ロクでなし魔術講師と投影者(リメイク中につき凍結) (よこちょ)
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第1話 始まり

どうも。よこちょです。
この作品は前書いてた艦これの話が合わないと思って勝手に消した分の補充(?)です。
なので相変わらずの不定期更新ですが、生暖かい目で見てくれると幸いです。
では、本編どうぞ。

12月7日 内容の手直しをしました。話の大筋に変更はありません。


ここはフェジテ。

アルザーノ帝国魔術学院という最高峰の魔術を学べると名高いこの学園のある、由緒ある土地だ。

志の高い生徒や職員、講師ばかり揃っていて皆毎日勉学に明け暮れている………

はずであった。

 

アラン「ふわぁぁぁ………ねみい……。」

 

この男はアラン・ジョーゼフ・エミヤ。

その学園に在籍している一生徒だ。

 

アラン「眠い………。よし、寝るか。」

 

この男、基本ダメ人間なので朝は起きれない。

それどころか学校だと言うのに二度寝しようとしている。

 

アラン「学校は……サボるか。うん。そうしよう。きっと神もそう言ってるはずだ。」

 

などとのたまい二度寝しようとしたその時、

 

ガチャッ!ヒュンッ!ドスッ!

 

自室のドアが開き、矢が飛んできて、アランの耳スレスレに刺さった。

 

エミヤ「起きろアラン。まさかとは思うが、さぼる気か?」

 

この男はシロウ・エミヤ。

固有魔術持ちの魔術師だ。

普通のの魔術とは違い、投影魔術という魔術を得意としている変わり者である。

 

エミヤ「全くお前と言うやつは………。久々に顔を合わせたんだ。朝飯を作ったから一緒に食べよう。」

 

ちなみに傭兵の仕事であっちこっちに行っているので、家にいるのは稀である。

 

アラン「おお!シロウのご飯は絶品だからな。すぐ行くわ。」

 

アランは耳元に矢がぶっ刺さったことなど気にせず答える。肝が座っているのか、はたまたバカなのか。恐らくは後者であろうが。

 

エミヤ「先に行っておく。制服に着替えてから降りてきたまえ。」

 

アラン「はいよ。メニューはなんだ?」

 

エミヤ「ご飯と味噌汁と目玉焼きだ。さっさと降りてこい。」

 

アラン「へいよ。」

 

こうしてエミヤとアランの朝は始まる。

 

______________________________________________

 

 

 

エミヤ・アラン「「ご馳走様。」」

 

朝ご飯を食べ終わると、そろそろ登校しなきゃいけない時間が迫っていた。

 

アラン「おっ。そろそろ時間か。」

 

エミヤ「なんだ。もう時間か?」

 

アラン「ああ。んじゃ、行ってきます。」

 

エミヤ「ああ。気をつけるんだよ。」

 

アラン「わかってるって。」

 

そう言ってアランは家を出た。

 

エミヤ「さて。掃除だな。あいつのことだ。ろくに掃除もしてないんだろう。」

 

家から続く真っ直ぐな道を行く後ろ姿を見届け、エミヤは家事を始めた。

 

エミヤ「………汚すぎだ馬鹿者ォォォ!」

 

 

______________________________________________

 

アランside

 

家を出てしばらく歩くと、噴水のある広場についた。

家を出た時に後ろから聞こえた怒号や飛んできた槍は気にしないでおこう。うん。

 

システィ「あ、アラン!おはよう!」

 

そう言って声をかけてきたのはシスティことシスティーナ=フィーべル。

勝気な目に銀のように滑らかで綺麗な髪を持った所謂美少女と呼ばれる部類に入る女の子だ。クラス内でもトップレベルで可愛い。が、いかんせん堅物っぽいとこがあるせいで男子諸君から敬遠されがちな部分のある、少しもったいない感じの美少女である。

 

ルミア「アラン君おはよう。一緒に学校行かない?」

 

一緒に声をかけてきたのはルミア=ティンジェル。

人懐っこくて誰にでも優しい、こちらも美少女である。

なおシスティと違ってどことは言わないが大きい上、前述した性格も影響して、男子生徒に人気がある。

2人は俺のクラスメイトで、結構仲がいい。

 

アラン「おお。おはよう。そうさせてもらうよ。それはそうと、今日も仲がいいな。」

 

システィ「………さっきなんか失礼なこと考えなかった?」

 

アラン「気のせいだ。」

 

このふたりは一緒に暮らしている。

姉妹ではないのだが本物の姉妹のように仲が良く、いつも一緒にいるのを見かける。

たまに2人でゆるゆりな空間を作っている(偏見)大事件な時があるが触れないでおこう。

 

 

 

 

 

システィ「それにしても、ヒューイ先生なんでやめちゃったのかな………。」

 

2人と合流して、並んで学校までの道を雑談しながら歩く。

 

ルミア「う〜ん。まあ、きっとなにか事情があったんだよ。」

 

アラン「でもそのせいで休日まで登校になっちゃったしなぁ………。」

 

ヒューイ先生は、ちょっと前まで俺らを担当してくれていた講師だ。柔和な感じで人当たりもよく、人気もあった先生だった。

だがなんの前触れもなく突然いなくなってしまったのだ。

そのせいで授業に穴が開き休日に補習、という訳である。

 

アラン「いい先生だったのにな。」

 

システィ「そうよね……。いい先生だったのに。授業もわかりやすくて………。」

 

ルミア「もっと教わりたかったよね。」

 

3人「「「ハァ………。」」」

 

アラン「……まあ非常勤講師が来るらしいし、そいつに期待しようぜ。」

 

システィ「まあ、ヒューイ先生の半分でもいい授業をしてくれることを期待するわ。」

 

そうやって3人で歩いて学校へ向かっていると、

 

???「うぉぉぉーーーッ!遅刻ぅぅぅ!」

 

悲鳴に近い叫び声とともに、なんとも珍妙な男が走ってきた。

その男は血走った目でパンを咥え、まるで鬼のような表情で全力疾走をしている。これが可愛い女子高生ならば曲がり角でイケメンとぶつかって淡い恋が始まるだろう。

だが走ってくるのはどう見ても男であり、そもそも直線だった。

 

???「おいそこのガキ共!どけぇぇぇ!」

 

その珍妙な男は勢いを殺さず、そのまま俺らの方に突っ込んできた。

 

アラン「えちょっ!?」

 

ルミア「えぇ!?」

 

システィ「え、え!お、『大いなる風よ』──!」

 

突っ込んできた男は、システィがテンパッて叫びながらぶっぱなした【ゲイル・ブロウ】によって吹っ飛び、

 

???「ぎゃぁぁーー!なんで俺飛んでんだァァァァ!」バッシャーン

 

広場の噴水へと見事なダイビングを決めていた。

 

アラン「……あーあ。やっちゃったな。システィ。」

 

俺らの所属する学校、「アルザーノ学園」では、校外や人前でみだりに魔術を使ってはいけないと決まっている。問題にならなきゃいいんだが………

 

システィ「ど、どうしよう……!」

 

システィも慌てている。まぁ、今回の件はどう見ても男の方に非があるし、大丈夫だろう。多分。きっと。

 

ルミア「二人とも落ち着いて……。もう。」

 

そう言うとルミアはその男の方へ駆けていき、

 

ルミア「あの、大丈夫ですか?」

 

声を掛けていた。流石はルミア。出来る子である。

 

???「大丈夫さ。ふっ……それより君達、怪我はないかい?」

 

全身切り傷擦り傷だらけのどうみても怪我をしている男からそう言われていた。

その男は精一杯爽やかな笑みを浮かべているのだろうが、ずぶ濡れの洒落た衣装を着崩している状態では全くカッコ良くない。むしろダサい。

 

アラン「いや、あんたの方が大丈夫か?」

 

思わず突っ込んでしまったが、俺に非はないはずだ。

 

???「全く……。急に飛び出すなんて危ないぞ?親の顔が見てみたいもんだよ。」

 

システィ「いや、飛び出したのは貴方だった気がするんだけど……」

 

気がするんじゃなく事実だ。

どけガキ共ーーとか叫んでたし。

 

ルミア「で、でもシスティも魔術撃っちゃったでしょ?ちゃんと謝らないと!」

 

システィ「そ、それもそうね。ごめんなさい。どうかご無礼をお許しください。」

 

グレン「全くだよ。このグレン様が寛大な心の持ち主でよかったな!」

 

この男尊大な態度のはグレンと言うらしい。

まあどうでも良いが。

 

グレン「あーあ全く服がびしょ濡れだ。どうしてくれんだ。………うん?」

 

急に喋るのをやめたかと思えば俺をしばらく見つめ、ルミアをジロジロと見ていた。

なんだこいつ。変態か?

 

ルミア「あ、あの。私の顔に何か付いてますか?」

 

戸惑うルミアの様子を気にせず、ずいっと顔を寄せるグレン。

 

グレン「うーん。お前らどっかで……見た気が………。」

 

首を傾げ、ルミアの体のあっちこっちを触っている。

 

……………って!

 

アラン「【何・しとんじゃ・アホ】──ッ!」

 

『フィジカル・ブースト』を改変して使い、目の前の変態(暫定)に回し蹴りをグレンの腰に放つ。

 

グレン「ぎゃぁぁ!腰がぁぁ!」

 

そんな間抜けな声を出しながら吹っ飛び、生垣に突っ込むグレン(暫定変態)。

 

アラン「…………あっ。」

 

やっべえ…校則で禁止されているのに魔術を使ってしまった。

 

アラン「ヤベーイ!」

 

システィ「って、あんたもやらかしてんじゃないの!」

 

ゴキッ!っという音がなるほど俺も蹴られ、グレンと同じ生垣に突っ込む。魔術を使ってないのにこの威力………強い(確信)。ゴフッ

 

システィ「もう………。ってもうそろそろ行かなきゃ不味いわね……。」

 

ルミア「え、ええっと………。大丈夫?」

 

アラン「あー。気にすんな。俺この人見とくから。先行っといてくれ。」

 

ルミア「わ、わかった!」

 

そう言って2人を先に行かせる。

 

アラン(今日も遅刻確定だな。)

 

そう思って隣を見る。

 

グレン「あー痛ってえ……。思いっきり蹴りやがって。」

 

そう言ってこっちを恨めしげに見てくるグレン。

 

アラン「す、すみません。つい。」

 

グレン「ったく。気をつけろよ?って、こんなことしてる余裕ねえ!初日から遅刻とかセリカに殺さされる!」

 

アラン「セリカって……あのセリカ=アルフォネア教授ですか?」

 

グレン「ん?ああ。」

 

アラン「てことは貴方はなにか学園と関係が?」

 

グレン「ああ。今日から非常勤講師として入ることになっている。」

 

これは驚きだ。まさかこの変態(確定)が俺のクラスの非常勤講師とは。

 

アラン「じゃあ俺のクラス見てくれるんですね。」

 

グレン「そうなのか?まあ見知った顔がある方がやりやすいし助かるわ。ほれ、早く行くぞ!間に合わなくなる。」

 

アラン「そうだった。………ん?いや、まだ時間ありますよ?」

 

登校時間までまだ少しある。女子の足なら少しかかるかもしれないが、俺らならゆっくり歩いても間に合うだろう。

 

グレン「まじか!よかったぁ〜。んじゃちょっと寝るから起こしてくれ。」

 

そう言って寝始めるグレン。

ぶっ飛ばしてしまった手前、止められない。

 

アラン「………まあ、おこせばいいか。」

 

そう思い、隣に腰を下ろした。

 

アラン「あ〜。朝から疲れた…………。」

 

______________________________________________

 

グレン「それでてめえまで寝たら意味ねえだろうが!アホかてめえ!」

 

アラン「うっせえ!先に寝んのが悪ぃんだろうが!」

 

そんな応酬をしながら学園への道を全力疾走する俺ら。

起こすはずの俺まで寝てしまったので結局授業開始時間を大幅にオーバーしてしまったのだ。

いつの間にか敬語が外れてしまったがそんなことを気にしてる余裕はない。

 

グレン「だぁぁぁもう!朝から最悪じゃぁぁ!」

 

アラン「そりゃ俺もだわ!」

 

そんなことを叫びながら校門を駆け抜け、廊下を疾駆する。

 

アラン「お先に!」

 

そう言って先に進む。もう始業のチャイムが鳴り始めた。

 

グレン「オレが先だっての!」

 

そう言いながら追い越すグレン。始業のチャイムは鳴り終わった。

 

そうやってギャーギャー言いながら邪魔をしあって教室へ着き、ドアを体当たりで開ける俺ら。

派手に吹っ飛んで反対側の壁まで飛んでいく扉を尻目に、

 

グレン「ふっ……俺の勝ちだ。」

 

勝利宣言をするグレン。

 

アラン「くそっ!負けた!」

 

何か知らんが敗北感がある!

 

システィ「どっちも負けに決まってるでしょうがぁぁ!」

 

システィの叫び声とともに俺らの頭に辞書が直撃した。

 

グレン・アラン「「ゴハァッ!」」

 

そのまま倒れふした。

 

______________________________________________

 

グレン「えー今日から1ヶ月間非常勤講師としてこのクラスを見ることになった、グレン=レーダスだ。よろしく頼む。」

 

グレンが復活したので授業が始まる。

グレンは自己紹介から入っていた。

勿論あのずぶ濡れボロボロのスタイルで。

 

システィ「前置きはいいです。早く授業を始めてください。」

 

Oh。相変わらずの「教師泣かせのシスティーナ」だ。

今日もツッコミが冴えきっている。

 

グレン「へいへい。えーっと。」

 

そう言って黒板へ向き直り、チョークで字を書く。

大きな字で、「自習」と。

 

…………えっ?

 

教室にいる生徒全員の思考が一致した。

 

グレン「えー今日は自習にします。……眠いんで。」

 

さらっと物凄い理由を言いながら教卓へ突っ伏し、イビキをかきながら寝始めた。

 

アラン(わーお。こりゃすげえや。)

 

ここまでやる気がないと一周まわって尊敬の念を抱くぞ。

 

アラン(まあいいや。俺も寝よう。)

 

かく言う俺も朝の騒動で疲れていたので、あっさり意識を手放し、眠りの世界へ入った。

 

システィのグレンに対する抗議を聞きながら。

 

______________________________________________

 

錬金術の移動授業以外を寝て過ごした俺は昼食を摂るために食堂へと向かっていた。

(ちなみに錬金術の授業は不幸な事故によりグレンが負傷し、中止になった。)

 

食堂で食事を適当に頼み、席を探してキョロキョロしていると、

 

システィ「あ、アラン!こっちこっち!」

 

とシスティが声を掛けてくれた。

 

アラン「おう、そっちだったか。」

 

そう言って近づき、ルミアの前へ腰を下ろす。近かったし。

 

アラン「んじゃ、いただきます。」

 

そう言ってパンにかぶりつく。

今日はずっと寝てたのであまりお腹が空いていない。

だからパンとシチューとサラダいう簡単なメニューにしてある。

 

アラン「しかしシスティ、お前もっと食わんと大きくならんぞ?」

 

主に胸とか。

 

システィ「う、うるさい。眠くならないようにしてるだけよ。」

 

システィはそういうが、食べているのはスコーンにサラダ。どう考えても少ないと思う。大きくなれんぞ?胸とか(2度目)

 

グレン「ちょっと失礼。」

 

そんなことを言いながらシスティの隣の席にグレンが腰を下ろした。

グレンは手に持ったお盆いっぱいに乗った料理を持っている。こいつは午前中あんだけ寝てんのによくこんな食えるな。

 

アラン「先生はいっぱい食うんだな。」

 

ルミア「よく食べるんですね。」

 

気さくに話しかける俺らに対し、

 

システィ「………。」

 

終始無言を貫こうとするシスティ。

 

グレン「まあな。食事は俺の数少ない娯楽の1つだからな。………にしても。」

 

そう言ってシスティへ向き直るグレン

 

グレン「お前それで足りんのか?たくさん食わんと大きくならんぞ?」

 

システィ「貴方も言うんですか……。私は眠くならないようにしてるだけです。最も、あなたの授業ならもっと食べてもいいかもしれませんがね。」

 

皮肉を混ぜながらそう言い返すシスティ。

 

グレン「ふぅ〜ん。ま、お前がそう言うなら知ったこっちゃないがな………」

 

そう言いながら自分の料理の皿を一枚システィの前に置く。

 

システィ「……………なんですか?」

 

グレン「別に。お前を心配してるとかじゃないけど?授業中に空腹で倒れられたら困るし?」

 

システィ「は、はぁ。」

 

グレン「まあなんだ、その。やるよ。それ。」

 

ガリガリと頭をかき、そっぽを向きながら言っているが、多分この男は優しい人なんだろう。

そう思わせるには十分な行動だった。

少々捻くれてはいるが。

 

システィ「………ありがとうございます。」

 

グレン「ふっ。俺に盛大に感謝しろよ?この俺があげるんだからな!」

 

システィ「………あぁもうやっぱこの男ムカつく!そこに直りなさい!」

 

グレン「お、ちょっ!暴力反対!」

 

キンキンッという金属音が立つくらい激しくフォークで打ち合う2人。

 

アラン「なあ、ルミア。」

 

ルミア「うん?何?」

 

アラン「こいつらさ、」

 

ルミア「……うん。」

 

アラン・ルミア「「仲いいな(よね)」」

 

そう言って再び目を向けると、グレンが俺の分のフォークまで使って戦っていた。

 

グレン「ガーッハッハ!これで二刀流じゃぁい!」

 

システィ「ちょっあんた!卑怯よ!」

 

グレン「ハッハッハ〜!最終的に勝てばよかろうなのだァ!」

 

どっかの柱の男のような叫びをあげたりしながらギャーギャーと騒いでいた。

ってか俺まだ食ってる途中なんだけど。

 

アラン「はぁ………。【投影】(ボソッ)」

 

取りに行くのも面倒なので、こっそりとフォークを投影する。

 

アラン「うん。やっぱうまいな。ルミアも早く食った方がいいぞ?」

 

ルミア「うん。」

 

食べながらルミアにそう言い、騒ぐふたりを気にせず食べた。

 

グレン「ぜえ……ぜえ……」

 

システィ「はぁ……はぁ……。」

 

アラン「………お前らも早くくった方がいいぞ?」

 

システィ・グレン「「わかってるわよ(っつうの)」」

 

なんだかんだ息ピッタリな2人であった。

 

 

ルミア(………あれ?アラン君、フォークどこから出したんだろう?)




はい。こんな感じでゆるりと話が進んでいきます。
しかし初の投影対象がフォークか………。
投影魔術やキャラの詳細は次の投稿で纏めます。
では、次の更新まで気長にお待ちください。
では、次の投稿まで。


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第2話 教師グレン、超サボる

どうも。たった1日でUAが300超えてビビってるよこちょです。
これがネームバリューってやつなんですかね。
原作に恥じぬよう頑張らねば。
では、第2話どうぞ!

※あとがきにアランとシロウのプロフィール乗っけときます


昼食が終わり、午後の授業が始まった。

だが、相も変わらずグレンは1時間どころか午後の授業を全て寝て過ごすんじゃないかと疑うほど爆睡していた。

さすがの俺でもこのままではやばいと思い、寝てるグレンに声をかけてみる。

 

アラン「なあ先生。いい加減授業してくんねえか?流石にこのままだと次のテストとかやばいんだが。」

 

グレン「へっ。知ったことかよ。どうせこんなろくでもないことしたって変わりゃしねえよ。そんなことより体でも動かせ。こんなことよりよっぽど有意義だぜ?」

 

アラン「……まあ、そう言われちゃそうなんだが。」

 

俺はこの学園に通ってる割には魔術がそんなに好きではない。まあ嫌いではないのだが。

それは俺の魔術特性にも関係がある。

俺の魔術特性は「対象の解析・改造」という、どう考えても魔術に合わないものなのだ。

魔術特性なのに魔術に適してないという矛盾した性質のため、あまり魔術が上達しない。

どうにか初等魔術は習得したものの、それ以上はからっきしだ。

それに魔術を極めたからと言ってそれで食っていける確証がある訳でもない。

 

アラン「でも最低限授業くらいはしてくれ。でないとわかんねえ。」

 

グレン「……ったくしゃーねーな。授業してやるよ。みんな席つけ。」

 

みんながほっと息をつく音が聞こえる。

まあみんな不安だったんだろうな。

 

グレン「では授業を始める。えーっとここか?」

 

授業が始まった。……始まったのだが、

 

グレン「ここは〜まあこうじゃないかな?でここが多分こうで、んでもってこっちは恐らくこうだと思われる。」

 

………こんな感じでぐだぐだと教科書を読むだけという授業(笑)としか言えないようなものだった。

しかもわかりづらい。

そんなこんなで1時間たち、最終授業終了のチャイムがなる。

 

グレン「お〜っともうこんな時間か。では諸君、さらば!」

 

と言って颯爽と姿を消した。

 

────────────────────

 

システィ「………あ〜もう!なんなのあいつ!どんな先生かと期待してみたらただのロクでなしじゃない!」

 

帰り道でシスティがそう言う。

魔術がそんなに好きじゃない俺でもちょっとイラッと来たくらいだ。

生粋のメルガリアンである彼女にとってはまさに腸が煮えくり返るほどの怒りであろう。

魔術を「そんなもの」呼ばわりしてたし。

 

ルミア「うーん。これはちょっとね。」

 

優しいルミアでさえこの反応だ。

明日教室でテロが起きても不思議じゃないくらいの不満をみんな持ってるだろう。

 

システィ「とにかく明日、ビシッと厳しく言ってやらなくちゃ!」

 

アラン「おうおう!言ってやれ!」

 

そんな軽口を叩きあいながら歩いていると、朝出会った広場に差し掛かった。

 

アラン「んじゃぁ俺こっちだから。」

 

システィ「うん。また明日ね!」

 

ルミア「じゃあねアラン君、また明日!」

 

アラン「おう。また明日。」

 

そう言って美少女2人と別れ、自分の家へと足を向ける。

しかしあれだな。システィは勿体ねえなぁ。

顔もスタイルもいいのに男ウケが悪いのは。

まあ俺からすれば見る目がないと思わざるを得ないのだが。

 

そんなことを考えながら歩いていたからだろうか。

前から飛んでくる槍に気づくのが遅れてしまった。

 

アラン「ッ!」

 

慌てて横に飛んで回避する。

すると前から強烈な殺気が飛んできていることに今更気がついた。

 

アラン「【投影】!」

 

手元に赤き槍『ゲイ・ボルグ』を投影させながら、飛んでくる矢を躱す。

 

お返しとばかりにゲイ・ボルグを矢が飛んできた方に投げるが、当たった感触はない。

 

用心しながらも次は接近されてもいいように刃を付与した弓を投影する。

 

アラン「さあ、どっからでもかかって来やがれ!」

 

威勢よく放った声を聞いたのか、男が思いっきり切りかかってきた。

 

その男は赤いコートを身に纏い、手に双剣を持っていた。

というか案の定シロウだった。

 

シロウ「ふむ。腕は鈍っていないようだ。それどころか上達したか。鍛錬は怠っていないようでなによりだ。」

 

アラン「もうちょっとマシな確かめ方はないのか?」

 

シロウ「すまないがこれ以外思いつかん。それに掃除をサボってた罰だ。」

 

アラン「それはすまなかった。」

 

シロウ「まあいいだろう。帰るぞ。アラン。」

 

アラン「はいよ。」

 

お互い投影してた武器を消し、家路につく。

 

──────────────────────

 

アラン「そういえば今日非常勤講師が来たんだが、凄いやつだったぞ。」

 

夕食が終わってゆっくりしていたシロウにそう切り出したアラン。

 

シロウ「なんだ?そんなに優秀だったのか?」

 

アラン「逆だ。授業も全くしない、してもわからないっていう感じ。」

 

シロウ「ほう。非常勤とはいえ、よくそれであのアルザーノ学園の講師になれたものだ。」

 

アラン「全くだ。グレン=レーダスって名前なんだけどさ。」

 

シロウ「グレン=レーダス……。ああ、聞いたことがあると思ったら奴か。」

 

アラン「知り合いか?」

 

シロウ「知り合いというか…元同僚だ。」

 

シロウは元々帝国軍にいた軍人で、名前は忘れたが相当凄いとこだったらしい。

 

シロウ「まああいつは魔術に対する理解が深い。そこを聞けば教えてくれるかもしれんな。」

 

アラン「ふーん。明日聞いてみるかね。」

 

シロウ「まああまり深くは聞きすぎないことだ。あいつも訳ありだからな。」

 

アラン「へいへい。っと、宿題しなきゃな。部屋行くわ。」

 

シロウ「早く済ませて寝たまえ。私はもう寝る。」

 

アラン「ああ。おやすみ。」

 

シロウ「おやすみ。」

 

アランは部屋へ行く。

 

シロウ「グレン=レーダスか……。まだあの事件を引っ張っているのだろうか………。」

 

そう言いながらシロウは、かつての同僚に思いを馳せていた。

 

──────────────────────

 

次の日学校へ行っても、グレンの態度は変わらなかった。

それどころか日に日に悪化し、最近では教科書を黒板に打ち付けている。

そんなグレンについに堪忍袋の緒が切れたシスティがグレンに決闘を申し込んだ。

 

グレン「……お前、正気か?」

 

システィ「ええ。その代わり、私が勝ったら今までの態度を改め、真面目に取り組んでもらいます。」

 

グレン「全く……。こんな決闘なんざ持ちかける骨董品がまだ残ってたなんてな……。いいぜ。受けてやる。後悔すんなよ?」

 

 

そんなこんなで全員中庭に移動し、システィとグレンの勝負を見守った。

……のだが。

 

システィ「【雷精の紫電よ】──!」

 

グレン「ぎゃぁあああ!」

 

始終こんな感じで終わった。

 

しかもグレンは負けたのにも関わらずあろうことか約束を反故にしたのだ。

これにはシスティの怒りが大爆発。

またもや口論をしながら本日の授業も終わった。

 

──────────────────────

 

次の日も、そのまた次の日も全く態度を改めないグレン。

だが一応学校には来るし、授業をする。

ここ最近ではもうグレンに対する信頼は0に近く、みんな思い思いに自習をしている。

そんななかでもグレンに質問に行くリン。

そんな生徒に対するグレンの返答は

 

グレン「これ、辞書な?これで調べろ。」

 

簡潔に言うとこんな感じの塩対応。

 

システィ「こいつに何聞いても一緒よ。こいつは魔術の崇高さを全く理解してないもの。それどころか馬鹿にしてるわ。さ、一緒に勉強しましょ?」

 

もはやシスティでさえこんな対応。

「全員に諦められてる」。これがグレンの現状だ。

そんなグレンだが、いつもなら「へいへい。」と言わんばかりにスルーすた発言。

だが今日は、なぜかスルーしなかった。

 

グレン「魔術って、そんなに偉大なもんかね?」

 

と。

 

システィ「え……?」

 

流石に困惑するシスティ。

そんなシスティの態度なんて意に介さず、言葉を続ける。

 

グレン「この世で術と付くものは必ずと言っていいほど人の役に立ってる。医術がなければ大勢人が死ぬ。農耕技術があるから作物は育つ。冶金術があるから包丁やらが作れる。だがどうだ?魔術はなんの役に立ってる?」

 

システィ「そ、それは……。」

 

グレン「あー皆まで言うな。わかってるよ。魔術はとっても役に立ってる。」

 

そう言うと、グレンは口を釣り上げ、どこか自嘲気味に言葉を紡ぐ。

 

グレン「『人殺しの道具』としてな。」

 

その瞬間、時間が止まったような気がした。

 

グレン「普通の兵士が10人殺すあいだに、魔術師は100人殺せる。大勢の兵士をいっせいに焼き払うことも出来る。ほら?役に立ってるだろ?」

 

システィ「そ、そんなこと………!」

 

グレン「反論できるか?できないよな?しかもその恩恵は自分にしか帰ってこない。だったらそんなもんはただの趣味だ。ただの自己満足でしかない。」

 

言い返せない悪魔の証明のような言葉が続く。

 

グレン「過去の戦争でも魔術は大活躍したさ。大勢の兵士を殺す意味でな。ほらみろ。魔術なんてろくなもんじゃ……」

 

そこまでいったグレンはようやく気づく。

目の前の少女が目に涙を浮かべ、必死に睨んでいることに。

 

システィ「ま、魔術はそんなもんじゃ……ない……」

 

消え入りそうな声でグレンに意見していることに。

 

システィ「なんで……そんなことばっかり言うの……。あんたなんて……大っ嫌いよ………!」

 

そう言って勢いよく教室を出て行くシスティ。

 

ルミア「シ、システィ!」

 

慌ててそれを追いかけるルミア。

 

グレン「………チッ………。」

 

重苦しくなった教室の雰囲気に舌打ちをするグレン。

重苦しい空気の中なった終了のチャイムは、いつもよりも大きく、寂しげに聞こえた。

 

──────────────────────

 

アラン「はぁ……。なんだかなぁ………。」

 

ため息をつきながら1人帰り道を行く。

クラスの雰囲気が重苦しいわシスティもルミアもいないわで結局1人で帰るハメになってしまった。

 

アラン「グレン探したけどいなかったし……。そのせいで遅くなったし。全く………。ん?あれは。」

 

愚痴を零しながら歩く道の先に、二人分の影が見えた。

 

アラン「ルミアにグレンか。」

 

なぜ一緒なのかは分からないが、グレンに用があったのだ。丁度いい。

広場でルミアと別れたグレンに声をかける。

 

アラン「うっす。先生。」

 

グレン「なんだ。今度はお前か?今回は蹴ったりしないよな?あれ痛いんだぞ?」

 

アラン「知ってますよ。今日は別件です。」

 

グレン「あぁ?なんだよ急に敬語なんざ使って。金なら貸さねえぞ?俺もピンチなんだ。」

 

俺の真剣さを茶化すように話すグレン。

 

アラン「用事って言うのは……真偽を確かめに来ました。グレン先生。いや、『愚者』さん。」

 

グレンの纏う雰囲気が氷のように冷たくなった。

 

グレン「てめえ……。なんでそれを知ってる。」

 

アラン「簡単なことですよ。覚えてますか?あの組織であった実験のこと。」

 

グレン「…………。」

 

アラン「………ちょっと昔話をしてもいいですか?」

 

グレン「ああ。」




ここでまさかの過去編突入。
グレンが覚醒する前にアランの過去を話すことのなるとは。
見切り発車って怖いね(他人事)。
では、次の投稿まで!
↓↓↓以下プロフィール↓↓↓

アラン=ジョーゼフ=エミヤ


アルザーノ学園に通う学生。
成績は真ん中より上くらい。
魔術はあまり得意ではないが、この世界のものでない、「投影魔術」という魔術を使う。
異能力者で固有魔術持ちだが、そのことは隠している。
基本めんどくさがり屋。
システィーナとルミアと仲が良く、大体一緒に居る。
クラスメイトとの関係は良好だが、ルミア絡みでたまに嫉妬される。なおシスティーナ絡みでは嫉妬されない。
システィェ………。

過去にとある事件に当事者として巻き込まれてしまい、家族を亡くした。
以降、シロウ・エミヤに世話をしてもらっている。

魔術はシロウに習ったのである程度は使えるのだが、魔術特性が「対象の解析・改造」というものなので、あまり上達しない。
だが、その特性のおかげで呪文の改変などはそつなくこなすことが出来る。
また、魔術に対する感性が魔術師とは違うので、魔術の呪文を覚えることよりも、より深い理解をすることを求める。



シロウ・エミヤ

元・帝国宮廷魔道士団特務分室の特殊メンバー。
コードネームは「アーチャー」。
帝国宮廷魔道士団にいたため、グレンは勿論、アルベルトやリィエル、イグナイト達とも面識がある。
遠距離近距離両方をこなす戦闘スタイルで、周りからも1目置かれていた。
性格はキザっぽいが普通にいいやつ。
別に正義の味方を志している訳では無い。
生い立ちはFate/Zeroと同じ。
自分も幼い頃に義父を亡くしていたためアランを引き取り、面倒を見た。
現在は傭兵としてあちこちへ行っており、家にはあまり帰れない。


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アランの過去

どうも。遅れてすみません。最近右足をチャリのタイヤに巻き込んだよこちょです。
あれは痛かった。
新学期早々テストがあったりして遅れました。

では、第3話目、どうぞ!

注意⚠今回の話から、FGOラスボスが姿だけ見せます。FGOのネタバレが嫌な人は読むのを辞めることをオススメします。まあ名前は出しませんが。


アラン「……少し昔話をしてもいいですか?」

 

グレン「ああ。」

 

了承をとった俺は上着を脱ぎ、シャツに手をかけた。

 

グレン「……え?なに?お前露出狂なのか?俺ちょっとそういう趣味は………」

 

アラン「誰がこのタイミングでそんな阿呆なことをするか。これ見せたかったんだよ。」

 

そう言ってシャツを脱ぎ、肌を見せる。

 

グレン「ッ!その傷は………!」

 

そう。俺は過去に巻き込まれた事件でこの傷を負った。

あの忌々しい事件で。

 

────────────────────────

 

アラン=ジョーゼフは、普通ではなかった。

普通じゃないといっても別に頭がおかしかったとかいうわけではない。

 

まず、生まれつき魔力量が多かった。

 

まぁ、これはたまにあることだった。

だが、もう1つは「たまにある」と言って済ませられる程軽いものではなかった。

 

彼は異能力者だったのだ。

 

異能の内容は「魔力増幅」。魔力のブースターのような役割を果たせるものだ。

普通は異能力者は忌み嫌われ、差別されても不思議じゃない。例えそれが生みの親であってもだ。

 

だが、アランの親は違った。

普通に接し、普通に育ててくれた。

 

「それもお前の個性だ」とアランに言い、普通の子供と同じように育てた。

 

アランにとって、それはとても幸せな日々だった。

 

朝学校に行って、友達と遊んで、魔術の練習をして、ご飯を食べて………。

 

そうやって普通に日常を過ごしていた。

 

「こんな毎日が続くといいな。」

 

アランはそう思っていた。

 

だが、そうやって過ごしてた普通の日常はなんの前触れもなく壊された。

 

それはアランが10歳の時。

いつもどおり家に帰ったアランを待っていたのはいつもどおりの家族の暖かい言葉ではなかった。

 

「アラン=ジョーゼフを捕獲せよ。」

 

「捕獲せよ。」

 

「捕獲せよ。」

 

機械的な声をあげて親の首を締めている謎の黒ずくめの兵士と、

 

???「うーん。この家じゃなかったっけ?まあいっか。処分しといて。」

 

それを指揮する白衣を着た眼鏡の男だった。

 

アラン「な───!」

 

絶句し、声が出せなくなった。

 

???「おや?なんだ、やっぱりあってたのか。全く。先に言ってくれよ。返り血で白衣が汚れうところだったじゃないか。」

 

男はこちらを振り返り、不満げに話しかけてくる。

 

アラン「あ、あ、あ────。」

 

???「まあ目的は達成したからいいんだけどね。ほら、こいつを連れてけ。処分はそのあとだ。」

 

「了承。捕獲する。」

 

床にゴミのように投げ捨てられた親は、必死にこちらを向いて口を動かしてくる。

 

に、げ、ろ

 

と。

 

だが、恐怖のあまり足がすくみ、尻もちをついてしまった。

 

アラン「な、なんなんだよ!お前らは!」

 

震えながらもそういうのが精一杯であった。

 

魔術師A「ただの魔術師だよ。天の知恵研究会のね。」

 

その言葉を最後に気を失わされ、目の前が真っ暗になった。

 

────────────────────────

 

アラン「う、うう。……ここはなんなんだ?」

 

埃っぽい部屋で目が覚めて最初に目に入ったのは、傷ついた己の肉体だった。

 

あちらこちらに切って魔術で治療した跡がある。

恐らく周りにいる魔術師がやったんだろう。

 

しかもなにかの術式まで身体に書かれていて、肌があまりみえない。

 

そしてアランを見ている魔術師らしき多くの人達や家で見た兵士の姿も多数確認出来た。

 

しかし、ここまで状況を分析してからふと疑問が浮かんだ。

 

『なぜ、己の肉体がこんなに見えるのか』と。

 

アラン「………っておい!そこのお前!なんで俺は全裸なんだ!」

 

そう。アラン=ジョーゼフは全裸だった。

それはもう一糸まとわぬ全裸だった。

 

魔術師B「……五月蝿いな。いいだろう?服くらい。」

 

近くにいた魔術師がそういうが、本人にとっては大問題だ。

 

アラン「いや、百歩譲って上着はいい。いや、そもそもこの状況が良くないんだが。せめてパンツくらい履かせてくれ。」

 

魔術師B「注文が多いな。」

 

アラン「いや1個しか頼んでねえから。パンツしか頼んでないから。」

 

魔術師B「仕方がない。おい、そこのパンツ取ってくれ。」

 

魔術師C「へいへい」

 

魔術師B「ほらよ。これでいいか?」

 

そう言ってパンツを渡す魔術師。

 

有るんだったら脱がさないで欲しかったと思いながらパンツを履く。履き終わったので、アランはこの状況の説明を求めた。

 

アラン「で、今どういう状況なんだ。俺の親をどうした。なぜ俺はここにいる!ここはどこだ!」

 

後半になるにつれ、語気が荒くなる。

 

魔術師B「質問は一つづつにしてくれ。まずここがどこかという質問には答えられない。」

 

アラン「なんで俺はここにいる。」

 

魔術師B「君を使うためだ。詳しくはあとで説明してやろう。そうすれば状況はわかるはずだ。」

 

アラン「……………俺の、俺の親をどうした。」

 

自分にとっての最重要項目について聞くと、

 

魔術師A「心配はいらない。ちゃんと燃やしておいたよ。」

 

アラン「…………は?」

 

燃やした………?

 

家にいた奴が、さも当然であるかのごとく言われたその言葉は、到底人間の発せるような内容ではなかった。

 

アラン「燃やしただと?」

 

魔術師A「ああ。邪魔だったのでね。家ごと燃やさせてもらったよ。」

 

アラン「お前……お前お前お前ェェェ!」

 

思わず立ち上がり、殴り掛かる。

だが、

 

魔術師A「はぁ……。【捕縛】。」

 

突如出てきた炎の縄で全身縛られ、口を塞がれる。

全身が焼けるように感じ、思わず叫ぶ。

 

アラン「─────!」

 

だが、口を塞がれているため声にならない。

 

魔術師A「まったく。これだから血の気の多い若者は………。しばらくは眠っててもらうよ。【おやすみ】。」

 

そう言いながら俺に触れる。

その瞬間強烈な眠気に襲われ、眠ってしまった。

 

魔術師A「全く。煩わしいったらありゃしない。さ、あとは生贄と魔法陣だな。準備に取り掛かるとしよう。」

 

────────────────────────

 

弱い光の点滅で目を覚ます。

いつの間にか移動させられていた自分の体を見て、やはり現実なのだと悟る。

 

アラン「…………夢じゃないんだな。」

 

つい、悪夢であることを祈ったが現実は非情であった。

 

アラン「もう家もないし、家族もいなくなったのか……。」

 

さっきまで強制的に眠らされていたためぼうっとしている頭で今までの人生を振り返る。

 

楽しかったこと。面白かったこと。辛かったこと。悲しかったこと。

 

ぼんやりとそんなことをしていると、さっきの魔術師が声を掛けてきた。

 

魔術師A「さ、準備が整った。君には冥土の土産に我々の計画を教えてやろう。」

 

アラン「…………。」

 

魔術師A「まず、君を連れてきた目的だ。簡単に言うと、君には魔力と魂の器になってもらう。」

 

それから魔術師の、まるで酔ってるかのような独白が続く。

 

ざっくりとまとめると、かつて古代魔術がまだあったころ、平行世界と呼ばれる世界との接触に成功したらしい。

そしてその平行世界には、「聖杯戦争」という儀式を用いて「聖杯」という万能の願望器を顕現させることができたらしい。

 

その聖杯は、七騎の「サーヴァント」と呼ばれる使い魔の魂を生贄とし、膨大な魔力で願いを叶えるのだとか。

 

魔術師A「で、我々はその聖杯を君の異能と生贄の魂、それに多くの魔力を使ってここに呼び出そうとしているわけ。名付けるなら『Project:Holy Grail』ってとこかな?」

 

アラン「………」

 

魔術師A「んで、君はその聖杯の器ってこと。つまり君が聖杯を呼んで、君が聖杯になる。名誉なことだろ?」

 

アラン「………」

 

魔術師A「まあ君は多分死ぬけど、あの世でも頑張ってね〜。あるかは知らんけど。」

 

アラン「……俺も死ぬのか。」

 

魔術師A「多分ね。じゃ、始めるよ。」

 

そう言ってなにか複雑な詠唱を始める。

 

アラン(家族もいなくなった。家もなくなった。ならもういいんじゃないかな。俺も死んで。)

 

そう思ったアランの頭に、ふと親の最期が浮かんだ。

 

親は俺に「助けろ」とも「一緒に来い」とも言わず、ただ「逃げろ」と言った。

 

勝手な想像かもしれないが………

親は俺に生きて欲しかったんじゃないか。

 

そう思うと、ぼうっとしていた頭が急にクリアになっていくのが分かった。

 

アラン(俺は………俺は死ぬわけには行かない。)

 

そう決意した。

 

それと同時に、詠唱を終えた魔術師がこちらをニコニコしながら見てきた。

 

詠唱が終わり、魔法陣が動き出す。

書かれた魔法陣が強い光を発し、浮かび上がって回転し始める。

 

魔術師A「ほら見ろよ!魔法陣は動いてる!これで成功だ!やっと「禁忌教典」に近づける!」

 

狂喜しながら成功の報告をしてくる。

 

魔法陣の回転が上がるにつれ、俺の頭になにかが流れ込んでくる。

 

──聖杯。セイバー。アーチャー。ランサー。アサシン。キャスター。ライダー。バーサーカー。ムーンセル。カルデア。グランドオーダー。

 

自分には全く分からないような単語が映像とともに次々と頭に流れ込んでくる。

 

………ついでと言わんばかりに全然関係ない情報も流れ込んでくるが、それはあっちの世界の知識だろう。

 

アラン「これは……『平行世界の記録』か?」

 

そうとしか考えられない。

 

流れ込んでくる情報の勢いに頭痛を覚えるが、まだまだ回転は止まらない。

 

魔術師A「ははっ!ははははははっ!成功だ!成功だァ!これで大魔道士様もお喜びになるぞ!」

 

どんどん頭痛が酷くなっていく一方で、魔術師は狂喜乱舞していた。

 

アラン(いや、ここで諦めるわけには行かない………。何か策は………。)

 

頭痛のひどい頭を駆使して考える。

 

アラン(………そういえば、この魔法陣は俺の増幅があって動いてるんだったな。)

 

一つ策を思いついた。

 

アラン(危険だが……やるしかない!)

 

意を決して、自身の異能をさらに開放する。

 

魔法陣の回転が余計に激しくなり、流れれくる情報量は先程よりももっと多くなった。

 

アラン(頭がっ………!でも魔法陣に限界が来てる!)

 

許容量以上の魔力が送り込まれた魔法陣はバチバチと音を立て、煙をあげる。

 

魔術師「なっ!貴様何をしている!」

 

アラン「なに、簡単な話だ。ここから逃げられない。このままだと死ぬ。ならば………ここごとぶっ壊しゃいいんじゃないか?ってね。」

 

魔術師「や、やめろ!そんなことしたら欠片分くらいの力の聖杯しか出せない!こいつを止めろーッ!」

 

魔術師が慌てて呪文を唱えるが、

 

アラン「もう遅いっ………てね。」

 

その言葉が合図になったかのように魔法陣が急速に光り、

 

ドゴォーーーーン!

 

盛大な爆発音を立てて周りの部屋や人間諸共吹っ飛ばした。

当然それには俺も含まれていて、

 

アラン「成功した………けど、こりゃ死んだな。」

 

真下で起こった爆発に巻き上げられ、上空へと吹っ飛ばされた。

 

アラン「あーあ。成功したんだけどな。………残念だ。」

 

どんどん地面が近づいてきて、どんどん死も目前に迫ってくる。

 

せめてもの抵抗として身体を大きく広げ、目を閉じる。

 

アラン「…………さよなら。俺の人生。」

 

そう言って地面にダイブしてそのまま死ぬ…………かと思っていたのだが、何故かそうはならなかった。

 

軽い衝撃はしたのだが、一向に痛みが襲ってこないのだ。

 

アラン「…………ついに神経までイかれて痛覚を感じなくったか。」

 

そうつぶやくと、

 

???「そんな訳があるか馬鹿者。目を開いて周りの状況を確認してから物を言え。」

 

上からそんな声が降ってきた。

 

目を開いて目に入ったのは、剣のように輝くように真っ白な髪だった。

 

シロウ「一応名乗っておこう。私はシロウ=エミヤだ。君を助けに来たのさ。」

 

そう、シロウさんは言った。

 

────────────────────────

 

アラン「んで、その時助けて貰った縁でそのまま引き取られて今に至るって訳。エミヤって名前もその時に貰ったんだ。」

 

グレン「やっぱりあの時の少年だったか……。んで?なんでそれを今話した?」

 

アラン「お礼ですよ。助けて貰った。」

 

グレン「いや俺は着いていってただけで実際助けたのはシロウだ。」

 

アラン「それでもですよ。」

 

そう。親も家も失くした俺にとっては「誰かが助けにきくれた」という事実だけで嬉しかったのだ。

 

アラン「ありがとうございました。」

 

グレン「…………まぁ、その。ああ。」

 

そう言って照れ臭そうにするグレン。

 

アラン「でも………」

 

グレン「んだよ?」

 

アラン「今日のあの発言はあんまりっすよ?」

 

グレン「ぐっ……!」

 

言葉を詰まらせるグレン。

 

アラン「魔術嫌いだからって魔術そのものを否定せんでもいいじゃないっすか。」

 

グレン「い、いや、あれはだな」

 

しどろもどろになりながら言い訳を言おうとするが、遮って喋る。

 

アラン「物事の1面だけ見ちゃダメっすよ?少なくとも………俺は魔術に助けられてここにいるんですから。」

 

グレン「…………。」

 

押し黙るグレン。

 

アラン「だからもっと学びたいんですよ。魔術のこと。」

 

グレン「…………ああ。」

 

アラン「明日の授業、期待してますからね?グレン先生。」

 

グレン「………あーもう分かったよ!すりゃいいんだろ!見てろよ?俺の本気を見せてやるよ。覚悟しとけ?」

 

グレンは頭をガシガシと掻きながら、『本気出す宣言』をした。

 

アラン「はいはい。期待してます。んじゃ、また明日。」

 

グレン「ああ。明日な。」

 

そう言って別れる俺達。

 

俺らの頭上では、夕焼けが綺麗に輝いていた。

 

 

────────────────────────

 

そのころ、とある平行世界では………

 

■■■■「聖杯が存在しない世界に聖杯を送り込む………か。まぁ、人理焼却の足しになるかどうか。面白くはあるがな。余興として見させてもらおうか。」

 

と、不吉に笑うモノが玉座に腰掛けていた。




はい。ちょっとFGO関連の話が出ましたね。
なので、下でちょっと補足します。

では、次の投稿まで!

──以下補足──

聖杯

本来は聖杯戦争の勝者に与えられる「万能の願望器」。
だが、これは魔術王■■■■が平行世界に送り込んだ物なので、どちらかというと「魔力炉」としての役割が大きい。
また、魔法陣が途中で破壊されたため完全には聖杯になりきっておらず、「アランの魔力量を莫大に増やす」くらいに留まっている。
サーヴァントを呼ぶ権限があるかは不明。


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講師覚醒と学園襲撃

どうも。ゴッドマキシマムマイティエックスガシャットを手に入れてご満悦のよこちょです。
最上級の神の才能やべぇわ。
投稿が遅れましたが、次回こそは早くしたいです。
なんでこんな行事重なるん?
まぁ、言い訳にしかなりませんがね。
では、第4話、どうぞ!



アランが自分のことをグレンに話した次の日。

アランはいつものようにシスティーナとルミアと一緒に登校していた。

 

システィ「………またあいつの授業とも言えないものを受けなきゃいけないのね………。」

 

憂鬱そうにそうこぼすシスティーナ。

真面目な彼女にとって、授業をサボるという選択肢がない。

だから、行くという選択肢しかないのだ。

どう考えてもあの授業は苦痛でしかないはずなのに、2人は全然そうは見えなかった。

 

アラン「ま、多分大丈夫だぞ。」

 

ルミア「うん。きっと大丈夫。」

 

2人は何か知っているように話す。

 

システィ「………はぁ。2人がそう言うなら今日は見てやろうじゃないの。」

 

観念したかのようにため息を吐くシスティーナ。

 

アラン「なんだかんだ言って仲良いくせに。」

 

システィ「仲良くなんか無いわよ!あんなやつ!」

 

フンッと鼻を鳴らし、そっぽをむくシスティーナ。

 

アラン「悪かったって。」

 

ルミア「でも先生と1番話してるのってシスティだよ?」

 

アラン「大半お説教だがな。」

 

アランが茶々を入れるが、実際そうである。

他の生徒は完全に無視を決め込んで授業中に自習をしているので、誰も話さないのだ。

グレンが学院で話すのはここにいる3人とセリカくらいであろう。

 

システィ「それはあいつがしっかりしてくれないからよ。してくれるんなら説教もしなくてすむし。清々するわ。」

 

アラン「やれやれ。素直じゃねえなぁ。」

 

システィ「何か言った?」

 

アラン「何も。ほら、教室ついたぞ。」

 

そう言って教室に入ってそれぞれが席につく。

 

アランはいつものように睡眠に………入らず、教科書とノートを机に準備していた。

 

システィ「………どうしたの?頭でも打った?」

 

アラン「なわけあるか。授業の準備だよ。今日は授業あるだろうし。」

 

ギイブル「ふん。あいつに限ってそれはないね。」

 

鼻で笑って否定するギイブル。

 

ギイブル「あいつはやる気がないんだ。なら、期待するだけ無駄だよ。どうせ授業にも遅れてくるさ。」

 

この教室にいる殆どの生徒の気持ちを代弁した発言に、アランは笑って答えた。

 

アラン「ま、多分大丈夫だ。なんせ、先生だからな。」

 

ガラララララ!

 

アランが言い終わったタイミングを図っていたのだろうか。

初日に吹っ飛ばされたが後に直されたドアが音を立てて開く。

 

はて、まだ来てない生徒は居ただろうか?

 

みんながそう思ってドアの方を見ると……グレンがいた。

 

しかも、授業開始前に。

 

どうしたのだろうかとみんなが小声で話していると、ツカツカと靴の音を鳴らしてグレンが歩き、システィーナの前に立つ。

 

システィ「………なによ。まだ魔術はくだらないと言うのかしら?」

 

システィーナは喧嘩も辞さないという覚悟でそう問いかける。

だが、グレンがとった行動は全員の予想とはるかに違った行動をとった。

 

グレン「………昨日は悪かった。」

 

謝ったのだ。

 

システィ「………え?」

 

謝られた本人も驚きを隠せず、きょとんとしている。

 

グレン「ほら、なんだ。俺は魔術なんて大っ嫌いだが……それを押し付けるのは子供っぽいっていうか大人気ないっていうか………。とにかく、悪かった。すまない。」

 

そう言って答えを聞かずに移動し、腕を組んで黒板に寄りかかって目を閉じた。

 

クラス全員。いや、アランとルミアを除いた全員が今までのグレンからは考えられないような行動に度肝を抜かれて小声で騒ぐ。

ちなみにルミアは期待の目でグレンを見つめ、アランはニヤニヤしながら事の顛末を見守っていた。

 

そして刻々と時間は過ぎていき、授業開始のチャイムが鳴った。

 

グレン「さて、授業を始める。」

 

驚く生徒を尻目に時間ぴったりにそう宣言したグレンは教科書を手に取り、パラパラとページを捲っていく。

捲る度にどんどん顔が苦くなって行き、限界が来たのか教科書を閉じ、

 

グレン「なんじゃこれは!おりゃーっ!」

 

そう言って窓の外へ教科書をぶん投げた。

 

ああ、なんだいつも通りだ。

 

各々そう思って自習の準備をしようとすると

 

グレン「さて、お前らに言っとくことがある。」

 

グレン「お前ら、本っ当に馬鹿だな?」

 

そう言い出し、「本当の授業」を開始した。

 

────────────────────────

 

「こんな授業があったのか」

 

授業を受けている生徒は全員こう思った。

 

最初に扱った呪文は「ショック・ボルト」。

基礎中の基礎の魔術で、あんまり魔術が得意でない俺だって使える魔術だ。

普通の講師ならば「これはこう唱えたら出てくる」くらいしか説明しないこの魔術。

 

だが、グレンは違った。

この魔術の威力調整やら射程の変え方を実際に見せてくれた。

そしてなによりもわかりやすい。

魔術が得意でない者はわかるように。

得意な者はより理解が深まるように。

 

そんな授業だった。

 

当然こんなハイレベルな授業をしたのだから数日もしないうちに評判になった。

 

日を追う事にグレンの授業に参加する人が増え、教室が少々窮屈に感じるほど参加者が増えていったが、当の本人は全く気にせず授業を続けていた。

 

だが………

 

グレン「じゃぁこの呪文のここを変えたらどうなるか?アラン。答えろ。」

 

アラン「あの、俺に当てる回数多くないっすかね?」

 

グレン「ふっ。俺はお前の為を思ってだな」

 

アラン「嘘つけ。てか俺以外にも当てろよ。不公平だろ?」

 

グレン「お前くらいしかこれを初見でわかるやつ居ねぇよ。」

 

なぜか俺ばかりに当ててくるのだ。

別にそれだけなら構わないのだ。実際わかってるのは事実だし。

問題は授業が終わったあとなのだ。

なんせ俺が1番理解してるから俺のとこにも他の生徒が質問をしに来る。

お陰で初対面での会話が授業の質問なんてのもザラだ。

俺自身あまり初対面の人に教えるのは気が進まないので、ぜひともやめて欲しいところである。

 

と、そうこうしているうちに本日も授業が終わり、下校となった。

 

グレン「やれやれ。今日も疲れたなぁ……。お前ら明日ちゃんと来いよ?」

 

明日は休日だが、授業がある日だ。

例のヒューイ先生が辞めた分の埋め合わせである。

 

システィ「貴方こそ遅れないようにしなさいよ?」

 

グレン「けっ。分かってるよ白猫。」

 

白猫というのはグレンがシスティにつけたあだ名だ。

なんでも髪の色といつも着いてる猫耳みたいなのからつけたらしい。

 

システィ「私は猫じゃないって何度言えば分かるんですか!だいたいさっきの授業だって魔術に対する敬意が」

 

グレン「だ〜もうやかましいわ!ほら、さっさ帰れ!じゃあな!」

 

そう言い残してダッシュで教室を後にするグレン。

 

システィ「もう……。いつもこうなんだから。」

 

ルミア「あ、あはははは。まあ、先生だしね?」

 

アラン「ま、さすがに遅れはしないだろ。遅れたら流石にアホの称号をくれてやるわ。」

 

システィ「それもそうね。見てなさいよ〜!明日こそ魔術についての敬意を……!」

 

そう意気込むシスティをみて、クラス全員「ああ、いつも通りだな。」と思ったそうな。

 

 

 

────────────────────────

 

そして次の日。

俺は朝起きてから制服に着替え、通学路をダッシュしていた。

 

アラン「やっべ!完全に寝坊じゃい!」

 

そういいながらダッシュするアラン。

今日からシロウが出張だということをすっかり忘れ、グースカと授業開始時刻まで寝こけていたのだ。

昨日アホの称号をくれてやるといった発言が完全にブーメラン発言となっていた。

 

アラン「うおぉぉぉぉぉ!間に合わねえってか間に合ってねえ!」

 

授業開始から20分程過ぎてから学校に着き正門を潜ったアランは、自身に『フィジカル・バースト』を掛け、思いっきり地面を蹴る。

 

アラン「そいやっさぁーーーー!」

 

蹴った勢いで教室よりちょっと上まで飛び上がり、そのまま窓に突っ込んだ。

 

ガッシャーン!

 

大きな音を立てて割れて飛び散るガラスと共にアランは教室へ到着した。

が、様子がおかしい。いやどう考えてもおかしいのは俺なのだがそれは置いておくとして。

 

普段ならば授業が始まっているか喋りながらも自習なりなんなりをしている時間なのだが今日は違った。

 

クラス全員ロープでぐるぐる巻きにされていたのだ。

 

アラン「………そういうプレイか?変態だな。」

 

「「この状況でそれを言うお前には言われたくねえよ!」」

 

全員に突っ込まれた。

 

────────────────────────

 

なぜこんなことになったか。

それは遡ること10分前。

 

システィ「………遅い!」

 

授業開始のチャイムが鳴ってしばらくした教室でシスティーナが叫んだ。

昨日注意をしておいたグレンがまだ来てないのだ。

それに、「アホの称号をくれてやる」とか言っていたアランも来ていない。

 

システィ「折角改善されてきてちょっと見直したのに……!あいつったら!」

 

ルミア「でも最近頑張ってたのに急に来ないっていうのも変じゃない?きっとなにか事情があったんだよ。」

 

システィ「……あいつらならただの寝坊ってこともありそうだけどね。」

 

実際グレンもアランも寝坊である。

 

ルミア「あ、あははは。そんなことない……よ。きっと。」

 

ルミアが断定できないあたりなかなか信用されてないようである。

 

ガラララララッ!

 

そうやって話していると、教室のドアが開き、2人の人が入ってきた。

 

システィ「きっと先生とアランね。もう!遅刻は厳禁って昨日あれほど……え?」

 

語尾が小さくなるシスティ。

それもそのはず。

なんせ教室に入ってきたのはアランでもグレンでもなく、

 

??「は〜い。みんな授業お疲れ様〜。」

 

そう言いながら入ってきた見知らぬ人達だったからだ。

 

システィ「あなた達誰なの。見たところこの学園の関係者には見えませんが。」

 

??「おいおい!誰って聞かれたぜ!」

 

ジン「ったく。この状況でわからんのか?おじさん達は所謂テロリストってやつなの。入口にいた門番ぶっ殺して中に入ってきたってわけ。あ、ちなみに俺はジンって言うんだ。」

 

カリス「俺はカリスだぜ?よろしく…っつってもまぁすぐ居なくなるけどな!」

 

システィ「う、嘘……。だってあの門番は派遣された優秀な……!」

 

突然言われたことに混乱するシスティを尻目に、勝手に自己紹介をするジンとカリス。

 

カリス「いやいやあれが優秀ってw」

 

ジン「あんな弱いのが門番じゃテロリストに侵入されちゃうぞ?」

 

カリス「まぁ俺らがテロリストなんだがな!」

 

「「ギャッハッハッハ!」」

 

自分たちがテロリストだと豪語し、そのうえで大笑いする2人。

 

システィ「な、何よあんた達!あんた達なんか先生にかかればあっという間に!」

 

ジン「ん?ああ。グレンだっけ?あいつなら多分今頃俺らの仲間が殺してるぞ?」

 

システィ「え……?そんなはず…」

 

カリス「そーそー。だから君たちは安心して死ねるってこと。よかったな〜大好きな先生と三途の川の向こう側で会えるぜ?」

 

ギャハハハハハと下品に笑う男二人の後からもう1人男が現れた。

 

レイク「お喋りもいい加減死しろ。さっさとこいつらに『スペル・シール』をかけて無力化しろ。」

 

ジン「えー。マジでやるんすか?どうせこんな弱っちいやつらなんかほっといても大丈夫な気がしますがねぇ。」

 

カリス「そうそう。魔力もったいないぜ?」

 

レイク「いいからさっさとやれ。」

 

ジン「へいへい。」

 

渋々と言った様子で『スペル・シール』をかけるジンとカリス。

だがそんな態度とは裏腹に、きっちりと強力に術をかけていく。

全員に『スペル・シール』をかけ終わると、

 

レイク「次だ。ルミアという少女を連れていけ。そこの金髪の娘だ。」

 

システィ「ちょ、ちょっと!ルミアに何する気なのよ!」

 

ジン「あ?お前にゃ関係ねえよ。」

 

親友であるシスティーナが縛られていながらも抗議するが、冷たい態度で一蹴される。

 

システィ「くっ。せめて魔術が使えれば……!」

 

カリス「?お前、なんか勘違いしてねえか?」

 

システィ「何の話よ?」

 

カリス「お前らと俺らとじゃ魔術の力量が違いすぎんだよ。んーと、【ほいっ】っと。」

 

会話の中に組み込まれていた単語から魔術が起動する。

システィーナに向けられていた指先からでた閃光は細く真っ直ぐに直進し、システィーナの目の前の床を貫通した。

 

システィ「そ、そんな!これは『ライトニングピアス』」

 

ライトニングピアスは軍用の魔術だ。

その分殺傷力が高く、その威力は人体を容易く貫通するほどだ。

そんな強力な魔術を一節どころか単語で発動できるのだ。学生がどうこうできるレベルではない。

 

カリス「だから言ったろ?無理だって。」

 

ジン「無駄な抵抗はしないほうがいいぞ?んで、こいつがルミアだっけ?」

 

そう言ってルミアを抱えあげる。

 

ジン「おいカリス。すまんがその銀髪の女も連れてってくれ。ちょっと『味見』したくてよ。」

 

カリス「へっ。ロリコンかよお前。まあいいけどよっと。」

 

そう言ってカリスはシスティーナを抱えあげる。

 

システィ「きゃぁっ!ちょ、ちょっと!離しなさい!」

 

カリス「あーもううっせえな。【眠れ】。」

 

魔術を発動させてシスティーナを眠らせ、ジンとレイクとともに廊下へと移動して行った。

 

────────────────────────

 

カッシュ「ってことがあったんだ。」

 

俺が全員に解呪し、状況を聞くと、相当やばいということがわかった。

 

アラン「そうか……。んじゃ、ちょっと行ってくるわ。」

 

ウィンディ「ちょっと!どこに行くんですの!」

 

アラン「あ?んなもんそのロリコン共のとこに決まってんだろ。トイレはさっきいったしな。」

 

ウィンディ「そういうことじゃないんですの!危険すぎますわ!」

 

アラン「まぁ、確かにな。」

 

確かに状況は危険すぎる。

テロリストがどこにいるかもわからないような状況で動くのは大変危険だ。

だが、

 

アラン「でも、動かない理由にはならない。」

 

俺にとって大事な友人だ。

当然助けたい。

それに、

 

アラン「そんな馬鹿どもに好きにさせてたまるかよ。」

 

そう言って廊下に出る。

ウィンディがまだ何か言っているが、無視を決め込むことにした。

 

アラン「さて………どこにいるんかね?」

 

そう言って廊下を走り始めた。

 

────────────────────────

 

グレン「ふう。」

 

一方グレンは、魔術師に襲われていたが返り討ちにし、

 

グレン「これでよしっと。」

 

魔術師を裸にひん剥いてどこからか取り出した紙に「不能」と書いて股間に貼り、ケツ穴に薔薇(棘あり)をぶっ刺し、縄で縛っていた。

そしてその作業(嫌がらせ)を終え、

 

グレン「………急ぐか。」

 

学園への道のりを全力で走り始めた。




やっとこさ次で戦闘に持ち込めそうです。
こっからどうしようかね(無計画)

感想や意見などあったらコメントしてくれるとありがたいです。
要望等あれば反映する……かも。


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第5話 アランの固有魔術

どうも。なんか筆が乗ったよこちょです。
今回はちょっと短めです。(戦闘なのに。)

それと、今回お試しで台本形式じゃなくしてみました。
こっちのほうがいい!とか元ものままがよかった!って言うような感想があったらコメントください。(露骨なコメ稼ぎ)

では、第5話、どうぞ!


「ぜぇ……ぜぇ……。」

 

校舎内を走り回り、テロリストを探す。

廊下を駆け抜けドアをぶち破り、階段を駆け上がって周囲を見渡す。だが、行く先々全部に人影は無く、とうとう最後の二部屋となった。

 

「………俺運悪すぎないか?」

 

そう思ってしまったのも不思議じゃないだろう。

だってさんざん走り回って最後の二部屋まで見つかんなかったし。

ていうかここにしかいないんなら紛らわしく全部屋のガラスを曇らせんじゃねえよ。

まぁ本当にそうなったらただの間抜けだが。

 

「んで?どっちから行くよ?」

 

そう問うのは無論、我らが講師のグレン先生だ。

どうやら先生も道中テロリストに襲撃されたらしく、急いでこっちまで走ってきたようだ。

 

「さぁ?ってか、二手に別れません?どうせ二部屋ですし。」

 

「まぁどっちかにしか居ないだろうしな。いいぜ。んじゃ、俺は奥の部屋で。」

 

「じゃあ俺はこっちで。」

 

グレンが選んだのは廊下の突き当たりの部屋。

俺はそのちょっと手前の部屋だ。

 

ガラララララッと言う音を伴って空いたドアの向こうに居たのは、

 

「ん?お前誰よ?」

 

………わざわざどこかからか持ってきたのであろうでかい鏡の前で半裸でポーズを取った変態だった。

 

「………お邪魔しました。」

 

そう言って廊下に出る。

 

すると同じタイミングでグレンが奥の部屋から出てきた。

 

「どうしたんすか?」

 

「いや、なんかお邪魔しちゃったかなって。」

 

「奇遇っすね。俺もなんすよ。」

 

「ちょ!助けなさいよ!」

 

奥の部屋からシスティーナの声が聞こえる。

 

「え〜……やっぱそういう感じだったの?お互い合意の上でやってるリア充爆破しろ案件じゃなく?」

 

なんて言いながら部屋に戻っていくグレン。

 

「……俺はどうしようか。」

 

悩んだが、結局もう一回部屋に入ることにした。

 

────────────────────────

 

「よう。よくここまで来れたな。俺はカリスだ。どうやって抜け出してきたかは知らんがここで素直に死んでもら……」

 

「いや、取り繕えてないから。思いっきりさっき見ちゃったから。」

 

なんかいい感じに仕切り直そうとしてるが、どう頑張っても最初の出会いが半裸の状態だったのだ。

どうしようもないと思いますこれは。

 

「……………」

 

「……………」

 

お互いの間に、気まずい沈黙が流れる。

 

「……なぁ、お前、名前なんていうんだ?」

 

「はぁ、アランですが。」

 

「アラン、か。なぁアラン。俺は今超恥ずかしい。」

 

「でしょうね。」

 

初対面が半裸で恥ずかしがらん人がいたらそいつは恐らく変態だろう。

 

「だからよ、お前は口封じのために死んでもらう。いいな?」

 

「嫌ですよ?」

 

即答する。

なんでこいつの半裸見たからって死なにゃならんのだ。

丁重にお断りさせていただこう。

 

「まぁ、お前に決定権はねえ。だからよ、死ねやぁ!」

 

いきなりブチ切れて殴りかかってくる。

 

「っとあっぶね!」

 

慌てて横に避ける。

だが、初動が遅かったせいで腕を少し掠ってしまった。

 

「ッ!」

 

鋭い痛みが腕を走る。

 

(なんだ?この痛みは。殴られたにしては随分鋭利な感じが……。ん?あいつ、手に何か持ってるのか?)

 

よく注意してカリスの手を見ると、まるで鱗のようにささくれている部分があった。

 

「なんだ。もう気づいたのか?こいつは逆鱗っていう龍の部位を真似したもんだ。結構切れ味良くて重宝するぜ?」

 

なるほど。逆鱗か。

しかし困った。

相手が近距離ならば遠距離から行くしかない。

だが生憎俺は攻撃魔術を一節で出せないのだ。

学院を襲撃するくらいだから恐らく相手は相当の手練のはず。

俺の魔術じゃ対抗できない可能性が高い。

ならば……!

 

「逆に近づく!【投影】!」

 

そう言って真っ赤な槍『ゲイ・ボルグ』を手に出す。

 

「ってめえ!どっからその槍を!」

 

相手が驚いている隙に、槍を突く。

狙うは心臓ではなく、腹。

心臓は狙われやすいと相手も承知のはずだから、あえて腹を狙った。

 

「わかりやすいな。そらっ!」

 

だが、いとも簡単にいなされる。

 

「チッ……。さすがに獲物が長すぎたか。」

 

遠くから狙えるのはいいのだが、直線的すぎて避けられたようだ。

 

「ならば何度も突くのみ!」

 

さっきよりも勢いを付けて何度も何度も違う場所に叩き込む。

 

頭、心臓、足先、腰、腕。

 

不規則に何度も叩き込んでいるのだが、相手はいとも簡単に軌道を逸らしてしまい、掠らせるのが限界だ。

 

「はっ。こんなもんか。急に槍が出たのにゃ驚いたが本人がこの程度じゃな。それじゃぁ、死んでもらおうか!」

 

そう言って俺の槍を掴み、

 

「オラァ!」

 

後ろに放り投げた。

 

「死ねぇ!」

 

勢いを付けるために飛び上がり、俺へと落下してくるカリス。

そのまま俺を殴れば、獲物のない俺はもろに食らってしまい、死なないにせよ重傷を負うだろう。

 

だが、そんな未来はありえない。

 

なぜなら………

 

「【投影】!」

 

再びゲイ・ボルグを投影させればいいだけの話だからだ。

 

そしてこの機会を狙っていた。

相手が確実に俺を仕留められる。

そう思ってしまうその瞬間を。

 

「かかったな阿呆が!行くぜ我が固有魔術!

【真名部分解放・刺し穿つ死棘の槍】!」

 

これこそが俺の固有魔術【真名部分解放】だ。

例えば俺の今投影しているこの「ゲイ・ボルグ」。

これは元々、平行世界の英霊「クーフーリン」の宝具だ。

それを投影し、使うだけなら普通に誰でも出来る。

だが、真名解放つまり「宝具として発動させせる」ことはできない。

なぜなら使っているのが本人でないからだ。

だが俺の場合はちょっと特殊で、体にある聖杯から「宝具自体をデータ化して投影」している。

よって部分的ではあるが、宝具として活用出来るのだ。

 

そしてこのゲイ・ボルグは端的に言えば「必ず心臓に当たる一撃」を放てる。

 

俺が突き出した槍はそのまま真っ直ぐに進み、

 

「ガッ………!」

 

大ぶりに振りかぶっていたせいでガラ空きになっていた腹に吸い込まれるように突き刺さり、

 

「ゴハァ………!」

 

心臓を木っ端微塵に破壊し、カリスの息の根を止めた。

 

「……………はぁ。終わったか。」

 

緊張状態から抜け出したせいで、疲れが一気に出てき、思わず座り込む。

しかし、

 

「なんなんだろうなぁ……この感覚は。」

 

俺は今、確かに人を殺した。

しかも人生で初めて。

なのに、あまり実感がわかない。

というより、罪悪感があまりないのだ。

相手が外道だったからだ、と言われればそれまでなのだが、どうも後味がわるい。

 

「………どうしたんだろうなぁ。俺。」

 

わからないままに廊下を出て、奥の部屋へと入っていった。




投影魔術はこれであってたんだろうか………
自分の中で、「投影魔術はエミヤ準拠」ってのと「宝具の真名解放はできない」っていう解釈なんでそれに乗っ取って書いたんですが……合ってましたっけ?
違ったらコメントください。
では、次の投稿まで!
ちゃお〜(マスターク風)

追記 アランの投影魔術は【真名部分解放】などの技を含めて「エミヤ準拠」としたいと思います。
指摘してくださった方、ありがとうございます


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第6話 最後の襲撃者

どうも。GW課題に恨みしかないよこちょです。
なんでこんなに宿題多いんや……丘people!?
まあ、いいんですがね。
前置きはこれくらいにして、第6話!どうぞ!
今回は短めです。



「よう。そっちも無事だったみてえだな。」

 

「ああ。」

 

奥の部屋へ来て合流したアランを労うグレン。

グレンはテロリストを1人、殺さずに倒したようだ。

 

「しかし、まさか2人別れてるとはなぁ。」

 

「……ああ。」

 

声をかけるものの反応が悪いアランにしびれを切らしたのか、グレンは

 

「………どうかしたか?」

 

と問いかける。

 

「………んにゃ。なんでもねえよ。」

 

ただ一言、アランは答える。

 

「そうか。」

 

その一言に何かを感じ取ったのか、グレンはそれ以上問うことはなかった。

 

アランはその気遣いに感謝しつつ、今後の予定を話し合う。

話し合った結果、残ったテロリストどもを探し出して暗殺するしか方法がないという意見になった。

 

そしていざ動こうとして扉に向かおうとすると、

 

ドグォオン!

 

盛大な音を立てて、扉が吹っ飛んできた。

 

「あっぶね!【投影】!」

 

アランが慌てて双剣を投影し、振るう。

この双剣は『干将・莫耶』という夫婦刀だ。

かなりの切れ味を誇るその刀は難なく扉を真っ二つに切断し、後ろへ飛ばしていた。

 

「ったく。次はなんだ?」

 

干将・莫耶を構えながら視線を廊下の方へ移すと、うじゃうじゃとスケルトンがいた。

 

「……っ!これは竜の牙を使ったボーンスケルトンか!?贅沢な野郎だぜ。これ俺の給料何ヶ月分いるんだよ!」

 

「んなこと言ってる場合か!どうすんだこれ!」

 

目の前のスケルトンを切りつけてみるが、さすがは竜の牙。アランの投影の精度で出せる程度では効果が薄く、表面に大きめの傷を付けるくらいに終わってしまい、とても切り裂いて破壊することは出来なかった。

 

「どうするも何も突破するしかねえだろ!おい白猫!お前『ウエポン・エンチャント』は使えるか!?」

 

「ええ!『その剣に光あれ』─!」

 

「っしゃ!俺とアランで道を開く!白猫は援護してくれ!」

 

「わかったわ!」

 

「了解!行くぜ!」

 

作戦会議も終了し、前進する。

 

「オラオラオラオラオラァ!」

 

グレンが拳でスケルトンを殴り砕いて先に進み、

 

「せいっ!おりゃぁ!」

 

アランが、グレンを襲おうとするスケルトンを斬り、双剣を投げつけて注意を引く。

 

「『大いなる風よ』─!」

 

それでも取りこぼしてしまったスケルトンをシスティーナが魔術で押し込み、その間にグレンかアランが破壊する。

 

そんなふうにしながら廊下や階段を上へ上へと進んで行く。

上に行くのは、スケルトンが湧いてくるのが上からだったからだ。

 

「多分屋上にいる!あとちょいだ!頑張れ!」

 

「システィ!まだ行けるか!?」

 

「ええ!勿論よ!そっちこそバテないでよね!」

 

互いを励まし、叱咤激励しながらも進み、ついに屋上へとたどり着いた。

 

────────────────────────

 

「まさかここまで来れるとはな。3流魔術師とその生徒だと思って甘く見ていたよ。」

 

ボーンスケルトンをグレンが黒魔改『イクスティンション・レイ』で全て消し飛ばした後に姿を見せたテロリスト、レイクがそう言う。

 

「はっ。スケルトン使って遠くからちまちまやるくらいしかできんやつにゃ言われたかないね。これで終わりなら大人しくしてくれや。」

 

アランがそう豪語するが、後半ちょっと疲れてるせいで相手に降伏してくれないかと遠回しに言っている。

 

「ふん。俺の手札がこれで終わりだと思わないことだ。」

 

そう言って背後から出てきたのは、6本の浮いた剣だった。

 

「うっへぇ。お前それあれだろ?『ロード・エクスペリエンス』で使い手の技量まで出した自動剣。」

 

「うわぁ。浮いてる。すげえ。」

 

「おいアラン。半分任せたぞ。」

 

「了解」

 

「行け!剣よ!」

 

迫ってくる3本の剣に対し、干将・莫耶で対抗するアラン。

 

「チッ!流石に難しいな。」

 

元々ただの学生であるアランには当然ながら剣術などはあまりない。

なんとか対抗できているのは、シロウに教えて貰ったことがあるからである。

だが、このままではアランの体力が持たない。

 

(何か策は………。)

 

考えながら戦っていたからだろうか。

足元のちょっとした段差に足をぶつけてしまい、転倒してしまった。

 

(しまった!)

 

そう思ったがもう遅い。

その隙を逃すまいと、3本の剣が飛んでくる。

なんとか2本は軌道を逸らせたが、残る1本が足を斬った。

 

「うぐっ!」

 

斬られた痛みが駆け巡る。

確認すると、結構深くまで斬られていた。

出血もかなり酷く、このままでは出血多量で死ぬだろう。

 

(早く手を打たなければ……。仕方ない。奥の手を使うか。)

 

アランは異能「魔力増幅」を少しだけ起動する。

そして自分自身に流れる魔力にブーストをかけ、

 

「せいっ!」

 

自分の前へ向けて魔力そのものを噴射し、スラスターのようにしてかっ飛ぶ。

 

「何!」

 

いきなり後ろへ向かって飛んでいったアランにレイクが驚いている隙に、詠唱を開始する。

 

『鶴翼、欠落ヲ不ラズ

心技、泰山二至レリ

心技、黄河ヲ渡ル

唯名、別天二納メ

両雄、共二天命ヲ断ツ』

 

干将・莫耶の刃が大きくなり、光を纏う。

 

『鶴翼三連!!』

 

掛け声共に投げられた2振りの剣は円を描くようにレイクの元へと飛んでいき、腹に突き刺さる。

 

「グゥ……!まさかここまでやるとはな。少しばかり見くびっていたようだ。」

 

「……悪いな。生憎ちょいと特殊でね。」

 

再び魔力を放出し、レイクの元へと移動したアラン。

 

「やはり『聖杯』は特殊か?失敗作とはいえ、あることには変わりないんだからな。」

 

「黙れ。」

 

これ以上言わさせまいと思ったのか、アランは思いっきり剣を横に凪いだ。

 

剣はレイクの肉体を半分に切り裂き、その肉体を地に落とした。

 

「「………!」」

 

アランの後ろから、二人分の息を呑む音が聞こえる。

 

「…………はぁ。終わったか。すまん。あとは頼んだわ。」

 

アランはそう言って、息絶えたレイクの死体と2人を背に、校舎の中へ歩いて消えた。

 

 

 

その後、グレンとシスティーナが尽力して事件は無事に幕を下ろした。

だが、事件が終わってもアランが学校に姿を見せることはなかった。




レイクを殺したのはアランってことにしました。
最近オリジナル要素少なかったからねしょうがないね。
アランの新しい技が出たので下に書いときますね。
あと、「鶴翼三連」の詠唱が間違ってたりしたら教えてください。
では、次の投稿まで!

──以下、新技解説──

魔力放出

自身の体内の魔力を意図的に噴出することで推進力を得て、一時的に飛んだり高速移動したりする技。
異能「魔力増幅」の応用。
多くの魔力を使うため、聖杯のあるアランくらいしか使える人がいない。
元ネタはFateの魔力放出。


鶴翼三連

投影した干将・莫耶をオーバーエッジ化させ、投擲する技。
詠唱の省略は可能。
別に3対使わなくてもよい。
設定が違うのはオリジナルだからってことで。


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第7話 資格

どうも。GWの宿題をようやくクリティカルフィニッシュしてきたよこちょです。ノーコンテニューでクリアしてやったぜ!
というわけでGWなので時間があまり、書いてみました。
2日連続投稿だよやったね(ペースを保てるとは言っていない。)
間違い指摘とかあったらコメントください。
感想くれてもええんやで?

というわけで、第7話!どうぞ!


学院襲撃事件が無事解決してから5日の時が流れた。

殆どの人は、襲撃なんてなかったかのように、いつも通りの日常を送っていた。

そう。「殆どの生徒」は。

その殆どに当てはまっていない人の中に、システィーナとルミアがいた。

 

「……アランの奴、なんで来ないのかしら。」

 

「連絡もないんでしょ?何かあったのかな…。」

 

最近は2人してアランが登校してこないのを心配してばかりだ。

最初の3日は風邪かなにかでも引いたのだろうと思っていたのだが、流石に5日間も休んでいるのはおかしい。

 

「心配だし、今日アラン君の家に行ってみない?」

 

「そうね。あいつ……サボってたら承知しないんだから。」

 

2人でアランの家に行こうと決めた時、廊下から1人、走ってくる者がいた。

 

「おい白猫、ルミア!今日の放課後、アランの家に行くぞ。」

 

その者はお察し、グレンだ。

グレンも最近心配して元通りの生活をしていない人の1人だ。

 

「いいですよ。ちょうど私たちも行こうって話してたんです。」

 

「おっ、まじか。ならちょうどよかった。今から行こうぜ。」

 

そう言って三人連れ立ってアランの家へ向かった。

 

────────────────────────

 

「「「お、大きい……!」」」

 

アランの家について最初に出た言葉はそれだった。

無理もない。

なぜなら、ものすごくでかかったからだ。

もう貴族の家なんじゃないかと錯覚し、住所を間違えたのではないかと思えるほどには大きかった。

 

「………先生、ホントにここで合ってるんですか?」

 

「………ああ。住所はここになってる。」

 

「表札にもエミヤって書いてありますしね。」

 

「………とにかく、呼び鈴押すか。」

 

「はい。」

 

ピンポーン

 

「……はい。エミヤですが。」

 

中からは普通そうなアランの声が聞こえてきた。

 

「ああ、俺だ。グレンだ。お前が無断欠席してるんで、心配だから様子を見に来た。開けてくんねえか?」

 

「ああ、先生ですか。いいっすよ。」

 

ガチャリとドアが開き、アランが姿を見せる。

 

「おう先生。久しぶりだ………」

 

アランはグレンの後ろにいるルミアとシスティーナの姿を見ると声を途切らせ

 

「………悪い。帰ってくんねえか?」

 

そういった。

 

「な、なんでよ!」

 

「ど、どうして!?」

 

システィーナとルミアは困惑して言い返す。

 

「………すまん。ちょっと会いたくなくてな。」

 

ハッキリと口にする。

 

「な………!」

 

思わず絶句するシスティーナ。

まさか心配して来たのに追い返されるとは思ってなかったんだろう。

 

「………………。」

 

一方のルミアは、黙ってアランを見ている。

 

「どうしてよ!友達のことを心配して来たのに!」

 

「………俺にはもう、お前らを友達と言う資格はないんだ。悪いな。」

 

話は終わりだと言わんばかりにドアを閉めようとする。

だが、グレンが足をドアに挟んだため、閉まらない。

 

「………俺にはお前がどうしてそう言うかわかるぜ。当ててやろうか?」

 

「……なんですか?」

 

「『人殺しはそんな資格がない』って思ってんだろ。そうだろ?アラン。」

 

「………ああ。そうだ。俺はあの襲撃事件の時、2人も人を殺した。しかも、躊躇なくだ。」

 

「………!」

 

システィーナが息を呑む。

彼女はアランが目の前でレイクを斬り殺したのを見ていたからだ。

 

「あの時はそうするしかなかった。そう思って無理やり納得しようとした。でも無理だった。俺の手はもう、誰かと繋がることが出来ない血に濡れた手なんだ。だから、俺にはその資格がない。」

 

「いや、そんなことはな「そんなことないよ!」」

 

グレンの声を遮って大声をあげたのは、さっきまで黙って聞いていたルミアだった。

 

「そんなことない。アラン君がしてなかったら、先生は多分、私を助けられなかった!アラン君がしてなかったら、システィ命が危なかった!アラン君は誰かのために、私達の為にやってくれたんでしょ!?」

 

「………それは。」

 

「少なくともここにいる3人は感謝してるんだよ?だから………そんなに自分だけを責めないで………!」

 

「そうよ!アランがいなかったら私は大切なものを失うかもしれなかったのよ!だから、感謝してる。」

 

「……俺もだ。お前がいなけりゃ魔力切れ起こしてルミアを助けられなかっただろうな。だから、サンキューな。」

 

「…………俺に、資格があるのか?人と関わる。」

 

「勿論よ。」

 

「………殺人者だぞ?」

 

「ああ。」

 

「……異能力持ちだぞ?」

 

「実は私も異能力者なんだよ?だから、大丈夫。」

 

「…………ああ。ありがとう。だから、その。これからも、よろしく頼む。」

 

「「「うん!(ああ!)」」」

 

こうして、アランは自分の罪と向き合い、前に進む覚悟ができた。

 

────────────────────────

 

「………ところでシスティ、失いそうになった大事なものってなんだったんだ?財布かなんかか?」

 

4人でアランの家に入り、お茶と菓子を食べている時に、アランはとんでもない質問をした。

というのも、テロリストについでに連れていかれたシスティーナは、ロリコン(恐らく)なテロリストに襲われそう(性的な意味で)になっていたからだ。

 

「ブフッ!」

 

思わずグレンがお茶を吹きかけて、喉に詰まらせる。

まぁ、無理もないだろう。

 

「な、な、な……!」

 

顔を一瞬で赤くしたシスティーナは、口をぱくぱくさせている。

 

「ったく。財布盗られそうになったときはな、大人しく渡す方が身のためになるんだぞ?」

 

「あ、あの〜、アラン君?それ以上はやめた方が………」

 

事情を知ってるルミアは、どう説明したものかと頭を悩ませながら必死に止めている。

 

「ん?財布じゃないのか。………じゃあなんなんだ?」

 

が、当の本人は考えていて聞いてない。

 

「…………………」

 

システィーナは下を向いて震えている。

耳まで真っ赤になりながら。

 

「女にとって大事なもの………。…………………あっ。」

 

考えた結果、どうやらようやく思いついたようで、顔を真っ青にしている。

 

「システィ。」

 

「…………なによ。」

 

アランは椅子から立ち上がり、

 

「すんませんでしたァァァァ!」

 

綺麗な土下座をして謝った。

 

その後、アランが【ゲイル・ブロウ】で吹っ飛ばされたのは、言うまでもない。




アランは再び手を取り、前に進むことができましたね。
ご都合主義感が否めない………。もっと文才が欲しいですね(切実)。
どうなるかと思いましたが、これでやっと2巻の内容に入れます。
ペース遅すぎィ!

というわけで、次の投稿まで!


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第8話 魔術競技祭 開幕

どうも。よこちょです。
まあ特に書くこともないので、第8話をどうぞ!

注意⚠今回初の多重クロスになります。今後登場するかは不明ですが、まあ、ネタと思って流してくれて大丈夫です。


アランが再び登校するようになってからしばらくたったある日のHR。

システィーナが壇上に立ち、会議の指揮を執っていた。

会議の内容は、

 

「………もう。誰も出たくないの?せっかくの『魔術競技祭』なのよ?」

 

そう。『魔術競技祭』という、いわば体育祭のようなものだ。

この魔術競技祭は、例年教師が勝手に優秀な人ばかり競技に出すので平凡な者は参加出来ないという悪習が成っており、祭りとは名ばかりになっていた。

 

だが、このクラスはグレンが出る生徒を生徒に(面倒臭いから)一任したため、全員に出るチャンスがあるのだ。

 

だが、今回の魔術競技祭は去年までと違い、女王陛下が直々に見に来る上、優勝チームに直接メダルを渡すためみんな参加を尻込みしているのだ。

 

「もう……。このままじゃ埒が明かないわ。」

 

「ふん。全員に機会を与えようとするからこうなるのさ。さっさと例年通り、成績上位者で固めた編成にしなよ。」

 

ギイブルがそう言うのも無理もない。

クラス全員、「それでいいかな」という考えに傾き始めたその時、大きな音を立ててドアが開いた。

 

「ふっ、皆。話は聞かせてもらったぜ!ここはこのグレン大先生に任せなぁ!」

 

入ってきたのは、この状況を作り出した張本人たるグレンだった。

 

グレンはツカツカと壇上に上がり、種目のリストをひったくるとそれに目を通す。そして、

 

「言っておくが、俺がやるからにはマジで勝ちに行く。覚悟しろ。」

 

そう言ったグレンは、各種目にそれぞれ人を当てていった。

だが、全員にだ。

例年のように成績優秀者使い回すのではなく、全員に出る競技がある。

 

みんながなぜこの編成になったのかと質問をするが、一応筋が通った説明をする。

 

「この編成はお前らそれぞれの得意な部分を出しやすいようにしてある。まぁ、これからの練習でどうとでもなるさ。そうと決まれば練習だ!行くぞお前ら!」

 

いつになくやる出しているグレンの態度が謎であったが、みんな自分の出番があるので移動して練習を始める。

 

だが、練習中に隣のクラスの担当のハーレイ先生が因縁を付けてきたので、それにキレたグレンがクラス対抗で勝負をすることを受けてしまったのだ。

 

「こうなったら俺がお前らを優勝させてやるよ!」

 

勝利宣言をしたグレンの元、クラス全員で練習を続けた。

 

────────────────────────

 

「………で、当日になったな。先生。」

 

「ああ。そうだな。」

 

「で?なんで俺は『変身』に出ることになってんだ?」

 

元々アランは「錬金術」の勝負に出る予定だったのだが、急遽『変身』に出るようにとグレンに言われたのだ。

 

「ってか変身はリンが出るだろ?なんで俺が。」

 

「しゃーねーだろ。まさか今年は『錬金術』が無くなって『変身』が2部編成になるなんて予想してなかったんだからよ。」

 

毎年競技内容が変わるということは承知していたが、まさか競技種目そのものがなくなるとは誰も思わないだろう。

学園長曰く、「魔術師には咄嗟の機転も必要だから」とのことらしい。

 

「………俺、『セルフ・イリュージョン』あんまし得意じゃないんですが。」

 

「大丈夫だ。『セルフ・イリュージョン』は自分がなりたいものを強くイメージすることが大事なんだ。そこさえできれば後は気合いだ。」

 

「結局気合いか………。まあ、やってみます。」

 

「おう。すまんな。」

 

「へいへい。」

 

────────────────────────

 

魔術競技祭が始まり、しばらくたった。今は「飛行」の競技中だ。

この種目には、カイとロッドが参加している。

二人とも勝てるかはわからないと言っていたが………

 

「おお〜っと!?ここで2組がトップに躍り出たぁー!」

 

現在普通に1位である。

グレン曰く「飛行はペース分配が重要」とかなんとか言ってたけども、本人が「うそーん」とか言ってたのはバッチリ耳に入っている。

よって恐らく善戦するくらいにしか思ってなかったんだろう。

 

このあとも次々に上位にクラスメイトがくい込んでいき、ついにハー……ハードディスク先生率いる1組との勝負にも勝ち目が見えてきた。

 

そして、とうとう変身の競技の順番が回ってきた。

前半後半に別れており、女性と男性でそれぞれ別れている。

前半は女子のため、リンがいくことになっている。

 

リンは図書室にあった絵に出てくる美しい天使の姿に変身していた。

会場の審査員も感動しており、ほぼほぼ満点に近い点数を取って1位となっていた。

ちなみに審査するのは審査員だけでなく、生徒も点数を入れることになっている。

 

「………これは。負けられないな。」

 

そう思い、いっそう強く変身する対象をイメージする。

 

そうしている間にも競技は進み、他の男子生徒が変身している。

皆、ドラゴンなどの自分が憧れる姿に変身していた。

 

そして、

 

「では最後の生徒に移ります!ここまで快進撃を続けてきた2組から出場のアラン=ジョーゼフ=エミヤ君です!」

 

大きな拍手と共に、頑張れというクラスメイトからの応援も聞こえてきた。

 

「………………」

 

目を閉じ、集中する。

 

そして、待ち時間のうちに投影しておいた「とある玩具」を掲げる。

その玩具は青を基調にした本体の横にレンチのような物が付いてたベルトのバックルのようなものである。

 

見たことの無いものを取り出した俺に、会場がざわざわとざわめいている。

 

深呼吸をし、おもちゃを勢いよく腰に当てる。

 

おもちゃの横に付いていたベルトが腰周りを回転し、反対側に刺さる。

 

そして、ズボンのポケットからこれまた「玩具」を取り出す。

こっちは紫色のキャップの付いたボトルで、表面にヒビ割れたようなデザインがある。

ちなみに両方とも既に音声拡張の魔術をかけ、投影魔術による改造を施してある。

 

その状態でしばらく待ち、会場のボルテージがMAXになったところで、キャップを捻る。

 

『デンジャー』

 

ボトルはそう音声を流し、おどろおどろしい音を流し始める。

 

そして、ボトルをベルトに突っ込み、レンチを下に倒す。

そして同時に改編した呪文を唱える。

唱える呪文は一節。

 

『変身。』

 

『クロコダイル!』

 

『割れる!喰われる!砕け散る!』

 

『クロコダイルインローグ!オーラァ!』

 

搭載しておいた立体射影機から光が溢れ、その光が俺の周りに液体で満たされたビーカーを作り出し、下から出た大きな顎がそれを割り砕く。

 

そしてそこから姿を表したのは、クロコダイルを模し、パープルを基調とした装甲を纏った存在だった。

 

「……………………………………」

 

会場が一瞬で静まり、沈黙が流れる。

 

(………さすがに不味かったか?)

 

そう思った矢先、

 

「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉ!カッケェェェェ!」」」」

 

という男子生徒の声が聞こえる。

どうやらウケはいいらしい。

審査員の席を見ると、驚いてはいるもののしっかり採点してくれているようだ。

 

全生徒からの採点も終わり、結果が発表される。

 

「1位は………2組!アラン=ジョーゼフ=エミヤ君です!」

 

会場が再び湧く。

 

変身を解除し、自分のクラスへ戻ると、男子生徒の羨望の眼差しが待っていた。

 

余談だが、このベルト1式はその後しばらく学校中の男子生徒の遊び道具となった。




初の多重クロス内容は「仮面ライダービルド」から参戦の「仮面ライダーローグ」です。
ちなみに出した理由は投影魔術利用したオリジナル競技を思いつかなかったからですw
一応詳細は下に書いときます。
では、次回の投稿まで!


───以下詳細───

白魔改 『ライダー・イリュージョン』

聖杯の知識から得た(余計な)知識から投影した仮面ライダーの玩具を投影魔術で音声拡張の魔術や立体射影機の機能を引っつけたものを使った後に改編した『セルフ・イリュージョン』を使うだけ。
『変身』の一言で準番に魔術が起動し、変身を完了させる。
要は複合魔術。


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第9話 ちょっと親衛隊さん、横暴すぎません?

どうも。最近ガンバライジングにハマったよこちょです。
周りの視線が痛いが気にしないZE☆

ところでそろそろヒロイン決めたい……決めたくない?
というわけでアンケート的なものをば。
基本的にFateキャラかロクアカキャラからヒロインは出そうと考えているので、意見があったらコメントしてください。
お願いします。

宣伝も終わったので、第9話、どうぞ!


変身の競技が終わり、昼食休みとなった。

腹が減った俺は、自作の弁当を持って食べる場所を探していた。

だが、どこもかしこも人がいてゆっくりできそうな場所が見当たらなかった。

 

「あーもう。ここでいっか。」

 

結局、ちょっと外れた場所にあるちょっとした林のような場所で食べることにした。

 

「うむ。我ながらいい出来だな。」

 

ちなみにメニューは簡単なサンドイッチである。

本当は弁当を作ろうと思っていたのだが、材料が足りず、断念した。

 

「ふう。ごちそうさまでした。」

 

食べ終わってクラスへ戻ろうとすると、林の前にグレンとルミアが歩いてきた。

 

「こんなとこで何してんだ……?」

 

声をかけようと近づいていくと、突然2人を取り囲むようにして兵士が表れた。

 

(あいつらは……護衛の騎士か?女王陛下の護衛についてるはずなんだが………どうしてここに?)

 

怪しく思ったので、気配を消してしばらく様子を見ることにした。

 

様子を見ていると、ルミアが国家転覆罪にあたることをしたとかなんとか言って拘束され、それに抵抗したグレンが峰打ちをされて気絶させられていた。

 

(この状況やばくないか?ってか、国家転覆罪ってなんだよ。あいつなんもしてないじゃんか。)

 

そう思い、どうにかこの状況を打開しようとするが、策が思いつかない。

だが、考えている間にルミアは林の中の俺の目の前の木に背をつけ、今にも殺されそうになっていた。

 

(まずいまずいまずい………!このままじゃルミアが殺させる……。)

 

もうこれは突入するしかない。そう思い動きかけた時に、グレンが突っ込んできた。

どうやら気絶させられたフリしていただけだったらしい。

そしてルミアの頭上でフラッシュ・ライトを焚き、親衛隊に手刀を叩き込んで気絶させていた。

 

(よ、容赦ねえな…………)

 

そう思いながら2人のそばに近づく。

 

「よう。お二人さん。」

 

「誰だっ………ってアランか。なんでここにいんだ?」

 

「こっちのセリフだわ。飯食ってたらいきなりこんな状況になったし。」

 

「それはすまんな。ってか、これからどうすっかな……」

 

「いたぞ!仲間が殺られている!急いで囲め!」

 

どうやら話している間に他のやつらが来たらしい。

 

「先生。ここは俺が引き受ける。先に逃げてくれ。」

 

「んな無茶な!」

 

「1人じゃ無理だよ!先生と一緒に早く逃げて!」

 

「アホか。もしここで俺が捕まったとしても、お前らが解決してくれると見込んでの行動だ。ここで3人捕まるよりはいいだろ?」

 

「………わかった。もしこれるなら西地区の路地裏まできてくれ。」

 

「了解。」

 

「すまん。頼んだ。ルミア、行くぞ!」

 

「アラン君!」

 

「いいからはよ行け。捕まんなよ?」

 

こちら向いてるルミアの肩を掴んで無理やり後ろを向かせ、走らせる。

これでこの場は俺一人だ。

 

「【投影】─。」

 

銃を投影し、構える。

俺をスルーして追いかけようとする親衛隊の連中の足元に、1発弾をぶち込む。

 

「………貴様、折角見逃そうとしてやっているのにわざわざ楯突く気か?今なら見逃してやるが、どうする?」

 

「そいつはどうも。でもここ通すわけにゃいかんからな。ちょっくら相手してもらうぜ?」

 

「………学生風情が調子に乗るなよ?総員、構え!」

 

5人程の親衛隊が俺の前に展開する。

正直こいつらの殺気は尖っていて非常に怖い。

だが、あいつらが死ぬほうがもっと怖い。

 

「…………ふう。」

 

周囲を見て人がいないことを確認し、覚悟を決めて息を吐き、いつでも動けるように腰を落とす。

 

「総員、掛かれ!」

 

「かかってこいやァァァ!」

 

魔術競技祭が午後の部を迎えると同時に、戦闘が始まった。

 

「オラオラ!」

 

手始めに銃を撃ってみる。

だが、流石に剣で弾かれたり避けられたりして当たらない。

 

「チッ。流石に銃は無理か。」

 

銃を魔力に戻し、干将・莫耶を投影する。

それと同時に迫ってくる剣を受け止め、追加で普通の剣を投影する。

そのまま射出し、一旦距離をとった。

 

「ほう。学生にしてはなかなかの腕だ。犯罪者でなければ騎士にでもなれただろうにな。」

 

「そうかい。あいにく興味無いね。」

 

軽口を叩いては見たものの、正直まずい。

今やり合って確信したが、正面からやるのではあまりにも部が悪すぎる。

しかもこっちは本物の犯罪者になる訳にはいかないので、殺してはいけない。

でも全力でかからないとこっちが殺られる。ていうか捕まる。

 

「【投影】!」

 

手元に複数の爆硝石を投影し、足元に投げる。

当然爆発し、足元を抉った。

 

「自爆か!」

 

相手はそう思っただろう。

そうなるようにやったんだしな。

だが違う。

確かに自爆覚悟でやったが、死ぬ気なんてさらさらない。

 

「【投影】!」

 

俺は爆破の衝撃で上に飛び上がることが目的だった。

そして弓を投影し、掃射する。

 

「グッ……!」

 

3人の脚に命中し、膝を着かせる。

これで3人は動けないはずだ。

念の為『ゲイル・ブロウ』を撃って吹っ飛ばし、こっちに来にくくしておいた。

これで残りは2人だ。

 

「チッ……唯の学生と思ってかかったのが間違いだったか。ここから?全力で行かせてもらおう。」

 

「おっそうだな(適当)」

 

適当に相槌をうち、次の策を考える。

考えているとふと、聖杯の記憶から戦法を思いついた。

しかも結構簡単な。

 

「【投影】──【複写】!」

 

まずい投影で先を潰した剣を投影し、それを複写作り出す。

 

「【発射】!」

 

そのままそれを相手に向かってまるでガトリング砲のように発射する。

 

「グゥ……!」

 

飛んでくる無数の剣になすすべもなく、1人気絶する。

残り1人。

 

「そりゃぁ!」

 

残り1人には干将・莫耶を投げつけ、アキレス腱を軽く切断する。

これで動けないはずだ。

 

「グハァ………!」

 

残り1人も無事に方がついた。

 

「ふう。危なかったな。」

 

最初に不意をつけたのが功を奏し、傷こそ負ったが五体満足で生還できた。

 

「………さて、西地区だったっけ?行きますかね!」

 

気休め程度だが親衛隊を『マジック・ロープ』拘束し、走って西地区へ向かうことにした。

 




ちょっと主人公強くしすぎた感あるわ。(今更)
まあでも敵も強くするしま、多少(の強化)はね?
というわけで次回の投稿まで!
あ、ヒロイン決定の件、宜しくお願いします。(懇願)


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第10話 事件収束と祝賀会〜毒々しいコブラを添えて〜

どうも。投稿遅れてすみません。よこちょです。
展開が思いつかなかったんじゃ……
まあ言い訳はともかく、今回初のライダー要素が出てきます。まあ、察しのいい人はタイトルで気づいたでしょうが。
そのへんも楽しんでくれると幸いです。
では、どうなる第10話!どうぞ!


学校を飛び出してしばらく走り、西地区へたどり着いた。

しかしまさか学校行事の途中で学校を抜け出すことになるとはな。

怒られなきゃいいんだが。

 

………そういえばこれ先生もいない状況なんだよな。

てことはワンチャン俺怒られないのでは………?

 

そんなことを考えながら走り、先生とルミアを探す。

だが、非常に重要なことを思い出した。

 

「…………裏路地って、どの裏路地だよ!」

 

そう。先生は「裏路地に来い」とは言ったが、どこの裏路地かを言ってなかったのだ。

お陰で今から第1回チキチキ先生探してウン千里

しなければならなくなった。

 

「…………先生〜!」

 

 

 

声をあげて探すことはや10分。

ようやくグレンとルミアを発見した。

発見したのだが………

 

「ルミア。これどういう状況だ?」

 

「わかんない………」

 

俺が見つけたには、

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

と叫ぶグレンと、

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

小柄な少女、リィエルがこちらも叫びながらグレンに大剣を振り下ろし、

 

「きゃうん!」

 

その少女の後ろにいた青年、アルベルトさんが少女の頭に「ショック・ボルト」を撃ち込んだ姿だった。

 

「いや、まじでどういう状況?」

 

────────────────────────

 

「とりあえず……お久しぶりです。アルベルトさん、リィエル。」

 

「ああ。元気そうで何よりだ。」

 

「ん。何より。」

 

「えっと……どちら様ですか?」

 

おっと。ルミアは面識ないんだったな。

 

「この2人は帝国宮廷魔道士団特務分室のメンバーだ。前言った、俺の命を救ってくれた人達でもある。」

 

「そうだったんだ。」

 

「自己紹介はこれくらいにしておこう。グレン。わかってることを話せ。」

 

アルベルトさんが仕切り直し、状況整理に入る。

 

今わかっていることは、アルフォネア教授は動けないということ。

鍵はグレンが握っているということ。

俺が関わっていることはバレてない可能性が高いといううこと。

そして、グレンが女王陛下に会えれば解決するということだ。

 

これを踏まえ、作戦を練る。

結果、「グレンとアルベルトさん、ルミアとリィエルが魔術で入れ替わる」という作戦になった。

そして、俺の役割は別にある。

それは、この中では俺にしかできない役割だった。

 

「了解。任せておけ。」

 

そう言い、俺は単独行動を始めた。

 

────────────────────────

 

「この辺でいいかな。」

 

グレンとルミアに変身したアルベルトさんとリィエルが走っていった道にある塀の上に座る。

 

「お、きたきた。」

 

そのまましばらく待っていると、足音をたてながら親衛隊が走ってきた。

そして俺に気づかず、そのまま走っていた。

 

「ま、気づかないよね〜」

 

まあ相手が気づかない理由は単純だ。

人払いの結界をエンチャントしたマントを羽織っているからである。

もちろん通常なら看破されて終わりだろうが、今は独断専行で焦って動いている。

 

よって比較的バレにくいのだ。

 

「さて、仕事しますか!」

 

弓と「スリープ・シールド」をエンチャントした魔矢を投影し、構える。

 

「ふっ!」

 

矢をつがえて引き絞り、親衛隊の足を目掛けて撃つ。

 

だが、俺自身あまり弓が得意ではないので、命中率はそこまで良くはない。

最初は宝具を投影し、憑依体験をして当てようとも考えたのだが、それで撃とうもんなら刺さるだけじゃすまないと思い直し、普通の弓にした。

 

「う〜ん。微妙だなぁ………。」

 

まあ、俺は「とにかく撃て。可能なら当てろ」と言われただけだしな。

実際当たらなくとも、「視認できない敵からの遠距離攻撃」というのは精神的にキツいだろうし。

 

そんなことを考えながら撃ち続け、親衛隊の四分の一程を眠らせたところで、親衛隊が人混みに入ってしまった。

これでは撃てないので弓矢を消し、遠見の魔術で様子を見る。

 

「……どうやら上手くいったぽいな。」

 

見えたのは、アルベルトさんが「ショック・ボルト」の狙撃で気絶させていってる所だった。

これならば、俺の出番はもうないだろう。

そう思い、グレンから借りた通信用の魔道具でグレンと連絡を取る。

どうやらまだ入れ替わったことはバレてないらしい。

俺は帰ってきていいということだったので、そのまま帰ることにした。

 

「………このまま無事に終わってくれればいいんだがなぁ。」

 

 

────────────────────────

 

学校へ帰り、無事にアルベルトさんに変身したグレン、リィエルに変身したルミア、それからクラスメイト達と無事に合流できた。

 

「あ!アラン!どこいってたのよ!」

 

帰ってくるなり、システィに怒られた。

 

「いや、ちょっとお花をつみにな。」

 

「こんな長い時間つんだら花畑なくなるわよ?全くもう………。先生もルミアもいないし………。」

 

いやそこにいるぞ、とは口が裂けても言えないので、慌てて話題を変える。

 

「ところで、今どんな感じだ?」

 

「ハーレイ先生のとこといい勝負してるわよ。あとは決闘戦で勝てれば優勝よ。」

 

「ほう。なかなか凄い所まで行ったんだな。」

 

実際、システィやギイブルと言った成績優秀者が少ない俺らのクラスがここまで勝ち進めているのは凄い事である。

これはグレンの戦略の賜物だ。

 

(………今度なんかあったら助けるか。)

 

参加出来て楽しかったので心にそう決めていると、

 

「間もなく、決闘戦に入ります。参加する生徒は集合してください。」

 

アナウンスが入った。

システィは勿論、参加生徒だ。

 

「システィ、頑張ってこいよ。」

 

「ええ。絶対に勝ってみせるわ!」

 

「おう、行ってこい!」

 

そう言ってシスティを送り出す。

そしてそのままアルベルト(グレン)に近づき、小声で会話をする。

 

「……なあ、まだバレてないんだよな?」

 

「ああ。なんとかな。」

 

「……なあ、先生。表彰の時、こっそり着いて言っていいか?」

 

「あ?なんでだよ。」

 

「まだなんかあったら怖いからな。」

 

「でも流石にあの隠蔽のマントじゃ防げないと思うぞ?」

 

「大丈夫。俺に策がある。」

 

策を話すと納得してくれたようで、「わかった。」と了承してくれた。

 

(ま、何も無いのが1番なんだけどな。)

 

話し終わったので決闘戦のフィールドへ視線を向ける。

視線の先には、システィが「ゲイル・ブロウ」で対戦相手を場外に吹っ飛ばして勝利を収めている姿があった。

どうやら無事に優勝出来たらしい。

 

クラスのみんなも自分たちの優勝に驚くと同時に喜び、帰ってきたシスティを胴上げしていた。

 

「さて………先生?」

 

「ああ。わかってる。」

 

俺は先生のローブの内側へ張り付き、その時を待った。

 

────────────────────────

 

優勝が決まり、先生が表彰される時間になった。

先生はアルベルトさんの見た目のまま、表彰台まで歩く。

女王陛下はグレンの顔を知っているらしく怪訝そうな顔をしている。

 

「この者が講師のグレン=レーダスかね?」

 

「いえ、違うと思うのですが………」

 

側付きの親衛隊─確かゼーロスとか言ったか─が白々しくそんな疑問を投げている。

 

「なあ、お前ら。馬鹿騒ぎもいい加減にしようぜ?」

 

先生が変身を解き、姿を晒す。

 

「なっ!貴様何故ここに!お前は街中にいる筈では!?」

 

「途中で入れ替わったんだよ。セリカ!頼んだ!」

 

グレンの声を合図に地面を光が走り、声や視界を外部と遮断した結界が張られる。

 

「セリカ殿!まさか裏切るおつもりか!」

 

ゼーロスが慌てるが、アルフォネア教授は何処吹く風と結界を維持している。

その後、ゼーロスが焦って行動している理由を女王陛下とのやり取りでグレンが察知し、行動を開始した。

しかし、グレンが動こうとした瞬間にゼーロスが神速の勢いで移動してきた。

 

「ハァッ!」

 

このままではグレンが行動不能になると思い、俺が動く。

一先ずは干将莫耶でゼーロスの2本のレイピアを防ぐ。

 

「なっ!貴様どこから!」

 

急に現れた俺に驚いたゼーロスは一旦下がり、再び突進してきた。

それをクロスさせた干将莫耶で防ぐ。

が、勢いが強すぎて後ろへ下がってしまう。

だが、

 

「先生!もうできたか!」

 

「ああ!バッチリだ!陛下!」

 

俺がすべきなのは時間稼ぎ。別に倒さなくても目標は達成出来た。

 

チャリンッ、という音が結界内に響く。

その音は、女王陛下が着けていたネックレスを外し、地面に落とした音だった。

 

「なっ………!陛下!なんということを!」

 

「大丈夫ですよ。ゼーロス。もう、大丈夫なのです。」

 

「はん、やっぱりな。そいつは呪殺用の魔道具だったんだろうよ。」

 

グレンの推理とゼーロスの言葉を纏めると、このネックレスには「カースド・ギアス」の魔術が掛けられていて、ギアスの内容は「解呪しない状態で外したら装着者を殺す」。解呪方法は「ルミアの殺害」だった。

このネックレスは側近のエルミナが持ってきたという事だが、そのエルミナが居ないあたり、十中八九そいつが犯人だろう。

 

「んで、それを知った親衛隊が暴走、そしてこうなった。と。」

 

「ああ。」

 

「成程ね。んで、この状態。収集つくのか?」

 

「…………さあな。……………ってかホントに着くのか?」

 

────────────────────────

 

そして時間は過ぎてその日の晩。

グレンとアランは2人で道を歩き、優勝祝賀会をやっているという店に移動していた。

 

「ったく。俺がとアランが勲章貰うだぁ?しかも二人揃って後日召喚とか。めんどくせえし要らねえっつうの。」

 

「まあまあ。別に俺ら2人じゃなくてもいいって言ってたし。なんなら友人誘って行きましょうよ。勲章だってタダで貰えるんだし、貰っときましょう。」

 

「はぁ………。めんどくせえなぁ。」

 

「どんだけ面倒くさがりなんだアンタ……。それよりほら、着きましたよ。その店。」

 

「ここか。しゃーねえ。酒でも飲むか。」

 

「程々にしてくださいよ?」

 

「わーってるっつうの。てめえは俺の親か?」

 

「生徒ですが?」

 

「違えねえ。」

 

2人でそんな掛け合いをしながら店へ入ると、夜遅いというのに、まだまだ騒ぎ足りないと言わんばかりに皆騒いでいた。

 

「おーおー。やってるねえ。」

 

「先生!今日の俺の活躍見てました!?」

 

グレンは皆に囲まれ、ヒーローのような扱いを受けていた。

アランはと言うと、1人椅子に腰掛け、料理を摘んでいた。

別にボッチな訳では無い。疲れて腹が減っていたのだ。

 

 

「ふう。ちょっとトイレ。」

 

誰に言うでもなくそう言ったアランは椅子から立ち上がると、トイレへと1歩を、

 

「ア〜ラ〜ン〜!こっちきて一緒話そうよぉ〜!」

 

………踏み出せなかった。

システィーナが腰にタックルをする様に抱きついてきたのだ。

 

「ふぐぉあ!?」

 

立ったばかりのアランは当然体制を崩し、顔面を近くのカウンターに思いっきりぶつけた。

 

「いってぇ………。おいこら。急に飛びつくんじゃあるません。痛いだろうが。」

 

「えへへ〜。ごめんなさ〜い。」

 

「ってかおめえ酒臭えな!なに酒飲んでんだゴルァ!ってか離せ!トイレ行かせろォー!」

 

なお、その時周りにはシスティーナが呑んだであろうクソ高い酒の空き瓶がゴロゴロと転がっており、それを見たグレンは戦慄していた。

 

 

 

 

 

「ふう。スッキリしたぜ。」

 

トイレから帰ってきた俺は、カウンターへと腰掛ける。

クラスメイトは俺がトイレに行ってる間に粗方帰ったらしく、店内にはルミアしかいなかった。

 

「なんか悪いな。待たせたみたいで。」

 

「ううん。全然。ちょうど2人で話したかったんだ。」

 

聞くと、先生はシスティをおぶって先に送り届けているらしい。

となると当然俺がルミアを送ることになるのか。

まあルミアは美少女だし、嫌じゃない。

 

「すまん。ちょっと喉かわいた。どっか飲み物ないか?」

 

「ええっと………これくらいしかないよ?」

 

そういって差し出したのはコップに入った紫色の液体だった。

曰く、近くのテーブルに手付かずで置いてあったらしい。

 

「つっても俺だけ飲むのも悪いし、半分こにしようぜ」

 

「いいの?ありがとう!」

 

2人でジュース(多分)をグラスに分け、飲む。

ふむ。

 

「上品で濃厚な葡萄のスッキリした甘みがこのアルコールの味を引き立たせていて非常においs………ってこれ、さっきシスティがガバ飲みしてたワインじゃんか。」

 

まさか人生初の飲酒をこんなとこでするとはな……

ってか、俺はちょっと頭がぼおっとするくらいだが、がルミアは大丈夫なのか?

そう思って確認すると、頬が少し紅いがあまり問題はなさそうだった。

 

「んで、話したいことって何だったんだ?」

 

「ええっとね………」

 

 

 

それからしばらく2人で話した。

普段の学校生活のこと、システィーナがグレンに対し好感を抱いているということ(まあこれは薄々分かっていたが)。

そして、ルミアの過去を。

 

初めて知ったが、ルミアは廃嫡された女王陛下の子供だったらしい。

このことはグレンやシスティ等のこの前の事件の関係者以外は知らないから他言無用で頼むということも言われた。

 

「そうだったのか。初めて知ったわ。」

 

思えば、凄く礼儀正しいのはそのせいかも知れない。

 

「うん。さっきお母さんとも話してきたんだ。そしたら色々スッキリしたよ。」

 

「そうか。それならよかったんだ。」

 

そう言って再び酒を呷る。

俺は幼い頃に両親も家も、何もかもを失っている。

しかも、最期の挨拶さえできなかった。

だから、

 

「ホントに、よかったな。」

 

そして少し羨ましく思う。

親と滅多に会えないとは言え、まだ言葉を交わす余地があるからだ。

 

「アラン君。辛かったら、泣いていいんだよ。」

 

「泣いてないし。」

 

そう。泣いてない。恐らく、初めて酒を呑んだからだろう。視界が濡れたように霞むのは。

 

そう思っていると、急に頭を抑えられ、撫でられる。

 

「………なんだよ。」

 

「ふふっ。何でもないよ?」

 

「………」

 

いつ以来だろうか。頭を撫でられるんて。

そう思っていると、どんどん頭がぼうっとしてきた。

 

(あ……やばい………眠い……)

 

せめてソファーで寝ようと移動しようとするが、上手く立てず、転んでしまう。

だが、硬い感触はいつまでたっても襲ってこず、代わりに柔らかくいい匂いのした物に受け止められた。

 

(ああ……なんか気持ちいいなぁ………)

 

そしてそのまま意識を手放した。

 

なお、翌朝全力で謝ったのは言うまでもない。

 

────────────────────────

 

時間は少し遡り、夕方。

1人の女性が裏路地を歩いていた。

 

「まさか失敗してしまうとは………。」

 

その言葉と裏腹に声音は弾み、顔には笑顔が張り付いていた。

 

「でも……折角のルートが無駄になってしまいましたね。」

 

「やはり貴様だったか。」

 

その女性に鋭い声を投げかけたのは、アルベルト。隣にはリィエルもいる。

 

「俺らが命じられた任務は3つあった。1つ目は親衛隊の監視、2つ目は女王陛下の内定調査。そして3つ目は、お前についての調査だ。天の知恵研究会所属の外道魔術師、エレノア=シャーレット!」

 

その女性、エレノア=シャーレットは振り向き、微笑を崩さず答える。

 

「あら?なぜ私個人の調査を?」

 

「貴様はとても優秀な側近で経歴に傷もなく、特に信頼を置かれていたそうだな。その分女王陛下との付き合いも長かったのだろう?」

 

「ええ。」

 

「だからだ。」

 

「あらあら。せっかちな男性は嫌われますわよ?」

 

「貴様の態度が『どこかおかしい』、『前と違う気がする』。そう女王陛下に思わせてしまうには充分な時間だったと言っているのだ。」

 

「…………」

 

エレノアは初めて、少し笑顔が崩れた。

 

「お前はいつのまにか変わってしまったと言われていた。お前は『本当のエレノア=シャーレット』なのか?」

 

エレノアは再び笑顔を浮かべた。

だが、その笑顔はさっきまでと違って狂気に溢れていた。

そして、なぜか二重に聞こえる声で答える。

 

「さあどうでしょうね?ですが、私は『私』。『私』は私です。」

 

「ん……あいつ変。アルベルト、あいつ斬っていい?」

 

「ダメだ。あいつは近づいてはいけない。」

 

リィエルがそう言うが、アルベルトは本気で止める。

 

「ん。わかった。突っ込む。りゃあああああ!」

 

「おい馬鹿!」

 

リィエルは突っ込み、エレノアを斬ろうとした。

だが、エレノアはスカートを捲り、足のホルスターから「黒色の奇妙な形の銃」と「紫のボトル」を取り出した。

 

「いけませんわよ?相手の戦力が分からないのに突っ込んできちゃ。」

 

『コブラ』

 

銃にボトルを差し込みながら言う。

 

「沸血」

 

『ミストマッチ』

 

『コッ・コブラ…コブラ…ファイアー』

 

路地裏一帯を煙が覆い、目線を遮る。

そして煙が晴れた時、そこに居たのモノは、エレノアの姿をしていなかった。

全身を血の色をした鎧に身を包み、音の如く目の部分にコブラを模したアイレンズのある、如何にも悪役と言った感じの姿をしていた。

 

「な……なんだこいつは……!」

 

「ん!よくわからないけどとりあえず切る!いやあぁぁぁぁぁ!」

 

「くっ……!援護する。」

 

「おやおや。かかってくるとは……。ならば、少しだけ相手にしてやろう。」

 

言っているあいだにリィエルの斬撃が腕に直撃した。

 

「ほう……。なかなかの硬さだ。だが、甘いな!」

 

腕を上にあげて剣をあげ、拳の一撃で粉砕する。

 

「……!!」

 

「馬鹿な………こんなにあっさりと!」

 

リィエルの剣が弾かれることはあっても砕ける所を見たことの無い2人は驚き、隙を作ってしまった

その隙を利用されてリィエルは蹴り飛ばされ、アルベルトを巻き込んで壁に激突する。

 

「おやおや他愛ない。でもまぁ、私も疲れたし、今日はこの辺でいいか。」

 

「ま、待て!」

 

「や〜だよ。アデュ〜」

 

エレノアは煙で逃げてしまった。

 

「…………なんだったんだ。あいつは。」

 

残されたアルベルトはリィエルを背負い、このことを報告するために戻っていった。

 

 




はい。初ライダーは「ブラッドスターク」です!
まだネビュラガスやプロジェクトビルドなんかは片鱗すら出てませんがま、多少はね?

これで漸く第2巻の内容が終了です。
次から3巻に入るので、お楽しみに。

感想意見など、気軽にコメントしてってください。全部返します。
では、次の投稿まで、チャ〜オ〜


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第11話 迫真遠征学修部(部活とは言っていない)キラキラと化した先生

はいどうも。よこちょです。
今回は繋ぎの話なので戦闘など一切ありませぬ。ご了承ください。
では、淫夢なタイトルの第11話、どうぞ!

P.S.ユーザー情報に追記をし、活動報告にアンケートを追加ました。興味のある人はどうぞ。
アンケート内容は「出してほしいキャラクター」と「ヒロイン候補」です。
基本的にFate、仮面ライダー、ロクアカから募集します。


祝賀会が終わってから数日。

俺らは日を追う事に痩せていく先生とともに、普通の学園生活をエンジョイしていた。

 

「私た〜ちはここにいます〜っと。」

 

別段ここフェジテにゾンビなんざいる訳では無いが、学園生活ということで口ずさむ。

 

「ふぁ〜あ。眠い……」

 

俺は現在、システィとルミアの住むフィーベル邸の前にいる。

理由は不明だが、ルミアが天の知恵研究会に狙われているということがわかったため、一応の護衛である。

最初はグレンがやっていたのだが、万が一ということもあると考え、俺も加えてもらった。

 

欠伸を噛み締めつつしばらく待つと、2人が現れた。

 

「よう。おはようさん。」

 

「アラン、おはよう」

 

「おはよう、アラン君」

 

「んじゃ、行きますかね」

 

ちなみにグレンはこの道を真っ直ぐ行ったところで待っている。

一緒に来ればいいのにと言ったことがあったのだが、「いや、先生が行くのはダメだろ」と一蹴された。

 

そして真っ直ぐ行ってグレンと合流して4人で学園へと行っていると、道の真ん中にポツンと1人の少女が立っていた。

 

(ん…?あれはリィエルか?)

 

なんでこんなところに、と思う暇もなく大剣を錬金し、飛びかかってくる。

普通なら慌てるが、別に慌てる必要は無い。

なぜなら……

 

(まあ、こうなるよね。)

 

俺らを思いっきり無視して、グレンに切りかかるからだ。

 

「うおっあっぶねえ!てめえいきなり何しやがる!」

 

「ん。グレン。あいたかった。」

 

リィエル=レイフォード。

『戦車』の異名を持つグレンの元同僚だ。

まあ、何が来ても気合いと腕力、そして「フィジカル・ブースト」でぶった斬るというとんでもない奴だが。

だが、なぜこいつはアルザーノ学園の制服を着てるんだ?

 

 

 

 

 

「なるほど。護衛ねえ……。人選ミスじゃねえか?」

 

「やっぱそう思うよなぁ………」

 

話を聞けば、天の知恵研究会を危惧した結果こうなったという。しかし、本人が全く任務を理解してない上、グレンを守りたいとかほざいてるからどう考えても人選ミスとしか思えないのが現状である。

 

ちなみに横ではルミアとシスティがリィエルと交友を深めている。

仲良きことは睦まじきかな。

 

「ほら、さっさと行くぞ。遅刻する。」

 

「やべっ。また減給くらったら今度こそ俺が学校に給料払うハメになる……お前ら急げ!」

 

「どんだけやらかしてんだこのアホ教師…………」

 

────────────────────────

 

時は移ってその日の昼。

俺はシスティ、ルミア、リィエル、グレンと共にご飯を食べることになった。

まあその前にリィエルがグレン絡みで爆弾発言したり、大剣ぶん投げて的壊したりと散々やらかしたせいで皆リィエルを怖がっているのだが。

 

「むぐむぐ………。これ美味しい。」

 

なお当の本人は苺タルトを頬張ってご満悦である。

 

「もう……そればっかり食べてると体壊すわよ?」

 

「ん。大丈夫。美味しいから。」

 

「いや、そうじゃないのよ………」

 

(しかし……ちょっと妙だな。)

 

そこそこ昔からリィエル知り合いである俺だが、実際のところ全くこいつのことを知らない。

俺が知り合ったときは既に軍にいたしな。

 

(だが……いくらなんでも幼すぎる。)

 

そう。幼いのだ。

まるで産まれて5,6年くらいしかたってないみたいに言動や仕草が幼い。

 

(………まあ、俺が気にすることではないか。)

 

そう思い直し、自分のご飯を食べる。

 

「………ん?」

 

ふと、リィエルがじっと俺の皿を見てることに気づいた。

その皿には学食特製の「石窯ピザ」が乗っている。

 

「どうした?」

 

「………それ、なに?」

 

どうやら興味があるらしい。

 

「食ってみるか?」

 

「うん。食べる。」

 

「ほれ。」

 

皿を渡す。

すると、なんとリィエルは一気に全部パクっと食べてしまった。

 

「おいこらお前!なに全部食ってんだ!」

 

「むぐむぐ………これも美味しい。」

 

「はぁ………まあいっか。」

 

しょうがない。今日はよしとしよう。

いちいちカッカしてたら胃に大穴が開く。

 

────────────────────────

 

それからまた数日。

あれからもリィエルがハー……ハードウェア先生の残る少ない前髪を意図せずぶった斬るという事件が発生した以外は平和な学園生活が送れていた。

そんな中、「遠征学修」という行事についての説明があった。

まあ、遠征とは名ばかりの遠足旅行のようなものだが。

行き先は「白金魔道研究所」というサイネリア島にある施設だ。

ここは霊脈の影響で比較的暖かく、この時期でも海水浴が可能なのである。

 

「そう。つまり、俺らの『仕事』があるってわけだ。」

 

そう言うのはカッシュ。

そして周りの男子も無言で頷く。

ここにいるのは全員男子。

あとは………分かるな?

 

「作成は現地で考えよう。各自、用意を進めておいてくれ。」

 

「「「「了解」」」」

 

そして今ここに、野郎(ほぼ)全員の共同戦線がはられることになった。

 

────────────────────────

 

時は過ぎ、遠征学修当日。

まだ朝の早い時間に各々が鞄を持って学院の中庭に集合した。

 

「揃ったか?出発するぞ〜」

 

グレンの合図で全員が馬車に乗り、フェジテをあとにする。

まず向かうのは港町シーホーク。

ちなみにここに来るまで1日以上馬車に揺られている。

ここから船に乗り換え、最終目的地のサイネリア島へと出発する。

だが、船が来るまで時間があるので、各々自由時間となった。

ちなみに俺はトイレを済ませに店に入り、ついでに飲み物を買っている。

 

「ふう。さて、そろそろルミア達と合流せねばな」

 

みんなのいる広場へ向かおうとすると、グレンが軽薄そうな青年を引っ張り、裏路地へ入っていくのが見えた。

 

(なにやってんだ?)

 

気になって覗いてみると、軽薄そうな青年がハットなどの変装道具を脱ぎ、俺の見覚えのある人の姿に変わった。

 

「あ、アルベルトさん!?」

 

「ん?お前はアランか。ちょうどいい。お前にも話そうと思っていたところだ。」

 

「は、はあ。」

 

俺個人としてはなんであんなに変装がうまいのに役者をしないのとかが気になったが、とりあえず話を聞く。

 

話を聞けば、リィエルはいわば囮の役割で学院に来ていて、本当の護衛はアルベルトさんであると言っていた。

そして去り際に、「リィエルに気をつけろ」と言っていた。

 

「リィエルに……?」

 

俺は訳が分からなかったが船が出航すると言うので、モヤモヤしながら船へ乗った。

 

────────────────────────

 

船に揺られて時間は経ち、俺らは遂にサイネリア島へと到着した。

 

「うーむ。流石海。とてもキラキラしている。」

 

だが、我々の近くには、別の意味でキラキラしてる物いや者があった。

 

「オロロロロロロロロロロ」

 

「ホント台無しだわこのアホ教師。」

 

そう。グレンである。

どうやらグレンは船に弱いらしく、着いた瞬間盛大にモザイク必須なキラキラを放出したのだ。

お陰で折角の景色が台無しだ。

「人間は陸の生き物だから海なんぞに行くのがおかしい」と本人は言っていたが、どう考えてもコイツが悪い。

 

「ほら、さっさと行くぞ。一応引率だろうが。」

 

「無理……おぶってってくれ………」

 

「先生なのにそれでいいのか…………」

 

仕方なしにおぶり、俺らが泊まるホテルへと移動を開始した。




結構短めでしたね。
次は早く出せると思います。
感想などなど、お待ちしております!
では、次の投稿まで!


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第12話 男の覚悟

ドーモ。読者=サン。よこちょです。
筆が乗って連日投稿!
ちなみに今回はオリジナル回です。しかもネタマシマシ。
内容は読んでのお楽しみ。
では、第12話どうぞ!



………あ、活動報告のアンケート、お待ちしてます(ステマ)



サイネリア島へ遠征学修へ来ていた俺たち。

まあ半分遊びなので、本日は当然のごとく自由時間である。

生徒達は1日、男女混合でビーチバレーで遊んだり、全力で鬼ごっこをしたりと、全力で体を使って遊んだ。

なぜならば…………

 

「「「「そう。我らの目的の為に!」」」」

 

男子全員が一部屋に集まり、会議を開いている。

この集まりは「如何にして女子風呂を覗くか」という男子全員のスケベ心を結集した集まりである。

ちなみに昼間全力で遊んだ理由のひとつに、「汗をかかせて風呂に入らせたくする」というのがある。

 

「くそっ……何故僕まで……!」

 

そう言うのはギイブル。

この男、覗きなどには全く興味が無いのだがカッシュに散々煽られてここにいる。

相変わらず乗せられやすい男である。

 

「ではまずルートの確認だ。」

 

宿泊しているホテルの見取り図を囲み、確認する。

 

「このホテルは風呂は大浴場、それに隣接した露天風呂がある。大浴場はガラス張りだ。」

 

「裏の林の中を迂回しつつ静かに通り、ここの大きな木に登る。あとは………わかるな?」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

「注意点は特にないが、誰かがもし脱落しても、止まらずに走ることだ。必ず、1人でもいいから楽園を見よう!」

 

「「「「オォーーー!」」」」

 

「では各自、女子の入浴開始時間の30分後まで待機だ。」

 

「「「了解!」」」

 

そして今夜、男子生徒(バカ)達は、動き始める。

 

ちなみにこの時誰も気づいていなかったが、ドアが少しだけ空いていて、そこからグレンが覗き見をしていたことを付け加えておこう。

 

────────────────────────

 

「────という事があった。」

 

所変わって女子部屋。

この部屋には、女子が全員集められていた。

そこで話をしているのはグレン。

さっき偶然聞いたこの話をなんと女子生徒に話していたのだ。

ちなみにその時の女子の反応は、

「最低」や「キモイ」や「ゴミ以下」、「野蛮」などと散々だった。

 

「さて、諸君、このまま俺が担任として制裁してもいいが………どうしたい?」

 

ニヤリと笑いながらグレンの提案した言葉に女子は互いに顔を見合わせ、ニッコリと笑いあった。

 

余談だが、この時の全員の目にはハイライトが点っていなかったという。

 

────────────────────────

 

そして、運命の30分が過ぎた。

 

「さて、野郎ども──Are you Ready?」

 

「OK!」

 

「では行こう!皆の者、出陣じゃァァァァァァァ!」

 

「「「「「ウオォォォォォォォォ!」」」」」

 

男子全員、部屋を出発し、裏の林へ一直線に走った。

 

────────────────────────

 

「さてお前ら、行くか。」

 

「ええ。」

 

「目に物見せてやりますわ!」

 

「ん。よくわかんないけど、とりあえず頑張ってみる。」

 

「移動するぞ。」

 

「「「了解」」」

 

グレン率いる女子の方も移動を開始した。

 

────────────────────────

 

男子が林へ入って暫くした時、アランが皆を止めた。

 

「待て………なんだこの雰囲気……。っまさか!皆回避ィィィ!」

 

そう言った瞬間に、足元に雷閃が刺さり穴をつくる。

ゾッとした男子が飛んできた方向を見ると、

 

「「「……………………………」」」

 

片手をあげ、無言でこっちを見ながらゆっくりと近寄ってくる女子の姿と、

 

「ギャーッハッハ!やっぱりここを通ったなァァァ!」

 

その後ろで高笑いをしているグレンがいた。

 

「なっ……!何故ここを通ることを!」

 

「お前ら、作戦を立てるならきっちりドアを閉めるんだな!そとに丸聞こえだぜ?」

 

「だ、だとしても!なんでピンポイントでここを通るって!」

 

「甘いな。アイスに蜂蜜と練乳と砂糖を大量にぶっ込んだレベルで甘い。」

 

「糖尿病で死ぬぞ?それ食ったら。」

 

アランが冷静に突っ込む。

 

「まあ、簡単な話だ。俺がお前らなら絶対ここを通るからだァ!」

 

「「「ですよネー!」」」

 

男子全員+グレンの心が1つになった瞬間であった。

 

「まあ、悪いことは言わん。素直に降参するって言うなら………気絶で済ませてやるよ。」

 

「ふっ……先生に女子よ。お前らは……覚悟してきてる人なんだよな?」

 

アランが立ち上がり言う。

その姿には妙な凄みがあった。

後ろに文字が見えそうなレベルで。

 

「……?どういう意味よ。」

 

システィが聞き返す。

 

「人を気絶させようとして来ているなら、逆に自分が気絶させられる覚悟が出来ているんだよな……って意味だよ。」

 

「は、はあ。」

 

「覚悟とは!暗闇の荒野に!!進むべき道を切り開くことだ!そして道というものは自分で切り拓くものだ。今からそれを俺らが証明してやる。」

 

「「「あ、アラン……!」」」

 

「行くぞお前ら!ここが正念場だ。気合い入れろよ!」

 

「「「「応!!」」」」

 

「な、なんなのよアンタ達!もういいわ!皆、すぐ片付けましょう!」

 

「「「ええ!」」」

 

男子は自らを鼓舞して、女子は気圧されながらも腕を構えた。

そして今、人っ子一人いない林の中で、激しいバトルが始まった。

 

────────────────────────

 

「【雷精の紫電よ】──!」

 

「ギャァァァァ!」

 

「怯むな!進めェェェ!」

 

林は戦場と化していた。

 

「オラオラオラオラオラオラオラァ!」

 

「【雷精の紫電よ】─!ってなんでショックボルトくらって平気なんですの!」

 

ある者は魔術を己の拳のみで受けつつ進み、

 

「グハァ……ッ!」

 

「お、おい!大丈夫か!」

 

「俺のことはいい!先に進めェェェ!」

 

「くっ……すまない!」

 

「お前らが行く先に俺はいるからよ………。だから……止まるんじゃねえぞ………」

 

ある者は仲間の屍を超えて進み、

 

「【大いなる風よ】──!」

 

「「「うぎゃー!」」」

 

ある者達は全滅し、それでもなお、先に進もうとしていた。

 

そして、そうやって攻防を続ける中、ようやく一人、楽園の目前までたどり着けた人がいた。

 

「フハハ!やはり、運はこのアラン=ジョーゼフ=エミヤに味方してくれている!」

 

アランであった。

 

「やはり覚悟ある者が生き残ったか……。ならば、俺は皆の屍を超え!更なる楽園へと到達する!」

 

「エロスの神よ!俺を導いてください!行くぜェェェ!」

 

自らの力を振り絞り、女子風呂の中へと柵を超えて乗り込む。

 

「おお……!この湯気の先に!」

 

もうもうと立ち込める蒸気を手で払いながら、周りを見渡す。

だが、誰もいない。

 

「可笑しい……。こういう時は絶対誰かいるって約束なんだが………(メタ)」

 

そして、ふと気がついた。否、気づいてしまった。

 

「さっきの戦闘………いない女子っていたか?」

 

そう。実は今回の件、全女子が攻撃に回っているため、そもそも誰も風呂に入っていないのだ。

 

「…………………」

 

アランは、1人空を見上げ、こう言った。

 

「これが…………これが人間のやる事かよォォォォォォォォォ!」

 

そして、足元に仕掛けられていた『スタン・フロア』によって吹き飛ばされた。

 

「不幸だァァァ!」

 

────────────────────────

 

「さて、もういいだろ?お前ら。」

 

グレンの声で、攻撃を辞める女子生徒。

周りには、男子生徒がまるで死体のように転がっていた。

だが、非殺傷性の魔術しか使っていないので気絶しているだけだ。

 

「これでもう懲りただろうしな。さ、お前らさっさと風呂入ってこい!また汗かいただろうしな。野郎共は俺が回収しとくから。」

 

「まあ、お仕置きはこれくらいにしときましょうか。」

 

「そうですわね。」

 

「これ以上は可愛そうだしね。」

 

そう言って各々林から出て、風呂に向かう。

 

「さーて。俺は回収作業をしますか。」

 

グレンは30分程かけ、林にいた生徒を全員回収した。

 

「あるえ?アランがいねえ。あいつどこいった?」

 

だが、アランの姿だけ見えず、探し回るハメとなった。

 

────────────────────────

 

教育的指導─!

そう言って目の前の生徒にトライアスロンで鍛えられた腕が刺さって倒れ──ってハッ!

 

「……ここは林?ああ。気絶してたのか。」

 

危ない危ない。意識がちょっと別世界のバカに移ってたわ。

 

「目が覚めましたか?」

 

「お前は……エレノア!」

 

後ろを向くと、そこには天の知恵研究会所属の魔術師、エレノア=シャーレットがいた。

 

「どういう要件かは知らんがちょうどいい。ここで死んでもらうか。」

 

干将莫耶を投影し、首筋にあてがう。

だが、エレノアはこちらの目をじっと見つめながら

 

「今の私は敵ではありません。」

 

と言う。

 

「……どういうことだ。」

 

「そのままの意味です。私には外道魔術師としてのエレノアと、本来の性格のエレノアが存在するのです。」

 

「……二重人格なのか?」

 

「そう捉えてくれて結構です。そして今の私は本来のエレノア。ですが時間がありません。あと僅かしかこの性格を保てないのです。」

 

「お前……乗っ取られているのか?」

 

「………そうです。何者かが私を乗っ取り、身体を勝手に使っているのです。」

 

「目的……が分かってたら言ってるか。で、わざわざ俺にそれを明かした要件はなんだ?」

 

「………何も言わず、これを受け取ってくだだい。」

 

そう言って手に握らせてきたのは、数本のボトルだった。

 

「なんだこれ?」

 

「……私にもわかりません。ですが、外道魔術師エレノアにとって、とても重要なものだということは確かです。だから、これを持っていてください。」

 

「………承知した。これは俺が預かる。」

 

「ありがとうございます!」

 

エレノアは笑顔でそう言った。

不覚にもその笑顔を「可愛い」と思ってしまった。

が、頭を振って追い出し、話を聞く。

 

「もう時間がないので、ここでお別れです。詳しく話せなくてごめんなさい。」

 

「いや、これで助けになるんならいいさ。俺はこのまま帰って大丈夫か?」

 

「ええ。大丈夫です。あ、最後に1つだけ」

 

「なんでしょう?」

 

「『バークス・ブラウモン』に気をつけてください。」

 

「……わかった。それじゃあな。」

 

「ええ。お気をつけて。」

 

エレノアと別れ、ホテルへ向かう。

 

「バークス・ブラウモンか。」

 

バークスは俺らがこの遠征学修で向かう目的地「白金魔道研究所」の所長だ。

なにを気をつければいいかはわからないが、用心しておこう。

そう心に決めたとき、目の前からグレンが走ってきた。

 

「いた!お前どこいたんだよ!随分探したんだからな!」

 

「悪ぃな。ちょっと気絶してた。」

 

「ったく。ほら、帰るぞ。」

 

「おう。」

 

俺はグレンと連れ立ち、ホテルへと足を向けた。




はい。風呂の覗き回でしたね。(覗けてませんが)
そしてエレノアが誰かに乗っ取られている!?
イッタイダレナンダロウナー(棒)
感想、意見、アンケート、お待ちしてます!
では、次回の投稿まで!


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第13話 壊れた幻想

どうも。よこちょです。
気がついたらUA7000、お気に入り50件を超えていました!
さらに他の投稿者様のオリキャラも使わせて頂けることに!
読んでくださってる方々、オリキャラ使用の許可を下さった魔王ゼロ様、artisan様!本当にありがとうございました!
こんな作品ですが、これからもよろしくお願いします!

感謝の意と共に第13話、どうぞ!


覗き事件(誰も見れなかった)があった次の日。

俺たちは予定通り、白金魔道研究所へと来ていた。

ちなみに女子とは既に和解済みである。

だが、一つ問題が発生した。

なんと、リィエルがシスティとルミアを拒絶したのだ。

当然周りの俺らは困惑した。

昨日まであんなにずっと一緒にいたのに急に態度を変えたから当たり前である。

どうやら原因はグレンらしいが、当の本人が珍しく何も言い返さずしおらしくしているので、何も言えないというのもあって、俺らは少しギクシャクした状態で白金魔道研究所へと足を踏み入れた。

 

────────────────────────

 

「やあやあ皆さんどうも。私はバークス・ブラウモン。ここの所長をやっとります。」

 

(……こいつがエレノアの言ってたバークスか。)

 

一見すると普通の人柄の良さそうなおじさんだ。

だが、「気をつけろ」と言われた以上、注意深く観察せねばなるまい。

 

その後、親切にこの研究所の中を案内してくれた上に質問まで受け付けてくれた。

やっぱり普通のおじさんだ。

 

(…………ホントに気をつけるべきなのだろうか。)

 

そう思って気が緩んだ瞬間だった。

首筋がチリッと痛んだ気がしたのだ。

 

(これは……獲物を見る目か?)

 

こっそりバークスの顔を窺うと、バークスはルミアを見ていた。

 

(ルミアが狙いなのか?しかしまたなんで)

 

ルミアはたしかに異能力者ではあるが、稀有な能力ではない。探せば他にもいるはずだ。

 

(一応見張っておくか。あと、グレンにも話しとこう。)

 

そう思っていると、施設内を一周し終わった。

バークスは用があるから奥へ行くと言ってこの場を離れたので、グレンにこっそりと昨日のこととバークスのことを話しておく。

 

「分かった。お前も見張っておいてくれ。」

 

グレンからの了解も得たので、俺も行動することにする。

 

「さて……仕事開始!」

 

────────────────────────

 

「………って言ってもまあ、いつも通りか。」

 

思えば、基本的にルミアとシスティと一緒に行動していたので、特にいつもと変わりがなかった。

 

「どうかしたの?」

 

ちなみに現在俺はルミアの部屋にいる。

他の男子が聞いたら俺を全力で殺しに来そうだが、今回ばかりは勘弁してもらいたい。

なんせバークスが天の知恵研究会と絡んでる可能性が否定出来ないからだ。

 

(つってもまあ、情報源がエレノアってのも不思議な話だがな。)

 

そう思いながら、なんでもないと返事をしておく。

そしてふと思い出し、エレノアから預かったボトルを制服の内ポケットから出す。

取り出したボトルには何かしらの鉱石の柄が掘られており、振るとシャカシャカという心地いい音がした。

ふむ。振ると音が鳴るから『フルボトル』とでも名付けようか。

 

「ねえ、それなあに?」

 

「ん?これか。『フルボトル』ってやつだ。どんなやつかは知らん。」

 

「そ、そうなんだ………。」

 

「んー。でもこれ振ると力が湧く気がするんだよなぁ〜。」

 

「へぇ〜。どんなのがあるの?」

 

「そういやまだ見てなかったな……。ほれ、こんだけだ。」

 

出してみると、鉱石っぽいやつ、兎の柄、蝙蝠の柄、機械っぽい柄のやつが3種類あった。

 

「ほれ。」

 

適当に1本ルミアに渡す。柄は兎のやつだった。

 

「へぇ〜。」

 

しばらく回したり振ったりしていると、突然ドアが勢いよく開けられた。

 

「ッ!ルミア!下がれ!」

 

開いたドアの先にいたのは、大剣を下げたリィエルだった。

しかし、どうしても聞かなければならないことがある。

 

「お前……その剣はなんだ?」

 

「ん。錬金した剣。」

 

「そうじゃねえよ阿呆。なんで剣が血塗れなんだって話だよ。」

 

そう。リィエルの持つ剣は血塗れなのだ。

まるで、たった今誰かを斬ってきたみたいに。

 

「……私がグレンを殺した。兄さんのために。」

 

「は?兄さん?お前何言ってんだ。」

 

自己紹介の時に、グレンが「身寄りがない」と言っていた。

だから、兄などいるはずがないのだ。

 

「……どいて。ルミアを連れて行けない。」

 

「断る。どうせあのクソッタレ組織がなんかやってんだろ。見過ごせん。」

 

「………邪魔!いやぁぁぁ!」

 

リィエルが全身の力を使って斬りこんでくる。

 

「ちっ。聞く耳を持たんかこのアホ!【投影】」

 

愛刀、干将莫耶を投影しクロスさせてガードする。

大剣の重量とリィエルの馬鹿力が干将莫耶とぶつかり、ギリギリと嫌な音を立てる。

そして、

 

パキィン!

 

「がはっ!」

 

干将莫耶が真ん中から折れ、俺に傷をつける。

だが、まだ動ける。

 

「【投影】【投影】【投影】!」

 

干将莫耶を3対取り出し、そのうちの2対を投げつける。

 

「りゃぁぁぁ!」

だが、いとも簡単に弾かれて壁に刺さる。

よし、狙い通りだ。

 

「今だ!」

 

投げつけた2対を爆破させる。

これは『壊れた幻想』(ブロークンファンタズム)といい、まあ簡単に言えば宝具爆弾だ。

 

「!」

 

急に起きた爆発に押され、リィエルがこちらへ飛んでくる。

そしてそのまま剣で貫こうとした瞬間、ふと思ってしまった。

 

(……今ここでリィエルを斬ってしまったら、俺はどう思われるだろうか)

 

と。

 

リィエルがシスティやルミア、他のクラスメイト達と過ごしていた時間を壊してしまうのではないか。

その感情は、恐れだった。

 

その一瞬は、リィエルに反撃の機会を与えるには充分な時間だった。

 

リィエルは爆風の勢いをそのままに俺の腹を剣で貫き、剣を手放した。

 

「……さよなら。」

 

俺が最後に聞いた言葉は、リィエルの決別の言葉だった。

 

(………ハッ。『壊れた幻想』、か。全く。皮肉なもんだ。)

 

俺は自分の日常が壊れるのを恐れ、躊躇ってしまった。

その結果がこれだ。

 

(………ルミアも自分も守れずか。情けない話だ。)

 

薄れゆく意識の中、自分の投影した干将莫耶が地面に落ち、魔力へと還る音がえらくハッキリと聞こえた気がした。




グレンに引き続き、アランまで深手を負ってしまった!
イッタイドウナルンダー
ちなみに次回の投稿がいつになるかは不明ですが、気長にお待ちください。
早くキャラを出したい……!
ではでは、次の投稿まで!チャ〜オ〜

………あ、まだまだ活動報告のアンケート募集中です!
気軽に入れれってください!
感想などくれたら心肺停止寸前まで喜びます。


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第14話 固有魔術 【構築・解析の盤面】

どうも。よこちょです。
前回UA7000突破したと言ったばかりなのに、もう8000超えていました。
本当にありがとうございます!
さて、今回で原作4巻までの内容が終了します。
今回は少々オリジナル要素、ご都合主義があ少々強めかと思われるので、苦手な方はにーげるんだよーしてください。
それでもおっけーという人は第14話、どうぞ!


朽ちた槍、折れた剣、崩れた城、壊れた鎧。倒れた屍、宙に浮く不完全な杯。

様々なものが壊れ、朽ち果て、無へと還っている。

そんななかに立つ男が1人いた。

男は探した。

壊れないものを。

男は泣いた。

自分の弱さに。

壊れぬものは、未だ遠く。そして近く。

 

────────────────────────

 

「…………ハッ!」

 

目が覚め、ガバッと起き上がる。

起き上がると、腹の部分が熱を持ったように痛かったが、傷は完全に塞がっていた。

周囲を見渡すと、死んだはずのグレン、アルベルトさん、そしてベットに倒れているシスティの姿が見えた。

 

「………俺は、生き残ったんですね。」

 

「ああ。らしいな。ついでに俺も。」

 

「二人ともしぶといものだ。グレンだけでも死んでいれば少しは楽だったんだがな。」

 

「そんなこと言いながら【リヴァイヴァー】してくれるなんてアルくんったらツンデr…嘘です冗談です。お願いだからその指下ろして。」

 

「……フン。」

 

相変わらず2人は漫才をやってるような応酬をしている。

見ていてとても面白い。

だが、今はそんなことを言ってる場合じゃない。

 

「……ルミアは。」

 

「リィエルが連れていった。」

 

「………あの馬鹿が。」

 

さらに聞くと、やはりバークスは黒。

恐らく白金魔道研究所の地下施設でよからぬ事をしているのだろうとのことだ。

そして、アルベルトさんの口からとんでもない言葉が飛び出してきた。

 

『Project;Revive Life』。

死んだ人間を蘇らせるという魔法のようなことを可能にする術式。

だが、この術式は実現不可能とまで呼ばれていたらしい。

だが、バークスはルミアの規格外な感応往復を利用してそれを成し遂げようとしているらしい。

 

そして、リィエルはその術式の唯一の成功例だと言うこと。

詳しいことは省くが、「兄の記憶」を利用されてリィエルは暴走。

「兄のためだ」と、天の知恵研究会に手を貸してしまっている状態らしい。

 

「んじゃ、俺らは行くから。」

 

「お前は大人しく待っていろ。」

 

「そんな!俺も行く!」

 

「ダメだ。」

 

「なぜ!」

 

「危険すぎるんだ。それに、今のお前じゃロクに動けんだろう。かえって足でまといだ。」

 

「それは……!」

 

残念ながら、図星だった。

今の俺じゃ走るのが精一杯。

とてもじゃないが、戦えないだろう。

 

「いいから大人しく待っていろ。いいな?」

 

そういうとそのまま返事も聞かず、行ってしまった。

 

「………クソっ。俺は、何も出来ないのか……!」

 

「………アラン。」

 

いつの間にか起きていたのだろう。システィが声を掛けてくる。

 

「……私ね。まだ魔力残ってるの。」

 

そう言って俺を回復する。

その途端に咳き込み、顔が青白くなった。

 

「おいお前それ、マナ欠乏症……!」

 

「いいの!いいから、その変わりに、ルミアをお願い。」

 

「……………」

 

「私は………まだなにも出来ないの。でも、アランならできる。そう信じてるの。だから……」

 

「………ああ。分かった。」

 

そう言って自分の血で濡れた学園のローブを着直し、壊れたドアを開けて廊下に出る。

 

「………さて、行きますかね!」

 

────────────────────────

 

「………って出てきたはいいものの、あの二人どこだ?」

 

カッコつけて出てきたはいいのだが、場所が不明だ。

アルベルトさんの口ぶりから察するに、白金魔道研究所の地下へ行けばいいのだが、正面からじゃ無理だろうしなぁ。

 

だがふと、研究所の作りを思い出す。

あそこはまるで「水の神殿」とも言える程の水を使っていた。

なら、必ず取水口のような場所があるはずだ。

 

「この島で適した場所といえば………あそこか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ビンゴ!」

 

研究所近くにある湖に行くと、不自然な水の流れが出来ていた。

前散歩したときにみたときは無かったし、十中八九ここだろう。

俺は【エア・スクリーン】を使って水中へ潜り、入口を見つけてそこから入った。

────────────────────────

 

「うわー。こりゃひでえ有様だな。」

 

入った途端大量のモンスターが目に入った。

入ったことは入ったのだが、全員無残な姿で死んでいる。

恐らく、グレンとアルベルトさんが殺ったんだろう。

 

そのまま進んでも、見えるものは死体死体死体。

なかには宝石獣なんていう豪華なものまであった。

(ちなみにもったいないから宝石は剥ぎ取った。)

 

道なりに進むと、前の部屋からバチバチという魔術の音が聞こえた。

 

こっそり中を伺うと、件のバークスとアルベルトさんが闘っていた。

 

バークスは全身がおかしなくらいに盛り上がり、火を出したり雷を出したりして、アルベルトさんは淡々とナイフを投げて闘っていた。

 

そしてこちらに気付いたアルベルトさんが、アイコンタクトで「気付かれずに先へいけ」と言ったので、隠蔽のマント羽織り、魔力放出で空を飛んで隣の部屋へ移動する。

 

その部屋からは、銃撃音や剣を弾く音が聞こえていた。

 

────────────────────────

 

「いやぁぁぁ!」

 

リィエルが跳躍し、斬り掛かる。

それを魔力を纏わせた拳で受け流し、逃げるグレン。

戦況は拮抗してるように見え、絶望的なまでにグレンが不利であった。

 

その横ではリィエルの兄を名乗る青毛の男が、『Project;Revie Life』を完成させようと、ルミアを核とした魔法陣を弄っていた。

 

「グッ……!」

 

ついにグレンが足に1発貰ってしまい、動けなくなってしまう。

 

そんなグレンにリィエルの大剣が振り下ろされて、首がはね飛ばされ──ることはなかった。

 

「ったく。俺にあんだけ大口叩いといてそれか?先生。」

 

アランが干将莫耶を投影し、前と同じようにクロスさせてガードしたからだ。

 

「……悪ぃ。助かったわ。」

 

「アラン──。生きてたの?」

 

「簡単に死んでたまるか阿呆。まだ俺は童貞なんでね!死ぬわけにはいかん!」

 

「せっかくカッコよかったのに台無しだなお前!?」

 

「どうてい……?それが何かわかんないけど……それごと斬る!」

 

「お前童貞斬るとかおっかねえな!男泣くぞ!?」

 

軽口を叩きながらも、大剣を両手の剣で捌くアラン。

勿論、剣には綻びひとつ無い。

 

「……!さっきは壊れたのに!どうして!」

 

「当たり前だ。強度を上げたんだからな。」

 

アランはさっきの反省を踏まえて大量の魔力を注ぎ込み、より強く、硬く投影したのだ。

 

「それに、俺はもう迷わない。」

 

「さっきは躊躇っちまったが、今回は躊躇わん。でなきゃ、話にならん。」

 

そう言って今度はリィエルの大剣を白刃取りの要領で素手で受け止める。

 

「!?なんで!」

 

「こいつのおかげだよ。」

 

そう言って腰に付けているフルボトルを指す。

 

「この『アダマンタイトフルボトル』を付けとくとめっちゃ防御力上がるんだよ。だからこんなこともできるのさ!」

 

そう言ってそのまま剣を素手で弾き飛ばす。

 

「オラァ!」

 

空いたボディーに拳を叩き込み、吹き飛ばして壁にぶつける。

 

「おい先生。ちょっと任せたぜ。」

 

「ちょ、なんでここd」

 

「調べたいことがあんだよ。終わったら加勢する。頼んだぞ?」

 

「………ああ。」

 

そしてその場をグレンに任せ、青毛の男の方へと歩を進めた。

 

────────────────────────

 

「ようクソ野郎。会えて嬉しいぜ?」

 

俺は青毛の男(名前は知らん)の正面に立った。

後ろからはグレンとルミアがかち合っている音が聞こえる。

 

「な、なんなんだお前!リィエルの剣を素手で受け止めるなんて化け物か!?」

 

「それで結構。化け物だろうがなんだろうが、俺は俺なんでね。やりたいことをさせて貰おう。」

 

そう言って懐から巻物を取り出す。

それには特に絵柄も書いていないので、一見ただの巻物にしか見えないと思う。

 

「さて、初めて使うがやってみるか!【構築・解析の盤面】──!」

 

ここで説明しておこう。

俺の魔術特性は解析や改編に向いている。

だから俺は投影魔術が使えるわけだ。

 

んで、魔術特性の「解析」を応用したのがこの【構築・解析の盤面】だ。

 

これは純粋に術式解析するだけでなく、その理論、方法などを全て記すことが出来るのだ。

しかもその魔術を紙に写し取り、自分で使うことも改編することもできる。

 

ようは『自分を中心に一定距離に存在する全て術式、魔道具の作りをパクって自分で使えるようにする』っていう固有魔術だ。

 

「ふむ。問題なく起動しているな。」

 

なんせ初めて起動するので動くかすら不明だったのだ。動いてよかったぜ。

 

術式が起動し、ちゃんと『Project;Review Life』についてが記された巻物が完成した。

 

それを読んだ結果、今ルミアをあの魔法陣から出したらルミアが危険だということがわかった。

なら、こうするまでだ。

 

「【投影】─!」

 

投影した一振の短剣を方陣に突き刺す。

 

「【擬似展開・破戒すべき全ての符】!」

 

『破戒すべき全ての符』を使い、術式を初期化する。

 

これによって方陣が消滅し、ルミアは安全になった。

加勢しようとグレンの方を見ると、グレンがリィエルを抱きしめていた。

 

リィエルが抵抗せず、大人しくしているところを見ると、説得に成功したのだろう。

グレンは満身創痍ではあるが、無事ならばよかった。

 

「さて………あとはお前だけだな?青毛。」

 

「ひ、ひぃぃぃぃぃい!」

 

青毛は腰が抜け、地べたを這うようにして逃げようとする。

 

「阿呆。そう簡単に逃がすか。」

 

「ごがっ!」

 

だが、俺の投げた剣の鞘が後頭部に命中し、気絶した。

 

「安心しろ。殺しはせん。だが、裁きは受けてもらうがな。」

 

短剣を魔力に還し、巻物をしまったところでルミアを助けるため、ルミアの元へ行く。

 

ちなみに青毛はしっかり亀甲縛りをしてケツに「えくすかりばー(弱)」と掘った木刀を刺し、顔には「顔面偏差値-1145141919810」と書いた紙を貼り付け、股間に「なんと平らな山でしょう!」と書いた紙を貼っといた。

 

「大丈夫だったか?」

 

繋がれていた鎖からルミアを下ろしながら声をかける。

すると、緊張の糸が切れたのか、こちらに身を預けて泣き始めてしまった。

 

「………ごめんな。俺が不甲斐ないばっかりに怖い思いさせちゃって。」

 

俺が躊躇せずにリィエルを無力化できる強さを持っていれば。あるいは、リィエルを殺してでも止められていれば。

後悔が募る。

 

「いいの。怖いくらい。」

 

「……だが。」

 

「だって、また助けてくれるんでしょ?」

 

そう言った時のルミアの笑顔は、どんな花よりも美しく、どんなものよりも尊く思えた。

 

「………ああ。約束する。俺がお前を守ってみせるさ。」

 

そう言って、ルミアを抱き締める。

嫌がられるかもと思ったが、なぜかこうしたかったのだ。

 

こうして、この事件は幕を下ろした。

 

────────────────────────

 

今回の事件の後日談的なことを話そう。

まず、俺らの遠征学修は中止となった。

研修先のバークスが「失踪」してしまったからである。

 

そして、失踪事件の調査のため、という名目でサイネリア島からの避難勧告が出された。

だが、観光地なので必然的に人が多い。

そのため、船の順番待ちの時間が丸一日でき、クラスメイトはサイネリア島のビーチで遊んでいるところだ。

 

ん?俺か?

俺は………………

 

 

 

「……………なぜ、なぜ俺はあんな恥ずかしいことをォォォォ………………。」

 

はい。現在研究所内での発言がブーメランのごとく時間差でダメージを負わせたため、1人ビーチパラソルの下で反省会中です。

ていうか俺なんであんな恥ずかしいこと言っちゃったの!

馬鹿なの!アホなの!死ぬの!いや今死んでるよ!

 

1人謎にハイテンションで反省会をしていると、目の前に影ができた。

 

「…………ん?リィエルか。どうした?」

 

砂に半分埋まった頭を上げると、リィエルがいた。

後ろにはシスティとルミアも居る。

 

「ええと……………昨日はごめんなさい。」

 

「ああ。気にすんなって。」

 

あのあと、グレンからリィエルについての話をされた。

詳しいことは省くが、訳ありで記憶を利用されただけらしいからな。

別に怒ってない。

 

「まあ、ぶっ刺されたときはアホクソ痛かったがな。治ってるし気にすんなって。」

 

「………うん。ありがとう。」

 

「よかったね。リィエル。」

 

「うん。よかった。」

 

「ま、お前らの仲が戻ってよかったぜ。身体張った甲斐があったってもんよ。」

 

「本当にありがとう。アラン君!」

 

「お、おう。」

 

そんな顔を赤らめながら言わないでくれ……

こっちまで赤くなる。

 

「?アラン、顔赤い。熱?」

 

「さー泳いでこよっかなー!いやー気持ちよさそうだなー」

 

リィエルがなんか言ってるが、無視だ無視!

 

俺はなんとなく海へ行きたくなったので、海へ飛び込む。

決して顔が赤いのを隠すためだとか、そういうわけではないのだ。うん。

 

────────────────────────

 

島の某所。

1人の女─エレノアが歩いていた。

周囲には避難勧告のおかげで人っ子1人いなかった。

 

「…………やはり、バークス様では役者不足でしたねぇ。」

 

1人、誰に言うでもなくそう言う。

 

「しかし、元軍人のグレン=レーダス様だけでなく、あんなジョーカーまで居たとは………。つくづく、人間というものは面白いですねぇ。」

 

くつくつくつと、愉快そうに笑う。

その顔は、純粋なる喜びに溢れていた。

 

「最初にフルボトルがなくなった時には驚きましたが………。まあ、いい実験になりました。しばらくは預けておいてもいいでしょう。なにせ、『パンドラボックス』と残りのボトルはこちらにあるのですから。」

 

「さぁ…………。お次はどんなものを魅せてくれるのか。楽しみですわぁ。」

 

 

 




これにて「遠征学修」編が終了です。
次回からは「システィーナ結婚騒動編」………ではなく!
完全なるオリジナルの話になります!
結婚騒動の話はその後になります。
楽しみにしてた人がいたらごめんなさい。

舞台はアルザーノ学園から離れ、「受勲式編」となります。ちなみ伏線は一応貼ってましたw
お粗末なものなので分かりにくいかもしれませんが、よければ探してみてください!(ちなみに魔術競技祭の時です)

では、次の投稿まで!


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第15話 王都と実験

どうも。ジーニアスフォームみて興奮してたよこちょです。モノスゲーイ!
そういえば言い忘れてましたが、前回サラッとオリジナルのボトルを登場させてました。まあ、気づいた人は少ないでしょうが。
一応後書きに解説的なのを乗っけときますんで、よかったら読んでいってください。
あと、今回からお借りしたオリキャラが登場します!
設定は少し変更してますが、ご了承ください。
では、どうなる第15話、どうぞ!



サイネリア島での遠征学修を終えてから数日。

俺は家でちょっとした悩み事をしていた。

 

「う〜む。流れで取ってきたはいいんだが………どうすっかなぁ。これ。」

 

手に持っているのは研究所で写し取った『Project;Review Life』の術式の巻物だ。

折角持って帰ってきたのだから何かに使いたいのだが、いかんせん術式が難しすぎる。

俺の知識と技量では、精々超絶劣化版を一瞬創り出すのが限度だろう。

投影魔術と合わせてもできそうなものが思いつきそうもない。

 

「う〜む。どうしたもんかねぇ。」

 

と、悩んでいると家の呼び鈴が鳴った。

現在家には俺しかいないため、俺が出なければならない。

面倒くさく思いながらも玄関を開けると、郵便だった。

 

受け取ったには、少し厚めの封筒だった。

蝋で封がしてあり、高級そうな見た目をしている。

一体誰が好き好んでこんな見た目のを送り付けてきたのか………

 

「送り主は………。………………………はい?」

 

裏面にあった送り主の欄に書かれた名前は、

 

『アリシア7世』

 

現在の女王陛下の名前であった。

 

「なんじゃそりゃ………なんで俺なんぞのところに女王陛下から直々に手紙が?」

 

封を切り、中身を読む。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

アラン=ジョーゼフ=エミヤ様

 

魔術競技祭においての貴方の尽力は素晴らしいものでした。

よって、貴方に勲章を与えます。

以下の日程で受勲式を行いますので、以下の者を同伴して必ず来ること。

 

同伴者

 

グレン=レーダス

システィーナ=フィーベル

ルミア=ティンジェル

セリカ=アルフォネア

リィエル=レイフォード

 

P.S.実際に会って話したいことがあるので、必ず来るように

 

アリシア

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「………………と、とりあえず、グレンに連絡だな。」

 

そう言って震える手で通信の魔道具を取り出し、グレンにかけるのであった。

 

────────────────────────

 

「この封筒だろ?ったくめんどくせえなぁ。」

 

通信で実際に会った方が早いとなり、俺は封筒持参でアルフォネア教授の家へとお邪魔している。(グレンはアルフォネア教授と一緒に暮らしている。)

 

「へぇ。アリシアがわざわざ手紙をねぇ。よかったなグレンにアラン。気に入られてるぞ?」

 

というか俺アルフォネア教授と初対面なんですがね。

でも普通にいい人そうでよかったわ。

 

「だといいんですけどね。」

 

「んで?ざっくりまとめるとこのメンバーで王都にいきゃいいってだけだろ?これ平日なんだけど有給扱いになんのか?」

 

グレンがゴネてるが、正直俺にとっちゃどうでもいい。人生で初めて王都に行けるわけだし、ワクワクしないはずがない。

 

そして、色々話し合った結果、当日の朝に学院にある転移装置に集合ということになった。

ちなみにこの転移装置、1回あのクソ組織の野郎共にぶっ壊されたが、最近漸く直った。

 

「んじゃ、そういうことで。」

 

俺は帰り際にフィーベル邸へ寄ってシスティとルミア、そしてこの前から居候しているリィエルにこの事を話し、一緒に来ることに同意してもらった。

なお、その時のシスティとルミアの反応は面白かったと付け加えておこう。

 

────────────────────────

 

 

そして当日。

 

「おし、全員揃ったな?行くぞ。」

 

アルフォネア教授の先導で、高鳴る胸と共に俺らは王都へと転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いたぞ。ここが王都だ。」

 

「おお…………」

 

「相変わらず綺麗なとこだな。」

 

「凄い………!」

 

「綺麗………!」

 

「………zzz」

 

「寝んなアホ。」

 

王都に着くなり、俺を含めた全員が三者三様の反応をした。

だが全員(リィエルを除く)に共通している感情は「驚き」だった。

それもそのはず。

道は石畳で綺麗に整備してある上にゴミひとつ落ちていない。加えて歩いている人々の一挙手一投足がとても優雅で、まるで御伽噺の中にきてしまったようだったからである。

ちなみにリィエルは既におねむである。(グレンが叩き起したが)

 

「失礼。グレン=レーダス様御一行でお間違いないでしょうか?」

 

物珍しそうにキョロキョロしていると、声をかけられた。

もしや不審者にでも思われただろうかと慌ててそっちを見ると、1人の青年が立っていた。

その青年はピシッと決まったスーツを着ており、綺麗な白髪と高い身長、それにイケメンフェイスを持ったいかにもなイケメンであった。

 

「私はレイジ=フロイス。今回の案内役を申し使っている、親衛隊の1人です。以後、お見知りおきを。」

 

「ああ。君がレイジ君か。アリシアから話は聞いているよ。宜しく頼む。」

 

「はい。では、こちらへ。」

 

そう言って先導してくれた。

 

「くっ……なんだあの非の打ち所のないイケメンは………。あいつマジで人間か?」

 

隣で呪詛のような言葉を履吐いているグレンは無視したが。

さて……なにも起こんなきゃいいんだけどなぁ。

 

────────────────────────

 

同じ頃の王都某所。

王都の路地裏に存在する寂れたバーに、1人の男が入っていった。

バーテンダーすら存在しない店に入った男はずかずかと奥のカウンター席へと進んでいった。

 

「よう。遅かったじゃないか。」

 

カウンターから声をかけたのは、天の知恵研究会所属のエレノア=シャーレットであった。

 

「悪いな。前の『仕事』が予想以上に手こずった。まあ、終わったから問題ない。」

 

「そう。で、例のものは回収出来たのかい?」

 

「ああ。『これ』だろ?」

 

そう言って取り出したのは、1本のボトルと、1枚の図面だった。

 

「そうそう。よくやったじゃないか。これは報奨だ。取っておいてくれ。」

 

エレノアは懐から一丁の銃を取り出し、机に置いた。

 

「これはトランスチームガン。さっき回収したボトルで変身できるのさ。報酬前払いでさっきのボトルもあげるから、追加で仕事を頼みたい。」

 

「了解した。仕事内容は。」

 

「……この男を抹殺しろ。」

 

エレノアが懐から取り出した写真。

そこに映っていたのは、アランだった。

 

「こいつはアラン=ジョーゼフ=エミヤって言ってな。厄介だから始末してもらいたい。」

 

「こんな少年が厄介なのか?まあいい。請け負った。」

 

「頼んだよ。」

 

「ああ。」

 

男はトランスチームガンとボトルを受け取り、去っていった。

 

「さぁ………実験を始めようか。」

 

エレノアは清々しいほどに歪んだ笑顔で、妖艶に微笑んだ。

 




はい。今回から登場のオリキャラは魔王ゼロさんからお借りした、「レイジ=フロイス」君です。
ボトルの解説と一緒に簡単な情報を載せときますので、読んでいってください。
では、次の投稿まで!シーユー!

──以下、解説──

アダマンタイトフルボトル

ビルド世界で言う、「ダイヤモンドフルボトル」と同じ存在。ベストマッチ対象は「ゴリラフルボトル」。変身フォームは「ゴリラタイト」。
変身後の能力に変化はない。


レイジ=フロイス

前親衛隊隊長のゼーロスが女王陛下暗殺未遂事件で暴走した結果辞任し、代わりに親衛隊隊長に就任した青年。
白髪長身の美青年であり、剣の腕前もピカイチ。
アランと同じく平行世界のことを認知しており、その知識も持ち合わせている。
また、投影魔術のように、平行世界の物品を創り出すことが可能。
だが、多大なる魔力と引き換えのため多用は不可能。ましかし、投影魔術と違い、変形や変質をさせての創造も不可能。(あくまで精巧な複製品を創り出すだけ。)
固有魔術をいくつか所持しているため、魔術師としての才能もトップクラス。
仕事の時は真面目な口調で話すが、普段は全くと言っていいほどヤル気のない人。やる時はやる。




こんな感じです。固有魔術については登場した時に書きます。


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第16話 エレノアの日記

どうも〜。魔神セイバー引けないよこちょです。なんでや!
UA9000突破ありがとうございます!非常に励みになります!1万行ったら記念に何か書こうかな………(皮算用)
あとはお知らせをば。
新たにアンケートを取りたいと思います!
内容は「オリジナルボトル、オリジナルベストマッチ」です。
どんなボトル、ベストマッチでも大丈夫です!ボトルだけでも書いてくれれば出すかも……?

是非お願いしますという宣伝とともに、どうなる第16話、どうぞ!

追記 Twitter初めました!@yokotyoyokotyoで検索してください!基本フォロバします。


王都に着いた俺らは、親衛隊隊長であるレイジ=フロイスさんに先導されて、王宮の応接室に通されていた。

周りにはいかにも高そうな絵画や壺、剣や盾が飾られておりシスティと俺はガチガチに緊張している。

一方のルミアは、昔のことを思い出しているのか、懐かしそうな顔を浮かべ、リィエルは背もたれにもたれて爆睡し、グレンは座ってこそいるものの、隠す気もなく欠伸をしている。

アルフォネア教授はというと、大胆にも自分で女王陛下の所へと行ってしまった。

第7階位と聞いていたのだが、実態はもしやアホなのではないだろうか。

そんなこんなで待ってると、アルフォネア教授が戻ってきた。

 

「おし、アリス〜。入ってきていいぞ〜。」

 

ちゃっかりと女王陛下のことを渾名で呼んでるし……

開いたドアから入ってきたアリシア陛下も満更じゃ無さそうだし、まぁ、いいか(思考放棄)

 

「お久しぶりですね。皆さん。」

 

品のある声でそう言われると、どうしても背筋が伸びてしまう。

その拍子に、尻ポケットに入れていたボトルが落ちて転がってしまった。

慌てて拾おうと身を捩ると、レイジさんが拾ってくれた。

礼を言って向き直ると、アリシア陛下が日程について話してくれていた。

簡潔にまとめると、明日1日は観光をして、その次に受勲式があるそうだ。今日は1日城内でゆっくりしてくれとのことである。

全員が日程を確認し終えたところで、それぞれ部屋へと案内された。

全員に個室が当てられており、その個室の作りもかなりゴージャスだった。

 

「ふひぃ〜〜。疲れたなぁ。」

 

そう思ってベットへとダイブする。

柔らかいシーツとマットレスが体を包み込んでくれて、それだけで力が抜けていく。

思わず感嘆と安らぎのため息を吐いていると、

コンコンッ!と、ドアがノックされた。

 

誰だろうか。グレンならば躊躇なく勝手に入ってくるだろうし………

 

「どうぞ〜」

 

考えながらそう言うと、意外な人物が入ってきた。

 

「やぁ。今ちょっといいかな?」

 

入ってきたのは、レイジさんだったのだ。

 

「確認したいことがあってね。ちょっと場所を変えようか。」

 

そう言って外へ出ていく。どうやら着いてこいということらしい。

仕方ないのでベットちゃんとしばしの別れをすることにして、後を着いていく。

レイジさんはどんどん廊下を進んでいき、とある部屋の前で立ち止まった。

 

「とりあえず入っておいてくれ。」

 

言われたとおりに入り、適当な椅子に掛ける。

レイジさんは反対の椅子に座った。

 

「さて…………。どこから話そうかな。」

 

────────────────────────

 

「まず、君がさっき落としたもの。あれ、どこで手に入れたんだい?」

 

あれ……とは、フルボトルのことだろうか。

 

「これですか?」

 

「そうだ。」

 

合ってるらしい。しかし……どう説明しようか。

まさか敵対組織の一員から貰いましたなんて言っても信じてもらえそうもないしな。

 

「…………もしかして、エレノア=シャーレットかい?」

 

「……なぜそれを?」

 

これは驚いた。

まだ何も説明してないのにエレノアの名前が出てくるとは。

 

「だろうと思ったよ。それを持ってる君にならば、話してもいいかも知れない。そう思って呼んだんだ。」

 

「話……ですか?」

 

「そうだ。ひとまず、これを読んで欲しい。」

 

そう言って渡してきたのは、古びた1冊の本だった。

なんらかの魔術的阻害が施されていた跡があるが、今は機能していないようだ。

表紙には『エレノア=シャーレット』という名前以外何も書いていない。

読み進めると、日々の記録のようなものが書かれていた。

 

「エレノアの日記か?」

 

だが、とある日を境に、全く書かれなくなっていた。

途切れ途切れに書かれた内容からは、悲痛さが漂っていた。

 

─ 月─日

最近、意識が急に途切れる。

今日もまた途切れた。

途切れているのに、私は動いているらしい。

何故だろうか。

 

 

─月─日

日付を確認すると、私の意識が途切れてから2日間が過ぎていた。

その間仕事をしていなかったことを陛下にお詫びしに行くと、「貴方はちゃんと仕事をしていましたよ?」と、怪訝そうな顔をされた。

原因が不明なのが、気味が悪い。

 

─月─日

呪いの類かと調べてもらったが、異常がなかった。

今日は意識が途切れなかった。

 

─月─日

目が覚めると、机の上に奇妙なボトルが置いてあった。

不気味だったが、なぜか捨てる気にはならなかった。

 

─月─日

私は操られている。

そう実感出来た。

私の中にナニか別のものが巣食っている。

痛みも苦しみもないが、私が私でいられる時間がどんどん減っていっている。

いやだ。怖い。誰か助けて。

 

─月─日

『エボルト』。

私の頭の中に浮かんできた言葉だ。

それがなんなのかはわからない。

だが、重要なもののようなことがしたので、記しておく。

 

─月─日

もうダメだ。私は私で居られない。

日に日に見たことないものが増えていく。

日に日に自分が消えていく。

私が居たという証拠は、もはやこの日記だけなのだろうか。

私は増えたものを森に埋めてきた。

これで少しは自分なるだろうか。

 

 

 

 

日記はここで終わっていた。

いつの間にか、俺の目には涙が溜まり、日記を持つ腕は震えていた。

 

「『エボルト』。お前はそいつのことを知っているのか?」

 

「………はい。」

 

聖杯に混ざりこんだ余計な知識。

その中に、『エボルト』という名前はあった。

「火星」という星を滅ぼし、平行世界の地球を滅ぼそうとした悪。

その悪は、俺の持つフルボトルと似たようなボトルで姿を変えて戦う「仮面ライダー」という存在によって打ち倒された。

だが、この世界にはフルボトルはあってもベルトはない。

もし、エレノアの中に巣食っているのがエボルトだとするならば、一体どうやってそんな奴らと戦えばいいのか。

そう思案していると、レイジさんが懐から何かを取り出し、机に置いた。

 

「……ッ!これは!」

 

それは、黒い本体に多数の歯車、2つの穴にハンドルの付いた、「ビルドドライバー」と呼ばれるドライバーと、中身のない透明なボトル、「エンプティボトル」だった。

 

「なぜレイジさんがこれを?」

 

「エレノアが森に埋めていたものだ。俺がその現場から掘り起こしてきた。」

 

どうやらエレノアが隠していたのは、ビルドドライバーとエンプティボトルだったらしい。

 

「それはお前に託そう。一応魔道具だから、慎重に扱え。」

 

そう言って、外へでようとする。

 

「………なんで俺に渡したんですか。」

 

「……………お前なら、扱えるからだ。それに、あのグレン=レーダスも使えるだろうな。だからだ。」

 

そう言って去っていった。

俺は無言でドライバーとボトル、それにエレノアの日記帳を手に取り、部屋へとゆっくり戻って行った。

 

────────────────────────

 

レイジが外へ出て暫くすると、アリシアが待っていた。

 

「…………彼には、無事に渡せた?」

 

「ん?ああ。渡せたぞ。普通に受け取ってくれた。」

 

「でも………よかったの?」

 

「別に。使うか使わないかはあいつ次第だしな。俺は選択肢を増やしてやっただけだ。」

 

「そうじゃなくて。あなたのことよ。貴方も『知ってる』んでしょ?」

 

「……………まぁ、時が来たら、な。」

 

そう言い残し、去っていく。

だが、レイジの口は固く閉じられていた。

まるで、「話したくない」と駄々をこねる子供のように。

そんな後ろ姿を見ながら、アリシアは思う。

 

「………言える時が来るといいのだけれど。『記録を持ってる』って。」




今回はレイジ回でしたね。
最後に出てきた「記録」とは一体何についてなのか……。
そのへんも推察してみてください。
では、次回の投稿まで!チャ〜オ〜


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第17話 愚者の正義 投影の正義

アラン;ようみんな。今作の主人公のアランだ。え?なんで俺がここにいるかって?………作者がここに書くネタを思いつかないんだと。

グレン;ま、駄文書き連ねてるだけの奴じゃしゃーないか。と、ロクアカの本来の主人公のグレンだ。

アラン;まあ、今回からちょくちょくこんな感じで俺らが出る時もあると思うから、そんときはよろしくな。ちなみにここは本編とは多分関係ないから若干メタっぽくなっても気にするな!

グレン;まあそもそもこのコーナー自体ビルドのOP前のトークのオマージュだしな。

アラン;まあね。んじゃまあ、長々話してもしゃーないし、本編行くか!

アラン&グレン;どうなる第17話、どうぞ!

アラン;あ、活動報告欄のアンケートはまだまだ実施中だぞ!

グレン;メタいの早速過ぎるだろ………


レイジさんからドライバーとボトルを受け取った夜。周りはすっかり寝静まった中、俺は、部屋で1人考えていた。

言うまでもなく、このドライバーについてである。

 

(………ビルドドライバー、か。)

 

仮面ライダービルド。

平行世界に存在する正義のヒーローの1人で、自称天才物理学者の桐生戦兎の変身する仮面ライダーだ。

ところでビルドのなかにあんまり物理要素ない気がするのは気のせいだろうか………。まあ、それは置いておいてだ。

このビルド、変身するにはハザードレベルと戦う意志が必要なのだ。

レイジさん曰く、俺とグレンは使えるらしいので、ハザードレベル自体に問題はないと思う。

だが、現在俺は、戦う意志を見い出せないでいた。

思い出されるのは学園襲撃事件の時、女王陛下暗殺未遂事件の時、それに先日の遠征学修の時だ。

あの時の俺はとにかく必死だった。

誰かを守ろうと必死になって戦った。

だが、今はどうだろうか。

今は平和だ。別に誰かが窮地に陥ってるわけでも、襲われている訳でもない。

なのに、俺がこれを使っていいのだろうか。

 

そんな風にグチャグチャと頭の中で考えていた。

………いや、考えようとしていた。

 

「はぁ………。この期に及んでまーだ迷ってんのか。俺は。」

 

迷う、というか怖いんだろう。

もし、この力を使った結果ルミアやシスティ達に恐れられてしまったら、と。

殺人を犯し、それで受け入れてもらってもなお、だ。

 

「あーもう!」

 

こんな自分に少しイラつく。

 

「………そういえば。グレンはどうなんだろうか。」

 

ふと、気になった。

グレンは、軍に属していた時期があったと聞いている。

グレンならば、己の守るもののために恐れるものはないのだろうか。

例え進む道の上で他の人に嫌われようとも、進み続けるのだろうか。

どうしても気になってしまい、忍び足でグレンの部屋へと向かった。

 

────────────────────────

 

一方のグレンも、まだ起きていて、手に1枚のアルカナを持ち、考え事をしていた。

 

「……『愚者のグレン』か。本当にいいセンスしてんな。」

 

グレンは幼い頃、家族だけでなく周りの全ての人間を亡くしている。

そこで手酷い人体実験をされていたところをセリカに助けられ、今に至っている。

助けてくれたセリカが魔術を巧みに使う人だったから、今でもグレンは絵本に出てくるような「正義の魔法使い」に憧れている。

だが、正義の魔法使いに憧れ、努力し、必死になって手に入れた軍属という「希望」は、日を追う事にグレンをすり減らしていった。

魔術をいくら使って助けようが、救おうとした人は絶対全員は救えない。

魔術師相手に魔術を使って殺してしまえば、罪悪感がのしかかる。

優しすぎるグレンは、魔術に絶望しながらも希望を追い続け、無職を経て今の教職についている。

 

そして今は、教職についてから見た生徒の中で、一番己と近しい生徒の顔を思い浮かべていた。

アラン=ジョーゼフ=エミヤ。

彼もまた幼い頃に周りの人を亡くし、人を殺めたことがある人間だ。

 

(………あいつは、どう思ってんだろうな。)

 

グレンの目には、一心に助けようとする彼の姿が眩しく映っていた。

もしかしたら、あいつなら乗り越えたかもしれない。

そう微かな希望を持ち、グレンは席を立った。

そしてアランの部屋へと移動を始めた。

 

────────────────────────

 

そして、現在。

2人は出会った廊下から場所をうつし、城の屋上にあるテラスへと足を運んでいた。

 

そして、互いに過去をさらけ出した。

グレンは、生まれ故郷での惨劇、軍属時代の話を。

アランは、人体実験のこと、人を殺した時のことを。

互いに近しい過去を持っていたからだろう。双方すんなりと口から出すことが出来ていた。

 

「………なあ、アラン。お前は『正義』って、なんだと思う?」

 

グレンは縋る様な目でアランに問う。

まるで、答えを欲しているかのように。

 

「……正義、か。俺の正義は……なんだろうな。」

 

「俺はまだ正義を名乗れるほど大人じゃねえし、まだ知らない。でもまぁ、『必死になってる人』とかなのかもな。」

 

「多分、俺は『正義の味方』になりたいんだろうよ。カッコよく、みんなを救えるような。」

 

「………そうか。お前もだったんだな。」

 

2人はしばし無言で風を感じた。

 

「………お前なら、なれるかもな。『正義の味方』。」

 

グレンは、寂しそうに笑いながら言う。

 

「なれるかもって………。先生も充分正義の味方っぽいじゃないか。」

 

「んにゃ。俺はダメだ。なんせ『愚者のグレン』だし?それに、ヒーローってのは期間限定らしくってな。俺みたいな年になるとどうもな。」

 

「なのに俺はまだそんなものに執着してる。笑っちゃうよな。」

 

無言が流れた。

そして、アランはその無言の間に何を感じたのか、こう言った。

 

「んじゃまあ、俺が努力してみるよ。正義の味方ってやつになれるように。」

 

と。

そう言ったアランの目は、まるで初めてニチアサの仮面ライダーを見た幼い少年のように輝いていた 。

グレンはその目を、過去の自分の目と重ねた。

 

セリカみたいな魔法使いになりたい

 

そう言った過去の自分と。

そして、今なおそれを目指している、荒んでしまった自分を。

 

 

「…………ああ。頼んだぞ。」

 

「…………ああ。」

 

互いに言葉を交わし、2人はまた、風を感じた。

だが今の風は、先程の風よりも清々しく感じた。

 

「…………さて、もう寝るとするか。明日は観光だろ?早く起きねえと白猫達にドヤされる。」

 

「ああ。ちげえねえや。」

 

2人で笑い合い、階下へと起きようとしたその瞬間、背後からゾクリと、嫌な気配がした。

振り向くとそこには、いつの間にか2体の黒い化け物がいた。

 

「なっ………!」

 

「あれは……スマッシュ!?なぜここに…グレン!」

 

「ああ!」

 

スマッシュ─ネビュラガスを使った兵器のようなものだ。

その肉体は固く、その力は鉄を容易く破壊するほどのパワーを持っている。

 

アランは知識から、グレンは直感からまずいと悟り、拳に『ウエポン・エンチャント』を掛け、突進する。

2体のスマッシュはゆっくりとした動きで迎撃の構えをとるが、その時既に2人は懐へと入り込み、鳩尾の部分を殴り飛ばしていた。

 

スマッシュは後ろへ後ずさるが、あまり効いた様子ではない。

 

「なんだこいつ固え!」

 

「しかも重っも!なんじゃこいつら!」

 

魔術で強化した拳で殴ってコレなのだから、正直普通の魔術が通じるかは怪しい所だ。

まあ最も、二人とも普通の魔術はあまり得意でないからあまり意味はないのだが。

 

「………そういえば!グレン!これを!」

 

そう言って「バットフルボトル」を投げ渡す。

 

「なんだこれ?なんか意味あんのか!」

 

「いいから持っとけ!」

 

グレンは不審がりながらも振り、それを握った拳でスマッシュを殴りつける。

すると、フルボトルで強化された拳は、さっきよりも強くスマッシュを吹っ飛ばす。

そのまま2人で殴り続け、なんとか倒しきった。

 

「ふぅ………。なんとか倒せたな。」

 

「あぁ。しっかし、なんでここにスマッシュが……。」

 

「ほぉ〜う。まさか変身せずに倒しちゃうとはねぇ〜。感心したよ。」

 

「誰だ?お前。」

 

煙を伴って表れたのは、全身に真っ黒な鎧を纏い、目の部分に蝙蝠を模したバイザーのある、異様な姿だった。

 

「お前は………ナイトローグか。なんで揃いもそろってここに居るんだ………。」

 

「ナイトローグっていうのか、こいつは。まあいい。一先ずお前に死刑宣告をしに来たぜ?アラン=ジョーゼフ=エミヤ。」

 

ナイトローグは仮面の下で不敵に笑いながら、そう告げた。




はい。こっちでは作者ことよこちょが喋ります。
今回ようやくナイトローグを出せました。
エレノアスタークは暫く出番ないかな………。
恐らく次回あたりでアランが初の変身をすると思います。
え?学園祭でローグになったって?あれはギャグみたいなもんやし(震え声)。まぁ、大目に見てください(土下座)

では、次回の投稿まで!アリーヴェデルチ!


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第18話 正義をビルド

アラン;おっす。アランだ。

グレン;グレンだ。

アラン;今回は俺の初変身回だ!みんな楽しみにしてくれよな!

グレン;へっ。散々渋ってたくせにいざとなったらやるんだからな。さすがは『正義の味方』様だぜ。

アラン;照れるなぁ。まぁ、今回は俺の正義についてもちょっと触れるからそこも見ててくれ。

グレン;後で恥ずかしくて悶えても知らんぞ?

アラン;うぐっ……。まぁ、そこは是非もないよネ!

グレン;どこの第六天魔王だお前は………。まぁいいや。さっさと本編いくぞ!

アラン;はいよ!

グレン&アラン;どうなる第18話、どうぞ!




アラン;あ、Twitterのフォローと活動報告のアンケートも宜しくな!

グレン;垢はTwitterで@yokotyoyokotyoで検索してくれ!

アラン;お前もメタいな。

グレン;もう慣れた。


「…………はい?今なんと?」

 

唐突に放たれた言葉に困惑し、思わず返した。

まぁ、普通の人は生きている上で冗談で死ねだの殺すだの言われたことはあってもガチで殺すなんて宣告されたことはないから仕方がない。是非もないよネ!

 

「聞こえなかったのか?俺はお前を殺す。依頼を受けたもんでね。まぁ、運が悪かったと思って諦めてくれや。」

 

キンッと、まるで空気が凍りついたような音が聞こえた気がした。

それほどまでに相手─ナイトローグの放つ圧は凄いものだった。

グレンはその圧にやられたのか、気持ち悪そうにして口を抑え、青い顔で下を向いていた。

 

(……俺しか動けない、か。)

 

試しに【ライトニング・ピアス】でも打ち込むか。

そう考えた矢先、ナイトローグの放った言葉によって中止せざるを得なくなった。

 

「言っておくが、俺には魔術の類はほどんど効かん。魔術で倒したきゃ、【イクスティンクション・レイ】でも持ってくるんだな。」

 

(………やはりか。予想してたとはいえ、これはきつい。)

 

ドライバーを使うという手もあるが、今の俺には使いこなせる気がしなかった。

ならばボトルで強化した拳で戦おうと決断し、振って構えた時、衝撃的な事が起きた。

 

「ぶっ飛べ!有象無象!【イクスティンクション・レイ】──!」

 

「はいぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」

 

なんと、グレンが【イクスティンクション・レイ】を容赦なくぶち込んだのだ。

どうやらさっき俯いて手で押さえていたのは、詠唱がバレないようにするためだったらしい。

グレンの手に表れた魔法陣から圧倒的なまでの魔力を伴って発射された光の奔流は絶大なる破壊力でナイトローグの居た場所を削り取り、無に帰していった。

ここから見ると、一直線に穴が空いたように見える。

相変わらず物凄い威力だ。

 

「…っあっぶねえ!てめえ人が話してる最中に呪文放っちゃいけないっていうお約束を知らんのか!」

 

「えー僕そんなの知らないな〜。だって俺そういうの面倒臭いし?それに部屋帰って寝たいし?明日早いからな〜。」

 

グレンはニヤニヤとした笑みを浮かべながらおちょくる。学園一煽りスキルの高いグレンの煽りは相手を猛烈に苛立たせている。流石だ。ナイトローグの額に青筋が幻視できる。

 

「チッ。めんどくせえ野郎だ。あーもうだりぃ!今日のところは引き上げてやるよ。」

 

そう言って来た時と同じように煙を伴ってどこかへと消えていった。それはもうブチ切れながら。心做しか煙の出方が多かったのも恐らく気のせいじゃないだろう。

 

「……ふぅ。行ったか。」

 

真っ青な顔になりながらその場に倒れふすグレン。やはり魔力消費が半端ないのであろう。

グレンを背負い、部屋へと運ぶことにした。まぁ、グレン寝てるしな。

 

「………一旦引く、か。」

 

恐らく、また近いうちに仕掛けてくるだろう。

………その時までに覚悟を決めなければな。

 

────────────────────────

 

翌日

 

 

あの後部屋へ戻って熟睡し、しっかり寝坊してシスティから説教をくらってから飯を食った。

そして現在。俺たちはしっかりと王都観光を楽しんでいた。

王都には様々な建物─映画館や美術館、博物館に巨大なショッピングセンターなどなど、フェジテとは比べ物にならなうほどの種類の建物があった。

普段こういうのに興味が無い俺が驚くほどなのだ。普段からショッピングを楽しむ乙女な2人にはとても刺激的に移っただろう。

ちばみにその乙女とは若干ズレてるリィエルは苺タルト頬張りながら歩き、グレンと俺は荷物持ちをさせられていた。

 

「お、おい……ちょっと休憩しようぜ………」

 

「あ、あぁ。頼む………。」

 

「もう……まだまだ回りたいとこ一杯あるのよ?」

 

「まあまあ、2人に荷物持たせちゃってるし……。ちょっと休憩しよう?」

 

「むう。ルミアがそう言うなら。」

 

「「た、助かった…………」」

 

そういうことで、モールの中心にある、大きな木の下にあるテーブル席に陣取り、休憩中である。

う、腕の感覚が…………

 

「イテテテテテ。腕吊りそうだ………」

 

グレンも同じ状況らしい。

 

「二人ともありがとう。はい、これ。」

 

休憩していると、ルミアが飲み物を買ってきてくれた。

あなたが神か(キャスター感)

 

「サンキュー。助かったぜ。」

 

「ううん。荷物持たせちゃってるしね。そのお礼。」

 

「まあ、ありがとよ。ふぅ。うまい。」

 

飲み物は何かのベリーだろうか?酸味が効いていて、疲れた体を十分に癒してくれた。

 

「しかし、こんなにいい場所なのになんでこんなに人がいないんだ?」

 

疲れていた時は気が付かなかったが、この木の周辺にあまり人がいない。

昼時を少しすぎているからだろうかとも思ったが、それにしても少なすぎる。

 

「………妙な胸騒ぎがするな。」

 

念の為ボトルを振っておく。

油断なく周囲を見渡していると、妙なことに気がついた。

人がいない部分が、綺麗な円になっているのだ。

ちょうど俺らを中心にした、半径20mほどの円だ。

ちらりとグレンを見やると、どうやら同じ結論に達したらしい。

 

「おいルミア、白猫。ここを離れるぞ。リィエルは大剣構えとけ。」

 

「グレン、持っとけ。」

 

「ああ。」

 

荷物を持ち、その場から少し離れた時、嫌な予感は的中した。

 

「シャァァァァ!」

 

「ッ!やっぱりか!」

 

表れたのは三体のスマッシュだった。

 

「昨日のナイトローグとかいうやつか!これやってんのは!」

 

「その通り!ようお前ら。昨日はよくもやってくれたなぁ?仕返しにきたぜ?」

 

更なるスマッシュを引き連れ、ナイトローグまで出てきた。

 

「あーもうやっぱりかよ。しつこい男は嫌われるぞ?」

 

「軽口を叩けるのも今のうちだ。行け。」

 

追加で5体。計8体のスマッシュが俺らを囲む。

3体でようやく対応出来ていたというのに、更に増えてはどうしようもない。

 

(………これじゃまずい。)

 

そう思うが、どうしてもドライバーの使用に踏ん切りがつかない。

迷いながらも戦い、グレン、リィエル、俺が一体ずつ仕留めた。これで残りは5体だ。

 

(………よし。これならいけるか?)

 

………そう思ったのがいけなかったのだろう。

 

「キャアァァァ!」

 

システィが魔術を撃ち損ね、スマッシュに腹を殴られていた。

 

「ッ!システィ!」

 

「ルミア!回復を頼む!クソ野郎がァ!」

 

グレンが突っ込む。

ルミアは回復をしている。

システィは攻撃を受けて痛そうだ。

 

「…………………。」

 

それ見て、ふと昔の光景を思い出した。

自分の親がこうして必死に抵抗している姿を。

 

「………そうか。」

 

俺はもう二度と繰り返したくない。そう思ったはずだ。

ならば。

 

「なら…………俺がやる。」

 

俺が止める。

例え俺の身が朽ちようとも、周りの人だけでも守りたい。

例え恐れられても、人のために戦いたい。

 

「…………もう、迷わんぞ。俺は。」

 

腰にドライバーを当てる。

するとベルト部分が飛び出し、自動的に腰に巻かれた。

 

「俺は…………俺の正義で戦う。」

 

兎と機械のボトルを取り出して、振る。

シャカシャカという軽快な音を立てて活性化したボトルをベルトに刺す。

 

『ラビット!タンク!ベストマッチ!』

 

「そして………希望を創る!」

 

横についたハンドルを回すと、音楽とともに問われる。

 

『Are you ready?』

 

「ああ。覚悟はできた。」

 

「変身!」

 

『鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イエーイ!』

 

前後に形成された赤と青の鎧が俺を挟み、変身を完了させる。

 

「………仮面ライダービルド。俺は、俺の正義で!希望をビルドする!」

 

正義の仮面の戦士。ここに見参

 

「さぁ、実験を始めようか。」




初変身キター!
というわけで次回からビルドとしての初戦闘です。お楽しみに。
ではでは、次回の投稿まで!


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第19話 正義のライダー

アラン;お ま た せ !駄文しかないけどいいかな?

グレン;のっけから汚えなぁ………。てか駄文ってわかってんなら努力しろや。

アラン;作者曰く「頭には戦闘シーンが浮かぶけど文字に起こすと薄っぺらくなる」だそうだ。

グレン;それを下手くそって言うんだがな………

アラン;『最近テストやらで忙しかった上に苦手な戦闘シーンだったんです。ごめんなさいby作者』
だそうだ。

グレン;まぁこんな文でも読んでくれる人が要るんだ。せめて期待にゃできるだけ答えていこうぜ?

アラン;そうだな………って、だべってたらもう200文字超えてんじゃねえか。とっとと本編行くぞ

グレン;あいよっ!どうなる第19話!

アラン&グレン;どうぞ!


「な………なんだあの姿は…。」

 

グレンは驚愕していた。

普通に生きる中では目にすることのない姿が目の前に現れらからだ。

赤と青の鎧を纏い、目の部分には複眼のアイレンズ。

さっきまでそこにいたアランとは全く違う姿に、システィやルミア、リィエルまでもが驚きに目を見開いていた。

 

「お、おい!お前、ホントにアランか!?」

 

「ん?ああ。俺だぞ。待っとけ。すぐ片す。」

 

そう言って、スマッシュの群れへと自ら突っ込んで行った。

 

────────────────────────

 

(さて………行きますか!)

 

スマッシュの群れへと走る。

まずは一発、目の前のスマッシュへと拳を入れる。

すると、さっきまでと違い、面白いように仰け反って吹っ飛んだ。

 

(これならいける!)

 

そう思ったが、流石に多勢に無勢。普通に囲まれた。

 

「んじゃ、こいつを使うか」

 

『ビートクローザー』と『四コマ忍法刀』を取り出し、強化の魔術で更に威力を上げる。

 

「せいっ!やぁ!とう!」

切りつけて吹っ飛ばすだけで簡単にスマッシュが砕け散る。

 

「これでどうかな!」

 

金属を切り飛ばしたような音が響き、火花が散る。

 

「これで終わりだ!」

 

横に付いているハンドルを回す。

 

『ボルティックフィニッシュ!』

 

フルボトルが振られて活性化し、更なる力強さで2本の剣を振るう。

周囲にいたスマッシュは一欠片も残らず爆散した。

どうやら人をスマッシュに変えていた訳では無いらしい。

 

「成分回収っと。ふぅ。さて。残りはお前だな。」

 

成分を回収し終えて振り向くと、身体を震わせたナイトローグの姿があった。

 

────────────────────────

 

(な………なんて強さだ)

 

ナイトローグに変身した男はそう感じていた。

複数のスマッシュを相手取った挙句、ほぼ無傷で倒してみせるなど想像の範疇を超えていたのだ。

この男は多数の殺害依頼をこなしてきていたが、ここまで実力差がある依頼は初めてだったのも原因ではある。

 

(…………一旦撤退して体制を立て直さねばな。そのためにもやるしかない。)

 

そう思い、銃を乱射しながら目の前のビルドへと走り込む。

数発当ってはいるが、あまり効いた様子はなかった。

それもまた、彼の焦りを加速させる。

 

「オォォォ!」

 

至近距離での射撃を織り交ぜたストレートを放つ。

が、銃弾は躱された上に胸部へと逆に強烈な拳が刺さる。

空気を強制的に吐き出させられ、吹き飛び、壁に打ち付けられる。

急な衝撃に着いていかない肺が空気を求めて動くが、息が吸えない。

咳き込んでフラフラしながら立ち上がる。

瓦礫による砂埃で前が見えない。

 

(………今の内に……離脱を………!)

 

そう思った途端、強い力で引っ張られた。

 

(なっ………!)

 

理解の追いつかぬまま、ナイトローグは成されるがままになった。

 

────────────────────────

 

「…………消えた?」

 

ビルドことアランは「ホークガトリンがー」を構え、いつでも撃てるようにしていた。

が、砂埃が晴れても姿はどこにもなかったのだ。

あったのは、衝撃で剥がれた建物の表面部分と薄い煙のみだった。

 

「……………撤退したか。このままやめてくれりゃいいんだがなぁ〜」

 

ボトルを引っこ抜き、変身を解除する。

纏っていた装甲が風と同化して流れていき、散った。

 

「(ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁん疲れたもう!)チカレタ」

 

唐突に淫夢な叫び声を上げたかったが、我慢する。

そして後ろを振り返ると、座り込んだルミア達が見えた。

 

(……………やっぱ、怖がられたか。)

 

覚悟して変身したとはいえ、実際に怖がられたと感じてしまうと寂しくなった。

 

(………よし。)

 

再び覚悟を決め、皆の元へ歩く。

脳内では、どう言うかをシュミレートしていた。

 

(怖がらせてごめん……じゃないな。かといって普通に接するのも変だしな……。難しいな。)

 

悩みながらも足を止めるわけには行かず、なにも思いつかぬまま目の前まで来てしまった。

 

(…………どうしようか)

 

そう考えていると、ふいに目の前が暗くなり、暖かさを感じた。

不思議に思い前を見ると、グレンがアランを抱き締めていた。

 

「………すまなかったな。役に立てなくて。でも、ありがとな。」

 

掛けられたのは拒絶の言葉ではなく、謝罪、そして受け入れの言葉だった。

 

(………やはり、俺は馬鹿だったらしい。)

 

アランはふと、遠征学修でのことを思い出した。

 

(………あの時も受け入れられた。今回もだ。)

 

そして、決意する。

 

(もう絶対ビビらん。)

 

と。

そして、言葉を発した。

 

「………ありがたいんだが、なぜここで抱き締めたし。」

 

「台無しだなオイィィ!」

 

 

 

ちなみにこのあとは普通に帰った。

荷物?グレンが持ったに決まってんダルォ!?

 

────────────────────────

 

アランが決意を新たにしていたのと同じ頃。

ナイトローグは成されるがまま路地裏へと移動させられていた。

 

「助かったぜ。エレノアさんよぉ。」

 

ナイトローグを連れて来たのは、スタークへと姿を変えたエレノアだった。

 

「ええ。問題ありませんわ。」

 

バイザーの下で妖艶に微笑む。

バイザー越しに伝わる色香に当てられていると、身体に力が入りにくくなった。

それもそのはず。

 

「だって、用済みのゴミくらい自分で処理したいじゃない?」

 

エレノアが毒を撃ち込んだからだ。

男はそれに気づかず、そのまま逝った。

 

「安心しなさい?ちゃんと『私の兵士』として使ってあげるわ。」

 

男の死体は、地面に溶けるように消えていった。

 




まずは謝礼をば。Twitterのほうでは前言ったのですが、とうとう10000UAを超えることが出来ました!
これもひとえに読んで下さった読者様のお陰でございます。本当にありがとうございます!これからも精進しますので、どうかよろしくお願いします!
あ、ついでにTwitterのフォローもオナシャス!@yokotyoyokotyoだゾ(ステマ)

さて、これからの話の予定ですが、残り1,2話でこの「王都受勲式編」は終了となります。そこからはしばらく本編どおり行きますが、ちょくちょく短編を挟むやもしれません。理由?思いつきです。

まぁこんな感じでゆるりゆるりと進んで行きますが、既刊発行分までのストーリー構成はあるので失踪はせずに続けて行きます。これからもお付き合い頂けると幸いです。

ではでは、次回の投稿まで!


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第20話 受勲式と言ったな。あれは以下略

アラン;おうなんだこのふざけたタイトルは。

グレン;なんでも、「別に受勲式の内容って要らなくないか?」っていう独断と偏見によって削ったらしい。

アラン;まぁ元々この受勲式編を作った理由がビルドを出すこととエレノアの招待を出すこと、それにお借りしたレイジ=フロイスさんを出すためだったらしいしな。

グレン;ここの部分は元々想定してなかった場面らしいし、まぁ大目に見てほしい………

アラン;本当にすまない………。あと使用許可くださった魔王ゼロさん、ありがとうございました

グレン;まぁ見たいって人がいたら短編で書くらしいから、そういう人がいたらコメントとかで言ってくれ。

アラン;んじゃ、そろそろ本編行くか!

グレン;そうだな。どうなる第20話!

アラン&グレン;どうぞ!


「ふぅ〜流石に疲れたわ…………」

 

ショッピングモールで襲撃された翌日。

無事に何事もなく受勲式が終了し、夜になった。

俺は現在疲れた身体を癒すために風呂に入っている。グレンは寝てから入るそうだ。

え?受勲式のとこの描写はどうしたって?

………野郎2人が受勲されてるとこなんか需要ねえだろ

ってことでカットだ。

え?見たいって?…………短編でやります(先送り)

 

まぁ硬っ苦しい式典も終わり、ようやく息を付けたんだ。こう言っても文句はないだろう。

 

「ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁん疲れたもう!」

 

昨日言えなかったクッソ汚いセリフを大声でを吐く。

誰もいない大浴場に汚い(確信)なセリフが響き渡り、反響した。

こういうのってFoo〜!気持ティイ〜!ってなるよな。

そういや女王陛下─めんどいからアリシアさんでいいや─が話があるって昨日言ってたな。

 

「あとでアリシアさんのとこ行かなきゃな…」

 

「いえいえ。そうしてくれなくても大丈夫よ?」

 

「ファッ!?」

 

突然後ろから声が聞こえてビックリして振り向くと、そこにはミロのヴィーナスもかくやという程の美しさがあった。

柔らかな身体のライン、タオルで隠していても隠せきれていない大きな果実(意味深)、纏められた濡れた髪、流れ落ちる水滴、健康的なツヤを放つ柔肌…………

上げればキリがないほどの「美」を持った存在かつ、この国を纏めあげる手腕を持ったアリシアさんがそこに居た。

 

「え?ちょま、はい?俺一人で入って……え?」

 

テンパりすぎて全く言葉にならぬ単語の羅列を捲し立てる。

だが、そんなことはどうでもいい。もっと重要なことがある。

 

「…………これは懲役何年だろうか?」

 

恐れ多くもタオル越しに見てしまったのだ。

これは下手すれば国家転覆罪で死刑ありますよ………

 

「別に罪じゃないのですが………」

 

よかった。どうやら処刑台行きは免れたらしい。

………あれ?でもこれがバレたら死刑はなくても私刑はありえるんじゃないだろうか。

ワシオワタ。

絶対にバレないようにしようと心に決め、湧いた疑問をぶつけてみる。

 

「あの………なんでここにいらっしゃるのでしょうか?」

 

「早く話がしてみたくって………お手紙にも書いてあったでしょ?」

 

「あぁ………。ってか、どんだけ話したかったんすか」

 

「以前グレンのマントから出てきた時からです。ふふっ。あれは面白いアイデアだったわ。」

 

「あ、ありがとうございます」

 

ぱっと思い付いた作戦だとは言い出せず、とりあえずお礼を言ってしまった。

 

「こうしてみると本当に普通の人なんですね………」

 

「まぁ、軍人とかじゃありませんしね。」

 

「というか敬語取ってくださいよ。今はただのアリシアなんですから。」

 

「………はぁ。わかったよ。」

 

「ついでに呼び方もアリシアって呼んでください。もしくはアリスでもいいですよ♪」

 

「…………アリシアにしときます。」

 

「ふふっ。アリスって呼んでくれなくて残念です」

 

言葉とは裏腹に、すごく楽しそうに話すアリシア。

しかしまぁ、こうしてみるとホントにルミアを産んだとは思えないほど若々しいな。

言動もさることながら、見せる人懐っこい茶目っ気がとても若々しい。

………ついでにアリシアが動く度水面を波立たせ、目に入ってしまう非常にボリューミーなアレも。

これがどこぞのボッチの言ってた万乳引力か…………すごい(語彙力皆無)

 

「んで、本題はなんですか?まさかこんな話をするためにわざわざ来たわけじゃないでしょう?」

 

「いいえ?こうしたかっただけですが。」

 

「……………は?」

 

…………どうやらマジに話したかっただけらしい。

 

「まぁ、ひとつだけお願いがあるんですけどね。」

 

「やっぱりか。………ルミアのことだろ?」

 

「あら。察しがいいのね。」

 

まぁ、実際その話だとは思っていた。

 

「…………必ず守りますよ。本人とも約束したんで。」

 

「まぁ!あの娘ったら大胆なのね!これはもう式場の予約を………」

 

「早い早い早い!ってか心臓に悪い冗談はやめてくれ………」

 

「大丈夫です。3割冗談ですよ。」

 

「過半数本気じゃねえか」

 

第一に俺とルミアじゃ月とスッポンを通り越して月と生ゴミレベルで釣り合わんわ。

………別になりたくないかと言われれば嘘になるがな。

学院全男子生徒はそう思ってるに違いない。

 

「…………でも、安心しました。上手くやって行けてるようで。」

 

「……………本人からも聞いたんでしょう?なら、問題ないと思うが。」

 

「ええ。聞きましたよ。勿論、あなたの事も。」

 

実際、ルミアは魔術祭の時に話したと言ってたし、今でも恐らく文通くらいはしてるのだろう。

まぁ、その話した内容に俺が含まれていたことは意外だったが。

 

「でも、実際に関わってる人とも話してみたかったんです。」

 

「………そういうもんなんですか。」

 

「そういうもんです。まぁ、普通の人で安心しました。」

 

「ホントにただの一般人ですがね。でもまぁ、俺は俺の正義でルミア達を守ります。だからその………安心してもいいっすよ。」

 

「…………ええ。お願いしますね。」

 

そういって笑った顔は、遠征学修先で見たルミアの顔と少し似ていて、やはり親子なのだと実感させられた。

 

「…………俺もうそろそろあがりますね。楽しかったです。お話。」

 

「ええ。私はもうちょっとつかっていくわ。ありがとう。」

 

「いえいえ。……それじゃ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

風呂場から上がり、身体をふく。

近くにあった扇風機から吹いてくる風が湯上りで暑いからだを冷やしていく。

 

「『俺の正義で守る』か。…………はぁ。何話してんだか。」

 

さっき自分で言ったことを思い出し、物凄い恥ずかしくなった。もうホント恥ずかしい…………

だが、そう思いながらも、俺の表情筋は緩みっぱなしだった。

 

────────────────────────

 

脱衣所からも出て、部屋を目指す。

もう疲れたし、眠い。

明日は学院に帰るのだから早く寝ようと思いつつ廊下を急いでいると

 

「ちょっといいか。」

 

レイジさんに呼び止められた。

 

「なにかありましたか?」

 

さっさと寝たいので、手短だと助かるのだが………

 

「無事に変身できたようだな。」

 

「…………ええ。」

 

どうやらビルドの件だったたしい。

 

「随分手間取っていたようだったが、なれたのなら何よりだ。」

 

「見てたのかよ…………」

 

見てたならちょっとでも加勢して欲しかったぜ…………

 

「…………その力は強大だ。お前なら知識としてそれ知っているだろう。だが、力の使い道を忘れるな。その力は呑まれれば一瞬でお前は終わる。そのことを肝に命じておけ。」

 

「…………ありがとうございます。」

 

どうやら助言をするためにこうして足を運んでくれたらしい。

 

「何。気にするな。時間を取らせて悪かったな。msぁ、その代わりといってはなんだが、これをやろう。」

 

そういって、1つの箱を渡してくる。

その箱は何も書かれていなかった。銀色に光るその箱には、1箇所穴が空いており、側面にビルドのマークが記されているだけだった。

その他には特筆すべき特徴もない、ただの箱だった。

 

「これは?」

 

「ボトルの浄化装置だ。一応ほ他の機能があるにはあるが、まぁ置いておいて構わんよ。俺が持っておくよりもお前がもっておけ。」

 

「ありがとうございます。」

 

「礼には及ばんよ。では、いい眠りを。」

 

「おやすみなさい。」

 

「ああ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………ところで、女王陛下を見かけなかっただろうか?フラっと部屋を出たっきり戻って来ないのだが」

 

「さ、さぁ?しししししし知りませんよ?」

 

「…………そうか。知ってるのか。なら吐け、今すぐ居場所を吐け!」

 

「知らんつってるだろうが!さらば!」

 

「あ、おいコラ待て!」

 

そして、場内の追いかけっこが始まってしまった。

…………まぁ、その時にも色々あったのだが、それはまた次の機会(未定)ということで。

 

────────────────────────

 

「ふふっ。やっぱり面白い人だったわ。」

 

アリシアは先程の少年─アランの姿を思ううかべながら、そう呟く。

 

「でも、若いっていいわねぇ〜」

 

そして、自分の娘─ルミアからこの前送られてきた手紙に書いてあった内容を思い出した。

その手紙には、その少年に対する『ある想いの片鱗』のような内容も書かれていた。

 

「命短し恋せよ乙女…ってね。頑張りなさいよ?ルミア。」

 




はい。まずは謝礼をば。
今回で20話を無事に迎えられました!
飽き性の筆者が区切り良いところまで続いたのは皆様のおかげです。ありがとうございました。
これからもゆっくり続けて行きますので、よろしくお願いします。
さて、今回で受勲式編は終了となります。
次からは「結婚騒動編」となります。(もしかしたら間話を挟むかもしれませんが)
お楽しみに。

では、次回の投稿まで!


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区切りいいから人物まとめじゃオルァ!

ドーモ、ドクシャ=サン。なぜ数学は存在するのか………。日々そんなことを考える、数学苦手なよこちょです。理系なのになぁ………
まぁそんなことはどうでもいいのですが(よくない)、20話といキリがいい数字で話の区切れになったので、ちょうどいいと思って人物まとめを投稿します。
最初に紹介したところは少し省いた部分もあるので、そっちは第2話を見てください。

では、どうぞ!


アラン=ジョーゼフ=エミヤ

 

アルザーノ学園に通う学生。

投影魔術とライダーシステムを駆使して戦う異様な魔術師見習い。

性格は割と温厚。価値観も魔術師よりも一般人に近く、魔術師の倫理観は疑問に思っている。

天の知恵研究会の実験のせいで体内に聖杯の欠片を宿しているため、かなりの量の魔力を持っている。

普通の魔術は得意ではなく、最近ようやく一節詠唱の成功率が30%を超えた。

システィーナやルミア、リィエルと特に仲が良く、他の男子生徒から羨ましがられている。

普通に変態で、風呂除きのときは率先して先陣を切った。だけどチキン。

固有魔術を2種類持っているが、現在他のものも考えているらしい。

過去に壮絶な目に合っている影響で他人との繋がりが切れることを猛烈に嫌っている。

 

使用可能な固有魔術

 

1,【真名部分解放】

 

投影魔術で投影した宝具の真名を部分的に解放し、その力を行使する固有魔術。

これをしない状態では宝具は真名解放をしていない状態なので、他の人が使っても「強い武器」くらいにしかならない。

 

2,【構築・解析の盤面】

 

アランの魔術特性「対象の解析・改造」を利用した固有魔術。

自分を中心に、半径20mに存在するあらゆる術式、魔道具の作りや呪文などの詳細を巻物に記すことが出来る。

その巻物に相応の魔力を流せば記されている魔術を使用することが出来る。

また、その術弄ることも可能。

だが、攻撃に全く使えないし防御も不可能な魔術なので、戦闘には全く向いていない。

よって、余裕のある時にしか発動できない面倒臭い魔術。

作った本人曰く、「できたのは嬉しいんだが、いまいちどう使おうか迷ってる」。

 

3,魔力放出

 

なんの加工もしてないただの魔力をブースターのように体外へと射出するもの。

魔術というよりはただの魔力の無駄遣いに近い。

だが、これによって瞬間移動のように一瞬で距離を詰めたり、短時間ではあるが宙に浮いたりできるなど汎用性は地味に高い。

原理的には他の魔術師もできる事だが、それをするよりシュトロムで飛んだ方が効率がいいので、やらない。

使用している本人曰く、「やるのは簡単だが魔力の消費が冗談抜きに多い。正直やると結構簡単にマナ欠乏症になる」、「こんなことならもうちょい風魔術やっときゃよかった」。

 

4,投影魔術(Fate本来のものに独自解釈、設定を加えているので別物と考えた方がいいかもです)

 

別にアランのみが使える訳では無いが、2人しか使ってないのでここに記す。

自分の記憶から物質を魔力で現界させる魔術。

普通はハリボテのようなガワのみが出てくるのだが、基本骨子の解明や構成材質の解明、担い手の記憶や蓄積された年月などの詳しい所まで投影すれば、本物とほぼ同じものができる。この担い手の記憶を自身にインストールすることで、その技量を模倣できる。

また、「壊れた幻想も」することができる。

ちなみに抑止力からの影響を受けないので、投影品は壊れるまでは壊れない。

 

 

グレン=レーダス

 

原作と殆ど同じ。

「正義の魔法使い」と似た「正義の味方」の影を追っているアランのことは、似たもの同士と思い弟のように扱っている。

 

システィーナ・フィーベル

 

原作とほぼ同じ。

アランのことは、「親友」と思っている。

 

ルミア・ティンジェル

 

原作とほぼ同じ。

アランのことは、「気になっているが、まだ感情に整理がついていない」、「親友」だと思っている。

 

リィエル・レイフォード

 

原作とほぼ同じ。

アランのことは、「システィーナ達と同じように、守りたい友人の1人」と思っている。

 

その他クラスメイト

 

原作と同じ

 

エレノア=シャーレット

 

体内に「エボルト」が寄生している天の知恵研究会所属の外道魔術師。

エボルトが寄生する前は、穏やかな性格をした、できる使用人として王宮で働いていた。

現在は様々な場所で裏から糸を引いて事件を巻き起こしている。

原作同様死体を使った魔術扱う他、ネビュラスチームガンを用いた変身も可能。

 

エボルト

 

ビルド原作から登場した存在。

火星を滅ぼし、地球を滅ぼそうと画策している中でビルドから倒されて消滅した

………と思われていたが、パンドラボックス等のアイテムと一緒にこちらの世界へと逃げてきていた。

が、本人は身体をもっていない状態で来たので、現在はエレノアの身体を乗っ取り天の知恵研究会に所属している。

目的もこちらへ来た方法も不明だが、パンドラボックスとフルボトルを持っていた時点でパンドラタワーを建てようとしていたのは明白である。

ちなみに、乗っ取ったのが女体だったため、今でも胸部装甲部分(隠語)とアレが無いのに違和感を感じている。




ほいっと。
今回のキャラ紹介で、エボルトとエレノアについても記述しました。
キャラが増えたりしたらまた別に投稿します。これに追記したらネタバレになっちゃうからネ!

というわけで、次の投稿こそは結婚騒動編に入ります!
ということで、次回の投稿まで〜!


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第21話 ここに来て新キャラ レオス?知らんな

アラン;……なぁ。俺もう帰りたいんだけど

グレン;どうした。えらく早いな。いつもならもっとテンションアゲアゲじゃねえか

アラン;すっごいいやな予感がするんだよ………生命の危機的な

グレン;ふーん。よし、行くか!

アラン;オイコラてめぇ人他人事みたいに言いやがって!

グレン;実際他人事だしな。まぁなんかあったら作者ボコればいいだろ

作者(え…………?)

アラン;それもそうだな。じゃあいくか!

グレン&アラン;どうなる第21話!どうぞ!

作者(え、了承しちゃうの?俺がヤベーイ!今から修正しなくてh)


「異議あり!」

 

静まり返り、厳粛に式が行われていた教会内が一層静まる。

 

「な、なんだね君は!」

 

壇上で式を執り行っていた神父も突然の大声に驚き、目を見開いている。

俺の左右に座っていたリィエルとルミアも、一瞬驚いた顔を浮かべたが、すぐに安堵の笑みを浮かべた。

グレンが来た。

それだけで俺らにとっては安心要素足り得るものなのだ。

 

「異議ありっつってんだよ。俺はこの結婚に大反対。」

 

そういいながらカツカツと靴を鳴らし、独身のグレンがヴァージンロードを歩いてくる。

いや、童貞だろうしドウテイロードか?なにそれダセェ。

そんなことを考えてる間にグレンは壇上まで踊り上がり、こう告げる。

 

「というわけで白猫こは貰ってくぜ!あ〜ばよ童貞寝取られクソ野郎!」

 

とんでもない下ネタを撒き散らしながらシスティをお姫様抱っこし、颯爽とドウテイロードを走り抜けて行った。

 

「…………しゃーない。俺も行くか。」

 

俺は椅子から立ち上がり、「当初の予定通り」グレンの背中をおった。

 

「はあ………くっそダルいけど行きますか。」

 

さて………なぜ俺がこうして背中を追って走っていったか。

その理由を話すためには時を少々遡らねばならない。

あれは1万………いや、114514年前の話だったか……

まあそんなはずはなくたった1週間2週間前の話なのだが。

 

────────────────────────

 

「この〜!待ちなさ〜い!」

 

「はん!待てと言われて待つくらいなら最初から逃げとらんわこの阿呆!お前は馬鹿か!」

 

「生徒に金を錬金させて売ろうとしてる馬鹿に言われたくないわ!」

 

受勲式も終わり、普段通りの平穏な日常の中。

 

「ふぅ……今日も平和だなぁ」

 

今日も今日とてグレンがやらかして逃げ、システィが魔術を撃ちながら追いかけるという、一見すれば「なんだこいつらたまげたなぁ……」となる全く平和ではない光景が始まっていた。

だが、俺を含めた生徒全員もこの光景に慣れたので、一瞬気を取られるも、「あぁ。なんだいつものやつか」と流し、普通に生活していた。

…………まぁ裏を返せばそんだけグレンがやらかしているということだから教師として大丈夫なのかという疑問は湧いてくるのだが。

 

しかしまぁ、今日は少々違った。

いつもならグレンが撃ち抜かれて説教くらってお終い………となるのだが、今日はグレンが逃げる前方に1台のいかにも高級そうな馬車が止まっていたのだ。

 

「うおぉぉぉぉぉ!あっぶねぇ!」

 

それに気づいて急ブレーキをかけ、ぶつかる寸前で急停止したグレンとそれを嗜めて謝るシスティ。

だが、馬車の御者は無言を貫き、馬車からは人が降りてきた。

その人はいかにも「The貴族」といったようなスカしたスーツに身を包み、目深に帽子を被っていた。

 

「まさかここに来て初めに貴女に逢えるとは……流石の私でも運命を信じてしまうかもしれませんね。」

 

貴族らしく嫌味な文句の1つでも言うのかと思えば、いきなりキザなセリフを放ってきた。

 

(なんだあいつ………変人の類か?)

 

しかし貴女に逢えるとか言ってたから知り合いなのかもしれん。

近づきながらそう考えていると、何やら揉め始めた。

グダってたので話を今北産業すると、

 

・名前はレオス=クライトス。その名の通りクライトス家の息子

・講師として学院に招かれた

・システィの許嫁である

 

ということだった。

 

「おや。貴方は?」

 

どうやらいつの間にか近づき過ぎていたらしい。付かず離れずの距離から静観しようと思ってたんだがな………。しゃーない。

 

「俺はアラン=ジョーゼフ=エミヤだ。システィとは……うん。仲のいい友人だ。別にお前から盗ろうなんて考えてねえから安心しろや。」

 

「そうですか。安心しました。」

 

それ以降も少し話したのだが、まるで興味を無くしたように淡白だった。

が、システィと話す時はやたら饒舌で若干引いた。

 

「ねぇレオス。早く私も紹介して頂戴な。」

 

「ああ。悪いね。さ、出ておいで。」

 

どうやら馬車にはもう1人乗ってたらしい。

声からすると女性だろうか?

 

トントンと靴底で床を踏んで降りてきたのは、予想通り女性だった。

その女性は小柄だった。が、柔らかな金髪を持ち、頭には帽子を被っていた。どことなく人形っぽい印象を受けるその少女は、ゆっくりと恭しくお辞儀をすると、自己紹介を始めた。

 

「初めまして皆さん!私、聖リリィ魔術女学院に通ってるアビゲイル=ウィリアムズ=クライトスと申します!アビーって呼んでください!」

 

「ちなみに義理の妹だよ。」

 

アビゲイルと名乗ったその少女は、まるで太陽のように明るい笑みを浮かべながら挨拶をした。

レオスの発言は無視されたが。

 

「お、おおお……眩しいぜ……………」

 

「尊い…………」

 

「オオォォォォ!貴女が神かァ!」

 

たった一言挨拶しただけで周りの男子がこうなったのだから、その可愛さは伺い知れよう。

 

「じぃーっ………」

 

だが、次の瞬間、周囲は凍りついた。

アビゲイルの取った行動によって。

 

「貴方………すっごい素敵だわ!そんな感じがする!」

 

そう言い放ったアビゲイルは小柄な身体を精一杯伸ばし…………………

 

 

 

 

俺の頬にキスをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「キャーーーー!」」」」

 

「「「嘘だろォォォォォォォォ!」」」

 

周囲の空気は一瞬静まり返り、次の瞬間爆発した。

女生徒は急に形成された恋愛な感じのムードに興奮して嬌声を上げて色めき立った。

一方男子生徒はそのムードに当てられて血を吐くほど悔しがっていた。

 

そしてその渦中にいる俺(童貞)はどうしたか。

 

「ふっ………大丈夫。致命傷だ。」

 

そういって鼻血を出しながら倒れた。




アラン;やっぱ予感的中じゃねえかボケカスゥゥゥゥゥ!「鶴翼三連」!

作者;おいこらまて落ち着け話をs(首切断)

キーボーオーノーハナー

作者;次回の投稿まで!(ダイイングメッセージ)


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第22話 違反?ルールに書いてないだろう?

どうも。物凄いお久しぶりなよこちょです。
長い間更新できずにすみませんでした。
色々リアルの方が立て込んでおりまして…………。
これからもこんな風に遅れることがあるかもしれませんが、そのときは大目に見てください………。
では、お待たせした第22話、どうぞ!







………あ、いつもの茶番は後書きにあるよ!


俺がアビーにズキュゥゥゥン!されてから数日。

俺は周囲からの興味の目線に耐えつつ登校していた。

 

「ねえねえ!今日のお昼一緒に食べましょう!私作ってきたのよ!」

 

理由は至極簡単なことだ。

突如現れたイケメン講師レオスとその可愛らしい妹アビゲイル。

レオスはシスティの許嫁、アビーは唐突な頬キスとくれば興味を持たない人間はいないだろう。

しかし、それだけではない。

 

「あ、アラン君!え、ええっと……私も作ったんだけど一緒に食べない?!」

 

えらいテンパりながら対抗するかのようにくっついて来るルミアの存在である。

アビーだけでも十分目を引くのに、さらにルミアまでいるのだ。

おかげで俺は動物園の珍獣の如く見られている。

 

(…………はぁ。これからどうすっかねぇ。)

 

頭を悩ませつつ、学校へと若干早足で行くしかない俺であった。

 

────────────────────────

 

なんとか今日も登校を終えた俺は現在、ルミア達と連れだって学院で1番でかい講堂へと来ていた。

劇場のように階段状の造りになったその講堂は現在授業を行っているレオスの声を充分に増幅させ、集まった全ての生徒に声を届けている。

授業内容は「軍用魔術理論」というものである。

「魔力を術式で魔術に変換する際にどれだけ効率よく変換されるか」というのを非常にわかりやすく教えていた。

まるでグレンの授業のようだ。

 

「すげぇ……」

 

そのグレンもこの授業には感じ入るものがあったらしい。

 

「いつも通りすごい授業だわ。流石お兄様。」

 

アビーも得意顔である。

かくいう俺も魔術は苦手で変換効率などさっぱりだったが、この授業内容を理解出来ているので、自慢げになるのもしょうがないだろう。

………だが、この授業は突き詰めれば「どれだけ効率良く破壊ができるか」という物だ。以前レイジさんから言われた「力の使い方を間違えるな」という言葉がある俺ならともかく、力を持つのに憧れる俺らの歳にこれは早すぎるのではないだろうか。

 

「やぁ。システィーナ。どうでしたか?私の授業は。」

 

おっと。噂をすればなんとやら。そう考えているうちにご本人様の登場だ。

相変わらずのイケメンフェイスで俺の中ではギルティ。イケメンに慈悲はないのだ。

そして俺らどころかアビーにも声をかけない辺り、相当システィにご執心のようだ。けっ( ・´ー・`)

 

「れ、レオス……。……そうね。非の打ち所のないいい授業だったと思うわ。」

 

システィも顔を赤らめて答えている。

おやおや?これは2人が腕をとりあってヴァージンロードを歩くのを見られる日も近いのではないだろうか?

 

「それはよかった。将来の伴侶にも納得してもらえる授業ができたようですね。」

 

「れ、レオス!どうして貴方はいつもこうなのよ……」

 

ふうむ。どうも気に食わんな。いや、別に嫉妬してる訳じゃない。ホントダヨオレウソツカナイ。

 

「2人で一緒に散歩でもしませんか?」

 

そして散歩のお誘い。

普通に見れば仲睦まじいカップルが予定を立ててるように見えるだろう。

だが、俺の目にはその光景がまるで透明な蜘蛛の糸が少しずつ伸びているように見えた。

何故だろうかと考えながらその光景を見ていると、俺の制服の裾がちょいちょいと引っ張られた。

 

「ん?どうした?」

 

引っ張ったのは、アビーだった。

 

「………ちょっと、お時間いいかしら?」

 

 

────────────────────────

 

そして俺らは連れ立ち、学校内の空き教室へと来ていた。

 

「んで?わざわざどうした?」

 

「………実は、お兄様のことで相談があるの。」

 

お兄様……レオスのことか。

 

「レオスがどうかしたのか?」

 

「変……っていうのかしら?なんか前と少し違う感じがするの。」

 

「変?」

 

俺からすれば容姿端麗で可愛い妹を持ち、女子にモテモテ。さらに貴族とかいう生まれながらのチーターが存在する時点で変なのだがな。

天は人に二物を与えないんじゃなかったのか。俺なんか下半身にあるイチモツくらいしかねえぞ。

………っと。話が逸れたな。

 

「うん。なんか、心ここに在らずっていうか関心が薄いっていうか………とにかくちょっと前と違うの。」

 

「なるほどなぁ。……分かった。ちょっと調べてみるわ。」

 

「本当!?ありがとう!」

 

パアァっと明るい顔になり嬉しそうに笑うアビー。うむ。可愛い。

 

「んじゃ、そろそろ休み時間も終わるし、教室戻ろうぜ。」

 

「ええ!一緒に行きましょう!」

 

────────────────────────

 

「では今から………魔道戦についても授業を行う!」

 

「「「ふっざけんなぁぁぁ!!」」」

 

教室に戻った俺達を待っていたのは、グレンがキレてレオスに喧嘩を吹っかけてそれに俺らが巻き込まれるという事件(?)だった。なんでも、レオスのシスティに対する物言いにキレたグレンが手袋を投げつけ、決闘することになったのだとか。

 

「ええい黙らっしゃい!」

 

皆の不満を一喝して沈め、教師権限で授業を強行した。

 

「では授業を始めよう。まず最初に言っておく。戦場に英雄は存在しない。」

 

こんな言葉を皮切りに。

 

 

 

 

 

結局座学は程々にして、二人一組の練習をすることになった。

っと、その前にルールを確認しなければな。

 

「えーとなになに?……………なるほど。」

 

確認したが、結構俺には不利だとわかった。

何故なら、使える魔術は初級魔術もしくは非殺傷性呪文のみだったからだ。俺はまだ一節詠唱の成功率が低いため、合戦になれば詠唱速度の遅い俺が確実に負ける。ならば詠唱後の速度を変ようかとも思ったが、それだと異能を使うから確実に怪しまれる。よって、この条件は不利だ。

 

「不味いな…………。これじゃ役に立たん。」

 

どうしようかと策を巡らせつつ歩いていると、森でなにやら小細工をしているグレンと会った。

 

「………何やってんだ?」

 

「ん?ああ、アランか。魔道戦に向けての”準備”だよ。」

 

ニヤリと口端を吊り上げ、不敵に笑うグレン。

 

「いいのかよ、そんなことして。キレられてもしらんぞ?」

 

「知らんな。渡したルールにゃ『森に罠を仕掛けてはいけません』なんて書いてねえだろ?」

 

「確かにな。」

 

なるほど。ルールに書いてなければ大丈夫、か。

 

「…………なぁ、先生。ちょいと俺に策があるんだが。」

 

今考えたアイデアをグレンに伝えると、またまたニヤリと笑った。

 

「いいじゃねえか。それ。できるんなら最強だぞ。」

 

「だから今から試すんだよ。ちょいと付き合ってくれや。」

 

「いいぜ。」

 

そして、俺達は秘策を実現するため、準備を始めた。




アラン;久しぶりだな。

グレン;ホントだぜ全く。あの駄作者散々待たせやがって。

アラン;まぁ、遅れた分は取り戻すとかなんとか言ってたから次回の更新は早目になるだろうよ。

グレン;でないと困るんだがな。ったく。そうこうしてるうちに最新巻出ちゃってるしよぉ。

アラン;全くだ。全然追いついてねえよ。

グレン;まぁそこは追追ってやつだな。っと。長々しゃべってもしゃーねーか。んじゃ、やる事やって閉めるか。

アラン;せやな。投影、開始!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

この後、ズタボロの雑巾のようになった肉塊が発見されたようだが、関係ないだろう。多分。


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第23話 別に、あれを使ってしまっても構わんのだろう??

グレン;よう皆。いつも通りのグレンだ。

アビー;アランの代理のアビーよ!アランは今魔道戦に向けて練習中なの!

グレン;道理で姿が見えんわけだ。んで?仕上がりはどんな感じだ?

アビー;バッチリよ!作戦は2つとも問題なさそう。でも私が参加できないのは残念だわ………

グレン;まぁクラスの実力で戦うって言われたからな。条件は対等でなきゃいけなかったんだよ。すまんな。

アビー;大丈夫よ。見るだけでも楽しそうだもの!

グレン;ならよかったぜ。んじゃ、そろそろ本編行くか!

アビー;ええ!どうなる第23話!

グレン&アビー;どうぞ!




先生との特訓を経て迎えた魔道戦当日。

俺たちは校内にある広いフィールドへと集合していた。フィールドは森や丘などの様々な地形が存在し、それをどう利用するかが勝負の鍵となっている。

今目の前では審判をすることになった教師の1人であるハー………ハートフル先生が魔道戦の説明を改めて行っているところだ。ルールや戦略は頭に入っているので半分聞き流していると、隣のシスティから声をかけられた。

 

「ねぇアラン。そういえばだけど一節詠唱できるようになってるんでしょうね?でないと勝ち目ないわよ?」

 

「安心しろ。バッチリできない。」

 

「そう。バッチリなら………って、できないの!?」

 

自信満々で返したら怒られてしまった。

 

「大丈夫だって。我に秘策ありってね。」

 

「………まぁアランが言うなら大丈夫か。」

 

「おう。バッチリだ。安心しろ。」

 

ではここで説明しよう。

作戦その1!巻物で術式を起動待機状態にしといて相手が見えた瞬間ぶち込む!

これが当たれば敵はひとたまりもないだろう。

これ勝ったな(確信)

 

「分かってるとは思うが、魔道具の使用は禁止だ。」

 

「「作戦がァァァァ!」」

 

おのれハー……ハーレム先生め!

魔道具使用禁止とか聞いてねえぞ!

 

「ちょ、アラン!まさか魔道具だけで勝とうとしてたの!?」

 

「あぁ!?しゃーねーだろ!一節詠唱できねえんだからよ!」

 

「だからって道具に頼るの!?」

 

ギャーギャーと言い合いをしていると、相手クラスから失笑や嘲笑の声が聞こえてきた。

 

「えぇ……あいつ一節詠唱すらできないのかよ」

 

「雑魚じゃねえか」

 

「こりゃ楽勝だな」

 

まぁ、当然っちゃ当然だな。言い合いをしているシスティだけでなく、クラス全員がムッとしているのが分かる。

よし、ならば第2プランだ。これで相手を叩き潰してやる。

 

「ふっ。いいだろう。後でその雑魚に負けてもしらんからな。」

 

とりあえず中指立てて挑発してヘイトを向けておこうっと。

 

────────────────────────

 

「よし、全員配置についたな。」

 

耳にはめた通信用の魔道具から先生の声が聞こえる。

ちなみに俺の配置場所は小高い丘だ。ここを相手に抑えられたら狙撃され放題になるので、相手は絶対にここを狙ってくるはずだ。煽ってヘイトも稼いどいたしね。

 

「んじゃ、避けるのは頑張れよ?リィエル。」

 

「ん。任せて。」

 

俺はリィエルと二人一組を組んでいる。といっても二人とも全然魔術が得意じゃないので形だけの二人一組だが。

 

 

 

「では用意………始め!」

 

開戦の合図が鳴り響き、双方行動を開始する。

しばらく待っていると、予想通り結構沢山の人が来た。総数12人。

3人1組という魔道戦において最もメジャーな編成でやってきたようだ。

 

「おいおい!丘に2人しか居ねえぞ!」

 

「っしゃ!ここは頂きだ!」

 

相手がそんな下っ端雑魚のようなセリフを吐きつつ魔術を撃ってくる。

が、リィエルには効かない。

 

「ん。」

 

フラリフラリとその場で動き回り、あるいは 【フィジカル・バースト】を駆使して迅速に動か周り、すべて回避しているからだ。さすがは軍属なだけあり、身のこなしは一流だ。

 

「くっ!当たんねえぞ!」

 

「こうならあっちの雑魚だ!やるぞ!」

 

おっと。漸くこっちを向いたな?

 

「投影、開始!」

 

地面に手を付き、錬金術の振りをしながら投影をする。

投影したのは1本の長槍と1振りの短剣だ。

 

「あいつ錬金術で対抗するつもりだぞ!」

 

「あれで攻撃できねえのに馬鹿なやつだ。撃て!」

 

ビュンビュンと空気を裂き、【ショック・ボルト】やら【スタン・ボール】やらが飛んでくる。

流石はレオスの仕込んだクラスだ。魔術の速度が早い。でもなぁ……

 

「こいつらの前にゃ無力だぜ!」

 

長槍を振り回し、短剣を魔術自体に突き刺して魔力へと還す。リィエルが避けきれなさそうな魔術に短剣を投げつけ、打ち消す。

 

そう。これが俺の作戦2。投影した長槍の宝具「破魔の紅薔薇」(ゲイジャルグ)と短剣の宝具「破戒すべき全ての符」(ルールブレイカー)の2つを使い、撃ってきた魔術そのものを無に返すというこの場では俺にしかできない戦法だ。ゲイジャルグは触れてる間しか効果を発揮しないので、保険程度にしか使えないのが難点だが。ちなみにさらに保険として熾天覆う七つの円環(ローアイアス)を貼る準備をしているので、ほぼ突破は不可能だろう。

 

「フハハハハハハハハァ!無駄無駄無駄無駄ァ!」

 

どこぞの吸血鬼のごとき叫びを上げながら槍と短剣を振り回す。勿論、その合間3節詠唱で魔術を放つのも忘れない。当たりはしないが、牽制くらいにはなっている。

 

「あいつ雑魚じゃなかったのかよ!」

 

「おい皆!指示が出た。撤退だ!一旦引くぞ!」

 

「ちっ!たった2人相手に撤退かよ!」

 

それを続けていると、相手も諦めて一旦撤退してくれたようだ。

ふむ。少し暴れ足りないがまあいいか。

 

「うし。なら一旦休憩だ。」

 

「ん。」

 

とりあえず相手が来るでは休憩しながら待ちますかねぇ。

 

────────────────────────

 

視点かわってこちらはレオス陣営。

指導者であるレオスは血相を変え、ブチ切れながら指示を出していた。

ブチ切れた理由は言うまでもない。

 

魔道戦という舞台に武器を持ち込み、それで無双しているアラン。

指導者なのに前線で指揮を取り続ける上、ブービートラップで生徒を足止めするグレン。

 

この2人の異質さと魔術師としてのプライドのなさにイライラしているからである。

しかもその2人に思うように翻弄されているというのも怒りに拍車をかけていた。

 

「くっ!またですか!」

 

だが、怒りながらも的確に指示を出し、巻き返して行った。

 

「貴方達の思うようにはさせませんよ!」

 

────────────────────────

 

試合はどんどん泥仕合と化していった。

 

魔力が尽きてその場に倒れる者。

なりふりかまってる余裕も消え、がむしゃらに魔術を放つ者。

体力に限界が来たところを撃たれ、動く元気もなく倒れ伏す者。

 

そんな状態が一体どれほど続いたか。

 

「そこまで!双方の損失が8割を超えた!よってこの勝負、引き分けとする!」

 

結局勝負は付かないまま、引き分けという形で幕を下ろした。

 

 




はい。というわけで宣言通り早めの投稿です。
ところでルールブレイカーについて、撃たれた魔術を消せるかという点についてです。
…………すみませんここは独自解釈です。
というのも、改めてstaynight見直してみたんですが自力ではメディアが魔術に対して使ってるのを確認できなかったからです。本来使えなかったとしてもそこは目を瞑りながらも教えていただけると幸いです。

感想コメント等お待ちしております!
では、次の投稿まで!


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第24話 違和感

アラン;おっす皆。唐突だが最近ここで言うことがなくなってきたZE☆

グレン;だろうな。付け焼き刃のコーナーだし。

アラン;まぁここで俺らが出るのが飛び飛びになったら……察してくれ。

グレン;だそうだ。あとで作者は血祭りに上げとくから勘弁してくれ。んじゃ、本編行くか!

アラン;あいよ!どうなる第24話!

アラン&グレン;どうぞ!


「そこまで!双方のチームの損失が80%を超えた!よって引き分けとする!」

 

審判の先生の号令が聞こえた瞬間、皆疲れからその場に突っ伏す。皆の口から「疲れた〜」とか「生き残れたぞー!」とかいった声が聞こえた。

 

「おつかれさん。リィエル。」

 

「ん。アランもおつかれ。」

 

俺は皆と少し離れたことろにいたのでとりあえず合流し、お互いの健闘を讃えあっていた。

 

「よう皆。お疲れ。」

 

そういってグレンも近づいてくる。それにしても喧嘩ふっかけた張本人が1番怪我してないってどういうことなんだ………

 

「でもいいのか?勝てなくて。」

 

ふと疑問に思い、声をかけてみた。

 

「あぁ。問題ねえよ。それに………」

 

どこか含みのある言い方をしながら、チラリと相手陣営の方を見やった。釣られてみてみると、レオスがクラスメイトを大声で怒鳴りつけているところだった。

だが、鬼気迫るその表情とは裏腹に、顔は青白いを通り越し、もはやを疑うレベルで顔色が悪かった。

 

レオスの態度を見かねたグレンが近寄り諌めるが、全く効果はないようだ。

 

しばらく言い合っていたが、レオスが手袋を投げ、グレンに決闘を挑んでいた。

そしてグレンもそれを受け入れていた。

 

(………妙だな。)

 

だが、俺はその様子を少し奇妙に感じていた。

なにせ、レオスは貴族なのだ。

貴族が勝手に女性を掛けて一般人相手に勝負し、負けた。それだけでなく、それでも尚諦めずにもう一度勝負を仕掛けている。

この行動は完全に自分の家の名声に傷を付けるだろう。しかも独断で行っているので、非難の目は自分に向かうともわかっているはずなのだ。

 

(なのに何故こんな行動を………?)

 

思考の海へと潜り込んでいた俺は、パンッ!という音で我に返った。

音の発生源を見遣ると、システィがグレンにビンタをかましていたところだった。

 

「………嫌いよ。貴方なんか!」

 

そう涙ながらに言い残し、去っていった。慌てて後を追うルミアを尻目に、俺は一旦帰ることにした。

当然、残りの授業はサボることになる。

だが、今は俺の内申よりもこの不安感を拭うのが先決だ。

 

(………この嫌な予感が当たんなきゃいいんだがな。)

 

────────────────────────

 

家へ帰ると、ちょうどシロウがいた。

どうやら、王都での仕事には方がついたらしい。

 

「今日は随分と早いな。まさかとは思うが、サボった訳では無いだろうな?」

 

「いや。サボった。」

 

そう言うと額に青筋を浮かべられた。

やべぇキレられる

 

「お前と言うやつは………。……まぁいい。それより、なにか理由があるのだろう?話してみろ。」

 

「よくわかったな。アンタエスパーか?」

 

「そんなわかりやすい顔をしていれば誰でもわかる。ほら座れ。今お茶を入れる。」

 

「あぁ。」

 

手渡されたお茶を1口啜る。

お茶は東方の国の緑茶だった。

お茶の温かみがお腹を通じて喉を温め、口を滑らかに動かかせる。

俺は、学園で起きたことを全て話した。

すると、しばらく考え込むようにしていたシロウが口を開いた。

 

「……俺が王都に行っていた理由と関係がありそうだな。」

 

元軍属のシロウを呼び出す案件と関係があるなら、事態はかなり深刻なことらしい。

 

「おそらくだが今回の件。天使の塵〈エンジェルダスト〉と呼ばれる薬物が原因だろう。」

 

「エンジェルダスト?」

 

「あぁ。人工的に作られた魔術薬剤の一種と考えてくれていい。」

 

天使の塵〈エンジェルダスト〉は、投与者の肉体にかかったストッパーを外して肉体の限界を超えた動きをさせ、命令に逆らうことの無い兵士を作るために開発されたものらしい。

だが、副作用として理性の消失や人格の破壊もしくは完全掌握などがあるために封印されたのだという。

 

「でも封印されたんだろ?なんであるんだよ。」

 

「そのはずだ。だが………1人だけ。1人だけそれを作れる奴に心当たりがある。」

 

「誰なんだ?」

 

「……ジャティス・ロウファン。かつて軍属していた外道魔術師だ。コードは【正義】だった。」

 

【正義】のジャティス・ロウファン。

俺はなぜかイライラする感情を抑え、続きを聞いた。

 

「封印されたのに知ってるのか。矛盾してないか?」

 

「いや。正確には知っていた、か。奴はエンジェルダストを使って事件を起こしてグレンに殺されている。」

 

「死んだんだろ?墓場から復活でもしたのか?」

 

「魔術的に死亡を隠蔽する手段など幾らでもある。それに引っかかってしまったんだろうな。」

 

死んだはずのやつが牙をむく、か。

まるでB級のゾンビ映画だな。

 

「………なぁ。これについてグレンは知ってんのか?」

 

「今アルベルトが伝えに行ってるだろうから、そろそろ知るはずだ。」

 

「成程。んじゃ、大丈夫か。」

 

グレンは強い。

事件が起きたことを前提として動けるならばそう易々とやられたりはしないだろう。

そう考え、ひとまずこの件は一旦保留にしておくことにした。

 

………その考えが甘いとも知らずに。

 

 

 

 

 

 

「………それはそうと、サボった罰だ。稽古を付けてやるから表にでろ。」

 

「うへぇ………」

 




前書きのネタが無い(困り顔)
ついでにいえばあとがきのネタもない。

さて困った………なにか案あります?(丸投げ)
やってほしいことがあったらコメントください


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第25話 魔女幼女

はいどうも。よこちょです。
え?いつもの2人はって?(´∀`)キニスンナ!

さて、ほんへとは全く関係ないですがジオウ始まりましたね。
ネタバレ注意⚠
個人的にはビルドの時系列が前過ぎてライドウォッチを戦兎が初見だったってのが気になりましたね。映画でのあれはなんだったんだよ…………


さて、俺の感想はおいといて、ジオウ見たよーってひとはコメントしてってください(露骨な以下略)

では、どうなる第25話!どうぞ!


「………は?昨日グレンが来なかっただ?」

 

「うん………。」

 

俺は1日学校を休み、シロウに特訓を付けてもらったから知らなかったのだが、どうやら、グレンは昨日学校に来ていないらしい。

しかも、それを好機と見たのかレオスが不戦勝という形でシスティと結婚を発表。今週末に挙式するということが本人の口から伝えられたらしい。

もはや家の名誉をごみ箱にでも捨ててきたのではないかとも思える所行に思わず眉を顰める。

だが、相手がここまでやるというのならば、こちらもそれ相応の対応を取らねばなるまい。

……ちなみに、俺は特訓で漸くではあるが熾天覆う七つの円環の花弁を全部展開できるようになった。遅すぎィ!あと投影の速度も上がった。

まぁ微々たる変化でしかないのだが。

 

「それに……システィの様子もおかしいし……」

 

そっちも詳しく聞いてみると、システィはレオスに何か弱みを握られてるかも知れないというのだ。

なんでも結婚の件でシスティと喧嘩したらしく、その最中にそれっぽいことを言ってたらしいのだ。

システィが迂闊に動けなくなる弱みと言うと………身近な人間の弱みか?

心当たりがあるとすれば俺の過去かルミアかリィエルの素性といった所か。

 

「どっちにしろ、グレンに会ってみないとな。」

 

「あ、それなら昨日会いに行ったよ。」

 

「行動早すぎるだろ………」

 

「いてもたっても居られなくなっちゃってね………昨日の夜のうちに会いに行ったんだ。」

 

「んで?なんて言ってたんだ?」

 

「最初はびっくりしてたけど、事情を説明したら『任せろ』って言ってた。」

 

「そうか。………じゃあ、信じてまってみよう。」

 

俺はとりあえず待つことを選んだ。

グレンは俺らが動かない前提で事を進めてると思うから、それを邪魔しちゃダメだしな。

 

(だから…………頼むぞ。グレン。)

 

────────────────────────

 

日付は遡り、1日前。つまり、魔道戦が終わった後の出来事である。

 

「クソっ!あのグレンとかいう男め!あんな卑怯な手を使いやがって!」

 

相も変わらない顔色の悪さで悪態をつくのは、魔道戦で敗北したレオスだ。その横では、アビゲイルが義兄を心配しながら座っている。

 

「まぁまぁ。グレンとはそういう男なんだよ。十中八九負ける試合でも必ず最初に残りの1を引くんだ。」

 

馬車を運転している、目深に帽子を被った御者がそう言う。

何故、御者の青年が軍属していたグレンの過去を知っているのか。

そんなことも気にせずに問答は続く。

 

「……随分と彼を買っているのですね。」

 

「そうだね。でも君が気にすることではない。」

 

「……そうですね。」

 

自分から話を振っておきながら、不自然な程にあっさりと引き下がる。そんな奇妙な問答を繰り返すと、

 

「だが、もう君はタイムアップだ。既に天使の塵は限界投与量を超えた。」

 

そう言った瞬間だった。

レオスが苦しげに呻き声を上げ、喉を掻き毟った。

皮膚が破け、血が流れだした。その血の色はどす黒く、まるで死人の血液のようであった。

やがて、突然と動かなくなり、喉に外から手を突っ込んだまま息絶えた。

 

「ヒッ!お、お兄様!」

 

隣のアビゲイルは今の出来事に戦慄し、ガクガクと震えていた。

 

「そう、レオス。君は時間切れだ。だが、」

 

震えるアビゲイルにゆっくりと振り向き、ニッコリと笑う御者。

 

「君は違う。君も犠牲者には変わりないが……君に天使の塵は使わないよ。」

 

そう言い、小型の銃のようなデバイス─トランスチームガンを手にする。

 

「君はアラン=ジョーゼフ=エミヤの囮だ。感情や人間の顔を持った囮というとびっきりの、ね。」

 

そう。この男はアビゲイルの心にある感情─即ちアランに対する淡い恋情を悪用する気だった。

 

「や、やめて!嫌……………嫌ぁぁぁぁぁ!」

 

カチリという音とともに、先端から煙─ネビュラガスが排出された。

その煙はみるみるうちにアビゲイルの全身を覆い尽くして、感情を暴走させていく。

 

 

 

あの人は………なんで私だけを見てくれないの………?

 

 

 

 

 

私が弱いから?周りの女の子達よりも魅力がないから?

 

 

 

 

 

 

…………じゃあ、殺しちゃおう。

みんなみーんな殺しちゃえば、私、強いよね?

私が1番になるよね?

 

 

 

 

あの人も殺せれば………私が1番になれる。

 

 

 

 

だから………待っててね?

 

私が殺して

愛してあげる

 

 

 

 

 

膨大な感情の増幅に怯えた馬が、教会の前で歩みを止めた。

だが、感情の増幅は止まらない。

暴走した感情に呼応するかのように、全身が変化していく。

髪と肌は、まるで元の人格ごと漂白するかのように真っ白になっていく。

目は狂気の色に染まり、体からは「絶対に逃がさない」という意思の表れの如く触手が大量に生えた。

ぞわりぞわりとまるで一本一本が自我を持っているかのように這いずり回る触手は、見るもの正気を奪い取る。

触手が馬を取り込み、さらに大きく太く成長し、アビゲイルの身長を超えた。

 

その姿は──まるで狂信の果てに堕ちた魔女のようであった。

 

 

「ハッハッハ!こうまで変化するとは!こんな変化は流石に『計算できなかった』よ!」

 

御者は被っていた帽子を脱ぎ捨て、トランスチームガンを放り投げて高らかに笑う。

 

「さぁ役者はそろった!今度こそ僕の『正義』が正しいと証明してみせるさ!ハッハッハッハッハ!」

 

元コードネーム「正義」の男、「ジャティス=ロウファン」は、そう宣言した。

 

それを見ていたのは、物言わぬ骸と成り果てたレオスの死体と、狂気に染まったアビゲイルの涙に濡れていた双眸だけであった。

 




ちなみにアビゲイルは最初から敵として出てもらう予定でした。だがここまでヤンデレ化するとは想定外だった…………
あ、ちなみに俺自身はアビーちゃん大好きなんでそこは勘違いしないでくだせぇ。

ではでは、次の投稿まで!チャオ!(マスター風挨拶)


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第26話 多分、誰もここまでが回想だって覚えてない。(確信)

アラン;ですよねぇ。流石に覚えてないわな。

レイジ;さすがにな。

アラン;うおっ!レイジさん!?なにゆえここに?

レイジ;まえがき、よやらの代役だ。グレンは今居ないんだろう?本当はもう1人、ちっこいのを呼ぶ予定だったんだがな。

アラン;ちっこいの……?

レイジ;ああ。なんでも、「まだ仕事が片付いでないから儂は行けぬ。」だそうだ。

アラン;ちっこいのにジジイ言葉か………謎すぎるぜ。っと、喋りすぎたか。そろそろあれ、言っとくか。

レイジ;了解だ。さて、どうなる第26話。

アラン&レイジ;どうぞ!









????;そろそろ出番くるかの?

作者;もうちょっと待っててください。(土下座)


そして漸く長い長い回想が終わった。

俺は結婚式が行われていた会場を単身で飛び出し、グレンが走っていったと思われる方向へと走っていた。

 

「クソっ………。流石にわからん。」

 

だが、この近辺は裏路地や細い道が多く、完全に追跡しきることは不可能であった。

 

「ハァハァ……一旦休憩すっか。」

 

そう思って壁を背にし、息を整え、思考も整える。

 

(グレンはシスティを抱えてるからそう遠くには行けないはずだ。それに、この事件に天使の塵が関わってるとすれば…………)

 

そう思って辺りを見渡し、集音の魔術を起動させ、耳を澄ます。

10秒ほどそうしていると、少し遠くの方から細い女性の悲鳴と、何者かの咆哮が聞こえた。

 

「あっちか!」

 

即座に【フィジカル・バースト】の呪文を紡ぎ、壁を次々に蹴って天井へと移動する。

そのまま直進し、2つ先の路地裏へと飛び降りた。

飛び降りた先には、グレンとシスティが天使の塵の中毒者複数名を相手取りながら走っている姿が見えた。

 

だが、状況は全くと言っていいほど良くなさそうだった。

 

システィは突然の状況に気が動転しているのか、見た時から一切呪文を唱えようとしていない。しかも呼吸も乱れており、マナ・バイオリズムも最悪に近いであろう。あんな状態では咄嗟に対応することができなさそうだ。

一方のグレンは【ウエポン・エンチャント】で強化した拳や飛び道具やら銃やらの魔術に頼らない武器で応戦してはいるものの、体力的にも残りの道具の量的にも限界が来そうである。

 

(なら………取る行動は一つだ!)

 

「『投影、開始!』」

 

屋根から飛び降りつつ、弓矢を投影して限界まで引き絞り、中毒者の頭目掛けて素早く放つ。

完全な死角である上からの攻撃に対応出来ず、中毒者は頭に矢が刺さって倒れ伏し、そのまま死亡した。

 

「っしょっと。おい、無事か?」

 

「ああ。サンキューな。」

 

「だ、大丈夫よ。」

 

「………いや、グレンは兎も角、システィは大丈夫じゃなくないか?顔色悪いし。」

 

マナ欠乏症になる程魔術を行使していないはずのシスティの顔は真っ青になっていた。加えて両腕で己を抱えており、全身は少し震えていた。

その様子は、何かに怯えているようであった。

 

「だ、大丈夫よ!ちょっと驚いただけ。」

 

「そう言われても………ッ!危ない!」

 

頭上から殺気を感じゅ、ドンッとシスティをグレンの方へと突き飛ばし、自分もその反動でその場を離れる。

すると、離れた場所へと紫色の大きな触手が接近し、石畳をまるでウエハースの様に砕きながら突き刺さった。

 

「あっぶねぇな!誰だ!」

 

そう叫びながら上を見ると───完全に予想外な人物が立っていた。

 

「あ、アビー!?」

 

髪や肌の色に差異はあれど、そこにいたのは紛れもなくアビーことアビゲイル=ウィリアムズ=クライトスであった。

 

「見つけたわ!さぁ死んで!今すぐ死んで!早く死んでぇぇぇぇ!」

 

(なんだこれ!?今までと全然様子が違うぞ!?)

 

だが、そこにいたアビーは前までの優しく元気な様子はなく、代わりに狂気に満ちた悪魔のような様子だった。まるでバーサーカーのようだった。

 

「先生!早くシスティ連れて走ってくれ!」

 

「で、でもお前一人じゃ!」

 

「俺はこれ使うから問題ない!」

 

腰にビルドドライバー装着しながらそう言うと、渋々ではあるが納得してくれたようで、システィと一緒に更に路地の奥へと走っていった。

 

「さて、と。気は進まないが………やるしかないか。」

 

迫り来る触手をステップで避けつつ、フルボトルを振ってビルドドライバーへと刺す。

 

『ラビット!タンク!ベストマッチ!』

 

『Are you Ready?』

 

「変身!」

 

『鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イエーイ!』

 

「さぁ、戦闘開始だ!」

 

赤と青の戦士─仮面ライダービルド ラビットタンクフォームへと変身し、彼我の距離を詰めるべく走り出す。

強化された脚力で一気に距離を詰め、まずは軽くパンチを放つ。

だが、その拳は何か硬い物質によって防がれた。

 

「ってその服、触手で編んであんのかよ……道理で硬いわけだぜ。」

 

そう。防いだのは触手によって編まれた強固な服であった。

素材が何で出来ているかは分からないが、恐ろしく硬いということは事実だ。

ならば──

 

「切断を試すか!」

 

触手とて肉でできていることには変わりない。

ならば斬ってみよう。

そう決め、即座に「ビートクローザー」と「四コマ忍法刀」を出し、二刀流で斬り掛かる。

 

「アァァァァァァァァ!!」

 

おぉ。効いてるっぽい。

触手の何処に口があるのかは分からないが、悲鳴を上げているところを見るに拳打よりも斬撃の方が効くと見た。

そうして何度も斬りつけていると、漸く1本触手を切断できた。

 

「ギャアァァァァァァァ!」

 

金属を擦り合わせた様な怪音と粘液らしき液体を吐き散らし、滅茶苦茶に暴れ回る触手。

辺りの建物の壁を破壊しながらも俺と距離を取った。

 

「ちっ。そう簡単に殺らせちゃくれないか。」

 

早いところあの触手を倒してアビーを救出しなければ俺は兎も角、アビーの体力が持たないだろう。

だが、情報のない今、下手に動きすぎて倒す手段を失っては元も子もない。

 

ならば、接近して弱点ないし打開策を見つけなければ。

 

そう考えて剣の柄を握り直し、再び接近を試みる。

 

迫り来る触手を切り払い、時に投影魔術で爆晶石を叩きつけてぶっ飛ばしながら進み、アビー本人に組み付く。

そして弱点を探すべく身体中を見渡す。

 

(弱点らしい部分…………。あ、これって!)

 

探してみると、触手は服の上から生えている─要は強化外装のようなもの─であると分かった。

つまり、この付け根さえ破壊できればアビー本人は無傷とは言えずとも無事に救出できるという事だ。

 

(なら…………後ろに回り込むしかないな。)

 

後ろに周り込むならば、小回りが効くほうがいい。ビルドでは若干不利だ。

そう考え、距離を取ってから変身を解除。

防御面がかなり不安にはなるが、これで後ろには回り込みやすいはずだ。

 

「『投影、開始!』」

 

干将莫耶を投影し、先ほどよりも数段遅い動きで肉薄する。

それを好機と見たか、触手が俺にしっかり狙いを付けて襲いかかってきた。

だが──

 

「想定内だ!」

 

速度が遅くなれば集中攻撃してくるのは目に見えていた。

ならばどうするか。

 

「『我、時の頸木より、解放されたし』!」

 

黒魔「タイム・アクセラレイト」を使用した反動で視界がモノクロへ反転し、周囲がゆっくりと動く。

当然触手もゆっくりと俺へ狭ってくるので、対処は簡単だ。

迫る触手を紙一重で避けつつ先へ進み、後ろへ回り込む。

が、回り込んだ時点で「タイム・アクセラレイト」の効果が切れ、反動で今度は自分の時間が遅くなる。

その隙を逃すはずもなく、再び触手が迫ってきた。

 

(くっ………若干時間が足りなかったか!)

 

先程より素早く見える速度に対応できず、触手に絡み取られ、地面へと組み伏されてしまった。

 

「グゥッ!」

 

生身で締め付けられているせいで気道と肺が圧迫され、空気が押し出された。

呼吸もままならず、頭もふらふらしてきた。

触手は相変わらず気持ちの悪い声を上げている。どっからこんな声出してんだか。

 

(………なんて考えてる暇ねぇな。どうにか抜け出さねえと。)




若干切りが悪いですが、ここで切らないと長くなりそうなので切らせていただきます。すみません。
あと、もう1人のお借りしたキャラ(一応名前伏せ)はもう少し後に出てきますので、お待ちください。
では、次の投稿まで!


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第27話 逃げた先の背中

アラン;……おい、作者。なんでこんなに投稿が遅れた?

作者;ふむ。テストがあることをすっかり忘れてて勉強し……もうひとつの作品を書いてさらに遅れ……そして興が乗らず書けなかったから……。そうか、私のせいだ。ハッハッハ!アラン君!全部私のせいだ!アッハッhブゴゥ!

アラン:ふぅ。ゴミはゴミ箱にっと。……というわけで遅れてしまって済まない。代わりと言ってはなんだが今回は少し長めだ。

グレン;筆が遅いのに作品掛け持ちすっからだ。やれやれ。

作者;すまない……

アラン;なんだ生きてたのか。まあいいや。

グレン;んじゃ、いつものいっときますか。

アラン&グレン;どうなる第27話、どうぞ!


カツカツカツと、路地裏に固めの靴底が鳴る。

はぁはぁと息は切れているが、それでも足は止まらなかった。

 

(…………私、最低だ)

 

走っている人物──システィーナは、走りながら自己嫌悪抱いていた。

そもそもなぜ彼女がグレンと離れ走っているのか。

それは、端的に言えば「逃がされた」からである。

グレンとシスティーナは今回の事件の黒幕であるジャティス=ロウファンと対峙し、交戦しようとした。勿論なけなしの勇気を振り絞り戦おうとしたのだが、ジャティスの狂気に染まった目や殺気立ったグレンの表情を見てしまったシスティーナは、戦う選択ができなかったのだ。

しかもそれだけでなく、グレンの殺気と表情に怯え、あろうことかグレンを拒絶してしまったのである。

最後に言っていた「達者でな」という言葉が耳にこびりつき、反響する。

その結果、「これでいいんだろうか」と言う気持ちと、「仕方がない」という気持ちが心の中で混ざり合い、その感情が今でも足を動かし続けさせていた。

 

「だって仕方ないじゃない!あんな風だとは思わなかったんだもん!」

 

誰に言うでもなく、口から言い訳が零れる。

彼女には、同世代、同クラスの友人と比べても「力がある」という自負があった。それはグレンやアラン、ルミアやリィエル達と共に行動し、事件に巻き込まれて生還するという過去から裏打ちされたものであり、その自負は事実であった。

だが、彼女は知らなかったのだ。自分が矢面に立ち、先陣を切って相手に攻め込むということの恐ろしさを。

故に彼女は逃げ出してしまったのだ。自分を守るために今もジャティスと戦っているグレンを背に。

 

恐怖に追いかけられるが如く走り続けていると、進んでいる道の前方からギリギリと、まるで刃物を擦り合わせるような音が聞こえた。

 

(ッ!まさかアランが!)

 

自分達を行かせる為に単身でアビゲイルを請け負ったアランの後ろ姿が浮かび、足を急がせる。

さっきまで整っていなかったマナ・バイオリズムはいつの間にか整い、腕は自然と真っ直ぐ前に伸びていた。

 

────────────────────────

 

(どうにか抜け出さねえとな……)

 

そうは思うものの、酸欠の頭では思うように思考が纏まらず、疲労で身体も鉛のように重かった。それでも潰されるまいと抵抗してはいるが、剣も体力も一体どこまで持つか分かったものではなかった。

 

(くっそ………何か手はないのか!)

 

「『大いなる風よ』──!」

 

すると、本来聞こえないはずの声が聞こえた。

その声は、まるで実体を持ったように上に居たアビーを吹き飛ばし、壁に衝突させた。

その声の主は─

 

「アラン!!大丈夫!?」

 

─システィだった。

 

「ゴホッゴホッ、し、システィ!?何でここに!?」

 

急に肺に入ってきた空気に驚き咳き込みながらもそう尋ねずにはいられなかった。だってシスティはグレンと一緒に……まさか!

 

「お前グレンはどうした!?」

 

「そ、それは……」

 

アビーが吹っ飛んだ方向を警戒しながらも事情を聞く。すると、さっきよりもまずい状況になっているという事がわかった。否、分かってしまった。

 

「ふぅ……成程な。…………ふんっ!」

 

とりあえず一発システィの頭にチョップをかます。

 

「ぎゅむ!急に何すんのよ!」

 

「何すんのじゃねえ阿呆!助けてくれたのは有難いがさっさとグレンのとこに戻れ!」

 

「で、でも先生が来るなって!」

 

「そりゃお前逃がすために決まってんだろうが。」

 

「だ、だったら尚更!」

 

「それもそうだ。………だがな、システィ。」

 

確かにそうだ。グレンはせっかく逃がす時間を稼いでくれたのかもしれない。わざわざそこに戻っても出来ることはないのかもしれない。むしろ邪魔になるだけということもあるだろう。

だが……

 

「お前はそれで後悔しないのか?」

 

「ッ!」

 

理屈っぽいのは行動しなくていい理由にはならない。例え好意を仇で返すことになったとしても、自分の決めた道を進むべきだ。

システィが息を飲んだ直後、まだ土煙の残る壁から触手が襲ってきた。

双剣再投影し、切り付ける。吹っ飛んだせいで力が弱っているのか、一発で切り飛ばせた。

 

「私は……!」

 

「おいぼやっとすんな!」

 

システィを襲う触手の間に割り込み、こちらも斬り付ける。手応えから考えるに、そろそ復活してきそうだ。

 

「………しゃーない。おいシスティ。お前確か風魔術得意だったよな?」

 

「え?えぇ。そうだけど」

 

「じゃあちょっと頼みがある。『相手の動きを封じるように』風起こせるか?」

 

「できるわよ。」

 

「了解だ。タイミング合わせてくれ。」

 

「わかったわ。」

 

慎重に触手を切り裂きながら、機会を待つ。

1本、2本、3本と、次々斬り付ける。

 

すると、痺れを切らしたのか、相手がこちらへと突っ込んできた。だが、大量の触手もセットで。

 

「よし、今だ!」

 

「了解!『大いなる風よ、集い囲みて、吹き荒れろ』──!」

 

システィの手に魔力が集中し、一気に開放される。開放された魔力は路地裏を吹き荒れる風となり、俺の横を通り抜け、回転する。

 

「キャアァァァァァァァァ!!」

 

当然その風は今襲いかかろうと突っ込んできたアビーに直撃。その動きを封じた。

 

「ナイスだシスティ!」

 

それを合図に俺も駆け出し、黒魔「タイム・アクセラレイト」を発動。

風で動きを封じても尚自我を持って攻撃してくる触手を、更に魔力を流し込んで先ほどよりも擬似加速し、避ける。

 

「うおぉ……おぉぉぉぉ!」

 

全身に掛かる負荷を気合いで跳ね除け、歩を進める。狙いは当然背後の触手の根っこだ。

 

「『投影──開始』!」

 

干将莫耶を投影し、両手で構える。

そして、干将莫耶の使い手であったとある少女の技巧を自分の身に宿した。そして、その少女の宝具を発動する。

 

「『擬似展開 鶴翼三連』──!」

 

追加で2対の干将莫耶を投影し、投げつける。

綺麗に弧を描いて飛んでいく2対の夫婦刀。その軌道は真っ直ぐに首元──ではなく、数本の触手を巻き込んで爆発した。壊れた幻想〈ブロークンファンタズム〉である。

そしてその爆発を避けるように、アビーの背後上空へ瞬間跳躍。そのまま上空から勢いよく干将莫耶を振り下ろし、触手を根元から切断した。

 

「ギシャアァァァァァァァ!!」

 

ドロドロとした粘液を吐き散らしながら煙となり、消滅していく。

──どうやら、ようやく勝てたようだ。

が、気は抜けない。

その場に倒れ伏したアビーにちょっと失礼し、体を調べる。触手があった場所には痕跡すら残らず、また目立った傷も無かった。

 

「ふぅ………。まずは一安心だな。」

 

「アラン!大丈夫!?」

 

「あぁ。問題ない。」

 

ため息をひとつ吐き、ちょっと目を閉じて身体を休ませる。10秒ほどそうしていると、背後から別の足音がした。

すわ戦闘かと身構えると、走ってきたのはルミアとリィエルであった。

 

「アラン君!システィ!大丈夫!?」

 

「…………怪我してない?」

 

どうやら音を聞いて駆けつけてくれたらしい。いい友人を持ったもんだ。

 

「あぁ。俺らは問題ない。………すまんが、アビーを連れて帰っててくれないか?」

 

「うん。それはいいんだけど……先生は?」

 

ルミアが不安げな目をして尋ねてくる。やはりこの場にいないのが心配なんだろう。

 

「まだ戦ってる。今から加勢に行くから心配すんな。」

 

「……私も行っていい?」

 

「いや、リィエルはルミアとシスティ頼む。こっちは俺らでなんとかするさ。」

 

「ん。わかった。」

 

納得しててくれて何よりだ。

…………さて、と。

 

「時間もない。いくぞ、システィ!」

 

「ええ!行きましょう!」

 

「二人とも気をつけてね!」

 

「…………頑張って。」

 

「「おう(ええ)!!」」

 

そう言い、俺は魔力放出を、システィは『ラピット・ストリーム』を起動し、地面や壁を蹴って進む。

 

(待ってろよ………先生!!)

 




作者;アビゲイルファンのみなさんはほんとに済まない………。ちゃんと活躍の場は今後作るから許してくれ………。
あ、感想とか意見くれると嬉しいです。

んじゃ、次の投稿まで!


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第29話 正義と〈正義〉

ルミア;えっと……皆さんどうも。今回担当するルミアです。

リィエル;ん……。同じくリィエル。……ねぇルミア、これなに?

ルミア;前回のあらすじみたいなことしてくれっていわれたんだけど……どうしよう?

リィエル;前回……?なにそれ?

ルミア;ええっとね、前回っていうのは

アラン;だあぁぁもう話が進まねぇ!前回は俺とシスティが共闘してネビュラガスに犯されて変質してたアビーを撃破!ガス回収してから先生んとこに移動中だ!

ルミア;そうだったの?私達この時来たばっかりだったから分かんなかったんだよね。ありがとう、アラン君。

リィエル;ありがとう……?よく分かんないけど。

アラン;………まぁいいや。ともかく!どうなる第29話!

3人;どうぞ!!


カチャリ、という音が何重にも重なり、静まり返った路地に響く。その音はグレンに向けられた何本もの銃口から鳴った音であり、その銃口はすべて、グレンの頭へ向けられていた。

 

「くそっ……!」

 

「フフ……チェックメイトってやつかな?グレン。」

 

その銃を構えているのは、ジャティスの召喚した人工精霊〈タルパ〉である。

 

(くそっ……何か手はないのか!)

 

先程までの戦闘で幾分か損傷しているものの、身体はまだ動く。だが、今この状況でいくら早く動いても、どう考えても銃口から玉が飛び出して身体を貫くのが早いということは容易に想像出来た。

 

(打つ手なし、か。)

 

己の敗北を悟り、それでもなお策を巡らせる。

絶対に諦めないという精神で考えては見たが──状況はあまりにも絶望的であった。

 

(クソっ!手持ちの飛針も底を尽きかけてるし、爆硝石もねぇ。あるのはペネトレイターと弾丸、それに巻物〈スクロール〉だけ……。何か手はないのか!)

 

「残念だったね。君が万が一にでも『イヴ・カイズルの玉薬』を入手出来ていれば勝敗は変わってたかもしれないが……。まぁ、軍属じゃない今の君には無理か。」

 

必死に策を巡らせているせいでジャティスが何を言っているかはいまいち分からなかった。

ジャティスが未だに自分に執着していることも。

 

(なんで俺に執着してんだか。………白猫は無事に逃げられただろうか?アランは負けちゃいねえだろうな?)

 

打つ手がないと分かってしまったせいか、悪い想像ばかりが頭をよぎる。しかも、自分の教え子が死んでしまうというような最悪の想像だった。

 

「フフフ………ともかく、ようやく僕の正義が君の正義に勝ったんだ!これで僕は『禁忌教典』〈アカシックレコード〉を手にする資格を得たんだ!」

 

グレンには禁忌教典なるものが一体何なのかはさっぱり分からなかった。が、今分かるのは最早この男を止められる存在がここにいないということ。そして、今の自分に出来ることが、アランとシスティーナが死なないように祈ることだけであった。

 

「チッ………うっせぇなぁ。殺すならさっさと殺せよ。」

 

「悪いね。でも漸くここまで来れたんだ。嬉しくて舞い上がる僕の気持ちも分かって欲しいね。」

 

「知りたくもねぇよ。テメエなんぞの気持ちなんか。」

 

「そうかい。残念だがまぁいいや。君は一瞬で殺す。それが僕の正義を破った君への最大限の敬意だ。」

 

カチャリ、ともう一度音が鳴る。

今度こそ、完全に詰みだった。

 

「じゃあね。グレン。あの世でセラによろしく頼むよ。」

 

「…………あぁ。」

 

そして、ジャティスの人工精霊達が一斉に引き金を引き、グレンの頭に血桜を咲かせ──ることはなかった。

 

『ボルテックフィニッシュ!!』

 

突如として響き渡った場違いなハイテンションな声と共に現れたビルド─アランが必殺技のボルテックフィニッシュを放ちながら現れたからだ。

 

「なにッ!?なぜ貴様がここに!グハッ!」

 

突然の攻撃に慌てて人工精霊で防御したが勢いは殺しきれず、そのまま路地の奥の方へとサッカーボールよろしくぶっ飛んで行った。

 

「よっと。よう、先生。一応聞くが無事か?」

 

「先生!大丈夫ですか!」

 

上空から変身を解除したアランと、『ラピッドストリーム』でやって来たシスティーナが着地した。

 

「お、お前らなんでここに!白猫は逃げろっつったろ!アランもそうだが、ここはお前らの居ていい世界じゃねえんだよ!」

 

それに対し、泣きそうな顔で必死に逃げろというグレン。

せめてこいつらだけでも逃がしてやりたい──グレンのそんな思いを知っている上での行動なのか。

そんなグレンの思いを汲んだのか、アランが言葉をつなぐ。

 

「そうだな。確かにここは俺らのいていい世界じゃねえかもしれんな。実際こんな血生臭えとこ居たくねぇし。」

 

「だったら早く逃げ」「でも!」

 

グレンの言葉をシスティーナが力強く遮る。

まるで、説教中のシスティーナのように。

教え子を諭す教師のように。

 

「貴方が居ていい世界でもないわ。先生。」

 

ぱちくりと目を瞬かせ、何を言っているか分からないという顔をしているグレン。

 

「だな。今の先生は俺らの先生だ。それ以外何もんでもねえよ。例え昔軍属だったとしても、な。」

 

「そうよ。だから…………学園に戻ってきて?先生。私達には貴方が必要なのよ。」

 

アランは茶化すように、システィーナは若干涙ぐみながら。それでも真摯な目で、「一緒にいて欲しい」と頼んでいた。

 

「俺は……お前らの先生でいいのか?」

 

「ったりめえだろ?第一、学園が襲撃された時に俺が相手殺しても真っ先に受け入れてくれたのは先生じゃねえか。俺だって受け入れる。」

 

「そうね。私だって気にしないわよ。守るためだったんだもの。」

 

グレンを励ますように、2人は朗らかに笑った。

その笑いはグレンのささくれていた心を元に戻し、再び勇気を与えてくれた。

 

 

 

 

「全く、僕としたことが……。折れた腕と脚を繋げるのに時間ががかってしまったよ。」

 

3人が結束した瞬間、ゆっくりと、人工精霊にぶら下がりながらジャティスが再び登場した。

 

「ホント、計算外だったよ。せっかく僕が作ったこの状況が台無しだ。この状況を作るために一体どれだけ苦労したか。」

 

はぁ、と、まるで自分が被害者であるかのようにため息を吐いた。その様子からは巻き込んだ無関係の人に対する申し訳なさや、人を殺めた罪悪感などは微塵も感じられなかった。

 

「………初めて見るが、こいつがジャティスって野郎か。気持ちわりぃ目してんな。」

 

アランの目には、狂気に染まりつつも聖者の如き落ち着きを持った目が気持ち悪く映っていた。

 

「なんだい?そこのクソガキ。一応温情で忠告しとくよ?さっさとこの場から失せろ。さもなくば殺す。そこのセラそっくりの小娘もね。」

 

苛立ちを隠さずに、殺気全開で凄むジャティス。その視線をまともに受ければ常人なら失禁するレベルの殺意だった。それを受けた2人は怯え──ることはなく、

 

「イヤよ。私も戦うわ。」

 

「テメエがくたばれ。腐れ変態。」

 

仲良く中指を立てて、挑発した。しかもいい笑顔をオプションで着けて。

 

「………決めたよ。君たちはこの世のありとあらゆる苦痛を与えながらゆっくり殺す。僕の正義侮辱した報いを受けさせてやるよ。」

 

「「一昨日来やがれ」」

 

「このガキ……!」

 

苛立ちがピークに達したらしい。わなわなと全身を震わせている。

 

「あーあ。お前ら知らねぇぞ?あいつすっげぇ執拗いから多分地獄の果まで追っかけて来るぜ?」

 

「うへぇ、気持ち悪。ストーカーかよ。」

 

「それは勘弁ね………」

 

「………でもまぁ。」

 

ニッと歯を見せ、不敵に笑うグレン。

 

「これで俺らは一蓮托生。全員あいつに目ぇつけられたってわけだ。全力でぶっ潰そうぜ?」

 

「「おう(ええ)!!」」

 

 

 

「『我・秘めたる力を・解放せん』──!」

 

白魔『フィジカル・ブースト』を発動し、パシン!と拳を打ち鳴らすグレン。

魔力を帯びた拳から紫電がバチッ!と音を立て、周囲を一瞬明るく照らした。

 

「行くわよ!」

 

腕を前に掲げ、戦闘態勢を取るシスティーナ。

その指先には魔力が宿り、いつでも魔術を行使できるように準備してある。

 

「さぁ、実験を始めようか!」

 

シャカシャカとボトルを振ってドライバーに挿し、レバーを回して変身するアラン。

身体の前後を鎧が包み、変身を完了する。

 

 

「僕も舐められたものだね。予告しよう。君たちがここで僕に勝てる確率は──0.001%もないよ。」

 

対するジャティスは手から擬似霊素粒子粉末〈パラ・エテリオン〉を振りまき、多数の人工精霊を召喚していた。

 

「さぁ、掛かってこいよ。僕の〈正義〉を執行してやる。」

 

「知るかよボケ!いくぞお前ら!」

 

「っしゃ!行くぜ!」

 

「行くわよ!」

 

 

細い路地の両端から、まるで津波のような思惑が重なり、激突した。




あ、次回辺りに新しいボトルを出したいと思います。
コメントして頂いたやつから出そうかと思ってるんで、よろしくお願いします。
ではでは、次回の投稿まで!チャオ!


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お知らせと謝罪

今回はお知らせです


どうも。作者のよこちょです。

今回のお知らせの内容なのですが、端的に言うと「この作品を作り直すことにした」ということです。

理由は色々とありますが、主な理由として「無理がある設定だった」ということです。

まず元々この作品は「ロクでなし魔術講師と禁忌教典」と「Fateにおける投影魔術」のクロスオーバー作品でした。ですが、途中で「仮面ライダービルド」の要素を安易に入れてしまい、そこから構想をシフトチェンジしたのです。

その結果かなりややこしい設定になってしまった上、話が非常に作りづらくなってしまったのです。投稿が滞っていたのはこのせいでもあります。

これは自分が安易に追加したせいなので、自業自得ですが。

 

そして、最新刊で「レオス・クライトス」にマジモンの妹がいることが分かり、「あ、これもう限界だな」と考えた結果、こうしてこの作品を作り直すことにしました。

 

次の話楽しみにして下さっていた方々。また、このような稚拙な作品に多数のアイデアやキャラを提供してくださった方々には大変ご迷惑をお掛けすることになります。申し訳ございません。

 

リメイク版は「ロクでなし魔術講師と投影者Re」という名前で投稿させて頂きますので、興味があると言う人はまた読んでいただけると幸いです。

リメイク版は設定を練り直し、極力原作の良さを生かした作品を作りたいと考えています。無論、オリ主は「投影魔術」と「原作の魔術」のみを扱いますので、次は脱線しないと思います。

 

では、長々と謝罪をさせて頂きましたが、最後にリメイク先で再びアランの活躍を見ていただけたらと思います。今まで読んで下さり、ありがとうございました。

以下はもしこのまま話が進んでいたらの展開ですので、流してもらっても構いません。端的に言うと文字調整です。

 

 

 

 

 

 

今後やる予定だった展開

 

様々な学園行事を乗り越えつつもスマッシュを倒し、20本のボトルを生成したアラン。だが、そのボトルはエボルトによって奪われてしまう。奪ったボトルをパンドラボックスへはめ込んだエボルトはパンドラタワーを立て、空に浮かぶ「メルガリウスの天空城」への通路を無理やり作り出してしまう。

天空城に入ったエボルトは本来の力「ブラックホールフォーム」に加え、太古の「魔法文明」まで取り込んでファーズオメガへと進化する。

だが、アランはジーニアスボトルに似た形状のボトル、「ファンタジーボトル」を作り出して応戦。

魔法文明の力を操って対抗する。

その後何やかんやで倒す。



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