ベル・クラネルとアイズ・ヴァレンシュタイン 【台本式Ver】 (へたくそ)
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1 オラリオ

この台本は台本形式となっています。

















ここは世界の中心、迷宮都市オラリオ。今そこに訪れた白髪の少年は亡き祖父の言葉を思い出しここにやって来た。

 

祖父「いいかベル、ダンジョンでモンスターに襲われてるか弱き女子(おなご)を助けいい関係になる。それこそがダンジョンの醍醐味、そしてそれが男のロマンというやつじゃ。いつかお前もダンジョンに潜り好きな娘を惚れさせてこい。」

 

突然亡くなった祖父の言葉を思い出しながらベルクラネルは大きな門をくぐった。

 

それは一人の英雄の始まり。それは一人の少女との始まり。それは一つの絶望の始まり。それは一つの希望の始まり。

 

 

それは一つの『眷属の物語(ファミリア・ミィス)

 

 

 

 

 

ベル「すごいなぁオラリオって、人も店も物もたくさんある」

 

 

「なんだ坊主、オラリオは初めてか?」

 

ベルの独り言を聞いていたドワーフがベルに話しかけた

 

 

ベル「あ、はい。ついさっきここについたばかりで。えぇっと…」

 

 

「ん?どうした坊主?男がそんな縮こまってどうする!もっと堂々と胸を張れ!はっはっはっはっはっは!!おっと、その前に名前も教えずにいるのも失礼だな。儂の名はガレス・ランドロックじゃ。お主はなんと?」

 

ベル「僕はベル・クラネルと言います!ところでランドロックさん、僕冒険者になりたくてここに来たんですけど、どこに行ったらなれますか?」

 

 

ガレス「なんじゃ冒険者になりたかったのか!それならうちの…いや、ギルドに行ってみるのが一番じゃの。あそこならいろんなファミリアを紹介してくれるじゃろ!」

 

 

ベル「ファミリア??ファミリアってなんですか?」

 

 

ガレス「おお、そうか来たばかりで知らぬのだな。よし、儂がギルドに案内しよう。その間に必要最低限の事を教えてやるかのう!」

 

 

 

ベル「本当ですか!?会ったばかりの僕にこんなに親切にしてくれるなんて、ありがとうございます!!」

 

 

ガレス「はっはっは!元気でよろしい!流石、若者と一緒にいるのは楽しいものじゃな!!それじゃギルドに向かうとするかの!」

 

(ベル・クラネルか、冒険者たる者見た目で判断してはならんがこやつには野心なんてものは恐らくないじゃろ。憧れか、好奇心か。どちらにせよこやつは冒険者には向いておらぬ)

 

 

 

ガレスはギルドに向かうまでの間、冒険者に必要な最低限の知識をベルに教えた

まず冒険者になるためには神の眷属になり、ファミリアに入る必要があること。

ダンジョンに潜りモンスターを倒しレベルを上げること。

それにはスキル、魔法、アビリティ、そして己の技を最大限に生かすこと。

そして何より、ダンジョンを甘く見ないことだ

 

 

それらの知識を一通り教え終わるとギルドに着いた

 

 

ガレス「ここがギルドじゃ。さぁ行ってこい坊主!お主の名が儂のところまで届くのを楽しみにしておるぞ!はっはっはっは!」

 

 

そう言い残してガレスはベルに別れを告げた

 

 

ベル「ありがとうございました!!またどこかでお会いしましょう!」

 

(ランドロックさん、いい人だったなぁ。会ったばかりの僕にこんなに親切にしてくれるなんて。それにおじいちゃんに似て豪快な人だったぁ)

 

 

ベルは祖父の事を思い出し、今冒険者になろうとしてるこの状況に興奮を覚えた

 

 

(これから冒険者になっておじいちゃんの言っていた出会いをするんだ!!)

 

 

若い女の人と接したことがないベルはただ純粋に女の子と仲良くなりたい。その一心でギルドに入っていった

 

 

 

 

 



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2 出会い

ベル「あの!僕をファミリアに入れてください!」

 

 

神「他をあたってくれ。お前みたいな貧弱そうなやつが入れるほどうちのファミリアは甘くないんだよ」

 

 

そう言いながらドアを閉められた。エイナさんが紹介してくれたファミリアはここで最後だったの…、一体どうしたら

 

 

 

 

3時間前

 

 

ベル「あ、あの。冒険者になりたんですけど…」

 

 

エイナ「初めまして。私はエイナ・チュールと言います。冒険者になりたいと言うとまだファミリアには入ってはいないという事ですか?」

 

 

ベル「はい、今日ここに着いたばかりで。冒険者になるにはここに来るのが一番だと言われて来ました。」

 

 

エイナ「そうですか。それなら私が今から紹介できるファミリアにリストを持ってくるので少しお待ちください。それとこれから少し冒険者になるための講義を受けてもらいます。と言っても1時間程度で終わるのでそんなに身構えなくても大丈夫ですよ。」

 

 

ベル「分かりました!」

 

(ランドロックさんに教えてもらってないことも教えてもらおう)

 

 

そしてその後エイナにこってり絞られたベルはぐったりして待合室のソファーに寝っ転がっていた

 

 

エイナ「ベル君大丈夫?この後ファミリアに回れるの?」

 

 

ベルを絞った張本人がなんの悪びれもなく言う。

 

 

ベル「エイナさんきつ過ぎですよ…。少し休めばなんとか行けると思います」

 

 

 

エイナ「まったくそんなんじゃ冒険者になっても頼りにされないよ?」

 

 

 

ベル「そんなぁ~…」

 

 

 

エイナ「もう、そんな落ち込まないの。ファミリアの紹介リスト持ってくるから少し休んでいなさい」

 

 

 

お茶を出したエイナはリストを取りに部屋を出て行った

エイナがベルに砕けた言葉を使っているのは講習中にベルの甘すぎる考えのあまり気合を入れすぎ敬語を使っていなかった事と、年齢的に弟みたいだと思ってしまったため正式な場以外ではこういった口調になってしまった

 

 

 

ベル(エイナさん本当に厳しかったなぁ、でもこれでダンジョンで安全を確保しながら冒険ができる!)

 

 

そう思いながらエイナの入れてくれたお茶に手を出すと

 

 

 

ベル「このお茶、美味しい…」

 

 

 

特別美味しいわけでもなく、何となくそんな言葉がポツリと出た

 

 

 

エイナ「それは少し特殊で疲労回復効果があるんだよ?頑張ったベル君へのご褒美みたいな感じかな」

 

 

 

ベル「そうだったんですか。ありがとうございます!」

 

 

 

エイナ「どういたしまして。さて、これが私の紹介できるファミリアのリストだよ。ベル君ならきっと入れると思うから頑張って!それとベル君の担当アドバイザーは私になったからギルドに用があるときは私を呼んでね?」

 

 

 

ベル「はい!それじゃ行ってきます!!」

 

 

そう言い残しベルはファミリアのドアを片っ端から叩いていったが結果は惨敗。

エイナからもらったリストには30以上のファミリアが記載されているが全て断られてしまった。

 

 

 

ベル「どうしよ、せっかくエイナさんが紹介してくれたのに。これだけ回っても入れてくれないなんて一体僕の何が…」

 

 

 

お前みたい貧弱なやつはお断りだ

 

なんかの冗談か?サポーターもろくに務まりそうにもないじゃないか!はっはっは!

 

あんたみたいなひょろいガキは雑用で十分だよ

 

 

 

次から次へと出てくる自分に向けられた言葉。見た目が弱そうだから、それだけで冒険者になれない。眷属にもファミリアにも入れてくれないのだ

 

 

 

ベル(どうしたら、一体どうしたらいいんだ…分からないよおじいちゃん)

 

 

 

裏路地の端っこで座り込んでいたベルに一人の金髪の少女が近づき

 

 

 

少女「あの、大丈夫ですか?」

 

 

 

ベル「え…?」

 

 

二人が出会った

これがベルのと少女の。二人の物語が始まった瞬間だった



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3 早すぎる再会

目を奪われた。腰に付けているレイピアが、金色の瞳が、金色の髪がただただ美しいと…

 

ベルSide

 

 

 

少女「あの、大丈夫ですか?」

 

ベル「あ、は、はい。大丈夫れすっ!!」

 

 

 

うわぁ…噛んだめっちゃ恥ずかしっ!

それにしても綺麗な人だな。こんな人もいるんだなぁ。

 

 

 

少女「その紙は…もしかしてファミリアのリスト?ファミリアに入りたいの?」

 

ベル「っ!!はい…、でもこんな僕だからどこも相手にしてくれなくて…。」

 

少女「そっか。それじゃ付いてきて。」

 

ベル「え、ちょっ、えぇぇぇ!」

 

 

 

そう言われ、無理やり手を取られ引っ張られていく。

何も言えないまま手を引かれること10分、そこに見えたのは2大勢力の1つ。

僕の村にまでもその噂は届いていた黄昏の館

 

そうそれは

 

 

『ロキ・ファミリア』

 

 

この世界で知らない者などいないだろう。

団長であるLV6の勇者(ブレイバー)フィン・ディムナ、副団長でLV6の九魔姫(ナイン・ヘル)リヴェリア・リヨス・アールヴ、LV6の重傑(エルガムル)ガレス・ランドロックなど、第一級冒険者が多数所属している。

 

そこで思い出した。一人いたのだ。目の前で僕の手を引く少女。金色の瞳、金色の髪、美しい顔立ち、そしてレイピアを使う第一級冒険者、剣姫(けんき)の二つ名を持つ人。特徴が一致している。その名前は…

 

 

 

??「おっっかえりアイズたーーーうぶぅおえ!!」

 

ベル「レベル5の剣姫…」

 

 

その名を呟くと彼女は僕の方を振り向き

 

 

少女「そういえば、まだ自己紹介していなかったね」

 

 

そう言って彼女は左手を胸に当て、優しく微笑みながらその名を口にした。

 

 

『私はロキ・ファミリアのアイズ・ヴァレンシュタインだよ』と

 

 

 

 

 

 

 

 

エイナ「ロキファミリアぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!」

 

ベル「え、エイナさん声が!声がでかいです!!」

 

 

ギルドのフロントの端の方にあるソファーとテーブルだけがある応対の場でエイナがとんでもデカく、無駄に長く叫んだせいで二人が注目の的になっていた。

 

 

エイナ「ご、ごめん。でも本当にロキファミリアに入ったの??流石にベル君が嘘をつくとは思えない、けどいきなりそんなこと言われても…。」

 

??「まぁいきなり言われても疑うのは仕方あるまいが、間違いなくベルはロキに認められているよ、エイナ。」

 

エイナ「!?り、リヴェリア様!?」

 

リヴェリア「久しいな、エイナ」

 

 

 

 

 

 

時は戻り黄昏の館

 

 

ロキ「なるほどなぁ、ファミリアを探しているんかぁ。」

 

ベル「はい、でも全部断られてしまって。」

 

ロキ「まぁ、それはわからんでもないが…」

 

ベル「えぇ~~!!そんなぁ…」

 

 

ベルはアイズに連れられロキ・ファミリアに連れてこられ、応対室でロキとアイズの三人で話していた。

 

 

ロキ「でも、おかしな話やな。エイナが紹介してくれてるならウチらのファミリアを紹介しないっていうのもなぁ」

 

アイズ「それは私も思いました。フレイアファミリアはともかく、なんで紹介してくれなかったんだろう。」

 

ベル「いえ、紹介してくれましたよ。けど門払いされてしまっt」

 

ロキ「はぁぁぁ!?!?ベルたんそれほんまか!?!?」

 

 

ロキは物凄い形相で迫ってくるのでベルは若干涙目になっている。

 

 

ロキ「それは何というか、すまんな。しっかり責任取らせたる…」

 

ベル「は、あははははは…」

 

アイズ「……」

 

 

ロキの禍々しいオーラにベルは苦笑いを、アイズは紅茶を飲むという何とも言えない絵面が出来上がっていた。

 

 

アイズ「そういえば、フィンたちはまだ来ないの?」

 

ロキ「んん?あぁもうそろそろ来る頃やと思うんやけどなぁ」

 

 

コンコン コンコン

 

 

ロキ「お、来たみたいやな。入ってええでえぇ!」

 

 

扉が開き入ってきたのはパルゥムの男、ロキファミリアの団長であるフィン・ディムナ。

次に入ってきたのがエルフの女、副団長のリヴェリア・リヨス・アールヴ。

 

そして

 

 

??「なんじゃロキ、いきりなり呼び出しよって。大した用でないならお主の秘蔵の酒を…」

 

 

入ってくると同時にロキに文句を言うその男は数時間前、初めてのオラリオで困っていたベルに声をかけてくれたドワーフ

 

 

ベル「ランドロックさん!!!」

 

 

 

その人であった



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4 決闘

ベル「はぁ、はぁ、はぁ、」

 

ガレス「どうしたそんなものかベルよ」

 

 

剣を持ったボロボロのベルの前にガレスは何も持たず立ちはだかっている。

 

 

 

 

 

30分前

 

 

ガレス「ん?なんじゃベル、お主ロキファミリアに入ったのか!」

 

ロキ「やぁっと来たか。遅いで~?」

 

ガレス「そんなことよりロキよ、儂の質問に答えぬか」

 

ロキ「ん?あぁ、まだやで。アイズたんが連れてきてな。入団するかしないかはこれからや」

 

 

 

ロキはニヤリと笑う。何かを企むその顔はベルにとって恐ろしいものだった

 

 

 

フィン「何を企んでるんだい?ロキ」

 

ロキ「何、簡単なことや。今ここにいる三人のLV6のうち一人と戦ってもらう」

 

ベル「なっ!!む、無理ですよロキ様!」

 

リヴェリア「…本気か?まだこの子は恩恵ももらっていないのだろ?」

 

ガレス「下手をすれば死んでしまうぞ。」

 

ロキ「これは決定事項や。さぁベル、自分の相手を自分で選びや。」

 

ベル「……、それじゃランドロックさんで、お願いします」

 

ガレス「儂か、そう来るとは思ってはいたがよかろう」

 

 

 

 

 

闘技場

 

 

 

ベルとガレスが向かい合って立っている中、ロキが呑気に歩いてきた

ガレスは庶民が来ているような茶色の布の服を着てるが、ベルは軽装の鎧を身に着けている

 

 

 

 

ロキ「それじゃこれからガレスVSベルの入団模擬戦を始めるで!ガレスはベルが死なない程度に相手してやり。ベルは本気でかかっても構わへんよ。その剣もガレスをぶった切る勢いで使いや~。」

 

ガレス「武器を持つのは初めてか?」

 

ベル「は、はい」

 

ガレス「そうか、なら何も考えずかかってこい。余計なことを考えては返ってやりにくかろうからな」

 

ベル「わ、わかりました!」

 

ロキ「両方準備OKやな?ほな、開始!!!」

 

 

 

ロキが合図した瞬間、ベルの視界からガレスが消えた。そう思った瞬間、ベルの視界は砂煙のせいで真っ暗になったのと同時に耐えがたい衝撃と痛みに襲われた

それはみぞおちにパンチは入れられ、壁に激突した

 

 

ベル「がっ!!あっ、ぁぁぁっ」

 

 

 

上手く呼吸ができない。痛すぎる。意味が分からない。今のベルはこの状況を理解する事すら出来ていなかった。そんなベルの様子をあざ笑うかのように砂煙の中からガレスが出て来た

 

 

 

ガレス「どうしたベルよ。いつまでそこにひれ伏しておるのだ?それとももう終わりか?そんな生半可な覚悟でダンジョンに挑もうとしていたのなら1週間と経たず命を落とすぞ。それとも今ここで……」

 

 

 

『儂が殺してやろうかの』

 

 

 

その瞬間、闘技場全体にとてつもない重い空気、ガレスの殺気があふれ出した。

ベルはその殺気に何もできず、ただ恐怖するしかなかった

 

 

 

 

 

ロキ「あんのアホやりすぎやろ」

 

フィン「彼はもうダメかな。あの殺気に耐えれる器には見えない」

 

リヴェリア「同感だ。あの少年に冒険者は向いていないのだろう」

 

アイズ「…」

 

 

 

三人がベルの敗北を確信した中、アイズは三人を拗ねたように睨んでいた

 

 

 

フィン「どうしたんだいアイズ。君がそんな顔をするなんてじゃが丸君を買ってもらえなかった時以来だよ」

 

 

 

フィンが冗談交じりに言うとアイズは

 

 

 

アイズ「あの子は負けない、諦めない。きっと立ち上がる」

 

リヴェリア「っ!アイズどうしたんだ?お前がそんなことを言うなんて」

 

アイズ「分からない。けどベルと会った時に強い何かを感じた。だからベルは負けない」

 

フィン「アイズにそこまで言わせる少年か、興味ができて来たな」

 

 

 

ベル(無理なのかな…、やっぱり僕には冒険者になれないのかな。)

 

 

 

ベルはほとんど諦めていた。祖父がいなくなり冒険者に憧れてオラリオに出て来た。

そして2大勢力の1つであるロキファミリアから勧誘を受け、ファミリアに入れると思っていた。

しかしそれにはそれ相応の実力がいる。当たり前の話だ。誰もが簡単に入れるはずがない。

 

 

 

ガレス(誰もがこのファミリアに入れるほど甘くはない。だからロキかフィン、リヴェリア、それか儂のいずれかが入れるか否かを判断する。それはこのファミリアの為でもあり、その者のためでもある。このファミリアは強いが故に危険が伴う。そしてベル、お主は弱い。だがお主は…)

 

ベル(僕は…このファミリアに相応しくない。でも)

 

ガレス(対峙して分かった。その目に宿る野心が。目指すものがある者の目!それを見せてみろ…)

 

ベル(認めてもらうんだ。今は弱い僕でも、目指す場所が、目標があって。おじいちゃんが話してくれた英雄になりたい!)

 

ベル/ガレス『僕の夢を(お主の覚悟を)!!!』

 

 

 

二人は走り出す。ガレスは覚悟を。ベルは夢を。互いに伝えるためにぶつかる。

その結末は予想するまでもない。圧倒的なガレスの勝利。しかしそれでもベルは足を止めない、道を曲げない。

その姿は愚者に見えるだろう。勇気と無謀を履き違えた子供なのだと。しかしそれは誰にもでもできることか?

 

 

 

『答えは否』

 

 

 

ベルはそれほど憧れてしまったのだ。圧倒的な力を前に背を向けず前に進む英雄の姿に。

 

 

 

ガレス「その覚悟、恐れ入ったぞベル!!その覚悟に儂も答えよう!!!正々堂々とお主を正面から受け止めてやるわい!!」

 

ベル「行きますガレスさん!!!これが今の僕の力です!!!」

 

 

 

その瞬間ベルの剣が光始めた。それと同時に地面に魔法陣が浮かび上がった。その瞬間ベルは闘技場にいるロキ、フィン、リヴェリア、アイズ、ガレスの視界から消えた。そしてガレスの上に姿を現した。

 

 

 

ベル「これで終わりです!!!!」

 

ガレス「っ!!!ふんっ!!!!」

 

 

 

ベルが剣を振り、ガレスが腕をクロスさせて受け止める。

ドワーフであり、LV6であるガレスだからこそできる芸当。

そして二人のぶつかり合う力は強い風を生む。フィンたちも立ってはいるが顔を腕で隠している。

いつまでも続くと思われる均衡は意外とあっけなく終わりを告げた

 

 

 

ガレス「ベルよ。認めよう、お主の覚悟と夢を。だからこそこの勝負は勝たせてもらうぞ!!」

 

 

 

そういうとガレスはクロスしている片腕を外し、もう片方の腕を使い剣をいなす。そしてベルは成す術なく落下する。

その隙にガレスはベルの横腹に蹴りを入れた。

 

 

 

ガレス「んんぬうああぁぁぁぁぁああ!!!」

 

ベル「がっ、あがぁっ!!!!」

 

 

 

ベルは血は吐き吹っ飛ばされ、壁に激突し気絶した。

 

 

 

リヴェリア「あの大馬鹿者が…」

 

ロキ「エリクサー使ったげてくれやママ」

 

リヴェリア「ママ言うな」

 

フィン「……」

 

ロキ「どないしたんやフィン」

 

フィン「いや、なんでもないよ」

 

 

 

フィンは疼く親指を摩りながら答えた

ベルはすぐにエリクサーで回復され、ガレスはリヴェリア、アイズにどやされたのだった



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5 結果

ベルSide

 

 

真っ暗で何も見えない

今にも僕をのみ込んでしまいそうな程の闇

ここはどこなんだろう

 

 

??(ここはお前の世界だよベル)

 

ベル「君は一体誰?姿を見せてよ」

 

??(それはできない。なんせ君が許してくれないからね)

 

ベル「どういう事?僕が許せば君の姿が見れるのかい?」

 

??(究極的に言ったらそうかな。けどそれはそんな簡単なことじゃない。だから今は君の許しの為に力を与えよう、と言ってもさっき君が強引に奪っていったんだけどね)

 

ベル「力ってもしかして、ランドロックさんと戦っていた時の?」

 

??(そうだよ。自覚はあったんだね。それなら話は早い、その能力は君の為に生まれて来たんだ。だから君にしか扱えない。君にしか理解できない力だ。僕が教えれるのこれだけ。あとはベル、君自身で考えるんだ)

 

ベル「待って!僕の為に生まれて来たってどういうことなの!?それに君は一体誰なんだ!?」

 

??(言っただろう?その力の事は君が考えるんだ。それと僕の名前は"まだ"無いんだ。でももう一度会うことが出来たならもしかしたら教えることが出来るかもね。それじゃベル。おはようの時間だ)

 

 

 

 

 

 

謎の声が聞こえた

それはどこか聞き覚えある声で、懐かしくもなく、心地よくもなく、ただ違和感を感じない。そんな普通の声。何の変哲もない。

 

 

 

 

『僕の声』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベルSide Out

 

 

ガレスとの決闘から丸一日が経った

ロキが予想していたよりもガレスの気合が入っていたのでベルが重症を負い、リヴェリアとアイズのこってり怒られた後、アイズはベルの看病をしていた

 

 

 

ベル「………ぅ、」

 

 

 

そしてベルは長いようで短かった夢を終え、目を覚ました

 

 

 

アイズ「っ!ベル、大丈夫?どこか痛いところとかない?」

 

 

 

アイズは心配で不安そうな顔をして訪ねて来た

 

 

 

ベル「ん、ア、アイズさん。大丈夫ですよ。どこも痛くないです」

 

 

 

目を開け、焦点が何となく定まったベルは、何となくだがアイズの様子を確認することが出来た。なので安心させるためにありのままの事を伝えた

 

 

 

アイズ「よかった。それならフィンたちを呼んでくるから大人しく待っててね」

 

ベル「分かりました。あの、アイズさん」

 

アイズ「ん、なに?」

 

 

 

少しの間が空く。すぐに返事が来ないことにアイズは疑問を持ち少し首をかしげる

そして5秒の間の後、ベルはどこか懐かしい顔で

 

 

 

ベル「おはようございます」

 

 

 

この一言、ただの挨拶の一言。それでもアイズは何か感じた。

ベルを見つけて二日も経っていない。ベルと話した時間なんて10分もないだろう

しかしベルを見つけたその時から何かを感じていた。

臆病な子。でもその内から何か強いものを感じる、アイズはその何かを知りたかった。だからベルをこのファミリアに連れて来た

 

 

 

『そしてそれは間違いではなかった』

 

 

 

ベルは負けたものの、ガレスとの一戦でその『何か』を見せてくれた

そしてベル自身もその『何か』に気づき、近づいたのだと悟った

それが何故か無性に嬉しくなり、アイズも優しい笑顔で

 

 

 

アイズ「おはよう、ベル」

 

 

 

そう返したのだった

 

 

 

 

 

 

 

アイズがフィン、ガレス、リヴェリア、ロキを連れてきた

 

 

ガレス「はっはっはっは!!すまんかったなベル!まさかお主との戦いであそこまで興奮する戦いになるとは思わなくてだな、つい力が入ってしまったわい!」

 

フィン「まったく、リヴェリアとエリクサーがあったから良かったけど次からは気を付けてくれよ?」

 

リヴェリア「その通りだ、後でエリクサー一本分の金額を請求するからな。逃げるなよ」

 

ガレス「はっ!誰が貴様相手に逃げるものか!」

 

リヴェリア「ほう、それはまた大きく出たな」

 

 

 

いつの間にか二人は火花を散らしながらにらみ合っている状況になり、その状況にベルは一人取り残されていた

 

 

 

フィン「二人とも喧嘩は後にしてくれ。さてベル、試験から一日が経った。勿論結果は出ている。君はこのファミリアを訪れガレスに挑み、そして負けた。だがそれは当たり前のことだ。恩恵すら持ってない者はLV1の冒険者に勝つことさえままならない。それでは一体僕たちは何を見ていたか。それは戦闘力でも技の技術でもない、君の意志の強さ、そして心の弱さだよ」

 

ベル「心の弱さ…?」

 

ロキ「せや、意志の強さは言わんでも大体察しはつくやろ?でも何故心の弱さを見ていたのか、そんなもん簡単な話や。冒険者にとって必要なもんだからや」

 

 

 

そうは言われてもベルは分からずきょとんとした目でロキを見ていた

 

 

 

フィン「まだ分かってないようだね。ベル、君はガレスと戦っている時、いや初撃をもらった時一度は諦めた、違うかい?」

 

ベル「いえ、その通りです。あの一撃で全てが分かってしまいました。負ける、それはどうやっても引っくり返せない事なんだって。でも…」

 

フィン「君の意志がそれを許さなかった。君の描く夢が諦めること拒んだ」

 

ベル「…はい。諦めたくなかったんです。僕の唯一の夢を」

 

 

 

ベルは下を向き、悔しそうに、悲しそうにシーツを握りしめた

今にも泣きだしそうなその背中を見てアイズたちは少し心を痛めたが、それと同時に確信した

 

 

 

ロキ「それでええんやで。諦めそうになっても、逃げたくなっても。実際に諦めてもいい。逃げてもいい。それがベルの選んだ道ならうちらは何も言わへん。諦めることにだって勇気がいる。だから何も言わへんよ」

 

ベル「ロキ様…」

 

ロキ「でもなベル、意志の強さは、心の弱さでもあるんやで。さっきベルが話したように諦めかけた時、自分は弱い。けど弱いからこそ今の夢を持った、そしてその夢があの時のベルの支えになった。つまりや、意志の強さと心の弱さはお互いに支えあってるってことや。どっちが欠けてもアカン。強さを知り、弱さを知る。これが一番大事なことなんや」

 

ベル「でも、僕は弱い自分が許せないんです。僕が弱いせいでおじいちゃんを助けることが出来なかった。だから!」

 

アイズ「それは違うよ」

 

全員「「「!!??」」」

 

リヴェリア(まさかアイズがここまで…)

 

アイズ「確かにベルが強かったらベルのおじいちゃんは助かったかもしれない。でもそれで自分の弱さを否定しちゃだめ。それは絶対にベルには必要なものだから。だからおじいちゃんの事を受け入れるしないんだよ。悔しいなら強くなるしかないの。そして弱さを忘れちゃダメ。弱さを忘れた人間は優しさを忘れてしまうから。だから…その、ごめん、うまく言えない」

 

ベル「アイズさん…」

 

フィン「アイズがここまで言うなんてビックリだよ。まぁアイズの言いたいことはベル、君は今の君のままでいることが一番大事なんだ。それは性格や外見の話じゃなく心の事だ。今の君の心は今の君にしか持てないものだ。それは今まで君が会ってきた人達が、出来事が築きあげて来たもの、もちろんその中には君のおじい様も含まれている。だから変っちゃいけないんだ。そんなことをしたら今までの事と出会っていた人達を否定することになるからね」

 

 

 

ここでベルは理解した。今の自分は自分だけのものではないと。今までの出来事が、人々が、出会いが自分を作ったのだと。自分の一長一短、それはおじいちゃんがくれたモノでもあるのだと。そう思うと不思議と気持ちが軽くなった。弱いことが悪いことだと思って来た。でもそれは違った。人には、弱さこそ必要なのだと、ベルは理解した

 

 

 

ベル「今の僕は、今までの人の思いが作ってくれんですね。」

 

ロキ「そういう事や!ほんで話がずれてしもうたな。ベルたん今から結果を伝えるで」

 

 

 

そう、結果は既に出ている。ロキはそれを伝えるために来たのだ

緊張のあまりベルは冷や汗が止まらない。一秒一秒が長く感じるとはよく言ったものだ

鼓動が大きくなるのが分かる

 

ロキ「我、ロキファミリアの主神、ロキの名の下に告げる。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「文句なしの合格や!おめでとう!これからよろしくな!」

 

 

ガレス「当たり前だ!この儂をあれだけ振るい上がらせて不合格なわけなかろう!」

 

フィン「確かにあの戦いは僕にも何か感じるものはあった。あんな感覚は久しいよ」

 

リヴェリア「私も同じだ。己の信念をあそこまで強く持てる者はそういないだろう」

 

ロキ「おうおう皆偉い褒めるなぁ~。ほんでほんで?アイズたんは何かないんか??ん?ん??」

 

アイズ「私も信じてたよ。君なら出来るって。改めてベル。これからもよろしくね」

 

 

 

そう言いながらアイズはベルに手を差し伸べた

それはあまりにも美して、まるで女神のようだ。とベルは思いその手を取り

 

 

 

ベル「はい!」

 

 

 

夢と弱さを胸に強くなることを誓った



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6 訓練

ベルの入団試験合格から2日の朝、ベルはロキファミリアの正式な眷属、冒険者になった。

そして今日からベルはダンジョンに向かうための訓練が始まる。

 

内容はフィンからは戦闘最中の的確な況判断と行動を、リヴェリアからはモンスターとダンジョンの特性を、ガレスからは純粋な戦闘力を…

 

 

 

ロキ「と思ってたんやが、それプラスアイズたんにはベルに剣の扱い方を教えてもう事になったで」

 

フィン「それはまた急だね。もしかしてアイズの意志でかい?」

 

ロキ「せや。アイズたんがここまで肩入れするんや。他のもんには申し訳ないけどアイズの好きなうようにさせよう思うてな」

 

リヴェリア「それには賛成だ。これでアイズに何かしらの変化があるかもしれない。いや、変化はもう起こっているか。」

 

ガレス「うむ、ワシとの戦いでも小僧の可能性を確信していた。あんな目を見るのは初めてじゃ。あの二人のこれからが本当に楽しみじゃな」

 

ロキ「まったくや、さてそれじゃ3人とも。ベルの訓練とアイズたんの事、頼んだで!」

 

 

 

そう言いながらロキは朝っぱらから大量の酒を飲み始めた。

いつもなら止めるリヴェリアも今回ばかりは止める気にはなれなかった。

強くなる事にしか興味のなかったアイズが初めて他人に興味を持ったのだ。これほど嬉しいことはない。

 

4人がそんな話をしている中、ベルとアイズは訓練をしていたのだが…

 

 

 

ベル「訓練、よろしくお願いします!」

 

アイズ「うん、よろしく。ベルは本当に剣でいいの?武器はいっぱいあるから試した方がいいと思うけど」

 

ベル「いえ、剣で大丈夫です。何故かは分からないんですが、ガレスさんと戦った時に剣を持った瞬間、剣が僕の体の一部になったような気がしたんです。だから剣でお願いします!」

 

アイズ「分かったよ。君がそこまで言うならそれでいいと思う。」

 

ベル「ありがとうございます!それでアイズさん、今日は何をするんですか?」

 

アイズ「ベルはまだ基本が身に付いていないからね。構え、振り方、動き方、防ぎ方。これを覚えてもらう。そうして基礎を染みこませて自分の剣を見つけていくんだよ」

 

ベル「自分の剣、ですか…」

 

アイズ「うん、基礎だけじゃ上層のモンスターに通じても中層、下層のモンスターに通用しなくなることが多くなる。だから自分にあった剣を見つける必要があるの。でもそれは簡単な事じゃない、完全に完成させるまでに最低でも10年はかかる。もしかすると型の基本を作り上げるまでに10年かかるなんて事も珍しくないんだよ。」

 

 

 

 

正直ベルはこの話を聞いて不思議と何も感じなかった。オラリオに来る前の自分なら怖気付いていただろうという確信があった。

だが今はどうだろう。自分の剣を見つける。どれくらい大変なのか聞いて分かるし、想像もできる。けどなぜかワクワクしている自分がいる事にベルは驚いていた。夢に近づけれるからなのか、ただ剣を振れることが楽しみなのか今は分からないが、

 

 

 

ベル「なら今すぐ始めましょう!アイズさん!」

 

アイズ「……!うん、そうだね」

 

 

 

早く自分だけの剣を見つけたい。そう思っていた。

そしてその真っ直ぐな目を見たアイズはベルは強くなるとまた一つ確信を得たのだった

 

 

 

 

 

 

その日の夜、ベルはアイズ、フィンによる訓練を終え、クタクタになりながら自分の部屋に戻り、ベッドに飛び込んだ。

汗も流し、服も着替えたベルは夕飯を食べる体力もなくそのまま眠りにつこうと思った時、コンコンと扉が鳴った。

 

 

 

アイズ「ベル、起きてる??」

 

ベル「ア、アイズさん!?どっどうしたんですか!?」

 

 

 

ベルは急いでドアを開けアイズに尋ねる。

しかし、アイズの鎧姿とは違う格好にベルは顔を赤くする。

 

 

 

アイズ「今日の訓練で疲れると思って、これ持ってきたの。よかったら使って?」

 

 

 

そう言って渡してきたのはハイポーションだった。

 

 

 

 

ベル「あ、ありがとうございます!でも、いいですか?ハイポーションって高いんじゃ…」

 

アイズ「うん、でもそれくらいなら下層に行けばすぐだから気にしないで」

 

 

 

 

下層をそんな簡単に攻略できるなんて、流石LV5だ。

僕がそこまでにたどり着くのにどれくらいの時間と努力が必要なのだろうか

まったく想像できない。それでもやらなきゃいけないんだ。

僕が憧れた英雄になるために

 

 

 

 

アイズ「??ベル?」

 

ベル「あ、ごめんなさい、ボーッとしてました。ポーションありがたく使わせてもらいますね!」

 

アイズ「うん。おやすみ、ベル」

 

ベル「はい!おやすみなさい、アイズさん」

 

 

 

 

ベルはアイズに貰ったポーションを飲み、眠りについた



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7女神

ベルがロキファミリアに入ってから5日が経った。ベルはその5日間を全て、フィン、ガレス、リヴェリア、アイズの訓練や座学に費やしていた。

 

しかしみんなの様子がおかしい。

そう思ったのは初めてアイズとの訓練を終えた次の日の朝、ロキに呼ばれてステイタス更新を行った時だった。

 

 

 

 

 

ベル「えっと、ロキ様?どうかされたんですか?」

 

ロキ「ん〜?いやぁ〜ベルたんの肌はすべすべやなぁ〜っと思ってなぁ?グヘヘ…、もっと触ってもそのすべすべ肌を…ってウソやウソそんなことうちする訳無いやないかホンマにする訳ないっていやマジでだからホントに勘弁して下さい二人ともその杖とレイピアを下ろして!」

 

リヴェリア「そうか、なら今回だけは勘弁してやろう」

 

アイズ「ん…」

 

ガレス「全く本当に学習ないのうお主は」

 

フィン「まぁそれがロキだからね。いきなり物わかりが良くなっていたらそれこそ本物か疑うよ」

 

ロキ「みんなしてウチの事そんなに言わんでも…」

 

ベル「あ、あの、ロキ様さえ良ければ僕は大丈夫ですよ?」

 

ロキ「ほ、ほんまか!?ベルたん!ほんまにいいんか!?」

 

リヴェリア「いい訳ないだろ、全く。ベルもあまりロキの事を甘やかさない方が良い。すぐに調子に乗るから」

 

ベル「あ、は、はい」

 

リヴェリア「それではそろそアイズとの稽古の時間だ。しっかり励んでくると良い」

 

ベル「は、はい!あろがとうございます!」

 

アイズ「それじゃ行ってくるね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フィン「行ったようだね。それでロキ、彼に何があったんだい?」

 

ロキ「なんや気付いてたんか」

 

フィン「君にしては随分とベルのステイタスに見入っていたからね」

 

リヴェリア「どう言う事だロキ」

 

ロキ「いやなぁ、それがベルたんのステイタスが、その、なぁ…」

 

ガレス「何を勿体ぶっておるのだ!さっさと見せんか!」

 

ロキ「………ええやろ。ただし他言無用や、絶対にやぞ」

 

 

 

ロキはいつにもなく真剣な目をして3人に言った。

それの目を見たフィン、リヴェリア、ガレスはベルの恩恵を見ずとも事の重大性を察し、静かに頷いた。

そしてロキはベルのステータスを3人に見せた。その瞬間3人は自分の目を疑わずにはいられなかった。

 

 

フィン「ロキ、これは何かの間違いじゃないのかい?」

 

ガレス「これがベルのステイタスとでも言うのか。恩恵をもらったのは昨日、儂らそう認識していたが?」

 

ロキ「せや、アイズたんとの稽古の前に恩恵を与えた。そしてそれは昨日の事、それは間違いあらへん」

 

リヴェリア「だとしたらこの異常なステイタスはなんなのだ。あり得ない…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベル・クラネル

 

LV1

 

力 i 93

 

耐久 H 128

 

器用 i 75

 

敏捷 H 113

 

魔力 i 0

 

 

 

魔法【】

 

スキル【英雄願望(アルゴノゥト)

   【隠された力】

   【護り手の鎧(ガーディアン)

 

 

 

 

 

ロキ「昨日のアイズタたんとの稽古で熟練度トータル400オーバー。しかもスキルが3つも既に発現している」

 

フィン「これはまた、何も言えないね」

 

リヴェリア「あぁ、まさかこれ程とは」

 

ガレス「うむ、鍛え甲斐がある…とは言える状況でもないのう。この事をベルにでも伝えれば…」

 

ロキ「間違いなく他の神共、時にあのアバズレ女神は間違いなくベルたんを狙ってくるやろうな。だからこの事はここにいる4人、後はアイズだけに伝える」

 

リヴェリア「それが無難だろうな」

 

フィン「僕もそれで異存はないよ」

 

ガレス「儂もじゃ」

 

ロキ「皆んな、ベルの事頼むで」

 

 

 

ロキが頼むと3人は力強く頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黄昏の館の訓練場で二人は稽古していた。二人の剣がぶつかる音が訓練場にに響き渡る。

ベルは必死にアイズの動きに付いていこうと必死だが、アイズは涼しい顔をしながらベルの攻撃を簡単に受け流す。

しかしアイズは顔にな出していないが内心ではかなり驚いていた。

 

アイズ(速い…、昨日の訓練の時は全くの別人。動きにはまだ無駄が多い、それでもこの成長の早さは普通じゃない)

 

ベル「……っ!……はぁ!!!」

 

 

 

 

アイズがベルの成長スピードに付いて考えていると、ベルは今まで使ってなかった蹴りを使いアイズの足元を狙いに行った。

それをアイズは難なくと交わす。

 

 

 

アイズ(っ!今の動き…狙ってたのかな。それにしてもやっぱり速い。この子は一体…)

  「今日はこれくらいにしようか」

 

ベル「ま、まだやれます!もう一回だけお願いします!」

 

アイズ「気持ちは分かるけどこれで終わり。この後もフィン達の訓練もあるからあまり無理しちゃダメだよ」

 

ベル「うっ…、で、でも…」

 

アイズ「……」

 

 

 

ベルはアイズの無言のプレッシャーに耐えきれなくなり、訓練はここまでにした。

アイズもベルの気持ちは分かる。つい数日前までの自分がベルと似たようなモノだったからだ。

朝昼夜構わずにダンジョンに潜りひたすらにモンターを倒す。今の自分はもうほとんど頭打ち状態、もうレベルアップするしかない。

しかしレベルアップはそんな簡単な事ではない。

 

そこで悩んでいるときにベルと出会った。そしてベルには何か言葉では言い表せれない何かを感じた。

ベルの事を知れば強くなれる気がした。最初はそんな考えだった。

しかしガレスとの戦いで見せたベルのあの目。何かを願う強いあの目を見た瞬間にアイズは一つ確信した。

ベルは近い内に自分たちと肩を並べるほどの器を持っている。それは戦闘面でも、もちろん精神面でもだ。

しかしそんなベルには自分の様になって欲しくはなかったのだ。

 

 

 

ベル「あの、アイズさん?どうかされましたか?」

 

アイズ「…ベルはどうして冒険者になろうとしたの?」

 

ベル「どうして、ですか…。あまり深く考えた事はありません。でも一つだけ夢があるんです」

 

アイズ「夢?」

 

ベル「はい、僕は英雄になりたいんです。別に世界を救いたいとか、歴史に名前を残したいって言うわけでもないんです。僕、小さい時に一回だけモンスターに襲われたことがあるんです。怖くて動けなくて何も出来なかった時、おじいちゃんが助けに来てくれました。カッコよく現れたわけでも、カッコよくモンスターを倒したわけでもなかったです。畑仕事の格好のままで、持ってたのは泥だらけの桑、最後にはおじいちゃんはぎっくり腰になってしまいました。皆んなからはたくさん笑われていましたけどおじいちゃんはこう言ったんです

 

【どんなに笑われてもお前を守れた。それだけで十分だ】って。

 

その時の僕にはおじいちゃんが英雄譚に出てくるどの英雄よりもカッコよく見えたんです。だから僕は誰か一人だけでも良い、どんなに小さくてもカッコ悪くても良い、ちゃんと胸を張れる英雄になりたいって。それに僕には英雄譚に出てくる様な英雄みたいに勇気も力もありませんから」

 

 

 

ベルは自分の夢を語り終えた後、軽く自虐しながら苦笑いをした

 

 

 

 

アイズ「そんなことないよ。その夢はすごく立派だと思う。だからそんな顔しないで」

 

ベル「アイズさん…」

 

アイズ「ベルはきっと強くなる。昨日と今日の訓練で分かった、動きが昨日とは比べものにならない程成長している。ベルの想いがきちんと結果として出ている証拠だよ」

 

ベル「でも、それだけじ英雄には慣れません…」

 

アイズ「そうだね。でもさっきも言ったよね?ベルの想いがきちんと結果として出ているって。それはきっとこの先必要となってくる、それは絆になり、勇気になり、力になる。それは英雄になる為に必要な事だと思う。だからベルはそのままでいいと思う、それがベルでそんなベルが英雄になるのに意味があると思う。前にも言ったでしょ?今のベルは今まで出会って来た人のおかげで居るんだよって」

 

ベル「アイズさん…、今までこの夢のことを話すと笑われて来たんです。子供の夢だって、お前みたいな弱い奴はなれないって。でもアイズさんに話してよかった。こんな僕でもこの夢を持っていいんだって思えました。ありがとうございます!」

 

アイズ「うん、これからも頑張ろうね」

 

 

 

アイズはベルの事を甘やかす様にベルの頭を撫でた。それを恥ずかしながらもベルは少し嬉しそうに笑った。

最初はベルも受け入れていたがアイズがいつまで経ってもやめない。

 

 

 

ベル「あ…あの、いつまで続けるんですか?」

 

アイズ「あともう少し」

 

ベル「えぇっと、それじゃあと少しだけ…」

 

 

 

アイズはベルの髪の手触りに良さにほんわかとした顔で、この後20分近く撫で続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイズとベルの稽古が終わり、アイズは出かける準備をする為、自室に向かおうとする途中でロキに引き止めれた。

 

 

 

 

 

ロキ「あっ!アイズたん!ちょっとええか?ベルたんの事で大事な話があるやけど」

 

アイズ「ベルの事で?分かった」

 

ロキ(……あれ?OKしたんか?いつもだったら是が非でもダンジョンに行きたがるのに、まさかこんなあっさりOKしてくれるなんて。ベルたんに相当懐いてる様やな)

 

アイズ「ロキ?行かないの?ベルの大事な話があるんでしょ?」

 

ロキ「せ、せやな。ほな行こうか。この話は他のやつの耳には入れられん話やからな。ウチの部屋でするで」

 

アイズ「もしかしてベルの身に何かよく無いことが起こるの?」

 

 

 

アイズは歩きながらロキに質問する。ロキはまたしても驚いた。アイズがここまで他人を気にかける事などなかった。

そんなアイズがここまでベルの事を気にかけるなんて、分かってはいても再確認する度に驚きを隠せない。

 

 

 

ロキ「起こる、かもしれないとも言える話であるし、既に起こってるっちゅう話や。こっから先は流石にこんな所では話せんからな、質問とかはうちの部屋についてからや」

 

アイズ「分かった」

 

 

 

アイズは珍しく真剣な目で話すので少し驚いていた。

いつもはおちゃらけているロキがここまで真剣なのは相当重大な事なのだと察した。

そしてロキの部屋に着き、その中でも一番奥にある部屋に通した。

そこは幹部とロキが極秘の会議をする時などに使用する部屋で、防音になっており外に音が漏れない様になってる。

 

 

 

 

ロキ「さてっと、とりあえずアイズたん。まず話す前にこのステイタス見てくれへんか?」

 

アイズ「っ!これって、本当にベルのステイタス?」

 

ロキ「もちろんや。これはさっきアイズたんとベルたんが稽古に行く前に更新したもんや。ベルたんは昨日アイズたんとの稽古しかしてない。なのに熟練度トータル400オーバー、こんなのいくらLv1の駆け出し冒険者でもありえない数字や。それに関係しているのかもしれにのが、更にあり得ないこの出現している3つのスキルや」

 

アイズ「昨日恩恵を貰ったばかりでこのステイタス、これがロキの言っていた既にベルの身に起こっている事?」

 

ロキ「せや、そしてもう一つ。これから起きるかもしれない良くない事は」

 

アイズ「他の神様に目を付けられるかもしれないと言う事…」

 

ロキ「その通り、このステイタスがバレれば間違いなく他の神が手を出してくる。ただちょっかいを出してくるだけならまだマシなもんや。けどベルたんを自分のファミリアに引き摺り込もうとするモンが現れないとも言い切れない。そこでアイズたんに頼みたい事があるんやけど…」

 

アイズ「私にベルの護衛をしてほしい?」

 

ロキ「護衛とまではいかんけど、少し気にかけて欲しいんや。フィンやリヴェリア、ガレスにもこの事は伝えてある。けど流石にあの3人には任せられない。そこでベルたんの事をアイズたんに頼みたいんや。アイズたんもステイタスの事で悩んでるのは知ってる。けど今はベルの為に協力してくれへんか?」

 

アイズ「分かった。ベルの事は私に任せて」

 

ロキ「アイズたん、今日は偉く物わかりが良いな?ダンジョンに行く事よりもこっちを優先させるし。そんなにベルたんの事が気に入ったんか?」

 

アイズ「気に入ったって言うよりも、放って置けない感じかな。何もしなかったら何処かに行っちゃいそうな気がして」

 

ロキ「アイズたんがそれを言うか、ウチらは毎回アイズたんがそうならんか心配で心配でおちおち寝てもいられんわ…」

 

アイズ「うっ、ごめんなさい…」

 

ロキ「まぁそんなアイズたんも可愛いけどな!それにアイズたんもウチら気持ちを分かってくれる様になってくれるはずやしな」

 

アイズ「これからは気をつけるね」

 

ロキ「よろしい!ベルたんが真似しない様にしっかりするんやで?」

 

アイズ「分かった」

 

ロキ「話はこれで終わりや。もうダンジョンに行っても大丈夫やで?」

 

アイズ「今日はダンジョンには行かないよ」

 

ロキ「へ?そうなんか?それじゃこの後は何するんや?」

 

 

 

アイズがダンジョンに行かない。これは大事件である。アイズが出かけると言えば絶対と言っていい程ダンジョンに行くのだ。と言うかむしろそれ以外思いつかない。もちろん武器屋などにも行くがそれはダンジョンに行く為に行くのだ。つまりダンジョン以外での外出目的は全く心当たりがないのだ。

あまりにも気になったロキはアイズに尋ねた。するとアイズは

 

 

 

 

『ベルと一緒に出掛けるだけだよ』

 

 

 

アイズは振り向きながら今まで見たことない様な優しい笑顔でロキに答えた。

その言葉にロキの思考回路は完璧にキャパオーバー、頭から煙を上げてフリーズした。

そこから再起動するのに3時間の時間を要したとフィンが後に語ったと言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いきなりフィンとの稽古がなくなりベルとアイズは二人で街を歩いていた。

 

 

 

ベル「あの、アイズさん。今日の朝、ロキ様の様子が変だったんですけど何か心たりがありますか?」

 

アイズ「少しだけなら」

 

ベル「ほ、本当です!?」

 

アイズ「ごめん、でも教えられないの」

 

ベル「え…な、何でですか?」

 

 

 

ベルはかなり不安そうな顔をする。

もしかしたら自分は何か良くない事でもしたのだろうかと思ったのをアイズは察っした。

 

 

 

アイズ「大丈夫、ベルが思ってる様な事じゃないよ。少しベルが心配なだけ。ベルは今までオラリオに来た事がないって聞いたし。ここはベルが思っている様な街でもあるけど、それ以上に危険な事もたくさんあるから」

 

ベル「そ、そうですか?僕、捨てられたりしませんか」

 

アイズ「大丈夫だよ、ロキは絶対にそんな事しない。だってベルはもう私たちの家族なんだから」

 

 

 

アイズはそう言うとまたベルの頭を撫でる。

それにベルは安心した様で、不安そうな顔をしていたのがほっとした顔になった。

そこでベルは一つ気になる事ができた。

 

 

 

ベル「そう言えばアイズさん、今日は何をにし街に来たんですか?」

 

アイズ「ん〜、特に考えてないかな。実は私もこの街のことあまり知らないの。いつもダンジョンで強くなることしか考えてなかったから」

 

ベル「そうなんですか?それじゃどうして街に?」

 

アイズ「ベルと一緒に何かしたくて。でも私何も知らないからベルと一緒にこの街のこと知りたくて。迷惑だったかな?」

 

ベル「そんな事ないです!僕もアイズさんと街に来れて嬉しいです。それに僕はアイズさんと同じ思い出を作れるのはとても嬉しいですよ」

 

アイズ「そっか、よかった。それじゃ行こうか、ベル」

 

ベル「はい、アイズさん」

 

 

 

その日、あの剣姫が知らない男と楽しそうに街を歩いていたと言う噂が流れた。まぁ事実なのだが。

それがロキの耳に入るや否や、またしてもロキは機能停止、今度は再起動するのに3時間半もかかったとか…




お久しぶりです。
更新が遅れて申し訳ないです。
プライベートで色々と忙しかったのでやっと投稿できてほっとしました。
今はコロナで大変な時期、自分は在宅作業がメインなので小説の更新を多くするはできませんが、この小説や、その他の小説が皆さんの空いている時間を少しでも有意義にする事ができればと思います。



他にも
【波動ねじれのヒーローアカデミア】
【メリッサ・シールドのヒーローアカデミア】
【Re:異世界で出会う冷酷無慈悲なお姫様】

なども書いています。
興味や時間をお持ちの方は是非見てください!





それとは別に更新されていない物もありますが、続き見たいと言う方がいるのであればまた再開しようと考えています。
どうぞこれからも「へたくそ」の作品をよろしくお願いします!


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8 ダンジョン

ベルがロキ・フォミリアに入団してから10日。アイズ達の訓練を終えたベルはステイタス更新の為にロキの部屋を訪れていた。フィン、リヴェリア、ガレスは居ないものの、ベルの更新には必ずアイズが同席のが恒例となっていた。

 

 

 

ロキ「さてっと、これで更新したでベルたん。いや〜今日も沢山頑張ったみたいやな〜」

 

ベル「は、はい。それでロキ様。僕のステイタスって今日も見せてくれないんですか?」

 

ロキ「悪いな、こっちもベルたんの事をいじめてる訳やないんや。ベルたんに見せれない理由(わけ)があってな。理由も話さないで信用してくれって方がおかしい話やけど、うちらの事を…、何や…」

 

ベル「信じますよ!ロキ様の事」

 

ロキ「そ、そんなあっさり、うちが言うんのもおかしいけど大丈夫なんか?」

 

ベル「はい。実はアイズさんに相談した事あるんです。ロキ様達が僕に何かを隠しているんじゃないかって。そうしたらアイズさんが言ってくれたんです。ロキ様は絶対に僕のことを見捨てたりしないって。だから信じてるんです、アイズさんを、ロキ様を。みんな、僕の大切な家族ですから!」

 

ロキ「ぅぅぅぅ、ベルたあああああん!」

 

 

 

ベルの言葉に、ロキはベルに抱きつこうとする。しかしそれは横で見ていたアイズに阻止された。

ベルにとっては抱きつかれる相手がロキからアイズに変わっただけなのだが。

 

 

 

アイズ「ベルに迷惑かけちゃダメ、訓練で疲れてるから。それにロキはいつもベルに抱きついているから今日は私の番」

 

ロキ「そんなアイズたん勘弁してえなぁ。これが1日に一回の楽しみやねん」

 

アイズ「でも今日はダメ」

 

ベル「あ、あのぉ、僕に拒否権って…」

 

アイズ「…イヤ?」

 

ベル「いえ全く!」

 

アイズ「良かった」

 

ロキ「ベルたんが堕ちた…。でもな、アイズたんにちょっと話があるからベルたんを離してあげてな」

 

アイズ「分かった…。それじゃベル、また明日ね」

 

ベル「はい、おやすみなさい。アイズさん、ロキ様」

 

ロキ「おやすみ〜!」

 

アイズ「おやすみなさい」

 

 

 

ベルが部屋を出ていくとロキは自分の机の引き出しから秘蔵の酒を出して飲み始めた。

アイズはそれを黙って見ていると、ロキは鋭い目つきで

 

 

 

ロキ「10日後の強化遠征にベルたんを連れて行こうと思っている」

 

アイズ「ロキ、言っていい事と悪いことがある。今度の強化遠征は35階層まで降りるはず、ベルを連れていくなんて何を考えているの」

 

 

 

アイズは珍しくロキを睨みつける。それはベルの事を思っての事だろう。それでも神に対してこんな事をできるのはオラリオでも10人もいないだろう。

 

 

 

ロキ「アイズたんの言う事も最もや。でもな、それは普通の冒険者やったらの話や。ベルたんが普通じゃないのはアイズたんもよぉく分かってるやろ?」

 

アイズ「それでもまだ恩恵をもらって10日しか経っていない、それにまだ実戦だって」

 

 

 

アイズの話に割り込むかの様に、ロキはベルのステイタスをアイズに見せた。

 

 

 

 

 

ベル・クラネル

 

LV1

 

力 F 432

 

耐久 C 648

 

器用 E 453

 

敏捷 C680

 

魔力 0

 

 

 

魔法【】

 

スキル【英雄願望(アルゴノゥト)

   【隠された力】

   【護り手の鎧(ガーディアン)

 

 

 

 

ロキ「ベルたんの成長スピードはホンマに異常や。たったの10日でステイタスにCが2つ、もう何が何だか。これ以上ステイタスが上がる前に実戦を覚えてもらわんきゃアカン。そこで問題が一つある、上層のモンスターでは恐らくもうベルたんの経験値にはならんやろ。それでこれから遠征までの10日間、アイズたんにはベルたんと一緒にダンジョンに行ってもらう。そして遠征に参加してもらう。」

 

アイズ「確かにベルの成長スピードは早い。でもだからって遠征は早すぎる。サポート役だってLV3の冒険者にやってもらっているのに、LV1のベルを連れていくのは危険すぎる」

 

ロキ「確かにな。でもなアイズたん、ベルたんのあの目を見て何も感じてへんっちゅう事はないやろ?」

 

アイズ「……なにが言いたいの」

 

ロキ「恐らく、その遠征でベルたんはレベルアップする」

 

アイズ「それは、フィンの親指が疼いてたの?それとも…」

 

ロキ「いんや。ウチの、神ロキ(トリックスター)の勘や」

 

 

 

アイズはロキの目を見て確信した。冗談のカケラもない。勘と言うには確信がありすぎる目をしている。しかし確信と言えるだけの十分な情報も揃ってない。むしろ不十分過ぎると言える。それでもロキの目を見ると、その言葉を信じてしまう。

 

 

 

アイズ「…分かった。ロキがそこまで言うなら」

 

ロキ「悪いな、色々任せきりになってしもうて」

 

アイズ「大丈夫、私もベルの事が心配だから」

 

 

 

 

アイズが部屋からいなくなり、ロキは一人で酒を飲む。いつもならリヴェリアに止められているので思いっきり飲むのだが、今回に限ってはそうも行かない。ベルの事を何としても守らなければいけない。しかしそれはアイズ達の力を借りるだけでは解決しない。ベル自信にも力をつけてもらわなければならない。

 

 

 

ロキ「さぁて、ベルたん。これからちと大変になるで」

 

 

 

ロキの目に映るのはどんな未来なのか。ロキはベルの未来になにを見たのか。

それはロキ()のみぞ知る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベル「ここがダンジョンですか…」

 

アイズ「緊張する?初めてだもんね」

 

ベル「はい。リヴェリアさんの座学はちゃんと受けてたので知識は大丈夫なんですけど、やっぱり本番となるとちゃんと対応できるか心配ですね…」

 

アイズ「最初は一階層でゆっくり慣らそうか。危なくなった時は私がサポートするから大丈夫だよ」

 

ベル「そ、そうですか…」

 

アイズ「??」

 

 

 

ベルの顔が暗くなっていく。アイズはベルを守れると絶対的な自信がある。それは自分がLV5である事と、今まで培ってきた経験があるからだ。

それなのにベルは何でこんな顔をするのか不安になった。自分ではベルの不安を消せないのか、と。

 

 

 

アイズ「私じゃ不安かな?」

 

ベル「いえ、そう言う事じゃ…。ただ、ここがおじいちゃんの落ちていった深い谷と少し似ていたので。何だかか怖くて」

 

アイズ「大丈夫、今は私がいる。それにベルだって前とは違う。自分で自分を守る力を持っている。だから自信を持って?」

 

 

 

アイズは不安そうなベルの頭を撫でる。ベルは撫でられて安心したのか目をほっそりさせて気持ちよさそうにしていた。

 

 

 

アイズ「それじゃモンスターを倒していこうか。まずは一対一から。しばらくは多対一の戦闘は避けていくからね」

 

ベル「は、はい!」

 

アイズ「ちょうどあそこにゴブリンがいるから、落ち着いて倒してみようか」

 

ベル「わ、わかりました」

 

アイズ「今までの訓練の事を忘れないで」

 

ベル「あ、はい!」

 

 

 

ベルは今カチカチに強張(こわば)っていた。無理もない。いくら訓練を積んできても、一発目で本場を切り抜けるのは至難の技だろう。

それ程に違うのだ。アイズは本番でも訓練通りにできた人間だが、ベルの様な新人冒険者はたくさん見てきた。

殆どのものは者は思考が止まり、頭が真っ白になると言う事を知っている。そこでアイズはベルに助言をする。

今までベルが培ってきた訓練をの事を。

 

 

 

アイズ「まずは冷静に、そして状況判断を正確に把握。肩の力は抜くけど、最低限の力を込める」

 

ベル「!…そしたら腰を適度に落として膝を曲げ、いつでも動ける様にバネを準備する」

 

 

 

そうしてベルは自分と対峙しているゴブリンを観察する。手の動き、視線の先、足の向き。全てに気を配らせる。

 

 

 

アイズ「そして相手を良く観察して、隙を見つけたら…」

 

ベル「突くっ!!!」

 

 

 

ベルは足のバネを最大限に利用してゴブリンに突っ込む。だがのスピード、反応はアイズの予測を遥かに上回っていた。

そしてゴブリンはベルに反応する事もできないまま、ベルの剣の餌食になった。

やはりベルには何かある。そんな事を考えてながらベルを見ると、ベルの背中が僅かに光っていた。ガレスと戦ったあの時の様に。

 

 

 

アイズ(あの光、確かガレスと戦った時にも。訓練の時より動きが早かった、けどあの時ほど早くはない。)

 

ベル「ふぅ…、アイズさん!どうでしたか?」

 

アイズ「うん、すごく良かった。集中していたせいか訓練の時より凄くいい動きをしていたよ。けど一体の敵にあんなに集中していたら、数が増えてくる時に反応できなくなるから、今度はそこを意識していこうか」

 

ベル「はい!!」

 

 

 

そこからベルはモンスターを倒していった。ロキの命令で初日は5時間と決められていたので、昼過ぎにダンジョンを出る。

そして魔石を換金してフォミリアに戻り、アイズは一人でベルの報告をロキにしにきた。

 

 

 

ロキ「お疲れさん!初めてのダンジョンはどうやった?訓練と本番の戦闘はちゃうからな。大体10体倒れせば多い方やけど何体くらい倒せたんや?」

 

アイズ「40体以上」

 

ロキ「…念のために聞いとくけど、アイズたんが手を貸した数も合わせてか?それとも…」

 

アイズ「ベルが一人で倒したモンスターの数。それに私は一度も手を貸していない」

 

ロキ「やっぱり普通の結果にはならんかったか。分かってはいたけど、ホンマにこうなってしまうと驚かずにはいられんな」

 

アイズ「私も分かってはいたけど驚いた。それに予想外の事も起こった」

 

ロキ「予想外の事?これはまた面白そうやな。それで、何があったんや?」

 

アイズ「詳しくは分からない、けどもしかしたらステイタスを一時的に向上させるスキルがあの3つの中にあるかもしれない」

 

ロキ「何やて?それはホンマか?」

 

アイズ「うん。その時ベルの背中が光ってた」

 

ロキ「それってもしかして、ガレスと戦った時と同じか?」

 

アイズ「そうだと思う、けどガレスの時よりは遅かった。何か条件があるのか、それは分からないけどスキルである事は間違い無いと思う」

 

ロキ「そっか、それなら今度の更新で何かしらに変化があるかもしれへんな」

 

アイズ「うん…」

 

ロキ「何やアイズたん、不安そうな顔して」

 

アイズ「少し気になる事があって」

 

ロキ「何や知らんけど、言える事なら今のうちに言っときや。一人で抱えきれない事もあるやろうからな」

 

アイズ「うん。実はベルが笑ってたの」

 

ロキ「笑ってた?それって普通のことじゃ…」

 

アイズ「違うの。モンスターを倒している時に、楽しそうに笑ってた。ベルがベルじゃ無い様に見えて、それを見たら何だか怖くなった」

 

ロキ「あのベルたんがか…、それは確かに気になるな。けど分からない事を考えても仕方ない。今は見守る、それだけや」

 

アイズ「分かった」

 

 

 

 

ロキはアイズのベルを心配そうに思う顔を見て少し嬉しくなった。あれ程強さに執着していたアイズが他人を思いやってる。

 

 

 

 

ロキ「アイズたんも変わったな」

 

アイズ「そう??」

 

ロキ「ああ、ベルたんが来てからやな。柔らかくなったっちゅうか、安心できる様になったわ」

 

アイズ「なんかごめん…、反省してる」

 

ロキ「まぁ今のアイズたんやったら何も心配いらんやろ。今度はアイズたんがベルたんの事を守るんやで?」

 

アイズ「任せて」

 

 

 

アイズはベルの事をどこか特別視している。それは周りの皆も同じだ。。ベルがロキファミリアに入団してから団員の、特にフィンやガレス、リヴェリアなどレベルの高いものが大きな影響を受けてる。その中で一番影響を受けいてるのはアイズだ。ベルを連れてきた張本人でもあるアイズだった。

ロキにベルの事を改めて任された後、アイズはベルの部屋を訪れた。別に用があったわけでもない。ただベルの顔を見たかっただけだった。

 

 

コンコン

 

 

 

ベル「はぁーい、誰ですかー…ってアイズさん!?ど、どうしたんですか!?」

 

アイズ「いきなりごめんね?ベルの事が心配で。今日初めてのダンジョンだったし、どこか怪我とかして無いかなって」

 

ベル「ありがとうございます。でも大丈夫ですよ。怪我もアイズさんんからもらったポーションで回復しましたし」

 

アイズ「それは良かった」

 

ベル「はい」

 

アイズ「……」

 

ベル「……」

 

アイズ「……」

 

ベル「…??」

 

 

 

アイズがベルの部屋の前から動かない。ベルはアイズの意図が分からずにいた。

 

 

 

ベル「あの、良かったらお茶飲んで行きますか?」

 

アイズ「ありがとう、それじゃお邪魔するね」

 

 

 

どうやらベルの選択は間違いではなかったみたいだ。

ベルはアイズにお茶とお茶菓子を出した。何を話すわけでもなく、ただただ黙って菓子を食べていく。

ベルはアイズが何をしたいのか全く分からないでいた。

 

 

 

 

ベル「あの、アイズさんは何をしにきたんですか?さっき言ってた事も何か建前の様に聞こえて…違ってたらすみません」

 

アイズ「ううん、違わないよ。本当はベルに会いたかったの。何でかは分からないけど、最近ベルと一緒にいると何故か安心できて、心が落ちつて和やかになるの。その、迷惑だったらごめん」

 

ベル「迷惑だなんて、そんな事ないですよ!僕もアイズさんと一緒にいたいですし、仲良くなれたらなって思ってます」

 

アイズ「そっか。良かった」

 

 

 

ベルとアイズ、二人はどこか似ている様で似ていない。二人は互いに特別なものを感じていた。

アイズはベルを初めて見つけたあの日に、ベルはガレスに負け目覚めたあの日に。

そんな二人の眷属の物語(ファミリア・ミィス)が徐々に加速していくのを傍観者達()は感じていた。

 

 

 



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9 冒険の始まり

【報告】

ベルが恩恵を貰ってから20日と前の回で言いましたが、訂正して恩恵を貰って10日という事にしました。


フィン「これから強化遠征を開始する。今回はLV3、LV4のみでの構成だ!アイズ、ベート、ティオナ、ティオネ、ガレス、リヴェリア、そしてこの僕はサポートに回る。この遠征では君たちだけで28階層まで攻略してもらう!それが出来ないのであれば今回の遠征は失敗だ!その事を忘れない様に!!」

 

「「「はい!!!」」」

 

フィン「そしてもう一つ!君たちに大事な報告がある!」

 

 

 

フィンの言葉にファミリアの皆んなが疑問を抱いた時、フィンの後ろからベルが、前に出てきた。

 

 

 

フィン「今日は例外的にLV1であるベル・クラネルもこの遠征には参加する!この事について皆んな、思う事があると思う。しかしベルの力は確かな者だ!LV1でありながらLV1では到底到達できない領域まで足を踏み込んでいる!その才能を僕とリヴェリア、ガレス、そして我らが主神、ロキがこの遠征に参加させないとう訳にはいけないと言う結論に至った!もし、彼の実力に不満のある者は今回の遠征で彼の力を見ていてくれ!そうすれば僕達の言っている事が分かるはずだ!それでは皆んな、無事に生還出来る事を祈っているよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遠征直前のダンジョン前でベルは一人でダンジョンを見上げていた。

その顔はどこか、見えない果ての地を見果てる様だった。

 

 

 

 

フィン「ベル、すまないね。君をあんな風に扱ってしまって」

 

ベル「いえ、本来僕はこの遠征に参加できないんです。この遠征に参加するのに沢山の努力をしてきた人達から見れば、僕の事をよく思わないのは仕方ない事です。だけど…」

 

フィン「なんだい?」

 

ベル「ここで立ち止まる訳にはいかないんだ…。この手で掴めるものがあるのなら僕は、それを取りこぼす様な事はしたくないんです…!」

 

 

 

 

ベルのその目には確かにな覚悟が見えた。いつもはどこか弱気で、自分たちの後ろを隠れてついてくる様なイメージがあったが、今日のベルは誰よりもダンジョンへの冒険を求める、一人の冒険者の姿があった。

 

 

 

 

フィン「君の覚悟は分かった。僕から言える事は一つ、絶対に死ぬな」

 

ベル「はい」

 

フィン「それと、後ろにいる彼女の相手もしてやってくれ」

 

ベル「え?」

 

アイズ「ベル、少しいいかな?」

 

 

 

ベルが後ろを見るとそこにはアイズがいた。何やら不安そうな顔をしている。

 

 

 

ベル「アイズさん、どうしたんですか?」

 

アイズ「少し気になって。その、大丈夫かなって」

 

ベル「大丈夫ですよ。アイズさん達とたくさん訓練してきましたから」

 

アイズ「そうじゃなくて。ベルがいつもと少し様子が違うから」

 

ベル「そうですか?」

 

アイズ「うん。無理だけはしないでね。絶対にだよ?」

 

ベル「は、はい。それじゃ僕はもう行きますね」

 

 

 

アイズはベルの背中を見て明らかにいつもと違うと確信した。

その背中はどこか、過去の自分にどこか似ていた。いつも死と隣り合わせだったあの頃の自分に。

 

 

 

フィン「気になるかい?彼のことが」

 

アイズ「うん…」

 

フィン「ロキからベルがこの遠征に参加した理由は聞いている。そこでロキから伝言だ、アイズ」

 

アイズ「ロキから?」

 

 

 

【前話した通り、ベルは恐らくこの遠征でレベルアップする。それはつまり、死んでも可笑しくない状況に落ちるっちゅう事や。そこで】

 

 

 

フィン「ベルの事はアイズに任せる。レベルアップも大事だが、ベルの命を何よりも優先にしろ、っと言っていたよ。だからアイズはベルの事に集中してくれ、他は僕達がカバーする」

 

アイズ「分かった。ベルは私が守っみせる」

 

フィン「任せたよ」

 

 

 

先程まで不安そうだったアイズの表情は、ベルを守る使命を与えられた事により強い目になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

21階層

 

 

リヴェリア「フィン、どう思う?」

 

フィン「順調とは言えないね。やはりベルに影響を受けているらしい」

 

 

 

LV1のベルがいる事により、遠征の雰囲気はハッキリ言って悪かった。

ベルの扱いが気に喰わない者、熟練度が頭打ちになってきた者、中々レベルアップできない者がベルに対して対抗心を燃やしていた。

 

 

 

ベート「けっ、雑魚が雑魚を意識してるから雑魚のままなんだよ」

 

フィン「あまりそういう事を言うものでは無いよベート」

 

アイズ「………」

 

リヴェリア「どうしたアイズ。さっきりから黙り込んで」

 

アイズ「ベルは頑張ってるのに、皆はどうして分かってくれないんだろうって」

 

フィン「もちろん知らない訳ではないよ。ただ認めたくないんだ。ベルは新人、そんな彼がいきなり強化遠征に参加してるんだ。不満がない方が不自然だろうね」

 

アイズ「でも……」

 

フィン「アイズの言いたい事も分かるよ。でも、ベルのスキルの事を話すわけにはいかいな」

 

アイズ「分かってる…」

 

 

 

アイズが不安な顔をしているの見かねたフィンは、自分が予想している事をアイズに伝える。

 

 

 

フィン「まぁそれに、ロキは言っていた事が本当ならベルを見る目はおそらく変わるだろう」

 

アイズ「レベルアップの事?」

 

フィン「うん、ベルはまだ二週間しか経ってない駆け出し。それがレベルアップなってしたら他の皆も認めざるおえないだろう」

 

 

 

現在のレコードホルダーはアイズの1ヶ月でのレベルアップだ。

それを優に超える二週間でのレベルアップ、一体ベルは何者なのだろうか。

他の者に言っても信じないだろうが、ロキのあの目とこの親指の疼き。

間違いなくベルはレベルアップする。その事にフィンは少しばかりの期待と興奮を覚えていた。

 

 

 

 

 

そんな時、ベル達のいる場所で大きな爆発が起こった。そこにはさっきまでいなかった大量のモンスター。

いきなりの非常事態にフィン達も少し行動が遅れた。

それでもフィンは的確な指示を出した。アイズにはベルを最優先させる様に改めて伝えた。

リヴェリアは怪我人の対応、ガレスやベートは残っているモンスターの掃討に当たった。

 

そしてアイズは一目散にベルを探す。土煙が邪魔で中々見つけられない為、魔法で土煙を払う。

周りを見渡し、ベルの姿を見つける。しかしベルは爆発で地面に空いた穴に落ちそうになっている気絶した仲間を引っ張り上げようとしていた。

だがそんなベルを、後ろから狙うモンスター数体がいた。

 

 

 

アイズ「(まずいっ!)目覚めよ(テンペスト)!」

 

 

 

アイズはすぐさまエアリアルを発動させる。

そのおかげでベルが襲われる前にモンスターを殲滅させる事に成功させ、ベルに手を伸ばす。

ベルもアイズに気づき、手を伸ばす。しかしベルは穴の縁ギリギリにいた為地面がベルの重さに耐えきれず、崩壊する。

ベルは一瞬驚いた顔をしたが、次の一瞬には何かを決めた顔をしていた。

そしてベルは仲間をアイズに向かって投げる。

 

 

 

ベル「この人を!」

 

アイズ「っ!ベル!」

 

 

 

アイズが仲間を受け止めるが、ベルはそのまま穴の底に落ちてった。

 

 

 

ベル「アイズさん!」

 

 

 

その顔は何故か笑っていた。まるで自分は大丈夫だと言っているかの様に。

いや違う、きっと自分が助けに来てくれると信じてくれているのだ。

それなら早く助けに…!!そう思いすぐに穴の中に飛び込むとするが

 

 

 

ベル「僕は大丈夫です!それより皆さんを!!」

 

 

 

 

その言葉にアイズは足を止めてしまった。ベルは笑顔のまま穴の中に消えていった。

さっきベルが助けた仲間は気絶している。

もしかしたらどこか怪我をしてるかもしれない。もし自分がこのまま助けに行ってもベルは喜んでくれるだろうか…。

ベルは優しすぎる、故にどうしても自分の事よりも他人の心配をしてしまうのだ。

そんなベルはアイズに向けた短い言葉、それに込められた想いをアイズは無碍(むげ)にできない。

 

 

 

アイズ「くっ…!」

 

 

 

アイズは苦虫を噛み潰した顔をしたが、気絶している仲間をリヴェリアの元に連れて行く。

 

 

 

アイズ「リヴェリア!この人を!」

 

リヴェリア「アイズ?どうしたのだ?何をそんなに慌てている?」

 

アイズ「説明は後でする。それよりもフィンはどこ?」

 

フィン「ここだ。それよりもアイズ、ベルは?」

 

アイズ「あの穴に…」

 

 

 

アイズの顔を見てフィンは何も言えなかった。

アイズにはベルの事を最優先させる様に言ったのは、アイズがベルを過保護にしている事があるからだ。

そうなればベルに危険が迫っている時に何の迷いもなく、ベルの安全を確保できると思ったからだ。

 

 

 

フィン「(アイズが何の理由もなくベルの元に向かわないのはおかしい)アイズ、一体何があったんだい?」

 

アイズ「ベルに…皆を守ってくれって…」

 

フィン「あの状況で他人の心配とは…。アイズ、団長命令だ。」

 

 

 

 

モンスターを殲滅しろ

 

 

 

 

その一言を聞いた瞬間、アイズはエアリエルを発動させる。

そして地面を蹴るとアイズは目にも止まらない速さでモンスターを殲滅して行く。

 

 

 

フィン「LV3までの者はなるべく戦闘を避け怪我人の救護にあたってくれ!そして魔法攻撃を使える者は遠距離攻撃で敵を殲滅!手の空いてる者は詠唱の間の援護を頼む!レフィーヤ!魔力の事は気にしなくていい!敵の数を減らすことだけ考えくれ!リヴェリアは怪我人の手当てが終わり次第戦闘に参加してくれ!」

 

 

 

フィンはまたしても的確な指示を出す。

 

 

 

アイズ「(ベル、待ってて。すぐ助けに行くからっ!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベルはアイズ達と分断され、十数階層下の階層にきていた。そんなベルがまず最初に(おこ)った事はまず身を隠す事だ。

そう、この階層のモンスタニーに見つかればベルは間違いなく殺される。ベルが穴に落ちる時に、アイズは迷わず一緒に穴に突っ込もうとした。

しかしベルは自分の事より、まずは仲間の安全を優先した。そうしなければ犠牲者が出るかもしれないと思ったからだ。

 

 

 

ベル「はぁ、はぁ、はぁ。最悪だな…、見つかったら絶対に殺される。なるべく動かない様にアイズさん達を待つしか…」

 

 

 

しかし、ベル達が襲撃を受けたのは21階層。推測では10階層は落ちたはず。

アイズ達がここに来るまで隠れ切れるか…。いや、そもそも助けは来るのか?

 

 

 

ベル「ダメだ…。悪いことしか思いつかない。はぁ…」

 

 

 

ベルは今の状況ではネガティブな気分になるしかなかった。それもうそうだろう。

今までダンジョンに潜ったのはたったの数回、そしていきなり強化遠征に参加されられ、今は最悪と言ってもいい状況。

LV1の自分はすぐにでもモンスターに襲われて…

 

 

 

ベル「いや、来る。来てくれる。皆、僕が生きてる信じてくれいるはずだ。だから僕も皆を信じて何としても生き残らなきゃ…!」

 

 

 

ベルは弱気な自分を鼓舞するかの様に言い聞かせる。何としても生き残るのだと。

そのための第一条件としてまずは、モンスターの少ない場所に居続けなければいけない。

今ベルの居る場所にモンスターが集まってきたのためベルは他の場所に移動しようとした。

 

 

 

 

『バキッ』

 

 

 

しかしダンジョンとは冒険者にとって宝の山であり、そして墓場でもある。

その理由は単純明快。冒険者に危機を逃さず、残酷な程に牙を剥く。

 

 

 

『グルゥゥ』

 

 

ダンジョンの壁を破り、そこに現れたのは10体は居るであろうリザードマン。LV1の冒険者が勝てる様な相手では無い。

 

 

 

ベル「ぐっ。リ、リザードマン…。こんな数相手できるわけ…」

 

 

 

ベルは後退りする。一刻も早くここから逃げなければいけない。

その為のベルは全力で後方に逃げるしかない。そう思った時だった。

 

 

 

ベル「ぁ……、嘘だろ…何で、何で…!!!」

 

 

 

ベルは絶望した。

前方には多数のリザードマン、そしてベルを挟み撃ちをするかの様に2

 

 

 

 

 

 

$%$&#'%$#%$%'$&!!!

 

 

 

 

 

2体のミノタウロスがいた



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