テイルズオブザワールド~異世界転生のディセンダー~ (神爪 勇人)
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第1話 異世界転生
世界樹の恩恵によって、人々が暮らす世界「テレジア」。
ある時、異世界から侵入した魔物「飲むモノ」によって、
大地のほとんどが食い尽くされてしまう。
人々は住むところを追われ、
大地を奪われる恐怖におびえていた。
テレジアの大地を生み育む世界樹は、
「飲むモノ」の侵攻から人々を、そして大地を守っていたが、
日に日にその力も弱まっていった。
世界樹は、残された力で最後の子供を生み出した。
ディセンダーである。
世界樹の最後の希望として、
ディセンダーはテレジアの大地に降り立った。
◆◆◆
「・・・・・・起きて! 君の世界『テレジア』は、大変なことになってるんだぞ!」
声が聞こえる。
少年のような、青年のような、或いはツッコミ体質の眼鏡のような声が聞こえてくる。
「ほら、起きて‼」
・・・・・・しかし、あまりにもうるさい。
というか・・・・・・俺は寝ていたのか?
目を開けて上体を起こす。
「目が覚めたかい? 中々起きてくれないから心配しちゃったよ」
目の前に、何やら白い奇怪な生物がいた。
猫っぽいが、何故か尻尾に羽が生えて空を飛んでいる。
「誰だ?」
「オイラ、モルモ! 呼びかけに応えてくれてありがとう。世界樹に呼び掛けて、君をこの世界に誕生させたのはオイラだよ」
この世界・・・・・・?
モルモとやらの言葉に立ち上がり周囲を見渡してみると、どうやら森の中の様で俺はここで眠っていた。
いや、こいつの言葉を信じるならここで生まれたらしい。
「えっと、君の名前は・・・・・・?」
「俺は・・・・・・——————」
聞かれて俺は口を開こうとし、「はて?」と動きを止める。
・・・・・・俺の名前ってなんだっけ?
名前が思い出せない。
いや、知っているという感覚はあるのだが、何故か頭に浮かんでこないというべきか。
自分が何者なのかもわからない。
いや、生まれたばかりなら何も知らないのは当然か?
しかし、その割には自分の名前を知ってる感覚はあるのに分からないというのは意味不明だが。
「どうしたの?」
「いや、自分の名前が分からないんだが・・・・・・」
「ええ!?・・・・・・いや、誕生したばかりなら無理もない・・・・・・のかな?」
いや、聞かれても知らんが。
モルモはうーんと頭を捻り、
「じゃあオイラが名前を付けてあげるよ!」
まぁ、仮名でも無いと俺を呼ぶのに不便か。
ただ変な名前はごめんだぜ?
「心配しなくても、イケてる名前を付けてあげるよ」
"イケてる"の時点で不安なんだが、此処はお任せするしかないか。
「うーん、そうだなぁ・・・・・・よし、決めたよ! 君の名前は——————」
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