S.O.N.G.の休憩室 (特異災害マン)
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藤尭の窮地。(上)
ふじきり先駆者でもあり創立者でもあるお方をリスペクトした作品です。
初投稿となります。
今回は上巻となります。
下巻の展開はまだ未定ですが、コメントをしていただければ参考までにさせていただくこともあります。
何卒、よろしくお願いします。
藤尭朔也は、ある窮地に立たされている。
S.O.N.G.での情報処理がひと段落し、休憩がてらコーヒーを買いに席を外そうとしたその時、俺の背後に人影が見えた。振り返るとそこには髪留めバッテンが特徴的な金髪の女の子が立っていた。
「藤尭さん!お疲れ様デース!」
とても明るくて元気に俺に挨拶してくれた彼女の名前は暁切歌ちゃん。「フロンティア事変」をきっかけに今ではS.O.N.G.のメンバーの一員でもあり、シンフォギア装者の1人でもある。
「どーも、切歌ちゃん。今から飲み物を買ってこようと思うけど、なんか飲みたいのある?」
「お気持ちだけで嬉しいデース。あ、藤尭さんって今とーっても疲れてるデスかー?」
「え?ま、まぁ疲れてるっちゃ疲れてるけど…。」
「ムッフッフー♩そんなお疲れモードの藤尭さんをこの私が癒してあげるのデース!」
そう言って切歌ちゃんはポケットの中から何かを取り出そうとしている。目の前にいる可愛い美少女が俺の為にと思うと、思わず涙が出てしまいそうだ。こんなシチュエーションは漫画の世界だけであって一生経験出来ないと思ってたが、人生何が起きるかわからないものだ。これまでも色々あったけども…。この幸せな時間がいつまでも続けばなと思ってしまい…。
「ジャーン!これデース!(五円玉とヒモ)」
前言撤回。早くこの時間が終わって欲しいです。切歌ちゃんの笑顔が少しだけ小悪魔っぽかった。
「さーて、飲み物でも買ってくるかー。」
「デデッ!?どーしてデスかー!!?」
明らかにイタズラをしようとする顔になっている事に気がついてない切歌ちゃんだった。しかし、ここで逃げてしまうと切歌ちゃんを悲しませてしまう。
「一応確認するけど、その道具を使って何をするつもり?」
「えーっとデスねー。」
もしかしたら、俺の勘違いかもしれない。まさかその道具でベタなことはしないだろう。その五円玉でマッサージを…。
「催眠術をするデース!」
…どうやらベタな展開になってきた。何処のどいつだ、この可愛い美少女にそんな物騒なことを教えた奴は…!!とりあえずは確認してみよう。
「ど、何処で覚えてきたの切歌ちゃん…?」
「最近、あるTV番組でやってたのデスよー。これで藤尭さんを元気にすることができるのデース。」
その番組ディレクターに一発殴ってやりたくなってきた。てか今どきのTV番組はとんでもないのを放送してるな…。あまりTVを観てないから何とも言えない。何をされるかわからないから丁重に断ろうと思ったけど、やはり切歌ちゃんを傷つけてしまうのではと不安に駆られる俺がいる。その切歌ちゃんはというと…。
「迷惑…デスか…?」
今でも泣きそうな眼で俺を見ないでくれ。どうしたものか。悩みに悩んだ末に出した俺の結論は…。
「じゃ、じゃあお願いしようかな。」
女の子の眼差しに負けた。しかし、内心喜んでいる自分もいる。女の子が俺の為に努力してくれるというだけで嬉しくないはずがない。
「任せるのデース!藤尭さんは泥舟に乗ったつもりになるデス!」
「それを言うなら、大船じゃないの…?」
「そ、そーとも言うデース。それはさておき、私についてくるデース。」
「ちょ、ちょっと切歌ちゃん!?」
突然俺の手を引いて走り出す切歌ちゃんに、転ばないよう必死について行った。そういえば、握った手が微かに湿っぽかったような気がした。
「じゃあ、ココでやるデース。」
そこはいつも俺が飲み物を買いに行く休憩室だった。結局ココに来るんだ…。
「早速デスが藤尭さん、この椅子に座って欲しいのデス。」
切歌ちゃんに言われた通りに俺は何のためらいもなく座った。
「そうだ切歌ちゃん。催眠術のやり方は大丈夫かな?」
「問題無いデスよー。ちゃーんとメモをとってありますから。」
「へぇ〜。」
「ただデスね…。あまり練習してないので、上手くいくか少し心配で…。けど、絶対に催眠術を成功させて藤尭さんに元気になって欲しいのデス!」
切歌ちゃん、せめて練習はして欲しかった。そしてその自信は一体何処から来るんだろう。けど、頑張ろうとする切歌ちゃんを見てるとつい応援したくなってしまう。
「切歌ちゃん。」
「何デス?」
「俺の疲れを取ってくれるのを期待してるよ。だから頑張って。」
「ま、まかせるのデース!じゃあ藤尭さんはこの五円玉をじーっと見ていて欲しいのデス。」
先程の道具を俺の顔の前に用意した五円玉越しに見える切歌ちゃんの顔が緊張のせいか少し赤くなっていた。
「デデ…。」
「だ、大丈夫…?」
「し、心配ないデース。ボソボソ…。」
切歌ちゃんが緊張のあまり、最後の方は何て言っていたのか俺は上手く聞き取れなかった。
「い、行くデスよー…。」
「お願いします。」
そう言って、目の前の五円玉をゆっくりと動き出した。
「あなたは、だんだん眠くなるデース。」
催眠術の方法はとてもシンプルなものだった。ゆっくりと揺れる五円玉を、ただひたすら眼で追っていくという。こんな方法で催眠術にかかるのは漫画だけなのではと思ってしまう。もし仮にかからなかったら、かかったフリをして切歌ちゃんを喜ばせた方がとても平和的解決だな。逆にかかってしまった場合はそうだな…。考えるのはやめておこう。想像しただけでも怖いものだ。やはり催眠術にはかかりたくない。
1分後…。
かかる気配がないな…。じゃあかかったフリを…。
「眠…く……な……( ˘ω˘)スヤァ」
「切歌ちゃん!?」
突然背中から倒れそうになった切歌ちゃんをとっさに抱えた。幸い怪我はしていなかった。しかし…なんて事だ……。
「まさか、かける側がかかってしまうとは…。」
こんな異例な展開になるとは予想してなかった。多分、TV番組的にはおいしい展開だと思うけど、いやそうじゃない。催眠術に関する知識がお互いに皆無なのでココからどうすればいいのか、俺は戸惑いを隠せなかった。
「ど、どうすれば…?けど…切歌ちゃんの寝顔…。」
その寝顔についつい見入ってしまった。いつもあんなに元気な切歌ちゃんがいざ寝るとここまで大人しくなってしまうとは。
「いや、見惚れている場合じゃない!」
廊下には人気は無く、休憩室には俺ら以外の人はいない。しかも、男と女の子の2人しかいない。改めて言おう…。
藤尭朔也は、ある窮地に立たされている。
下巻の展開はまだ未定です。
こうなって欲しいみたいな展開があればコメントをお願いします。
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