思いつき東方1 (killer2525)
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転生

「眩しいなぁ。なんなんだ?」

「ここかね?天界と人界のあいだに広がる世界だよ。」

ひとり呟いていた、と思ったら、いつの間にか青年が後ろに立っていた。

「ってうぉい!?いきなりお前誰だ!?」

「何。ただの神だよ。君には済まないが転生をしてもらおうと思ってね。」

「は?転生?俺生きてんじゃないの?」

「いや?死んだよ?」

「・・・・・・は?死んだ?」

「うん。死んだ。」

「・・・ちなみになんで?」

「俺のミス。」

「おい?今なんつった?(ボキボキ)」

「いや、ね?俺の上司がメガネ落としちゃってさ、その時に手が当たってさ、インクボトル倒してね。

その時慌てて直したんだけど丁度君の名前のところだけ消えてしまってね。

名前のないものはいきていくことはできない。他者に知られているなら尚更ね。」

「・・・なるほど。だから死んだのか。まあミスは許せんけど、ま、しゃーないか。」

「・・・怒らんのか?」

「いや、むしろ神様でもミスすることがあんだなって思って若干親近感が湧いた。ずいぶん人間っぽいんだなって思った。」

「ははは、まあ、人間界に書かれているものだと随分人間離れしているしな。俺たちだってミスぐらいすることあるさ。」

「へえ。そういえば転生って言ってたよな。どこ?」

「ああ、君のパソコンの中に入っていたものと似た世界だよ。」

「・・・色々入っているんだが。ガンダムとか東方projectシリーズとか。」

「あ、それそれ。転生先は東方だよ。」

「マジで?」

「不満か?特典とかいろいろ付けるが。」

「いやむしろその正反対。めっちゃ嬉しい。」

「そうか。なら良かった。」

「ところで特典って?」

「とりあえず鬼すら足元に及ばないほどの筋力、天狗以上のスピード、実質無限とも言えるほどの妖力、霊力、魔力でどうだい?無論能力もあとで選んでもらうよ。」

「スゴ・・・強すぎんだろ・・・」

「じゃあ、この中から紐を4本引いて。」

「え?これで決めんの?」

「大丈夫。充分どれもチートだから。」

「あ・・・そう・・・

んじゃあまあ適当にこれとこれとこれっと。」

「えーとどれどれ・・・?

『分解と再構成を司る程度の能力』っていきなりチートかよ。

あとは『時間と空間を司る程度の能力』、『あらゆるものを作れる程度の能力』、『体を進化させることのできる程度の能力』?

強すぎんだろ。どうやって倒すの?」

「知るかよ。前からくじ運だけは良かったんだ。」

「良いってどころじゃないよこれ・・・まあいいや。適当に転生させておくよ。

じゃあ二度目の人生行ってらー。」

「あんたほんと軽いな。まあいいや。特典とか転生とか色々ありがとうな。」

「気にすんな。ま、楽しんで来い。というわけで奈落の底まで『ボッシュートになります』」

「おいまてどういう意味だ!?」

 

ポチッ

 

ガコンっ!

 

「お前今度会ったら絶対しばくからなあああああああああああああああああああ!」

足元に空いた穴によって下に落ちていく。



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転生完了

「おうわああああああああああああ!?」

 

バッシャアアアアアアアンッ

 

「ゴホッゴホッ!くっそ、何も川に落とさんでもいいじゃねえか。」

穴から落とされた先は川で、体勢が悪かったのか頭から川に突っ込み溺れかけた。

「ふう。まあ落とされたのはもういいや。どうせボコれないし。それよりも現状確認だな。

まずここは・・・?なんか町、というよりも都市があるな。空に車走ってるし。

なのにこれだ自然があるってことは・・・

もしかしてこれ、永琳たちがまだ地球にいるってことじゃあ?

あれ?ってことは俺寿命でゆかりん達に会う前に死ぬんじゃね?

蓬莱の薬のも。」

 

「・・・・・・そういえば俺の種族ってなんだろ。

・・・は?天狼?いやそれってまずくね?しかも半妖?

ま、いいや。腹減ったし適当に食お。」

 

そういって能力を使い鉄板と味噌、キャベツ(なぜか一口大にカット済み)、猪肉(こちらはなぜか厚めのスライス肉)を出し、簡単に炒める。

 

「うっし、それじゃあ早速・・・ってなんだ?お前もこれ食いたいのか?」

そう言っていつの間にかそばに来ていた1頭の狼と2頭の仔狼に聞く。

すると「くぅ~ん」と言いつつ頷く。

「そっか。じゃあちょっと待ってな。そろそろできるから。」

そしてしばらく後。

「よし、出来たぞ。さ、一緒に食おうぜ?」

そう言って取り皿を作り出し、そこに肉だけを分けてやる。

当然自分の分が減るので、既に肉は追加済みである。

火は起こすのがめんどくさかったので妖力を燃やして火を得ている。

魔力だけはわからなかったが、その他の力の使い方はこちらに落とされた時に理解することができた。

おかげでもうマスタースパークも妖力、霊力版だけど使える。

結界の張り方も理解することができた。

 

 

ところでお気づきだろか?転生特典は程度の能力だけでなく、

莫大な量の妖力、霊力、魔力を貰っていることに。

つまり、

 

 

「あなた、一体何者?」

「ん?お前らも食うか?(えーりんか・・・腹減ってんのかな?)」

複数の兵士と思しき人たちと共に武器をこちらに向けている永琳がいた。

 

 

 

side 永琳

「八意先生!大変です!『妖の森』からの反応が急激に強まりました!」

「なんですって!まさか、新たな大妖怪が誕生したかも・・・

隊長に伝えてきなさい!『妖の森』で発生した急激な妖力の原因を調査するために私も同行して偵察に行きます!」

「は、はい!直ちに伝えてきます!」

 

そして四十分後・・・

「八意先生、第三部隊所属2個小隊、準備完了しました。いつでも出れます。」

「わかったわ。それじゃあ早速偵察に行くわよ。」

そして街をでるが・・・

 

「この方向であってるのかしら?」

「はい。あの煙がたっているあたりかと。」

前の森を見ると煙が一筋上がっている。

「全員、武装のロックの解除を許可する。相手が攻撃の意思を持っている場合はためらわず発砲せよ。

攻撃の意思が見られない場合は許可があるまで発砲を禁ずる。いいか?」

「「「「了解!」」」」

 

そしてしばらく森の中を進むと・・・

「・・・いたぞ、総員準備。」

そして一斉に銃と弓を構えつつ茂みから飛び出すと・・・

「あなた、何者?」

「ん?お前らも食うか?」

今ちょうど食事をはじめようとしている銀色の耳と尻尾の付いた青年がこちらを振り返っていた。

 

 

 

side龍

「お前らも一緒に飯食うか?ちょうどこっちも飯食うところだったんだ。」

「貴様、手を挙げてその場に跪け!」

「あ、悪い。後でいいか?肉や野菜が焦げちまう。食い終わってからにしてくれ。」

「・・・なんの肉?」

「ん?猪肉。臭みとかは取ってあるし柔らかくしてあるけどな。ほらお前らもどんどん食えよ?」

そう言って足元で食べている狼達にもおかわりを足してやる。

「新しいやつはまだ熱いからな?気をつけて食えよ?」

「「「ガウっ!」」」

元気よく返事をしてまた食にに戻る三頭。

「・・・撃てっ!」

しびれを切らしたのか発砲の命令を下す隊長らしき人。

 

「フッ!・・・やれやれ。また温めなおすのかよ。めんどくさい。」

しかし、鉄板を跳ね上げて盾がわりにし、宙に舞った食材を反対の手に出した皿で一つ残らず受け止める。

「ほれ、隊長さんも食ってみ?美味いぜ?」

そう言って凸凹(穴はあいてない)になった鉄板から手を離して箸でその内の一つをつまんで口の中に放り込む。

「熱っ!?」

まだ熱かったのか口を抑えて転がる隊長。

「あ、ワリワリ。ただ飯食ってる間は邪魔しないでくれ。」

そう言って食事を続ける。

 

 

・・・・・・・

二十分後・・・

「食ったー。で?あんたたちもしかして俺に何か用?」

「あなた、一体何者?」

「狼の妖風情だよ。あ、こいつらはさっきあっただけで関係はないから手は出すなよ?」

そう言って一緒に飯を食っていた狼たちを逃がす。

「あなたには一緒についてきてもらうわ。抵抗する場合は倒させてもらうわ。

次はレーザーでね。」

「ああ、まあ飯食ったから別に構わんが?」

特に従わない理由もなかったので大人しく付いていく。

 

 

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・・

・・・

「で、どうして俺はここにいるんだ?」

「あら?だったら実験室に連れて行かれて解剖されても良かったの?」

「あ~。それは困る。そのことには感謝している。」

「そう。ならこっちにも協力して貰うわよ。」

 

都市の中に連れて行かれたあと、永琳の家に滞在することになり、

いまはそれなりに打ち解けた。

そして俺がここに連れてこられてから数年がたったある日。

 

「はいはい。で、次はこれを分解してこっちを結合させればいいんだな?」

「ええ。それが終わったら今日はもう終わりましょう。もう遅いしね。」

永琳が薬を作るのにどうしても結合が強過ぎ、また混ざらなかったものでも、俺の能力ならばできるのではないかと思い以前手伝ったところ、たまにこのような仕事を頼まれる。

「ほーい。んじゃあ遅いけど終わったら晩飯作るわ。永琳も食えるか?」

「ええ。頂くわ。じゃあその間に私は片付けておくわね。」

「はぁ。たまには永琳が作ってくれよ。」

「あら?前作ってあげたじゃない。」

「あれは冷凍食品だ。」

そんな雑談をしつつ、頼まれた仕事をする。

俺は前世を含め、妖怪になってからも自炊していた(永琳の家で)からそれなりのものを作れるようになった。

「にしても随分と馴れ馴れしくなったな。」

「森からもどるまでのあいだずっとあの調子じゃあ真面目に警戒しているこっちが馬鹿にしか思えなくなったのよ。」

「まあ、人なんて食いたいとは思わねえしな。それより自分で料理したほうが人肉食うよりよっぽどうまいと思う。そもそも俺は人と敵対するつもりはないしな。殺されそうになったら流石に反抗するが。」

「ホント妖怪とは思えないわね。あなた本当に妖?」

「ああ。しがない狼の妖怪だ。」

 

ただし頭に『天』がつくがな。

 

「確かに今のあなたの力だとしがないって言っても嫌味には聞こえないわね。」

「今は力の封印の仕方を知ったからな。どうせしばらくここに居ることになるんだろ?」

「ええ。悪いけどね。あなたみたいな強力な力を持った妖をあのまま森にはなったままにはできないしね。」

「別に構わないよ。あそこにいても弱肉強食が地で行くだけで何も面白くない。

それよりもここで薬の作り方を学んだほうがよっぽどいい。」

「本当に妖とは思えないわね。」

「ははは、自分でもよくそう思うよ。」

しゃべりつつ仕事を終えたので夕飯(時間的には夜食)を作る。

「明日は薬の材料を取りに森に入るわよ。護衛は任せたわよ。

まさか森に入ったとたん逃げないわよね?」

「おいおい?いったい何年一緒にいると思ってんだよ。すべての薬の作り方を知ってからならまだしもまだまだ全てには届かないだろ?」

「ええ。そうね。夕飯はあとどれくらいでできそう?」

「あと2~30分ってとこだな。どうかしたか?」

「なら私はそのあいだにお風呂にでも入ってこようかしら?」

「そこでなぜこっちを見る?」

「・・・覗いてもいいのよ?///」

顔を赤らめつつそう言ってくるが、

「あとが怖いからやめとく。ってか俺みたいな奴別に好きでもなんでもないだろうに。」

「(何度も助けられて惚れないわけないじゃない。しかもこんなにかっこいいのに///

。)そう?なら今はそういうことにしとくわ。」

「はいはい。早く上がってこないと冷めちまうからな。入ってくるなら早く入ってこいよ~。」

そして風呂に入る永琳。

「さてと。あいつが風呂上がったらすぐ食べれるようにしとおかないとな。」

食器を出しつつ料理をすすめ、同時にお茶を入れるためのお湯を沸かす準備をする。

ちなみに妖力と魔力はひとまず全部封印したが、霊力だけは普通の人間より少し強め程度に開放してある。

足りない手数やコンロは霊力を応用して擬似的に手を作ったり霊力の火を使ったりする。

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

・・

 

「よし。出来たな。あとはお茶を淹れて、っと。」

「龍~上がったわよ~」

「お~ちょうど出来たぞ・・・ってええええええいえい永琳!?なんでそんな恰好なんだよ!?」

「どんなって、こんな格好だけど?」

ちなみに永琳の今の格好はバスタオル一枚を羽織っただけの姿である。

要するにちょっと動くだけど色々見えそうなのだ。

「頼むから服を着てきてくれ。俺の精神がもたん。」

「・・・襲ってもいいのよ?///」

「だからやめい!早く服を着る!早くしないと飯が冷めてまずくなるだろ!」

「はいはい。わかったわよ。」

そう言って部屋から出ていき、今度こそまともな服を着てくる。

「それじゃあ食べましょうか。」

「全く・・・もう遅いんだから慌てさせないでくれ。」

「「いただきます!」」

 

 

 

 

 

「じゃあ洗い物は俺がやっとくから永琳は先に寝ててくれ。」

「いいの?別に洗い物くらい明日でもいいのに。」

「臭いが取れなくなったら嫌だからな。早いとこ洗っておくよ。」

「そう。ならお言葉に甘えて先に寝させてもらうわね。」

「ん。お休み永琳。」

「ええ、お休み。」

そして洗い物を終え、就寝する。

 

 

 

お休みなさい。



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不老化

「龍、起きなさい。森に行くわよ。」

「あ~わかった・・・・朝食作るからちょっと待って・・・どれぐらい行く?」

「そうね・・・全部見つけるには午前中いっぱいぐらいはかかるかしら?」

「あいよ~じゃあ昼飯の下拵えもついでにやっとく・・・。」

そう言って調理に取り掛かる。

 

「「ごちそうさまでした。」」

下ごしらえと朝食を作り終え、食べたあと。

そのまま出かける準備をする。

 

といっても、黒に銀の糸で少し刺繍をしてある着流しを着て、自分で作った刀『朧火』を帯刀するだけだが。

 

「ん。準備できたぞ。」

「そう。こっちも準備できたから行きましょう。」

そう言って家を出る。

 

移動中・・・

到着

 

「さて、それじゃあ始めましょうか♪龍、貴方はこれらを採ってきて頂戴。」

「わかった。永琳は?一人で大丈夫か?」

「ええ。心配御無用。ちゃんと弓矢を持ってきたわ。」

そう言って俺に愛用の弓矢を見せてくる。

「ならいいけど・・・気をつけろよ?」

「ええ。わかってるわ。」

そして別れ、それぞれ必要な物を集める。

 

・・・・・・・・

「よし。これで集まったか。あとは永琳と合流すればいいか。ど~こっかな~っと?」

 

まあ、能力ですぐわかるんだが。

っつ!?マズい!

 

とっさに永琳の所まで空間を捻じ曲げて移動する。

 

「永琳!」

そう叫んで永琳を抱きかかえ、背中で守る。

 

 

 

 

side永琳

「あとはこれと・・・そういえばこれもなかったわね。丁度切らしていたところだし、いただいていきましょう。」

そう言いつつ目的の物以外のものもとっていく。

そしてたまたま場所が良かったのか、なかなか取れない薬の材料なども追加で採取する。

 

だが、その作業に熱中しすぎたのがいけなかった。

 

「キシャアアアアアア!」

「キャッ!」

後ろから奇声をあげ、襲いかかってくる妖怪に全く気付かなかった。

 

それこそ、致命的なまでに対処が遅れるほどに。

 

死を覚悟し、目を強くつむり、来るであろう痛みに耐えるために歯を食いしばる。

「永琳!」

よく知っており、自分の愛し、全幅の信頼を寄せる半妖がいた。

 

 

ザクッ!

 

「ぐぅっ!流石に痛えっ・・・!」

資格から襲いかかってきた蜘蛛の妖怪の攻撃を自らが壁になることで防ぐ。

 

「クッソ・・・『次元斬』っ!」

 

自身の霊力を刀に込め、空間ごと相手を切り裂くイメージで抜刀して居合斬りを放つ。

 

 

・・・・・・あ、ミスった。

この状況でこれ使ったら・・・!

 

サンっ!

 

うん。確実に蜘蛛の妖怪を倒せるのはいいんだけどね?

 

・・・これ、まだ未完成で体にめちゃくちゃ負担がかかるんだった・・・。

 

ドサドサッ!

 

蜘蛛の妖怪が切り裂かれて力尽き、倒れるのと同時に。

俺の体も既に深手を負っていたにもかかわらずこんなめちゃくちゃな技を放ったせいで体に過剰の負担がかかり、危険を感じた脳が自動的に痛みを遮断する。

 

有り体に言えば。

 

気絶した。\(^o^)/

 

 

 

・・・・・・・・・

「ぐ、ぬう。ここ、は?」

「・・・よかった!気がついた!」

「ぐほぁっ!?永琳!頭!頭鳩尾に入ってる!」

目を覚ますと真っ白な天井があり、気がついた途端泣きそうな顔をした永琳が顔をうずめてくる。

「永琳、どうした?俺が気絶したからってなく必要ないだろ?」

「いいえ・・・聞くよりも見たほうが早いと思うわ・・・。」

そう言って鏡を渡してくる。

 

「え?なにこれ?」

そこに映っていたのは俺とそっくりな、髪の白い青年がいた。

「え、永琳?どゆこと?」

「・・・ごめんなさい。あなたがそうなったのは私が原因なの。」

「は?」

恐らく俺がこうなったのには永琳に原因(俺は元々は黒髪)だと思ったので聞いてみたところ、泣き出しそうな顔で説明をはじめようとする。

「あ~永琳?もうこうなっちまったもんはしゃーないし、落ち着いて話してくれ。」

「ええ。わかったわ・・・実はね、あなたが気絶したあと・・・」

 

 

 

side永琳

「そんな・・・龍、しっかりして!」

抱き起こしてみるも、息は荒く、背中側は大きく切り裂かれており、どす黒く変色した血が絶え間なく流れ出していた。

「まさか爪に毒が・・・とりあえず急いで戻らなくちゃ!」

そう思い、抱き上げようとするも、

「・・・重い・・・」

女性一人の力で大の大人の体重をいくら細身とは言え抱き上げることもできずただ焦っていただけの所。

「ガウっ!」

「っつ!狼!」

反射的に弓を構えるが、ここで気づく。

「いくらでも襲えてたはずなのに、襲ってこなかった?」

不思議に思い、呆然と見る。

「アォーンっ!」

「遠吠え!?仲間を呼ぶつもり!」

慌てて矢を射ようとするが、狼の目を見て気づく。

「・・・攻撃の意思がない?」

そして仲間が集まり、唸ったり地面を前足で掻いたり体を震わせたりの意思疎通らしきものをしたあと。

 

 

ズル・・・ズル・・・

 

 

 

十数匹もの狼が集まり、それぞれが服の裾をかんで引っ張り出す。

 

ーーーーーーーー本来ならば寄り付きたくもないであろう街の方へと。

「運んで、くれている?」

慌てて自分も手伝い、一緒に引っ張り、街の入口までなんとか戻る。

「あ、ありがとう。」

狼たちに礼を言うと、狼たちは軽く頭を下げ、再び森のなかえ駆け出し、消えていった。

「そうだ!急がなくちゃ!門番さん、手伝ってくれる?」

「は、はい!どうしたんですか!?」

「森の中で妖に襲われて重傷を負っているの!急いで治療をするから運んで頂戴!」

「わかりました!お前、ここの見張りを頼む!俺はこの人を運ぶ!急ぎましょう、永琳先生!」

「ええ!」

そして急いで運び、自宅の診療所へたどり着くも、

「出血が・・・止まらない!解毒剤もないし、今から作っても到底間に合わない!」

そして周りを見渡すと・・・

「蓬莱の薬の試作品・・・こうなったら仕方ないわね・・・死んでしまうよりも、蓬莱の薬を飲ませたほうが!」

そしてもう出来ることはないと判断し、思い切って蓬莱の薬を飲ませる。

なんとか入れられたものを飲み込む。

「グ、う、がああああああああああああああああああああ!?」

副作用で身体が激しく痛むのか、叫び声を上げつつ悶え苦しむ。

そして収まった頃に慌てて脈を取り、心音を確かめる。

「よかった・・・生きてる・・・。」

ようやくほっと一息をつき、ベットに運んでもらったあと、自分は傍のストールに座り、様子をしばらく見る。

 

 

・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・

・・

 

「で、今に至る、ということだな。」

「ええ。ごめんなさい。それと背中の傷だけど、薬のおかげで治ったわ。毒も殆どが抜けて、残ったものももう分解されたみたいよ。」

「そっか。じゃあ死ぬ心配あもうないんだな。そういえば蓬莱の薬ってなんなんだ?」

「不老不死の薬・・・と言いたい所だけど、あなたの飲んだものは未完成なのよ。あなたが飲んだものは特に対する耐性と傷の超回復、それと不老の効果よ。」

「なるほど。つまり老いない効果はあるが、死にはする、ということか?」

「ええ。不死の方が不老よりも難しかったのよ。だから未完なのよ。」

「ふ~ん。ま、生きてんならいいや。永琳は怪我していないし。」

「・・・あなた、軽すぎない?」

「ん~?別にそんな気にする必要ないだろ?そんよか得のが多いだろ?」

「本当にいいの・・・?」

「いいって別に。じゃあ俺は防衛班にはいろうかな?」

「え!?あなた、自分が半妖なの忘れてない!?」

「人としての姿だけ見せりゃあいいだろ。」

「・・・それでいいならいいわ・・・。とりあえず、貴方の実力なら問題ないと思うから私の方から推薦しておくわ。」

「ありがとな。んじゃ、明日から早速防衛班として頑張るかね。

永琳、しばらく薬の材料取りは遠慮しておこう。」

「そうね。次行く時は集団で行きましょう。」

そう言って一日を終え、就寝する。

 



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破滅の前兆…

数十年後…

 

「隊長!何ぼーっとしてるんですか?」

「んー?いや俺が防衛班に入ることになった出来事を思い出していただけだ。」

「そうですか…ならいいですけど…」

「心配性すぎるぜ~副隊長。もうチョイほどほどに手抜こうぜ。」

「隊長はサボり過ぎです!もっと緊張感持ってください!」

「おいおい!こんな歳のじーさん捕まえて働けっていうなよ!」

「アンタは不老だから生涯現役でしょうがこのアホ隊長!!」

 

スッパァン!

「いって~。いいだろ何もないし。」

漫才みたいなことを副隊長とやりつつ、休憩していると、

 

 

「隊長、永琳先生が外に薬の材料を採りに行くそうですよ?」

「よし、早速護衛として着いて行くぞ!!」

「……ホント永琳先生の時だけやる気をものすごく出しますね…。」

 

隊員の一人が報告に来ると、即座に準備を終えいつでも出られるようにする。

 

・・・・・・・・

・・・・・・

・・・・

・・

 

「これで必要なのは最後か?永琳。」

「ええ、護衛ありがとうね。にしても最近一切妖怪が来ないわね…」

「『月面移住計画』の方は順調なのか?」

「ええ。この調子だと後一週間もすれば前期揃うわ。」

「そうか…できれば俺はここを離れたくはないんだがな…。」

「そこは仕方ないわよ。最近は穢れの数も増えてきているしね。」

 

周囲を警戒しながらも会話をしていると…

「くぅーん。」

「ん?こいつは・・!?」

足元に一匹の狼がすり寄ってきて、何やら訴えてくる。

怪しく思い、霊力で細い糸のようなものを自分と狼の頭につなぎ、会話をしようとしてみる。

 

『どうした?』

『妖怪、森の中、いっぱい。妖怪、殺気だってる。大騒ぎ、いつも。三日後、襲う、言ってる。』

『!?それは本当かい?』

『本当。ご飯、くれた、ありがと、お返し。』

『やっぱり、お前あの時の仔狼か。でももう寿命じゃないのか?』

『あの後、俺たち、みんな、妖怪、なった。でも、人、襲わない。それ、失礼。』

『そうか。ありがとな。それとおめでとう。気をつけてな。

三日後に、俺の所においで。助けてあげる。』

『ありがと。バイバイ。』

 

そう伝え終えると、また森の中に消えていく。

「あの狼、なんだったの?それに顔が怖いわよ?」

「永琳、急いで戻るぞ。急がないとヤバい。一分一秒も無駄にすることはできない。」

「た、隊長?」

「お前たちも急いで町に戻るぞ。状況はかなりまずい。」

そして一行は街へと戻る。

 

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・

・・・

・・

「それで、どういうことかしら?龍。」

「簡潔に話すぞ。あの狼は昔俺が飯を分けてやった狼だ。今は妖怪になったみたいだがな。

あいつが飯の礼として教えてくれたことによると三日後に集まった妖怪が一斉に攻めてくるらしい。

数はかなり多く、森の中に集合しているらしい。」

「!?本当なの!?」

「ああ。さっきついでに能力で確認してきたしな。数万は居るぞ。」

「私は上に掛け合って計画を早めるわ。あなたはーーーー」

「ああ。警備を強化するように言っておく。俺も見回りに今日から加わる。」

「…珍しいわね。あなたが自分から見回りに参加するって言うなんて。」

「正直言って、俺の部隊以外だとほぼ戦力外だからな。妖力にあてられて戦えなくなるのが半分、立ち尽くすのがその半分、発狂して暴走するのがその半分ってとこだな。結果的に戦えるのは8分の1がいいところだろう。」

「厳しいわね。」

「事実を言ったまでだ。下手に当てにしていざと言う時に慌てるよりも少なめに見積もっておいた方がいい。」

「そう…じゃあ私の方も急いで最終段階を終えようかしら。」

「…無茶を言っているのは分かっているが、頼む。」 

「ええ。任されたわ。その代わり防衛は任せたわよ?」

「ああ。」

 

 

 

その日の夜・・・・

見回り中…

『副隊長、覚悟しておけ。次の戦いは今までとは次元が違うぞ。』

『………』

『当日は俺が現場指揮を執る。ほかの奴らの命令は無視しろ。俺より上の命令でもだ。責任は俺がとる。死傷者を最小限に抑えるためにも、経験を積みまくった俺たち第一班が死ぬ気でやる必要がある。

……………悪いな、貧乏くじ引かせちまって。』

『いえ、俺たちは『不死身の第一班』ですから。仕方がないですよ。』

『それと部隊編成だが、新兵は明日から外して市民の避難誘導の連中と合流させろ。第1班配属3年以上の連中だけ明日からは第1班の班員とする。他の班の隊長には俺から話を通しておくから、使えそうな奴らを見繕っておいてくれ。当日はそいつらの中から俺が半数選んで第1班に加わってもらう。』

『…全員じゃあないんですか?』

『本当なら使える連中はできるだけ手元に集めておきたいところだが、全員となるとほかの部隊がただの足手まといになる。撤退のことも考えると半数ぐらいが引き抜ける限界だ。』

『…ぷっ!ハハハハハハハハハハ!』

『…どうした?』

『いやあ……いつも寝てるか遊んでばかりいる隊長がこんなことを言い出すなんて、まるで別人みたいだと思ったんですよ。』

『ばーっか。俺だって遊んでるように見せて戦闘訓練をやってんだよ。消えてたのは外に行って戦闘を経験していたからだ。』

『……隊長、今思うと、『不死身の第1班』って綽名は、隊長のおかげで付いたんですよね・・・』

『確か、『最多遠征班』でありながら、『最少損害班』だったから付いたんだっけか?』

『ええ。隊長が隊長に就任してからは死者はゼロですからね。だからこそ一番最初に新兵が配属されるんですけどね。』

『ああ…今回の戦いは、厳しくなるな。』

『…ええ……』

『明日からも、頼むぞ?』

『ええ。死ぬまで着いて行きますよ、隊長。』

 

 

そういって次の担当と交代し、眠りにつく。

明日からの激動に備えて。



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決戦!

5連投稿。ストック切れましたwww。


 

三日後・・・

「やれやれ・・・ウンザリするほどの晴天だな。お前ら、充分休んだか?」

後ろに集まった第1班の連中に聞く。

「ええ、昨日は丸一日休暇でしたからね。皆充分休みましたよ。」

「そうか。じゃあ体全員あっためておけ。今日は長丁場になるぞ。」

「「「「了解!」」」」

そして各自ウォーミングアップをはじめる。

「隊長はいいんですか?」

「ん?ああ、気にすんな。俺は朝偵察ついでに済ませてある。お前は?」

「そうですか。俺も済ませてありますよ。」

そう言って二人でウォーミングアップを始めているみんなを見る。

 

「ほかの隊はどうだ?」

「・・・ダメですね。皆、訓練不足。第1班上がりのメンツはどれだけ厳しいのか知っていますから、準備も念入りにしていますが。それ以外の連中ーーーー第1班に入ったことのない連中は日頃の生ぬるい訓練程度だと思っていますね。中には第1班上がりの面子を笑っている班もありますし。」

「・・・・・・馬鹿か?戦場での不調がどれだけ危険なのか知らないバカばっかりかよ。ガチで昨日の予想どうりになりそうだな。」

「・・・八分の一とちょっと、ですね。使えそうなのは。」

「厳しいな。」

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

・・

 

「隊長!見えました!」

「よし。10~20班の連中は市民の誘導に専念しろ!残りの班は5グループに分かれて防壁の影から射撃開始!これは3グループで行え!残りの2グループは防衛設備で砲撃しろ!」

全体に指示を出していると・・・

「おい!何を馬鹿なこと言ってやがる!全員後退しながら威嚇射撃すればいいだろ!」

「そうだ!どうして俺たちが残らなくちゃいけないんだ!」

 

・・・・・・・腰抜け共が。散々威張っておいて結局その様かよ。

 

 

「じゃあいい!てめえらみたいな腰抜けどもは居たって邪魔なだけだ!妖怪どもの餌になりな!

俺の指示に従ってくれる奴らはさっきの指示通りに戦闘を開始しろ!」

「「「了解!」」」

 

見繕っていた連中と元第1班の面子は残ったが、ほとんどの連中は逃げた市民たちに紛れて逃げようとしていた。

 

その様子をしばらく見たあと、残ってくれた面子に向かっていう。

 

「あ~お前ら。この際だからついでに言っておくわ。俺、実は半妖なんだ。」

「「「はっはははあはは!」」」

「あ?どうしたお前ら?」

「隊長、今更何言ってるんですか?そんな事、皆知ってますよ。」

「マジで?」

「ええ。ここに居るみんなは隊長の心や行動に惹かれて集まって従ってるんです。隊長が半妖だろうと誰も気にしませんよ。」

「・・・そう、か。・・・・・・・・・」

 

ふぅ・・・

 

「やれやれ。俺も随分と信頼されたもんだな。この大馬鹿野郎どもが。」

そう言ってはいるが、どことなく嬉しそうな表情である。

「さて、と。悪いなお前ら。貧乏くじだ。何処までも付き合ってもらうぜ?

命令は三つ。死ぬな、死にそうになったら逃げろ。そんでロケットに乗り込め。

無理して残る必要はねえ。ヤバイと思ったら逃げてもらって構わない。

常に2人1組で行動しろ!いいな!?」

「了解!」

そして戦闘が始まる。

 

・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

・・

「ぐ、はぁ。てめえら全員生きてるか!?」

「はい!全員生きてます!」

「よし!もう十分時間は稼いだ!若い連中から順にロケットに乗り込め!

現1班の連中は・・・悪いな。殿だ。俺と一緒にな。」

「ははは、不死身の第1班の体調がいるなら問題ないな!隊長の運、少し分けてくださいよ?」

「しゃーねえな。少しだけ分けてやるよ。付いてこいよ?」

「「「了解!」」」

 

そうして死を恐れない、勇敢な兵士たちが決死の覚悟で時間を稼ぐ。

 

だが。

「隊長!ロケットの基盤がやられていて発射できません!」

先に乗り込ませておいた奴が報告に来る。

「クソが!上層部のアホどもか!」

そう言った直後に報告に来たやつのデバイスから映像が流れる。

 

 

『悪いね、防衛班の諸君。だが君たちは穢れに接しすぎた。そんな者共を月へ招くことは出来ないのでね。ここで君たちには我々のために礎となってもらうよ。それではごきげんよう。』

そう言って通信が切れる。

「隊長・・・どうすれば・・・」

「く、くくくくくくくく。ははははははは!なるほどクソ野郎どもが!予想はしていたがそれ以上のクズ野郎どもの集まりだったようだな!!ふざけやがって!てめえらの方が穢れてんじゃねえか!」

そう言って切れる。

「お前、ほかの面子に伝えろ。最後のの命令だ。『死ぬのは俺ひとりで十分だ。お前らはロケットに乗れ。』」

「なっ!?隊長!?」

「誰かがロケット発射までの時間稼ぎをしなきゃなんねえ。俺は自分に付いて来てくれた連中を死なせたくないからな。てめえらは逃がしてやる。行け!」

「っつ!了、解、しましたっ!」

泣き出しそうな顔をしつつ、伝令の兵士が駆け出す。

 

「・・・・・・・ふう・・・ワリイな、永琳。月に行けそうにないわ。」

 

一時的に敵を殲滅し、休息を得る。

「お前ら、来たんだな。」

ふと何かの気配を感じ、後ろを見るといつぞやの狼たちがいた。

「こっちにおいで。先にシェルターの中に逃げてな。」

そう言いつつ誘導し、シェルター内に避難させる。

 

「全員乗り込みました!」

先ほどの兵士が報告に来る。

「よし。」

早速最後のロケットに向かう。

「副隊長。これからは隊長として頑張ってくれ。」

そう言いつつ、以前作っておいた予備の回路を渡す。

「コイツで動くはずだ。あとは頼んだ。それと・・・」

 

朧火を抜き、渡す。

「永琳にこれ渡しといてくれ。あと次会った時に返してくれって言っておいて。」

「隊長!でもそうすると武器が!」

「あ?いいよ。俺は半妖だぜ?妖力や霊力、能力で戦うさ。」

そう言って扉を閉める。

「あばよ、てめえら。達者でな。」

そう言って開けられないように外から能力で扉のすぐ傍の空間ごと固定する。

そして背を向け、手を軽く振って離れる。

 

「さてと、てめえら。俺と遊んでもらうぜ?」

霊力で作った刀でいきなり次元斬を放ち、まとめて切り払う。

「おら!かかってきな!」

挑発しつつ、自ら飛び込んでいく。

 

・・・・・・・・・・・

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・・

 

「終わった、か。」

所々負傷しつつ、妖怪を全て倒すことに成功する。

「・・・そうだ・・・早くシェルターに入らないとな・・・。」

そしてなんとかシェルター内に入り、入口を閉める。

その十秒後に、核の洗礼がその場を襲った。

 



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