刀使ノ巫女-穢れた刀の一閃- (オーガスト)
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プロローグ
「抜刀!!」
三重県伊勢自動車道の舗装された道路が抉れガードレールが剥がれ落ち廃墟同然となってるこの地に刀を持った6人の少女と赤く、醜い化け物が対峙していた。
その少女は「刀使」、荒魂という化け物と対峙できる「御刀」を持つ。
「荒魂」と呼ばれるノロと言われる不純物の集合体を討つための存在である。
その荒魂と呼ばれる化け物は今、ここで暴れており刀使はここで討伐するために派遣された。
荒魂の姿は多種多様であり大型から小型まで様々である。
今回の荒魂はムカデ型と猪型である。
「第1班と第2班は荒魂αと戦闘!荒魂βは第3班が受け持つ!『写シ』!」
『写シ』とは刀使の基本戦術であり、最大の防御術。御刀を媒介として肉体を一時的にエネルギー体へと変質させる。防御している間は、わずかな痛みと精神疲労を代償にし実体へのダメージを肩代わりできる技術である。
ダメージを受けると、その部分は消失し、身体機能も奪われていくが、写しを解除するまで実体へのダメージはない。
3人一組で展開し荒魂βと呼称された5メートル強の猪型荒魂を囲む。
「キシャーー!!」
猪の声とは程遠い金属をすり合わせたような甲高い声を発し突進する。
「歌留多さん!!」
薄い青髪の少女が
歌留多は腰に固定されていた鞘を外し、抜かずに横に寝かせ前に突き出す。
ガゴン!と金属同士がぶつかった音と共に猪型の荒魂が止まる。
歌留多の鞘は猪型の荒魂の角とぶつかり合い歌留多は更に前に突き出し荒魂をひるませる。
「キシャー!?」
刹那、荒魂の角が切り落とされ地に落ち同時に荒魂が真っ二つになる。
『迅移』、刀使の攻撃術でそれは加速術であり組み合わせることにより強力な一撃と化す。
歌留多の迅移により巨体な荒魂は無残な姿と化し左右に倒れ傷口から溶岩のようなまがまがしい液状、ノロがあふれ出る。
あふれ出てるノロと荒魂の残骸の後ろに迅移で移動した歌留多が刀を収め息を付く。
「ふぅ、こんなものかな?」
一息を付く歌留多は後ろを見て残骸と化した荒魂を見る。
歌留多は多少の我流も入るが『柳生心眼流』を基礎として使い鞘の受け身からの抜刀術を好んで使う。
一度荒魂の攻撃を受け止め、抜刀術により敵を一閃し沈黙させる使い手だ。
「歌留多さん!無事ですか!!」
青髪の少女、
「大丈夫よ、写シも付けてたし」
「その写シを付けてなかったから心配を……」
沈黙
「え……あははは」
そう、歌留多はたまにだが写しを付けるのを忘れてしまうことがある。
今回もそうだった。
「写しを付ける癖をつけておかないと何時か大けがしますよ」
「わ、わかってるって。それよりも1班と2班は?」
「あっちは終えてますよ。みんな優秀ですから」
既にムカデ型の荒魂を討伐したのか残りの班がこっちに来てるのを歌留多は見た。
「これで任務完りょ…スペクトラムファインダーに反応!!」
突如、電子音の警報がなり蓮がスペクトラムファインダーと呼ばれる荒魂探知装置を取り出し方角と距離を確認する。
「南の方角から…しかも大きい!!」
歌留多達は南の方角へ向き刀を抜刀し写シを張る。
自動車道の南の森から金属音を鳴らしてくる新しい荒魂。
その荒魂はさっきまでの5メートルもある荒魂より大きい。
大きさは10メートルくらいあるだろうか。その荒魂の形状はハリネズミのようで背中に針のような突起物が多数生えていた。
「第1班と第2班は左右から牽制!第3班は正面で仕留める!」
蓮が各班への指示を出し左右へ牽制させるように動かす。
「歌留多さん!私たちは荒魂の足を奪う!奪った後はトドメを!」
「わかったわ!」
蓮ともう一人、栗色の髪をした少女は左右から攻撃されて暴れてる荒魂の足に刀を振り下ろす。
「か、硬い……下がって!」
硬い皮膚に覆われ、刀が弾かれ、カウンターとばかしに荒魂の鋭い爪が振り下ろされ2人は間一髪で避けたが更なる攻撃が待ち構えてられていた。
それは荒魂が殻に閉じこもるかのような動作をし背中に生えてる突起物である針を伸ばし全周への攻撃を仕掛けた。
「きゃあ!!」
各班、蓮達は針に直撃か刀で間一髪免れたのどっちかで写シが解かれ3つの班の半数が壊滅した。
「くっ!みんな!」
歌留多や蓮はその間一髪免れた方であり他の班の数名は直撃し写シは解かれたが命の別状はない。
しかし気を失ってるため張りなおすことはできない。
「蓮ちゃん……皆を連れてここから離脱を、私がアレを相手するよ」
負傷者がいる今ここに留まるのは危険であり誰かが囮となり移動させるか、討伐の2択となる。
歌留多は自分が囮となることを蓮に進言する。
「歌留多!……わかったわ」
蓮も一瞬とはいえ怒ろうとしたが事態を把握したのか抑え込み承諾をし各班へ指示を出す。
歌留多はそれを後ろ目で見届け再度荒魂に目を向ける。
「あんたの相手は……私よ!」
刀を下段に抑え込み迅移で肉薄し、突く。
「ぐぅ、やっぱり硬いね」
先ほどの荒魂と違い硬く、突きで傷一つもつかない。
ならばと上段からの振り下ろし、間接部分へと攻撃を移しながら切りつける。
「これでもダメってどうすればいいのよ!!」
歌留多は叫びながら切りつけるが荒魂は怯む事もなく爪を横なぎにしてくる。
「くぅ!!」
すかさず受け止めるが抑えきれずに横へ吹っ飛ぶ。
「歌留多さん!」
負傷者を付けだしてる蓮が嫌な音がしたと思い後ろへ向き歌留多が飛んでいくのを見て叫ぶ。
幸いにも受け身は取れ写シは解かれなかったが思うように動けれない。
「あはは……これはまずいかも」
攻撃が通じず受け止めようにもまた吹っ飛べば写シが解かれてしまう。
時間稼ぎとはいえ荒魂を討たなければどうしようもない状況であり歌留多は冷や汗を出す。
「キシャー!!」
荒魂が爪を立てに振り下ろす。
目を瞑る歌留多だが吹っ飛ぶ衝撃もなければ痛みも来ない。
代わりに荒魂が叫ぶ声と後方に何かが飛んでいく音が聞こえた。
「大丈夫か?歌留多」
目を開けると爪が剥がれ落ちた荒魂とその目の前に歌留多と同じくピンク色の髪をし、少し短めな一人の刀使、その手に持ってるのはおよそ140cmもある太刀である『伊吹丸』。
特徴的な御刀を持つ人物は歌留多にとっては知らない人とは言えない人物。
「姉さん……なんで」
彼女の名は
「下がってて」
伊吹丸を片手に迅移、一瞬で10メートルもある傷一つ付かなかった荒魂が真っ二つになり倒れる。
「任務終えた後大きい荒魂の反応があったからついでに来てみたけど、歌留多もしかして腕落ちた?」
伊吹丸を鞘に納めちょっと悪顔で歌留多に言う。
「腕は多分落ちてないけど姉さんは……いつもの通りね」
ちょっとあきれ顔で姉を見つつ鞘に納める。
場所が変わり折神家当主、折神紫は窓の景色を見ながら今回の荒魂討伐の詳細にて考えていた。
刀使の御刀でも傷つけられない荒魂を倒す刀使の存在を。
その刀使の名は有名であり折神家、並びに親衛隊からでも一目置かれていた。
「紫様、やはりあの者を取り入れるべきかと」
親衛隊第一席、獅童真希が紫に進言をする。
紫は変わらぬ表情で振り向き言葉を発する。
これが古住歌留多とその姉、美弥の2人の物語の始まりである。
感想よろしくお願いします
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1-1 来客
京都府に所在地されている
ここは伍箇伝の中でも最も歴史ある伝統校で、人々に尊敬されている。また有事の際は特別刀剣類管理局の仮本部として機能するようになっている場所でもある。
そんな綾小路武芸学舎のグラウンドの隅に木刀を持った二人の刀使がいた。
髪がピンク色で腰まで伸びていて身長は年相応の少女ともう一人はその姉なのか身長が少し高く髪は同じ色だが肩下くらいまでしかない少女である。
「やぁ!てい!」
「まだ、甘いわよ」
木刀同士が打ち合う刀使。一人は木刀を振り回し上、下、横、はたまた切り返しをするがもう一人は片手で全てを弾く、弾く、弾く。
どうすれば姉に一本決めれるのか、そんな思考を張り巡らしてる間に時間が過ぎる。
「はぁー、今日はここまでね」
「あぁーまた取れなかったよ……」
一息吐く姉、美弥と木刀を下に向けうなだれる少女、歌留多はまた達成できなかったとばかりに唸る。
「早く行きなさい、授業始まるよ」
ヒョイ、と木刀取り上げて両肩に委託する美弥。
少しやつれ気味である歌留多はチラッと腕時計を見て真顔になった。
次の授業まであと5分なのである。
「あぁー!!やっばい!姉さん頼んだ!!」
走り去る歌留多に美弥はほほ笑みながら見送った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ふぅー、間に合ったぁー」
机につっぷし、顔の形が崩れるかのようにする歌留多。
次の授業まであと2分であった。
「また美弥さんと稽古?」
隣の席はこの前荒魂討伐に参加したリーダーであった
彼女は綾小路武芸学舎に入学してからずっとチームとして組んでいる時が多く指揮もできて頼りになる人である。
「まぁ、ね……一本も取れなかったよ」
「あの人はすごいからねぇ…」
そう、私の姉は10歳から刀使になり12歳……2年前から特別祭祀機動隊として荒魂討伐をし始めてから一度も討伐を失敗しておらず、それどころか他の刀使のフォローに向かい任務達成するほどの腕前である。
総合的に任務失敗した刀使は少ないが、その中でも美弥はトップクラスである。
そんな姉を持つ私であるが、私はというと中の中という平凡な腕前である。
姉があれだから妹もという妙な期待を周りから抱かされてる。
私も蓮と組んでいる時が多いためそこまで失敗はしてないが大半は姉からの援護があったのだ。自分で成功したというのは多分、2つの手の指で数えても余るくらいだ。
そんな経歴もあってからかよくため息を付いてしまう。
これから授業なのにね…
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「お、いたいた。古住くん」
授業が終わり、これから帰ろうと教材をしまうところに栗色のクセっ毛ショートヘアが特徴である女性教師が探していたかのように教室に顔を出して見つけ、歌留多の苗字を言う。
「あ、北山先生。どうかしましたか?」
なぜか私や姉も研究対象だとかでデータを採取してるみたいで不気味ではある。
「いや……ふふふ、グラウンドにいけばわかるさ、ふふふ」
「えぇ……」
いつものことだがこの人は可笑しな笑いをしながら話す。
そのときは何か嫌なことが起きることが多い。
とりあえずグラウンドに向かおう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「あれ?姉さん?」
「あれ、歌留多も呼ばれたの?」
下駄箱に向かうと長い御刀、伊吹丸を帯刀している姉、美弥の姿が見えた、
どうやら姉も亜里沙先生に呼ばれたみたいでそれを確認するとやはりそうみたいだった。
「まぁ亜里沙先生のことだから……嫌なことが起きそうね」
そう、亜里沙先生は研究熱心な人なためよく騒動を起こす。
この前は捕まえた荒魂を逃がして全員捜索に出てったりノロの爆発で実験室丸々ノロまみれになったりとよくクビにならないね、と思うときがある。
そんなことを思いながらグラウンドに出た瞬間に妙な寒気を思い出す。
「歌留多!!抜刀!!」
美弥が手を下に回し写シを張りながら伊吹丸を抜刀し歌留多も同じように抜刀、せずにそのまま鞘で取り出す。
いくつものの刃と刃が噛み合う音、それが歌留多の御刀『則房』に一回、美弥に二回音が鳴り歌留多は退けぞり、美弥は伊吹丸を振り、襲撃者三人を吹き飛ばす。
「おっと、へぇーおねーさんたち中々やるじゃん」
襲撃者の一人、カルタとほぼ同じ身長で髪も同じ色であり左側に髪を縛っている娘が評価を出す。
服装を見るとどこの生徒か、あまりピンと来なかったがそれでもどこかで見たことある服装であった。
「その服装は……貴女達親衛隊ね」
美弥がその疑問をすぐ明かし、歌留多は驚いた声をあげる。
「親衛隊!?」
折神家の当主、
先程のは
「すまないが少し手合わせをしよう」
「いきなりね、親衛隊は暇なの?」
美弥が煽るかのように真希に言う。
「これも仕事ですわ」
しかし寿々花が代弁するかのように回答をする。
どうやらこの3人は何か、私たちの実力を試すかのような感じをしている。
仕事とはそういうものだろうか。まぁ姉があれほど活躍してるし折神家も気にはしてるのだろう。
私は何かとばっちりを食らってる気がするけど。
「ねぇねぇ!!もうやっちゃっていい?」
私と同じくらいの小柄な少女、結芽が御刀を振り回しながら言う。
彼女は戦闘好きなのか張り切っているみたい。
3体2、あっちはベテラン刀使でもあり不利だけどこれは1体1にさせてくれるのだろうか。
「歌留多、貴女はあの娘の方をお願い。二人は私が引き受ける」
美弥は燕結芽の方に視線を向けて指示を出す。
逆に美弥は二人を相手するということになるが姉のことだ。多分大丈夫だろう。
歌留多はそう判断し、首を縦に振り同意し視線を結芽に向ける。
「なぁにぃ?もしかしておねぇさんが相手してくれるの?」
歌留多が望んでいた1体1という状況を生み出してくれた姉を感謝し、写シを張る。
相手は親衛隊、生半可なことでは負けてしまうだろう。勝てるだろうか、と緊張するが息を吐き、気持ちを落ち着かせる。
「そういうことになるね」
御刀を手に軽く触らせて今か今かと思っていた結芽が悪賢そうに笑う。
「いいねぇいいねぇ!楽しませてよ!」
瞬間、結芽の姿が消え目の前に中腰の姿勢で突きを出す結芽の姿が見え刃が歌留多に迫る。
人名紹介1
名:古住 歌留多(ふるずみ かるた)
血液型:A
御刀:則房
流派:柳生心眼流
所属:綾小路武芸学舎
中等部2年
身長150cmの小柄でピンク色の髪が腰まで伸びている刀使。
とある事件に遭ってから姉と共に刀使に選ばれた。
仲間思いであり友達のことを大切に思っており親友である蓑崎蓮と良い付き合いである。
実力は姉より劣るが柳生心眼流を使うカウンター技で対戦相手や荒魂を一刀両断する短期決戦系の技を好み、守突斬ができる特別製の鞘を使い御刀と同じ扱いをする疑似的な2刀流使いである。
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1-2 二刀流の刀使
短め
「くっ!」
最初の一突き、それは鞘の中心に受け止め、受け流すように動かし抜刀し一閃する。
結芽はそれを見越してたかのように下がり歌留多は追撃、3、4、5回金属同士が響き合う。
「へぇ、中々やるね。ならこれならどう!!」
結芽は正面だけではなく、左右背後にも回り込み切りつける。
右手に持っている御刀で弾きフェイントを付けこみにかけられ、結芽は隙となった左側を攻め、左腕を切り捨てようとするが不気味な音が響く。
「わっとっと、面白いね!鞘も使うなんて私驚いたよ」
切り捨てられるはずだった左腕は抜刀し空となった鞘を盾にし結芽の御刀を防ぐ。
歌留多の鞘は元は赤羽刀ではあったが北山先生の研究によって生み出された御刀と同等の力を持つ切り込み可能の特別な鞘であり強度も高く荒魂討伐にも使用可能であるものだ。
その鞘を振り結芽の左腕に打ち込むが後ろへ下がり距離をとる。
鞘も武器として使う、結芽はそんな歌留多の戦闘スタイルに驚嘆をこぼす。
「これが私のスタイルだからね」
鞘をくるくる回しそんなスタイルだと答える歌留多。
その言葉を聞き結芽は笑顔になる。
「いいね!いいね!お姉さん気に入ったよ!名前は?」
「歌留多、古住歌留多よ」
「歌留多お姉さんね!私の名前は燕結芽!さぁ楽しもうよ!」
更に速度を上げ、何度も切りかかる。
「これが親衛隊の実力!だが、姉さんほどでは!」
まだ姉の方が剣捌きが早い、そんなことを口にし、御刀と鞘で弾く。
「へぇ、これでもついていけるのね。ならもっと早くするね」
更に速度を上げて切りかかる。
この速度は姉より早い。そんなことを思い歌留多は迅移で距離を取り、攻められ、弾く。
「どうしたの?まだまだ本気じゃないよ?」
刃と刃が重なり合い、余裕の表情の結芽。
「くっ、でやぁ!」
力任せに、八幡力で押し倒し御刀を突きたてるが結芽は弾き飛ばす。
「いいねぇ、楽しい!楽しいよ!」
「早すぎる……このままじゃ」
「これで、終わり!」
「まだまだぁ!」
結芽の鋭い突きからの切り返しの技を使うが歌留多は鞘と御刀を交差させて剣戟を首元まで受け止める。
「きゃははは。お姉さんすごいね!ここまでついてきてる子達は居なかった!」
戦いを楽しんでいるかのような笑顔を見せる結芽の姿に歌留多は結芽は『今まで戦いを退屈していたのか。それとも自分が強いからここまで勝負にならなかったのか』と頭の中でよぎる。
結芽は御刀を肩上まで上げて剣先を歌留多に向ける。
「さぁ、私の本気中の本気を、受けてみて!」
結芽、歌留多は迅移と八幡力を最大限に上げ最大の剣戟を繰り出す。
3連続の剣戟、それを弾き、流し、避ける。
それをお返しとばかりに変則的な振り下ろし、振り上げ、切り返しをする。
そして最後の勝負が来た。
結芽の御刀と歌留多の鞘が弾かれ双方ともに体勢が一瞬崩れた。
結芽はすぐに体勢を取り戻し切り返しを。
歌留多は出来る限り取り戻しフリーであった則房を振り下ろす。
「「でやぁ!!」」
二人の気合が入った切り上げと切り下し。
刃と刃がかみ合わずに彼女らの上空に一本の御刀と片腕が打ち上げられた。
人名紹介2
名:古住 美弥(ふるずみ みや)
血液型:AB
御刀:伊吹丸
流派:???
所属:綾小路武芸学舎
中等部3年
歌留多の姉であり髪は歌留多とほぼ同じ桃色だが長さは少し短め。胸はそこそこ大きい。
歌留多と同じく事故に遭ってから太刀『伊吹丸』に認められ刀使として選ばれ中等部に編入してから数々の任務をすべてこなしてきた。
冷静沈着であり表情が読み取れない時がある。故にファンクラブがあるとかないとか。
学舎一であり無敗の実力を持っており北山亜里沙の実験でS装備刀使との戦闘訓練でも圧勝する結果を生み出した。
因みに任務を理由に御前試合には一度も出場していない。
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1-3 『剥離』
時は少し戻り、歌留多が結芽と対峙している一方古住美弥は伊吹丸を右手に持ち、目の前の二人獅童真希、此花寿々花に目を向ける。
「親衛隊は私達に用があるの?」
横風で髪がなびき、目を細めなぜ親衛隊はここに来てるのか、美弥は二人に問いてみる。
手合わせとは言えそれだけでは理由になっていないからだ。
それが理由だとしたら親衛隊として来てるとしたら滑稽でもある。
自分たちに関係するとしたら、姉妹、家庭……いや折神家のことだからそれを関係するとしたら。
「勧誘……かしら?」
恐らく実力だと自己分析する。
その仮定を口にすると獅童真希が頷く。
「そうだ、古住美弥。報告書を見る限り君は全ての任務をパーフェクトにこなし更にはこの綾小路武芸学舎内での無敗を持っている」
かつての母校で使っていたであろうジャージを羽織る真希は御刀を取り写シを張る。
「その評価の元、貴女を我が親衛隊に配属させようと参られましたわ」
寿々花も同様に抜刀し写シを張る。
完璧・無敗だから、学舎内でも時折耳をしとあるものは尊敬または畏怖の眼差しが突き刺さることがある日々であった。
その話は伍箇伝おろか折神家にも届いた。
そしてその噂の確認と実力の査定で来たということだろう。
ただ一つ気になると言えば一つ。
「私の妹、歌留多も親衛隊に入れさせる気かしら?」
今までの話からとすると美弥一人だけの要件なのだ。
歌留多の話だと北山先生に呼ばれて来たということ。
「そうですわね。歌留多さんも結芽さんと同じ実力ならぜひとも親衛隊に迎え受け入れたいですわ」
しかし彼女らの雰囲気から歌留多のことは勧誘するつもりは無かった。
もしかして、と美弥は頭を過ったがもう遅かった。
歌留多も知らない間に私と同じく実力試しされていることを。
横目にし歌留多と結芽の戦いを見てると鞘と御刀を使った二刀流で変幻自在に戦っていた。
「できればあの子には巻き添えはしたくなかったけど……」
だが債は投げられたのだ。
今は目の前の相手に集中し伊吹丸を振り待ち構える。
「親衛隊第一席を甘く見るなよ!」
真希と寿々花は美弥の表情は余裕な感じを示し、真希が先陣を切り迅移で肉薄し凪ぎ払うが美弥はそれを受け止める。
「はぁ!」
「きゃ!?」
「っ!やるな」
一瞬だった。
受け止めていた真希の御刀を両手で力任せで弾き飛ばし勢いを殺さず後ろへと回し寿々花をも弾き飛ばした。
140㎝もある御刀『伊吹丸』を軽々と振り回しその長いリーチを生かし二人の御刀は美弥まで届かせないようにしていた。
一瞬だとはいえ美弥の実力を肌に感じ真希は少しの冷や汗をかき戦術を組み立てる。
「寿々花!同時に仕掛けるぞ」
「承知しましたわ」
寿々花は了承し交互に攻撃を仕掛ける。
美弥は合わせてるかのように振り回し弾かせ、避ける。
「もらったぁ!」
相互の攻撃から前後からの一斉攻撃、二ヶ所同時なら速くても弾くこともできない。
「なに!!」
先を見越してたのか真希と寿々花の攻撃の交点で受け止めて弾く。
だがこれで攻撃は終わらない。
弾くのなら弾かせないように攻撃を加え、弾かれる前に空いた空間に攻撃をするが美弥は大きく下がり距離を取る。
「中々の連携ね。少し危なかったかな」
煽りではない美弥の二人への評価。
彼女にとっては親衛隊の評価を少し甘く見ていた。
「そっちも、噂でしか聞いたことありませんでしたが本当にS装備相手に勝つほどの実力の持ち主ですわね」
逆に親衛隊もそうであった。
美弥の評価は書類上でしか確かめてなくその中でも信憑性が低かった10人のS装備戦の圧勝がそれであった。
「寿々花……この勝負僕にやらせてくれないか」
だが御刀と交えて確信した。
彼女の実績、噂は本当であったことを。
「駄目ですわ真希さん!今回はあくまで試験として来ましたのよ!力を使うほどでは」
真希の目が紅く染まり、寿々花はそれを止めようとする。
「だが試してみたいんだ。僕の全力が彼女に届くかどうか」
好奇心、敬意、プライド。
その全てを今注ぐ。
「真希さん……貴女は」
寿々花はため息を吐きその場から下がる。
「いいでしょう、来なさい」
美弥は真希の雰囲気が変わるのを察知し伊吹丸を構える。
「はぁ!」
「くぅ」
肉薄した真希の御刀が美弥の長い伊吹丸の刃を滑り鍔まで届かせ美弥は根をあげる。
「捉えた!」
やっと一手決めれた真希がほほ笑み剣戟を加える。
「はぁ!!」
攻防が真逆となり真希が進みながら剣戟を加え、美弥が下がりながら弾かずに受け止める。
「もらったぁ!」
真希は上段の大振り振り下ろしをし、甲高い音とその感覚と共に上半身と下半身が分かれる感覚と共に視線が上向きとなる。
「なに……!?」
見間違えだろうか、確かに目の前に古住美弥が居る。
居るのだがまるで幻かのような姿をしており、真希の後ろには写シを張っている美弥が居た。
「『剥離』」
『剥離』、聞いたこともない言葉を美弥が口にし真希は切られた写シを解除に膝をつく。
「ば、バカな、このぼくが……親衛隊一席のぼくが負けた」
「でも、少し危なかったわ」
美弥は振り向き真希にそう答えた。
真希の身体能力の向上の仕方が異様であり美弥は仕方なく使ったのだ。
「美弥さん、その技は一体……っ!」
寿々花が先ほどの技を聞こうとすると美弥は何かが来るのを察知して伊吹丸を振るう。
「へぇー、そっちのおねぇーさんもなかなかやるねぇ」
さっきまで歌留多と戦っていた燕結芽が御刀を振るいかけてきた。
結芽が参戦したということは歌留多は、と美弥が横眼向けたら歌留多の御刀が遠くの地面に刺さっており彼女はそれを取りに行こうとしている。
察すにに負けたのだろう。
「結芽!」
真希が叫び結芽は力強く御刀を込める。
今、美弥と結芽の戦いが始まろうかとしてた。
「はーい!そこまでー!」
突如結芽の後ろに北山亜里沙が現れ、結芽の頭の上に手を乗せた。
「北山先生……なぜここに?」
「うげっ」
美弥達は突如現れたことに少し困惑しながら現れ結芽は身の毛がよだち亜里沙から離れる。
「やぁやぁ結芽ちゃんに親衛隊の皆さん久しぶりー。いやー久々に会ったけど貴女達スゴいわね二人をここまでやりあえるなんてデータ採取が捗ったわ。それよりも」
やはりか、と美弥は呟き亜里沙はいつの間に撮ってたのかビデオカメラを取り出し頷き、片目を開き美弥に見たと思いきや姿が一瞬消え、美弥の前に現れ首を掴み前後に振るう。
「美弥!貴女さっき凄い技やったでしょ!!何!?あれはなに!?」
「北山先生、首が痛いです」
亜里沙は興奮状態である一方逆に美弥は冷静に言い亜里沙は手を放す。
「えっと、『剥離』は写シのエネルギー体を複製させ、分離させて自立させる技です」
「そんな技が……」
「でも欠点はありそうですわね」
美弥は首をさすりながら『剥離』の説明をし真希は驚愕し、寿々花はその欠点があるだろうと指摘し美弥は頷く。
「精神力の消耗の激しさがそれです」
写シをもう一度張るということ、と美弥はそう言った。
写シはほとんどの人は1回か2回が限度なため『剥離』を使うのは博打であった。
そもそもこの『剥離』を知る者は美弥と歌留多しか居らず美弥は3回、歌留多は一度も使えない。
「つまり並な刀使では扱えれない技、ということですわね」
「ふむふむ、すばらしい!新たな発見よ!」
亜里沙は笑いながらメモ帳で書いている一方歌留多の後ろに結芽が姿を隠している。身長はほぼ同じなため隠れきれてないが。
心なしか少し震えていた。
「あ、あの結芽ちゃん……ずっと後ろに隠れてるけどもしかして亜里沙先生のこと苦手ですか?」
「あの人きらーい!」
「結芽ちゃん!怖がることはないよ!来なさい!」
「いやー!!」
ウェルカムとばかりに手を広げる亜里沙の反応に絶対的な拒否を示す結芽の攻防が広げられる。
「とりあえずだ古住美弥。君の腕前は確かだ。そのうえで親衛隊の隷下に配属しようと思うがかまわないか」
「それが折神紫様の命令とならば構わないわ」
真希は隷下の配属と進言し美弥は承諾する。
この後は一旦鎌倉にある折神家の屋敷に行くことになるということだ。
歌留多はとは言うと。
「あー!だったら私はこの子を部下にしていいよねー!」
「え、えええええ!?」
結芽の部下公認にさせられてしまう。
単語1
『剥離』
写シの応用技。
刀使の写シであるエネルギー体を自ら引きはがし自立化させる。
『剥離』されたエネルギー体は写シと同じく運動機能も向上しており実体と同じく荒魂を切り沈めることができるが精神疲労は約二倍となり並の刀使では扱えれず持続時間は短い。
使える刀使は現在古住美弥一人のみである。
(歌留多も使えるが3秒間しか使えず戦闘不能になる)
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2-1 隷下部隊
ちょっとしたお遊びです
「入れ」
「失礼します」
ノックの音が鳴り、折神紫は入室の許可を出す。
許可を出すと獅童真希、此花寿々花そして客人である古住歌留多と美弥が入る。
入った瞬間、紫の眼は歌留多と美弥に向ける。
折神紫、20年前の相模湾岸で発生した大災厄、相模湾岸大災厄において出現した大荒魂を討伐した英雄で現在は警視庁刀剣類管理局の局長を務める人だ。
その英雄である折神紫の姿を見た歌留多は多少の眩暈により視界が歪み震えを起こし膝を付く。
それを察した美弥は歌留多の前に出てその圧力を分散させた。
「ようこそ、私が折神紫だ」
歌留多の体調が崩れたのにも関わらずそのまま紫はそのまま続かせる。
「お会いできて幸栄です折神紫様。古住美弥です」
圧力に屈さず美弥は怒りを押さえ込み軽く挨拶を交わした。
紫は自身が出している圧力をしまいこみ歌留多の気分が回復し起き上がる。
「後ろにいるのは妹の古住歌留多か」
「は、はい。古住歌留多です」
歌留多も額に手を当てながら挨拶を交わす。
これが折神紫。英雄の刀使。
歌留多は折神紫の気迫を当てられて戦慄した。
英雄の刀使であり憧れる人も多い。
この圧力、気迫は本物だ。これに憧れない人は居ないだろう。
「いきなり本題に入ろう。『青木ケ原樹海』で大量のノロの反応があり調査に向かった鎌府の刀使の連絡が絶たれ追加の刀使も連絡が途絶えた。そこでお前たちは鎌府と親衛隊と連携しこの事件を解決することだ」
本題、折神紫はその場所での出来事を軽く説明し、真希がその概要が書かれている書類を渡す。
青木ケ原樹海、確か富士にある樹海であり観光名所でもあり広さもあるため自殺が多い所だ。
反応を示した場所はかなり奥深くにあるようでこれまでの戦力と被害も書かれていた。
陸地からは荒魂の大群、上空からも鳥形の荒魂というバーゲンセールと言ったところみたい。
その被害は長期的であるため甚大なものであり次は親衛隊も投入と共に歌留多達も行くようである。
「そんなことで私たちを呼んだという訳?」
美弥の飽きれた声に歌留多はもちろんのこと真希、寿々花もそっちに目を向けた。
仮にでも局長、二人は御刀に手をかけかけたが前日の戦いを体験したことを思い出した二人は腕を止め紫が「よせ」と目を向け、二人は手をかけるのを止めて歌留多はほっ、と一息をつく。
確かに精強の親衛隊も今回で入るのだ。
私たちが行かなくても良いのでは?と少しは思っていた。
「そうだ、お前たちは綾小路にてさまざまな戦果を挙げてきた。今回は大量のノロ、大型の荒魂が出たとしてもお前たちなら造作もないことだと思うのだが。報酬は相当の物を用意しよう。……それにこの長い戦いも終わらせる」
紫が焦る、いや実際焦ってるのは特別刀剣類管理局自身だ。
観光名所でもあるため早期に解決したかったのだが長期的で異常である事件へと化したため終止符を打たせるため私たちを親衛隊の隷下部隊を配属させたのだ。
この事は事前に綾小路武芸学舎の学長である相楽にも許可が出されていた。
「わかったわ」
「出発は明朝だ。部屋は獅童真希が案内する」
美弥が頷き紫は実施する時間を指定させ退出させる。
「ではこちらに来てくれ」
「失礼しました」
真希が先導させ退出させ歌留多を最後に扉を閉める音が響く。
一人となった紫はまた窓から外を眺め考えだした。
「ふわぁ~~すっごい部屋」
別館へと移動し扉を開くと客室とは言い難い豪華な部屋が視界に入った。
流石折神家、内装はテレビで見た超豪華なビジネスホテルの部屋のような感じであり、キッチンや冷蔵庫、風呂まであった。
「ゆっくりしていってくれ。何かがあったら外の刀使に言え」
「ありがとうございます」
真希が部屋から出て二人になる歌留多と美弥。
「それにしても姉さんは堂々としすぎだよ。私少し冷や汗掻いたよ」
歌留多は振り返り先程の発言での不安を言った。
当主に向けての不満を堂々と口にする精神はかなり凄いものだ。
「要件を聴けばこれだからね、正直なところ親衛隊の仲間に入れたら良かったのに」
美弥があわよくばと親衛隊の一員になれたらと期待はしてたようだが紫が報酬を用意する。
そのことに歌留多はもしかしてと、期待はしてると携帯電話の着信音が鳴り取り出し名前を見るとチームメイトである蓮からであった。
「ん、もしもし。あ、蓮?久しぶり」
『久しぶりじゃないでしょ!!今日来てないから学長から聞いたけど鎌倉にいるの!?』
受話器から怒号が響き一瞬耳から離すがまた近付ける。
一日が経ち学舎のほうは相楽学長の許可は得ているのだが欠席してるのだ。
かける時間無かったから夕方からかけてきたのだ。
「あ、うん」
『はぁ、なんか折神家の方に行って何かやってるみたいだけど……美弥さん居るからいいけど無茶しないでね』
ため息混じりの心配している声が受話器から出てくる。
姉さんが居るから大丈夫ってどういう……いや姉さんが出れば秒で解決とか言われてるからそういうことだろう。私も最近そう思ってきたし。
「うん、ありがとう。そっちに戻るのは多分御前試合前だと思うよ」
『歌留多と美弥さんは御前試合出ないから別にいいと思うけど?』
かなり痛いところを突かれた。
美弥は任務が多くて無理で歌留多は学舎内で二回戦敗退で出れずという悲しみを背負っていた。
その事にクラスメイトも驚いていたが歌留多は鞘も使うことに特化し過ぎて手数を増やすことも出来ずに負けたのだ。
「まぁそうだけど一応帰らなきゃいけないし……」
『そっちの仕事終えたら帰ってきなさい』
「うん、分かった。じゃあね」
蓮との会話ができて元気を取り戻すことができた歌留多は通話を終えて明日のための準備を始めた。
「はぁ」
通話が切れて蓮はベッドに携帯電話を投げ電話は真ん中に跳ね上がる。
跳ね終わるのを見た蓮は立て掛けてる御刀を手にし、大きな藁人形に目を向ける。その藁人形の顔に写真が貼られていた。
一つはチームメイトであり親友の古住歌留多、蓮も歌留多も御前試合出ることはないが親友、ライバルであり彼女は荒魂討伐するたびに腕をあげてきて水があいてきた。必ず彼女を越してみせる。
そしてもうひとつは誰でも憧れの対象でもあるが蓮の目からはその感情が出ていない。
出てるとすれば……革命の眼だ。
「折神紫……」
刹那、抜刀しすぐに鞘に納める。
すると二つある藁人形がバラバラになり切られた写真と共に地に崩れ落ちる。
「ごめん歌留多……私は負けないよ」
少しばかりの懺悔と決意をし後悔をした。
古住歌留多……早くすれば私と肩と並べて戦えると思ったのにと。
人物紹介3
蓑崎蓮(みのさき れん)
血液型:B
御刀:???
流派:???
所属:綾小路武芸学舎
中等部2年
腰上まで伸びる薄い青髪の刀使であり歌留多のことが心配でいっぱいの時がある。
討伐で歌留多と共にすることが多く前衛兼指揮ポジション。
密かに歌留多をライバル視してるが彼女の成長により多少の嫉妬と期待を上げていた。
しかし彼女の親衛隊の仲間入りを耳にし祝うと共に後悔を積もらせた。
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2-2 樹海の奥深くへ(前)
「整列!」
日の出が出る頃、折神家の屋敷前にある広場にて四列横隊で並ぶ刀使、制服は鎌府女学院。その列のなかには鎌府の制服とは違う制服を着る刀使が二人居た。
綾小路の制服を着る刀使である歌留多と美弥を見る者、興味なしとばかりに見ない者がおり歌留多はそわそわと左右を見る。
フードを被りそこから髪を出している不良っぽい刀使や心ここにあらずといった短い銀髪の刀使が居たりと独特の雰囲気を出す。
そう視界を動かしてると親衛隊である真希が前に出るとざわざわしてた時間は終わる。
「ではこれより青木ケ原樹海における荒魂討伐任務を開始する!知っての通り青木ケ原樹海の奥には大量のノロ、多くの荒魂が発生しており半月ほど長引いている。
危険な作戦だがお前たちの奮闘を期待している」
危険な作戦、長期でもあり被害が大きいこの討伐任務に今回参加するのは鎌府の刀使80人と私たち二人、そして親衛隊四人、獅童真希、此花寿々花と燕結芽、そして皐月夜見。
これでこの戦いを終わらせるつもりだ。
―――――――――――――――――――――――――
青木ケ原樹海、緑深く木々が生い茂り足場が悪い。
その入口に着いた討伐隊が親衛隊を隊長にし4つの班に別れている。
歌留多は結芽へ、美弥は真希の方だ。
「へへっ、荒魂ちゃん待ってろよぉ」
栗色の髪をしたフードを被っている刀使は荒魂が居る方向へ向き今か今かと飛び出そうとしている。
彼女の懐には短刀の御刀二振りあり他の人とは特色が違うことがわかる。
「歌留多お姉さんも此方なのね。じゃあ私先に先陣切るから付いてきてね!他の人は私たちの凄さを見てね」
結芽は楽しそうに作戦を組み立ててるが完全に一人でやるような内容であり刀使達はそれを聞き呆れぎみである。話によるといつも結芽は先陣切って部隊を取り残したり知らない荒魂に付いていったりとしているらしい。
いや、知らない荒魂って何よ。と歌留多は脳内でツッコミをする。
「はぁ?荒魂の前で指咥えて待つなんてことして堪るか。俺も付いていくぜ」
「ふぅん、じゃあ頑張って付いてきてね!」
またあの人は、と頭抑えて呟く人がいた。
まさかだと思うけどこの人も結芽のように猪突猛進する人だろうか。
「おいお前、名前はなんだ」
「え、私?」
「お前しかいねぇだろ!!綾小路の刀使!!」
フードを被った刀使が当たり前だ!と思うようで呆れながらも大声で言う。
「歌留多、古住歌留多!綾小路中等部二年!」
「私は
その目は子供が新しいオモチャを見たような純粋な目になり歌留多は少し不安を抱き始めた。
―――――――――――――――――――――――――
「古住美弥、準備はいいか」
真希は荒魂が居る侵入方向を見つつ美弥に確認を取る。
「ええ……親衛隊全員出るみたいだけどあと一人は?」
黒い手袋をはめつつ美弥は答え、親衛隊全員出ると聞いているが一人見当たらない。
今まで接触していない一人だ。
「夜見は偵察として先に出ている。彼女はそれが得意からな」
夜見と言う最期の親衛隊は偵察能力が長けている、と言うことだろう。
「へぇ、挨拶はしたかったけど……あの子は?」
短い銀髪の刀使、美弥はその静かな気配を感じその刀使は誰か?と聞く。
「
高津学長……確か鎌府女学院の学長であったはず。北山亜里沙が研究室でよくその名を憎しみを込めながら言いはなった時があった。たしかド三流野郎とか色々言ってた気がする。とにかくそんな仲であった。
その高津学長のお気に入りと呼ばれるほどの腕前であるというのは読み取れる。
そんな会話が聞こえたのか沙耶香呼ばれたような気がしてが近づいたが呼ばれたのではなく彼女の話題というのを気づく。
「糸見沙耶香です」
沙耶香は美弥の制服、綾小路の制服を見て挨拶をする。
「古住美弥です。よろしく……ははっ、どうやら嫌われてるみたいだ」
美弥の挨拶と共に握手を交わそうとするが沙耶香は一歩下がり嫌われたかのように感じ取った。
「ごめんなさい」
「いや、いいんだ」
沙耶香は謝罪したが美弥は気にしてないと答える。
「よし、全員S装備装着し出撃だ!」
真希の指示の下刀使達は後方にあるコンテナを御刀の柄を付けて起動させる。
S装備、通称ストームアーマーは折神家が開発した強襲装備。それは身体能力が向上されるが稼働時間は短く長時間の戦闘には不向きである。
そんな装備を装着する鎌府の刀使達。
バイザーに胸部、両腕両足には容器に入っている不気味に光る液体が蠢いている。
今回装備出来るのは鎌府の刀使だけ。
親衛隊はそれを装備する必要は無く、歌留多達も装備することはなかった。
否、出来なかったのだ。
歌留多と美弥は過去に研修で一度S装備を使えることは出来たが不思議な事が起きたのだ。
それは装着した途端にオーバーフローを起こし消失してしまったのだ。
余りにも事例が無かったので後日相楽学長と北山先生の元もう一度装備し原因究明を図った。
この時も同じようにオーバーフローを起こし消失。
計器で測ったが北山先生は驚きを隠しつつも分からないと答え原因は分からなかったのだ。
そんなハンデがあるが親衛隊は居る。
恐らくだが、大丈夫だろう。
「よし、行くぞ!」
人物紹介4
名:北山 亜里沙(きたやま ありさ)
血液型:A
所属:綾小路武芸学舎
綾小路に所属する教師兼研究者
研究は主にノロと赤羽刀を主とし相楽学長と折神家と連携をしている。
高津学長とはライバル視にしている。
他に歌留多と美弥にも研究対象として定期的な検査もしている。
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2-3 樹海の奥地へ(後)
こっちの話も無事終えることができるか…
感想受付を非ログイン状態でもできるという設定が合ったことを最近知る音
「おらよぉ!」
「もーらい!」
「せやぁ!」
フードを被る鎌府の刀使呼吹は類を見ない短刀の御刀の二刀流を持ち、高く飛び立ち急降下、位置エネルギーを利用しS装備の曳光を描き荒魂を4体斬る。
親衛隊の結芽はジグザグに移動しながら6体の荒魂を斬り、綾小路の刀使歌留多は鞘で受け止め抜刀し一体斬り、飛び上がり一体、鞘を荒魂の眼に目掛け投擲し怯んだ隙に斬る。合計三体。
「へぇ、中々やるねぇ」
「へっ、親衛隊から褒められるのは虫酸が走るね!」
余所見しながら嫌悪を出す二人。
まるで水と油のように混ざらず連携もせず個々で斬る。
「二人とも凄い……危ない!」
歌留多はその二人の姿を見てると結芽の後ろからの小型の荒魂が口を開けながら飛び出してくる。
迅移で結芽の後ろへ回り込み鞘で口を塞がせ地面に叩きつけ、則房を突き立て仕留める。
「ちょっとー、今のは私の獲物だよぉ」
「え、あ、うん……ごめん」
膨れる結芽はさっきの荒魂が見えてたみたいで獲物盗られたと思われ歌留多は謝罪する。
「しっかし奥に行けば行くほど荒魂が堅くなってきてるな」
「そうね、それに多い」
呼吹が鼻を擦り行けば行くほど荒魂が堅くなると言った。
確かに最初は並の荒魂で斬るのは容易だったが今は岩の様に硬く、八幡力無しでは斬れなくなってきた。
この事により付いてきてる刀使は半数も減ってきた。
残りの半分は拠点へ戻っていったがまだまだ増えていきそうだ。
「別に多くても全部全部斬ればいいし!」
「だな!荒魂ちゃんぶった切れるチャンスだ!」
終わりよければ全てよしと言いそうな二人。
というよりなんでもいいから荒魂倒したいと思っている。
この二人はもしかして戦闘狂?
「俺の勘だともっと強い荒魂がいる方角はあっちだと感じてるぜ!」
犬かと思わせるかのように鼻をスンスンするように嗅ぎ、西の方角に短い御刀を向かせる。
「へぇ、だったらその荒魂倒した方が勝ちにしよっか!」
「乗った!」
「ちょっと二人とも勝手に行っては……はぁ」
荒魂の勝負になるとこうも同調するのだろうか?と心のなかで思う歌留多は急いで二人に付いていく。
所変わり北2㎞ほど離れた場所に真希達率いる隊は多くの荒魂により足留めを食らっていた。
「はぁ!」
沙耶香は刀を振り、飛行型の荒魂を両断させ分離された身体からノロが飛び散る。
「数が多い……このままじゃ」
全滅する。と感じとる沙耶香は周りを見渡し現在の状況を把握する。
まずスペクトラムファインダーの反応は四方に1km囲うような反応をしめしている。
荒魂に包囲されている。
幸いだが親衛隊二人が側にいるから刀使の消耗は抑えられているが後退も出来ないこともありジリ貧だ。
「荒魂が多すぎる……どうする?」
真希が同じように気付いておりそう呟いた瞬間、なにかが通りすぎるのを感じ一瞬周りを見渡す。
「なっ!?」
「……!?」
真希も沙耶香も他の刀使達も動きが止まり騒然した。
ある刀使は目の前にいた荒魂、ある刀使は足を滑らし荒魂の凶器の刃が降りかかろうとしていたものが突如二つに割られ地に落ちノロが分離される。
「ふぅ、こんなものね、真希さん周辺の荒魂一掃したわ」
荒魂の亡骸の傍にはノロが不気味に付着している太刀伊吹丸を持つ綾小路の刀使、古住美弥。
「馬鹿な……半径1kmの範囲に居る荒魂の反応が消えた……50体は居たぞ」
沙耶香はスペクトラムファインダーを見ると確かに半径1kmにいた荒魂の反応が消えていた。
恐らくだがあの美弥という刀使は迅移、二段階三段階を付けて一掃したのだ。
迅移三段階を使えばその分力の弱体化もあるのだろうが美弥にはその様な兆候が見当たらない。
「流石にここまでやると貴女は化け物と思ってしまいますわ」
「ふふっ、化け物は心外ですよ寿々花さん」
寿々花は半ば呆れながら、美弥は笑いながら付いたノロを払い落とす。
規格外、仮にそうだとしても寿々花はそうだと割りきり、真希そうだったなとため息をつく。
「真希さん、夜見さんが荒魂の大元を突き止めましたわ。ここより西の方角ですわ」
「西か、よし荒魂大元を叩く!動ける者は負傷者を連れて本部まで下がれ!」
夜見、親衛隊の一人が何らかの方法で西側に荒魂の大元を探り当てたようだ。探索能力が優秀なのだろう。
西、確かにあちらの方向から何かが引き寄せている。
そんな感覚が美弥は感じ取っていた。
「おらぁ!!」
「あははは!硬いねぇ!」
どんどん堅くなってきてる荒魂であるが二人にはそんなの関係ねぇとばかりに切り刻みながら進んでいき歌留多はそれを追いかける。
「二人とも待って!」
歌留多が制止をかけたとき、二人は森の開けた所で止まり立ち尽くす。
それを気づいた歌留多はその二人が見ている光景にて言葉が出なくなった。
「おいおいなんだよあれは」
「ノロの……湖?」
ノロが大量に湧き出ており家一軒分もある大きな湖とも思える異様な光景だった。
もしかしたらここが大量のノロ反応の発信源。
もしこの膨大なノロが荒魂と化したら大災厄にもなりかねない。
「気味わりぃな」
呼吹がこの湖を気味悪い光景だと口にする。
逆に歌留多はそうでも思わずに何か、そわそわする気持ちがわき出ていた。
「あれ?誰かいるよ?」
結芽が湖へ指を指し、指した先には人みたいな何かが佇んでいるのが見えた。
民間人、だとしてもここは荒魂が大量に居り側にはノロもあり危険だ。
保護しようと動くがすぐに違和感を覚えた。
「人型の……荒魂?」
良く見ると髪、顔、身体全体が黒い鱗みたいな物が付いており顔の一部から突起物が生えておりそこから目玉みたいなものがこちらを見る。
どうみても民間人ではなくまるで荒魂と人が交わったかのような姿であった。
「貴様ラ、何ノ用ダ」
目が見開き低く、中性でどもるような声がその荒魂から発せられ三人は驚きを見せる。
声を発し、言葉を交わす。知能を持つ荒魂を目の当たりにしてるのだ。
「特別祭祀機動隊、古住歌留多です。貴女は……?」
「ナルホド、オ前タチハ巫女カ」
一回目を伏せもう一度目を開けた荒魂はノロの湖に手を入れ棒状の物を取り出す。
それは私たち刀使が知っている物、刀のような形状で刀身にはノロがこびりついたかのような赤い錆が張り付いており刃はガタガタ。
そう、赤羽刀だ。
「そうだな……私ノ名ハ『ヘル』、人が荒魂化になった者だ」
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