沙条愛歌といくオーバーロード (ヴィヴィオ)
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沙条愛歌といくオーバーロード

 

 

 

 転生というものを知っているだろうか? 私は転生した。死因はFate/Prototype 蒼銀のフラグメンツにでてくる沙条愛歌という少女のSSを読んでいる途中で飛び出してきたトラックが突っ込んできたらしい。

 目覚めた俺を出迎えたのは142cmくらいの麗しい少女で俺に抱き着いて頭を擦りつけてくる。

 砂金の如く薄い綺麗な金髪に青い宝石のような瞳をしている。最初は妹かと思ったが、よくよく彼女の容姿をみれば沙条愛歌そっくりだった。

 俺は身体が動かずにベッドに寝ている状態のようだ。そんな俺に彼女は手鏡を持ってきて俺の姿をみせてくれた。鏡に映ったのはアーサー・ペンドラゴン(プロトタイプ)の容姿だった。

 よくよく沙条愛歌を見ればその瞳はまるでハートが移り込んでいるようで、俺に抱き着いて身体を擦りつけてくる。

 

「なんだこれは……説明してくれ」

「あなたはアーサーになったの」

「ちょっと待ってくれ」

「私、聖杯戦争で殺されかけた時に思ったの。アーサーが私の白馬の王子様にならないのなら、自分で作ってしまえばいいって」

「ちょっ!?」

「だから、別の世界に転換させて逃げて、新しい身体を作り直して、アーサーも私と同じ死んだ人から私を求めてくれる人を材料に作ったのよ」

「まじですか……」

「いやなの?」

「幾つか聞きたいのだが、いいか?」

「なに?」

「つまり、沙条愛歌は俺の嫁になると?」

「そうよ。私の身も心も好きにしていいの。それと愛歌でいいわ」

「よしっ!」

 

 思わずなんとか動く両手でこちらから愛歌を抱きしめて彼女の匂いを嗅いでいく。半ゾンビだったら臭いかもしれないが、そんなことはなくてとてもいい匂いがした。

 

「ならいいわ」

「要望を伝えあうのは大事だから、そちらからしてほしいことや頼みは何かあるか?」

 

 話し合いの結果、俺はニートになることが確定した。というのも、この世界は環境汚染が進み地表は荒れ空には常に霧がかかっているような中、国家を巨大複合企業が掌握し法律さえ思うがままにしたそうだ。

 そして、巨大複合企業は完全環境都市アーコロジーを建て、荒れた地球を捨ててそこに逃げていった。

 

 アーコロジーは企業の関係者らが住み、時には利益を求めアーコロジー間での戦争も勃発していた。

 政府が機能しなくなっているため警察などの機能もほとんどが形骸化している。そのため、治安は最悪であり集団窃盗や電脳ハッカーなどが相次いでいる。

 それに地表が荒れているため当然第一次産業は機能しておらず、自給自足の生活などは夢のまた夢とのこと。企業から何か言われようとも、自分がどれだけ疲れようとも仕事を辞める事だけはできず、やめたら最後、死ぬか犯罪者になるしかないのである。

 どこかで聞いた話である。そんな場所に俺を出すことを拒否した愛歌は甲斐甲斐しく世話をしてくれる。まず食事はほぼ口移しだし、下の方も喜んでしてくれる。それでも頑張ってリハビリをしないといけない。

 小さい幼女に介護されているという現状、人を雇えばどうだと言ってみたが、お金がないし絶対に嫌だという。今はどうやって稼いでいるかというと、水を魔術で生み出して売っているそうだ。汚染された環境では綺麗な水はそれだけで価値があるらしい。

 

「なあ、一つ思ったんだが……」

「なにかしら?」

「愛歌の魔術で空気の汚染を消すことはできるか?」

「できるわよ。汚染されている物質を転換すればいいだけだし」

「空気清浄機みたいなのを作れないか?」

「ちょっと待って」

 

 愛歌が虚空を見詰めている。おそらく根源にアクセスしているのだろう。少しして持ってきたボードに設計図を書いていく。それから床に魔法陣を血で書いて置いてあったソファーを魔術で浮かせてそこにおく。

 

「何をするんだ?」

「錬金術よ。物質の転換ともいえるから私の魔術特性とあっているから」

 

 愛歌が両手を叩くとソファーが光となって消えて、代わりに四角い機械がでてきた。それを一生懸命に運んでいって、窓際に設置して動かすと、空気が吸われて爽やか匂いをもつ空気になった。

 

「みてみてアーサーっ!」

「おーすごいな」

 

 嬉しそうにしている愛歌を褒めて撫でてやると本当に嬉しそうにしてくれる。

 

「これを売れば金になりそうだな」

「そうね。頑張ってみるわ」

 

 

 

 

 

 それから数ヶ月。俺が動けるようになる頃には生活が一変した。まず家がボロボロの一軒家が買った周りの土地ごと転換によって綺麗な高級住宅に作り替えられた。

 作る時はブルーシートで覆ってやったのでちょくちょく作っているようにみえる。

 

 

 さて、動けるようになってさらに数ヵ月が経つが、愛歌は相変わらず俺を外に出してくれないので、家の掃除や洗濯をしたりする。料理は愛歌がやるといって譲ってくれないからだ。

 つまり、俺がやることは少しの家事と帰ってきた愛歌を労って愛し合うことだ。

 まあ、アーサー・ペンドラゴンのスペックは正直言って化け物だ。というのも、この身体はアーサープロトタイプの容姿だが、中身は根源少女沙条愛歌の理想が詰め込まれたハイスペックボディーなのだ。本気を出せば素手で鉄が切れるほどだ。

 一応、作られていた魔剣で剣術を練習したりもしている。なぜ魔剣かというと愛歌が聖剣なんて作れるはずがないからだ。そして何故剣がいるかといえば……

 

「死ねっ!」

「お前がな」

 

 襲われるからだ。貧民街にできた大きな高級住宅に幼い少女と青年が二人だけで住んでいる。そのため相手にとっては恰好の獲物なのだろう。

 庭に防衛装置を色々と組み込んでいるのですぐに排除はできるが、その前に俺の剣の訓練相手になってもらっている。他にも素材にされていたりするがな。

 

「さて、いい汗を掻いた」

 

 魂を吸収した魔剣を鞘に仕舞ってから、リクライニングチェアに座って庭で優雅なひと時を過ごす。本を読みながら、周りの草木を鑑賞する。庭には空気清浄機に加えて綺麗な水の流れる水路や家庭菜園がある。

 外に眼をやれば荒廃した廃墟と虚ろな瞳であるいている人達がみえる。

 しかし、暇である。外には出られないし、本はもう読んでこの世界のことを知った。ここはオーバーロードの世界だ。つまりユグドラシルがある。ぜひプレイしてみたい。愛歌に頼んではある。

 

「ただいま」

「おかえり。早いね」

「アーサーに会いたかったから、お昼に帰ってきたの」

「そうか」

 

 考えていると帰ってきた愛歌が抱き着いてキスを強請ってくるのでキスをする。そのまま深い口付けを交わしてから彼女を抱いて中に入る。

 

「空気清浄機の売り上げはどうだい?」

「順調よ。それに水質浄化装置も売り出したし、土地を購入したから農園を本格的にやるつもりよ」

「そうか。稼いでくれるのはいいが、無理はしないでくれ。むしろ俺も稼ぎに……」

「駄目よ。アーサーを外に出すなんて危険なことはできないわ。今日だってお昼までで13回も襲撃されたんだから……」

「わかったよ」

 

 愛歌の売る道具は画期的で地球環境を再生させることすら夢ではない。つまり、莫大な利益を生み出すことが確定しているので富裕層から狙われている。しかし、そんな相手に根源少女である彼女が容赦するだろうか?

 否。電子爆弾や爆弾などを逆に相手に送りつけることぐらい平気でやる。実際、一つのアーコロジーを毒ガスで蔓延させて狙ってきた連中もろとも壊している。どうやら、そのアーコロジーを格安で購入してきたらしい。

 

「それとアーサーに頼まれていたVR装置を買ってきたわ」

「ありがとう」

「それと子供ができたわ」

「本当か!」

「ええ、私とアーサーの子よ」

 

 身体が動くようになってから毎日のようにしていれば子供ができるのは当然だ。これはかなり嬉しい。可愛い嫁に可愛い娘ができたのだから。

 その日はユグドラシルのインストールだけしようとしたが、ユグドラシルはまだできていなかった。なので後は愛歌と過ごす。しばらくできなくなるとのことで、彼女から徹底的に求められたのだ。

 次の日、食事を取って会社に出かけていく愛歌とキスをして見送ってから、俺は適当なゲームをプレイする。本当にニートである。

 数年後、生まれた子供は順調に育っている。名前はアビゲイルにして愛称はアビーだ。

 

「お父様、お父様、買ってもらったのだわ!」

「おお、よかったね」

 

 アビーは最新式のVRゲーム機を買ってもらったようだ。今日がユグドラシルの開始日なので親子三人でやるのだ。

 

「アーサー、やりましょう」

「わかった。最初は人間種にするか、異形種か亜人種か……」

「人がいいわ」

「アビーもそれがいいわ」

「ならそれでいくか」

 

 俺達はキャラを作っていく。俺は戦士職の前衛で、愛歌が魔法職、アビーは召喚職の予定だ。

 

 

 

 ログインした人の中で俺は妻である愛歌と娘であるアビーを探す。アビーは名前をアビーにしているし、俺はアーサー・ペンドラゴンにしてある。アーサーは取られたから仕方ない。

 そんなことを考えていると、抱き着いてくる人がいた。振り向くと愛歌だったが……

 

「あっ、警告がきたわね。家族でも駄目なんて無粋ね」

「システム的にもできないようになっているからな。ちょっと聞いてみるか。アビーのためにも」

「ええ」

 

 GMコールしてみると、リアルでの家族かどうかで書類を送ってくれたらいいらしいとのことだ。ただ、それでも手を繋いだり抱き着いたりはできるが、キスやそれ以上のことは無理らしい。子供に関してはリアルでお子様用フィルターを使って登録すれば大丈夫らしい。そちらはしておいたので大丈夫だ。

 

「お母様、お父様!」

 

 ぽふっと抱き着いてきたアビーには警告がでていないようで、問題ないようだ。そんな訳でアビーを挟んで三人で手を繋げば問題ない。しかし、無茶苦茶視線が集まる。殆どが嫉妬の視線だ。

 

「最初はノービスね」

「ああ。それぞれの訓練所で転職するようだし、いってみるか」

「三人で別々にいくのが効率的だけれど……」

「いやよ。せっかくお父様とお母様と一緒にお出掛けなんだもの」

「そうね。じゃあ、三人でゆっくりと回りましょう」

「そうだな、いこうか」

 

 三人でゆっくりと回る。愛歌も流石にゲームの中でなら許可をくれる。死んだとしてもレベルダウンですむからだ。そんなわけで戦士と召喚士、魔術師となってゲームを始めていく。

 

 

 

 

 



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2話

 

 

 

 戦士と召喚士、魔術師となった俺達は戦闘をするために外に出た。一緒に歩いていると周りの視線が集まってくる。どうみても幼女二人を連れている青年にしかみえないからな。

 

「じゃあ、パーティーを組んで適当に倒すか」

「狙いは牛と兎か」

「うさぎさんと遊びたいの!」

「じゃあ、ここでみているから遊んでおいで」

「うん!」

 

 アビーが遊びにいったので、俺達は遠くから見ながらゆっくりとする。二人でアビーを見守っていると、近くに猪がポップしたのでやってみよう。

 

「危なくなったら頼む」

「ええ、頑張ってね」

 

 愛歌が見守ってくれるので、剣を引き抜いてイノシシに向かう。相手もこちらに気付いたのか、威嚇してから突撃してくる。その速度はかなり遅く感じる。横に避けながら剣を猪の進行方向におきながらタイミングをみて踏み込みながら振りぬく。さらに身体を回しながら背後から斬りつける。

 すると相手は簡単に消滅してしまった。確か、オーバーロードでユグドラシルの前衛職は現実の反射神経などが影響するとはいっていたが……余裕そうだな。

 

「アーサー、かっこよかったわ」

「そ、そうか……」

 

 嬉しそうにしている愛歌。俺は愛歌の隣に座ってアビーを見守ることにする。隣の愛歌が俺にもたれかかろうとして、止めてメニューを操作しだした。

 アビーは兎と戦っている。ただ、抱き上げてすりすりしているだけだ。向こうじゃ動物は飼えないからな。

 

「そういえばこのゲーム、課金ができるのよね」

「ああ、そのはずだ」

「じゃあ、やってみようかしら?」

「いいかもしれないな……」

 

 話していると、アビーが兎を絞め殺してからこっちにやってきた。やはり愛歌の娘なだけあるな。

 

「お父様、お母様、召喚術が使えないの?」

「どうしたんだ?」

「モンスターがないの。兎さんも駄目だったから、殺したんだけど……」

「どれどれ……」

 

 愛歌と一緒にアビーのをみると納得した。契約したモンスターがいないのだ。何体も倒さないと契約とかもできないみたいだ。入手方法にガチャと書かれていた。

 

「ガチャだな」

「お小遣い欲しいの」

「いいわよ。とりあえず100万渡すわね」

 

 とりあえずのレベルじゃないんだが、あっさりと俺達のところに課金してコインを購入した。アビーはそれを使ってガチャをしていくので、俺もやっていく。目当てのものはレアなモンスターや課金のレア装備だ。ちょうどサービス開始のイベントをやっているので。

 

「まあ、当たらないよな」

 

 ユグドラシルの武装は宿したデータ容量の大きさによって区分される。最下級から始まり、下級、中級、上級、最上級、遺産級(レガシー)聖遺物級(レリック)伝説級(レジェンド)神器級(ゴッズ)と九つに区分される。レガシーまでガチャに入っているが、その確率はかなり引くい。

 

「う~当たらないの」

「私に任せて」

 

 愛歌がリズムに乗りつつか、何度か隙間をあけながらガチャをすると遺産級(レガシー)ばかり当たっていく。というか、ハイレアのオンパレードである。

 

「とりあえず装備はこれね。モンスターは好きなのを……全部使ったらいいわ」

「お母様、ありがとう~」

 

 俺は倉庫とかを最大まで拡張しておく。三人で最大まで拡張したら愛歌はガチャででてきた魔法書を使っていく。俺は鎧とかを変えてから、剣を引き抜く。明らかに初期装備の武器とはレベルが違う。ただ、装備してもレベルが低いからか、ペナルティーがついてまともに使えない。ただ、それを解除する薬もガチャからでる。一定時間だけだが。

 

「使えそうかしら?」

「問題ない。むしろ丁度いいくらいか」

 

 どうせペナルティーはシステムアシストやスキル技が使えない程度の物。ならば剣術だけで対応すればいい。

 

「それならよかったわ」

「愛歌はどうだ?」

「私は支援魔法とか色々と覚えたわ。アビーは……」

 

 アビーの方に視線をやると強力なモンスターのクリスタルを使って呼び出していた。大きな熊と大きな黒いうさぎ。

 

「ねえ、危なくないかしら?」

「だな」

 

 立ち上がって全力で走って二匹の拳が振り下ろされる前にアビーを抱えて避ける。そのまま走ってアビーを置いて二匹に走る。

 

「アビーは愛歌と一緒に後ろから援護してくれ。俺に回復アイテムを使ってくれればいいから」

「はい、お父様!」

「援護するわ」

 

 愛歌の援護を受けて二匹に攻撃しつつ、ヘイトを稼いでいく。さすがに二匹の相手はきついので被ダメージを受けるが、可愛い愛娘がポーションを投げたり、ガチャ産の使い捨ての支援アイテムを使ってくれる。愛歌は魔法を放ってヘイトコントロールを自分でしてくれるのでかなり楽だ。

 

 

 

 課金アイテムを湯水のように使って一時間ぐらい戦ってようやく二匹は倒れてくれた。経験値やドロップアイテムはなく、ただアビーの召喚術にウォーラビットとウォーベアの二匹が登録された。

 

「これで召喚術が使えるのだわ」

 

 アビーの二匹を可愛らしいデフォルメしたぬいぐるみみたいなのを召喚した。どうやら子供用にデフォルメされた奴みたいだ。抱き上げてアビーが顔を埋めてもふもふしている。

 

「よかったわね。でも、ちょっと貸してくれるかしら?」

「はい、お母様」

 

 愛歌がぬいぐるみを借りてもふもふしだした。いや、二匹はバタバタと手を振っている。というか、二人共無茶苦茶可愛くてほっこりする。

 草原で二人が座ってゆっくりと、そこだけ世界が違うようにしている。しばらく日向ぼっこをしていると、流石に時間がきたので愛歌がログアウトする。食事を作ってくれるからだ。

 俺とアビーは二人で色々とまわっていく。お父様呼びに色々視線が集まるが、流石に子供に手を出してくるのはいない。

 

「お父様、肩車して欲しいわ」

「いいぞ」

 

 肩車をして進んでいくと、召喚獣に戦わせていく。子供フィルターをかけているからこそできる。ちなみにこのフィルター、買う時に指定できる奴なので、購入時に身分証明書を出しているからできるらしい。

 

 

 遊んでいるとリアルから呼ばれたので、現実世界に戻って愛歌が作ってくれた食事を行う。アビーはぱくぱくと食べてすぐにゲームに戻っていった。まあ、子供フィルターがかかっている人はPKとかもできないから安心だ。

 俺と愛歌は一緒に食器を洗ってから、アビーがいないうちに楽しむ。一、二時間経ってからログインするとアビーがセクハラされていた。

 

「そこのピンク肉棒……」

「あれ? 知り合い?」

「お父様とお母様ですわ」

「え、母親!?」

「そうよ」

「それで、娘の教育に……」

「? 私、もう知ってるよ? お父様とお母様がしてるのみてるもの」

 

 色々とやばいことになっているようだ。まあ、一緒に寝ているし、寝ているアビーの隣でやったりもしているし、仕方ないな。

 

 

 

 

 



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3話

 

???

 

 

 ここは第46番アーコロジー。愚かにもマスターに手を出し、死の吐息が充満することになった。その施設をマスターが購入して浄化し、一大食料生産地となっている。

 

「メイド長、おはようございます」

「ああ、おはよう。施設の稼働状況はどうなっている?」

「問題ありません」

「そうか。では食事と十分な休息を取るように」

「はっ」

 

 彼等はこのアーコロジーの外で過ごしていた貧民層の者達だ。そんな彼等はいい服を着て仕事である食糧生産に勤しんでいる。皆は笑顔で働いているが、ここは福利厚生がしっかりしているホワイト企業だからだろう。他とはかなり違う。そもそもこのアーコロジー内では自然が普通にあり、まるで地球環境が再生したかのような世界だ。

 各施設を確認して塵掃除を行ってから施設の中央部、空中に浮いている多面体の中に飛び上がって入る。

 廊下を歩いていると中央の部屋に到着できた。そこには出勤してきた社長の少女がいる。彼女こそ、私のマスターだ。

 

「マスター、ご機嫌麗しく」

「ええ。施設の状況は順調?」

「うむ。何も問題はない。今日も元気に働いている」

「そう。ならいいわ。ごみ処理はどうなの?」

「問題ない」

 

 マスターの背後の影が揺れて大きな骸骨のような人が現れる。奴の実力はかなり高い。

 

「情報は引き出して全てくべた」

「そう。ならいいわ。私とアーサーの邪魔をする奴等は有効利用してあげましょう」

 

 ここの下には泥のような物が沢山ある。そこから人の手がでてもがき苦しんでいる姿がみえる。

 

「4364人の生命で聖杯は順調に稼働中か」

「そうよ。いきの良い魔力を作ってくれているわ」

 

 こいつらはこのアーコロジーに住んでいて弱者から搾取していた連中だ。マスターが殺した連中全ての魂を手に入れて聖杯を作った。そこから私達、英霊を呼び出した。

 

「しかし、これはいいのか?」

「何がかしら?」

「お前の夫は嫌がったんだろ?」

「あら、アーサーが言っていたのは無関係の人間に手を出すのは止めろって言われたの。でも、自衛は許してもらえているから、私達を襲ったりする連中は自衛の内に入るでしょう?」

 

 無邪気に微笑みながら数千を殺し、魂すらも魔力炉に変えて商品を作る動力に変えてしまった。私達、サーヴァントも呼び出されて会社の護衛についている。特に山の翁をはじめとしたハサン達が護衛と諜報部隊として動いている。

 施設内の管理は私とメディアで行っているので問題ない。

 

「あっ、定時だから帰るわ」

「三時間労働とはいい身分だな、マスター」

「当然よ。浮気させないためにもアーサーを家から出さずにいるのよ。それがユグドラシルなんて始めちゃったんだから、気が気じゃないわ」

「監視をつけているんだろ?」

「一応、アビーに頼んであるわ」

 

 アビーは確かアビゲイルという二人の娘だったわね。マスターの方からさっさと襲って子供をなしたらしいが、その子供にも色々と細工しているみたいだ。

 

「それに早く帰るのはここに新しい子がいるからよ」

「お盛んなことだな。しかし、閉じ込めておいたところで娘に父親が取られる場合が……」

「っ!?」

 

 カランカランと手に持っていた物が床に落ちる。青ざめだしたマスターに私はニヤニヤと見詰める。

 

「帰るわっ!」

 

 一瞬で転移していく。

 

「からかうのも大概にせよ」

「構わないではないか。どうせ暇つぶしだ。それに可能性がないわけではない。マスターの娘なのだからな」

「そうか」

「どこに行く?」

「仕事だ」

「また供物がきたか。ではメイドとして掃除をするとしよう」

 

 やれやれ、ここに喧嘩を売りにくるなんて愚かな奴等だ。しかし、ユグドラシルか。私もやってみてもいいかもしれない。静謐でも誘ってやってみるか。

 

 

 

 

 



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4話

 

 

 

 愛歌が家に帰ってきたと思ったら、俺と俺の膝の上に座っているアビーをみていきなり両手両足を椅子に拘束された。

 

「あの、愛歌さん?」

「お母様、どうしたのかしら?」

「アビーはちょっとユグドラシルでもいいから遊んでなさい」

「うん……」

 

 アビーが逃げていくので、俺は愛歌を見詰めながら何かいけないことをしたかと考えるが、基本的に愛歌が張った結界によって家から出してもらえないので当ては無い。

 そもそも毎日、三人で風呂に入って三人で寝ている。アビーが遊び疲れて先に寝るので、そのあとは愛歌と愛し合っているぐらいだ。昨日もそれは変わらない。つまり、俺には何を怒っているのかがわからない。別に結界を破壊して外にでたこともないのだ。

 

「愛歌、さすがにいきなりこれは怒るぞ。理由はなんだ?」

「アーサー、あなたアビーに手を出してないでしょうね?」

「何を言っているんだ。流石に五歳児に手を出すことはない。だいたいあの子は娘だぞ」

「でも、アビーは雌の顔をしている時があるわ」

「いや、勘違いだろう。確かに溺愛しているし、好みの子になるように育てているが……」

「好みっ!?」

「いや、これは普通のことだろう。というか、愛歌も納得しているだろう」

 

 アビーの育成方針は簡単だ。セイレムの魔女にでてきたアビゲイルになるように育てている。愛歌と俺の娘なので魔術師としても一級品となっている。いくら偽物とはいえ、この身体はアーサー・ペンドラゴン(プロトタイプ)の上をいくスペックとして作られているのだから、根源少女である沙条愛歌との子であるアビゲイルのスペックはまさにフォーリナーといっていいはずだ。

 

「そもそもまだアビーはそういうことを理解していない……待て、なんで視線を逸らす」

 

 愛歌がそっぽを向いている。俺は力を入れて縄を引きちぎって愛歌の柔らかい頬っぺたを掴んでむにむにしてやる。

 

「やっ、やめてぇっ」

「ほら、隠していることをいえ」

「怒らない? 嫌いにならない?」

「内容次第だ」

「えっと、アーサーの近くに綾香みたいに他の女がいて取られるのが、嫌だったから……私の半分をアビーにあげたの」

「待てこら。DNAが半分とかそんなじゃないんだよな?」

「怒らないで……ただちょ~と私の魂を半分コピーしてあげただけなのよ? いたっ! うぅ~」

 

 拳骨をプレゼントしてから、抱き上げて目線を合わせつつ詳しいことを聞くと、アビーは俺と同じように作ったような感じらしい。ただ違うのはアビゲイルは愛歌の子宮で育って普通の赤ちゃんと同じように生まれたということその辺の死んだ赤子の魂やらなんやらを混ぜて器を作ったらしい。そこに自分の魂の半分をコピーして与えたらしい。だから、アビーは俺に対してライクではなくラブになる可能性が凄く高いらしい。

 

「それ、自爆といわないか?」

「娘なら、まだ許せるかなと思ったのよ……でも……」

「嫌なものは嫌と」

「ええ、そうよ。でも、この子も同じようにしたから……」

「待て。もしかしてもう一人できたのか?」

「そうよ」

 

 それはめでたいが、嫉妬する相手を増やされるのもなあ。

 

「まあ、これからはそういうことを止めるんだ。いいね?」

「ええ、アーサーがそういうなら……やらないわ」

「良い子だ。それでアビーのことだが……」

「……諦めるわ」

「どうしてそうなった」

「あの子も根源への接続が可能なのよ。それも外なる神に関してだけど」

「もしかして……愛歌がやったようなことが起こる可能性が……」

「♪」

 

 満面の笑みで答えてくれた。下手をしたらこの世界に神話生物のパラダイスができるかもしれないということだ。それにおそらく根源、アカシックレコードにアクセスして調べたのだろう。

 

「まあ、ちゃんと育てるか」

「そうよ。それとアーサー」

「なんだ?」

「アーサーは三人プレイとか四人プレイとか興味あるのよね?」

「まあ、俺も男だしな」

「わかったわ。じゃあ、これでいいわね」

 

 愛歌が指を鳴らして魔術を発動しようとすると、鳴らなかった。顔を真っ赤にした愛歌の隣に複数の愛歌が現れた。

 

「し、分身よ。といってもホムンクルスみたいなもので、喋れないけれど身体は私と同じよ」

「まさか……」

「これでたっぷりと奉仕してあげるわ」

「いや、それって奉仕じゃなくて搾り取るって……」

「この子達なら好きなだけ乱暴に扱って壊してもいいわよ」

「まっ」

 

 俺の身体は殺到する愛歌たちに押さえ込まれて押し倒され、好き勝手に貪られた。抵抗して二、三人はダウンさせたがそれ以上の物量には勝てなかった。

 

 

 

 

 

 アビゲイル

 

 

 

 

 お母様に追い出されたから、言われた通りにユグドラシルにログインする。メニューを開いてみるとお小遣いが振り込まれているので、とりあえず露店をみてみるのだわ。

 露店では掘り出し物がなかったので、そのまま外に出てクマさんのぬいぐるみを大きくしてそれに乗ってうさぎを抱きながら進んでいると、メッセージが入ってきた。

 

『今暇してる? 馬鹿な弟とこれから狩りにいくんだけど、一緒にどうかな~って?』

「暇だからいくわ。場所は?」

『黄昏×外なる×神殿でいけるわ』

「すぐにいくのだわ」

 

 トラベルゲートを使ってキーワードを挿入。転移するとピンクのスライムと鳥人の人がいた。

 

「うはっ、ガチの美幼女じゃねえか」

「手を出したら殺されるわよ。社会的にも物理的にも」

「え?」

「アーコロジー買い取ったところのご令嬢だからね。ちなみに私達の家と家族構成とか全バレしてるから」

「どういうことだよ!」

「簡単よ。私の知り合いは全部お母様とお父様による調査が入っているの」

「それ、なにかあったら……」

 

 私は首をかっきる仕草をしてあげる。顔が真っ青になった鳥の人をおいておいて、パーティーへの加入要請がきたから承諾して一緒に進んでいく。

 

「ここに何の用があるの?」

「転職アイテムよ! ショゴスになるの!」

「素敵だわ! ぜひなりましょう!」

「いや、なんでだよ……だが、美幼女の触手プレイ……」

 

 ゾワッとして身体が震えるけれど、たぶん大丈夫よね。そんな感じで進んでいくとさっそく巨大なスライムっぽいのが現れた。私は熊のぬいぐるみと兎のぬいぐるみを巨大化させて叩き込む。

 

「ほら、愚弟は援護しなさい。私はアビーちゃんの盾になるから」

「了解だ」

 

 二匹じゃ足りなさそうだから、使い捨ての召喚アイテムを使ってさっさと終わらせる。

 

「アークエンジェルいっぱい」

 

 ガチャ産の召喚用データクリスタルをばらまく。これは一時間くらいしか使えない肉壁兼削りよう。まかせればどんどん狩ってくれる。

 

「さあ、殲滅するのだわ!」

「なにこの廃課金プレイ」

「この子、レアモンスターのコレクターだからガチャいっぱいまわしてるらしいのよね。それで召喚士として特化しているから、スキルも諸々乗って……」

 

 ショゴスを倒してショゴスを倒して倒しまくる。ドロップアイテムは名状しがたき何か。でも、そのまま進んでいく。

 

「あ、言い忘れてたけど報酬は魔導書のデータクリスタルでいいわよね?」

「ええ、それでいいわ」

 

 最奥にあるクトゥルフ神話系統の魔導書。そのページのデータクリスタルを集めて作ることでクトゥルフ神話の有名な魔導書が手に入るのよね。いっぱい材料もいるから、お小遣いがカツカツで大変。

 

「あ、これ飲んでおいてね」

「大丈夫。私は精神耐性完全無効の装備をもってるから」

「なら大丈夫ね。愚弟は用意しているわよね?」

「もちろんだ。発狂したくないからな」

 

 ボス部屋の前にくると人がいっぱい並んでいる。順番にボスを倒しているの。

 

「ちょっと外れるけれどいい?」

「ああ、弟にならばせるからいいわよ」

「ちょっ!?」

「うるさい。さあ、いきましょう」

「お願いするわ」

「任せとけ! 幼女のお願いはなんとしてもきくぞ!」

 

 少しずれたところでシートを引いて座りながらチャットルームを作成する。そこに魔導書関連のデータクリスタルを買い取ると書く。課金アイテムとの交換も受けつけると、いろんな人が売ってくれる。

 私達の順番になるときにはお小遣いが消えちゃった。でも、いっぱい集まったからよしとするわ。でも、作るのに数百万もいるなんて、高いと思うの。

 

 

 

 

 

 




アビーちゃんのお小遣い。月100万。臨時のお小遣いも結構ある。廃課金プレイヤー。
愛歌の課金額は月5万程度。ただし、所持はハイレアとかばかり。
アーサーは月数千から数十万で押さえている。欲しいアイテムしかガチャをしない。


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5話

 

 

 

 

 私、沙条アビゲイル。小学4年生。今年で10歳になります。今日も学校で授業を受け、お友達のララちゃんと一緒に楽しいお話をしたり、ご飯を一緒に食べたりし、授業が終わってからユグドラシルで会う約束をして校門で別れます。

 

「アビー」

「うん。ユグドラシルで会いましょう」

「……わかった。何時ものところで待ち合わせ……」

「楽しみだわ」

 

 お友達のララちゃんと別れて駐車場に移動すると、大きなバイクが停まっていて、そこにメイドさんが待っている。

 

「お勤めご苦労様だ」

「お勤めじゃないのだわ、おば様」

「そうか。まあ、どちらでもいい。そちらも護衛ご苦労様だ」

「うむ」

 

 私の背後から滲み出るようにしてお爺様がでてくる。お爺様は私を持ち上げてバイクに乗せ、ヘルメットを被せてくれる。おば様は口に咥えていたアイスを私の口に入れてから、バイクにまたがってヘルメットも付けずに発進する。お爺様は姿を消して普通に走ってついてくる。

 

 自宅に到着すると、お爺様が私を降ろしてくれる。そのまま玄関を通っていくと、沢山いるメイドさん達が出迎えてくれるので、挨拶を交わしながら庭にある温室に入る。

 

「お父様っ! ただいま~!」

「お帰り、アビー」

 

 お父様は椅子に座りながら紅茶を飲んでいる。何時も、この時間はここにいるからわかりやすい。私はお父様に抱き着いて膝の上に乗って、今日あったことを楽しく話していく。

 

「楽しかったようで良かったよ」

「えへへ~あっ、忘れてた。んっ」

 

 お父様に抱き着いたままキスをして、舌を絡める。そのまま楽しんでいると、お父様が私を離してくる。唾液の橋がもったいなくて、舌で絡めて口の中に迎え入れる。

 

「駄目だと言っているだろう」

「だって、舌を入れるのは気持ちいいもの。それにアビーはお父様のお嫁さんになるのだから問題ないの」

「まったく……」

 

 お父様は私達、娘にもお母様にも弱い。甘えれば本当に悪い事以外は許してくれる。これは悪い事じゃない。ただのスキンシップなのよ。お父様、嫌いっていう最強の言葉もあるから、これぐらいは受け入れてくれている。もっと成長して

 

「「パパっ、姉様っ」」

 

 声に振り向くと、お母様が手にケーキを持って、妹達を連れてこちらにやってきていた。

 

「ただいま、イリヤ、ジル」

「おかえりなさい」

「おかえり~!」

 

 妹は双子で、二人共銀色の髪の毛をしている。生まれた時は白色だったけれど、お母様がなにかしたのか、綺麗な銀色の髪の毛になったのよ。イリヤはイリヤスフィールっていって、ジルはそのままジルなのよ。イリヤは髪の毛を伸ばしていて、活発なジルはお母様と同じ短くしている。私が伸ばしているからかもしれないけれど。

 

「アビー、降りなさい」

「はーい」

 

 私は素直に降りる。降りると、二人が抱き着いてくるので私も抱きしめ返してキスをする。振り返れば、お母様がケーキをテーブルに置いて、お父様が紅茶を入れていく。いつの間にかメイド服を着たおば様も座ってお父様が入れた紅茶を採点している。普通は逆なのだけど、おば様はお父様のお姉様だから問題ないらしいわ。

 私達が座り、それぞれ紅茶とケーキを食べはじめる。紅茶を入れ終わったお父様が座ると、その上にお母様が座ってイチャイチャしだす。娘の前だというのに一切気にしていないわ。

 

「失礼します」

 

 黒い肌に青い髪の毛をした女の子が現れた。彼女はフードに手袋、ストッキングとかで全身の肌を隠している。でている部分は顔くらい。

 

「静謐、どうしたの?」

「欧州に送った手の者から連絡がありました。アーコロジー間で紛争が発展した事後処理です」

「ネオナチスだったかしら」

「はい。アーサー様とアルトリア様で解決なされた件です」

「そうね……」

「ふむ。アレは楽しかった。またやりたいぞ」

「ライダー? 俺は御免だ。何が好き好んでミサイルや砲弾が降り注ぐ場所に単身で突撃して、殲滅しなくてはいけないんだ」

「おや、子供達には人気だぞ」

「かっこよかったのだわ!」

「パパ、凄かった!」

 

 紛争が勃発して、狙いがお母様の会社が持つ技術だとわかったため、おば様がお父様を連れ出して戦場を二人で散歩してきたらしいの。二人だけで戦場を蹂躙して、虐殺している姿が静謐達、ハサン達が撮ってきてくれた。その後、お母様が大激怒してお母様とおば様が戦って、お父様がとりなして事なきを得た。

 

「まだ怒っているのだけれど……」

「ふん。アレは必要なことだった。ここ数年でアーサーは私の剣技を吸収し、飛躍的に強くなった。私と引き分ける程度にはだ。銃とバイクがアリなら負けぬが」

「それをいうなら、宝具ありなら負けないな」

「ほう、言ったな。いいだろう」

「はいはい、そこまでよ」

 

 お父様達は毎朝戦っている。この頃、お爺様に二人がかりで挑んで負けているらしい。おば様とお父様の勝率はお父様の方が負け越してはいるみたい。

 

「処理はこちらでやっておくわ」

「そうか。それとアビー。そろそろ時間ではないかな?」

「あ、いってきま~す」

「お姉ちゃん、私達もいくよ!」

「はい」

「二人は私達と行きましょうね」

「は~い」

 

 私は部屋に戻ってVR装置をかぶってIDとパスワードを入れて、ユグドラシルの世界へとログインする。妹達と違って、私は成長しているので一人でも大丈夫。

 

 

 ユグドラシルの私はアビー。最上位クラスの異界召喚士をしている。種族も人だったのが魔女になっちゃった。アビーの現在のステータスはこんな感じ。

 

 

【名前】

 アビー 

【レベル】64

 種族・災厄の魔女レベル15

【クラス】

 異界召喚士レベル15

 ジェネラルレベル10

 エンチャンターレベル10

 インマスターレベル10

 魔導図書館レベル4

 

 災厄の魔女は伝説や神話級の魔導書を沢山持っていて、それを使って沢山の人やモンスターを殺したりして、災厄を引き起こしたら得られるの。私は友達が異形種狩りに襲われて殺されたから、報復にその人達がいる街とギルドを徹底的に破壊してあげたら、なっちゃった。ちょっとナコト写本とセラエノ断章、ルルイエ異本、エイボンの書を使って課金アイテムをふんだんに使って本気の召喚しただけなんだよ。お小遣いが全部消えちゃったけど。

 でも、ヨグ=ソトース、ツァトゥグァ、ツァトゥグァ、ウボ=サスラ、アザトース、ファロールとかでてきて、とっても楽しかったわ。私の大事なラヴィを殺した馬鹿共を踏み潰す感じがとても素敵。相手の人達デスペナルティでレベルダウンさせまくってあげたけど、その代償は結構大きい。

 クトゥルフ神話の魔導書は神様を呼び出すのは使い捨てなの。それもこちらの言う事なんて聞いてくれないし、喜んでこちらを攻撃してくるわ。このレイドボス、倒したら召喚師に神話知識とか、色々と入ってくる。その時に精神攻撃を受けて死ぬとレベルが初期に戻される。それでも神話知識はレベルダウンが起きずに蓄積される。レイドボスを倒せなかったら、神話知識はレベルダウンする。

 精神攻撃に耐えきって、生き残ることができたら、神話知識はたっぷりと貰える。神話知識が一定レベルに達するとようやく契約する可能性が生まれてくる。精神系スペルキャスターのインマスターを取ることで精神耐性を得られるから、頑張ってとってみた。

 

「アビー」

「ラヴィ!」

 

 待ち合わせのカフェで座っていると、ラヴィが来たのでステータスを閉じる。ラヴィは角が二本生えていて、肌も青白い。その上から拘束具をつけてローブを着ている。ラヴィは鬼と不死者のハーフで、クラスはアルケミスト(ジーニアス)とネクロマンサー、カースメイカーとかを習得している。今の格好はお父様いわく、世界樹の迷宮にでてくるカス子の衣装みたい。ラヴィはラヴィニアといって、リアルの名前はララ。お父様にお願いして、ララの誕生日にユグドラシルの装置を買ってもらって、プレゼントしたの。その設定の時に悩んでいたらラヴィニアという名前を進めてもらったの。

 

「……今日は何処にいく……?」

 

 反対側の席について、注文をしてすぐにでてきたジュースを飲みながら、ラヴィが質問してくる。

 

「クトゥルフ神話の魔導書がまだ欲しいけれど、ずっと行ってたから今日はラヴィの行きたいところでいいのよ」

「……クトゥルフ神話のとこでいい。デスナイトを改造したから、そっちで大丈夫……」

「ありがとう!」

「アビーのためじゃない。私が行きたいところだから」

「それでもなのよ」

 

 ラヴィに抱き着きながら考える。どう考えても戦力がたりない。フレンドリストを見てみると、お父様とお母様。それにジャック・ザ・リッパー、シトナイがログインしてきたのがわかった。ジャックはジルで、シトナイはイリヤなの。

 

「お父様や妹達がきたから、誘ってみる。ラヴィも皆なら大丈夫よね?」

「……お願い」

 

 ラヴィは人見知りだから仕方ない。私がしっかりとしないと駄目なの。

 

 

 

 連絡を取れた私達は海底に沈むルルイエにやってきた。そこで封印を解いて、ダンジョンを攻略する。このダンジョンは浮上していき、完全に浮上するとクトゥルフが復活してくる。レイドボスのため、とっても大変なことになる。

 

「前衛は二人、中衛が一人、後衛が三人ね」

 

 お父様とジャックが前衛で、シトナイが中衛。残りは後衛となる。まあ、壁は私が用意するので問題ないと思う。それにお父様は前衛職としてすごく強いから、大丈夫。

 実際、でてくる敵はお父様達と一緒に軽く蹴散らしていく。お父様が剣ではじいて盾となり、ジャックとシトナイが攻撃する。私達も援護していけば簡単。お母様はスペルキャスターとしてかなり強いし、シトナイが回復やバフをしてくれる。ラヴィがデバフをするし。私は蜂を召喚して索敵を担当する。

 

「アーサー、次のアップデートでフィールドが買えるようになるみたいなの」

「それはいいが、どういうことなんだ?」

「フィールドを買って拠点にできるのよ。ダンジョンも変わらないみたいよ」

「だったら、私は遊園地が欲しい!」

「え~遊園地より、私は動物園がいい! 現実にないし」

「動物園なんて、お姉ちゃんに頼めば一発じゃない」

「それもそっか」

 

 私の召喚獣達を動物といいきるのはどうかと思うの。でも、もふもふで最高の遊び相手になる子達もちゃんといる。

 

「どちらも却下よ。欲しいのなら、現実で作ってあげるから。それよりも、狙っている場所があるの」

「どこだ?」

「世界そのもの。買い叩いてみない?」

「それはとても面白そうだ」

 

 お父様とお母様が楽しそうに世界一つを手に入れるみたい。

 実際、二年後にお母様達はえげつない方法で九つある世界の一つ、アースガルズの世界を手に入れた。そこを支配していた天空城を持つギルドを倒したの。

 お母様達はアルバイトを雇って人数を増やしたし、おば様やハサン達も投入していた。その人達で複数のギルドを作らせ、一つ一つのダンジョンを購入して課金をいっぱいしてアースガルズを強化したの。そして、最後にはおっきくなった異形種のギルド、アインズ・ウール・ゴウンと戦わせて消耗したところで、全てを統合して天空城に攻め込んでギルドを潰し、天空城すらも手に入れた。

 私はお母様達が落としたあと、アースガルズ中にクトゥルフ神話や、課金のモンスターたちを放ってレイドモンスターによる防衛網を構築した。戻ってきた人達は呆然としていたのが印象に残っている。

 こうして、世界一つを支配する巨大ギルド、エデンが結成された。ここは私達の楽園であり、邪魔する者は存在しない。各拠点は転移できるし、別の世界にいく門の前にはレイドモンスターがいっぱい待ち構えているのでエデンの人以外は誰もこない。私達は別の転移門があるので、そっちを使えばいいだけだから問題ないの。

 

 

 

 

 

 

 



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