ハイスクール・フリート ~新米海曹晴風と共に~ (メガネ二曹)
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登場人物、登場兵器紹介

俺ははいふりだと美甘ちゃんが好きです。


〔登場人物〕

 

・海上自衛隊

 

日御 宗太郎(ひの そうたろう)

〈年齢〉21

〈階級〉三等海曹

〈所属〉護衛艦「りょうかみ」

〈配置〉射撃管制

〈あだ名〉宗、そーくん、クッキングバカ

 

海上自衛隊、しらかみ型2番艦「りょうかみ」所属の海上自衛官で新米三等海曹。最近術科学校から帰還したばかり。

立ち入り検査隊にも所属。

夜目が利く。誕生日は2月18日。

武器を所持しているが、使う機会はほとんど無い。

特技は近接格闘、速読。

戦闘の才能があるらしく、時にはゲームの技を自分なりに改造して使ったりもする。実力は相当の物で、艦内で格闘指導を任されたりもした。

アニメやゲーム好きでノリが良く、「ユーモア無き者船乗りに非ず」と言い切った。

機関科でも無いのに何故か聴診棒を持っていたりする。

人手が足りないりょうかみで勤務しているお陰か様々な事が出来る。

過去に教官とバディを訓練中に失っている他、家族(+幼馴染)が高速道路での事故で死亡していたり、本編の少し前に彼女を寝取られていたりと、なんというか悲惨な人間。

本人はもう割り切ったと言っているが少なからずトラウマになっており、毎日のように悪夢にうなされていたが、りょうかみという居場所を得た為か一時的に悪夢を見なくなった。

しかし晴風に来て再発し、以降しばらくは悪夢にうなされる事となる。

20××年に発生した太平洋タンカー銃撃戦事件において「りょうかみ」に侵入した敵構成員を二人射殺した経験があるが、死に触れすぎたせいかその際は何も感じていなかった。

 

 

先輩隊員

〈年齢〉28

〈階級〉二等海曹

〈所属〉護衛艦「りょうかみ」

〈配置〉艦橋、ウイング見張り員

〈あだ名〉特に無し

 

1話に登場する、宗太郎の先輩隊員。

航海科所属。

少しお調子者だが面倒見が良く、後輩に好かれている。上からの信頼も厚い。

判断力もある優秀な隊員。

海上自衛隊に入隊前は泳げなかったらしい。

 

 

田村 定宏(あきむら さだひろ)

〈年齢〉51

〈階級〉二等海佐

〈所属〉護衛艦「りょうかみ」

〈配置〉艦長

〈あだ名〉じっちゃん、定さん

 

海上自衛隊、しらかみ型護衛艦「りょうかみ」艦長。部下思いな良い艦長。

温厚な性格だが判断が速く、迷いが無い。

曰く「もっと良い答えは確かにあるかもしれない。だが考えている間、敵は待ってくれない。だから私は迷わんのです。」

頼りなさそうと言われる事が多いが、りょうかみクルーからの信頼は厚い。

本編には現在登場していない。

 

 

浜谷 拓人(はまや たくと)

〈年齢〉19

〈階級〉海士長

〈所属〉横須賀教育隊

〈配置〉???

〈あだ名〉はまやん、浜ちゃん

 

故人。

宗太郎の教育隊時代のバディで、親友だった。

訓練中の事故により、宗太郎の目の前で死亡。宗太郎は現在もその時の夢を見てうなされ、トラウマになっている。

気遣いが出来る良いヤツで、多くの人に愛されていた。

死亡

 

 

上中 哲(かみなか さとし)

〈年齢〉32

〈階級〉准海尉

〈所属〉横須賀教育隊

〈配置〉指導教官

〈あだ名〉特に無し

 

教育隊時代の宗太郎の教官。

浜谷と同じ事故により、宗太郎の目の前で死亡している。

候補生達を育てる為に憎まれ役を買って出たりしており、上からも将来を有望視されていた。

死亡により二階級特進。

宗太郎の持つネクタイピンは、彼の遺品で形見。

 

 

・晴風

 

 

・その他

 

 

〔兵器〕

 

 

護衛艦りょうかみ

〈艦番号〉DDG-180

〈艦種〉ミサイル護衛艦(イージス)

〈所属〉海上自衛隊 第2護衛艦隊群第6護衛隊

〈母港〉横須賀

〈前級〉あたご型

〈姉妹艦〉護衛艦しらかみ(DDG-179)

[スペック]

〈基準排水量〉8200㌧

〈満載排水量〉11000㌧

〈全長〉177m

〈全幅〉22.5m

〈深さ〉12m

〈吃水〉6.4m

〈機関〉COGAG方式

〈主機〉GELM2500×4基

〈出力〉120,000ps

〈推進〉スクリュープロペラ×2

〈最大速力〉30ノット以上

〈乗員〉約200人

[火器]

・OTOメララ127mm単装速射砲×1門

・17式艦対艦誘導弾4連装発射機×2基

・12式3連装短魚雷発射管×2基

・高性能20mm機関砲CIWS×2基

・Mk.41 Mod20VLS×90セル

[艦載機]

・SH-60k

[C4Iシステム]

・イージスシステム

・AN/SQQ-89(V)15J 対潜システム

[レーダー]

・SPY-1D 多用途

・OPS-28D 対水上

・OPS-20 航海用

・Mk.99/SPG-62ミサイル誘導用 × 3基

[ソナー]

・OQS-102

・OQR-2D-1 曳航式

[カウンターメジャー・電子戦]

・NOLQ-2ESM/ECM

・Mk.137デコイ発射機 ×4基

・18式多目的弾体投射機

 

架空艦。

海上自衛隊所属、最新鋭のイージス護衛艦。

あたご型をベースに、最新式のイージスシステムを搭載、自動化による人員削減等が行われたモデル。

多少のコストカットも実現している。

兵装はあたご型の「あしがら」を参考にしている。(というかほぼ同じ)

強力な艦隊防空能力に捜索・追跡能力を持つ。

人員の練度も相当な物。

嵐に遭遇した時は、オーストラリア海軍との合同演習の為、ダーウィン港へ向かう途中だった。

基本的に交戦をよしとしない為、よほどの事でないと戦闘は行わないが、攻撃に対する迎撃、及び警告等、自衛の範囲内、最低限の行動は行う。

20××年に発生した太平洋沖タンカー銃撃戦事件において、タンカー上の戦闘で立ち入り検査隊員3名が死亡、艦内に侵入してきた敵構成員によって2名が殺害されており、毎年艦で慰霊を行い、弔砲が行われている。

自動化、機械化による人員削減により、前級であるあたご型より100名近く乗員を減らしている。……が、結局人数不足は解消されていない。

人数不足のせいでクルーは非常に様々な作業が出来るようになっており、航海科なのに砲の整備をしていたり、射撃科が水道管を修理していたりと、苦労が絶えない。

しかも運用開始直後は機械化された部分でトラブルが多発。

防大卒の運用幹部が過労でぶっ倒れたという事も。

それらのせいでクルーの練度はやたらと高い。

架空兵器も積んである。(17式対艦ミサイルや18式投射機等)

 



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本編
黒い嵐の海にて


どうも。
お久しぶりです。初めての方は初めまして。
メガネです。三カ月……四カ月ぶりのハーメルンかな?
相変わらずネタが浮かばずやる気も起きず、さらにリアルがそこそこ忙しくてですね、まあいつものようにメインの2作品は全く進行しておりません。ごめんなさい。
さて、今回は「ハイスクールフリート」、はいふりの二次創作になります。はいふりと言えば二周年記念イベントで映画化が発表されましたね。
凄く好きな作品でしたし、丁度書きかけの試作はいふり二次小説と架空艦の設定がありましたので書いてみました。

……関係ない愚痴になりますが俺、大田区住まいでして、産業プラザではいふりのイベントがあると聞いてウッキウキしてたんですが寝坊して行けませんでした(半ギレ)


西暦 2020年 8月20日 午後8時32分

小笠原諸島沖

 

「両舷第二戦速!舵もどーせー!」

 

「両舷第二戦速アイ!、舵もどーせー!」

 

「「もどーせー!!」」

 

陸も光も見えない暗い海の嵐の中を、俺達が乗る一隻の護衛艦が進んでいた。

張り出した巨大艦上構造物、角張った艦橋。

看板に大量のミサイル発射機を積んだその特徴的なフォルムの艦は、俗に言う「イージス艦」という物だ。

 

DDG-180「りょうかみ」。最新技術を詰め込まれた、日本の技術の結晶。

アメリカが開発した、神の盾の名を冠する強力な艦隊防空システム、「イージス・システム」を搭載し、巨大なフェイズド・アレイレーダーを始めとした強力なレーダーと、音速を超えた弾頭すら撃ちぬく大量のミサイルを搭載した灰色のそれは、海の上の要塞と言っても過言では無いだろう。

 

……しかし、どんな強力な艦艇でも、自然という物には適わない。

全長177m、基準排水量8200㌧の大型艦ですら、巨大な嵐と波の前では無力な物だ。

りょうかみ艦内は戦闘配置がなされ、クルーは皆、本当に戦争をしているように引き締まって集中している。

舵輪を握る海曹の顔は引きつり、汗が垂れ、艦橋内では怒号のような指示がひっきりなしに飛ぶ。

甲板では嵐に打たれながら運用員達が必死の作業をしており、ウイングに居る俺たちも、数十メートル先も見えない闇を双眼鏡で覗き、近くに艦船が居ないかを必死に確認する。

CICでは電測員達がレーダーに食らいついているだろう。

 

「デカいの来るぞ!」

 

「何かに掴まれ!」

 

隣に居る隊員がそう叫び、ウイングに居る俺たちは支柱や柵、信号探照灯に捕まる。

視界の端に迫る巨大な波が見えたかと思うと艦が縦に大きく揺れ、大量の海水が降りかかった。

ベルトにくくりつけたヘッドセットがウイングの壁に擦れ嫌な音がする。

 

「日御ォ!無事か!」

 

後ろでハッチの取っ手に捕まっていた先輩隊員が、俺の被るテッパチを叩いて言った。

 

「体は大丈夫っす!強いて言えばパンツまでビショビショで気持ち悪い事くらいですかね!」

 

「そいつは結構!三曹になったんならこのくらい喰らわないとな!気張れよ電測員!」

 

「俺は射撃管制っすよ!」

 

そう。俺の本業はここでは無い。

本来、俺は砲雷科の射撃員。CICでミサイルや主砲を運用するというのが仕事である。

ならなぜウイングで航海科に混じって見張り員をしているか?……答えは簡単。

人が足りて居ないのである。

 

海上自衛隊は、慢性的な人手不足に悩まされている。

艦という逃げ場の無い閉鎖空間で長期間海の上で、プライベートもほとんど無い。

その分給料は良いにしろ、陸空に比べ入隊する人間は少なめだ。

海上自衛隊が動かすのは巨大な「艦艇」。

陸海空の中でもダントツに人数が必要なのだ。それも戦闘を行う護衛艦、電子機器満載のイージス艦となればその人数は1艦に300人は必要になる。

人員不足で定数が満たせず一人あたりの仕事が増えオーバーワークとなり、耐えきれず、または体を壊して退職してしまうといった悪循環まで起きているのだ。

 

そこでこのりょうかみ含む「しらかみ型」は、必要な人員の削減が行われた。

各部自動化やシステム操作の最適化、作業の効率化により必要な人員を大幅に減らしているのである。具体的に言えば前級である「あたご型」が約300人であるのに対し、「しらかみ型」は約200人。

これは中々の物で、人数が減った事により居住性も良くなった。……しかし良い事ばかりでは無い。

人員が少なくなったという事はダメコン等に不安が残るし、自動化や機械化に関しても、万が一故障やエラー等が起こればただじゃ済まない。最悪まともに戦闘艦として機能し無くなる可能性だって0では無いのだ。

 

……まあつまり何が言いたいかと言うと、結局人員不足は解消されなかったという事だ。

俺は2時間前まで当直でCICに居て、別の隊員と交代しベッドで寝ていた。

それでウイングの見張りを増員する時に、CICに行っても仕事が無く、待機するしか無い俺が呼びつけられたという訳だ。

見張りは教育隊で訓練しているしこんな嵐の中では初めてとは言え部隊配備された後も数回やっている。出来ない事は無い。

 

俺はアポロキャップの上から被った、ズレたテッパチを直して立ち上がると、再び双眼鏡を覗こうとする。

 

すると再び別の見張り員が叫ぶ。

 

「右前方から大波!……さっきのよりデカいぞ!」

 

「まずい!ウイング見張り員退避!」

 

恐ろしく大きい波を見た幹部が血相を変えて指示を飛ばす。ウイングの見張り員達は急いで艦橋に入るも、全員が戻るには時間が足りない。

ギリギリの所で先輩隊員がハッチを閉める。これ以上開けておけば波が艦橋に入る恐れがあるからだ。先輩隊員と一緒にウイングに取り残された俺は信号探照灯の脚に捕まる。

 

「来るぞー!」

 

「神様俺様仏様!」

 

艦が波に突っ込み、甲板がへこむんじゃないかというくらいの両の海水が叩きつけられる。

海面から相当離れているウイングにも海水の塊が落ちてきて、痛いくらいだ。

 

(よし!耐えた!)

 

そう思って俺がゆっくり立ち上がると、顔面に激痛が走る。

飛んできた何か。

銀色のしたそれは、紛れもなく、魚だった。

波にのまれた魚が宙を舞い、偶然にも俺の顔に直撃したのだ。

あまりの痛みと突然魚が飛んできた驚きで、俺は手を離してしまう。

直後艦が激しく揺れ俺はバランスを崩し、黒い作業靴が、ウイングの甲板から離れてしまった。

 

「あ」

 

今度は俺の体が宙を舞う。咄嗟に先輩隊員が手を伸ばすも、その手は一歩届かない。 

俺の体は灰色の巨大な艦から離れ、黒い海へと落ちてゆく。

浮遊感が体を包み込み、時間がスローモーションになったように感じながら海面へと落ちてゆき、そして俺は、嵐の海へとダイブした。

 

「日御ぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

ウイングに残された先輩隊員の絶叫は、嵐にかき消された。

 

――――――

 

『よう、日御。相変わらずシケたツラしてんさばゃねーか。』

 

ー教官!浜谷!……なんで?

 

『バディを追い返しにきてやったんだよ。感謝してくれよ?』

 

ー追い返す?どういう事だ?

 

『そのまんまだよ。宗太郎、お前はまだこっちに来るのは速すぎるって事だ。』

 

ーこっち?おい浜谷、一体何を言ってる?

 

『じゃあな日御。俺らの分も、頼むぜ』

 

ー教官!待ってくれ!何処へ行くんだ!浜谷!置いて行かないでくれ!行くな!

 

「待ってくれッ!!」

 

俺はそう叫びで飛び起きた。

いつの間にか俺は白いベッドの上に寝かされていたのだ。

作業服やカポック、帽子は脱がされている。

呼吸は乱れ、寝汗が酷い。

 

……どうやら俺は夢を見ていたようだ。……まあ、夢でも無ければ死んだ二人が居るはず無いだろうが。

呼吸を落ち着かせ、シャツの袖で顔の汗を拭う。

周りを見ると、どうやら何処かの船の医務室のようだ。

見た感じでは、少なくとも「りょうかみ」では無い。別の海自の艦か民間の船か、はたまた他国の軍艦か。なんにせよ助かったのだ。あの高さから落ちて体がどこも痛くないし、俺は相当運が良いらしい。

……もしかしたら、二人が俺を生かしてくれたのかもしれない。

 

そんな事を考えていると、扉が開く音がして、「失礼しまーす」と、女性……というより女の子の声がした。

声の感じ的に高校生くらいだろうか。

普通の日本語だし、どうやら日本の民間船か何かに救助されたのだろう。俺はほっとため息をつき、ベッドを降りる。

靴下も脱がされており、直に床に触れ、足の裏がひんやりと冷たい。

 

ベッドを覆っていたカーテンを開き、外に出ると、そこにはセーラー服にエプロンを着た女の子が居た。

 

俺と目が合うと、女の子は笑顔で医務室のドアから身を乗り出す。

 

「みなみさーん!助けた人が起きたよー!」

 

久しぶりに女性を見たというのもあって、彼女の笑顔は、非常に眩しく、可憐に見えた。




如何でしたでしょうか。
何しろにわかレベルのミリオタな為、おかしい所もあるでしょうから、感想やメッセージなどで優しく指摘して頂けると幸いです。
感想なども頂けると嬉しいです。
ではまた次回、何時になるかは解りませんが読んで頂けると幸いです。
ではでは。


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目覚めた先は

どうも。眠いです。メガネです。
はいふりを見てからしばらく経つので、結構うろ覚えなのですが精一杯書きました。
にしても、主人公を大人にしちゃうとキャラの口調が大変です。高校生の女の子が使う敬語……辛い。
まあそんな訳で口調に関してはごめんなさい。合ってると保障できません。自己解釈+妄想による補完ですので。
ではどうぞ。


『コントロール、ディスイズシーキャット。プリーズクリアランス。』

 

「ディスイズウルフコントロール。シーキャット01、リクエストタキシーVFR。クリアード・フォー、テイクオフ。」

 

『シーキャットラジャー。テイクオフ。』

 

凄まじい音を立てながら、「りょうかみ」の飛行甲板からSH-60ヘリコプターが飛び立ってゆく。

現在時刻は0845。嵐を抜け7時間程が立った所だ。

現在りょうかみでは、行方不明となった宗太郎の捜索が行われていた。

 

「面舵10度。」

 

「面舵10度、アイ!」

 

艦橋では神妙な顔つきの艦長が操艦指示を出している。

そこへ、副長が戻ってきた。

 

「副長、どうかね。」

 

「はっ、艦長。残念ながら手掛かりすらありません。嵐を抜けて時間も経っていますし、発見は困難かと……現在HSを上げて海上を捜索させています。帰投は0915時の予定です。」

 

「ご苦労……彼は諦めた方が良いかもしれんな。」

 

「ええ……生存は絶望的かと。」

 

「流されたコンテナの方は?」

 

「あれも行方不明です。小銃に弾薬。衣類も入って居たんですが……」

 

「それは始末書で済むから別に構わん。」

 

りょうかみではこれまで、三度の捜索ヘリコプターの発進、そして作業艇による捜索が行われている。しかし目標である宗太郎は発見出来ずに終わっていた。もし見つかってもあの高さから嵐の海への落下だ。生存の可能性は極めて低い。

 

「出来る事なら見つけて、なんとか家族と同じ墓に入れてやりたい所ですが……」

 

「ああ……しかし状況が悪すぎる。衛星もGPSもアンサーバック無し。長距離通信が使えず主機も不調とは……復旧の状況は?」

 

「現在担当の隊員達が検査をしていますが、ほとんどの機器に故障はなく、原因不明だそうです。GPSと衛星通信に関しては衛星側に問題がある可能性が高いですね。主機に関してはなんとか修理可能だそうです。」

 

艦長席に座る艦長が頭を抱えてうなる。

 

「近くに味方艦は居ないのか?」

 

「嵐に突入する前に「ひので」とすれ違ったきりです。こちらの状況は伝わって居ないでしょう。」

 

「一度横須賀に戻った方が良いかもしれん。現在位置は解るか?」

 

「はっ、最終位置と航海のログから見ると……このあたりですかね。」

 

副長は、持っていた海図を指さす。

 

「主機を修復しながらとなると時間がかかるな……しかしなんとかするしか無い。舵戻せ。」

 

「もどーせー、舵中央。」

 

「取り舵に当て、210度ようそろ。」

 

「取り舵に当て、取り舵10度。210度ヨーソロー!」

 

「210度ヨーソロー!」

 

「ヘリの帰還を持って日御三曹の捜索を終了とする。両舷前進原速、副長操艦。しばらく頼む。」

 

「副長操艦頂きました。」

 

--

 

「……異常無し」

 

「あ、はい、ありがとうございます。」

 

目を覚ました俺は、「みなみさん」と呼ばれる医務室に入ってきた白衣の子に診察をされていた。

 

白衣の下に赤いセーラー服を着ている少女はとても大人には見えない。しかし診察に相当手馴れていたし、気絶していた俺の処置をしてくれたのも彼女らしい。

これが世に言う「合法ロリ」というやつだろうか。

聴診が終わった俺はエプロンの子が持ってきてくれた作業服に着替える。

作業服はきちんと洗濯され、しっかりアイロン掛けまでされていた。

着替え終わるとこれまた洗ってくれた識別帽を被る。

 

「失礼しまーす。みなみさん、助けた人の調子はどう?」

 

仕切りのカーテンから出ようとすると、これまた元気そうな女の子の声がする。さっきの子とは違う声だ。

カーテンから出ると、何処かの制帽を被った茶髪の女の子が立っている。

 

「えっと、はじめまして!私、艦長の岬 明乃です!ケガとか、大丈夫ですか?」

 

「あ、ああ。おかげさまで特には。」

 

艦長?この子が?

見た感じ高校生だ。……というかさっきから大人を見ていないような気がする。

これは水産高校の実習船か何かだろうか。

 

「えっと、俺は海自の日御 宗太郎です。……救助して頂き、ありがとうございます。」

 

「あっ!頭上げてください!当たり前の事をしただけですから!」

 

俺は深く頭を下げた。

相手は年下だが、命を救われたのだから当然の事だ。

……にしても国民を守る自衛官が女子高生に命を救われるってのはなんだか情けない話である。

 

「えーっと、この船はどこかの学校の船ですか?」

 

「はい、横須賀女子海洋学校の航洋艦、晴風です。」

 

「横須賀女子海洋学校……?」

 

記憶に無い名前だ。

詳しいという訳では無いが、横須賀には2年居る。

実習船を扱う学校なら名前くらい耳に入ってもおかしく無いはずなのだが。

 

「えーっと、先生はいらっしゃいますか?」

 

「あ、この艦には乗っていませんよ?」

 

「……え?じゃあ、大人は誰か」

 

「大人は乗ってません。」

 

(うっそぉ……)

 

横須賀女子海洋学校とやら、色々大丈夫なのだろうか。

確かにまあ「習うより慣れろ」、実際に自分達やらせるというのは物凄い成長する物だが、いくら何でも放任過ぎやしないだろうか。

この子達を見るにしっかりしてそうだが、それでも何かあったら大変だ。監督として乗船するのが普通ではないのか。

シャバの常識に疎い俺だが、流石にそれくらい解る。

 

「そういえば海自って、何ですか?」

 

「え?海上自衛隊だけど?」

 

「海上自衛隊?」

 

「……もしかして、知らないですかね。」

 

岬さんはこくりとうなずく。

水産高校生、海自くらい知っとこうよ。

ちょっとショックだ。

……色々な事に驚いたせいか、なんだか頭痛がしてくる。

 

「あの、すいません。外の空気吸いたいんですけど、大丈夫ですか?」

 

「あ、はい。どうぞ!」

 

--

 

「ふぅ……あー、落ち着いた。」

 

岬さんの案内で俺は船の外に出た。

ここに来るまでに何人もの人とすれ違ったのだが、本当に女の子しか居ない。大人の姿は影も形も無かった。

俺は艦の壁に寄りかかる。

塩風が心地よく吹き抜けていき、心を落ち着かせてゆく。やはり海の上というのは心地良い物だ。

ふとタバコを吸いたくなったが、流された時にシガーケースの中が浸水してしまったようで、現在渇かしており手元に無い。

岬さんはデカい猫に餌をあげている。

なんともふてぶてしい顔をした猫だ。しかし何故か愛嬌を感じるのは何故だろう。

 

「あのー、岬さん。」

 

「はい?」

 

「少し歩いて来て良いですか?」

 

「大丈夫ですよ!」

 

岬さんの許可を得た俺は、ゆっくりと船を見ながら歩き出す。

晴風、といったか。

俺の勝手なイメージでは、実習船というのは白とか目立つ色で塗られるイメージだったのだが、この船はまるで軍艦のような濃灰色だ。

艦の構造物や、学校の物らしいエンブレムが入った煙突もどこかゴツくて、戦闘艦に見える。これでクルーが男だらけだったら、間違いなくどこかの軍艦だと思っただろう。

そんなことを考えながら艦の後部へと歩いて行く。……すると、

 

「……ん?」

 

俺の視界の端に、似つかわしくない物が映った。

全体的に四角いフォルム、そして突き出た二本の筒。……どう見ても砲だ。

セーラー服の女の子達が近くに居るのがとてもミスマッチに見える。

 

(……いやいやいやそんな訳ないだろ。高校の実習船に砲って……あれはあれだ、その、古いレーダーとか通信機とか、そういうもんだろう。……それか俺の幻覚だ。)

 

そう自分に言い聞かせ、目をこすり、もう一度目を開く。しかし何度見てもあれは砲だ。

確か12.7cm連装砲……だったか。

あれは日本軍の砲のハズだ。ならばこの世に残っている訳が無い。

俺は一旦状況を整理する。

高校生が動かす軍艦、連装砲、魚雷、大人が居ない教育艦、そして海自を知らないクルー。

色々とおかしい事だらけだ。

 

……ひょっと俺はパラレルワールドか何かに迷い込んだのだろうか。

 

(……いやいや、そんなアニメみたいな話があるわけが無い。)

 

しかし、ここが別の世界だと考えると全て納得がいってしまう。現代に存在しないハズの砲。しかし艦内を見るに年代はさほど変わらないように見える。……つまり、異なる歴史を歩んだ世界……だろうか。

 

(しかし確かめないとなんとも……)

 

こういう時は漫画やアニメに解決法を求めてみる。

ジパングでは草加少佐が資料室で歴史を知っていた。この艦にそれがあるかは分からないが、クルーは学生なのだ。歴史の教科書くらいはあるだろう。

歴史の違いを確認するのならば十分だ。

俺はさっそく確認しようと考えるが、なんだか体がだるい。あまりに非現実的過ぎて体が追いついて居ないのだろうか。

なんにせよ疲れてきてしまった。 

確認は少し休んだ後でも遅くは無いだろう。

 

「岬さん、ありがとうございました。もう大丈夫です。……申し訳ないんですが、医務室まで案内して貰っても……」

 

「わかりました!」

 

俺と岬さんが艦内に戻ろうとする。すると岬さんが呼び止められた。

 

「艦長ー、副長が呼んでるよー!」

 

「あれ?メイちゃん。どうしたの?」

 

メイちゃんと呼ばれた子が、ラッタルの手すりを上手く使って滑り降りて来る。

 

「あれ?その人さっきの人?」

 

「うん。日御さんだって。」

 

「あ、日御宗太郎です。」

 

「水雷委員の西崎芽依。よろしく。」

 

着ているパーカーのフードには耳が付いている。恐らく猫か何かをモチーフにしたのだろう。

……にしても水雷委員とは。中々に物騒な委員会である。

 

「そうそう艦長、とりあえず艦橋に来て欲しいって。」

 

「シロちゃん……何だろう。」

 

「遅刻の事じゃない?」

 

「でもそれはツグちゃんに連絡して貰ったよ?」

 

「それでも来いってさー。」

 

「うん……ってダメだ、」

 

ラッタルを上ろうとした所で岬さんが止まる。

 

「私、日御さんを医務室に連れてかなきゃいけないから……」

 

あー、そういう事か。

 

「あ、俺は大丈夫ですよ。ここで待ってましょうか?」

 

「うーん……じゃあ、一緒に艦橋に行きませんか?」

 

「あ、はい。別に良いですけど。」

 

「じゃあ、付いてきて下さい。急だから気をつけて下さいね!」

 

そう言ってラッタルを上り始める。

俺は岬さんに続き、下を向いてラッタルを上る。何故下を向いてるかって?察してほしい。俺なりの紳士の配慮というヤツだ。

ラッタルを上ると、艦橋につながる金属の戸を開け、中に入った。

やはり女の子しか居ない。

 

「艦長!何処へ行って居たのですか!遅刻しそうな時に!……というかその男は誰ですか!」

 

「その男って……」

 

初対面の大人に随分高圧的な子だ。西崎さんの言っていた副長だろう。

黒髪ポニーテール。真面目そうな委員長タイプだ。少し融通が利かなそうだ。

 

「シロちゃんは会ってないんだっけ?この人は日御さん。さっき救助した人だよ。」

 

「どうも、日御宗太郎です。助けて頂いてありがとうございました。」

 

「あっ、その、すいません。副長の宗谷ましろです。……あと艦長、シロちゃんはやめて下さい。副長、もしくは宗谷さんと……」

 

「えー?それじゃ他人みたいだよー」

 

なんだか俺抜きで話初めてしまった。なんだろう。これが青春というヤツだろうか。

彼女が居たことはあるが、中高と男子校という学生生活を送った挙げ句すぐに海自に入った俺には中々新鮮で微笑ましい会話だ。

 

そんな時ふと艦橋の窓の外を見る。青い空に白い雲。素晴らしい天気だ。……しかしその中に、豆粒のような「何か」が見えた。

 

目をこらして見ると、それはどうやらこちらに飛んできているようだ。

 

「ッ!やべえ!」

 

「うぇ?!」

 

背中に悪寒が走った俺は本能的に走りだし、舵輪を握る女の子から舵輪を無理やり引きはがし、そして思いっきり回して取り舵をきる。

 

「日御さん?!何を-」

 

岬さんが驚いてそう声をだした瞬間、艦が激しく揺れ、「晴風」の艦首付近右側で大きな水柱が立った。

砲撃。さっきの豆粒の正体は砲弾だったのだ。

 

『着弾!右20度!』

 

「え、着弾……?」

 

伝声管で伝えられたその言葉に、艦橋は一瞬静まりかえった。

 




眠い中書いたんで文章がちょっとおかしいかもです。


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