この優秀な魔法使いに爆焔を! (ピカしば)
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第一章︰この色物パーティーに革命を!
プロローグ


 

 

  今でも思う時がある。

  本当にあの時の選択は間違っていなかったのかと。

  私は仲間を理由にして自分の夢や、生きがいから逃げてしまったのではないのかと。

  もっと仲間を信頼しても良かったのではないかと。

  私が上級魔法を覚えたあの日、爆裂魔法を教えてくれたお姉さんに爆裂魔法を極めて立派になった自分を見て貰うという目的からは遠ざかり、爆裂道を極めるという生きがいすら失った。

  それでも……

 

 

 

 

 

 

 

「──『ライト・オブ・セイバー』ッッッッ!」

 

  私の放った魔法が真っ直ぐ飛んでいき目の前のグリフォンを真っ二つに切り裂いた。

 

「……何ていうか何度見てもやっぱすげぇな」

 

  カズマが私の上級魔法に感嘆の声を漏らす中。

 

「『インフェルノ』ッッ!」

 

  今度は2匹目のグリフォンに私の上級魔法が飛んでいく。

  それがグリフォンに直撃し、その大きく屈強な身体を灼熱の業火で焼き尽くしていく。

 

「あの、カズマ?私の上級魔法に感動するのは分かりますが出来ればちゃんと指示を出して欲しいのですが……」

 

「いや……それこそ何度目になるか分からんが、もうお前1人でいいんじゃね?」

 

  私が何故上級魔法を覚えたのか知っているはずなのに彼はそんな意地悪な事を言ってくる。

 

「そんな事を言わずにお願いします!私はカズマの事を世界で一番信用しているんですから!」

 

「お前はまたそういう事を!……分かったよ出せばいいんだろ指示を!」

 

  私の甘い言葉に彼はそんな事を言いながら指示を出していく。

 

「アクアはダクネスに支援魔法を!ダクネスは最後のグリフォンの足止めを頼む!めぐみんは足止めされてるグリフォンを1発で倒してくれ!」

 

「「「了解!」」」

 

  彼から指示が入り私達のパーティーは一気に動き出す。

  アクアの支援魔法を受けたダクネスがグリフォンへと特攻し、スキルの『デコイ』を使ってグリフォンを引きつける。

 

「『ライト・オブ・セイバー』ッッッッ!」

 

  そして私から放たれた魔法がグリフォンを真っ二つに切り裂いて……!

 

 

 

 

 

 

「──ふぅ…やっと終わった……」

 

「何を言っているのですかあなたは!最後に少し指示を出しただけでしょう!何を疲れる事があるんですか!」

 

  今回のクエストはグリフォン3体の討伐、彼は私が2体のグリフォンを倒すまでぼーっと眺めていただけだった癖にそんな事を言っている。

 

「だってそうだろ……お前はともかく俺はグリフォンなんかに出来ることなんて無いんだし……」

 

「そんな事はありませんよ、今回だって最後はちゃんと作戦を立ててくれたではありませんか」

 

 「はいはい分かったよ……とりあえずアクセルに帰るか!」

 

  彼は私から目を逸らし帰る準備を始める。

 

「カズマさん!今日は私のお陰でグリフォンを倒せたんだし分け前は9︰1で良いわよね!」

 

「アホか!どう考えても今日のMVPはめぐみんだろ!毎回!毎回!いい加減にしろよ!」

 

「だって!もうお小遣いも残って無いし酒場に20万近いツケまであるのよ!お願いよカズマさん!」

 

「お前ふざんなよ!一週間前に小遣いやったばっかじゃねえか!何でもう酒場に借金なんてしてやがんだ!」

 

  そんなカズマとアクアの二人の会話を聞きながら私はダクネスと2人で笑い合う。

 

「ダクネス、やっぱり私はこんな馬鹿な暮らしがずっと続けば良いと、そう思ってしまいます」

 

「ああ、私もそう思う」

 

  ダクネスが本当に幸せそうな優しい顔でそう言う。

 

  そう……私の選択は間違ってなんかいない、あの時から私がカズマを……このパーティーを守ると決めたのだ。

  もう足でまといになんかならない。

  私が今のこの幸せな時間を守るのだと。

 

 

  そんな事を思いながらカズマの下へ駆け出した!

 



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第1話︰紅魔族一の使い手

プロローグはめぐみん視点でしたが本編はカズマさん視点ですのでよろしく。
※最後の内容をガッツリと変更しました。








「カズマは、優秀な魔法使いが欲しいですか?」

 

 

 

 

  ━━めぐみんが上級魔法を覚え、里の外からの帰る途中でめぐみんがゆんゆんと勝負をしたいと言い出した。

  本人曰く『紅魔族一の使い手』をかけた重要な勝負らしい。

  そして今は勝負の開始数分前。

 

「そろそろ時間ですね……」

 

「うん……でも本当に良いの?あの内容で?」

 

「構わないと言っているではありませんか……何ですか?自分が勝てると思っているから余裕なんですね!!心配しなくても!すぐ、あなたに紅魔族随一の負け犬の称号を授けてあげますよ!!」

 

  心配してくれているゆんゆんに突っかかるめぐみん。

  今回のめぐみんとゆんゆんの勝負には村中の紅魔族が観戦に来ている。

  めぐみんがどうせならこの勝負の行方を紅魔族全員に見てもらいたいと言い出したのだ。

 

「本当に大丈夫なんだろうな……」

 

  流石に今回の勝負の行方は俺も少し心配だ。

  なんせ今回の勝負は勝った方が紅魔族随一の使い手の称号を得て、負けた方は紅魔族随一の負け犬の称号を得てしまうという紅魔族的には中々ハードな賭けをしているらしい。

  里中の人達に見られているので簡単にその汚名を払拭する事も出来ない。

  勝負の内容はゆんゆんの父親である族長が決めたもので、その内容は『1時間以内に森に生息している指定されたモンスターを討伐し、その合計ポイントで競う』というもの。

  どう考えてもめぐみんには不利な勝負内容にゆんゆんが困惑している。

  ちなみに、一撃熊が5ポイント、グリフォンが10ポイント、マンティコアが15ポイント、その他雑魚敵が1ポイントで倒した数は冒険者カードに記録される。

  そして……

 

「よーい!どん!!」

 

  族長の掛け声と共に2人は森の中へと駆け出した━━。

 

 

 

 

 

 

「━━それでは結果を発表する!!!」

 

  討伐を終えためぐみんとゆんゆんの冒険者カードを受け取った族長が大きな声で叫ぶ。

 

  「ゆんゆんの点数合計68ポイント!!」

 

  周りから歓声の声が上がる。

  流石は雷鳴轟く者だの、やはり私の目に狂いは無かっただの、あいつは俺の生徒だっただのと、ものすごい賞賛の嵐となっていた。

  正直、俺も驚いた。

  別にゆんゆんを過小評価していた訳では無かったが、この短時間で一撃熊やらグリフォンやらをポンポン討伐して来るのは少し背筋がゾッとする。

  これからゆんゆんにセクハラをするのはやめておこう……うん、そうしよう。

  当のゆんゆん本人は、顔を赤くして下を向いてしまっているが……

  しかし、誰もこの後にある、めぐみんの結果発表に期待はしていない。

  当たり前だ、紅魔族の連中は皆、めぐみんが爆裂魔法しか使えない欠陥魔法使いだと思っているのだ。

  当のめぐみんは帽子を深くかぶり、口元をニヤつかせている。

 

「あいつ…マジかよ……」

 

  そんなめぐみんの様子に誰も気付かないまま、めぐみんの結果が発表される。

 

「それじゃあ一応めぐみんの点数を……って何じゃこりゃあ!!」

 

  族長のその言葉に、騒がしかった紅魔族が一気に静かになる。

  いつまでも固まっている族長に、めぐみんが杖でつつきながら続きを言えと催促している。

 

「あ、えっと……めぐみんの点数合計は110ポイント……よってめぐみんの勝ち!!」

 

  その言葉に場の空気が一瞬固まる。

  そして、その空気を一蹴するかの様にめぐみんはバサッとマントを翻して……

 

「我が名はめぐみん!紅魔族随一の魔法の使い手にして、上級魔法を操る者!そして、いつか魔王を討伐する者!!」

 

  そのめぐみんの名乗りに紅魔族全員から大きな歓声が上がった。

 

 

 

 

「━━さあ!早く名乗るのです!紅魔族随一の負け犬、ゆんゆん!!」

 

「やめてぇ!うわああああああー!!」

 

  さっきからめぐみんがゆんゆんに早く紅魔族随一の負け犬を名乗れと強要している。

 

「もうやめてやれよ……そろそろゆんゆんが可哀想だろ……」

 

「カズマがそこまで言うなら仕方ありませんね…ですが、勝負は勝負です!今回はこの辺にしておきますが、次に会う時までにはちゃんと名乗れる様にしておいて下さいね『負け犬』」

 

「うわあああああああー!!」

 

 めぐみんはゆんゆんを虐めるのに熱が入ってきたのか、頬を火照らせている。

  たまに思うが、あいつは地味にいじめっ子の素質があると思う。

 

「馬鹿な事をやってないで帰るぞ……最近はずっとバタバタしてたからな、早く帰って屋敷でゴロゴロしたいんだよ」

 

「この男は、平気でそういう事を言いますね……」

 

 めぐみんからの視線が冷たいものに変わるが気にしない。

 

「それにしても、めぐみんが本当に上級魔法を覚えるなんてね……」

 

  ゆんゆんが涙目になりながら、とても意外そうにそうに口にする。

 

「私だって色々考えていたんです、カズマがピンチになっても何も出来なかった……爆裂魔法はそれはそれは美しくそして威力もある最強魔法ですけど、そんな事より目の前で仲間が……カズマが死ぬのが怖かったんです。だから私は……」

 

  笑っているのにどこか寂しそうな顔でそんな事を言うめぐみんに俺もゆんゆんも何も言えなくなってしまう。

  ……俺はまた、ふとバニルの言葉を思い出していた。

 

『貴様はこの旅の目的地にて、仲間に迷いを打ち明けられる時が来る。貴様の返答次第では、その仲間は自らの歩むべき道を変えるだろう。汝よく考え、後悔のない助言を与えるようにな』

 

 

「やっぱり止めるべきだったのか……」

 

  そんな後悔の言葉を誰にも聞こえない様に呟く。

 

「どうしました、カズマ?」

 

「いや、何でもないよ……」

 

「……そうですか、ではそろそろアクア達とも合流しましょう。帰って早く魔法の練習もしたいので」

 

「そうだな…たまになら、練習にも付き合ってやるよ」

 

「たまに、ではなく毎日付き合って欲しいです。私がこんな身体になってしまったのはカズマにも責任があるんですよ。」

  何故か顔を赤らめ、下を向きながらそんな事を言うめぐみんに、

 

「いちいち卑猥な言い方をするな!!俺はお前の冒険者カードを操作して上級魔法覚えさせただけだろ!!」

 

「ええ!?カズマさんがめぐみんの冒険者カードを操作したんですか!そんな!?いつの間に冒険者カードを預けあえる様な関係に……でもめぐみんは今日、カズマさんは私の男だって言ってたし……」

 

  何やらゆんゆんが勘違いをしているようだが、そんな事、今はどうでも良い。

  このままでは俺のこれからの引きこもり生活をこのロリっ子に邪魔されてしまうのだ。

「俺はお前の魔法の練習に毎日なんか付き合わないぞ!!俺の引きこもり生活を邪魔するのならたとえお前だろうと容赦はしないからな!!」

 

  そう、俺は真の男女平等を掲げる者。

  たとえそれが仲間の女の子であろうと、俺の安息を邪魔するのであれば容赦はしな……

 「そうですか、なら仕方ありません。他の人にでも頼むとしますね」

 

  そう言って俺の言う事に反論してくるめぐみんに……

 

 「あれ?」

  こいつ今なんて、

 

 「どうしました?」

 「へ?良いのか?毎日練習に付き合わなくても?」

 「別に構いませんよ、ここ最近はずっと遠出していて疲れているでしょうし、それに今回のシルビアとの戦いでカズマは大活躍でしたし、カズマが練習に付き合えない時は私ひとりで頑張ります」

 

 「お、おう…そうか」

  そんな風に言われると何故か少し罪悪感が……

 「ま、まあ……別に帰ってからはそんなに忙しい訳じゃないしな!毎日とは言わないが出来る限りは練習に付き合ってやるよ!」

 「そうですか、それじゃあ出来る限り練習に付き合って貰いますね!」

  めぐみんが凄く胡散臭い笑顔でそんな事を言う。

 

  これは嵌められたな…

  そういえばこいつは頭が良いんだった。

  変な悪知恵も働くようになってるが、これからはまともな魔法使いとして活躍してくれると思うとそんな些細な事も許せてしまう。

 

 「カズマァ!ボーッとしてないで早く戻りますよ!」

 「お、おう!そうだな」

 

 「ねぇ?結局カズマさんとめぐみんは付き合ってるの?」

 

  ここまで来て、何故か何も理解出来てなかったゆんゆんに本当の事をちゃんと説明して、俺達はめぐみんの実家に帰った────

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。
こんな作品ですが、良かったと思って頂けたらそっとお気に入り登録や高評価を付けてくれると幸いです。
お気に入りや高評価が増えたら投稿も頑張れるかもしれないです。(多分、いや、やっぱり無理かも……)


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第2話︰後悔

  ゆんゆんと別れてめぐみんの家に帰ってきて早々、アクアが俺に噛み付いてきた。

 

「ねえカズマさん、どうして私とダクネスはこんな所でずっと待たされてたのかしら?あの観客を集めたのは私なのよ!どうして厄介払いされないといけないの?凄く理不尽だと思うんですけど!!」

「仕方ないだろ……お前があのままあの場に居たら、また面倒を起こす気しかしなかったんだよ」

 

  あの時、めぐみんの言伝でアクアが里中の紅魔族を集めたのだが、俺の危機感知センサーが何か訴えてきた為、ダクネスにその事を説明しアクアを勝負の場所から帰らせたのだ。

 

「ちょっと待って、私が今までに面倒を起こした事なんて無かったと思うんですけど!今までもトラブルに巻き込まれるカズマの事を助けて上げてたのは私なんですけど!!」

「お前はどの口がそれを言うんだ!どこの誰がそのトラブルを持ってきてると思ってるんだ!……おい!目を逸らしてんじゃねえ!!」

 

  何でこいつは自分のしでかして来た事を簡単に忘れるのかと頭を抱えていると、

 

「まあまあ、二人とも落ち着け……で、めぐみんとゆんゆんの勝負自体はどうなったのだ?」

 

  ダクネスが少し心配したようにそれを聞いてくる。

  一応、アクアとダクネスにも勝負の内容と賭けに関しては説明してあるのだ、心配するのも無理は無い。

 

「めぐみんのその緩みきった表情を見るに、勝負には一応、勝てたと見て良いのだろうが……」

 

  どうやらダクネスは、めぐみんの心配をしていたわけではなかったらしい……

 

「やっぱりめぐみんの事だから、カズマさんみたいに狡賢い手を使ってゆんゆんを陥れたんじゃないかしら?」

 

「「おい、誰が狡賢いのかを聞こうじゃないか!」」

 

  アクアの失礼な言葉に俺とめぐみんの声が重なる。

  ダクネスが困ったような顔をしながら頭を抱えていてる。

  どうやらダクネスもアクアと同じ事を考えていたようで…

 

  「え?だって、あの勝負の内容だとめぐみんに勝ち目無いと思うんですけど、爆裂魔法しか使えないめぐみんは負けると思ってたんですけど」

 

  こいつのこの正直過ぎる所は少し考えものだが、確かに間違った事は言っていない、今までのめぐみんの事を考えればそう考えるのは必然なのかもしれない。

  俺はめぐみんの方に目を向けるとめぐみんが大きく頷いた。

  そして……

 

「……二人ともよく聞いてくれ、実はな……」

 

  俺は二人にめぐみんが上級魔法を覚えた事や今日の勝負の詳細を説明した。

 

 

 

 

 

 

 

 

  一連の流れを話終え、俺達はアクセルへ帰るためにめぐみんの家族と別れてテレポート屋に向かっていた。

 

「─そうか、めぐみんが爆裂魔法以外の魔法を……」

 

  ダクネスが顎に手を当てながら真剣にそう呟く。

 

「ええ!?めぐみん普通の魔法使いになっちゃうの?何かつまらないんですけど!!」

「何かつまらないとか、お前は一体、魔法使いに何を求めてるんだよ…」

「面白さとロマンですけど?」

 

  こんな馬鹿な事を言ってくるアクアに少し安心感すら覚えて来ている俺は多分、もう色々とダメなんだろう。

 

「アクア、私は普通の魔法使いに成り下がる気はさらさらありませんよ?これから先、私の名声は更に大きくなる事でしょう!!様々な異名が付けられて、色んなパーティーから引っ張りだこになる事は間違いないです!」

「めぐみんがこのパーティーから居なくなると寂しいんですけど、ニートと変態を世話するの私だけだと、ものすごくしんどくなるんですけど」

「大丈夫ですよアクア、私はどんな凄腕パーティーから誘われたとしてもこのパーティーを抜けるつもりはありません」

「ちょっと待ってくれアクア、その変態と言うのは間違いないなく私の事だろう?いや、多少自覚はしているのだが、仲間にそれを言われるとさすがに来るものがあるというか……」

「おいアクア、何処からどう見ても世話をされているのはお前の方だろ?さっきも言ったがお前はこのパーティーで1番のトラブルメーカーなんだからな?それをちゃんと自覚しろ」

 

  さっきから好き勝手言っているアクアに俺とダクネスが反論する。

  こいつは少し自分を抑えると言う事を覚えた方がいいと思う。

 

「何を言ってるのカズマ?私は女神なのよ!ちょっとぐらい、わがままを言ってグダグダしてもバチは当たらないと思うの!!」

「おっと、そろそろだな!」

「私の言ってる事を無視しないで欲しいんですけど」

 

  自分がグダグダしてる事を認めてるじゃないかとか、お前が女神なのに誰がバチを当てるんだとか色々と言いたい事はあるが、とりあえずテレポート屋の場所が近づいて来たので話を逸らす。

 

「あ、すみません、アクアとダクネスだけ先にアクセルへ飛んでもらっても良いでしょうか?」

 

  めぐみんが唐突にそんな事を言い出す。

 

「構わないが、どうしてだ?」

「いえ、少しカズマと話をしたい事がありまして」

「ねえめぐみん、それは隠し事かしら?私、このパーティーは隠し事の無いフレンドリーなパーティーであって欲しいと思ってるんですけど」

 

「いえ、別に隠し事では……」

 

「分かったわ!冷蔵庫にあったあの高級シュワシュワの事でしょ?カズマに襲われそうになった事を口実に少し飲ませて欲しいって言おうとしたんでしょ?でも残念ね、あのシュワシュワは私がここに来る前に全部飲んじゃったのでした!」

「おい!あれは最近バタバタしてる日が続いてるから紅魔の里から帰ったらめぐみん以外の3人でぱーっと飲もうと思って買っておいたやつなんだぞ!!」

「あの、カズマ?私はもう14歳なのですよ?もう結婚も出来ますし立派な大人です!お酒だってもう飲めます!!」

「まあまあ、良いじゃないかアクア、今回めぐみんは新しい魔法を覚えたんだし、それについて話したい事でもあるのだろう」

 

  ぐちゃぐちゃになってしまった会話をダクネスが冷静に引き戻してくれる。

 

「ええ!私も聞きたいんですけど!カズマだけズルいと思うんですけど!」

 

  今回やたらと絡んでくるなコイツは。

 

「帰ったらシュワシュワ奢ってやるからな?今回は素直に帰ってくれ」

 

  その言葉にアクアだけでなくめぐみんとダクネスも驚く。

 

「……あの、カズマ?どうして私の話を聞くためにそこまでしてくれるのですか?」

「いやいや、仲間からの真剣な言葉を聞いてやるのは当たり前の事じゃないか」

「何だか凄く胡散臭いのですが……」

 

  せっかく心配してやってるのに酷い言い草だ。

  決して今度こその愛の告白に期待している訳ではない。

 

「ねえねえカズマさん、約束だからね?帰ったらシュワシュワ奢りね?」

「ああ、良いやつを奢ってやる!」

「さあダクネス帰りましょう!私早く屋敷に帰ってゴロゴロしたいわ!」

「あ、待ってくれアクア!私を置いて行かないでくれれ!」

 

  アクアが突然走り出し、ダクネスがそれを追う。

 

  ギリギリで追いついた様で2人でテレポートして帰っていった。

 

 

 

 

 

 

「カズマ…すみません、突然こんな事……」

「いいよ別に……で、どうしたんだ?」

 

  めぐみんが突然かしこまった様に背筋を伸ばして、

 

「いえ、その……」

 

  何やらめぐみんが躊躇っている様に見える。

 

  こいつがこんなになるのも珍しい。

 

  もしかして本当に……

 

「告白!?愛の告白なのか!?めぐみん、俺はいつでもOKだぞ!」

「本当にデリカシーというものがありませんねあなたは!そんなんだからモテないんですよ!!」

 

  思春期の童貞にデリカシーがどうとか、そんな高度な事を求められても困るのだが……

 

「はあ…本当にどうしてあなたという人は…」

 

  とりあえず呆れられているという事は分かった。

 

「……何かごめん」

「謝らなくて良いですよ、勘違いさせる感じにした私にも責任はありますから」

 

  どうやら本当に勘違いだったらしい。

 

「話がそれてしまいましたがちゃんと言いますね」

「お、おう……」

 

  めぐみんの表情が突然険しくなり、俺は表情に驚きを隠せなくなる。

 

「カズマが居なければ、私は恐らく上級魔法を覚える事は出来ませんでした、私の心が弱かったばっかりにカズマに私のカードを操作させてしまった……本当にどう言えば良いか……」

 

  めぐみんの真剣な表情に俺は少し気圧される。

 

  それだけめぐみんの真剣さは今までの雰囲気とは一線を画していた。

 

「私は今までずっと周りからネタ魔法使いと呼ばれてきました……本当は辛かったんですよ、天才と呼ばれたこの私が爆裂魔法などという魔法に毒されてしまったが為に周りから馬鹿にされるだけで無く、仲間まで危険に晒しているという事が……」

 

  その悲痛な告白を聞いて胸が苦しくなる。

 

  だから……

 

「だから今はスッキリしているんです、これからは私が先頭に立って皆を助ける事が出来る」

 

  お願いだからそんな顔をしないでくれ……

 

「もう役立たずのネタ魔法使いなんかじゃありません……私は紅魔族随一の魔法の使い手です……だから」

 

 

 

 

「……私があなたの隣に立つ事を許してくれますか?」

 

 

  めぐみんの告白を聞いて、自分の選択の失敗を自覚する。

  やはりあの時めぐみんの意見を無視するべきだった。

  俺にはそれが出来た。俺はめぐみんに甘えたのだ。

  優秀な魔法使いになるという甘言に乗せられて、俺はめぐみんの気持ちを考えてやる事が出来ていなかった。

 

 

  どうすれば良い?俺はどうすれば………

 

 

「カズマ……?」

 

 

  めぐみんが不安そうにこちらを見つめてくる。

 

「ああ!もう!!」

 

「!?」

 

  俺が急に声を上げた事でめぐみんが驚くがそんな事は気にならない。

 

「俺は馬鹿かよ!何をグダグダと考えてたんだ!!」

 

  そうだ、失敗したのなら取り返せば良い。

  めぐみんの生きる目的を奪ったのなら俺がこいつの生きる目的とやらになってやれば良い。

  俺らしく無いとは思う。自分が人の生き甲斐になってやろうなんて。そんなのは物語の主人公がヒロインに対して思う様な大それた事だ。しかもヒロインの役割であるこいつは厨二病拗らせてるし、すぐに近所の子供と喧嘩するし、今日に至るまで才能の無駄使いまでしてやがった『大バカ野郎』だ。

 

 

  それでも俺は仲間の為に自分の生き甲斐まで放棄したパーティ1番の『大バカ野郎』をほっては置けない。

 

 

 

 

 

  だから……

 

 

 

 

 

「馬鹿かよお前は!隣に立っても良いか?なんてお前らしくないだろ!もっと図々しく来いよ天才魔法使い!」

 

「ッ!!」

 

「だいたい、俺は最弱職の冒険者だぞ、仲間の優秀な魔法使いに支えて貰う気満々だったつうの!!」

 

  めぐみんは泣きそうな顔なのに嬉しさを我慢出来ないような、微妙な表情になる。

 

  それでも何かが吹っ切れた様で……

 

「はい!もうカズマが何と言おうと、私は私のやりたいようにやります!!止まりませんからね私は、これから先に何が起ころうと、カズマと一緒なら私は何だって乗り越えて行ける気がするんです!!」

「随分俺へのハードルが高くなってる気がするんですが?」

 

  俺はめぐみんに困った表情の笑顔でそう呟く。

 

「いえ、私は本気でそう思ってますよ?私はカズマが居れば魔王だって怖くありません」

 

  何やら随分と高い評価をされていたものだ……

 

「……その期待、裏切らない様に頑張るよ」

「ええ!その意気です!!では言いたい事も言えましたし、そろそろ私達も帰りましょうか」

 

  めぐみんが俺の手を引いてテレポート屋の魔法陣へと向かう。

 

 

 

 

  魔王の討伐か………

 

 

 

 

  もしかしてこいつとなら……

 

 

 

 

「……まあ、少しぐらいは考えてやっても良いかな」

 

 

「どうしましたカズマ?」

 

 

「いや、何でも無いよ…」

 

 

 

 

  そして、俺達2人は魔法の光に包まれた─

 

 

 

 

 

 

 

 




遅くなってしまい本当に申し訳ございません!!
個人的にはもう少し話の内容を膨らませたい所です。


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