生まれ変わって調整体魔法師 (アマノハブキ)
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第1話

 

 

 

 

 

「イリヤスフィール様、会場の準備が整いました。」

「そう」

 

シワのないスーツを着た支配人が私のいる控え室のドアを開けて恭しく頭を下げる。

 

今日は私の開発した初めての新作の発表会なのだ。何を作ったのか。

それは、今まで不可能と言われ続けた汎用型CADに特化型CAD用の照準補助システムを増設するという技術を初めて実用化した試作デバイスだ。これにより、CADの開発はさらなる飛躍を見せるだろう。

 

前代未聞の技術という触れ込みでマスコミも世界各国から集まっている。この私に限って失敗することなど万に一つない。

 

座っていた椅子から立ち上がり、部屋から出る途中で鏡を見る。

 

身だしなみに問題は無し。鏡に映っていたのは一人の幼女。白銀の長髪に紅の瞳、その様はまるで雪の妖精のようだった。肩や袖に刺繍が施された紫色のシャツにシャツより薄い紫のアスコット・タイ、申しわけ程度のフリルがついた白のスカートを身にまとっていた。

 

「行きましょう」

 

そう言って銀髪をなびかせるながら部屋を出る。

 

誰もが私に頭を下げてくる廊下のど真ん中を堂々と歩く。

 

(転生なんて不思議なことを経験してからもう15年か)

 

ふとそんなことを考える。

 

病弱だった私は案の定、病魔に抗うことができず死んだ。しかし、気がつけば知らない天井の元、この世界に生まれ変わっていた。

 

かつて「超能力」と呼ばれていた先天的に備わる能力が「魔法」という名前で体系化され、強力な魔法技能師は国の力と見なされるようになった。各国はこぞって魔法の開発に専念するようになったという。そんな世界に私は生まれ変わった。

 

ところで調整体魔法師というのをご存知だろうか。

 

遺伝子操作、人体実験上等な研究者によって作り出された文字通り、調整された魔法師だ。

ドイツ発祥のその技術、そのドイツで頂点に立つアインツベルンという一族が研究していた『聖杯シリーズ』の最高傑作の調整体魔法師が私だ。

『聖杯シリーズ』の概要は、聖杯と呼ばれる大規模ストレージに大量の想子(サイオン)を保有することができ、常人の十数倍に及ぶ想子(サイオン)を有する個体であるということ。他には、魔法演算領域の広い個体と個体を掛け合わせ続けた結果、今までで最高の広さである魔法演算領域を持っていることなど。特に物体の解析と構築に対して瞬間とも言える演算速度を持つ。ということだ。

 

実験の果てに死んでしまったのか、父親と母親はいなかった。

 

そして、私を生み出して満足したのか、アインツベルンの当主とその他幹部もほとんどが死亡してしまい、必然的に私がアインツベルン当主となった。

 

かつての世界には無かった魔法。私は魔法の虜になってしまった。ドイツという国が魔法を用いた工学先進国というのもあり、私は魔法工学に始まりCADの開発にまで手を出した。

私の教育係でもあるセラに政治関係のことを丸投げしてしまっているのがすこしあれだが、私には政治のせの字も分からないので頼むしかあるまい。なんせドイツの魔法界隈の頂点が私たちアインツベルンだ。下手な手は打てないのである。

 

そしてCADの開発を進めて数年。私は不可能と言われ続けた汎用型CADに特化型CAD用の照準補助システムを増設することに成功したのだ。

 

壇上の袖で一度深呼吸をする。後ろを見るといつのまにかセラとセラの妹で私の世話をしてくれるリーゼリットが微笑みながら立っていた。

 

「行ってくるわ」

「行ってらっしゃいませ」

「行ってらっしゃ〜い」

 

二人の声を背に私はステージに立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拍手とカメラのフラッシュの光を背中に浴びながら私はステージを降りた。

 

「お疲れ様です」

「ありがとう」

 

そう言って冷えた水をセラから受け取ると一息に煽る。食道を伝って体が中から冷えていく感覚が興奮で火照った体にとても気持ちがいい。

 

「イリヤ〜、ニュース」

 

そう言ってリーゼリットからタブレットを受け取る。

 

『トーラス・シルバーがループ・キャストを公表!』

 

でかでかと掲げられた見出し。なんでも、日本のデバイス開発会社、フォア・リーブス・テクノロジーに所属する魔法工学技師であるトーラス・シルバーがループ・キャストを実用化したとか。ループ・キャストとは、魔法師の演算キャパシティが許す限り何度でも連続して魔法を発動できるように組まれた起動式、またはそのソフトウェア技術のことである。通常の起動式は魔法発動の都度消去される為、同じ術式を発動するにはその都度CADから起動式を展開し直さなければならなかった。しかし、この技術を用いれば、二度目以降の展開工程を省略し、より高速で魔法が展開出来るというわけだ。

 

よりによってこのタイミングか。

 

なんとなく納得がいかず眉をひそめる。

そもそも、ループ・キャストは実用化ができてなかっただけで、論文自体は私が発表したのだ。実用化されて嬉しくないわけではないが、タイミングがタイミングであるだけ、素直に喜べない。

 

「日本か……」

「如何なさいましたか?」

「あ、いやなんでもないわ」

 

思わず口に出てしまっていたか。

 

生まれからドイツだったため、今では慣れたが、もともと私は日本人。寿司に和菓子、日本が懐かしくて仕方がない。

 

「そういえばイリヤ様、高等学校に行かれたりするのでしょうか?そろそろかと思うのですが」

「高等学校?」

 

セラの言葉で、あー、もうそんな歳だったか。あっという間だったなぁ、なんて考えてしまう。高校かー、高校。懐かしい。私が病気になったのも高校卒業してからだ。それまでは楽しい高校生ライフを送っていたからなぁ。

 

 

 

ちょっとまって

 

 

 

「セラ、日本って魔法の先進国だったわよね」

「そうですね、件のループ・キャストのフォア・リーブス・テクノロジーを、初めとして先進国と言われるレベルにあるかと。現代魔法だけではなく、古式魔法においても追随を許さないかと」

 

まぁ、イリヤ様には敵いませんがと付け加えてくるのをそれとなく聞き逃しながら考える。

 

日本への留学、悪くないんじゃないか?

 

魔法技術大国、魔法先進国である日本なら学ぶことも多いはず。何か持って帰ってくるという条件付きならうるさい奴らも黙るはず。

 

廊下にあった手頃なソファに腰掛けると、手元にあるタブレットで日本について調べ始める。

 

日本が力を入れている魔法教育、その先頭に立っているのが国立魔法大学付属高校。国内に九つの学校の中でも、第一高校は最高峰の国立魔法大学へ一番多く生徒を輩出しており、十師族と呼ばれる魔法に優れた家系の者たちが二人いると。東京にも近い。

 

ここにしよう。入学しよう。

 

「セラ、日本の第一高校に入学するわ」

「本当ですか!?」

 

驚いたように目を見開くセラ。リーゼリットも驚いたのか声は上げずとも目を見開いていた。

 

「そのことで色々騒がしくなると思うの。だから手回しと準備をお願い。日本には私とセラ、リーゼリットで行くわ。よってアインツベルンの城は残りのメイドと保険で私のゴーレムを置いておくわ」

「……かしこまりました、お任せください」

 

多少の間があったものの、これでなんとかなりそうだ。

 

リーゼリットにタブレットを渡し、ソファから立ち上がる。

 

「楽しみだわ、日本!」

 

手を広げ、廊下をくるくる舞いながら進んで行く。

 

なんせ十何年ぶりの帰省だ。私の住んでた世界からとんでもなく様変わりしていると思うが、なるようになるはず。

 

目指せ友達100人!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第2話

 

 

 

「ふざけるな!アインツベルンは祖国を捨てるというのか!?」

「ですから先ほどから申し上げているとおり、ただの留学で御座います」

 

ドイツの中心、政治の最重要機関である国立会議場の一番特上の部屋では大荒れな会議が行われていた。

 

楕円形の片方にスーツを着たドイツ政府の重役十数人、もう片方にはドイツが誇る魔法師の一族の現アインツベルン家当主の白銀の幼女、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンとその後ろに控える二人の従者。

その片割れであるこれまた美しい銀の長髪を持った従者とハゲ散らかった頭部に無駄に高価そうなスーツを着込んだ中年と言い合いをしていた。

 

「であれば、当初の計画通りミュンヘン魔法工学大学付属高校へ行くことで事足りるではないか!?あなたは自分がどれほどの人物であるか知っているのですか、なぜわざわざ危険を冒してまで日本へ行こうとするのだ!?」

 

ミュンヘン魔法工学大学付属高校?そんなもの初耳だったのだが。チラリとセラの方を見やる。

すると私の言わんとすることが伝わったのか、セラが耳打ちをしてくる。

 

「申し訳ございません、一応形式だけでもいいので入って欲しいと日本の土下座というのまでされてしまい。形だけならと判断してしまいました」

 

あ、そう。べつにそんな特別に怒ってるわけでもないのでいいのだが。

それにしても面倒なことになった。もっとぱっぱと話が決まって今日の夜には日本に飛べるかと思っていたんだけれど。窓から覗く景気はオレンジ色と紫色が混じったようなものになってしまっていた。

ぶっちゃけた話、もうすでに日本の第一高校には出願している。入試まであと一ヶ月といったところだけれど、問題ない。日本の高校入試の過去問を見てみたが大したことなかった。余裕で受かることができる自信がある。

 

ここでガツンといって諦めてもらいたいところだ。

 

「なぜあなた方は私の行動に否定的なのかしら?」

「さっきも述べた通りです。わざわざ日本に行かなくても……」

 

ほかの重役たちもうんうんと頷いている。

 

「日本とドイツとの関係は悪いものではなかったはずよ。現に、フォルク・ワーゲン社と日本の研究機関で技術提携が行われているじゃない。それに日本は世界でも有数の魔法技術先進国。あなた方が危惧するようなことはないのではなくって?」

「それは……そう、ですが」

 

なんだ、案外簡単そうじゃないか。まぁ、そんなにいうのなら納得するような理由でも作ろうかしら。

 

「日本には、アインツベルンと同じく物体解析を研究しているエミヤ魔法工学研究所というのがあるのはご存知かしら?」

「ええ」

「そこの見学も兼ねてアインツベルン家として滞在することはできないかしら?エミヤ魔法工学研究所だけではなく、他にも色々。それこそ技術を祖国に持って帰ることで納得していただけないかしら?アインツベルンのものとして、もっと見聞を広げたいの」

「…………しかし、飛行機に乗っている間に狙われたりしたらーーー」

 

もうそろそろ面倒臭くなってきた。

 

「貴方達、まさかアインツベルンの長たる私がその程度で死ぬとでも思っているのかしら?だとしたら、そんなこともわからないような者達が主導する国になんている必要がないわ。それこそ日本やUNSAに移った方が余程いいわ。もう一度だけ聞くわ。日本に渡ってもいいかしら?」

 

自分でもびっくりするほど怖い声が出た。正面を見れば顔色を青く染める様を見て少しわらえてくる。

 

沈黙は肯定

 

となればこれ以上ここに用はない。

そもそも、私がドイツにいるのは魔法工学へと手の出しやすさが世界で一番だからだ。別に、魔法技術先進国ならどこでもいいという感じはある。ただ、なんとなくドイツでなくてはいけないような感じがするのだ。

 

立ち上がると懐からメモリーカードを取り出す。あらかじめ反重力の魔法をかけてメモリーカードを対面に投げる。綺麗な放物線を描いて机に落ちることなく役人の目の前に留まった。

 

「許可をくれたお礼よ。先の新作デバイスの情報を入れておいたわ。生かすも殺すも貴方達次第ってことで。ああ、安心して。日本に渡っても研究データは定期的に送信するわ。それについては構わないけど、データ毎の報酬金はいつもの口座によろしくね。それじゃあね」

 

そういって両開きの大きなドアをセラとリズ(リーゼリット)にそれぞれ開けさせると悠々と会議場を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「荷物はこの程度でよろしいでしょうか?」

 

セラが荷造りの終わったキャリーバックを開いてみせる。私服に普段着、紫色の美しいドレス、下着に歯磨きなどその他日用品まで。まるで旅行に行くかのような荷物の量だ。

 

「大丈夫じゃないかしら。もし足りなければあっちで揃えればいいし」

「イリヤ、CADは、これでいい?」

 

そういって今度はリズが灰色のアタッシュケースを開いて私にみせる。

中には機械と一目でわかるものから、ただの貴金属のようなものまで様々だった。特化型CAD用の照準補助システムを増設した汎用型CAD『ナインライブズ』、刻印魔法が施された水銀『月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)』。あとはカスタムされたブレスレット型の汎用型CADにその他いくつか機械類。

 

「あと、もしものためっていうのと、研究の続きってことでバーサーカーも持って行くわ。日本の拠点にバーサーカーが入るくらいの工房はあるでしょ?」

「うん、ある」

「よかった。じゃあ、運搬と隠蔽は任せるわ」

「わかった」

 

こんなものか。とりあえずバーサーカーを持ってけるのはありがたかった。すでに運用可能にはなっているがまだまだ足りない。参考にしているギリシャ神話の英霊。彼の成した十二の偉業をモチーフにしたシステムがまだなのだ。

 

日本はドイツに劣らず魔法工学も進んでいる。エミヤ魔法工学研究所に始まり遠坂重工、一部のものしか知らない柳洞寺の魔法師など。そこのあたりの話を聞ければさらに躍進するかもしれない。

 

そうだ、城の警備をゴーレムにもさせるんだった。

ゴーレムを起動させるために私は、城の地下へと足を運んだ。

 

 

 

セラは諸々の準備があるといって別れた。今はリズを連れて地下の格納庫へと向かっていた。

 

松明が点々と置かれた階段を下り切るとそこは暗闇だった。あかりもなければ地下ということもあり、窓もなかった。ふう、と一息つくと

 

「起動」

 

パチンと指を鳴らす。

すると、おくから点々と光が灯っていった。よく見ればそれは各ゴーレムの瞳だった。岩を無理やりくっつけたようなものから、すらっとした細いもの、さらには二メートルはあるかという巨人のようなものまで。

 

タブレット式のCADでゴーレム達を稼働させた魔法式を展開する。そこに指示のための命令系統の式を加える。そうすると、それぞれが意思を持ったかのように動き始めた。それを確認すると、CADをリズに手渡す。

 

「これでよし、あとは行くだけね」

「お待たせしました」

 

ちょうどセラの方も準備が終わったようだ。

 

「玄関に車をつけておきました。あとは出立するのみです」

「そう」

 

 

 

 

 

「じゃあ、行きましょうか!!」

 

そう言って、アインツベルン御一行様は自家用車で自前の空港に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






読んでくれて本当に感謝。

感想評価、モチベアップですわ。よろしければ、ご意見下さいませ。

つぎ、一ヶ月飛ばして入学式!




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第3話

 

 

 

 

リズが運転するメルセデス・ベンツ300SLクーペの後部座席に座り、私は流れて行く外の景色を眺めながら、これから過ごすであろう十数年ぶりの高校生活へと思いを馳せていた。

 

「イリヤ様、もうすぐ第一高校付近です」

「ありがとう……そうだ、今後は公共交通機関で登校するわ。さすがに毎日この車で送ってもらうのはね」

 

ただでさえアインツベルン家当主として顔が割れているのだ。無理だとは思うが、新天地ということですこしは穏やかに過ごしてみたいと思ったりするわけなのだ。

 

揺れが収まり、同時にエンジン音もやむ。ドアがセラの手によって開けられ、桜の花びらが車内に入ってくる。

私は春の空気を胸いっぱいに吸い込むとゆっくりと吐いた。

懐かしい空気だ。ドイツではこうはいかなかったしアインツベルンの城は年中雪に覆われているので外に出て深呼吸など論外だ。肺が凍って死ぬ。

 

「CADはお持ちになられましたか?マネーカードは?ええと、それから」

「そんなに慌てなくても大丈夫よ」

「ですが……」

 

現在のセラは、いつものメイド姿ではない。麦わら色の長袖に焦茶色のロングスカート、その上にエプロンをつけていた。私からの命令で日本にいる間は日本で一般的な服装をすることと厳命しており、今のセラはどこか母のような雰囲気を感じる服装となっていた。高校に入学するにもかかわらず依然見た目が幼女の私がいるのも相まって完全に入学式についてきてしまった母親と娘にしか見えない。

 

「それじゃ、何かあったら連絡するわ」

「いってらっしゃいませ」

「いてら〜」

 

礼儀正しくお辞儀をするセラと窓越しにひらひらあと手を振るリズに手を振りながら真新しい制服に身を包んだ生徒たちの波に紛れるように、第一高校へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中条あずさは興奮していた。校門脇でその人を出待ちするほど興奮していた。興奮のあまり昨日は一睡もできなかった。

なんと今年、あの今まで不可能と言われ続けた汎用型CADに特化型CAD用の照準補助システムを増設するという技術を確立させ、世に発表したイリヤスフィール・フォン・アインツベルンがこの第一高校に入学するらしいのだ。あの記者会見は何度見返したかわからない。あの幼い見た目でまさか中学三年生だったとは。小学生ぐらいかと思ってたなど口が裂けても言えない。

 

アインツベルンとは。

 

ドイツに本拠地を構える魔法師の一族。先代は魔法実験の事故で亡くなってしまいイリヤスフィールが当主になったと聞く。

物体の解析や構築を専門とし、魔法工学の根底を築いたとも言われている。CADという機器の初期構想もアインツベルンという話もあるほどだ。

そして、件のイリヤスフィール、彼女がこれまたとんでもないのだ。

先ほどの汎用型と特化型の融合に始まり、トーラス・シルバーが実用化したループ・キャストも理論や証明は全て彼女によるものなのだ。CADだけではない。貴金属の変形、変質。錬金術と呼ばれるようになった一種の魔法を体系化したのも彼女だ。厳密には『等価交換による物質の変形』なのだが、とんでもない人物であるのは疑いようもない。もし会えるのなら、話したり、サインをもらったりしたいものだが……

 

「ふえ?」

 

その時

中条あずさの目の前を自分と同じくらいの銀髪の少女が通り過ぎていった。

 

「はっ!?」

 

もしかして今のが!?慌てて見回すが銀色はどこにも見つからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人混みに流されるように歩いていくこと数分。気がつけば『国立魔法大学付属第一高等学校 入学式』と達筆な字体で書かれた看板がかけられた体育館の入り口に立っていた。

とりあえず、入学式か。

そんなことをぼやきながら私は体育館内に入る。

 

「うわぁ」

 

これはひどい。くだらなすぎる。

前情報として、この学校が一科生二科生制度を取っていることも知っていた。一科生には教師がつき、二科生にはつかないことも、一科生は花弁(ブルーム)と、二科生は雑草(ウィード)と呼び合い差別していることも知っていた。

しかしまさか、入学式の席もがそれで決められるとは。

 

阿呆らしい。

 

そんなことを思いながら会場の真ん中ほどの私には少し高めの椅子に座る。

 

完全に余談だが、私ももちろん一科生だ。証拠に私の制服には花弁をモチーフにしたエンブレムが付いている。

 

バーサーカー に組み込む魔法を脳内でシミュレーションを繰り返していたらいつの間にか入学式が始まっていた。

内容としては、私の知っている入学式とは大して変わらなかった。

印象に残っているのは、新入生総代の言葉だ。一科生にしては「魔法以外で」「皆等しく」などの際どいフレーズがたっぷりと盛り込まれたスピーチだったが、その美しい容姿ゆえなのか、皆気にしている様子がなかった。

 

その後も式辞や会長からの言葉があったが別段興味が湧かなかったので、ずっと研究のことを考えている間に入学式は終わっていた。

 

式が終了すれば、次はIDカードの交付だ。予め各個人のカードが作成されているわけではなく、個人認証を行なってその場で学園内カードにデータを書き込む仕組みだからだ。銀髪紅瞳というのもあり、様々な意図を含んだ視線の中で私はカードを受け取り、自分のクラスを確認する。

 

「A組か」

 

さて、これからどうしようか。ずっとドイツにいたからか、いまいち感触がつかめない。

人件費の無駄、いちいち人手を割くのも面倒ということで、ホームルームがないのも事前情報として知っているが。どうしたものか。

 

とりあえず、今日のところは帰るとしよう。

 

そう言って私は校門をくぐるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







もうちょい文字数増やしたほうがいいですかね?
そこんとこ、皆さんはどんな感じなんだろうか……

あ、評価・感想・誤字報告、助かっております。
モチベの一つ、ありがとうございます!



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第4話


ちなみにうちのカルデアのクロエちゃんはレベル100スキルマ絆マフォウマです。

最強なんやで





 

 

 

 

 

入学式から帰ってきて、セラから色々と言われ、夜ご飯を食べたあとこの地下の工房にやってきた。

 

そして、私は今工房に篭って、ドイツから持って来ていた秘密道具を持って来ていた。

ディスプレイや機器の照明の他に僅かな光源のみの地下工房。そして、その暗闇に薄っすらと浮かぶ漆黒の影。

 

識別名称『ヘラクレス』

 

今持てる私の技術の全てを凝縮して作り出した半自立人形だ。巨人と見間違うほどの巨躯を持った、(いわお)のような男性の人形(ゴーレム)。纏っている装備は刻印魔術を施した金属をあしらった腰巻のみ。燃え盛る炎のような黒の髪。起動してないがゆえに生命の光を灯していない紅の瞳。

 

これはギリシャ神話の英雄ヘラクレスをモチーフに私が開発したものだ。

 

十二の試練(ゴッドハンド)』と銘打った魔法を始めとしたものに対魔法障壁や万物を叩き割る高出力の両腕。あらゆるものを飛び越えて駆け抜ける機動力。恐らく、魔法工学としてはこれを超えるものは今の世界にはないという自負さえある。

 

普通に学校生活を送っていればバーサーカー(ヘラクレス)を使うことなんて無いだろうが、私はアインツベルンだ。戦いに巻き込まれるというもしかしてに備えたほうがいいことに変わりはない。

 

さらに開発困難と思っていた十二の試練はやっと完成した。ほんの数十分まえの話だ。確かな達成感とともに、自分の生きがいでもある研究のテーマをやりきってしまった虚無感を感じていた。やることはなくなってしまったし、これから私は何を生きがいしようか……。

 

ドイツに開発データを回さなきゃいけないし。ナインライブズの研究でもしようかしら。確かにあれもまだまだムラがあるし、もっとスマートを目指してやってみようか……。

 

そんなことを思いながらディスプレイに向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつけば朝を迎えていた。

オートセーブでシャットダウンしているディスプレイとコンピュータを見た感じだと、寝落ちしてしまったのだろう。まったく、高校生にもなってだらしないと思いながら階段を登って行く。

 

階段を登りきり、まずは洗面所で顔を洗う。冷たい水が心地よい。

リビングに出ると美味しそうな匂いが漂ってきた。

 

「おはようございます、イリヤ様」

「おはよーイリヤ」

「うん、おはよう」

 

セラとリズに挨拶を返すと、席についてコンソメスープをゆっくり飲む。内側からじんわりと体が温まって行く感触を味わいながら、バターの乗ったコンガリと焼かれたトーストを手に取ると思いっきりかぶりつく。サクッと音を立てるトーストはその通り、最高の歯ごたえだった。さらに噛むとバターが滲み出てくる点で100点満点だ。

 

「また髪をこんなにして……あ、リーゼリットはイリヤ様の服を取ってきて」

「は〜い」

 

思わず笑みがこぼれてしまうような朝食に舌鼓を打ってるちょうどその時に、セラが髪を梳いてくれた。くすぐったいようで気持ちが良い。

 

「服、ここ置いとくね」

「ありがとー」

 

最後に牛乳を一気飲みしたタイミングでセラの方も終わったようだ。

寝巻きから第一高校の制服に着替えると、そのまま再び洗面台に向かって歯磨きを始める。

 

ドイツにいた頃なら、全ての準備をやらせていたが、ここにきてからは少しずつ自分でやることを増やしていった。やっぱり、環境が大きく変わったのなら、生活スタイルも変えて見たいというものなのだ。いつもならここでセラにお小言の一つや二つ言われそうなものなのだが、どうやらセラも存外、この生活を気に入っているらしい。

 

口をゆすぎ、最後に身だしなみを整える。

 

「行ってきます!」

「行ってらっしゃいませ」

「いてらー」

 

つい昨日も同じやりとりだったような、と思いながら私は家を出た。

 

 

 

 

 

ドイツでは未だに電車やバスが使われていたのだが(もちろん、前世で私が使っていたものとは大きく異なる)、日本は大分違うらしい。大人数を乗せて走るものなど一部のみで、公共交通機関といえば、この目の前にある四人乗りほどの大きさのキャビネットを指すらしい。なんでもこのリニア式小型車両は全て交通管制システムで一括で管理されており、それ故に移動で時間がかかるなどほとんどないらしいのだ。この技術はドイツに持って帰ろう、そんなことを考えながら、第一高校前までのキャビネットに乗り込んだ。

 

ふと携帯端末をここのところ開いてなかったと思い開いてみる。案の定ドイツの官僚からのメールが山ほど届いていた。面倒なので目も通さずゴミ箱のフォルダーにぶち込む。そうしてフォームがすっきりしてから再び液晶を見直す。

 

『遠坂重工よりアインツベルン様へ』

 

そう書かれたメールを速攻で開くと早速中身を確認した。

 

『この度は魔法大学付属第一高等学校への入学、おめでとうございます。

以前より相談をいただいてました会談、及び技術提携につきましては、是非やらせていただきたく思っております。会談につきましては以前確認した日付けでよろしいでしょうか?その他事前資料も添付しておきます。お返事の程、お待ちしております。』

 

と書かれていた。添付されていたファイルもなかなか興味深そうなものだった。すかさず返信を書く。お返しとばかりに、刻印魔術の効率化についての理論と証明を添付して送信した。

 

ほう、と一息つくと深く椅子に座りなおす。

 

遠坂重工のみならずエミヤ魔法工学研究所とも今の所うまく行っている。私は小さくほくそ笑みながらもう慣れてしまったメルセデスとは違った揺れに身をまかせるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 





進まんかった!

これで森崎とのいざこざまでやるつもりだったんだが……

早くて明日朝、お昼くらいに投稿できればと思ってます。



感想評価ありがとうござます!!



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第5話


すみません、朝とか昼とか言ってたけど無理でした……





 

 

 

少し余裕を持って学校に着いた私は早速席に着くと、A組の自分の席にある端末を起動した。

 

端末の起動を待つその数秒の間で少し耳を立ててみる。

 

コソコソとこちらに向けられたものが目立った。そりゃ、ドイツの魔法界の頂点であるアインツベルンが同じクラスにいるとなれば目立つに決まっている。特に容姿なんて、日本ではコスプレ以外一生お目にかかれないだろう。銀髪に紅瞳なんてそんなよくある特徴でもあるまいし。

 

別に私は一人でも構わないし、困ることなんて何一つないんだが、せっかく同じクラスなのだから話しかけてくれたりしてもいいのに。

 

そんなことを考えながら起動した端末にIDカードをセットし、インフォメーションを開いた。

 

履修規則、風紀規則、施設の利用規約から入学に伴うイベント、自治活動の案内、一学期のカリキュラムなどを全て頭に入れ、スクロールして行く。

読むべきものを全て頭に叩き込んだ後は、コンソールからキーボードを呼び出し、受講登録や記入の必須事項などをノータイムで一つのミスなく打ち込んで行く。

 

最後にもう一度全ての項目に目を通す。

 

(総括、私が受けて得するような授業はなし。ここでのメリットといえば閲覧制限付きの文献が読み放題ってことだけね)

 

日本で1、2を争う進学校なのだ、魔法や授業、色々と期待など全くしていなかったといえば嘘になるが、やはり思ったとおりだった。魔法技術先進国とはいえ、所詮高校一年生でやれる分野などたかが知れている。魔法工学に至っては本格的に実施するのは二年生からだそうだ。

 

そんなことを考えながら内心ため息をついた。

 

「あの、こんにちは!私、隣の席の光井ほのかです、よろしくお願いします!」

「北山雫、です。あの、えっとよろしくお願いします……」

「あ、ちゃんと言わなきゃダメだって……」

 

すると隣から声をかけられた。明るいい色の髪をした子が光井ほのか、黒髪のショートの子が北山雫。なんかこの子すごくもじもじしているんですけども。

 

北山ってどこかで……

 

「はじめまして。ドイツから来ました、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンです」

「日本語お上手なんですね!」

「えぇ、まぁ。ありがとうございます」

 

ふと雫の方を見る。あまり表情に起伏が見えないが、その瞳は驚きのためかすこし見開いていた。

 

「もしかして、あのアインツベルン(・・・・・・・)ですか?」

「多分、貴方が考えているアインツベルンであってるわ」

「ほん、もの……!」

 

興奮のためか、雫は顔を赤くしてドタバタと自分の席まで戻って行く。バッグを持って戻ってくると、いそいそとバッグをあさる。するとバッグから一冊の本を取り出すと手を若干震わせながら手渡して来た。

 

「あの、今日これしか持ってないんですけど……全部、初版で揃えてます!えぇっと……さ、サイン、下さい!」

 

と言いながらズイと出してきた。

 

本の表紙を見れば『魔法工学から考察するこの先の魔法師の在り方』とドイツ語(・・・・)で書かれていた。

自分の研究を世に公表したいという研究職としての本能が私にいくつかの本を書かせた。どれも魔法工学についてだが、ただの論文から魔法工学を通じて考えた哲学や倫理観、他にも新たな魔法についての可能性など、根底にあるのは工学とはいえ、多岐にわたる範囲で本を書いた。この『魔法工学から考察するこの先の魔法師の在り方』と題した本はあまり上手く書けた自信がなかったので、自費出版でわずか千部弱しか世に出回ってないものだ。世間で言うところのレアものである。興味本位で本の題名から中古ショップのサイトを覗いたことがあるが、元の値段の数十倍の値段で取引されていた。

こんなものを持ち歩いて大丈夫なのかと思ったが、この本自体あまり知られておらず、ドイツでなければ知らない人の方が多い。

 

はず。

 

「ドイツ語わかるの?」

「うん、じゃなかったはい!論文の紹介でアインツベルンさんのことを知ってから、人の手が入った物じゃなくて、そのままを感じてみたいって思ったから」

「そう、すごいわ。私もこんなファンがいてくれたなんてとても驚いているもの」

「あ、ありがとうございます……」

 

ますます顔を赤くしている雫。このままだと顔から本当に湯気でも出しそうだ。

 

「サインだったかしら。喜んで書かせてもらうわ」

「ありがとうございます!!」

 

そんな返事を聴きながら手提げからペンを取り出すと表紙を開く。

 

(そういえば、サインなんて書類でしか描いたことがなかったわね……)

 

サインなんて書類の契約欄に書く程度で、こういったいわゆるファンサービス向けのサインは考えてなかった。

 

いい機会だし今日考えたものを私のサインにしようと思った。

 

いくら考えても仕方ないと思ったので、直感で書いてしまった。イリヤスフィールという文字を筆記体にして、全体的に丸っぽい形になるように。なんとなく可愛げが足りないと思ったのでデフォルメした猫を添えておく。最後に日付とZu Shizuku(雫へ)と書くと、パタンと表紙を閉じる。

 

「どうぞ。あぁ、私今までサインとか書類契約でしか書いたことがなくって……このイリヤスフィールのサインを書いたのは貴方が初めてよ」

 

そう言いながら丁寧に両手で雫に渡した。

 

「は、じ…めて……………………ありがとうございます!!一生の宝物にします!!」

 

そう言って雫が涙を浮かべながら頭を下げたところで、始業を伝えるチャイムが鳴った。

 

 

 

 

 






文字数に関してのさまざまなご意見、ありがとうございます。
誤字脱字報告も助かっております。

えっと、結構大きな見落としがありました。
魔法師の渡航は厳禁だったのでは?というお言葉を頂きまして。
調べてみたところ、「ハイレベルの魔法師の遺伝子資源が流出することを危惧する政府により、海外渡航をも厳しく管理され、実質的に魔法師開発の国際化の時代は終わった」という記述がありました。

確かにそうですね。自国の火力と同義である魔法師を、そう易々と国外に出すわけにはいきませんよね。増して、その優秀な遺伝子を取られたりなんて……

ということや、リーナが留学してきたという例外を吟味した結果、ドイツ政府と会議していた回のお話を変えておきます。今、書いている途中なので、もうしばらくお待ちください。

大まかな設定としては、期限は三年間、性行為等遺伝子データの流出する恐れがある行動は必ず避ける、日本で公開していい魔法関係の道具及び資料は限定する。などの制約ありです。この制約を破ることでアインツベルンの全財産を政府に譲渡などの契約をした上での留学とします。

すみません、ガバガバ設定で……

もし何かあれば、また変更するかもしれません。



長々とお付き合い頂きありがとうございました。




あ、評価・感想、ありがとうございます!!





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第6話



今まで2500くらいだったんすか、気づいたらこんなになってました。
切る場所もわからなかったので取り敢えず投稿。


よろしければお付き合いください。

ではでは




 

 

 

 

 

 

授業を行う先生達が教室に来たり、ディスプレイ越しに挨拶したりなど、一通りオリエンテーションが終了した。他にもカリキュラムのガイダンスや履修科目の選択方法、男女一組のカウンセラーの説明などもあった。

 

この後、直ぐに授業が始まる。と言うわけではなく、残りの2日ほどをかけて新入生は学校の施設や上級生の授業の見学をするのだ。

 

それはなぜか。

 

この二日間の見学という時間は、今まで魔法に触れてこなかった生徒たちの不安を取り除くためだったり、自分の中で思い描いていたものとの差をなるべく縮めるための措置だ。

 

今日はこの各種説明の時間だけで、残りは学校の見学に当てていいとのことだ。

 

(さて、何を見に行こう)

 

今後の予定を考える。中々に難しい。

 

当たり前のことながら私自身、分身などできるはずもない。つまり、行きたい場所が中々多く、時間が足りないということだ。

 

この第一高校ではどれほどの深さまで授業をしているかとか。

ここの設備の充実さとか。

前世ぶり、ひさびさに口にすることになる学生食堂のメニューだったり。

その他には、施設見学ということで闘技場や工房。

あ、遠隔魔法用実習室にも行って見たい。

日本の中でも指折りの実力者、十師族の一つ、七草の長女こと七草真由美の所属するクラスが今日遠隔魔法用実習室、通称射撃場で授業があるというのだ。

 

仕方がないし、見学期間ではこの1日しか見学できないという七草会長の実技演習でも見に行こう。こうして考えてるだけでも時間は無駄に過ぎていく。

 

だとすれば話は早い。

 

端末に接続していたIDカードを引っこ抜くと、そのまま端末の電源も落とす。

 

さぁ、行こう。前世ぶりの高校見学へと!

 

「あのアインツベルンさん」

 

勢いづいたそのときに声をかけられるものだから思わず転びそうになってしまう。しかしこれでも私は淑女。そんな失態、見せるわけにはいかない。

よろけたことを気付かれないように努めながら、声の方へと振り返ると、そこには先程私に話しかけてくれた明るい女性、光井ほのかさんと私のファンだと言ってくれた北山雫さん。声をかけてくれたのはほのかだったようだ。

 

「どうしたの?」

「えっとね。もしよかったら見学、一緒に行かない?」

 

しかし、これは嬉しい事だ。一人でも全く問題ないが、この高校で三年間生活するわけだ。友人の一人や二人ほどは欲しいと考えていたところだ。しかも、こんなビッグネーム(自分で言うのもアレだが)に声をかけるのは勇気もいるだろうに。ほんと、こういった人は尊敬する。

 

「ええ、そう言っていただけると嬉しいわ」

「ありがとう、アインツベルン さん!」

「ありがとうございます!!」

 

ほのかと雫が嬉しそうにそう返した。

 

友人……そうだ!

 

「アインツベルン さんだなんてそんな他人行儀じゃなくってもいいわ。イリヤって呼んで。もう私たち、友達でしょ?」

「うん、イリヤさん!!」

「――――――」

 

ほのかは驚いたような表情を一瞬浮かべたのち、嬉しそうに破顔させて手を握ってきた。はじめての友達だ、私も嬉しくなって笑う。

そういえば、雫はどうしたんだろう?

そう思って見てみれば

 

「私が……アインツベルン さんと?友達?……イリヤって…………あ……」

 

オリエンテーション前に話した時とは数倍、いや比にならないほど顔を赤く染めて目を回していた。

 

「ちょっと雫!大丈夫?」

「ちょっと……む、り……」

 

そう言うと、気を失い倒れてしまう。すんでのところでほのかが支えに入ったが、危なかった。

 

「ふふ……」

 

なんだか楽しい高校生活になりそうな予感がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おかしい。というか下らなすぎる。たまたま居合わせたというので巻き込まれてしまったこの状況に思わずため息が出てしまう。

 

「いい加減諦めたらどうなんですか?深雪さんは、お兄さんと一緒に帰ると言っているんです。

他人が口を挟む事じゃないでしょう!」

 

眼鏡をかけた二科生の女生徒が、一科生に食ってかかっていた。

 

 

 

事の発端はこうだ。

 

新入生の総代を務めていた同じA組の司波深雪という女生徒がいる。今回の問題となったのはその総代さまとお近づきになりたい、仲良くしたいと思っている一科生のグループだ。

 

まず最初、ことは七草会長の演習が見れるという遠隔魔法用演習室、通称『射撃場』で起こった。私とほのかと雫は運良く、射撃場の中央あたりに座れた。会長の腕はどんなものか、そんな話をしていたところで件の一科生のグループが射撃場に入ってきた。あいにく、人気だったためか、あっという間に席が埋まってしまい座れる場所など疾うになかった。そんな中彼らが目をつけたのは、最前列に座っていた二科生のグループだった。

 

「二科生の落ちこぼれがここに居るのはおかしい。ここは優れている一科生に譲れ」

 

そんなことを言いながら一科生のグループの代表のような生徒は二科生に突っかかった。幸いなことに、多少騒がしくなったが、七草会長の鶴の一声で一科生が舌打ちとともに二科生を睨みつけながら射撃場を後にするという形でその場は収まった。

 

もちろん件の二科生は悪い意味で目立っていた。

 

 

 

そういえば、同じ声を食堂でも聞いた。

懐かしの日本食。ご飯に味噌汁、おかずには鮭の塩焼きと漬物という完璧な組み合わせに舌鼓を打っている最中のことだったか。

ドイツでは、そんなものにありつけるはずもなく、十数年ぶりに口にする日本食への喜びを訳の分からない言い争いで邪魔されたことに僅かながら怒りを覚えた。

 

 

 

そして今に至る。

 

一科生(深雪)の近くに居続ける二科生に、我慢ができなくなったのか、深雪の後についてきていたA組のクラスメイトが、会話の流れから察するに、兄である男子生徒を含む二科生に難癖をつけ、言い合いになってしまった。

 

一科生というのと、たまたま立ち位置が一科生グループと重なってしまったというのもあり、まるで私もこの低レベルな集団とカウントされているようで、うんざりだ。

 

先程放った正論の下、黙りこくってしまった一科生に追撃を加える眼鏡の女生徒。

 

「別に深雪さんはあなたたちを邪魔者扱いなんてしてないじゃないですか!一緒に帰りたいなら、ついて来ればいいんです。なんの権利があって二人の仲を引き裂こうとするんですか!?」

するんですか!?」

 

しかし、今の言葉を聞いてなぜ顔を赤らめる司波深雪よ。

 

「僕たちは彼女に相談することがあるんだ!」

「そうよ!司波さんには悪いけど、少し時間を貸してもらうだけなんだから!」

 

おいおい一科生の男子その一と女子その二。その言葉のセレクトは秒で正論叩きつけられるのが目に見えるだろう。

 

「ハン!そういうのは自活(自治活動)中にやれよ。ちゃんと時間がとってあるだろうが」

「相談だったらあらかじめ本人に同意を取ってからにしたら?深雪の意思を無視して相談もあったものじゃないの。それがルール、高校生になってそんなこともわからないの?」

 

少し日本人離れした大柄な男子がどうどうと、そして赤い髪が目立つ快活そうな女子が小馬鹿にしたような態度ですかさず反論する。

ほれみたことか。ほとんど私の考えていたことを正確に代弁してくれたぞ。

 

「うるさい!他のクラスが、ましてや雑草(ウィード)ごときが僕たち花弁(ブルーム)に口出しするな!」

 

ウィード、か。その言葉は校則で使用禁止になっていたのでは?とつい先刻頭に叩き込んだ校則を思い出しながらため息をつく。

 

筋の通った意見を物怖じせずにしっかりと伝えられる生徒、我儘な考えばかりが先行し訳の分からないことを喚き散らす生徒。これではどちらが優れているかなど自明ではないのだろうか。

 

 

 

「同じ新入生じゃないですか。あなたたちブルームが、今の時点でどれだけ優れているというのですか!?」

 

 

 

決して叫んだわけではないが、眼鏡の女子生徒の言葉は不思議と校庭に響き渡った。

 

(それは言わないほうがいいんじゃないかしら)

 

そんなことを考えていたとき、私が危惧していたことが起きようとしていた。

 

「どれだけ優れているのか……知りたいなら教えてやるぞ」

「ハッ、おもしれぇ!是非とも教えてもらおうじゃねぇか!」

 

まさに売りことばに買いことば。こんなに模範的な例が見れるとは。

 

「だったら教えてやる!」

 

 

 

とても見てられない。幼稚すぎやしないだろうか?

 

魔法というものが世に出回ってから、というのだろうか。魔法は別にCADがなければ発動できないというわけではない。よって、CADの所持について、事細かに法律が決まっているわけではない。しかし、安全のため、魔法の使用については細かく法律が制定されている。

天下の第一高校で生きていく上で守らなければならない法律が守れないというのは流石にマズイだろう。

 

クイックドロウで有名な森崎家の長男だ。携帯しているCADは、内蔵できる魔法式が少ない代わりに、座標を魔法式に入力する作業をサブシステムで肩代わりする事で展開の時間を短くする特化型で間違いないだろう。

その設計上、攻撃に特化した魔法が内蔵されていることの多い特化型ならなおさらダメだ。

 

「っ!」

 

隣を見てみれば、覚悟を決めたような表情を浮かべたほのかが腕輪型の汎用型CADに指を走らせ、魔法式を起動しようとしていた。国々によって魔法式の形式は違う。ドイツの形式ならどういったの魔法なのか、魔法式から読み取れるのだが、形式の違う日本ではそうはいかない。

 

しかし、わかることはある。今ここで魔法を発動すれば、罪が一際重い攻撃魔法と勘違いされかねない。

 

魔法式を展開しようとするその手を遮る。

 

「え?」

「今このタイミングで魔法を使うのはダメよ」

 

そんなことを話していると、件の森崎が懐からCADを取り出そうとする。ホルスターに入っていること、うっすらとブレザーの上から浮かび上がる形から、やはり森崎が抜こうとしているのは特化型だと断定出来る。

 

これは動けるのなら動いた方がいいパターンだ。

 

そのままほのかの返事を待たずに軽やかに駆け出す。対面にいた赤髪の二科生の女生徒も止めに入るために何かを取り出すようだったがこの距離なら私の方が早い。

 

どうやって二人を止めるか。

そうだ、どうせなら少し遊んでも問題はないはずだ。これを機に少し反省してもらおう。

 

私がいつも持ち歩いているCADは三つ。一つはテストプレイも兼ねている特化型の標準システムをくっつけた汎用型デバイス『ナインライブズ』、余程のことがない限り公にしたくない『月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)』。そしてもう一つが今私が使おうとしているものだ。

 

『アイリス』

 

簡単に言って仕舞えば、とても細い貴金属の針金だ。しかしただの針金ではない。ナノという単位の下、術式を幾何学模様化して刻印してあるのだ。そうすることで硬化や弾性変形、伸縮から思い描いた形状にできるなど自分で言うのもアレだが、とんでもない代物だ。

 

刻印魔法自体、刻印にサイオンを流すだけで、刻印された魔法をどんなCADよりも早く発動できると言う利点を持つが、燃費が悪いと言うことで衰退していってしまった。しかし、調整体魔法師の『聖杯シリーズ』の最高傑作である私には関係ない。むしろ燃費の問題さえ解決できればとても便利で探求のしがいがある魔法の分野であると私は考えている。

 

アイリスを取り出し幾何学模様化された魔法式の中から伸縮と弾性を選択し、呼び出す。魔法が発動したことを確認すると、その一端を森崎めがけて飛ばした。

 

針金は森崎の制服の袖を貫通すると、そのままレオの背後に回り一周すると、今度はレオの袖を貫通した。そのまま本人たちが気がつかない程度の距離を飛びながら何重にも回る。

 

Fertig(お終い)!」

 

そう言ってアイリスを思いっきり引っ張る。するとどうだろうか。

 

「ガッ!?」

「ばっ!?」

 

周りを漂っていた針金が一気に収縮しはじめ、二人を縛り付けてしまった。袖も一緒に引っ張られることで、お互いが抱きつきあっているようにしか見えない。

森崎は衝撃のあまりか、特化型のCADを落としてしまった。二人とも、雁字搦めに巻きつけられた針金から抜けようともがくが、腕が相手の背中まで回されているものだからどうしようもない。むしろ抱き合いながらモゾモゾと動いているので、こう何か言葉にしがたい感情が思い浮かぶ。

 

案の定、私と同じく止めに入ろうとしていた女子生徒はゲラゲラと笑っていた。

 

さて、この芋虫sをどうしてやろうか。言葉よりも先に(CAD)が出るとは。二科生のかれは分からないが、名家の森崎家ならその辺のこともわきまえていると思ったのだが。

面倒だしこのまま風紀委員会にでも突き出してやろうかと考えていたそのとき。

 

「やめなさい!自衛目的以外での魔法による対人攻撃は、校則違反である以前に、犯罪行為ですよ!」

 

本校が誇る生徒会長、七草真由美が、生徒会役員だろうか、何人かの生徒を引き連れてこちらへと歩いてきていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 






感想・評価!とても嬉しいです、ありがとうございます!!

多分次からまた文字数が減るかもですが、よろしくお願いします!





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第7話

すまねぇ……






 

 

 

 

「止めなさい!自衛目的以外の魔法による対人攻撃は、校則違反である以前に、犯罪行為ですよ!」

 

生徒を引き連れながらやってきた七草真由美は、生徒会長として相応しい威圧感を放ちながら声をあげる。

声のする方を振り返った一科生達が次々と顔を青く染めていく。

 

「貴方達、1―Aと1―Eの生徒ね。事情を聞きます。ついて来なさい」

 

真由美の隣に立って居た上級生と思われる女子生徒が、硬質な声で命じた。彼女は確か……そうだ思い出した、入学式の委員会紹介のうちの一つ、風紀委員会の委員長として登壇していた先輩だ。三年生で、名前は渡辺摩利だったはずだ。

 

ふと彼女の手元に目を向けてみれば、既にCADは完全に起動しており、魔法式は完璧に展開していた。つまり、いつでも我々を無力化できるということだろう。もう面倒だから帰ろうか、などと思っていたが無理そうだ。少しでも怪しいそぶりを見せればすぐにでも実力行使されかねない。

 

私はアインツベルンだ。おごりでも慢心でもない。本当のことを言ってしまえば、あの三年生の魔法を打ち破れるし逆に無力化できる自信もある。よって私自身たいしてなんとも思ってないのだが、周りの生徒はそうでもないらしい。現に、ほのかと雫を始めとした一科生や二科生たちも、言葉なく、硬直してしまっている。

 

どうしたものか、と思っていたそのとき。深雪と、その兄と思われる二科生のグループの中心にいた切れ目の男子生徒が他の生徒のように萎縮したり、項垂れたりすることなくしっかりとした足取りで、背後に付き従う深雪と共に、風紀委員長である摩利の前へ歩み出た。

 

注意される側の生徒がいきなり堂々とした態度で前に出てくるのだ。当然、摩利は訝しげな視線を向けた。

 

「すみません、悪ふざけが過ぎました」

「悪ふざけ?」

 

一礼して何を言い出すのか、思わず私も風紀委員長と同じことをうっかり言いそうになってしまった。なおも司波兄の言葉は続く。

 

「はい。森崎一門のクイックドロウは有名ですから、後学のために見せてもらうだけだったのですが、あまりにも真に迫っていたもので、思わず手が出てしまいました」

 

チラリと司波兄がこちらを見る。風紀委員長殿も眉をひそめながらこちらを見てきた。周りを見回せば一科生のグループも二科生の彼らもみんなこっちを見てくる。

どうしてそんなにこっちを見るのだろうか。

いくつもの視線のうち、いくつかは私の足元に向けられていた。視線を追ってみれば、簀巻きにされた状態から抜け出すことを諦めたのか、ため息をつきながらぐったりとしている二人(森崎とレオ)がいた。もちろんまだ縛られたままだ。

 

因みに、先ほどまで身体中をアイリスで縛っていたが、何か言われても面倒なので、それは既に取り除き回収した。今彼らを縛っているのは彼ら自身の袖と袖。お互いの腕が相手の背中側にあるのでそこで両手をしまってしまえばどちらにせよ、動けないし、何もできないという寸法だ。

 

森崎が落とした特化型CAD、赤髪の二科生が慌てて隠した警棒など。周囲の状況を確認すると、改めて達也に質問した。

 

どうやら、抱き合う二人はひとまず後回しらしい。

 

「少し前から遠目に見させてもらっていた。そこの1―Aの女子生徒が男子生徒に何かをしていたな。あれはなんだ?」

「先ほども言った通り、真に迫った森崎のクイックドロウに思わず手が出てしまったのでしょう。条件反射であそこまで行動できるとは……流石は一科生ですね」

「本当か?」

 

あの男子生徒の言葉はどことなく白々しかった。

 

しかし、見られていたのか。まぁ、あれは別に見られてもなんの問題もない。アイリスのような機構のアプローチはすでに世間に公表してある。(刻印魔法の効率化などと共にだしたそれは、刻印魔法の研究を10年進めたなどと言われるまでだ。)作り方がわかっているものを見られても別に問題ないのだ。

 

「私のホウキ(術式補助演算機)です。すでに学校に持ち込みするCADとして登録してあります。このホウキは捕縛から戦闘まで幅広く応用が利く物です。今回は捕縛のために使用しました」

 

もし原理が知りたかったら、アインツベルンの論文、「刻印魔法の研究報告 第13号」を見てみてくださいね。とさりげなく宣伝もしてみる。

 

「その森崎と君の友人は彼女に拘束されているのだがそれについては」

「それはーーー」

「目の前で学友が法を破るところだったのよ?止めなくてどうするのかしら?」

「……ふっ、確かにその通りだ。しかし、魔法式に触れるだけでも拒絶反応を起こすこともある。少し軽率だったんじゃないか?」

 

なるほど、そうくるか。

しっかりと説明しようとしたその時。司波兄が口を開く。

 

「どちらにせよ、問題はなかったでしょう。あの糸のような形状のホウキには捕縛以外にもう一つ並列で行なっているものがありました。サイオンを弾丸として魔法式に直撃させると、魔法式はその効力を発揮せず、魔法は不発のまま霧散しますね。あの糸の表面には高出力のサイオンが膜のように張り付いていました。それによって最初の一巻きの時点で魔法式は全て破壊されてましたよ」

 

驚いた。誰も気づいていないと思っていたのに。

司波兄の言った通りだ。サイオン光も目立たないように情報改変の魔法を裏で発動していたのにも関わらず、すべて的確に当ててみせた。司波兄、彼は他の生徒たちとは一味も二味も違うらしい。

 

会長と委員長の方をみれば、彼女たちも気付けてなかったのか驚きの表情を浮かべていた。

 

「その様子だと、私が魔法を展開してたのにも気がついていそうね」

「魔法式の形式が違っていたな。あれは確かドイツだな?そうだとすればあれは現実の情報改変、視覚情報の操作だったか?」

「正解!あなたは分析が得意なのね!」

 

とりあえず、レオと森崎を拘束していた分を回収する。流石にこれ以上暴れないと思うが。

 

というわけでこれぐらいで納得していただけるとありがたいのだけれども。そう言った意味合いも込めて委員長を見やる。

 

「二人揃って誤魔化すのも得意なようだ」

 

値踏みするような、睨みつけるような、その中間の眼差しが私と司波兄を貫く。

そこで司波深雪が私たちを庇うように前に出た。

 

「兄と彼女の申した通りちょっとした行き違いだったんです。先輩方のお手を煩わせてしまい、申し訳ありませんでした」

 

そうして深く頭を下げた。私も一応頭を下げておく。

 

流石に司波兄も含めた3人から真正面で深々と頭を下げられて、毒気を抜かれた摩利は目をそらした。

 

「摩利、もういいじゃない。達也くん、それにイリヤさん。本当にただの見学だったのよね?」

 

どうして名前で呼ばれているのだろうか。と思ったが絶好の機会でやってきた助け舟を無駄にするわけにはいかない。たまたま目があった達也もおんなじことを考えていたようだ。

 

「はい」

「大変参考になりました」

 

それを真由美は満足そうに頷いた。

 

「生徒同士で教え合うことは禁止されているわけではありませんが、魔法の行使には、起動するだけでも細かい制限があります。このことは一学期の授業で教わる内容です。魔法の発動を伴う自主活動は、それまで控えた方がいいでしょう」

 

会長の言葉の後に風紀委員長も続く。

 

「……会長がこうおっしゃられていることでもあるし、今回は不問とします。以後はこのようなことがないように」

 

その言葉を皮切りに、当事者全員が‘慌てて頭を下げた。

そんな一同に見向きもせずに摩利は踵を返した。

と、思われたのだが。

 

「そういえば、そこの君」

「なんでしょう」

 

視線もこちらに固定されている。何だろうか?

 

「先程会長からイリヤさんと呼ばれていたな」

 

そういうことか。

 

「申し遅れました。1―Aのイリヤスフィール・フォン・アインツベルンと申します。ドイツからの留学ということでこの第一高校で三年間学ばせて頂きます。よろしくお願いしますね、先輩」

 

そう言い切ると、周りからどよめきが聞こえてくる。耳を澄ましてみる。内容としては、「あのアインツベルンが!?」「本物だ……」などなど。やはりそういう反応になるよなぁ……。

 

「君が……うん覚えておこう。それで隣の分析が上手な君は?」

「1―Eの司波達也です」

「君のことも覚えておこう」

 

そんなやりとりを最後に、第一高校に入学してからの最初の波乱は幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

 




すごい無理矢理な気がしますが……

ちょこちょこでいいので直していけたらと思います。

評価・感想!ありがとうございます!!!


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第8話



生存報告


また当分更新できないと思いますが、待ってていただければ幸いです。





 

 

 

 

 

「借りだなんて思わないからな」

 

噛ませ犬ですと言わんばかりの捨て台詞を吐いた男子生徒。森崎は達也を棘のある視線で睨み、同じく棘のある口調で達也にそう言った。

 

達也を見れば、やれやれという表情を浮かべていた。ほかにも二科生の生徒が達也と同じような顔をしていた。

 

「貸しているなんて思っていないから安心しろよ。決め手になったのは俺の舌先じゃなくて深雪の誠意とアインツベルンさんのとっさの判断によるものだからな」

 

「イリヤでいいわよ」一応同学年の学友になるわけなのでちゃんと言っておいた。

 

その後の司波兄妹のやりとりに毒気を抜かれたのか、気を削がれたのか、やや敵意の薄れた表情で名乗りをあげる。

 

「……僕の名前は森崎駿。お前が見抜いた通り森崎の本家に連なるものだ」

 

そうなんども言わなくても分かる、と言いかけたが飲み込む。いつだったか、興味本位で日本の魔法について調べていた時、森崎一門のクィックドロウを見たことがある。確かにアレは速いが、やはり到底私には敵わないレベルだと思った。彼は森崎の中でも優秀なのかは知らないが、動画より少しクィックドロウが速かった。ちゃんと鍛えれば素晴らしい魔法師になると思う。

 

まぁ、本人次第だが。

 

さらにエリカとレオ、美月のコントのようなやりとりを挟んで

 

「僕はお前を認めないぞ司波達也。司波さんは僕たちと一緒にいるべきなんだ。それにアインツベルンさんもだ。雑草(二科生)に肩入れするなんてこと、しない方がいい」

 

この期に及んでまだそんなことを言うのか。まさか、こいつは私の楽しみにしていたスクールライフを邪魔するつもりなのだろうか。前言撤回、ちゃんとした魔法師になりたくばその性格を直したほうがいい。

 

「まぁ、考えておくわ」

 

そう言い切り、私の返事を聞くと、「いきなりフルネームで呼び捨てか」という達也の独り言のようなボリュームの言葉に反応することなく、そのまま立ち去った。達也の言葉に若干肩が動いていたが、彼のプライド故か、こちらを振り返ることなくズンズンと歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、なんやかんやで一緒に帰ることとなった。

 

高校生らしいイベントの王道を体験することができると言うことで、私の気分は最高の状態だった。

 

若干微妙な空気であることを除けば。

 

ふと、そんな雰囲気を壊すかのようにほのかが達也に向けて質問をした。

 

「じゃあ、深雪さんのアシスタンスを調整しているのは達也さんなんですか?」

「ええ、お兄様にお任せするのが一番安心ですから」

 

ほのかの質問に対して深雪が我が事のように得意げに答えた。

達也は深雪の発言に対して「そうでもない」と苦笑いをしていた。

 

「それだってデバイスのOSを理解できるだけの知識がないとできませんよね」

「美月の言う通りよ。デバイスのアレンジなんて普通(・・)の高校生では難しいはずよ?それほどの技術を持っている貴方が本当に二科生なんだか少し不思議だわ」

 

深雪の隣から覗き込むようにして顔を出して会話に加わった美月に続いて私も気になったことを聞いてみる。

 

深雪ほどの実力者が使うCADだ、本来ならプロのエンジニアにやってもらうのが一番いいはずだ。しかし先ほど、深雪はただの学生であるはずの達也に任せるのが一番安心といったのだ。何かありそうと思うのは当然だろう。すごいと思うのは事実だが。

 

深雪がなにか同志を見つけたかのような嬉しそうな表情を浮かべてこちらに声をかけようとしていたが、いち早く気づいた達也に手で制された。文句を言いたげな深雪をよそに

 

「少しデバイスに慣れているだけさ。実力主義の魔法科高校では実技のできない俺は二科生であっても別におかしくないだろう」

「ふふ、今はそう言うことにしといてあげるわ」

 

なんにせよ、いずれ分かることだ。今はそう言うことにしておこう。

 

「CADの基礎システムにアクセスできるスキルもないとな。大したもんだ」

「達也くん、私のホウキもみてくれない?」

 

振り返りながらレオとエリカ。

 

確かエリカのホウキはあの警棒か。彼女が制圧に動く前に私のアイリスで片付けてしまったからわずかな時間しか見れていないが。

あれ(エリカの警棒)は見たことがある。確か物体解析などに優れたエミヤ魔法工学研究所と日本で刻印魔法の権威と言われている五十里家の共同制作のものだったはずだ。世界でトップクラスの刻印魔法の使い手である(アインツベルン)に意見を求めるためにサンプルが送られてきたことがあったからだ。

 

「無理。あんな特殊な形状のCADをいじる自信はないよ」

「あはっ、やっぱりすごいね達也くんは」

 

達也の返事は本気なのか謙遜なのかわかりにくいものだったが、エリカの反応は裏表がないものだった。先の会話から、私は十中八九謙遜だと思うが。

 

「えっ?その警棒、デバイスなの?」

 

目を丸くして驚きの声をあげる美月に満足したのか、ウンウンと頷くエリカ。

 

まぁ、それが普通の反応だろう。

 

私が起こした技術革命の影響か、ドイツでは刻印魔法自体それほどマイナーでもない。刻印を効率よく、無駄なく刻むことができればどんなものだってホウキとして使えるし、いくらでも応用が利くからだ。それに対して、日本では魔法の発動はCADが主で刻印魔法自体の認知度がとても低いのだ。

 

「……どこにシステムを組み込んでるんだ?さっきの感じじゃ、全部空洞ってわけじゃないんだろ?」

「いえ、全部空洞じゃないかしら。警棒の中にCADの機械を入れたりなんかしたら縮められなくなるし、振った時の衝撃で木っ端微塵になるわ。だとすれば刻印魔法かなって思ったのよ」

 

レオの質問に続いて私が言葉をつなげる。

 

「さっすがイリ、……えーと」

「イリヤでいいわよ、エリカ」

 

友達とは名前で呼び合う、はず。本当に呼び捨てでいいのかと言う目とともにこちらを見てきたエリカに間髪入れずオッケーを出す。

 

「ありがと……コホン、イリヤの言った通り。柄以外は全部空洞なの。刻印式の術式、刻印魔法で強度を上げているの。レオ、硬化魔法得意なんでしょ?」

「……術式を幾何学模様にして刻み、サイオンを注入することで発動するって言うアレか?そんなもん使ってたら並のサイオン量じゃ済まないぜ?よくガス欠にならねぇな?そもそも刻印型自体、燃費が悪すぎるってんで、今じゃあんまり使われていねぇ術式のはずだぜ」

 

レオの指摘にエリカは目を開き驚き半分、感心半分を表した。

 

「あんた、鋭いっちゃ鋭いけど本当にドイツの血が流れてるのかしら?アインツベルンの、イリヤの刻印魔法って言ったらドイツの誰もが知ってるって兄貴の知り合いが言ってたけど」

「そりゃ知ってるさ。アインツベルンの魔法技術革命は世界中で話題になってたしな。革命の主な内容は刻印魔法とかマイナーな魔法の完全効率化だったわけだからな。それで効率が良くなったってサイオンを大量に使うことには変わりねぇだろう?」

 

やっぱりそこまで話題になってたか。

私は壁が大きければ大きいほど乗り越えたくなる性格なのだ。ゴミと呼ばれていた魔法を効率化・最適化して世に発表したのが魔法技術革命だなんて呼ばれているのは小耳に挟んでいたがこれほどまでだったとは。

 

「ま、そこは私の腕でカバーってところね。要は効果が必要な時だけ魔法を発動させればいいってわけ。振り出しと打ち込みの瞬間だけね。

その刹那を見極めてサイオンを流せば、そんなに消費しないわけ。つまり兜割と似たようなものね……って、みんなどうしたの?」

 

逆に感心と呆れ顔がブレンドされた空気にさらされて、居心地悪げに尋ねたエリカに、

 

「エリカ……兜割って、それこそ秘伝とか奥義とかに分類される技術だと思うのだけれど」

「単純にサイオン量が多いよりもすごいと思うわよ?」

 

全員を代表して深雪と私が答えた。

 

「達也さんも深雪さんも、イリヤさんもすごいけど、エリカちゃんもすごい人だったのね…………うちの高校って、一般人の方が珍しいのかな?」

「魔法科高校に一般人はいないと思う」

 

美月の天然気味な発言と、それまで押し黙っていた北山雫がボソッと漏らした的確すぎるツッコミで、色々とわけありの空気は確信が見えぬまま霧散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

「おかえりなさいませ」

 

靴を脱ぎ、リビングへ続くドアを開けるとそこらの主婦となんら変わらない衣装にエプロンをつけたセラが出迎えた。

 

「あれ、リズは?」

「ああ、情報収集と関係各所に挨拶に向かわせました。あと少しで帰ってくるかと。イリヤ様はこれからどうしますか?」

「エミヤ魔法工学と五十里の共同開発の警棒って持ってきていたかしら?」

「申し訳ありません。持ってきていません。データの方のみとなっています」

 

残念だ。送られてきたその時は、ナインライブズの開発で大忙しだったので見向きもしなかったのだ。一応、データの収集のみは行わせていた。エミヤ魔法工学研究所に行く時のお土産として警棒を改良して持って行こうとしたのだが……最悪データだけあれば魔法式の構築と幾何学模様化、デザインの設計はできる。

 

「そう。まあいいわ…………そうだ、遠坂重工との会談とか研究の件、正式に許可が出たわ。スケジュールのチェックをお願い」

「かしこまりました。警棒の件なのですが、ドイツより持って来させましょうか?」

「お願いするわ」

「では、2日以内に」

 

そう言うと私は自室に戻った。

 

 

 

 

 






謝罪

第7話に続く8話と9話を削除して投稿をしました。
理由は、どうしても続くがかけなかったからです。変にごちゃごちゃしてしまって、このままグダグダしてしまうならやってしまえと言うことで、はい。
何かあれば感想等でお知らせください。

感想・評価お待ちしております。



では





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第9話

生存報告

しばらくは不定期更新になると思います。しかし、これからもなるたけ続けてけたらなと思っています。

よろしくお願いします。


 

 

 

「単刀直入にお聞きします。イリヤスフィール・フォン・アインツベルンさん、生徒会に入りませんか?」

 

「お断りします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法科高校に入学して早数日。

私はほのかと雫と一緒に食堂でお昼ご飯を食べていた。

食べているのはもちろん和食。今日は肉じゃが定食だった。味の染み込んだジャガイモ、甘く優しい食感の人参、主張しすぎずしっかりとした味の牛肉。ここのシェフはいい腕をしている。

 

このご時世、未来食というわけではないが、日本食が見れなくなった場所もところどころある。しかし、この学校ではちゃんと日本食も用意されており、毎日日本食が食べられる。それだけでドイツから日本に渡って来た意味があるというものだ。

 

先日の一科生と二科生のいざこざを解決?してからというもの、中心人物であった森崎は大人しくなり、楽しい食事中に不快な声はあまり聞かないようになった。

 

モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず、自由でなんというか救われてなきゃあダメなんだ 。とは誰が言ってた話だったっけ。

 

「でも、先日のイリヤさんのCADとてもすごかったですね!あんなに細いものに複数の術式を刻めるなんて!」

「イリヤさんがすごいのは当然」

「ふふ、ありがとう」

 

鼻息荒く話すほのかに対して、なぜか自慢げに胸を張る雫の姿が面白くて少し笑ってしまう。

 

「あのあと、気になってイリヤさんの論文、いくつか読みました。刻印魔法の基礎技術を、あそこまで改良できるなんて本当に驚きました!とくに第24号の論文なんて!あの発想は誰も思いつきませんって!」

「本当にありがとう。なんかくすぐったいわ」

「ほのかはわかってる。第24号の書いてあることがわかったなら『体細胞と刻印魔法 刻印魔法の医療技術転用』の論文も読むべき。これは極小物体への刻印を課題とした実験の副産物というサイドストーリーがあってーー」

「そうだ!もうすぐ部活動勧誘期間が始まるらしいけれど、二人は何部に入るか決めた?」

 

そのままにしておくといつまでも話してしまいそうだったので多少無理に話を変える。

やっぱり、目の前で自分のことを褒め称えられ続けるのはこそばゆい。

マスコミや政治家、アインツベルにいい顔をしようとする者たちに言われ続けていい加減なんとも思わなくなったと思っていた。しかし、『友達』に純粋に褒めてもらうのはまた違う感じでどうしてもなれなかった。さっきも言ったがとてもくすぐったい。

 

「うーん、部活動勧誘期間中は各部活を観れるらしいから、そこで見てから決めたいなぁって」

「わたしもほのかと一緒…………えっと、それで。もしよかったら、部活動見学、一緒に回りませんか?」

 

そう聞いてくる雫に対して私は二つ返事で了承した。

 

「もちろん!是非ご一緒させてもらうわ」

「やった……ありがとうございます!」

「もう、せっかくの友達なんだから敬語はやめてって言ってるのに」

「うぅ……あ、ありがとう。イリヤさん」

 

そういえば、ここの学校の部活動についての事前情報はゼロに等しいんだった。ゼロではないのはなぜか、というのも、入学式後にカリキュラムなどを確認した際に部活の欄を流し読みしたからだ。あくまでも、あの時は日本の高校ではどんなことを学べるのかというのを調べるために、それらに関係した欄しかちゃんと読んでいなかったからだ。

 

もしかしたら、ほのかや雫は部活動について何か知っているかもしれない。

 

お昼休みの終了までまだあるし、ここで聞いておくのも手かもしれない。

 

「えっとーー」

「イリヤスフィール・フォン・アインツベルン さんですか?」

 

ほのかと雫にかけようとした言葉はふと頭上から放たれた声に遮られた。

 

声のした方を見てみると見覚えのある顔がそこにはあった。フワフワとした黒髪に小柄ながら素晴らしいプロポーションをもつ女性。国立魔法大学付属第一高校生徒会長こと、七草真由美だ。

 

「こんにちは、生徒会長」

 

取り敢えず返事をする。しかし、なんで声をかけられたのか全く見に覚えがない。もしかして、先日のイザコザの件だろうか?だとしたらとても面倒くさいので是非ともおかえりいただきたいところなのだが。

 

「普通に名前で呼んでくれても大丈夫なのに」

「では、七草先輩と。それで、用とはなんでしょうか?」

「少し話したいことがあるの。イリヤさんは今日の放課後は暇かしら?」

 

話?やはり先日の件なのだろうか。というか何故名前呼びか。あっちが先輩だからだろうか。まぁ、ともかく。折角の学園生活なのだし、『直接生徒会長に呼び出される』なんてシチュエーションはそうそうないだろうし。別に断る必要もないか。

 

「大丈夫です」

「ありがとう、では放課後に生徒会室でお待ちしてるわ」

 

そう言うと、小さく手を振って行ってしまった。ほぅと一息ついてほのかと雫の方を見る。ほのかと雫はすこし不安げな表情を浮かべていた。

 

「どうかした?」

「今の生徒会長さんでしょ?もしかして先日の一件で呼び出されたとか?」

「まぁ、そうかもしれないしそうじゃないかもしれないわね。別に貴方が思い詰めることなんてないわよ。私自身、悪いことなんてしてないし。ほら、元気出して。私、ほのかに部活のことでいくつか聞きたいことがあるの」

 

そう言うと、すこし表情が晴れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一科生と二科生の大きな違い。それは魔法師である教師から直々に実技指導が受けられる点がまず最初に挙げられる。

ぶっちゃけ、私はそこらの魔法師よりも魔法が扱えるのでいらないといえばいらない。

 

 

しかし、学習方法として見習う点はたくさんあることがわかった。

 

 

というのも、過去に政治家の権力争いにアインツベルン が巻き込まれたことがあったのだ。そのとき、ドイツの魔法教育局の特別顧問になってしまったのだ。私は面倒ごとが嫌いだ。最初は魔法教育局の局長にされるところだったのだ。

 

 

どうして魔法教育局の特別顧問になんてなったのか、話は少し長くなる。

 

 

しかし、当時の私は新しいCAD、汎用型CADに特化型CAD用の照準補助システムを繋げた例のモノの開発に夢中だった。そんなことする時間があったら開発に回したいと考えていた。実際、食事や風呂の時間を削ってでも研究をしようとしてセラの指揮の元、リズに首えり引っ掴まれて風呂場まで輸送されたこともあった。

 

だから、それに気づけたのは幸運だった。私を生み出したのと同時に両親はこの世から去り、ドイツを代表する魔法師の家系の当主となった私には、そこそこ仕事がある。その中に書類仕事も含まれているのだが、開発で大忙しでまともに書類なぞまともに確認していなかった時に「魔法教育局局長について」の書類が挟まっていたのだ。

 

その書類を確認するや否や、政府に乗り込み、断りに行った。

 

最初は断るつもりだった。しかし、眼前で行われる小さな政治家の下らない言い争いを目にすると冷静になった。よくよく考えれば教育局でのコネは色々使えるのでは、と思い至ったのだ。魔法教育局などというくらいなのだから、政府はもちろん、研究所やその他の機関とも関係があるはずだ。これなら、研究論文を提出するために様々な機関をわざわざ回らずとも、魔法教育局の人に丸投げするだけで世に公表できるのではないかと。

 

局長だと、何かと前に出る機会が多いので、それ以外なら受けてもいいと承諾。

 

そうして勤めることになった職が、ドイツ魔法教育局特別顧問。主な仕事は、魔法教育機関に配布する教科書や資料の校閲・アドバイス、魔法教育機関の視察、カリキュラムの確認などだ。

 

よって、日本に来た目的の一つに、日本の教育機関のシステムを少しでも持ち帰って、ドイツで活かせるようにすることも含まれているのだ。

 

そんなことを考えていたら、いつのまにか生徒会室前まで来ていた。

 

廊下の一番奥、私の目の前には教室とは全く異なる作りのドアが鎮座していた。セキュリティーのためか無骨ながら重厚感を放つ扉、その扉の隣には『生徒会室』と達筆な文字で刻まれた木版とドアのロックなどのシステムを管理するためのタッチパネル。よくよく見てみると、このセキュリティーシステムは遠坂重工の最新版ではないか。

 

「よし」

 

意を決してタッチパネルに触れる。

 

『あ、イリヤさん。今開けるわね〜』

 

タッチパネルの画面に真由美が映り、彼女の返事と同時にドアからカチン、と音がなった。そして自動でドアが開き、イリヤを迎え入れる。

 

 

 

さて、どんな話をするんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 





2018/11/11

最後の方少しだけ変えました。今頑張って続き書いてますので、行きてたら投稿します。


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第10話


生存報告。

受験で死にそう。なぁにが誘導リアクタンスじゃ、回路図破り捨てるぞ。



次回は梓さん暴走会かも


これからもお付き合いしていただけたらと思ってます。

では




 

 

 

 

「ごめんなさいイリヤさん、本当は生徒会室でお話ししようと思ってたけど、少し付き合ってもらってもいいかしら?」

 

「はい?」

 

そう言う真由美の後ろを見てみれば何やら少し緊張した空気の中、他の生徒会役員が移動の準備をしていた。それについてこいと言うわけか。

 

「別にいいですが……何があったのですか?」

 

「実はね……」

 

ため息交じりに真由美が話した内容をまとめると、事の発端は今日の昼休み。この学校では、入学試験で首席だったものには生徒会に入ってもらうと言う伝統があるらしい。それで今年の首席であった司波深雪に生徒会に入ってくれるようにお願いしたところ、そこで少し問題?があったらしい。

なんと、筆記試験では司波達也が文句なしの一位だったらしいのだ。しかし、実技が上手くいかなかったようで、首席にはならなかったのだと。

そこで、深雪は達也の方が自分よりも生徒会に相応しいと言い張った。最終的には、深雪が生徒会に入ることになったのだが、魔法式を読み取れると言う貴重な人材(達也)を逃すわけにはいかず、風紀委員に入れると言う形で落ち着いたらしい。

 

問題はこの後だ。副会長である服部なんとか(名前は長いので忘れた)先輩がどうしても納得いかなかったそう。

 

それで今から司波達也と服部何某で試合を行うとのこと。

 

なるほど、本当にこの一科生二科生制度は面倒くさい。このシステムだけはドイツに持ってくわけにはいかないな。

まぁ、司波達也に関しては、見えすぎているようだし。こんなところで本気は出さないだろうが、見ておくのも悪くない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故アインツベルン さんがここに」

 

「イリヤでいいわよ。その代わり私も達也くんと呼ぶわ。そうね、成り行きとしか言いようがないわ」

 

少し広い演習場に入ると、達也と目があった。取り敢えず、挨拶をする。

 

「なるほど」

 

「それにしてもよく付き合うわね、貴方。どうせ勝負にならないでしょうに」

 

「なんでそう思うんだ?相手は一科生の服部先輩だぞ?」

 

「あら、(とぼ)けるのね。言いふらすつもりもないけれど、貴方の体の動かし方、普通じゃないもの。それこそどこかの兵士みたい」

 

達也の目がスッと細められる。

 

この男は普通(・・)ではない。魔法式が読み取れると言う異常な能力、それに身のこなし方。味方か敵かはハッキリしないが、一応は釘を刺しておく。私のキャンパスライフをぶち壊したら許さないからな、と言うことだ。

 

「驚いた。イリヤさんはよく人を見ているようだ」

 

「存分に褒めなさい。じゃ、頑張って」

 

そう言って生徒会役員が集まっている壁際に向かう。

 

「イリヤさんはどっちが勝つと思う?」

 

「そうですね……ここは達也くんに賭けてみます」

 

そう言った瞬間、深雪がいるあたりから「私もそう思います!」と言わんばかりのオーラが飛んできたが感じなかったことにする。

 

そう、といってあまり興味がなさげだが、十中八九会長も達也が勝つと考えているだろう。

 

なんというか、服部何某が勝つ未来が見えないのだ。副会長にまで上ったのは実力もあるだろうが、日本の諺にある「井の中の蛙大海を知らず」を知った方がいい。「上には上がいる」、これは諺ではないか。

 

両者がCADを手に演習場中央に立つ。

 

 

 

 

そして試合が始まった。

 

 

 

 

本当に決着は一瞬だった。

 

司波達也の圧勝だ。達也は、服部何某が使用した魔法よりも早く、自力のみで服部何某の背後に回り込み、波長の違うサイオンの波を上手く使って、ハッキリと言葉にするならば酔わせて服部何某をダウンさせたのだ。

 

まぁ、確かにあの攻撃は優れた魔法師であればあるほど初見で食らうと苦しいだろう。優れた魔法師ほど常にさらされ続けているサイオンには強い。しかし、それを上回るずらされた波をじかに食らったら対処のしようがないはずだ。強い波の生成、波の合成かな?

 

 

「待て。今のは自己加速術式を予め展開していたのか?」

 

「そんなわけないのは先輩が一番ご存知なハズですが」

 

「だがあれは……」

 

摩利の戸惑うに声に深雪がハッキリと答える。

 

まぁ、そう言いたくなるのもわかる。やはりあの男は普通ではなかったのだということだ。

 

「魔法ではありません。正真正銘、身体的な技術ですよ」

 

「私も証言します。あれは兄の体術です。兄は、忍術使い・九重八雲先生の指導を受けているのです」

 

なるほど、そういうことか。達也はジャパニーズニンジャの弟子だったのか…………いや、やめよう。なんかアホに聞こえる。

 

そして、達也からの解説。少しずれてたみたいだが、大方予想通りだった。しかし、随分と器用なことをする男だ。

 

そして、他にも優秀な生徒がいるようだ。黒髪ロングの先輩が波の合成であることを見事当てた。やはり、ただの高校生ではないのだというのがよくわかった。

 

(そして極め付けは)

 

チラリと達也の手に握られているものをみる。

 

間違いない、あれはシルバーホーン。忌々しいループキャスト技術が載せられたフォア・リーブス・テクノロジーの最新作だ。しかも銃身が長い限定生産モデル。

 

魔法師の演算キャパシティが許す限り何度でも連続して魔法を発動できるように組まれたシステム、あんなもの金持ちでも手が出せないほどのものだったはず。

 

見ればオレンジ色の髪をした女生徒が熱心に件のCADについて語っていた。

 

うーん。司波、芝、違う四葉(よつば)フォア・リーブス・テクノロジー(ふぉー・はっぱ・技術)

 

考えすぎだろうか。

 

うーん、四葉って日本の一番ヤバい一族とかって言ってたっけ。この件は口に出すべきではなさそうだな。

 

 

 

それを除いても、司波達也。やはり只者ではないようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後もなんやかんやあったが、落ち着いたようだ。

 

生徒会室に戻ってきて改めてお話というわけだ。

 

開かれた扉から生徒会室内に入ると、中央に生徒会長の七草真由美、その両隣から順番に生徒会役員が座っている。司波兄妹は先に帰ったようだ。

 

 

「単刀直入にお聞きします。イリヤスフィール・フォン・アインツベルンさん、生徒会に入りませんか?」

 

「お断りします」

 

 

 

そこで言われたのがこれだ。

 

 

 

「何故、留学生である私に?」

 

「日本の高校についてもっと中心に立って間近で感じて欲しいのです」

 

生徒会室に通されて、まず最初の一声がこれだ。もちろん断る。

 

そもそも、私は日本に仕事しに来たんじゃない(仕事はしなきゃいけない)。遊びに、楽しみに来たのだ。生徒会に入る?そんなもの面倒臭いに決まっているじゃないか。絶対に入らないぞ。

 

 

「この学校は権力の一点集中型で、その権力をまとめて持っているのが生徒会です。そんな中に私が入っていくというのは些か不用心ではないですか?なんせ国外から来てます、スパイかもしれなせんよ?」

 

「あら、イリヤさんがスパイ?それこそアインツベルン が本気を出せばこんなことをしなくてもいいはずです」

 

やりづらい……というか面倒くさい。

 

おや、会長の雰囲気が変わったぞ。

 

「先ほどの試合ですが、事の発端は一科生と二科生の差別的な今の状態が引き起こした問題です。私が生徒会長であるあいだにどうにかしたいと考えています。ドイツの魔法教育は国際的にみても進んでいると聞いています。その教育局の特別顧問であるイリヤさんのお力をお借りしたいのです」

 

そういうことか。まぁ、会長ほどの真面目な人ならこの状態をなんとかしたいと思うのは当然か。

 

「どうか、よろしくお願いします」

 

そう言って頭を下げる真由美。

 

「私からもお願いしたい。この通りだ」

 

風紀委員長に続くように、他の役員も頭を下げた。

 

(ッッ〜〜ー!)

 

本当に、やり辛くて仕方がない。

 

 

 

「頭をあげて下さい、この学校のリーダーがそう易々と頭を下げては示しがつかないでしょう?」

 

「じゃあ……」

 

「生徒会所属の件、了解しました。微力ながらお手伝いさせていただきます」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 

 

 

しかし、こういうのも悪くないのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも、生徒会室に来るのは本当に必要な用事がある時と、協力の要請がある時だけです、お願いしますね!」

 

あくまでも自分が一番なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 



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第11話

お待たせしました!帰って参りました!!!

受験期により更新を一時的に停止していたのですが、先日無事合格発表をもぎ取ることができました。

なので、これからまたちょくちょくと更新できると思います。


これからも本作をよろしくお願いします!!!


 

 

 

 

 

七草真由美との話を終えた後、司波達也が帰ってきた。

あんなことを言ってしまった手前、服部何某は口にすることはないが、達也が風紀委員に入るということを認めたらしい。

今は摩利に連れられて生徒会室の下にある風紀委員の部屋へと行ってしまった。

 

服部何某は、もうちょっと柔軟な考え方をすればいいのにとつくづく思う。

 

 

 

取り敢えず、生徒会執行部に入ってしまったからには仕方がない。

私はやると言ったらちゃんとやり切る主義の人間なのだ。

 

「では会長、仕事説明などをしていただきたいのですが」

 

「ええ、いい……のだけれども……。取り敢えずあーちゃんの話聞いてもらってもいいかしら」

 

気まずそうな目線の先には、調整の影響を受けた私の低身長と同等かそれ以下の身長の少女がテレビの中の人気者を見るかのような目で私を見ていた。

 

「紹介するわね、彼女は「中条梓です!あ、あの、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン さんですか!?ご本人様ですか!?」……」

 

会長の言葉を遮って名乗りを上げたのは本校生徒会本部役員の一員である2年の中城あずさだった。

 

そして彼女は生粋のCADオタクでもあるのだ。達也の使っているCADが一般販売の物ではなく、限定モデルであることを見抜いたのも彼女がオタクであるが故だ。

 

そして彼女はイリヤの大ファンでもあった。あくまで、CADが大好きなだけなので雫には敵わないものの、数々の名作を作り上げた製作者を尊敬していた。

 

「きょ、今日会えるならもっと色々聞きたいこととか準備できたんですけど……えっとその……サ、サインください!」

 

そう言ってノートを1ページを開いて私に頭を下げていた。なんか既視感があるぞ。

 

「ええ、構わないわ」

 

そう返事をしながらノートを受け取る。趣味で作ったノートだろうか。CADのことや魔法理論についてよくまとめられたノートだった。ペラペラと他のページを覗いてしまったのは申し訳ないが、これも(さが)というものだろうか、どうしても気になってしまう。

 

感心しながら各ページを流し、空いてるページを開く。

そこに日本に来て2度目のサインをした。

 

「はい、できました。それにしてもとてもよくまとめられていますね」

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

当のあずさは興奮でどんどん顔が赤くなっている。

 

「あ、申し遅れました。この度生徒会本部役員の一役員として一緒に仕事をさせていただきます、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン と申します。不慣れな点があるかと思いますが、よろしくお願いします」

 

「いえいえいえいえ、こちらこそ、えっと頭をあげてください!私なんかに……ええっと」

 

私の突然の行動に驚いたのかあずさは目を回して大いに混乱しているようだった。

 

「すみません。少しからかってみただけです、改めてよろしくお願いします」

 

そう言って再度頭を下げる。

 

 

 

 

わずかな静寂

 

 

 

 

「た、体調不良で帰らせていただきますぅ!」

 

とうとうキャパをオーバーしてしまった梓は、その言葉を最後に顔を真っ赤にしてドタバタとカバンをひっ掴み、生徒会室を出て言ってしまった。

 

すこしやりすぎてしまったのだろうか。これから出会うであろう学友の全員にこんな反応されたら流石に困るし面倒だぞ。できれば司波達也くらいな落ち着いた対応をしてほしいものである。流石に高望みしすぎか。

 

「えっと、じゃあ仕事の説明に入ってもいいかしら?」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

申し訳なさそうな会長から他の役員の紹介をしてもらった。

すこし静かになった生徒会室で私は作業内容を学ぶのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日から部活動の勧誘期間に入ります」

 

真由美からの説明が続く。

 

やはりというか、この魔法科高校にも部活動はちゃんと存在するらしい。魔法を使用する競技の部活動も多数存在している。そのため、この部活動新入部員勧誘期間になると、説明の際などにCADの使用が必要となるケースが増えるため、CADの利用許可が緩くなるのだそうだ。

 

そうすれば必然とトラブルも多数発生する。

 

各部活の予算は活動実績によって割り振られるため、その年の大会結果によって今後の活動できる金銭的に範囲が決まってしまう。

 

優秀な魔法師の卵をいかにして部活に引き入れるかというこの期間から部活動としての戦いは始まっているのである。

 

その結果、デモンストレーションで張り切った結果やりすぎてしまったり、ある生徒を何人もの部員で囲んだり、挙げ句の果てには拉致なんてこともあるらしい。

 

さらに、魔法を使用する部活動と使用しない部活動との見えない確執がそれに拍車をかけており、例年とんでもない数の問題の対応に追われるらしい。

 

「でも今年は助かったわ。主だって問題児の確保に当たる風紀委員は新しく二人、問題の処理をする生徒会本部役員も二人増えてくれたことだし」

 

語尾に音符マークでもついてそうな言い方をする真由美に対して私は『無理矢理っぽかったじゃないか』と目で訴える。

 

ごめんごめんと言いながら頬をかき、真由美は今後の動きについての説明に入った。

 

「今年も生徒会本部役員は問題解決に回ってもらう予定です。事情聴取等は部活連とともに行います。そこで、生徒を拘束できる魔法を持っているイリヤさんには風紀委員会からの生徒の受け渡しを担当してください。深雪さんはリンちゃんの下についてください」

 

なるほど、会長は人を使うことに長けているようだ。たしかに昨日の時点で魔法の研究とは全く関係ない書類まとめなどが苦手なことがバレてしまってはこうした仕事の方が私には向いているだろう。

 

そもそも、私の主な仕事としてはこの魔法科高校の区別に対するアドバイザーなのだ。別に書類仕事ができなかったからといって悔しいとかそんなわけでは断じてないのだ。ないったらない。

 

「わかりました」

 

「ありがとう。あ、これが勧誘期間中の風紀委員の主な流れが書いてあるデータで、これが事情聴取のために借りた部屋と風紀委員からの受け渡し場所の地図のデータ」

 

ケースに入れられた小さなチップを受け取る。それと同時に生徒会本部のタブレットも渡された。チップを、タブレットに入れてデータを表示させて中身を確認する。

 

風紀委員の動き、タイムテーブルといくつかの地点にマークがされたこの学校の地図のデータが収められていた。

 

「ありがとうございます。風紀委員の方々に一応挨拶したほうがいいでしょうか?」

 

「そうねぇ。ちょうど今決起集会でもしてそうだし、一応挨拶したほうがいいかもね」

 

「わかりました、失礼します」

 

そう言ってお辞儀をして、生徒会室奥の下の階にある風紀委員の部屋に直通している階段へと向かう。

 

後付け感がひしひしと伝わる外部階段を下って風紀委員の部屋の扉の前に立ち、ノックをする。

 

「引き渡し担当のアインツベルン です」

 

『あぁ、入ってくれ』

 

「失礼します」

 

摩利の返事を受けて、風紀委員の部屋に入る。

 

中を見ると、ちょうど取り締まり前のミーティングだったのか、風紀委員会の全員が集まっていた。そのなかで見慣れた顔が二つ。

一つは昨日もあっていた司波達也。もう一人は数日前、司波深雪を巡ってトラブルを起こしていた森崎何某だ。個人的に知っているわけではないが、あんなに騒いでいたのだから一応顔だけは覚えている。

 

森崎と私の目があった。ワナワナと何か言いたげな表情を、浮かべていた。

 

「紹介しよう。我々で捕らえた問題児を事情聴取の部屋へと引き渡す係として生徒会本部から来たイリヤスフィール・フォン・アインツベルン だ。彼女のことを知っているものもいるかと思うが、特別に扱う必要はない。彼女もただの新入生だ。では、挨拶を」

 

「ご紹介していただいた通りです。イリヤスフィール・フォン・アインツベルン 。一科生の一年生です。生徒会本部役員の末席に就かせていただいています。部活動の勧誘期間中は先ほどの通り、引き渡し役として動きます。よろしくお願いします」

 

そう言って頭を下げる。

 

よろしく、とかたのむぞ!だとかの、声が聞こえた。良かった。ここにいる人たちは雫や梓のような過剰反応しない人たちだった。

 

「最後に合わせでミーティングをした後に出動とする!」

 

摩利の締めの言葉により皆の表情が変わった。

 

 

 

さて、問題が起きないのが一番なんだけれども…………

 

 

 

 






はい、という形です。

勧誘期間はなるべくざっくり。で行きたいかと。

敬語あたりになにか違和感を感じるかもしれませんが、イリヤは長年ドイツにいたので少し日本語に不慣れなんだな程度に思っていただけたら幸いです。

感想・評価を、していただきましてありがとうございます。励みになっています。

またな誤字脱字報告も助かっております。ありがとうございます。






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第12話

 

 

 

 

 

「第一号でーす」

 

「了解です、あとはお任せください」

 

早速問題児の一人目を連れてきた風紀委員から生徒を受け取り、手首に自前のCADであるアイリスを使って拘束する。背面で手を拘束され、椅子に座らされた当人は反省しているようで、がっくりとうなだれていた。

 

「では、自分は又出てきますので」

 

「はい、頑張ってくださいね」

 

すると風紀委員の男子生徒は顔をわずかに赤く染めると、失礼しますと言って部屋を出ていった。

照れてるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして風紀委員から生徒会本部と部活連の事情聴取の部屋を行ったり来たりすること数時間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如端末から通知音が響く。

 

落ち着いてきたのか連行されてくる生徒が減っており、すこし疲れもありぼんやりとしていたので余計びっくりしてしまった。幸いなことに、部屋に私以外の人はいなかったため、恥をさらさずに済んだ。よかった。

 

こほん、と一息ついて自身の精神をリセットして落ち着かせる。

 

通知を告げた携帯端末を手に出し、その通知が達也からの電話であることを確認すると、通話を開始する。

 

「もしもし、どうかした?」

 

『ああ、イリヤか。今闘技場で剣道部と剣術部間でのトラブルが発生した。負傷者も出たから担架を出すように手配してくれ。俺一人でも制圧は可能だが、そのあとのことを考えるとイリヤに来てもらった方が都合がいいかと思ってな。もちろん、手荒なことは風紀委員の管轄だからな、無理にとは言わないが……』

 

最初は理解した。ただ、後半は何となくひっかかった。達也本人としても気づかいのつもりで言ったのだろうか、私はそれが見くびられているように感じてしまった。

 

 

 

 

行くしかない。

 

 

 

 

一瞬の間ののちに私は達也にはっきりと言い放つ。

 

「問題ないわ。私はアインツベルンよ。一分半でつくわ」

 

『フッ、それは心強い。では俺は止めに入るからな、その後のことは頼んだぞ』

 

「ええ、任せて頂戴」

 

通信を切る。

 

部屋の扉わきに設置してある連絡用の電子掲示板に『引き渡し担当生徒、問題対応のため外出中。急用の方は以下のアドレスに連絡を入れてください。』本文後に自分のプライベートの端末ではなく、学校から借りた端末のコードを転送して記載しておく。

 

丁度定期連絡に来ていた部活連の生徒に闘技場でトラブル発生の旨と、怪我人がいでたため担架を持って来てほしいと伝える。

 

部活連の生徒が走り出したのを確認すると、扉を内側からロックし、窓を開ける。

 

扉からわずかに身を乗り出して闘技場の位置情報を把握する。

闘技場は木や建物の阻まれることのない場所にあった。

 

「あそこね……よし」

 

 

調整体の完成形とも言われている私は、別にCADがなくてもある程度の魔法は使える(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)のだが、このことはあまり言いふらしたくないので普通にCADを使う。手首に巻かれた風紀委員の備品として借り受けたCADの感触を確かめるように撫でる。

 

風紀委員の部屋に整理しておいてあったこのCADは、知る人ぞ知るエキスパート仕様のハイスペックな逸品だ。一時期、ドイツの一般的な市場でも、公にできない裏市場でも需要が高まり結構な値段で取引されていた。

 

バッテリーの持ちが悪いので長期間の使用には向かないが、その点に目を瞑れば設定の自由度はトップレベルだし、旧式と言われているけど使う人によれば最近のものより数倍使いやすいものだ。

 

 

短く、呼吸を挟む。

 

扉から離れて助走できる距離を取り、窓めがけて全力で走り抜ける。その過程で自身に加速の魔法、そして空気に対して追い風を生じさせ、窓べりを蹴っ飛ばす。

 

宙に舞い、一直線に闘技場を目指した。

 

 

 

 

 

 

 

闘技場二階の窓から中がうかがえる距離まで近づいた。予想どおり、達也の無双が繰り広げられていた。

 

窓が開いているのを確認。

 

入口に降り立って闘技場に入ろうかと思っていたのだが……ちょうどいい、派手に入場してやろうじゃないか。そんなことを考えながらもどんどん闘技場に近づいていく。

 

加速系魔法を呼び出して加速度ベクトルを操作して窓から侵入する。その刹那、一瞬だが達也と目が合った。このわずかな時間で私のやろうとしていることを理解したのか、苦笑いを浮かべると、安全マージンを取りつつ闘技場の中央から離れていった。

 

やりたいことを理解してくれるというのはとてもいいことだ。やるなら徹底的にが私のルール。

 

 

 

 

 

二階フロアの手すりを初歩的な振動系魔法を用いてなるべく大きな音で響くように蹴ってフロアへと降り立つ。

 

「誰だお前!?」

 

「生徒会本部役員様、よ!!」

 

瞬時にあたりを見渡して状況を把握。敵勢力、人数、主なレベルを確認。懐からアイリスを取り出す。使いたい魔法、金属の性質操作の魔法を原子レベルの大きさで刻んだ刻印にサイオンを流し込み起動する。

 

周りを魅了するかのように舞う。

 

私を敵だと判断した袴姿が木刀を振り下ろそうと身構える。振り下ろされたそれをアイリスの部分硬化で弾き飛ばすと、流れるような動きで男子生徒の足を払う。顔から地面に落ちた生徒の腕と足をアイリスで拘束し、その部分を切り離す。

 

 

 

後ろから接近の気配。

 

 

 

振り払われた木刀をマトリックスの要領で躱す。バク転で距離を取り、その足で手に持った木刀を蹴り飛ばす。襲ってきた男子生徒その2の腕にアイリスを巻き付け、加速魔法で自身のベクトルを操作し、巻き込むようにして前へと飛び込む。構えていたわけでもない当人はそのまま引っ張られてしりもちをつく。その間にその1と同じように腕と足を拘束して放る。

 

 

 

瞬く間に二人も無力化されてしまった様を見せつけられて怖気づいてしまった男子生徒その3は、私と目があったとたん覚悟を決めたような表情に切り替わり、雄叫びをあげながら私に襲いかかる。単調な動きゆえに簡単に見切ることができた。体を傾けるように右に避けつつ、左足だけをその場に残して突っ込んでくるその3の足を掬う。片腕だけにアイリスを巻きつけ、拘束しやすいようにうつ伏せで倒れるようにその腕を引く。すでに巻きつけていたアイリスを操作して、拘束する。

 

 

 

ふと達也の方を見る。あちらもあちらで鎮圧したらしい。剣術部の男子生徒は地面に転がされ、剣道部の生徒は同じように地面に転がされているものと、戦意を喪失して項垂れるものとの二パターンに分かれていた。

 

そろそろこちらもおしまいにしよう。

 

 

 

最後に残っていた男子生徒その4は一般的な木刀よりも小さいものと、小ぶりな小刀での二刀流らしく、隙なく構えるその姿からは、重ねて訓練を続けて磨かれた技術がうかがえた。

先制とばかりにアイリスを放つ。魔法を使わない剣道に対して、魔法を併用する剣術。私の前に立つ剣術部の生徒は素早い動きで手首に装着されたCADを操作して、収束系と思われる魔法で風をまとった刀で以てしてアイリスを吹き飛ばした。先ほどまでの相手と同等のレベルかと思っていた私は少し驚いた。突っ込もうかと思っていたが少し作戦を変更しよう。アイリスで牽制して男子生徒その4から距離を取る。

そして私は、日本に来て初めて使うことになる魔法を呼び出す。アイリスを手元に集め、一つの彫刻のように美しい鳥を形作る。その鳥はまるで意思を持っているかのように羽ばたき始め男子生徒その4に向かって飛び出した。

 

「なんだこいつ!?」

 

自らの周りを旋回しちょっかいをかけてくる銀の鳥を二本の木刀で攻撃するが、あまり効果がないのを見るとまた魔法を纏った刀で以てして沈められてしまった。

しかしこれでいい。あれはあくまでも時間稼ぎ。アイリスを基にして作り出すものは、時間をどれくらいかけられるか、その中身の密度がどれくらいかによって耐久値が変わる。私が作りたかったのはこっち(・・・)。鮮やかで美しい模様の刻まれた大きな槍。その大きな槍を男子生徒に向かって突撃させる。先ほどよりもより強力な風と振動をまとった木刀で以て粉砕しようと斬りかかるが、その直前で槍は紐状に分解し、木刀もろともまるで芋虫のように完全に拘束してしまった。

 

「言い訳は(事情聴取室)できくわ……ふふふ」

 

そう言い放ったのと同時に風紀委員と部活連の応援が担架を持って現れた。こういう決め台詞を一度でもいいから言ってみたかったのだ。

 

あたりを軽く見渡す。先ほどまでパニックになっていた生徒に対しての事情聴取を行う風紀委員などの間に達也とエリカを見つけた。

 

達也は予想していたのだろうか、やはりなと言わんばかりの表情で頬をかき、エリカは面白いおもちゃを見つけたような表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

確かに目立ちたかったというのもあるがやりすぎだったかもしれない。

これは後で面倒なことになりそうだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






久々の投稿にもかかわらずランキング入り。皆さま本当にありがとうございます。
ひさびさに本格的な戦闘?描写をやりました。違和感等ありましたら是非コメント欄にてご意見ください。



コメント・評価、作品作成に対する燃料となっています。
皆さん、是非コメント・評価をしていただけたらなと思います。

これからも本作品をよろしくお願いします。




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第13話



本日少し短めです


 

 

 

 

 

 

「以上が剣道部の新歓演舞中に剣術部が乱入して来た事件の顛末です」

 

達也の胸ポケットに仕込まれたレコーダー内に収められたデータ、それを踏まえた達也の目撃と体験、私が乱入……援護に入った後の話をこの学校を代表する三名の生徒に二人で説明した。

 

「それにしても、二人だったとはいえ十人以上を相手にして怪我なしって……」

 

「正確には十四人か。あの九重先生のお弟子というのならわかるが、アインツベルン がそこまで動けるとは。はっきり言って意外だったぞ」

 

すでに見知った人である生徒会会長の七草真由美と、達也の所属する風紀委員委員長の渡辺摩利。

二人は純粋に私と達也の腕に驚いていたらしい。摩利も言っていた通り、私が近接戦であんなに戦えるのが余程想定外の事らしく、私の行動が丸々記録されている達也のレコーダー内の映像を何度も見返していた。

 

しかし、あんなの余裕だぞ。ただの近接戦なら私のメイドのセラとリズの方が圧倒的に強い。洗練された技術のセラ、圧倒的パワーでゴリ押しのリズ。それぞれ近接戦において最も重要とされる要素だ。

 

まぁ、近接戦だけであって何でもありなら確実に私が勝てるのだが……。

 

あの二人に比べたら剣術部の連中なんて何ともなかったぞ。

 

そして最後の一人。同じく三年生の男子生徒。今回の問題でも大いに協力してくれた部活連の長、部活連会頭という役職を務めている十文字克人。姓に『十』を持つ数字付きの名門、十文字家の総領。

 

 

この日本では、苗字に数字を持つ一族のなかでも抜きんでて秀でて居る者たち。この日本という国の魔法師の頂点に立つ一族のことを『十師族』と呼ぶらしい。

 

最強の魔法師が十師族という枠にあてはめられ、お互いをけん制しあっていることにより、一般の魔法師の暴走を予防するという抑止力的な役割も果たしているとのことだ。

 

十師族当主の名は日本の魔法師にとって一般常識なのだそうだ。

 

 

おそらく180以上はあるだろうと思われる巨躯。制服からでもわかるような筋肉、広い肩幅。そして全身から放たれるオーラ。流石この魔法科高校の三巨頭の一人に数えられるだけはある。克人と初めて会ったのは勧誘期間入る前の生徒会本部と部活連との顔合わせの時だ。

 

 

 

ちなみに全くの余談だが、初めて克人に会った時に思い浮かんだ感想といえば

 

(劣化版バーサーカー……)

 

であったことを述べておく。

 

 

 

そして、楽しそうにしていた真由美と摩利も意識を切り替えて改めて報告した。

 

私が登場する前までのことを達也が、その後のことも達也が話していたが、ところどころ私が注釈するという形で進んでいった。

 

そういえば、『訴追は摘発したものに判断をゆだねる』という記述が生徒手帳の生徒規約に書いてあった気がするが。

 

「桐原先輩は鎖骨が折れていましたので、保健委員に引き渡しました。とはいえ、学校在中の魔法師によるその場での治療が可能なレベルの怪我でしたが……保健室で非を認めているようでしたのでこれ以上の措置は必要ないと判断しましたが、どうでしょうか」

 

まぁ、私たちに実害が出たわけでもないし。優秀であるならばここで芽を摘んでしまうのもマイナスになってしまうか。

 

「ふむ……いいだろう。規約にもある通り摘発した本人にその意思があるならそれ以上の行動は必要ない」

 

摩利は、達也の言葉にうなずくと克人へ目を向ける。

 

「というわけだ。風紀委員会としては、今回の件を懲罰委員会に持ち込むつもりはない」

 

「そう言ってもらえると助かる。あんな場所で危険な魔法である『高周波ブレード』を使用したのだ。当然停学処分にされても仕方がないだろう。それは本人がよくわかっているだろう。私からもよく言っておく」

 

克人が頭を下げ、摩利も軽く頷く。

 

しかし、私が登場する前までそんなことが起きていたのか。高周波ブレードって、対象を超高周波で振動させ切れ味がとんでもない代物ができるっていう魔法。確かに一般人にとっては脅威になるのか。

 

まぁ、私ほどになるとその魔法に干渉して逆に制御してしまえるので問題ない。

 

その後、事後処理について真由美・摩利・克人との三人と一緒に話を詰める。適当に話がまとまったところで、達也が退出の意思を示したので、それに便乗する形で部屋から退出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかしあんなに動けるとは思ってなかった」

 

「そうかしら?護身術は淑女の嗜みなのよ」

 

セラとリズに仕込まれた近接戦闘技術だ。あんな程度なら負けるはずがない。

 

「俺は師匠に教わったが、イリヤはどこでその技術を?」

 

「私の世話係から教わったのよ」

 

「そうか…………しかし、イリヤはなんであんな大立ち回りを?」

 

「…………別に……目立ちたかっただけよ、何か文句ある?」

 

「いいや、別に何もないさ」

 

くそう、やっぱそうなるのか。相変わらずこの男は……そういうとこだぞ。多分この男のこういう性格は無意識的なものなんだろう。だからこそなおたちが悪い。

 

そう軽口を叩きながら部活連の本部がある棟を達也とともに出る。

するとそこには学校に数少ない顔見知りが揃っていた。

 

「あ、おつかれ~」

 

「お兄様」

 

真っ先に声をかけたエリカに、達也の方に真っ先に駆けていく深雪。そのほかには美月とレオが後ろにバッグを抱えて立っていた。

 

すぐさま達也と深雪の間に形容しがたいフィールドが形成されていく。その様ははっきり言って家族間のものというよりかは恋人のそれに近いように見えた。

 

「兄妹だと分かっちゃいるんだけどなぁ……」

 

「何だか、とっても絵になってますよね……」

 

気恥ずかし気に視線を逸らすレオに、顔を赤らめながら食い入るように達也と深雪を見る美月。そんなレオと美月を白い目で見るエリカ。

 

「あなた達はあの二人に何を求めているのかなぁ?」

 

「そうね……まぁそんなことを考えてしまうのもわからなくわないけれど」

 

若干演技臭い動きを混ぜながら話すエリカに賛同する。確かに普通に兄妹として生活していたらあんな空気には『絶対に』ならない。

 

焦って弁明する二人を見ながら改めて司波兄妹を見る。

近すぎる距離からうっとりとした目で達也を見上げる深雪。そのおねだりに応えるようにやさしい手つきで深雪の頭をなでる達也。二人の目線はそれぞれ互いの瞳にしっかり固定されていた。

 

 

あ、一通り終わったぽいな。

 

 

「すまないな、待っていてくれたのか」

 

話を聞くと、二人ともクラブ見学や用事がちょうど終わったとこだったらしい。

 

「こんな時間だし、どこか軽く食べに行かないか?一人千円までならおごるぞ」

 

そして、達也は意外にも心遣いを無下にすることはできない男らしく、学生にしてはあり得ない対応となった。

 

この誘いを蹴れるものなどこの中には一人もいなかった。

 

 

 

ただで食べる飯ほど美味しいものはないしな。

 

 

 






いつもありがとうございます。

もしよろしければコメント・評価よろしくお願いします。



これからも本作をよろしくお願いします。


では



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第14話

誤字脱字報告助かっております。
これからもよろしければお願いします。




事情を知ってる方は申し訳ねぇ……笑ってくれ(主に感想欄で指摘してくれた方々)






 

 

どうせなので1000円ぎりぎりになるようにいろいろ頼んでやった。1000円もあればコーヒーに食べ物二種類くらいまで行ける。お釣りの桁が一桁になるように気合い入れて選んだ。

 

喫茶店の席についてみんなの頼んだものがそろうと、各々が体験した学校での話を披露し始めた。

入部したクラブのことや勧誘の時に受けた被害、その他この数日間で得た情報などがお題に上がった。なかでも闘技場での一件はすでに学校中に噂として広まっているらしく、話は自然と達也と私の活劇へと移っていった。

 

「しっかし、その桐原とかいう先輩は高周波ブレード使ってたんだろ?あんな危険な魔法に

よく怪我もなしに……」

 

「致死性があるって言っても、射程距離も狭い範囲だしあの魔法はよく切れる刃物と変わらないからな。そこまで対処が厳しいわけじゃない」

 

達也にとってはそうでもないことだったとしても、世間一般の考えではそうではない。自分ではそうは思わないことで何度も褒められてやや辟易とした表情を浮かべていた。

 

「でも、真剣を素手で対処したのとおんなじってことですよね?危なくなかったんですか?」

 

「美月、お兄様なら心配ないわよ」

 

そう言う深雪の表情には揺らぎようのない自信が浮かんでいた。

 

武道として、剣の技を修めているエリカからも桐原の腕は決して鈍らではなかったとの指摘を受けたのにもかかわらず、深雪の表情は変わらなかった。

 

あいにく私は桐原対達也の戦いを生で見たわけではないのでコメントのしようがなかった。ただまぁ、あの大人数を相手にしているにもかかわらず、周囲を把握して、私のやりたいことについて考察する余裕があるのであれば、深雪がそこまでに信頼を置くのもわからなくはない。

 

しかし、これ以上深雪ののろけ話を聞くのもうんざりなので、話題を逸らすことにした。

 

「たしかにその技量には驚くべきところがあるけれど、私としては高周波ブレードを無力化した手段について聞きたいわ」

 

そういえば、たしかにといった風に自然な動きで違う話へと移れた。

 

するとまたも深雪が達也に代わって丁寧に教えてくれた。

 

「魔法式の無効化はお兄様の十八番なの」

 

どうやら情報強化でも領域干渉でもないらしい。でも、そんなものは私自身知らないし初耳だ。達也の説明によるとそれはキャスト・ジャミングというものらしい。しかし、キャスト・ジャミング自体は魔法式に働きかける妨害魔法全般のことを指す言葉だったはずだ。

 

「お兄様のそれは学校でやるようなものではないもの」

 

「でも、それって特殊な鉱石が必要なんじゃなかった?」

 

「アンティナイトね」

 

美月が言った言葉に補足する形で言葉を添える。

 

そう、そのキャスト・ジャミングにはアンティナイトという希少な鉱石が必要なのだ。キャスト・ジャミングをするには条件を満たすサイオン波を作り出すのに必要であり、その条件を満たすサイオン波を作り出す物質として知られているのがアンティナイトなのだ。

 

実際アンティナイトなしでもキャスト・ジャミングはできるが、それは理論上の話であり実際は困難であるといわれている。私もできないし。

 

それもそうだ。キャスト・ジャミングは魔法の阻害技術なのだ。その影響は自分自身にも影響することを考えれば無意識化で拒否反応を起こしてしまうのだ。

 

そもそもアンティナイトは軍需物資であり民間人が手にすることはできない。一応、私はドイツの魔法師界隈のなかでも頂点に立つ女だ。いちおうドイツの家の貯蔵庫にはアンティナイトが置いてあるが、私はサイオン量が常人の十数倍なので魔法式に直接干渉して破壊したり止めたりすることもできる。

 

しかし、達也が言うには、厳密にはキャスト・ジャミングではないらしい。

 

「編み出したというか、偶然発見したという方が正確かな。二つのCADを同時に使用すると、互いに干渉しあってほとんどの場合で魔法が発生しないだろ」

 

理解した。要は、二種類のCADを用いて特定のサイオン波を発生させると、魔法式から魔法を発動させるまでの進行をある程度妨害できるという寸法か。

 

なるほど、アンティナイトを使わずに魔法の使用を阻止できるとなれば、軍事利用目的でまぁ大変なことになるだろうな。アンティナイトは採掘量も極小だし、それ故に法外な値段でやり取りされているからな。達也が大声で言いたくないのもうなずける。

 

これが広まったら社会基盤が揺らぎかねんぞ。

 

聞きたいことも聞けたし、もくもくとケーキを食べていたが、ほかの方々もそういった結論に至ったようだ。

 

流石は一校生。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

「おかえりなさいませイリヤ様」

 

言いつけておいた通り、あれ以来外国産の高級車でお迎えに来ることはなくなった。

普通の学生らしく過ごせて大変満足だ。

 

カバンをセラに預け、リビングにでる。セラからコップ一杯の水を受け取ると一息で飲み干して小さくため息をついた。

 

日本に来てわずかな時間しかたっていないが、かなり濃厚な時間を過ごせた。同時になれない環境に置かれているため、疲労も大分たまってきた。ここらで派手にストレスの発散でもしたいものだが。

 

ふと見渡すと、いつもならリビングのソファーにいるはずのリズが見当たらなかった。

 

「あれ、リズは?」

 

「はい、いくつか怪しい情報が回ってきたので調査に行かせました。もうしばらくしたら帰ってくるとおもいますが……」

 

そう、と返事したその直後、二階の窓が開く音が響いた。

 

「ちょうど帰ってきたみたいね」

 

「そのようですね。夕飯の準備をしますね」

 

「ええ」

 

数時間前まで達也たちと一緒にカフェで甘いものを食べていたが、意外とまだまだ余裕はありそうだ。それにセラは私が色々な料理を食べたいということを踏まえて毎日必ず違う料理を用意してくれるのでこの食事の時間が楽しみの一つなのだ。

 

自室に戻り部屋着に着替える。

 

夕食まで時間があるのでこの時間にCADを点検してしまおう。

 

部屋におかれたクローゼットと同等の大きさの機械のコンソール部分前に座る。流体上のアイリスを容器に入れて機械にセットする。この機械は私が考案した原子レベルの刻印を施したり、点検ができたりする代物だ。ちなみにこれも私が作ったものだ。

 

ここ最近点検できてなかったし、部活動勧誘期間で大分酷使したので一度リセットしておかないといけない。

 

少し傷ついていたが、問題になるほどではない。この耐久値、流石私だ。

 

この点検でもう少し時間を使う予定だったが、想像以上に早く終わってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、半分趣味で作っていたバーサーカーのデータを覗いて時間をつぶしていたら、夕食の時間になった。

 

私、セラとリズの三人でテーブルを囲む。

 

「で、なんかあったの?」

 

今日は和食だった。前々から食べたいと言っていたら、セラが猛勉強して習得してくれたのだ。今日はサバの味噌煮だ。白米とみそ汁付きだ。

 

イリヤの質問にセラが淡々と答える。

 

「はい。イリヤ様の通ってらっしゃる第一高校に干渉している組織の存在を認知しましたので、今日リズに所在の確認と詳細について実際に確認させていました」

 

「へー」

 

「組織の名は『ブランシュ』。日本に存在している反魔法国際政治団体の一つです。実際に第一高校で活動しているのは『エガリテ』という組織ですね」

 

「今日ブランシュ?の拠点見てきた。しょぼかった」

 

「拠点の座標はこちらになりますね。警備システムについてもまったく対策が取られていません。ただの廃墟に居座っているだけのようです」

 

リズの感覚的な感想に、セラはその感想に詳細を添えタブレットに位置座標を表示させた状態でイリヤに手渡す。

 

なるほど、これなら片手間のシステム操作ですべてのシステムを掌握できるくらいの脆さだ。

 

それに私の充実したキャンパス・ライフが侵される可能性があると考えれば、ここらで壊滅させておくのがいいかもしれない。

 

よし決めたぞ。この組織には私のストレス解消に付き合ってもらおう。

どうせエガリテなんて下位組織、学生が主なんだろう。ブランシュありきの組織に違いないので、どっちにしろブランシュを壊滅させれば自然とエガリテも消失するだろう。

 

やろう

 

「決めたわ。この組織、消すわ。それに伴って情報操作と隠ぺい作業、いちおう事前に必要な情報の収集をお願い」

 

「了解しました…………ほらリズも」

 

「はーい」

 

いつの間にか食べきっていたお米と味噌煮。最後に味噌汁を飲み切ると箸をおく。

 

「ごちそうさまでした。じゃあ、例の件よろしく。三日以内に完了させて」

 

「かしこまりました」

 

よし、せいぜい私の役に立ってくれよ三下。

 

 

 

 

 




いつもありがとうございます。

原作組使ってブランシュつぶす描写がきっついというのと、単純にイリヤの無双が書いてみたかったのでこういう運びとなりました。


よろしければ評価・感想いただけると執筆速度が上がると思います。よろしくお願いします。

早く論文コンペの話書きたい


では



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第15話


大分短めです。

多分次回辺りで入学編終わります。
個人的にはコンぺまでやりたいんじゃ……




 

 

 

 

ちょうど三日目、部活動勧誘期間の四日目を迎える朝、セラからすべての情報・手回しが終了したとの連絡が入った。それは朝食時のこと。三日前の夕食のようにタブレット端末を受け取り中におさめられた情報に目を通す。

拠点の座標、内部構造、上下水道の配置、敵構成員の一覧、犯した罪。私の指示にはなかった情報を含むそれを見ながら私はほくそ笑む。

 

これでいいのだ、素晴らしい。

 

私は自分の要求以上の仕事をしてくれた従者二人を満足そうに眺める家を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男は久々に『あたり』である仕事を見つけて、上機嫌だった。

 

仕事の内容はある組織の拠点の警備だった。支給されたそこそこの性能のアサルトライフルを肩から下げて、誰も来ることのない道を見張るというとても簡単な仕事だ。そして、こんな簡単な作業に合わない額の報酬が与えられるのだ。

 

中で、どんな組織が何をするのかはまったくわからないが、この高額な報酬には口止め料も含まれているのだろう。

 

もとより、内容がわからないのだから話すつもりもない。

 

本当に天職だ。

 

現代において、自動車は衰退していき、より安全な中央集中管理のシステムをとるキャビネットが主流となっていた。残る自動車にしても、安全を突き詰めた結果が完全自動運転だ。よって、登録された正規の道しか進むことができない。この組織の拠点はキャビネット通る駅から離れているし、正規の道から大きく離れて場所に存在している。

よって人が来ることもない。

 

仕事内容のすり合わせの時聞いたが、ここの警備システムはそこそこの精度らしい。

 

つまり、一般の人間も魔法師もここを墜とすことは不可能だということだ。俺のほかにもにも銃を構えた仕事人が何人も暇そうにあくびを噛み殺しながら辺りを警戒していた。ぶっちゃけさぼっても敵なんて来るはずもないし問題はないが、いちおう金が生じているのだ。あとでぐちぐち言われて報酬の減額なんて喰らったらシャレにならない。

 

 

 

カサカサ

 

 

 

ふと草花がかすれる音が響く。まらりを見渡す。一応、自身のうちにある警戒レベルを一段階上げ、アサルトライフルを構えなおし、音のもとへと向かう。

 

「誰だ」

 

「ヒッ」

 

そこには美しく雪のような白銀の髪に、ルビーのようにきらきらと輝く瞳を持った少女がいた。美しい瞳には数滴の水を浮かべ、紫色のシャツと汚れのないスカートに包まれた体を両手で抱え震えていた。

 

「……お嬢ちゃん、こんなところでどうしたの」

 

「あ、あの……私まだこの国に来たばかりで……山を探検しようと思ったら迷っちゃって……」

 

少しつたない日本語。彼女の言葉から察するに外国人らしい。

 

男は喜んだ。こんなにも美しい女性にあったことはなかった。あたりを見渡してみても、この少女に気付いているのはこの男ただ一人。今ならこの少女を自分の思うがままにできると思いつくと思わずよだれあふれてしまいそうになる。

 

興奮とともに熱を帯びる体を隠しながら男は少女に近づく。

 

「じゃあ、おじさんが案内してあげるよ」

 

そういって少女の手を取る。目と目が合う。その時少女は理解したのだ、この男は信用ならないと。今まだ感じたことのない恐怖心が全身を駆ける。大きな声を上げようと開かれた少女の口を男は慌てて手でふさぐ。

 

「へへ、少しの間だよ……そしたらすぐに気持ちよくなれるからね」

 

そういって逃げようとする少女を無理やり押さえつけさらに奥へ奥へ、男の仲間もいないような場所を目指す。

 

 

 

 

 

 

周りには『誰も』いない。

 

 

 

 

 

 

はじかれるように男の手は振りほどかれた。

若干の苛立ちとともに少女を見る。

 

そこには先ほど兎のように震えていた少女はおらず、冷酷な、血よりも紅い瞳を持った雪の精がいた。

 

「別にあなたに思うことがあるわけではないけれど……死んで」

 

氷のように冷え込んだ声が響くと同時に、少女の周りに銀が舞う。

 

液体状の銀は少女の周りをふわふわと回っていた。

 

「|Automatoportum defensio:Automatoportum quaerere:Dilectus incrisio《自律防御:自動索敵:指定攻撃》」

 

さっきまで不規則に動いていた液体は一定の動きに定まり、やがて少女の足元にドラム缶くらいの大きさの球状に纏まった。

 

「な、何んだそーーー」

 

inpulsa(衝撃)

 

 

 

銀閃が舞う。

 

 

 

男は自らがどうなったのかを知覚する間もなく、その意識は暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイリスに続く私のの傑作、『ヴォールメン・ハイドラグラム』。

 

アイリスは細い合成金属に施した刻印によって駆動する。この『ヴォールメン・ハイドラグラム』は水銀を主に作られた液体金属である。合金の原子一つ一つに刻印された回路によって駆動するこれは液体である分、アイリスとは比べ物にならない操作性と自由性を持つ。

 

か弱い少女の振りにまんまと騙されたこの汚い男は、人の知覚速度を超えて近づいた水銀によって起こされた極小の衝撃波をもろに受け気絶した。

 

この男は私の演技に騙されたのだ。決して私の見た目が高校生には見えないとかそんなわけはないのだ。

 

実戦でまだ使用したことのない『ヴォールメン・ハイドラグラム』の性能テストを兼ねている今回の襲撃だが、この感じからすると全く問題はなさそうだ。

しかし、こうやって一人ずつ誘い込んで無力化しようかと考えていたが、これは想像以上に面倒だぞ。

 

 

 

やはりこんな小さなやり方は私に向いていない。

 

アインツベルンたる私がこそこそする必要など全くない。

 

 

 

ire: incrisio(索敵及び攻撃)

 

極小の回路一つ一つに火を灯す。

 

私の足元に丸まっていた銀は揺らめきながら、何本もの触手をまっすぐに伸ばしブランシュの拠点へと進む。このCADの特徴としてさっき挙げた操作の自由性に加えて圧倒的な索敵能力を持つ。タネは簡単だ。この液体金属はささいな振動も感知する。たとえそれが音の波だったとしても。周囲の音で環境を把握し、その場に合わせて動くことができるのだ。

 

今は、数多くの触手を施設内に這わせ、すべての場所を索敵したのち、一斉に無力化するプログラムを組んだ。

 

 

しばらく待つ。

 

 

感触でわかる。どうやら私の道具は無事全ての構成員を無力化したようだ。

 

この中でトップに立つ男の所在も手に取るようにわかる。安定して緩やかな心臓の鼓動音。感知している音から解析するに、寝ているらしい。外の惨状に気付くこともなく熟睡とは……悪事を働いている組織の幹部とは思えないくつろぎっぷりである。

 

安全が保障された小汚い廊下を進む。

 

 

コツコツコツ

 

そして件のリーダー、司一の眠る部屋へとたどり着いた。

 

 

 

 

 

 





詠唱はラテン語訳から引っ張ってきたものです。
多少目をつむってみていただければ幸いです。



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