二重魔法(デュアル・スペル)を使う守護神 (シマタク)
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1話
ハルジオンの街
魔法が普通の生活に影響を及ぼしている世界だが、この街の人の中には魔法を使える人は一割にも満たないらしい。
その代わり、漁業を中心としていて生活する人たちはみんな活発に楽しそうに働いている街だ。
「早く着いたのはいいことだが、あのバカはどこにいるんだ?」
腰まであるほどの綺麗な金髪をひとつに括っていて、両目は色違いのクリアグリーンとクリアブルーの瞳を持つ、顔がきれいに整っているせいで、周りから嫉妬と羨みの視線を浴びていることを、少年、タク・プリンセスは知らなかった。
腕時計を確認してみると、ちょうど昼時。どこかで昼ご飯でも食べているのだろうか?
少し騒がしいと思い周りを見渡すと、広場の一角に何やら集団が出来ていた。
「イグニール!!」
そしてその中から、探している人物の声が飛んできたので、迷わず集団の中に飛び込む。
「おいナツ、お前はここで何をしてるんだ」
「タク!!探してたんだぞ!・・・・っていうかそれより、イグニールを見つけたん・・・・・・・誰だお前!?」
そういって前の男の顔を見て驚くナツ。
「火竜(サラマンダー)といえば、わかるかな?」
「ナツ、ハズレだ。行くぞ」
そういって、ナツを引きずりながら集団から跳躍して脱出した。
「ちょっと失礼じゃない!!」
「火竜様に謝りなさいよ!!」
「そうよそうよ!!」
周りにいた女性たちが様々な攻撃をしてくるが、タクはすべてをきれいに避ける。
「みなさんも目を覚ましたほうがいいですよ、『目覚める姫』。」
女性たちに向けたタクの手から突風が放たれる。
「「「あれ、私たち何やってるんだろ?」」」
突如、先ほどの周りの人達の様子が変化する。
火竜と名乗った男は、この現象に顔を歪ませる。
「まさか、バレてないとでも思ってたのか、火竜さん?あんたが使っているのは『魅了(チャーム)』だろ」
「っち!!ここはひとまず退散だ」
男の足元から、紫のほのうが現れ、それに乗って港の方へ姿を消してしまった。
「なんだったんだあいつは・・・・」
ナツが地面に座りながら、考え込んでいると一人の女の子がナツに声をかけてきた。
「本当にいけ好かないやつよね。さっきはありがとう」
モデルのようなスタイルに、金髪で、腰に星霊魔法に使う『門の鍵』をつけた活発そうな女の子であった。
しかし、ナツはなぜお礼を言われているかわからないので、すこし困惑した表情を浮かべている。
「お礼したいから、ご飯でもどう?」
「よろしくお願いします!!」
「あい!!」
ナツと今まで黙っていた青猫、ハッピーはすぐに頭を下げて、その女の子の跡をついていった。
「さてと、あいつらが飯食っている間、あの火竜とか言う奴のことでも調べてようかな」
タクは、そう言うと漁師たちが集まる酒場の方へと向かっていった。
ナツと別れて数時間、すっかり日が暮れて夜になってっしまった。
様々な人たちに聞いたがあの男は、今夜船でパーティーを開くらしくいろいろな人たちに声をかけていた。
そのほかにも、今日はよくガラの悪い連中を街中で見かけることや、そいつらがたくさんの食料を買い込んでいること。他にも、最近近くの町で奴隷船がきていたことなどを聞くことができた。
「しかし、本当にあれが奴隷船である確証がないし、下手に仕掛けたら軍の厄介になるしな・・・・」
ふた考えながら空を見上げた瞬間だった。
ひとりの人間と一匹の翼の生えた猫が、海の方向へ飛んでいった。
「はぁ・・・・・、俺も海の方へ向かいますか」
少し風が吹いたと思ったら、既にそこに金髪の少年の姿はなかった。
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