待っていました!私も奏也せんぱいが大好きです!」

 

 

それはイエスの合図だ。

それを聞いた瞬間俺はついポーカーフェイスを崩してしまい、笑みが漏れてしまった。

それにつられて香澄ちゃんも笑う。

 

 —うん、やっぱり

 

 

「香澄ちゃんは笑顔の方が可愛い」

 

 

 

この日、俺と香澄ちゃんは―

 

 

晴れて恋人同士となったのだ。

 

 

 

 

 

さて、甘ったるい雰囲気はここまでだ。いったん置いておく。

まあこの作品の作者ラブコメ描くの超苦手らしいからね、ボロが出る前に次に進むぞ。

 

 

告白の後、ちょっとイチャついてたら空気を読まない成瀬からの連絡があった。

 

 

「戸山先生、調子はどうですか?」

 

 

あんな量一人でやれるわけがない。

そうタカをくくったバカにするような声で電話がかかってきたのだ。

しかしそれに対する香澄ちゃんの返事はおそらく予想していなかったものだったであろう。それを聞いた成瀬はクッソ間抜けな声でレスポンスする。

 

 

「はえ!?終わった!?」

「はい、なので定時になったら失礼します」

 

 

この会話は俺が指示したものだ。さあ、どう出てくるかな・・・?

 

 

「何かミスをしているかもしれません、今から様子を見に行きます」

 

 

やったぜ。絶対こっちに来ると言い出すと思った。

これで何らかの手段を使って香澄ちゃんを脅すつもりだろう。

 

 

「香澄ちゃん。俺は隠れているから成瀬からできるだけ会話を引っ張てくれるかな?」

「わかりました!久々に奏也せんぱいの本気が見られるなー!でも・・・そうなると成瀬先生・・・辞めさせられて・・・大変な目に遭いますよね?」

「やってきたことの報いは受けてもらわないとね」

 

 

返答すると香澄ちゃんは少し微妙そうな顔をする。

 

 

「なんとか・・・できるだけ穏便にすませられませんか?」

「・・・あそこまでやられたのにかばうのかい?」

「いくら道を間違えたとしても・・・やっぱり彼女にも志があって教師になったはずだからって思って!だから・・・・お願いします!」

「・・・・香澄ちゃんは優しいね」

 

本当にこの子は・・・・

でもこれがいいところ何だよね香澄ちゃんって。

悪意を向けられてもじっと耐え、向けた相手すら許してしまう優しさ。

 

 

「わかったよ。じゃあこうしよう。できるだけ穏便に済ますように話を持っていく。そこからは相手の出方で処置を決めよう」

「それでお願いします!」

 

 

さあ、最終戦だ。

どんな出方をするかはわからないが俺はやるべきことをやろう。

すべては香澄ちゃんのキラキラドキドキを取り戻すために。

 

 

 

 

 

 

 




あららー結ばれちゃいましたねーついに。
さて、次回は香澄ちゃん編最終話です!

おたえいがいのポピパメンバーも出せたら嬉しいなあなんて考えているけど全く話がまとまっていないので期待しないでね!

引き続きよろしくお願いいたします。


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第7話 失われし輝きの鼓動

今回で最終回といったな。
スマン、ありゃ嘘だ。




「戸山先生」

「あ・・・成瀬先生」

「いくら早く終わっても内容が適当にやっては終わったといえませんよ」

 

 

こんな早くできるわけがない。そう考えていた成瀬は成果を受取りチェックを始める。

どうせアラだらけだ。いつもミスをねつ造している成瀬だが、今回はミスを拾いまくってねつ造の幅を広げてやろうと考えていたのだが・・・・・

 

 

「・・・・・・!」

 

 

まさに完璧。

作成された書類は1文字もミスがなく非の打ち所がない。

ねつ造しようにもこれだけ完璧に仕上がったものに手を加えるとそこから綻びが出て、全体が壊れてしまう。

さすがにそこまで露骨なねつ造をできるわけもなかったのだ。

 

 

「・・・だ、大丈夫です。お疲れさまでした」

 

 

震える声で香澄にOKサインを出す成瀬。それを聞いた香澄は顔には出さないが嬉しさで爆発しそうであり、同時に奏也の凄さを改めて実感していた。

 

 

「ああ、そうだ戸山先生。私が来たついでと言ってはなんですが実はちょっと手伝って貰いたいことがありまして。ものを運んでほしいので体育倉庫前に行きましょう」

 

 

不自然ともいえるこの提案。香澄は隠れている奏也にそっとアイコンタクトを送り、意思疎通を果たしたのち、成瀬についていったのであった。

 

 

 

 

「ついに動いたか」

 

 

明らかに不自然。何が手伝いだバカバカしい。体育倉庫なんて裏にあって基本は誰も寄り付かないし建物の陰になっていて見えない。

さて、どう出るか・・・・?

 

 

「戸山先生、一つ相談があるのですが」

「な、なんでしょう?」

 

 

意を決したように成瀬がいう。

 

 

「今度の校長の聞き取り調査。まさかとは思いますが私にパワハラを受けているなんていいませんよね・・・?」

「あの・・・それは・・・」

 

 

遂に来たな。

よし、香澄ちゃん。打合せ通り答えるんだ。

 

 

「あの・・・やっぱり私、成瀬先生の指導はおかしいと思います!私自身もう耐えられません」

「言いがかりをつけるのはやめなさい!自分の未熟を棚に上げて人をパワハラ上司扱いするなんてなんて失礼な人なのッ!」

 

 

あーあー堪え性なさすぎでしょこれ。

はたから見たら完全にパワハラ真っただ中って感じだ。

 

 

「最後のチャンスです。校長の聞き取りにはパワハラなんてない、すべて私を思っての指導だと答えるのを約束しなさい」

「・・・・嫌ですっ!私はもう私の意思を曲げません!ねえ成瀬先生・・・どうしてこんなことするんですか?成瀬先生だって教師になった日、きっと新しい門出にドキドキしてたはずです。それがなんで・・・・!」

 

 

香澄ちゃんはあくまで成瀬を説得しようとしている。

香澄の願い。それは成瀬の処分をできるだけ軽くしたいというものであった。

優しすぎるんだよ香澄ちゃんは・・・・

そして成瀬が口を開く。しかしその答えは香澄の思いを踏みにじる、最低なものであった。

 

 

「はぁ?ドキドキ?なにそれ?私は単に先生って呼ばれたかっただけ。先生になってガキ共を支配して悦に浸りたかっただけよ。そして職場でいい男をみつけて結婚して、安定の公務員夫婦という肩書を手に入れる。そしてそのまま安定して暮らす・・・・それが私の願いだたのに」

「え・・・・?」

「それをあんたが!全部台無しにした!ちょっと前までは馬鹿な男どもは私をチヤホヤしてなんでもいうことを聞いてくれてたのに!あんたがきた瞬間手のひらを返して!誰も・・・私を見てくれなくなった・・・私の幸せと人生計画を台無しにしたあんなに何をしようと勝手でしょ!!!!」

「・・・そん、な・・・・・」

 

 

香澄ちゃんの顔は絶望色に染まる。

少しでも処分を軽くしたい。自分を陥れた相手なのに助けてあげたい。

そんな心遣いを踏みにじり、ぐちゃぐちゃにするような回答だったのだ。

そしてそれを聞いた香澄ちゃんは目に涙をため、ポケットに手を入れる。

 

 

「残念です・・・成瀬先生」

「・・・・ッ!それは!!」

 

 

香澄ちゃんが手に持っているのはボイスレコーダー。

そう、俺の指示で香澄ちゃんは成瀬との会話をすべて録音していたのだ。

 

 

「戸山あああああ!そいつをこっちにわたせえええええ!!!」

 

 

香澄ちゃんに襲い掛かる成瀬。しかし香澄ちゃんは間一髪回避して逃げ出した。

 

 

「おい!その女を逃がすな!!!」

「!?」

 

 

成瀬が号令を上げると、茂みの中からガラの悪そうな男が続々と出てきた。

 

 

「何人?」

「7人。今日のカモはこの女でいいわけ?」

「いいわ、グチャグチャにレイ●しちゃって。私はカメラを回すわ」

 

 

その光景に戦慄する香澄ちゃん。

そして余裕振る成瀬。

 

 

「驚いた?あんたが言うこと聞かないようだったら強制的に聞かせようと思ってお願いしてたの。私、若いころ結構やんちゃしててね。その時からの仲間なんだ、こいつら」

「今までも・・・・こうやって・・・?」

「そうよ。気に入らない奴はこいつらにレ●プしてもらって撮影。こんなに簡単な口封じはないわ」

「いや・・・来ないで・・・・!」

「もう遅いわ!!!さああんたたち、やっちゃって!!」

 

 

おっと、傍観者キメるのはここまでか。俺も行きますかね。

俺は手に持っていたビデオカメラの録画モードをOFFにし、奴らの方向へと向かった。

 

 

 

 

「俺も混ぜてくださいよ」

「なっ!?神剣先生!?なぜここに・・・・」

 

 

心底驚く顔をしている成瀬。

そして安堵する香澄ちゃんの姿があった。

 

 

「通りすがりですよ。とりあえず香澄ちゃん、あっちの方に行ってくれれば安全だからさ」

「は、はい!わかりました!」

 

 

そう指示すると香澄ちゃんは俺が指定した物陰の方へいく。

 

 

「ちょっ!?何を勝手に!!!!」

「まあまあいいじゃないですか。それに成瀬先生知ってますか?この学校の校則って原則教員にも適用されるんですよ」

「なにが言いたいの・・・・?まあいいわ。見られたなら仕方ないわね。あんたたち!この男もやっちゃって!」

 

 

その掛け声で男たちが臨戦態勢に入る。

 

 

「気が短けえなあアンタ。校則8条、犯罪およびそれに類する行為をしてはならない。第10条、正当な理由なく第三者を校内に入れてはならない。2つも犯しちゃってますねえ」

「ゴチャゴチャうるせえんだよテメエ!死ね!!!」

 

 

話の途中であるが男が一人殴り掛かってきた。

 

 

「人の話は最後まで聞こうって習わなかったんですかねえ・・・」ドゴォ!

「舐めんじゃねええええええ」

「あ゛―!もううっせえなあ!お前が通っていた小学校では人の話を遮って相手に殴り掛かりましょうって教えているのか?めちゃくちゃバイオレンスだなあオイ」ドゴッ!

「アベガブゲゲゲゲガアアアアアアア」

「Wao!(ネイティブ)すっげえ悲鳴!」

 

 

拳を入れた瞬間きれいな放物線を描きながらスクリューして吹っ飛ぶ男を見て空気が変わる。

 

 

「オイ大丈夫か!?テメエ・・・ただじゃ置かねえぞ・・・・!」

「なーんで暴力しか能がない悪党ってみんな同じこと言うかねえ。俺は今成瀬先生と話してるんだけど・・・ま、おめえらと遊んでからでも話はできるかなあ・・・」

 

 

俺が見ている方向を成瀬から男どもに変更する。

 

 

「うーむ。しかしなあ、30にもなる男が集団で女襲うって恥ずかしくねーの?働いてんだろ?こんなことが職場にバレたまずいだろ」

「んなもん関係ねえよ。見たやつ全員ぶちのめせば終わりだ!」

「野蛮だねえ」

「ゴチャゴチャうるせえ!死ね!!!」

 

 

一応やさしさ(大嘘)で気遣ってあげたんだけどなあ・・・

そういうことなら仕方ない。

 

 

「オラアアアアアアアアアアアアア!」

 

 

一斉にかかってくる男ども。うーん、アホじゃな。

さっさと話しをしたいから全員一撃をノルマにするかなあ。

 

 

 

 

「うぐっ・・・・ぐぉぉぉぉぉ・・・・」

「まあこんなもんか。やっぱ素人やな」

「なにが・・・起きたの・・・・?」

 

 

積みあがる死屍累々。とはいっても7人であるが。向こうでの滞在中、任務で同時に10人に20人相手するのも珍しくなかった俺には物足りない。

しかも相手は言ってしまえば素人だ。

そんなことを考えていると成瀬が目を点にしてその場にへたり込むのが見えた。

 

 

「え・・・?全部一撃・・・?無傷・・・?ありえない・・・ありえない・・・・」

 

 

そんなこと言いながらブルブルと震えだす。

まあ誰だって武器を取り上げられて銃を突き付けられたらこうなるだろ。

まさに今、奴らの仲間という武器を取りあげたのだがら当然といえば当然か。

 

 

「さて成瀬先生よ、話をしましょうかね」

「ヒッ・・・・!」

「そんな怖がらないでくださいよ~俺はただ話をしたいだけですし~」

 

 

満面の笑みで近づく俺。日菜あたりに見せたら極悪な笑みとか言われそうだ。

 

 

「こ、こないで・・・・!なんなの・・・なんなのよアンタ!!」

「俺か?通りすがりだって言っただろ?そして・・・・単なる悪党狩りだ」

 

 

そしてついに決着がついた。

 

 

 

 

さて、後日談だ。

あのあと、成瀬は男共々逮捕された。成瀬は俺が撮っていた動画と香澄の持っていたボイスレコーダーが動かぬ証拠となり、男どももそれに伴い全員お縄。

集団で脅迫を企てたいうことで成瀬はその主犯となった。強姦までさせようとしたことだし、おそらく起訴されて実刑になるだろう。

そのあと俺は環境が変わらないように後片付けに奔走した。

まず色々情報を操作して成瀬は逮捕前に自主退職した扱いにする。そして弦巻さんの力を借りて警察・報道陣に圧力をかけて事件が明るみにならないようにしておいた。

 

 

「奏くん、こっちこっち!」

 

 

そして事件が発生し、成瀬が逮捕されてから数か月。

さすがに内部的にごまかせない部分があって、一時は非常に良くない雰囲気が流れていた学校も元気を取り戻してゆく。

そう、もうすぐ学校の一大イベントである文化祭だ。

その準備が進められており、開催まであと数日というところに迫っていた。

俺と香澄は見回りという名目でデートっぽいことをやっているといった具合だ。

 

 

「にぎやかだねっ!」

「ああ」

「奏くんはここの出身だったよね。何かやったの?」

「まあ人並みには。露店で食い物売ったくらいさ」

 

 

お気づきの方もいるだろうが俺と香澄の関係はここ数か月で変わった。

まずは呼称。付き合うのにさすがにせんぱい呼びはないなということで今の形に収まった。

そしてそれ以上の進展はというと・・・・デートで手をつないだくらいでそれ以上はない。

お互いに初の相手ということで、どこまで距離を詰めていいのか・・・勝手がわからないのだ。

 

 

「結構大きい規模でやっているから楽しめると思うよ。準備期間をかなりとるし」

「そうだよねっ!めちゃくちゃ力いれててびっくりしたもん!」

 

 

さて、こんな風に明るさを取り戻したように見える香澄。

しかし一度負った傷はなかなか消えないようで、かなりマシになったがやはりどこか陰があるような感じが続いていた。つまり、キラキラドキドキを取り戻せていないのだ。

成瀬の正体を目の当たりにし、さらに逮捕という最悪の結果を迎えたことで、心の優しい香澄はやはりショックを受けているのだろう。

そして俺は頭の中でどうやったら香澄がそれを取り戻せるかをずっと考えているがなかなか思いつかない。

 

 

「さて、そろそろ戻ろうか」

「そうだね!」

 

 

一通り見回りを終えて職員室に戻ろうとする俺。

しかしそこで何かが聞こえてきた。

 

 

「これは―」

 

 

香澄がその音にすぐに反応する。

耳を澄ませて聴く。このメロディを俺たちは知っているからだ。

 

 

「夢見るSunflower―」

 

 

香澄がつぶやく。そう、それはPoppin’Partyの持ち歌であった。

香澄たちが作り、そして歌ったものだ。

俺たちは顔を合わせ、その音がするほうへと向かう。

 

 

「あれ?香澄ちゃんと奏也せんせー?」

 

 

そこにいたのは軽音部でガールズバンドを組んでいる生徒たちだった。

それぞれリードギター、ギター、ベース、キーボード、ドラムに分かれて音楽を奏でている。

 

 

「コラ、戸山先生でしょ」

「神剣先生でしょ」

「あはは、ごめんなさーい」

「文化祭の練習?」

「はい!」

「その曲は・・・・?」

「あ、これはですね!この辺で伝説になっているPoppin’ Partyっていうガールズバンドの曲なんです」

「で、伝説・・・?」

 

 

香澄が少しひきつった顔で復唱する。

話を聞くところによるとこうだ。

今現在でもこの町ではガールズバンドは大人気であるのだが、その中でも火付け役となった伝説とよばれる5つのバンド。

そのうちの二つであるPastel*PalletとRoselia知名度があるので顔も名前も知れ渡っている。しかし残りのPoppin’ Party、Afterglow、ハロー、ハッピーワールド!はプロデビューをせず、一部を除いて今はひっそりと社会人バンドとして続けてるにすぎないので、ライブハウスに音源が残っている昔の曲は知っていてもメンバーのことがわからないという感じになっているらしい。

確かに曲は知っていても歌っている人の顔はわからないってよくあるよな。(ドラマとかアニメの主題歌とか)

プロ歌手ならまだしも地元のガールズバンドでこのパターンを見るとは・・・・

 

 

「でもここのコードが難しくて・・・」

 

 

そしてボーカル&ギターの子は自分の演奏に納得がいっていないようだ。

 

 

「あ、これはね、こうしてこうすると・・・・・」

 

 

すぐさま香澄が反応する。そして教えたとおりにやると、どうやら上手くできたようで生徒に笑顔が広がる。

 

 

「すごい!香澄ちゃんもしかしてギター経験者?」

「だから戸山先生だよー・・・ま、いっか。んーまあそんなようなもんだよ!」

「経験者どころかその曲を・・・・」

「神剣先生」

 

 

つくったのは香澄たちだ、と言おうとしたところで止められた。

“いわないで”ウインクしてアイコンタクトを送る香澄。

それに俺は静かにうなずいた。

 

 

「じゃ、みんな本番頑張ってね!」

 

 

そういって練習室を後にする。

 

 

「言わなくてよかったの?」

「うん。本人の前でその人の曲をやるのってものすごいプレッシャーだし、私は伝説なんて呼ばれるような人じゃないし・・・・」

「そんなことは・・・・」

「ううん、わかってるよ。いや~しかしでも若いっていいね~!」

 

 

おどけてそんなことをいう香澄であったが、やはり少し陰がある様子だ。

しかし、それと同時にその姿はどこか生き生きとしているように見えた。

その後別れて帰宅し、そんな香澄の姿を見た俺は色々考えた結果あることに気づく。

 

 

「そうだよ・・・なんでこんな簡単なことに気づかなかったんだ。キラキラを忘れたならキラキラを知ったきっかけをもう一度・・・・あ、もしもしおたえか?うん、実は相談したいことがあって・・・・

 

 

大好きな香澄を助けるために。もう1回、色々とやってみようじゃないか。

俺は考えていたことをおたえに話して、そして計画を実行すべく考えを巡らせたのであった。

 

 

 

時は文化祭当日。

「全員が平等に楽しむ」がコンセプトなだけあって、教員も基本的な見回りがあるだけで、あとは生徒同様の自由が与えられていた。

俺たちは例の軽音部の子を見に行こうと話し、激励するために控室にいったわけだが・・・

ここで一つ問題が起きたようだ。

 

 

「どうしたの?」

「あ、香澄ちゃん・・・」

「だーかーらー戸山先生!」

「あの、この子が・・・・」

 

 

話を聞くにボーカル&ギターの子が昨日から風邪をひいてしまい、喉をやってしまったらしい。

それでもなんとか1曲だけだし・・・と思っていたら今日の朝起きてみると、なんと声が全くでなくなったらしい。

しかも体調もあまり芳しくないようで、ギターを持つ手は震えている。

 

 

「だから演奏は無理だって!来年もあるし、今回はゆっくりやすも!」

「で・・・でも゛・・・わだじは・・・・いい・・・・でも・・・そのぜいでみんなが演奏できないのは・・・・」

 

 

ガラガラにかすれた絞るような、泣きそうな声でいう。

そんな彼女の姿をみるといたたまれないのか他のメンバーも黙ってしまう。

その様子を見て俺も何とも言えない気分になった。

今日のために、そのたった1曲のためだけにどれだけ練習してどれだけ楽しみにしてきたのだろう。

それを想像するだけで胸が締め付けられるようだ。

 

 

「ねえ、演奏するのはさ。夢見るSunflowerなんだよね?」

「え・・?そうですけど」

 

 

香澄が突然口を開きこんなことを聞く。

どうするつもりなんだろうか・・・・?

 

 

「ねえ、あなたのギター。私に貸してくれるかな?」

 

 

そういうと、ちょうどバンドの順番が回ってくる。

そしてそのままメンバーの子たちと何かを話したと思ったら。

香澄はそのまま舞台へと上がっていったのであった。

 

 

 

その姿には。

 

失われたはずの輝きの鼓動をかすかに感じるようであった。




次回こそ香澄編最終回!
最後までよろしくお願いします!


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最終話 澄み渡るキラキラの香り

本当に最終回です!


「こんにちは軽音部です!」

 

 

舞台に上がり、ボーカルの子からギターを預かった香澄は高らかにそう宣言する。

そして普段教壇に立っている教師が突然ギターを抱えて上がったことにざわつきがあがった。

 

 

“あれ?香澄ちゃん?”

“なんでギターを持って・・・?”

“なにが始まるんだ?”

 

 

いやマジでなにが始まるの?

まあ雰囲気で何となく察してはいるけどさ。これは・・・俺的にはいい流れかもしれませんね。

 

 

「お~!みんななんで戸山が?って顔してますねえ~!実は軽音部のギター&ボーカルの子が急病で私が代役で歌って演奏します!」

 

 

“マジで!?”

“いいぞー!”

“香澄の歌声めっちゃレアじゃない!?”

“おお、ギター弾けたんだ!”

 

 

香澄のMCはとにかくうまい。

さすがPoppin’ Partyのボーカルだ。MCが進むにつれて観客の生徒たちもなかなか見られないレアな光景にドキドキしているようだ。

 

 

「1曲だけだけど聞いて下さい!夢見るSunflower!!」

 

 

そして演奏が始まる。さすが持ち歌だけあって演奏は全く問題ない。

そして歌声もまったく衰えを感じないのだ。

そんな彼女の姿は―

 

 

とってもキラキラしていた。

 

 

 

 

「ありがとうございました!!」

 

 

湧き上がる拍手・歓声。ほかのメンバーも、物陰に控えているボーカルの子もとてもうれしそうだ。

 

 

「いや~実は私、昔バンドやってまして。こんな大勢の人の前でやるの久々だったから緊張したよ~しかもぶっつけ本番!!でもできてよかったです!!ありがとうございました!!」

 

 

もう歓声が鳴りやまない。それほど香澄は輝いていたんだ。

 

 

「なんだ、俺がやるまでもなくキラキラしてるじゃないか・・・・」

 

 

そんなことを呟く俺。香澄は確実にいい方向へと向かっている。

よし、せっかくだ。最後の一押しで俺の計画も実行させてもらおうじゃないか。

 

 

「さて!本来は今のバンドでラストのはずでしたが、ここでサプライズゲストの登場です!せっかくですので、戸山先生はそのまま舞台にお残りください!」

 

 

俺が事前に司会者に話していた計画が実行される。

香澄はが舞台に上るのは想定外だったが、どうやらアドリブをきかせてくれたようだ。

 

 

「え?え?」

 

 

香澄はわけがわからないようで舞台上で困惑している。

そして実行委員が次々に機材を運んでくる。

 

キーボド、ドラム、アンプ。

すでに設置してあるにも関わらずそれが撤去され、新しいものが設置される。

 

 

「あれ・・・?このキーボード、ドラム・・・どこかで・・・・・ってあああああああああああ!!!」

 

 

ふっ、どうやら気づいたようだな。

 

 

「それではご入場いただきましょう!本日のスペシャルゲスト!Poppin'Partyの皆さんです!!!」

 

 

 

その刹那ものすごいどよめきが起きる。

本物なの?マジ?など色々と聞こえてくる。

 

 

 

「いや~どうも~」

「わぁ、凄い人!」

「うーん、テンション上がってくるねえ~!」

「これだけ人がいるところでライブやんのは久々だな~」

 

 

そこに現れたのはおたえ、りみちゃん、沙綾ちゃん、有咲ちゃんであった。

 

 

「香澄、久しぶり・・・ってわけでもないか、私は」

「私は久しぶりだよ~!ね、香澄ちゃん!」

「私もけっこー久々だなー」

「最近香澄、パン買いに来ないしね~」

 

 

どれくらいぶりの勢ぞろいなんだろう。

香澄はまだ驚いた顔をしている。

 

 

「おたえ、りみりん、有咲、さーや・・・なんで!?」

「お、驚いてるね~香澄。おたえにね、呼ばれたんだ」

「奏也がね、香澄が最近元気ないっていうから。私達も全然あえてなかったしちょうどいい機会だと思って」

「うん!一緒に演奏するのめっちゃ楽しみにしてた~!」

 

 

いや~ほほえましい。やっぱポピパは5人揃うといいねえ~癒される。

 

 

「はい。香澄」

「え!?ランダムスター!?なんで!?」

「なんでって香澄、うちのスタジオに楽器預けてたでしょ?持ってきた」

「あ、そっか」

「香澄、やるよな?」

「有咲・・・」

「香澄が色々大変だったって奏也さんに聞いてさ。なんつーか・・・力になれなくてゴメンな」

「え!?有咲は悪くないよ!?」

「それでもさ。だから今日は思いっきり演奏してさ。楽しい思い出、つくろうぜ?」

「う~・・・あーりーさー!」

「だー!みんなが見てる前で抱き着くなあああああ!!」

「みんなが見てないところならいいの?」

「そ、そういうことを言ってんじゃねー!お前大人になってもホント変わんねーなー!」

「「「「「あはははははは!!!」」」」」

 

 

ポピパのみんな。観客のみんな。笑い声が響く。

ああ、これだ。この感じだ。

 

 

「ねえ、香澄。やるのはこの曲いい?」

「えっと・・・あ、これ!」

「うん」

 

 

そして舞台上で5人は示し合わせ、それぞれの持ち場につく。

 

 

「えっと改めまして!Poppin' Partyです!みんなからしたら青天の霹靂って感じだと思うけど・・・私もです!」

 

 

ドッっと会場が笑いに包まれる。

 

 

「ま、細かいことはいいよね!今はこの場を目いっぱい楽しもう!聴いてください・・・前へススメ!」

 

 

その香澄の姿はすごかった。

また香澄は輝ける。キラキラドキドキをできるはず。

・・・・今歌っている姿をみて、なんとなくだけど俺はそう思った。

そう、香澄の見る景色。そこには見渡す限りに揺れる輝きがあり、そして香澄自身も輝いているから。

 

 

こうしてサプライズポピパライブは大盛況で終わった。

 

 

 

 

「ふぅ~!さすがに疲れたよ」

「お疲れ様」

 

 

ライブが終わって生徒たちに囲まれて、質問攻めにあった香澄はようやくそこから抜け出したようだ。

今俺たちは人目のつかない文化祭のはずれでお茶を飲みながら休憩している。

 

 

「まあ伝説って言われてるポピパがきて、しかもそのメンバーが身近にいた先生ってなればみんな興奮するだろうなあ」

「これってみんな奏くんが私のためにやってくれたことなんだよね・・・・?」

 

 

香澄が少し落ち着いた感じで聞いてくる。

 

 

「ああ。香澄のために何かできないかなって思って。やっぱ香澄といえばライブだと思ったからね。それでおたえに相談してさ」

 

 

 

以前おたえから聞いたことがある話。

ポピパを結成してちょっとしたとき、香澄が歌えなくなった時期があったらしい。

そんなとき、ポピパみんなで励ましあい、みんなで歌い、そして輝きを取り戻した曲。

それがあの前へススメ!だ。

これはある意味再現のようなもの。どうやら上手くいったようである。

 

 

「うん。楽しかったよ。すっごく。奏くんにも、おたえにも、りみりんにも、有咲にも、さーやにも・・・感謝してもしきれないなあ」

「すごくよかった。香澄はやっぱそうやって元気で歌って、笑っている方が可愛い」

「可愛い!?もう奏くんったらそんなこと急にいうの反則ー!」

「本当のことを言って何が悪い」

「うぐっ・・・・!鈍感なくせにこういうときだけこの人は・・・・」

 

 

ああ、やっぱりこれだ。香澄はこうでなくっちゃ。

一喜一憂して色々な表情を見せる香澄がとにかく可愛くて、そして愛おしくて。

気が付けば俺は香澄の目をじっと見つめ、肩を優しくつかんでいた。

 

 

「そ、奏くん・・・・?」

「ねえ香澄。目、閉じてくれないか・・・・?」

「は・・・・・・・はい」

 

 

香澄は目を閉じるそして俺は徐々に接近して、ついに―

 

 

 

 

俺と香澄の唇が重なった。

 

 

 

 

その時間は永遠に感じるほど長くて、でも短い。

形容しがたい幸福感に包まれた俺たちは、ただただそれに酔いしれていた。

 

 

「ぷはっ!・・・・しちゃったね」

「ああ・・・にしてもずっと息止めてたのか?」

「だって初めてなんだもん!はっ!?まさか奏くんはすでに経験済み!?私は何番目の女なの!?2番目!?3番目!?」

「お、落ち着かんかい!・・・・香澄が初めてだよ」

「・・・・///奏くん・・・・」

「香澄・・・・」

 

 

そして俺たちの顔は再び近づ―

 

 

 

ガサガサ!

 

 

―くことはなかった。

俺は後ろの茂みで気配を感じたのだ。

 

 

「あっもう。ほらぁ、有咲が押すから」

「私のせいか!?そもそもこんな小さい茂みに4人入るのが無理だったんだよ!」

「あはは・・・・狭いもんね」

「あー・・・みんな。前前」

「「「あ・・・・」」」

「なにしてんのキミたち」

 

 

そこにはポピパのみんながいた。

 

 

「いやー・・・香澄を探してたらこっちにいくところを見つけて。ついていったらまさか奏也さんと・・・・ねえ・・・?」

「まさか奏也さんと香澄が付き合ってたなんてなあ・・・」

「奏也、香澄。水臭い。私、なんの相談も報告も受けてないよ?」

「ウチ、めっちゃびっくりしたあ~それにさっきの思い出すと///」

 

 

うーーーーーーむ。

これはアレだな。全部見られてたというわけか。

 

 

後ろを見ると石化したように動かない香澄。

そのさまはまるでメデューサにやられたようだ。

 

 

「ということだ香澄。見られてた」

「いやあああああああああああああああああああああああ恥ずかしくて死ぬうううううううううううううう」

 

 

そうやって現実を突きつけると、香澄は我に返った途端顔を真っ赤にして地面をゴロゴロ転がり悶えていたのであった。でもそんな香澄も可愛い。

 

そしてこの日。

香澄はかつての輝きを取り戻し。俺たちの関係も間違いなく進んだ。

これからはずっと俺が守っていく。

戸山香澄という女の子すべてを、俺の全存在をかけて。

何のためらいもなくそう思えた、そんな夜であった。

 

 

 

 

あれからさらに時間は経つ。仕事も香澄との関係もすべて良好。

あれから色々働いた結果、三科高校の教員不足はなんとか解消され、それに伴って俺の教員としての生活は終わりを告げた。

それでも俺と香澄の関係が変わるわけではない。俺は通常通り弦巻家で仕事を受け、香澄は教員として子供たちに色々なことを教えている。

そんな俺たちが休みのある日、俺たちは普段とは雰囲気の違うところに遊びに来ていた。

そして夜はめちゃくちゃ高いビルにある個室レストラン。この日のためにセレクトした店だ。

 

 

「わぁ~凄い景色!でもなんで?今日は私も奏くんも誕生日じゃないよ?」

 

 

その質問に対してい俺は少しこわばる。そしてポケットに手を突っ込みガラにもなく緊張する俺。

 

 

「いや・・・まあ色々あってな」

「色々?なんだろー?」

 

 

大体こういう感じって察するもんかと思ってたけど、香澄はマジでわかっていないようだ。

・・・・よしっ!意を決せ神剣奏也!

 

 

「香澄、これを見てくれないか」

「・・・?」

 

 

俺は小さな箱を出す。そしてそれを開くと、一言だけ言う。

 

 

 

「家族になってくれませんか」

 

 

 

 

時はさらに経つ。

俺と香澄の苗字が一緒になり1年くらいたった頃、仕事から帰ると玄関先で香澄がソワソワしながら待っていた。

 

 

「あれ?香澄どうしたの?今日は仕事じゃ?」

「うん、ちょっと調子悪いから早退してきたの」

「えっ!?ならここにいちゃダメじゃないか!早く中に入ろう」

 

 

慌てて俺は香澄を家の中にいれようとした。

しかし香澄は動く様子はない。

 

 

 

「あのねっ、調子が悪い理由・・・なんだけどねっ・・・!」

「・・・・ん?え、まさかヤバい病気とか・・・・?」

「あ、違うの!あの・・・えっとね。実は・・・家族が増えるんだ!」

「・・・・あの・・・それって・・・そういうこと・・・なんだよな?」

「う、うん。できました///」

「よっしゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

 

 

 

 

 

さて、俺と香澄のお話はここまでだ。

出会い、別れ、また出会い・・・そして家族になって、その家族が増えて。

世界はこんなにも輝いている。あの時から、そして今も。

香澄のおかげでキラキラドキドキっていうのかな。そんな幸せな日々を送れている。

 

 

「なあ香澄、今幸せか?」

 

 

すやすやと眠る我が子を抱きながら座る香澄に問いかける。

 

 

「なーに?急に~?」

「いや、なんか聞きたくなった」

「なにそれ!でもそうだねえ~うん、最高に幸せだよ!奏くんは?」

「ああ俺も」

 

 

 

「最高に幸せだ」

 

 

 

~fin~

 




おかげ様で香澄編の最終話を迎えることができました!
当初は3話くらいの短編をやるつもりが書いていると楽しくなって知らぬ間8話という本編の章より長いという結果に(笑)
まだ二人残ってるんですけど・・・書ききれるのか?私?

個別ルートということでいつもの勧善懲悪をだしつつ、結末もかなり好きに書かせてもらいました!
こんな結末は・・・皆様の好みでしたでしょうか?

結構初の試みなので感想などいただける嬉しいです!

不定期になりますが、それでは引き続きよろしくお願いいたします!


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丸山彩個別ルート-彩りのロストメモリー-
第1話 山は丸いとは限らない


新章スタート!





「ふう温泉はいいね~」

 

 

俺は帰国後、弦巻さんの気遣いで地元から少し離れたとある山奥の温泉旅館へ来ていた。

長らく日本の温泉に浸かってなかった俺はお言葉に甘え、ただいま単独プチ旅行といった感じで束の間の休息を楽しんでいる。

 

 

「日本人に癒しはあってしかるべきだと思うんですよね、そう思いませんか?」

「ウキ?」

 

 

あ、人だと思ってたら野生の猿じゃねえか。

 

 

「こいつは失敬」

「・・・ウキッ」

 

 

サルは何か分かったような顔をして温泉を後にしていった。

あ、実際の野生サルは凶暴で非常に危険だからな!見つけても近づいたり食い物わたそうとしたりしちゃダメだからな(戒め)

筆者が墓参りの時お供えものを狙ったサルに出くわして”こわいおもい”をしたらしいからな!

 

 

「うわ~広いなぁ~」

「滑って転ばないでよ~」

 

 

そんな中、鳴り響くは女性の声。

いかんな。今の時間帯、この温泉は混浴。誰も来ないだろうと踏んでいたが予想外のイベントだ。

とりあえず変態扱いされて御用なんてゴメンなので声を上げることにした。

 

 

「すみません!男一人入ってます!見ないようにするんで!」

「えっ!?なんで男の人が!?」

「彩ちゃん。この時間はここ、混浴だよ」

「うぇ~アイドルが混浴なんてマズイよ~!」

 

 

ん??????

なんだこのやけにこころに響く癒しボイスとトラブルを運んできそうな不吉な声は・・・聞いたことがあるぞ・・・・?

 

 

「大丈夫大丈夫!だってアレ、奏也だもん!」

「やっぱり日菜か!!!!!」

 

 

思わず俺は立ち上がる。

 

 

「ということは隣にいるのは彩か!いや~久しぶりだな。まだ帰国の挨拶に行けてなかったよ。すまんな」

「あっあっあっあっ・・・/////」

「なんだよ彩、ハトがマテリアルバースト食らったみたいな顔しやがって」

「あのっ!奏也くん・・・会えたのは嬉しんだけど・・・その・・・前・・・・////」

「は?前?フロント?」

 

 

何かがおかしい。そして日菜よ、なぜおまえは笑いをこらえながら顔を背けている?

 

 

「前・・・前・・・前」

 

 

前にはタオルを巻き付けて恥ずかしがる彩。

まあ混浴だからね。こんな格好にもなるよ。

そして俺自身を確認する。なんてことない、鍛え上げた体に加え股間に棒が1本ぶら下がっているだけだ。

特に異常ないじゃないか。うん。

・・・・・うん??????

 

 

「きゃっ・・・・」

「きゃあああああああああああああああああああああああああああ」

「あはははは!なんで奏也が彩ちゃんより先に悲鳴あげてるの(笑)」

「あああああああああああああああああああああああ」

「うーん、ぷくくっ・・・さすがに・・・くくっ・・・ここまでとは予想外だよ奏也・・・くくくっ・・・・!」

 

 

そのさまを見て俺はすべてを察した。

 

 

「日菜あああああ!お前ええええ!謀りやがったなああああああ!」

「そんなことはいいから隠してよぉ~~~~~////」

 

 

こうして俺と丸山彩は再会を果たした。

なんというか・・・うん、こんな形で。どうしてこうなった・・・

 

 

 

 

「おい日菜、改めて言うが謀りやがったな?」

「さっすが奏也、あの一瞬で見破っちゃうなんてさ」

 

 

話を聞くに今彩と日菜は二人で温泉ロケに来ているらしい。

それをいいことに弦巻さんに働きかけ、彩と俺を再会させるサプライズを企てたらしい。

そして今日は定休日で他の客はいないらしい。

道理で人にあわないと思っていたよ・・・・

 

 

「ん?そういやなんで俺が風呂に行くタイミングがわかったんだ?」

「そりゃ奏也、あたしたちの部屋ココだもん」

 

 

そういいながら到着したのは俺が止まっている部屋の隣。

 

 

「いや~ちょっと恥ずかしい思いさせるくらいで終わるつもりがまさかあんなことになるなんて・・・・くくっ・・・思い出したらまた・・・・ふふふ・・・」

「・・・・////」

 

 

彩はさっきからこんな様子で黙っている。

うーむ、どうにもやりづらい。そりゃ久しぶりに会ったやつのイチモツを見せられたらそうなるか・・・アレは確かに俺が悪いし。

 

 

「ま、いーや!あたしはもうひと風呂浴びてくるからさ!二人は積もる話でもしなよ!」

「あ、おい日菜!」

「待ってよ日菜ちゃあああん!」

 

 

俺たちの制止も聞かず、日菜は去っていった。

 

 

「・・・・とりあえず部屋に入るか。こんなところ見られたらアレだし」

「・・・そうだね」

 

 

 

 

「いやもうほんとさっきはすみませんでしたゆるしてくださいなんでもしますから」

「う、ううん!いいよいいよ!それに・・・さ。私は奏也くんにまた会えたってことの方が嬉しいかな」

「彩・・・」

「それに奏也くん、凄くたくましくなったね」

「まあ向こうで鍛えてたからなあ。彩もさ。すごくいい感じだ」

「え!?」

 

 

そう、今の彩には品格がある。

昔のようなオーラは健在で、大人の女性として、ベテランアイドルとしてのオーラが出ている。

 

 

「でもやっぱ彩は彩だな。おっちょこちょいなところもテンパるところも昔のままだ」

「もう~///誰のせいだと思ってるの~」

「悪い悪い」

「まったく・・・あ、そうだ奏也くん」

「ん?なんだ?」

「おかえりなさい!」

「・・・・ああ、帰ったよ。ただいま、彩」

 

 

交わされる言葉。

彩の声を聞くとやはり帰ってきたんだと実感する。

 

 

「ずっと日本なの?」

「まあ仕事次第では海外もあるだろうが拠点はそうだな」

「よかった!昔言ってた役目、ちゃんと果たせたんだね!」

「・・・ああ。・・・彩もさ」

「え?」

「彩も理想のアイドル、やれてるか?」

「うん!奏也くんが海外で頑張ってるって思って私も頑張ったよ!今はお仕事も沢山あって、すごく充実してる」

 

 

よかった。話しててだんだんと実感する。やはり彩は彩だ。

何も変わらないし、ただひたむきに純粋な笑顔を振りまく彩のままだ。

 

 

「ま、これからもよろしくな」

「うん!」

 

 

その後しばらく世間話に花を咲かせる俺たちであった。

・・・のだがしばらくすると彩がそわそわしだした。

 

 

「どうしたんだ・・・?」

「あ、足が・・・・・」

 

 

この様子・・・

どうやら足がしびれているようである。

 

 

「おっ・・・大丈夫か大丈夫か」

「えっ!?なんで人差し指を出しながら近づいてくるの!?」

「そりゃお前お約束ってもんだ。俺がいた国のコメディだったらむしろやらないと失礼ってもんだ」

「ここ日本!だめ!つんつん!ダメ、ゼッタイ!」

「違法薬物の啓発みたいに言っても逃げられないゾ」

「いーやーあー!」

 

 

このあとメチャクチャつんつんした。

・・・・のであるがここで思わぬことが起きた。

 

 

「もうっ・・・やめてってばあ~ってきゃあ!」

「えっちょまま」

 

 

ゴチーン!

 

 

「ぬごおおおおおおおおおお・・・・」

 

体勢を崩した彩はそのまま俺に倒れ掛かる。そしてそのまま頭が俺の頭に落ちてきたのだ。

アイドルにあるまじきうめき声をだして悶える彩。ちなみに俺は鍛えているので痛みをあまり感じていない。

 

 

「す、すまん彩。さすがに調子に乗りすぎた。大丈夫か?」

「い゛だい゛」

 

 

しかしこの体制、非常によろしくないな。端からみたら彩が覆いかぶさって俺に抱き着いているようにしか見えない。

・・・・なんか記憶にあるぞこの流れ

 

 

スパンスパン!

 

 

「いや~つい長湯しちゃったよ!二人とも話はできたか・・・・な・・・・?」

 

 

勢いよく開かれるふすま。そして現れた日菜。俺に抱き着いている(ように見える)彩。加えて無抵抗の俺。

日菜は固定された笑顔のまま俺たちを見下ろす。

あっ・・・(察し)

 

 

「・・・・ごゆっくり~」スーッ

「待てええええええ違うんだ日菜ああああああ!!!」

「日菜ちゃああああん!無言でふすまを閉めないでえええええええ」

「おい、彩!立ち上がろうとしたらまた・・・・」

「あしがああああああああ」

 

 

ゴチーン!!

 

 

「ぬごおおおおおおおお・・・・」

「・・・お主、さてはアホの子じゃな・・・・」

 

再び倒れこむ彩。そして少し痛みを感じる俺。

うん。

 

や っ ぱ り こ う な っ た 。

 

このあと誤解を解き、ニヤニヤしながら彩をいじる日菜も加わって三人で話に勤しんだのだった。

 

 

 

 

「ふう、喋ったら疲れちゃった」

「あ、俺飲み物買ってくるわ。二人もいるか?」

「あ、じゃああたしふつーのお茶で!」

「じゃあ私は・・・なににしよ」

「なんなら彩ちゃんも行ってくれば?あたし待ってるからさ!」

「そうするか?」

「そうだね。じゃあお供します!」

 

 

部屋を後にする俺たちはフロン近くにある自販機へと行く。

どうやらこの温泉旅館、いわゆる秘湯的な感じでちょっと時代を感じる作りになっている。ルームサービスも終わっている時間帯なので飲み物の入手は、フロント付近にある自販機まで行かねばならないのだ。

・・・秘湯がロケやっちゃ秘湯にならない気がするのだがまあ細かいことはいいだろう。

 

 

ガサゴソッ

 

 

「・・・・なんだ」

「そ、奏也くん・・・」

 

 

それは気配。

常夜灯に照らされるフロント。

今確かに物音がして人の気配がしている。

 

 

「多分スタッフだろ」

 

 

彩を安心させるためにそう言うが明らかに気配が違う。

これは・・・よくない気配だ。

 

 

そして俺は目をこらす。するとその足元には・・・・

この旅館の制服を着て倒れている人と、全身真っ黒な服を着てフロントを漁る男の姿があったのだ。

 

 

「えっ・・・あれって・・・?」

「彩、見るな。すぐに部屋に戻れ」

 

 

そういうがすでに遅かった。

足元に倒れている人と不審者を視認した彩は恐怖のためか腰が抜けてしまったようで、その場にへたり込んでしまった。

そしてその物音を聞いた不審者は、こちらに視線を向けたのだ。

 

 

「あああ・・・・」

「みたなっ・・・!」

 

 

不審者は即座に俺たちの方へ走り寄る。

だがその走り方は素人。手に持つ刃物の握り方も素人。

まあこんな普通の温泉旅館に手練れがいたら怖いわ!ずっとそういうやつばかり相手にしてきたから過敏になってるなあ俺。

 

 

「・・・・!」

 

 

臨戦態勢になる俺。

しかし、次の瞬間。予想外のことが起きた。

 

 

「・・・・・」

 

 

タッタッタッ・・・・

 

 

「・・・・逃げるのかよっっっっ!」

 

 

そう、不審者はそのまま入り口に方向転換し、破ったと思われるドアから逃走を図ったのだ。

 

 

「待ちやがれ!」

 

 

俺は追う。この温泉は軽い山道を登った上にあるので自動的に山道を下ることになる。

日本の山道は走りなれてない俺であるが、まあこれくらいは余裕だろう。

 

 

「オラ!観念しやがれ!」

 

 

と、相手に言い放った刹那。

 

 

クンッ!

 

 

「なに!?」

 

 

不審者が躓いたのである。

しかし俺のスピードは殺せない。

俺はそのまま不審者に突っ込み・・・・そのままの勢いで崖下に落ちてしまったのある。

 

 

「いやあ・・・慢心はよくありませんねえ・・・・」

 

 

落下中、そんなことを考えながら落ちていった。

そして体に衝撃が走る。ふむ、どうやら高くない崖みたいだな。

しかしなあ・・・さすがにこれは

 

 

「キツイッス・・・・・」

 

 

俺はそのまま・・・

あろうことか意識を失ったのである。

 

 

 

 

 

目が覚める。そして最初に眼に映るのは白い天井だ。

 

 

「ここは・・・・」

 

 

あたりを見回す。

するとそこには一人の女性が涙ぐんでいた。

 

 

「奏也くん・・・!よかった、目を覚まして!」

 

 

察するにここは病院。

なるほど。僕は何らかの理由で意識を失い、そして病院に運び込まれたというわけだね。

 

 

「ずっとみていてくれたの?」

「あ、あたりまえだよ!」

「そうか。じゃあ一つ聞いてもいいかな?」

「いいよ!」

「あなたは・・・・僕のお知り合いの方でしたっけ」

「え・・・・?」

「いやー・・・なんも覚えてないんですわ。まいったね、こりゃどうも」

「ええええええええええええええええええ!?」

 

 

というわけでなんか色々と忘れてしまった今日この頃。

かわいらしい声で奏られる悲鳴を聞きながら、この病室の窓から見える風景をみていた。




2人目は丸山彩編!
前回はリサ→彩→香澄の順番だったので、今回は逆ということで進めてまいります。
今までありそうでなかった記憶喪失モノです。
最後まで書ききれるんですかね・・・・?


また、前回はたくさんの感想、評価ありがとうございました!
ものすっごく励みになります。
引き続きよろしくお願いいたします。


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第2話 ワイルドで悪い顔

筆者に医療知識はまったくございません。
故にこの小説で登場する医療に関する知識は物語の用意されたフィクションとお考え下さい。


●オリキャラ解説
私が執筆し完結した「偽りの幸せとクズの結末」の主人公である弓神陽葵がゲスト出演しています。
こっちを読んでいなくても話は分かりますのでご安心ください。


僕の目覚めから1日たった。

あれから聞いた僕を担当する医者、研修医、そしてやってきた警察官の話。

そして丸山彩さんと名乗る女の子に話を聞くに、僕は不審者を追って崖から転落してしまったらしい。

不審者は間一髪、崖下には落ちずそのまま逃走。

対して僕であるが、どうやら相当体を鍛えていたみたいで、幸いそんなに高い崖でもなかったため大きなケガはない。しかしショックは大きく、それで記憶を一時的に失っている状態だとか。

まあ鍛えていたとはいっても普通の人なら骨を数本折っていてもおかしくないといわれてちょっと血の気が引いたけどね。

ありがとう、記憶を失う前の僕。

 

 

「あの・・・・奏也?」

 

 

本日は実に気持ちがいい。

目覚めはバッチリ、落下で負ったであろう外傷はほとんどない。

そして病室には世間では大人気らしいアイドルグループのメンバーが集まっている。なんて華やかで気持ちがいい空間なんだろう。

そう、ただ一つ僕自身が彼女たちのことをすべて忘れているという点を除いてはね。

 

 

「えっと・・・奏也くん?私のことわかるかしら?」

「・・・・・」

「奏也くん・・・?」

 

 

おや、どうやら僕が呼ばれているらしい。

あ、そうか。僕の名前は神剣奏也というんだったね。

 

 

「ああ、ごめんね。まだ呼ばれ慣れてなくて。えっと・・・白鷺さん・・・だっけ?」

「白鷺さん・・・ね。本当に覚えていないのね・・・」

「ごめんね」

 

 

謝ると白鷺さんは複雑そうな顔をする。

 

 

「ふーん・・・奏也、ほんとになんにも覚えてないんだ・・・」

 

 

対して氷川日菜さん。

僕+丸山さんと一緒の旅館に泊まっていたらしい。

さらにそうなることをセッティングしたのは他でもない彼女らしく、丸山さん曰くかなり責任を感じているようだ。

 

 

「ほんとごめんね奏也!あたしができることだったらなんでもするからさ!」

「そう謝らなくても大丈夫だよ?話を聞くにキミは何も悪くないし、一時的なものだろうしね。それよりも可愛い顔をそうやって曇らせちゃう方が僕には辛いかな」

「・・・・・・・・・・・・・は?」

 

 

ん?何か僕、変なこと言ったかな?

氷川さんは心底驚いた顔をしており、白鷺さんは何故かゴミを見るような顔をしている。

そして丸山さんは顔を真っ赤にして口をパクパクさせている。

 

 

「えっと・・・・・」

 

 

と、言葉を発そうとしたところで病室のドアが開く。

 

 

「失礼します。奏也、調子はどうだい・・・・ってなんで美女百面相が繰り広げられてんのココ」

 

 

入ってきたのは研修医の弓神陽葵(ゆがみ はるき)先生だ。

僕と同年代、そしてどうやら氷川さんと良い仲らしい。

 

 

「細かいことはいいじゃないですか。それで先生、僕は相変わらずですよ」

 

 

よくわからない不穏な空気が怖かったのでとりあえずごまかしておいた。

 

 

「僕・・・ねえ。一応検査の結果を持ってきたけど、やっぱり一時的な記憶喪失みたいなんだよね」

「じゃあすぐに戻るの?」

「悪い日菜・・・それがわからない。人の記憶って結構デリケートでね。なにかのきっかけで思い出すかもしれないし、時間がかかるかもしれない。とりあえず外傷はないしレントゲン・CTの結果も良好。退院して日常生活に戻ったほうがいいだろうね」

 

 

と、いうことで日常生活に戻ることを勧められた僕。

ぶっちゃけやることないし、それに従うようにした。

数日後、退院手続きを取り病院を後にする僕。ありがたいことに丸山さんと氷川さんが仕事を安んで色々と世話をしてくれた。

 

 

「よしじゃあ帰ろうか。ごめんね、付き合わせちゃって」

「ううん!全然いいよ!私たちにも責任あるし・・・・」

「そうそう!でもやっぱその奏也の口調、落ち着かないなー。あたしが言えた義理じゃないけどさ」

「前の僕ってどんなんだったの?」

 

 

ふと疑問に思い聞いてみた。

 

 

「んーなんていうかワイルド?」

 

 

それが丸山さんからみた僕。

 

 

「そうだなー・・・なんていうか悪い顔!」

 

 

それが氷川さんの意見。

 

 

「ワイルドで悪い顔って・・・・ええ・・・・メチャクチャ悪人ってことか・・・?何やってたんだろ僕・・・・」

 

 

そんなことを考えながら僕は歩き、分かれ道に来たようで丸山さんが言葉を発した。

 

 

「じゃあ、私はここで」

「あたしもこっちだから」

「うん、二人ともありがとね」

「うん、バイバイ!奏也くん!」

「じゃあね!」

 

 

二人の背中を見送る僕。さて、僕も帰宅しようかな。

 

 

「・・・・・・・・・んん?」

 

 

そういえば僕の家どこだ・・・?

 

 

「いやあ、参ったなあこれは。よし、とりあえず逆立ちでもすれば考えが浮かぶかな?」

 

 

何故かわからないが道端で逆立ちをする僕。ひょいっとできるあたり体が鍛えられているのがわかるね。

そんなことを考えていると丸山さんが帰った方向から足音が聞こえてきた。

 

 

「ごめ~ん奏也くん!忘れてるってことは家もわかんないよね!?」

 

 

どうやら丸山さんは気が付いてわざわざ戻ってきてきれたようだ。

 

 

「うん、いや~助かったよ。おっしゃる通り途方に暮れていてね。丸山さんが来てくれて助かった」

「ほんとごめんね!送っていくから・・・・ってなんで逆立ち??」

「なんかこのほうが考えが浮かぶと思ってね・・・・あ」

「どうしたの奏也くん???」

「いやぁなんというかまあ・・・・」

 

 

逆立ちする僕。そして目線の先には丸山さんのスカートの隙間から、絶対領域の中が見えてしまっていたのだ。

 

 

「奏也くんどこをみて・・・・・・!?!?!?!?!?」

「いやっその、丸山さん、これはね、違うんだよ。事故というか不可抗力というか」

「み、み、見たんだよね!?」

「・・・・・さすが丸山さん。ふわふわピンク担当だけあってそっちもふわふわピンク担当なんだね」

「冷静に実況しないでよぉ~~~~~~~~!!!!!」

「ほんとごめん、ほんとわざとじゃないんだ!」

「だったらいつまで逆立ちしてるのぉ!早く戻ってぇ!」

「ま、丸山さん、蹴りは勘弁して蹴りはゴフォ!」

 

 

ああ、アイドルのキックを顔面に受けるなんてそうない経験なんだろうな・・・

特殊な趣味をもつ方々からしたらご褒美かもしれないね。

 

 

「フリフリまでついてるとは恐れ入った・・・・」

「~~~~~///ばかああああああ!」

「ゴフォオォォォォ!」

 

 

キックにより見えてしまったモノの感想を追加で言ったらおまけをもらってしまい、僕は完全に体制を崩して地面に倒れこんだ。

 

 

「・・・奏也が家の場所まで忘れてること思い出して戻ってきてみれば・・・なんで彩ちゃんが顔を真っ赤にしながら奏也の顔面にキックして地面を這わせてるのさ・・・・あれ、もしかして奏也・・・記憶を失ってそういうプレイに目覚めちゃった・・・?彩ちゃんも乗るってことは同レベル・・・?」

 

 

そういいながら現れた氷川さんは明らかにドン引きしており、後ずさりしていた。

 

 

「日菜ちゃあん!違うのぉ!」

 

 

まあ僕が悪いんだけどさ。

氷川さんの誤解を解くのはちょっと大変だった。

 

 

 

 

そして翌日、僕の雇い主である弦巻さんという人にあって事情を話した。

記憶がきちんと戻るまでは仕事は休んで構わないと快諾してくれた

しかしめちゃくちゃ大きい家だった・・・・・

 

 

「ん・・・・?」

 

 

その帰り道、マスクにサングラスをした男が道で僕を待ち伏せるようにして立っていた。

なんかやばい気配がする。

なんだろう、なぜだかわからないけど本能的に危険だと直感する。

 

 

「・・・・・!」

 

 

その刹那、その不審者は手に刃物を握り、僕の方へ向かってきた。

 

 

「えっえっえっ・・・ちょままままま」

 

 

あたふたすることしたできない僕。やべーよ!さすがに刃物はやばいって!なんで僕襲われてんの!?

 

 

「いやだぁー!」

 

 

そんなことを叫びながら敵に背を向けて逃げる僕。

 

 

「たーすーけーてー!」

 

 

しかしここはちょっとした町のはずれ。助けがくる気配はない。

しかし奴はまだ追ってくる。僕はがむしゃらに逃げるが、土地勘が失われているせいで袋小路に逃げ込んでしまい、逃げ場をなくしてしまった。

 

 

「ちょっとあんた話し合おう!僕がなにをしたっていうの!?」

「・・・死ね」

「質問に死ねで返すってどういう教育受けてるんですかぁー!」

 

 

ああ、僕はここで終わりのようです。このまま刺されて記憶が戻ることなく息絶えてしまうのですね・・・・

 

 

「・・・・・!?」

「え?」

 

 

なんて思っていたら不思議だ。奴の動きが手に取るようにわかる。

僕はそのまま奴が刃物を握る手を掴み、力で押さえつけていた。

 

 

「な、キサマ!」

「・・・・大したことねえじゃねえか」

 

 

ゴキッ!

 

 

「うぐおおおおおおおお!」

「チッ・・・折れてはないか」

「よくも・・・・やりやがったな!」

「なーに言ってんだクソ野郎。不意打ちナイフかました卑怯モンの分際でよぉ、やられたことに対してブツクサ文句言ってんじゃねーぞ」

「・・・・・覚えていろ!」

「捨て台詞吐くのは死亡フラグだってそれ一番言われてるから。待ちやがれ・・・・!?」

 

 

背を向け逃げるやつを追う・・・・ことは叶わなかった。

俺は・・・僕は突然めまいをおこし、その場にへたり込んでしまった。

 

 

「今の僕は・・・・なんだ・・・・?」

 

 

今、奴に対峙していた僕。ほとんど無意識だった。なぜこんなことに・・・?

そういえばワイルドで口が悪い・・・・

もしかして、あれが本当の僕?なんらかのショックで記憶がすこし戻りかけたのかな・・・・?

 

 

「ダメだ、これ以上思い出せない」

 

 

とりあえずアクションがあったことは確かだ。明日になったらこのことを病院で話そう。

それと不審者に襲われたこと・・・これは警察に通報したほうがいいんだろうか・・・?

そんなことを考えながら僕は、暫定的に僕のサポートをしてくれている丸山さんと氷川さんに相談すべく連絡を取ったのであった。

 

 

 

 

奏也くんから連絡があった。あろうことか刃物を持った不審者に襲われたって!

でもこころちゃんのお父さんや日菜ちゃんを交えて話した結果、警察への相談はしないことになった。なぜだかわからないけど・・・・

そして病院で奏也くんがその時経験したことを相談をしたところ、陽葵くんからはこんな回答があったのだ。

 

 

『多分、記憶を失う前によくやっていたことを体が覚えていて、脳がその刺激を受けて一時的に記憶を回復させたんじゃないかな』

『つまり記憶を失う前のできごとをすれば、戻る可能性が高まるということ?』

『さすが日菜、その通り・・・かもしれない』

『そっか!じゃあ・・・・・』

 

 

ということで私と日菜ちゃん、そして奏也くんは例の温泉旅館に来ていた。

 

 

「さあ、ここで奏也の記憶を取り戻すよ!」

「うん!がんばるぞー!」

「お手柔らかに頼むよ」

 

 

奏也くんの記憶を戻すためのプチ旅行再び。

で知らなかったんです。ここであんなことが起こるなんて・・・・

 




記憶喪失ものにしたはいいですがメチャクチャ書くの難しい・・・難しくない・・・?
いつも以上に駄文感はんぱない・・・

引き続きよろしくお願いいたします。


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第3話 かつての悪夢






「えー・・・・休館日?」

 

 

旅館に着くと旅館には休館の文字があった。

 

 

「あー・・・奏也にばっか気をとられてたけど、そういや従業員さんもケガしたんだった・・・そりゃお休みになるよね」

「日菜ちゃんにしては珍しいね、こんなミスするなんて」

「あはは、失敗失敗。どうしよーこれ」

 

 

いやあ参ったなあ、完全に抜けてた。

多分あたしなりに奏也のことで頭がいっぱいだったんだと思う。

でも今となっては言い訳かなー

 

 

「閉まっているものは仕方ないし、氷川さんの気持ちだけでも十分嬉しいよ。そうだね、せっかくここまで来たんだし自然を満喫しないかい?」

 

 

うーん、やっぱ調子狂うなあ・・・

でもせっかく提案してくれてるんだし乗っかるのもありかな。

このあたり、ハイキングコースもあるみたいだし。

 

 

「彩ちゃんはそれでいい?」

「私はそれで大丈夫!こんな自然の中ゆっくり歩くなんてことできないからね!」

「じゃあそれでいこうか。氷川さん、丸山さん、まずはハイキングコースに入ろう」

「あ、奏也。前から気になってたけどさ、その氷川さんってのやめない?」

「あー・・・丸山さんもちょっとなあ・・・」

 

 

私と彩ちゃんはかねてから気になっていたことを話した。

記憶がないとはいえそんな他人行儀にされるとるんっってこないしね。

 

 

「そうだなー・・・日菜さんと彩さん?」

「さん、もいらないよっ!」

「うん、なんか奏也くんに”さん付け”で呼ばれると違和感ある」

「そっか。じゃあ日菜、彩。いこうか」

「うん!るんっってきた!」

 

 

そんな感じであたしたちはハイキングに向かうべく歩き出した。

そこそこ距離があるけど歩きやすい山道。ぶっちゃけ到達するまえに満足しちゃうかもしれない。

 

 

「・・・・ん」

「どうしたの?奏也」

「いや・・・なんていうか。なんか嫌な感じがするんだよね」

 

 

そういえば。なんか空気が疼く感じがする。

これは敵意・・・・?そして

 

 

「・・・殺意。出てきなよ。もうバレてるからさ」

 

 

その気配がする方へ声をかける。すると覆面を被ってナイフや角材を持った人たちが四方八方から出てきて、あたしたちを囲んだのだ。

 

 

「大したもんだなァ・・・・・」

 

 

リーダー格と思われる男が声を出す。

 

 

「ようやくおでましって感じだね」

「ひ、日菜ちゃん・・・これって・・・」

「なんなだよこいつら・・・・」

 

 

 

実は、あたしはこころちゃんのお父さんから奏也のボディーガードの役割も仰せつかっていた。いくら奏也が最強っていっても記憶がないと限界があるっておもったから。

 

 

「・・・読んでいたのかねェ?」

「まあね。多分、どっかで来ると思ってた。けどここで来るとは予想外だったかな」

「カッカッカ・・・さすがだねえ日菜」

「・・・・?あたしのことを知ってるの?」

「そりゃあ今や大人気のアイドルグループの一員だからなあ・・・それに俺たち、昔会ったことがあるんだぜぇ?それに彩ァ!随分見ない間にキレーになったねえ。昔のあどけない感じもたまらなかったが今の感じもいい。思わず股間がおっきしちゃぜ」

「えっ・・・・・!?昔・・・私・・・?」

 

 

どうやら敵は彩ちゃんのことも昔から知っているようだ。

下劣で品のない言葉を突然ぶつけられた彩ちゃんは困惑している。

言われてみればどこかで聞いたことがある声な気がする。

 

 

「そして神剣奏也ァ!テメーに一番会いたかったよ・・・・俺をこんな目に遭わせたテメーになあ!」

「・・・・・うぇ!?僕たちどっかでお会いしてるんですか!?」

「ああそうか。今記憶がないんだったなァ・・・これは好都合だ。おい!まずはあの男を捕らえろ!今の奴なら数で押せば勝てる!」

「えっ・・・ちょっ・・・・」

 

 

狙いはやはり奏也!

 

 

「ぐぉぉぉ!」

「そうはいかないよ。確かに今の奏也じゃ数で押されたら厳しいかもね。・・・ま、あたしが一緒じゃなければだけど」

 

 

そういってはみるけど戦況は圧倒的不利。

足元が悪く、しかも奏也や彩ちゃんをかばいながらだと一度に相手にできる数には限界がある。

 

 

「馬鹿め!こっちだ!」

「しまった・・・!」

 

とにかく倒す。でもやっぱやはり数が多いね・・・・

 

下っ端を相手にしているとリーダー格の人が奏也に迫る。

奏也のところには彩ちゃんもいる。ここままじゃ・・・・!

 

 

「死ね!神剣奏也ァ!」

「やめっ・・・ぐああああああああああああああああ!」

「奏也くぅぅぅん!」

「奏也!!!!」

 

 

抵抗する間もなく攻撃を受ける奏也。

そしてそのまま山道を、斜面を転がり落ちていく。

そこは奇しくも・・・・奏也が転落し、記憶を失ったところだった。

 

 

「オラ、彩はこっちだ!」

「いやあああああ!」

「やめて!彩ちゃんを放して!」

 

 

形勢逆転。奴らの残った下っ端に彩ちゃんは捕らえられ、奏也は崖下で眠っている。

 

 

「おっと動くなよ?動いたら彩がどうなっても知らないぞ?」

「あなた達一体何なの!?なんで奏也や彩ちゃんを狙うの!?目的は何!?」

「お前に話すつもりはない。だが邪魔をするならお前も一緒に連れていく」

 

 

わからない・・・・ほんとうに分からない・・・・

考えてみれば付け狙われたのはあの日、旅館での事件があってからだ。さらにこの人達は彩ちゃんやあたしだけではなく6年もの間日本にいなかった奏也のことまで知っている。

しかもかなり強い恨みを抱いている様子だ。

待って・・・あの声、雰囲気。どこかで・・・・本当にどこかで・・・・・

 

 

「おい、神剣を回収してこい」

「わかりました」

 

 

リーダー格が下っ端に指示をする。そしてその人はその場を離れ、下にいる奏也のもとへ向かう。

くっ・・・でも彩ちゃんが人質になっている今は動けない。

じわじわと広がる不安。あたしはかつてない大ピンチに・・・嫌な胸の鼓動を感じていた。

 

 

 

「寝ちまったらそこらのつまんねー雑魚と一緒だなあ、テメエ。この前はよくやってくれたな。オラ、こっちへ来い・・・・な、な!?!?!?」

「えっ!?」

「どうした!?」

 

 

そんな声がした。上にいる全員は驚き、奏也が落ちた場所を見下ろす。

しかしそこには・・・・奏也の姿はなく、さっき降りて行った下っ端が倒れているのみだった。

 

 

 

 

この感覚を俺は知っている。

 

 

「奏也くぅぅぅぅん!」

「奏也!!!!」

 

 

俺を呼ぶのは誰だ?

待てよ、なぜ俺は俺だと知っている?

 

 

「おっと動くなよ?動いたら彩がどうなっても知らないぞ?」

 

 

 

うっすらとする意識。その中に聞こえてくる会話。

この声・・・・どこかで・・・・・?

 

 

「おい、神剣を回収して来い」

「わかりました」

 

 

ザッザッザ・・・

 

 

上にいる足音が遠ざかったと思ったら俺の近くに聞こえる。

神剣・・・奏也。

俺の名前。ズキズキと痛む体の衝撃が全身を伝播し、そして何かをこじ開ける。

そうか・・・・俺は・・・・!

 

 

「寝ちまったらそこらのつまんねー雑魚と一緒だなあ、テメエ。この前はよくやってくれたな。オラ、こっちへ来い・・・・な、な!?!?!?」

 

 

そして俺は―

 

 

 

 

 

 

目を開き、そして動いた。

 

 

 

 

 

「おい、どうなってる!?ヤツどこにいった!?」

「・・・・・・」

「おい、お前らなんで黙っている!?」

 

 

 

ドサッ・・・ドサドサドサ・・・・

 

 

 

それに対する返答はない。

奴とあたしの目線が下に注がれている間。

後ろにいたはずの下っ端たちが倒れ始めたのだった。

 

 

 

「なっ!?お前らどうした?」

 

 

倒れた下っ端の後ろ映る影。そう、それは・・・・・

 

 

「どうしたもこうしたもねーよ。俺がちょっとお礼をしてやっただけだ。彩、ワリィな。怖い思いさせちまって」

「奏也・・・くん?」

 

 

そういって彩ちゃんを抱き寄せる奏也の姿だった。

 

 

「ああ、こっからは俺に任せておけ。日菜!気をつけろ、まだ起きたる奴がいるぜ?」

「!!!!うん、わかった!」

 

 

その声に反応し、起き上がる下っ端を蹴散らすあたしたち、

うん!あの喋り方、顔つき、間違いない。

記憶が戻ってるんだ!

 

 

「さておめえ、どっかで聞いたことある声だと思うんだが・・・やっと思い出したぜ。オラ、ご尊顔拝ませてみろや」

 

 

しばらくして下っ端は全滅。

恐ろしいスピードだったね。やはり本気の奏也がいると早くて笑えて来るレベルだね。

 

 

「ぐぉっ・・・!やめろ・・・・!」

「アンタバカですか?やめるわけないでしょ?はいはいお顔みせましょうね~」

 

 

抵抗虚しく覆面を剥がれるリーダー格の人。

その下から出てきた顔は・・・・

 

―あの日の悪夢

彩ちゃん、奏也、そしてあたしがかつて対峙した敵。

 

 

「やっぱりテメエか宮野。おめえ服役中じゃなかったか?」

 

 

 

その敵の正体。

7年前。彩ちゃんと奏也を拉致し、大事件を起こした元ストーカー・宮野だった。

 

 

 

 




意外と早く戻ったなあ・・・・
滅茶苦茶マイペースですがゆっくり更新していきますので引き続きよろしくお願いいたします!


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第4話 彩りなきデスエスケープ

この章はここより、過激な描写が数多くあります。
苦手な方はマズイと思ったらブラウザバックをおススメします。





「んで宮野クン?なんでおめえがシャバにいんの?」

「クソッ・・・・」

「クソじゃねえよクソ野郎。質問に答えて、どうぞ」

「・・・・・」

 

 

あっふーん・・・

あくまでしゃべらないと。昔は壊れたステレオみたいにピーチクパーチクうるさかった奴だが沈黙となるとなんか違和感あるな。

 

 

「日菜」

「はーい」

「え?日菜ちゃん?」

 

 

俺は日菜にアイコンタクトを送る。

すると日菜は彩の目を塞ぎ、向いている方向を転換させ、こちらから目線を逸らした。

 

 

「さぁて宮野。俺と一緒に遊ぼうじゃねえか」

「や、やめっ・・・・」

「喋らねえお前が悪い。とりあえず崖側いって・・・なにしてやろうか」

「ひっ・・・・ひぎゃあああああああああああああ」

「奏也ー、ほどほどにねー」

 

日菜と彩にはひとまず避難するように指示し、そんな日菜の声を聞き届けながら宮野と遊ぶことにした。

 

 

 

話をまとめよう。

どうやら宮野は仮釈放中らしい。どうやら一刻も早く刑務所を出て俺や彩に復讐をしたかったらしく、キチガイのくせに模範囚といえる刑務所生活を送っていたようだ。

そしてあの日、彩があの旅館にロケで泊まることを掴んだ宮野は手下に偵察に行かせた。

そしてその手下は彩の泊まる部屋を調べようとフロントの顧客名簿を漁っているところを従業員にみつかり・・・というのが俺と彩があの日遭遇した夜の出来事だったようだ。

どうやらそれは宮野にとって嬉しい誤算だったようで、まさか彩だけでなくもう一人のターゲットである俺まで現れるとは思っていなかったようだ。

これ幸いと俺と彩にターゲットに定めた宮野は調子に乗って今日に至ったという。

コレが宮野から吐かせた内容だった。

 

「しかしなあ、宮野。仮釈放してすぐやらかしてバレてたんじゃあ意味ねえぞ?」

「・・・・・」

「だんまりかよ」

 

今の宮野に以前のような勢いはない。壊れたオモチャのように沈黙する宮野には違和感があったので俺は続けて尋問することにした。

 

 

「それでな、宮野。シャバに出てきたばっかでどうやってあれだけの手下をそろえた?」

 

 

そう、これこそが違和感の正体。

仮釈放で出てくるまでは当然刑務所にいたはず。そうするとその間はコネクションを形成するのは不可能なわけで、かつての財産の没収もくらった宮野がこんなに早くに手下を集めたり、彩の情報を入手するできるのは明らかにおかしいのである。

 

 

「誰がバックにいる?」

「お前・・・なんでそのこと・・・!?」

「あたりかよ」

 

 

ちょっとカマをかけたらこれかあ・・・程度が低いねえ。しかしこれで確定だな。ふむ、つまり宮野も手駒の一つに過ぎないというわけか。

 

 

「どうせお前、もう無事じゃいられねえだろ?吐いてスッキリしちまえよ。そうすりゃ刑務所に帰すだけで勘弁してやるよ。口を割っても刑務所にいりゃ安全だろ?」

「わ、わかった。言う、言うから命だけは助けてくれ!」

「うわっ、口軽ッ!素直になったもんだなおめえも」

「俺に話を持ってきて、手下も貸してくれた奴がいる。それは・・・・」

 

 

宮野が言おうとした瞬間、俺は身に覚えのある気配を感じた。

これは・・・・”殺気”だ。

 

 

『バァン!(大破)』

 

 

「ウグッ・・・・」ドサッ

「宮野!!!狙撃だと・・・?」

 

鳴り響く銃声、断末魔を上げて倒れる宮野。

俺は弾が飛んできたと思われる方向を予測し、木の陰に隠れる。

しかし宮野は頭を打ち抜かれており、すでに息絶えてしまっていた。

証拠隠滅に何のためらいもなく殺すとはなんてクレイジーな野郎だ・・・・!

 

 

ドサッ

 

 

「なんだ?」

 

 

続いて近くに人の気配。しかしその気配はすぐに遠ざかり、そこには何かが落ちていた。

 

 

「・・・・・!?!?!?!?手りゅう弾だとぉぉぉぉぉ!?!?!?」

 

 

ヤバイ!これはガチでヤバイ!!!やはりヤバイ!

全速前進DA!逃げろ、俺!!!!

 

 

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!

 

 

逃げるだけ逃げ、かつて記憶を失った崖下に全力でダイブすると、上から爆音が鳴り響く。

考えてみれば爆破ポイントには俺が気絶させた宮野の手下がいたはずだ。

一瞬にして起きる大量殺戮。おそらく手下から黒幕の名前が漏れないよう、口封じであろう。

 

 

「これは本気でヤバイぞ。何のためらいもなく駒を処分するとは・・・いつから日本はこんな物騒になりやがった?」

 

 

とにかく異常だ。いくら人の少ない山の中とはいえこんなド派手にやらかすなんて尋常じゃない。

 

 

「とにかく、早く退かねば」

 

 

このままここにいては彩や日菜の身も危ない、ひとまず下山し、弦巻さんに報告しよう。俺は電話をかけながら、すぐさま二人のいる方へと駆けたのであった。

 

 

 

「奏也!さっきの音なに!?」

「日菜、彩は無事か?」

「奏也くん!ほんと・・・記憶が戻ってよかったよ!」

「ああ。さて、詳しい話は後だ。走るぞ!!!!!!」

 

 

このまま逃げるのは正直賭け要素が強い。少なくともこの山には銃と爆発物を持ったヤツが最低でも一人ずつ潜んでいるからだ。しかしそれ以上に山にとどまるのはもっと危険だ。

俺一人だけならまだしも彩たちを守りながらとなると俺もそう自由に動けないし、このまま山の中を逃げるということは敵に狩場を提供するようなもの。

それならば少しでも危険を早く回避できる方がいいだろう。

 

 

「こっちだ」

「奏也くん、後ろ!!」

「なっ!?」

 

 

彩が声を上げ、言われた通り後ろを見ると、敵と思われる男が追ってきているのが見えた。

 

 

「日菜、彩を頼む。さっき弦巻さんに連絡はしておいた。下山すればすぐに黒服の人たちがいるはずだ」

「奏也は?」

「あいつを足止めする。なに、すぐ追い付くさ」

「うわぁ・・・それ死亡フラグでよく聞くやつじゃん。でもま、奏也なら死亡フラグなんで壊しちゃうか。うん、彩ちゃんは任せて!」

「奏也くん!気を付けてね!!」

「ああ、すぐ戻るから」

 

 

そうやって俺は日菜と彩の背中を見送り、奴の死角となる木の後ろに気配を殺して隠れる。

 

 

「む、このあたりに見えたと思ったのだが・・・」

 

 

相手は1人。漂う雰囲気は明らかに通常の人間ではない。

俺は隠密に、奴の背後に近寄る。

 

 

「あらよっと。暗殺者があんなに全身に殺気を纏ってちゃあダメじゃないか」

「なに・・・!?ぐああああああ」ボキボキッ

 

 

とりあえず腕と足をへし折る俺。

そして地面にたたきつけ、身動きが取れないようにする。

 

 

「命までとりゃしねえよ。さて、話を聞かせてもらおうじゃないか」

「ぐおおおおおお」

「まずキサマの狙いはなんだ?」

「・・・・・・」

「ふぅん・・・・」ボキ!

「ぐぎゃああああああああああ」

 

 

俺はさらに指を1本へし折る。

 

 

「ダンマリを決め込むといてえぞ~。俺が一回質問するごとに1本ずついっちゃうから。はい、んで目的はなんだ?」

「や、やめ・・・・」

「・・・・・」ボキッ!

「ああああああああああああああ」

「目的。日本語わかる?Can you speak Japanese?」

「ひいいいい・・・・・・」

「おまけに二本」ボキボキッ

「があああああああああわかった、いう、いう!」

 

 

ふむ、ようやくか。

 

 

「俺は丸山彩の拉致を手助けするため、そしてあらゆる証拠となる人間を消すために派遣されたんだ。あの実行犯共も終わったら処分するように命を受けていた」

 

 

なるほど、宮野は本当に捨て駒だったわけだ。哀れだなあ・・・

 

 

「丸山彩が目的だと?それはなぜだ?」

「それは・・・・」

 

 

バァン!(大破)

 

 

「ぐぉっ・・・・・」

「なんだと・・・!」

 

 

尋問を続行としようとした刹那。暗殺者は頭を打ち抜かれ、絶命した。

 

 

「情報漏洩には何重もプロテクトをかけるってことか・・・・!クソッ」

 

 

俺はすぐに逃走を開始する。このまま狙撃者のフィールドにとどまるのは不利極まりないからな。ここはこれ以上のリスクを犯すのではなく、弦巻さんと相談して作戦を練るのがよいだろう。

その後俺は何とか下山し、弦巻家の車に乗り込むと退却を開始したのであった。

 

 

 

ひとまず彩は日菜の自宅に匿うことにし、落ち着いたのち話をすることにし、

その後の対策を弦巻さんと話すべく弦巻邸に向かった。

しかしその後。こんなことが起きるとは・・・夢にも思っていなかったのである。

 

 

「奏也君、本部から指令が来たのだが・・・・・」

「深刻そうな顔をしてどうしたんですか?」

 

 

そういって一枚の指令書を俺の前に見せる。

 

 

指令

丸山彩の捕縛

及び神剣奏也の処分をせよ

 

 

「奏也君。丸山さんを連れて逃げるんだ」

 

 

俺と彩はお尋ね者になってしまい、二人の逃亡生活が始まろうとしていたのであった。




仕事忙しかったりぶっ倒れたりでかなり遅れてしまい申し訳ありません。
次回から奏也と彩の逃亡劇です。
引き続きよろしくお願いいたします!


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第5話 逃走の幕間

前回からめちゃくちゃ開いちゃったなあ・・・・
シメの構想まではできているのですがいかんせん文章がまとまらない・・・まとまらなくない?




俺が所属する組織。

その組織は表向きは民間企業ではあるが、実態は某国の直轄下にある裏組織(警察で言う公安のようなもの)で国や警察が表立って処理できない事件やテロリストの対応、要人の警護などをする会社である。

中には特定の人物の機密調査や、場合によっては身柄確保なども仕事として存在する。そしてそれは各有力国それぞれに設置されており、つながりがある。

俺はこれで利用し、外国でテロリストとなった荒神と対決することを決意し、そして勝利した、というわけだ。

そして弦巻さんが社長を務める日本支部に転勤を願い出て、受理されたのが俺の帰国の経緯である。

肝心の連絡が弦巻さんに言ってなかったのは向こうのクソ上司のせいであるが・・・・

 

 

 

「彩を狙っていた奴らが本部に依頼してきましたか」

「そのようだ」

 

 

そして突然の本部指令。名の知れた芸能人である彩を捕縛、ということは間違いなく利権が絡んでるのだろう。それに裏組織である俺たちの本部に依頼できるということはそれなりの権力を持っており、何か悪いことをしたわけではない彩を狙う依頼が通るということは、請け負った人間も本部である程度の力を持っているのは想像に難くない。

 

 

「こりゃ敵と味方が繋がっていますね。ならば社長の狙いは・・・・」

「うむ。私が情報を集め、君に指令を出す。君は逃走しながらその内通者暴き、処理してもらいたい」

「これってもしかして俺が敵に内通した裏切り者扱いになってるってところですかね?」

「・・・うむ。君は我々の敵対組織に内通したということになっている。おそらく敵の計画を邪魔したことで目をつけられたのだろう」

 

 

なるほどなー。邪魔した責任をとってスケープゴートになれってか?

死んでもゴメンだな。

 

 

「ふうん・・・ん?ってことはこれからはこの前の正体不明の襲撃者に加えて味方の追手も加わるってことですか・・・うわぁ・・・」

「そういうことだ。もうこれしか君が助かる道はないともいえるな。とにかく時間がない、すぐに丸山さんと逃げるんだ。私も秘密裏に、できるだけ支援はさせてもらう」

「かしこまりました。ではこれより作戦を開始します。」

「奏也君、死ぬなよ。幸運を祈る」

 

 

 

 

「と、いうわけだ。彩、今から俺と逃げるぞ」

「えええええええええ!?」

 

 

翌日、身支度を終えた俺は彩が匿われている日菜の部屋に赴いた。

 

 

「だっていきなり”俺たちぃ、命狙われてっから逃げんべ?”って近所に買い物行こうみたいなノリでいうから!!」

「おおう、モノマネツッコミとは彩も成長しているんだね・・・お兄さん嬉しいよ」

「そーうーやーくーん?」

「うわっこわ!アイドルがしちゃいかん顔してるから!うーん、要点を掻い摘んで話したつもりなんだがなあ・・・・」

「奏也・・・あたしはなんとなく察したけど、彩ちゃんは何も知らないんだしさ。一応説明してあげたほうがいいと思うな」

 

 

そんなことを言う日菜だがその目は怒りと困惑に満ちている。

そりゃそうだ。昨日あんなことがあっただけでなく、自分の仲間が2人も狙われているとなるとこんな顔にもなるだろう。

怒り狂って暴れないだけ日菜も成長したってもんだ。

 

 

「アヤ、狙われてる。オレ、裏切り者扱い。OK?」

「わっかんないよ!」

「あらやだ彩ちゃんったらいつの間にこんなキレのいいツッコミを手に入れたのかしら?・・・なんて戯言はさておきそろそろ真面目に話すか」

 

 

俺はやむを得ず、俺がどういう仕事をやる人間なのか。

そしてどんな話で今の流れになっているのかを要約して話した。

これから苦楽を共にするんだ。隠し事をしておくのは信頼性が失われるし、何より今の彩なら・・・芸能界を通じて色々な闇を見てきてここまで成長した彩なら大丈夫だと思ったわけだ。

 

 

「と、いうわけだ。敵の目的は俺の始末と彩の身柄確保。目的はまだ不明だ。そして俺が属する組織の本部の誰かとどこかの組織が絡んでいる。ひとまず相手の情報が分かるまで逃げる。そして正体がわかったら解決に動く。シンプルにいえばこんな感じだ」

「そんな・・・・」

 

 

彩は信じられないといった顔になる。

 

 

「しかしわっかんないなあー・・・危ない橋を渡ってきた奏也だけならまだしもなんで彩ちゃんまで?彩ちゃん、なんか心当たりない?」

「うーん・・・思いつかないなあ・・・あの、宮野さんが首謀者ってことは・・・?」

「それはない。宮野も駒の一つにしか過ぎなかった」

 

 

宮野が死んだことは彩に言っていない。これから何があるかわからないのにショックを与えたくないからだ。宮野は再び警察に捕まったということにしてある。

 

 

「とにかく時間がない。彩の事務所には病気で療養と発表してもらうように弦巻さんが手配した。今回弦巻さん、表面上は俺たちの敵ってことになっているし、行方不明とか大きな騒ぎにするのは依頼人が望んでいないとのことだ。俺たちとしても大事にならないほうがいいからこの辺は助かる。彩、移動しながら追々説明はするから・・・今は一緒に頼む」

 

 

俺は本気だ、という目で彩を見つめる。それが伝わったのか彩はわかった、といって支度を始めるべく家に戻るとのこと。

弦巻さんによるとまだ追手は来ていないからそれくらいの時間はあるだろう。

 

 

「日菜。俺たちがいない間、頼んだ」

「・・・ちゃんと戻ってくるよね?せっかくまた会えたのに、これで終わりなんてことないよね?」

「当たり前だ。俺を信じろ。黒幕をぶん殴って土下座させて、またすぐ戻ってくる」

 

 

そういうと日菜は笑って一言、言い放った。

 

 

「信じるよ」

 

 

こうして俺は氷川家を後にし、丸山家へ向かった。

 

 

 

・・・のであるが俺は少し懸念していた。

彩に出した指示は、着替えと身の回りの物をいくつか。加えて変装。

しかし考えてみろ。さっきは焦っていたから何も考えずに変装を指示したがあの彩だぞ?

変なメガネやバレバレな変装で出てくる気がしてならなかった。

 

 

「奏也くん、お待たせ!」

「おう」

 

 

意を決して彩の方を見る。

 

 

「あれ・・・・?」

「どうしたの?」

 

 

そこにいたのは一目では確実に彩だとわからない完璧な変装を施した彩がいた。

 

 

「え?え?変なメガネは?バレバレの変装は?」

「どれだけ昔の話してるの~~~~~~!」

 

 

話を聞くに高校生で駆け出しの頃と違い、さすがに有名になりすぎたから千聖さんに教えてもらってこの完璧な変装を身に着けたらしい。すごい(小並感)

 

 

「そういう奏也くんも・・・もはや別人?」

「むこうじゃ変装して潜入なんてザラだったからな」

 

 

かくいう俺も変装でかなり様変わりしている。俺を見抜けるやつなんざ余程勘の鋭い奴か向こうで一緒に仕事をした仲間くらいのもんだろう。

しかしこれならば逃亡劇の見た目的な難易度が思ったより低そうだ。

まあ相手もプロなのでもちろん油断はできないが・・・・

 

 

「じゃあこれに荷物を積んで乗ってくれ」

「おお、車・・・」

 

 

そういう俺は乗ってきた車を彩に見せる。

見た目は普通の5人乗り乗用車だ。もちろん名義は別人名義である。

 

 

「とりあえずひたすら県をまたいで走る。宿泊は適当に宿を見つけよう」

「うん」

 

 

車を発進させると彩はどことなく落ち着いた雰囲気であった。

 

 

「なんか思ったより怖がっていないようで安心した」

「あ、そうかな?やっぱ奏也くんと一緒だから・・・かな。不謹慎かもしれないけど二人きりで逃亡劇なんて映画みたいで」

 

 

えへへ、と笑う彩。

命狙われてる(命までは俺だけかもしれないが)のに暢気なものだ・・・といいたいところだが彩のこの明るさには救われる部分もある。

絶対に守らなきゃ。俺はそう決意し、ハンドルを握ったのであった。

 

 

「正直・・・昨日から現実離れしすぎてハイになってるのかも。本当はすっごく怖いはずなのに・・・でも私は奏也くんを信じる。今まで奏也くんを信じて裏切られたこと一度もないから。昔攫われたときだって、病院で襲われたときだって・・・いつだって奏也くんは私を助けてくれた。だから、今回も信じるしかないかなって」

「彩・・・」

「奏也くん、私も奏也くんのこと聞いてもいいかな?」

「・・・そうだな。彩には聞く権利があると思う」

 

 

そういって俺は高校卒業をしてから向こうでやっていたことを話した。

弦巻さんの紹介で今の組織にバイトで入り、そのまま社員になったこと。

オッサンと親の仇である荒神が目的であり、そしてその目的を達したこと。

職務上守秘義務は発生しないことはすべて彩に話した。

 

 

「とまあこんなわけだ」

「そっか・・・色々大変だったんだね」

「確かに大変ではあったが・・・まあ今こうして帰ってこれたしな。荒神の野郎もとっ捕まえて国に叩き出したし」

 

 

とまあこんな感じで話をしながらひたすら道を往く。そして今日の目的である、とりあえず県外に出ることを、走行中に見た県境の看板で確認にした俺たちは、適当な宿に入ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




彩のアフターは今までの話とは結構タイプが違ってスケールも大きくなってるのかなあと。
そのおかげで結構難産気味です・・・・
描き切るんで引き続きよろしくお願いいたします!


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