私のお父さん (ローファイト)
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私のお父さん

私の名前はアスカ・チドリ。

9歳

ロンドンからバスで5時間程離れたイギリス、ウェールズの海が近い片田舎の街の小学校に通ってる小学3年生です。

 

生まれも育ちもウェールズの生粋のウェールズ人のつもりなんだけど……

日本人のお母さんと、たぶん日本人のお父さん、それと愛犬アルと街外れのちょっと古いお家に住んでます。

 

学校は大好きです。

勉強は楽しいし、友達もたくさん居て、先生も優しいからです。

 

今日は先生から、作文の宿題が出されました。

好きな人の事を作文にしなさいって………

 

 

私は大好きなお父さんの事を作文にすることにしました。

 

 

題名:大好きなお父さん

 

私のお父さんの名前はソウスケ・S・チドリです。

今年29歳になります。

誕生日はお母さんと同じの12月24日です。

 

お仕事はよくわかりません。

毎日、家に居ます。

家の掃除や洗濯、買い物や庭の手入れも毎日やってくれます。

だから、家に帰ったら何時も居てくれて嬉しいです。

毎日遊んでくれます。

勉強も見てくれます。

 

とても優しいお父さんです。

怒ったところを見たことありません。

私が失敗してお母さんに怒られると何時も代わりに怒られてくれます。

 

「あんたが、甘やかすからでしょ!」

「問題ない。アスカは俺の言いつけを守って行動したまでだ」

「また、アスカに余計な事を吹き込んだんじゃないでしょうね」

「いや、俺はアスカに郵便ポストの安全な開け方を教えたまでだ」

「………それが何でこんな事になるのよ!」

「アスカには家族以外がポストを開けた形跡があった場合の対処方法として……一つ目にポストの取っ手に紐を括り、10メートル離れ頑丈な障害物に隠れながら引張り、開けることを教えた。これでポストに爆発物が仕掛けられていたとしてもアスカが被害を受けることはない。C4で爆破させる方法が確実だが、君がC4はダメだと言うからこの方法を教えた」

「……うんで、他に何を吹き込んだ」

「ニつ目に、爆発物が見られなかった場合。細菌兵器や化学兵器の可能性を考慮し、予めガスマスクをするように教え、飛散しないように泡タイプの消火器を使いポストに…………」

「おのれの仕業か!!!」

バスーーーン!

「痛いぞ、かなめ」

「あんたのせいで、ポストの中の手紙が泡だらけじゃない。アスカに妙なことを吹き込むな!!」

「いや、この頃、世間ではテロ事件が勃発している。もしやという事もある。ポストに催涙ガスが仕掛けられ、アスカがさらわれる可能性もある。アスカは美人だからな」

「うんなわけ有るかーーーー!!ああーーーもう!!あんたほんとっ親バカね!!」

 

お母さんも一通り怒ると許してくれます。

 

 

お父さんは私にポストの安全な開け方と、対処方法以外にも色々教えてくれます。

お父さんはすごく物知りです。

 

地雷を踏んでしまった時の対処の仕方とか……

有刺鉄線の張り方とか……

仇敵を見つけた時の尾行の仕方とか……

 

 

お父さんは遊びも得意です。

お父さんは隠れんぼをすると絶対見つかりません。

友達と一緒に探しても、絶対見つからないです。

 

でも、一度だけ見つけた事があります。

友達と一緒に隠れんぼしてたのですが、お父さんは見つかりませんでした。

お母さんとお花を植える約束をしていて、夕方、お仕事から帰ってきたお母さんとお花を植えるために花壇の土を掘り返したら、お父さんが出てきました。

お父さんは、全身土色で、いっぱい葉っぱがついていました。

 

お父さんはスクッと立ち上がり、私の頭をなでて褒めてくれました。

「アスカよく見つけた。うむ、なかなかの擬態だと自負していたが、アスカには偵察の才能が有るようだ」

 

一緒にいたお母さんは最初は驚いて、尻もちをついてましたが、手品のようにハリセンをだして、お父さんを吹き飛ばしてしまいました。

 

 

いっつも、お母さんに怒られて、ハリセンで叩かれてるお父さんです。

本当はすごく強くて格好いいのに、お母さんには頭があがりません。

でも、お父さんはお母さんが大好きで、私のことも大好きでいてくれます。

 

そんなお父さんが大好きです。

 

終わり。

 

 

 

 

作文を先生に提出したら……先生は目を潤ませて、アスカさんも家では大変ねと言われてしまいました。

 

なんでだろう?



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私のお母さん

 

 

今日学校の休み時間に教頭先生とお話しました。

教頭先生は髪の毛が全く生えていない卵のような頭をしたおじさんです。

 

教頭先生は私のお母さんがどういう人なのか聞いてきました。

 

 

私のお母さんの名前はカナメ・チドリ29歳。

誕生日はお父さんとおなじの12月24日

 

お母さんは大学のえらい先生です。

何を教えているかと言うと……えーと、たしか工学なんとかという先生です。

実はよくわかりません。

 

お母さんはどういう人かと聞かれたので、こう答えました。

「美人の大学の先生です」

 

「そうか、君はあの世界的に有名な工学博士、天才科学者チドリ博士の娘さんだったね」

教頭先生がそう言ってました。たぶんそうだと思います。

 

 

次に教頭先生は普段は家でお母さんは、何をやっているのかを聞いてきました。

なので私はこう答えました。

……ふだんのお母さんは…………

「お父さんを何時もハリセンで叩いてます」

 

「え?君は大丈夫なのかい?え?それはドメスティック・バイオレンスじゃないのか?え?」

教頭先生が言っている意味はわかりませんでしたが、ものすごく心配そうな顔をしていました。

 

「お父さんとお母さんは何時も喧嘩ばかりしているのかい?」

 

「喧嘩じゃありません。お父さんが何時も怒られてます」

 

「………カウンセラーに相談した方が………君はその…叩かれたりされてないのかい?」

 

「?……お母さんは私にも、たまに怒ることもあるけど、叩いたりしません。代わりにお父さんが叩かれます」

 

「?……お父さんはお母さんに叩かれて何か言っているかい?」

 

「うーーん。あっ、『痛いぞ』『なかなかいい攻撃だ』『キレがイマイチだな』『かなり痛いぞ』って言ってます」

 

「?……お父さんはどんな表情かな?」

教頭先生は少し考えるような顔をしてから、こう聞いてきました。

 

「お父さんはいつも普通です」

お父さんはあまり表情が変わりませんが、汗とか、目の動きでわかります。

 

「!?……SM夫婦………まさか、あの工学博士の趣味が女王様だったとは…………君も大変だろうが、頑張りなさい」

教頭先生は、私に優しそうな顔をしてこう言って、フラフラと何処かへ行ってしまいました。

お母さんが女王様?教頭先生の言っている意味がよくわかりませんでした。

 

 

お母さんはお父さんによく怒るけど、お父さんは全然気にしていないみたいです。

お母さんはお父さんが大好きです。お母さんからよくお父さんにキスをしています。

車でお母さんの大学にお父さんが送り迎えをする時は何時もです。

お母さんはお父さんとくっついているのが好きで、一緒にいる時はずっとくっついてます。

そんなお母さんとお父さんを見るのが大好きです。

 

お母さんはたまに怒ると、ものすごく怖いけど、普段は優しいお母さんです。

料理は美味しいし、お庭のお花の世話を一緒にしてくれます。

寝る前は本を読んでくれたりします。

本当はお掃除もお父さんより上手です。

 

お母さんがお休みの日は何時も、3人でお出かけします。

お母さんとお父さんと手を繋いで仲良くお出かけするのが大好きです。

 

そんな、お母さんは私は大好きです。

 



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私の愛犬

昨日、学校で担任のキャサリン先生に宿題で動物の絵を書いてくるようにと言われました。

 

 

私は愛犬のアルを一生懸命、色鉛筆で描きました。

 

 

アルは私が生まれた時からずっと一緒です。

お母さんに聞くと、私が生まれる前から居るそうです。私より年上でオスなのでお兄さんです。

フサフサの毛を触るとモフモフしています。シェルティーという犬らしいです。

あまり大きくはありません。

でも、抱っこしたいけど、結構重たいのでしません。

家では何時も私の後を付いてきてくれます。

 

 

アルの絵を先生に見せたらこう聞かれました。

「アスカさん、この犬のしっぽの先に付いているものは何かな?」

 

「コンセントプラグです」

 

「……アスカさん犬にコンセントはついてないわ……じゃあ、目から出ている赤いのは?」

 

「ビームです」

 

「……アスカさん、犬は目からビームは出ないわ……じゃあ、口からいっぱい出ているのは?」

 

「PDW用の特殊装弾です」

 

「…………アスカさん、アニメか何かを見て描いたのかな?」

 

「家の愛犬アルです」

 

「………アスカさんは夢を見たのね。分かったわ。今度はコンセントもビームも弾も無いアルちゃんを描いてきてください」

 

「わかりました」

 

 

ちゃんと描いたのに先生も友達のみんなも信じてくれません。

 

私はちゃんと見たのに………

アルは私の前ではコンセントもビームもPDW用特殊装弾も隠します。

 

でも、私は見ました。

 

 

アルのしっぽからコンセントプラグが飛びでて、家のコンセントに挿しているのを…………

私が近づいたら、さっと隠します。

 

家の窓からハチが侵入した時に、目からビームが出て、撃ち落としているのを見ました。

 

家に侵入してきたネズミを口から銃口が伸びて、狙撃していたのを見ました。

 

でも、アルは私がこっそり近づいても、それを全部隠しちゃいます。

 

 

 

私が寝たフリをして、こっそり部屋の外を見ると…………

「アル、アスカは今日はどんな様子だったか?」

 

「問題ありません。マスター・サガラ」

 

「留守番ご苦労だった」

 

「あの子はいい子です。素直で心が優しい」

 

「俺の娘だからな」

 

「……誰に似たんだか」

 

「俺似だ」

 

「奥方に似ていると思いますが」

 

なんとアルはお父さんとお話をしていたのです。

 

 

次の日アルに何度話しかけても、返事はしてくれませんでした。

 

お父さんにも、その事を話したら…………

「うむ、スマホをアルの上に載せて友人と話してただけだ」

お父さんはそう言ったけど、怪しいです。

お父さんアルって言ったもん。

 

お母さんにも、その話をしたら………

「アスカがもうちょっと大人になったらアルも話してくれるかもしれないから、待ってね」

と言ってくれました。

 

今はアルが話せる事は秘密なんだと思いました。

だから、アルが話してくれるまで待とうと思います。

 

 

 



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私のお父さんとご近所さん

お父さんはご近所さんと、とても仲良しです。

 

学校が午前中に終わったので、お隣のスティーブおじいさんの牧場にお手伝いに行ってるお父さんの所にアルと一緒に行きました。

 

スティーブおじいさんは白いおヒゲのとても優しいおじいさんです。奥さんのステファニーおばあさんと一緒に広い丘で沢山羊を飼ってます。

お父さんはたくさん飼っている羊の毛を切るお手伝いをします。

羊の毛を切る事を毛刈りと言うそうです。スティーブおじいさんにずっと前に教えてもらいました。

沢山いる羊をおじいさん1人で毛刈りをするのは大変なので、お父さんが毎年この季節に1週間ぐらいお手伝いしているそうです。

 

スティーブおじいさんのところには、アルと同じ種類の犬の家族が4匹居ます。

羊たちをどっかに行かない様に見守ったり、案内したり、守ったりして、とても賢い犬達です。

アルも私を見守ってくれるので、アルも賢い犬です。

 

でも、アルが一緒に行くと、スティーブおじいさんの犬さんたちは、何故か吠えて近づいてきません。

アルを怖がっている様に見えました。

アルは全然気にして無いみたいだけど………アルはとっても強いけど、優しい犬です。アルとお友達になってくれたら嬉しいです。

 

私とアルが行くと丁度、スティーブおじいさんとお父さんが並んで羊の毛を切っていました。

スティーブおじいさんは電動バリカンと言うもので、ブーンと音を立てながら、羊の毛を次々と切っていきます。

羊さん達は大人しく気持ちよさそうにしてました。

モコモコだった羊さんたちは、スマートになって、変身したみたいでした。

でもちょっと寒そうです。

 

お父さんはその横で、いつものコンバットナイフを片手に羊の毛を切っていました。

しかも、スティーブおじいさんよりも、物凄い速さで羊の毛を切って行きます。

スティーブおじいさんもお父さんを褒めてくれます。

 

「相変わらず早いのうソウスケ。にしてもなぜナイフ何じゃ?効率悪かろうに……と言ってもわしのバリカンよりもソウスケの方が早いんじゃがな……もしや日本はナイフで羊の毛を刈るのか?」

 

「日本で羊の毛を刈った事がないからわからない……ただ、使い慣れた装備で行うのは戦士としての矜持なだけです」

 

「戦士?……なんじゃ、ソウスケはジャパン・ネイビー出身か?」

 

「……戦士は忘れてください。ただ自分は幼い頃、時期が来ると、こうして羊の毛を刈る作業を村総出でやっていたもので……」

 

「そうか……あえて聞くまいが、お前さんも色々あったのじゃろう」

 

「お前さんが10年前、隣に引っ越して来てくれてよかった。子供が居ないわしら夫婦にとって、カナメとソウスケは神が授けてくれた娘と息子と思っておるよ。……しかも、こんな可愛い孫までおるんじゃからな」

 

「恐縮です」

 

 

お父さんとスティーブおじいさんの羊さんの毛刈りが一段落終わるとステファニーおばあさんはおいしいクッキーとパイを焼いて持ってきてくれます。

皆でティータイムをしておしゃべりをします。

お父さんはあまり喋りませんが、スティーブおじいさんとステファニーおばあさんは私に楽しそうにいっぱいお話を聞かせてくれます。

 

夕方になるとお仕事が終わったお母さんも来てくれて、一緒に夕食を楽しみます。

 

 

スティーブおじいさんとステファニーおばあさんは何時もお父さんとお母さんを息子や娘みたいだと言ってくれます。

私も孫のようだと、優しくしてくれます。

 

そんなおじいさんとおばあさんが私も大好きです。

 



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私のお父さんと近所のお兄さん

私はお父さんと買い物に近くの雑貨屋さんに歩いて行きました。

お家から歩いて30分ぐらいかかります。

車だと5分ぐらいですが、お父さんと手を繋いで散歩ができるので、歩いて行くほうが楽しいです。

 

帰り道、途中から石で出来た狭い道に変わります。

すると前から、近所のお兄さん達3人が向こうから歩いてきました。

 

すると、お兄さん達3人は、道の端っこに横にならんで、背筋を伸ばしてお父さんに敬礼します。

 

「「「軍曹!こんにちはであります!!」」」

丁度前を通ると、お父さんに大きな声で挨拶をします。

 

「うむ。君たちも元気で何よりだ」

お父さんはそう言って挨拶を返します。

 

私もお父さんの後ろに隠れるようにこわごわお辞儀をします。

急に大きな声だすから、びっくりします。

もう、半年になりますが、慣れません。

 

 

真ん中の大っきなお兄さんが中学2年生のビリーくん

左の小柄なお兄さんが中学1年生のダスティくん

右の太っちょのお兄さんが中学1年生のフランクくん

 

 

半年前、3人のお兄さんはイタズラばかりする不良というもので、ご近所さんは皆迷惑していました。

 

半年前のあの時、私とアルはお隣のスティーブおじいさんにお届け物をしに家の門をでると………

 

 

「ヒャッハー流石は日本車だぜ!ご機嫌だな!」

「兄貴!やっぱりコンバインはクボタに限るぜ!」

「兄貴!!ジャップ夫婦の娘がいるぜ!!」

 

不良のお兄さん達が、家の前の石でできた小道を塞ぐように、小麦を刈る大型コンバインを3人乗りで走って来ました。

コンバインは1人乗りなのに、3人で乗るなんて不良だと思いました。

 

アルは私の前に出て、守るように一吠えしてくれました。

 

「なんだこの犬は?やる気か!?」

「兄貴、こんな犬刈っちまおうぜ!!」

「ジャップの娘のくせに可愛い面しやがって、俺っちのヨメにしてくれるぜ!!ヒーハー」

 

アルに向かって大きな音を立てながらコンバインを走らせてきます。

アルが刈られるのは嫌なので、アルを抱っこして、逃げようと思いましたが、アルを掴んでも重いので抱き上げられませんでした。

このままだと、私もアルも小麦みたいに刈られてしまいます。

 

 

でも、

 

 

ズダダダダダダダダダッ!!

 

 

お父さんが格好良く出てきて、H&K MP7を構え地面に威嚇射撃をしました。

 

 

「うむ、大丈夫かアスカ?」

お父さんは振り返り私の頭を優しく撫でてくれました。

私は「お父さん!」と言って、お父さんの背中に抱きつきました。

 

 

3人は驚いた顔をしてました。

「兄貴……あのジャップ、銃を撃ちやがった………」

「はぁ?あんなのただのモデルガンだ!」

「びびったのか?相棒!」

 

 

「貴様ら!アスカは嫁にやらん!俺を倒す事ができるのなら考えてやらんでもない!まあ、貴様らごとき技量では一生かかっても無理だがな!」

 

 

「何言ってんだ。このおっさん?いいからやっちまうぞお前ら!」

「兄貴……あのジャップ…変な噂が………」

「ガッテン!コンバイン!発進!!ヒーハー!!」

 

再び、コンバインが迫って来ました。

 

 

「新兵にありがちな驕りだな。相手との戦力差も理解出来ないとは………」

お父さんはそう言って、私にサングラスとヘッドホン型の耳栓を素早く付け………

 

バスーーーーーン!!

キラーーーーーン!!

 

お父さんは暴徒鎮圧用のスタングレネードをお兄さん達に投擲しました。

 

「ぎゃーーーーー!!目が!目が!」

「ああああ!!耳が目が!!」

「はひーーー!!」

 

スタングレネードの100万カンデラの閃光と170デジベルの爆音で、お兄さん達はコンバインから転げ落ち、地面を転げてました。

 

 

「アスカ。今から、この新兵共に教育を施してくる。届け物はお母さんが帰ってから一緒に行くと良い」

お父さんはそう言うと……転げ回っているお兄さんたちを引きずって、道を挟んだ畑の向こうに連れて行ってしまいました。

 

 

それから、次にお兄さん達に会ったら、あんな感じになってました。

近所のおじさん、おばさんたちは喜んでいました。

しばらくして、お兄さん達のお父さんやお母さんは私のお父さんにお礼にきました。

 

でも、帰ってきたお母さんにその日あった事を話すと、おでこを手で抑えて、頭痛がすると言ってました。

 

 

でも、なんでお兄さん達はお父さんを軍曹って呼ぶんだろう?

 

 

それと、お父さんが言ってた事を思い出しました。

お父さんより強い人じゃないと、私はお嫁に行けないそうです。

お父さんより強い人は私は知りません。

 

そうなると、私はお父さんのお嫁さんになるしかありません。

お父さんと結婚するのは嬉しいけど、お母さんがきっと泣いちゃうので、お父さんと結婚は出来ないです。

 

私はしばらく考えました。

  ……一生結婚出来ないかもしれません。



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私のお父さんはスポーツ選手だった?

お父さんとお母さんと夕ご飯の後に一緒にテレビを見ていました。

ウェールズで今度行うラグビーの世界大会のニュースをやってました。

 

ウェールズ人は大人も子供もみんなラグビーが好きです。

学校でも、クラスメイトのジョンくんとポールくん、ジョージくんにリンゴくんが大きくなったらラグビー選手になるって大声で皆に話していました。

 

お父さんとお母さんにその事を話すと………お父さんは………

 

「アスカはラグビーは好きか?」

 

「うん、ラグビーの選手は格好いい」

 

「うむ、俺も昔、ラグビーをやってたことがある」

 

「お父さん、すごい!ラグビーの選手だったんだ」

 

「うむ」

お父さんは何処か嬉しそうでした。

 

「宗介、アスカの前だからってカッコつけるんじゃないの。あんたルールもまともに知らなかったじゃない」

 

「そうなの?」

 

「う、うむ。しかし、俺は弱小チームを育て上げ強豪チームを打ち破らせたこともある」

 

「やっぱりお父さんすごい!コーチもしてたんだ。格好いいね!」

お父さんはやっぱり格好いいです。

 

「………まあ、そうなんだけど」

何故かお母さんは呆れたような顔をしていました。

 

 

ニュースキャスターのお姉さんが海外から来た代表チームの紹介をしてました。

今日はお父さんとお母さんの国の日本のチームを紹介していました。

 

『アジア代表日本、サムライチームのキャプテンに来ていただきました。世界屈指のタックル力をほこり、今、世界各国のクラブチームが最も注目している選手と言えば……こちらの日本代表キャプテンの郷田選手です。郷田選手、今、このウエールズにも貴方と日本チームの活躍が聞こえて来てますよ』

 

『恐縮であります』

……あれ?背筋がピーンと伸びて、後ろでに手を組んでます……何処かで見た気がします。

 

『しかも、今回の日本代表チームには、なんと高校時代のチームメイトが5人も選ばれています。高校時代。当初は無名だったと聞いていますが、なぜそんな無名の学校が強豪校となり、代表選手5人も選ばれるという快挙をなしえたのでしょうか』

 

『はっ、全てはコーチのおかげであります』

………日本のキャプテンの喋り方、何処かで聞いた事があります。

 

『こちらの調べでは、実質郷田選手が選手兼コーチをされていたと聞いておりますが………』

 

『いえ、コーチに比べれば自分など、足元にも及びません』

 

『ほほう。郷田選手を世界屈指の選手まで育て上げた人物に俄然興味が湧いてきました。その伝説のコーチとは?』

 

『相良軍曹であります!』

 

お母さんはソファーから大きな音を立てながら滑り落ちました。

「あは、あははははははっ」

 

サガラグンソウ?…サガラ…軍曹?…サガラ…そう言えば、お父さんがお母さんと結婚する前の名前がサガラだったそうです。昔のお父さんとお母さんのお友達が皆そう呼んでました。

 

『サガラグンゾウ氏?すみません。こちらのリサーチ不足で存じ上げませんでした……嘸かし素晴らしい方なのでしょうが、どのような方ですか?』

 

『厳しくも優しい方であります』

 

『ほほう、今は何方で指揮を取られているのでしょうか』

 

『今はもう………軍曹殿!見て居られますか!!我々は軍曹殿のお陰で、アジア代表になり!!世界と戦うこの舞台まで来ることが出来ました!!』

日本代表の郷田キャプテンは大きな体をふるわせ、涙を流しながら叫んでました。

でも……その話し方とか……どこかで………思い出せません。

 

『申し訳ございません。故人だとは知らずに…………』

 

 

 

お母さんはソファーから滑り落ちたまま、ずっと乾いた笑いを繰り返していました。

「あは、あはっ、あははははははっ」

 

 

お父さんはテレビをじっと見ながら一言。

「うむ、流石に予想外だ」

 

 

 

まさか………お父さんが伝説のコーチ?



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私の森の妖精さん

この頃、小学校のお友達の間で噂になってることがあります。

真夜中になると森の妖精さんが森から街に出てきて、イタズラをするそうです。

なんでも、大きな目の可愛い妖精さんらしいです。

森の妖精さんは緑の帽子をかぶっているそうです。

森の妖精さんは「ふもふも」って喋るそうです。

 

私もその大きな目の可愛い森の妖精さんを見てみたいと思いました。

 

 

 

家に帰ってお父さんとお母さんに森の妖精さんのことを話して、見てみたいと言いました。

 

「うーん。森の妖精さんは真夜中にしか現れないから、探しに行けないわね。アスカはもう寝る時間だからね」

お母さんは困った顔をしていました。

 

「学校がお休みの前の日に一緒に妖精さんを見に行こうよ。お父さん」

 

「アスカ、夜は危ない。危険なテロリストが潜んでいるかも知れない。アスカのような美人は直ぐに連れ去られる」

お父さんも危ないからって言って、一緒に行ってくれません。

いつものお父さんだったら、良いって言ってくれるのに………

 

 

1人で行くのは怖いし……夜中に勝手に家を抜け出したら、お母さんがきっと怒ります。

でも、どうしても森の妖精さんを見てみたいです。

 

私は考えました。

……良いことを思いつきました。

 

 

学校がお休みの前の日。私は家に帰って直ぐに寝ました。森の妖精さんを見つけるために夜更かしするためです。

そして、何時も寝る時間の9時に何時も通りベッドに潜り込み部屋の電気を消しました。

シーツの中で明かりを付け、準備をします。

 

赤外線レーザーサイトと、1キロ先も視認できる赤外線高感度双眼鏡を用意しました。

使い方はお父さんに何時も教えて貰っているので、大丈夫です。

これでお部屋から、森の妖精さんを探すことが出来ます。

 

でも………私はそのままベッドの中で双眼鏡と一緒に寝てしまいました。

失敗です。

 

次の日、赤外線高感度カメラと自動追尾センサーを準備しました。

お父さんの作業部屋にいっぱいあるので、借りることにしました。

その日の夜。何時も寝る時間の9時に何時も通りベットに潜り込み部屋の電気を消しました。

昨日と同じで、シーツの中で組み立てます。そして窓の外に向けて自動追尾センサーを取り付けた赤外線高感度カメラを置きました。ノートパソコンとつなげて自動録画するように設定しました。プログラムはお母さんに教えてもらっているので、大丈夫です。

 

これだったら、私が寝てしまっても大丈夫です。

明日、森の妖精さんが映っていれば良いな……

そんなことを思っていたら直ぐに寝てしまいました。

 

 

次の日の朝、ノートパソコンでカメラの映像を確認すると…………森の妖精さんが写ってました!

 

 

まん丸大きな目に犬かねずみさんみたいな顔に大きな耳、短い手と足に、丸い模様が入っている樽の様な体。

とても可愛いです!

でも、何処かで見たような妖精さんです………思い出せません。

 

うーん……よく見ると学校のお友達が噂していた森の妖精さんと少し違う気がします。

緑の帽子ではなくて、緑のヘルメットをかぶってました。しかもヘルメットにはブレードアンテナのような角がついてました。

何故か、その妖精さんは最新型の防弾ベストを着てゴム弾装弾型のショットガンを持ってました。

妖精さんの右頬には十字の傷が………あっ、お父さんと一緒です。

きびきびとした動きもどこかで見た事があるような…………

 

 

その森の妖精さんは私のお家の裏にある納屋から出てきて……5時間後には納屋に戻って来ました。

何で私のお家の納屋?どういう事なんだろう?

 

 

私はノートパソコンを閉じて、アルと一緒に納屋に向かいました。

でも納屋の中には、お花の土や栄養剤とかスコップとかしかありません。

確かに、森の妖精さんは納屋から出てきて、帰ってきました。

森の妖精さん。ここで何をしていたのかな?

 

もう一回よく納屋を探しても何も見つかりませんでした。………お家に戻ろうとしたら、納屋の前に妖精さんそっくりのストラップが落ちてました。

どうしてこんな所に?

 

 

家に戻ると、お母さんが朝ごはんを用意してくれてました。

お父さんは先にいつもの席についていました。

 

「お母さん……これ、納屋の前で見つけたの。森の妖精さんも、あの納屋から出てきたのを見たの」

私はお母さんに納屋の前で見つけた森の妖精さんそっくりのストラップを見せました。

 

「へ…へー、森の妖精さんが………そのストラップ、お母さんが探してたものよ。アスカにあげるわ」

 

丁度TVではニュース番組が始まりました。

ニュースキャスターのお姉さんが大きな声で大騒ぎしながら説明してました。

なんでも、この街に潜んでいた危険なテロリストが今日の朝に交番の前で5人縄で縛られていたそうです。

『なお、テロリスト達は犬かネズミの化物にやられたなどと証言しているそうです。その鳴き声は「ふもふも」「ふもっふ」と、……相当錯乱しているようです。詳しくはこれから取り調べが始まるようです』

 

そのニュースを見ていたお父さんが一言。

「犬でもネズミでもない。ボン太くんだ」

 

 

ボン太くん?………

そういえば、お母さんが大切にしている大きなぬいぐるみ、森の妖精さんそっくりです。名前は確かボン太くんです。このストラップと一緒です。

 

私はお母さんが寝る前によく話してくれたお話を思い出しました。物を大切にすると、物に魂が宿って、助けてくれたり、恩返しをしてくれるって………きっとお母さんがボン太くんのぬいぐるみとストラップを大切にしていたから、森の妖精さんになって武器を持って悪いテロリストから街を守ってくれたんだと思いました。

 

私もこのボン太くんストラップを大切にしようと思いました。

きっとまた、森の妖精さんになって街や私たちを守ってくれます。

 

 

 



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私の家のキャンプ

私の家族はよくキャンプに出かけます。

今日は車でお出かけしますが、大っきなリュックサックを担いでバスと歩きで行くこともあります。

 

今日は湖の畔でキャンプです。

まずはテントを張って、石を積み上げてかまどを作り、木の枝を拾いに行きます。

食べ物は、パスタやレトルト食品も持っていきますが、テントの周りで食べ物を探します。

お父さんは銃を持って森に狩りに行くこともあります。

今日は湖なので、お父さんは湖で罠を仕掛けて川エビを、釣りでお魚を取ります。

私はお母さんと近くの林に木の実やキノコを採りに行きます。

アルも一緒に探してくれます。

 

空いている時間はお父さんとお母さんとお話したり、ゲームをします。

ゲームと言っても、3DSとかじゃありません。

私の家のキャンプのルールでは車以外の電子機器を使わない事になってます。

だから、スマホもタブレットもその日は電源を切っています。

なので石取りゲームやしりとり、トランプで遊びます。

 

夕方近くになると、お父さんが石と木で火を起こして、湖で取ってきた川エビとお魚と林で採ってきた木の実やキノコでお母さんと一緒に料理をします。

私もお魚の捌き方とか上手になってきたと思います。

 

湖の畔で食べる夕食はとても美味しく感じます。

 

そして、小さなテントの中で3人並んで寝ます。

私はお父さんとお母さんとの間に入って寝ます。

今は家では自分の部屋で1人で寝ているので3人で寝れるのは嬉しいです。

 

 

お母さんはキャンプをする時、私が生まれる前の話をよくしてくれます。

私が生まれる前はお母さんはお父さんと世界中をキャンプして廻ってたそうです。

 

「アスカが生まれる前はね。お母さんは、お父さんと2人で世界中をキャンプして廻ったの。色々な国を見てきたわ。苦しいこともあったけど、素敵な事も沢山あったわ」

そういうお母さんの顔は何時も何処か懐かしそうです。

 

世界の広い大地の草原や、雪の森、乾いた土地に、海のお話までしてくれます。

でも、最後は何時もお母さんはお父さんが大好きだって話になります。

私もお父さんみたいな格好いい人と結婚できるといいな……

 

何で世界中を廻ったの?ってお母さんに聞いたことがあります。

「いろいろあったの。いつかアスカが大人になったら話すわ」

困ったような顔をしてから、優しく微笑んで答えてくれました。

 

私は、このお話はあまり聞いたらダメなんだと思いました。

 

キャンプに行くのは好きだけど、お友達に聞くとあまり行かないみたいなので、お父さんに何でキャンプによく行くのか聞いてみました。

「生きるすべが学べる。……忘れてはいけない人の原点……こうして自然を感じ触れる事で心が穏やかになる。もちろんアスカとお母さんが一緒にいるからだ」

お父さんはたまに難しいことを言います。たぶん、大人になったら分かるんだと思います。

 

キャンプをする時、夜にはお星がとても綺麗に見えます。

お父さんとお母さんと一緒にお星を見るのが好きです。

 

お父さんとお母さんと一緒に魚や木の実を採ったり、料理をしたり、テントを作ったりするのも好きです。

 

外は寒い事もあるけど、テントの中で3人で寝るのが好きです。

とても温かいです。

 

だから、キャンプは大好きです。

 

ずっといつまでも、お父さんとお母さんと一緒にいたいと思います。

 

 

 

 



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私のお父さんのお友達の酔っ払いおじさん

昨日からお父さんのお友達のクルツおじさんがお家に泊まっています。

クルツおじさんは、昔のお父さんのお友達でセンユウって言ってました。お母さんともお知合いだそうです。

クルツおじさんは長い金髪で映画の俳優さんみたいな、きれいな顔をしてます。でもいつもお酒を飲んでいて、お父さんに注意されます。

クルツおじさんの奥さんはマオおばさんと言います。

マオおばさんもお父さんとお母さんのお友達だそうです。

クルツおじさんとマオおばさんの子供がクララちゃんです。私と同じ年の女の子です。

 

クルツおじさんは昨日の夜に、酔っぱらったままお家に来ました。

 

「よ~、宗介~しばらく泊めてくれ~」

「クルツ、酒臭いぞ。アスカの教育上良くない。貴様は裏の納屋で寝ろ」

「そう冷たいこと言うなよ~ダチじゃねーか」

「クルツくん。また、マオさんとケンカして追い出されたの?」

「かなめちゃ~ん。相変わらず美人だね~。いんや、追い出されたんじゃなくて、出てやったんだよ~」

「今度はなにをやったのよ」

「どうせ、くだらん理由だろう。聞くだけ無駄だ」

「ったく冷てーな。お前はよ!…聞いてくれよかなめちゃん。メリッサの奴カレーに蜂蜜を入れようとしやがるんだ。そんなもん邪道だろ?どうしても入れるんだったら離婚でも何でもしてやるって言ってやったんだ!」

「……ほんと、くだらないわね」

「とっととマオに頭を下げろ」

「やだね!」

「クルツくん……私からマオさんに電話しようか?」

「やだね!メリッサが頭を下げにきやがったら考えてやってもいい!」

「はぁ、いい大人が駄々をこねないでよね」

「カナメ、こいつに何を言っても無駄だ。俺からマオには連絡はするが、しばらく置いてやってくれないか?」

「宗介~~お前!やっぱ持つべき者は戦友だよな!」

「まあ、私もそのつもりだからいいけど。いい、クルツくん。マオさんにちゃんと謝るのよ!」

「わーったよ」

「それと、家は禁酒だ。外で飲め。……もし、アスカに手を出してみろ!貴様は二度と太陽を拝むことが出来なくなる」

「おいー!銃を構えるなって!自分の娘と同じ年の子に手を出すバカがどこに居るんだ!うんで、お子様は範疇外だっつーの!んっとに親バカかよ!」

「はぁ、客間を使っていいから……」

「アスカに教育上不適切な言動や行動をした場合。アルにお前の股間を噛みちぎるように言ってある。精々気を付けることだな」

「……信用ねーな……ってアル?なんで俺の後ろにくっ付いてくる?……まじで?」

 

 

クルツおじさんは昼間はいつもソファーで酔っぱらって寝てます。

なので、私はおじさんとあまりお話することがありません。

たまに、お話しすると、アルにお尻を噛まれて、泣いてました。

昔のお父さんのお話を聞きたかったのに残念です。

 

酔っぱらって寝ているクルツおじさんを指さしてお父さんは私に言います。

「クルツの様な酔っぱらいの不道徳な男と、恋人や結婚は絶対してはいけない。不幸になるだけだ」

と……

でも、そうなるとマオおばさんは不幸なのかな?

クララちゃんはクルツおじさんが大好きみたいだけど……

 

 

でも、クルツおじさんを見てると、やっぱり私のお父さんの方がいいです。

かっこいいし、お母さんを大切にするからです。



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私の防犯訓練

今日、学校で防犯訓練がありました。

3階の教室で警察官のお姉さんが3人来て、色々とお話をしてくれました。

 

「皆さーん。知らない人にはついていってはダメですよ」

 

「「「「はーい」」」」

 

「もし、知らない人に連れて行かれそうになったら、防犯ブザーを鳴らしてください」

警察官のお姉さんは、いろんな色のストラップの防犯ブザーを皆に配りました。

 

「この紐を引っ張ると、ハイ」

お姉さんは防犯ブザーの紐を引っ張るとすごい大きな音がなりました。

皆は耳を塞いでました。

お姉さんが防犯ブザーのボタンを2回押すと鳴り止みました。

 

「これを学校にいつも持ってきてるカバンに取り付けてくださいね~」

 

「「「「はーい」」」」

 

警察官のお姉さん達は、何処に取り付けたら良いのかとか、取り付け方を一人一人手分けして教えてくれました。

 

私はお父さんにカバンに付けてもらった防犯ブザーを持っているので、どうしたらいいのか警察官のお姉さんに聞きました。

 

「あら、あなたはもう防犯ブザーをもっているのね。可愛らしいけど見たことのない形状ね。これはどういうものなの?」

警察官のお姉さんにお父さんに付けてもらった防犯ブザーの事を聞かれたので、答えました。

私の防犯ブザーは、ハート型の本体の上に森の妖精さんのちっちゃな人形がくっついてます。

ハート型の本体に停止用の大きなボタンがあって、その下に赤、黄、青の紐が3本付いてます。

 

「変な人を見つけたらこの黄色い紐を引っぱります。警戒音が鳴ります。5分後にアルが来てくれます」

 

「アル?」

 

「アルは家の愛犬です。とっても強いです」

 

「犬が来るの?………本当に?」

警察官のお姉さんは信じてくれません。

 

「じゃあ、この青い紐は?」

 

「わたしが尾行されたり、連れ去られそうになった場合に青い紐を引っぱります。スタン性のある特殊警戒音が鳴ります。5分後にお父さんが助けに来てくれます」

 

「へ?お父さんが?………またまた冗談よね」

警察官のお姉さんは信じてくれません。

 

「おもしろい子ね。じゃあ、この赤色の紐は?」

 

「テロリストに攫われたり、人質になった時に赤色の紐を引っぱります。警戒音は出ません。5分後にアルとお父さんが武装して助けにきてくれます。それと、お父さんが言ってました。MI6(イギリス秘密情報部)も完全武装で来るそうです」

 

「え?それは何の冗談かしら……ねえねえ、この子面白いのよ!」

やっぱり、警察官のお姉さんは信じてくれません。

警察官のお姉さんは他の警察官のお姉さん達を呼んできました。

そして、さっき私の防犯ブザーの説明を楽しそうに他のお姉さんたちに話してました。

 

「あなたお名前は?」

 

「アスカ・チドリです」

 

「じゃあアスカさん。試しに防犯ブザーの青い紐を引っ張って貰っていいかしら、一応警戒音がどんなものかも、聞いておきたいから」

 

「でも、お父さんが緊急の時以外は使っちゃダメだって言ってました」

 

「その、緊急のための訓練だから、きっとお父さんも許してくれるわ」

 

「わかりました」

私は防犯ブザーの青い紐を引っぱりました。

 

すると………超音波のようなキーンと言う音が教室の中いっぱいに鳴り響きました。

 

「ちょ!これ、身体が動かない…………止めて!アスカさん」

警察官のお姉さんたちはびっくりして、止めるようにと言ったので、ボタンを押して止めました。

 

「これ、すごいわね。こんな小さな防犯ブザーのストラップなのに…………」

警察官のお姉さんは息を切らしながら驚いてました。

教室の皆もビックリしてました。だから言ったのに……

この防犯ブザーはスタン性のある音波衝撃波が流れるって、お母さんが言ってました。

お母さんの手作りです。

 

「……アスカさんはこの防犯ブザーがあるから……大丈夫ね」

そう言って、警察官のお姉さん達は他の皆のところに行って、防犯ブザーの取り付け方の説明の続きを始めました。

 

でも、……何かを忘れてる気がします。

 

 

ブウウウウウウウンンン!!

キキキキッッ!!

ガシャーーーーン!!

 

外で大っきな音がして………

 

 

バタン!

3階のこの教室の窓が開きました。

 

「アスカ!!無事か!!」

お父さんが格好良く、窓から教室に飛び込んできました。

丁度青い紐を引っ張ってから5分です。

 

「うん。お父さん大丈夫。防犯訓練なの。訓練だからブザーを鳴らしてみなさいって、警察官のお姉さんが言ったの」

 

お父さんが格好良く窓から現れて、警察官のお姉さんと、クラスの皆はビックリした顔をしてました。

 

その後、警察官のお姉さん達はお父さんにずっと謝ってました。

 

お父さんは学校の授業が終わるまで、教室の後ろで授業を見てくれてました。

帰りはお父さんのバイクで一緒に帰りました。

 

クラスの皆は、お父さんの事を格好いいと褒めてくれました。

私もお父さんが褒められて嬉しいです。

やっぱり、私のお父さんは格好いいです。

 

 

 

でも……MI6って何のことかな?



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私のお父さんとお母さんの恩人

今日は、お父さんとお母さんのお知り合いのマデューカスおじさんが遊びに来てくれました。私のおじいちゃんと同じくらいの年ですが、背筋が伸びてとてもおじいさんに見えません。

マデューカスおじさんは年に何回か遊びに来てくれます。

その度に、私に大きなぬいぐるみをプレゼントしてくれます。

 

「アスカさんも元気のようだね」

「マデューカスおじさん。何時もありがとう」

 

「アスカ、リビングでアルと遊んでなさい」

私はアルと一緒におじさんに貰ったぬいぐるみで遊びました。

 

 

マデューカスおじさんとお父さんとお母さんはダイニングテーブルでお話をします。

「マデューカスさん何時もすみません。アスカも喜んでます」

「長官殿、アスカに何時もすみません」

「いいのだカナメさん。私もアスカさんに喜んでもらえて嬉しいのだよ。それとソウスケくん。ここでは長官はよしてくれ」

「いえ、MI6(イギリス秘密情報部)の長官たる貴方に失礼です」

「はぁ、君は昔と変わらず頑固者だな。今の君は私の部下でも、軍属でも組織の人間でもないというのに」

「フフフフッ、私達はマデューカスさんには返しきれない恩がありますから、宗介も貴方をそう呼びたいんです。迷惑ではなければ、そうさせてあげてください」

「いや、こちらこそ助かっている。先日の潜伏していたテロリスト5人の対処、見事だった……しかし、戦いから離れ平和に暮らす君に無理を言った」

「いいえ、自衛のために行ったまでです。それに大恩ある長官殿のお話を無碍にはできません」

「君らがここに来て、もうあれから10年か………アスカさんもこんなに大きく立派に育った」

「アスカがここまで元気に育ったのもマデューカスさんのお陰です。行き場が無くなった私達に色々と手を回していただいただけでなく、こんな素晴らしい場所まで紹介してもらって……私達家族は地に足をつける生活を営む事が出来たんです」

「いや、君たちの努力の賜物だよ」

「日本を追われた俺を受け入れる国は無かった。まっとうに生きることが出来ないと思っていた所を貴方は救ってくれた」

「当時の私には打算があったのだよ。君たちが女王陛下が治めるこの国に留まれば、国益にきっとなると。まさにその通りになったのだがね」

 

お父さんとお母さんはマデューカスおじさんと何時も難しいお話をしてます。

 

お父さんとお母さんはマデューカスおじさんは恩人だと言ってました。

ここに、住めるのもマデューカスおじさんのお陰なのだそうです。

 

マデューカスおじさんはお家に来ると決まって、お父さんとチェスをします。

何故か、必ず横にアルがいます。アルはじっとチェスの版を見ています。

まるで、アルとマデューカスおじさんがチェスをしてるみたいです。

 

そして、お母さんの手料理を食べて帰ります。

マデューカスおじさんは、何時もお家に来るときは疲れたような感じがします。でも、帰る時は元気な顔になってます。

お母さんに何でなのかを聞きました。

 

「マデューカスおじさんはね。アスカやお父さんやお母さんが幸せに暮らせるための、すごいお仕事をしているの。でもね。お仕事を頑張りすぎて、何時も疲れて、辛い思いをしているの。だから、この家に来るときぐらいは、仕事を忘れてリラックスしてもらわないとね」

 

マデューカスおじさんが何のお仕事をしているかはわかりません。きっと大変なお仕事なんだと思います。

だから、お父さんとお母さんは、マデューカスおじさんに元気を分けてあげているんだと思います。

マデューカスおじさんも、私のお家に来て休んでいるんだと思いました。

 

 

私も、今度マデューカスおじさんがお家に来た時に、元気を分けてあげることができれば良いなと思いました。



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私のお父さんの好きな料理

私のお家の裏には小さな畑があります。

お父さんの畑です。

 

お父さんは畑で、ジャガイモと人参と玉葱を育ててます。

最初は表のお庭に作ろうとして、お母さんに怒られて、裏の林の木を切って畑にしたそうです。

 

1年に2回野菜が取れます。

お父さんはこの畑を大事にしてます。

私も植える時と掘り起こす時はお手伝いをします。

でも、育てるのは、いつもジャガイモと人参と玉葱だけです。

なので、いつもお家にはジャガイモと人参と玉葱は沢山あります。

 

余ったら、お母さんと一緒にご近所さんにおすそ分けをしてます。

美味しいとみんな言ってます。

でも、お父さんはおすそ分けする野菜を悲しそうに見ます。

ジャガイモと人参と玉葱は日本から、送って貰ったものを育ててるそうです。

お薬などは使わない。ムノウヤクで育ててるとお父さんは言ってました。

 

お父さんに、なんでジャガイモと人参と玉葱しか育てないのか聞いてみました。

「うむ。ジャガイモと人参、玉葱は野菜の基本だ。これがあれば、お母さんがこの野菜を使って美味しい料理を作ってくれる」

 

「お母さんのご飯は、ジャガイモ、人参、玉葱が無くてもなんでも美味しいよ」

 

「うむ…そうなんだが……」

お父さんは何か言い難そうでした。

 

 

 

 

今日の夕ご飯はお母さん特製のカレーとシーフードサラダでした。

お父さんは無表情に見えますが、とても嬉しそうでした。

 

「お父さん。お母さんのカレー大好きだね」

 

「うむ、お母さんが作ったカレーは最高だ」

 

「ありがと、でも、結構大変なのよ。日本のルーやらをわざわざ、あやめ(かなめの妹)に送ってもらってるし、宗介が作ってるジャガイモと人参、玉葱だって、元はあやめに送ってもらったものなんだから。あんたがこれじゃなきゃダメだって言うから」

 

お父さんがお外でカレーを食べてるのを見たことがありません。家でお母さんのカレーしか食べないです。

私もお母さんのカレーが大好きです。甘いからです。お外のカレーは辛くて食べれないからです。

きっとお父さんも甘いカレーが大好きなんだと思いました。

私はわかりました。お父さんがジャガイモと人参と玉葱しか育てない理由です。お父さんはきっとお母さんのカレーが食べたいからです。

 

「でも、宗介は何でそこまでカレーにこだわるの?」

 

「……俺にとって懐かしい味、日本で言うおふくろの味とはこのカレーであり、肉じゃがだからだ」

 

「なによそれ」

 

「俺は君に出会うまで、食料とはエネルギーを補給するための手段だとしか思っていなかった。しかし、君に出会い。君が作ってくれたこのカレーや肉じゃがを一緒に食べて、料理と言うものを知った。あの満たされた幸福感は今も忘れない」

 

「………そんな、大したものじゃないってば」

お母さんは顔を赤らめていました。

 

「いいや、俺の世界観は一気に変化した。衝撃だった。無感動だった俺の感情は動かされた」

 

「って、料理だけかい!」

 

「いいや、君がそこにいて、一緒に食べてくれるからこそだ」

 

「ちょ………宗介」

 

「今も君がいて、アスカもいる。そして今日も君が作ったカレーが食べられる。これ程幸せなことはないだろう」

 

「…………もう、やだ…今、アスカもいるのにそんな事言わないで」

お母さんは顔を真赤にして俯いたままでした。

 

 

 

夕ご飯が終わって、あやめお姉ちゃんとスカイプでお話しました。

お礼を言うためです。カレーのルーと私に日本の美味しいお菓子を送ってくれるからです。

 

あやめお姉ちゃんはお母さんの妹ですが、おばちゃんと言ったら泣いちゃったので、お母さんにお姉ちゃんって呼んであげなさいって言われました。なんでなんだろう?

 

あやめお姉ちゃんに今日のお父さんとお母さんとカレーの事をお話したら、「料理がうまく無いと結婚できないのか」って、やっぱり涙を流していました。うーん。何で泣いちゃうのかな?

 

それと、あやめお姉ちゃんが最後に言ってくれました。

「アスカちゃんに弟か妹が出来るかもね」

 

私に、弟、妹……出来たら嬉しいです。

でも、なんで、お父さんとお母さんとカレーの話をしたら、弟と妹ができるのかわかりません。

今度、お母さんに聞いてみようと思いました。

 



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私のお父さんのお友達のベンおじさん

今日はアメリカからベンおじさんがお家に遊びに来ました。

お父さんの昔のお友達でとても背が高くて力持ちのおじさんです。

ベンおじさんは日本のかわいらしいアニメをお土産にいつも持ってきれくれます。

いつも、後でそのアニメの感想を聞かれたり、へんな言葉は無いかと聞かれます。

 

でも今日のベンおじさんは少し変です。

 

「カナメさん!!ソウスケ!!頼む。この通りだ!!」

「クルーゾーさん。そんなの困ります」

「後生だ!!こんなことは君たちにしか頼めないんだ!!我が社の、いや俺の生涯で最高の仕事になるはずなんだ!!」

「元隊長殿、頭を上げてくれ。まずは理由を説明してくれ」

 

ベンおじさんはお父さんとお母さんに床に頭を付けて何かをお願いしてました。

私はこのお願いの仕方を知ってます。日本の伝統文化の一つ土下座です。

教科書にものってました。

 

「この程、日本で制作された児童名作アニメのリメイクアニメ映画、『アルプスの森のハイチ』の欧米、北アメリカでのパッケージ販売権を俺の会社が獲得したんだ!!その吹き替えを、主役のハイチ役を是非、アスカくんにお願いしたい!!」

「クルーゾーさん。なぜ、素人のアスカなんですか?しかも、わざわざ遠いところまで来られて、アメリカにもいい子役や声優さんが居るじゃないですか」

「アメリカの声優じゃ、あのハイチの愛らしくも元気な子の表現はできないんだ!」

「元隊長殿、アメリカにも子役は沢山居るだろう?」

「それこそダメだ!彼奴等は親の成金主義に染まったモグワイ(子供)の皮をかぶった汚れたグレムリン(悪魔)だ!ピュアなハイチの役などできようはずもない!!」

「マオさんとクルツくんところのクララちゃんもアスカと同じ年ですよ?」

「ダメだ!ダメだ!メリッサのところの子は論外だ!!この感動シーンをなんて読んだと思う?『じじい!ケツに銃口突っ込むぞ!このファッキン野郎!』だぞ!!なんでそうなるんだ。ここはおじいさんに怒られたハイチが、抱きついて健気に泣いて謝るシーンだぞ!!」

「…………それはさすがに」

「だろ!?」

「元隊長殿。それがどのようなものかはわからんが、なぜ家のアスカなんだ?」

「アスカくんは素晴らしい!現代の子供にはないピュアで清純な心をもったままだ!こんな子はもう全米中探しても居ない!!」

「…………………どうする宗介?」

「元隊長殿、俺たちの境遇は知ってると思う。まだアスカは9歳だ。今しばらくは静かに暮らしたい」

「ソウスケ!そこを曲げて頼む!!キャスト名は出さない。絶対漏らさない!録音はすべてここで行う!!頼む!!」

「宗介……」

「了解だ。だが、最終的に決めるのはアスカだ」

「ありがとう!!ありがとう!!」

 

 

ベンおじさんに『アルプスの森のハイチ』の声をやってくれないかと言われました。

楽しそうなので、「やってみたい」と返事しました。

 

ベンおじさんはすごく喜んでました。

 

そして、私はお家のリビングでアニメ映画の吹き替えというものをやりました。

最初は日本語の『アルプスの森のハイチ』を見せてもらいました。

その後、日本語の本を渡してもらい。ベンおじさんに私の好きに英語に訳していいと言われました。

声の入ってない『アルプスの森のハイチ』に日本語の本を英語に直しながら、ハイチのように喋りました。

1人では寂しいので、お母さんがハイチのお友達で街のお嬢様クラリス役、お父さんが羊飼いの男の子ピータン役、ベンおじさんがハイチのおじいさん役、そして、アルがおじいさんの犬のオスカル役を代わりにやってくれました。

お父さんやお母さんとアル、ベンおじさんとみんなで出来たので楽しかったです。

 

ベンおじさんは吹き替えが終わると、

「グレート!!まさしくエンジェル・ボイス!!」

と言って涙を流しながら褒めてくれました。

 

 

後日、ベンおじさんから『アルプスの森のハイチ』のブルーレイディスクが送られてきました。

私の声と、他は本番の知らない人たちの声でした。

家族で一緒に見ましたが、最初、ハイチは私の声じゃないと思いました。

お母さんにその事を言うと、自分の声は話している声とは違うふうに聞こえるのが普通なのだそうです。私の声はこんな声なんだと、声が高くてびっくりしました。

 

お母さんが言ってました。世界中の大きいお友達のお兄さんとお姉さんに人気で沢山売れたのだそうです。

大きいお兄さんとお姉さんって、どれくらい大きいのかな?ベンおじさんのお友達だから、お父さんより、きっと大きいのだと思いました。

 

そして、サプライズと書いてあった箱には、お父さん、お母さん、アル、ベンおじさん。みんなの声が入った『アルプスの森のハイチ』のブルーレイディスクが入ってました。

私はこっちの方が好きです。みんなで楽しく出来たからです。

お父さんはみんなの声の『アルプスの森のハイチ』を見てすごく喜んでました。

お母さんは少し恥ずかしそうにしてました。

お父さんは自分の宝物にすると言ってましたが、お父さんとお母さんとアルと私のみんなの宝物です。

 

 



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私のお父さんとお母さんの日本のお友達






 

今日はお父さんとお母さんの高校生の時のお友達が日本から遊びに来ます。

お父さんはロンドンまで車で迎えに行ってました。

 

 

「かなちゃん。久しぶり~」

「千鳥、おっす」

「恭子!オノDも!!」

 

お母さんは日本から来たお友達の恭子おばちゃんと両手をつないで、喜んでました。

 

「アスカちゃんも。久しぶり~、私の事、覚えてるかな?」

「こんにちは。うん。覚えてる」

恭子おばちゃんはとても優しいおばちゃんです。

2年前と4年前にも遊びに来たことがあります。

私が赤ちゃんだったころも会った事があるそうですが、赤ちゃんだったので覚えてません。

Dおじさんは恭子おばちゃんの旦那さんで、みんな同じ学校の同じクラスのお友達だったそうです。

でも、Dおじさんはなんで日本人なのにDおじさんって言うんだろう?

 

恭子おばちゃんとDおじさんにお土産で日本のお菓子と、日本で流行ってるデーモンウオッチのぬいぐるみを貰いました。

お母さんは紅茶とお菓子をだして、みんなでリビングでお話をしました。

 

「アスカちゃんはますます千鳥に似て来たな。きっと将来お母さん似の美人になる事間違いなしだな」

「うむ。肯定だ。アスカはきっとかなめに似て美人になるだろう」

「はいはい、ありがとねオノDと宗介も。まあ、確かにアスカは私の小さい時にそっくりだけど、性格はどっちかというと宗介に似てるかな」

「そうかもね~。アスカちゃんって大人しいし~」

「何?恭子。私が騒がしい奴みたいじゃない!」

「しょっちゅう叫んでたのは誰だよ。クラスで一番声がでかかったのも千鳥だろ?」

「しょうがないじゃない!宗介がいつもいつも騒ぎを起こすから!」

 

お父さんとお母さんたちはとても仲良くお話してます。

とても楽しそうです。

私も一緒にいるだけで楽しい気分になります。

 

「何にしろ昔の相良を知ってるだけに、こんなに親バカになるなんて、想像もつかなかったよな」

「うむ。それも肯定だ。俺もそう思う」

「あんたはちょっとは否定しろっての!」

「うふふふふっ、かなちゃんと宗介君は相変わらずだね」

 

 

 

「おいしょっと」

「……恭子……お腹……もしかして」

「そうだよかなちゃん。妊娠5か月なんだ」

「恭子!………よかった。よかったよー恭子。でもなんで妊娠中の大事な時にわざわざ遠いところに来たのよ」

「それはね。かなちゃんに直接報告したかったの」

「え?なんで」

「かなちゃんさ。わたしが子供出来ない事。ずーっと自分のせいだって責めてたでしょ。あの時の怪我のせいだって。そんな事全然ないのに。だから、かなちゃんにはあの時の怪我とかは全然関係ないよって直接いいたかったの。だいたいかなちゃんと宗介君が悪いわけがないのに。悪いのはかなちゃん達と学校を狙ったテロリストなんだから。だからこれでお終い。もう、あの時の事を負い目に思わないで、かなちゃん」

「………恭子……ありがとう。……本当にありがとう……恭子…」

お母さんは恭子おばさんを抱きしめて泣いてました。恭子おばちゃんはそんなお母さんを優しく微笑みながら、頭をさすってくれました。

 

その後ろでお父さんは恭子おばちゃんに黙って頭を下げてました。

 

良くわからないけど、お母さんと恭子おばちゃんを見ていて私も涙が出てきました。

悲しいわけじゃないです。なになのかはわかりません。嬉しいに近いと思います。

お母さんも嬉しいから泣いたんだと思います。

 

 

恭子おばちゃんとDおじさんは10日程、お家でお泊りしました。

その間、一緒にいろんなところに遊びに行きました。

お母さんと恭子おばちゃんは本当に仲良しです。

私もこんな風に学校のお友達とも大人になってもずっと仲良しでいたいなと思いました。

 



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