それでは本編をどうぞ!!
皆にとって、神様ってどんな存在なんだろうか?ある人は偉大な存在、またある人は凄い人物と、
とにかく崇めるべき存在と思っているだろう。しかし俺は違う。
神様なんて不条理で今すぐにでも殺してやりたい、そんな存在でしかない。
皆にとても大事な話がある、顧問の口から何気ない一言が発せられる。
まさかそれが今後の俺の人生を大きく左右すると、思いもせずに。
「誠に申し訳ないのだが、この度、我が鶴美ヶ崎高校サッカー部の1年間の休部が決定した。」
この瞬間、俺、梅崎蒼也の高校生活は、この何気ない一言で一瞬にして崩れさった。
「おーい、蒼也~!」どこからか俺の親友であり、良きライバルである南勇斗の声が聞こえてくる。
俺と勇斗は小さい時からの幼馴染みで、ずっと一緒のチームでプレーをしてきた。
ちょっとした自慢話になるが、俺と勇斗は中学時代に黄金のツートップとして、
全国大会に出場したこともあって、かの有名な某スポーツ雑誌にインタビューを掲載
された事がある。実際、全国大会でもそれなりの結果を出した事で県内有数の強豪高、
ここ鶴美ヶ崎高校に進学し、一年の夏にはインターハイ優勝、冬の選手権では優勝を
果たしたし、MVPも獲得した。そんな順風満帆な高校生活を送っていた俺を突如として襲った、
サッカー部の1年間の休部。俺は悔しさと哀しみを噛み締めながら友人の元へ向かった。
「どうかしたのか勇斗?」俺は声を掛けてみる。
「どうしたもこうしたもねえよ!何で休部になったんだよ!何の理由もなくただ休部って、
なあ蒼也、お前はこのままでいいのかよ?このまま一年間サッカーをしなくていいのかよ?」
いい訳がない。少なくとも俺達は何か悪い事を起こした訳でもない。せいぜい起こした事件なんざ、今までの
鶴美ヶ崎高校サッカー部の歴史上、起こり得なかった一年間での二冠達成だ。決して悪い事件
ではない。なのに理由もなしに突然の休部発表だと?ふざけんな。悪ふざけも度が過ぎている。
「いい訳ないだろ。俺らは夏と冬で二冠達成してるんだぜ?新しい後輩も入って来てこれからだ、
って時に休部なんざ正気の沙汰じゃねえだろ。」
「それはそうだけど...じゃあ蒼也はこれからどうするんだよ?部活もないしマジでどうすんの?」
「さあ?本当にどうしたいんだろうねぇ、俺は。」
親友との会話を終え、俺はその場を後にした。
さあて、することもできなくなったしこれから本当にどうするかなあ...心機一転、他のスポーツでも
やってみるか、そんな事を頭に思い浮かべながらあっという間に1日が過ぎ俺は自分の家へと歩を進める。ああ、また中3の時みてえな退屈な日々を過ごさなきゃならんのかねえ...俺はそんな憂鬱の様な感情を抱きながら自分の家を目指して歩いていた俺だったが、この後、そんな俺にある転機が訪れる。まさかそれが、俺自身の生涯において、一番後悔したのか、しなかったのかすら分からねえ様なとにかくヤバい出来事であったとはその時は全く想像すらできていなかった俺なのであった。
いかがでしたでしょうか?これからの物語の進み具合はほぼ原作に沿っていきます。学生であるがゆえに更新が遅れたりすることがあるかもしれませんが、そこはご了承下さい。
ではこれからも宜しくお願いします!
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第1話 七瀬唯香
自分の家にたどり着いた時、ふと何か奇妙な雰囲気がした。誰かが家に侵入している様なそんな雰囲気がしたが、
「ふっ、そんな訳ねぇか。この家には俺と母さんしかいねぇし、しかも母さんは今日大学の同級生達と一緒に飲み会だからここにいる訳がねぇ。気のせいだな、きっと。」
俺はそう言って玄関の前に立ち、閉まっているはずのドアの鍵を開けようと鍵を掛けたがここである変化に気付いた。ガチャリ、と鍵が逆に閉まった様な音がしたのだ。案の定ドアのぶに手を掛けてもドアは開くことはなかった。つまり元からドアは開いていたのである。
「母さん、忘れ物でもしたのかな?まあ元々どこか抜けた性格の持ち主だからたぶんそうかもしれないけど。」
そうして俺は再び鍵を掛け直して今度こそドアを開けた。さあて母さんに何て言ってやろうかな、そんな浅はかな考え事をしていた俺の前に
「おっ帰りーーー!!蒼也!!!」甲高い女性の声が響き渡った。
バタンとドアを閉めた。おかしいな、頭の中をもう一度整理してみよう。まず家のドアは普通に閉まっているのではなく開いていた、そして家の中は一瞬だけだったが荒らされた様子はなかった。つまり空き巣等ではなかったようだ。さらにドアを開けた途端に俺の視界に入ったロングヘアーの容姿と俺の名を知り俺自身も聞き覚えのある声、間違いない、アイツだ、と結論が出た俺の後ろでまた俺を呼ぶ声が聞こえた。
「蒼~~~也~~~?なーーんで私が呼んでも無視したのよぉ?」
「どうでもいいだろそんなの、とにかく唯姉、どうしてアンタがここにいんだよ?」
唯姉と呼ばれるこの女、そうコイツが俺、梅崎蒼也の従姉にして現在はお互い離れて暮らしている七瀬唯香(23)である。見た目はパッと見、完全に小学生の様な顔つきをしているがこれでもれっきとした大人でそれだけではなく、なんとこの女、仕事は教職を取っているのである。世界って広いなあ...
「とにかく!さっきも言ったけどどうしてここにいる?何しに来た?」
「なんだよ冷たいなあ。親戚をも思いやることが出来んのかオマエは。お母さん泣くぞ?」
これだけ馬鹿にされて、さすがにカチンときた俺も
「いいからさっさと答えろ。一体何の用でここに来た?俺に何させようってんだよ。」
少し熱くなった俺に対し、唯姉は冷静に答えた。
「分かった分かった。話してやるよ。実はな、アタシとある成り行きで女子サッカー部の顧問を受け持つことになったんだけど....」
「唯姉にサッカーの知識なんてあったっけ?」
「話の腰を折るな。それで確かに私はサッカーの知識なんて一欠片もないし、せいぜい知ってる事なんかボール蹴ったりパスしたりしてゴールを取り合うスポーツなんだなって事ぐらい。全くサッカー部の顧問には適さない人間と思う。」
偉く自分を自嘲したような口ぶりに内心驚いたが、
「で、それがどうしたんだよ。適任じゃないなら代わりに他の先生とかにやってもらえばいいじゃん、全く問題ないっしょ。」
「既に当てのある先生には何人か試してみたけど全員ダメ。皆、他の予定があるみたいで。」
それ、ただ単純に面倒くさいだけなんじゃ...内心そう思っていた俺だったが
「じゃあこれから先どうすんの?唯姉1人で頑張ってくの?」
俺がそう告げると、唯姉は待ってましたと言わんばかりに目をキランと輝かせながら俺の方を向いた。...なんだろう、凄ーーーーく嫌な予感がする。いや違う、嫌な予感しかない。
昔から大抵こんな時は嫌な予感がした後、嫌な思いをした経験がある。今回もそんな事になってしまうのか?いやいや、さすがに唯姉ももう俺以上に大人だ。そんな子供の様な嫌がらせをするはずがない。俺はそんな安易な事をつい考えてしまう。この女がどういった性格の持ち主であるかさえ分かっておきながらも...
「蒼也、アンタ女子サッカー部のコーチをやってみない?」
突如、従姉の口から放たれた衝撃的な爆弾発言に、しばし俺は呆然と立ち尽くすことしか出来なかった。
という事で今回は新オリキャラ、蒼也の従姉の七瀬唯香の登場でした!今回の作品がサッカーなので智花達5人に続きまた新たにオリキャラを作る予定ですのでお楽しみに!
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第2話 監督代理(サッカーコーチ)
それではどうぞ。
「アンタ女子サッカー部のコーチをやってみない?」
この従姉の口からから放たれた爆弾発言に対し、しばし呆然と立ち尽くしていた俺だったがようやく我に戻ることが出来た。
「はあっ!?冗談も程々にしてくれよ。なんで俺がそんな面倒くさい事をしなくちゃなんねーんだよ!!」
俺がそう言い返すと、唯香は
「面倒くさい?アンタ今、サッカー部1年間の休部になってんじゃん。全然忙しくともなんともないでしょ?」
俺と母親しか知り得ない事も踏まえて言い切った。
「っ!!どうしてアンタがその事を...?」
「チッチッチ。アンタが隠し通そうとしてることなんてぜーんぶお見通しなのよ。まあもっとも、こうして私がアンタの情報を知ることが出来るのも、口の軽い誰かさんのおかげでもあるんだけどね♪」
クソ、母さん、あれほど唯姉辺りには絶対に休部の事言うな、って言ってたのに...悔しがる俺を尻目に
「で、結局コーチはやってみるの?やらないの?出来ることならやってみないというよりやってほしいっていうのが本心なんだけど。」
唯姉がこう迫ってきた。
「何で俺なんだよ。俺以外にも大学時代の同級生なり友達なり他にたくさん当てがいるだろ?どうして俺なんだ?」
「アンタじゃなきゃダメ。ううん、蒼也じゃないといけないの。だって蒼也は小さい頃からずっとサッカー一筋で過ごしてきたし、サッカーを生きがいとしてきた。だから中学の時も全国大会で準優勝したし高校でも1年生ながらレギュラーとして夏と冬の大会で2冠達成にMVPも取ったんでしょ!?これほどサッカーに精通して、サッカーをよく知る人間は他にはいない。逆に言えば蒼也ぐらいしか頼れる相手がいないの!!だからお願い、あの子達を助けてあげて!!」
どこか、悲痛な感情を抱きながら漏らした言葉には何故か胸が痛む思いがした。あの子達、というのはきっと唯姉が受け持つ女子サッカー部のメンバー達のことなのだろう。
「それでも...無理だよ、俺には。俺はサッカーに夢中になりすぎた。きっと今回の1年間の休部も神様が俺に与えた罰なんだよ。いい機会だし、俺はサッカーをやめる。」
刹那、今までとぼけた顔をしていた唯姉が急にキッと目を鋭くさせ、いきなり俺の胸ぐらを掴んで近くの壁に俺の体を強く押し付けた。
「っ痛え!!てめえ、いきなり何すんだよ!!」
「とぼけんのも大概にしろ。何がサッカーやめるだ?はっ、たかが1年部活が休部になったぐらいで自分の夢に諦めつけるなんて可哀想なヤツだねえ、お前は。」
さすがにイライラが積もった俺も
「ざけんな!!てめえに俺の何が分かる!もういいんだよ、サッカーやるのも何か冷めたしもうする気力すらねえんだよ!!」
「それでも、逃げちゃダメ。」
激昂する俺に対し、唯姉はそっと呟いた。
「蒼也、アンタはサッカーから逃げちゃダメ。アンタはサッカーをこれからも続けるべき人間なんだ。今ここで逃げたら、アンタ社会に出ても一生負け犬のままだよ。」
何も反抗せず、ただ唯姉の言うことを俺は黙って聞き続ける。
「なあ蒼也、1週間だけでいい。1週間、あの子達のことを見てやってほしい。1週間やってやっぱり無理って思ったら、もうコーチはしなくていい。だから、1週間コーチをやって。お願い!」
ここまで散々言われたら男としてのプライドもすたるし、まあ1週間程度なら見てやってもいいかな。俺は自分自身に言い聞かせて、決断を下した。
「1週間だけだぞ。それ以上続けるか続けないかは俺自身で判断する。」
こうして俺、梅崎蒼也はサッカーコーチとして新しいサッカー人生をスタートさせた。
はい、これで蒼也がサッカーコーチをすることがようやく無事に決まりました。次回は女子サッカー部の事情についてオリジナルストーリーを作成する予定ですのでお楽しみに!
そしてプロフィールを見ている方はお分かりと思いますが作者は現在、現役バリバリの高校2年生ですので更新が遅くなることが多々出てくると思いますがそこはご了承下さい。
それでは今日はこの辺りで失礼します!!
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第3話 女子サッカー部
学校の行事やら部活やらで中々小説が手付かずな状態になっていましたがこれからはもう少し早めに投稿をしていきたいと思います。
それでは本編をどうぞ!!
「で、まあ一応女子サッカー部のコーチを務めるのはいいとして、一つ聞いておきたい事があんだけどさ。」
突如やって来た従姉の七瀬唯香から、女子サッカー部のコーチをやってくれ、という衝撃的な依頼を受け、しぶしぶその依頼を引き受けることとなった俺、梅崎蒼也は一つの疑問を全ての元凶の源である我が従姉に思いっきりぶつけてみた。
「ん?どうした?」
間の抜けた様な返事が返ってくる。
「いや、まあ俺も一応は高校生の身分だし中々時間も取りづらい状況にあるわけでさ、さすがに20人近くもの選手を一辺に見るのはキツいと思うんだが、そこんところはどうやってフォローするとかはないのか?」
「20人近く?なんでそんなにたくさんの人数がいる訳よ?」
「えっ?だってアンタ高等部の方の担当だろ?女子の高校サッカーだって男子と同じで11人とサブ要因何名かのはずだから大体20人近くはいるはずじゃないのか...?」
不思議と唯香の口からとぼけた様な返事が返ってきたため俺は一瞬疑問を感じたが、
「...ねえ蒼也、私とアンタが最後に会ったのっていつ頃かな?」
唯香のこの一言で嫌な予感を直感で感じた。この女が俺に対してふっかけて来ることは大抵嫌な事ばかりしか起きないからだ。
「さあ、でも普段から会うこともないし、最後に会ったのは....正月辺りじゃね?」
俺は率直に唯香の質問に答えたが、直後に唯香はやってしまった的な表情を見せると頭を抱え込んだ。
「あー、しまった。ゴメン蒼也、アンタは私の事情とか知らなかったもんね。」
「?」
何を言ってるのかさっぱり分からない俺をよそに唯香はハッキリと言い切った。
「いや実はさ、今年の4月の仕事始めの時に学校内での教員の人事異動があってさ、私今は高等部の方の担当じゃないんだよね。」
慧心学園は小学校から大学までのエスカレータ式の学園で今現在に至るまで唯香は高等部の担当であったがそれが人事異動で変わってしまった。となると残る学年部は初等部と中等部、そして大学の3つになるが俺はこの時、猛烈に嫌な予感を感じ取っていた。
「.....で、アンタは結局どこの学年部に移動になったんだよ?」
恐る恐る唯姉に聞いてみる。
頼む!!今日だけは、今日だけは悪い予感は外れてくれ!!
最悪の事態だけは避けたい、そう心から願っていた俺を待ち受けていたのは
「うん。私、初等部の担当になっちゃった♪つまりアンタがコーチをする相手は高校生じゃなくて小学生。慧心学園初等部女子サッカー部のコーチよ。」
神様があらかじめ用意していたシナリオにしては、とても非情で残酷な現実だった。
「まあ何もアンタだけに無理はさせないよ。私もフォローには入る。まっ、精々頑張ってくれたまえ、期待のロリコンホープ♪」
テメエ殴り飛ばすぞコラ。誰がロリコンホープだ。そもそも期待されてんのかよそれ。
結局、上手いこと唯香に丸められた俺はもはや怒るというより呆れることしかできなかった。
しかし俺のある意味、悪運もよく当たるもんだなあ、こりゃひょっとすると俺、呪われてんじゃねえのか?
つくづく俺はそう思う。じゃなかったらこうも都合良く不幸な出来事が起こったりするもんじゃねえしな。
かくして、俺のサッカーコーチとしての新しいサッカー人生のスタート地点は俺の理想としていた場所とは程遠い場所からのスタートになることとなった。
いかがでしたでしょうか?
次回は女子サッカー部のサッカールールを作品中で少し変えたものをストーリー形式でお送りします。
あくまで物語上での設定なので批判等の感想はあらかじめご了承下さい。
それではまた次回でお会いしましょう!今日はこの辺りで失礼します。
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第4話 女子サッカー部2
今回は女子サッカー部のルールを一応物語上で変えたものをストーリー形式でお送りします。
といってもサッカーとフットサルの中間にあるような感じです。それでは本編へどうぞ!
この度、憎き我が従姉の七瀬唯香から女子サッカー部のコーチをやっとほしいと言われ、しぶしぶその依頼を引き受けることとなった俺、梅崎蒼也は更に衝撃的な現実を受け止めることになってしまった。
というのも、頼まれた相手の女子サッカー部は俺と同年代の高校生かと思いきや、なんと中学年でもあらず、小学生であったのだ。俺はもはや、この鬼の様な従姉とまともに討論する気力も無くし、自分自身でも情けないと思うほどなんとも弱しげな声で呟いた。
「はぁ、まあ実際、同年代の子を指導するのもなんか気が引けるしな。小学生でも良かったかな...」
「おっ?そんなに小学生の美幼女共と一緒に戯れたいのか、このロリコンホープ野郎が。」
黙れこのクソ野郎。俺だって元々この依頼も本心でしたかった訳じゃない。あと美幼女ってなんだ。せめて美少女と言え。そして俺の名を勝手に変えるな、何なんだよロリコンホープってよ。
「...チッ、もういい。それで人数の事だけど、小学生ってことは多少サッカーのルールも変わったりするもんなのか?」
俺の問い掛けに対し、唯香は待ってましたと言わんばかりのにやけ顔を見せつけてきた。
近い、離れろ、うっとうしい。
「むっふっふ、驚けこのロリコン野郎。私はアンタがそう言うと思って必死に勉強してきたのだ。」
コイツが勉強してきたなんてスゲえ意外だな。と、俺は心の底でそう呟いた。
「で、どうなんだよ?」
「ああ、多少だけどルールはちょっと変わってる。えっと、まずコートの面積だけどコート面積は縦85mで横が40mらしい。それで気になる人数だけどこれはスタメンが8人、サブが基本4~6人の計12~14人構成だって。そんでスタメンとサブの交代は原則自由。但し退場を受けた選手の交代は原則不可だと。そして試合時間は前・後半20分ずつの計40分制。ハーフタイムは8分とのこと。まあこんなとこかしらね。」
ふーん、と俺は相づちを打つ。
まあそんなとこか....俺は頭の中で今、従姉が発した言葉をしっかりとインプットし、これからどうやって指導していこうかと準備に取りかかる。
「それで?結局人数は12人程度いるってことなんだな?」
改めて人数の確認をしようとした俺に対し、
「いや~~~、蒼也、実はなあ....」
唯香は何とも申し訳なさそうな声で返してきた。
....なんだよ、もういい加減やっちゃった的な事を起こしたりしてねえよな?こうなったら部員数も8人に行き届いたりしてないとかは...さすがにないよな、そんなんだったらもう即刻首絞め上げて息の根を止めt......
「実はウチの部員数5人しかいないんだ♪」
よし決定。即刻殺す。今すぐ首を絞め上げてやろう。
俺は心の中でそう決意すると、即座に従姉の首もと目掛けて両手を伸ばした。
「バカ!!やめろ!!私を殺そうとするな!大丈夫だって、言ったじゃん私もフォローに入るって、既に何人かアテはあるから!!」
そう言われて俺はしぶしぶ襲うのをやめた。チクショウ、せっかくこの憎き従姉を殺せるチャンスだったのに。
「はあ、分かった。じゃあ残りの足りないメンバー集めの方はそっちに任せるよ。それで俺はいつからコーチに行けばいい?」
「そうだね...明日は休日だし、さっそく、みたいな感じでどう?」
明日か...まあでも実際その子達の実力を見てみたい気持ちもあるし、明日でもいいかな。
俺は腹を括った。
「オーケー。じゃあ明日から1週間な。」
明日、いよいよ俺、梅崎蒼也の第2のサッカー人生が幕を開ける。
遂に、遂に次回で智花達と初対面だあーーーー!!
やっとここまで来ることが出来ました。原作キャラの登場を待ちわびていた方々、長らくお待たせしまして本当にすいません。予想以上に作成に時間が掛かってしまいました。
そしてオリキャラも次の回で登場予定です。
ぜひお楽しみに!!
それでは今日はこの辺で失礼します。
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第5話 出会い
そして本作もいよいよ智花達の登場だあ!
それではごゆるりとお楽しみ下さい(笑)。
どうぞ!!
翌日、慧心学園初等部・中等部校門前――――
遂に来てしまった。俺、梅崎蒼也はゴクリと唾を飲んだ。突然現れた従姉の七瀬唯香から自身の受け持つ女子サッカー部のコーチをやってくれないかという依頼を受け、しぶしぶ引き受ける事になり、なぜか今日という日からのコーチ指導をスタートさせることになったわけだが、
「ヤベえ、マジ緊張してきた。」
かなり緊張していた。それもそのはず、俺は今までこういったお嬢様やお坊っちゃまが通う学園という所に来た試しがなかったのだ。それだけに限らず、今までずっと市立や県立の学校にしか通っていないわけであるから、多少の私立校に対する劣等感もあったのかもしれない。それでもいざ本物を目の前にするとやはり、私立の凄さに圧倒されてしまう。
我ながら情けないなあ...
そんな呑気な事を考えていたら突然警備員さんらしき人に補導された。ツイテないなあ、俺。
そんなこんなで色々と話を聞かれたが、意外と気前の良い感じの警備員だったので自然と会話は弾んだ。
「いやあゴメンね。最近この近辺でウチの生徒を狙う輩がいてね、今日みたいな休日でも部活生に万が一のことがあってはいけないと思ってね。警備をしていたんだ。そうかい、君は七瀬先生の従弟さんか。」
最近は結構、物騒なんだな。
俺はそう思いながらも警備員の人と会話を続けた。
「それで?今日はどうしてこんな所に?何か用事でもあったのかい?」
「いえ、何でもありません。ただ散歩がてらここを通りかかったもので、今日はこのまま帰ります。」
直後、背後から何らかの殺気を感じた。すると、振り向く間もなく背後から思いきりジャンピングキックを喰らわされた。バっと振り返ると、そこには我が憎き従姉の七瀬唯香が仁王立ちで俺を思いきり蔑む様な感じで上から見下ろしていた。...今の地味にきましたよ唯香さん?
「アンタ、なに勝手に嘘ついて一人で帰ろうとしてんのよ?」
唯香が結構強い口調で言ってきたので俺も少し口調を強めながら言い返した。
「うるせえ。テメエがいつまでたっても来ねえから少し冗談のつもりで言っただけだよ。」
とそこへ、先程の警備員さんが割って入る。
「七瀬先生、そちらの子は従弟さんで?」
「そっ、ソイツが私の従弟の梅崎蒼也。サッカー好きの野村さんだったら名前くらい聞いたことはあるでしょ?」
野村さん、という名なのであろう警備員さんは両腕を組んでう~んと考え込んだ。そして、何か閃いたのかポンと手を叩くと、
「ああ思い出した!君はあの梅崎蒼也君だね?ほら、中学の時同じポジションの南勇斗君と一緒に黄金のツートップとして全中の時に全くの無名だった学校をベスト4まで導いたって。そして高校はウチの県で有数の強豪校、鶴美ヶ崎高校で1年からレギュラーをはって、その年の夏のインターハイと冬の選手権大会で両方とも優勝、さらにはMVPも獲得したっていう天才ストライカーじゃないか!!凄いなあ、こんな所で会えるなんて。」
少し興奮気味にそう言った。
それにしても懐かしいなあ、俺はそう心の中で呟いた。
「で、今日は休みだったのかい?」
唐突に答えにくい質問をしてきたので俺は一瞬慌てたが、そんな俺を見かねてフォローしようとしたのか、唯香が
「まあ野村さん、コイツも色々と用事があるから話はまた今度ね。」
野村さんの質問をシャットアウトした。
「そうですか...分かりました、じゃあまた今度話をしよう、梅崎君。それじゃあ。」
そう告げて野村さんは来た道を逆に戻っていった。
「...スマン、助かった。」
「べつにいいってこんくらい。そんじゃあ行こうか。」
そう唯香が言っていざ選手達の待つ部室へ行こうか、という所で不意に携帯の着信音が鳴った。どうやら唯香の方にかかったらしく、唯香はすぐに携帯を取りだし自分の耳に傾けた。
「はいもしもし、七瀬です。...はい、えっ、そうなんですか?はい....はい、分かりました。」
そう言って携帯をしまうと唯香は俺の方をジッと見つめてきた。
「.....何だよ?」
「スマン蒼也。私、今から急な用事が入ったからそっちに向かわないといけなくなった。だからメンバー達との挨拶とかはアンタ一人でやっといて。」
...何でだろう、何でコイツと一緒になって関わるとロクな目にも会わないんだろうか、俺は心底そう思った。つーか最近やけに多いな、俺に降りかかる不幸の数。けっこう数えきれんぞコレ。
そんな俺をよそに、
「じゃあ後は任せた。あ、後部室はここを真っ直ぐ行って右に曲がった所を手前から3番目だから、んじゃまあ頑張ってくれよ♪」
そう俺に告げると唯香はサーっと別の校舎の方へそそくさに去っていった。.....なぜだろう、何かむなしいぞこの空気。
「はあ、まあ仕方ねえ、今さら後に引くわけにもいかねえしいっちょ行ってやるか。」
そう言って俺はゆっくりと歩を進めた。
「ここか...」
俺はドアに貼り付けられた女子サッカー部という文字に目を向ける。いよいよ初のご対面である。コンコンと軽くドアを叩くと中からどうぞー、という声が返ってきた。
「ええい、ままよ!」
俺は意を決してドアを開けた。するとそこには、
『お帰りなさいませ、ご主人様!!』
綺麗なメイド服を着た5人の美少女たちが、俺を見つめていた。
いかがでしたでしょうか?
いよいよ智花達と蒼也の初ご対面です!!思ったより智花達の登場が少なくて待ちわびていた読者の方には申し訳ない限りです。
しかし、次回以降からは智花達に続き、新たなオリキャラ達も続々登場してくるので、ぜひお楽しみに!!
それでは今日はこの辺で失礼します。
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第6話 初練習
最近朝晩めっきり冷え込んできましたが体調にはくれぐれもご注意下さい。
それでは本編へどうぞ。
バタン、とドアを閉めた。
.....何だろう、前にもあったよね、こんな展開。
俺は今しがた起こった出来事を今一つ納得できずにいた。もう一度整理をしてみよう。
俺の目が正しければ確かにドアを開けた瞬間5人のメイド服を着た少女達が俺の方を向いていたと思うのだが...幻覚だろう、そう幻覚に違いないな。
最近俺も俺自身にとっちゃクソみてえな従姉に散々振り回されたあげく今日もここまで連れてこられたからな、きっと疲れが溜まって幻覚を見てたに違いない。
俺は自分にそう納得させるともう一度気持ちを切り替えて再びドアのぶに手を掛け、思いっきりドアを開けた、するとそこには
『お帰りなさいませ、ご主人様!!』
俺の願いを打ち砕くかの様に先程のメイド服を着た5人の少女達が俺を見つめていた。
そして先程俺に向かって発した台詞を一言一句違わず言い切った。
.....ごめんなさい、僕には理解できないです。
俺が心の中で呟いていると、突然俺のもとに5人の少女達の中でリーダーらしき?眼鏡をかけた長髪の少女が歩み寄ってきた。
「あのー、気に障ったのでしたら謝りましょうか?私たちも少し張り切り過ぎてこんな格好になってしまいましたので...」
申し訳なさそうだったので俺は少し口調を和らげて答えた。
「いや、全然大丈夫だよ。まあできることならそのメイド服、かな。着替えてきてくれないかな?あ、あとその『ご主人様』っていうのは言うのをやめてくれると助かるんだけど..」
すると少女達は一斉に輪になり何やら話を始めたが、結論が出たのか俺の方を向いて、
『わかりました、お兄ちゃん!!』
.....どうしよう、誰か助けて下さい。
――――――――――――――――――――――
あのあと彼女達が着替えを完了させるまで俺はいったん部室の外へ出た。そして何分か経って中から再びどうぞー、という声がかかったので俺はドアを開けた。
見ると、5人ともまだ練習着等が支給されていないのだろう、慧心の体操服を着ていた。
そんなこんなで俺は自己紹介を始めた。
「えっと、もう唯姉..じゃなかった、七瀬先生からも話があったと思うけど、自分が七瀬先生の従弟の梅崎蒼也です。コーチをするのは初めてだし、まあ1週間っていっても1日おきでコーチをする訳だから数回くらいしか指導ができないけど、どうぞ1週間宜しくお願いします。」
俺が自分の自己紹介を終えると、彼女達はパチパチと拍手を返してくれた。
小学生から拍手されるって結構くるなあ...
俺がそう思っていると、今度は彼女達の方が自己紹介を始めた。
「け、慧心学園初等部6年、湊智花です!」
「同じく、三沢真帆でーす!!」
「改めまして、永塚紗季です。」
「ひなた。袴田ひなた。」
「か、香椎愛梨...です。」
全員の自己紹介が終わると、突然俺の肩にツインテール姿の三沢真帆さんが飛び乗ってきた。
「ねーねーそうやん、練習しないの練習?練習しようよ!」
そうやんって...俺のことか?
少なくとも年下、特に小学生辺りからアダ名呼ばわりってのも結構くる。
「そ、そうだね真帆さん。じゃあ練習場へ行こうか?」
「さん付け禁止ー!!ちゃんと名前で呼ぶように。」
「わ、分かったよ真帆。」
「おーしっ、そんじゃみんな、行くぞお!」
真帆はそう告げると、俺の肩からピョンと飛び降り、そのまま紗季達がいる方へ戻っていった。
しかし今度はボブカット姿の湊智花が俺のもとに緊張した顔つきで寄ってきた。
「あ、あの...梅崎蒼也選手..ですよね?今年の冬の選手権と去年の夏のインターハイでMVPを獲得したっていう。」
「ああ、そうだよ。」
俺がそう答えると智花はパアッと明るい表情を見せ、少し興奮気味に話しかけてきた。
「大ファンなんです私!!七瀬先生から話を聞いてもしかしたら、ってずっと思ってたんですけど...うわあ、本物だあ...あ、後でサインとか頂いても良いですか?」
俺のファンがいるとは思ってもいなかったが少なくとも凄く嬉しかったので、
「うん、サインくらいだったら全然大丈夫だよ。じゃあ今はとりあえず練習場へ行こっか?」
「はい!ありがとうございます。」
それから練習場へ向かう間、俺と智花は終始インターハイやら選手権の話で盛り上がった。
「へえ、ちゃんと人工芝のグラウンドなのか。」
唯姉から聞いていた限りでは小学生の女子サッカーは基本的に大会でも怪我を考慮して、人工芝のグラウンドでプレーをさせるらしい。そのため慧心の様な私立校でも同様に安全第一を考えて人工芝を設置しているのだそうだが、俺自身も強豪校でプレーをしてるぶんそこまで驚きはしなかったが...まあスゲえな、私立校。
そうこう思っている内にグラウンドの近くにあるポール型の時計は午後の4時を回っていた。
「よし、じゃあもうあんまり時間がないから今日はパスとシュート練習をしよう。まずはパスから。じゃあ2組になって早速やろう。」
振り分けの結果、真帆と紗季、ひなたと愛梨、そして残った智花は俺と一緒にパスをすることになった。
智花とパスをしている間、俺は智花以外の4人の様子を見てみた。
まず真帆と紗季だが、この2人はボールに慣れているのかまずまずといった所か、様になっていた。真帆はまだトーキックで蹴っていたのが目立ったがこれからの練習次第ではきっと上手くなっていくだろう、紗季はボールも足の裏で止めたり、ちゃんとインサイドでパスを出していて安定感がある。走力を身につければボランチで活躍できる日も遠くはないだろう。
俺はそんな監督の様な考えを既に抱いていた。
お次はひなたと愛梨だが、2人ともまだあまり蹴った回数も少ないのだろう、蹴り方もまだ両腕を前に出したまま蹴るような感じだった。ひなたはそこそこ良い方だが愛梨はボールが来たらあたふたしていたのでまずはボールに慣れていく必要があるだろう。
そして智花だが、この子はこの5人の中では格段に上手い。パスも正確なら、遠距離のパスもインステップでしっかりと返すことができる。
これは凄い才能を持った子かもしれない、と俺が思っていても当の本人は、
「あ、憧れの梅崎選手と一緒にパスしてるんだ..えへへ。」
どうやら少し上の空だったようだが、とにかく凄い存在を発見だ。
続いてシュート練習をする為にゴール前まで5人を連れてきたが、俺が彼女達の正面に立って、そこからボールを出してそれをシュートさせる様な形になったが、真帆と紗季はシュート力の方も中々強く、高確率でゴールネットを揺らしていた。
一方やはりひなたと愛梨はまだシュート力も弱く、愛梨はボールが違うところへ飛んでいったりもしたが、まあそこは仕方ない。これからの中で鍛えていくしかない。俺は心の中でそう決めた。
しかし智花はこのシュート練習もそつなくこなし、左右両方でシュートを出来るというまたしても驚くべき才能を発揮していた。
初日の収穫にしちゃ、凄く意義のある1日だった。そう考えていると先程見た時計の針は午後の5時前を指していた。
「よし、そろそろ辺りも暗くなるし今日はここまでにしよう。さあみんな、片付けに入って!」
俺がそう告げると、彼女達は不満気ながらも各々片付けに入っていった。
ふと目をやると、やはり少し物足りないのだろう、智花が1人ボールを抱えたまま、ペナルティエリア手前で立ちすくんでいた。
瞬間、智花はボールを前に置いて、ボールと距離をおいた後、思いっきり助走を始め右足を振り抜いた。
ゾクリ、と寒気が走った。智花が蹴ったボールは美しい軌道を描きながらゴールへと吸い込まれた。
「ごめん、智花!今のもう一回見せて!」
「ふえっ!?」
気づけば俺は智花のもとへ夢中で駆け出していた。
いかがでしたでしょうか?
ちょっとストーリーがスローペースですいません。
これからは少しずつペースを上げるようにします。そしてオリキャラも直に登場します、ぜひお楽しみに!
感想頂けたら嬉しいです。こちらも宜しくお願いします。それではまた。
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第7話 志島明日香
まずは・・・最新の投稿が遅くなって本っ当にすいません。つい先刻までテストだったもんで(本当は明日も続きが)。今後も少し遅れるかもしれませんが、頑張って早めに投稿するようにします。
さあ、今回はタイトルにもあるように待ちわびていた方々、大変長らくお待たせしました、そう!新オリキャラの登場です。遂にキターーー!!ということでこれからも出てくるオリキャラ達と共に繰り広げる物語をお楽しみ下さい!それでは、どうぞ。
「はあ、疲れた・・・」
今まで過ごしてきた人生の中で、今日以上に疲れというものを身体の底から感じた事はないだろう。確かに今までサッカーの練習に明け暮れた毎日を過ごし続けてきた訳で、肉体的疲労というのはその練習を繰り返していった中で嫌と言うほど味わってきた。しかし、今回は全く状況が違う。もちろん肉体的ダメージもあるにはあるが、それ以上に精神的ダメージが大きい。今日はその2つが重なった為、ここまで疲労を感じているのだろうと俺は思った。
「それもこれも、全部あの忌まわしき従姉のせいってかおかげなんだけどなぁ。」
俺は頭の中で俺の従姉である七瀬唯香を思いやった。突然俺の前に現れ、なおかつ自身の受け持つ女子サッカー部(小学生)のコーチをやってほしいと頼み込んできて、俺の人生を180度回転させた張本人。俺は今更ながら自分がなぜあの忌まわしき従姉の頼み事を安易に承諾してしまったのか、疑問に思ってしまう。確かにあの時の唯香の頼み方は並大抵な物ではなかった。何か、本当に助けが欲しい様な、そういった眼差しだった。
「クソ、元はと言えば、あの休部さえなければ良かったんだ・・・!休部にならなけりゃ、今頃俺だって必死に大会に向けて練習に励んでたってのに。」
“ 1年間の休部“ それは突然俺の元に降りかかった悲劇。信じられなかった。というより、信じたくなかった。3年生も引退し、2年生が主体となって新チームとして動こうとした矢先に起こった時、ただただ俺は茫然とするしかなかった。 衝撃の事実が発表されたあの日から数日経ったが、数日経った今でも学校側からは何も知らせはなかった。どんな経緯で休部に至ったのか、休部になった理由など、まだ何も明かされていない。この休部になった経緯を巡って、学校内でも様々な噂が流れた。特に多くの生徒の間でささやかれた噂は、一部のサッカー部のメンバーが暴行に及んだ、というものだったが、とりわけ俺自身はその噂を信じる事はしなかった。冬の選手権も優勝して、誰一人不満を持つメンバー等、いるはずがなかったからだ。
「はあ、まあいいか。1年間とは言ったもののひょっとしたら近い内に復帰するかもしれないし。仮にサッカーを続けたいなら何処かのクラブチームに入ればそれでいいや。」
俺は自分にそう納得させた。とりあえず、今はあの娘達にどう指導をしていくかだ。流石に目に見える物を与えないと、面目が立たないしな。そう考えている内に俺は家の玄関前まで辿り着いた。
「まあ、これからじっくりと考えるか。」
そうして俺は自分の鞄の中に入れていた鍵を取りだし、閉まっているドアの鍵穴に鍵を差し込み、ドアを開けた。
ガチャッ
「・・・・・・・・・・あれ?」
ガチャッ、ガチャガチャガチャ!
開かない。というよりびくともしない。
「おっかしいなあ、ちゃんと鍵穴差し込んだはずなのに・・・」
瞬間、ハッとした。急いで隣の車庫を覗いたが、案の定母親が使っているはずの車はその場にはなかった。
「・・・まさか・・・」
前にも似たような経験をしたことがあったのを俺は思い出した。俺は再び鍵を取りだし、ドアの鍵穴に差し込み、ねじった後、恐る恐るドアを開けた。
ガチャリ、
「おお、帰ってきたか我が家の期待の星、ロリコンホーp」
バタン。
・・・神様1つ聞いてもよろしいでしょうか?俺が一体何をしましたか?一体俺はどんな事を償えばあの忌まわしき存在から離れる事が出来るのでしょうか?
様々な思考が頭の中を巡ったが、どうやら神様は俺に対してとっても冷たい存在であることが確認できた。俺はやむを得ず、再び部屋の中へ突入した。
ガチャリ、
「何だよ、さっきは無視してよう。そんなに従姉って言う設定が嫌か。そうか、お前は妹の方が良いんだなこのロリコン野郎が。」
矢継ぎ早に俺に向かって罵声を浴びさせてきたこの女こそが、俺にとって憎ましき存在であり、俺の人生を180度回転させた張本人、七瀬唯香だ。っていうか勝手に俺のイメージを固定するんじゃねえ。いい加減ロリコン扱いはやめろ。後、俺は従姉よりも従兄の方が欲しいわ。
俺は内心そうツっこんだが、口だけは達者なこの女と口論になっても時間の無駄、と判断し話題をさっさとサッカーの話へ半ば強引に切り替えた。
「もういいよ。ってか、アンタの方も頼んどいた新メンバーについては大丈夫なんだろうな?」
「んー、まあ大体揃ったかな。あ、でもちょっと面倒なのが1人・・・」
その口調はいかにも相手が厄介であるかを感じさせる様な口振りだった。
「へえ、どんな娘?」
「うん、本人は幼い時から親の影響でサッカーにはまりこんでね。それで慧心に入ってもサッカーを続けたかったらしいんだけど、ウチの部に入るかクラブチームに入るかで迷ってたみたい。で、明日練習を見に来たいっていうからこっちは無理に断る理由もなかったからOK出しちゃったけど、明日来れる?」
ちょうど明日は日程の変更で午後の早い時間帯に終わるため、時間は充分にあった。
「まあ、行けない事はないけど・・・いつ頃終わんの?」
「そんなに遅くはないかな、2時頃だと思う。じゃあ明日2時前後位にこっちに来て。そこで紹介も兼ねてするから。」
「分かった。ところで、その娘の名前は?」
「ああ、志島明日香っていう娘。どうかした?」
「いや、何でも・・・・」
志島明日香、何だろう、どっかで聞いた事があるような名前だが・・・結局思い出す事も出来ず、その日はそのまま俺は疲労のせいもあってかすぐに深い眠りへとついた。
――――――――――――――――――――――
翌日、慧心学園初等部人工芝サッカーコート
「あ、そうやんだ。おーい!そーうやーん!」
俺の姿を見つけるやいなや大きな声で出迎えてくれたのは、ポニーテールが特徴の三沢真帆だ。
「やあ、真帆。他の皆もこんにちは。」
俺はにこやかな表情で残りのメンバーとも挨拶を交わした。
「梅崎さん、こ、こんにちは!」
やや緊張気味の智花にも柔軟に俺は対応する。
「うん、そんなに緊張しなくていいよ智花。あ、後他の皆は言ってるけど俺の事は下の名前で呼んでいいよ。名字でっていうのもちょっと堅苦しいしね。」
「は、はい。ありがとうございます、蒼也さん。」
智花との話を終えたところでちょうど俺がやって来た方向から、ジャージ姿の従姉と、もう1人、慧心の体操服を着たミディアムヘア姿の少女が一緒に向かってきた。
「おーっす。ちょうどタイミングあってて良かった。じゃあ紹介するね。この娘が志島明日香。皆と同じ6年生よ。じゃあ、明日香ちゃん、プロフィールは自分でやってね。」
実際に見てみると上背はあった。体格もしっかりしている。流石は小さい時からサッカーをしてるだけはあるな。
「えーっと、志島明日香です。ポジションはFW。3歳からサッカーをやっています。身長は163㎝、体重は47㎏です。」
「ああ、僕がこの女子サッカー部のコーチをやってる七瀬先生の従弟の梅崎蒼也です。サッカー歴が長いならこの名前は聞いた事があるかな?」
俺の質問に対し、
「ああ、知ってますよ。確か去年のインターハイと今年の冬の選手権でMVPに輝いた選手ですよね。噂はかねがね聞いてました。会えて光栄です。」
明日香は落ち着いた様子で応えてくれた。
「ああ、こちらこそよろしく。じゃあ早速練習に移ろうか。」
瞬間、明日香の目がキッと鋭くなったのを見て、俺は一瞬驚いた。
「?どうかした?」
だが俺の問い掛けにも答えない明日香はじっと視線の先を睨み付けていた。その視線の先には・・・
「・・・・・・智花・・・っ!」
「・・・・・明日香ちゃん・・・」
智花もまた、明日香の方を見つめていた。この時俺は、2人がどういった関係であるかなんて事は、到底予想が付かなかった。
いかがでしたでしょうか?
智花と明日香の関係とはいかなるものなのか、次回作をお楽しみに!!
次回作も更新急ぎます。
それでは皆さん、See you again!
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