突発ネタ作品 (マーシィー)
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傍観少女シリーズ
傍観少女は“視”てるだけ
「また後でね、木乃香」
「また後でな~、明日菜」
今私の目の前で別れの挨拶を交わした2人、神楽坂明日菜と近衛木乃香。私の通う麻帆良学園2年A組に通う生徒である。
一見極々普通の一般人の二人組みに見えるのだが、実際は違う。神楽坂の方は本名はアスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシアと無駄に長い名前でしかも地球生まれではなく魔法世界と言われる別世界の生まれでさらに魔法世界のとある国の王族である。
今は2年A組の担任であったタカミチ・T・高畑の手によって王族だった頃の記憶を封印されておりその副作用か頭が悪くなっているようだ。
もう一人の近衛木乃香と言うとこちらは日本生まれの日本育ちであるがその体には洒落にもできないほどの魔力を秘めて居るのだが当の本人はそのことを知らないようだ。下手に魔力を暴走させてしまったらこの校舎ごとき簡単に吹き飛ばせられるというのにのんきな事だ。
何故そんな事を私が知っているのか?簡単な事である。私には“視”えるのだ。無機物有機物関係無しに私が眼で“見て”対象の事を“視たい”と思えば本名から始まり年齢性別種族に職業、得意な事苦手な事趣味性癖等など……。
もっと詳しく視ようとすれば対象が生まれた時から今に至るまでのあらゆる行動だってログとして視ることだってできる。
そんな私だからとにかく厄介事や面倒な事、危ない事や危険な人から逃げて隠れて逃亡してきた。何せ私が通うこの麻帆良学園には“魔法使い”が存在するのだから。
私が魔法使いの存在を知ったのは小学校に通い始めてすぐだった。なんてことは無い。担任の職業欄に教師兼魔法使いと書いてあったからだ。
始めは見間違いかと思ったが何度確認しても職業:教師兼魔法使いと書いてあった。その頃の私は自分の“視える”という事がどういう事なのかをよく理解しておらず、ただ色んな人の色んなことが視えるとだけしか思っていなかった。
その結果、私は一度“記憶を書き換えられた”
……まあ書き換えられたとは言っても私のこの能力?のおかげで自分自身の過去の行動のログを見てすぐに書き換えられた記憶を思い出せたのだが、魔法使いという人種に険悪感を抱いてしまったのは自業自得とはいえしょうがないと思う。
記憶を書き換えられその記憶を思い出した後の私はとにかく目立たないように生活をした。なぜなら私のクラスの何人かが、職業欄に魔法使い見習いと追加されていたからだ。どうやらこの学園では素質がある生徒を魔法使いとしてスカウトしているらしい。そして見習いなったクラスメイトのログを確認したら極々軽いながらも思考誘導の魔法を使われた形跡があった。
私は魔法使いという人種に恐怖した。
だからこそ私は小学校での生活はとにかく目立たず静かに過ごしきった。クラスメイトや担任の思考を“視て”印象に残らないような会話や行動を心がけ、とにかく存在感を消していった。
幸いと言うべきか私自身には魔法使い達が使う魔力、と言うのは一般人よりも少ないようで目を付けられる事は無かったようだ。
この眼の事も備考:魔眼持ち、では無く備考:能力持ちと書かれており私以外で備考欄に能力持ち、と書かれていた人物はおらず魔法使い達も魔眼持ちには声をかけていたが能力もちである私には一切声をかけてくることは無かった。
魔眼持ちは見つけられても能力持ちは見つけることができなかったようだ。
小学生時代を何とか乗り切ったものの中学生に上がってから厄介事が起きた。たまたま隣のクラスである1年A組の1人を“視て”しまったのだがそれがダメだった。なぜならその1人は年齢:678歳、人種:吸血鬼で職業:中学生(強制)兼魔法使いだった。
吸血鬼ってどういう事なの。それに見た目が小学生ぐらいなのに年齢が600歳越えているってなんなの?
それから私は1週間ほどかけて1年A組の生徒を“視て”回ったのだか酷かった。人種に幽霊、ロボット、忍者、魔族にハーフが2人いて、職業には兼業で傭兵、神鳴流剣士、魔法使いが居てさらに備考欄に未来人とか書かれている人まで居た。
隣のクラスは魔境かナニかか!?
だから私は隣の1年A組には絶対に関わらないと決めた。それに違うクラスなのだから早々関わる事も無い、と安心していたのだが、甘かった。
あんな魔境と化したクラスに通っている生徒が普通なわけなかった。
私が静かに授業を受けていると隣のA組から破裂音が聞こえ、それと同時に隣のクラスにまで聞こえてくる乱闘音が聞こえてきた。
「この、シスコン委員長が!!今日こそ白黒つけてやる!!」
「ジジコンの貴方には言われたくありませんわ!!」
このやり取りは今週に入ってすでに5回目である。すでに私のクラスでは日常と化してしまったやり取りである。
正直凄く迷惑である。この騒ぎのせいで授業が中断するせいで授業が進まない。最初のころは私のクラスの担任が止めに入ったりしていたのにある時を境にまたか、の一言で済ますようになってしまった。なんでかと思って担任のログを見たら魔法使い達によって思考誘導されていた。
再び魔法使い達に恐怖すると共に魔法使い達の考えている事が分からない。なぜあのクラスだけ特別扱いするのだろうか。周りの事も考えずに騒ぎ立てる生徒を止めもせず放置に近い事を何故しているのか。
その理由は1年後、私が中学二年生になった時に判明した。なぜあのクラスだけを特別扱いしていたのかが。
その理由は私が中学二年生となった時にA組に来た新しい担任だった。
私が二年生になった時にA組に来た新しい担任。それは10歳の男の子だった。本名ネギ・スプリングフィールド。イギリスの田舎育ちの魔法使い見習い。本当に魔法使いと言う人種は一体何を考えて幼い子供をあの魔境の担任にしたのか?
あの幼い子供があの魔境の担任になった理由は有る意味簡単な理由だった。彼の父親ナギ・スプリングフィールドがどうやら魔法世界で起きた戦争の英雄だったらしく英雄の息子も英雄であるべき、というくだらない理由であの子供はこの学園で教師をさせられる事となったのだ。
そんな理由で教師をさせられるあの子供もA組の生徒もご愁傷様である。
もともとが騒がしかったあの魔境のクラスにあんな子供先生を投入したらどうなるか?火を見るより明らかである。さらに騒がしくなった。
ほんの数週間で軽くログを見てみただけで惚れ薬や魔法バレ、特定の生徒だけでの勉強合宿(その間他の生徒は放置)オコジョ妖精とか言う生き物による仮契約騒動等など……。
数えだしたらきりが無い。魔法の秘匿とは一体……。
そんななか学園には大停電の時期がやってきた。この学園は電気を自前の施設で補っているのだがその施設の総点検が行われる故にその間は停電となるのだか、どうやらその停電の間に以前見た吸血鬼の子が行動を起こすようだ。
どうやら吸血鬼の子、マクダウェルさんは子供先生の親に登校地獄とか言う呪いを無理やり掛けられたらしく15年も中学生生活を繰り返しているらしい。掛けられた呪いを“視て”みたが大小様々な縄?のように見えるものが複雑に絡み合ってこんがらがっていた。掛けられた時のログを見てみるとどうやら子供先生の親は魔力に物を言わせて無理やりかけたようで術式がめちゃくちゃになってしまったようで正規の解き方ができなくなってしまっているようだった。ご愁傷様である。
あれこれ言ったが本物の吸血鬼が起こす行動にただ“視る”だけしかできない私が介入できる訳も無いしする気も無いので大停電の日は大人しく部屋の中で大人しくしていた。
で次の日、こっそりとログを覗き見してみたらなんと子供先生が勝ったらしい。いや勝たせてもらった、と言うのが正しいか?
大停電が終った後は修学旅行が近づいてきた。私のクラスが行くのはハワイに決まった。一票差で京都が負けた。私としては国外よりも国内の方が良かったのだが……と思っていたがやっぱり国外が良いよね。ハワイなんて早々いけないし。うん、修学旅行の先にまで魔境クラスと係わり合いになんてなりたくないしね。
ハワイ楽しかったよハワイ。何所までも青い空と海に白い砂浜。普段の心がけなんて無視してはしゃいじゃった。だってハワイだよ!!ハワイ!!
とまあ、はしゃいで楽しんでお土産もいっぱい買って学園に戻ってきたら、子供先生の
確かログで確認した限りでは契約方法は魔方陣の上でキスをするはずだった。つまり子供先生は複数の教え子とキスをしたという事で……。
私も子供先生には気をつけよう。
子供先生に近寄らないように生活を送っていたある雨の強い日。私が生活している女子学園寮に悪魔が侵入してきた。なぜ分かったかと言うと私は定期的に“学園寮”の“入出記録”をログで確認しているからだ。いかに魔法を使いばれない様に進入したとしてもばれないのは中で生活している生徒であり“学園寮”に入ったことには代わりが無い。
そして私は無機物有機物関係無しにあらゆる物の情報が“視える”のだ。だから学園寮の入出記録を“視”れば誰が何時何人入ったかなんて筒抜けである。
侵入してきた悪魔達が向かったのは大浴場だった。悪魔達の学園寮内での行動履歴を見ると大浴場内に居たA組の生徒を数名さらって出て行った。
私はどうするべきか。悪魔に人がさらわれたことを今現在知っているのは私だけ。だが、私自身は裏の世界の事を知っているだけの一般人に過ぎない。それに私はこの寮に居る裏の関係者の事を知っているが向こうは私の事は知らないのだ。
そんな中私が「悪魔が進入してA組の人をさらっていきましたよ」なんて言えるわけも無い。
どうしようかと考えたが、結局見なかった事にした。薄情かも知れないが知ったことではない。私は魔法使いと係わり合いになりたくないしなろうとも思わない。それにさらわれた生徒は皆子供先生の関係者だ。
なら彼女達がどうなろうと子供先生、ひいてはその上の魔法使い達の責任である。私には関係ないのだ。
結局の所、さらわれた彼女達は無事に戻ってきた。さらわれた結果裏の事情を知った人も出てきたようだがまあ自己責任なので知ったことではない。裏の世界をしってどうなろうと私には関係ない。
悪魔襲撃事件が終わり間を挟んで学園祭の季節になった。私のクラスの出し物はもめる事も無く決まり特に問題なく進んでいったのだが隣のA組は相変わらず騒がしい。期限ギリギリまで何も決まっていないとは……。
それはともかく私のクラスの出し物の準備は問題なく進み学園祭当日を迎えた。私は空いた時間を使って屋台をめぐっていた。こう見えて私は美味しいものに眼が無いのだ。
そうやってお小遣いの許す範囲でいろいろ買っていたらなにやら騒がしくなってきた。いや元々騒がしかったのだが一層騒がしくなってきた。何が起きたのかと周りの人のログを“視”て見たらなにやら武道大会が開かれるとの事。優勝賞金1000万で。
学生主体の学園祭のだす金額ではない。まあ、金額に惹かれるものはあったが武道大会の時点で私が出られるはずも無くすぐに忘れる事にした。その後も私は屋台を回り色んな食べ物を食べ歩き学園祭を楽しんだ。
途中途中で魔法使いが慌しくしていたのが気になったが初日に“視”た魔法使いがこの時期はいつも以上に忙しくなるから大変だ、と考えていたのを“視”ていたので警備ご苦労様、と思うだけでその後、一度も魔法使いのログを確認していなかった。
その結果、私は、いや
学園祭最終日。私は連日の食べ歩きのせいかお腹を壊してしまい寮内で伏せていた。お腹を押さえ唸っていると急に窓から光が差し込んだ。お腹を押さえながら窓の外を見てみるとそこには眩い光を放つ世界樹が。
慌てて世界樹から放たれる光の情報を“視”て見た結果、驚愕した。世界樹から溢れ出る光の正体は強制認識魔法の光。内容は“世界中の人が魔法を認識する”という馬鹿げた無いようだった。
こんな事を実行した人物は頭がイかれている!!魔法が何故秘匿されているのかを分かっていないのか!?私は痛むお腹を押さえながら寮から抜け出した。目指すのは子供先生。
なぜならばここ最近の物事の中心には常に子供先生が存在していた。ならば今回の出来事にもなにかしら関与しているはず。ならそこからログを“視”て、“視”て……どうするっていうの。
急に走り出したせいでさらに痛くなったお腹を押さえ私は座り込む。
私は一体何をしようとした?私は裏の世界とは関わらないように決めていたはずだ。いまさら子供先生のログを視て情報を得たとしてどうするのだ。情報を得たところでどうにもできないじゃないか。私は“視”えるだけの一般人じゃないか。主人公でもヒロインでも主要人物でもない。ただ“視”ているだけの人間じゃないか。
そんな人間が今更何を言ったってどうしようもないじゃないか。私はただ“視”てるだけ、傍観しているだけの人間じゃないか。
お腹を押さえゆっくりと立ち上がりもう一度輝く世界樹を“視”る。
「そう、私は“視”てるだけ」
痛むお腹を押さえながらゆっくりと寮に戻っていく。周りの人たちは頭の中に入ってくる魔法と言う言葉に混乱していたが、私はそんな人々を“視”ながら寮に戻り倒れこむように意識を失った。
強制認識魔法が発動した後、世界中が混乱した。魔法という御伽噺の力が実際に存在すると認識してしまったのだ。世界各国が一同に魔法使いを探し出し、世界各国に存在している大小様々な裏の組織を探し出した。それはまるで中世の魔女狩りを彷彿させる光景だった。
そんな混迷を極める中、子供先生は失踪していた。
いや失踪ではない。正確には
子供先生は未来を変えるために過去に戻ったようだが、今更である。この世界はもう魔法がばれてしまっているのだ。
過去を変えたところで結局この世界とは別の“魔法がばれなかった世界”が生まれるだけで私が今いる世界が変わるわけではない。
主役が消えた世界がどうなるかなんて誰にも分からないけど私はそれでも“視”てるだけ。
だって、私は傍観少女だから。
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傍観少女は“視”てるだけ IF
「また後でね、木乃香」
「また後でな~、明日菜」
今私の目の前で別れの挨拶を交わした2人、神楽坂明日菜と近衛木乃香。私の通う麻帆良学園2年A組に通う生徒である。
一見極々普通の一般人の二人組みに見えるのだが、実際は違う。神楽坂の方は本名はアスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシアと無駄に長い名前でしかも地球生まれではなく魔法世界と言われる別世界の生まれでさらに魔法世界のとある国の王族である。
今は2年A組の担任であったタカミチ・T・高畑の手によって王族だった頃の記憶を封印されておりその副作用か頭が悪くなっているようだ。
もう一人の近衛木乃香と言うとこちらは日本生まれの日本育ちであるがその体には洒落にもできないほどの魔力を秘めて居るのだが当の本人はそのことを知らないようだ。下手に魔力を暴走させてしまったらこの校舎ごとき簡単に吹き飛ばせられるというのにのんきな事だ。
本当に、のんきな事だ……。
「……こんばんわ」
そんな事を思っていると私の前に一人の女性があわられた。
名前は絡繰 茶々丸といい、女性、というよりも女性型アンドロイドというのが正しいのだがこの町、麻帆良では誰も疑問に思うことは無い。
彼女とは彼女の主人を通じて知り合った。
「先日は手伝っていただきありがとうございます」
「お礼を言われるほどのことはしていないです」
彼女とは街中で出会った時に彼女の手伝いをたまにしているだけの関係である。傍から見れば、だが。
「では、これで……」
一言二言しゃべった後彼女と別れる。
(今日の訓練は術式の簡略化と実践訓練、か……)
彼女から話しかけてくる時、それは今日の訓練内容を伝えるためである。なぜそんな事を私が知りえたかといえば私の持つ能力が原因になる。
私には“視”えるのだ。無機物有機物関係無しに私が眼で“見て”対象の事を“視たい”と思えば本名から始まり年齢性別種族に職業、得意な事苦手な事趣味性癖等など……。
もっと詳しく視ようとすれば対象が生まれた時から今に至るまでのあらゆる行動だってログとして視ることだってできる。
この能力を使い、彼女の主人が彼女に言った事をログとして“視”たのだ。
この方法を使うことによってたとえ魔法使いだとしても私と彼女のやり取りはただの会話としか見られる事は無いのである。
なぜ私がこんなやり取りをしているかといえばすべての原因は未来にある。
未来と繋がった世界樹を通じて“視”てしまった
小学生最後の年の学園祭。私はそこで世界樹からおかしなログを“視”てしまった。今思えばこの時から私の世界は分岐してしまったのだろう。
私が知ってしまったログ。それは今から二年後、中学二年の私自身のログであった。そのログには二年後に起こる一連の騒動が書かれていた。英雄の子の来日。その日から起こる魔法が絡んだ事件、最後に起こった世界樹を使った強制認識魔法の発動。そして消失した英雄の子が原因で始まる
私は恐怖した。ただでさえ一度記憶を書き換えられたせいで魔法使いに険悪感を持っているのにその魔法使いたちのせいで世界と世界という大戦争に発展するのだ。
そんな未来を知った私は考えた。このまま傍観を続けるのかどうかを。
このまま傍観を続ければきっと私が視た未来につながっていくだろう。だけどそれでいいのだろうか?私一人が何かした所で未来が変わるとは思っていない。でもあの未来を迎えるのならば私のこの能力以外の力がないといけない。そうでなければあの未来では生きていけない。
この麻帆良は未来では戦争の最前線になるのだから。
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エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル
この名前は裏の世界において特別な意味を持つ。それは「闇の福音」「人形使い」「不死の魔法使い」と様々な忌み名を持つ悪の魔法使いにて真祖の吸血鬼である。
かつては裏の世界で悪名を轟かせていたが英雄ナギ・スプリングフィールドによって退治されその存在は過去の物となった。
だが彼女は生きていた。麻帆良の土地に「登校地獄」という呪いを掛けられ縛り付けられていた。
「マスター、今回の修行に使う道具はすべて用意が出来ました」
「そうか」
学園の女子寮から離れた場所にひっそりと佇むログハウスに彼女は住んでいた。
「……さて、今回の修行で奴はどこまでいけるかな」
室内に置かれた細かな細工を施されたソファに座る10歳ほどの少女。彼女こそかつて裏世界で恐怖の代名詞とまで言われた真祖の吸血鬼、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルその人である。
「ここ最近、楽しそうですねマスター」
「クク、楽しそうに見えるか?」
「はい」
彼女の従者である茶々丸の言葉に楽しげに表情を歪る。自分の弟子と出会った日を思い出して。
初めて二人が出会ったのは何回目かの中学の入学式がが終わって数日した夜間警備が非番の日であった。
その日、彼女は久しぶりの非番という事でゆっくりと過ごそうと考えていたのだが従者が持ってきたある手紙が彼女の予定を変える事となった。
「私に、手紙だと?」
「はい」
従者から渡されたのは無地の封筒に入った手紙である。
「誰からだ?」
「……分かりません」
「何だと」
従者となってまだ日は浅いが冗談や無駄な事をするような性格ではないと分かっている彼女は困惑する。
「誰だか知らない奴からの手紙など捨ててしまえ。私に名を言えん時点で取るに足らん」
手紙を投げ返そうとするが従者の言葉でその手を止めた。
「ですが裏側に書かれた言葉は無視できないと思いますが」
「裏側だと」
投げ返そうとした手を止めて封筒を裏返す。そこには小さな字でこう書かれていた。
「 678年を生きた
エヴァンジェリン・アタナシア・キティ・マクダウェル
あなたの秘密を知る者より 」
言葉が出なかった。
彼女が何年生きたのかは彼女自身もあやふやで、ミドルネームを知っているのは限られた数人しかおらず、その数人はこんな手紙はよこさない。
そして何よりも彼女が人造の吸血鬼であることを知っているのは彼女と彼女が殺した人物だけのはずである。
「これ、は……」
彼女は手早く封筒に仕掛けが無いかを魔法で調べ、問題が無いことを確認した後慎重に封筒を開けて中の手紙を読み始めた。
数分の間真剣な表情で読み続け、読み終わった後その手紙を燃やした。
「ク、ククッ……」
「……マスター?」
「クククッ、アーーハッハッハッハッハ!!」
しばらく笑い続けた後、彼女は言う。
「茶々丸出かける準備をしろ」
「……分かりました」
「今夜は楽しい事になりそうだ」
楽しげな表情を浮かべて彼女は思う。この退屈な日常がどう変わるのかを。
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傍観少女は“視”てるだけ IF2
今回のお話で彼女がある種チートになる(最強とは言ってない)
「ミニステル・マギ、ですか?」
とある日の夜、私は師匠であるエヴァにある提案を受けました。
私がエヴァの弟子となり早数ヶ月がたち、”前回”の経験も合わさり並みの魔法使いよりは強くなり、今は格上との実戦形式の戦いを主にしています。
数ヶ月とはいえ実際はエヴァの持つマジックアイテムのひとつで外の一時間が中の一日になる特別な空間になっている別荘(名前を"EVANGELINE'S RESORT"という物)を使っているので実際はもう一年近くはたっています。
「そうだ。お前の能力ですでに知っているだろうが、一種の主従契約という奴だ。”前回”のお前は契約はしていなかっただろう?」
その日もいつも通りに実戦訓練を終えて反省点を”視”ながら考えているとエヴァにそう話を持ちかけられました。
「急にどうしたんです?」
「なに、ただ気になっただけだ。貴様が契約したときに手に入れるアーティファクトがな」
不敵に笑いながら話すエヴァの姿は幼い姿ながらも長い年月を生きた所為なのかどこか神秘的な雰囲気を纏っています。ただ……
(そろそろ私の弟子になって一年経つし何かプレゼントをあげないとな。でもそこらのマジックアイテムでは一周年のプレゼントにしては印象が薄いしなぁ。何かこうあいつの記憶に一生記憶に残るような物がいい……そうだ、ミニステル・マギだ!!私を主人としてあいつを配下に契約をしよう。これなら一周年の記念にもなるし、私とあいつ確固とした繋がりも出来るし。)
と、見た目は悪の魔法使いといった表情なのだが中身はなんと言うかかわいらしい考え方をしているのが私の師匠であるエヴァの姿である。
私が微笑ましい視線をしているのに気が付いたエヴァはカッと顔を赤らめさせる。かわいい。
「……フン、どうせ”視て”いるんだろう。ならさっさと来い。もう準備はしてある」
駆けるように移動してしまったエヴァに私は笑いながら後を追いかける。
そうして私はエヴァと契約を結びミニステル・マギとなり、パクティオーカードとアーティファクトを手に入れた。
カードには目を閉じた私の背後に無数の老若男女の仮面を被った悪魔と、三神の女神が書かれたカードで悪魔の方がソロモン72柱の悪魔、あらゆる秘密や、過去と未来の事柄が記されている本を持つというダンダリアンであり、女神の方が北欧神話にて過去・現在・未来を司る、ウルド、ヴェルダンディー、スクルドの三神でした。
エヴァ曰く「カードに描かれる絵は本人の本質を表す」と言われましたが、どういう事なんでしょうか?
そして、このカードによって手に入れた私のアーティファクトは「文官の隻眼」と言うモノクル型のアーティファクトでエヴァ曰く「一部の職業には人気だが基本ハズレだ」と言われるものでした。
その効果は『モノクル越しに見た物に文章を書く、ないしは書きかえれる』と言う、確かに文章を書く文官や事務職の人達には人気そうですがそれ以外ではハズレといわれる性能でした。
ですが、このアーティファクトは私にとってはチートアイテムだったのです。
このアーティファクトを装備した状態でエヴァと模擬戦をした所、初めてエヴァに完封勝利をすることができました。
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某月某日。
麻帆良学園の駅に一人少年が降り立った。
「ここが麻帆良学園かぁ……」
年は10歳程なのだがスーツ姿に”身の丈を越す杖”を持っているのだが、周りの生徒たちは
「ここで最終課題をこなして、僕も
ぐっと両手を握り締めて気合を入れる姿は容姿と相まって周りから微笑ましい表情で見られているが本人は気が付いていない。
「……あれ?」
気合を入れている中、少年はふと顔を動かしまわりを見渡す。
「誰かが僕の事見ていたような……」
周りをきょろきょろと見渡すも、周りにいるのは登校中の学生だけである。
「まあ、気のせいかな?【僕を知っている人なんていないはずだし】……ん?何で知っている人がいないんだっけ……」
自分自身が考えた事に疑問を感じたその時、少年を呼ぶ声が聞こえその後の騒動によって少年は自信が感じた疑問の事を忘れてしまった。
「……」
そんな少年を見つめる少女がいた。
少女の目は濁り、暗く、澱んでいた。
「あれが、”この世界”のネギ・スプリングフィールド……」
少年が起こす騒動を見ながら、呟く。
「「引き金を止めれなかった英雄の子」か……”今回”がどうなるかは分からない。でも私は生き残る。そして”視”てあげる。貴方の事を……」
これが後に始まる世界と世界の大戦争「魔法異界戦争」と呼ばれる戦争の切欠の日であり、少年と少女の奇妙な繋がりの始まりの日であった。
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傍観少女は“視”てるだけ IF3
ネギ・スプリングフィールドがこの麻帆良学園に来てはや一週間。
今の内に暗殺した方がいいんじゃないかと過激な思考に陥っている私がいた。
「おい、何だその顔は」
「なんですか急に?」
今日も学園の監視網をすり抜けてエヴァの家で実戦練習を始めようとした時、エヴァにそういわれました。
「目が澱んでいるぞ。まるでゾンビだ」
私がどうしてそうなっているのか分かっているはずのエヴァがそんな事を言うと言うことは私の顔は随分とひどい事になっているみたい。
「……137回」
「うん?」
「ネギ・スプリングフィールドがこの学園に来てから使った魔法の回数です」
「一週間ぐらいでそれなら少ない方じゃないのか?」
確かにこの学園にいる魔法使いが一週間で使う魔法の回数としては少ない方です。ただし、
「後処理していない回数も同じでもですか」
「なん……だと……」
普通の魔法使いなら夜間の警備の時ならばともかく日常で魔法を使うなら必ず一般人に魔法を知られないようにするのが常識なのですがあの少年は違うのです。
ごく普通に日常生活で魔法を使いそれの後処理をしていないのです。
「そんな事していたらすぐに魔法がばれてオコジョの刑だぞ」
「普通の魔法使いの子供ならそうですね」
「……英雄の子、か」
そう、あの少年は魔法世界の英雄、ナギ・スプリングフィールドの息子だから特別扱いされているのです。本当にくだらない。
「彼の後処理専用の魔法使いもいますから本当にいい身分ですね」
「ここの魔法使いたちはナギの事をある種崇拝しているがそこまでか……」
ナギ・スプリングフィールドはかつて魔法世界であった大戦を終わらせた英雄として語られていますが、それはあくまで結果として戦争を終わらせただけであってその過程で何十何百何千と人を殺したのは変わりません。
「だから、魔法使いは嫌いなんです」
「……そう、か」
そう、だから私は魔法使いが嫌いだ。
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「ここが桜通りかぁ。夜だけど綺麗な所だな」
僕は今、深夜の桜通りに来ている。
この学園に来て一週間がたったけど先生として一生懸命がんばってるけどやっぱり初めての事がいっぱいでなかなかうまく行かない事や失敗することもある。
でも立派な魔法使いになるためにがんばらないと。
そんな僕が何でこの桜通りに来ているのかというと今日僕のカバンの中にいつの間にか一通の手紙が入っていてその中にはこう書かれていた。
『今日の深夜、桜通りにて待つ。一人で来なければ貴様が持つ秘密をばらす』
僕の持つ秘密と言われたら魔法の事だ。一体誰がこんな手紙を入れたのかは分からないけどもしこの手紙に書かれている事が本当だったら僕が魔法使いだって事がばれてしまう。そうなったら僕はオコジョの刑になっちゃう!!
だから深夜の桜通りにひとりで来たんだ。
「それにしても一体どこにいるんだろう?暗くてよく見えないのに……」
「ちゃんと一人で来た様じゃないか、ぼうや」
「エ、エヴァンジェリンさんと茶々丸さん?どうしてここに?」
「ククク……分からないのか?」
クスクスと笑うエヴァンジェリンさんを見て僕は思いつく。でもまさかそんな事って……
「あの手紙はまさか貴女が書いたんですか?」
「その通りさ。あの手紙は私が書いたんだよ」
「じゃあ、まさか貴女も」
「坊やが思っている通り、私も魔法使いだ……ただし『悪』のな」
僕は驚きで声が出ませんでした。僕の卒業課題として受け持ったクラスの生徒の一人が僕と同じ魔法使いでしかも悪の魔法使いだったかなんて。
「悪の魔法使いって、そんな魔法は正しい事に使わないといけないのに」
「正しい事、か……くだらん、くだらんなぼうや。いかにも世の中の事を知らない子供が言うような言葉だ」
「こ、子供って貴女も子供じゃないですか!!」
「見た目は確かに子供だ。だが少なくとも魔法使いとしては私は大人だよ」
ニヤニヤと笑い僕を見下すような視線で語るエヴァンジェリンさんに反論しよう口を開くが、それよりも先にエヴァンジェリンさんが話を切り出した。
「私が魔法をどう使おうと私の勝手だがまあいい。それよりもなぜ私が態々こんな手間のかかる事をしてぼうやを呼んだか分かるか?」
「……いえ」
「なに、話としては簡単な事だ。ぼうや、私と決闘しろ」
「……え?決闘って戦うって事ですか?」
「そうさぼうや。魔法使いとしての決闘だ。無論タダではない。ぼうやが私に勝ったら褒美をやろう」
「褒美?」
「……ナギ・スプリングフィールドの情報だ」
「!!」
僕の父さんの情報!?
「父さんの情報って、一体どんなことなんですか!!」
「戦ってもいないぼうやに教えるわけ無いだろう?情報が欲しいなら私と戦って勝つことだな」
「なら、戦います。戦って貴女に勝って父さんの情報を貰います」
「クク……では私と決闘すると言うことでいいんだな?」
「いいです!!」
この時の僕はまだ知らなかったんだ。父さんの情報と言う言葉に踊らされてエヴェンジェリンさんの決闘と言う言葉の意味も、魔法使い同士が戦うと言うことも、そしてこれから起きるすべての事が一人の少女によって仕組まれていると言うことも。
「では、戦いの日は次の大停電の日だ。それまでしっかりと準備をしておくんだな。行くぞ茶々丸」
「はい、マスター。ではネギ先生失礼します」
それだけ言ってエヴァンジェリンさんと茶々丸さんは僕の横を歩いて通りすぎていった。その姿を僕は睨み付けながら見ていた。僕の心の中は不自然なほどの強烈な【憎しみ】と【怒り】で埋め尽くされていたから。
もしこの時の顔を見ることが出来たならきっと僕は驚いただろう。
僕の顔はまるで殺人鬼のように歪んでいたんだから。
「ああ、言い忘れていたがこの事は誰にも言うんじゃないぞ。誰かにばらしたらナギの情報は教えんからな」
「分かっています!!誰にも言いません」
「いい返事だ。それと最後にもう一つ。決闘でぼうやが負けたら……」
「負けたら?」
「ぼうやの血を貰おう」
「血、ってなんで僕の血を?」
「何簡単なことだよ」
エヴァンジェリンさんは顔だけをこちらに向けて言った。
「私が吸血鬼だからだよ」
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傍観少女は“視”てるだけ IF4
作者も覚えていないあやふや設定&時間軸&人物設定
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失敗した 失敗した 失敗した
私は失敗してしまった。
魔法大戦を引き起こす原因になったネギスプリングフィールドに、その師匠となるエヴァンジェリンに私は干渉した。
だがそれがいけなかった。
私が干渉した結果 ネギスプリングフィールドは本来たどるはずだった道筋をそれまったくちがう結果を引き起こしてしまった。
本来ならば仮契約を神楽坂明日菜と行ってから戦うはずであった、 エヴァンジェリンとの戦いをたった一人で挑みさらに負けてしまったのだ。
この戦いの末に二人は師弟の関係になるはずがそうはならず、呪いをかけた血縁者の血という登校地獄を解除するための触媒を手に入れるために、彼女は彼の血を干からびる手前まで吸ってしまった。ゆえに彼は心が折れてしまった。
英雄の息子、魔法の天才などといわれてもまだ10歳にもならない子供だ。
本物の実戦を経験した直後に死を実感するほどまでに血を吸われればたとえ天才とうたわれ様とも耐えれるようなことではない。
ましてやこの学園に来るまで彼は失敗らしい失敗を経験していない。それが拍車をかけた。
この事件に学園側の魔法使いたちは当然のように怒り学園所属の魔法使い総出で彼女を討伐に赴くこととなった。学園長や彼の父親と知り合いであったタカミチ先生は止めようとしたようだが正義という言葉に染まった、いや狂ったといっていい魔法使いたちは止まらなかった。
だが相手は600年以上を生きた吸血鬼で高額の賞金首でもあった彼女である。学園で戦いを経験しているとはいえ彼女から見れば一山いくらの雑魚といっていい存在だ。さらに長年彼女を苦しめていた登校地獄を解除した直後で鬱憤を晴らすように魔法使いたちを蹴散らしていった。
これには学園長も隠蔽できることではなく、さらにこの出来事が外部に漏れ麻帆良学園に多くの侵入者や襲撃者が襲来しそれらから学園を守るはずの魔法使いたちが軒並み戦闘不能になっていたため麻帆良学園は襲撃者の手により陥落した。
学園長は彼女に学園を守るように頼んだようだがそれを彼女が聞き入れるよりも前に襲撃者が来てしまい混乱の中で彼女も戦ったようだが守りきれなかった。
そしてその戦闘で学園で生活している一般の生徒や職員たちの住民に魔法という存在がばれてしまった。
そこからは私がかつて視たログの結末をたどるように世界は進んでいく。
魔法という空想で未知の技術が世界中に拡散されそこから始まる魔女狩り、魔法使いたちの迫害、それらを止める為という名目で魔法世界から侵略してくる魔法使いたちや亜人たち。
そして私たちが居る世界と魔法使いたちが居る世界と世界の戦争、魔法大戦の勃発。
私はそれらを彼女のそばで視続けた。私が干渉してしまった結果が魔法大戦を早めてしまったのだ。
彼女は私のせいではないと言ってくれたがそうとは思わない。
少なくとも私があの時に干渉をしなければ、魔法使いである彼や彼女に関わらなければこんな結末には成らなかったはずだ。少なくともここまで早くに魔法大戦が始まりはしなかったはずだ。
だから私はこの記憶と感情を、彼女と過ごした時間で得た技術や経験を
この世界での私は失敗してしまった。だけどこのログを過去の私に伝えれば、この失敗はしないはず。
過去の私。傍観していただけの少女。このログを視て何を思うかは分からない。でも今の私は自分自身の意思で魔法とかかわりを持った。
傍観していただけの少女ではもう居られない。たとえこのログを無視したとしても待っているのは戦争という結末だけ。
どうか私と同じ結末を迎えないように。私とはちがう結末を迎えれますように……
____________________________
「……覚悟は決まったのか?」
過去に麻帆良学園と呼ばれ、現在は魔法世界から来た魔法使いたちの前線基地となった場所から少し離れた森の中。警戒網ギリギリの場所に彼女たちは居た。
「はい……ここまでありがとうございました。マスター」
「考え直すことは出来ないんだな」
「……はい。これはやらなくてはいけない事なんです」
無表情でうなずく女性。魔法大戦の中マスターであるエヴァと共に死線を潜り抜けた少女は大人となっていた。その身には服では隠しきれないほどの大小さまざまな傷が無数に存在し傷が無ければ美女といって間違いは無かったであろう。
能力を使えば傷跡など残ることは無かったのに女性はそれをしなかった。未熟で、無知で、魔法を、戦いを、戦争を、表面でしか知らなかった自分自身への戒めとして残したのだ。
「この数年、お前には私が教えれることはすべて教えた。その能力も合わせれば一流といわれる魔法使いと戦ったとしても勝てるだろう。だがそれだけだ。この先にある前線基地、その最深部にある世界樹にたどり着けるかは分からないぞ」
怒りを隠すような声で女性に話すのはかつて闇の祝福といわれた吸血鬼
「それでもです。それでも私は向かわないといけない。今回の世界樹の発光を逃せば次がいつになるかは分かりません。だからいかなければいけないのです。過去の私のために」
「過去の自分の為に今の自分が死んでもいいというのか!!」
胸倉を掴み怒鳴るエヴァ。
「お前は私をあの牢獄から解放し、吸血鬼という呪いからも解き放ってくれた……恩人なんだ。それを、それなのにお前は私を残して死ににいくというのか!!」
怒りながら、怒鳴りながらもその声には悲しみしかない。そんなエヴァを抱きしめる。
「私は恩人なんかじゃありません。私のせいでマスターが本来たどるべき道筋を歪めて「本来の道筋なんて関係ない!!今、ここに居る私が、お前を恩人だといっているんだ!!」……」
「ごめんなさいマスター……いいえエヴァンジェリン。そう言ってくれて救われました」
泣いているエヴァにぎこちないながらも笑顔でそう伝えゆっくりとエヴァを離す。
「……茶々丸さん。エヴァをお願いしますね」
「……はい」
離れた場所で隠れながら見守っていた茶々丸にエヴァを任せ彼女は一人世界樹に向かっていく。
「 」
エヴァが彼女の名前を呼ぶ。
「過去のお前に伝えておけ!!必ず私を頼れと!!私はどんな時でもお前の味方になると!!」
女性は一度だけ振り向き頷く。それと同時にエヴァの思考が
(ありがとうエヴァ。たった一人の私のマスター)
「……ッ」
その後、一時間と立たない内に前線基地で警報音と爆音が鳴り響きそれと同じくして世界樹が過去類を見ないほどの発光現象を起こし、それと同時にエヴァの持つ彼女の仮契約のカードが消滅。エヴァはそれを見届けるとその場から立ち去った。
この先の未来は彼女のログには存在しない。
____________________________
「受け取ったよ、私」
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ハイスクールD×Dシリーズ
IF ミク魔がハイスクールD×Dの世界だったら
いろいろおかしなところがありますがそこはご都合主義でお願いします。
21世紀、世界からは神秘は失われていた。かつては神が起こしたとされる地震や火山の噴火は科学の進歩とともにその原理を解明されただの自然現象に落とされ、夜の闇に潜む怪異は科学の光とともに照らされて消えていった。人は神秘を失う代わりに科学という新しい力を手にして文明を発展させていった。
だが、それはあくまでも人の、人類の視点からでありそれ以外の視点から見ればまったく違っていた。
この世界には悪魔が、天使が、堕天使が、人ならざる種族が存在していた。それらは表世界に出てくることはなく裏の世界で跋扈し、活動していった。裏の世界では幻想があふれ、魔法が存在し、神秘は失われていなかった。
しかし、かつて悪魔と天使と堕天使の三勢力が勢力争いを行い戦争を起こし、三勢力は疲弊していた。そんな中でさらに人々は神秘を忘れていった。
それは神秘は所詮幻想であるという思いが世界中にあふれていったかだ。ゆえに信仰を得れなくなっていった神々は力を失いその姿を隠すか、力をなくしていった。
神々の力、それ即ち信仰である。
いかに力強き神といえどその姿を、力を認識されなければそれは存在しないと同意義であるからだ。そしてそんな神々より下の存在である天使や堕天使、魔王を失った悪魔達も総じてかつて神秘があふれていた時代に比べてはるかに力を落としていた……。
ただし、日本は除く。
この世界において日本という国は表と裏、両方で特異な存在となっていた。
まず表であるが、21世紀なってなおこの日本では神秘が、信仰が失われていなかった。その原因は聖地にある御神木の存在である。
この御神木は樹暦3000年を越すといわれその大きさは山よりも大きく、その姿は遠く離れた場所からも見ることが出来るほどであった。この聖地に存在する御神木は日本で最大の信仰を得ており歴代の天皇もこの御神木から信託を受けたということは歴史の教科書に必ず載っているほどである。
そんな御神木がある聖地は限られた者たち以外は入ることは許されずたとえ他国の大統領や王族であろうと入ることは許されなく許可なく進入したものは問答無用で射殺されるというほどである。しかもこれは日本の法にも記載されているという徹底振りである。
ゆえに日本に入国した際必ず言われるのは「聖地に進入するべからず」の言葉が言われるほどである。
目に見える巨大な御神木という神秘があるゆえに日本人はその御神木を日ノ本の神々が住まう地としてはるか昔から信仰してきた。それは子供のころ親に子守唄の代わりに御神木の逸話を話して聞かせるほどである。
さらにこの日本、日本という国が出来た当初から”戦争を行ったことが無い”のである。
国の中での戦はあったが、他国との戦争はしたことは一度も無いのである。ただし防衛戦は多々あったが。
かつてあった侵略戦争で日本はただの一度も他国からの上陸を許したことは無かった。戦艦の尽くを海に沈め侵攻してくる敵に対しては一切の慈悲無く、一兵卒ですら最後の一人になるまで戦い続けるその姿に敵国の尽くが恐怖したという。
さらに奇怪なことに日本に侵攻した軍隊のうち無事にたどり着けるのは全体の6~7割しかいなかったのだ。日本に侵攻すると必ずといっていいほど海は荒れ暴風が吹き荒れ兵の中に病気が蔓延するのである。それがすべての侵攻作戦で起こりそんな士気が低下した中で異常なほどに士気が高く練度が高い日本兵を相手に戦い続けられるわけも無く大体の国は数回の侵略で大抵は諦めるのである。
そして日本に対して侵略戦争を起こすことが無くなる切欠となった事件がある。
それは侵攻しようとしたとある国が侵略を宣言した直後、それを決定した指導者と、その派閥の重鎮たちが同時に心臓発作で亡くなるという怪奇事件が起きたことである。心臓発作を起こした中には病気などしたことの無い現役の軍人もいたのに原因不明の心臓発作で亡くなったのである。
この事件を切欠に日本に対して侵攻をしようとする国は無くなり無敗のまま日本の軍人は日本を守りきったのであった。
では裏の日本はどうかというと、裏の世界での日本は完全な中立国となっていた。
神秘と信仰が失われていくなか裏の日本は、そんなこと知ったことか、と言わんばかりに神秘と信仰を保っていた。裏の日本では神秘が保たれ、信仰が失われず、幻想にあふれていた。日本生まれの妖怪は活気にあふれそれを見守る八百万の神々が力を保ったまま存在する場所。それが裏の世界での日本だった。
現代においても信仰を集める神々がいる日本。そんな日本だから裏世界の日本においても簡単に多種族が進入することは出来ず、北海道、京都、九州の三箇所に作られた裏世界の空港と言える場所から正規の手順を踏んでしか日本に入ることは出来なかった。
不法侵入すれば、どういう仕組みかは不明だが即座に進入が発覚し捕縛される。しかも捕縛に来るのは多種族では最上級クラスの力を持った妖怪とそれらをはるかに上回る力を持つ神々が師団単位で襲い掛かってくるのだ。自殺志望か無知の馬鹿以外で不法侵入しようとするものはまずいないと言っていいだろう。
さらに正規の手順で入ってもいろいろと規則があり、特に破った場合厳しい罰が下るのが日本人に対して害を与える行為である。
これはやむおえない場合の記憶操作や特殊な場合を除いてほぼすべての行為に対してであり特に悪魔の中で作られた「悪魔の駒」と呼ばれる多種族を悪魔に転生させる道具があるのだが、これを日本人に使用した場合ごく特殊な場合を除いて使用した悪魔は完全消滅される。日本神話に出てくる宝具を使用した上位の神々がガチで攻撃してくるのである。たとえ使用した悪魔が純潔であろうと現魔王の親族であろうと一切関係なく襲い掛かってくるのである。
かつて悪魔の純潔種で貴族だった男が隠れて神器持ちだった日本人に対して「悪魔の駒」を使用して転生悪魔にしたことがあった。
この時、貴族の男は純潔種たる自分を殺せば国際問題になるから殺されることは無いだろうと、たかを括っていたが、そんなことは無く「悪魔の駒」を使用してから1時間とたたずにガチ装備の神々に包囲され、高天原に強制連行されそこで地獄の拷問すら生ぬるい拷問に掛けられ魂ごと消滅させられた。
無論、この事にその悪魔の親族や現魔王が抗議をしてきたが八百万の神々は聞きもせずに入国時に散々注意した規則を守らない悪魔が悪いと反論。あわや戦争に発展しかけたのだが、抗議した悪魔の不祥事が突如として発覚した。しかも悪魔社会において死罪が確定するような犯罪ばかりが、である。
さらにこの不祥事は悪魔社会のみならず他の神話体系、天使や堕天使達などに知れ渡り、悪魔の地位を落とす結果となった。そんな状態で戦争を行うことも出来ず、しかも今回の事件は悪魔側が全体的に悪くこれ以上他の勢力、特に日本の神々との関係を悪化させることが出来ず、現魔王自らの謝罪に賠償金を払うこととで手打ちになることとなった。
この事件を切欠に裏世界での日本は他の勢力から一目をおかれるようになった。さらに裏世界での駆け込み寺のような場所になる切欠ともなった。
衰退しているとはいえ強大な力を持つ悪魔勢力から正面からぶつかり一歩も引けを取らなかったその姿勢に希少な能力から迫害されたり奴隷や実験対象として襲われる者たちや住む場所を滅ぼされ当てもなくさまよう者、さらには悪魔達に無理やり転生悪魔にされたり、転生後迫害された転生悪魔達が挙って日本に亡命してきたのだ。
この事に日本の神々は会議の結果、ある程度の制約は有るものの亡命してきた者たちを受け入れることにした。亡命してきた者たちのほとんどが迫害や差別された者だったからである。そんな彼らを日本の神々は暖かく迎え入れ迫害や差別することなく一人一人の意思を尊重する接し方で接していった。
亡命した者達も制約があるとはいえ今までの暮らしに比べたら遥かに幸せな生活を送れるとあって心から信服し、日本の神々を信仰していった。これによりさらに信仰の力を得ることになった。
そして副次効果として裏の日本には「神器」と呼ばれる特殊な能力持ちの人材が増えていった。
「神器」とは、聖書の神が人間に与えた奇跡であり、一つ一つにさまざまな力を宿し中には使い方しだいで神を殺すことさえ出来ると言われる物まであると言われていた。ではなぜ亡命者が増えた結果、神器使いが増えたかと言うと、亡命者の大体が神器使いだからである。
裏の世界のことを知らなければ神器の能力は知らない人たちから見れば奇怪な能力に見えゆえに迫害や差別を受ける結果となり、さらにそんな神器を持つものを悪魔達が転生悪魔として悪魔に変えていくのである。悪魔に転生させる時説明を受け、納得して転生するよりも無理やり転生させられたり酷い時には殺された後に悪魔として転生させられる事もあった。
これは悪魔が人間を下等な種族と見下している傾向が強いことが原因である。これにより無理やり悪魔に転生させられたものが素直に従うわけもなく反発し、それが虐待に繋がりそれによって主を裏切り「はぐれ悪魔」と呼ばれる存在になった原因である。
そしてはぐれ悪魔が亡命してくる割合の半数以上を占め、その大体が裏の日本に所属することとなるので結果、日本勢力には神器使いが増えていくのである。
ちなみに日本人には神器使いは殆どいない。何故かと言うと、神器は聖書の神が作り出したものである。つまりは他勢力の神の一種の祝福なので日本の神々に祝福され、信仰している日本人に対して神器という祝福を受けるものは殆どいないのである。
殆ど、と言うことでたまに神器を持って生まれてくる日本人もいるが大体が神器の中でも上位の能力を持つものばかりである。上位の神器はそれだけ聖書の神の祝福を強く受けているので日本の神々の祝福を破り日本人に宿ってくることがあるのだ。
最終的には裏の日本が亡命を受け入れた結果、希少な能力使いや神器使いが大量に増え、しかもその殆どが日本勢力に所属することとなった。
そんな特殊な立場の日本に、一人の神器持ちが生まれた。純粋な日本人にもかかわらず神器を持って生まれた彼はすくすくと成長しそして彼が高校に入学し、二年生に進級した年、物語が始まる……。
はい、こんな感じで始まるハイスクールD×D編ですが、これはひどい。
この世界においての日本はNIHONであって日本にあらず。かなり特殊な立場の世界となっております。簡単に言ってしまえば「ぼくの かんがえた すごいにほん」。これに尽きます。
こんなNIHONなので原作のように三大勢力は殆どいません。と言うか原作のようにどこどこの町を領地として持っているなんて事は出来ません。しようとした瞬間に滅ぼされます。なので原作キャラの立場もかなり違います。リアスやソーナはただの学生として日本で生活しています。理由は日本が裏世界で一番治安がいいからです(笑)
無論ただの学生扱いなので悪魔としての活動は一切出来ません。ビラ配りもアウトです。オカルト部なんて存在すらしていません。
朱乃はそもそもバラキエルが日本に入ってこれなかったので純粋な日本人で、黒歌と白音は日本に亡命してきたので日本勢力所属で各地を飛び回り、結果として木場だけがリアスの眷属です。弱体化ってレベルではないですねww
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IF ミク魔がハイスクールD×Dの世界だったら2
この作品における一誠はISSEI化してます。そしてオープンスケベではありません。
表の世界と裏の世界。二つの世界で異端とも異常とも言われている日本。
そこは信仰と神秘を失わずに現代まで保った神々が住む異端の地である。他勢力がその力を少しずつ、少しずつ無くしていく中、日本の神々は逆に力を高めていった。
それは信仰の有無とその質によるからである。
人類の文明が発展していくにつれて日本以外の他勢力を信仰していく人は少なくなっていった。人は弱い生き物である。かつては信じていた神々の仕業とされた地震や噴火も、科学が進歩するにつれて神々とは関係の無い物とされれば、かつての信仰よりも、目先の事実を信じてしまうからである。
日本人はそんな事はなかったが。
そして信仰している者たちも、力のあるものや宗教の上位陣以外は神々やその配下を見たことすらない。見たこともないものを信仰し続けることは難しいもので信者数が世界最大と言われるキリスト教でさえ、神々が本当にいると知っているのは全体の0.1%にも満たない。
信仰してくれる信者はいるがそれの99.9%が心から信じているわけではないのである。数自体は多いがそれらから齎される信仰の力はかつてに比べれば比較できないほどに質が低かった。
日本人の信仰力は日々高まっているので関係はない。
さて、ここでこの世界の主人公である兵藤一誠の話をしよう。
原作での兵藤一誠はオープンスケベでありおっぱいのためならば例え火の中水の中と、突き進んでいく男の子であった。そんな彼はある日、彼の中に眠る神器を狙われ、堕天使に殺されてしまう。だがその死に際、彼が住む町を支配する悪魔の1人に見つかり、「悪魔の駒」と言われる道具で人から悪魔に転生してしまう。
そして其処から彼の波乱万丈の人生、いや悪魔生が始まった。
彼の主の婚約者を殴り飛ばしたり(初めて生おっぱいを見たり)、三大勢力が激突していた時代から生きる堕天使の幹部と戦ったり(女性の服だけを破くワザを開発したり)、戦争を望むテロリスト達と戦ったり(おっぱいをつついて新しい力に目覚めたり)、死に掛けながらも足掻きもがきながらも仲間や新しい力を手に入れながら新しい時代を切り開いていった。
そして何時しか彼はこう呼ばれていった。
「おっぱいドラゴン」と
「……ハッ!?」
ベットから跳ね起きる1人の青年。寝起きだというのに全裸の体に脂汗を滲ませていた。
(どうした、相棒?)
そんな青年の頭に響く重低音の声。一誠の体に宿る神器「赤龍帝の篭手」に宿る赤き龍ドライグの声だ。
(ドライグ、か……。いや酷い夢を見ただけだよ)
(酷い夢だと?)
(ああ。俺がおっぱいおっぱいと叫ぶ変態になって、あの“残念姫”の眷属になっていた)
(それは、酷い夢だな)
(本当に酷い夢だったよ。終いには「おっぱいドラゴン」なんて言われてたし。しかも禁手化したのが“残念姫”の胸をつついてなってたからな)
(うわぁ……)
ゲンナリとした表情を浮かべながらため息を吐く青年。名前を「兵藤一誠」と言った。
「うにゃぁぁ……一誠?」
そんな一誠の右側から聞こえる女性の声。その女性の方に顔を向けて声をかける一誠。
「おはよう、黒歌」
「おはようにゃ、一誠」
ベットから起き上がる黒歌。起き上がった黒歌は服を着ていなかった。あらわになる巨乳に一瞬目を奪われるも極々自然に黒歌とキスを交わす一誠。
「……にゃぁぁ」
触れあうような軽いキスを交わした後一誠の胸に抱きつく黒歌。その黒歌を軽く抱きしめる一誠。
「んにぃぁぁ……一兄さん?」
そんな2人の声に気がついたのか一誠の左から目を擦りながら起きる少女。黒歌には劣るものの十分に発育した胸をあらわにして起きた少女はそのまま一誠に抱きついた。
「んん……一兄さぁん」
猫が頭をこすり付けるように頭を擦り付ける少女を見て苦笑する2人。
「ほら、おきなさい白音」
「……姉さん?おはようございまふ」
まだちゃんと頭がおきていない白音を微笑ましい表情で見ながら笑う黒歌。
「おはようにゃ、白音。じゃあ皆起きた事だし朝ご飯にするにゃ」
「そうだな。2人はシャワーを浴びてきなよ。俺が用意するから」
「そうさせてもらうにゃ。ほら白音いくよ」
「ふぁい……」
黒歌につれられて風呂場に向かう白音。そんな2人を見てから自分の頬をぴしゃりと叩き目を覚ます一誠。
「よし、と。今日も一日がんばろう」
これがこの世界における兵藤一誠の一日の始まりである。
ではこの本来の歴史からずれたこの世界の兵藤一誠のことを話していこう。
この世界の兵藤一誠は5歳の時にとある出来事が原因で神器に目覚めている。その出来事とは現在一誠と同棲している黒歌と白音の2人とであったことである。
5歳の頃、一誠が公園で遊んでいる時草むらの中に傷ついた黒と白の猫を見つけた事が全ての始まりであった。傷ついた二匹の猫を見つけた一誠はその二匹を自分の家に持っていき手厚く看病をした。傷ついた猫たちも最初は警戒するも邪気のない純粋な子供の看病に警戒を解いて子供にされるがままに看病をされていた。
この二匹がただの猫であったならば一誠の家に飼われるか、また野良に戻るかしただろう。だがこの二匹の猫は普通の猫ではなかった。この二匹の猫は猫又と呼ばれる妖怪の一種であり、しかもその猫又の種類の中で希少とされている猫魈と呼ばれる種類であった。
そんな希少種である二匹が何の理由もなく、表裏共に異端異常と言われる日本に来たのは訳があった。
この二匹はとある山奥で静かに暮らしていた。慎ましくも穏やかな日常を過ごしていたのだが、其処にある悪魔の軍勢がやってきたのだ。その悪魔達は自分の眷属に優秀な種族を求めていて、山奥にひっそりと暮らす二匹を見つけ己が眷属にしようとやってきたのであった。
二匹に接触した悪魔達は最初こそ穏やかに勧誘していたが二匹が乗り気ではない事に怒り、無理やり眷属にしようとしてきたのであった。
姉である黒歌がすぐさま仙術で悪魔達の気を逸らし二匹は住み慣れた山奥から逃げ出したのだ。
其処から数ヶ月の間執拗に襲ってくる悪魔達から逃げる二匹。黒歌だけならば逃げ切れたかもしれないがまだ幼い白音をつれたままでは逃げ切る事はできなかった。少しずつ追い詰められていく二匹。そんな逃避行の中で二匹は裏世界の日本の事を知った。
裏世界の日本。そこは裏の世界で唯一中立を宣言し、それを保っている国であった。三大勢力と言われる天使、堕天使、悪魔やそれ以外の神話体系に屈せず中立を保っている唯一の国であり、他の国や勢力で迫害された者たちの唯一の避難場所として知られているその場所に逃げ込む事を決めた二匹。だが、追って来た悪魔達も日本に二匹を逃がすものかと執拗に追いかけてきた。
激しくなる襲撃を何とか振り切り大怪我を追いながらも黒歌は白音と一緒に日本に逃げ込んだ。そして逃げ込んだ先にいたのが、幼い頃の一誠であった。
この出会いだが、実はあと少し一誠が見つけるのが遅かったらこの出会いはなかったのだ。なぜならば逃げ込んだ二匹だが、日本に侵入した時点で日本神話の神々に見つかっていた。で周囲を最上位悪魔と同等以上の力を持った妖怪達とそれ以上の力を持った神々に包囲されていたのだ。仙術使いとして高い力を持っている黒歌であっても信仰を得ている神々の術式を見破れるわけがなく周囲を囲まれているとは気がつけれなかった。
で、包囲した神々がいざ二匹を連れて行こうとした時、
日本人とは言え軽々しくも人の前に現れる事を良しとしない神々はひとまず監視をしながら一誠と二匹を見守った。
神々に監視されているとは知らない一誠と黒歌と白音。一誠は二匹をただの傷ついた猫だと思い両親に手伝われながらも甲斐甲斐しく世話をして、二匹を家族のように可愛がった。
黒歌と白音もそんな一誠に感謝していた。少なくともこの家にいれば恐ろしい悪魔達も襲ってこず、空腹で眠れない日々を過ごす事もなくお腹いっぱいにご飯を食べる事ができた。
だが、そんな日々は終りを告げる。一誠が二匹を家に連れて行ってから1週間後の深夜。一誠と両親が寝ている所を見て監視していた神が二匹の前に現れた。
二匹が寄り添って寝ている一誠手作りの寝床の元に
「其処の二匹よ」
「!?」
黒歌は直前まで感じられなかったその気配にすぐさま警戒し、白音も黒歌の邪魔にならないように黒歌の後ろに下がった。
「そう慌てるでない。われらは日本神話勢「高天原」が所属の八咫烏である」
「ファ!?」
日本では力のある神々が多くすむとは聞いていたがまさか自分達のような弱い存在に神が、しかも名のある神が合いに来るなど思ってもいなかった黒歌の口から変な声が漏れてしまうのも仕方がなかった。
「まずはそなた達に謝罪をしなければならん。迎えに来るのが遅くなってすまなかった」
名のある神が合いに来た事に驚いているのにその神が自分に頭を下げるという自体に黒歌と白音は頭が真っ白になる。
「本来であれば日ノ本に来た時点でそなた等を迎えに行かねばならなかったのだが、少し厄介事が起きてしまってな。遅くなってしまった」
「い、いえいえいえ!!とんでもないにゃ!!むしろ私たちから貴方様方に会いに行かなかったのが悪いだけですので、貴方様に謝られる事なんてないですにゃ」
「そ、そうです。悪いのは私達の方です」
頭を下げる神に慌てて自分達も土下座の如く頭を下げる黒歌と白音。
「そうか。そう言ってもらえると助かる……。では、本題に入ろうか」
穏やかな雰囲気を出していた八咫烏からまさしく神々しい気配が流れ出る。その気配に圧倒される黒歌と白音。
「そなた達は我が日ノ本が裏の世界でどの様な存在か分かっているな?」
「ッ……は、はい」
「本来であれば三箇所ある裏世界専用の入り口以外からの日ノ本への侵入は重罪であり、それを犯したものはいかなる者であろうと罰せられる」
「……」
「故にそなた達を我は罰せなければならない。そして罰は死罪となる」
「そんな!?」
黒歌と白音に課せられた罰は死刑。必死に逃げてきた末に一誠と言う自分達を家族として扱ってくれ保護してくれた存在に会えた結果が死刑である。反論しようと顔を上げるも神としての気配を放つその瞳に睨まれて息を詰まらせる黒歌と白音。
「あ、あぁぁ」
「悪く思わんでくれ。これも我らが決まりなのでな」
そう言ってゆっくりと三本の足を使い近づく八咫烏。神の気配によって身が竦み動けない黒歌と白音。その二匹は迫り来る死の気配に自らの死期を悟りながらもある事を考えていた。それは黒歌と白音を家族として扱ってくれた一誠の事だ。
(一誠、ごめんにゃ)
(一誠さん、ごめんなさい)
(私達を拾ってくれてありがとうにゃ)
(温かいご飯を与えてくれてありがとうございます)
後一歩のところまで八咫烏が近づいてきた。死を目の前にして最後に思ったことは、一誠に対しての感謝だった。
((私達を家族としてくれてありがとう))
そして神の采配が下ろされようとした時、目に映ってきたのは
「二匹から離れろ!!化けカラス!!」
子供用バットを手に八咫烏に殴り掛かった一誠の姿だった。
この世界でのISSEI=サンのヒロインは黒歌と白音です。
リアス?そんな名前の人は知りません。
八咫烏さんが黒歌と白音を殺そうとしてますが、ちゃんとした理由があります。てか問答無用で殺してたら殺伐な国になってしまう。
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IF ミク魔がハイスクールD×Dの世界だったら3
朝日が昇り、外が少しづつ騒がしくなってきた頃、俺と黒歌と白音は朝食を食べていた。
朝食は黒歌が仕入れてきた(取ってきた?)魚をさばいて塩焼きにした物と白米と味噌汁、漬物と出し巻き卵と和風したての朝食である。
「うん。一誠の作るご飯は美味しいにゃ」
「美味しいです」
黒歌と白音はパクパクと箸を動かしてご飯を食べていく。
「お代わりは沢山有るからよく噛んで食べろよ」
そう言いながら俺も箸で焼き魚をほぐしご飯と一緒に食べる。うん、美味い。
こうやって3人で仲良く朝食を食べている俺達が住んでいる場所は、俺達が住む日本で数十箇所しかない、裏世界の住人のための一種の隔離都市である’駒王市’である。
隔離都市とは言ってはいる物の別に周囲を壁だの結界だので覆っているわけではない。極普通に表の世界の住人も住んでいる。この都市は裏の世界で差罰されたり迫害を受けてきた種族の人たちが社会復帰するために日本政府が用意した都市である。
そんな都市で俺と黒歌と白音の3人は暮らしていた。
俺の両親とは別居している。これは俺達が裏世界の仕事を始める事となったため保護するために日本の神々が守護する場所で住んでもらっているからだ。
身内を人質に取られるのは厳しいからな。
まあ、両親とは黒歌、白音としっかり話し合ったし月に数回は必ず顔を出しているから寂しいという事は無いがな。と言うかむしろ両親は孫は学校を卒業してから見せに来いとか笑顔でほざいていたのできっと大丈夫だろう。
「? どうかしたかにゃ、一誠」
「ん? ああ、両親の事を思い出してたんだ」
箸を止めて尋ねてくる黒歌に俺はあの時の事を思い出しながら答える。
「一兄様のご両親の事ですか」
黒歌につられて白音も聞いて来る。
「一誠のご両親かにゃ……色々すごい人だったにゃ」
黒歌は思いにふける。
確かに実の息子である俺からしても両親は凄いと言うか、図太いというか、変わっていると思う。
黒歌と白音が俺の家に初めて来てから1週間たった頃、俺の家に日本神話勢「高天原」に所属している八咫烏様が来たのだ。
その時の俺は、裏世界の事なんで全く知らないただの餓鬼であり八咫烏様の事を三つ足の化けカラスなんて言って子供用のプラスチック製のバットで殴り掛かったのだ。
今思えばなんて無茶をしたものだ。ただ、二匹、いや二人を守ろうとして殴りかかった事に対しては後悔はしていないが。
まあ、何の力も無い子供が玩具のバットで殴った程度で傷が出来るわけも無くむしろ黒歌達を守ろうとする俺をどうやって落ち着かせようかと逆に慌ててたぐらいである。
その後、俺が罰せられると勘違いした黒歌達が俺の前で初めて人型に姿を変えて俺を止めようとしたり、騒ぎを聞きつけた両親が起きて来て俺を抑える見知らぬ少女二人と明らかに神々しい雰囲気を出す八咫烏様を見てパニック状態になったりして場は混沌とかしていった。
「そうですね……。私達が猫又の妖怪だと知っても猫が人になった事より、娘が2人もできたと言って喜んでましたからね」
白音は両親の前で姿を変えた時の事を思い出して苦笑いをしていた。
「あの後着せ替え人形にされたにゃ……」
黒歌も娘が欲しかった両親のハイテンションを思い出したのか苦笑してた。
「ハハハ、まあ驚かれても受け入れてくれたからいいじゃないか」
「そうにゃ」
「そうですね」
そう言って俺達は笑う。
こうして俺達の一日が始ったのだ。
隔離都市『駒王』
そこは日本国内において数十箇所ある裏世界の住人を隔離するための都市である。
裏世界の日本に亡命、逃亡してきた者達は日本神話勢「高天原」に所属している神々の洗礼を受けた後、各地に移入させられるのである。
この洗礼とは、裏世界から来た者達に日本の神々の力を見せつけ力の差を分からせる事を意味するのである。
大概は’現在も’信仰されている神々の圧倒的な雰囲気を見せ付ける事によって大体はひれ伏す事となる。極々偶に無謀にも戦いを挑んでくる馬鹿もいるがワンパンで沈む事となる。
黒歌と白音の前に現れた八咫烏もこの洗礼をするために現れたのである。八咫烏は二人を殺す気など更々無くただ、最初に舐められないようにあえて殺気を出したのである。
これによって日本神話勢に逆らおうとする気を無くすのである。もっとも裏日本に来る者達はそんな気力は持ち合わせて居ない者達が大半であるが。
さて、隔離都市とは言ったがそれはあくまでも裏世界での呼び名であり、表向きはただの1都市である。ただ、市の政策として外国人が生みやすいようになっているが。
市の政策で外国人を受け入れやすくしているのは亡命してきた者達の容姿を誤魔化すためである。(亡命してきた者達は大体が目立つ容姿をしているからである)
深紅の髪や蒼色の髪、金髪銀髪、蒼目赤目オッドアイと多種多様の容姿を持つ者達が黒髪黒目の日本人の中に居たらそれはそれは目立つのである。
黒いインクがついた真っ白の紙のように。
そんな違和感を軽減させるために市の政策という言葉を使ったのであった。
かくして隔離都市では多種多様な種族が人目に隠れて静かで平和な生活を送っているのである。
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IF ミク魔がハイスクールD×Dの世界だったら4
朝食を食べ終わった後、家の戸締りをして俺は黒歌と白音と一緒に学校に向かった。
『駒王学園』
隔離都市『駒王』にある高等学園である。異文化交流を掲げるこの学園は学園生徒の約半数以上が外国人と言う珍しい学園である。アメリカ、イギリス、ドイツに中国と世界各国からの留学生が通う学園で多種多様の見た目の生徒が通っている。
……と言うのが表向きの理由である。
では裏側から見ると、この学園の生徒は約半数以上が日本に亡命してきた者達で構成されているのだ。そもそもが駒王学園は亡命してきた者達の社会復帰?のために作られた学園である。亡命してきた者達は大概が過酷な生活をしてきた者達ばかりであった。
そんな過酷な生活を送ってきた者達が日常生活を送るために常識やら知識を蓄えるために作られ、多種多様な見た目の亡命者たちが違和感なく通えるように考えられた駒王学園。そんな学園に俺達3人は通っていた。
「……そういえば一誠、また亡命者が来たらしいにゃね」
「ああ。……全く3大勢力のやつ等には困ったものだ」
「ホントですね。3大勢力なんて
毎日行われている定時報告でまたこの日本に亡命者が来たらしい。これで今月だけでももう30人以上の亡命者が来たのだ。まだ今月に入って二週目も過ぎていないのに。
「勢力として落ち目で、何とかしようと言う気持ちは分かるがだからと言って他者に迷惑を掛けて言い訳ではないのに」
「ホントにゃ。おかげで私たちの仕事が増えて大変なのに」
俺達3人は日本勢力内にある特殊部隊的な組織の中で働いている。その組織の中の任務で亡命者の保護が一番多いのだ。本当に3大勢力の奴らはいい加減にして欲しいものである。
そんな風に任務の事で愚痴を言ったりしながら歩いていると学園が見えてきた。
「着いた、と……ん?あいつは」
学園の正門付近まで来ると何やら人だかりができていた。その人だかりの中に1人の女子が見えた。
「リアス・グレモリー、か」
「残念姫かにゃ」
「残念姫ですね」
リアス・グレモリー
3大勢力の一つ、悪魔勢の中のグレモリー家の悪魔である。何故はぐれでもない悪魔であるグレモリーがこの学園にいるのか?一言で言えば彼女は悪魔社会から実質的な追放処分を受けてここに来たのだ。
正確にはある種の人質的な感じで来たのだが彼女の実家であるグレモリー家には嫡男が生まれておりそれまで跡継ぎとして育てられていた彼女はお役ごめんとなってしまったらしい。本当はもっと複雑な政治の駆け引きとかが合ったらしいが、関わってないのでよくは分からない。
ちなみに残念姫とはリアス・グレモリーにつけられた二つ名でありもっとも彼女を言い表した二つ名として定着した名である。
残念姫という二つ名が定着する前は「滅びの戦乙女」とか「滅びを齎す赤髪」と、かなりまともな二つ名があったのだが。
「成績優秀、容姿端麗、文武両道で人当たりのいい性格」
「公爵家の出身で気品も持ち合わせているのにそれを鼻につけず」
「恋愛相談は百発百中との噂ももっいるのに」
一見して完璧超人?超魔?とも言えるほどのスペックを持っているのだがその長所をすべてだめにる欠点を彼女は持っているのだ。
「まあ、レズで」
「ショタコンで」
「腐女子です」
「「「……ハァ」」」
そうなのだ。彼女リアス・グレモリーはレズでショタコンで腐女子なのだ。さらにこの欠点を表側の人間には一切気づかれないように完璧に隠し通しているのだから手におえない。
「あら?……一誠に黒歌に白音。ごきげんよう」
俺達に気がついたグレモリーは周りの友人達に断りを入れてこちらに来て挨拶をしたが、本当に一見すると完璧な淑女なんだが、実際は腐女子でレズショタコンである。
「ああ、おはようグレモリー」
「おはようにゃ、リアス」
「お、おはようございます。リアス先輩」
俺は普通に、黒歌は親しく、白音は少し威嚇しながら挨拶を返す。
「一誠はもっとフレンドリーでもいいのに」
「勘弁してくれ。ファンに殺されちまう」
「たかだかファン程度に殺されるほど柔じゃないでしょう?一誠は」
クスクスとにこやかに笑う姿は大和撫子と言ってもおかしくは無い。だが腐女子だ。創作作品は裏で高額で売買されているという噂である。ちなみに登場人物は全員架空の人物しかいない。グレモリー曰く実在の人物を使うのは妄想力が足りないとの事。
「黒歌、この前教えてくれた料理。私風にアレンジしてみたんだけど今度食べに来ないかしら?白音と一緒に」
「いいにゃ。私も新しい料理を試してみたかったからその時に持っていくわ」
黒歌とグレモリーは以外かもしれないが仲がいい。お互いに手料理の意見を言い合ったり食べ比べしたり、休日には一緒に遊びにいったりもする。だがレズ関係ではない。恋人がいる相手には手を出さないのが主義だとか何とか。
「わ、私はその……」
「白音には創作お菓子の感想を聞きたいのだけど、駄目かしら」
白音に苦手意識を持たれているのが分かっているグレモリーはちょっと眉を下げて機嫌を伺うように話しかける。白音もグレモリーを完全に嫌いなわけではないしグレモリーが作る創作お菓子は一級品なので、お菓子好きな白音はついつい食べに行ってしまっている。
「その、いきます」
「来てくれるのね、ありがとう白音。今回のは自信作だから期待してね?……では私は先に行くわね。あなた達も遅れないでね」
グレモリーはそう言って教室に向かって歩いていった。歩く姿は優雅で気品が溢れていた。だがしかし彼女はショタコンなのだ。ロリっ気もあるらしくかわいい子供はグレモリーの射程範囲らしい。休日に孤児院や近所の子供達にお菓子を配ったり一緒に遊んだりしていて人気はかなり高い。それでいて犯罪は一切起こっていないのだから、不思議である。
「……最近思うんだが、グレモリーがこの学園に来たのって悪魔社会から隔離するためな気がするんだが」
「さ、さすがにそんな理由でここに来る訳が」
「三大勢力内でグレモリー作の作品が高額で取引されているという噂を聞いたんだが」
「……」
本当に、どうしてああなってしまったのだろう。
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