吾輩は備品である (ぺちぺち)
しおりを挟む

第0話:ぷろろーぐ

 第0話はあまり内容を変更しませんでした、でもメッチャ時間がかかった。
 不思議ですね^q^


--(0)

 

 化物に食われそうになっていた姉の身代わりになった結果右腕と胴体の一部を喰い千切られて瀕死モードと化してしまった。

 空からイミフな化物が降って来るという素敵なイベントの結果である。

 幸い内臓までは持って行かれていないが胸筋辺りの肉はまとめてブチィ!といかれた。

 完全に致命傷ですね。

 余裕で死ねる。

 

 ヤベー^q^

 

 調子に乗ってラノベ主人公っぽい事をした結果がこれである。

 やだ…私の主人公力、低すぎ…?

 ちょっとクソ雑魚過ぎるっしょ、やはりモブには無理があったか…。

 

 「満点の星空だ、あれは全て死兆星に違いない」などと右腕から血液を垂れ流しながら悟っていると折角出来たばかりの友人が食われたり愛すべき弟(爆笑)が瀕死モードと化したりでなんやかんやあったのか覚醒した姉が「うわぁぁあああああ―――!!」と刀を手にバッサバッサと化物を刺身にしてらした。

 なんという鬼武者ムーブ、お前が主人公だったのか…そりゃ俺の腕も捥げるわけだぜ。

 それはそうとはよ逃げろ。

 バッサリ感とかいいから。

 いくら覚醒(?)しても一人で勝てるわけないだろ(マジレス)

 しかも覚醒したてとかRPGなら初期レベルじゃん。

 

 化物も合体してワンダの巨像並みに巨大化するわちっこいのはまだまだ増えるわで非常にヤバイ。

 パンピー集団+レベル1の鬼武者一人に対して過剰戦力過ぎるっしょ、ゲームだったらクソゲー過ぎてディスク叩き割るレベル。

 

 朦朧とする意識の中で「アカンこれじゃ姉まで死ぬゥ!」とか思っていると生太刀とかなんとか電波を受信しながら俺の応急処置(?)をしてくれていた姉の親友が先導するから逃げようと提案してくれたのでそのまま全力で撤収する事に。

 謎パワーで身体能力が強化されたのか姉も瀕死の俺を軽々と担いで逃げ始めた。

 

 この状況でお荷物を抱える馬鹿がいるかこの猿ゥ^q^

 応急処置といっても上着で傷口を抑えられた程度だから殆ど意味無いんですけど。

 完全に焼石に水モードなんですけど。

 痛覚とか断絶してるんですけど。

 体の感覚も消えかけてるんですけど。

 マジでくたばる5秒前って感じなんですけど。

 なんだただの瀕死じゃないか(悲哀)

 

 「生命力的なサムシングがマッハなんで放置でいいですよ(意訳)」と伝えても「五月蠅い!」の一点張りである。

 涙声になっている辺り手遅れなのは理解できているだろうに…。

 死の縁ですら要望を聞かない頑固な姉で困る…いや別に死にたいわけじゃないけどさ。

 

 まぁせめて死ぬならもう少しマシな場所でくたばりたいというのも事実なので出来る限り生き延びようと心に決めて数日が経過。

 もう執念で生きてました。

 気分はペルソナ3の主人公。

 これを数ヶ月とかキタローさん人間じゃねぇ……あぁユニバースだからか。

 宇宙って凄い。

 

 だが流石にもう限界だった、パンピーが気力で生き永らえるとか普通に考えて無理がある。

 どうにか四国には到着したが息は絶え絶えだ。

 もう死ぬんじゃね?って感じだ。

 つーか死ぬ(確信)

 そりゃ瀕死モードで碌な処置を受けずにいたら死ぬわな、寧ろ生きていた今までが可笑しかった。

 チクショー、今週末はCシャドウさんとのオフ会だというのに…無念だぜ…。

 

 未だ俺を介抱しようとする姉と親友さんには申し訳ないが「もう大丈夫だよ」と告げる。

 大丈夫とは言ったもののその一言だけで意図が伝わったんだろう。必死に手の空いた医療機関を捜す二人の表情が絶望一色に染まった。

 あー…余計な事言ったかもしれん。

 最期は嘘でも笑わせるべきだっただろうか、折角美少女なんだし。

 勿体無い事したなぁー。

 

 死ぬ直前だというのに姉が何で庇ったかって五月蠅い。

 んなもん知らんがな。

 理由なんてない。

 無意識だ無意識。

 体が勝手に動いたってヤツだ。

 大事な物を守ろうとするのは普通じゃろ?

 つまりそういう事だ。

 考えるな、感じろ、激流に身を任せて同化すれば多分かるって(適当)

 

 話している間に全身の感覚が少しづつ無くなって行く。

 視界も殆どの像を写さなくなってきた。

 分かってはいたが昇天の時間ですね。

 10年ちょっとの短い人生、思い返せば腹立つ事満載で死に方も理不尽極まってやがるがそれでも楽しい人生だった。

 本当に短い人生だったにも関わらずこう思えるんだから間違いない。

 

 

 

 若姉、ひなちゃん、二人が居たから俺も楽しかったよ。

 

 

 

 

 

 




 宜しければ感想や評価、誤字報告等を頂ければ幸いです。


 ●主人公
 モブの分際でラノベ主人公の真似事をしたら死んだクソザコナメクジ。
 何故か精神年齢が異様に加速しているがそれが活用された事は皆無。
 とあるゲームのプレイヤー、"Cシャドウ"の大ファン。






 ●若姉
 主人公の姉で思考が戦国時代のソレまで逆行してるやべーやつ。
 弟の死で覚醒するという90年代RPG的なノリで鬼武者(仮)になった。
 多分この子が真主人公。
 ただし若干コミュ症で軽く弟に依存していた。
 だが弟は死んだ!もういない!(天元突破)






 ●ひなちゃん
 若姉の親友で主人公の友人。
 化物襲来時には謎の電波を受信して数多くの人命を救うという快挙を成し遂げた。
 しゅごい。
 ただし若姉に対する思考はクレイジーサイコのソレ。
 そのサイコ具合は過去に"主人公と結ばれれば若姉と姉妹になれるのでは?"という狂気思想を抱き主人公の警戒レベルを爆上げさせた程。
 詰まる所若姉とは別ベクトルでやべーやつ。






 ●化物
 ゲームだったらディスクを叩き割るレベルのクソ仕様で襲い掛かって来たやべーやつら。
 人間を食べるので将来的に世界中の軍隊からボコられるに違いない(極太フラグ)
 主人公の死因でもある。






目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第1話:神世紀しゅごい

 西暦の人間が神世紀に行ったら絶対パニック起こすと思う(断言)
 つまり多少頭がおかしくっても仕方ないんや^q^


--(0)

 

 姉とその親友に看取られて昇天し、天国という約束されしパライソで永遠の平穏を満喫するかと思ったら新たな生を受けて再誕する事になった。

 つまるところ人生コンテニューである。

 ホント意味わかんないです。

 そもそも何故記憶を継承してやがるのかと。

 というか生まれ変わっている時点でコンテニューとはちと違うような…?

 まぁどうでもいいや。

 転生云々なんて考えても分からんしそもそもパンピーに理解出来る筈が無いし。

 

 因みに前世の世界に関しては半黒歴史として処理しようと思う、フラグ無しで化物が襲い掛かって来る死にイベ発動とかクソ過ぎるでしょ。

 若姉とひなちゃんがいなけりゃ完全な黒歴史としてエクゾディア並に封印してるね。

 

 ……何故か涙が出て来たので赤ん坊の欲望に従い盛大に泣いた。

 別に寂しくなって泣いたとかそんなんじゃない事を念押ししておこう。

 ないから。

 違うから。

 ただちょっと目に入った塵を体外に排出する為に貴重な水分をまろみ出しただけだから。

 

 

 ……悲しい。

 

 

 

 

 

 

--(1)

 

 二度目の人生なのだが前世から約300年後の世界だった。

 約がついているのは完全に300年後じゃないから。

 とりあえず凄い未来なんだろう、西暦とかもう終わってるし。

 神世紀とかいう中二がノートに書いた小説に使いそうな暦に替わってるし。

 イエス様とかブチギレてそう、まぁキリシタンってわけでも無いからどうでもいいんだけど。

 

 真に重要なのは俺の享年から文明もテクノロジーも大して進歩して無かった事だ。

 猫型青狸も存在しないしガンダムとかも無い、それどころか航空機系統はまとめて全滅しているとかいうイミフ。

 

 発展するどころか軽く衰退してらっしゃる事実に震えるゥ!

 異世界の可能性が微レ存…?

 

 

 

 

 

 

--(2)

 

 うどんキチガイ、略称うどキチの跋扈する四国に再び生を受けたが神世紀やばい。

 マジやばい。

 超やばいでござる。

 もうスゲーの、神世紀パネェの、世紀末とか目じゃねーの。

 まず四国以外の土地は全部滅んだっぽい、本州も九州も北海道も沖縄もお米も露もメシマズもシナもチョンも中東もアフリカもインドもその他諸々纏めて滅んだ。

 原因はウイルスの力でチョメチョメされたかららしい、人類滅却レベルのウイルスとかバイオセーフティーレベル4どころじゃ済まなさそう。

 この規模ならSCPの可能性もあるかも。

 つまり外の世界が滅んだ原因はKeterクラスの収容違反が原因である可能性。

 K-クラスシナリオ発動してるじゃないですかヤダー。

 GH-クラスとかそりゃ世界も滅ぶ。

 下手すりゃXK-クラスの可能性も…?

 何にしてもK-クラスには変わりねぇなガハハ。

 あっ、クソトカゲとピザ食って「さわやか」とか抜かしてる奴は滅んでくれて大丈夫です。

 むしろ滅べ。

 

 

 話を戻して、四国が無事なのは神樹様っていう御神木が結界でウイルスから守ってくれてるからなんだと。

 そんな神樹様はこの世界じゃ唯一神扱い、世界も神樹様を中心とした統一宗教で治められておりそのお膝元である『大赦』は実質的に総理大臣よりも発言力が上とかいうファンタジック。

 俺の記憶にある日本人は神様を冒涜されるよりも炊きたて御飯を床にぶち撒けられる方が根源的な怒りを呼び覚まされる人種だった筈なんだがなぁ……。

 「信仰心? そんな事よりメシはまだか」みたいな。

 これが世代差ってヤツか。

 

 やはり知識では理解していても困惑する…が、むしろこの程度で済んで良かったと安堵している面もある。

 なにせ四国という狭い土地で300年もの間隔離され続けていたのだ、普通ならとっくに滅んでいても不思議じゃない。

 にも関わらず人は生き延び、文明を維持し続け、それどころか一部の技術に関しては進歩すらしている……正直な話よくもまぁここまで事を為し遂げられたもんだと素直に関心した。

 これも神樹様の存在あってこそなんだろう、精神的な拠り所があるというだけで人間は強くなれるモノだし。

 宗教ってすげー。

 神樹様はもっとすげー。

 

 

 まぁ名家に養子行きとかいう時代錯誤も甚だしい事態に全部どうでも良くなったんですけどね(白目)

 

 

 

 

 

 

--(3)

 

 神世紀の俺に家族と呼べる存在はいない。

 まぁ全滅してんだから当然だが。

 死因を上げて行けば父は母に俺が産まれる為の遺伝子を母にぶち込んで少し経った後に病死、母は父の死で精神を病んで衰弱し、その状態では出産の負荷に耐えられずに俺を産んだ数日後に他界。

 祖父母は諸々の事情で俺が産まれる前から既にこの世を去っており、加えて従兄弟、叔父、叔母と呼べる人達は祖父母の代から産んでいない為そもそも存在しないというデッドミラクル。

 そもそも俺の自意識が発生する頃には三親等の血縁は全滅してらっしゃったっていう。

 これは全米も号泣不可避だな、滅んだけど。

 ……。

 ……世知辛い。

 

 そんな詰みモードで人生のスタートラインを切った俺が孤児院に入らずに実家で生活出来ているのは遠縁にあたる乃木家の方々が支援して下さっているお陰だ。

 乃木家というのは大赦のツートップを担う家系の片側で四国一の大金持ちという権力と財力が合わさり最強に見える名家中の名家。

 最強と言うか無敵かもしれんね、実際神世紀だと国土無双状態だし。

 歴史に例えて言うなら平安中期の藤原氏みたいな存在だと言えば分かり易いかもしれん。

 ついでに言うなら俺の前世と同姓だったりするが…まぁそこはどうでもいいか。

 重要なのはこの乃木家、三親等外にも関わらず血縁というだけで赤ん坊の頃から今の今まで俺の私生活を支援し続けてくれているという事だ。

 お金持ちってすげぇや…。

 その一方で何故面倒を見てくれているのかは疑問が尽きないのだが…なんと今度は前述通り養子縁組を提案して来た。

 しかも引き取られる乃木家が子宝に恵まれなかった等の話ならまだしも俺と同い年の娘様がいるというイミフ具合。

 トカゲの尻尾切りモードで「名家の抱える闇とか罪状的な物を一身に背負って死ねェ!」みたいな展開だったらバッドエンド確定ですなわははは……はぁ。

 

 ……不安が募る。

 

 

 だというのに人の気もそっちのけで「わーい弟だー」などと騒ぎ倒してらっしゃる園子様はなんなんですかね。

 ムカついたのでとっ捕まえて「誰が弟やねん」と柔らかそうな頬をむにゅむにゅしてやった。どう考えても貴様が妹ポジだよなぁ。

 「オラ俺をお兄様と呼ぶんだよあくしろよ」とむにゅむにゅを激化させるが…なんかめっちゃ嬉しそうにしてらっしゃる、つられてこっちまで笑っちまいそうになるでしょうが。

 

 「私をお姉ちゃんって呼んでも良いんよ~」

 

 やめろ下さい(真顔)

 

 

 

 

 

 

--(4)

 

 渋っていた養子縁組の件だが結局お引き受けする事にした。

 受けた理由としては将来に対する余裕が持てる事や生活水準が目に見えて向上するというメリットなどを鑑みてというのがあるが…ぶっちゃけ長い物に巻かれた方が将来的に好都合というのが大きい。

 チキンだっていいじゃない、パンピーだもの。

 他に理由を挙げるなら園子と一緒に居て面白かったなどもあるが…駄目だ、園子云々は封印しておこう。

 知られた場合長期に渡って弄られる可能性が非常に高い。

 

 ま、まぁ決まった事は決まった事として置いておくとして…なんと俺が讃州市から大橋市に引っ越すに当たり、讃州市では隣人関係だった結城ちゃんが中心になってお別れ会を開いてくれる事になった。

 まだ小2だというのに凄まじい行動力である、正直凄い嬉しい。

 というか女子が主催してくれてるというだけでもう感涙モノだ。

 

 …思えば前世も今世も基本男子とつるんでばっかだったなぁ…と悲しみに暮れる、女子との交流なんて殆ど無かったわ、あったとしても若姉とひなちゃんくらいだ。

 改めて思い返すと悲しくなる、俺の心は硝子よりも繊細なのだ。

 というか折角転生したんだから盛大にモテたいんですけど。

 どうせ転生するなら異世界転生チーレムとかしたかった。

 銀髪美少女ロリババア吸血鬼のミレニアム処女を俺に捧げろやオラァ!(ガチギレ)

 ……ふぅ、落ち着いた。

 

 あーモテたいなぁ…と黄昏ていると級友の結城から勿忘草の押し花が装飾されたブレスレットを送られた、手作りで製作したお守りのプレゼントだそうだ。

 ……。

 ……?

 手作り?

 女子が?

 俺に?

 ……。

 ………。

 

 イイイイィィィィィィイイヤッヒィィィィィィイイイイイwwwwwwwwww

 

 神世紀に転生して一番テンション上がった。

 童貞だからね、しょうがないね。

 

 

 

 

 

 

--(5)

 

 正式に乃木家へ養子に迎えられて数週間、讃州市の実家から大橋市の乃木家へ移り住んだワケだがやっぱ乃木家は凄いとつくづく痛感させられる。

 例えば住んでいる邸宅はクッソ広い敷地に加えその外観は西暦の世界遺産である二条城の二の丸御殿そのものというぶっ飛び具合。

 維持費どうなってんだと戦慄したが…ちょっと調べれば考えるだけ無駄という事を悟った。

 分かり易い例を上げれば西暦の吹上御苑にある新御所の建設費がおよそ56億円…そしてかつて京都に存在していたモノホン二条城が修繕費だけでおよそ100億円だったと言えば理解出来るだろうか?

 まだ分かり辛い場合は修繕費だけで西暦の富裕層が一生かけて稼ぐ額より更に高いと思って頂ければ分かり易いと思う。

 正に権威の象徴、これが財力と権力を兼ね備えてリアル無双してるお家の力ですか…。

 ……しゅごい^q^

 

 他に突出してる点を上げるとすれば所持している車がリムジンなどの高級車ばかりだとか出される食事が毎度料亭レベルだとか専属の使用人を十数人雇っているとかそんな感じ…使用人は指摘されるまで家政婦だと思ってました。

 

 まぁ何が言いたいのかと言うと全体的にリッチ過ぎィ!って事。

 

 俺が順応すれば良いだけの話なのだが将来自立した時に面倒な事になりそうなのであまり慣れたくない。

 舌が肥えてレトルトが食えないとか最高級の羽毛布団じゃないと眠れないとか使用人の方が掃除してくれるのに頼りきった結果自分で掃除が出来なくなるとかになったら洒落にならん。

 自分の事を自分で処理出来ないってのは割とマジで情けなさ過ぎる。

 

 そんな訳で対策その1:自室は自分で清掃すべし。

 三日に一度は棚や窓際、勉強机等の雑巾がけを行い埃を取り除き、床は畳なので週一の割合で掃除機で汚れを取り除く。

 まぁ毎日は面倒なので流石にやらんけど。

 因みに雑巾は不要認定された布を縫い合わせた自作品である。

 

 対策その2:自炊出来る時は自炊すべし。

 基本の三食+乃木家の家族と間食を取る時以外で何か食べたくなった時は自炊を試みる。

 料理スキルは炒め物がギリギリ作れるレベルの底辺だが…まぁ自分一人だけなら十分だろうし物足りなくなった場合はクックパッド大先生の出番だ。

 夜食はブタメンで対応すればイケる。

 

 対策その3:徒歩以外の移動は自転車を活用すべし。

 チャリがあれば20km程度なら頑張ればいけるから基本は余裕っしょ。

 無理なら電車でGO。

 リムジンは敵だ。

 

 

 それにしても畳に掃除機を使うのが地味に面倒臭い上やり辛い、フローリングならクイックルで済むのだがこればっかりはどうにもね。

 雑巾を使用するにしても畳に水分はご法度なので畳の目に沿って乾拭きをするくらいしか出来ないのは中々歯痒い。

 後処理が億劫になってポテチも碌に食えないのはなぁ…。

 

 「何か良い掃除方法無いですかね?」と使用人の方にも聞いてみるが返答も芳しく無いし…まぁあったら既に実践してるよなぁ。

 どうしたものか……。

 

 

 翌日、神樹館から帰宅すると自室の床が全面フローリングと化していた。

 ……?

 え、なにこれ。

 呆然と立ち尽くしていると乃木家の御婦人…詰まる所義母様から「少しくらい我儘を言ってもいいのよ?」と気遣わしげな表情で言われた。

 

 ……。

 ………。

 

 

 善意100%で札束ビンタされるとか誰が予想出来るっちゅうねん(白目)

 

 

 余談になるが転校した神樹館は神樹様の名を冠している分前の学校と比べれば格式は高いが、言ってしまえばそれだけで学校自体に目立った違いは無かった。

 生徒も他校と比べれば育ちと品が良い程度、正直未だ乃木家に馴染み切れていない身としては邸宅に居る時よりも神樹館に居る時の方が居心地が良いです。

 

 ……まさか学校が精神安定剤代わりになる日が来るとは思いもしなかったわ。

 

 

 

 

 

 

--(6)

 

 20XX年、世界はウイルスの脅威に包まれた!大国は核爆し、周辺国は巻き添えを食らい、全ての国家が死滅したかのように見えた。だが、日本は死滅していなかった!!

 神樹様しゅごい(^p^三^p^)

 

 神世紀直前の西暦と神樹様の関係をこんな感じかと脳内補完していたがどうにもウイルスの脅威はその程度では終わらなかったらしい

 曰く、ウイルスの海から既存兵器が一切通用しない『バーテックス』と名付けられた超強い化物が産まれるらしく、そいつ等が人類滅ぼす為に神樹様をぶっ壊しに来るとか。

 そんな核も通じない最強無敵なバーテックスに対抗できるのは『勇者』と呼ばれる神樹様の力を宿して戦う戦士のみらしく、なんと園子がその勇者とやらに選ばれたらしい。

 

 

 ………(^o^)?

 

 

 養子に迎えられて早数年、なんぞ用事があるとの事で義両親に連れられた乃木家の応接間にて和装に仮面という前衛的なファッション(オブラート)の方から超神妙な空気で告げられた。

 何かのジョークかと思ったが声のトーンからして仮面の下にある顔は多分真顔だろう、そして義両親の表情もこれ以上ないくらい真顔…というか少し強張っている。

 つまり今語られた内容はジョークでもドッキリでも無いという事だ。

 まじかぁ…。

 

 事実だとすればウイルス君どんだけ殺意高いんですかね、人類絶対ぶっ殺すマン過ぎる。

 というかウイルスの集合体が神様の集合体をぶっ壊すってなんなの(真顔)

 ……ウイルスSCP説が現実味を帯びてきましたね(小声)

 

 全体的に現実離れし過ぎている為ふわふわとした印象を受ける情報ばかりだがそれを態々俺にまで話した点から察して園子だけでなく俺もその勇者とやらになるのかとか思ったがどうも違うっぽい。

 なんでも前提として勇者は女性にしかなれないとか、ソレもう魔法少女にでも改名すれば良いんじゃないですかね。

 じゃあ関係無しかと思ったがそういう訳でもないとか…紛らわしい。

 詳しく聞こうかと思ったが俺に関しては明日大赦の方で最終確認しなければならない事があるらしく、俺の役割については確認が完了次第告げるらしい。

 そこ勿体付ける必要ある?

 

 因みに仮に勇者が負けて神樹様まで到達された場合ワンパンで人類滅亡らしい。

 ……え?

 え?

 クソゲー過ぎません?

 

 

 

 

 

 

--(7)

 

 今日も今日とて早朝から前世の姉に刷り込まれ習慣と化した居合の鍛錬を行い、ブレスレットを念入りに手入れした後は園子を目覚ましアラーム五割増しの洗礼で叩き起こし、朝食を頂いた後は昨日話された最終確認とやらの為に大赦に向けてチャリで爆走…と行きたいところだが、今日に限っては大人しくリムジンモードで行く。

 

 「態々勿体付ける当たり碌な役割じゃないよな…」と嫌な予感をビンビンに感じ取ってはいるが…まぁそうじゃないかもという一縷の望みを胸に大赦にお邪魔する。

 で、お約束の様に大量の大赦仮面に迎えられた。

 丁重に迎えてくれるのは嬉しいのだが演出が軽くホラーの域に入っているので正直やめて欲しいなって…。

 

 ビビリながら大赦仮面の案内について行くとまず私服から純白の着物に着替えさせられた。

 ふむ?

 その後禊だとかで冷水滴る滝にぶち込まれた。

 ……ふむ?

 その後は無駄に仰々しい和装に着替えさせられ、見覚えのないスマホを渡された。

 …………ふむ?

 で、何やら厳重に守られている樹木の前に連れて来られた……曰く、この樹木が神樹様らしい。

 ………………ふむ?

 

 ……。

 …………。

 

 ……………………ん?

 

 

 

 

 

 

--(8)

 

 拝啓、前世の両親、姉、友人達、そして時折面倒を見ていた捨て犬捨て猫の畜生共へ。

 俺は今、この世全ての恵みとも言える神樹様に触れています。

 何故って?

 知らん。

 俺が聞きたい。

 指示通り渡されたスマホのアプリを起動させた後巫女様に触れるよう指示されたから触れただけでっす。

 理解不能にも程がある。

 触れた事に対する感想も失礼ながら温かいくらいしか湧かん。

 というか緊張でストレスがマッハな俺にまともなレビューとか出来るワケが無い。

 別にレビューとか求められてませんけども。

 

 そもそも現状が気まず過ぎて精神が焼き切れそう、傍に居る巫女様も何も言ってくれんし。

 ガチガチに緊張しながらも「神樹様マジリスペクトっす!」とか念じて俺の信仰心をアッピルしてみたりするがまるで変化がない。

 いや意味なんか無いしパンピーの声なんかに神様が反応するわけ無いんだけど。

 ……今のが原因で祟られたりしないよな?

 

 と、気まずさの余り死にたくなって来た所で変化が起きた。

 なんだろうコレ…神樹様からエネルギーみたいなのが体に送られて来る。

 水の様に滑らかに、空気の様に違和感無く送られて来るソレは俺の中に入ると同時に少しづつその総量を増して行き……俺は血を吐いた。

 

 やっぱり祟られてんじゃねーか^q^

 

 

 

 

 

 




 宜しければ感想や評価、誤字報告等を頂ければ幸いです。


 ●主人公
 西暦で化物にムシャられたら300年後の神世紀に転生したクソザコナメクジ。
 転生してからは酷くてニューゲーム→天涯孤独ムーブ→名家へ養子行きという黄金コンボをかまして漸く安定した生活を手に入れたかに見えたが、結局乃木家のヒモという点は変化していない。
 最近触らぬ神に祟りなしを実演した。






 ●神世紀
 四国以外は全て滅んだ末期な世界。
 神樹様の威光がなければ5秒で滅ぶ可能性がある。






 ●神樹様
 神世紀における唯一神的存在。
 四国が存命出来ているのは勿論四国民が安心安全に暮らせているのも全て神樹様のお陰。
 しゅごい。






 ●大赦
 神樹様の腰巾着。
 神世紀において最も権力を持つ存在でありその力は総理大臣よりも更に上。
 スタッフの殆どは和装に仮面と言う謎のファッションで闊歩しているが傍から見ればホラーでしかない。






 ●乃木家
 大赦におけるツートップの一角であり権力と財力が合わさり最強に見える神世紀の藤原氏。
 遠い血縁であるとはいえ何故か主人公が産まれた時から支援し続け、何故か主人公を養子に迎えた。






 ●乃木園子
 マイペースで天然気質というスローライフの化身。
 また大変フレンドリーな性格ではあるものの大赦のトップである乃木家の子である事が災いしてか、近づき難い存在として見られることが多く友人は殆どいなかったらしい(Wiki参照)
 その為少々寂しい思いもしていたらしく、その反動からか主人公が養子として乃木家に迎えられてからは積極的に交流を取っている。
 相手を選んだ方が良いと思います(真顔)
 あと最近勇者に任命されたらしい。






 ●結城
 讃州市では主人公の隣人だった女の子。
 小2という幼さでクソザコナメクジの為にサプライズお別れ会を企画し、更には餞別として手作りのブレスレットをプレゼントした慈愛と行動力の化身。
 多分女神だと思うんですけど(名推理)






 ●ブレスレット
 勿忘草の押し花で装飾された女神結城お手製ブレスレット。
 クソザコナメクジのお守りにして宝物、毎朝忘れず手入れしている。
 RPGに登場した場合全ステータスに300%くらいバフがかかり使用者はトランザム化する。






 ●ウイルス
 西暦の人類を殺し尽くし、神様バリアでなんとか食い止めたやべーやつ。
 日本生類創研がやらかした可能性が微レ存…?






 ●バーテックス
 ウイルスの集合体のやべーやつ。
 人類を滅ぼす為に神樹様を破壊しに来るくらいには殺意が高い。







目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2話:備品はつらいよ

 神様の力ってやべー…つらいしぬ^q^
 そんなお話です。


--(1)

 

 知らない病室で目が覚めた、これがテンプレ天井ですか。

 頭に残る最後の記憶は視界一面を俺の吐いた血液が染め上げた光景である、というか一緒に朝食等の吐瀉物もまろみ出ていた気がする。

 キモいなー。

 ゲロった場所はそれこそ地獄絵図と化しているに違いない。

 

 「やっちまいましたなぁ」と思っていると数人の大赦仮面を同伴した義両親と園子が入室して来た。

 どうやら相当騒ぎになったらしい、まぁ血ぃ吐いたんだからそりゃ騒ぎになるわな。

 大赦側もまさか神樹様に触れた結果盛大にリバースするとは予測していなかったと聞かされた。

 まぁそうだよな、まさか神樹様に触って吐くなんて……吐くなんて……なんて……。

 

 ……。

 …………。

 

 

 神樹様が俺の血液やら吐瀉物やらで俺色(物理)に染め上げられとるぅ……^q^

 

 

 

 「死罪不可避やんけ!」と戦々恐々としたが厳重注意だけでお咎めの類は無いらしい。

 曰く、俺の吐瀉物で神樹様の力がマイクロ単位だが上がったのが厳重注意で済んだ理由だとか……。

 

 

 (^o^)?

 

 

 野郎のゲロで力を上げる神様……?

 なにそれ斬新(超オブラートな表現)。

 

 ………つまり神樹様の力の源はゲロを含めた肥やしだった?

 

 「畑やんけ!」と戦慄したがどうも違うっぽい。

 力の源は主に信仰心だとか、じゃあ何で野郎のゲロでパワーアップしてるんですか!

 俺氏、訳もわからず神樹様信仰をゲロ信仰と改名!……流石に祟られそうだから止めておこう。

 日本の神様は基本祟り神だしね。

 おっかねぇわー。

 

 

 ……そもそも吐いた時点で既に祟られてる可能性が高い?(真顔)

 

 

 

 

 

 

--(2)

 

 神樹様の力は基本的に四国に住む人々の信仰心で高められているのだがその他にも祭りや巫女さんの祈祷等の神事、あとは神社その物が神樹様の力を高める効果があるらしい。

 故に四国中の学校で行われている『起立・礼・拝』や、大赦で毎日行われている巫女さん達の神事、そして日程ごとに各神社で行われている神樹様関連のイベントや祭りにはそれぞれが重要な意義を持っているそうな。

 

 で、俺はそんな四国民の中でも個人で、しかも何もせずに神樹様の力を増幅出来ちゃう変な資質を持った稀少な人間らしい。

 意味がわからないって?

 俺も。

 まぁ歩く神社みたいな扱いと思えば良いんじゃない?(適当)

 なお、増幅倍率はクソ雑魚で上位の巫女さん数人で行う神事並だとか…び、微妙…。

 ぶっちゃけ毎日行われている神事の延長線でしか無いね、しかも神樹様に直接影響する神事は基本女性が行うのが通例だから参加するとか不可だし。

 なんという無駄スキル、まるでMUGEN大会の食いしばりみたいだぁ…(直喩)

 

 「食いしばりはクソスキル」と手の平ドリルアーム5秒前な事を考ている間に俺の役割について教えて頂いた。

 ゆとりに優しくまとめると勇者達に送られる神樹様の力を増幅する強化係らしい、RPG風に言うならバフ要員。

 『神樹様→勇者』の流れで送られている力の流れに割り込んで『神樹様→俺→勇者』の形にする事で勇者に与えられる力を増幅したり力の配分を調節するのが主な仕事らしい。

 巫女さんの様に一々工程を踏んだ上で増幅する必要も無く、且つ自分自身を力の中継点とする事で瞬時に勇者への力配分を変更出来るという点から戦闘時のサポートにうってつけという事で勇者のサポ枠に指名されたんだと。

 俺への負担は上がるが専用のアプリと併用すれば増幅倍率を上げる事が出来るようになるのも指名された一因なんだとか。

 ……アプリと併用って何だ。

 

 因みにお役目中の扱いは勇者システムの一部という事で備品である。

 俺にも勇者適正がマイクロ単位でもあれば樹海化に適応出来るよう調整した上で相応の役職も用意する予定だったようだが、前提として男は「適正もねぇ! 資質もねぇ! そもそも候補に入ってねぇ!」という無い無い尽し故に備品扱いになったらしい。

 まさかの無機物と同列という驚愕の事実。

 仕方が無いとはいえ泣けるぜ。

 

 

 ……ところで樹海化って何です?

 

 

 

 

 

 

--(3)

 

 この際なので聞いてみたが俺が乃木家へ養子となったのはお役目や備品云々が関係していたらしい。

 まぁ妥当かなと、そうでもなきゃ俺を養子にするメリットなんて無いし。

 俺個人としても無償の善意で施されるだけというのは肩身が狭いのでむしろ何かしら利用された上で施される方が気分的には楽でいい。

 ただ俺を備品としてお役目に組み込むに当たり大赦内では一悶着…二悶着…もっとかな?まぁ色々とゴタついたらしい。

 

 というのもまずお役目の中に俺と言う存在を捻じ込むという事が想定されていなかったという事。

 そしてお役目に参加する人間は前提として大赦と縁の深く、地位の高い家名から出すべきと規定されていた事。

 そもそもお役目に『備品』という役割自体が存在していなかったという事もあり、本来であれば養子行きはおろか俺がお役目に参入する事自体まずありえない事だったそうな。

 

 しかし大赦が勇者システムの適正等を調べる為に四国全土で毎年行っている身体検査の結果、俺の特異性…というか異常性?まぁ変な部分が浮き彫りになったらしく更にその資料を勇者システムの研究・開発等を請け負う技術部の人間が偶然目にする機会があったらしく、「変な資質を持った人間も居るもんだなー」という世間話レベルの話題性から「この資質を活かせば勇者システムの出力を上げられるんじゃね?」という実用化に向けた話題へシフト。

 始めは冗談半分だったらしいが人類の危機という事で使える物は何でも使おう精神を発揮し、幾度かの実験と検証を敢行した結果実用化可能と判断された事で最終的に企画書がお偉い方へと提出される事態にまで発展したらしい。

 

 ここからが本題になるのだがまず備品のシステム自体は勇者と神樹様の力の流れに割り込み、その上で勇者の力を増強・調整するだけという勇者システムと比べるとかなり単純構造である為勇者システムのプログラムを多少書き換えるだけで直ぐに完成したようだ。

 更に俺をお役目に加えるか否かに関しては人類の未来云々が掛かっている為大赦側、特に勇者を出す家系の方々は娘の安全性が多少は増すという事で実用化させる気全開。

 最後の障害となった『お役目は大赦と縁の深い家名から出すべき』という部分は鷲尾家が血縁の娘を養子に迎えて勇者としたのと同じ様に、血縁関係にあり尚且つ娘が勇者という事で計画を一番推進していた乃木家が俺を養子に迎える事でカバーするという形で可決したらしい。

 この部分だけは俺が天涯孤独且つ乃木家が昔から支援し続けていた事もありスムーズに事が運んだとか。

 当然少数ながら反対意見も出たらしいがそこは多数派である賛成側が金と権力で押さえつけて無理矢理合意に持って行ったらしい。

 知らない所で莫大な金銭運用と凄まじい権力制圧が行われててやーんなっちゃう。

 

 因みに乃木家が俺を備品云々以前から支援し続けてくれていたのは主に面子の問題らしい。

 勿論憐みや同情といった部分もあるらしいが、それ以上に遠縁とはいえ血縁関係に当たる人間が困窮しているのは大赦のトップを担う家系として体面上あまり宜しく無いとか。

 

 ……お金持ちはお金持ちで大変なんやなって。

 まぁそのお陰で今の俺があるのも否定出来ないんだけど。

 

 

 

 

 

 

--(4)

 

 増幅→吐血→復活→増幅→吐血→復活→増幅→吐血→復活→増幅→吐血→復活→増幅→吐血→復活→増幅→吐血→復活→増幅→吐血→復活→増幅→吐血→復活→増幅→吐血→復活→増幅→吐血→復活→増幅→吐血→復活→増幅→吐血→復活→増幅→吐血→復活→増幅→吐血→復活……

 

 し、死ぬゥ……^q^

 

 備品認定を受けて数ヶ月後、勇者の訓練開始に合わせて俺の訓練も始まったのだがもう血を吐いてばっかりだ。

 むしろ血を吐く以外してない。

 もうトイレでやれよって感じである。

 

 吐血の原因は体内で神樹様の力を増幅させるという行動自体が肉体に凄まじい負荷を掛けているかららしい、神樹様ぶっかけ事件もソレが原因なんだとか。

 そりゃそうだわ。

 一般市民Aの身で神様の力を増やそうとしたらそりゃ何かしらの悪影響が出るわ。

 むしろ何故生きてるってレベルだわ。

 …つらい。

 

 ともかく吐血訓練の目的は増幅回数を重ねる事で増幅行為そのものに肉体を順応させ、慣らす事で肉体の負荷を極限まで減らす事なのだが…これがマジでつらい。

 訓練を始めたばかりの全く順応していない状態な為仕方ないのかもしれないが、訓練を行えば必ずといって良い程血を吐くというのは中々キツイ。

 そもそも吐血行為自体が苦しい上自分から行動して吐いている為体感的には自傷行為に近いまである。

 とても辛く、とても苦しい。

 実際度々泣きそうになる…というか既に何度か泣いた。

 

 それでも放棄せずに続けるのは単純にこの行動が乃木家の役に立つからだ。

 詰まる所恩返しである、お金に困っておらず権力無双で何不自由の無い乃木家に対して、世話になりっぱなしの俺が唯一出来る事がこれだ。

 極論でまとめちゃうと乃木家に対するコンプレックスの発散でしかないね、取り繕ってはいるが結局の所自分の為だ。

 自分で言ってて情けなくなるけどこれが事実なんだから仕方が無い、人類の命運なんざ二の次だ…だから今も投げ出さず頑張れているのだが。

 

 

 因みに俺の訓練で使用された神樹様の力は増幅された力が血液と一緒に吐き出されただけであって勇者の力の様に消費されたワケでは無いらしく神樹様が力だけを回収しているらしい。

 回収された力も多少なりと増幅されている為神樹様にとっても利があるとか。

 エコロジーでいいですね(白目)

 

 

 

 

 

 

--(5)

 

 訓練と称した吐血祭りを開催している間に気が付けば小6になった。

 増幅に関しても肉体が順応し増幅における負荷も軽減されたのは苦労と努力の甲斐あってだろう、俺超頑張った。

 他には勇者へのエネルギー配分の調整とかも訓練したがその辺は俺の意思に沿ってスマホとアプリが処理してくれる為対して苦労しなかった。

 なんというオーバースペックスマホ、流石神世紀だ。

 未来の力は伊達じゃない。

 まぁ世界の九割九分は滅んでやがりますが…。

 

 「それでも神樹様の御威光で四国は今日も平和ですよ」と昼休みを利用し神樹館内のPC部屋で提出課題であるレポートを作成する。

 というのも出席日数が足りていない為その補填としてレポート課題を出されたっていうね。

 勿論サボっていたわけではなく備品の吐血訓練が原因、訓練する→吐く→繰り返す→倒れる→欠席という悪循環が連続した結果だ。

 塵も積もればなんとやらって事ですね、勿論お役目関係が原因という事もあり大赦経由で神樹館側もある程度融通を利かせてくれてはいるのだがそれはそれ。

 他の生徒への体面というモノもあるらしく適当なペナルティを科される事になり、西暦の歴史について2000文字以上でまとめるようレポート課題を仰せつかった次第だ。2000文字とか大学課題かと。

 正直な話かなり怠かった…だがそれも今日で終わりだ。

 数日分の昼休みを消費するハメになったが漸く完成である、後は印刷して提出するだけ。

 「さっさと終わらせるべ」とコピー用紙をセットし、プリンターを起動させた後はPCを操作して印刷用プロセスを立ち上げ…。

 

 いざ印刷を開始しようとした瞬間、"ドン!"という巨大な衝撃が世界を包みこんだ。

 

 「地震ですかね?」と警戒した所なんと操作していたPCが停止してしまっているではないか。

 モニターが切れたわけでもなく、ブルースクリーンになったわけでもないという事はフリーズだろうか?何にしてもPCがウンともスンとも言わなくなった事には変わりない。

 そして使用していた文書作成ソフトは先日から作業していた部分こそ保存してはいるものの本日の作業分は全く保存しておらず、加えて文書作成ソフトも自動保存システムなんて保険機能は搭載していない。

 つまり先程まで俺がちまちまと入力していたレポートが水泡に帰したわけで……。

 …。

 ……。

 

 ほ、ほわああああああああああああああああああああああああ!!!!(怒りのムーンサルト)

 

 

 

 

 

 

--(6)

 

 停止したのはPCだけじゃなかったようだ。

 というか世界そのものが停止してらっしゃる、ソースは今現在俺の眼前に広がっている謎現象。

 俗に言う時止め状態です。

 バグった世界にビビリながら神樹館を徘徊したが人も物も有象無象を問わず全部停止してるんで多分間違いないだろう。

 具体例を挙げるならキャラポーズの資料集に出て来るデッサンの様な姿勢で止まっている生徒や教師達。

 重力に逆らい静止するボール。

 秒針を刻まない時計。

 その他空中で落下体勢を取る猫等色々見たが諸々全てが停まっていた。

 

 何故停止しているのかは不明。

 元通りに時間が進むかも不明。

 唯一理解出来るのは自分だけは通常通り活動出来ているという点だけだ。

 ……つまり俺が時止め入門者として覚醒した可能性が高い…?

 だからどうした。

 制御出来ないんじゃただの事故発動じゃねーか。

 

 どうしたものかと頭を抱え、思考し、悩み、そしてこの状況を打開する方法を思いつく。

 今こそ唱えるは先人が産み出した時間を動かす為のマジックワード。

 

 

 「そして時は動き出す(ドヤァ)」

 

 

 全然動き出さなかったよ。

 まあ台詞も元ネタと違うし。

 そもそも台詞事態はキメ台詞であって発動の為の暗号や詠唱といった類のものじゃないっていうね。

 適当な事考えるんじゃなかったわ。

 

 「どうしたもんかね」と再び熟考ムーブをしているとなんと級友の鷲尾、三ノ輪、そして園子の勇者組が走って来た。

 驚く事にコイツ等も時止めの影響を受けないらしい、というか今までどこに居たの君達。

 神樹館中徘徊したけど何処にも居なかったんですけど。

 ………。

 

 

 「思うに自動車という機械は便利なものだが、誰も彼もが乗るから道路が混雑してしまう」

 

 「止まった時の中はひとり…このDIOだけだ」

 

 

 なんか安心したので軽く悪ふざけしたら園子にズガーンってされた。

 そんで今起きている時間停止も樹海化の前兆だと鷲尾から鬼気迫る表情で説明された。

 どうやら俺が時止め入門者として覚醒したわけではなかったらしい。

 安心半分拍子抜け半分である。

 まぁ俺と勇者組だけが活動してる時点でお役目案件なのは明らかだが。

 

 

 

 納得していたら世界が光に飲まれてうわぁぁあああああああああああ^q^

 

 

 

 

 

 

--(7)

 

 目を開けば世界は光どころか樹木に飲まれていた。

 これが聞かされていた"樹海化"で間違い無いだろう、見た目は完全に異空間である。

 そして勇者組もアプリを起動させたかと思うと光に呑まれ、各々が専用の戦闘服と武器を携えていた。カッコイイ。

 備品はそういうの無いんだよなぁ…と俺もアプリを起動するがやはり身体が怠くなるだけで外見上の変化は無かった。

 泣けるぜ。

 ただ俺がアプリを起動した事により勇者組も幾分パワーアップしたらしく三ノ輪と園子が荒ぶっていた、三ノ輪なんて「負ける気がしねぇ!」って騒いでるし…あ、鷲尾に怒られた。

 供給されるエネルギーの増幅が精神に影響しているのだろうかとか予想してみたがよく分からんしどうでも良いので記憶の彼方へ投射。

 今すべきなのはお役目の遂行だ。

 

 いい加減留まり過ぎなので適当に発破をかけて瀬戸大橋に向かわせる。

 言うだけなら誰だって強気になれるんだぜ。

 因みに俺は遠く離れた安置からライブ中継で応援係である。

 まぁ必要とあらば増幅倍率をもっと上げるから安心して欲しい、俺は吐血祭りを開催する事になるだろうが勇者の命が最優先だ。

 

 それにしても時間が止まった世界で戦闘かぁ……つまりバーテックスが完全停止して袋叩きに出来る可能性も微レ存?

 神樹様だって敵さんを態々動かしたりはしないだろう、完全にハメ技状態である。

 

 勝ったな、風呂入って来る。

 

 

 

 

 

 

--(8)

 

 俺というバフ要員を態々用意しておいてハメ技確定なんてある訳ないじゃん。

 むしろバーテックスの高すぎる戦闘力に勇者側がボコされてテンパった俺が増幅倍率を底上げした結果負担も底上げされて血反吐をぶち撒けてしまった。

 戦闘に関しては俺の増幅と勇者の気合いによるゴリ押しで辛勝といった感じだ…想定の五割増しくらい消耗してしまったが園子達は無事だったし過度な増幅に関しても自分の意思でやった事なので良しとする。

 

 だけどこのままじゃ駄目だよな。

 勇者側は連携不足だし、俺は少しでも冷静に戦況把握出来るよう努めるべきだった。

 ……課題ですなぁとか考えていると樹海化が解除され、俺も勇者組と同じ様に安置から何処かのお社まで転送されていた。

 

 うーん……皆ボロボロだけど無事でよかった!

 

 お社で合流した勇者組を「よくやった!」と血反吐をまろみ出しながら褒めてやると園子がガチ泣きして三ノ輪と鷲尾の顔が真っ青になった。

 

 (^o^)?

 

 

 

 

 

 

--(7)

 

 消耗が酷過ぎるらしく俺だけ病院に搬送される事になった。

 戦闘員が保健室での検査だけで非戦闘員が入院ってどうなのよ逆じゃね、まぁ俺の場合最低でも輸血が必要だから仕方が無いのだけれど。

 安芸先生からは必要の無い場面で倍率を上げ過ぎだと説教された…確かに終盤は常時高倍率でしたからなぁ。

 今後は気を付けようとは思うのだが実際に戦闘をしている勇者と外野からサポートしている俺とでは如何せんラグが生じてしまいタイミングが合い辛いのだ。

 例えば三ノ輪の攻撃時に園子の能力を高めても意味は無く、同様に鷲尾の攻撃時に三ノ輪の能力を高めても意味が無いといった具合だ。

 しかも勇者の戦闘速度は常人の対応速度を遥かに凌駕しており、また行動を予測して対処しようにもパンピーな俺に戦況予測とか出来るわけが無い。

 ……やっぱ全員を常時高倍率で増幅させるのが一番安定するな!

 

 

 「死にますよ」

 

 

 えぇー…。

 じゃあせめてダイレクトに連絡が取れるようシステムを改良して下さいとゲザる。

 通信みたいなので相互連絡が取れる様になればある程度は対応出来る様になる筈だ。多分。

 樹海化中でもLINE通話出来るようにすれば解決するんじゃない?

 

 「なんて名案なんだ」とドヤ顔を晒すと溜息を吐かれた。

 提案が完璧過ぎたのだろうか?

 頭を抱えられた。

 

 (^o^)?

 

 

 

 

 

 

--(9)

 

 バーテックス戦から数日が経過した昼休みに鷲尾から放課後に祝勝会をしないかと誘われたのでイオンのパチモンであるイネスへGO。

 実際の所は祝勝会というより親睦会だったが勇者組がそれなりに仲良くなったのは良い事だと思いました(小学生の感想)

 鷲尾と三ノ輪に関しては俺も知人から友人へとランクアップを果たしたしね、やったぜ。

 園子も友人が増えて良かったな。

 

 取り敢えず先日の戦闘を顧みて俺がこれ以上血反吐をぶち撒けないよう頑張ろう!と意気込む彼女達は控え目に言ってぐう可愛でした。

 何故か結城を思い出したね。

 あ、ブレスレットは毎日手入れしてます。

 ……何で今思い出した?

 

 因みにイネスで食ったジェラートは大変美味だった。

 俺の食った苺味は至高天だろう、人気No.1は伊達じゃない。

 園子のメロン味も鷲尾の宇治金時も素晴らしかったので今度は自分で注文してみよう。

 三ノ輪の醤油は微妙だったがまぁ美味いか不味いかで言えば美味かったのでとにかく良し。

 

 ただしつけもの、テメーはダメだ。

 

 ノリで注文して超後悔した。

 前提として何故生クリームにたくあんときゅうりが刺さっているのかと。

 更にその上に醤油風味ではなくガチの醤油がぶっかけられているという悲劇、というか惨劇。

 そもそも漬け物ジェラートってなんやねん…。

 結論:悪乗りは良くない(戒め)

 

 

 

 

 




 宜しければ感想や評価、誤字報告等を頂ければ幸いです。


 ●主人公
 パンピーの分際で神樹様の力を増幅出来るやべーやつ。
 但し少しの増幅であっても肉体に掛かる負荷は膨大であり、増幅倍率を上げる事も出来るが当然上げた量に比例して負担も増加する。
 改善案としては何度も増幅を繰り返す事で可能な限り肉体を順応させる事だが、あくまで順応させているだけなので負担が掛かる事に変わりは無い。






 ●備品
 主人公の役割であり乃木家が主人公を引き取った理由。
 お役目中は人権が剥奪され完全に勇者システムの一部(備品)として扱われるが、逆説的に言えばシステムの一部として扱われるからこそ樹海化状態でも活動が可能になっている。
 専用衣装?ないです。
 私服で頑張れ。






 ●鷲尾須美
 主人公の級友にしてお役目仲間。
 生真面目と堅物が融合したかような性格をしており実際頑固。
 主人公の事は異性という事もあり園子や三ノ輪以上に苦手意識を持っていたが、お役目中における増幅の有用性を体験した事や主人公の血塗れモードを目撃してた事により園子、三ノ輪への態度と同様に主人公に対する態度も軟化した。
 硬い物程壊れやすい=チョロイを体現しているとも言える。






 ●三ノ輪銀
 鷲尾と同様主人公の級友にしてお役目仲間。
 陽気かつ快活、そして好奇心旺盛な性格であり良くも悪くも鷲尾とは真逆の性格。
 主人公とは休み時間になれば偶に遊ぶ程度の関係だったがお役目後は他の勇者組と同様よく連むようになった。
 両者共に軽い性格である為結構波長が合うらしい。






 ●安芸先生
 主人公達の担任でありお役目のサポートも務めるおっぱい先生。
 小6に大学レベルのレポート課題を要求する魔王。






 ●結城
 登場していないにも関わらず株を上げる女神。






 ●時間停止
 樹海化の前触れだがどうでもいいものとして主人公の記憶から投射されていた。







目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話:備品ライフ

 備品って大変^q^
 そんなお話です。
 あと0話の加筆(1行)と0話の主人公設定に追記(1行)を行いました。
 ウォーリーレベルの違いですが宜しければ御拝読下さい。
 花結いのきらめきで活用されるかも…?


--(1)

 

 休日、鷲尾が三ノ輪の家に行くらしく園子を誘いに来た。

 何でも三ノ輪が学校、訓練問わず遅刻する事がお気に召さないらしく原因を探る為に私生活を観察するつもりらしい。

 大人がやればストーカーとしてしょっぴかれそうな話ですね。

 俺も誘われたが…んーどうしようかね。

 先日の訓練による負荷が抜け切っておらずガタガタな為今日一日はゆったり過ごす予定だったので正直ご遠慮願いたいのだが…安芸先生から異性の壁がある分勇者組とは積極的に交流を取る様言われてんだよね。

 実際鷲尾とは祝勝会以降あまり関わってないし…ここは無理を推してでも行くべきだな、あまり親しくない以上下手に断って悪印象を持たれても困るし。

 

 気怠げながらも誘いに乗る旨を鷲尾に伝えて身支度を整え、準備が出来た所で出発。

 使用人の方々からは「そんな体調で外出すんの…?」みたいな視線を向けられるが…頑張ります。

 ぶっちゃけ絶対安静とかでも無いんだから多少燥いでも平気っしょ、追加で増幅訓練とかでも無い限り余裕の筈だ。

 それはそうと鷲尾の手荷物が無駄に多いのが気になった、バットケースまで背負っているが何か用意して来たのだろうか?

 

 「色々よ、潜望鏡とか」

 

 ……。

 ……お前もやべーやつだったか…(諦観)

 

 

 

 

 

 

--(2)

 

 三ノ輪宅に到着して早々に鷲尾が潜望鏡を展開して三ノ輪宅の敷地内を覗き始めた。

 完全に使い方を心得てたっしゃるご様子ですね、ドン引きです(ロシア娘並感)

 園子のピンポンダッシュ発言に「恐ろしい」という評価を下す前にもっと気に掛けるべきところがあるでしょう…そもそも覗きを行っている時点でアウトなのは確実。

 普通にインターホンからの特攻で直接聞き出すんじゃ駄目なんです?

 

 「駄目よ、その方法じゃ銀にまたはぐらかされちゃうわ。 私生活を観察して原因を究明するのが一番よ」

 

 理に適ってらっしゃるのは認めますけど手段がギルティなんですよバーロー^q^

 

 

 

 

 

 

--(3)

 

 通報されても可笑しくない不審者ムーブで三ノ輪をストーキングしていたが怪しまれる事すら無かった。

 むしろ微笑ましく思われているのか妙に生暖かい視線を送られ続けたっていうね。

 多分神世紀のモラルの高さによるモノだろう、西暦なら疑心からの通報で担任教師と親を交えた三者面談へのコンボだった。

 休日だというのに急遽呼び出される担任教師が哀れでならないこの構図は涙無しには語れまい。

 まぁ現実では全くそんな事はないのでどうでも良いんですけど。

 

 で、三ノ輪を観察(ストーキング)して分かった事だが三ノ輪が遅刻を重ねていた原因は弟の世話と三ノ輪自身の気質にあるらしい。

 弟云々はまんま幼い弟の面倒を見ているから、気質云々は分かり易く言うと道行く先で起こる何かしらのトラブルに自分から首を突っ込んでいくスタイル…お節介焼きにも程があるでしょう。

 加えてトラブルとの遭遇頻度がちょっとおかしい、なんか1kmおきには何かしらの厄介ごとに突撃している気がする。

 園子曰く「トラブル体質じゃね?」って話だが…現実に居るんですね、そういう人。

 つまりトラブルに遭遇する→首を突っ込む→遅延が起こる→連続する→遅延が加速するって負のサイクルですね…めっちゃ良い娘なんだけど結果的に遅刻しちゃうのが玉に瑕。

 こういうのはバランスが大事なんだろうけど園子の言う通り体質も関係するとすればどうしようも無さそうだな…というか恥じる理由でも無いんだし遅刻する原因があるなら正直に話せば良かったのでは?

 

 「いやー…確かに遅れた理由は遅れた理由だけどそれだと弟や他の人達のせいにしてるみたいでさ…何があろうと遅れたのは自分の責任なんだし…」

 

 ……想像以上に良い子やんけ!

 なんかもうテンションが振り切れたので「よう言うた!それでこそ漢女や!」と撫で回した。

 過剰かもしれんが色々考えるのも愚痴るのも面倒臭いしここ数日の付き合いから鑑みて勇者達みたいなタイプと親しくなるなら多少オーバーなくらい感情に従って行動したほうが利口だろう。

 

 そんなわけでもうなでりなでりの、わっしゃわしゃーっ!てした。

 俺の熱きパトスは誰にも止められない、良い事をすれば褒めるのが世の道理だ。

 よって俺が三ノ輪を撫で回すのも世の理の一つである。

 Q.E.D.《証明終了》

 ただ三ノ輪自身は褒められ慣れていないのか赤面して抵抗してくる…なんか新鮮ですね、園子は「もっともっと~」ってぐいぐい来る感じだし。

 途中顔を赤くした鷲尾が「婚姻してもいない男女が密着するなんて不潔です!」などと宣い出したが、そんなもん知るかと一緒にわっしゃわしゃー!である。

 取り敢えず三ノ輪は羞恥でお顔真っ赤+涙目プルプルになるまで、鷲尾は茹蛸になるまで撫で回しておいた。

 なかなかどうして素晴らしいんじゃないですかねぇ…(御満悦)

 二人とも控え目に言って美少女だしな、役得です。

 因みに園子は撫で回される二人の姿を写メってた。

 ハブっていたので不機嫌になるのではと警戒したが「インスピレーションが刺激されるんよ~!!」とか言って園子なりに楽しんでいたようなのでとにかく良し。

 

 なんだかんだ言って俺も結構楽しんでますね…これは鷲尾に感謝だな、まぁ今は茹蛸モードで放心してらっしゃいますが。

 ……復活したら面倒そうだしご機嫌取りに飲み物でも確保しておきますか、サービスとして三ノ輪と園子にもついでに買っておこう。

 

 「鷲尾なら緑茶かな」と傍にある自販機に小銭を投入…した瞬間、周囲の時間が停止した。

 前回の経験から察するにバーテックスが攻め込んで来たという事だろう、どんなタイミングやねん。

 お陰様で俺の100円が犠牲になったぞ。

 一銭を笑うものは一銭に泣くということわざを知らんのか奴等は…知ってるワケないか。

 …それはそうと今から戦闘が起こるという事は俺もこれから勇者の援護に回らなければならないという事だよな。

 つまり吐血祭り開催の可能性が非常に高いという事だ、そして俺の身体は先日の訓練による負荷が抜けきっていないという中々危うい状態。

 という事は今の状態で増幅しちゃうと残留している負荷と新たな負荷が同時に襲い掛かって来るという事になるワケだ。

 

 つまり 残留している負荷 × 新たな負荷 = ^q^ という方程式が出来上がる訳で…。

 

 ……。

 ……これは死ぬかもわからんね(震え声)

 

 

 

 

 

 

--(4)

 

 「前のようにはいかんぞ!」と意気込む勇者達だったが案の定苦戦してらっしゃった。

 まぁ連携訓練が始まったのも最近の事だししゃーない。

 ただお陰様で俺の方は前回同様高倍率バフからの即フリージアである。

 キボウノハナーである。

 俺は止まらねぇからよ…(吐血)

 

 で、今回の増幅なのだが元々溜まっていた肉体への負荷も相まって予想以上にキツイ。

 どれくらいキツイかというとマジで瀕死になるくらいキツイ…痛覚が吹き飛んでいる為痛みは感じないが、呼吸も上手くできないし何より口から血が止まらないどころか目や鼻からも垂れ流し状態になってる。

 他にも全身の細かい血管がブチブチになってあっちこっちで内出血起こしていたり…ちょっとつらすぎんよぉ。

 偶々傍に合ったショーウィンドウに映る自分を見たが口、鼻、両目と至る部分から血液をまろみ出している人型物体とかキモすぎませんかね。

 ホラー過ぎて草も生えんわ。

 気絶寸前でこんなん見るとか夢に見そうでちょっと困るなって…。

 いや意識を失う=寝るってわけじゃないから夢の心配とかはしなくていいのか?

 わからんから今度ググッとこ。

 

 そんな具合に無駄な思考を重ねる事で何とか意識を保ち続けるという荒業の甲斐あってか勇者がバーテックスの撃退に成功したようだ。

 前回同様樹海化解除と共に何処ぞのお社へと転送されたので間違いない…そうと決まれば早々にダウンさせて貰おう。

 どうせ病院行きだし勇者組が転送されて来るのを待つだけの余裕もないのでお先に休ませて頂いてもバチは当たらんじゃろ。

 グッナイ勇者共、安芸先生への報告は任せた。

 

 「――――っあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッ!!!!」

 

 なんか意識が落ちる直前にどこからか物凄い叫び声が聞こえた。

 新手のホラーか^q^

 

 

 

 

 

 

--(5)

 

 目覚めると何時もの病室に居た。

 この展開にも慣れたモノである、まぁ訓練し始めた頃はほぼ毎回搬送されていたので当然だが。

 ただ担当医の話だとあまりの消耗具合からか5日間もの間昏睡しっぱなしだったらしい、いくらなんでも寝過ぎっしょ。

 

 「耐久がカス過ぎる」と自嘲したが見舞いに来てくれた安芸先生曰くガチの瀕死ムーブをしていたらしいのでむしろこの程度で済んで幸運だったそうな。

 予想通り今回俺が三途の川を往復するハメになった原因は増幅による負荷が俺の許容量を超過してしまった事らしい、まぁ訓練による負荷が残留した状態で更に大幅な負荷を掛ければそりゃ肉体だって壊れる。

 例えるなら許容上限1ℓの風船を500mℓの液体が入った状態にし、更に1ℓの液体を無理矢理入れればどうなるかという話だ、当然破裂する。

 今までの吐血が単純な増幅による負荷だけであったとすれば今回は増幅による負荷+肉体のオーバーフローでダメージが更に凄い事になったワケだ。

 我ながら無茶したなぁ…。

 因みに安芸先生曰く運が悪けりゃその場で爆ぜてミンチになっていた可能性もあったらしい。

 セルフボンバーマンとか怖いわぁ。

 

 プラスになった点といえば今回無茶苦茶やった分だけ増幅の許容上限が増えた程度だな、まぁ瀕死レベルになるまでやらかしたのでその分恩恵は大きいのだろうが生死の境を彷徨うだけの価値はあったのかと聞かれればマイナス収支も良い所だ。

 ハイリスクローリターンの実演とかマジで誰得なのよ…。

 

 他に聞いた事といえば戦闘終了後に鷲尾がブロークンハートしてギャン泣きをぶちかました事とかだな。

 なんか自分の放った矢が樹海を傷付けた事や三ノ輪が負傷した事、俺が特大バフをぶち込みオルガムーブをかました事等が原因で色々思い詰めた結果メンタルが爆発した感じだそうな。

 つまり意識が切れる寸前で聞こえたクソデカヴォイスは鷲尾のギャン泣きだったわけですか、はぇ^~すっごい声量。

 ……泣くにしても普通あんな絶叫しますかね…?

 

 「自分の行動に負い目を感じた矢先にチームの一人が瀕死で倒れていたらどう思いますか?」

 

 更に負い目を感じて自己嫌悪ムーブですね、わかります。

 ブロークンハートとの合わせ技で鬱になってそうだなと思ったが園子と三ノ輪が頑張ってフォローしまくったらしくメンタル面は割と復活しているらしい。

 「面倒事に首つっ込まなくてやったぜ!(ガッツポ」としていたらまだ増幅云々に関してはフォロー仕切れてないからお前がなんとかしろよとの無茶振りを食らった。

 

 えっ^q^

 

 ついでに5日休み続けた分もっかいレポート提出しやがれよというクッソありがたい(無慈悲な)お言葉も頂いた。

 

 ……えっ^q^

 

 

 

 

 

 

--(6)

 

 無茶振りはおっぱいだけにしとけやオラァ!と神樹館 in PCルームにて日本史のレポート作成する。

 これに鷲尾のフォローも加わるのだから堪ったもんじゃない。

 「おのれおっぱい許さんぞおっぱい揉ませろおっぱい」と怨嗟の念をおっぱい先生に送り続けるのも仕方のない事だ。

 童貞にあのたわわは凶器ですよ。

 あーおっぱい揉みたい(至極の願い)

 

 そんな具合に「おっぱいおっぱい」やっていると『安芸先生無茶振りツートップ』の一角である鷲尾がPCルームに入室しに来た…揉ませてくれるのだろうか?

 まぁそんなワケないけど。

 どうも俺が歴史のレポート課題を出された事を園子から聞いたらしく手伝いに来てくれたらしい。

 

 鷲尾様ァ!!(歓喜)

 

 で、実際に手伝って貰ったところものの30分程度で終わってしまった。

 歴女の力は伊達じゃない。

 

 鷲尾様ァ!!!!(畏敬)

 

 

 

 

 

 

--(7)

 

 レポートを提出し終え歓喜に震えながら鷲尾と下校する…が、鷲尾の様子がおかしい。

 まぁ手伝って貰う前から既におかしかったんだけど。

 なんか気落ちしてらっしゃる感じ。

 当たり障りのないジャブ程度の会話を幾度か行うが反応が乏しいし「鷲尾先生マジリスペクトっす!」と称えても華麗にスルーされる…生理かな?

 ジト目でしばかれた。

 こういう部分だけ素に戻るのやめーや^q^

 

 まぁ安芸先生から鷲尾が増幅云々でグロッキーなのは聞いていたのでその部分で悶々としてるんやろうなぁと推測。

 なのでテキトーに先日のお役目の話題を振り、勇者組の働きを賞賛+俺は全く気にしてませんよアピールをかまして鷲尾が気負う必要なんざない事を主張。

 「誰の邪魔も入らない場所で遊泳しようと自爆してまで三途の川に向かったってのに神樹様に蹴り返されちまったよ。これが本当の『()入お断り』ってヤツだろうなHAHAHAHA!!」とウィットに富んだナイスジョークで場を和ませる事も忘れない。

 実際今回のは自爆みたいなもんですし。

 しかもお役目における俺の働きなんて脇役どころかモブにすらなってないレベルだからね、伊達に人権剥奪されてねぇぜ。

 泣ける。

 だが事実だ。

 まぁここまでやれば鷲尾の胸中も少しは晴れてくれたんじゃないですかね(願望)

 

 期待の眼差しで鷲尾の様子を伺っていると少しづつ顔が歪み、続けて両目からポロポロと滴を零し、最後には滂沱の涙を流し始めた。

 ヴェーイ!?

 

 唐突なガチ泣きに困惑しながらも取り敢えず近場の公園に設置されているベンチに座らせて宥める。

 自販機からお茶を買って飲ませると少しづつだが何を思っているのか教えてくれた。

 というのも鷲尾自身ぐちゃぐちゃし過ぎて自分じゃ心の整理がつかなくなっていたらしく、俺が話を振った事で今まで溜めこんでいたモノが決壊してしまったらしい。

 つまりこうか。

 

 ①お役目で鷲尾のメンタルが死ぬ。

 ②園子と三ノ輪の尽力である程度復活したものの、フォローされていなかった増幅関係の部分がジワジワと鷲尾を追い詰める。

 ③俺の慰め&ジョークが鷲尾の琴線に触れてしまいガチ泣き。

 

 これは藪蛇ったかもしれませんね。

 ただ鷲尾が言いたい事はなんとなく分かる…あれじゃろ、事態を重く受け止めすぎてメンタルがガタガガタになっちゃうやつ。

 あるあるですな。

 俺だってある。

 加えて鷲尾の場合年齢に比べて人並以上に責任感が強い事や頭が堅い事が災いして色々爆発しちゃったんだろう。

 自己処理出来ない程に溜めこむくらいなら園子達にメンタルケアして貰った際に一緒に吐き出しちゃえば良かったのに…。

 まぁそういう堅い所や不器用な所も含めて鷲尾なんだろうが。

 

 頭をくしゃくしゃと撫でながら「ゆっくりやっていこうぜー」といった具合に少しづつ会話を重ねる。

 まだチームになって一ヶ月も経っていないのだ、勇者組の連携がまともに機能していないのは理解できるし俺だってどの程度強化すりゃいいのかなんてわからん。

 お互い雛鳥もいいとこなんだから地道にやってりゃいいんですよ、そもそもチームで行動する以上一人だけで思い悩む事は無いし。

 「折角チームなんだから一人で抱え込むんじゃないよ、色々共有しながら皆で強くなりましょーや」といった具合に締め括ると辛抱堪らんといった具合に鷲尾が吹き出し、そこから笑い始めた。

 ……えっ、そこ笑うとこ?

 

 「あ、そういう訳じゃなくて…その…銀やそのっちと似たような事言ってるからつい…」

 

 違います。

 全然違います。

 あいつ等のはその場のノリや友愛精神に則した慰め等によるメンタルケアだろうが俺のは超心理学を応用発展利用した最新鋭の精神リラクゼーション術だから…って更に笑ってんじゃないよ。

 まったく無礼な奴だ…でもまぁ一応復活したっぽいし良しとしますか。

 これでまたグロッキーになったら今度は園子、三ノ輪、俺の三人で囲んで完全復活するまで只管メンタルケアしてやるから覚悟しろよな。

 数の暴力に屈するんだよオラァ!

 

 

 

 余談だが後日に安芸先生から聞いた話によると園子が勇者組の隊長になったそうだ。

 マジか。

 その上で勇者全体の連携強化の為に強化合宿を行うっぽい。

 マジか。

 しかも備品は勇者じゃないので例外だと思ったらまさかの強制参加らしい。

 マジか。

 

 ……マジで?

 

 

 

 

 

 

--(8)

 

 強化合宿だよオラァとバスに揺られて讃州市内の浜辺にやって来た。

 合宿の遠征先が地元とかここまでテンションが下がる事もそう無いだろう。

 しかも部屋割りは男女別では無く俺を含めた四人揃って一室にぶち込まれるという悲劇。

 男女比1:3で外泊とか修羅の国にも程があるでしょう。

 安芸先生にも抗議したが"予算"の一言でぶった切られた。

 やはり世の中金ですな(悟り)

 

 合宿中の訓練は勇者の使用する武器の達人が指導する通常修練の他に基礎体力訓練、バーテックス戦を想定した海岸線での戦闘訓練が主だった。

 他は学校で授業を受けられない分のお勉強とか精神統一の座禅とか。

 

 俺?

 俺は勉強と座禅以外は対人訓練と海岸線訓練の見物しかしてない。

 というのも前回のお役目で備品としての訓練とバーテックスの襲撃が重なった場合増幅のリスクが急上昇する事が判明した為備品の訓練は無期限で中止となったのだ。

 マジで来る必要無かったんじゃないかと思ったが、安芸先生曰く俺の課題は『勇者組の実力を把握していない』と『適切な強化が出来ていない』の二点らしい。

 その為俺が合宿ですべき事は彼女達の訓練っぷりを見学した上で各々の実力を見極め、全員の実力を把握し適切な強化を行えるよう努める事だそうだ。

 

 因みにレポート提出有り、提出期限は合宿最終日の早朝、文字制限は5000以上。

 作成時間は夜の鍛錬を過ぎた入浴時間から就寝までの自由時間のみ。

 しかも合宿中の起床時刻は早朝5時なので夜更かしは厳禁。

 完成できなかった場合は別途で補修を設けるそうな。

 自由時間が実質的に皆無とか鬼か^q^

 

 「おのれー!」と恨み節を呟きながら勇者組の訓練を眺めていると三ノ輪が訓練の到達目標であるバスを粉砕した。

 ……確かにバスまで到達しろと言われてたけど別に破壊しろとは言われてなかったような…中々クリア出来ない事に対してフラストレーションが溜まっていたのだろうか?

 因みに安芸先生は「予算ががが…」ってなりながら消沈してた。

 

 ドンマイ☆(世界が嫉妬するスマイル)

 

 しばかれたー^q^

 

 

 

 

 

 

--(9)

 

 合宿最終日前日の夜。

 事実を膨らませて文字数を稼ぎつつコピペの嵐を乱舞させる事でどうにかレポートを完成させた。

 大学生の平均レポートが2000字程度だというのに小学生に5000字を要求ってやっぱおかしい。

 それとも乃木の人間はこの程度容易くクリアしないといけないとかの試練なのだろうか?

 どの道つれぇわ。

 そして眠い。

 

 「よっしゃ寝るべ」と布団に向かうとまだ起きていた勇者組が楽しげに雑談していた。

 なんでも女子が三人姦しいという事で好きな人がどうこうといった話題で盛り上がっているそうな。

 青春してんねー。

 だがスルーする、何故なら俺は眠いのだ。

 クソネミなのだ。

 故に寝るべくして寝るのだ。

 おやすみなさい!!(世界への宣誓)

 

 

 

 ……なんか時間が停まったんですけど…。

 

 

 

 

 

 

--(10)

 

 「でででっでーん!お役目速報。ただ今入って来た情報によりますと、壁の外側より大橋市近辺へとバーテックスが攻め込んで来た模様です」

 

 「付近の住民の皆様は直ちに座して死を待て」

 

 「お役目速報、完。でででっでーん!」

 

 ……ふぅ。

 よっしゃ!寝るべ!!

 

 ニュースの速報風にテキトーな事言って睡眠ロードを走ろうとしたら三ノ輪と鷲尾にしばき倒された^q^

 真面目にしますから許して。

 でも人様の快眠を妨げる存在は死んでいいと思うんだ。

 むしろ死ぬべき。

 古事記にもそう書かれている。

 よって襲撃をかけて来たバーテックスは死ね。

 一部の隙も無い完璧な理論だ。

 

 そんな具合で勇者様方!やっちまってくだせぇ!と三下悪役モードでアプリを起動し、アプリを弄って大型バフを掛けようとしたら勇者組三人に羽交い絞めにされた。

 無闇矢鱈に強化してんじゃねぇぞオラァン!って事らしい。

 あと少しは自分達の力を信用しろとも。

 

 まさか三人揃ってマジギレするとは思わなかった…正直ビビりました。

 特に園子の目付きが恐ろしい事になってて駄目だった。

 完全に闇属性のソレでしたわ。

 怖いわー…。

 

 そういう訳で計画変更、今回のお役目では勇者達を常時強化するのではなく状況次第で強化していく方針にしていく。

 ぶっちゃけ不安しか無いんだけどね…。

 前にも言ったが勇者の戦闘速度は常人では対応仕切れない程速く、また行動を予測して対処しようにもパンピーな俺に戦況予測とか出来るわけが無い。

 ならばバーテックスの動き次第で強化を施そうと考えたが、送られて来る映像は常時勇者達を注視しているので超巨大サイズであるバーテックスの全体像が映らず動きを見定める事が難しい。

 

 どうしても後手に回るとかクソゲー過ぎんよ…。

 

 

 

 

 

 

--(11)

 

 バーテックスのビームを受け止める三ノ輪をサポートしている間に戦闘が終了した。

 地震を起こして鷲尾の矢を完封するわビームをぶっぱするわで中々厄介な相手だったが三ノ輪がビームの照射を受け止めている間に鷲尾と園子でボコした感じだ。

 映像は只管ビームを受け止めて腰痛と戦う三ノ輪しか映していなかったからまったく状況把握出来て無いんですけどね!

 

 やっぱカメラ設定変えるべきだわーとゲンナリ。

 大赦に申請して変えて貰うべきか…あーでもお役目で使う機材って樹海化状態でも動く特別仕様だから申請したところで反映されるまでに数ヶ月かかるんだよなぁ…。

 まぁ何もしないよりか良いので次のお役目に間に合う事を祈って申請しておこう。

 ぜってー間に合わないだろうけど…。

 

 因みに勇者組なのだが殆どバフを掛けなかったにも関わらず目立った外傷は無く多少疲弊した程度だった。

 これは喜ばしい。

 しかし提出したレポートのコピペが安芸先生にバレた。

 これは喜ばしくない。

 お仕置き不可避だ。

 や、止めろ!離せ!魔王!

 ぐ、ぐわああああああああああ!!!

 

 

 結果、文字数を7000文字に割増された。

 

 

 ひょ、ひょえー!( 'ω')

 

 

 

 

 

 




 宜しければ感想や評価、誤字報告等を頂ければ幸いです。


 ●主人公
 訓練とお役目の負荷が重なった事により自爆した。
 こわい。
 ただそれにより毎度血反吐を撒いていた訓練が消えた。
 やったね!
 最近だと超心理学を応用発展利用した最新鋭の精神リラクゼーション術を用いて鷲尾のメンタルケアを行ったらしい。
 ネーミングが酷過ぎる。






 ●鷲尾須美
 頭のお堅いお役目仲間。
 原作のお悩み+増幅云々のお悩みで原作よりも長期にお悩みを引っ張ったが無事解決。
 その影響もあってか主人公に対しても三ノ輪や園子と同等の仲間意識を持つようになった。






 ●安芸先生
 最近お役目関係の出費が増えて予算がヤベーぞとお上から通知が来た為頭を悩ませている。
 主に勇者達の訓練費と主人公の入院費が原因。






 ●自販機
 「れはわるくない」

 「じゅかいかががやった」

 「しらない」

 「すんだこと」






 ●日本史レポート
 主人公の仇敵。
 最近歴女鷲尾に瞬殺された。






 ●バス
 三ノ輪のフラストレーション発散により勇者パワーで粉々に粉砕された。
 これによりお役目関連の出費は更に膨らんだ。
 安芸先生は頭を抱えた。
 多分主人公達を送迎してたバスだと思うんですけど(名推理)






 ●大橋市付近の住民
 避難勧告かと思ったら首洗って座ってろって言われた。







目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

妄想ぶっこみ短編:結城友奈の幼馴染である

 幼馴染ネタは王道。


 最近、友奈の付き合いが悪くなった。

 遊びに誘っても、今日は都合が悪いと言い張りで東郷さんと何処へと向かう様になった。

 粘って誘っても駄目だった。

 幼馴染兼隣人兼旦那(確定事項)の俺が誘っても駄目とかおかしくなーい?

 というか東郷さんの申し訳なさそうな表情が結構刺さる。

 別に攻めてるわけじゃないんよ!

 あと牡丹餅美味しいレス^q^

 

 俺と友奈は幼馴染である。

 赤ん坊の頃は隣同士のベッドで寝かせられ、保育園から今の今まで同じ教室、小5までは共に風呂に入り、朝起こすのも俺の仕事だ。

 幼年期に将来を約束したのは一日だって忘れた事は無い。

 それなのにスルーされるとはおのれ…。

 これが親離れならぬ幼馴染離れというヤツか…。

 

 「悲しいなぁ」と悲壮に暮れていると見かねた東郷さんが事情を教えてくれた。

 どうやら部活に入ったらしい。

 曰く人助けを進んでやる部活動で名を『勇者部』と言うそうな…。

 

 

 なん……だと……?

 俺と遊ぶよりも充実しているというのか…?

 

 

 詳しく聞くとお人好し100%の友奈が勇者部の在り方にド嵌りしたらしく毎日ノリノリで活動に励んでいるそうな。

 今はまだ東郷さんと友奈、そして部長の3人という小人数且つ出来たばかりの部活なので依頼も殆ど入って来ないが、知名度を広げる為に進んで地域の清掃や幼稚園への訪問等を行っているらしい。

 えっ、つまり本来なら依頼受託せいなの?

 中学生の部活なのに?

 えぇ…(困惑)

 

 変な情報ばかりだが突き詰めるとボランティア活動的なサムシングだという事は把握した。

 だが実態をこの目で把握するまでは納得できんし安心もできん。

 そんなわけで勇者部にカチコミだ!場合によっては俺の友奈を取り戻すのです!!

 

 

 

 

 

 ……うどんうんめ~^q^

 

 

 

 

 

 油断した。

 部長の犬吠埼先輩こと風先輩の女子力うどんでワンパンされてしまった。

 これは勝てない。

 どれくらい勝てないかというとソロの一般人が素手でゴジラに挑むくらい勝てない。

 一般人のソロプレイとか例え武装しても無理やんけ。

 というか友奈の為に極めた肉うどんが敗北するとかどうなってんねん。

 やはり男はボリューム料理には勝てないというのか…。

 あっ、勇者部自体はとてもアットホームな素晴らしい場所でしたよ!求人なら死語もいいところだがな!

 ……ゆーなー…。

 

 

 

 

 なんやかんやあって俺も勇者部に入部させて貰う事になった。

 ただし名誉勇者部員としてなので正式な部員としてはカウントされない、いわば仮入部扱いである。

 何故俺は入部出来ないのか先輩に聞いてみたが誤魔化されてばかりなので放置。

 俺からすれば友奈と一緒にいられるだけで上々だし一々詮索するのは野暮だからね、まぁ色々あるんだろう。

 因みに友奈が俺と距離をとっていたのはこの『俺が入部出来ない』という部分で酷く消沈してしまっていたのが原因だと東郷さんから聞かされた。

 "一緒に居る時間が長ければ離れている時間が辛いから"とか"自分から離れてしまった事もあって言い出せなかった"とかなんとか…何か友奈も色々思い悩んでらっしゃったご様子なので取り敢えず友奈可愛いで決着をつけておいた。

 

 で、今回のカチコミ案件なのだがなんと東郷さんの思惑通りだったらしい、俺が勇者部に突撃する事も風先輩に屈することも全てわかっていたそうな。

 曰く勇者部の部活をする友奈は楽しそうだがそれでいて寂しげなのが透けて見えていたらしい、そして東郷さんと同じく友奈の気配に勘付いていた風先輩と結託して俺を向かわせるよう扇動したとか。

 因みに仮入部ムーブまで行くのも全て東郷さんの計画通り、風先輩もまぁ仮入部ならという事で東郷さんの提案に乗ったとの事。

 

 

 ……つまり一緒にいられず寂しい思いをしていたのは俺だけでは無かったと…?

 友奈の方を見ると顔を赤くした友奈が無言でコクリと頷いた。

 

 

 ゆ、ゆうううううううううううなああああああああああああああああああああ!!!!!

 

 

 全力で抱き締めると既に真っ赤だった友奈が爆発した。

 "ボッ!!"って感じになった。

 最高に可愛い。

 流石は俺の友奈だ、俺じゃなかったら死んでいる破壊力だ。

 今夜は寝かさねぇぜ。

 

 「ここまで見させられて改めて聞くのもアレだけどその…二人はどういった関係なのかしらね?」

 

 この手の話に興味があるのか蚊帳の外気味だった風先輩が興奮気味に聞いてきた。

 誰がどう見ても神世紀最大最高の幼馴染ツインズでしょうが犬パイセンの眼は節穴か(理不尽)

 夫婦と呼んでも良いのよ?

 

 

 

 

 今夜は寝かさねぇぜと言った手前今晩は一緒のベッドで寝る事にした。

 少し狭いが友奈と一緒なら気にならない、むしろ友奈と密着出来て役得だし友奈の方も進んで密着しに来るので仮に今以上ベッドに幅があってもひっついているのは変わらなかっただろう。

 因みに夕食も風呂もご一緒した次第。

 風呂は流石に嫌がられるかと思ったがここ数週間の反動は大きかったらしく特に何も言わず一緒に入ってくれた。

 流石友奈、大好きだ。

 

 で、一緒のベッドで寝るというのが久々という事もあってか密着した状態で友奈が様々な話をしてくれた。

 密着した状態で(強調)

 内容は主に勇者部の話ばかりだが友奈の話はどれを聞いても楽しい、友奈も詳しく伝えようと懸命に話して来れるので思いが伝わって来るのも相まって最高の一時としか言いようがない。

 

 一頻りにゃんにゃんしていると流石に眠くなって来たのか友奈がうとうとして来た。

 今日は寝かさないと言ってしまった為か「ごめんね…」と申し訳無さそうに言って来るが全く気にしません。

 あんなもん一緒に寝る為の建前に決まってるでしょう、俺は友奈と一緒に居られればそれで満足だ。

 大好きだからな!

 少し力を込めて抱き締めながらそう伝えると安心したかの様に眠り始めた。

 最高の寝顔だ。

 この寝顔だけで夜食7杯はいける。

 そして友奈が眠ったのを見届けて十数分後、事件は起きた。

 

 

 

 

 「……君…大好き…」

 

 

 

 死ぬ。

 これは死ぬ。

 溶けて死ぬ。

 寝顔をガン見して絶頂し続けているこのタイミングでその寝言は破壊力が高すぎる。

 例えるなら全く対策していない状態で挑むペルソナ3のエリザベス戦。

 速い話がメギドラオンでございます。

 最大HPが999にも関わらず全体万能属性9999ダメージとか昇天するしかないじゃない。

 そして俺は歓喜の中で天に召された。

 

 チーン^q^

 

 

 

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 

 

 

 

 「って夢を見たんだけどどう思う?」

 

 「あわわわわわわわわわわわわ…(顔面赤色噴火(フェイスバーニングエンド))」

 

 全人類嫉妬案件+人生最高の夢を見た翌日、牡丹餅ウマー!しながら昨晩見た夢を上機嫌に報告してきた友奈に対しカウンター気味に俺の見た夢を話すと顔を赤くしてあわあわしだした。

 凄い可愛い。

 因みに美森と風先輩は別件の依頼でそれぞれ部室にいない為今は俺と友奈の二人きりだ。

 二人きりだ(超重要)

 ニヤニヤしちゃうね。

 

 「頬に餡子がついてますよ」と人差し指で拭いとって口内に含むと「はうっ!」と呟いた途端にオーバーフローした。

 "ボッ!"っと赤くなって"シーン"…って感じ。

 凄い可愛い。

 写メっとこ。

 

 そういえばえ何で俺は夢の中とはいえ美森を"東郷さん"呼びをしていたのだろうか…?

 気分とか?

 まぁどうでもいいや。

 

 「……嬉しかったの?」

 

 撮った写真を待ち受けにしていると再起動を果たした友奈が顔を赤くしながら聞いてきたので「昇天する勢いで幸せでした!」と報告すると更に顔を赤くして俯いてしまった。

 天使か。

 いや、女神だな。

 友奈神様結婚して下さい!!

 

 「私も…その…う、嬉しいよ…」

 

  心の内でシャウトしていると俯いていた友奈が少しだけ顔を上げ、指をもじもじさせながら上目遣いでそう呟いて来た。

 

 ぐう可愛すぎてヤバい。

 そしてチキン童貞な俺は気恥ずかしさのあまり友奈のカミングアウトに対して「さ、左様でございますか…」と目を逸らしながら呟く事しか出来なかった。

 

 ……やっばいな、不意打ちのせいか顔中が熱くてたまらない。

 今絶対顔真っ赤だわ俺…。

 だが恥ずかしさと同時に多幸感も凄い…アレだ、嬉死恥ずか死というヤツだ。

 幸せの中で死ぬ…これが北斗有情破顔拳ですか。

 まぁ本家は快楽と共に死ぬらしいがさして変わらんだろう(適当)

 うわらば。

 FATAL K.O.

 

 死んどるやないかい^q^

 まぁ悩殺させられたのは事実なんですけど。

 事実なんですけど!

 

 「チクショー」と未だ火照る顔を抑えながら友奈をチラ見……俺と同じく赤くした顔ではにかみながら微笑まれた。

 

 勝てる気がしねーや…。

 

 

 

 

 

 




 宜しければ感想や評価、誤字報告等を頂ければ幸いです。


 ●主人公
 短編作品にあたり夢の世界では本編の10倍ほど、現実側でも本編の3倍ほど友奈愛が爆発している。
 つまり本編とは別世界線の備品。
 夢の世界では前世の記憶を受け継いでおらず乃木家への養子行きもなく備品パワーも持っていないパーフェクトパンピーと化した。
 多分只管友奈ちゃんとイチャコラしたり牡丹餅ウメーしたりしているに違いない。
 なお、お役目云々とは無関係である為勇者部では仮入部扱いな模様。
 現実の方では"本日の10割"を食らった。
 FATAL K.O.






 ●結城友奈
 「肉うどんをお腹いっぱい食べる夢を見たんだ~!」といった具合に報告したところ主人公からカウンターを受け顔面赤色噴火(フェイスバーニングエンド)した。
 が、最後の最後で主人公に対して"本日の10割"レベルのカウンターを見舞い今度は主人公をワンパンした。
 必殺としては北斗有情破顔拳レベル
 座れば勝ち。
 つまりトキ。
 当たり判定スーパーな即死あぐらビームとかズルくない?







目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。