巨人族の弟子 (猫ペンギン)
しおりを挟む

1話

西の海の西側にある小さな島。

そこにはもともと色んな村が存在していた。

そんな過去を持つ島に今、生きている人間は一人しかいない。

 

幼少期に、とある悪魔の実を食べ、実質この世の中で最強の力を手にしたと思われる少年は、その最強の力のせいで生き延びてしまうのだった。

 

 

##

 

腹減った。

本当に腹減った。

この島で生き延びてからしばらく食料に困ることはなかったが、さすがに食料が尽きた。

あと、魚はもう飽きた。

あれから2年くらい経つのだろうか。

この世界は海に出る人間が多いが、割と出ない人間もいるから。

俺も海に出ないでゆったりと過ごしたかったのに。

まさか肉を食いたいがために海に出ることになるとは思わなかった。

有事のためにとっておいた舟が役に立つとは。

外で生きていけるかどうかも分からない。でも、孤独はもう嫌だ。

人を探して島を駆け巡り、誰も居ないことに気がついたのもつい最近の話しだ。

「はぁ・・・行くか・・・」

独り言を呟きながら、舟の舵を切る。

航海術なんてものは身についていないが、適当に進めばどこかしらの島には着くだろう。

この世界は島だらけだし。

 

「ん?なんだあれ?」

海になんか大きなものが浮かんでいる。

あれは船かな?

とりあえず、悪い人がたくさん乗ってても俺が死ぬことはないだろうし、近づくことにするか。

 

 

 

「・・・でけぇ・・・」

 

近づいてやっと分かったそれは、巨人族だった。

初めて巨人族を見るが、なんで海に浮いてんだ?

生きてるか死んでるかも分からないが、ここにずっといたら生きてても死ぬかもな。

とりあえず舟が小さすぎて乗せれないから、なんか網でグルグルに巻いて引き摺ってくか。

 

俺はとりあえず、能力を最大限に発揮して、どっかの島へ最速で向かうことにした。

どっちにしても能力使わないと重すぎて舟が動かないし。

 

##

 

島に着いた。

なんとか着いたが、この辺りは人がいないな多分。

なんか気配みたいなのが全然ない。

生まれた島で人を探してた時と同じだ。

でも、ちょっと歩けば人がいそうな気もしている。

俺の希望的観測ではないことを願うか。

巨人族をよく見ると生きてはいる感じだったし、この砂浜に置いといて俺はとりあえず人間を探すことにするか。

 

##

 

「・・・すいません」

とりあえず第一島人を発見したので、声をかける。

 

「ん?どうした?見かけない顔だが・・・迷子か?」

 

「いえ、今さっき島に着いたんですが・・・ちょっと教えてほしいことがありまして・・・」

 

「なにかね?」

 

優しい顔をしたおじさんは、見た目通り優しかった。

俺は久しぶりに人と話すからあまり言葉がうまく出なかったが、なんとか会話を続けてくれた。

それで分かったことは2つ。

この島の名前がオハラといい、学者が多いということ。

肉を売っている店の場所。

とりあえずお礼を言ってから、肉を買って最初に着いた砂浜に向かったのだった。

 

##

 

「デレシシシシ!」

 

賑やかな話し声が聞こえた。

巨人族のおっさんの目が覚めたのか?

「こんにちは。大丈夫ですか?」

「んあ?おめぇだれだ?」

同じくらいの背丈の女の子が巨人族に隠れたのをスルーして、話しかけたが、質問に質問で返されてしまった。

「・・・俺の名はクロス。海のど真ん中でおっさんが浮いてたから、とりあえず引っ張ってきたんだけど大丈夫そうだな。」

「おぉ!ワシを助けてくれたのか!ありがとよ!ワシはサウロという名だ!ハグワール・D・サウロだ!」

「ん、そうか。とりあえず肉でも食うか?」

俺は大量に購入した肉を目の前に置いた。ちなみにお金は、前の島にあったお金をかき集めといたから、2000万ベリーくらいは持っている。

「デレシシ!食べさせてもらおう!おぉ、ロビン!おめぇも食え!」

巨人族の後ろから女の子が恐る恐る出てきた。

「・・・」

「・・・ん?誰だお前。まぁ良い。とりあえず肉だ。肉を食おう。・・・お前も食っていいぞ」

ロビンと呼ばれた子は黒髪の似合う美少女だったのでちょっと緊張したが、そんなことよりも今は肉だ。

とりあえずマッチで焚き火をし、肉を焼く。味付けは塩しか買わなかったが、肉が食えるならこの際なんでも良い。

俺ってこんなに肉肉言う奴だっただろうかとも思ったが、話しは腹ごしらえしてからだな。

 

##

 

「ご馳走さまでした」

ロビンという子も、細々と食べていたが、まさか向こうから話しかけてくるとは。

「ん、かまわんよ。俺は別の島から来たんだけど、とりあえず目的もないからこの島に住もうと思っている

。ロビンはこの島の子か?」

「そう。たぶん大丈夫だと思う。けど、わたしは妖怪だからあまり近づかない方がいい。」

妖怪?

俺がそう思っていると、ロビンはそう言ってどこかに行こうとしたが、ちょっと離れてこちらを振り向いた。

「・・・また来る」

「デレシ!デレシシ!待ってるでよ!」

 

サウロが代わりに答えた。

とりあえず初めての航海(漂流)でちょっと疲れたので、一旦サウロと話してココで野宿でもするか。

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2話

##

漂流から4日目、目が覚めた俺とサウロは腹ごしらえもそこそこに話し合うことにした。

 

「・・・なぁサウロ。これからどうする気だ?」

 

「デレシ!ワシはある島を探してるんだで。まだ動けそうにないから、舟でも作りながら療養しようと思うているんだで」

 

「そうか。俺はどうしようかな?」

 

本当にどうしよう。何か生きる目的みたいなものがないからなぁ。

世はまさに大海賊時代と言われているけれど。

海賊や海軍、賞金稼ぎと色々あるらしいが、どちらにせよ力を付けないと、すぐに死にそうな気がする。

大抵は能力でどうとでもなりそうだけど。

まだ保留という形でいいか。

ここに滞在するという手もあるし。

 

「・・・おはよ」

 

話していたら、またロビンがやってきた。

ここに着いてから毎日のように色々と食べ物を持ってきてくれている。

 

「なぁ、ロビン。こないだ言ってた妖怪ってどういう意味だ?」

 

「それは・・・」

 

そういうとロビンの肘から腕が3本くらい生えてきた。たぶん俺と同じ能力者だろう。

それで化け物扱いされたのだろう。とても悲しい目をしている。

表情には出てないようにも見えるが。

「怖くないの?」

「別に怖くはないかな」

「ワシは"偉大なる航路"におった事あるで。すげェ能力者いっぱい見たでよ。そうか羨ましいでよ。デレシシ!!便利そうだなデレシシ〜〜シ!!」

「うふふっ変な笑い方」

ロビンは嬉しそうに笑った。

それにしても偉大なる航路にいたのか。巨人族ってのは偉大なる航路にしかいないのかな?

サウロに鍛えてもらえるかどうかきいてみようかなぁ。

俺も能力者だけど、見た目の変化と言えば、この白髪が目立つ容姿が変化っちゃ変化だな。

「デレシ!」

「うめーうめーデレシシシシ!!」

考え事をしてたら、いつのまにかロビンの笑い方も変になってた。

まぁ、笑顔が一番だな。

俺はうつらないように気をつけよう。

 

##

 

「できたでよーー!!イカダ!!デレシシシシ」

あの後俺たちは、サウロが乗るための船を作った。

まぁ船というか本当にイカダだな、これは。

「じゃあ・・・・・もう行っちゃうの?」

「「!」」

ロビンがあからさまに悲しそうな顔をしている。

「もうちょい待ってくれよ、サウロ。着いていくかここに残るかまだ決めきれてないんだよ」

「そういや旗でも付けようと思うとったとこだで。も少しここにおるでよ。クロスもゆっくり決めればええ。デレシシ!」

サウロは良いやつだな。

ロビンも嬉しそうだし。このままこの3人でここにいれないものかな。

 

「私も海に出たいなぁ・・・」

ロビンがポツリとつぶやいた。

 

「私のお母さんは考古学の研究が忙しいんだけど、いつかまたこの島に帰ってきた時には、今度は海へ一緒に連れてって貰うの!!」

そう話すロビンは楽しそうだ。

「その為に勉強して、私、やっと考古学者になれたのよ」

「考古学者か、スゲェな」

そういや、考古学の島だったな、ここは。

「おめェ、母ちゃんの顔も覚えてないんだで?」

「・・・うん。でもお母さんだもん」

母さんか。二年前まで俺も両親は普通にいたんだよなぁ。

 

「知ってる?サウロ、クロス」

「「ん?」」

「世界には、100年間ポッカリ空いた、誰も知らない歴史があるの」

「あァ、"空白の100年"というやつだで?興味あるが政府はそれを調べることを禁じとるでよ」

・・・初めて聞いたな。そんなこと有り得るのだろうか。

 

「うん。私のお母さんは世界中でそれを調べて回ってるんだって。・・・でも、これは誰にも言っちゃダメよ!本当は犯罪だから」

「・・・・・・・・え・・・!!・・・それはまさか"歴史の本文"という石を探し回ってるという事ではねェか!?」

「"歴史の本文"知ってるの・・・?」

「知っとるもなにも!!ええかロビン!こういう問題は人前で口にしちゃイカンでよ!!ましてやおめぇの母ちゃんがそれを探し回ってるなん・・・」

 

サウロが何かに気づいたようなとても複雑な表情を浮かべている。

「・・・どうしたんだ?サウロ」

「・・・どうしたの?」

 

「ロビンおめぇ、母ちゃんの名前、分かるか?」

「オルビア」

「!!!?」

ドテ・・・!!

でかい音を立ててサウロが倒れた。

サウロはロビンの母親を知ってるのか。

 

「じゃあまさか!!ここは、オハラという島では!?」

「「うん」」

ロビンと俺の声がハモった。

「うわあ!!!大変だで!!なんてこった!なんてこったワシは!!オハラに来ていたのか!!つうか、クロス知ってたんか!!」

「知ってたけど、何か問題でもあるのか?」

「問題もなにも!こうしてる場合でねェ!大変だこりゃあ!ロビン!!おめェ驚くだろうが、ワシの言うことをよく聞け!」

 

「このオハラという土地に今・・・!海軍の軍艦が向かって来とるハズだで!!」

「海軍?どうして?」

「この島の学者達を消し去る為だ!!!」

「「!!!??」」

「そんなの、ウソよ!」

「どういうことだ?」

「ホントだで!ワシはお前らにウソつかんでよ!!ええか、今すぐ町に向かって異変がねェか見てくるでよ。もしかしたら、お前の母ちゃんも帰ってきとるかもしれん!」

 

ロビンは必死な表情を浮かべてすぐに走っていった。

「なぁサウロ。お前、何者なんだ?なんでそんなこと知ってるんだ?」

「ワシは・・・元海軍の・・・中将だで!」

「!!」

マジかよ。どおりで存在感というか生命力みたいなのを強く感じるハズだ。大きいからだと思ってたが、まさか中将とは。

「なんちゅう事だ・・・!!すまねェ・・・!!ロビン!!」

サウロは頭をかかえて、申し訳なさそうにしている。その件のせいで、サウロは辞めてきたのだろうか。

「「ん?」」

海から人の気配がするな、と思ったら、同時にサウロも立ち上がった。

「大変だでよ・・・!!!もう、見えるトコまで、軍艦が押し寄せて来とるで・・・!!!」

「マジかよ!ロビンが危ねぇじゃねぇか!」

「「クソっ!!」」

サウロと俺はまた同時に走り出した。ロビンが向かった方向へ。

「クロス、おめェは俺の上に乗れ!手遅れにならんといいが・・・もっと早くに気づくべきだったで!!ロビン!!早く逃げるでよ〜〜〜!!!」

 

「うおお!なんだありゃあ〜〜〜!!!!」

「巨人族だァ!!!!」

島民たちが俺たちを見上げて叫んでいる。でもそれどころじゃない。せっかく仲良くなれたのに。

もう俺は誰も失いたくないのに。

 

##

 

・・・ズドォォン!

・・・ドゴォォォ!

すごい音が絶えず鳴り響いている。

まるで二年前のあの時みたいだ。

「「ロビン!!!」」

サウロは肩で息をしながら立ち止まった。

「ここにおったか!!探したでよ!!」

「サウロ!!クロス!!」

良かった、無事みたいだ。

抱き合ってるのがお母さんだろう。

「オルビアにも会えたんだな!」

「サウロ!あなたが何故この島に・・・!」

「なんの因果かよ!そんなことより事態は最悪だで!早く島を出ねェと!」

「・・・ロビンをお願い!!娘を・・・!必ず島から逃がして!!」

 

「!」

「え、やだ!!お母さんは!?一緒にいてくれないの!?」

ロビンのお母さんは死ぬ気だろう。

覚悟を決めた目をしている。

ロビンを生かす為に。

 

「私はまだ、ここでやる事があるから」

「お母さん!離れたくないよ!!やっと会えたのに!私もここにいる!」

 

「ロビン。オハラの学者ならよく知ってる筈よ。"歴史"は人の財産。あなた達がこれから生きる未来を、きっと照らしてくれる。だけど過去から受け取った歴史は、次の時代へ引き渡さなくちゃ消えていくの。オハラは歴史を暴きたいんじゃない。過去の声を受け止めて、守りたかっただけ。」

「私達の研究はここで終わりになるけど、たとえこのオハラが滅んでも。あなた達の生きる未来を!私達が諦める訳にはいかない!」

「わからな"い"・・・」

「いつか分かるわ」

「さぁ、行って!3人とも!」

「・・・ええんだな!?」

「いやだ!わたしもここにいるよ!お母さん!」

「お母さァん!!!」

サウロは俺とロビンを乗せて、また走り出した。

 

「生きて!!!ロビン!!!」

 

##

 

「撃てーーっっ!!」

ドドドッ・・・ズドォォン!!

 

「ぬぉォォオ!コリャワシを狙って来とるでよ!!」

「誇れ!ロビン!お前の母ちゃん立派だで!オハラは立派だでよ!この島の歴史は!お前が語り継げ!ロビン!オハラは世界と戦ったんだでよ!」

 

ヒュルルルル・・・

 

「「あ」」

サウロに砲弾が向かっている。

 

「全反射(オールリバース)」

サウロに向かっていた砲弾は全く同じ軌跡を同じスピードで戻っていく。

 

・・・ズドォォン!!!

「うわぁあああ!!!」

「何が起きたァあ!?」

「分かりません!サウロ中将に当たった砲弾が帰ってきました!!!」

 

「「クロス?」」

サウロとロビンが同時に聞いた。今のは何だ?と言いたそうな顔をしている。

「俺も悪魔の実の能力者だ。ベクベクの実を食べたベクトル人間。俺はお前らを死なせない!!」

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

3話

感想や評価、ありがとうございます。エタらないように頑張ります。


「オォォォォオラァア!」

軍艦一隻のベクトルを操作し、持ち上げ、別の軍艦に投げつけるクロスを見て、サウロとロビンは見ていることしかできなかった。

「クロス・・・」

「なんて強さだで。まだ10歳とは思えないでよ。」

 

「何事だァ!」

「子供です!サウロ中将に乗っていた子供が我々に攻撃を!」

海軍達は混乱している。

あんな小さな子供のどこにそんな力があるというのだろうかと。

 

クロスが暴れている間にも、研究者たちは本を残そうと必死に投げ捨てる。

 

場は混沌としていた。

 

「サウロ!ロビン!!」

クロスが暴れながら、2人に向かって叫んだ。

「今のうちに、イカダで逃げろ!!もうこの島は助からない!」

 

クロスが暴れ回っているが、それでも砲弾の嵐は止むことはない。

「お母さァーーん!!!」

ロビンがいくら叫ぼうが、クロスがいくら暴れようが、オハラは着実に壊されていく。

 

「サウロ中将を撃てェーー!!」

サウロに砲台が向けられる。

「クソがッッ!」

クロスは近くにある瓦礫の山をその砲弾目掛けて投げ飛ばした。

 

「ロビン!お前の母ちゃんの望みはなんだべ!!ワシと一緒に来い!」

「お母さんが!クロスが!!」

 

「俺のことは良い!早く行け!!」

 

サウロはロビンを大きな手で包み、イカダのある砂浜に向かって走り出した。

 

「長官!サウロ中将が逃げます!」

「うぉっ!!サウロ中将、本当にこの島に!!・・・撃て!撃て!砲撃しろォ!!」

 

「アイス塊"両棘矛(パルチザン)」

 

氷の槍みたいなものが、サウロの身体を突然貫いた。

 

「「サウロ!!!」」

「クザンさん!」

「・・・クザン!!」

 

「あららら・・・バスターコールが元海兵とその連れに阻止されたんじゃあ、格好付かないんじゃないの・・・」

 

「クザン・・・!おめェはこの攻撃に!誇りが持てるのか!!?おかしいでよ!これは"見せしめ"だ!!」

 

「それが今後の世界の為なら仕方ない。現に学者達は法を破ってるじゃないの。正義なんてのは立場によって形を変える。ただ、俺たちの邪魔をするなら放ってはおけねェ!」

 

ドォォォオンンン!!!

 

すると、突然島民達が逃げ込んでいた避難船が燃えて崩れ落ちた。

「「「!!!??」」」

「うわァ!避難船が吹き飛んだァ!!」

「な・・なんでだ!!」

「砲撃です!!軍艦から!!!」

「サカズキ中将の艦から!!!」

 

「・・・!バカ野郎・・・!」

「これが正義のやることかァ!!これでも、まだ胸を張れるのかァ!!」

 

サウロがクザンに向かって拳を振るう。それをクザンが避けるのを見計らって、サウロはまたロビンを乗せて走りだす。

「逃げるど、ロビン!あいつの強さは異常だで!!」

 

「サウロが逃げたぞー!学者を一人連れている!!!」

 

「アイス塊"両棘矛(パルチザン)!」

また氷がサウロ目掛けて飛んでいく。

しかしそれが当たることはなかった。

「全反射・位置標的(オールリバース・ポイント)」

跳ね返った氷は海軍の軍艦へ襲いかかる。

「少年、能力者か。何の能力なのか検討もつかないな。」

「サウロ!ロビン!先に行け!!」

 

「アイスタイム!」

今度は、クロスに対して攻撃を仕掛ける。

その氷はクロスを覆うことなく、分散されていく。

 

パキッ!パキッ!パキッ!と音だけが鳴り響き、クザンは驚いた顔をする。

 

「高重力(ハイグラビティ)!」

今度はクロスが技を仕掛ける。

重力のベクトルを操作し、触った相手の身動きが取れなくなっていく。

(重さを操る能力なのか?いや、だったら砲弾を跳ね返した意味がわからない。・・・どちらにせよ、この少年はここで捕らえなければ、いずれ事件を起こしかねない。)

「少年、名前はなんという?」

 

「・・・クロスだ」

 

クザンとクロスがやり取りをしている間に、オハラは崩れ去ろうとしていた。

 

「もうダメだ」

「倒れるぞ・・・!全知の樹が・・・!」

 

 

 

##

 

 

サウロとロビンはイカダに乗って逃げきり、今はオハラから北東に位置する無人島に隠れていた。

 

「なんとか逃げ切れたで。ロビン、苦しいときは笑うんだで」

「だって、お母さんが!クロスが!二人とも島に!うわぁぁああん!!」

ロビンはあれからずっと暗い顔をしていて、励ましても逆効果なのか泣いてしまうのだった。

 

「ぐす・・・ぐす・・・これからどうすればいいの・・・?」

「ちょいとクロスを待ってみようと思うでよ。クザンに対抗できていたから生きているなら賞金首になるハズだで!その後は、二人ともワシが鍛えるでよ!」

 

クロスが生きているかも、この島にたどり着くかどうかもサウロには分からないが、ロビンを慰める為にも、自分が信じたい為にも、そう言うしかなかった。

ただ、クロスのあの能力は強すぎるから生きているという確信もあったが。

 

 

##

 

オハラの悲劇から3日後・・・

 

 

「逃げ切れたんだな、良かった・・・」

サウロとロビンは無人島で魚を食べているところを上から話しかける。

 

「クロス!!良かった、ほんとに生きてた・・・」

「クロス!おめェなんで月歩ができるんだで?まぁ生きてて良かったでよ!デレシシシ!」

 

「月歩?月歩は知らないけど、能力でベクトル操作をしてな。重力のベクトルの向きを上にして、大きさを5倍にしているんだ。あと、サウロのいる場所がなんとなく分かったから飛んできたんだ」

 

「めちゃくちゃな奴だで、クロス!おめェその歳で見聞色に目覚めちまったのか!!?・・・しかも、クザンの奴から逃げ切れちまうとはよ・・・デレシシ!」

 

「グス・・・よかった・・・」

 

とりあえず俺はその場に降り立ち、ロビンの頭を撫でた。

ロビンは顔を赤くして泣いてる。なんか俺のために泣いてくれてるのが嬉しいな。

 

「まぁ無事でなによりだな。魚を俺にも食わしてくれ。腹ペコなんだ」

「デレシシ!デレシシシシ!こんなに嬉しいのは久しぶりでよ、デレシシ!」

「グス・・・デレシシ!」

 

サウロもロビンも泣きながら笑っている。

あいかわらず変な笑い方だが、この雰囲気は好きだな。

俺も涙が出てきた。

とある島で両親や友だちを失って悲しかったけど、こいつらは家族みたいな感じがする。

そこから俺たちは泣きながら魚を食べた。

 

 

「なぁ、サウロ。今後のことで話しがあるんだ」

「ん、なんでよ?」

「お前中将だったんだよな?俺を鍛えてくれないか?」

「おめェ、あんなに強かったのにまだ鍛えてェのか?」

 

「いや、あの氷の奴からも逃げ切るだけで精一杯だったし。何より見聞色?とかよく分かってないしな」

「・・・ワシは厳しいでよ?」

「覚悟の上だ!」

 

俺はサウロと目を合わせる。

覚悟を乗せるようにして、目を逸らさないようにする。

「分かったでよ。どちらにせよワシはお前らを鍛えたいと思うとったんだで」

 

「ん、ありがとう。・・・ロビンも鍛えるのか?」

 

「あぁ、昨日ニュースクーにコレが挟まってたんだで!鍛えないと捕まっちまうでよ!」

 

そういうとサウロは3枚の手配書を取り出した。

「な・・・!!」

そこには俺たち3人の顔が映されていた。

どこで撮影したのかは分からないが・・・。

"悪魔の子 ニコ・ロビン 7900万ベリー"

"小さな巨人 クロス 1億ベリー"

"黄鬼 ハグワール・D・サウロ 1億ベリー"

 

「初頭の手配からこの金額はイかれてるでよ。これじゃあ、どこに行っても心休まるこたァねぇ!ある程度強くならんといかんでよ」

 

「マジかよ。でもそれで鍛えてもらえるなら助かるな。でも・・・この小さな巨人てのはなんだ?」

「デレシシ!おめェ小さいのに俺と変わらんくらい力持ちだったでよ!能力のせいだろうが!まぁ黄鬼よりはマシだで!デレシシシシ!」

「・・・悪魔の子よりもマシ」ボソッ

 

ロビンも不服らしい。

学者たちを"オハラの悪魔"呼ばわりされるのが嫌なんだろうな。

 

「デレシシ!ロビンも気にするな!可愛い顔が台無しでよ!デレシシシシ!」

 

「かわいい・・・」ボッ

 

ロビンは顔を真っ赤にした。

俺たちは本物の家族のように笑い合うのだった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

4話

とある島と同じように、島に生息するイノシシや熊、海から取れる魚を能力で捉えて食べる生活を続けながら、サウロから覇気の使い方を教わっていた。

しかし、そんな生活を始めた当初、俺は10歳でロビンが8歳。

成長期なので、衣服を買わないといけないし、野菜を摂取したいとロビンは言う。

そこで、俺は一人で西の海にある花ノ国に買い出しに出かけたりした。

結構文化が発達していて料理も多いので、いつかロビンとサウロと行きたかったが、賞金首3人で固まって行動すると目立つし、何より、巨人族のサウロは変装のしようもない。

俺一人で行動しているのはそんな理由からだった。

お金は、とある島から持って来ていたのでなんとかなるが、いつかはなくなってしまうだろう。

そんな危惧もあったが俺たちはあれから楽しく自由に生活していて、オハラの悲劇からもう6年の年月が経とうとしていた。

俺は16歳でロビンが14歳。

最近ロビンが可愛くて仕方がない。

が、どうこうする気も特にない。

 

「サウロ、クロス。話があるの」

ロビンは毎日続く特訓の後でそう話しを切り出した。

 

「私、海に出たい。海に出て、"歴史の本文(ポーネグリフ)"を探す旅に出たいの」

 

ロビンは昔からの夢を叶える為に海に出たいと言いだした。

 

「デレシシ!確かにもうおめェ達に教えるこたぁァ何もねェでよ・・・ワシはロビン。おめェの夢を応援するでよ!」

 

「あー、いいんじゃないか。もうそろそろお金も心許ないしなぁ。3人で海にでるか?」

 

俺の言葉でロビンは花が咲いたように笑った。

しかし、サウロはその俺の言葉を遮った。

 

「いや、クロス。ワシは行かないでよ。ワシは大きすぎるし、おめェ達が安心して帰ってこれるようにこの島にいるでよ。それに何かあったら花ノ国でおめェが買ってきた電伝虫で喋れるんだで。デレシシシシ!」

 

ロビンと俺は悲しかったが、帰る場所になってくれるというのは嬉しい。しかし、サウロを一人置いていくのも申し訳なくなってしまう。

二人ともしょんぼりしてしまった。

 

「なに気にするこたァないでよ!おめェ達はまだ若いんだで。世界を見てくるといいでよ!むしろ長くこの島に居すぎだと思ってたでよ!デレシシシシ!!」

 

「・・・分かった。私、クロスと二人で海に出るね。それで大丈夫?クロス・・・」

 

上目遣いで不安そうに聞いてくるロビン。可愛すぎだろ、これ。

 

「あー、分かった。とりあえず空でも飛んで島を移動するか。海に出るという感じではないが、船が手に入るまでは空を移動しよう。海軍からも見つかりづらいだろうしな」

 

話は決まった。

ちなみにあれからの修行で俺たちは二人とも武装色の覇気と、見聞色の覇気を身につけ、能力の向上をし、六式も身につけた。それぞれに得意分野もある。

サウロから言わせれば、強くしすぎてしまったらしい。偉大なる航路のに行っても生きていけると言われたときはロビンと二人して驚いた。

ちなみに、ロビンも俺も月歩と能力を合わせての浮遊が得意だった。

ロビンは背中から翼のように腕と手を咲かせて短時間だけ浮遊できるようになっており、月歩と合わせたら自由に飛んでいるようにも見える。

その能力をサウロがはじめて見たときにロビンをべた褒めしていて、ロビンは顔を赤くして照れていた。

俺はベクトルの向きと大きさを変えれるのは変わらないが、その範囲が広がったと思う。どこか身体が触れていなくてもベクトルの操作が可能になったし、大きさも自在に変えれるようになった。

あと、武装色で殴られようがその衝撃を跳ね返せるので、この悪魔の実はつくづく反則的だと思う。

気をつけないと殺傷能力が高すぎるのが問題だけどな。

 

「じゃあ、出発は明日にすると良いでよ!今日はパーっとやるんだで!デレシシシシ!」

 

思い出話に花を咲かせ、俺たちは3人での、最後の夜を過ごしたのだった。

 

 

##

 

次の日、俺とロビンは旅立つ準備を終えて、島の端の方に来ていた。

サウロが大きな声で俺たちに言った。

「クロス!おめェは口数が少ないくせに生意気だったが、俺が生きてるのは間違いなくおめェのおかげだで!デレシシ!ロビンを守ってやるんだで!!そして、ロビン!ロビンはしっかりしてるから大丈夫だで!クロスを支えてやるんだで!おめェ達は一人じゃないでよ!」

 

「「サウロ!」」

俺とロビンは、泣きながらサウロに抱きついた。

 

「・・・俺はサウロのことを親父のように思っている・・・また帰ってくるときまで死ぬなよ、サウロ!!」

 

「・・・サウロとクロスが守ってくれて私は生きてる!私もサウロのことお父さんだと思ってるから・・・デレシシシ・・グス・・・」

 

「デレシシ!嬉しいことを言ってくれるでよ!・・・行ってこい!オハラの生き残りとして、過去を明かして、未来に繋げ!そしてまた、帰ってくるんだで!デレシシシシ!!」

 

サウロも号泣している。号泣しながら笑っている。

 

俺たちは泣きながら、空へ向かった。見えなくなるまで、サウロは手を振っていた。

 

「・・・よし、ロビン。"偉大なる航路"に行く前に、予定通り"西の海"を見て回ろう。最初は花ノ国で良かったよな!」

 

「うん!私も花ノ国には行ってみたかったの!楽しみ!」

 

俺たちは目元を赤くしながら花ノ国に向かう。

今日は晴れやかな出航?日和。

 

##

 

そうして俺たちは西の海を駆け巡っていった。

島に着いたら、"歴史の本文(ポーネグリフ)"を捜す。島の隅々まで捜す。

捜している途中で、財宝を偶々発見し、船を買うこともできた。

なかなかに運が良すぎると思う。

運のベクトルとかあるのだろうかとコッソリ思ったりもした。

 

途中で海軍やCP(サイファーポール)に見つかることも沢山あり、島中で戦うこともあれば、海上で戦うこともあった。

基本的な戦闘スタイルは、ロビンがハナハナの実の能力で、相手に関節技を決め、大きな腕や脚で薙ぎ払って踏み潰す。

俺は砲撃の防御と、船のベクトルを操作して逃げることだった。

俺が攻撃に回ると、阿鼻叫喚な地獄絵図になってしまうからだった。

そうして手配書の金額も上がった。

ロビンが1億3000万ベリーで、俺が3億ベリーになっていた。

 

そんな生活の中で、"世界の本文(ポーネグリフ)"を1つだけ見つけることができたが、有益な情報は記載されていなかったらしい。

それでも、それはちゃんとメモをしていたが。

 

着々と戦闘の経験を積み、"世界の本文(ポーネグリフ)"を探し回り、たまにサウロのいる島にお土産を持って帰ったりした。

 

そんな日々を過ごして、8年の月日が流れた。

西の海の捜索に限界を感じたロビンと俺は、いよいよ、"偉大なる航路(グランドライン)"に入ることを決意したのだった。

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

5話

"偉大なる航路(グランドライン)"に入って1年経ち、俺たちはアラバスタにいる。

目の前にはアラバスタの英雄と名高い七武海の一人、クロコダイルがいた。

 

「お前らの力を借りたい。"歴史の本文(ポーネグリフ)"を・・・読めるらしいな・・・・・・」

 

「・・・どこでそれを知った?」

 

俺とロビンは警戒している。

大体俺は家族以外をあまり信用してはいない。

親切心を表面に出して通報されたり、疫病神扱いされたり、ここ数年の生活で警戒心は強くなっている。

そんな日々を得て、ロビンとの絆だけはすごく強いものになってはいったが。

 

「・・・なに、俺ァ七武海だ。・・・情報なんぞどこにでも転がっているもんだ。・・・クロス、ニコロビン。俺ァこの国に"歴史の本文(ポーネグリフ)"があると睨んでいる。お前らを"歴史の本文(ポーネグリフ)"に連れて行く代わりに、そこに記載されている兵器の情報を渡してくれりゃあ良い・・・悪い話じゃないだろう?」

 

こいつは世界を滅ぼす気なのか?

俺とロビンは顔を見合わせた。

答えはもう決まっている。

 

「断るわ。別に貴方に連れて行かれないでも、自分たちで探すもの」

 

「あー、そうだな。大体人の下についたり、協定を結ぶってーのは苦手なんだ。悪いが他をあたってくれ」

 

クロコダイルは断っても、ニヤニヤと笑っている。

腹の探り合いが好きなのだろうが、実際俺たちに断られることは予定の範疇だったのだろうか。

 

「・・・"歴史の本文(ポーネグリフ)"はこの国で、王に管理されている。お前たちだけでは探しても見つけきれないと断言しよう・・・」

 

(なんだと!?この国は世界政府に黙って、"歴史の本文(ポーネグリフ)"を管理している?

アラバスタ王国は確か、世界政府加盟国だったハズだ。これはちょっと調べる価値があるな。)

 

「あー、それをお前だと連れてけるってのもよく分からんな。いくら英雄様でもそこまでの権限はないんだろう?」

 

「・・・やりようはいくらでもあるが、それは協定を結んだあとに話すこととしよう。・・・なに、今すぐに決める必要はない。また明日、同じ時間にここに来い。お前たちに損はさせねぇよ」

 

「・・・分かった。それまでに考えておくこととしよう」

 

俺たちはレインディナーズと呼ばれるカジノの地下にある部屋から出て、自分たちの船に戻ることにした。

 

##

 

「どうする、ロビン。あいつの掌の上で転がされているようでシャクだが、"歴史の本文(ポーネグリフ)"は本当にこの国にあるみたいだったな」

 

「えぇ、多分嘘は付いていないでしょうね。わざわざ私たちに接触するくらいだもの」

 

「クロコダイルがなにを考えてるかはまだ分からないが、この国を拠点にしておくのは良いかも知れないな。この国は"偉大なる航路(グランドライン)"の前半の海の中でもちょうど良い場所にあるし。あとはあいつに何をさせられるのか確認しておくか」

 

「そうね・・・なにかあってもクロスが守ってくれるよね?」

 

上目遣いで恥ずかしそうに言うロビン。わざとやってるんだろうなぁ絶対。

 

「・・・当たり前だろ」

 

俺まで恥ずかしくなってしまったが、そう言って、顔をそらし、ロビンの頭を撫でた。

 

「・・・ふふっ。嬉しい・・・」

 

花が咲いたような笑顔。

絶対にロビンを守ろう。たとえ自分が死ぬことになっても。

俺はそう再認識したのだった。

 

 

 

##

 

 

 

次の日、俺たちはまたレインディナーズの地下にやって来た。

 

「・・・答えを聞かせてもらおうか」

 

ニヤりと、クロコダイルが偉そうに聞いてきた。

 

「その前に、再確認だ。昨日の話しだと、お前が"歴史の本文(ポーネグリフ)"に連れて行くときに兵器の情報を渡すと言っていたが、俺たちが・・・というより、ロビンがそれをするだけか?他になにかさせられることがあるなら先に言え」

 

「クハハハハ・・・用心深いな・・・!その通りだ!その他には、ここレインディナーズの経営を任せたいと考えている・・・新しく組織を作ろうと考えているので時間がなくてな。あとは俺が指示する人間をスカウトに行ってもらうことだ。とりあえずその3点だけだ・・・いざという時の戦力になって欲しいとは思っているが、そこまでは望まねぇよ」

 

「スカウト?」

 

「組織を作ると言っただろう・・・賞金稼ぎや暗殺者を集めるつもりだ・・・俺ァ表に出ないようにするつもりなんでな・・・その方が都合が良い。」

 

「そうか。それくらいならまぁ良いだろう。俺たちは定期的にこの国を出て"歴史の本文(ポーネグリフ)"を探す旅に出たりすることもあると思うが、それは大丈夫か?」

 

「・・・もちろん問題ない。カジノはおまけみたいなもんだ・・・報酬として受け取れば良い。経営するだけで金になる・・・」

 

ロビンと俺は同時に頷いた。

 

「クハハ・・・じゃあ乾杯でもしておこうか。」

 

チリン

 

俺たち3人はグラスを合わせた。

これで協定が結ばれたという訳だ。

 

##

 

「・・・この組織は、秘密主義がモットーだ・・・俺のことはこれから社長と呼んでもらう。Mr.0と呼んでも良い・・・」

 

「会社みたいな形態を取るというわけね・・・構わないわ、Mr.0」

 

「コードネームか・・・用意が良いんだな。俺たちのはもう考えているのか?」

 

「・・・Mrの後の数字が小さい順番で序列を決める。あとは男女のパートナーで考えているが・・・お前らは副社長にしておこう。ニコロビン、お前はMs.オールサンデーと名乗ってもらう。クロス、お前はMr.i(アイ)としようか・・・」

 

「数字じゃねぇのかよ!」

 

「imaginary numberのことだ。お前の懸賞金は俺を超えてるから序列のつけようがねぇのさ。俺の下につきたくもないんだろう?」

 

「虚数のことね・・・」

 

「あー、よく分からんが・・・それで良いよ・・・組織名は決めているのか?」

 

「会社名はBW(バロックワークス )。"理想国家の建国"が最終目標とだけ言っておく。あとは、この電伝虫を渡しておこう」

 

俺たちはクロコダイルから電伝虫を受け取った。

 

「・・・詳しい話はまた後日だ。とりあえず社員集めをしてもらうことになるだろうが・・・要件は電伝虫で伝える・・・」

 

こいつ割とマイペースなやつだな。

長く話していると疲れる相手だから、話が終わるなら別に良いけどさ。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

6話

ロビンと一緒に西の海に帰ってきた。

社長から指令が出たのだ。

 

”西の海”で『殺し屋』の異名で知られている賞金稼ぎ。ダズ・ボーネスというやつをスカウトして来い・・・と。

 

めちゃくちゃ有名人で、俺も名前を聞いたことがある。

賞金稼ぎなら、向こうも俺とロビンのことを知っているのだろう。

 

何より賞金稼ぎなら、BW(バロックワークス )のことも耳にしたことくらいはあるかもしれない。

 

スカウトした賞金稼ぎに、スカウトをするように指示を出していたから、社員も結構な数が集まってきている。

 

「クロス。ダズ・ボーネス はあの酒場にいるそうよ」

 

聞き込みを続けているとすぐにダズ・ボーネス は見つかった。

有名人ということもあるだろうが、ロビンがハナハナの実の能力で、目や耳を咲かせて情報収集をしているのが大きい。

 

「失礼しまーす」

そう言って酒場の扉を開けた。

酒場自体は綺麗だが、客の面子がすごい。どこぞのギャングやら海賊共が騒ぎ立てている。

スカウトする時は結構酒場ですることが多いのだが、大体海賊が多いか海兵が多いかのどちらかだ。

海兵が多い酒場は、気づかれると面倒なのでスカウトに向いていない。

そういう意味では海賊共が多い酒場で良かったと思う。

ただ、海賊が多くても面倒であることに変わりはないが。

 

「おい・・・あいつ小さな巨人じゃねぇか!?」

「本当だ!隣にいるのは悪魔の子だぞ!」

「巨人ではないが、小さくもねぇな!以外にひょろっちぃけどよ・・・」

「最近は小さな巨人の意味を込めて、小鬼って呼ばれてるらしいぞ・・・!」

 

俺たちに気づいた奴らが、ヒソヒソとこちらの様子を伺いながら喋っている。

どこの酒場でも同じだ。

挑戦してくる馬鹿もたまにいるが、今日は早くダズ・ボーネスを勧誘したいから勘弁だと思う。

久しぶりにサウロに会いたいし。

つーか、小鬼って何だよ!すごく弱そうじゃないか。

 

ダズ・ボーネスはカウンターで一人で酒を飲んでいた。こちらに気付いてはいるようだが。

とりあえず話しかけようとカウンターに向かう。

 

「おいお前!3億の首らしいな!俺たちの為に死んでくれや!」

 

歩いている途中、身の程をしらない馬鹿共が俺の前に立ちはだかった。辺りが一瞬だけ静まり返った。

やはりこういう馬鹿はどこにでもいるんだな。

 

「あ、あいつら!最近、億越えの賞金首ばかり狙っているゴリアテ一味じゃないか・・・!」

 

「いや!流石に3億は無理だろ!」

 

「けど7人いるうちの一人一人が億越えを相手にできるらしいぞ・・・」

 

 

「なぁ、小鬼さん。表に出ろやぁ!俺たちに倒されてくれよぉ!そして、ニコ・ロビン!そんな奴と一緒にいねェで俺たちと楽しいことしようぜぇ」

 

ゴリアテというやつがニヤニヤとこちらを見ている。

いや、ロビンのことを舌舐めずりしながら見てやがる。後ろのやつらもニヤニヤしていた。

 

よし、こいつら、殺す。

俺は、ゴリアテの左腕を掴んだ。

 

「ん?なん・・・」

 

ブチブチブチィ!!

 

ゴリアテの肩から腕を引っこ抜いた。血はベクトル操作で流れないようにしているが、相当痛いだろう。

 

「ッギャアアああああ!!!!」

 

「こ、こいつ!!やりやがった!どんな力してやがる!!」

 

「てめぇ!!親分に何しやがる!お前ら!!かかれぃ!」

 

そういってゴリアテの後ろにいた6人が一斉に剣を持ち上げて俺に向かってきた。ゴリアテは苦しそうに地面に這いつくばっている。

 

「超・重力(グラビティ)」

 

ベクトル操作で、その6人にかかる重力を上げていく。

その6人は地面に倒れ、身体中から血を吹き出し、地面の中に落ちていった。

 

「「「はぁ!!???」」」

 

「ヤバい!あいつはヤバすぎる!!何をしたらあんなことになるんだ!!?」

 

周りの観衆共が喧しい。

俺はそのまま、ゴリアテの頭をつかんだ。

 

「や、やめてくれ!やめてくれぇえ!あ、あやまる!か、金も払う・・・!」

「全方向(オールベクトル)」

 

ゴリアテの頭部は弾けとんだ。

頭と左腕のない死体がその場に崩れ落ちる。

 

 

「「「「「う、うわぁあああああああ!!!」」」」」

 

その光景を見ていた客は一斉に店の外に逃げていった。

店の中には、ダズ・ボーネスしか残っていない。

 

「クロス・・・やり過ぎじゃない?」

 

「あいつら、ロビンのことを厭らしい目で見やがったから我慢できなかった、すまん・・・悪いな、店主!これで許してくれ!」

 

店主に札束をドサリと渡して、俺とロビンはカウンターに座った。

 

「か、勘弁して下さいよ旦那!!」

 

「ごめんなさいね・・・死体はちゃんと片付けるから・・・ブランデーを2つもらえるかしら?」

 

店主はビクビクしながらも、酒の準備をしている。申し訳ないことをしてしまった。

 

「俺に何か用か・・・?小さな巨人・・・!悪魔の子・・・!」

 

「いやまぁ、ここまで騒ぐ気は無かったんだが、ちょっと話があってな。"殺し屋"ダズ・ボーネス」

 

「BW(バロックワークス)って知ってるかしら?」

 

「・・・あァ、知っている。つい先日勧誘された・・・そいつは殺したけどな」

 

「・・・そう。是非入って欲しいのだけれど」

 

「それとも俺たちを殺すか?」

 

「・・・いや、そいつは無理だろう・・・なんで俺なんだ?」

 

「・・・冷静沈着で、動揺せずに相手を殺せるところと・・・ボスは兵力と言ってたわね・・・あとはネームバリューと言ったところかしら」

 

「・・・お前ら程、悪名高くはないが・・・良いだろう。BWに入ってやる」

 

「助かるわ。じゃあこの電伝虫とエターナルポースを渡すから、なにかあったらまた連絡するわ」

 

そう言ってロビンがアラバスタの"永久指針(エターナルポース)"を渡した。

 

「・・・了解。なぁあんた」

 

「ん?なんだ?」

 

「さっきのあれ、どうやったんだ?」

 

そう言って、ゴリアテの死体を指差した。

 

「あぁ、俺は悪魔の実の能力者なんだ。ただ、こういうご時世だからな。・・・お前の能力を教えてくれるなら教えてやっても良いけど」

 

「・・・俺は"スパスパの実"を食った"全身刃物人間"だ」

 

「結構簡単に教えてくれるんだな」

 

「同じ組織に入るんだ・・・くだらねェ馴れ合いをするつもりもないが、それくらい教えても良いだろう?」

 

「なるほど、一理あるな。俺は"ベクベクの実"を食べた"ベクトル人間"だ。さっきのは、頭部から下にかかる力の、ベクトルの向きを全方向に変換して、ベクトルの大きさを大きくしただけだ。触らなくても壊せるが、触った方が威力が高い・・・これでいいか?」

 

「・・・反則じゃねェか、そんなの」

 

「あぁ、気に入ってるよ。じゃあまた会おう」

 

そう言って俺とロビンは死体を回収して酒場を出た。

酒場を出てすぐに、死体を海の方向に向かって投げ飛ばした。

 

「能力を教えて良かったの?」

 

「俺の能力を知った方が、変な考えを起こさなくて良いと思ったからな」

 

「それもそうね」

 

店の外に出た俺たちを遠巻きで見ているやつらが沢山いた。

さっきの観衆たちだろう。

もうこの島には長居できそうにない。

 

「よし、ロビン。一旦サウロのいるとこに行くか!」

 

「ふふっ、久しぶりだものね。私も楽しみ」

 

それから俺たちは、サウロのいる島に向かった。

 

##

 

「デレシシシ!久しぶりだで!デレシシシシ!」

 

「「ただいま!」」

 

「おめェ達、懸賞金がまた上がったでよ!まだまだ上がる余地があるんだで!海軍も見る目がないでよ、デレシシシ!」

 

「ふふっ、元中将がそれを言うのね」

 

「デレシシ!しばらく見ねェ内にだいぶ辛辣になったでよ、ロビン!デレシシシシ!」

 

サウロもロビンも嬉しそうに笑っている。

 

俺たちは1週間滞在することにして、サウロに今までのことと、これからのことを報告したのだった。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

7話

お気に入り400件登録されてて驚きました!
拙い文章で、文章力を上げたいとは思っているのですがなかなか上手に書けません。
でも、頑張りたいと思います!

皆様のおかげで頑張ることができます!
これからも応援の方、よろしくお願いいたします!


今回から、原作突入します!



俺は久しぶりに、レインディナーズに呼ばれていた。

最近は、ロビンがバロックワークスの仕事に行くことが多くて、俺はあまり関わっていなかった。

ロビンと一緒に居たかったのだが、ロビンに止められていたのだ。

 

 

クロコダイルはどこかに電伝虫をかけている。

 

[ガチャ・・・ヘイまいど、こちらクソレストラン・・・・・・ご予約で?]

 

「ふざけてんじゃねェバカヤロウ。てめェ報告が遅すぎやしねェか?」

 

[報告・・・あ〜〜そちら、どちらさんで?]

 

「おれだ。Mr.0だ・・・おれが指令を出してから、もうずいぶん日が経つぞ。いったいどうなっているMr.3」

 

どうやら社長はMr.3と連絡を取ろうとしていたようだ。

(あれ?でも、あいつの喋り方ってもっとこう"アレ"じゃなかったか?)

俺はそう考えて、ロビンの方を見る。

ロビンは目が合うとウインクした。

(か、かわいい!!いや、違う・・・なんか企んでるな、ロビンの奴・・・ここはロビンに従って、黙っておくか)

 

「何を黙りこくっている。おれは質問をしているんだ。王女ビビと麦わらの一味は抹殺できたのか?」

 

(王女ビビの抹殺だと?俺たちをどうやって"歴史の本文(ポーネグリフ)"に連れてく気なんだ、こいつ・・・やっぱり腹黒い奴だな・・・)

 

[・・・ああ、任務は完了しましたよ。あんたの秘密を知っちまった野郎どもは全て消し去りました。だからもう追っ手は必要ありません]

 

「そうかごくろう・・・今アンラッキーズがそっちへ向かっている。任務完了の確認と、ある届け物を持ってな」

 

[アンラッキーズ・・・?届け物?]

 

「アラバスタ王国への・・・"永久指針(エターナルポース)"だ。ミス・ゴールデンウィークと共に、お前はこれからアラバスタへ向かえ。時期がきた・・・おれ達にとって最も重要な作戦に着手する。詳細はアラバスタへ着いてからの指示を待て」

 

クロコダイルは今の話しの途中で、花瓶から引っこ抜いた一輪の花をなぜか酒の入ったグラスに入れた。

 

(?こいつ何してるんだ?)

 

[・・・・・・]

 

「オイ・・・どうした・・・」

 

[いや、何でも・・・]

 

[ドドドド・・・ボォン!!!ザクッ!!!・・・ガン・・・!!!ドサッ]

 

銃撃戦のような音が電伝虫から聞こえる。これは・・・アンラッキーズかな?

クロコダイルは機嫌が悪そうな顔をしている。

 

「何事だ」

 

[あ〜〜いや、なんでもねェ・・・ハァ。いや、ありません。麦わらの野郎がまだ、生きてやがって。大丈夫、とどめはさしました。ご安心を]

 

「生きてやがった・・・だと?」

 

クロコダイルはさっきの花の入ったグラスの水をなくし、花を枯れ果てさせた。

スナスナの実の能力で怒りを発散させてたのか。

 

「さっきお前は任務は完了したと、そう言わなかったか?」

 

[えぇ、まぁ完了したつもりだったんですがね、想像以上に生命力の強い野郎で・・・]

 

「つまりお前は・・・このおれに嘘の報告をしたわけだ・・・」

 

[あー、まぁそういう言い方をしちまうとあれなんだが・・・今、確実に息の根を止めたぜ・・・だからもう追っ手を出す必要はねェ。OK?]

 

「・・・まァいい。とにかく貴様はそこから一直線にアラバスタを目指せ。あと、電波を使った連絡はこれっきりだ。海軍にかぎつけられては厄介だからな。以後、伝達は全て今まで通りの指令状により行う・・・以上だ。幸運を・・・Mr.3」

 

ガチャ・・・

 

「ミス・オールサンデー」

 

「何・・・?」

 

「Mr.2をリトルガーデンへ向かわせろ。"アラバスタ""リトルガーデン"間の直線航路でMr.3を始末しろ・・・」

 

「・・・ずいぶん乱暴なのね、サー・"Mr.0"クロコダイル」

 

「人手なら足りている・・・おれに口答えをするのか?」

 

「・・・おい、クロコダイル!」

 

「・・・あァ?」

 

「お前、ご立腹なのは分かるが・・・あまり調子に乗ると、殺すぞ?」

 

俺は殺気を思いっきりクロコダイルにぶつける。

 

「ロビンに何かしようってんなら、俺は協定をすぐに破棄するぞ・・・!!」

 

「・・・俺と闘ろうってェのか?」

 

「・・・お前が何かしようってんならな」

 

俺とクロコダイルは睨み合う。

 

「・・・クロス、私は大丈夫よ。"Mr.0"従うわ・・・」

 

そう言ってロビンは部屋から出て行くので、俺もあとをついていった。

 

その後、一人残ったクロコダイルは腹立だしげに舌打ちするのだった。

 

##

 

「そういやロビン、相手の男は誰だったんだ?」

 

「たぶん、麦わらの一味の一員よ。私は"歴史の本文(ポーネグリフ)"を見た後は、クロコダイルがどうなろうが、どうでもいいもの」

 

「その麦わらってのはクロコダイルより強いのか?」

 

「いえ、たぶん今のままでは勝てないわね。けど、何かしてくれそうではあったわ」

 

「ふーん」

 

「なにか面白いことになりそうじゃない?」

 

そう言ってロビンは悪戯っぽく笑った。

利用されるだけのつもりはないという訳か。

 

「ロビンはどうするつもりなんだ?」

 

「ふふっ、王女様にも似たようなことを聞かれたわ。クロコダイルはアラバスタを乗っ取ろうとしているの。私は、"歴史の本文(ポーネグリフ)"は読みたいけど、アラバスタ乗っ取りは阻止したいのよ」

 

「え、乗っ取り?王様になるってことか?」

 

「えぇ、そのあと"歴史の本文(ポーネグリフ)"から得た兵器を使って、海賊王でも目指しているんじゃないかしら」

 

「マジかよ・・・」

 

「えぇ、でも、そんな兵器はない方がいいもの」

 

表面上は従ってるように見せかけて途中で裏切るということ。

 

「クロスもそろそろ知っておいた方がいいと思って」

 

「そういや、なんで俺は最近BWの仕事を任されてなかったんだ?」

 

「・・・貴方、クロコダイルからの信用がほとんどないのよ?自覚ないの?」

 

「いや、さっきのようなことも、初めてでは無かったから信用は薄いと思ってたけどさ。結構言うことを聞いてきたとは思うんだけど・・・」

 

「クロコダイルは、私に危害を与えなければ貴方は言うことを聞くけど、逆に言えば、それしかないのが怖いのよ。懸賞金も自分より高いし、何回か海軍大将や中将と闘っているのも知っている。自分より強いのに1人の為にしかその力を振るわない。それが考えられないことだとあの人は考えているわ」

 

「・・・そうか。けど俺はこの生き方しか知らないからなぁ」

 

「ふふっ、私は好きよ?」

 

「・・・そうかい、ありがとよ」

 

俺はロビンの肩を抱き寄せた。

 

##

 

 

数日後・・・

 

「"作戦"の決行は2日後の朝7時。手配は済んだのか?」

 

「えぇ、滞りなく。ビリオンズ150名はナノハナで待機。Mr.2も呼び戻しておいたわ。どうやらMr.3は捕まらなかったらしいから。オフィサーエージェント達の集合は今夜、スパイダーズカフェに8時」

 

「"Mr.i"の野郎はどうしている?」

 

「同じようにスパイダーズカフェに行くと言っていたわ。Mr.1とMr.3しか面識がないから、と」

 

「んあ、結構だ・・・」

 

「もう5時をまわってるわ。そろそろ彼らも集まり始める頃かしら」

 

##

 

 

カランコロンカラーン

 

ばん!

 

「ハイハイハイハイ、メリクリメリクリ!!あー疲れた!!」

 

「長旅っ!疲れた!腰ッ!痛っ!腰痛っ!!まったくお前のせいさMr.4!!腰にくるんだよ、お前のトロさは!!このバッ!!」

 

「えっ・・・・・・ごぉ〜〜〜〜〜〜めぇ〜〜〜〜〜〜ん〜〜〜〜〜〜ね〜〜〜〜〜〜」

「ハイハイハイハイ。ポーラ景気はどうだい今日は店ガラガラだね。店ガラだよ!ミガ!ミ!ミだね!!」

 

「フフフフ、お久しぶりね。いらっしゃい、ミス・メリークリスマス。Mr.4。今日は"あなた達"の貸し切りよ。お飲み物は、オレンジペコと・・・Mr.4、あなたはアップルティーで良かったかしら?」

 

「熱いのはゴメンだよ!すぐに飲める温度で頼むね!さァすぐ出しな!それが出しな!やれ出しな!」バババン

 

「お元気そうね。お仕事の方はいかが?」

 

「しくじれば殺される世界だ絶好調に決まってらっ!バッ!このバッ!!」ゴクッ!!

 

「それもそうね、ごめんなさい」

 

「んー何だいおめー この店は変テコな歌をかけるようになったね」

 

「歌?いいえ、今かけてるのは独奏曲。歌はなくってよ?」

 

アンドゥーオラー♪アンドゥークラー♪

 

「「ん?」」

 

「ごきげんようッ」バン!!

「最近ドゥーーーー?」

 

「バカじゃない?」

 

「バカじゃないわっ!!ポーラ、なぜならあちしはオカマだからよっ!!タコパちょうだい」

 

「タコパ?」

 

「ジョ〜〜〜〜〜ダンじゃなーーいわよ〜〜う!!タコパフェよーーーう!!常識でしょう!?がっはっはっは!!」

 

「あら、デブチン、オバハン、いたの?」

 

「ウッセーな、おめーは本当に腰にひびくから騒ぐんじゃねーやね!」

 

「あっそうそうそう言えば今回はMr.1のペアまで動くらしいのよ。なんだかんだであちし、会ったことないから楽しみなのよーーう」

 

「だけどみんなには恐がられてるみたいよ?」

 

「カーマわなーーいわよーーーう!」

 

##

 

いや〜、やっと着いたこの店だな?

砂漠の中になんでお店を建ててるんだよ、全く。

ずっと同じ風景だから迷ってしまった。

ベクトル人間の俺が方向を間違うなんてシャレにならねぇよ全く。

 

 

「オカマ拳法""白鳥アラベスク"!!!」

 

店の中から声が聞こえた。

オフィサーエージェント達か?

 

「オラァ!!!」

 

フッ・・・

 

急に、目の前から壁をすり抜けて男が出てきた。

おいおい、危ねぇな全く。

俺は手を上げてその男の背中を押した。

 

「逆・方向(リバース)」

 

「何だい!?壁をすり抜け・・・ええっ!!戻ってきたっ!!」

 

「おいおまえら同じ社員だろ、仲良くやれよ全く・・・」

 

「・・・今のはてめぇか、"Mr.i"・・・」

 

「おぉ久しぶりだな、Mr.1・・・元気そうで何よりだ」

 

「「「ええっ!何で"小鬼"がここに(いるのよーーう)!!?」」」

 

「っ!!"Mr.i"!!?あの黄猿をボコボコにしたと噂の・・・」

 

「納得だわねーい!あの"小鬼"がそうなら、すごいじゃなーーーい」

 

「おい、Mr.2!シカトこいてんじゃねぇぞ!俺はお前を殺す」

 

「んなーによーう!!?上等じゃなーーーい!」

 

2人はまた争おうとしていた。

 

「磁石(ダブルリバース)」

 

Mr.1とMr.2はそれぞれ別方向の壁にぶつかった。

 

「落ち着け、お前ら。もう8時を過ぎてるぞ!!」

 

「「くそっ・・・」」

 

2人とも壁に身体をくっつけて離れられないように操作する。

 

「・・・貴方、遅刻してきたのに・・・けどそうよ!揃うべきエージェントは揃ったわ。そしてこのスパイダーズカフェに指令状が一通届いてる。・・・ここから夢の町"レインベース"へ向かうのよ。私達が今まで顔も知らずに"社長"と呼んできた男が・・・その町で待ってる」

 

「悪かったな、遅刻して・・・」

 

「ふふふっはじめまして、"Mr.i"。私がミス・ダブルフィンガー、Mr.1とペアを組んでるの」

 

「あぁ、よろしく」

 

ドドドッ!ドドドッ!ウイッ!ウイッ!

 

店の外から変な音がする。

 

「来たみたいね、みんな外に出るわ!バンチが着いたみたいよ・・・"Mr.i"そろそろあの2人を壁から降ろしてもらえるかしら?」

 

「あぁ、はい・・・」

 

2人を地面にゆっくりと降ろした。

暴れようと頑張ったのか、肩で息をしている。

 

「・・・て、てめェ・・・」

 

「ゼェ・・・ゼェ・・・覚えてなさーーい・・・よーーう・・・!」

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

8話

「ジョ〜〜〜〜〜ダンじゃなーーーいわよ〜〜〜う!!!」

 

普段は静まりかえっていて、ほとんど誰も入ることがないレインディナーズの一室に、オフィサーエージェントが一堂に会するとなると、そこはまるで海賊船のような空間を連想させるくらい各々が自由になっていく。

 

着いたばかりの頃は、社長がすぐに来るだろうと大人しく座っていた面々も、痺れを切らすが如く騒ぎ立てるのも無理がないだろう。

 

そう。声高々に、Mr.2がくるくる回っていても無理はないというものだ。

 

「ふふふっ・・・みんな仲良くって訳にはいかなそうね・・・もっとも、その必要はないんだけど」

 

ロビンはそう言いながら部屋に現れた。何もないところから出てきたところを見ると、別の部屋からハナハナの実で身体ごと移動してきたのだろうか。能力を使いこなしてるな。先日の、海軍大将"黄猿"率いる軍艦の一戦でさらに能力に磨きがかかったというべきか。

何しろ、2人きりで海軍大将の軍艦をほぼ壊滅状態にしたのだから、懸賞金が上がるとみて間違いないだろう。

ロビンは、テーブルにつくオフィサーエージェントの面々に向かって続ける。

 

「長旅ご苦労様・・・よく集まってくれたわね。これだけの面子が揃うとさすがに静観」

 

「ここはどこなんだ、ミス・オールサンデー」

 

Mr.1が口を開いた。

ここに到着してからもずっと腕を組んで、口を閉ざしていた。たまに、一人だけ腕を組んで壁にもたれかかっている俺の方を見ていたようだが、それでも、初めてアクションを起こしたといえるだろう。

 

「そうね・・・あなた達はバンチに引かれて、裏口から入ったのよね。町は分かると思うけど・・・ここは人々がギャンブルで一攫千金を夢見る町。"夢の町"レインベース。そしてあなた達のいるこの建物は、レインベースのオアシスの真ん中にそびえる建物、この町最大のカジノ"レインディナーズ"その一室よ」

 

Mr.1は納得したのか無口のまま、前を向いたので、ロビンは一旦黙ってからまた、口を開く。

 

「他に質問がなければ話を進めるわ」

 

「そーともさ!さっさと始めな。それ始めな。やれ始めな」

 

ミス・メリークリスマスが机をバンバンバンバンと音を立てながら話を促す。このおばさん、移動している時も思っていたことだが、とてもせっかちで面白い。せっかち過ぎて言葉が足りない部分を結局説明することになるから、余計に時間をとってしまうところが特に面白い。

移動している時のことを考えていたら、ロビンはまた話を続け出した。

 

「だけどその前に、紹介しなきゃね。あなた達がまだ誰もが知らない我が社の社長・・・今までは私が彼の"裏の顔"として、あなた達に働きかけて来たけれど、もうその必要はなくなった。・・・・・・分かるでしょ?」

 

机の上にあるキャンドルの炎がゆらめき、部屋の中で威圧感が増していくと、誰も居ないと思っていたハズの上座の席から声がした。

 

「いよいよというわけだ・・・・・・!」

 

「「「な!!」」」

 

オフィサーエージェント達はみんな驚いて、声がした方を振り向いた。

 

「作戦名"ユートピア"・・・これが我々B・W(バロックワークス )社の、最終作戦だ」

 

クロコダイルは椅子をゆっくりと回転させながらこちらを振り向く。その表情は笑顔で、過剰な演出が好きなクロコダイルとしては、悪戯を成功させて満足といったところだろうか。

 

オフィサーエージェントはそのクロコダイルの思惑にまんまと引っかかり、声を張り上げる。

 

「「「え!!?!?ク・・・クロコダイル!!?」」」

 

「さすがにご存知のようね、彼の表の顔くらいは・・・」

 

ロビンはその様子を面白そうに見ながら喋ると、オフィサーエージェント達はそれぞれ、クロコダイルに疑問や驚きの声を上げた。

 

「不服か?」

 

クロコダイルは不機嫌そうに問いかける。

この中に、そう言われて不服だと答える奴はいないだろう。

オフィサーエージェントの中でも性格がまともな、ミス・ダブルフィンガーが代表して、その問いに答えた。

 

「不服とは言わないけど"七武海"といえば、政府に略奪を許された海賊・・・なぜわざわざこんな会社を・・・」

 

「・・・おれが欲しいのは金じゃない。地位でもない。"軍事力"。順序よく話していこう・・・このおれの真の目的。そして、B・W社最終作戦の全貌」

 

クロコダイルは、口に咥えた葉巻に火を付けて話し出した。

武器の在りかを示す"歴史の本文(ポーネグリフ)"を手に入れる為の国取り、その全貌を。

概ねロビンの言っていたことと一致したそれを、俺たちは途中でバレないように阻止しなければならない。

もちろん、"歴史の本文(ポーネグリフ)"を見ることを前提としているから、後でロビンと緻密に計画を練る必要がある。

しかし、麦わらの一味がいることでどう作戦が破綻していくか、その時の状況判断も大事だろう。

"偉大なる航路(グランドライン)"前半の海を航海してきたばかりの懸賞金3千万の男に、"七武海"を倒せるとは考えていない。しかし、Mr.3を倒しているのであれば、そこそこの実力を有しているとみて間違いないだろう。

 

「B・W社創設以来、お前らが遂行してきた全ての任務はこの作戦に通じていた。そして、それらがお前達に託す最後の指令状。いよいよ、アラバスタ王国には消えてもらう時がきた・・・」

 

オフィサーエージェント達が指令状を読んでいる。が、俺の元に指令状はない。あらかじめロビンから、ロビンと一緒に行動するとは聞いていた。

そうなるようにロビンが仕向けたのだろう。

オフィサーエージェント達は机の上のキャンドルの炎がで指令状を燃やした。

このそれぞれの指令状も、もちろんロビンは把握済みである。

 

「それぞれの任務を貴様らが全うした時、このアラバスタ王国は自ら大破し・・・行き場を失った反乱軍と国民たちはあえなく、我がB・W社の手中に堕ちる・・・!一夜にしてこの国は、まさに我らの"理想郷(ユートピア)"となるわけだ!!!これがB・W社最後にして最大の"ユートピア作戦"。失敗は許されん。決行は明朝7時!!!」

 

クロコダイルは俺らを見渡した。

オフィサーエージェント達も納得した顔をしている。

この国が堕ちた後の地位に興味があるといったところか。誰も失敗することなんて考えていないだろう。

 

「「「「了解」」」」

 

「武運を祈る・・・」

 

クロコダイルがニヤりと締めの言葉を言った時だった。

 

「その"ユートピア作戦"ちょっと待って欲しいガネ」

 

室内にある大階段。その大階段の上に位置する入り口から、Mr.3が入ってきた。クロコダイルは静かにMr.3を睨みつける。

 

「Mr.3!!あなたどうやってこの"秘密地下"へ!?」

 

ロビンが問いかけると、Mr.2が続けるように叫んだ。

 

「Mr.3!!!あんた一体どこから湧いて出たのようぅ!指令通りあちしが始末して・・・」

 

「待てMr.2!!!」

 

そのMr.2の発言と行動を止めるクロコダイル。

ウソの報告であんなに怒っていたのが嘘のようだ。

しかし、Mr.3は何で来たんだろうか。そのまま逃げることも出来ただろうに。

 

「湧いて出た?失敬な・・・スパイダーズ・カフェからずっとつけさせて貰っただけだガネ・・・社長、お初に!もう一度チャンスを頂きたくここへ参上いたしましたガネ。言い渡された任務を遂行しきれなかった私がMr.2・・・お前に命を狙われるのは当然の話・・・だから少々進路をまげて"エージェントの詰め所"スパイダーズ・カフェへ向かったのだ」

 

「・・・任務を遂行しきれなかった・・・・・・?何の話だ・・・!!」

 

「・・・ですから・・・麦わらの一味とビビ王女を取り逃がしてしまったことを・・・」

 

Mr.3はあの報告を知らない。

だから、逃げることもせずに報酬に目が眩んでここへ来てしまったのか。

クロコダイルはMr.3の発言に思わず立ち上がり叫んだ。

 

「取り逃がしただと・・・!!?奴らはまだ生きてるってのか!!!」

 

オフィサーエージェントの皆はおとなしく聞いていた。

 

「・・・てめェ電伝虫で何て言った・・・!!海賊共もビビも全員片付けたと、そう言ったんじゃねェのか!!?」

 

話が噛み合っていない為、Mr.3は不思議そうに話し続ける。

 

「?電伝虫!?何の話ですカネ。私は"リトルガーデン"で電伝虫など使ってませんガネ」

 

クロコダイルはその報告を聞き、椅子にまたドサりと座り込んで葉巻に火をつけた。

あの、クソレストランの報告が偽物の報告であることにようやく気付いたようだ。

考え込むようにしてクロコダイルは葉巻をふかす。

 

「・・・こりゃまいったぜ・・・アンラッキーズがあの島から戻らねェのはそういうわけか・・・1人や2人くらいは消したんだろうな・・・?」

 

「・・・イ・・・イヤそれが・・・!!」

 

「は?」

 

「・・・で・・・ででですが・・・!!情報に誤りが・・・!!奴ら・・・海賊の護衛は・・・本当は4人いて・・・!!鼻の・・・鼻の長い男が・・・まだいまして・・・!!!」

 

「てめェ・・・・・・」

 

一旦落ち着いたがクロコダイルがまたブチ切れだした。

Mr.3も正直者だな。案外姑息で卑怯という割には、素直な奴なのかもしれない。

 

「0(ゼロ)ちゃん!!?何の話をしているのか説明してちょうだいよう!!わけがわからナイわ!!」

 

しばらく大人しくしていたMr.2が、とうとう話を切り出した。

確かにさっきから他の面々も不思議そうに聞いていた。

俺とロビンとクロコダイル以外は何のことか分からないだろう。

といっても俺もロビンも、Mr.3はどちらにしろ死んでいたと思っていたが。

それから、クロコダイルはみんなに分かるように、麦わらの一味とビビ王女抹殺の任務を説明しだしたのだった。

 

「あちし・・・逢ったわよ!?」

 

Mr.2の目の前には麦わら帽子を被った男、緑髪の男、オレンジ髪の女、そしてビビ王女の写真が置かれていて、その写真を見てMr.2は汗をかいていた。

 

「なに!?」

 

「こいつらならあちし、ここに来る途中に逢ったわよう!!?」

 

そう言うとMr.2は今の写真に載っていた奴らプラスαに変身した。

これがマネマネの実の能力か。

真似という言葉では到底足りないくらいに本物のようだ。

話には聞いていたが、この男?がいないとB・W社の計画がそもそも成り立っていないとロビンが言ってたのも頷ける。

 

「そしてコイツがミス・ウェンズデーで!この国の王女ビビで!あいつらつまり"敵"だったってわーけなのう!!?」

 

「・・・そうだ、おれの正体を知ってる。野放しにしておきゃあ作戦の邪魔になる・・・そしてMr.3・・・お前の言う通り、確かに一人、さらに一匹、報告よりも増えているな・・・・・・まァ、ペットの方はおいといてもビビを合わせて5人・・・すでにこのアラバスタに入ってるとみて間違いねェだろう・・・Mr.2、さっきのメモリーを写真におさめろ」

 

「・・・しかし"社長"!!あの一味とビビは私が今度こそ必ず・・・この手で仕留めて・・・」

 

Mr.3は無謀にもこの状況でクロコダイルに意見した。

 

「黙れ、マヌケ野郎!!」

 

クロコダイルはそう言って、Mr.3の首を片手で締め上げて、スナスナの実の能力を発動していく。

Mr.3は身体中の水分をどんどん吸われていき、カラッカラのミイラのようになっていった。

もちろん、初めてクロコダイルを見たオフィサーエージェントの面々はその能力に畏怖しドン引きしていた。

 

「み、みす・・・みす・・・」

 

Mr.3が地面に四つん這いになりながら喚いている。このまま放っておくだけでも死にそうだが、クロコダイルは更に追い討ちをかける。

Mr.3から離れたと思ったら、いくつかあるボタンの1つを押した。

すると、Mr.3の床が突然開いて、そのまま下に落ちていった。

クロコダイルは外で泳いでいるバナナワニに対して、エサの時間だと言った。

突然俺がいるところの床も開くかもと思ったので、こっそり浮いておこう。

 

床の下からMr.3の叫び声が聞こえてきた気がした。

 

「・・・やってくれたぜ、あのガキ!殺しても殺したりねェ!いいか、てめェら。この5人・・・目に焼き付けておけ!!こいつらの狙いは"反乱の阻止"・・・!放っておいても向こうから必ず姿を現す!」

 

クロコダイルは新たな指令を言い渡した。"反乱の阻止"か・・・。

 

「・・・しかしゼロちゃん・・・たとえ王女といえど、ここまで動き出した反乱を止められるものかしらねい!!?」

 

Mr.2が質問をすると、クロコダイルはすぐに答えた。

 

「厄介なことにな・・・反乱軍のリーダー・コーザと、王女ネフェルタリ・ビビは幼馴染だって情報がある。70万人のうねりだ・・・そううまく止まらねェにしても、少なくとも反乱軍に"迷い"を与えることは確かだ。あの二人を合わせちゃならねェ・・・すでに反乱軍には"ビリオンズ"を数名、潜り込ませてある。そいつらの音沙汰がねェってことは、まだ奴ら直接的な行動には出ていない様だ・・・何としても"作戦前"のビビと反乱軍の接触だけは避けにゃあならん!!ミス・オールサンデー・・・この際だ、電伝虫を使っても構わねェ・・・"ナノハナ"にいる"ビリオンズ"に通達を!!奴らを発見し次第抹殺しろと!!王女と海賊どもを決して"カトレア"へ入れるな!!ビビとコーザは絶対に会わせてちゃならねェ!!!」

 

「はい・・・すぐに」

 

「さァ・・・お前らも行け・・・パーティーの時間に遅れちまう・・・俺たちの"理想郷(ユートピア)は目前だ・・・・・・もうこれ以上のトラブルはゴメンだぜ・・・!?」

 

「お任せを、社長(ボス)・・・!!」

 

「やーーったるわよーーーう!」

 

「楽しんできたまえ」

 

立ち上がったオフィサーエージェント達にクロコダイルはそう言って話を締めくくったので、俺も部屋を出るために扉に向かおうとした。

 

 

「おい、"Mr.i"!!・・・てめェはちょっと残れ・・・話がある!!」

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

9話

たくさんのお気に入り登録、評価、感想をありがとうございます!!

この話から原作が結構崩れていきます。
ご了承ください。





「おれァな、"Mr.i"・・・"七武海"として、たまに海軍本部に呼ばれることがある・・・基本的には参加しねェが、前回は招集に行くのも最後になるからと行ってきたわけだ・・・」

 

「・・・・・・」

 

"秘密地下"からオフィサーエージェント達が出て行き、クロコダイルと2人きりになった途端にクロコダイルが語り始めた。

不穏な動きでもバレてしまったのだろうか。様子を見る必要があるな。

俺が黙っていると、クロコダイルは続きを話し始めた。

 

「・・・てめェ、黄猿の野郎とどうやって闘いやがった・・・!!あの野郎の能力はおれが知ってる中でも最強の部類だが、まだ入院しているという・・・!!海軍にはお前が俺と共にいることを知られてねェようだからひとまず大丈夫だが・・・」

 

なるほど。海軍本部に行って黄猿の様子を聞いたのか。

会議の議題に俺とロビンの話もあったということだろう。

 

「・・・あぁ、作戦には関係ないことか。特別な任務でも与えられるのかと思ったよ・・・何、ロギアだろうが攻撃のしようはある。ただ、俺の能力は特に、あの男と相性が良い・・・それだけだ。」

 

クロコダイルはちょっと考え込むようにしている。

まだ何か言いたいことでもあるのだろうか。とりあえず、待っているとクロコダイルは口を開いた。

 

「・・・"Mr.i"・・・てめェはしばらく待機だ・・・おまえが動くと、トラブルを招く可能性がある・・・とりあえず朝までは自分の船で大人しくしていろ・・・」

 

なるほど。俺を動かさないというわけだ。黄猿を倒したことで、クロコダイルの牽制にも繋がったということだろう。俺は頷いてから、"秘密地下アジト"をあとにした。

 

##

 

数時間後・・・アルバーナ宮殿にて・・・

 

「やかましい!!ならんと言っている!!やられたらやり返す気か・・・!子供のケンカじゃないんだぞ!!」

 

アラバスタ王国現国王であるコブラ王は、王国に仕える護衛隊副官の2人に怒鳴り散らした。

 

「しかし国王様!!このままでは国の存亡に関わります!!」

 

「それがどうした!だからと言って原因も分からずこの国の民を打ち滅ぼすというのか!!?」

 

"ジャッカルのチャカ"と呼ばれるおかっぱ頭の男が意見するが、コブラ王は跳ね返す。

 

「それこそが国を滅ぼすということだ!!いいか、国とは"人"なのだ!!!この国があのダンスパウダーの一件以来・・・何者かの手によって唆されていることとすれば、我々が戦うべき相手はそこにいるはずじゃないのか!!」

 

「ですが、その"影"も・・・!一向に正体を掴めません!!何者かも知れぬ"影"に国を食われてからでは遅いのです!!国王!!!」

 

「・・・駄目だ・・・・・・理解しろ・・・」

 

アラバスタ王国内の内乱。国王軍と反乱軍の戦いにて、コブラ王は民が死ぬのを良しとするハズもなく、護衛副官の2人に言い聞かせた。

しぶしぶ、その場を後にする2人だった。

 

「こちらからの攻撃を王は許さない・・・あくまでも鎮圧か・・・・・・」

 

「おれ達だけではもう、兵をなだめるのも限界だぞ・・・」

 

アルバーナ宮殿の王室を出てすぐにある通路にて、"ジャッカルのチャカ"と、同じ役職についている"ハヤブサのペル"は嘆いた。

 

「こんな時、イガラムさんさえ居てくれれば・・・」

 

「その話はよせ、ペル・・・あの人は決してこの国を裏切ったりはせん・・・!何か考えがあるのだ・・・ビビ様も然り・・・」

 

「もしそうなら我々に話してくれても良かったろうに・・・それ考えの内か・・・?」

 

「・・・・・・そうだ」

 

突然、国が大変になってから姿を消したアラバスタ王国護衛隊長であるイガラム隊長と王女ネフェルタリ・ビビ、アラバスタ王国最速集団"超カルガモ部隊"の隊長のカルー。

今ごろ何をしているのかと2人して憂いている時に、宮殿護衛隊の1人がドタドタと騒ぎながらやってきた。

 

「チャカ様!ペル様!カルーが帰ってまいりました・・・!!!」

 

 

 

また、王室に戻った2人が久しぶりに見たカルーは、砂漠を走り続けて来たのだろう。

泣きながらすごい音をたてて水を飲み続けている。

 

そして、コブラ王が読み終わった、ビビ王女からの文書をチャカとペルが読み始めた。

その文書には、国を乗っ取ろうとクロコダイルが動いていることと、そのクロコダイルが立ち上げている組織に潜入していた際きイガラム隊長がこの国の為に死んでしまったこと、ビビ王女が海賊・麦わらの一味と同行していることが書かれていた。

 

「こいつは少々・・・ショックが強すぎるな・・・政府側の人間と油断していた・・・クロコダイルがまさかこの国を乗っ取ろうとしていたとは・・・!」

 

全員が項垂れている。が、落ち込んでいる暇はないと国王は顔を上げた。

 

「チャカ・・・"敵"は知れた・・・ただちに兵に遠征の準備を・・・!ビビの覚悟とイガラムの死を無駄にはさせん!!討って出るぞ!!クロコダイルのいる"レインベース"へ!」

 

「お待ち下さい!国王様!!"レインベース"へは距離があり過ぎます。例え敵が認識できようとも、向こうに戦意がなければかわされるだけだ。今・・・クロコダイルは国民を味方に付けているんですよ・・・!?お言葉ですが・・・!今では貴方よりも!!ここでクロコダイルと敵対すれば、反乱軍の火に油を注ぐようなものです!!我らが"レインベース"に攻め入っている隙をつかれたら、この"アルバーナ宮殿"は反乱軍に・・・!!」

 

国王の命令に、ペルが口を挟んだが、コブラ王は王として話を続ける。

 

「・・・反乱軍にこの宮殿を落とされるから何だと言うのだ・・・!言ったハズだぞ・・・国とは"人"なのだと・・・!!我ら国王軍が滅びようともクロコダイルさえ討ち倒せれば、国民の手によってまた"国"は再生する。だがこのまま我々が反乱軍とうち合ってみろ・・・!!最後に笑うのはクロコダイル!!奴1人だ!!!万に一つ反乱軍が止まらずとも・・・奴さえ討てれば良し!!相手は"王下七武海"の一角クロコダイル・・・!甘くはない・・・!!もはや何の犠牲もなく終結を見うる戦いではあるまい!!」

 

コブラ王は有無を言わさぬ気迫を持って命ずる。

 

「チャカ!すぐに戦陣会議を開く・・・士官達を集めよ!!ペル!お前は先行し、敵地視察へ!!出陣は明朝だ!!"レインベース"へ全兵を向ける!!!」

 

「「ハッ!」」

 

コブラ王の命令に片膝をつき答える2人。

死ぬ覚悟を持ってクロコダイルを討つというコブラ王の覚悟を見せられた2人は背筋にヒヤりと汗を流したのだった。

 

が、その時、王室の扉が突然開かれた。

 

「その話、ちょっと待ってね」

 

現れたのは2人の男たちだった。

 

 

##

 

 

「その話、ちょっと待ってね」

 

クロスは"地下秘密アジト"をあとにしてから一旦船に帰り、ロビンの立てた計画に従って、大急ぎでアルバーナ宮殿に向かった。

 

「・・・な!貴様は・・・!!"小鬼"!!?どうやってここに・・・!!!・・・・・・え!!!イガラムさん!!?」

 

ペルと呼ばれている男が俺に向かって戦闘態勢を取って叫んだが、俺の隣にいるイガラムを見るとそちらを見て驚愕の声を上げた。

 

「「イガラム(さん)!!?」」

 

他の2人も驚いていた。

俺は説明をする為に話を続ける。

 

「この男は、殺されるように見せかけさせてもらった。その方が都合が良かったからな。・・・警戒しないで欲しい。もちろんイガラムは本物だ・・・」

 

あの夜、ロビンに言われるがままに"ウィスキーピーク"へ連れてこらへた俺は、よく分からないままにこの男を攫い、船を爆破させたのだった。

今思えば、あの頃からロビンのクロコダイルに楯突く計画が始まったと言ってもいいのだろう。

ロビンが麦わらの一味とビビ王女に声をかけている間に、不気味な女装をしたこの男を抱えて、空を飛びながらアラバスタ王国に帰還した。

この男はMr.5ペアと戦闘をしたせいで死ぬほどの怪我を負っていたから、船で簡単に治療して隠していたのだった。

 

「・・・国王ッ!!急にいなくなり申し訳こざいませんでしたッッ!ビビ王女を1人にしてしまったことをッッ!・・・私は・・・・・・!!」

 

イガラムは突然土下座をし、コブラ王へ向かって泣きながら叫んだ。

 

「・・・よい・・・よくぞ生きて、帰ってきた!!!」

 

「「・・・イガラム隊長・・・!」」

 

コブラ王はイガラム隊長に優しく声をかけ、護衛隊副官の2人も涙を流している。

 

「この者が、私の怪我を治療して匿ってもらっておりました。私が死んだことにした方がクロコダイルを欺けるということで・・・」

 

イガラムが俺を紹介してくれた。

感動するのはいいが、時間がないので助かる。俺のことを信用してもらって、ロビンの立てた計画を話さなければならない。

 

「・・・小鬼殿。良ければ話を聞かせてくれないか・・・!!?」

 

コブラ王がそう言ってくれたので俺はロビンの立てた作戦を話した。

"歴史の本文(ポーネグリフ)"を見るために動いていることも含めて、だ。

国王軍と反乱軍の両軍に、B・W社の者が潜入していることも、麦わらの一味がビビ王女と共にクロコダイルを狙っていることも。

 

「・・・・・・1つ聞きたい。なぜ君はこの国を救おうとしてくれているのかね?」

 

話を聞き終えたコブラ王が質問してきた。

 

「・・・ツレが言うんだ・・・"歴史の本文(ポーネグリフ)"は読みたいが、人が死ぬのは嫌いだと・・・あと、俺はクロコダイルが嫌いだからな・・・それだけだ」

 

「・・・そうか・・・・・・」

 

連れが誰なのか分かったのだろうか、コブラ王は微笑を浮かべて頷いたのだった。

これで"歴史の本文(ポーネグリフ)"が見れるのは間違いないだろう。

 

国王軍は大人しくさせることと、潜入したB・W社員をこっそりと捜索することをお願いして、俺は宮殿を飛び出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

10話

"ユートピア作戦"まであと僅か・・・

 

夢の町"レインベース"にて、B・W社員が集っていた。

 

「ずいぶん暴れてくれたもんだな、王女様。さすがは元我が社のフロンティアエージェントだ。だが観念しな!ヒハハ!」

 

ビビ王女が地面でへたり込んでいて、その周りを人相の悪い男たちが囲っていた。

 

しかしその時、B・W社員は突然、ガトリング銃を持った鳥の銃撃で次々に倒れていった。

 

「何だ!!あの鳥は・・・!!」

 

「ハヤブサッ!!でけぇ!!」

 

「何で鳥がガトリング銃を!!」

 

「くそッ撃ち落とせ!!!」

 

B・W社員を避けて、そのハヤブサはビビ王女を掴み、上空に飛び上がると、近くにある建物の屋上に降り立った。

 

「お久しぶりです、ビビ様。少々ここでお待ちを!」

 

「ペル!!!」

 

ビビ王女は、久しぶりの護衛隊副官との再会に笑顔になる。

そのビビ王女の言葉を聞いたB・W社員達は顔を青くしていった。

 

「・・・ペル!?まさか"ハヤブサのペル"・・・!!?アラバスタ最強の戦士じゃねェか・・・!」

 

「"トリトリの実"モデル"隼(ファルコン)"・・・世界に5種しか確認されぬ"飛行能力"をご賞味あれ・・・」

 

そう言うと、ペルはその場から姿を消すかのような速度で飛び出した。

 

「!!!見えねェ!!!」

 

「撃て!!撃ちまくれ!!」

 

B・W社員達は一心不乱に辺りを狙撃していくが、ペルはその隙間をかいくぐり爪で肉を抉っていった。

 

「"飛爪(とびつめ)"」

 

そこにいた社員達は1人残らず地面に倒れた。その光景を見ていたビビ王女はホッと息をつく。

 

「助かった・・・!急がなきゃ、みんなの所へ・・・!!」

 

「そう、その気なら話は早いわ・・・」

 

「ミス・オールサンデー!!」

 

ビビ王女を連れて来るように指示を出されたロビンがその場に現れ、ビビは思いっきりロビンを睨みつけた。

 

「副社長・・・!!」

 

「"三十輪咲き(トレインタフルール)"!!・・・"ストラングル"!!」

 

何人か意識のある社員達がホッとしたように声を出した。

しかし、社員達はロビンによって意識を刈り取られるのだった。

その様子を呆気にとられたように見るビビ王女。

 

「・・・どういうつもりなの?」

 

「ビビ様・・・この方は信用して大丈夫です・・・!」

 

ペルがどうしてこの女のことを知ってるのか、なんで援護するようなことを言うのか分からない。ビビ王女は声も出せずに驚いていた。

 

「私はクロコダイルを倒そうと思っているの。ただ、麦わらの一味がクロコダイルを倒すのが理想的だと考えている・・・私と彼はあまり表に出たくないから・・・だから何も言わずに屋敷に招待されてくれないかしら・・・」

 

「・・・ナメんじゃないわよ!!いきなりそんなこと言われて、はいそうですかと納得できないわ!!」

 

ビビ王女はそう言って攻撃を仕掛けるが、ロビンはその腕を止めて面白そうに言う。

 

「まぁ。お姫様がそんなはしたない言葉、口にするものじゃないわ。ミス・ウェンズデー」

 

「今更そんな都合のいいことを・・・!!よくもイガラムを・・・!!」

 

「・・・ビビ様!イガラム隊長は無事です!つい先程帰ってこられて、今頃国王軍は反乱軍を鎮圧するためだけに動いています!!」

 

ペルがイガラムの無事をすぐに報告する。ビビ王女はその言葉を聞いて、目に涙を浮かべる。

 

「え・・・本当に・・・」

 

「さぁ、そんなこと今はどうでもいいんじゃなくて?この国を救えるのだから・・・私について来てくれるわね?」

 

ビビ王女はまだ理解しきれなかったが、力なく頷くと立ち上がった。

 

「クロコダイルの前では、私が裏切ろうとしていることは黙っていてちょうだいね・・・」

 

ロビンは"レインディナーズ"への道中で今回の作戦をビビに伝えていく。

そして、レインディナーズの"秘密地下"に到着した。

 

「クロコダイル!!!」

 

ビビ王女は地下アジトに到着するなり、クロコダイルへ声を上げた。

麦わらの一味は檻の中で捕まっており、ビビが来たことに驚いていた。

 

「・・・やァ・・・ようこそアラバスタの王女ビビ。いや・・・ミス・ウェンズデー。よくぞ、我が社の刺客をかいくぐってここまで来たな」

 

余裕そうに腕を広げて迎え入れるクロコダイルは、ビビ王女をバカにするような笑顔を浮かべた。

 

「来るわよ・・・!どこまでだって・・・!あなたに死んでほしいから・・・!Mr.0!!!」

 

「死ぬのはこの、くだらねェ王国さ・・・ミス・ウェンズデー」

 

そう言われて、ビビ王女は階段を駆け下りていく。

 

「お前さえこの国に来なければ・・・アラバスタはずっと平和でいられたんだ!!"孔雀(クジャッキー)" "一連(ストリング)スラッシャー"!!」

 

スパァン!とクロコダイルの頭部と、その後ろにある椅子を吹っ飛ばす。しかし、クロコダイルはスナスナの実の能力者。体ごと砂にして、ビビ王女を後ろから羽交い締めにした。

 

「気が済んだか・・・ミス・ウェンズデー・・・この国に住む者なら・・・知ってるハズだぞ。このおれの"スナスナの実"の能力くらいな・・・・・・ミイラになるか?」

 

クロコダイルはそういうと、ビビ王女を空いている椅子に座らせた。

 

「座りたまえ・・・。・・・そう睨むな。ちょうど頃合・・・パーティの始まる時間だ。違うか?ミス・オールサンデー」

 

「ええ・・・7時を回ったわ」

 

クロコダイルはそれを聞いて、この作戦をビビ王女に教えていく。

もう作戦が止まらないと思っているから。

 

「クハハハハハハハ・・・ハッハッハッハッハ!気に入ったかね、ミス・ウェンズデー。君も中程に参加していた作戦が今、花開いた。耳を澄ませばアラバスタの唸り声が聞こえてきそうだ!・・・そして心にみんなこう思ってるのさ、俺たちがアラバスタを守るんだ・・・と!!」

 

「やめて・・・!なんて非道いことを・・・!!」

 

ビビ王女はもう聞きたくないと耳を塞いだ。

先ほどミス・オールサンデーに聞かされた話では、ユートピア作戦の開始はされないということだった。

ただ、ここは水に囲まれた地下アジト。

もし、クロコダイルがミス・オールサンデーの考えなどお見通しだとしたら、クロコダイルの言う通りに国王軍と反乱軍が争っているということだ。

一刻も早く地上に行って確認するまで、居ても立っても居られなかった。

手足を縛られたビビ王女は椅子から倒れ降りて、ミミズのように這いつくばって出口を目指している。

 

「オイオイ・・・どうした、何をする気だミス・ウェンズデー」

 

クロコダイルは嬉しそうに話しかける。

 

「止めるのよ!!まだ間に合う・・・!ここから東へまっすぐアルバーナへ向かえば・・・!!反乱軍よりも早くアルバーナへ向かえば・・・!まだ反乱軍を止められる可能性はある!!」

 

「ほぉ・・・奇遇だな。オレ達もちょうどこれから、アルバーナへ向かうところさ。てめェの親父に一つだけ質問をしにな・・・一緒に来たければ好きにすればいい・・・」

 

そう言ってクロコダイルは懐から鍵を取り出してみせた。

 

「鍵・・・・・・!?それは・・・」

 

「鍵ィ!!?この檻の鍵だな!!?よこせ、この野郎!!」

 

檻の中で大人しく捕まっていたルフィがクロコダイルに吼えるように叫ぶ。

しかし、虚しくもその鍵はクロコダイルによって、部屋を囲むように設置されたバナナワニのいる水槽の中に落とされてしまった。

 

「お前の自由さ・・・ミス・ウェンズデー。確かに反乱軍と国王軍の激突はまだ避けられる・・・奴らの"殺し合い"が始まるまであと"8時間"ってとこか・・・時間があるとは言えねェな・・・ここからアルバーナへ急いでも、それ以上はかかる・・・反乱を止めたきゃ今すぐにでもここを出るべきだ、ミス・ウェンズデー。無論こいつらを助けてやるのもお前の自由。この鍵を開けてやると良い・・・・・・もっとも、ウッカリおれが鍵をこの床の下に落としちまったがな・・・」

 

クロコダイルが喋っている間、ビビは床の下を見て、考え込んでいた。

早くクロコダイルがこの部屋を出て行ってくれないか・・・ということを。

(まだ完璧にミス・オールサンデーのことを信用できないけど・・・ルフィさん達の捕まっている檻の鍵の複製品は先程ここに来る途中で貰っている・・・この鍵で合うと思うけど2つあれば安心・・・)

 

そうビビ王女が考えている間にも、クロコダイルが投げ込んだ鍵をバナナワニが飲み込んでしまっていた。

 

「あっ!!ワニが鍵を・・・!!」

 

「おい、どうしたビビ!!」

 

「バナナワニが檻の鍵を・・・飲み込んじゃった・・・・・・!」

 

「何ィ!!?なんとかしろ!おれ達をここから出せ!!おれ達がここで死んだら!!誰があいつをぶっ飛ばすんだ!!!」

 

ルフィがビビに向かって言い放ったその言葉に、去ろうとしていたクロコダイルが耳にして、立ち止まり振り返った。

 

「・・・自惚れるなよ・・・・・・小物が・・・」

 

「・・・お前の方が、小物だろ!!」

 

2人は睨み合う。

檻の中で、鼻の長い男ウソップとオレンジ髪の女ナミが、あまりの威圧感で気を失いそうになっている。

 

クロコダイルはロビンを引き連れて、部屋を出て行った。

 

##

 

 

「おい!何してんだ!ビビ!!ワニがそこまでやってきてるぞ!!」

 

「それは、檻の鍵・・・!!?なんでビビが鍵を・・・」

 

ビビはクロコダイルが居なくなるのを確認すると、すぐさま檻の方へ駆けて行った。

 

「・・・開いて・・・早く・・・お願い・・・」

 

後ろからバナナワニがビビを襲おうと歩いてくるものだから、ビビは焦ってしまい、なかなか鍵を開けることができない。

 

・・・ガチャッ!!

 

鍵が開いた時にはもうビビの後ろから大きく口を開けたバナナワニが迫っていた。

 

「ゴムゴムの・・・銃(ピストル)!!」

 

開いた途端に檻の外に出たルフィがバナナワニの顔を思いっきりぶん殴り、ズドォォンと音を立ててバナナワニは床に倒れた。

その拍子かどうか分からないが、部屋が崩れてきて、ところどころから水が入ってくる。

さらに、次々と別のバナナワニが部屋に入ってきたので、ウソップとナミは大騒ぎしていた。

 

「三刀流・・・龍巻き!!!」

 

「ホワイト・ブロー!!」

 

しかしそのバナナワニ達も呆気なくやられていくのだった。

その時、やられていくバナナワニのうち一体の口から、とてつもなく大きな白い球体が出てきた。

一同が驚いてその球体を見ていたら、卵のようにヒビが割れて中から人間が出てくる。

 

「"ドルドルボール・・・・・・解除!!オオ・・・!み・・・水!!水だガネ!奇跡だガネ!」

 

「「「なにーーーー!!!!」」」

 

「おい・・・あいつ・・・!」

 

「・・・Mr.3・・・・・・なんでワニのお腹の中から・・・?」

 

麦わらの一味が驚いている中、Mr.3は溜まっていく水に顔を入れ、水をゴクゴクと飲んでいた。

 

「ぷはーっ生き返った!!死ぬかと思ったガネ!」

 

完全に復活したMr.3は嬉しそうに笑っている。

 

「フフフ・・・!クロコダイルめ私を仕留めた気でいるだろうが甘いガネ!私はコイツに食われる瞬間、最後の力を振り絞って、この"ドルドルボール"を作り出し、その中に身を隠すことでなんと、この身を守っていたのだガネ。我ながら素晴らしい作戦だったガネ!ん?しかしこの"ドルドルボール"に付着している鍵のようなものは一体・・・!」

 

そう誰に説明したのか分からないが長い独り言を言い終えたMr.3は振り返った。

 

「ギャーーーー!!お前らは!!!ヘブッ!!!!」

 

そしてルフィに殴られて気を失うのだった。

 

「なんだったのかしら、一体・・・そういえば、ビビ。その鍵どうして持ってたの?」

 

「・・・ミス・オールサンデーがくれたの」

 

「え?それってどういう・・・」

 

「オイオイ、それは後に回そうぜ!それよりここから早く脱出しよう」

 

ナミとビビが会話しているのを、ウソップが止めたその時に、壁からピシッ!!と音がして、勢いよく水が入ってくる。

 

「うわぁあ!壁が壊れたァ!!」

 

「通路まで壊れた!脱出だ!脱出するぞ!!」

 

そう言っている間にも、水がそこにいる全員を飲み込んでいった。

 

「「「あああぁァァアアア!!!!」」」

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

11話

お気に入り900人越え!ありがとうございます。

これからもよろしくお願いいたします。




しばらくして秘密地下アジトに帰ってきたクロコダイルが見た光景は、クロコダイルにとって予想すらしていないひどい有様だったことはいうまでもない。

 

クロコダイルが地上に出て、まず目についたのがボコボコに伸されたB・W社員達だった。

息があるものに聞いてみたところ、Mr.プリンスと名乗る奴にやられたらしい。

聞き覚えのない人間に、麦わらの一味の可能性が高いと判断したクロコダイルは、すぐさま秘密地下アジトへと引き返したのだった。

 

水浸しになり、瓦礫とバナナワニが積み上げられている。檻の鍵はどうやったのか開けられており、水面にはMr.3がプカプカと浮かんでいた。

 

クロコダイルはこめかみに青筋を浮かばせて眉間に皺を寄せると、すぐにそこからアルバーナへと向かった。後から来いとロビンに言い残して。

 

 

「ふふふっ。怖い顔・・・」

 

残されたロビンは愉快そうに笑い、自分の立てた作戦が順調であることにほっと息をついた。

 

「さて・・・Mr.3には復活してもらわないとね・・・」

 

そう言ってMr.3の身体に腕を咲かせると、パシャパシャとMr.3を自分の方へと泳がせた。

かろうじて息があるMr.3に脚を咲かせて無理矢理歩かせる。。

 

 

「はたして・・・麦わらの男はクロコダイルを倒せるかしら・・・」

 

そう言って、崩壊した秘密アジトを去っていくのだった。

 

 

 

##

 

 

 

 

クロスは一人でナノハナにいた。

ロビンに言われて、反乱軍がアルバーナへ向かうところを足止めしているのだった。

 

とは言っても、クロスがやったことと言えば、反乱軍の乗っている馬やラクダを地面に縫い付けられたように固定しただけだ。

不機嫌そうに啼きながら、走ることができなくなった動物たちに、反乱軍たちは為すすべもない。

ただこの国を守る為にじっとしていられるハズもなく、反乱軍のおよそ半分は自分達の足でアルバーナへ向かうことにしたのだった。

残りの半分は、人間だけでアルバーナまで向かうのは不可能だと判断して、いつ治るか分からない動物たちの回復を待つことにしたのだった。

回復してから先行部隊を拾ってアルバーナに向かう手筈だ。

 

「もうそろそろ良いかな?」

 

クロスがそう言うと、今まで1時間強、動けなかった動物たちは一斉に前のめりに倒れこんだ。

 

「ど、どうした!!?」

 

「今まで押しても引いても動かなかった動物たちが動いたぞ!!」

 

「よ・・・よし!!俺たちもすぐにアルバーナへ向かうぞ!!」

 

後攻する反乱軍たちは、急に動き出した動物たちに疑問はあったものの、すぐに跨り、アルバーナへと向かうことにした。

 

「じゃあ、俺もアルバーナへ向かいましょうかね・・・」

 

クロスは、足止めをしながら今まで食べていた骨付き肉をポイっと捨てると、晴天の空に吸い込まれるように飛び立ち、黒いコートを風に靡かせながら誰の目にも止まらぬスピードで、アルバーナへと向かった。

 

 

##

 

 

決戦の地とされる"アルバーナ"その西門にて

 

「問題は、どこで待ち受けるかよ・・・敵は仮にも我が社のNoエージェントを6人消してきた海賊団・・・」

 

「そうねい!ナニセ当の王女ビビが元B・W社員だってんだからね~~~い!」

 

「回んじゃねーよ、このオカマ!!」

 

オフィサーエージェント達が各自の任務を終え、集っていた。

最後の任務である王女ビビを抹殺する為に。

護衛している麦わらの一味を殺せばさらに良し。

各々が闘る気十分に、誰が最後の任務をこなすか言い争いをしながら待機していると、Mr.4が声を上げた。

 

「きぃ~~~~~~」

 

「てぇ~~~~~~」

 

「るぅ~~~~~~」

 

「ぞぉ~~~~~~」

 

「何ィ!!さっさと言わねェかい!このウスノロダルマ!!」

 

付き合いが一番長い、Mr.4とペアのミス・メリークリスマスがその発言に唯一気づくと、Mr.4の双眼鏡を奪い取り、Mr.4が見ていた方角を確認した。

 

「カ・・・!カルガモ!!?」

 

麦わらの一味が超カルガモ部隊に乗ってアルバーナにどんどん近づいてきていた。

 

「数が増えてないかい!?6人いる!!リストから"麦わら"を外して残りは4人のはずだろ!?」

 

「違うわミス・メリークリスマス・・・社長の話を聞いてた?・・・"Mr.プリンス"って奴があるのよ。複数いると言っていたから2人増えても数は合うわ」

 

「何人増えようが標的は王女1人だ・・・何をうろたえてる・・・」

 

「それにしても"反乱軍"が来ないわねーい!作戦通りならそろそろ来ないといけないんじゃなーーい!?」

 

「確かにそうね・・・反乱軍に潜入している社員たちから報告がないのはおかしいわね・・・」

 

「Mr.1・・・・・・王女1人消せばそれでいいって?じゃあおめー・・・どれが王女だか当ててみなよ」

 

麦わらの一味がもう目視で確認できるところまで近づいていた。

しかも全員同じマントを羽織っているから、外見だけでビビ王女かどうかを知る術もない。

 

「オノレ!これじゃあどいつか王女なんだか・・・!!"あやふや"じゃないのようっ!」

 

「やっちまいなっ!Mr.4!!」

 

Mr.4がかかえている銃から野球ボールのような見た目の銃弾を出し、地面に落ちた。それは時限式の銃弾だったが、麦わらの一味の誰かが近づくなと示唆し、全員が避けていく。

 

そして、避けた拍子にそれぞれ2人ずつ南門、西門、南西門へと別れていった。

 

「アルバーナに5つある門の内、西から狙える門は3つ!そこからバラバラに入ろうってわけね・・・同じよ!中で抹殺するわ!!」

 

ミス・ダブルフィンガーがそう言うと、オフィサーエージェント達はそれぞれの超カルガモ部隊たちを追いかけていくのだった。

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

12話

反乱軍を足止めしていた俺はアルバーナ宮殿の屋上に着いて早々にクロコダイルと対峙していた。

 

「・・・おい、Mr.i・・・・・・どういうつもりだてめェは・・・」

 

クロコダイルはブチ切れていた。

Mr.2によって東門に捕らえられていた王は、オフィサーエージェントがいない隙をついてチャカによって救出されていたこと。

ビビ王女がペルと共に西門で反乱軍が来るのを待ち構えていること。

ミス・オールサンデーことニコ・ロビンがこの場に姿を現さないこと。

何より反乱軍が何者かからの足止めによってアルバーナに到着していないこと。

どれか1つをとっても"ユートピア作戦"の計画が破綻してしまいそうな事案である。

何より、クロコダイルでは俺に勝つことなどできる訳がないのだ。

 

「・・・反乱軍の足止めは、てめェだな・・・!!?」

 

ギロリと、殺気を溢れさせながら睨んでくるクロコダイルは今にも飛びかかってきそうだった。

 

「あー、Mr.0・・・何か勘違いしているようだが・・・」

 

「ほォ・・・何か言い分があるなら聞いてやる・・・」

 

「俺たちとの協定はあくまで"歴史の本文(ポーネグリフ)"に連れて行った際に、その内容を教える・・・ということだろう?・・・俺はまだ何も協定を破ったりなんかしていないぞ?」

 

ブチィッ!!とクロコダイルの血管が切れた。

クロコダイルは全身を砂にしながら襲いかかろうと向かってくる。

その時、横の方からドガァン!と建物を破壊した音が響いた。

 

「・・・お前は・・・!俺が!ぶっ飛ばすと・・・言っただろうがァァアアア!!」

 

突然そんなことを言いながらタンクをからった麦わらのルフィが現れた。

 

「クロコダイル〜〜〜〜!!!」

 

「・・・麦わらァ・・・!!!」

 

2人は睨み合っている。

 

「おいおい、麦わらの。俺がクロコダイルと闘う流れだっただろう、お前。ま、別にいいけどさ・・・」

 

空気になりそうな流れだったのでとりあえず横槍を入れる。

 

「ん?誰だお前?俺がやるに決まってんだろ!」

 

「Mr.i・・・てめェは後回しだ・・・先にこの麦わらをぶっ殺すからその後相手をしてやろう」

 

「おいおい、Mr.0・・・麦わらは置いといて、お前が俺を倒せる訳ないだろう!?」

 

「おい!失礼だな、お前!俺はこんな奴には負けねェよ!!」

 

そういうと麦わらはクロコダイルに向かって走り出した。

 

「あああああ!ルフィが生きてるぞ〜〜〜!!!」

 

「何ィ!?ルフィ〜〜!!?」

 

宮殿の下から声がする。

下を見てみると、麦わらの一味が勢ぞろいして騒いでいた。

オフィサーエージェントを倒してきたのだろうか。

ところどころ怪我は見られるが、麦わらの一味は少数精鋭部隊なのだろう。

 

「ワ〜〜〜〜!ニ〜〜〜〜イッ!」

 

「何度戦っても、お前は俺を殴ることすらできん・・・!また串刺しになりてェ様だな!!」

 

ドゴォォォン!!

クロコダイルは麦わらに殴られて血を出しながら吹き飛んでいく。

 

「だ・・・誰だ・・・?あれは!!」

 

まさかクロコダイルが殴られると思っていなかったコブラ王とイガラム は驚愕しながらその光景を見ていた。

麦わらは殴った後も次の攻撃の態勢に入っている。

 

「ゴムゴムのォ・・・」

 

「クッ・・・小僧・・・!」

 

殴られた後も、クロコダイルも態勢を整えるために立ち上がるが、すぐに肩を掴まれた。

 

「"丸鋸"!!!!」

 

すごい縦回転をしながら、クロコダイルに頭突きを食らわして、またクロコダイルは後ろの方に飛んでいった。

 

「へェ・・・やるじゃないか、麦わらの・・・」

 

「立て・・・!」

 

クロコダイルとの闘いに集中しており、瞬きすらせずにクロコダイルを睨みつけている。

 

「あの時お前の手にかかった"ユバで貰った水が教えてくれたんだ・・・水に触れたらお前は砂になれなくなる!だから雨を奪うんだろ。お前は水が恐ェから!!これでお前をぶっ飛ばせる!!こっからがケンカだぞ!!」

 

そう麦わらが言うと、クロコダイルは高笑いしながら上体を起こした。

 

「ハッハッハッハッハッハッハッハッハ・・・・・・お前が!?おれに勝つ気なのか・・・!?」

 

「ああ」

 

「確かによく見抜いたもんだ。死に際のあの状況でな・・・だが、そんなことじゃあ埋め尽くせねェ格の差がおれとお前にはある・・・それが"七武海"のレベルだ・・・!!」

 

「・・・お前が七武海だから何だ・・・!だったらおれは・・・"八武海"だ!!!」

 

麦わらの一味は頭を抑えて、その発言を聞いていた。

クロコダイルも呆れている。

 

「一体、あの男は・・・」

 

コブラ王がポツリともらした。

 

「あいつが、例の麦わらの一味の船長だな。あいつがクロコダイルを倒せるなら、それが一番良いんだが・・・」

 

「では、彼が・・・ビビをこの国へ送ってくれたという・・・」

 

俺とコブラ王が喋っている間に、麦わらはクロコダイルを殴ろうと、腕を思いっきり伸ばしたが、クロコダイルはそれを難なく避けてしまった。

 

「そんなもの避ければ意味はなく・・・濡れていようがいまいが・・・おれの掌はあらゆる水分を吸収できる・・・」

 

伸びきったその腕を掴み、水分を、吸収してシワシワにしていく。

焦ったルフィはクロコダイルを蹴りあげてその拍子に掴まれた腕を離させると、樽の水を飲んで腕を復活させた。

そして、またクロコダイルをぶん殴る為に腕を伸ばした。今度はその腕を弾いて、腕を掴まれないようにしていた。

しかし、それも難なく避けられてしまう。

 

「コザかしい・・・"砂漠の宝刀(デザート・スパーダ)"!!!」

 

クロコダイルが反撃したその技は、砂を巻き上げて相手の身体を切るものだった。

麦わらはギリギリで避けたが、宮殿がスパッと切れ、ところどころが崩れ落ちた。

武装色を覚えたらあの技は強すぎるだろうが、俺には効かないだろう。

 

「ゴムゴムの・・・」

 

また腕を伸ばしている。

ずっと同じような技ばかりで、クロコダイルは冷静になっていた。

 

「何度も何度も同じ技で・・・勝つ気はあんのか?」

 

「ああ!!満々だぞ!!!」

 

そういって伸びた腕に他の身体を近づけて、クロコダイルに裏拳を決めた。

その後、樽を持ち上げるとクロコダイルに水をかけようとしたが、クロコダイルは砂嵐を起こしてその水から避けるのだった。

麦わらは飛んでいきながら、慌てて樽を取り直した。

 

「クハハハハ!必死じゃねェか"麦わらのルフィ"・・・その樽がなきゃあ、結局なにもできねェって訳だ・・・これじゃ、初戦と何も変わらねェじゃねェか!クハハハハ!!」

 

「・・・お前の言う通りだ・・・これじゃあ何も変わらねェな・・・!」

 

そう言うと麦わらは樽に入っている水を全て飲み込んでいく。

その身体は水風船のように丸くなっていくのだった。

 

「これで今までの俺じゃねェ!!!」

 

「・・・正気かてめェ・・・・・・フザケてんじゃねェぞ小僧ォ!!!」

 

激昂したクロコダイルが麦わらに怒鳴りつけたが、麦わらは口から水の塊をクロコダイルにぶつけた。

クロコダイルはそのせいで身体が動かなくなっている。

 

「誰がフザけてるんだ!!?俺はいつでもまじめだぞ!ゴムゴムのォ・・・"バズーカ"!!!」

 

そう言って腹を両手でぶん殴ると、クロコダイルは宮殿の一角を巻き込みながら吹っ飛んでいった。

全然まじめな戦いに見えないのは2人とも能力者だからだろうが、まさかここまでやるとは思ってなかった。

しかし、時間をかけすぎだな。

あと少しで倒せないようだったら、俺が手を出すとしよう。

 

瓦礫の中からクロコダイルが立ち上がったと思ったらまた座り込み、地面に掌を向けて麦わらに話しかけた。

 

「いいか麦わら・・・地表にある全ての岩石は・・・崩壊するものだ・・・"干割(グラウンド・セッコ)"!!!!」

 

宮殿屋上にある草木は枯れ、地面はひび割れていく。

俺はコブラ王とイガラムをちょっとだけ浮かせているから問題はないが、麦わらは宮殿屋上から落ちそうになっていた。

 

「あっ・・・危ねェっ・・・あんのヤロー!!"水水の銃(ピストル)"!!」

 

そう言って水の塊を先ほどのように口から発射したが、クロコダイルは片手を上げると、その水を飲み込んでしまった。

 

「・・・おれの能力を殺した気でいたか?"水ルフィ"・・・だがそりゃあお門違いだ。砂の能力の真髄は"乾き"にある!!・・・見ろ。この右手は全てに"乾き"を与える手だ!底なしにな・・・!!木も・・・石も・・・土も!地表は全て砂に還る!!!・・・干涸らびろ"侵食輪廻(グラウンド・デス)"!!!」

 

宮殿屋上にある芝生を全て砂漠に変えてしまい、コブラ王は絶望感でいっぱいになっていた。

麦わらもなんとか飛び跳ねて、屋上の端で何とか落ちないように柵に捕まっていた。

 

「余計な体力を使わせやがって・・・」

 

クロコダイルは麦わらの首を片手で掴み、麦わらが口から上に向かって吐き出した水を避ける。

 

「ハズレだ・・・またお前の・・・敗けだったな、麦わらのルフィ・・・」

 

どんどん干涸らびさせていくと、そのまま屋上から落としたのだった。

宮殿の下の方で麦わらの一味が騒いでいる。

 

「次はお前だ・・・"Mr.i"いや、クロス・・・・・・」

 

「あぁ。お疲れのところ悪いんだが、もう時間がない。すぐに終わらせるぞ、クロコダイル!」

 

「抜かせ・・・」

 

クロコダイルは距離を詰めようと砂になって飛んできた。

 

俺には水がないから、覇気で闘うしかない。

俺の能力は、相手の攻撃は全て防御できるのに"自然系(ロギア)"に対する攻撃力がほとんどない。

並大抵の人間を殺せる能力ではあるけれど、このままこの世界でロビンを守るためには全然足りない力だ。

エルバフの巨人たちは"エルバフの槍"を用いた大技があるが、サウロは覇気の力を守りの力として使用していた。

その防御力も引き継いだ俺にはいかなる攻撃も効かない。

そんな俺がサウロに教えてもらった、唯一、ロギアに攻撃できると猛特訓した力。

あの黄猿をも退けた力。

至ってシンプルな覇気の力・・・

 

"武装色・硬化"

 

俺はそう言うと、コートの内側にあるダガー・ナイフを6本だけ取り出して、クロコダイルに向かって投げた。

 

「"同方向・強化"」

 

とてつもない速さで飛んでいくナイフがクロコダイルの身体を捉える。

 

「ぐっ・・・てめェ・・・ほんとに・・・」

 

クロコダイルは出血しながら立ち止まりこちらを睨む。

 

「"乱血"」

 

そう言って俺はナイフを乱方向に回転させる。クロコダイルの身体はたった6本のナイフによって内部まで蹂躙されていく。

 

内臓や皮膚はボロボロだろう。

クロコダイルは白目を向いて、身体中から血を吹き出して、その場に倒れたのだった。

 

ただの投げナイフだが、武装色硬化したナイフを身体から離して使うのはすごく大変なことだった。

どんどんナイフを纏う覇気が薄くて弱くなっていくものだから、訓練に訓練を重ねたのだ。

こんなことができるのは、俺とあの男くらいのものだろう・・・。

 

いとも簡単にクロコダイルを倒した俺はコートの中から骨つき肉を取り出してかぶりついた。

 

「約束だぜ、コブラ王。俺たちを"歴史の本文(ポーネグリフ)"のとこまで連れて行け」

 

「・・・あぁ・・・!!」

 

コブラ王は力強く頷いたのだった。

 

「あぁ!クロコダイルが!!おめェがやったのか!」

 

麦わらは上に吹き出した水を飲んで復活したのかすぐに屋上に上がってきた。

 

「ん?お前が敗けちゃったからな・・・悪いが倒させてもらった」

 

「なにィー!俺は負けてねェぞ!今からぶっ飛ばすとこだったんだ!!やっぱお前むかつくなァ!ってお前!それは!!」

 

麦わらは俺の持っている肉を羨ましそうに見てきた。

 

「あぁ?これか?良かったら食うか?」

 

全部言い終わる前に俺の手から骨付き肉を掻っ攫っていった。

 

「!!!お前めちゃくちゃ良いやつじゃねェか!!!」

 

そう言って麦わらは骨付き肉を食べながら、疲れ果てたのかその場に倒れてしまった。

 

「なぁ・・・コブラ王。こいつ面白い奴だな・・・」

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

13話

あれから王女ビビは遅れてやってきた反乱軍のリーダーであるコーザを説得し、納得させた。反乱軍は自分たちがしていたことに絶望していた。

イガラム 隊長も、国王軍に、この国で何が起きていたのかを説明した。

国王軍もチャカやペルの言うことに疑問を持ち、反乱軍に攻撃しようと思っていた者が多数いた為、その説明を聞いて項垂れていた。

 

その両軍に一喝し、これからの道を示したコブラ王は、さすが一国の王といったところだろう。

 

麦わらの一味は宮殿の近くで全員が倒れた為、チャカとペルが宮殿の中で匿うために隠したそうだ。

 

中央広場の爆弾による爆発はロビンと、ある男が止めたらしい。

 

クロコダイルと、一部を除くB・W社員たちは海軍に捕まっていった。B・W社が保有するダンスパウダーが押収され、国取りを始めとする他の犯罪事案も晒されて、社長を名乗っていたクロコダイルは海楼石の手錠を掛けられた。まさかクロコダイルがあの戦闘で生きているとは思わなかったが。

 

万事うまくロビンの作戦通りにことが進んでから三日後、俺たちは王宮から西にある葬祭殿(王家の墓)に来ていた。

 

「隠し階段・・・・・・!」

 

「この地下奥深くに"歴史の本文(ポーネグリフ)"はある・・・そういうものの存在すら・・・普通は知らぬものだが」

 

「裏の世界は深いの・・・世界政府加盟国の王といえど、あなた達が全てを知っているとは限らない」

 

「・・・"歴史の本文(ポーネグリフ)"を読めるのか・・・・・・?」

 

「ええ・・・クロコダイルと私たちが手を組んだのはその為よ。だから彼には私を殺せなかった・・・」

 

「手を出せば、ロビンの方があいつを殺してただろうけどな・・・」

 

俺たちは隠し階段を降りて行き、その途中でロビンがコブラ王に話しかけた。

 

「あなたに罪はないわ・・・まさかこの世にあの文字を解読できる者がいるなんて知らなかったでしょうから・・・おそらくこの国の"歴史の本文(ポーネグリフ)"には"プルトン"の在りかが記されてある。違うかしら?」

 

「わからん・・・アラバスタの王家は代々、これを守ることが義務付けられている。私たちにとってはただそれだけのものだ」

 

「"守る"・・・?笑わせないで!!」

 

ロビンはその発言に腹を立てていた。

無理もないだろう。オハラを世界政府に焼き払われたロビンにとって、読むこともできず、守る力さえもないのに、そう簡単に"守る"などと言われてしまっては・・・。

 

階段の一番下まで降りると、ひらけた場所にたどり着いた。

彫刻が施された柱や装飾されたそこは立派で、"歴史の本文(ポーネグリフ)"を大事に保管する為だけの場所という意味ではふさわしくも思える。

 

「奥の扉の中にある」

 

コブラ王の言葉を聞いて扉を開けると、中はドーム型になっていた。そのど真ん中に"歴史の本文(ポーネグリフ)"が置いてある。

ロビンが近寄り、解読をし始めた。

 

しばらく黙っていたロビンは口を開く。

「他にはもうないの・・・!?これが、この国の隠している全て・・・・・・!?」

 

「・・・不満かね・・・?」

 

「いえ・・・そんなことないわ。ありがとう・・・」

 

「・・・そうか・・・ここもダメだったのか・・・」

 

ロビンは静かに頷いた。

 

「どういうことだ?」

 

コブラ王が俺たちの様子がおかしいことに疑問を持ったようだ。

 

「これには、"兵器"の全てが記されているわ・・・でも、私たちが知りたいのは"真の歴史の本文(リオ・ポーネグリフ)"・・・ここは不発だったわ・・・」

 

「"真の歴史の本文(リオ・ポーネグリフ)"?」

 

コブラ王は不思議そうにしているが、それを説明する訳にはいかない。知ればそれだけで犯罪者である。どちらにしても、俺たちがこれからやることは確実に決まった。

 

「よし・・・とりあえず船に戻ろうぜ!元気出せよ、ロビン!やることも決まっただろ?」

 

「えぇ、そうね・・・ありがとう、クロス。もちろん、これからも探し続けるわ・・・」

 

そう喋っていると、コブラ王が今夜のことで提案してきた。

 

「なぁ・・・船に戻っても良いが・・・今夜、宮殿で会食を開こうと思っているのだ。良かったら参加しないかね?」

 

会食か・・・それはさぞかし美味しい肉が出るのだろう。でも、俺たちは敵だった訳だし・・・特に俺たちは、"歴史の本文(ポーネグリフ)"を読むためにクロコダイルとアラバスタ王国の両方を利用したと言える。いくらクロコダイルを倒したところで罪が清算される訳がない。

断ろうと思い口を開きかけると、コブラ王は話を続けた。

 

「クロコダイルは、君たちがいなくてもこの国を襲ったと思う。国を手中に収めてから兵器を探していたかもしれない・・・君たちがいなかったら反乱軍と国王軍も衝突していただろう・・・・・・良かったら礼をさせては貰えないかね?」

 

それを聞いた俺とロビンは見つめ合うとお互いに頷いた。

 

「ふふっ、行かせてもらうわ」

 

「あぁ。そう言ってもらえるなら俺たちには断る理由がないな」

 

俺たちは葬祭殿をあとにして、宮殿に向かうのだった。

 

 

##

 

 

「いやーーーっ!!よく寝た〜〜〜っ!!」

 

そう言ってルフィが寝起きとは思えないテンションで叫んだ。

 

「あっ!!帽子は!?帽子!!ハラ減ったァ!!朝メシと帽子は!!?」

 

「起きて早々うるせェなァ、てめェは・・・それに朝メシじゃねェ。今は夕方だ」

 

「帽子ならそこにあるぞ。宮殿前で兵士が見つけといてくれたんだ」

 

サンジとウソップにそう返されると、ルフィはすぐさま麦わら帽子を被った。

 

「よかった・・・ルフィさん元気になって・・・」

 

「元気?おれはずっと元気じゃねェか・・・」

 

「バカねー熱とかすごくて大変だったのよ!?ビビとチョッパーがずっとあんなのこと看病してたんだからっ!」

 

ナミからそう言われたルフィはすぐにビビとチョッパーにお礼を言った。

 

「・・・おぉルフィ。起きたのか」

 

「ああゾロ、久しぶり!!久しぶり?」

 

「まぁそういう気分にもなるだろう。なんせ3日も寝てたんだからな」

 

ウソップがルフィに説明するとルフィは驚いていた。

 

「3日??おれは3日も寝てたのか?15食も食い損ねている・・・!!」

 

ルフィたちが談笑していると扉が開いた。

 

「あぁ、元気そうじゃないか麦わらの」

 

「ふふふっ良かったわね」

 

クロス達が現れて言う。

 

「「「な!!?」」」

 

麦わらの一味とビビ王女はそれぞれ思い思いの表情をしている。

 

特にウソップとナミは怯えてしまっていた。

新しく公開された俺たちの手配書でも見ているのだろう。

 

「まぁ落ち着けよ、お前ら。俺たちは別にお前らの敵じゃない」

 

「あぁ!お前!!よくもクロコダイルをぶっ飛ばしてくれたな!?俺がぶっ飛ばす予定だったのによ!!」

 

「や、やめろよルフィ〜〜〜」

 

ルフィは怒っているがウソップがビクビクとルフィに止めるように言っていた。

 

「・・・まだ引きずってんのか。悪かったって!」

 

「謝ってくれたし、許す!!」

 

「・・・ねぇ、何でここに来たの?」

 

恐る恐るナミが挙手をしながら聞いて来た。

 

「コブラ王に、夕食にお呼ばれしたの。あなた達とも喋ってみたかったしね」

 

ニコッとロビンは返事をする。

その様子を見ていたサンジは目をハートにしてメロメロになっていた。

 

「そうか。なぁお前ら、仲間になれよ!」

 

「「「「ルフィ!!!!」」」」

 

ゾロ、ナミ、ウソップ、チョッパーがルフィに対して叫ぶが、ルフィは気にする様子が全くない。サンジだけ目をハートにしたままだった。

 

「心配すんなって!こいつらは悪い奴等じゃねェから!!」

 

「で、でもよルフィ・・・このクロスって男は懸賞金6億で、あの大将の乗っている軍艦を沈めたんだぞ!!?クロコダイルも瞬殺だったじゃねェか・・・そこにいるロビンも懸賞金4億ベリーだって言うしよ・・・」

 

「なにィ!!お前らそんなに強ェのか!」

 

ウソップがこちらをチラチラ見ながらルフィに忠告するが、ルフィは逆に、とても乗り気になってしまった。

 

「いえ・・・悪いけど仲間にはなれないわね。誘いは嬉しいけれど・・・」

 

「えぇ〜〜!良いじゃねェか!楽しいぞ、海賊!!」

 

「悪いな、麦わらの!俺たちはやることがあるからな!」

 

ちょっとホッとした麦わらの一味たちだった。

 

「やることって何だ!?一緒に来てやれば良いだろ!?」

 

ルフィはなかなか諦めない。

しかしこちらも一緒に行く訳にはいかないのだ。

 

「なぁ、麦わらの。この骨付き肉でも食べるか?」

 

クロスが懐から取り出した骨付き肉を、ルフィは「食う!」と言うと同時にぶんどって口の中に入れた。

 

「・・・それは手切れ肉だ。もう仲間にはなれない」

 

「なにィ!!!?」

 

「なによ、手切れ肉って・・・手切れ金みたいに・・・」

 

「・・・強いやつはやっぱり、どこかちょっとおかしいんじゃねェか?」

 

「ルフィとクロスってちょっと似てるな」

 

ナミとウソップとチョッパーが呆れて言った。

 

「ズリィぞ!お前!手切れ肉なんて!!」

 

「でももう食べただろう?」

 

クロスは愉快そうに笑いながら、自分の分も取り出して骨付き肉にかぶりついた。

 

「チクショー・・・諦めねェからな!」

 

ルフィは肉のなくなった骨を加えながら、しぶしぶ引き下がった。

ちょうど話が終わったタイミングで扉がノックされて、ペルが入ってきた。

 

「そろそろ大食堂にお集まり下さい。会食の準備が整いましたので」

 

 

##

 

 

 

数時間前・・・

 

 

「オイ・・・どうなってやがる」

 

元Mr.1のダズは目が覚めるなり睨んできた。

この船には他にも、元オフィサーエージェントの面々が集っていた。

 

「ふふふっ・・・私が連れてきたの。この国を狙ったクロコダイルの野望は打ち砕かれた・・・あなた達をあのままにしていたら、海軍に捕まりそうだったし」

 

「あら・・・それはありがたいけど、私たちをどうするつもりなのかしら?」

 

ロビンがそう説明すると、元ミス・ダブルフィンガーのポーラが疑問を口にしたので、俺から説明するとしよう。

 

「俺とロビンはクロコダイルと別口で協定を結んでいたが、最初から、この国をどうこうしようとは考えていなかった・・・俺たちの狙いはあくまで"歴史の本文(ポーネグリフ)"・・・」

 

「"歴史の本文(ポーネグリフ)"だと・・・?」

 

ダズは暗殺業を営んでいたから裏とも通ずる所があったので多少は耳にしたことがあったのだろう。

 

「・・・その為には世界政府を敵に回さないといけない・・・もう回してるけどな。このまま2人でやっていくのは厳しいと思ってな・・・海賊団を作ることにした」

 

「なによぅー!それじゃあ、あちし達に海賊になれって言うのーーう!!?」

 

「はなしが早くて助かる・・・なに、無理にとは言わない・・・俺たちと一緒に来てくれる気がある奴だけで良い。今から俺たちはこの国の"歴史の本文(ポーネグリフ)"を見に行く。付いてきてくれるのであれば、俺たちが戻ってくるまでにこの船に乗っていてくれ」

 

そう言って俺とロビンは船をあとにした。

呆然とした様子の元オフィサーエージェント達を残して。

 

##

 

 

「何人残っているかしらね・・・」

 

「さぁな。こればかりは無理やり連れて行く訳にもいかんさ。麦わらは結構強引だったけどな」

 

俺とロビンは自分たちの船に戻ってきた。

会食は楽しいものだったし、麦わらの一味も面白い連中だったがあのまま長居するわけにもいかない。

 

「あら、お帰りなさい。遅かったのね・・・」

 

俺たちが船に帰ると、ポーラがそう言ってきた。

ダズ・ボーネス以外の全員が残っていた。

ダズ・ボーネスは誰かと連むイメージもないし、なんとなくだがそんな気はしていた。

とりあえずこのメンバーで海賊団結成である。

 

「そういえば、船長はクロスなのか?ロビンなのか?」

 

元Mr.5のクラヴァが聞いてきた。ちなみに、中央広場の爆弾を処理したのはこの男である。

火薬だけじゃなく爆弾ごと飲み込んで、小さなパワーアップを果たしたそうだ。

 

「船長は俺だ!!とりあえず皆んなの役職みたいなものも能力や性格に応じて考えてはいるぞ!」

 

「ガッハッハ!これからよろしくねぃ、クロスちゃん!!海賊団の名前はなーんて言うのかしらねぃ?」

 

「それはおいおい考えていこうと思っているが・・・とりあえず副船長はベンサム、お前に任せたいと考えている」

 

「えぇ!!!ロビンちゃんが副船長じゃなくて良かったのーーう!?」

 

「あぁ。性格と能力を加味している。ロビンはどちらかといえば参謀だからな。ベンサムには、俺やみんなを支えてほしい」

 

「ガッハッハッハ!そ〜こまで言われちゃ、やるしかないじゃなーいのよーーうっ!任せて頂戴!」

 

ベンサムはくるくると上機嫌で回っていた。

 

「先ほど言ったように、俺が船長だ!お前らは絶対に死なせないと約束しよう・・・仲間は何があっても守る。それだけは信じてくれて大丈夫だ!!」

 

ミス・ダブルフィンガーのポーラ

Mr.2・ボン・クレーのベンサム

Mr.3のギャルディーノ

ミス・ゴールデンウィークのマリー

Mr.4のブル

ミス・メリークリスマスのアマベル

Mr.5のクラヴァ

ミス・バレンタインのホーンビー

そして、ロビンと俺の10人からなる海賊団が今ここに結成された。

 

 

 




やっとここまで来れました。
バロックワークス オフィサーエージェントの海賊団は、最初から構想としてはありました。

ミスGW、Mr.4、ミスMC、Mr.5、ミスVの名前は、勝手につけてます!

許して下さい!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

14話

プルプルプル〜プルプルプル〜

ガチャっ

 

[おう、クロスか?仲間になる気になったか?]

 

相手の男・・・麦わらのルフィが受話器をあげるなりそう言ってきた。

 

「いや・・・それは断ったハズだが・・・さっきは楽しかった、ありがとよ!」

 

[おう!で?どうしたんだ?]

 

「・・・お前らの船はいただいた」

 

[フザけんな!!!]

 

一味全員で返事してきた。よほどこの船は愛されているようだな。

 

「・・・返して欲しくばサンドラ河の上流に来い」

 

それだけ言って、俺は受話器を電伝虫の背中に戻した。

 

「・・・そんな誤解を招くような言い方しなくても」

 

「キャハハハ!さすが船長!」

 

ポーラが呆れて言い、ホーンビーが笑っていた。

他のメンバーも呆れているようだった。

 

麦わら海賊団の船である"ゴーイングメリー号を、俺たちの船"暗黒丸"と一緒にベクトル操作でサンドラ河の上流に持ってきていた。

 

「そういえば船長・・・おれ達の役割をそれぞれ教えてくれよ」

 

クラヴァがそう言ったので、麦わら達を待つ間にそのはなしをすることにした。

 

「あぁ、分かった。とりあえずじゃあ、一人一人言っていくか・・・まず副船長は先ほど言った通りベンサムだ!で、参謀としてロビン・・・ロビンには能力を使った諜報員として動いてもらうことも多いだろう。航海士はギャルディーノだな。"リトルガーデン"から"アラバスタ"まで"永久指針(エターナルポース)"なしで直線航路を辿らずに来れたから大丈夫だろう?」

 

「任せてほしいガネ!」

 

「あとは、ポーラに料理を作ってもらいたい。スパイダーズカフェの経験を生かして頑張って欲しい。ホーンビーもコックの手伝いをして欲しい」

 

「えぇ、それで良いわ」

 

「キャハハハ!腕がなるわね!」

 

「それと、狙撃手がブルとクラヴァだ。暗黒丸の砲台は、付いてはいるけど・・・お前らが狙撃手なら使うこともほとんどないだろう。ラッスーがいるからな。」

 

「わァ〜〜〜〜〜かァ〜〜〜〜〜

 

「あぁ!やってやるぜ!」

 

っ〜〜〜〜〜たァ〜〜〜〜〜」

 

「マリーとアマベルには、怪我人や病人が出た時の看病をして欲しい。2人いればどちらかが病気になっても安心だろう」

 

「うん、わかった!」

 

「了解したよッ!!"りょか"!!"りょ"だね!!!」

 

「以上だな。操舵は俺の能力があるから問題ないだろう・・・何か質問はないか?」

 

みんなの顔を見渡したが、納得しているようだった。

 

「・・・よし!あとは、戦闘なんだけど、みんなには今よりも強くなってもらわないといけない。基本的に暇な時は、俺かロビンが稽古を付けようと思っているからそのつもりで」

 

「「「了解、船長!!」」」

 

と、そんな感じで長話をしてたら麦わらの一味がやって来たようだ。

船の外が騒がしくなってきたので、俺だけ暗黒丸を出ることにした。

 

「おう、麦わら!さっきぶり!」

 

「おい!クロス!!何でメリーをこんなところに!!」

 

会うなりいきなり叫んできた麦わら。こいつはずっと元気だな。

 

「この船をあのまま放っておいたら海軍に奪われただろうから、俺たちの船と一緒避難させといた!」

 

「何ィ!!?じゃあお前、海軍からゴーイングメリー号を守ってくれたのか・・・?」

 

「何故だ!?」

 

「まぁ、ついでだついで。あと、今回は色々とドタバタさせちまったからな!そのお詫びにお前達が安全に出航できる手助けでもしてやろうと思ってな」

 

「おぉ!ありがたやありがたや!!」

 

「お前やっぱり良いやつだなァ!仲間になれよ!!」

 

ウソップが感激の涙を流していて、麦わらはまた勧誘してきた。

 

「いや、俺はもう別の海賊団を作ったからな・・・その誘いは無理だ!」

 

「何ィ!!!?」

 

ルフィはガビーーーン!と驚いていた。

 

「・・・つまり、海軍の"海岸包囲"によってお前らも島を出られなくなったから、味方を増やそうと考えたわけだな?」

 

「いや、海賊狩り・・・俺たちは本当に問題ない・・・マジで」

 

「・・・そうかよ」

 

ゾロは聞いてきたくせに、興味なさそうにそう呟いたのだった。

 

「クロスちん!あちしも麦わらちゃん達と喋りたいんだけドゥーー!いくら船長だからって1人だけズルいんじゃな〜〜イ!?」

 

俺が麦わらの一味と喋っていると、暗黒丸からベンサムとロビンが出てきて、その後ろから続くように全員が姿を現した。

 

「げっ!!オカマ!何故ここに!?」

 

「Mr.2!!?」

 

麦わらの一味は若干の警戒をしている。

 

「そーゆー態度ってないんジャナ〜〜〜イ!!?ダチに対して!!」

 

「ダチって何だよ!お前敵だったんじゃねェか、騙しやがって」

 

「ダマしてないわよーーう!あちしも知らなかったのよーう!!!」

 

麦わらは若干の敵意を持っていた。

 

「キレイなお姉さま〜〜!会いたかったですーー!!」

 

その麦わらの後ろで、サンジがまた目をハートにしていたけれど、ゾロにアホかと言われて喧嘩が始まった。

 

「俺の海賊団は元B・W社のオフィサーエージェントで結成されているからな・・・もう俺の仲間だ!!」

 

「そうか!なら大丈夫だな、ニッシッシッシ!」

 

麦わらは小気味よく笑い飛ばしたのだった。

 

##

 

 

「ウゲッ!!"黒檻のヒナ"!!この海域をナワバリとする本部大佐よう!厄介な奴が出てきたわ!!さっさとトンズラぶっこくわよう!」

 

「問題ねェよ、ベンサム」

 

暗黒丸とゴーイングメリー号の2隻が横に並んで出航すると、すぐに海軍の艦隊が8隻囲むように現れた。

 

「撃て!撃てェ!!!」

 

現れてすぐに鉄の槍を撃ってきた海軍たち。狙いはゴーイングメリー号のようだった。

たしかに俺たちの船はジョリーロジャーを掲げていないし、海軍たちはクロコダイルを討伐したのは麦わらのルフィだと思っているハズだ。

鉄の槍がゴーイングメリー号の船底に向かってきていた。

 

「"キャンドル壁(ウォール)"!!」

 

ギャルディーノが出した蝋の壁がゴーイングメリー号を守った。

 

「ふん、造作もないことだガネ・・・」

 

「"3"ッ!ありがとう!」

 

「あいつが助けてくれるなんて・・・また来たァ!!」

 

麦わらがお礼を言い、ナミが叫んだ。今度は8隻同時に鉄槍を飛ばしてくる。

 

「"全反射(オールリバース)"」

 

ゴーイングメリー号に当たろうとしていた鉄槍は向きを真逆に変えて、海軍の艦隊に返っていった。

鉄槍が8隻の艦隊全てに刺さった。

 

「クロスお前かァ!!すげェな!!」

 

「なんつう能力だよ・・・!!」

 

「「すげェェエ!!!」」

 

麦わらの一味は全員で驚いていたし、ベンサム達も驚いていた。

 

「さすが船長・・・6億の首・・・パリッ」

 

「すげェ船長に付いてきちまったぜ、まったく」

 

「スゴーい、船長!キャハハハ!!」

 

マリーとクラヴァとホーンビーは嬉しそうにしていた。

マリーは煎餅を食べながらまったりしている。

 

 

「ヒナ嬢!!!2船の片割れに、"小鬼"が乗っています!!」

 

「何ですって!!?なんでそんな大物が、麦わらの一味と!?」

 

一方海軍の方では、慌ただしく軍艦の修理をしながら、ドタバタしていた。

 

「・・・ここは撤退するしかなさそうね・・・"小鬼"を相手取るとなると、私たちだけでは死ぬだけよ・・・」

 

「応援要請をしますか!!?」

 

「いいえ、応援部隊が本部からここにする間に逃げ切られてしまうだけでしょうね・・・ヒナ断念・・・!」

 

ギリッッ!と悔しそうにヒナは歯ぎしりをした。

 

「おい!海軍が逃げていくぞ!?」

 

艦隊が急に向きを変えて逆方向に進んで行く様をウソップが驚いて見ていた。

その光景を見て、ロビンが俺に尋ねる。

 

「・・・クロスが何かしたの?」

 

「いや、艦隊自体のベクトル操作はまだしていなかった・・・」

 

「じゃあ貴方に気づいたのね・・・海賊になったことまでバレてたりして・・・」

 

「・・・結局いつかはバレるさ」

 

俺とロビンがヒソヒソと話をしていたら麦わらが話しかけてきた。

 

「なぁクロス!俺達は今から仲間を迎えに行くからここでお別れだ!!」

 

「・・・そうか。まぁ当面はお互いに"記録(ログ)"に沿って進むから、また会うこともあるかもな」

 

「おれはお前を仲間にすることを諦めた訳じゃねェからな!」

 

「そこは諦めろよ!またな、麦わら!」

 

「おう!」

 

おれ達は手を振りながら別れたのだった。

別れてすぐにおれはみんなに話しかける。

 

「よし、お前たち!無事に麦わら達を出航させることもできたし、これからも海軍や海賊との戦いはあると思うが、とりあえず!"デレシシ海賊団"出航だァ!!」

 

「「「おぉーー!!!」」」

 

「ふふふっ、"デレシシ海賊団"?」

 

「あぁ、苦しい時も笑えるくらい明るくて、お互いを守りあえるような海賊団に俺はしたい」

 

「なんか分かんないケド、素敵じゃナ〜〜〜イ!?」

 

「デレシシ海賊団・・・変な名前・・・」

 

「・・・マリー、船長が聞いてるよっ!この"バッ"!」

 

「船長はそんなことあまり気にしないさ」

 

「キャハハハ!もしかして、この船の変な名前も・・・」

 

「・・・それは私よ・・・」

 

 

空は晴天。海は穏やかに。

暗黒丸と共に俺達は、次の秋島へと向かっていく。

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

15話 挿絵:海賊旗

前回、最終回でもいいかな?と思える終わり方をしましたが、まだまだ続きます。

空島編に突入します。


「あーーー!!!」

 

甲板にいるギャルディーノが悲鳴をあげた。

暗黒丸は順調に進んでいたけど、なにかあったのだろうか。

 

「ナーニよーーう?ギャルディーノ!うるさーいわよーーう!!」

 

「おめぇ達、うるせェんだよ!この"バッ"!」

 

ベンサムがギャルディーノより大きな声で注意すると、アマベルが更に大きな声で怒っていた。けれど、それを無視するようにギャルディーノが声を荒げている。

 

「"記録指針(ログポース)"が、上を向いてしまったガネ・・・船長!!クロス船長!どうするガネ?」

 

「・・・より強い磁力により"記録(ログ)"が書き換えられてしまったのね・・・空島がこの上にある!」

 

ギャルディーノとロビンがそう話すと、みんなが空島というワードにワクワクし始めた。

 

「空島って本当にあるのかしら?」

 

「キャハハハ!行ってみれば分かるんじゃない?」

 

「どうやって行くっていうんだよ!?・・・どうする船長・・・?」

 

ポーラ、ホーンビー、クラヴァも甲板にある畳の上でお茶をしていたが、座りながら会話に参加してきた。

ついさっきまで、この3人はマストに張っている帆に海賊旗のシンボルを描いていたが、それももう終わっていた。仕事が終わって一息ついていたのだろう。

 

「・・・空島にも"歴史の本文(ポーネグリフ)"がある可能性が高いな。今のところ何のヒントもないし・・・みんなが行ってみたいなら行ってみるか?」

 

おぉ!とみんなが嬉しそうに笑ったが、副船長のベンサムと参謀のロビンだけ顔を険しくしていた。

 

「行くってドゥーやって行くっていうのよーーう?そりゃあ、あちしも行ってみたいけどねぃ!!?」

 

「確かに、どうやって行くかは考えないといけないわ・・・このままここに居るわけにも行かないし・・・」

 

「確かに、言われてみるとそうだガネ・・・どこか近くの島で情報収集するのが一番良いかもしれないガネ」

 

ギャルディーノが最もなことをいうと、みんなが頷いて俺の方を見てきた。

 

「ポーラ!食い物はまだ余裕はあるか!?」

 

俺がそう聞くと、ポーラが不思議そうな顔をして答えた。

 

「?えぇ、あと何日かは持つと思うけど・・・それがどうかしたの?」

 

「"逆重力・加速(マイナスグラヴィティ・アクセル)"」

 

俺はポーラの言葉を聞いてすぐに、能力を使用して船を浮かせて、上方向に引っ張り上げる。もちろん船体は平行のままで。

 

「よし、このまま行ってみよう。無かったら帰って来れば良いだろ!最悪、空からなら島も見えるだろうし・・・」

 

「「「能力で行けるなら早く言えー!!!」」」

 

みんなが一斉につっこんだ。

 

「いや、むしろ忘れるなよ・・・俺に行けない方角はねェよ・・・」

 

「方角というより方向ね・・・でも楽しみだわ・・・ふふっ」

 

「この大きな暗黒丸を軽々と飛行船にするなんて・・・ウチの船長は化け物だな」

 

ロビンとクラヴァがそんな返事を返してきた。

ものすごい勢いで上がっていく暗黒丸だけど、みんなにかかる重力は地上にいる時と何も変わらないように操作していた。

もちろん暗黒丸にも負担がないように気をつけている。

 

「本当に楽しみだわ・・・あると良いわね」

 

「うん!楽しみー!」

 

みんながワクワクと期待していた。

 

 

 

 

##

 

 

「あの雲の先に空島があると思うんだけど・・・雲の中はもしかして、息ができなくて全員死ぬかもしれないわね」

 

「しぃ〜〜〜〜〜ぬぅ〜〜〜〜〜」

 

すごく大きな積帝雲に突入する手前でロビンが物騒な物言いで発言して、ブルが発言を簡略化して言った。

 

「どういうことだガネ?」

 

「あくまで仮説だけど、空島が雲の上にあるなら、この雲は海の役割を果たしている可能性があるわ」

 

「それは困ったな・・・風で雲を吹き飛ばしながら進むか・・・」

 

「風は大きさと方向で表わされるベクトル・・・"カゼカゼの実"に近いものを感じるわね」

 

ポーラが冷静に分析している。

カゼカゼの実か・・・噂では聞いたことがあるけど、何もないところから風は発生できるのが風人間だろう。俺の能力は、すでに発生している風を強くすることしかできないハズだ。そんなことを考えながら風を操作して船の周りにある積帝雲を飛ばしながら進んでいく。分厚い積帝雲を抜けると、一面真っ白な雲の世界にたどり着いて、船が雲の上に乗ったのだった。

 

「こりゃあ絶景だねっ!"ぜっけ"!!"ぜっ"だねっ!!」

 

「キャハハハ!すごーい!!真っ白ー!!」

 

「雲に絵を描いてみたいかも・・・」

 

女性陣が騒いでいた。

 

「船長はもう上向きに船を動かしてないの?」

 

ポーラがそう聞いてくる。

 

「あぁ。乗るかどうか試す為に能力は解除した。能力使いすぎて疲れたから、寝る!ベンサム、あとは頼む!」

 

「クロスちんも疲れることがあるのネーーイっ!!任せなサーーイ!ガッハッハッハ!!」

 

「ふふっ、お疲れ様・・・」

 

ベンサムとロビンの声を聞いて、俺は"船長の部屋"に向かった。

 

 

 

##

 

 

「まだ"記録指針(ログポース)"は上を向いてるガネ・・・」

 

「あらどうするの?副船長・・・船長を起こす?」

 

「クロスちんもお疲れなようだったしィ・・・まだゆっくりしてても良いンじゃナーーーイ?」

 

ギャルディーノとロビンとベンサムがこれからどうするかを話し合っている時に、他の面子は盛り上がっていた。ブルだけ、双眼鏡を除いてまわりの

 

「だぁ〜〜〜〜〜」

 

「この雪は海みたいなものなのかしらね・・・だとしたら能力者はどうなるのかしら」

 

「れぇ〜〜〜〜〜」

 

「キャハハハ、それもそうね」

 

「かぁ〜〜〜〜〜」

 

「この一味で能力者じゃないのってブルとマリーくらいのものだが・・・2人とも泳げそうにないな・・・」

 

そう言って全員でブルとマリーを見るが、

 

「くぅ〜〜〜〜〜」

 

「ズズッ・・・」

 

奇声を発しているブル、お茶を飲んでいるマリーの、2人の通常運転ぶりを見ることで、この2人が泳ぐのは無理そうだと全員が判断した。

 

「るぅ〜〜〜〜〜」

 

「てめェはさっきから何を言ってんだい!この太っちょ!"バッ"!!!」

 

「人だ!誰か来てるぞ!!」

 

クラヴァが雲からこちらに向かって来る人間に気付きそう叫ぶと、雲の上を走ってやって来た人物は飛び上がり、船の甲板目掛けてやって来た。

 

「排除する・・・」

 

いきなり現れた、石の仮面をつけた敵の襲撃に、みんなすぐに身構える。

 

「ジョーダンじゃナーーーイわよーーうぅ!!」

 

「ふふっ、物騒ね・・・」

 

「早い者勝ちね・・・倒した人には夕飯のおかずを一品増やしてあげるわ」

 

「やってやるガネ・・・!」

 

「呑気なこと言ってんじゃないよっ!ポーラ!!」

 

「やぁ〜〜〜〜〜るぅ〜〜〜〜〜」

 

「キャハハハ!デザートもつけるわよ!!」

 

「死にてェらしい・・・」

 

「ズズッ・・・みんな、頑張れ・・・」

 

「「「いや、お前も頑張れよ!!!」」」

 

「"六輪咲き(セイスフルール)"・・・"クラッチ"!!!」

 

ロビンを除く全員がマリーの発言にツッコミを入れている隙に、ロビンが襲撃者の身体に腕を生やして関節技を決めた。

相手の男はゴキ!と大きな音を立てて、甲板に気絶した状態で落ちてきた。

 

「「「あぁ〜〜・・・」」

 

マリー以外はやる気になっていた為、複雑そうにロビンと襲撃者を見ていた。

真っ先に気を取り直したベンサムが口を開いた。

 

「さーっすが、ロビンちゃんよねぃ!!とりあえず、コイツの仮面を剥ぎ取って、縛りあげよーうじゃナーーーイ!ブル、縄を持ってきてチョーダイ?」

 

ブルはそう言われると襲撃者をマストに縛りつけた。

 

「・・・こうなると、話も聞けないガネ」

 

「キャハハハ!さすがロビン姉さんよねぇ!」

 

「ふふふっ、そんなことないわ」

 

襲撃者が現れた直後だというのに、船の空気はすぐに賑やかになっていった。

 

「・・・なぁ、みんな。あっちを見てくれ。あの雲ちょっと変じゃねェか?」

 

「なにかしら、滝のようにも見えるわね」

 

クラヴァがみんなに話しかけるとポーラがそう答えた。

 

「とりあえず、アチラに行ってみようかしらねぃ!」

 

副船長であるベンサムが指示を出して滝の様な雲の近くに来ると、その前には大きな雲が浮いていた。

 

「なんだいコレは!!?でっかい雲だねっ!!」

 

「あっちの方から通れそうじゃない?」

 

アマベルとポーラがそう話し、船は大きな雲の隙間を通して行くと、これまた大きな門の前に出た。

大きな門には、"天国の門"と書かれていた。

 

「襲撃者といい、この門の名前といい、空島ってのはよっぽど物騒な場所なのか?」

 

クラヴァがそう言った時、門の横にある扉から、背中から羽を生やしたバァさんがカメラを片手に現れた。

 

「観光かい?戦争かい?どっちでも構わない・・・上層に行くなら入国料1人10億エクストルおいていきなさい。それが"法律"・・・」

 

「なぁ、バァさん!10億エクストルってぇのは、ベリーで言うといくらなんだ?」

 

クラヴァがバァさんに尋ねた。

 

「ベリー・・・青海の通貨かい・・・1人あたり10万ベリーになるよ」

 

「高いわねぃ!けどこの船には沢山お金があるしイイんじゃナーーイ?ガッハッハッハ!」

 

「そうね、まとめて100万ベリー払いましょう」

 

「夢のような場所でも、法律ってのはあるんだガネ・・・」

 

バァさんにお金を渡すと、雲の下からボフン!と音を立てて大きな鋏が船を掴んだ。

 

「「な、なんだァ!!?」」

 

「"白海"名物、"特急エビ"・・・」

 

バァさんがそう呟くと、船が勝手に前に進み出した。

 

「スゴイじゃナーーーイ!!?これで入国するのねぃ!?」

 

船はグングンと滝を上に登って行くと、次には帯状の川のような雲の上を進んで行く。帯状にうねる雲の周りも雲で覆われていた。

 

"神の国スカイピア"と書かれた看板が立ててあり、先には囲う雲がなくなっていた。

 

「出口だガネ!?」

 

「いや、入り口みたいよ!」

 

特急エビは役目を終えて、暗黒丸を手放すと、船は海雲の上に乗った。

 

「空島よーーう!」

 

「すごいガネ・・・」

 

「綺麗・・・」

 

"白白海"神の国"スカイピア"に到着して、クルー全員が感動しているのと同時に、気絶していた襲撃者が、マストに縛られたまま意識を取り戻したのだった。

 

 

 

 

 




今回の話でマリーが描いた海賊旗のイメージです。


【挿絵表示】


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

16話 挿絵:クロス

仕事忙しくて中々執筆できないGWでした。




「おい!早く殺せ!!じゃねェと、てめェら全員排除するぞ!!」

 

縛り付けながらも、暴れる様子は見せずに、ただただ殺せと喚く様は滑稽以外の何者でもない。

 

「あぁ・・・コイツ、どうするガネ?」

 

「そうね・・・色々と空島について教えて欲しいこともあるんだけど」

 

「何も教えん!早く殺せェ!」

 

ロビンが襲撃者に対して声をかけるが、それでも喚くばかりで話にならない。とても面倒なものを連れてきてしまったものだ。あの"天国の門"に置いてくれば良かったと全員が思った時だ。

 

空からまた、何者かがこの船に飛び降りてきた。

 

「また現れたガネ!!」

 

ババっと再度みんなが身構えるが、今度の奴は敵意を持ってはいないようだ。

 

「我輩、"空の騎士"ガン・フォール!!!」

 

「ピエー!」

 

変な顔をした鳥に乗ったお爺さんが船の上に降り立った。

 

「我輩は敵ではない・・・おぬしら見たところ青海人だな?・・・なんと!!ゲリラを倒しおったのか!!?」

 

「青海人?門にいたバァさんも同じような事を言っていたな・・・」

 

「ゲリラって何?」

 

「ゲリラとは先住民シャンディアが自らの島を追われ、その島を取り戻す為にゲリラ活動をしている者のことを指す・・・そこで伸びている奴はシャンディアのリーダーである。空の戦いを知らないのに其奴を倒すとは・・・」

 

「追われて・・・?」

 

「"大地(ヴァース)"は空島にないのでな・・・彼らの住んでいた土地を空島の者が奪ったのだ・・・」

 

「ナーニよーーう!!空島の人達が悪インじゃナーーーイ!!?」

 

「返す言葉もない・・・」

 

「そこのゲリラを連れて行ってくれないかしら?私たちの手に余るもの・・・」

 

「・・・承知した!」

 

「誰がテメェなんかに・・・!!!」

 

ポーラがそう言うとガン・フォールが答えるが、襲撃者が否定した。

 

「・・・テメェに気を許した覚えはねェぞ、ジジィ!!!」

 

怒り狂ったように叫ぶ襲撃者。過去にこの2人になにかあったのは明らかだった。

 

「いや、連れて行かなくてもいい・・・これも何かの縁・・・仲良くやろうじゃないか」

 

「「「船長!!!」」」

 

「クロスちんもうダーイ丈夫なのーーーう??」

 

突如現れたクロスはマストに縛られた襲撃者の縄をベクトル操作で解いた。驚いた顔で襲撃者はクロスを見るが、特に暴れるようなことはしなかった。

 

「・・・礼は言わん!仲良くやるつもりもないぞ!!!」

 

「俺の仲間が縛ったんだろう?それが道理だな・・・ただ、俺もロビンも故郷がない身・・・仲良くできると思うが・・・」

 

「てめェが船長か・・・名は?」

 

「クロスだ」

 

「おれァワイパーという・・・今は引き上げるが、くれぐれも邪魔だけはするんじゃねェぞ!」

 

「おぉ!またな!!」

 

舌打ちすると、ワイパーは船を降りてどこかに向かって行った。

クロスの雰囲気に圧されたのかは分からない。勝ち目がないと悟ったのだろうか。

クロスは何が起きているのかよく分からなかったが、ロビンの頭にポンッと手を乗せるとガン・フォールに問いかけた。

 

「お前だれだ?」

 

「我輩は"空の騎士"ガン・フォールである・・・主が船長か。強そうな佇まいをしておるの」

 

「あぁ、俺は強いな・・・何か用でもあるか?」

 

「我輩は傭兵をしておってな。先ほどのゲリラのような者たちから観光客の護衛等をする仕事をしておる。おぬしらに必要はないみたいだったが・・・」

 

「あぁ・・・空気が薄いからな。俺にとってはなんの意味もないけど・・・空島でオススメの場所とかあるか?」

 

「ふむ・・・青海にはない文化が沢山あるからどこへ行っても良かろう。アッパーヤードにさえ立ちいらなければな」

 

「「「アッパーヤード!?」」」

 

「神の住む土地とされている聖域で、先ほどのゲリラの故郷でもある。おぬしらがいかに強かろうと、決して"神"には勝てん!」

 

「・・・ふーん」

 

クロスは特に興味なさそうに返事をしたが、他の面子はクロスが興味を持つのではないかと恐れていた。

 

「我輩はもう行く・・・くれぐれもアッパーヤードには近づかないように」

 

そういうと、ガン・フォールは"ウマウマの実"を食べてペガサスとなった鳥に乗って飛び立っていった。

その変な顔をしたペガサスのイラストを画用紙にマリーが描いていた。

 

「とりあえず上陸するガネ」

 

「あぁ、そうだな。俺が寝てる間に起きたことを教えてくれ!

 

クロスがそう言うと、ベンサムが何があったかを話した。

ロビンとポーラもちょいちょい口を挟みながら。

 

 

##

 

 

 

俺とロビンとギャルディーノを残して、みんなが空島に入っていった。

ワイワイと騒ぎながら、島雲のビーチで楽しそうにしていた。

 

「錨はどうするガネ?海底とかあるガネ!?」

 

「下ろしてみてダメだったら、俺の能力でここに留めるから大丈夫だ。やってみろ」

 

そう言うとギャルディーノは錨を下ろした。

 

「おぉ!手応えありだガネ!!」

 

「ふふふっ、私たちも行きましょ!」

 

そうして俺たちも下船してビーチに降り立った。

とても気持ちの良い気分だ。

俺たちはビーチでのんびりとすることにした。

と言っても、海のような雲に入ると身体の力が抜けたので、ビーチで転がったりフカフカの椅子に座ったりしていた。

フォーフォーと言いながら、クロールで泳ぐブルを見ながら、「泳げたのかよお前!」と全員がツッコミを入れたりしている。そうやって過ごしていると海から人が来た。

 

「へそ!」

 

「「「いや、何言ってるんだ!!?」」」

 

「はい、すいません。止まりますよ」

 

そう言って水上バイクみたいなものに乗ったオッさんは、止まり切れずに木の方にぶつかりそうになったが俺の能力でぶつかる寸前で止めておいた。

 

「面倒をおかけしてすいません。青海からいらしたのですか?ここは"白々海"ですいません。申し遅れましたが私の名は"パガヤ"ですいません」

 

謝り通しているおっさんに、クラヴァとポーラが戸惑い、海から出たブルがフォーフォーと笑っていた。

 

「そうだ、ちょうど良い。今、漁に出ていたのですが、みなさんお腹は空いていませんか?家にいらっしゃい。ご馳走しますよ!」

 

人の良さそうな笑顔でそう言ったパガヤさんに皆んなすぐに気を許した。基本的に人を信じないメンバーではあるが、空島の食べ物にみんな興味津々だ。

 

「イイのーーーう?ゴチになるわよぅ!!」

 

「空島料理も覚えてみたいわね・・・」

 

「キャハハハ!楽しみね!」

 

俺たちはワイワイしながら、パガヤさんに着いていった。

 

「見晴らしの良いところにあるガネ」

 

「「「おじゃましまーす」」」

 

「あらお父さん、へそ!」

 

「へそ!コニスさん」

 

へそって挨拶だったのか!と納得していると、コニスさんと言われた少女は俺たちに目を向けた。

 

「お父さんのお客様ですか?」

 

「えぇ!青海からいらしたそうで、エンジェルビーチで出会いました。空島料理をご馳走しようと連れてきたのですいません」

 

「ふふっ!みなさん、へそ!ゆっくりしていって下さいね」

 

とても優しい親子のようだ。

お言葉に甘えて俺たちは雲でできた椅子のあるダイニングに通された。

 

パガヤさんとポーラとホーンビーは3人でキッチンへ行った。

 

「気持ちいいな、この椅子は・・・船長!雲でできた家具を後で買いに行っても良いか?」

 

「行きたい・・・!」

 

クラヴァとマリーがそう言ってきたので了承した。後で買い物に出かけるのも良いだろう。

 

「ふふっ・・・じゃあ後でラブリー通りをご案内しますね!」

 

「ラブリー通り!!?ステキな名前じゃナーーーイ!?」

 

ベンサムはクルクルと周りながらそう言った。

 

「ラブリー通りはエンジェル島唯一の繁華街なんです!店が浮いていたり色んな"ダイアル"が手に入りますよ!」

 

「ダイアルってのはどう言ったものガネ?」

 

「ダイアル!?"ダイッ"!"ダッ"!!!」

 

「ダイアルをご存知ないのですか?そうですね・・・例えばコレです」

 

「「「貝!!?」」」

 

「この貝がダイアルです。これは"音貝(トーンダイアル)"で、音を録音・再生する習性がある白々海産の貝殻です。主に音楽を録音して使います」

 

「とォ〜〜〜〜〜おォ〜〜〜〜〜ん〜〜〜〜〜」

 

[とォ〜〜〜〜〜おォ〜〜〜〜〜ん〜〜〜〜〜]

 

ブルが録音して遊んでいた。

 

「すごいわね・・・色んなダイアルというのは?」

 

「あとは、"風貝(ブレスダイアル)"。例えば30分、風に当てておけば30分分の風を自在に排出できるんです」

 

そう言われて俺は風貝を借りてみた。貝を手に持ってグルグル回して殻頂を押してみると、強い風が出てきた。俺の能力に合いそうなダイアルだ。

 

「他にもまだ種類がありそうね・・・この照明もそう?」

 

「ええ、"灯貝(ランプダイアル)"です。光を溜めて使います」

 

「おぉ!貝が光ったガネ!!」

 

みんなダイアルに興味津々だ。

 

「直接の資源じゃないですけど、空島の文化はダイアルエネルギーと共にある文化ですから・・・他にも炎を蓄える"炎貝(フレイムダイアル)"、香りを溜める"匂貝(フレイバーダイアル)"、映像を残せる"映像貝(ビジョンダイアル)"と色々あります」

 

「面白いじゃナーーーイ!!?クロスちん!あちし、沢山買うわよーーう!」

 

「ふふふっ、良いわね・・・たくさん買いましょ」

 

「おまたせ!できたわよ!」

 

俺たちがダイアルの話で盛り上がっていると、ポーラとホーンビーがお皿を持ってきた。

お皿の上には見たこともない変な形をした魚と海老と貝が載っていた。

 

「「「いただきまーす!」」」

 

うん、めちゃくちゃ美味しい。

コナッシュと言われる飲み物とよく合う料理だ。

ポーラが作った料理はアクアパッツァだったが、パガヤさんとコニスさんも美味しそうにしてくれている。

俺たちはパガヤさんの作った空島料理とポーラ達の作った青海料理をご馳走になった後、ラブリー通りへ向かって、"ダイアル"と雲でできた家具や雑貨を買い込みながら、観光を楽しんだのだった。

 




クロスのイメージ画を描いてみました。
読者様のイメージとかけ離れていたらすいません。


【挿絵表示】



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

17話

パガヤさんは"風貝"を使った乗り物であるウェイバー等の"貝船"を扱うエンジニアのようだが、漁に出ることも仕事としているようだったので、数日その漁の手伝いをしながらも空島を満喫していると、見たことのある船が遠くの方に見えた。

 

麦わらの一味も空島にやってきたようで、コニスさんと仲良くなっていた。

 

「お前らも空島に来てたのか!!!」

 

「ねぇ!どうやって来たの?」

 

嬉しそうにルフィが話しかけてきたが、ナミは不思議そうに聞いてきた。

 

「あぁ、俺の能力でプカプカと浮いてきた。お前らこそどうやって来たんだ?」

 

「反則じゃねェか!俺たちは"突き上げる海流(ノックアップストリーム)"で来たんだ!」

 

「それって災害じゃなかった?」

 

ウソップの答えにロビンが返事をすると、ナミとウソップとチョッパーは肩を落とした。

 

「・・・そうだよな。何も言えねェよ。なんだよプカプカって!本当に反則じゃねェか!」

 

「いや、あれはプカプカとは言えないと思うガネ」

 

ウソップが理不尽に文句を言ってきたがギャルディーノが言い訳をすると、みんなウンウンと頷いている。

解せぬ。

 

「今、パガヤさんと漁をしてたんだけど、船長のおかげで大漁なの。良かったら一緒にご飯しない?」

 

ポーラがそう言うと、麦わらの一味は全員嬉しそうにしだした。

 

「空島料理か!俺も手伝わせてくれ!」

 

「ふふっ・・・一緒に作りましょうね」

 

「キャハハ!空島料理に慣れてきたかも」

 

「お姉様方!!よろこんで〜〜〜!!!」

 

ポーラがウィンクすると、サンジはクネクネしながら目をハートにしている。

 

「ねぇ、その前に聞いていい?これ、どんな仕組みなの?風を受ける帆もないし、漕いでたわけでもない。何で海を走ってたの??」

 

ナミがパガヤさんの乗っていたウェイバーに興味津々のようだ。

パガヤさんがウェイバーで先導し、俺たちは暗黒丸に乗って漁をしていたから、またしてもパガヤさんは止まりきれずに樹木に突撃しそうになっていたのだ。

 

「アクセル?これか?踏めばいいんだな、これを」

 

ルフィがウェイバーに乗って海に駆け出した。が、すぐにコケてしまい海に沈んでいった。

麦わらの一味とパガヤさん親子は焦っている。

 

「逆流」

 

俺が能力で救いあげると、飛び込もうとしていたゾロ、サンジ、チョッパーはピタリと止まった。

 

「し・・・しぬ・・・」

 

「すいません!ウェイバーをお貸ししてすいません!」

 

「助かったよ、ありがとな!」

 

ルフィが死にそうになり、パガヤさんは謝り続け、サンジが礼を言ってきた。

 

「おーい!!」

 

声がする方を見ると、ナミがウェイバーに乗っていた。

ウチのメンバーで乗れたのは能力を使用した俺だけだったのに、能力なしで乗れるとはすごいな。

そう俺が感心していると、横で生き返ったルフィが拗ねて文句を垂らしていた。

 

「先行ってて!!おじさん、もう少し遊んでていい?」

 

「えぇどうぞ!気をつけて下さい!!」

 

俺たちは共に、またパガヤさんの家にお邪魔することになり、俺たちと同様、ダイアルの説明を受けていた。

サンジという男は、女好きのようだが、包丁を持つと顔が変わるようで、とても美味しそうな料理を持ってきた。ポーラとホーンビーがサンジに色々とレシピを聞いたり勉強させてもらったらしい。

 

「さァ出来たぞ!!"空島特産果物添えスカイシーフード満腹コース"だ!!!」

 

「んまほ〜〜〜〜〜!!!」

 

全員で一斉に料理に手をつけ始めた。

 

「ねェ、サンジさん?良かったらお姉さんにもっと色んなことをお・し・え・て?」

 

「キャハハ わたしもデザートの作り方教わりたーい!」

 

「はい喜んで〜〜〜〜〜!!!」

 

料理を持ってきてすぐにサンジは2人の肩を抱きながら厨房に戻っていった。

ふと海を見ると、ナミがいなくなっている。

 

「おい、お前らの航海士いなくなってるぞ?」

 

「ちょっと遠出でもしてんだろ?放っといていい!」

 

麦わらの一味は目の前の料理に夢中になっていたが、パガヤさんとコニスさんが慌て始める。その様子を見てルフィは顔を上げた。

 

「なんだ?どうした?」

 

「この"スカイピア"には何があっても絶対に足を踏み入れてはならない場所があるんです・・・その土地はこの島と隣接しているので、"ウェイバー"だとすぐに行けてしまう場所で・・・」

 

「足を踏み入れちゃならないって何だそれ?」

 

「・・・聖域です。神の住む土地・・・"アッパーヤード"」

 

そうコニスさんが続けると、ルフィはとても行きたそうにしていた。

アッパーヤードの話は俺たちも聞いていたが、まだ行ってはいない。

青海に帰る前にちょっと行ってみようとは考えていたけど。

この話はメンバーにはまだ言ってなかったけど。

とりあえず様子見の為に、全員でまたエンジェルビーチに向かうこととなった。

 

 

##

 

 

麦わらの一味はゴーイングメリー号に乗り込んで、ナミを探しに行くことにしたらしい。

俺たちデレシシ海賊団は、ビーチでまたのんびりとしている。

ルフィが船に乗る前に、古くなったウェイバーをパガヤさんに見せていると、階段の上から降りてくる人間が大勢いた。

 

ゆっくりと時間をかけて、匍匐前進で現れたそいつらは立ち上がるとへそ!!と挨拶をして、パガヤさんとコニスさんも挨拶を返した。

 

「あなた達ですね!?"青海"からやって来られた不法入国者7名というのは!!!」

 

「ええっ!?不法入国者?」

 

「弁解の余地はありませんよ。"天国の門"監視官アマゾンより"映像貝"による写真が届いていますので!!」

 

「・・・まさか?何かの間違いでは!?マッキンリー隊長!彼らはそんな悪い人たちでは・・・」

 

「なぁ麦わら、お前ら入国の時のお金を払わなかったのか?」

 

「あぁ、通っていいって言ってたからな!」

 

俺がルフィにそう聞くと、ニカッと笑ってそう答えた。俺は門を通るときに寝ていたから詳しくは知らないが、ベンサムとロビンが俺の分のお金も払ってくれていた。

 

「言い訳はおやめ下さいまし、認めて下さい・・・ですがまだそう焦る事もありません。"不法入国"これは"天の裁き"における第11級犯罪でしかありません。罰を受け入れればあなた方は、そこにいる10名と同じく安全な観光者となれます」

 

「何だそれを早く言えよ。心外にゃかわりねェが・・・罰ってのは一体何なんだ?」

 

マッキンリー隊長と言われる軍服を着た男に、サンジが質問をした。

 

「簡単なことです。入国料を10倍払って下さい。1人100億エクストル・・・つまり6人で600億エクストル!この場でお支払い下されば、あなた方の罪は帳消しにさせていただきます」

 

「600万ベリーだな・・・」

 

俺が教えてあげると、麦わらの一味は高すぎると騒いでいた。こいつらはそんなにお金を持っていないらしい。

 

「貸してやろうか?俺たち結構持ってるし・・・」

 

「え!いや、でも・・・」

 

「え!いいのか!?悪ィな!」

 

サンジとウソップは戸惑っているが、ルフィは潔く借りることを決意した。

その時、海の方からナミがウェイバーに乗って帰ってきたのだった。

 

「ちょっと待って!!」

 

「あぁっ!!ナミさん無事だったんだね?」

 

目をハートにしたサンジが手を振っている。

 

「ルフィ!その人たちに逆らっちゃダメよ!!」

 

「600万ベリーの不法入国料を払ったら許してくれるらしいぞ!」

 

大声で会話をするナミとルフィ。

 

「良かった、まだ罰金で済むのね・・・600万ベリーって・・・高すぎるわよ!!」

 

そういってナミはウェイバーでマッキンリー隊長の顔面を吹き飛ばした。

「ハッ!しまった!!理不尽な多額請求につい・・・!!!」

 

「おい!クロスがお金を貸してやるって言ってくれたのに!」

 

「えぇー!!早く言ってよ!あ、おじさんウェイバーありがとう。楽しかったわ!」

 

「いえいえどうもすいません。そんな事よりあなた方、大変なことに!」

 

「さぁ逃げるのよ、ルフィ!!」

 

すぐに島雲に降り立ったナミはルフィの手を引いてぐいぐいと船の方に向かおうとした。

 

「わ!何でだよ!お前、ケンカ仕掛けたんじゃねェのか?」

 

「"神"とかってのに関わってるとヤバいのよホントに!今のは事故よ!!」

 

「待てぇ〜い!!!」

 

逃げようとする2人にマッキンリー隊長が叫んだ。

 

「・・・逃げ場など既にありはしない!我々に対する数々の暴言・・・それに今のは完全な公務執行妨害・・・第5級犯罪に値している・・・!"神・エネル"の御名において、お前たちを"雲流し"に処す!!!」

 

「雲流し・・・!そんな!!」

 

「何だそれ、雲流しって気持ち良さそうだな!」

 

「良くありません!逃げ場のない大きさの島雲に船ごと乗せられて骨になるまで空を彷徨い続ける刑です・・・死刑です!!」

 

コニスが楽観的なルフィにそう説明した。とても恐ろしいことを思いつくものだ、空島というところは。

 

「ひっ捕らえろ!!!」

 

「「「ハッ!!」」」

 

ホワイトベレー部隊が弓を構えた。

 

「逃げて下さい!敵いません!!」

 

「止しなさいお嬢さん、それは犯罪者を庇う言動に聞こえますよ」

 

コニスさんが麦わらの一味を気遣ってそう言うと、マッキンリー隊長がギロリと睨みつけた。

 

「撃て!!"雲の矢(ミルキーアロー)"

!!!」

 

ホワイトベレー部隊が放った矢をルフィがサッと避けるが、その矢の後ろは雲が流れていて、ホワイトベレー部隊はその雲の上を風貝の付いた靴で流れるように移動してルフィに追撃をする。

 

「なーーるほど!!!」

 

ルフィは近くにあったコナッシュの木に捕まるとビヨーンとその場から姿を消した。

 

「何っ!?何だアイツは・・・!?」

 

「えェ!!?手が・・・伸びた」

 

「なァんと!!」

 

ホワイトベレー部隊のみんなと、コニスさん、パガヤさんも驚いている。

 

「ゴムゴムの・・・"花火"!!!」

 

ルフィはあっという間に、近くにいたホワイトベレー部隊をぶっ飛ばし、ゾロとサンジも参戦して全員を倒してしまった。

俺たちは傍観を決め込んでいる。

 

「・・・あのホワイトベレーをやっつけちゃった・・・!青海の人はここでは、運動能力が落ちるハズなのに・・・」

 

コニスがそう呟くと、マッキンリー隊長が立ち上がった。マッキンリー隊長は丈夫なようだ。

 

「ハ、ハハハ、バカ共め・・・我々の言う事を大人しく聞いておけば良かったものを・・・我々ホワイトベレー部隊はこの神の国の最も優しい法の番人だ・・・彼らはこう甘くはないぞ!!これでもはや第2級犯罪者。泣こうが喚こうが・・・アッパーヤードの神官達の手によって、お前達は裁かれるのだ!!!へそ!!!」

 

マッキンリー隊長はそう言い残して去っていった。他の隊員たちもなんとか起き上がり、隊長について行ったのだった。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。