問題児と000と弱者の箱庭物語 (天崎)
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虎とペルセウスと流星群
封書と召喚と黒ウサギ



問題児と弱者と欲望が交差する物語です。



霧崎カブトが目を覚ますと、封書がすぐ近くに置いてあった。

 

「なんだこりゃ……」

 

霧崎は寝惚けたまま、手紙の封を欠伸をしながら切る。

切ってしまった。

あの戦いからこういう物にはろくな事が無いと知ってたはずだが、寝惚けた状態ゆえに開けてしまった。

開けた瞬間、霧崎は何処か懐かしい、そして思い出したくもない感覚を味わった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

火野映司はテントを張って、焚き火をして魚を焼いていた。

 

「この手紙、何時から?」

 

そんな時、気が付いたら映司の近くに封書が落ちていた。

 

「うわ!?」

 

映司が手紙を手に取った瞬間、銀色のオーロラが現れ、映司を飲み込んだ。

その時に明日のパンツだけは持っていたのは映司ゆえにだろう。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

そして逆廻十六夜も封書を開けていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

とある屋敷の離れで子供達に絵本を読み聞かせる女性は何かを感じていた。

 

(これは……誰かが時空を越えた?)

 

それと同時刻、かつてとあるゲームに巻き込まれ、現在と未来を行き来していた者達も妙な物を感じていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

とある写真館。

 

「箱庭?どんな世界だ?」

 

疑問に思いながら、青年はその世界へ通りすがるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

またその青年を追うように彼もその世界へ行くのだった。

 

「箱庭か……お宝がありそうだね」

 

◆◆◆◆◆

 

 

某所。

 

「………だけでなくオーズまでもか。だが変わりはしない」

 

何処かで中年の男が言うのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

とある電車内。

 

「ん?どうしたんだ?」

 

「どうやら奇妙な時空移動が起きたようですねぇ~」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

そして肝心の十六夜、霧崎、映司は上空4000mに投げ出されていた。

 

(いきなり何だよこりゃ!?)

 

霧崎はかつてのゲームを思いだしながら混乱していた。

 

(また急だな。これも何かの仕業なのかな?)

 

映司は江戸時代に送られたり、未来からの敵と戦ったりなどこういう自体になれかけていて冷静であった。

 

彼らの眼前には見た事のない風景が広がっていた。

視線の先に広がる地平線は、世界の果てを彷彿させる断崖絶壁。

眼下に見えるのは、縮尺を見間違うほど巨大な天幕に覆われた未知の都市。

彼らの目の前に広がる世界は___完全無欠に異世界だった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

上空4000mから落下した三人は落下地点に用意してあった緩衝材のような薄い水膜を幾重も通って投げ出された。

着水するが、勢いが衰えていた為に三人は無傷だった。

とは言え、各々勢いが落ちて無くても助かる方法はあったのだが。

三人はさっさと陸地に上がる。

 

「明日のパンツと……これも無事だな」

 

映司は岸に上がるなり、明日のパンツとポケットの中のアンクのメダルを確認した。

 

「またこんな事に巻き込まれるとは思って無かったぜ……」

 

霧崎がうんざりとしたように言う。

あれ以来は戦場カメラマンをしていたが、さすがにゲーム以上の事は無いと思っていたのだがそうでも無かったようだ。

 

「クソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぞ」

 

十六夜は服を絞りながら文句を言う。

 

「さて、此処は何処だろう?」

 

「さあ?世界の果てっぽいものが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねぇか?」

 

「適当だな…」

 

何にせよ、彼らの知らない場所であることは確かだった。

 

「俺は逆廻十六夜、お前らは?」

 

「俺は火野映司」

 

「俺は霧崎カブトだ」

 

二人は簡潔に名乗るのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「一応確認しておくが、お前達にも変な手紙が?」

 

「そうだね」

「そうだな」

 

「しかし、呼び出されたはいいけどなんで誰もいねぇんだよ」

 

十六夜が苛立たしげに言う。

それに反応する霧崎と映司。

 

「「呼び出された?」」

 

二人は呼び出されたわけで無く、意味も分からず連れて来られた状態だった。

それを十六夜に話すと、十六夜は首を傾げる。

 

「どういう事だ?不手際でも起きてるのか?だとしたら呼び出した奴は……」

 

何かとんでもない誤解を受けてる事を感じた黒ウサギは、物陰から出ようとするが、その前に十六夜が見付けていた。

その後、黒ウサギから説明を受けると、どうやら黒ウサギにとっても予想外の事態だったようだ。

ついでにギフトゲームの説明なども聞くのだった。

そして説明が終わると十六夜は黒ウサギに尋ねた。

 

 

「この世界は………面白いか?」

 

 

「___YES。[ギフトゲーム]は人を越えた者達だけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段と面白いと、黒ウサギは保証いたします♪」

 

それを聞きながら映司はアンクのメダルを握りながら考えていた。

 

(この世界でお前を元に戻すかもしれないな)

 

映司は静かにそう思うのだった。

 

(何でアゲハ達じゃなくて俺が何だろうな……)

 

霧崎はそんなことを考えながら、その意味を見付けるか、と考えていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ、現在オーズの使えるメダルは!!

タカ、クジャク、コンドル。

クワガタ、カマキリ、バッタ。

ライオン、トラ、チーター。

サイ、ゴリラ、ゾウ。

シャチ、ウナギ、タコ。

コブラ、カメ、ワニ。

スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ。

 

 





プロローグでした。

メイン三人以外についてはまたいずれ。
メイン三人については十六夜はそのまま。
映司は本編後からアルティメイタム以降です。
パラレル系映画の記憶はリーティングシュタゲイナー的なもので何となくあるとでも思ってください。
霧崎は小説第二弾以降です。


それでは質問などがありましたら聞いてください。
感想は待っています。

次回、{消える十六夜とコミュニティとガルド}(仮)


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消えた十六夜とコミュニティとガルドの欲


ガルドの人格が少し違います。
理由はあります。




 

前回の三つの出来事!!

 

一つ!!逆廻十六夜、霧崎カブト、火野映司の三名は封書によって箱庭に召喚された。

 

二つ!!物陰に隠れていた黒ウサギから箱庭などについての説明を受けた!!

 

三つ!!三人は各々自らの目標を定めるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ジン坊っちゃーン!!新しい方を連れてきましたよー!!」

 

黒ウサギと映司と霧崎は街道の方から歩いていて、黒ウサギがジンを見付けるなり、声を掛けたのだ。

 

「お帰り、黒ウサギ。そちらの二人が?」

 

「はいな、こちらの御三人が___」

 

クルリ、と振り返る黒ウサギ。

カチン、と固まる黒ウサギ。

 

「………え、あれ?もう一人いませんでしたっけ?ちょっと目付きが悪くて、かなり口が悪くて、全身から“俺問題児”ってオーラを放っている殿方が」

 

「十六夜君のことなら“ちょっと世界の果てを見てくるぜ!!”と言って駆け出して行ったよ。本当は俺も行きたかったんだけどね」

 

映司が指差すのは上空4000mから見えた断崖絶壁。

街道の真ん中で呆然となった黒ウサギは、ウサ耳を逆立てて二人に問いただす。

 

「な、なんで止めてくれなかったんですか!!」

 

「いや~実は三人で誰が行くか話あった結果、十六夜が行く事になったから………」

 

つまり全員、行く気満々だったようだ。

霧崎は純粋に興味があり、映司も似たようなかんじであった。

ガクリ、と前のめりに倒れる黒ウサギ。

ここは全員で行かずに一人だけだったの幸運と思うべきなのかどうかは定かではない。

そんな黒ウサギと対照的、ジンは蒼白になって叫んだ。

 

「た、大変です!!“世界の果て”にはギフトゲームの為に野放しにされている幻獣が」

 

「幻獣?」

 

「は、はい。ギフトを持った獣を指す言葉で、特に“世界の果て”付近には強力なギフトを持ったものがいます。出くわせば最後、とても人間では太刀打ち出来ません!!」

 

「へぇ。それは少し会って見たかったな」

 

(禁人種みたいなものか?)

 

似たようなものを見てきた二人はそれを聞いても特に驚きはしない。

その後、黒ウサギは十六夜を捕まえるべく、跳躍していった。

残された三人は箱庭の外門をくぐるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

三人は“六本傷”の旗を掲げるカフェテラスにいた。

そこで珈琲を飲んでいると、

 

「おんやぁ?誰かと思えば東区の最底辺コミュ“名無しの権兵衞”のリーダー、ジン君じゃないですか。今日はオモリ役の黒ウサギは一緒じゃないんですか?」

 

2mを越える巨体をピチピチのタキシードで包む変な男に声を掛けられた。

変な男は不覚にも………本当に不覚にも、ジンの知った者の声だ。

ジンは顔をしかめて男に返事をする。

 

「僕らのコミュニティは“ノーネーム”です。“フォレス・ガロ”のガルド=ガスパー」

 

「黙れ、この名無しめ。聞けば新しい人材を呼び寄せたらしいじゃないか。コミュニティの誇りである名と旗印を奪われてよくも未練がましくコミュニティを存続させるなどできたものだ___そう思わないか?」

 

ガルドと呼ばれたピチピチタキシードは三人の座るテーブルの空席に勢いよく腰を下ろした。

霧崎は面倒そうな顔で言う。

 

「とりあえず……あんたは何者だ?」

 

「俺は箱庭上層に陣取るコミュニティ“六百六十六の獣”の傘下である」

「烏合の衆の」

「コミュニティのリーダーをしている、ってマテやゴラァ!!誰が烏合の衆だ小僧オォ!!」

 

ジンに横槍を入れられたガルドの顔は怒鳴り声とともに激変する。

口は耳元まで大きく裂け、肉食獣のような牙とギョロリと剥かれた瞳が激しい怒りを向ける。

 

「口を慎めや小僧オォ!!聞き逃してやれねぇ言葉だぜそれは!!ぶっ殺すぞ!!」

 

そのままジンの胸ぐらを掴もうとするガルドの腕を映司が止めた。

ガルドが映司を睨むが、映司も睨み返す。

 

「いきなり手を出すのはやり過ぎじゃないかな?」

 

「あぁ?新参ごときが俺になめた口を聞いてるなよぉ?」

 

ガルドは空いてるもう片方の腕で映司に殴り掛かる。

 

「なぁ!?」

 

しかしそれは映司が対応するより早くガルドが吹っ飛ばされたことにより中断される。

 

「とりあえず落ち着こうぜ?」

 

霧崎が【弱者のパラダイム】を使ったのだった。

霧崎は【脅威の幻視】により、数秒先に起きる死の脅威を視る。

死を予兆する禍々しい白いオーラを視る。

その“運命”を“ヨヨ”が掴み、“脅威”を祓う。

死の運命を操り回避するそれが【弱者のパラダイム】だ。

 

「一旦、話そうぜ」

 

霧崎によりその場は一旦落ち着き、ガルドとジンはコミュニティについて語るのだった。

 

そして誰も気付いていなかった。

今のガルドの反応は決して何時もの反応ではないことに。

ガルドの事をよく知らない故に気付いてなかったガルドが少しおかしい事に。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「それでどうだ?こんな“名無し”より俺のコミュニティに入らねぇか?」

 

説明を終えたガルドは二人を勧誘してきた。

どの口が、と思うかもしれないが“ノーネーム”の現状を聞かした後ならば分からなくもない。

 

「俺はジン君のコミュニティに入るよ」

 

「ま~俺もだな。正直あんたのとこに入るのは嫌だし」

 

即答だった。

霧崎の理由は言った通りであり、映司は少しの小銭と明日のパンツがあれば生きていける、ゆえにジンのコミュニティでいいのだ。

 

「それにジン君とは昼からの長い付き合いだしね」

 

そう映司が言うとガルドは立ち上がった。

 

「分からねぇな……本当に分からねぇ。名無しにはお前らは勿体ないぜ。だから俺とゲームをしないか?お前らはどちらのコミュニティが相応しいか」

 

こんなものは断ってしまうば終わりである。

ゲームは双方の同意の元に行われるのだから。

しかしガルドは断らせないように言った直後にジンへと跳び掛かる。

人質をとって無理矢理承諾を得ようというわけである。

だが、そんなものは霧崎の【弱者のパラダイム】により阻止される。

先程同様に何が起きているか理解出来ずに混乱するガルド。

そこで、

 

「キャー!!」

「な、何だこいつら!?」

「ば、ば、化け物か!?」

 

悲鳴が街から響いた。

映司がそちらを見ると、そこでは槍を持った人型の化け物が十体程暴れていた。

 

「あれは……グール!?何で箱庭に!?」

 

映司が驚きの声を上げる。

いるはずの無いものを見たのだ。

当たり前と言えば当たり前である。

 

「ちょっと行ってきます」

 

「へ?」

 

それだけ言って映司は返事も聞かずにグールの方へと走っていった。

霧崎も追いかけようかと思ったが、ガルドから目を離すのは危険かと考え、その場に留まった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「皆、逃げて!!」

 

映司は叫びながら、人を襲っていたグールに蹴りを入れる。

そして後ろのグールに肘打ちをする。

右から振り降ろされた槍を避けると、その槍を掴んで持っていたグールを蹴り飛ばす。

奪った槍を正面のグールに突き刺すと、そのまま振り回していく。

背後から斬り掛かってきたのを横のグールを盾にして防ぐ。

そのグールが持っていた槍で背後のグールを突き刺す。

それが最後の一匹だった。

 

「これで全部か?」

 

辺りを見回しながら映司は考える。

 

(何でグールが?箱庭にも怪人がいるのか?)

 

考えながら、映司は元いたカフェテラスに戻っていく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

その時、霧崎はガルドのゲームに参加するのに同意していた。

理由はこいつを放っておくと後で面倒だと、直感で感じたからだ。

 

(後々難癖を付けられても面倒だしな)

 

そしてガルドはニィッと笑っていた。

その笑みがぶれて、白い包帯が巻かれたような怪物が見えた事に、微かにメダルが落ちる音がした事に、ジンと霧崎は気付いていなかった。

そこに映司がいれば気付いていただろう。

それの正体に、ガルドの妙な様子の理由が。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ゲームは明日、“フォレス・ガロ”のテリトリーで行われることになった。

“今のところ”は新参の所属についてが賞品だ。

このゲームがもう少し大事に発展するのは誰も分かっていなかった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

某所。

 

「やはりグールでは駄目か。しかしまだ本命がある。オーズは決して……と合流させはしない……」

 

そこで戦いを見ていた中年の男は呟いた後に銀色のオーロラに姿を消した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ

タカ、クジャク、コンドル

ライオン、トラ、チーター

クワガタ、カマキリ、バッタ

サイ、ゴリラ、ゾウ

シャチ、ウナギ、タコ

コブラ、カメ、ワニ

スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 





バトルあったのに変身ならず!!
まぁ最近のライダーは生身でも強いですし。
(坂本監督の影響でもありますが)

ガルドについては分かる人には分かると思います。

変身に関しては四話あたりになると思います。

明日の朝はディケイドですね。
何をするやら。
脚本が前半の人だから結構期待はしています。


それでは質問があれば聞いてください。
感想待っています。



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白夜叉とギフトカードと魔王を倒すコミュニティ


所々説明部分など省略してます。




 

前回の三つの出来事!!

 

一つ!!十六夜が世界の果てを見に行く為に消え、黒ウサギが追い掛けた。

 

二つ!!ガルドとジンからコミュニティの事情を聞いた。

 

三つ!!映司は突如現れたグールを倒し、霧崎はガルドのゲームに参加する事に同意するのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

日が暮れた頃に噴水広場で合流し、話を聞いた黒ウサギだったが、ジンが襲われそうになったりと事情が事情の為あまりキツく説教出来ずにモヤモヤしていた。

 

「まぁ確かにそういう奴なら放置より今叩き潰しておいた方がいいかもな」

 

話を聞いた十六夜が呟く。

 

「あくまで俺達が受けたゲームだから十六夜君は参加しなくてもいいよ」

 

「言われなくてもそのつもりだ。この喧嘩はお前らが買ったものだからな」

 

「まぁ、あいつなら俺と映司さんで大丈夫だろうし」

 

霧崎が適当にそう締め括る。

それを聞いた黒ウサギだが、丸一日振り回され続けた上に今回の事態なので気力が残って無かった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

その後、ジンはコミュニティに帰り、黒ウサギ、十六夜、映司、霧崎はギフトの鑑定をする為に“サウザンドアイズ”に向かっていた。

道中で三人が来た世界がパラレルワールドということを軽く話していると、店に着いた。

日が暮れて割烹着の女性店員が看板を下げているところだった。

黒ウサギがストップをかけようとして失敗した。

その後、口論になっているところに、

 

「いぃぃぃぃぃやほおぉぉぉぉぉぉぉ!!久しぶりだ黒ウサギィィィィィィ!!」

 

黒ウサギが店内から爆走してきた着物風の服を着た真っ白い髪の少女に抱き(もしくはフライングボディーアタック)つかれ、少女と共にクルクルクルクルクルクと空中四回転半ひねりして街道の向こうにある浅い水路まで吹き飛んだ。

 

「きゃあーーーー・・・・・・・・・・・・・!!」

 

ボチャン。

そして遠くなる悲鳴。

十六夜達は眼を丸くし、店員は痛そうな頭を抱えていた。

 

「………おい店員。この店にはドッキリサービスがあるのか?」

 

「なら俺も別バージョンで是非」

 

「ありません」

 

「なんなら有料でも」

 

「やりません」

 

真剣な表情の十六夜に、真剣な表情でキッパリ言い切る女性店員。

二人は割とマジだった。

白い髪の少女は白夜叉と言い、“サウザンドアイズ”の幹部のようだ。

見た目からは考えられないが、映司と霧崎は特に気にしなかった。

元いた世界でもそういう類いのはいたからだ。

その後、四人は白夜叉の私室に案内された。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

私室では外門の説明を聞き、白夜叉が東側の“階層支配者”にして“最強の主催者”という事を聞かされた。

それを聞き、十六夜は闘争心剥き出しの視線を白夜叉に向ける。

しかし映司と霧崎は元々好戦的なタイプではないので乗り気ではない。

 

「何だ。そこの童と違ってノリが悪いの」

 

「避けれる戦いなら避けたい主義なんで」

 

「俺も無駄な戦いはしたくないですから」

 

「まぁよい。おんしだけになるがよいのか?」

 

「俺は別にいいぜ」

 

「なら、ゲームの前に一つ確認しておくことがある」

 

「なんだ?」

 

白夜叉は着物の裾から“サウザンドアイズ”の旗印___向かい合う双女神の紋が入ったカードを取り出し、壮絶な笑みで一言、

 

 

「おんしが望むのは“挑戦”か____もしくは、“決闘”か?」

 

刹那、視界に爆発的な変化が起きた。

視界は意味を無くし、様々な情景が脳裏で回転し始める。

脳裏を掠めたのは、黄金色の穂波が揺れる草原。

白い地平線を覗く丘。

森林の湖畔。

記憶にない場所が流転を繰り返し、足元から呑み込んでいく。

投げ出されたのは、白い雪原と凍る湖畔____そして、水平に太陽が廻る世界だった。

 

「………なっ………!?」

 

余りの異常さに、同時に息を呑んだ。

ただし各々意味が違っていた。

霧崎はかつてのゲームを連想し、映司は江戸時代に送られた事を連想していた。

その後、十六夜は今回は降参して、試されてやった。

白夜叉の用意したグリフォンのゲームを勝利するのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

試練も終了し、本題のギフトの鑑定を頼むと白夜叉は気まずそうな顔をする。

どうやら専門外どころか無関係のようだった。

困ったように頭を掻いていた白夜叉は、突然妙案が浮かんだとばかりにニヤリと笑った。

 

「ふむ。何にせよ“主催者”として、星霊のはしくれとして、試練をクリアしたおんしらには“恩恵”を与えねばならん。ちょいと贅沢な代物だが、コミュニティ復興の前祝いとしては丁度良かろう」

 

白夜叉がパンパンと柏手を打つ。

すると三人の眼前に光り輝く三枚のカードが現れる。

カードには各々の名前と、体に宿るギフトを表すネームが記されていた。

 

コバルトブルーのカードに逆廻十六夜・ギフトネーム“正体不明”

 

パープルのカードに火野映司・ギフトネーム“オーズ” “メダジャリバー” “カンドロイド”

 

グリーンのカードに霧崎カブト・ギフトネーム“脅威の幻視” “弱者のパラダイム”

 

各々の名前とギフトが記されたカードを受け取る。

黒ウサギは驚いたような、興奮したような顔で三人のカードを覗きこんだ。

 

「ギフトカード!!」

 

「お中元?」

 

「ライダーカード?」

 

「テレホンカード?」

 

「ち、違います!!このギフトカードは顕現しているギフトを収納出来る超高価なカードですよ!!」

 

黒ウサギに叱られながら三人は各々のカードを物珍しそうに見つめる。

実は映司と霧崎の言葉は、冗談でもあるが各々の経験してきた事に関係あるのだが黒ウサギに気付きようはない。

その後、ギフトカードの詳しい説明を受け、十六夜の異常性が確認され、白夜叉に忠告をされ店を出るのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

そして一同は本拠に着き、廃墟同然の光景を見て、魔王の凄まじさを感じるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ガルドは自分の屋敷で文字通り吠えていた。

 

「ははははは!!あいつらがうちに加わればかなりの戦力になる!!」

 

(戦力差を度外視しているな……ここまで馬鹿とは聞いて無かったが……鬼化させてしまえば同じか)

 

ガルドの様子を見ていた吸血鬼の少女は背後から襲い、血を吸うのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

少女が去り、鬼化させられたガルドには二つの変化が起きていた。

一つ目は肉体自身の変化。

二つ目は……その体から銀色のメダルが溢れ出ていたのだ。

 

その数分後、屋敷には二つの遠吠えが響いていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

“ノーネーム”・本拠。

その夜、十六夜、映司、霧崎は侵入者を縛り上げていた。

どうせ頭があんな奴らなら夜襲してくるだろうと待ち伏せしていたのだ。

しかし彼らの予想を越える程にあっさり侵入者は捕まった。

騒音を聞いてジンが慌てて出てくる。

 

「ど、どうしたんですか!?」

 

「侵入者だ。今は事情を聞いてるとこだ」

 

ジンがよく見ると、侵入者にはガルドの側近が混じっていた。

 

「面白い話が聞けてるぞ。こいつらは予想以上にゲスだったようだぜ?」

 

「どういう事です?」

 

そして十六夜達は側近から聞いた人質の事をジンに話した。

それを聞いたジンの顔は驚愕に包まれる。

 

「そんな人が何でわざわざ?」

 

「今、それを聞いてたところだ」

 

視線を側近に向ける。

わざわざ側近が夜襲に参加している事について聞く為だ。

 

「あんたらに頭を完膚なきまでに叩き潰して欲しいからだ」

 

「どの口が言ってるんだ?」

 

とても人質の件を知ってる者が言うことではないはずだ。

それは自身の破滅を招く事でもあるのだから。

 

「か、頭は変わっちまったんだ!!人質の件はあるが、あそこまで考え無しで動くような人じゃ無かった!!」

 

「どういう事だ?」

 

「あの日を境に頭はまるで欲望を優先するように動き始めたんだ。後先を考えずにゲームを仕掛けて傘下に取り込む。何時もであれば下準備を整えてから仕掛けるはずなのに!!」

 

「それ、詳しく聞かせてくれませんか?」

映司が何かを察したように問う。

こういう話には思い当たる事があるのだ。

 

「あの日、変な男が現れて頭に変なメダルみたいな物を投げ付けたんだ。それだけでそいつは消えたんだがそこからだ、頭がおかしくなったのは……」

 

それを聞いて映司は事態を把握した。

それは映司がよく知っている事だった。

その後、十六夜が侵入者一同に向けて、自分達は魔王を倒す為のコミュニティと言い、ジンの口を塞ぎながら高らかに宣言するのだった。

 

(……面倒事がまた増えたな)

 

人質の件と魔王を倒す為のコミュニティ、面倒事が二つも転がり込んできたこと霧崎はため息を吐くのだった。

それでも逃げはしないのだが。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ

 

タカ、クジャク、コンドル

ライオン、トラ、チーター

クワガタ、カマキリ、バッタ

サイ、ゴリラ、ゾウ

シャチ、ウナギ、タコ

コブラ、カメ、ワニ

スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 

 





白夜叉部分省略はほぼ同じになりそうだったからです。

次回はいよいよゲーム開始です!!
vsガルド&???です。
???に関しては大体察してると思います。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待っています。



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ハンティングとヤミーと虎の怪物の最期


ゲーム開始です。




 

前回の三つの出来事!!

 

一つ!!最強の階層支配者、白夜叉と一同は出会うのだった。

 

二つ!!白夜叉の試練をクリアし、ギフトカードを受け取った。

 

三つ!!ガルドは予想以上なゲスであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

翌日、一同は“フォレス・ガロ”の居住区画前にいた。

そこで目にしたのは鬼化した木々が生い茂る様だった。

そして辺りを探っていると、門柱に羊皮紙を見付ける。

そこにはゲームの内容が記されていた。

 

{ギフトゲーム名“ハンティング”

 

 ・プレイヤー一覧 火野 映司

          霧崎 カブト

          ジン=ラッセル

 

 ・クリア条件 ホストの本拠内に潜むガルド=ガスパーの討伐。サポーターの撃退。

 ・クリア方法 ホスト側が指定した特定の部具でのみ討伐可能。指定武具以外は“契約”によってガルド=ガスパーを傷付ける事は不可能。

 

 ・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなかった場合。

 ・指定武具 ゲームテリトリーに配置。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、“ノーネーム”はギフトゲームに参加します。

         “フォレス・ガロ”印}

 

「ガルドの身をクリア条件に………指定武具で打倒!?」

 

「こ、これはまずいです!!」

 

ジンと黒ウサギが悲鳴のような声をあげる。

霧崎は首を傾げながら問う。

 

「このゲーム危険なのか?」

 

黒ウサギは“契約”の事を説明するが二人は特に顔色を変えなかった。

 

「ま、倒せないわけじゃないし大丈夫だろ」

 

「ですがサポーターまでいるんですよ!?」

 

「数が増えた所でどおって事ないよ。サポーターは普通に倒せるんだし」

 

そんな会話の陰で十六夜とジンも話していた。

参加者三名は門を開けて突入するのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

三人は本拠の前に来ていた。

霧崎がとある方法で見付けたのだ。

虎の紋様を施された扉は無残に取り払われ、窓ガラスは砕かれている。

豪奢な外見は塗装もろともツタに蝕まれては剥ぎ取られていた。

三人が中の様子を確認しようとした瞬間、熱風が放たれた。

 

「うわつ!?」

 

「ガァァァァァァァ!!」

 

熱風を放ったのは虎を二足歩行にして人型に近付けた様な姿の怪人だった。

体は白く両手に鋭い爪をつけている。

それは白虎ヤミーだった。

 

「やっぱりヤミーか!!」

 

「知ってたのか!?」

 

「確信は無かったけどね!!」

 

物陰に隠れながら話す。

しかし映司はにわか信じられ無かった。

グリードは全て倒されたはずなのだから。

そこまで考えて、ここが別世界と言う事を思いだし納得する。

 

「カブト君、ここは俺に任せてくれないか?それで君は上階のガルドを頼んでいいかな?」

 

「分かった!!気をつけてな」

 

霧崎は言いながら階段の方に走る。

ジンは困惑しながら問う。

 

「あ、あの僕は……」

 

「下がってて。ここは俺達に任せてくれればいいから」

 

答えながら白虎ヤミーの前に立つ映司。

 

「悪いけど俺が相手だ」

 

映司はオーズドライバーを腰に当てる。

するとベルト部分が出現する。

メダルを三枚取り出して構え、赤いメダルを右端に、緑のメダルを左端に同時に入れる。

最後に黄のメダルを真ん中に入れて、傾ける。

右腰からオースキャナーを取り出してスキャンする。

 

「変身!!」タカ!!トラ!!バッタ!!タトバッ、タトバ、タットッバ!!

 

変身音と共に映司の頭、胴、足を中心に円状の物が多数回る。

そして頭の前にタカの紋章が刻まれた赤い円、胴の前にトラの紋章が刻まれた黄の円、足の前にバッタの紋章が刻まれた緑の円が止まり、胴の部分に集まり胸に近付く。

その時には映司の姿はオーズ、タトバコンボに変わっていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

霧崎が階段を上がった先に待っていたのは、言葉を失った虎の怪物だった。

 

「____GEEEEEEYAAAAAaaaaa!!」

 

「怪物を産み出しただけじゃなく、自身も怪物に堕ちたのか……」

 

言いながら霧崎は白銀の十字剣を守るように立ち塞がっているのに気付く。

 

「悪いけど、それはそれ、ゲームはゲームだ。容赦なくいかせて貰うぞ」

 

言葉を理解してない虎は霧崎へと、突進を仕掛けていた。

しかしそんなものは【弱者のパラダイム】でどうにでもなる。

虎はあらぬ方向へと突っ込んでいった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

白虎ヤミーは鋭い爪で斬り掛かり、熱風を吐く。

映司はそれらを避けながら、メダジャリバーを手に取る。

近付き、斬り掛かる。

 

「ハァ!!」

 

「ガァァァァァァァ!!」

 

数回は斬れたが、爪で防がれる。

そして熱風により吹っ飛ばされる。

 

「クッ……ならこれだ!!」サイ!!カマキリ!!チーター!!

 

メダルを入れ換え、スキャンする。

サイの頭、カマキリの腕、チーターの足を持つ亜種、サキリーターである。

 

「ハァァァァ!!」

 

チーターレッグによる高速移動しながら、カマキリソードで斬る。

熱風が吐きそうになったらサイヘッドの頭突きにより怯ませる。

 

「次はこれだ」サイ!!ゴリラ!!チーター!!

 

亜種、サゴリーターへとチェンジする。

一気に懐にまで入ると、ゴリラアームで白虎ヤミーの爪を横から殴り、へし折る。

 

「ガァ!?」

 

そしてゴリラアームを突き出して、ゴリゴバーンを発射して白虎ヤミーを吹き飛ばす。

そして再びタトバコンボにチェンジする。

 

「これで終わりだ!!」スキャニングチャージ!!

 

バッタレッグが展開し、バッタの如く跳躍する。

そして白虎ヤミーとの間に赤、黄、緑の順に輪が現れる。

それを潜りながら白虎ヤミーへと近付いていく。

タトバコンボの必殺技、タトバキックだ。

 

「ハァァァァセイヤー!!」

 

蹴りが直撃したヤミーは三つの輪の紋章と共に爆散するのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

霧崎は虎を弾き飛ばしながら、十字剣を手に取っていた。

【弱者のパラダイム】は言ってしまえば自発的な攻撃には向かない能力である。

だから別の力を使う。

 

「ライズ全開」

 

呟き、イアン式ライズを放射する。

イアン式ライズは「相手の生命波動を感知する」ことである。

普通のライズと違うのはパワーがつかない事である。

しかしこの場面に置いて、パワーは必要無い。

呼吸合わせ、タイミングを計り、虎の攻撃を避け、首の下から十字剣で喉を貫けばいいのだから。

 

「GaYa………!!」

 

十字剣の激しい光と、歯切れの悪い悲鳴。

それが虎の怪物の最期。

 

「こんな奴でも、例え怪物になっていたとしても、やっぱり気持ちいいもんじゃねぇな」

 

そんな思いを抱きながら、霧崎は階下に向かうのだった。

 

こうして、ゲームは終了した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

某所。

 

「おのれ、ヤミー如き、奴の欲望程度ではオーズを倒ないか……奴の行方は分からんが決して合流させはしない……」

 

中年の男はそれだけ言って、また姿を銀色のオーロラの中に消した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ

 

タカ、クジャク、コンドル

クワガタ、カマキリ、バッタ

ライオン、トラ、チーター

サイ、ゴリラ、ゾウ

シャチ、ウナギ、タコ

コブラ、カメ、ワニ

スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 





ゲーム終了!!

オーズに関しましては序盤は亜種をくしする方針で行きたいと思います。
さすがにボス戦ではコンボを使うつもりですが。
要望さえあれば最初からクライマックスでもいいのですが。
瞬殺するのもどうかと思いますし。

コラそこ、タトバキックがちゃんと決まったとか言うな。

それでは質問がありましたら聞いてください。
感想待っています。



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襲撃と追跡と交渉

前回の三つの出来事!!

 

一つ!!“フォレス・ガロ”の本拠に来た一同が見たのは鬼化した木々だった。

 

二つ!!一同を待ち受けていたのは虎の怪物と化したガルドと白虎ヤミーだった。

 

三つ!!ガルドは霧崎が、ヤミーは映司が撃退し、ゲームに勝利するのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ゲームが終わり、“フォレス・ガロ”の解散令が出たのは間もなくの事だった。

そしてジンは“名”と“旗印”をコミュニティの代表者へと返還していった。

そしてジンの名を広める、十六夜とジンの作戦は一先ず成功した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

本拠に戻ると、映司は黒ウサギに呼び出された。

 

「用は何かな?黒ウサギちゃん」

 

「実は白夜叉様から、映司さんにお届け物なのですよ」

 

「届け物?」

 

黒ウサギの後ろには大きい何かが包まれていた。

映司がそれを開けると、中から自販機のような物が出てきた。

そして手紙もついていた。

 

{これは拾い物でな。使い道が無くて処分に困っておったんじゃが、おんしのメダルを見てピンと来てな。もしかしたらおんしなら使えるかもしれんと送っておいた。役に立たなかったら返品でよいぞ}

 

手紙の内容はこんなかんじであった。

 

「映司さん?これは一体?」

 

「かなり使える物だよ。まさか箱庭にあるなんて思ってもなかったけど」

 

言いながら映司はギフトカードに自販機をしまうのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

その夜、騒音を感じて映司と霧崎は外に出る。

するとそこには翼の生えた空を駆ける靴を装着した騎士風の男達が大挙して押し寄せてきたのだ。

どうやら黒ウサギと口論になっているようだ。

 

「どうしたんだ!?」

 

二人が現場に着いた時には騎士達は陣形を取りながら、何かを放った。

それは刀を持った忍者の様な姿の怪物達だった。

 

「今度はダスタード!?」

 

映司が驚きの声を上げる。

箱庭に来てから怪人を見たのは三度目だ。

しかも各々別の種類のこれは問いたださないといけないなと考える映司。

その隣では黒ウサギが髪色を変化させて、インドラの槍をその手に掲げていた。

それを見た騎士達は動揺し、更にダスタードを放つ。

 

「どういう状況か簡潔でいいから説明してくれ!!」

 

「あいつらが吸血鬼を石化させて連れていこうとして、黒ウサギが見ての通りブチギレてる」

 

霧崎の叫びに十六夜が適当に答える。

その間に騎士達はダスタードを囮に逃げようとする。

 

「お願い!!」

 

それに気付いた映司はタカカンドロイドを数体放つ。

そして自販機をギフトカードから取り出して、セルメダルを投入する。

すると自販機はバイクに変形した。

これがライドベンダーである。

 

「変身!!」タカ!!トラ!!バッタ!タトバッ、タトバ、タットッバ!!

 

バイクに跨がりながら変身する。

ダスタードはバイクに乗りながらでも倒せる。

そんな映司に十六夜が声を掛ける。

 

「今はやめとけ。“ノーネーム”と“サウザンドアイズ”が揉めたら困るみたいだからな」

 

「それでも………俺は、手を伸ばせば届くのに伸ばさなかったら一生後悔する!!」

 

映司は過去の事を思い出しながら叫ぶ。

それを聞いて十六夜はニィッと笑う。

 

「いいぜ……協力してやるよ。吸血鬼を助けて、揉め事も起こさないようにな」

 

「それなら、まず彼らを捕まえないとね」

 

「そうだな」

 

言いながら十六夜はバイクの背に乗る。

その時には騎士達は逃走を始めていた。

バイクを走らせようとするがダスタード達が、立ち塞がるように向かってきた。

 

「邪魔はさせねぇよ!!」

「邪魔はさせません!!」

 

霧崎と黒ウサギの声と共にダスタード達は吹き飛ばされた。

 

「ここは私達に任せて御二人はレティシア様を!!」

 

「分かった。ありがとう、黒ウサギちゃん」

 

言いながらバイクを発進させる映司。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「クソ!!うっとしい!!」

 

騎士の一人が忌々しそうに叫ぶ。

彼らの背後には映司と十六夜がバイクで追跡し、周囲をタカカンドロイドが彷徨いているのだ。

不可視のギフトは使っているはずである。

それなのに引き離せない。

彼らは知らない、タカヘッドの眼にはそんなギフトは通用しない事に。

 

「ダスタードも意味がねぇだと!?」

 

ある人物によりルイオスに渡され、騎士達もその一部の恩恵を受けている。

その一つであるダスタードをさっきから放っているのだが、その度に十六夜が撃ち落としているのだ。

 

「これじゃあ追い付かれ……」

 

そこで彼らは気付いた。

追って来ているバイクから人影が一つ消えている事に。

 

「ハァァァァァ!!」

 

自分達の真上に何かいる事に気付き、見上げる騎士達だが既に遅い。

その時にはトラクローを展開したタトバコンボが翼を斬り裂き、彼らは落下していた。

彼らがダスタードが撃ち落とされるのに気を取られている内に、十六夜が映司を彼らの真上に投げたのだ。

落下した彼らは映司と十六夜に捕まるのだった。

しかしレティシアは石化したままであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

“サウザンドアイズ”の支店・座敷。

十六夜、黒ウサギ、映司はルイオスと白夜叉と向かい合う形で座っていた。

 

ルイオスは少々焦った様子であるが、必死にそれを感じさせない様にしている。

黒ウサギは白夜叉に事情を説明していた。

 

「___“ペルセウス”が私達に対する無礼を振るったのは以上の内容です。ご理解いただけたでしょうか?」

 

「う、うむ。“ペルセウス”の所有物・ヴァンパイアが身勝手に“ノーネーム”の敷地に踏み込んで荒らした事。それに乗じて騎士達がした数々の暴言と暴挙。確かに受け取った」

 

「我々の怒りは謝罪じゃすみません。“ペルセウス”に受けた屈辱は両コミュニティの決闘をもって決着をつけるべきかと」

 

両コミュニティの直接対決。

それが黒ウサギの狙いだ。

レティシアと騎士達が敷地内で暴れ回ったというのは捏造だ。

後者に関しては完全に捏造では無いが。

なりふり構わず、使える手段は全て使うつもりだ。

 

「“サウザンドアイズ”にはその仲介をお願いしたくて参りました。もし“ペルセウス”が拒むようであれば“主催者権限”の名の下に」

 

「いやだ」

 

唐突にルイオスは言った。

 

「……はい?」

 

「いやだ。決闘なんて冗談じゃない。それに吸血鬼や騎士が暴れ回ったって証拠があるの?」

 

「証拠があればいいんですね?」

 

その言葉と共に背後の障子が開き、霧崎が縛りあげた騎士達を連れてくる。

それを見たルイオスは顔をひきつらせる。

その騎士達は自白をした。

“ノーネーム”敷地内で暴れ回ったことを。

本来ならそんな事は言わないだろう。

しかし数々の戦場を歩いた映司と霧崎、問題児十六夜の手に掛かればどうという事はない。

これ以上の無い証拠をつきつけられルイオスは黙る。

 

その後、二日後に“ペルセウス”の本拠にてゲームをする事が決定した。

ゲームの内容は“ペルセウス”側の自由である。

その上で完膚無きまでに叩き潰す。

それ以上の報復はないだろう。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「クソ!!あいつら!!調子に乗りやがって!!」

 

ルイオスは自室で荒れていた。

それもそのはず言い負かされた上にゲームをする羽目になったのだから。

しかもゲームの内容は此方で決める事になった。

有利ではあるが屈辱である。

何故なら格下相手に情けを掛けられたように受け取られるからだ。

一通り荒れた後、

 

「まぁいいさ。あいつらは後悔するだけだ。アルゴールと僕のこの力を前に!!」

 

手の中に何かを握りながら叫ぶルイオスだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

某所。

 

「やはり適合率はいいみたいだな。これでオーズが倒れればいいが」

 

一部始終を眺めつつ、決して干渉しない彼はまた銀色のオーロラの中へと消えた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ

 

タカ、クジャク、コンドル

クワガタ、カマキリ、バッタ

ライオン、トラ、チーター

サイ、ゴリラ、ゾウ

シャチ、ウナギ、タコ

コブラ、カメ、ワニ

スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 




ペルセウス編前編終了と言ったところです。

ダスタードに関しては「あれ」が少し特殊な物とでも思ってください。

ライドベンダーに関しては後々。


それでは質問があれば聞いてください
感想待っています


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最強コンボとアルゴールとペルセウス

今回は初コンボ!!




前回の三つの出来事!!

 

一つ!!ゲームが終了し、映司ざ本拠に戻ると、白夜叉からライドベンダーが届いていた。

 

二つ!!急な襲撃をして、レティシアを連れさろうとした騎士達を撃退するのだった。

 

三つ!!襲撃を口実にレティシアの所属を“ノーネーム”に戻す為、“ペルセウス”とゲームをする事になるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

{ギフトゲーム名“FAIRYTALE in PERUSEUS”

 

 ・プレイヤー一覧 逆廻十六夜

          火野映司

          霧崎カブト

 ・“ノーネーム”ゲームマスター ジン=ラッセル

 ・“ペルセウス”ゲームマスター ルイオス=ペルセウス

 

 ・クリア条件 ホスト側のゲームマスターを打倒

 ・敗北条件 プレイヤー側のゲームマスターによる降伏。

       プレイヤー側のゲームマスターの失格。

       プレイヤー側が上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

 ・舞台詳細・ルール

  *ホスト側のゲームマスターは本拠・白亜の宮殿の最奥から出てはならない。

  *ホスト側の参加者は最奥に入ってはいけない。

  *プレイヤー達はホスト側の(ゲームマスターを除く)人間に姿を見られてはいけない。

  *姿を見られたプレイヤー達は失格となり、ゲームマスターへの挑戦資格を失う。

  *失格となったプレイヤーは挑戦資格を失うだけでゲームを続行する事は出来る。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、“ノーネーム”はギフトゲームに参加します。

              “ペルセウス”印}

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ゲーム当日。

一同が“契約書類”に承諾した直後、視界は間を置かずに光へと呑まれた。

次元の歪みは一同を門前へと追いやり、ギフトゲームへの入口へと誘う。

門前に立った十六夜達が不意に振り返る。

白亜の宮殿の周辺は箱庭から切り離され、未知の空域を浮かぶ宮殿に変貌していた。

一同は一先ず話し、一応の作戦を定める。

そして十六夜が宮殿の門を蹴り破り、向かっていくのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

白亜の宮殿内部には“ペルセウス”の騎士とダスタードで溢れていた。

騎士とダスタードは階段を塞ぐように陣取っていた。

そこへ、囮を買って出た映司が進んでいく。

 

「一人で俺達の相手をする気か?」

 

「そうなるね」

 

軽く答える映司を笑う騎士達。

彼らは知らないからこそ笑える。

オーズの力を知らないからこそ笑えるのだ。

映司はオーズドライバーを装着して、緑色のメダルを入れる。

 

「変身!!」クワガタ!!カマキリ!!バッタ!!ガータ!!ガタガタ!!キリバッ!!ガタキリバッ!!

 

音声共に緑色の円状の物体が頭、胴、足の前に現れ、胴に集中する。

クワガタの頭、カマキリの胴、バッタの足を持つコンボ、ガタキリバコンボだ。

 

「「「なっ………」」」

 

騎士達は絶句する。

姿を見たからではない。

その数にだ。

ガタキリバに変身した直後、その数は50人に増えていた。

これがガタキリバの分身能力【ブレンチシェイド】だ。

50人のガタキリバは一斉に騎士達へと向かっていく。

その動きはクワガタヘッドで各個体、交信しているので一糸乱れぬ様だ。

 

「「ハァァァァ!!」」

 

先頭の数体がクワガタヘッドから雷を放ち、騎士を薙ぎ倒していく。

ダスタードをカマキリソードで斬り倒していき、騎士達をバッタレッグで蹴り倒していく。

一体でも一騎当千であるガタキリバが50人、悪夢な様な状態に騎士達は恐れおののくのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

十六夜、霧崎、ジンは最奥、最上階に辿り着いていた。

騎士達やダスタードは映司がほとんど一人で相手にしている。

不可視の相手も映司から渡されたカンドロイド達が発見して撃退していた。

最奥に天井はなく、まるで闘技場のように簡素な造りだった。

 

「十六夜さん、カブトさん、ジン坊っちゃん!!」

 

最上階で待っていた黒ウサギが名を呼ぶ。

少しは心配していたのだろう。

眼前に開けた闘技場の上空を見上げると、見下ろす人影があった。

 

「__ふん。ホントに使えない奴ら。今回の一件でまとめて粛清しないと。でもおかげでこの力が試せるけどね」

 

空に浮かぶ人影には、確かに翼があった。

膝までを覆うロングブーツから、光り輝く対の翼が。

しかしそれだけでは無い、その姿はルイオスのそれでは無かった。

右腕に大剣を持ち、左腕には顔の様な物が付き、全体も怪物そのものだった。

十六夜達は知らないがその姿はペルセウス・ゾディアーツの姿だった。

バサッと翼が羽ばたく。

たった一回の羽ばたきでルイオスは風を追い抜き、落下速度の数十倍の勢いで十六夜達の前に降り立った。

 

「なにはともあれ、ようこそ白亜の宮殿・最上階へ。ゲームマスターとして相手をしましょう。…………あれ、この台詞を言うのってはじめてかも」

 

それは全て騎士達が優秀だったからだ。

十六夜としてはそれより姿の変化が気になっていた。

 

「随分と姿が変わったな。整形でもしたか?」

 

「これかい?とある男が僕に渡した力さ」

 

言いながらルイオスは手の中のスイッチを押す。

すると姿が元のルイオスに戻った。

 

「君達はこの力とアルゴールの力の実験台にしてやるよ。光栄に思いな」

 

そして再びスイッチを押し、黒い煙に包まれ、姿を怪物に変える。

周囲には数体のダスタードが生まれていた。

そしてチョーカーの装飾を掲げた。

掲げたギフトが光り始める。

星の光のようにも見間違う光の波は、強弱を付けながら一つ一つ封印を解いていく。

十六夜と霧崎は臨戦態勢に入る。

光が一層強くなり、ルイオスが叫ぶ。

 

 

「目覚めろ____“アルゴールの魔王”!!」

 

 

光は褐色に染まり、三人の視界を染めていく。

白亜の宮殿に共鳴するかのような甲高い女の声が響き渡った。

 

「ra……Ra、GEEEEEEEYAAAAAAAAaaaaaaaa!!」

 

それは最早、人の言語野で理解できる叫びでは無かった。

そんな中、ルイオスだけ困惑した様子だった。

それもそのはず石化の光を放ったはずなのに周囲に全くその様子がないからだ。

それも全て、霧崎が【弱者のパラダイム】でその“脅威”を真上に纏めて祓ったのだが。

十六夜と霧崎はルイオスが困惑している内に作戦通り行動を開始する。

十六夜はルイオスに、霧崎はアルゴールへ向かっていく。

これは霧崎の希望である。

 

(本音を言うなら化け物相手の方が気が楽なだけだけどな)

 

「行くぜヨヨ!!」

 

『ヨシキタ』

 

霧崎の後ろで他人には見えない“ヨヨ”が返事をする。

“ヨヨ”はアルゴールから放たれる死の脅威を掴む、そして祓う。

向かって来ていたアルゴールはあらぬ方向へと吹き飛ばされる。

アルゴールは再び不協和音と共に、褐色の光を放つ。

それは石化の光、どうやらルイオスはいつでも放てるように許可していたらしい。

だがそれも意味はない。

“ヨヨ”はその脅威を掴み、球体状にする。

 

『脅威ヲ集メタ結晶体……アトハイツモ通リダロ?』

 

「ああ、ありがとうな」

 

脅威の塊を手に漂わせながら、ライズを発動する。

ライズは簡単に言えば身体能力を上げる物だ。

イアン式ライズとは少し違う。

何はともあれ、敵は真っ正面なのだからイアン式ライズでは無く通常版でいい。

あの戦いの後に念のために身に付けた通常版で。

 

「これで終わりだ」

 

脅威の塊をアルゴールにぶつける。

それだけで終わる。

直後、褐色の光は全てアルゴールに向かい、アルゴールは自らの能力により石化するのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方の十六夜。

此方も一方的だった。

 

「ハァ!!」

 

「これがどうした!!」

 

ルイオスは左腕から石化の力を持つ光線を放つが、十六夜は適当に腕を振る。

それだけで光線は砕け散った。

比喩無く本当にそのままであった。

 

「クソ!!」

 

ダスタードと共に大剣で斬り掛かるが、ダスタードは裏拳で纏めて砕き散らされる。

大剣も片手で受け止められ、どれだけ力を入れようとピクリともしなかった。

そしてそのまま十六夜が腕に力を入れ、握り潰された。

その光景に唖然とする一同。

 

「大口叩くからどれだけかと思ったら、この程度かよ。詰まらねぇ」

 

溜め息を吐きながら、十六夜は右の拳に力を込めて思いっきり殴り飛ばした。

それを何とか持ちこたえるが十六夜は追撃の為に踵落としを放ち、足がめり込むルイオス。

そこに先程以上の拳が叩き込まれ、吹き飛び、爆散する。

爆煙の中からスイッチが飛んでくる。

十六夜はそれを掴むと、握り潰した。

興味が無いように欠片を捨てる。

爆煙の後にはルイオスが倒れていた。

本人は倒れ、アルゴールも石化。

勝敗は決した。

黒ウサギ宣言しようとした、その時__十六夜は、この上なく凶悪な笑みでルイオスを追い立てた。

 

「ああ、そうだ。もしこのままゲームで負けたら……どうなるか分かっているんだろうな?」

 

「な、何?」

 

不意を突かれたような声を上げるルイオス。

それもそうだろう。

このゲームはレティシアの所有権を譲渡させる為の物ではなかったのか。

 

「そんなのは後でも出来るだろ?そんなことより、まず旗印を奪う。そして旗印を盾にして即座にもう一度ゲームを申し込む。____そうだなぁ。次はお前達の名前を戴こうか」

 

ルイオスの顔から血の気が一気に引く。

その後、十六夜は一片の慈悲もなく凶悪な笑みのまま、徹底的に潰すと言う事を話す。

そして最後にこう言った。

 

「_____ならもう方法は一つしかないよな?」

 

一転して凶悪さを消し、今度はにこやかに笑う十六夜。

指先で誘うようにルイオスを挑発し、

 

「来いよペルセウス。命懸けで_____俺を楽しませろ」

 

獰猛な快楽主義者が、両手を広げてゲームの続行を促す。

彼はまだまだ遊び足らなかった。

_____その後の事は語るまでもない。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ

 

タカ、クジャク、コンドル

クワガタ、カマキリ、バッタ

ライオン、トラ、チーター

サイ、ゴリラ、ゾウ

シャチ、ウナギ、タコ

コブラ、カメ、ワニ

スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 





ゾディアーツになってもルイオスはルイオスでした。

ちなみに最奥のバトルが始まる頃にはスキャニングチャージ×50が鳴り響いてほぼ終わってたりします。

次回はエピローグです。

次々回からは二巻です。

それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。



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メイドと歓迎会と“ペルセウス”の流星群


エピローグです。




 

前回の三つの出来事!!

 

一つ!!遂にペルセウスとのゲームが開始され、囮を引き受けた火野映司はガタキリバコンボになり、騎士やダスタードを蹴散らすのだった。

 

二つ!!最奥に辿り着いた逆廻十六夜と霧崎カブトは各々アルゴールとルイオスを相手にするのだった。

 

三つ!!ルイオスとアルゴールを撃破した十六夜はルイオスに脅しをかけるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

レティシアの受難と言えるのはむしろここからだろう。

所有権は“ノーネーム”に移った。

これは普通に予定通りだ。

“ペルセウス”に勝利した五人はレティシアを大広間に運ぶ。

ここまでも予定通り、問題はそこからだ。

石化を解いた途端、十六夜が言う。

 

 

「じゃあこれからよろしく、メイド」

 

 

「え?」

「え?」

「………え?」

 

「それはどういう意味ですか?十六夜さん………」

 

「そのまんまだ。今回のゲームで活躍したの俺達だけだし、お前らくっついて来ただけだろ?所有権は俺達で等分3:2:2でもう話は付いた!!」

 

まぁ、他の二人は別にいいって言ってたが形だけはな、と付け加える。

 

「何を言っちゃってんでござきますかこの人!?」

 

もはやツッコミが追い付かないなんて状況ではない。

黒ウサギとしては完全に混乱している。

ついでに言えばジンも混乱していた。

唯一、当事者であるレティシアだけが冷静だった。

 

「んっ…………ふ、む。そうだな。今回の件で、私は皆に恩義を感じている。コミュニティに帰れた事に、この上なく感動している。だが、親しき仲にも礼儀あり、コミュニティの同士にもそれを忘れてはならない。君が家政婦をしろというのなら、喜んでやろうじゃないか」

 

「レ、レティシア様!?」

 

黒ウサギの声は今までにないくらい焦っていた。

まさか尊敬していた先輩をメイドとして扱わなければならないとは……と困惑する。

しかし意外に和やかそう四人を見て、黒ウサギは力なく肩を落とすのだった。

映司と霧崎が立場とかをあまり気にしないのもあるが。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

___“ペルセウス”との決闘から三日後の夜。

子供達を含めた“ノーネーム”一同は水樹の貯水池付近に集まっていた。

その数、百二十六人。

数字だけを見れば中堅以上のコミュニティとも呼べるだろう。

 

「えーそれでは!!新たな同士を迎えた“ノーネーム”の歓迎会を始めます!!」

 

ワッと子供達の歓声が上がる。

周囲には運んできた長机の上にささやかながら料理が並んでいる。

本当に子供だらけの歓迎会だったが、三人は悪い気はしない。

むしろ楽しんでいる。

 

「だけど何で屋外の歓迎会なんだ?」

 

「俺は別にいいと思うけど?」

 

「黒ウサギなりに精一杯のサプライズってところじゃねぇか?」

 

映司は野宿も多く、世界を回っている為に特に何も不思議に思わない。

霧崎も野宿慣れしているが少しは疑問に思う。

実を言えば、“ノーネーム”の財政は想像以上に悪い。

あと数日で金蔵が底をつく。

三人が本格的に活動し始めたとしても、百人を越える子供達を支えるのは厳しいかもしれない。

ましてやその中で、魔王との戦いや仲間達の救出を行わなければならないのだ。

こうして敷地内で騒ぎながらお腹いっぱい飲み食いをする、というのもちょっとした贅沢になるほどに。

それを知ってるからこそ、霧崎はため息を吐く。

 

「別に無理をしなくてもいいのにな」

 

呟いた直後、黒ウサギが大きな声を上げて注目を促す。

 

「それでは本日の大メインイベントが始まります!!みなさん、箱庭の天幕に注目してください!!」

 

十六夜達を含めたコミュニティの全員が、箱庭の天幕に注目する。

その夜も満天の星空だった。

空に輝く星々は今日も燦然と輝きを放っている。

異変が起きたのは、注目を促してから数秒後の事だった。

 

「……あっ」

 

星を見上げているコミュニティの誰かが、声を上げた。

それから連続して星が流れた。

すぐに全員が流星群だと気が付き、口々に歓声を上げる。

黒ウサギは十六夜達や子供達に聞かせるような口調で語る。

 

「この流星群を起こしたのは他でもありません。我々の新たな同士、異世界からの三人がこの流星群のきっかけを作ったのです」

 

「え?」

 

子供達の歓声の裏で、十六夜達が驚きの声を上げる。

黒ウサギは構わず話を続ける。

 

「箱庭の世界は天動説のように、全てのルールが此処、箱庭を中心に回っております。先日、同士が倒した“ペルセウス”のコミュニティは、敗北の為に“サウザンドアイズ”を追放されたのです。そして彼らは、あの星々からも旗を降ろすことになりました」

 

十六夜達は驚愕し、完全に絶句した。

刹那、一際大きな光が星空を満たした。

そこにあったはずのペルセウス座は、流星群と共に跡形もなく消滅していたのだ。

ここ数日で様々な奇跡を目の当たりにした彼らだが、今度の奇跡は規模が違う。

黒ウサギは進行を続ける。

 

「今夜の流星群は“サウザンドアイズ”から“ノーネーム”への、コミュニティ再出発に対する祝福も兼ねております。星に願いをかけるもよし、皆で鑑賞するもよし、今日は一杯騒ぎましょう♪」

 

嬉々として杯を掲げる黒ウサギと子供達。

霧崎はその姿と流星群を写真に撮っていた。

 

(“意味”はまだ見付からないけど……“これ”くらいは守りたいな)

 

写真を撮りながら考える霧崎。

映司はアンクのメダルを握りながら空を見上げていた。

 

(これだけの奇跡が起こせるんだ。きっとお前も……)

 

霧崎と映司が決意を新たにする中、十六夜も黒ウサギに自身の目標を語っていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

某所。

 

「またしても倒されたか!!しかしまだ手がないわけではない覚悟するがいい……オーズ、そして___よ」

 

再び銀色のオーロラに消える。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

箱庭の何処か。

その青年も流星群を眺めていた。

 

「おい、あれは何だ?」

 

「ん?あれは“ペルセウス”か?たぶん“ペルセウス”のコミュニティが何処かに敗北して旗を降ろしてるところだろうな」

 

老人の答えを聞き青年は、

 

「そうか………大体分かった」

 

それだけ言うのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ

 

タカ、クジャク、コンドル

クワガタ、カマキリ、バッタ

ライオン、トラ、チーター

サイ、ゴリラ、ゾウ

シャチ、ウナギ、タコ

コブラ、カメ、ワニ

スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

次回予告

 

次回の舞台は北の“火龍誕生祭”!!

そこには魔王襲来の予言があった。

果たして彼らを待ち受けるものとは?

そして響く、笛の音。

 

 





一巻分終了!!

次回からは二巻分へと突入します。
あれも参戦予定です。

あくまで別世界の、ですが。

そしてあいつは既に何処かにはいると言う。


それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます!!


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火龍誕生祭と病魔とハーメルンの魔王
招待状と北側と追いかけっこ



今回から二巻に突入です。




 

「黒ウサギちゃん!!」

「黒ウサギのお姉ちゃん!!」

 

呼ばれた気がして振り返る黒ウサギ。

黒ウサギは現在、レティシアと共に農園の惨状を眺め、土地の再生について話し、貧乏を嘆いてる所だった。

ちなみにレティシアはメイド服である。

 

「映司さん!?リリ!?どうしたのですか?」

 

「じ、実は十六夜様とカブト様が……」

 

「この手紙を渡すように頼まれてね」

 

映司が黒ウサギに手紙を渡す。

 

{黒ウサギへ。

 北側と東側で開催する祭典に参加するから。

 お前も後から必ず来いよ。

 レティシアと映司もだぞ。

 俺達に意図的に黙っていた罰として、今日中に捕まえれなかった場合“俺達はコミュニティを脱退するから。”

 死ぬ気で探せよ。

 それから御チビを道案内に連れて行くからな}

 

「……………………………………………………………………………………………………………………………………!?」

 

たっぷり黙り込むこと三十秒。

黒ウサギは手紙を持つ手をワナワナと震わせながら、悲鳴のような声を上げた。

 

 

「な、_____何を言っちゃってんですかあの問題児様方あああああぁぁぁぁ!!」

 

 

黒ウサギの絶叫が一帯に響き渡る。

脱退とは穏やかな話ではない。

その後ろで映司が、

 

「………若いっていいね」

 

苦笑いしながら呟くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

某所。

そこに中年の男の男が二人いた。

 

「北の祭りでこいつを倒せばいいんだな?」

 

「そうだ。そこで同時にお前が望む素材も手に入るだろう」

 

「利用されるのは気にいらないが……仕方が無い。私は___を救う為なら何だってする!!」シャバドゥビタッチヘンシーン

 

その音の後に数回似たような音がし、片方は姿を消し、もう片方も銀色のオーロラに姿を消した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

十六夜、霧崎、ジンの三人はリリと映司に手紙を預けた後、噴水広場にいた。

映司も誘ったのだが断られた。

霧崎としては分からなくもないというかんじだ。

霧崎も何となく着いてきているだけなのだ。

そもそもとして彼らがこんな行動を起こした原因は白夜叉からの祭りへの誘いの手紙だった。

彼らはそれにより隠されていた祭りの事を知り、北の境界壁を目指していた。

しかし距離という点に置いてとてつもなく離れている事が分かり、頭を抱えていた。

境界門も金銭的な問題で使用は出来ない。

八方塞がりと思われたが、あんな手紙を残して引くに引けない。

そこで彼らが出した結論は、

 

「こうなったら駄目で元々!!“サウザンドアイズ”へ交渉に行くぞ!!」

 

「そうだな。それしか手はないよな~」

 

ヤハハと自棄気味にハイテンションな十六夜とそれに続く形の霧崎。

ジンはダボダボのローブに首を絞められながら、二人に連れ回されたのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

三人は“サウザンドアイズ”の支店前で割烹着の女性店員と揉めていた。

割りといつも通りではある。

というか毎回、似たような物である。

そして、

 

「やっふぉぉぉぉぉぉ!!ようやく来おったか小僧どもおおおおおおお!!」

 

白夜叉が、ズドォン!!と地響きと土煙を舞い上がらせて登場した。

今回の招待状の送り主である。

十六夜は土煙を払いながら、呆れたように女性店員に言う。

 

「ぶっ飛んで現れなきゃ気が済まねぇのか、此処のオーナーは」

 

「………………、」

 

痛烈に頭が痛そうな女性店員は、言い返せずに頭を抱えた。

霧崎は白夜叉に招待状を見せる。

 

「招待は嬉しいんだが、どうやって北側に行くか分からなくてな」

 

「よいよい、全部分かっておる。まずは店の中に入れ。条件次第で路銀は私が支払ってやる。…………秘密裏に話しておきたい事もあるしな」

 

スッと目を細める白夜叉。

最後の言葉にだけ真剣な声音が宿る。

 

「それ、楽しい事か?」

 

「さて、どうかの。まあおんしら次第だな」

 

意味深に話す白夜叉。

二人はジンを引きずりつつ、嬉々として暖簾をくぐった。

三人は店内を通らず、中庭から白夜叉の座敷に招かれた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

その後、“ノーネーム”のコミュニティとしての方針や、北のフロアマスターの一角の世代交代や、“サラマンドラ”、“階層支配者”、サンドラの事などを話し、白夜叉が本題に入ろうとした所で霧崎が制す。

 

「その話、長くなるか?」

 

「ん?んん、そうだな。短くともあと一時間程度はかかるかの?」

 

「それはまずいな。……黒ウサギ達に追い付かれかねない」

 

霧崎と十六夜が言う。

一時間も悠長に“サウザンドアイズ”に留まっていれば、黒ウサギ達に見付かる事が避けられない。

今は黒ウサギ達と追いかけっこの最中なのだ。

そんなことで見付かるわけにも行かない。

ジンはその事に気が付くと咄嗟に立ち上がり、

 

「し、白夜叉様!!どうかこのまま、」

 

「ちょ、待て!!」

 

霧崎が慌ててジンの口を塞ぐ。

それ以上、喋られては面倒なのだ。

その隙を逃さず十六夜が白夜叉を促す。

 

「白夜叉!!今すぐ北側に向かってくれ!!」

 

「む、むぅ?別に構わんが、何か急用か?というか、内容を聞かず受諾してよいのか?」

 

「構わねぇから早く!!事情は追々話すし何より___その方が面白い!!俺が保証する!!」

 

十六夜の言い分に白夜叉は瞳を丸くし、呵々と哄笑を上げて頷いた。

 

「そうか。面白いか。いやいや、それは大事だ!!娯楽こそ我々神仏の生きる糧なのだからな。ジンには悪いが、面白いならば仕方がないのぅ?」

 

「………!?……………!?」

 

白夜叉の悪戯っぽい横顔に、声にならない悲鳴を上げるジン。

しかし何もかももう遅い。

暴れるジンを嬉々として取り押さえる十六夜。

彼らを余所目に、白夜叉は両手を前に出し、パンパンと柏手を打つ。

 

「___ふむ。これでよし。これで望み通り、北側に着いたぞ」

 

「「「_____は?」」」

 

素っ頓狂な声を上げる。

それもそのはず間違えではない。

北側までの馬鹿な距離を、今の僅かな時間で移動したというのだ。

空間移動能力でもそういないだろう。

少なくとも霧崎が知る範囲では。

そんな事は気にせず、点外へと走り出すのだが。

それはそれで彼ららしいだろう。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

彼らが店から出て、赤壁と炎とガラスの街を眺めていると、

 

 

「見ィつけた_____のですよおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 

ズドォン!!と、ドップラー効果の効いた絶叫と共に、爆撃の様な着地。

その声に跳ね上がる一同。

大声の主は我らが同士・黒ウサギ。

遥か彼方、巨大な時計塔から叫んだ彼女は全力で跳躍し、一瞬で彼らの前に現れたのだ。

その後ろには映司も続く。

 

「ふ、ふふ、フフフフ………!!ようぉぉぉやく見つけたのですよ………!!」

 

淡い緋色の髪を戦慄かせ、怒りのオーラを振り撒く黒ウサギ。

危機を感じとった十六夜と霧崎は即逃げる。

 

「「逃げるぞッ!!」」

 

「逃がすかッ!!」

 

二人が展望台から飛び降りる。

その後を追う黒ウサギ。

彼らと黒ウサギの追いかけっこは、後半戦にもつれ込んでいた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方、残された映司と白夜叉。

 

「…………茶でも飲むか?」

 

「戴きます」

 

そうして店の方へと向かうのだった。

追いかけっことは縁がないような光景だった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ

 

タカ、クジャク、コンドル

クワガタ、カマキリ、バッタ

ライオン、トラ、チーター

サイ、ゴリラ、ゾウ

シャチ、ウナギ、タコ

コブラ、カメ、ワニ

スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 





二巻に突入です!!

導入回だから特に話す事はないですが。

ショッカーオーズとか後々出したいですがどう出すか悩み所ですね。
天から目線の人とかも出そうと思えば出せますが。
まぁあまり言うとネタバレをうっかり書きかねないのでここまでとして。

途中に出て来たあの人は本編とは別世界の人です。
大体誰かは分かるでしょう。


それでは質問などありましたら聞いてください。
感想待ってます。



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チラシと精霊と造物主達の決闘

 

前回の三つの出来事!!

 

一つ!!黒ウサギは映司から渡された手紙を読み、絶叫を響かせた。

 

二つ!!白夜叉からの招待状を見て十六夜、霧崎はジンを連れて、北側に行く為に“サウザンドアイズ”支店に向かい、白夜叉から事情を聞くのだった。

 

三つ!!白夜叉に連れられて北側まで来た十六夜と霧崎はその光景を眺めていると黒ウサギに見付かり、逃亡するのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

“サウザンドアイズ”支店。

白夜叉と映司は茶をすすりながら歓談していた。

 

「そういえば、おんしに出場して欲しいゲームがある」

 

「俺に?」

 

映司は和菓子を食べつつ、首を傾げる。

白夜叉は着物の袖からチラシを取り出して見せた。

 

{ギフトゲーム名“造物主達の決闘”

 

 ・参加資格、及び概要

  ・参加者は創作系のギフトを所持。

  ・サポートとして、一名までの同伴を許可。

  ・決闘内容はその都度変化。

  ・ギフト保持者は創作系のギフト以外の使用を一部禁ず。

 

 ・授与される恩恵に関して

  ・“階層支配者”の火龍にプレイヤーが希望する恩恵を進言できる。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、両コミュニティはギフトゲームを開催します。

        “サウザンドアイズ”印

          “サラマンドラ”印}

 

「創作系のギフトかい?」

 

「うむ。人造・霊造・神造・星造を問わず、制作者が存在するギフトのことだ。北では、過酷な環境に耐え忍ぶために恒久的に使える創作系のギフトが重宝されておってな。その技術や美術を競い合う為のゲームがしばしば行われるのだ。本件とは別に、祭りを盛り上げる為に一役を買って欲しいのだがどうかの?」

 

「そうだね。試しに出場してみようかな」

 

映司は頷く。

そしてポケットの中のメダルを握る。

創作系のギフトを競い合う為のゲームならコアメダルを修復出来るレベルの者もいるかもしれないからだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

霧崎は十六夜と別れ、展示物を眺めていた。

ちょっとした興味で見に来たが、中々いい物が並んでいた。

遠くから爆音と笑い声が響いてるが気のせいだと、霧崎は自分に言い聞かせる。

しかし十中八九、これは十六夜と黒ウサギが原因であろう。

 

「さーて、次は何処を見に行くかな?」

 

そこへ金髪メイド服の吸血鬼が、空から舞い降りてきた。

レティシアである。

レティシアは霧崎の目の前に立つと、黒い翼を畳む。

 

「ようやく見付けたぞ、カブト」

 

「見付かっちまったか…………まぁ見付かったら仕方ねぇか。降参だ」

 

両手を上げて、降参の姿勢を取る霧崎であった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

こうしてレティシアと霧崎は合流した。

しかし、だからと言って、やる事があると言えばそうでもないので二人は出店でクレープを買い、食べ歩いていた。

 

「__南側の料理ってそんなに凄いのか?」

 

「まぁそうだな………凄いという類いではないな。とにかくワイルドだ。斬る!!焼く!!かじる!!の三工程を食事だと説明された時は、流石の私も頭を抱えたよ」

 

フッと遠い目をするレティシア。

思い出して小さく身震いをしている。

霧崎は苦笑しながら、少し食ってみたいと思うのだった。

そこで小さな影を見掛ける。

 

「レティシアちゃん。あれが何か分かる?」

 

ん?と指さす方向に首を傾げるレティシア。

その彼女も眼を丸くして驚いた。

指の先には_____手の平サイズしかない身長の、とんがり帽子を被った小人の女の子が、切子細工のグラスをキラキラとした瞳で眺めていた。

 

「あれは、精霊か?あのサイズが一人でいるのは珍しいな。“はぐれ”かな?」

 

「“はぐれ”?」

 

「ああ。あの類の小精霊は群体精霊だからな。単体で行動している事は滅多にないんだ」

 

相槌を打つ霧崎。

こういうのには面倒事が必ず関わっている。

そう感じた霧崎はクレープの残りとたまたま持っていたクッキーを精霊の近くに置いて、立ち去ろうとする。

あれは関わらない方がいいということだ。

 

「行くか、レティシアちゃん」

 

「そうだな」

 

そう言って、その場を立ち去ろうとするが、

 

「ひゃ~」

 

と、霧崎の肩から声が聞こえる。

そちらを見ると、口にクレープのクリームを付けた精霊がいた。

どうやら餌付けしてしまったようだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

十六夜と黒ウサギは派手に暴れ、ゲームとしては引き分けになっていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方の“火龍誕生祭”運営本陣営。

そこでは“造物主達の決闘”の舞台上で、最後の決勝枠が争われていた。

現在、戦っているのは“ノーネーム”の火野映司と“ロックイーター”のコミュニティに属する自動人形、石垣の巨人だった。

 

「行くよ」スキャニングチャージ

 

映司は現在、サゴリバだった。

サイの頭、ゴリラの胴、バッタの足を持つ亜種である。

必殺技を発動させた映司はバッタレッグで大きく跳躍する。

そして頭と腕をを前面に突き付けるようにする。

 

「セイヤァァァ!!」

 

叫びながら石垣の巨人に砲弾の如く着弾する。

石垣の巨人は全身にヒビを入れながら、倒れた。

それと同時に割れるような観衆の声が起こった。

映司が変身を解除すると、宮殿の上から見ていた白夜叉が柏手を打つと、観衆の声がピタリと止む。

白夜叉はバルコニーから朗らかに笑いかけ、映司と一般参加者に声を掛けた。

 

「最後の勝者は“ノーネーム”出身の火野映司に決定した。これにて最後の決勝枠が用意されたかの。決勝のゲームは明日以降の日取りとなっておる。明日以降のゲームルールは…………ふむ。ルールはもう一人の“主催者”にして、今回の祭典の主賓から説明願おう」

 

白夜叉が振り返り、宮殿の中心を譲る。

舞台会場が一望できるそのテラスに現れたのは、深紅の髪を頭上で結い、色彩鮮やかな衣装を幾重にも纏った幼い少女。

龍の純血種____星海龍王の龍角を継承した、新たな“階層支配者”。

炎の龍紋を掲げる“サラマンドラ”の幼き頭首・サンドラが玉座から立ち上がる。

華美装飾を身に纏い、緊張した面持ちの彼女に白夜叉が促すように笑いかける。

そしてサンドラは深呼吸し、鈴の音の様な凛とした声音で挨拶をし、観客に招待状を手に取る様に言う。

観客が招待状を手に取ると、書き記されたインクは直線と曲線に分解され、別の文章を紡ぎ始めた。

 

{ギフトゲーム名“造物主達の決闘”

 

 ・決勝コミュニティ

  ・ゲームマスター・“サラマンドラ”

  ・プレイヤー・“ウィル・オ・ウィスプ”

  ・プレイヤー・“ラッテンフェンガー”

  ・プレイヤー・“ノーネーム”

 

 ・決勝ゲームルール

  ・お互いのコミュニティが創造したギフトを比べ合う。

  ・ギフトを十全に扱う為、一人まで補佐が許される。

  ・ゲームのクリアは登録されたギフト保持者の手で行う事。

  ・総当たり戦を行い勝ち星が多いコミュニティが優勝。

  ・優勝者はゲームマスターと対峙。

 

 ・授与される恩恵に関して

  ・“階層支配者”の火龍にプレイヤーが希望する恩恵を進言できる。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、両コミュニティはギフトゲームに参加します。

           “サウザンドアイズ”印

             “サラマンドラ”印}

 

此れにて本日の大祭は御開きとなった。

日も傾き始め、巨大な境界壁の影が街を包み始める。

黄昏時を彷彿させる街の装いは宵闇に覆われ、昼の煌めきとは別の姿を見せ始める。

月明かりを遮る赤壁の街は、巨大なペンダントランプだけが唯一の標としてゆらゆらと灯りを燈している。

悪鬼羅刹が魍魎跋扈する北との境界線は、夜の街に姿を変えて目覚め始めるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ

 

タカ、クジャク、コンドル

クワガタ、カマキリ、バッタ

ライオン、トラ、チーター

サイ、ゴリラ、ゾウ

シャチ、ウナギ、タコ

コブラ、カメ、ワニ

スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 






今回も今回で導入に近いので特に話す事がないですね。

後半はほぼ原作に近いですが変えようが無かったし、ゲームの説明を削るわけもいかないので。


それでは質問などあれば聞いてください。
感想待ってます。



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ネズミの襲撃と謎の女性と決闘準備


今回はちょっとした雑魚戦




 

前回の三つの出来事!!

 

一つ!!白夜叉と茶をすすっていた映司は、“造物主達の決闘”に参加する事になるのだった。

 

二つ!!レティシアに捕まった霧崎は小さな精霊を発見し、面倒事になる前に逃げようとするが、餌付けに成功してしまい肩に乗られるのだった。

 

三つ!!映司は“造物主達の決闘”の決勝まで進むのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

霧崎とレティシアが精霊を連れて歩いてる中、他の“ノーネーム”メンバーは魔王襲来の可能性があるという話を聞いていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

霧崎は精霊から名前を聞こうとしていた。

もう何かには巻き込まれるだろう事は諦めていた。

巻き込まれたら対処すればいいだけである。

どの道、白夜叉に巻き込まれるだろうから。

 

「それでお前の名前は?」

 

「らってんふぇんがー!!」

 

「それが名前なのか?」

 

少しイメージから外れるは名である。

 

「んー、こみゅ!!」

 

「………」

 

どうやら違ったようだ。

コミュニティの名前か?と首を傾げる霧崎。

 

「……どう思う?」

 

「私に聞かれてもな……」

 

考え込む霧崎とレティシア。

しばらくしても分からない物は分からないという結論をつけ、展覧会を見る事にした。

見ていると突然、ヒュゥと、大空洞に一陣の風が吹く。

その風は数多の灯火を一吹きで消し去ってしまう。

近くに人はいないが少し離れた所から叫び声が反響している。

霧崎とレティシアは戦闘体勢に入る。

こういう時は大抵、何かしらの襲撃である。

今回ならこの精霊だろう。

 

「さて、何が来るかな」

 

(出来れば来ないで欲しいけどな)

 

レティシアが呟き、霧崎が心の中で言う。

そしてネズミの群れだった。

だがそんなものは敵ではない。

現れた瞬間、レティシアが消し飛ばした。

 

(半端ねぇ~)

 

よく見るとレティシアの姿は少女から女性へと変化していた。

メイド服は深紅のレザージャケットに変わり、拘束具を彷彿させる奇形のスカートを穿いていた。

ネズミが消え、脅威が去ったと思ったがそんなことはなかった。

次は映司がグールと呼んでいた槍を持つ怪物が大量に現れた。

さすがにこの数はレティシアだけではキツいだろう。

 

「半分はそちらに任せて問題無いな、カブト?」

 

「あぁ、見てるだけってのもあれだしな!!」

 

霧崎とレティシアは互いに背を向け、グールの軍団に向かっていく。

レティシアは刃を持つ竜巻の如く、グールを一掃していく。

霧崎はグールくらいの死の脅威では脅威を返した所で意味がないので槍を奪うと、ライズで身体能力を上げてグールを斬っていく。

 

(ったくどれだけいるんだよ!!)

 

「何なのよこいつら!?」

 

叫び声が聞こえ、霧崎がそちらを向くとローブで全身を包み、フードで顔を隠しているがおそらく女と思われる人物がグールに襲われていた。

 

「危ねぇ!!」

 

その女性が背後から斬られそうになっているのを見て、霧崎はライズを全開にして近付く。

背後から斬り掛かろうとしていたグールに槍を刺し、周囲のグールを【弱者のパラダイム】で吹き飛ばす。

返しても意味はないが吹き飛ばすくらいなら出来る。

 

「大丈夫か?」

 

「えぇ、大丈夫よ」

 

「そうか。なら掴まってろ!!」

 

言って霧崎はいわゆるお姫様だっこというかんじに女性を抱き上げるとグールの頭部を蹴りながら、グールの少ない場所まで走る。

何はともあれこういう場合は女性の安全が優先である。

男として、人として。

グールの軍団から離れた所まで来ると女性を降ろす。

そしてグールの方を向く。

 

「一応、礼は言っておくわ」

 

「礼はいいから隠れてろ。あいつらが来るから」

 

霧崎自身、少し震えた声で言う。

霧崎は成長したとは言え、元々は気が強いタイプではない。

こういう場面に完全に強いわけではないのだ。

 

「面白い男ね、また会いましょ。その時はかなり近いと思うけど」

 

「は?」

 

女性の言葉の意味が分からず、振り向くが、その時には女性の姿は消えていた。

 

「どうした、カブト?」

 

どうやら全てのグールを倒したらしいレティシアが聞いてきた。

 

「いや、何でもない」

 

霧崎はそれだけ答えるのだった。

レティシアは首を傾げる。

そんな中、精霊は震えながら霧崎の肩に掴まっていた。

すっかり忘れていたが、振り落とされないように必死だったのだろう。

これ以上、襲撃が合っても面倒なので二人と一匹の精霊は朱色のランプが照らす街を進み、“サウザンドアイズ”の店舗に戻るのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

その夜、十六夜、霧崎、映司、黒ウサギ、ジン、白夜叉、そしてとんがり帽子の精霊は来賓室にいた。

白夜叉は来賓室の席の中心に陣取り、両肘をテーブルに載せこの上なく真剣な声音で、

 

「それでは皆のものよ。今から第一回、黒ウサギの審判衣装をエロ可愛くする会議を」

 

「始めません」

 

「始めます」

 

「始めませんっ!!」

 

白夜叉の提案に悪乗りする十六夜。

速攻で断じる黒ウサギ。

その後は大体真面目に話は進んだ。

コミュニティ“ラッテンフェンガー”などの事などが話され、警戒対象を定め、

 

{§火龍誕生祭§

 

 ・参加に際する諸事項欄

  一、一般参加は舞台区画内・自由区画内でコミュニティ間のギフトゲームの開催を禁ず。

  二、“主催者権限”を所持する参加者は、祭典のホストに許可なく入る事を禁ず。

  三、祭典区画内で参加者の“主催者権限”の使用を禁ず。

  四、祭典区域にある舞台区画・自由区画に参加者以外の侵入を禁ず。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

          “サウザンドアイズ”印

            “サラマンドラ”印}

 

という対策ルールがあることが説明された。

そんな中で霧崎は魔王の配下と精霊のコミュニティ名が一緒なのが気になっていたが、不安に思いつつそれは胸にしまうのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

運営側特別席では十六夜と白夜叉が異様なテンションで盛り上がっていた。

内容は黒ウサギのスカートについてではあるが。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

“造物主達の決闘”観客席は黒ウサギ登場によりかなり盛り上がっていた。

そんな事は微塵も関係無い舞台袖。

 

「___“ウィル・オ・ウィスプ”に関して、僕が知ってるのは以上です。参考になればいいのですが………」

 

「情報は助かるよ。予備知識があるとないじゃだいぶ違うからね」

 

映司はジンとレティシアと情報の確認をしていた。

次の対戦相手“ウィル・オ・ウィスプ”についてである。

 

[それでは入場していただきましょう!!第一ゲームのプレイヤー・“ノーネーム”の火野映司と、“ウィル・オ・ウィスプ”のアーシャ=イグニファトゥスです!!}

 

通路から舞台に続く道に出る映司。

そこでアーシャと多少ゴタゴタがあったがそれを気にする映司ではない。

その後、黒ウサギが白夜叉から説明があると言うと会場から喧騒が消えた。

白夜叉が招待状のとある番号の者の所に行き、旗印を確認し、バルコニーに戻る。

 

「今しがた、決勝の舞台が決定した。それでは皆のもの。お手を拝借」

 

白夜叉が両手を前に出す。

倣って全ての観客が両手を前に出す。

パン!!と会場一致で柏手一つ。

その所作一つで_____全ての世界が一変した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルス

 

タカ、クジャク、コンドル

クワガタ、カマキリ、バッタ

ライオン、トラ、チーター

サイ、ゴリラ、ゾウ

シャチ、ウナギ、タコ

コブラ、カメ、ワニ

スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 





今回はネズミと思わせグールでした。
そもそもの規模が違いますが。

映司が生身で倒せるレベルなので一体一体は普通に倒せるが数いると厄介ってパターンです。
それでもレティシアの敵ではないですが。

霧崎は弱い敵が大量に来るのは苦手なタイプです。
能力的に。


それでは質問があれば聞いてください。
感想待っています。



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迷路とカボチャとShout out


今回はゲーム開始です。
二重の意味で。




 

前回の三つの出来事!!

 

一つ!!精霊を連れて歩いていた霧崎とレティシアはグールの軍団に襲撃された。

 

二つ!!霧崎はローブに身を包んだ女性を助けるが、女性はいつの間にか消えていた。

 

三つ!!映司の参加する“造物主達の決闘”の決勝が始まろうとしていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

変化は劇的だった。

映司の足元は虚無に呑み込まれ、闇の向こうには流線型の世界が数多に廻っていた。

バフン、と着地音。

見ると下地は樹木の上だ。

否、ただの樹木ではなく____

 

「此処は樹の根に囲まれた場所かな?」

 

上下左右、その全てが巨大な樹の根に囲まれている大空洞だった。

少し離れたところではアーシャがツインテールを振り回し、呆れたように根の大空洞を見回している。

 

「しっかし、流石は星霊様ねー。私ら木っ端悪魔とは比べものにはならねぇわ」

 

ぼやくように呟いていた。

その横にはジャック・オー・ランタンが立っている。

突如、空間に亀裂が入る。

亀裂の中から出てきたのは、輝く羊皮紙を持った黒ウサギだった。

ホストマスターによって作成された“契約書類”を振りかざした黒ウサギは、書面の内容を淡々と読みあげる。

 

{ギフトゲーム名“アンダーウッドの迷路”

 ・勝利条件 一、プレイヤーが大樹の根の迷路より野外に出る。

       二、対戦プレイヤーのギフトを破壊。

       三、対戦プレイヤーが勝利条件を満たせなくなった場合(降参含む)

 ・敗北条件 一、対戦プレイヤーが勝利条件を一つ満たした場合。

       二、上記の勝利条件を満たせなくなった場合。}

 

「____“審判権限”の名において。以上が両者不可侵で有ることを、御旗の下に契ります。御二人とも、どうか誇りある戦いを。此処に、ゲームの開始を宣言します」

 

黒ウサギの宣誓が終わる。

それが開始のコールだった。

映司はベルトを装着すると、右端に青のメダル、左端に黄のメダルを同時に入れる。

そして最後に真ん中に緑のメダルを入れ、右腰からスキャナーを取り、スキャンする。

 

「変身!!」シャチ!!カマキリ!!チーター!!

 

シャチの頭、カマキリの胴、チーターの足を持つ亜種、シャキリーターに変身した。

映司はそのまま背後に走り出す。

 

「は?」

 

余裕の笑みを浮かべて眺めていたアーシャだったが自分を無視して走る映司に唖然とする。

その間に距離はどんどん離れる。

我に返ったアーシャは全身を戦慄かせ、怒りのままに叫び声を上げた。

 

「行くぞジャック!!樹の根の迷路で人間狩りだ!!」

 

ツインテールを逆立たせて猛追するアーシャ。

しかしチーターの走力の前には距離は縮まらない。

映司はシャチの能力の透視で出口を既に見付けてある。

邪魔な障害物をカマキリソードで斬りながら進むだけである。

背後から業火が来るが、チーターの走力で避けつつ、シャチヘッドから水を放ち、消火する。

その様子を見つめ、アーシャは諦めたようにため息を吐いた。

 

「………くそったれ。悔しいが後はアンタに任せるよ。本気でやっちゃって、ジャックさん」

 

「わかりました」

 

次の瞬間、ジャックの姿が映司の前方に現れる。

ジャックの真っ白な手になぎ払われそうになるが間一髪で回避する。

 

「さ、早く行きなさいアーシャ。私が足止めします」

 

「悪いねジャックさん。本当は私の力で優勝したかったんだけど………」

 

「それは貴女の怠慢と油断が原因です。猛省しなさい」

 

「う~了解しました」

 

アーシャ返事した後、走り抜ける。

映司はカマキリソードを構えながらジャックを見る。

おそらくこのジャックはジンの言っていた生と死の境界に顕現せし大悪魔の大傑作というものだろう。

 

「どうやら先に進むには貴方を倒すしかないみたいですね」

 

「ヤホホ!!そうなりますね。聖人ぺテロに烙印を押されし不死の怪物____このジャック・オー・ランタンがお相手しましょう!!」

 

カマキリソードを構え、相手の動きに注意しながら映司は考える。

相手が不死となると完全に倒す事は無理だろう。

こういう時はガタキリバを使えばいいかもしれないが、あれはこういうゲームでは反則に近いのであまり使いたくはないのが映司だ。

それを踏まえ、映司はメダルを変えスキャンする。

 

シャチ!!ウナギ!!タコ!!シャシャシャウーター!!シャシャシャウーター!!

 

そんな音声と共に姿がシャウタコンボに変わる。

シャチの頭、ウナギの胴、タコの足を持つコンボだ。

 

「ハァァァァ!!」

 

体を液状化させ、ジャックに向かっていく。

この体を液状化させるのがシャウタの能力の一つである。

この状態ならジャックの業火を食らっても多少は平気である。

 

「ヤホホ!!奇妙な技を使いますね!!しかしその力は……」

 

タコレッグを展開し、八本の足でジャックを蹴り飛ばす。

ジャックが掴もうとするが、その瞬間に液状化し、避ける。

ある程度、隙を作るともう一度スキャンする。

 

スキャニングチャージ!!

 

その音声が響くと同時に必殺技の態勢に入る。

ウナギの鞭でジャックの体を捕まえ、此方に引き寄せるようにする。

そしてタコレッグを展開し、八本の足がドリルの様に動く。

それを引き寄せるジャックへと向ける。

これがシャウタの必殺技、オクトバニッシュである。

 

「ハァァァァ!!セイヤー!!」

 

響く声と共に必殺技がジャックに当たる寸前に………ゲームは終了した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

アーシャがゴールした瞬間、会場の舞台はガラス細工のように砕け散り、円状の舞台に戻ってきていた。

同時に発動中だった必殺技も中断させられた。

呆然とする観客達。

その中で一人、黒ウサギは何事もなかったように終了を宣言する。

 

[勝者、アーシャ=イグニファトゥス!!]

 

ハッと観客席から声が上がる。

次に割れんばかりの歓声が会場を包んだ。

舞台の中心で変身を解く映司。

そこにジャックが近付いてきた。

 

「一つ、お聞きしても?」

 

「何ですか?」

 

「それはコアメダルですね?」

 

「そうですけど。知っているんですか?」

 

「ヤホホ!!これでも私は錬金術に多少通じてまして、その関係でもしやと思っただけです」

 

映司はその話に飛び付いた。

これは確実に鍵になる、アンクを元に戻すのに。

そう思い、映司は飛び付いた。

 

「その話、詳しく聞かせて貰って……」

 

映司が言い掛けた時、何かが起きた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

映司達のゲームを見ていた白夜叉達が話している中、十六夜の思考はゲームの舞台から離れていた。

彼の視線は遥か彼方、箱庭の空に向けられている。

それに気付いた霧崎も空を見る。

十六夜は怪訝な表情で白夜叉に問う。

 

「………白夜叉。アレはなんだ?」

 

「何?」

 

白夜叉も上空へ目を向ける。

観客の中にも、異変を感じた者たちが声を上げていた。

映司も、ジャックも、それを見ていた。

遥か上空から、雨のようにばら撒かれる黒い封書。

黒ウサギはすかさず手に取って開ける。

 

「黒く輝く“契約書類”………ま、まさか!?」

 

笛を吹く道化師の印が入った封蝋を開封すると、“契約書類”にはこう書かれていた。

 

{ギフトゲーム名“The PIDE PIPER of HAMELIN”

 

 ・プレイヤー一覧

  ・現時点で三九九九九九九外門・四〇〇〇〇〇〇外門・境界壁の舞台区画に存在する参加者・主催者の全コミュニティ。

 

 ・プレイヤー側・ホスト指定ゲームマスター

  ・太陽の運行者・星霊 白夜叉。

 

 ・ホストマスター側 勝利条件

  ・全プレイヤーの屈服・及び殺害。

 

 ・プレイヤー側 勝利条件

  一、ゲームマスターを打倒。

  二、偽りの伝承を砕き、真実の伝承を掲げよ。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

         “グリムグリモワール・ハーメルン”印}

 

数多の黒い封書が舞い落ちる中、静まり返る舞台会場。

観客席の中で一人、膨張した空気が弾けるように叫び声を上げた。

 

 

「魔王が…………魔王が現れたぞオオオォォォー!!」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルス

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 





vsジャック&魔王のゲームスタートです!!

今回の登場コンボはシャウタです。
サブタイトルの通りです。
最後の必殺技が当たっても倒せはしないけど距離を取るくらいの間は出来ていたというかんじです。

遂に魔王のゲームスタート!!
次回は今回出番少なかった奴らも暴れる予定です。

それでは質問があれば聞いてください。
感想待っています。



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魔王襲来と黒い風と意外な再会


魔王のゲーム開幕です。




 

前回の三つの出来事!!

 

一つ!!“アンダーウッドの迷路”が始まり、映司はシャキリーターで戦況を優位に進めた。

 

二つ!!しかしジャック・オー・ランタンに足止めされ、ゲームには敗北するのだった。

 

三つ!!上空から黒い封書が舞い落ち、魔王が襲来するのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

遥か上空、境界壁の突起に四つの人影があった。

白装束の女、軍服姿の男、陶器の様な巨兵、白黒の斑模様の少女というメンバーだ。

女はラッテン、男はヴェーザーと呼ばれた。

彼らの中の斑模様の少女が宣言する。

 

「______ギフトゲームを始めるわ。貴方達は手筈通りに御願い」

 

「おう、邪魔する奴は?」

 

「殺していいよ」

 

「イエス、マイマスター♪」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

最初の変化はバルコニーだった。

突如として白夜叉の全身を黒い風が包み込み、彼女の周囲を球体に包み込んだ。

そして勢いが増す黒い風が白夜叉以外の全ての人間ををバルコニーから押し出した。

“ノーネーム”一同は舞台側へ。

“サラマンドラ”一同は観客席へ。

一同は一通り状況を確認し、十六夜とレティシアは迎撃、霧崎、ジンは白夜叉の元に、黒ウサギと合流したアーシャとジャックはサンドラを探す事になった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

十六夜は全力で跳躍し、黒い軍服の男を不意討ちし交戦状態に入る。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

レティシアは斑模様の少女とシュトロムと交戦状態だった。

しかしレティシアは追い込まれ、黒い風に捕まりそうになっていた。

そこに映司が飛び込む。

 

「レティシアちゃん!!」コブラ!!カメ!!ワニ!!ブラカーワニ!!

 

コブラの頭、カメの胴、ワニの足を持つコンボ、ブラカワニにタトバからチェンジして躊躇なく黒い風に飛び込む。

ブラカワニは毒などに耐性があるのでそこらへんは気にすることではないのだ。

映司はそのままレティシアを黒い風に捕まる前に救い、斑模様の少女をワニレッグでオーラが噛む様に蹴り飛ばす。

 

「すまないな、映司」

 

「いいよ。仲間だからね」

 

それだけ言うと二人は斑模様の少女の方を向き、構える。

斑模様の少女も立ち上がり構える。

その時、紅い閃光がシュトロムを撃ち抜いた。

撃ち抜いた中心から溶解する陶器の巨兵。

焼きただれた巨兵はその場に崩れ落ち、土へと還る。

斑模様の少女は、閃光を放った龍を模した炎を身に纏う、北側の“階層支配者”サンドラの方を見る。

 

「待っていたわ。逃げられたのではと心配していたところよ」

 

「………目的は何ですか、ハーメルンの魔王」

 

「あ、ソレ間違い。私のギフトネームの正式名称は“黒死斑の魔王”よ」

 

「……………。二十四代目“火龍”、サンドラ」

 

「自己紹介ありがと。目的は言w

 

斑模様の少女が喋る途中で、レティシアが攻撃をしかける。

完全な不意討ちであったが、先程の黒い風の影響で体から少々力が抜けている為、効果は薄いようだ。

 

「…………邪魔しないでくれる?」

 

斑模様の少女が衝撃波をレティシアに放とうとしたところに映司が割って入る。

両腕の盾を重ね、衝撃波を完全に防ぐ。

そこへ轟々と荒らぶる火龍の炎が放たれる。

斑模様の少女は黒々とした不気味な暴風で受け止める。

二つの衝撃波は空間を歪め、強大な力の波となって周囲を満たし、境界壁を照らすペンダントランプを余波のみで砕く。

砕けたペンダントランプの残骸は、戦いを彩るかの如く煌めきを放って無散する。

その中を映司は斑模様の少女へと向かっていく。

正直を言えば見た目がこんな少女な相手にオーズの力を振るうのは不本意だが、相手は魔王、躊躇したら被害は広がると心に念じ、拳を振るう。

 

「クッ……」

 

炎を相殺したばかりで隙だらけの所に映司の拳を食らい、顔を歪め吹き飛ぶ。

そこへ再びサンドラが紅い閃光を放つ。

慌てて相殺し、周囲への警戒も同時に行う。

予想通り、映司が蹴りを放ってくるが黒い風で防ぐ。

しかし空いた隙間からレティシアの攻撃が放たれ、少し吹き飛ぶ。

立ち上がった所に紅い閃光が来る。

相殺し、続くレティシアの攻撃も防ぐ。

しかし今度は映司のワニが噛むようなオーラを纏った蹴りを食らい吹き飛ぶ。

 

(これは………面倒ね)

 

斑模様の少女心の中で思う。

三人の攻撃はどれも決定打という程ではない。

しかし二撃までは防げるが、どれか一撃は必ず食らってしまう。

これは手数の差というより人数の差であろう。

その後も戦況ま拮抗し続けた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

バルコニー入り口扉前。

霧崎達はバルコニーに通じる通路の前で立ち往生していた。

吹き飛ばされた時と同じ黒い風が、彼らの侵入を阻んでいたからだ。

 

「よいかおんしら!!今から言う事を一字一句違えずに黒ウサギへ伝えるのだ!!間違える事は許さん!!おんしらの不手際は、そのまま参加者の死に繋がるものと心得よ!!」

 

進むことも出来ない霧崎達は、扉の向こうにいる白夜叉から伝言を聞いていた。

普段の白夜叉からは考えられない、緊迫した声。

今はそれだけ非常事態ということだ。

その途中で霧崎は死の脅威を見る。

霧崎はジンを説得し、途中まで聞いた伝言を黒ウサギへ伝えるように言って、向かわせた。

例え【弱者のパラダイム】があってもさすがに完全に守り切る自信はないのだ。

そんな事を考えていると、火トカゲ達が現れ、襲ってきた。

様子を見る限り、どうやら操られてるようだがこの場合は仕方が無い。

ライズで身体能力を強化すると、なるべく傷を付けないように意識を狩り取っていく。

さすがに脅威を返すような事はしない。

それは操られてるだけの奴らにやることではない。

数十体、気絶させた所で露出が多く、布の少ない白装飾を纏う、白髪の二十代半ば程に見える女性が現れた。

 

「え………」

 

女性は霧崎の姿を見ると、驚いたような声を上げた。

そして、その声は霧崎の聞き覚えのあるものだった。

 

「あんた、あの時のか………あの言葉の意味はこういう事だったんだな」

 

「えぇ、そうよ。とは言えこんなに早く真っ正面からとは私も思ってなかったけど」

 

互いに互いを見る。

ただの偶然とは言え、何かあると感じてしまうものだ。

とは言え立場的にはそんなものは意味をなさない。

 

「一応名乗っておくわ。ラッテンよ」

 

「……霧崎カブトだ」

 

互いに互いを警戒し、すぐに交戦出来る状態で名乗り合う。

これがもう少し平和な出会いだったら……展開は変わっていたかもしれない。

互いに言葉を探り合う。

数瞬後、先に喋り出したのはラッテンであった。

 

「助けて貰った借りもあるしね、聞いておくわ。大人しく降参してくれない?悪いようにはしないわよ?」

 

「それこそ悪いが、

 

霧崎が言い切る前に、激しい雷鳴が鳴り響いた。

それにより言葉は中断され、二人の意識は別に向く。

そしてラッテンは確認をする為に、その場を離れるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「そこまでです!!」

 

黒ウサギは軍神・帝釈天より授かったギフト、“疑似神格・金剛杵”を掲げ、雷鳴を幾度も轟かせる。

輝く三叉の金剛杵を掲げ、高らかに宣言する。

 

 

「“審判権限”の発動が受理されました!!これよりギフトゲーム“The PIDE PIPER of HAMELIN”は一時中断し、審議決議を執り行います!!プレイヤー側、ホスト側は共に交戦を中止し、速やかに交渉テーブルの準備に移行してください!!繰り返します______」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 





vsハーメルン第一ラウンド終了と言ったところです。

ブラカワニ登場です。
様々な耐性があり、再生能力にも優れるコンボです。

ラッテンと霧崎に関しては話が進むままに。

いまだに介入してないあの人らに関しては第二ラウンドあたりから。


それでは、質問があれば聞いてください。
感想待っています。



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交渉と群体とゲーム再開

今回は色々と始まります。




前回の三つの出来事!!

 

一つ!!襲来した魔王、そして白夜叉は黒い風に囚われるのだった。

 

二つ!!激化する戦いの中、霧崎は以前グールから助けた女性と再開するが彼女は魔王の一味だった。

 

三つ!!黒ウサギが“審判権限”を発動させ、ゲームを中断させるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ゲームが中断され、交渉へと移る。

交渉には“ノーネーム”からは十六夜、ジン、黒ウサギが参加する。

映司はレティシアの手当てを手伝いつつ、負傷者の手当てもしていた。

霧崎も手伝おうとしたが、そこで精霊が話し掛けてきた。

すっかり忘れていたが、精霊はずっと霧崎についてきてたようだ。

霧崎は交渉が終わるまで待つように言い聞かせた。

しばらくして、交渉が終了し、ゲームのルールが改めて提示された。

 

{ギフトゲーム名“The PIDE PIPER of HAMELIN”

 

 ・プレイヤー一覧

  ・現時点で三九九九九九九外門・四〇〇〇〇〇〇外門・境界壁の舞台区画に存在する参加者・主催者の全コミュニティ(“箱庭の貴族”を含む)。

 

 ・プレイヤー側・ホスト指定ゲームマスター

  ・太陽の運行者・星霊 白夜叉(現在非参戦の為、中断時の接触禁止)。

 

 ・プレイヤー側・禁止事項

  ・自決及び同士討ちによる討ち死に。

  ・休止期間中にゲームテリトリー(舞台区画)からの脱出を禁ず。

  ・休止期間の自由行動範囲は、大祭本陣営より500m四方に限る。

 

 ・ホストマスター側 勝利条件

  ・全プレイヤーの屈服・及び殺害。

  ・八日後の時間制限を迎えると無条件勝利。

 

 ・プレイヤー側 勝利条件

  一、ゲームマスターを打倒。

  二、偽りの伝承を砕き、真実の伝承を掲げよ。

 

 ・休止期間

  ・一週間を、相互不可侵の時間として設ける。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

           “グリムグリモワール・ハーメルン”印}

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「こっち、こっち」

 

霧崎は幼い声に言われるままに進んでいた。

どうやら精霊は霧崎を何処かに連れて行きたいらしく、霧崎としても謎解きは十六夜や映司、ジン任せなので精霊に従って道を進む。

松明を片手に精霊が指を指す方へと向かっている。

現在、歩いているのは洞穴の様な所である。

しばらく歩くと巨大な門の前に立っていた。

 

「かぶと」

 

精霊は霧崎の肩から飛び降り、手ごろな岩壁の突起に立つ。

幼い表情には寂しそうな、切ないような、でも嬉しそうな、そんな瞳の精霊は_______

 

「わたしから、あなたにお願いがある。偽りの童話____“ラッテンフェンガー”に終止符を」

 

声は四方八方から聞こえた。

目の前の精霊からではなく、洞穴の虚空から、岩肌から。

この場にいるのは彼女だけではないようだ。

霧崎は彼女が何者かを思い出しつつ納得する。

 

「お前らが“群体精霊”か………」

 

「はい。私達はハーメルンで犠牲になった一三〇人の御霊。天災により命を落とした者達」

 

人の身から精霊へ。

転生という新たな生を経て、霊格と功績を手にした精霊群。

それが彼ら“群体精霊”の正体である。

 

「貴方には全てを語りましょう。一二八四年六月二十六日にあった真実を。そして偽りのハーメルンの正体を」

 

「そして貴方の悩みを晴らす方法を授けましょう」

 

「………………どうやらお見通しみたいだな」

 

霧崎は現在、ラッテンの事について悩んでいたのだった。

それを晴らす方法を授けてくれるというのなら、話を聞こうと思う霧崎であった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

魔王側本陣営。

 

「あいつもまた現れるかしら?」

 

その時は殺し合いか、と思いながらラッテンは呟くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

そして運営本陣営。

霧崎が“群体精霊”と話す中、謎解きはほぼ終わっていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

____そして二十時間後。

火龍誕生祭・運営本陣営に、活動出来る全てのコミュニティが集結する。

“黒死斑の魔王”との、ラストゲームが始まろうとしていた。

その中でマンドラは集まった人員に行動方針を読み上げていた。

黒ウサギと十六夜も作戦会議をしつつ、士気を高めていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ゲーム再開の合図は、激しい地鳴りと共に起きた。

境界壁から削り出された宮殿は光に呑み込まれ、激しいプリズムと共に参加者のテリトリーを包み込む。

見上げれば、天を衝くほど巨大な境界壁は跡形も無く消えていた。

代わりに、見た事も無い別の街並みが宮殿の外に広がっていたのだ。

参加者達は動揺するがマンドラが一喝する。

ジンが指揮を取り、捜索隊は一斉に動き始める。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

十六夜とヴェーザーは早速、交戦状態になる。

今度は十六夜が不意討ちをくらっていた。

神格を得たヴェーザーは地殻変動に比する力だが、十六夜は拳一つで立ち向かうのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「あら、早速貴方が来る?」

 

「俺としてもお前とは一応の決着は着けておきたいからな」

 

何十匹もの火トカゲを従えるラッテンの前に霧崎が現れる。

これは本人の希望であった。

たまたま助けたのが、たまたま魔王の配下だった。

それだけの話ではあるが、それも何かの縁。

その縁は霧崎は自分自身で決着を着けようと思っているのだ。

 

「さて、恩人とは言え敵同士。それでも何かの縁を感じるし、戦う前に改めて聞いて起きたいんだけど、大人しく降伏する気はない?」

 

「悪いけどそれはない。“約束”もあるが………何より仲間を裏切るわけにはいかないしな」

 

「そう、…………残念だわ」

 

本当に残念そうに、悲しそうに言うラッテン。

ラッテンの本心としても結構霧崎の事を気にいってたりするのだ。

 

「まぁ大丈夫よ。殺しはしないから」

 

「余計なお世話だ」

 

霧崎も何処か残念そうに言うのだった。

それを最後に霧崎に向かって火トカゲ達が襲い掛かる。

操られている火トカゲは一斉に火球を吐き出す。

幾つかの爆発が霧崎の周囲で起こるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

トリプル!!スキャニングチャージ!!

 

そんな音声と共に数体のシュトロムが斬られ、真っ二つになり、爆散する。

タトバコンボに変身している映司がメダジャリバーで斬り裂いたのだ。

 

「ここらへんはこれで全部かな?」

 

映司の役目は捜索隊の邪魔をするシュトロムの排除だった。

周囲にもうシュトロムが存在しない事を確認するとギフトカードからライドベンダーを取り出し、跨がる。

そしてしばらく走っていると、前方に銀色のオーロラが三つ現れる。

 

「何だ!?」

 

急ブレーキを入れる映司。

その間に各々のオーロラから何かが現れる。

 

「キシャアアアアァァァァァ!!」

 

左のオーロラからズードーパントが、

 

「ふん……」

 

右のオーロラからファントムのバハムートが現れる。

そして中央のオーロラからは、

 

 

「祭りの場所は…………ここかぁ?」

 

 

禍々しいオーラを纏いながら仮面ライダー王蛇が現れる。

映司は三体を敵と認識し、ライドベンダーから降りて構える。

三体は一斉に映司へと襲い掛かるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 




前半が超ダイジェスト気味なのは、ほぼ原作通りだからと思ってください。

再開されるゲーム、そして始まる戦いというかんじです。

対戦表
十六夜vsヴェーザー
霧崎vsラッテン及びその他
映司vs王蛇&バハムート&ズードーパント

“この”王蛇は一体のみ契約状態で、ジェノサイダーは出せないです。

映司は蛇が苦手ですが何とか我慢しているかんじです。


それでは質問があれば聞いてください。
感想待っています。



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毒蛇と感情と歪みきった狂気


今回は前回の三つの出来事は割愛です。




 

三対一、数の上では不利な状況に見えるかもしれないが、映司はそこそこ対応出来ていた。

何故なら敵側の三体は決して協力して襲ってきているわけではないからだ。

 

「ハッ!!」

 

「ゲリャアァァ!!」

 

ズードーパントは自我が無いようで本能のままに襲ってきている。

数々の動物の能力を使うのは厄介ではあるが、捌き切れない程では無い。

更に言えば、ズードーパントが本能のまま襲ってくることから他の二体を巻き込みかねない故に完全な三対一と言うわけでは無い。

ズードーパントの腹に蹴りを入れ、弾き飛ばすと他の二体が入れ換わる様に襲ってくる。

しかし王蛇とバハムートの二体も互いに我が強い為、協力などは一切無い。

むしろ同士討ちを始めかねない勢いである。

映司はメダジャリバーで王蛇のベノサーベルと鍔迫り合いになる。

途中でバハムートが殴り掛かって来るが上手く避ける。

しかしその隙に王蛇に蹴りを入れられ吹っ飛ばされる。

 

「なら、これだ!!」コブラ!!カメ!!ワニ!!ブラカーワニ!!

 

距離が離れたのを利用し、ブラカワニコンボにコンボチェンジをする。

その間に距離を縮められるが、全ての攻撃を両腕の盾で受け止める。

背後からズードーパントが飛び掛かってくるが、後ろ回し蹴りの要領で吹き飛ばす。

そしてバハムートの腹に拳を入れ、隙が出来た所で笛を取り出し吹く。

すると頭部に蛇が展開し、バハムートに襲い掛かり数回ぶつかり腕を弾き、腹に強烈な一撃を入れる。

ついでに王蛇にも一発入れる。

すると王蛇は一枚カードを取り出し、

 

アドベント

 

そんな音声と共にベノスネーカーが現れる。

 

「うわっ!?蛇!?」

 

蛇が苦手な映司が動揺している間に、ベノスネーカーが毒液を吹きかけてくる。

更に尻尾で叩かれ、吹き飛び、横に合った家が崩れる。

毒液は効かず、再生能力があるとは言え、ダメージは食らうものである。

映司が立ち上がっていると、

 

ファイナルベント

 

王蛇は必殺技の準備を開始していた。

映司は対抗するようにオースキャナーを持つと、

 

「なら、此方も!!」スキャニングチャージ!!

 

スキャンし、必殺技の準備に入る。

王蛇は飛び上がると、そのまま蹴りの姿勢に入り、ベノスネーカーの吐く毒液の勢いで加速する。

王蛇と映司の間に三つの橙の円が現れる。

ブラカワニは地を滑る様に王蛇へと向かっていく。

二つの必殺技がぶつかる。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「やっぱりトカゲごときじゃ、貴方は無理か」

 

「舐めて貰っちゃ困るな」

 

ラッテンと霧崎は一定の距離を保ちつつ、互いを見ていた。

その間には気絶させられた火トカゲ達が倒れている。

霧崎が出来るだけ傷を付けない様に倒した為に目立った外傷は無い。

ライズを使えばそれくらいなら出来るのだ。

 

「私としても殺さない様に気を使ってたんだけど……さすがにこれは出し惜しみをしている状況じゃないわね」

 

ラッテンが手を上げると、数体のシュトロムが現れる。

陶器の巨兵は何時でも霧崎を襲えるように待機している。

 

「ったく敵じゃなけりゃ、出会いはともかく、こんな運命的な再会をするくらいなんだから口説いてる所なんだけどな」

 

「それは……私も同感だけど、今は敵同士だから。“今”は無理よ」

 

「結局こうなるか」

 

霧崎が呟いた直後、数体のシュトロムが霧崎を襲う。

そしてシュトロムはまだまだ出てきているようだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

二つの必殺技が衝突する、そう思われた時、王蛇に横から影の刃の様な物が激突し、ベノクラッシュの軌道が少々ずれる。

そこへブラカワニの必殺技、ワーニングライドが直撃する。

ブラカワニの肩まで鰐の顎の様なオーラが包んでいる。

そして鰐が噛み砕く様に王蛇も噛み砕かれ、爆散する。

しかしその爆散時の煙の中で、王蛇のデッキとベノスネーカーが銀色のオーロラの中へと消えたのには誰も気付いていない。

 

「大丈夫か、映司」

 

影の刃を放ったのはレティシアだった。

映司はそちらを向くと、レティシアには所々傷が合った。

 

「その傷、どうしたんだい?」

 

「これは……あいつを相手していたらな」

 

レティシアが指差す方を見ると、

 

「ゲシャアァァァァァァ!!」

 

傷だらけのズードーパントが瓦礫の中から現れた。

どうやら近くを通り掛かったレティシアが気を利かせて足止めしていたらしい。

そして反対側からも瓦礫が崩れる音がし、バハムートが現れる。

 

「レティシア、大丈夫?」

 

「大丈夫だ。問題無い」

 

「それじゃあ、行こうか!!」

 

映司とレティシアは互いに背中を合わせ、敵へと向かっていく。

これで二対二、数の上では対等である。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「BRUUUUUM!!」

 

シュトロムは悲鳴をあげながら自壊していく。

霧崎が【弱者のパラダイム】でシュトロムが作り出した脅威を返したのだ。

それによりシュトロムは自ら生み出した乱気流により、自ら崩壊していっているのだ。

そしてこれが最後の一体、これでラッテンの手札は消えた。

 

「あー・・・・・・これは負けかな?」

 

「自覚があるなら………」

 

そこで霧崎は言葉を切る。

そして言い方を変える。

 

「今度はこっちが聞く番だ。降参してくれないか?」

 

「悪いけど、そういうわけには行かn

 

ドスッ、という音が聞こえた。

それによりラッテンの言葉が途切れる。

ラッテンは目の前の霧崎の表情が驚愕に染まっているのを見つつ、自分の口から血がたれている事に気付く。

そして、視線を下げる。

見えたのは自分の腹を背から貫く刃だった。

 

「グフッ………」

 

「ふん、」

 

「ゴハァ!?」

 

「ラッテン!!」

 

腹の刃が一気に引き抜かれ、地に崩れ落ちるラッテン。

霧崎は叫びながら駆け寄る。

ラッテンの背後にいたのは、白い魔法使いだった。

その白い姿はラッテンの血で紅く汚れていた。

そして手の中のハーメルケインからは血が滴る。

しかし白い魔法使いは、笛木は、ラッテンなど見ていなかった。

その視線の先にあるのは黒ウサギ、サンドラと交戦しているぺストである。

 

「あれだ…………あれだけの魔力があれば、暦を!!」

 

狂気の籠った声が響く。

しかし霧崎はそれどころでは無い。

霧崎は上着を脱ぎ、ラッテンの傷口へと当てる。

 

「コフッ……こりゃ駄目ね。霊格が斬られたような気分だわ」

 

「諦めんなよ!!お前にも目的があるんだろ!?」

 

「まぁ……心の残りとしては、マスターの事と………どうせ殺られるなら貴方に殺られたかった事かしらね?」

 

「…………」

 

色々言いたい事はある。

しかしそれを口に出す前にやる事がある。

霧崎は上着をラッテンに被せたまま、立ち上がる。

 

「死なせねぇ……死なせるかよ!!お前は俺が助ける!!」

 

「さっき、敵同士とか言って無かった?敵を助けて……いいの?」

 

「そんなものは関係無い。こんな終わり方は認めない、それだけだ」

 

その声は感情を押し殺した様だった。

そして立ち去ろうとする、白い魔法使いの前に立つ。

そして怒りの籠った目で睨む。

 

「お前だけは……俺が倒す!!」

 

それは普段の霧崎なら言わないであろうことだった。

それくらいに霧崎は怒っていた。

だが、熱くなり過ぎてるわけでも無い。

熱くなり過ぎて周りが見えなくなっては元も子も無いのだから。

それでも、それでも霧崎は憤怒と憎悪と殺意が籠った目で白い魔法使いを睨む。

 

「…………邪魔だ」エクスプロージョンナウ

 

対して白い魔法使いは然程気にするまでも無く、興味など最初から無いようだった。

そして容赦無く、魔法を発動させる。

霧崎の周囲で激しい爆発が起こる。

 

「貴様らなど、どうでもいいのだ。全ては暦を甦らせる為に……」

 

「そっちがどんな事情があるか何て知らねぇ。どんな事情があろうと俺はお前を許さねぇ!!」

 

爆炎の中から霧崎は白い魔法使いへと、向かっていく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 






激化する戦いというかんじでした。

王蛇に関しては後々です。

対戦表
十六夜vsヴェーザー(進行中)
黒ウサギ&サンドラvsぺスト(進行中)
映司&レティシアvsズードーパント&バハムート
霧崎vs白い魔法使い(new)
ラッテン(瀕死)
王蛇(脱落)
というかんじです。


それでは質問などあれば聞いてください。
感想待っています。



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決着と加速とSun goes up


今回は最終決戦に向けてというかんじです。




 

「ハァァァァ!!」

 

「ぬぅぅぅぅ!!」

 

ブラカワニとバハムートの拳が激しくぶつかる。

互いに二、三撃放つと、一旦間合いから離脱する。

直後にバハムートへはレティシアの影の刃が、映司にはズードーパントの爪が襲い掛かる。

バハムートは紙一重でそれを避ける。

映司は盾で受け止め、蹴りを放ち、ズードーパントを弾き飛ばす。

 

(このままじゃ埒が明かないね。それなら……)

 

考えながら映司は隙を見て、メダルを変えて、スキャンする。

 

サイ!!ゴリラ!!ゾウ!!サゴーゾ!!サゴーゾ!!

 

そんな音声と共に映司は、サイの頭、ゴリラの胴、像の足を持つ形態、サゴーゾコンボへと変貌する。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

霧崎は白い魔法使いへと向かっていったはいいが、【弱者のパラダイム】は攻撃向けの能力では無い。

単騎で突っ込んだ所であまり意味は無いのだ。

しかしそれでも近付く。

近付き、攻撃を誘導する。

 

「邪魔だと言っている!!貴様などを相手にしている暇は無い!!」エクスプージョンナウ

 

魔法陣が霧崎の前に現れ、死の脅威が見える。

だからこそ回避出来る。

【弱者のパラダイム】では無くライズで避ける。

その代わりに死の脅威を集める。

生半可な一撃じゃ倒せないのは一目で分かる。

だからこそ、死の脅威を集める。

一点集中させてぶつけるのが目的だ。

とはいえ、死の脅威に保つ時間という物がある。

死の脅威が死の脅威としての威力を保てるのはそこまで長くは無い。

そこで一つ問題があると言えば、霧崎の攻撃が白い魔法使いに当たらない事だ。

死の脅威を集めてぶつけようにも当たらなければ意味は無い。

 

(クソッ!!見た目からしてそこまで動くタイプじゃないと思ったが真逆じゃねぇか!!)

 

(ドウスル?続ケルカ?)

 

(当たり前だ!!)

 

ヨヨとそんなやり取りをしていると、

 

 

クロックアップ

 

 

そんな電子音が聞こえた様に霧崎は感じた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

サゴーゾにチェンジした映司はそのままバハムートに拳を放つ。

先程までとは威力が違う。

バハムートは吹き飛ばされながらそう感じる。

 

 

「ウオォォォォォォォ!!」

 

 

更にゴリラのドラミングの様な動作をサゴーゾが始めるとバハムートの体が重くなる。

更にズードーパントはまるで無重力空間にいるかの様に浮く。

まるで重力を操っているかのようである。

 

「ゲッ……キシャガァァァァァ!!」

 

ズードーパントがもがいていると、その体を幾つもの影の刃が貫いていく。

刃は龍の顎を形作って行き、ズードーパントは何度も噛み砕かれ、引きちぎられ、細切れにされて悲鳴を上げる間もなく爆散した。

残りはバハムートだけである。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

クロックアップ、そんな電子音が聞こえた瞬間、白い魔法使いが吹き飛ばされた。

否、何度も打撃を食らい、胸に重い一撃を受けた様子だ。

 

「は?」

 

その光景に霧崎は困惑する。

本当に一瞬の出来事だった。

本当に一瞬で白い魔法使いはボロボロになり、吹き飛ばされたのだ。

それには白い魔法使い自身も困惑している様子だ。

霧崎が困惑し、数瞬立ち尽くしていると、耳元で何かが囁かれる。

 

「トドメは譲ってやる」

 

男の声だった。

振り向いても姿は見えない。

結局、何が起きたかは分からずじまい。

しかし最後の言葉に関しては言われるまでも無い事である。

 

「ヨヨ!!」

 

(ヨシキタ!!)

 

霧崎が叫び、ヨヨが答える。

直後に周辺の死の脅威が極限にまで集められる。

そしてそれを白い魔法使いにぶつけるべく近付いていく。

 

エクスプージョンナウ!!エクスプージョンナウ!!

 

危機を感じた白い魔法使いが、エクスプロージョンの魔法を連発するがその脅威すらも死の脅威の塊へと加わる。

 

「………地獄に落ちな」

 

それだけ呟き、霧崎は白い魔法使いへ死の脅威の塊をぶつける。

直後に白い魔法使いに大量の魔法陣が集まり、暴風が集中する。

 

「ぬ、ぐぅぅ………私が……こんなところで…………暦…………」

 

激しい爆発音と共に白い魔法使いは消し飛んだ。

その火柱は天に届き兼ねない程だった。

幾ら何でも高く上がり過ぎかもしれないが、それは霧崎が横方向へ爆炎が広がらない様にしたからである。

 

「ラッテン!!」

 

あんな奴相手でもやはり人を殺すという嫌な感覚を感じつつ、霧崎はラッテンへと駆け寄るのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

バハムートは重くなる体を奮い立たせるように立ち上がり、映司へと向かっていく。

 

「ぬぁぁぁぁぁあ!!」

 

映司も迎え撃つ様に構える。

 

「ハァァァァァ!!」

 

互いの拳が互いの体へと当たる。

両者引かずに相手を殴り続ける。

レティシアも下手に手を出せないような雰囲気である。

サゴーゾは元々装甲も強化されるコンボの為、一撃一撃のダメージはそこまで響いてないが、バハムートは一撃一撃で身を削られてる様な勢いである。

それでも殴り続ける、戦い続ける。

何撃目かも分から無い、拳の放ち合いの中で映司は片腕のゴリバゴーンを射出する。

それにより怯むバハムート。

そこへゾウレッグの重い蹴りを叩き込む。

ある程度距離を離すと、映司はオースキャナーを構え、

 

スキャニングチャージ!!

 

スキャンする。

必殺技の体勢に入るサゴーゾ。

一度、真上に飛び上がると足を揃え、勢いのままに着地する。

地面にヒビが入り、その衝撃でバハムートの足が地面にめり込む。

そして、バハムートサゴーゾに向かい引き寄せられる。

 

「ハァァァァァ!!」

 

「クソッガァァァァァ!!」

 

「セイヤァァァァァァァ!!」

 

目の前にバハムートが来た瞬間にサイヘッド、ゴリラアームの三発を一度に叩きつける。

一瞬、バハムートが耐えた様に見えたがそれも一瞬の事であり、バハムートは爆散するのだった。

 

「やったな」

 

「そうだね。でもまだ終わりじゃない」

 

駆け寄るレティシア。

息を切らしながら魔王の方を見る映司。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

霧崎は倒れているラッテンの治療をしていた。

止血は勿論の事、殆ど見よう見真似でぶっつけ本番のキュアもどきを掛ける。

本来のキュアの様には当然行かない。

そもそも霧崎にキュアは使えないのだから。

こんなものは火事場の馬鹿力で一時的に発動しているだけに過ぎない。

効果も精々痛みを和らげる程度である。

 

「……無駄よ。傷の問題何かじゃない。霊格を傷付けられた時点でね……」

 

「諦めんな!!まだ手は……何か手はあるはずだ!!」

 

言いながら霧崎は思い出す。

そして懐から一枚の羊皮紙を取り出す。

これは“群体精霊”が霧崎に授けた物である。

本来の用途とは違うが、この状況でも意味はある。

 

「俺と“契約”しろ、ラッテン。“契約”でお前の霊格を補強する」

 

「それって……隷属の契約?それなら貴方でも……お断りよ。私のマスターは今は……」

 

「分かってる。分かっているし、これは隷属の“契約”なんかじゃない。あくまで対等な“契約”だ」

 

これは霊格の同調を誘発させる“契約”である。

ラッテンと“群体精霊”の似た様な霊格を同調させ、疑似的に安定させゲームが終わった後もラッテンという存在を保たせる為の物だ。

そしてゆっくりと霧崎とラッテンの霊格を同調させる物でもある。

ラッテンを説得出来た場合に使う予定だった物である。

そして今はラッテンを助ける為の希望でもある。

 

「…………でもそれってマスターに対する裏切りになるのよね……」

 

「…………なら、手伝うよ。お前らの目的を俺は手伝う」

 

「何それ?貴方が私達につk「違う」

 

「今、お前らがやってる様な方法じゃ無くちゃんとした方法なら手伝うって意味だ。まぁ先に“ノーネーム”の復興という先約があるからその後にだけどな」

 

ラッテンは一瞬、キョトンとした顔をするがすぐに笑い出す。

 

「面白い事を言ってくれるじゃない。惚れちゃいそうね。でもマスターが今のやり方を貫いてる間は駄目かな」

 

「分かってるよ。お前らがそういうのって事はな。だけどもうすぐ終わるよ。このゲームは」

 

「……何を根拠に?」

 

「根拠なんてねぇよ。ただ単にそう思っただけだ」

 

そんな事を言いながら二人は空を見上げる。

黒ウサギ、サンドラとぺストがぶつかる上空を。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

その時、ちょうど十六夜の勝負も決着が着いていた。

十六夜とヴェーザーの全力のぶつかり合いに勝利したのは十六夜であった。

そうであっても十六夜の右腕はかなり損傷していた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 





色々と決着回でした。

サゴーゾ活躍回でもあります。

クロックアップに関して軽く説明しますと、
タキオン粒子を使い、時間流を操作し、クロックアップしていない者と別の時間流の中を動くというものです。
故にタキオン粒子が無い者には見えません。

とは言ってもディケイドで設定がかなり崩れていますが。
此処ではカブト本編の設定で行きます。
決して高速移動などではありません。

クロックアップの使用者については次回をお楽しみに。

“契約”に関してはあまり深く考える事はないです。


それでな質問があれば聞いてください。
感想待っています。


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槍と決着とRide on Right time


最終決戦です。




 

現在、ぺストは触れただけで命に死を運ぶ風を発動している。

黒ウサギとサンドラも退避する。

するしかない。

霧崎がいれば話は別なのだが、無いものねだりである。

そんな中、樹霊の少年が死の風に巻き込まれそうになっていた。

そこへ、

 

ライオン!!トラ!!チーター!!ラトラタ!!ラトラーター!!

 

そんな音声と共にライオンの頭、トラの胴、チーターの足を持つ形態、ラトラーターコンボに姿を変えた映司が駆け寄る。

そして頭部から太陽の如くの激しい光と熱波が放たれる。

これがラトラーターの能力、ライオディアスである。

光に触れた途端に、死の風は霧散する。

 

「え?」

 

それにはぺスト自身が困惑していた。

太陽の輝きが死の風を振り払うもの、自身の弱点だと把握していなかったのだ。

故に太陽の如くの輝きを放つラトラーターは天敵に近い。

 

「大丈夫?早く逃げて!!」

 

「は、はい」

 

映司が叫ぶと、腰が抜けたような顔をしていた樹霊の少年は、すぐさま建物の中に逃げ込む。

 

「映司さん!!」

 

「黒ウサギちゃん!!前見て前!!危ない!!」

 

へ?と振り返る。

ぺストが放った死の風が黒ウサギのすぐそこまで迫っていた。

 

「オイコラ、余所見してんじゃねぇぞこの駄ウサギ!!」

 

側面から助勢に現れた十六夜の蹴りが、死の風を霧散させる。

何が起こったか分からないぺストは一瞬、唖然とした。

 

「ギフトを砕いた………?貴方、」

 

「先に断っておくが、俺は人間だぞ魔王様!!」

 

懐に飛び込んだ十六夜はぺストを蹴り飛ばす。

ぺストは数多の建築物を粉々にしながら吹き飛んでいく。

その様子に唖然とするサンドラ。

しかし幾千万の怨嗟の声が衝撃波と共に瓦礫を吹き飛ばした。

そしてぺストは傷を瞬時に回復させ、十六夜に微笑みかける。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

戦場から少し離れた尖塔の上、

 

カブトパワー

ザビーパワー

ドレイクパワー

サソードパワー

 

 

オールゼクターコンバイン

 

 

尖塔の上に立つ男が持っている物からそんな音声が流れる。

 

 

「お婆ちゃんが言っていた、身不相応に天に近付きし者は翼をもがれ、地に落ちる」マキシマムハイパーサイクロン

 

 

男は“それ”を構え、ぺストへと狙いを定め引き金を引く。

直後、音声と共に凄まじいエネルギー弾が放たれた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

刹那、ぺストの身体の半分以上が消し飛んだ。

 

「「「「「は?」」」」」

 

ぺストも、十六夜も、黒ウサギも、サンドラも、映司も何が起きたか分からず、困惑の声をあげる。

そんな中で十六夜が我に帰ると、黒ウサギに向かって叫ぶ。

 

「よく分からねぇが……黒ウサギ、今だ!!何かするなら今の内だ!!」

 

「は、はい!!」

 

返事をしながら黒ウサギは慌てて、白黒のギフトカードを取り出す。

 

 

「それでは、今から魔王と此処にいる主力____纏めて、月まで案内します」

 

 

白黒のギフトカードが輝き、周囲の光が暗転して星が巡る。

温度は急激に下がり、大気が凍てつくほどの過酷な環境が十六夜達を襲う。

激しい力の奔流が収まり、瞳を開けて天を仰ぐ。

天には、箱庭の世界が逆様になって浮いていた。

月の神殿を見て、ぺストは蒼白になって叫ぶ。

 

「……………“月界神殿”!!軍神ではなく、月神の神格を持つギフト………!!」

 

「YES!!このギフトこそ、我々“月の兎”が招かれた神殿!!帝釈天様と月神様より譲り受けた“月界神殿”でございます!!」

 

黒ウサギは、満天の星と箱庭を誇る様に両手を広げる。

 

「十六夜さん!!映司さん!!サンドラ様!!少し魔王に隙を作ってください!!私が決着を着けます!!」

 

「分かった!!」

「分かりました!!」

「しょうがねぇな!!」

 

言うや否や、サンドラと十六夜がぺストに向かって突撃する。

映司はライドベンダーをギフトカードから取り出し、トラカンと合体させてトライドベンダーとする。

トライドベンダーはラトラーターの余剰エネルギーを吸収させる事により、制御される。

映司はトライドベンダーに跨がり、ぺストへと向かっていく。

 

「退いて、十六夜君!!サンドラちゃん!!」

 

ぺストと殴りあったり、衝撃波と炎のぶつけ合いをしていた十六夜とサンドラは映司の言葉を聞くと一旦ぺストから離れる。

ぺスト怪訝な顔をするが、そこへトライドベンダーから放たれる光弾が襲う。

爆炎の中から飛び出るぺストに十六夜の拳とサンドラの炎が襲う。

 

「無駄よ。私を打倒するというのなら、星を砕くに値する一撃を用意なさい____!!」

 

「ハァァァ!!」トリプル!!スキャニングチャージ!!

 

そこへトライドベンダーの上でメダジャリバーを構える映司が突進する。。

メダジャリバーに三枚のセルメダルを投入し、オースキャナーでスキャンする。

 

「セイヤァァァァァァァ!!」

 

擦れ違い様にぺストを斬り、真っ二つにする。

だが、それでも倒すまでとはいかない。

 

「まだよ………このくらいじゃ……」

 

「分かってるよ。だから終わりじゃない」スキャニングチャージ!!

 

トライドベンダーから跳躍し、ぺストの真上に行き、オースキャナーでスキャンし、必殺技を発動する。

映司とぺストの間に黄色の円が、三つ現れる。

映司は落下速度も掛け合わせながら、円を潜りながら、両腕のトラクローを展開しながらぺストへと迫る。

 

「ちょ、」

 

「セイヤァァァァァァァ!!」

 

真っ二つに斬られた部分が完全に回復していないぺストには避ける術も無い。

叫びながら映司はぺストをトラクローで斬り裂くのだった。

これがラトラーターの必殺技、ガッシュクロスである。

ぺストは月面に落下すると共に爆散する。

しかし爆炎の中でまだ生きていた。

そこらへんはさすが魔王の耐久力というところである。

しかし何も映司達の目的は倒す事では無い。

隙を作れれば充分なのである。

 

「黒ウサギちゃん!!」

 

「はい、なのですよ!!」

 

傷が重くまだ動けないぺストへと、黒ウサギが迫る。

その手には投擲用の槍がある。

黒ウサギはある程度まで近付くと槍を、帝釈天の神格の宿る槍を放つ。

インドラの槍は千の天雷を束ね、ぺストを襲う。

避けられないぺストに槍は磔にするように突き刺さる。

 

「こ、この………程度、なんかで…………!!」

 

千の雷に焼かれながらもぺストは抗う。

この程度では魔王は倒せない。

しかし、インドラの槍は勢いは衰えず、力を解放していく。

 

「無駄でございますよ。その槍は正真正銘、帝釈天の加護を持つ槍。勝利の運命を宿す槍なのですから」

 

天雷は千から万へ、万から億へ急速に力を増していく。

衰える事を知らないインドラの槍は敵を焼き尽くすまで止め処なく光を放ち続ける。

穿てば必ず勝利する槍。

軍神が“勝利”の恩恵をもたらす武具が、この槍なのだ。

 

「そんな……私は、まだ…………!!」

 

「____さようなら、“黒死斑の魔王”」

 

一際激しい雷光が月面を満たす。

轟と響きを上げた軍神の槍は、圧倒的な熱量を撒き散らして魔王と共に爆ぜた。

そして月面にはクレーターが一つ増えるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

霧崎とラッテンは槍が爆ぜる様子を地上から見ていた。

ラッテンは寂しそうな、悲しそうな顔をしながら呟く。

 

「……負けちゃったか、マスター」

 

「そうみたいだな」

 

霧崎はラッテンを支えながら傍らに座っていた。

 

「………貴方、さっきの言葉に偽りはないわね?」

 

「ないよ。あるわけがないだろそんなこと」

 

「そう、なら………」

 

フラフラとラッテンは霧崎に手を伸ばし…………

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

某所。

 

「おのれオーズ!!またしても刺客を打ち破ったか!!しかしこれで終わりでは無いぞ!!」

 

中年の男は叫んだ後に銀色のオーロラに去ろうとする。

そこへ、

 

「待て」

 

とある男が現れる。

中年の男は身構え、男の方を向く。

 

「貴様、何者だ!!」

 

「天の道を往き総てを司る男。天道総司だ」

 

男は人指し指を上げて天を指しながら言う。

その姿は仮面ライダーカブトライダーフォームだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 






決着です!!
二巻も残すはエピローグのみです。

ラトラーター活躍回というところです。

最後に登場する天道!!
彼が此処にいる理由は後々。


さてはて次回のエピローグが終わったら次章に入りたい所ですが、
三巻四巻分に行くか、番外編「乙」に行くか悩み所ですね。

それと、おそらく明日エピローグを投稿したら少しの間投稿出来ないと思います。
具体的に言えば18日あたりまでです。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待っています。


映司、天道を含め、“現在”箱庭入りしているライダーは五人います。
中年の男が呼び出した分は加算していません。
その中でも天道は事情が違うと言っておきます。


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裏の戦いと別れと土地の復活

今回はエピローグです。
二巻分終了!!




「何故ここが分かった!?」

 

「お婆ちゃんが言っていた、手の込んだ料理ほどまずい。どんなに真実を隠そうとしても、隠しきれるものじゃない」

 

天を人指し指で天を指しながら天道は言う。

つまりどんなに隠れても無駄ということだろう。

 

「ふん、まぁいい。此処で使う予定では無かったが、このダークディケイドで始末してくれる!!」

 

中年の男が叫ぶと銀色のオーロラから黒いディケイドが現れる。

黒いディケイドは無言で、無感情に天道にライドブッカーをソードモードにして突き付ける。

 

アタックライド、クロックアップ

クロックアップ

 

天道とダークディケイドは同時にクロックアップする。

二人には周囲がスローモーションに見える。

そんな中で激しくぶつかり合う。

数十度目の衝突で、ダークディケイドのが吹き飛ばされる。

 

クロックオーバー

クロックオーバー

 

同時にクロックアップも解除される。

そしてダークディケイドが押されている様子に中年の男は驚愕する。

 

「な、何故だ!?別世界とはいえカブトの力も取り込んでいる筈だ!!」

 

「それは俺ではない。例え俺だとしても、俺の進化は光より速い。全宇宙の何者も俺の進化にはついて来れない。過去の俺を解析したところで意味などない」

 

アタックライド、インビシビル

 

そんな音声と共にダークディケイドは姿を消す。

姿が見えなければ対応出来ないと判断したのだろう。

 

「無駄だ」ハイパーキャストオフ

 

ハイパーゼクターをいつの間にか手に持っていた天道はハイパーフォームへと変化する。

そしてパーフェクトゼクターを呼び出し、手に持つと地面に叩き付ける。

地面は砕け大量の土煙が上がる。

それによりダークディケイドの動きが浮き彫りになる。

 

アタックライド、クロックアップ

ハイパークロックアップ

 

どうやら慌ててクロックアップをしたようだが、天道がハイパークロックアップをした時点でそれも意味を無くす。

ハイパークロックアップの中ではクロックアップですらスローモーションである。

そしてパーフェクトゼクターに各種ゼクターを取り付ける。

 

カブトパワー

ザビーパワー

ドレイクパワー

サソードパワー

オールゼクターコンバイン

 

そしてパーフェクトゼクターをダークディケイドのいるであろう場所に向け、引き金を引く。

 

マキシマムハイパーサイクロン

 

パーフェクトゼクターから放たれたエネルギー弾はダークディケイドを跡形も無く消し飛ばすのだった。

そして同時にハイパークロックアップが解除される。

 

「何!?」

 

「次はお前だ」

 

(おのれ、天道総司!!“試作品”とは言えダークディケイドを倒すとは!!)

 

中年の男は苦虫を噛み殺すような表情をしながら、マスカレイド、屑ヤミー、ダスタード、グールを大量に召喚し、銀色のオーロラへと消えるのだった。

 

「逃げたか」

 

その全てを消し飛ばした天道は一人で呟く。

 

「クイーン・ハロウィンは俺に白夜叉への借りを作らせたかったのだろうが……俺は俺でやるべき事がある」

 

それだけ言うと、天道はクイーンに渡された道具を使用し、何処かに消えるのだった。

おそらくは妹の待っている所であろう。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ゲーム開始より十時間後。

ゲームは勝利で終わった。

各コミュニティはゲームの後始末を始めるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

霧崎は大空洞の中にいた。

 

「これで良かったんだな?」

 

「はい。これで帰れます」

「一二八四年のあの日に」

「第二の故郷へ」

 

霧崎彼らの正体は聞かされていた。

だからこそ、確認するように言う。

 

「街造り、上手く行くといいな」

 

「ありがとう」

「そんな貴方にこそ託せれます」

「一三一人目の同士と____紅い鋼の巨兵・ディーンを!!」

 

へ?と言う言葉は、激しい風に掻き消される。

現れたのはとんがり帽子の精霊と、紅い鋼の巨兵だった。

 

 

[____我々が後の世に授かる、開拓の霊格をその子に授けました。

私達が箱庭に残せる、最後に生きた証。貴方に託します______]

 

そんな声のついでに耳元で、

[この霊格は彼女の霊格を支える足しにもなるでしょう。彼女と上手く行くといいですね]

と呟かれた気がした。

 

「余計なお世話だ」

 

それだけ呟くと、霧崎は肩にとんがり帽子の精霊を乗せながら、紅い鋼の巨兵を見る。

はっきり言って霧崎には使い道も、使いようもない代物であった。

その時、精霊が目を覚ました。

 

「………かぶと?」

 

「よう、メルン。起きたか」

 

「めるん?」

 

「そう。お前は、今から俺達の同士だ」

 

霧崎の言葉に首を傾げるメルン。

周囲を見回し、考えた後、

 

「____はい!!」

 

満面の笑みで、元気よく返事をするのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

映司は、ジャックに聞きそびれていた事を聞いて、後日詳しく話すと約束を取り付けていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

とある病室。

そこには腹に包帯を巻き、病人服を着た白髪の女が病人用のベッドに寝転んでいた。

その病室のドアが開き、霧崎が入ってきた。

 

「よーラッテン。調子はどうだ?」

 

「傷も霊格もかなり安定してきたわね。二人分の霊格、それも片方は似たような性質となれば私一人くらいなら安定かせれるようね。全く狙っていた存在に命を救われるとか人生どうなるか分かったもんじゃないわね」

 

悪戯っぽく笑うラッテン。

彼らが交わした“契約”は霊格を同調させるものだ。

そして幾つかの細かい条件も設定してある。

【一】、“目的”に対しまともな方法なら協力する。

【二】、【一】に関しては“ノーネーム”復興を優先してよい。

【三】、互いに上下関係無く対等である。

【四】、上記を破った場合、破った者の命を絶つ権利が片方に与えられる。

以上が契約内容である。

あの場で簡単に設定した物なので単純ではある。

 

「それにしても魔王の配下と対等の契約するなんて物好きがいるとはね~♪」

 

「その物好きの契約に応じた時点でお前も結構な物好きだよ」

 

「まあね♪」

 

それを言うとラッテンは一旦言葉を切る。

そして霧崎の方を見つめる。

 

「………“契約”したからには“責任”はちゃんと取りなさいよ」

 

少々頬を染めながらラッテンが言うと、霧崎も頬を赤め困惑する。

 

「え、ちょ、それって………」

 

「うっさい!!私は寝る!!」

 

そう言ってラッテンは布団にくるまり、だんまりを決め込むのだった。

色々聞きたいとこだったが、霧崎は諦めてベッドの隣の椅子に座るのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

十六夜はマンドラと話を終え、部屋から出ようとすると、部屋の外に気配を感じ叫ぶ。

 

「其処に隠れてる奴、出てこい!!」

 

(わぁ、気付かれたか)アタックライド、インビシビル

 

十六夜が扉を開ける頃には扉の外には誰もいなかった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「むり!!」

 

ブンブンブンブン!!と激しく首を振るメルン。

土地の修復を頼んだのだが、どうやら厳しいようだ。

そこへ、十六夜が土壌の肥やしを提案すると、

 

「できる!!………かも!!」

 

どうやら試す価値くらいはあるようだ。

 

「さ~て、そうと決まれば行くわよ、ディーン!!」

 

霧崎の背後にいたメイド服のラッテンがディーンを従え、ついでに子供達も連れて飛び出していった。

ラッテンがメイド服なのは、ラッテンは魔王の元配下である為、表向きは隷属ということにしておかないと色々と面倒なのである。

ディーンに関しては霧崎では使いようが無いので、ラッテンに譲ったのだ。

 

「カブト君!!十六夜君!!廃材持ってきたよ!!」

 

ラッテン達と入れ換わるように映司が廃材を抱えてやってきた。

十六夜が提案を出した時にはいなかったはずだが、何故廃材を?と首を傾げる。

 

「いや、土地の修復なら肥料が必要かと思ってね」

 

どうやら先に行動していたらしい。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

南の某所。

 

「おい、そっちの木材はこっちだ!!収穫祭が近いんだ!!キビキビ働け!!」

 

「おい、ガロロ!!人使いが荒いぞ!!」

 

「居候が文句を言うな。働かざる者食うべからずだ」

 

「そもそも、俺はお前の護衛という話だったろ!!」

 

「今は護衛はいいからこれを手伝えという事だ」

 

「全く……仕方がないな」

 

男は渋々と言ったように了承する。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

青年は森の中でバイクの隣に立っていた。

 

「此処は何処?」

 

あたりを見回すが広がるのは森、森、森。

道という道は見当たらない。

 

「何処ぉぉぉ!?」

 

青年は呆然と立ち尽くすのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 





二巻分終わりです。

ダークディケイド(試作品)はカメンライドせずにアタックライド出来るかわりに結構スペックが犠牲になっています。

最後の方の名前を出していない彼らは後々登場です。
誰が誰かは、大体分かるかと。


前回も言いましたが18日くらいまで更新が出来ません。
ですので次回から始めるのは、三巻分か番外編「乙」かアンケートを取りたいと思います。
メッセージか活動報告の方に、
三巻か、
番外編「乙」か、
回答をお願いします。


それでは質問などあれば聞いてください。
感想待っています。



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道化とサーカスと寂しがり屋の人形
少女とショータイムと黒ウサギの消失


久しぶりに投稿です。

今回からは番外編「乙」のサーカス編です。
漫画における一話、二話は既に終了したところから開始します。
理由としてはあの肉屋のゲームはこのメンバーですと、どう頑張っても数分で終わるからです。

ではでは始まりです♪


某所。

 

「私は、私は_____として甦ったのだぁぁぁぁぁ!!」

 

「「「「「イー!!」」」」」

 

男が叫ぶと、男を囲む全身黒タイツの集団は一糸乱れずに敬礼するのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

“ノーネーム”本拠。

 

「さあ、皆さんお肉が焼けましたよーっ。順番に取りに来ましょうねー」

 

“ノーネーム”のメンバーは肉屋とのゲームの戦利品であるバーベキューセットを囲んでいた。

何だかんだと役に立つ物である。

 

「はい、レティシアちゃん。焼き加減レアだったよね?」

 

「すまないな」

 

近くでは映司がレティシアに焼けた肉を渡していた。

本来なら逆ではあるが、映司としてはレティシアをメイドとして見てないのでそこらへんは関係無い。

カサッ、そんな音が草影から聞こえると、

 

「何者だ!!」

 

レティシアは串をそこへ向かって投げるのだった。

 

「きゃあ!?」

 

悲鳴と共にレティシアには見慣れぬ少女が現れた。

しかし、映司と黒ウサギは知っていた。

この前、肉屋から助けた少女である。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「「「サーカスのチケット?」」」

 

十六夜、霧崎、映司が同時に言う。

話を聞く為に少女を部屋に入れていた。

少女の名はフェルナというようだ。

この前のお礼に、とサーカスのチケットを持ってきたようだ。

サーカスというのは、現在東の街に来ている移動サーカスの事である。

 

「ラッテン、どうする?」

 

「私は貴方が行くと言うのなら行くけども、霧崎」

 

ラッテンの方を向き、尋ねた霧崎だったのだが。

そんな答えをラッテンはしたものの、眼は「言え」と示している。

どうもどうやら、行きたいようである。

霧崎としても興味はあるので此処は行く事にするのであった。

そしてリーダーであるジンも羽を休めるいい機会ということで行っていいという事になった。

 

「それでは本日はギフトゲームもお休みにして、行楽日と洒落込みましょう!!」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

そして十六夜、黒ウサギ、映司、霧崎、ラッテンそしてフェルナはサーカスのテントへと向かっていた。

サーカスは昼頃から公演のようだ。

どうも一日一回の公演しか無いようだ。

そんな貴重なチケット入手してくれたことに感激して、黒ウサギはフェルナに抱き付くのだった。

そして後ろを振り向くと、

 

「また突然の自由行動ですかーっ!?」

 

一人残らず消えてる事を確認して、絶叫するのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

映司はフラフラとしているだけだったので割とすぐに発見出来た。

どうやら屋台が気になったようである。

 

「レティシアちゃんや子供達にお土産でも持って帰ろうと思ってね」

 

「それはいいですが、せめて一言お願いします!!」

 

理由もまともである。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

霧崎とラッテンもすぐに見付かった。

というか、かなり目立っていた。

霧崎はラッテンに腕を組まれ、引きずられてるようだった。

 

「ほらほら、この髪飾りいいと思わない?」

 

「そうだな」

 

返事をするが、それでは不満というかんじの視線を向けてくる。

数秒後、霧崎は折れるのだった。

 

「分かったよ、買えばいいんだろ。買えば!!」

 

霧崎は渋々と髪飾りを購入して、ラッテンに渡す。

ラッテンは渡されてすぐにその髪飾りを付けて霧崎の方を見る。

 

「……似合う?」

 

「似合うし、綺麗だよ」

 

聞いてくるラッテンに、少々頬を赤めながら目線をそらす霧崎。

そんな様子で周囲から(特に男から)視線が集中していた。

黒ウサギは発見次第、二人を無言でハリセンで叩くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

十六夜は、十六夜で早くに見付かる。

それもその筈で、着ぐるみと喧嘩していたのである。

全員発見したものの、黒ウサギは腹を押さえながら項垂れるのだった。

 

「せっかくの休日だと言うのに胃がねじ切れそうですぅ………」

 

「た………大変なんだね……………」

 

細々と呟く黒ウサギ。

同情した様に言うフェルナであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

テントの前に着くと、ピエロに案内され中へ入るのだった。

 

 

「イッツショータイム!!」

 

 

中では既にショーが始まっていた。

黒ウサギはハシャギにハシャいでいた。

ずいぶんストレスが溜まってたようである。

何が原因かと問われれば、近くに座る問題児達なのであるが。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

その様にショーは進行し、いよいよクライマックスである。

ラストの大マジックである。

観客の中から一人選ぶようだが、光が指したのは、

 

 

「えっ!!えっ!?く………黒ウサギですかっ!?」

 

 

黒ウサギであった。

舞台に出た黒ウサギは椅子に座らせられる。

どうやら黒ウサギの姿を変える、というマジックのようだ。

団長がカウントダウンをし、黒ウサギが煙に包まれるとその姿は、

 

 

「すげーっ!!ドラゴンだーっ!!」

 

 

大きなドラゴンへと変わるのだった。

大歓声が響く。

団長が一礼し、

 

「これにて本日の公演は終了どす。皆様のまたのお越しを待っとります」

 

と締め括るのだった。

しかし“ノーネーム”の面々はそれどころでは無かった。

 

「黒ウサギは……何処に行った?」

 

黒ウサギ何処に消えた。

そこが問題であった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

スタッフに裏口から聞いたが収穫は無かった。

一同は仕方無く、フェルナが取っておいた宿へ向かうのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

その夜、映司が窓の外を見るとサーカスのテントに灯りがついてるように見えた。

 

「気のせいかな?」

 

しかしもう一度見れば、消えていたので気のせいと結論付けるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ちなみにその隣の部屋。

 

「お前は別の部屋だろ!!」

 

「あら?別に添い寝くらいいいでしょう?手出しはしないから安心していいわよ?」

 

「そういう問題じゃねぇだろ!!」

 

「よいではないか~よいではないか~」

 

「よくねぇ!!」

 

霧崎とラッテンがどんちゃん騒ぎしているのだった。

黒ウサギが行方不明中だが、ラッテン的にはどうせ無事という認識らしい。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

翌日。

メルンを本拠に向かわせたり、カンドロイドを大量に放ったりしたのだが収穫は無かった。

しかし十六夜はフェルナから何らかの話を聞けたようだ。

 

「いいいいやっほおおおお!!」

 

そこへ、白夜叉が飛び込んで来るのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

その後、白夜叉が黒ウサギと間違いラッテンの胸に飛び込んだりして、一悶着あったりしたのだがそれはまた別の話である。

そんなこんなで本題だが、どうやら白夜叉はサーカスを観に行った者達が帰って来ぬと言う話を聞き、来たようだ。

 

「それって黒ウサギちゃんと同じ?」

 

「やはりおんしらも見物に行っておったか。だとすれば、黒ウサギはそれと同一の事件に巻き込まれた可能性が高いぞ」

 

それを聞いて、十六夜はフェルナから聞いた話を語り始める。

どうやらフェルナのコミュニティのメンバーも被害にあってたらしい。

そして初めから十六夜達に頼る為にサーカスへと誘ったらしい。

それを聞き、一刻も早く解決しよう、という事になるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

そして、サーカスのテント前に来た一同だったがテントには灯りがついていた。

 

「どうやら昨日のは気のせいじゃ無かったみたいだね」

 

映司が一人呟く。

その時、“契約書類”が突然現れた。

 

{ギフトゲーム名“Funny Circus Clowns”

 

 ・プレイヤー一覧

  ・現時刻にテント前に現れた者

 

 ・クリア条件

  ・円形闘技場にて五回試合での三勝以上

 

 ・なお、プレイヤー達は招待状を見付けなければ闘技場への入場を許可されない

 

 ・敗北条件

  ・上記の条件を陽が昇るまでに満たせなかった場合}

 

白夜叉がルールを読み上げた。

そして十六夜達の方を向く。

 

「……どうやら、始まってしまったようだの。覚悟は良いなおんしら」

 

白夜叉は確認するように言うのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 





今回は三話、四話分でした。

導入回です。
次回からバトルです。

霧崎とラッテンに関してはご想像にお任せを。
但し、一線は越えてないです。
それは確実に。
更に言えば、まだ関係性としてはくっついてるわけでも無いです。

ラッテンとしては迫りはするが、ちゃんとした関係になるまでは一線は越えないつもりです。

冒頭の集団は後々。
言える事は謎の中年とは別です。


それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。



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招待状と道化と黒ウサギの行方


ゲームスタートです。




 

前回の三つの出来事!!

 

一つ!!何者かが復活するのだった。

 

二つ!!以前助けた少女、フェルナに連れられて行ったサーカスにて黒ウサギが消えるのだった。

 

三つ!!白夜叉と合流し、テント前に行った一同はギフトゲームに参加することになるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「しっかし、招待状を探すとはいえどうしたものかしらね?」

 

霧崎の隣を歩くラッテンが呟く。

彼らは現在、手分けして招待状を探していた。

とはいえ手掛かりも無いので進展も無い。

 

「情報が少ないからな………とりあえずヒントになるものでもあればいいんだけどな」

 

そんな事を話しながら二人は夜の街を歩いていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

十六夜は白夜叉と共に酒場で情報を聞き出していた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

そんな中で映司は一人“それ”を見付けていた。

カンドロイドが発見したのだ。

 

「やあ、見付けたよ」

 

「アハハ、いらっしゃいマしみなサマ」

 

そこにはピエロがいた。

サーカスにいたピエロである。

 

「それで招待状は持ってるよね?」

 

「もちロンだとも!!」

 

聞かれるとピエロは招待状らしき物を取り出す。

それを見ると、映司は先手必勝の如くピエロに向かい蹴りを放つ。

 

「え?」

 

しかし吹っ飛ばされたと思った、ピエロは体を液状にして衝撃を逃がしていた。

 

「体を液状にするギフトかな?それだと……少し面倒だな」

 

言いながらベルトを取り出して、腰に装着する。

そこへ体を変化させながらピエロが攻撃を放ってくる。

 

「アハハ、何をスルか知らないけどサセないよ~」

 

更に分裂し、四方八方から攻撃が来る。

 

「こレハ避けられないダロう?」

 

「それはどうかな?」

 

映司が言った直後、霧崎が割り込み攻撃はズラされる。

 

「へ?」

 

「させるかよ」

 

「ありがとうね、変身!!」タカ!!トラ!!チーター!!

 

霧崎が作った隙を使い、変身する映司。

その姿はタカの頭、トラの胴、チーターの足を持つ亜種、タカトラーターに変わる。

 

「ウワぁ、スゴいねぇ~」

 

言いながらピエロは攻撃を放つ。

しかしチーターの力で高速移動をする映司と、死の脅威を祓う霧崎が相手では当たらない。

それ所か、一ヶ所に固められる。

 

「お前らだけ楽しそうにしてんなよ!!」

 

そこへ、十六夜が飛び込んで来る。

十六夜は現れるなり、ピエロに向かい思いっきり蹴りを放つ。

その衝撃により地面は陥没する。

 

「ほうほう地面に大穴を開けて液体を逃がしにくくしたか。言わば即席の貯水地だの!!」

 

「なんつーデタラメパワー………というか、よく打ち合わせも無く即席でやるれるわねあいつら…………」

 

いつの間にかいた白夜叉とラッテンが呟く。

確かに見ている側からしたら次々と集まってるだけなのに、打ち合わせ無しに連携が取れているように見えるだろう。

しかし彼らはそれくらいは互いを信用しているのだ。

 

「やっぱりこの独特な匂い……お前は油絵の具だな?」

 

「……っ!!」

 

正体を見破る十六夜。

図星のピエロは絶句する。

 

「そ………そレがわかっタカラってどうするんっテんだ!?」

 

「燃やすけど」

 

「お前、火なんテ持ってナ……!!」

 

十六夜は無言で後ろを指差す。

そちらでは、

 

タカ!!クジャク!!チーター!!

 

映司がコンボチェンジをしていた。

タカの頭、クジャクの胴、チーターの足を持つ亜種、タカジャーターにへと変わっていた。

そしてタジャスピナーが左腕に現れる。

タジャスピナーを開き、ベルトからメダルを取り外し、中にセットする。

 

キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!

タカ!!クジャク!!チーター!!ギン!!ギン!!ギン!!ギン!!ギガスキャン!!

 

そしてタジャスピナーを閉じて、オースキャナーを使いスキャンしていく。

力がタジャスピナーへと溜まり、ピエロに向け構える。

 

「さ………させルかぁああああッ!!」

 

ピエロは慌てて大穴から出ようとする。

 

「させるかよ!!」

 

霧崎が先回りする。

ピエロはなりふり構わず攻撃をするが、それが逆に自らを追い込む。

攻撃による死の脅威を霧崎は大穴へとズラす。

ピエロの攻撃は自身の体を使ったもの。

故に大穴へと引き戻される事になる。

そこへ、

 

「セイヤァァァァァ!!」

 

タジャスピナーからエネルギー弾が放たれる。

炎を纏いしその攻撃はピエロに直撃する。

 

「ギャアァァァァァ!?ああ……ア………そん…………ナァ……」

 

直撃を受けたピエロは体をほぼ消し飛ばされ、残りも燃え散るのだった。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ピエロが燃え尽きた後には魔法陣が残った。

白夜叉によれば、これに乗ると本拠へと飛ぶようだ。

つまりこれが招待状という事だろう。

十六夜、白夜叉、映司、霧崎、ラッテンは一刻も早く行く為に躊躇無く乗る。

そして光に包まれた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

移動した先は大天幕の中であった。

昼間とは雰囲気がかなり違うようだ。

一同が周囲を見渡していると背後から、

 

 

「おやおや、皆さん。お揃いでどうなされたのですか!?」

 

 

聞き覚えのある呑気な声が聞こえてくる。

 

「あっもしかして!!黒ウサギの玉乗り芸を見に来てくださったのですねーっ!?」

 

振り向くと予想通り黒ウサギであった。

黒ウサギは大玉に乗り、笑顔で近付いて来ていた。

その笑顔は無性に怒りを誘う。

そして十六夜、ラッテン、白夜叉は同時に思う。

 

 

「「「この笑顔…………殴りたい……………」」」

 

そして一拍置いて、

 

「まぁ……とりあえずだ」

 

白夜叉は目を一瞬閉じ、

 

「揉みたかったぞ黒ウサギィィィィーッ!!」

 

「ひゃああああ!?」

 

黒ウサギの胸に飛び込むのだった。

 

「「もうお前は引っ込んでろ!!」」

 

霧崎とラッテンは同時に叫ぶのだった。

これ以上ややこしくするなという思いを込めて。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

そこから黒ウサギには事情を説明させた。

どうもどうやら公演の後に裏手で団長にスカウトされたらしい。

アルバイトという感覚で引き受けたようだ。

しかしそれについて、団員が伝えておくことになっていた。

しかし十六夜達はそんなことは全く聞いてない。

何はともあれ、帰ろう。となった所で、

 

「おい!!下がれ!!」

 

十六夜が何かに気付き叫んだ。

そして霧崎が黒ウサギとラッテンの前に立つと、飛んできていた剣の軌道をそらす。

 

「あきまへんなお客様。まだギフトゲームは終わっとらんどす」

 

「団長さん!?」

 

そして団長が現れた。

 

「このゲームはここからが本番。円形闘技場で五回試合での三勝以上………クリア条件にもそうあったはず」

 

「え!?え!?いつの間にそんなことになっていたのですか!?」

 

困惑し、混乱する黒ウサギ。

しかし団長は構わず続ける。

 

「みすみす帰すわけにはいきまへんなあ。もう一遍サーカス仕込みの剣撃を食らいたいなら話は別ですけど……」

 

それはそれでいい、と数人思ったが口には出さない。

 

「他のお客様もそろそろ退屈してはるやろし、はよそちらのトップバッター決めてくれますか?ちなみにこっちのトップバッターは………」

 

そこで団長は一拍開ける。

 

 

「この黒ウサギさんどす!!」

 

 

黒ウサギを指名するのだった。

 

「………………え……?」

 

予想外な言葉に困惑する黒ウサギだった。

 

◆◆◆◆◆

 

 

某所。

 

「奴も復活した。奴が入ればしばらく私は準備に専念出来るだろう。兵は貸してあるし奴も“能力”はある」

 

それだけ呟くと中年の男は銀色のオーロラへと消えた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 

 






今回は主にvsピエロでした。
とはいえほぼ相手にならなかったわけですが。
そこらへんは相性の問題です。


それでは質問があれば聞いてください。
感想待っています。



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闘技場とサーカス団員と集団の空想劇


黒ウサギvs十六夜は原作通りにしかならないのでダイジェストです。




 

前回の三つの出来事!!

 

一つ!!招待状を探す一同は道化を発見するのだった。

 

二つ!!道化と交戦状態に入るが、勝利し大天幕に転送されるのだった。

 

三つ!!転送された一同を迎えたのはムカつく笑顔の黒ウサギであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

トップバッターに指定された黒ウサギは十六夜と戦う事になるのだった。

ルールはリングアウトもしくは戦闘不能にさせたら勝利。

黒ウサギはわざと負けたらいいのでは、と考えるのだが体が勝手に動いて戦ってしまうのだった。

結果として勝負は引き分けに終わった。

操られているのは白夜叉の仮説では錯覚のようだ。

何はともあれ、一戦目は引き分けだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「さて、次は私の番ね!!」

 

ラッテンが舞台の上に立っていた。

“ノーネーム”で次に出場するのはラッテンなのである。

 

「本当にいいのか?俺でもよかったんだが……」

 

「いいの。いいの。貴方は私の戦う様をしっかりと見てなさい、霧崎」

 

そんなやり取りをしてラッテンは前を向く。

相手は猫系の獣人のようだ。

ラッテンが戦う前に一言言おうとすると、

 

「はぁ~何でアタシの相手がこんな“オ・バ・サ・ン”なんだか」

 

やけにオバサンの部分を強調して聞こえるように呟いた。

それを聞いたラッテンは………

 

 

「だぁぁぁぁれがオバサンだ………この小娘がぁ!!」

 

 

ブチギレていた。

顔をひきつらせ叫ぶ。

そしてギフトカードから最近手に入れた武器を取り出す。

そう、白い魔法使いが使っていた武器、ハーメルケインを取り出す。

 

「さ~て、そんな挑発してくるということは…………覚悟出来てるわね?」

 

「アハハ!!煩いよ!!“オ・バ・サ・ン”!!」

 

猫女が剣を持って斬り掛かる。

猫系の獣人なだけあってかなり素早い。

しかしラッテンはいとも簡単に避ける。

 

「へ?」

 

「遅いわよ……」

 

「ゴブファ!?」

 

避けると同時にハーメルケインの刃の付いてない部分で腹を殴る。

 

「ゲホォゲホォ」

 

猫女はいまだに腹を押さえて咳き込んでいる。

 

「悪いけど私は元魔王の配下でね。格が違うのよ、貴女とは!!」

 

追撃を紙一重、ギリギリ避けると猫女はテントのロープの上に跳び乗る。

 

「は?元魔王の配下?なにそれ?それどうしたってのよ………大口を叩くのはこの数を捌いてからにしてくれる!!」

 

猫女のギフトはサーカス用具を無尽蔵に操る。

それにより大量のサーカス用具をラッテンへと放つ。

しかしラッテンは冷静にハーメルケインに口を付け演奏する。

すると周囲に魔法陣が現れ、猫女の攻撃を防ぐ。

更に演奏により、猫女は力が抜ける。

 

「身の程を知る事ね……小娘が!!」

 

力が抜けたところで距離を縮め、場外に思いっきり叩き付けるのだった。

これで“ノーネーム”一勝目である。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「霧崎、見てくれた?」

 

「あぁ、お前って怒ると怖いんだな」

 

「そ・ん・な・所は見なくていいのよ!!」

 

霧崎の耳を引っ張るラッテン。

これは霧崎が悪い。

一方、舞台の上には映司がいた。

彼が三戦目の出場者である。

 

「えーと、君らが相手かい?」

 

映司の視線の先には極小の鶏、猫、犬とイカついロバ太郎とやらがいる。

 

「俺達はブレーメン隊!!」

「甘く見てると痛い目を見るぜ!!」

「ぶっ殺されたくなければ降参するがいい!!」

 

「うん、そうだね」

 

適当に返事する映司。

映司はまだ変身していない。

こういうのは穏便に舞台から落とそうと考えているのだ。

 

「今だ!!突撃!!」

 

そんな中、ブレーメン隊の小さい三匹が飛び掛かってくるのだが映司はひょいひょいと避けていく。

背後からロバ太郎が襲い掛かってくるが後ろ回し蹴りで吹き飛ばす。

割と強めに。

 

「どうする?」

 

「お、おのれ~」

「なめてくれた物だな」

「俺達の本気を見せてやる!!」

 

「「「いくぞ!!」」」

 

そんな掛け声と共にブレーメン隊が煙に包まれる。

そして煙から出てきたのは、

 

「スーパー♪合体!!これぞ、ブレーメンの音楽隊最強形態だーっ!!」

 

巨大なロボットだった。

 

「ハハハ驚いたか!?俺達は北g

 

「変身!!」タカ!!トラ!!バッタ!!タトバッ、タトバ、タットッバ!!

 

ブレーメンの台詞の途中で映司は変身し、タトバコンボに姿を変える。

 

「何だ、その歌は!?」

 

「歌は気にしなくていいよ」

 

何時かアンクが言ってたような事を言いつつ、トラクローを展開する。

そしてブレーメンが降り下ろす翼を斬り砕く。

 

「な!?」

 

「そういう事なら、遠慮しなくていいよね?」

 

小動物相手なら多少は気にするが、ロボット相手なら気にしない。

映司はメダジャリバーを構えると、セルメダルを三枚入れる。

右腰からオースキャナーを取り出して、スキャンする。

 

トリプル!!スキャニングチャージ!!

 

「え!?いや、ちょ、待っ……」

 

「セイヤー!!」

 

「ギャアァァァァァァ!?」

 

メダジャリバーを振るうと、ブレーメンは背後の空間ごと真っ二つに斬られる。

そして空間だけ元に戻り、ブレーメンは爆散するのだった。

 

「これで二勝目だね」

 

残すはあと一勝である。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

その時、外ではレティシアとジンがフェルナと出会っていた。

そしてフェルナが敵側という事を見抜き、様子が変だということを感付いた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

いよいよ最終戦である。

相手は団長。

 

「じゃ、まだ戦って無いし俺が行くか」

 

霧崎が舞台に上がった。

 

「いいのですか、カブトさん?」

 

「何もしないってのは後味悪いからな」

 

何はともあれ、舞台に上がれば変更不可である。

ちなみに白夜叉は拗ねている。

十六夜も、映司も、ラッテンも本人の希望なら止めはしない。

 

「さて、相手はあんたか」

 

「そうなるな」

 

答えた直後に鞭が飛んできたが、“脅威の幻視”で見えているので簡単に避ける。

しかし霧崎、そして“ヨヨ”は奇妙な感覚であった。

見えている死の気配が妙なのだ。

まるで何か別の力が加わってるような。

 

(これは何だ?)

(オ前ニ分カラナイナラ俺ニモ分カラナイ)

 

そんな事を考えていると、

 

「霧崎!!お前の切り札を見せたらどうだ!!」

 

背後から十六夜が叫んできた。

そして小声で「ハッタリだ。合わせろ」と言ってきた。

何かは知らないがとりあえず合わせる事にはした。

 

「あぁ、俺の切り札を見せてやるよ。死を振り撒く切り札をな!!」

 

「「「「「は?」」」」」

 

霧崎が叫んだ直後、観客が動揺する。

それもそのはず、つい最近その手の魔王が北側で出現し、元魔王の配下を連れた者がそんな事を言えば動揺するだろう。

何にしろ得体が知れないのは間違い無いのだから。

 

「さ~て、余り近くにいない方がいいぜ?巻き込んで死なせかねないからな!!」

 

それを合図に観客は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

 

「皆待ちなはれ!!最後までここで観てるんや!!そんなデタラメに騙されたらいかんどす!!」

 

明らかに団長が取り乱す。

その隙は逃さない。

何の為のハッタリかは知らないが、まだ何かあるかも知れない故に霧崎は団長に近付くと打撃を加えて場外に落とすのだった。

 

「これで俺の勝ちだよな?」

 

「えぇ、そうどすな」

 

団長はあっさりと認めるのだった。

後々聞くと団長のギフトは“空想劇”と言い、複数人のイメージが集中した物を具現化するようだ。

 

「……ノーネームか。名無しにしては骨のあるコミュニティやった……久々に楽しませて貰ったどす」

 

団長は言いながら黒ウサギに手を伸ばす。

黒ウサギも伸ばし、二人の手が重なる。

 

「アンタ達ならもしかしたら、このサーカスを………」

 

その言葉を言い切る前に団長の姿は跡形も無く消えた。

 

「え?」

 

「団長さんが消えた?」

 

一同が首を傾げた時、会場全体が揺れ出した。

そして会場の姿が変化し、ボロボロな姿へと変わる。

まるでこれが本来の姿であるように。

 

 

「アハハハハハ!!まダ戦いは終わらせナイヨー♪」

 

 

聞き覚えのある癇に触る声が響き、

 

「こコで選手交代っ………ダンチョーに代わっテ、このボクがオ相手しヨウじゃないかーっ!!」

 

金髪の薔薇を持った男が現れるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 






vsサーカス団員終了です!!
次回は最終決戦です!!

ほぼ一方的な戦いでしたがそこらへんはスペック差という事で。

ラッテンがハーメルケインを扱えたのは霊格の相性がよかったからです。

それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待っています。


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人形と虚栄とサーカスの終幕


今回で「乙」は一旦終了です。




 

前回の三つの出来事!!

 

一つ!!十六夜と黒ウサギの勝負は引き分けに終わるのだった。

 

二つ!!その後の勝負は“ノーネーム”の連勝であった。

 

三つ!!団長が消え、金髪の男が現れるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「やっぱりまだ生きてたのか、ねじ切れ太!!」

 

「どさくさニ紛れて変ナあだ名ツけるのやメテくれナいかな?ピエールだよ!!」

 

どうやら金髪の男は、外で倒した絵の具のようだ。

そしてその背後にはサーカスに取り込まれた人々が現れる。

 

「全員まトめてかかってオいで。皆でワイワイ楽シんデ、拍手喝采のフィナーレとイこうじゃなイか!!」

 

叫ぶピエール。

一同は迎え撃つ為に身構える。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「さて皆さん!!いよいよゲームも大詰めです!!相手は取り込まれていたコミュニティの方々!!迂闊に手を出せない以上、ここはやはり作戦会議を行うべきで………」

 

黒ウサギは策を立てる為に一同を見るが、

 

「ってやっぱりガンガン行ってる!!」

 

一同は既に交戦していた。

作戦は[ガンガン行こうぜ]で固定のようだ。

 

「こんな大混戦で策は意味無いだろ?」

 

「そりゃそーよね」

 

霧崎とラッテンが互いの隙を埋めるように動き、集団の中で混戦している。

 

「ま、極力怪我はさせないから」

 

映司は変身状態ではなく生身で攻撃をヒラヒラ避けながら、襲い来る人々の意識を刈り取っていく。

 

「せっかく戦闘解禁されたのだ!!暴れさせんかー!!」

 

白夜叉が嬉々とした様子で吹き飛ばしていく。

 

「ううう……どうして皆さんはそうやっていつも…………黒ウサギの言う事を聞いてくれないのですかーッ!?」

 

黒ウサギは涙目で自棄になりながらも、人々を殴り蹴っていく。

一方の十六夜は敵に囲まれていた。

 

「いくら破天荒ナ君デモ…………こノ人数を上手くあしらい切レるかなァ!!」

 

ピエールと人々が一斉に十六夜へと襲い掛かる。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方のレティシアとジンは動かなくなったフェルナを眺めていた。

するといきなりテントが爆発して、十六夜が飛び出てきた。

その後ろに涙目で雑魚を吹き飛ばした十六夜に文句を言う黒ウサギが現れる。

そしてフェルナが突然動きだし、何度も何度も同じ事を繰り返し言う。

その姿はボロボロの人形であった。

その間もピエールは体を絵の具にしながら攻撃してくる。

 

「白夜叉、この町をぶっ壊すぞ!!」

 

十六夜が白夜叉に向かって言う。

どうもどうやら町中に根を張るピエールをどうにかするらしい。

黒ウサギがギャーギャー文句を言ってくるがそんなことはお構い無しに進める。

 

「「行くぞ!!」」

 

十六夜と白夜叉が大きく一撃を放とうとした時、

 

「アガァ!?」

 

ピエールが悲鳴を上げ、町中にヒビが入った。

 

「何が起きた?」

 

十六夜が怪訝な顔をしながら周囲を見回すと、かろうじて人型を保っていたピエールの部分の腹部に剣が刺さっていた。

しかしそれでどうにかなるとは思えない。

 

「“虚栄(ヴァニタス)”よ。貴様は我ら大ショッカーが回収させて貰う」

 

そんな声が聞こえると、町中に張られていた絵の具が剥がれ、剣を中心に集まっていく。

それで“虚栄”の背後にいた人物が見えるようになる。

その男は白いスーツの男だった。

白いスーツの男が小瓶を取り出すと、“虚栄”はその中に入れられていく。

全部入ると蓋が閉められスーツの中に仕舞われる。

その間に十六夜は距離を縮め、飛び掛かる。

 

「お前!!何者だ!!」

 

「私はガイ。貴様らにとって、とても迷惑な存在なのだ!!」

 

「なら現れんな!!」

 

そんなやり取りをしながら、ガイと名乗った男は手を横に向ける。

そこに魔法陣が現れ、ガイはその中から銃を取り出す。

 

「マグナムショット!!」

 

「うおぉ!?」

 

十六夜の眉間を狙い放たれた銃撃を首を捻ってギリギリ避ける。

そのまま十六夜は少々距離を取る。

 

「大丈夫、十六夜君?」

 

「あぁ」

 

一同はガイへと視線を向ける。

 

イー、イー、イー

 

ガイの背後には何処からともなく全身タイツの集団が、ショッカー戦闘員が集まっていた。

 

「ふん、今は貴様らを相手にする気は無い。立ち去らせてもらおう」

 

「「「待て!!」」」

 

銀色のオーロラを出現させるガイ。

十六夜、映司、霧崎が駆け寄ろうとするが戦闘員に阻まれる。

戦闘員を全員な倒した時にはガイの姿は何処にも無かった。

何はともあれ、些か問題は残ったもののサーカスは終幕した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

数日後。

“ノーネーム”本拠。

一同はバーベキューをしていた。

 

「………かつて滅ぼされた魔王の遺留品……か。あの移動式テントも、マリオネットも、よくあれ程長い稼働出来ていた物だな。限界が来ていたとはいえ大したものだ」

 

「なんだか切ない話よね~」

 

「あいつ、同じ事を繰り返してたんだろ?」

 

「そうみたいだね。解放された人は北や南のコミュニティばかりなようだし」

 

「まったくとんでもねぇさみしがり屋もいたもんだぜ。なあ、黒ウサギ」

 

「そうですね~」

 

話を振られ、返事をする黒ウサギ。

 

「なんで黒ウサギだけ、はんぺんなんでしょうか?」

 

「「「心配かけたペナルティ」」」

 

「みたいだね」

 

同時に答える問題児達。

 

「今回は迷惑かけられたの此方だしね~」<ほら、口を開けなさいよ、霧崎

 

「敵にも回るし」<自分で食うっての!!

 

「この箱庭の貴族(迷)」

 

「まぁまぁ、そのくらいにしとこうよ」

 

あまり言い過ぎない様に映司が言う。

黒ウサギとしては無駄に正論なので突っ込み返せない。

約二名、適当についでの様に言ってるだけのようでもあるが。

その後、ジンと話し、十六夜達のコミュニティの目標に対する思いを聞き、感激した所を落とし穴に落とされた黒ウサギは、涙目でハリセンを持って追い掛け回すのだった。

本拠は今日もワイワイ騒がしかった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

某所。

 

「これで我らの計画へと一歩近付くのだ!!」

 

白いスーツの男は“虚栄”の入った小瓶を取り出す。

そして緑色の“何か”が入った壺に放り込む。

 

「へ?いや!?こんな!?ギャアァァァアァァ!?」

 

直後に“虚栄”の悲鳴が響くが“喰われる”ような音がして静かになるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 

 





サーカス編終幕!!
次回からは三巻分です!!

残りの「乙」に関してはコミック出たらやります。

ガイに関しては“ガイ”という呼び名自体が設定だけで劇中に使われなかったものですので、今のところは白いスーツの謎の男です。
正体に関しては後々。


それでは質問があれば聞いてください。
感想待っています。



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収穫祭と空の古城と十三番目の太陽
競い合いと宴と南の祭り


今回から三巻です。




南の某所。

 

「ったく、あの樹を目指せとか言われたけど結構距離あるな」コネクトプリーズ

 

魔法陣から水を取り出した男はバイクに乗りながら呟いた。

既に幾つかの集落で世話になっている。

その度にあの樹、巨大な水樹を目指せと言われていた。

どうもどうやら情報とかはあそこで聞けと言う事らしい。

男は少しの間、休憩すると再び樹を目指しバイクを走らせた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

その日、東の三ヶ所にて爆音が響いた。

その音は十六夜、霧崎、映司が白夜叉の依頼の為に受けたゲームに決着を着ける音だった。

三人は各々とある目的の為にゲームの戦果を競いあっていた。

その過程で偶然、全員が白夜叉の依頼を受ける事になった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

とある事情とは南で開かれる収穫祭の事である。

しかし主力が本拠にいないというのはマズイので収穫祭に出れる日数に偏りが生まれてしまう。

それをゲームの戦果で決めようという話である。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

しかし十六夜の名は“ノーネーム”の評判と共に広がり、参加出来るゲームは少なくなっていた。

唯一受けれたのが白夜叉の依頼という事である。

しかし時を同じくして霧崎と映司も各々別の依頼を白夜叉から受けていたのだ。

霧崎と映司は各々それなりの戦果は上げていた。

霧崎は山羊と土地を、映司は“ウィル・オ・ウィスプ”から炎を蓄積できる巨大なキャンドルホルダーを、というかんじである。

故に十六夜はそれなりに焦っていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

“サウザンドアイズ”支店。

その前にて十六夜、霧崎、映司はばったり出会った。

ついでにラッテン、ジン、レティシアもだ。

どうもどうやらちょうどよく重なったらしい。

店先にて女性店員と一悶着がいつも通りあったが、それこそいつも通りに白夜叉に通される。

 

「しかしタイミングが同じになるか………」

 

「そんな偶然もあるだろ」

 

「君達も依頼は達成したのかい?」

 

「まあな。お前らも戦果を受け取りにか?」

 

「そんなところだ」

「そんなところだね」

 

話している内に白夜叉の部屋の前に着く。

中から黒ウサギと白雪姫の悲痛な声が響いてる。

白夜叉の影は二人に襲い掛かるようであった。

その後、いつも通りとはいえ無いが一悶着あり白夜叉は吹き飛ばされるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

十六夜達三人が受けた依頼は水源施設の開拓の手伝いのようなものだった。

その為に十六夜は白雪姫を隷属させてきた。

一通り話し、報酬を受け取る。

報酬はジンに渡された。

直後にジンは硬直する。

 

「こ、これ………まさか……………!?」

 

「どうしましたジン坊ちゃん?」

 

黒ウサギもそれを見て驚愕して動かなくなる。

それは外門の利権証であった。

大歓喜する黒ウサギは十六夜の胸に飛び込む。

十六夜は黒ウサギの体の感触をどさくさ紛れに楽しみ役得というかんじである。

とはいえ、この戦果は三人に分散、十六夜に少し多めというかんじではあるが既に結構な戦果を霧崎と映司は上げている。

つまりは十六夜の負けに近いわけだが、勝負は勝負なので納得しているようだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

その夜。

“ノーネーム”では小さな宴の席が設けらるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

宴が終わり、霧崎の自室。

 

「だ・か・ら!!何でお前は一週間に一度くらいの間隔で俺の部屋に侵入してくるだよ!?」

 

「えぇー別にいいじゃない………手を出そうってわけじゃないわよ……ちょっと添い寝くらいしたっていいでしょ?」

(ちゃんとした関係になるまではね)

 

ボソリ、と呟くラッテン。

その部分は霧崎には聞こえていない。

何はともあれ、現在の霧崎の部屋にはラッテンがいて、顔を赤くした霧崎が文句を言ってるという様である。

ラッテンしては側にいたいというかんじである。

他意はなく。

こんなやり取り自体は霧崎の言う通り、一週間に一度くらいある。

但し、今回は少し違った。う

 

「分かったわよ。今日の所は此処で引いてあげるから…………収穫祭に私を連れていくと約束しなさい」

 

「元から連れてく気だったよ」

 

顔をそらしながら即答する霧崎。

嘘では無い。

それはラッテンにも分かっている。

ラッテンは口元を緩ませるとドアノブに手を掛ける。

 

「それはよかった。催促するまで無いとは…………(更に惚れさせてくれるじゃない)」

 

「何か言ったか?」

 

ただでさえ、呟く様に小さい声だったが最後の方は聞こえてなかった。

 

「それじゃ明日は楽しみにしてるわよ。おやすみ、霧崎」

 

「あぁ、また明日なラッテン」

 

そのやり取りを最後にラッテンは部屋を出るのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

その頃、風呂場では十六夜、リリ、レティシアが一緒に風呂に入っていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

映司は自室で割れたアンクのメダルを握りながら月を眺めていた。

 

「可能性が見えてきたよ、アンク」

 

“ウィル・オ・ウィスプ”でジャックより聞いた話を思い出しながら呟くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

翌朝、霧崎、ラッテン、映司、ジン、黒ウサギは本拠を後にするのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

____七七五九一七五外門“アンダーウッドの大瀑布”フィル・ボルグの丘陵。

外門を出た一同が目にしたのは樹の根が網目の様に張り巡らされた地下都市と、清涼としたしぶきの舞う水舞台だった。

 

「かなり大きい水樹だね……」

 

「あの水路の水晶……」

 

「北側でもあった物よね?」

 

各々が呟いていく。

その後、“サウザンドアイズ”のグリフォン、グリーと再会して宿まで運んで貰うのだった。

途中で“ウィル・オ・ウィスプ”のアーシャとジャックとも出会い、“主催者”への挨拶に一緒に行く事になるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一同は螺旋状に掘り進められた“アンダーウッド”の都市をグルグルと回りながら登っていく。

深さは20mほどだが壁伝いだとそれなりに距離がある。

出店からは美味しそうな薫りが漂う。

 

「ちょ!!映司さん!!何処に行くつもりですか?」

 

「あぁ、ごめん。ちょっとそこらを見てみようかと……」

 

「後にしてください!!」

 

フラリ、と何処かに行きそうになっていた映司を引き止めて念を押す。

しかしその間に、

 

「ね~霧崎、次はあれにしましょう」

 

「おい、どれだけ食うつもりだ………金にも限界があるぞ…………」

 

ラッテンに引っ張り回される霧崎と両手に色々と抱えたラッテンが出店を回り始めていた。

 

「何してんだあいつら!?」

 

アーシャが思わず叫ぶ。

ついでに色々と見せ付けられてるようなかんじであり、少々イライラしているようだ。

 

「まぁまぁ落ち着いて、アーシャちゃん」

 

「子供扱いするな!!」

 

そんなアーシャの頭に手を乗せ、撫でるようにする映司。

まるで子供のような扱いに更にイライラするアーシャ。

 

「ちょっと目を離した隙に何をやってるんですか貴方達は!!」

 

スパン!!、とハリセンで叩く音が響く。

黒ウサギがラッテンと霧崎に突っ込みを入れたのだ。

ラッテンは不満そうな顔で文句を言う。

 

「少しくらいいいじゃない」

 

「“主催者”への挨拶が最優先です!!」

 

スパパァーン!!、と一際大きな音が響くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

そんなこんなで一同は大樹の下まで来ていた。

大樹を見上げながら霧崎は黒ウサギに問う。

 

「この樹、どれくらいだ?」

 

「全長500mと聞きます。向かう場所は中程の位置です」

 

つまりは250m。

それも梯子や備え付けの足場を伝っていくしかない。

 

「じゃあ、行こうか」

 

しかし映司は躊躇無く進もうとする。

世界を回ってきた映司にとってこのくらいは苦では無いようだ。

とはいえ他のメンツが付き合えると言えばそうでもない。

 

「ちょっと待て!!」

 

だからとりあえず止めておくのだった。

 

「ヤホホ!!本陣まではエレベーターがありますのでそちらを使えばいきですよ」

 

エレベーター?と首を傾げる一同。

まさか箱庭にエレベーターがあるとは映司も霧崎も思ってはいない。

ジャックに案内されて着いたのは、水式エレベーターだった。

それによりものの数分で本陣に辿り着くのだった。

そこからは木造の通路に降り立ち、進む。

そして受付で火龍誕生祭で映司が助けた少年の姉に出会い、礼を言われた。

招待状をくれたのは彼女達らしい。

そこで“龍角を持つ鷲獅子”の議長であるサラ=ドルトレイクの話になった。

その名はサンドラの姉の名前であった。

すると、聞き覚えの無い女性の声が聞こえ、熱風が大樹を揺らす。

その発生源は空から現れた女性の炎翼だった。

 

「サ、サラ様!!」

 

「久しいなジン。会える日を待っていた」

 

現れたのはサラ=ドルトレイク本人であった。

彼女は受付の少女に笑い掛けて遊びに行かせるのだった。

 

「ようこそ、“ノーネーム”と“ウィル・オ・ウィスプ”。下層で噂の両コミュニティを招く事が出来て、私も鼻高々といったところだ」

 

「…………噂?」

 

「ああ。しかし立ち話も何だ。皆、中に入れ。茶の一つも淹れよう」

 

手招きをしながら本陣の中に消えるサラ。

両コミュニティのメンバーは怪訝に顔を見合わせるも、招かれるままに大樹の中に入って行った。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 





導入回でした。

十六夜のヘッドホンは無事です。

冒頭の人に関しては後々。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。


次回、あいつが登場する…………かも


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巨人と濃霧と無法者の襲撃


あいつ登場!!




 

前回の三つの出来事!!

 

一つ!!とある男は“アンダーウッド”の大樹を目指していた。

 

二つ!!問題児達の競い合いは霧崎と映司が勝利して、二人が収穫祭に先に行く事へなった。

 

三つ!!一同はサラに案内されて、大樹の中へと入って行くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

貴賓室。

一同が招かれた貴賓室は大樹の中心に位置する場所だ。

そこでサラと“ペルセウス”や魔王の事を話したりした。

その途中で扉がノックされる。

 

「誰だ?」

 

「俺だ。ガロロの奴から届け物だ」

 

うんざりしたような声が聞こえてきた。

サラは苦笑しながら入るように言う。

 

「ついに郵便まで押し付けられたのか?」

 

「そうみたいだな。あいつ、護衛という話がいつの間にか便利屋みたいな扱いだ」

 

本当にうんざりした様子で入ってきた男は、届け物をサラへと渡す。

映司は男に見覚えがあるように感じた。

男の方も映司に気付いたようだ。

 

「お前は………確か仮面ライダーオーズ、火野映司だったか?」

 

「そうですね。貴方は確か………」

 

「門矢士だ」

 

映司が言う前に士は自ら名乗った。

そのやり取りに周囲は怪訝な顔をする。

 

「知り合いか?」

 

「いや、顔を見た事があるくらいだ。まだ俺が行った事の無い“世界”の人間だからな」

 

そんな風に答えた後、二人は少し話す事がある、と言って部屋を出た。

部屋に残っているのは霧崎、ラッテン、黒ウサギ、ジン、アーシャ、ジャック、サラである。

その後、少し話すと黒ウサギは“ノーネーム”のメンバーを(強引に)連れて最下層へと向かった。

“ブラック★ラビットイーター”を焼きに行くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

焼いた後は日が暮れるまで収穫祭を見学した。

幾つかのギフトゲームの参加申請を済ませ、バザーや市場を見て回った。

途中で霧崎&ラッテンが消えそうになるが、その度に止める黒ウサギだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

宿の映司の個室にて、士と映司は語り合っていた。

互いの箱庭に来た経緯などをである。

士はたまたま来た世界が箱庭だったが思いの外広いので時間を掛けて見て回ろうと計画していたようだ。

その資金集めの為にガロロの護衛についてるわけである。

とはいえ、もはや雑用係に近いが。

そんな風に話していると、

 

「映司さん!!士さん!!緊急事態でございますッ!!」

 

黒ウサギが勢いよく扉を開いた。

 

「「どうした?」」

 

「襲撃ですッ!!“アンダーウッド”は現在、魔王の残党に襲われております!!我々もすぐに協力を____

 

そこで黒ウサギの言葉が切れる。

宿舎の壁をぶち抜き、巨大な腕が三人の前に現れた。

 

「は!?」

「な!?」

 

二人は驚きの声を上げつつ、ベルトを腰に装着する。

そして映司はメダルを、士はカードを構える。

ベルトにそれらを入れると、

 

「変身!!」カメンライド、ディディディケイド!!

「変身!!」タカ!!トラ!!バッタ!!タトバッ、タトバ、タットッバ!!

 

士はディケイドに、映司はタトバコンボに姿を変える。

直後に襲撃者が巨腕を振るって宿舎を薙ぎ倒す。

士、映司、黒ウサギは宿舎の外に飛び出る。

 

「巨人か……」

 

襲撃者の全身を見て、士が呟く。

全長三十尺の巨体であった。

とはいえ、映司も士もある意味見慣れているので驚きはしない。

 

「オオオオオオオオオオオオッォォォォオォ!!」

 

猛々しい声を上げて仮面の巨人が襲い掛かってくる。

巨大な剣を降り下ろして来るが、彼ら三人が避けられない程ではない。

 

「黒ウサギちゃん!!魔王の残党ってまさか…………」

 

「いえ、この不埒者どもはギフトゲームを無視して襲ってきました。即ち典型的な無法者の集団でございます!!」

 

黒ウサギの声には明らかに怒気が含まれている。

ギフトゲームを破った蛮行に腹を立てているのだろう。

 

「お前ら!!大丈夫か!!」

 

霧崎が巨人に蹴りを入れつつ現れた。

その後ろからはラッテンが着いてきている。

 

「此方は大丈夫です!!」

 

答える黒ウサギ。

その後、黒ウサギの指示で映司、士、霧崎、ラッテンは地表へと出る事になった。

彼らが暴れると地下都市が崩れかねないのだ。

地下は黒ウサギに任せる事になっている。

映司と士はギフトカードからバイクを取り出し、霧崎とラッテンを後ろに乗せるとカンドロイドの上を走って地表へと向かう。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

地表は乱戦状態だった。

平原と大河の岸で、弾き合う鋼の音が響く。

飛び散る火花が、夜の帳を照らし出す。

轟々と撃ち合う炎の矢と、竜巻く風の壁が弾け合う。

奇跡の結晶である“恩恵”を用いた戦争が“アンダーウッド”の麓で繰り広げられていた。

士、映司、霧崎、ラッテンは各々状況を確認して動き出す。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

士は自身の役目の為に戦場をバイクで走っていた。

 

「とりあえずガロロの奴を見付けないとな」

 

言いながら二枚のカードを取り出して、ベルトに投げる。

 

カメンライド、ク、ク、クウガ!!

フォームライド、ペガサス!!

 

士の姿はベルト以外がディケイドからクウガ・ペガサスフォームに変わる。

そしてボウガンを構えて、能力を生かし、正確に周囲の巨人の脳天を撃ち抜く。

何だかんだ、士も“アンダーウッド”で数ヵ月過ごして、そこに住む者たちがやられるのは見ていられないのだ。

 

「まぁこれも“雑用”の一環だ」

 

呟きながらも巨人を倒し続けるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

スキャニングチャージ!!

「セイヤァァァァァ!!」

 

映司は戦場に飛び込むなり、タトバキックを発動し数体の巨人を消し飛ばす。

 

クワガタ!!トラ!!チーター!!

 

爆炎から飛び出た直後、クワガタの頭、トラの胴、チーターの足を持つ亜種、ガタトラーターへと姿を変える。

クワガタヘッドから電撃を放ちつつ、チーターレッグで高速移動し、トラクローで急所を斬り裂いていく。

 

クワガタ!!ゴリラ!!チーター!!

 

胴をゴリラへと変えて、ガタゴリーターとなる。

腕のゴリバゴンーンを発射して目の前の巨人を吹き飛ばす。

 

ライオン!!トラ!!チーター!!ラトラタ!!ラトラーター!!

 

ラトラーターコンボに姿を変えると、ライドベンダーを再び取り出してトラカンと合体させてトライドベンダーとする。

そしてトライドベンダーに跨がるとメダジャリバーを取り出す。

 

トリプル!!スキャニングチャージ!!

「ハァァァァァ!!」

 

トライドベンダーから光弾を放ちつつ、メダジャリバーですれ違い様に巨人を斬り裂いて行くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

二人の仮面ライダーが巨人を倒していく中、霧崎とラッテンは後方の防衛線で構えていた。

霧崎としては攻めるより守る方が能力的にも得意なのだ。

 

[来タゾ]

「分かってるよ!!」

 

街の方へと向く攻撃を【弱者のパラダイム】で祓い、近付く敵を撃退していく。

霧崎より後ろには傷がほとんど無かった。

 

「さて、私も働かないとね♪」

 

ラッテンはディーンに乗りつつ、笛を奏でる。

その音色は味方を強化しつつ、巨人の力を削ぐ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

彼らの雄姿に“アンダーウッド”の士気が一気に高まる。

これを勝機と見た誰かが、大樹の上で“龍角を持つ鷲獅子”の旗印を広げて照らした。

サラは巨人を振り払い、赤髪をたなびかせて叫ぶ。

 

 

「“主催者”がゲストに守られては末代までの名折れッ!!“龍角を持つ鷲獅子”の旗本に生きる者は己の領分を全うし、戦況を立て直せ!!」

 

一喝に応じて、おおと鬨の声が上がる。

サラの一喝で己を取り戻した各コミュニティは、旗印の下に集って本来の役割に就く。

それにより巨人は後退を始める。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

刹那、琴線を弾く音がした。

反応する間もなく一帯は濃霧に包まれる。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

しかし、そんなものは一切仮面ライダーには関係無い。

士は元よりこういう事態を想定して目の利くクウガ・ペガサスフォームにしたのだし、映司は頭部をシャチに変えれば問題はない。

そして霧崎にとっても霧は意味が無い。

死の脅威さえ見えていればどうにでもなるのだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

彼らの活躍、そしてフェイス・レスの活躍によって戦況は以前押していた。

少し時が経ち、安全を知らせる鐘が鳴らされた。

濃霧は晴れ、一同は満月を見上げるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

某所。

 

「おのれ、ディケイドォォォォォ!!遂にオーズと接触してしまったか!!だが、私も準備は出来ている」

 

中年の男は銀色のオーロラの中へと消えた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 






士、登場でした。
台詞が少なかったかも知れませんがそれは次回以降で。

vs巨人第一ラウンドは終了です。
次回から第二ラウンドです。

彼女も登場。(ライダー関係では無い)


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。



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強襲と琴とぺスト復活




今回で三巻終了です!!




 

 

 

 

 

前回の三つの出来事!!

 

一つ!!“ノーネーム”一同は仮面ライダーディケイドこと門矢士と出会った。

 

二つ!!その夜、突然巨人が襲撃してくるのだった。

 

三つ!!彼らは協力して巨人を退却させるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

本陣営では、サラと黒ウサギとジンとジャックとアーシャが話をしていた。

そこで“バロールの死眼”や魔王の残党兵や南の“階層支配者”の事だ。

そしてサラからジンへと白夜叉から預かっていた魔王のゲームの報酬、“グリムグリモワール・ハーメルン”の指輪が渡された。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

前回の襲撃から一時間後、巨人がかつてない大軍を率いて、再び強襲してきた。

戦場に琴線を弾く音が響く。

その音色は最前線の仲間の意識を奪っていく。

ジャックとアーシャはフェイス・レスに加勢する為に最前線へと向かう。

 

「変身!!」カメンライド、ディディディケイド!!

「変身!!」ライオン!!トラ!!チーター!!ラトラタ!!ラトラーター!!

 

映司と士はすぐさま変身して、士はマシンディケイダーに、映司はトライドベンダーに跨がって戦場へと飛び込んで行ってしまう。

 

「ラッテン、」

 

「言われなくても分かってるわよ。でもちょっと解析するのに時間が掛かるかもしれないわ」

 

やり取りが終わると、ラッテンは何処かへと向かう。

霧崎が言おうとしたのはラッテンに琴線の音色を相殺する演奏をして貰うということである。

ラッテンは言われずとも察して解析に向かったのだ。

 

「それで俺らはどうする、ジン?」

 

霧崎は振り返って、ジンに聞く。

ジンは少し考え、

 

「戦線を混乱させ、堅琴の術者を破ります」

 

方針を示す。

 

「俺はどうすればいい?」

 

霧崎は作戦を聞く体勢に入る。

何はともあれ、今動けるのは霧崎だけなのだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

作戦を聞いた霧崎は出来るだけ感付かれない様に移動していた。

 

「(さて、出来るだけ目立ってくれよな)」

 

離れたところにいる仲間に心の中で語りかけるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

映司と士は数の、体格の差を関係無く巨人を薙ぎ払い続けていた。

 

トリプル!!スキャニングチャージ!!

「セイヤ、セイヤ、セイヤァァァァ!!」

 

トライドベンダーの上でメダジャリバーを構えて巨人を斬っていく。

更にトライドベンダーから放たれる光弾は巨人を吹き飛ばす。

 

アタックライド、ブラスト!!

「ハァァァァ!!」

 

そのカードをスキャンするとガンモードのライドブッカー周囲に銃口が幾つも現れる。

そして全ての銃口から無数の弾丸が放たれる。

マシンディケイダーで移動しながら放たれる弾丸は巨人を撃ち抜いていく。

 

「うわぁ………凄い事になってますね…………」

 

「そうだね…………」

 

その様子をグリーの上から見ている黒ウサギとジンは唖然としていた。

映司と士が暴れているところを中心に巨人の軍団にポッカリと穴が空いている。

その隙間を利用してジン達は進んでいた。

ある程度、敵陣に踏み込むと足を止める。

そしてジンは“グリムグリモワール・ハーメルン”の指輪をはめた右腕を掲げる。

 

 

「隷属の契りに従い、再び顕現せよ______“黒死斑の御子”______ッ!!」

 

 

刹那、漆黒の風が戦場に吹雪いた。

うごめくように生物的で、不吉を具現化させたような黒い風は、瞬く間に戦場を駆け抜けていく。

召喚の円陣には笛吹き道化の旗印が刻まれ、その中心へと黒い風が圧縮される。

やがて人型へと変化していく黒い風は、圧縮された全ての空気を放出して爆ぜた。

爆心地は白と黒の斑模様の光が溢れ、その中に顕現したモノは___

 

 

「______何処に逃げたの、白夜叉ああああああああああああッぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

戦場とは無関係の駄神の名を叫び。

一撃で、百の巨人族を薙ぎ払った。

 

「この声はマスター?」

 

音色を解析していたラッテンが聞き覚えのある声に首を傾げる。

白夜叉に色々されたらしく現れたぺストはメイド服であった。

ぺストは激怒しながら巨人族を掻き乱して殲滅していく。

すると予定通り、琴線を弾く音が聞こえる。

再び濃霧が現れると思われたが、琴線の音にラッテンの笛の音色が加わり、相殺する。

どうやら解析は終わったようだ。

ジン達は予定以上の状況に安堵する。

 

「カブトさん、後は任せました」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

霧崎は既に【イアン式ライズ】で敵を発見していた。

 

「そこだ!!」

 

敵が濃霧が発生しない事に動揺している間に近付き、フードを被った敵の手の中にある“黄金の堅琴”を真上に蹴り上げる。

そして敵が何かする前に横っ腹に蹴りを叩き込んで吹き飛ばす。

 

「これでよし、と」

 

敵が吹き飛んだのを確認すると、落下してきた“黄金の堅琴”を掴む。

その瞬間______巨人族と“アンダーウッド”の勝敗が決した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

次の日。

士、映司、霧崎が復興作業を手伝っている中、十六夜とレティシアが地下都市に到着した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

十六夜と黒ウサギが木の上で語らい合ってると、複数の星が光を無くした。

 

 

___目覚めよ、林檎の如き黄金の囁きよ___

 

そんな不吉な声を聞いた瞬間。

“アンダーウッド”に、黄金の琴線を弾く音が響いた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ぺストはレティシアと少し話し、別れた後、ラッテンに絡まれていた。

突然、後ろから抱き付かれたのだ。

 

「いや~久しぶりですね、マスター♪」

 

「貴女、生きていたのね……」

 

「そりゃギリギリな上に死ぬ気でしたけど心残りが出来てしまいましたからね………」

 

少々頬を赤くして言うラッテン。

その様子に呆れる様な顔をするぺスト。

二人がそんなやり取りをしていると、不吉な声と音色が響く。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

刹那、夜空が二つに裂けた。

晴れ晴れとしていたはずの夜空は暗雲に包まれて稲光を放ち、“アンダーウッド”の空を暗く染め上げていく。

二つに割れた空から___神話の光景を眼にする。

 

「龍か………また面倒な………」

 

士が呟いた直後、

 

 

「GYEEEEEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

 

 

常識外れの雄叫びが、“アンダーウッド”の総身を揺り動かす。

龍の頭部はかろうじて見えたが、その全長は雲海に隠れて見えないほどの巨体なのだ。

巨龍が現れた星空の歪みからは、更に巨大な城のような影が見え隠れしている。

数多の落雷が降り注ぎ、地下都市を覆う根は焼け落ちる。

そして混乱に拍手を掛けるように見張り台の鐘が鳴らされた。

どうやら巨人族も現れたようだ。

一層大きな雄叫びが響くと、鱗が雨のように降り注ぎ、一枚一枚が化け物になって街を襲い始める。

 

「しょうがない、変身!!」カメンライド、ディディディケイド!!

 

見かねた士はディケイドに姿を変えて、化け物達へと向かっていく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

飛翔するローブの詩人と、その腕に捕らえられたレティシア。

レティシアは混濁した意識の中で、眼下に十六夜とレティシアを見つけると訴える。

 

 

「十三番目だ………十三番目の太陽を撃て…………!!それが、私のゲームをクリアする唯一の鍵だ!!」

 

 

断末魔にも似た叫びと共に、レティシアは巨龍に飲み込まれて光となる。

その光は軈て黒い封書となり、魔王の“契約書類”となって“アンダーウッド”に降り注いだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

{ギフトゲーム名“SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING”

 

 ・プレイヤー一覧

  ・獣の帯に巻かれた全ての生命体。

  ※但し獣の帯が消失した場合、無期限でゲームを一時中断とする。

 

 ・プレイヤー側敗北条件

  ・なし(死亡も敗北と認めず)

 

 ・プレイヤー側禁止事項

  ・なし

 

 ・プレイヤー側ペナルティ条項

  ・ゲームマスターと交戦した全てのプレイヤーは時間制限を設ける。

  ・時間制限は十日毎にリセットされ繰り返される。

  ・ペナルティは“串刺し刑” “磔刑” “焚刑”からランダムに選出。

  ・解除方法はゲームクリア及び中断された際にのみ適用。

  ※プレイヤーの死亡は解除条件に含まず、永続的にペナルティが課される。

 

 ・ホストマスター側 勝利条件

  ・なし

 

 ・プレイヤー側勝利条件

  一、ゲームマスター・“魔王ドラキュラ”の殺害。

  二、ゲームマスター・“レティシア=ドラクレア”の殺害。

  三、砕かれた星空を集め、獣の帯を玉座に捧げよ。

  四、玉座に正された獣の帯を導に、鎖に繋がれた革命主導者の心臓を撃て。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

             “    ”印}

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カンウト・ザ・メダルズ

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 






三巻終了!!
四巻に続く!!


巨人達に関してはライダーの一撃で一体死んでると思ってください。
スペック的にそれだけ違いますので

ちなみにラッテンとぺストの関係は今では主従とか全く無いですが
呼び方はマスターです


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。


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鱗と突風と死のペナルティ

今回から四巻に入ります




カメンライド、ヒビキ!!

 

士は仮面ライダー響鬼にカメンライドして音撃棒・烈火を両手に持って化け物達を吹き飛ばしていた。

 

「クソッ!!次から次へと出てきて………その上、巨人までか!!」

 

左右から襲いくる化け物を叩き砕き、前方の化け物に炎弾を放ちながら愚痴る。

状況としてはかなり悪い。

士はともかく全体に置いて。

 

アタックライド、オ・ニ・ビ!!

 

上から飛び掛かってくる化け物に口から炎を放ち、焼き払う。

こんな作業をさっきからずっと続けていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「キリノちゃんを離せ!!」

 

映司はオーズに変身して触手の化け物を追跡していた。

キリノとは映司がさっき出会った樹霊の少女である。

キリノが逃げ遅れていたところを映司が助けたのだ。

映司は“契約書類”と巨人の襲撃を聞いて“ノーネーム”のメンバーと合流しようとして走り回る中で出会ったのだ。

そして一緒に行動していたが、少し目を話した隙に岩塊から変化した化け物にキリノが捕まったのだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「何だよ、この化け物は!?」

 

「見りゃ分かるでしょ!!大蛇よ!!」

 

叫びながら霧崎とラッテンは大蛇に攻撃を仕掛けて絶命させる。

霧崎もラッテンもとりあえず合流したものの状況がさっぱり分かってないというところである。

 

「蛇の事じゃねぇよ!!蛇もだがこの化け物どもの大元の事だ!!」

 

「そんなの分か「雲に隠れてるのに正体が分かるわけ無いでしょ」

 

ラッテンの言葉は後ろから現れたぺストの言葉に遮られる。

 

「でも、大体察せれるけどね」

 

ボソリ、と呟くぺスト。

 

「カブトさんに、ラッテン!!ご無事でしたか!!」

 

「ジン、そっちも大丈夫だな?」

 

「はい……しかし、映司さんや士さんは…………」

 

「あいつらはたぶん大丈夫だ。問題はレティシアだな」

 

“契約書類”を握りながら言う。

ラッテンはぺストがじっと雷雲に覆われた夜空を見つめていることを怪訝に思った。

 

「マスター、いどうかしたんですか?」

 

「……………すぐに此処を逃げた方がいいわ」

 

「「え?」」

 

「契約があるからジンに死なれたら困るし、守ってはあげるつもりはあるけど_____さすがの私も、アレを相手に守り抜く自信はないもの」

 

「あぁ、確かに俺もアレから守り抜くのは難しいな……」

 

悠然と構えながらも、冷や汗を額に浮かばせるぺスト。

一足先に夜空を見ていた霧崎も冷や汗を浮かせている。

何事かとラッテンとジンが天を仰ぎ見た刹那_____

 

 

「_____GYEEEEEEEEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaEEEEEEEEEEEEEEEEYYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaa!!」

 

 

神話の光景を見た。

 

「ジン、今のは何だ?」

 

「龍の純血…………!!そんな、最強種が何で最下層に…………!?」

 

絞り出した言葉に万感の畏怖が籠る。

直後、巨龍は雄叫びと共に鱗を散弾のように撒き散らす。

鱗は次々と化け物へと変幻する。

“アンダーウッド”を取り囲むように産み落とされた魔獣を相手に、霧崎達は臨戦態勢に入る。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ギフトゲームに関しては黒ウサギの“審判権限”により一時休戦が近付いていた。

巨人に関しては十六夜が大暴れしていた。

数百の巨人を倒すだけでなく、味方、“龍角を持つ鷲獅子”を焚き付けた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

黒ウサギは審議決議の受理がされた事を全域に届くような声で宣言した。

 

「“審判権限”の発動が受理されました!!只今から“SUN SYCHRONOUS ORBIT in VAMPIPE KING”は一時休戦し、審議決議を執り行います!!プレイヤー側、ホスト側は共に交戦を中止し、速やかに交渉テーブルの準備に移行してください!!繰り返し

 

 

「_____GYEEEEEEEEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEYYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

 

 

え?とウサ耳を疑う黒ウサギ。

彼女が審議決議の宣言をしている最中、巨龍は雷雲を撒き散らして“アンダーウッド”へと急降下を始めた。

身動ぎ一つで大気を震撼させる龍は“アンダーウッド”の僅か100mを通過し突風を巻き起こす。

 

「うおぉぉぉ!?滅茶苦茶過ぎるだろうが!?」

 

霧崎は思わず叫ぶ。

【弱者のパラダイム】は死の脅威を祓う。

しかしこれは、“範囲が広過ぎる”。

これでは精々自分の周囲から祓うくらいしか出来ない。

ジン、ぺスト、ラッテンと少数の味方は守れてはいるが、その他の大多数が巻き込まれて吹き飛ばされる。

霧崎はそれをただ見ているだけしか出来ない。

これが龍の純血、最強種である。

真に恐ろしいのはこの突風は巨龍がただ飛翔しただけなのだ。

これこそ神々の箱庭で“天災”と称されたものである。

突風が収まり、我にかえると霧崎達、そしてサラと黒ウサギは落下する同士たちの救出に向かう。

 

カメンライド、カブト!!

アタックライド、クロックアップ!!

 

士も巻き上げられはしたが仮面ライダーカブトにカメンライドして、クロックアップする事によって時間流を操作することにより周囲の時間を遅くらせて落下する人々を救出しながら降りていくのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

地下都市、緊急治療所。

審議決議から半刻ほどで“ノーネーム”はレティシアと映司以外とは合流した。

そして映司は魔獣に襲われた子供を助けようとして上空の城に乗り込んで行ったという事が判明した。

しかし彼らに空を飛ぶ事は出来ず、歯痒い思いで空の古城を睨む。

 

◆◆◆◆◆

 

 

_____“アンダーウッド”上空。

吸血鬼の古城・城下街。

 

トリプル!!スキャニングチャージ!!

「セイヤァァァ!!」

 

映司はタトバコンボでメダジャリバーを構えて敵を倒し続けていた。

敵は血塊と苔の集合体のような赤黒い怪物だ。

一体一体は屑ヤミーと同じ程度で脅威ではない。

数もオーズには関係無い。

だが、背にキリノを含む十人近い負傷者と子供が入るとなれば話は別だ。

オーズのスペックがどれだけあっても動きを制限される。

 

「何処か……隠れるところは無いかな?」

 

「こ、こっちにあります!!」

 

キリノが指差す先には廃墟があった。

隠れる場所があれば充分、と判断して映司は右腰からオースキャナーを取り出してベルトに入っているメダルをスキャンさせ、必殺技を発動させる。

 

スキャニングチャージ!!

 

映司が飛び上がると、敵との間に三つの輪が現れる。

 

「セイヤァァァ!!」

 

輪を潜り抜けながら敵へ向かって蹴りを放つ。

タトバコンボの必殺技、タトバキックである。

蹴りが当たった瞬間、敵の集団は爆散するのだった。

これで一先ず近くにいた分は倒しきった。

映司は変身を解いて廃墟に身を潜めた。

 

「皆、無事だよね?」

 

「う、うん」

 

「ああ。お前さんのおかげで全員無事だ」

 

キリノと年輩の獣人が礼を述べた。

話を聞くと、老人はガロロ=ガンタック、“六本傷”頭主のようだ。

此処からどうするか、と考えているとさっきの怪物、ガロロが言うには冬獣夏草に囲まれて襲撃を受けたがジャックとアーシャが加勢して撃退した。

全員集まると、今後の方針はガロロに任せるとジャックは言う。

そしてジャックは此処にいる人々はペナルティ条件を満たしていることが告げられた。

今後どうするか本気で悩む一同だった。

ゲームをどうにかしなければ、十日後に血の雨が降る事になるのだから。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

某所。

 

「“奴ら”も動き出したか………南にはディケイドもいると報告がある。“奴ら”の動向を探るのに兼ねて甦った私を見せてやろうではないか!!」

 

ガイは高らかに叫び、部下を連れて銀色のオーロラに消えるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

某所。

 

「巨人も、巨龍もディケイドを倒すには足りない………次の戦闘が始まる時に“これ”を投入し今度こそお前を消してやるぞディケイド!!」

 

中年の男はアタッシュケースを片手に持ち、ポケットに何かを入れて銀色のオーロラへと消えるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ





レティシアのゲーム第一ラウンド終了!!


【弱者のパラダイム】で祓える死の脅威の範囲は明記されてませんが、あまりに大規模な死の脅威を全域カバーは不可という事にしました。


某所二ヶ所については各々独自に動いています。
故に互いの動きも把握していません。

本編で触れないので言っておきますが“奴ら”は殿下達の事です。
まだ魔王連盟と呼ばれてないのでガイにはそう呼称させました。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待っています。



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脅迫と連盟会議と獣の帯

 

前回の三つの出来事!!

 

一つ!!次々と出現する化け物と巨人に十六夜、映司、士、霧崎は各々対処するのだった。

 

二つ!!黒ウサギが“審判権限”を使用し、交戦を止めようとした時に巨龍が突風を起こし、多くの同士が巻き上げられた。

 

三つ!!キリノ達を助ける為に古城に乗り込んだ映司はジャックから自分達がペナルティ条件を満たしてしまっている事を聞かされるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

本陣営。

一夜明け、連盟会議場には、

“一本角”の頭首にして“龍角を持つ鷲獅子”連盟の代表・サラ=ドルトレイク

“六本傷”の頭首代行・キャロロ=ガンダックと頭首護衛・門矢士

“ウィル・オ・ウィスプ”の参謀代行・フェイス・レス

“ノーネーム”のリーダー・ジン=ラッセルと逆廻十六夜、霧崎カブト

が集まっていた。

そして黒ウサギが会議の進行役として前に立つ。

他のコミュニティは委任状を受け取ってあり、サラとキャロロに委任されている。

自己紹介もかねて、少し話すとキャロロが十六夜達が常連の喫茶店のウェイトレスだった。

どうもどうやら、ちょっとした諜報活動をしていたらしい。

しかしそれを話してしまったのが運の尽き。

十六夜達は脅し、三割引を約束させるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

上空・吸血鬼の古城。

映司達は干し肉やスープなどを食べながら今後の方針を相談していた。

 

「今後の活動だが…………意見を募りたい。誰か案はあるか?」

 

ガロロが問うと、映司が即答した。

 

「俺は……残って謎解きをした方がいいと思う。十日後にはペナルティを受ける事になるからね」

 

その後、審議決議で外敵がいない内に子供たちにも協力して貰い、城下街を散策するということになった。

そして映司としてはある程度、勝利条件の解答が出来ていたのでそれを補強する為に数個の質問をする。

そこでレティシアの話を聞くことになった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

会議は滞り無く進行していた。

会議の内容は、“バロールの死眼”が盗まれた事、北と東にも魔王が現れた事、魔王達の目的、そしてレティシアについて。

最終的に乗り込もうという話になり、捜索隊を送る事になった。

会議が終わり、水式エレベーター内。

謎解きを頑張ろうという雰囲気になっていたのだが……

 

「いや、謎なら既に解けているが」

 

十六夜の発言に、は?と声が重なる。

そして、

 

「何だ、お前も解いてたのか」

 

という士の発言で更に驚きの声が上がる。

一同は一斉に疑問符を浮かばせて二人を見る。

 

「ええっと、常連さん?貴方さっきサラ様に『情報が少ないから敵地に部隊を送れ』とかなんとか言ってませんでした?そして、士さん?貴方も何で言わなかったのですか?」

 

「いや、ここはこいつらに合わせておこうかと思ってな」

 

そう言って十六夜を指差す士。

 

「うん?俺は『情報が少ないけど、謎は解けたからゲームクリアしようぜ!!』という意味で言ったんだが」

 

ついでに救援部隊とか編成してくれたらいいな、的な。

確かに『ゲームクリアを目指す部隊』と言っていたが、まさか言葉の通りとは思うはずが無い。

 

「でもそんな風に誤解してくれて本当に万々歳だなー。もし何処かの馬の骨にうちの美髪メイドを隷属させられるようなことになったら、それこそ殺し合うしかねぇもんなー。いやぁ、運が良かったな本当に!!」

 

(白々しいな、オイ!!)

 

心の中で叫ぶ霧崎。

明後日の方向を見ながら話す十六夜。

ニヤニヤ笑う士。

キャロロはサラに報告しようと思うが十六夜に脅されて取り止めるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

レティシアについての話などを聞いた映司達は情報を纏めて、“獣の帯”を“獣帯(ゾディアック)”として読み解いていた。

ゾディアックとは“黄道帯”や“黄道の十二宮”の別称である。

そして十二星座と蛇使い座を集めると解釈し、それらに関連する痕跡を探索する事にした。

蛇使い座は万が一の時の為である。

あの星座は微妙なラインなのだ。

一方、ジャックは様々な夢を見せる魔法の傘、オーレ=ルゲイエの作った夢見の傘を散策に協力してくれた子供にプレゼントすると言い。

子供達が楽しく協力出来るようにしていた。

映司はジャックと子供達のやり取りの

中で旗印の重要性を感じる。

そしてガロロから魔王への対処の仕方を簡単に聞く。

その間にジャックとアーシャが子供達に説明を終える。

そして本格的な探索を開始するのだった。

 

「ん?」

 

「どうかしましたか?映司さん?」

 

「いや、何でもないよ」

 

その途中、映司は視線を感じて振り返るがそこには何も無かった。

気のせいであろう、と結論付けて探索を再開した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方のぺストとラッテン。

元主従ではあるが、再開してから初めて二人っきりで話していた。

 

「いや~お揃いの服ですね」

 

「メイド服だけどね」

 

同じ服装であるのを楽しそうにするラッテン。

対して興味無さそうなぺスト。

その服装をある程度気に入ってるラッテンとまだ着慣れないぺストは対称的な反応である。

 

「それでマスターはこれからどうするんですか?」

 

「契約があるからジンを守らないとだけど、太陽への復讐を諦める気は無いわ」

 

「そうですか、それを聞ければ安心ですよ」

 

「何よ、その顔………」

 

変にニヤニヤするラッテンを怪訝な眼で見るぺスト。

 

「私はもう貴女のマスターでは無いのだから付き合う必要は無いわよ?」

 

「酷い事を言いますね。私も霧崎マスターの手助けをしますからそんな事は言わないでくださいよ~」

 

「何でここであのヘタレ男の名前が出るの?」

 

“契約”を知らないぺストは疑問に思う。

ヘタレ男は外見から判断しているのだろう。

 

「それは……まだ秘密ですね♪」

 

顔を少し赤めながら、それだけ言うとラッテンは逃げるように移動する。

 

「ちょっと教えなさい!!」

 

そんな態度を取られると気になるので追い掛けるぺスト。

そんな様子を可愛いと思いながら逃げるラッテンであった。

その追いかけっこは霧崎に見付かり、「何やってんだ、お前ら……」と呆れられるまで続くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

主賓室にて、“ノーネーム”一同は作戦会議をしていた。

十六夜はグリーに手を貸して貰って攻略組。

待機組はジンとぺストを中心に霧崎とラッテン。

 

「ここら辺が各々の能力的に無難だな」

 

「俺の【弱者のパラダイム】は守り特化だから攻め向きじゃないしな」

 

ちなみに士は“ノーネーム”メンバーでは無いのと別用があるらしく、この場にはいない。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

“アンダーウッド”から少し離れた地点。

 

「ハァァァァ!!」チョーイイネ!!キックストライク!!サイコー!!

 

その人影は足に炎を纏いながらグールの群れに蹴りを放つ。

蹴りが直撃したグール達は爆散するのだった。

 

「ふぃ~」

 

男は変身を解いて大樹の方を見る。

その上空には古城が浮いている。

 

「これで何度目だ?明らかに足止めってかんじだよな」

 

男はここ数日、何度かグールによる襲撃を受けていた。

それらは蹴散らしたが、その影響で到着予定よりかなり時間が掛かっている。

 

「あそこも大変そうだし急ぐか!!」コネクトプリーズ!!

 

男は魔法陣からバイクを取り出して“アンダーウッド”へと急ぐのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 






今回は戦力の整えというかんじでした。


士の頭首護衛はこの世界での役目などではなく、居候する代わりの職業のようなものです。
基本的に働かざるもの食うべからずですので。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。



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風呂と再強襲と迷惑な再会

 

翌日。

サラが偵察帰ると大樹が激しく揺れる。

どうやら原因は“ノーネーム”らしくサラは地下の大空洞に向かう。

そこで見たのはずぶ濡れのぺスト&ラッテンと訓練もかねて手合わせをする霧崎と十六夜だった。

どうもどうやら十六夜の提案で実力試しにしているらしい。

ぺストとラッテンは早々についていけなくなったようだ。

というよりやる気を無くして見学に回っている。

一方の十六夜と霧崎は、

 

「なあ、そろそろ終わりにしないか?」

 

「いや、まだだ!!」

 

霧崎はうんざりした様子で、十六夜は意地になっているようである。

互いに無傷で濡れてもいない。

先程から十六夜が突っ込み、霧崎が【弱者のパラダイム】で軌道をそらし、十六夜が強引に体勢を変えてまた突っ込むの繰り返しである。

十六夜としては一発入れないと気がすまなくなってきている。

主賓室では黒ウサギとサラがその様子を眺めている。

サラは霧崎の力を珍しそうに見つつ、十六夜も観察する。

その時、

 

「これならどうだ!!」

 

十六夜が足場を思いっきり殴った。

そうすれば勿論、足場は崩れ、水が多いに吹き飛ぶ。

 

「うぉい!?」

 

「ハハッ!!一撃入れるのは無理だったが水に落としはしてやったぞ」

 

霧崎は足場が崩れ、必然的に水に落ちる。

とはいえ十六夜も自分が巻き上げた水でずぶ濡れなわけだが。

ついでに水は主賓室まで飛んでサラもずぶ濡れになっていた。

黒ウサギは嫌な予感がして無事だったがサラはそうも行かなかったらしい。

その後、全員風呂に向かう事になるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

大浴場・女湯。

 

「さ~てマスター?覚悟してくださいよ?」

 

「ちょ、待って!!」

 

「待ちませんよ♪」

 

女湯には風呂に慣れていないぺストの悲鳴とラッテンの楽しそうな声が響くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

上空の古城では映司とアーシャが子供に気を付けながら探索を進めていた。

二人とも子供の世話はある程度慣れているのだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

翌日。

“アンダーウッド”はゲームクリアに向けて動き始めていた。

十六夜はグリーに乗り、サラ達と共に古城へと向かっていた。

そこでレティシアの影に襲撃される。

そして地上では巨人があり得ない程短時間で距離を詰めて襲撃してきていた。

サラ達は指揮をする為に地上に戻り、古城へ向かうのは十六夜とグリーだけだった。

そしてレティシアの影と交戦を開始する。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

巨人族強襲を聞いた士は戦場に向かおうとするがその前に銀色のオーロラが現れ、白いスーツの男が現れる。

その背後にはショッカー戦闘員がいる。

 

「久しぶりだな、ディケイド」

 

「お前は……アポロガイスト!!」

 

「そうだ。私は甦ったのだ!!我が大ショッカーの技術だけでなく、ネクロオーバー!!ホムンクルス!!ありとあらゆる技術を結集したのだ!!」

 

「甦ったところでまた倒すだけだ」

 

「私はただ甦っただけではないのだよ!!」

 

言い合いながら士はライドブッカーソードモードを、アポロガイストはアポロフルーレを構える。

 

「我が命の炎を消さぬ為に人工ファントムを取り込んでその魔力によって私は永遠の命を手に入れたのだ!!」

 

「それがどうした!!」

 

互いに向かっていき、剣をぶつけあう。

その間に士はディケイドドライバーを取り出して腰に装着する。

 

「人工ファントムを取り込んだ副産物がこれだ。サンダー!!」

 

アポロガイストが叫ぶと彼の前に魔法陣が現れる。

何かを察した士は飛び退く。

その直後に魔法陣から雷が放たれる。

 

「フハハハ!!これが副産物、魔法の力なのだ!!」

 

「お前がどうなろうと興味は無い」

 

言いながらカードを取り出す。

それをベルトに入れようとするが、

 

「まぁ待て、今日は挨拶に来ただけだ。次に会う時、宇宙一迷惑な存在として貴様を倒してやろう」

 

「分かっているなら来るな」

 

そう言ってアポロガイストは白いスーツの姿のまま銀色のオーロラへと戻っていた。

士としては邪魔が消えたというかんじだが何かあるようにしか思えなかった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

某所。

銀色のオーロラから出たアポロガイストはうずくまっていた。

 

「クッ………やはりまだ馴染まんか。人工ファントムが私の体に完全に定着した時が貴様の命日だ、ディケイド!!」

 

アポロガイストはふらつきながらも立ち上がって歩き出す。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

吸血鬼の古城。

 

「それで皆、どうだった?」

 

探索を一通り終えて確認をとる。

都市が十二分割されている事と各々外郭の壁に十二宮を示す記号がある事が分かった。

そしてアーシャとキリノは十二宮が刻まれた欠片と蛇使い座の欠片とその他の星座の欠片を発見していた。

その後、少し話し合うと欠片を繋ぎ玉座に捧げる事がゲームクリアという結論になった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

東南の平野。

巨人族との戦いは、限りなく一方的だった。

ぺストが次々と薙ぎ倒し、取りこぼしを霧崎が防ぎ、ラッテンが奏でる音色が味方を強化する。

防御特化に近い能力である霧崎にとって強襲されているこの状況は好都合であった。

ラッテンは音色で味方を強化するだけでなく、自身もディーンを使役して巨人を薙ぎ倒していた。

更にサラ達も加わって戦況はかなり優位に進む。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ぺストは敵、アウラと話していた。

交渉に近い形でもあったがそれは決裂した。

その隣にラッテンと霧崎達が現れる。

 

「話は終わりましたか、マスター?」

 

「えぇ、“終わったわ”」

 

一同の視線はアウラへと集う。

サラが代表者として降伏勧告をする。

 

「巨人族は全て我々が倒した。士気を操作して無理矢理戦わせたようだが、所詮は死に体の輩。我々の敵ではない。大人しく降伏し、その身を預けるが良い」

 

(士気操作は私が妨害入れてましたし)

 

ボソリ、と呟くラッテン。

サラは言い終わると剣を抜く。

これが最後通牒であるという意味だろう。

しかしアウラは憮然とした笑みが絶えずに浮かんでいる。

ぺストが警戒し、アウラが人類の幻獣、通称“魔法使い”と呼ばれる者と警告する。

アウラは自分を包囲する軍勢を見ると、嘲笑うかのように“バロールの死眼”を掲げ、

 

 

「さようなら、“黒死斑の御子”!!そして“龍角を持つ鷲獅子”同盟の皆さんと、その他大勢の皆さん!!不用意に全軍を進めた、貴方達の敗北よ!!」

 

 

“バロールの死眼”が一瞬、戦場を満たす程の黒い光を放つ。

霧崎は奇妙に思った。

聞いてた通りだったら放たれるのは“死の光”のはずだ。

なのに死の脅威が一切見えない事に。

次の刹那、

 

「「「「「「ウオオオオオオッオォォォォォォ!!」」」」」」」

 

黒死病から解放された巨人族が、鬨の声を上げて彼らを包囲した。

霧崎は冷や汗を流す。

さすがにこの状況では全てをかばーするのは不可能である。

状況は絶望的。

そう思われた時、一発の銃声が聞こえる。

そして銃弾はアウラの足元に当たる。

視線が銃弾が放たれた所へと集中する。

そこには人影があった。

人影に向かってアウラが叫ぶ。

 

「何者だ!!」

 

「俺は操真 晴人。希望を守る魔法使いさ。とりあえずお前らが敵という事でいいよな?」

 

「さあね?どうかしら!!」

 

アウラが言った直後、数体の巨人が晴人に攻撃をしかける。

しかし、

 

デイフェンドプリーズ!!

「これが答えってわけね」

 

魔法陣に防がれる。

 

ドライバーオンプリーズ!!

シャバドゥビタッチヘンシ~ン!!

「変身!!」フレイムプリーズ!!ヒー、ヒー、ヒーヒーヒー!!

 

指輪をベルトにかざすと魔法陣が晴人を包んでいき、その姿を仮面ライダーウィザード、フレイムスタイルへと変える。

 

「さあ、ショータイムだ!!」

 

ソードガンを構え、巨人達に向けて言う。

“アンダーウッド”に現れた三人目の仮面ライダーは絶望的な状況を塗り替えるべく戦闘を始める。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 






ウィザード登場!!
今までもチラチラ出てきてましたが本格参戦です!!


アポロガイスト(ガイ)はパーフェクターやファンガイアの力の代わりに人工ファントムの魔力で命の炎を灯しているかんじです。
蘇生には彼の言う通り大ショッカーの技術以外にもネクロオーバーやホムンクルスなどの技術も利用されています。
ネクロオーバーはエターナル
ホムンクルスはノブナガ
の蘇生に使われた技術です。
それと人工ファントムが完全に定着していないので魔法は使えても怪人態にはなれないのが現状です。


それでは質問があれば聞いてください。
感想待っています。



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十二使徒と炎の巨人と指輪の魔法使い

 

キャモナスラッシュシェイクハンズ!!フレイム!!スラッシュストライク!!ヒーヒーヒー!!

「ハァァァ!!」

 

晴人は巨人の集団に突っ込むと炎の斬撃を加えていく。

ソードガンをガンモードに変えて周囲に銃弾をばら蒔きなから左手の指輪を変える。

変え終わるとドライバーの手形の向きを変えて指輪をかざす。

 

フレイム!!ドラゴン!!ボー、ボー、ボーボーボー!!

 

晴人を赤い魔法陣と赤い龍の様な物が包み、姿をフレイムドラゴンに変える。

 

「悪いけど、そこまで時間を掛けれないみたいだからな」チョーイイネ!!スペシャル!!サイコー!!

 

その指輪をスキャンするとフレイムドラゴンの胸にドラゴンの頭部が出現する。

そしてドラゴンの口から巨人に向けて熱線が放たれて巨人を消し飛ばしていく。

 

ハリケーン!!ドラゴン!!ビュー、ビュー、ビュービュービュービュー!!

 

緑色の魔法陣とドラゴンが包み姿をハリケーンドラゴンに変える。

 

チョーイイネ!!スペシャル!!サイコー!!

 

スペシャルの指輪をスキャンするとハリケーンドラゴンの背に翼が現れる。

 

コピープリーズ!!

 

更にソードガンにコピーの指輪をスキャンして二本にする。

ガンモードに変えて上空から巨人を撃ち抜いていく。

 

チョーイイネ!!サンダー!!サイコー!!

キャモナスラッシュシェイクハンズ!!ハリケーン!!スラッシュストライク!!ビュービュービュー!!

  キャモナスラッシュシェイクハンズ!!ハリケーン!!スラッシュストライク!!ビュービュービュー!!

 

サンダーの指輪をベルトでスキャンし、ソードガン二本ででスラッシュストライクを発動させる。

そのまま急降下していき巨人の集団の中心で雷を纏った風の斬撃を放つ。

 

ウォーター!!ドラゴン!!ザバザババシャーン、ザブンザブーン!!

 

青色の魔法陣とドラゴンが包んで姿をウォータードラゴンに変える。

直後に、

 

「それ以上はさせないわ!!」

 

アウラが自身を包む黒い渦、“バロールの威光”の一部を収束させて晴人へと放つ。

死の恩恵を与える黒い光が晴人に当たる前、その間に霧崎が割り込んだ。

 

「そっちこそさせるかよ!!」

 

死の恩恵、つまり死の脅威そのものである黒い光は霧崎には意味が無い。

【弱者のパラダイム】で簡単に祓ってしまう。

 

「余計なお世話だったか?」

 

「いや、助かった。ありがとうな」

 

二人はそれだけ言うと各々巨人へと向かっていく。

 

チョーイイネ!!ブリザード!!サイコー!!

チョーイイネ!!スペシャル!!サイコー!!

 

周囲に冷気を放ち、巨人を凍結させてスペシャルにより出現したドラゴンの尾で薙ぎ払って砕いていく。

 

ランド!!ドラゴン!!ダン、デン、ドン、ズ、ドゴーン!!ダン、デン、ドゴーン!!

 

黄色の魔法陣とドラゴンに包まれて姿をランドドラゴンに変える。

 

チョーイイネ!!グラビティ!!サイコー!!

 

その指輪をスキャンすると巨人達の真上に黄色の魔法陣が現れる。

それが下に降りていくと、巨人達は押し潰される様に地面に押し付けられる。

 

キャモナシューティングシェイクハンズ!!ランド!!シューティングストライク!!ダン、デン、ドン、ズ、ドゴーン!!

  キャモナシューティングシェイクハンズ!!ランド!!シューティングストライク!!ダン、デン、ドン、ズ、ドゴーン!!

 

地面に押し付けられて動けない巨人達に向かって土属性のエネルギー弾を放ち、消し飛ばす。

そして背後から襲いくる巨人を、

 

チョーイイネ!!スペシャル!!サイコー!!

 

スペシャルの指輪をスキャンして出現したドラゴンの爪で斬り裂く。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「おのれ!!ウィザードまで来たか!!致し方無い!!此処でこれらを解放するか!!」

 

そう言って中年の男はアタッシュケースを開ける。

その中には12個のスイッチがあった。

12個のスイッチはほんのり光ると何処かへ飛んでいった。

中年の男はそれを見守るとポケットから一つのガイアメモリと三枚のコアメダルを取り出す。

そして、それを地上に向かって投げる。

投げられた四つの物体は光って絡み合う。

 

「フハハハ!!ウィザード!!貴様はこの仮面ライダーに倒されがいい!!」

 

中年の男は叫びは誰にも聞こえる事のなく、響いていく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

その頃、十六夜はレティシアの影を倒して古城に上陸していた。

現在は上陸の際に負傷したグリーの止血をしている。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

古城。

映司達は黒いグリフォンの襲撃を受けていた。

黄道の玉座にてそこに拘束されていたレティシアと話しながら、十二星座の欠片を玉座の周囲にはめている中で襲撃されたのだ。

しかも最後の一つの欠片、蛇使い座の欠片をはめる直前に襲撃された為にクリアに近付いたと見なされてゲームが再開されてしまった。

故に巨龍も解放された。

しかも蛇使い座の欠片を黒いグリフォンに奪われてしまった為にゲームを終わらせて巨龍を止める事も出来ない。

現在は子供達を避難させ、映司がオーズ・タトバコンボになって応戦していた。

 

「その欠片、返してくれないかな?」

 

「無理だな。欲しければ私を倒して奪うがいい!!」

 

「時間も無いし、そうさせて貰うよ!!」

 

「それに貴様のメダルも“生命の目録”の代わりに奪わなくてはいけないからな!!」

 

「メダルで何をするつもりだ!!」

 

メダジャリバーを弾き飛ばされ、トラクローを展開して挑み掛かる映司。

 

「貴様に教える義理は無い!!」

 

黒いグリフォン、グライアも体を変化させて鋭い爪を出して対抗する。

両者が激しいぶつかり合いをする中、室内に何かが突入してくる。

奇妙な気配を感じ、互いに距離を取って、突入してきた物を見る。

 

「何だ、あれは………」

 

「あれは……ホロスコープススイッチ!?」

 

映司が驚きの声を上げる。

そんな事も関係無くスイッチは対応する欠片と共鳴して、欠片へと近付く。

そして激しい光を放つ。

 

「「な!?」」

 

映司とグライアが目を塞ぐ。

そして光が収まりそこにいたのは、

 

蟹座のゾディアーツ、キャンサー・ゾディアーツ

牡羊座のゾディアーツ、アリエス・ゾディアーツ

山羊座のゾディアーツ、カプリコーン・ゾディアーツ

水瓶座のゾディアーツ、アクエリアス・ゾディアーツ

牡牛座のゾディアーツ、タウラス・ゾディアーツ

双子座のゾディアーツ、ジェミニ・ゾディアーツ

魚座のゾディアーツ、ピスケス・ゾディアーツ

蠍座のゾディアーツ、スコーピオン・ゾディアーツ

天秤座のゾディアーツ、リブラ・ゾディアーツ

乙女座のゾディアーツ、ヴァルゴ・ゾディアーツ

獅子座のゾディアーツ、レオ・ゾディアーツ

射手座のゾディアーツ、サジタリウス・ゾディアーツ

 

十二使徒、通称ホロスープスと呼ばれる怪人達だった。

十二体が一斉に放った攻撃によって映司は外へ吹き飛ばされるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

東南の平原。

ジンの提案により、晴人、霧崎、ぺストはアウラに向かっていっていた。

晴人がスラッシュストライクでアウラを包む黒い渦に切り目を入れる。

そこへラッテンの操るディーンの上に乗った霧崎が突っ込んでいく。

 

「終わりだ、クソッタレ!!」

 

突っ込んだ瞬間、【弱者のパラダイム】で“黄金の竪琴”によって呼び出された雷撃ごと、アウラを包む黒い渦、死の脅威の塊を掴み祓う。

黒い渦は切れ目から大きく穴が開く。

 

「馬鹿な!?人間が神霊の御業をこんなに簡単に……!?」

 

驚愕するアウラ。

その隙にぺストは開いた穴から“バロールの死眼”に手を伸ばしてアウラを嘲笑う。

 

「舐めていたわね、アウラ。今度は貴女の番よ」

 

「小娘がぁぁぁ!!」

 

直後にアウラは悪足掻きに“バロールの死眼”に短刀を突き立てる。

その短刀は“ブリューナク”の穂先であり、瞳は石となって二つに裂けて分かれた。

一つはアウラに。

一つはぺストに。

瞬間、“バロールの死眼”は制御を離れて暴走し始める。

巻き込まれかけたアウラはリンに拾われる。

ぺストが持っている方はすぐさま霧崎が抑え付けた。

 

「あんた…………本当に滅茶苦茶ね」

 

「頼むから、今は話しかけないでくれ………」

 

霧崎としては押さえ付けるのに必死であった。

 

「だそうですよ、マスター♪」

 

「貴女はいきなり抱き付いてこないでくれる?」

 

ぺストの背後からラッテンが現れてぺストを抱く。

一先ず落ち着いたと思った直後に、上空で何かが光る。

 

「「「「何だ!?」」」」

 

ようやく“バロールの死眼”を落ち着かせた霧崎が、

巨人を片付けていた、晴人、ぺスト、ラッテンが、

その光の中心を見る。

光の中心には一つのガイアメモリと三枚のコアメダル。

 

「変身!!」

 

そんな声が響くと一層強く輝く。

そんな輝きが収まり、一同が上空を見上げる前に巨大な何かが降ってくる。

 

 

「我が名は………仮面ライダーコア!!」

 

 

一同は叫び声の音源を、落下地点を見る。

そこには巨人の二、三倍はありそうな炎に包まれた仮面ライダーの様な化け物が立っていた。

 

「仮面ライダーの悲しみと憎しみの記憶から生まれし、私が全てを吹き飛ばしてやろう!!」

 

その叫びが大気を震わす。

大気を震わすのはそれだけでは無い。

巨龍が天地を揺るがす絶叫と共に大地へと舞い降り始めていた。

 

天災は重なる。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

古城。

映司は防戦を強いられていた。

映司が一人なのに対して、敵は十二体である。

更にグライアまで攻撃をし掛けてくる。

どうもどうやらホロスープスは映司を優先して狙っているようだ。

グライアはそれを利用して戦況を有利に進めている。

グライアの姿は現在黒い龍であった。

 

「クッ………」

 

息を吐きながら映司は攻撃を避ける。

この状況で一番厄介なのはコンボチェンジをする隙すら無いことである。

ダスタードなどなら幾ら数がいてもその程度の隙はある。

しかしホロスープスは全員幹部級、グライアもかなりの実力である。

 

「そろそろ諦めたらどうだ?」

 

「悪いけど、諦めるわけには行かないんだよね。皆の為にも」

 

「そうか、では死ぬがいい!!」

 

一斉に攻撃が放たれようとした時、映司と敵の間に何かが撃ち込まれる。

ホロスープスとグライアは警戒し、距離を取る。

そして弾が飛んできた方を見る。

 

「少し遅かったか?」

 

「いや、十分だよ」

 

現れたのは士だった。

アポロガイスト出現から古城に何かあると感じて急いで向かっていたのだ。

結果として何も無かったが、こうして仲間のピンチには間に合った。

 

「貴様、何者だ!!」

 

グライアが叫ぶ。

士はディケイドライバーを腰に巻きながら答える。

 

「通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ!!」カメンライド、ディディディケイド!!

 

カードをベルトに入れてディケイドに変身する。

そしてその隙に映司もコンボチェンジする。

 

(アンク、行こうか)

タカ!!クジャク!!コンドル!!タージャードルー!!

 

心の中で割れたアンクのコアを思い浮かべ、語り掛けながら姿を変える。

タカヘッドはタカヘッド・ブレイブと変わり、クジャクの胴、コンドルの足を持つ鳥系コンボ、タジャドルとなる。

 

「さあ、俺達の力を見せてやる!!」

 

二人はホロスープスとグライアに向かっていくのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 






ゲームも終盤に突入!!

対戦表
映司&士vsグライア&ホロスコープス
霧崎&晴人&その他大勢vs仮面ライダーコア

大まかにはこんなかんじですね。

タジャドルの活躍は次回です。

前半はウィザード大暴れでした。
魔力に関してはまだ大丈夫です。


それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。



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ドラゴンとコアと最高の演奏

古城。

ディケイド、士の参戦により戦況はかなり変わった。

数の上では13対2と不利ではあるが、映司もタジャドルコンボとなっているので囲まれずに済んでいる。

 

「ハァァァァ!!」

 

クジャクの翼を展開して炎の羽を矢の如く放つ。

それによってグライアもホロスコープスも距離を詰めれない。

更にタジャスピナーからの炎弾も加わる。

 

「時間が無いみたいだからな。10秒で終わらせてやるよ」

カメンライド、ファファファイズ!!

フォームライド、アクセル!!

 

士は仮面ライダーファイズに姿を変えると、すぐにアクセルフォームにチェンジする。

アクセルフォームは10秒間のみ高速移動が出来るのだ。

とりあえず手近にいたキャンサーゾディアーツに攻撃を集中する。

キャンサーは蟹座なだけあって、かなり装甲が固い。

しかし装甲などお構い無しの如くライドブッカーで斬り付ける。

高速移動に対応出来ないキャンサーは攻撃を受けるままだった。

一ヶ所に攻撃が集中しているとも気付かずに。

 

「中々やるね……」

 

映司はスコーピオンゾディアーツの蹴りを回避しながら、その腹にタジャスピナーを押し付けると0距離で炎弾を放つ。

怯んだ所を畳み掛ける。

右腰からスキャナーを取り出して、タジャスピナーに入ってるメダルをスキャンしていく。

 

キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!

 

スキャン音が鳴り響き、完全にスキャンをする。

 

「これで終わりだ!!」

 

士もキャンサーにトドメを刺そうとしていた。

カードを取り出してベルトに入れる。

 

ファイナルアタックライド、ファファファイズ!!

ギン!!ギン!!ギン!!ギン!!ギン!!ギン!!ギン!!ギガスキャン!!

 

スキャナーとディケイドライバーから音声が響く。

そしてタジャスピナーから回転する銀色のエネルギー弾が放たれてスコーピオンを貫く。

キャンサーはポインターが大量にセットされ、身動きを取れない所に強化クリムゾンスマッシュが一ヶ所に叩き込まれ続ける。

爆炎が二つ生まれる。

映司と士はすぐに他のホロスコープスに視線を向けるが、アクエリアスが両肩の水瓶から液体を爆炎に向けて放つ。

すると、爆炎が収まり中から無傷のキャンサーとスコーピオンが出てくる。

 

「再生能力か!!」

 

アクエリアスの液体には傷を癒す力があるのだ。

復活したキャンサーとスコーピオンは同時に叫ぶ。

 

「「超新星!!」」

 

叫んだ直後、キャンサーとスコーピオンに刻まれた星座が輝く。

そして二体は大きく姿を変える。

より蟹のような姿に、より蠍のような姿に巨大化し変化したのだ。

 

「クソッ、面倒だな。ならこれだ」

 

士は即座にケータッチを取り出す。

その隙に敵も攻撃をし掛ける。

サジタリウスが矢を大量に放ってくるが、タジャドルの炎の羽で最低限撃ち落とす。

レオが熱波を放つがタジャスピナーの炎弾で相殺する。

その間に士はケータッチを操作する。

 

クウガ、アギト、リュウキ、ファイズ、ブレイド、ヒビキ、カブト、デンオウ、キバ

 

ケータッチに表示されたマークをタッチしていく。

それに対応した音声が流れる。

最後のマークをタッチするとベルトを操作し、ディケイドライバーがあった場所にケータッチを納める。

 

ファイナルカメンライド!!ディケイド!!

 

瞬間、ディケイドの胸に九枚のカードが現れる。

カードには各々クウガ、アギト、龍騎、ファイズ、ブレイド、響鬼、カブト、電王、キバの顔が刻まれている。

そしてディケイドの頭部にもカードが一枚現れる。

それはディケイド自身の顔が刻まれている。

これがディケイドの強化形態、コンプリートフォームである。

 

「さあ、覚悟しろ!!」

 

士は敵の集団にライドブッカーを突き付けながら叫ぶ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

東南の平野。

巨龍が現れた直後、大量の魔獣が地上に散布された。

しかしそれどころでは無い状況でもあった。

魔獣らとほぼ同時に現れた仮面ライダーコアがかなりの脅威であった。

巨人の二、三倍はある巨体が暴れる、それだけでかなりの規模の被害が出る。

更にコアの口から放たれる熱線は直撃したら“アンダーウッド”が消し飛びかねない。

 

「バンバン吐いて来やがって面倒だな!!」

 

幸い霧崎が熱線を真上に祓う事によって被害は出ていない。

しかしそれが何時まで続くか分からない。

 

「頼む!!来てくれ、ドラゴン!!」ドラゴライズプリーズ!!

 

晴人は呼び出せるか分からないが、賭けとしてドラゴライズの指輪をスキャンする。

そして晴人は賭けに勝った。

大きな魔法陣から晴人のファントム、ウィザードラゴンが召喚される。

 

「行くぞ、ドラゴン!!」

 

晴人はマシンウィンガーに跨がって、ドラゴンに近付く。

ドラゴンの近くに来るとマシンウィンガーが変形してドラゴンと合体する。

これによってドラゴンを完全に制御出来るのだ。

そしてコアへと近付き、炎弾を放つ。

コアは炎弾を腕で防ぎながら忌々しそうに叫ぶ。

 

「うっとおしい蝿が!!」

 

腕を振り回すが、ドラゴンを捉える事は出来ない。

口を開き、薙ぎ払う為に熱線を放つ準備をする。

コアの口にエネルギーが貯まっていく。

そこにドラゴンが炎弾を放つ。

それによって収束していたエネルギーが乱れ暴走し掛ける。

 

「今だ!!」

「行け、ディィィィィン!!」

 

不安定になった所を狙ってサラとディーンがコアの下顎に攻撃を放って口を閉じさせる。

 

「ぬぐっ!?ぬぁぁぁぁ!?」

 

エネルギーは口の中で破裂して、コアは口から煙を吐いて怯む。

その隙に足を狙って“龍角を持つ鷲獅子”連盟と“ノーネーム”は攻撃を集中する。

コアのバランスが崩れ始めるが、それで終わる筈が無い。

 

「調子に乗るなぁぁぁ!!」

 

コアは腕で地面ごと大きく薙ぎ払う。

直接巻き込まれた者は血塗れで吹き飛び、余波だけでもかなりの数が吹き飛ぶ。

 

「ヤバッ…………」

 

そしてディーンの操作に集中していたラッテンも巻き込まれかける。

ラッテンは避けられないと確信して眼を閉じて防御に集中する。

 

「諦めんな、馬鹿!!」

 

そんな霧崎の声がラッテンの耳に響いた。

ラッテンが恐る恐る眼を開けると、ラッテンは霧崎に抱き抱えられていた。

お姫様だっこと言うやつである。

ラッテンはその状態に顔を少し紅くする。

 

「助けてくれたんだ、霧崎……」

 

「当たり前だ。お前は……………っ……とりあえず、お前を死なせるわけがねぇだろ」

 

霧崎は途中で何か言い淀んで、言い直したようなかんじで言い切った。

霧崎も顔を少し紅くしているのにラッテンは微笑む。

言い淀むのは分かるが出来れば言って欲しかったな~と思いながら、ラッテンは霧崎が居た位置を思い出す。

霧崎が居たのはコアと“アンダーウッド”のちょうど間だ。

そこからラッテンが巻き込まれる前に助けるには常にラッテンを気にかけでもしないと間に合わない。

つまり霧崎はコアの熱線から“アンダーウッド”を守りつつ、ラッテンに危険が無いか気にしていたわけである。

それを推測したラッテンは更に顔を紅くして

 

「ありがとうね」

 

呟き、霧崎の唇を奪った。

 

「なっ、えっ、はぁ!?いや、おい、ちょっ……」

 

霧崎は顔を真っ赤にして動揺する。

それもそうだろう、こんな時にいきなりキスをされれば動揺もするだろう。

当のラッテンは霧崎が固まってる内に腕から降りると、霧崎の方を向いて唇に手を当てる。

 

「ファーストキスもーらった♪」

 

「いやいやいや!!何もこんな時じゃなくてもいいだろ!?」

 

「こんな時、だからよ♪」

 

そう言うとラッテンはハーメルケインに口を付ける。

今なら最高の演奏が出来そうなのだ。

そしてラッテンの演奏が響く。

 

「何だ……この音は!?」

 

コアが苦しげに言う。

ラッテンの演奏がコアのガイアメモリとコアメダルの繋がりを乱しているのだ。

そしてその状態で足への攻撃が続き、コアはバランスを崩して倒れる。

すぐさまに起き上がろうとするが、

 

 

「フィナーレだ!!」チョーイイネ!!キックストライク!!サイコー!!

 

 

ラッテンの演奏によって魔力が強化されている晴人がキックストライクをスキャンする。

ドラゴンが変形していき龍の脚となる。

コアとの間に巨大な魔法陣が幾つも現れる。

それを蹴り抜いて行き、蹴りの勢いは増していく。

そして起き上がろうとしていたコアの顔面に蹴りが、ストライクエンドが直撃する。

 

「ゴガァァァァァァ!?」

 

顔面に直撃したコアはそこから全身にヒビが広がって砕け、蹴り抜かれる。

ウィザードが地面に着地し、ドラゴンが元の姿に戻ると一際大きな爆炎が立つのだった。

 

「ご静聴ありがとうございました♪」

 

同時にラッテンの演奏も終わる。

そして霧崎に向きなおると、

 

「後は任せたわよ」

 

それだけ言うと、力を使い果たしたラッテンは意識を失って倒れるのだった。

霧崎はその体を支えつつ呟くのだった。

 

「分かってるよ、お前が目覚める前には終わってるよ」

 

そしてラッテンを背負うのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

コアが倒された事により、コアを形成していたガイアメモリは砕けた。

しかし三枚のコアメダルは残り淡い光を放ちながら何処かへと飛んでいった。

それに気付くのは誰もいない。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

古城。

コンプリートフォームになった士はアクエリアスに狙いを定める。

アクエリアスを倒さない事には全てを倒せないのだ。

 

「お前にはこれだ」カメンライド、ブラスター!!

 

ケータッチを持って、ファイズのマークを押して再度セットする。

すると胸のカードが全てファイズブラスターフォームへと変わる。

コンプリートフォームはカメンライドする事によって胸のカードが対応するフォームに変わってそのフォームの全ての能力を使えるのだ。

更にそのフォームを召喚する事も可能である。

士は少し離れた所にファイズブラスターフォームを召喚する。

そして一枚のカードを取り出して腰の部分に移動したディケイドライバーに入れる。

 

ファイナルアタックライド、ファファファイズ!!

 

その動作を召喚されたファイズもする。

召喚されたライダーは基本的には同じ動きをする。

ファイナルアタックライドが発動されてアクエリアスの両肩にポインターが設置される。

 

「ハァァァァ!!」

 

二発の超強化クリムゾンスマッシュがアクエリアスを貫く。

アクエリアスは大量のフォトンブラッドを撒き散らしながら爆散する。

再生はしない。

肩の水瓶を破壊されたら再生は出来ないのだ。

 

「まずは一体だ」

 

呟いた後、残りの足止めをしている映司に加勢をする。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 





コア撃破!!
巨体は的であると同時にライダーのスペックで動かれると厄介だったり。

箱庭は基本的にアンダーワールドと似た扱いです。
故にドラゴライズが出来たという事です。
演奏で強化されたのはハーメルケインでの演奏だからということで。


古城の方の本格的な戦闘は次回です。
今回でやるつもりでしたがvsコアが意外に長くなったもので。


それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。



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不死鳥コンボとライダー図鑑と不穏な影

大樹の麓。

ここが魔獣最終防衛線と言ったところである。

 

「貴方達、何やってるの?」

 

霧崎の隣に立つぺストの第一声はそれだった。

どうやら見られていたらしい。

まぁ確かに戦闘中に何をやってるという光景だっただろう。

 

「いや……あれは………まぁ………その………」

 

霧崎は目をそらしつつ、口をゴニョゴニョさせる。

霧崎としてはひたすら受け身だった為に何も言いようが無い。

その後もぺストは冷たい視線でネチネチと言い続けるのだった。

その間も霧崎とぺストは背中合わせに魔獣を倒し続けている。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

古城。

アクエリアスが倒れたので映司と士は再生の心配無く攻め続ける。

映司はクジャクの翼を広げて空中でグライアとぶつかり合う。

 

「ぬぅ…………」

 

押されている感覚にグライアが声を上げる。

熱線を放っても避けられて攻撃をくらう。

格闘に持ち込むが映司の方が飛行速度は速く、小回りもきくので不利な状況である。

 

「うわぁ!?」

 

下から放たれたサジタリウスの矢を首を捻り避ける。

その隙にグライアが掴み掛かろうとしてくるが腕を蹴り上げ、タジャスピナーから炎弾を放って吹き飛ばす。

 

「いつかの蟹みたいで厄介だな!!」

 

士はキャンサーノヴァの攻撃を避けながら愚痴る。

 

「蟹にはこいつだ!!」カメンライド、アームド!!

 

コンプリートフォームの胸の九枚のカードが装甲響鬼に変わる。

士の隣に装甲響鬼が現れる。

士はカードをライドブッカーから取り出してディケイドドライバーに入れる。

装甲響鬼も同じ動作をする。

 

ファイナルアタックライド、ヒ、ヒ、ヒビキ!!

「オラァ!!」

 

士と装甲響鬼が同じ動作で同時にキャンサーノヴァを斬る。

二発の【音撃刃・鬼神覚声】で斬られたキャンサーノヴァは爆散する。

 

カメンライド、サバイブ!!

 

士はスコーピオンノヴァの方を向くとケータッチを手に取って龍騎のマークを押して腰に戻す。

胸のカードが龍騎サバイブに変わり、隣に龍騎サバイブが現れる。

 

「お前はこれだ!!」ファイナルアタックライド、リュ、リュ、リュウキ!!

 

士と龍騎サバイブが同時に炎の刃を放つ。

二発の【バーニングセイバー】によってスコーピオンノヴァは斬り裂かれて爆散する。

龍騎サバイブの姿が消えると、

 

「ロォォォォクンロォォォォル!!」

 

カプリコーンがギターから音の衝撃を放ってくる。

士は紙一重で回避する。

 

「うるさいんだよ!!」カメンライド、エンペラー!!

 

ケータッチを操作し、胸のカードが変わる。

士の隣にキバエンペラーフォームが現れる。

 

ファイナルアタックライド、キ、キ、キバ!!

 

同じ動きで放たれる二発の【ファイナルザンバット斬】がカプリコーンの音撃を押し返してその体を裂く。

キバエンペラーフォームが消えると背後からジェミニが抱き掛かってきた。

しかし士の目の前にもジェミニはいる。

 

「アハハハ♪吹き飛びな♪」

 

どうやら抱き掛かってきているのはジェミニの超神星、分身爆弾のようだ。

分身ジェミニが点滅を始める。

爆発が近いのであろう。

 

「こんなのが通用するとでも思っているのか?」

 

「「え?」」

 

二人のジェミニの声が重なる。

直後、抱き掛かっていたジェミニにライドブッカーガンモードを押し当てて引き金を引く。

0距離の銃撃に分身ジェミニは吹き飛ぶ。

すかさずライドブッカーをソードモードにして本体の方へと分身を弾き飛ばす。

分身を叩き付けられてへたり込んだ所に、

 

スキャニングチャージ!!

「セイヤァァァァァァ!!」

 

映司がプロミネンスドロップを発動させて急降下してくる。

展開したコンドルレッグに挟まれてジェミニは分身ごと爆散する。

 

「士さん、伏せて!!」ギン!!ギン!!ギン!!ギン!!ギン!!ギン!!ギン!!ギガスキャン!!

 

言われて伏せる士。

その真上を銀色のエネルギー弾が通っていき、背後にいたレオへと当たる。

 

「ぬおぉぉぉぉ!!」

 

レオは爪でエネルギー弾を防ぎ霧散させる。

防ぎ切ったもののかなり後退している。

 

「ウオォォォォ!!」

 

入れ換わるようにタウラスが突進してくる。

 

カメンライド、ライナー!!

ファイナルアタックライド、デ、デ、デンオウ!!

 

士は迎え撃つ様に隣に電王ライナーフォームを召喚して、即座にデンカメンスラッシュを発動する。

目の前に来た所を狙い斬られタウラスは爆散する。

 

「エリャァァァァァ!!」

 

ピスケスが地面を泳ぐように移動して攻撃を仕掛けてくるが、地面から出たところを狙い撃つ。

 

カメンライド、アルティメット!!

 

ケータッチを操作して腰に戻す。

胸のカードが全てクウガアルティメットフォームに変わる。

 

「眠れ!!」

 

アリエスが睡眠波を放つ。

士は後退しながら避ける。

士の隣にクウガアルティメットフォームが現れる。

 

ファイナルアタックライド、ク、ク、クウガ!!

 

カードを入れると士とクウガアルティメットフォームが同時に手をピスケスとアリエスに向ける。

するとアリエスとピスケス周辺が炎上し始めて火柱が立ち上がる。

超自然発火によりアリエスとピスケスは原子レベルで焼かれて限界を迎えて爆散した。

 

「残りは四体か」

 

「調子に乗るなよ……」

 

リブラが呟きながらディケを持って挑み掛かってくる。

士は最初の一撃を避けるとカウンターの如くライドブッカーで斬る。

少し距離を空けてケータッチを操作する。

胸の全てのカードがブレイドキングフォームへと変わる。

 

アタックライド、ストレートフラッシュ!!

 

カードをディケイドドライバーに入れると、士は二本の剣を持ってリブラに斬り掛かる。

リブラはディケで防御するが一本で防ぎ切れずに斬撃を受け続ける。

そしてディケにも限界が来て砕ける。

そこが大きな隙となる。

そこを狙って二本で同時に斬る。

リブラは吹き飛び外壁にぶつかる。

士は隣にブレイドキングフォームを召喚してカードをディケイドドライバーに入れる。

 

ファイナルアタックライド、ブ、ブ、ブレイド!!

 

士の前にはマゼンタのエネルギー体のカードが五枚、ブレイドキングフォームの前には金色のエネルギー体のカードが五枚現れる。

全く同じ動作で剣を構え、振り降ろす。

斬撃波はカードを抜けてリブラへと向かっていく。

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

リブラは当たる直前に情けない悲鳴を上げて二つの斬撃波に斬り裂かれて爆散した。

 

「「これ以上はさせん!!」」

 

レオとヴァルゴが同時に襲い掛かってくる。

レオとヴァルゴが直接攻撃を仕掛けて、背後からサジタリウスが矢を放ってくる。

矢を避け、攻撃をライドブッカーで防いでいく。

 

「ぐぬぅ!?」

 

突然、ヴァルゴが背中から煙を上げてバランスを崩す。

映司が炎弾を放ったのだ。

その隙を士は逃さない。

 

カメンライド、シャイニング!!

ファイナルアタックライド、ア、ア、アギト!!

 

ケータッチを操作して、胸の全てのカードがアギトシャイニングフォームに変わる。

隣にアギトシャイニングフォームを召喚して、同じ動作で光の斬撃波をヴァルゴに向けて放つ。

ヴァルゴはギリギリ回避するが、翼を斬り裂かれて落ちる。

 

「もう一発だ!!」ファイナルアタックライド、ア、ア、アギト!!

 

もう一度カードを入れると士とアギトシャイニングフォームの足元に各々の紋章が現れる。

そして二人同時に蹴りを放つ。

二発の【シャイニングライダーキック】を受けたヴァルゴは貫かれて爆散した。

 

「ぐぁ!?」

 

着地した直後にレオが高速移動しながら襲ってくる。

 

カメンライド、ハイパー!!

 

ライドブッカーで攻撃を防ぎながらケータッチを操作して腰へと戻す。

胸のカードが全てカブトハイパーフォームへと変わる。

 

アタックライド、サソードパワー!!

 

そのカードを入れるとライドブッカーに紫のエネルギーが貯まっていく。

 

「そこだ!!」

 

士はある程度狙いを付けて斬撃を放つ。

 

「ぬぁ!?」

 

バキィ!!という音と共にレオの爪が砕ける。

先程、エネルギー弾を防いだ時にヒビが入っていたのだ。

爪を砕いた勢いのままにレオを斬り付け、更にカードをディケイドドライバーに入れる。

 

アタックライド、ドレイクパワー!!

 

ライドブッカーをガンモードにして貯まった緑色のエネルギーをそのまま放つ。

近距離で受けたレオは吹き飛ぶ。

その隙に隣にカブトハイパーフォームを召喚する。

 

ファイナルアタックライド、カ、カ、カブト!!

 

カードを入れると士はライドブッカーガンモードを、カブトハイパーフォームはハイパーゼクターを構える。

引き金を引き、二発の【マキシマムハイパーサイクロン】が放たれる。

レオは二発のエネルギー弾を防ぎ切れず直撃し貫かれて爆散した。

 

「超神星!!」

 

サジタリウスの叫びが響いた。

超神星を発動したサジタリウスは全身が赤くなって格闘に特化した姿となる。

そして士は殴り飛ばされた。

 

カメンライド、アルティメット!!

アタックライド、アルティメットタイタンソード!!

 

接近してきたサジタリウスノヴァにアルティメットタイタンソードで重い斬撃を入れて怯ませる。

そして腹にタイタンソードを突き刺し、宙に蹴り上げる。

 

「これでトドメだ!!」ファイナルアタックライド、ディ、ディ、ディケイド!!

 

映司はグライアの片翼を貫いていた。

そのままコンドルレッグでグライアを蹴り飛ばす。

そしてベルトからメダルを取ってタジャスピナーにセットし、オースキャナーでスキャンする。

 

キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!

「これで終わりだ!!」タカ!!クジャク!!コンドル!!ギン!!ギン!!ギン!!ギン!!ギガスキャン!!

 

グライアとサジタリウスノヴァは空中でぶつかる。

そして上からは炎の鳥を纏ったタジャドルが突っ込んでいき、

下からはコンプリートフォームが自身とサジタリウスノヴァの間に現れたカードを蹴り破りながら突っ込んでくる。

 

「セイヤァァァァァァ!!」

「ハアァァァァァァァ!!」

 

グライアは途中でギリギリ回避するがサジタリウスノヴァはマグナブレイズと強化ディメンションキックに貫かれて爆散する。

グライアはその余波に巻き込まれて場外へと吹き飛んでいった。

 

「ふぅ……」

「はぁ……」

 

二人は着地し、変身を解く。

決着は着いたと思われた時、ホロスコープススイッチが仄かに光って浮く。

 

「「何だ!?」」

 

ホロスコープススイッチはそのまま何処かへと飛んでいく。

二人がそちらに視線を向けるとそこにいたのは、

 

「お前は………ジェネラルシャドウ!!」

 

「それにショッカーグリード!!」

 

そこにいたのは二体の怪人であった。

二体の怪人は士と映司は眼中に無い様に会話する。

 

「ホロスコープススイッチはこの通り回収したがそちらは問題無いな?」

 

「あぁ、三枚のコアメダルは確かに回収した」

 

「貴重な研究資料だ。回収出来る時にせねばな」

 

「現在、不安定なアポロガイストに全てを任せていてはいかんからな」

 

「では帰るとしよう」

 

確認作業を終えたジェネラルシャドウとショッカーグリードは銀色のオーロラを出して何処かへ帰還しようとする。

 

「待て!!ジェネラルシャドウ!!」

 

「ふんっ。オーズに、ディケイドか。今は貴様たちに用は無いのでな帰らせて貰う」

 

呼び止める士を他所にジェネラルシャドウとショッカーグリードはさっさと銀色のオーロラへと消えるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ!!

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 





vsホロスコープス&グライア終了!!

コンプリートフォーム大暴れでした!!
設定的にはカメンライドしたライダーの能力を使えるので色々使わせてみました。


最後の二体は後々。
彼らは自身が放った物を回収したわけでなく、偶然現れた物を回収しただけです。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。


活動報告にてアンケート取ってます。
四巻後に何をやるかについてです。



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ゲームの終わりと無限龍と十三番目の太陽

 

映司と士はジェネラルシャドウとショッカーグリードの事が気になったが、今はゲームクリアを優先と言う事でホロスコープスを倒した跡から欠片を回収する。

士は思い出した様に確認をする。

 

「蛇使い座の欠片はどうした?」

 

「この通り、取り返してあるよ」

 

映司は蛇使い座の欠片を士に見せる。

そして全ての欠片を回収すると玉座の間へと向かう。

途中で十六夜と合流して各々の謎解きの確認をする。

細部は違えど大体同じ様な解答になっていた。

玉座の間に着き、欠片を填めていく。

最後の欠片を填める前に十六夜はレティシアに確認を取る。

 

「外の巨龍はもしかしてお前自身なんじゃないか?」

 

「ああ、その通りだ」

 

レティシアは肯定する。

最強種の召喚には器と星の主権が必要。

その器がレティシアというわけである。

そして最後の欠片が填め込まれる。

その時、一同は疑問に思う。

 

(どうやって巨龍を無力化する?)

(どうレティシアを解放するのか?)

 

そんな疑問が解決をしないまま、“契約書類”に勝利宣言がなされる。

 

 

{ギフトゲーム名“SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING”

 

 勝者・参加者側コミュニティ“ノーネーム”

 敗者・主催者側コミュニティ“     ”

 

 *上記の結果をもちまして、今ゲームは終了となります。

  尚、第三勝利条件の達成に伴って十二分後・大天幕の開放を行います。

  それまではロスタイムとさせていただきますので、何卒ご了承下さい。

  夜行種は死の恐れもありますので、七七五九一七五外門より退避して下さい。

          参加者の皆様はお疲れ様でした}

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

大樹の麓。

 

「ラッテンを頼むぞ」

 

「は、はい」

 

霧崎はラッテンをジンに任せると魔獣の群れへと向かっていった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

古城。

映司と士は“契約書類”を読み直し、即決した。

 

「それじゃあ、行こうか」

 

「ああ、これじゃ終われないからな」

 

二人は立ち上がって玉座に背を向ける。

大天幕が開放されればレティシアがどうなるかは察しがつく。

レティシアは慌てて二人に叫ぶ。

 

「お前達、何をするつもりだ!?」

 

「そりゃ、」

 

「「巨龍を討つ」」

 

二人が同時に答える。

そして、

 

「皆で手をつなげば、その手はどこまでも届く腕になる。俺は君の手も掴みたいんだよ、レティシアちゃん」

 

「俺は幾つもの世界を見てきた。お前は間違ってはいない。だが俺はそんな悲劇で妥協はしない。救うなら全て救ってやるよ」

 

二人は明確に意思を示す。

レティシアは言葉を失い、十六夜は呆れたような笑みを口元に浮かべる。

 

「……なら、俺も協力するぜ」

 

十六夜も玉座に背を向けた。

そして十六夜も意思を示す。

 

「俺は自己犠牲の出来る聖者よりも、物分かりの悪い勇者を助ける方が一〇〇倍好ましいんでね。悲劇になりきれねぇなら、俺がこの手で喜劇に変えてやる。______だから覚悟しろ。俺達は巨龍を倒して完膚なきまでに救ってやるからな」

 

三人は外へと向かっていく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

大樹の麓。

 

インフィニティープリィィィィィィズ!!ヒースイフードーボーザバビュードゴーン!!

 

「来い、ドラゴン!!」

 

晴人はインフィニティースタイルになってアックスカリバーで魔獣を斬り裂いていく。

 

ハイタッチ!!ハイタッチ!!ハイタッチ!!ハイタッチ!!ハイタッチ!!プラズマシャイニングストライク!!

「ハァァァァァァ!!」

 

アックスカリバーを遠隔操作して四方八方から切り裂く。

勝利宣言によって全ての参加者の士気は高まっていた。

 

「我々の勝利は決まったッ!!後はこの有象無象を蹴散らすのみッ!!同士よ、これが最後だッ!!死力を尽くせッ!!」

 

サラが吼えて、鬨の声が答える様に響く。

 

「あいつらがレティシアを見捨てるわけが無い。なら、やる事は一つだ!!」

 

霧崎は【ライズ】を全開にして魔獣を潰していた。

大天幕が開放されればどうなるかくらいは霧崎にも分かる。

だからこそ死力を尽くして戦う。

それらの様子を見て、途中参戦で事情がさっぱり分からない晴人も大体察する。

 

「み、見ろッ!!また巨龍が降りてくるッ!!」

「今度はかなり低いぞッ!!」

「まさか………“アンダーウッド”に突撃するつもりかッ!?」

 

全軍に、恐怖と戦慄が走った。

霧崎と晴人は自然と並び立つ。

ほぼ初対面ではあるが、通じあってる様に確認を取る。

 

「霧崎、お前はどうする?」

 

「決まってるだろ。巨龍を止める」

 

「そうだな、俺達が最後の希望だ!!」

 

二人は巨龍へと向かっていく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

古城・最端の崖。

十六夜と映司と士の行動は迅速であった。

 

「変身!!」

「変身!!」

 

カメンライド、ディ、ディ、ディケイド!!

タカ!!クジャク!!コンドル!!タージャードルー!!

 

「じゃあ、行くか!!」

 

映司は翼を広げて飛ぶ。

士と十六夜はマシンディケイダーに二人乗りになる。

その前にはカンドロイドが道を作っている。

十六夜が巨龍を撃ち、映司と士はサポートというかんじである。

急降下していった、巨龍へと三人は向かっていく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

大樹の麓。

巨龍はその凶暴な顎を限界まで開き、東南の平野の地平へと急降下。

激突寸前のところで進路を変え、雄叫びと共に大樹へと突進を仕掛ける。

霧崎と晴人は最前線で迎え撃つ。

 

(アレヲ止メレルカ分カラナイゾ)

(そんなことは百も承知だ!!)

 

そんなやり取りをしながら目の前の死の脅威を掴み、上へと祓おうとする。

しかし敵の規模が規模だ。

祓うにも苦労する。

晴人も加勢しようとした時、サラが隣に立つ。

 

「お前達、正気か!?」

 

「ああ、正気だ。俺達が引いたらたくさんの被害が出る。だから止めるんだ」

 

「無理だ!!それは自殺と変わらない!!」

 

「………ありえないことするのが魔法使いだろ?」

 

「退かないのか?」

 

「俺は最後の希望だ。俺は退くわけにはいかない」

 

言い切る晴人。

覚悟を感じてサラも決意する。

 

「______分かった。ならば、私も同じだけの決意を示そう!!」

 

サラは一族の誇りである龍角を切断した。

 

「な!?」

 

晴人が動揺するが、それ以上は言わない。

彼女の覚悟を前にそれらの言葉は吐けない。

 

「お前の力は龍から来ているのだろう………それなら純度の高い霊格である龍角が力になるはずだ」

 

「ああ、確かに受け取ったぜ。あんたの覚悟を!!」

 

サラから渡された龍角は光を放って金色の指輪へと変わる。

そしてその指輪をベルトにかざす。

 

チョーイイネ!!フィニッシュストライク!!サイコー!!

 

インフィニティースタイルの周囲を透明のドラゴンが回って晴人と一つになる。

インフィニティースタイルにドラゴンの翼と爪と尾が現れる。

これが全ての力を解放した形態、インフィニティードラゴンである。

 

「フィナーレだ!!」

 

晴人は蹴りを、全ての力を込めた蹴り、インフィニティーエンドを巨龍に向かって放つ。

右足にはドラゴンの頭部が顕現する。

 

「______GYEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEYYAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

 

「止まれぇぇぇぇぇ!!」

 

巨龍が雄叫びを上げ、霧崎が叫ぶ。

霧崎の意地で巨龍の頭が上空を向いた時に晴人の蹴りが巨龍を押し上げる。

 

アタックライド、イリュージョン!!

ファイナルアタックライド、ディ、ディ、ディケイド!!

 

そこへ更に三発のデイメンションキックが巨龍を貫く。

そして大天幕が開かれ、巨龍の体が消えていく。

心臓に刻まれた神々しい極光が浮き彫りになる。

その一瞬を待っていたように十六夜が追走する。

 

 

「見つけたぞ……………十三番目の太陽!!」

 

 

十六夜は両手に抑えた光の柱を束ね、巨龍の心臓を撃ち抜く。

巨龍の断末魔は無く、その総身は光の中へと静かに消えていく。

巨龍の心臓から零れ落ちた、もう一つの太陽______レティシアを日光から庇うように抱いて、映司は右腕を振り上げた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

“アンダーウッド”主賓室。

レティシアが目を覚ましたのは二日後だった。

 

「起きたかい、レティシアちゃん」

 

声を掛けたのは映司だった。

映司は読んでいた本を閉じる。

 

「私は……」

 

「問題は無いよ。二日程寝ていただけだよ」

 

「ずっと起きるのを待っていたのか?」

 

「ずっとじゃないね。順番で待っているかんじだよ」

 

レティシアが少し身を起こすと、黒ウサギが部屋に飛び込んできた。

黒ウサギはレティシアに気付くと歓喜の声を上げる。

そして他のメンバーを呼ぶ為に部屋を出ていった。

本当に騒がしい。

少し話して映司も退室する。

レティシアは小さく泣く。

 

「………そうか。私の太陽は、空にあるものだけじゃなかったんだな」

 

そんな実感と幸福感を胸に、もう一度眠りにつく。

太陽の様に輝く同士たちと歩む明日に思いをはせ、レティシアは優しいまどろみに身を任せるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ!!

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 





四巻分終了!!

次回からの内容は日曜日までのアンケートの結果に次第です。
活動報告の方で実施してます。


それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。



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リリとコッペリアと退廃の風
前夜祭と料理とマッチョ人形



今回からリリの大冒険です




 

時は過ぎ、収穫祭が始まる三日前。

“ノーネーム”の年長組が主催進行の手伝いをして、リリと十六夜が小麦と肉を調達しに売店のある広場に向かっている頃、

霧崎とラッテンは市場に来ていた。

最初の方は互いに色々と思う所があって顔を赤くして気まずそうにしていたが、そんなのは本当に最初の方だけであり、すぐに何時ものテンションになって霧崎はラッテンの買い物に付き合わされていた。

 

「それで、まだ買うのか?」

 

「そりゃそうでしょ!!女の買い物なめんじゃないわよ!!」

 

まぁ普通で普通に荷物持ちをさせられている霧崎である。

結構な量を抱えてはいる。

暖かい気候の南側では、衣類の布は比較的に面積が少ない。

つまり露出が多い。

そんな事はラッテンは気にしない。

というか、むしろ気に入って目を輝かせている。

 

(何と言うか………こりゃ長くなりそうだな……)

 

霧崎はうんざりといったかんじにため息を吐く。

ラッテンの喜ぶ姿を見てるのはいいのだが、さすがに大量の荷物を持たされてあっちこっち連れ回されるのは御免である。

ラッテンが品を選んでいる間、暇な霧崎は周囲を見ると、両手に大量の荷物を抱えた十六夜とリリの姿が見えた。

映司、士、晴人も各々別の方向に見える。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「クソッ!!ガロロの奴!!最後だからって聞きもせずに仕事を入れて来やがって!!」

 

士が大声で愚痴る。

収穫祭が終わったら資金も貯まったから“アンダーウッド”を出るという事をガロロに話したのだ。

その後、ガロロがかなりの量の仕事を押し付けて来たのだ。

士としても何もせずに出ていく気は無かったが、ここまでとは考えて無かった。

とはいえ、今日の分は終わらせてあるのだが。

そこらへんはしっかりしている。

 

「さて、ここからどうするか……」

 

仕事が空いてる間に前夜祭を見ておこうと思い、フラフラ彷徨いてはいるのだが無計画なので特に何かをやろうということはない。

何となく周囲を見回すと、十六夜とリリ、映司、晴人、霧崎とラッテンを見つけるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

晴人は市場でプレーンシュガーのドーナツを買って食べ歩いていた。

晴人は戦いが終わった後に士や映司達に色々と話した。

自分がどう箱庭に来たのか、などである。

とは言っても変な銀色のオーロラに包まれ、気がついたら箱庭にいたので話す事はあまり無いのだが。

今後の方針はまだ未定である。

箱庭の事はある程度、把握はしたが何をするか決めかねているのだ。

 

「しかし、あそこまで荒れてたとは思えない光景だな」

 

周囲を見回しながら呟く。

そんな中、士、映司、霧崎とラッテン、十六夜とリリを見付けるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

映司は帰路の途中であった。

ジャック達と“とある事”の相談をして、必要な準備などを話していたのだ。

話はいい方向に行きそうではある。

それで現在は宿へ帰るついでに前夜祭を見ていこうという事である。

 

「此処には此処で色々あるね」

 

市場に並ぶ商品を見ながら呟く。

すると、視界に見覚えのある物が入ったような気がして見回すと知り合いを結構見付けるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

そうして十六夜とリリ、霧崎とラッテン、映司、士、晴人はばったりと偶然出くわすのだった。

本当にばったり会っただけなので各々用があるわけではないが、少し話をする。

“ノーネーム”一同はプレゼントについて話し、士と晴人は互いの今後を話し合う。

そして一通り話すと十六夜が料理をするという話題になった。

 

「それで何を作るんだ?」

 

「パンプキンキッシュだな」

 

「メインはそれだね。なら、俺はスープでも作ろうかな?」

 

映司が食品を見ながら言う。

世界を見て回り、それなりに料理も出来るのだ。

 

「じゃあ、俺は前菜だな」

 

士も乗っかってきた。

 

「これで三品か。お前らはどうする?」

 

「俺は料理が苦手で無理だ」

 

「私もそこまで作れるわけじゃないからパスね」

 

霧崎とラッテンが答える。

 

「俺もあんまり作る方じゃ無いし遠慮しておく」

 

晴人も辞退した。

それじゃ夕食で、という事で一同は各々行動を始めるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

その後、リリは自由時間にプレゼントを探して市場を散策していた。

その際に暴れ牛にはね飛ばされて断崖の隙間に落ちた。

そこで不思議な店をぶつけるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

陽も落ちて夜の帳が降りる時刻。

“ノーネーム”一同は晩餐会を開いていた。

サラやガロロ、士と晴人も参加している。

ガロロは杯をあおりながら、料理を絶賛する。

 

「クッハァー!!なんでぇ、なんでぇ!!お前さんら調理も人並み以上に出来るんじゃねぇか!!」

 

「俺の料理は趣味の範疇だ。上手いのはあんたの護衛だろ」

 

十六夜は少しむっとした表情でキッシュをかじる。

映司も同意する。

 

「そうだね。士さんがここまで上手いとは思ってなかったよ」

 

「ふん、少し前にとある男に馬鹿にされてな。その時に上手くなっただけだ」

 

士が何やら嫌な人間を思い浮かべたような表情をする。

 

「確かにこれも上手いが、映司さんのスープも十六夜のキッシュも美味しいぜ」

 

「そりゃどうも」

「ありがとうね、霧崎くん」

 

その隣でサラも士の料理を意外そうに食べている。

 

「いやはや、まさかお前がここまで調理が出来るとは………かなり意外だ。具材も拘ってるようだしな」

 

「お前は俺をどんな風に見ていたんだ……具材に関してはとある男によれば“料理の味を決めるのは下準備と手際の良さ”らしいからな」

 

適当な調子で答えるあまり思い出したくは無いのだろう。

そうしていると、リリの様子がおかしいと気付き話を聞く。

何やら素敵な店で素敵なブローチを見付けたらしいが、ギフトゲームが関わってるらしく買えなかったらしい。

話を聞いてく内に何やら怪しい話になっていった。

何はともあれ、十六夜達で見に行こうと言う事になる。

サラも主催の一人としてガロロに頼まれて行く事になる。

士も仕事という事で行く事になる。

晴人は話を聞いたからには行くようだ。

十六夜、霧崎、ラッテン、映司、士、晴人、サラ、そしてリリは席を立って主賓室を後にした。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一同が亀裂の前に来て、亀裂が気づかれず、周囲に誰もいないのを不可解に思っていると

 

「ひゃー!?」

 

リリが暴れ馬に弾き飛ばされて亀裂の中に入るのだった。

一同はすぐさまリリの後を追うのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

亀裂から歩いて約五分。

一同はリリを発見するのだった。

その後、店まで辿り着いて、店主の椅子に座る女性型人形を見付けて、その手に握られた“契約書類”を見る。

 

{___わたしはせかいいちのはたらきもの___

 

 ひとりめのわたしはせかいいちのはたらきもの!!

 だれのてをかりなくてもうごいてうごきつづけたよ!!

 あまりにうごきつづけたから、はじめのとうさんもおおよろこび!!

 だけどあるひ、それがうそだとばれちゃった。

 ひとりめのわたしととうさんは、うそがばれてこわれちゃった。

 

 ふたりめのわたしはせかいいちのはたらきもの!!

 ともだちがてをかしてくれたから、うごいてうごいてうごきつづけたよ!!

 あまりにもうごきつづけたから、つぎのとうさんもおおよろこび!!

 だけどあるひ、それがにせものだとばれちゃった。

 でもふたりめのわたしととうさんは、ともだちのおかげではたらきつづけたの。

 

 さんにんめのわたしはほんとうにはたらきもの!!

 まだうまれてないけど、えいえんにはたらきつづけるの!!

 はやくうまれろ!!はやくうまれろ!!みんなにそういわれつづけたよ!!

 だけどあるひ、わたしがうまれないとばれちゃった。

 だからさんにんめのとうさんは、さんにんめのわたしをあきらめたの。

 だけどそんなのゆるさない!!たくさんのとうさんがわたしをまっている!!

 とみも!!めいせいも!!じんるいのゆめも!!わたしがうまれたらてにはいる!!

 だからお願い…………私を諦めないで…………!!例え、真実が答えでも…………!!}

 

「これが…………“契約書類”かい?」

 

「随分と変則的な文だがおそらくそうだろう」

 

サラは厳しい瞳で書面に目を通す。

しかし一通り読んだ後、あっさりと匙を投げた。

 

「悪いが私にはさっぱりだ。お前達に任せるよ」

 

「おい、それでいいのか“階層支配者”」

 

「そうだぜ。新しい“階層支配者”がそれでどうする」

 

士と十六夜がからかうように言うとサラは珍しく唇を尖らせて拗ねた。

その後、店が揺れて奥の扉から幾百もの大小様々な___

 

 

マッチョ人形が現れた。

 

 

「「「___うわお」」」

 

十六夜、霧崎、ラッテンが驚きの声を上げ、臨戦体勢だったサラは白くなり、リリは怯えて涙目だ。

 

シャバドゥビタッチヘンシーン!!

 

「「「変身!!」」」

 

カメンライド、ディ、ディ、ディケイド!!

タカ!!トラ!!バッタ!!タトバッ、タトバ、タットッバ!!

フレイム、プリーズ!!ヒー、ヒー、ヒーヒーヒー!!

 

が、士、映司、晴人の行動は迅速だった。

 

キャモナスラッシュシェイクハンズ!!

 

ファイナルアタックライド!!ディ、ディ、ディケイド!!

トリプル!!スキャニングチャージ!!

フレイム!!スラッシュストライク!!ヒーヒーヒー!!

 

ライドブッカー、メダジャリバー、ソードガンを構えて即座に必殺技を発動させる。

三つの斬撃がマッチョ人形に放たれ、暴炎が上がる。

 

「さて、今の内に逃げようか」

 

晴人が呟いた直後、

 

 

「雄々オオオオオオオオオオォォォォォォォォォ!!」

 

 

暴炎を突き抜けてマッチョ人形が雄叫びを上げて迫ってきた。

サラは既に店外に逃げている。

それは仕方無い。

一同は冷や汗を流しながら後退する。

十六夜は後ろ走りでマッチョ人形を見つつ、ボソリと、

 

「………一体欲しいな」

 

「いいわね、それ!!」

 

「やめとけ!!」

 

「や、止めてください十六夜様、ラッテンさん!!」

 

割りと全力で止める霧崎とリリ。

残念そうな声を上げる十六夜とラッテン。

十六夜、霧崎、ラッテンが高速で駆け抜ける中、

 

ファイナルアタックライド!!カ、カ、カブト!!

タカ!!クジャク!!コンドル!!ライオン!!クワガタ!!トラ!!バッタ!!ギガスキャン!!

チョーイイネ!!スペシャル!!サイコー!!

 

背後でやたら大きな爆発音がする。

何やら割と本気で迎撃してるようだった。

そんなこんなで断崖壁の入り口まで逃げるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ!!

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 





リリの大冒険編です!!

割と本気の火力出してるけどお気にならさず……
消されるものは消されるべきなので。


ちなみにあの二人の関係はまだ進展はあるが関係は変更無しというかんじです。


それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。



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風と神珍鉄と永久機関

 

前回の三つの出来事!!

 

一つ!!十六夜、リリ、映司、士、晴人、霧崎、ラッテンは各々市場を回るのだった。

 

二つ!!リリは暴れ馬に弾き飛ばされた所で奇妙な店を発見するのだった。

 

三つ!!リリから奇妙な店の話を聞き、そこへ向かう一同だったがマッチョ人形を前に退散するのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

そして翌日。

非常に負けず嫌いな十六夜はかなり本気でパンプキンキッシュを作っていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

士は連盟議長室に来ていた。

そこでサラに昨日のギフトゲームに関する考察を聞かせていた。

話を聞かせるとサラは士に対して勧誘活動を行った。

結果は、

 

「悪いが俺は何処かのコミュニティに加わる気は無いんでな。そもそも俺みたいな通りすがりに頼る時点で間違いだ」

 

すっぱりと断る士。

残念そうにするサラ。

 

「そうだ、あのギフトゲームには近付かない方がいい。あれはトラップゲームの可能性がある」

 

「まぁ俺もそんな気がしていたが、俺より他の奴に言った方がいいんじゃないか?」

 

「それもそうだな」

 

そしてサラは人を呼んで、誰も通さない様に指示を出した。

その間に士は連盟議長室を出ていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

その時、リリはコッペリアと話していた。

そして“退廃の風”に襲われていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ライトプリーズ!!

 

そんな音声と共に館を光が包む。

 

「リリ、逃げるぞ!!」

 

「こりゃとんでもない物がいたものね………」

 

「それどころでは無いだろう!!」

 

「カブト様!!白雪姫様!!ラッテンさん!!どうしてここに!?」

 

「それはこっちの台詞だよ!!」

 

霧崎に言われて狐耳を伏せるリリ。

白雪姫とラッテンは鈍色の風を見て冷や汗を流している。

 

ハリケーン!!ドラゴン!!ビュー、ビュー、ビュービュービュービュー!!

 

晴人はハリケーンドラゴンに姿を変える。

まともに戦え無いので逃げる体勢に入っているのだ。

霧崎の【弱者のパラダイム】も死の脅威とは違う“退廃の風”には意味が無い。

 

ライトプリーズ!!

 

ソードガンにライトの指輪をかざす。

ソードガンが光を放ち、“退廃の風”が寄ってくる。

晴人はソードガンを投げ捨て、囮にする。

 

「今の内だ!!」チョーイイネ!!スペシャル!!サイコー!!

 

晴人は翼を展開しながら叫ぶ。

霧崎はリリとコッペリアを晴人に預け、自分はラッテンを抱える。

六人は追憶の檻から逃げ出すのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方、その頃の映司はと言うと、

 

「それでジャック。素材はこれで解決として成功しそう?」

 

「ヤホホ、五分五分と言った所ですかね。何分未知の技術に近い所もありますから」

 

「それでいいよ。可能性があるなら………」

 

何やらジャックと話を進めているのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

某所。

 

「大ショッカーめ、私が用意した物も奪っていったな。まぁいい、ディケイドに終わりが近付けばそれでいい。さて、これらは……“あれ”を利用させて貰おう」

 

中年の男は銀色のオーロラへと消える。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

主賓室。

そこで一同はガロロを混ぜて話あっていた。

コッペリアの正体は第三永久機関。

それを完成させなければ“退廃の風”は止まらない。

そこで十六夜はコッペリアに宣言する。

 

「今日からお前は永久機関コッペリアじゃない。俺たち“ノーネーム”が造る新しい人形___神造永久機関コッペリアだ」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

士、映司、晴人、白雪姫、リリは市場の割れ目を眺めていた。

士、映司、晴人は既に変身済みである。

彼らの役目は足止めである。

彼らが互いに役目を確認し合うと、市場の割れ目から低く鳴動するような地響きが聞こえた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方の地下工房。

そこに十六夜、霧崎、ラッテン、コッペリア、そしてジャックがいた。

 

「にしても神珍鉄を使うなんてよく思いついたわね」

 

ラッテンがディーンを取り出しながら呟く。

ディーンの姿は壊れはしてないがヒビだらけである。

ディーンを取り出した理由は簡単である。

伸縮自在なディーンの神珍鉄を使って永久機関を完成させようというわけである。

 

「まぁそれはともかくお前らから承諾を取らないわけにはいかないからな」

 

「この流れで断るわけないでしょ」

 

苦笑いするラッテン。

それを見てジャックが何かを思い付く。

 

「ではこういうのはどうでしょう?十六夜殿が神珍鉄を貰い受ける代わりに、ディーンさんの修理改修費用を全面負担するというのは?」

 

その様子では少なからず修理は必要でしょうし、と付け加える。

ちゃかりしてんな~と霧崎が心の中で呟く。

不満そうな顔はしたが観念したように十六夜は了承するのだった。

一方のコッペリアは話を聞きながら覚悟を決めていた。

 

「それでは改造を行いますが、覚悟はよろしいですか、コッペリア嬢」

 

「___ええ。お願いします、スミス・パンプキン」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「来たぞ!!」

 

士の叫びと共に映司と晴人は光を放つ。

映司はラトラーターとなって光を放ち。

晴人はハリケーンドラゴンで空を飛びながら光を放つ。

割れ目から出てきた“退廃の風”はそれらを求め、迫る。

 

ファイナルアタックライド!!ディ、ディ、ディケイド!!

 

が、飛び出した瞬間、ライドブッカーから放たれたディメンションブラストによって押し返される。

それも数瞬だけであり、“退廃の風”はすぐに映司と晴人に向かっていく。

 

「何とかなってはいるようだな」

 

白雪姫が呟く。

映司と晴人が高速移動しながら囮として駆け回り士がサポートする事によって均衡は保たれる。

そしてコッペリアが現れ、姿無き無貌魔王の動きが止まる。

その後、一悶着はあったが“退廃の風”は去っていった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

主賓室。

一同は十六夜の焼いたパンプキンキッシュを晩餐に歓談していた。

 

「これは……昨日以上だね」

 

「確かにこれはいいな」

 

「当然だ。収穫祭でかなり材料を厳選したからな」

 

「ヤホホホ!!我々の出品した黄熱カボチャも使いましたからね!!間違いなく美味しいですよ!!」

 

ヤハハと笑ってふんぞり返る十六夜と、ヤホホと笑ってふんぞり返るジャック。

リリとコッペリアも色々と話している。

 

「じゃあ、あのブローチを売って欲しいな!!あのペンダントが似合う人がいるから、贈り物にしたいの!!」

 

「ですがフォックス。あのブローチは…………その、値を付けるとそこそこしますよ?元がご神木のブローチですから」

 

うっ、と言葉の詰まるリリ。

その様子を見たガロロが働き口を用意すると助け船を出す。

リリはガロロにお礼を言うとコッペリアに向き直る。

 

 

「母様がいつも言ってました。勤労には見合った対価を払わなければならない、って。あのブローチを作ったのはコッペちゃんなんだから、それに見合うお金を払わないと私、家訓に背いちゃいます」

 

 

ムンッ、と両手を握って気合いを入れる。

コッペリアは恥ずかしそうにしながらも、微笑んで承諾した。

その影で、

 

「ガロロのおっさん、俺にも何かやる仕事あるか?」

 

「何だ?お前さんも金がいるのか?」

 

「ちょっと小遣い稼ぎとリリの手伝いにな」

 

「そうか、なら用意しよう」

 

「霧崎が働くなら私も働きますよ~♪」

 

霧崎に乗っかる様に言うラッテン。

そして食卓に座る面々の前にパンプキンキッシュが並べられる。

一同が両手を合わせた瞬間___事態は一変した。

 

 

「うわああああああああああああ!!暴れマッチョだああああああああああああああああ!!」

 

 

___雄々オオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ!!

と猛々しい声が地下都市に響く。

直後、映司、晴人が立ち上がる。

 

「悪いけど、ちょっと行ってくるね」

 

「ああ、俺も行ってくる」

 

二人は窓から飛び降りて向かっていった。

 

「仕事だぜ」

 

「分かったよ」

 

ガロロに言われて渋々向かう士。

そしてその後、十六夜とコッペリアもマッチョの群れへと飛び込んで行くのだった。

 

その後、何処からか飛来したゾディアーツスイッチやガイアメモリによりマッチョ人形の集団が本物の怪人集団に変わり、一同が処理をする羽目になるのだがそれはまた別の話である。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

某所。

 

「ふむ。失敗作は失敗で使い方はあるものだ……」

 

ガイアメモリやゾディアーツスイッチを放った張本人は何処かで笑っているのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 






リリの大冒険編終了!!

“退廃の風”に【弱者のパラダイム】は通用しないという事で。

次回からは五巻分です。

映司とジャックに関しては後々。

あの人に関しては失敗作をマッチョ人形に使ったという感じです。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。



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水着と鷲龍とヒッポカンプの騎手
狩猟と騒ぎと乱入者



今回から五巻です。




 

“アンダーウッド”

色々あって黒ウサギは白夜叉に誘拐されたりなどしたが、やっとの事で解放されて現在に至る。

黒ウサギは“ノーネーム”一同に会おうと思ったが見事にバラバラだった為に手短な所な十六夜の所へと向かう事にした。

蛟劉と呼ばれる男に案内されて黒ウサギは十六夜のいる書庫へと向かう。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

東南の高原とアラサノ樹海・境界線。

ペリュドンの群れに霧崎が飛び込む。

ペリュドンは反射的に霧崎へと襲い掛かる。

しかし霧崎に角は届かず地面に叩き落とされる。

 

「今だ」

 

霧崎が合図を出すと弓矢の一斉掃射によって翼を貫かれる。

 

「ハァ!!」

「とりゃ!!」

 

そして晴人のソードガンとラッテンのハーメルケインによってペリュドンは喉を切り裂かれて絶命していく。

 

「ふぃ~」

 

「こりゃ大量だな」

 

「そうね~これだけあれば上位狙えるわ」

 

「角付きは高得点だから期待してもいいだろうな」

 

彼らは現在、狩猟のゲームに参加していた。

 

{ギフトゲーム___“アンダーウッド”の収穫祭・狩猟部門___

 

 ・参加者

  自由参加(前日までに要申請)。

 

 ・ルール規定

  一、コミュニティごとに戦果を競う(ゲーム内での同盟は可)。

  二、亜人を含む人類は狩猟道具を着用すること。

  三、勝敗は獲物の総重量をポイントにして決する。

  四、角付きの戦果には加点有り(奉納・祭具としての寄付を認めた場合に限り)。

  五、期間は前夜祭の正午から夕暮れ迄とする。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、各コミュニティはギフトゲームに参加します。

             “龍角を持つ鷲獅子”連盟 印}

 

ルールを確認した三人はガロロに言われて荷馬車に乗り込む。

帰路の途中、フェイス・レスの戦果を見て驚いたりしたが、そこらへんを気にする霧崎ではない。

ラッテンは少々悔しがったりしていたが。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

地下都市・収穫祭の露店通り。

霧崎、晴人、ラッテン、ガロロは地下都市に足を運んでいた。

ちなみに狩猟で晴人が魔法を使用せず、ラッテンが演奏を使わなかったのはガロロに、

 

「コミュニティの主力が簡単に底を見せちゃいけねぇ。どんなゲームにも全力を出すのは三流プレイヤーのすることだ」

 

と言われたからだ。

だから、フェイス・レスに優勝を奪われても仕方なくはあるのだが、ラッテンは納得してないようであった。

ガロロが開会式の準備で去っていってしばらくして、

 

「……ねー、霧崎。聞いてるの~?」

 

ラッテンは完全に酔っていた。

納得のいかない分を酒で晴らそうとしたのかどうかは分からないが、酔って霧崎に絡みまくっている。

 

「あ~、ちゃんと聞いてるから、酒はそこらへんにしとけ………」

 

「何よ~祭りなんだから少しくらい、いいでしょ……ヒック」

 

苦笑いで何とか飲むのを止めようとする霧崎。

話を聞かずに酒を飲み続けるラッテン。

そんな二人を他所に晴人はプレーンシュガーのドーナツとコーヒーを飲んでいた。

コーヒーには角砂糖がドバドバと投入される。

 

「うん、やっぱりドーナツはプレーンシュガーだな」

 

呟きながらドーナツを食べる晴人。

そこで、小さな精霊を見掛ける。

 

(何だ、ありゃ?)

 

同じ姿の五人組の精霊である。

精霊はそこらへんを彷徨いた後に何事もなかった様に飛び去っていった。

少し興味のわいた晴人は霧崎とラッテンに一言言って精霊を追いかけるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方、会議室・深緑の間。

そこで“ノーネーム”のジンと“六本傷”のポロロが交渉の席に付いていた。

ジンには付き人としてメイド服のぺストと白雪姫が、ポロロにはキャロロが同伴していた。

映司と士もこの場に護衛として同席する予定であったが過剰な戦力は不要という事で参加していない。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方、開会式では、

 

 

「___天が呼ぶッ!!

    地が呼ぶッ!!

    人が呼ぶッ!!

    少し落ち着けと人は言うッ!!」

 

白夜叉が何処かで聞いた様な事を言いながらド派手に登場していた。

その後は真面目に話をした。

白夜叉の後にサラが語り、それを聞いた黒ウサギは、

 

(“ノーネーム”も何時かきっと………旗を取り戻すのですよ………!!)

 

と思いながらサラへと拍手を送っていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

立食会場。

そこで騒ぎが起こっていた。

形としては映司と“二翼”の長、グリフィスが睨みあって、グリフィスの取り巻きの二人の後頭部には、各々士と晴人がライドブッカーとソードガンの銃口を突き付けていた。

 

「もう一回言うよ、訂正してくれないかな?」

 

語気を強めて言う映司。

その言葉に少したじろぐグリフィス。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

騒ぎが起こる少し前。

始まりはグリフィス達が“ノーネーム”を蔑んだのをリリが咎めたことだった。

そこから騒ぎが広がり、映司が割り込んだ時にグリフィスはサラを嘲笑った。

それが引き金だった。

 

「悪いけど、訂正してくれないかな?サラさんは決して愚かじゃないよ。君とは違ってね」

 

「貴様!!グリフィス様になn

 

「お前は少し黙ってろ」

 

「な!?」

 

「お前もだよ」

 

取り巻きの男がグリフィスと映司の間に入ろうとした所で士と晴人が現れ、取り巻きの男達の後頭部に銃口を突き付けた。

士も、晴人も、偶然居合わせただけだが事情は察していた。

そして士も、晴人も、グリフィスの様なタイプは気に入らない。

そして現在に至る。

 

「………フン」

 

グリフィスは笑みを浮かべ、人化の術を解く。

 

「そういえば、もう一匹馬鹿な真似をして誇りを折った者がいたな。___奴は元気にしているか?“名無し”の猿を助ける為に鷲獅子の翼を失い…………愚かで陳腐な姿となった、我が愚弟はッ!!」

 

姿が激変する中、グリフィスはグリーすら嘲笑う。

 

[思い知るがいい、猿どもが!!このグリフィス=グr

 

グリフィスの叫びは最後まで続かなかった。

それは喉元に三つの刃が突きつけられていたからである。

映司、士、晴人は姿を変化させる一瞬をついて近付き、ライドブッカー、ソードガン、メダジャリバーを喉元に当てたのだ。

 

[くっ………]

 

三人に睨み付けられて苦々しそうに顔を歪めるグリフィス。

この状態で動けばどうなるかくらいは察しが付くグリフィスは動けないのだ。

 

「喧嘩なら買うぞ?」

 

「リリちゃんやサラだけじゃなく、グリーまで侮蔑するって、どこまで救い様が無いな」

 

「士さん、晴人くん。二人共、離れててください。これは俺と……この人の問題ですから」

 

言われて離れる士と晴人。

士も、晴人も、この件に関しては割り込んだはいいが関わりが強いわけではない。

なので、この場は映司に譲った。

無論、サラやグリーへの侮辱は許せないが。

 

[何のつもりだ?]

 

「そのままだよ。これは俺と君の問題だ。サラさんやグリーさんへの侮辱、訂正してくれないかな?」

 

[誰がするか!!]

 

グリフィスが吠えて、稲妻と旋風が吹き乱れる。

映司は紙一重でそれを回避する。

回避しながらオーズドライバーを取り出して装着する。

二人がぶつかると思われた時、

 

 

「あれ?これはどういう状況や?」

 

 

突然の乱入者によって止められた。

 

 

◆◆◆◆◆   

 

 

カウント・ザ・メダルズ

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 





五巻導入です!!

晴人は精霊を追い掛ける中、騒ぎに遭遇したかんじです。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。



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蛟劉と水着と刹那の剣閃

 

 

 

 

前回の三つの出来事!!

 

一つ!!霧崎、ラッテン、晴人は狩猟に参加するのだった。

 

二つ!!ジンは“六本傷”の新頭首と交渉するのだった。

 

三つ!!映司、士、晴人はグリフィス達と揉め事を起こして、ぶつかりそうになった所を乱入者に止められるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆      

 

 

映司達の騒ぎを止めたのは蛟劉だった。

その後、本陣営に呼び出しをくらい。

そこでも一悶着あった。

グリフィスが納得しなかったのだ。

蛟劉が自分が蛟魔王だと明かして、グリフィスは大人しくなるが、今度は十六夜が文句を言う。

そして、結果として、ギフトゲームで決着をつける事になる。

ゲームは“ヒッポカンプの騎手”、敗者は壇上で土下座。

それで話はつくのだった。

 

その後、蛟魔王に色々聞こうと黒ウサギと十六夜が行動を起こして映司も乗っかったりするのだが、それは別の話。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方の壇上。

 

 

「____というわけでッ!!収穫祭のメインゲーム・“ヒッポカンプの騎手”の水馬の貸し出しはッ!!全員、水着の着用を義務とするッ!!」

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

 

「白夜叉様万歳!!白夜叉様万歳!!白夜叉様万歳!!」

 

「“サウザンドアイズ”万歳!!“サウザンドアイズ”万歳!!」

 

白夜叉が暴走していた。

ついで酔っ払い共が大騒ぎしていた。

 

「まぁ…………止める奴がいなけりゃこうなるよな…………………」

 

その様子を見ながら苦笑いで呟く霧崎。

その隣ではラッテンが酔い潰れて眠っている。

霧崎の言う通り、

ツッコミ役の黒ウサギは不在。

“主催者”のサラも不在。

ストッパーの女性店員は酔い潰れている。

枷が外れた状態という事である。

そして枷を失った白夜叉を止められる者などこの場にはいない。

参加者もノリノリである。

収穫祭の初夜____暴走する白夜叉を止める者は無く。

三日月の月明かりが、生ぬるく彼らを見つめていた。

霧崎もチビチビと酒を飲みながら、その光景を眺めていた。

 

 

◆◆◆◆◆     

 

 

川辺の放牧場。

翌日の明朝。

士、映司、晴人、黒ウサギはヒッポカンプを選びに来ていた。

黒ウサギが子供達の水着を選んでいる。

どうもどうやら当日の手伝いを水着でお願いされたらしい。

ラッテンも手伝いに入る予定だが。

ラッテンはさっさと決めていたらしい。

そんな黒ウサギは放置して、映司達はヒッポカンプを選んでいた。

 

「こいつは………いいな」

 

士がヒッポカンプにまたがりながら、呟く。

選んでいる途中に士にいやになついてくるのがいたので試しに乗ったのだがどうやら相性がよかったらしい。

ちなみに士と晴人は“ノーネーム”に所属していないが、今回の件は自分達も関わりがあるとの事で“ノーネーム”枠で出場する。

 

「これは騎手は士さんかな?」

 

「そうだな。俺は馬乗れないし」

 

士が乗り回す様を見ながら映司と晴人は“契約書類”を見る。

 

{ギフトゲーム____ヒッポカンプの騎手____

 

 ・参加者資格

  一、水上を駆けることが出来る幻獣と騎手(飛行は不可)。

  二、騎手・騎馬を川辺からサポートする者を三人まで選出可。

  三、本部で海馬を貸し入れる場合、コミュニティの女性は水着必着。

 

 ・禁止事項

  一、騎馬へ危害を加える行為は全て禁止。

  二、水中に落ちた者は落馬扱いで失格とする。

 

 ・勝利条件

  一、“アンダーウッド”から激流を遡り、海樹の果実を収穫。

  二、最速で駆け抜けた者が優勝。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、各コミュニティはギフトゲームに参加します。

                “龍角を持つ鷲獅子”連盟 印}

 

その後、ヒッポカンプに跨るフェイス・レスを見付ける。

少し話し、そこで“ヒッポカンプの騎手”で“二翼”が優勝した場合、グリフィスが南の“階層支配者”に任命される、という話を聞いた。

 

 

◆◆◆◆◆    

 

 

グリーの個室では十六夜とグリーとガロロが話をしていた。

 

 

◆◆◆◆◆    

 

 

会談室。

そこではジャック、ジン、ポロロ、アーシャ、ぺストが同盟の契約の確認をしていた。

 

 

◆◆◆◆◆    

 

 

“ヒッポカンプの騎手”当日。

地下都市の観戦会場。

 

「よっと」

 

霧崎は会場で露店の手伝いをしていた。

ガロロに入れて貰った仕事の一つである。

鉄板で焼きそばを調理しながら、モニターを見ている。

まぁ彼も馬券を買っていたりするのだ。

 

「手が止まってるわよ、霧崎」

 

「お前こそ、仕事はどうした?」

 

突然現れたラッテンを大して気にせず作業を続ける霧崎。

ラッテンは空の籠を片手に溜め息を吐く。

 

「私は追加の品を取りに来ているとこよ。ついでに顔を見に来ただけよ」

 

「そりゃありがとうな。というか売れるの速くねぇか?」

 

「いや~私にはマスター達とは違う層が食いついてるようね」

 

「…………大丈夫なのか?」

 

「大丈夫よ。馬鹿は制裁してるから。私は手伝いと護衛かねてるらしいし」

 

確かにリリだけでは危ないだろう。

しかしぺストもレティシアもいる中、護衛がいるかと言われれば疑問である。

 

「まっ、私は品を取って仕事に戻るから」

 

「あぁ」

 

そう言ってラッテンは人混みに消えていった。

 

 

◆◆◆◆◆    

 

 

一方、

水着姿の三人組の少女も飲み物や凍った果実を籠に入れて売り捌いていた。

満面の笑みで二尾を振るリリ。

億刧そうな顔で売るぺスト。

麦わら帽子を深く被ったレティシアの三人である。

 

「“斑梨”、“斑梨”のジュースは如何ですかー?氷菓子もありますよー?作り立てだからシャリシャリしていて、とても美味しいですよー♪」

 

「……………斑模様でも、黒死病にかかりませよー」

 

「お前がそれを言うと洒落にならんから止めろ」

 

「そうですよーもっとやる気出さないと、マスター♪」

 

麦わら帽子を深く被り、正体がばれないかと冷や汗を流しながら咎めるレティシア。

普段以上にやる気の出ないぺストは文句を言いながら溜め息を吐く。

そんなぺストに抱き掛かる戻ってきたラッテン。

リリは唯一楽しそうである。

そんな中、舞台の映像に司会が現れ、舞台袖には実況が現れた。

舞台袖の実況は着物姿の白夜叉と、お目付け役の女性店員。

見れば白夜叉の手には形だけのマイクが握られている。

この駄神、最早ノリノリである。

そして映像の視界は____

 

『____大変長らくおまたせしました!!それでは今より、“ヒッポカンプの騎手”を始めさせていただこうかと思います!!司会進行は毎度お馴染み、黒ウサギが____』

 

____雄々オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォッ!!

 

黒ウサギの登場と共に、天地を揺るがす大歓声が起きた。

会場は熱気と雄叫びに包まれる。

 

「黒ウサギの水着姿万歳!!黒ウサギの水着姿万歳!!」

 

「白夜叉様万歳!!白夜叉様万歳!!白夜叉様万歳!!」

 

「此処に来てよかった…………我等、生涯に一片の悔いなし!!」

 

ゴフッ、と吐血しながら続々と倒れていく有象無象。

どうやら興奮し過ぎたらしい。

ぺストとラッテンはその光景に生ゴミを見るような冷徹な視線を送る。

レティシアはそっとリリの瞳を覆いながら、その場を離れた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

その後、白夜叉が開会宣言をすると、

直後にフェイス・レスが行動を起こす。

 

仮面の騎士は一瞬にして、参加者の水着をバラバラに引き裂いたのだ!!

 

士はライドブッカーでそれを防いで、悲鳴が起こる中を進んでいく。

ちなみに“ノーネーム”は騎手・士、サポート・十六夜、映司、晴人というメンバーである。

黒ウサギがその光景に絶句する中、白夜叉は会場と一丸になって大盛り上がりを見せていた。

つまりはどいつもこいつも馬鹿という事である。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

チョーイイネ!!ブリザード!!サイコー!!

 

そんな音声が生き残ったが出遅れた者達に響く。

直後に大河が凍結して氷の壁を作り上げる。

その光景に生き残り達は困惑する。

 

ハリケーン!!ドラゴン!!ビュー、ビュー、ビュービュービュービュー!!

 

チョーイイネ!!スペシャル!!サイコー!!

 

「悪いけど、ここから先は行かせるわけにはいかない。俺が相手になるぜ」

 

生き残りの前にハリケーンドラゴンに変身して、翼を生やした晴人が立ち塞がる。

上位の数チームは逃したが、これによりかなりのチームが道を塞がれる事になる。

生き残り達は先に進む為、晴人に攻撃を仕掛ける。

晴人は攻撃を避けながら生き残りにソードガンを向けて言う。

 

「さあ、ショータイムだ!!」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ

 

赤、タカ、クジャク、ゴンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 

 







ゲームスタート!!
初っ端から水着切りと足止めで色々と削がれてますが。

“ノーネーム”
騎手、門矢士
サポート、逆廻十六夜、火野映司、操真晴人

というかんじです。
スタート地点ではライダー達は変身していません。


それでは質問があれば聞いてください。
感想待っています。



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鷲龍と津波と素直じゃない贈り物

 

前回の三つの出来事!!

 

一つ!!グリフィスとの決着は“ヒッポカンプの騎手”でつける事になるのだった。

 

二つ!!士と晴人も“ノーネーム”枠で“ヒッポカンプの騎手”に出場する事になんのだった。

 

三つ!!ゲーム開始直後、フェイス・レスが水着切りを行い、晴人が生き残りの相手をするのだった。

 

 

◆◆◆◆◆       

 

 

『現在、トップ集団は五頭!!トップは“ウィル・オ・ウィスプ”よりフェイス・レス!!二番手は“ノーネーム”より門矢士!!以下三番手から五番手は“二翼”の騎手達が猛追している状況です!!』

 

司会の黒ウサギが状況を報告する。

霧崎は焼きそばを売り捌きながらモニターを見る。

そこではちょうど“ノーネーム”メンバーがアラサノ樹海の分岐路に入るところだった。

そこで気付く。

 

「映司さんは何処だ?」

 

樹海へと進む“ノーネーム”の騎馬付近で確認出来るのは十六夜の姿だけであった。

 

 

◆◆◆◆◆     

 

 

“二翼”は最短経路を直進していた。

その前に、

 

タカ!!クジャク!!コンドル!!タージャードルー!!

 

そんな音声が響き、無数の炎の羽が飛来する。

それによって有翼人二人が吹き飛ばされた。

 

[先日の遺恨を晴らしに来たか!!]

 

雄叫びを上げると、熱風を纏いながら目の前にタジャドルの姿の映司が現れる。

 

「別にそういうわけじゃないよ?ただ、君達が最短ルートを通ってるみたいだから止めにきただけだよ」

 

[舐めるなよ、猿が!!]

 

苛立ちに呼応して稲妻がほとばしる。

稲妻を、旋風を、水流を操って激怒しているグリフィス。

それに続く五人の部下。

タジャスピナーを構え、炎の翼を展開して映司は“二翼”と正面衝突する。

 

 

◆◆◆◆◆     

 

 

アタックライド、ブラスト!!

 

士はライドブッカーを構えて、アタックライド、ブラストにより増えた銃口から放つ弾丸によって“水霊馬”を吹き飛ばす。

彼らの通るルートは“水霊馬”の縄張りだったようだ。

十六夜も石を投げて援護する。

そのまま全速力で進んでいくと滝に出る。

 

「この滝…………かなり高い崖から流れ落ちているな」

 

「だろうな。とりあえず回れば道があるだろ」

 

士も、十六夜も、滝と河川に違和感があったが気のせいとして、山河を登り始める。

 

 

◆◆◆◆◆  

 

 

ギン!!ギン!!ギン!!ギン!!ギン!!ギン!!ギン!!ギガスキャン!!

「セイヤー!!」

 

タジャスピナーから放たれる銀のエネルギー弾にグリフィスの部下を吹き飛ばす。

左右から襲われるがグリフィスの部下程度に捕まる程ではない。

容易に避けて、コンドルレッグで蹴り飛ばす。

 

「さて、残りは君だけだね」

 

[おのれ……………猿風情がぁ!!]

 

うめくような声を上げるグリフィス。

彼は彼で全身の至るところに軽傷を負い、肩で息をしている。

 

[あまり図に乗るなよ………………猿ごときがぁぁぁぁぁ!!]

 

激昂するグリフィス。

姿を大きく変化させて、全身から光る粒子を放ち、眩く神々しい翼と龍角をその頭上に生やす。

 

「え?」

 

その直後、鷲龍へと化したグリフィスへと大量のセルメダルが降り注いだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「これはサービスだ」

 

「貴様にセルメダルを与えてやろう」

 

「その力を持ってライダー達を倒すのだ!!」

 

 

◆◆◆◆◆    

 

 

セルメダルを注ぎ込まれグリフィスは理性のない幻獣どころでは無かった。

むしろ理性のない状態で注ぎ込まれ事によって力を制御出来ず暴走している。

セルメダルがグリフィスの全身を包んで鎧と化す。

しかしその姿はまるで鎧がグリフィスを操っているようでもあった。

 

[____GYRUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaa!!]

 

雷鳴を轟かせながら映司へと突進してくる。

 

「一体誰がセルメダルなんて……」

 

呟きながらコアメダルをタジャスピナーへとセットしていく。

セットするとオースキャナーを右腰から取り出してコアメダルをスキャンしていく。

 

タカ!!クジャク!!コンドル!!トラ!!バッタ!!サイ!!シャチ!!ギガスキャン!!

 

読み込まれたメダルの力がタジャスピナーに収束する。

そして炎の鳥を纏う様にして暴走するグリフィスへと突っ込む。

 

「ハァァァァァセイヤァァァァァ!!」

 

[GYARUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!]

 

火炎の鳥と、稲妻の龍角が衝突する。

岸辺の木々は燃え上がり、衝撃で地盤が捲り上がり溶解を始める。

初めの一瞬は拮抗したかの様に見えたが本当に一瞬であり、グリフィスは弾き飛ばされる。

そこにタジャスピナーからエネルギー弾が放たれて、鎧が引き剥がされる。

 

[GYa……………]

 

グリフィスは気を失うが、引き剥がされたセルメダルは鷲獅子の様な姿へと変貌していく。

 

スキャニングチャージ!!

 

そこを狙って映司はプロミネンスドロップを放つ。

変貌の途中で身動きの取れないセルメダルの塊プロミネンスドロップが直撃し、貫かれ、爆散した。

 

「ふぅ…………」

 

着地して息を吐く。

唐突に降り注いだセルメダルを奇妙に感じるが、一先ずこの場に置いて映司は勝利した。

 

 

◆◆◆◆◆       

 

 

一方、遅れて出発した一人の参加者が……………尋常外な速度でトップのへと迫っていた。

 

 

◆◆◆◆◆      

 

 

士と十六夜の違和感は正しかった。

二人共、まさか山頂に海が広がってるとは思っていなかった。

二人は海樹の果実を採取し、荷袋に詰めると水平線に背を向ける。

そこでフェイス・レスに追い付かれる。

まだ、そこまでならどうにか出来た。

しかし事態はそこで止まらない。

“枯れ木の流木”、最強の参加者、蛟魔王が追い付いてきたのだ。

これにより“ヒッポカンプの騎手”は後半戦にもつれ込む。

 

 

◆◆◆◆◆    

 

 

士は十六夜に蛟魔王を任せてヒッポカンプを走らせる。

というか走らせるしか無かった。

蛟魔王が津波を起こしたのだ。

津波から逃れる為に一直線に滝へと突っ込む。

 

「試した事は無いがこれしかないな!!」

カメンライド、ク、ク、クウガ!!

アタックライド、ゴウラム!!

 

二枚のカードをディケイドドライバーへと入れる。

そして姿をクウガマイティフォームに変える。

同時にどこからともなく巨大なクワガタに似た姿の物体が現れる。

これこそがゴウラムである。

ゴウラムはヒッポカンプに重なって鎧の様に纏われる。

その姿は初代クウガ、リクがン・ダグバ・ゼバに挑む際に跨がっていた馬の様だった。

ゴウラムを纏い、強化されたヒッポカンプは楽々と着地した。

そして先を進むフェイス・レスを追い上げる。

ゴウラムによって強化されたヒッポカンプはフェイス・レスの騎馬以上の力を持つ。

追い抜ける、と思った時にフェイス・レスの蛇蝎の剣閃が放たれる。

 

「うぉ!?」

 

不意討ちに驚き、ギリギリ回避する士。

 

フォームライド、ドラゴン!!

 

瞬時に判断して一枚のカードをディケイドドライバーに入れる。

それによってクウガの姿が青く変わる。

クウガドラゴンフォームである。

士はドラゴンロッドを構える。

それによって最後の攻防が始まる。

視界が開けて、“アンダーウッド”の大樹が見えていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

“アンダーウッド”直下の水門。

ゴールは目前であった。

士はフェイス・レスと打ち合いながら最後の賭けに出る。

 

「行け、ゴウラム!!」

 

隙が出来るの覚悟でフェイス・レスに重い一撃を入れて怯ませる。

フェイス・レスがすぐに持ち直そうという所にヒッポカンプから切り離したゴウラムを突っ込ませたのだ。

これはさすがのフェイス・レスでもたまったものではない。

 

「くっ…………!!」

 

剣から槍へと装備を変えてゴウラムを押さえようとするが、それだけのロスをゴール目前ですれば結果は見えている。

 

 

「“ヒッポカンプの騎手”は俺達の勝ちだ!!」

 

 

士は勝利宣言をして、トップで駆け抜けた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「………お前ら、手が空いてたのならサポートに来いよ!!」

 

士はゴールすぐ近くに映司と晴人を見付けて叫ぶ。

 

「いや、俺達もサポートに行こうとは思ったよ」

 

「けど、少し遅かったようで………」

 

二人は目をそらしながら言い訳に近い事を言うのだった。

 

 

◆◆◆◆◆    

 

 

某所。

 

「大した戦果は上がらなかったが、これはこれでいい実験結果になった」

 

「これも、我ら大ショッカーの計画に利用出来そうだな」

 

グリフィスから得た実験結果を確めながら呟く。

今回の目的はセルメダルによる強化具合と影響である。

グリフィスからはそれなりのデータが取れたのだ。

 

「アポロガイスト、計画の方はどうなっている?」

 

突如、データを確認していた男、白いスーツに身を包み黒い手袋をした男、アポロガイストに声が掛けられる。

 

「ジェネラルシャドウか。此方は問題は無い。順調に進行している。そちらの回収状況はどうだ?」

 

「ふむ。此方も順調だな。それで身体の方はどうだ?馴染んだか?」

 

「あと少しという所だ。一月もしない内に完全に適合する」

 

「ならば、問題は無いな」

 

「あぁ、“これ”の準備も出来ている」

 

そして二人は緑色の物体が入った壺を見る。

 

「それで用はなんだ?たかが確認の為に貴様が出てくるとは思えないが」

 

「我ら大幹部に召集が掛かっている。本拠へと、大首領様の元に向かう準備をしておけ」

 

「我らの計画も第一段階はクリアしたということか?」

 

「そうだろうな。そうでなければ、各々動いている大幹部に召集などかからないだろう」

 

そう言ってジェネラルシャドウは姿を消した。

 

「フハハ、終わりの時は近いぞディケイド!!」

 

「だが、貴様は私が大ショッカー大幹部として葬ってやるのだぁぁぁぁぁ!!」

 

アポロガイストは高々と叫び、銀色のオーロラへと姿を消した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

階層支配者就任式。

収穫祭は最終日を迎えた。

大樹の天辺では、南の守護者としてサラが新たなる“階層支配者”として任命され、“鷲龍の角”を授与されている。

グリフィスはサラが継ぐと決まると姿を消したらしい。

そして黒ウサギには“ノーネーム”一同からプレゼントが送られていた。

そして中には、

 

『親愛なる同士・黒ウサギへ』

 

と宛名にある手紙も入っていた。

夜風と祝福に包まれた大樹の地下都市は今宵も眠らず、何時までも明るい声が響いていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

カメンライド

クウガ、アギト、龍騎、ファイズ、ブレイド、響鬼、カブト、電王、キバ、コンプリート、???

 

スタイル

フレイム、ウォーター、ハリケーン、ランド

フレイムドラゴン、ウォータードラゴン、ハリケーンドラゴン、ランドドラゴン

インフィニティー





五巻終了!!

今回は中年は動かず!!
大ショッカーが主に活動です!!
と言っても実験や下準備ですが。

ゴウラムに付いてはアタックライド、オートバシンやアタックライド、アドベントがあるんだからいいだろという事で。
リクの下りはHEROSAGAクウガにて。


それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。



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駄・神・暴・走
白夜叉と白夜王と逆ギレ最強種



今回は「白夜の送別会」です。




 

送別会・花見会場。

宵の柳桜が咲き乱れる宴席の場。

天界へ帰る事になった白夜叉を見送る為、多くのコミュニティが“サウザンドアイズ”の開く宴会に足を運んでいた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

円形闘技場。

そこで白夜叉はゲームを開いていた。

 

{ギフトゲーム名“落陽”

 

 ・参加者 自由参加

 ・勝利条件 ゲームマスターを盤外へ出す。

 

 ※特別勝利条件

 ・四種の獣が駆ける謎を解き、季節を薫る花の簪を沈む大地に突き立てよ。

 

 

 上記の条件に則り、白夜王はゲームを開催します “サウザンドアイズ” 印}

 

というとてもシンプルなルールだ。

とはいえそれで数千人相手しているのだが白夜叉は涼しい顔である。

そこへ、三人の男が現れる。

 

「ほぉ、まずはおんしらか」

 

「そうだ。最強の“階層支配者”の力を見ておきたくてな」

 

「俺も同じかな?」

 

「しかし、おんしが来るとは思わなかったぞ」

 

「来る気は無かったですけど、士さんや晴人くんが行くのに俺だけ行かないわけにはいかないですから」

 

映司は苦笑した風に言う。

現れたのは士、映司、晴人であった。

三人とも各々ディケイド、オーズ、ウィザードに変身している。

白夜叉は三人を見るが、構えはしない。

相手は白夜叉を囲む四つの発光体がするとの事だろう。

 

「さて、始めるかの」

 

白夜叉が言うと三人はすぐに行動を開始する。

 

(足止めは任せたぞ)

 

(分かってる)

(分かってます)

 

実の所、話をしている間にゲームクリアの為の謎は解けてたりするのだ。

その為に士は本命を、映司と晴人は足止めをというかんじである。

映司はメダルを変えようとする。

晴人はドラゴタイマーを取り出す。

 

クワガタ!!カマk

ドラゴタイm

 

「甘いぞ、おんしら!!」

 

「「「は?」」」

 

直後、三人纏めて吹き飛ばされた。

どうやったのかさっぱり分からないが三人は空中に投げ出されて落下していく。

 

「フフン、準備はリングに上がる前にするんだったな。儂の前でそんな悠長な事が出来ると思ったか?」

 

それが聞こえた時には三人とも塀の水面に落下した。

いかに仮面ライダーと言えど動く前に吹き飛ばされては意味が無いのだ。

 

 

◆◆◆◆◆     

 

 

花見会場。

 

「お前ら、それどうした?」

 

びしょ濡れの士、映司、晴人を見て十六夜が呟く。

十六夜は夜桜を楽しんでいるところだった。

 

「白夜叉にやられてきただけだ」

 

士が投げやりに答える。

映司と晴人は苦笑いというかんじである。

敗北条件が無いから再戦は幾らでも出来るのだが、三人としてはこれ以上やる気はないようだ。

それより夜桜で花見というかんじである。

三人は服をある程度絞ってからブルーシートに腰を下ろす。

 

「そう言えば、十六夜くん。霧崎くんはどこだい?」

 

「メイド組も、レティシア以外見当たらないな」

 

映司と晴人が呟く。

十六夜は士達の杯に酒を注ぎながら言う。

 

「あいつならメイド達に引っ張られていったぞ」

 

どうもどうやらメイド組に付き合わされてるようだ。

おそらく主犯はラッテンであろう。

 

「レティシアちゃんはいかないのかい?」

 

「こういう場でメイドが全員離れるわけにもいかないだろう?」

 

レティシアは苦笑しながら料理を映司達の前に運ぶ。

 

 

◆◆◆◆◆     

 

 

 

円形闘技場。

 

「やるなぁ~霧崎くん」

 

「攻め手はないけどな………」

 

現在、白夜叉の前には蛟劉と霧崎とぺスト、ラッテン、白雪姫がいる。

霧崎はほぼ強引に連れて来られた形である。

シチュエーションとしては、

 

「霧崎、あんたも行くわよ!!」

 

「何で俺まで………」

 

「ちゃんとした方法で目的を果たすなら手伝うって言わなかったっけ?」

 

「…………屁理屈もいいとこだな!!」

 

「ま、屁理屈でも何でも手伝いなさい!!」

 

と、渋々ながら霧崎は付き合ってるというかんじである。

しかし、ながら思いの外役に立ってるようだ。

 

「厄介だのう………おんしの力は」

 

白夜叉でさえそんなことを呟く。

それもそのはず、霧崎の【幻視】は数秒先の死の脅威を見る。

そして【弱者のパラダイム】は死の脅威を掴んで祓う。

白夜叉と言えど、相手をするのは面倒なのである。

と言っても攻めの面では使えないのだが。

 

「霧崎~あんたが頼みの綱よ~」

 

「ヘタレ男、あんたがいるから持ってるんだから」

 

「確かに我が主神をここまで相手に出来るのは稀有だな」

 

メイド組が各々誉めてるのかどうか分からないような事を言う。

使える盾くらいには見られてるのだろう。

 

「それで蛟劉さん、何か現状を打開する策はあるのか?」

 

「いや~僕に言われてもな…………」

 

蛟劉が困った顔をする。

霧崎も、蛟劉も肩で息をしている。

防御面では何とかなっているのだが、白夜叉攻略の決め手というものがないのだ。

そんな時、

 

「ふむ。大体分かったぞ、おんしの力の攻略法は」

 

「「は?」」

 

霧崎他数人が声を上げた直後、白夜叉が霧崎近くの地面を叩く。

地面にヒビが入り、そのまま崩れる。

 

「お前………まさか…………滅茶苦茶過ぎるだろ!?」

 

「おんしにはこうするしかなかろう。直接おんしに手を出せばそらされるんだから」

 

「ふ、ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

霧崎は絶叫しながら塀の水面に足場ごと落下していくのだった。

白夜叉が思い付いた霧崎攻略法は簡単である。

本人を直接狙うと祓われるなら、本人以外を狙えばいいという事である。

目論見通り、霧崎は崩された足場ごと落下した。

落下による死の脅威は祓えても、落下そのものはどうしようもないのである。

 

「あ……こりゃマズイわ」

 

そして霧崎がいなくなれば当然メイド組の守りも消えるわけである。

三人はなす術もなく白夜叉に吹き飛ばされるのであった。

 

 

◆◆◆◆◆      

 

 

花見会場。

 

「お前らもやられたみたいだな」

 

「勝てるか、あんなやつ!!」

 

言いながら霧崎はブルーシートに座る。

服に関しては絞ってある。

現在は十六夜、黒ウサギ、レティシアが挑戦中である。

どうやらメイドが挑戦してるのに主人が挑戦しないわけにもいかないとのことらしい。

 

「そういえば、士さんは最近どうしてるんですか?」

 

「東をフラフラと回ってるくらいだな」

 

士は収穫祭の後に南を離れた。

旅の資金は充分稼いだらしい。

ガロロの引退とサラの“階層支配者”就任も理由の一つであろう。

その後は箱庭を気ままに旅しているらしい。

少し調べたい事もあるらしい。

ちなみに世界を渡る銀色のオーロラは箱庭では“境界門”の代わりとして使えるらしい。

移動出来る場所は“境界門”の近くだけらしいが。

 

「それでお前らは変わった事はあるか?」

 

「特に無いですね。あるとしても同盟関連くらいですね」

 

「俺もジャック達に新しい指輪を作れるか聞いたりくらいだな」

 

晴人の方は収穫祭の後は“ノーネーム”に居候という状態である。

元々箱庭には迷い込んだ形なのでちょうどいいかんじではある。

一方の霧崎は、

 

「ほら、霧崎口開けなさい」

 

「自分で食うからいいよ!!」

 

ラッテンといちゃこらしてた。

その様子をぺストと白雪姫は呆れた様に見ている。

そんな中、突然並木道の柳桜が、白夜の陽射しに濡れる。

周りの一般参加者は強引に納得しているようだが、十六夜達が挑戦しているの知っている霧崎、士、映司、晴人、メイド組は大体察する。

 

「これは…………十六夜くん達が何かやったかな?」

 

「「だろうな」」

 

映司の言葉に士と晴人が頷く。

霧崎は面倒事は御免というかんじに杯に酒を注いで眼をそらしている。

仕方ないので士、映司、晴人は円形闘技場を見に行く事にした。

 

 

◆◆◆◆◆     

 

 

円形闘技場。

士、映司、晴人が円形闘技場に着いて目にしたのは、逆切れした白夜叉に十六夜が何かを捧げるとこだった。

白夜叉はそれを受け取った直後、歓喜して敗北を受け入れた。

 

 

「えーと…………これはどういう状況?」

 

「「……さあ?」」

 

状況がさっぱり分からない三人は首を傾げるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆      

 

 

宴会の踊り場。

 

 

「___え、えーそれでは!!不肖ながらこの黒ウサギ、天界に帰られる白夜叉様の為、心より歌って踊らせていただきますッ!!」

 

 

雄々オオオオオオオオオオオオオ!!

という猛々しい雄叫びと共に、特設舞台ステージに上がる黒ウサギ。

挙動一つ一つにやけっぱち感が漂うのは気のせいではない。

 

「ぉ、ぉおおう…………とうとう夢にまで見た舞台が!!黒ウサギがシースルーのビスチェスカートを着て、コンサート会場に立つ日が来たのだッ!!」

 

「ああ。よかったなそりゃ」

 

感無量の涙を流す白夜叉。

シースルースカートの不可視絶対領域を注視する十六夜。

そんな二人を呆れ顔で眺める“ノーネーム”及びその他面々。

十六夜が渡したのはどうもどうやら黒ウサギの使い捨て命令権らしい。

命令権を得た白夜叉は敗北を受け入れ、夢にまで見た黒ウサギのコンサートを開催することにしたのだ。

十六夜以外の面々は白夜叉の下層での最後の思い出だし、楽しんでるならいいや、というかんじである。

十六夜は十六夜で白夜叉に下層は心配するな、とぶっきらぼうに伝えるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆      

 

 

カウント・ザ・メダルズ

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

カメンライド

クウガ、アギト、龍騎、ファイズ、ブレイド、響鬼、カブト、電王、キバ、コンプリート、???

 

スタイル

フレイム、ウォーター、ハリケーン、ランド

フレイムドラゴン、ハリケーンドラゴン、ウォータードラゴン、ランドドラゴン

インフィニティー

 

 

 





今回は短編でした。

元と違いそれぞれ分けてみました。
ライダー組はメダルチェンジ、ドラゴタイマーする間を突かれたらマズイという事で。
お約束破りとも言いますが。

士に関してはフリーで旅しているかんじです。
銀色のオーロラは箱庭では外門の“境界門”近くに移動出来るかんじです。

晴人は“ノーネーム”に居候状態です。


それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。



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アポロチェンジと造物主の決闘とウサギの消失
田植えと工房と大喧嘩



今回から六巻です。




 

“ノーネーム”水樹の貯水地。

年長組とメイド組(ラッテン、ぺスト、白雪姫)、ジン、そして霧崎は、新設した田園に買い入れた若い青葉の稲を移植する作業を行っていた。

 

「晴れてるな……」

 

「晴れてるわね………」

 

ノルマを終えた霧崎とラッテンが呟く。

東の支配者が蛟劉に変わった事によって頻繁に定期降雨が行われるようになったので晴れてるのは五日振りなのだ。

ラッテンは子供達の為に多少身体能力を強化される演奏をする。

 

「またやってんのか、あいつら…………………」

 

霧崎の視線の先には何やら言い合っているぺストと白雪姫、巻き込まれているジンとリリの姿がある。

聞こえてくる声からして和食、洋食どちらかにするとの言い合いだろう。

 

「あれは放っておけばいいわよ」

 

と、ラッテンは言う。

それはすぐに分かる。

レティシアが現れて、二人の喧嘩を止めた。

止めるしかないだろう、あのレティシアが影の刃を使い、珍しく明確に怒りを見せていれば。

レティシアの立場は現在は侍女頭である。

一週間前程に任命された。

その立場に泥を塗るような事をすれば怒りはするだろう。

ラッテンは関係無いという感じでラッテンは演奏を続けている。

表向きはメイドではあるが、あくまで表向きでしかないのでラッテンは気にする必要が無いのだ。

眺めていると、ぺストと白雪姫はレティシアに連れ去られていった。

食事に関してはしばらく中華らしい。

和食洋食で対立しているのだから妥当な判断だろう。

そして、どうやら他の年長組も作業を終えた様で霧崎とラッテンも合流する。

 

「平和だな」

 

「平和ね………今のところは」

 

雲一つない晴天の空の下。

霧崎とラッテンは年長組と昼食を食べながら呟くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆     

 

 

本拠・正面口。

これからジンとぺストと霧崎とラッテンは、五四五四五外門に向かう事になっているのだ。

十六夜、黒ウサギ、映司、晴人は三日前から打ち合わせに入っている。

霧崎はジンの護衛として残っていた。

霧崎の能力は護衛としてかなり使えるのだ。

五四五四五外門に向かう理由は魔王連盟に関する召集会に呼ばれたからである。

ジンが年長組とメイド組にこれからの事を告げると四人は本拠をあとにした。

 

 

◆◆◆◆◆     

 

 

“煌焔の都”

そこに着いたジン、ぺスト、霧崎、ラッテンは偶然ジャック、サンドラと合流する。

少し話した後、

 

「おお、思った以上に絶景じゃねぇか!!」

 

「確かにこんな光景は中々見られないな」

 

巨大ペンダントランプの上に逆廻十六夜と門矢士の姿を見付ける。

ジャックの話によると映司は工房、晴人は何処かをフラフラと歩いてるらしい。

何故十六夜が士といるのかは分からないが、バレたら“ノーネーム”の立場が悪くなりかねない。

とはいえ時すでに遅し。

 

「貴様らあああああああぁぁぁぁぁ!!誰の許可があって其処に登ってる!?」

 

憲兵が集まっていた。

しょうがないのでぺストに専門家を呼んできて貰う事にするのだった。

 

 

◆◆◆◆◆     

 

 

一方の十六夜と士。

偶然出会った二人はギフトゲームは粗方参加したし、巨大ペンダントランプに登ってみようというノリで登った後、黒ウサギにより叩き落とされた。

その後、二人は憲兵隊から逃げ延び、黒ウサギの説教を聞きつつ、錬成工房街へと足を運ぶ。

その途中、十六夜は“神隠し”騒ぎを聞いてそちらに向かって行くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆   

 

 

一方のジンとぺストは、護衛はここまでいいという事で霧崎とラッテンと分かれていた。

 

 

◆◆◆◆◆   

 

 

錬成工房街・第八八工房。

霧崎とラッテンは修理を依頼したディーンの回収に来ていた。

 

「あ、霧崎さん、ラッテンさん着いていたのですか!!」

 

「あぁ、ついさっきな」

 

倉庫の入り口前で黒ウサギと士と遭遇した。

中に入るとジャックと映司が話していた。

 

「………これで直ったって事でいいのかな?」

 

「えぇ、大量のセルメダルが無ければ確認は出来ませんが成功した筈です。ウィラが手を加えたので心配はいりませんよ」

 

内容は分からないが映司は何かを受け取り、その代金らしき物を渡す。

そこでジャックは霧崎達に気付く。

 

「ヤホホホッ!!皆さん、お久しぶりですねぇ!!」

 

「皆、来てたんだ。霧崎くん達はディーンかな?」

 

「えぇ、そうよ~」

 

言いながらラッテンはディーンの近くに行く。

そして元通りの姿になったディーンを見て歓喜の声を上げる。

 

「凄ぇな………ここまで元通りか」

 

その後ろで霧崎が呟く。

 

「士さんはどうしたんですか?」

 

「少しジャックに用事があってな」

 

そう言って士はジャックの方を向く。

 

「頼んでいた物は出来たか?」

 

「えぇ、この通り」

 

ジャックが士に渡したのは何も記されていないカードの束だった。

どうもどうやらジャックに解析して貰って少し改良した物を作って貰ったらしい。

その後、何故かラッテンが“造物主の決闘”に出場する事になった。

本人はノリノリではあるが。

そして工房の奥から誰かの声が聞こえてきた。

間髪を容れずに奥の扉が蹴り破られた。

現れた男は数ヵ月前に“ノーネーム”と戦い敗れた“ペルセウス”のルイオスだった。

 

 

◆◆◆◆◆     

 

 

操真晴人は展示回廊を歩いていた。

晴人は“造物主の決闘”に参加するつもりでいた。

登録は既に済ませてある。

現在は暇潰しに展示品を見ているところである。

 

「色々あるもんだな」

 

モニュメントを眺めながら呟く。

異世界の技術が使われているだけあって晴人には新鮮な光景であった。

 

 

◆◆◆◆◆      

 

 

第八八番工房。

 

「“名無し”共め……………!!よくも僕の前に顔を出」

 

 

「裏口の扉を蹴り破ってんじゃねぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

激怒したジャックにルイオスは殴り飛ばされた。

ルイオスは三回転半しながら壁にねじ込まれる。

そのままジャックとルイオスは怒鳴り合いをする。

 

「ま、まあまあ。お二人とも落ち着いてください」

 

見かねて黒ウサギが止めに入る。

その横でラッテンが霧崎に問う。

 

「あれは誰?」

 

「あぁ、あれは………」

 

言おうとして口を止める。

そして少し考える仕草をする。

 

「“ペルセウス”のルイオスだ!!知らないのか!?」

 

横からルイオスが叫ぶだが初対面の士とラッテンは首を傾げる。

 

「「誰?」」

 

「うぉい!!お前らはさすがに覚えてるよな……“名無し”………」

 

「「誰だっけ?」」

 

映司と霧崎が同時に言う。

 

「忘れてんじゃねぇぇぇぇぇ!!」

 

ルイオスの心からの叫びが響くのだった。

 

「「いや、冗談だって」」

 

「馬鹿にしてんのか!?」

 

またもや叫ぶ。

 

「霧崎……こんな馬鹿は相手にする必要ないわよ?」

 

「分かってるって」

 

「お前らは僕に喧嘩売ってるのか!?」

 

「それは此方の台詞だけど?まぁ買うっていうなら高くつくわよ?」

 

「はあああああ?“名無し”風情が高くつくだと?笑わせてくれるな!!だけど買ってやるよ、その喧嘩ッ!!まとめて相手にするから表に出やがれ三下共!!」

 

「三下はどっちかしら?でも、私も貴方の喧嘩を買ってやるわよ!!」

 

「ラッテンさん!?」

 

「よし、私の分まで売った!!」

 

「ジャックさんまで!?霧崎さん、映司さん、士さん止めてくださいよ!?」

 

「仕方ないな………ラッテン!!」

 

「何よ、霧崎」

 

「ほどほどにな」

 

「分かってるわよ!!」

 

「何で煽ってるんですか、貴方は!!」

 

ハリセンで霧崎を叩く。

 

 

「もう、とにかく全員落ち着くのですよぉおおおおお!!」

 

 

轟と鳴り響く、落雷と黒ウサギの叫び。

借家である第八八番工房の窓は激しい稲光と共に砕け散り、その衝撃でキャンドルランプの硝子も二次、三次災害の如く砕け散るのだった。

 

 

◆◆◆◆◆       

 

 

カウント・ザ・メダルズ!!

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

???

 

 

カメンライド

クウガ、アギト、龍騎、ファイズ、ブレイド、響鬼、カブト、電王、キバ、コンプリート、???

空白

 

 

スタイル

フレイム、ウォーター、ハリケーン、ランド

フレイムドラゴン、ウォータードラゴン、ハリケーンドラゴン、ランドドラゴン

インフィニティー

 

 

 





六巻導入でした!!

工房にて映司が受け取った物に着いては後々。
ウィラが関わってるのが鍵。
士の方はジャックによって機能追加された空白のカードです。
使用用途については後々。


それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。



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全壊と定着と“愚者の刧火”

 

前回の三つの出来事!!

 

一つ!!霧崎とラッテンは年長組と共に田植えをし、その後ジン達と共に五四五四五外門へと向かうのだった。

 

二つ!!五四五四五外門に着いたジン達はペンダントランプの上に十六夜と士の姿を発見し、黒ウサギにどうにかして貰うのだった。

 

三つ!!工房にて映司や士がジャックから品物を受け取る中、“ペルセウス”のルイオスが現れて大喧嘩に発展して黒ウサギが止めに入るのだった。

 

 

◆◆◆◆◆       

 

 

第八八番工房。

 

「うう……………半壊していた“疑似神格・金剛杵”が、本格的にご臨終なのですよ」

 

シクシクとウサ耳を萎れさせて項垂れる黒ウサギ。

“アンダーウッド”にて半壊状態になった“疑似神格・金剛杵”が完全に壊れたようだ。

そこはジャックが同盟お友達価格で何とかしてくれるらしいので黒ウサギは元気を取り戻す。

ルイオスに関しては面倒なので適当に流す事にした一同であった。

そこでジャックから“マクスウェルの魔王”が四桁に上り詰めたという話を聞く。

最終的にはルイオスはラッテンが“造物主の決闘”で優勝したら納得するという事になった。

それまで参加にノリノリだったラッテンも少々面倒そうな顔をするのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

路地。

一旦、黒ウサギ達と別れた映司と士は話ながら歩いていた。

 

「……というわけだ」

 

「それは確かにマズイですね……」

 

映司は、士の箱庭での旅の話を聞いていた。

どうもどうやら大ショッカーは箱庭で目撃情報がそれなりにあるようだ。

街を襲ったり、魔王を潰したり、その行動は読めないようだ。

 

「そろそろ出てきたらどうだ、アポロガイスト!!」

 

士が振り向きながら言う。

すると、銀色のオーロラが現れて白いスーツに黒い手袋の男、アポロガイストが現れた。

その背後には戦闘員やグールがいる。

 

「よく気がついたな、ディケイド」

 

「狙うなら二人になった、今だろうからな」

 

「それに視線は感じてたからね」

 

「それで何の用だ、アポロガイスト?」

 

「勿論、貴様たちを消しに来たのだ!!」

 

アポロガイストが叫ぶと背後の戦闘員達が二人へと襲い掛かる。

 

「やっぱりか!!行けるか、映司!!」

 

「はい、大丈夫です!!」

 

二人はそのまま戦闘員達を迎え撃つ。

士はライドブッカーをガンモードにして、襲い掛かってくる戦闘員達に発砲する。

 

「イー!?」

 

銃撃で足を止めた戦闘員を映司が蹴り飛ばす。

そのままグールの槍を奪い、周囲の戦闘員を薙ぎ払う。

その背後を狙う戦闘員を士がライドブッカーソードモードで斬る。

 

「ハァ!!」

 

前方のグールにライドブッカーを突き刺し、そのまま盾にする。

そして突き刺していたグールを蹴り飛ばして、攻撃してきた戦闘員ごと吹っ飛ばす。

映司は背後の戦闘員に肘打ちをして怯ませて、後ろ回し蹴りで数体吹き飛ばす。

 

「マグナムショット!!」

 

「うぉ!?」

 

アポロガイストの不意討ちの銃撃を士は上半身を後ろに倒して避ける。

完全に避け切れは出来ず、肩に掠めるが倒れながら数発撃ち返す。

 

「ふん!!」

 

その銃撃をアポロガイストはアポロフルーレで全弾斬る。

 

「おらぁ!!」

 

その隙に近付いた士が斬り掛かるが、受け止められる。

鍔迫り合いになるが、士が蹴りを入れて距離を離す。

そして互いに撃つ。

互いの弾は互いの頬を掠める。

 

「士さん!!」

 

映司が槍をアポロガイストに投げ付ける。

どうやら戦闘員達は全て倒されたらしい。

アポロガイストは槍を弾くが、それが致命的な隙になる。

懐に入り込んだ士が、アポロガイストに斬り掛かる。

 

「ぬぅ!!」

 

アポロガイストはそちらに左手を向ける。

すると、魔法陣が手の先に現れて士の斬撃を防ぐ。

 

「チッ」

 

舌打ちしながらアポロガイストの返しの斬撃を避ける士。

士は距離を取ると映司の隣に立つ。

 

「大丈夫ですか、士さん」

 

「あぁ。だが、奴ばっかり構ってるわけにもいかない」

 

そう言って二人はベルトを取り出して腰に付ける。

映司はメダルを取り出し、オーズドライバーに入れると腰からオースキャナーを取り出す。

士は腰のライドブッカーからカードを取り出す。

 

「変身!!」カメンライド!!ディ、ディ、ディケイド!!

「変身!!」タカ!!トラ!!バッタ!!タトバッ、タトバ、タットッバ!!

 

士はディケイドライバーにカードを入れる。

映司はオースキャナーでオーズドライバーに入っているメダルを読み込む。

音声が響く。

士は残像が重なり、姿をディケイドに変える。

映司は頭、胴、足を中心に三つの円状の物体が回り、各々前方で止まるとぬ胸の前で三つの円状の物体が一つになり体と重なる。

そして姿をオーズへと変える。

タカの頭、トラの胴、バッタの足を持つコンボ、タトバコンボである。

変身を終えると二人はアポロガイストにメダジャリバーとライドブッカーを突き付ける。

 

「倒させて貰うぞ、アポロガイスト!!」

 

「ならば、私も真の姿になるとしよう!!アポロチェンジ!!」

 

アポロガイストが腰に手を当てると、その体が炎に包まれ赤い鎧の様な姿になる。

そして以前パーフェクターのあった場所には人工ファントム、カーバンクルの体にあるような紫色の水晶がある。

そして体の所々に似たような水晶が見られる。

 

「これが新しい力を手に入れた私の姿なのだ!!」

 

人工ファントムは完全に定着したようだ。

アポロガイストはアポロフルーレを二人に向ける。

すると、二人の前に魔法陣が現れる。

二人が動く前にアポロフルーレを下に振り降ろすと魔法陣が爆発して、二人は吹き飛ばされる。

 

「「な!?」」

 

空間を操り爆発を起こす魔法、エクスプロージョンである。

人工ファントムが定着した事により、アポロガイストは完全に魔法を操れる様になったのだ。

 

「これが魔法の力!!この力で私は更に迷惑な存在になったのだ!!」

 

「知るか、そんなこと!!」

 

二人は立ち上がり、向かっていく。

 

ファイナルアタックライド!!ディ、ディ、ディケイド!!

トリプル!!スキャニングチャージ!!

 

「ハァァァァァ!!」

「セイヤァァァ!!」

 

「この程度!!」

 

二人が斬撃波を放つが、アポロガイストもアポロフルーレに魔力を込めて斬撃を放ち相殺する。

 

「囮だよ」

 

「ぬぁ!?」

 

いつの間にか懐に潜り込んだ映司がトラクローを展開してアポロガイストを斬り付けて吹き飛ばす。

 

「ふむ。さすがに二対一では分が悪いか……(いや、定着はしたが力はまだ完全では無いようだな)」

 

アポロガイストは二人に背を向けて、銀色のオーロラを出す。

 

「逃げる気か?」

 

「一旦引くだけだ。近い内に決着をつけに来る。覚えておけ!!」

 

そう言ってアポロガイストは姿を消した。

二人が変身を解いて一息つこうとした時、闘技場から激しい音が聞こえ、二人は急いで向かうのだった。

 

 

◆◆◆◆◆      

 

 

少々時を遡って闘技場。

 

「えーと、これはどういうことだ?ラッテンちゃん」

 

「たまたま私も出る事になって、偶然あんたと戦う事になっただけよ」

 

“造物主の決闘”開幕前、二人はもう一人の相手、ウィラを他所に話していた。

とはいえ、始まったら気にせず戦うのだが。

ルールとしては三人で一人になるまで戦うというかんじである。

リングから落ちたり、ギフトを破壊されたら負けである。

晴人は念のためにフレイムスタイルに変身してソードガンを構えて開幕を待っている。

ラッテンはディーンの肩に乗りながらハーメルケインを構えている。

 

『それでは此処に____“造物主の決闘”の開幕を宣言します!!』

 

開幕直後にウィラは地獄の業火を召喚し、リングは炎に包まれた。

 

 

◆◆◆◆◆       

 

 

 

「「ふ………ふざけんな!!」」

 

晴人とラッテンの叫びと共に炎は消えた。

 

チョーイイネ!!ブリザード!!プリーズ!!

  キャモナスラッシュシェイクハンズ!!ウォーター!!スラッシュストライク!!ザバザババシャーン!!

    キャモナスラッシュシェイクハンズ!!ウォーター!!スラッシュストライク!!ザバザババシャーン!!

      チョーイイネ!!スペシャル!!サイコー!!

 

いつの間にかウォータードラゴンに姿を変えていた晴人が次々と魔法を発動させる。

そしてラッテンはハーメルケインで笛の音を轟かせる。

二人の行動により炎は消えた。

二人は息を切らしながらウィラを見る。

二人は狙いをウィラに定めていた。

もはや打ち合わせする必要もなく二人がウィラに向かっていこうとした時、

 

事態は急変した。

 

 

◆◆◆◆◆     

 

 

カウント・ザ・メダルズ

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

???

 

 

カメンライド

クウガ、アギト、龍騎、ファイズ、ブレイド、響鬼、カブト、電王、キバ、コンプリート、???

空白

 

 

スタイル

フレイム、ウォーター、ハリケーン、ランド

フレイムドラゴン、ウォータードラゴン、ハリケーンドラゴン、ランドドラゴン

インフィニティー

 

 

 






アポロガイスト怪人態登場!!
能力的な点は後々。
魔法は白い魔法使いが使うようなのはむ普通に使えます。
少しの動作だけで。
とはいえ、今回の状態は完全では無いですが。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。



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殿下と契約とウサ耳の異変

 

前回の三つの出来事!!

 

一つ!!ルイオスはラッテンが“造物主の決闘”で優勝出来なかったらディーンは自分は自分が貰うと言い出すのだった。

 

二つ!!映司と士は、アポロガイストと交戦するのだった。

 

三つ!!“造物主の決闘”ではラッテン、晴人、ウィラがぶつかる事になるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆      

 

 

霧崎がラッテンを闘技場まで送って観客席に戻ってきた時に目にした光景は、白髪金眼の少年が黒ウサギを殴り飛ばす所だった。

その拳は黒ウサギの太陽の鎧を砕き散らしていた。

それを見た瞬間、

 

「何してんだ、テメェ!!」

 

我を忘れて少年へと突っ込んでいった。

 

 

◆◆◆◆◆    

 

 

少し時を遡って地下水路。

そこである男が息を潜めていた。

 

(あれが“マクスウェルの魔王”に、混世魔王か。あの女の子は噂の魔王連盟のメンバーかな?)

 

その男は混世魔王が魔王連盟に加盟するまでの一部始終を眺めていた。

 

「そろそろ僕も動く時かな?彼らが動けばお宝の警備も手薄になりそうだしね」

 

男はそれだけ呟くと、手に持っていた銃の様な物にカードを入れる。

 

アタックライド、インビシビル

 

そんな音声と共に男は姿を消すのだった。

 

 

◆◆◆◆◆      

 

 

「うおおおお!!」

 

「おいおい、ちょっと待てよ……」

 

不意討ちの蹴りを避けながら少年は呟く。

そして蹴りを入れようとする。

 

「は?」

 

しかし逆に少年が吹っ飛ばされていた。

 

「行くぜ……“ヨヨ”」

 

[アァ……]

 

霧崎の【弱者のパラダイム】は殿下と呼ばれる少年にも有効であった。

殿下が再度殴り掛かるが同じ様に“死の脅威”を掴み、祓う。

吹っ飛ばされた殿下は興味深そうに霧崎を見ながら体勢を整え着地する。

 

ハリケーン!!ドラゴン!!ビュー、ビュー、ビュービュー、ビュービュー!!

 

そこへラッテンと晴人が斬り掛かる。

両側から斬り掛かるが、殿下はソードガンとハーメルケインの側面を殴って避ける。

そして両者に蹴りを入れる。

 

「ディーン!!」

 

チョーイイネ!!サンダー!!サイコー!!

 

ディーンの拳を避け、雷撃を殴り砕きながら殿下は距離を取ろうとする。

 

チョーイイネ!!スペシャル!!サイコー!!

 

翼を生やし、風を纏いながら殿下に迫る。

そしてソードガンに指輪をかざす。

 

コピー!!

 

ソードガンを両手に構え、ガンモードにして殿下に銃弾を放つ。

 

「DEEEEEEEeeeeeeeEEEEEEN!!」

 

そこへディーンが拳を放つ。

殿下はディーンの拳を下から殴り上げる。

ディーンの拳は上にそれるが、ディーンの伸びた腕を伝って走っていた霧崎が殿下の腹に蹴りを入れる。

しかしライズで強化したとはいえ、殿下の身体能力には遠い。

殿下はバックステップで威力を殺す。

 

「まいったね。ここまでとなると…………ただでさえ苦手なのに手加減出来なくなるだろう?」

 

「うるせぇよ!!」

キャモナスラッシュシェイクハンズ!!ハリケーン!!スラッシュストライク!!ビュービュービュービュー!!

    キャモナスラッシュシェイクハンズ!!ハリケーン!!スラッシュストライク!!ビュービュービュービュー!!

 

晴人が暴風の斬撃波を飛ばすが、殿下は紙一重で避ける。

 

チョーイイネ!!キックストライク!!サイコー!!

 

「「ハァァァァァァ!!」」

 

殿下と晴人の声が重なる。

そして蹴りがぶつかり合う。

しばらくは拮抗するが、殿下は分が悪いのを悟って離脱する。

晴人とラッテンは更に追撃を加えようとする。

 

「あーお前ら、もういいと思うぞ。あいつが来た」

 

霧崎が止めに入った。

理由は単純。

 

逆廻十六夜が現れたのだ。

 

 

◆◆◆◆◆       

 

 

その後、十六夜と殿下がぶつかり合った。

十六夜は怒り狂って周囲の被害を考えずに殿下に攻撃を加え続けた。

十六夜がトドメの拳を放とうとした時、殿下の姿が消えた。

闘技場の瓦礫の上、“尾を食らう三頭の龍”____“ウロボロス”の連盟旗がなびく下には殿下とリン。

その背後には、

漆黒の総身を持つ一本角の鷲獅子。

怪しげなローブで身を包む魔女。

そして青と赤のコントラストで彩られたド派手な外套を身に纏う道化のような男。

一同が実力者である事は一目で分かる。

十六夜も不用意に跳びかからず、剣呑な視線を向けるだけにとどまっている。

その背後からバイクのエンジン音が響く。

ライドベンダーとマシンディケイダーが現れ、十六夜の後ろに止まる。

映司と士はバイクから降りると、魔王連盟の主力達を見る。

 

「あいつらが…………魔王を束ねるコミュニティか」

 

「魔王連盟と、その首魁か………」

 

二人は既に変身して姿をディケイドとオーズに変えている。

とはいえ下手に手を出したりはしない。

闘技場の崩壊具合から何が合ったかは大体察しがついている。

しかし手を出せば、即座に戦いが始まる。

そうすれば何の準備のされていない街にはかなりの被害が出るだろう。

だからこそ、出方を待つ。

血を拭われた殿下は、服装を整えて魔王連盟の前に立つ。

口元に血を滲ませ、瓦礫の上から十六夜を見下す殿下。

十六夜は憤怒を収め、黄昏色の空を背負う彼らを睨む。

共に仇敵を見つめるかのような視線をぶつけ合う中、唐突に殿下が哄笑を上げた。

 

「………ハハッ、凄い偶然だ。“原典”候補者と“欲望の器”が同じコミュニティに在籍しているなんて。それに“あの男”が言っていた“世界の破壊者”、“指輪の魔法使い”までいる。そして……奇妙なギフトを扱う男。目的のものが飛び込んでくるだけでなく珍客まで紛れ込んでいるとはな」

 

『それこそ殿下に覇道を成せという天啓。………いかがします?望まれるのでしたら、我々は今すぐにでも』

 

「まぁ待て。今日の所は一度引く。“サラマンドラ”の本隊も動き出しているしな」

 

その後、殿下はジンとぺストに加盟を考える様に大声でいった。

これは悪戯に近い意趣返しでもあった。

 

「君は………最悪だ」

 

「ああ、自覚はあるよ」

 

クックッと笑いを噛み殺す殿下。

ぺストは迷い無くリンに告げる。

 

「私は、魔王連盟と完全に縁を切る。今後顔を合わせるとしたら、それは戦いの中だけ。…………次はきっと、容赦しない。会いに来るなら相応の覚悟を持ってきなさい」

 

凛然とした声ではっきり告げる。

明確な宣戦布告にリンはリンで決別の意思表示をした後、背を向けた。

そうして、魔王連盟の一同を中心に吹雪が渦を巻いた。

 

「そう睨むなよ。この決着は後日、必ずつける。………必ずな」

 

殿下は姿を消す最後の一瞬、黄金の瞳で十六夜を見ていた。

十六夜も同様に、消えるその一瞬まで殿下を睨み付けていた。

 

恐らく____この少年とは、殺し合うことになるのだろうと。

そんな、宿命の様な感慨を胸に抱きながら。

 

 

◆◆◆◆◆     

 

 

ジンとぺストは牢獄にて、壁越しに手を重ねて二人だけの契約を交わすのだった。

 

 

◆◆◆◆◆    

 

 

「ぺストはああ言ってたけど、お前はいいのか?」

 

「私?」

 

霧崎とラッテンは二人で話していた。

 

「私はマスターの意志についてくわよ。それにあんたとの“契約”もあるしね」

 

「そうか。なら聞いた俺が馬鹿だったか」

 

「そう大馬鹿よ。私が霧崎を裏切る事は無いし、霧崎も私を裏切らない。そうでしょ?」

 

「そうだな。その通りだよ」

 

息を吐いてラッテンを見る。

その顔は悪戯な色を含んだ微笑みに包まれていた。

 

 

◆◆◆◆◆     

 

 

投獄されたジンとぺスト以外の“ノーネーム”のメンバーはジャックに連れられて黒ウサギの病室まで来ていた。

病室に入った一同が見たのは意識を取り戻すまで回復した“彼女”だった。

傷は大事ないように見える。

しかし“彼女”には問題があった。

 

「えーと、くろう…」

 

「…………詐欺?」

 

呼びに困ったラッテンの言葉に繋ぐ様に晴人が呟く。

ポロポロと瞳に大粒の涙を溢れさせている彼女に対しては失礼極まりないが、二人の言い分は正しい。

比喩が無い程度には正しい。

ベッドの上で泣き崩れている彼女は“側頭部”の耳を押さえ、絶叫を上げた。

 

 

「う、うしゃ………………………黒ウサギのウサ耳が………ウサ耳が無くなったのですよッ_____!!」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

某所。

アポロガイストは戦闘員に指示を出していた。

これからかなりの数の戦力が動く。

その為の確認作業であった。

門矢士、火野映司と交戦に入った彼だが、あれには偵察の意味もあった。

 

「魔王連盟も動くのは厄介ではあるが攻める期が今なのは変わりない。逆に利用させて貰おうとしよう」

 

呟きながらアポロガイストは緑の液体に近い物体が入った容器を覗く。

 

「ふむ。経過は順調なのだ」

 

これも投入される。

その準備は出来ていた。

彼らの目的はライダーを倒すだけでも、“煌焔の都”に攻めいるだけでも無かった。

地下に眠る“魔王”に用があった。

とはいえアポロガイストの個人的な目的はディケイドを倒す事であった。

 

「見ているがいい、ディケイド!!この戦力を持って貴様を倒し、私が全時間軸でもっとも迷惑な存在になるのだ!!」

 

アポロガイストの叫びが響くのであった。

 

 

◆◆◆◆◆      

 

 

某所。

 

「大ショッカーも動くか。ならば私も動くとしよう。次こそが貴様の最後だ、ディケイド!!」

 

中年の男は銀色のオーロラへと消えた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

どの勢力も準備を進め動き出す。

“煌焔の都”を舞台にした戦乱が始まろうとしていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ!!

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

???

 

 

カメンライド

クウガ、アギト、龍騎、ファイズ、ブレイド、響鬼、カブト、電王、キバ、コンプリート、???

空白

 

 

スタイル

フレイム、ウォーター、ハリケーン、ランド

フレイムドラゴン、ハリケーンドラゴン、ウォータードラゴン、ランドドラゴン

インフィニティー

 

 

 





六巻終了!!
次回から七巻です!!

殿下相手でも【弱者のパラダイム】は機能します。
とはいえ、身体能力の差で攻撃に移れませんが。


それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。



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悪と紅い腕と開かれた地獄の釜
月と変態とサンドラの終幕


今回から七巻です!!


“煌焔の都”

会議室にて魔王連盟に対抗する為の会議が開かれようとしていた。

というか開かれた途端に滅茶苦茶になった。

具体的にはぺストが、

 

「全員、戦力外。荷物まとめて帰っていいわ」

 

と、言い放ち。

“ノーネーム”メンバーが鍛練場で駐屯兵にを相手に戦い始めたという知らせが入り、

 

「ほら。やっぱり烏合の衆じゃない」

 

と、ぺストが呟き、鍛練場へと向かった事が原因であった。

ぺストを追って人化を解いた参加者が続いていくのだった。

 

 

◆◆◆◆◆     

 

 

一方、鍛練場。

その光景を一言で表せば、死屍累々だった。

倒された火龍と駐屯兵が積み上がり、ぺストが連れて来た連中も、

 

 

「てい!!」

 

 

「「「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアやられたあああああああ!!」」」

 

 

十六夜の拳で吹っ飛ばされた。

一部始終を見ていたマンドラは、口元をヒクつかせて呆れ返っていた。

 

「………………。あれで本当に人間なのか?」

 

「知らねぇよ…………」

 

もはやデタラメ加減を気にしない事にした霧崎が適当に答える。

その後、古豪達と交渉して十六夜がゲームメイクする事になった。

そして誰が誰を相手にするという話になる。

 

「白髪鬼は俺が相手するとして…………“マクスウェルの魔王”を始めとした側近は誰が相手にする?あいつは“境界門”を使って瞬間的に飛び回る。それをどう押さえる?」

 

「出現位置を押さえればいい」

 

サラリと難題を口にするウィラ。

確かに出現位置を特定出来れば“境界門”の攻略は難しくない。

 

「なら、相手にするのは俺だな」

 

そこで霧崎が前に出る。

それを見て十六夜はニヤリと不敵に笑う。

 

「いいぜ。その方法ならマクスウェルが相手でも歯車が噛み合う。……………お前らもそれでいいよな?」

 

「霧崎がやるというなら私は反対しはいわよ」

 

「俺もいいと思うよ」

 

「まぁ……適任だな」

 

ラッテン、映司、晴人が頷く。

士はこの場にはいない。

 

「よし、マッチアップは決まった。古株連中と“サラマンドラ”を集めるぞ」

 

 

◆◆◆◆◆       

 

 

その頃、サンドラは混世魔王と対峙して[終わって]いた。

 

 

◆◆◆◆◆       

 

 

月の下、士は一枚のカードを手に持って立っていた。

カードは一瞬、大きな光を放つと灰になって散っていった。

 

「これで準備は完了だな。あとは上手く行くかどうかは運次第か」

 

士は呟いた後、仲間の下へと向かった。

 

 

◆◆◆◆◆    

 

 

某所。

 

イー

イー?

イー!!

 

準備を進める戦闘員の声が響いていた。

そこでアポロガイストに報せが届く。

 

「何?“奴”が単独で出ていっただと?」

 

「イー!!」

 

アポロガイストが聞き返し、戦闘員が頷く。

 

「勝手な真似を………まぁよい。放っておけ」

 

報せを届けに来た戦闘員に追加の指示を出す。

 

「“奴”がどうしようと私の知った事ではない。しかし……我々の邪魔になるようだったら粛清するだけなのだ!!」

 

 

◆◆◆◆◆         

 

 

“煌焔の都”

十六夜と黒ウサギの前に殿下が現れていた。

予想外の事態ではあるが、来る事が速まっただけである。

そして殿下が原典候補者の力の一端を見せる。

 

{ギフトゲーム“Tain Bo Cuailnge”

 

 ・参加者側ゲームマスター“逆廻十六夜”

 ・主催者側ゲームマスター“     ”

 

 ・ゲームテリトリー “煌焔の都”を中心とした半径2km。

 

 ・ゲーム概要

  ※本ゲームは主催者側から参加者側に行われる略奪型ゲームです。

   このギフトゲームで行われるあらゆる略奪が以下の条件で行われる限り罪に問われません。

 条件その一:ゲームマスターは一対一の決闘で雌雄を決する。

 条件その二:ゲームマスターが決闘している間は略奪可(死傷不問)

 条件その三:参加者側の男性は決闘が続く限り体力の消費を倍加する(異例有)

 条件その四:主催者側ゲームマスターが敗北した場合は条件を反転。

 条件その五:参加者側ゲームマスターが敗北した場合は解除不可。

 条件その六:ゲームマスターはゲームテリトリーから離脱すると強制敗北。

 

 

 終了条件:両陣営のゲームマスターの合意があった場合にのみ戦争終結とする。

      ゲームマスターが死亡した場合、生き残ったゲームマスターの合意で終決。

 

 

 宣誓 上記を尊重し誇りと御旗の下、“ウロボロス”連盟はゲームを開催します。

               “ウロボロス”印}

 

状況は刻一刻と悪化していく。

 

 

「ウオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォ______!!」

 

 

巨人の集団が現れるのだった。

十六夜は黒ウサギを逃がす。

そして殿下と十六夜がぶつかり合う。

大気を焦がし。

大地を砕き。

大海を両断する拳をぶつけ合う。

二人の戦いは、一瞬にして第八左翼の宮殿を半壊させた。

己の覇を競い合う、新しい時代の息吹は今______

 

 

「______…………」

我知らず。

破滅へと歩みを進めていた。

 

 

◆◆◆◆◆       

 

 

鍛練場。

巨人は都市部まで進行していた。

そんな中でウィラは、事態を把握していた。

 

「マクスウェル…………」

 

普段のぼんやりした雰囲気からは想像もつかない、緊迫した声。

その呟きに答える様に炎の螺旋が現れ、炎の向こうに人影を映しだすと、指を弾く音がした。

 

「召喚、“氷結境界”」

 

炎の嵐が氷結し、砕ける。

そしてマクスウェルが現れる。

 

「ふふ、ようやく我が名を口にしてくれたね。ついに私を受け入れてくれる気になったか、愛しの花嫁よ」

 

「うるさいストーカー」

 

ウィラの青髪に触れようとした右手を、蒼炎で払いのける。

だがマクスウェルは恐れることなく蒼炎を突き破り彼女の青髪に触れた。

当然、右腕は焼きただれる。

しかしマクスウェルは、触れられた事への歓喜しか感じていない。

 

「ああ、やっと………やっと、君に触れられるだけの力を手に入れられた。この力を手に入れる為だけに、私は時の最果てまで駆け抜けた。この恋心よ、世界の境界を飛び越えて君に届けと願い続け______ウィラ!!私はとうとう、君を迎えに来た!!」

 

 

「きもい」

 

 

一刀両断である。

そして、

 

「あぁうん。確かにこれはアウトね。無理ね。キモいわね。言うならマクズウェルね」

 

いつの間にかマクスウェルの背後を取っていたラッテンが、ハーメルケインで横一閃。

マクスウェルは背中をばっさり斬られる。

そこへ“サラマンドラ”のメンバー達が追撃を仕掛ける。

だが、衰退の呪いによって疲労困憊したように倒れていく。

 

「こりゃ対策が必要ね」

 

その光景を見てラッテンが呟く。

そしてマクスウェルにとってそれらの攻撃は然程効いてなかったようだ。

マクスウェルは巨人族を召喚し始める。

 

「霧崎、ウィラ。どうやら、あの変態の相手は任されちゃってるらしいわよ?」

 

巨人族と戦う火龍や古豪を見ながら言う。

 

「元からそういう予定だろ?」

 

「そうだったわね。さて、それじゃあ私は一曲いきますか!!」

 

ラッテンはディーンの肩に乗りながらハーメルケインを口に付ける。

今厄介なのは衰退の呪い。

それに対抗する為の一曲を奏でる為に霊格を高める。

 

「そういえば、“あの男”が言っていたな。その笛を持つ者は私とウィラの恋路を妨げる、とな。排除させて貰おう」

 

「は!?」

 

突如、ラッテンの背後にマクスウェルが現れる。

前兆など一切無く現れた。

演奏の為にハーメルケインに魔力を注いでいたラッテンはすぐに対応が出来ない。

そんなラッテンを他所にマクスウェルはラッテンへと拳を放つ。

 

「……………させるかよ!!」

 

その手首を霧崎が掴んだ。

霧崎は怒気の含んだ眼でマクスウェルを睨む。

明らかに何時もの調子では無い。

 

「何だ、貴様は?邪魔をするな!!」

 

炎と吹雪を霧崎、そしてその背後ラッテンに向けて放つ。

だが、そんなものは霧崎には意味が無い。

霧崎はその死の脅威を祓う。

炎と吹雪もそらされる。

その光景にマクスウェルは怪訝な顔をする。

霧崎はそれに構わず言う。

 

「任せろと言ったはいいが、正直な所は自信は無かった。けど、お前は手を出しちゃならない物に手を出した」

 

「そんなものは私の知った所では無い。私とウィラの恋路をzy

 

「黙れよ。お前の目的なんかどうでもいい。俺はお前を倒すそれだけだ!!」

 

「何をそんなに怒っているかは知らないし興味も無いが。私とウィラの恋路を邪魔するというのなら排除するまでだ!!少し待っていてくれ、ウィラ!!この男を倒したら愛を語り合おう!!」

 

「きもい」

 

各々の思いを抱えて“マクスウェルの魔王”と霧崎カブトの戦いが始まる。

 

 

◆◆◆◆◆     

 

 

カウント・ザ・メダルズ!!

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

???

 

 

カメンライド

クウガ、アギト、龍騎、ファイズ、ブレイド、響鬼、カブト、電王、キバ、コンプリート、???

空白

 

 

スタイル

フレイム、ウォーター、ハリケーン、ランド

フレイムドラゴン、ウォータードラゴン、ハリケーンドラゴン、ランドドラゴン

インフィニティー




七巻突入!!
いきなり開戦!!

まずは、
マクスウェルvs霧崎&ウィラ
です。

ラッテンに関しては別枠です。
どういう意味かは後々。


それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。



マクズウェルって何か語呂いいですよね。


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鬼化巨人と“少女”とホムンクルス

 

 

 

 

 

“煌焔の都”展示回廊。

都市部は大混乱に陥っていた。

大型火龍が次々と巨人に戦いを挑む。

そんな中、三台のバイクが戦場を駆け抜ける。

 

シャバドゥビタッチヘンシーン!!

 

「変身!!」カメンライド!!ディ、ディ、ディケイド!!

「変身!!」タカ!!トラ!!バッタ!!タトバッ、タトバ、タットッバ!!

「変身!!」フレイム、プリーズ!!ヒー、ヒー、ヒーヒーヒー!!

 

士、映司、晴人は各々ディケイド、オーズ、ウィザードへと姿を変える。

 

スキャニングチャージ!!

「セイヤァァァァァ!!」

 

映司はライドベンダーから飛び降りると巨人の集団にタトバキックを叩き込む。

数体を吹き飛ばし、着地と同時とコンボチェンジする。

 

ライオン!!カマキリ!!チーター!!

 

ライオンの頭、カマキリの胴、チーターの足を持つ亜種、ラキリーターに姿を変える。

チーターレッグで高速移動しながらカマキリソードで巨人を斬っていく。

 

「ショータイムだ!!」

キャモナシューティングシェイクハンズ!!

フレイム!!シューティングストライク!!ヒーヒーヒー!!

 

マシンウィンガーに乗りながら巨人に炎の弾丸をばらまく。

 

コピープリーズ!!

コピープリーズ!!コピープリーズ!!

 

マシンウィンガーから飛び降りてコピーの魔法で四人に増える。

そして四人は全く同じ動作で指輪を変え、スキャンする。

 

チョーイイネ!!キックストライク!!サイコー!!

チョーイイネ!!キックストライク!!サイコー!!

チョーイイネ!!キックストライク!!サイコー!!

チョーイイネ!!キックストライク!!サイコー!!

 

そして四人が全く同じ動きで巨人の集団に足に炎を纏ってストライクウィザードを叩き込む。

 

「本当に数だけはいるな」

アタックライド!!ブラスト!!

 

ライドブッカーガンモードを構えてカードを入れる。

増えた銃口から巨人へと弾丸を撃ち込んでいく。

 

アタックライド!!イリュージョン!!

「「「数には数だ」」」

 

三人に分身する。

 

ファイナルアタックライド!!ディ、ディ、ディケイド!!

 

三人の士は前方に現れたカード群を蹴り破りながら巨人を吹き飛ばしていく。

その光景をジャックとルイオスは、唖然としながら見ていた。

 

「…………ヤホホ!!巨人の中には鬼化している者も見えますが…………関係無いようですね」

 

「というか何であいつらは衰退の呪いの中をあんなに動けるんだよ……」

 

そう、士達仮面ライダーの三人は巨人が鬼化していても関係無く吹き飛ばしていた。

その程度の強化はものともしないようだ。

衰退の呪いを弾く程度の能力は彼らにはある。

 

トリプル!!スキャニングチャージ!!

「ハァ!!」

 

タトバコンボに戻った映司は、メダジャリバーを構え、セルメダルを込めてスキャンし、斬る。

空間ごと切断された巨人達は崩れ落ちていく。

 

 

「貴様が………今の“王”か!!」

 

 

「うわぁ!?」

 

そこへ、何かが突進して来て映司ごと壁を突き破り戦場から離れて行った。

 

「「映司!?」」

 

士と晴人がそれに気付くと、そこへ熱線が放たれる。

二人は紙一重に熱線を避けると、襲撃者を見る。

 

「こちらも来たみたいだな」

 

襲撃者は黒いグリフォンであった。

 

「そいつだけじゃないな」ディフェンドプリーズ!!

 

正面に“混”一文字が現れる。

フードで顔は見えないが、確実に混世魔王だろう。

混世魔王が両手から熱線を放つがあらかじめ発動していたディフェンドの魔法で防ぐ。

が、

 

「GEYAAAaaaaaa!!」

 

黒いグリフォン、グライアも同時に熱線を吐いてくる。

 

「そう簡単に行くと思うか?」ファイナルアタックライド!!ディ、ディ、ディケイド!!

 

士はライドブッカーを構えて、ディメンションブラストを放つ。

熱線とディメンションブラストが衝突し、激しい爆発が起こる。

 

「やったか?」

 

「………いやぁ?それはさすがに甘く見過ぎだ」

 

フレイム!!ドラゴン!!ボー、ボー、ボーボーボー!!

チョーイイネ!!スペシャル!!サイコー!!

 

直後に炎が収束してウィザードフレイムドラゴンの姿が現れ、胸に付けたドラゴンスカルからお返しとばかりに熱線を放つ。

 

「ヌゥ!?」

 

「外したか……」

 

グライアが慌て回避した事によって熱線はグライアの翼を掠めるだけだった。

 

「こりゃ面白れぇ!!自身の力に龍の力を混ぜるか!!」

 

「ふん。龍には龍だ!!」

 

グライアは姿を翼を四枚持つ黒龍へと変える。

黒龍へと変化したグライアは真紅の瞳を光らせ、晴人と士に光を放出する。

 

「うぉ!?」

 

士と晴人は一先ず回避する。

得体の知れない攻撃を受けるつもりはない。

横一直線にグライアの光線で薙ぎ払われた回廊は破壊されず、一瞬にして灰色に石化させられた。

 

「石化か……大体分かった」

カメンライド!!ヒ、ヒ、ヒビキ!!

 

士は姿をディケイドから響鬼に変える。

音撃棒・烈火を取り出すと間合いを詰め、グライアに叩き込む。

 

「グヌゥ!?」

 

「ハハハハ!!楽しませてくれそうだなお前ら!!」

 

愛らしい声音には似つかない下卑た笑いを上げながら“混”一文字が夜空に踊る。

その前に晴人が立ち塞がる。

 

「お前の相手は俺だよ!!」

ハリケーン!!ドラゴン!!ビュー、ビュー、ビュービュー、ビュービュー!!

チョーイイネ!!スペシャル!!サイコー!!

 

ハリケーンドラゴンに姿を変え、背に翼を生やし、二本のソードガンで混世魔王に斬り掛かる。

混世魔王も左右に残像を移しつつ間合いを取る。

そのまま拳を放ってくる。

その速度でもハリケーンドラゴンなら対応出来る。

混世魔王の拳を片手のソードガンで防ぎつつ、もう片方のソードガンで撃つ。

それを簡単に受ける混世魔王では無い。

銀の弾丸を紙一重で避け、拳を放ってくる。

拮抗した戦いの中に一つの影が加わる。

 

「ヤホホ!!加勢しますヨ!!」

 

ジャックが七つのランプを顕現させ、混世魔王へ襲い掛かる。

晴人も加えて魔法を発動する。

 

チョーイイネ!!サンダー!!サイコー!!

 

二方向から攻撃を受ける混世魔王だが、身を翻してギリギリ避ける。

しかし本当にギリギリで着ていた衣は燃え落ちた。

 

「…………ヤホ?」

 

「は!?」

 

ジャックと晴人の瞳が驚愕に揺れる。

その隙に混世魔王は距離を取り、愉快そうに笑っている。

 

「ハァァ!!」

 

ちょうどいグライアを吹っ飛ばした士が、その姿を見て首を傾げる。

 

「これは……どういうことだ、サンドラ?」

 

思った事をそのまま言っただけだった。

“混”一文字の衣の下から現れたのは_____赤髪と金の装飾を身に纏い、“サラマンドラ”の旗印である火龍を衣装に縫った少女。

“サラマンドラ”の頭首・サンドラ・ドルトレイクその人だった。

 

 

◆◆◆◆◆       

 

 

一方、吹っ飛ばされた映司は吹っ飛ばした相手と対峙していた。

メダジャリバーを構え、間合いを計る。

 

「………やはり未熟だな。しかし、“メダルの器”としては極上のようだ」

 

「何故それを?」

 

敵は現在、人間態であった。

しかし、その雰囲気はどこかで感じた事があるものだった。

そう、ホムンクルスだ。

鴻上会長がホムンクルスとして甦らせたノブナガの雰囲気と似ているのだ。

まるで人の上に立つのが当然と言わんばかりの雰囲気が、

そしてその欲望の強さが。

 

「この姿を見ても分からないかね?」

 

言って姿を変えた。

体がセルメダルに包まれて、怪人態になる。

 

「な!?」

 

それを見た瞬間、映司は驚愕した。

その姿は、

 

「“グリード”?………いや違う。それは“オーズ”!?」

 

敵の姿はグリードの様な生物的な姿でありながら、オーズの特徴を持っていた。

というか、オーズの特徴が強かった。

 

「そう。私が、私こそが“オーズ”だよ!!」

 

「まさか……貴方は800年前の”王”!?」

 

「正解だ!!私はホムンクルスとして甦ったのだよ。甦った副産物として手に入ったのがこの力だ!!」

 

“王”は高らかと叫ぶ。

まるで自身の存在を示す様に。

 

「だが、この体は少し不安定でね。やはりオーズドライバーで変身した方が私に合うみたいなんだ。だから、君には死んで貰い、そのオーズドライバーを取り返させて貰おう。ついでに君のメダルもいただく事にしよう」

 

「悪いですけど、俺はまだ死ねないんですよ。やり残した事があるからね!!」

 

「君の事情なんて私には知った事ではないよ!!」

 

それを合図に互いに向かっていく。

先代と今代、オーズ同士がぶつかり合う。

 

 

◆◆◆◆◆    

 

 

カウント・ザ・メダルズ!!

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

???

 

 

カメンライド

クウガ、アギト、龍騎、ファイズ、ブレイド、響鬼、カブト、電王、キバ、コンプリート、???

空白

 

 

スタイル

フレイム、ウォーター、ハリケーン、ランド

フレイムドラゴン、ウォータードラゴン、ハリケーンドラゴン、ランドドラゴン

インフィニティー

 

 

 






続々開戦!!

現在は

マクスウェルvs霧崎&ウィラ
混世魔王(サンドラ)&グライアvs士&晴人
“王”vs映司
というかんじです。

“王”は大ショッカーが蘇生させました。
怪人態はSICオーズに近い物だと思ってください。
存在としてはホムンクルス、つまりノブナガと同じ存在です。
能力に関しては後々。


それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。




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“ジャック”と凶刃と“王”の“力”


このラノで十六夜が七位でしたね。
前回11位と結構上がったかんじですね~




 

一方、展示回廊。

 

「いざ心して受けろ、混世の魔王よ!!この私の……………“パンプキン・ザ・クラウン”の試練を!!」

 

カボチャの王冠が爆ぜた。

その破片は輝く羊皮紙となってばら蒔かれる。

ジャックの怒る理由は簡単である。

“ウィル・オ・ウィスプ”を前にやってはいけない事をした。

幼子に手を出した。

サンドラの体を乗っとっている混世魔王はその対象なのである。

 

{ギフトゲーム“Jack the monster”

 

 参加条件

  ・幼子の殺傷歴がある者。

  ・幼子を利用し悪徳を働いた者。

 

 ・参加者 混世魔王(ゲームの妨害をする者は殺害可)

 ・ゲームマスター ジャック・ザ・リッパー

 

 勝利条件

  その一:主催者“パンプキン・ザ・クラウン”の打倒。

  その二:歴史を紐解き、“ジャック”の謎を解け。

 

 敗北条件

  その一:参加者はゲームマスターに殺されると敗北。

  その二:ゲームマスターは己が何者かを暴かれる度に力を失い、最後は敗北する。

 

 宣誓 参加条件を満たした者に執行する限り、この試練が正当であることを保証します。

              “聖ぺテロ”印}

 

その場にいた誰もが驚愕に顔を歪める。

 

「「“主催者権限”!?」」

 

士と晴人も驚き声を上げる。

ジャックは人の姿を構築していく。

真紅のレザージャケットと野獣を思わせる荒れた亜麻色の長髪。

両手には血塗れのナイフを逆手に構え、瞳には射殺すほどの殺気を充満させていく。

 

「あの姿は…………」

 

士はその雰囲気を何処かで感じた気がした。

例えば13人の仮面ライダーが殺し合いをする世界などで……

 

「殺戮劇だ…………踊れ、混世魔王!!」

 

憤怒と殺気に塗れた声でジャックが叫ぶ。

革靴の裏に炎の渦で構築したスプリングを作り、ジャックは瞬間的に混世魔王の懐へと飛び込む。

血に濡れたその凶刃を、混世魔王の胸に突き立てた。

 

 

◆◆◆◆◆          

 

 

「ハァァァァ!!」

 

「遅いよ」

 

メダジャリバーで“王”に斬り掛かるが、いとも簡単に回避され、逆に鋭い爪で斬り飛ばされる。

 

「なら!!」ライオン!!トラ!!チーター!!ラトラタ!!ラトラーター!!

 

「コンボチェンジが出来るのが君だけかと思ったかい?」

 

映司がラトラーターコンボにコンボチェンジしている間に“王”も姿を変えていた。

一度崩れた様な状態になったセルメダルが“王”の体を再構築していく。

“王”の体もライオンの頭、トラの胴、チーターの足へと変化する。

両者が姿を変え終えると、同時に高速移動を始める。

映司も、“王”も、眼に止まらぬ速さで移動し、ぶつかりあう。

一見拮抗しているように見えたが、徐々に映司が押されていく。

トラクローと“王”の爪がぶつかり合うが、映司の方が弾かれる。

その隙を突かない“王”ではない。

“王”の前に黄色の円が三つ前方に現れる。

円を潜りながら進んで行く。

円を通る事に爪に力が貯まる。

そして映司にその全てを叩き付ける。

 

「グァァァァ!!」

 

吹っ飛ばされた映司は壁を幾つも突き破る。

“王”は歩きながらそちらに進んでいく。

 

サイ!!ゴリラ!!ゾウ!!サゴーゾ!!サゴーゾ!!

 

そんな音声が響いた直後、“王”に向かってゴリバゴーンが飛んでくる。

“王”は上半身を後ろに倒して避ける。

 

「ぬ……」

 

「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

上半身を起き上がらせた“王”に向かって、サゴーゾの拳が飛んでくる。

一発目は胸にくらって少々後退するが、二発目は片手で抑え付けられる。

 

「な!?」

 

「中々いい拳だ。だがまだまだだ。真の拳を見せて上げよう」

 

言うと“王”の体が再び変化する。

サイの頭、ゴリラの胴、ゾウの足に再構築される。

 

「これが“力”だ!!」

 

「がばぁ!?」

 

“王”の拳を受け、吹き飛んだ映司は、肺の空気が押し出され、呼吸を乱しながらも立ち上がる。

 

コブラ!!カメ!!ワニ!!ブラカーワニ!!

 

「同じメダルでも君と私ではあそこまで“力”に差が出る。それを見せられても立ち上がるのかね?」

 

「生憎諦めが悪くてね!!」

 

「ならば君と私の絶望的な差を骨の芯まで思い知らせる必要があるようだ!!」

 

“王”は叫ぶと姿を再構築しながら地面に手を突っ込む。

映司はその隙に突進するが、“王”が地面から出した斧の様な物体によって斬り飛ばされる。

 

「がっ………!?」

 

「これが絶望の象徴だ」

 

“王”はプテラの頭、トリケラの胴、ティラノの足を持った姿へと変わっていた。

その姿はプトティラコンボに酷似して、その手に持つ斧もメダガブリューに酷似していた。

 

「がっ!?ごばぁ!?ぐばはぁ!?」

 

“王”が斧を振るう度に骨にヒビが入れられるようだった。

腕の盾で防いでも意味が無い、盾ごと砕かれる。

その程度ならブラカワニの再生力でどうにかなるのだが状況を打開出来る程では無い。

 

(こうなったら……)

 

覚悟を決めて一際重い攻撃をブラカワニの再生力任せで敢えて受ける。

そして吹き飛ばされて距離を取る。

そこでオースキャナーを取り出そうとした時、

 

「無駄だよ」

 

「な!?」

 

全てが凍結した。

“王”を中心に強烈な冷気が放たれて、周囲一帯が完全に凍結する。

映司も下半身が凍り、地面に縫い付けられ身動きが取れない。

 

「終わりだ」

 

“王”が斧を上に掲げると、周囲の物体がセルメダルに変換されて斧に飲み込まれていく。

そして飲み込み終え、

 

ゴックン!!プットティラーノヒッサーツ!!

 

紫の凝縮されたエネルギーの刃が映司を斬り裂いた。

右肩から左腰に袈裟斬りされた映司は変身が解け、無言で崩れ落ちる。

傷口から血が溢れ、意識を保てているのが奇跡の様な状況だった。

ブラカワニでダメージがある程度軽減されて致命傷にはならなかったがすぐに動けるわけでも無い。

 

「ハァ……ハァ……」

 

「まだ意識があるとは驚きだよ。しぶといものだね、君も」

 

“王”が映司に近付いて来る。

目的は一つしか無いだろう。

 

「さて、メダルを頂戴するとしよう。我が元に来い、メダル達よ!!」

 

“王”が手を前に出すと映司の所持していたメダルが次々と浮かぶ。

浮いたメダル達は“王”の体へと吸い込まれていった。

 

「あぁ……感じる!!感じるぞ!!メダルが一枚私に吸収される度に私の力が増幅されるのが!!これだ!!これが世界を全て手に入れる力なのだ!!」

 

“王”は歓喜し、叫ぶ。

そして更なる力を求める。

 

「もっと、もっとだ!!もっとメダルがあれば!!もっと力があれば私は何よりも強大な存在になるのだ!!」

 

周囲の建築物がセルメダルに変換されていく。

狂喜する“王”の力が暴走しているからかは分からないが次々と周辺の物が変換される。

変換されたセルメダルは“王”の体へと飲み込まれていく。

だが、変化は突然起きる。

 

「がっ!?ぐっ!?がぁぁぁぁぁぁ!?何だ!?」

 

“王”が苦しみ始めたのだ。

“王”を構築するセルメダルが不安定になっていく。

 

「暴走!?いや、そんなわけがない!!この体にそんな事が起こるわけが無い!!」

 

その様子はまるで800年前の暴走だった。

 

「あの時とは違うのだ!!あの時より最適化されたこの体で暴走が起こるはずが!!」

 

「そうだな。その体では暴走はしない様だな。だが、そんな体になったからいこそ俺に利用されるんだよ!!」

 

「な!?その声は!?」

 

どこからともなく映司でも、“王”でも無い男の声が響いた。

“王”の苦しみは更に増していく。

 

「ゴガァァァァァァァァァァァァ!?」

 

“王”が一際大きく絶叫する。

映司が顔を弱々しく上げて、そちらを見ると“王”の胸からセルメダルが吹き飛び、何かが突き出していた。

それと同時に紅い羽も舞う。

 

「あ……」

 

“それ”を見て、映司は声を上げる。

“それ”は映司を認識すると叫んだ。

 

 

「おい、映司!!こんな奴にやられて寝てんじゃねぇ!!」

 

 

“それ”は、紅い右腕は懐かしい声でまるで何時もの事の様に叫ぶのだった。

 

 

◆◆◆◆◆         

 

 

 

カウント・ザ・メダルズ!!    

 

???(多数損失)

 

 

カメンライド        

クウガ、アギト、龍騎、ファイズ、ブレイド、響鬼、カブト、電王、キバ、コンプリート、???

空白

 

 

スタイル

フレイム、ウォーター、ハリケーン、ランド

フレイムドラゴン、ウォータードラゴン、ハリケーンドラゴン、ランドドラゴン

ドラゴタイマー

インフィニティー

 

 

 






紅い右腕登場!!

正体に関しては隠すまでも無いですがくわしくは次回で!!

“王”の能力は取り込んだコアメダルの力を瞬時に引き出して体を再構築です。
外見としてはSICオーズみたいなのになっていると思ってください。
周囲の物体のセルメダル化はガメル完全体の能力ですが、グリードに近い体質ゆえに引き出せたメダルの力というかんじです。

という“王”に関してはほぼオリ設定です。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。



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未来のコアと踊る姉妹人形と復活の紅い翼

 

「アンク!!」

 

映司は“王”の胸から出てきた紅い腕を見て思わず叫んだ。

 

「はっ。このくらいで騒ぐな!!」

 

「ゴバッ、ガァァァァァァァァァ!?」

 

そのまま紅い腕は“王”の胸から飛び出す。

腕と共に大量のメダルが“王”の体から離れていき、“王”の絶叫が響く。

腕は映司の近くまで行くと、“王”から奪ったセルメダルで体を構築していく。

人間態となったその姿は完全にアンクのものだった。

 

「アンク………目覚めたんだな」

 

「ああ、どうやらお前が俺を復活させたようだな。今回は本気で礼を言うぞ、映司」

 

そう、アンクの割れたコアメダルを修復したのは映司“達”だ。

映司が材料を集め、ジャックとウィラの力を借りてコアメダルを修復しアンクの意識を復活させたのだ。

そのコアメダルが“王”の体内に入った事によって完全に覚醒したのだ。

 

「何時までも寝てるな。立て映司」

 

「分かってるよ、アンク」

 

映司はよろよろと立ち上がる。

それを見ながらアンクは地面に倒れる“王”を見る。

 

「メダルを抜かれ、地に這いつくばる気分はどうだ?」

 

「かはぁ、げばぁ………クダスナ」

 

「800年前とは逆だな。お前がそんな体になってくれたからメダルを奪いやすかったぜ」

 

「……クダスナ。私を見下すなよ、アンク!!グリード風情が私を見下すな!!」

 

もはや“王”にはアンクの言葉が届いていなかった。

“王”の胸の中にあるのは、見下される事への憤怒だった。

 

 

「私は“王”なのだぁぁぁぁぁ!!」

 

 

勢いよく立ち上がり、プテラの翼とティラノの尾を展開する。

雄叫びを上げる“王”の周囲はヒビが入り、吹き飛んでいた。

 

「来るぞ。映司、さっさと変身しろ!!」

 

「でも、メダルは奪われて……」

 

「あいつにも奪えないメダルはある。あいつが知らないメダルとかな」

 

「そうか!!」

 

アンクの言葉で何かに気付いて懐を探る映司。

アンクとしては自分が完全体になる分、タカ、クジャク、コンドルを三枚ずつに加えて数枚のメダルを奪っていたが、“王”と戦うとなると映司に渡すのは躊躇われた。

 

「あった、未来のコアメダル!!」

 

映司は懐から三枚のメダルを見付ける。

その時、フラリと倒れそうになるが意地で立つ。

血はまだ止まっていないのだ。

だが、アンクの前で倒れるわけにもいかないのだ。

映司はメダルをオーズドライバーに装填する。

そしてオースキャナーを右腰から取り出し、スキャンする。

 

 

「変身!!」スーパー!!スーパー!!スーパー!!スーパータカ!!スーパートラ!!スーパーバッタ!!スーパー、タトバ、タットッバ!!スーパー!!

 

 

オースキャナーから歌が鳴り響き、映司の頭、胴、足を中心に円状の物体が回る。

頭の前には赤の円が、胴の前には黄の円が、足の前には緑の円が止まる。

三つの円は胸の前で一つに集まって映司と胸に向かう。

そして映司の姿を変える。

タカの頭、トラの胴、バッタの足、各々が強化されたコンボ、スーパータトバに姿を変える。

スーパータトバは未来で作られた暴走をしないでメダルの力を限界以上に引き出すメダルを使ったコンボである。

その隣でアンクも姿を怪人態に変える。

その紅い姿はまさしく鳥の王であった。

 

「何だその姿は……私の知らないメダルだと!?」

 

「行くぞ、映司!!」

 

「あぁ、行こうアンク!!」

 

戸惑う“王”を他所に映司とアンクは各々翼を広げて“王”へと向かっていく。

 

 

◆◆◆◆◆        

 

 

一方の鍛練場。

霧崎は何も無い背後へと蹴りを入れる。

直後にマクスウェルが前触れも無く現れる。

そして霧崎の蹴りがマクスウェルに直撃する。

 

「ほぅ………」

 

蹴り飛ばされながらマクスウェルは興味深そうに霧崎を見る。

吹っ飛びはしたが、蹴り自体は対して効いてない。

ライズで強化しようと霧崎のライズはイアン式ライズが元なので反応強化の“センス”にほぼ注がれていて、身体能力強化の“ストレングス”は無いに等しい。

それでもそこそこの相手になら対応出来るレベルだが。

先程からこの様なやり取りが続いていた。

マクスウェルが現れる場所には“死の脅威”が現れるので視れはするのだが決定打になるものが無い。

はっきり言って火力不足なのだ。

 

(何か状況を変える物が無いとな……)

 

霧崎は汗を流しながら思う。

霧崎はその場をほとんど動かずに戦っていた。

勿論、ウィラやラッテンの方にマクスウェルが動けば動かざる得ないが、それ以外では動いてない。

霧崎には衰退の呪いを跳ね退けるだけの力は無いのだ。

火力不足と衰退の呪いのせいで戦況は動いていなかった。

何度かウィラの攻撃がマクスウェルに当たりはするのだが、再生されてしまう。

そこでマクスウェルは距離を取った。

霧崎は分けが分からず警戒する。

 

「あいにくと私もあまり遊んでいられないのでね。彼女達にも参戦して貰おう」

 

マクスウェルは“境界門”を開き、何かを多数召喚する。

霧崎はそれを見て、顔をひきつらせる。

 

「コッペリアか……」

 

「知っているのか。まあいい。舞え、“踊る姉妹人形”!!」

 

召喚されたのは見覚えのある少女の人形だった。

マクスウェルの合図と共にそれらは身体の至る所から刃物を出して襲ってくるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆       

 

 

“王”と映司、アンクの戦いは空中戦になっていた。

三者共に翼を持つ者であり、“王”はプテラの紫の翼を広げ、映司とアンクは紅い翼を広げ飛び回る。

 

「全く厄介だよ、君達は!!」

 

「それはこっちの台詞だ!!」

 

アンクが翼から炎の矢を多数放つ。

“王”は全て紙一重で回避するが、そこへトラクローソリッドを展開した映司が斬り掛かる。

斧と爪が何度もぶつかり合う、その度に周囲に空気が揺れる。

アンクはぶつかるタイミングを狙い、火球を放つ。

ぶつかった直後で“王”は火球を避けれず、少し吹っ飛ぶ。

その隙を狙って、映司は“王”に攻撃をし掛けるが予想以上に速く“王”は体勢を建て直して斧で防いだ。

 

「簡単に行くと

 

「思ってないよ!!」

 

直後にスーパータトバの能力が発動する。

映司以外の全てが停止した様に見えた。

時間操作、それがスーパータトバの能力である。

その間に映司は“王”の左翼を斬り落とした。

 

「ぬがぁ!?」

 

「地に落ちろ!!」

 

片翼を失い、バランスを崩す“王”へ、アンクは近付き残った翼を抉り取る。

 

「ぐがぁぁぁ!?このグリードが!!」

 

絶叫しながら落下する“王”。

映司とアンクが落下地点に降下し、畳み掛けようとした時、“王”を中心に衝撃波が広がる。

 

 

「こんな奴らに!!こんな奴らに私が!!この私が倒されるなど!!我が欲望はまだ満たされていないのだ!!こんなところで終っ…………Gebaryaaaaa!?」

 

 

絶叫の途中で“王”の言葉が乱れる。

 

「なnだ、kれh!?わたs…g……こんn…こ……t」

 

それが“王”の最期の言葉だった。

“王”の理性が崩れ去ると共に原型が崩れる。

映司とアンクは少し離れた所でそれを眺めている。

“王”だったものの周囲が完全にセルメダル化してごっそりと抉られる。

セルメダルは“王”だったものを包み形を変えていく。

 

「チッ。結局暴走したか」

 

「暴走という事はまだあれみたいな事に!?」

 

あれとはウヴァが暴走した事である。

 

「だろうな。だが、下手したらもっと悲惨な事になりかねないな」

 

「なら、止めないと!!」

 

「お前らしいな」

 

「お前はどうするんだ、アンク?」

 

「ハッ。あんなものは放っておくのが一番何だが…………あいつには借りがある。俺の手で倒したかったとこだ」

 

「じゃあ決まりだな!!」

 

映司とアンクは互いの意見を確認し合うと、完全に姿を変えた“王”の成れの果ての怪物に向き直り、構えるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆      

 

 

カウント・ザ・メダルズ!!     

 

スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

タカ×3、クジャク×3、コンドル×3

???

 

 






アンク復活!!
スーパータトバ登場!!

ジャックから受け取ったのは修復したアンクのコアでした。
ウィラの能力とジャックの技術があればこそ出来た芸当という感じです。

霧崎のライズは“センス”に極振り、弱めな“ストレングス”というかんじです。
元が呼吸合わせ、スピード強化のイアン式ライズなのでそんなかんじです。


スーパータトバに関してはMOVIE大戦の超銀河王との高速移動対決に見えたのは時間停止合戦で、時間操作が出来る設定です。
未来のコアだからこその能力らしいです。


それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。


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怪物と欲望の雨とTime judged all

 

タカ!!クジャク!!コンドル!!

ライオン!!トラ!!チーター!!

クワガタ!!カマキリ!!バッタ!!

サイ!!ゴリラ!!ゾウ!!

シャチ!!ウナギ!!タコ!!

サソリ!!カニ!!エビ!!

コブラ!!カメ!!ワニ!!

プテラ!!トリケラ!!ティラノ!!

 

“王”だったものからそんな音が鳴り響きセルメダルが完全に肉体となっていく。

 

「あれ、どんな姿になるんだ?」

 

「知るか」

 

適当に答えるアンク。

それもそうだろう。

アンクでさえ見た事無いのだから。

映司はガラの様なものになるだろうと身構える。

 

 

「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

 

 

完全に怪物と化した“それ”は雄叫びを上げる。

その姿は映司の予想と大きく違った。

頭部は獅子の鬣の様な物に包まれ、サイの様な角があり、エラもある。

口には鋭い牙が見え、その両端にはクワガタの顎の様な物もある。

四本の足には鋭い爪が生え、鰻の様な物が巻き付いてる様にも見える。

胴体は獣の毛皮に、爬虫類の鱗に、甲殻類の外骨格、亀の甲羅などが混ざりあっている。

その背から生える翼は羽毛に包まれる二対の翼と、恐竜の様な二対の翼、計四本だった。

肩からはトリケラトプスの角らしき物がある。

尾は三本あり、一本はコブラの頭が毒牙を見せ、二本目は蠍の毒棘が振り回され、三本目は蟷螂の鎌の様な物が見える。

その姿はまさしく怪物。

様々な生物が混ざりあっていた。

 

「はっ。本当の怪物にまで堕ちたか」

 

その理性の欠片も見られない姿をアンクは嘲笑した。

それを理解したわけでもないだろうが、怪物は叫びながらアンクへと突進する。

 

「動きが単調なんだよ!!」

 

紅い翼を広げ、飛び上がり、突進を避ける。

そこへ三本の尾が襲い掛かる。

コブラの頭に炎球を放ち、蝎の棘を蹴り飛ばす。

だが、蟷螂の鎌を回避するには一手足りなかった。

 

「アンク!!」

 

しかしそれはスーパータトバの映司がトラクローソリッドを展開して弾き飛ばした。

 

「油断するなよ、アンク」

 

「お前がそれを言うな」

 

いつの間にか映司の背後に迫っていた炎の羽の矢群をアンクの翼からも放って相殺する。

 

「だりゃぁぁぁぁぁ!!」

 

映司はその中を進み、一つの翼を根本から斬り落とす。

斬り落とされた翼は大量のセルメダルへと変わる。

アンクはそこへ降りたって吸収する。

 

「こんな時に何やってんだよ!?」

 

「うるせぇ!!こっちはメダルが足りて無いんだよ!!」

 

そのアンクへと怪物は右前足を振り降ろす。

ヒラリ、とアンクが避ける。

直後に右前足が振り降ろされた地面が砕け散ってクレーターが出来る。

 

「何て力だ……」

 

「いや、力では無いな」

 

「どういう事だ?」

 

「振り降ろした場所を一瞬でセルメダルにして吸収してやがる」

 

「GEAYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

 

上空で話す二人に向けて、角から電撃が放たれる。

二人は電撃を避けながら降下していく。

映司はトラクローソリッドで怪物の体を削り取っていく。

その途中でコアメダルを見付け、回収する。

アンクは頭部に乗ると、眼球に向かって腕を突き刺す。

 

「メダルを貰うぜ」

 

「GEvaRya!?」

 

引き抜かれたその手には数枚のコアメダルが握られていた。

怪物は悲鳴を上げながらアンクを振り落とす。

そして頭部の角で弾き飛ばす。

 

「ぐがぁ!?」

 

「大丈夫か、アンク!!」

 

「このくらい問題無い。それより来るぞ!!」

 

「GVAAAAAAAAAAAAAAA!!」

 

コアメダルを奪われて怒り狂ったのか、角や尾から無数の光線を放ってくる。

映司は避けながらメダジャリバーを構えてセルメダルを入れ、オースキャナーでスキャンする。

 

トリプル!!スキャニングチャージ!!

「ハァァァァァァァァァ!!」

 

そのまま急降下していく。

三本の尾が三方向から襲ってくるが、時間操作によって回避する。

そのまま三本纏めて斬り落とす。

 

「GAGER!?」

 

「もう一回!!」

 

そのまま背に乗り、更にメダルを入れ、スキャンする。

 

トリプル!!スキャニングチャージ!!

 

そして回転斬りの要領で残り三本の翼を斬り落とす。

だがそれで終わらない。

一方アンクは後ろ足に集中放火していた。

炎の翼を集中的に放ち、バランスを崩させる。

そして真下に潜り込む。

 

「「ハァァァァァァァァァ!!」」

 

二人の声が重なる。

怪物は上からトラクローソリッドを叩き付けられ、同時に下から特大の炎球を受ける。

怪物は血を流すようにセルメダルを撒き散らす。

 

「GeyaaaaaaAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

 

怪物は二人を振り払うと、口に紫のエネルギーを凝縮していく。

それを見た映司とアンクは合図も無しに同時に向かっていく。

映司が時間操作で時を止める間に顎の下に行き、足に力を込め、全力の跳躍をする。

その勢いのままトラクローソリッドを下顎に叩き付ける。

そしてアンクが上顎に炎球を放つ。

 

 

「_______っ!?」

 

 

強引に口を閉じさせられた怪物は凝縮していたエネルギーが口の中で爆発し煙を吐く。

 

「映司、トドメ!!」

 

「ああ、行くぞアンク!!」スキャニングチャージ!!

 

映司がオースキャナーでベルトのメダルをスキャンすると、二人は上空まで昇っていく。

そして二人と怪物の間に上から赤、黄、緑の巨大な輪が現れる。

映司はそのまま蹴りの体勢を取る。

アンクも足に炎を纏わせながら蹴りの体勢になる。

 

「ハァァァァァァァァァセイヤァァァァァァァァァ!!」

「ハァァァァァァァァァダァァァァァァァァァァァ!!」

 

「GeRAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

 

映司とアンクが声を上げながら急降下していく。

怪物も迎え撃つ様に角を突き出して吠えながら突進していく。

二つの蹴りと突進が衝突した衝撃によって周囲の物体が崩壊していく。

拮抗したかの様に見えたが、徐々に角にヒビが入っていき、遂に砕ける。

そのまま二つの蹴りは怪物を貫き、映司とアンクが着地すると背後に円を三つ重ねた様な紋章か浮かび上がる。

直後、貫かれた怪物は内部から膨れ上がって爆散する。

メダルの塊が爆散し、セルメダルを撒き散らす光景はまさしく欲望の雨だった。

 

 

◆◆◆◆◆        

 

 

展示回廊。

 

「どうする?」

 

「どうするも何もやるしかないだろ」

 

「あぁそうだな。やる事は一つだ。混世魔王を捕まえてアンダーワールドに入って憑いてる本体を倒す、それだけだ」

 

「なら、やるぞ。それ以外は打ち合わせ通りだ」

 

カメンライド!!カ、カ、カブト!!

インフィニティー!!プリーズ!!ヒースイフードーボーザバビュードゴーン!!

 

士と晴人はジャックがサンドラの胸にナイフを突き立てるのを見ながら姿を変える。

ディケイドからディケイドカブトに。

フレイムドラゴンからインフィニティースタイルに。

各々混世魔王の対処を目的にしたフォームへ姿を変える。

 

 

◆◆◆◆◆        

 

 

「映司!!ボーとしてるな!!メダルを回収するぞ!!」

 

「あぁ!!」

 

既に回収を始めているアンクに言われ、コアメダルの回収を始める映司。

そこへ何者かが襲ってくる。

 

「な!?」

「は!?」

 

ある程度、メダルを回収した映司とアンクに向かってエネルギー弾が放たれたのだ。

それも一つでは無い。

メダル回収に集中していた二人は防御しながらも吹き飛ばされる。

映司とアンクが体勢を建て直し、元いた場所を見ると六つの異形が残ったメダルを回収していた。

映司とアンクはその異形に見覚えがあった。

 

「ショッカーグリードに、他のグリードまで!?」

 

「お前ら、何しに来やがった!!」

 

「我らはただ我らの所有物を回収しに来ただけだ」

 

答えたのはショッカーグリードだった。

その背後には、

ゲルショッカーグリード

デストロングリード

ガランダーグリード

ゴッドグリード

デルザーグリード

の姿がある。

それらのグリードはショッカーの作り出したメダルから生まれたグリード達である。

 

「まだお前達と戦う気は無い。私達はアポロガイストに命じられて勝手に動いた馬鹿の後始末をしに来ただけなのでな」

 

そう言うと、彼らの背後に銀色のオーロラが現れる。

おそらく彼らの拠点に繋がっているのだろう。

 

「待て!!メダルを渡しやがれ!!」

 

「無理な相談だな。これは我らにとっても必要だからな」

 

「いずれ貴様らのメダルも貰い受ける」

 

「今回は運が良かった、と思うんだな」

 

「良かったな。俺達にお前たちから奪う事が命じられて無くて」

 

「近い内にまた出会い、殺し合いになるだろうがな」

 

「では、さらばだ!!」

 

六体は口々に言いながら、銀色のオーロラへと姿を消すのだった。

それをアンクは苦々しそうに見るのだった。

 

 

◆◆◆◆◆       

 

 

カウント・ザ・メダルズ!!

タカ、トラ、バッタ(映司所持)

タカ×3、クジャク×3、コンドル×3

クワガタ×2、カマキリ、バッタ

ライオン、トラ、チーター×2

サイ、ゴリラ×2、ゾウ

シャチ、ウナギ、タコ

コブラ、カメ、ワニ

スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

???(アンク所持数枚)

 

 

カメンライド

クウガ、アギト、龍騎、ファイズ、ブレイド、響鬼、カブト、電王、キバ、コンプリート、???

空白

 

 

スタイル

フレイム、ウォーター、ハリケーン、ランド

フレイムドラゴン、ウォータードラゴン、ハリケーンドラゴン、ランドドラゴン

ドラゴタイマー

インフィニティー





“王”戦決着!!
怪物の外見はお好きに想像を。
大体、奇形のキマイラみたいなかんじです。
サイズ的にはガラの巨大体くらいです。

最後に出た六体のグリード、
ショッカーグリード
ゲルショッカーグリード
デストロングリード
ガランダーグリード
ゴッドグリード
デルザーグリード
はHEROSAGAにて登場した物です。
詳細は改めて登場した時に。


それと、少々用事がありまして12月7日まで更新が出来ないと思います。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。

それから、活動報告でアンケートをやりますのでよければ答えてください。
詳細は活動報告の方で。



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アイスと霊格共鳴と強引な攻略


活動報告にてアンケートしてます。

やっと用事も終わって再開です!!
関係無いけど戦隊vsがゴーバスターズを空気にする気満々ですね………
恐竜戦隊がブレイブ過ぎる………
それでは本編です!!




六体のグリードが銀色のオーロラに消えて、気が抜けた映司は変身が解ける。

地に座る映司にアンクが手を出し、

 

「映司、今日の分のアイスを寄越せ」

 

「この戦いが終わったら幾らでも食わせてやるよ。……ゴホッ」

 

以前の様なやり取りに笑っていた映司が突如咳き込む。

手には血がついている。

映司は口を拭いながら苦笑いする。

 

「こりゃ…………マズイかもね」

 

“王”から受けた傷は癒えてない。

むしろ広がっているだろう。

 

「こいつに変身しておけ。少しはマシになるだろ」

 

そう言って、アンクが映司にメダルを投げた。

受け取ったメダルはコブラ、カメ、ワニだった。

確かにブラカワニになれば、その再生力で傷の治りが速まるだろう。

 

「ありがとうな、アンク」

 

「ふん。お前にここで倒れられたら面倒なだけだ」

 

「そうか。まぁとりあえず変身!!」コブラ!!カメ!!ワニ!!ブラカーワニ!!

 

映司は姿をブラカワニへと変える。

その影響で映司も体が軽くなった様に感じる。

 

「それじゃあ、行くぞ」

 

「あぁ」

 

二人はライドベンダーに跨がって、戦場へと向かうのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

鍛練場。

ラッテンはディーンの肩に乗り、自分の肩にはメルンを乗せていた。

 

「さてさて……“霊格共鳴”は完了したわね。あとは………地脈から魔力を吸い上げれば準備完了!!」

 

言い終わるとディーンの体が淡く光る。

ラッテンは“契約”を利用してメルンとディーンと霊格を同調させて地脈に干渉していた。

メルンの地精としての面を霊格を同調させる事によって強化したのだ。

干渉した地脈から魔力を吸い上げて、ディーンの体に貯めているのだ。

体が光ったのはこの為である。

これからの演奏にはこの魔力が必須なのだ。

 

「さぁさぁ一曲いくとしましょうか。衰退の呪いなんて吹き飛ばす程のね!!」

 

ハーメルケインに口を付ける。

そして周囲に魔法陣が現れる。

スピーカー代わりである。

準備が整いラッテンの演奏が始まる。

一方の霧崎は無傷ではあった。

“踊る姉妹人形”も、吹雪も、炎も【弱者のパラダイム】の前では意味が無い。

だが、無傷なのはマクスウェルも同じである。

正確には何度も攻撃を当ててはいるのだが、効かないか、再生されるかである。

戦いは完全に膠着状態。

しかし衰退の呪いが霧崎の体力を削っていく。

膠着した状態でも体力の減りが速いのは不利である。

 

(そろそろ……マズイな)

 

疲弊しても敗けはしない。

だが、その場合はウィラやラッテンを守り切れない。

それは問題だ。

 

「限界が近そうだな」

 

「さあ、どうだろうな?」

 

互いに傷を付ける事が叶わぬ攻防を続けながら言う。

そこに笛の音が響く。

 

「これはラッテンの演奏か………」

 

「これが何だと言うのだ?」

 

マクスウェルが怪訝な顔をする。

だが、霧崎、そして近くで戦う衛兵達も感じていた。

衰退の呪いが消えていく事を。

実際には衰退の呪いは消えていない。

だが、無効化はされていた。

今のラッテンの演奏は地脈から吸い上げた魔力をハーメルケインを媒介に笛の音に乗せているのだ。

それによって演奏を聞いた衰退の呪いを受けている者達に魔力を送り、衰退の呪いと相殺しているのだ。

 

「ありがとよ、ラッテン!!」

 

衰退の呪いを気にしなくていいなら思いっきり動ける。

霧崎はライズを全開にして、マクスウェルに蹴りを放つ。

しかしあっさりと避けられる。

それはそれで当然である。

“境界門”を使うマクスウェルに不意討ちでも無いのに攻撃を当てるのは難しいのだ。

 

「だけど、“視え”てるぜ!!」

 

数秒後の死の脅威を視る眼でマクスウェルが出現する場所を探る。

見付け次第そこに死の脅威の塊を叩き込む。

 

「何度同じ事を繰り返す」

 

「お前を倒すまでだよ!!」

 

再び消えるマクスウェル。

次に現れる場所を視て、死の脅威の塊を叩き込む霧崎。

そのやり取りを何度も繰り返す。

そこへウィラも助太刀をする。

二人掛かりでマクスウェルに攻撃を加えようやくその時が来る。

 

「この程度!!」

 

マクスウェルは半身が焼かれ、膝をつく。

だが、徐々に傷の再生が始まる。

 

「いいんだよ。動きが止まればそれで」

 

「何?」

 

「だってお前、死の脅威まみれだぜ?」

 

「何をふざけ

 

直後、八割のコッペリア、吹雪、炎が一斉にマクスウェルへと押し寄せた。

 

「ぐっ……ごっが………あああああああああ!?何だ!?何が起きている!?」

 

「お前が出した死の脅威を返しただけだ」

 

「そんな……事が……dき……わ」

 

大量のコッペリアに刺され押し潰され、吹雪凍え、炎に燃やされる。

そんな中で放たれるマクスウェルの言葉は途切れ途切れである。

 

 

「お前が蒔いた種だ。自分で責任を取るんだな」

 

 

呟いた直後にマクスウェルを中心に火柱が立つ。

ウィラが“愚者の劫火”を召喚したのだ。

それによって“踊る姉妹人形”が誘爆していき、天まで巨大な火柱になる。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

五分して火柱が消える。

霧崎とウィラが火柱の跡を見る。

そこには何も無かった。

死体も、燃えカスも。

残ったのは焦げた地面だけであった。

 

「………やったのか?」

 

「分からない。これじゃあ、生死の確認しようがない」

 

何であれ、退ける事には成功した。

それは間違い無い。

しかし相手が生きてるか、死んでいるかを判断するのは困難という状況はかなり不気味である。

 

「でも、ありがとう……霧崎」

 

「?……俺は礼を言われる様な事はしてないぞ?」

 

「アレを撃退してくれた。それだけで充分。だって……」

 

「ああ……分かった。大体分かったからそれ以上言わなくていい」

 

「……うん」

 

確かにアレは気持ち悪い。

あんなのにストーカーされたとなればかなりの精神的にまいるだろう。

そこら辺は大体察せる霧崎である。

ただし、ウィラの頬が少々紅くなっていた事には気付かないのも霧崎らしい。

とはいえ、霧崎が気付こうが気付かなかろうがもう一つ面倒事が発生するのだが。

 

「きぃぃぃぃりさぁぁきぃぃぃぃ?こぉぉぉれはどういう事かしら?」

 

「何の事だ………?」

 

いつの間にか近くにいたラッテン。

霧崎は背後に寒気を感じながら、恐る恐る振り返る。

ラッテンは笑ってはいた。

しかし眼は笑っていない。

霧崎は苦笑いするしか無かった。

 

「何の事か、言う必要あるのかしらぁぁぁ?」

 

「いや本当に何のk

 

その後、霧崎はとことん追求される羽目になるのだった。

現在戦闘中な事を強調して説得して何とか逃れ、黒ウサギの様子を見てくる、と言って霧崎はその場から離れるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

展示回廊。

混世魔王が上空に幾百の大火球を出現させ、グライアがジャックの背後に周り込み、挟み撃つ様に攻撃が放たれる。

そこへ、

 

ディフェンド、プリーズ!!

アタックライド、リフレクト!!

 

インフィニティースタイルの晴人とディケイドカブトの士が、ジャックの前後に割り込む。

晴人の前方に魔法陣が幾つも現れ、混世魔王の大火球を防ぐ。

士はグライアの熱線を反射する。

グライアは自らの攻撃を慌てて回避する事になる。

 

「ジャック、今はお前の姿については聞かない。まずはあいつらを倒すぞ」

 

「だから、何も言わなくていい」

 

「…………ヤホホ。そうですね。まずは目の前の敵が先決です」

 

三人は一言で意思を確認し合うと、混世魔王とグライアへと向かっていく。

 

「その姿、キラキラキラキラと目障りだな!!」

 

サンドラの姿の混世魔王が晴人に蹴りを放つ。

晴人はそれを避けもせずに正面から受け止める。

 

「何!?」

 

「悪いな。それくらいじゃ効かないんだよ!!」

 

驚愕する混世魔王。

その隙に足を掴んで引き寄せる。

 

「ぐぬ……これならどうだ!!」

 

両手で火球を作ってぶつけるがそれでもインフィニティーは揺るがない。

引き寄せた勢いのまま、混世魔王の腹に肘打ちする。

混世魔王はその衝撃を敢えて逃がさず、距離を取る為に吹き飛ぶ。

 

「逃がさねーよ」エクステンド、プリーズ!!

 

アックスカリバーを持った手をエクステンドの魔法で伸ばし、斬り掛かる。

 

「なめんな!!」

 

混世魔王はそれを上半身を背後に倒し、鼻先に剣を掠める形で避ける。

そこへジャック炎のスプリングを使って接近していく。

一方のグライアは士に翻弄されていた。

 

アタックライド、プットオン!!

 

士は腕だけプットオンし、そこでグライアの攻撃を受け止め、カウンターの様に蹴りを入れる。

そして晴人達の方をチラリと見て、ディケイドライバーにカードを入れる。

 

アタックライド、スラッシュ!!

 

ライドブッカーをソードモードにし、グライアを晴人達の方に斬り飛ばす。

 

「Ger……」

 

「今度は俺だ」

 

入れ変わる様に晴人がアックスカリバーで斬り掛かってくる。

グライアは体勢を急いで建て直し、攻撃を見切る。

 

「GEYAAAAA!!」

 

「おっと」ディフェンド、プリーズ!!

 

熱線を放つが晴人の前に現れた魔法陣によって防がれる。

 

ターンオン!!

 

晴人はアックスカリバーの手形部分に左手のインフィニティーの指輪をかざし、アックスカリバーを上下逆に持ち変える。

持ち手だった方が斧となる。

 

「これならどうだ?」

 

「GEYAAAAAAAA!!」

 

晴人とグライア、互いにぶつかり合うが傷を負うのはグライアだけである。

グライアの攻撃は鎧に弾かれ、その隙に晴人はグライアに斧による重い一撃を加えていく。

そして一際強めの一撃で吹き飛ばす。

 

「これでトドメだ!!」ハイタッチ!!シャイニングストライク!!キラキラ!!キラキラ!!キラキラ!!

 

晴人がアックスカリバーの手形部分に右手の指輪をかざし、頭上で回すと、アックスカリバーが巨大化していく。

そしてグライアに向けて振り降ろす。

 

「ハァァァァァァァ!!」

 

「GEYAAA!?」

 

しかしグライアもやられるだけでなく、ギリギリ回避行動を取る。

だが、完全に回避は出来ず、右肩から下に深く抉られ、吹っ飛ばされ、展示回廊が薙ぎ倒される。

 

(チッ。こいつら中々面倒だな…………)

 

士とジャックの相手をしながら混世魔王は吹っ飛ばされたグライアを見て、戦況を把握していく。

流石にこれでは分が悪いと、肩を竦める。

 

「そろそろ潮時だなァ。ヒヒ、そろそろお暇するかね」

 

「俺達から逃げれると思うのか?」

 

「それに俺の“主催者権限”が発動している限り、お前はこの“煌焔の都”からは出られない」

 

武器を構えるジャックと士。

士はライドブッカーとは反対の手でカードを構えている。

混世魔王は余裕の笑みで巻物を取り出す。

 

「なぁに、仕切り直すだけさ!!テメェらはそれまで、巨人族と遊んでやがれ!!」

 

巻物が解かれ、浮かび上がる文字。

虚度光陰____対象の体感時間を止める呪い。

だが直後に、

 

アタックライド、クロックアップ!!

インフィニティー!!

 

「「この時を待っていたんだよ!!」」

 

音声と共に逃げようとしていた混世魔王の前に士と晴人が立ち塞がる。

 

「な!?」

 

今度こそ本気で驚く混世魔王。

二人は十六夜から虚度光陰の話を聞いて予め対策がしやすいフォームになっておいたのだ。

対策とは体感時間がいじられるのなら、周りの時間の方もそれに合わせて遅くしてしまえばいいと言う力技である。

クロックアップとインフィニティーの加速、この二つは原理は違うが時間に干渉して高速移動しているに近い状態になる力である。

 

「言っただろ?逃げれるつもりか?ってな」

 

「サンドラの体を返して貰わないといけないしな」

 

「いいぜ。やれるもんならやってみろ!!」

 

晴人と士は互いに剣を構え、混世魔王は自分の技が破られたにも関わらず__否、だからこそ面白そうに笑っていた。





書いてる端末の都合かよく分からないのですがこれ以上本文が入力出来ないので今回はカウント・ザ・メダルズは無しです。


今回はvsマクズウェルとvs混世魔王&グライアでした。
vs混世魔王はまだ続きますが。

久しぶりの投稿でおかしい所があったら言ってください。

インフィニティーに関しては
時間操作系高速移動、鉄壁の鎧とかなり性能高いです。

アタックライド、リフレクトはスーパーヒーロー大戦の戦隊の力です。


それでは質問などがありましたら聞いてください。
感想待ってます!!


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逃亡の魔王と“彼”の尾行と立ち上がる戦士


活動報告にてアンケート実施中です。

貴虎の斬月への変身は一回だけになりそうな予感。
そろそろゲネシスドライバーが出てきますしね~

それでは本編です。




 

「オラァ!!」

 

混世魔王は大量の大火球を作り出し、士と晴人に向けて放つ。

晴人が前に出て、ベルトに右手の指輪をかざす。

 

ルパッチマジックタッチゴー!!

ディフェンド、プリーズ!!

 

魔法陣を前方に展開して大火球を防いでいく。

士も背後からライドブッカーガンモードで火球を撃ち抜いていく。

そして、混世魔王はその隙に逃亡を計る。

 

「行かせるわけがないだろ?」

 

「だろうな!!」

 

火球を撃ち抜きながら近付いていた士と混世魔王が拳を打ち付けあう。

 

「俺を忘れて貰っちゃ困るぜ」バインド、プリーズ!!

 

混世魔王が晴人に視線向けると、混世魔王の周囲に魔法陣が現れ、その中から鎖が飛び出て混世魔王を縛る。

 

「この鎖程度で俺が縛れると思ってるのか?」

 

「思っちゃいないさ」

 

「動きを少しでも止めれれば充分なんだよ」ファイナルアタックライド!!カ、カ、カブト!!

 

縛られていた混世魔王を力を足に集中させた士が回し蹴りで地面に叩き落とす。

 

「チィィ!!(こりゃマズイな。虚度光陰が効かないとなると逃げるのは苦労するな)」

 

地面に叩き付けられる前に火球で勢いを相殺する。

 

アタックライド、ブラスト!!

 

士が逃がさない様に銃弾をばら蒔く。

その間に晴人が近付き、アックスカリバーで斬り掛かる。

しゃがんで避け、両手に火球を出して0距離で叩き込む。

しかし爆発の衝撃で多少後退はさせれるがインフィニティースタイルには傷一つない。

 

「随分硬い装甲だ!!」

 

その後も士と晴人の剣を避けつつ、混世魔王は冷や汗をかく。

 

「そろそろ終わりにさせて貰う」ファイナルアタックライド!!カ、カ、カブト!!

 

「フィナーレだ!!」チョーイイネ!!キックストライク!!サイコー!!

 

二人は蹴りの構えを取る。

サンドラの体にあまり傷はつけたくないが、意識を刈り取らない事には手の出しようがない。二人が混世魔王に蹴りを放とうとした瞬間、都市を守る外壁が砕ける音が響いた。

 

(しめた!!)

 

士と晴人がそちらに気を取られた瞬間、混世魔王は地面に向けてありったけの大火球を放った。

それにより大量の土煙が舞う。

 

「しまった!!」

 

爆音を聞いて二人が混世魔王の方を向くがつ土煙によって見えない。

土煙を突き破るがそこにはもう混世魔王の姿はなかった。

 

「逃げられたか………」

 

「みたいだな」

 

二人は周囲に気配がなく、逃げられてしまった事を確認すると一旦変身を解く。

 

「士さん、晴人さん!!混世魔王はどうしました!!」

 

そこへ虚度光陰から解放されたジャックが近付いてきた。

ジャックに混世魔王に逃げられた事を言い、やるべき事を確認する。

 

「行くか。巨人に街を荒らされたらゲームが終わっても大損害だからな」

 

「ジャックは衰退の呪いの方は大丈夫はなのか?」

 

「お気になさらず!!諸事情でこの呪いは聞きませんから!!」

 

「そうか。なら急ごう」

 

士はマシンディケイダーに、晴人はマシンウィンガーに跨がって、突破された外壁へと急ぐのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

第五右翼の宮。

リンは隠し通路を進んでいた。

その背後を“彼”は気付かれない様に尾行していた。

 

(どうやら目的の物は同じようだね。それに“鍵”も持っているようだね。ちょうどいいし道案内してもらうとしよう)

 

“彼”はもう一人、リンを尾行している者にも気付いていた。

そちらについては気にしていない。

宝さえ手に入れば後は勝手にやってくれればいい。

そう思いながら“彼”はリンのあとを進んでいく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

十六夜と殿下の戦いいまだに続いていた。

勝利の天秤は十六夜に傾いている。

しかし勝利を掴むのは数時間後になる。

その間にも外壁が破壊されていく。

それが十六夜を焦らせていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

外壁の戦場。

ぺストも戦闘に参加はしているが、黒死病は吸血鬼化した巨人には効き目が薄い。

衝撃波で応戦はしてはいるのだが、大局を変える程ではない。

 

「はあ、はあ、っの…………!!何体出てくるの、この巨人族………!!」

 

悪態を付きながらも巨人族を衝撃波で吹き飛ばす。

ぺストは肩で息をする程度には疲弊していた。

そこへ、

 

ライオン!!トラ!!チーター!!ラトラタ!!ラトラーター!!

 

ラトラーターコンボに姿を変え、トライドベンダーからエネルギー弾を放って巨人を薙ぎ倒しながら火野映司が現れる。

 

「ぺストちゃん、大丈夫?」

 

「人の心配してる場合か!!無茶をしてると傷が開くぞ!!」

 

ぺストに声を掛ける映司の背後でアンクが翼から炎の羽の矢をばら蒔いて巨人族を吹き飛ばしている。

さすがに通常の巨人の様にはいかないが映司とアンクは次々と巨人族を倒していく。

しかし後方ではまだまだ召喚されている。

吸血鬼化した巨人は完全に殺さないと、戦場に流れる血を吸ってでも傷を癒して立ち上がる。

映司はライオンヘッドから光を放ち、周囲の巨人を怯ませる。

吸血鬼にとってこの太陽の如くの輝きは毒である。

映司は胸を塞がったばかりの傷を押さえる様にしながら巨人達の背後を見る。

 

「巨人達を召喚している術者さえ何とか出来れば…………」

 

「そんな体で何を言ってる。ここはもう駄目だ。退却した方が懸命だ」

 

「だろうね。でも十六夜君はまだ戦っているし、ここの人達は見捨てれない。それに俺は諦めが悪いからね」

 

「ふん。お前らしいな」

 

怪人態ゆえに表情は見えないがおそらく笑っている様に映司は感じていた。

その背後から、

 

「そうだ。俺達、仮面ライダーは最後まで戦い抜く」カメンライド!!ヒ、ヒ、ヒビキ!!

 

「俺達が最後の希望だからな!!」ランド!!ドラゴン!!ダン、デン、ドン、ズドゴーン!!ダン、デン、ドゴーン!!

 

士と晴人がバイクに乗りながら現れ、フォームチェンジをしながら飛び降りる。

 

アタックライド、オンゲキボウ・レッカ!!

「ハァァァァ!!」

 

士は音撃棒・烈火を取り出すと、炎を纏わせ巨人に叩き付けていく。

単純な力と清めの音によって巨人の肉を吹き飛ばしていく。

更に炎球を飛ばしてもいく。

 

「さあ、ショータイムだ!!」

チョーイイネ!!スペシャル!!サイコー!!

ドリル、プリーズ!!

 

晴人は巨大なドラゴンの爪を出現させると、ドリルの魔法で回転しながら、巨人を貫いていく。

 

チョーイイネ!!グラビティ!!サイコー!!

 

巨人達の上に魔法陣を展開し、強めた重力によって地面に押し付ける。

 

ビッグ、プリーズ!!

 

そしてビッグの魔法で巨大化させた爪から斬撃波を放って巨人を消し飛ばす。

 

サイ!!ゴリラ!!ゾウ!!サゴーゾ!!サゴォォォゾ!!

 

「ハァ!!デリャ!!」

 

映司も姿をサゴーゾコンボにコンボチェンジしてその怪力で巨人を殴り飛ばしていく。

 

スキャニングチャージ!!

 

右腰からオースキャナーを取り出し、ベルトのメダルを再度スキャンする。

足を合体させ、一度、宙に浮かび上がり、落下する。

衝撃波が地面を伝わって響く。

その衝撃波に掴まれた巨人達は映司の方へと寄せられていく。

逃げようにも地面にがっしりと掴まれている。

 

「ハァァァァセイヤァァァァァァ!!」

 

巨人達が目の前に寄せられた瞬間にサイヘッドとゴリラアームを同時に叩き付ける。

サゴーゾインパクトによって寄せられてきた巨人は遠方へと吹き飛ばされていく。

その仮面ライダー達の暴れ様を見て、次々と火龍達が立ち上がる。

 

『『『名無し風情があそこまでやっているんだ、我々も負けてはいられんな』』』

 

仮面ライダーの覚悟を見て、それが希望となり、戦士達の心に焔を灯していく。

心の炎は傷付いた戦士達を立ち上がらせる。

戦士達は仮面ライダーに続く様に巨人達へと向かっていく。

そんな戦士達に運命も味方する。

 

 

「いい覚悟や。僕も加勢するで」

 

 

___全てを押し流す、龍の如き濁流が彼らに加勢する。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ!!

 

映司

タカ、トラ、バッタ

クワガタ、カマキリ、バッタ

ライオン、トラ、チーター

サイ、ゴリラ、ゾウ

シャチ、ウナギ、タコ

コブラ、カメ、ワニ

スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

アンク

タカ×3、クジャク×3、コンドル×3

クワガタ、チーター、ゴリラ

(その他数枚)

 

 

カメンライド

クウガ、アギト、龍騎、ファイズ、ブレイド、響鬼、カブト、電王、キバ、コンプリート、???

空白

 

 

スタイル

フレイム、ウォーター、ハリケーン、ランド

フレイムドラゴン、ウォータードラゴン、ハリケーンドラゴン、ランドドラゴン

ドラゴタイマー

インフィニティー

 

 






vs混世魔王決着!!
というか混世魔王に逃げられた!!ですね。

“彼”はちょくちょく出てきてる宝目当てのあの人です。

映司の傷はブラカワニの力で塞がりました。
とはいえ本調子ではないですが。

MOVIE大合戦は来週公開ですね。
武神ライダーの戦闘が意外にガッツリやりそうです。
というか早速ネタバレされるインフィニティードラゴンゴールド………
詳細が分かったら取り入れたい所ですね。
チチンプイプイ、プリーズ!!


それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。



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コソ泥と召喚ライダーと青い蝶の参戦


活動報告にて短編のアンケート実施中





 

立ち上がりし戦士達の前に現れたのは蛟魔王であった。

 

「いやあ、えらい遅れてしまった。それにしても頑張ってたみたいやな」

 

士、映司、晴人が薙ぎ倒していた巨人は蛟劉の放出した水流によって吹き飛ばされた。

 

「いや、助かりました」

 

映司は姿をタトバコンボにして礼を言う。

三人の仮面ライダーと立ち上がった火龍達の手にかかれば巨人は殲滅出来ただろう。

しかしそれでは消耗が激しい。

だからこそ一度に吹き飛ばせる蛟劉の参戦に感謝する。

 

「礼はいらんよ。まずはゲームを終わらせよか」

 

蛟劉によって津波が起こり、巨人が流されていく。

残った巨人もいとも簡単に蛟劉によって吹き飛ばされていく。

そこへ混世魔王とグライアが現れる。

 

「ヒハハハ!!さあさあ、千年越しのリベンジマッチだ!!しかも此方の器は超極上!!大聖の代わりに、そのすかした顔を歪めてやんよ!!」

 

「___へぇ?五桁が四桁を?身の程を知れや山猿ッ!!」

 

吹き荒れる炎と海流の渦。

士、映司、アンク、晴人は巨人の召喚者の方へと急ぐ。

燃える炎の戦場は未だに静まる気配を見せない。

しかし誰もが熱を増す中で___刻一刻と、静かに閉幕の時は近付いていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

地下。

“彼”はリンがジンを刺してマクスウェルに対して誤魔化しを計る一部始終を見ていた。

 

(全く面倒な事に巻き込まれたね。早くお宝の封印を解いてくれないものか)

 

心の中で愚痴りながらその光景を眺める。

現在はリンが台座に旗を掲げ、星海龍王の龍角を差し込む。

そしてマクスウェルが台座の前に進み出ようとした時、

 

 

「何時まで隠れているつもりだ?コソ泥め!!」

 

 

マクスウェルが振り返って灼熱の炎を“彼”に向けて放った。

“彼”は慌てる様子もなく物陰から出て回避する。

 

「やあ、やっと気付いたかい」

 

その姿は海東大樹だった。

彼は何時も通り宝を狙ってここまでやってきたのだ。

彼は銃の様な物、ディエンドライバーをマクスウェルの方に向けながら不適に笑う。

 

「一応聞こう。貴様の目的は何だ?」

 

「それこそ聞くまでもないだろ?君達と同じでお宝さ」

 

「なら渡すわけにはいかないな」

 

いつの間にかマクスウェルは海東の背後へと周り込み、手刀で突く。

海東はそれを避け、カードをディエンドライバーに入れる。

 

「いいや。星海龍王の遺産は僕が頂く。変身!!」カメンライド、ディ、ディ、ディエンド!!

 

海東が発砲すると、幾つもの残像が現れ、海東に重なる。

そして姿を仮面ライダーディエンドに変える。

 

「瞬間移動には彼らだね」

カメンライド、ケタロス!!

 カメンライド、ヘラクス!!

 

海東がディエンドライバーにカードを入れて再び発砲すると銃弾は二つの人影に変わる。

銀色の兜虫の様な姿の戦士、仮面ライダーヘラクスと銅色の兜虫の様な姿の戦士、仮面ライダーケタロスを召喚したのだ。

ケタロスとヘラクスは現れた直後にクロックアップする。

彼らにはマスクドフォームが無く、直接クロックアップ出来るのだ。

 

「高速移動程度で私に対抗出来るとでも?」

 

「高速移動じゃないよ」

 

マクスウェルが姿を消す。

そして海東の頭上へと吹雪を纏わせ現れる。

直後、マクスウェルが蹴り飛ばされる。

 

「な!?」

 

マクスウェルは驚愕しながら海東の銃撃を避ける。

種は簡単である。

クロックアップは端から見ればただの高速移動であるが、実態は時間流に干渉して周囲の時を遅くしているのである。

だから同じ時間に干渉する力でもない限り対抗するのは難しい。

ようはマクスウェルが海東の頭上に現れ攻撃するまでの間はケタロスとヘラクスにはスローモーション同然なのだ。

 

「“踊る姉妹人形”!!」

 

マクスウェルは少女の人形を対抗するかの様に召喚する。

 

「へぇ、少女型の人形か」アタックライド、ブラスト!!

 

海東は頭上に青いエネルギー弾を放つ。

そのエネルギー弾は分裂して降り注ぐ。

そして“踊る姉妹人形”を破壊していく。

 

「さて、仕上げだ」

カメンライド、ザビー!!

 

海東は蜂の様な姿の戦士、仮面ライダーザビーを召喚してマクスウェルに仕向ける。

 

「あとは任せたよ」

 

ザビー、ケタロス、ヘラクスにマクスウェルと“踊る姉妹人形”を任せて台座に近付いていく。

 

「なめるなぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「何!?」アタックライド、バリアー!!

 

マクスウェルはケタロス、ヘラクス、ザビーに翻弄されながらもこの広間を包み込むクラスの火炎を放った。

海東は咄嗟にカードをディエンドライバーに入れて、防御する。

傍観していたリンも距離を操るギフトで自分とジンを守る。

ケタロス、ヘラクス、ザビーは召喚された存在ゆえにオリジナル程の強さはなく脆い。

マクスウェルの火炎に巻き込まれて消えていった。

 

「ちょっとマクスウェルさん!!私達を巻き込むつもりですか!!」

 

「それはすまない。しかし“軍師”殿のギフトなら防ぎ切れるだろう?」

 

「そういう問題じゃないです!!」

 

ファイナルアタックライド!!ディ、ディ、ディエンド!!

 

そんなマクスウェルに向けて海東は銃を向ける。

銃口から標的までにエネルギー体のカードの円が現れる。

引き金を引くとエネルギー弾、ディメンションシュートが標的を貫くべく放たれる。

勿論、マクスウェルは“境界門”で瞬時に移動して避ける。

海東もそんな事は想定済である。

 

アタックライド、インビジブル!!

「ちょっと僕は去らせて貰うよ」

 

カードをディエンドライバーに入れた瞬間、海東の姿は消えた。

マクスウェルも、リンも怪訝な顔をする。

別段に不利な状況でもないのに海東が退却するのは不可解なのである。

だが、その理由はすぐに分かる。

大地が激しく揺れたのだ。

 

「今の揺れ……まさか!!」

 

リンが慌てて台座の方を見る。

そこには既に灼熱が放たれた様な跡があった。

マクスウェルの火炎が台座をも巻き込んだのだ。

 

「ちょっと何をしてるんですか、マクスウェルさん!!」

 

「まさか台座まで巻き込まれているとはな。これはやり過ぎた」

 

全く反省してない口振りである。

それはともかくリンは焦る。

 

「そんな事より速く遺産を回収してここから離れますよ!!」

 

「言われなくても分かっている。開かれたのだからな…………地獄の窯が!!」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

宮殿内。

 

「全く無駄骨だったよ。お宝は回収出来ないし、何か妙な事は起こるしね」

 

激しく揺れる周囲を眺めながら呟く。

その目はまだ宝を諦めた目では無かった。

 

「その前に士にでも会っておこうかな」

 

そう言って海東はその場を離れ、何処かへと向かうのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

第八八区画。

十六夜と殿下の戦いは七十七の区画を壊滅させるまでに及んでいた。

互いに肋骨が砕け、四肢が腫れ上がるほどの猛攻を打ち合い、腱が切れそうになる寸前にまで及んでいた。

闘志は上がる一方ではある。

しかし殿下の方が明らかに深刻な傷を負っていた。

そして十六夜は殿下が生後三歳未満で、罪深いほど無垢な子供でしかない事を知る。

十六夜が殿下の人生を後悔させるべく、拳に力を込める。

気焔万丈の闘志を燃え上がらせる二人の戦いは___

 

 

大地の地殻から立ち昇る、それ以上の脅威によって妨害された。

 

 

傷だらけの二人が立っていられず、構えを解いて壁に持たれかかっている。

殿下はこの揺れの発生源を感付き、“契約書類”を取り出して半狂乱になってそれを投げる。

受け取った十六夜は殿下からこの大地震が封印された魔王が復活する余波と聞き、驚愕する。

そして十六夜は満身創痍の身体に鞭を打って地下水脈から飛び上がる。

大地の揺れも魔王の脅威も忘れ、仲間たちの下に走った。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

某所。

 

「あの魔王が復活するか。これでお前も終わりだディケイドォォォォォォォォ!!」

 

中年の男は天に向かって叫ぶのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ!!

 

映司

タカ、トラ、バッタ

クワガタ、カマキリ、バッタ

ライオン、トラ、チーター

サイ、ゴリラ、ゾウ

シャチ、ウナギ、タコ

コブラ、カメ、ワニ

スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 

アンク

タカ×3、クジャク×3、コンドル×3

クワガタ、チーター、ゴリラ

(その他数枚)

 

 

カメンライド

クウガ、アギト、龍騎、ファイズ、ブレイド、響鬼、カブト、電王、キバ、コンプリート、???

空白

 

 

スタイル

フレイム、ウォーター、ハリケーン、ランド

フレイムドラゴン、ウォータードラゴン、ハリケーンドラゴン、ランドドラゴン

ドラゴタイマー

インフィニティー

 

 





さあ、地獄の釜が開かれた!!
というわけで海東大樹こと仮面ライダーディエンド参戦!!

いきなりvsマクズウェルでしたが結果は退却。
余波で封印が解けましたので。

今回、召喚されたライダーはザビー、ヘラクス、ケタロスでした。

それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。


召喚ライダーの耐久度はノリで変動したりして。
サブタイの青い蝶はディエンドの事です。



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地獄の釜と三頭龍と更なる火種

活動報告にて短編のアンケート実施中




____そして地獄の釜は開かれた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

外壁正面の門前。

活火山の噴火によって、戦線は一時的に静止した。

誰の命令を受けたわけでもない。

溶岩に飲み込まれれば誰だろうと為すすべもない。

それで無事なのは大型の火龍とディケイドくらいだろう。

混乱している巨人たちを見て攻め込むタイミングだと思い動き出そうとした時に彼らは異変を察した。

 

「「「「___!?」」」」

 

ゾクリ、と。

士、映司、アンク、晴人は寒気に近い何かを感じる。

数々の怪人と戦って来た彼らだからこそ、寒気の出所を素早く見抜く。

蛟劉、混世魔王、ぺスト、グライアが活火山を見る中、彼らは空を見る。

一帯を支配する目に見えない重圧とその存在感の出所を。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「こりゃ急いだ方がいいな」

 

霧崎は宮殿を走りながら黒ウサギの元へと向かっていた。

そんな中で大きな死の脅威を感じて、空を見上げ、それを見た。

夜天を照らす凶星の様な紅玉の眼。

顎から頭蓋を貫通した杭を打たれた異形の三本首。

三つの双眸と六つの眼球は敵の胆力を根こそぎ枯れさせるだろう。

生物としての機能性も感じられなければ、神秘性を高める為の祟高さも感じられない。

見る者の全てが生理的に嫌悪を抱くその造形は元より畏怖されることを目的にしているとしか思えない。

全長は十尺前後しかないというのに________その筆舌に尽くし難い威圧感は、巨龍すら凌駕している。

何より霧崎から見れば、

 

「全身から常に死の脅威を放ってるとか、どんな化け物だよ!!」

 

死の脅威に包まれた化け物。

それはつまり常に死を振り撒くレベルという事である。

霧崎は嫌な予感を感じながら、黒ウサギの元へと急ぐ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

そしてラッテンとウィラもそれを見ていた。

三頭龍は周囲の状況を把握すると、翼を数倍にして羽ばたく。

無造作に三頭龍をの羽ばたきは____月夜を覆い隠す曇天を瞬く間に消し飛ばし、一瞬にして夜の帳を掻き消した。

 

「___こりゃ………マズイわね」

 

ウィラの隣で冷や汗を流しながら呟く。

そう何もかもが遅いかったのだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

三頭龍の羽ばたきによって雲海は左右に引き裂かれて消失し、大気を揺らす衝撃は波となって星の光を捻じ曲げる。

その波は大きな二つの竜巻となって都市部を駆け抜け、蛟劉が作り出した海流までもを瞬く間に掻き消したのだ。

 

 

「なッ…………なんやとツ!?」

 

 

それだけにとどまるはずがなく。

蛟劉が召喚していた大海象は竜巻に呑み込まれて、有象無象の区別なく全ての勢力を呑み込んで崩壊させていく。

都市部も、宮殿も、羽ばたき一つで瓦解して崩れ去っていった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ちょっやっぱこうなる!?」

 

「きゃあ!?」

 

瓦解した宮殿と共に旋風に巻き上げられるラッテンとウィラ。

そこへ、

 

アタックライド、アドベント!!

ドラゴライズ、プリーズ!!

 

仮面ライダー龍騎にカメンライドした士がドラグレッダーを召喚し、晴人がウィザードラゴンを召喚し、各々上に乗って二人を救出した。

 

「大丈夫か、二人とも?」

 

「えぇ、とりあえずは」

 

頷くラッテンとウィラ。

士がウィラを、晴人がラッテンを抱え、竜巻を突っ切る。

ある程度落ち着くと、各々背に乗せる。

 

「それで、霧崎はどうした?」

 

「黒ウサギ……つまりあの瓦礫の所よ。そっちのもう一人は?」

 

ラッテンはアンクを知らないので映司のみ聞く。

そして、晴人と士は瓦礫の山を指差す。

 

「どうやら考える事は同じな様だ」

 

映司も黒ウサギの元へと向かっているというのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「こりゃ最悪のタイミングだったみたいだな」

 

霧崎が黒ウサギの元へ辿り着いた瞬間、十六夜が黒ウサギを守る様に貫かれていた。

あれは致命傷だろう。

三頭龍の爪は十六夜の脇腹を抉り、五臓六腑を貫いていた。

 

「霧崎!!……黒、ウサギを………連れて逃げろ!!」

 

「いや、お前、その傷じゃ!!囮なら俺がやる!!」

 

「この傷……だか、らこそだ!!……こ、の傷じゃ……無理だ。だから頼む」

 

「……………だ~分かったよ!!」

 

霧崎は納得出来ない様子で、だが黒ウサギを抱えて十六夜に背を向ける。

十六夜の言ってる事は分かるし、覚悟も感じた。

それでも簡単に納得出来る話ではない。

だから一言だけ言う。

 

 

「………死ぬなよ」

 

「ハッ………無茶を言ってくれるな!!」

 

 

迷惑そうに言う。

だが、その口元は少し笑っている様でもあった。

 

「だ………駄、ぁ、…………駄目……………!!」

 

黒ウサギは知っていた。

あの背中が物語る覚悟を知っている。

その覚悟の行く末を知っている。

黒ウサギは霧崎に担がれながらも、十六夜の背中に手を伸ばす。

それに気が付いた十六夜は表情を先程と違う笑みに無理矢理変え、首を横に振った。

 

 

「____ごめん。旗を取り戻す約束は……………果たせそうにない」

 

 

それは十六夜の生涯で初めて、真っ直ぐな言葉で謝罪した。

黒ウサギは言葉にならない叫びを上げ、霧崎から降りようとする。

 

「………悪い」

 

一言呟き、霧崎は滂沱の涙を流し、十六夜に手を伸ばしそこへ向かおうとする黒ウサギに手刀を入れ、意識を刈り取った。

霧崎は走り去りながら天から漆黒の紙吹雪が降り注いでいる事に気付く。

そして目の前から映司とアンクがライドベンダーに乗って向かってきていた。

二人は霧崎を見付けると、停止する。

 

「霧崎君!!」

 

「映司さん、話してる暇はない。この場から離れないといけないんだ」

 

「でも、十六夜君は?」

 

聞かれ、一瞬黙る霧崎。

霧崎が十六夜の事を話すと、

 

「なら、俺が行くよ。アンクと霧崎君は…」

 

「やめとけ!!」

 

「でも、アンク!!」

 

「そいつが選んだ道だ。今は邪魔すんな。それにまずはこいつらだろ?」

 

アンクに言われ、映司は納得出来はしないが、まずは黒ウサギを安全な場所に運ぶ事にする。

ライドベンダーを発進する前に映司は後ろを向いて呟く。

 

「必ず助けに戻る……だからそれまでは……」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

三頭龍の白蛇は、十六夜に何者か問われ、失笑しながらも己の名を口にした。

 

『箱庭第三桁・“拝火教”神群が一柱____魔王アジ=ダカーハ。宗主より旗と第三桁を預かりし今生を魔王として過ごすことを約束された、不倶戴天の化身であるッ!!』

 

活火山から、灼熱の風が吹く。

地獄の山河の如く風を受け、純白の総身と紅玉の瞳をたぎらせる魔王は、“悪”の旗をなびかせて吠えた。

 

 

『いざ来たれ、幾百年ぶりの英傑よッ!!

 死力を尽くせッ!!

 知謀を尽くせッ!!

 蛮勇を尽くし____我が胸を貫く光輝く剣となってみせよッ!!』

 

 

その夜、星々が揺れた。

三界を突き抜ける嵐が吹いた。

静止していた世界を廻る歯車が、激動と共に動き出した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

某所。

アポロガイストはアジ=ダカーハ復活の報せを聞き、部下を集めた。

 

「諸君!!かの魔王は復活した!!我ら大ショッカーはこれより“煌焔の都”へと進軍する!!我らの目的を果たすべく死力を尽くすのだ!!」

 

イー!!

 

「そして憎き仮面ライダー達も“煌焔の都”にいる。第一目標を確保次第、全力で叩き潰すのだ!!」

 

イー!!イー!!イー!!

ウォォオォォォオォォォォ!!

 

戦闘員が敬礼し、怪人達は叫びで答える。

更なる火種が投入されようとしていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ!!

 

映司

タカ、トラ、バッタ

クワガタ、カマキリ、バッタ

ライオン、トラ、チーター

サイ、ゴリラ、ゾウ

シャチ、ウナギ、タコ

コブラ、カメ、ワニ

スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

アンク

タカ×3、クジャク×3、コンドル×3

クワガタ、チーター、ゴリラ

(その他数枚)

 

 

カメンライド

クウガ、アギト、龍騎、ファイズ、ブレイド、響鬼、カブト、電王、キバ、コンプリート、???

空白

 

 

スタイル

フレイム、ウォーター、ハリケーン、ランド

フレイムドラゴン、ウォータードラゴン、ハリケーンドラゴン、ランドドラゴン

ドラゴタイマー

インフィニティー

 

 





七巻分終了!!
アジ=ダカーハ復活!!
アポロガイストの新たな動き!!
でした!!
次回からは八巻です!!

実は霧崎が残ったり、映司が向かったりしたらアジ=ダカーハ相手だと問題が発生したりするので十六夜が最適なのは変わってなかったり。


それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。



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“Aksara”と血の分身と過熱する戦い


活動報告にて短編のアンケートを実施中です。




 

無記名の“契約書類”が降り注ぐ。

そこに記されているのは唯一つ、

 

【悪】

 

の旗印のみ。

その契約は天地が裂かれたその日より継続して結ばれ続けていたもの。

故に試練の概要など記すまでもない。

世界に住まう全ての存在が知っている。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

十六夜と三頭龍の戦いの最中、二本の光が放たれた。

 

『ぬ?』

 

三頭龍を狙ったそれはギリギリの所を避けられる。

しかしそれは一本のみで、もう一本は三頭龍の肩を深く消し飛ばした。

三頭龍は大量の血液の溢れる傷口を眺め、笑う。

 

『逃げた奴らの仕業か。とはいえ、ここまでよく当てたものだ。まぁ私としては“自分で抉る”手間が省けたのだが』

 

三頭龍が言った直後、大地に滴り落ちた血液は大地を、溶岩を、朽ちた大木を、双頭の龍へと変幻させていく。

その数は、十数匹にも及んでいた。

十六夜はその光景に戦慄と焦燥を感じた。

その双頭龍達は一体、一体神霊に匹敵するだけの威圧感を放っていた。

三頭龍が指示を出すと、双頭龍達は巨峰を下って行った。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

光を、マキシマムハイパーサイクロンを放った張本人、士はコンプリートフォームへと姿を変えていた。

 

「外したか」

 

「まぁこの距離だからな」

 

「遠距離が駄目なら直接叩くしかないな」

 

「それも含めて速く十六夜君に助太刀しないと」

 

士の後ろには映司、アンク、晴人がいた。

彼らは一先ず完全にノーマークなこの距離からの攻撃を試して見たのだが、あまり効果は無かった様だ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

時は少々遡り、瓦礫の山河。

避難民を保護する中、霧崎、ラッテン、ぺスト、士、映司、アンク、晴人、黒ウサギは集結していた。

霧崎は十六夜の事を士達に説明をした。

その中でジンが行方不明という事が分かった。

そして気絶していた黒ウサギが目を覚ます。

黒ウサギは十六夜の事を思い出し、

 

「あ、…………あぁ………………!!」

 

うめく様な声を漏らし、膝を折って項垂れていた。

映司はそんな黒ウサギの手を掴む。

 

「え、映司さん?」

 

「黒ウサギちゃん、知ってるかい?」

 

「何をですか?」

 

「たくさんの人とこうして手を繋いでいけば、その手はどこまでも届く腕になるんだ」

 

「どこまでも届く腕?」

 

「皆が手を繋いで協力すれば何だって出来るんだよ」

 

「それに十六夜の事なら心配するな。俺達が助太刀しに行く」

 

「だから絶望するな。俺達、皆が最後の希望なんだから」

 

士、晴人も続ける様に言う。

その後ろでアンクは呆れた様にしている。

 

「十六夜君の腕も掴んでみせる。だから安心して、黒ウサギちゃん」

 

「映司さん…士さん…晴人さん………」

 

言って映司は黒ウサギの頭を撫でた。

黒ウサギは涙目で彼らを見る。

 

「じゃあ、行こうか」

 

「「ああ!!」」

 

「アンク、お前はどうする?」

 

「ふん。そういう所は相変わらずだな、映司。メダルの件もあるし、今回は手伝ってやる」

 

「ありがとう、アンク」

 

アンクに礼を言い、霧崎の方を見る。

 

「ここは任せていいかな?」

 

「あぁ、大丈夫だ。黒ウサギも、避難民も任せておけ。俺の能力ならちょうどいいからな」

 

最後の確認を済ませると、映司達はバイクに乗って、三頭龍と十六夜が戦っている場所へと向かう。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

時は戻って士、映司、アンク、晴人は巨峰へと真っ直ぐ進んでいた。

体力温存の為に変身は解いてある。

そこへ、

 

「お前ら、避けろ!!」

 

アンクが全力で叫び、他三人がバイクのハンドルをきる。

そして彼らが進もうとしていた場所に複数の熱線が放たれた。

 

『『『『『『『GEEEYAAAAAaaaaa!!』』』』』』』

 

彼らの前に現れたのは双頭の怪龍の群れだった。

数は十数体。

体は各々別々の物で造られている。

 

「これはあの魔王の分身みたいな物か?」

 

「だろうな。気配がよく似てる。大方、さっきの攻撃が原因なんじゃないか?」

 

「雑魚では無さそうだな」

 

「それに倒さない事には十六夜の所へは行けない」

 

「つまり、やるしかないって事だ」

 

彼らはバイクから降りる。

士はディケイドライバーを腰に巻き、カードを構える。

映司はオーズドライバーを腰に巻き、メダルを入れる。

晴人はドライバーオン済みのベルトの手形部分を左側に傾ける。

 

シャバドゥビタッチヘンシーン!!

 シャバドゥビタッチヘンシーン!!

  シャバドゥビタッチヘンシーン!!

 

ウィザードライバーから短縮された呪文が唱えられる。

そして映司がオースキャナーを取り出し構える。

 

「変身!!」カメンライド、ディ、ディ、ディケイド!!

 

「変身!!」タカ!!トラ!!バッタ!!タトバッ、タトバ、タットッバ!!

 

「変身!!」フレイム、プリーズ!!ヒー、ヒー、ヒーヒーヒー!!

 

同時に叫ぶ。

そして各々変身音が鳴り響く。

その間にも双頭龍から攻撃が来るが防御される。

士が、ディケイドライバーにカードを入れ、閉じると複数の残像が現れ、士に重なって行く。

そして士の姿は仮面ライダーディケイドとなる。

映司が、オースキャナーでベルトにセットしたメダルをスキャンすると、頭、胴、足の三ヶ所を中心に円形の複数の物体が回転し始める。

頭の前に赤、胴の前に黄、足の前に緑の物体が止まり、胸の前で一つになる。

そして映司の姿は仮面ライダーオーズ、タトバコンボへと変わる。

晴人が、左手の指輪のバイザーを降ろし、ウィザードライバーにかざし、横に手を伸ばす。

手の先に魔法陣が現れ、晴人の体を潜らせていく。

そして晴人の姿は、仮面ライダーウィザード、フレイムスタイルになる。

その後ろでアンクも怪人態に姿を変える。

 

「さあ、ショータイムだ!!」

 

晴人が言うと、

士はライドブッカーソードモードを構え

映司はメダジャリバーを構え、

アンクは紅い翼を生やし、

晴人はソードガンを構え、

双頭龍の群れへと向かっていく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方、瓦礫の山河。

霧崎とラッテンはウィラと合流していた。

 

「無事だったか、ウィラ」

 

「う、うん」

 

霧崎に無事か聞かれ、頷くウィラ。

その頬はほんの少し紅くなっている様に見える。

その様子をぺストとラッテンが並んで見ていた。

 

「何か機嫌が悪いようだけど、ラッテン」

 

「そんなことはないですよ、マスター」

 

「ウィラが邪魔になると思ってるなら検討違いもいいとこよ。あの様子じゃ進展はたぶんないわ」

 

「いやいや、ああいうタイプこそ……………って、いやいやいや!!そういう事じゃないですよ、マスター!?」

 

思いっきり動揺するラッテン。

このままいじり倒してやろうか、とぺストが考えていると、

 

「お前ら、念のために防御の準備しとけ!!」

 

霧崎が二人に向けて叫んだ。

ウィラはいつの間にか黒ウサギを抱えてディーンの側面に隠れていた。

直後に大量の火炎弾が林道から襲い掛かる。

もちろん、全て【弱者のパラダイム】で上空へと祓う。

霧崎が火炎弾の飛んできた方を見ると、二体の双頭龍が此方を睨んでいた。

 

「何だありゃ?話に聞いた魔王の分身か?」

 

苦笑いをしながら背後を見る。

後ろにはラッテン、ぺスト、ウィラ、黒ウサギ、そして大量の避難民。

霧崎は再び双頭龍二体の方を見て、溜め息を吐く。

 

(約束したからにはしょうがねぇな)

「ラッテン!!ウィラ!!ぺスト!!避難民を頼む!!」

 

「霧崎!!あんたはどうするつもりよ!?」

 

「こいつらの相手をする!!」

 

言って、霧崎はライズを全開にする。

 

(行くぜ、ヨヨ!!)

(アァ)

 

強化した足で跳躍し、放ってくる火炎弾の死の脅威をそのまま返す。

自ら放った火炎弾が叩き込まれ、吹き飛んでいく双頭龍。

しかしほぼ無傷の様である。

 

「やっぱり火力は足りないか。でもやるしかねぇ!!」

 

体勢を建て直して再び立ち上がる二体の双頭龍。

その前に霧崎は立ち塞がる。

 

「悪いがここから先には行かせねぇ。約束しちまったからな、あいつらを守るって」

 

映司達は信用している。

だから十六夜の事は任せておける。

なら、自分のやる事、そして約束を果たすだけである。

 

「「GEEYAAAAAAAAAAAAaaaaaaa!!」」

 

「あいつらは必ず守り抜く!!だから来やがれ、この化け物共!!」

 

突進してくる二体。

霧崎、そしてヨヨは片方の死の脅威をもう片方の方向に祓う。

軌道をズラされ、ぶつかり合う双頭龍は木々を薙ぎ倒しながら吹っ飛んでいく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

それぞれの想いを胸に、戦いは過熱していった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ!!

 

 

映司

タカ、トラ、バッタ

クワガタ、カマキリ、バッタ

ライオン、トラ、チーター

サイ、ゴリラ、ゾウ

シャチ、ウナギ、タコ

コブラ、カメ、ワニ

スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 

アンク

タカ×3、クジャク×3、コンドル×3

クワガタ、チーター、ゴリラ

(その他数枚)

 

 

カメンライド

クウガ、アギト、龍騎、ファイズ、ブレイド、響鬼、カブト、電王、キバ、コンプリート、???

空白

 

 

スタイルチェンジ

フレイム、ウォーター、ハリケーン、ランド

フレイムドラゴン、ウォータードラゴン、ハリケーンドラゴン、ランドドラゴン

ドラゴタイマー

インフィニティー

 

 





各々のアジ分身戦開始!!でした。


アジ本体に対するライダーと霧崎の相性ですが、
ライダーはスペック高いのはいいが、完全に殺し切るのは難しいので今回の様に分身の産まれる元になったり
霧崎は単純な火力不足
というかんじです。
だから前回、十六夜が残るのが最適というかんじにいなりました。
分身相手に関しては別ですが。


ちなみにアルマいないので誰も説明していない状態という事でライダー組も霧崎達も、アジか人類最終試練と言うことは知りません。
どれくらいの脅威というのは感じとっているというかんじですが。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。



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龍時計とじり貧とGot to keep it real


活動報告にてアンケート実施中です




 

「GEYAAAAaaaaaa!!」

 

「黙ってろ化物が」アタックライド、ブラスト!!

 

周囲の双頭龍達に銃弾をばらまきながら、ケータッチを取り出す。

ケータッチにカードを入れ、浮かび上がった紋章をクウガから順に押していく。

 

クウガ、アギト、リュウキ、ファイズ、ブレイド、ヒビキ、カブト、デンオウ、キバ、ファイナルカメンライド!!ディ、ディ、ディケイド!!

 

ケータッチを腰に付け、姿をコンプリートフォームに変える。

 

「まずはこいつだ」ファイズ!!カメンライド、ブラスター!!

 

ケータッチを取り外し、ファイズの紋章を押し、腰に戻す。

そして胸のカードがファイズ、ブラスターフォームへと変わる。

 

「GEEEEEYAAAAAAAAAAaaaaaaaaa!!」

 

そこへ一匹の双頭龍が突進してくる。

隣にファイズ、ブラスターフォームを召喚し、カードを取り出し、ディケイドライバーに入れる。

 

ファイナルアタックライド!!ファ、ファ、ファイズ!!

 

士とブラスターフォームは銃口を突進する双頭龍へと向け、引き金を引く。

銃口からは光弾が放たれ、二つの光弾が双頭龍を貫く。

 

「GEYAAAAA!!」

 

双頭龍は悶えるが、死ぬという程でもないようだ。

 

「さすがに神霊級は一撃じゃ死なないか」ファイナルアタックライド!!ファ、ファ、ファイズ!!

 

再びディケイドライバーにカードを入れる。

今度は、双頭龍にポインターがセットされ、身動きのとれなくなる。

そこへ士とブラスターフォームが全く同じ動作で同じタイミングで、超強化クリムゾンスマッシュを放つ。

二発の超強化クリムゾンスマッシュを受けた双頭龍はなす術もなく爆散する。

 

「ぐぁ!?」

 

ブラスターフォームが隣から消えた瞬間、複数の火球によって吹き飛ばされる士。

 

クウガ!!カメンライド、アルティメット!!

 

火球を放った三体の双頭龍の方を向く。

胸のカードはクウガ、アルティメットフォームになっている。

 

アタックライド、アルティメットタイタンソード!!

 

士はディケイドライバーにカードを入れ、黒い大剣を召喚する。

 

「ハァァァァ!!」

 

跳躍して一体の首を斬り落とす。

そのまま背に乗って斬り刻んだ。

そして隣にクウガ、アルティメットフォームを召喚する。

 

ファイナルアタックライド!!ク、ク、クウガ!!

 

突進して来た一体を同時に殴り飛ばし、体勢を崩した所にアルティメットマイティキックが二発、放たれ爆散する。

 

ファイナルアタックライド!!ク、ク、クウガ!!

 

そして残り一体を超自然発火で燃やしつくす。

ついでに辺りに散らばる血肉も纏めて原子レベルで燃やす。

アルティメットフォームの姿を消すと、ディケイドライバーにカードを入れる。

 

アタックライド、アルティメットペガサスボウガン!!

 

黒いボウガンを召喚すると、遠く離れた双頭龍を貫いていく。

映司を背後から狙う個体を見つけ、それも首を撃ち抜く。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「GEY!?」

 

「士さん、ありがとうございます!!」

 

背後の双頭龍が士の放ったボウガンに首を貫かれたのを確認しながら、メダジャリバーにセルメダルを込める。

三枚入れると、オースキャナーでスキャンする。

 

トリプル!!スキャニングチャージ!!

 

首を貫かれた双頭龍に向け振るう。

空間ごと真っ二つにされた双頭龍は、爆散する。

 

「クソッ!!数が多い。映司!!こいつを使え!!」

 

双頭龍と火球を放ちあっていたアンクが、映司に向け、緑のメダルを投げる。

映司はそれを受け取り、構える。

 

「なるほど。ガタガタ、ガタキリバね」クワガタ!!カマキリ!!バッタ!!ガータ!!ガタガタ!!キリバッ!!ガタキリバッ!!

 

緑のメダルオーズドライバーに入れ、スキャンする。

昆虫系コンボ、ガタキリバコンボへと姿を変える。

 

「ウォォォオォォォォォォォ!!」

 

映司は叫び、双頭龍の群れへと向かっていく。

その後ろではガタキリバの姿が増えていく。

これがガタキリバの能力、ブレンチシェイドである。

50人に分身した映司は双頭龍に跳び掛かっていく。

 

「ハァァァァ!!」

  「デリャ!!」     「トリャ!!」

    「ダァァァ!!」          「タァ!!」

               「セイ!!」

     「ハァァァァ!!」

 

ガタキリバ達は次々と双頭龍へとまとわりついて、カマキリソードでその体を斬り裂いていく。

 

「GEEEYAAAAAAAAAAaaaaa!!」

 

双頭龍はガタキリバ達を振り払ったり、体から血を撒き散らし更なる魔獣を産んだりする。

しかし振り払われようが再びまとわりつき、産み出された魔獣はクワガタヘッドから放たれる雷撃に蹴散らされる。

 

「ダァァァ!!」

 

「GEBARYAAAAAAAAaaaaaa!?」

 

数体のガタキリバが双頭龍の真紅の瞳を抉る。

更には翼をも斬り落とす。

そして一斉にオースキャナーを取り出す。

 

スキャニングチャージ!!

 スキャニングチャージ!!

  スキャニングチャージ!!

   スキャニングチャージ!!

    スキャニングチャージ!!

     スキャニングチャージ!!

 

次々とスキャン音が響く。

ガタキリバ達はほとんど同時に跳び上がると、双頭龍達に蹴りを叩き込んでいく。

 

「「「「「セイヤ!!」」」」」

      「「「セイヤ!!」」」「「「セイヤ!!」」」

「セイヤ!!」「セイヤ!!」「セイヤ!!」「セイヤ!!」「セイヤ!!」

「「「「セイヤ!!」」」」     「セイヤ!!」

「「「「セイヤァァ!!」」」」   「「「「「「セイヤァァァァ!!」」」」」」

「「「「「「「「「「セィヤァァァァァァァァ!!」」」」」」」」」」

 

蹴り抜かれた双頭龍は、次々と爆散していく。

 

「邪魔くさいんだよ!!」

 

一方、怪人態のアンクに投げ飛ばされた双頭龍が、晴人の相手していた双頭龍へと衝突する。

 

 

「うぉ!?危ないな」

 

目の前でいきなり双頭龍がぶつかり吹っ飛んでいって驚く晴人。

 

「ちょっと大人しくしてくれよ」バインド、プリーズ!!

 

鎖によって双頭龍を縛ると左手の指輪をウィザードライバーにかざす。

 

フレイム!!ドラゴン!!ボー、ボー、ボーボーボー!!

 

姿をフレイムドラゴンへと変える。

そして右手の指輪を付け替える。

 

ルパッチマジックタッチゴー!!

コネクト、プリーズ!!

 

魔法陣で空間を繋げ、ソードガンとドラゴタイマーを取り出す。

ドラゴタイマーを右手に付け、操作する。

 

ドラゴタイム!!セットアップ!!スタート!!

 

ウォータードラゴン!!

「ハァ!!」

 

ドラゴタイマーの針が青色の部分を指した時にドラゴタイマーのレバーを押す。

すると青色の魔法陣からウォータードラゴンが姿を現す。

 

リキッド、プリーズ!!

 

ウォータードラゴンは液状化しながら双頭龍を攻撃していく。

 

ハリケーンドラゴン!!

「タァ!!」

 

緑の部分を針が指し、レバーを押す。

緑の魔法陣からハリケーンドラゴンが現れる。

 

チョーイイネ!!スペシャル!!サイコー!!

コピー、プリーズ!!

 

ハリケーンドラゴンは翼を生やし、二本に増やしたソードガンで双頭龍を斬り裂く。

 

ランドドラゴン!!

「俺もいるよ」

 

黄色の部分を針が差し、レバーを押す。

黄色の魔法陣からランドドラゴンが現れる。

 

エキサイト、プリーズ!!

 

エキサイトの魔法で筋肉ムキムキになって、双頭龍を殴り飛ばす。

筋肉ムキムキ状態から戻ると更に魔法を発動する。

 

チョーイイネ!!グラビティ!!サイコー!!

 

重力操作をして、双頭龍を地面に押さえつける。

しかし双頭龍は立ち上がろうと体を持ち上げかける。

 

キャモナスラッシュシェイクハンズ!!ランド!!スラッシュストライク!!ダン、デン、ドン、ズドゴーン!!

 キャモナスラッシュシェイクハンズ!!ランド!!スラッシュストライク!!ダン、デン、ドン、ズドゴーン!!

 

二本のソードガンに左手の指輪をかざしてスラッシュストライクを発動し、双頭龍の足を斬り落とす。

 

「GEYAAAAAAAAAaaaaaa!!」

 

「ハァァァァ!!」チョーイイネ!!スペシャル!!サイコー!!

 

振り向き様に龍の爪から斬撃波を飛ばし、双頭龍を完全に斬り裂く。

斬り裂かれた双頭龍は爆散する。

 

チョーイイネ!!サンダー!!サイコー!!

 

ハリケーンドラゴンは緑の魔法陣から雷を放って、双頭龍を怯ませる。

 

「ダァァァァァ!!」チョーイイネ!!キックストライク!!サイコー!!

 

「GEEEEYAAAAAAAaaaaaaa!!」

 

雷と嵐を纏った蹴りが双頭龍を貫く。

双頭龍は雷に焼かれながら爆散した。

 

チョーイイネ!!ブリザード!!サイコー!!

 

「GEEEEEEEYAAAAAAAAAAaaaaaaaaaa!!」

 

火炎と冷気がぶつかり合う。

そこへ、

 

キャモナシューティングシェイクハンズ!!ウォーター!!シューティングストライク!!ザバザババシャーン!!

  キャモナシューティングシェイクハンズ!!ウォーター!!シューティングストライク!!ザバザババシャーン!!

 

水属性のシューティングストライクを二発押し込む。

冷気とシューティングストライクが双頭龍に押し込まれ、双頭龍は凍結する。

 

チョーイイネ!!スペシャル!!サイコー!!

 

ドラゴンテイルを生やし、凍結した双頭龍に向けて振るう。

抵抗する事も出来ずに双頭龍は粉々に砕け散る。

 

ファイナルタイム!!

 

「「GEEEEYAAAAAAAAaaaaaaaaa!!」」

 

鎖に縛られていた双頭龍二体が抜け出て来るが、そこへ向け、

ランドドラゴンが重力で押さえつけ、

ハリケーンドラゴンが雷撃を放ち、

ウォータードラゴンが冷気を放ち、

フレイムドラゴンがドラゴンスカルから熱線を放つ。

四人のドラゴンからの一斉攻撃に二体の双頭龍は耐え切れず、爆散する。

 

オールドラゴン!!プリーズ!!

 

右手のドラゴタイマーをウィザードライバーにかざす。

ウォータードラゴンが青色の龍に、

ハリケーンドラゴンが緑色の龍に、

ランドドラゴンが黄色の龍に、

姿を変え、フレイムドラゴンに集まる。

そして、フレイムドラゴンにドラゴンスカル、ドラゴンウィング、ドラゴンテイル、ドラゴンクローが現れる。

これがウィザード、オールドラゴンである。

 

「フィナーレだ!!」

 

晴人は目の前にいた二体の双頭龍を翼から放つ風で怯ませ、爪で斬り裂き、尾で弾き飛ばす。

上空に弾き飛ばすと、自身は地に足を付ける。

地面に巨大な魔法陣が現れる。

 

「ハァァァァァァァァァァァァ!!」

 

「GEEEEEEYAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaa!!」

 

上空の二体へ向け、蹴りを放つ。

魔法陣から赤、青、緑、黄のドラゴン型のエネルギー体が現れ、蹴りと合わせて双頭龍を貫いていく。

最後に蹴り抜かれた双頭龍は盛大な悲鳴を上げ、花火の如く爆散した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

霧崎は終始防戦一方だった。

二体の双頭龍を相手にしているのだが、決め手が全くなかった。

攻撃をくらう事はない。

だが、殺し切る程の火力もない。

 

「こりゃあ、じり貧だな」

 

冷や汗をたらし、呟くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ!!

 

映司

タカ、トラ、バッタ

クワガタ、カマキリ、バッタ

ライオン、トラ、チーター

サイ、ゴリラ、ゾウ

シャチ、ウナギ、タコ

コブラ、カメ、ワニ

スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 

アンク

タカ×3、クジャク×3、コンドル×3

クワガタ、チーター、ゴリラ

(その他数枚)

 

 





ライダーvs双頭龍でした!!
とはいえ、これで終わりというわけでもないですが。

士達も結構出し惜しみなく全力です。
まだ奥の手は残していますが。

そういや春には平成15ライダーvs昭和15ライダーがやるようですね。
スーパー戦隊がおまけ扱いなのがあれですが。
どの道、またシャドームーンがボコられるんでしょうね。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。



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電気と正義の戦士と三色の魔法使い


活動報告にて短編のアンケート実施中




 

双頭龍の爪が振るわれ、霧崎が軌道をそらす。

ズレた爪は地面を深く抉る。

 

「GEEEYAAAAAAAAaaaaaaaa!!」

 

二体の双頭龍はこの進展の無い戦いに苛立っているようだった。

霧崎としても体は無傷だが、身体的にも、精神的にも疲労している。

いくら死の脅威を祓えても疲労だけはどうにもならない。

 

(引き受けたはいいが………倒しようがないな…………)

 

霧崎は能力からして防御特化の極みである。

カウンターの手は先程から使ってはいるのだが、それも敵が自身を殺せるだけの火力を有して無ければ意味がない。

周囲は双頭龍の血から産まれた化け物が溢れていた。

今のところは霧崎を狙って囲んでいるが、何時黒ウサギや避難民の方に行くか分かったものではない。

その時、抑え切れる自信は霧崎には無かった。

自身をそこまで過剰評価はしていない。

そこへ、

 

「どうやら此処にも士はいないみたいだね」

 

そんな呟きと共に海東大樹が現れる。

海東は現れるなりに、霧崎の周囲の化け物を撃ち抜いた。

 

「お困りのようだね。助太刀しようか?」

 

「助太刀してくれるなら助かるが、その前にあんたは何者だ?」

 

「僕かい?僕は仮面ライダーさ」カメンライド、ディ、ディ、ディエンド!!

 

言いながら海東はディエンドライバーにカードを入れ、発砲する。

残像現れ、海東に重なって行き、姿を仮面ライダーディエンドに変える。

 

「目的は別にあるんだけど、彼は此処を狙いそうな気がするからね」

 

チラリ、とウィラを見て言う。

その間も化け物に発砲している。

 

「それに士も待ってれば来そうだからね」アタックライド、ブラスト!!

 

上空にエネルギーの塊を放つ。

エネルギーの塊は拡散し、化け物に振り注ぐ。

 

「何だかよく分からないが、とりあえずは味方って事だな」

 

「そういうこと」

 

霧崎と海東は背中合わせになりながら双頭龍の方を向く。

 

「それにしても“悪”ね」

 

何処かで拾った“悪”と書かれた“契約書類”を片手に持ちながら呟く。

そして一枚カードを取り出し、ディエンドライバーに入れ、引き金を引く。

 

「“悪”にはこれだね」カメンライド、ス、ス、ストロンガー!!

 

幾つもの残像が現れ、重なり実体となる。

そして実体は姿を現す。

 

「天が呼ぶ!!

 地が呼ぶ!!

 人が呼ぶ!!

 悪を倒せと、俺を呼ぶ!!

 聞け、悪人共!!俺は正義の戦士!!

 仮面ライダーストロンガー!!」

 

召喚された仮面ライダーストロンガーは高らかに叫ぶ。

 

「じゃ、あっちは任せたよ」

 

ストロンガーに一体の双頭龍を任せ、霧崎と海東はもう一体に向かっていく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「エレクトロファイヤー!!」

 

地面から高圧プラス電流を流し、双頭龍の血から産まれた化け物を吹き飛ばしていく。

 

「エレクトロウォーターフォール!!」

 

地面から電気が滝の様に吹き上げ、双頭龍を攻撃する。

 

「GEEEEEYAAAAAAAAAaaaaaaaa!!」

 

お返しとばかりに火球を放ってくる。

自分を中心に電磁波を放つ。

 

「ストロンガーバーリア!!」

 

火球は電磁波の防御膜に触れた途端に霧散する。

 

「トォ!!」

 

ストロンガーは双頭龍へと突進して行き、周囲に渦状の電気エネルギーを張る。

 

「スクリュー電カッター!!」

 

「GEEEYAAAAaaaa!?」

 

すれ違い様に電気によって双頭龍の翼が斬り落とされる。

更に雷雲を呼び寄せ、

 

「エレクトロサンダー!!」

 

双頭龍へと向け、落雷を落とす。

雷をくらった双頭龍は落下していく。

 

「電パンチ!!」

 

落下してくる双頭龍を一万ボルトを纏った右拳で殴り上げる。

そして左手で双頭龍を掴み、

 

「ストロンガー超放電!!」

 

全身から電気を発し、双頭龍へと電気を流し込む。

 

「GEEEEEYAAAAAAAaaaaaaaaaaaaa!!」

 

激しい悲鳴を上げる双頭龍を投げ飛ばす。

地面に叩き付けられた双頭龍は起き上がろうとするが、痺れて動きが鈍い。

向かってくるストロンガーに血から産まれし化け物を仕向けるが、片っ端から蹴散らされる。

 

「これでトドメだ!!トォ!!」

 

前方宙返りをし、電気の力を体に集中させる。

その際、一瞬体が赤くなる。

力を集中させると、双頭龍に向け、蹴りを放つ。

 

「ストロンガー電キック!!」

 

電気を纏った蹴りが直撃した双頭龍は蹴り抜かれ、ストロンガーが地面に着地すると同時に爆散した。

 

「フッ……」

 

ストロンガーは役目を終えた様に消えるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方の海東と霧崎。

 

「これはどうだい?」

カメンライド、メイジ!!メイジ!!メイジ!!

 

海東がディエンドライバーに三枚のカードを入れ、発砲すると目の前に黄、青、緑の仮面ライダーメイジが現れる。

 

「何なんだ、その力?」

 

「ただ、ライダーを召喚するだけさ」

 

「GEEEEEYYYYAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaa!!」

 

敵が増えようと、双頭龍はお構い無しに突っ込んでくる。

そこへ、霧崎が前に出て、双頭龍の突進の軌道をズラす。

 

「便利だね、君の能力も」

 

地面を転がる双頭龍に向け、海東とメイジ三人から銃撃が放たれる。

 

「GEEEEYYYAAAAAAAAaaaaa!!」

 

大量の火球を放ってくるが、

 

バリア、ナウ!!

バリア、ナウ!!

バリア、ナウ!!

アタックライド、バリア!!

 

各々別の方法でそれを防ぐ。

霧崎は死の脅威を祓い、

海東は銃口から放ったエネルギーの塊が防壁となり、

メイジ三人は目の前に魔法陣を展開させる。

 

ジャイアント、ナウ!!

 

青いメイジが目の前に魔法陣を出し、大型の爪が装備された右手を潜らせ、巨大化させる。

そのまま、双頭龍を斬り裂く。

 

テレポート、ナウ!!

エクスプロージョン、ナウ!!

 

テレポートの魔法で黄のメイジが双頭龍の背に乗り、その背を爆発させる。

 

イエス!!スペシャル!!アンダースタンド?

 

緑のメイジは尻尾を巨大化させ、落下してくる双頭龍を横殴りにする。

 

「さて、そろそろ終いにしよう」アタックライド、ブラスト!!

 

「そうだな!!ヨヨ!!」

 

(分カッテイル)

 

海東が上空にエネルギーの塊を放つ。

それは拡散し、降り注ぐと思われたがその前に霧崎が【弱者のパラダイム】を発動させる。

ブラストの死の脅威を塊とし、双頭龍の懐に潜り込んでぶつける。

すると拡散した弾は軌道が修正された様に全て双頭龍を撃ち抜く。

 

チェイン、ナウ!!

 

緑のメイジがチェインの魔法で双頭龍を縛り、

 

イエス!!グラビティ!!アンダースタンド?

 

黄のメイジが重力で叩き付け、

 

イエス!!ブリザード!!アンダースタンド?

 

青いメイジがブリザードの魔法で凍結させ、双頭龍と地面を縫い付ける。

 

「終わりだ」

アタックライド、クロスアタック!!

ファイナルアタックライド!!ディ、ディ、ディエンド!!

 

「GEEEEEEEYYYYYYYYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

 

逃れる様に暴れる双頭龍。

しかし逃げるにはもう遅い。

海東が銃口を双頭龍に向けると、カードによる道筋が出来る。

 

エクスプロージョン、ナウ!!

イエス!!スペシャル!!アンダースタンド?

エクスプロージョン、ナウ!!

 

三人のメイジが爆撃を双頭龍に放ち、トドメを刺すように海東は引き金を引く。

放たれた弾丸は展開されたカードの道筋をエネルギーに変換して進んで行き、双頭龍を貫いた。

 

(これで終わりではないだろうけどね)

 

背後で双頭龍が爆散するのに目を向けず、海東は心の中で呟くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ!!

 

映司

タカ、トラ、バッタ

クワガタ、カマキリ、バッタ

ライオン、トラ、チーター

サイ、ゴリラ、ゾウ

シャチ、ウナギ、タコ

コブラ、カメ、ワニ

スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 

アンク

タカ×3、クジャク×3、コンドル×3

クワガタ、チーター、ゴリラ

(その他数枚)

 

 

カメンライド

クウガ、アギト、龍騎、ファイズ、ブレイド、響鬼、カブト、電王、キバ、コンプリート、???

空白

 

 

スタイル

フレイム、ウォーター、ハリケーン、ランド

フレイムドラゴン、ウォータードラゴン、ハリケーンドラゴン、ランドドラゴン

ドラゴタイマー

インフィニティー

 

 






(霧崎の)双頭龍戦終了!!

だからと言って現状的に何かが解決したわけでもないですが。

海東乱入!!でしたが、海東は海東で思惑あって加勢してます。
ストロンガーはカメンライド、ブラックのノリです。


それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。



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変態の脅迫と迷惑な軍勢と“答え”

活動報告にて短編関連のアンケート実施中
締め切りは12月27日




「これは、これは面白い顔触れだな。コソ泥に、私とウィラの恋路を邪魔した男か!!」

 

その声を聞き、霧崎と海東が顔を上げると、熱風と冷風が放出されてマクスウェルが姿を現す。

海東と霧崎は睨みつつ、構える。

 

「何しに来たんだい?」

 

「また、ウィラを狙いに来たのか?」

 

「少し違うな。私は戦いに来たわけでもないし、狙っているわけではない!!この窮地にウィラを助けに来ただけだよ!!」

 

「キモイ!!」

 

「嬉しそうで何よりだ!!」

 

「これの何処が嬉しそうに見えるんだ?」

 

ウィラは少々震えながら、霧崎の後ろに隠れていた。

その隣で海東は何かを思い付いた様であった。

表情は見えない。

彼らを守る様に海東が召喚した三人のメイジが前に出る。

霧崎はマクスウェルの瞳に先程以上の狂気が含まれているのを感じていた。

 

「さて、ウィラ。私は君がどうやったら素直に私のもとに来られるか考えてみたんだよ」

 

「キモイ!!」

 

「今までは来れないだけの理由があった。だから逆に考えたんだ」

 

スッと、右腕を脇の高さにまで上げる。

それと同時に三人のメイジが動きだす。

 

チェイン、ナウ!!

イエス!!グラビティ!!アンダースタンド?

コネクト、ナウ!!

 

青いメイジが鎖で縛り、黄のメイジが重力で上から押さえつけ、緑のメイジが取り出したソードガンで撃ち抜く。

霧崎はウィラを守る様に構え、海東はマクスウェルにディエンドライバーの銃口を向ける。

_____しかし、マクスウェルは止まらない。

 

「要するに_____君が私のもとに“来ざる得ない”、そんな状況を作ればよかったんだ!!」

 

パチン、と指を弾く。

すると、彼方に火柱が立ち上がった。

この街道からそう遠くはない。

丁度街道を抜けた辺りの場所だろう。

_____つまり、マクスウェルは“境界門”を壊したのだ。

 

「ハハ、さてはて隣の“境界門”までは……………何万キロあったかな?」

 

高笑いを上げるマクスウェル。

 

「では、脅迫だウィラ。まずは、その男から離れ、そして私の花嫁になるというのなら、私の力で避難民を助けてもいい」

 

「っ………!!」

 

奥歯を噛みしめるウィラ。

 

「ハハハ!!確かにこれは笑えるね」

 

ただ、海東大樹だけはこの状況を笑っていた。

嘲笑っていた。

 

「悪いけどマクスウェル。君の脅迫には何の意味もない」

 

「何?」

 

「だって、僕と士が入れば“境界門”なんて必要ないのだから!!」

 

そう、海東と士が持つ能力。

世界を渡る力は、箱庭においては“境界門”と同等の力を発揮する。

この場において、マクスウェルの取った行動は全く持って意味がないのだ。

だからこそ、嘲笑う。

 

「さて、君が狙うお宝は彼女だね?君には勿体無いお宝だ。だから渡すわけにはいかないよ」

 

「貴様も……私とウィラの恋路を邪魔するか、コソ泥ごときが!!」

 

「別に邪魔をするわけじゃないさ。僕は僕の道を進む。それだけさ。さて、どうする?戦うかい?撤退するかい?君の霊格、少し傷が付いてる様にも見えるけど?」

 

マクスウェルの霊格は確かに傷が付いていた。

死の脅威による実害そのものは何とかしのいだが、多量の死の脅威を受けた霊格は傷を負っていた。

だからこそ、傷の治りが遅い。

現に先程受けた銃撃の傷が塞がりきってない。

 

「私とウィラの恋路を邪魔する者は消すだけだ!!そして、貴様はいい加減、ウィラから離れろ!!」

 

「うるせぇよ、ストーカーが!!」

 

霧崎の首を薙ぐ様に空間移動をしたマクスウェル。

それも霧崎にはしっかり死の脅威として見えており、避けてカウンターの蹴りを入れる。

そこへ、海東の銃撃が入る。

しかし、それは空間移動で回避される。

 

「さあ、決着を付けるとしようか」

 

霧崎と海東が並び立ち、マクスウェルに言い放つ。

海東としては、マクスウェル達に持っていかれたお宝を狙ってという理由もあるが、決着をつけたいのも本音であった。

霧崎も決着をつける為、そしてラッテン、黒ウサギ、ウィラ、皆を守る為に構える。

例え、一時的な利害の一致であろうと海東大樹、仮面ライダーディエンドと霧崎カブトは並び立ち、マクスウェルを迎え撃つ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ハァァァァ!!」

 

「セイヤァァ!!」

 

「タァァァァ!!」

 

士、映司、晴人が爆炎の中から出てくる。

姿はディケイド、タトバ、フレイムスタイルである。

 

「どうやら、大方狩り尽くした様だな。一匹を除きな!!」

 

背後からアンクが炎球を放つ。

炎球は引こうとしていた双頭龍を正確にとらえる。

彼らは目の前にいた双頭龍、そして次々と現れる分も狩り尽くしていた。

本体が生きている限り、出てきはするだろうがこの場で道を塞ぐ者はいなくなった。

いち早く十六夜の元へと向かう為に四人が残りの一匹を片付けようとした瞬間、

 

 

「やぁ、君がアジ=ダカーハの分身だね。僕と一つになろうよ!!」

 

 

突如として緑色の半個体が双頭龍へと襲い掛かった。

そして、喰らっていく。

双頭龍を包み喰らっていく。

 

「GEEEEEEYYYYYYAAAAAAAAAAaaaaaaaaaa!!」

 

双頭龍の悲痛な悲鳴を聞きながら三人は唖然としていた。

 

「あれは………何だ?」

 

「少なくともメダルを使った類いではないだろうな」

 

「ファントムでもない」

 

「あぁお前らの言うそれらとは確かに違う。あれは………ネオ生命体だ」

 

士が呟いた直後に双頭龍が完全に包み込まれる。

そして形を変えていく。

ネオ生命体自身の力と以前喰らった“虚栄”の能力でその姿を変える。

 

「ハハハハハ!!力が溢れるよ!!これが神霊の力かい!!これでもっと楽しく遊べるよ!!」

 

ネオ生命体が大声で笑いを上げると姿は完全に変わっていた。

その姿はかつてスーパーショッカーが作り上げた要塞、クライス要塞であった。

 

「あ、君達いたんだ。せっかくだから僕と遊ぼうよ!!」

 

「な!?」

 

ネオ生命体は士達を見つけるや否や、あらゆる火器から砲撃する。

 

「グッ……ガァ!?」

 

四人は防ぎ切る事が出来ず、吹き飛ばされる。

そして、ダメージで変身が解ける。

何とか士達が立ち上がると、丘の上に巨大な銀色のオーロラが現れる。

 

「フハハハハハハハハハハ!!ネオ生命体、よくやったのだ!!これで第一目標は確保した!!出来れば本体も確保したい所だが、まずは仮面ライダーの排除が優先なのだ!!」

 

先頭で現れた、アポロガイストが人間態で叫ぶ。

そして士達へと視線を向ける。

士もまた、アポロガイストを睨む。

 

「またお前か、アポロガイスト!!」

 

「その通りなのだ。貴様らを排除させてもらう!!」

 

そのアポロガイストの背後から大量の人影が現れる。

戦闘員、マスカレイド、屑ヤミー、ダスタード、グールだけではない。

ショッカーグリード

ゲルショッカーグリード

デストロングリード

ゴッドグリード

ガランダーグリード

デルザーグリード

等のショッカー製グリードから、

グランダイン、スカイダインからなる宇宙鉄人キョーダイン、

仮面ライダーレイ、

そしてマミーレジェンドルガ、メデューサレジェンドルガ、ガーゴイルレジェンドルガ、マンドレイクレジェンドルガ、アントライオンレジェンドルガなどからなるレジェンドルガ族、

コックローチ、アイズ、ホッパーなどのドーパント、

ウニアルマジロヤミー、オウムヤミー、シャムネコヤミー、カマキリヤミー等のヤミー、

ユニコーン、ピクシス、ドラゴン、ヘラクレス等のゾディアーツ、

アルゴス、リザードマン、シルフィ達ファントム、

そしてカーバンクルの集団が次々と現れる。

更に小さな銀色のオーロラが現れたと思うと、

 

「………………」

 

「お前ら………………糞尿臭ぇ!!」

 

仮面ライダーリュウガサバイブ、仮面ライダー王蛇サバイブが現れる。

その強敵達が士達の前に立ち塞がる。

 

「ずいぶんと数を揃えたもんだな」

 

「この数を相手に四人では敵うまい!!我ら大ショッカーが貴様らを討ち取り、今日を貴様らの命日にしてやるのだ!!フハハハハハハハハハハ!!」

 

高らかに勝ち誇る様に笑い声を上げるアポロガイスト。

しかし、士は不適に笑う。

 

「ふっ……」

 

「何だ、何が可笑しいというのだ、貴様は!!この絶望的な状況で何故そんな表情をしていられる!?」

 

「絶望的?確かにそうだな。でも俺達は最後の希望だ。こんな状況くらいで絶望するわけがないだろ?」

 

「そうだ。俺達、仮面ライダーは例え孤独でも、命ある限り戦う!!」

 

晴人と士が睨みながら言う。

 

「それに仮面ライダーは俺達だけじゃない」

 

「援軍など、この箱庭に来るわけがないのだ!!」

 

「いいや、繋がるさ。手を伸ばし、人と人で繋いでいけば腕はどこまでも届く!!例え、異世界でも」

 

「相変わらずだな…………お前は」

 

アポロガイストの言葉を否定する様に言う映司。

その背後ではアンクが呆れた様に呟く。

しかし表情は笑っている。

 

「そうだ。仮面ライダーは人々の思いがある限り、世界を超え、お前らを倒すんだ!!」

 

「戯れ言をぉぉぉぉぉ!!」

 

アポロガイストが激昂し、戦闘が開始されようとした時、士のライドブッカーから空白のカード二枚飛び出す。

そして映司と晴人の手元に収まる。

 

「何だ?」

 

二人が首を傾げると、カードに各々別の仮面ライダーの顔が浮かび上がる。

そして士達の背後に二つの銀色のオーロラが現れる。

 

「人々が助けを求めれば、俺達は駆け付ける。確かにそうだが、まさか異世界に来る事になるとはな…………人生分からないもんだぜ」

 

「ダチのピンチには何処にだって駆け付ける!!それが俺だ!!」

 

銀色のオーロラから現れたのは、帽子を被った青年と学ランでリーゼントの少年だった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

そして、十六夜は欲しかった答えを得て、探し物を見付けていた。

三頭龍に渇破され、その覚悟を見せられた十六夜は、今にも燃え尽きようとしている命を全てを拳に集め、十六夜は嬉々として走り出した。

 

 

「お前が…………“お前が魔王か”、アジ=ダカーハ____!!」

 

 

策はない。

しかし恐れもない。

あるのははち切れんばかりの胸の高鳴りだけ。

神々の箱庭を徒手空拳で駆け抜けた少年は、己の全身全霊を握りしめ、最後の巨峰へと走り出した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ!!

 

 

映司

タカ、トラ、バッタ

クワガタ、カマキリ、バッタ

ライオン、トラ、チーター

サイ、ゴリラ、ゾウ

シャチ、ウナギ、タコ

コブラ、カメ、ワニ

スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 

アンク

タカ×3、クジャク×3、コンドル×3

クワガタ、チーター、ゴリラ

(その他数枚)

 

 

カメンライド

クウガ、アギト、龍騎、ファイズ、ブレイド、響鬼、カブト、電王、キバ、コンプリート、???

空白

 

 

スタイル

フレイムドラゴン、ウォータードラゴン、ハリケーンドラゴン、ランドドラゴン

ドラゴタイマー

インフィニティー

 

 




八巻分終了!!
次回からはアンケートの結果の短編です!!
本編の続きは次巻が発売したらです!!

アポロガイストが大軍引き連れ参戦!!
ネオ生命体がアジ分身を取り込みクライス要塞へと変貌。
ちなみに“この”ネオ生命体はオーガ(ファントム)の如く喰らった相手の能力を使えます。
大軍の中のグリード系とサバイブ二人はHEROSAGAからです。
王蛇の人格は小説龍騎の浅倉です。


それでは質問などがあればきいてください。
感想待ってます。


晴人はMOVIE大合戦後に決定しました。


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黄金と黒アゲハとウサギ小屋
黄金盤とMの欲望と支配の鱗粉


今回からは九巻収録の短編、黄金盤です。
時系列的には二巻と三巻の間なので士と晴人はいません。

そう言えば、春映画で士、翔太郎、乾巧、草加が本人確定しましたね。
士と巧はソースはツイッターです。




貯水池前の憩いの小屋。

そこに霧崎とラッテンはいた。

ラッテンは一応メイドであるのだが、あくまで表向きはなのでサボりもある程度許容される。

 

「暇ね~」

 

「そうだな」

 

今日は快晴、春風、水流の音とかなり気持ちのいい環境である。

ラッテンが欠伸をする。

 

「ん~この気持ちいい中だと眠くなるわね」

 

「確かにな」

 

答える霧崎も欠伸をする。

彼は彼で本を読んでたりする。

ラッテンはつまらなさそうに口を尖らせると、何かを思い付き、ニヤリとする。

思い付いたら即実行の如く、行動を開始する。

とはいえ、行動とは簡単に霧崎に持たれ掛かって寝る体勢に入っただけだが。

 

「ちょっ、何だよ!?」

 

霧崎が頬を少々赤くして動揺する。

こういう事にはなれていない。

 

「眠いのよ。少しくらいは持たれ掛かっていいでしょ?」

 

なら、壁に持たれ掛かれよ、と言い掛けてやめる。

諦めたように息を吐く。

 

「分かったよ。好きにしてくれ」

 

「ありがと♪」

 

暖かな日差しの中でラッテンは霧崎に持たれ掛かりながら眠りについた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

そして二時間後。

 

「起きねぇな~」

 

ラッテンに持たれ掛かられながら霧崎は呟く。

本は読み終わった。

かと言って起こすのも躊躇われる。

もう自分も寝てやろうかと、思っていると十六夜が歩いてきた。

 

「何をやってんだ?」

 

「見た通り」

 

適当に答える霧崎。

それ以外に答え様が無い。

十六夜はと言うと苦笑してる様な、ニヤニヤしている様な、判断のつかない表情をしている。

そこへ、

 

「た、大変なのです!!大変なのですよーッ!!」

 

黒ウサギが猛ダッシュでやってきた。

とは言え五月蝿いので何かを投げ付けようとしたが、その前に。

 

「………五月蝿いのよ、ウサ耳を斬り落とされたいの?」

 

ラッテンが目覚めて、ハーメルケインを黒ウサギのウサ耳に当てていた。

黒ウサギは涙目で震えていた。

その手には黄金の板があった。

 

「その金塊、どうしたんだ?本物に見えるが」

 

「本物ですよ………それより映司さんはどうしました?」

 

「白夜叉に呼び出されていたぞ。しばらく帰って来ないんじゃないか?」

 

「そうですか……それよりそろそろウサ耳から刃をどけてくれませんか?」

 

「そうね」

 

ラッテンは寝足りない様に欠伸をしながらハーメルケインをしまう。

黒ウサギの持ってきた黄金盤はどうやら“契約書類”らしい。

その内容は、

 

{ ___ギフトゲーム名 “Raimundus Lullus”___

 

 参加資格B:善なる者。

 

 敵対者:偉大なる者。

     継続する者。

     力ある者。

     知恵ある者。

     遺志ある者。

     徳ある者。

 

 敗北条件:“契約書類”の紛失は参加資格の剥奪に相当。

 勝利条件:全ての“ルルスの円盤”を結合し、真理ならざる栄光を手にせよ。

 

 ゲーム補足:全ての参加者の準備が整い次第ゲーム開始。

       ゲーム終了は全ての参加者が敗北した場合。

 

 宣誓 上記を尊重し誇りと御旗の下、“サウザンドアイズ”はギフトゲームを開催します。

           “サウザンドアイズ”印}

 

何やら疑わしく感じるが、金が手に入るらしい。

復興の為にも頑張ろうと、十六夜と霧崎が立ち上がった時、彼らは襲撃を受けた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「それで今日は何の用ですか?白夜叉さん」

 

「何、簡単な依頼じゃ」

 

映司は白夜叉に呼び出され、支店に来ていた。

 

「実は最近、化け物を見かけるとの報告があっての今開催しているギフトゲームに現れる可能性があっての。おんしにはそいつらの撃退を頼みたいのじゃ」

 

「何で俺に?」

 

依頼を受けるのはいいが一応理由は聞いておきたい。

 

「どうやら、その化け物はおんしの近くに現れる化け物に酷似しているらしくてな」

 

「そういう事ですか。分かりました」

 

大体事情は察した。

ようは怪人の目撃情報があり、一番知っているであろう者に撃退を任せたというわけである。

映司は依頼を受け、目撃情報のあった場所に向かうのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「何だ、こいつら?」

 

十六夜達を襲撃したのは金色の化け物達だった。

 

「黄金盤を寄越せ!!」

 

「誰が渡すか!!」

 

化け物達はコイン状のエネルギー弾を放って来るが十六夜が軽く腕を振っただけで砕ける。

面倒になった十六夜は足に力を込め跳躍する。

一気に距離を縮め、拳を叩き込む。

 

「ガバァ!?」

 

拳を受けた化け物は気絶し、姿が獣人になる。

そして、その獣人の首からメモリの様な物が飛び出ると、パリン、という音と共に砕け散った。

残りも同じ様な感じで片付けると、獣人達が持っていた黄金盤を奪う。

そう、彼らは“ノーネーム”の黄金盤を奪いに来たのだった。

十六夜奪った黄金盤の文面を見る。

 

{ ___ギフトゲーム名 “Raimundus Lullus”

 

 参加資格D:継続する者。

 

 敵対者:善なる者。

     偉大なる者。

     力ある者。

     知恵ある者。

     意志ある者。

     徳ある者。}

 

以下の文章は黒ウサギの物と同じだった。

十六夜が文面を訝しかむと、黄金盤は鉄粉にまで分解される。

 

「な!?」

 

黄金は輝きを無くし、春風に乗って姿を消した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ダブル!!スキャニングチャージ!!

「セイヤァァァァ!!」

 

メダジャリバーに二枚セルメダルを込めて、化け物達を斬る。

映司は現在、偶然出会った化け物達と交戦していた。

倒された化け物は体内からメモリを排出し、元の姿に戻る。

 

「やっぱりドーパントか」

 

映司は変身を解いて砕けた破片を手に取る。

おそらくマネーメモリの破片だろう。

 

「でも、何でガイアメモリが広まっているんだ?」

 

首を傾げながら呟く。

確かに不可解である。

今開かれているゲームからしたらマネーメモリは確かに合ってはいるのだが。

入手経路が分からない。

映司はとりあえず所持者から話を聞く事にするのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方の十六夜達は襲撃者達からゲームについて話を聞いて、各々で黄金盤を集めるという事になった。

ついでに一番多く集めた人に一日黒ウサギが服従という事にもなった。

更にレティシアまで話に乗ってきた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「さて、ここらへんかな?」

 

映司がマネーメモリを所持していた人達から話を聞くと、どうやらゲームに勝てる力が手に入ると書かれた手紙と共に降ってきたらしい。

その時に鱗粉が舞っていたという事くらいしか分からなかったがもう一つ情報が入った。

ある場所で蝶の化け物が金をばら蒔いてるらしいという話を。

ちょうどそこに来ている所であった。

 

「キャーハハハハハ!!受け取りなさい!!力と金が手に入るわよ!!」

 

覗いて見ると五体くらいのクロアゲハヤミーが金と一緒にマネーメモリをばら蒔いていた。

集まっている人々はクロアゲハヤミーの鱗粉にやられたのか狂った様な熱狂に包まれている。

 

「ヤミーまでいるなんて………でも何が目的でこんな事をしているんだ?」

 

中を覗きながら考える。

ヤミーには宿主がいるはずだ。

しかし、この状況では何の欲望を叶えようとしているかが全く分からない。

その時、

 

「そこに隠れている奴、出てきなさい!!」

 

クロアゲハヤミーが映司に気付き、エネルギー弾を放ってくる。

慌てて物陰から出て、それを避ける。

 

「さあ、力を試す時よ」

 

「あぁ……あぁ……」マネー!!

マネー!!  マネー!!マネー!!マネー!!

 

人々は焦点の定まっていない目でメモリを体に挿入し、姿をマネードーパントに変える。

 

「こうなったら仕方ないか!!」

 

映司はオーズドライバーを腰に装着するのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

某所。

 

「オーズが乱入してきたか。だが、問題はあるまい。改造マネーメモリで生命力を集め、クロアゲハヤミーでセルメダルを回収する計画は順調に進んでいるのだから。しかし、祭りとはいえ派手に動き過ぎたな」

 

声の主は状況を確かめ、反省点を探す様に呟くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

映司が怪人の群れに遭遇し、十六夜がフェイス・レスと戦っている時、霧崎、黒ウサギ、ラッテン、レティシアは一緒に歩いていた。

 

「まぁ、元気出せって」

 

「うぅ……あれでどう元気を出せといいますか」

 

「まぁまぁ、たぶん黒ウサギにメイド服は似合うと思うわよ?」

 

「そうだな。愛らしく映えるに違い無い」

 

励ますような、望んでいる様な事を黒ウサギに言いながら四人は街を散策する。

今はゲームの謎解き中である。

先程、アーシャ達のリトルゲームの内容を見て怪訝に思って一度考える事にしたのだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「変身!!」サイ!!ゴリラ!!ゾウ!!サゴーゾ!!サゴーゾ!!

 

映司はサイの頭、ゴリラの胴、ゾウの足を持つコンボ、サゴーゾコンボへと姿を変えて怪人の群れへと突っ込んで行く。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ!!

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 




黄金盤前編でした!!

映司だけ別行動になりました。
vsクロアゲハヤミー&マネードーパントです。
改造マネーメモリは使用者の生命力がクロアゲハヤミーに吸いとられていく仕掛けです。
使ってる本人に自覚は無し。
クロアゲハヤミーに関しては鱗粉にラッテンの支配に似た効果が追加しました。

それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。



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Mの崩壊とウサギ小屋と黄金の行方

 

「「「GEEAAAAAAAAA!!」」」

 

「ダァァ!!」

 

飛び掛かってくるマネードーパント達を映司は次々と殴り飛ばしていく。

正面から来る者を頭突きで怯ませ、回し蹴りで数体纏めて蹴り飛ばす。

そして纏めて固まっている所に向けて両腕のゴリバゴーンを発射する。

まともに受けた集団は爆散し、元の姿に戻り、メモリを排出する。

排出されたメモリはパリン、と音を立てて砕ける。

コイン状のエネルギー弾を放ってくるが、威力は低くサゴーゾコンボはビクともしない。

エネルギー弾に構わず進んで行き、地面に叩き付け、薙ぎ倒す。

 

「おのれ!!」

 

数体のクロアゲハヤミーが上空からエネルギー弾を放つ。

直撃するが少しのけぞる程である。

ゴリバゴーンを放つが俊敏性ではクロアゲハヤミーが勝り、上空を自在に飛ぶクロアゲハヤミーを捉えられない。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方の霧崎。

謎解きは既に終わっていた。

真の参加者は露店商であり、参加者は舞台装置であり、金を使わせるのが目的。

最終的なゲームの勝者は最も売り上げを出したコミュニティが選ばれる。

商品はおそらく商売の権益だと思われる。

なら、金塊を全て頂こうという話になったのだが、そこらへんについては霧崎は全く関与していない。

ラッテン達に丸投げしてきた。

正しく言うならラッテンがその為の策を思い付いたのだが、霧崎は必要無い所か邪魔だから追い出されたという感じではあるが。

 

「さ~て、どうするかな……」

 

霧崎は露店で買った飲み物を少しずつ飲みながらフラフラと歩いていた。

特に目的は無い。

映司を探そうかと、最初は思っていたが邪魔になるだけだろうと思い止めた。

すると、何処かで騒ぎが起きてる事に気付く。

そして、“契約書類”の敵対者の欄に力ある者があるのを思い出す。

 

「まさか十六夜じゃないよな?」

 

嫌な予感を感じつつ、霧崎は騒ぎの方へと向かう。

色々と確かめる為に。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

更に別の場所で、

 

「おい、聞いたか!?」

 

「うん?何が?」

 

「おいおいおいおいおいおいおい、お前さんまだ知らないのか!?何でも物凄い可愛い三人組が、メイド姿で!!メイド姿で!!メイド姿でッ!!_____もう一度言うぞ!!」

 

 

「“メ”  “イ”  “ド”  “姿”  “で”  、」

 

 

「出店の総合代理店を始めたんだぞ!!」

 

「なん………だと…………?」

 

 

「しかもその一人が“箱庭の騎士”なんだぞッ!!」

 

 

「しかももう一人が“箱庭の貴族”______あの月のウサギなんだってよッ!!」

 

 

「「「「「な…………んだってー!?」」」」」」

 

その瞬間、十六夜vsフェイス・レスを見ていた観客及びマネーメモリの使用を迷っていた者に色んな意味で電流が走る。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「い、いらっしゃいませー!!出店代理店・“ノーネーム”のウサギ小屋はこちらなのですよー!!」

 

 

噴水広場の一角に、とんでもない長さの行列が出来上がっていた。

そこでは列の先頭でかーなーり露出度の高いメイド服にわざわざ着替えたラッテンが笛を吹き、曲を奏でながら列を纏めていた。

最初に現れた時の服装を見れば分かるだろうが、露出に抵抗が少ない。

そんな格好のラッテンに当然客は視線を集めるが、

 

 

「見るのはいいけど、列を崩したらもぐわよ?」

 

 

笑顔で言い放つ。

一部は歓喜し、一部は震え、一部は悶えつつも列はキチンとなっていく。

ちなみに奏でる笛の音には多少の暗示効果も入ってたりするがそれはそれである。

レティシアは売り子である。

レティシアは優雅に微笑みながら預かった品を捌いていく。

そして商品の受け渡し口に立つウサ耳メイド______黒ウサギ自棄っぱちになって愛想の嵐を降りまいていた。

メイド服を着た黒ウサギに笑顔で「ありがとうございますご主人様♪」と言われ、手渡しされれば、大抵の男はのぼせ上がる。

そして、ラッテンの軽めの暗示も加わり、もう一度手渡しして欲しくて列を並び、商品を買っていくという寸法だ。

暗示に関しては、

 

「ただのBGMよ」

 

と、ラッテンは言う。

かなり黒い笑顔で。

まぁそんな事を気にする間がないくらいの勢いで商品は減っていっている。

倉庫二つ分の委託された品々は、僅か半刻の時間で売り捌かれた。

品物が無くなっても人だかりは残っていたが、軽く挨拶をしてサッサと天幕を畳んで路地裏に逃げ去って行った。

途中で面倒にラッテンがもう一曲奏で、暗示で追い払おうとしていたがさすがに止められた。

ちなみに客の中にはどうでもよくなってマネーメモリを捨てた人々が結構な人数いたりして、地味に事件の種を潰していたりするが彼女達は知らない事である。

路地裏でラッテンはサッサと何時ものメイド服に着替える。

 

「………やっぱりこれが一番ね」

 

「同じメイド服だし、露出を気にしないなら着替える意味が無くないか?」

 

「いやいや、結構重要よ?衣装は場面に合わせる物だから場によって変える物よ。今回は客引きだから露出を高めたけど、普段は普通のメイド服が一番なのよ♪」

 

適当に個人的な主義を言うラッテン。

黒ウサギは大金を手にしてかなりはしゃぎ、飛び跳ね、興奮している。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ハァァァァァァァ!!」

 

ドラミングの音が辺り一体に響く。

映司がサゴーゾコンボでドラミングをしているのだ。

サゴーゾコンボには重力操作の能力がある。

ドラミングはそれを発生させる物でもある。

 

「のわぁぁぁぁ!?」

 

クロアゲハヤミー達は重力操作の影響で地に落とされる。

残りのマネードーパント達も地面に押さえつけられる。

 

「これで終わりだ!!」スキャニングチャージ!!

 

全てのクロアゲハヤミーが落ちた事を確認すると、映司は右腰からオースキャナーを取り出し、オーズドライバーにセットされたメダルをスキャンする。

オースキャナーが音声を響かせると、ゾウレッグが合わされ、サゴーゾコンボが一度宙に浮き、落下する。

その衝撃波が地面を伝わり、クロアゲハヤミー達とマネードーパント達は地面に足を捉えられ、サゴーゾコンボの下へと吸い寄せられる。

 

「ぐっ………ぬぅぅ!?」

 

「ハァァァァァァァセイヤァァァァァ!!」

 

そのまま、目の前に集められた敵に向かって頭突きと両腕の拳を同時に叩き付ける。

直撃した怪人達は爆散し、残ったのはメモリを排出した人々とクロアゲハヤミーの“人数分”のセルメダルだった。

セルメダルを拾いながら、映司は首を傾げる。

 

「かなり欲望を満たしていたように見えたけど………残ったセルメダルは一枚だけ?ガメルのヤミーじゃないのに何でだ?」

 

ヤミーは欲望を満たす事で体内のセルメダルを増やしていく。

どんどんセルメダルを消費するガメルのヤミーならともかくクロアゲハヤミーでこの状況は不可解だった。

まるで何処かに増えた先から転送された様に。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「酷いな……こりゃ」

 

霧崎が騒ぎの中心に来た、ちょうどその時、十六夜とフェイス・レスが“サウザンドアイズ”の門を破壊し、決着がついた所だった。

辺りを見回し、その破壊の惨状に霧崎は苦笑いする。

その後、十六夜は多額の弁償金を請求される事になるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

祭りも、事件も、終結し街が夕焼けに染まる頃。

朱色の街道の真ん中で、黒ウサギは盛大に泣き叫んだ。

 

 

「い………………十六夜さんのお馬鹿様お馬鹿様お馬鹿様、超特大お馬鹿ああああああああああああ!!」

 

 

スパパパパパパァーン!!

と、軽快な音を立てて十六夜の頭をハリセンが往復ビンタした。

十六夜も今回ばかりは甘んじて受ける事にした。

十六夜の弁償代のせいで折角の稼ぎが消え去ったのだった。

呆れた様に溜め息を吐くラッテン。

苦笑いする霧崎。

本気で泣いて項垂れる黒ウサギ。

レティシアと映司が困った様に笑って仲介に入った。

 

「ま、まあまあ。所詮はあぶく銭だ。容易い儲けは容易く消えるもの。簡単に稼いだ資金で復興しても、あまりありがたみがないだろう?」

 

「それに俺の貰ってきた報酬もあるし」

 

「うう………映司さんが唯一の救いなのですよ……」

 

「でも、あれだけ稼いだのに残らないのは残念だったわね~」

 

「と言っても俺は何もしてないしな……」

 

「霧崎は主に謎解きで役立ったからいいのよ」

 

その後、十六夜のゲーム考察を聞き、優勝賞品は“サウザンドアイズ”の金融か投資の権利、もしくは貨幣の発行と配布辺りだろうと結論つけた。

そして、十六夜は残った一枚の黄金盤を黒ウサギに渡し、南の収穫祭の招待状を取り出す。

それにより、一同の表情は明るくなる。

 

「“ノーネーム”の次の舞台は______南側、水と大樹の大瀑布だ。気合いを入れていくぞ!!」

 

手を叩き合って、一同は帰路につく。

異世界での、新しい舞台と出会いに胸を弾ませながら。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ!!

 

赤、タカ、クジャク、コンドル

緑、クワガタ、カマキリ、バッタ

黄、ライオン、トラ、チーター

白、サイ、ゴリラ、ゾウ

青、シャチ、ウナギ、タコ

橙、コブラ、カメ、ワニ

特、スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ

 

 






黄金盤編終了!!

ラッテンは衣装を使い分けてるという事に。
霧崎の前では大体ノーマルメイド服ですが。
霧崎にはそっちの方が効果あったり。

ドーパントとヤミーについてはまたいずれ。


それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。



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青銅と雛鳥とスティムパリデス
怪鳥と硬貨とイソギンジャガー


今回は「スティパリデスの硬貨」編をやろうと思います!!

ついでにオリ短編の方もやっていきたいと思います。
それについては活動報告にてアンケートをとりたいと思います。
詳細はあとがきに書きます。




{___ギフトゲーム名“青銅の怪鳥”

 

 参加者:自由参加。

    (ただし、参加者は死の恐れ在り)

 

 勝利条件:青銅で出来たスティムパリデスの羽を持ち帰る。

 

 敗北条件:勝利条件を満たせない場合。

     (死亡も敗北と同様)

 

 ルール概要

 一、青銅が一定以上集まればゲーム終了。

 二、銀の羽を持ち帰った者には恩賞あり。

 三、参加者は持ち帰った銅・銀の羽を主催者に寄与すること(密輸は厳罰あり)

 四、主催者は持ち帰った銅・銀の羽の値に見合う恩恵を授けること。

 五、参加者が死亡した場合、死後の霊格はギリシャ神群に委ねる。

 

 宣誓 上記を尊重し誇りと御旗の下、“ケーリュイオン”はギフトゲームを開催します。

          “ケーリュケイオン”印}

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

デボラ山峡麓の湖畔。

スティムパリデスの巣穴。

怪鳥の巣穴に、不自然な人影があった。

そして、笛の音が響いていた。

 

「…………第二陣が来るわね。迎撃の準備をしといた方がいいわね」

 

「あいよ」

 

「分かった」

 

「ラッテン、数はどれくらいだ?」

 

「一二〇人くらいかしら?音の反響具合から毒でも持ってると思うわよ。それと、結構遠くに五百人くらいの集団がいるわね」

 

「おそらく“奴ら”でしょうね」

 

「だろうな。そちらは俺達がやる」

 

彼らは先程第一陣を蹴散らしたばかりであった。

二人はギフトカードからバイクを取り出し、第二陣とは別の集団の所へと向かう。

彼らは少々力が大き過ぎるので、此方の目的には向いてない。

一人の少年が、残りの青年二人と女に向けて言う。

 

「俺達も持ち場につくぞ。“青銅の怪鳥”をゲームクリアするために……………絶対、スティムパリデスを死守するぞ」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

湖畔から離れた所。

そこにイソンギンジャガーヤミーと戦闘員達が集まっていた。

 

「我らの目的はスティムパリデスと使える人材の捕縛である!!心して掛かれ!!」

 

イー!!

 

イソンギンジャガーヤミーのかけ声に戦闘員達が答える。

そこにバイクのエンジン音が響く。

そして、戦闘員達に銃弾ばら蒔かれる。

 

「何者だ!?」

 

「通りすがりの仮面ライダーだ………覚えておけ!!」

 

「俺もそんなところかな」

 

「「変身!!」」

 

カメンライド!!ディ、ディ、ディケイド!!

タカ!!トラ!!バッタ!!タトバッ、タトバ、タットッバ!!

 

士と映司はバイクに乗りながらディケイドとオーズ、タトバコンボに姿を変える。

 

「仮面ライダーか!!皆、掛かれ!!」

 

イソンギンジャガーヤミーがエネルギー弾を放ちながら叫ぶ。

それに合わせ、戦闘員達が二人へと向かっていく。

二人はバイクを走らせ、エネルギー弾を避け、背後に爆発を纏いながら戦闘員達へと向かっていく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

第二陣の不意討ちを得意とする者達の足下に変則的な軌道で銀の弾丸が放たれる。

 

「何者だ!?」

 

「魔法使いさ。悪いけど、スティムパリデスたちは襲わせないよ」

 

そう言って彼らの前に晴人が現れる。

その手にはソードガンがあり、変身はしていない。

 

「今のところは無所属の操真晴人だ。俺が勝ったら大人しく帰ってくれないか?」

 

獣人の男は鋭い瞳を細めると、短刀を水辺に放り投げ、満月を仰いだ。

 

「まさか正面から喧嘩を売ってくるとはな。“五爪”の副長・ヴォルド=フォーカス。___その決闘、乗ったぜ!!」

 

一喝、ヴォルドの姿が激変した。

肌は灰色の体毛に覆われ、指からは岩をも斬り裂く鋭い爪が刃のように生えていく。

 

「………ただの獣人じゃないのかよ!!」

 

「おおよ!!七代の系譜を連ねて得た霊格は、妖仙にも退けはとらねぇ___!!」

 

狼に変幻したヴォルドは、前傾の姿勢から一直線に晴人のもとに疾走する。

晴人は右手の指輪を変えて迎え撃つ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

同時刻、投擲で巣を狙っていた一団が次々と倒れていく。

彼らの目指す高台では、ラッテンが月明かりの中で笛を吹いていた。

その音が彼らの意識を奪っていく。

 

「軽く演奏しただけなのに耐えられないのね~」

 

倒れていく人々を見ながら呟く。

反論する前にどんどん倒れていく。

しかし、突然地鳴りが起こる。

 

「調子に乗ってんじゃねぇよ!!」

 

ラッテンに向け、巨大な岩石が投げ飛ばされる。

その間に人影が入る。

 

「余所見するなよ!!」

 

霧崎が割って入り、【弱者のパラダイム】で岩の軌道をそらす。

そして、ラッテンが後ろから抱き付いてくる。

 

「ありがとうね、霧崎。まぁ大丈夫だったけど」

 

「一言余計だ」

 

抱き付き、抱き付かれながらやり取りする。

投擲の主は眼中に無い様な様子である。

霧崎はしっかりと見てはいるが。

 

「巨人なんてどっから出てきたんだ?」

 

「チッ、やっとか。人化の術を使うのは幻獣や獣人だけじゃないって事だ」

 

目の前の光景に舌打ちしながら言う巨人族・ドルク=ポルフォイ。

彼は斧を取り出し、名乗りを上げる。

 

「俺は“四本足”の副長・ドルク=ポルフォイだ。そこを空けてくれないか?」

 

「嫌よ。何で私と霧崎が退かなくちゃならないのよ?」

 

冗談っぽく答えるラッテン。

その答えに青筋を立てるドルク。

まいった霧崎が代わりに答える。

 

「悪いが退くわけにはいかない事になってるんだ。退かせたければ力付くにやってみろ」

 

「なるほど。そういう事なら話が速い!!」

 

「さ~て、私がやるとしますか。行くわよ、ディーン!!」

 

ラッテンが霧崎から離れ、ディーンを呼び出す。

そして、ディーンの肩に乗ってハーメルケインを構え、演奏を始める。

ラッテンの演奏の中でディーンとドルク、超重量でぶつかり合う。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

十六夜は“二翼”の集団を相手にし、勝利した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カメンライド!!ア、ア、アギト!!

フォームライド!!トリニティ!!

タカ!!カマキリ!!チーター!!

 

二人はバイクで戦闘員達へと突っ込み、何人かひいて吹き飛ばす。

その直後に各々フォームチェンジしながらバイクから飛び降りる。

アギト、トリニティフォームへと姿を変えた士は両手の剣と槍で戦闘員達を斬り裂いていく。

タカキリーターに姿を変えた映司は、高速移動しながら戦闘員を斬り倒していく。

そして、粗方片付け終え、

 

ファイナルアタックライド!!ア、ア、アギト!!

スキャニングチャージ!!

 

同時に音声が鳴り響く。

 

「な、何ぃぃ!?」

 

後ろでエネルギー弾を放っていたイソンギンジャガーヤミーへと駆けて行く。

士と映司は戦闘員達を巻き込みながら、イソンギンジャガーヤミーを同時に斬り刻んだ。

 

「無念なり!!」

 

斬り刻んまれたイソンギンジャガーヤミーは捨て台詞を遺し、爆散するのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ディフェンド、プリーズ!!

 

晴人とヴォルドの戦いは対称的だった。

ヴォルドが縦横無尽に駆け回る中、晴人は魔法を駆使し、ソードガンで攻撃を受け止めたりなどしていた。

 

「ハッ、俺の攻撃を全部受け止めやがるか!!」

 

「でも、そろそろフィナーレだ」

 

「ハハッ、やってみろぉ!!」

 

ヴォルドが高速で晴人へと突進する。

晴人は銀の弾丸で牽制しながら、右手の指輪をスキャンする。

 

サンダー、プリーズ!!

 

「グ、ガァ!?」

 

今まで“一切”攻撃系の魔法を使わず、油断させてた所へサンダーの雷撃を叩き込む。

雷撃で怯んだ所へ、

 

グラビティ、プリーズ!!

 

重力を操る魔法で、ヴォルドを思いっきり地面へと叩き付ける。

何十倍の勢いで地面へと叩き付けられたヴォルドは完全に意識を失う。

 

「ふぃ~」

 

勝利を確認し、晴人は息を吐いた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「グボァ!?」

 

ディーンの拳がドルクの腹へと叩き込まれる。

状況は簡単である。

ドルクの攻撃をラッテンがハーメルケインで発生させた防御の魔法で防ぎ、その隙にディーンが一撃叩き込んだのだ。

 

「ふふん。私が演奏だけしか無いと油断したのが悪いのよ」

 

「かはっ……確かにな」

 

腹を抑えながら、苦笑するドルク。

霧崎も、ラッテンがまさか初手で終わらすとは思って無かったので苦笑するだけであった。

その後、霧崎とラッテンはドルクをスティパリデスの巣へと案内する。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

スティパリデスの巣の最奥にて一同は集合していた。

そこでヴォルドとドルクにスティパリデスを“龍角を持つ鷲獅子”に加えるという話をした。

そして今回のゲームはスティパリデスの羽を持ち帰ればそれでいい事、

“ケーリュケイオン”は貨幣の材料を欲していた事を話した。

これにてガロロの依頼と“青銅の怪鳥”をクリアしたとして、十六夜、霧崎、ラッテン、士、映司、晴人は酒宴席へと向かう。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ほい、差し入れ」

 

「明日には帰るから、黒ウサギちゃんも何か食べておいた方がいいよ」

 

「既に酔い潰れてるのもいるけどな………」

 

スティパリデスの雛を寝かし付けた黒ウサギの元へ十六夜、映司、霧崎酒宴の料理を持ってやってきた。

霧崎は酔い潰れたラッテンを背負ってはいるが。

そして、黒ウサギが乾杯の音頭を取ることになった。

十六夜は渋々といった感じだが。

 

「それではっ!!我々“ノーネーム”の降盛を願って___」

 

 

「「「「乾杯!!」」」」

 

 

「かんぱ、ってやっぱり言わせてくれないんじゃないですかぁぁぁぁぁぁ!!」

 

十六夜が主体に、半分ノリで先に杯を鳴らす映司と霧崎。

そして何故か起きて混ざってるラッテン。

黒ウサギは半泣きになりながら遅れて杯を鳴らす。

 

明日の輝かしい未来を願う者達の酒宴は、夜が更けようと何時までも続いていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カウント・ザ・メダルズ!!

 

タカ、クジャク、コンドル

クワガタ、カマキリ、バッタ

ライオン、トラ、チーター

サイ、ゴリラ、ゾウ

シャチ、ウナギ、タコ

コブラ、カメ、ワニ

スーパータカ、スーパートラ、スーパーバッタ




スティパリデス編終了!!

生身の強さの基準は坂本監督系

イソギンジャカーヤミーの目的はそのまんま言ってた通りです。

それでオリ短編ですが、

1、Eの再臨
2、大ショッカー幹部の集い(仮)

の二つです。
ほぼ、外伝で敵側の話です。
活動報告かメッセージで見たい方を言ってください。

それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。



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Eの再臨/過去にさよなら
Eの再臨/地獄から呼び戻されし者達


今回は番外編です。
時系列は連盟旗前です。

今後の予定としては
Eの再臨/
乙三巻
大ショッカー連盟円卓会議(仮)
の順でやりたいと思います。




 

箱庭某所。

大ショッカー研究所。

大きな広間に三人の人影があった。

一人はドクタープロスペクト。

クォークスの研究者である。

クォークスは簡単に言えば超能力者である。

大ショッカー連盟によって蘇生され、クォークスの研究と再生怪人技術の研究を担当している。

その隣に立っている男が番場影人。

新人類と呼ばれる、クォークスとは別の超能力者の研究を担当している。

大ショッカー連盟によって蘇生され、ドクタープロスペクトの助手をしている。

この二人は元々死ぬ前に財団Xの研究機関ビレッジにて繋がりがあった。

そして、残りの一つの人影。

それは異形だった。

ネオサウナギンナン。

あらゆる時間軸と繋がっている箱庭の性質を利用し、大ショッカーの把握してない怪人を大ショッカーの技術を加えて蘇生したのだ。

ネオサウナギンナンはサウナ、ウナギ、ギンナンをモチーフとされるトリノイドである。

それはかつてアバレンジャーとデカレンジャーを相手にしたトリノイド0号である。

その魂を大ショッカーの技術を利用して新たな存在として甦らせたのだ。

そして、ネオサウナギンナンの能力は現在行われている実験の核である。

サウナギンナンの能力は死者蘇生。

地熱のエネルギーを利用して、死者を甦らせる。

しかし、サウナギンナンが死んだらその効果は消え、死者はあの世に戻る。

大ショッカーはその能力に改良を加え、甦らせた者にしかるべき措置をすれば例えネオサウナギンナンが死のうとこの世に留めておける様にしたのだ。

現在の実験はその能力のテストである。

この実験が成功すれば、大ショッカーの再生怪人技術、速度も大幅に向上するだろう。

 

「さて、経過はどうなっている?番場君」

 

「順調ですよ。ドクタープロスペクト」

 

「おいらも準備万端ぜよ~」

 

ネオサウナギンナンのみテンションが違うが二人は無視をする。

 

「それでは実験を開始しましょう」

 

「了解ぜよ!!」

 

ネオサウナギンナンが返事をし、広間に蒸気が満ち、あの世とこの世を繋ぐ時空の狭間が生まれる。

 

「さぁ~強い奴よ、来るぜよ!!」

 

現在の蘇生させる対象は風都のライダーを苦しませた“ガイアメモリ”使いの強い奴である。

広間が光に包まれ、狭間から何かが出てくるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「現場はどうなりました?」

 

「蘇生自体は成功した様ですが………」

 

ドクタープロスペクトの質問に番場が答える。

まだ広間は蒸気に包まれ、何が出てきたかは確認出来ない。

 

「さぁ~て、何が来たぜよ………ってぐばぁ!?」

 

「おや?」

 

「ん?」

 

蒸気の中を確認しようとしたネオサウナギンナンがいきなり吹っ飛ばされた。

ドクタープロスペクトと番場が警戒する様に立ち上がる。

 

「何事です?」

 

「分からねぇぜよ~いきなり殴り飛ばされたぜよ~」

 

「どうやら面倒な物が蘇生された様ですな」

 

顔を押さえてのたうち回るネオサウナギンナンを放っておいて、二人は蒸気の方を見る。

そこには五つの人影があった。

 

「その声はドクターか?お互い地獄から連れ出された様だな」

 

青年の声が蒸気の中から聞こえてくる。

ドクタープロスペクトはその声に聞き覚えがあったか。

 

「地獄から這い出て来たか!!この死体どもが!!」

 

「おいおい、酷いな。連れ戻したのはお前らだろ?」

 

蒸気が晴れ、姿が露になる。

甦ったのは、

大道 克己

泉 京水

羽原 レイカ

芦原 賢

堂本 剛三

の五人であった。

彼らはNEVER。

傭兵集団である。

そして、死体だ。

特殊な酵素によって肉体を維持しているが、定期的に接種しないとただの死体へと変わる。

ドクタープロスペクトは一瞬顔色を変えるが、すぐに余裕の表情に戻る。

そして、彼ら五人を戦闘員、マスカレイドドーパント、ダスタードが囲む。

 

「すぐに地獄へと帰してやろう。ガイアメモリを持たぬ貴様達では敵わないだろう?」

 

「それはどうかな?」

 

大道は不敵に笑う。

そして、向かって来る集団を迎え撃つ。

他の四人も応戦する。

 

「ゲームスタート」

 

芦原がボソリと呟く。

そして、向かって来たマスカレイドから拳銃を奪い取り、鉛弾を撃ち込んでいく。

弾が切れては倒したマスカレイドから拳銃を奪う。

拳銃だけでなく体術も駆使して倒していく。

 

「デリャァァァァァァァ!!」

 

堂本はそこらへんにある鉄棒を掴み、振り回す。

三体のダスタードの剣を受け止めると、そのまま押し返して薙ぎ払う。

そして、飛び掛かって来た戦闘員は狙いすました様に叩き落とす。

 

「ハァ!!ダァァ!!」

 

レイカは戦闘員達を次々と蹴り倒していく。

足を首に絡め、フランケンシュタイナー。

首が折れる音が響くが気にせず次々に倒していく。

 

「貴方達、太陽に代わってお仕置きよ!!」

 

NEVERの副隊長である京水は鞭を持ち、オネェ口調で構える。

 

「鞭!!鞭!!鞭!!」

 

鞭を次々と戦闘員達へと打ち付ける。

そして、首に巻き付け、

 

「ぶっとびぃぃぃぃぃ!!」

 

そのまま吹っ飛ばす。

そして、大道の方を見る。

 

「克己ちゃん!!こいつら、数が多いわ!!どうするの?」

 

「まぁ待て。俺達は“焦る”必要は無い」

 

大道はナイフで戦闘員を斬り倒し、返り血に濡れながら言う。

そこへ、ネオサウナギンナンが放った火球が飛んでくる。

 

「くっ……」

 

ギリギリ避けるが爆風を受ける。

そんな克己にドクタープロスペクトが語りかける。

 

「本当に私達に勝てるとでも思っているのかい?今、私達の傘下に加わると言うのなら考えない事も無いが」

 

「悪いがお前達の傘下に加わる気は全く無い。それに知っているか?ガイアメモリは適合者と引き合うというのを」

 

「それがどうした?」

 

「俺が望めば、手に入らないわけが無いのさ」

 

「戯言を!!」

 

ネオサウナギンナンが更に火球を放つ。

そこで天井が崩れ、何か光に包まれた物が降ってくる。

瓦礫が火球を防ぎ、大道へは届かない。

 

「何が起きて……」

 

「だから、言ったろう?ドクター」

 

土埃が晴れ、ドクタープロスペクトが大道を見るとその手にはエターナルメモリが握られていた。

 

「それは大ショッカーが開発中の最新型メモリ!!何故貴様の手に!?」

 

「何度も言わせるな。メモリが俺を選んだんだよ」エターナル!!

 

大道がメモリのスイッチを押すと、メモリから音声が流れる。

大道はロストドライバーを腰に巻く。

 

「変身!!」エターナル!!

 

ロストドライバーにエターナルメモリを挿入する。

そして、音声と共に大道の姿が変わっていく。

白い姿に黒いマント。

その姿はまさしく仮面ライダーエターナル ブルーフレアである。

 

「さぁ、死神のパーティータイムだ」

 

「死体ごときが調子に乗るなよ」アイズアップグレード!!

 

「そこは同感ですね」

 

「どんな姿になろうと倒していくやるぜよ!!」

 

意気込むネオサウナギンナン。

ドクタープロスペクトはアイズメモリを取り出すと、ガイアメモリ強化アダプターを装着し、音声を鳴らして首に刺し込む。

そして、姿をアイズドーパントへと変貌させる。

番場はゾディアーツスイッチを押す。

黒い影に包まれ、目の前にヘラクレス座が現れる。

そして、姿をヘラクレスゾディアーツに変える。

仮面ライダーエターナル、そしてその仲間とアイズドーパント、ヘラクレスゾディアーツ、ネオサウナギンナンが対峙するのだった。

 

 





番外編第一話でした!!
思いっきり敵側の話で主人公達が一切出てきませんでしたが。

NEVERvsアイズ&ヘラクレス&ネオサウナギンナンです。
スーパー戦隊側の敵が出たけど別に大ザンギャックまで出てくるわけではないです。
箱庭の性質的には繋がっていておかしく無いですから。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。



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Eの再臨/引き合うメモリ

 

「全く数だけは多いわね!!」

 

「全くだ!!」

 

レイカと堂本が敵の多さに愚痴を漏らす。

芦原はただ無言で敵を撃ち倒していく。

 

「克己ちゃん!!雑魚は私達が相手にするけど、何か手伝える事はある?」

 

「そうだな………こいつらの相手は俺に任せておけ。だから、お前らは“アレ”を見付けてくれ」

 

「分かったわ!!」

 

大道の指示を聞いた一同は各々別々の方向へと駆け出す。

 

「何のつもりだい?」

 

「三対一で勝てるつもりか?」

 

「ぶっ倒してやるぜよ!!」

 

ドクタープロスペクト、番場、ネオサウナギンナンが口々に言う。

それを聞いて、大道は苦笑する様に呟く。

 

「お前らの相手くらい、俺一人で充分って事だ!!」

 

「戯言を!!」

 

激昂を無視して、大道はエターナルエッジを構えながら向かっていく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ハァ!!」

 

レイカは戦闘員に蹴りを入れて吹っ飛ばしていく。

吹っ飛ばされた戦闘員が当たった壁が崩れる。

レイカがその中へ入る。

そこは保管庫のようだった。

現在、彼らは堂本と芦原が敵を引き付け、レイカと京水が目的の物を探していた。

 

「あら、ちょうどいいわね」

 

保管庫には様々な物品があった。

その中でガイアメモリを探し当てる。

AからZ、大道の使っているEのエターナルメモリを除く25本のガイアメモリが入ったケースであった。

他にも多数のガイアメモリが保管してあるがまずはそのケースを持って行こうとする。

 

「見付けたぜ、侵入者さんよ!!」

 

「っ!?」

 

そこへ、白服の男が現れて念力の様な物で吹き飛ばされる。

壁にぶつかりケースの中のメモリが数本散らばる。

拾おうとした所に男が蹴りを放ってくる。

それを防ぎ、逆に蹴りをくわせる。

 

「あんた、クォークスね。どうすれば倒せるかくらい分かってるのよ」

 

「そうかよ!!」

 

男の拳を受け止める。

そこで男が怪訝な顔をする。

 

「あんた、手が冷たいな。さすが死体って所か!!」

 

その言葉を聞いた瞬間にレイカは顔を歪める。

 

 

「………言ったわね、気にしてる事!!」

 

 

「グバァ!?」

 

男の腹に思いっきり蹴りを入れ、吹っ飛ばすとケースの中から一つのメモリを取り出す。

 

「やっぱりこれね」ヒート!!

 

音声を鳴らすと、レイカはヒートメモリを投げる。

そして、ヒートメモリはブーメランの様に戻ってくると胸元に挿入される。

レイカの姿が変貌し、ヒートドーパントとなる。

 

「そういう力はメモリだけじゃねぇんだぜ?」

 

男はゾディアーツスイッチを取り出し、姿を変貌させる。

ハウンドゾディアーツとなった男は念力を放ちながら鎖を放つ。

 

「狙いが甘いのよ!!」

 

念力はドーパント化したレイカには意味は無く。

鎖はあっさりと弾かれる。

そのまま懐に入られ、炎の纏った蹴りを受けて男は吹っ飛ばされる。

二人は気付いていなかった。

散らばったメモリの幾つかが何かに引かれる様に動いている事に。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

芦原は銃器を強奪しながら進んでいた。

 

「………ゲームオーバー」

 

呟き、脳天を撃ち抜く。

 

「派手に暴れてるようだね、侵入者」

 

芦原は無言で声のした方へと発砲する。

 

「おやおや危ないね」

 

男は念力で銃弾を受け止め、勢いを消して落とす。

しかし、芦原は淡々と撃ち続ける。

男は余裕で受け止める。

その間に距離を縮められ、殴り飛ばされる。

 

「くっ…………やはり死体相手に出しおしみはするべきでは無いようだ!!」

 

男はゾディアーツスイッチを押して、カメレオンゾディアーツへと姿を変える。

そして、舌で芦原を吹っ飛ばす。

 

「………」

 

吹っ飛ばされた先で頭上から何かが降ってくる。

それを手に取り、立ち上がる。

 

「………ゲームスタート」トリガー!!

 

呟き、音声を鳴らし投げる。

戻ってきたトリガーメモリは芦原の掌に挿入される。

そして、姿をトリガードーパントへと変える。

 

「ドーパントになった所で!!」

 

男は気にせず突っ込んで行く。

 

「………」

 

「ぐっ!?ばぁ!?」

 

芦原は正確な銃撃で男を撃ち抜いていく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「デリャァァァァ!!」

 

堂本はとにかく暴れていた。

次々と現れる戦闘員を鉄棒で薙ぎ払っていく。

 

「ん?うぉ!?」

 

そこで突然体が燃え始める。

そして、念力によって吹っ飛ばされる。

壁にめり込む程の衝撃を受け、首も変な方向を向くが立ち上がり、首を直す。

これがNEVER、死体故のタフさである。

 

「お前らはいつかの超能力者の同類か!!悪いが俺はそのくらいじゃ倒されねぇぞ!!」

 

「みたいですね」

 

「では、これならどうです?」

 

堂本の前に現れた二人はゾディアーツスイッチを押して、姿を変貌させる。

一人はオリオンゾディアーツ、もう一人はユニコーンゾディアーツである。

オリオンは棍棒を構え、ユニコーンは角が変化した剣を構え、堂本へと向かっていく。

 

「ぬぅん!!」

 

「ハァ!!」

 

棍棒が振るわれ、剣で突かれる。

堂本は棍棒を避け、剣を鉄棒で軌道をそらす。

そのままユニコーンの懐に鉄棒を叩き込む。

怯んだ所に思いっきり鉄棒を振り降ろす。

 

「デリャァァァァ!!」

 

「ぐっ!?」

 

頭を叩かれたユニコーンは頭を押さえ、ふらつく。

そこで手を鉄棒で払い、剣を落とさせる。

そこにオリオンが棍棒を振るう。

しゃがんでそれを避け、オリオンも鉄棒で突く。

しかし、オリオン相手では怯ます事は出来ず、更に振るわれた棍棒によって吹っ飛ばされる。

 

「うぉぉぉぉ!?」

 

オリオンの怪力で吹っ飛ばされた堂本は壁に衝突し、壁を突き破りながら隣の部屋を転がる。

そして、瓦礫の中でメモリ発見する。

 

「おぉ!!メモリじゃねぇか!!」メタル!!

 

堂本はメモリを鳴らし投げる。

投げられたメモリは軌道を変え、堂本の背中側へと回る。

そして、堂本が上着を脱ぎ捨てるとメタルメモリは堂本の背中へと挿入される。

そして、姿をメタルドーパントへと変貌させた所でオリオンが棍棒を叩き込んでくる。

 

「どらぁ!!」

 

「ダァァ!!」

 

しかし、堂本の拳によって棍棒は粉々に砕かれる。

 

「な!?」

 

「ハァァァァ!!」

 

驚愕した様な声をあげたオリオンに横薙ぎで鉄棒を振るう。

鉄棒はメタルドーパントに変貌した時に一緒に変化していた。

肋骨にヒビが入る様な音と共にオリオンは吹っ飛ぶ。

 

「デヤァァァァ!!」

 

「くっ!?」

 

そして、剣を構え直したユニコーンへ、鉄棒を縦に振り降ろす。

ユニコーンは当然、剣で防ごうとする。

しかし、鉄棒は剣を砕いた。

そのまま鉄棒はユニコーンの肩へと直撃する。

肩の砕ける音共にユニコーンはうずくまるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「く~ねくね~♪く~ねくね~♪」

 

「ハッ!!」

 

「ぬ~るぬる~♪ぬ~るぬる~♪」

 

「なぁ!?」

 

京水は歌いながら体をくねらせ、男の放つ念力を完璧に避けていた。

筋肉質の男が体をくねらせて歌いながら迫ってくる気味の悪い光景である。

男は顔をひきつらせて後退する。

 

「あら~貴方よく見たらいい男じゃない!!私が可愛がって、あ・げ・る!!」

 

「ひぃぃぃぃぃぃ!!」

 

男は必死になって念力を放つ。

しかし、京水はそれを避けて飛び掛かる。

 

「フライング~四丁目固め!!」

 

「あがっ!?」

 

飛び掛かられ、寝技をかけられた男は意識を失うのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「くっ………」

 

「そろそろくたばったらどうだい?」

 

大道はアイズドーパント、ヘラクレスゾディアーツ、ネオサウナギンナン相手に苦戦していた。

原因は強化アダプターによって強化されたアイズの能力である。

目の記憶の力を扱うアイズメモリが強化され、細かな空気の動きすら見て動きを読んでくるのだった。

これでアイズだけであればそれほど苦戦もしなかっただろうが他に二体もいては苦戦する一方であった。

そんな時、

 

「克己ちゃーん!!見つけたわよ~!!」

 

京水が壁をぶち破って広間へと入ってきた。

 

「助太刀はさせんよ!!」

 

ヘラクレスがダスタードを生み出し、京水を襲わせる。

京水はメモリを取り出す。

 

「ふふ、私も変身よ!!」ルナ!!

 

音声を鳴らし投げる。

メモリは軌道を変え、京水の額へと挿入させる。

 

「あぁん!!キタッー!!」

 

京水の叫び声と共に姿が変貌し、ルナドーパントになる。

 

「貴方たちの相手はこちらよ!!」

 

京水はマスカレイドドーパントを生み出し、ダスタードの相手をさせる。

 

「さぁ、受け取って克己ちゃん!!」

 

京水は大道へと、とある物を投げる。

大道はそれを受け取ると変身を解く。

 

「何のつもりだ?」

 

「こういうつもりだ」

 

ドクタープロスペクトが怪訝な顔をしている様な動作をする中で大道は京水から渡された“酵素”を体へ打ち込む。

それを見た瞬間にドクタープロスペクトは慌て始め、大道は不敵に笑う。

これこそ、ネオサウナギンナンで甦らせた魂をこの世に定着させるしかるべき処置である。

処置の内容は各々違うが大道達を定着させるのはこの方法である。

 

「これで俺の魂とやらはこの世に定着された」

 

「ふん。しかし、定着されただけだ!!貴様らではその“酵素”は作れまい!!どの道終わりなのだよ!!」

 

「そうでもないようだぞ?どうやらこの“世界”では俺達死体は特別な様だ」

 

大道の霊格が変質する。

動く死体から死霊へと。

NEVERの性質をそのままに酵素が無ければ維持出来なかった肉体が確かな存在へと変質する。

むしろ前よりタフな体となる。

 

「さて、これで俺達を縛る物は無くなった。そろそろ終わりにしようか」エターナル!!

 

「例え貴様がどんな存在になろうと、地獄へ戻してくれるは!!」

 

「やってみろ、変身!!」エターナル!!

 

克己は再び変身をする。

仮面ライダーエターナルへと姿を変える。

もはや、ネオサウナギンナンの生け捕り等は関係無い。

ここから先は本気の殺し合いである。

 

 





番外編二話でした!!
次回で決着の予定です!!

箱庭と言う事で霊格の変質と言う感じにしてみました。
とは言っても能力的には変わり無いですが。
酵素がいらなくなったくらいです。

それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。



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Eの再臨/メモリを統べる者

 

「抱き締めてあ・げ・る!!」

 

ルナドーパントの伸びた腕によって締め付けられたダスタード達が爆散していく。

一方の大道は、

 

「ハァァァァァ!!」

 

「ぐべぇ!?」

 

エターナルエッジでネオサウナギンナンを斬り付けていた。

 

「ひゃぁぁぁぁぁ!!」

 

「ふん」

 

「ちょ!?ぐばぁ!?」

 

ヘラクレスゾディアーツが棍棒を地面に叩き付け、衝撃波が大道を襲うがネオサウナギンナンを盾にして防ぐ。

そのままネオサウナギンナンをアイズドーパントへと投げ付ける。

 

「ほんの少しの空気の乱れすら視れる私にこの程度が当たるとでも?」

 

「思っちゃいないさ」

 

投げ付けられたネオサウナギンナンを避け、更に死角から振り降ろされたエターナルエッジすらも避ける。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「デヤァァァァァァァ!!」

 

「タァ!!」

 

「……………ゲームオーバー」

 

三つの声が響いたと思うと広間の壁が崩れ、ゾディアーツ達が吹っ飛んで来る。

各々人間の姿に戻るが灰となって消えていくのだった。

そして、穴からはレイカ、芦原、堂本達が現れる。

 

「ちょっと貴方達!!何をやってるのよ!!」

 

京水は三人を見た途端に叫ぶ。

 

「何って敵を倒しただけだぜ?」

 

「それにこれを克己の元へと運んで来ただけよ」

 

堂本とレイカが答える。

レイカは大道の姿を確認すると持っていたケースを投げる。

 

「克己、受け取って!!」

 

大道は振り向き、投げられたケースの中身を確認する。

 

「よくやった!!さて、ドクター。もはや用は完全に無くなった終わりにしよう」

 

「何が終わりぜよ!!」

 

「さっきまで苦戦して置いてよく言いますね~」

 

「言ってろ」

ジョーカー!!マキシマムドライブ!!

ユニコーン!!マキシマムドライブ!!

バイオレンス!!マキシマムドライブ!!

ゾーン!!マキシマムドライブ!!

 

ケースからガイアメモリを取り出し、体のメモリスロットに挿入していく。

そして、ゾーンの能力によりヘラクレスゾディアーツの背後まで瞬間移動する。

 

「ハァァァァァ!!」

 

「ブワバァ!?」

 

そのまま拳に力を集中させて殴る。

ヘラクレスゾディアーツは悲鳴を上げながら吹き飛ばされる。

 

ファング!!マキシマムドライブ!!

サイクロン!!マキシマムドライブ!!

ウェザー!!マキシマムドライブ!!

ナスカ!!マキシマムドライブ!!

 

「終わりだ」

 

「グバァァァァァァ!?」

 

風を纏った刃がヘラクレスゾディアーツを斬る。

そして、振り返り様にネオサウナギンナンも斬る。

 

「俺もですか!?」

 

アクセル!!マキシマムドライブ!!

アイスエイジ!!マキシマムドライブ!!

オーシャン!!マキシマムドライブ!!

スカル!!マキシマムドライブ!!

ロケット!!マキシマムドライブ!!

 

「どらぁぁぁぁ!!」

 

続けて蹴りを叩き込む。

 

「さて、残りはドクター。あんただけだ」

 

「おのれぇぇぇぇ!!」

 

アイズドーパントを中心に大量の眼球が現れ、大道に向けて飛んでいく。

眼球は着弾すると爆発するが大道は構わず進む。

 

ゾーン!!マキシマムドライブ!!

 

「くっ!!」

 

「甘いな、ドクター」

 

ゾーンの力でアイズドーパントの背後に回る。

空気の乱れで感知したアイズドーパントは裏拳を放つが大道によって軽く受け止められる。

そのままエターナルエッジを首に当てられて斬られる。

その衝撃によって、ガイアメモリ強化アダプターが排出される。

それを大道が掴むと、アイズドーパントはふらつきながらも近付いて来る。

 

「これは頂いておくぞ、ドクター」

 

「それは私の力だ……返せ!!」

 

「奪う物は奪った。トドメだ」ゾーン!!マキシマムドライブ!!

 

アイズドーパントが自分の周囲に大量の眼球を生み出す。

対して大道は再びゾーンメモリのマキシマムドライブを発動させる。

今度は体移動させるのでは無くメモリを呼び寄せる。

京水、レイカ、堂本、芦原の体から各々のメモリが排出される。

京水達の体が人間に戻る中でメモリは大道の元へと移動する。

そして、次々と挿入されていく。

 

アクセル!!マキシマムドライブ!!

バード!!マキシマムドライブ!!

サイクロン!!マキシマムドライブ!!

ダミー!!マキシマムドライブ!!

ファング!!マキシマムドライブ!!

ジーン!!マキシマムドライブ!!

ヒート!!マキシマムドライブ!!

アイスエイジ!!マキシマムドライブ!!

ジョーカー!!マキシマムドライブ!!

キー!!マキシマムドライブ!!

ルナ!!マキシマムドライブ!!

メタル!!マキシマムドライブ!!

ナスカ!!マキシマムドライブ!!

オーシャン!!マキシマムドライブ!!

パペディアー!!マキシマムドライブ!!

クイーン!!マキシマムドライブ!!

ロケット!!マキシマムドライブ!!

スカル!!マキシマムドライブ!!

トリガー!!マキシマムドライブ!!

ユニコーン!!マキシマムドライブ!!

バイオレンス!!マキシマムドライブ!!

ウェザー!!マキシマムドライブ!!

イエスタデイ!!マキシマムドライブ!!

 

エクストリィィィィィィィィム!!マキシマムドライブ!!

 

挿入された25本のメモリの力がエターナルへと集まる。

眼球が大量に飛ばされて来るが、エターナルエッジを軽く振るだけで全て斬り裂かれる。

 

「何ぃ!?」

 

「メモリの数が違うんだよ、ドクター」エターナル!!マキシマムドライブ!!

 

そして、ロストドライバーからエターナルメモリを外し、エターナルエッジに挿入してマキシマムドライブを発動する。

 

「ぐっ!?がぁぁ!?」

 

途端にアイズドーパントが苦しみ始め、姿にノイズが掛かる。

エターナルメモリのマキシマムドライブ、エターナルレクイエム。

その効果は一定範囲にある任意のメモリを機能停止させる物である。

大道はAtoZ、26本のメモリの力を足へと集中させる。

そして、アイズドーパントへ叩き込む。

 

「ハァァァァァ!!」

 

「ごがぁぁぁぁぁ!?」

 

「さあ、地獄を楽しみな」

 

親指を下へ向ける。

三つの爆発音が広間に響く。

 

「死体ごときが………また私を邪魔するか…………」

 

爆炎が晴れた中から出てきたドクタープロスペクトが口から血を垂らしながら言う。

ガイアメモリの機能が停止して、ほとんど生身の様な状態であれを受けたのだ。

肋骨は砕け、内臓も潰れているだろう。

 

「地獄に舞い戻って、また楽しんで来るんだな」

 

不敵な笑みを浮かべながら大道は変身を解除する。

ドクタープロスペクトは倒れ、血の海を作るのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ドクタープロスペクト、番場影人、ネオサウナギンナンを倒した後に五人は研究所のデータをあさっていた。

ドクタープロスペクトが呼んだ援軍が来る可能性があるので早めに脱出したいのだが、ここが何処でどういう場所かを探る必要があった。

幸い、すぐに資料を見付け箱庭の仕組みを理解した。

同時にとある物を見付けた事により、急いで脱出する必要も無くなった。

とある物とは、ブラッドオレンジロックシードである。

大ショッカーがとある世界から回収した物である。

ブラッドオレンジロックシードには次元の裂け目を生み出す力がある。

大ショッカーはそれを改造し、箱庭で言う境界門の簡易式の様にしたのだ。

これによって敵が来ればすぐに脱出出来ると言う事である。

大道は現在、一つの資料を読んでいた。

彼らNEVERは大ショッカーに加わる気は無い。

その上で今後の方針を決める資料であった。

 

「皆、聞いてくれ。今後の方針が決まった」

 

「おっ!!なんだ?」

 

注目する四人に大道は写真を見せる。

 

「最初にこいつを確保する」

 

写真に写っていたのはとある少女であった。

 

「克己ちゃん、この子に何かあるの?」

 

「こいつは“蒼炎の悪魔” ウィラ=ザ=イグニファトゥス_____“生”と“死”の境界を司る悪魔らしい」

 

「生と……“死”を?」

 

「そうだ。こいつを利用すれば面白い事をおこせると思えないか?」

 

「なるほどなぁ!!」

 

各々納得する。

彼らは死体(現在は死霊と呼べる霊格だが)である故にその手の存在は興味深いのだ。

 

「何か意見はあるか?」

 

「無いわ。私達は何時でも克己ちゃんに従うのよ」

 

「あぁ、俺達はお前に救われたんだからな」

 

「えぇ」

 

「…………」

 

四人とも賛成する様に頷く。

但しレイカのみ何かが引っ掛かる様な感じであった。

実は彼らの記憶には多少の欠落があった。

大体は仮面ライダーWと戦い敗北し、消滅したと記憶にはある。

その詳細や前後の出来事に多少の欠落があるのだ。

しかし、彼らは大道についていく。

何故なら大道 克己は彼らにとってのヒーローなのだから。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

NEVERの去った研究所。

そこに二人の男が立っていた。

 

「どうやら逃げられた後の様ですね」

 

「どうやらそうみたいだな」

 

二人の前にはドクタープロスペクトと番場影人が倒れていた。

ドクタープロスペクトは完全に死んでいたが、番場はまだ虫の息ながら生きていた。

しかし、男の内の一人、アポロガイストはアポロフルーレでトドメを刺した。

 

「よろしいのですか?」

 

「この二人は研究者として使えたから今までここを任せて来た。しかし、倒され優秀な後釜も見つかった今では用無しなのだ!!」

 

「では、死体は私が好きにしても?」

 

「いや、これらもまだ使い道があるのだ。自我の消えた再生怪人として甦らせる。そして“例の部隊”の戦列に加える」

 

「そうですか。後釜と言う形であれ、感謝しますよ。ヴァグラス復活用の残留プログラムを再起動して頂いた事」

 

「回収していた物に偶然混ざっていただけであるのだがな」

 

二人は話しながら被害状況を確認する。

そして、男の片方は二人の死体に向けて呟く。

 

「今までお疲れ様でした。ここからは私、エンターが貴方達の代わりに研究を進めさせて頂きます」

 

エンターは死体を見下ろしながら不敵に笑うのだった。

 

 





決着及び番外編「Eの再臨/」終了!!

ブラッドオレンジロックシードとガイアメモリ強化アダプターが大道の手に渡ってます。
ブラッドオレンジロックシードは便利な次元移動装置的な扱いになります。

本編のアポロガイスト率いる軍勢にヘラクレスゾディアーツとアイズドーパントがいたのは此処で殺られてたからです。

エンター登場!!
形としては残留プログラムを大ショッカーが何処かの世界から回収して再起動させた感じです。
ドクタープロスペクトの後釜枠とは言っても研究内容は全然違ったりします。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。

ブラッドオレンジロックシードはMOVIE大合戦
残留プログラムは恐竜大決戦
が基準です。



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温泉と謎の試練と硝子人形
温泉と旅行と羽休め


久しぶりの投稿です。
乙三巻部分をやります。
今回は温泉回です。
時系列的には五巻の後です。
ただし、白夜叉がいたりなどの矛盾点がありますがそのままで行きたいと思います。
世界線は違っても似た様な事は起きたって感じです。


某所。

とある液体で満たされた池の中から二つの人影が現れる。

それを眺めていた中年の男は人影が自分の方を向くと語りかける。

 

「目覚めはどうかな?」

 

「「………………」」

 

「心配しなくていい。私は君達の敵では無い。ネオガルヴィディ、“    ”よ、力は与えた後は君達の好きにやるがいい。それがディケイドを倒すことに繋がるのだ!!」

 

中年の男が叫ぶ中、二つの人影は体の調子を確かめるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

とある温泉旅館。

“ノーネーム”と白夜叉は温泉旅行に来ていた。

メンバーは黒ウサギ、ジン、十六夜、映司、霧崎、ラッテン、レティシア、リリ、ペスト、白雪姫だ。

ついでに晴人と士も来ている。

現在はジンと黒ウサギが受付をしている所だ。

 

「確かに羽休めにはいいかもな」

 

「何事もなければいいけどな」

 

「こんな所で事件も無いだろ」

 

そんな事を話していると何処からか歌が聞こえてきた。

 

「___がある限り、風は時を運ぶよ~♪

 勇気がある限り、夢は必ず叶うよ~♪」

 

見渡すとロビーの奥で一人の男が箱庭製と思われる弦楽器を持ちながら歌っていた。

その回りには子供達が集まっていた。

曲が終わり、子供達が散った後に映司は近付いて行った。

 

「いい曲ですね」

 

「だろ?俺がいた“場所”で広まってたんだ。見た所、あんた達も“旅人”かい?」

 

「少し前まではそうでしたね。今はコミュニティに所属していますから」

 

「俺は旅の途中と言う感じだな」

 

「なら、俺と同じだな」

 

男は士の方を見る。

悪意は無い。

むしろ人が良さそうにも見える。

そんな印象を持つ男だった。

 

「皆さ~ん!!受付が終わりましたよ~!!」

 

黒ウサギが声をかけてくる。

どうやら受付が終わったようだ。

 

「じゃあ、俺達は行きますね」

 

「あぁ」

 

そう言って映司達が移動し始めると男も何処かへと姿を消すのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「さぁ~霧崎、混浴行きましょうか!!」

 

「行くわけが無いだろ!!」

 

ラッテンの誘いに叫ぶ霧崎。

さすがに混浴に行く気は無い。

ラッテンも半分冗談だったのか特に機嫌を悪くした様子では無い。

ただし、悪戯っぽく笑う。

 

「しょうがないわね~。でも、今夜は付き合って貰うわよ!!」

 

「……分かったよ」

 

少し間を置いてから溜め息を吐いて頷く。

付き合うと言っても酒盛りにだが。

 

「「「「「っ!!」」」」」

 

その時、ジンを除く男達は何か殺気の様な物を感じとる。

 

「十六夜さん、どうしました?」

 

「何でもない。ちょっと旅館を探検してくるからお前らは先に風呂に入ってろ」

 

「え?はい、では先に入らせて頂きます」

 

少々首を傾げた様子で言う黒ウサギ。

白夜叉も何か感じた様だが特に口出しはしない。

ラッテンも感じてはいたようだが、察して聞きはしない。

その変わりに、

 

「じゃあマスター、風呂で楽しむと行きましょうか!!」

 

「は!?いや、私は入らな

 

「いいから行きますよ!!」

 

ぺストを無理矢理浴場へと連れて行くのであった。

その後をレティシア、白雪姫、白夜叉、黒ウサギが続いていく。

 

「何かする気ですか?」

 

「いや、何か気配を感じてな。ちょっと見に行くだけだ」

 

危ないからとジンを残して十六夜、映司、霧崎、士、晴人はロビーを通って外に出る。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「こりゃ凄いな」

 

その光景を目の前にして晴人が呟く。

彼らの目の前には数百体近い集団がいた。

 

ジャメ!!ジャメ!!ジャメ!!ジャメ!!

ヌルヌル~!!

ヌル~!!

 

白い個体と黒い個体が存在するロッドを持った戦闘員。

武器を持ち、ヌルヌル叫ぶ戦闘員。

青い巨大で棍棒を振り回す戦闘員。

それらが数百体ほど旅館の前にいたのだ。

 

「「何だ、こいつら?」」

 

十六夜と霧崎が同時に知ってそうな三人に聞く。

しかし三人は首を横に振る。

 

「いや、俺は知らない」

 

「俺も初めて見たよ」

 

「見るのは初めてだな」

 

それもそのはず彼らの前にいるのはバーミア兵、ゾーリ魔、カンブリ魔。

彼らが戦ってきた敵では無いし、大ショッカーにも参加していない。

だが、それでも彼らは違和感を感じていた。

 

「あいつら、様子がおかしくないか?」

 

「そうだな。何か“興奮”しているような……」

 

戦闘員達は普段より興奮している様子であり、“獰猛”であった。

だけど、そんな物は関係無い。

わざわざ女性陣を先に温泉に入れたのはこんな事を察するのを防ぐ為だ。

 

「折角の温泉旅行だしね。黒ウサギちゃん達には休んで貰わないとね」

 

「さぁ、ショータイムだ!!」

 

そして、五人と数百体の戦闘員の戦いが始まる。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「はぁ~いい湯ですね~」

 

「そうじゃろうの…………それはそうと何故私を縛るのだ?」

 

「「「「「「どうせ、セクハラするでしょ?」」」」」」

 

全員が同時に言うのだった。

 

「ちょ……そこ、やめて!?」

 

「駄目ですよ~じっとしててくださいよ、マスター」

 

嫌がるぺストにシャンプーするラッテンであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ジャメ!?

ヌルヌル~!?

 

「オラァ!!」

 

十六夜が拳を振り降ろせば地面が抉れ、戦闘員達が吹き飛んでいく。

十六夜は近くにいるやつから纏めて吹っ飛ばしていく。

 

「うぉ!?」

 

霧崎は攻撃を避けながらカウンターを決めていた。

バーミア兵がロッドで横薙ぎにしたのをしゃがんで避け、蹴りを入れる。

 

「ふん」

 

ヌルバァ!?

 

士はライドブッカーをガンモードにして撃ち抜いていく。

ゾーリ魔の放つ光弾を避け、弾を撃ち込んで行く。

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

映司はバーミア兵のロッドを掴むと蹴りを入れ奪う。

奪ったロッドで敵を薙ぎ払い、ゾーリ魔に突き刺す。

カンブリ魔が振り降ろしてきた棍棒をバーミア兵を盾にして防ぎ、纏めて蹴り飛ばす。

 

「騒がしい奴らだな」サンダー!!プリーズ!!

 

晴人はソードガンで斬り裂きながら魔法を発動する。

右手から稲妻が放たれ、戦闘員達を消し飛ばしていく。

ライダー達は変身せずに生身で戦っている。

変身したら被害が無駄に大きくなる。

女性陣に悟られない為にも気付かれる要素を減らしておく。

 

「ヌルヌル~!!」

 

数が減ってきた所でゾーリ魔達がおかしな動きを見せる。

数十体が集まり融合していくのだ。

そして、巨大化した。

 

「ヌル~!!」

 

口から熱線を吐いてくる。

各々が防御しようとした時、十六夜が跳び上がった。

 

「しゃらくせぇ!!」

 

なんとそのまま熱線を殴り飛ばした。

とは言っても驚く者はいない。

十六夜ならこのくらい普通である。

巨大ゾーリ魔の攻撃を全て弾き、その腹に蹴りを入れて巨体を浮かす。

 

「オラァァァァ!!」

 

そのまま連続で拳を入れて上空まで撃ち上がった所で爆散した。

十六夜が着地しようとした所へと戦闘員達が攻撃をしかけようとする。

 

「させるかよ!!」

 

しかし、攻撃を仕掛けようとしていた戦闘員達は先程の男に殴り倒される。

 

「助太刀するぜ」

 

「ありがとうこざいます!!」

 

「このくらい礼を言われる程じゃないって!!」

 

礼を言った映司と背中合わせになる様に男は戦闘員を倒していく。

 

「そう言えば、名前を聞いてませんでしたね。俺は火野 映司。貴方は?」

 

「俺は“アスカ・シン”だ!!よろしくな、映司!!」

 

互いに名乗りあって息を合わせる様に敵を倒していく。

その後、十六夜、霧崎、晴人、士も名乗り、十数分後には敵は全滅するのだった。

 

「あれ?アスカさんは?」

 

しかし、敵が全滅した時にはアスカ・シンの姿は消えていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

映司達が戦っていた場所が見える崖の上に“彼ら”はいた。

ネオガルヴィディは戦闘の様子を眺めて満足そうにしていた。

映司達を襲撃した戦闘員は甦ったばかりの彼らが力を試す為に送り付けた物だ。

 

「どうやら“あの男”の言う通り、我らの力は相性がいいようだな。此処にあの“爆竜”の力が加われば天下が我らの手に!!」

 

背後に語り掛ける。

彼の背後には全身タイツの様なスーツに身を包んだ者がいた。

顔は見えない。

だが、スーツの“彼”は“獰猛”な笑みを浮かべた様だった。

“彼”は“ウォー槍刀”を片手に頷きながらネオガルヴィディの背後には近付いていく。

 

「確かにそうみたいだ………なぁ!!」

 

「ぐぁぁ!?」

 

“彼”はネオガルヴィディの背後を思いっきり斬り付ける。

不意討ちにを防げるわけも無く、ネオガルヴィディは困惑した様に声を上げる。

 

「貴様ぁ………裏切ったか!?」

 

「裏切るも何も、俺は元々お前の仲間になったつもりは無い。甦った力を試すのにちょうどいいから行動を共にしていただけだ。そして、もう用は済んだ。あとは消えて貰うだけだ」

 

「戯言をぉぉぉぉ!!」

 

ネオガルヴィディは右手にバクレイザーを、左手からは鈎爪を出し、“彼”に襲い掛かる。

しかし、所詮は手負い。

“彼”は“ウォー槍刀”でそれらを防ぐと、“フルートバスター”を取り出して斬り付ける。

 

「ぐぅぅ!?」

 

「ふむ、この“スーツ”の力はまだ扱いなれないが俺の力は問題無く使えるな」

 

“彼”を包む“スーツ”はアバレンジャーと似た様な姿であった。

それもそのはず改造されたダイノブレスもどきによって“爆竜カルノリューダス”の力を引き出した物なのだから。

“彼”は改造ダイノブレスからデーボスイン獣電池を取り出す。

此方も改造品である。

純粋にデーボスの力を込める為の物である。

その獣電池を“フルートバスター”に装填する。

邪悪な力が“ウォー槍刀”と“フルートバスター”へと集中していく。

 

「“最終楽章・デーボスフィニッシュ・二重奏”!!」

 

「おのれぇぇぇぇぇぇ!!」

 

二つの黒い力の塊がネオガルヴィディに直撃する。

しかし、爆散はせずに倒れる。

虫の息ではあるが生きているようだ。

“彼”は倒れたネオガルヴィディへと近付いていく。

その頭を掴んで持ち上げる。

 

「さて、お前の体は利用さ

 

ドスッという音が響き、喉が貫かれる。

虫の息のネオガルヴィディが何とか動く左手で貫いたのだ。

 

「くっ、ハハハハハハァ!!」

 

「な!?」

 

だが、“彼”は笑う。

そもそもネオガルヴィディが爆散せずにギリギリ生きているのは“彼”が加減したからである。

 

「このくらいじゃ俺は死にはしねぇよ。何故ならなぁ………俺が完全に甦ったわけじゃねぇからだ」

 

「どういう事だ………」

 

“彼”は現在不完全な状態である。

スーツの下は僅かなデーボス細胞に魂が宿って繋ぎ止めているだけである。

だから肉体を造る必要があるのだ。

その為のネオガルヴィディだ。

 

「俺が復活する為の生け贄にしてやるよ。お前の体、造り変えさせて貰う!!」

 

直後に黒い障気がスーツから溢れ、ネオガルヴィディを包む。

ネオガルヴィディは声を上げる事すら出来ない。

スーツが消えて中に収まっていた僅かな、心臓共言えるデーボス細胞がネオガルヴィディを喰らっていく。

数分後、そこにはネオガルヴィディの姿は無く“彼”の本来の姿があるだけであった。

左腕に改造ダイノブレスを付け、右腰にバクレイザーを、左腰にフルートバスターを携え、右手にはウォー槍刀を握る。

 

「フフフフ、フゥーハハハハハハハハハハハハァ!!これで俺は完全に復活した!!あとは復元水の泉の中で眠る二体の“爆竜”の復活を待つだけだ!!そうすれば俺は全てを手に入れるんだ!!」

 

“彼”、“獰猛の戦騎 D”は高らかに叫ぶのだった。

 

 




思いっきりバトル回でした!!
温泉回とは言いましたが全体がと言った覚えは無い!!
タイトル詐欺?
嘘はついてませんから。

新キャラが色々登場しました。

アスカ・シンに関しては“あの”アスカ・シン”です。
つるのなあの人です。

後半の敵側はアバレンジャーとキョウリュウジャーの夏映画を見てれば分かると思います。
ネオガルヴィディはガルヴィディをあの中年が復活させた存在です。
色々と強化されたが吸収されました。

獰猛な方はcv.宮野なあいつです。
色々と説明は後々に。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。



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旅行からの帰りと謎の“契約書類”と鎧兵


前回はほぼオリジナルでしたが、今回は乙三巻本編寄りです。

仮面ライダー大戦に士、晴人が出ますけど春映画は基本的に本編に繋がりはないという感じでいきます。
似たような事はあった感じではいきますが。




 

ドレスアップ!!プリーズ!!

 

戦闘を終えた十六夜、霧崎、映司、士、晴人は晴人のドレスアップの魔法で汚れた服から綺麗な服へとチェンジする。

そして旅館の中へと戻っていくのだった。

その後は十六夜が卓球で力を入れ過ぎて壁を壊したりして黒ウサギのストレスが貯まったするが、比較的に平和であった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

“ノーネーム”本拠。

十六夜、映司、霧崎、ラッテン、レティシア、黒ウサギ、ペスト、白雪姫、ジンは本拠に帰ってきた。

士とは途中で別れた。

しかし、本拠に帰った彼らを待っていたのは正体不明のゲームだった。

子供達から話を聞くと、主催者不明、ルール不明、場所不明の“契約書類”が届いたらしい。

 

「つまり、敗北条件の{プレイヤーがクリア条件を満たせなくなった場合}しか書いてないわけだね」

 

「そういう事になります」

 

「他に書いてあるのと言ったら変な図形くらいだな」

 

「あとは此処に小さく{33}と数字が書かれてるな」

 

「一体どういう事かしらね?」

 

悩む一同であったが十六夜が近くの教会に行くと決めるのだった。

ついでにジンとメイド組も引き連れ、教会へと向かうのだった。

 

「ったく、掃除の途中だったのに!!」

 

「まぁまぁ、そう怒らないで後で手伝いますから~」

 

「そもそも貴女もメイドでしょ!?」

 

ラッテンがペストの文句を聞きながら連れてくる。

 

「洗濯物も早急に干さねば生乾きの匂いがついてしまう!!」

 

「……洗い直すにしても俺が手伝うから」

 

「しかし、それでは……」

 

「十六夜君が規模が分からないから念の為って言うし、俺としてもレティシアちゃん達がいたら頼もしいしね」

 

映司もレティシアを説得しながらついてくる。

そうして黒ウサギの案内され、教会に到着する。

黒ウサギは価値が高いから壊すなと言うが、十六夜はお構い無しに壁にワンパン入れた。

 

「ちょ何してるんですか、十六夜さん!?」

 

「この通り」

 

文句を言う黒ウサギに対して十六夜は崩れた壁を指差す。

崩れた後には地下へと続く隠し通路があった。

十六夜が言うには{33}はイエスが磔刑にされた歳らしい。

という事で教会に何かあると思い、当たりを引いたようだ。

そして一同は地下通路へと進んで行くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

進んだ先にて妙なハムスターが現れた。

 

「ワシはインディ・ハームズっちゅーモンじゃ。大好きなのはヒマワリの種と芋焼酎」

 

「「「どうでもいい」」」

 

十六夜、霧崎、晴人の声が重なる。

どうもどうやら“契約書類”を送ったのはこいつの様だ。

しかし、ただの進行役で“主催者”では無いようだ。

クリア条件は最深部に居る“主催者”の所へと辿り着く事らしい。

幾つかの難関を解き、一人でも到達すればクリアの様だ。

 

 

「ただし、もしクリア出来なかった場合は命を頂く事になるがの」

 

 

言った直後に両側の壁から水が流れ込んできた。

まずは扉の鍵を解いて脱出しろとの事らしい。

ハームズは既に姿を消している。

とは言っても十六夜にとっては既に解いた問題ではあるらしい。

水と共に流れてきた数字の書かれた石板を使い魔法陣を作るのだ。

ただし、一列の合計が{33}で“契約書類”に書いてあった図形の通り足しても{33}になる様に組めという事だ。

つまり、

 

[4][14][14][1]

[9][6][7][11]

[5][10][10][8]

[15][ ][2][13]

 

こういう並びである。

 

「あとは三の石板をはめれば扉は開く」

 

その後、最後の石板を溺れていた黒ウサギが抱え込んで離さなかったので黒ウサギごとぶん投げて使用したなどがあったが何はともあれ、扉は開いた。

 

黒ウサギは後々トルネードジャーマンスプレックスを受けるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

扉から出た一同の前に広がるのは森だった。

森である。

地下なのに森である。

直後に、

 

「第一関門突破おめでとうガキ共」

 

何処からともなくハームズの声が響いた。

どうもどうやら森に降りて来いとの事だ。

そして、森を進んで行くと開けた場所に出た。

どうやら此処が次のステージらしい。

そこで一同の前に現れたのは、かなり膨らんだハームズであった。

 

「えーと、その姿はどういう事だ?」

 

「野球観ながら油ものつまみまくってたらこうなったんじゃ」

 

「……んなわけあるかぁ!!」

 

という突っ込みは置いておき、今はゲームだ。

 

「次の試練はワシを満足させる美味しいメシを作って貰おうか」

 

レッツクッキングである。

メイド組と問題児組に分かれて料理する事になる。

メイド組はともかく問題児組には少々問題があった。

十六夜は魚を獲ってくると消えた。

残りはジン、黒ウサギ、映司、霧崎、晴人だが問題は料理が出来ないとかそういうのではない。

 

「私は簡単な物なら出来ますが……」

 

「俺も出来るには出来るけど、ちょっとクセがある料理に片寄ってるかな」

 

「俺は簡単にくらいしか出来ないな」

 

「俺は手伝いくらいだな」

 

ようは食える範囲は作れる物の満足させれるかどうか微妙と言った感じであった。

映司は世界を回ってるだけあって出来るには出来るのだがクセが強い。

霧崎、晴人は本格的では無い。

ジン、黒ウサギも似たような物である。

一方メイド組は既に料理が完成していた。

しかし、

 

「ゴパァ!?」

 

食べたハームズが多量の血を吐き出し、失格となった。

 

「マスター?」

 

「……………」

 

ラッテンから顔をそらすペスト。

 

「何時も言ってるじゃないですか!!病原菌が混入する可能性あるからマスク持っておけって!!」

 

「仕方ないでしょ!!料理対決なんて想定してなかったんだから!!」

 

ショックのあまり崩れ落ちたレティシアを放って置いて口論する二人。

白雪姫は呆然としている。

その後、十六夜が獲ってきた魚を寿司にして何とかクリアするのだった。

 

「さぁ、次に行きましょう!!」

 

と先に進もうとするのだったが、ペスト、白雪姫、ジンが残ると言い出した。

どうもどうやらレティシアがまだ(精神的に)回復して無い様だ。

仕方無いので十六夜、霧崎、ラッテン、映司、晴人だけで先に進むのだった。

 

「お前は残らないんだな」

 

「メイドなんて表向きだし」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

次のステージは不気味な屋敷だった。

中に入るとそこは壁に多数の鎧が飾られた広間だった。

 

「此処で何をしろって………っ!!」

 

死の脅威を視た霧崎が慌てて飛び退く。

直後に鎧が剣を振り降ろしてくる。

 

「なるほどね」

 

「至ってシンプルな試練と言うわけだ」

 

「つまり、こいつらぶっ倒せばいきんだろ!!」

 

鎧に取り囲まれ一斉に構える。

 

「さーて、それじゃあ作戦通りに行くか」

 

「「「あぁ!!」」」「えぇ!!」

 

「(問題児様方が作戦!?)」

 

意外な行動に驚く黒ウサギ。

そして、どんな作戦か耳を傾ける。

 

 

「「「「「ガンガン行こうぜ!!」」」」」

 

 

「ってやっぱりそうなるんですかーっ!!」

 

問題児にそこらへんを期待するだけで無駄である。

 

「オラァ!!」

 

十六夜は次々と鎧を殴り砕いて行く。

どういう仕組みで動いてるかはさっぱりだが十六夜の拳を受け止めれる鎧では無い。

 

「ほら、霧崎伏せて!!」

 

「うぉ!?わざとじゃねぇよな!?」

 

「さぁ……ね!!」

 

霧崎の頭の上を通る様にハーメルケインで鎧が斬り払われていく。

そして、霧崎はラッテンの背後の鎧を蹴り飛ばす。

二人は完全に合った動きで鎧達を蹴散らしていく。

 

「はっ!!」コネクト!!プリーズ!!

 

回し蹴りをしながらコネクトの魔法で空間を繋げ、ソードガンを取り出す。

ソードガンをガンモードにして鎧を撃ち抜きながら右手の指輪を変える。

 

「落ちろ!!」フォール!!プリーズ!!

 

鎧達の足元に魔法陣が現れ、そこに巨大な穴が出現して鎧達が落下していく。

更に指輪を変える。

 

「おらぁ!!」ビッグ!!プリーズ!!

 

隣に現れた魔法陣に手を突っ込む。

魔法陣を通った腕は巨大化する。

巨大化した腕で鎧を薙ぎ払う。

 

「たぁ!!はぁぁ!!」

 

映司は鎧達に肘打ちを入れながらオーズドライバーを腰に巻く。

そして、鎧から距離を取ってメダルを入れる。

近付いてきた鎧に蹴りを入れながらスキャナーを取り出す。

 

「変身!!」タカ!!トラ!!バッタ!!タトバッ、タトバ、タットッバ!!

 

姿をオーズ タトバコンボへと変える。

鎧達は変身エフェクトが直撃して吹っ飛ぶ。

更にメダジャリバーを構え、鎧達を斬り裂く。

そして、セルメダルをメダジャリバーに入れていく。

 

「皆、伏せて!!」トリプル!!スキャニングチャージ!!

 

叫びながらスキャナーでメダジャリバーの力を解放する。

全員伏せた事を確認するとメダジャリバーを振るう。

 

「ハァァ!!セイヤー!!」

 

屋敷ごと一直線に空間が切断される。

しかし、屋敷は切断され無かった様に元に戻り、鎧達だけそのまま斬り裂かれ真っ二つになり、爆散する。

これで鎧は全滅した。

 

「ほぉ、やるもんじゃのう……」

 

声が聞こえ一同が振り向くと階段の上層に人影があった。

 

「掛かった時間はざっと三分……中々やるもんじゃな」

 

そこにいたのはランプを持った謎のロリだった。

 

 






乙三巻前半でした!!
だいぶダイジェストでしたがパズルとか料理とかほとんど変えようが無いので。

最後に映司だけ変身したのは手っ取り早く片付ける為ですね。
タトバなら体力消費も少ないので。

それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。


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驚愕のロリとヒマワリと主催者の正体

 

「お前、誰だ?」

 

「ん?自己紹介なら済ませてるじゃろう。皆大好き、ハームズさんじゃよ!!」

 

「「「「…………」」」」

 

ロリがこの場において最も意外な名を名乗ってきた。

霧崎、晴人、ラッテン、黒ウサギは言葉に困る。

だが、一瞬あとに、

 

 

「「って、そんなわけあるかぁ!!」」

 

 

晴人とラッテンは叫ぶのだった。

あの爺臭いハムスターが目の前のロリと認められなかったのだろう。

 

「ワシ、年寄り臭くてもロリじゃ無いとは一言も言っとらんぞ」

 

「いやだからって当然の様に登場されてもですね!!」

 

「別にそんなに驚く事じゃないでしょ、黒ウサギちゃん」

 

「だよな。ロリや変身くらい箱庭ではよくある事だろ」

 

「慣れてる!?」

 

平然とした様子の十六夜と映司に驚愕する黒ウサギ。

何はともあれ、問題は目の前のハームズである。

 

「まぁこの姿になったのは久々ではあるからな。やや節々が痛むがこれも主催者からの言い付けじゃ。ワシはお前達を倒す」

 

「へぇ?お前が俺達を倒すって?」ドライバーオン!!

 

シャバドゥビタッチヘンシーン!!

シャバドゥビタッチヘンシーン!!

 

「既にやる気満々のようだが少々言い換えよう。ワシを倒してみるがいい。それが出来ればゲームクリアじゃ!!」

 

「そりゃ簡単でいいな、変身!!」

フレイム!!プリーズ!!ヒー、ヒー、ヒーヒーヒー!!

 

魔法陣が晴人を通り抜け、姿をウィザード フレイムスタイルへと変わる。

そして、そちらに気を取られている間に背後に接近した映司が背後から斬り掛かる。

 

「うぉっと!!容赦が無いのう!!」

 

「どうやら君は強そうに感じるからね」

 

「老人とは言っても手は抜かないぜ」

キャモナスラッシュシェイクハンズ!!フレイム!!スラッシュストライク!!ヒーヒーヒー!!ヒーヒーヒー!!

 

映司の斬撃を避けた所に晴人がソードガンでスラッシュストライクを発動させながら飛び掛かってくる。

これもギリギリ避ける。

どうもどうやらライダー達は戦闘経験からハームズの戦闘力を大体察したらしい。

 

「俺を忘れて貰っちゃ困るぜ!!」

 

更に十六夜も乱入してくる。

 

「全く老人を寄ってたかって…………」

 

十六夜の拳を避けようとしたところで、

 

バインド、プリーズ!!

 

「なっ!?」

 

地面に魔法陣が現れ、鎖が中から飛び出す。

そして鎖はハームズを拘束する。

それは一瞬だったかもしれないが十六夜にとっては充分隙である。

 

「オラァ!!」

 

「ぬぅ!?」

 

十六夜の拳がハームズに直撃し、ハームズが吹っ飛ぶ。

 

「中々やるのう。しかしこれで数的に不利ではあるな。ワシも数を頼るとするか」

 

瓦礫の中から起き上がったハームズの手には多数の錠前が握ってあった。

 

「それはロックシード?何をするつもりだ?」

 

見た事のある晴人が怪訝な顔をする。

 

「言っただろう?ワシはヒマワリが好きだと」

バトルスタート!!バトルスタート!!バトルスタート!!

 

ハームズの握る複数のヒマワリロックシードが解錠される。

ハームズの背後に多数の次元の裂け目が現れる。

そこから小型インベスが多数現れる。

体色は緑、青、赤と様々である。

 

「さて、このくらいいてもお前達は問題無いだろう?」

 

「あぁそうだな」

 

多数のインベスを前にしても十六夜は嬉々として向かっていく。

映司、晴人もその後を続いて行くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方の黒ウサギ、霧崎、ラッテン。

今までは三人が戦ってるのを眺めてるだけで済みそうであったが多数のインベスが現れたからにはそうはいかない。

 

「な……なんなんですか、あの化け物!?」

 

「俺は知らない。ラッテンはどうだ?」

 

「私も知らないわよ」

 

とは言っても敵の正体なんて実際のところはどうでもいい。

倒せるかどうかが問題である。

見た感じは倒せそうではある。

それよりも二人が気になったのは、黒ウサギが過剰気味に驚いている事だ。

まるで何か想定外の事が起きたような。

何はともあれ、霧崎とラッテンはインベス達に向きなおる、

 

「さて、やりますか!!」

 

「楽だといいんだけどな!!」

 

ラッテンはハーメルケインでインベスを斬り裂いていく。

斬り裂かれたインベスは爆散していく。

それは霧崎の倒したインベスも同じだ。

霧崎は【ライズ】で身体能力を強化して殴り倒していく。

小型インベスでは“死の脅威”を返そうにも小さすぎてインベスを殺すほどでは無いのだ。

だから直接叩く必要がある。

霧崎が肉弾戦で倒したインベスもラッテンの倒したインベスと同じく爆散するのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

キャモナシューティングシェイクハンズ!!フレイム!!シューティングストライク!!ヒーヒーヒー!!ヒーヒーヒー!!

 

晴人はソードガンをガンモードにして、シューティングストライクでインベスを倒していく。

 

クワガタ!!ウナギ!!チーター!!

 

映司はガタウーターに姿を変えるとチーターレッグで高速移動しながらクワガタヘッドから電撃を放ち、ウナギの鞭で敵を薙ぎ払っていく。

 

「ウォラァァアァァ!!」

 

十六夜はインベスの群れを嵐の様に吹っ飛ばしていく。

そして、一体のインベスを持ち上げてハームズへと投げ付ける。

 

「ふん!!」

 

ハームズは第三宇宙速度を越える速さで投げつけられたインベスを軽く弾く。

そこへ、

 

チョーイイネ!!キックストライク!!サイコー!!

「ハァァァァァ!!」

 

晴人がキックストライクを放つ。

しかし、ギリギリで避けられ腕を掠めるだけだった。

さっきからこんな感じで続いている。

じり貧なのは向こうだろうが余裕そうにしているのが多少気掛かりであった。

 

「映司、晴人、少しいいか?」

 

「なんだい?」

 

「なんだ?」

 

互いに背中を合わせる様にして話す。

 

「あいつを倒す策があるんだが乗るか?」

 

「まぁ今のままだと膠着したままだからね」

 

「どんな策だ?」

 

「あいつの“体の性質”を利用する」

 

そして、打ち合わせを終えると十六夜は何処かにへと走っていく。

そして、映司と晴人がハームズの前に立ち塞がる。

 

「あの男一人で何をしようと言うのだ?」

 

「教えると思うかい?」

 

「そうじゃな。むしろ、あいつのいない間にお前達を全滅させる方がいいな」

 

「やれるものならやってみろ!!」

 

互いに武器を構え向かっていくのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「十六夜さんは何処に行く気なのでしょう?」

 

「さぁね~。でも、嫌な予感しかしないのは確かね」

 

「だな。あいつの事だ。ろくでも無い事を考えてるんだろ」

 

三人が話しながらインベスを倒していると援軍が現れた。

否、遅れていたメイド組が追い付いてきた。

 

「遅くなったな!!」

 

登場と同時にレティシアが影でインベスを斬り刻んでいく。

 

「ちょ、何よ。この化け物!!」

 

ペストが衝撃波でインベスを吹っ飛ばしていく。

そして、水がインベスを押し流す。

白雪姫の力である。

ついでにジンも合流する。

 

「おい、言付けがある!!」

 

おそらく十六夜が白雪姫に残したのだろう。

 

「『ちょっと面倒くさくなってきたから、建物壊してスッキリする』だそうだ」

 

「「はぁ!?」」

 

黒ウサギと霧崎が驚きの声をあげた直後に天井が崩れ始める。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

タカ!!クジャク!!コンドル!!タージャードルー!!

ウォーター!!ドラゴン!!ザバザババシャーン!!ザブンザブーン!!

 

映司はタジャドルコンボへ、晴人はウォータードラゴンに姿を変える。

 

「フィナーレだ!!」

 

「姿を変えたくらいでどうなるというのだ!!」

 

「変わるよ、色々とね!!」

 

晴人の方へと飛び掛かろうとしたハームズに向けて映司は翼を広げ、飛行しながらタジャスピナーから炎弾を放つ。

 

「これくらいで!!」

 

「なら、これはどうかな?」

チョーイイネ!!スペシャル!!サイコー!!

 

炎弾を弾いていたハームズに向け、晴人は出現した巨大な尾を振り降ろす。

地面に叩き付けられたハームズが起き上がろうとした所に更に魔法を放つ。

 

バインド、プリーズ!!

チョーイイネ!!ブリザード!!サイコー!!

 

水の鎖がハームズを拘束したと思うと、冷気がハームズの周囲を凍結させる。

 

「こんな物で拘束し切れると、」

 

「思っちゃいないさ。だからこうするのさ」

 

キャモナスラッシュシェイクハンズ!!ウォーター!!スラッシュストライク!!ザバザババシャーン!!ザバザババシャーン!!

 キャモナスラッシュシェイクハンズ!!ウォーター!!スラッシュストライク!!ザバザババシャーン!!ザバザババシャーン!!

 

タカ!!クジャク!!コンドル!!ライオン!!トラ!!チーター!!クワガタ!!ギガスキャン!!

 

晴人は両手にソードガンを構えてスラッシュストライクを発動させる。

晴人がハームズを拘束している間にタジャスピナーにメダルをセットしていた映司はスキャナーを取り出してスキャンする。

 

「セイヤー!!」

「ハァァァァァ!!」

 

二人の攻撃が同時に放たれる。

軌道としては二人の攻撃がぶつかる様に。

そしてぶつかる地点にはもちろん拘束されたハームズがいる。

水の魔力に加えて冷気を纏った二発の斬撃波と七枚のコアメダルの力を纏った不死鳥の炎がぶつかる。

その激しい温度差に強烈な風と衝撃波が巻き起こる。

衝撃波によって残っていたインベスも全て弾き飛ばされる。

同時に天井が崩れ落ちる。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ったく、無茶苦茶するな……あいつら」

 

瓦礫の山の中で唯一何も落ちてこなかった場所で霧崎が呟く。

もちろん霧崎が【弱者のパラダイム】で全ての瓦礫をそらし、衝撃波をズラしたからなのだが。

背後には黒ウサギ達がいる。

周囲を見渡すと十六夜と変身を解除した映司と晴人が膝をついた“ヒビ”だらけのハームズ前に立っていた。

 

「………もう隠居してな、じーさん」

 

ハームズを十六夜が指でつくと、ハームズの体は割れ崩れた。

 

「どういう事だ?」

 

「ガラスは急激な温度変化に弱い。映司と晴人が逆の属性で攻撃し、外気を流し込めば割れる」

 

どうもどうやら三人は戦っている間にハームズの体がガラスという事を気付いていたようだ。

問題は誰がこんな物を用意したかだが。

 

「これを用意したのは、このゲームの主催者である、黒ウサギお前だろ?」

 

「っ!!」

 

映司を除いた全員が驚く。

まさか身内が仕掛けたとは思って無かったのだろう。

 

「流石は十六夜さんですね。そう全てご推察の通り…………今回のゲームは黒ウサギが仕組んだものです。……………“ノーネーム”を試す為に」

 

今回のゲームは白夜叉の協力の元に仕組まれたものの様だ。

仲間も増え、勢力を増したコミュニティではあるが過信は油断を生む。

だから一度力量を測ろうとなったわけだ。

ハームズも白夜叉が力を注いだ物のようだ。

ただハームズがロックシードを使ったのだけは黒ウサギも聞いて無かったらしく本気で驚いたらしい。

後で聞く事だがこれは白夜叉が実験のつもりで持たせていたらしい。

 

「黒ウサギの一存で皆様を危険な目に遇わせ、欺き続けたこと、深くお詫びいたします!!本当に申し訳ございませんでしたっ!!」

 

頭を下げる黒ウサギ。

とは言っても謝られる様な事ではない。

それよりも聞きたい事はある。

 

「黒ウサギちゃんから見て、俺達はどんな評価だった?」

 

「あ、えっと………戦力はともかくとして、知力やチームワークはまだまだ箱庭全体からすれば駆け出し同然に近いと言えるでしょう………けれど以前より格段に成長していると見えました」

 

 

「どうもこれからも“ノーネーム”をよろしくお願いします!!」

 

黒ウサギの顔に浮かぶのは笑顔だった。

 





乙三巻終了!!

全ては黒ウサギが仕組んだ事だったのさ!!

原作より善戦してる様に見えるのはメンバーが直接戦闘寄りだからです。

それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。



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援軍と集結と地獄の業火
探偵と高校生と絆が繋ぐ物



今回からは本編の続きです
主に仮面ライダー達のところです。




 

「翔太郎さん、弦太朗君!?何故ここに!?」

 

「見れば分かるだろ?ディケイドの力で俺達も呼ばれたって事だ。ただし、俺達は“一時的”だろうけどな」

 

「俺も力を貸すぜ、先輩!!」

 

現れた二人の男は左 翔太郎と如月 弦太朗だった。

 

「でも、どうしてこの二人なんだ?」

 

「おそらくお前達と関わりが深いからこそ繋がったんだろ」

 

晴人の疑問に士が答える。

翔太郎は前に出ると向かってくる敵を見る。

 

「さて、見た感じ喋ってる場合でも無さそうだな」

 

「そうだな。倒す相手はあいつらだけじゃないからな」

 

「仲間が一人、別の敵と戦っているんだ。俺達はそこに向かう途中であいつらが立ち塞がって来たんだ」

 

「つまり、ダチのピンチに駆け付けるのを邪魔して来たってことだな」

 

「まぁそういう事だね」

 

「ふん、それだけでも無さそうだがな」

 

「なら、さっさと片付けるぜ。仲間を助けるんだろ?」

 

「戯言を!!幾ら人数が増えようと貴様らごときに我々大ショッカーを倒せるものか!!」

 

アポロガイストが叫び、戦闘員が一気に押し寄せてくる。

 

「いいや、人数なんて関係ねぇ!!俺達仮面ライダーはダチの為なら幾らだって戦えるんだ!!」

 

「さぁ、行こうぜ!!」

 

「「あぁ!!」」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

士はライドブッカーをガンモードにして押し寄せてきた戦闘員に向かって発砲する。

発砲しながらもディケイドドライバーを腰に巻き、カードを取り出し入れる。

 

「変身!!」カメンライド!!ディケイド!!

 

幾つもの残像が士へと重なっていき、姿をディケイドへと変える。

ライドブッカーをソードモードに変えて戦闘員達を斬り倒していく。

 

「ハァ!!」

 

「シャアァァァァァァ!!」

 

飛び掛かってきたシャムネコヤミーの爪と斬り合う。

何回か打ち合った後に重い一撃を加えて後退させ、ベルトにカードを投げ入れる。

 

アタックライド、ブラスト!!

 

ライドブッカーガンモードの銃口が増えて弾がシャムネコヤミーに撃ち込まれていく。

更にカードを投げ入れる。

 

ファイナルアタックライド!!ディ、ディ、ディケイド!!

 

ライドブッカーをソードモードにすると、士とシャムネコヤミーの間にも幾つものカード型のエネルギー体が現れる。

 

「ハァァ!!」

 

それに向けて斬り掛かると斬撃波がエネルギー体を通り抜け、強化され進んでいき、ブラストで怯んでいたシャムネコヤミーに直撃する。

 

「シャァァ!?」

 

ディメンションスラッシュが直撃したシャムネコヤミーは叫び声を上げながら爆散した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「オラァ!!」

 

翔太郎は戦闘員に蹴りを入れながらダブルドライバーを腰に巻く。

斬り掛かってくるダスタードの剣を避け、帽子を押さえながら“相棒”に話しかける。

 

「準備はいいか、フィリップ?」

(何時でもいいよ。世界が離れていても、あの銀色のオーロラが僕らを繋いでくれてるみたいだしね)

 

「じゃあ、問題ねぇな」

(そうだね)

 

言いながらガイアメモリを取り出す。

肘打ちを屑ヤミーに当て怯ませ、集団に蹴り込んで隙を作る。

 

(さぁ、行こうか翔太郎!!)サイクロン!!

「あぁ、行こうぜフィリップ!!」ジョーカー!!

 

(変身!!)「変身!!」

 

叫ぶとベルトの右側にサイクロンメモリが転送されてくる。

それを挿し込み、左側にジョーカーメモリを挿し込み、ベルトを開く。

 

サイクロンジョーカー!!

 

音声が鳴り響き、翔太郎の体が風に包まれる。

そして、姿を右が緑、左が黒のライダー、仮面ライダーW サイクロンジョーカーへと変える。

右半身をフィリップが、左半身を翔太郎が操る二人で一人の仮面ライダー、それが仮面ライダーWである。

 

「「さあ、お前達の罪を数えろ!!」」

 

二人が声を揃えて叫ぶ。

そこにファントムのリザードマンが斬り掛かってくる。

Wはそれをヒラリと避け、逆にカウンターの拳を叩き込む。

 

「オラァ!!」

 

「ぐっ………」

 

更に青色のガイアメモリを取り出し、ジョーカーメモリと取り換える。

 

サイクロントリガー!!

 

左側が青くなり、その手に銃が現れる。

サイクロントリガーは速射に優れる形態である。

一撃一撃の威力は弱いが戦闘員相手ならこれで十分である。

 

「ハァァ!!」

 

戦闘員達を撃ち抜きながらもリザードマンにも当て、怯ませる。

 

サイクロンジョーカー!!

 

再びサイクロンジョーカーへと姿を変える。

そして、ベルトからサイクロンメモリを取り出す。

マキシマムスロットにサイクロンメモリを挿し込み構える。

 

「行くぜ」サイクロン!!マキシマムドライブ!!

 

「「サイクロンエクストリーム!!」」

 

二人の声が重なる。

タイミングを合わせる為に技名を叫んでいるのだ。

足に風を纏わせ飛び掛かる。

リザードマンが炎弾を放ってくるが構わずに蹴りを放つ。

 

「ドラァ!!」

 

風を纏った変則的な軌道の蹴りがリザードマンと戦闘員を蹴り倒していく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ふん!!」

 

「ハッ!!」

 

映司はアンクと共に戦闘員達を殴り飛ばしていく。

戦闘員達を倒しながらオーズドライバーを腰に巻く。

アンクはそれを確認すると叫ぶ。

 

「映司!!」

 

「あぁ!!」

 

アンクが映司に向かってメダルを三枚投げる。

映司は投げられたメダルを掴み、このやり取りに懐かしさを感じつつ、メダルをベルトに入れて腰のオースキャナーを取る。

 

「変身!!」タカ!!トラ!!バッタ!!タトバッ、タトバ、タットッバ!!

 

ベルトを傾け、オースキャナーでメダルをスキャンする。

円状の物体が頭、胴、足を中心に複数現れて回る。

そして、頭の前には赤、胴の前には黄、足の前には緑の円が止まり、胸の前で一つになって胸に重なる。

そして、姿を仮面ライダーオーズ タトバコンボへと変える。

その背後でアンクが姿を怪人態に変える。

 

「オラァ!!」

 

炎弾と炎の羽で戦闘員達を吹っ飛ばしていく。

そこにピクシス・ゾディアーツが現れる。

羅針盤座のピクシスは飛び道具などの飛んで行く向きを操れる。

炎弾があらぬ方向へと飛んでいく。

それを確認したアンクは近付いて直接殴り掛かる。

 

「ぐぁ!?」

 

「飛び道具を曲げるなら直接叩くだけだ」

 

更にそこへメダジャリバーで敵を斬り裂いていた映司が加わり、ピクシスに斬り掛かる。

メダジャリバーに三枚のセルメダルを込めて、オースキャナーでスキャンする。

 

トリプル!!スキャニングチャージ!!

「ハァァァァセイヤァァァァァ!!」

 

「うわぁぁぁ!?」

 

すれ違い様に斬られ、真っ二つにされたピクシスは悲鳴を上げながら爆散した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「行くぜぇぇぇ!!」

 

弦太朗は屑ヤミーに殴り掛かり、マスカレイドを蹴り飛ばし、ダスタードに頭突きを叩き込む。

ある程度戦闘員を吹っ飛ばすと腰にフォーゼドライバーを巻く。

ドライバーにある四つのスイッチを右側二つを左手で、左側二つを右手で押す。

 

3!!

2!!

1!!

「変身!!」

 

カウントダウンと共にドライバー右側のレバーを引き、手を上に挙げる。

体が光に包まれ、煙が周囲に放たれる。

そして、姿を仮面ライダーフォーゼ ベースステイツに変える。

 

「宇宙……キター!!」

 

溜めを入れてから、両手を挙げて叫ぶ。

 

「仮面ライダーフォーゼ、如月弦太朗!!お前達全員とタイマンはらせて貰うぜ!!」

 

頭を撫でる様な動作の後に胸を叩き、腕を敵側へと向けて叫ぶ。

そして、ベルトにセットされたスイッチを押す。

 

ロケットオン!!

 

電子音声と共に右手にロケットが現れる。

そして、ロケットの勢いで敵に殴り掛かる。

 

「ライダーロケットパンチ!!」

 

戦闘員が吹き飛ぶ中でコックローチドーパントが高速移動しながら粘液を吹き掛けてくる。

 

「うぉぉぉゴキブリか!?」

 

ロケットの勢いで避けながら叫ぶ。

その間に△部分のスイッチを入れ換える。

 

「お次はこれだ」ホッピングオン!!

 

ロケットを解除しながらホッピングスイッチをオンにする。

ロケットモジュールが右手から消えて左足にホッピングモジュールが現れる。

ホッピングで戦闘員達の頭を跳ねながらコックローチの攻撃を避ける。

変則的な動きで翻弄し、コックローチに蹴りを入れる。

コックローチの動きが止まった所でスイッチを入れ換え、オンにする。

 

クローオン!!

チェーンソーオン!!

スパイクオン!!

シザースオン!!

 

右手に爪、右足にチェーンソー、左足にスパイク、左手に鋏が現れる。

更にベルトのレバーを引く。

 

クロー!!チェーンソー!!スパイク!!シザース!!リミットブレイク!!

「ウォォォォォォ!!」

 

電子音が響くと弦太朗は手足を広げ、手裏剣の様に回転しながら敵へと突っ込んでいく。

コックローチと戦闘員は四つのモジュールによって次々と斬り裂かれて爆散していった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

コネクトプリーズ!!

「ハァ!!」

 

晴人は魔法陣に手を突っ込むと中からソードガンを取り出してグールを斬り裂いていく。

 

ドライバーオン!!

 シャバドゥビタッチヘンシーン!!

  シャバドゥビタッチヘンシーン!!

 

ドライバーから短縮された呪文が鳴り響く。

ソードガンから銀弾をばら撒いて隙を作る。

 

「変身!!」フレイム!!プリーズ!!ヒー、ヒー、ヒーヒーヒー!!

 

左手の指輪のバイザーを下げて、ベルトにかざす。

魔法陣が現れ、オウムヤミーの放つ炎を吸収しながら晴人の体を通り抜けていく。

完全に魔法陣が通り抜けると、姿は仮面ライダーウィザード フレイムスタイルへと変わる。

 

「さぁ、ショータイムだ!!」

 

飛び掛かってくるダスタードを斬り飛ばし、突いてくるグールの槍を蹴り上げ、右手の指輪を変える。

 

ビッグプリーズ!!

 

晴人の前に魔法陣が現れる。

それに手を入れると腕が巨大化する。

巨大化した腕で周囲の戦闘員を薙ぎ払う。

そこへ、オウムヤミーが飛行しながら襲い掛かる。

攻撃をギリギリ避けながら銃弾を放つが避けられる。

 

「なら、これだ」バインドプリーズ!!

 

地面に複数の魔法陣が現れ、そこから鎖が放たれてオウムヤミーを捕まえ、地に落とし、縛る。

ソードガンのハンドオーサーを開いて左手の指輪をかざす。

 

キャモナスラッシュシェイクハンズ!!フレイム!!スラッシュストライク!!ヒーヒーヒー!!

「ハァァァァ!!」

 

炎の斬撃波が放たれ、オウムヤミーは斬り裂かれ、爆散するのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

複数の爆発音が同時に響く。

周囲の戦闘員を粗方片付けたライダー達が並び立つ。

 

「くっ……その程度で調子に乗るなよ!!まだまだ貴様らと我々の人数差は圧倒的なのだ!!」

 

「それはどうかな?お前ら、受け取れ!!」

 

士の腰のライドブッカーから複数のカードが宙に放たれ、W、映司、弦太朗、晴人の手に収まる。

そして、姿を変える。

 

「これは……ライダーメモリ?」

「へぇ…これは興味深いね」

 

「ライダーメダル?」

 

「ライダースイッチ?」

 

「ライダーリング?」

 

「俺達仮面ライダーが繋いだ絆の力を見せてやる!!」

 

映司達はよく分からないまま受け取った物を使用する。

 

アクセル!!

バース!!プロトバース!!アクア!!

メテオ!!ナデシコ!!

 

アクセル!!マキシマムドライブ!!

バース!!プロトバース!!アクア!!スキャニングチャージ!!

メテオ!!ナデシコ!!リミットブレイク!!

ビースト!!プリーズ!!ライダライダライダー!!

 

音声が鳴り響いた次の瞬間、アイテムは光りとなって彼らの前に落ち、人型へと姿を変える。

否、“仮面ライダー”へと姿を変える。

彼らの前には

仮面ライダーアクセル

仮面ライダーバース、仮面ライダープロトバース、仮面ライダーアクア

仮面ライダーメテオ、仮面ライダーなでしこ

仮面ライダービースト

が姿を現したのだ。





ライダー大集合!!
平成二期ライダーここに集結です!!

WとフォーゼはMOVIE大戦2010のスカル
その他はアルティメイタム、ウィザード特別編のライダー達
と同じ様な感じです。
つまりWとフォーゼ以外は人格とスペックは同じだけど本物では無い存在です。
とは言ってもこれで“全員”では無いですが。
ライダーカードがアイテム変化したのはノリです。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。



仮面ライダー大戦は平成vs昭和要素さえなければSH大戦系列とは比べ物にならないくらいよかったです。
具体的に言ったらラスト十分くらいがいらない。
あと、翔太郎呼ぶならフィリップ呼べよ!!的な感じでした。



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集結と列車と繋がる時間

ディケイド

W

アクセル

オーズ

バース

プロトバース

アクア

フォーゼ

メテオ

なでしこ

ウィザード

ビースト

十二人の仮面ライダーが並び立つ。

怪人達はその姿に一瞬歩を止める。

だが、それは一部だけだ。

 

「ええぃ!!高々十二人程度集まったところで我々を倒せる物か!!」

 

アポロガイストの叫びに我に帰る。

その背後のクライス要塞も砲台をライダー達に向ける。

 

『面白そうだね!!僕ともっと遊んでよ!!』

 

ネオ生命体の声が響き渡ると同時に一斉に砲火が放たれる。

 

「いいぜ、見せてやるよ。俺達仮面ライダーのショータイムを!!」

 

コネクト、プリーズ!!

 

十二人の仮面ライダーの背後に巨大な魔法陣が現れ、彼らの半数はいつの間にかバイクに跨がり爆炎の中を進んで行く。

 

「さぁ、振り切るぜ!!」

 

仮面ライダーアクセルはバイクに乗らず、周囲の戦闘員をエンジンブレードで斬り倒していく。

エンジン音を鳴り響かせながら回転斬りをする。

 

アクセル!!マキシマムドライブ!!

 

そして、マキシマムドライブを発動させ、バイクモードに変形し、体に炎を纏わせて敵の集団へと突進する。

牽かれた敵はAのマークを浮かべながら爆散していく。

その背後をハードボイルダーに乗ったWが走っていく。

 

ルナトリガー!!

 

右半身が黄、左半身が青のルナトリガーに姿を変える。

トリガーマグナムから放たれる弾丸はルナの力によって軌道が変化して敵を撃ち抜いていく。

 

トリガー!!マキシマムドライブ!!

「「トリガーフルバースト!!」」

 

トリガーマグナムにトリガーメモリを挿入してマキシマムドライブを発動させる。

放たれた無数の弾丸は軌道を変えながら正確に敵を貫いていく。

 

「さぁ、ランチタイムだ!!お前ら全員俺が喰ってやるぜ!!」

 

仮面ライダービーストはビーストドライバーからダイスサーベルを取り出してグール達を斬り裂く。

 

ゴー!!ドッドドド、ドルフィ!!

 

ビーストドライバーに指輪をセットするとビーストの肩にドルフィマントが現れる。

そこから水流を放ってグールを吹き飛ばす。

更にダイスサーベルのサイコロ部分を回転させ、指輪をセットする。

 

4!!ドルフィ!!セイバーストライク!!

「オラァ!!」

 

ダイスサーベルを振るとイルカ型のエネルギー体が四つ、敵に突進し、打ち倒していく。

その中でグールは魔法陣となってビーストドライバーに吸収されていく。

 

「映司!!これに変えとけ!!」

 

「おう!!」ライオン!!ウナギ!!コンドル!!

 

映司はアンクに投げ渡されたメダルでラウドルへと姿を変える。

ライオディアスの熱波で敵を怯ませ、電気ウナギの鞭とコンドルレッグの爪で戦闘員を倒していく。

 

ライオン!!トラ!!チーター!!ラトラタ、ラトラーター!!

 

そして、ラトラーターコンボに姿を変えてトラクローで敵を高速移動しながら斬り裂いていく。

それを見て近くにいたビーストが反応する。

 

「おー!!お前もライオンか!!」

 

「あっ、はい」

 

言いながらも二人は敵を斬っていく。

 

「なら、合わせ技と行こうぜ」

 

「え?はい、分かりました」

 

多少困惑しつつ同意する。

同時に飛び掛かってきたカマキリヤミーをトラクローとダイスサーベルで吹っ飛ばす。

 

キックストライク!!

スキャニングチャージ!!

 

同時に必殺技を発動する。

ビーストは飛び上がり、映司はトラクローを構える。

ビーストの前には火の輪が、映司の前には円状のエネルギー体が現れる。

 

「セイヤァァァ!!」

「オラァァァァ!!」

 

映司が高速移動しながら円を潜り抜けていき、トラクローで斬り裂いた後にビーストの蹴りがカマキリヤミーにヒットし爆散する。

 

「割って挿す!!」

N!!  マグネットオン!!

  S!!マグネットオン!!

 

右端と左端にマグフォンを分割したNマグネットスイッチとSマグネットスイッチを入れ、スイッチをオンにする。

そして、姿をフォーゼ マグネットステイツへと変える。

 

ホイールオン!!

 

更にホイールスイッチをオンにする。

ホイールモジュールが足に現れる。

これによって鈍重なマグネットステイツに機動力を確保する。

 

「オラオラオラァ!!」

 

肩のマグネットキャノンを乱射し、移動砲台として敵を撃ち倒していく。

 

ロケットオン!!

「なでしこロケットパンチ!!」

 

その背後で仮面ライダーなでしこが右腕にロケットモジュールを出現させ、ダスタード達を殴り倒していく。

 

ウォーター、プリーズ!!スイースイースイー!!

 

晴人は姿をウォータースタイルに変える。

 

リキッド、プリーズ!!

 

リキッドの魔法によって体を液状化させて敵の攻撃を擦り抜けながら攻撃していく。

 

「ハァァ!!」

 

仮面ライダーアクアが両手で屑ヤミーに向けて張り手を放つ。

衝撃波が水の波紋の様に背後の戦闘員達にも伝わり吹っ飛ばしていく。

 

クレーンアーム!!

「行くよ、後藤ちゃん!!」

 

「はい、伊達さん!!」セルバースト!!

 

プロトバースがクレーンアームで多量の敵を縛りあげてから上空へと投げ飛ばす。

そこへ向けてバースバスターのセルバーストがバースによって放たれた直撃し、爆散する。

 

サターン!!レディ?

OK!!サターン!!

「ホワチャァァ!!」

 

仮面ライダーメテオはメテオギャラクシーを使い、土星を模したエネルギー体を放つ。

土星の輪によってマスカレイド達は斬り裂かれ、爆散する。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「待て待て待てぇ!!俺達抜きで勝手に盛り上がってんじゃねぇよ!!」

 

 

突如声が響いたと思うと上空にヒビが入り、空間に穴が開く。

そこから線路が伸びていき、穴から時の列車デンライナーが出てくる。

 

「やっと来たか」

 

それを見ながら士が呟く。

同時にデンライナーから幾つかの人影が飛び降りてくるのが見えた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

デンライナー車内。

オーナーは呆れた顔で溜め息を吐いていた。

 

「全く……“道標”があったとはいえ箱庭に入るなんて無茶を要求してきますね~」

 

“道標”とはライダーカードの事である。

士は空白のライダーカードを使い、援軍を頼んでいたのだ。

そして、士の存在そのものを頼りに本来なら難しいのだが箱庭へ狙った時間に辿り着いて見せたのだ。

それでも箱庭に入る事自体がイレギュラーではあるのだが。

 

「これは上層の方々に文句を言われるかもしれませんね」

 

そんな事を呟きながらも激しく揺れる車内でオーナーは立っているのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

デンライナーは全ての武装を展開してクライス要塞へと攻撃を仕掛けていた。

それによってライダー達に放たれていた砲撃が止まる。

更にデンライナーに乗っていた者達が加勢する。

 

ガンフォーム!!

アックスフォーム!!

ロッドフォーム!!

ストライクフォーム!!

ライナーフォーム!!

ソードフォーム!!

 

そんな電子音と共に飛び降りて来た面々に鎧が纏われる。

 

「お前、撃つけどいいよね?答えは聞いてない!!」

 

リュウタロスが直接変身した電王ガンフォームが言ってポーズを取る。

 

「バンバンバーン!!」

 

敵の集団に向けてデンガッシャーガンモードで撃つのだが、撃つ前に口で言ってる為、半数ほどに避けられている。

 

「なんで避けるのさ!!」

 

「リュウタロス、撃ってくると分かってたらそりゃ避けるよ」

 

良太郎の変身する電王ライナーフォームがリュウタロスに向けて言いながらへっぴり腰ながらもデンカメンソードで敵を斬っていく。

 

「俺の強さにお前が泣いた!!」

 

キンタロスが直接変身したアックスフォームが四股を取りながら言う。

そして、向かって来た敵を突っ張りで吹っ飛ばす。

 

「俺、参じょ「イー!!」

 

「邪魔すんじゃねぇよ!!」

 

モモタロスが直接変身したソードフォームはポーズを遮った戦闘員をデンガッシャーソードモードで斬り飛ばし、再びポーズを取り直す。

 

「俺、参上!!………くぅ~俺やっぱり格好いいなぁ……」

 

「先輩、それを言ったら全部台無しだよ」

 

「うるせぇ!!余計な事を言うんじゃねぇよ、亀公!!」

 

「お前、僕に釣られてみる?」

 

モモタロスの文句を無視しながらウラタロスが直接変身したロッドフォームはポーズを取り、デンガッシャーロッドフォームで敵を薙ぎ払う。

 

「テディ!!」

 

「おう!!」

 

NEW電王、野上幸太郎が手を出すと青いイマジン、テディが姿を剣、マチェーテディに変える。

幸太郎はマチェーテディの剣先をオーズと交戦するメデューサレジェンドルガに向け、剣先にある銃口から発砲する。

 

「うぉ!?」

 

メデューサレジェンドルガがいきなり吹き飛んで驚き、映司は攻撃が飛んできた方向を見る。

そこで変身している状態とはいえ、懐かしい顔を見付ける。

 

「幸太郎!!」

 

「久しぶりだな、映司」

 

「また繋がったね、俺達の時間が」

 

「あぁまた一緒に戦おう」

 

そして、映司と幸太郎はメデューサレジェンドルガへマチェーテディとメダジャリバーの剣先を向ける。

 

「幸太郎、カウントは?」

 

「3……いや、カウントするまでも無い」

 

尋ねるテディにはっきりと答える。

そしてライダーパスを取り出す。

映司もメダジャリバーにセルメダルを三枚入れる。

 

フルチャージ!!

トリプル!!スキャニングチャージ!!

 

同時にスキャンする。

剣に力を込め、向かってくるメデューサレジェンドルガへと駆け出す。

 

「ハァァァァ!!」

「セイヤァァ!!」

 

「キャ……ガァァァ!?」

 

擦れ違い様に同時に斬る。

二つの剣によって斬り裂かれたメデューサレジェンドルガは悲鳴を上げて爆散した。

 

「わぁ~ライオンさんだ!!」

 

リュウタロスはアントライオンレジェンドルガと戦っていた。

キャッキャッと声をあげながらも動きを封じる様に撃つ。

撃ちながら近付き、隙を付いて蹴りを入れる。

怯んだところでライダーパスをベルトにかざし、投げ捨てる。

 

フルチャージ!!

「オリャア!!」

 

銃口へとエネルギーが集まり、収束していく。

引き金を引き、エネルギー弾が放たれ、至近距離で直撃したアントライオンは叫ぶ暇も無く爆散した。

 

「行くで!!」フルチャージ!!

 

キンタロスはガーゴイルレジェンドルガに重い一撃を加えて怯ませ、ライダーパスをベルトにかざす。

 

「ちゃんとしまっとかんとな」

 

デンガッシャーアックスモードの刃に力が溜まる中でライダーパスを懐にしまっておく。

飛び掛かり、斧によってガーゴイルを真っ二つにする。

 

「ギャァァァ!?」

 

「ダイナミックチョップ!!」

 

ガーゴイルが爆散した後に技名を言うのであった。

 

「行くよ」フルチャージ!!

 

ウラタロスはライダーパスをベルトにかざすと、デンガッシャーをマンドレイクレジェンドルガへと投げ付ける。

 

「ハァァァァ!!」

 

突き刺さり、動きが止まった所へとデンライダーキックを放ちマンドレイクを仕留めるのだった。

 

「行くぜ、良太郎!!」

 

「うん、モモタロス!!」

 

二人でマミーレジェンドルガを斬り飛ばすと必殺技を発動する。

 

「電車斬り!!」

 

列車の如くのオーラを纏いながらデンカメンソードでマミーを斬る。

そこへ、本体から分離したデンガッシャーの刃にが襲い掛かる。

 

「俺の必殺技、パート2!!」

 

刃は弧を描きながらマミーを斬り刻み、爆散させるのだった。

 

 




騒がしい奴らも参戦!!
ゼロノス組はいません。
変身する度に忘れられるなどがありますので。

幸太郎と映司のやり取りはレッツゴーを見ていれば分かると思います。

次回からは別の場所にも視点が行くと思います。

それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。


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紅い羽と白い羽と絶望の金羽

「あぁん?お前、あの時のトサカ野郎か?」

 

「あ?何だお前は?」

 

モモタロスは見掛けたアンクをマジマジと眺める。

互いに以前会った時とは違う姿なのですぐには分からない。

だが、声を聞き気付く。

 

「お前……あの時のか!!」

 

「やっぱりお前か、トサカ野郎!!何で手羽先野郎みたいになってるんだよ!!」

 

「誰がトサカ野郎だ!!それに手羽先野郎ってなんだよ!!」

 

「あぁん?トサカ野郎はトサカ野郎だ!!」

 

睨み合って言い合う。

互いに変身した状態である為、喧嘩が始まれば止めるのはかなり面倒くさい。

そこで白い羽が舞う。

 

「呼んだか、家臣達よ?」

 

 

「「呼んでねぇ!!」」

 

 

「ぬぅ!?」

 

突然現れたジークだが、モモタロスとアンクの眼中には無かった。

二人は同時に殴り飛ばすのだった。

 

「だーアンク!!そんな事してる場合じゃないだろ!!」

 

「モモタロス、喧嘩してる場合じゃないよ!!」

 

「うるせぇ!!止めんな!!」

 

「止めるな良太郎!!こいつは一発殴らねぇと気が済まねぇ!!」

 

「いい加減にしろ!!」

 

「いい加減にして!!」

 

見かねた映司と良太郎が止めに入り、二人を引き離す。

 

「モモタロスがごめんね」

 

「いや、こちらこそ」

 

映司と良太郎は一言言い合ってから戦線に戻るのだった。

一方、殴り飛ばされたジークは立ち上がりベルトを腰に巻く。

 

「ふむ……私を戦うとするか、変身!!」

ウィングフォーム!!

 

ジークの周囲をパーツが回り、装着されていく。

 

「降臨……満を持して!!」

 

白い羽を舞い散らしながらポーズを取るのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

マクスウェルと霧崎、海東の戦いは激化していた。

空間移動して攻撃を仕掛けるマクスウェルを霧崎が“死の脅威”を視る事によって察知し、海東と召喚されたメイジ三人が攻撃を仕掛ける。

マクスウェルは即座に空間移動をし、それらを避けるのだがタイミングが遅れる。

多少ではあるが攻撃を受けて傷が付く。

霊格が少し傷付いているマクスウェルは普段なら即座に再生する傷が遅々と再生するのを忌々しく見る。

マクスウェルは苛立っていた。

“境界門”を破壊し、あと一歩でウィラが手に入ると思ったら空間移動の能力を持つ者が現れ台無しにたあなったのだ。

苛立たない筈が無いのだ。

 

「随分と苛立ってる様だね、マクスウェル」

 

「ふん……花嫁を手にする直前で離されたら誰だって苛立つ物だ!!」

 

言葉と共に熱量を操作して温度差で爆発を起こす。

だが、

 

「返すぜ!!」

 

いつの間にか背後に回っていた霧崎に何かをぶつけられ、その影響か自身で発生させた爆発が全て自分へと帰ってきた。

 

「ぬぅぅぅぅ!!」

 

普段なら背後に回られる前に気付く物である。

しかし、今はそれを阻害する物がある。

ウィラの側でディーンの肩に乗って笛を奏でるラッテンだ。

ラッテンが奏でる笛の音がマクスウェルが気配を察知するのを鈍らせているのだ。

これ以上マクスウェルが何かする前に一気に畳み掛ける為に霧崎達は構える。

 

 

「何やら騒がしい時に来ちまったみたいだな………」

 

 

チャックの開く音がしたと思うと、マクスウェルと霧崎達の間の中心点辺りに次元の裂け目が現れ、中から白い仮面ライダーが出てくる。

その後ろには四体の怪人の姿がある。

白い仮面ライダーが手に持っていた錠前を閉じると裂け目も閉じる。

 

「君は何者だい?」

 

「エターナル……仮面ライダーエターナルだ」

 

海東の問いに大道が答える。

 

「貴様が何者かなど、どうでもいい!!この場に現れ何をするつもりだ!!」

 

「なぁに……ちょっとウィラ=ザ=イグニファトゥスを頂きに来ただけだ」

 

直後にマクスウェルは大道へと攻撃を仕掛けた。

いきなり名前を出されたウィラはビクリ、と肩を震わす。

 

「貴女人気者ね~」

 

「う、嬉しくない!!」

 

「でしょうね。これはさすがにちょっと同情するわ」

 

割りと本気で同情する様にウィラを見る。

言いつつもラッテンはラッテンでハーメルケインを構える。

 

「さて、そろそろ私も戦いますか!!行くわよ、ディーン!!」

 

ディーンが頷く様にするのを見て満足気に立ち上がる。

マクスウェルが大道に攻撃を仕掛けた直後に背後の怪人達も動き出していた。

ルナ・ドーパントはマスカレイドを生み出して周囲に放つ。

ヒート、メタル、トリガーはウィラ確保の為に動く。

マスカレイドとドーパントはメイジ達が止めているが、さすがに人数差で全員止めれたわけでは無いようだ。

メタル・ドーパントがラッテン達の方へと向かって来ている。

ラッテンはディーンから降りてハーメルケインで斬り掛かる。

 

「ハァァ!!」

 

「テヤァァァァ!!」

 

堂本と数回打ち合うがそれだけでラッテンは不利を悟る。

 

「こりゃあ………マズイわね」

 

敵の武器は鉄棒が変形した物ではあるが、戦闘能力は明らかに堂本の方が上である。

さすがに今のラッテンでは相手にするのは厳しい。

元々直接戦闘が専門というわけでも無いのもあるが。

隙を見てディーンの肩に跳び乗る。

次はディーンが堂本へと攻撃を仕掛ける。

流石にディーンの怪力は受け止め切れないのか拳を受けた堂本は多少後ろに後退する。

 

「面白いじゃねぇか!!」

 

メタルメモリによって体は頑丈な上に身体能力もかなり上がってる。

ディーンの怪力を知っても堂本は正面から向かってくる。

今度はディーンの拳を正面から受け止めず、鉄棒を横薙ぎに振るって拳をそらす。

だが、それはそれで多少は負担があるのか一瞬動きを止める。

 

「ハァァァ!!」

 

そこへラッテンが突きを叩き込む。

小回りの利かないディーンを補う様にラッテン自身が攻撃を仕掛ける。

 

「ふん」

 

マクスウェルの攻撃を大道はエターナルエッジで受け止める。

感情に任せた攻撃だったからか、単調で容易く受け止めれた。

 

「我が花嫁に手を出そうと言うのか!!」

 

「違うな。俺達はただ、あいつの力を利用したいだけさ」

 

「そんな事はどうでもいいよ」

 

マクスウェルと大道の両方に向け、海東は牽制する様に発砲する。

マクスウェルが爆撃を仕掛けてくるが、それは霧崎によって防がれる。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

マクスウェルと霧崎達、そして乱入してきたNEVERの戦いを少し離れた所で眺める者がいた。

その者は金色の羽を散らして一瞬にして姿を消した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

箱庭上層三桁

斉天大聖が白夜叉に“希望”を伝え、天岩戸へと向かおうとしていた時、白夜叉はとある気配を感じて振り向く。

そこには誰もいない。

しかし、何かを感じたのは確かだ。

そして何かの正体も知ってはいる。

 

「おんしが箱庭にいるとは珍しいの。いや、“絶対悪”が目覚めたからこそ現れたのか?」

 

虚空へと話し掛ける。

この場にその存在はいないが構わない。

どうせ聞こえているのだから。

隣の斉天大聖も同じ気配を感じたのか、白夜叉の行動を黙って見ている。

 

「そんなに気になるならすぐに力を貸してやればいいものを………本当におんしは人を選ぶの、ウルトラマンノアよ」

 

それだけ言うと白夜叉は踵を返し、天岩戸に向かうのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

どこかで眠る彼は眺めていた。

 

[……………]

 

彼は、ウルトラマンノアは見定めるかの様にそれを眺めていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

それは前触れなく現れた。

 

「は?」

 

霧崎は思わず声をあげた。

金色の羽が舞ったと思うと争っていたマクスウェル、大道、海東の中心に金色の仮面ライダーが現れたのだ。

その仮面ライダーは出現した直後に両手に持っていた剣で三人を斬り飛ばしたのだ。

 

「チッ、何者だあいつは!!」

 

大道はすぐに立ち上がり、即座に構えて吐き捨てる。

 

「仮面ライダーオーディン!?何故ここに!?」

 

海東はその正体を知っていた。

だからこそ、現れた事に困惑する。

あれはとある男が妹の為に生み出した存在だ。

そんな物が此処にいる事自体がおかしい。

だが、海東は知らない。

離れた場所で現在士達が交戦している大ショッカーがオーディンと同じシステムの仮面ライダーを連れている事を。

それさえ分かっていれば推測くらいは出来ていたのだろうが。

 

「次から次へと………一体今度は何だと言うのだ!!」

 

そんな事をお構い無しにマクスウェルはオーディンへと攻撃を仕掛ける。

次々と現れる邪魔者に彼はかなり苛立っていた。

そんな状態で攻撃すれば結果は分かっている物である。

 

「…………………」

 

マクスウェルの攻撃を金色の羽を散らしながら瞬間移動で避け、背後から斬り掛かる。

マクスウェルも空間移動で回避し、背後から攻撃を仕掛けるが、オーディンの右肘打ちによって吹っ飛ばされる。

吹っ飛ばされた地点に瞬間移動し、腕を組む様な格好で現れ、右腕でマクスウェルを掴むと投げ飛ばす。

 

「………………」

 

そこへ海東が数発撃つがまた金色の羽を散らし、瞬間移動し避けられる。

そのまま海東の背後に現れる。

 

「ふん」

 

しかし直後に大道が斬り掛かる。

だが、あっさりと右手の剣で受け止め、海東が振り向く前に左手の剣で纏めて斬り飛ばす。

 

「………私の目的を果たすには貴様らは邪魔だな」

 

「目的?何だいそれは教えたまえ」

 

「大首領の命により、ウィラ=ザ=イグニファトゥスの捕縛だ」

 

「なるほどね」

 

その言葉で海東は大体察した。

つまり、オーディンは大ショッカーの手の者という事だ。

ようは大ショッカーが何処からか技術を手に入れ、オーディンを作り上げたと言う事だ。

何処からは考えるだけ無駄だ。

此処は箱庭、あらゆる可能性が集う場所だ。

探せばそれくらい手に入るだろう。

そして、大ショッカーだけにはウィラを渡してはいけない。

ウィラの力の使い方など大体察しが付く。

再生怪人製造の効率を上げる為だろう。

生と死の境界を司るウィラ程適任な人材はそういないだろう。

海東がウィラの方を見るがどうもどうやら言うまでも無く察した様で霧崎が既にラッテンとウィラの近くにいた。

霧崎の能力ほど守りに最適な能力は無い。

海東がオーディンの方へと視線を戻す時にはオーディンの姿はそこには無かった。

 

「何処に!?」

 

周囲を見渡せばすぐに見付かった。

海東、大道、マクスウェル全員から少し離れた位置に立っていた。

その手にはゴルドバイザーが握られていた。

そして、カードをセットする部分が開かれていた。

 

「まずは貴様らから終わらせよう」

 

「何を!!」

 

大道が警戒する様に構え、マクスウェルは激昂し立ち上がる。

海東はバイザーを見て、まだ一枚でのサバイブという事に安心しつつ冷や汗を流す。

オーディンのスペックの高さは常に無限のサバイブ使用状態だからだ。

それだけならまだ対処のしようがある。

海東が恐れていたのはゴルドバイザー上部の翼が開かれ、そこにサバイブ三枚が揃う事だった。

しかし、それでも脅威なのは違い無いが。

そして、もう警戒した所で遅かった。

オーディンはそのカードをバイザーにセットする。

 

ファイナルベント!!

 

音声が響く。

それは絶望の音だ。

 

「霧崎!!全力で防げ!!」

 

海東が焦った様に叫ぶ。

その間にオーディンの契約モンスター、ゴルドフェニックスが現れ、オーディンの背中と合体する。

背中から不死鳥の翼を生やすその姿は神々しかった。

そして、全てが光に包まれた。

 

 




乱入者多数でした!!
ジーク参戦!!
NEVER乱入!!
オーディン乱入!!

大道がウィラを狙う理由は後々。
ヒントは「さらば電王」「仮面ライダー大戦」

オーディンの目的は書いてある通りです。
大ショッカーの使いです。
一応幹部です。
大首領に従う駒でありますが。
龍騎本編のオーディンは中身ホームレスなのに対して、ここでのオーディンは中身が大首領が選んだ者だからかなりのスペックって感じです。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。

エイプリルフール予告!!
一つだけ真実が!!
次回以降の三つの出来事!!

一つ!!まさかの全滅。しかしそこに現れる天の道を行き総てを司る男!!

二つ!!アジ=ダカーハと十六夜の前に現れしウルトラ兄弟!!歴戦の戦士が絶対悪の前に並び立つ!!

三つ!!倒れた霧崎の前に現れたのは懐かしき面々。かつてのメンバーが集まりし時、物語は加速する!!

もう一度言う。
真実は一つのみ!!
どれが本当かはお楽しみで!!


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消えし二人と広まる絶望と現れし男達

 

そして、全てが吹き飛んだ。

光に包まれ、気が付いた時には全てが吹き飛んでいた。

 

「何だよ……これは…………」

 

霧崎は何が何だかさっぱり分からなかった。

背後を見ればラッテンとウィラが怪我無く倒れていた。

周囲を見渡せば海東が変身が解けた状態で倒れ、エターナルと名乗った男とその仲間も変身が解け倒れていた。

マクスウェルもボロボロで血塗れな状態で倒れていた。

霧崎達三人は【弱者のパラダイム】で何とか被害を免れた様だ。

それにそこまで広範囲に及ぶ被害でも無いようだ。

だが、何が起きたかだけはさっぱり分からなかった。

光に包まれ、その後は必死に防いだだけで何が起きたかまでは把握出来なかったのだ。

何はともあれ、凄まじい何かが起きたのは間違い無い。

そして、起こした当人、仮面ライダーオーディンは変わらず腕を組んで立っていた。

 

「さて、ウィラ=ザ=イグニファトゥスを確保させて貰おう」

 

「ふざ……けんな……まだ俺が…………ぐっ!?」

 

言い返そうとした所で激しい頭痛に襲われる。

頭を押さえた手を見ると血に濡れていた。

どうやら鼻や眼から血が出てる様だ。

 

「くっ……はぁ………こりゃヤバイか………」

 

「「霧崎!?」」

 

頭を押さえ、咳き込み、膝をつく霧崎に慌てて駆け寄るラッテンとウィラ。

こんな症状が出たのは初めてだ。

しかし、霧崎はこの症状を知っていた。

 

「(ヨヨ……これは…………)」

(アァ……脳ヘ負担ヲ掛ケ過ギタヨウダ)

 

似た症状を見た事がある。

力を、“PSI”を限界以上に酷使すれば脳が限界を迎える。

今はこの程度で済んでいるが、やり過ぎれば最悪死ぬ。

実際に仲間は死に掛けた。

霧崎はこれまでこうなった事は無い。

それは霧崎の【弱者のパラダイム】が負担が軽い力だ。

しかし、こうなったという事は短時間で使い過ぎたという事だろう。

考えてみれば多少休憩はあったとはいえ、ここまで戦いの連続である。

限界を迎えてもおかしくは無いのだ。

決め手となったのは先程の正体不明の死の脅威だろう。

そんな事を考えている間にもオーディンは近付いて来ていた。

 

「我が花嫁を奪おうにもそうはいかんぞ」

 

そんな声が聞こえ、声のした方を向くとマクスウェルが傷を再生させ、立ち上がっていた。

変わらぬ狂気の笑みを浮かべながらウィラの方を向く。

 

「安心していい。君は必ず私が守り、花嫁とするのだから!!」

 

「キモイ!!」

 

ウィラの叫びを無視してマクスウェルはオーディンの方を向く。

そこで何かに気付くと倒れている海東の方へと腕を向け、熱量を操り、爆発を起こさせる。

 

アタックライド、バリア!!

「……全く危ないじゃないか」

 

爆発を青い壁で防ぎながら呟く。

どうやら既に意識は戻っていた様だ。

 

「貴様の猿芝居を私が気付かないとでも?」

 

「そこまでは期待してないよ。とは言ってもこれはさすがに分が悪いね」

 

周囲を確認しながら呟く。

 

「だから一旦引かせて貰うよ。けど、僕がいる限り“境界門”が無くてもどうにかなると言う事を忘れないでおきたまえ」

アタックライド、インビジブル!!

 

「は?」

 

海東はディエンドライバーにカードを挿入すると、いつの間にか姿を消していた。

つまり逃げたという事だ。

さすがに驚きの声をあげるがそんな事を気にしている場合では無い。

海東の召喚したメイジ三人は先程ので既に消えている。

これに加えて海東までいなくなれば戦力的には絶望的だ。

霧崎は動けないし、ラッテンとウィラではどうにか出来る状態では無い。

マクスウェルはニヤリと笑う。

これ以上に嫌な予感がする事は無い。

 

「では、別の方法で交渉するとしよう」

 

オーディンと霧崎達を他所にマクスウェルは右腕を陽炎に揺らし、何かを引き寄せる。

それが何か分かった瞬間、霧崎達は凍り付く。

 

「黒ウサギ!?」

 

霧崎が叫ぶ。

もうこうなったら自分の事を考えている場合では無い。

立ち上がろうとするが足に力が入りにくく。

中々立ち上がれない。

その間に黒ウサギは状況を把握する。

 

「マ、マクスウェル!?それに霧崎さん!!ラッテンさん!!」

 

「初めまして、月の御子殿。こんな形で呼びつけた無礼をお許し願いたい」

 

慇懃な笑みでマクスウェルが黒ウサギを拘束する。

霧崎が無理矢理立ち上がり、飛び掛かろうとした時に気付く。

背後にいたはずのラッテンがいない事を。

そして、ラッテンがハーメルケインでマクスウェルに斬り掛かろうとしているのに気付く。

 

「よせ、ラッテン!!」

 

「いい加減にしなさいよ、このマクズウェルが!!」

 

「うるさい女だ」

 

ラッテンはキレていた。

いい加減にこのクズの所業に我慢が利かなくなってきたのだ。

否、我慢など最初から利いていない。

もはや背後から考え無しに斬り掛かる程に冷静を欠いただけだ。

だが、その怒りの斬撃もマクスウェルには届かなかった。

 

「っ!?」

 

「ラッテンさん!!私に構わず!!」

 

「このクズがぁぁぁ!!」

 

マクスウェルは黒ウサギを盾にしてきたのだ。

それに対してラッテンは攻撃を止めるしか無い。

 

「二人纏めて消えるがいい」

 

パチンと指を鳴らす音が響く。

それを最後にラッテンと黒ウサギの姿は消えていた。

霧崎は即座にマクスウェルが何をやったか察する。

 

「テメェ!!二人をどこにやった!!」

 

口から血を吐きながらも叫ぶ。

しかし、マクスウェルは本当にどうでもいい様に笑う。

 

「さてね。何せ咄嗟だったからなあ。まあ生きてはきるだろう。どの道死ぬのには代わり無いが」

 

「テメェ!!」

 

「だが、貴様は先にあの世に行っているといい」

 

フラフラな体を押して駆け様とした霧崎の背後にマクスウェルが現れる。

マクスウェルは霧崎に手を向け笑う。

 

「あの世で仲間が来るのを待っているがいい」

 

「チクショウが………」

 

激しい爆音が響く。

それも一度では無い。

何度も、何度も、何度も響く。

その度に霧崎の周りで爆発が起こる。

限界を迎えた今の霧崎では“死の脅威”を完全に祓うだけの力は無い。

爆発は霧崎の体を肉片すら残さない様に徹底的に焼いていく。

 

「(チクショウ………任せられたってのに!!請け負ったってのに!!この様かよ!!守れないのかよ……結局何も守れないのかよ!!)」

 

体が連続する爆発で焼かれる中、霧崎は心の中で叫ぶのだった。

そして、爆音が止んだ時にはもはや肉片の一つすら残っていなかった。

 

「霧崎!!」

 

ウィラが瞳に涙を見せながら悲痛に叫ぶ。

しかし、マクスウェルは笑う、嘲笑う。

 

「ハハハハハハハハハハッ!!これも君のせいだよ、ウィラ。君が私をさしおいてこんな男に気を向けるからこうなるのだよ!!」

 

「俺達を忘れて貰っちゃ困るな」

 

「……………」

 

今まで黙って眺めていたオーディン。

いつの間にか起き上がり、変身していたNEVER。

周囲を見れば何時からか吹雪が吹き、アジ=ダカーハの分身体が暴れていた。

もはやこの場にいた“ノーネーム”メンバーは全滅。

双頭龍達が地響きを起こし、ウィラにはもうどうする事も出来ない。

あとはもう自身を廻る争いの結果を見守るしかない。

その場を包むのは絶望だった。

 

“煌焔の都”を廻る戦いは此れにて閉幕。

大地は蹂躪され、悲鳴が響き、絶望が広がっていく。

ウィラは何も出来ずにその場に項垂れるだけだった。

 

 

 

 

 

まだ諦める時では無い、そんな声がウィラの耳に響く。

同時にハイパークロックアップという音声が聞こえてくるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

そして、時は遡る。

フラフラな体を押して駆け様とした霧崎の背後にマクスウェルが現れる。

マクスウェルは霧崎に手を向け笑う。

 

「あの世で仲間が来るn「ハイパーキック」

 

「は?」

 

マクスウェルが何かをしようとする前に何者かが腕を掴み、そのまま目にも止まらぬ速さでマクスウェルを蹴り飛ばした。

 

「何ぃぃ!?」

 

マクスウェルとしては空間移動の直後に腕を掴まれ、蹴り飛ばされたのだ。

まるで未来から現れた様な所業に困惑する。

誰も思わないだろう。

本当に未来からの救援など。

 

「ハイパークロックアップ!!」ハイパークロックアップ!!

 

マクスウェルを蹴り飛ばした者は腰にある銀色のパーツをいじる。

音声が鳴った瞬間、その者の姿は消え、代わりにオーディンが吹っ飛び、周囲に召喚されていた双頭龍が爆炎と変貌していく。

 

「なんだ………これ………………」

 

いまだに痛む頭を押さえながらその光景を呆然と見る。

隣のウィラも似た様な感じである。

だが、それを更に絶句させる物が現れる。

 

「なっ!?あの城が何で此処に!?」

 

現れたのは“アンダーウッド”に放置されていた空中城塞。

その上になびく旗印を見る。

“鷲獅子”、“金翅の神鳥”、“相克する蛇”、“向かい合う双女神”、いずれも超弩級コミュニティだが、視線を釘付けにするのは最も高い位置にてなびく旗だ。

黄金の稲穂と地平線から昇る太陽、そして中心の女神___否、女王の旗。

箱庭第三桁“クイーン・ハロウィン”の御旗だ。

霧崎の許へはサラとグリーが一直線に舞い降りてくる。

 

「カブト殿!!無事か!!」

 

「あんたらか……」

 

今の霧崎にはあまり余裕が無い。

彼の周囲にはまだ敵がいる。

 

「援軍か………まぁいい。何人いようと相手にしてやるよ」

 

大道と彼が率いるNEVERの四人は先程のをやり過ごしたらしい。

霧崎の方を睨み、エターナルエッジを向けてくる。

 

「どうやらお前は厄介な力を持っている様だが今は使えないみたいだな。つまり、殺すなら今って事だ」

 

確かに霧崎の力は厄介だ。

今の様な状態で無ければ殺せるチャンスは無いだろう。

しかし、サラは彼らを前にして不敵に笑う。

 

「お前達は少し前から暴れている傭兵だな?」

 

「さぁな?そこまで有名なつもりは無いんだがな」

 

「お前達にはちょうどいい相手がいる。先にそちらを相手にするんだな」

 

そこまで言ってサラは振り向く。

そこには五つの人影があった。

 

「頼んでいいか?」

 

「あぁ任せてください!!」

 

それを聞くとサラは霧崎を抱えてグリーの背に乗り、飛びたつ。

大道達の前には五つの人影だけが残った。

芦原が狙撃しようとするが大道が止める。

 

「お前達が相手という事でいいのか?」

 

「あらぁ!!結構イケメンの集まりじゃない!!」

 

京水がどうでもいい事を叫ぶ。

大道達の前にいるのは男三人、女一人、よく分からないのが一体だ。

彼らは一斉に何かを構えて叫ぶ。

 

「「「「「アニマルチェンジ!!」」」」」

 

その声と共に彼らの持っていたアイテムのサングラス状の物が彼らの目に重なり、全身にスーツが装着されていく。

完全に姿を変えると、各々ポーズを取り始める。

 

「大地のハンター!!レッドチーター!!」

 

「林のウォーリアー!!ブルーゴリラ!!」

 

「野原のジャンパー!!イエローラビット!!」

 

「樹木のリーダー!!ゴールドビートル!!」

 

「樹液のドランカー!!シルバースタッグ!!」

 

「「「「「動物戦隊!!ゴーバスターズ!!」」」」」

 

全員並んでポーズを取る。

大道はどうでもよさそうにエターナルエッジを構えている。

 

「そうだ、俺達がお前達の相手だ!!」

 

「ふん、まぁ準備運動くらいにはなるか」

 

大道は首をコキコキ鳴らしながら呟く。

正直な所、大道達はウィラの確保が困難になった時点で機を改める予定だった。

たった五人で数百人を相手にするのはガイアメモリがあっても箱庭ではキツい。

だから彼らが今この場にいるのは半分遊びの様な物である。

そんな事も知らずにゴーバスターズは構える。

 

「バスターズ、レディ~ゴー!!」

 

それを合図に両者共に駆け出し、ぶつかり、戦闘を始めるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方、オーディンは紅い男と向かい合っていた。

彼こそがゴーバスターズをこの場に連れてきた男である。

両者共に下手に手を出さずに機を疑っていた。






援軍到着!!
霧崎がウンメイノーになりましたがそこらへんはあの人がどうにかしました。

海東が逃げましたが何時もの事ですし、今回は機を疑う為の撤退です。

霧崎に関してはPSIを酷使した時の状態にあります。
原作で描写無かったとはいえ、【弱者のパラダイム】もPSIなので起こってもおかしくはないかと。

動物戦隊ゴーバスターズに関しては箱庭だからこそ、ifの世界も拾えるって感じで。
NEVERvsゴーバスターズとなりました。

オーディンに関しては紅い男と対峙しています。
正体に関しては次回以降に。
ヒントとしては戦隊関連です。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。


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赤の魂と現れる街と荒れる戦場

前回のゴーバスターズはVシネの帰ってきたゴーバスターズに登場した動物戦隊の方です。




突如として金色の羽が舞い、オーディンが男の背後に現れる。

そのまま、右手の剣で斬り掛かるが男の手に突如現れたティラノロッドによって防がれる。

更に男は振り返り様に龍撃剣で斬り掛かる。

オーディンは再び瞬間移動して避ける。

 

「……………」

 

「面倒な能力だな」

 

「貴様に言われたくない。スーパー戦隊の“原典候補者”……」

 

「待て。そこから先は自分で名乗らせて貰おう。俺は、」

 

「赤の魂を受け継ぐ者!!アカレッド!!」

 

アカレッドはオーディンの言葉を遮り自ら名乗る。

赤の魂を受け継ぐ者として名乗りは自分からやりたいのだろう。

オーディンもその間に攻撃しようとはしない。

アカレッドには“ソウル降臨”という能力がある。

あらゆるスーパー戦隊の赤の戦士の力、武器を使え、姿も変える事が出来るのだ。

 

「ここは一旦引くとするか」

 

「ウィラ=ザ=イグニファトゥスは確保しなくていいのか?」

 

「今、貴様を相手にするのは得策では無いからな」

 

それだけ言ってオーディンは姿を消すのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方、霧崎はグリーの上でサラに抱えられていた。

 

「このまま城に退くが構わないな?」

 

「俺はいいから他の奴らを頼めるか?」

 

「何故だ?」

 

「黒ウサギとラッテンは何処かに飛ばされたし、十六夜は映司さん達が向かったとはいえ一人で戦ってるのには代わり無い。あいつらを頼んだ……」

 

それを言い終えると霧崎は意識を失った。

それ程までに霧崎は限界に近かったのだ。

むしろ今まで意識を保てていた方が奇跡なくらいには。

サラはその様子を見て先程の場所に彼の仲間の姿が見えなかった事を思い出して苦悶の表情を浮かべる。

 

「すまない。少し遅かったようだ。だが、安心しろ。飛ばされた二人に関してはともかく十六夜殿の許には既に救援が向かっている。我々の用意出来る、最強の戦力が」

 

意識を失っている霧崎に語り掛け、一枚の羊皮紙を取り出す。

輝く羊皮紙を高々と掲げる。

瞬間、視界に映る全ての景観が崩壊し、世界が一変した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

異変は十六夜とアジ=ダカーハも包み込んだ。

廃都がロンドンの模造品に変わる。

そして、十六夜はジャックに任せて意識を失った。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

アジ=ダカーハの前変貌の中で仁王立ちして事の成り行きを見守っていた。

そんな彼の前に、

レティシア=ドラクレア。

“覆海大聖”蛟魔王。

女王騎士・フェイスレス。

“パンプキン・ザ・クラウン”ジャック・オー・ランタン。

そして、対神・対龍の恩恵を誇る神鳥___大鵬金翅鳥の姫・鵬魔王が現れる。

三頭龍は腰を低く構え、四肢を大地に着けて獣のように身構える。

大鐘楼の鐘の音が街全体に響き渡ると同時に___四人は、一斉に開幕の宣言をした。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

たとえ戦場がロンドンの街並みに変貌しようと仮面ライダー達とアポロガイスト率いる軍勢の戦いは変わらず続いていた。

 

「ハァァァ!!」

 

「うぉ!?危ねぇ!!」

 

飛び掛かってきた仮面ライダーレイを慌てて回避する弦太朗。

マグネットステイツとなり、ホイールモジュールを使い移動砲台の如く駆け回っていた弦太朗にいきなりレイが飛び掛かってきたのだ。

弦太朗はレイの鈎爪が突き刺さった地面が凍結しているのを見てスイッチを変える。

マグネットステイツを解除し、紅いスイッチを○の所へとセットする。

 

「氷にならこいつだ」ファイヤーオン!!

 

音声と共にフォーゼの体が炎に包まれ変貌していく。

体は白から赤へと変わり、右手にはヒーハックガンが現れる。

 

「燃えるぜ!!」

 

「ガァァァァァ!!」

 

突進してくるレイに向けてヒーハックガンがから炎弾を放つが避けられ接近される。

 

「うぉぉぉぉ!?」

 

爪で弾き飛ばされる。

ギリギリ回避行動を取っていたから深くは食らわ無かったが吹っ飛ばされる。

背中の噴射で体勢を取り、バランスを崩す事無く着地する。

 

「なら、これもセットだ!!」

ランチャーオン!!ガトリングオン!!ジャイロオン!!

 

右足にランチャーモジュールが、左足にガトリングモジュールが、左手にジャイロモジュールが現れる。

ジャイロモジュールのプロペラを回転させ、浮遊する。

そして、空中から一斉放射する。

 

「これなら避けようがねぇだろ!!」

 

「ぐっ……ガァァァ!?」

 

数発食らって悲鳴を上げるが倒してはいない。

少し怯ませている程度のようだ。

 

「ぐぁ!?」

 

「………………」

 

「糞尿臭いんだよ、お前らは!!」

 

晴人はリュウガサバイブと王蛇サバイブに苦戦していた。

リュウガサバイブは龍騎を吸収したリュウガが烈火のサバイブを使った形態である。

消滅する恐れの無い完全な体を手に入れたリュウガが更に強化されているのだ。

王蛇サバイブは王蛇が疾風のサバイブを使って強化された形態である。

問題なのは強化では無く中身である。

現在王蛇に変身しているのは浅倉 威。

殺人鬼というのには収まらない正真正銘生まれながらの怪物である。

生後一週間で母親を殺しただけでもその異常性は分かるだろう。

そんな怪物が変身しているのだ苦戦しないはすが無い。

 

「くそっ…………ん?」

 

息を切らしながら晴人が立ち上がろうとすると幾つかのウィザードリングが光を放ち浮かび上がる。

 

「何だ……これ…………使えって事か?」

 

晴人はそれらを手に取って右手に填め、一つ一つスキャンしていく。

 

スーパーセンタイ、プリーズ!!

ミラクル、プリーズ!!

チチンプイプイ、プリーズ!!

チチンプイプイプイ!!チチンプイプイプイ!!チチンプイプイプイ!!

 

「うぉ!?」

 

そんな呪文が響くと共に地面に魔法陣が現れる。

魔法陣は凄まじい光を放ち始める。

しかし、何かが起こるのを待つ敵では無い。

 

「何をしてやがる………っ!?」

 

「久しぶりだな、ウィザード!!」

 

大剣で斬り掛かろうとしてくる王蛇サバイブではあるが光の中から銃撃され、怯み動きを止める。

そして、光の中からは晴人が一度共に戦った事のある男が現れた。

 

「お前はキョウリュウレッド!!」

 

「おぉ!!覚えててくれたか!!」

 

「そんな事より、何でお前が此処に!?」

 

「いや~そこはよく分からないんだけどよ……」

 

光から現れたのは桐生ダイゴであった。

どうやら本人も自分がどうして此処にいるのか分かって無いようだ。

そんな事はどうでもいいと言った感じに王蛇サバイブ、リュウガサバイブの方を向く。

 

「とりあえずあいつらがお前が戦ってる敵って事でいいんだよな?助太刀するぜ?」

 

「それは助かるけど、お前一人じゃ…………」

 

「いや、俺は一人じゃいないぜ!!そうだろ、皆!!」

 

ダイゴが叫ぶと彼の背後に九つの幻影が現れる。

それらは黒、青、緑、桃、金、シアン、灰、紫、銀の色をしていた。

それを見て晴人はダイゴと幻影の正体を悟る。

彼らは魔力の塊である。

いわば今戦っているバース達と似た様な存在である。

何故ダイゴだけ実体を持っているかは分からない。

だが、彼らが味方する程心強い事は無い。

 

「行くぜ、皆!!」

 

「「「「「「「「ブレイブイン!!」」」」」」」」

「「スピリットイン!!」」

 

ガブリンチョ!!ガブティラ!!

ガブリンチョ!!パラサガン!!

ガブリンチョ!!ステゴッチ!!

ガブリンチョ!!ザクトル!!

ガブリンチョ!!ドリケラ!!

ガブリンチョ!!プテラゴードン!!

アンキドン!!

ブンバッキー!!

ガブリンチョ!!プレズオン!!

ギガガブリンチョ!!ブラギガス!!

 

「「「「「「「「キョウリュウチェンジ!!」」」」」」」」

「「スピリットレンジャー!!」」

 

ダイゴと幻影は獣電池にブレイブを込める。

ダイゴと五つの幻影はガブリボルバーに、金の幻影はガブリチェンジャーに、銀の幻影はギガガブリボルバーに獣電池を入れる。

シアンと灰の幻影は獣電池を高く掲げる。

そして、流れる音声のリズムに合わせて踊る。

音声が終わると同時に銃口を前方に向けて引き金を引いて叫ぶ。

 

「「「「「「「「「「ファイヤ!!」」」」」」」」」」

 

「……………」

 

リュウガサバイブが無言で炎弾を放ってくるが叫ぶと同時に各々の銃口から恐竜の顔の様なエネルギー体が現れ、攻撃を弾き、リュウガサバイブと王蛇サバイブも吹き飛ばす。

エネルギー体は各々の背後に回り、ぶつかり姿を変貌させる。

姿を完全に変貌させ、並び立つ。

 

「聞いて驚け!!」

 

「牙の勇者!!キョウリュウレッド!!」

 

「弾丸の勇者!!キョウリュウブラック!!」

 

「鎧の勇者!!キョウリュウブルー!!」

 

「斬撃の勇者!!キョウリュウグリーン!!」

 

「角の勇者!!キョウリュウピンク!!」

 

「雷鳴の勇者!!キョウリュウゴールド見参!!」

 

「鋼の勇者!!キョウリュウシアン!!」

 

「激突の勇者!!キョウリュウグレー!!」

 

「海の勇者!!キョウリュウバイオレット!!」

 

「閃光の勇者!!キョウリュウシルバー!!」

 

「「「「「「「「「「史上最強のブレイブ!!」」」」」」」」」」

 

「十人揃って!!」

 

「「「「「「「「「「獣電戦隊!!キョウリュウジャー!!」」」」」」」」」」

 

次々と名乗り、ポーズを決め、最後に並び立ち、背後で爆発が起こる。

 

「荒~れ~る~ぜ~」

 

「「「「「「「「「「止めてみなぁ!!」」」」」」」」」」

 

十人同時に行って敵へと向かっていく。

だが、全員が全員、目の前の二人に向かっていくわけでは無い。

散って周囲の敵へと向かっていく。

 

「凄いな……」

 

晴人もその後に続く様に敵へと向かっていく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

___時を少し遡り。

マクスウェルは謎の高速蹴りによって吹き飛ばされ、ロンドンの舞台に招かれる事なく、山岳に投げ出されていた。

傷は既に再生している。

何故なら目の前に襲撃者と思えし男が立っているからだ。

 

「……お婆ちゃんが言っていた、男がやっていけない事が二つある。女の子を泣かせる事と食べ物を粗末にする事だ」

 

「何が言いたい?」

 

「分からないならば、話す価値も無い」

 

「訳が分からぬ事を…………貴様は何者だ!!」

 

「俺は天の道を行き、総てを司る男、天道 総司!!」

 

「戯言を!!」

 

相手にするだけ無駄だと感じたのだろうマクスウェルは天を指差し見下す様な視線を向けてくる男に向かって炎弾を放つ。

だが、既にその手にはカブトゼクターが握られている。

 

「変身!!」ヘンシン!!

 

炎弾が届く前に姿が変わり炎弾は弾かれる。

仮面ライダーカブト マクスドフォームの装甲は炎弾ごときでは壊せない。

 

「……………」

 

マクスウェルは無言で天道の背後へと回る。

しかし、それを読んでいた様に天道はベルトを操作する。

 

「キャストオフ」キャストオフ!!

 

マクスドフォームの鎧が全包囲に弾けて、ライダーフォームへと変わる。

カブトホーンが上がり、完全に姿が変わった時にはマクスウェルは弾けた鎧によって吹き飛ばされていた。

 

「くっ………」

 

「お前ごときでは天の道を行く俺を止められない」

 

天道の表情は見えない。

しかしマクスウェルには自分を見下している様に感じていた。

マクスウェルはそれを憎々しげに睨む。

そして、次の瞬間には両者は再びぶつかり合う。

 

 





色々乱戦でした!!
キョウリュウジャー参戦!!
シアンとグレーはラミレスと鉄砕、シルバーはダンテツって感じです。

アカレッドに関しては色々と設定を加えてあります。
スーパー戦隊の“原典候補者”というのは“ソウル降臨”や存在的にそんな感じだろとカテゴリしました。

今回始まった戦いは
フォーゼvsレイ
カブトvsマクスウェル
と言った感じです。
乱入組はまだvsまでは行ってない感じです。

荒れる戦場はキョウリュウジャーの事を示していたりします。

それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。


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風と切り札と分裂

 

「邪魔だ、どけ!!」

 

「誰が言われてどくか!!」

 

士はウニアルマジロヤミー、シルフィファントム、ドラゴン・ゾディアーツを相手にしていた。

特に相手としては問題無いのだが士としては速い所相手にしたいのがいるので邪魔で仕方ない。

そこで近くでWが戦っているのを見掛ける。

 

「ちょうどいいな。オイ、W!!」

 

「ん?どうした?」

 

Wが此方を向くと士はカードを一枚取り出し、ベルトに投げ入れる。

そして、Wの背後に回る。

 

「ちょっとくすぐったいぞ」ファイナルフォームライド!!ダ、ダ、ダブル!!

 

「なぁ!?」

「うわぁ!?」

 

士がWの中心に手を当て真っ二つにする様に手を動かす。

すると、実際に真っ二つになり、各々独立した姿になる。

 

サイクロンサイクロン!!

ジョーカージョーカー!!

 

そんな音声と共にフィリップは仮面ライダーW サイクロンサイクロンに、

翔太郎は仮面ライダーW ジョーカージョーカーとなる。

 

「お前なぁ………こういう事をするなら事前に一言……」

 

「あいつらは任せたぞ」

 

「ちょ、待てよ!!」

 

「言ってる場合じゃないよ、翔太郎」

 

「ったく、しょうがねぇな…………」

 

渋々といった感じに翔太郎は三体の怪人の方を向く。

 

「さて、お前たちの相手は俺達がさせて貰うぜ」

 

「行こう、翔太郎」

 

「あぁ!!」

 

向かってくる二人に向かってウニアルマジロヤミーが多量の針を放ってくるが左右に別れ、回避する。

 

「オラァ!!」

 

「ウゲェ!?」

 

翔太郎がウニアルマジロヤミーにアッパーを食らわせ体を浮かせる。

そこにフィリップが蹴りを入れて吹っ飛ばす。

ドラゴンとシルフィが襲ってくる。

 

「ハァァ!!」

 

「風か。風は僕を味方するよ」

 

シルフィが起こす風をフィリップはわざと受ける。

サイクロンメモリの力で風を受ける度に力が上がるのだ。

しかも今はサイクロンメモリが二本である。

ある程度受け止めると近付き、手刀を入れて怯ませた所を回し蹴りで吹っ飛ばす。

翔太郎もドラゴンを殴り飛ばしている所だった。

そして、翔太郎はベルトからジョーカーメモリを取り出すとマキシマムスロットに挿し込む。

 

ジョーカー!!マキシマムドライブ!!

「行くぜ。ライダーパンチ!!」

 

力を溜める様に拳を構える。

紫のオーラを纏わせながらフィリップが吹っ飛ばしたシルフィを殴り飛ばす。

直撃したシルフィは転がり回り、爆散した。

フィリップもベルトからサイクロンメモリを取り出し、マキシマムスロットに入れる。

 

サイクロン!!マキシマムドライブ!!

「今日は君に合わせよう。ライダーチョップ!!」

 

「うわぁぁぁぁ!?」

 

Wの状態ならタイミングを合わせる為に技名を言うが、今は単独なので言う必要は無い。

しかし、今回は翔太郎に合わせて言うのだった。

起き上がってきたウニアルマジロヤミーに向け、風を纏わせたチョップを正確にウニの針の間に向けて放つのだった。

爆散したウニアルマジロヤミーに背を向けて二人並び立つ。

 

「もういっちょ」

 

「そうだね」

 

サイクロン!!マキシマムドライブ!!

ジョーカー!!マキシマムドライブ!!

 

同時にマキシマムスロットを叩き、マキシマムドライブを発動させる。

翔太郎は足に紫のオーラを、フィリップは足に風を纏わせ、同時に飛び上がる。

 

「「Wライダーキック!!」」

 

「グガァァァァァァ!?」

 

二発のライダーキックを同時に受けたドラゴンは頑丈な装甲も意味をなさずに爆散した。

そして、サイクロンサイクロンとジョーカージョーカーが再び一つになり、仮面ライダーW サイクロンジョーカーへと戻るのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ジークはホッパー・ドーパントと交戦していた。

バッタの力を持つホッパーはジークの周囲をピョンピョンと飛び跳ねて翻弄する。

ジークはデンガッシャーブーメランモードとデンガッシャーハンドアックスモードを構え、ブーメランを投げ付ける。

 

「頭が高い!!」

 

「ぐぇ!?」

 

ブーメランは見事に当たり、落ちてきたホッパーをハンドアックスで斬り付けるのだった。

 

フルチャージ!!

「ふん」

 

「かぁぁ!?」

 

ライダーパスをベルトにかざして投げ捨てる。

ブーメランとハンドアックスに力を溜め、ホッパーを斬り刻み爆散させる。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方、士とアポロガイストは向かい合っていた。

 

「決着を付けるぞ、アポロガイスト!!」

 

「今日こそ貴様を倒し、私が宇宙一迷惑な存在となるのだ!!」

 

「勝手になってろ、そんなもん!!」

 

ライドブッカーガンモードで数発撃つが、アポロガイストの前に現れた魔法陣によって防がれる。

アポロガイストは銃と盾を構え、盾を士に投げ付ける。

 

「ガイストカッター!!」

 

投げ付けられた刃付きの円状盾をしゃがんで避ける。

その間にカードをベルトに投げ入れる。

 

「ハァァ!!」ファイナルアタックライド!!ディ、ディ、ディケイド!!

 

「マグナムショット!!」

 

ディメンションブラストとマグナムショットがぶつかり合い相殺する。

互いに衝撃波で後退し、改めて武器を構え直す。

そこでアポロガイストがニッと笑った様に士は感じた。

 

「コネクトカッター!!」

 

「なっ!?」

 

突如として士の真上に避けたまはずのガイストカッターが現れる。

慌てて後ろに跳ぶが遅く、斬り裂かれ吹っ飛ぶ。

 

「困惑しているな。何故避けたはずの物が現れたのか。いいだろう、教えてやろう。簡単な事よ。ただ空間魔法で貴様の背後と真上を繋げただけなのだ!!」

 

「そういう事か!!」

 

言いながら発砲するが全てアポロガイストの手元に戻った盾によって防がれる。

 

「そして、こういう事も出来るのだよ」

 

「何ッ!?」

 

いきなり目の前からアポロガイストの姿が消える。

 

「後ろだ!!」

 

「くそっ!!」

 

背後から声がして振り向くが遅い。

いつの間にか銃からアポロフルーレに持ち変え、それを振り降ろす所であった。

斬られ吹き飛ぶ。

おそらくテレポートの魔法によって瞬間移動をしているのだろう。

晴人達と違って予備動作が無いのでかなり厄介である。

 

「チッ、ならこいつだ」

カメンライド!!クウガ!!

フォームライド!!ペガサス!!

 

「無駄なのだ!!」

 

姿をクウガ ペガサスフォームへと変える。

超感覚によってアポロガイストが移動したのを感知し、そこへ銃撃するが当たる前に移動し、一向に捉えられない。

 

「だから無駄だと言ったのだ」

 

「ぐぁ!?」

 

いつの間にか近付かれ、斬られる。

カードを数枚、ベルトに投げ入れる。

 

カメンライド!!カブト!!

アタックライド!!クロックアップ!!

 

「クロックアップ対策をしてないと思ったか?」

 

言った直後にアポロガイストが体内に宿したカーバンクルの宝石の色が変化する。

澄んだ透明へと変化する。

それはまるで晴人のインフィニティーリングの様に。

そんな事は気にせず士はクロックアップしたままアポロガイストに斬り掛かる。

しかし、アポロガイストはタキオン粒子によって時間流に干渉している状態である士の攻撃を受け止める。

つまりアポロガイストも時間操作系高速移動を使用しているという事だ。

 

「だから無駄だと言っただろう!!」

 

「くそっ………そこまでファントムの力を引き出してるのか」

 

何度か打ち合う。

だが、手数はアポロガイストの方が多い。

ガイストカッターを投げ付けられ、回避したところを斬り飛ばされる。

 

「ガハッ!?」

 

「ファントムを体内に宿し、魔法の力を手に入れた私に貴様の力など意味が無いのだ!!」

 

アポロガイストは勝利を確信したかの様に高笑いをするのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「おのれ………ちょこまかと!!」

 

アルゴスは周囲に眼球を漂わせ自分の周囲でちょこまかと動く敵に向かって放つ。

 

「何度も同じ物を食らうか!!」

 

バースとプロトバースがバースバスターが眼球を撃ち落としていく。

 

「嬢ちゃん、今だ!!」

 

「了解!!なでしこロケットパンチ!!」

 

「グォォォ!?」

 

プロトバースの声に反応し、なでしこが薄くなった眼球の中を通り抜け、右手のロケットモジュールで殴り飛ばす。

 

「締めは頼んだぜ、青いの!!」

 

「はい!!オーシャニックブレイク!!」

 

「ぬ、がぁぁぁぁ!?」

 

アクアが水流に乗る様に水を纏い、スライディングキックを叩き込む。

連撃を受け、アルゴスは爆散するのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ハァァ!!」

 

数体のカーバンクルが魔宝石を弾丸の様に放ってくる。

 

メッチャムーチョ!!

「そうはいかないよ!!」

 

キョウリュウブルーは仲間の前に立ち、ステゴシールドで魔宝石の弾丸を防ぐ。

その後ろからキョウリュウピンクとキョウリュウバイオレットが飛び掛かる。

 

「ハイ!!ハイ!!ハイ!!ワァオ!!」

 

「タァァァァ!!」

 

キョウリュウピンクは敵に次々と蹴りを入れていく。

その姿はまるで敵の上を歩いているかの様である。

キョウリュウバイオレットはガブリボルバーとガブリカリバーを合体させたガブルキャノンで敵を撃ち抜き、短剣モードし、斬り裂いていく。

 

バモラムーチョ!!

「獣電ブレイブフィニッシュ!!」

 

キョウリュウブラックはガブリボルバーのリボルバー部分を回転させ、力を解放し、敵の集団に滑り込む。

そのまま引き金を引き、敵を爆散させていく。

 

「お前の剣は俺には届かない!!」

 

キョウリュウグリーンはガブリカリバーとフェザーエッジの二刀流でユニコーン・ゾディアーツと斬り合っている。

ガブリカリバーは逆手持ちである。

何度か打ち合い、ガブリカリバーで敵の剣を受け止め、フェザーエッジで斬り飛ばす。

そして、距離を取るととある構えを取る。

 

「これが本当の剣だ。トリニティストレイザー…………斬撃無双剣!!」

 

背中から緑色の翼を生やし、右手のフェザーエッジで正三角形を描く様に剣を振り、それに重ねる様に左手のガブリカリバーで斬撃を放つ。

複数の斬撃波が敵に向け放たれ、ユニコーンごと敵の集団を斬り刻み爆散させるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「岩烈パンチ!!」

 

岩をも砕く拳が王蛇サバイブに直撃する。

しかし、王蛇サバイブは微動だにしなかった。

 

「なぁ!?」

 

「オラァ!!」

 

それどころかダメージも感じさせずに反撃してくる。

エイの尾の様な鞭で弾き飛ばされる。

距離が離れると王蛇サバイブはバイザーに何枚かカードを読み込ませる。

 

アドベント!!

アドベント!!

アドベント!!

ユナイトベント!!

 

王蛇サバイブの背後に巨大な蛇、サイ、エイが現れたと思うとそれらが一つになる。

 

「何だこれ!?」

 

その姿にダイゴが声を上げる。

王蛇サバイブの背後の化け物………ジェノサバイバーはそれほどまでにおぞましい姿だった。

 

「行け……」

キシャァァァァ!!

 

ジェノサバイバーは叫びながらダイゴへと突撃してくる。

ガブリボルバーで撃つのだが効いてる様子では無い。

そこへ救援が現れる。

 

「タァァァ!!」

「ハァァァ!!」

「ふん!!」

 

キョウリュウシアン、キョウリュウグレー、キョウリュウシルバーが同時にジェノサバイバーを殴り付ける。

その衝撃でジェノサバイバーはその巨体を中に浮かして吹っ飛ぶ。

 

「助かったぜ、親父!!ラミレス!!鉄砕!!」

 

「この怪物は俺達が倒す」

 

「だからお前はあいつを倒すんだ」

 

「任せましタ!!」

 

「おぅ!!来てくれ、ガブティラ!!」

 

オーバーチャージ!!

 

ジェノサバイバーを三人に任せ、ダイゴは宙に向かってカーニバル獣電池を投げ付ける。

獣電池は現れたガブティラの口に入り、ガブティラをミニティラに変える。

ミニティラがダイゴの近くに寄ってくる。

 

「此処から先はもっとブレイブに行くぜ!!」

 

「…………くせぇ」

 

向き合うダイゴと王蛇だが、王蛇の方はダイゴの言葉など耳に入って無いようだった。





ひたすらバトルでした!!

アポロガイストがクロックアップに対抗出来たのはインフィニティーと同じ理屈です。
インフィニティーの高速移動は魔法で時間に干渉する物なのでクロックアップに対抗出来るという事です。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。



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Wシャフトと合わさる金と最初からクライマックス

 

 

 

「行くぜ、ミニティラ!!」クルリンチョ!!

 

ミニティラの首を捻り、銃の様な形態にしてから顎部分を閉じさせる。

響くメロディに合わせて踊る。

そして、銃口を上に向けて引き金を引く。

 

「ファイヤ!!」

OH!!マツリンチョ!!カーニバル!!

 

「ぐっ!?」

 

銃口からティラノの頭部の様なエネルギー体が放たれる。

エネルギー体は王蛇サバイブを弾き飛ばしてからダイゴの背後に回り、ぶつかりダイゴの姿を変化させる。

 

「キョウリュウレッド・カーニバルだぁ!!」

 

キョウリュウレッド・カーニバルへと変身したダイゴはミニティラとガブリボルバーの二丁拳銃で王蛇サバイブへと向かっていく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

フレイム!!ドラゴン!!ボー、ボー、ボーボーボー!!

コピー、プリーズ!!

 

「ハァァァ!!」

 

「…………………」

 

晴人は姿をフレイムドラゴンへと変え、ソードガンをコピーの魔法で増やし、二刀流で斬り掛かる。

リュウガサバイブはバイザーから刃を出し、それを防ぐ。

晴人は一旦後ろに下がり、右手の指輪を入れ換え、ベルトにかざす。

 

コネクト、プリーズ!!

 

魔法陣の中に手を突っ込みタイマーを右手に装備する。

 

ドラゴタイム!!セットアップ、スタート!!

ウォータードラゴン!!

 

タイマーを操作し、動き出させる。

青の魔法陣からウォータードラゴンが現れ、ソードガンの二丁拳銃でリュウガサバイブを撃つ。

これすらもあっさり避けられる。

 

ハリケーンドラゴン!!

 

緑の魔法陣からハリケーンドラゴンが現れる。

逆手持ちの二刀流で斬り掛かるがこれもいなされる。

三人でもまだ足りない。

 

ランドドラゴン!!

 

黄の魔法陣からランドドラゴンが現れる。

四人同時に襲い掛かり、ようやく二太刀ほど直撃させ、吹っ飛ばす。

そこへガンモードで銀の弾丸を撃ち込み怯ませる。

 

ファイナルタイム!!

 

フレイムドラゴンの胸にドラゴンの頭部が、

ウォータードラゴンの背後にドラゴンの尾が、

ハリケーンドラゴンの背にドラゴンの翼が、

ランドドラゴンの両腕にドラゴンの爪が現れる。

頭部から熱線が、尾から海を割る一撃が、翼から疾風が、爪から斬撃波がリュウガサバイブへと放たれる。

 

ガードベント!!

 

「「「「なぁ!?」」」」

 

しかし、それらは全て突如現れたブラックドラグランザーにより防がれる。

ブラックドラグランザーは現れるなり、リュウガサバイブの周囲を回り、全ての攻撃を弾いたのだ。

 

「………………」シュートベント!!

 

そのカードをバイザーにセットすると、ブラックドラグランザーがリュウガサバイブの背後に立ち、バイザーを四人へと向ける。

そして、ドラグランザーとバイザーから同時に炎弾が放たれる。

 

ディフェンド、プリーズ!!

ディフェンド、プリーズ!!

ディフェンド、プリーズ!!

ディフェンド、プリーズ!!

 

焔、風、水、岩の防壁が展開する。

それらは炎弾が当たってもしばらくは拮抗する。

 

「「「「グァァァァァ!?」」」」

 

だが、四つの防壁も結局は破られ、炎弾は激しい爆発を起こし四人を吹き飛ばしていく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

弦太朗はファイヤーステイツで仮面ライダーレイと戦闘を続けていた。

ジャイロモジュールで滑空しながら、三つのモジュールから弾丸を放つがレイには大して効いて無いようだ。

と言うより効いてはいるが、決定打としては欠けている。

 

「こうなったら直接当ててやるぜ!!」

 

ジャイロモジュールを解除し、ガトリングもランチャーも解除する。

 

ウィンチオン!!

 

代わりにウィンチモジュールを左腕に出現させる。

そのままレイに向かってロープを放ち、縛り上げる。

そして、ファイヤースイッチをヒーハックガンにセットする。

 

「ウォォォォォ!!」

 

警告音が響く中でロープを回収し、レイを近くへと引き寄せながら自身もレイに向かって駆けて行く。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ジュピター、レディ?

OK!!ジュピター!!

「ホワタァァァ!!」

 

メテオギャラクシーを操作し、木星型のエネルギー体を腕に纏わせ目の前の集団へと打ち込み、吹っ飛ばし、爆散させる。

そこへ巨大な棍棒が振り降ろされる。

メテオはギリギリの所でそれを避ける。

 

「ヘラクレス?………番場か?」

 

「テヤァァァァァァァ!!」

 

ヘラクレス・ゾディアーツは聞き耳を持たずに棍棒を振り回す。

メテオは仕方なくとあるスイッチを取り出し、ベルトのメテオスイッチと入れ換える。

 

メテオストーム!!

「俺の運命は嵐を呼ぶぜ!!」

 

メテオストームスイッチをオンにし、姿をメテオストームへと変える。

その手に現れたストームシャフトで棍棒と打ち合う。

だが、パワーは向こうのが上であり押される。

後退し、メテオストームスイッチをベルトからストームシャフトへと移す。

 

リミットブレイク!!

「メテオストームパニッシャー!!」

 

メテオストームスイッチの駒部分にエネルギーを溜めて放つ。

しかし、ヘラクレスは棍棒でそれを受け止め、弾き返す。

 

「何ぃ!?ぐぁ!?」

 

そのまま棍棒の一撃を受け吹っ飛ばされる。

そしてまだ立ち上がれていない所に二撃目が叩き込まれようとする。

 

ヒートメタル!!

「おっと、やらせないよ」

「助太刀するぜ、後輩!!」

 

二撃目はメテオに当たる前に止められた。

右半身を赤、左半身を銀にしたWがメタルシャフトで棍棒を受け止めたのだ。

 

「余計なお世話だ!!」

 

叫びながらメテオはストームシャフトでヘラクレスの顔面を突き後退させる。

 

「ガァァァァァ!!」

 

ヘラクレスは激昂しながらダスタードを呼び出す。

 

「雑魚がどれだけいようが関係無いぜ」

 

「弦太朗、火を貸してくれ!!」

 

呼び出されたダスタードの集団をメテオは近くで戦っている弦太朗へと叫ぶ。

 

「おう、ちょっと待ってろ、流星!!」

 

弦太朗はヒーハックガンの銃口をレイに直接押し付けていた。

ロープを千切ったレイが爪で斬り掛かるが掴んで距離を取られない様に押さえ込む。

 

リミットブレイク!!

「ライダー爆熱シュート!!」

 

「ゴガァァァァ!?」

 

零距離で放たれた爆炎の衝撃により、ヒーハックガンが上方へと押し上げられるがそれを利用してファイヤースイッチを刺したまま、流星へと投げ付ける。

そして、空いているベルトの○部分にエレキスイッチを入れ、オンにする。

 

エレキオン!!

 

全身が雷に包まれ、金色に染まり、右手にビリーザロッドが現れ、エレキステイツに姿を変える。

そのままレイの白い装甲が黒焦げた部分を斬り付ける。

 

「確かに受け取ったぞ」

 

ファイヤーステイツが解除された事により、ヒーハックガンが消え、ファイヤースイッチだけメテオへと飛んでくる。

受け取ったメテオはベルトにファイヤースイッチを差し込む。

Wもメタルメモリをメタルシャフトにセットする。

 

メタル!!

ファイヤーオン、レディ?

 

ベルトの天球儀を回し、リミットブレイクを発動させる。

 

メタル!!マキシマムドライブ!!

ファイヤー!!リミットブレイク!!

 

「「メタルブランディング!!」」

「ホワタァァァ!!」

 

Wはメタルシャフトに、メテオはストームシャフトに炎を纏わせダスタード達を消し飛ばし、その余波でヘラクレスを吹き飛ばす。

 

「トドメだ。タイミング合わせろよ、後輩!!」

 

「分かっている!!」

 

サイクロンジョーカー!!

メテオオン!!レディ?

 

Wは姿をサイクロンジョーカーに変え、メテオはメテオスイッチをベルトに入れる。

 

ジョーカー!!マキシマムドライブ!!

メテオ!!リミットブレイク!!

 

ジョーカーメモリをマキシマムスロットに入れマキシマムドライブを発動させる。

ベルトの天球儀を回転させ、リミットブレイクを発動させる。

 

「「ジョーカーエクストリーム!!」」

「ウォォォォォォォ!!」

 

「グボガァァァァァァ!?」

 

Wは左右が二つに別れ、半身ごとに時間差で蹴りを叩き込む。

メテオは風を纏わせた蹴りを叩き込む。

三発の蹴りを直撃したヘラクレスは奇声を上げながら爆散するのだった。

爆炎の中で番場が灰となって散るのだがその姿を見た者はいない。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「助太刀するでござる!!」

 

「おぉ!!助かるぜ!!」

 

一方、弦太朗の所へはキョウリュウゴールドが助太刀していた。

割り込むなり、ザンダーサンダーでレイを斬り飛ばす。

 

「弦太朗殿も金色で雷を使うでござるか」

 

「お前もか!!」

 

どうやらエレキステイツとキョウリュウゴールド、金色で雷属性という共通点で親しみが沸いている様である。

そうでなくとも弦太朗は元々人と親しくなりやすいタイプである。

 

「それじゃあ合わせ技で」

 

「決めるでござる!!」

 

ビリーザロッドとザンダーサンダーを構えて技の準備をする。

弦太朗はベルトからエレキステイツを外してビリーザロッドに入れる。

 

「獣電池、装填!!」ガブリンチョ!!

 

ザンダーサンダーに獣電池を三本セットする。

準備を完了すると警告音が響く中、ビリーザロッドとザンダーサンダーを構える。

ふらふらと立ち上がって来たレイに狙いを付けて二人は剣を振るう。

 

リミットブレイク!!

「「ライダー戦隊W雷電シュート!!」」

ザンダーサンダー!!

 

ザンダーサンダーから放たれた、ZANDAR THUNDERと言う文字を描く様な斬撃にビリーザロッドの電気が加わる。

合わさったそれはレイを斬り裂き抜け、激しい雷電を放ちながら爆散させるのだった。

 

「やったぜ!!」

「パーフェクトでござる!!」

 

二人は爆発に背を向け、拳を合わせるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ウォォォォォ!!」

 

アクセルはバイクモードとなり、後部にガンナーAを装備して敵の集団に砲撃を撃ち込んでいた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「何故だ!?何故動きが読めない!?」

 

「それは俺が最初からクライマックスだからだぁ!!」

 

「ぐぉぉぉぉ!?」

 

アイズ・ドーパントはモモタロスの動きが読めずに困惑していた。

 

ゴー!!カカッ、カッカカッ、カメレオ!!

「オラァ!!」

 

「ぐぁ!?何処から!?」

 

「へへっ、目が良くても見えなければ意味が無いよな!!」

 

ビーストがカメレオマントで透明化してダイスサーベルでアイズを斬り付ける。

更にそこへ銃撃が加わる。

 

「幾ら目が良くても精神的に困惑し、複数人を相手にした場合は全てを把握出来ない様ですね!!」

 

「くっ……おのれ!!」

 

キョウリュウバイオレットが中距離を保ってアイズをガブルキャノンで銃撃する。

ビーストとモモタロスが同時に斬り付けて隙を作る。

そこを狙って近付き紫のオーラを纏った銃口を向ける。

 

バモラムーチョ!!

「獣電ブレイブフィニッシュ!!」

 

「ぐぅぅぅ!?」

 

至近距離で重たい一撃を受けて体を宙に浮かす。

 

「俺も行くぜぇ!!」

5!!カメレオ!!セイバーストライク!!

 

「カァァァァ!?」

 

ダイスサーベルから放たれた五匹のカメレオンのエネルギー体がアイズに突進して吹っ飛ばしていく。

 

「何故……私が貴様らの様な奴らに…………」

 

「そんなもん決まってるだろうが!!戦いってのはなぁ!!ノリがいい方が勝つんだよ!!」フルチャージ!!

 

ライダーパスをベルトにかざし、デンガッシャーソードモードに力を溜める。

 

「俺の必殺技ァ!!」

 

「ごがぁぁぁぁ!?」

 

カメレオンに吹っ飛ばされ、落ちてきた所をモモタロスに真っ二つに斬られ、爆散する。

爆炎の中でドクタープロスペクトが灰になって散るのだが此方もやはり誰も気付かれないのだった。

 

 






幾つか対決も決着!!
まだグリードとか残ってますけど!!
乱戦自体は終わってませんけど!!

龍騎系のライダーって意外とスペック的には凄いところがあったりします。
表記が違うから普通のに変換すると凄い事になるらしいです。

モモタロスの動きをアイズが読めなかったのはノリがよかったからです。
それ以下でもそれ以上でもありません。
そこらへんがモモタロスらしいかと。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。


次回辺りに他の戦場にも視線が移るかもです。


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恐竜コンボとズバッと参上とびしょ濡れな二人

 

「ふん!!」

 

「「「「「ぐぁぁぁ!?」」」」」

 

ショッカーグリード、ゲルショッカーグリード、デストロングリード、ゴッドグリード、ガランダーグリード、デルザーグリードが各々炎弾を放ってくる。

映司、アンク、良太郎、幸太郎、キンタロス、ウラタロス、リュウタロスは敵の集団の中で不意討ち気味の炎弾を避け切れず吹き飛んでいく。

 

「グリード達か……」

 

「不味いぞ、幸太郎。流石にあの数を一度に相手にするのは分が悪い」

 

「それでもやらなくちゃならないんだ!!そうだろ、爺ちゃん?」

 

「うん。負けるわけには行かないから」

 

「付き合うで、良太郎、幸太郎」

 

「君達だけには任せられからね~」

 

「僕もやる!!」

 

「俺達が諦めたら終わりですからね!!」

 

「……………」

 

映司達が立ち上がり並び立つ中でアンクは掌の上にある三枚のメダルを見つめている。

このメダルは“王”から奪った物だ。

グリード相手にはかなりの切り札ではある。

ただしリスクもある。

だが、アンクは躊躇せずに映司に投げ付ける。

 

「映司!!これ使え!!」

 

「ッ!!こ、これは………恐竜メダル?」

 

受け取った三枚の紫メダルを見て、思わず映司はアンクを見る。

アンクは真っ直ぐ映司を見ている。

その視線からは信頼を感じた。

 

「………確かにこれを使えばどうにかなるかもしれないからな」

 

一瞬だけアンクに視線を戻し、メダルをベルトに入れる。

暴走はしない。

そう確信してオースキャナーを手に取り、メダルをスキャンする。

 

「ハッ!!」プテラ!!トリケラ!!ティラノ!!プットティラーノザウルース!!

 

 

「ウォォォォォォォォォォォォォォォ!!」

 

 

映司はプテラの頭、トリケラの胴、ティラノの足を持つコンボ、プトティラコンボに姿を変える。

周囲に冷気を放ちながら雄叫びをあげる。

その姿を前にグリード達は本能的に恐れる。

それもそうだろう。

コアメダルを砕ける力を持つのがプトティラコンボなのだから。

グリードにとっては天敵に等しい。

だからこそ本能から恐れる。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「トドメなのだ!!」

 

「くっ………………」

 

片膝を付き、忌々しげにアポロガイストを睨む士。

アポロガイストは余裕な様子で銃口を士へと向ける。

 

「終わりだ、マグナムショ「させるか!!」

 

「っ!?」

 

突如声が響き、アポロガイストの手にカードが突き刺さる。

その衝撃により放たれた攻撃は士の真横にズレる。

 

「お前は……風見 志郎?」

 

「いいや、違う」

 

士が現れた男の顔を見て呟くが否定される。

男の姿は紅いスーツを纏った姿へと変貌していく。

 

「ならば貴様は何者だぁ!!」

 

「ズバッと参上!!ズバッと解決!!人呼んでさすらいのヒーロー!!快傑ズバット!!」

 

名乗り口上を叫びポーズを取る。

更にズバットはアポロガイストを指差し言う。

 

「アポロガイスト、貴様は迷惑な奴として有名な様だが所詮は二番だ!!」

 

「何だと!!では、誰が一番だと言うのだ!!」

 

「俺さ………貴様ら悪にとってはなぁ!!」

 

「なめた口を………ディケイド共々貴様も消してくれるわァ!!」

 

激昂するアポロガイストを他所にズバットは士の横へと飛び降りる。

 

「行くぞ、ディケイド。協力して奴を倒すんだ!!」

 

「あぁ分かっている!!」

 

士は立ち上がり、ズバットと並び立ちながらライドブッカーソードモードをアポロガイストに向けるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

クロックアップ!!

1……2……3………

「ライダーキック………ハァ!!」

 

天道はマクスウェルが背後に空間移動してくるとクロックアップを発動させる。

時間流を操作し、天道からはマクスウェルはスローモーションに見える。

その間にゼクターのスイッチを押して力を足に溜める。

そのまま回し蹴りでマクスウェルを吹き飛ばす。

 

クロックオーバー!!

「なぁ!?」

 

いきなり蹴られた様な感覚が襲い、マクスウェルは吹っ飛んで行く。

まるで動きが読まれてるかの様にマクスウェルは蹴りを入れられたのだった。

 

「おのれ………」

 

憎々しげに天道を睨むマクスウェル。

そんな彼を嘲笑うかのように、茂みから幼い少女の声が響く。

 

「………ホント、信じられない。“境界門”を壊すなんて、魔王たちでもタブーなのに。新鋭のストーカーの行動力をなめていました」

 

「誰かと思えば軍師殿か。丁度いいところに来てくれたね。私は今、あの男から離れられない。すまないが、私に代わってウィラを連れてきてくれないかね?」

 

マクスウェルの申し出にリンは呆れて物も言えないという表情で仁王立ちしながら、何かを確認するかの様に大きく頷く。

 

「うーん、なんていうのかなあ。実はマクスウェルさんに言われるまでも無く、ウィラさんを拉致っていたりします」

 

____は? と、マクスウェルから間の抜けた声が漏れる。

直後にマクスウェルの周囲が爆裂する。

 

「がはぁ!?何が起きて!?」

 

再生しながらマクスウェルは周囲を見る。

すると天道がゼクトマイザーを操作し、カブト虫型自律式小型手榴弾、マイザーボマーを無数射出していた。

それらがマクスウェルへ襲い掛かり、爆裂しているのだ。

どうやら天道は話が終わるまで待つ気は無いようだ。

爆炎の中でマクスウェルはリンの背後にジンとぺストが控えているのを見る。

更にウィラがペストの持つ鎖で両腕を繋がれた状態で半泣きになり混乱している。

 

「何のつもりだ、軍師d

 

「ハァ!!」

 

問う途中に天道に殴り飛ばされ、クナイガンで斬り付けられる。

リンはその様子を見ながら笑みを浮かべてナイフを引き抜き、マクスウェルに宣言する。

 

「お取り込み中のようですけどちゃんと聞いてくださいよ。“マクスウェル・パラドックス”。メイカーの権限を以て、貴方の首を挿げ替えます。二一二〇年に現れる“歴史の転換期”____“第三永久機関”の霊格をね」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

____北側・未開の樹海。

蛟劉たちの“主催者権限”により新たなゲームが開催されていた頃。

 

「………最悪」

 

ラッテンはびしょ濡れの体を震わせながら焚き火に当たっていた。

その横では同じくびしょ濡れの黒ウサギが意識を失い倒れている。

二人纏めてマクスウェルに跳ばされたのだが、跳ばされた先が川の真上だったのだ。

バラバラに跳ばされるよりマシではあるが不運なのは間違い無かった。

 

「これも全てマクズウェルのせいよ………あいつがいなけりゃこんな事には…………戻ってまだ生きてたら斬り刻んでやる……………」

 

「ッ……?」

 

体を乾かしながら愚痴っていると黒ウサギが目を覚ます。

ラッテンはそちらを面倒そうに見る。

 

「あー・・・起きた?」

 

「ラッテンさん………此処は?」

 

「さっぱり分からないわ。まぁとりあえず川の近くなのは確かね」

 

とりあえず焚き火に当たって体を乾かす様に促す。

移動するにせよ、着替えるにせよ、乾かさなければどうともならない。

黒ウサギは申し訳なさそうに視線を下げる。

 

「申し訳ありません。黒ウサギが捕まらなければこんなことには…………」

 

「いいわよいいわよ、そういうのは。悪いのはあのマクズウェルなんだし……それにコミュニティの仲間にそういうのはいらないの!!」

 

ラッテンは全く気にしてないどころか、黒ウサギの態度を面倒そうに言う。

そろそろ体も乾いてきた。

 

「さて、とにかく戻る算段を立てましょ。とりあえず人里を探すとして、立てる?」

 

「だ、大丈夫です。ですが、服はそのままでいいのですか?」

 

「これ?まぁいいんじゃない?」

 

予備のメイド服くらいはある事をギフトカードを見せながら示す。

 

「あいつらは大丈夫として霧崎が心配なのよね~」

 

「………………」

 

ラッテンとしては何時も通りなら殺しても死なない奴らという感じに心配しないのだが、跳ばされる前の霧崎の状態を考えるとは多少心配であった。

黒ウサギとしては答えられなかった。

霊格の消失で自信を失っているのもあるのだろう。

だがそれ以上に、黒ウサギの網膜に焼き付いた鮮血の光景が、どうしても脳裏を離れなかった。

 

(十六夜さんは………あれからどうなったのでしょう…………?)

 

(無事だったとしても守れ無かったとか、勝手に思ってるんでしょうね……)

 

両者共に不安の種は尽きない。

だが人の心配をしている場合ではないのも確かではある。

ここが何処であれ、箱庭の樹海には様々な精霊、幻獣、悪鬼羅刹が跳梁跋滬している。

ラッテンの音響探知に引っ掛からないのもいる。

 

「夜に動き回るのは危険です。今夜は身体を休めて、明日から動くのですよ」

 

「えー・・・」

 

ラッテンが不満そうに言うが黒ウサギはギフトカードを取り出し、水樹の枝や携帯食を広げる。

その様子を見て、焦ってもしょうがないか、とラッテンもギフトカードを取り出すのだった。

 

「まぁ二人分を合わせりゃそれなりに持つでしょ」

 

「はい。川を下っていけば、何処か人里のコミュニティに出られるはずですし!!」

 

黒ウサギは空元気を全開にして両手を振り回す。

必死な黒ウサギにラッテンは苦笑するが、ウジウジされるよりはいいと思える。

窮地は自分たちだけではないのだ。

二人は身支度を進め、樹海の中で一夜を過ごすのだった。

 

 





プトティラ登場!!
“王”の体内にあったのをアンクが回収していました。
映司の中に入ってはいないので暴走のリスクは下がり、グリード化はありません。

快傑ズバットを士が仮面ライダーV3こと風見 志郎と呼んだのは役者繋がりです。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。



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狂気の獣と完全な肉体と強き竜の者

 

「行くぜ!!」

 

ダイゴは三本の獣電池を手に取り、ミニティラに一本ずつ入れていく。

 

ドゴドゴリンチョ!!

ブンブンリンチョ!!

ガブガブリンチョ!!

 

三本入れ終えるとリズムに合わせて踊る。

その背後には獣電竜の幻影が見える。

そして、銃口を上に向け引き金を引く。

 

「ファイヤ!!」

バモラ!!カーニバル!!アーチョチョ、チョチョチョチョ!!

 

銃口から放たれた恐竜の頭部の様なエネルギー体はダイゴへと向かっていき、纏われる。

右腕にシアンのハンマー、左腕に灰の鉄球が現れる。

 

「キョウリュウレッド・カンフーカーニバルだぁ!!」

 

「………うるせぇ」

 

ハンマーを王蛇サバイブへと振り降ろすが大剣に防がれる。

だが、振り回した鉄球が背後から王蛇サバイブへと襲い掛かる。

 

「くっ……」

 

「まだまだぁ!!ガブガブキック!!」

 

王蛇サバイブが怯んだ所で足を広げ、噛み付く様に蹴りを入れる。

王蛇サバイブが後退したところでダイゴは新たに三本の獣電池を取り出す。

 

ガンガンリンチョ!!

ザクザクリンチョ!!

ガブガブリンチョ!!

 

「ファイヤ!!」

バモラ!!カーニバル!!イーハー!!

 

また銃口からエネルギー体が二つ放たれ、ダイゴの体に纏われる。

右手に黒の銃、左手に緑の刃が現れる。

 

「キョウリュウレッド・ウェスタンカーニバルだぁ!!」

 

「うぜぇ…………」

 

面倒そうな王蛇サバイブ。

戦いに飢えていてもダイゴの様なタイプは鬱陶しいようだ。

 

「パラサガン!!」

 

「ハァァァァァァァ………」

 

ダイゴは右手からエネルギー弾を多数放つが王蛇サバイブは全く気にした様子も無く、直撃しようが平然と進んでくる。

 

「アアアァァァァァァ!!」

 

「うぉッ!?」

 

獣の様に叫びながら斬り掛かってくる。

ダイゴも左手の刃で対応する。

数度打ち合い、鍔迫り合いとなり、互いの動きが一瞬止まる。

ダイゴはそこを狙い、至近距離でエネルギー弾を放つ。

さすがに至近距離で受けたらさすがに効いたのか、王蛇サバイブは少々後退する。

そして、仮面の一部が砕けていた。

 

「何て顔をしてやがる……」

 

「糞尿臭いんだよ………お前らはぁ!!」

 

仮面の下の顔は笑っていた。

獣の様に獰猛に狂った様に笑っていた。

仮面はすぐに元に戻っていくがその顔は強く印象を残す。

仮面が完全に戻る前にも王蛇サバイブは斬り掛かってくるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

アドベント!!

ユナイトベント!!

「………………」

 

リュウガサバイブは無言のままでバイザーにカードを読み込ませる。

ドラグランザーが現れ、ブラックドラグランザーと一つになる。

リュウガサバイブの背後には黒と赤の二つ首の龍が佇んでいた。

その首から二色の炎弾が放たれる。

晴人はドラゴタイマーによって四色のドラゴン形態に分身してるとはいえ、防ぎ切れずに吹き飛んでいく。

 

「くそっ…………何て強さだ」

 

「当たり前だ………俺は完全な体を手に入れた。もう鏡の中の幻影じゃない。完全な体を手に入れた俺に敵う物か!!」

 

そこで初めてリュウガサバイブは口を開いた。

だが、そこから先はやはり無言でトドメを刺そうと斬り掛かってくる。

そこへ割り込む人影が現れる。

 

「ノブハルシールド!!」

 

キョウリュウブルーがステゴシールドでリュウガサバイブの剣を防ぐ。

 

「パラサショット!!」

 

「ドリケランス!!ワァオ!!」

 

キョウリュウブラックがパラサショットで撃ち、リュウガサバイブを後退させる。

そこをキョウリュウピンクがドリケランスで突く。

 

「雷電飛翔斬り!!」

 

「斬撃無双剣!!」

 

怯んだ所にキョウリュウグリーンが緑のオーラを纏った斬撃を、キョウリュウゴールドが雷を纏った斬撃を放つ。

吹っ飛ぶリュウガサバイブだが地面を転がる前に体勢を立て直し、着地する。

 

「大丈夫か、ウィザード!!」

 

「あぁ助かった」

 

「……………………………」

 

変わらず無言ではこの連撃はそれなりにダメージであった様だ。

 

「一気に決めるぞ!!」

 

「あぁフィナーレだ!!」

ファイナルタイム!!オールドラゴン!!プリーズ!!

 

晴人がドラゴタイマーをベルトにかざすと、ウォータードラゴン、ハリケーンドラゴン、ランドドラゴンが幻影の龍と変わり、フレイムドラゴンへと集っていく。

フレイムドラゴンの胸にドラゴンの頭部が、両手にドラゴンの爪、背後にドラゴンの翼と尾が現れる。

そのままリュウガサバイブへと突撃していく。

融合ドラグランザーが放つ炎弾を尾で弾き、爪で斬り裂き、翼から放つ竜巻で動きを封じ、ドラグランザー共々ドラゴンスカルから放つ熱線で貫く。

それでもまだリュウガサバイブは生きている。

 

「戦隊やぐらだ!!」

 

「「「おぅ!!」」」

 

晴人が攻撃を終えると黒、青、緑、桃がヤグラを組み、ガブリボルバーから前方へとエネルギー弾を放ち、一つにする。

キョウリュウゴールドが一つにしたエネルギー体を纏い、リュウガサバイブへと突撃する。

 

「雷電残光・五連突き!!」

 

反撃の隙を与えぬ内にキョウリュウゴールドが五方向からリュウガサバイブを斬る。

 

「ハァァァ!!」

 

「…………グハァ!?」

 

キョウリュウゴールドが斬り終えた後に晴人が四属性のドラゴンを纏わせ蹴り抜く。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

キシャァァァァ!!

 

ジェノサバイバーが毒液を撒き散らしながらキョウリュウシアン、キョウリュウグレー、キョウリュウシルバーへと突進してくる。

 

「中々手強いですネ」

 

「だが、所詮は化け物だ」

 

「あぁ、これで決める」

 

三人共、拳へと力を溜める。

各々構えを取り、狙いを付ける。

 

「アンキドンハンマー!!」

 

「鉄砕拳・激烈突破!!」

 

「奥義……空烈………パンチ!!」

 

グゲリャァァァ!?

 

ハンマーの様な重い拳、全身を振り回しその衝撃を詰めた拳、全てを込めた拳がジェノサバイバーに直撃し、その巨体を浮かす。

ジェノサバイバーは悲鳴を上げながら吹き飛んで行く。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ゴチゴチリンチョ!!

バスバスリンチョ!!

ガブガブリンチョ!!

 

「ファイヤ!!」

 

銃口から二つのエネルギー体が放たれ、ダイゴに纏われる。

右手には青い腕でブーメランを持ち、左手はネイビーの腕で盾を持つ。

 

「キョウリュウレッド・サンバカーニバルスペシャルだぁ!!」

 

そんな事を言ってる間にも王蛇サバイブは斬り掛かってくる。

盾でそれを受け止め、ブーメランで斬りつけ、蹴りを入れて後退させる。

 

「スピノブーメラン!!」

 

右手のブーメランを投げ付ける。

それによって王蛇サバイブは何度目斬り裂かれるが相変わらず平然としている。

それは予想通りである。

その間にミニティラとガブリボルバーを連結する。

 

「行くぜぇ!!」バモラ!!カーニバル!!

 

「か…………ッ!?」

 

放たれたエネルギー弾に直撃する王蛇サバイブ。

だが、王蛇サバイブは炎の中でも平然と立っている。

そこでダイゴは確信する。

王蛇サバイブ、否、浅倉は攻撃が効かないわけじゃない。

効いていようが関係無く戦闘を続けているのだ。

まるで痛覚が失われてる様に。

そこへ、ボロボロのリュウガサバイブが現れる。

ついで晴人とキョウリュウジャーの仲間がダイゴの方へと駆け寄ってくる。

 

「こ、こんな所で俺が死n「ハァ!!」

 

ダイゴ達の前でバシャリと言う血が溢れる様な音がする。

そして、リュウガサバイブの首が血に転がる。

王蛇サバイブが近くに来たリュウガサバイブの首を斬り落としたのだ。

だが、それで終わらない。

腹を裂き、内蔵を引き抜く。

血が溢れ、返り血に濡れる中で浅倉は深呼吸をする。

自身にまとわりついている糞尿の臭いを“死の臭い”で上書きする様に。

ある程度深呼吸すると浅倉は死体を近寄ってきたジェノサバイバーに喰わせる。

ダイゴ達はそれを呆然と立ち尽くして見ているしか無かった。

 

「何て奴だ………」

 

吐き気を堪えながら呟く。

 

「ブレイブを黙らせるなぁ!!お前たちは強き竜の者だ!!あれくらいで身をすくませるな!!」

 

ジェノサバイバーを追ってきたキョウリュウシルバーが背後にシアン、グレー、バイオレットを引き連れて現れ、ダイゴ達へと激励する。

 

「俺は違うんだけどな。だけど、最後の希望が諦めちゃ駄目だよな」

インフィニティー!!プリィィィズ!!ヒースイフードボーザバビュードゴーン!!

 

晴人が前に出てインフィニティースタイルへとスタイルチェンジする。

そして、ダイゴ達も落ちていた士気を取り戻す。

 

「行くぜ、みんなぁ!!」

 

「「「「「「おぉ!!」」」」」」

 

だが、王蛇サバイブにはそんな事は眼中に無い。

融合ドラグランザーを契約し自らの契約モンスターとすると数枚のカードをバイザーに読み込ませる。

 

アドベント!!アドベント!!アドベント!!アドベント!!アドベント!!アドベント!!ユナイトベント!!

 

なんとボルキャンサー、ブランウィング、バイオグリーザ、デストワイルダー、ギガゼール、ダークウィングを召喚し、ジェノサバイバーと融合させていく。

融合し生まれたミラーモンスターは巨大で禍々しい姿をしていた。

 

「何だ、あの化け物は!?」

 

「これが真のジェノサバイバーだぁ!!お前ら、俺を楽しまして死ね!!」

 

王蛇サバイブの叫びと共にジェノサバイバーが一同へと襲い掛かる。

キョウリュウジャー達は慌てて攻撃を避けようとするが晴人だけは正面から攻撃を受け止め様とする。

 

「ウィザード!!何をやっているんだ!?」

 

「大丈夫だ、このくらいなら」

 

言葉の通り晴人は無事であった。

さすがに衝撃で多少後退はしたものの、輝くその体には傷一つ無い。

晴人はアックスカリバーを手に取ってジェノサバイバーに斬り掛かる。

続いてキョウリュウジャー達も攻撃を仕掛ける。

 

「スピノブーメラン!!」

 

「ブレイブフィニッシュ!!雷電残光!!」

 

「トリニティストレイザー!!」

 

「「「「獣電ブレイブフィニッシュ!!」」」」ゴッチーン!!ドッドリーン!!ガッガーン!!ズッオーン!!

 

「ハァ!!」「タァァ!!」「フン!!」

 

十人による攻撃でさすがにジェノサバイバーも悲鳴を上げる。

 

インフィニティー!!

「ハァァ!!」

 

「何ィ!?」

 

晴人は高速移動して浅倉を斬り飛ばす。

吹っ飛んだ先まで高速移動し、地に足をつけれないレベルで斬り刻んでいく。

晴人とキョウリュウジャーが再び並び立つ。

 

「これで決めるぜ!!」

 

「ビクトリー獣電池!!」

「マキシマム獣電池!!」

「「直列!!」」

 

銀と金の獣電池を取り出して直列に繋げる。

他の八人も獣電池を持つ手に手を重ねていく。

 

「「「「「ビクトリーブレイブイン!!」」」」」

「「「「「マキシマムブレイブイン!!」」」」」

 

二つの獣電池に十人の力を込める。

ダイゴはその獣電池をミニティラへと入れていく。

 

アミーゴ!!ミンナアツマリンチョ!!

アミーゴ!!メッチャメチャアツマリンチョ!!

 

獣電池をセットすると十人がダイゴと肩に手を乗せる。

 

「フィナーレだ!!」

ハイタッチ!!ハイタッチ!!ハイタッチ!!ハイタッチ!!ハイタッチ!!プラズマシャイニングストライク!!

 

晴人もアックスカリバーをアックスモードにて、手形部分にインフィニティーリングを五回かざす。

 

「「「「「「「「「「「十獣電ビクトリーマキシマムフィニッシュ!!」」」」」」」」」」」

 

ミニティラから放たれた十大獣電竜の頭部の形のエネルギー弾が王蛇サバイブ、ジェノサバイバーを貫いていく。

それに合わせて遠隔操作されたアックスカリバーが斬り刻んでいく。

幾ら致命傷を与えて立っていた浅倉も耐え切れずカードデッキも砕け浅倉の体も灰となって散っていった。

 

「ブレイブだぜぇ!!」

 

爆炎を背後にダイゴは叫ぶのだった。






キョウリュウジャーとウィザードのバトルでした!!
王蛇サバイブとリュウガサバイブに勝利でした!!

浅倉の殺し方は人格が小説仮面ライダー龍騎の浅倉なので内臓を取り出してという形になりました。

リュウガに関しては龍騎を取り込むのに成功していたリュウガです。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待っています。



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獣電巨人と獰猛なる雄叫びと眼中に無い物

仮面ライダー達とアポロガイスト達の戦う場に近付く影が幾つか見えた。

アジ=ダカーハの分身体である。

激しい戦闘に釣られて現れたのだろう。

 

『また来たんだ………』

 

デンライナーと砲火を交えるネオ生命体がそれらを見付け、呟く。

 

『ねぇ、君達。僕の玩具になってよ』

 

言った直後にクライス要塞の下部でうごめく足の様な部分が二本伸びて行く。

そのまま分身体達へと襲い掛かり貫き、飲み込んでいく。

その場にいた分身体を粗方喰い終わると、足を切り離す。

 

『特大サイズの玩具だよ♪』

 

切り離された二本は形を液体金属の様に変えていく。

それは徐々に人型へと変わっていく。

だが、サイズは巨大だ。

完全に変化を終えると、巨大なドラスが二体叫びを上げ、足元へと雷を放っていく。

 

『アハハハハハハハッ♪これでもっと面白くなるよ』

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「うぉぉぉ!?」

 

放たれた雷を彼らは必死に回避する。

幾つも爆炎が上がっていく。

巨大ドラスの雷は戦闘員すらも巻き込んで吹き飛ばしていく。

 

「巨大な奴らなら俺達に任せろ!!」

 

「「「「「「「「「「ブレイブイン!!」」」」」」」」」」

 

「ガブティラ!!」

「パラサガン!!」

「ステゴッチ!!」

「ザクトル!!」

「ドリケラ!!」

「プテラゴードン!!」

「アンキドン!!」

「ブンバッキー!!」

「プレズオン!!」

「ブラギガス!!」

「トバスピノ!!」

 

ガブリンチョ!!×11

 

キョウリュウジャー十人が獣電池にブレイブを込めて投げる。

全て獣電竜の口へと入り、彼らのエネルギーとなる。

 

「「「「「「「「カミツキ合体!!」」」」」」」」

「ロケット変形!!」

「超カミツキ変形!!」

 

ガブティラが変形し、ステゴッチを右腕、ドリケラを左腕とする。

その中にダイゴ、キョウリュウブルー、キョウリュウピンクが乗り込む。

コクピットの台座の上に立ち叫ぶ。

 

「「「完成!!キョウリュウジン!!」」」キョウリュウジン!!

 

プテラゴードンが変形し、パラサガンを右腕、ザクトルを左腕とする。

キョウリュウゴールド、キョウリュウブラック、キョウリュウグリーンが乗り込み、コクピットの台座に立ち叫ぶ。

 

「「「完成!!プテライデンオーウェスタン!!」」」プテライデンオー!!

 

プレズオンが変形し、長い首が右腕となる。

キョウリュウバイオレットが乗り込み、コクピットの台座に立ち叫ぶ。

 

「完成!!プレズオー!!」プレズオー!!

 

ブラギガスの背に13本のガーディアンズ獣電池が刺さる。

それらを全て取り込み、変形する。

キョウリュウシルバーが乗り込み、コクピットの台座に立ち叫ぶ。

 

ギガガブリンチョ!!

ギーガント、ギガント!!ギーガント、ギガント!!

「完成!!ギガントブラギオー!!」

ギガントブラギオー!!

 

トパスピノが変形し、アンキドンが右腕、ブンバッキーが左腕となる。

右腕にブーメラン、左腕に盾を持つ。

キョウリュウシアン、キョウリュウグレーが乗り込み、コクピットの台座に立ち叫ぶ。

 

「「完成!!スピノダイオー!!」」

 

五体の獣電巨人が二体の巨大ドラスの前に立ち並ぶ。

巨大ドラスも警戒した様に構える。

何の合図も無しに両者は互いに向かって行くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ヌウン!!」

 

「ハァァ!!」

 

デルザーグリードの放つ炎弾を映司はプテラヘッドから放つ冷気で相殺する。

地面に手を突っ込みメダガブリューを取り出す。

 

「ウォォォォ!!」

 

「ぐぅぅぅ!?ぐはっ!?」

 

叫びを上げて全方向に冷気を放つ。

すると透明化し近付いて来ていたガランダーグリードの足が凍結し、その姿が露になる。

それを見逃さずにメダガブリューで斬り飛ばす。

 

「かぁぁぁぁ!!」

 

「ダァ!!」

 

「ギャ!?」

 

飛び掛かってきたゲルショッカーグリードを肩の角を伸ばして貫く。

 

「ウォォォォ!!」

 

「フンッ!!」

 

そのままプテラヘッドから翼を展開して、ゲルショッカーグリードへと突進し、メダガブリューで斬り掛かるがデストロングリードが頑強なその体で受け止めてくる。

だが、直後にティラノの尾を展開して振り回す。

さすがにそれには耐えられずゲルショッカーグリードとデストロングリードが纏めて吹っ飛ぶ。

 

「おのれ!!」

 

「ぐっ………ダァァ!!」

 

ゴッドグリードが火炎球を連射してくるが耐え切り、弾き飛ばす。

 

「中々やるようだな。しかし一人で我々を倒せると思うな!!」

 

ショッカーグリードが他の五体と同時に炎弾を放つ。

さすがにこれを食らえばプトティラコンボとはいえ不味い。

だが、それは一人ならの話だ。

 

シールドオン!!

「一人じゃねぇよ!!」

 

ディフェンド、プリーズ!!

「俺達を忘れて貰っちゃ困るぜ」

 

晴人と弦太朗が映司の前に出て攻撃を防ぐ。

 

「「Xブラス「おっと、やらせねぇぜ!!」

 

離れた所から不意討ちしようとしていたキョーダインにWとアクセルが蹴り込み、技を中断させる。

 

「人間ごときが私達に勝てるとでも?」

 

「俺に質問をするなぁ!!」

 

スカイダインの問いを無視して叫びながらエンジンブレードで斬り掛かる。

 

「ったく相変わらずだな」

「宇宙鉄人………興味深いね」

 

「そんな場合じゃねぇだろ。行くぜ、フィリップ」

「あぁ、翔太郎!!」

 

翔太郎とフィリップが息を合わせ、アクセルに続く様にグランダインに攻撃を仕掛けていく。

 

「何人いようが貴様らライダーなど我々が倒してくれるわ!!」

 

「いいや、カウントダウンが始まってるのはお前達の方だよ?」

 

「何だと!!」

 

「つまり、俺ら全員一人残らずクライマックスって事だよ!!」

 

叫びモモタロスが一人で敵に向かって先陣切って駆けて行く。

それを合図にグリード達も戦闘員を引き連れて迎え撃つ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

クウガ!!アギト!!リュウキ!!ファイズ!!ブレイド!!ヒビキ!!カブト!!デンオウ!!キバ!!ファイナルカメンライド!!ディ、ディ、ディケイド!!

「これで終わりにしてやる!!」

 

士はズバットがアポロガイストに隙を作ってる間にケータッチを操作する。

操作し終えるとディケイドドライバーを右腰に移動させ、ドライバーのあった場所にケータッチをセットする。

胸に九枚のカード、頭に一枚のカードが現れ、ディケイドコンプリートフォームへとファイナルカメンライドする。

 

「何を終わりにするというのだ!!」

 

「お前をだよ!!」ブレイド!!カメンライド、キング!!

 

ケータッチを操作すると胸のカードがブレイドキングフォームへと変化する。

 

「やれる物ならやってみるがいい!!」

 

アポロガイストの水晶が透明になる。

その瞬間を狙って士はディケイドドライバーにカードを入れる。

 

アタックライド、タイムスカラベ!!

 

そして、時が止まる。

タイムスカラベの力によって時を停止させたのだ。

アポロガイストは時間干渉系高速移動にテレポートを合わせてくる。

これを攻略するとなると手は限られる。

だから、手っ取り早く時を停止させたのだ。

ただし、この時間停止は物体に干渉出来ない。

だから停止しているアポロガイストを一方的に攻撃する事は出来ない。

だが、近付くくらいは出来る。

目の前まで近付き、カードをディケイドドライバーに入れる。

そして、時は動き出す。

 

アタックライド、ストレートフラッシュ!!

「ハァァァァ!!」

 

「ぐ、ぬぅ!?」

 

時が動き出した瞬間、アポロガイストが移動する前にライドブッカーとブレイラウザーの二刀流で斬り飛ばす。

 

「タァァァ!!」

 

「が、グハァ!?」

 

斬り飛ばされ、隙が出来た所にズバットが鞭で一撃入れる。

アポロガイストは体から火花を散らしながら後退する。

 

「次で決めるぞ、ディケイド!!」

 

「あぁ!!」

 

「おのれぇぇぇぇ!!」

 

アポロガイストが忌々しげに叫び、士とズバットが攻撃に備えて構える。

ライダー達とアポロガイスト達の戦いも終盤へと向かっていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方、ジャック達は三頭龍相手に一時撤退を余儀無くされていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

____“煌焔の都”・廃墟。

三頭龍の消えた“煌焔の都”の付近では、また別の戦いの幕が上がっていた。

 

クロックオーバー!!

 

そんな音声と共に青と赤のコントラストで彩られた派手な外套を纏うマクスウェルが建物を巻き込み吹き飛んでいく。

仮面ライダーカブト、天道 総司の仕業である。

マクスウェルが空間跳躍と熱量操作で攻撃するのに対し、天道はクロックアップで応戦しマクスウェルを圧倒している。

マクスウェルが背後に跳躍すれば、まるで読んでいたかの様に回し蹴りで蹴り飛ばし、熱量操作による攻撃も軽々避けている。

 

「貴様では俺には勝てない」

 

「そんな事はどうでもいい!!私が花嫁を奪いに行く邪魔をするなぁ!!」

 

「別に邪魔をしているつもりは無い。俺は俺でやる事をやっているだけだ」

 

マクスウェルが大吹雪を放つが天道は廃墟の上へと飛び乗り避ける。

クナイガンでマクスウェルを狙撃するが、空間跳躍で避けられる。

だが、現れる場所の検討は大体付いている。

 

クロックアップ!!

 

ウィラを狙い空間跳躍したマクスウェルにクロックアップで即座に追い付き、クナイガンで斬り飛ばす。

マクスウェルの眼中には天道など無いのだ。

幾らボコられようと彼はウィラしか見てないのだ。

鎖で繋がれたウィラを見たマクスウェルは我を失っている。

天道としても攻撃が単調な上に攻撃対象が散っている為、かなり戦いやすい状況であった。

一方、リン達は逃げてはいるものの天道がマクスウェルを相手している為にゆっくりとどう対処するか相談していた。

マクスウェルを放って置くと分身体が下層にどんどん送り込まれていくのだ。

とりあえず殿下の疑似創星図をどうやって当てるかという方向に話が進んでいた。

ついでにどう逃がさないかという話も。

それに関しては混世魔王の言葉にリンが何か思い付いた様である。

殿下とジンはさっぱりと言った様子ではあるが。

そこへ、ライダーキックが直撃したマクスウェルが建物を突き破って転がってきた。

 

「ちょうどいい所にいたね、メイカー殿」

 

傷を再生しながらマクスウェルはリン達の方を見る。

マクスウェルが突き破って出来た穴の方から足音が聞こえるがマクスウェルは気にせず言う。

 

「言っておくが君達の裏切りは初めから織り込み済みだ。頭……ガッ……首殿からは既に、殿下以外を皆殺しにしていいと許可を得て……グッ……いる。カリ=ユガを乗り越えるのに必要なのは、殿下だけだからね」

 

「…………へえ?」

 

体を撃ち抜かれながらも話すマクスウェル。

リンはそこから何か重要な事実に気付いた様だ。

穴から天道が姿を見せるが何かを察した様に様子を見ている。

 

「そっか。裏切りも織り込み済み、ね。……参ったな。何手先を読んでるんだあの人」

 

「ほう?流石のメイカー殿も、頭首殿の先見には敵わないかね?」

 

「…………そうだね。ほんと、怪物だよ。この展開を読んでいたのなら、あの人は本当に怪物だ。もしも一連の出来事を初めから読んでいたのなら__」

 

何かを覚悟した様に瞳を見開いたリンは、短刀を構えて告げる。

 

「マクスウェル。“生贄にされたのは貴方の方だ”」

 

それだけ言うと、リンは満面の笑みでウィラを抱き締め、顔を近付け、顎をクイッと持ち上げて___

 

「それじゃ、いただきます♪」

 

 

____ウィラの、可憐な唇を奪った。

 

 

「「「___……なっ、」」」

 

ジン、マクスウェル、ペストの三人が同時に声を上げ、そのまま絶句。

被害者であるウィラは何が起きたかわからないまま頭が真っ白になっていた。

 

 





巨大ドラス×2vs獣電巨人×5開戦!!
地上の決戦は終盤に近付いてきました!!
残るは六体のグリードとキョーダインと戦闘員多数です。

天道vsマクスウェルはクロックアップある時点で天道優勢です。
とは言ってもマクスウェルは無限に再生してきますが。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待っています。



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謎の天使と老紳士と変動する確率

 

ウィラとリンが(挑発する為に)イチャイチャしていると、虚ろな瞳のマクスウェルが呟いた。

 

「___“Summon maxwell myths. 3S,nano machine unit”___!!」

 

え?と、初めて聞く召喚式に、リンとウィラは耳を疑う。

“主催者権限“を発動させるのかと思ったが、“召喚”を告げた以上、何かを呼び出す術だろう。

混世魔王だけが驚愕し、一同を後退させる。

直後に炎熱と極寒の風を纏って現れた影が天道を吹っ飛ばした。

 

「何ィ!?」

 

あれだけ圧倒していた天道が不意を突かれ、吹っ飛ばされたのに殿下達が声を上げる。

殿下達は慌てて臨戦態勢に入り、謎の天使を迎え撃つ。

 

「“nano machine unit”____ナノマシンか」

 

吹っ飛ばされながらも天道は敵を解析していた。

解析しながらもハイパーゼクターを掴んで腰に装着し、角を倒す。

 

「ハイパーキャストオフ」ハイパーキャストオフ!!チェンジハイパービートル!!

 

ハイパーフォームへと姿を変える。

パーフェクトゼクターも呼び出し、吹っ飛ばされた所を戻っていく。

そこでは殿下達が空間跳躍を使い、体が霞の様に再生する天使に苦戦していた。

天道はドレイクゼクターを呼び出し、パーフェクトゼクターガンモードに装着させる。

 

ドレイクパワー!!ハイパーシューティング!!

 

パーフェクトゼクターから殿下の戦う天使に向けてエネルギー弾が放たれる。

 

「ハイパークロックアップ!!」ハイパークロックアップ!!

 

直後にハイパーゼクターの角を倒し、ハイパークロックアップを発動させる。

その間にパーフェクトゼクターをソードモードにし、呼び出したザビーゼクターを装着させる。

 

ザビーパワー!!ハイパースティング!!

「ハァ!!」

 

ハイパークロックアップ状態で鈍く進む様に見えるエネルギー弾を追い越し、二体の天使を貫く。

 

クロックオーバー!!

 

ハイパークロックアップが解除され、時間流が通常の速さとなる。

天使は貫かれた状態でエネルギー弾に撃ち抜かれ、吹き飛んでいく。

街から森へ、未開の樹海に吹っ飛んでいく。

戦いは更に激化していく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

リリと白雪姫達が十六夜を治療をする中、霧崎は意識を取り戻していた。

頭に包帯を巻き、まだ多少頭痛のする頭を押さえながらサラ、コッペリア、そしてクロア=バロンと話をしていた。

 

「つまり、あんたは俺達の先輩って事でいいんだよな?」

 

「そうだ。一応は創始者の一人になるのかな?」

 

霧崎としては実感があるわけでは無いが聞いておきたい事もあった。

真っ先にラッテン達の事を聞きたくはあったがそれは後でいい。

 

「あんたはどうやって箱庭に“戻って”来たんだ?」

 

これまで聞いた話から元メンバーが外界に跳ばされた事は大体予想が付いている。

ならばどうやって戻って来たかそれが気になる所なのだ。

 

「それは君の“知り合い”に力を貸して貰ってね」

 

「俺の“知り合い”?」

 

思い当たる人物はいなかった。

そもそも知り合いに箱庭を知ってる様な奴も、箱庭へ戻るのを手伝えそうな能力も心当たりに無い。

 

「“誰”かは聞かないでくれよ。そういう約束だからな。とにかく、君の“知り合い”に手伝って貰い、“クイーン・ハロウィン”の力で召喚して貰ったのさ」

 

「まぁ……よく分からないけど運が良かったって事か?」

 

「そういう事だ。“あれ”のおかげで土壇場に間に合った。そうは言っても色々と仕掛けた救援を呼ぶ仕掛けが無駄になったのは残念だがね」

 

どうも真意の読めない笑いをする。

何はともあれとクロアは霧崎に視線を戻す。

 

「とりあえず君は休んでいたまえ。脳へのダメージは気休めとはいえ回復させた方がいい」

 

「それは分かっている。無茶したらどうなるかは“見て”いるからな」

 

これで話は終わりと、休む為に眠れる部屋に移動しようとする霧崎に背後からクロアが呟く。

 

「君の心配する二人は大丈夫だ。だから安心して休みたまえ」

 

それはどういう事か問おうと霧崎が振り向くが既にクロアの姿は霞の用に消えていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「協力感謝するよ、“ネメシスQ”」

 

[別に感謝する必要は無い。私はただ、私のいる時間軸から消えた“知り合い”の行方を探りたかっただけだ。そのついでにお前たちに協力しただけだ]

 

「それでも我々としては感謝しなければいけないんだよ」

 

クロアは十六夜の病室に現れ、窓際にいる奇妙な人影と話しかけていた。

それは霧崎のいた世界から“07号”が飛ばしている疑似生命体だ。

彼女は“確率を変動させる力”によって接触してきたクロア達を箱庭へ戻す手伝いをする代わりに霧崎の安否をこうやって確かめに来たのだ。

“07号”と霧崎にはそこまで接点があるわけでは無い。

アゲハ達への義理と言う部分が大きい。

 

[さて、目的は果たした。私は消えさせて貰うぞ。さすがに“これ”を世界を越えて維持するのは辛い]

 

「最後に一つ聞かせてくれ。彼はまだ戦えるか?」

 

[あいつは元々負担が軽いタイプだ。適度に休ませておけば死にはしない。無茶をするかどうかは本人次第だ]

 

「そうか。それだけ聞ければ十分だ」

 

返事を聞く前に“ネメシスQ”の体は灰の様に崩れていくのだった。

そして、クロアは窓の向こうに隠れている者達へと話しかける。

 

「それでお前たちはどうする?」

 

『………俺は一度ゲーム盤から出る』

 

その声には何か別の事を考えている様な色が含まれていた。

 

「そんなに娘が心配か?」

 

『……娘を心配しない父親がいるものか』

 

それを最後に物陰の気配が一つ消える。

“彼”としては“今”この場にいない娘がかなり心配なのだ。

 

「もう少し言葉を選んだらどうだ?」

 

もう一つの人影がクロアを非難する様に言う。

 

「どう言おうと変わりはしないさ。“予定外”の事が起きているのは間違い無いが、その原因は私達には分からないんだからな」

 

「彼らでも大丈夫なのか?」

 

「それはお前の方が知ってるはずだろ、アカレッド」

 

「俺も全てを把握しているわけでは無いんだよ」

 

アカレッドはスーパー戦隊の“原典候補者”ではあるが全てを全て完全に知る事は不可能である。

ましてや、仮面ライダーに関しては専門外である。

 

「それもそうか。とはいえ、どうせあいつを追ってゲーム盤の外に出る気だろ?」

 

「あぁ。NEVERも退却した様だし双頭龍も片付けておく必要があるからな」

 

NEVERの面々は動物戦隊ゴーバスターズと交戦していたが、アカレッドが加勢に現れると錠前を操作し、空間の裂け目を作り、そこに消えていったらしい。

 

「なら外の事は任せた」

 

それを最後に物陰の気配が完全に消える。

一人その場に残ったクロアは両手で杖を持ち、苦い顔で呟いた。

 

「………………とは言ったものの。この戦い、何人生き残れるかね?」

 

「へぇ?それは聞き捨てならないな」

 

十六夜の不意の声にクロアは片眉を歪ませる。

彼の傷は簡単に意識が回復するようなものではない。

なのにどうしてこんないいタイミングで目を覚ますのだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

撤退したNEVERの面々はゲーム盤の外から様子を眺めていた。

 

「克己ちゃん、本当によかったの?」

 

「奴らが現れた時点で割りに合わないのは確実だ。ウィラ=ザ=イグニファトゥスを確保するチャンスならまだあるんだ。急ぐ必要は無い」

 

「でも、マクスウェルとか言うのに奪われたら確保するのが難しくない?」

 

「そこは大丈夫だ。“あいつら”なら奪われやしないだろ」

 

敵の変な所を分かった様に言う。

何はともあれ大道はマクスウェルの手にウィラ=ザ=イグニファトゥスが渡らないと確信していた。

 

「それにマクスウェルから奪うくらいなら俺達なら出来るだろ?」

 

「そうね!!私達なら出来るわ!!」

 

京水が大声で同意する。

他のメンバーは鬱陶しそうにそれを眺める。

京水のテンションには扱い方が分かってる大道以外はうんざりする物だ。

彼らは戦場の流れをある程度眺めた後、空間の裂け目へと姿を消すのだった。

 

 





今回はバトル少なめでした!!

クロア達を箱庭に導いたのはネメシスQでした。
霧崎が消えたのを感じた07号にクロア達が接触し、霧崎の安否確認を条件に手伝ったという感じです。

『』は考明です。
クロア達にとっても予想外の事が起きているのがこの世界線です。
原因としては大体“あれ”とか、“あいつら”とか、“あれら”です。

それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。



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変形キョーダインと悪の欲望と悪の結社系グリード

 

「「スピノブーメラン!!」」

 

スピノダイオーがドラスに向け、スピノブーメランを投げ付ける。

ドラスは体をそらすが避け切れずに浅く体を抉られる。

だが、その傷もすぐに再生していく。

 

「ハァ!!」

 

「フン!!」

 

プレズオーがロケットパンチで牽制し、ギガントブラギオーが斬り倒す。

今度こそ深く抉られ、真っ二つとはいかないが、右肩から腰に掛けてまで綺麗に斬られていた。

それもすぐに再生して行くが隙を与えず攻撃を仕掛けていく。

 

「「「ドリケラドリル!!」」」

 

「「「パラサビームガン!!」」」

 

もう一体のドラスをビームガンで怯ませ、ドリケラドリルで吹っ飛ばす。

 

「「タァ!!」」

 

出来た隙を見逃さずにプテライデンオーが斬り込み、キョウリュウジンも突く。

五対二とは言え相手は強敵。

中々苦戦しているのであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

エンジン!!マキシマムドライブ!!

 

エンジンメモリをエンジンブレードに挿し込み、スカイダインへと斬り掛かる。

スカイダインは腕から刺突武器を展開し、それを弾いていく。

 

ルナ!!メタル!!

 

Wはグランダインをルナの力で鞭の様になったメタルシャフトで攻撃していた。

繰り返す内に見切ったのかグランダインはメタルシャフトを掴み、Wの動きが止まった所に接近し殴り飛ばす。

 

「「ぐっ……」」

 

「中々やるじゃねぇか」

「翔太郎、エクストリームで行こう」

「分かった」

 

翔太郎が頷くと、銀色のオーロラからフィリップを吸収したエクストリームメモリが飛来する。

それを掴み、Wドライバーに重ね、開く。

 

エクストリィィィィム!!

 

左半身、右半身の間にある溝に手を当て、広げる。

中央にクリスタルサーバーが現れる。

この姿こそがW サイクロンジョーカーエクストリームである。

この姿になれば一瞬で検索を終える事が出来る。

 

「「プリズムビッカー!!」」

 

中央のクリスタルサーバーからマキシマムスロットが四つある盾の様な物が現れる。

 

プリズム!!

 

プリズムメモリを剣の様な部分に入れてから抜く。

ビッカーソードである。

 

「行くぜ」

 

「ウォォォォォ!!」

 

Wがビッカーソードを構えるとグランダインが拳を握り、殴り掛かってくる。

グランダインの拳をしゃがんで避けると擦れ違い様に斬る。

グランダインは腹から火花を散らして転がっていく。

 

「ハァァ!!」

 

「アァ……!?」

 

スカイダインもアクセルと何回か打ち合った末に受け切れなくなって地を転がる。

スカイダインとグランダインは並んで立ち上がる。

 

「兄さん、あれを」

 

「あぁやるぞ」

 

スカイダインとグランダインは頷き合うと姿を変えていく。

人型の姿からグランダインは戦車の様な姿に、スカイダインは飛行形態に変形していく。

 

「検索した結果にもある形態だね」

「さすが宇宙鉄人って所か?」

 

そんな事を言っている内に変形は完了し、スカイダインがグランダインの上に乗っかる様に合体する。

 

「左、フィリップ、乗れ!!」

 

「「あぁ!!」」

 

バイクモードでWの前に止まるアクセル。

Wはアクセルに乗り、その上でビッカーソードを構える。

キョーダインと向き合い、互いに突撃していくのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ガァ!!」

 

ゴッドグリードが鈎爪で晴人に斬り掛かる。

ダスタード、グール、カーバンクルも続く様に斬り掛かる。

だが、晴人は微動だにしない。

 

インフィニティー!!

「ハァァァ!!」

 

「ゴガァ!?」

 

インフィニティーリングをベルトにかざし、高速移動しながらアックスカリバーでゴッドグリードと戦闘員を斬り裂いていく。

裂かれた戦闘員達が爆炎に変わっていく。

 

「カァ!!」

 

「無駄だ。それくらいじゃな!!」

 

ゴッドグリードが放つ火炎弾を受けながらもゴッドグリードに近付き、斬り飛ばす。

インフィニティーの装甲はそのくらいの攻撃なら弾けるのだ。

更に使った魔力を吸収して再利用出来るから魔力切れも無い。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「行くぜ!!」ゴー!!ハイパー!!ハィハィ、ハィ、ハイパー!!

 

ビーストハイパーへと姿を変え、現れたミラージュマグナムでゲルショッカーグリードと周囲の戦闘員を撃ち抜いていく。

 

クレーンアーム!!

「オラァ!!」

 

「ぬぅ?」

 

プロトバースがクレーンアームを伸ばし周囲の戦闘員達を縛り上げてゲルショッカーグリードへと叩き付ける。

ゲルショッカーグリードは軽く払う様にして叩き付けられた戦闘員達を爆炎に変える。

 

ドリルアーム!!ショベルアーム!!キャタピラレッグ!!

「タァァァ!!」

 

右手にドリル、左手にショベル、両足にキャタピラを装備してバースがゲルショッカーグリードに突進する。

 

「そんな攻撃が効くか!!」

 

「ぐぁ!?」

 

しかし、バースの攻撃では表面のセルメダルが削れるだけでダメージと言える程の物では無かった。

蛇の様な腕でバースを吹っ飛ばす。

そこへビーストが飛び込んでいく。

 

「それならこいつはどうだ!!」

 

蛇と戦闘員を両腕の装飾が鞭の様に弾き飛ばし、ダイスサーベルでゲルショッカーグリードを斬り飛ばす。

吹っ飛んだ所をミラージュマグナムで撃ち抜いていく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ぐぁ!?」

 

「うわぁ!?」

 

(フフフフ………)

 

ガランダーグリードは姿を消してメテオとアクアを殴り飛ばしていく。

気配すら消しているのでメテオもアクアも居場所を見付けられないのだ。

だが、なでしこだけはガランダーグリードの攻撃を避けていた。

 

(何だ……こいつは………)

 

「見ーえた♪」ロケットオン!!

 

なでしこはガランダーグリードの攻撃を避けながらロケットモジュールを右腕に装着し、飛び上がる。

そして、正確にガランダーグリードへと蹴りを放つ。

 

「なでしこロケットキッーク!!」

 

「ぐぁぁ!?」

 

両手で防御するがその衝撃によって後退する。

それだけでは無く消していた姿が元に戻ってしまう。

 

「しまっ「「見えた!!」」

 

姿を現した直後にアクアの水を纏った平手突きとストームシャフトによる風を纏った打撃が叩き込まれる。

ストームシャフトの一撃は何とか防いだのだがアクアの平手突きに体勢を崩され、メテオの一撃によって吹っ飛ばされる。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ロケット!!ドリル!!リミットブレイク!!

「ライダーロケットドリルキック!!」

 

「なぁぁぁぁ、ふんッ!!」

 

「うぉ!?」

 

弦太朗はデストロングリードにロケットモジュールで加速したドリルキックを叩き込むが、その頑強な装甲と怪力で弾き飛ばされる。

ロケットモジュールとドリルモジュールを解除し、着地した直後にデストロングリードは蠍の尻尾を放ってくる。

 

「うおッ………危ねぇ!?」

 

ギリギリ避け切れずにかする。

それだけでも蠍の毒が回ってくる。

 

「毒には……これだ」

メディカルオン!!ハンドオン!!

 

毒でフラフラしながらも左手にメディカルモジュール、右足にハンドモジュールを装備する。

ハンドモジュールがメディカルモジュールから解毒薬を取り出し、弦太朗に打ち込む。

これで多少体は痛むが解毒は終わる。

 

「固いならこれだ!!」

チェーンアレイオン!!ハンマーオン!!ジャイアントフットオン!!スタンパーオン!!

 

右手にチェーンアレイモジュール、左手にハンマーモジュール、右足にジャイアントフットモジュール、左足にスタンパーモジュールを装備する。

右足を思いっきり振ると、それに合わせて巨大な空気の足がデストロングリードに襲い掛かる。

 

「フン!!」

 

それでも軽々と受け止められる。

だが、さすがにチェーンアレイとハンマーの連撃は耐え切れないのが距離を取ろうとする。

そこにスタンパーモジュールで蹴りを叩き込む。

 

「ガッ!?」

 

「ウォラァ!!」

 

更にハンマーとチェーンアレイで一撃ずつ加える。

スタンパーモジュールで蹴られた所はスタンプの様にマークが残っている。

 

「ぐばぁ!?」

 

マークが光ったと思うと爆発を起こし、デストロングリードが吹っ飛び、セルメダルを巻き散らす。

スタンパーモジュールは敵にマークを刻んで爆破するモジュールだ。

蹴り込む力が強い程、爆破の威力も大きくなるのだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「行くぜ、良太郎!!幸太郎!!」

 

「うん」

 

「あぁ!!」

 

「ぬぅ……」

 

モモタロス、良太郎、幸太郎がデルザーグリードに同時に斬り掛かる。

各々違ったタイプであり、デルザーグリードも対処に困っている様子である。

 

「でやぁ!!」

 

「タァ!!」

 

「バーン!!」

 

「ふむ、ハァ!!」

 

ウラタロス、キンタロス、リュウタロス、ジークも周囲で戦闘員を倒している。

 

「行くぜ、行くぜ、行くぜぇ!!」

 

「くっ……」

 

モモタロスの荒っぽい剣と良太郎のへっぴり腰な剣は軌道が読みにくい。

幸太郎の剣も癖はそこまで強く無いが対処が難しい場所を狙う様だった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ウォォォォォ!!」

 

「くっ……」

 

ショッカーグリードは映司に押されていた。

炎弾は相殺され、近接戦闘もプトティラの暴れ様には圧倒されるしか無かった。

メダガブリューによって殴られ続け、幾度無くショッカーグリードは吹っ飛んだ。

 

「暴走してなくてこれとは恐ろしい」

 

「ふん。さすがはメダルを破壊する力って所か」

 

周囲の雑魚を焼きながら炎弾をショッカーグリードに向けて放つアンク。

炎弾は相殺されるが気を他に向けた瞬間に斬り飛ばされる。

 

「ハァ……ハァ………やっぱりこれはさすがに辛いね」

 

息を切らしながらもショッカーグリードを斬り飛ばす映司。

体力が切れようと映司は諦めない。

そんな様子にショッカーグリードは反撃する隙も無く、防御するしか無かった。

 

 

 





激化する戦いでした!!
圧倒してる所は圧倒してるけど簡単に終わらないのがグリード達です。

グリードはほとんどHEROSAGA設定なのでそこまでキャラ達と因縁は無いです。

それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。



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マルチコンバインと弾けるメダルとズバッと解決

 

 

 

 

「行くぜ、皆!!獣電マルチコンバインだぁ!!」

 

「「「「「「「「「おぉ!!」」」」」」」」」

 

ダイゴが叫ぶと五体の獣電巨人が並び立ち二体のドラスに武装を向ける。

キョウリュウジンとプテライデンオーウェスタンが真っ先に向かっていく。

 

「「「キョウリュウジン・ブレイブフィニッシュ!!」」」

 

「「「プテライデンオーウェスタン・ブレイブフィニッシュ!!」」」

 

身構えたドラスをパラサビームガンで怯ませ、二体で斬り掛かる。

防御しようと腕を胸の前に構えているがお構い無しに斬り飛ばす。

更にそのまま擦れ違い、プテライデンオーウェスタンはプテラゴードン、パラサガン、ザクトルに分離し、プテラゴードンはキョウリュウジンに近付いていく。

 

「「「「「「雷電カミツキ合体!!完成、ライデンキョウリュウジン!!」」」」」」

 

キョウリュウジンとプテラゴードンが合体し、ライデンキョウリュウジンとなる。

コクピットではレッド、ブラック、ブルー、グリーン、ピンク、ゴールドが台座の上に立っている。

飛行しながら五連獣電剣を構えて降下していく。

プレズオーもドラス達へと突進していく。

 

「「「「「「獣電剣・稲妻ブレイブフィニッシュ!!」」」」」」

 

「プレズオー・ブレイブフィニッシュ!!」ズオーン!!

 

コクピットでバイオレットがガブリボルバーを構え撃つ様な動作をし、プレズオーの右腕からプレズオンの頭部の様なエネルギー体が放たれる。

それによりドラスの防御が弾き飛ばされる。

それでも雷を放ってくるがライデンキョウリュウジンはそれを避け進む。

近付き、コクピットで六人が剣で斬る様な動作をし、稲妻を纏った五連獣電剣で擦れ違い様にドラスを斬る。

そのままライデンキョウリュウジンは分離し、プレズオーも変形を始め、スピノダイオーはブンバッキーが分離し、代わりにドリケラと合体してスピノダイオーマッチョになる。

ガブティラ、プレズオン、ブンバッキーが近付いていく。

 

「「「「「「爆裂カミツキ合体!!完成、バクレツキョウリュウジン!!」」」」」」

 

掛け声によって合体する。

ガブティラをベースに右腕はプレズオンの頭部、左腕はブンバッキーの形態、バクレツキョウリュウジンになる。

コクピットはゴールドと入れ替わる様にバイオレットが乗り込んでいる。

ゴールドはプテラゴードンに乗り込んでいる。

合体の間にギガントブラギオーが二体のドラスへと突っ込んでいく。

武器を薙ぐ様に振るい、ドラス二体を弾き飛ばす。

そこを狙う様にバクレツキョウリュウジンも右腕を構える。

 

「超獣電………ギガブレイブフィニッシュ!!」

 

「「「「「「獣電砲・爆裂ブレイブフィニッシュ!!」」」」」」

 

シルバーがコクピットで大きく腕を振るうと武器に力を集中させ、ドラスに向けて振るう。

体を大きく削れた所にバクレツキョウリュウジンから放たれたエネルギー体が貫いていく。

更にスピノダイオーがスピノブーメランを放ち、再生を遅れさせる。

その間にバクレツキョウリュウジンは分離し、ガブティラ、パラサガン、ステゴッチ、ザクトル、ドリケラがギガントブラギオーへと近付いていく。

スピノダイオーもブンバッキーと再合体する。

ゴールドの乗り込んだプテラゴードン、バイオレットの乗り込んだプレズオンも変形を始める。

 

「「「「「「超カミツキ合体!!完成、ギガントキョウリュウジン!!」」」」」」

 

「完成、プテライデンオー!!」

 

「完成、プレズオー!!」

 

掛け声と共に合体を完了する。

変形を完了したプテライデンオーとプレズオーが雷撃と砲撃でドラスを牽制する。

 

「ギガントショット!!」

 

コクピットでブラックがガブリボルバーを撃つ動作をし、ギガントキョウリュウジンの肩のパラサビームガンからエネルギー弾が放たれ、ドラスが吹き飛んでいく。

そこへスピノダイオーが突進していく。

 

「「スピノダイオー・ブレイブフィニッシュ!!」」

 

コクピットのシアンとグレーが拳を振るい、ハンマーと鉄球をドラスに叩き付ける。

更にギガントキョウリュウジンは胸にエネルギーを溜める。

 

「「「「「「超獣電ギガントフルブレスター!!」」」」」」

 

23色の光線がギガントキョウリュウジンから放たれ、二体のドラスへと突き刺さっていく。

その間にプテライデンオー、プレズオー、スピノダイオーがギガントキョウリュウジンの背に回り、手を背に当てる。

 

「皆の力を一つに!!」

 

「「「「「「「「「「超獣電オールギガントフルブレスター!!」」」」」」」」」」

 

11体、全ての獣電竜のエネルギーがギガントキョウリュウジンへと集中する。

胸の獣電竜の顔が刻まれたプレートへ各々の力が集まり、一気に解き放たれる。

全ての獣電竜の力が凝縮された光線が放たれ、二体のドラスを完全に飲み込み、消し飛ばし、爆炎へと変えたのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

チョーイイネ!!スペシャル!!サイコー!!

 

「ごがぁ!?」

 

スペシャルの指輪をベルトにスキャンし、右腕をゴッドグリードへと向ける。

直後に爆撃がゴッドグリードを襲い、吹き飛ばす。

セルメダルを散らしながら転がるゴッドグリード。

その間にアックスカリバーをアックスモードに持ち変え、ハンドオーサーにインフィニティーリングをかざす。

 

ハイタッチ!!シャイニングストライク!!

キラキラッ!!キラキラッ!!キラキラッ!!

「ウォォォ!!ハァ!!」

 

「ぬぐぅ!?」

 

アックスカリバーを頭上で回転させる。

回転させる内にアックスカリバーは巨大化していく。

ある程度の大きさになるとアックスカリバーを持って飛び上がり、ゴッドグリードへと振り降ろす。

ギリギリ立ち上がっていたゴッドグリードは紙一重で何とか身をそらすが左腕をもがれる。

もがれた左腕はセルメダルへと変わり散る。

傷口からもボロボロとセルメダルが溢れる。

ゴッドグリードの背後に着地した晴人は互いの振り返り様に右手の指輪をベルトにかざす。

ゴッドグリードは高速移動を警戒し、構える。

 

バインド、プリーズ!!

 

「なっ!?」

 

予想外の魔法に対応が遅れる。

周囲に現れた魔法陣から放たれる鎖を弾き切れずに縛られる。

晴人は右手の指輪を変えて、ベルトにスキャンする。

 

「フィナーレだ!!」チョーイイネ!!キックストライク!!サイコー!!

 

晴人の足元に輝く魔法陣が現れ、蹴りの体勢に構える。

飛び上がり、蹴りを放つ。

足には魔法陣が纏われ、晴人の蹴りに貫かれた様な形になる。

 

「タァァァァ!!」

 

「ぬっ………がぁぁ!!」

 

縛っていた鎖を引き千切るが遅かった。

晴人の蹴りはゴッドグリードの胸に直撃し、ゴッドグリードは吹っ飛んでいく。

足は地から離れず、地面を削る様にして吹っ飛ぶ。

受けたダメージを現すかの様にセルメダルが弾け飛ぶ。

ゴッドグリードの胸は大きく抉れ、血が溢れる様にセルメダルが流れていった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ガイストカッター!!」

 

「ハッ!!」

 

アポロガイストが刃付き盾を投げ放ってくる。

士は隣にブレイド キングフォームを召喚し、ライドブッカーを振るう。

その動きに合わせてブレイドもキングラウザーを振るう。

二人の剣を同時に叩き付けられ、ガイストカッターは弾かれる。

その間にズバットは飛び蹴りを放つ。

 

「ズバットアタック!!」

 

「ガッ!?」

 

飛び蹴りはアポロガイストの顔面にヒットし、アポロガイストの兜にヒビを入れる。

それでも銃口を士に向ける。

 

「マグナムショット!!」

 

ファイナルアタックライド!!ブ、ブ、ブレイド!!

「オラァ!!」

 

カードをディケイドドライバーに投げ入れる。

士とブレイドの前にカード状のエネルギー体が複数現れる。

士とブレイドが同じ動きでエネルギー体に斬撃を放つ。

二人の斬撃は重なり、アポロガイストの放った光線と衝突する。

少々拮抗するが士達の斬撃が押し勝ち、アポロガイストに直撃する。

ブレイドの姿は消え、士とズバットはアポロガイストに背を向けて並び立つ。

 

「ズバッと解決!!」

 

ズバットが叫び、ポーズを決めるとアポロガイストが爆炎を上げて倒れるのだった。

 

「あとは任せたぞ、ディケイド」

 

それだけ言い残し、ズバットは幻の様に姿を消していった。

直後に背後から物音がする。

士が振り向くと爆炎の中でアポロガイストが立ち上がっていた。

姿は人間態に戻りボロボロではあるが、アポロガイストはまだ生きていた。

 

「私は………私はまだ終わらないのだぁぁぁぁぁぁ!!」

 

アポロガイストは叫びながら頭上に魔法陣を出現させる。

そして、同じく瀕死のゴッドグリードの方を向く。

 

「ゴッドグリード!!その身を我に捧げるのだ!!」

 

「御意!!」

 

アポロガイストから言われた直後にゴッドグリードは体を崩壊させる。

確かな肉体からセルメダルへと姿を変貌させ、その塊のままアポロガイストの体を包んでいく。

その中からゴッドメダルがアポロガイストの額へと入っていく。

そして、頭上の魔法陣から大量のセルメダルがアポロガイストへと降り注ぐ。

 

「セルメダルだと………この量となるとまさか!!」

 

「これだけでは無いのだ!!“スフィア”よ、我が身を形作るのだぁ!!」

 

多量のセルメダルと共に何かよく分からない物がアポロガイストを包み込む。

その集合体は徐々に姿を変えていく。

その身を肥大化させながらも、人型へと変化していく。

完全に姿を変え、士を見下す様にし、マントをなびかせながら叫ぶ。

 

 

「この“キングダーク”の力によって貴様らを消し飛ばしてやるのだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

その巨体、キングダークの姿でアポロガイストが叫ぶ。

その咆哮は大地を震わせるのだった。

 

 







アポロガイスト撃破!!
と思いきやキングダーク化でした!!
仕組みとしてはゴッドメダルを取り込んでセルメダルを操りつつ、“スフィア”で完全に形とした感じです。
人格はアポロガイストそのものです。


獣電マルチコンバインは爆竜マルチコンバインをキョウリュウジャー風にやったらこんな感じかな?みたいな物です。
とは言っても技を連続で放つだけなのもあれなので多少戦闘を入れましたが。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。



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GOD機関の巨人と怪獣兵器と間に合った者

 

「ギガントスラッシャー!!」

 

ギガントキョウリュウジンがキングダークへと斬り掛かる。

キングダークはアポロフルーレでそれを受け止める。

キングダークの姿になってもアポロガイストの時の武器は使える様だ。

キングダークは何度か打ち合うと他三体の獣電巨人の位置を確かめる。

 

「ガイストカッター!!」

 

「「「「どわぁぁ!?」」」」

 

刃付きの円状盾を投げ付ける。

盾は円を描く様な軌道でギガントキョウリュウジン達を吹っ飛ばしていく。

ギガントキョウリュウジンを立ち上がらせながらダイゴは地上の晴人と士に叫ぶ。

 

「ディケイド!!ウィザード!!お前たちのブレイブも貸してくれ!!」

 

「「おぉ!!」」

 

士と晴人が飛び上がりギガントキョウリュウジンに乗り込む。

コクピットには二人用の台座が出現する。

晴人はインフィニティースタイルに合わせた宝石の様な台座の上に、士はマゼンタの台座の上に立つ。

晴人はアックスカリバー、士はライドブッカーを手に持ち、ダイゴ達に合わせる様に振るう。

 

「「「ウォォォォォ!!」」」

 

「ぬぅぅ……」

 

二人分強くなっている攻撃に多少押されるキングダーク。

しかし、それでもまだ余裕そうである。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ウオリャァァァ!!」

 

「ぐっ……」

 

モモタロスの思いっきり振り降ろした一撃にデルザーグリードの腕からセルメダルが散っていく。

 

「ハァ!!」

 

幸太郎はマチェーテディの先端を向けるとそこにある銃口から銃撃する。

デルザーグリードは避けはするが数発避け切れず、体から火花を散らす。

 

「電車斬り!!」

 

良太郎はデンカメンソードを操作し、ロッドの電仮面にして、線路を出現させる。

線路にデルザーグリードを拘束し、良太郎も線路に飛び乗る。

背後から走ってくるデンライナーイスルギ型のエネルギー体と合わせて進んでいく。

そのままデルザーグリードを突き貫いていく。

 

「おのれぇ………」

 

デルザーグリードは多量の火球を良太郎達へと放つ。

さすがに避け切れず、数発は弾いてやり過ごす。

その間にデルザーグリードが接近してくる。

 

「ぬぅん!!」

 

「「かっ!?」」

 

「良太郎!!幸太郎!!」

 

デルザーグリードの一撃により、良太郎と幸太郎が吹っ飛んでいく。

モモタロスが身構えるとデルザーグリードの手刀が放たれる。

デンガッシャーで打ち合うが、純粋な力ではデルザーグリードの方が上である。

徐々に押されていくがそこへジークが投げ付けたデンガッシャーブーメランモードが飛んでくる。

 

「デリャァ!!」

 

「ぬぐぅ!?」

 

デルザーグリードがブーメランを弾いた隙に腹を横薙ぎに斬る。

かなり深く入ったのか腹から多量のセルメダルを撒き散らしながらフラフラと下がっていく。

そこへ、良太郎と幸太郎が同時に斬り掛かる。

デルザーグリードは両肩から両腰に掛けて袈裟斬りにされる。

モモタロスはライダーパスを構えて叫ぶ。

 

「行くぞ、お前ら!!これで正真正銘のクライマックスだぁ!!」フルチャージ!!

 

ライダーパスをベルトにかざす。

デンガッシャーに力を集中させ斬り飛ばすとデンガッシャーの刃をキンタロスに向けて放つ。

 

フルチャージ!!

「ダァ!!亀の字!!」

 

キンタロスはライダーパスをベルトにかざし、デンガッシャーアックスモードに力を集中させる。

飛んで来た刃と重ねて周囲の屑ヤミーを斬り飛ばし、ウラタロスに向けて刃を放つ。

 

フルチャージ!!

「ハッ!!……リュウタ!!」

 

ウラタロスもライダーパスをベルトにかざし、力をデンガッシャーロッドモードに集中させる。

飛んで来た刃と重ねてダスタードを貫き、そのまま振り回す様にしてマスカレイドと共に爆散させ、リュウタロスへと刃を放つ。

 

フルチャージ!!

「鳥さん!!」

 

リュウタロスもライダーパスをベルトにかざし、デンガッシャーガンモードに力を集中させる。

銃口のエネルギー弾と飛んで来た刃を重ねてジークへと放つ。

放たれたエネルギー弾は刃と共にグールを撃ち抜いていく。

 

フルチャージ!!

「フン!!」

 

ジークはライダーパスをベルトにかざし、デンガッシャーブーメランモードとハンドアックスモードに力を集中させる。

飛んで来た刃は適当に弾いてからブーメランを放つ。

ブーメランとハンドアックスで挟む様にカーバンクルを斬り裂く。

 

フルチャージ!!

「爺ちゃん!!」

 

ライダーパスをベルトにかざし、マチェーテディに力を集中させ、飛んで来た刃と重ねてデルザーグリードを斬り付け、良太郎へと放つ。

 

「モモタロス!!」

 

良太郎はデンカメンソードの電仮面を一周させてフルスロットクラッシュを発動させる。

足元の線路以外に良太郎の背後に四つの線路が現れる。

そこをデンライナーゴウカ、デンライナーイスルギ、デンライナーレッコウ、デンライナーイカズチの形をしたエネルギー体が走っていく。

刃とデンカメンソードを重ね、四つのエネルギー体と合わせて刃をモモタロスへと放つ。

 

「もういっちょ!!」フルチャージ!!

 

刃をデンガッシャーソードモードの元の位置へと填め、ライダーパスをベルトにかざし、パスを投げ捨てる。

 

 

「必殺、俺達の必殺技ファイナルバージョン2!!」

 

 

モモタロスはデンガッシャーを構え、デルザーグリードへと斬り掛かる。

 

「ウオリャァァァァァァァァァ!!」

 

「ぬ、がぁぐぅぅ!?」

 

良太郎、幸太郎、テディ、ウラタロス、キンタロス、リュウタロス、ジーク、そしてモモタロス。

八人の力を込めた剣で力任せに八回ぶった斬る。

斬り刻んだデルザーグリードにモモタロスは背を向ける。

デルザーグリードは全身からセルメダルを散らしながら背後へと倒れていく。

 

 

「大ショッカー…………万歳!!」

 

 

最期にそれだけ言い残して爆散するのだった。

残るのはただ飛び散ったメダルだけであった。

 

「俺達も行くぜぇ!!」

 

モモタロスが叫ぶとゴウカ、イカズチ、レッコウ、イカズチ、NEWデンライナーへと乗り込んで行く。

 

「あとは任せましたよ、モモタロスくん」

 

今まで一人でデンライナーを操作していたオーナーが呟くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ズオーン!!

 

「フン!!」

 

プレズオーからの砲撃を盾で防ぐ。

キングダークはクライス要塞と砲戦していたデンライナーが分裂し、クライス要塞を囲もうとしているのを見る。

 

(さすがに分が悪いか……)

 

残っている戦力を確認し、考える。

プテライデンオーの剣撃とアポロフルーレで打ち合いながらクライス要塞の方向に向けて手を向ける。

 

「クライス要塞!!撤退するのだ!!お前だけは大首領様へと届ける必要があるのだ!!」

 

キングダークは叫びながらクライス要塞の背後に巨大な銀色のオーロラを出現させる。

 

『どうやら今回はここまでみたいだね。短かったけど楽しかったよ♪』

 

それだけ言うとクライス要塞は銀色のオーロラへと向かっていく。

だが、簡単に逃がすモモタロスでは無い。

砲門を全て展開し、クライス要塞へと放とうとする。

しかし、そこへ銀色の塊が飛来する。

 

「何だぁ!?」

 

慌てて方向転換する。

ギリギリその塊を回避するが、塊は周囲の物体を吸収しながら高速で何かへと変化していく。

 

「怪物になりやがっただとぉ!?」

 

ピポポポポポポポポポポポ……………

 

「行け、怪獣兵器サソリガドラスよ!!そいつらを叩き落とすのだ!!」

 

『じゃーねー♪』

 

クライス要塞がオーロラへと消えていくがそれどころでは無かった。

現れたのはかつて仮面ライダー一号とウルトラマンが相手した合体獣サソリガドラスだ。

本来は死にかけた毒サソリ男とガドラスが合体した怪獣なのだが、キングダークはスフィアを変化させて再現したのだろう。

そうして産み出す事により、怪獣兵器として操っているのだ。

問題はデンライナーでは相手にしにくい事だ。

 

ピポポポポポポポポ…………

 

デンライナーから光線を放つがそれらは全て吸収されてしまうのだ。

それどころか吸収したエネルギーを角から電撃として放ってくる。

モモタロス達は何とかそれを回避してはいるが、此方は電車である。

小回りに限界がある。

サソリガドラスが鎌の様な腕を振り降ろしてくる。

回避は無理な位置である。

 

ピポポポポポポポポポ……………

 

「チ、チクショー!!」

 

「諦めるのはまだ速いぜ」

 

モモタロスが叫んだ直後にそんな声が聞こえる。

そして、振り降ろされていた腕は光に包まれた腕に掴まれていた。

現れたのは巨人であった。

ただの巨人では無い。

光の巨人である。

纏っていた光を散らしながら巨人はサソリガドラスを殴り飛ばす。

 

「どうやら間に合ったみたいだな」

 

サソリガドラスと向き合いながら巨人が呟く。

 

「あれは……まさか!!」

 

「余所見をしてるなよ、アポロガイスト!!」

 

「ギガントクラウン!!」

 

「ぐぁ!?」

 

キングダークが突如現れた巨人に目を向けている隙を突き、ギガントキョウリュウジンは巨大な頭部を叩き付け、キングダークを後退させる。

 

「何だか知らねえがありがとよ」

 

「こいつの相手は俺がしておくから後ろの要塞は任せたぜ!!」

 

「あれは元から俺達の獲物だぜ!!」

 

言ってモモタロス達はサソリガドラスを巨人に任せ、銀色のオーロラへ入りかけているクライス要塞に線路を伸ばす。

巨人はサソリガドラスへと視線を戻し、構える。

 

 

「さぁ、本当の戦いはここからだぜ!!」

 

 

巨人は、光の巨人は、ウルトラマンダイナはそう叫ぶのだった。





ダイナ参戦!!
アスカ・シン自体は温泉の時に出てきていましたが。
サソリガドラスはウルトラマンvs仮面ライダーに出てきた怪獣です。
スフィアが怪獣兵器になるのはウルトラマンサーガから。

戦隊ロボに乗り込む仮面ライダーというのはSH大戦のノリで。
人数が増えて攻撃力が上昇するのは気合い操作系ロボならよくある事です。

デルザーグリードの最期の言葉は外見的にジェネラルシャドウを意識してみました。


それでは質問などがあれば聞いてください。
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静寂の世界と自責と絶望の瞳

_____北側・未開の樹海。

野鳥が森の木々を揺らす音。

樹海の湿った土を獣が忍び足で駆けていく気配。

ラッテンはそれに合わせる様に笛を奏でる。

 

「………………」

 

黒ウサギは俯いたままであった。

黒ウサギは何時間も膝を抱えて物思いに耽ったまま、時折火に薪を投げる仕草を繰り返すだけだ。

そんな黒ウサギにラッテンは内心イライラしていた。

焦燥や不安に支配されないように口を閉ざしているのだろうが、それが逆にラッテンを苛立たせていた。

 

(あ~もう!!何時までウジウジウジウジしてんのよ!!何があったかは大体察しがつくけど、さぁ!!)

 

笛を吹きながら心の中で叫ぶ。

励ますとかそういうのは柄じゃないのだ。

一応気分が明るくなる様な曲を選んではいるのだが。

 

(というか、こういう役目はあいつらの役目でしょうが!!)

 

この場にはいない映司達の姿を浮かべる。

映司達なら確かに上手い事やれるだろう。

というよりやれていた。

十六夜の許へと向かう前はそれで黒ウサギも少しは元気付けられていたがマクスウェルによって飛ばされた事によって不安がぶり返して来たのだろう。

ついでに自分が捕まったせいでラッテンまで巻き込んだとも思っているのだろう。

とはいえ、そろそろ曲を奏でるだけで繋ぐのも限界である。

さすがに空気が重い。

何か話でもしようと思い、ネタを探す。

そんな中で黒ウサギがポツリと言ってきた。

 

「……………ラッテンさんは、後悔していませんか?」

 

「ハァ?後悔?何に対してよ?」

 

「その……色々と…………」

 

「あのねぇ………今更それを聞く?」

 

多少言葉がキツくなっているのはイライラしているからだろう。

苛立ちが態度に出ているのを反省ながらもラッテンは黒ウサギの方を見る。

 

(どうせ十六夜に何かあっての言葉なんでしょうが、私は霧崎とマスターに付いていくだけでそんな事は知らないっての!!)

 

心の内で愚痴を吐き続ける。

黒ウサギは、ラッテンのそんな様子に気付かずに話を続ける。

 

「黒ウサギは……………“ノーネーム”は、十六夜さん、映司さん、カブトさんが召喚されてから、全てが変わりました。信じられないかもしれませんけど………以前はもっと暗鬱とした雰囲気が館を包み、今を生きる事が精一杯でした。僅かに残った仲間たちも、生活苦を理由に次々と去っていきました。中には、自分の子供を残してまで去った者もいます」

 

でしょうね、と黒ウサギにも聞こえない様な声で呟く。

かつての経験から旗印と名前を失ったコミュニティがどうなるかくらいは分かっている。

 

「去っていった彼らを責める気はありません。知ってるとは思いますが、箱庭ではよくある話です。むしろ可笑しいのは黒ウサギたちの方なのですよね」

 

「そりゃ意地を張らずにコミュニティを解散宣言していたら、少なくとも仲間の離反くらいは防げてたでしょうからね」

 

「…………ですよね。もし正規のコミュニティとして旗揚げしていたのなら_____彼らを、こんな不出来なコミュニティに召喚する事も無かった。十六夜さんだって、あんなに酷い戦いに命を賭けずに済んだはずです」

 

最後の言葉は、僅かに嗚咽が混ざっていた。

普段の黒ウサギからは考えられないほど弱気な発言だった。

悩んでいるとは思っていたが、まさかこれ程までに自分を責めているとは予想外だった。

_____だが、そんな事は関係無い。

さすがにラッテンとしても限界だった。

ラッテンは無言で黒ウサギの前に立ち、向かい合う様にする。

 

「デヤァ!!」

 

「ひゃ!?」

 

頭を少々背後に倒し、溜めの姿勢を取り、黒ウサギの額を思いっきり頭突いた。

それには、さすがに黒ウサギも声をあげて頭を押さえる。

 

「ら……ラッテンさん?」

 

「あのねぇ…………ジメジメウジウジすんのもいい加減にしなさいよ!!」

 

頭を押さえて困惑する黒ウサギが見たのは、青筋を立て頬をひきつらせるラッテンだった。

そう、ラッテンは今ブチギレていた。

さすがに我慢の限界で堪忍袋の尾が切れていた。

 

「そもそもコミュニティがどうとか言うけど、私は一回潰れたのを経験してんのよ!!まぁ魔王のコミュニティだし、前のマスターは名に恥じない散り様だったし、不満は無いんだけど。それでも話す相手を選びなさい!!」

 

「は、はい」

 

語り始めるラッテンに気押される黒ウサギ。

 

「それにあいつらも言ったでしょうが、心配するなって。不安になるよりあいつらを信用しなさいよ!!」

 

語り始めて少々冷静になって来てはいるが一度始めたからには最後まで言うべきと止まりはしない。

 

「そもそも私は霧崎と契約した時点でどんなコミュニティだろうと霧崎と共に行くと決めてあるのよ。それにマスターにも付いていくと決めてあるしね」

 

なら、霧崎とペストが対立したらどうするという話ではあるが。

それに関してはそもそも起こらないとラッテンは確信していた。

今のペストならそう思えるのだ。

 

「だから後悔してるかどうかなんて聞く時点で間違ってるのよ。それにあいつらだって後悔していたら此処まで戦ってきてないわよ。だからあんたが気に病む必要なんて無いのよ」

 

言い終わり、ふぅ、と息を吐く。

さすがに言い過ぎたかと思い黒ウサギの方を見る。

 

「す、すいません。ラッテンさん。どうやら黒ウサギは抱え込み過ぎていたようです……」

 

「あー・・・私もちょっとぶちまけ過ぎた気がするし、そこらへんはいいわよ」

 

互いに苦笑する。

先程の様なラッテンはそう見れない。

だが、それのおかげで黒ウサギは胸に灯火を宿らせていた。

そして、映司達の言葉を思いだし、灯火の暖かさは増していく。

黒ウサギがラッテンの方を向き直ろうとした時、

 

草葉の陰の絶望を見た。

 

「ラッテンさん、伏せt「気付いているわよ!!」

 

ラッテンはハーメルケインを構えながら這いつくばせようとしてきた黒ウサギを押さえつける。

魔法陣を幾つか展開すると現れた強襲者の突進を上方へとそらす。

灼熱の体を持つ双頭龍は、紅玉の瞳を光らせて吠える。

 

「GEEEEYAAAAAAaaaaaaa!!」

 

「ったく、こんな時に面倒くさい!!」

 

左手にギフトカードを持ちながらディーンを出すか、どうか検討する。

さすがに双頭龍に勝てるとは思ってはいない。

だとすると逃げるだけだが、それにはディーンは向かない。

となると、手は一つ。

黒ウサギを抱え、双頭龍の攻撃を避けながら川の方へと転がる。

ハーメルケインの先端を水へと付け、魔法陣を展開させる。

 

「貫け!!」

 

魔法陣を通った水は槍の様に双頭龍へと放たれていく。

気炎と水槍がぶつかりあって水蒸気が舞っていく。

幾つかは双頭龍の体を貫いたのか、悲鳴が聞こえる。

それにより血液が散撒かれ、一頭龍が次々と生まれるがそれくらいならどうとでもなる。

 

「ラッテンさん!!もう一体隠れていますッ!!」

 

黒ウサギの絶叫を受けて左手にギフトカードを構えながら振り向こうとした時、鮮血が舞う。

 

「がぁ!?」

 

現れた純白の双頭龍に左腕が噛み付かれていた。

左腕の感覚は既に無い。

ギフトカードは下に落ちている。

双頭龍が動こうとすれば引きずりまわされるのは確実。

ラッテンは即座に決断した。

 

「_____ッ!!」

 

「ラッテンさん!?」

 

ハーメルケインを左腕の根元に当てると自ら左腕を斬り落とす。

舌を噛まない様に歯を食い縛りながら、双頭龍の眼球を斬りつける。

双頭龍はラッテンの左腕を噛んだまま、悶える様に飛び抜けていく。

ラッテンは斬り口を押さえるより前にハーメルケインでギフトカードを拾い、口で掴む。

こうなったら出し惜しみしている場合では無い。

 

「フガフグ!!ヒィィィン!!(来なさい!!ディィィン!!)」

 

ディーンはラッテンと黒ウサギを肩に乗せ、襲い掛かってくる双頭龍を殴り飛ばす。

 

(腕は後でジャック辺りに義手を要求するとして、問題は双頭龍ね。さすがに片腕で二体から逃げ切れる気はしないのよ……………)

 

そんな事を考えながらラッテンは切り口に包帯を巻き付けている。

黒ウサギも作業を手伝う。

ディーンの肩の上で揺れるとはいえ、そのくらいは出来る。

 

「GEEEEEYAAAAAAAaaaaaaaa!!」

 

二体の双頭龍が迫ってきている。

純白の双頭龍はディーンでどうにか相手に出来ているが、問題は灼熱の双頭龍だ。

大体包帯を巻き終えると黒ウサギを反対側の肩へと移動させ、ハーメルケインを構え、防御用の魔法陣を張っていく。

 

「私は此処で死ぬわけにはいかないのよ!!」

 

死ぬわけには行かないのだ。

霧崎を置いて、ペストを置いて死ぬのは今では無いのだ。

だが、左腕を失い、かなり血を流し、疲弊したラッテンでは限界がある。

それに加えて即席な防御魔法にも限界はある。

何度か火球を弾くと双頭龍は灼熱の吐息を放ってくる。

これまでの攻防を受けてきた魔法陣にヒビが入り、次々と砕けていく。

 

「……………………」

 

迫り来る陽炎を憎々しげに睨み付ける。

もう防ぐ術は無い。

咄嗟に出した防御魔法も全て破られたのだ。

ディーンでも防ぎ様が無い角度だ。

それ以前にディーンは一頭龍と純白の双頭龍の相手で手が一杯である。

悔しさを感じながらラッテンは死を覚悟していた。

 

「ら、ラッテンさん!!」

 

そこへ黒ウサギがラッテンと双頭龍の間に割り込んでくる。

無駄かもしれない、駄目かもしれない、それでも黒ウサギは割り込んできた。

幾星霜の遥かな過去_______仏話の“月の兎”が己の身を捧げたように。

同士を守る為に、黒ウサギは灼熱へと飛び込んだ。

 

 





今回は黒ウサギとラッテンでした!!

ラッテンとしては励ますタイプでは無いのであんな感じになりました。
黒ウサギはラッテンの言葉と映司達の言葉で灯火を宿らせた感じです。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待っています。



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煉獄と業火と復活のウサ耳

 

___近隣の樹海。

樹海の奥で燃え上がる火柱。

それは近くで双頭龍が戦っているという事だ。

だが、天道は気にせずにパーフェクトゼクターを操作する。

 

カブトパワー!!

ザビーパワー!!

ドレイクパワー!!

サソードパワー!!

オールゼクターコンバイン!!

 

ザビーゼクター、ドレイクゼクター、サソードゼクターがパーフェクトゼクターにくっついていく。

天道はパーフェクトゼクターをソードモードにして構える。

その間にも鋼の天使が迫ってきているのだが気にしてはいない。

天使の大剣が天道に向けて振り降ろされる。

 

「ハァ!!」

マキシマムハイパータイフーン!!

 

天道は大剣を軽く避けると返す刀でパーフェクトゼクターを振るう。

放たれた斬撃は天使の半身を消滅させ、周囲の木々すら広範囲に渡って斬り裂く。

さすがにこれだけ体を削れば再生には多少時間が掛かるのか修復は遅い。

天道の背後ではリン達が天使の正体を考察していた。

そして、雷光が樹海を燃え上がらせていた。

天道はそちらを向かずにマクスウェルともう一体の天使を相手にしている殿下の加勢に入る。

己の命を鼓舞するかのよくな激しい雷光を見てジンは瞳を見開いて大きく息を呑む。

 

「まさか………彼女が…………!?」

 

これだけの稲妻を行使出来る存在を、ジンは一人だけ知っている。

一際激しい雷光が一帯を満たした瞬間_______その術者は、煉獄と共に姿を現した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

散るならばせめて、仲間の為に。

この命よ、今こそ燃え上がれ…………!!

 

 

「ああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁっぁあぁ___!!」

 

その断末魔と共に黒ウサギは全身が焼失し___同時に、生誕の産声を上げる。

燃え落ちた四肢は稲妻と共に再生し、緋色の髪は赤い稲妻となって灼熱の炎を撃ち抜く。

そしてその頭上には、黒ウサギのトレードマークであるウサ耳が生えていた。

神代の縫術で編まれた衣を身に纏い、天地神明に雷鳴を轟かせる。

これは黒ウサギに霊格が戻ったのではない。

“月の兎”の伝承を体現し死を超過して転生した新たな黒ウサギの姿がそこに有った。

 

「何よ……あれ………黒ウサギ?」

 

ラッテンはディーンの肩の上で頬をひきつらせながらも、黒ウサギの身に何があったかを察する。

黒ウサギの額に浮かび上がる帝釈天の神紋。

あれは紛れもない神格の証だ。

黒ウサギの見せた同士への献身が、帝釈天の神格をその身に宿らせたのだ。

 

「覚悟しろ、双頭龍ッ!!」

 

黒ウサギは神雷をその身に宿らせ、灼熱を放つ双頭龍へと突進する。

稲妻だけで灼熱を振り払い、黒ウサギは双頭龍の身体を一太刀の許に両断した。

 

「GEEEEEEEEYAAAAAAAaaaaaaa!!」

 

燃え落ち、炭と化す双頭龍。

だが、敵は一体ではない。

純白の双頭龍の凶爪と金剛杵を打ち合う。

そして、切っ先で片首を斬り落とす。

鮮血の噴水から産まれた十や二十どころではない害獣は黒ウサギの放つ赤い稲妻の一閃によって焼き払われた。

 

「凄い力ね………でも、あれだと………………」

 

黒ウサギに宿っているのは疑似神格だ。

疑似神格は本体の命を削る諸刃の剣。

黒ウサギは今まさに、命を燃やして戦っているのだ。

 

「この駄ウサギが…………無茶して!!あんたはもういいわよ!!あとは私がやる!!それくらいならディーンでどうにかなる!!だから!!」

 

ラッテンの言葉を無視し、全身の骨と肉が軋み、衣が身を焦がす炎に変わっても、黒ウサギは戦いを止めない。

双頭龍は片首を失って、重症である。

しかし、それでも片腕を失っているラッテンでは手に余る。

この身が燃え落ちたとしても、此処で戦いを止めることだけは絶対に出来ない。

 

「…………っ、あああああああああッ!!」

 

退けない。退けない!!

退けるはずがないッ!!

退けば同士が死ぬのだッ!!

 

(我が主神よ………………!!どうか、もう少しだけ、黒ウサギに恩恵を……………!!)

 

金剛杵を更に二つ、三つ、四つと召喚し、双頭龍に狙いを定める。

双頭龍も賭けに出てくる。

 

「GEEEEEEEEYAAAAAAAAaaaaaaa!!」

 

双頭龍は稲妻と金剛杵の放射によって出来た僅かな硬直を突いて決死の襲撃を仕掛ける。

純白の双頭龍は属性を持たないが故に他の双頭龍よりスペックが高い。

黒ウサギと双頭龍は超身体能力を発揮して樹海を駆け抜け、付かず離れずの攻防を繰り返す。

 

「あぁ……もう!!分かってるけど!!分かってたけども!!何でそうなのよ!!」

 

離れていく黒ウサギに向かってラッテンは叫ぶ。

ラッテンは自己犠牲というのが嫌いなのだ。

そういうもので助かっても後味が悪いだけである。

ラッテンは、息を切らしながらもディーンに黒ウサギを追い掛けさせるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

黒ウサギと双頭龍は戦いながらジン達がいた場所に現れていた。

ようやく再生した鋼の天使は両者の激しい戦いに反応する。

 

「La………………Ra……………………………!!」

 

初めて声らしきものを発しながら、黒ウサギに大剣を振りかざす鋼の天使。

しかし、ウサ耳を取り戻した黒ウサギに奇襲は通用しない。

背後からの襲撃を後天しながら避けた黒ウサギは、二体を一直線上に捉えたのを確認し、一枚の紙片を取り出す。

 

「召喚、“疑似神格・梵釈槍”___!!」

 

神鳴が響き、顕現する必勝の槍。

黒ウサギの纏う神代の衣は既に全身に火が点いているのだ。

これを外せばもう後がない。

大地を、天を、星を穿つ裂帛の気迫を込めて黒ウサギは吠えた。

 

 

「貫けえええええええええ_______!!」

 

 

太陽の光輪が切っ先に宿らせた神槍はかつてない霊格を放出し___第六宇宙速度という尋常外の速度を叩き出して双頭龍と鋼の天使を纏めて撃ち貫く。

稲妻は億兆もと束となって二体の化生を焼き尽くす。

槍は最後に日輪を夜空に輝かせて破裂させる。

その戦闘力に、“ウロボロス”の面々は顔を蒼白にしていた。

樹海は戦いの余波で焦土と化していた。

 

「これが“箱庭の貴族”………“月の兎”の真の力…………!!」

 

黒ウサギは、敵が完全に消滅したことを確認して、そこでようやく全身から力を抜いた。

 

「…………っ………」

 

そこで黒ウサギは異変に気付く。

身に纏う炎は、戦いを終えても消える気配は無かった。

 

(ああ…………やっぱり、そうなのですね………………)

 

全てを受け入れたように、金剛杵から手を放す。

これが恩恵の対価。

命を賭した“月の兎”の最期。

この炎は対価を徴収する為に煉獄から黒ウサギを手招いていた。

黒ウサギは全身を焼くその痛みで己の身体を抱き締める。

だが後悔は無かった。

 

(我が主神よ……………この命、貴方にお返しします)

 

奇跡に感謝して跪く。

そこに恨みは無い。

煉獄は間もなく黒ウサギを六道に導くだろう。

黒ウサギの意識はそこで途絶えた。

地獄の口が開こうとしているその瀬戸際_______己を顧みず飛び込む人影があった。

 

「本当に……いい加減にしなさいよ!!」

 

ラッテンは燃える黒ウサギに手を伸ばす。

煉獄は生者を焼きはしない。

だが、その身を焼く痛みは本物だ。

しかし、そんなことはどうでもいい。

片腕を斬り落とした今ではそんな痛みは今更だ。

そんなことよりもラッテンは苛立っていた。

 

「ったく、本当にこういうのは柄じゃ無いのよ!!何で私がこういう役割をやる事になってんのよ!!普通こういうのはもっと性格がいい奴がやるものなのよ!!」

 

溜まりに溜まった物をぶちまける。

だがそれで炎が消えるはずもない。

六道の地獄から吹き荒れる業火は津波の様に押し寄せて二人を包み込む。

このままではラッテンも命を落とす。

けれどもラッテンにはそんな気はさらさら無かった。

 

「帝釈天!!あんたが本当に……本当に善神なら!!世に蔓延る悪を討つという神というのなら!!その教義に邁進した、あんたの眷属くらい救いなさいよ!!」

 

ラッテンは胸に渦巻く苛立ちをぶちまける。

八つ当たりに近いがぶちまける。

そもそもこの苛立ちは黒ウサギに、敵に、魔王に、そして自分にすら向けている物だ。

神にはすがらない。

だが、文句はあるのだ。

 

「そもそも善神だというのならあんなものが現れた時点で駆け付けて来なさいよ!!それすら出来ないのに対価を取るってどんな善神よ!!大体眷属の一人くらいを救わないで何が善神よ!!そんなものは私は善神と認めない!!」

 

目の前の炎に叫ぶ。

それに黒ウサギに死なれたら困るのだ。

黒ウサギが死んだら皆悲しむ。

霧崎もきっと悲しむ。

そんな事にはなりたくないのだ。

だから、こんな終わり方は認めない。

そんな思いを無視するかの様に業火はまるで巨大な顎のように二つに分かれて二人を覆う。

全身に炎が奔り、煉獄に呑み込まれかけた瞬間。

ラッテンは雷鳴と共に苦笑する様な天の声を聴いた。

 

「…………遅いのよ」

 

想いを聞き届けたかのように、天空に轟く雷鳴。

二つ三つと輝く雷光の中、ラッテンは神の姿を見た。

雷光の中に中に佇む神の姿は獣のようでもあり、人のようにも見えた。

やがて業火は消え、静寂が訪れる。

全身の痛みと貧血でラッテンは気を失い、荒野に倒れ伏すのだった。

 

 





黒ウサギ覚醒でした!!
ほぼ原作通りではありますが!!

ラッテンは神にすがるタイプでも無いので文句をぶちまける形にしてみました。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。



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兄妹愛と合体獣と赤い輝き

 

ピポポポポポポポポポポ………………

 

サソリガドラスが蠍の様な尾をダイナに向かって振るう。

ダイナは転がり避けると同時に八つ裂き光輪を放つ。

 

「デヤッ!!」

 

ピポポポポポポポポポポ…………

 

八つ裂き光輪はサソリガドラスの尾を斬り裂き千切る。

しかし、本体に向かっていった物はサソリガドラスの腹が開き、吸収される。

直後に角から吸収したエネルギーを上乗せされた光線が放たれる。

 

「うおっ!?」

 

慌てて飛び退くがタイミングが遅く、爆風に吹っ飛ばされる様な形になる。

ダイナは立ち上がり、サソリガドラスの方を向くと腕を前で重ね広げる。

 

「ハァ!!」

 

直後にダイナの体が赤く、力強くなっていく。

フラッシュタイプからストロングタイプにタイプチェンジしたのだ。

ストロングは力と耐久力に優れる形態である。

姿を完全に変えると、サソリガドラスに向かい駆けていく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「待ちやがれ!!」

 

モモタロスがマシンデンバードに跨がり、デンライナーを操縦しながら叫ぶ。

モモタロス達は各々のデンライナーで銀色のオーロラに入りかけているクライス要塞に迫っていた。

しかし、このままでは逃げ切られる。

 

「僕に任せて!!」

 

そんな時にリュウタロス操るデンライナーイカズチが前に出てくる。

それにあわせ、二両で形成されるイカズチの間にゴウカ、イスルギ、レッコウが連結される。

各々がバトルモードに変形する。

イカズチは最後尾の車両から竜の尾の様な物を展開し、先頭の車両からは竜の頭の様な武装が展開される。

その頭部の上に操縦席が出てくる。

 

フルチャージ!!

 

リュウタロスはデンガッシャーガンモードを構え、狙いを定める。

全ての砲頭にエネルギーが集まっていく。

 

「テヤァ!!」

 

リュウタロスが引き金を引き、デンガッシャーからワイルドショットが放たれる。

同時に全ての砲頭からも光線やミサイルが放たれる。

それらは銀色のオーロラに先頭を入れていたクライス要塞の後部へと当たっていく。

そして、小爆発が連続して起き、クライス要塞後部から黒煙が吹き上げ、バランスを崩していく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ウォォ!!」

 

サソリガドラスは近付いてきたダイナに向けて鎌を振るう。

ダイナは裏拳でそれを弾き、左の拳を下顎に叩き込む。

間髪入れずに腹に右の拳を入れ、後退させる。

 

「ダァ!!」

 

飛び上がり、サソリガドラスに向けて降る様に蹴りを放つ。

蹴りはサソリガドラスの顔面に直撃し、角をへし折る。

 

ピポポポポポポポポポポ……………

 

サソリガドラスは唸りを上げながら途中で千切られた尾を鞭の様に振るってくる。

それを避けずにあえて受ける。

受けて踏ん張り、掴み取る。

 

「ハァ!!」

 

そのまま尾を引っ張り、足を踏ん張り、サソリガドラスの体を宙に浮かせ、投げ飛ばす。

 

ピポポポポポポポポポポ……………

 

地に叩き付けられたサソリガドラスは、フラフラと立ち上がる。

そこへ、ダイナがオーラを纏わせた左の拳を腹に叩き込む。

活動限界が近いのか、ダイナのカラータイマーが点滅している。

それ故に全身の力を込めて殴り付ける。

 

ピポポポポポポポポポポ……………

 

サソリガドラスは拳によって吹っ飛び宙に浮く。

ダイナは続けて右の拳に全身のエネルギーを集中させる。

 

「デュアッ!!」

 

宙に浮かんだサソリガドラスに向け、右の拳から炎の様なエネルギー弾、ガルネイドボンバーが放たれる。

サソリガドラスは悪足掻きする様に火球を放つがガルネイドボンバーに押し返され、消し飛ばされる。

そのままサソリガドラスは貫かれて爆散する。

 

「やったぜ!!」

 

サソリガドラスが爆散するのを確認し、拳を握り叫ぶのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「「「ハァァァ!!」」」

 

「「タァァァ!!」」

 

変形合体したキョーダインとWを上に乗せたアクセルバイクモードがぶつかり合う。

火花を散らし、攻防を繰り返す。

ただぶつかるだけでは無い。

キョーダインはプリズムソードによる斬撃に対応し、ライダー達はキョーダインの放つミサイル等を対処する。

そうして何度かぶつかり合っている間にチャンスが巡ってくる。

互いに正面から突進していく。

 

プリズム!!マキシマムドライブ!!

エンジン!!マキシマムドライブ!!

 

Wとアクセルが同時にマキシマムドライブを発動させる。

プリズムソードに力を集中させる。

そして、ぶつかる直前にWが前方に飛んでグランダインとスカイダインの連結部分を斬る。

 

「グガァ!?」

 

「兄さん!?」

 

連結を斬り離された直後にマキシマムドライブの力が加わった突進によってグランダインが跳ね飛ばされる。

スカイダインが心配する様な声を上げる。

旋回し、空中からWとアクセルを攻撃しようとするがその背を追う者がいた。

 

アクセル!!アップグレード!!

 

アクセルはグランダインを吹っ飛ばした直後に人型へと戻り、ガイアメモリ強化アダプターをベルトのアクセルメモリに装着させていた。

アクセルの体の色が赤から黄へと変化し、アクセルブースターへと姿を変える。

装備されてブースターを吹かし、空を飛ぶ。

 

「何ィ!?」

 

エンジン!!マキシマムドライブ!!

「ハァァァァァ……ダァ!!」

 

飛びながらエンジンブレードにエンジンメモリを装填する。

スカイダインの放つ攻撃を回避し、旋回してきた所を擦れ違い様に斬る。

スカイダインは黒煙を上げて墜落していく。

一方のグランダインは吹っ飛ばされ、着地した時には人型へと戻っていた。

だが、勢いは殺し切れずに地面を転がる。

そこへ、

 

サイクロン!!マキシマムドライブ!!

ルナ!!マキシマムドライブ!!

トリガー!!マキシマムドライブ!!

「「ビッカーファイナリュージョン!!」」

 

「ぬぐぁぁぁ!?」

 

翔太郎とフィリップの重なった声と共に幾重にも分かれ、湾曲した光線がグランダインへと突き刺さっていく。

その光線はプリズムソードが収められたビッカーシールドから放たれた物だ。

ビッカーシールドは最大四本のメモリでマキシマムドライブを発動させれる。

それによってルナの変幻自在の神秘、トリガーの射撃能力、サイクロンの旋風の力がシールドの中央で複合されたのだ。

幾つもの爆発を起こしながらグランダインは転がっていく。

ちょうど墜落し、人型へと戻ったスカイダインの近くで止まる。

 

「兄さん……」

 

「あぁ妹よ…………」

 

キョーダインはフラフラと立ち上がると手を重ね合わせてWとアクセルに向ける。

アクセルが前に出ようとするが、Wが手で制す。

そして、四本のメモリをビッカーシールドに装填していく。

 

サイクロン!!マキシマムドライブ!!

ヒート!!マキシマムドライブ!!

ルナ!!マキシマムドライブ!!

ジョーカー!!マキシマムドライブ!!

 

これはWのメモリで最も攻撃に特化されな組み合わせだ。

それらの力が収納されているプリズムソードに注がれる。

 

「「エックスブラスター!!」」

 

「「ビッカーチャージブレイク!!」」

 

キョーダインの重ねた手から凄まじいエネルギー光線が放たれる。

Wはプリズムソードを引き抜き、四つのメモリの力を乗せて斬り掛かる。

プリズムソードはキョーダインの放つ光線を徐々にだが、確実に斬り裂いていく。

そして、四つの光と共にプリズムソードはキョーダインに振り降ろされる。

共に斬り飛ばされたスカイダインとグランダインだが、各々別方向に火花をあげながら吹っ飛んでいく。

 

トライアル!!

 

アクセルがトライアルメモリをベルトに装填する。

カウントダウンの様な音と共にアクセルの装甲がパージされ、体の色も青くなる。

 

「アァ!!」

 

グランダインの苦し紛れの拳を避け、逆に拳を入れる。

グランダインが怯んでいる内にトライアルメモリをベルトから抜き、操作し、上へ放り投げる。

 

アクセル!!マキシマムドライブ!!

 

更にエンジンブレードにアクセルメモリを装填し、マキシマムドライブを発動させる。

 

「ハァァァァァ!!」

 

直後にアクセルトライアルは高速移動し、連続で何度も何度もグランダインをT字状に斬っていく。

その間もトライアルメモリはピピピピピピと音を鳴らしながら落ちてきている。

パワーが落ちる代わりに高速移動を手にする形態がアクセルトライアルなのだ。

落ちてきたトライアルメモリを掴み、音を止めてグランダインに背を向ける。

 

「9.7秒……それがお前の絶望までのタイムだ!!」

 

グランダインは火花を散らしながら崩れ落ちる。

 

Wはプリズムビッカーをクリスタルサーバーにしまう。

そして、素手でスカイダインと向き合う。

 

「ふっ………アァァァァァ!!」

 

スカイダインは叫びながら両手の針の様な武器を構えて突進してくる。

だが、どれだけの敵であろうと我を失っては実力は出し切れない。

スカイダインの攻撃を受け止め、拳の連打を叩き込む。

一瞬動きが止まった所に蹴りを入れ、距離を離す。

そして、エクストリームメモリを一度閉じ、再び開く。

 

エクストリィィィム!!マキシマムドライブ!!

 

内部の風車が激しく回る。

大気を体内へと送り込む。

 

「「ダブルエクストリーム!!」」

 

「ア……ァァァァァァ!?」

 

大気の力で宙に舞ったWの両足蹴りがスカイダインに放たれる。

両腕で防御しようとするが無駄だ。

防御を簡単に弾き、スカイダインの体に蹴りが炸裂する。

吹っ飛ばされ火花を上げて崩れ落ちるスカイダイン。

 

「兄……さん………」

 

「妹………よ………」

 

同じく崩れ落ちたキョーダインは互いに手を伸ばす。

体に致命的なダメージを受け、火花を散らした状態でも手を伸ばす。

そして、手が重なり合うと同時に爆炎をあげるのだった。

翔太郎は何故か手が重なりあった瞬間、キョーダインが微笑を浮かべた様に感じるのだった。





幾つか決着でした!!

光線吸収するなら肉弾戦のストロングという感じでタイプチェンジしました。
ウルトラマンと仮面ライダーが協力して倒した怪獣ではありますが、相性の問題だと思いまして。

キョーダインは二人では三人には勝てないという感じです。

それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。



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回転独楽と夢のミサイルと絆で掴む宇宙

 

「なでしこロケットパーンチ!!」

 

なでしこは右腕にロケットモジュールを装備し、身体を回転させる様にしながら戦闘員に叩き付けていく。

そのままの流れで気配も姿も消している筈のガランダーグリードに一撃入れる。

 

「がぁ!?」

 

なでしこがガランダーグリードを視認出来るのはなでしこが本質的に人間では無いからだ。

根本的にこの場にいるなでしこはライダースイッチの力によってコズミックエナジーから作りだした物だ。

とはいってもなでしこの人格と体質は完全に再現している。

彼女は元々SOLUが化けた存在である。

SOLUの特性によって見えない物も視えているのだ。

そして、一撃を受けたガランダーグリードはダメージによって姿を現す。

 

「これで決めてやる!!」リミットブレイク!!

 

ストームシャフトにメテオストームスイッチを挿してリミットブレイクを発動させる。

 

「メテオストームパニッシャー!!」

 

ストームシャフトの先端から回転独楽を放つ。

一直線に向かって来る回転独楽を両手で受け止めるガランダーグリード。

足を少々引きずり、後ろへと下がっていくが何とか耐えてはいる。

故に他へ集中をそらせない状態であった。

だから、足に水流を纏わせたアクアが近付いて来ている事に気付くのも遅れた。

 

「アクアヴォルテクス!!」

 

「何ィ!?グギャアァァァ!?」

 

アクアの水流を纏わせた飛び蹴りをほぼ背面に受け、体勢を崩され吹っ飛んでいく。

同時に防御も崩れ、左肩を回転独楽が貫く。

回転独楽をメテオストームスイッチに戻し、スイッチをベルトに入れて天球儀を回転させ、リミットブレイクを発動する。

 

メテオ!!リミットブレイク!!

「ホワチャァァァ!!」

 

「私がこんな………ところでぇぇぇぇ!!」

 

メテオの風を纏った流星の様な蹴りを直撃するガランダーグリード。

連撃を受けた直後ではさすがに防御する余裕は無かったのだ。

ガランダーグリードは悔しそうに叫び、セルメダルを撒き散らしながら爆散していくのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

エアロオン!!ハンマーオン!!

「ウリャ!!」

 

「ふん!!」

 

弦太朗がエアロモジュールとハンマーモジュールを装備する。

エアロモジュールでデストロングリードを引き寄せ、ハンマーモジュールを叩き付けるが弾かれる。

逆に重い一撃を受ける。

 

「なら、これはどうだ!!」

ウインチオン!!ウォーターオン!!

 

「ほぉ……」

 

ハンマーモジュールとエアロモジュールを解除し、ウインチモジュールとウォーターモジュールを装備する。

ウインチモジュールでデストロングリードを縛ると、ロープが引き千切られる前にその身体を宙に浮かせる。

そこへ左足を向け、左足に装備した蛇口の様な形状のウォーターモジュールから水を放出する。

高く宙に打ち上げられただけでダメージというダメージを受けてないデストロングリードは、意図が分からず次の手を待っている様子である。

弦太朗はモジュールを解除すると、特殊な形状の青いスイッチを取り出し、ベルトの×部分に挿す。

 

ランチャー!!ス、ス、スーパー!!

 

そして、スイッチオン。

 

ランチャーオン!!

 

ランチャースイッチスーパー2の力でフォーゼの姿が変化する。

色が白から濃い青へと変わり、両足両肩にランチャーモジュールが付いたステイツ、ランチャーステイツとなる。

 

「やっぱりこの姿になると皆の夢を感じるぜ。お前も受けてみろ、これが夢のパワーだ!!」

ランチャー!!リミットブレイク!!

 

「何が夢だ!!」

 

全身から無数のミサイルがデストロングリードに向けて放たれる。

デストロングリードは空中でそれを避けようが無い。

出来る事と言えば火球を放ち、ミサイルを撃ち落とすくらいである。

それも限界であり、殆どのミサイルは吸い込まれる様にデストロングリードへと当たる。

爆風に押し上げられる様にデストロングリードの体は上空へと上がっていく。

 

「俺を地に降ろさないつもりか!?」

 

「いいや、そんなことは無いぜ!!」

ロケット!!ス、ス、スーパー!!

ロケットオン!!

 

ランチャースイッチスーパー2をオフにし、ロケットスイッチスーパー1をベルトの○部分に挿し、スイッチオンする。

体が濃いオレンジ色へと変わっていく。

両腕にロケットモジュールが装備される。

ロケットステイツへと変化したのだ。

二つのロケットの力で加速し、空中のデストロングリードに突進する。

一回目の突撃でデストロングリードを跳ね上げる。

 

ロケット!!リミットブレイク!!

「行くぜ、ライダーきりもりクラッシャー!!」

 

「このぉ!!」

 

左手のロケットモジュールを半解除し、左手でベルトのレバーを引く。

半解除していたロケットモジュールを装備し、発動したリミットブレイクの力で更に加速する。

そのまま身体を回転させてデストロングリードに突進する。

デストロングリードが火球を放ってくるが回転によって弾いていく。

 

「ぬ……がぁぁぁぁぁ!?」

 

「ウォォォォォォォォォ!!」

 

突進により、身体を削られ墜落していくデストロングリード。

しかし、突進は一度だけでなく、完全に地に落ちるまで何度もぶつかった。

 

「だが、私はまだ終わらんぞ!!」

 

「だろうな。お前の頑丈さはぶつかった俺がよく分かってるぜ」

 

砂煙が上がる中で勢いよく立ち上がり砂煙を払うデストロングリード。

弦太朗は地に足を付けるとロケットステイツを解除する。

そして、別のスイッチを挿す。

 

コズミック!!

コズミックオン!!

「皆の絆で宇宙を掴む!!」

 

フォーゼへと一番から四十番までの全てのアストロスイッチが集まっていく。

全身がチタンブルーへと変わり、右手にバリズンソードを持つ。

コズミックステイツへと姿を変えたのだ。

左手で宙を掴む様な動作をし、バリズンソードをデストロングリードに向けて構える。

 

「幾ら姿を変えても無駄だぁ!!」

 

シールドオン!!

「ハァ!!」

 

デストロングリードの一撃をシールドモジュールで受け止める。

そのままバリズンソードで突き、吹っ飛ばす。

そして、胸のパネルを操作する。

 

ホッピング!!

ホッピングオン!!

スタンパー!!

 

コズミックステイツの能力はスイッチの合成である。

これによってホッピングモジュールにスタンパーの能力を合成する。

つまり、ホッピングモジュールで跳ねながら紋章を刻んでいくという事だ。

 

「この紋章は……ぬがぁ!?」

 

周囲を縦横無尽に跳び回る弦太朗によって全身を紋章だらけにされる。

直後に紋章が光を放って爆発する。

しかし、煙を上げてはいるがデストロングリード自体にはそこまでダメージは無いようである。

そこはさすがの頑丈さという事だろう。

 

「これはどうだ!!」

クロー!!

クローオン!!

エレキ!!

 

「ぐがぁ!?」

 

バリズンソードのレバーを倒し、刃を出現させる。

更に胸のパネルをいじり、クロースイッチをバリズンソードへと挿し、エレキスイッチの雷を上乗せする。

バリズンソードに巨大な爪型のエネルギー体が現れ、雷を纏った状態でデストロングリードを斬り付けていく。

その間に一瞬上空を見る。

 

ファイヤー!!

ファイヤーオン!!

シザース!!

シザースオン!!

 

今度はファイヤースイッチをバリズンソードに挿し、左手に装備したシザースモジュールと合わせて斬り掛かる。

数度斬り掛かり、身体からセルメダルを散らせるとバリズンソードに大きな炎を纏わせて斬り付ける。

デストロングリードが怯み、動きが止まった瞬間を狙い、バリズンソードを刺突型に戻し、コズミックスイッチを挿す。

 

リミットブレイク!!

「ウォリャア!!」

 

「これは次元の穴!?」

 

デストロングリードの背後に次元の穴を出現させ、突撃し、そのままデストロングリードごと次元の穴に突入する。

そして、上空4000mへとワープする。

そのままデストロングリードを放り出し、自身はその真上へと移動する。

 

「こんな上空で何をするつもりだぁ!?」

 

ロケット!!ス、ス、スーパー!!

ロケットオン!!

ドリル!!

ドリルオン!!

ドリル!!リミットブレイク!!

「ライダー超銀河ドリルキック!!」

 

バリズンソードへとロケットスイッチスーパー1を挿し込む。

更に左足にドリルモジュールを出現させ、リミットブレイクを発動させる。

バリズンソードの切っ先とドリルをデストロングリードへと向ける。

バリズンソードに加えたロケットスイッチスーパー1の力で加速し、デストロングリードへと突撃、正確には落下していく。

 

「ウオラァァァァァァァァ!!」

 

「ゴガァァァァァァァァ!?」

 

ドリルキックを受け、身体を削られながら高速で落下していく。

キックの威力と落下の勢いが重なり合い、落ちていく様はまるで隕石の如くであった。

そして、墜落する直前に身体を貫かれる。

 

「ゴァァ!?」

 

墜落する様はまさに隕石であり、激しい音をたて、クレーターの様な落下跡を作る。

幾らデストロングリードの頑丈さでもこれには耐え切れず致命的にボロボロであった。

直後に断末魔の叫びをあげ、セルメダルを撒き散らし、爆散するのだった。

 

「ふぅ………」

 

墜落の直前に離脱していた弦太朗は、ドリルモジュールを解除して無事着地していた。

そして、頭を撫でる様にして息を吐くのだった。

 

 





vsガランダーグリード及びvsデストロングリード決着!!

ランチャーステイツは小説フォーゼに出た物です。
夢云々はそちらを見てください。
塚Pが書いた物でしたが中々よかったですよ。

それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。



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サソリとキマイラとPOWER to TEARER

ブレストキャノン!!

カポン!!カポン!!カポン!!カポン!!カポン!!セルバースト!!

「ブレストキャノンシュート!!」

 

「ぬぐぅぅぅ…………効くか!!」

 

プロトバースが胸元に砲台を出現させ、セルメダルの力を凝縮した光線をゲルショッカーグリードに向けて放つ。

しかし、ゲルショッカーグリードはそれを正面から受け止めて弾き飛ばす。

やはりセルメダルとコアメダルでは力の差が大きいのだ。

ゲルショッカーグリードはそのまま追い討ちを仕掛けようとする。

 

「貴様らごときが俺を倒せるとでも思っているのか!!」

 

「うおっ、危ねぇ!!」

 

間一髪、ギリギリ回避するプロトバース。

だが、一撃で終わるはずなく更に攻撃しようとしたところでバースとビーストが銃撃を放って怯ませる。

 

「ナイス、後藤ちゃん!!」セルバースト!!

 

「ぐおっ!?」

 

怯んだ所にプロトバースがセルバーストを発動させたバースバスターを構えて引き金を引く。

至近距離で放たれたそれはさすがにゲルショッカーグリードを吹き飛ばす。

 

クレーンアーム!!ドリルアーム!!ショベルアーム!!キャタピラレッグ!!カッターウィング!!ブレストキャノン!!

「伊達さんが先行し過ぎなんですよ!!」

 

そこへバースが全ての装備を展開してバース・デイになりながら突進していく。

 

「ガァァァ!!」

 

「タァァァ!!」

 

カッターウィングをブーメランの様に放ち、隙を作り、先端にドリルアームを付けたクレーンアームによって蛇の様な腕を弾き飛ばす。

そのまま戻ってきたカッターウィングの力で飛行し、キャタピラレッグで蹴りを叩き込む。

そのまま反撃の隙を与えない為に密着し、ショベルアームで右腕をしっかり掴んで、ブレストキャノンを押し付ける。

 

「何ぃ!?」

 

「ハァァ!!」セルバースト!!

 

0距離で放たれたブレストキャノンシュートはゲルショッカーグリードの左肩を貫き、セルメダルを撒き散らせる。

 

「調子に………乗るなよ!!」

 

「ぐぁぁ!?」

 

「後藤ちゃん!!」

 

ブレストキャノンの放射が終わった直後に弾き飛ばされる。

バースは装備が解除されながら転がっていく。

そのまま炎弾を放ってバースとプロトバースを纏めて吹き飛ばす。

 

「おいおい、俺を忘れて貰ったら困るぜ!!」ハイパー!!マグナムストライク!!

 

「な……ぐぉぉぉ!?」

 

いつの間にか背後に回っていたビーストがミラージュマグナムからキマイラの頭部の様なエネルギー弾が放たれ、ゲルショッカーグリードを吹っ飛ばす。

 

「おのれ………」

 

ゲルショッカーグリードは地面を転がりながら体勢を立て直し、ビーストに攻撃を仕掛けようとするが左右から襲い掛かる影が見える。

 

クレーンアーム!!クレーンアーム!!

「「ハァ!!」」

 

「くっ………こしゃくな!!」

 

自らを拘束するクレーンアームを引き千切ろうとするが、その前にビーストが仕掛ける。

ダイスサーベルを構え、ハイパーリングを填める。

 

シックス!!セイバーストライク!!

「オラァ!!」

 

「ぐ……ぎゃあぁ!?」

 

バッファ、ドルフィ、カメレオ、ファルコが各々六匹ずつエネルギー弾としてゲルショッカーグリードへと突進していく。

その群れに貫かれ、押し負け、セルメダルを撒き散らすゲルショッカーグリード。

 

「この程度………この程度でこの俺がぁ!!」

 

激昂し周囲に炎弾を撒き散らす。

ビーストは両腕に付いている布の様な飾りが鞭の様に動き炎弾を弾く。

バース、プロトバースは地面を転がりながら避けていく。

その間にビーストは指輪を変え、バースはベルトにセルメダルを入れていく。

 

キマイライズ!!ゴー!!

クレーンアーム!!ドリルアーム!!キャタピラレッグ!!ショベルアーム!!カッターウィング!!ブレストキャノン!!

 

ビーストはビーストハイパーからビーストへと姿を戻し、ベルトの前に魔法陣を出現させる。

そこからビーストに力を与えるファントム、キマイラが出現する。

ビーストはそれに飛び乗り、キマイラは空を駆ける。

 

「行くぜ、キマイラ!!メインディッシュだ!!」

 

バースの前に六つの武装が展開し、合体し、姿をCROW'sサソリとなる。

サソリはバースの動きと連動して動く。

そして、キマイラとサソリが地と空からゲルショッカーグリードに向かっていく。

 

「デカブツごときが……うぐぅ!?」

 

「足元が抜けてるぜ」

 

プロトバースが、ゲルショッカーグリードの足元を狙い撃ち、崩壊させて、ゲルショッカーグリードの体勢を崩させる。

そこへキマイラとサソリが迫る。

 

「オラァァァ!!」

 

「ハァァァァァ!!」

 

「ガラァァァ!?」

 

サソリの尾の部分から七色の光線が放たれ、キマイラも各頭部から光線を放つ。

サソリの光線とキマイラの光線に挟まれたゲルショッカーグリードは断末魔の叫びを上げ、セルメダルを撒き散らして爆散していった。

 

「ごっそうさん!!」

 

ビーストはキマイラから降りて、手を合わせるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ダァァァ!!」

 

「ハァァァ!!」

 

ショッカーグリードの放つメダル状のエネルギー弾を、映司はティラノの尾を展開して纏めてはたき落とす。

 

「ぬぅん!!」

 

「ハッ!!」

 

力を溜め、一際大きなエネルギー弾を放つが、此方はアンクの放った炎弾によって相殺される。

 

「このままでは埒が明かぬ!!」

 

そう言ってショッカーグリードは、翼を広げて空へと飛びたつ。

明らかに自分の得意とする戦場に誘っているのだろう。

だが、敢えて乗る。

何故ならアンクも映司も空中戦の得意な形態であるからだ。

アンクは元々鳥の王であるグリードである。

紅い翼を広げてショッカーグリードへと向かっていく。

その後を映司はプテラの翼を広げて追い掛ける。

 

「ショッカァァァァ!!」

 

向かってくる映司とアンクに向けてエネルギー弾を放ってくる。

それに対してアンクは翼から羽状のエネルギー弾を放ち相殺させる。

そのまま突進していき、アンクの右腕とショッカーグリードの左腕がぶつかる。

数瞬鍔迫り合いの様に拮抗するが、互いに後方へと吹っ飛んでいく。

その隙に映司が背後へと近付いていく。

 

「ガァァ!!」

 

「くぅ……カァァ!?」

 

背後に回った映司がショッカーグリードの翼を掴む。

そのままメダガブリューを振り降ろし、翼をもぎ取る。

血の様にセルメダルが溢れていく。

だが、片翼だけでも飛行自体は可能らしい。

 

「片翼程度………」

 

「ハッ………本当に片翼“程度”か?」

 

片翼を失い、フラフラと飛ぶショッカーグリードに、自由自在に動き回るアンクが接近していく。

そのまま翼を右腕で貫く。

ショッカーグリードが炎弾を放つがヒラリフラリと上手い事避けていく。

その間に左腕で根本を掴む。

そして、ショッカーグリードの体を足で押さえる。

左腕の鈎爪を根本に押し込み、そこから炎弾を放ち、爆破させる。

セルメダルが撒き散らされ、ショッカーグリードは両翼をもがれた。

 

「ハァァァァ!!」

 

「ごぶぅ!?」

 

落下していくショッカーグリードへと追い討ちを掛ける様にアンクが足に炎を纏わせ、蹴りを叩き込んだ。

多量のセルメダルが炎に包まれながら舞う。

更にその後ろには紫の影があった。

 

ゴックン!!プットティラーノヒッサーツ!!

「セイヤァァァァァ!!」

 

「ぬおれぇ!?」

 

映司はメダガブリューにセルメダル四枚を飲ませると、ショッカーグリードが墜落する前にアックスモードで振り降ろした。

紫のオーラを纏った刀身によって斬られ、セルメダルが吹き出す。

そのまま墜落し、小さなクレーターが出来る。

 

「まだだ…………私がこんな所で…………」

 

「終わるんだよ」

 

何とか立ち上がったショッカーグリードに向け、アンクが炎弾を放った。

ショッカーグリードはそれを片腕で弾く。

だが、そこに予想外の攻撃がくる。

プトティラの肩アーマーの角が伸びてショッカーグリードを貫いたのだ。

 

「アァァァァ!!」

 

「ぐぅ………」

 

更に展開されたプテラの翼が展開し、冷気を放ち、ショッカーグリードの足元を凍結させて動きを封じる。

そして、ティラノの尾を振るう。

 

「ガァ!!」

 

「なんのぉぉぉ!!」

 

ショッカーグリードはそれを受け止めようとするが、凍結した足では踏ん張りが効かず、砕けた氷と共にホームランの様に飛ばされる。

とは言っても足が自由になったのは確かである。

体勢を整え、着地しようとした所で下に回り込まれた事を悟る。

何故なら着地地点にプトティラがメダガブリューバズーカモードを構えて待機していたからだ。

しかも銃口には紫のエネルギーが収束している。

 

「ダガァァァ!!」

 

「ふん」

 

無論、ただ見ているだけでなくエネルギー弾を放つなりするのだが、それらはアンクによって弾かれていく。

 

プットティラーノヒッサーツ!!

「ハァァァァァァァ!!」

 

「ぐぉぉぉぉぉ…………うばぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

メダガブリューから放たれたエネルギー弾に包み込まれて断末魔をあげるショッカーグリード。

だが、放射が終わってもその体は原型を保っていた。

映司達よりやや離れた所に落ちたショッカーグリードは身体中から火花を散らしながら立ち上がる。

そのまま手を大きく広げる。

 

「ショォォォォォォォカァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

自らの組織名を叫びながら爆散するショッカーグリード。

周囲にセルメダルを撒き散らしていく。

その中で一つ色合いの違うメダルが現れる。

アンクはそれに向けて右手を飛ばす。

元々メダルの塊で不定形の身である為に腕のみになれるのだ。

アンクがショッカーグリードを掴む一歩前に何かが飛んできていた。

 

「ショッカーメダル頂く!!」

 

「させんよ!!」

 

現れたのは怪人であった。

両肩が鷲の頭の様な形をし、頭部は何処かディケイドに似ている形であった。

怪人は、アンクより先にショッカーメダルを掴み、アンクを弾き飛ばす。

アンクは人間態に戻り怪人を睨む。

 

「お前、何者だ!!」

 

「私はグリードだよ。君と同類のね」

 

怪人はそう言って、周囲に五つのメダルを浮かばせるのだった。

もし、士がこの場にいたのならこの怪人の正体を見た目で察していただろう。

 

 





グリード全滅でした!!
と思わせて新グリード登場!!
オリ怪人です!!
種類としてはショッカーグリードなどと同類にして上位互換です。
二つ首の鷲とディケイド似という点がヒントです。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。



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超獣電と六枚のメダルと迷惑な者の最期

 

 

 

 

 

 

「これでゴッドメダル以外は私の手元ですか。まだ取り込むには速いですね」

 

「何の話をしてやがる!!」

 

「こちらの話ですよ」

 

突如現れた謎のグリードは、アンクの方を見ずに周囲に漂わせている五枚のメダルを見る。

ショッカーメダル、ゲルショッカーメダル、デストロンメダル、ガランダーメダル、デルザーメダル。

倒されたグリード達のメダルである。

倒された後、このグリードが密かに回収していたのだ。

 

「アンク、あいつは何?」

 

「グリードだ」

 

「新手って事か」

 

アンクの隣に映司が立つ。

姿はタトバコンボである。

さすがにプトティラコンボは体力を減らし過ぎるので変えたのだ。

映司に続く様に他のライダー達も謎のグリードを囲む。

 

「お前が何者かは知らねぇが……この数に勝てるつもりか?」

「戦闘員も粗方片付けたし、逃げても無駄だよ?」

 

オーズ、アンク、W、アクセル、バース、プロトバース、アクア、フォーゼ、メテオ、なでしこ、ビーストに囲まれる中でも、そのグリードは余裕そうに構えていた。

まるで何かを観察するようであった。

 

「確かに不利ですね………私が“並”の怪人だったらの話ですが!!」

 

「自分が規格外って言いたいのか?」

 

「そぉぉぉの通りですようォ!!」

 

謎のグリードは翼を広げると、飛び上がり、回転する様に周囲へと炎弾を放っていく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ハァァァァ!!」

 

「甘いわ!!」

 

斬り掛かってくるプテライデンオーの攻撃を避けて、銃撃で吹っ飛ばす。

そのままキングダークは口を開き、光線をスピノダイオーへと吐く。

 

「「ぬっ……ハァ!!」」

 

スピノシールドとスピノブーメランで受け止める。

地面に跡を残しながら押されるが、耐え切り、弾く。

その隙にプレズオーが右手をキングダークに向ける。

 

「プレズオー・ブレイブフィニッシュ!!」ズッオーン!!

 

「ふん、こんなもの!!」

 

キングダークは、刃付き円状盾でプレズオンの頭部の様な光線を受け止める。

そのまま右手の銃を向け、引き金を引く。

 

「マグナムショット!!」

 

「きゃあ!?」

 

銃撃が直撃してコクピットのバイオレットが悲鳴を上げ、プレズオーが吹っ飛ぶ。

その横合いからキングダークへ向けて射撃が入る。

 

「ギガントショット!!」

 

「ぐぅ……」

 

数発かするが、ギリギリで避けていく。

 

「ガイストカッター!!」

 

「スピノブーメラン!!」

 

刃付き円状盾をギガントキョウリュウジンへと投げ付けるが、側面にスピノダイオーが放ったスピノブーメランが当たり、軌道がズラされて吹っ飛んでいく。

慌てて銃を構えるが、既にギガントキョウリュウジンには近付かれていた。

 

「ギガントスラッシャー!!」

 

「ぐぬぅ!?」

 

下から斬り上げるような一撃に腕ごと弾かれる。

銃は回転しながら宙に舞い、両腕は弾き上げられ、キングダークは胴を無防備に晒す。

その隙を突かないわけがなく斬り上げの状態から斬り下げる様に袈裟斬りする。

 

「ぐぅぅ……おのれぇぇ!!」

 

一歩後退したところを一歩踏み込んで更に一撃を加えようとするが、武器を掴まれ、殴り飛ばされる。

 

「私が魔法を使える事を忘れるなよ!!」

 

そう叫び、前方に魔法陣を出現させたと思うとそれを殴り付けた。

魔法陣を通った腕は何処かへと消える。

 

「「「「「「「「ぐぁぁ!?」」」」」」」」

 

消えた腕はギガントキョウリュウジンの背後に現れ、後頭部を殴られる。

バランスを崩したギガントキョウリュウジンへ追い討ちをかける様に前方に魔法陣を出現させる。

 

「ふん!!」

 

「俺が乗ってるのも忘れるなよ」ディフェンド、プリーズ!!

 

キングダークの魔法陣から放たれる雷を、ギガントキョウリュウジンの前に現れた魔法陣が防ぐ。

コクピットの晴人がディフェンドの魔法を発動させたのだ。

 

「私達も!!」

 

「プテライデンオー・ブレイブフィニッシュ!!」

 

「鉄砕拳・激烈突破!!」

「アンキドンハンマー!!」

 

プレズオーが放ったロケットパンチは軽々弾いたキングダークではあったが、それは隙を作るだけであった。

プテライデンオーが翼に雷を纏わせて斬り掛かり、防御しようとしていた両腕を弾き飛ばす。

口から光線を放つがスピノダイオーの鉄球を合わせた拳によって霧散し、シアンのオーラを纏ったハンマーによる重い一撃を受ける事になる。

 

「それで終わりじゃないぜ」アタックライド、スラッシュ!!

 

「ギガントスラッシュ!!」

 

「ごがぁ!?」

 

士がコクピットでベルトにカードを入れる。

ギガントザクトルアックスにマゼンタのオーラを纏わせて斬る。

キングダークは避けれず、左の角を折られ、顔面にヒビ割れが入る。

 

「合わせろよ、ダイゴ!!」

 

「おぉ、親父!!」

 

コクピットでダイゴとシルバーが拳を構える。

それに合わせる様にギガントキョウリュウジンもギガントザクトルアックスを地面に突き刺して拳を構える。

 

「岩烈……」

「空烈……」

 

「「パァンチ!!」」ギガバイバイーン!!

 

拳に合わせる様にギガントキョウリュウジンが能力を使う。

ギガントキョウリュウジンはガーディアンズの力を全て扱えるのだ。

それによってフタバインの力を使い、ギガントキョウリュウジンの姿が二つになる。

そして、同時に拳がキングダークに叩き込まれる。

キングダークは大きく吹っ飛び、拳を受けた胸には深いヒビが入っている。

 

「ダァァ!!」

 

「「「「ウワァァァァ!?」」」」

 

キングダークが激昂すると周囲に魔法陣が現れ、ギガントキョウリュウジン、プテライデンオー、プレズオー、スピノダイオーを爆撃で吹っ飛ばしていく。

エクスプロージョンの魔法によって爆撃を起こしたのだろう。

 

ギガビヨーン!!

ギガメラメラーン!!

「「「ハァァァァ!!」」」

 

「この程度ォ!!」

 

ビヨンスモとアロメラスの力によってギガントザクトルアックスに炎を纏わせ、鞭の様に振るう。

キングダークは紙一重で避け、拳でそれを弾く。

弾かれたギガントザクトルアックスを元の状態に戻し、牽制する様に投げ付ける。

キングダークはヒラリと避け、ギガントザクトルアックスはキングダークの背後へと突き刺さる。

 

「こうなったら一気に決めるぜ!!」

 

「キョウリュウジャーの力、使わせて貰うぞ!!」ファイナルアタックライド!!キョウリュウジャー!!

 

「グランドフィナーレだ!!」チョーイイネ!!ダイノホープ!!サイコー!!

 

「「「「「「「「「ブレイブを一つに!!」」」」」」」」」

 

プテライデンオー、プレズオー、スピノダイオーがギガントキョウリュウジンの背に手を当てる。

力をギガントキョウリュウジンへと集めているのだ。

コクピットのディケイド コンプリートフォームのカードがキョウリュウジャーの物に変わる。

胸の九枚の部分はキョウリュウブラック、キョウリュウブルー、キョウリュウグリーン、キョウリュウピンク、キョウリュウゴールド、キョウリュウシアン、キョウリュウグレー、キョウリュウバイオレット、キョウリュウシルバーとなり、頭部の部分はキョウリュウレッドカーニバルになる。

ギガントキョウリュウジンの胸元のパネルが光輝き、足元に魔法陣が現れ、そこから巨大なウィザードラゴンが出現する。

ウィザードの希望の魔法と時を越えて受け継がれてきたダイノホープが合わさり、強力な力へと変わっていくのだ。

ウィザードラゴンに合わせる様にギガントキョウリュウジンが飛び上がる。

その間にウィザードラゴンは巨大な足へと変形する。

それをギガントキョウリュウジンの右足で押す様にすると、ギガントキョウリュウジンとキングダークの間に十枚のカード状のエネルギー体が現れる。

カードにはキョウリュウジャー面々の顔が書かれている。

 

 

「「「「「「「「超獣電インフィニティーディメンションブレイブフィニッシュ!!」」」」」」」」

 

 

「なぁ………ごぐぶゥ!?」

 

十枚のカードを通り抜け、二つのライダーとキョウリュウジャーと24体の獣電竜の力がこもった蹴りがキングダークへと放たれる。

足を掴み受け止めようとするが、数瞬止めるのが精一杯であり、盛大に蹴り抜かれた。

火花を上げるキングダークと背中合わせになるような形で着地する。

そこに突き刺さっていたギガントザクトルアックスを掴む。

 

ファイナルアタックライド!!ディ、ディ、ディケイド!!

ハイタッチ!!シャイングストライク!!キラキラッ!!キラキラッ!!

ガブリンチョ!!バモラ!!

「「「ドラァァ!!」」」

 

コクピット内で士はディメンションスラッシュを、晴人はシャイニングストライク、ダイゴは獣電ブレイブスラッシュを発動させる。

三つの斬撃のエネルギーはギガントザクトルアックスへと集中する。

そのまま回転斬りの要領で振り返り様にキングダークを一刀両断する。

キングダークは幾つもの小爆発を起こしながら崩壊していく。

その中にアポロガイストの姿があった。

 

 

「………ぐっ………私が倒れたくらいで大ショッカーは止まらないのだ。我ら大ショッカーの前に貴様らも何時か倒れる運命なのだぁ!!そして、私はあらゆる時空で最も迷惑な存在として再び甦るのだぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

「いいや、今度こそ地獄に落ちてろ!!」ファイナルアタックライド!!ディ、ディ、ディケイド!!

 

崩れ落ちるキングダークの中心部で断末魔の叫びを上げるアポロガイストを、士はコクピットから飛び出し、ディメンションキックで蹴り貫くのだった。

直後にアポロガイストとキングダークの残骸が爆散していくのだった。

その中で散ったゴッドメダルは、映司達と戦う謎のグリードの許へと飛んでいく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

謎のグリードは、バースとプロトバースの銃撃がまるで効いてない様に平然と立ちながらメダジャリバーとダイスサーベルを受け止める。

そのまま翼で映司とビーストを弾き飛ばす。

 

「「ぐぁ!?」」

 

「なでしこロケットパーンチ!!」

 

ロケットモジュールを装備しパンチを放つなでしこ。

背後に体を倒して避ける。

上を通過していくなでしこに蹴りを放ち吹っ飛ばす。

 

OK!!サターン!!

ランチャーオン!!

エンジン!!マキシマムドライブ!!

 

突進してくるアクセルをヒラリと避けるが翼にかすめた様でバランスを崩す。

そこへミサイルと斬撃波が飛んでくる。

翼を広げ、羽状のエネルギー弾を放ち、弾幕を張る事で相殺する。

 

「「ジョーカーエクストリーム!!」」

「アクアヴォルテクス!!」

 

直後に二方向から蹴りが放たれる。

さすがにここまでの連撃で手を出し尽くしており、避けれずくらう。

セルメダルを散らしながら吹っ飛ぶ。

距離を取る為にも踏ん張りはしなかった。

そのまま互いに様子を見会う膠着状態になりかけた時、謎のグリードの許にゴッドメダルが飛来する。

 

「散ったかアポロガイスト。しかし、最低限の事はやり遂げたようですね。ネオ生命体があそこまで強化されているならば充分です。さて、メダルも揃いましたし私もまた完成に近付くとしますか」

 

「待て!!」

 

謎のグリードが六枚のメダルを光らせ、周囲を回らせている所で士、晴人、キョウリュウジャー面々が現れる。

だが、謎のグリードは気にした様子ではない。

そして、士はその姿を見て正体を察する。

 

「お前は……まさか大ショッカーの!!」

 

「ご名答!!さすがは元大首領ですね!!それでは見せてあげましょう!!この私、大ショッカーグリードの新たなる姿を!!」

 

「「「「「「させるか!!」」」」」」

 

六枚のメダルを取り込もうとする謎のグリードに向けて士達が一斉に攻撃を放つ。

激しい攻撃により砂埃が上がり姿が確認出来なくなる。

 

「やったか?」

 

誰かがそう呟いた直後に砂埃が斬り裂かれる。

そこにいたのは背中から触手の様な翼を六枚生やす、大ショッカーグリードだった。







アポロガイスト死亡でした!!
ほぼ決着と言った感じです!!
念入りに殺ったのは復活させない為です。
意味あるかどうかはともかく心情的にです。

大ショッカーグリードはショッカーグリード+ディケイド+大首領オーズみたいな姿です。
まだ不完全な感じです。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。



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消えたヒーローと再会する者達と必要な犠牲


今回で十巻分は終了です!!
次に本編更新するのは最新刊出たらです!!
鎧武はその時には終わってそうですけど!!


 

「調子は中々いいようですね」

 

大ショッカーグリードは、力を調整するかの様に触手の様な翼を振り回す。

そして、グルリと周囲を見回す。

近くではライダー達が警戒する様に構えていた。

遠くを眺めればクライス要塞が煙を上げて高度を下げていた。

それを追い掛ける様にデンライナーが走っている。

ウルトラマンダイナの姿はいつの間にか消えていた。

状況を確認し終えた大ショッカーグリードはライダーの方へと向き直る。

 

「このまま貴方達と戦うのもいいんですが、さすがにこの人数差ではキツいところもあるので一旦引かせて貰います」

 

「行かせるかよ!!」

 

「フッ……」

 

パチン、と大ショッカーグリードが指を鳴らす。

それに合わせる様に翼が振るわれ、砂埃が上がる。

衝撃波で追おうとしていたライダー達を怯ませる。

更に炎弾を放ち、すぐには追えない状態にして飛び立つ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「くそっ!!」

 

上空へと上がっていく大ショッカーグリードを睨みながら言う。

そんな時にアクセル、バース、プロトバース、アクア、メテオ、なでしこ、ビーストの姿がノイズが走った様に歪み始める。

 

「どうやら俺達はここまでのようだな」

 

「あとは任せたぞ、火野!!」

 

「弦太朗、俺達の力だ。受け取れ!!」

 

「負けたら許さねぇぜ、晴人!!」

 

そんな事を口々に言いながら彼らは姿を消していった。

彼らは元々魔力などで作られた実体を持つ幻影の様な物なので時間が経てば消えるのだ。

消える直前にメテオとなでしこはメテオスイッチとなでしこスイッチを弦太朗に渡して行くのだった。

 

「キョウリュウレッド、お前は大丈夫なのか?」

 

「俺は大丈夫だぜ。皆の姿は消えちまったようだけど皆のブレイブは俺の中に残ってるぜ!!」

 

キョウリュウジャーの面々もダイゴを残して消えていた。

此方は召喚の方法が違うのでまだ大丈夫のようだ。

ビクトリー獣電池、マキシマム獣電池に残りの九人の力も残っているようでそれを使えばまた現れも出来るらしい。

そんなこんなでクライス要塞へと何とか向かおうとした一同だが、クライス要塞が此方に船首を向けているのに気付く。

アクセル達の離脱などに気を取られて気付くのが遅れたのだ。

 

「お前ら!!危ねぇぞ!!」

 

モモタロスの叫びが届くよりも速くクライス要塞の全砲門が開く。

 

「やれ」

 

『アハッ♪』

 

大ショッカーグリードの合図と共に一斉放射が始まる。

士、W、映司、アンク、弦太朗、晴人、ダイゴのいるところをクライス要塞から放たれる光線が貫いて行く。

デンライナーも数発かすらせて黒煙を上げる。

数分間放ち続けようやく放射が止まる。

 

「おい、ディケイド!!W!!オーズ!!フォーゼ!!ウィザード!!トサカ野郎!!チクショォォォォォ!!」

 

モモタロスの叫びに答える者はいない。

残っているのは煙を上げる大地だけだった。

 

「このままでは危険です。一旦引きますよ」

 

オーナーが指示を出し、デンライナー達は異空間へと消えていく。

これ以上危険な状態になるとデンライナー自体が爆発しかねないのだろう。

 

「さあ、私達も帰るとしましょう。我らが本拠へ」

 

大ショッカーグリードとクライス要塞も銀色のオーロラを通って消えていくのだった。

残戦闘によって削れた大地しかそこには無かった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

某所。

 

「ようやく倒れたか、ディケイドめ!!だが、念には念だ。まだ様子を見るとしよう。奴らは油断ならないからな」

 

中年の男はあくまで疑った様子で呟く。

銀色のオーロラを作り出し、また現れた時の為の準備を進めるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

____樹海での戦闘、そしてライダー達の戦いから数時間。

黒ウサギと十六夜は再会していた。

黒ウサギはウサ耳と十六夜の生存を泣いて喜ぶのだった。

十六夜は攻略会議の為にクロアに連れていかれるのだった。

そして、別邸から離れた事を確認すると十六夜はクロアを睨む。

 

「映司達を回収出来なかったってどういう事だ?」

 

「どういう事も何もそのままさ。戦闘した跡は残っていたが彼らの姿は無かった」

 

クロアはアカレッドと孝明に黒ウサギとラッテンを回収に向かわせ、自身は十六夜救助に向かっていた映司、アンク、士、晴人の回収へと向かった。

断片的な情報から彼らがアジ=ダカーハやウロボロスとはまた違う集団と戦闘しているのは分かっていた。

しかし、着いて見れば彼らの姿は何処にも無かったのだ。

戦闘跡を見間違える筈は無かった。

彼らの戦闘跡は些か目立つ形ではあったのだから。

彼らと戦っていたと思われる集団の残骸くらいしか発見出来る物は無かった。

 

「まさかと思うがあいつら……」

 

「映司達なら大丈夫だぜ」

 

「「っ!?」」

 

いきなり会話に割り込んできた声に十六夜とクロアは思わず振り返る。

そこには十六夜にとっては見覚えのある人物がいた。

 

「お前は確か、アスカ・シンだったか?」

 

「そうだ。久しぶりだな」

 

「それより何故大丈夫だと断言出来る?」

 

「あいつらはあれくらいじゃ死なないと知ってるからさ。ちょっと戻るのに手間取っているみたいだけど死んじゃいない」

 

確信を持って言うアスカ。

だが、根本的に何故そんな事を知っているかまでは答え無かった。

 

「そもそもお前はどうやって此処に現れた?」

 

「飛んできただけさ。それじゃあ、俺はそれだけ伝えに来ただけだから」

 

それ以上追求する前にアスカは姿を消すのだった。

箱庭なら別に飛ぶくらいは不思議ではない。

しかし、目的は分からないままだった。

その後、十六夜とクロアはジンの話や軽口を叩きながら城へと戻っていった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方、霧崎はと言うと別の会議室に呼ばれて待っていた。

しかし、招かれた場所は舞台会場のようだった。

一応の休息を取った霧崎は頭の包帯を巻き直した以外は何時も通りの格好であった。

そこへラッテンが現れる。

 

 

「きっりさき~♪無事だったようね!!心配させて~!!」

 

 

いきなり飛び掛かられてバランスを崩す霧崎。

ラッテンとしては心配でしかたなく、再会出来てかなりテンションが上がってるのだ。

だが、むしろ霧崎が驚いたのはラッテンの姿にだった。

 

「ラッテン……それ…………」

 

「あぁ……これ?」

 

霧崎の視線に気付き左腕があった場所に手を当てる。

とは言っても表情は暗くなっていない。

 

「こんなくらいは大丈夫よ!!」

 

「いや、大丈夫じゃないだろ!?片腕だぞ!?」

 

「義手でどうにかなる程度よ!!」

 

もうほとんどノリで押し切っている。

此処で暗くなれば霧崎は後悔を続けると、ラッテンは分かっているのであえて明るく振る舞う。

元々そこまで気にしてないのもあるが。

 

「それよりも……」

 

「何だよ………」

 

「私に心配させたからには覚悟は出来てるんでしょうね?」

 

「は?」

 

予想外の言葉に呆然とする霧崎。

元々テンションが高くなってるのと心配し過ぎた反動その他諸々が重なり変な方向へと思考が進み始めていた。

 

「責任取りなさいよ………」

 

「いや、ちょ………ラッテンさん!?」

 

顔を変な風に紅くしながら霧崎へと顔を近付けていくラッテン。

霧崎も顔を真っ赤にして、口では色々いってはいるが逃げる気には不思議にならなかった。

互いに顔を赤くし、唇が触れそうになり、

 

 

「こんなところで何をしてるんだ、お前達は…………」

 

 

レティシアの呆れた様な声を聞いて慌てて離れるのだった。

冷静になって周囲を見てみると気不味そうな雰囲気と「こんな時に何をやってるんだ」的な空気が広がっていた。

霧崎は多少顔を赤くしたまま、頬をポリポリとかくのだった。

一方、ラッテンは不満そうにレティシアを睨む。

 

「あと少しだったのに邪魔しないでよ!!」

 

「やかましいわ!!そもそもお前は絶対安静だ!!」

 

「霧崎が会議参加するのに私が引くとでも!?」

 

「一旦寝て落ち着け!!白雪!!」

 

「了解した!!」

 

ドタバタ暴れるラッテンを白雪が抱え込んで病室へと連れて行くのだった。

普段ならこうは簡単に行かない筈だが、やはりラッテンも怪我の影響で体力が落ちているらしい。

その後、霧崎はレティシアにアジ=ダカーハについて色々と聞くのだった。

そして、ラプ子が舞台の中心に降り立ちとある報告をしていく。

一つ、二〇〇年前のアジ=ダカーハとの戦いに参加した者は八割が命を落とし、“サラマンドラ”の五桁転落に繋がったという事。

二つ、アジ=ダカーハを倒す為には大量の戦力が必要になり、分身体を相手に壁となって戦うのが役割であり、それが出来ねば勝利は不可能である。

淡々と事実だけを並べていくラプ子。

霧崎として分身体と戦い、ある程度は覚悟していたが、予想以上であった。

こんな時に映司達の様な考えが出来ればいいのにと考えながらも話を清聴する。

会場内の全員がその事実を噛み締めたのを確認したのを確認したラプ子は、最後をこう締めた。

 

「三つ。全てが上手くいったとしても………この場に居る者は、九分九厘命を落とします。そういう者だけを私の独断で選びました。必要な犠牲だけを選びました。それでも箱庭の為に戦えるという方は____この場に残って下さい」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「死なせないさ……きっとな」

 

離れていた所で聞いていたアスカが呟く。

あの中で直接は言いはしない。

選ぶのは本人達であるのだから。

 

「もしかしたらお前達が来るような事件が起こるかもしれないぜ…………ゼロ」

 

空を見上げながら言うのだった。

そして、彼は彼の目的を果たす為に歩き出す。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

アポロガイスト達は倒れた。

“ノーネーム”と“ウロボロス”、そして三頭龍との戦いは、様々な思いを抱えて最終局面を迎えようとしていた。

 

 

 






士、翔太郎(&フィリップ)、映司、アンク、弦太朗、晴人、ダイゴは行方不明です!!
翔太郎(&フィリップ)と弦太朗は帰りは自由です。
ダイゴは特別製の幻影的な感じです。

アスカは士と似た感じの旅人ではありますが、箱庭では一応の目的を持っています。
最後の台詞はお前“達”なのが重要。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待っています。


エミョファジャシャバロションエミュディンエファデョムディムガジエロフォエ


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前日談[5.5]
悪の連盟[前編]


そろそろ新刊出るので前日談です。
五巻から六巻までの間の事です。


某所。

箱庭であって、箱庭では無い所。

そこに建造されし、基地の通路を息を荒げ走る者がいた。

 

「ハァ………ハァ………………」

 

黒いスーツにスカーフを身に纏うその者は人間では無い。

その頭部は黒く無数の眼があった。

その者の名は、百目タイタン。

ブラックサタンの幹部“だった”。

タイタンが走る背後から白いスーツの男が迫ってくる。

 

「マグナムショット!!」

 

「ぐぁ!?」

 

左肩を撃ち抜かれた。

傷口からマグマが溢れ出す。

追ってきている男はアポロガイストだった。

体勢を崩しかけるが、何とか建て直して走り続ける。

タイタンは眼球を幾つか外すと火の玉に変える。

そのままアポロガイストに放とうとするが、何かを察知して前方へと放つ。

 

「トランプショット」

 

前方から放たれたトランプと火の玉が衝突し、爆発を起こす。

タイタンは立ち止まって前後を見る。

両方から白い影が歩いてきていた。

一本道を走ってた故に追い詰められた。

前方から来ていたのはジェネラルシャドウだった。

 

「くっ………おのれ………………」

 

苦々しく呟くタイタンだが、二人はそもそもタイタンなど気にしていなかった。

ジェネラルシャドウはトランプを、アポロガイストは銃を構えて向き合う。

 

「遅いぞ。まだ捕まえられて無かったのか、アポロガイスト」

 

「ええぃ、うるさい!!元はと言えば貴様が原因だろう」

 

「ふん、どうかな」

 

言い合いをしながらも隙を見せない。

だが、一か八か抵抗すれば逃げられる可能性はある。

しかし、それは出来ないのだ。

 

「それにしても貴様も馬鹿だな。無駄な野心を出さなければ一時的に支配者気分を楽しめたというのに」

 

「身の程知らずは自ら身を滅ぼす物なのだ」

 

呆れた様に言う。

現在、タイタンは反逆者として追われていたのだ。

タイタンとしては反逆など一切していないのだが、“そういうこと”にされてしまった。

 

「大方、私を貶める為に弱味を探ってたのだろうが、それが失敗だったな」

 

「“あれ”を知られたからには消えて貰うしか無いのだ!!」

 

「…………貴様らこそ何を企んでいる!!我らを騙し、大首領と共に何をするつもりだ!?」

 

ようやく口を開いたタイタン。

具体的な計画は分からない。

しかし、“何か”をしようとしているのは確実だった。

だからこそ、彼らは“それ”を知ったタイタンを生かしてはおけない。

 

「そもそも、何故貴様がブラックサタン、デルザー軍団を仕切っている!?マシーン大元帥すら指しおいて!!」

 

「簡単な事だよ…………それは私がマシーン大元帥すらも越える力を手に入れたからだよ」

 

そう言って、ジェネラルシャドウは奇妙なトランプをタイタンに見せた。

それが何かはタイタンは分からなかった。

けれども、ジェネラルシャドウが得体の知れない力を手に入れた事を確信させるには充分だった。

 

「それでは……そろそろ死んで貰うのだ!!」

 

「おのれぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

タイタンが火の玉を作り、更に激しい攻撃を仕掛けようとする。

今までは大きな騒ぎを起こせば、反逆者として集団に殺られるリスクがあったが、この状況ではそうも言っていられない。

しかし、ジェネラルシャドウとアポロガイストはそれよりも早く動く。

 

「アポロフルーレ!!」

 

「シャドウ剣!!」

 

「ごがぁ!?」

 

目にも止まらぬ速さで斬撃を繰り出した。

タイタンの両腕が斬り飛ばされ、体の前後が大きく一閃斬り裂かれていた。

アポロガイストにいたっては人間態でそれを実行していた。

 

「ヒュー・・・ヒュー・・・」

 

「グールよ、これを運べ」

 

ほとんど瀕死で虫の息とはいえ、タイタンは生きていた。

これはタイタンがしぶといわけではなく、わざとであった。

生きたタイタンを大首領に届けるのが二人の役目であった。

アポロガイストはグールを召喚するとタイタンを大首領の許へと運ばせるのだった。

 

「この程度の役目、ガニコウモル辺りにでも任せれば良かったかもしれんな」

 

「ふん、仕方があるまい。奴は奴で仕事があるのだから」

 

「この後は会議だったか?」

 

「そうだな。議題は“例の件”についてだったな。ようやく我らが本格的に動く時が来たようだ」

 

話しながらジェネラルシャドウとアポロガイストは基地の奥へと進んでいくのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

基地内部、某所。

タイタンは真っ暗な部屋で目を覚ました。

 

「ここは………」

 

体は動かなかった。

ダメージが重く、能力すら使えなかった。

周囲を見渡すと奥に一つの眼光を見付けた。

 

『………貴様も我が“血肉”にしてやろう』

 

「な…………ギャアァァァァァァァァァァァァァァァ・・・・・・

 

タイタンの悲鳴が轟き、血が飛び散る。

タイタンが最期に見た物を知るのは当事者だけであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

基地内部、会議場。

そこには巨大なU型の机が置かれていた。

そこに集まる者達がいた。

この会議場を使う者は決まっていた。

この会議場には幹部待遇を受ける者達しか入れないのだ。

何時もは集まりの悪い者達なのだが、今はほとんどの者が集まっていた。

それほど今回の議題は、重要なのだ。

 

「どうした?ティラノレンジャーに付けられた傷が痛むか、ガライ?」

 

「黙れアポロガイスト、貴様ごときが気安く名を呼ぶな」

 

ガライが向側の斜め左に座るアポロガイストを睨む。

 

「相変わらず、いけ好かない顔をしているな、ドレイク」

 

「ふん、貴様こそなオーガ」

 

ファントムである二人も睨み合う。

魔法使いの力を使うドレイクと喰らったファントムの力を使うオーガ。

どうもどうやら気が合わないようだ。

 

「ここまで集まるのも珍しい物だ」

 

「集めたからにはそれ相応の話があるのだろう?」

 

「慌てるでない。まだ揃っていないのだ」

 

「参加を表明する者が全員来るまで今回の話は始められない」

 

ジャーク将軍に対し、ブラック将軍と地獄大使が言う。

そんな時に背後のドアが開かれ、二人の男が入ってくる。

 

「すまない、遅れたね」

 

「少々研究が長引いてしまいました」

 

嫌な笑みを浮かべるレム・カンナギと淡々と話す真木清人だった。

この二人で全員だった。

二人が最後だった。

 

「これで全員揃ったな。では、会議を始めるとしよう」

 

「待て、今回は大首領殿はいないのか?」

 

錬金術師のガラが訊ねる。

その問いには意外な所から答えが返ってきた。

 

『もちろん私もいますよ。今日はせっかく皆さんに集まって貰ったのに私が不在では示しがつかないでしょう』

 

U型の机の欠けた部分の先がライトに照らされる。

そこには階段があり、その上はカーテンに仕切られ見えなかった。

だが、強い光を当てられる事により椅子に座った人影は見えた。

 

『姿をお見せする事は出来ませんが、私が此処にいる事の証明にはなりましょう』

 

大首領が隠れるカーテンの前の階段の脇を側近の死神博士、地獄大使が固める。

その前に直属幹部である、ブラック将軍、ドクトルG、ヨロイ元帥が立つ。

 

『今回の議題は一つです。だが、重大で重要な物です。それは、今まで仮の形であった大ショッカーを正式に大ショッカー連盟にしよう、という話です』

 

集まった者達がざわめき始める。

これまでの大ショッカーは、数々の悪の組織が大ショッカーと名乗る事により、大組織と思わせ、敵に対する威嚇の意味合いが強かった。

その中心となっていたのがショッカーであり、それ故にショッカー大首領が議長を務めていた。

互いの活動を報告したり、利害の一致で協力する事はあっても組織同士が完全に協力体制になる事は無かった。

だから、何時か崩れる仮の形と言われていた。

それを正式に大ショッカー連盟にすると言う事は各組織が完全に手を取り合い協力するという事だ。

ざわめくのも無理も無い。

それをするメリットを示されなければ賛成もしにくいのだ。

 

「連盟の具体的な目的は何なのですか?」

 

真木清人が大首領に訊ねる。

その迷いの無さに集まった者達から視線が集まる。

 

『我らが掲げる理念は一つです。“まずはこの箱庭を支配し、箱庭を起点として侵攻し、他の全ての世界を支配する。そして、優秀な人材を改造人間として我らの理想郷を作る”事です。その為には我らが協力せねばなりません』

 

今度はカンナギが訊ねる。

 

「それに協力して、私達にメリットはあるのかね?」

 

『計画達成の暁には、皆さんに支配した世界を好きなだけ与えましょう。そして、その世界を皆さんの好きに出来ます。それに、連盟しても基本的に皆さんの行動を縛るような事はありません』

 

大首領のその言葉に迷う一同。

此処にいる者達がいれば確かに可能だろう。

だが、個々に目的がある。

だからこそ、簡単に賛同するわけにはいかない。

賛同する事で目的から離れるかもしれないのだから。

 

『まぁ、時間はたっぷりあります。ゆっくり話していくとしましょう』

 

場合によっては即座に戦争クラスの争いが起きてもおかしくない。

そんな緊張感の下、会議は始まるのだった。





会議の始まりでした!!
大体レッツゴーの円卓会議を思い浮かべて比べればいいです。
メンバーはだいぶ違いますが。
それは次回分かります。

冒頭のタイタンが何に気付き、何に喰われたかは後々。
割りと組織構造自体に色々あったりします。


それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。


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悪の連盟[後編]

『まずは皆さんの意見を聞くとしまょう』

 

大首領の言葉に面々は考え込む様にする。

しばらくして、[ブラックサタン&デルザー軍団代表]ジェネラルシャドウが意見を言う。

 

「我々は賛成しよう」

 

「ガランダー帝国も賛成しよう」

 

ジェネラルシャドウに合わせる形で[ガランダー帝国代表]十面鬼ユム・キミルが言う。

ゲドンは元々ガランダー帝国の一部であり、十面鬼ユム・キミルが下剋上して現在の形になっている。

 

「GOD機関も賛成だ」

 

更に[GOD機関代表]アポロガイストが言う。

 

「ふん、茶番だな」

 

[クライシス帝国代表]ジャーク将軍が、呆れた様に言う。

彼が動く度に機械音が響く。

その隣に座る「暗黒結社ゴルゴム代表」剣聖ビルゲニアが頷く。

現在、ゴルゴムとクライシス帝国は同盟を結んでいた。

そして、共通の“皇帝”の指示に従っている。

地位としては“皇帝”がトップであり、それに仕える三神官がナンバー2だがこういう場に“代表”として出るのはジャーク将軍とビルゲニアだった。

 

「既に調べはついているのだよ。ショッカーとGOD、ガランダー帝国、デルザー軍団が手を組んでいる事はな」

 

「大方、先に賛成を示す事で我々が賛成に傾く様に誘導したかったのだろうがそうはいかんぞ」

 

「更にネオショッカー、ドグマ王国、ジンドクマ……そしてバダン帝国!!貴様らも協力関係なのだろう」

 

ジャーク将軍とビルゲニアが口々に言う。

 

「何を根拠に?」

 

[バダン帝国代表代理]暗闇大使が訊ねる。

続ける様に[ネオショッカー代表代理]魔神提督、[ドグマ王国代表]帝王テラーマクロ、[ジンドグマ代表]悪魔元帥が言っていく。

 

「もしや根拠も無しに言ってるわけではあるまい」

 

「あらぬ疑いを掛けられるのは困るのだよ」

 

「我らを貶めようと言うならば、“戦争”でも構わんぞ?」

 

各々怪人体を見え隠れさせながら睨み返す。

それに対してやれやれと言った感じに対応する。

 

「貴様らが“大ショッカー大幹部”であるアポロガイスト、ジェネラルシャドウを通じてショッカー大首領と通じているのは監視員から報告を受けている。なんなら証拠をキチンと用意してもいいのだぞ」

 

「“別世界”の様に全て“JUDO”の配下という形では無いようだがな」

 

ビルゲニアの言葉に首を傾げる一同だが、それとは別にジャーク将軍の言葉に苦々しく顔を歪める者もいる。

“大ショッカー幹部”それはつまり、既にショッカーと組してかなりの地位にいるという事だ。

それらと接触しているのがバレれば反論の余地は無い。

硬直する状況に大首領が動く。

 

『一旦落ち着くとしましょう。この“連盟”が成立すれば結局同じなのですから、まずは意見を示していただこう』

 

「ならば、我々暗黒結社ゴルゴムとクライシス帝国は反対だ」

 

「今までの状態ならともかく我らの目的は全人類の抹殺だ。ショッカーの目的とは相容れない」

 

「そういう事なら俺達も先に言っておこう。俺達アクマイザーも反対だ!!俺達の復讐は全てを地獄に変えるまで終わらねぇ!!」

 

ビルゲニア、ジャーク将軍の反対意見に合わせて[アクマイザー]のザタンが言う。

その後ろのイールとガーラも頷く。

 

「私も反対です。今までは復活させていただいた義理で研究に手を貸していましたが、貴方がたの目的は私とは合致しないようだ。世界は支配するのではなく、終わらせるべきなのです」

 

研究者である真木清人が言う。

世界は醜くなる前に美しい内に終わらせるべき、が彼の思想である。

 

『ならば、こういうのはどうでしょうか?まず、ゴルゴムとクライシス帝国ですが、貴方がたより直接“皇帝”に聞いた方が早そうだ』

 

「なんだと?皇帝陛下は此処には………」

 

ジャーク将軍が言い掛けたその時、特徴的な足音が聞こえてきた。

そして、影から真紅の影が現れる。

腰には二つの“キングストーン”が填められている。

 

「そ、創世王様!?何故此処に!?」

 

驚いた様な声が上がる。

現れたのはクライシス皇帝にして創世王、アナザーシャドームーンだった。

創世王の力、そしてクライシス皇帝の力を合わせ持つまさに創世の王と言える存在だった。

 

『我らの今後に関わる大事な場なのでな』

 

『それで今回の話はどうですかな?』

 

『ゴルゴム及びクライシス帝国皇帝として賛成しよう』

 

「な!?」

 

「皇帝陛下!?」

 

『余の決定に何か文句があるか?』

 

立ち上がり、声を荒げるビルゲニアとジャーク将軍をアナザーシャドームーンは威圧し、黙らせる。

そうして二人を無理矢理納得させるとまた姿を消すのだった。

 

『次にアクマイザーとドクター真木ですが、貴方がたが望まれる物は“支配”の過程で叶えられると思いますよ』

 

「そうですか………意味はよく分かりませんがそういう事なら賛成してみましょう」

 

「ふん、その言葉に偽りだとしても俺達は勝手に地獄を作り出すだけだ。一時的に賛成してやる」

 

真木とアクマイザーは渋々と言った感じに賛成した。

その後、ネオショッカー、ドグマ王国、ジンドグマ、バダン帝国も賛成するのだった。

 

『それでは、他の皆さんはどうですかな?』

 

「我々は“大孵化”の餌場が幾らでも確保出来るというのなら賛成だ」

 

[フォッグ代表代理]ガライが賛成を示す。

その後も、

 

「どうやら“復讐”は“支配”で済まされそうで俺が“神”として支配する世界まで提供してくれるというんだ、賛成しよう」

 

間口正一が、

 

「“ZECT”無き今、俺に目的なんてほとんど無いんだが、好きにしていい世界をくれるというなら喜んで協力しよう」

 

[ネイティブ]三島正人が、

 

「私が王となり君臨する世界が手に入るのだ、賛成しよう」

 

[錬金術師]ガラが、

 

「私も幾つかの世界を好きに出来るというのなら文句は無い、賛成しようではないか」

 

レム・カンナギが、

 

「私も元々世界を支配するつもりだったんでね、賛成しよう」

 

[金色の魔法使い]オーマが、

 

「俺は力が手に入るならなんだっていい」

 

オーガが、

 

「どうやら協力した方が完全な体になるのも、新たな世界を創造するにも近道なようだ、賛成だ」

 

[黄金の果実]コウガネが、

 

「“復讐”を果たせるだけでなく世界も手に入る、賛成するしかないだろう」

 

アマダムが賛成していき、この場の全員が賛成した事になる。

大首領はカーテンの向こうで大きく手を広げ、宣誓する。

 

 

『では、ここに大ショッカー連盟が結成された!!我らの力も持って全てを支配するのだ!!』

 

 

高らかに宣言する大首領に合わせる様に各々武器を掲げる。

それが連盟の印となる。

この日、各々の組織の旗印が描かれし、悪の連盟旗が基地に掲げられる事となるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

『ふふふふ………これで計画が加速する!!“我”の悲願が叶うのだ!!』

 

大首領はただ叫んだ。

誰にも聞かれる事なく叫んだ。

その背後の壁には何かを埋め込むような凹みのある石碑が埋め込まれていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「そういえば、アポロガイスト。貴様が担当していた例の“将軍”はどうなった?」

 

「部下を向かわせておいた。じきに報告が来るだろう。貴様の回収状態の方はどうだ?」

 

「ぼちぼちだな。二つほど時間が掛かりそうな物があるが問題は無かろう」

 

アポロガイストとジェネラルシャドウは歩きながら互いの状況を確認していた。

彼らは“大幹部”ゆえに互いの動きを把握しておいた方が都合がいい。

“大ショッカー大幹部”は連盟が決まる遥かに前から既に決まっていた。

大首領が自ら選んだ精鋭達である。

ゆえに、“あの中”にも気付かれず“大幹部”が混ざっている。

アポロガイストとジェネラルシャドウはわざと“大幹部”とバレる様に動いていた。

それは元々二人の組織はショッカーと繋がりがあるとバレやすい位置にあるからだ。

彼らに集中を集める事で他の“大幹部”が暗躍しやすい様にしているのだ。

彼らが話していると、背後から足音が聞こえてくる。

 

「やっと来たようだな」

 

「今日は元々貴様が来ていれば、面倒な問答をせずともよかったのでは無いか?」

 

「……………」

 

奇妙な足音を響かせながら、その“大幹部”は彼らの問いに無言で答えるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

『……………』

 

何処か別の世界。

封じられし、“彼”は自分に似た“何か”が動くの感じとっていた。

そして、感じた故に笑みを浮かべるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ここに悪の連盟が結成された。

しかし、彼らは互いを即座に信用出来るような人格はしていない。

故に互いを牽制し合う。

だが、だからこそ彼らは気付かない。

もっと大きな“思惑”に。





連盟結成でした!!
とはいえ、これで全員と言うわけではありませんが。
死んだ奴らがいるのは再生怪人や生き残ってる世界線から来たと思ってください。

大ショッカー連盟は基本的にショッカーが中心という事になっています。
あくまで表向きのみで実質は違いまずが。
そういうわけで、ショッカーを中心として他の幹部待遇には
・各組織代表
・代表代理
・幹部待遇単独所属
・幹部待遇外部協力員
などが大まかに分けてあります。
“大幹部”を兼任してる奴に多少意味がありますがそこらへんは後々。
最後の幹部待遇外部協力員というのは今回出ていません。
三番目のは組織としてではなく単独で参加してる奴らの事です。
大体平成ライダー組がそんな感じです。


それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます!!

本編は新刊出たら早い内に始めたいです。


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勇気と“絶対悪”の最期と完全なる敗北
幻想の男と残骸の山と集まる破片


今回から十一巻です。


戦場跡。

そこで動めく物があった。

それは周囲に散らばったセルメダルとスフィアの破片だった。

セルメダルとスフィアの破片は一ヶ所に集まる様に動いていく。

そして、一つの大きな塊へと変貌していく。

塊から右腕が生えると、そこから中心に人型が形作られていく。

完全に人型となると、肌色が銀から普通の色へと変わり、白いスーツを着た男の外見へとなるのだった。

 

「ハァ…ハァ…おのれ……ディケイドめ!!」

 

激しく息を吐きながら状況を確認していく。

状況を把握すると、男は、アポロガイストは恨み事を吐く。

アポロガイストはあの時、トドメを刺され、確かに死んだ。

だが、それは肉体としてはだった。

大ショッカーのありとあらゆる蘇生技術を使い復活したアポロガイストの魂はあれくらいでは滅びなかったのだ。

キングダークがやられる直前に、キングダークを形成していたスフィアにバックアップを取っておいたのだった。

そして、現在ようやく新たなる体を形成したのだった。

魔法は使えるままのようではあるが、怪人態にはなれなかった。

おそらく力を消費し過ぎたのだろう。

この状態ではオーロラを出す事も出来ないだろう。

大ショッカーグリードとクライス要塞が先に撤退してしまったのでこれでは帰還する方法が無かった。

境界門を奪おうにも、マクスウェルが壊してるのでそれも無理だ。

帰還する為の方法を模索していると突如話し声が聞こえてくる。

 

「へぇ、あの状態から復活したか。凄い執念だな」

 

「誰だ、貴様は」

 

「今は何者でも無いかな。あえて言うなら、“遊興屋”だ」

 

現れたのは金髪のメイドを連れた男だった。

男は存在が限りなく希薄だった。

アポロガイストは、正体を探るだけ無駄と判断し、アポロフルーレを振るい、男の首を斬り落とした。

だが、ノイズの様に揺れるだけで首は斬り落とされて無かった。

 

「無駄だぜ。さっき、閣下にも似た様な事を言ったがそんな物じゃ今の俺は殺せない。俺を殺したいなら、せめてあんたが同盟してる創世王を連れて来るんだな」

 

「貴様………何処まで把握している?それに閣下とはアジ=ダカーハの事か?」

 

「何処まで把握してるかは答える気にならねぇが、閣下はその通りだ。あんたが従ってのは“JUDO”の野郎か、“あの蛇”かは知らねぇが一つ言わせて貰うなら、あんな奴らより閣下の方がよほど“悪”だぜ」

 

「……………」

 

アポロガイストは、無言で男の脳天を撃つが男は笑ったままだった。

やはり、効いていない。

背後のメイドが特に動かない辺り、幾らやろうと無駄だと確信しているのだろう。

 

「だから、無駄だって。少なくともあんたにゃ絶対殺られねぇよ」

 

「…………戯言を言いにきただけでは無いのだろう。用件は何なのだ!!」

 

「せっかちだねぇ~まぁ単刀直入に言うならちょっと俺と手を組まねぇか?答えはすぐじゃなくてもいい。どうせなら閣下のラストゲームを見物してからの方が俺は聞きたいが」

 

「そんなもの………答えは決まってると思うが?」

 

「いいや、閣下のラストゲームを見たら気も変わるぜ。必ずな」

 

「…………ふん、面白い。ならば、付き合ってやろうでは無いか。貴様がそこまで言う、アジ=ダカーハの見物をな」

 

どの道、帰還するには力の回復が必要だ。

それまでは戯言に付き合ってやろう、そう思いながらアポロガイストは男と共に姿を消すのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「おい、映司!!起きろ!!」

 

アンクの怒鳴り声で映司は目を覚ました。

 

「ア、アンク?あれ?そういえば、俺って………あれ?」

 

「チッ、やっと起きたか」

 

アンクは呆れた様な顔をすると映司から離れていった。

映司が周囲を見回すとそこは暗闇だった。

比喩では無い。

周囲が把握出来るのが不思議なくらいに真っ黒だった。

まるで世界の全てが黒く塗り潰されたかのようだった。

そこで士近くにいるのに気付く。

 

「士さん!!」

 

「あぁ、目覚めたか」

 

「状況を聞いていいですか?クライス要塞から砲撃を受けたまでは、覚えているんですけど」

 

「そこまで記憶が正確なら問題無いな。そこで途切れてるのが普通だからな」

 

「どういう事ですか?」

 

「どうも俺達は砲撃を何とか凌いだが、時空の檻に閉じ込められたらしい。この空間そのものがあそこから少し“ズレ”た位相で、戻る為にはこの不完全な空間を崩さないといけない」

 

「その為にはどうしたらいいんですか?」

 

「空間の綻びを見付け、そこを中心的に攻撃するくらいしか無いな。今、綻びを見付ける為に手分けして探してる」

 

「そうですか………」

 

どうりで他の人が見当たらないわけだ、と納得する。

翔太郎、フィリップ、弦太朗、晴人、ダイゴは各々別の場所を探っているらしい。

とはいえ、この空間には何も無いのだが。

それから映司とアンクも捜索に加わるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

空中城塞の作戦会議室では、

クロア=バロン

東の階層支配者、“覆海大聖”蛟劉

南の階層支配者、サラ=ドルトレイク

北の階層支配者、コマンダーラプ子lll

“混天大聖”鵬魔王

女王騎士フェイスレス

そして、薬湯をすする逆廻十六夜が円卓を囲んで会議をしていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「さて、“彼”との決着は付けるとして僕はどう動くかな」

 

各勢力の動きを逐一確認しながら海東大樹は呟くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

近隣の樹海。

そこでは天使との戦いが続いていた。

というより、殆ど一方的な戦いと化していた。

魔王マクスウェルは天使達を召喚した後、蒼白に輝く球体に身を包んで閉じ籠り、一向に動く気配が無い。

天使は時間を置く事に数を増している。

が、それは天道が様子を見る為に倒すペースを落としているからだった。

 

ザビーパワー!!

 

パーフェクトゼクターにザビーゼクターが取り付く。

そして、ハイパースティングが放たれて何体もの天使が貫かれる。

再生する前に機能を停止させられたのが、体を崩壊させて地に落ちる。

既に彼の回りには、天使の残骸が山を作っていた。

いつの間にか殿下達が姿を消しているが、おそらく近くにはいるだろう。

おそらく正体の考察でもしているのだろう。

そんな事は気にせず、天道は延々と天使を倒していた。

大体コツを掴んだので、倒すのに苦は無かった。

本体に手を出さないのは下手に手を出しては更に面倒な事態が起こる可能性があるからだ。

 

「おそらく“第三永久機関”そのものでは無いが、要因の一つではあるのだろう。更に召喚式の“nano machine unit”……大体は見えてくるがそれまでだな」

 

正体に関してはある程度の推測は可能なのだ。

ついでに“ウロボロス”の背後の神群も見えない事も無いが、それは今はいい。

何はともあれ、“あれ”を倒すには方法を選ぶ必要がある。

様子身を続行しようとした時に、何か近付いてくる気配を天道は感じるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方、殿下達及びジン&ペストは、突如現れた幻想の男の指示に渋々従う事になっていた。

殿下は、三頭龍と戦う事になり、その他は幻想の男と共に待機という事になった。

マクスウェルは、どうもどうやら幻想の男はクロア=バロンと交渉したらしく、春日部孝明に任せるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

空中城塞の厨房では黒ウサギが空いていた調理場を借りて、簡単な食事を作っていた。

卵と野菜で簡単なスープを作る。

香辛料は大量に積まれていたので、味付けには困らなかった。

続いて山羊の乾燥肉と卵を炒めて二品目を作っていた。

 

「これ少し貰ってくわよ~」

 

「はい、作り過ぎたのでどうぞ~」

 

調理の途中で話しかけられ、軽く答える。

スープは量の感覚を間違え、少し多目に作ってしまっていたのだ。

そこである事に気付く。

今、話し掛けてきた声には聞き覚えがあった。

そして、誰か思い当たり、慌てて振り返る。

 

「ちょ、ラッテンさん!?貴女は安静にしとく様に言われてませんでしたか!?動いていいのですか!?」

 

が、振り向いた時にはラッテンの姿は何処にも無かった。

残っていたのは、否、何も残ってなどいなかった。

 

「少し所か、全部持っていかれたました!?」

 

空っぽの皿を見て、悲鳴を上げる黒ウサギだった。

そんな黒ウサギを他所にラッテンは、黒ウサギの作ったスープを飲み干して、皿を厨房に返してから霧崎の元へと向かうのだった。

 

「まだ感覚が慣れないわね~」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

永遠に続く日々が終わると考えた三頭龍は、一人の女の影を思い浮かべていた。

全ての始まりは、その女の涙だった。

幾星霜という年月が経とうと、三頭龍は決して忘れはしない。

 

宝石の様な瞳から止め処なく流れていた涙の理由を。

その涙を拭うためなら、永遠を賭しても構わないと思った熱い気持ちを。

戦って戦って、永遠に等しい時間を戦い続けた。

その戦いが…………ようやく終わりを告げようとしている。

 

 

『_____裁決の時だ。箱庭の英傑たちよ。今こそ真価を見せるがいい……………!!』




導入回前半でした!!

アポロガイスト復活!!
スフィアとセルメダルで体を形成してますが、スペック的には変化はありません。
遊興屋が目を付けたのは“執念”です。

大雑把に飛ばしてる部分は原作通りと思ってください。
天道はひたすら天使を倒してる感じです。
慣れたので流れ作業に近いです。

それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。



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口論と“ズレ”の謎と譲れない物

 

空中城塞・第三貴賓室。

レティシア、白雪姫は対アジ=ダカーハの戦闘における一通りの作戦を聞いた後、少々気不味くなっていた。

理由は簡単だ。

もう一人、作戦を聞いてた者、霧崎カブトが苛立つ様に座っていたからだ。

 

「……………何なんだよ、あの作戦は………正気かよ………なあ、レティシア。あいつって信用していいのか?」

 

「ああ。こと勝算を立てるというスキルに於いてラプ子は箱庭最高の頭脳だ」

 

「うむ。“ラプラスの悪魔”の立てた作戦ならば信じるしかあるまい」

 

レティシアの意見に白雪姫が厳しい顔で同意する。

だが、霧崎が苛立っているのはその部分では無い。

多少非人道的な作戦でも、霧崎は納得する覚悟はあった。

しかし、聞かされた作戦は納得し難い物だった。

 

「……勝率ね。まぁ確かにあの作戦なら勝率が上がるだろうよ。でもよ………あいつにどんだけ負担掛ける気だよ…………ラッテンは………………」

 

「あら、私がどうかした?」

 

「ッ!?」

 

いきなり乱入してきたラッテンに驚く。

そして、その姿を見て二度驚く。

失われたはずの左腕があった。

が、よく見れば義手なのが分かった。

パッと見で分からない程度には精巧な物だった。

 

「あ、これ?これは無理言ってさっさと付けて貰ったのよ。まだ馴れはしないけど、十分な程度には動くわよ?」

 

「お前、安静にしてなくて大丈夫なのか?」

 

「大丈夫に決まってるでしょ。この通り、ピンピンしてるし。それに“作戦”には私が必要なんでしょ?ラプ子から聞いたわよ?私の“演奏”で戦力の底上げ、そのくらいならお安い御用よ」

 

どうもどうやら、ラプ子から直接作戦の全てを既に聞いてたようだ。

だが、霧崎はラッテンが作戦に参加するのには納得してなかった。

たとえ義手があろうと万全でも無いのに参加させるのは納得出来ない。

 

「………ダメだ。お前は参加するな」

 

「何でよ。私が参加しなきゃマズイでしょ?」

 

「それでもダメだ!!」

 

互いに見つめ合う。

互いの考えてる事は分かる。

分かるからこそ、意見が対立する。

 

「じゃあ、どうやってあの化け物から霊格を吐き出させるつもり?私が強化させないと、ままならないはずよね?」

 

「…………俺が真っ正面から相手にする」

 

「は?」

 

「俺の“PSI”なら奴の攻撃も祓える。俺が攻撃を祓い続けてる内に攻撃を仕掛けてくれればいいだろ」

 

「あのねぇ………それじゃ消耗するだけでしょうが」

 

「それでもだ」

 

「…………分からない奴ね~私が強化した方が効率いいでしょうが!!」

 

「効率とかそういう問題じゃねぇよ!!」

 

「なら、あんたの作戦もそういうの関係無しに問題あるわよ!!」

 

口論はそのまま平行線を続いた。

結局、根本は二人とも一緒なのだ。

霧崎は、傷付いているラッテンにこれ以上負担を掛けるのが納得出来ない。

ラッテンは、倒れるまで“PSI”を酷使した霧崎にまた脳への過剰な負担を加えさせる事に納得が出来ない。

つまりは互いに互いの身を案じてるが故に口論は平行線なのだ。

作戦を実行した結果の被害などは二の次であった。

究極的に今の二人の眼中には互いしか映って無かった。

 

「お前たち……一旦落ちt

 

「「うっさい!!」」

 

レティシアが止めに入ろうとするが、二人は即座に声を合わせて言い放ち、レティシアを怯ませた。

 

「完全に我々など眼中に無いな」

 

「………のようだな」

 

レティシアと白雪姫は、軽く引いた様子で呟く。

もはや、割り込んで止められる様子では無かった。

止められそうな男に心当たりはあるが、この場にはいない。

 

「……少しいいか?」

 

そんなレティシアと白雪姫に扉の向こうからマンドラが話し掛けてきた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

少しして、ラッテンと霧崎の口論は一先ず止められた。

マンドラの作戦に対する話を聞く為にだった。

話は火龍達の鬼化、その代償、マンドラの覚悟…………そして、混世魔王の手からサンドラを救う為に必要な条件とそれを満たす為の策だった。

霧崎は苦々しい顔をして聞いているのだった。

 

「___というわけだ。だから、我々が戦う必要があるのだ。そして、その為には鬼化と…………“演奏”による強化が必要なのだ、サンドラを救う為にも」

 

かつての敵による強化すら必要とする部分は心の底では気に入らないのだろう。

その部分は言い淀んでいた。

だが、しかし、それ故に霧崎も“納得”するしか無かった。

 

「…………分かったよ。ラプ子の作戦通り動くよ、仕方ねぇ」

 

「やっと納得した。強情なのよ、霧崎は。何時もはヘタレが見え隠れするくせに」

 

「……最後のは余計だ。それにあんな“覚悟”を聞かされちゃ、文句を言うわけにはいかないだろ」

 

「まぁ、そうでしょうね」

 

「…………またお前に負担を掛ける事になるな」

 

「そんな事は全然いいのよ。それに、危なくなってくれたら守ってくれるでしょ、霧崎?」

 

「……聞かなくても分かるだろ。お前は俺が絶対に守る」

 

マンドラとレティシアは準備を進める。

そして、ラッテンは霧崎に背中から抱き付いていた。

霧崎は、顔を少し紅くしながら顔をそらすのだった。

互いに体温を感じて顔を紅めるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

クロアと十六夜が打ち合わせをしながら歩いていた。

 

「……やはり、“ズレ”の影響はそれなりにあるようだな」

 

「さっきから呟いているが、その“ズレ”ってのは何なんだ?単にお前らの思惑から外れた物ってわけじゃ無さそうだが」

 

「…………詳しくは倒してから、と言いたい所だが端的だけ言っておこう。思惑から外れた物ではあるが、そもそも想定すらしていなかった物だ。本来ならば“現れ”すらしなかった物だ」

 

「………“想定外”とは何か違うのか?」

 

「それで収まってくれれば、どれだけ良かったかと思えるくらいだ」

 

そんな事を話していると隣の廊下から聞き覚えのある二つの声、ジャックとリリの声が聞こえてくるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ジャック達と話を終え、クロアは十六夜達と一旦分かれた。

そこへ、赤い人影が現れる。

 

「アカレッドか。何かあったか?」

 

「お前が俺を呼び戻したんだろ。用件があるんじゃなかったのか?」

 

「用件という程では無いな。アジ=ダカーハに血を流させる要員で一撃離脱出来る面子足りないから任せようと思っただけだ」

 

「そういう事か」

 

「…………それと幾つか聞いておきたくてな」

 

「なんだ?」

 

この状況で聞かれる事に想像が付かずに首を傾げるアカレッド。

 

「……“ズレ”の原因に何か心当たりがあるか?」

 

「それを俺に聞くか……」

 

「私の方でも幾つか考えはしているんだがな。初めは、お前や“ネメシスQ”が原因かと考えていたが今の状況から考えると、確かに原因の一部ではあるんだろうがもっと大きな“何か”があると思えてくる」

 

「………まぁ俺も本来ならば此処にいないとは思うが、それだけで影響が大きく出るとは思えないしな」

 

「“彼ら”は“ズレ”の一部であり、原因では無いのは確信している。他に思い当たるのは“あの男”が言っていた“世界の破壊者”もあるのだが」

 

「確信が持てるわけでは無いか」

 

確かに“世界の破壊者”は怪しくはあるが、十六夜や黒ウサギなど、彼に関わった者達から話を聞く限り噂される様な者では無いとも思える。

それに単体で“ズレ”を広げれるか、というのも疑問である。

 

「だが、たとえ“ズレ”が発生していても問題は無いんだろ?」

 

「あぁ、“彼ら”でも充分果たせる。問題なのは“あの組織”だ。“ウロボロス”を相手にするのは“本来”の通りだ。だが、“あの組織”は“ズレ”そのものだ。どう影響してくるか分かった物じゃ無い」

 

「確かに奴らは俺が戦ってきた敵と似た雰囲気を感じる」

 

「………これ以上、状況を面倒な方向に荒さないでくれるといいが」

 

おそらく叶わないと思いつつ、クロアは呟くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「そう、“ズレ”だ。これは正に“ズレ”と言うのがぴったりだ。今はまだそこまででは無い。だが、いずれ見過ごせなくなるまで歪みは大きくなる。その時が俺は楽しみだ」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

原因は分からない。

だが、確かに“ズレ”は存在する。

その“ズレ”の中心に存在する“アレ”は世界の歪みを加速させていく。





半分くらい霧崎とラッテンの口論でした!!
次回は戦闘開始まで行くと思います。

“ズレ”に関しては話の根幹というわけでは無いですが、それなりに重要です。
“本来”がどういう意味かは大体察せれると思います。
“ズレ”がどういう物かは後々。
原因に関しては一つとは限らないというか、複数あります。
でも、中心とも言える“原因”があるにはあります。

それでは質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます!!



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足りない旗印とネコミミと明ける夜

 

「まだダメか。此処の環境が合わないってわけじゃないようだけど……………」

 

アスカ・シンはリーフラッシャーを見ながら呟くのだった。

箱庭に来てから何故か一回変身するとしばらくの間、変身出来なくなっていた。

理由が分からず、首を傾げながら使える様になるまで待つのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「そういえば、“これ”をコウメイから預かっていた」

 

「これは猫耳ヘッドホンか」

 

アカレッドは、クロアにコウメイから預かっていた猫耳ヘッドホンを渡した。

だが、クロアは理由が分からず首を傾げるのだった。

 

「これを私に渡してどうしろと?」

 

「十六夜君にでも渡しておけばいいんじゃないか?コウメイは[少しでも“ズレ”は修正しとくべきだ]とか言っていたが」

 

「“ズレ”の修正か。まぁ確かにどんな小さな“ズレ”だろうと消しておくにこした事は無いが………これでそうなるかどうか…………」

 

「まぁ、あいつが言うのだし試しておけばいいだろ」

 

「そうだな。霧崎君辺りにでも渡しておいて貰うか」

 

「直接私が渡すのは違う気がするからな」

 

「そういう物か」

 

言いながら二人は決戦への準備を進めるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

空中城塞・最上階のテラス。

夜明け前の風が吹き抜け、城の上に掲げられた旗印を揺らす。

あと一時間もすれば地平線から太陽が昇り、夜の終わりを告げるだろう。

召喚された時は主力コミュニティである三つの旗印しかなかったが、今は違う。

参戦を表明した全てのコミュニティの旗印が雄々しくなびいている。

何十もの旗印が最強の神殺しを前にして不退転を鼓舞する様は、壮観の一言に尽きる。

名を上げるのにこれ以上の効果があるだろうか。

正に一世一代、華の舞台と呼ぶに相応しいだろう。

なのにその旗印の戦列に…………一つ、足りない旗があった。

 

「………………」

 

黒ウサギは最上階のテラスに一人佇み、旗印を見上げていた。

柄にもなく少し寂しげな表情を浮かべる彼女は、柄にもない溜め息を吐いて柵にもたれ掛かっていた。

 

「…………これから命がけの大決戦だっていうのに、鼓舞できる旗が無い。締まらない話なのです。皆さんは、本当にそれでよろしいのですか?」

 

黒ウサギは視線をテラスの入り口に向ける。

逆廻十六夜、霧崎カブト、ラッテンの三人は、三者三様の表情を浮かべ頷いた。

 

「俺達は所詮“名無し”のコミュニティ。大舞台で命を賭けたとしても、後世に名を残すことは難しいだろうな」

 

「まぁそんな事は今更な部分があるしな」

 

「私的には名が売れようと、売れなかろうとどうでもいいけどね」

 

霧崎と一緒なら、とラッテンは付け加える。

霧崎は、首に下げていたカメラで旗印が並ぶ光景を撮る。

 

「まぁ人知れず戦うって事がどういう事かは、今ここにいない奴らが一番知ってるんだろうが」

 

十六夜が呟く。

名誉の為ではない戦い、為すべきを為し、討つべきを討つための戦い、それらを経験してる者達こそが今ここにいない士達なのだろう。

彼らは何時でも世界の敵と戦っていた。

街を守る為、後悔を繰り返さない為、友人を守る為、人を絶望から救う為、理由は様々だろう。

世界を巡り、悪魔と呼ばれようと戦いを続ける者もいる。

彼らが戦うのは正義の為では無い。

自由を守る為に戦うのだ。

実際に何をどうしたかは分からないが、見ていれば乗り越えた物の重さも伝わる物である。

 

「まぁ……今はあいつらがいないんだ。その分、俺達が戦うそれだけだ。言ってしまえば、これまで通りだしな。魔王を倒す為に旗揚げし直したのが今の“ノーネーム”だ」

 

「とは言っても、連盟旗が作れてたらとは多少は思うわね」

 

「連盟旗があれば、これに並べたもんな。タイミングが悪かったって事だな」

 

全くだ、と十六夜とラッテンも同時に頷く。

普段なら此処で黒ウサギが「ふざけてる場合ですかお馬鹿様!!」とハリセンをはしらせている所だ。

しかし、今の黒ウサギは少々過去をモノログしていた。

 

「そういや、ラッテン。義手になったようだが大丈夫なのか?」

 

「別に平気よ。急場凌ぎの物だけど、馴れてきたし、今まで通りに動かすくらいは出来るわよ」

 

十六夜に見せるように軽く左腕の義手を動かすラッテン。

出来がいい義手とはいえ、馴れるのがこうも速いのはラッテンの能力もあるのだろう。

 

「急場凌ぎって事はこの戦いが終わったら変えるのか?」

 

「そうよ~調整とかもあるけど、改造して色々と仕込んで貰う気よ」

 

「そりゃ楽しみだな」

 

ラッテンの言葉に霧崎は苦笑いし、十六夜は楽しそうに笑うのだった。

最終作戦まであと一刻ほどである。

それまではこうして英気を養うとしよう。

そこで霧崎はクロアから渡された物を思い出した。

 

「そういや、十六夜。これをお前に渡して置いてくれと頼まれてた」

 

「ん?ヘッドホンか?」

 

それは十六夜の持っていた物とよく似たヘッドホンだった。

ただし、ネコミミではあったが。

 

「…………おい、これを渡せと言ったのは誰だ。死神の奴か?」

 

「いや、渡せと言われたのはクロアさんだが用意したのは別らしい。確か…………コウメイだったか?」

 

「知らねぇ名だな。何だって俺にこんな物を渡そうと思ったんだ?確かに俺のと似てはいるが………」

 

「まぁまぁいいじゃない、そんな事は。それよりちょっと付けてみなさいよ、それ」

 

困惑する十六夜に対し、ラッテンが面白そうに言ってくる。

否、言った時には行動は開始されていた。

即座にヘッドホンを掠め取ると、十六夜の頭に装着させるのだった。

 

「いきなり何すんだよ!?」

 

「…………プッ、ハハハハ!!結構似合うじゃない!!霧崎もそう思うでしょ?」

 

「………まぁ…そうだな」

 

試しに付けさせた割りと似合っていて、ラッテンは逆に笑えてくるのだった。

ラッテンに聞かれた霧崎は、適当に流しはしたが意外に似合っているなとは思っていた。

 

「何をしているのですか、あなた達は……な…………な……………………!?」

 

騒がしい声を聞いて此方を向いた黒ウサギだが、ネコミミヘッドホンを装着した十六夜を見て、思考を真っ白にさせた。

抜群に似合っているその組み合わせに、黒ウサギの胸の奥から未知の衝撃が掘り起こされていた。

 

「な、何でしょう、この胸の高鳴りは……………!!ウサ耳代表としては断固として物申さねばならないはずのこの状況に、何故か身を任せてしまいたい自分がいるのです………!!こ、この未知の衝動は一体…………!!」

 

「それが萌えよ、黒ウサギ!!貴女も分かってきてるじゃない!!」

 

ラッテンは何故かノリノリであった。

ちなみに、箱庭事典:萌えとは、新芽が地より出でて生長する様子を指す。

それは即ち新世界を作り天地創造に繋がる新境地。

一種の宇宙観である。

 

「な、なんということでしょう……………黒ウサギも遂に己の宇宙観を手にするほどの悟りを開いたのですね……………!!しかしその切っ掛けがライバルであるネコミミとは、何という皮肉…………!!何という屈辱……………!!」

 

「何かよく分からないけどまぁいいわ!!それより、霧崎!!写真よ、写真!!」

 

「___分かったから、黒ウサギもラッテンもそろそろ異世界から帰ってこい」

 

呆れた様に溜め息を吐く十六夜。

霧崎はもうほとんどスルー状態である。

さすがにネコミミ十六夜の写真を、大量に撮る気は無かった。

十六夜は、こんな馬鹿な付き合いを何時までも続けられたらいいと、以前までの自分からは考えられない弛んだ思いがあった。

 

 

願えるのなら…………この戦いの後も、この日々が続けばいいと。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方、子供たちは仕事をしながら、その間に“ある話”をしていた。

それは希望の種であった。

 

「何の話をしているの?」

 

「映司さんや士さん、晴人さんから聞いた話を皆にしているんだ」

 

“ノーネーム”の子供達だけではない。

避難民の子供達へもその話は伝わっていた。

 

「映司さん達の世界にいたヒーローの話だよ」

 

「箱庭の外のヒーローの話なら僕もアスカっていうお兄さんから聞いた事があるよ」

 

話をする時の子供達はこんな状況であれ、明るかった。

その子供達を見て、周囲の大人達も少し心に暖かさを取り戻すのだった。

 

「映司さんが言っていたよ。こうやって、皆で手を繋いでいけば何時か何処までも届く腕になるって」

 

手を繋ぎ、微笑む。

それはまるで希望が繋がるようだった。

 

「大丈夫だよ。諦めなければ大丈夫なんだ」

 

「諦めなければきっと、どんな危機も乗り越えれるんだ」

 

“仮面の戦士”、“光の戦士”、“戦隊”、それ以外にも様々な“話”を聞いていた。

その“話”と城の上に掲げられた数々の旗印が子供達を支えているのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

誰かが言った。

時代が求める時、“      ”は必ず甦る。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

____そして、長い夜が明けようとしていた。

三頭龍との最後の戦いが始まる。





次回より開戦!!
今回開戦まで行きたかったですがそれはそれとして。

広がる話の内容は色々とあります。
士、映司、晴人が知ってる範囲の話ではありますが。
話しているのは“ノーネーム”の子供達ではありません。
アスカから聞いたなどは別のコミュニティの子供達です。
士に関しても、それなりに箱庭を旅してるのでその影響もあります。


それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。



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濃霧の開戦と予想外の奇襲と戦慄の“契約書類”

 

三頭龍は四つん這いのまま臨戦態勢に入っていた。

霧により、視界は不明瞭。

先に仕掛けられるのは主催者側のみ。

朝日さえ遮る霧の中では三頭龍でさえ、視界が不明瞭である。

奇襲を仕掛けるにはちょうど良すぎる。

三つの首は全包囲を常に確認し、ピット機関で熱も探知している。

が、予想外の方角から、大量の爆撃が三頭龍を襲った。

 

『___!?』

 

遥か上空から三頭龍めがけて大量の投榴弾が落とされていく。

命中精度は相当だ。

濃霧の中で、ピンポイントに狙いを付けてくるという事は、この瞬間も監視し続けている者がいるという事だ。

気配は無い。

明らかに何かの恩恵を行使した追跡者がアジ=ダカーハを監視しているのだろう。

三頭龍は姿を晒さない為にも瓦礫の中を走り回る。

主催者側に優秀なゲームメイカーが居るの感じていた。

だから、まずは敵の急所であるメイカー、そして追跡者を叩く事にするのだった。

人類の悪意の具現である彼はその知識量も人類の総決算に相当する量を与えられている。

微塵の悪意も無く使われる技術などこの世には存在しないからだ。

千の魔術に等しいと称された知識量を用いて模索する三頭龍。

考察が終わった彼は、突如として足を止めて姿の見えない追跡者に語りかけた。

 

『_____フム。しかし調べるまでも無かったな。ここまで完全に条件が符合する恩恵は一つしかない。そうだろう、ギリシャの英傑よ』

 

「っ………………!?」

 

右方向から僅かに漏れる僅かな悲鳴。

どうもどうやら術者の声を断ち切る事は出来ないらしい。

三つの頭と六つの瞳で一斉に睨んだ三頭龍は、挑発するように首をゴキリと鳴らす。

 

『どうした?私の首を獲らんのか?貴様の所有する鎌___星霊殺しのハルパーなら、万が一という可能性もある。そう考えて此処まで接近したのだろう?』

 

真ん中の首を伸ばして語りかけるアジ=ダカーハ。

逃げる事も出来ず、戦う勇気も無く、動くことすらままならない。

そんな彼_____“ペルセウス”の長ルイオスは、半ギレになって叫んでいた。

 

「_____おっせぇんだよ!!」

 

怒号一喝。

瓦礫の陰からまるで弾き出された様に飛び出た影が三つあった。

濃霧と追跡者に気を取られていた三頭龍は僅かに反応が遅れる。

街の造形は凡そ把握していた三頭龍だが、榴弾によって街の地形が変わり、崩れた煉瓦の陰が死角になっていた。

火龍達は闇雲に上空から攻撃していたわけではない。

主力である彼らが戦える場所まで誘導するように計算していたのだ。

 

「三頭龍、覚悟ッ!!」

 

叫んだのはアカレッド、フェイスレス、ジャックの三名。

三人は各々が鋭利な刃を持つ武器を手にして三頭龍に斬り掛かる。

共に右腕と左足の数ヵ所を裂傷させ、三頭龍を鮮血で濡らす。

 

『待ち伏せか_____小賢しい!!』

 

翼である龍影を嵐の様に激しく暴れさせる。

一撃でも当たれば、彼らの身体は砕け散るだろう。

ジャックは短剣と俊足で避け、フェイスレスは蛟魔王さえ舌を巻いた絶技で捌き、アカレッドは数々の“赤”の武器と能力で対処する。

アカレッドその場にいる全員に叫ぶ。

 

「血を流させる事には成功した!!全員、距離を取るんだ!!」

 

ルイオスを含めた全員が散開してその場を離脱。

すかさず追い打ちをかけようとした三頭龍。

しかし天空に輝く雷光が、三頭龍の追撃を阻んだ。

そこで三頭龍は己を襲う稲妻の霊格から帝釈天か考える。

そして、少しして己が一手遅れた事に気付く。

 

(分身を吐き出させることが目的というのなら、次の手段は間違いなく___)

 

「_____“霊格共鳴・四重奏”、重なり響け、我が演奏よ」

 

直後に“笛の音”が戦場に響き渡る。

その途端、三頭龍の上空は核熱にも等しい榴弾の雨によって覆われた。

やはりそう来たか、と三頭龍は身構える。

奇襲によって分身体を吐き出させ誕生した直後に大火力で包囲殲滅。

それが主催者側が取った作戦。

主力を温存する為に構築した一撃離脱のゲームメイクである。

千体の火龍が放出した気焔によって双頭龍は殲滅されていく。

三頭龍は龍影でそれを阻む。

散雨の様な榴弾の後に残ったのは、無傷のアジ=ダカーハだけだった。

 

上空からラプ子llを通して地上を確認していたラッテンと霧崎は、思わず口をヒクつかせる。

 

「………ったく、本当に化け物ね。あれだけ撃って傷一つ無いとか」

 

「まぁ分身体を殺れただけ十分だろ。化け物なのは初めから分かってる事だし」

 

「せんか!!すごいせんか!!らってんすごい!!」

 

ヒョコリ、とラッテンの胸の谷間から地精のメルンが歓声を上げる。

彼女一人だけ本拠に置いてくるわけにも行かず、空中城塞まで連れてきたのだが、それがちょうどよかった。

正直、彼女を戦いに参加させるのはどうかと思ったが、それはメルンの意思でもあった為にこの場に連れてきた。

彼女の存在も実は結構重要なのである。

ラッテン単体ならば疑似神格を付与するに近いレベルまでの強化は不可能なのだが、霊格を共鳴させる事で強引にそのレベルまで上げていた。

とはいえ、共鳴させるにはそれなりに繋がりが必要なので“契約”を結んでいる霧崎とその契約を用意したメルン及びディーンくらいしか今は共鳴出来ない。

共鳴するには、ある程度近くにいる必要があるのでラッテンの護衛役である霧崎はもちろん、メルンも此処にいるのだ。

ディーンは、さすがに火龍の背に乗れないので地上を火龍の動きに合わせて移動している。

ラッテンは、胸元のメルンを少しだけ撫でる。

 

「メルン、今はちょっと忙しいから大人しくしてなさい」

 

「わかった!!」

 

そう言って、メルンを谷間に押し込むのだった。

火龍の背に座る彼女の後ろに立つ霧崎が溜め息を吐く。

 

「共鳴とか言って、無理に霊格の力を引き出して大丈夫なのか?」

 

「別に、むしろ分散して軽いくらいよ?」

 

ラッテンは軽く答え、演奏を再開する。

霧崎はラッテンの代わりに次の指示を出していく。

 

「一次作戦は成功した様だ。榴弾で威嚇しつつ、地上の動きを待ってくれ」

 

『心得た!!』

 

『吸血鬼化した“サラマンドラ”の同志が間に合えば更なる攻勢に出られる。今は着実に敵の戦力を削ぐぞ!!』

 

おおと鬨の声を上げる火龍達。

彼らの言葉は一切分からないので霧崎は、ラプラスに通訳してもらって状況を把握する。

 

(………ったく、“禁人種”といい、何でそういう道を外れた力を手にしたがるのかね)

 

理由分かっている。

今回の戦いでは必要な事とも分かっている。

それでも、霧崎は“あの世界”を見たからこそ、そう思ってしまう。

全ての火龍が吸血鬼化するわけじゃない。

子持ち、老龍、マンドラだけだ。

戦いで勝利した所で彼らの試練はそこで終わらない。

ならばせめてこの戦いを穏便に勝ち抜けれたらいいな、と霧崎は思う。

そして、“守れる”だけの力を振るえない事を歯痒く思うのだった。

小さく祈る様に一枚、写真を撮る。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方、アカレッド、フェイスレス、ジャックは嫌がるルイオスを説得し、再度追跡を任せるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カブトパワー!!

ザビーパワー!!

ドレイクパワー!!

サソードパワー!!

 

オールゼクターコンバイン!!

「はぁぁ!!」

 

パーフェクトゼクターに三つのゼクターを装着し、数十体の天使を一度に消し飛ばす。

 

「………天使が俺に一斉に押し寄せてきた理由はこれか」

 

周囲を見回すとまだ天使は残っていた。

だが、それだけだった。

“繭”は破られ、マクスウェルの姿が消えていた。

どうやら数十体………少なくとも五十体は越える数の天使が天道を一度に襲い掛かり、それを相手にしている内に姿をくらましたらしい。

とはいえ、行き先は大体分かっている。

近くで天使と戦う“者”には悪いが天道はマクスウェルを追い掛けるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方、空中城塞ではマクスウェルが中へと落下していき、大騒ぎになっていた。

そして、主力陣が迎え撃とうとしたその時、誰かが叫んだ。

 

「み、見ろッ!!空から………空から“契約書類”が___!!」

 

ハッと、全員が息を呑む。

それが意味をするのは二つしかない。

一つは新たなるゲームの開催。

新たなる魔王が出現したのだから、誰もがそう考えるだろう。

だが、違った。

“契約書類”の羊皮紙の下地に捺されている旗印は、誰もがよく知る証が刻まれていた。

“龍角を持つ鷲獅子”の旗印。

そこに記された内容に、誰もが戦慄した。

 

『ギフトゲーム “GREEK MYTHS of GRIFFIN”

  上記のゲームがクリアされたことをお知らせします。

  勝者:アジ=ダカーハ。

  達成条件:宝の奪取。

  主催者側の責任者・サラ=ドルトレイクは速やかに恩恵の授与に移行してください』

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「へぇ……これは大変だね。僕の方も急がないといけないかもね」

 

マクスウェルの襲来と“契約書類”に気を取られ、誰も“彼”の侵入に気付く事は無かった。

彼は彼で、決着を付けに。

そして、目的を果たす為に歩を進める。





開戦でした!!
原作とそう変わらない所はだいぶけずっていますが。

霊格共鳴に関しては霊格的に深い繋がりがある相手としか成立しません。
メルンや霧崎とは、ラッテンをこの世に繋げる為の契約などをしてますので条件を満たしています。


それでは、質問などがあれば聞いてください。
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破れるゲームと奪われる龍角と笑い転げる男

 

そして、全ての戦闘行動が中断された。

 

「ちょ………さすがに早過ぎでしょうが!!」

 

「マジかよ………」

 

ラッテンと霧崎が顔を引きつらせながら呟く。

十六夜に言わせれば、純粋な謎としての難易度なら“ハーメルンの笛吹き”やレティシアのゲームに比べて遜色がないほどだったという。

基本的にそちらの方向は丸投げしてる二人なので、あまり理解はしてないが、開催から一日も経たずにクリアしたのは驚愕した。

同じく火龍の背に乗っていたサラ=ドルトレイクが覚悟を決めた所にアジ=ダカーハが右手に黄金の杖を握りながら現れる。

そして、“GREEK MYTHS of GRIFIN”に対する考察を語り、更にはこのゲームの不自然さを付き、ジャックに視線を向ける。

 

『__火龍から報酬を要求する前に、貴様の解を一つ示すぞ、“パンプキン・ザ・クラウン”』

 

誰もがマズイと直感した。

ジャックのゲームは解答と論拠だけでゲームクリア可能だ。

サラの開催したゲームをクリアする事で全体のゲーム進行を一度断ち切り、その中断してる最中に論拠を示せば、三頭龍は同時に二つのゲームをクリアする事が出来てしまう。

黒ウサギの様に“審判権限”を使って中断する必要もない。

この魔王は叡知と胆力だけでゲームを支配してしまった。

武力、知力、胆力、その全てに於いて真正面から敵を圧倒する。

最古参の魔王にして、最強の神殺し。

三つ首と六つの眼でジャックを見据えた魔王は_____

 

 

『ジャックよ。貴様は__貴様は、“切り裂きジャック”ではない!!』

 

 

_____英国が生んだ怪物に対し、その真実を叩き付けた。

硝子の割れるような繊細な音を立てて、ジャックの血塗られたナイフが砕けた。

同時に全身の傷という傷から血液が流出していく。

赤かった衣服は血によってより濃い紅色に染まっていく。

元々重傷だったジャックから不死性が完全に失われ、辛うじて止血出来ていた傷が無情にも開き始める。

ゴポリ、と。

とてもではないが血液が流れる音とは思えない音を立てて、腹部から血を流す。

 

「…………ヤホホ。よもや、これほどとは……………!!」

 

有りっ丈の力で空笑いを浮かべるが、それも限界だ。

膝から崩れ落ちたジャックは自らが流した血の海に横たわり、やがて動かなくなる。

呼吸で肩が揺れているのを見るとまだ死んではいないのだろうが、それも時間の問題だ。

その様子をつまらなさそうに見届けた三頭龍は、サラ=ドルトレイクに視線を戻す。

 

『………あの様子では残る謎を解く必要もあるまい。本題に入るぞ火龍の娘』

 

サラの顔が強張るが、ジャックの凄惨な有り様を視れば萎縮するのは仕方ないだろう。

だが、サラはそれを恥じ、頭を振って、視線に不屈の闘志を込める。

命を奪われても、誇りまではけがれさせない。

そんな力強い視線を受け止めた三頭龍は心底愉快そうに牙を剥いて笑みを作る。

 

『フフ。強い瞳だ。魔王を前にしても屈さぬ勇姿、私は高く評価しよう』

 

魔王に向ける不屈の瞳はこうでなければいけない。

誰もが息を呑んで緊張する中、三頭龍は嗜虐の笑みで報酬を要求した。

 

『火龍の英傑よ。私が望む物は…………貴様の霊格の全てを頂こう!!』

 

途端、サラの龍角が砕けた。

龍角を失って倒れるサラを霧崎が受け止める。

ラッテンにジト目を向けられるが今は本当にそういう場合では無い。

夜に響く雷鳴のように、火山が噴火するように、根元から折れて消滅したサラの龍角はアジ=ダカーハの手元に現れる。

だが、それだけでは終わらない。

終わるはずが無い。

火龍と鷲獅子の龍角を手にした三頭龍はその二本を地上に向かって投げ付けた。

 

『褒美だ。我が分身よ、龍角を得て力を得るがいい!!』

 

煉瓦を敷き詰めた石畳が、ドクンと鼓動を打つ。

その鼓動の大きさは街全域に響き渡るほどだった。

二本の龍角を得た双頭龍は大嵐の化身となって咆哮を上げ、アカレッド達の前に姿を見せた。

アカレッドは、双頭龍を正面から睨む。

彼は静かに怒っていた。

 

「フェイスレス、ジャックを頼んだ」

 

「え?」

 

フェイスレスが反応するよりも早くアカレッドは動いた。

双頭龍は己の周囲の気圧を操り、プラズマが可視化されるほど圧縮された壁を作りだす。

だが、そんな物は一切関係無かった。

 

「ハァ!!」

 

『GEEEYAAaaa!?』

 

圧縮された力の解放は大気に視覚化出来るほどの波紋が広がっていた。

しかし、それらを全て弾き返し、アカレッドは双頭龍を吹っ飛ばした。

双頭龍は元より神霊並みの力がある。

其処に加えて神格級の恩恵を与えられた。

その戦闘力は並の双頭龍を遥かに凌駕しているはずだ。

それをいとも簡単に吹っ飛ばした。

アカレッドは、双頭龍が起き上がるより早く近付き、見下ろす。

 

「受け継がれし赤の力を見せてやろう」

 

スーパー戦隊の“原典候補者”アカレッド。

その真の力を持って双頭龍を迎え撃とうとしていた。

とはいえ、相手も雑魚では無い。

殺し切るには少なからず時間が必要だろう。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

(あの男は…………)

 

眼下で双頭龍と戦うアカレッドを見て、三頭龍は記憶の端に見覚えを感じていた。

思い当たりはしたが今は相手にする物が別にある。

三頭龍は、目の前の集団に視線を向ける。

ちょうど龍角を失って倒れるサラ及び霧崎達と睨み合う形になる。

“サラマンドラ”にも“鷲獅子を持つ鷲獅子”の同士にも、先程までの意気揚々とした覇気は見られない。

見られるのは目の前の二人くらいだった。

だが、たかが二人では意味が無い。

主催者側の表情に恐怖が伝染していく。

ゴキリと首を鳴らした三頭龍は、そんな彼らをせせら笑った。

 

『フン。どうした?もう終わりか?』

 

『策謀は尽きたか?闘志は枯れたか?希望は潰えたのか?どうなのだ、英傑達よ』

 

三頭龍に答える声は…………

 

「そんな事はねぇよ」

「そんな事は無いわよ」

 

「「まだ、終わっちゃいない」」

 

……あった。

たった二人だがあった。

霧崎とラッテンは、顔をひきつらせながらではあるが、三頭龍を正面から見て声を揃え言い切った。

それにより、主催者側は恐慌状態に陥る一歩前で踏み止まった。

そんな彼らに対し、三頭龍は満足そうに目を見開き、

 

 

『____ならば、よい。手を尽くした上で死ね』

 

 

躊躇う事も無く、絶望の牙を剥く。

そして、主催者側も半ば自棄になりながらも三頭龍に向かっていった。

作戦も破られた、ゲームも半ば破られた。

だが、諦めるにはまだ早い。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

廃都にて、幻想と呼ばれた男は地団駄しながら腹を抱えて笑い転げていた。

背後でアポロガイストが呆れた顔をしているが関係無い。

ダンダンダン!!と、土埃が巻き上がるほど足をバタつかせた彼は、これ以上ないくらい品無く笑う。

 

「流石だ、流石は閣下だ!!此れでもかってぐらい甘い夢を見ている連中に、此れでもかってぐらい最高のタイミングで現実を叩きつけ返しやがった。相も変わらず酷い奴だ!!やられたら三倍返しに色付けて返しやがる!!ああ、最高にイカしてよアンタツ!!そう思わねぇか、アポロガイスト!!」

 

妖狐の尾で作られ、千里眼の恩恵を宿した布を広げ、位相のズレた場所にあるゲーム舞台を覗き見る。

一頻り笑い転げ、満足すると身体を起こしてアポロガイストに問い掛ける。

が、問い掛けておきながら語りを続ける。

 

「此れだ。此れこそがギフトゲームだ。此れこそが神魔の遊戯だ。外界の連中は無理難題に突き当たると己の未熟や無力を棚上げしてやれ才能だ、それチートだ喚き散らし、果てはやれイカサマだとかルールの横紙破りや拡大解釈に奔り、さも己が優秀であるかのように振る舞いやがる。悲しいことにそれらの小者の小賢しさは、徐々に箱庭すらも毒していった」

 

三頭龍のゲームメイクを恍惚の瞳で見つめる男は、力を込めた拳を握りしめ、

 

「だが……閣下は違う。英傑をねじ伏せ、賢者を策謀にはめ、勇者を王威の輝きで弾き返す!!ああ、そうだ!!これぞ、王道を許された者にのみ可能なゲームメイク!!閣下よ、貴方こそが最強の魔王だ………!!」

 

無邪気な子供の様に瞳を輝かせて男は両手を上げる。

 

「ふん、確かに“あれ”は貴様の言う様に凄まじい。だが、ならば私を勧誘するのだ?」

 

アポロガイストはそこが分からずにいた。

男の魔王像はよく分かった。

しかし、それに反する部分がアポロガイスト、そして大ショッカーにはある。

それなのに何故この男は、アポロガイストを勧誘するのか。

 

「そりゃ言っただろ?あんたの執念に目を付けたってな。それに“世界の融合を加速させる”能力に興味はあるし、大ショッカー内部の情報があれば俺も動きやすいからな」

 

「何を企んでいる?」

 

「おいおい、返事もしてないのにそれを聞こうってか?そこまでサービスする気はねぇぜ?」

 

「物は言いようだな」

 

アポロガイストとの会話に切りを付けると、男はリンと話を始める。

マクスウェルについて話した後、リンは探れる事は探っておこうと、挙手して質問した。

 

「率直に言って、先生はどちらが勝つと思ってますか?」

 

「おおっと、株を暴落させる質問だな。それぐらい自分で考えろと言いたいが今は許そう。___ふむ。そうだな。“イレギュラー”が頑張ってる様だが、まともにやれば確実に閣下が勝つと俺は見る」

 

笑みをふっと消し、男は答える。

だが、リンもアポロガイストも答えそのものより一つの単語が引っ掛かった。

 

「“イレギュラー”だと?アカレッドの事か?」

 

「いや、違うぜ」

 

リンは、アポロガイストが聞いてくれた事を好都合と思いながら続きを聞く。

 

「あいつに関しちゃ、大ショッカーが来てる時点で予測出来る範囲だ。本当の“イレギュラー”ってのはこいつの事だ」

 

言いながら男は布に映る霧崎を指差す。

アポロガイストは更に困惑を深める。

 

「そいつは、妙な力を使うだけの人間では無いのか?」

 

「そこだよ。あんたらは“そこ”を注視してないようだが、“そこ”が大事なんだよ。こいつの使う“妙な力”、PSIって言うらしいが箱庭ではマイナーもマイナーな力だ。そんなのを使う奴が外界から召喚されて、此処に参戦してる事自体が“イレギュラー”なのさ」

 

「どういう意味だ?」

 

「つまり、こいつは“ズレ”に影響されて召喚されたに違い無いが、それでも異常な存在って事だよ。あんたらにすら関わりが無いのに召喚されるくらいだからな」

 

“ズレ”だの、PSIだの意味が分からない事を言っているがリンは記憶に残していく。

その後、何故アジ=ダカーハが勝つと言い切れるかを聞かされるのだった。

 

「ところで彩里鈴。他のお子様二人は何やっとるよ?」

 

「あ、はい。ちゃんと拘束してあります」

 

「そうかそうか。ならそちらにも唾付けておかないとな。特に斑っ子は俺たちの切り札になるかもしれない大事な駒だ。いい機会だからお前もよく見て勉強なさい」

 

「勉強……ですか?」

 

何を?と首を傾げるリンに対し、ニヤリと怪しげに笑って返す。

よっこらせ、と腰を上げた男はノイズの上からでも分かる不適なオーラを見せながら、

 

「決まってる。悪鬼羅刹すら誑かす“遊興屋”の華麗な勧誘術を、だ」

 

「……………それ、この人には使わないんですか?」

 

「それをやったらつまらなくなるんだよ」

 

リンが思わず呟いた言葉に、笑って返すのだった。

 

 





追い詰められる主催者側でした!!
とはいえ、完全に追い詰められたというわけでも無いですが。

霧崎とラッテンは、両方経験から来る意地などで言い返す事が出来た感じです。
それにより、完全に陥落する事にもなりませんでした。
アカレッドが単体で双頭龍を抑えてるのも大きいです。

遊興屋達に関しては見物人というのが大きいです。

それでは、質問などがあれば聞いてください。
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劣勢と謎の頭痛とハイパーシューティング

 

殿下は身を隠しながら戦場を走っていた。

とある交渉は済ませたので一先ず様子を見ようと思ったら、今度は此方が交渉を仕掛けられた。

というか、どうにも割りに合わない事を押し付けられた。

 

「ったく、これも借りだぞ…………何で俺が時空の檻とやらの綻びを探さないといけないんだよ」

 

交渉を持ち掛けて来たのはアスカ・シンという男だった。

もはや交渉とはいえ無かったが、時空の檻による空間の綻びとやらを探す事を一方的に押し付けられた。

そんな頼みは普通なら聞く気は無いのだが、現状を打開するには必須と言われては試さないわけにはいかないのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方、空中城塞では十六夜がマクスウェルに首を絞められていた。

絞められた所で応えはしないのだが、熱を奪われるのなら話は別だ。

体温を奪われれば、さすがの十六夜でも細胞が壊死して死に至る。

しかも直接では無く口内を冷気で満たす事で熱を奪っているので質が悪い。

とても暴走しているとは思えない妙手である。

 

「こっ、のやろ…………!!」

 

十六夜がマクスウェルの腕を引き剥がそうとすると、乱入者が現れる。

謎の高速移動をしながら現れたそれはマクスウェルに銃撃を放ち、マクスウェルの腕を吹っ飛ばす。

それから十六夜が蹴りを入れようとするが、完全に衝撃が伝わる前に空間跳躍で逃げられていた。

 

「助けてあげたんだ、感謝したまえ」

 

「別に助けなんていらなかったよ」

 

ケホッと咳き込みながら十六夜は、隣に立った偉そうにしてくる男に対し、悪態をつく。

隣に立った男、仮面ライダーディエンドこと、海東大樹は気にした様子も無く、マクスウェルの方を見る。

腕は既に再生していた。

よく見るとマクスウェルの姿は以前より変わっていた。

蒼と紅のコントラストで飾られた外套から白主体の衣装となり、背中には翼のようなものが生えて光る羽根を振り撒いている。

喩えるなら天使なのだが、本性と今の暴走している様子から壊れた印象が強い。

海東がどう手を出すか、と考えていると更に別の乱入者が現れる。

壁をぶち破ってその男は現れた。

 

「またかよ…………」

 

「やっと追い付いたか、マクスウェル」

 

「何だ、君か」

 

乱入者はハイパーカブトこと天道だった。

ハイパーカブト状態なら単独で飛行が可能なのだ。

海東はディエンドライバーの銃口をマクスウェルに向けながら天道を睨む。

 

「悪いけど、“あれ”は僕の敵だ」

 

「いいや、俺の獲物だ」

 

「何でもいいが悠長に話してる場合じゃ無さそうだぜ」

 

十六夜の言葉に天道と海東は、視線をマクスウェルに戻す。

 

「WEEEeeeeeLAAAAAAaaaaaa!!」

 

理性を失っても尚、ウィラの名を叫び続けるマクスウェルだが、それどころでは無かった。

変身している海東と天道は感じにくかったが城塞の中は寒冷地にでも来たのではないかというぐらいに冷え込み、石造りの壁には氷柱と霜柱が出来始める。

加えてマクスウェルは奪った熱を体内にため込み始めていた。

 

「なるほど……自爆するつもりか」

 

「熱量を操る能力と再生能力を生かした自爆攻撃、暴走している割りには合理的な事をするね」

 

「加えて残像が残るレベルの連続跳躍と無駄が無いわけだ、どうするつもりだ?」

 

一か八か仕掛ける為に十六夜は既に右腕を掲げていた。

とりあえず十六夜の“疑似創星図”が当たれば終わる。

それだけは分かっていた。

マクスウェルの攻撃が成功すれば、空中城塞が墜落する可能性は高い。

マクスウェルの全身は白熱しており、時間が無い事は間違いなかった。

連続跳躍するマクスウェルを見ながら天道は一言だけ言うのだった。

 

「とりあえず撃て。タイミングは五秒後だ」

 

「よく分からねぇが策はあるんだな?時間もねぇし、それで行くぞ」

 

「僕としては不満だけどね」

 

海東は無視して行動を始める。

十六夜の右手には光の柱が現れる。

それを見ながら天道は一枚のカードを海東に投げ渡す。

 

「お前はそれを使え」

 

「全く人使いが荒いね」

 

ハイパークロックアップ!!

アタックライド、クロックアップ!!

 

海東は受け取ったカードをディエンドライバーに入れ、天道は腰のハイパーゼクターをいじる。

電子音声が鳴り響くと同時に二人の姿は十六夜の視界から消える。

十六夜はそれに困惑はしない。

同じ事を士が出来るので今更なのた。

原理は分からないが、視認出来ない状態なのは確かだ。

だが、十六夜は天道を信じ、五秒後に正面に向かって光の柱を放つのだった。

 

「さすがにクロックアップとはいえ、あそこまでの連続跳躍を捉えるのは難しい様だね」

 

天道から受け取ったカードはアタックライドクロックアップのカードだった。

そのカードを使い、クロックアップした海東は通常の時間流とは別の時間流で行動していた。

それにより、周囲は全てスローモーションに見える。

十六夜の放った光の柱もかなりゆっくりに見える。

だが、マクスウェルの連続跳躍は残像が残らず現れるのがしっかり視認出来るという程度であり、攻撃のタイミングを合わせるのは難しかった。

とはいえ、天道の思惑は大体察しているので仕方なくそれに合わせる事にする。

 

「これで決着だ、マクスウェル」ファイナルアタックライド!!ディ、ディ、ディエンド!!

 

ファイナルアタックライドのカードをディエンドライバーに入れる。

そして、ディメンションシュートを“光の柱と交わる軌道”で放つ。

 

ドレイクパワー!!

 

ハイパークロックアップ状態の天道には、クロックアップ状態の海東すらスローモーションに見えてた。

その状態でパーフェクトゼクターの一つのスイッチを押す。

ドレイクゼクターがパーフェクトゼクターに装着される。

今の天道にはマクスウェルが現れるのすら、ゆっくりに見えた。

だから、光の柱とディメンションシュートが放たれたのを見ると、目の前に現れたマクスウェルに蹴りを入れる。

そして、パーフェクトゼクターの銃口をマクスウェルに押し付ける。

 

「ハイパーシューティング」

 

パーフェクトゼクターの引き金を引くと零距離で光弾が放たれる。

光弾も勿論ハイパークロックアップ状態である。

マクスウェルは空間跳躍する間もなく、光弾によって光の柱とディメンションシュートが交差するポイントに押し込まれるのだった。

 

クロックオーバー

 

十六夜の視点では光の柱を放った直後に、高速の攻撃が放たれ、同時に超高速の光弾によってマクスウェルが視認出来ないレベルの速さで光の柱の軌道に押し込まれていた。

 

「前哨戦は終わりだ。消し飛べ、“マクスウェルの魔王”___!!」

 

十六夜が呟いた直後に輝く極光が周囲を満たす。

その時には天道と海東も通常の時間流に戻っており、マクスウェルに背を向けていた。

マクスウェルは大量の熱量を抱えたまま、三つの多大な力により、抱えた熱ごと消し飛ばされるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

突如、コッペリアは謎の頭痛に襲われて頭を押さえた。

 

「____っ!?」

 

「コッペリア!!避けろ!!」

 

ハッと顔を上げる。

が、遅かった。

霧崎の警告も空しく、コッペリアの乗っていた火龍の首を斬り落とされる。

きっと、霧崎には火龍を襲う“死の脅威”が見えてたのだろう。

霧崎は悔しそうに顔を歪めていた。

眼前には三頭龍が迫っていた。

凶爪が起こした疾風はコッペリアが何かをする前に霧崎が祓った。

 

『小僧、妙な力を使うようだが防御だけではどうにもならんぞ!!』

 

「う、うるせぇ!!分かってんだよ、そんな事は!!」

 

どうもどうやら三頭龍は、霧崎の“弱者のパラダイム”が守るだけでは無いのを察して、それを使わせようと挑発しているが彼の役目はラッテンの護衛なので易々と挑発には乗らずに言い返してはいる。

言い返す霧崎の顔が半ば引きつっているのは、多少ビビッているのだろう。

霧崎とラッテンを背に乗せる火龍も三頭龍から離れていく。

三頭龍が詰まらさそうな視線を向けた気がするが、気のせいだろう。

謎の頭痛に首を傾げるコッペリアはそれどころではなく、額を押さえながら火龍の死骸と共に落下していく。

 

(今…………誰かの意思が、私の中に入ってきたような…………?)

 

凄まじい量の情報と、己ではない誰かの記憶がコッペリアの魂に介入してくる。

だが、それは何処か傷が付いた様な感触があった。

突然の事に動揺した彼女は火龍の手綱を握ったまま戦列を離れていく。

その様子を見た霧崎は最低限の指示を叫ぶ。

 

「コッペリアはそのまま離脱して、フェイスレス達と合流してくれ!!隙を見てジャックの介抱を頼む!!」

 

「…………申し訳ありません。了解、しました」

 

頭痛を堪えながら声を絞り出す。

空中戦は大混戦になっていた。

恐慌状態に陥らずに済んだ戦線はそのまは三頭龍との戦いを続行していた。

だが、三頭龍は霧崎とラッテンがこの戦線の核であると目を付けていた。

ラッテンと霧崎が戦線から離れ過ぎれば、三頭龍も追う様に向かってくる。

だから、ラッテンと霧崎は三頭龍から一定距離を保ちながら戦うしか無かった。

彼らを狙う攻撃は全て霧崎が祓い、ラッテンは演奏を続ける。

指示は霧崎の肩に乗るラプ子llが出している。

 

「全軍、一斉掃射!!」

 

三頭龍の四方を囲う“サラマンドラ”の火龍と“龍角を持つ鷲獅子”の幻獣達は高速で飛び回り、一斉射撃を浴びせる。

ラッテンの演奏で強化されたそれらは並の武具を遥かに凌駕する。

三頭龍は己の全身を龍影に包んで高速回転して弾いて避け、黒い弾丸となって戦列を縫う様に飛び回る。

弾丸が横を通過した火龍や幻獣達は払い抜けに斬り裂かれて絶叫を上げた。

 

『ガアアアアア!!』

 

「………またかよ」

 

「来てますよ!!」

 

ラプ子llに言われ、黒い弾丸の放つ“死の脅威”を祓う。

出来るだけ遠くに祓う事で被害を減らそうとするが焼け石に水だ。

既に爪で斬り裂かれたのは多数いる。

“死の脅威”が視認出来るだけに仲間が散っていくのはかなりキツい物だ。

だが、ラッテンは演奏を一旦止めて呆れた様に言う。

 

「ったく、まだ気にしてるの?割り切りなさいよ。覚悟は決めてきたはずでしょ?」

 

「それでもキツいのはキツいんだよ。逆に何でお前はそんなに平気なんだよ」

 

「一度コミュニティが滅んだ経験があるからね、これくらいじゃ動じないわよ」

 

つまりは割り切れてるという事だろう。

そこらへんはある意味、ラッテンの強みとも言える。

だが、それだけではない。

 

「……それに気にする程………余裕があるわけじゃないのよね………」

 

言ってる途中からラッテンの口の端から血が零れる。

口元の血を拭いながら平気そうなかおをするが、やはり双頭龍戦のダメージを残しながら“霊格共鳴”をやるのはかなりの負担なのだろう。

 

「………大丈夫よ。心配しなくても死にはしないわよ」

 

「………っ!!」

 

霧崎は何も言えず、拳を握る。

拳から血が垂れてきているが、それにはラプ子llもラッテンも触れないのだった。

その間にもマンドラが鬼龍を引き連れて三頭龍へと向かっていく。

が、マンドラの大剣は牙によって噛み砕かれ、爪によって肘から先を斬り飛ばされる。

胴体を真っ二つにされなかったのは具直な百年の鍛練が生きたのだろう。

マンドラは切断された腕を押さえ、血が出る程唇を噛み締めた。

 

「血を捨て去り………同士を捨て駒にして………それでも、一太刀も届かんのか!!」

 

痛恨の思いで吐き捨てる。

現状で懸けられる物は全て賭して、一瞬足を止めるのが精一杯という体たらく。

悔しさの痛みで気が狂いそうだった。

それでも引くわけにはいかない。

一人、また一人散って逝く同士を追う様にマンドラは立つ。

それを見て霧崎は悔しそうに奥歯を噛み締める。

必要な犠牲、そんな物は作戦を聞く時から言われている。

だが、納得出来るかは、割りきれるかは別だ。

 

「分かってる……分かってるんだよ………でもよ………」

 

霧崎の呟きは空しく響くだけだった。





マクズウェル死亡でした!!
少々オーバーキルだが気にしない方向で。
状況的にはドレイクのライダーシューティングを思い浮かべてくれればいいです。

それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。



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ヒビと閃熱と助けを呼ぶ声

「ようやく見付けた、ここが空間の綻びだ」

 

視認出来るが見逃してしまいそうな空間の歪みをCJXが指差す。

CJXの検索を使ってどうにか見付け出したのだった。

そのままフィリップは説明を続ける。

 

「元々ここは急場凌ぎで作られた空間だ。だから、此処に一定以上の衝撃を与えれば…………」

「この空間ごと砕けるってわけだな、相棒」

 

「そういうことだね。でも、その為にはありったけの力が必要だ」

 

「つまり、俺達全員で全力をぶつければいいって事だな!!」

 

おそらく理解してない弦太朗が言う。

だが、間違ってはいない。

 

「それじゃあ、速い事やるとしようか」

 

「そうですね」

 

言いながら晴人がアックスカリバーを構え、映司がタジャスピナーにメダルを入れていく。

 

「やっと此処から出れるか」

 

「行くぞ!!」ファイナルアタックライド!!ディ、ディ、ディケイド!!

 

アンクの呟きを無視して、士がベルトにカードを投げ入れ、ライドブッカーガンモードを構える。

銃口と歪みの間にカード状のエネルギー体が現れる。

続く様にWはプリズムビッカーにメモリを入れ、

映司はタジャスピナーのメダルをスキャンし、

弦太朗はバリズンソードにコズミックスイッチを入れ、

晴人はアックスカリバーにインフィニティーリングをかざし、

アンクは怪人態となって炎弾を放つ。

 

サイクロン!!マキシマムドライブ!!ヒート!!マキシマムドライブ!!ルナ!!マキシマムドライブ!!ジョーカー!!マキシマムドライブ!!

プテラ!!トリケラ!!ティラノ!!ギン!!ギン!!ギン!!ギン!!

リミットブレイク!!

ハイタッチ!!ハイタッチ!!ハイタッチ!!ハイタッチ!!ハイタッチ!!プラズマシャイニングストライク!!キラッキラッ!!キラッキラッ!!

 

「ハァ!!」

 

「「ビッカーファイナリュージョン!!」」

 

「セイヤァァァァァァ!!」

「フン!!」

 

「ライダー超銀河フィニッシュ!!」

 

「ハァァァァァァ!!」

 

ライドブッカーの銃口から放たれた光弾はカードを通過する度に強化され、歪みへと向かっていく。

プリズムビッカーから四色の光線が放たれ、歪みへと向かっていく。

タジャスピナーから紫の光弾が放たれ、アンクの炎弾と重なりながら歪みへと向かう。

光を纏ったバリズンソードを振るい、青い斬撃状のエネルギーを放つ。

歪みへと向かい、アックスカリバーを投げ放つ。

歪みは数々の攻撃を受け、空間にヒビが広がっていく。

同時に存在を維持する魔力が減っていたダイゴが何故か赤い粒子となって姿を消した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

放たれた攻撃を避け切れないと判断した三頭龍は防備を解き、三つある頭蓋の口内から炎熱を放つ。

三頭龍から吐き出された炎熱は強化された幾百の散弾を物ともせず弾き飛ばし、ロンドンの街を分割するほどの力の奔流となって顕現する。

着弾した地上は赤熱を放ち、視界が眩むほどの熱波を放つ。

だが、一部は霧崎の手で祓われていた。

とはいえ、分かっている事なので然程気にしない。

三頭龍には周囲を気にして加減する理由など無い。

立ち向かってくる有像無像に天災と称された力の全てを叩き付けるだけだ。

嵐の如く、津波の如く、雷雨の如く。

一切の感情を排した紅玉の瞳は淡々と主催者側の命を奪っていく。

 

(…………これでは効率が悪いな。奴も挑発には乗らんしな)

 

チラリ、と視線を霧崎の方へと向ける。

顔は相変わらず仲間が散っていくのを見て歪んでいる。

あの様子なら多少挑発すれば役目を放棄し、乗ってくるかと思ったが、存外冷静だったようだ。

とはいえ、主催者側を強化している者も体に負担が掛かっているのが目に見えている。

それらを合わせて見れば、役目を放棄しない理由も分かりはする。

次に気焔を放ちながら、眼下に視線を向ける。

空の部隊とは違い、地上の部隊はそこまで崩れていなかった。

赤い男が龍角を得た双頭龍を相手に圧倒し、女騎士が指示を出し、他の分身体を相手にしている。

三頭龍は少し考え、牙を剥く。

 

(地上の要は奴らか。ならば話は早い)

 

右腕を掲げた三頭龍は、左腕を裂いて鮮血を撒き散らす。

血は十体ほどの純白の双頭龍となって顕現し、地上へと落下していく。

赤い男は龍角の双頭龍だけで手一杯であろうし、この追撃を受ければ女騎士が指示している部隊も戦列が崩れていくだろう。

 

(とはいえ、ゲーム開始前にかなりの霊格を放出してしまった。これ以上の流血は避けるべきか)

 

先日の戦いでも余波だけで大量の血を流し、数百体分の霊格を既に失っている。

時間経過で霊格は回復するが、如何せん昨日の今日だ。

分身体に割ける霊格は残り僅かだろう。

 

(翼を持つ眷属は霊格を多く消費するが、こうも有象無像に群がられては手間が掛かり過ぎる)

 

どれだけ強化しようと三頭龍の敵ではないが、かといって無視出来るほどでもない。

慢心はどれほど優位であっても敗北の可能性を生む。

慢心ゆえに敗北した連中を三頭龍は幾つも知っている。

新たな分身体を生み出そうと右腕に力を込めたその時____三頭龍は、膨大な霊格の気配に気が付き、手を止めた。

 

「其処までだ、アジ=ダカーハ!!」

 

金糸と見紛う美しい髪をなびかせ、レティシアが龍影で強襲。

昨夜と同じように軽く受け流そうとした三頭龍だったが、予想外の鋭さに瞳を見開く。

 

『ヌッ……?』

 

龍騎士の龍影を、三頭龍の龍影で捌く。

影の牙は幾千の槍となって三頭龍に襲い掛かった。

その衝撃の重さは昨夜の比ではない。

三頭龍に届くほどの物ではないが、確実に霊格が肥大していた。

三頭龍が疑問を解決する間もなく、鵬魔王が襲い掛かる。

レティシアの切り札はまだ使うわけにはいかない。

二人は火龍に分身体の処理を指示する。

無尽の刃を連続して射出しながら三頭龍へと肉薄するレティシア。

鵬魔王は掻い潜る様に天を舞って距離を詰める。

金翅の炎で倒せない事は既に織り込み済みだが、どうしても試さねばならない件がある。

血を流させるだけが二人の目的ではない。

金翅の炎と龍影の刃で四方を囲んだ二人は、視線を交わして同時に仕掛けた。

 

(三頭龍を仕留める事は出来ずとも____)

 

(____せめて、背中の翼だけは破壊するッ!!)

 

全霊格を込めて翼となる龍影を狙い撃つ。

同系統の恩恵で撃退しようとしていた三頭龍は、そこで二人の狙いに気が付いた。

 

『貴様ら…………本当の目的は、私の翼かッ!!』

 

武には、武で、智には智を。

三頭龍は魔王として、相手の長所を砕こうとする。

ならば同系統の恩恵で仕掛ければ必ずや龍影の翼で応じてくると二人は読んでいた。

一時的にでも翼を失えば、地上には練達の実力者達が揃っている。

彼らならば確実に三頭龍の心臓を暴いてくれると信じ、二人は捨て身の突撃をかけた。

 

「地に落ちろ、三頭龍____!!」

 

対龍の恩恵を秘めた金翅の炎に巻き込まれ、レティシアの龍影が砕け散る。

だが砕けたのは彼女のだけではない。

三頭龍の右翼の龍影もまた、引き千切られた様に形を失った。

体勢を崩した三頭龍は驚愕した様に瞳を見開き____そして、嗜虐を込めて笑った。

 

『…………存外やるな。褒美だ。絶望をくれてやる』

 

何?と、肩で息をしていた二人に緊張が走る。

全戦力をつぎ込んだ二人にもう余力は残っていない。

反撃が来たら容易く葬られるだろう。

だが、落下する三頭龍は二人には目もくれずに回転し、別の方角を見た。

大地を呑み込む程の牙の中に、先程放った炎熱の数十倍の閃熱をため込んだ魔王が狙いを定めたのは____

 

「ま、まさか…………!!」

 

「空中城塞を落とすつもりか____!?」

 

____刮目せよ、愚かな挑戦者たち。

この炎こそ魔王アジ=ダカーハが固有で所持する最大の恩恵。

世界の三分の一を滅ぼすと伝承で伝えられてきた、閃熱系最強の一撃である。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

三頭龍の翼が砕けたのと、ほぼ同時に空間にヒビが入った。

三頭龍に気を取られ、それに気付く物は少なかった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

空中城塞の中庭。

激しい震動が城を襲う。

城の外の郊外に避難していたリリと年長組の子供達は、共に抱きしめあって支えている。

リリは戦いに参加している”ノーネーム”の主力たちを思う。

どんなに強大な敵でも彼らは臆さずに立ち向かっていった。

そして勝利してきた。

どんな厳しい状況でも、今までと同じ様に勝利してくれるに違いないと強く信じている。

 

「映司さん………早く来てください………」

 

そして、姿を消した男の名を呟く。

だが、現状は彼女達の想像より遥かに厳しい。

別の場所では震えてる避難民の子供をアスカが元気付けていた。

 

「大丈夫だ。あいつらを信じるんだ」

 

十六夜とクロアは異変を感じていた。

クロアから三頭龍のもう一つの切り札について聞く。

“覇者の光輪”、終末論の引き金を引く力を召喚し、炎熱として扱う恩恵。

それを聞いた十六夜が防ぎに行こうとするが、ラプ子IVに止められる。

そして、匿名での伝言と贈り物を受け取る。

十六夜は、納得出来ない者の“彼ら”を信じるしか無かった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

殿下は三頭龍の放つ極光と目の前の空間のヒビを見て溜め息を吐く。

この状況で出来る事など一つしか無かった。

 

「………ったく、やっぱり俺がやるしかないのか」

 

言いながら空間のヒビに手を突っ込む。

そして、全身から太陽光を放って告げる。

 

 

「____“アヴァターラ”起動。十天廻りて輝け、“疑似創星図”………!!」

 

 

直後に空間が砕ける。

同時に内側から爆炎が放たれる。

そして、空間の奥にいた者達が爆炎を突き破り、飛び出てくる。

殿下は“彼ら”が飛んでいく前に言う。

 

「今回は特別大サービスだからな。これは貸しにしておくから、後で返せよ」

 

「あぁ分かってる。借りは必ず返すよ」

 

そう言うと“彼ら”は急ぐ様に姿を消した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

そして、誰かが呟くのだった。

「助けて、仮面ライダー」と。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

口内にため込んだ気焔を圧縮する三頭龍と空中城塞の間に彼らが現れる。

 

『貴様らが現れるか…………仮面ライダー!!』

 

「助けを呼ぶ声が聞こえたんだ、駆け付けないわけにはいかないだろ?」

 

『今更現れた所で無駄だッ!!貴様ら如きでは、我が必殺の“覇者の光輪”は止められんッ!!』

 

「いいや、止めてやるさ。俺がいや、俺達が!!」エクストリーム!!

 

「あそこには沢山の人がいるんだ、守ってみせる!!」スーパー!!スーパー!!スーパー!!スーパータカ!!スーパートラ!!スーパーバッタ!!スーパー!!タトバッ、タトバ、タットッバ!!スーパー!!

 

「俺達の絆は鉄をも砕くぜ!!」フュージョンオン!!

 

「最後の希望がお前の絶望なんかに負けるわけが無いだろ!!」チョーイイネ!!フィニッシュッストライク!!サイコー!!

 

三頭龍の前に現れたライダー達は次々と姿を変えていく。

Wは助けを呼ぶ声、そして風を受けてクリスタルサーバーが金色に変わり、サイクロンジョーカーゴールドエクストリームに、

オーズは未来のコアメダルを使って、スーパータトバコンボに、

フォーゼはフュージョンスイッチを使うと、同時にメテオスイッチ、なでしこスイッチがベルトにセットされ、メテオとなでしこの姿がフォーゼに重なり、メテオなでしこフュージョンステイツに、

ウィザードはフィニッシュストライクのリングの力で金色の装甲とドラゴンの頭部、爪、翼、尾を持つインフィニティードラコンゴールドに、

 

クウガ!!アギト!!リュウキ!!ファイズ!!ブレイド!!ヒビキ!!カブト!!デンオウ!!キバ!!ファイナルカメンライド!!ディ、ディ、ディケイド!!

 

そして、ディケイドはコンプリートフォームへと姿を変える。

三頭龍と仮面ライダー達は正面から睨み合うのだった。

 




ライダー達帰還でした!!
最初の攻撃で時空の檻にヒビが入り、殿下がこじ開けた感じです。


それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。


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“光”と衝突と最期の覚悟

三頭龍とライダー達が向き合う中で空中城塞を少し離れた空間から線路が伸びてくる。

そこへデンライナーが現れる。

士達の姿を確認するなり、電王ソードフォームが飛び降りて来る。

 

「お前ら、生きてやがったか!!」

 

「騒がしいのが来たな」

 

モモタロスの声に士が面倒そうに呟く。

そんな中で良太郎はケータロスを取り出す。

 

(皆、来て)

「行くぜ、クライマックスだ!!」

(しょうがないね)

(行くで!!)

(ワァーイ!!てんこ盛り!!)

(ふむ)

 

デンライナーから幾つものエネルギー体が飛んできたと思うと電王の中へと入っていく。

ケータロスをベルトに装着すると、装備が一度解かれ、周囲に電仮面が現れる。

肩にアックスとロッドの電仮面が、胸元にガンの電仮面が、背中にウィングの電仮面が装着される。

更に頭部が裂けて、各々の紋章が現れる。

姿を超クライマックスフォームへと変化させたのだ。

 

「俺、再び参上!!」

 

ポーズを決めたと思うと、

 

「僕に釣られてみる?」

「俺の強さにお前が泣いた!!」

「答えは聞いてない!!」

「降臨、満を持して」

 

次々と電仮面に引っ張られる様にポーズが変わっていく。

 

「だーもう!!相変わらず鬱陶しい!!つーか、お前まで入ってんのかよ、手羽野郎!!」

「苦しゅうない」

「苦しいんだよ!!勝手に動くな!!」

 

モモタロスが他のイマジンに文句を言うが、端から見ればただの一人漫才である。

さすがの三頭龍でもうるさくは思うらしい。

 

『貴様ら、遊びに来たのか?』

 

「いいや、テメェを倒しに来たんだよ」

 

『ならば、他の連中諸とも消え去れ!!』

 

「誰がだよ!!見せてやろうじゃねえか!!俺達の必殺技!!超クライマックスバージョン!!」チャージアンドアップ!!

 

「ったく、勝手に話を進めるなよ」ファイナルアタックライド!!ディ、ディ、ディケイド!!

 

「全くだぜ、後から来た奴が」

「君も格好付けはしてるじゃないか」

「う、うるせぇ!!」エクストリィィィム!!マキシマムドライブ!!

 

「何はともあれ味方が増えるのは心強いですよ!!」スキャニングチャージ!!

 

「見せてやるぜ、俺達の絆の力を!!」メテオ!!ナデシコ!!リミットブレイク!!

 

「フィナーレだ!!」チョーイイネ!!キックストライク!!サイコー!!

 

電王がライダーパスをベルトにかざして投げ捨てる。

士がカードをディケイドライバーに投げ入れる。

Wがエクストリームメモリを一度閉じて、再度開く。

映司がスキャナーでベルトにセットしてあるメダルを再度スキャンする。

弦太朗がベルトのレバーを引く。

晴人がキックストライクのリングをベルトにかざす。

そうして各々必殺技を発動させる。

 

「デヤァァァァァ!!」

 

電王は背中から大きく翼を広げ、右足に全ての電仮面から力を収束させて蹴りを放つ。

 

「ハァァ!!」

 

士と三頭龍の間にカード状のエネルギー体が現れ、士は蹴りを放ち、カードを蹴破り、力を増加しながら三頭龍へと向かっていく。

 

「「ゴールドエクストリーム!!」」

 

タイミングを合わせる為に翔太郎とフィリップは声を揃えて叫ぶ。

背中の金の六翼を広げ、足にメモリの力、風の力、人々の思いの力を収束させ、両足蹴りを放つ。

 

「セイヤァァァァァァァ!!」

 

背中に紅い翼を広げ、トラクローソリッド、スーパーバッタレッグを展開し、三頭龍との間に現れた赤、黄、緑の三つのリングを潜りながら、両足蹴りを放つ。

 

「ライダーアルティメットクラッシャー!!」

 

弦太朗が技名を叫ぶ。

両腕に装着された銀色のロケットモジュールを吹かし、両足に装着されたスキー板状のなでしこモジュールを三頭龍に向ける。

そして、全身をドリルの様に回転させながら三頭龍へと向かっていく。

 

「ダァァァァァ!!」

 

晴人の背に五つの大きな魔法陣が重なった物が現れる。

それに足を付け、思いっきり跳ぶ。

その勢いのままにキックの体勢に入る。

背後の魔法陣から赤い竜、青い竜、緑の竜、黄の竜、透明な竜が飛び出てくる。

更に蹴りの進行方向に大きな魔法陣が現れる。

それを蹴破り向かっていく。

六つの必殺技が三頭龍に向けて放たれた。

同時に天を穿つ様に終末の気焔が放たれる。

その衝突は天地を揺るがした。

その余波で天は裂け、夜空が露にされ、地は砕け、更地に変貌し、地割れが起こる。

周囲の全てを吹き飛ばすかの様に衝撃波は広がり、時空すら歪める。

空間にヒビが入る様な幻覚が見え兼ねない惨状だった。。

力の天秤は完全に拮抗していた。

どちらも一歩も引かずにぶつかり続ける。

 

「こうなったらもういっちょう!!」チャージアンドアップ!!

 

「俺もだ!!」リミットブレイク!!

 

モモタロスが何処からかライダーパスを取り出して、再度ベルトにかざす。

弦太朗はベルトのレバーを数度引く。

巻き起こる風はエクストリームメモリ内の風車を回し、力を高めていく。

士、映司、晴人の意思の力に答える様に力は増していく。

ビキリ、とヒビの入る音が聞こえる。

だが、それでも拮抗は解けない。

三頭龍も血を流していた。

それほどまでに全力で押し込んでいた。

生まれる双頭龍は余波で次々と消し飛んでいく。

何かが足りない。

この拮抗を破る為には何かが。

そして、空中城塞内でアスカ・シンはリーフラッシャーを持った手を掲げる。

 

「受け取れ、これが“光”だ」

 

その手から光が放たれる。

たとえ今すぐ変身出来なくてもやれる事はある。

子供達、否、空中城塞にいる人々の想い、“光”を届けるくらいなら出来る。

空中城塞の中から放たれた“光”は、映司達を後押しする様に向かっていく。

“光”を受け取り力は増す、一気に決める為に力を込める。

 

直後に極光は爆ぜた。

 

上空へと火柱が登ってく。

天を貫くと思える程に大規模だった。

同時に衝撃波が四方へと放たれる。

火龍達は急いで地にしがみつく。

そうでもしなければ吹き飛ばされる程だった。

空中城塞も衝撃波に揺らされるが、浮力は失われなかった。

やがて、火柱が収まるとライダー達の姿が見えた。

さすがに変身は解除され、傷だらけで骨にはヒビが入ってる可能性はあるが、無事ではあった。

空中城塞無事な事に安堵の表情を見せる。

そこに銀色のオーロラが現れる。

オーロラは翔太郎、フィリップ、弦太朗を包もうと向かってくる。

 

「どうやら僕達が手伝えるのはここまでらしい」

 

「あとは頑張れよ」

 

「俺は消えても熱い友情がきっと先輩達の助けになります!!」

 

翔太郎は帽子を押さえ、フィリップは微笑み、弦太朗は胸を叩き拳を映司達に向けながらオーロラの中へと消えていく。

が、残された士、映司、晴人、M良太郎を身の毛も凍る敵意が襲う。

 

 

『……………貴様ら。我が必殺の“覇者の光輪”を相殺するとはな』

 

 

「うるせぇ!!俺達の必殺技がお前のより強かっただけだ!!」

 

モモタロスが空気を読まずに言い返しているが明らかにそれどころではない。

地獄の底から響いてくるような声だった。

それは今まで余裕を見せてきた三頭龍の声とは決定的に違っている。

憤怒は傷つけられた誇りによるもの。

そして、それはこれまで以上に明確に敵として、障害として認識された事を意味する。

 

(………マズイな)

 

全員冷や汗が滴り落ちる。

変身は解けている。

今攻撃を食らえば一溜まりも無い。

空中で動く術も無い。

再変身する間も、武器を取り出す間も無い。

何より防御する術が全く無い。

三頭龍は残った片翼を大きく広げ、無数の刃として彼らを襲い_____空中に鮮血をばら撒いた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

____その時。

幼子たちの鬼哭啾々の怨嗟が、ジャックの耳に届いた。

 

「っ…………!!」

 

失っていた意識を激痛と悪夢で呼び戻す。

血は相変わらず緩やかに外へと流れている。

もう、この身体も限界か。

そんな事を考えて思わず空笑いを浮かべる。

そして、残っている問いの答え、自らの正体が浮かんでいく。

 

「………っ……………!!」

 

今でも、瞳を閉じれば想い出す光景がある。

一夜の愛を売る場所で____『愛が無ければ生まれてきてはいけませんか』と、叫んだ子供たちを。

泣きながら叫ぶ彼女たちを、教会の派遣した断罪人____“バネ足ジャック”という怪人の名で処分した時のことを。

狂気の洗浄を終えたジャックは、彼らの犯した罪の全てを背負うと誓いを立てた。

子供たちの未来を奪おうとするものが現れたのなら、次は必ずや、彼らの為に戦おうと。

そして今。

遥か上空にて、不安に涙する子供たちの声が、何かを失う事を拒む子供たちの声が聞こえた。

 

(リリ嬢…………そして、“ノーネーム”の子供たちよ…………!!)

 

次第に身体が崩れていく。

この身体が完全に崩れれば、ロンドンの街も砕けて無くなるだろう。

だがそれでもいい。

最後の手段を訴える為、ジャックは“契約書類”を握り潰す。

 

(………もう、助からぬならば…………この僅かな命で、為せることがあるのならッ!!)

 

考えられる外法の中で最悪の手段。

一〇〇年以上も積み重ねてきた贖罪の全てを無に帰しかねない手法を以て、ジャックは両腕に力を込める。

子供たちの未来を守れるのならば。

最期のその一瞬までその願いに殉じる事が出来るのならッ!!

 

 

(私は…………魔王に堕ちても構わない____!!)

 

 





“覇者の光輪”相殺でした!!
爆発の所はアメイジングマイティが起こした火柱が更に大きくなったと思ってくれればいいです。


それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。



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凶刃と正義とジャックの覚悟

万象を撃ち抜くかのような、赤い閃光だった。

落下中だった良太郎、士、映司、晴人の前をNEW電王が操るデンライナーがレッコウと連結して走っていく。

この為に幸太郎は待機していたのだ。

レッコウの斧で凶刃の幾つかは阻まれる。

その隙にアンクが怪人態になって、駆け付け凶刃を炎弾などで弾き、良太郎をデンライナーに放り投げて回収させる。

 

ディフェンド、プリーズ!!

 

その間に晴人が防御の魔法を発動させる。

だが、凶刃はそれだけでは止まらなかった。

隙間を縫う様にして迫ってきていた。

そこに燃える様な瞳を宿した人影が彼らの前に現れる。

或いはそれは、本当に炎と情熱の化身だったのかもしれない。

衣服だけでなく髪と瞳も炎上し、地獄の住人かと見紛うような険しい横顔。

それが自分達の知るジャックだと、彼らは気付く。

 

「お前、ジャックか?」

 

「ええ。そうですよ、晴人殿」

 

晴人の言葉に頷きながらジャックは映司の方を見る。

 

「…………映司殿。最期に一つ、お願いがあります」

 

最期の願い。

それが比喩でも何でもなく、本当に最期の願いだと悟る。

映司が無言で頷くと、ジャックは何時かの陽気な笑顔で告げた。

 

「“ウィル・オ・ウィスプ”を…………あの子たちをお願いします。悲しい過去を持つ子たちです。だから貴方達の手で、正道に導いてあげてください」

 

「あぁ、分かった。約束するよ」

 

全てを覚悟した笑みに、同じ覚悟を込めた瞳で返す。

映司の脳裏には“あの時”助けられ無かった少女が浮かんでいた。

ジャックは安堵したように軽快な笑い声を上げた。

 

____ヤホホホホッ!!

 

全ての子供たちの福音を願う様に笑い上げる。

そのジャックの背に士が一言だけ言葉を掛ける。

 

「ジャック、お前は“悪”じゃない。世界の破壊者と呼ばれる俺が言うんだから間違いない」

 

士の言葉にジャックは一瞬驚いた様な反応をし、また一瞬微笑んだ様にも見えた。

直後にジャックは炎のスプリングで待大気を蹴る。

その姿は正に赤い閃光。

それは比喩ではない。

ジャックの虚空を蹴る速度は既存の最高速度_____第六宇宙速度にまで到達し、アジ=ダカーハの脇腹を深く抉り抜いた。

 

『ガァ!?』

 

三頭龍はこの戦いが始まって以来初めて、明確な苦悶を含んだ声を上げた。

今のジャックは純粋に速く、防ぎ切れぬほど鋭かった。

それを受けて三頭龍は、ジャックが魔王の領域に踏み込んだ事を察する。

そして、それは最悪な堕ち方だった。

主催者が無条件で有利になる様なルールを大量に盛り込む、そんな事を詩人以外がすれば、膨大なロジックエラーが発生し、数分も持たずにゲームその物が強制終了される。

加えて膨張した霊格は自壊し、死後も天界から罰を受け続ける事になる。

既に天軍による征伐対象にリストアップされていることだろう。

それらを全て振り切って、ジャックは二撃三撃と跳び回る。

 

「神罰は全て覚悟の上ッ!!この身は元より悪道を生きてきた!!ならばその悪道の果てに“絶対悪”を滅ぼせるというのならば本望ッ!!」

 

_____“悪を以て巨悪を討つ”。

ジャックは瞳でそう訴える。

幾ら士に“否定”されても、そうそう受け入れる事は出来ないのだ。

そんな様子を彼らは離れた所で見ていた。

映司はアンクに支えられて無事着地し、士は晴人が使ったグラビティの魔法で一緒に着地する。

ジャックの身体は星辰体となって光の粒子に酷似した存在になっていた。

膨大なエネルギーを得て、後は消費していくだけのものだった。

アジ=ダカーハが着地するまでに二百に近い傷が付けられた。

そして、着地してからも片翼による全方位殲滅を行うが、今のジャックには当たらなかった。

そのジャックに三頭龍が問う。

 

『………“悪を以て巨悪を討つ”。それは、貴様が地獄を見るのに値する願いか?』

 

「当然だ。だからこそこうして堕ちた。その代償が何であれ、私に後悔はない」

 

口元の血を拭って魔王に吠える。

全てを承知して、全てを投げ捨てた。

今日まで重ねてきた善行を。

積んできた信頼を。

向けられてきた笑顔の数々を。

もう二度と、素敵な道化師と呼ばれなくたっていい。

人生の幕を殺人鬼として終えても構わないという覚悟を決めて、ジャックは魔王になったのだ。

そして、三頭龍は問答を噛み締める様にする。

其処にどのような感情があったのかは定かではない。

三頭龍はその隙を攻める訳でなく静かに見定め、次に口にした言葉は…………とても、静謐な響きを含んでいた。

 

『よかろう。“ならば許す”』

 

「………なに?」

 

踏み込もうとした足が止まる。

何を突然と思うジャックに、三頭龍は理路整然と告げた。

 

 

『神の一人として、お前を許す。悪を討つのが悪であるなら、死闘の果てに残るのも悪しかない。……………それではあまりに救いがなかろう。故に私が、悪神として認めよう。お前の歩んだ軌跡にも一欠片の正義があったということを。この“絶対悪”に突きつけた刃の輝きを、この私が保証する』

 

 

それは静謐でありながら、これ以上ないくらいに力強い神託だった。

_____“我、絶対悪なり。故に、正義は汝に在り”。

踏み越えよ、我が屍の上こそが絶対正義である。

その人生がどれだけ血塗られていても。

今日までの輝きを手放したとしても。

今この一瞬にある汝の正義を保証すると、この悪神は告げたのだ。

破壊者に“悪”を否定され、悪神に“正義”と肯定された。

ジャックは生きていた頃の哄笑をあげる。

許されるはずの無い過去を他人として割り切り、俺と私はは違うものだと逃げ続けていたジャックは今、ようやく全ての己を統一する。

 

「今こそ我が王号を名乗ろう!!俺は魔王“南瓜の王冠”ッ!!大魔王アジ=ダカーハの心臓………このジャックが貰い受けるッ!!」

 

赤い閃光となった怪人が第六宇宙速度で駆け抜ける。

三頭龍は“絶対悪”の旗をなびかせ、静かな声で死刑宣告を告げた。

 

『“アヴェスター”起動。相剋して廻れ、“疑似創星図”…………!!』

 

同じく星辰体となることで迎え撃つ。

五分の戦いになった両者は共にお互いの身体を砕き合い、肉を抉り合う。

ジャックのゲームのタイムリミットは残り数秒も無かった。

星の光の如く駆け抜けたジャックはそのままの速度を維持したまま光の粒子となって散って逝く。

両者の戦いが終わった後に残ったのは、三頭龍のみ。

ジャックの霊格は一欠片も残さず消えた。

その証として_____悪神の心臓を剥き出しにして。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

その光景を彼らは見ていた。

何も出来る事無く見ていた。

士は罪と血で汚れた手を見て、映司とアンクは救えなかった各々別の少女を思い浮かべ、晴人は自ら置いてきた“指輪”とその“持ち主”を思い浮かべる。

各々が各々に辿ってきた道があり、物語があり、想いがあった。

そして、いつの間にか何処かへ消えていた天の道を行く男と怪盗もその光景を見ているのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

別の所で霧崎もそれを眺めていた。

自らを犠牲にして道を開く様はかつての“記憶”を呼び起こす。

そんな霧崎に背中から手を回してラッテンは抱くのだった。

少しでも霧崎の気が晴れる様に。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

空中城塞の断崖絶壁。

 

「……………ジャック」

 

その戦いの全てを。

十六夜は無感情な瞳で見届けた。

時間にすれば一分にも満たない死闘。

ジャックが三頭龍に残した傷の数々は紛れもない、希望そのものだ。

だがそれでも。

十六夜は一言、血を吐く様に告げる。

 

「この…………この、大馬鹿野郎が…………!!」

 

ジャックは満足して逝ったのかもしれない。

霧崎達はその様を肯定するかもしれない。

しかし十六夜は彼を糾弾した。

それは何も己を犠牲にした事を糾弾しているのではない。

今日まで大事に積み上げてきたはずの人生の全てを、財産を台無しにした事に怒りを感じているのだ。

クロアは彼の肩を掴み、いさめるように首を振る。

 

「十六夜君。彼を責めたい気持ちは分かる。だが今はそんな場合ではない」

 

「…………分かってる」

 

有りっ丈の苦渋を奥歯で噛み潰し、十六夜はラプ子IVに視線を向ける。

 

「最終作戦決行だ。今度こそ、あの魔王を仕留める」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ほぼ同時刻。

アカレッドは龍角の双頭龍、純白の双頭龍の相手をしていた。

出来るだけ血を流させない様に打撃技を中心に、それでいて確実にダメージを与えていた。

吹き飛ばされた双頭龍達は瓦礫の中に倒れている。

途中から何かを違和感があったが、今はその正体を察していた。

そこにラプ子から最終作戦決行の知らせを受ける。

 

「どうやら時間が無いらしい。最終作戦に置いて邪魔なお前達は“切り札”で片付けさせてもらう。どうやら“同士”の意思も此処にあったらしく、その残留も上手く使えるようだからな!!」

 

そう言ったアカレッドのマスクの奥にある眼光が強まった気がする。

何か危険な気配を感じ、双頭龍達は瓦礫から抜け出て警戒する。

だが、もう遅い。

何処からか流れてきた赤い粒子を吸収しながら構える。

すると、アカレッドの胸のバッジが輝き始める。

 

「“ソウル降臨”完全起動。受け継がれし赤の魂集り廻れ、“疑似創星図”………!!」

 

輝きが更に大きくなる。

アカレッドの体から幾つもの赤い光が放たれる。

光は人型となり、アカレッドの背後に並んでいく。





ジャック魔王化でした!!
“悪と正義”、罪、過去などは色々と思うところがあるのが多数。

アカレッドに関しては詳しくは次回ですが、オリ設定を加えていきます。

それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。



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月龍と太陽龍と穿つ槍

全てのラプ子が十六夜の言葉を全軍に伝える。

士、映司、晴人は作戦を把握してないので近くにいたラプ子に軽く説明して貰っている。

デンライナーはそれなりに無理して出てきた様ですぐに時の砂漠に戻っていった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

蛟劉は“契約書類”を手に取り、夜明けでうっすらと消えそうになっている月を見上げた。

 

「……………此処まで来たか。なら僕も覚悟を決めないなあかんな。____降りて来い、月龍ッ!!」

 

月龍と一体化した蛟劉は一匹の星龍と成って戦う。

こうなればアジ=ダカーハが蛟劉を打ち破れば戦いは終わる。

後はやるかやられるかだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方のレティシアも、未発動だった“主催者権限”を発動し、太陽の主権を掲げた。

二度と使う事はないだろうと思っていた力だが、アジ=ダカーハが相手なら出し惜しむ理由は無い。

天を仰いだレティシアは呼吸を整え、緊張をほぐす。

 

「此処が最後の一番だ………………頼んだぞ、主殿……………!!」

 

“蛇使い座”を象徴する二頭の蛇が絡み合う杖。

それを掲げると同時に、夜明けの地平線から大気を揺るがす咆哮が聞こえた。

 

「____GYEEEEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaEEEEEEEEEEEEEEEEEEEYYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

 

夜明けの地平線から一直線にレティシアへ突進する巨龍。

彼女を取り込んだ巨龍はその瞳に意思を宿し、地上の三頭龍を睨みつける。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

大まかに作戦を聞いた三人は加勢をする為に立ち上がる。

 

ドライバーオン!!

 

三人は変身の為にベルトを腰に装着する。

映司はアンクに手を伸ばす。

が、アンクは面倒そうに言う。

 

「此処まで来たら、他の奴らに任せておけばいいだろ。こんな所でメダルを失うわけにはいかないだろ?」

 

「いいや、此処まで来たからこそやらなくちゃいけないんだ。だからアンク、メダルを」

 

「ふん。相変わらずだな、お前は」

 

呆れた様に呟きながらメダルを渡す。

映司はメダルを受け取ると、一枚ずつベルトに入れ、スキャナーを構える。

晴人はベルトを操作し、指輪を構える。

 

シャバドゥビタッチヘンシーン!!

 シャバドゥビタッチヘンシーン!!

  シャバドゥビタッチヘンシーン!!

 

ウィザードライバーから電子音が鳴り響く。

 

「「「変身!!」」」

 

叫ぶと同時に

士はカードをディケイドライバーに入れ、映司はベルトにセットしたメダルをスキャンし、晴人は指輪のバイザーを下ろしベルトにかざす。

 

カメンライド!!ディ、ディ、ディケイド!!

タカ!!トラ!!バッタ!!タトバッ、タトバ、タットッバ!!

フレイム、プリーズ!!ヒーヒー、ヒーヒーヒー!!

 

幾つもの残像が士と重なり、姿をディケイドに変える。

映司を中心に回転していた幾つもの円状の物体が赤の物が頭、黄の物が胴、緑の物が足の前に止まり、胸の前で一つになり、オーズへと姿を変える。

晴人は左手を横にやると赤い魔法陣が現れ、晴人の体を通過し、ウィザードの姿へと変えていく。

更に晴人は右手の指輪を変え、ベルトにかざす。

 

「ドラゴン、俺に力を貸してくれ」ドラゴライズ、プリーズ!!

 

晴人の後ろに魔法陣が現れ、そこからウィザードラゴンが出てくる。

そして、バイクと合体し、晴人を背に乗せる。

士もドラゴンの背に乗ると映司達の方を見る。

 

「お前達はどうする?」

 

「俺達は地上から加勢に行きます」

 

「そうか」

 

言うと士と晴人を乗せたドラゴンは、アジ=ダカーハへと向かっていく。

 

「じゃ、行こうかアンク」

 

「あぁ」

 

二人は地上からアジ=ダカーハへと向かっていくのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

『フン。月龍と太陽龍、そして魔力の龍。それが貴様らの切り札か』

 

胸骨の中心に輝く心臓を隠す素振りも見せず、三頭龍はただ泰然と構える。

片翼が潰され、弱点であるはずの心臓を剥き出しにされても、大魔王の魂は揺るがない。

此処まで己を追い込んだ者達は両手の指で数えるほども居なかった。

 

『…………短くも、鮮烈な戦いだった。箱庭の命運を決めるにはこれ以上ない戦いだった』

 

この魔王の心臓に彼らの牙は届くのか。

“絶対悪”を掲げて戦い続けた永刧の時は、意味ある物だったのか。

今、その答えが出る。

 

『来るがいい、英傑たち。そして踏み越えよ____我が屍の上こそ正義であるッ!!』

 

敵を待つ事はしない。

眼前に障害がある。

ならば砕くッ!!

敵より速くッ!!

翼があろうとなかろうと関係ないと、三頭龍は片翼を広げて跳躍した。

翼がない彼と飛翔出来る三匹の龍では空中戦の優位は明白だ。

故に、三頭龍は敵の優位を真正面から砕く。

三頭龍は何時だってそうして戦ってきた。

己こそ真の英傑だと名乗りを上げる者たちに、我こそは彼らが最期に行き着く巨峰でかると固持し続けた。

中には、決して勝てぬと知りながら、愛した者たちの為に戦った者たちもいた。

その愚直さ、その輝きを知ってたからこそ____彼の宗主は、人間の為に涙した。

 

_______“拝火教”悪神の母である、彼女は告げた。

“人間より素晴らしいものなど、この世には存在しません。

ならばこそ私は悲しいのです。

彼らの滅びが絶対的であることが”

 

そう。滅ぶのだ。

このままでは滅ぶのだ。

否定する者はいる。

目の前にもいる。

だが、“何をどう足掻いても人類は滅ぶのだ”。

“拝火教”という枠組みを超えてより強大な超越者としての視点を持っていた彼女には、人類が辿る結末が全て見えてしまっていた。

だから彼女は泣いていた。

己を糾弾して責める人類を、愛したが故に泣いていた。

その彼女の涙を少しでも拭えるのならと思い、三頭龍は最古の魔王____“人類最終試練”と呼ばれる存在を確立させた。

人類が滅ぶ要因を明確にし、細分化することで、彼らが勝利する未来を造ろうとした。

最も業の深い“絶対悪”の旗を己が背負い、世界の終焉にまで付き添うこと。

三頭龍は全ての案を話し終えた上で、彼女の手を取って誓った。

____貴女が背負う罪を、私が共に背負いましょう。

 

そして今、ようやくその契約が終わる。

 

(結末には妥協すまい。人類最終試練として、貴様らを砕こう…………!!)

 

試練の代行者として、加減しては意味がない。

故に挑戦者は渾身の力で砕く。

二頭の星龍と一頭のドラゴンに、三頭龍が吼える。

 

「____GYEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaEEEEEEEEEEEEEEEEEEYYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

 

四体の超龍が天地を揺るがす。

ディケイドとウィザードの銃撃、ウィザードラゴンの炎弾を軽く弾き、月龍の突進を真正面から受け止めた三頭龍は、すかさず切り札を切る。

 

『“アヴェスター”起動。相剋して廻れ、“疑似創星図”…………!!』

 

敵対者の霊格を己に上乗せする。

この力がある限り、数の有利は三頭龍に有効ではない。

三頭龍と宇宙観を共有し合う種族でなければこの力は破れない。

だが三頭龍は、即座に異変に気が付く。

 

(どういうことだ………太陽龍の霊格が上乗せされていない…………!?)

 

小細工で虚を付けるのは僅か一瞬。

だが、それで充分である。

ディケイドはドラゴンから飛び降りながらベルトにカードを入れる。

 

ファイナルアタックライド!!ディ、ディ、ディケイド!!

スキャニングチャージ!!

チョーイイネ!!キックストライク!!サイコー!!

 

ディケイドが上空からディメンションキックを放ち、遅れる様にウィザードラゴンが巨大な足に変型し、ウィザードがそれでストライクエンドを放つ。

加えて地上からオーズがタトバキックを放つ。

 

『甘いわ!!』

 

だが、全て三頭龍に弾かれる。

先程の衝突で体力をかなり消費していたので威力は普段よりは下がっていた。

その程度ならば三頭龍にとって弾くのは容易いのだ。

そして、そんな間に三頭龍は太陽龍の霊格が上乗せされない理由を突き止める。

 

『人類が生み出した遺産か!!ならば“覇者の光輪”で応戦するだけよッ!!』

 

三頭龍は落下しながら口内に閃熱を収束させる。

しかし、それは二方向から飛んできた閃光によって散らされた。

 

『何ィ!?』

 

離れた場所で天道はパーフェクトゼクターを構えていた。

 

「隙は作った。あとは生かすも殺すもお前達次第だ」

 

更に別の場所で黄金の杖を回収していた海東もディエンドライバーを構えていた。

 

「士に死なれちゃ困るからね。特別大サービスだ」

 

一瞬、完全に虚を突かれ、三頭龍の動きが止まる。

レティシアはその一瞬を好機と見て、最後の手段に出た。

そして、弾かれ落下中の晴人も指輪をベルトにかざしていた。

 

「やられっ放しじゃ終われないんでな」バインド、プリーズ!!

 

『“蛇遣い座”の恩恵よ………一瞬でいい、奴を拘束する力をッ……………!!』

 

幾つもの魔法陣から鎖が現れ、三頭龍に絡み付く。

更に黄金の巨龍はその巨体を超圧縮させ、蛇蝎を縛る鎖となって絡み付く。

巨龍の保有する超質量がそのまま鎖になった事で、流石の三頭龍も動きが制限された。

 

『小癪…………!!』

 

『今だ!!私に構わず撃て、黒ウサギ!!』

 

レティシアの声と共に、火龍の一団に強力な神気が発生する。

霧崎達では無いと、三頭龍は即座に判断する。

あれの性質は別だ。

それから序盤に感じた神気だと気が付き、牙を剥いて唸った。

 

『帝釈天………いや、違う!!“月の兎”の生き残りか!!』

 

二百年前に滅ぼした筈の一族。

そしてその手に握られる必勝の槍。

黒ウサギの構える槍を見て、今更宇宙真理の権能に頼るか、と激怒する。

神気を放つ槍と黒ウサギは、稲妻を放って狙いを定める。

 

「我が一族の仇!!此処で晴らします!!」

 

万感の思いを込めた槍が、三頭龍の心臓を狙う。

馬鹿が、と嘆いた三頭龍は”アヴェスター”を____

 

『_______!?』

 

“アヴェスター”が、起動しない。

帝釈天と梵天を二体一対として信仰する概念がある。

帝釈天の恩恵を宿す槍は即ち”拝火教”の宇宙観を宿した恩恵でもあるのだ。

二百年前_____御子だった黒ウサギを逃がす為に散って逝った同士の無念。

過去の痛みと、今日散って逝った同士たちの為に。

黒ウサギは全霊を込めて撃つ。

 

「穿て____“疑似神格・梵釈槍”____!!」

 

星辰体と同等の速度____第六宇宙速度を叩き出して進む必勝の槍。

逃れられない敗北。

僅かに抱く達観。

だがそれら全てを、三頭龍は、最強の魔王は、王威一つではね除けた。

 

『魔王を____“絶対悪”を甘く見るでないわッ!!』

 

魔力の鎖と星一つに匹敵する質量と封印を、力任せに引き千切る。

レティシアは言葉にならない悲鳴を上げて霧散し、人型に戻って落ちていくが地面に衝突する前に映司が受け止める。

アジ=ダカーハは先程の戦闘で得た経験値を元に、自力で星辰体化の恩恵を引きずり出す。

____誰が信じられるだろう。

瞬きの間にも満たない間に三頭龍は二度進化した。

星を砕く膂力と、星の光より速く動く術。

人智の及ばぬ二つの恩恵を魂の強さだけで引き出した。

こんな事を予想出来る者がいたとするのなら。

 

「____ああ。お前なら、避けると思っていたよ」

 

それは。

魔王と言う存在に羨望し、彼の王威を信じていた者以外はあり得なかった。

 





次回決着です!!
海東はちゃっかりお宝を回収していました。

それでは、質問があれば聞いてください。
感想待ってます。



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灰と勇気と完全なる敗北


今回で十一巻終了です





 

「ガジ=ザババザザヂダダバ。ボセゼバゼサボゲゲルロ、ロンザギバブググレサセスバ」

 

何かを感じた“彼”は呟き、雪山を進んで行くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「オビション“ディンジュジョエオシュ”ショ。フォショフォショデョムフェフォブジョジョショエジョンジュジョフィ」

 

“植物”を使い、“戦い”を眺めていた“彼女”は楽しそうに呟くと姿を消すのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

箱庭であって、箱庭では無い何処か。

その奥底で佇む“それ”も何かを感じていたか。

 

「アジ=ダカーハは死んだか。まぁ予定の範囲内だ。計画に支障は無い」

 

「捕らえた分身体に関してはどうしましょうか?」

 

「一匹残して全てネオ生命体に吸収させるのだ」

 

少し離れた所で指示を待っていた大ショッカーグリードは、聞くや否や姿を消すのだった。

そのまま“それ”は何かを眺める様にしているのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

幻の街、ロンドンが砕け散る。

煉瓦の小道も尖塔群も跡形も無くなり、此処に至るまでの全てが夢か幻だったのではないかと誰もが錯覚を抱く。

だが、彼らの流した血潮と死の山河がこの戦いが現実だったことを雄弁に語っている。

時間にすると小一時間も無かったであろう攻防だった。

巨人族と“ウロボロス”が攻めて来たのが昨夜のこと。

それから三頭龍の復活、マクスウェルの強襲、アポロガイスト率いる軍団との戦い、そして再戦。

廃都となった“煌焔の都”は、二日振りに平穏を取り戻した。

まるで数年に渡る戦争をしたかのように面影もない。

もしも幸いなことがあるのだとしたら、散って逝った火龍たちが故郷の土で眠れるということぐらいだ。

 

(……………)

 

静寂が訪れた。

誰もが微動だにせずその光景を見守っている。

 

「さすがに魔力切れだな………」

 

晴人も魔力切れで起き上がる事も出来ず、地面に仰向けになりながら、その光景を見ていた。

 

「…………」

 

月龍の上で士は無言で十六夜の背を見ていた。

三頭龍の心臓には、黒ウサギの投げた槍が芯々と食い込んでいる。

その槍を握りしめる少年、逆廻十六夜の姿がある。

それが士の目の前にある光景だ。

それがどういう事なのか。

あの一瞬の攻防で何があったのか。

士はそれを見ていた。

士自身は何もしていない。

否、間に合わなかった。

だが、故に何があったのかを目撃していた。

三頭龍が自身の心臓を深々と貫いた槍を見て、感慨深く頷く。三つ首がそれぞれ違う物を眺める。

心臓を貫いた槍を。

満身創痍の主催者を。

そして、槍を握る逆廻十六夜を。

紅玉の瞳を細めた三頭龍は、してやられたとばかりに笑って頷いた。

 

『…………やられたぞ。まさか…………まさか、第六宇宙速度で飛翔する槍を、“受け止めよう”などと考える大馬鹿者が実在しようとは……………!!』

 

それは怪物の物とは思えないほど穏やかで晴れ晴れとした笑顔だった。

____発動した神槍を受け止め、三頭龍に生まれた僅かな安堵の隙を突く。

言うは易いが、投げる側も、受け止める側も、この一投に賭けた覚悟と勇気は並の物ではなかったはずだ。

或いは、黒ウサギの一投は逆廻十六夜を殺していたかもしれないのだから。

だが彼女はそんな懸念を微塵も感じさせない覚悟の一刺しで応じた。

そしてそれに応えようと十六夜は命を懸けた。

どちらの信頼が欠けても成り立つはずも無かった最高の不意打ちである。

 

「………っ……」

 

十六夜は奥歯を噛み締める。

倒れ落ちようとした三頭龍は、そこでふと、心臓を貫く槍を握る手が小刻みに震えていたことに気が付く。

今まさに滅ぼそうとしていた三頭龍は己を打倒した勇者に、最後の加護を授けるかのように手を握りしめて告げた。

 

『…………恥じることはない。知らぬならば此処で学べ。“その震えこそ恐怖だ”』

 

「っ、違うッ!!」

 

『違わぬ。そして忘れるな。恐怖に震えても尚、踏み込んだ足。____“それが勇気だ”』

 

違うと、駄々を捏ねる様に激しく首を振る。

そんな十六夜を見ながらも首の一つは、ある意味に置いて“同類”と言えなくも無い男に視線を向けていた。

士は三頭龍の最期の姿を写真に納める手を止めて、その目を合わせる。

だが、何かを言う前に、十六夜の声を最後まで聞くことなく炎上して灰となった。

純白の総身、三つの首、紅玉の瞳。

誰もが恐れたその姿は、まるで線香花火の炎の様に燃え上がって消えた。真紅の布地の“絶対悪”の旗印はその紋様を変え、封印の鍵となった本来の旗印_____自由を象徴とする少女と丘の旗印、“アルカディア”大連盟の物に書き換わる。

途端、火山が噴火したのではないかというような大歓声が起きた。

天地を揺るがす声は神仏だけではないのだと訴えるかのような雄々しい声が廃都を満たしていく。

生き残った事を素直に喜ぶ者。

仲間が生き残ってくれたことに涙する者。

喪ってしまった友を悼んで涙する者。

未来を達観して空を見上げる者。

 

「結局……やれた事は少なかったな」

 

三頭龍の最期の姿を撮り、今は人々の写真を撮っている霧崎が呟く。

返事は無い。

ラッテンは戦いが終わると気力も尽きたのか意識を失った。

今は霧崎に背負われている。

守れた物、守れなかった物を思いながら霧崎は写真を撮っていく。

 

「それでお前はこれからどうする気だ?」

 

「そうだな………お前も戻ってきたし…………」

 

アンクの問いに考える様にする映司。

抱えているレティシアを見て、結論を出す。

 

「黒ウサギちゃん……それにジャックさんとの約束もあるしな。しばらくは箱庭で暮らすかな。お前はどうするんだ?」

 

逆にアンクに聞き返す。

すると、アンクは何処か遠くの空を眺める様にしてから映司の方に向き直る。

 

「お前には借りがあるしな…………しばらく付き合ってやるよ」

 

「そうか…………ありがとな、アンク」

 

映司の言葉に、気に入らないといった感じで顔を反らすアンクだった。

千差万別の声が響き渡る中で、逆廻十六夜は月龍の背の上で、悔し涙を一滴流した。

 

「…………“違う”……………“違うんだ”、アジ=ダカーハ……………!!」

 

勝利を噛み締める主催者たちの声とは裏腹に、十六夜は悔恨の声を上げて泣いた。

その涙を知る者は、あの攻防に何があったのかを知る者だけ。

背を貸していた月龍_____蛟劉は、全てを見届けた龍の姿のまま優しい声音で告げた。

 

『……………それでも君は勝った。今はそれでええんよ』

 

自由の旗印を握りしめ、左胸を押さえる十六夜を、蛟劉は鬣を器用に操って慰める。

士も無言で十六夜の背を叩く。

雄々しい勝利の雄叫びが響く中、十六夜は何度も首を振ってそれを否定した。

万人が沸き立つ勝利の歓声の中で、彼らだけが知っていた。

十六夜の涙の訳を。

逆廻十六夜が経験した、完全なる敗北を。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

士は三頭龍が最期に伝えようとした事について考えていた。

“絶対悪”である三頭龍が“破壊者”である士に伝えようとした事。

完全には伝わっていないが、士は口の動きで少しは分かっていた。

 

_____“アレ”は違う。“アレ”は……

 

その先を言おうとして、三頭龍は灰となった。

何を伝えたかったのか、それは分からない。

 

「“何”が違うって言うんだ、アジ=ダカーハ。忠告なのかもしれないが………俺達は“アレ”とは必ず戦う事になる」

 

何時もの調子で呟く。

だが、何時もの調子なのは言葉だけで内心は自分が持つ“主催者権限”、そして“大ショッカー”の事を思い浮かべているのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

某所。

中年の男は戦場から離れた所で“戦い”を眺めていた。

 

「おのれ、ディケイド!!生きていたか!!だが、貴様はこの箱庭にいる限り、消える運命から逃れられないのだ!!」

 

叫び、声を響かせる。

そして、人の気配を感じると帽子を押さえ、銀色のオーロラへと消えていくのだった。




燃えて灰となって死ぬ…………オルフェノクか!?

…………という冗談は置いといて、エピローグでした!!
冒頭の謎言語については後々。
次巻が出ないと未定な部分もありますが。
十六夜辺りは獅子座の太陽主権云々推測出来ない事も無いですが、明確な事は分からないので。


それでは、質問があれば聞いてください。
感想待ってます。

次の更新は次巻が出てからになりそうです。
おそらく十二月辺りかと。


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亡霊と歪な列車と二人の怪盗
黄金の杖と黒い鬼と激突の怪盗



久々の投稿!!
新刊は春頃らしいけど、とりあえずオリ短編です。
web連載のは過去編で正直書ける事が無いので。


 

「さて、お宝も回収したし一旦引こうかな。士には落ち着いた時に接触すればいいしね」

 

海東は戦場を眺め、黄金の杖を握りながら呟く。

銀のオーロラを出現させて移動しようとする時、何か波動の様な物が広がった。

直後に周囲の物体の動きが鈍重になる。

 

「その黄金の杖は俺が貰い受けよう」

 

背後から何かが近付いてくる気配を感じる。

この不可思議な現象の中でも普通に動いてる様だ。

近付いてきた者の手が黄金の杖に触れようとした時、海東はディエンドライバーの引き金を引いた。

 

「おっと」

 

「悪いがこれはもう僕のお宝だ。渡すわけにはいかないね」

 

海東も周囲の現象に囚われず普通に動いていた。

海東は周囲の状況を確かめながら襲撃者の方を見る。

海東の銃撃をヒラリと避けた男は白いスーツに白いシルクハットを被り、黒いマントを揺らし、仮面を付けていた。

 

「どうやら重加速を起こせる様だけど、そんな者は僕には通じないよ」

 

言いながら引き金を引く。

仮面の男は銃撃をヒラリヒラリと避けながら近付いてくる。

そして、懐に手を入れたと思うと金色の銃の様な物体を取り出す。

海東の銃撃を避けながら男も銃撃する。

だが、海東はあくまで余裕である。

距離が縮まった所で男の顔に銃撃を放つ。

男は咄嗟に顔を反らすが、仮面を飛ばされる。

それに構わず、なおも近付き、結果的に互いに銃口を顔に突き付け合う状態になる。

 

「まさか、君が箱庭に来てるとは思わなかったよ」

 

「へぇ俺の事を知ってるのか。それは光栄だ。だが、あえて名乗らせて貰おう。俺は怪盗………アルティメット・ルパンだ」

 

「いいや、違うだろ?君はサイバロイドZZZだ」

 

お互いに視線をぶつけ合う。

だが、お互いに不敵な笑みを浮かべるだけである。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「克己ちゃん、これからどうするの?」

 

「期を見てまた確保に動く。大きな戦いが終わった後は油断が生まれるからなそこらが狙い時だ」

 

戦場から撤退していたNEVERの面々は拠点の一つで今後の方針を話し合っていた。

傭兵として活動している内に各地に拠点は作っていた。

そこに何か電車が走る様な音が響く。

一同が外に出ると、空間に穴が開き、そこから線路が伸びてくる。

 

「何よ、あれ………」

 

レイカが呆然と呟く。

そうこうしている間に線路を歪な列車が走ってくる。

そのまま大道達の前に止まる。

その中から異形の者達が出てくる。

黒い鬼の様な怪物と不気味な道化の様な怪物と黒い布切れを纏った骨の様な怪物だ。

その背後にも怪物達がいる。

 

「イマジンが俺達に何か用か?」

 

「俺達が何か知ってるのか。それなら話が速い」

 

「俺達に話だと?」

 

「俺はネガタロス。俺の目的は絶対に負けない悪の組織、新ネガタロス軍団(仮)を作る事だ。速い話、俺達と組まねぇかって事だ」

 

ネガタロスはあっさりと目的を明かす。

大ショッカーに組するつもりは無いのだ。

悪の組織は自分の手で作る事に意味があるのだから。

そして、大道はネガタロスの申し出を笑い飛ばす。

 

「悪いがそれは断らせて貰う。俺達は別にそんな事に興味は無いからな」

 

「そうか、残念だ。だが、それならばお前達が所持してるというロックシードを頂こうか」

 

「これか………イマジンごときが俺達から奪うつもりか?」

 

大道はブラッドオレンジロックシードをチラつかせながら挑発する様に言う。

ネガタロスは笑う様にしながらベルトを巻き付け、ライダーパスを取り出す。

 

「悪いが俺は雑魚共とは強さは別格だぜ。変身!!」ネガフォーム!!

 

エターナル!!

「なら、その強さってのを見せてみるんだな。変身!!」エターナル!!

 

ネガタロスがパスをベルトにかざすとその体がオーラアーマーに包まれ、姿をネガ電王に変える。

大道は予め巻いていたロストドライバーにエターナルメモリを挿し込み、仮面ライダーエターナルに姿を変える。

 

「俺も混ぜて貰おうか」

 

「好きにしろ」

 

「元からそのつもりだよ、変身!!」スカルフォーム!!

 

ネガ電王の背後から出てきたゴーストイマジンがベルトを巻き付け、パスをかざす。

その体はオーラアーマーに包まれ、仮面ライダー幽汽 スカルフォームへと姿を変える。

 

「俺達も忘れて貰っちゃ困るぜ!!」

 

大道の背後で待機していたNEVERの面々も姿をドーパントへと変えて臨戦体勢を取っていた。

いよいよ、両者の戦いが始まろうという所でネガ電王は背後に向けて声を掛ける。

配下のイマジンに、ではない。

その後ろ、電車の出入り口の扉に背を預けている男に、だ。

 

「お前も参加するか?」

 

「俺は従うつもりは無いと言ったはずだが」

 

「別にそういうわけじゃねぇよ。ただ、誘ってるだけだ」

 

「ふん………いいだろう。その誘い乗ってやる。お前が俺の体に妙な仕掛けをしていないか確かめるのにちょうどよくもあるからな」

 

言うと赤い服を着たその男は電車から降りて来る。

その男の名は、駆紋 戒斗。

かつて、知恵の実を巡る戦いの中で死んだはずの男であった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「おいおい、それは“体”の名だろ?」

 

「違わないさ。だって、今の君にはアルティメット・ルパン…………ゾルーク東条の魂は入って無いんだから」

 

互いに顔に銃口を突き付け合いながら言い合う。

海東の言葉を受けても、ルパンは特に動揺したりはしない。

むしろ、それがどうしたという態度だ。

 

「そもそも、彼の魂はまだ体を変えて生きてるからね。君に残ってるのは彼の残留思念みたいな物だ。それに君は一度メガヘクスに取り込まれたはずだ。どういう経緯で元に戻って箱庭に辿り着いたか知らないけど、君は“個”を名乗れる程の存在では無いよ」

 

「それはどうかな?確かに俺は亡霊みたいな物かも知れない。元々の魂は別世界で生きてるかもしれない。けれども、だからと言って俺自身が“個”か残りカスなんて確定出来るわけでもない」

 

「じゃあ、君はどういう存在というつもりだい?」

 

「そうだな………この箱庭ではアルティメット・ルパンの名は広まって無い様だし、俺こそが箱庭におけるアルティメット・ルパンとなろうか!!」

 

「そうかい。でも、それは叶わないよ」

 

「何故だ?」

 

「君の体……サイバロイドZZZは僕にとってはお宝でね。僕の物にさせて貰う」

 

「それこそ、お断りだな!!」

 

同時に引き金が引かれ、両者共に紙一重で回避する。

お互いに飛び退き、海東はディエンドライバーにカードを入れ、ルパンはルパンガンナーの銃口に左掌を押し付ける。

 

「まずはその杖から戴くとしよう!!変身!!」ッルパーン!!

 

カメンライド!!

「渡すと思ってるのかい、変身!!」ディエーンド!!

 

ルパンガンナーから掌を離し、大きく振るう。

直後に宝石の様なエネルギー体が周囲に放たれる。

同時に海東もディエンドライバーの引き金を引いており、複数の残像と同時に青い板の様なエネルギー体が前方に放たれる。

互いのエネルギー体が衝突する中で姿を変えていく。

宝石のエネルギー体がアルティメット・ルパンの体に収束し、姿を仮面ライダールパンへと変える。

残像が全て海東へ重なり、その頭部に青いエネルギー体が重なり、仮面ライダーディエンドへと姿を変えた。

 

「さて、始めようか」

 

ルパンが軽くルパンガンナーを振るうと、三つのフィルムの様なエネルギー体が現れる。

その中から各々バット型、コブラ型、スパイダー型のコアを持たないロイミュードが生み出される。

 

「君にはこれだね」

カメンライド!!シザース!!

カメンライド!!G3-X!!

 

ディエンドライバーに二枚カードを入れ、引き金を引く。

幾つかの残像が重なり、仮面ライダーシザースとG3-Xの姿となる。

互いに召喚した者を連れ、お互いへと向かっていく。

これが二人の怪盗の最初の激突であった。

 

 





思いっきり番外編でした!!
時系列的にはvsアジ=ダカーハ決着直後くらいです。

ネガタロス達に関しては次回詳しく書きます。
NEVERの面々は傭兵として動いてもいるので拠点を箱庭の各所に作ってたりします。
ブラッドオレンジで自由に移動出来るのを活用した感じです。

ルパンに関してはMOVIE大戦フルスロットルに出てきた奴です。
海東が言った事に関しては見てれば分かると思います。
逆に見てなければネタバレ注意(遅い)

今年のMOVIE大戦もよかったです。
個人的にはMEGAMAXか、アルティメイタムに並ぶくらいには。

それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。


0話はまだ余ってる様ですよ(二枚もいらないよ…………)


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目覚めとネガの野望と死者の時間

 

ネガタロス達がNEVERと激突する数日前。

 

「ここは…………」

 

目覚めは突然だった。

駆紋 戒斗は見知らぬ場所で目を覚ました。

だが、目を覚ます事自体がおかしいはずだった。

何故なら彼は既に死んでいるのだから。

知恵の実を巡る最終決戦で鎧武に敗北した彼は死んでいるはずだった。

 

「どういう事だ?」

 

「よぉお目覚めか?」

 

状況を確認しようとしたら突如声を掛けられる。

声がした方を見れば黒い鬼が座っていた。

戒斗は、自身が戦極ドライバーもロックシードも所持していない事を確認すると軽く手を振るう。

すると、空間が裂け別の光景が現れる。

空間の裂け目に手を伸ばして適当な物を手に取る。

それを裂け目から取り出すと大剣に姿を変えていた。

 

「(どうやら力は使えるようだな)……………貴様は何者だ」

 

黒い鬼に大剣 グロンバリャムを向けながら言う。

だが、黒い鬼は大して気にせず立ち上がる。

 

「俺はネガタロス……イマジンって存在だ」

 

「そんな奴がこの俺に何の用だ?それとも此処は死後の世界とでも言う気か?」

 

「ある意味そうとも言えるな。俺の“ネガデンライナー(改)feat.幽霊列車”は死者の時間をも走るからな」

 

言われてよく見れば戒斗がいる場所は電車の車内の様だった。

が、そんな事はどうでもよかった。

戒斗はどんな世界だろうが己を貫き通すのだから。

 

「肝心な事を聞いてないぞ!!俺を此処に連れてきた目的はなんだ!!」

 

「お前は自分が甦った方法とかに興味はねぇのか?まぁ……正確に言えばまだ死者だけどな」

 

「そんな物はどうでもいい!!まさかと思うが甦らせたから従えとでも言うつもりか?ならば、無意味だな。俺は誰にも従う事などない!!」

 

「別に従えと言うわけでもねぇよ」

 

ネガタロスは肩を竦める様に言う。

そこで新たな足音が聞こえてくる。

戒斗が背後からの足音に気付き、振り向こうとした時には剣を首に当てられていた。

 

「もういいだろ?素直に従いそうに無いし、殺してしまおうぜ」

 

「やめておけ。お前じゃ勝てねぇよ」

 

「何だと?」

 

ゴーストイマジンがネガタロスの言葉を聞き捨てにならないと判断し、反論しようとする前に戒斗は行動を起こしていた。

 

「ふん!!」

 

「うぉ!?」

 

戒斗が目を光らせたと思うと周囲から植物が急速に伸びて来て、ゴーストイマジンの腕を縛る。

振りほどこうとする前に戒斗が大剣で斬り付けていた。

吹き飛び、乗客席に衝突する。

残骸の中から起き上がる時には立場は変わっていた。

今度は戒斗が剣を突き付ける番だった。

 

「戦うと言うのならば容赦はしないぞ!!」

 

「テメェ………やりやがったなッ!!」

 

両者が激突しようとした、その時だった。

一発の銃声が響き両者共にそちらを警戒する。

ネガタロスの手にはネガボルバーがあり、その銃口から煙が上がっていた。

 

「やめねぇか。まだ話の途中だって言うのに喧嘩してんじゃねぇよ」

 

「話だと?まだ何かあるというのか?」

 

「俺はまだ何も言ったつもりはねぇよ。別に従えと言うわけじゃねぇんだ」

 

「ならば、何が目的だ?」

 

「同盟を組もうじゃねぇか。俺は俺の“正義に負けない究極の悪の組織”を作る為、お前はお前の目的を果たす。その為の同盟だ」

 

「断ると言ったら?」

 

「仕方ねぇが二対一で消させて貰う」

 

戒斗は少し考える。

今の戒斗にこれと言った目的は無い。

大きな戦いで満足して敗れたのだから当然と言えば当然だ。

ネガタロスの目的は戒斗からして見れば文句は無い。

勝手にすればいいと思う所ではあるが、目的が無い今は普段とは違った。

 

「手を組むつもりは無い。……………だが、お前達が“弱者”か“強者”か少し見極めさせてもらおう」

 

「上から目線がムカつくが、まぁいい答えとして受け取っておこう」

 

ネガタロスはそう言うと近くに放置してあった残骸から何かを取り出して戒斗へと投げ付ける。

受け取って見てみるとそれらはドライバーとロックシードだった。

それらを所持している事を怪訝に思い、ネガタロスの方を睨む。

すると、ゴロリと残骸が転がった。

仮面ライダーバロンの姿をした残骸が。

 

「貴様……何だそれは!!」

 

「依代だよ。幽霊列車は死者の時間を走るとはいえ、狙って死者の魂を回収出来るわけじゃないからな」

 

ネガタロスの代わりにゴーストイマジンが答えた。

ネガタロスは説明する様に続きを言う。

 

「この際だ。お前を甦らせた方法も言っておくか。この依代はとある世界で機械生命体が造り出したお前の模倣体が機能停止した残骸だ。ちょうどいいから俺が回収させて貰ったのさ」

 

残骸の頭を軽く叩きながら言う。

模倣体とはいえ、これはほとんど完璧に本人をコピーした代物でもあるのだ。

 

「そして、こいつを使って性質の近いお前の魂を呼び寄せ、同じく回収していたヘルヘイムの植物やインベスの肉体と同調させてお前の体を再構築させたわけだ」

 

戒斗はヘルヘイムの果実を食し、ヘルヘイムの毒を凌駕する事によってオーバーロードへと進化を果たした。

ゆえにその肉体はインベスに限り無く近かった。

普通ならば魂を回収するだけでは甦る事も無かったが体を再構築させる事で甦らせたのだった。

とはいえ、実際には死者の時間の中で自由に行動出来る程度のはずだった。

そして、彼らは各々死んでいた身。

現世へと出る事は難しくもあった。

だが、とある場所の存在がその問題を解決していた。

 

「なるほどな。そうまでして戦力を集め、貴様は何をするつもりだ?」

 

「全ての時が収束する場所………箱庭で俺の軍団を完成させる。あそこなら手を組む価値がある奴らがうじゃうじゃいるからな」

 

「箱庭への突入は時の列車じゃ難しいんじゃ無いのか?」

 

聞いたのはゴーストイマジンだった。

だが、そこらへんの問題は当然ネガタロスも把握している。

 

「俺はあいつらに倒されてから時の砂漠で残骸をかき集め、俺の列車の修復と改良をしていた。そして、完成したのがこの“ネガデンライナー(改)feat.幽霊列車”だ!!この列車は箱庭に突入するくらい容易い物だ!!」

 

実際には神の列車と言われるガオウライナーキバの残骸が組み合わされた結果、時を喰らう力を限定的に備えたのだがそれ自体はネガタロスも把握していない。

彼が回収したパスも別の用途に使われる事が主である。

何はともあれ、彼らは箱庭へと突入し、新たな戦力を加える為にNEVERの持つロックシードを狙うのだった。

箱庭に突入した事により、彼らの霊格が確立し、存在が安定したのだがそれに気付くのはいなかった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

そして、現在。

戒斗は列車から降りて前へと出る。

懐から戦極ドライバーを取り出して巻き付ける。

同時にフェイスプレートにバロンの顔が浮かび上がる。

実はこれが渡されて初めての使用だったりする。

戒斗はバナナロックシードを取り出す。

 

「変身!!」バナナ!!

 

ロックシードを解錠し、指で軽く回す。

頭上では空間に穴が空き、バナナ型の物体が降りてくる。

 

ロックオン!!

 

ロックシードを戦極ドライバーへとはめる。

カッテイングブレードを倒し、ロックシードを開く。

 

カモン!!バナナアームズ!!ナイトオブスピアー!!

 

とある科学者の趣味である音声が鳴り響く中で、バナナ型の物体が戒斗へと降りて来る。

戒斗の体がライドウェアに包まれ、戒斗の顔が仮面に包まれる。

バナナ型の物体が展開し、バナナの鎧となる。

その手にはバナスピアーが現れる。

仮面ライダーバロン バナナアームズへと姿を変えるのだった。

 

「さぁ、お前達の力を見せてみろ!!」

 

戒斗が叫ぶと同時にNEVER達とネガタロス達の戦闘は開始されるのだった。

数の差はあった。

だが、NEVER達はそんな事は関係無いとでも言うかの様に向かっていく。

死者の時間より現れし者達と生ける屍達の戦いが始まる。





ネガタロスサイドの話でした!!
戦闘は次回より!!
戒斗に関しては使える力は全て問題無く使える状態です。

幽霊列車が別枠扱いなのはネガタロス的に無理矢理組み合わせたからに近かったからです。


それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。


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蟹と機械と最初の激突

 

アタックライド!!ブラスト!!

 

海東がディエンドライバーにカードを入れると銃口の周囲に残像の様な物が現れる。

そして、無数の銃撃が放たれる。

 

「おっと」ガン!!

 

ルパンはヒラリと銃撃を回避しながらルパンガンナーをガンモードにする。

死角を狙う様に撃っていくがそこで何かが割り込む。

 

ガードベント

 

盾を召喚したシザースが海東を守ったのだった。

が、ルパンは特に気にせず撃ち続ける。

そうやって気を引きながらロイミュードに背後から襲われる。

 

カイジョシマス

 

だが、それらはガトリング砲から無数の銃弾を放つG3-Xによって阻まれる。

そのままシザースとG3-Xによってロイミュード三体は海東から遠ざけられる。

バット型が翼を広げるが、G3-Xがガトリング砲から持ち変えた拳銃によって銃撃される。

そちらに気を取られてる間にスパイダー型がG3-Xに糸を吐く。

 

ストライクベント

 

巨大な蟹の鋏の様な物を装備したシザースが糸を全て切り裂く。

更にバイザーにカードを入れる。

 

アドベント

 

その音声と共に蟹のミラーモンスター、ボルキャンサーが現れ、ロイミュード達へと襲い掛かる。

 

「ぬぅん!!」

 

パワー重視のコブラ型がボルキャンサーへと殴り掛かるが軽く弾かれる。

蟹故に甲羅は硬いのだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ルパンはルパンブレードバイラルコアを取り出すとルパンガンナーへとセットする。

 

チューン!!ルパンブレード!!

 

ルパンブレードバイラルコアの背に付いてた刃が起き上がり、大きくなる事により、ルパンガンナーに上部に短剣の様な物が出現する。

海東は構わず撃つ。

だが、ルパンは銃撃を斬り裂きながら向かってくる。

 

「人殺しは趣味じゃないんだがね」

 

至近距離まで踏み込むとそのまま斬り掛かる。

海東はギリギリの所で避け、銃口をルパンへと向ける。

 

「それは大丈夫だよ。君じゃ僕は殺せない」

 

「だが、そうやってナメられるのも気に入らない」

 

海東の銃撃を紙一重で避けつつ、返す様に撃つ。

それらも海東は避ける。

その避ける一瞬を狙った。

大きく踏み込んだ上でルパンガンナーの銃口を押す。

 

アルティメット!!ルパァンスラッシュ!!

 

ルパンガンナーの刃へとエネルギーが収束していく。

避け切れないと判断した海東は素早くカードをディエンドライバーに入れる。

 

アタックライド!!バリア!!

 

「ハァ!!」

 

青い障壁がルパンの斬撃を阻んだ。

だが、それも長くは持たなかった。

障壁にヒビが入り、そのまま障壁ごと海東を斬り裂いた。

 

「グァ!?」

 

その衝撃で大きく吹き飛ばされる海東。

しかし、黄金の杖から手は離していなかった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

三対三の戦いになっていたが装備が違いで戦いは互角にはなっていなかった。

装備においてはシザースとG3-Xのがロイミュードより優れていた。

ガトリングでバット型の翼は撃ち抜かれ、バランスを崩して落下してくる。

そこを狙った様にシザースがバイザーにカードを入れる。

 

ファイナルベント

 

シザースはボルキャンサーの方へと飛び上がり、体を丸くする。

そして、ボルキャンサーがシザースを落下するバット型へと弾く。

勢いを付けたシザースは落下中で無防備なバット型へと攻撃を仕掛ける。

次の瞬間、バット型は爆炎に姿を変えた。

そちらにスパイダー型とコブラ型が気を取られてる間にG3-Xは武器同士を合体させてその先端にミサイルの様な物を設置する。

狙いを付け、引き金を引く。

それに一瞬早く気付いたスパイダー型が糸を放ち止めようとする。

だが、落ちてきたシザースが糸を斬り裂き、止める物を無くす。

 

「グバァ!?」

 

直撃したスパイダー型は爆炎となり、近くにいたコブラ型は余波で吹っ飛ばされるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「中々やるじゃないか」

 

海東が立ち上がりながら呟く。

 

「ならば、それを俺に渡してくれないかな?」

 

「冗談はよしなよ。僕は一言も渡すなんて言ってないし、負けを認めてないよ」

 

「そうだろうな」

 

言いながら互いに撃ち合う。

ルパンは撃ちながら接近するが、海東は特に動こうとはしない。

そのままルパンは刃を振るい、海東はディエンドライバーで受け止める。

ルパンは足払いをするが、海東はヒラリと避け代わりに銃撃を放つ。

ルパンはそれを避けると刃ではなくルパンガンナーそのもので殴り掛かる。

 

「くっ」

 

一瞬吹っ飛びそうになるが耐え、逆に腕を掴んだ上で銃撃する。

 

「ガァ!?」

 

体から火花を飛ばす様にルパンが吹っ飛ぶ。

それによって二人の間に距離が空く。

 

「ハッ!!」「フッ!!」

 

互いが同時に引き金を引いた。

二つの弾は互いにぶつかりあって相殺していく。

そんな時に爆音と共にコブラ型のロイミュードが転がり込んでくる。

 

「どうやらあちらは俺が出した方が押されてる様だな」

 

ルパンが呟く間に海東は行動をしていた。

ディエンドライバーにカードを入れ、銃口をルパンへと向ける。

 

ファイナルアタックライド!!ディ、ディ、ディエンド!!

「ハァァァ!!」

 

カードの束の様なエネルギー体が円形になって銃口を伸ばす様に並ぶ。

此方に向かって来ていたG3-Xもエネルギー体へと変換されて吸収される。

引き金は引かれ、ディメンションシュートがルパンへと放たれる。

 

「オォッと!!」

 

一瞬早く気付いたルパンは咄嗟にコブラ型を盾にする。

爆炎が上がるが、それに向かってシザースとボルキャンサーを向かわせる。

すると、予想通りにほぼ無傷なルパンが爆炎の中から向かってくる。

 

「あまり俺を甘く見ない方がいい」

 

仮面に隠れて見えないが、その言葉を言う時、不敵に笑っていただろう。

ルパンガンナーが軽く振られると、フィルムの様なエネルギー体にシザースとボルキャンサーが拘束されたのだ。

シザースとボルキャンサーは必死に足掻くがどうやっても解放されない。

その間にルパンはルパンガンナーの銃口を押す。

 

アルティメット!!ルパァンスラッシュ!!

 

ルパンガンナーの刃へとエネルギーが収束する。

そのままシザースとボルキャンサーを斬り裂き、爆散させる。

そのまま海東をも拘束しようとする。

 

「何ィ!?」

 

ルパンがフィルムを出現させると同時に海東の姿がブレた。

消えたわけではない。

高速移動しているのだ。

微かに見えてるのを目で追う。

 

「能力を隠してるのは君だけじゃ無かったって事さ」アタックライド!!ブラスト!!

 

「そういう事か」アルティメット!!ルパァンスラッシュ!!

 

つまり、ルパンが拘束能力を伏せていた様に海東も高速移動をあえて見せていなかったのだ。

だが、ルパンもただ出し抜かれるだけではない。

咄嗟に必殺技を発動させていた。

そして、自身の左側へと移動していた海東へと刃を振るう。

対して海東もブラストを既に発動させていた。

至近距離で互いの攻撃をが衝突する。

激しい爆炎が二人を包むのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

爆炎が晴れた時、海東とルパンは変身が解けた状態で背中合わせになっていた。

が、それで終わりというわけでも無い。

互いに即座に動いた。

 

「最初に戻ったね」

 

二人は互いに銃口を突き付けあっていた。

まるで振り出しに戻ったかの様な光景だった。

 

「どうする?まだ続けるかい?」

 

「いや、今日はここまでにしておこう」

 

海東が問うと、ルパンはあっさり引いた。

言いながらルパンガンナーを引っ込めて懐へとしまった。

海東は怪訝な顔をしながらディエンドライバーの銃口をルパンに向け続けている。

 

「どういうつもりかな?」

 

「よくよく考えて見れば今回は“予告状”を出していなかったし、出しても気付かれない状態だったのでな。それは俺の主義に反するというわけだ。それにこの惨状の中で漁夫の利同然で宝を持っていくのは怪盗ではなくコソ泥に近いからな」

 

「そうかい。主義がどうだの君も面倒だね」

 

「主義を通すから怪盗なのさ。では、さらばだ!!」

 

言うだけ言うとルパンは煙に包まれ、姿を消した。

どうやったかは分からないが、消える前のルパンの手には宝石の様な物が握られていた。

おそらく空間転移に応用出来そうな恩恵でも持っていたのだろう。

 

「全く時間を無駄にしてしまったね。何はともあれもう出会いはたくは無いね」

 

そう呟き、海東も銀のオーロラへと姿を消すのだった。

こうして後に各々違った意味で箱庭を騒がす怪盗アルティメット・ルパンと海東 大樹の最初の激突は幕を閉じるのだった。





海東サイド決着でした!!
どちらも負けを認めてはいませんが変身が解けた後は海東の方が危なかったりします。
ルパンの体はサイバロイドZZZという強化ロイミュードなので。
フィルムによる拘束は地味にチート臭かったり。

それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待っています。



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バナナの騎士とネガの鬼と野望の軍団


100話目です!!
とはいえ、特に何があるというわけでも無いですが
春映画にゼロノス組と橘さんの本人が確定しました
良太郎はともかく剣崎も本人だとは思います


 

「いきなさぁ~い!!」

 

ルナ・ドーパントが腕を振るうとバイクに乗ったマスカレイド・ドーパントが大量に生み出される。

しかし、ネガ電王、バロン、幽汽は無造作に斬り捨てながら進んでくる。

が、クラウンイマジン、ファントムイマジン、シャドウイマジンは数もあって手間取っている。

その間にヒート・ドーパント、ルナ・ドーパントが距離を詰める。

 

「私達がお相手してあげる!!」

 

ルナは伸びる腕を鞭の様に振るっていく。

ファントムとシャドウが弾き飛ばされる中でクラウンは飛び越えて腕の鎌で斬り掛かろうとする。

 

「ハァ!!」

 

だが、それもヒートによって蹴り飛ばされる。

続けて炎を纏わせた蹴りを叩き込むがさすがに防がれる。

 

「ゲームスタート」

 

「うぉ!?」

 

マスカレイドを斬り飛ばしていた幽汽にトリガー・ドーパントの銃撃が襲い掛かる。

避け切れずに肩から煙を放ちながらのけぞる。

 

「デリャァァァァァァ!!」

 

そこへメタル・ドーパントが鉄棒を振り降ろす。

剣でギリギリ防ぐが受け止める事は出来ず、弾き飛ばされる。

そのまま連撃が来るが今度は受け止めて的確に防ぐ。

 

「チッ!!ウゼェな!!」

 

「ダァァァァァァ!!」

 

受け止めてはいるが一発一発が強力であり、受け止めている剣が折れそうである。

中々攻めに転じれずにイラついていると、トリガーの銃撃が来る。

 

「ぐぁ!?」

 

隙を見せたつもりでは無かった。

だが、メタルの攻撃を受け止めて動け無い所を正確に狙われるのだった。

 

「お前の仲間は中々に強いようだな」

 

「そりゃそうだ。俺達がイマジンごときに負けるはずが無いからな」

 

大道は挑発する様に言う。

彼の目の前にはネガ電王とバロンがいる。

エターナルエッジでネガデンガッシャー ソードモードとバナスピアーによる攻撃を正確に受け流していく。

二対一なのだから鍔迫り合いは隙になる。

なるべく受け止めずに流しているのだ。

 

「お前らとは場数が違うんだよ、俺達は」

 

「それはどうかな!!」

 

叫びながらバロン……戒斗は大道に斬り込んでいく。

バナスピアーによる激しい突きを武器の側面を叩く様に流していく。

 

「俺はずっと戦ってきた!!二度と屈しない様に!!弱者の考えを潰す為に!!」

 

「そうか……なら、一回地獄を見てみるといいさ。強者も弱者も関係無い………全てが行き着く先をな!!」

 

大道は幾つかのガイアメモリをマキシマムスロットに差し込む。

 

サイクロン!!マキシマムドライブ!!

ファング!!マキシマムドライブ!!

スカル!!マキシマムドライブ!!

 

エターナルエッジに風と刃の力が纏われる。

それをスカルで強化された力で振るう。

 

「ハァ!!」

 

「その程度!!」カモン!!バナナオーレ!!

 

戒斗はカッティングブレードを二回倒す。

音声と共にバナスピアーを頭上にに上げる。

バナスピアーに巨大なバナナ型のエネルギー体が纏われる。

それを大道に向かって振り降ろす。

エターナルエッジとバナナ型のエネルギー体が衝突し、爆炎が周囲を包む。

その爆炎を斬り裂く様にして大道が前に出てくる。

そこに横合いからネガ電王が割り込む。

 

「俺を忘れて貰っちゃ困るな」

 

「戦いで敵から目を離すとでも思ったか?」

 

ネガ電王が振り降ろしたネガデンガッシャー ロッドモードをエターナルエッジで下から斬り上げる様に弾き上げる。

ネガ電王が体勢を建て直そうとした所で引こうとしていたロッドを掴む。

その上でガイアメモリを差し込む。

 

ユニコーン!!マキシマムドライブ!!

「ダァァ!!」

 

「グァァ!?」

 

エネルギーを纏った拳をネガ電王に思いっきり叩き込む。

転がっていくのを追撃する前に戒斗が割り込む。

 

マンゴーアームズ!!ファイトオブハンマー!!

 

「甘いな」ゾーン!!マキシマムドライブ!!

 

振り下ろしてきたマンゴーパニッシャーを瞬間移動で回避する。

戒斗の背後に移動するとその背中を蹴り飛ばす。

ネガ電王の方へと転がってくのを見ながらエターナルメモリをエターナルエッジに差し込む。

 

エターナル!!マキシマムドライブ!!

「終わりだ」

 

「いいや、そうとも限らねぇぜ」フルチャージ!!

 

「ナメるなぁ!!」マンゴーオーレ!!

 

ネガ電王はネガデンガッシャーをガンモードにした上でパスをベルトにかざす。

戒斗はカッティングブレードを二回倒す。

ネガデンガッシャーの銃口の先端へとエネルギーが収束していく。

戒斗が頭上でマンゴーパニッシャーを回すとマンゴーパニッシャーの棍棒部にエネルギー体が収束していく。

それらが同時に放たれ、大道が放った斬撃波と衝突する。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「調子に乗るんじゃねぇぞ!!」フルチャージ!!

 

幽汽がパスをベルトにかざし、剣にエネルギーを収束させる。

トリガーの銃撃を弾きながらエネルギーを纏わせた剣でそのままメタルへと斬り掛かる。

 

「ハァァァァァァ!!」

 

「ドリャァァァァァァ!!」

 

鉄棒が振り下ろされるだろうと思い、鉄棒ごと斬る様に剣を振るう。

が、メタルは振り下ろさずに鉄棒で幽汽を突いた。

虚を突かれるが剣は鈍らない。

 

「ぐぅ!?」

 

「どわぁ!?」

 

先にメタルの鉄棒が幽汽の胸を突いた。

それによって斬撃の軌道がズレる。

しかし、ズレたと言っても浅くなった程度でメタルも吹き飛ぶのだった。

 

「あら~中々やるじゃない!!嫌いじゃないわ!!」

 

「ウゼェんだよ、オカマが!!」

 

「レディって言いなさい!!」

 

シャドウとファントムはヌルヌル動き、腕を鞭の様に振るうルナに終始翻弄されている。

ついでにバイクに乗ったマスカレイドが襲い掛かるので対応に苦労している。

 

「ちょこまかと…………」

 

ヒートは素早く奇妙に動くクラウンにイラついていた。

クラウンは喋らずにぬらりくらりとヒートに鎌で斬り掛かる。

ヒートはそれを避けながら炎を纏った蹴りを加えるが中々当たらない。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

結果としてはほぼ相殺だった。

しかし、二対一で当然ではあるが大道の方が多少は押された様で余波に耐える様にしていた。

 

レモンエナジー!!

 

そこに爆煙を裂く様にして黄色の弓矢が襲い掛かる。

大道はほとんど反射的に矢をエターナルエッジで斬り裂いた。

だが、矢は切っ先に触れた途端に拡散する。

レモン型のエネルギー体となって大道を包み、拘束する。

爆煙の向こうではレモンエナジーアームズへとアームズチェンジしたバロンがレモンエナジーロックシードをセットしたソニックアローを構えていた。

 

「オラァ!!」フルチャージ!!

 

「な………ゴハァ!?」

 

拘束された大道をネガ電王がネガデンガッシャーをソードモードにして斬り飛ばす。

さすがに拘束された状態ではどうにも出来ず斬り飛ばされて吹き飛ぶ。

その時、懐から何か落ちた。

それを拾い上げてネガ電王は笑う様にする。

 

「目的の物は手に入れさせて貰ったぜ」

 

「こりゃしまったな」

 

ロックシードを奪われたが、大道はわざとらしく呟く。

そして、何か合図する様に指を鳴らすのだった。

 

「どうする続けるか?」

 

「いや、俺達は引かせて貰うぜ。目的を果たせば後は無駄な戦いをする必要も無いからな」

 

ネガ電王がそういうと同時にネガデンライナーがネガ電王達を回収して何処かに走り去るのだった。

大道はそれを見ながら変身を解くのだった。

その後ろに合図と共に戦闘を切り上げたNEVERの面々が集まっていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

戦いを終えた大道達は“別の”拠点にいた。

あれだけ派手に戦闘をしたあの拠点は破棄した。

傭兵としてはあまり拠点を知られるわけにはいかないのだ。

では、何故大道達が遠く離れているはずの別拠点にいるかと言うと、それは予め準備を進めていた物のおかげであった。

 

「それにしても予め拠点を繋げて置いてよかったわね」

 

「あれにばかり頼るわけにはいかないからな」

 

そもそも一つしか無いロックシードが奪われたら動きを制限されるくらいでは駄目だった。

なので、奪われた時を想定して拠点同士空間を繋げた“門”を用意していたのだ。

 

「動きが制限はされるがしばらくはこれで問題は無いだろう」

 

「けど、あれを狙う方はダメそうね」

 

「また次の機会を狙えばいい。まだ時間はたっぷりあるんだからな」

 

“あれら”の計画が動くまでは時間がある。

それまでに自分達の目的を果たせば問題無い。

死人である彼らは滅びるその時まで戦いを続ける。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ネガデンライナー車内。

ネガタロスと戒斗は復活の儀式の準備を進めていた。

幽霊列車の力で魂を回収するのはいいが、肉体を用意するのにはそれなりに準備がいるのだ。

依代であるロックシードを眺めながら戒斗は問う。

 

「貴様は何を基準に勧誘している?“それ”より強い奴を俺は知っているぞ?」

 

「強いだけじゃダメなんだよ。その力に自惚れて正義に倒されるのがお決まりだからな。必要なのは上を目指す悪って奴だ。こいつは天下を取ろうっていうある意味お前と同じ様な経歴もあるしな」

 

「興味が無いな」

 

戒斗の素っ気ない返しを聞き流しながらネガタロスは、大ショッカーに回収されてないってのも条件ではあるけどな、と付け加える。

その間に戒斗はクラックを開いてヘルヘイムの植物を多少入れる。

そして、ネガタロスの携帯が振るえる。

ネガタロスが携帯を取り出してその画面に映る表示を見る。

 

「魂の回収は終わった様だ。あとは体だな」ブラッドオレンジ!!

 

言いながらブラッドオレンジロックシードを解錠する。

同時に頭上に円形の空間の裂け目が生じ、中からブラッドオレンジ型の鎧が降りてくる。

それに合わせる様にヘルヘイムの植物が人型に固まっていく。

 

「目覚めな」

 

呟き、ロックシードを放り投げる。

ロックシードは人型にズブリと取り込まれる。

 

ブラッドオレンジアームズ!!邪ノ道オンステージ!!

 

ギター音と共に音声が鳴り響く。

頭上の物体が人型の物体に降りて行き、鎧として展開する。

完全に展開する前にその身はライドウェアに包まれた。

新たな体を手に入れた赤い鎧は静かに立ち上がる。

 

「これで俺の軍団がまた一つ強化された。さぁ、次の人材を確保に行くとしようか」

 

ネガタロスは野望の為に突き進む。

神の模造体を加え、その悪の軍団は更に大きくなる。

正義を打ち破るべく、力を蓄え、線路を進む。





武神復活でした!!
NEVER側はブラッドオレンジを奪われても移動手段を確保していたのであまり問題はありませんでした。
ネガタロス達と戦いあまり被害が出ても面倒なので多少手を抜いてた面も。

春の新刊で第一部完、夏の新刊で第二部始動らしいです。
第一部と第二部の間にはオリ編計画中です。
サブタイは
『影と不死者と白い切り札』
『円陣と金の魔法とグサゲゲル』
各々別の内容です。
その内、どちらを先にやるかアンケートやります。

それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます。

次は少年兵の短編が終わった辺りで


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新天地と追悼式と歪んだ歯車
一時の休息と新たな影とメイド長の目覚め


今回は隼さんとのコラボの後の話になります
後日談とは言いにくいですが


五月雨の世界から帰還した映司達は“ノーネーム”の本拠にいた。

アジ=ダカーハとの戦いから数日も経たない内に別の世界に飛んで戦って疲れた体を休めているのだ。

とはいえ、此方の箱庭では映司達が別の世界に飛んでから帰ってくるまでそう時間は経っていなかったが。

士だけ帰ってくるなり、何かを調べる為に何処かへと出ていった。

士自体は“ノーネーム”に属しているわけではないのだから特に止める理由も無かったのだが。

 

「追悼式にまでは戻る。あいつらの動きは多少引っ掛かる所がある。それを確かめる為に行くだけだ」

 

そう言って士はマシンディケイダーに乗り、何処かへと走り去るのだった。

映司と晴人が雑談しながら茶を飲んでいると十六夜が入ってきた。

 

「よう」

 

「十六夜君も飲むかい?」

 

「あぁ、貰っとく」

 

十六夜は座りながら茶を受け取る。

そこでアンクの姿が無い事に気付く。

 

「アンクの奴はどうした?」

 

「あいつなら遠くへは行っては無いと思うよ」

 

映司の言葉通り、アンクは“ノーネーム”本拠の屋根の上で寝転びながらアイスを食っていた。

 

「それでお前は何か聞きに来たんじゃないのか?」

 

「あぁ、お前達が行ったという別の箱庭の話を聞こうと思ってな」

 

十六夜の答えに二人は頷く。

聞いてくる理由も気になる理由も分かりはする。

 

「いいよ。まずは何処から話そうか」

 

特に隠す理由も無いので映司と晴人は別の世界での出来事を話し始めるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

某所。

箱庭であって箱庭では無い所。

そこに大ショッカーの連盟の基地があった。

二つ首の鷲の様な紋章の中央にあるランプが点滅する。

 

『そうか…………あの程度の数では別の箱庭への侵攻もままならぬか』

 

「えぇ侵攻に参加した者は全滅したようです」

 

「だが、ガラによって回収する物は回収されているのでご安心を」

 

「この侵攻も決して無駄ではありません。別の箱庭への干渉実験としてもいいデータがとれました」

 

「ですが、エネルギーもそれなりに使ってしまい。再び別の箱庭に干渉するにはかなりの時間が必要でしょう」

 

「無論、怪人再生には問題はありませんが」

 

紋章から聞こえてくる“大首領”の声に直属の大幹部達が答えていく。

今見える人影は被り物をしてマントを纏い腰に金のショッカーベルトを巻く男、白のスーツに黒のマントの老人、緑の軍服で眼帯をしている男、兜被り黒の軍服で指揮棒を持つ男だ。

各々の影には各々の真の姿がチラついている。

 

『我の悲願の為に計画を進めるのだ!!悲願が達成されし時、我らが全てを飲み込むのだ!!』

 

歪な歯車は加速し、正規の歯車まで巻き込んで行く。

歪みに歪んだ“世界”はその“ズレ”を広げていく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「なるほどな。士の奴が世界は無数にあるとか言ってたがそこまでとはな。それもまた“可能性”か」

 

世界は無限に広がっている。

それらに全てに繋がる箱庭ももっと大きな枠として見れば幾つもの“可能性”が存在する。

“視点”を変えれば別の物に見える様に。

話を聞き終わった十六夜は時計を見ると立ち上がった。

 

「どうした……あぁ、時間か」

 

「メイド長の看病のな」

 

「レティシアちゃんはまだ目が覚めないんだよね」

 

「真っ二つにされたからな。吸血鬼と言えど重傷だ」

 

レティシアは映司が早々に回収した事で早々に傷自体は回復し始めたが意識は戻っていなかった。

“ノーネーム”のメンバーはそのレティシアを順番で看病しているのだった。

 

「じゃあ、行ってくる」

 

「よろしくね」

 

そうして十六夜は部屋を出てレティシアの病室へと向かうのだった。

とはいえ、本拠に運び込まれたのは少し前ではあるが。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

某所。

赤の魂を受け継ぐ男は何処かを眺めていた。

 

「彼らがキョウリュウレッドを擬似的にとはいえ召喚していてくれたおかげで“疑似創星図”の負担は軽く済んだようだ」

 

彼は“世界”を眺めていた。

“ズレ”により歪みを広げる“世界”を。

 

「奴らの動きもそろそろ活発化し始めるところか。俺も力を、仲間を集める必要があるかもしれないな」

 

そう言うと彼は何処かへと歩き出すのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

箱庭では無い何処かの世界。

“ズレ”の波紋はその世界に新たなる歪みを発生させていた。

だが、それは微々たる物でもあった。

故に観測出来る者も少なかった。

明確な影響が出る事も無く、出たとしても短時間のみなので物好きな者以外は関わろうとはしなかった。

それに関わろうとする事はかつての“事件”と同等の危険を感じさせる面もあったからだ。

だが、物好きはどの世界にも存在する。

 

「これはどうやら別の世界に繋がってるのかな?けれども、見た感じでは一方通行っぽいね」

 

その物好きな男は不敵に笑う。

彼にとってそれは最高の最高の誘惑だった。

“退屈”からの解放を感じさせたからだ。

 

「いいね。これはいいね。僕が求めるアーティスティックで、ファンタスティックでエキセントリックな人生がありそうじゃないか!!」

 

男は歓喜していた。

あの世界から“解放”されてから眠っていた感覚が甦る様だ。

とはいえ、そこですぐに飛び込む男でも無い。

 

「けれども、“アゲハ”くんのいるこの世界も惜しくはあるんだよね。彼も僕を退屈にさせないからね」

 

それが心残りではある。

だが、彼は決断する。

 

「だけど、僕は行こうじゃないか!!新天地に!!」

 

決めるなりに彼は飛び込んだ。

かつて味わった快感を求めて。

“PSYREN”世界の様な“異常”を求めて。

望月 朧は銀色のオーロラへと飛び込んだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

“ノーネーム“本拠の廊下を霧崎とラッテンは歩いていた。

 

「だから、言ってるじゃない!!霧崎には霧崎の得意分野という物があるんだから私は私でそこを補わなきゃいけないでしょ!!」

 

「だからよ!!お前がそこまでやる必要は無いだろ!!」

 

「でも、そうしないと霧崎が無茶するでしょう!!」

 

「その無茶をお前がやる必要は無いって言ってるんだよ!!」

 

「御二人とも!!少し静かにしてください!!」

 

そこで黒ウサギが割り込んできた。

偶然では無い。

行き先自体は一緒なので此処で遭遇するのはおかしくはない。

彼らはこれからレティシアの病室に行くところなのだ。

黒ウサギの言う通り、病室の近くで騒ぐのもあれなので二人は静かに歩き出す。

レティシアの部屋の前に着くと中から話し声が聞こえる。

どうもどうやらレティシアが目覚めたらしい。

話の流れ的に黒ウサギ達を十六夜が呼ぶ様になる。

そこでラッテンが扉を開けた。

 

「その必要は無いわよ!!」

 

ニッと笑いながらラッテンが部屋へと勢いよく入るが、続いて入った黒ウサギがレティシアへと飛び付いた。

大量の涙と鼻水を流しながら飛び付く様子に何とも言えなくなるラッテンの肩に霧崎は手を置くのだった。

 

「レ、レ……………レディジアざまあああぁぁぁぁ……………………………!!」

 

「お、落ち着け黒ウサギ。ほら、鼻かんで」

 

涙と鼻水でくしゃくしゃになっていた黒ウサギにティッシュを当てて、チーン!!と鼻をかませるレティシア。

黒ウサギもそれで落ち着く。

ウサ耳をピンと伸ばして、胸を張って報告する。

報告を聞いたレティシアが何故か取り乱し、疲れた様にベッドに倒れる。

こんなレティシアは本当に珍しかった。

何か己の言葉に悔いる所があった様だが事情を知らない黒ウサギはオロオロする。

 

(まぁ元魔王で何か思う所でもあるのかしら?)

 

ラッテンだけは何か感じているが特に何も言いはしないし、わざわざ聞いたりはしない。

そこらへんは分かっている。

だから、パンパンと手を叩いて場を収める事にする。

 

「メイド長も目を覚ましたんだし、皆に伝えましょうよ」

 

「そうだな。映司さんもかなり心配してたしな。子供達も喜ぶだろうし」

 

「Y、YES!!快気祝いをしなければなりませんね!!」

 

「そうだな。………でも、霧崎とラッテンは手伝わなくていいぞ。お前らはまだゴタゴタしてるんだろ」

 

「何かあったのか?」

 

レティシアが問うとラッテンが苦々しく語り始める。

その隣で霧崎が頬を掻く。

 

「ただの義手の注文よ。今の義手も動作は問題無いんだけど、どうせなら色々仕込みたい所なのよね」

 

「それで俺もゲームで金を稼ぐなりして手伝おうと思ったんだけどな」

 

聞く所によると金自体は問題無いようだが、その仕込みの内容に色々問題があるようだ。

ルイオスやウィラと共に話を進めてるようだが、霧崎も口出しをしている様で中々最終的な結論が出ないようだ。

黒ウサギが恐る恐る踏み込む。

 

「一体どの様に手を加えるつもりなのですか?」

 

「倉庫に眠ってた物を仕込む程度の話よ」

 

「それがやり過ぎだって言ってるんだよ」

 

「そのくらいやらないといけないでしょうが」

 

「お前がそこまでやる必要は無いんだよ」

 

再び口論になる。

ヒートアップする前に黒ウサギがハリセンで叩き飛ばして黙らせる。

どうもどうやら完成図自体は凄い事になってる様だがそれ実際に組み込むかどうかが議論のポイントの様だ。

 

「そうだ。レティシア様は明日の戦没者の追悼式に出席されますか?辛いようなら休んでいても…………」

 

魔王との戦いで散って逝った者たちを送る戦没者の追悼式。

“ノーネーム”から犠牲者は出なかったが他のコミュニティからはかなりの数の死者が出ている。

その話を聞くと霧崎の顔に一瞬影が出来る。

ラッテンはそれに気付くが何も言いはしない。

何か言わない方がいい時もあるのだ。

 

「…………いや、出席させてもらおう。彼らの犠牲無くして勝利は得られなかった。共に魔王と戦った戦友として花を添えたい」

 

「あいよ。サラにはそう伝えとく」

 

じゃあな、と手を降って四人は退出するのだった。

 

 





半分くらいはレティシア短編の前編でした!!
隼さんとのコラボも実際にあったという事で

朧に関しては後々
隼さんとこの箱庭への干渉がPSYREN世界にも影響したという感じではあります。

ラッテンの義手に仕込む物についてはヒント色々とあったりします
原作メンバーもヒントだったりします。


それと、アンケートをやります。
『影と不死者と白い切り札』
『円陣と金の魔法とグサゲゲル』
のどちらを先にやるかです
投票は活動報告で
活動報告の方には簡単なあらすじも載せます

別作品のアンケートも絶賛実施中です!!

それでは、質問などがあれば聞いてください。
感想待ってます!!


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“怪物”と改造兵士とマッドサイエンティスト

一ヶ月振りくらいに投稿です!!
活動報告にてアンケート実施中!!


某所。

箱庭で箱庭では無い場所。

大ショッカー連盟の研究施設。

そこは大きな部屋であった。

部屋の中心には緑色の怪物が鎖で縛られていた。

白眼を見せるその怪物はただ暴れようとしていた。

だが、特別製の鎖は壊れない。

そして、部屋の四方が開き、何かが入ってくる。

灰色の体色に機械が混じった肉体を持つ怪物だった。

その右手には鈎爪の様な刃がある。

その怪物達はとある世界で“改造兵士レベル2”と呼ばれていた個体だ。

四方から改造兵士レベル2が部屋に入ると扉は閉められただの壁となる。

同時にアラームが鳴り響き、鎖が外される。

それにより、“怪物”は自由になる。

 

 

「■■■■■■■■■■■■__ッ!!」

 

 

怪物は解放されると同時に吠えた。

それだけで凄まじい衝撃波が周囲に放たれる。

“怪物”を中心に床にヒビが入り、捲れ上がり、吹き飛ばされている。

改造兵士レベル2達は何とか持ちこたえている。

 

「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

“怪物”の背後にいた改造兵士レベル2が衝撃波が収まると同時に鈎爪を振り上げて“怪物”に跳び掛かる。

その鈎爪が“怪物”の皮膚に触れる一瞬前だった。

鈎爪は皮膚の手前で止まり、改造兵士レベル2の血が舞った。

“怪物”は動いてすらいない。

何が改造兵士レベル2に攻撃したのか、それは“怪物”の腕だった。

ただし、突如として腰の上辺りから生えた三本目、四本目の腕だった。

それが改造兵士レベル2の腹部を貫き、鈎爪を止めたのだった。

“怪物”は振り向き様に軽く腕を振るう。

それだけだった。

それだけの行動が改造兵士レベル2を真っ二つにした。

ベチャリと改造兵士レベル2の上半身が地面に落ちる。

同時にその頭部が点滅を始める。

頭部内に仕掛けられた自爆装置が作動したのだ。

しかし、作動する前に“怪物”に踏み潰される。

ここまで数秒。

圧倒的な力の前に残り三体の改造兵士レベル2の反応が遅れる。

それが命取りになった。

“怪物”が右側にいた改造兵士レベル2に狙いを付ける。

それに気付きはした。

だが、全てが無駄だった。

 

「ガァァァァァベキャ

 

反応した時には既に目の前に近付かれていた。

“怪物”はただ跳んだだけだった。

飛蝗の様に地面を蹴った。

それだけの行動でも“怪物”の身体能力に掛かれば十数mの距離を一瞬で跳ぶ。

叫びを上げるより早く右手に頭部を掴まれて握り潰される。

超振動する爪と圧倒的な握力の前では改造兵士レベル2の装甲も意味をなさない。

残り三本の腕により、正確にはその腕に生えた超振動する刃によってその胴体は八つ裂きにされる。

肉片がボトボト床に落ちる。

“怪物”の緑色の肉体も返り血に染まっていく。

その背に向かって残り二体の改造兵士レベル2が鈎爪を振り上げて跳び掛かる。

それも“怪物”は気付いていた。

軽く振り返り、目を見開く。

同時に“念力”によって二体の改造兵士レベル2が空中に固定される。

右側の個体を蹴り飛ばす。

ただの蹴りだ。

それでも壁に激突した改造兵士レベル2は水風船の様に破裂した。

壁に赤い染みが出来るだけで済むわけが無く、その衝撃は建物全体を揺らした。

そして、最後の個体は内から裂かれた。

四本の腕に体を貫かれ、超振動の刃にその身を裂かれるだけでなく、そのまま開かれて肉片を散らされた。

その部屋に残ったのは血と肉片と“怪物”だけだった。

だが、“怪物”は止まらない。

何かに気付き天井を、否、壁の上部に視線を向ける。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

改造兵士レベル2四体が“怪物”に八つ裂きにされる様を真木清人とレム・カンナギはただ観察していた。

 

「やはり、第三段階に達している“改造兵士”は“素体”に向いてる様ですね」

 

「そうだね。まさしく“怪物”と言った暴れ様だったよ」

 

「ですが、まだ足りませんね」

 

「あぁ、せめて改造兵士レベル2程度は念力で全て潰せるくらいになってくれなければな」

 

「ミュータミットやクォークスなどの要素を加えたのですがいかんせん力で暴れるのに片寄る様ですね」

 

分析して解析してる間に“怪物”は二人の存在に気付く。

実験室は上部から見下ろせる構造になっている。

もちろん強化ガラスではあるが“怪物”なら容易く壊せるだろう。

だが、二人は特に警戒はしない。

 

「ともかくこの“個体”は処分して構いませんね」

 

「他の“個体”に手を加えた方が“素体”としては優秀になってくれるだろう」

 

結論を出すと設置されていたスイッチを躊躇いなく押す。

同時に実験室の天井が開く。

次の瞬間、“一兆度”を越える火球が実験室を包む。

直撃した“怪物”は灰すら残さずに消し飛ばされるのだった。

 

「“彼ら”に今の実験データを渡しておいてください。“彼ら”の造っている個体に利用出来るはずなので」

 

指示を受けた黒マスクの研究員は迅速に実行する。

そして、真木は今後の方針の話し合いに戻る。

 

「おそらく動物的な本能が暴走しているのでしょうが、幾ら性能が良くても有効に利用出来ないのであれば意味がありません」

 

「全くだな。だが、それは仕方なくもある。“裏切り防止”の意味もあるのだからな」

 

「かつての“改造兵士レベル3”も裏切り、“仮面ライダー”になったそうですね」

 

「それにあの程度の個体では“素体”にしても改造後の性能に体が耐えられまい」

 

「解決すべき問題は“知性”と“裏切り防止”の両立、“素体”の強度ですか。かの

一号、二号を倒した“三号”、そしてそれに並ぶ戦士“四号”。彼らのデータを組み込んだせいで問題が更に増えましたね」

 

「元よりこの“計画”は問題が山積みだよ。何しろ失敗の“前例”が多過ぎるからな」

 

彼らの進めているのは究極の改造人間を造るという“計画”である。

彼らの個人的な研究をしつつの“計画”なので進みは遅い。

大ショッカー連盟はそもそも一丸では無いので幾つもの計画が平行して進行しているのだった。

そもそも改造される“素体”の段階で規格外の個体を作ろうというので問題が発生していた。

改造兵士レベル3を元として大ショッカー連盟の技術を結集させる。

性能は高まるがそれ故に問題も発生するのだった。

 

「やはり、彼らの所持する“細胞”も加えますか?」

 

「適合するかどうかが問題ではあるな」

 

「何か手伝える事はあるかな?」

 

そこへ一人乱入してくる。

男の名は戦極 凌馬。

とある世界でベルトの開発をしていた男である。

彼も大ショッカー連盟の技術により甦っていた。

 

「おや、貴方が此処に来るとは珍しいですね」

 

「私が研究を進めるベルトにも何か利用出来るかもしれないからね」

 

戦極は独自のベルト開発を進めると共に大ショッカー連盟が持つデータからベルトを再現する役目も持っていた。

他人を信用しない故に自身の研究は他人に明かさない。

とはいえ、他の連中にも言える事ではあるが。

 

「それとこの“計画”のプラスになるかもしれない情報が手に入った物でね。私が研究を進めるヘルヘイムに深く関わりを持つ者達をこの“箱庭”で発見した。もしかしたらその者達の細胞も利用出来るかもしれない」

 

「それで今から貴方が確保してくると?」

 

「そういう事だ。しばらく研究室を明ける事になるのでそれを伝えるのも兼ねてるのさ。私の研究室に不用意に近付くのを防ぐ意味合いも兼ねてね」

 

言うだけ言うと戦極は何処かに去っていった。

ようは計画に利用出来るかもしれない物を確保出来るかもしれないという事と研究室に近付けば何かある事を言いに来ただけである。

本人が来たのは警告の意味を強める為でもあるのだろう。

ある程度、話を進めていくと真木は一つの可能性を思い浮かべた。

 

「“三号”と“四号”は貴重なサンプルとしてショッカーが歪めた歴史からデータを取りましたけど。“箱庭”と言えど本来存在しない所に干渉すれば何か問題が発生するのでは?」

 

「確かにあれは“歴史改変マシーン”により生み出された歪んだ歴史だ。“歴史改変マシーン”が失われ、修正を受けたはずの物を再び掘り返せば何かしらの“歪み”が生まれるだろう」

 

“歴史改変マシーン”とはかつてショッカーが生み出した装置である。

しかし、今となっては失われ再現は出来ない物であった。

あれは破壊されたという事実が確定した時点で永遠に失われてしまうのだ。

 

「だが、あれらへの干渉は“大首領”が望んだ事だ」

 

「つまり、“歪み”を生む事自体が目的かもしれないと?」

 

「私には“大首領”の思考は分からないが少なくとも“世界”への影響などは気にしないだろう」

 

「せめて、終末へと向かう鍵になってくれればいいのですが」

 

大ショッカー連盟の研究施設にて密かに進められる“計画”。

その“計画”の余波は、大ショッカー連盟という存在の余波は“箱庭”すらも巻き込んでいく。

小さな波紋は重なり大きくなっていく。

イレギュラーが増えれば増える程に狂っていく。

歪んだ歯車は歪に回り続けていく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

全ての始まりは一つの“裏切り”だった。

それを皮切りに“裏切り”は繰り返されていく。

それに終止符を打つ為の計画。

それが究極の改造人間を生み出す“計画”_____“No.0計画”である。




何故か敵サイド一色の回でした!!
ようは改造兵士を元に究極の素体を造った上で改造人間にして、究極の改造人間を造ろうという感じです。
web短編の話をやるつもりがどうしてこうなった。

三号に関しては一号&二号を殺した改造人間という重要データ扱いです
四号については三号と同格という事で
まぁデータ取られたというだけなので本人達は特に関係無かったり

歴史改変マシーンに関しては出すと面倒なので永遠に失われたという事で
でも、それ以外の部分は後々絡んでくるかも

No.0計画は大首領主導の計画だけど大首領の“目的”とは別物だったり
真木とカンナギだったのはたまたまであり、他の研究者連中も参加はしています
戦極に関しての詳しい事は新刊出たらそこでやると思います

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!
アンケートに参加してくれると嬉しいです!!


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追悼式と宴席と任侠の王

活動報告にてアンケート実施中

今回はweb短編の話です


 

人としての体を奪われ。

人としての生を奪われ。

平穏な生活を奪われた彼は、こう言った。

俺は_____ 人間の自由と平和を守る為に戦っている。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

_____“北東の境界壁”。

追悼式はかつて“火龍誕生祭”が行われた赤壁の街で行われた。

尖塔群の先には戦いに参加した全てのコミュニティの旗印がなびき、彼らを讃えている。

その中で一際高い位置でなびく三つの旗があった。

魔王アジ=ダカーハを倒した赤地の旗の“ノーネーム”。

命と霊格をなげうってまで勝機を作った“ウィル・オ・ウィスプ”。

多くの犠牲者を出しながらも獅子奮迅の働きをした“サラマンドラ”。

彼らの活躍無くしてこの度の勝利はあり得なかっただろう。

階層支配者と地域支配者たちは彼らに感謝の意を述べ、コミュニティ再建に向けての支援を惜しまないという言葉で追悼式を締めた。

その様子を士は少し離れた場所で撮っていた。

他にもその様子を遠くから眺める者は何人かいた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

戦没者の名前が順々に読み上げられ、全ての行事が終わった頃。

“階層支配者”の一人である蛟劉が、“ノーネーム”に泊まっている宿に足を運んでいた。

棍を肩に負い宿の茶席に座りる蛟劉は、肩を回しながらため息を吐いた。

 

「いやあ、こんな堅苦しい行事に出るのは久しぶりやから肩凝ってしゃあないな」

 

「おいおい、不謹慎だろ。今日ぐらいは喪に服してもいいんだぞ」

 

「そりゃこっちの台詞や。何やこれ。顔見に来たら、殆ど宴会状態やないか」

 

「それはまぁ仕方無いだろ」

 

そう言いながら士が写真を撮る。

その先では宴席が開かれていた。

酒瓶や料理が東西問わずに転がっている。

死者を労うのも大事ではあるが、生き残った者が何時までも暗くては仕方無い。

心を癒す為には酒と肴、そして痛みを分かち合う場が必要なのも事実だ。

蛟劉、十六夜、そして士は共に宴席を眺めて熱い茶をすする。

 

「しかし、“ノーネーム”はよく全員生き残れたなあ。所属が半分くらいに減るんやないかと心配しとってんで。特に君らなんて途中から行方不明やったしな」

 

「あれは大ショッカーが面倒な置き土産を置いてったせいだからな。まぁそうなる可能性も十分にあったとは思うが」

 

「俺達が流すはずだった血を肩代わりした奴が多かったってだけだろ。“ウィル・オ・ウィスプ”にせよ“サラマンドラ”にせよな」

 

熱い茶を一気にあおる。

十六夜が宴席に交ざらず遠巻きに眺めているのは、彼なりに何か思うところがあったのだろう。

三頭龍が己の力だけで勝利を掴めない相手であったことは彼が一番よく理解している。

故に酒で痛みを紛らわせる必要は無いと思ったのだろう。

こうして静かに死者を想い、偲ぶ声に耳を傾けるのも_____

 

「ほら、霧崎!!あんたも飲みなさいよ!!」

 

「ウボァ!?酒瓶を口に突っ込むなよ!?」

 

「いいからいいから、ほらグイッと!!」

 

「ちょ、やめゴバァ!?」

 

まあ、偲ぶだけが追悼とは限らない。

死者を安心させる為に宴を開く文化は少なからずある。

きっとある。

痴話喧嘩は勝手にやってればいい。

 

「いやはや。ラッテンちゃんは楽しんどるみたいやね」

 

「あいつらは別枠だ。特にラッテンは他人の死より我を優先する奴だ」

 

「巻き込まれる霧崎の方はたまった物じゃないだろうがな」

 

蛟劉はクックッと苦笑いを浮かべ、そこで幾つか顔が見当たらないのに気付く。

知ってるであろう士の方に顔を向けて問う。

 

「そういや映司君や晴人君が見当たらんけど、君知っとるか?」

 

「映司なら此処にはいるだろうが宴席自体には参加してないと思うぞ。あいつは気にし過ぎる質だからな」

 

晴人の方は士も十六夜も知らない様だ。

蛟劉は納得すると拝借してきた日本酒の瓶を取り出すのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

映司は士の言った通り、宴席をすみから眺めていた。

そんな映司に後ろからアンクが話し掛ける。

 

「お前はまた一々気にしてるのか?」

 

「そう簡単に割り切れる物じゃないんだよ」

 

後悔はしている。

もっと何か出来ていたのではないかと思えする。

けれども、それで止まる映司では無い。

とはいえ、宴席に参加する気にもなれないのでこうして部屋のすみにいるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

蛟劉の取り出した酒が異様に美味かった。

とはいえ、士は特に気にする事も無く淡々と飲む。

十六夜の方は何処から持ってきたか視線で問おうとしていた。

そんな時に“混天魔王”鵬魔王が、同じ酒瓶を持って近寄ってきた。

 

「次兄。宴席から離れて飲むとは珍しいですね」

 

「なんや、迦陵ちゃんも来てたんかいな」

 

迦陵ちゃんと呼ばないでください、と一言釘を刺して同席する。

同じく同席していた二人に気付く。

十六夜の方には楽しそうに顔を覗き込んだが、士の方は何やら面倒そうな顔をされた。

 

「俺の顔に何かついてるのか?」

 

「貴方、世界の破壊者でしょ?」

 

「またそれか。お前も俺を消したいのか?」

 

「いいえ、妙な男に変な事を言われましたが特に何もする気は無いですよ。今のところはですけどね。一応、名を聞いておきましょうか?」

 

「門矢 士だ。覚えなくていい」

 

適当に返す士。

今のところ敵では無いのならそこまで気を張る必要は無い。

そんなやり取りを士とした後に鵬魔王は十六夜と似た様なやり取りをするのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ったく、人使いが荒いな」テレポートプリーズ

 

晴人はテレポートの魔法で何処かに帰ってきたところであった。

追悼式が終わった後に野暮用で出掛けていたが今ようやく戻ってきていたのだった。

宿に入ると何故か宴席の参加者が一ヶ所に集まっていた。

 

「何をやってんだ?」

 

「晴人か。お前も交ざるか?」

 

酒樽を片手に持つ十六夜が視線を向けて言ってくる。

その周囲には十六夜、士、蛟劉、鵬魔王、そして映司とアンクもいた。

 

「いや、状況がさっぱり分からないんだが」

 

そんな事を晴人が言うと誰かが説明を始める。

宴席の真ん中にいた男が七天の“通風大聖”猴魔王であり、酒天童子であったらしい。

そこで七天の武勇伝を聞く事になった様だ。

ついでに皆酒を持ちあって聞いてたというわけらしい。

 

「そういう事なら俺も交ざるかな。話ってのは俺も聞きたいし」

 

そうして改めて参加者達は杯を掲げ、共に乾杯の声を上げるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

____宴会は月が頂に昇る頃まで続けられた。

結局のところある程度話した所までで大半の物は酔い潰れていた。

これも酒天童子が___

“ワシに合わせて酒を飲めるものだけに語って聞かせよう!!さあ、語り部ゲームだ!!”

_____と宣言したからである。

結果は見ての通りの死屍累々。

映司も、晴人もさすがに酔い潰れていた。

霧崎とラッテンは明らかに別要因で酔い潰れていたが。

残っているのは十六夜、士、アンクくらいであった。

話の方は酒天童子が盛ったという前提の物ではあった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

月は巡り、既に傾き始めている。

随分と話し込んでいたのだろう。

十六夜、アンク、士、酒天童子は三つ目の酒樽に手を出していた。

 

「俺はともかくお前らは大丈夫なのか?」

 

「俺はグリード……メダルの塊だ。味覚を初めとした感覚を手にしたとしても酒に酔うほどやわじゃない」

 

「俺は酒には強いからな」

 

アンクはともかく士の方は説明になっていなかった。

此処まで来ると消化機関に何か重要な欠陥があるのではないかと疑えてしまう範囲ではあった。

 

「お前もよく飲んでる方だぞ、小僧。その点は金糸雀とはえらい違いだな」

 

「血縁でも無いのにそんなところ似るわけねぇだろ。それにアイツ酒だけは弱かったからな。グラス一杯でノックダウンしてたぞ」

 

「おお、それよそれ。あの娘ときたらどんな宴席でも絶対に酒は口にせなんだからな。無理矢理飲ませてぶっ倒れた時はその場が騒然となったものよ」

 

「それは飲ませた方が悪いがな」

 

豪快に笑う酒天童子。

適当に口を挟む士。

呆れた様な顔をするアンク。

十六夜も口を綻ばせていた。

箱庭にいた時の金糸雀の話は一度も耳にしていなかった。

十六夜は自身が取っ付きにくい人格をしている自覚がある。

それは士やアンクも同じであろう。

故に踏み込まない面もあるが。

この酒天童子はという化生とは馬が合う気がしていた。

流石は任侠の王と言ったところか。

何だかんだアンクが付き合って飲んでるのも、十六夜がついつい口を滑らせてしまうのもきっとこの男の人柄による業に違いない。

 

「…………まあ、アイツは何処にいてもあんな感じだったんだろうな箱庭でも外界でも」

 

「人ってのはそういう物だ。俺も世界を旅していたが“あいつら”は変わり無かった」

 

「そうだな。アイツが俺と旅をしていた時もそうだったよ」

 

「ほほう。旅とな?」

 

「ああ。あれは確か_____」

 

杯の水面に映る月影を揺らしながら、十六夜は過去を思う。

それは当時、彼が十三歳に成ったばかりの頃。

過激な宗教団体が、とある集落を襲った時の話。





web短編回でした!!
何かネタ的に危なくて更新止まってるけど一応時系列内の話なので
冒頭のが何の話かは続きか来た時に!!

それでは、質問があれば聞いてください。
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義手と手合わせとフェムシンム

活動報告でアンケート実施中!!
予定変更で新刊の前にオリ短編二つをやる事にしたので締切は今回合わせて二話終わるまでという事で!!
あと、今回は短めです!!


アジ=ダカーハとの戦いから半月。

まだまだ傷跡は深々と残っていた。

そんな中でラッテン、霧崎、ルイオス、ウィラは“ノーネーム”本拠の廃墟付近にいた。

今から始める事は周囲に何も無い方が都合がいい。

ラッテンの左腕にはかなり精巧な義手が装着されていた。

義手には毛皮の様な物が混じっている。

今は最終調整という所だ。

ラッテンの注文で強力な義手というだけで無く霊格に影響する様な仕掛けがしてある。

 

「さて、後は完全に“繋げれば”完成するんだけど本当にいいんだな?僕は責任を持たないぞ?」

 

「あんたに責任なんて求めて無いから安心しなさいよ。失敗したら私の器はそこまでだったという事よ」

 

ルイオスに対して軽く返すラッテン。

チラリと霧崎の方を見るといかにも悩んでるという様子だった。

ウィラの方はただ見守るという感じだった。

 

「まだ心配なの、霧崎?」

 

「そりゃな………お前なら大丈夫とは思うけどよ…………」

 

「グチグチ言うなら聞かないわよ。こういう時に掛ける言葉は一つでしょうが!!」

 

「分かったよ………成功してくれよ」

 

「了解♪」

 

上機嫌という感じで答えるラッテン。

霧崎はもはや諦めたという感じに首を振る。

 

「はい、話は終わり!!もう“繋げて”いいわよ」

 

「あーもう、勝手だよな!!どうなっても知らないぞ!?」

 

叫びながらルイオスは義手に宿りし霊格とラッテンの魂を“繋げる”。

同時にラッテンと魂の繋がりを持つ霧崎も小さな頭痛を感じる。

義手がバチリと小さく電撃を発したと思うとラッテンは虚空を眺めながら膝を着くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ラッテンは気付くと真っ白な空間にいた。

とはいえ、“何処か”は大体察していた。

 

「精神世界…………いや、生と死の狭間の更に中間と言ったところかしら?」

 

自分で言っといて滅茶苦茶だな~と軽く済ませる。

そんなラッテンは遠方から何かが雷鳴を轟かせて近付いて来るのを察していた。

何処からともなくハーメルケインを取り出すと防御の魔法陣を展開させる。

雷鳴と衝突音が鳴り響く。

 

「わぁー・・・こりゃ予想以上ね」

 

魔法陣にはヒビが入るが何とか防ぎきる。

しかし、相手が手加減した上と言うのは自覚がある。

雷を纏った“山羊”がラッテンの周囲を駆け抜けた後にラッテンの正面に降り立つ。

いつの間にか“山羊”から人型へと姿は変わっていた。

 

「咄嗟の防御でアレを防ぎ切るとは中々やりますね。まぁ……………一応及第点と言ったところでしょう」

 

「うん、色々と面倒そうなタイプね」

 

とりあえず見たまんまの感想を呟く。

相手は特に気にせず次の言葉を放つ。

 

「細かい事は置いといてまずは問いましょうか。貴女が私を従えようと考えし者ですか?」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カメンライド、イチゴウ!!

 

「オラァ!!」

 

「よっと……」

 

また“ノーネーム“本拠の広い場所にて仮面ライダー1号にカメンライドした士に対して十六夜が殴り掛かっていた。

 

「武器は使わねぇのか!!」

 

「武器使ったら軽い手合わせにははらないだろ?」

 

「そもそも何でいきなり手合わせなんてやろうと思ったんだよ!!」

 

「気分転換だ!!」

 

「そうかよ!!」

 

この手合わせは士から言い始めた事ではあった。

本拠をフラフラと歩いていた十六夜に対して士がいきなり言って来たのだ。

十六夜としてもやる事はなかったので受けたのだった。

十六夜は次々と拳を放つ物の士は軽くいなしていく。

 

「赤心小林拳…………梅花の型ってな。まぁ見様見真似だが」

 

「チッ………」

 

そんな感じに拳を弾かれていく内に隙が生まれる。

拳が弾かれから再び放つまでのタイムラグを付かれて懐に踏み込まれる。

右の拳を左の手で上方に弾き、そのまはの流れで肘打ちを入れる。

 

「ある男が言っていた………一手目なんざ、かわして当然。その一手二手先を組み立てとくんだよってな。まぁお前には言うまでも無い事だろうが」

 

「いや、有り難く聞いとくよ!!」

 

その後も二人は手合わせを続けるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

箱庭の某所。

そこには未知の植物が侵食していた。

そこで槍の様な武器を持つ緑の体色の人型の化け物が歩いていた。

 

「デェムジムジェショジャシェジョエデェジョシュイフォン、ダウジュシャンウガシュロエショフォエメジョエファンフィ。シャファディショエフェンロデェシュグルンジュファロムデェガシュションアダエメジョエファン」

 

異なる言語を操る怪物は“フェムシンム”と呼ばれた者達が生き残る為に姿を変えた結果だった。

彼女はインベスと呼ばれる怪物を従えながら周囲の森林を探索していた。

そこへ銀色のオーロラが現れ、その中から一人の白衣の男が現れる。

 

「フォムファン?」

 

「やぁ、また君に会えるとは思わなかったよ、レデュエ君。いや、君と僕が知る個体は別物かな?何はともあれ元々君の事なんて対して知らないんだけどね」

 

レデュエと呼ばれた怪物は現れた男、戦極凌馬を警戒する様にダウと呼ばれる果実をぶら下げた槍を構える。

対して戦極の方は飄々と構える。

 

「アミョイロフォムファン?」

 

「あぁ………ちょっと待ちたまえ。君達の言語の解析を済ませるか……

 

「フンッ!!」

 

戦極に言われて待つわけも無く、レデュエは戦極の腹をダウで突く。

が、戦極の方は構える事もせずに軽く左手で受け止めた。

そう、生身の腕でだ。

だが、響いたのは明らかに硬いもの同士が衝突した音だった。

 

「フォフェ!?」

 

「私がただ復活するだけなわけが無いだろう?今の私は生物とメガヘクス……つまりは機械の混ざり物だと思ってくれればいい。まぁ君に言った所で分からないだろうけどね!!」

 

レデュエが距離を取る為に後退すると同時に戦極はゲネシスドライバーを腰に巻く。

レモンエナジーロックシードを取り出して解錠する。

同時に戦極の頭上に空間の穴が現れ、レモン型の物体が現れる。

 

「ちょうどいいし、私の性能実験もさせて貰うとしよう」レモンエナジー!!

 

レモンエナジーロックシードをゲネシスドライバーにセットするとレバー引く。

すると、頭上の物体が戦極の頭へと降ってくる。

 

ロックオン!!

「変身!!」

ソーダ……レモンエナジーアームズ!!ファイトパワー!!ファイトパワー!!ファイファイファイファイファイファイトパワー!!

 

レモン型の物体が戦極の頭と被さると同時に戦極の体がアンダースーツに包まれる。

同時に頭部に兜が装着され、レモン型の物体が鎧状に展開する。

 

「デョジ、シンムシャンショエディシェミャアコジュジョ。デェンジュシュイムショエデェジャエシャウショ(さて、言語解析も終わった。実験開始と行こうか)」

 

仮面ライダーデュークに変身した戦極はあえて相手の言葉で挑発する様に言い放った。

マッドサイエンティストとフェムシンムの戦いが始まる。





とりあえず今後はアジ撃破から新刊までの空白の三ヶ月をやります!!
というわけで今やってるのが終わったらアンケートの話をやるので参加してくれると嬉しいです!!

戦極に関してはメガヘクスによって再生させられた後に撃破されて残った破片を利用した感じなのでああいう感じに
素の性能もかなり上がってるという事です

あと、今回短いのを強いて言い訳するなら大体エイプリルフールのせいです
特にツイッターの

それでは、質問があれば聞いてください。
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サンプル採取と新たな契約と山羊の星獣

レデュエは周囲の植物を操り、戦極に向かって蔦を伸ばして拘束しようとする。

だが、戦極はソニックアローで軽く切り落としていく。

一定量切り落とすと矢を数発放った。

ただ、それだけでレデュエの背後のインベスが爆散していく。

 

「うん。レモンエナジーアームズの方は問題無いようだ。なら、次は此方だね」ドラゴンフルーツエナジー!!

 

「シェメ、フォショフォショゴブリョメジョエファンフィ(君、中々やるみたいだね)」

 

「オムデェムデェジョミョイ。シェメロシェジェガウフォデョムブブリョファン。シャバリャデェロデェフォエ(安心したまえ。君は貴重なサンプルだ。殺しはしない)」

ソーダッ!!ドラゴンエナジーアームズ!!

 

適当に話しながらアームズチェンジをする。

赤い物体が戦極の頭上から降りてきて展開する。

デューク ドラゴンエナジーアームズへと変わりレデュエに向かっていく。

紅い残像が残る様な高速移動でレデュエの懐に一気に近付く。

 

「フォフェ!?」

 

全くの予想外の攻撃にレデュエも慌てる。

だが、その焦りが隙を作る

レデュエのダリと呼ばれる槍が上方に弾かれて虚を付かれた隙に逆袈裟斬りを受ける。

肉が抉れ音が響く。

 

「幻覚だね。そんな物で私の目を誤魔化せると思っていたのかい?」

 

呟くと同時に矢を放つ。

レデュエの見せていた幻影を突き破り、真のレデュエの方へと矢は向かっていく。

それをダウで弾くが一発一発の威力がかなりあって対応し切れなくなっていく。

その間に戦極はゲネシスドライバーのレバーを引く。

 

ドラゴンフルーツエナジースカッシュ!!

「ふふっ」

 

「ぐぅぅぅぅぅぅぅッ!?」

 

高速移動で一瞬の内に距離を詰められ、至近距離でエネルギーを纏った刃を受けてしまう。

何とか一歩下がっていたが意味はあまりない。

今度こそレデュエの体から血液の様な物が流れ落ちる。

 

「ダバリャダバリャシャエデョムデェジョボリャフォンウファンエ?(そろそろ降参したらどうだい?)」

 

「ファンビリェション?コジョデェション?デュブリョコシュイションフォエションフォエファンバリャ?(誰が?私が?するわけがないだろう?)」

 

「ダビリャロデュオンムフィムファン。デョムブブリョフェロフォブリョグリンシュシェテュンカジュシュジョシュロフォショジュションデェショジョフォエ(それは残念だ。サンプルにはなるべく傷を付けたくは無かったが仕方無い)」

ロックオン!!

 

評価しながらもドラゴンフルーツエナジーロックシードをソニックアローにセットする。

そのまま矢を引き、矢に力を収束させていく

 

ドラゴンフルーツエナジー!!

「ハァ!!」

 

「グボォ!?コジョデェションションシャムフォジャシャバリャフェノ……………」

 

「いいや、終わりだ」

 

レデュエは竜の姿をした禍々しい空気を漂わせる矢をに貫かれながら崩れ落ちた。

だが、手加減されていたのか爆散しなかったようだ。

 

「死体よりも生きてる方が新鮮だからね。殺すわけが無い」

 

その後は戦闘員にレデュエと周囲の植物を採取させて戦極はその場に残るのだった。

レデュエの使っていた槍の様なものを手に取る。

 

「へぇ………これは解析したら面白い事が起こりそうだな」

 

ニヤリと笑いながら戦極は槍を持ち帰るのだった。

怪物のサンプルを得て戦極の研究は更に進んでいく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「で、結局何がしたかったんだ?ただの手合わせというわけでは無いんだろ?」

 

士と十六夜は汗を流しながらも地に寝転んでいた。

上半身だけを起こして汗を拭う。

あの後は結局勝負は付かず、互いに息切れしてきたので休んでいたのだった。

 

「別に大きな意味は無い。強いて言うならお前の気分転換の為だ」

 

「そりゃ礼を言うが……………」

 

「別にあまり踏み込む気は無いが“それ”は胸の内に溜め込んで置くと後で痛い目に合うぞ」

 

「ご忠告どうも」

 

適当に答える十六夜ではあるが意味合いは違っている。

十六夜の抱える“物”を士は理解している。

だが、十六夜としてはそう割り切れる物では無いので苦労しているのだった。

 

「さて、戻るか」

 

「汗も掻いたし、一風呂入りたいとこだな」

 

二人は汗を拭いながら立ち上がり、本拠の方へと歩いて行くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

誰かが呟いた…………どうしてこうなった、と。

“ノーネーム”本拠の廃墟周辺。

霧崎は呆れる様に“それ”を眺めていた。

その視線の先では

 

「だから……あんたは気に入らないでしょうがこうでもしないと顕現出来ないでしょうが!!」

 

「それでも、もう少しやり方はあったでしょう!!契約を交わしたとはいえこれは許容出来ません!!」

 

「他のやり方じゃ霊格落ちて意味が無いでしょうが!!」

 

「そこで許容してくださいよ!!」

 

縦縞トップスセーター(&巨乳)で亜麻色の髪の女性とラッテンが口論していた。

何故こんな事になっているかと言うと全ての原因はラッテンの説明不足であった。

義手に宿らせた霊格との契約は具体的なやり取りは不明ではあるがどうやら成功した様だ。

しかし、問題はその後だった。

ラッテンは成功の証として山羊を顕現させ、山羊は人型へと変化した。

そこで彼女は自分の状態を察したのだった。

霊格を出来るだけ生前の通りに再生させる為にラッテンの命を支える“契約”に割り込ませ、ラッテンの魂と接続させて固定する。

それによって山羊の霊格を保させながら、ラッテン自身の霊格を強化しようという算段だった。

それ自体は上手く行った様だ。

だが、魂と接続とやらに何か不味い部分があるらしく顕現するなり口論が始まったのだ。

 

「つまり、どういう事なんだ?」

 

「さぁ?僕は言ったはずだぞ?どうなっても知らないと」

 

「私も分からない」

 

霧崎は何となくルイオスとウィラに話し掛けるが分かる事は無かった。

とりあえず、そろそろ口論を止めて話を聞いた方が良さそうだった。

 

「なぁ、一旦落ち着かないか?」

 

「霧崎は黙ってて!!今、この山羊を黙らせるから!!」

 

「いいえ。黙るのは貴女の方ですよ、マスター」

 

「何でよ!?」

 

「此処は霧崎殿の言う通りに情報共有した方が良いでしょう」

 

「あれ?俺達の事を知ってるのか?」

 

「えぇ………忌々しい繋がりのせいではありますが」

 

そこからラッテンを一旦落ち着かせて山羊ことアルマテイアが説明を始めた。

まず、契約そのものは円満に結んだ様だ。

そこらへんは分かっていた事だ。

そこからがアルマ達にとって予想外だった。

魂の接続によって互いに霊格という点では利点があっただが他の部分で問題が発生した。

魂の接続によって色々と混ざったのだ。

まずは記憶が共有される様になった様だ。

そのお陰でアルマも状況そのものや“ノーネーム”の足跡も理解出来たので許容範囲であり、契約に足る相手だという判断も出来たという。

記憶の共有とはいえ人格に影響が出る程でも無い。

繋がりを強めようとすれば現在進行形で感覚の共有すら可能だがそこらへんは互いの任意なので問題は無い。

問題は次だ。

魂が繋がった事による同調だ。

魂の並が同調した事により、片方が不調になればもう片方にも影響が出るという事だ。

とはいえ、別に怪我や風邪程度では影響は出ない。

問題はラッテンの不安定さだ。

ラッテンは“契約”で強引に存在を繋いでる様な物だ。

それゆえに何かあれば存在が揺らぐ。

最悪消える事すら有り得る。

それにアルマは同調されているのだ。

もし、今のままラッテンが消えたらアルマも巻き添えをくらうというわけだ。

しかも、魂を繋げているので“契約”は簡単には解けない。

だからこそ、口論になっていたのだった。

目覚めてすぐにこんな事情を知れば当然だろう。

 

「とはいえ、私は霧崎達のおかげで安定してるんだから大丈夫よ」

 

「まぁ………仕方ありません。これもまた運命でしょう。一度マスターと認めたのです。これくらいは許容しておきましょう」

 

「えーと、一応落ち着いたって事でいいのか?」

 

「えぇ納得はあまり出来ませんがこれ以上騒ぎはしませんよ」

 

「それじゃあ、色々と知ってるとはいえ一応改めて……霧崎カブトだ。よろしくな」

 

「えぇ………私は山羊の星獣、アルマテイア。コミュニティの同士として、今後よろしくお願いいたします」

 

礼儀正しく人当たりの良い笑顔と挨拶を返す。

だが、その頬が何処か紅いのを見逃しはしなかった。

記憶共有は人格に影響する程の物では無いだが、それをどう受け取るかは人次第ではある。

 

「ちょっとアルマァァァァ?何?私の霧崎に手を出そうとでも思ってるわけ?」

 

「いえ、そんな気は一欠片もありませんよ」

 

「じゃあ、さっきの反応は何なのよ!!」

 

「マスターの気のせいですよ」

 

「なわけが無いでしょうが!!」

 

再び口論になるラッテンとアルマ。

霧崎はそんな二人を喧嘩する程仲が良いとも言うのでもう放置する事にするのだった。

というより、この話題は割って入ったら面倒過ぎるので出来れば触れたくは無いのだった。

ルイオスに関してはもはや帰っていい?とでも言いたげな顔をしているのだった。

その隣でウィラは何か胸に痛みを感じるのだった。





アルマ契約編でした!!
アルマがようやく参戦です!!
とはいえ、記憶共有でアジ戦の経緯などは把握していますが

レデュエに関しては本編とは別時空の個体です
知恵の実を手に入れてはいないのでメガヘクスの力の一部を取り込んでる戦極には分が悪いのでした
箱庭でのヘルヘイムの植物の扱いは他の植物と変わらなかったり
繁殖能力が箱庭だとそこまで強力になれないという事で

それでは、質問があれば聞いてください!!
感想待ってます!!

次はグロンギ編です!!


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狂宴と金の魔法とギヅバシンゲゲル
惨状と狂宴と謎の言語


今回からオリ編その一です!!


 

アジ=ダカーハの戦いから一ヶ月。

復興も進む中で蛟劉は“階層支配者”としてとある層まで来ていた。

 

「また、この惨状か。これで十ヶ所やで。明らかに異常や」

 

蛟劉の周囲にはそこに住んでいたと思われる住人の死体と共に見た事も無い種族の死体が散らばっていた。

ここ最近東側では似た様な事態が頻繁に起きていた。

特定エリアに謎の怪物が現れ、周辺の住民を殺しながら同族とすら殺し合うという事件だ。

話を聞いて駆け付けた時にはこの有り様である。

死体に共通点は殆ど無かった。

殺され方は千差万別である。

だが、怪物の腰部分が抉られているという点のみは共通していた。

それが何を意味するかは蛟劉には解らない。

周囲を見渡すと比較的綺麗に残っている死体を発見する。

蝙蝠の様な人型の怪物であった。

そして、その手に握られていた物を手に取る。

それは“契約書類”であった。

 

「こいつらは皆ゲームに参加していたという事か?いや、それでもこれは…………」

 

蛟劉は“契約書類”を手にしながら怪訝な顔をするのだった。

その“契約書類”は書かれている事さえ異常であった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

某所。

そこで二人の男が話していた。

 

「ベキキョブ ボボダダンザ “ゴ”ン センジュグザベバ」

 

「ゴセゾゾ バブガ ヂガグンザソグ。バンビゲジョ “ゲゲル”パ ジョデギゾゴシビ ググレスザベザ」

 

二人は謎の言語で話しながら紅い液体に満たされている巨大な器の方を眺めるのだった。

その奥底では何かが三つ輝いているのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

“ノーネーム”本拠。

 

「いきなり来て何の用だ?」

 

「ちょっと君達に頼みたい事があってな」

 

「“階層支配者”がわざわざ依頼しに来るって事はそれなりの案件だと思っていていいんだよな?」

 

本拠の客間にて蛟劉と十六夜達は話していた。

前触れ無く来たので対応としては多少雑ではあった。

蛟劉も蛟劉で今回は御忍びに近いのでそれで構わなかった。

 

「何かあったんですか?」

 

「君達はここ最近起こっとる大量殺戮事件を知っとるか?」

 

「初耳だな」

 

「なんだ?此処はそういうのが世界じゃないのか?」

 

アンクが怪訝そうな顔をして言う。

アンクとしてはまだ箱庭での生活は一ヶ月程しか無く。

復活直後の戦いがあの死闘であった為に箱庭に対して誤ったイメージを持っていたりする。

そこらへんの誤解を解くついでに蛟劉は今回の事件の事を話すのだった。

 

「____というわけなんや」

 

「それだけじゃ解らねぇな。情報が少なくて判断の仕様が無い」

 

「そこは同感や。けどまぁ僕でも知らん様な“怪物”がいきなりあんだけ現れたとなるとな…………“ウロボロス”や“大ショッカー”が関連してるかも知れないやろ?」

 

「それは確かにな」

 

「“大ショッカー”ならそれだけの怪人を用意出来るかもしれませんしね」

 

映司と晴人が同意する。

とはいえ、情報が少ないのは間違い無い。

これ以上犠牲を出さない為には次にどの場所で事件が起きるか予想しなければならない。

 

「そこでヒントになるかも知れないと持ってきたんやけど、君達は“これ”を解けるか?」

 

言いながら懐から一枚の紙を取り出す。

十六夜、映司、アンク、晴人の視線はそれに集まる。

その紙は“契約書類”であった。

 

{ ーーーー ギズドゲゲルレギ “ギヅパシンゲゲル” ーーーー

 

 ガンバジョグベン:“グロンギ”グガスボド。

 

 パパン・バギング ン グススムビパバセ ギデギンダギジョゼ ジョゲン ゾ ゴボバグ

 

 ドググ・ゴボゴボガ ガザレダ ジョグベンゼ ビデギググン ガヅガギゾ ダゲゲギ ギダグゲゼ ガギゴンジドシ ビバダダロボガ ギジョグギジャ

 

 グシギ・ゾンゲン ゼザ ギジュガギギジャ バサ ガンバギジャ ゼ “ダグバ” ン バベザ ガ ジョグド ガセス

 

 ズゴゴ・ゾンゲン ゼザ ドググ ン ジョグベン ゾ リダギダ グゲゼ バベサ ゾ グデデ ガヅレダロボ ガ ギジョグギジャ ドバス

 

 ズガギ・ガンバギジャ ゾ ジジョグデビ ビ ギデロジョギ

 

 ギブグ・ギガグソソス ゾ ズンギヅ ギデロ ゾバボ ガンバギジャ バサ グダゲダ ズビビ ゼビス(ダザギ ガヅガギググ ザ シゲドド ガセス)

 

 ※ジュグギジボグ

  “リント” ギガギ ン ギジュゾグ パ ガヅガギ バンギゾ ビ ジョデデ バグンド ガ ゼンゾグ

  “グロンギ” パ “ズ”ガ ドググ “メ”ガ ギブグ “ゴ”ガ バギング

  “ゴ” ビ バギシ “グロンギ” ゾ ガヅガギ ギデロ パパン グ バグンド ガセス

 

 ジュグギジョグゾグギジュグ:“ン” ン バド ヂバサ

 

 ゲンゲギ ギジュガギギジャ パ ジョグビ ン ススス ビ ボドドジ バドリザダ ン ロド ボグゲギバゲゲル ゾ ドシゴボバグ ボドゾ ヂバギラグ

           “ラ・ドレク・レ”印}

 

「なんだこりゃ?」

 

十六夜ですら思わず声を上げる。

その“契約書類”は謎の言語で書かれていた。

これではヒントにしようが無い。

 

「近しい外界から召喚された君らなら分かるかもと思ったが難しいか」

 

「すみません。これは俺も力になれなさそうです」

 

「俺も……さすがにこれは解らないな」

 

映司と晴人も首を横に振る。

二人も流石にこんな言語は見た事も無かった。

聞けば蛟劉も急いで解読をさせてるようだがどうにも取っ掛かりが無いようだ。

手詰まりかと思った時、客間の扉が開いた。

 

「お前ら………こんな所に集まって何をやってるんだ?」

 

入ってきたのは士だった。

あの戦いの後、“ノーネーム”本拠を拠点にして遠出する事が多いので帰ってくるのは一週間振りくらいであった。

とはいえ、士は別に“ノーネーム”所属では無いので帰ってくるのは義務は無いのだが。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

幾つもの命を散らす狂宴が開催され、血は地を染める。

血の染みた大地は怪しく脈動する。





グロンギ編開幕!!
契約書類に関しては後々!!
解読はお好きな様に!!


それでは、質問があれば聞いてください。
感想待ってます!!


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開幕と因縁の再会と死の鉄球

今回短いです


「なるほど、大体分かった」

 

話を聞いた士は"契約書類"を手に取りながら呟く。

何かを思い出すかの様な顔をしながら言う。

 

「事件の正確な場所は分かるか?」

 

「あぁ、分かるで」

 

「じゃあ、この地図に書いてくれ」

 

言われて蛟劉は地図に書き示していく。

それが書かれていく内に晴人の顔色が変わっていく。

魔法を扱うがゆえにその意味を理解するのだ。

 

「これじゃまるで魔方陣みたいじゃないか」

 

「つまりはそういう事だ。奴らは……グロンギはゲームに加えて何かを企んでいる」

 

言いながら士は蛟劉が書いた現場を線で繋いでいく。

それは確かに魔方陣に見えるのだった。

そして、その中央を指差す。

 

「奴らが何かをするというなら次に事を起こすのは”此処”だ」

 

「それでその”グロンギ”って奴はどんな怪人なんだ?」

 

「奴らは人をゲームする様に殺す………いや、ゲームそのものだな。つまりゲームとして人を殺していく集団だ」

 

「胸糞悪い奴らって事か」

 

十六夜が吐き捨てるように言う。

他のメンバーも大体同意見だった。

映司は前に出て言う。

 

「敵の正体と次の場所も分かったし、早く行こう。これ以上犠牲を出さない為にも」

 

「それは同意だし、僕も参加するつもりやったんだけどな。別所で魔王の封印塚が壊されたという報告があってそちらにもいかんといかんくなったのやけど、この件は君達に任してもええか?」

 

「最初からそのつもりだったんだろ?」

 

「まぁ情報ついでに君らに任せれたらいいとは思っていたよ。けど、受けるかどうかは君たち次第や」

 

「受けるに決まってるだろ?俺達はそういうコミュニティなんだからよ」

 

「恩に着るで!」

 

方針は決まり、各々が動き始める。

蛟劉は調査に向かい、”ノーネーム”はグロンギ達との戦いの準備を進める。

修行の為に出かけていた霧崎、ラッテン、アルマティアを呼び戻す。

移動はクロアに任せて十六夜、映司、霧崎、アンク、ラッテン、アルマティア、晴人、士が現場に向かう事になった。

レティシアや黒ウサギ達は留守番である。

 

「本当についていかなくてよいのですか?」

 

「あぁ、今度の相手には”審判権限”の有無は関係無いらしいからな。それより本拠を守っていてくれた方が安心だ」

 

「そう言うなら仕方ないのですよ。皆さんの留守はお任せください!」

 

黒ウサギ達が見送る中で十六夜達は空間を跳躍するのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

同時刻。

”器”の前に立っていた男は何かに気付く。

 

「ゾグジャサ ジャラロボ ガ ラギセボンザ ジョグザ」

 

カツン、という足音が男の背後から響く。

男は振り返りもせずに何者かを悟る。

 

「ガドル バ バンボ ジョグザ?」

 

「ゲゲル ザ ゲンビバ?」

 

「ギギジャ ジョデギゾゴシ ググレスガ ジャラロボ ロ ラサ ギキキョグ ザソグ」

 

軍服の男はそれだけ聞くと男の背後から去っていくのだった。

男は振り向かずに小さく呟く。

 

「そうさ。お楽しみはここからなのだよ」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

”ノーネーム”の面々は現場になると思われる街を歩いていた。

一応事前に蛟劉が街に知らせてはいるが、避難はされていなかった。

魔王のゲームというわけでもなく具体的な像が見えているわけでも無いので危機感が薄いのだろう。

今は幾つかのメンバーに分かれて聞き込みをしているのだった。

 

「しかし、タトゥーだけが目印じゃ。そう情報は出てこないよな」

 

グロンギの人間体にはタトゥーが刻まれているのだが、箱庭ではそう珍しくも無い。

外見も人間体である内は見分けもつかない。

そんなこんなで大した情報も入らないのだった。

晴人は休憩がてら買ったプレーンシュガーを食べ歩いている。

 

「よぉ、まさかお前が最初とは思わなかったぜ」

 

「ッ!?」

 

いきなり声を掛けられて晴人はドーナツを喉に詰まらせかけながら振り返った。

そして、相手の姿を確認するなり警戒を強めた。

 

「何でお前が此処にいる………オーガ!」

 

相手を睨み付けるようにしながら叫ぶ。

だが、相手は特に気にすることもせずに立っている。

ただ笑みを浮かべながら視線を返す。

 

「そう警戒しなくていいぜ。今は別に戦いに来たわけじゃねぇからな」

 

「なら、何しに来た」

 

「いや、何ただの偵察だ。まさかいきなりお前と会うとは思ってなかったがな!!」

 

最後の方の語調を強めつつ、腕を振るうオーガ。

同時に晴人の手前の足元に何かが着弾する。

土煙によってオーガの姿が隠れる。

 

「もうすぐ祭が始まる!!せいぜい楽しむ事だな!!」

 

最後にそう言い残してオーガは姿を消すのだった。

土煙を払いながら晴人は考える。

 

「何でオーガが…………ファントムが此処に?まさか此処で何かしようとしてるのはグロンギだけじゃ無いのか?」

 

そんな事を考えながら晴人はマシンウィンガーに跨り、移動を始めるのだった。

何か嫌な予感を感じながら晴人は周囲の探索を再開するのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

十六夜も街を歩いていた。

何かしら手がかりが無いかと思っていたが町並みそのものからは何も見つかりはしなかった。

 

「そういや、肝心の”契約書類”の中身は聞いて無かったな。あれだけで察するという事は何かしら意味はあるんだろが………ッ!?」

 

強烈な殺気を感じて十六夜は思わず飛びのいた。

それが正解だった。

突然、空から鉄球が降り注いで来たのだ。

しかも、道を、建物を、人を容易く砕く威力を持った鉄球が、だ。

 

「ッ!!しゃらくせぇ!!」

 

近くの電燈を引っこ抜くとそれを思いっきり回して鉄球を弾いていく。

そうしていく内に鉄球を放つ影を見付ける。

第二波を放つ前に距離を詰める為に十六夜は思いっきり跳んだ。

 

「いいぜ、テメェらがそのつもりなら完膚なきまでに叩き潰してやるよ!!」

 

拳を構え、叫びながら鉄球を放っていた怪人を殴りつけた。

十六夜なりの戦線布告であった。

 

 




ゲゲル開幕でした!!

オーガはファントムのオーガです
仮面ライダーオーガではありません

それでは、質問などがあれば聞いてください
感想待ってます!!


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囮と新技と謎の欠片

 

「オラァ!!」

 

十六夜は建築物の屋上にいた亀の様な怪人に拳を放つ。

だが、怪人は少々後退しただけで傷らしい傷は無かった。

 

「リント ビギデザ ジャスバ ザガ ”ダグバ” ボ ヂバサ ソ ゲダ ゴセビザ ビバン!!」

 

「ごちゃごちゃうるせぇ!!硬いなら砕けるまで殴るだけだ!!」

 

叫びながら距離を詰める。

先程の一撃で拳から血が流れてはいたが、気にせず殴りに行く。

怪人も対抗しようとするが素早さは十六夜のが上だ。

拳を入れ続け、後退させ続け、屋上から怪人を空中に放り出す。

その上で叩き付ける様に殴り付け、下に殴り飛ばすのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「アルマ。あいつ、怪しくない?」

 

「えぇ、挙動が明らかに違いますね」

 

「じゃあ、仕掛けるわよ!!初の実戦投入としてあんたの力を見させて貰いましょうか!!」

 

「それは此方の台詞ですよ。マスターとして相応しいかどうか見させて貰います」

 

言い合いながらラッテンとアルマは建築物から飛び降りる。

その間にアルマは姿を山羊へと変える。

標的は路地裏を歩く不良の様な格好をした女性である。

完全に背後は取った。

タイミングとしては完璧ではあった。

………………更に背後を取られていなければの話ではあるが。

 

「これで五人目、と」

 

ラッテンとアルマを背後から眺めていた怪人、ゴ・ジャラジ・ダは胸元のアクセサリを手に取る。

すると、アクセサリは針へと変貌した。

”ゴ”のグロンギが持つ物質変換能力である。

ジャラジは針をラッテンに向けて投げ放つ。

それはラッテンの後頭部を正確に貫く…………はずだった。

 

「危ねぇ!!」

 

ラッテンとジャラジの間に霧崎が割り込んだのだ。

同時に針は霧崎を避ける様な軌道にズレる。

ジャラジは奇妙な物を見た様に眉をひそめる。

 

「君、何を………ッ!?」

 

ジャラジの言葉は最後まで続かなかった。

足場が崩れ、ジャラジもそれに巻き込まれたのだ。

霧崎はそれを見ながら肩に乗せていたメルンの頭を撫でる。

 

「よし、メルンよくやった」

 

霧崎が褒めるとメルンは歓喜するように飛び跳ねるのだった。

そんなメルンを眺めつつ、霧崎は”ライズ”で身体能力を強化し、落ちていくジャラジの後を追う。

背後の方で建物が崩れる音を聞きつつ、ラッテンは呟く。

 

「どうやら上手いこと敵を誘き寄せられてた様ね。わざわざ目立ちながら探索したかいがあったようね」

 

「霧崎殿がいなければ危ない行き当たりばったりの作戦でしたけどね」

 

アルマの背に乗りながらラッテンはハーメルケインを構える。

標的の方も崩壊音で此方に感づいていたが、ここまで距離を詰めれば関係無かった。

女、ゴ・ザザル・バは姿を怪人態に変え、鉄の爪の先から毒を噴射するがもう遅い。

アルマが”城塞”として毒からラッテンを守り、その間にラッテンは懐まで潜り込む。

ザザルが爪を振るって来るが関係ない。

”金剛鉄”の義手で爪を受け止め、右手に持ったハーメルケインを腰のベルトに突き刺す。

 

「ガ___グブゥ!?」

 

ザザルが苦悶に近い声を上げる。

それもそうだろう。

グロンギにとって腰のベルトには霊石が埋め込まれているのだから。

 

「士の奴が言ってた通りね。腰のベルトは確かによく効くわ。そして、もう一つを試すにもちょうどいいわね」

 

言いながらラッテンはハーメルケインに口を付け、演奏の準備をする。

士から聞いた話から独学で完成させた新技を試すつもりなのだ。

 

「さて、新曲を御静聴ください♪………”音撃槍・疾風破断”!!」

 

ラッテンが演奏を始めると、ハーメルケインの切っ先から波長を持った魔力が放たれる。

音撃とは本来清めの音で浄化する技なのだが、ラッテンは清めの音の代わりに魔力を放ち、相手の体内で反響させ、内部から崩壊させる技としていた。

それを霊石に直接叩き込まれたザザルは内側から光を放って爆散した。

 

「ん?何あれ?」

 

爆炎の中に何かの欠片の様な物を見付け、ラッテンは何か確かめようと近づいていく。

それは何かの破片だった。

手に取ろうと手を伸ばした時、

 

「マスター!!伏せてください!!」

 

アルマが叫び、慌てる様に防御態勢なる。

同時に何かが放たれ、アルマはその攻撃からラッテンの身を守る。

攻撃が止み、視界が晴れると欠片は既に何者かに拾われていた。

刺青の男だった。

男はニヤリと口を歪めてラッテンには目もくれずに立ち去った。

 

「何だったのかしら、一体?」

 

「あの欠片には回収するだけの価値があるという事でしょうか?」

 

とはいえ、分からない物は仕方ないので二人は霧崎と合流する為に行動を始めるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

その怪人、ゴ・ブウロ・グは上空から吹き矢を放ち、順調に殺害数を稼いでいた。

邪魔者が現れたが上空から狙撃するブウロは余裕であった。

見つかった所で簡単に撃ち落される気は無かった。

むしろ、逆に狙撃してやるつもりだった。

空中戦でも負ける気はしなかった。

しかし、それは自身より更に上空からの奇襲によって崩される。

 

ギン!!ギン!!ギン!!ギン!!ギン!!ギン!!ギガスキャン!!

「ハァァセイヤァァァァァァ!!」

 

銀色の回転するエネルギー弾が遥か上空より放たれる。

着弾する数瞬前に感付けたのは”ゴ”故にだろう。

だが、それでも遅かった。

避けきれず、左翼が抉られていった。

片翼でも飛行自体は出来る。

けれども、飛行戦でそれは致命的だ。

ゆえにブウロは気が進まないが奥の手に手を出す。

懐から”欠片”を取り出して、傷口に押し付ける。

”欠片”は体内に取り込まれ、ブウロは何かが脈打つのを感じた。

体の所々が鋭利に尖り、身体能力が跳ね上がる。

翼も一瞬で再生した。

 

「ガサダバス ゴ・ブウロ・グ ボ ヂバサ ソ リスガギギ!!」

 

「何を言ってるかはさっぱりだけど……何かヤバそうだな」

 

「だろうな。あいつはさっきまでとは雰囲気からして違う。どうやら、奴が取り込んだのは俺達にとってのコアメダルに近い物のようだな」

 

映司__オーズ タジャドルコンボは近くに漂うアンクの右手と話していた。

アンクは今回あまり乗り気では無いらしく怪人態にすらならない。

映司は気にせず相手の様子を窺う。

最初に奇襲したのは逃げられたら厄介で敵意を自身に向ける為であったがどうやら上手く行ってはいるようだ。

先程までは吹き矢を構えていたので攻撃が来るまでタイムラグがあるだろうと考え、出方を待つ。

だが、相手は映司の思う以上に進化していた。

 

「ッ!?」

 

ブウロは吹き矢を構えもせずに弾を放ってきたのだ。

しかも、一度に複数発を連射で、だ。

映司はタジャドルの飛行速度を生かして躱していくが、ブウロは飛行速度も上がっていた。

高速飛行しながら放たれる複数発の弾はさすがに防ぎきれず、映司の体をかすめていく。

そこで映司は小声でアンクに何かを提案する。

 

「面白い………付き合ってやる」

 

アンクはおそらく不敵に笑いながら承諾した。

すると、攻撃を避けながら映司はタジャスピナーを開き、ベルトのコアメダルをその中に入れる。

タジャスピナーを閉じ、オースキャナーを構える。

タジャスピナーを回転させると内部のメダルを読み込ませていく。

 

タカ!!クジャク!!コンドル!!ギン!!ギン!!ギン!!ギン!!

「セイッヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

炎の鳥を纏い、映司はブウロへと突進していく。

弾丸を放ってくるが全て炎の鳥に弾かれる。

だが、飛行速度は向こうのが上である。

ゆえにブウロは迎撃を諦め、回避しようと上へ飛ぶ。

マグナブレイズの攻撃範囲は意外に広いので上下に避けるしか無かったのだ。

が、それを読んでいたように映司はマグナブレイズを中断する。

そして、アンクがスキャナーを持って腰のメダルをスキャンする。

 

スキャニングチャージ!!

 

その音声と共にコンドルレッグが展開する。

急な方向転換したブウロと必殺技を発動したオーズでは勢いが違う。

展開されたコンドルレッグがブウロを背後から掴む。

これで背後に弾丸を放てないブウロは逃れられない。

だが、骨の軋む音がするだけで抵抗はやめようとはしない。

それは読んでいた。

ゆえにもう一度ベルトのメダルをスキャンする。

 

スキャニングチャージ!!

「これでトドメだ!!セイヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

ブウロをコンドルレッグで挟んだまま地面に向けて突撃をする。

タジャドルの飛行速度と落下速度が合わさり、加速するままに地面へと向かう。

そして、轟音と共にブウロは地面へと激突する。

まるで隕石が落ちた後の様なクレーターを残した直後にブウロは爆散した。

その爆炎は周囲一キロ近くを包んだ。

爆炎が晴れた時、立っていたのはオーズとアンクであった。

体力温存の為に姿はタトバに変わっている。

 

「ヅギザ ゴセボ ガギデソ ギデロサゴグバ」

 

そんな映司達の前にはバイクに乗った男が現れるのだった。

 





ザザル&ブウロ戦でした!!
グロンギがいきなり強化されるのは後々
ヒントはいろいろあったりします

それでは、質問があれば聞いてください
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交代と謎の襲撃と強者の風格

複数の鉄球が絡められた鎖が十六夜の頭上を通過する。

紙一重で鉄球の束を回避した十六夜は相手の懐に潜り込んで腹部に拳を入れる。

 

「チッ…………いい加減にして欲しい硬さだな!!」

 

拳を入れたまま力を込めて敵の体を浮かし、そのまま吹き飛ばす。

吹っ飛ばされた相手は住居に激突して瓦礫に埋もれる。

が、すぐに起き上ってくる。

 

「ボボ ガメゴ ビ ゴンバ ボグゲビ ギブサ ジャソグガ ルザザ!!」

 

「まだ甲羅は砕けねぇか」

 

ガメゴと名乗る怪人の腹部にはヒビが入ってはいる。

だが、まだ小さく致命的というわけでも無い。

埒が明かない、と自らの血に濡れた拳を見ながら呟く。

そんな時、後方の住居から誰かが落ちてくる。

 

「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「何だ、霧崎じゃねぇか」

 

降ってきたのは霧崎だった。

叫びながら落ちてきた霧崎の方も十六夜に気が付く。

 

「十六夜か……………」

 

「何してるんだ、お前?」

 

「いや、敵が中々厄介というか相性がかなり悪くてな」

 

背中合わせでそんな事を話していると、霧崎が降ってきた住居からジャラジが降りてくる。

それを見て、十六夜も理解する。

霧崎の”弱者の(チキンソウル)パラダイム”は防御面においては無敵に近い。

だが、火力に関しては敵に依存する。

相手の放つ死の脅威をそのまま返すのだから当たり前ではある。

それで今回の相手は見た目的にそこまで火力がある相手には見えない。

ゆえに苦戦しているのだ。

 

「(なぁ、相手を交換しねぇか?)」

 

背中合わせなのをいいことに霧崎は小声でそんな提案をする。

十六夜としては多少悩むところではあった。

 

「(どうせ、あいつらを倒しても終わりじゃねぇんだから体力は温存しといた方がいいだろ?)」

 

「(まぁ、それも一理はあるな)」

 

そうこう話している内に相手は痺れを切らす。

ガメゴは鉄球を、ジャラジは針を十六夜と霧崎に向けて放つ。

十六夜はため息を吐き、顔を上げる。

 

「しょうがねぇ!!亀の方は任せたぞ!!」

 

「あぁ!!」

 

同時に振り返る様な形で二人は向き合う敵を入れ換える。

霧崎はガメゴの方へ、十六夜はジャラジの方へ走り出す。

 

「ヨヨ!!」

 

『アァ、マカセロ』

 

ヨヨが死の脅威を祓い、鉄球は霧崎を避ける様な軌道を辿る。

その間に霧崎はガメゴの目の前まで迫る。

ガメゴが直接掴み掛ろうとするが、もう遅い。

霧崎はヨヨが作った死の脅威の塊を十六夜が作った甲羅のヒビに押し込む。

 

「バンザ ボセザ!?」

 

ガメゴが困惑の声を上げる間に霧崎はしゃがみ込む。

ガメゴが先程放った鉄球は何故かガメゴの方へと戻ってきていた。

鉄球は霧崎の頭上を通過し、ガメゴの腹部へとめり込んでいく。

十六夜によって既にヒビを入れられていた部分に鉄球が直撃すればどうなるかなど明白である。

甲羅は砕け、ガメゴは崩れ落ちるのだった。

砕けた腹部からは血と共に何かの欠片が流れ出てきていた。

ガメゴはまだ息があるようで欠片へと、手を伸ばしていく。

 

「まだ生きてるのかよ…………」

 

霧崎が呆れる様に呟いた直後だった。

何者かが近くの屋根から飛び降り、その手に持った剣でガメゴを貫いたのだ。

そして、爆発が起きた。

 

「な、何だ!?」

 

状況に混乱しながら叫ぶ霧崎であった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方、十六夜は走り出した直後から特にジャラジの針を避ける素振りを見せなかった。

いや、避ける必要が一切無かった。

獅子座の太陽主権の恩恵により、全ての武具は弾かれる。

ゆえに避ける必要は無い。

ジャラジの針はあっさり弾かれて引く暇も無いほどに距離を詰められていた。

 

「オラァァァァァァ!!」

 

避ける暇など与えずに即座に全力で拳を叩き込んだ。

肋骨が砕ける音が響きながらジャラジは吹き飛ばされていく。

ジャラジはガメゴ程硬くも無く、直接戦闘力も際立って高いわけでも無い。

ゆえに当然の結果とも言えた。

ジャラジは血を吐きながら立ち上る。

十六夜としては次の拳で決めるつもりだった。

だが、そうはならなかった。

 

「が…………こはッ!!」

 

ジャラジは後ろから大剣に貫かれていた。

ジャラジがそれを認識して抵抗するより速く、大剣はジャラジの体を斬り裂いた。

その時に何か欠片の様な物が飛び出す。

それはジャラジの背後にいた軍服の男の手に収まる。

ジャラジの肉片を気にすることも無く。

男は十六夜の方へ歩いてくる。

 

「ゴセ パ ザバギン バシグラ ゴ・ガドル・バ…………ゴラゲソ ボソゲダ ”ゲゲル” サ ゴバス」

 

圧倒的な威圧感にさすがの十六夜も冷や汗を流す。

こいつは格が違うと十六夜は本能で察する。

 

「手を貸そうか?」

 

後ろから霧崎が声を掛けてくる。

確かに二対一なら優位に戦いを進めれはするだろう。

しかし、十六夜はそれを断る。

 

「お前はラッテン達と合流してゲームの黒幕を探ってくれ。このゲームには何か裏がありそうだからな」

 

「分かったけどよ………本当に一人で大丈夫か?」

 

「あぁ、むしろこいつとはタイマンじゃなきゃダメだ」

 

それだけ聞くと霧崎はラッテンと合流すべく走り出す。

十六夜は拳を握り、目の前の相手に集中する。

 

「さて、やるか!!」

 

「ギギレザ!!ボヂザロ ダロギラゲデ ロサゴグ!!」

 

ガドルは姿を兜虫型の怪人態へと姿を変えた。

その間に十六夜は目の前で拳を構えている。

目が合うと同時に互いに拳を放ち合う。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

路地裏。

そこで士はディケイドの姿で怪人を絞め上げていた。

猪型の怪人、ゴ・ジイノ・ダの首を持って壁に叩き付けている。

 

「ボンバギボ ”ゲゲル”ボロブデビ ザ バンザ?(今回の”ゲゲルの目的はなんだ?)」

 

「”ゲゲル”ザ ”ゲゲル”ザ!!ゴゼギガギビ バビガガス?(”ゲゲル”は”ゲゲル”だ!!それ以外に何がある?)」

 

「大体分かった。お前は何も知らないって事か」

 

言いながらジイノを適当に投げ捨てる。

そして、ライドブッカーをガンモードにして構え、カードをディケイドライバーに投げ入れる。

 

ダガビギデ!!(バカにして!!)

 

ファイナルアタックライド!!ディ、ディ、ディケイド!!

 

激昂したジイノは士に向けて突進してくる。

それに対して士はディメンションシュートで迎え撃つ。

士の前方に出現したカード状のエネルギー体を通り抜ける。

そして、吸い込まれる様にジイノに命中し、貫いた。

爆炎に背を向けながら士は変身を解く。

 

「これはグロンギに聞くより、主催者を探した方が早いか?」

 

”契約書類”を握りながら呟く。

グロンギの言語で書かれる”契約書類”だが、士は読めていた。

おそらく過去の立場ゆえにだろう。

 

{ ーーーー ギズドゲゲルレギ “ギヅパシンゲゲル” ーーーー

 

 ガンバジョグベン:“グロンギ”グガスボド。

 

 パパン・バギング ン グススムビパバセ ギデギンダギジョゼ ジョゲン ゾ ゴボバグ

 

 ドググ・ゴボゴボガ ガザレダ ジョグベンゼ ビデギググン ガヅガギゾ ダゲゲギ ギダグゲゼ ガギゴンジドシ ビバダダロボガ ギジョグギジャ

 

 グシギ・ゾンゲン ゼザ ギジュガギギジャ バサ ガンバギジャ ゼ “ダグバ” ン バベザ ガ ジョグド ガセス

 

 ズゴゴ・ゾンゲン ゼザ ドググ ン ジョグベン ゾ リダギダ グゲゼ バベサ ゾ グデデ ガヅレダロボ ガ ギジョグギジャ ドバス

 

 ズガギ・ガンバギジャ ゾ ジジョグデビ ビ ギデロジョギ

 

 ギブグ・ギガグソソス ゾ ズンギヅ ギデロ ゾバボ ガンバギジャ バサ グダゲダ ズビビ ゼビス(ダザギ ガヅガギググ ザ シゲドド ガセス)

 

 ※ジュグギジボグ

  “リント” ギガギ ン ギジュゾグ パ ガヅガギ バンギゾ ビ ジョデデ バグンド ガ ゼンゾグ

  “グロンギ” パ “ズ”ガ ドググ “メ”ガ ギブグ “ゴ”ガ バギング

  “ゴ” ビ バギシ “グロンギ” ゾ ガヅガギ ギデロ パパン グ バグンド ガセス

 

 ジュグギジョグゾグギジュグ:“ン” ン バド ヂバサ

 

 ゲンゲギ ギジュガギギジャ パ ジョグビ ン ススス ビ ボドドジ バドリザダ ン ロド ボグゲギバゲゲル ゾ ドシゴボバグ ボドゾ ヂバギラグ

           “ラ・ドレク・レ”印}

 

この”契約書類”を解読すると

 

{ ーーーー ギフトゲーム名 “ギヅパシンゲゲル” ーーーー

 

 参加条件:グロンギであること。

 

 一、十のグループに別れ、指定の場所で予選を行う。

 

 二、各々が定めた条件で規定数の殺害を達成した上で最後の一人になった者が勝者。

 

 三、本戦では主催者から参加者へ、”ダグバ”のベルトの欠片が譲渡される。

 

 四、本戦では二の条件を満たした上で欠片を全て集めた者が勝者となる。

 

 五、参加者を標的にしてもよい。

 

 六、契約書類を紛失しても他の参加者から奪えば復帰出来る。(ただし、殺害数はリセットされる。)

 

 注意事項

 リント以外の種族は殺害難易度によってカウントが変動。

 グロンギは”ズ”が三、”メ”が六、”ゴ”が十でカウントされる。(ただし、”ゴ”に限り、グロンギを殺害しても一でカウントされる)

 

 優勝報酬:”ン”の座と力。

 

 宣誓 主催者は上記のルールに則り名と御旗の下、公正なゲームを執り行うことを誓います。

           “ラ・ドレク・レ”印}

 

となる。

今までの事件はゲームの一部というわけだ。

何はともあれ嫌な予感しか無いゲームである。

そんな時、”契約書類”を眺める士の背後から誰かが話しかけてくる。

 

「”ゲゲル”について知りたいのならば私が話しましょうか?」

 

そんな声と共に士は振り返る。





ガメゴ&ジャラジ決着でした
相性的には逆にしたらすっきりする感じでした

ジイノはハイパーバトルビデオの奴です
特に見せ場も無く基本形態に圧倒されたあいつです

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます


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見物人と歪んだゲゲルと順調な計画

 

「グロンギのゲームというからお宝があると思ったけど………これは外れかな?」

 

海東は街の川辺を歩きながら呟く。

何時も通りに宝を盗みに来たのだが何も無さそうなので暇してるのだった。

背後の川は静かに流れている。

 

「士と会うのはまだいいし、結末を見届け様にもまだまだ何かありそうなんだよ………ね!!」

 

言いながらディエンドライバーを取り出し、背後の川を撃つ。

放たれたエネルギー弾は鞭のようなもので弾かれる。

それと同時に川の中から女の怪人が現れる。

 

「君は確か………ゴ・べミウ・ギだっけ?」

 

ギヅバサ ビズギデギダ!?(何時から気付いていた!?」)

 

ザジレバサザジョ(初めからだよ)………変身」

カメンライド ディエンド!!

 

海東は即座にカードをディエンドライバーに挿入し、真上に撃つ。

幾つもの残像が海東に重なり、蒼いプレートが頭部に刺さる。

海東はディエンドに姿を変える。

 

「君の相手は彼らでいいだろう」

カメンライド!!イクサ!!サガ!!

 

ディエンドライバーに二枚のカードを入れて引き金を引く。

幾つかの残像が重なり、仮面ライダーイクサと仮面ライダーサガとなる。

各々武器を構えてベミウへと向かっていくのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方、晴人は街の中心に向かっていた。

オーガが関わっているという事は他のファントムもしくは魔法使いが関わっている可能性もある。

ゆえに魔法関連の”何か”があるなら関わりがありそうな中心へと向かっているのだった。

そんな時、目の前に何かが降ってくる。

 

「何だ!?」

 

晴人は驚きつつもバイクにブレーキを掛けて急停止する。

土煙が晴れて見えたのは男だった。

 

「ボボ”ゴ・バベル・ダ”ビ ボソガセスボッソ ジョソボデ」

 

男は何かを言いながら姿を怪人態に変える。

バッファロー型の姿を見て、晴人は表情を変える。

 

ドライバーオン!!

「何言ってるかは分からないが敵か」

 

ベルトを出現させ、操作し、指輪を変える。

 

シャバドゥビタッチヘンシーン!!

シャバドゥビタッチヘンシーン!!

「変身!!」

ランド、プリーズ!!

ドッドッ、ドドド、ドンッドンッ、ドッドッドン!!

 

晴人がベルトにリングをかざし、下に手を向ける。

すると、黄色の魔方陣が下に現れ、上に向かっていく。

魔方陣が取りぬけると、晴人は仮面ライダーウィザード ランドスタイルに姿を変えていた。

 

コネクト、プリーズ

「さぁ、ショータイムだ!!」

 

魔方陣からソードガンを取り出し、構え、敵へと向かっていく。

バベルもメリケンサックの付いた拳で迎え撃つ構えを取るのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

その時、士は一人の男と対峙していた。

士は男に向けてライドブッカーガンモードの銃口を向けている。

男はそれを特に気にしないかの様に笑っている。

 

「いやはや、危ないですね。そんなに私が信用ならないのですか?」

 

「当たり前だ。”ゲゲル”について知ってる奴がグロンギ以外にいるか?」

 

「いると思いますよ。たとえば、私達を利用する為に介入してきた”大ショッカー”とか」

 

「大体分かった。この”ゲゲル”、何処かおかしいと思ったが………まさか”大ショッカー”が直接関与しているとはな」

 

「知っているのは少数でしょうけどね」

 

「で、その少数であるお前は何の為に俺に近付いた?」

 

「勿論、今”ゲゲル”を取り仕切っている存在を倒して貰う為にですよ。今の”ゲゲル”は気に入らないですからね」

 

「なるほど…………そういう口実か」

 

「はい……ッ!?」

 

男が士の言葉に怪訝な顔を見せた瞬間には引き金が引かれていた。

ライドブッカーからエネルギー弾が放たれ、男を襲う。

常人ならそれで死ぬ。

だが、男は常人ではない。

男はライオン型の怪人態に姿を変え、エネルギー弾を全て弾いていくのだった。

 

「いきなり撃つとは酷いじゃないですか」

 

「俺達を利用するつもりだった奴に言われたくは無いな、ゴ・ライオ・ダ」

 

「はて、何のことやら?」

 

「恍けても無駄だ。お前はどうせ俺達に黒幕を倒させた後に黒幕の用意した物を奪うつもりだろう?」

 

「どうやら貴方は必要以上に疑い深いようだ!!」

 

言いながら爪で斬りかかる。

士は軽く避けると、ディケイドライバーを腰に巻く。

カードを構え、ディケイドライバーに投げ入れる。

 

「変身!!」

カメンライド ディケイド!!

 

士の体に幾つもの残像が重なり、頭部にプレートが刺さる。

士の姿は仮面ライダーディケイドになっている。

変身すると同時にライドブッカーをソードモードに変え、ライオの攻撃を弾く。

 

「まぁいい。欠片をそれなりに集めれば、私はさらなる力を得るだろう。その力さえあれば…………」

 

「皮算用はやめといた方がいいぞ。お前は此処で倒されるんだからな!!」

 

そうしてディケイドとライオの対決が始まる。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ウェイクアップ!!

「王の判決を言い渡す…………死だ!!」

 

そんな声と共にサガのジャコーダービュートがベミウの体を貫く。

上空に紋章が現れ、サガはそれに飛び込む。

飛び込んだサガは紋章の別の位置から出てくる。

それにより、ベミウは宙吊りにされる。

 

「その命…………神に返しなさい!!」

イ・ク・サ・カ・リ・バ・ー・ラ・イ・ズ・アッ・プ!!

 

イクサはイクサカリバーにカリバーフェッスルを差し込み、技を発動させる。

イクサカリバーが光を纏うそのままイクサは宙吊りのベミウを斬り裂く。

同時にサガがジャコーダーを通して魔皇力を注入する。

イクサジャッジメントとスネーキングデスブレイクを同時に受けたベミウは全身から火花を散らす。

 

「お疲れ様」

ファイナルアタックライド!!ディ、ディ、ディ、エンド!!

 

そこに駄目押しのディメンションシュートが放たれる。

三つの必殺技を続けて受けたベミウは跡形もなく消し飛ぶのだった。

同時にサガとイクサも消えるのだった。

 

「これはお宝では無いね」

 

闘いの最中でベミウから盗んでいた何かの”欠片”を見ながら呟く。

そこで殺意の混ざった視線を感じ、”欠片”を適当に放り投げる。

 

「僕としてはそれには興味が無いから好きに持って行きなよ。今は積極的に戦いたい気分じゃないしね」

 

そう言いながら海東は”欠片”に背を向けて歩き出すのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「残りは半分か。邪魔者のおかげで純度は下がっているがスムーズに事を進めれてはいるな」

 

”器”の前で男は呟く。

今回の”ゲゲル”の管理人である、ラ・ドレク・レは何かを含んだ笑みを浮かべながら進行状況を確かめる。

そんな男の背後から足音が聞こえてくる。

 

ジャグギ ギダギサ ゴボラゼザ(安い芝居はそこまでだ)

 

”ジャーザ”バ バビバジョグゼロ?(”ジャーザ”か、何か用でも?)

 

近付いてきていたのは眼鏡の女だった。

ゴ・ジャーザ・ギ、”ゴ”の中でもかなり上位の実力を持つ者だ。

ドレクは愉しそうに口元を歪めて振り返る。

 

「安い芝居とは何の事かな?」

 

「貴様の立ち位置そのものだ。そこは本来”バルバ”の立ち位置のはずよ」

 

ドレクが挑発するようにリントの言葉で聞き返すとジャーザもリントの言葉で返す。

ドレクは大きく口を歪めた上で告げる。

 

「それは簡単な事だよ。私が”バルバ”を殺して主催者権限を奪ったのだからなぁ!!」

 

それは真実でもあり、嘘でもあった。

だが、挑発としては十分だった。

ジャーザはシュモクザメ型の怪人態へと姿を変え、銛を構えてドレクへと、向かっていく。

ドレクは悪意に満ちた笑みを浮かべながら龍型の怪人態へと姿を変える。

”彼ら”の計画は今この時も順調に進行しているのだった。

 

 





グロンギ語が訳してあるとこと無いとこの違いは理解できるキャラの有無です

ラ・ドレク・レの正体は所々にヒントがあったりします
既存キャラではあります


それでは質問があれば聞いてください
感想待ってます!!


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バギブソンと収束する脅威と”戦場”

「ゴセザ キョグギン サギザザ ゴ・バダー・バ ザ!!」

 

「何だ………あの人?」

 

「言葉的にグロンギだろ」

 

何やらよくわからない言語を言う男に対して映司とアンクは怪訝な顔をする。

そんな事を構いもせずに男はバイクに跨ったままポーズを取り、姿をバッタ型の怪人へと変える。

更に何か懐から取り出すのを見て、二人は警戒する構えを取る。

 

「超変身!!」

 

だが、男は、バダーは取り出した”欠片”を叫びながら己の胸に突き刺す。

直後にバダーの姿が刺々しく変貌する。

そして、バイクに棘の様な装飾品を突き刺す。

すると、バイクは禍々しい姿に変わる。

バダーの愛機、ググママ・バギブソンに変化したのだ。

 

「さぁ、勝負だ。仮面ライダー」

 

リントの言葉を流暢に扱い喋り掛けてくる。

それが”欠片”の影響かどうかは定かでは無い。

だが、映司達にはそんなことは関係無い。

 

「いいよ、受けて立つ」

 

映司は答え、対抗するようにライドベンダーに跨る。

二台のバイクからのエンジン音が響く。

誰が合図するわけでも無かった。

それでも二台のバイクは同時に動き出し、激突を始める。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ディフェンド、プリーズ!!

 

そんな音声と共に晴人の前に土の壁が現れる。

だが、バベルはその壁を容易く砕いていく。

晴人は転がりながら距離を取る。

 

「脆い壁だ」

 

「そうかい」

キャモナシューティングシェイクハンズ!!ランド!!シューティングストライク!!ドッドッ、ドドド、ドンッドンッ、ドッドッドン!!

 

晴人はソードガンでシューティングストライクを発動させ、土属性の魔弾をバベルに向けて放っていく。

バベルも最初の数発は防いでいたが徐々に対応仕切れなくなり、数発直撃する。

それでも倒れずに立っている。

傷もすぐに治っていてる。

 

「なら、こいつだ」

ランド!!ドラゴン!!ダン、デン、ドン、ズ、ドゴーン!!ダン、デン、ドゴーン!!

 

リングを変え、ウィザードライバーに読み込ませる。

魔方陣を取りぬけて姿をランドドラゴンへと変える。

 

コピー、プリーズ!!

 

コピーの魔法でソードガンを二本に増やし、二刀流で斬り掛かる。

バベルも手数的に防ぎきれず、後退していく。

少し距離を取ると、姿を微妙に変化させる。

筋肉が隆起し、肩から牛の角の様な物が生えてくる。

そして、装飾品を槌の様な物に変換する。

 

「ゴツくなったねぇ………」

 

一気に距離を詰めて槌を振り下ろしてくる。

晴人は紙一重に体を捻って躱す。

返す刀で斬り付けるつもりではあったがそうは出来なかった。

バベルの振り下ろした槌は地面を砕き、その衝撃波で晴人を吹き飛ばした。

 

「どんなパワーだよ!!」

チョーイイネ!!グラビティ!!サイコー!!

 

グラビティの魔法を発動させてバベルの頭上から重力を掛ける。

普通なら立ってもいられない様な重力なのだが、バベルは耐えた上に前に進もうと足を出してくる。

だが、足止めさえ出来れば十分だった。

 

チョーイイネ!!スペシャル!!サイコー!!

「ハァ!!」

 

スペシャルのリングを読み込ませると、晴人の体から黄色のドラゴンが飛び出し、腕に絡み付き、巨大なクローを出現させる。

クローから刃状のエネルギーをバベルに向けて放つ。

バベルは槌でそれを防ごうとするがグラビティの重力もあってかなりぎりぎりであった。

そこまでも織り込み済みではある。

晴人はリングを変えて読み込ませる。

 

ルパッチマジックタッチゴー!!

 ルパッチマジックタッチゴー!!

「フィナーレだ!!」チョーイイネ!!キックストライク!!サイコー!!

 

晴人の足に黄色の魔力が纏われる。

そのまま側転から跳んでバベルに蹴りを放つ。

 

「まだまだ………」

 

バベルはそれすら意地で耐えようとする。

だが、そこで終わる晴人ではない。

 

ドリル、プリーズ!!

「ダァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

ドリルの魔法によって蹴りに激しい回転が加わる。

それで拮抗は崩れる。

槌が砕け、バベルの胸板にストライクウィザードがめり込む。

転がるようにバベルは吹き飛ばされ、壁に激突する。

だが、そこで終わらなかった。

バベルは血塗れになりながらも立ち上がってきたのだ。

そして、血の溢れる胸板に”欠片”を押し込んだ。

 

「レビ ロボ リゲデ ブセス!!」

 

バベルの肌は黒くなり、筋肉は更に隆起する。

傷は塞がり、角が鋭さを増す。

更に頑強で重量のある槌が生み出される。

バベルはそれを容易く持ち上げ晴人へと向かっていくのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「何処向かってるの、霧崎?」

 

「死の脅威が異常な程充満しているとこだ」

 

ラッテンと合流した霧崎は一度高所に登り、街全体を見回した。

そこで気付いたのだ。

死の脅威が一か所に流れていっているのを。

まるで吸い寄せられるかの光景だった。

ゆえに霧崎はそこに何かあると踏んで向かっているのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

強化されたバベルの一撃は凄まじかった。

それは地を揺らし、地割れを起こした。

避けていなければ晴人も魔法の鎧ごと潰されていただろう。

 

「凄いな。でも、お前にばっか構ってられる程暇じゃ無いんでね」

インフィニティープリィィィィィィズ!!ヒースイフードーボーザバビュードゴーン!!

 

晴人はインフィニティーのリングをベルトに読み込ませる。

透明なドラゴンがその身から飛び出し、晴人の周囲を周る。

同時に透明な魔方陣が地面に現れ、晴人を包んでいく。

晴人の姿はインフィニティースタイルへと変貌していた。

キラキラと輝くその姿を一切気にせずバベルは槌を振り下ろす。

 

インフィニティー!!

 

再度ウィザードライバーにインフィニティーリングをかざす。

それによって時は加速し、その影響でインフィニティースタイルはその身を高速移動させる。

アックスカリバーをその手に高速移動しながらバベルをすれ違い様に何度も斬り裂いていく。

高速移動についていけなくともバベルの身は強靭である。

それゆえに何度斬り裂かれようと傷は浅く、すぐに再生していった。

 

ターンオン!!

 

アックスカリバーを反転さえ、アックスモードにする。

その状態で斬り掛かるが今度は対処されやすくなる。

アックスカリバーと槌が何度も衝突し、火花を散らす。

だが、弾き飛ばされるのは晴人の方だった。

バベルは実質その場から動かずに全ての攻撃を受け止めていた。

 

「埒が明かないな!!」

ハイタッチ!!シャイニングストライク!!キラキラッ!!キラキラッ!!キラキラッ!!

 

アックスカリバーのハンドオーサーにインフィニティーリングをかざす。

アックスカリバーに魔力を纏わせ、頭上で回す。

一回転するごとにアックスアリバーは大きくなる。

最大まで巨大化させ、飛び上がり、バベルに向けて振り下ろす。

バベルも対抗するかの様に槌を大きく回し遠心力を付けた上で振り上げる。

激突は一瞬だった。

轟音が鳴り響き、周囲に衝撃波が広がり、ただでさえボロボロな街並みが更に吹き飛んでいく。

激突の結果、アックスカリバーの軌道はズラされた。

しかし、同時にバベルの左腕を大きく抉り、ほとんど動かない状態にさせた。

ここが狙い時であり、晴人も畳み掛ける。

 

ハイタッチ!!ハイタッチ!!ハイタッチ!!ハイタッチ!!ハイタッチ!!プラズマシャイニングストライク!!

 

元のサイズに戻ったアックスカリバーのハンドオーサーにインフィニティーリングを数度重ねる様にかざす。

魔力を纏ったアックスカリバーを投げ放つ。

アックスカリバーは遠隔操作され、バベルに何度でも向かっていく。

その度にバベルはアックスカリバーを弾き返していく。

これでは決め手にはならない。

そんな事は晴人も分かっている。

 

「今度こそフィナーレだ!!」

チョーイイネ!!キックストライク!!サイコー!!

 

アックスカリバーを遠隔操作しながらもリングを変え、ベルトに読み込ませる。

飛び上がり、バベルに向けて蹴りを放つ。

その足には幾つもの魔方陣が纏われている。

バベルも全力を掛けて対抗する。

 

「ヌゥン!!」

 

「ダァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

晴人の蹴りとバベルの槌が激突する。

だが、それだけでは無かった。

アックスカリバーはまだ動いていた。

バベルの背にアックスカリバーが突き刺さりそのまま両断しようとする。

同時にバベルの槌にも限界が来る。

インフィニティーの必殺技を受け続けた槌は全体にヒビが入り、砕けていった。

そこが最後だった。

前後からの同時攻撃の負荷に耐えれずに崩壊が始まる。

アックスカリバーがバベルの上半身と下半身を切り離し、上半身は蹴り抜かれる。

 

「ふぃ~」

 

晴人が一息吐くと同時にバベルの体は爆散し、”欠片”が吹き飛ぶ。

晴人は”欠片”に気付かずにバイクに跨る。

 

インフィニティー!!

 

バイクに乗ったまま高速移動を発動させ、街の中心を目指すのだった。

 

 





vsバベル決着でした!!
ごり押しにごり押しを重ねた感じでした
強化バベルは一撃でも受けたらガチで即死クラスの怪力という感じです

それでは質問があれば聞いてください
感想待ってます!!


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違うテンションと竜のグロンギと狡猾な獅子

 

霧崎とラッテンは街の中央にあった時計塔の地下へと進んでいた。

死の脅威を辿る内にいつの間にかこんなとこに来ていたのだ。

 

「怪しい臭いが全開ね~」

 

「出来れば近付きたくないんだけどな……………」

 

嫌な予感しか無い霧崎は露骨に顔を引き攣らせている。

ラッテンはその後ろをニコニコしながらついていく。

逃げ出すわけにもいかないので最早進むしか無いのだがそれでも二人のテンションには差が出る。

性格的に仕方なくはあるのだが。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ビガラサ バンザ!!(貴様は何だ!!)

 

バダギザ "ラ・ドレク・レ” (私は”ラ・ドレク・レ”) ゴセギジョグ ゴギゲス ギシザバギ ザソグ?(それ以上教える義理は無いだろう?)

 

ドレクはジャーザに対してひたすら挑発するように言う。

ジャーザは筋肉を隆起させ、銛を大剣へと変化させる。

剛力態に体を変化させたのだ。

ドレクも腰の二本の剣を手に取る。

剣を交差させてジャーザの剣を受け止め、蹴りを入れて距離を取る。

ゴの中でも上位の実力を持つジャーザを相手にしてもドレクは余裕そうに構える。

それどころか、楽しむかの様に口を歪ませるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

アタックライド!!スラッシュ!!

「ハァ!!」

 

「おっと」

 

刀身が残像の様に増えたライドブッカーソードモードでの斬撃をライオは軽々と受け止める。

その仕草には余裕が感じられた。

だが、士はあえてそのまま力を込める。

 

「む…………」

 

「ダァ!!」

 

そのまま斬撃は振り下ろされる。

ライオの腕から鮮血が舞う。

刀身の側面を拭う様にしながら士は更に斬撃を加えていく。

ライオは思わず距離を取る。

 

「どうした?」

 

「どうやら予想以上のようですね」

 

ライオは幾つか火球を生み出して士に牽制するように放つ。

士はライドブッカーをガンモードにし、ディケイドライバーにカードを投げ入れる。

 

アタックライド!!ブラスト!!

 

銃口が残像の様に増え、弾丸が乱射され、火球を撃ち落していく。

その隙にライオは”欠片”を取り出して体内に押し込んでいく。

 

「本来ならばこういう使い方はしたくないんですがね!!」

 

取り込んだ直後に体が脈動するかの様に震える。

他のグロンギ同様に体は禍々しく刺々しく変化する。

 

「アゥオオオオオンンンンンン!!」

 

変化の直後に咆哮を上げて火球を放つ。

先程とはサイズが桁違いのを複数だ。

それを目にしても士は慌てはしない。

 

フォームライド!!ファイズアクセル!!

スタートアップ!!

 

ファイズ アクセルフォームに直接カメンライドする。

1000倍に加速された動きでライオの背後を取る。

 

 

リフォメーション

カメンライド!!キバ!!

フォームライド!!キバドッガ!!

アタックライド!!ドッガハンマー!!

 

ライオが振り返る間に次々とカードをディケイドライバーに投げ入れる。

キバ ドッガフォームにカメンライドし、ドッガハンマーを手にしてライオに殴り掛かる。

だが、ドッガハンマーでの攻撃は容易く受け止められる。

力を込めようとピクリとも動かない。

その隙に殴り返されて吹き飛ぶ。

 

「怪力も私には通じませんよ」

 

「なら、これだ」

 

地面を転がりながらもカードをディケイドライバーに押し込む。

 

カメンライド!!ヒビキ!!

 

響鬼にカメンライドし、音撃棒を取り出す。

牽制する様に火炎弾を放つ。

ライオは軽く手を払う様にそれを振り払う。

しかし、それは目暗ましに過ぎない。

士は姿勢を低くしてライオの懐に転がり込む。

 

アタックライド!!オンゲキコ カエンヅツミ!!

ファイナルアタックライド!!ヒ、ヒ、ヒ、ヒビキ!!

 

ライオの腹に音撃鼓を押し付ける。

音撃鼓が広がり、ライオを拘束する。

そこに音撃を叩き込もうとするが、

 

「この程度で私が縛れるとでも?」

 

「な!?グゥハァ!?」

 

ライオは力技で拘束を引き千切る。

そして、正面の士に重い一撃をくらわせ、吹き飛ばす。

吹き飛ばされた士は建物に激突し、崩れ落ちた瓦礫と土煙に包まれる。

 

「どうしました?もう終わりですか?」

 

「そんなわけが無いだろう」

クウガ、アギト、リュウキ、ファイズ、ブレイド、ヒビキ、カブト、デンオウ、キバ、ファイナルカメンライド!!ディ、ディ、ディケイド!!

 

土煙を払うかの様な光が放たれる。

その胸には九人のライダーのカード、その頭部にはディケイドのカード。

士はディケイド コンプリートフォームにファイナルカメンライドして土煙を切り払う様に出てくる。

同時にケータッチを操作する。

 

クウガ!!

カメンライド!!アルティメット!!

 

胸のカードが捲れていき九枚全てクウガの物になる。

更に側面に移動させられたディケイドライバーにカードを投げ入れる。

 

アタックライド!!アルティメットペガサスボウガン!!

 

「ぐぅ!?」

 

黒いライジングペガサスボウガンを召喚し、ライオが対応する前に撃ち込んでいく。

ライオもほぼ不意打ちに近い状況であり、油断していた事もあって避けきれずに直撃を許してしまう。

撃ち込まれた部位から封印エネルギーが流れ込もうとするが”欠片”を取り込んだ事もあってまだ耐えられていた。

 

「まだまだ」

アタックライド!!アルティメットタイタンソード!!

 

士は二本の黒いライジングタイタンソードを召喚する。

そのまま二刀流でライオに斬り掛かっていく。

ライオは対応しようにもボウガンを撃ち込まれたばかりで体の反応が鈍かった。

結局受け止めようにも遅く、腕を深々と斬られる。

そして、五、六度斬った後に両腕を突き刺した上で壁に貼り付ける。

 

「一体何を……………」

 

アタックライド!!アルティメットドラゴンロッド!!

「ハァ!!」

 

「ヌグァ!?」

 

黒いライジングドラゴンロッドを召喚して駄目押しするかの様にライオの胸板に突き刺す。

そして、士はライオから距離を取るかの様に少し後ろへ下がった。

その上で隣にクウガ アルティメットフォームを召喚する。

カードをディケイドライバーへと投げ入れる。

 

ファイナルアタックライド!!ク、ク、ク、クウガ!!

「ダァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

士とクウガは完全に動きをシンクロさせた状態で拳に炎を纏わせる。

全く同じ動き、全く同じタイミングで士とクウガは拳をライオへと叩き込む。

拳を受けた直後にライオは炎に包まれる。

同時にライオを貼り付けにしていた壁も耐え切れずに崩れ落ちた。

 

「うっ……………グガ…………クァァァァ!!」

 

ここまで立て続けに攻撃を受け続けたライオの体は遂に限界を迎える。

封印エネルギーが腰の魔石に届き掛ける。

ゆえにライオは奥の手を使う。

鬣を展開する事で封印エネルギーを外へ放出するのだ。

これによって魔石に封印エネルギーが到達するのを防げる。

だが、注ぎ込まれた量が量なだけに何時も取りに放出が出来ず、体の傷が広がっていく。

何とか放出し切るとライオの姿は血塗れの人間体へと戻っていた。

奥の手は自身の変身エネルギーも放出するがゆえに姿が人間体に戻るというデメリットもあるのだ。

 

「まさか…………ここまで追い込まれるとは」

 

さすがに受けた傷が深くて即座に怪人態へ戻るのは無理だった。

土煙に紛れることによって一旦引くことにする。

だが、逃がす程士は甘くは無い。

 

「逃がすかよ」

 

ライオの姿を見付けるなり、殴り飛ばして地面に転がすのだった。

しかも変身したままであった。

士はライオの首を掴み持ち上げ、壁に叩き付ける。

 

「この姿を相手に躊躇無しですか…………」

 

「悪いが俺は”あの男”やユウスケ程、お人好しじゃない」

 

自嘲するように士は言う。

士は必要あれば女性の顔面でも殴る。

怪人の人間体を攻撃するくらいは躊躇は無い。

 

「さて、ちょうどいいから色々と聞かせて貰おうか。今度こそ本当の事をな」

 

士はそのままライオを相手に尋問を始めるのだった。





ライオ戦終了でした!!
ライオは小説版クウガに出た奴です
プロトクウガに封印された組です

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!


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悪趣味な物体とタナトスの器と龍の正体

遅くなってすみません
大学とバイトがかなり時間を持って行ってるもので


時計塔地下。

霧崎とラッテンは下に降りていった結果、一枚の扉の前にいた。

その奥に死の脅威が流れていくように霧崎には見えていた。

 

「いかにも、怪しそうな扉ね」

 

「そもそもドアノブすら無いがどうやって開けるんだ、これ?」

 

二人が立ち往生している理由はそれだった。

扉らしき物体ではあるのだがノブすら無いので開けようにもいじりようが無いのだった。

が、霧崎はともかくラッテンはそれを前にして大人しくしている性格では無い。

 

「ちょっとどいてなさい、霧崎」

 

「ん?何か策で……うぉい!?」

 

『ちょ、何をやってるんですか、マスター!?』

 

ラッテンは雑に霧崎をどけると、扉に向けてハーメルケインを突き刺す。

あまりにも急な行動に義手内で待機していたアルマすら困惑の声をあげる。

 

「こんな物を一々仕掛けを探してたら面倒でしょうが。なら、さっさと壊すに限るでしょ♪」

 

アハハハ、と笑いを上げる様にしてラッテンは扉に激しく攻撃を仕掛ける。

霧崎も、アルマももはや何も言わずに見ているのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ライオン!!トラ!!チーター!!ラトラタ!!ラトラーター!!

 

映司はライドベンダーに乗りながらラトラーターコンボへと姿を変える。

更にギフトカードからトラカンを取り出し、ライドベンダーと合体させる。

トライドベンダーへと変形したマシンは咆哮を轟かせる。

それに対抗するかの様にググママ・バギブソンもエンジンを響かせる。

トライドベンダーの前方からメダル型のエネルギー弾が放たれるがバダーは軽々と躱していく。

 

「ゴボデギソ ザ ビバン!!」

 

ググママ・バギブソン前方がバダーの叫びと共に変形する。

捻じれた牛角の様な物が伸びてくる。

それはクワガタの角の様に前方のタイヤの側面に設置される。

同時にドリルの様に回転を始める。

そのままトライドベンダーに向けて突進してくる。

だが、そのまま直撃させるわけもない。

互いのバイクはその身をすれ違わせる様に短く衝突する。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

その身は鎖に縛られた上で二本の剣に貫かれていた。

ラ・ドレク・レはジャーザをそこまで追い込んでいた。

もはや日動き一つ出来ないまでに斬り刻んでいた。

血に包まれた体を鎖は消して離さない。

 

「これでジ・エンドだ」

 

ドレクはそういうとジャーザの腰に腕を突き刺す。

体内の霊石を掴み取って抜き出す。

もはや断末魔すら無かった。

霊石を引っこ抜かれたジャーザは崩れ落ちて灰の様にその身を散らすのだった。

 

「これはこれでいい余興になった。ちょうど贄も不足していたしな」

 

ドレクがそう呟くと同時に崩れ落ちたジャーザの残骸の下に魔方陣の様な物が現れ、遺っていた骨を回収していく。

ドレク自身は摘出した霊石を背後の”器”に投げ込むのだった。

そんな時だった。

激しい音が響いたと思ったら扉が吹き飛ばされ、そこから男女が数人入って来るのだった。

 

「割と簡単に開いたわね~」

 

『開けたではなく、吹き飛ばしたでしょう』

 

「細かい違いでしょう?」

 

「いや、全然細かく無いぞ」

 

霧崎とアルマに突っ込まれるが、ラッテンは軽い調子で聞き流す。

そんなことは一切気にせずに室内へと足を踏み入れる。

霧崎も渋々と後に続く。

 

「ほぉ、客人か」

 

軽い調子もその一言で消し飛んだ。

ドレクの存在に気付くなり、警戒を最大に高める。

アルマは山羊の姿で即座に顕現して二人を守る様に前に立つ。

だが、ドレクは人間態に戻り軽い調子を崩さない。

 

「此処で客人とは中々面白い。”ゲゲル”も佳境だ。そろそろ盤面を大きく動かすのもいいだろう」

 

しかし、霧崎達が目を付けたのはドレクでは無かった。

その背後にある物体の方がよっぽど目を引いた。

それは”器”だった。

夥しい数の骨によって構築された禍々しく巨大な器だった。

 

「何だよ、あれ………」

 

『黒魔術の魔道具の類でしょうか…………何にせよ、胸糞悪いのには変わりありませんね』

 

「悪趣味ね。まぁ碌な物じゃない気配がプンプンするわね」

 

三者三様の反応を見せる。

ドレクはそれを愉しそうに眺めていた。

霧崎としては死の脅威を溜め込む、”器”が気持ち悪くてたまらなかった。

そして、膠着状態にはならず、ドレクの方から語りを始める。

 

「面白い反応に感謝をしよう。私はラ・ドレク・レ。この”ゲゲル”の管理者だ。本来ならばもう少し愉しむところではあるが、決着が近そうなのでな。君達には一旦退場して貰おう」

 

芝居がかった口調でドレクは話していく。

そこに確かな殺気を感じた三人は各々全力で警戒して、ドレクの出方を待つ。

ドレクは手の中で何かを弄ぶ様にしながら手を腰のベルトに近付ける。

が、それは直前で遮られる。

 

「弾丸ッ!?」

 

霧崎達の背後からまるで霧崎達を避ける様に銀の弾丸がドレクに襲い掛かったのだ。

ドレクは怪人態になり、銀の弾丸を弾くが一発弾きそこねてベルトを掠める。

 

「小芝居はその辺にしておけよ、オーマ。いや、金色の魔法使い!!」

 

「貴様か、ウィザード!!」

 

弾丸を掠めたベルトにはヒビが入る。

ヒビは全体に広がり、グロンギとしてのベルトが剥がれ落ちる。

その下からは白い魔法使いやメイジが使用していた物と同型のドライバーが出現する。

ラ・ドレク・レ改めオーマは霧崎達が通ってきた階段から現れる人影、操真 晴人を憎々し気に睨み付ける。

対して晴人は何時も通り、飄々とした態度で現れる。

 

「もう貴様が此処に来るとはな………奴は何をしている」

 

「それはタナトスの器か?今度はそれで何をするつもりだ?」

 

「聞かれて答えるとでも?」

 

「それもそうだな。なら、お前が何かする前に倒させて貰うよ」ドライバーオン!!

 

タナトスの器はかつて魔法使いの国の全ての民を絶望に追い込んでファントムに変貌させかけた代物だ。

それと同じ物があるとなれば何が起こるかは分からなくても惨劇の気配は感じられる。

晴人はドライバーオンの指輪をベルトにかざし、ウィザードライバーを出現させる。

 

シャバドゥビタッチヘンシ~ン!!

 シャバドゥビタッチヘンシ~ン!!

 

ベルトを操作すると、圧縮された呪文が鳴り響く。

オーマは怪人態もといファントム、ドレイクの姿で腰の剣、タイラントを構える。

 

「変身!!」

フレイム、プリーズ!!ヒー、ヒー、ヒーヒーヒー!!

 

左手の指輪のバイザーを降ろし、ウィザードライバーにかざし、横に手を伸ばす。

手の先に赤い魔法陣が現れ、晴人の体を通り抜け、その身に魔法の鎧を包ませる。

仮面ライダーウィザード フレイムスタイルに姿を変えてソードガンを構える。

 

「さぁ、ショータイムだ!!」

 

同時にオーマは走り出して斬り掛かる。

晴人は回る様にしてその斬撃を躱し、逆に斬り掛かる。

晴人とオーマの闘いが再び始まる。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「なるほど、大体分かった」

 

士はライオから今回の”ゲゲル”が始まるまでの流れを聞いていた。

いわく、彼らグロンギは元々何処かの世界で封印されていたはずだが、突如封印が解けたと思えばこの見知らぬ土地、箱庭にいたらしい。

彼らの纏め役に近い立場のラ・バルバ・デはしばらく様子見の構えであった。

ライオの私見では何処か悟った様な雰囲気だったらしい。

そして、突然バルバは姿を消し、代わりにラ・ドレク・レが現れた。

ドレクはバルバから受け継いだという”主催者権限”で”ゲゲル”を開幕させた。

確かにバルバから受け継いだと思われる物と”ン”の力を賭けての”ゲゲル”という事もあって納得していない連中も腹を探る意味合いも兼ねて参加した。

という流れのようだ。

ドレク関連とグロンギが箱庭に現れた理由は不明確ではあるが、士が知りたい事は大体知れた。

士は用が済んだライオをそこらへんに投げ捨てる。

 

「話を聞くのに時間を掛けすぎたな!!」

 

ライオは怪人態に姿を変えて士へと向かっていく。

対して士は淡々とケータッチを操作する。

 

クウガ!!

カメンライド!!アルティメット!!

 

士の隣にクウガ アルティメットフォームが出現する。

全く同じ動きで振り向きつつ、士はディケイドライバーにカードを投げ入れる。

 

ファイナルアタックライド!!ク、ク、ク、クウガ!!

「ハァァ!!」

 

同時に飛び上がり、士とクウガは両足蹴りをライオに同時に叩き込む。

さすがにボロボロのライオではこれほどまでに多量の封印エネルギーに対処は出来なかった。

全身に広がるレベルに巨大な紋様を刻まれながらライオは爆散するのだった。

 

「さて、俺も中央に急ぐか」

 

変身を解いた士はマシンディケイダーに跨って時計塔を目指すのだった。

 





ジャーザ&ライオ退場でした
ドレクの正体は金色の魔法使いことオーマことファントムのドレイクでした
怪人態はベルトだけグロンギのものにしたお手軽偽装になってました

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!


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電撃体とサギザザビブブと金色の魔法使い

 

激しい音が響き、周囲に衝撃波が撒き散らされる。

彼らはただ拳を互いにぶつけ合っていた。

互いの体に拳が突き刺さる度に鮮血が舞う。

 

「はぁ…………はぁ…………」

 

「リント ガ ボボラゼ ジャスドザバ」

 

十六夜もゴ・ガドル・バも息絶え絶えであった。

ガドルは俊敏体、射撃体、剛力体に姿を変える事が出来る。

しかし、それらが扱う武器は全て獅子座の太陽主権によって弾かれる。

ゆえに殴り合いになっているのだった。

ガドルは目を金色に変えて電撃体になっている。

雷を纏う拳と十六夜の拳がすれ違い、互いの腹部に突き刺さる。

互いに後退するが即座に拳を構えて打ち付け合う。

互いの誇りを掛けて闘いは続く。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

映司はトライドベンダーを操りながらメダジャリバーを手に取って、すれ違い様にバダーに斬り掛かる。

バダーはバイクに乗ったまま身を屈めてそれを避けた上でハンドルを大きく切る。

トライドベンダーは突然の衝撃に大きく横滑りをする。

そこを狙う様にバダーが突進してくる。

 

「ダァ!!」

 

映司はライオンヘッドを輝かせる事でバダーの目を眩ます。

ググママ・バギブソンの動きが鈍っている内に体勢を立て直す。

今度はググママ・バギブソンの横っ腹を狙ってエネルギー弾を放っていく。

が、バダーは脅威のテクニックでそれらの回避していく。

そのままググママ・バギブソンを飛び上がらせ、突撃してくる。

映司も立ち向かう様にトライドベンダーを突進させる。

その間にセルメダル三枚をメダジャリバーに込める。

 

トリプル!!スキャニングチャージ!!

「セイヤァァァァァァァァァァァ!!」

 

オースキャナーでメダジャリバー内のセルメダルをスキャンする。

セルメダルの力が刀身に纏われる。

すれ違い様にメダジャリバーを振るう。

空間が斬り裂かれ、映司に直撃する寸前であったググママ・バギブソンも真っ二つになる。

映司の背後から爆発音が響く。

 

「ゴゼボ ”ググママ・バギブソン”ガ!!」

 

しかし、バダーは直前に危険を察知して地面に転がり落ちていた。

起き上ると憎々し気に映司を睨み付ける。

映司もトライドベンダーから降りて構える。

バダーは助走を付けると飛び上がって映司に向けて蹴りを放つ。

 

「サギザザビブブ!!」

 

「俺も負けはしないよ」スキャニングチャージ!!

 

映司はオースキャナーでオーズドライバー内にあるコアメダルをスキャンする。

トラクローを展開すると映司とバダーの間に黄色のリング状のエネルギー体が三つ出現する。

トラクローを広げ、チーターレッグで高速移動しながらリングを潜っていく。

 

「ハァァァァセイヤァァァァァァァァァァァァ!!」

 

三つ目のリングを潜ると同時にバダーに向けてトラクローを放つ。

バダーのサキザザビブブとラトラーターコンボのガッシュクロスが衝突する。

接触はほとんど一瞬だった。

映司は爪を振り下ろした状態で静止し、バダーは少し離れた位置に着地跡を残した上で立っていた。

 

「ゴビボ……………ラベザ」

 

バダーはグロンギ語で何かを呟き、仰向けに倒れる。

その胸には大きく✖型に斬り裂かれた跡があった。

倒れた数瞬後にその身は爆散するのだった。

それを確認した映司は大きく息を吐いて変身を解除した。

 

「やっと終わったか。遅かったな」

 

「手伝いすらしなかったお前がそれを言うか?」

 

建物から降りてきたアンクに対して映司は軽く文句を言う。

アンクは全く悪びれる事も無くただ笑うのだった。

 

「それでこれからどうするつもりだ?」

 

「時計台に向かうよ。霧崎君達が大変なみたいだからな」

 

そういう映司の指にはタカカンドロイドがいた。

どうやらカンドロイド数体に探索を頼んでいたらしい。

 

「俺達だけ休むわけにもいかないしね」

 

そう言って映司とアンクはライドベンダーに乗り込んで時計塔へと向かうのだった。

その背後で何者かがバダーの落とした”欠片”を回収していたのだが、安心して一時的に気が抜けた映司は気付かないのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ハァ!!」

 

「フンッ!!」

 

晴人とオーマが剣を激しくぶつけ合う。

ソードガンの銃撃交じりに応戦していたがどうにも押されていた。

オーマは二本の剣で器用に晴人のソードガンを受け止めて返す刀で斬り返す。

ドレイクとしての肉体は硬い装甲に覆われている為に多少の傷はどうという事は無い。

 

「更に駄目押しと行こうか!!」

 

オーマはそういうと二本の剣を合体させて大剣タイラントに変える。

一撃一撃の重みが増していき、フレイムスタイルでは受け止め切れなくなる。

 

スペシャル、プリーズ!!

 

「うん?」

 

晴人は牽制の為に小規模の爆発を放つ。

それによってオーマも怯む。

その隙にリングをチェンジし、ベルトをいじり、リングをかざす。

 

フレイム!!ドラゴン!!ボー、ボー、ボーボーボー!!

「ハァ!!」

 

魔方陣を通り抜けてフレイムドラゴンに姿を変える。

そのまま飛び掛かる様にソードガンを振るう。

オーマはタイラントで受け止め、鍔迫り合いの様な格好になる。

 

「お前、前より強くなってないか?」

 

「ファントムは成長しないとでも思っていたか?我々も進化するのだよ!!」

 

言いながら火球を周囲に出現させる。

晴人は慌てて距離をとってリングを変える。

 

ウォータードラゴン!!ジャバジャババシャン!!ザブンザブーン!!

ディフェンド、プリーズ!!

 

ウォータードラゴンに姿を変え、ディフェンドの魔法で水の障壁を発生させて火球を防いでいく。

その合間にソードガンをガンモードにして銃撃を返す。

オーマはタイラントを回転させて弾丸を弾き飛ばしていく。

 

コピー、プリーズ!!

「そりゃ悪かったな。でも、具体的にはどう変わった?」

 

コピーの魔法でソードガンを増やして二刀流で斬り掛かる。

オーマはタイラントで器用に受け止めて上で纏めて跳ね上げる。

無防備になった晴人の腹に肘打ちが叩き込まれ、吹っ飛ばされる。

柱に激突し、壁の一部が崩れ落ちる。

瓦礫の下敷きになるがそちらは特にダメージにはならなかった。

瓦礫を蹴り飛ばしながら晴人は立ち上がる。

 

「それでは、御見せしようじゃないか!!進化した私の魔法を!!」

 

オーマは人間態に姿を変えると指にリングを填める。

ベルトを操作し、短縮された呪文を鳴り響かせる。

 

シャバドゥビタッチヘンシーン!!

 シャバドゥビタッチヘンシーン!!

  シャバドゥビタッチヘンシーン!!

「変身!!」チェンジ!!ナウ!!

 

指輪のバイザーを下げてベルトにかざし、マントをなびかせる。

同時に頭上に魔方陣が出現し、オーマを包む様に下がっていく。

その身は魔法の鎧に包まれ、仮面ライダーソーサラーとなる。

 

「さて、貴様も私を楽しませてくれよ?」コネクト、ナウ

 

オーマは魔方陣を出現させ、長斧ディスハルバードを取り出す。

晴人もソードガンを構え直す。

崩れ掛けている壁から瓦礫が落ちる音によって合図された様に互いに向かっていくのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「じゃあ、私達はさっさとあの胸糞悪い器を壊すとしましょうか」

 

魔法使い達の闘いを影から見ていたラッテンは軽くそんな事を言うのだった。

霧崎もアルマも魔法使いの闘いを見ていたのであまり言い出せ無かったがラッテンは軽く言う。

 

『そうですね。マスターの言う通りです。あれはどの道、敵の要のようですし壊せるなら速いにこしたことはありません』

 

「だな」

 

二人は静かに同意する。

別に意見としては間違ってないので反対する理由は無い。

アルマが破壊の為に雷をその身に纏わせた時だった。

 

「悪いがそれはやらせれねぇな。それをやられると俺も困るんでね」

 

そう言いながら柄の悪い男がタナトスの器の影から出てくる。

男は霧崎達に手を向けると同時に宝石の様な物を弾丸の如く放ってきた。

 

「いきなりかよ!?」

 

霧崎は叫びながらアルマより速く宝石を弾いた。

正確には死の脅威を祓い、軌道をそらした。

どうやら破壊するのも一筋縄ではいかない様だった。

 





バダー戦終了でした!!
そして、始まる晴人vsオーマ!!
残るグロンギはガドルのみ!!

グロンギ編も終盤です
とはいえ、このまま終わるわけでも無いですが

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!


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深まる悩みと見様見真似と天に届きし火柱


今回は十六夜回です!


 

十六夜の目の前にはゴ・ガドル・バ。

その身は全身の所々から流血し、甲殻にヒビが入っている。

だが、平然と立っている。

弱っている様子など欠片も見せはしない。

対して十六夜は肩で息をしている。

両手は自身の血で真っ赤に染まり、額からも血は垂れている。

 

「俺もまだまだだな。だからこそ、悩みどころではあるんだが」

 

十六夜は独り言を呟く。

その悩みは十六夜の胸の中だけを渦巻いている。

だが、周囲の数人はそれを察している様な様子を見せる。

自身が一番経験が薄いという自覚はある。

だからこそ、悩みは深まる。

十六夜が自覚出来る部分でも、無自覚な部分でも。

ゆえに、こんな所で苦戦している場合では無かった。

 

「さて、続きと行こうぜ!!カブト野郎!!」

 

十六夜が動くとほぼ同時にガドルも動く。

このままただ殴り合うだけでは先に力尽きるのは十六夜だ。

それゆえに変化が必要だ。

なので、十六夜は士との手合わせを思い浮かべて両手を構える。

 

「確か赤心少林拳、梅花の型……………だったか?」

 

見様見真似の型でガドルの拳をいなそうとする。

ガドルの全身を観察し、殺気を感じ取り、その動きを解析する。

そして、ガドルが放つ拳の力の流れを自然にズラす様に側面から手を打ち付ける。

とはいえ、即興の技が上手く決まることなどそうありはしない。

力の流れは完全にはズレず、十六夜の右腕を掠める様に通過する。

 

「チッ、やっぱ最初は上手くいかねぇか」

 

「ゴロギソギ!!」

 

十六夜は苦笑いしながら呟く。

ガドルは十六夜が見せた新たな動きに面白そうに声を出す。

それで何を思ったのか、懐から取り出した”欠片”二つを両手で、それぞれ一つずつ握りしめる。

すると、ガドルの体に変化が現れる。

両手から金の管の様な物が全身に伸びていったのだ。

 

「ガサバス ヂバサ ソ リゲスガギギ!! ボヂサ ロ ゼンシジョブ ゼ ギブグ!!」

 

「何言ってるかはさっぱりだが、お前が更に強くなったというのは分かったよ!!」

 

それが分かっても十六夜は勝負を捨てない。

こんなところで負けるわけにはいかないのだから。

こんなところで負けているようでは、”アジ=ダカーハ”を倒すなど不可能なのだから。

だから、止まっている暇は無い。

とはいえ、”極光の柱”は使わない。

あれで勝つのは違う。

 

「オラァ!!」

 

先手必勝。

十六夜は一気に懐へと踏み込んでいき、拳を放つ。

それは読まれていたかは定かでは無い。

けれども、ガドルは拳の軌道を完全に読んでいて軽く十六夜の拳を受け止めていた。

拳はピクリとも動かなかった。

まるで岩盤にでも挟まれたがごとくの怪力であった。

先程までとは格が違っていた。

 

「ボシガ ヂバサ ザ!!」

 

音が消えた。

ガドルの拳は十六夜の胸板に突き刺さる。

吹き飛びはしなかった。

衝撃は全て突き抜けるようだった。

ゆえにダメージも絶大。

十六夜は膝を振るわせながら吐血する。

ガドルはそれを気にすることも無く、十六夜から距離を取る。

決着がついたのではない。

追撃の為に距離を取ったのだ。

ガドルが力を込める様に両腕を広げる。

同時に右足に雷の力が収束していき、放電を始める。

 

「ジョグ・ゼンゲビ・ビブブ!!」

 

「そう簡単にやられるかよ!!」

 

ガドルが助走を付け、右足に雷を纏わせた上で十六夜に向けて蹴りを放つ。

だが、十六夜の方も黙って見ているわけが無い。

とっさに左腕で拳を放つ。

とっさとはいえ全身全霊全力全開を乗せた拳であった。

拳と蹴りの衝突によって凄まじい衝撃波が生じる。

十六夜もガドルもダメージと反動によって吹っ飛ぶ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

十六夜は吹き飛んだ末に住居の壁にめり込む形になっていた。

出血と負傷は更に酷くなっている。

特に左腕はかなり損傷していた。

肉は裂け、骨は砕け、動かすことすら困難だった。

当然、激痛を常に感じさせるが意地で押し通す。

壁の中から這い出て立ち上る。

もはや、生きている方が不思議なレベルではあるがそれでも立った。

何故ならまだ終わっていないからだ。

 

「さて、次で終わりにするとしようか」

 

目の前から歩いてくるガドルに向けて言う。

ガドルの方も先程の衝突は無傷で済まなかったらしく右足を引きずる様な形になっている。

だが、それでも十六夜に比べれば軽いくらいだった。

ダメージが蓄積されているのは明らかに十六夜だった。

けれど、そんな物は関係無い。

体が動くなら戦いは続くのだった。

もはや、きっかけすら不要だった。

示し合わせたかの様に両者は同時に動き出す。

とは言っても、十六夜には対応するだけの体力が残っているわけでも無い。

だから、動きは最小限だった。

ガドルが拳を放った直後に身を沈め、拳の下側から右手を打ち付けて軌道をそらす。

そして、懐に飛び込んでその身を掴んだ。

 

「行くぜ、きりもみシュートだ!!」

 

地面にヒビが入るレベルで力を込めて、ガドルの体を回転させて投げ飛ばす。

その回転の余波で疑似的な竜巻が発生するレベルだった。

左腕も無理矢理動かして投げた影響で完全に動かなくなる。

だが、それすら無視して十六夜は跳ぶ。

投げ飛ばしたガドルの真上まで跳んで拳を構える。

 

「これが正真正銘全身全霊全力全開の最後の一撃だ」

 

残っている力を全て込めて十六夜はガドルを叩き付ける様に殴り飛ばした。

その時、右腕が淡く光っていたのは本人すら気付いていなかった。

ガドルはきりもみシュートの回転の勢いを残したまま地に叩き付けられる。

全身にヒビが広がり、ベルトが砕ける。

ガドルの目から光が消えると同時にその身は火柱を上げた。

その火柱はまるで天に届くかと思える程に強大で凄まじかった。

それはガドルが身に秘めていたエネルギーと、その身に叩き込まれたエネルギーの凄まじさを物語っていた。

 

「クソッ……………勝つには勝ったがこの様じゃまだ届かねぇな……………」

 

落下時に受け身を取る余裕すら残っていなかった十六夜は地面に転がったまま火柱を見ていた。

何処か悔し気に呟いた直後にその意識は闇に沈むのだった。

ゆえに気付かなかった。

緑色の靄の様な物がガドルが取り込んだ二つの”欠片”を回収していた事に。

ガドルが倒れた直後に街の中央にある時計塔が崩れ落ちた事に。

その時計塔の下から黄金の塔が出現し、見下ろすかの様に伸びていった事に。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「いやいや、面白い物が見れたね。やはり、この世界に来たには僕にとって正解だったようだ。この世界は僕を存分に楽しませてくれる!!」

 

十六夜とガドルの闘いを遠目で観察していた青年は両手を広げ、楽しそうに語る。

顔に笑みを浮かべながら青年は十六夜へと近づいていく。

 

「君も中々に面白そうだ。だからこそ、こんなところで死なれちゃ困るんだよね。君は僕の都合で生きて貰う」

 

倒れている十六夜の近くでしゃがみ込んでその身を観察する。

その手つきは何やら怪しくもあったが意識の無い十六夜ではどうする事も出来ない。

 

「こりゃ、酷いね。全身ズタズタだ。アゲハ君でもここまでボロボロにはならなかったよ。生きてるのが不思議なくらいだ」

 

最もアゲハ君の場合は体より脳のが危なかったけど、と一人付け足す。

目の前の惨状など気にすることなく彼は楽しそうに傷を体化める。

 

「かなり酷くはあるけど、大丈夫かな。再生力はかなり高いみたいだし、僕の”CURE"で十分治せるだろう。ヴァン君やイアンさんはほとんど死体の状態の人間を治した事があるみたいだし、僕に出来ない道理は無い」

 

そう言って彼は十六夜に抱き付き、”CURE"を発動する。

同時に彼の体が淡く輝き、その輝きは十六夜の体に流れ込んでいく。

自身の生命エネルギーを譲渡して、再生能力を高めているのだ。

しばらくすると彼は十六夜の体から離れて立ち上がる。

 

「骨を繋げて、止血はしておいた。これで最低限は動けるはずだね。君にはアゲハ君に似た可能性を感じるんだ。この望月 朧の人生を盛り上げる為にも簡単に死なないでくれよ」

 

意識の無い十六夜にそれだけ言うと朧は何処かに歩き出す。

あくまで己の為に彼は歩き続ける。

 

 





ガドル戦決着でした!
十六夜も周囲から色々と吸収していたりします

朧に関しては面白そうなことがあったからたまたま見ていたという感じです
十六夜にアゲハと似たものを感じて死なれたら困るので治療しました。
どれもこれも己の為に行動した結果ではありますが。
箱庭に来てからそう時間が経ってないのでそこまで箱庭の事情を把握しているわけでは無いです


それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!


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大喰いとエレメントチェンジと悪夢の目覚め

 

少々時が戻って時計塔地下。

霧崎、ラッテン、アルマは苦戦していた。

乱入してきた男が中々に手強かったのだ。

男は刺青を光らせるとその身をファントム、オーガへと変える。

 

「アルゴス!!」

 

オーガがファントムの名を叫ぶとそのファントムの幻影がオーガと重なる。

オーガの体から無数の目玉が飛び出す。

それは四方八方に散って、霧崎達に向けて光弾を放つ。

 

「ヨヨ!!」

(オウ!!)

 

霧崎は弱者の(チキンソウル)パラダイムで光弾の軌道を反らしていく。

その間にラッテンは演奏し、アルマは体に雷を纏わせる。

 

「行きなさい、アルマティア!!」

 

『はい、マスター!!』

 

 

雷光を纏ったアルマがオーガへと突撃する。

雷はラッテンの演奏で強化されている。

 

「ベルゼバブ!!」

 

オーガはベルゼバブの空間転移能力でアルマの突進をギリギリのところで回避する。

そして、アルマの背後に回り、剣で斬り掛かる。

が、それを霧崎は視ていた。

ライズを全開にし、死の脅威の塊をオーガにぶつける。

 

「今何かしたか?」

 

「自分の攻撃でも食らってろ」

 

先程、オーガが放ったアルゴスの瞳が目標を変更する。

オーガを狙う様に動き、オーガに向けて光線を吐き出し始める。

オーガ自身が放った死の脅威が全て己の身に返されたのだ。

 

「ガーゴイル!!」

 

ガーゴイルの姿がオーガに重なる。

直後にオーガの体が石化する。

体を硬化することで攻撃を防いだのだ。

石化が解けた直後にその身から宝石を弾丸の様に放ってアルゴスの瞳を全て撃ち落す。

 

「お前ら、中々やるじゃねぇか」

 

オーガは笑う様に言う。

だが、霧崎達は顔を引き攣らせていた。

 

「こりゃ参ったわね。私達の火力不足さが仇になってるわね」

 

「アルマがいるから火力的には問題無いと思うんだけどな……」

 

『火力というよりは相性の問題ですね。少なくとも私達だけでどうにか出来る相手では無いですね』

 

アルマによって戦術パターンが増えたとはいえ、根本的に霧崎とラッテンは攻撃手段に乏しかった。

加えて地下なのでディーンを暴れさせるわけにもいかない。

天井から崩壊しかねないのだ。

対してオーガは能力のバリエーションが凄まじい。

戦況は動かそうにも動かせず、とてもでは無いがタナトスの器を壊せる状況じゃ無かった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ライトニング、ナウ!!

リキッド、プリーズ!!

 

ソーサラーが電撃を放つと晴人はその身を液状化させて電撃から逃れる。

そのまま背後へと回り込んでソードガンで斬り掛かる。

ソーサラーはディスハルバードの柄でソードガンを受け止め、そこを起点に回転させる様に振り回す。

その刃は晴人の体を裂こうと襲い掛かるがリキッドの魔法がまだ残っており、液状化で回避する。

 

イエス!!サンダー!!アンダースタンド?

 

「うぉ!?」

 

ソーサラーがサンダーの魔法をライトニングと重ねてディスハルバードに纏わせて振るう。

これにはさすがに晴人も慌てて回避する。

リキッドの魔法もさすがにあれだけの電撃を相手にしては分が悪い。

 

「属性魔法が貴様の専売特許では無い事を見せてやろう」

 

「なんだと!?」

 

ヴォルケーノ!!ナウ!!ヒー、ヒー、ヒーヒーヒー!!

「受けてみるがいい!!これが進化した私の力だ!!」

 

ソーサラーがベルトに紅いリングをかざすと、ディスハルバードを炎が包む。

ディスハルバードの魔力を増強する魔法石、エクセルシャードが紅く染まる。

その状態で振るわれるディスハルバードは炎の刃を放った。

地面を引きずる様に振るうと、その延長線上まで炎の壁が襲い掛かったのだ。

 

チョーイイネ!!ブリザード!!サイコー!!

「相殺し切れないだと!?」

 

晴人はブリザードの魔法で冷気を放つが炎の壁は冷気を斬り裂いて向かってきた。

横に飛び退いて転がるようにして、ギリギリのところで回避する。

その間にリングを変えてウィザードライバーにかざす。

 

フレイム!!ドラゴン!!ボー、ボー、ボーボーボー!!

ハイドロ!!ナウ!!スイー、スイー、スイー、スイー!!

 

「また属性を変えたのか」

 

「一属性だけと思っていたのか?」

 

晴人がフレイムドラゴンに姿を変えるのと同時にソーサラーもディスハルバードのエクセルシャードを蒼く染める。

晴人が驚くのは無理は無い。

ファントムとは元々一体につき必ず一属性は持っている。

そんな中で晴人がエレメントチェンジ出来るのはドラゴンが四属性全てを宿すレアなファントムだからだ。

それ故にソーサラーのエレメントチェンジは驚くべきことなのだ。

 

チョーイイネ!!スペシャル!!サイコー!!

イエス!!バニッシュストライク!!アンダースタンド?

 

「ダァァァァァァァァ!!」

 

「ハァ!!」

 

晴人は胸にドラゴンの頭部を出現させる。

その頭部の口が開き、ソーサラーに向けて熱線が放たれる。

対してソーサラーは頭上に蒼い光球を出現させる。

水属性の魔力を凝縮させた物だ。

それを晴人に向けて放つ。

熱線と光球が衝突し、激しい爆発が起こる。

炎と水の衝突によって水蒸気が立ちめく。

水蒸気を突き破って、晴人とソーサラーはソードガンとディスハルバードで斬り合いを再開する。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「お前らの力は中々に面白れぇが…………正直闘いとしては退屈だな」

 

「悪かったな!!」

 

霧崎がオーガの攻撃を防ぎ、ラッテンが演奏でサポートし、アルマが攻撃する。

隙は無いが決め手も欠けている。

戦況が進まないのでオーガも退屈しているのだった。

そんな時だった。

 

「なら、俺達が相手をしてやろうか?」

 

「此処は俺達に任せて霧崎君達はアレの破壊を急いで」

 

士と映司が霧崎達の背後から現れたのだ。

二人はオーガの前の立ち、霧崎達にタナトスの器を任せようとする。

 

「そう簡単にやらせると思うか?」

 

「どうかな?お前の方が数的には不利に思えるけど?」

 

映司と士がベルトを腰に巻いて戦闘を始めようとした時だった。

緑色の靄がオーガの近くに飛来し、何かを手渡した。

 

「どうやら来るのが遅かったみたいだぜ!!ドレイク、”欠片”は揃った!!儀式を始めろ!!」

 

オーガは”欠片”をタナトスの器に投げ込むと映司達に向けて牽制する様に宝石を放つ。

剣を肩で担ぎながらオーガは笑う。

 

「悪いがもう手遅れだ!!究極の闇は目覚め!!その闇で世界は包まれる!!」

 

「究極の闇だと…………」

 

「知ってるんですか、士さん?」

 

「箱庭風に言うなら終末論みたいな物だ」

 

『そこまでですかッ!?』

 

「アルマがここまで取り乱すって事は相当ね」

 

「マジかよ………」

 

映司達はオーガの背後にあるタナトスの器を見る。

禍々しい妖気を放つ器を見据えて一斉に駆け出す。

オーガは時間稼ぎをするように大量の光弾を放つ。

それとほぼ同時に床が激しく揺れ始める。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「何をするつもりだ!!」

 

「お楽しみはここからだということだ!!」トルネード、ナウ!!

 

ソーサラーがリングをかざすと同時に床が激しく揺れる。

否、揺れているのでは無い。

とてつもない勢いで上昇していた。

外からは時計塔が崩れ、虹色の竜巻に包まれた黄金の塔が現れる様に見えただろう。

 

「タナトスの器を箱庭で使っても意味は薄いはずだ!!」

 

「だから、改造してある。魔力の器なのは変わりないが機能は別物だ。使用した骨もグロンギの物ではあるしな」

 

いよいよ持って意図が見えない。

そんな事は気にせずにソーサラーは加える様にリングをかざす。

 

クリエイト、ナウ!!

「これは世界を改変しうるレベルの魔法だ!!その力をタナトスの器と組み合わせ、因果を越えた力を呼び覚まさせるのだ!!」

 

黄金の塔の頂点から巨大な魔法陣が広がる。

それは街を包むレベルの大きさだった。

それだけでは無い。

ゲゲルの予選が行われた土地では不気味なエネルギー体が地中から生え、天を掴むかの様に伸びた。

それらは全て紅かった被害者の血肉、グロンギの怨念を示すかの様だった。

そこから魔法陣が広がり、魔法陣から線が伸びて魔法陣同士を繋げていく。

 

「今までの全てがコレの為だったのか!?」

 

「あぁ!!そういうことだ!!グロンギを争わせ、怨念と血肉をその土地に刻み、触媒とさせて貰った!!そうして生み出された負の魔力は全てタナトスの器へと収束する!!そして、あの中にある死体と結合し、血肉へと変貌するのだ!!」

 

斬り合う晴人とソーサラーだが儀式は止まらない。

映司達もオーガに足止めされ、タナトスの器を破壊出来る状態では無かった。

そして、悪夢が始まる。

 

「______________________ッ!!」

 

地獄からの叫び声かと聞き間違えるレベルの声にならない叫びと共にそれは現れた。

タナトスの器を内から砕き、その身を晒す。

闇そのものと言える黒い瘴気と共にグロンギの王、ン・ガミオ・ゼダは姿を現した。





ン・ガミオ・ゼダ復活!!
勿論あれがそのままではありませんが
出なければソーサラーが大掛かりな事をやった意味がありませんので


それでは、質問があれば聞いてください
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暴走と超絶と輪廻竜

 

前回までの三つの出来事!!

 

一つ!!十六夜達の活躍によって、”ゲゲル”を行っていたグロンギは全て倒された!!

 

二つ!!霧崎達は一連の事件の黒幕と呼べる存在に辿り着いた!!

 

三つ!!しかし、一歩遅く敵の目的は達成され、ン・ガミオ・ゼダが蘇ってしまうのだった!!

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「何故俺は蘇った…………俺は既に存在してはいけないというのに!!それに何だ”これ”は!?」

 

蘇った直後にン・ガミオ・ゼダは困惑したかのように叫ぶ。

そして、苦しむように唸り始める。

ガミオの両肩が怪しく輝き、闇がガミオを包んでいく。

 

「ただ怪物を復活させたってわけじゃ無さそうだな」

 

「当然だろう?それでは意味が無いのだから、我々の目的としてな」

 

ガミオの復活を傍目に晴人とソーサラーの闘いは続いていた。

互いにエレメントチェンジを繰り返して魔法をぶつけあう。

 

「変身!!」カメンライド!!ディケイド!!

「変身!!」タカ!!トラ!!バッタ!!タトバッ、タトバ、タットッバ!!

 

映司と士が同時に変身する。

ガミオから明らかにヤバい気配を感じた二人はライドブッカーソードモードとメダジャリバーを構える。

士はカードをベルトに投げ入れ、映司はメダジャリバーにセルメダルを込めてオースキャナーでスキャンする。

士の前にはカード状のエネルギー体が複数現れ、メダジャリバーにはメダルのエネルギーが纏われる。

 

「復活早々悪いがさっさと倒させて貰うぞ!!」

 

「行きましょう、士さん!!」

 

ファイナルアタックライド!!ディ、ディ、ディケイド!!

トリプル!!スキャニングチャージ!!

 

「ハァァァァァァァァァ!!」

「セイヤァァァァァァァ!!」

 

士はカード状のエネルギー体を突き破る様に走って、ガミオへと向かっていく。

映司もバッタの脚力を生かす様にして向かっていく。

士は右から、映司は左から同時に斬り掛かる。

次元すら斬り裂き、破壊し尽くす様な斬撃がガミオを包む闇へと襲い掛かる。

 

「「なぁ!?」」

 

だが、それは止められた。

闇を突き破って出てきたガミオの腕がライドブッカーとメダジャリバーを掴み取ったのだ。

ボタボタとガミオの掌から血が垂れるがそれだけである。

相当なエネルギーを抱え、並の怪人なら死んでる攻撃をただ握るだけで止めたのだ。

ガミオはそのまま手を開くと目にも止まらぬ速さで拳を放つ。

いきなりの事に対応できず、士と映司はなす術も無く吹き飛ばされる。

 

「あの二人があんなにあっさりやられるとは相当ね」

 

「言ってる場合じゃねぇだろ……」

 

『えぇ、これは確かにヤバいですね』

 

ガミオの姿は闇の中だがそれでもヤバいのだけは今の一幕だけでも分かった。

霧崎には存在そのものが死の脅威に見えて、アルマは感じる気配だけで危険度を把握していた。

そんなこんなで三人が動けずにいるとガミオを包む闇が晴れる。

 

「外見にそんなに変化は無い様ね」

 

ラッテンが冷や汗を流しながら呟く。

ガミオの姿はラッテンが言う通り、大きくは変化していない。

目立つ変化といえば体色くらいである。

紅かったその身は白と黒が乱雑に混じった様な物に変わり、所々に金の装飾がある。

瞳も白と黒のオッドアイとなっている。

また、腕や足には刃の様な突起が現れている。

 

「_________________________ッ!!」

 

闇が晴れた直後に獣の様な咆哮が轟く。

その咆哮は大気を振るわせ、周囲の物体にヒビを入れる。

同時にガミオの両肩が禍々しく光を放つのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「やはり、暴走したか。まぁ仕方ねぇよなぁ………なんたって世界を滅ぼす程の力が三つも詰め込まれてるんだ。グロンギの頂点に立つ存在とはいえ制御は無理だよなぁ」

 

いつの間にか姿を消していたオーガが少々離れていた場所でガミオの様子を眺めていた。

彼の言う通り、ガミオの身には三つの力が取り込まれていた。

究極の闇そのものであるガミオ自身の魔石、

究極の闇をもたらす者と呼ばれた最強のグロンギ”ン・ダグバ・ゼバ”の魔石、

”ン・ダグバ・ゼバ”と同等で同質な力を持つクウガ アルティメットフォームの力を宿した霊石アマダム

それら三つが負の力を極限まで高められた状態でガミオの体内に取り込まれている。

アマダムに関してはプロトクウガの物ではあるが、力としては変わりは無い。

ダグバの魔石もグロンギに所持させ、取り込ませ、争わせる事で内包する力を高めさせていた。

それに加えてソーサラーの魔法によって負の魔力をグロンギの怨念と共に注ぎ込まれている。

その力はもはやガミオの許容量を遥かに超えて暴走していた。

ゆえに蘇生させたソーサラー達でも制御出来ない。

それでもソーサラーとオーガは予定通りとでも言うかの様にことを進めるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「チッ、強くなりすぎだろ」

 

「それでもやるしか無いですよ。倒さないと被害が広まるだけですし」

 

瓦礫の中から映司と士が立ち上がる。

二人とも変身は解けていない。

諦めてもいなかった。

そこへ右腕状態のアンクが寄ってくる。

 

「相変わらずだな、お前は。まぁ、お前に何を言っても無駄な事は分かってる。だから、これを使っとけ」

 

「ありがとう、アンク」

 

アンクは映司に紫のメダルを投げ渡すと自身も人型になる。

士もケータッチを構える。

 

「ここからが本番だッ!!」

クウガ、アギト、リュウキ、ファイズ、ブレイド、ヒビキ、カブト、デンオウ、キバ、ファイナルカメンライド!!ディ、ディ、ディケイド!!

 

「えぇ、俺達仮面ライダーが諦めるわけにはいきませんしね!!」

プテラ!!トリケラ!!ティラノ!!プットティラーノザウルース!!

 

ディケイドの胸と両肩にクウガからキバまでの仮面ライダーのカードが装着され、頭部にディケイドのカードが出現する。

コンプリートフォームへと姿を変えたのだ。

映司はベルトにアンクから渡されたメダルを入れ、オースキャナーでスキャンする。

頭、胸、足の前に紫のメダル状の物体が出現する。

それらが胸の所で重なり、オーズのオーラングルサークルと重なる。

そして、姿を恐竜の力を宿したコンボ、プトティラコンボへと変える。

 

「ウオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!」

 

姿を変えた直後に叫びを上げる。

同時にプテラの翼が展開し、周囲に冷気が放たれる。

目を光らせ、地面に腕を突き刺し、メダガブリューを取り出す。

その隣でアンクも怪人態に姿を変える。

 

「行くぞ!!」

 

ガミオに士、映司、アンクが向かっていく。

それに合わせて霧崎達も動き始める。

 

「それじゃあ、私達もやるとしますか」

 

「俺がラッテンを守るからアルマは映司さん達のサポートを頼む」

 

『了解!!』

 

召喚したディーンの肩に乗るラッテンがハーメルケインで演奏を始める。

それを守る様に霧崎が前に出る。

アルマは雷光を身に纏わせてガミオへと突進していく。

もはや意識すらあるか怪しいガミオはそれらを見て、獣の様な構えを取る。

 

「______________________________ッ!!」

 

迎え撃つかの様に咆哮を轟かせる。

極限まで濃度を高められた闇との激突が始まる。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「悪いが俺も加勢したいんでさっさと終わらせてもらうぞ!!」

ドラゴタイム!!セットアップ!!スタート!!

ウォータードラゴン!!

ハリケーンドラゴン!!

ランドドラゴン!!

 

晴人はドラゴタイマーを腕に装着すると連続でレバーを押す。

すると、背後に青、緑、黄の魔法陣が出現してその中からウォータードラゴン、ハリケーンドラゴン、ランドドラゴンが出現する。

その状態でドラゴタイマーをウィザードライバーにかざす。

 

ファイナルタイム!!

オールドラゴン!!プリーズ!!

 

ウォータードラゴンが青色の龍に姿を変えてフレイムドラゴンの背後に回り、ドラゴテイルになる。

ハリケーンドラゴンが緑色の龍に姿を変えてフレイムドラゴンの背を通り、ドラゴウィングとなる。

ランドドラゴンが黄色の龍に姿を変えてフレイムドラゴンの手を包み、ドラゴヘルクローとなる。

最後にフレイムドラゴンの胸にドラゴンスカルが現れる。

四つの力が一つになり、オールドラゴンへと姿を変えたのだ。

 

「フィナーレだ!!」

 

「いいや、まだまだフィナーレは遠いよ!!」

ドラゴライズ、ナウ!!

 

ソーサラーがベルトにリングをかざすとその背後に巨大な魔法陣が出現する。

そこから巨大な竜が姿を現す。

その身は異形だった。

長大な蛇の様なその身は半分のところで金と銀に体色が分かれていた。

その身に尾は無く、両端が竜の頭部となっていた。

 

「ウロボロスだと!?」

 

それはかつて晴人がとある人物のアンダーワールドで倒してたファントムだった。

ゆえにその存在を知っていた。

 

「ドラゴン系ファントムを従えるのは貴様だけでは無いという事だよ!!さぁ、まだまだ私を楽しませて貰おうか!!」

 

倒されたファントムの再生は大ショッカーの手による物だ。

それに加えてソーサラー自身もドラゴン系ファントムだ。

ゆえに魔法を使い、ウロボロスを従えるのは容易い事だった。

ソーサラーはウロボロスの金色の方の頭部に乗って、晴人へと襲い掛かる。

黄金の塔の天井は突き破られ、二人の魔法使いの戦いは空中に場所を移す。





復活の「N」ことン・ガミオ・ゼダ覚醒でした!!
アルティメットガミオ(仮)の戦闘は次回から!!
単純に戦闘力三倍というわけでも無いです
ついでに暴走してるのでまともな判断とかもありません
ダグバでは無くガミオだったのは大ショッカーが入手できた死体がそちらだけだったからです

ソーサラーvsウィザードは空中戦に!!
ウロボロスは夏映画に出てきたファントムです

それでは、質問があれば聞いてください
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絶望の闇と黒白の衝突と竜上の決戦

 

「おい、起きろ!!起きやがれ、このクソガキ!!」

 

「ん……ッ!!」

 

「ようやく起きたか」

 

上から掛けられた声によって十六夜は跳び起きた。

彼の記憶はガドルを倒したところで止まっていた。

ゆえに骨が繋がり、血が止まっていることに違和感を覚える。

周囲を見回すとクロアが傍らにいた。

 

「お前が何でここに?」

 

「黒ウサギが嫌な予感がするとか言ったから私が様子を見る為に来たというわけだよ。それより、何があったか聞かせて貰おうか」

 

「その前に一つ聞かせろ。俺を治療したのはお前か?」

 

「いいや、違う。お前が血溜まりに倒れていて驚いたくらいだ。だから、それを含めて状況を把握したい」

 

十六夜自身も状況を把握しかねているが、一応分かっている部分は話すのだった。

話を聞くとクロアは面倒そうに顔を歪めるのだった。

 

「チッ、そこまで”ズレ”の影響が出てきているのか。こりゃ、かなり予定が狂いそうだな」

 

「何の話だ?」

 

「いや、此方の話だ。気にしなくていい。それよりも早く他の連中と合流した方が良さそうだな」

 

「だな。とりあえず、あのいきなり出現した黄金の塔にでも…………」

 

十六夜が黄金の塔を指差そうとした時だった。

黄金の塔から凄まじい咆哮が響き、その頂点が崩壊する。

そこから異形の竜が現れ、何かと戦っていた。

次いで何かしらの衝撃波の様な物によって頂点が更に崩壊していく。

明らかに何かある。

 

「跳ぶぞ」

 

「あぁ」

 

答えた直後に景色が変わる。

空間跳躍によって黄金の塔の真上に移動したのだ。

そこで見えたのは衝撃の光景だった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

決着はほぼ一瞬だった。

ン・ガミオ・ゼダの力はそれほどまでに圧倒的だった。

プトティラの冷気によって足場を凍結するが、モーフィンパワーによってすぐに融解させられた。

士と映司が同時に斬り掛かるが軽く受け止められた上にメダガブリューをモーフィンパワーでガミオの剣に変換せれ、二人纏めて斬り飛ばされる。

アルマの雷を纏った突進も片手で受け止められる。

それどころか雷を吸収され、弱ったところを殴り飛ばされる。

アンクが炎弾を放ち、映司がティラノの尾を振るう。

炎弾は軽く弾かれ、ティラノの尾は掴まれ、振り回された上でアンクに衝突させられて纏めて壁に叩き付けられる。

壁もモーフィンパワーで変形し、二人に更なるダメージを加える。

ディーンが殴り掛かるが片腕を斬り飛ばされて殴られ、全身にヒビを入れて崩れ落ちる。

背後から士が斬り掛かるも斬撃は受け流され、首を掴まれ、地面に叩き付けられ、踏み潰される。

これだけを一分に満たない時間でやったのだ。

霧崎とラッテンは顔を引き攣らせて一部始終を見ているしか出来なかった。

 

「こりゃ、ヤバいどころじゃないわね」

 

「次元が違うってレベルじゃないな」

 

映司とアンクは変身が解けて地面に倒れ、アルマもディーンもボロボロ、士はガミオの足の下だ。

どうやっても絶望しか見えなかった。

それでも霧崎とラッテンの目は死んでいない。

敵を見据えて構える。

 

「____________________________________ッ!!」

 

叫びを上げながらガミオが二人に迫る。

冷や汗を流しながら二人はせめて一撃でも入れる為にガミオの一挙一動を見る。

ガミオはただ爪を振るう。

それならば霧崎の力で対処出来る。

だから、それで出来る一瞬しか狙い目が無かった。

そう思っていた。

 

「俺の仲間に何してくれてんだ?」

 

いつの間にか二人の目の前には十六夜がいて、その右手には極光の柱があった。

ガミオはその存在を認識した上で止まらない。

 

「消し飛べ、クソ狼!!」

 

極光の柱が放たれる。

確実な直撃コース。

普通はこれで終わるはずだ。

だが、ガミオは普通では無かった。

ガミオは両の手を突き出し、極光の柱を受け止め様とする。

 

「何ッ!?」

 

「______アオォォォォォォォォォォンンンンンン!!」

 

ガミオの手は凄まじい熱量を放ち、その腕を赤熱させる。

それでもガミオの腕は消し飛びかけるのだが、高速で再生されていく。

加えて黄金の塔そのものが変形していく。

塔は破壊兵器に姿を変え、ガミオをサポートするかの様にエネルギーを放つ。

ガミオの叫びと共に激しい光が放たれ、塔の上半分が崩壊する。

その余波はもちろん十六夜達にも被害をもたらす。

足場は崩れ、落下していく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「何だあの光は!?」

 

「人の心配をするとは余裕だな、ウィザード!!」

 

気がそれた晴人に向けてウロボロスが火球を吐き出して来る。

それを回避し、返す様にドラゴンスカルから熱線を放つ。

 

リフレクト、ナウ

 

ソーサラーがリフレクトの魔法で跳ね返してくるが同じ場所に留まるわけが無いので軽く回避する。

チラリ、と崩壊する塔を見つつも意識はソーサラーから離さない。

心配ではあるが今は目の前の敵に集中するしかないのだった。

 

「仲間が心配だろうが気にする事は無い。すぐに貴様も仲間も同じところに行くのだからな」

 

「そうだな。さっさと終わらせて休みたいとこだよ」

 

ドラゴヘルクローとディスハルバードが衝突し、火花を散らす。

ドラゴテイルを振り向き様に振り下ろすが、ウロボロスが軽く回避する。

 

チェイン、ナウ

アロー、ナウ

 

「こんなもんくらうかよ」

 

チェインの魔法によって出現した鎖をドラゴヘルクローで引き千切る。

続けて放たれた魔力の矢をドラゴウィングが起こす暴風で吹き飛ばす。

そのままドラゴヘルクローから斬撃波を放つがディスハルバードで弾かれる。

 

「そんなに急ぐなら奥の手で終わらせてやろう」

 

「そうかよ」

 

「全属性の力に対処し切れるかな?」オールマイティ、ナウ!!ヒースイフードーボーザバビュードゴーン!!

 

四つの魔法陣が現れ、ディスハルバードと重なる。

四つの色が重なり、完全なる黒と化す。

晴人はそれを見ると同時にウロボロスへと突撃する。

ウロボロスの真上でリングをウィザードライバーにスキャンする。

 

インフィニティープリィィィィィィズ!!ヒースイフードーボーザバビュードゴーン!!

「ハァ!!」

 

透明な魔法陣をくぐり、オールドラゴンからインフィニティースタイルへと姿を変える。

同時にアックスカリバーを掴み取ってソーサラーへと斬り掛かる。

ディスハルバードで受け止められるが、そのままバク転するかの様にしてソーサラーと背中合わせになる様に着地する。

そのまま振り返りざまに斬り掛かる。

ソーサラーも同時に斬り掛かる。

刃と刃の衝突する音が鳴り響く。

 

「フゥン!!」

 

インフィニティー!!

「ハァァ!!」

 

ソーサラーがディスハルバードから四つの属性の斬撃弾を放つ。

晴人は高速移動でそれを避け、間合いを詰める。

ソーサラーはそれに合わせる様に刃とは逆側の柄で突きを放つ。

晴人が避ける事によって一瞬の合間が生まれる。

 

ライトニング、ナウ

ディフェンド、プリーズ

 

至近距離で雷の魔法と防御の魔法が衝突する。

激しい音と光が生じて互いの姿が見えなくなる。

その間にウロボロスの銀色の頭が晴人に襲い掛かる。

加えてソーサラーがディスハルバードを振るう。

ディスハルバードの斬撃はインフィニティースタイルの装甲にダメージを与える程では無かった。

しかし、ウロボロスの攻撃と合わせて晴人をウロボロスの上から落とすには十分だった。

だが、晴人は冷静にリングをウィザードライバーにかざすのだった。

 

「落としたくらいで終わるわけが無いだろう?」

チョーイイネ!!フィニッシュッストライク!!サイコー!!

 

黄金の光が輝き、その身を魔法陣が包む。

魔法使い同士の戦いは終局へのカウントダウンを始めていた。

 





グロンギ編も終局が近づいてきました!!
アルティメットガミオの破壊兵器生成は小説クウガのアルティメットプロトクウガのイメージで
暴走しているので獣的です

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!


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時間稼ぎと散る黄金と崩壊の塔

 

「________________ッ!!」

 

ガミオの咆哮が崩れた塔の上層を振るわす。

ガミオは極光の柱を正面から受け止めた上で生き残っていた。

無論無傷では無いのだが、表面上は再生されている。

その姿を霧崎達は瓦礫の陰から見ていた。

幸い霧崎とラッテンは無傷であったので無事だった。

だが、他のメンバーの安否は不明だった。

上層の崩壊に巻き込まれた後ははぐれてしまったのだ。

ディーンは斬り落とされた片腕と共に回収し、アルマは霧崎が背負っていた。

 

「あちらさんはまだピンピンしてるわね」

 

「どうやって倒すんだ、あんな化物を…………」

 

「一応策はあるさ」

 

「「ッ!!」」

 

突如、影からクロアが姿を現す。

驚いた二人が声を上げそうになり、クロアが慌てて口を塞ぐ。

 

「驚かせて済まない。だが、あまり時間を消費したくないのでね」

 

「他の奴らは無事なのか?」

 

「あぁ、無傷では無いが全員の生存は確認出来ている」

 

十六夜は自力で崩壊から生き残り、映司と士はアンクとクロアが回収したようだ。

下手に動いてガミオに見つかるのはマズイということで空間転移が可能なクロアが連絡役になっているわけだ。

どうもどうやら十六夜が提案した策があるようでそれを霧崎とラッテンは聞くのだった。

 

「なるほどね。確かにそれなら倒せるかもしれないわね」

 

「そういうわけだ。だから、君達にも動いて貰いたい」

 

「なら、俺が注意を引き付けておくからその間に準備してくれ」

 

言いながら霧崎が立ち上がる。

言葉に反して顔は苦笑いで冷や汗が垂れていた。

それを見てラッテンが慌てた様に言う。

 

「ちょ、何も霧崎がやる事は無いでしょう!?」

 

「いや、こういうのは俺が適任だ。皆が命を掛ける中で安全地帯でじっとしてるわけにもいかないしな」

 

言うだけ言うと霧崎は走り出してしまう。

此処で叫べば策も台無しになるので叫べない。

ラッテンは頬を膨らませながら渋々納得するのだった。

 

「もし、死んでいたら許さないわよ」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「さぁ、来いよ化物。餌が出てきてやったぜ」

 

「____________________________ッ!!」

 

物陰から出てきた霧崎を視認するなり、ガミオは咆哮を上げながら飛び掛かる。

霧崎は紙一重のところで回避する。

だが、ガミオが床に手を付くなり、床が刃の様に姿を変えて霧崎を襲い始める。

 

「やっぱ怖えぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

弱者の(チキンソウル)パラダイムで刃の軌道を変えていってなんとか対処する。

激しい轟音と共に土煙が舞う。

その煙を突き破るかの様にガミオが襲い掛かる。

死の脅威としてガミオの突進は既に見えていたのでしゃがんでやり過ごしつつ真上を通るガミオに死の脅威の塊をぶつける。

途端に刃の山がガミオに襲い掛かる。

しかし、その全てはガミオに突き刺さることなく砕けた。

 

「硬い皮膚だな…………」

 

防戦一方というより防御しか出来なくても霧崎は己の役目を果たしていくのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

チョーイイネ!!フィニッシュストライク!!サイコー!!

 

晴人の体から透明の龍が飛び出す。

それに加えて黄金の魔法陣がその身を包む。

魔法陣と透明の龍が重なる。

インフィニティースタイルの所々が金に染まり、ドラゴンスカル、ドラゴウィング、ドラゴテイル、ドラゴヘルクローもそれぞれ金に染まった上で装備される。

インフィニティードラゴンゴールドへと姿を変えたのだ。

 

「さぁ、フィナーレだ!!」

 

「いいや、まだまだ終わらないよ!!」

 

ウロボロスに乗ったソーサラーが晴人に襲い掛かる。

晴人は翼を広げ、正面から迎え撃つ。

すれ違い様にドラゴヘルクローとディスハルバードが衝突する。

 

「何ッ!?」

 

轟音と共にディスハルバードの先端が宙を舞う。

衝突した瞬間、衝撃に耐えきれずに折れたのだ。

晴人が振り向き様にドラゴテイルを振るう。

ソーサラーは素手で防ごうとするが耐え切れるはずもなく、ウロボロスの上から叩き落とされる。

 

インフィニティー!!

 

インフィニティースタイルの高速移動能力により、残像が残る程の速度で宙を舞うソーサラーを斬り裂いていく。

幾度か斬り裂いた末にソーサラーの下へと回り込む。

 

「ダァァ!!」

 

ドラゴスカルから凄まじい熱線が放たれる。

ソーサラーは空中である事に加え、先程のダメージもあって回避する事が出来ずに熱線に飲み込まれる。

更なる上空に打ち上げられた所で晴人が放った魔法陣に拘束される。

 

「おのれ、ウィザード!!またしても私の計画を台無しにするか!!」

 

「何度だって潰してやるよ!!お前達ファントムの邪魔をするのが魔法使いの仕事だからな!!」

 

ソーサラーと晴人の間に幾つもの魔方陣が現れ、晴人の背後にも五色の魔方陣が出現する。

魔法陣を蹴り抜くかの様に晴人はソーサラーに向けてキックを放つ。

同時にその背後の魔法陣から(フレイム)(ウォーター)(ハリケーン)(ランド)透明(インフィニティー)のドラゴンが出現する。

 

「ダァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

「ぬぅぐぁぁ!?」

 

先行する様に五色のドラゴンが魔法陣に拘束されたソーサラーを貫く。

続いて晴人のキックが多大な魔力を乗せてソーサラーの身を完全に貫く。

火花を散らしながら限界を迎えたソーサラーの体が爆散するのだった。

それに合わせてウロボロスも何処かに消えるのだった。

 

「ふぃ~」

 

決着がつき、晴人も一息吐く。

その時だった。

上層が崩壊した塔へ、凄まじい雷光が落ちる。

同時に塔が本格的に崩壊を始める。

 

「結構ヤバそうだな。俺も速く行かないと」

 

晴人は急ぐ様に翼を広げて塔へと向かうのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「お前らはまだ戦えるか?」

 

「当然だ」

 

「体は動くしね」

 

「重傷には違いないけどな」

 

十六夜に問われ、士と映司は即答する。

傷付き、血の流れる体を押して立ち上がる。

それを見てアンクが呆れた様に呟く。

 

「お前らは何でそこまで戦い続けるんだ?」

 

十六夜は純粋に聞いていた。

彼には映司達の姿がとても眩しく見えていた。

アジ=ダカーハとの戦いの後、悩み本調子の出ない自分に比べてとても眩しく。

 

「ある男は戦いに終わりが無い事に気付き悩んでいた。それでも、そいつは戦い続けていた。数え切れない夜の中で悩み戦い続ける。それはそいつは知っていたからだ。何も変えられない夜でもやがて明日は来る。未来を変える者達の明日がな。だから、そいつはそれを守る為に戦う事を誓い続けているんだ。絶望の痛みを己の力に変えながらな」

 

十六夜の問いに対して士は語る。

その上で苦笑する。

 

「俺はそいつじゃないしそんな大層な事は考えちゃいない。けど、自分が守ると決めた物くらいは守り抜くくらいはするさ。たとえ汚れた泥を被ってもな。その為なら何度だって立ち上がる」

 

「俺はただ後悔したくないんだ。伸ばせば届く手を伸ばさずに諦めれば絶対後悔する。俺は自分の出来ることをやり切りたいんだ」

 

自分に言い聞かせる様に二人は言う。

十六夜はその言葉を聞きながら色々と感じていた。

それを感じた上で二人は十六夜に背を向ける。

それぞれベルトを腰に巻く。

 

「それじゃ、俺達は俺達の役目を果たして来るよ」

 

「仕上げは頼んだぞ」

 

 「「変身!!」」

カメンライド!! タカ!!トラ!!バッタ!!

ディケイド!! タトバッ、タトバ、タットッバ!!

 

二人は同時に姿を変える。

その時、士の腰のライドブッカーから数枚のカードが飛び出て士がそれを掴むのを十六夜は見た。

直後に二人はクロアによって作戦予定場所に転移されるのだった。

アンクもそれに合わせて転移する。

一人その場に立って十六夜は拳を握るのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

『マスター!!準備は整いましたよ!!』

 

「そう、なら床を完全に貫き通してしまいなさい!!」

 

指示を受けた直後にアルマがその身に溜め込んだ雷を開放する。

その上で飛び上がり、塔の一番上から真下に向けて突進する。

ガミオも当然気付くが邪魔をするのは霧崎が防いだ。

アルマの方の死の脅威をそらして、ガミオの予想ルートとは別の動きをさせたからだ。

邪魔さえ入らなければ後は一直線だ。

塔の全ての床を砕き貫き、吹き抜けへと変える。

これが作戦の第一段階だった。

触れた物を操作するなら周囲に何も無ければいい。

というわけで、ガミオを空中に投げ出す為に最大限に雷をチャージさせたアルマに床を貫かせたのだ。

霧崎の時間稼ぎはラッテンの演奏によるアルマの回復と強化および雷のチャージが完了する為の物だったのだ。

それは最終決戦開幕の合図でもあった。

 

 

 





最後の攻防開幕です
割と全員ボロボロだけど霧崎とラッテンだけは無傷に近かったり
能力とサポート枠という役割上の問題ではありますが


それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!


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KRオーズと晴れる闇と散り行く灰

足場は消え、塔も崩壊を始める。

だが、ガミオは飛行も可能だ。

ゆえに足場が消えても問題は無い。

アルマへの指示でラッテンの居場所には既に気付いていた。

 

「ヤバいわね……」

 

足場が消えて、落下中のラッテンはガミオの視線に気付いて冷や汗を流す。

ガミオの周囲に炎球が数十個現れる。

 

「_______________________ッ!!」

 

ガミオの咆哮と共にその全てがラッテンに向けて放たれる。

だが、軌道がおかしかった。

まっすぐに飛ばされたはずの炎球は何故か四方八方に散っていく。

 

 

「ラッテンに手を出してんなよ!!」

 

 

ガミオの真上に霧崎が迫る。

ガミオの目が完全にラッテンに向いてたがゆえに反応が遅れる。

ガミオが上を向いた時には霧崎の拳がガミオの顔面に届いていた。

ダメージはあるはずがない。

幾らライズで身体能力を強化しようとガミオに効く程では無い。

しかし、触れた時点で意味はある。

 

「霧崎~♪」

 

ガミオに触れるなり、慌ててガミオに蹴りを入れ、その勢いで距離を取る霧崎。

それにラッテンは喜々として抱き付いた。

悪魔なので飛べないにせよ、空中でも割と余裕があるのだ。

直後にガミオは自身の放った炎球を全てその身で受ける事になる。

弱者の(チキンソウル)パラダイムで死の脅威を全て返したのだ。

それによってガミオの視界は爆炎に包まれる。

その隙に霧崎とラッテンはクロアによって転移させられる。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「行くぞ、映司!!」

 

「はい、士さん!!」

 

霧崎とラッテンが転移されると同時に士と映司がガミオの上へと転移される。

士は既にコンプリートフォームになっている。

士はケータッチを腰から外し、幾つものオーラングルサークルが写っているカードを中に入れる。

 

「新しい力を試してみるか」カメンライド!!オーズ!!

 

ケータッチには幾つものオーラングルサークルが浮き出る。

同時に二人に並ぶように九つの人影が現れる。

士はそれを指でなぞっていく。

 

タトバ!!

タカ!!トラ!!バッタ!! ガタキリバ!!

タトバッ、タトバ、タットッバ!! クワガタ!!カマキリ!!バッタ!! ラトラーター!!

ガータ、ガタガタキリバッ、ガタキハリバ!! ライオン!!トラ!!チーター!! サゴーゾ!!

ラトラタ、ラトラァァター!! サイ!!ゴリラ!!ゾウ!! タジャドル!!

サゴーゾ、サゴォォォゾッ!! タカ!!クジャク!!コンドル!! シャウタ!!

タァァジャァァドルゥゥ!! シャチ!!ウナギ!!タコ!! タマシー!!

シャシャ、シャウター!!シャシャ、シャウター!! タカ!!イマジン!!ショッカー!! プトティラ!!

タマシィ!!タマシ、タマシー!!ライダァァァァ魂ィ!! プテラ!!トリケラ!!ティラノ!! ブラカワニ!!

プットティラァァァノザウルゥゥゥス!! コブラ!!カメ!!ワニ!!

ブラカァァァワニッ!!

 

士がオーラングルサークルを押すのと同時に人影の周囲をメダル状の物体が回り始める。

そして、頭、胴、足の前でそれぞれ一つずつ止まる。

それらは胴の部分で一つに集約してオーラングルサークルとなる。

士はもう一度タトバのオーラングルサークルを押してからディケイドの紋様を押し、ケータッチを腰に戻す。

 

スーパータトバ!!

 

スーパー!!スーパー!!スーパー!!

スーパータカ!!スーパートラ!!スーパーバッタ!!

スーパー!!タトバッ、タトバ、タットッバ!!スーパー!!

 

カメンライド!!オールコンボ!!

 

ケータッチの音声と共にオーラングルサークルが人影と重なる。

同時に映司の周囲にもメダル状の物体が回り、重なり、オーラングルサークルとなり、映司の胸に重なり映司の姿を変える。

タトバ、ガタキリバ、ラトラーター、サゴーゾ、タジャドル、シャウタ、タマシー、プトティラ、ブラカワニの九コンボへと人影は姿を変える。

映司もスーパータトバへと姿を変えた。

それと共にコンプリートフォームの胸のカードもスーパータトバ以外の九コンボの物へと変わる。

 

「うわぁ、凄いですね!!」

 

「驚くのは後だ!!」

 

十一人の戦士となってガミオへの攻撃を開始する。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ガミオも何も士と映司の変化を黙って見ていたわけでは無い。

暴走して理性が吹っ飛んでいるが、その本能で危険だと判断していた。

 

『邪魔はさせません!!』

 

「お前がいると色々面倒なんでな!!」

 

アンクとアルマが雷撃と炎弾でガミオを引き付ける事によって妨害は防がれていた。

だが、長くは持たない。

アンクは即座に距離を詰められて胸を突かれかけるが、右腕状態に咄嗟に変化することで回避した。

アルマはガミオがやたらめったら放つ炎球を処理する内に体力を擦り減らす。

ラッテンと離れていると安定して力を発揮することが出来ないのだ。

 

『最後に一撃くらいは入れさせて貰いましょう!!』

 

「ハァァァァァ!!」

 

残りし力を全て雷光に変え、纏い突進する。

ガミオは軽々しくそれを受け止めはするが動きは止まる。

そこを狙って怪人態に戻ったアンクはガミオの背に向けて炎を纏いし蹴りを叩き込んだ。

確かな手応えを感じ、二人はガミオより距離を取る。

映司と士の仕込みが完了したのを確認したからだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「_________________ッ!!」

 

「フンッ!!」

 

咆哮を轟かすガミオに向けてメダル状のエネルギー弾が放たれる。

タコカンドロイドによって作られた道をトライドベンダーが走る。

ガミオは片手を軽く払う様にしてエネルギー弾を砕く。

その間にトライドベンダーの後方に立つサゴーゾがドラミングし、ガミオに掛かる重力を操作する。

 

「ッ!?」

 

ガミオは突然重くなる重力に困惑した様な反応をする。

飛べるとはいえ、足場の無い状態で普段以上の多大な重力に晒されればキツイ物がある。

ゆえに動きが鈍くなる。

 

スキャニングチャージ!!

 

「「「「「セイヤ!!」」」」」

「「「セイヤ!!」」」「「「セイヤ!!」」」

「セイヤ!!」「セイヤ!!」「セイヤ!!」「セイヤ!!」「セイヤ!!」

「「セイヤ!!」」「「「セイヤ!!」」」

「「「「セイヤァァ!!」」」」「「「「「「セイヤァァァァ!!」」」」」」

「「「「「「「「「「セィヤァァァァァァァァ!!」」」」」」」」」」

 

そこをガタキリバが狙う。

オースキャナーでベルトのメダルをスキャンし、ガタキリバキックを放つ。

同時にヒットの瞬間に分身する。

五十人という物量に対してはさすがのガミオも対処し切れずに大きく下へ吹き飛ばされる。

 

「___________ッ!!」

 

吠える。

咆哮を上げ、全身に力を入れて止まろうとする。

そこにラトラーターがライオディアスを放つ。

強烈な光を至近距離で浴びせられ、ガミオの視界は奪われる。

 

スキャニングチャージ!!

「セイッ……ヤァァァァ!!」

 

その隙にタマシーコンボが魂ボンバーを発動する。

メダル、イマジン、ショッカーの力が一つとなったエネルギー弾がガミオに向けて放たれる。

眼は見えないはずだった。

だが、ガミオは魂ボンバーの凄まじいエネルギーを感じ取り、受け止めるかの如く両腕を出す。

 

スキャニングチャージ!!

 スキャニングチャージ!!

 

「「セイヤァァァァァァァァ!!」」

 

しかし、ラトラーターとサゴーゾがガミオに跳び付き、全力でガミオの腕を弾く。

魂ボンバーを受け止める為にその腕には凄まじい力が溜められており、必殺技クラスでも無ければ弾く事すら出来なかった。

それによって無防備にされたガミオに魂ボンバーが直撃する。

とてつもない爆発が起き、その余波で塔の崩壊が加速していく。

ガミオは本能で自身の根本にある何かにヒビが入っていくのを感じた。

 

「ウォォォォォォォォォォォォ!!」

 

「アバババババババババババッ!!」

 

液状化したシャウタと崩壊していく瓦礫の上を滑る様に移動するブラカワニがガミオに攻撃を仕掛ける。

シャウタは鞭で右腕を、ブラカワニは頭部のコブラで左腕を拘束する。

右腕には電撃が流され、左腕は凄まじい力で噛み付かれる。

ガミオはそんな事を気にもせずに両者を力付くで引き寄せ、己の頭上で衝突させようとする。

けれども、それはシャウタが液状化することによって回避される。

そして、それは死角を作る。

 

トリプル!!スキャニングチャージ!!

「セイヤー!!」

 

シャウタとブラカワニがちょうど交差した所にタトバが割って入る。

ガミオは虚を突かれ、反応が遅れる。

メダジャリバーが振られた時にようやく回避行動を取るが遅かった。

完全に受け止める体勢だった前回と違い今回は完全に虚を突いた形となる。

ゆえに次元切断をそのまま喰らう事となる。

咄嗟の回避では避け切れず、両足が切断された。

即座に繋げようとするがそれは叶わなかった。

 

「させないよ」

 

飛行するタジャドルとプトティラが切断された足を吹き飛ばしたからだ。

片足は焼き飛ばされ、片足は凍結し砕かれる。

 

スキャニングチャージ!!スキャニングチャージ!!

「セイヤッ!!」

 

その間に体勢を直したブラカワニとシャウタがオースキャナーでベルトのメダルをスキャンする。

オクトバニッシュでその身は貫かれ、ワーニングライドで左腕が挟まれ持っていきかける。

そこにプトティラとタジャドルが迫る。

タジャスピナーから弾かれる炎弾を弾きながら、メダガブリューの斬撃を防ぐ。

 

タカ!!クジャク!!コンドル!!ギン!!ギン!!ギン!!ギン!!

「ハァァセイヤァァァァァ!!」

 

タジャスピナーにメダルを入れ、オースキャナーでスキャンする。

七枚のメダルの力が炎となり、その身を包み火の鳥化す。

マグナブレイズを発動し、ガミオへと突進するがガミオはそれすら受け止めようとする。

 

「ッ!?」

 

 

だが、連戦な上にここまで撃ち込まれたダメージもあって受け止め切れなくなりつつある。

そして、ブラカワニに挟まれた左腕が限界を迎える。

骨が砕け、力が抜ける。

モーフィンパワーで骨を再生させようとするが遅い。

片腕ではバランスが崩れる。

受け止め切れず、ガミオは炎に貫かれた。

同時に無理に受け止めようとした右腕は焼き焦げる。

 

ゴックン!!プットティラァァァノヒッサァァァツ!!

「セイヤァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

追い打ちする様にプトティラはメダガブリューに膨大なエネルギーを纏わせ、斬撃を放つ。

もはや腕すら動かないガミオは袈裟斬りにされるのに抵抗すら出来なかった。

だが、それでも、【ン】はそこで終わらない。

 

「______________________________________________ッ!!」

 

咆哮と共に衝撃波を放ち、周囲の九コンボを纏めて吹き飛ばす。

それと共に肉体は急速に再生を始める。

危機を感じた三つの魔石霊石が限界以上の力を引き出しているのだ。

 

「悪足掻きは嫌いじゃないがもうフィナーレだ」

 

そんな声と共に幾つもの魔法陣がガミオを拘束した。

その魔法陣は動きどころか再生すら阻害する。

その魔法陣を放った晴人は上空の二人に視線を送る。

 

「トドメだ!!」

 

「行きましょう、士さん!!」

 

スキャニングチャージ!!

ファイナルアタックライド!!オ、オ、オ、オーズ!!

 

「ハァァァァァァァァァァァァ!!」

「セイヤァァァァァァァァァァ!!」

 

ガミオと二人の間に三色の輪と十枚のカード状のエネルギー体が出現する。

映司と士はそれを蹴り抜けながらガミオに両足蹴りを放つ。

直撃はした。

全身にヒビは広がっていく。

それでも、ガミオは滅びない。

それどころか瞳に光が戻る。

 

「よもや、リントがこれほどの力を持った俺をここまで追い込むとはな。だが、この程度では闇は晴れんぞ!!」

 

「いいや、俺が晴らしてやるよ。だから、今度こそ消し飛べ”ン・ガミオ・ゼダ”!!」

 

蹴り抜かれながらガミオと二人は落ちていく。

最下層で待っていたのは十六夜だった。

その右手には極光の柱が構えられていた。

これが策の最後の最後の決め手だった。

最下層に辿り着くまでに仕留められない可能性は十分にあっただから確実に仕留められる状況を作ったのだ。

正面からだと受け止められるならば、絶対に防げない状況を生み出せばいい。

 

「喜べ、再び闇は晴れる。だが、闇自体は消えない事を心に刻んで置くのだな」

 

その背に極光の柱が放たれる。

直撃したガミオは何かを悟った様な顔をした後に警告の様な言葉を遺して爆炎に包まれた。

映司と士は十六夜の隣に着地し、続く様に晴人も降りてくる。

爆炎の余波は塔の瓦礫を吹き飛ばし、その周囲を更地にするほどの衝撃波だった。

街が中心部を除いて原形を保っているのが疑問に思えるレベルだった。

 

「驚いたな。あれを受けて原形を保つとはどれほど凄まじい存在だったか察せれるな」

 

決着が付いたと思い現れたクロアがそんな事を呟く。

彼は中心部に立つ物体を眺めていた。

それはン・ガミオ・ゼダの死体だった。

その死体は倒れる事が無く立っていた。

しかし、風が吹くと同時に灰の如く崩れ落ちるのだった。

 

 

 

 





VSガミオ決着でした!!

KRオールコンボに関してはFFRオーズ枠です
士がケータッチのオーラングルサークルを押す→変身エフェクトが出る
という感じなので音声にズレが入ってます。

ガミオの意識が最後の最期で戻ったのはライスピのガラガランダみたいなノリです
あちらと違って本当に最後の最期ですが

ガミオに攻撃が通った云々は準備万端と反射の違いみたいな物です

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!


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捕食者と休息と新たなる火種

今回でグロンギ編終了です!!



「ウィザードめ…………」

 

ドレイクはまだ生きていた。

だが、体の三分の一は消し飛んでいる。

既に虫の息であり、生きているのもファントムゆえにだろう。

残っている右腕で地を這いながら呪いの言葉を吐く。

 

「やっぱ、まだ生きていたか。いい様だなぁ………ドレイク」

 

「オーガ…………」

 

ドレイクの姿を眺め、嘲笑うようにしながらオーガが現れる。

目的はただ一つだった。

ドレイクも察してはいた。

しかし、足掻く様に炎弾を放つ。

 

「無駄だぜ。大人しく俺の血肉となるんだな」

 

「私を喰った事を後々後悔することになるぞ」

 

「それはそれで楽しみなんでね」

 

炎弾を片手で払いながら近づいていく。

そして、ドレイクを真上に投げ捨てる。

オーガの体が右肩から裂けていく。

落ちてきたドレイクはその間に落ちて喰われるのだった。

 

「遂に手に入れたぞ!!魔法使いの力をッ!!」

 

オーガが歓喜するかの様に叫ぶ。

その姿にはドレイクが重ねて見えた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「いやはや、まさかここまでの闘いになるとはね」

 

「もうちょっと人数連れてくるべきでしたね、クロアさん」

 

周囲を眺めながらクロアが呟く。

映司の言う事ももっともではあったが少なくともあの状況からは想像できないのも仕方なかった。

アンクはギフトカードにしまっていたアイスを瓦礫の山の上で食べている。

 

「何か悩んでるのか?」

 

晴人がすみで己の拳を眺めている十六夜に声を掛ける。

十六夜は何でもないというかの様に首を振る。

それは十六夜らしくないと晴人は感じた。

 

「無理して一人で抱え込んでると自分の中の大事な物まで腐らせてしまうぞ。俺は恩師にそう言われた。俺じゃなくてもいいから全部吐き出せば楽になると思うぞ」

 

「確かに…………そうかも知れないな」

 

「ま、俺達はお前の味方だ。遠慮する事は何一つないんだ」

 

そう言うと晴人は晴人で胸の奥の何かを思うのだった。

既に解決したことではあるが”それ”は晴人の中に残り続ける。

 

「大丈夫か、アルマ?」

 

「問題は特に無いですね。力の方もマスターの傍にいれば回復は速いですし」

 

「ちょっとき~り~さ~き~?なぁぁぁぁぁんで私より先にアルマに聞くのかな?」

 

「いや、お前はほとんど無傷じゃん?」

 

「それでも気持ちくらいは考えてよねぇ!!」

 

「そうは言われてもよ!?」

 

霧崎とラッテンの痴話喧嘩をアルマは微笑ましそうに眺める。

二人の間に口を出す気は無いので黙っているのだった。

 

「しかし、何でグロンギが箱庭に現れたんだ?」

 

士はガミオの死体とも言える灰の山を眺めながら呟いていた。

ライオの話を聞くとグロンギが箱庭に出現したのは偶発的だ。

とはいえ、何かしらの理由があるのではないかと考えていた。

 

「ん?」

 

灰の中に輝く物を見付ける。

それに手を伸ばした時だった。

 

アロー、ナウ

 

魔法の矢が士に向けて放たれた。

周囲のメンバーが気付くより速く着弾し、土煙を巻き起こす。

 

「士さん!?」

 

「大丈夫だ」

 

土煙の中からライドブッカーを構えた士が出てくる目立った傷は見当たらなかった。

飛んできた矢から晴人が何かに感付く。

 

「今の矢……まさか、ドレイクが生きていたのか?」

 

「いいや、違うぜ。奴は俺の腹の中だ」

 

呟くと同時に答えが帰ってきた。

いつの間にか灰の山にオーガが立っていた。

その腰には魔法使い用のドライバーがあった。

 

「なるほど、ドレイクを喰ったってわけか」

 

「そういう事だ。まぁ、俺の目的は”これ”で今は気分がいいし、帰らせて貰うとするぜ」

 

そう言いながら手を灰の山に突っ込む。

そして、それが取り出された時に気付く。

その手に三つの石が握られている。

それで士は大体を察す。

 

「そういうことか!!そういうことなら逃がすわけにはいかねぇな!!」

 

ようはこういう事だ。

敵の目的は”ガミオ”を復活させることでは無かったのだ。

復活させた体内でアマダムと魔石を完全覚醒状態にして、極限まで力を引き出させた上で回収する。

そういう計画だったのだ。

 

「悪いが遊ぶのはまた今度だ」

テレポート、ナウ

 

一つの指輪をベルトにかざし、オーガは姿を消した。

おそらく転移系の魔法を使ったのだ。

そうして、敵の計画は達せられるという結末を迎えるのだった。

しかし、一先ず蛟劉の依頼は完全に終了した。

ゆえに彼らはクロアに運んで貰い本拠に戻るのだった。

そこで、かなり心配していたらしい黒ウサギ達に迎えられるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

少々時は過ぎる。

蛟劉は破壊された封印塚の前に来ていた。

そこで顔を引き攣らせていた。

 

「これはまた面倒な物が現れたな…………下手したら戦争が起きるで」

 

それはほとんど冗談抜きの言葉だった。

戦いの火種がまた一つ解放されるのだった。

 

 

 




グロンギ編終了!!
とはいえ、何も解決してなかったり

さてさて、次回からはアンデット編です
お楽しみに!!

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!


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影と不死者と白い切り札
PSI講座とアルマ講座と動き出す白



今回からアンデット編に入ります!


 

「で、こんなところに呼び出して何の用だ?」

 

アジ=ダカーハとの戦いから二ヵ月、グロンギとの戦いから約一ヵ月経ったある日。

霧崎は十六夜に呼ばれ、ノーネーム本拠の居住区跡地まで来ていた。

問われた十六夜は何やら言いにくそうにしていたが、やがて口を開く。

 

「お前の使う力…………PSIとやらを教えてくれねぇか?」

 

「いきなりだな。お前には必要無いんじゃないか?」

 

怪訝そうに問う。

アジ=ダカーハとの戦いから何か悩んでるとは感づいていたが、まさかこんな事を頼まれるとは思っていなかった。

 

「いや、アジ=ダカーハの時もン・ガミオ・ゼダの時も思ったんだ。今の俺の力じゃまだ足りないってな。だから、手近なところから取り込んでいこうと思ってな」

 

それで、実際に士との手合わせでみた技を見様見真似で再現したりもしたのだが、それでも足りないと感じさせた。

だから、自身の力を底上げする為にも霧崎のPSIを修得しようと考えたのだ。

 

(別に教えるのは構わないんだけど、俺の場合は教える程理解してないんだよな~)

 

対して霧崎は別の事を悩んでいた。

霧崎はPSIを使えはするが、それが使える様になったのは偶然的な要素が多々ある。

それに加えて十六夜が使えるかどうかも微妙なところではあった。

けれども、あの十六夜が頼んでくるという事はかなり珍しい。

だから、基本的な説明をしてあとはなる様になれとでも結論付けるのだった。

 

「教えるのは構わないけど、参考になるかどうかは微妙なところだぞ?」

 

「それでも、構わないさ」

 

「なら、まぁ基本的なとこから行くか。俺も理解出来てるか微妙なとこだけどさ」

 

そうして、霧崎はPSIについて説明を開始した。

 

 

◇◇◆◇◇

 

 

まず、PSIはおおまかに分けて三つの力で構成されている。

 

烈破のバースト

心破のトランス

強化のライズ

 

内なるPSIを念動力や発火現象(パイロキネシス)などの物理的な波動に変え、外界へ放つのが「バースト」

 

テレパシーなど、人間の内なる心界へ働きかける力が「トランス」

 

人体の感覚機能、筋力や治癒力を高める力が「ライズ」

 

PSIは思念の力であり、イメージを現実に変える。

ゆえにその姿は使用者によって大きく変わる。

三つの力を組み合わせる事でも形を変える。

その例が「CURE」だ。

「CURE」は己のライズの力を他者に分け与える。

再生能力を高めるライズを波動(バースト)の形で他者の人体に作用させるのだ。

 

霧崎の幻視(ヴィジョンズ)もその特殊なPSIの一種である。

トランスと感覚能力のライズ”センス”の力が極めて高いゆえの力だ。

 

ライズは二種存在する。

前述した感覚能力のライズ”センス”

筋力、身体能力のライズ”ストレングス”

この二種によって構成されるが特殊な物も存在する。

それが”イアン式ライズ”だ。

「相手の生命波動を感知すること」と「エネルギーの循環操作」に特化したライズのことだ。

相手の呼吸、脈動、生命の律動(リズム)に同調するのだ。

本来の使い方は同調した上でPSIを流し込み、相手を癒すことだが、相手のリズムに合わせて懐に入り込む事も可能だ。

 

 

◇◇◆◇◇

 

 

「と、まぁ俺が説明出来るのはこれくらいだ」

 

「結構色々あるんだな」

 

「でも、俺が教えられるとすればライズくらいだぞ。トランスとバーストは教えられる程詳しくは無い」

 

「そうか。コツとか無いのか?」

 

「何だっけな…………PSIは全脳細胞を瞬間的に100%活性化することで発揮できる、とか言ってたような」

 

そもそも、霧崎が本格的にPSIの訓練を始めてのは未来での戦いが他の者より遅く、別メニューで修行したので知識が中途半端な部分がある。

説明も真面目に聞いてる時と聞いていない時の差があって記憶も曖昧だ。

十六夜は霧崎の話を聞き、少し頭の中で情報を整理する。

整理した上で結論を出す。

 

「何はともあれ実践か。手合わせする内に感覚も掴むだろ」

 

「それは俺が巻き込まれるのが前提か」

 

「ダメか?」

 

「…………まぁ、いいさ。どうせ俺もあんまりやる事が無いしな」

 

そうして、十六夜は霧崎に飛び掛かり、霧崎はひたすら十六夜の攻撃を受け続けるのだった。

その中でPSIのコツと呼べるかどうか微妙なところではあるが、アドバイスをしていくのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方、ラッテンはアルマに徹底的に鍛えられる羽目になっていた。

 

「何で私がこんなことをしなくちゃいけないのよ!!」

 

「私のマスターでありたいならそれくらいはしてください。貴女は大雑把過ぎるんですよ。もう少し思考を広げてください」

 

「それにしても、神話を神様使わずに説明しろとか面倒にも程があるでしょうが!!」

 

「だからこそやるんですよ。ギフトゲーム攻略の為にはこういうのも必要なんです」

 

「私は基本的に後方支援担当なんだから別に必要無くない?」

 

「それでも、前線に出ることはあるでしょう。それに後方支援の方がこういうのは必要でしょう」

 

口論しながらも何だかんだ渋々言われたとおりにするラッテンではあった。

力不足は感じてるがゆえに文句も言えないのだろう。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

某所。

箱庭であって、箱庭では無い所。

大ショッカー連盟本拠の廊下をジェネラルシャドウは歩いていた。

ジェネラルシャドウは廊下の先に妙な気配を感じて視線を尖らせるが、すぐにその正体に気付く。

彼の前に現れたのは醜悪な外見の老人だった。

だが、実体では無い。

その姿には時折ノイズが混ざっていた。

 

「貴様が表に出てくるとは珍しいな、呪博士」

 

『何、大首領に挨拶に来ただけだ。それにアポロガイストが死んだからな。GODは再び私が仕切らねばなるまい』

 

「それだけではあるまい。貴様がその姿を晒す時は何かがあるはずだ」

 

『だから、言っただろう。大首領に挨拶に来たとな。大首領の前であの姿になるのは失礼だろう?それに、”例の作戦”に我が部下を加える様に頼みもしたからな』

 

「何を企んでいる?」

 

『来るべき日に備えているだけだ。大首領が悲願を達成した時の我が立ち位置を守る為にな』

 

「くだらないな」

 

そう言うとジェネラルシャドウは再び歩き始め、呪博士の隣を通り過ぎていく。

呪博士は口元を歪ませると、ジェネラルシャドウの背に向けて言葉を掛ける。

 

『そういう貴様も何処かへ出る直前の様だが何処へ行くつもりだ?』

 

「”あれ”が動き始めたようでな。新たに得た我が力を完全にする為に取りに行くのだよ」

 

『ふん、アポロガイストの様にならぬといいな』

 

皮肉を込めて呪博士が言う。

対してジェネラルシャドウは振り向きもせずに言う。

 

「生憎だが今の私はどうやろうが殺せんよ」

 

それだけ、言うとジェネラルシャドウの姿は闇へと消えるのだった。

呪博士も特に反応することも無く闇へとその姿を溶かした。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

箱庭、東側の某所。

 

「ようやく始まったか。今度こそ俺は究極の力を手に入れてやる」

 

男は呟くと同時に歩き出す。

その背後では男の影から白い影が無数に生まれていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

数日後。

ノーネームの面々は蛟劉に呼び出されていた。

映司や士は前回の闘いの傷がいまだに癒えてなくところどころに包帯を巻いていた。

 

「今日呼んだのは他でも無い。例の封印塚の事や」

 

「何かあったんですか?」

 

「あったにはあったが問題はそれやない」

 

どうもどうやら蛟劉が駆け付けた時には封印塚は周辺には何も残っておらず出てきた魔王が暴れた形跡も無かった。

それならば復活した魔王が身を隠しただけとも受け取れる。

だが、問題はそこでは無かった。

どうもどうやらその封印塚は数ヵ月前まで存在すらしてなかった様だ。

突如としてそこに出現し、突如封印が解かれた。

これはかなり不可解な事件であった。

だが、士はそれを聞いてライオから聞きだしたグロンギ達が箱庭に飛ばされた話を連想した。

 

「何か魔王に関する情報はあったのか?」

 

「魔王かどうかは分からんけど、封印塚破壊と同時期に”黒い捻じれた石板”が何処かへと飛んでいくのを目撃した人がそれなりにいたな」

 

その言葉を聞いて士は確信する。

蛟劉もその反応を待っていたかの様な表情になる。

 

「封印塚が現れた理由は分からんでもな。”石板”の方はまだ情報がある。士君は知ってるんやないか?」

 

「”石板”はおそらくモノリスだろ。つまり、バトルファイトが開催されるわけか」

 

士は何かを思い出すかの様に言った。

そして、一人の男を連想しているのだった。

 

 





超今更ですがPSI説明回でした!

呪博士はアポロガイストが姿を消したので仕方なく出てきた感じです。
改造人間ではないのに再生してるのにも一応理由はあります。
ライスピで思考データを残していたのでそれの複製品に近い物と考えてください。


それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!


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蔦と白ローチと争いの理由





毒蔦の怪物が、烏賊の怪物が互いに触手を操り争い合う。

怪物は周囲の事などは気にしない。

その争いに巻き込まれた人々は悲鳴を上げて逃げていく。

その様子を一人の女が物陰から眺めていた。

 

「君も参加しないのかい?」

 

女の背後にはいつの間にか帽子を被った男がいた。

男は話しかけると同時に発砲する。

女は即座に姿を蘭の怪物に変えて銃撃を防ぐ。

男、海東はその姿を見て溜息を吐く。

 

「カテゴリー7に、カテゴリー9に、カテゴリーQか。期待外れだね」

 

「貴様は何を言っている?」

 

「別に僕が欲しいのは君達では無いという事だよ」

 

銃声に気付き、プラントアンデットとスキッドアンデットも海東とオーキッドアンデットを認識襲い掛かろうとする。

海東はつまらなさそうにしながらもディエンドライバーにカードを入れ、頭上に掲げて引き金を引く。

 

「変身!!」

カメンライド!!ディエンド!!

 

幾つもの残像が現れ、アンデット達が放つ触手を弾いていく。

残像は海東と姿を重ね、頭上から青いプレートが飛来し刺さる。

その姿はディエンドに変わっていた。

海東の銃撃によって触手は正確に撃ち抜かれ、海東にまで届く事は無い。

アンデット達も元々味方では無いので連携など出来るはずも無く、やがて同士討ちに近い形に争いの形が変わる。

その隙に海東はディエンドライバーにカードを入れる。

 

アタックライド!!ブラスト!!

 

無数の散弾が放たれ、三体のアンデットは纏めて地面を転がる。

そこに駄目押しをするようにカードを加える。

 

「終わりだ」

ファイナルアタックライド!!ディ、ディ、ディ、ディエンド!!

 

海東とアンデットの間に複数のカード状のエネルギー体で構成された輪が現れる。

海東がディエンドライバーの引き金を引くと同時に銃口からエネルギー弾が放たれる。

エネルギー弾は輪によって増幅され、アンデット達に直撃する。

爆炎が上がり、アンデット達の肉体から緑色の血液が撒き散らされる。

アンデット達は動きを止める。

だが、それだけだった。

動きを止めただけで死にはしなかった。

変化は腰のベルトが開いているくらいではあった。

 

「全く不死生物と言うのも厄介だね。とはいえ、わざわざモノリスが回収するのを待つ必要も無いよね」

 

海東が腰から自身が使うのとは細部が違うカードを取り出した瞬間だった。

白い影が海東に襲い掛かった。

 

「白い………ローチ!?」

 

白い影の姿に海東が驚きの声を上げる。

ゴキブリの様な姿をしたアルビノローチ達は海東の邪魔をするかの様に飛び掛かる。

海東はそれらをブラストで即座に蹴散らす。

そして、改めてアンデットに目を向けるが、そこでは既にアンデット達がカードに吸収されているところだった。

 

「最初から横取り狙いかい」

 

アンデットを吸収したカードが戻る先に銃口を向けようとするが再びローチに邪魔をされる。

ローチを片付けた時にはアンデットを横取りした人物は姿を消しているのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「そのバトルファイトってのは何なんだ?」

 

「不死の怪物であり、一部の種族の祖であるアンデット53体が殺し合う物だ。最後に残った奴の種族が繁栄する。ただし、どの種族の祖でも無いジョーカーが生き残った場合、世界が終わり、生態系がリセットされる」

 

「つまり、創世と終末論の要素を併せ持ったゲームや。箱庭でも開催されるのが観測される度に様々な神群が警戒を始めるくらいや」

 

士と蛟劉の説明を受けて一同は息を呑む。

本来ならば箱庭の外で行われるはずのバトルファイトが、今箱庭で開催されている。

それがどう影響し、何を起こすかは誰も予想出来ない。

ゆえに蛟劉は彼らにこれを話した。

 

「どう転ぶにせよ、バトルファイトを完遂させるわけにはいかん。だから、君らにも協力してほしいんやけどいいか?」

 

他のコミュニティは復興があり、派手に動く余裕は無い。

ゆえにノーネームに依頼しているのだ。

彼らもそれは分かっている。

彼らは無言で頷き、バトルファイトを叩き壊す為に動き始めるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「嫌な風だ。これはマズイ事が起こるかもしれないね。君も何か感じてはいるのだろう?」

 

バトルファイトが開催されている地域の山の上で一人の男が呟く。

彼の背後には一人の女が岩に背を預けていた。

 

「私が知った事では無いよ。でも、この争いが何か歪な事くらいは気付いているよ。また誰かが介入してるんだな?」

 

「確証は無いがおそらくね。あまり戦いたくは無いが我々も動かないといけないかもね」

 

男はその身で風邪を感じながら言うのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

十六夜達はクロアの力でバトルファイトが起きていると思われる地域まで移動していた。

そこから分かれて様子を見ることになった。

十六夜は傷跡の残る町並みを眺めながら歩いていた。

 

「しかし、こうも連続して事件が起きると関連付けたくなるものだな」

 

一ヵ月前のグロンギ達の裏には大ショッカーがいた。

二ヵ月前のアジ=ダカーハ戦の数日後には、映司、士、晴人、アンクが大ショッカーの並行世界に存在する箱庭への侵攻に巻き込まれていた。

こうも連続して大ショッカーが動くとなると今回も裏にいるのではないかと疑う十六夜ではあった。

実際にウロボロスが暗躍し、アジ=ダカーハ復活まで繋がっていた事があるからゆえに考える。

そこに縞馬の怪物が高速移動しながら現れ、十六夜に襲い掛かる。

 

「さっそくか!!」

 

怪物、ゼブラアンデットの攻撃を紙一重で回避しながら十六夜は敵の動きを観察する。

ちょうど正面から来たところにタイミングを合わせて拳を放つ。

タイミングは完璧で拳は直撃するかと思われたが、ゼブラアンデットは突如二体に分裂し、馬蹄型の武器を左右から横薙ぎに振るって来る。

 

「ッ、うぉ!?」

 

十六夜は慌てて上半身を背後に倒して回避する。

そのまま地面に手を着き、下半身を上げると二体のゼブラアンデットを纏めて蹴り飛ばす。

バク転のノリで起き上ると同時に跳んで宙に浮くゼブラアンデット二体を踏み台にして更に大きく跳ぶ。

そのまま空中で一回転して上でゼブラアンデットに向けて鋭い蹴りを放つ。

 

「反転キック!!」

 

そのままゼブラアンデットは地面にヒビを入れる勢いで吹き飛ばされて纏めて地面を転がった上で爆炎を上げる。

しかし、死なずに腰のベルトが開くだけだった。

 

「確かに不死身だな。緑の体液を吹きだしてはいるが全然死に近付いた感じじゃねぇ」

 

そんなこんなで観察していると何処からともなく黒い捻じれた石板が飛来する。

倒れたゼブラアンデットの近くに着地すると怪しい輝きを放つ。

同時にゼブラアンデットの体が縮んでいく。

圧縮されてカードに押し込まれ、封印される。

そのまま石板にカードは吸収された。

これがバトルファイト。

敗者は石板によって封印されるのだ。

 

「ふうん…………こいつがモノリス、統制者って奴か」

 

呟きながら十六夜は石板に向けて拳を放つ。

石板は回避することも無く砕け散っていった。

その内部から何枚かのカードが零れ落ちる。

が、頭上に新たな石板が即座に出現してカードを回収する。

 

「確かにこりゃキリが無いな」

 

十六夜はまるで分かっていたかの様に呟く。

そう、こうなる事は分かっていたのだ。

事前に士から倒したアンデットは石板に吸収されるとも、破壊しても無駄な事は聞いていた。

統制者にとって石板は仮初で意思を移すだけの入れ物であって壊したところで無駄だということも聞いていた。

 

「契約書類を持っているかどうか確かめる前に持っていかれたか。まぁ、次の奴にでも聞きだせばいいだろ」

 

適当に呟きながら十六夜は再び歩き出すのだった。

バトルファイトを止める鍵になるかもしれないので一同は契約書類もついでに探しているのだった。

そうして歩いていると再び襲撃を受ける。

今度は白い影が複数一斉に十六夜へと襲い掛かる。

 

「今度はゴキブリか?」

 

十六夜は飛び掛かってきた数体を殴り飛ばし、下から懐に入ろうとするローチの頭を掴んで振り回す。

そのまま周囲のローチを纏めて吹き飛ばすと掴んでいた個体も地面に叩き付ける。

それと同時にローチは霧散して消えていくのだった。

 

「不死身じゃない?じゃあ、今のは何だったんだ?

 

十六夜は改めて首を傾げる。

それもそうだろう敵は不死身と聞いていたのだいきなり別物が現れれば困惑もするだろう。

ローチ達は瞬殺されるのを招致で囮になるかの様に次々と襲い掛かる。

十六夜は困惑しながらもローチ達を蹴散らし続けるのだった。

その様子をとある男は眺めていた。

まるで観察するかの様に。

十六夜を見極めるかの様な目付きであった。

 

 





十六夜達もバトルファイトに乱入でした!
暗躍してるのは別に一人じゃ無かったり

白いローチを操る謎の人物については大体分かるかもです

十六夜が言う並行世界云々は隼さんとのコラボのことです

それでは、質問があれば聞いてください
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黄金虫と連携と潜む悪意


今更ですが牙狼に士の人が出てますね
相変わらず敵役がしっくりきて煽りが凄かったですね


 

士はバトルファイトによる破壊跡の残る大通りを歩いていた。

破壊跡を見ながら溜息を吐く。

 

「せっかく復興してるのにまた壊されるのは面倒の極みだな。全くこうも次々と事件が起きるのはやめてほしいところだな!!」

 

言いながら背後をライドブッカーで撃つ。

背後から奇襲しようとしていた黄金虫の始祖であるスカラベアンデットは慌てて銃弾を防ぐ。

それと同時にその身は黄金に輝く。

 

「何ッ!?」

 

士が気が付いた時にはスカラベアンデットは隣にいて、武器を振るうところだった。

慌ててしゃがみ込み、地面を転がるように距離を取る。

その間に腰にディケイドライバーを巻き付ける。

 

「変身!!」

カメンライド!!ディケイド!!

 

幾つもの残像が士と重なり、プレートが頭部に突き刺さる。

姿をディケイドに変えて身構えるが既にスカラベアンデットは姿を消していた。

周囲を見渡そうとした時には背後にスカラベアンデットが出現していた。

 

「グァ!?」

 

背後から攻撃を受けてよろめくが、その間にもライドブッカーをガンモードにしてスカラベアンデットへと向けている。

引き金を引いて撃つ時には相手の姿は消えてた。

そして、死角に現れて攻撃を仕掛けてくる。

 

「瞬間移動…………いや、時間停止か。大体分かった」

 

死角からの連撃を何とかライドブッカーソードモードで受け止めながら士はカードを取り出す。

ディケイドライバーを開き、カードを投げ入れる。

 

カメンライド!!カブト!!

アタックライド!!クロックアップ!!

 

姿をディケイドからカブトに変えた上でクロックアップする。

士の身は異なる時間流へと移動し、周囲の全てがスローモーションの様に見える。

スカラベアンデットの時間停止は完璧だ。

だが、完璧故に弱点はある。

時間停止中は他の物体に干渉できないのだ。

それゆえに攻撃の直前に姿を現すのだ。

士はそれを見抜いてカブトを選んだ。

時間停止解除の瞬間を狙う為にクロックアップを使ったのだ。

士の目の前には攻撃をしようとするスカラベアンデットがいる。

その姿は処刑を待つのみだった。

士は右手にライドブッカーを、左手にカブトクナイガンを持ちながら二枚のカードをディケイドライバーに投げ入れる。

 

アタックライド!!スラッシュ!!

ファイナルアタックライド!!カ、カ、カ、カブト!!

「ハァァァァァァァァ!!」

 

ライドブッカーとカブトクナイガンに多大なエネルギーが纏われる。

そのまま二本の剣で士はスカラベアンデットを切り刻むのだった。

吹き飛ばされたスカラベアンデットは緑色の血を撒き散らしながら地面を転がる。

腰にあるベルトが静かに開くのを見て士はカードをベルトに投げ入れる。

 

カメンライド!!ブレイド!!

 

青いオリハルコンエレメントにその身を通して姿をブレイドに変える。

ブレイラウザーを取り出し、そこからカードを引き抜きスカラベアンデットに投げつけようとした時だった。

物陰から数体のアンデットが現れる。

 

「またか…………まぁいい。ついでに封印するか」

 

そう言って士が身構えた時だった。

白い影が通り過ぎた。

その影は()()()()()()()()()()剣を軽く振るい、こびりいていた物を払い落した。

同時にアンデット達が悲鳴を上げて体液を吹き出す。

驚くべきことにあの一瞬で全てのアンデットを斬り裂いたのだ。

アンデット達の腰のベルトが開くと同時に白い影の左肩が怪しく光る。

すると、周囲のアンデット達が歪む。

歪みに歪み、カード状に姿を変える

アンデットが姿を変えたカードはそのまま白い影の手に収まる。

士が周囲を観察するとスカラベアンデットも今のに巻き込まれていた。

 

「2,5,10,3か。まぁ、持っていて損はあるまい」

 

「まさかお前が現れるとはな、ジェネラルシャドウ」

 

「ふん、私の新たなる力を完全な物にするにはこれが必要なのでな」

 

「ラウズカードが?」

 

ジェネラルシャドウ(白い影)は不敵な笑みを浮かべたまま見せつける様にアンデットが姿を変えた物、ラウズカードを見せ付ける。

ジェネラルシャドウが手を放すとカードは左肩に吸い込まれていくのだった。

士はジェネラルシャドウそのものには特に驚きは抱いていなかった。

何故ならアポロガイストを倒したのだから代わりが動き始めるのは察していた。

それがただ単にジェネラルシャドウだっただけだと思っていた。

ゆえに目的が違う事に多少の疑念があった。

そして、アポロガイストがファントムを取り込んでいた事を思い出す。

 

「お前、まさかアンデットと融合しているのか?」

 

「察しがいいな、ディケイドよ」

 

不気味に笑うジェネラルシャドウを前にし、士は警戒を緩めずに構えてはいる。

それでもジェネラルシャドウは余裕そうに笑う。

 

「さて、私の目的は貴様とは別にあるわけだが……別に貴様を見逃す理由もあるまい」

 

「そうだろうな!!」

 

ほとんど同時に両者は踏み出し、剣を打ち付け合うのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「うん、姿を見せないで正解だったね。あんな化物がいたら実力なんて関係無さそうだし、何より楽しみが減りそうだからね」

 

少年がいた。

少年はつまらなさそうに士とジェネラルシャドウの闘いを眺めていた。

少年は不敵な笑みを浮かべ、何処かへと姿を消す。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「あら、貴方達は逃げないの?」

 

「逃げる理由が何処にあるのかしら?」

 

霧崎とラッテン、アルマは海蛇の始祖であるサーペントアンデットと対峙していた。

サーペントアンデットの背後にはトータスアンデットが身構えている。

街で暴れていたのを霧崎達が見付けたのだ。

サーペントアンデットは蛇骨を伸ばし、鞭の様に振るう。

その先端には鎌が付けられており、触れた物を斬り裂いていく。

だが、それは全て霧崎達に当たらず通り過ぎていく。

 

「どういうこと?」

 

サーペントアンデットもその奇怪な状況に首を傾げる。

霧崎が弱者の(チキンソウル)パラダイムで死の脅威をズラしているだけではあるが、知らなければ怪訝に思うのも仕方ない。

その隙にディーンを召喚して、襲い掛からせる。

一ヵ月前の破損も今ではキッチリ修復されている。

ディーンの巨大な拳がサーペントアンデットを狙うが怪力を持つトータスアンデットに受け止められる。

が、それも作戦の内だった。

 

「二体纏めて吹き飛ばしてしまいなさい、アルマ!!」

 

『了解!!』

 

体に雷を纏わせたアルマがサーペントアンデットとトータスアンデットの真上から突進していく。

サーペントアンデットは咄嗟にトータスアンデットを盾にして逃れる。

吹き飛ばされたトータスアンデットは焼き焦げ、地を転がる。

腰のベルトが開くと動かなくなる。

 

「悪いが、まだ終わりじゃないんだ」

 

霧崎が呟くと同時にクロアによってサーペントアンデットの背後に黒ウサギとレティシアが出現する。

サーペントアンデットは予想外の戦力に驚くと同時に反射的に蛇骨を振るう。

しかし、それとほぼ同時に転移した霧崎が蛇骨の軌道を変える。

それによって道は開けた。

 

「感謝するぞ、霧崎!!」

 

「行くのですよ!!」

 

ラッテンはハーメルケインで音楽を奏でる。

その音は可聴域外ゆえに誰も認識されなかった。

しかし、それでも耳に届けば効果は発揮する。

それによってアンデットの動きを鈍らせつつ、黒ウサギとレティシアを強化する。

アルマや黒ウサギくらいしか聞き取れない音はラッテンの心情的にはあまり使いたくないのだが、サポートという面では必要なので修得した物だった。

 

「さて、〆としましょうか」

 

黒ウサギとレティシアが槍、龍影を振るう。

その鋭さはラッテンによる強化によって増している。

動きの鈍ったサーペントアンデットでは対処出来ずに貫かれていくのだった。

最後にディーンによって上空へと殴り飛ばされ、空中で腰のベルトが開く。

そこに統制者が現れて敗れたアンデットを回収していくのだった。

 

「即興にしては上手く行ったんじゃない?」

 

『今回は不意を突けたからいけましたが、相手が防御系の恩恵を持っていたら危なかったでしょうね』

 

ラッテンと霧崎の火力不足は不死生物アンデットと戦うにはやや不安要素であったので黒ウサギ達に協力を仰いでいたのだった。

連携そのものは行き当たりばったりではあったが各々の力もあって上手く行くのだった。

 

「十六夜さんや、映司さん達は大丈夫なのでしょうか?」

 

「主様達ならば大丈夫だろう。それより我らは頼まれていた物を探さなければ」

 

「本当にあるのかね、統制者の対になる存在なんて」

 

霧崎は疑わしそうに呟きながら何か気持ち悪い物を感じているのだった。

ねっとりとした殺意とは違う悪意を。





ジェネラルシャドウ参戦でした!!
ある意味トランプ繋がりです
何と融合してるかは察せる人は察せるかもです


ラストエンブリオは読みました
前編という事で次巻はよ!!という感じですが
原作タグはラストエンブリオ編に入っても問題児のままの予定ではあります


それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます


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怪し気な警告と孔雀の始祖と人の起源


岩代先生の新作、カガミガミ一巻今日発売でしたね!!
岩代先生らしい作風の式神系の作品でした

あと、今月のライスピでは幻の怪人が姿を現してました!!


「ハァ!!」

 

蛟劉によって数体のアンデットが吹き飛ばされ、モノリスに回収されていく。

蛟劉は周囲一帯を見回して近くにはもういない事を確かめる。

 

「数が分かってる分はええんやけど、人に紛れて隠れてるのが厄介やな」

 

先程、人に化けていたアンデットを見かけたからこその言葉だった。

蛟劉は周囲を警戒しながら街を歩くのだった。

そんな時に、背後から何者かが話し掛ける。

 

「お前はこれまでの事件が誰のせいで起きているか気付いているのか?」

 

「いきなりやね、いったい何者や?」

 

蛟劉は特に動揺せずに振り向く。

気配無く近づいてくるくらいで動揺する精神では無い。

背後にいたのは中年の男だった。

 

「私のことはどうでもいい。問題はディケイドのことだ。奴がいるからこのような事件が起きるのだ」

 

「全部士君のせいとでも言いたいんか?」

 

「そうだ。奴の存在が世界を歪める。だから、お前たちは奴をさっさと倒すべきなのだ」

 

「君の言ってる事が本当かどうかは知らんけど……少なくとも君に言われるがまま士君を襲ったりはせぇへんよ。君よりは士君のが信用できるしな」

 

「その選択、いずれ後悔するぞ!!ディケイドは必ず世界を破壊するのだからなッ!!」

 

それだけ言うと中年の男は姿を消す。

それを見て蛟劉は軽く息を吐く。

 

「なんや、士君も大変そうやな~」

 

そんな事を呟きながらもアンデット捜索を再開するのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

上半身裸で妙なベルトをした男が街を歩いていた。

だが、誰もそれを目に留めなかった。

まるでそれが普通であるかの様に歩いている。

 

「これが箱庭ですか。あまり、巻き込みたくは無いですね」

 

そんな事を呟く男の周囲が突如爆ぜた。

男には傷は無かったが周囲では悲鳴が上がる。

 

「貴方ですか」

 

「貴様はバトルファイトで優勝した経験がある。だから、早めに消させてもらおう」

 

黒いロングコートを着て、サングラスをした男が歩いてくる。

男が軽く手を振るうと火球が放たれる。

上半身裸な男はあえて動かずに火球を見ていた。

 

「アンク!!」

 

「分かってる!!」

 

男に当たる直前、紅い翼が火球を防ぐのだった。

同時に二人の男が上半身裸の男を守る様に割り込む。

それは映司とアンクだった。

アンクは返すように黒コートの男に火球を放った。

男は爆炎に包まれた。

 

「大丈夫ですか?」

 

「えぇ、おかげさまで」

 

映司が尋ねると男は静かに頷いた。

それを聞くと映司はベルトを取り出し、爆炎の方を向く。

 

「なら、出来るだけ遠くに逃げてください。アンク、メダル」

 

「ほらよ」

 

映司が手を出すとアンクが適当にメダルを渡す。

映司は受け取ると、それをベルトにはめ込む。

そのときに、爆炎からアンデットが現れる。

黒コートの男が正体を見せたのだ。

 

「人間が邪魔をするな」

 

「変身!!」

タカ!!トラ!!バッタ!!タトバッ、タトバ、タットッバ!!

 

孔雀の始祖である不死生物、ピーコックアンデットに変幻した男は無数の羽を刃の様にして映司に放つ。

だが、その時には映司はベルトのメダルをオースキャナーでスキャンしていた。

映司の周囲で円状のエネルギー体が回転を始める。

それらが盾となり、放たれた羽を弾いていく。

頭部の前では赤のが、胸部の前では黄のが、脚部の前では緑のエネルギー体が静止する。

それらは胸部の前で一つとなる。

それが映司の胸と重なり、映司の姿が変化する。

鷹の頭部、虎の腕、飛蝗の足を持つ姿、オーズ タトバコンボへと映司の姿は変化した。

映司はメダジャリバーを構えてピーコックアンデットへと向かっていく。

ピーコックアンデットも大剣を手に持って対処する。

 

「タァ!!」

 

数度か剣を打ち合い、鍔迫り合いとなる。

そこにピーコックアンデットは左手の鉤爪を振るう。

映司は慌ててトラクローを展開して防ぐ。

だが、そちらに意識を移したせいで押し合いに負ける。

メダジャリバーが弾かれ、そのまま大剣に斬られ、吹っ飛ばされて地面を転がる。

 

「映司!!これに変えろ!!」

 

見かねたアンクが映司に向けてメダルを投げ付ける。

映司は受け取ると特に確認せずにベルトに入れた。

信用ゆえの行動である。

 

タカ!!カマキリ!!チーター!!

「なるほどね」

 

映司は変化した体に納得する。

その姿は鷹の頭部、蟷螂の腕、チーターの足を持つ亜種タカキリーターに変わっていた。

カマキリソードを構え、チーターレッグで高速移動してピーコックアンデットに迫る。

背後に回って斬り掛かるが、相手は上級アンデットである。

さすがに対応はしてくる。

鉤爪で受け止められるが、すぐに離れる。

そのまま連撃し、徐々に攻撃を当てていくが決定打にはならない。

 

「人間がナメるな」

 

ピーコックアンデットもチーターレッグによる高速移動に慣れて対応してくる。

映司が来る方向を予測し、突きを放つ。

チーターレッグの高速移動は止まるのに多少時間が掛かる。

それゆえに狙われると避けるのが難しかった。

カマキリソードでどうにか受け止めるが反動を抑えきれずに後退する。

そこを狙われる。

無数の羽を刃の様にして放たれ、映司は避けきれずに吹き飛ぶ。

 

「アンク、コンボで行こう」

 

「なら、これにしとけ」

 

再びアンクからメダルを渡される。

それをオーズドライバーに入れると、オースキャナーでスキャンする。

 

シャチ!!ウナギ!!タコ!!シャシャ、シャウーター!!シャシャ、シャウーター!!

 

円状のエネルギー体がオーズの周囲を回る。

青の物体が頭部、胸部、脚部の前で止まる。

それらは胸の前で重なり、オーラングルサークルに重なり、オーズの姿を変える。

鯱の頭部、鰻の腕、蛸の足を持つコンボ、オーズ シャウタコンボに姿を変えるのだった。

そこにピーコックアンデットが羽を放つ。

だが、シャウタは体を液状化させる。

 

「攻撃が全て奴をすり抜けるだと!?」

 

驚くピーコックアンデットに向けて映司は液状化したまま突進する。

近くまで行くとウナギウィップを展開する。

放たれかけていた火球をシャチヘッドから水流を放ち消し飛ばす。

そのままウナギウィップをピーコックアンデットに巻き付ける。

ウナギウィップは常に電気を帯びている為に巻き付かれるだけでダメージとなる。

ウナギウィップを振るい、ピーコックアンデットを真上に投げ飛ばす。

そして、タコレッグをそちらに向ける。

 

「ダラララララララララ!!」

 

タコレッグの足を八本に分裂させる。

そのまま回転するように連続蹴りをピーコックアンデットに食らわせる。

その連撃でピーコックアンデットの大剣が弾き飛ばされる。

 

「トドメだ!!」スキャニングチャージ!!

 

蹴りの反動で距離を取り、空中で体勢を整えながらオースキャナーでメダルをスキャンする。

メダルの力が全身を駆け巡る。

ウナギウィップを放ち、ピーコックアンデットを拘束しようとする。

だが、ピーコックアンデットは鉤爪でウナギウィップを弾き飛ばす。

タコレッグを展開し、ドリルの様に回転させるとそのままピーコックアンデットに突っ込んでいく。

 

「セイヤァァァァァァァァ!!」

 

ピーコックアンデットは無数の羽を刃の様にして放つ。

けれども、全てタコレッグの回転によって弾かれていく。

シャウタの必殺技オクトバニッシュがピーコックアンデットを貫く。

 

「この俺がこんなところで…………」

 

ピーコックアンデットは一瞬だけ人間態に戻り、苦しげに呟いた後に怪人態となって倒れて爆炎を上げた。

その後に残ったのはベルトが開き、身動き一つ取らなくなったピーコックアンデットだった。

即座にモノリスが飛来し、ピーコックアンデットをカードに変えて回収していくのだった。

 

「あれが統制者って奴か。面倒な欲望の臭いがこびり付いてるな」

 

アンクは忌々し気に呟く。

グリードゆえにモノリスから何かを感じ、嫌悪感を持ったのだろう。

映司も変身を解き、アンクにメダルを返す。

 

「貴方達は人間とは思えないほどの力を持っているのですね」

 

そこに先程の上半身裸の男が話しかけてきた。

映司は怪我が無いのを確認して、安堵した様な顔をする。

 

「お前、まだ逃げて無かったのか」

 

「アンク、そういうこと言うなよ。でも、此処は本当に危険ですから逃げた方がいいですよ」

 

「えぇ、それは分かっています。私もバトルファイトの参加者ですから」

 

「え?」「ハァ?」

 

映司とアンク、それぞれ驚いた様な声を上げる。

その反応に男は首を傾けた後に何かに気付いて納得した様な顔をする。

 

「まだ名乗っていませんでしたね。私はヒューマンアンデット。簡単に言えば、貴方達人類の始祖とも呼べる存在です」

 

男は、ヒューマンアンデットはあっさりと言う。

そこに込められた意味を理解し、映司は再び驚いた様な声を上げるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

街の影を”何か”が駆ける。

それは獣の様に息を荒げる。

極上の肉を求める獣の様に。

触角を揺らし、紅の瞳を輝かせ、獣は獲物を探す。





vsピーコックアンデットでした!!
ヒューマンアンデットの外見は始のままです。

最後の獣は既に出ている存在です
どれかは外見がヒントかも?


それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!


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脈打つ物とすれ違う因縁と大幹部の余裕

 

「やっぱ、感覚が分からねぇな」

 

十六夜は歩きながら手を開いたり閉じたりしていた。

霧崎からPSIの事を聞き、ある程度訓練はしたが未だにその感覚と言うのにピンと来ていなかった。

それと言うのもアジ=ダカーハ戦以降、胸の奥に留まり続ける悩みが原因ではあるのだろう。

思念の力であり、イメージを現実に変えるPSI。

そのイメージが今の十六夜には難しいのだった。

そんな中、十六夜は何かを感じて背後に向けて裏拳を放つ。

 

「おっと、危ねぇ」

 

十六夜の背後には大柄の男がいた。

男は確かに殺気を放っていた。

男はニタリと笑うと姿を変える。

 

「中々やるようでちょうどいいし、少し実験台になってくれないか?」

 

「誰がなるかよ!!」

 

男は象の始祖である不死生物、エレファントアンデットへと姿を変える。

何やら異質な物を感じて十六夜は少し距離を取る。

 

「なっ!?」

 

が、距離を話した直後にエレファントアンデットの腰にある先端に刃が付いた鎖の様な物が伸びて十六夜へと襲い掛かる。

紙一重で避けるがそこへ鉄球型のエネルギー弾が放たれる。

ほとんど反射的に拳を振るい、数発は砕くが数発砕き切れなかった。

弾き飛ばされ、建物の壁を突き破る。

瓦礫に埋もれながら十六夜は頭を抱える。

 

「これじゃダメだろ…………このくらいじゃ足りない。これじゃアジ=ダカーハにも、あいつらにも足りない」

 

十六夜は瓦礫を吹き飛ばしながら拳を握り直す。

立ち上がり、全身に力を入れ直す。

目の前の敵より、その先を見て拳を握る。

 

「やはり、人間にしては頑丈だな。だからこそ、ウォーミングアップにちょうどいい」

 

「いいや、クライマックスだ」

 

「へぇ」

 

十六夜は目にも止まらぬ速さでエレファントアンデットの懐に入り込む。

そのままエレファントアンデットの腹に拳を叩き込む。

だが、少々後退するくらいでそこまでダメージは無いようだった。

 

「アァァァァァァァァァァ!!」

 

拳に力を入れたまま叫びを上げる。

殴り飛ばすイメージを極限まで高める。

そして、拳が十六夜もエレファントアンデットも気付かないくらいに淡く光る。

 

「何っ!?」

 

何かにヒビが入る様な音がした。

それと共にエレファントアンデットの足が地から離れ、吹っ飛ぶ。

とはいえ、多少離れた程度で再び踏ん張っていたが。

 

「まだだ、もっと明確にイメージしろ。霧崎の奴もそう言ってたじゃねぇか」

 

更なる高みを見上げ、上り詰める為に力を溜めてイメージする。

十六夜の脳の奥の奥で何かが開く。

扉が開ければ後は開放するだけである。

十六夜は己の中で何かが脈打つのを感じながら。

普段とは違う物を体感していた。

 

「ウォォォォォォォォォォォォォ!!」

 

エレファントアンデットが十六夜に向けて巨大な鉄槌を振り下ろす。

十六夜は物が壊れる様をイメージする。

そして、鉄槌に正面から拳を叩き込む。

そこから何かを流し込むのを本能で行う。

鉄槌にヒビが広がる。

そのまま十六夜が更に力を加えると鉄槌は弾けた。

内から衝撃を放たれた様に破片が四散する。

 

「オラァ!!」

 

そこから回し蹴りを入れてよろめかせる。

更に足払いを仕掛け、倒れ掛けたところで重心に手を加え、投げる様な形にして吹っ飛ばす。

宙に浮いている内に飛び上がり、着地の瞬間を狙って蹴りを放つ。

エレファントアンデットは地面に擦られる様な形で吹っ飛んでいく。

 

「まさか、戦闘中に自身を強化するとは思ってもいなかったぜ。だが、俺はこのくらいじゃ終わらねぇよ!!」

 

「いいや、終わるんだよ!!」

 

エレファントアンデットの腹に十六夜の拳がめり込む。

そのまま破壊の力を流し込まれ、、内から崩壊していく。

駄目押しとばかりに十六夜は更に力を込めていく。

脈打つ何かは加速し、再び拳は光り始める。

何かが破裂するような音と共にエレファントアンデットは十六夜の(バースト)に貫かれた。

煙を上げながら崩れ落ち、ベルトが開く。

 

「これがPSIなのか?」

 

自身でそんな疑問を持ちながら十六夜は己の拳を見詰めた。

そんな事をしている内にモノリスが飛来し、エレファントアンデットをカードに変えて(封印し)再び何処かへと飛んでいくのだった。

それとほぼ同時だった。

風を斬る音と共に鮮血が舞った。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「やっと見つけたよ。横取りしたカードとは言わず、とりあえず君が持っているカード全てを頂こうか」

 

「何だ、お前は?アンデットを封印するのが目的じゃないのか?」

 

「いいや、僕はお宝が欲しいだけさ。それと…………少し確認しにきただけさ」

 

「確認だと?俺に何か聞きたいのか?」

 

「いや、確認ならもう終わったよ。その姿(グレイブ)でローチを操るからまさかとは思ったけど、君は兄さんでは無いらしい」

 

海東は溜息を吐く。

そう、横取りされただけならわざわざ追い掛けはしなかった。

ローチを見たからこそ追い掛けたのだ。

自身の世界でとある怪物に仕え、怪物が死んだ後にその怪物に自身がなると言った後に姿を消した兄を連想したからこその行動ではあった。

だが、実際は違った。

ローチ達の後をつけ、こうして実物を見たからこそ分かった。

目の前の者が全くの別人だと。

相手は仮面ライダーグレイブだった。

海東の兄もそのライダーに変身していた。

声も似てはいた。

それでも、決定的に気配が違っていた。

このグレイブから感じる気配は人外のそれであった。

そもそも海東の事を知らなかったり、従えるローチが白かったりと相違点はあった。

このグレイブと海東は無関係。

でも、だからこそ海東は銃口をグレイブに向ける。

 

「君が何者かは知らないけど、兄さんと同じ様な姿でアレコレやられるのは不快だね」

 

「随分と勝手な事を言ってくれるな」

 

「そりゃそうさ。これは僕の個人的な因縁なのだから………変身!!」カメンライド!!ディエンド!!

 

ディエンドライバーにカードを入れ、頭上に発砲する。

海東の周囲に幾つもの残像が現れ、海東へと重なっていく。

そして、頭上から青のプレートが複数頭部へ突き刺さる。

海東はディエンドへと姿を変えた。

 

「お前を相手にする気は無いんだけどな」

 

「そちらがそうでも僕は君を倒したいのさ」アタックライド!!ブラスト!!

 

ディエンドライバーにカードを読み込ませて発砲する。

銃弾は複数に拡散し、グレイブの周囲にいたローチを消し飛ばす。

続けて二枚のカードをディエンドライバーに入れて引き金を引く。

 

カメンライド!!ランス!!

カメンライド!!ラルク!!

 

「これは面倒そうだな」

 

「逃がしはしないという事だよ」

 

残像が重なり、仮面ライダーランスと仮面ライダーラルクが召喚される。

ランスとラルクはそれぞれ槍とボウガンを構えてグレイブへと襲い掛かる。

ディエンドは後方から退路を塞ぐように銃撃していく。

グレイブは影からローチを生み出し、これに対抗する。

奇妙な縁で出会いし者の闘いが始まる。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「アンデットやグロンギが箱庭に現れたのはお前達の仕業か?」アタックライド!!スラッシュ!!

 

「さぁ、どうだろうな?」

 

刀身が増えた斬撃をジェネラルシャドウは軽く弾いていく。

その隙に数枚のトランプが投げ放たれる。

ジェネラルシャドウの斬撃に対応しながらそれを躱せるはずも無く、士は弾丸の様なトランプに吹き飛ばされる。

しかし、その間にライドブッカーをガンモードに変え、カードをディケイドライバーに投げ入れる。

 

アタックライド!!ブラスト!!

 

ライドブッカーの銃口が増え、無数の弾丸がジェネラルシャドウに向けて放たれる。

だが、ジェネラルシャドウはあくまで余裕を崩さない。

 

「ぬるいぞ、ディケイド!!この程度では()()の命には届きはしないぞ!!」

 

トランプの束が舞ったと思えばジェネラルシャドウの姿が消える。

同時に複数の巨大なトランプが士の周囲を回る。

 

「トランプフェイド」

 

「クソ!!厄介だな、本当に!!」

 

ライドブッカーでトランプを撃つが弾は虚しくすり抜けていく。

そして、トランプが一斉に回転したと思うと、全てがジェネラルシャドウとなり、同時に剣を振るう。

士は対応し切れずに吹き飛ばされる。

地を転がりながら、士は舌打ちをする。

 

「さすがは”デルザー軍団”の実質的なまとめ役と言ったところか………」

 

息を切らしながら吐き捨てる様に言う。

ジェネラルシャドウの言葉が本当ならば相手は本気など全く持って出していない。

何故ならこの戦い方は何時も通りでしか無いからだ。

新たに得たという力は一切使用してない。

士は息を整え、警戒を十分しながら打開策を考えるのだった。

それをジェネラルシャドウは楽しそうに眺める。





十六夜が色々と目覚め始めました。
切っ掛けはPSIだけど、それだけでは無かったり

グレイブ参戦!!
中身は原典の方です
色んな意味で隠して無いけど!!

ジェネラルシャドウはかなり余裕です
デルザー軍団は幹部の中でも別格的な感じです


それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!


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兜の王と乱入者と開く扉

 

「では、貴方方はバトルファイトを止めたいのですね?」

 

「はい。でも、アンデットを倒すだけでは止まらないんですか?」

 

「そうです。今回の闘いを止めた所で統制者は再びバトルファイトを開催するでしょう」

 

「じゃあ、どうすれば?」

 

映司とアンクはヒューマンアンデットからバトルファイトについて話を聞いていた。

ヒューマンアンデットは協力的であり、貴重な情報をもたらしていた。

 

「完全に止めるには統制者そのものを倒すしかないでしょう。ですが、アレを引きずり出すにはバトルファイトに致命的なロジックエラーが発生でもしないと………」

 

「へぇ、それはいいことを聞いたね」

 

突然割り込んできた声に三人は一斉に声のした方に顔を向ける。

そこには金髪の少年が立っていた。

少年は不敵に笑う。

 

「アレを出し抜くなんて面白そうだね。でも、僕としては君達の方が邪魔なんだよね」

 

「お前、何者だ?」

 

言いながらアンクは火球を少年に放つ。

火球は爆炎を上げ、少年を包み込む。

だが、少年は無傷で爆炎から出てくる。

 

「その程度じゃ、僕には届かないよ」

 

「なら、これならどうだ?映司!!」

 

「分かったよ、変身!!」

サイ!!ゴリラ!!ゾウ!!サゴーゾ!!サゴォォォォォォォォォゾッ!!

 

アンクから投げ渡されたメダルを腰に巻いたオーズドライバーに入れ、オースキャナーで読み込む。

円状のエネルギー体が映司の周囲を回る。

頭部、胸部、脚部の前にそれぞれ一つずつ止まる。

そして、胸部の前で一つとなって映司の胸に重なる。

すうと映司の体が変化する。

サイの頭部、ゴリラの腕、ゾウの足を持つコンボ、サゴーゾコンボに変身したのだ。

 

「ふーん。面白そうじゃん」

 

少年はそんな事を言いながら自身の姿を歪める。

金色の甲虫の様な姿となり、大剣と盾を構える。

コーカサスオオカブトの始祖である不死生物、コーカサスビートルアンデットへと姿を変えたのだ。

その間に映司は接近し、拳を放つ。

 

「デヤァァァァァァ!!」

 

「八ッ!!」

 

ゴリラアームの怪力が乗せられた拳が次々と放たれる。

だが、コーカサスビートルアンデットはそれを盾で正確に防いでいく。

拳の隙間にサイヘッドで頭突きを放つ。

けれども、コーカサスビートルアンデットは返す様に頭突きを放つ。

激しい轟音が響き、互いの頭突きが相殺される。

映司は一先ずゾウレッグで蹴りを入れ、コーカサスビートルアンデットの体を宙に浮かす。

そこにゴリラアームからゴリバゴーンを射出する。

さすがに空中では勢いを相殺し切れず、コーカサスビートルアンデットもそこそこ吹っ飛ばされる。

 

「クァッ!?」

 

映司はコーカサスビートルアンデットが地を転がり、ゴリバゴーンが戻ってきたところでオースキャナーを取り出し、オーズドライバー内のメダルを読み込む。

全身にメダルの力が流れ込む。

映司は一度飛び上がるとゾウレッグを固め、重ね合わせ、地面へと落下する。

その衝撃波は地面へと広がり、コーカサスビートルアンデットの足を拘束する。

そのままコーカサスビートルアンデットは映司の方へと引き寄せられる。

 

「ハァァァァァァァァァァァァセイヤァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

目の前に来たコーカサスビートルアンデットに向けてサイヘッドと両腕を同時に叩き込む。

コーカサスビートルアンデットは盾を構え、正面から受け切ろうとする。

爆音が轟く、結果は両者弾き飛ばされた。

だが、立ち直りはコーカサスビートルアンデットのが早かった。

コーカサスビートルアンデットは即座に接近し、五、六度映司を斬り飛ばした。

映司は変身は解けずともそれなりにダメージを受ける。

 

「映司!!これに変えろ!!」

 

「分かった!!」

 

映司はアンクの投げ放ったメダルを受け取り、オーズドライバーに入れる。

コーカサスビートルアンデットがその間にも斬り掛かって来るが紙一重に斬撃を躱し、アンクが火球を放つ事で隙を生み出す。

その隙にオースキャナーでメダルをスキャンするのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

銃撃音と斬撃音が響き合う。

海東とグレイブの戦いは決め手に欠け、中々変化は起きなかった。

 

「鬱陶しいな」

 

「それは此方の台詞だよ」

 

ランスとラルクはグレイブが大量に発生させたローチに足止めをさせられていた。

ローチは此処の個体はそこまで強くないが数が集まると厄介なのだ。

海東は発砲しながら敵の隙を見極める。

 

アタックライド!!イリュージョン!!

 

海東は三体に分身する。

そこから別々の方向に銃口を向けてカードを入れる。

 

アタックライド!!ブラスト!!

 

拡散されたエネルギー弾が広範囲に向けて放たれる。

それによって周囲に群がっていたローチ達が消し飛ぶ。

 

「何ッ!?」

 

グレイブが驚いた様に声を上げる。

さすがにここまで一辺に削られるとは思っていなかったのだろう。

ローチの数が減った事によってランスとラルクの手が空く。

二体はグレイブに矛を向ける。

 

「数の有利を一時的とはいえ、消させて貰ったよ」

 

ラルクと海東が銃撃し、ランスが槍で斬り掛かる。

グレイブは対応仕切れずに押されていく。

海東はトドメを刺す為にカードをディエンドライバーに入れる。

 

アタックライド!!クロスアタック!!

マイティ!!

マイティ!!

 

ファイナルアタックライド!!ディ、ディ、ディ、ディエンド!!

 

海東がクロスアタックのカードを入れた事によってラルクとランスも必殺技を発動する。

ラルクはボウガンに、ランスは槍にカードを通し、エネルギーを武器に纏わせる。

更に海東も分身を解いてディメンションシュートを発動する。

 

「おのれ………」マイティ!!

 

グレイブも苦し紛れに剣にカードを通して必殺技を発動する。

だが、誰の目から見ても戦況は明らかだった。

そう、今のままだったのなら。

 

「ん?」

 

「なっ!?」

 

目にも止まらぬ速さで何かが乱入してきた。

そう、海東とグレイブが認識した時には状況が変わっていた。

ラルクの両腕が宙を舞い、その身が真っ二つに引き裂かれていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

十六夜はほとんど無意識に裏拳を放っていた。

その拳は風の刃と衝突する。

そして、鮮血が舞った。

だが、砕けたのは風の刃の方だった。

 

「なるほど、こう使うのか」

 

十六夜は自身の拳を眺めながら呟く。

拳は血に濡れていたが薄皮が裂けていた程度だった。

それも十六夜が少し意識すれば傷口が塞がった。

 

「なら、此方も出来るか?」

 

十六夜は目を閉じ、地面に手を突き、生命の波動を放つ。

波紋の様に放たれる波動は生物に触れるとリズムを乱す。

それによって十六夜は風の刃を放った相手の居場所を探知する。

 

「そこか!!」

 

十六夜は地面をそのまま抉り取って襲撃者へと投げ付ける。

それを見て襲撃者は慌てて逃げ出す。

 

「何故気付かれた!?」

 

襲撃者は蟷螂の始祖である不死生物、パラドキサアンデットだった。

十六夜は相手が姿を見せるなり、懐へと入り込んで拳を放つ。

パラドキサアンデットはその素早さに目を見開く。

 

「先程までより段違いに速いだと!!」

 

「そりゃ、さっきまでの俺とは違うからな!!」

 

小さく口元を歪めながら十六夜は叫ぶ。

迷いも悩みも晴れたわけでは無い。

むしろ、解決など一切してない。

それでも、分かる事は一つある。

()()()()()()()()()という事は分かる。

今の己ではあいつら(````)には届かないし、アレ(``)にも届きはしない。

ならば、手を伸ばすだけだ。

その力を掴む為に手を伸ばし、イメージする。

それがPSIを起動させる。

一度感覚を掴めれば後は使いこなすだけだ。

十六夜の内側で何かが脈打つ。

PSIと絡み合い、別の可能性へと進化していく。

扉は開き、その身に流れ込んでいく。

 





色々開戦でした!!

十六夜に関しては脳のリミッターはPSYREN世界に行くまでも無く常に外れてるという扱いで
使用したのはライズとイアン式ライズの亜種の様な物です

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます


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思わぬ援軍と血生臭い乱入者と風を味方につけし怪物





フォームライド!!ファイズ、アクセル!!

スタートアップ!!

 

士は姿をディケイドからファイズアクセルフォームへと変える。

高速移動をして、ジェネラルシャドウへと迫る。

だが、ジェネラルシャドウは余裕を崩さない。

 

「たかが高速移動程度で私を倒せると思っているのか?」

 

正面、側面、背後などの様々な場所から斬り掛かる。

しかし、ジェネラルシャドウはその全てを的確に受け止めていく。

1000倍の加速もジェネラルシャドウには通用しなかったのだ。

そして、十秒が過ぎる。

 

「なら、これだ!!」

フォームライド!!キバ、バッシャー!!

 

次に士はキバ バッシャーフォームへと姿を変える。

同時に足元に水面が展開される。

士はその上を滑る様に移動しながらライドブッカーとバッシャーマグナムで銃撃する。

ジェネラルシャドウはそれを紙一重で回避する。

 

ファイナルアタックライド!!キ、キ、キ、キバ!!

「ハァァァァァァァァ!!」

 

士はディケイドライバーにカードを投げ入れて必殺技を発動する。

バッシャーマグナムの銃口に水型のエネルギーが収束される。

そのままジェネラルシャドウへと狙いを定める。

引き金が引かれ、弾丸が放たれる。

バッシャーアクアトルネードの弾丸は追尾弾だ。

ゆえに敵を追い掛け回す。

だが、ジェネラルシャドウは回避をしなかった。

むしろ、正面から向かってきた。

弾丸が当たる数秒前に体を沈め、頭部に多少掠らせながらもその横を通り過ぎる。

そして、剣を振るう。

 

「足りんな」

 

ジェネラルシャドウの斬り上げによって士は大きく吹き飛ばされる。

地を転がる中で姿がバッシャーフォームからディケイドへと戻る。

力の差はかなりあった。

それでもコンプリートフォームにならば対抗出来たかもしれなかった。

けれど、その隙はジェネラルシャドウの前では見せられない。

結果として手詰まりとなるのだった。

 

「だが、私の力を倒すのにはちょうどよかったな。そこは礼を言おう」

 

「ハッ、元より俺はついでか」

 

愚痴を溢しながらも士は隙を探る。

コンプリートフォームにならなければ力の差は生まれない。

膠着とは少し違う。

ジェネラルシャドウが面白そうにながめていた。

余裕があるゆえにジェネラルシャドウは次の手を待っているのだった。

そこへ、

 

「そこまでにしといてくれないかな?」

 

二発の光弾放たれた。

視線を射出場所に向けるジェネラルシャドウ。

そこには和服の男とノースリーブの女が立っていた。

ジェネラルシャドウはその正体を即座に見抜く。

 

「なるほどな。何故貴様らがディケイドを助けるかは知らんが三対一は避けたいところなのでな。一旦引かせて貰うとしよう」

 

そういうとジェネラルシャドウは姿を消した。

あとに残るのは散らばったトランプだけだった。

そうして、士は男女へと視線を向ける。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

それはまさしく化物だった。

ラルクを解体した怪物は首を曲げて海東達の方を向く。

全身はほぼ緑、真紅の瞳を持ち、頭部には黒々とした宝石が埋め込まれていた。

 

「GEEEEEEEEEEEEEEEaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

 

海東達の姿を確認するなり、咆哮を上げながら突進してくる。

それに対してランスが割り込む。

だが、それも足止めにすらならなかった。

ランスの槍は一撃で粉々に砕かれ、破片が撒き散らされる。

そのままランスの腹を貫き、内臓を抉り出して握りつぶし、すすいで飲み干す。

ランスは地に倒れて残像へと戻るのだった。

手が空き、本格的に海東とグレイブを狙う。

海東は一連の流れで怪物の正体を察す。

 

「こんな物は出来るだけ相手にしたく無いね」アタックライド!!ブラスト!!

 

無数の弾丸が怪物へと放たれる。

そうして隙を作って逃げる算段だった。

だが、そうはならなかった。

 

「が……ガバァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

怪物は銃弾を受けながらも普通に進み続けていた。

当たった傍から傷口は塞がっていく。

その驚異的な再生力に海東は正体を確信する。

 

「改造兵士………それもレベル3か。厄介極まりないね」

 

けれども、オリジナルの改造兵士レベル3とは多少の差異はあった。

暴走している点だ。

本来は第三の目によって理性を保つのだが色も違い、完全に暴走していた。

海東は簡単な命令は本能で果たさせて、それ以外は完全に暴走させて暴れさせているのだと解釈した。

そして、何よりの違いが腰のタイフーンであった。

改造兵士レベル3には外装という物は存在しないだが、目の前の個体はタイフーンを装備していた。

それが何よりの差異だ。

それ一つでも未知数と言ってよかった。

何故ならタイフーンはあの一号二号の力の源なのだ。

それが付けられているとなれば警戒するのも仕方ない。

 

「おっと」

 

銃撃をものともせずに進んできた突進をギリギリのところで回避する。

そこから背中に銃口を向けてディエンドライバーにファイナルアタックライドのカードを入れる。

 

ファイナルアタックライド!!ディ、ディ、ディ、ディエンド!!

 

ディメンションシュートが怪物の背に向けて放たれる。

暴走している分、そこまで賢くは無い。

ゆえに回避はされなかった。

 

「消し飛びな」

 

血肉が飛び散る様な音と共に怪物が吹き飛んで爆炎が上がる。

煙が晴れて出てきたのは怪物の下半身だった。

おそらく上半身は消し飛んだのだろう。

海東は一息を吐く。

 

マイティ!!

「ハァ!!」

 

「なぁ!?」

 

グレイブがいつの間にか接近しており、斬り掛かってきていた。

海東も一瞬早く気が付き、後方に跳びながらグレイブに対して引き金を引く。

それによってグレイブはよろめき、また海東が後方に跳んでいた事もあって直撃はしなかった。

それでも多少は吹き飛ばされて、地を転がる。

 

「お前ばかりに付き合っているわけにはいかないんでな」

 

そうやって距離をとってこの場から離脱しようとする。

だが、そこに新たなる乱入者が現れる。

それはグレイブに飛び掛かり、蹴りを入れる。

 

「グゥ!?」

 

その凄まじい威力にグレイブは地を二、三度跳ねながら吹き飛んでいく。

海東はその姿を目にして目を見開く。

 

「もう一体いたのか」

 

乱入したのはタイフーン付きの改造兵士レベル3だった。

やはり暴走しており、理性の欠片も見えなかった。

けれど、海東はそちらを気にしてはいられなくなった。

風車の回るような爆音が響いた。

その直後だった。

上半身を消し飛ばされた改造兵士レベル3の肉体が脈動を始める。

 

「まさか、そこから再生を始めるというのか!?」

 

海東が驚愕の声を上げる中でもう一体の怪物はグレイブへと襲い掛かる。

吹き飛ばしたグレイブの頭部を掴み、指をめり込ませる。

その状態で地面に何度も叩き付ける。

一回叩き付けられるごとにグレイブの仮面から破片が零れ落ちる。

 

「調子にのるな!!」

 

何とか剣を振るうだが、傷は浅い上にすぐに再生されてしまう。

それでも刺激にはなったようで怪物は行動を変える。

頭部を掴んだまま持ち上げ、その体を蹴り上げる。

それだけで背中の装甲がヒビだらけになり、崩れ落ちそうになる。

ある程度まで打ち上げられると重力によって落ちていく。

その間に怪物はまるでプログラムに従うかのように構えを取った。

そして、グレイブが落下してくるタイミングに合わせて拳が放たれる。

 

「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

大砲が放たれたかの様な爆音が響く。

同時にグレイブの体は数キロ先にまで吹き飛ばされていった。

その時にはもう一体も再生を終えていた。

最初の個体の再生が始まってからグレイブが吹き飛ぶまで三十秒も無かった。

ゆえに攻撃を受けた海東が体勢を立て直し、逃げに入るには時間が足りなかった。

 

「これはマズイね」

 

二体の怪物を前に冷や汗を流しながら呟く。

今までの戦闘だけでどれだけ怪物かは理解した。

だからこそ、状況はかなり絶望的だった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ジェネラルシャドウはその光景を遠くから眺めていた。

 

「ふむ、タイフーンを個体に組み込む実験は順調なようだな。性能も申し分も無い。これを更に発展させれば”素体”としては十分成立するだろう」

 

改造兵士レベル3をこの場に連れ込んだのはジェネラルシャドウだった。

相手は不死生物アンデット。

実戦実験にはちょうどいいという事で連れてきたのだ。

タイフーンとの同調も成功し、再生能力、戦闘能力も向上していた。

けれども、これも通過点に過ぎなかった。

あの個体は”素体”の材料でしか無い。

ゆえに底はまだまだ深くどす黒いのだった。





追い詰められる海東でした!!

改造兵士レベル3改は性能が一回り強化された上でタイフーンを移植されました
つまり、風の力で性能がアップです
設定的には87%以下のダメージは0.1秒で再生可能なので改造関係無しに上半身くらいなら再生出来たりします
それを言ったらタイフーン無くても感情とかで強化されますがそこらへんは効率化とでも思ってくれれば

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます


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浮き上がる物と謎の石板と解放されし怪物


明日はドライブは休みだけどニンニンジャーはやるよ!


 

十六夜とパラドキサアンデットの戦いは十六夜が押しいていた。

パラドキサアンデットが風の刃を放つが十六夜はそれを軽々と砕いていく。

風の刃は確かに十六夜の拳を斬り裂いてはいた。

だが、PSIによって強化された十六夜の肉体はその傷を即座に塞いでいく。

それはライズによる影響でもあったがそれだけでも無かった。

十六夜の体内に潜む”何か”がそれ以上の効果を生み出していた。

 

「オラァ!!」

 

十六夜の拳がパラドキサアンデットへと突き刺さる。

その身にはヒビが入って緑色の血液が溢れ出す。

パラドキサアンデットは困惑していた。

十六夜とエレファントアンデットの戦いは眺めていた。

それでも此れは予想が出来ていなかった。

 

「何が起きたというのだ!?」

 

「自分で考えるんだな!!ともあれ、倒すのには違いない!!」

 

「ふざけるなッ!!私はこんなところでは………」

 

「俺もお前くらいに苦戦してたら駄目なんだよ。此処で止まってるわけにはいかねぇんだッ!!」

 

十六夜が叫ぶと同時に脈打つ物が加速する。

そして、十六夜の右腕と右頬に明確な形を持った何かが淡い光を放ちながら浮かび上がりかける。

それは何かを描くかの様だった。

だが、完全には形にならずブレて安定はしなかった。

それでも今は十分だった。

感覚さえ分かれば後は研ぎ澄ましていくだけだから。

 

「吹き飛べッ!!」

 

「そう何度も受けたままだと思うな!!」

 

十六夜の拳をパラドキサアンデットは左腕で受け止める。

多少後退した物の止めることには成功した。

成功したはずだった。

十六夜が拳に更に力を込める。

それと同時にパラドキサアンデットの左腕から血が溢れていく。

 

「何ィ!?」

 

まるで押しつぶされた缶の様に血を吹き出し、左腕は歪んでいく。

十六夜の拳から流れ込んできた”何か”が左腕を内側から破壊していく。

パラドキサアンデットが思わず飛び退くと、十六夜は拳を再び構えた。

右拳を顔の前に、左拳を胸の前に構えて力を込める。

その姿を見てパラドキサアンデットは何かを記憶に引っ掛かる物を感じたが何かは分からなかった。

 

「ドオラァ!!」

 

十六夜は跳んで全体重を掛けるかの様に拳を放つ。

パラドキサアンデットは直撃寸前にその右拳が淡く光り、点滅しているかの様に見えた。

だが、そんな物には意味が無く。

避けれもせずに直撃した。

その威力に吹き飛び、地を転がり、爆炎を上げた。

 

「この私が人間のガキ程度にここまで…………」

 

「待て……ッ!?」

 

それでもパラドキサアンデットは全身緑色の血に濡れるだけに留まり、這うように逃げ出そうとしていた。

十六夜はそれを追いかけようとしたが突然強烈な頭痛に襲われた。

頭を抱えてその場にうずくまる。

その頭痛の原因は十六夜には分からなかった。

ただ、それによってパラドキサアンデットは姿をくらますのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「何だこれ?」

 

「石板としか言いようが無いわね」

 

霧崎達は捜索している内に洞窟を発見し、そこで妙な石板を発見していた。

そこに書かれる文字は霧崎やラッテンには読めず、何を示しているかも分からなかった。

何かを入れる為かどうか分からないが窪みは見付けていた。

 

「アルマ、分かる?」

 

『私も分かりませんね。ですが、今回の件と無関係とは思えません』

 

「私も同感だな。ここの洞窟は無関係にしては少々アンデット……いや、アンデットもどきが多すぎる」

 

アルマとクロアが石板を眺めながら言う。

クロアが言うアンデットもどきとは白い怪物の事だった。

洞窟に入るなり、彼らに襲い掛かって来たのだ。

彼らは当初アンデットかと思ったが倒せば普通に消滅したので違うと思ったのだ。

今も沸いてはいるが黒ウサギとレティシアによって蹴散らされている。

何はともあれ、何か重要そうという事は分かっていてもどういう物かは何一つ分からなかった。

 

「さて、どうしましょうか?壊しておく?」

 

「いきなりだな」

 

『マスター、正体不明の物を壊したらそれはそれで危険ですよ』

 

「これが何かを封印する鍵かも知れないしね。壊してそれが目覚めるても面倒だ」

 

とはいえ、これを調べていても自体は進展しない。

目的の物も見付かっていない。

これからどうするか話し始めるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

パラドキサアンデットは全身から血を滴らせながら歩いていた。

幸いにもまだベルトは開いていなかった。

つまりはまだ敗北はしていない。

 

「私はまだ戦う事が出来る……あの力を手にするのは私なのだ………」

 

呟きながら身を引きずらせ歩く。

だが、パラドキサアンデットの運は既に尽きていた。

目の前にはグレイブが倒れていた。

パラドキサアンデットはそこでどうしようも無い気配を感じていた。

何かヤバいと感じていた。

だが、それが具体的に何かは分からなかった。

 

「俺は運がいい。ちょうどいいところにアンデットが現れたのだから」

 

グレイブの外装は既にヒビだらけだった。

当然ベルトも破損していた。

グレイブが立ち上がると外装がボロボロと剥がれ落ちていく。

一歩歩くごとにその内側が晒されていく。

ベルトが砕け、外装が完全に消える。

そこにパラドキサアンデットは死神を見た。

グレイブの中身はアンデットだった。

だが、普通のアンデットでは無かった。

白と赤で構成される肉体。

何処かしら虫に近い印象を与える外見だった。

けれども、そのアンデットは何の始祖でも無かった。

始祖では無い故に何処のスートにも属さず、数字も持っていない。

その名はアルビノジョーカー。

アンデットを封印する力を持つアンデットにとっては死神に近い存在だった。

その身は滅びの象徴(`````)である。

バトルファイトに勝ち残ったアンデットは己が種を繁栄させられる。

だが、始祖を持たないこのアンデットが優勝すればどうなるか。

答えは単純明快。

全てがリセットされる。

世界は滅ぼされ、生態系は潰えるのだ。

だからこそ、アンデット達には特に敵視される。

けれど、アルビノジョーカーは本来のジョーカーでは無い。

そもそもアルビノジョーカーは本来バトルファイトに参加する存在では無い。

バトルファイトが停止した時に現れる者だ。

それ故にパラドキサアンデットは恐れ困惑する。

本来現われるはずの無い存在、それを前にした事で先程感じた物を理解した。

それは自身の終わりだった。

 

「ウワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

叫びを上げ、死神の鎌から逃れる様にアルビノジョーカーへと突撃する。

運命に抗い、勝ち残る為に動きが鈍い隙を突くつもりだった。

だが、何もかも手遅れだった。

死神の鎌は既に振られていた。

アルビノジョーカーの手には大鎌が存在し、それは既に振り下ろされていた。

突進してきたパラドキサアンデットは上から下に綺麗に斬られた。

そして、倒れるより速くハートのキングのラウズカードに変えられてアルビノジョーカーの手に収まる。

 

「これで一先ずは大丈夫だろう」

 

もう一枚のラウズカードを取り出す。

それを先に腰にあるベルトに読み込ませる。

 

アブソーブ!!

 

続けてたった今封印したカードを読み込ませる。

 

エヴォリューション!!

 

二枚のラウズカードが光の粒子となってアルビノジョーカーへと取り込まれる。

二体のアンデットをその身に融合させて改造兵士レベル3から受けた傷を塞ぐのと同時に自身の強化を果たしたのだ。

 

「だが、グレイブを破壊されたのは痛いな。今は目立つわけにはいかないのだが………」

 

残骸から変身用のラウズカードだけはしっかりと回収する。

破壊されたのは本当に予想外ではあった。

今はアルビノジョーカーという存在を他のアンデットに見せる気は無かったのだ。

それでは感付かれてしまうから(``````````)

 

「仕方ないがこいつらを使うか」

 

そう言って数枚のカードを取り出す。

そこから一枚を除き、宙に投げる。

 

リモート

 

そして、残した一枚を腰のベルトに読み込ませる。

それによってアルビノジョーカーの指先から光が放たれ、ラウズカードに当たる。

光を受けたラウズカードは姿を変えていく。

数秒でアルビノジョーカーの前に七体の怪物が立つ。

 

「行け」

 

アルビノジョーカーがそれだけ言うと怪物達は散り散りとなって何処かへ消える。

それを確認するとアルビノジョーカーは一息を吐いて姿を人間態に変えた。

イレギュラーは更なるイレギュラーを放ち、バトルファイトは更に混沌としていく。





十六夜の頭痛はPSIを使った代償というか暴王を初めて使った後のアゲハを思い出してくれるといいです
あれよりは軽度ですが

霧崎達の発見した物については後々
分かる人は普通に分かる類ですが

グレイブの正体はアルビノジョーカーでした!!(今更)
このバトルファイトにジョーカーはいません

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!


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砕かれた盾と圧倒的な怪物と鍬形の王

 

タカ!!クジャク!!コンドル!!タージャードルー!!

 

赤のコンボ、タジャドルコンボに映司は姿を変える。

コーカサスビートルアンデットはそれを興味深そうに眺める。

 

「へぇ、それでどうするんだい?」

 

「君に勝つよ」

 

「なら、やってみなよ!!」

 

それを合図に互いに動き出す。

映司は空を舞い、上空からタジャスピナーで火炎弾を放っていく。

それらは全てコーカサスビートルアンデットの盾で防がれていく。

 

「映司!!」

 

アンクがメダジャリバーを投げ放ち、映司は上空でそれを受け取る。

映司は高速飛行しながら火炎弾を放ち、コーカサスビートルアンデットとの距離を縮めていく。

その間にメダジャリバーにセルメダルを三枚入れる。

オースキャナーでそれを読み込む。

 

トリプル!!スキャニングチャージ!!

 

その音声と共にメダジャリバーにセルメダルの力が纏われる。

すれ違い様にメダジャリバーを振るう。

通常の次元切断に加えてタジャドルの炎と高速飛行の勢いが合わされる。

コーカサスビートルアンデットは盾に身を隠しながらも剣を振るう。

 

「ダァァァァァァァァ!!」

 

次元は切断されなかった。

コーカサスビートルアンデットが防ぎ切ったのだ。

しかし、盾は破片が零れる程に破損していた。

映司は高速飛行しながら地面に手を入れる。

アンクは所持している紫のメダルが脈打つのを感じた。

地面からメダガブリューが出現する。

映司は腰のメダルケースからセルメダルを取り出すとメダガブリューに咀嚼させた。

そして、メダガブリューの口を閉じて開く。

 

ゴックン!!タジャドル!!

 

そんな音声と共にメダガブリューからタジャドルの変身音が流れ始める。

同時にタジャスピナーにコアメダルを入れ、回転させ、オースキャナーで読み込んでいく。

 

サイ!!ゴリラ!!ゾウ!!ライオン!!トラ!!チーター!!バッタ!!ギガスキャン!!

 

そんな音声と共に七枚のコアメダルの力が完全に開放される。

再び下降して、コーカサスビートルアンデットに向かっていく。

その身は様々な力に包まれていた。

対してコーカサスビートルアンデットは正面から迎え撃つ。

 

「セイヤー!!」

 

メダガブリューが振るわれる。

タジャドルの炎と紫の破壊の力が混ざり、二色の刃を形成する。

二色の刃と盾が激突する。

拮抗する。

コーカサスビートルアンデットはまだ持つと確信した。

が、それでも映司は振り抜いた。

そのまま身を回転させて回し斬った。

盾が崩壊し、破片があちらこちらに散らばっていく。

映司の攻撃はそこで終わらずに炎の鳥を纏ってタジャスピナーを突き出して突進する。

コーカサスビートルアンデットは大剣で迎え撃つ。

だが、コーカサスビートルアンデットは気付いていなかった。

先程のメダジャリバーとの衝突で大剣にヒビが入っていた事に。

その見落しはこの衝突において致命的だった。

大剣のヒビは衝突と同時に広がっていく。

そして、遂に折れて刃先は地面に突き刺さる。

もはや、コーカサスビートルアンデットを守る物は無かった。

炎の鳥が直撃し、吹き飛ばされる。

ベルトは開かなかった。

けれども、直撃した胸からは緑色の血が溢れ流れる。

ダメージは重く動きは鈍っていた。

 

「まだ僕は負けてないよ」

 

だけど、映司の攻撃はそこで終わりでは無かった。

オースキャナーを手に持ってベルトに入っているタカメダル、クジャクメダル、コンドルメダルを読み込ませる。

三枚のメダルの力が解放される。

 

スキャニングチャージ!!

「ハァァァァァァァァァァセイヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

コンドルレッグが展開する。

その身は三枚のコアメダルのエネルギーによる焔に包まれる。

一直線にコーカサスビートルアンデットに突進する。

コーカサスビートルアンデットには避けるだけの体力が無かった。

回避は出来ず、コンドルレッグに挟み込まれ、地を引き摺られる。

完全に挟み込まれ、その身は爆炎に包まれた。

映司はコーカサスビートルアンデットに背を向ける形で着地した。

爆炎が晴れて現れたのは血塗れの少年だった。

 

「また人間に………か」

 

その姿はすぐさまコーカサスビートルアンデットに戻った。

ベルトが開き、即座に統制者が現れる………はずだった。

統制者が現れる前に怪物が乱入した。

映司はすぐに迎撃しようとするがコーカサスビートルアンデットとの戦いのダメージにふらついた。

 

「チッ!!」

 

アンクが火炎弾を放つが怪物は即座にコーカサスビートルアンデットをラウズカードに変えて取り込んだ。

そして、火炎弾の爆炎に身を隠すように姿を消したのだった。

 

「何だったんだ?」

 

「アンデットだろ」

 

「いえ、アンデットであってアンデットではありません。あんなアンデットは前回のバトルファイトには存在しなかった」

 

ヒューマンアンデットは映司とアンクに向けて悩む様に告げるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「「■■■■■■■■■■■■__ッ!!」」

 

二体の怪物は同時に吼えた。

それだけで周囲に衝撃波が放たれる。

海東は思わず身をすくませる。

 

「こりゃ、予想以上だね」

 

内心冷や汗を大量に流しながら引き金を引く。

だが、怪物はそれらを全て目視し、紙一重で回避していく。

 

アタックライド!!バリア!!

 

海東の前方に蒼いエネルギー体による防護壁が発生する。

突進してきた一体はそれに弾かれた。

だが、二体目は違った。

手を開き、防護壁に向けた。

そして、それを閉じた。

それだけで防護壁は砕け散った。

改造兵士レベル3の持つ、”念力”による物だった。

 

「ヤバいね」

アタックライド!!ブラスト!!

 

防護壁が破られた直後に散弾を放つ。

仮面ライダーを召喚しようにも、今のままでは召喚する前に砕かれる。

だから、隙を作る為に放った。

それでも無意味だった。

怪物達は避けもしなかった。

ただ、進んだだけであった。

それで問題無かったのだ。

何故なら散弾程度で怪物の突進を止められるわけが無いのだから。

怪物は散弾が当たる度に肉片を散らす。

だけど、同時に目にも止まらぬ速さで再生していく。

最早海東に腕が届く位置に辿り着いていた。

 

「規格外にも程があるね…………」

 

怪物が腕を振るう。

海東はそれに反応出来なかった。

鈍い打撃音と共にディエンドの装甲から破片が飛び散る。

防ごうとして反射的に出した左腕は弾き飛ばされ、折れていた。

ディエンドという大ショッカー製の装甲が無ければ千切れていただろう。

もう一体の怪物が蹴りを放つ。

これもまた避けれる速さでは無かった。

 

「グガァァァァァァァ!?」

 

地を跳ねる様な勢いで吹き飛ばされた数十m飛ばされたところでようやく止まる。

これもまた肉片になっていてもおかしくは無い威力だった。

ディエンドのスーツだったからこそ生きていた。

変身が解ける。

海東は血塗れだった。

肋骨は折れて、左腕は動かない。

重傷にも程があった。

 

「これは………殺されるかな」

 

仰向けで天を見上げて呟く。

死ぬ気は無い。

だが、それでも怪物の近付いてくる足音を聞くとどうしても死を連想させた。

そんな時だった。

 

「ふむ、やっぱり彼も死なせるには惜しいね。僕の人生を楽しくする為には必要だ。あんな獣に殺させるには勿体無い」

 

不敵な笑みを浮かべて長髪の男が怪物と海東の間に割り込んできた。

男は吟味していた。

己の人生を彩る為に必要かどうかを。

海東は一目見ただけでこの男は気に入らないと思った。

 

「君は何者だ?」

 

「………望月 朧」

 

その答えを聞くと同時に海東の意識は途切れるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

十六夜は頭を抱えて蹲っていた。

強烈な頭痛に襲われているだけでは無かった。

鼻や目から血が垂れ、手足は痺れ、視界は歪んでいた。

いきなりこんな症状に襲われたがゆえに十六夜は困惑していた。

 

「何だこりゃ……………」

 

そして、そこに眼鏡を掛けた青年が現れた。

十六夜は足音と気配でそれに感付いた。

症状によって感覚は弱まっているはずなのに何故か気付けた。

 

「何者だ?」

 

「この姿を見れば分かるだろう」

 

青年は怪物へと姿を変えた。

その姿は金色のクワガタの怪物だった。

これこそがギラファノコギリクワガタの始祖である不死生物、ギラファアンデットの姿だった。

ギラファアンデットは双剣を構えて十六夜へと付き付ける。

 

「先程の戦いを偶然を見たがお前はただの人間じゃないようだな。俺の害になるかもしれんし、弱ってる内に消させて貰う」

 

十六夜は内心かなり焦っていた。

だが、弱ってるがゆえに行動が出来なかった。

そんな事はギラファアンデットには関係無く双剣は振り下ろされ様としていた。

 

「させるかよ」

 

そんな声と共に銀の銃弾が飛んでくる。

銃弾は十六夜を避ける様な軌道を描き、ギラファアンデットに突進する。

ギラファアンデットは反射的に双剣で防ぐ。

 

「誰だ、貴様は!!」

 

「ただの魔法使いさ」

 

ソードガンを構えた晴人が飄々と答えるのだった。

十六夜はそのタイミングの良さに苦笑いをするのだった。

 





コーサカスビートルアンデット戦決着!!
そして、乱入者参戦!!

タイミングの良い登場は別に狙ってたわけでは無い
朧は狙ってるというより興味が向いただけだったり

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!


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穏やかなアンデットと生命融和ともう一人の蛟劉


今週のvs嵐はアギト、ディケイド、鎧武、ゴーカイレッド、タイムレッド、ダイナと特撮一色でしたね


 

「お前らはアンデットか?」

 

「そうだ」

 

「わざわざ助けて何か用でもあるのか?」

 

「そういう事になるね。大丈夫、安心してくれ。私達に敵対するつもりは無い」

 

士は和服の男が差し出してきた手を取って立ち上がる。

そして、服を整えて軽い調子で言う。

 

「なら、話を聞かせてもらおうか」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「「■■■■■■■■■■■■__ッ!!」」

 

怪物は朧の登場をさして気にする事無く叫びを上げて向かってくる。

やる事は変わらない。

目の前の存在をただ殺す。

怪物の目的はただそれだけだ。

 

「これじゃただの獣だね」

 

振り下ろしてきた拳を軽く躱しながら朧は呟く。

朧には怪物の筋肉の動きが見えていた。

波長を感じ取り、筋肉の動きを観察する事でその動きを見極める。

当然自身の身体能力はライズで強化している。

けれども、怪物の反応速度はその上を行く。

腰から第三、第四の腕を生やす。

その想定外の動きには朧もさすがに対応は出来なかった。

 

「カハッ、さすがにこれは予想外だ。何でもありかい君は?」

 

こうしている間も突き刺した腕が微細な振動で朧の肉体を破壊していく。

だが、それでも朧は笑っていた。

口から血を吹き出しながらもなお笑う。

この程度では望月朧は止まらない。

 

「分析完了……細胞隔壁破壊…………発動、生命融和(ハーモニウス)!!」

 

「■■■■■■■■■■■■__ッ!?」

 

腕を突き刺していた怪物が突如苦しみ始める。

反射的に腕を引き抜こうとするが遅かった。

手遅れだった。

腕は既に取り込まれていた。

 

「随分複雑な構成だったようだけど、この天才である望月 朧に掛かれば解析なんて容易い。君には僕の踏み台になってもらう。この僕が更なる高みに上り詰める為にね」

 

細胞の隔壁が破壊され、次々と望月朧に融合されていく。

もはや怪物に抵抗は出来ず、されるがままだった。

突き刺していた腕に肉が凝縮され、朧の中へと移動していく。

朧は確かに自身の中に力が満ちていくのを感じていた。

禁人種(タブー)の比では無かった。

イルミナの様な代償も無く、それ以上の力を手にするのを感じていた。

 

「あぁ、だからこそ世界は楽しんだ!!」

 

改造兵士レベル3調整型の一体を完全に吸収して立ち上がる。

心底楽しそうな笑みを浮かべる。

そこにもう一体の怪物が飛び掛かる。

 

「■■■■■■■■■■■■_____________ッ!!」

 

「君には新たな力の実験台になってもらおう」

 

振り降ろされた超振動する爪を片腕で軽く受け止める。

その腕には怪物と同等の超振動する刃が現れていた。

朧が軽く手を振るうと怪物の腕が千切れ飛んだ。

今の朧には自身の身体能力と改造兵士レベル3調整型の身体能力が合わさり、更にライズで強化されている。

自身で言う様に朧は天才だ。

だからこそ、力の使い方の理解も速い。

その状態で取り込んだものと同等の存在を相手にすればどうなるかは明白だった。

それがこの結果だ。

怪物は即座に腕を再生し、生やす。

それを見て朧はニヤリと笑う。

 

「君達は再生能力も強力なみたいだね」

 

言いながら構えをガラリと変えた。

まるで自身の再生能力を試すかの様に怪物の攻撃をわざと受けて再生を繰り返す。

ダメージを受ければ当然痛みはある。

けれど、朧は平然と受け止めて笑っている。

傍から見たら狂気を感じるしか無いだろう。

朧の感性は一般人とはかけ離れている。

自身の人生を楽しむ為なら地位も名声も捨てるのに躊躇は無い。

天才ゆえにどの分野でも成功する。

だからこそ、退屈していて娯楽に飢えていた。

それだから、PSYREN世界を楽しみ、元の世界を軽く捨てて箱庭の世界にも行く。

興味はコロコロ移ろう。

でも、人への興味は変わらない。

夜科アゲハに向けるのも変わらない興味だ。

それでも、元の世界は捨てれた。

後悔はある。

だが、収穫はあった。

アゲハと同じような興味を向けれる相手はそれなりに見付けていた。

それら全ては自身の人生を彩る為だ。

だから、今の状況も彩る為の手段だった。

怪物はタイフーンを高速回転させて動きを更に加速する。

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■_________________ッ!!」

 

それも今の望月朧には軽く見えた。

突き出してきた腕を軽く避け、下から蹴り上げる。

当然、足にも超振動する刃は存在する。

結果、怪物の腕はあっさりと切断される。

朧はそれを空中で手に取ると体内に取り込んだ。

微量だが更に力を増したのを感じた。

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■_________________ッ!!」

 

「獣には力の差は理解出来ないかな?」

 

第三、第四の腕を腰から生やして吠えながら襲い掛かって来る。

朧はそれにも涼しい顔で対応していく。

二本の腕で四本による攻撃を完全にさばき切っていく。

そして、十九度打ち合った時に両手を回す様にして、全ての手首を斬り飛ばした。

悲鳴をあげる怪物を無視して蹴り飛ばす。

再生が始まっていても関係無い。

朧の目的は勝利などでは無いのだから。

蹴り飛ばされた怪物は肋骨が飛び出し、内臓が潰れ、さすがに即座に再生できる状態では無かった。

朧はそれでも再生し終わるのを待った。

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■__________________________________ッ!!」

 

再生が終わるなり、怪物は特大の咆哮と共に跳ぶように襲い掛かって来る。

先程までとは動きが段違いだった。

それも朧の想定内ではあった。

先程から力を試してる内に外部から加わる力の一部を吸収しているのを感じていた。

そして、目の前の怪物の様子で確信した。

この怪物は周囲のエネルギーすら吸収して強くなるのだと。

 

「全く面白い体をしているねぇ!!」

 

歓喜するように朧は叫ぶ。

飛んできた怪物は片手で受け止めて地面に叩き付ける。

それだけで地面に大きなヒビが広がる。

そのまま掴んでいた腕を引き千切る。

それを吸収すると同時に立ち上った怪物を殴り付ける。

怪物は吹き飛ばず、衝撃のみが肉体を貫く。

殴った場所は左胸。

怪物の口から血が溢れる。

朧の拳は正確に怪物の心臓を潰していた。

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■_________________________ッ!!」

 

けれど、心臓が潰れた程度では怪物は止まらない。

朧に向けて四本の腕で拳を放つ。

朧は上半身を後方に倒し、それらを回避する。

同時に両手を地に着く。

そこから足を振り上げて超振動の刃で怪物の肉体を裂く。

少し後退したところに着地し、怪物の惨状を見てからその傷口に腕を突っ込む。

 

「さて、君も一つになろうか。生命融和(ハーモニウス)!!」

 

もはや怪物に抵抗するだけの力は無い。

それほどまでに追い詰められていた。

細胞の隔壁は破壊され、朧の肉体へ融合が進む。

そこに拒否権は無く、されるがままに取り込まれる。

二度目の融合はあっさりと終わるのだった。

 

「ふぅ……やはり、力があるというのはいいね」

 

髪をかき上げ、笑みを浮かべながら言う。

そこで割り込んだもう一人を思い出してそちらに視線を向ける。

 

「あれ?」

 

とりあえず治療をしておこうと朧は思っていたが、海東の姿は何処にも無かった。

朧は首を傾げながらそれならそれでいいやと立ち去るのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「出てきたらどうや?とっくに気付いてるで」

 

アンデットを倒し回っていた蛟劉は奇妙な気配を感じて自身の背後に話しかける。

相手が物陰から出るのを感じ、蛟劉は振り向く。

だが、そこにいたのは己だった。

 

「なんや………これは」

 

まるで鏡でも眺める様に蛟劉は自分自身と向き合う事になるのだった。

物陰から出てきた蛟劉は不気味な笑みを浮かべ、拳を振ろうとして

 

「甘いで」

 

蛟劉に一瞬で間合いに入られてその胸を貫かれていた。

蛟劉の姿がブレて怪物に変化する。

どうやら変化する能力を持っていた様だ。

 

「外見はともかく中身を簡単に真似れると思ったのが間違いやったな」

 

蛟劉はそのまま腕を上げた。

胸を貫かれたまま腕を上げられ、怪物は上半身を真っ二つにされる。

蛟劉が背を向けるとほぼ同時に怪物は爆散するのだった。

 

「統制者も現れんし、普通に死んだし、アンデットや無かったみたいやね」

 

言いながら歩き出す。

今はアンデットが先であって正体不明の怪物なんて後回しという感じであった。

そこで蛟劉は怪物に刻まれていた文字を思い出す。

 

「”トライアル”……か。それが名前やったりするのかね?」

 

呟きながらもそれは思考の隅へと追いやられる。

それが人造アンデットとは気付かずに蛟劉は思考の隅に置いといてしまうのだった。

だが、人造アンデットなど思い付くはずも無いので仕方ない話ではあった。





朧無双でした!
無双というより相性の差で圧倒した感じですが
生命融和は能力的に禁人種以外にも有効と言う事で

蛟劉が倒したのはハイパーバトルビデオ剣のトライアルです
さすがに階層支配者の力はコピー出来ず瞬殺でした

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!


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接射とバリアとalteration


今週更新少なくてすみません
大体車高とバイトと大学のせいなので!


 

「お前、今まで何やってた?」

 

「ちょっと士に依頼されてな」

 

「それは霧崎達じゃ無かったか?」

 

「それとは別件だ。まぁ結果的には同じような結果にはなったけどな」

 

「お前ら、俺を忘れてないか?」

 

双剣を構えるギラファアンデットが睨みながら言ってくる。

晴人は軽く笑いながらウィザードライバーにリングをかざす。

 

ドライバーオン

「別に忘れちゃいないよ」

 

「そうか。が、俺もあんまりお前らばっか構うわけにもいかないんでな」

 

「分かってるよ。だから、俺も早めに終わらせたい」

シャバドゥビタッチヘンシーン!!

シャバドゥビタッチヘンシーン!!

 

「何だ、その音は?」

 

「気にすることでは無いさ」

 

ギラファアンデットは短縮された呪文を怪訝に思いつつ聞き流す。

晴人は左手に紅いリングをはめてバイザーを降ろす。

 

「十六夜、離れてろ」

 

「無茶を言ってくれるな」

 

「変身!!」

フレイム!!ドラゴン!!ボー、ボー、ボーボーボー!!

 

頭を抱えながら十六夜は体を引き摺る様にしてその場を離れる。

晴人はベルトに紅いリングをかざし、手を横に伸ばす。

その先に紅い魔法陣が現れ、晴人の体を包んでいく。

焔の中から出てくるようにフレイムドラゴンに姿を変えた晴人が姿を現す。

同時にソードガンを構え、ハンドオーサーを開く。

右手のリングを変えてソードガンのハンドオーサーにかざす。

 

コピー

「さぁ、ショータイムだ!!」

 

「すぐに終わるがな」

 

魔法陣からもう一本のソードガンが現れる。

それを掴み、二刀流でギラファアンデットに斬り掛かる。

鋏の様な双剣とソードガンが刃音を鳴らす。

斬り合いは互角であった。

どちらの剣も相手に届かず、打ち合うだけだった。

晴人は体を回転させて距離を取る。

その間にソードガンをガンモードに変えて引き金を引く。

だが、銀の弾丸はギラファアンデットに届きはしなかった。

 

「お前の攻撃は俺には効かない」

 

何か見えない壁の様な物が銀の弾丸を防いでいた。

晴人がそれに驚いている間にギラファアンデットは距離を詰めて来る。

ガンモードからソードモードに戻すより速くギラファアンデットは射程距離に詰める。

剣が振り下ろされる前に晴人はベルトにリングをかざす。

 

「くっ」ディフェンド、プリーズ

 

防御の魔法(ディフェンド)によって炎の壁が目の前に展開される。

ギラファアンデットはそれをお構いなしに双剣を振るう。

炎の壁はあっさりと破られる。

しかし、その間にソードガンはソードモードになっている。

ギリギリのとこで双剣を受け止めて弾く。

そこから突きを放つがやはり何かに防がれる。

 

「バリアか、何かでも張ってるのか?」

 

「大方その通りだ。だから、お前には勝ち目は無い」

 

「そうかな?」

 

挑発する様に軽く首を傾げる。

効果はあったようでギラファアンデットは激しく攻めてくる。

双剣を二刀で受け止めて体を回転させて弾く。

再び斬り掛かって来るのを回転の勢いを加えて弾く。

そして、無防備に晒された懐に斬り掛かる。

ギラファアンデットは、はかば強引に双剣を動かしてソードガンを受け止める。

もう片方のソードガンをガンモードに変えて至近距離で撃ち込む。

その衝撃でギラファアンデットは後退(``)する。

だが、一定距離離れると特に効いて無いように銀の弾丸は弾かれる。

その光景に違和感を覚える晴人だったがそれが何かにまでは思い当たらなかった。

一先ず距離を取ると右手の指輪変えてウィザードライバーにかざす。

 

コネクト、プリーズ

 

空間操作の魔法(コネクト)で小さな魔法陣からドラゴタイマーを取り出す。

それを右手に装着して時計針をいじり、レバーを押す。

 

ドラゴタイム!セットアップ!スタート!

「行くぞ!!」

 

そのままギラファアンデットに斬り掛かる。

ギラファアンデットは何が来るか警戒しつつ鋏型の双剣でソードガンを挟んで跳ね上げる。

無防備になったところを斬り掛かろうとした時、ドラゴタイマーの時計針が蒼い部分に重なる。

そして、晴人がレバーを押す。

 

ウォータードラゴン!!

「よっと」

 

蒼い魔法陣が真横に出現し、そこから出てきたウォータードラゴンがギラファアンデットの双剣をソードガンで受け止める。

その間にフレイムドラゴンが蹴りを入れて距離を取る。

 

「二人になったところで!!」

 

「二人じゃないんだよな」ハリケーンドラゴン!!

 

時計針が緑の部分に重なった所でレバーが押される。

向かってくるギラファアンデットにウォータードラゴンが銃弾を放つがバリアに弾かれる。

そこで緑の魔方陣がギラファアンデットの背後に現れる。

 

「あらよっと」

 

「くぅ!?」

 

背後に出現したハリケーンドラゴンの斬撃を左手の双剣を回す事で防ぐ。

そこから振り返り、ソードガンを鋏部分で挟み込んでフレイムドラゴンとウォータドラゴンの方に投げ放つ。

ハリケーンドラゴンが盾になってる内に双剣にエネルギーを溜める。

だが、その時点で時計針は黄色の部分に重なっていた。

そして、レバーが押される。

 

ランドドラゴン!!

「俺もいるよ」

 

「ぐがぁ!?」

 

真下に黄色の魔方陣が出現し、そこから飛び出たランドドラゴンが斬り上げる様にギラファアンデットを吹き飛ばす。

ギラファアンデットはふらつきながらも倒れずに状況を判断する。

まだ問題は無かった。

けれど、これ以上続行すればヤバいかもしれないのは感じていた。

四人のウィザードはそれぞれソードガンを重ね合わせるとハンドオーサーを開く。

 

キャモナスラッシュシェイクハンズ!!キャモナスラッシュシェイクハンズ!!

キャモナスラッシュシェイクハンズ!!キャモナスラッシュシェイクハンズ!!

キャモナスラッシュシェイクハンズ!!キャモナスラッシュシェイクハンズ!!

キャモナスラッシュシェイクハンズ!!キャモナスラッシュシェイクハンズ!!

 

それぞれの二刀にそれぞれの変身用リングをかざす。

それぞれのソードガンに(フレイム)(ウォーター)(ハリケーン)(ランド)の力が纏われる。

それに加えてドラゴンの力が重ねられる。

 

フレイム!!スラッシュストライク!!ボーボーボー!!ボーボーボー!!

フレイム!!スラッシュストライク!!ボーボーボー!!ボーボーボー!!

ウォーター!!スラッシュストライク!!ジャバザバザブーン!!ジャバザバザブーン!!

ウォーター!!スラッシュストライク!!ジャバザバザブーン!!ジャバザバザブーン!!

ハリケーン!!スラッシュストライク!!ビュービュービュービュー!!ビュービュービュービュー!!

ハリケーン!!スラッシュストライク!!ビュービュービュービュー!!ビュービュービュービュー!!

ランド!!スラッシュストライク!!ダンデンドン!!ダンデンドン!!

ランド!!スラッシュストライク!!ダンデンドン!!ダンデンドン!!

「「「「ダアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」」」」

 

四色八つの刃がギラファアンデットに向けて放たれる。

それに対してギラファアンデットは鋏型の双剣にエネルギーを溜めて斬撃波として放った。

とある世界でその斬撃波は13枚のラウズカードの力を重ねた一撃を相殺した。

爆音があった。

土煙は上がった。

それが晴れた時には地面は大きく抉れていた。

けれど、双方に対した傷は無い。

だからこそ、戦いは続く。

 

チョーイイネ!!ブリザード!!サイコー!!

 

土煙が晴れると同時に凄まじい冷気が放たれた。

それは一瞬にして周囲一帯の地面を凍結させた。

突然の事に回避出来ず、ギラファアンデットも足が凍って拘束される。

 

「クソッ!!」

 

チョーイイネ!!スペシャル!!サイコー!!

チョーイイネ!!スペシャル!!サイコー!!

 

更に(ランド)の魔力を纏い、両腕にドラゴヘルクローを装備したランドドラゴンが右側を

(ハリケーン)の魔力で風を纏い、背にドラゴウィングを装備したハリケーンドラゴンが左側を

通り過ぎる様にしてギラファアンデットの両腕と双剣を弾いた。

双剣は遠方に突き刺さり、両腕は捻じれる様に砕け、緑の血を吹き出す。

そこにフレイムドラゴンが突っ込んで来る。

 

チョーイイネ!!スペシャル!!サイコー!!

「お前のバリアは至近距離からの攻撃には対応出来ない。だから、これ(接射)ならよく効くだろ?」

 

「この………」

 

晴人はそんな事を言いながら胸にドラゴンスカルを出現させてギラファアンデットに押し付ける。

ギラファアンデットは抵抗しようとするが足は凍り、腕は砕けていた。

 

「フィナーレだ!!」

 

「グガァァァァァァァ!?」

 

ドラゴンスカルから超高熱の熱線が零距離で放たれる。

足元の氷は即座に蒸発し、ギラファアンデットは吹き飛ぶ。

熱線に貫かれてなお立ち上がろうとしたが崩れ落ち、爆散した。

残ったのはベルトが開いた状態で倒れたギラファアンデットだけだった。

 

「ふぃ~」

 

晴人は息を吐きながら一人となって変身を解くのだった。






晴人vsギラファ回でした!!

数の暴力は強し!!
接射版ドラゴスカルはアルティメイタムでやってたり
零距離射撃じゃないのかって?
正式には接射のが正しいらしいですよ
零距離射撃は別物になるとか

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!


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「D」と回収者と蠢く影


二週間空いてすみません
大体レポートのせいです!


 

「ソコカラハナレロ」

 

謎の怪物が全身にあるコードの様な物を伸ばし、鞭の様に振るう。

地面から黒い影が伸びてコードは弾かれる。

レティシアの龍影だ。

コードを龍影で弾いて道を作る。

出来た道を黒ウサギが通り抜けて槍を振るう。

 

「たぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

怪物は左腕で槍を受け止める。

同時に怪物に向けて雷撃が放たれるが掴む力は一切緩みはしない。

怪物は右腕を黒ウサギに向けると光弾を放とうとする。

黒ウサギが慌てて飛び退こうとするが遅い。

光弾が放たれたその時、影が伸びて黒ウサギの座標が瞬時に移動する。

 

「ありがとうございます、クロア様」

 

「礼はいらない」

 

黒ウサギを助けたのはクロアだった。

怪物は突然現れたのだ。

何処からともなく現れ、石板を調べていた彼らに襲い掛かった。

そうして戦いが始まったのだった。

黒ウサギ達が怪物と距離を置きながら構えていると何処からともなく何かが放たれた。

 

「危ねぇ!!」

 

霧崎が割り込んで放たれた物の軌道を逸らす。

冷や汗流しながら周囲を観察する。

洞窟内は薄暗く遠くまでは見えない。

ゆえに敵の数は分からない。

 

「まったく面倒な状況だね。黒ウサギの雷撃で片腕焦がすだけで済むのも驚きではあるが」

 

「不意討ちには霧崎がいるとはいえ警戒しなくてはな」

 

「あぁ、敵は二体だから大丈夫よ~」

 

『マスター、そういう事は早く言ってください』

 

「今探知し終わったのよ!!」

 

ディーンの肩の上にいるラッテンとアルマが口論する。

ラッテンは気を取り直してハーメルケインを咥えて演奏する。

 

「ジャマダ」

 

「このくらい!!」

 

目の前の怪物がコードと光弾を放つ。

黒ウサギはそれらを纏めて薙ぎ払う。

それによって周囲が数秒照らされる。

そこで夜目が利くレティシアがもう一体の敵を見付けて龍影を放つ。

金属音が鳴り響く。

どうやら影の刃と敵の武装がぶつありあっているようだ。

 

「あちらは任せろ!!」

 

レティシアが槍を構えながら向かっていく。

クロアは二体の敵を観察する。

 

「ふむ、アンデットではあるようだが何処か違和感があるな………体に刻まれているトライアルが奴らの名か?」

 

「そんな物はぶっ倒した後に士のやつあたりに聞けばいいでしょ!!」

 

ラッテンがディーンの肩の上で立ち上がる。

そして、ハーメルケインを指揮棒の様に振るう。

何故か輝いているハーメルケインの刃先から魔法陣が放たれる。

 

「アルマ!!」

 

『はい、マスター』

 

アルマがその身を魔法陣へと向ける。

魔方陣を潜りぬける度に勢いと纏う力が増す。

演奏によって高めた魔力をハーメルケインの刃先に凝縮し、魔法陣として放ったのだ。

それを潜り抜ける事でアルマに強化を施しているのだ。

音速を超え、光速に近い勢いで目の前の怪物に突進する。

 

「ゴガバッ!?」

 

防御すら間に合わない。

アルマの突進は直撃し、怪物の左半身を消し飛ばした。

抉られた断面から中身が零れ落ちていく。

だが、それでも、怪物の動きは止まらない。

 

「ギ……ギ……ジャマモ…………ケ…………」

 

「どうなってるのよ、これ」

 

『不死身というわけでは無いですがかなり頑丈なようですね』

 

一方のレティシアは善戦していた。

敵の攻撃をヒラリヒラリと回避しながら近づき攻撃を加えていく。

だが、何故か手応えを感じられないのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「で、どうするんだ?」

 

「とりあえず誰かと合流だな。お前も少しは休んだ方がいいだろ」

 

「休める状況ならな」

 

十六夜と晴人がそんな事を話していると、何処からともなく何かが飛来した。

二人は統制者がギラファアンデットを回収しに来たかと思った。

だが、違った。

飛来したのは両肩に犬の頭部の様な物を持つ怪物だった。

 

「アンデットか?」

 

二人が身構えるより速く怪物は両肩の頭部から炎弾を乱射した。

晴人は素早く指輪を変えてウィザードライバーにかざす。

 

ディフェンド、プリーズ

 

魔法陣による防壁で炎弾は防いだ。

だが、同時に多量の砂埃が舞う。

砂埃が晴れた時には怪物の姿も、ギラファアンデットの姿も消えていた。

 

「こりゃ、速く合流した方が良さそうだな」

 

「休む暇は無さそうだな」

 

十六夜は痛む頭を押さえながら立ち上る。

晴人はプラモンスター達を放って仲間を探させるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「これでキングは三枚か。あと一枚………そして、贄さえ手にすればあの力が俺の物に………」

 

森の中で木に背を付けながら呟く。

受けたダメージもほぼ回復していた。

だが、彼はまだ動かない。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「トライアルが解放されたか。奴は上手く動いてくれてるようだ。これなら無駄に加工(``)する必要も無さそうだな」

 

ワインを傾けながら呟かれる。

その意味を知るのは彼の腕に巻き付きし、毒蛇だけだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「なるほど、大体分かった」

 

士は二人の話を聞いて納得していた。

二人の名は男の方は嶋、女の方は光というらしい。

男はクラブのスートのキングで、女はクラブのスートのクイーンらしい。

嶋は元々バトルファイトに参加する気は無かったようだ。

士から見ても嘘はついて無いと思えた。

光の方は本来のバトルファイトなら普通に参加していたようだが、今回はバトルファイトの方が異常であり、異常の正体が分かるまで参加する気は無いようだ。

二人は異常を突き止めようとしていたが状況が状況ゆえに派手に動けなかった様だ。

そこで士やノーネームの面々が現れた事で状況が変わり、動き出した様だ。

聞けば今回のバトルファイトは元々何かが欠けていて不完全な状態だったようだ。

そこに何者かが手を加えて欠けた物を強引に埋めた様だ。

だが、欠けた何かがイレギュラーな物に置き換わってバトルファイトが開催された為におかしなことが起きているようだ。

 

「それで俺にどうして欲しいんだ?」

 

「戦いを止めるか、バトルファイトそのものを壊してくれるとありがたい」

 

「元よりそのつもりではあるが、具体的にはどうやって?」

 

「”ジョーカー”を倒せばいい。今回の”ジョーカー”は変だ。本来出現するタイミングでは無い物が”ジョーカー”として現れている、と風は伝えてくれている」

 

「ジョーカーか」

 

士はブレイドの世界で倒したジョーカーを思い浮かべる。

あれの立ち位置に位置するイレギュラーとなると見当も付かなかった。

そんな時に複数の足音が聞こえて振り返る。

そこには三体の怪物がいた。

 

「キングを寄越せ………」

 

大きな目玉の様な頭部を持つ怪物、腕に刃を持った怪物、骸骨頭の怪物だった。

それは士も知らない怪人だった。

嶋の方へとチラリと視線を向ける。

嶋はただ呟いた。

 

「あんな怪物は私も知らないよ。ただ、性質はアンデットと似たような物だとは思うが」

 

「何でもいいだろう。アレは明らかに敵だ。なら、倒せばいい」

 

光は軽く言いながら姿をタイガーアンデットに変える。

嶋はそれを見て溜息を吐く。

戦う気満々というのもマズイかもしれない。

相手はよく分からない存在だ。

なら、もう少し警戒した方が良かったかもしれない。

士もディケイドライバーを腰に巻きつけて構えを取る。

何時でも対応できるようにしているのだ。

 

「一つ言える事があるとするなら頑丈だとは思った方がいい」

 

「分かってる」

 

士はライドブッカーからカードを取り出す。

ベルトを開けてカードを投げ入れる。

 

「変身!!」

カメンライド!!ディケイド!!

 

残像が広がってから士の体に収束する。

更に上からプレートの様な物が降り、頭部にセットされる。

士の姿はディケイドへと変わっていた。

士はライドブッカーをソードモードにして側面を撫でる。

そうして、敵へと向かっていくのだった。

怪物三体と仮面ライダーとアンデット、奇妙な組み合わせの戦いが始まる。





vs人造アンデット始まり!
アルビノジョーカーが解放したのが奴らです
とはいえ、アルビノジョーカーが何故トライアルたちを従えてるかは後半から察せるかと

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!


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人造アンデットと奇妙な共闘と崩落の始まり


遅くなりました!
テストも終わりましたし更新再出来ると思います!


 

「ハァ!」

 

レティシアは怪物に向けて龍影を放つ。

怪物は紙一重で回避を繰り返す。

そして、腕に装着されたアームガンから弾丸を放つ。

レティシアは槍と龍影で弾丸を弾きつつ距離を詰める。

怪物は距離を取ろうとするがレティシアのが速かった。

怪物の目の前にレティシアが着地する。

即座に龍影が放たれる。

怪物は死を一歩下がらせ、上半身を背後に倒してギリギリのところで回避する。

龍影の隙間に腕を向け、弾丸を放つ。

だが、そこにはレティシアはいなかった。

レティシアがいたのは怪物の背後だった。

至近距離で大きく龍影を放つ事で視界を封じたのだ。

その隙に背後に回り込んでいたのだ。

体勢的に回避は不可。

レティシアの槍が放たれる。

 

「何ッ!?」

 

確かに槍は怪物を貫いた。

槍は貫通し、その刀身を怪物の体液で染めている。

それでも怪物は止まらない。

片腕で槍を掴み、全身の筋肉で槍を押さえ付ける。

レティシアは即座に槍を手放そうとするが遅い。

渾身の力で打ち込んだ分戻りも遅いのだ。

敵の腕に装備された棒が振るわれてレティシアの体に触れる。

直後に電撃が放たれる。

これは攻撃の為では無かった。

痺れさせて麻痺させて動きを封じる為の電撃だ。

いくら吸血鬼といえど数秒は動きを封じられる。

そして、戦いではその数秒が勝敗を分ける。

レティシアの顔面にアームガンが向けられる。

 

「クソ…………」

 

レティシアは顔を歪ませて吐き捨てる。

直後に、

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

金属音が鳴り響く。

紫色の骸骨頭の怪物の振るう槍とライドブッカーがぶつかり合う。

その横ではタイガーアンデットと黄色の怪物が互いに刃を振るい、ぶつけ合う。

 

アタックライド!!スラッシュ!!

 

ライドブッカーの刃が残像の様に増される。

士は目の前の怪物に重い一撃を入れて槍を跳ね上げさせる。

槍と剣、戻りが速いのは後者だ。

そうして、がら空きになった胴へと刃を叩き込む。

斬り裂かれる音と共に怪物から体液が漏れる。

直後に地面から溶ける様な音が響く。

士は一目見て何が原因か見抜く。

 

「毒か」

 

そちらに目を向ける士に対して目玉頭の怪物が双頭の蛇が巻き付いた左腕を士に向ける。

双頭の蛇の目が怪しく光る。

士は何かを察してカードをディケイドライバーに投げ入れる。

 

アタックライド!!リフレクラウド!!

「返すぞ」

 

士の周囲に緑色のオーラが出現する。

双頭の蛇から放たれた光は緑色のオーラに吸収される。

直後に光はそっくりそのまま怪物へと返される。

光が直撃した双頭の蛇ごと怪物の左腕が石化する。

背後で立ち上がってきた骸骨頭が横薙ぎに槍を振るう。

士は身を下げて軽く回避する。

その流れの中でライドブッカーをガンモードに変える。

銃口を骸骨頭と目玉頭に向けながらカードをディケイドライバーに投げ入れる。

 

アタックライド!!ブラスト!!

 

ライドブッカーの周囲に複数の銃口が出現する。

引き金を引くと共に無数の銃口から弾丸が放たれる。

至近距離で放たれた骸骨頭はもちろん目玉頭も回避できずに吹き飛ばされる。

特に目玉頭は石化していた左腕を砕かれる。

二体が転がってる隙に士はケータッチを取り出す。

一方、タイガーアンデットは少々苦戦していた。

 

「チッ………」

 

素早さではタイガーアンデットが上ではあるがパワーは黄色の怪物のが上であった。

更に頑丈さも怪物のが上であった。

タイガーアンデットが数回斬り込んでも特にダメージを受けてる様子も無く動き回る。

黄色の怪物の刃とタイガーアンデットの爪が衝突する。

が、体勢が悪かったのかタイガーアンデットが押され少々吹き飛ばされる。

そこに怪物は追撃を仕掛けようとする。

だが、怪物は一つの存在を忘れていた。

 

「私を忘れてないか?」

 

嶋は一瞬のみ姿をタランチュラアンデットに変え、糸を放った。

糸は大きく網の様に広がり、黄色の怪物を拘束した。

怪物は右腕の刃で糸を斬り裂こうとするが、タイガーアンデットの動きのが速かった。

タイガーアンデットは右の鉤爪で連撃を加えた後に蹴りを入れて吹き飛ばす。

そちらにはちょうど骸骨頭と目玉頭も転がっていた。

 

「あとは任せろ」

 

そう言いながら士はケータッチを操作して画面に映る紋章をタッチしていく。

 

クウガ、アギト、リュウキ、ファイズ、ブレイド、ヒビキ、カブト、デンオウ、キバ

 

それから最後にディケイドの紋章にタッチし、ディケイドライバー中央部を右腰に移動させ中央にケータッチをセットする。

 

ファイナルカメンライド!!ディ、ディ、ディケイド!!

 

ディケイドの胸の中央に九人のライダーのライダーカードが出現する。

そして、頭部にディケイドのライダーカードが現れる。

士はディケイド コンプリートフォームへと姿を変えたのだ。

 

「纏めて消し飛ばしてやる」

 

ケータッチを取り出してカブトの紋章を押して元の位置に戻す。

 

カブト!!カメンライド!!ハイパー!!

 

音声と共に士の隣に仮面ライダーカブト ハイパーフォームが出現する。

士はカードを取り出して右腰のディケイドライバーに投げ入れる。

士の動きに合わせてカブトも動く。

 

ファイナルアタックライド!!カ、カ、カ、カブト!!

 

士はライドブッカーガンモードを構えて三体の怪物に向ける。

同時にカブトもザビーゼクター、ドレイクゼクター、サソードゼクターが付けられたパーフェクトゼクターを構える。

そうして二重のマキシマムハイパーサイクロンが三体の怪物へと襲い掛かる。

竜巻状の全ての物体を原子の塵に変えるエネルギーの本流は三体の怪物を軽々飲み込んでいく。

断末魔も上げる間すら無く毒も何も関係無しに消し飛んでいくが黄色の怪物のみ端の方にいたがゆえに左上半身を消し飛ばされただけで済んでいた。

体液と破片を撒き散らしながらもなんとか動いて逃亡しようとした直後だった。

何故か士とカブトが目の前にいた。

 

アタックライド!!ハイパークロックアップ!!

「逃がすと思ったか?」

 

遅れてきた電子音声と共に士が言う。

やけくその様に怪物は右腕の刃を振るう。

だが、遅かった。

その時にはカードはディケイドライバーに投げ入れられていた。

 

ファイナルアタックライド!!カ、カ、カ、カブト!!

「ダァァァァァァァァ!!」

 

士とカブト、二人分の回し蹴りが怪物の刃を砕き、その身にめり込む。

元より限界寸前だった肉体が限界を振り切る。

全身にヒビが広がっていき、士が背中を向けた時には爆散しているのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

タカ!!トラ!!バッタ!!タトバッ、タトバ、タットッバ!!

 

レティシアの顔面に向けて弾丸が放たれる直前にそんな音声が洞窟に響いた。

レティシアがそちらに目を向けるよりも速く緑色の足による蹴りが怪物にめり込む。

数回バウンドしながら怪物は吹き飛ぶ。

 

「大丈夫、レティシアちゃん?」

 

「あぁ、すまないな映司」

 

助けたのはタトバコンボに変身した映司だった。

映司の問いにレティシアはほんの少し本人すら気付かない程度に頬を紅くしながら答えた。

後からアンクと上半身裸の男が歩いてくる。

 

「映司!!さっさと倒せ!!」

 

「分かってるよ!!」

 

映司はメダジャリバーを片手に持ちながら地面に腕を突っ込む。

アンクの手にある紫のメダルが光を放つ。

地面からメダガブリューを取り出した映司は二刀流で怪物に斬り掛かる。

レティシアに腹を刺されたがゆえに怪物の動きは鈍く一方的斬り飛ばされる。

特にメダガブリューによって斬られる度に大きく肉片を撒き散らしていく。

一気に両方を力強く叩き付けて怪物を怯ませる。

その隙にメダジャリバーには三枚、メダガブリューには四枚セルメダルを入れる。

メダガブリューの口を閉じ、メダジャリバーの側面をオースキャナーでスキャンし、メダガブリューの口を開く。

 

トリプル!!スキャニングチャージ!!

タトバ!!

「セイヤァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

メダルの力がメダジャリバーに纏われ、メダガブリューに紫のオーラが纏われる。

そのままメダジャリバーで左上から右下に袈裟斬りにし、メダガブリューを右から左に横薙ぎに振るう。

そして、左下から右上にメダジャリバーで斬り上げ、メダジャリバーとメダガブリューを中央に揃えて同時に振り下ろす。

全身を切り刻まれ、火花を散らしながら怪物は背後に倒れ、盛大に爆散した。

 

「ア………ガガガガガ………ハイ………ョ……………」

 

アルマに半身を吹き飛ばされたコードの怪物はそれでも身を引き摺ってラッテン達へと向かってくる。

だが、もう勝負は決まったも同然であった。

黒ウサギが持ち前の敏捷さで怪物の足元にしゃがみ込み、両足を槍で斬る。

崩れ落ちたところでディーンが殴り上げる。

それもただの拳では無い。

ディーンの肩の上にはラッテンがいた。

ディーンにハーメルケインを突き刺していた。

その状態で演奏し、内部で反響させていたのだ。

その全ての衝撃がコードの怪物に叩き込まれた形となる。

内部から振動によって破壊された怪物は全身から体液を撒き散らす。

それでも、全身のコードをラッテンに向けて放つ。

だが、それも霧崎によって阻まれる。

 

「やらせるかよ」

 

「私に手を出そうなんて百年早いのよ。というわけで、アルマ!!貫きなさい!!」

 

殴り上げられ宙に浮かされた怪物の頭上からアルマが突撃する。

先程まで強化はしていない。

けれども、今は内部から破壊されて怪物の方が脆かった。

体の中心に大穴を開ける様に怪物は貫かれた。

断末魔を上げるよりも速く内側から膨らんでいき爆散するのだった。

そうして、洞窟内での戦闘は終わった。

映司達はヒューマンアンデットと共に霧崎や黒ウサギ達と話しをする為にカンドロイドで探し、駆けつけてきたのであった。

戦闘も終わり、合流しようとした時だった。

洞窟が激しく揺れ始めたのだ。

壁面にヒビが入り、ポロポロと破片が落ち始める。

一体何が起きているのか、洞窟内の映司や霧崎達には把握出来る物では無かった。

 





トライアル軍団は終了!
こっから大きく動きます!
そこらへんは次回をお楽しみに!

映司の攻撃は割とオーバーキルだけど人造アンデット殺すにはあれくらい的な感じです
タトバだったのは連戦の疲れが多少あるからです

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!


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真紅の石板と母なるアンデットと純白の死神


小説剣要素がガッツリありますが別に読んでなくても問題は無いです


それは唐突に飛来した。

十六夜と晴人が歩いている矢先に背後に何かが降ってきたのだ。

凄まじい勢いで飛来した”それ”は巻き上げた土煙の中から姿を現す。

 

「石板?統制者か?」

 

「いや、色が違う」

 

「なら、士が言ってた奴か」

 

現われたのは統制者と同じ形をした捻じれた石板だった。

ただし、その色は真紅だった。

それは統制者と対になる存在、破壊者であった。

 

【貴様らは邪魔だ。貴様らの存在は戦いを収束させてしまう。多少のイレギュラーがあったとはいえバトルファイトは止められては困るのだ】

 

その言葉は”声”では無かった。

頭の中に直接響く様に聞こえてきた。

そして、真紅の石板(破壊者)の下から何かが溢れてきていた。

溢れ出た液体は集まっていき肉へ、骨へ姿を変えていく。

その姿は十六夜達より大きくなっていた。

その姿は蟷螂(かまきり)に近かった。

爪を持つ、だがその数は四つであった。

肉体は明らかに後ろ半分が膨れ上がっていた。

背には虫の翅も存在する。

そして、体の一部から触手が伸びていた。

 

「十六夜、戦えるか?」

 

「当たり前だ」

 

十六夜は頭から右手を離す。

それから軽く息を吸い、目を閉じる。

感覚を思い出させた上で目を開く。

それと同時に十六夜の右腕が淡く光を放つ。

 

「大丈夫そうだな」ドライバーオン

 

言いながら晴人は右手の指輪を腰にかざしてウィザードライバーを出現させる。

そして、左手に紅い指輪をはめる。

 

シャバドゥビタッチヘンシーン!!

 シャバドゥビタッチヘンシーン!!

「変身!!」

フレイム!!ドラゴン!!ボー、ボー、ボーボーボー!!

 

左手の指輪をウィザードライバーにかざして前方に魔法陣を出現させる。

それを走りながら潜って姿をウィザード フレイムドラゴンに変える。

そのまま前方の敵に向かっていきながら右手の指輪をかざす。

 

コネクト、プリーズ

コピー、プリーズ

 

小さな魔法陣を出現させ、中からソードガンを出現させる。

更にコピーの魔法でソードガンを二本にする。

 

【マザーアンデットよ。敵を殲滅しろ】

 

真紅の石板(破壊者)が言うと同時にマザーアンデットが動きだす。

四本の爪を晴人に向けて振り下ろしてくるが、晴人はそれをヒラリヒラリと回る様に回避した上で爪の付け根を狙う様に斬り付けていく。

 

『GEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!?』

 

マザーアンデットが悲鳴をあげ、青色の体液を撒き散らす。

だが、傷そのものは浅い。

その上、垂れた体液は地面を軽く溶かしている。

 

「硬いな」

 

晴人は呟きながら距離を取り、ソードガンをガンモードに変え、銀の弾丸を放っていく。

十六夜はライズのイメージを固めていた。

強化を足に集中させる。

ビキリ、と地にヒビが入ると同時に十六夜は宙を舞う。

更に空を蹴ってマザーアンデットへと降下していく。

 

「中々使えるな。あとはこっちの制御か」

 

十六夜は右手を眺めながら呟く。

マザーアンデットは見た目通り昆虫の様な複眼を持つのか上空からの襲撃も探知していた。

マザーアンデットの背中から何故か泡立つ様な音が響く。

晴人と十六夜が怪訝に思うと同時に背中から丸い何かが射出された。

それを見て弾丸を生成した、と思うが違った。

生成したのは弾丸どころでは無かった。

放たれた球体にヒビが入り、その中から昆虫型のアンデット(子供)が誕生した。

マザーアンデットはその名が示すように母体として兵士()を産み出す力を持ち合わせているのだ。

産まれた子供は使命が既にプログラムされているのか、即座に十六夜を標的と定めて牙を剥いて襲い掛かる。

 

「(これの状態は簡単に言えば俺の中の”何か”が常に駄々漏れで敵に触れたらそいつに流し込んでる形だ。駄々漏れにしている分、負担も大きい。頭痛の原因もそれだろう。”これ”の正体は分からねぇが俺の中を脈打っているのは感じる。なら、制御するのは流し込む量の方じゃねぇ体内を流れる形そのものだ。発現しているのが右腕だけなのは俺が把握し切れていないからだろう。なら、”これ”は全身を流れ循環する物と仮定する。そうイメージする。PSIで大事なのはイメージというからな。イメージした上で流れる量を絞り、脈打つ様に、敵に当たる瞬間のみ右腕から放つ量を増させて叩き込む!!)」

 

一瞬の内に考えを纏める。

実験する様に目の前に迫ったアンデットに向けて右腕を振るう。

拳はアンデットの装甲を軽々破ってめり込む。

直後にアンデットの全身から体液が弾け飛ぶ。

体内からぐちゃぐちゃに破壊し尽くされたのだ。

アンデットとはいえ本来の物とは違うらしく息絶えた。

 

「ッ!?」

 

成功した事に息を吐くと同時に軽い痛みが右腕からした。

その痛みの正体にはすぐに気付く。

流す力を一瞬だけ増量させるのは出来た。

それで体力の消費は抑えられる。

しかし、今度は体の方が急激な変化に悲鳴を上げたのだ。

そうして十六夜はプログラムを組み替える。

ライズ(ストレングス)によって肉体を強化し、負担に耐えれる形に持って行く。

だが、それでも仮の処置に過ぎない。

本当に一撃に莫大な量を流した場合、右腕は耐えれないだろう。

そうこうしている間に他のアンデットが十六夜に同時に攻撃を仕掛けていた。

 

「しゃらくせぇ!!」

 

叫びながら裏拳の要領で拳を振るい、アンデットを纏めて弾き飛ばす。

アンデットは全て体液を撒き散らして墜落していった。

十六夜は右腕を眺め、痛みがしない事を確認する。

 

「制御は出来ているな。さて、次はテメェだクソ虫ッ!!」

 

眼前にマザーアンデットが迫っていた。

空中ではあるが先程同様に足を強化し、空を蹴り飛ばす。

空中で加速し、懐に飛び込む。

マザーアンデットは触手を放ち、拘束しようとする。

その前に晴人が飛び込み、触手を斬り裂く。

阻む物はもはやなく十六夜は全力でマザーアンデットを殴り付けた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

漆黒の石板(統制者)はとある丘の上を浮遊していた。

ボタリボタリと何か液体に近い物が漆黒の石板(統制者)から垂れる。

それが地に触れると同時に地が揺れた。

丘にヒビが広がり周囲は陥没していく。

そんな中で丘の頂点から何かが生えてきた。

それは石板であった。

霧崎達が見付け、映司達が入ってきた洞窟が崩壊し、石板が姿を現したのだ。

まるでその存在を知らしめる様に。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

三体の怪物が倒れた直後だった。

敵を倒し、一瞬気を抜いたところでだった。

ケータッチを外し、コンプリートフォームから通常態へと戻ったところだった。

それは現れ、タイガーアンデットに向けて白の大鎌(死神の鎌)が振るわれた。

 

「ッ!?」

 

「させないよ」

 

だが、嶋が、タランチュラアンデットが割り込む。

大鎌を横合いから蹴り飛ばし、空振りさせたのだった。

そこへ士がライドブッカー ガンモードで弾丸を撃ち込む。

襲撃者は紙一重でどうにか回避しながら後退した。

 

「白いジョーカーか………」

 

「まさかむこう(ジョーカー)の方から来てくれるとはね」

 

襲撃者は53体目のアンデット、ジョーカーだった。

そのジョーカーは士の知るジョーカーとは違った。

黒の体は白くなり、緑の部分は赤くなっていた。

いうなれば、アルビノジョーカーだった。

 

「欲を張らずにキングを狙うべきだったか…………」

 

「どうやら、ジョーカーの狙いは私のようだね」

 

「みたいだな。どうする?」

 

「倒すに決まっているだろう」

 

言うと同時にタイガーアンデットがアルビノジョーカーに襲い掛かる。

おそらく不意討ちが頭に来たのだろう。

士と(タランチュラアンデット)はやれやれと言った様子で後に続く。

アルビノジョーカーは純白の大鎌を構え、迎え撃つ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

某所。

 

「ようやく統制者と破壊者が姿を現したか。となれば、もうすぐ(````)か」

 

言いながらジェネラルシャドウはワイングラスを傾ける。

その腕には舌を伸ばした蛇が巻き付いている。

その言葉は誰に届けるまでもなく闇に消えていく。

ワイングラスを置くとトランプを取り出して一枚引く。

そのカードをみてジェネラルシャドウは怪しく笑う。

 

「ふむ。これはいい結果(````)に転がりそうだ。我々もそろそろ動くとするか。奴らが全てを終わらせた後では遅いからな」

 

言ってジェネラルシャドウは椅子から立ち上がる。

何処かへと歩を進める。

足音だけが闇に響き渡る。

その姿は闇に消えていき、残ったのはトランプだけだった。

 





使える設定は使っとけ!
というわけで、小説剣のマザーアンデット&破壊者参戦!!
あと、未使用なアルビノジョーカーの大鎌とかも!!

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!


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母胎の死と殺気の違和感と誘い込む大鎌

 

『GEEEEEEEEEEEEEEEEYYYYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!?』

 

マザーアンデットの悲鳴が轟く。

十六夜の拳はその身を大きく抉り取った。

マザーアンデットの左半身は内から弾け飛び、肉片となっている。

撒き散らされた体液は周囲一帯を溶かしていくが、晴人と十六夜は既に距離を取っていた。

傷口は何故か泡立つかの様に膨らんでいく。

十六夜を憎々し気に睨み付け、雄叫びをあげる。

 

『AGEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!』

 

「うるせぇんだよ!!」

 

叫び返して十六夜も向かっていく。

そこから再び殴り付けるつもりだった。

だが、マザーアンデットの生態は十六夜の想像の先を行った。

ゴポリ、と泡立っていた傷口が大きく膨れ上がり、その中から大きな鎌が付いた腕が生え、十六夜に向けて振り下ろされたのだ。

しかし、十六夜は慌てずに対処する。

 

「悪いが聞かねぇよ!!」

 

鎌は十六夜の左手に軽く受け止められた。

その鎌は薄皮さえ切れていなかった。

アジ=ダカーハとの戦い以来、殿下に渡された太陽主権の力で十六夜の体に対して刃物は通用しないのだ。

鎌を両手で掴み、全身をライズ(ストレングス)で純粋に強化してマザーアンデットを投げ飛ばす。

地面に大きくめり込み、砂埃が盛大に上がる。

 

『GA………GEYAaaaaaa………』

 

苦悶の声を上げながらのたうち回るがマザーアンデットはそこまで時間を掛けずに起き上ってくる。

傷口は再び盛り上がり、今度は大量の触手が襲い掛かる。

十六夜は梅花の型を取る。

花の様に広げた手とライズ(センス)によって強化された感覚で一本残らず弾き返していく。

その間に晴人はウィザードライバーに右手の指輪をかざす。

 

ドラゴライズ!!

「来い、ドラゴン!!」

 

晴人の前方に大きな魔法陣が出現し、そこからウィザードラゴンが出現する。

それによって晴人の姿もフレイムスタイルに戻る。

 

コネクト、プリーズ

 

更にもう一つ魔法陣を生み出してマシンウィンガーを取り出し、跨る。

マシンウィンガーを変形させてウィザードラゴンと合体させてウィンガーウィザードラゴンとする。

ウィザードラゴンを操り、マザーアンデットへと襲い掛かる。

 

「さぁ、ショータイムだ!!」

 

ウィザードラゴンに気付いたマザーアンデットは十六夜の相手をしつつ、背から卵を射出していく。

しかし、それらはウィザードラゴンによって孵化する前に撃ち落されていく。

晴人はすれ違い様にマザーアンデットの体を斬り裂いていく。

 

『GGGEEEEEEEEEEEEeeeeeeeeeeeeeYYYYYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!?』

 

いとも簡単に崩れ落ちていく身に悲鳴をあげるマザーアンデット。

そこに容赦無く炎弾が襲い掛かる。

マザーアンデットの体は炎に包まれる。

近くにいた十六夜が軽く離れる振りをしてマザーアンデットの腹の下に移動する。

そして、右腕を輝かせる。

 

「打ちあがれデカブツッ!!」

 

マザーアンデットの腹に思いっきり拳が叩き込まれる。

破裂する様な音と共にその身は宙に浮かび吹っ飛ぶ。

破裂した水風船の様な音が響く。

体内でエネルギーが暴れ回り破壊し尽くしているのだ。

そこにウィザードラゴンに乗った晴人が待ち受ける。

 

キャモナスラッシュシェイクハンズ!!フレイム!!スラッシュストライク!!ヒーヒーヒー!!

「ハァァァァァァァァ!!」

 

ソードガンに炎の魔力が纏われ、更にウィザードラゴンの火炎が上乗せされる。

マザーアンデットの肉体は真っ二つにされるが傷口は完全に焼き焦げ、体液は一滴たりとも流れ落ちていなかった。

内側を破壊され、真っ二つになった。

それでも、マザーアンデットは止まらない。

体内から次々と兵士()を生み出しては喰らい尽くしていく。

自ら産み出し自ら喰らう。

その繰り返しの中で真っ二つにされた肉体が触手で繋がろうとする。

だが、再生は晴人と十六夜が許さない。

 

「フィナーレだ!!」

チョーイイネ!!キックストライク!!サイコー!!

 

「こんなとこで何時までも止まっているわけにもいかねぇからな!!」

 

ウィザードラゴンが変形し、巨大な足となる。

マシンウィンガーは台座となり、晴人はそれらを組み合わせて巨大な蹴りと化す。

十六夜はイメージする。

無駄な火力はいらない。

ただ完璧に消し去るだけの力を。

最適な量を最適な形で放つ様を。

拳を胸の前で重ね合わせ、右拳を顔の前に、左拳を胸の前に構える。

そこから、飛び上がり拳を放つ。

 

『GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAGEBUUUUYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!?』

 

先に十六夜の拳に貫かれ、後にストライクエンドで押し潰される。

十六夜の拳に貫かれた時点で膨大な力が注がれた上に中身を混ぜ返され、破裂寸前の風船の様に膨張していた。

そこに巨大な蹴りが叩き込まれ、地面にめり込み盛大に破裂した。

もはやただの液体と化していた。

毒もウィザードラゴンには通用しない。

ウィザードラゴンも元の姿へと戻り、晴人のアンダーワールドに帰っていった。

晴人が変身を解き、十六夜もライズを解除する。

 

「終わったか?」

 

「さすがにあれで復活はしねぇだろ」

 

そんな事を言っている内に二人は気付く。

真紅の石板(破壊者)の姿が消えている事を。

それはある意味不気味であった。

まるで何かの準備(``)が済んだかのような。

知らない何か(``)が動きだしているような。

不気味な感覚であった。

二人は一先ず仲間達と合流する為に急ぐのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「誰や、君?」

 

「ほう、この距離で気付くか」

 

蛟劉が背後に話しかけると同時に答えが返ってきた。

それと共に蛟劉の周囲にトランプが舞う。

蛟劉が構えると同時に剣が死角から飛び出してくる。

蛟劉は頭を僅かに動かして回避し、背後に蹴りを放つ。

だが、その蹴りは空を蹴っただけだった。

その姿が現れたのはまた蛟劉の背後だった。

 

「我が名はジェネラルシャドウ。大ショッカー連盟の幹部だ」

 

「へぇ。幹部がどうどう喧嘩売りに来るとは意外やな」

 

「何、貴様があちらに介入したら予定(``)が崩れそうなのでな」

 

「足止めってわけかいな。でも、いいんか?君一人で本当にええやな?」

 

殺気を隠しもせずに言う蛟劉。

対してジェネラルシャドウは涼しい顔で剣を構える。

 

「確かに貴様は強かろう。だが、それは箱庭(``)での話だろう?」

 

「へぇ、舐めてくれたもんやな!!」

 

瞬間、二人の戦いは始まった。

眼にも止まらぬ勢いで音すら遅れるレベルの戦いが開幕した。

そんな中で蛟劉は何か違和感があった。

向けられている殺気が一つでは無いような妙な感覚があったのだ。

だが、今は戦いの中雑念は置いておき目の前の敵を見るのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

タイガーアンデットの爪を軽々受け止めると、腹部に柄を叩き込む。

怯んだところに蹴りを入れ、更に大鎌を振り下ろす。

そこに士が割り込み、ライドブッカーで受け止める。

更に(タランチュラアンデット)が蜘蛛糸を放つ。

 

「ハァ!!」

 

大鎌にハートが浮かんだと思うとその刀身に風の刃が纏われる。

大鎌が振るわれると同時に蜘蛛糸ごと士、(タランチュラアンデット)、タイガーアンデットは吹き飛ばされる。

 

「さすがジョーカーだけあって強いな」

 

「今のは……他のアンデットの力か?」

 

「だろうな。奴は元々の力に他のアンデットの力を上乗せしているというわけだ」

 

そんな風に話しながら体勢を整える。

アルビノジョーカーは迂闊に踏み込まずに遠距離から風の刃を放つ。

先程は近距離ゆえに躱せなかったが距離を取ればそうでも無い。

士はライドブッカーをガンモードにして撃ち返していく。

だが、それは何か(``)によって阻まれる。

まるで目の前に壁があるかのようだった。

 

「おそらくだがバリアか何かを張れるようだな」

 

「遠距離対策もばっちりというわけか」

 

「だが、今踏み込むのは下策だと思うぞ?」

 

「分かっている。近付かずにちまちま攻めてきているのは誘い込みたいからだろ。特にお前をな」

 

「だろうね」

 

苦笑する(タランチュラアンデット)

だが、踏み込まない事には攻めの手が無い。

三人はアルビノジョーカーを見据えつつ策を練るのだった。





マザーアンデット死亡!
蛟劉vsジェネラルシャドウ!
でした!

盤面は転がり始めて終幕は近いです!!

それでは、質問があれば聞いてください
感想待っています!!


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伝えた物とローチと完成する鍵


キーボードが壊れるとかマジふざけてますよね


 

士はライドブッカーから銃弾を乱射する。

アルビノジョーカーは右肩狙いの弾丸を軽く躱し、正面に迫った弾丸を大鎌で切り払い、足元狙いの弾丸を大鎌を回転させて防ぐ。

 

「そこだ」

 

その瞬間をピンポイントで狙い、(タランチュラアンデット)は蜘蛛糸を放つ。

蜘蛛糸は弾丸を弾いた直後の大鎌と地面をくっつける。

 

「小細工を…………」

 

アルビノジョーカーは即座に大鎌を地面から剥がそうとするが、その前に三人が動く。

(タランチュラアンデット)が風を放ち、それをアルビノジョーカーが咄嗟に回避する。

そこにタイガーアンデットが飛び掛かる。

互いの爪を打ち付け合う中で不規則に風が放たれてアルビノジョーカーはペースを乱される。

 

ファイナルアタックライド!!ディ、ディ、ディ、ディケイド!!

 

士とアルビノジョーカーの間にカード状のエネルギー体が複数出現する。

それにライドブッカーの銃口を向ける。

銃口から放たれたエネルギー弾はカードを通り抜ける度に増大し、アルビノジョーカーへ襲い掛かる。

避けようにもタイガーアンデットによってその場から離れる事は困難だった。

ディメンションブラストがアルビノジョーカーの眼前に迫る。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「どうしてこうも急に崩落するんだよ…………」

 

崩落した洞窟の中で霧崎が溜め息交じりに呟く。

確かに洞窟は崩落していた。

しかし、霧崎達は全員生きていた。

というより、誰一人として下敷きにはなっていなかった。

霧崎が死の脅威を視る幻視(ヴィジョンズ) 脅威(メナス)で事前に察知し、弱者の(チキンソウル)パラダイムを使い、仲間に降り掛かっていた脅威を全て祓い退けたのだ。

それによって岩の脅威は回避していた。

だが、崩落によって閉じ込められてはいた。

死の脅威を祓えてもそこまで都合よくはいかないのだ。

 

「大丈夫ですか、霧崎殿」

 

「あぁ、大丈夫だ。ちょっと空気悪いと思うくらいだな」

 

アルマが気遣う様に問い、霧崎はヒラヒラと手を振りながら軽く答える。

その周囲では映司がヒューマンアンデット、レティシア、黒ウサギ、クロアと話していた。

その近くではアンクが壁に背を預けて座っている。

ディーンは図体的に動けば洞窟を刺激しかねないのでラッテンのギフトカードに戻っている。

ラッテンは霧崎の隣でハーメルケインを吹いていた。

一通り演奏してラッテンはハーメルケインから口を離す。

 

「駄目ね。完全に塞がっている上に何処もかしこもヒビだらけで下手に刺激すると更に酷くなりそうね」

 

「なら、私の出番だね」

 

言いながらクロアが立ち上がる。

最初は映司やアルマが岩を砕いてさっさと出るつもりだったのだが周囲の状況把握も兼ねてラッテンが音響反射で調べていたのだ。

それでこういう結果が出たのならば力付くは危険だ。

そこでクロアの空間跳躍の出番というわけだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

そう、アルビノジョーカー単体だったならば回避は無理な状況だっただろう。

だが、単体でなければ話しは違う。

彼にはいるのだ。

(しもべ)が、ケルベロスが。

 

「何ッ!?」

 

『GEEEEEEEEEEEEEYYYYYYAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!』

 

唸り声を上げながらケルベロスが横合いから飛び込んで来る。

タイガーアンデットごとアルビノジョーカー(主人)を弾き飛ばす。

不意討ちゆえにタイガーアンデットは抵抗する間もなく吹き飛ばされた。

その上でケルベロスは自身も転がり、回避する。

ディメンションブラストは虚しく宙を貫く。

 

「うぉ!?」

 

ケルベロスは転がりながら光弾を放ち、士と(タランチュラアンデット)を怯ませる。

そこから即座に起き上がり、士に飛び掛かる。

咄嗟にライドブッカー ソードモードで受け止めるが衝撃を殺し切れずに吹っ飛ばされる。

その間にアルビノジョーカーは五枚のラウズカードを取り出す。

スペードのA(チェンジビートル)ハートのA(チェンジマンティス)ダイヤのA(チェンジスタッグ)クローバーのA(チェンジスパイダー)ケルベロスのA(チェンジケルベロス)の五枚である。

それらを次々と腰のベルトに読み込ませていく。

 

チェンジ、チェンジ、チェンジ、チェンジ、チェンジ

ファイブカード!!

「はぁぁぁぁぁぁ…………………………………」

 

アルビノジョーカーの周囲に五つの紋章が現れる。

そのまま大鎌に飛びつき、柄を握り込む。

同時に紋章が刃へと吸収される。

五枚のAの力を得た大鎌は蜘蛛糸を容易く引き千切る。

士は阻止しようにもケルベロスの相手で手が一杯であった。

タイガーアンデットと(タランチュラアンデット)は回避しようとする。

だが、その時だった。

 

「「ッ!?」」

 

奇妙な音が響き、二人の動きを止めた。

その音はまるで嘲るような響きがあった。

士にもその音は聞こえていた。

だが、普通に動けていた。

どうやら、その音は特定の対象のみに効果があるようだ。

実際に二人が動きを止めていたのは一瞬だろう。

けれど、その一瞬は致命的だった。

アルビノジョーカーの凶刃が二人に迫る。

 

「終わりだ」

 

横薙ぎに振るった大鎌がタイガーアンデットの体に深く深く傷を刻む。

その勢いのまま、(タランチュラアンデット)へ斬り上げを放つ。

緑の血が勢いよく溢れ出す。

二人はそのまま倒れていく。

 

「クソッ!!」

 

士がケルベロスに銃口を押し付けて零距離で弾丸を放ち、吹き飛ばした時には手遅れであった。

二人は倒れる直前に一瞬だけ人間態に戻った。

そして、口が動く。

声は出なかった。

だが、それでも(タランチュラアンデット)とタイガーアンデットから何か(``)は伝わっていた。

倒れた時にはタイガーアンデットとタランチュラアンデットの姿に戻っていた。

そして、ベルトは開いていた。

アルビノジョーカーが封印用のカードを投げ、二人は吸収され、封印される。

 

「ククク、ハハハハハハハハハハハッ!!これで鍵は揃った!!あとは扉を開き、力を手にするだけだッ!!」

 

(タランチュラアンデット)が封印されたクローバーのKを含む、各スートのKがアルビノジョーカーの懐から浮かび上がる。

それらはまるで引き合うかの様に集まり、混ざり、一枚のカードに変貌する。

扉のような物が描かれたカードを手に取り、笑いを上げる。

その影からは白い怪物が、アルビノローチが次々と出現していく。

 

「行くぞ、ケルベロス。あの力を手に入れに。世界の破壊者…………悪いが貴様に興味は無い。だから、此処でローチと遊んでいてくれ」

 

「待て!!」

 

士が走り出すより速く、アルビノジョーカーとケルベロスが光弾を放つ。

防ぎ切りはしたが、土煙の奥にアルビノジョーカーの姿は無かった。

直後にアルビノローチが一斉に士へと襲い掛かる。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「何だ、こいつら?」

 

仲間と合流する為に走っていた。

晴人と十六夜の前には黒い怪物がうじゃうじゃと現れていた。

 

「敵なのは間違い無いだろうな」

 

二人は即座に敵と判断し、黒い怪物の、ダークローチの群れに飛び込んでいくのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

脱出は三回に分ける事になった。

さすがに一気に飛ばすのは体力を使うようだった。

最初はレディーファーストという事でレティシアと黒ウサギが。

霧崎達は念の為に最後まで残る様なので二番目に映司、アンク、ヒューマンアンデットが脱出した。

映司達は先程まで洞窟のあった丘の上にある石板を遠目から眺めていた。

 

「あれをわざわざ露出させたという事は統率者は痺れを切らしているのでしょう」

 

「それ程、重要なんですか?」

 

「えぇ、あれには古代の大いなる力が封印されてます。キングのカードを集め、生贄を差し出した者がその力を得ます」

 

「ようは特別報酬みたいな物か」

 

ヒューマンアンデットの言葉にアンクが適当な言葉を返す。

そんなこんな話していると霧崎達がクロアの空間跳躍で外に出てくるところだった。

 

「一先ず落ち着いた事ですし、ゆっくりと話しw

 

そこでヒューマンアンデットの言葉が途切れた。

怪訝に思い、映司が振り向くとヒューマンアンデットは大鎌に貫かれていた。

 

「ご先祖様!?」

 

「もう貴方が来ますか…………」

 

ヒューマンアンデットは悪いと思いながら映司の叫びを無視して背後に話しかける。

僅かに首を動かしてみるとそこにいたのは予想通りの顔だった。

アルビノジョーカー、イレギュラーなジョーカーがその場にいた。

 

「一回バトルファイトで勝ち残った貴様は生贄にちょうどいい。このままバニティに封印させてもらう」

 

アルビノジョーカーは大鎌を引き抜き、傷口に扉が描かれたカードを押し付ける。

ヒューマンアンデットの肉体はそのカードに吸収されていく。

 

「あとは…………頼みます」

 

そう言い残し、ヒューマンアンデットは吸収された。

カードにはヒューマンアンデットが映されていた。

鍵は揃った。

扉は目前。

絶望の扉は軋みを上げて開き始める。





アルビノジョーカー大立ち回り
役者はいまだ揃わず、扉は開かれる
ラストバトル間近です


ダークドライブの正体は予想通りでありながら予想通りでした
今年の夏映画も良かったよ!!

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!


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笑う道化と嘲る支配者と全てを握りし者

 

轟音が響く。

アルビノジョーカーに向けて一同による攻撃が放たれたのだ。

アンクの炎弾が、黒ウサギの雷が、レティシアの龍影が、アルマの突撃が一斉に放たれる。

緑の血が撒き散らされ、アルビノジョーカーは盛大に吹き飛ばされる。

地面を数度バウンドして洞窟だった丘に叩き付けられてようやく止まる。

それでも、アルビノジョーカーは笑っていた。

 

「もう遅い!!鍵は揃った!!誰も俺は止められないッ!!」

 

笑いながら石板の前に立つ。

すると、アルビノジョーカーが手に持つバニティのカードと石板が共鳴を始める。

 

「させるか!!」

「させません!!」

 

黒ウサギとレティシアが同時に飛び掛かる。

だが、二人の槍は不可視の何かに阻まれた。

同時に何かがアルビノジョーカーの左右に飛来し、降り立つ。

それは、漆黒の石板(統制者)だった。

それは、真紅の石板(破壊者)だった。

対たる存在であるそれらはただそこに現れた。

 

「どうやら、バトルファイトも俺を勝利者として認めたらしい!!貴様らではもう手が届かん存在に俺はなるのだッ!!」

 

【いや、違うな】

【お前はただの依代だ】

【我らが全てを破壊するための】

【此度のバトルファイトをリセットする為に】

 

まるで脳に直接響く様に声が流れる。

それはまさしく嘲るような声だった。

全てを見下すような支配者の声だった。

 

「貴様ら…………何を、グガ……アガァァァァァァァァァァァ!?」

 

怪訝に思ったアルビノジョーカーが何かをする前に苦しみ始める。

同時に真紅の石板(破壊者)漆黒の石板(統制者)がその身を溶かす。

そして、石板が、バニティのカードが、ケルベロスが、アルビノジョーカーが取り込まれる。

それは一つの大きな塊と化す。

更に雲が怪し気に輝き始める。

 

「何が起きてるんだ?」

 

「どうやら、ご先祖様が想像していた以上の事が起こってるみたいだね」

 

【簡単な話だ】

アレ(アルビノジョーカー)は自らの意志で動いていたつもりなのだろうが】

【それは我らが運命を操作した結果でしか無かったのだ】

 

「そこまでして何が目的なのよ?」

 

【言ったであろう】

【バトルファイトのリセットだ】

【此度は邪魔が多過ぎたのだ】

【それに場所も悪い】

【これでは戦いとして成立しないのだ】

【くだらぬ存在が余計な横槍を入れなければ良き物を】

【これも全てあの()が余計な因果の乱れを生み出したせいだ】

()など問題では無いのだ。問題は我らに抗う余計な存在だ】

 

「なるほどね。奴らは典型的な支配者系の神気取りか………私が嫌うタイプだ」

 

クロアが憎々し気に呟く。

アンクも吐き捨てる様に言う。

 

「ハッ、どれだけ力を持とうがこういう奴らはあいつ()と対して変わらんみたいだな」

 

そうこう言っている間に雲から光の奔流が漆黒の石板(統制者)真紅の石板(破壊者)が混ざりし塊に降る。

塊は光の中を奔り、雲へと突入する。

雲が積乱雲の如く黒く染まる。

霧崎は雲を眺め、顔を引き攣らせて呟く。

 

「何が起きてるんだ?」

 

「どうやら、とんでもない力の塊が雲の中に潜んでいる様ですね」

 

アルマもアルマで嫌な予感という物を感じていた。

ラッテンは冷や汗を流しながらディーンをギフトカードから出して肩に乗る。

黒ウサギは槍を抱えてアワワワワワワと震えている。

レティシアは重圧を感じながらチラリと隣の映司を見る。

映司は平然と空を眺めて立っていた。

それを見てレティシアも重圧を振り払う。

そして、雲が割れた。

 

『GGEEEEEEEEEEEEEEEEEeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeYYYYYYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!』

 

雄叫びと共に山の如き巨体を持った怪物が姿を現す。

現れた怪物はまさに異形だった。

純白、漆黒、真紅が混ざりあった斑な体色は毒々しい。

頭部にはケルベロスが埋め込まれた巨大な角を持ち、両肩には龍を思わせる頭部があった。

右肩は漆黒であり、左肩は真紅だった。

四本の腕にはスペード型の剣、ハート型の聖杯、ダイヤ型の盾、クラブ型の棍棒が持たれている。

胸の中央にはアルビノジョーカーの上半身が姿を見せていた。

背にはその巨体を包み込む程の翼があった。

右翼は真紅、左翼は漆黒に染まっていた。

両翼の付け根の間には石板があった。

石板にはバニティのカードがはまっており怪しく輝いていた。

下半身はまるで大蛇の如く伸びている。

まるで終焉を齎すかの如く怪物の周囲では風が吹き荒れ、豪雨が降り、雷が轟く。

その雄叫びは嘲るような色も含んでいた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

海東もその光景を眺めていた。

 

「まさか、フォーティーンもどきまで出現するとはね。運命には皮肉を感じるよ」

 

呟き、溜息を吐く。

そこで改めて思い当たるのだった。

 

「…………まさか、これは偶然(``)じゃないのか?歪みによって引き摺り込まれた(``````````````)存在がこうも因縁が絡むのは僕らの方に原因があるとでも言うのか?」

 

ありえなくもない可能性に思い当たり、海東はしばし考える。

何故なら彼は二ヵ月程前に別の箱庭への移動という世界と世界、箱庭と外界を移動するとは桁の違う経験をしているのだから。

全ての世界と繋がるのが箱庭である。

ならば、別の箱庭と繋がるという事は中身の確定していない猫箱からもう一つの猫箱を観測するという事なのだから。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

蛟劉も怪物の姿は認識していた。

だが、今はそればっかり気にしてはいられなかった。

 

「トランプフェイド」

 

蛟劉の周囲に複数の巨大なトランプが出現し、高速で回る。

それらが同時に裏返ったと思うと、その全てからジェネラルシャドウが出現し、剣で突いてくる。

蛟劉は真上に躱した上で全てのジェネラルシャドウが纏まったところに蹴りを放つ。

けれど、ジェネラルシャドウの身はトランプへと変幻し蹴りは当たらなかった。

 

「やはり、階層支配者(フロアマスター)は手強いか」

 

「どの口が言うとるんや。明らかに全力や無い上に手を隠してるくせに」

 

「それは貴様も同じ事だろう?」

 

互いの視線が衝突する。

明らかに時間稼ぎなやり方なのだが、敵が全力で無い上に手を隠しているのでは蛟劉も無闇に手札を明かすわけにはいかない。

轟音がと共に互いの姿が消えて衝突が始まる。

 

「アレが君らの狙いか?」

 

「何、偶然の産物が想像以上に状物だったから手を加えただけだ」

 

「明らかに出所を知ってる口振りやな」

 

「二ヵ月前、といえば分かるだろう」

 

「……………君らが別の箱庭に攻め込んで映司君達と戦った一件か」

 

「アレがどれだけ無茶な実験かは説明する間でも無い。それがどれだけの歪みを齎したかもな」

 

「此処最近の出所不明の化け物はそれの余波でこの箱庭に出現したという事か。しかし、えらいあっさり話すんやな」

 

「それらはあくまで副産物、偶発的な物だ。ゆえに問題は無いのだよ」

 

その言葉と同時に蛟劉が一際強めの拳を叩き込んだ。

ジェネラルシャドウは紙一重で回避しながらトランプを投げ放つ。

蛟劉はトランプを殴り上げて上空で爆発させてから蹴り払いをジェネラルシャドウの足に向けて出す。

ジェネラルシャドウは体を巨大なトランプに変化させて高速回転し、回避と同時に襲い掛かる。

蛟劉は紙一重で回避しながら考える。

あっさり話した理由は惑わす為だ。

ようは偶発的とはいえあそこまでの副産物が生まれるのだ。

ならば、繰り返すかもしれないと警戒させるのも目的の一つではあるのだろう。

だが、実際別の箱庭への干渉という物にどれだけの力を使うかは不明だ。

繰り返せるかも分からないレベルかもしれないのだ。

だから、問題はそこではない。

問題は一度でもそれを成功させた技術と力だ。

正体不明規模不明拠点不明、大ショッカーの多くは謎だ。

それゆえに断片的でも情報が入れば有用だ。

けれど、今回の情報は曲解させる為の情報だ。

曲解させてネガティブなイメージを広げる為だ。

だから、蛟劉はあくまで目の前の的に集中する。

幹部を片付ける事を最優先とした。

圧倒的強大さという物を打ち砕くために、決して敵わない存在では無いと証明する為に。

ジェネラルシャドウはそれでも不敵に笑う。

彼としてはこの戦いはさして重要では無いのだから。

この局面、そのもの突然現れた予定外の事なのだから。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

幾つもの思惑が重なり合う。

(統制者)は、は本性を現し、その身を曝け出す。

魔人は不敵に笑い、その目的を霧に隠す。

盤面は収束し、終局は目前に迫る。

 

 

 

 





今編のラスボス枠出現です
統制者&破壊者は小説剣に登場するあれらです
片方はねじれこんにゃくと同一ですが

フォーティーンもどきに関しては14+ケルベロス+小説剣ラスボスという感じです

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!


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嘲る運命と否定する運命と歪んだ魔神

 

聖杯が振られ、雷が映司達に襲い掛かる。

 

「いきなりかよ!!」

 

悲鳴の様に叫びながら霧崎が弱者の(チキンソウル)パラダイムで雷の軌道をずらす。

雷によって大地が抉られる中で怪物(統制者と破壊者)は突進してくる。

各々が散る中で霧崎とラッテン、アルマは動かずに正面に立つ。

 

「何でお前らは逃げないんだよ?」

 

「どうせ、霧崎が守ってくれるし」

 

『その前提ならカウンターもやりやすいですし』

 

ラッテンとアルマがこんな調子なので霧崎も動くに動けないのだった。

あんな化物の正面に立つなんて本当はチビリそうなくらいに恐くても背後にラッテンがいるとなれば引くわけにはいかない。

霧崎は覚悟を決めて迎え撃つ。

 

「ヨヨ!!」

 

(オウ!!)

 

振り下ろされた大剣を全力でズラす。

大剣とはいうがそのサイズはとんでもない。

小さな山に近い巨体が振るう大剣なのだ。

桁違いの大きさであり、桁違いの力も秘めている。

十数メートル離れたところに大剣が落ちる。

それだけで地が割れた。

それでも、余波すら霧崎達に届かない。

 

「今よ!!突っ込んじゃいなさい、アルマァ!!」

 

『はい、マスター!!』

 

ラッテンが演奏でアルマの出力を強化する。

アルマは全身を雷光に包み怪物に突進する。

映司はその光景を見ながらアンクに叫ぶ。

 

「アンク、メダル!!」

 

「ほらよ」

 

「変身!!」

タカ!!トラ!!バッタ!!タトバッ、タトバ、タットッバ!!

 

映司はメダルを受け取るなり、オーズドライバーに入れて急ぐようにオースキャナーに読み込ませる。

頭部、胴部、脚部を中心に三ケ所で円状のエネルギー体が回る。

頭部の前には赤、胴部の前には黄、脚部の前には緑の物が静止する。

それらは胴部の前で一つになる。

そこから映司の胸と重なり、映司の姿を変貌させる。

オーズ タトバコンボに姿を変えた映司はすぐさまにオースキャナーを取り出す。

 

スキャニングチャージ!!

「だぁ!!」

 

オーズドライバー内のメダルを再びスキャンし、その力を開放する。

映司と怪物の間に赤、黄、緑の円状のエネルギー体が現れる。

それを潜り抜けながらアルマと並行する様に蹴りを放った。

 

「危ないとこだったようだね」

 

クロアがレティシアと黒ウサギに冷や汗を流しながら語り掛ける。

三人は退避した方向が偶然霧崎が大剣をずらした方向に重なっていたのだ。

直撃はしなかったが余波に巻き込まれかけたのでクロアに救われたのだ。

 

「ありがとうございます、クロア様」

 

「それより、黒ウサギ。すぐに動けるか?」

 

「はい」

 

「ならば、映司達に合わせるぞ」

 

言うがいなや、レティシアは龍影を構え、黒ウサギは飛び上がる。

そして、黒ウサギが龍影に足を付けた瞬間に全力で弾き飛ばす。

同時に黒ウサギも全力で跳躍する。

二つの力を重ねた勢いで怪物に突撃する。

疑似神格・金剛杵(ヴァジュラ・レプリカ)を構えて轟雷を纏う。

 

『GEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeYYYYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!』

 

それらに対して怪物の対処は実にシンプルだった。

盾を構えて正面から受け止める。

絶対的な力への自信がそれをさせたのだろう。

怪物の盾と三つの突撃が正面から衝突する。

最初は余裕で受け止めていたが徐々に余裕は消えていく。

盾そのものに破損は無い。

それでも、衝撃は殺し切れなかった。

激しい衝突音と共に怪物が弾き飛ばされる。

地面を抉るかのように身を転がす。

 

「まぁ初撃には十分な一撃になったか」

 

アンクが呟くとほぼ同時に三人は着地した。

一同はあまり散らばらずに各自を目視出来る範囲で構えを取る。

怪物は即座に起き上がって吠える。

その咆哮には苛立ちが籠っている様に聞こえるのだった。

 

『気に入らぬ』

『許せん』

『貴様達のような』

『人間ごときが』

『『我らに歯向かおうとは!!』』

 

統制者と破壊者が睨み付けながら叫ぶ。

よほど、抵抗される事が頭に来たのだろう。

容易く磨り潰すつもりがいきなり押し負けたのだ。

それは頭に来るだろう。

見下してるがゆえに自身に抗う者が気に入らぬのだ。

 

『我は(統制者)なり』

『我は悪魔(破壊者)なり』

『『我らは全てを支配する魔神なり』』

『それを』

『それを』

『戦い、敵を作る事でしか進化できない』

『愚昧で卑小で矮小な存在が!!』

『我らに逆らうなどあってはならんのだ』

『貴様らはただ我らが操りし運命に溺れておれば良い物を』

『我らの手の中に収まっておればいい物を』

『『何故抗う!!』』

 

神と悪魔が混じりし、魔神はただ全ては己の手で支配する物と語る。

人間はただ自分の手で動かされていればいい語る。

 

「はぁ………確かに人間は神視点から見れば矮小だろうけどさ。それでも、必死に生きてるんだよ。お前らみたいな存在はあいつら(````)を否定する事になる。運命なんて物は定まっていないから意味があるんだ」

 

霧崎はかつて共に戦った仲間、かつて戦った敵を思い浮かべながら言う。

彼らは運命に抗い、最悪の未来を変えた。

だからこそ、今がある。

確かに戦った結果ではある。

それでも、戦いだけが全てでは無いのだ。

 

「人は確かに戦うよ。欲望の為に他人を蹴落としもする。だけど、それは一面でしか無い。人の想い、欲望はお前達の手には収まらない。人々の手を取り合って協力して先に進めるのだから」

 

『『黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』』

 

映司の言葉を遮る様に叫ぶ。

映司達を押し潰す為に突撃しようとする魔神。

 

『『グゥ!?』』

 

その顔面に巨大な火炎が直撃する。

火炎が飛んできた方に顔を向けるとウィザード フレイムスタイルに変身してる晴人と十六夜がウィザードラゴンの背に乗って飛んできたところだった。

続けて火炎を吐きながら牽制しながら魔神の周囲を飛ぶ。

十六夜はドラゴンの背から飛び降り、黒ウサギ達の前に着地する。

 

「待たせたな」

 

「随分遅い到着だったな」

 

「道中邪魔が多かったんだよ」

 

ダークローチの群れを思い出しながら十六夜は言う。

 

「お前がどういう存在かは知らないけど、人の希望はお前如きにどうこう出来る物じゃないよ。人の希望は魔法すら及ばない力を持ってるからな」

 

『希望?欲望?くだらない』

『我らの力が無ければ繁栄すら出来なかった人間が』

『思い上がるのもいい加減にしろ』

 

棍棒を振るい、ドラゴンを振り払う。

晴人はドラゴンを退かせながらもソードガンで銃撃を加えていく。

 

「いいや、思い上がりなんかじゃねぇよ」

 

『なんだと?』

 

「ヒューマンアンデットは何故フォーティーンの力を手にしなかったと思う?それは人類が自らの力で歩んでいく為だ。人類はお前達が用意した圧倒的な力に頼らずに此処まで歩んで来たんだ。だから、思い上がりなんかじゃない」

 

『それがどうした』

 

「人は自らの道は自らが決めて歩んでいく!!つまり、不要なのはお前らってことだ!!」

 

大気にヒビが入るような音が響く。

映司達の背後から現れた士に極大の殺気が向けられる。

 

「重役出勤のつもりか?」

 

「大物の登場は最後って言うだろ?」

 

十六夜に対して士は不敵な笑いを返す。

十六夜は特に気にする事も無く、むしろ映司達や霧崎の言葉を噛み締める。

自身に足りないのは経験という事を改めて刻み込む。

魔神は完全に切れた様子で叫ぶ。

 

『『貴様は一体何様のつもりだ!!』』

 

「通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ!!」

 

言いながらライドブッカー内のカードを取り出して構える。

 

「変身」

カメンライド!!ディケイド!!

 

カードをディケイドライバーに入れて閉じる。

同時に幾つもの残像が士の周囲に現れる。

それらは士に重なり、士の姿を変貌させる。

そして、真上から数枚のプレートが頭部に刺さる。

それと共に全身の装甲に色が付く。

仮面ライダーディケイドに士は姿を変えた。

 

「さて、バトルファイトを終幕させるとするか!!」

 

ライドブッカーソードモードの刃の側面を撫で、魔神に切っ先を向けて叫ぶ。

魔神は天を震わすかの様に咆哮を上げる。

 

『『貴様らなど元々関係無い!!元より全てを無に帰し、バトルファイトを改めて始めるのだ!!その為に最初に消すのが貴様らなだけだ!!』』

 

凄まじい殺気と共に魔神が急降下してくる。

映司達は迎え撃つべく構えを取る。

役者は揃い、最終決戦が開幕する。

それはまさしく終わりの始まりであった。

神による理不尽な運命を終わらせる為に。

自身に抗う邪魔な因果を終わらせる為に。

魔神と抗いし者は己たちの力をぶつけあう。

どちらが勝利するにせよ、一つの物が終わりを迎える。

 





まさかの舌戦回
実際には舌戦として成立してないですが

魔神に関しては傲慢そのものな感じです

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!


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捥がれる翼と始祖達の死と魔神のプライド

 

「アンク!!ラトラーターくれ!!」

 

「ほらよ」

 

映司の催促に応じてアンクは黄色のメダルを二枚映司に投げ付ける。

映司は受け取ると同時にオーズドライバーにメダルを入れ、オースキャナーで読み込ませる。

 

ライオン!!トラ!!チーター!!ラトラタ!!ラトラーター!!

 

映司は姿をタトバからラトラーターコンボに変える。

更にギフトカードからライドベンダーを取り出し、トラカンを投げ付けて合体させる。

咆哮を上げるトライドベンダーに乗り込み、魔神へと向かっていく。

 

『GEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEYYYAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!』

 

魔神が聖杯を振るい、雷を撒き散らす。

トライドベンダーを器用に操り、雷の合間を進んでいく。

メダル型のエネルギー弾を牽制に放ちながらも近付いていく。

そこで魔神が特大の火炎球を放ってくる。

正面からであり、それなりに近付いていたので躱せるサイズでは無かった。

 

ファイナルアタックライド!!ディ、ディ、ディ、ディケイド!!

 

士がトライドベンダーの背に飛び乗り、そこからディメンションブラストを放って火炎球を消し飛ばした。

 

「ありがとうございます、士さん」

 

「あそこに向かってるんだろ?俺もアレには用があるからついでに乗せてくれ」

 

「はい、分かりました!!」

 

魔神の両翼の付け根の間にある石板を指差す士。

映司は頷きながらトライドベンダーを先に進める。

士も加わった事により、安定して進む事が出来るのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

『まずは貴様から消そう』

『人間の分際で限定的とはいえ運命を操るとは』

『許さん』

『存在そのものが罪に等しいと思え』

 

一方、霧崎は集中的に狙われていた。

その能力の性質が魔神気に入らないらしい。

 

(随分ト嫌ワレテイルナ)

 

「あいつらが勝手に嫌っているだけだけどな!!」

 

霧崎は必死に回避しながら地を転がる。

弱者の(チキンソウル)パラダイムがあるとはいえ集中的に狙われるのは精神的に辛い物があった。

聖杯から放たれる雷は単純にずらせばいいが、他の武装は祓うにも場所を選ぶ必要がある。

それゆえに気苦労するのだ。

 

『『ッ!?』』

 

そんなことを考えているとクロアがアンクを魔神の顎下に転移させていた。

アンクは即座に翼を広げ、足に炎を纏わせて魔神の下顎に蹴りを放つ。

不意討ち気味に蹴り上げられた魔神は苦悶の声を上げながらもアンクに向けて棍棒を振り下ろす。

だが、アンクは既にそこにはいなかった。

クロアの転移で何を逃れていた。

しかし、棍棒の落ちる先に視線を向けるとラッテン達がいるのだった。

 

「ラッテン!!逃げろ!!」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

霧崎の叫びは勿論ラッテンにも届いている。

ラッテンは霧崎が心配してくれているのに歓喜しながらも考えていた筋書きを実行する。

ラッテンは左腕をディーンに押し付ける。

すると、ディーンはこつぜんと姿を消した。

 

「アルマ!!」

 

『はい、マスター!!』

 

ラッテンの足が地に着くよりも速くアルマがラッテンを拾い運ぶ。

棍棒のギリギリ範囲外まで移動すると左腕を地面に当てる。

そこから盛り上がる様にディーンが出現する。

ラッテンのギフトカードは義手である左腕の掌に仕込んである。

なので、左腕に意識を向けるだけで出し入れが可能なのだ。

ディーンが出現した十数秒後に真横に棍棒が降りてくる。

 

「さぁ、手筈通りやっちゃいなさい!!アルマ!!ディィィィィィィィィン!!」

 

『分かってますよ!!』

 

『DEEEEEEEEEEEEeeeeeeeeeeeEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEN!!』

 

ディーンは限界まで巨大化し、棍棒の側面を全力で殴り付ける。

アルマは斜め上から棍棒に向けて突進する。

あくまで振り下ろすという方向性は変えずに向きだけをいじる様に衝撃を加える。

凄まじい轟音と共に棍棒が地面を抉っていく。

それだけで谷が出来、山が生まれそうな光景だがラッテンはさして気にしない。

彼女にとってそのくらいはどうでもいいのだ。

棍棒の軌道は魔神にも予想外な方向性になった事によって魔神は体勢を崩す。

 

チョーイイネ!!キックストライク!!サイコー!!

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

そこへ、晴人がドラゴンを変形させた巨大足で蹴りを放つ。

それも背中に向けてだ。

ただでさえ、前方向に前のめりになっている時に背中から強い衝撃を受ければどうなるかは明白だ。

魔神はその巨体ごと倒れていき、地面にその身を擦らせる。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

魔神が倒れていくのとほぼ同時に黒ウサギとレティシアもクロアの手で転移していた。

レティシアは左翼の前に、黒ウサギは右翼の前にいた。

 

「映司達だけに頑張らせるわけにはいかないからな!!」

 

「黒ウサギ達もやるのですよ!!」

 

レティシアは龍影を纏い左翼へと突進する。

それだけでは心許ないが今の手持ちではこれが限界。

うねり歪ませ勢いを付け、反動を考慮せずに突っこんでいく。

それが功を精したのか、意外に脆かったのか左翼はべシャリと音を立てて大きく抉れるのだった。

 

「疑似神格解放………!!穿て、軍神槍・金剛杵(ヴァジュラ)________!!」

 

黒ウサギは髪を燃え上がらせ、紅蓮の光を放つ。

疑似神格・金剛杵(ヴァジュラ・レプリカ)に紅蓮の炎と神雷の束を纏わせて投射する。

集束した紅い稲妻が先端を鋭利に変え、金剛杵をも燃やし尽くす紅槍に姿を変える。

凝縮されたエネルギーが一気に解放され、右翼を完全に消し飛ばす。

役目を終えて二人はクロアに回収される。

そんな中で二人は倒れ掛けの魔神の背に跳び乗るトライドベンダーを見るのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「大丈夫か?」

 

「今回はさすがに無茶をし過ぎたな。あと、一発くらいで限界だ」

 

十六夜は己の拳を見ながら呟く。

そして、何時最後の一撃を放つかタイミングを計るのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

トライドベンダーで魔神の背に跳び乗ったはいいが映司と士の前にはダークローチとアルビノローチが溢れていた。

だが、そんな事は関係無しに二人は進む。

トライドベンダーが放つ光弾が、ライドブッカーから放たれる弾丸がローチ達を吹き飛ばしていく。

 

「士さん」

 

「おう」

 

それだけのやり取りで二人は運転を変わる。

トライドベンダーは暴れ馬ではあるが、ディケイドの手には軽く操られていた。

その間に映司はメダジャリバーにセルメダル三枚を入れて、オースキャナーで読み込ませて力を開放させる。

 

トリプル!!スキャニングチャージ!!

「セイヤー!!」

 

横一線にメダジャリバーを振るう。

それだけでローチの群れが次元ごと切断されて一斉に爆散する。

そうして、ローチ達を切り抜けた先に石板はあった。

二人はトライドベンダーから降りると石板に歩み寄る。

その石板には一枚のカードがはめ込まれていた。

 

『おや、案外速く来ましたね』

 

「助けに着ましたよ。というか、意識があるんですか?」

 

『本来は人間を生贄に捧げるところを私というアンデットを生贄にした事で起きた不具合でしょう』

 

『風はまだ私達の方を向いていたという事さ』

 

「お前の意識があったのか」

 

『どうやら今は封印が弱まっているようだからね』

 

士と映司はまだ意識のあったヒューマンアンデットと(タランチュラアンデット)を意外に思いつつ救う方法を尋ねる。

だが、二人は救う事自体を否定した。

 

『駄目ですね。この封印を解くには代わりの生贄が必要な様ですから』

 

『我々ごと石板を破壊するのが一番だね。そうすれば奴らは弱体化する』

 

「ご先祖様達はそれでいいんですか?」

 

『あぁ、私達はアンデットだ。バトルファイトの為に生まれた存在とはいえ十分過ぎる程に生きたさ』

 

『ですから、私達は大丈夫です。むしろ、子孫の為なら喜んでこの身を差し出しますよ。頼めますか?』

 

「あぁ、分かった。やってやるよ。俺は破壊者だからな」

 

「俺もやります。これ以上バトルファイトを続けさせない為にも」

 

映司と士は意を決してメダジャリバーとライドブッカーを構える。

セルメダル三枚をメダジャリバーに込めてオースキャナーで読み込ませる。

ディケイドライバーにカードを投げ入れる。

 

トリプル!!スキャニングチャージ!!

ファイナルアタックライド!!ディ、ディ、ディ、ディケイド!!

 

それぞれ力を開放し、石板に向けて無言で斬り掛かる。

斬り裂かれたバニティのカードは役目を終えたかのように蒼い炎に包まれて消滅した。

石板は全体にヒビが入り崩れ落ちた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

『G…………GEEEeeeeee……………YYYAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!?』

 

石板が破壊されるとほぼ同時にに魔神は悶える様に身を捻らす。

起き上ろうとしたちょうどその時に咆哮を上げる。

それは苦悶の声であった。

それは屈辱の声であった。

それは憤怒の声であった。

それは(統制者)悪魔(破壊者)のメッキが剥がれ落ちていく前兆だった。

魔神は徐々にその身を、その我欲を曝け出していく。

 

 

 





vs魔神前編でした!!
時間にしたら五分以下の攻防だったりします
フォーティーンベースなので弱点が弱点してます

おそらく次回決着です
エピローグでもう一話使うかもです

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!


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音撃と意地で越えた先と魔神の最期

『G…………GEEEeeeeee……………YYYAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!?』

 

石板が破壊されるとほぼ同時にに魔神は悶える様に身を捻らす。

起き上ろうとしたちょうどその時に咆哮を上げる。

そんな中で魔神の捥がれた翼が原型を無くして溶け始める。

そこから、ダークローチ、アルビノローチ、そして影のようなアンデットが溢れ出していく。

 

「こりゃ面倒だな」

 

「安心してください」

 

「雑魚は我らに任せて主殿はアレを倒せ」

 

十六夜が呟いた直後にレティシアと黒ウサギがアンデット達の前に立ち塞がる。

クロアはそれに同調するように立ち上がる。

 

「確かにお前の出番はそろそろだろ。私もちょっとは働いておくからさっさと一撃入れて来い」

 

「分かったよ、任せたぞ!!」

 

そう言って十六夜は立ち上がり、魔神に向けて歩き出す。

その右腕は脈打つように輝いていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ちょうどその時、魔神の胸に埋め込まれていたアルビノジョーカーも目を覚ましていた。

そして、自身を縛る(統制者)悪魔(破壊者)の力が弱まっている事にも気付いた。

 

「ハハハハハハハハハハハハッ!!どうやら運は俺に向いてきたようだッ!!このまま俺がこの力を乗っ取ってやるよ!!」

 

『貴様…………』

『今更抵抗を…………』

 

悪魔(破壊者)(統制者)はうろたえる様な声を出す。

今は石板を破壊され、生贄を奪われた直後である。

力はかなり不安定なのだ。

その中でアルビノジョーカーが抵抗するとなると万が一があり得てしまうのだ。

ゆえに両者は必死に押さえ付けようとする。

だが、アルビノジョーカーは意地でも抵抗する。

その様は魔神にも影響を与え、魔神は悶える様に体を捻らす。

 

「目覚めたようだね。悪いが僕は貸しっぱなしを好まない。だから、今ここで返させて貰うよ」

 

その光景をディエンドに変身した海東も眺めていた。

海東はディエンドライバーの銃口をアルビノジョーカーに向けながらカードをディエンドライバーに入れる。

 

ファイナルアタックライド!!ディ、ディ、ディ、ディエンド!!

「ハァ!!」

 

銃口の前にカード状のエネルギー体が出現する。

ディエンドライバーから放たれた光弾はカードを通過する度に強大になり、魔神へと向かっていく。

 

「ククククククク……………グボガァ!?」

 

内部での抵抗に集中していたアルビノジョーカーは直撃の直前まで気付く事は無かった。

魔神の胸元から抉り取られ、体液をぶちまけながら絶叫を上げてアルビノジョーカーは吹き飛んでいくのだった。

それを確認した海東は銀色のオーロラを出現させる。

 

「あとは任せたよ、士。会うのはまたの機会という事にしておくよ」

 

呟きながら姿を銀色のオーロラの中に消すのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

蛟劉とジェネラルシャドウの戦いは拮抗していた。

互いに表面上は本気を出してはいた。

しかし、隠している手札を迂闊に切れば、そこが隙になりかねない極限の拮抗だった。

ゆえに互いに真なる本気は見せていなかった。

互いに踏み込もうとしたその時に、両者の間に何かが飛来した。

 

「ガッ………グバッ、ゲハァ……………何だったんだ、一体。面倒な拘束からは抜けれたが何処まで吹き飛ばされたか。それにこの傷だと………」

 

飛来したのはアルビノジョーカーだった。

傷だらけでろくに体を動かせない状況で周囲の状況を確認して言葉を詰まらせる。

蛟劉は初めて見たがゆえに首を傾げるが、ジェネラルシャドウはニィと口の端を歪ませる。

その様子に蛟劉は警戒を強める。

 

「貴様、何故こk………ガッ!?」

 

「ちょうどいいところに来たな、アルビノジョーカー」

 

ジェネラルシャドウはアルビノジョーカーが余計な事を言う前にその口に剣を刺し込んで黙らせる。

直後に周囲にトランプをばら撒く。

意図を察した蛟劉は一気に詰め寄る。

 

「待てや!!」

 

「悪いが勝負は御預けとしよう。決着がそろそろ着きそうなんでな。コレ(アルビノジョーカー)の処理もしないといけないのでな」

 

拳が届いた時にはジェネラルシャドウとアルビノジョーカーの姿は幻の様に消えていた。

 

「逃がしたか。しかし、決着近いという事は十六夜君達は上手い事やっとるんかな」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「そのまま押さえておきなさい、ディーン!!」

 

『DEEEEEEEEEEEEEeeeeeeeeeeeeeeeeEEEEEEEEEEEEEEN!!』

 

ラッテンの指示によってディーンは地にめり込む魔神の棍棒を全力で押さえ付ける。

石板を破壊され、生贄を失い、依代を引き剥がされた。

これ以上になく魔神の力は安定を失っていた。

そのチャンスを生かす為にラッテンは棍棒を伝って魔神の腕を駆け上る。

そして、関節部に辿り着くとハーメルケインを突き刺す。

そこを中心に魔法陣が広がる。

 

「さて、私の特別演奏を聞かせてあげようじゃない!!」

 

アンクは右腕だけの状態になり、魔神の背にいる映司のもとに来ていた。

映司は息を切らしていた。

さすがに連戦とコンボによる負担を重ね過ぎていた。

 

「アンク………メダル渡しに来てくれたんだよな?」

 

「まだやる気か?お前は体がメダルに慣れているとはいえこれ以上続けてると呑まれるぞ」

 

「大丈夫、あと一発で今回は終わらせるから」

 

「そうか。なら、耐えてみろ」

 

言いながらアンクは緑のメダルを三枚投げ付けた。

映司は受け取ると立ち上がり、オーズドライバーにメダルを込める。

オースキャナーでメダルを読み込み姿を変える。

 

クワガタ!!カマキリ!!バッタ!!ガータ、ガタガタキリバッ!!ガタキリバ!!

「ウオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」」」」」」」」」」」」」」」」

 

映司は叫びながら分身していく。

アンクの手元の紫のメダルが輝くと同時に50体のガタキリバ全てが手にメダガブリューを手に持つ。

そして、一斉に四方八方に飛び跳ねた。

 

「で、お前はどうするつもりだ?」

 

「トドメを刺すさ。デカブツにはちょうどいいのがあるしな」

クウガ、アギト、リュウキ、ファイズ、ブレイド、ヒビキ、カブト、デンオウ、キバ、ファイナルカメンライド!!ディケイド!!

 

アンクの問いに答えながら士はケータッチを取り出す。

カードをケータッチに入れ、紋章を順番にタッチした後にディケイドライバーを右腰にずらし、腰にケータッチを填める。

姿をコンプリートフォームに変えた上でケータッチを操作する。

 

ヒビキ!!カメンライド!!アームド!!

ファイナルアタックライド!!ヒ、ヒ、ヒ、ヒビキ!!

 

士の隣に装甲(アームド)響鬼が出現する。

そして、全く同じ動作で音撃棒・烈火を構える。

同時に二人の足元に音撃鼓の様なエネルギー体が出現する。

 

『行きますよ、霧崎殿』

 

「あぁ、全力で行ってくれ!!」

 

一方、霧崎はアルマに乗りながら魔神に近付いていた。

より正確に言えば魔神の持つ聖杯へと。

魔神は自身の力を暴走が無いように押さえ付けている間も執拗に霧崎を狙っていた。

何故それほどまでに霧崎を狙うかは定かでは無いが霧崎はそれを逆に利用する事にした。

執拗に狙われるのは霧崎にとってはある意味好都合だった。

もちろん心の中では盛大にビビってはいたが。

 

「それでも、男はやる時にやっとかないと後で後悔するんだよ」

 

(準備ハ出来タゾ)

 

「あぁ、後は任せろ」

 

ヨヨによって死の脅威が集められていく。

その間も聖杯からは雷が放たれる。

その間を霧崎とアルマはすいすい抜けていく。

それはアルマの機動力と弱者の(チキンソウル)パラダイムがあってこそだった。

 

『目標はもう眼前です』

 

「なら、あとは俺の役目だ」

 

言いながら霧崎はアルマの背から飛び降りる。

本当は絶叫を上げたいレベルではあったが押さえ込んで行く。

そうして、眼前に迫った聖杯に特大の死の脅威の塊をぶつけるのだった。

直後に今まで放たれていた雷が全て軌道を変えて聖杯に向かっていく。

落下中の霧崎がアルマに拾われる頃には雷は特大に膨れ上がり、盛大に爆散した。

 

「そんなに運命をいじられるのが嫌なら自分で天罰を喰らってろ」

 

聖杯崩壊の余波で指が消し飛び、黒焦げになった魔神の腕を見ながら呟くのだった。

それと共に空で輝く物が視界に入るのだった。

 

インフィニティィィィィィィィィ!!プリィィィィィィィズ!!ヒースイフードーボーザバビュードゴーン!!

「さぁ、そろそろフィナーレだ」

 

晴人はインフィニティースタイルに姿を変えていた。

宝石のようなその身で光を反射させながら魔神を見降ろす。

背後を飛んでいたドラゴンはアックスカリバーに姿を変えて晴人の手に収まった。

 

「音撃槍・疾風刺音!!」

 

    ラ

     ッ

      テ

       ン

 

ラッテンはハーメルケインを突き刺したまま演奏する。

音は、曲は魔力の波となり刃先より魔神の体内に撃ち込まれていく。

 

         疾

 

         風

 

         刺

 

         音

 

撃ち込まれた魔力は刺し貫くかの様に魔神の体内を廻っていく。

 

「「音撃打・爆裂真紅の型!!」」

 

       デ

        ィ

         ケ

          イ

           ド

       装

 

       甲

 

       響 

       

       鬼

 

士と装甲(アームド)響鬼が同じリズム、同じ動きで魔神に向けて音撃を叩き込んでいく。

 

            爆

          

            裂 

 

            真

 

            紅

 

叩き込まれた清めの音は魔神の全身を駆け巡り内から破壊していく。

魔神は声にならない悲鳴をあげながら抵抗を試みるが既に遅かったのだ。

地に落とされ、力を抉られ続けた時点でチャンスを逃していたのだ。

 

ゴックン!!ガタキリバ!!

 

そんな声が魔神の頭上で五十ほど響き渡る。

直後に五十の影が一斉に降り注ぐ。

 

「セイヤッ「セイヤッ「セイヤッ「セイヤッ「セイヤッ「セイヤッ「セイヤッ「セイヤッ「セイヤッ「セイヤァァァァァ!!」」」」」」」」」」

「セイヤッ「セイヤッ「セイヤッ「セイヤッ「セイヤッ「セイヤッ「セイヤッ「セイヤッ「セイヤッ「セイヤァァァァァ!!」」」」」」」」」」

「セイヤッ「セイヤッ「セイヤッ「セイヤッ「セイヤッ「セイヤッ「セイヤッ「セイヤッ「セイヤッ「セイヤァァァァァ!!」」」」」」」」」」

「セイヤッ「セイヤッ「セイヤッ「セイヤッ「セイヤッ「セイヤッ「セイヤッ「セイヤッ「セイヤッ「セイヤァァァァァ!!」」」」」」」」」」

 

「「「「「「「「「「セイッヤァァァァァァァァァァァァァァ!!」」」」」」」」」」

 

五十の叫びと共に紫の、無の、破壊そのものとも言える五十の刃が魔神を斬り裂いていく。

更に続けて輝く物が降りてくる。

 

ハイタッチ!!シャイニングストライク!!

「ダァァァァァァァァァァァァ!!」

 

晴人がアックスカリバーを巨大化させながら頭上で回す。

そして、魔神を斬るに相応しい大きさになると共に振り上げ、降ろす。

 

『『GEEEEEEEEEEEEEEEYYYYYYYYAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!』』

 

魔神もせめてもの抵抗にダイヤ型の盾を構えて防ごうとする。

内から破壊されてなお抵抗を続ける。

神ゆえのしぶとさではあった。

しかし、そこに一つの人影が割り込む。

 

「そういう悪足掻きはもう十分なんだよ。そろそろ消し飛べ、神様気取りの石っころが!!」

 

割り込んできた十六夜は晴人に一瞬視線を向ける。

それだけで意図を察する。

晴人が足を出すと十六夜もそれに合わせて足を出す。

その状態で晴人は十六夜を思いっきり蹴り飛ばした。

その加速に加えて十六夜は右腕に強化を集中し、体内に脈打つ力も出来る限り集中させる。

それによって十六夜の右腕は一瞬のみ目が眩む程に輝いた。

直後に盾に向けて拳が叩き込まれた。

盾は古代の力に加えて(統制者)悪魔(破壊者)の力が加わってるだけあって頑強だった。

だが、それでも、十六夜は拳を打ち込む。

その目は魔神を見てはいなかった。

いまだ悩みは晴れないし、結論は出ない。

それでも、それでも(````)、先は見ていた。

自身より先に行く者の背は見えていた。

だから、此処は意地でも抉じ開ける。

こんな所で止まるわけにはいかないのだから。

 

「しゃらくせぇ!!」

 

盾全体にヒビが広がる。

それだけではなく、魔神の腕からも光が溢れ出す。

道を塞ぎし物は輝きながら消し飛ぶのだった。

同時に十六夜の右腕も血を吹き出し、十六夜自身落下していくのだった。

だが、道は開けた。

晴人はその意思を汲み取りながらアックスカリバーを振り下ろす。

魔神は最後に残る大剣を振るうが遅い、否、弱い。

大剣は腕ごと砕かれ、アックスカリバーは魔神の顔に突き刺さり、そのまま真下に降り抜かれた。

晴人が着地すると共にアックスカリバーは元のサイズに戻る。

 

「ふぃー」

 

晴人は息を吐き、マントを翻しながら魔神に背を向ける。

先に着地していた映司は変身を解いて地面に座っていた。

二人の間に途中で十六夜を拾った士が着地する。

その近くに霧崎とラッテンを乗せたアルマが降りてくる。

 

『愚かな、愚かな、愚かなッ!!』

『馬鹿な、馬鹿な、馬鹿なッ!!』

『我らが運命に逆らうとは………』

『自ら世界を破滅に傾けるとは…………』

 

魔神は断面から光を溢れさせながら断末魔を漏らす。

驕りに満ちた存在は焦りと共に叫びを上げる。

完全に崩れ落ちると共に魔神は光の柱の様に爆散した。

(統制者)悪魔(破壊者)は最期まで自らの存在を過信し、絶対を疑うことなく消えていった。

跡に残ったのは魔神が描かれた石板とケルベロスのカードだった。

 

 

 




決着!!
次回アンデット編エピローグです!!
vs魔神は時間にしたら十分立っていなかったり
統制者と破壊者が完全に力を引き出す前に弱体化措置が取れたから圧倒出来たけど本来ならもっと追い詰められてたかも
14も小説剣のラスボスも最期はあっさりでしたが

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!


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持ち去られる石板と歪みゆく世界と崩れゆく物


今回でアンデット編終幕です!!


 

晴人と士は魔神が遺した石板をさっさと壊した方がいいと判断して剣を振り上げていた。

そこに突然の襲撃が入る。

幾つものトランプがまるで手裏剣の様に襲い掛かって来たのだ。

 

インフィニティー!!

アタックライド!!ブラスト!!

 

他の面々を守る為に二人は即座に行動した。

晴人は高速移動し、飛んできたトランプを斬り飛ばしていく。

士はライドブッカーをガンモードにし、銃口を増やして乱射する。

それでも、撃ち漏らしはあったがそれは霧崎が祓い切った。

だが、トランプに気を取られ過ぎていた。

それを初めに気付いたのはやはり脅威(メナス)幻視(ヴィジョンズ)を持つ霧崎だった。

 

「危ねぇ!!下がれ、そこは真っ白(```)だ!!」

 

霧崎には晴人と士の前方が真っ白に見えていた。

つまり、死の脅威に包まれて見えていた。

晴人と士はほぼ反射的に下がる。

直後に、それ(``)が来た。

 

「ほう、どうやら優秀な仲間がいるらしい」

 

何時の間にかジェネラルシャドウが二人の懐まで迫っていた。

先程のトランプで攪乱している間に踏み込んだのだ。

そこから先は最早対応が出来なかった。

ジェネラルシャドウの振るう神速の刃が二人を斬り裂いて吹き飛ばした。

霧崎の叫びによって下がっていたおかげで浅くはあったが重かった。

二人は地面を転がりながら変身が解けていた。

ジェネラルシャドウはその間にケルベロスのカードを拾い、石板に手を触れる。

すると、石板は凝縮されてラウズカードに変化した。

 

「これで回収すべき物は回収させて貰った。残るは貴様達か」

 

ジェネラルシャドウはアルビノジョーカー、ケルベロス、そして統制者と破壊者が封じられたカードを一瞬眺めると懐にしまう。

そして、十六夜達に目を向ける。

それだけで寒気が襲ってきていた。

万全の時であればまた別であっただろうが今は絶望的な状況だった。

十六夜は右腕が動かない上に体力も使い切っていた。

映司、士、晴人も連戦の影響で息は切れており、体の動きも鈍かった。

黒ウサギは金剛杵を使い切っており、しばらくは使用できない。

 

『マスター、まだ戦えますか?』

 

「いや、悪いわね。さっきのアレとかで魔力は大分危ないわ」

 

ラッテンも魔力をほぼ切らしていた。

アルマの意地にそれなりに魔力を使っている上に先程大きく消費したので当然と言えば当然であった。

つまり、現在まともに戦えるのは霧崎、レティシア、アンク、クロアだけである。

それを見て霧崎は諦めた様に息を吐く。

 

「しょうがねぇな…………俺が足止めするからお前らは逃げてくれ」

 

「ほう、貴様一人で私を相手にする気か?」

 

ジェネラルシャドウが興味深そうに視線を向けてくる。

その目の威圧感に正直かなり恐怖を抱いていたが、それでも霧崎は後ろを向かない。

此処で逃げれるはずも無かった。

 

「ちょ、何を勝手なこ『本気ですか、霧崎殿?』

 

ラッテンを押さえ付けながらアルマが訪ねてくる。

霧崎はそれに苦笑いで答える。

 

「俺がこの中じゃ一番適任だろ?」

 

『そうですが…………』

 

「いや、霧崎君がやる必要は無いよ」

 

「あぁ、こういう時は俺達の方が適任だ」

 

「元々俺を狙ってきた奴だしな」

 

映司、晴人、士が立ち上がり傷付いた体を押しながらも歩いてくる。

その様子に黒ウサギが慌て始める。

それもそうだろう。

彼らが限界に近いのは見えていた。

 

「ちょ、皆さん!!それ以上戦うのは無茶ですよ!!」

 

「それでも、やるのが仮面ライダーって奴らしいぜ」

 

そんな光景を見てクロアは苦笑する。

彼からしても面白い光景ではあった。

横目で十六夜を見ながら呟く。

 

「いやいや、本当に彼らは面白いね。こんな絶望的な戦況でも自らを囮に出来るのはそうそういないよ」

 

「俺もあんまり人のことは言えないけどな。それでも、あいつらは眩しく見えるよ」

 

「だろうな。お前の場合は後先考えずの結果だったろうが奴らは生き残る気満々だしな」

 

ジェネラルシャドウは律儀に待っていた。

正直、十六夜達に関してはついででしか無いので遊んでいる面もあった。

 

「君らの心意気はやっぱええな。僕としては気分がいいで」

 

そこに蛟劉が駆け付けた。

彼は十六夜達には笑い掛ける様にしながらジェネラルシャドウには最大の警戒を向けていた。

 

「間に合わなかったのは御免な。けどまぁ、今からその分は働くつもりやで」

 

ジェネラルシャドウを睨み付けながら呟く。

大気を握り潰す様な音を立てながら何時でも動ける様に構える。

ジェネラルシャドウは一旦周囲を見回した後に銀色のオーロラを出現させる。

 

「まだ本格的に階層支配者(フロアマスター)と事を起こすつもりはないのでな。此処は一旦引くとしよう」

 

「忘れもんやで!!」

 

そう言うと共に蛟劉はトランプをジェネラルシャドウに向けて投げ付ける。

風どころか、大気を切る様な勢いであったがジェネラルシャドウは難無く掴み取る。

それから、一瞬視線を交わした後に銀色のオーロラの中に消えるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

それから、蛟劉はグロンギやアンデットが出現した理由を十六夜達に話した。

二ヵ月前の別の箱庭に大ショッカーが介入するという事件。

あれが原因の一つではあったのだ。

あれによって大きく時空が歪んだのだ。

その歪みに巻き込まれ、グロンギやアンデットはこの箱庭に流れ着いたのだ。

それも歪な形で、だ。

本来は無かった場所に封印塚が出現した様にまるで元からそういう存在があったかの様に"世界"の方があり方を変えていた。

もしかしたら、気付いていないだけで箱庭は、世界はもっと歪んでいるのかもしれない。

何故なら世界を歪ませるだけの技術を大ショッカーは所持しているのだから。

 

「原因の一つという事は他にも何かあるという事か?」

 

「それは分からん。けれど、君の話ではグロンギやアンデットの出所は別の世界なんやろ?如何に生まれた歪みが大きくても別の世界の物が一緒に現れる(`````````````)

何て事はありえるんかな?」

 

それはありえなくの無い可能性だった。

出現した物の数だけ歪みを起こせる何か(``)が起きたというのは。

 

「まぁ何はともあれ仕事としてはこれでしまいや。後始末は僕がやっておくから君らは休み。報酬はまた今度でな」

 

それだけ言って蛟劉は後始末の為の準備を始めるのだった。

十六夜達は言われた通り、一先ずは休む事になるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

某所。

箱庭であって箱庭では無い場所。

ジェネラルシャドウは大首領に事の顛末を報告していた。

 

「えぇ、奴らは歪み自体には気付いている様ですがその原因は気付いては無いかと」

 

気付いているのはあくまでほんの一欠片でしか無い。

そんな意味を含めながら言う。

一通り報告を終えるとジェネラルシャドウはラウズカードを置いて部屋を出るのだった。

ラウズカードは浮かび上がり、怪し気に光を放つ鷲の紋章に吸い込まれる。

 

『これでまた一つ近付いた私が奴を越える準備を整え終わるのも時間の問題だろう。何時までも貴様の地位が安定してると思うな、神よ』

 

大首領の呟きが無人の部屋に響く。

それは何かに対する宣言であったのかもしれない。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「おのれ、ディケイド!!またしても生き残ったか!!」

 

中年の男は虚空に叫ぶ。

その叫びは世界を微かに震わせる。

 

「このままではまた世界が破壊されてしまう…………仕方があるまい。次は私自らの手で貴様の息の根を止めてくれる!!」

 

叫びながら男は銀色のオーロラに消えていく。

その存在の痕跡を残さず、まるで始めから誰もいなかった様に。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

歪みの爪痕は無数に残る。

それは戻る事無く止まり続ける。

歪みの根元は強大になり、更なる歪みを生み出す。

"ズレ"は広がり、歯車は歪み軋む。

世界は悲鳴を上げる事も無く静かに崩れていく。

 

 





原因は一つどころでは無かったり
大ショッカーは色々やらかしてるわけです
主に迷惑してるのは箱庭の住人で得をしてるのは大ショッカーです

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!


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軍神と迷いとそれぞれの進路
闇将軍と終末の衝突と苦しき目覚め



連載再開です!


深い霧の中、足元さえ虚ろな中でその男はただ座っていた。

男の腰の下には数多もの骸骨があった。

これは別に男が作った物では無い。

元々積み上げられていた死体の成れの果てだ。

此処は奈落、地獄の一角とも言える場所である。

そこで男はただ自身が朽ちるのを待つかのように座っていた。

 

「ん?」

 

何時振りか自身すら分からなくなっていたその時に何かの男が聞こえてきた。

そう、まるで列車(``)が走るような音であった。

男はそちらに静かに顔を向けるのであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

”ネガデンライナー(改)feat.幽霊列車”車内。

 

「何故私が自身を討った者達の一人と行動を共にしなければならないのだ」

 

「知った事か。というより、これを決めたのは貴様自身だろう」

 

「私は私の天下を手に入れる為にこの集団を利用しているだけだ」

 

「いかにも、弱者が言いそうな事だな。だから貴様は奴に敗れたんだ」

 

「なんだと?」

 

「喧嘩してんじゃねぇよ。何回目だ、そのやり取り?」

 

血色の様な鎧を纏う武士と戒斗の会話に割り込むネガタロス。

彼としては別に軽い喧嘩ならば放置したいのだが、自身の貴重な列車を破壊されるわけにもいかないので止めに入るのだった。

武士の加入直後によくあった言い争いではあったがさすがに時が経って頻度は減った。

しかし、最近になってまた発生し始めてきていた。

理由は単純に互いにストレスは溜まって来ているのだろう。

彼らはスカウトも兼ねて有望そうな人材に誘いを掛け、駄目ならば戦いになっていた。

その行動は血の気の多いメンバーにとってはストレス発散にはなっていた。

だが、最近はとある目的の為に長期の移動に入っているので発散が出来ていないのだ。

 

「ふむ、反応が近くなってきたな。そろそろか」

 

列車は深い霧の中を走っていた。

そう、彼らは奈落とも地獄とも言える場所を移動しているのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

かくして、男の前に”ネガデンライナー(改)feat.幽霊列車”は辿り着くのだった。

男は立ち上がり、腰に下げる剣に手を当てる。

何時でも戦えるように臨戦体勢を取っていた。

ドアが開き、中から黒い鬼が、ネガタロスが現れる。

 

「貴様は何者だ?」

 

「俺の名はネガタロス。一応現”ネガタロス同盟(仮)”の代表者だ」

 

「それが私に何の用だ?わざわざ地獄まで来るのだ、遊びではあるまい」

 

「スカウトさ。なぁ、シュバルツ将軍(```````)。俺と手を組まないか?」

 

「スカウトだと?」

 

「あぁ、俺は“正義に負けない究極の悪の組織”を作りたい。その一員にアンタを誘ってるのさ」

 

「悪いが私は最早死んだ身。目的も果たした。ゆえにこれ以上何をする気も無い」

 

言いながら男は、シュバルツ将軍は座り直す。

その姿から達観した様子を感じられた。

かつてのシャドーラインの幹部の姿がそこにあった。

それに対してネガタロスは肩を竦めながら言う。

 

「本当にそうか?」

 

「なに?」

 

ピクリとシュバルツ将軍は反応する。

その言葉は引っ掛かりを覚えさせる物だった。

 

「グリッタ嬢を救い、ゼットに一矢は報いた。これ以上に私が果たしていない目的があるとでも?」

 

「あるじゃねぇか。”最強の列車軍団を組織する”ってのは果たして無いだろう?」

 

「ぬぅ」

 

その言葉にしばし考えるシュバルツ将軍。

ネガタロスは更に続ける。

 

「俺は“正義に負けない究極の悪の組織”を作りたい。あんたは”最強の列車軍団”を組織したい。なら、俺達の目的は一致してるんじゃないか?」

 

「確かにそれは果たしていなかったな。だが、心残りと言う程でも無い。貴様は何故私を選んだ?」

 

「あんたには野心があるからさ。自身の目的の為ならば皇帝すら敵に回すその野心!!それを俺は求めているのさ。だから、俺達と共に夢を目指そうじゃねぇか」

 

「ふむ…………確かに悪くは無い話だ。私の内に眠る野心も貴様の野望に協調しなくも無い。いいだろう、手を組もうではないか」

 

「歓迎するぜ、シュバルツ将軍」

 

そう言って二人は手を重ねた。

とはいえ、ただ話に乗っただけでは無さそうだとネガタロスは感じていた。

互いに利用し合う。

そのくらいの関係が悪の組織としてはちょうどいい部分もある。

ゆえにネガタロスはあえてそこに突っ込みはしなかった。

 

「だが、私は死した身だ。それが現世に戻れるのか?」

 

「そこは問題ねぇよ。というわけで、頼むぜマーブロ!!」

 

「はいはい、任されたよ~」

 

そんな明るい声が列車の中から響き、シュバルツ将軍の知った顔が姿を見せた。

人型で眼鏡を掛け、杖を持つ男がクローズを連れて列車から出てくるのだった。

 

「やぁ、シュバルツ将軍。久し振りだね」

 

「まさか貴様もいるとはな、マーブロ」

 

現れたのは闇博士マーブロだった。

胡散臭い笑みを浮かべる印象を抱くが実際に間違っていない。

何故なら彼はマッドサイエンティストと呼べる類であるのだから。

シュバルツ将軍と同じくシャドーラインに属する者だった。

 

「あんたを探す途中で見つけて、気に入ったんでスカウトした」

 

「僕に好きに研究させてくれるらしいからね。大好きな忍者を手にする為にも都合が良い」

 

「貴様も死んでいたとはな」

 

「僕だって負けたら死んじゃうからね」

 

「それで貴様がどう私を死んだ身から変えるというのだ?」

 

「こうするのさ」

 

マーブロが杖を鳴らす。

直後に背後の”ネガデンライナー(改)feat.幽霊列車”が漆黒に輝く。

”ネガデンライナー(改)feat.幽霊列車”は時の砂漠に落ちたクライナーも改造の材料にされている。

それを触媒にしてネガタロスは闇博士マーブロとシュバルツ将軍を見つけ出したのだ。

そして、マーブロは”ネガデンライナー(改)feat.幽霊列車”を使って闇を増幅させる。

その力を持ってクローズ達を純粋な闇へと変換する。

その闇をシュバルツ将軍に注ぎ込む。

彼らシャドー怪人は元々闇から生まれし物。

それゆえに闇を注ぎ込み、肉体を再構成させたのだ。

 

「なるほどな。それで、組織を作る上での当てはあるのか?」

 

「あぁ、あるぜ。箱庭でちょうど良さそうな計画が動いている。標的はそれの確保だ」

 

邪悪な笑みを浮かべるネガタロス。

闇の力を宿し者を味方に加え、ネガタロスは己の野望の為に突き進む。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

あらゆる物が残骸と化していた。

建造物は崩れゆき、地は煙をあげ、所々で火を吹いている。

天は暗闇に包まれ、獣の叫び声が響き渡る。

人々は血を流しながら倒れゆき、その血を地面に染み渡らせる。

時折衝撃音と共に大地が揺れる。

その様はまさしく終末と言える状況だった。

その中心で十六夜とディケイドは向き合っていた。

互いにボロボロであった。

それでも倒れはしてなかった。

二人の周囲には多数の人影が倒れていた。

二人を中心に地が割れていた。

ディケイドはライドブッカーをガンモードにして銃撃を十六夜に向けて放つ。

 

「やめてください!!」

 

叫び声が上がる。

それでも二人は止まらない。

十六夜は銃撃を紙一重で回避し、最短ルートでディケイドに迫る。

ディケイドは即座にライドブッカーをソードモードに変える。

横薙ぎに振るわれた刃が十六夜に迫る。

十六夜は全力で上半身を背後に仰け反らせる。

そして、刃が真上に来た瞬間思いっきり状態を跳ね上げた。

全力の頭突きが刃の側面にぶつけられ、その衝撃で刃は叩き上げられる。

十六夜は額から血を流しながらもその勢いのまま、拳をディケイドに叩き込む。

だが、ディケイドはライドブッカーを手放し、完全に体勢を崩すのを防ぐ。

むしろ、そのまま背後への衝撃を利用して足を上げ、蹴りを放つ、

十六夜の拳とディケイドの足は同時に互いの胴へと突き刺さり、お互いを吹き飛ばした。

 

「やめてください!!二人が戦っても………」

 

少女の、黒ウサギの悲痛な叫びが響く。

それでもその声は届かず、二人は止まらない。

瓦礫の中からほぼ同時に起き上がる。

互いを睨み付けながら拳を構える。

ディケイドの右腕にマゼンタの粒子が凝縮され、放つ輝きが増していく。

十六夜の右腕を中心に輝く紋様が広まっていく。

ディケイドの右腕はマゼンタの輝きを、十六夜の右腕は蒼き輝きを眩いばかりに放っていく。

 

「ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」

 

「ダアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

互いに向けて同時に駆け出し、同時に叫びをあげながら拳が放たれる。

異なる輝きを放つ拳が凄まじく衝突する。

その衝突の衝撃は天を揺らがし、地を砕き、人を吹き飛ばした。

その衝突の上空を中心に暗雲に穴が広がっていく。

その衝突を中心に地は捲れ上がり、砕けヒビを広げていく。

その衝突の余波により、周囲の人影は吹き飛ばされていく。

それは何も物理的な物には収まらなかった。

世界の破壊者の拳と世界を救う者の拳の衝突は世界(``)に亀裂を入れる。

衝突点を中心に空間に亀裂が広がり、世界は砕け散っていく。

まるで硝子のように世界は散らばって行くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

そこで、再び(``)眼が覚めた。

 

(…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………今度は今度でなんて夢だよ、クソが)

 

頭を抱えるようにして心の中で呟く。

十六夜としては悪夢で目覚めるのは今朝だけで二度目なのだった。

先程は三頭龍アジ=ダカーハに対する賭けに負け、黒ウサギの投擲した槍に自身が貫かれ、黒ウサギの表情を見たところで目覚めたのだった。

しかし、今回の夢は別の意味で悪夢であった。

先程の夢ならばまだ見る理由は分かっていた。

だが、今回の夢はさっぱり分からないのだった。

十六夜は思考を放棄するように寝返りを打ち、三度寝の準備に入るのだった。

薄れゆく意識の中で十六夜は心の内に何か棘が刺さったままのような感覚を残すのだった。

 

 






というわけで、第一部最終巻に突入しました!
初っ端から敵サイドでした!
闇博士はニンニンvsトッキュウの敵です

後半は十六夜vsディケイド(夢)でした!
夏みかんが見ていた夢と似たような物です
それを十六夜が見た理由は後々

連載止まっている間にライダーはドライブからゴーストへ、戦隊はニンニンからジュウオウへと代替わりしましたが第一部完まで変わらず突っ走ります

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!

予定としては登場している全勢力の動向を第一部完までに描写していく感じです!


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第四の男と遅い目覚めと残りし傷跡





その男は戦いに敗れ死んだはずだった。

存在そのものも歴史(``)が正されたことによって忘れ去られたはずだった。

事実、組織(``)もデータの回収の為だけにその時空に干渉はしたが本人の回収は諦めていた。

だが、歴史が改変されたことによって生まれた世界線と正しい世界線の狭間に位置する閉ざされた時空。

誰かが死ぬ度に繰り返し、繰り返す度に組織(``)の力が増していく時空。

その特殊なあり方ゆえに組織(``)が予想すらしていなかった事態が起きたのだ。

時空の歪みそのものが発生し、余波で箱庭そのものが歪むのは想定内ではあった。

けれど、干渉した時空で死んだはずの()が、仮面ライダー4号が箱庭に零れ落ちるのだけは想定外であった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

意識を取り戻したのは唐突であった。

眼に光が灯ると同時に体の感覚がほぼ無いと自覚した。

下半身と右半身の感覚は完全に無かった。

左半身の感覚は辛うじてあったが左腕は肘より先の感覚が無い。

視界も右半分しか無い。

おそらく左半分は傷付くなりして機能停止しているのだろう。

唯一動く首を動かすと感覚は正しかったようで下半身と右半身が消失している事が確認出来た。

千切れたコードのような物も広がっていた。

 

「よう。目覚めたみたいだな、ガラクタ」

 

「貴様は……………大道克己」

 

「へぇ、俺の事を知ってるのか」

 

「財団Xが所有する技術によってネクロオーバーと化した不死身の集団NEVERを率いる者だろう?ショッカーの情報力ならばそれくらい分かりはする。それよりも何故俺はこんなところにいる?俺は敗れ死んだはずだ」

 

「知るかよ。俺が聞きたいくらいだ。なんせ俺達の隠れ家の近くに唐突に降ってきたのがお前だからな」

 

大道の言っている事はほぼ事実であった。

少なくとも大道達にとってはそうだった。

4号も仮面ライダードライブ タイプフォーミュラのフォーミュラドロップによって倒されて以降意識が途切れていたので何も把握できていない。

だが、考察することは出来なくも無い。

なので、まずは情報を得ることにするのだった。

 

「此処は何処だ?」

 

大道は面倒そうにしながらも逐一4号の問いに答えるのだった。

そして、4号は箱庭の事、大ショッカーの事を聞き大体の事は把握する。

歴史改変マシーンによって歪められた歴史、最早干渉することすら難しい時空に強引に干渉された事で自身の運命すら歪んだのだと結論付ける。

おそらく完全に爆散するはずが残骸が残る形となったのだろう。

その残骸が時空から零れ落ち、箱庭へと流れ着いたのが4号なのだ。

推測は出来ただからと言って何かが変わるわけでは無い。

歴史が正された事実は変えようが無いからだ。

 

「貴様は俺をどうするつもりだ?」

 

「特に決めてはいない。ただ、使えそう(````)だったから拾ったまでだ」

 

使えそう(````)だと?」

 

「あぁ、俺達には大ショッカーからくすねてきたデータがある。その中にお前のデータもあってな。つまり、俺達ならお前を修復出来るというわけだ」

 

「なるほどな。貴様らは俺を手中に収めたいというわけだ」

 

「箱庭の連中を相手にするにはいささか戦力不足だからな。戦力と言うより人員だが」

 

「俺がショッカーを裏切り、貴様らに付くと思うか?」

 

「別に付かないなら完全にガラクタにするだけだ。その状態じゃ何も出来ないだろう?愛機も失っているしな」

 

「俺のスカイサイクロンも貴様が回収したのか?」

 

「残骸を、だがな。それでどうするつもりだ?」

 

大道は手の中でエターナルメモリを弄びながら言う。

その様子には余裕しか無かった。

それもそうだろう。

手足を失った4号がこの状況で何も出来るわけが無いのだから。

4号は考える。

そこで思い当たる。

現在の大ショッカーは自身が忠誠を誓っていたショッカーと同質な物かどうかをだ。

確かに行動理念としてはほぼ同一だろう。

だが、此処は箱庭である。

あらゆる可能性が集う地だ。

つまり、ショッカーの名を名乗るだけで別の組織が基盤の可能性もあるのだ。

たとえば、別の存在が首領として君臨している可能性もあるのだ。

4号は自身が従っていたショッカーにしか忠誠を誓うつもりは無い。

そして、ショッカーの名を名乗りながらその理念と違う道へ進む組織だったのならばショッカー怪人の名の元に正す必要がある。

そこまで考えて4号は結論を付けた。

 

「確かめる事が出来た。それを確かめる為にも一時的にだが貴様らに我が力を貸してやろう」

 

「いいぜ。元より此方も利用する気だったんだ。互いに互いを利用し合っていこうじゃないか」

 

契約は成立した。

4号は大ショッカーの有り方を確かめるべく大道たちに付くのであった。

大道は元より興味半分ではあったが、4号が提案に乗ると口元を歪めるのだった。

互いに互いを利用し合う同盟が成立するのであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

_____”風浪の鉱山”六本傷の宿。

鉱山の一角に十六夜は宿を取っていた。

寝室で時計がカチカチと規則的な音を鳴らす。

時計の秒針の音とは、どうしてこんなに耳障りなのだろう。

寝苦しそうに寝返りを打つ十六夜の周囲で機械音混じりに鳥の鳴き声のような物が聞こえる。

否、聞こえるどころでは無く突っつかれていた。

よくよく見れば鳥では無かった。

タカカンドロイドが数匹十六夜の周囲を飛び回り、鳴き声と突っつきで起こそうとしているのだった。

だが、その程度では十六夜は完全には目を覚まさなかった。

数分経つとガタリという音が響く。

そして、十六夜の額に凸ピンが放たれる。

 

「おい、起きろ!!起きやがれ!!」

 

紅い右腕が叫ぶ。

どうもどうやら痺れを切らしたアンクが右腕状態となって窓から入って来たらしい。

凸ピンに加えて叫び声まで上げられ、さすがに目を覚ました十六夜は、不機嫌そうに布団から顔を出す。

 

「………五月蠅いぞ、鳥野郎」

 

「お前が何時まで経っても起きないのが悪いんだろうが、ガキ」

 

寝惚けながらも悪態を吐き合う。

頭を掻きながら時計を見て時間を確認する。

すると予想外の時間に目を丸くする。

 

(マジかよ。もう昼じゃねぇか)

 

なんてこった、とわざとらしく頭を抱えて跳び起きる。

そりゃ起こしに来るわけである。

アンクが、では無くおそらく一緒にいるであろう人物が。

今日は参加する予定のゲームがあるのだ。

伸びをした十六夜は、ゲームに参加する為に粛々と出立の準備を始める。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

”ノーネーム”一同は戦没者の追悼式や戦後処理、そして蛟劉から頼まれた依頼であるグロンギやアンデットとの戦いを終えた後、新たな活動を始める為に東側のとある土地にまで足を運んでいた。

その場所は、かつて旧”ノーネーム”を支えた”金剛鉄(アダマンティウム)”の採掘場。

第六桁・五六五六五六外門にある”風浪の鉱山”。

絶え間無く響いている鉄を叩く音は寝惚けた頭に少し辛いが、目を覚まさせるには丁度良かった。

鼻腔を突く鉄の匂いを胸一杯に吸い込んで眠気を払う。

鉄臭い空気は頭を刺激するのにいい。

 

「さっさと支度を済ませろよ」

 

人型に戻ったアンクが窓から飛び降りると下から入れ替わるように声が響いてくる。

 

「十六夜君、起きたかい?」

 

火野映司の声が響く。

十六夜は軽く首を鳴らして窓から身を乗り出して下を見る。

 

「あぁ、おかげ様でしっかり目覚めたぜ」

 

「それは良かった。けど、速く準備しないとゲームの予選に間に合わないよ」

 

「了解了解。用意するからしばしお待ちを」

 

苦笑する様な映司と呆れた顔のアンクに向けてヒラヒラと手を振って頷く。

窓を閉めてコーヒーを淹れて一気に飲み干す。

顔を洗い、風呂に入る。

たっぷり時間を掛けて用意した十六夜は、鉱山に相応しい作業服を着こむ。

採掘用の鶴嘴を脇に抱え、”サウザンドアイズ”に注文して作らせたオリジナルの土建屋スタイルを着込んで仁王立ちする。

 

「うっし。それじゃあ、元気に掘りまくるか!!」

 

ヤハハと軽快に笑って急造の小屋を出る。

今日も賑わう鉄火場には、”六本傷”を始めとした様々な商業・工業・鉱業コミュニティが集まっていた。

 

「そういえば、他の奴らはどうしてるんだ?」

 

「ラッテンさんが今頃ゲームの予選かな。霧崎君はラッテンさんの応援だね。士さんは既にゲームの予選は終わっているけどそれからの動向は分からない。晴人くんは散歩と言って出かけたよ」

 

「そうか。で、お前らはゲームに出場しないのか?」

 

「俺は特に興味は無い」

 

「俺は今回みたいなゲームは遠慮しとこうと思う」

 

アンクの答えは予想通りだが、映司の答えは不明瞭であった。

だが、多少は察せる答えでもあった。

ライダーの力は強大ではあるが、積極的に振るうべき物でも無い。

特に今回みたいなゲームでは火力過剰な面がある。

そういう意味での遠慮なのだろう。

 

「あ、そうだ。ゲームの前に、”六本傷”のポロロ君と話し合いをすることになってるよ」

 

「ポロロ………?あぁ、あのネコミミチビッコ頭首か」

 

「採掘した”金剛鉄”の使い道について相談したいらしいよ」

 

「”金剛鉄”の使い道…………ねぇ。御チビが見付かるまで待たなくてもいいのか?」

 

「そうも言ってられないんだろ。今回のゲームの予算を出したのは奴ら(六本傷)で保管にもコストが掛かるんだ。時間が経てば経つほど損が増えるだけだろ」

 

「これ以上世話になるわけにもいかなしね」

 

三人は”六本傷”の旗印を見上げる。

三頭龍アジ=ダカーハとの戦いから三カ月が経過し、下層は何事も無かったかのように平穏な日々を過ごしている。

だが、全てが元に戻ったわけでは無い。

三頭龍との戦いは様々なコミュニティに多くの傷跡を残していた。

”ノーネーム”は、リーダーであるジン=ラッセルが行方不明となっていた。

蛟劉や鵬魔王を通して方々に捜索願を出しているが、まるで痕跡が掴めないのが今の状況だ。

 

「これだけ探して見付からないんだ。死ぬか拉致されたんだろう」

 

「死んでは無いだろうけどな。身の引きどころを間違えてはいやがるが」

 

「ジン君なりに考えはあるとは思うんだけどね」

 

戻ってくる選択肢もあった筈だ。

しかし、ジンはそれをせずに”ウロボロス”の許に残ったという。

考えがあったにせよ、組織の最高責任者がいなくなったままでは、”ノーネーム”のあらゆる活動が凍結されてしまう。

取り戻す方法が無いわけではないが、それも現状のままではどうにもならない。

リーダーが不在である今、”ノーネーム”は幾つかの決断を迫られていた。

 

「しっかし、このタイミングで今後の方針を決めに掛かるとはね。”六本傷”のチビッコ頭首がやり手っていう噂は本当らしい。中々に容赦が無い」

 

「これでも待った方だろ。本当に容赦無かったらもっと悪いタイミングで提案してくるぞ」

 

「ジン君がいなくなって一番ヤキモキしていたのはポロロ君だからね」

 

わかっている、と十六夜は相槌を打つ。

頭首が欠席したままでは決めることも決められないという”ノーネーム”の事情を彼はよく汲んでくれた。

むしろ感謝すべきかもしれない。

 

「いつまでもおんぶ抱っこじゃいられないって事だね。人は助け合う物だけど限度があるしね」

 

「お前達も決めることを決めなきゃいけないってわけだ」

 

「わかってる」

 

そのまま三人は黙ったまま雑踏を歩く。

鉱山の街の賑わいは何処か遠い景色を思わせる。

鉄火場の横道をしばらく歩くと、会議室の洞穴前に着いた。

 

「ん?」

 

「どうした、アンク?」

 

「何やら妙な気配がするな」

 

「敵か?」

 

「そこまでは分からねぇが何か(``)あるだろうな」

 

アンクの言葉に映司は警戒を強める。

一方の十六夜は自身の右手を見下しながら何処か空虚な顔をしているのだった。

まるで何かを掴み逃したように。

 

 

 





4号復活!
NEVERと行動を共にすることになったとさ

前回と同じく前半敵サイドで後半ノーネームサイドでしたが別に決めてるわけでは無いのでどちらかに傾く場合もあります

それと、勢力図などは第一部完まで行ったら活動報告で纏めるつもりです

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!


次回、あの科学者が復活!


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悪意の復活と悪夢の卵と手を回し者


前回入ったそばから敵オンリー!
というわけで、敵視点回です


某所。

箱庭であって箱庭では無い場所。

大ショッカー本部の研究室の一つに戦極凌馬はいた。

椅子に座り、コーヒーを飲みながら液体が満たされているカプセルを眺めていた。

 

「まさかオーバーロードに続いてこんな良質な研究素材が手に入るとはね」

 

カプセルの中には人型に近い異形の物体が浮かんでいた。

それは残骸とも呼べる物であった。

事実活動は停止し、生物的には死亡しているはずの物であった。

だが、それは腐敗もせずに存在し続けていた。

それどころか破片が時折動くくらいである。

 

「元々は一人の人間を操っていたようだけど自身の欠片と融合させる事で完全なる傀儡にした。それにより、この個体の肉体は限りなく本体に近い」

 

それは人間の女性の面影を残していた。

しかし、切断面と思われるところから見えているのは斑模様の正体不明の物質だ。

肉や血、骨などの人間らしい物は一切無かった。

 

「不規則な軌道を描く隕石”ウロボロス”、星を喰らう者”クァトネヴァス”。それを目的たる星へと導く端末である化身。いやはや、全く面白い物だよ。そして、”偶然”というのもまた面白い」

 

箱庭を騒がす魔王連盟”ウロボロス”と同じ名を持つ存在でもあったのだ。

とはいえ、”ウロボロス”という名称はその軌道から名付けられた物であり、本当に偶然でしか無いのだが。

クァトネヴァスが星を喰らう理由は単純明快だ。

自身の力が弱まったから栄養を得る為に喰らうのだ。

そのサイクルを一度でも失敗すれば本体は弱り衰弱する。

そして、此処に化身の残骸がある理由は一つ。

邪魔が入り、撃退されたのだ。

それにより、本体は捕食を行えず、衰弱して宇宙を漂っている。

大ショッカーが目を付けたのはそれだった。

星を喰らう存在を手にする為に化身の研究を戦極に行わせようとしているのだ。

戦極としては自身の研究に役立つデータも手に入りそうなので願ったり叶ったりなのであった。

戦極はサンプルから目を離すと椅子を回し、別の方を向く。

 

「さて、そろそろ()を作るとしようか」

 

言いながらコップを机の上に置き、手を前に出す。

戦極の片眼が怪しく光ると手の先に黒いベルトが、黒いドライブドライバーが出現する。

更にそれを中心として機械が広がり、人型を作り出していく。

やがてそれの表面は肌色と変わって行き、気が付けば一人の男となっていた。

 

「初めまして、かな。蛮野天十郎」

 

「どういう事だ?私は確かに剛に破壊されたはずだ。それにこの体は…………」

 

「メガへクスの力を得た私の手に掛かれば君一人を再現するくらいわけないさ」

 

戦極は蛮野のデータをその身に取り込み、蛮野の肉体と黒いドライブドライバー、通称バンノドライバーを再現したのだ。

蛮野は機械生命体ロイミュードの制作者である。

それゆえに自身の体について即座に理解する。

 

「何故私を甦らせた?」

 

「君の頭脳が欲しかったからさ」

 

「私を再現したということはデータなら君の手元にあるはずだが?」

 

「データだけじゃ意味が無いだろう?研究者の発想は人格から来る物もある」

 

「だが、私が君達に従うとでも?」

 

「思ってはいないさ。私も同じ状況なら従わないしね。でも、君の肉体を作ったのは私だ。君ならばその意味合いを分かるはずだけどな」

 

「………………………」

 

蛮野も理解はしていた。

たとえ今逆らったとしても何らかの方法で即座に無力化されるだろうという事くらいは。

 

「仕方がない。今は君達に私の技術を与えてやろう。だが、私が何時までもそのままとは思っていないだろう?」

 

「あぁ、そうでなくては面白くないからね。制御装置くらい君なら解除してみせると思っているさ」

 

「ならば、何故自由を与える?」

 

「大ショッカーは寛容だよ。君一人の野望くらい平気で抱え込んで利用する。利用し利用される関係ではあるがそのままというのも気に入らない。だから、その関係が壊れる様な因子を少しでも増やしたいのさ」

 

「私が君の都合よく動くとは限らないが」

 

「構わないさ。害になれば排除するだけだからね」

 

視線がぶつかり合う。

手を取り合うはずなど無い。

互いに世界を自分を中心に回すつもりなのだから当たり前である。

数秒して蛮野は戦極に背を向けて研究室を出るのだった。

大ショッカー本部の内部構造は製造過程で脳にインプットしてある。

それを元に蛮野に与えられた研究室へと向かったのだろう。

 

「サンプルを得る代償は払ったが、大首領はどういう人選をしているのだろうね。まるで内輪揉めを起こすつもりで組織を作っているのかと思えるくらいだよ」

 

何はともあれ自身には関係無いとして戦極はサンプルに向き直す。

彼の目の前には無数のカプセルがあった。

無数の研究材料を前に戦極は思わず口を歪める。

 

「これだけあればドライバーに新しいシステムを組み込めるかもしれないね」

 

言いながらコーヒーを一気に呷る。

瞳を怪しく光らせながらデータを纏め始める。

その途中でふと思い出したように呟くのだった。

 

「私の技術を一部提供した彼らの方はどうなっているんだろうね」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ふむ。どの個体も経過は良好な様ですね」

 

「あの三頭龍が良質な恐怖と絶望を撒き散らしてくれたからな。ゼットンを育てる餌にはこの上なく丁度良かった」

 

大型の研究室にてエンターと甲冑の様な姿を持つ異星人バット星人が話していた。

彼らの視線の先には紫色の楕円形のゼリーのような物が無数に並んでいた。

その中では異形の怪物が孵化の瞬間を今か今かと待ち続けている。

彼らの進める計画は本来ならば別ではあるがとある理由で一時的に技術協力をしていた。

そんな中で彼らの背後の空間にヒビが入り砕ける。

そこから別の異形の者が姿を現した。

異次元人ヤプールであった。

 

「貴方でしたか。貴方から提供していただいだデータによりゼットンの強化は順調ですよ」

 

「此方が頼んでいた物はどうなっている?」

 

「超獣のデータ、対ウルトラマン戦のデータ、そして此方の研究を組み合わせた理論値は出来ていますよ」

 

言いながらエンターはメモリーを渡す。

ヤプールは受け取りながらゼットンの卵を見る。

バット星人とヤプールの立場は幹部待遇外部協力員と言った物である。

エンターや戦極も同じような立場であるが彼らは微妙に違う。

彼らは一定以上互いに干渉しないのを条件に大ショッカーに協力しているのだ。

彼らの最終的な目的は箱庭は無い。

それゆえに距離を取っているのだ。

 

「貴方の方はこのところ姿を見せていませんでしたがどうなりましたか?」

 

「帝王復活の算段は付いてきてはいる。問題はどうやってビクトリウムコアに匹敵するエネルギーを得るかだ」

 

「それならば”奴”の力を使えばいいのでは?」

 

「”奴”はまだ使い物にはならん。力を全て取り戻すには至って無いからな」

 

エンターは受け答えしながら思考を巡らす。

エンターは積極的に大ショッカーに協力している身ではあるが理念に賛同しているからでは無い。

他者の計画に協力しながらも自身の計画への準備も着実に進めている。

たとえ大ショッカーが潰れても計画を進める為に保険は幾つも作ってはいる。

それが彼らでもあった。

彼らもまた大ショッカーが無くても活動を続けるだろう。

何故なら彼らの根底にあるのは復讐(``)なのだから。

ヤプールに至っては怨念そのものに近い。

そんな彼らだからこそエンターは保険に使えるのだ。

野望では無く復讐(``)だからこそ彼らは止まる事は無い。

復讐(``)はたとえ自身が滅びても終わらないのだから。

ゆえにエンターは彼らにも協力的である程度は自身の研究も開示する。

大ショッカー内部の組織はほとんど利用し利用されるの関係ではあるが、それでも信頼を得ていて損をすることは無いのだから。

 

「おっと、そろそろ”彼ら”のサポートをしなければいけないので私は失礼させていただきます」

 

言いながら頭を下げる。

その仕草には小馬鹿にするような態度が混じっているがその程度を気にするヤプールとバット星人では無い。

ヤプールは再び空間を割って異次元へと消える。

バット星人はそのまま研究室に留まった。

エンターは研究室を出て歩いていく。

 

「誰に付くというのは今の状況下では判断しにくい物ですね」

 

呟きながら歩を進める。

現在エンターが技術提供している組織の一つがとある目的の為にとある存在を排除しようと動いている。

エンターはそれをサポートするとは言ったが実質的には敵の把握という目的もあった。

敵がどういう存在か分かれば後々利用できるかもしれないからだ。

ゆえに彼は協力しながらも探りを入れているのだった。

そして、居場所は突き止めた。

その居場所は既に報告してある。

なので、あとは経過観察だけに等しい。

何かを企むように手を顎に当てながらエンターは歩を進めていくのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

箱庭某所。

森林地帯に獰猛の戦騎Dは身を潜めていた。

だが、明らかに自身を狙って動いている気配を感じ、武器を構え移動を始めようとした時だった。

 

「いきなりかよ!?」

 

気付いた時には四方八方から光弾が放たれていた。

森林に激しい爆音が響き渡るのだった。

 

 





はい、敵回でした!

蛮野参戦!
科学者同士手を組む?
そんなわけが無いのでした!

エンターは基本的にはサポートに徹する感じで自身の目的はコツコツ進めている感じです
大ショッカーに協力しているのは恐竜大決戦の時みたいなノリです

バット星人&ヤプール参戦!
バット星人はサーガの奴と同族で同程度の技術持ってる感じです
ヤプールは説明不要!

戦極が手に入れたサンプルはミスラの上半身だと思ってくれればOKです

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!

次回!獰猛の戦騎Dの運命はいかに!


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忌々しき再会と復活の戦騎と目覚めし凍結竜


今回も今回で敵オンリー!
しかも一陣営だけという!


「チッ…………予想以上に数が多いな。というより、知らない(````)奴が結構いるな」

 

爆煙から抜け出しながらDが呟く。

その真上に楽譜型のエネルギー体が出現する。

Dはギリギリ紙一重のところで気付き回避する。

 

「元同胞を処分することになるとは哀しいですねぇ」

 

何度も何度も念入りに潰すかのように楽譜が放たれる。

全力で走って回避していくがそれも限界がある。

それを見越したように二方向から銃撃が放たれる。

片方は本当に銃撃のようであり、もう片方は音符のような弾丸であった。

 

「ふう、頭が痛ぇぜ」

 

「ラッパップ~!!」

 

フルートバスターを投げ、自身の周囲を回る様な軌道を描かせて銃撃は弾いていく。

更に懐に白い影が飛び込んで来る。

ウォー槍刀で斬り合うが、視界の端に紅い影がちらつく。

戻って来たフルートバスターを左手で掴み目の前の相手に重い一撃を叩き込んで距離を取る。

そして、高速で動く紅い影の一撃を何とか受け止める。

だが、衝撃は完全には殺し切れず多少後退する。

 

「ふん!!」

 

「チッ、ガァァァ!?」

 

後退したところに狙い澄ましたように緑色の光弾が放たれる。

さすがに防ぎ切れず、直撃し吹き飛ばされる。

地を転がりながらも光弾が飛んできた方にしっかりと視線を向ける。

 

「やっぱり、テメェか。カオス!!」

 

「予想は出来ていたようだな」

 

「デーボモンスターも満足に作れるような環境じゃねぇってのは分かってるからな」

 

「だが、ゆえに貴様は逃げられまい」

 

百面神官カオスと向き合い叫ぶD。

カオスはデーボス軍(````)の最高幹部に等しい。

何故この場にいるのか、そもそも何故生きているのかは分からないが自分を消しにくるならカオスだろうとDは考えていたようだ。

 

あえて(```)、聞くぜ。どうやって復活した?」

 

あえて(```)、答えてやろう。我らがキョウリュウジャーに敗れてからほぼ一年後の事だ。地球に我らの主であるデーボス様を産んだ創造主様が来られた。その強大な闇に呼応するようにボルドス殿の魂が活性化されたのだ」

 

「ボルドスだと?あいつも俺が前に復活したのと同時期に殺されたはずだ」

 

「ボルドス殿はデーボス様と並ぶ宇宙の戦神だ。ただ滅びるわけが無いだろう。ボルドス殿は肉体を失えど魂が怨念などを吸収し、力を取り戻すのだ」

 

「なるほどな」

 

「だが、一度敗れたことによりボルドス殿も力の大半を失われていた。ゆえに創造主様の闇を利用し、似た性質を持つ我らの魂を現世に呼び戻し復活させてくださったのだ」

 

「それでテメェらはボルドスとデーボスの両方を復活させる為に活動しているわけか」

 

「その為に大ショッカーの技術をデーボス細胞のノウハウを提供する代わりに利用しているのだ」

 

「で、その邪魔をしそうな俺を潰しに来たわけか」

 

「その通り、貴様の事だ。復活に介入する事で更なる力でも得ようとするだろう?」

 

「さぁ、それはどうかな?」

 

はぐらかす答える。

気付けば何時の間にかカオスの周囲に何体かの怪人が立っていた。

 

「そいつらが新しい戦騎か」

 

「そうだ。貴様達(```)とは違いデーボス様に忠実で優秀な戦騎たちだ」

 

カオスが言うなり戦騎たちはDに視線を向ける。

まずは全身が紅く蝋燭のような肉体を持つ戦騎が前に出た。

 

「俺は怨みの戦騎エンドルフだ。よろしくな、旧型」

 

次にまた赤い楽器の集合体のような姿の戦騎が前に出る。

 

「俺は真・喜びの戦騎キルボレロだ。旧型の分際で俺達に楯突くのが生意気なんだよ」

 

黒いマントを纏う戦騎はその場から動かずに名乗る。

 

「私は真・哀しみの戦騎アイスロンドです。出会ってすぐにお別れとは哀しいですねぇ」

 

白い食器のような肉体を持つ戦騎はカオスの隣に立ち名乗る。

 

「私は後悔の戦騎アースレバン。あぁ、もうすぐ死ぬ者に名乗る必要は無かったか」

 

名乗った事自体を後悔するように言う。

最後にカオスは隣に立つ漆黒の鳥の怪人を指差す。

 

「そして、我が弟、魔剣神官マッドトリンだ」

 

「兄者に逆らうとは愚かだな」

 

散々煽られながらもDは立ち上がる。

そして、逆にカオス達を嘲笑うように声を漏らす。

 

「旧型だの、愚かだの散々言ってくれるじゃねぇか。だがなぁ、俺が何時までも旧型のままだと思っているのか?」

 

言いながらデーボス獣電池を取り出す。

更に改造ダイノブレスの口を開かせる。

 

「デーボスイン」

 

デーボス獣電池に自身の邪悪な力を取り込ませる。

力を込めたデーボス獣電池を改造ダイノブレスへと押し込む。

だが、それらをゆっくりと待っているカオス達では無い。

 

「貴様がどうなろうと知った事では無い。何故ならここで死ぬのだからな!!」

 

カオスと戦騎たちが一斉に光弾などを放っていく。

それでも、Dは動じない。

改造ダイノブレスの口を閉じさせると腕を前に突き出す。

 

ガブリンチョ!!デーボス!!カルノリュータス!!

「デーボスチェンジ!!」

 

改造ダイノブレスから蒼白いカルノタウルスの頭部のようなエネルギー体が跳び出す。

エネルギー体はDの周囲を周り、カオス達の光弾を弾いていく。

その間にDの肉体は特殊スーツに包まれていく。

一回りしたエネルギー体はDの頭部に噛み付く様に向かっていく。

それを受け止めると同時にDの頭部もスーツに包まれる。

 

「変身した程度でこの人数相手に勝てると思っているのか?」

 

「変身した程度(``)かどうかはその身で確かめるんだな!!」

 

言いながらDはフルートバスターをカオス達に向けて投げ付ける。

それと同時に腰からバクレイザーを抜き取る。

即座にバクレイザーをガンモードにすると牽制するように乱射する。

アイスロンドが楽譜型エネルギー体で防壁を張り、銃撃は防ぐ。

だが、フルートバスターは弾けずに破られる。

マッドトリンが割り込み、斬り上げによってフルートバスターを弾き飛ばす。

エンドルフとキルボレロは此方に向けて駆けてくるDに向けて乱射する。

 

「フッ」

 

Dは大きく飛び上がってそれを回避する。

爆炎を背後に跳びながらバクレイザーを一旦腰に戻す。

そして、改造ダイノブレスからデーボス獣電池を抜き、上方向に(````)弾き飛ばされていた(`````````)フルートバスターを掴み取り、獣電池を入れる。

漆黒を纏う邪悪な力がフルートバスターに凝縮される。

 

「魔楽章・デーボスフィニッシュ!!」

 

爆竜カルノリュータスの頭部に酷似した邪悪なエネルギー体を纏ってフルートバスターがカオス達に向けて投げ付けられる。

アイスロンドが爆音符を、キルボレロとエンドルフが銃撃を、アースレバンが光弾を放つがその悉くを弾き飛ばして向かっていく。

その中でカオスは一切動じずに右手を前に出す。

 

「あまり私を舐めるなァ!!」

 

濃い緑のエネルギーが防壁のように展開され、フルートバスターと激突する。

激しい音と共に爆炎とも思える火花を放つが防壁は破られず、フルートバスターは再び弾かれる。

Dは特に驚いた様子も無く着地するがそこにアースレバンとマッドトリンが斬り掛かって来る。

二体の剣をウォー槍刀で受け止めながらDは後退していく。

他の戦騎たちがDを囲む前にバクレイザーをガンモードにして引き金を引く。

至近距離過ぎてさすがにアースレバンもマッドトリンも防ぎ切れずに吹き飛ばされる。

Dはバクレイザーをソードモードに変えるとウォー槍刀とバクレイザーの両方に自身の力を注ぎ込む。

漆黒がバクレイザーとウォー槍刀に纏われる。

バクレイザーとウォー槍刀を一度重ね合わせるようにしてから、再び両手を広げ構える。

 

「最終楽章!!デーボスフィニッシュ・二重奏(カルテット)!!」

 

バクレイザー、ウォー槍刀の両方から無数の牙を生やしたエネルギー体が放たれる。

戦騎達の攻撃を一切寄せ付けずに日本のエネルギーの奔流はカオスへと一直線に突き進む。

それでもカオスは動じずに手を動かすだけである。

今度も両手を使ったという違いがあるだけで結果は同じだった。

漆黒の奔流は弾き飛ばされ、カオスは無傷である。

 

「まさかと思うがこんな物で私を倒せると思っているのか?」

 

「いや、思っちゃいねぇよ。今は(``)な」

 

Dは見た。

完全に防いだように見えて防壁にヒビが入っていた事を。

ゆえにあと一押しさえあればカオスには(``)勝てると確信した。

だが、今は状況が状況だ。

タイマンならばチャンスはあるが今は絶望的に等しい。

だから、場を乱して隙を作るのに専念していたのだ。

 

「来い!!」

 

Dの声に応えるように地を割って爆竜カルノリュータスが姿を現した。

爆竜カルノリュータスはその頭部にDを乗せると雄叫びを上げる。

 

「なんだと!?」

 

「ちょうどいいタイミングに襲ってきてくれて感謝するぜ!!おかげで試運転の手間が省けた!!」

 

爆竜カルノリュータスは復元水の泉の中で復活を待っていた爆竜の一体である。

もう一体より先に復活していたのでDは試運転を兼ねてこの地で暴れさせようとしていたのだ。

だが、カオス達が来たことによりわざわざ暴れさせなくても制御出来ることを確かめられたというわけである。

 

「次に会う時には俺は更なる進化をしているだろう!!それを楽しみに待っているんだな!!」

 

叫び、言うだけ言うとDは爆竜カルノリュータスを走らせてこの場を離脱するのだった。

追い付く手段を持たないカオス達は苦虫を噛み潰すようにしながらも姿を消すのだった。

 

 






獰猛の戦騎D vs 新生デーボス軍の面々でした!

デーボス軍が箱庭にいるのは大ショッカーに拾われたからです
カオスの理想的なデーボス軍となっています

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!

次回はノーネームサイドのはずです!


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腐れ縁と増えた精霊と鉱山のゲーム


今回はノーネームサイドオンリーです!


 

霧崎は金剛の鉄火場の観客席にいた。

理由は単純にラッテンを応援する為である。

霧崎自身はこのゲームに参加する気は一切無かった。

能力的に明らかに向いて無いのもあるがただ疲れるからやりたくないというのもあった。

霧崎は攻めより防御中心なので仕方なくはある。

ラッテンの試合が恥まるまでまだ少しある。

売店で勝った飲み物を飲み、売店で勝った菓子を食べながらゲームスタートを待つ。

そんな時に隣から声を掛けられる。

 

「隣に座ってもいいかな?」

 

「あ、別に構わ………朧!?」

 

その姿に霧崎は吹き出しそうになる。

話し掛けてきた相手は望月 朧。

箱庭にいるはずの無い男がいるのだからそれは驚く。

 

「お前………何でここにいる?」

 

「それは此方が聞きたいかな」

 

言いながら朧は霧崎の隣に座る。

彼としては霧崎のような男がこの場にいる方が疑問だったようだ。

霧崎は諦めたように溜息を吐き、箱庭に来るまでの経緯と来てからの出来事を朧に話すのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「_____って、わけだ。納得したか?」

 

「そうだね。納得は出来る内容だったよ。羨ましい限りだ」

 

「ここでの生活は別にそこまでいい物でも無いぞ?」

 

「いやいや、謎の手紙に誘われて異世界になんて僕が求めていた物そのものだよ。こんな面白そうな世界に招待されるのが羨ましいんだよ」

 

「招待されてないとしたら、お前はどうやって箱庭に来たんだ?」

 

一番疑問に思っていた事を問う。

箱庭はそう易々と来れる世界では無い。

ネメシスQですら存在を知らなかったくらいだ。

そこに招待されていない朧がいるのは確かに異常なのだ。

それに対して朧は軽く答える。

 

「何か次元の裂け目っぽいのがあって面白そうだから入ったら箱庭に辿り着いたんだよ」

 

「は?」

 

「別に難しいことを言った気は無かったんだけど…………何か疑問でもあるかい?」

 

「いや、お前の性格は分かってるからそこらへんは避けるけど。次元の裂け目ってなんだよ」

 

「それは僕も知らないよ」

 

そんな得体の知れない物に飛び込んで朧は箱庭に辿り着いたのである。

更に話を聞くと朧が箱庭に辿り着いたのは三頭龍アジ=ダカーハとの戦いが終わった後であり、朧的には面白そうな物を見逃したと心底がっかりしているようだ。

箱庭に辿り着いてからは情報収集しながらギフトゲームで生活費を稼ぎながら各地を転々としていたようだ。

その時々に霧崎達”ノーネーム”の噂を聞いて動き回っていた様だ。

何度か”ノーネーム”のメンバーと接触はしたようだが霧崎とは会えなかったようだ。

 

「それで、お前はこれからどうするんだ?帰るのか?」

 

「帰るなんてとんでもない!!此処は僕が待ち望んでいた世界なんだ!!楽しみ尽くすに決まっているだろう?」

 

「そーかよ。でも、”ウロボロス”とかいう連中と”大ショッカー”って連中には気を付けろよ」

 

呆れたように言いながらも注意はしておく。

だが、それが失敗だとすぐに気付く。

望月朧は注意されたくらいじゃ止まらない。

むしろ嬉々としてそういう物に近付こうとするタイプなのである。

 

「霧崎くん、そいつらってどんなコミュニティなんだい?」

 

キラキラした笑顔で聞いてくる。

霧崎は大きく溜息を吐きながら額に手を当てる。

顔を引き攣らせながら渋々という形で口を開く。

 

「”大ショッカー”はよく知らないけど箱庭全体に喧嘩売ってる規模不明な組織だ」

 

「それはどっちかというと霧崎くんが知らないだけじゃないのかい?」

 

「たぶん、そうだろうな。映司さん達は心当たりがあるみたいだし。それはともかく”ウロボロス”は魔王連盟だ。魔王の集まりでここ最近箱庭を荒らしている連中だな」

 

三頭龍復活などの裏にも”ウロボロス”が関わっていたのも説明する。

すると、朧は考え込むように顎に手を当てる。

霧崎は一瞬朧の口が楽しそうに歪むのを見た。

それで朧が関わる気満々なのを察する。

 

「俺の言えた事じゃないけど、あんまり無茶するなよ?」

 

「何でかな?」

 

「アゲハ達の事も考えろって事だよ」

 

「あぁ、それはそうか。確かに僕が死んだら彼らは気にするよねぇ……………アゲハ君に無駄に心配は掛けたく無いしね。死なないようには気をつけるよ」

 

本当に最低限の事を誓うのだった。

口で言っても分からないとは思うが、そこらへんはそこそこ長い付き合いゆえの面がある。

会話も一段落し、霧崎がドリンクに口を付けようとした時だった。

 

「そういえば、このゲームにも出場する予定の笛使いって霧崎くんの彼女かい?」

 

「ッブフゥ!?」

 

いきなり予想外の言葉に完全に吹き出す。

咳き込みながら朧の方を見る。

頬が多少紅くなっているのは鏡を見なくても分かった。

 

「い、いきなりなんだよ!?」

 

「霧崎くんが想像以上に入れ込んでるようだからもしかしたら、って思ってね。単なる興味で深い意味は無いさ」

 

「そ、そうか」

 

本当にただ聞いただけなようで朧はすぐに立ち上がった。

首を鳴らしながら周囲を見渡す。

 

「行くのか?」

 

「そうだね。僕も色々と箱庭で楽しめそうなことを探してるからね」

 

「何時になるかは分からねぇが、またな」

 

「そうだね。僕らの運命が交差する時にでもまた会おう」

 

言いながら朧は歩き去って行くのだった。

時を同じくしてゲームの方も開幕しようとしていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

{ ー ギフトゲーム名”金剛の鉄火場” ー

 

 参加条件:”サウザンドアイズ”発行金貨一枚。

 ※勝敗について。

 一、A~Fグループに分かれて予選を行い、各グループで最も採掘量が多い参加者が勝者。

 二、以降は勝者六名が採掘した鉱石を奪い合うバトルロワイヤル形式。

 三、予選では複数名が採掘し、戦果を一人に集中しても良い。

 四、本戦では主催者(ホスト)から”金剛鉄”の武具を貸し出しする(使用は任意)

 五、バトルロワイヤルの勝敗は予選・本選で得た採掘量の集計で決める。

 六、採掘した鉱石はギフトカードに仕舞われる為、ギフトカードを奪われることは鉱石を奪われることと同意とする。

 

 ※注意事項。

 金剛鉄の不正な持ち出しは反則です。

 反則行為は全て審判に通達が行くので、密輸は諦めましょう。

 

 

 参加者報酬:採掘量に応じて賃金を支払う。尚、略奪分の賃金は採掘した本人に還元。

 優勝者報酬:採掘した”金剛鉄”で武具を発注できる。武具以外は要相談。

 

  宣誓 主催者は上記のルールに則り名と御旗の下、公正なゲームを執り行う事を誓います。

                               同盟代表”六本傷”印}

 

ラッテンは”風浪の鉱山”の洞穴内で”契約書類(ギアス・ロール)”を眺めていた。

周囲には三原色の光を放つ岩盤がある。

ルールを一通り眺めてラッテンは息を吐く。

 

「チーム戦ありってのが厄介なのよね~」

 

複数人で発掘して一人に鉱石を集中させる方法もこの予選ならありではある。

一人で参加しているラッテンとしてはそこは不安要素であった。

そんなことを考えていると小さな影が三つぴょんぴょんと跳ねる。

 

「らってん!!ふあん?」

 

「だいじょうぶ?らってん!!」

 

「がんばれ!!らってん!!」

 

群体精霊のメルン、メルル、メリルの三人だった。

”ノーネーム”の農場を開拓した事によって己の眷属を増やしていたのだ。

とんがり帽子の精霊が主精霊のメルン。

先っぽが二つ尖っている帽子を被っているのがメルル。

先っぽが三つ尖っている帽子を被っているのがメリル。

彼女達はラッテンを元気付けるように騒いでいた。

霊格を同調させている分そういうのにも敏感なのだ。

対してラッテンは軽い調子で笑みを浮かべ、メルン達を撫で回す。

 

「心配しなくてもいいわよ。負けはしないわ。何の為に貴女たちを連れてきたと思っているの?」

 

「「「?」」」

 

三人同時に首を傾げる。

そもそも彼女達がこの場にいるのはラッテンが連れ出して来たからである。

つまり、連れて来たからに連れて来たなりの理由が存在するというわけである。

その一番目が戦力の温存である。

ディーンとアルマは強力な戦力ではあるが、多用すれば手の内を晒すに等しい。

なので、ラッテンはメルン達三人を連れてきたのだ。

 

「けど、モチベーション上がんないのは確かなのよね~」

 

既に義手がある彼女にとって”金剛鉄”の武具は特段必要な物では無い。

加えて霧崎も武器を多用するタイプでは無い。

なので、優勝を狙う旨みが少ないのは確かであった。

霧崎の前で無様な姿を見せるわけにはいかないので頑張るつもりではあるが。

そうこうしている内にゲーム開始が近付く。

黒ウサギが壇上で時間を確認し、ウサ耳を伸ばし、

 

『それでは!!ギフトゲーム”金剛の鉄火場”__________スタートです!!』

 

ドオオオオオオオオオオオオオオオォン!! と銅鑼の音が洞窟内に響き渡る。

参加者たちは待ちくたびれたとばかりに怒号を上げて一斉に動き始めた。

同時にラッテンも動き出す。

とはいえ、ラッテンは鶴嘴を使う気は無かった。

発掘の手段は別に掘り進めることだけでは無い。

義手である左腕の掌に仕込んであるギフトカードからハーメルケインを取り出す。

 

「さーて、始めるとしましょうか!!」

 

言いながらハーメルケインに口を付け演奏を始めるのだった。

 

 





ゲーム開始でした!
ここまで特撮組の出番が無いのもある意味珍しかったりします

朧と霧崎の再会でした
再会しても盛り上がる間柄では無いですが
友人ではあるんでしょうけどそこまで深い関係でも無いですからね

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!

ラッテンの活躍は次回なり!


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地精と馬肉と金剛の鉄火場


バッチリミナー!バッチリミロー!バッチリミィヤー!
というわけで、予選ゲーム開幕です


「ま、こんなもんでしょ」

 

採掘は順調であった。

モチベーション上がらないのは確かではあったが純粋に真面目にやるかどうかは話が別であった。

メルン達を連れて来たのも採掘の為なのであるから。

メルン達は地精なので地盤の操作くらいは簡単である。

なので、その力を持って岩盤を脆くし、ラッテンの魔力を籠った演奏によって一気呵成に崩落させるという寸法である。

ついでに、定期的に攻撃的な音波や催眠的な音波も放っている。

洞穴なのでよく反響する。

遠いと効果は薄いが妨害には十分である。

攻守ともに万全な姿勢でラッテンはゲームを進めているのだった。

その時だった。

洞穴内に悲鳴が響いた。

 

「ん?何かしら?」

 

ラッテンは耳を澄ませて悲鳴に合わせて会話を聞き取り始める。

悪魔ゆえに耳も常人以上に良く、精度もかなりの物なのである。

 

「な、何しやがる!?それは私のギフトカードだぞ!!」

 

「ふん。地精如きがギフトカードを持つなど宝の持ち腐れだ」

 

その声だけで大体の事は把握する。

反響の方向から場所も大体分かっている。

ラッテンは口を歪ませながらハーメルケインを構えるのだった。

 

「らってん、どうかした~?」

 

「らってん、わるいかお!!」

 

「らってん、こわい!!」

 

「あ、顔に出ちゃってた?まぁそれも仕方ないわよね」

 

言いながら声がした方へと駆け出すのだった。

メルン達はその背に必死に掴まっているのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「よし。では、娘は縛り上げて次に行くぞ。採掘量は多いほどいい。他の参加者からも、」

 

「とりゃ」

 

「ゴバァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!?」

 

ラッテンはハーメルケインの刃の先に複数の魔方陣を展開して球体を作っていた。

そこで魔力の籠った音をひたすら反響凝縮させていた。

それを襲撃者たちに向けて解放したのだ。

ひたすら押し込まれていた音は開放された途端に波長を持った魔力波となり、襲撃者に向けて破裂したのだった。

ただの物理的なダメージでは無く体内で反響する地味にキツイ打撃と化しているのだ。

前まではここまでは出来なかったがアルマと同調し、霊格が強化され、その状態にも慣れた事によって今まで以上の力を扱えるようになったのだ。

襲撃者たちは試し撃ちに吹き飛ばされたのだった。

 

「威力は上々、精度は要調整ってとこかしら?」

 

適当に確かめるように呟く。

一応の確認を終えると襲われていた少女の方を向く。

 

「あら?”ウィル・オ・ウィスプ”の……………アーシャだっけ?大丈夫?」

 

「そういうお前は”ノーネーム”のか。何で助けた?」

 

襲われていたのは同盟コミュニティである”ウィル・オ・ウィスプ”のメンバー、アーシャ=イグニファトゥスだった。

理由を問われ、一瞬顎に手を当てたがどう言っても仕方が無いのでそのままを伝える事にした。

 

「まぁ一言で言うならついでね。ぶっ飛ばす相手にあいつらがちょうど良かったってのと単純にちょっとイラっとしただけよ」

 

「そうかよ」

 

顔を背けながらアーシャが呟く。

頬が少々赤くなってるのは照れくささからだろう。

ラッテンが差し出した手を掴んでアーシャは立ち上がる。

用は済んだので各々採掘に戻ろうとした時だった。

 

『_______悪魔風情が私を邪魔するかぁぁぁぁ!!」

 

突如として雷鳴が響き、ラッテンに吹き飛ばされた者が帰ってくる。

現れたのは第三幻想種______鷲獅子と龍馬の混血貴種・”ヒッポグリフ”のグリフィスだった。

それを見たラッテンは呟く。

 

「誰?」

 

割と本気の呟きだった。

首を傾げながら思い出そうとするが中々出てこない。

その様子にグリフィスは完全にブチギレる。

 

『貴様ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!このグリフィス様を知らないで妨害したというのかッ!!』

 

「ん~グリフィス?あぁ!!あの映司にボコられてた雑魚馬肉ね」

 

『何処までを私を馬鹿にしなければ気が済まないようだなッ!!』

 

怒りの限界を越えてグリフィスが叫び散らす。

眼を見開き、周囲に雷鳴を撒き散らす。

ラッテンは呆れたようにその光景を眺めている。

 

「どの道没落貴族ルートの真っ最中でしょ?」

 

『GEEEEEEYAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!』

 

ラッテンの更なる煽りに最早理性の欠片も無い叫びを上げる。

獣の如く吼え、龍角を構える。

 

『最早問答など不要!!消し飛ぶがいい、悪魔風情がァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!』

 

龍角の先端を突き出して突貫してくるグリフィス。

途端、洞穴内に轟音が響いた。

足場は両者の激突で大きく窪み、洞穴が陥没するのではないかという衝撃が走る。

対してラッテンはハーメルケインを咥えて演奏を始める。

それによって魔法陣型の防壁が前方に展開される。

激しい音と共に魔法陣と龍角が激突する。

 

『ふん。この程度の防壁破れないとでも思ったかッ!!』

 

突進するグリフィスの力は徐々に増していく。

それどころか、体に稲光まで纏わせていく。

それでも、ラッテンは引かない。

 

「_____って、こんなところで戦いを始めるなお馬鹿ー!!」

 

近くで観戦していたアーシャはラッテンと違い、防壁では守られていない。

ゆえに激突の余波に晒されかねないので全力疾走で逃げ出すのだった。

他の参加者たちも巻き込まれない内に我先にと逃げ出すのだった。

ラッテンを守護する防壁は徐々にヒビが入り始める。

いかに霊格が強化されたとはいえ、完全に防御し得るレベルには到達していないようだった。

だが、それで良かった。

元よりラッテンの狙いは別にあった。

防壁など時間稼ぎでしか無い。

ただ、グリフィスを(``````)この場に留めれれば(````````)十分なのだから(```````)

 

『ヌゥゥゥゥゥン!?』

 

突如としてグリフィスの足場が崩壊を始める。

完全に予想外な上に突進に専念していたグリフィスは虚を突かれ、足元を掬われる形で沈んでいく。

その様子を見て、ラッテンは口元を歪める。

此処までラッテンの作戦通りだった。

足止めに徹して、グリフィスを特定の場所で固定している間にメルン達の力で足場を脆くする。

グリフィス自身が余波の大きい力を使ってるだけあって崩壊は一気に進む。

ぞれによって隙を作るのが狙いであった。

ラッテンはグリフィスが落下した穴に飛び降り、グリフィスの背に降り立つ。

 

『な、何を…………』

 

「音撃槍・疾風刺音!!」

 

ハーメルケインをグリフィスの背に突き刺した上で演奏を始める。

魔法陣が幾重にも重なり、グリフィスを拘束し、抵抗を完全に封じる。

そして、魔力が籠った音波がグリフィスの体内を駆け巡る。

体内を反響し、内部からズタズタにしていく。

 

『ガグギャガバァ!?』

 

肺の空気の全てが絞り出されるような悲鳴と共に全身から血を吹き出すグリフィス。

グリフィスは白目を剥いて痙攣しながら気絶した。

その有様にグリフィスの付き人と思われし者たちは顔を引き攣らせながら主人を置いて一斉に逃げ出そうとする。

だが、それを許すラッテンでは無かった。

 

「逃がすと思ってる?」

 

軽く音色を奏でる。

それだけで付き人達は意識を失い倒れていく。

土砂に隠れて戦いを見守っていたアーシャもまた顔を引き攣らせていた。

 

(容赦無いな……………)

 

慄きながら息を呑む。

かつての”火龍誕生祭”において襲撃してきた魔王の一味の一人が目の前ラッテンである。

あの場にいたアーシャはうっすらだがラッテンの事も聞いていた。

その聞いていた話と現在の実力の違いに身を振るわす。

それを気付いてか気付かずにか、ラッテンは特に気にする事も無くグリフィスたちへと近付き、懐を漁る。

必要以上に蹴りを入れながら完全に気絶しているのと息をしているのを確認していた。

さすがに殺しては後々の印象が悪いと思っているのだろう。

確認作業のついでにギフトカードも回収していた。

 

「大量、大量、自業自得ってね」

 

明らかに楽しそうに性格悪そうな笑みを浮かべながらギフトカードを眺める。

その中からアーシャのギフトカードを抜き取るとアーシャの方を向く。

 

「はい、貴女のギフトカード。返しておくわね」

 

「お、おう。ありが_____」

 

ラッテンがアーシャに向けてギフトカードを投げ渡そうとした時だった。

ドオオオオオオオオオオオオオォンッ!!

という、銅鑼の音が洞穴内に響き渡った。

 

「あー………」

 

「え………」

 

その音が何を意味するか悟ってラッテンは頬に汗を流す。

内心ではヤバい、どうしようこれ、となっていた。

ラッテンの手の中にはアーシャのギフトカードがあった。

 

「タイムアーップ!!此れにてゲーム終了!!現時点で最も金剛鉄(アダマンティウム)を所持しているのは____なんと!!我らが”ノーネーム”のラッテン選手です!!」

 

「やっぱ、そうなるわよね~」

 

ラッテンは苦笑いしながら呟く。

ラッテンの採掘分には確実にアーシャの物が入っているだろう。

だが、そんなことは露知らず、ウサ!!とウサ耳をアピールして銅鑼を鳴らす黒ウサギ。

後で殴ろうと心に決めながらラッテンはアーシャの方を見る。

此処で抗議しに行くかどうかはアーシャが決めるのが一番だと思ったからである。

 

「単刀直入に聞くけど、貴女はどうしたい?」

 

「あー、そうだな。抗議して勝っても恥ずかしいしあんたの勝ちって事でいいよ」

 

「本当に?」

 

真意を探るように瞳を真っ直ぐ見るラッテン。

それに対して何か底知れない物を感じて冷や汗を流すアーシャ。

アーシャは一息を吐いた後に諦めたように言う。

 

「いいんだよ、もう(``)な」

 

「ふーん、そこらへん深く切り込む気は無いけど納得(``)にはまだ足りないのよね。一回話さない?」

 

「それじゃあ、この後少し付き合ってくれよ。”ウィル・オ・ウィスプ”移住も含めて相談したい事もあるから黒ウサギ辺りも誘ってさ」

 

「じゃあ、ついでに霧崎も連れて行くとしましょうか」

 

ラッテンは意味深に笑いながら頷く。

それに不気味な事を感じたがそこに触れはせずにアーシャも洞穴を撤収する。

一人残ったラッテンはボソリと呟く。

 

「ま、柱を失ったからには苦労はあるんでしょうね~」

 

何かを察したかのように頭を掻きながら遅れてラッテンも退出する。

ガラじゃないとはいえ一度乗り掛かった船なので多少相談くらいは聞こうと思うのだった。

 

 





ラッテンvsグリフィスはラッテンの勝利という形でしたがディーン&アルマ抜きだと割とキツイ相手でもありました
ラッテンは霊格強化されても本体の耐久力はそこまでなので


それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!


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同士の行方と歪む写真と姿を見せし者

 

”ノーネーム”本拠・居住区跡地。

死神(グリムリーパー)クロア=バロンは、侍女頭のレティシア、”ウィル・オ・ウィスプ”のリーダーであるウィラ=ザ=イグニファトゥスと共に廃墟街を見て回っていた。

三頭龍との戦いの後、”ウィル・オ・ウィスプ”の面々は北側に住むのは危険だと判断し、”ノーネーム”に身を寄せていた。

”ウィル・オ・ウィスプ”の面々の移住に必要な住居を作る為の見取り図を作っているのだった。

 

「そういえば、行方不明になっている同士たちを探す当てが付いたと聞いたが」

 

「あぁ、その件か。確かに当てはついてはいるがはっきりとした事は私も知らないよ」

 

「なんだと?」

 

「”ズレ”を利用して”鍵”を探し当てたとは言ってたが、…………正直対応に困る話だったんでね」

 

「だから、具体的な事を教えろ」

 

「いやなに、どうやら”鍵”は本来(``)召喚されるはずだった者らしくてね。それを辿れば同士を見つけ出せるかもしれないってだけだよ」

 

本来(``)だと?映司や霧崎たちが召喚された事がおかしいとでも言うつもりか?」

 

「まさにその通りらしいよ」

 

肩を竦めるように言うクロア。

実のところでは彼も事の全容を把握しているわけではない。

だが、深刻な”ズレ”が発生し、それが多大な影響を及ぼしているのは分かっている。

”ズレ”が現時点で何処まで広がっているかは定かでは無い。

けれど、”ズレ”が大きくなればなるほど”ズレ”を発生させた元凶の思惑通りになるのだろうとは予測が出来る。

そして、”ズレ”の要になる”鍵”に”ノーネーム”が再建の為に行った召喚が関わっているのも聞いていた。

 

「詳しいことはアカレッド(`````)に聞いてくれ、としか言えないな。あいつ、三頭龍の戦いの跡に言うだけ言って消えやがったし」

 

「そもそも、奴は何者なのだ?」

 

レティシアが訪ねると同時にウィラがおどおどと手を上げる。

彼女としてはレティシアとクロアの会話に一切ついていけて無かった。

 

「あの、アカレッドって誰ですか?」

 

「そうか。君は会って無かったな。アカレッドは…………三頭龍の相手をし、強化された双頭龍を打倒した男だ」

 

その言葉にウィラも思い出す。

確かにそんな男が戦場にいたと思い当たったのだ。

 

「それで、奴が何者かという話だが正直私も何と説明していいのか分からないのだよな」

 

「どういう事だ?」

 

「原典候補者であるのは確かだ。そして、敵でも無い事もな。けれど、その正体は分からない。私やコウメイに接触出来ていた辺りそれなりの者だとは分かるが」

 

「そんな奴を何故信頼できる?」

 

「奴の言葉には説得力はあるのだよ。幾つもの魂が重なったような説得力がね。まぁ何はともあれ同士たちの捜索に進展があれば奴の方から連絡をしてくるだろう」

 

それで話を〆てクロア達はまた足を進める。

早目に住居を作る為にも見取り図は近日中に作っておきたいのだった。

やる事は山ほどあるのだった。

出戻りで立場が雑務からやり直しであるクロアはチマチマとかつての立場に近付く為に働くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

士は当然のように予選は突破していた。

響鬼の力やキバの力によって岩盤を崩し、大量の鉱石を採掘する事で勝ち上がったのだった。

予選が終わった後は街をふらふらと歩きながら写真を取っていた。

 

「やっと、騒ぎも収束してきたってところか」

 

新聞のような物を眺めながら呟く。

三頭龍との戦いが終わった後も後始末などがあり慌ただしかった。

そして、グロンギやアンデットが起こした事件などもあり箱庭は落ち着きを取り戻せていなかった。

やっと最近そういった騒ぎも少なくなり平穏に近付いてきたということだ。

写真を取りながらも今まで自身が撮ってきた写真を眺める。

そのどれもが異様としか表現しようが無い歪んだ写真となっていた。

士の撮った写真は毎度こうなるのだった。

 

「この世界もまた俺に撮られたがっていないのか?」

 

まるで世界が士に撮られることを拒絶しているかのように写真は歪む。

幾つもの戦いを乗り越え、幾つもの世界を巡った士ではあるがこれだけはどうやっても変わらなかった。

幾つもの世界と繋がりを持つ箱庭でさえ士の写真は歪む。

それは最早まともに写真が撮れる世界は存在しないとも思わせた。

これで折れる士では無いが、それでも多少は気にしはするのであった。

カフェに入り、コーヒーを啜りながら考える。

 

「世界の融合と消滅はあの戦いで終わったはずだ。だが、今感じているこの違和感は何だ?」

 

箱庭で起こる怪人による事件。

元々は存在していない物がまるでかつてから存在していたかのように現れる現象。

そう、アンデットの封印塚である。

あれは明らかにおかしい物であった。

まるで本来のあるべき姿から世界がどんどん歪んでいっているようだった。

士はかつて”滅びの現象”という物を体験した事があった。

ゲゲルを失敗させ、復活を阻止したグロンギが唐突に蘇る。

そんな事を”滅びの現象”は引き起こした。

”滅びの現象”が具体的に何が原因で、どういう物かは結局のところ分からなかった。

それでも、”滅びの現象”はディケイド激情態となった士が仮面ライダーキバーラによって倒され、世界が修復されて以降は発生した記憶は無かった。

だが、もしイレギュラーを起こすのが”滅びの現象”であるのならばアンデットの件も”滅びの現象”と同類なのかもしれない。

それはそれで修復されたはずの世界が再び終わりへと向かっている事を意味する。

何が原因であるにせよ、放置は出来ないのだった。

 

「まぁ何はともあれ今は十六夜の奴を何とかしてやるのが先だけどな」

 

だいぶマシになって来ているとはいえ十六夜は迷いの中にある。

その原因を察せてるがゆえに放っておけないのだった。

”金剛の鉄火場”に参加しているのもその為ではあった。

本戦においてしっかりと叩き直す為の参戦ではある。

だが、その前に答えを得ていたとしてもそれはそれとして力試しに相手をすることにはしていた。

今の十六夜は、新たな力が目覚めているところでもある。

その力の制御法の確立に付き合うのもまた一興というわけである。

 

「さて、そろそろ行くか」

 

「いいや、貴様はもう何処にもいけない。何故ならば貴様は今日此処で終わるのだからな!!」

 

立ち上がった瞬間に何処からともなく聞き覚えがあるような声が聞こえてきた。

周囲を見回そうとした瞬間に視界が、否、世界(``)が歪んだ。

頭痛のような鈍痛が瞳に走り、思わず目を押さえる。

 

「なッ!?」

 

痛みが収まり、手を目から話した時には世界から色が消えた。

昔のテレビのように色が抜けた白黒な灰色の世界が広がっていた。

世界は静止し、動きを止めていた。

色が付いているのは士だけであった。

士はそこまで驚きはしなかった。

こういう経験は何度かしていた。

そして、こういう経験する時は大体()が関わっていた。

周囲を改めて見回すと色が付き、動いている物を見付けた。

人混みに紛れるように立つ中年の男。

帽子を被り、眼鏡を掛け、コートに身を包んだその姿。

それは最早見覚えがあるというレベルでは無かった。

その男の事を士はよく知っていた。

 

「またお前か、鳴滝!!」

 

「ディケイド、こうして話すのは久し振りだな。そして、今回で最後となる」

 

うんざりしたように叫ぶ士。

対して鳴滝と呼ばれた中年の男は軽く手を上げる。

それと同時に鳴滝の背後に巨大な銀色のオーロラが現れる。

銀色のオーロラはそのまま鳴滝を包み込み、士の方へと向かっていく。

逃げることなど出来ずに士も銀色のオーロラに包まれる。

思わず身を守るように上げていた腕を下げると先程までとは全く違う世界(``)が広がっていた。

これも何度も経験していた。

こういう手は鳴滝がよく使う手であったのだ。

士は肩を竦めるようしながら鳴滝に言う。

 

「こんなところまで来るとはお前は本当にしつこいな、鳴滝」

 

「貴様が消えるまで私の役目も終わらないのでね」

 

士を睨み付けながら返す鳴滝。

この男は今まで幾度も幾度も士の前に現れていた。

そして、幾度も士の命を狙っていた。

だが、世界の敵では無いようで大ショッカーが初めて姿を現した時はその野望を阻止する為に動きもしていた。

しかし、何時からか士を消す為なら手段を選ばないようになっていた。

士を消す為なら悪の組織の力を使う時もあれば、自身を怪人に変える事もあった。

その正体も、士を狙う目的も一切不明であった。

なので、今回も士は何時もの事かと思っていた。

だが、今回は雰囲気に何処か違和感があった。

 

「だが、今回こそは貴様を消させて貰う。貴様は存在してはならないのだ」

 

士を消す気なのは何時も通りだった。

だが、今回は明らかに殺気が違った。

何より何時もは士を消す為に用意している刺客が見当たらない。

何時もならばライダーなり、怪人を連れて襲って来ているのだった。

けれど、今回はそれがいない。

それが意味することは、

 

「私の手で直々に貴様の息の根を止めてやろう、ディケイド!!」

 

鳴滝が自分の手で士と戦おうとしていることだった。

 

 





遂に正体判明!
バレバレだった?
それはともかくとしてようやくの直接接触でした!

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!


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金剛鉄の交渉と金の責任と怪しい気配

 

同盟の会合に足を向けていた十六夜と映司、アンクは、鉱山の数少ない憩いの場である”六本傷”のカフェ支店にまで来ていた。

三人は一際大きいオープンテラスに招かれていた。

テラスには同盟相手である”六本傷”の幼き頭首・ポロロ=ガンタックと、”ペルセウス”の頭首・ルイオスがいた。

会合の内容は”金剛鉄(アダマンティウム)”の専売契約についてだ。

ポロロが示した”金剛鉄(アダマンティウム)”の使い道は”精霊列車”だった。

”精霊列車”とは精霊の力を利用し、霊脈を通る列車だ。

その利便性は半端では無い。

霊脈を高速移動する列車は霊脈が引かれている場所に限り、数秒から数分で移動出来る。

それは人だけで無く物資も含めてだ。

箱庭の環境に大きな影響を与えると思える代物だ。

ポロロは抜け目無く”階層支配者(フロアマスター)”達にも話が通してある様子であった。

それら全ての話を聞いた上で十六夜はこう言った。

 

「お前______責任取れるんだな(````````)?」

 

十六夜の言葉の真意を察している映司とアンクの反応はそれぞれ別であった。

映司はただ続きを聞く様に構え、アンクは興味が湧いたように顔にうっすらと笑みを浮かべる。

ルイオスは首を傾げる。

そして、ポロロは息を呑み、思わず返答に迷った。

まさかこの段階でこの質問をされるとは思わなかったと内心で舌打ちするが、その苛立ちを隠す様にとぼける。

 

「責任……………か。何に対しての責任だ?」

 

「この起業によって起こる。副次的な環境変化に対してだ」

 

環境変化、それは確かに起こり得る物であった。

”精霊列車”が実用化されれば境界門が不要になる可能性も高い。

何故なら運べる量も速さも桁違いなのだから。

そんな事になれば箱庭は十年もすれば様変わりする可能性もある。

霊脈が通っていれば”精霊列車”は陸海空の何処にでも物資を運ぶ事が出来る。

霊脈が恩恵が集まる土地だというのならば、そこに住まう幻獣や土地神も多いだろう。

だからこそ、十六夜はポロロの案に警笛を鳴らす。

 

「俺が一番懸念しているのはその点だ。”精霊列車”の性能がお前の言う通りの物なら、今まで交通の問題で未開拓だった土地に雪崩れ込むコミュニティが大量に現れる。大量の移民と急速な開拓が現地の先住者たちとの抗争に繋がることは容易に想像出来ることだ」

 

「確かにな。人は欲が深い。特に目の前に宝が転がっている時なんて簡単に欲に溺れる。そこから争いに発展する確率は高いかもな。いや、確実に(```)起きはするな。大か小かの違いはあってもな」

 

「アンク」

 

映司がいさめる様に割り込む。

アンクはニヤニヤと笑みを浮かべながら一旦口を止める。

映司も止めはしたが、否定はしなかった。

分かっているのだ、アンクが言っている事は間違いだけでは無い事は。

十六夜は気にせず続ける。

 

「加えてだ。流通の一極化によって仕事を奪われるコミュニティだって出て来るぞ。甘い汁を吸っている”地域支配者”だって黙っちゃいない。そんな副次的な争いに、お前は責任取れるのか?」

 

「…………それは、」

 

十六夜たちの指摘に、ポロロはしばし黙り込む。

十六夜はあえて指摘しなかったものの、問題はそれだけでは無い。

”境界門”の使用料など最たる例だ。

それらの緩衝材とする為にポロロは”階層支配者(フロアマスター)”を押さえていたのだ。

 

「……………なるほどね。旦那も見える(```)人間なわけか」

 

「それくらいの見通しを立てられないで交渉になんかくるかよ。それに俺のいた世界じゃゴールドラッシュを筆頭に参考となる歴史は幾らでもある」

 

十六夜も、ポロロが根回ししていた点は正しく評価している。

だからこそより大きな視点で語り掛けた。

ポロロも彼が何を言わんとしているのかを察して、重苦しく奥歯を噛む。

 

「…………悪いけど、責任を取れるかどうかは答えられない。箱庭がゴールデンステイトの二の舞になる可能性だって俺は否定できないんだからな」

 

取り繕っても仕方がないと諦めたのか、ポロロは偽りなく本心を告げる。

急激な発展にともなう問題はまさしく欲が付いて回る。

だから、アンクはどうなるかが簡単に察せられる。

映司は中東などを旅していた経験もあるので似たような事例を見たこともあった。

ゆえに難しい顔をして考えるようになっている。

鉱山を掘る工夫が増え、彼らを食わせる為の商店が増え、消費が増え、民家が増える。

上手くことが運べば史上空前の大バブル期の到来だ。

しかし、事はそれだけに留まらない。

留まるはずが無い。

”精霊列車”は、今の箱庭の文化そのものを大きく変えてしまう可能性があるのだ。

数年後には都市を繋ぐ起点となるか、或いは兵どもが夢の跡となることは間違いない。

 

「人が増えれば需要が増える。需要が増えれば消費が嵩む。あらゆるバランスを欠いたままにな。その結果、様々な地域で衝突や摩擦が生まれる。絶滅の危機に晒される種族だって出てくるだろうよ」

 

「ゴールドラッシュで、土地を奪われたヤヒ族の様に?」

 

ポロロの呟きに一瞬、十六夜の瞳に熱が籠る。

刹那にも満たない時間だったが、彼はその一瞬、怒りにも似た激情を瞳に宿していた。

そして、映司も同じく瞳に何かを悔やむような色を宿していた。

おそらく救えなかった女の子の事を思い出したのだろう。

それら両方に気付いていたアンクは静かに呆れる様に息を吐くのだった。

髪を掻き上げた十六夜は舌打ちと同時に熱を隠し、結論を口にする。

 

「……………そうだな。ま、知っているなら話が早い。俺が言いたいのは要するに、そういう事件(``````)を起こすなってこと。それに対して何らかの答えを提示できないなら、俺はこの交渉を支持しない」

 

断固たる決意を感じさせる口調。

映司も似たような意見ではあった。

だが、十六夜の意見はさすがに言い過ぎでもあった。

映司がそれとなくフォローしようとするとタイミングを見計らったように十六夜は肩を竦める。

 

「とは言っても、それは俺個人の意見に過ぎねぇけどな。”ノーネーム”内の一票ってことで聞き流してもいい。映司は考えがあるか?」

 

「俺には聞かないのか?」

 

「お前は別枠だ」

 

「で、映司。お互いに代表なんだし、お前の意見も聞いておきたい」

 

意図は口を開く前から察していた。

ようは映司に緩衝役を頼んでいるわけだ。

仕方ないな、とばかりに息を吐いてから口を開く。

 

「利益だけならこれ以上は無いって話だね。ポロロ君なら上手くやるだろうし専売契約自体は参戦だよ。でも、十六夜君が危惧している点については俺も同意見ではあるよ。発展することはいいもとではあるけど問題点から目を背けるわけにはいかないからね。他にも支配者さんたちと交渉の必要もあるだろうし。だから、専売自体は問題無いけど、マイナス面への対策をしっかり考えていくのが一番かな」

 

「……………うん。”ノーネーム”の意思は分かった。前向きに考えつつ、一先ずは保留ってことでいいんだよな?」

 

「ああ。ゲーム開催中には方針をまとめて、閉会式の夜に意見を出し合うってことで」

 

ポロロの問いに、十六夜と映司は頷く。

この辺りが今の落としどころ判断したのだろう。

急いては事を仕損じると互いに分かっていた。

何と言っても話の規模が大き過ぎる。

今の箱庭の在り方そのものが変わるかもしれない規模のマネーゲームを始めようというのだ。

”六本傷”も”ノーネーム”も”ペルセウス”も”ウィル・オ・ウィスプ”も、その場で二つ返事とはいかないのだろう。

”精霊列車”の設計図の模写を取り出したポロロは、十六夜とルイオスにそれぞれ一束ずつ渡してから口を開く。

 

「この後、ちょっといいか?」

 

「何だ?まだ何か話すことでもあるのか」

 

「話は纏まって無いが、一応顔見せくらいはしておきたくてね」

 

とりあえず、一同が頷くとポロロは立ち上がってカフェの奥へと歩いていく。

十六夜達もその後を続いていく。

そして、ポロロは一つの扉の前に立つと時間を確認する。

 

「よし、ちょうどいいな」

 

「時間が何か関係あるのか?」

 

「入る為の条件が面倒なだけさ」

 

言いながらポロロは扉を開く。

扉の奥からは室内とは思えないような光が溢れてくる。

扉を抜けた先は一同が想像すら出来ないような光景が広がっていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

晴人は十歳より幼いと思われる男の子を肩車しながら歩いていた。

周囲を見渡すように歩いていると、突然男の子が声を上げる。

 

「あ、いた!!」

 

「そうか、どっちだ?」

 

「あっち!!」

 

「分かった!!」

 

ノリよく答えながら男の子が指差した方へと進む。

進んだ先には男の子母親と思われし、女性がいた。

晴人は母親から礼を言われた後に、男の子を降ろして手を振りながら去って行くのだった。

 

「ふぃ~」

 

特に目的があったわけでは無く散歩していたら偶然出会ったという形であった。

とはいえ、泣いている子供を放っておけないので一緒に探していたわけである。

ずっと肩車していたので、さすがに方が痛んでいた。

何処かで座ってお茶でもするかと思った時だった。

 

「ッ!?…………何だこの気配……………?」

 

何やら禍々しい気配を感じ、周囲を慌てて見渡す。

だが、怪しい物は見当たらなかった。

けれど、何かが起きているのは確かだった。

肌で感じる空気がそう告げているのだった。

 

 





はい、交渉回でした!
ポロロが何処に連れていったかは次回で!

街は街で何やら不穏な気配が漂ってきた模様


それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!


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ターミナルとイマジネーションと残念なる偽名

 

扉の向こうは駅の構内のような光景が広がっていた。

映司とアンクは目を見開き、ルイオスはキョトンとした顔をする。

十六夜も驚いた顔をしながらポロロに声を掛ける。

 

「おい、これはどういう事だ?」

 

「外界出身の旦那ならどういう場所かくらい知ってるだろ?」

 

「そうだが……………何で箱庭に、それもカフェの扉の向こうにこんなとこがあるんだよ」

 

「厳密には箱庭じゃない(``````)な」

 

「どういう意味だ?」

 

「それは私がお答えしましょう」

 

会話に割り込む声が響く。

一同がそちらを向くと黒い服を着た杖を持った男が歩いてきているところだった。

その後ろには赤、青、黄、紫の異形の者が歩いていた。

 

「オーナーさんが此処にいるという事は此処はデンライナーが関係あるんですか?」

 

「その通りですよ」

 

その顔は映司に取っては知った顔だった。

時の列車デンライナーの乗務員であるオーナーが目の前の男だった。

オーナーは駅についての説明を始める。

 

「此処は時の分岐点近くに現れるターミナルの中です。箱庭は全ての分岐点と関わりが深いので繋げること自体は容易というわけです」

 

「俺達をそんなとこに連れてきてどうするつもりだ?」

 

「それはあちらで座って話すとしましょう」

 

一同はカフェテラスとも言える場所に移動し、それぞれ座る。

モモタロスとアンクはお互いの姿を確認すると睨み合う。

 

「なんだ、お前もいんのか」

 

「いちゃ悪いかよ?」

 

「今度は勝手な真似すんじゃねぇぞ?あの時どんだけ大変だったか分かってんだろ?」

 

「ふん。そんな事は俺の知った事じゃない」

 

「なんだとぉ!?」

 

「はいはい、先輩も右腕さんも喧嘩しないで今は大事な話があるみたいだし」

 

喧嘩寸前のところでウラタロスが仲裁する。

今暴れられても面倒なわけである。

 

「良太郎さんや幸太郎はいないんですか?」

 

「良太郎の奴は用事あるから今はいねぇ。幸太郎は別の仕事があるらしいぜ」

 

映司の問いにモモタロスが答える。

オーナーは一旦咳払いしてから話を始める。

 

「では、改めて自己紹介を私はデンライナーのオーナーです。今回は駅長の代わりに代表としてこの場に来ました。モモタロス君達は護衛と思ってください」

 

「それで、話ってのは一体何なんだ?」

 

その答えはポロロから返ってくる。

ポロロは先程渡した設計図を指差しながら言う。

 

「さっき、”精霊列車”の話をしたろ?」

 

「あぁ」

 

「あれを製作運営にするにあたって不安要素は幾つかあるのもさっき話したよな?その中の一つ……………”大ショッカー”に関しての対策に協力してもらおうと思ってな」

 

「そういう事か」

 

十六夜はその言葉に納得する。

大ショッカーは確かに不安要素の一つである。

”精霊列車”の利便性を考えれば手を出してきてもおかしく無い。

物資の運搬中に襲撃されでもしたら溜まった物では無い。

霊脈での高速移動とは言え相手は大ショッカーだ。

何をしてくるか、何を使ってくるか分かった物では無い。

それゆえの対策なのだ。

 

「此方としても大ショッカーは問題視していましてね。彼らは時の運航を乱し過ぎているのですよ。ですから、協力は快くさせてもらいますよ」

 

「具体的にどう協力して貰うつもりなんだ?」

 

「主には護衛だな。設計としてはあんまり武装付けれないからそこらへんを補ってもらう」

 

「でも、オーナーさん達じゃ対応し切れないんじゃ?」

 

「そこも考えてもう一勢力交渉している。この場にも来てもらうって話にはなってるはずなんだが」

 

「彼らはもうすぐ来ると思いますよ」

 

「どうやらちょうど良いタイミングだったようだね」

 

オーナーが言った瞬間に別方向から声が響いた。

一同がそちらを向くとピタリと動きを止めた。

現れた人物の外見があまりに奇抜ゆえに冷や汗すら流す。

現れた人物は白い制服のような服に身を包んでいた。

そこまでは良かった。

良かったのだ。

問題はその頭だった。

その頭にウサギの被り物を被っていたのだ。

 

「ん?私はレインボーラインの総裁だ。よろしく」

 

首を傾げながら総裁は自己紹介をする。

どうやら固まってる意味を理解してないようだ。

十六夜はもう面倒になって気にしない事にした。

そうして、ようやく口を開く。

 

「えーと、まずレインボーラインってのはなんだ?」

 

「夢や想像力を、イマジネーションを持つ者だけが見える路線さ。私達はそれを守っている存在さ」

 

いまいち分からない説明だったが、ようは列車関連の組織という事は把握した。

顎に手を当てると総裁の後ろにもう一人男が立っているのに気付いた。

男はタンクトップの上に皮ジャンを着込み、ヘルメットを被ったいかにも作業服と言った服装をしていた。

男に十六夜が気付いたことに気付くと総裁は男の紹介を始めた。

 

「彼は虹野 明。今日は私の護衛として付いて来てもらっている」

 

「レインボーラインの整備員をやっている。よろしくな」

 

ヘルメットを押さえるようにしながら名乗った。

十六夜は息を吐きながらポロロの隣に移動する。

 

「おい、どうやって知り合った?」

 

「いきなりか」

 

「どちらも箱庭にいちゃ知り合えなさそうに見えるんだよ」

 

「まぁ、そうだな。だが、三カ月前戦いがあっただろ?あの時にデンライナーは箱庭に来てたんだ。それでコンタクトが取れて交渉を進めれたってわけだ」

 

「レインボーラインの方は?」

 

「オーナーの紹介だ」

 

「なるほどね」

 

話を聞いて十六夜も納得する。

内心に渦巻いていた怪しさは解消された。

だが、どういう連中なのかはさっぱり分からないのだった。

何はともあれ交渉自体は進んでいく。

 

「私達も彼らの存在は見逃せなくてね。協力は惜しみなくしよう」

 

とはいえ、両者ともに元々協力する気満々だったので話自体はスムーズに進んでいく。

”精霊列車”に関してはまだ不確定な部分が多々あるとはいえ、話自体を進めておいて損は無い。

一方で交渉とは無縁の護衛達は暇そうにしているのだった。

 

「ねー、遊んできていい?」

 

「駄目だよ、リュウタ。僕たち一応護衛なんだから」

 

「ZZZZZZZzzzzzzz」

 

「ほら、キンちゃんも起きて」

 

「あぁ、すまんな」

 

イマジン達は自由にしている一方で明は座ってコーヒーを飲んでいる。

ルイオスは次々と現れる者たちについていけないという様子だった。

 

「あのウサギ頭はなんなんだ?何で誰も突っ込まない?僕の方がおかしいとでも言うのか?」

 

「あれは触れない方がいい」

 

「いや、そういうお前はなんなんだよ?」

 

「俺はさっき言った通りレインボーラインの整備員の虹野 明だ。特に秘密とかは無いから安心しろ」

 

モモタロスとアンクは相変わらず睨み合っているのだった。

映司と十六夜は交渉の方に参加していた。

 

「まさか映司さんがオーナー達と知り合いだとは思わなかったぜ。それなら、もっとスムーズに話が通せたかもしれないのに」

 

「知り合いと言っても一回共闘したくらいだよ」

 

「えぇ、それ以降彼らとは会っていませんからね」

 

「何はともあれ話はこういう形でいいかな」

 

「十六夜の旦那は何か意見あるか?」

 

「特には無いな。俺は”大ショッカー”自体よく知らねぇしこれに関しては任せる」

 

「そうか」

 

「それでは、我らレインボーラインと時の列車、そし君達が力を合わせて”精霊列車”の安全を守っていこう」

 

「”精霊列車”絡み以外でも困った事があれば呼んでください。力を貸せる事もあるかもしれませんからね」

 

話は纏まった。

レインボーラインと時の列車が”精霊列車”が緊急事態になった時に力を貸すという契約は結ばれた。

”精霊列車”側の対応というワンクッションを入れて頼り過ぎにならない様に調整を加え、”大ショッカー”対策とする。

とはいえ、ポロロ自身にも考えはあり、どうもどうやら二勢力はもしもの時の保険のようだ。

大ショッカーとウロボロスの両方が襲撃し、対応し切れなくなって初めて頼る形に近いようだ。

 

 

「どうやら、話は纏まったみたいだな」

 

 

何処からともなく声が響く。

一同が周囲を見渡すが辺りに姿は無かった。

それでも、声は響く。

 

「それにしても、身の丈に合わぬほど世界に視野を広げ、背負う必要も無い背負い込み。規模も性質も不明確な相手を、それも複数を想定して対策を考えるか。増長も甚だしいな!!全く持って人間らしい愚行だなァ!!」

 

声はどうもどうやらカフェの段階から話を聞いていたようである。

このメンバー相手に気付かれずに盗み聞きし、ターミナル構内へと入り込む。

相手が並々ならぬ技術か相応の恩恵(ギフト)を持っているのは確かだ。

十六夜たちは一斉に警戒を強める。

 

「いや、ポロロ君も十六夜君も精一杯考えて話しているんですよ。それをあんまり馬鹿にしないでくれますか?」

 

「何処に隠れてやがる!!出てきやがれ!!」

 

「先輩、それで出てくるわけないでしょ」

 

映司が相手が並でないのを理解しつつも目を細めながら言い、モモタロスが直情的に叫ぶ。

ウラタロスは呆れたように言う。

オーナーと総裁はこの状況でも落ち着いた様子で紅茶を飲んでいた。

 

「そうだな。確かに言い過ぎた面もあるか。だがまぁ、俺も出資者の一人なんでね。意見くらいは言わせてくれよ」

 

カツンカツンと足音を立てながら一人の男が現れる。

その姿に十六夜は目を丸くし、映司は怪訝な顔をする。

アンクやモモタロスは睨んだままである。

現れた男の服装は着崩したワイシャツの上からジャケットスーツを着込み、煙草に火を点けていた。

オーナー達とは違い、箱庭側と思われる男が二〇〇〇年代を思わせる服装をしているのは奇妙だった。

 

「えっと、どちら様ですか?」

 

「名前か?_____あぁ、そうか。人間に降天すると名前も新しく考えにゃならんのか」

 

面倒そうにしながら煙草を咥える。

明らかに偽名を名乗るつもりであった。

しかも、暢気に今から考える様子である。

ただ、偽名を考える素振りにしては真剣な輝きがあった。

 

「ふざけた奴だな」

 

「詐欺師なら失格だね」

 

「こいつ、何か嫌い~」

 

「馬鹿にしてんのか?」

 

アンクやイマジン達が口々に言う。

男はそれに対して特に気にした様子は見せなかった。

そして、ガリガリと頭を掻きながらしばらく考え込んだ男は、試行錯誤の末、己の偽名を自慢する様に名乗った。

 

「よし……………決めた!!俺の名前は御門_____そう、御門釈天だ!!」

 

「_____な、」

 

何人かは首を傾げ、何人かは唖然とした。

その反応に気を良くして続ける。

 

「所属コミュニティは上層を繋ぐ”忉利天”。この度は”護法十二天”の使者として、”精霊列車”の開発に協力しにきてやった!!」

 

ドヤァ!!と、完璧な偽名だという自負を込めて名乗る帝_____否、御門釈天氏。

その仕草、その偽名、そしてその身に纏う黒ウサギ系の残念オーラ。

此れだけ推理する要素が揃っていて見破れない人間は、知識が無い者だけだろう。

武神衆・”護法十二天”の長にして箱庭の都市を統べる一人。

最強の軍神(笑)”帝釈天”その人であった_________!!

 

 




帝釈天登場!!

オーナーと総裁は繋がりがあるという形で
デンライナーとトッキュウオーが合体できるから繋がりがあってもおかしくないということで
ターミナルと箱庭は繋がり自体は強いけど
ターミナル側から箱庭へと行くと何時に繋がるか特定出来ない形です
箱庭側とターミナル側でお互いに目印があって初めて望んだ通りに繋がれる形です

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!


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十のカードと十五の錠前と枠外の力


士vs鳴滝開幕です!




「またカニレーザーにでも変身する気か?」

 

「あの姿では無い。貴様を倒すのに相応しい姿は別にある」

 

言いながら鳴滝は一枚のカードを取り出す。

鳴滝がカードに力を込めるとカードは禍々しいオーラに包まれる。

カードはそのまま形状を変えていく。

形状を変えたカードは錠前のような形状になる。

それは士にも見覚えがあった。

 

「ロックシードだと?しかも、それは……………」

 

「この力を持って貴様の息の根を止めてやろう」フィフティーン!!

 

骨のような外観の錠前を開くと音声が鳴り響く。

同時に鳴滝の腰に靄の様な物が纏わりつき、戦極ドライバーに姿を変える。

更に鳴滝の頭上に円形の次元の穴が発生する。

そこから巨大な髑髏ような物が姿を見せる。

鳴滝が錠前から手を離すと、錠前は吸い付けられるように戦極ドライバーに嵌まる。

 

ロックオン!!

「変身!!」

 

ギターの様な待機音が響く中でカッティングブレードを倒す。

戦極ドライバーにセットされたフィフティーンロックシード開かれる。

同時に鳴滝をアンダースーツが包む。

降下してきた髑髏が鳴滝の頭に嵌まり、全身に背骨のような物から伸びる骨が包んでいく。

そして、骨は鎧の様な姿に変わる。

全身に骨を纏ったようなその姿はまさしく仮面ライダーだった。

仮面ライダーフィフティーン、それがその姿の名だった。

フィフティーンに変身した鳴滝は地面に手をかざす。

すると、地面から禍々しいオーラが集まり、骨の様な大剣、黄泉丸となる。

 

「覚悟するがいい、ディケイドォォォォォォォォォォォ!!」

 

「いつにも無くやる気だな!!」

カメンライド!!ディケイド!!

 

士がディケイドドライバーを装着するのも待たずに、横薙ぎに一閃黄泉丸が振るわれる。

ベルトを操作しながら士は右腕で防御するかの様に構える。

ベルトにカードが押し込まれると同時に黄泉丸に斬り裂かれる寸前だった士の右腕に鎧が纏われる。

そのまま黄泉丸を受け止めながらベルトを閉めると士に幾つもの残像が重なり、姿をディケイドに変えていく。

真上から飛来したプレートが頭部に刺さり、完全に姿は仮面ライダーディケイドとなる。

 

「はぁ!!」

 

「ぐぅ……………」

 

黄泉丸に更に力を加えられる前に士は左の拳で鳴滝を殴り飛ばす。

そこからライドブッカーを手に取り、ガンモードにして追い打ちを掛ける様に撃つ。

鳴滝は転がるようにして銃撃を回避していく。

回避しながらライダーカードのような物を取り出す。

だが、それは士の物とはデザインが違った。

士の物とは違い、黒く禍々しい紋様がカードのデザインに加えられていた。

その紋様はまるで怨念のような印象だった。

ライダーカードは鳴滝の手の中で錠前へと姿を変える。

 

「フィフティーンの力を忘れたわけではあるまい」

 

「あぁ、覚えているさ」

 

「ならば、再びその力に屈するがいい!!」リュウキ!!

 

鳴滝はフィフティーンロックシードを外すとカードから変化したロックシードを開錠し、戦極ドライバーにセットする。

鳴滝の頭上に円形の次元の穴が発生し、仮面ライダー龍騎の頭部のような物体が姿を現す。

士はその間にカードをベルトに刺し込む。

 

アタックライド!!ブラスト!!

 

「無駄だ!!」

ロックオン!!龍騎アームズ!!戦わなければ生き残れない!!

 

ブラストのカードで銃口を増加し、無数の銃撃を放つが龍騎の頭部が銃撃を悉く弾く。

そのまま、鳴滝の頭部に被さり、鎧状に展開する。

フィフティーン龍騎アームズに姿を変えたのだ。

鳴滝はドラグセイバーを左手に持ち、黄泉丸との二刀流で士に斬り掛かる。

士は銃撃で牽制しながらカードを取り出す。

 

「なら、龍には龍だ!!」

フォームライド!!アギト!!ストーム!!

 

士はアギト ストームフォームへと姿を変える。

ストームハルバードを構えて二刀による攻撃を弾いていく。

得物の長さを生かして、二刀をどうにか凌ぎ続けるが手数の差によって段々押され始める。

すると、鳴滝が唐突にバックステップで距離を取ってくる。

士が怪訝な顔をするとドラグセイバーを士に向けて投擲した。

士は驚きつつもヒラリと回避する。

 

「ハァ!!」

 

回避している間に鳴滝は黄泉丸を左手に持ち変えて、右手にはドラグクローを装備していた。

そして、ドラグレッダーの頭部を模したドラグクローの口から火炎弾が放たれる。

 

「うおぉ!?」

 

二、三発はストームハルバードで弾くと以降の弾は回避していく。

鳴滝は一旦射出を止めて距離を詰め、ドラグクローで殴り掛かって来る。

ドラグクローによる打撃は回避しながら士は黄泉丸による斬撃を防ぎ続ける。

だが、避けて受けるにも限界が出て来る。

躱し切れないタイミングでのドラグクローの打撃をストームハルバードで受け止めてしまう。

鳴滝はそれを狙ってたとばかりに逃がさないようにドラグクローでストームハルバードを噛む。

士が慌ててストームハルバードを手放すが遅かった。

噛んだままドラグクローから火炎が放たれて、士は吹き飛ばされる。

士が地を転がるのも眺めながら鳴滝はカッティングブレードを二度倒す。

 

アドベント!!

「苦しむがいい、ディケイド!!」

 

音声と共にドラグレッダーが何処からともなく現れる。

現れるなり、士に向けてドラグレッダーが炎弾を放っていく。

士は走りながら必死に避ける。

 

「チッ、面倒な奴が来たな」

 

士がドラグレッダーに襲われるのを眺めながら鳴滝は龍騎ロックシードを戦極ドライバーから外す。

更に龍騎ロックシードに力を込めると龍騎ロックシードの色が変わっていく。

金色へと変わった龍騎ロックシードを改めて開錠する。

 

リュウキ!!

「変身!!」

ロックオン!!龍騎アームズ!!サバイブ!!烈火の力!!」

 

ロックシードが変質した事によって鎧も変質する。

形状が変化し、色合いも金色と真紅へと変わった。

それに合わせる様にドラグレッダーも姿を変える。

体積が肥大し、ドラグランザーと姿を変えた。

それを見て、士は息を吐き、姿をアギト グランドフォームへと変える。

 

「消し飛ぶがいい!!」ファイナルベント!!

 

「そっちがな」ファイナルアタックライド!!ア、ア、ア、アギト!!

 

鳴滝がカッティングブレードを倒すのと同時に士もカードをディケイドライバーに入れ閉じる。

ドラグランザーはバイクへと姿を変え、鳴滝が乗り込む。

士は足を広げて構えを取る。

その足元にはアギトの紋章が浮かび上がる。

 

「ふはっはははははははははははははは!!」

 

「ダァァァァ!!」

 

ドラグランザーが火炎弾を何発も吐き出しながら突撃してくる。

士はそれに正面から対抗するようにライダーキックを放つ。

右足に纏われたアギトの力が火炎弾を消し飛ばしていく。

そのままドラグランザーとライダーキックが衝突する。

凄まじい衝撃波が周囲に放たれる。

だが、士の方が分が悪かったらしく弾き飛ばされる。

ドラグランザーは多少怯んだが弾き飛ばされた士に向けて突進を再開する。

 

「このまま引き潰してくれるわッ!!」

 

「いいや、まだだぜ」ファイナルアタックライド!!ディ、ディ、ディ、ディケイド!!

 

弾き飛ばされた士はアギトからディケイドの姿に戻るが地面を転がりながらもライドブッカーを手に取る。

ガンモードにし、カードをディケイドライバーに押し込む。

銃口とドラグランザーの間にカード状のエネルギー体が出現する。

士は即座に引き金を引く。

ライドブッカーから放たれた光弾はカードを通る度に巨大化していく。

そして、先程(``)ライダーキック(```````)が当たった場所(```````)()直撃する。

今度こそドラグランザーの方が弾き飛ばされる。

つまり、鳴滝もろとも吹き飛ぶ。

二、三度地面を跳ねた後にドラグランザーは爆散し、激しい爆音と共に爆炎を上げる。

だが、その爆炎を引き裂く様に鳴滝が飛び出してくる。

 

フォーゼアームズ!!青春!!スイッチオン!!

「おのれ、ディケイド!!」

 

フォーゼアームズを身に纏い、ヒーハックガンを手にした鳴滝がダメージなど無いかのように銃撃を放ってくる。

背後の爆炎を吸収する事でヒーハックガンの威力は徐々に高まって来ている。

士はフォームライドのカードをディケイドライバーに投げ入れ、ドライバーを閉じる。

 

「変身」フォームライド!!キバ!!バッシャー!!

 

キバ バッシャーフォームに姿を変えてバッシャーマグナムとライドブッカーの二丁を構えて応戦する。

バッシャーフォームの力で弾丸に水を纏わせる事でヒーハックガンの力を相殺する。

状況が硬直する前に両者共に動く。

鳴滝はファイヤースイッチをヒーハックガンにセットし、士はカードをディケイドライバーに投げ入れる。

 

「ハァ!!」ファイヤー!!リミットブレイク!!

 

「ダァ!!」ファイナルアタックライド!!キ、キ、キ、キバ!!

 

極大の炎弾と極大の水弾が両者のちょうど中心で激突し、大量の水蒸気が発生し、霧のように視界を塞ぐ。

士はそのままバッシャーマグナムを構え、周囲を警戒する。

 

V3アームズ!!力!!技!!ダブルタイフーン!!

「V3プロペラチョップ!!」

 

「何ッ!?」

 

水蒸気の霧を突き破り、鳴滝が姿を現す。

それだけでは無かった。

激しく回転する両腕によって水蒸気の霧が吹き飛ばされたのだ。

至近距離過ぎて躱す事すら出来ずに士は両手によるチョップで吹き飛ばされる。

 

「フリーザーショット!!V3サンダー!!」

 

「グアァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

体勢を立て直す暇すら与えずに両手から冷気を放ち、周囲の水蒸気ごと士を凍結させて地面に縫い付け、電撃を放つ。

身動きが取れない士は叫び耐えるしか無かった。

鳴滝はフィフティーンの姿の上に濃緑の鎧を纏っているのだった。

それはV3アームズ、本来の仮面ライダーフィフティーンは使っていなかった昭和ライダーの力だった。

 

「平成ライダーの力しか使えないなど一言も言って無いんでね。世界の悲鳴を(``````)代弁する(````)私ならば昭和ライダーの力を利用する事すら容易いのだよ」

 

氷に包まれ、身動きの取れない士を見下し嘲笑う様に鳴滝は言う。

その言葉には怨念では収まり切らない感情が籠っているのだった。

 

 





昭和ライダーアームズすら利用する鳴滝でした!!
鳴滝がフィフティーンに変身しました
ライダーカード(?)をロックシードに変えて各ライダーの力を使っています
ライダーロックシードはオリジナルを際限出来る代わりに性能自体は劣化しています
それに加えて戦極ドライバーを利用したライダーという事で弊害も発生してはいます

それでは、質問があれば聞いてください
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次回、明かされる鳴滝の真実!


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許容量と悲鳴と割り込む銃声

 

「V3電熱チョップ!!」

 

電撃を纏った手刀が士を吹き飛ばす。

ディケイドの装甲に焼き焦げたような跡が付くがおかげで体を包んでいた氷も溶けた。

士は地面を転がりながらライドブッカーを構え直して引き金を引く。

当然当たらないが元より牽制としか思って無いので構わない。

鳴滝は前方にバリヤーのような物を張る事で銃撃を悉く弾いていく。

その手には新たなロックシードがあった。

 

ゼクロス!!

「変身」ロックオン!!ZXアームズ!!10号!!サイボーグ忍者!!

 

鳴滝の頭上にZXの頭部型の物体が出現し、降下する。

鳴滝の頭部に嵌まると展開して鎧へと姿を変える。

フィフティーン ZXアームズに姿を変えるなり、鳴滝はマイクロチェーンを士に向けて放つ。

士はライドブッカーをソードモードに変えてマイクロチェーンを弾く。

 

「今度はZXの力か」

フォームライド!!ファイズ!!アクセル!!

スタートアップ!!

 

士はディケイドライバーにカードを投げ入れてファイズ アクセルフォームへと姿を変えて高速移動を始める。

だが、ZXの力と感覚を得ている鳴滝は高速移動による攻撃を軽々と受け止めていく。

士はカードをディケイドライバーに投げ入れると、ポインターを足に装着すると鳴滝に向けてフォトンブラッドによる光を放つ。

 

ファイナルアタックライド!!ファ、ファ、ファ、ファイズ!!

 

「無駄な事を」

 

円錐状の光が鳴滝を拘束する。

その光に向けて士は蹴りを放つ。

対して鳴滝は余裕そうな様子で手を動かす。

その掌には衝撃集中爆弾があった。

士が蹴りを放つと同時に威力と方向が操作された爆発が起きる。

それによって士の蹴りは相殺され、吹き飛ばされる。

 

リフォメーション

「チッ、時間切れか」

 

アクセルフォームの制限時間が切れると同時に士は新たなカードを投げ入れる。

鳴滝も新たな錠前を構える。

 

フォームライド!!キバ!!ドッガ!!

 

スーパー1!!

「変身」ロックオン!!スーパー1アームズ!!赤!!心!!少林拳!!

 

士はキバ ドッガフォームへ、鳴滝はフィフティーン スーパー1アームズに姿を変える。

士はドッガハンマーを引き摺るようにしながら振り回す。

鳴滝はそれをヒラリヒラリと受け流していく。

スーパー1の梅花の型の力を使っているのだ。

 

「お前が世界の悲鳴の代弁者ってのはどういう事だ?」

 

「そのままの意味だ。私は貴様のせいで(``````)破壊されゆく(``````)世界の悲鳴そのものと言えるのだからな!!」

 

「意味が分からねぇよ」

 

ドッガハンマーを蹴り上げてから大振りで鳴滝へと振り下ろす。

鳴滝は腕を赤い腕、パワーハンドへとチェンジさせてドッガハンマーを軽々と受け止める。

パワーハンドは一万メガトンの力を持つ腕なのだ。

ドッガハンマーを受け止めるくらい軽い物である。

 

「貴様は存在するだけで破壊をもたらすのだ。世界を繋ぎ(`````)変質させ(````)崩壊させる(`````)!!それが貴様なのだ!!」

 

「変質だと?」

 

「分からんのか?海東大樹やデンライナーなどはただ世界を移動するだけだ。だが、貴様は世界を繋げてしまう(`````````)!!それが破滅の鍵だ!!」

 

「くっ……………抽象的過ぎるんだよ!!」

 

鳴滝はドッガハンマーを弾き飛ばすと腕を元々の銀色の物へ戻して手刀で丸腰の士に斬り掛かる。

銀の腕、スーパーハンドは300tの力だけでは無く日本刀以上の斬れ味すらあるのだ。

つまり、手刀でも切り裂くには十分なのだ。

士は即座に姿を変える。

 

フォームライド!!デンオウ!!ガン!!

「俺と海東の何が違う!!」

 

「世界には許容量と言う物があるのだ!!海東君はただ移動しているだけであり、まだ許容量の中で済む。貴様は違うのだ、ディケイド!!貴様は世界に取って負担が大き過ぎるのだ!!貴様が世界に足を踏み入れるだけでも許容量ギリギリだというのに、貴様は渡った世界と世界に繋がりを作ってしまう。その繋がりは小さい物ではあるが許容量ギリギリの世界にとっては耐久限界を超える物だ!!」

 

「それで世界が破壊されると?」

 

「そうだ!!貴様が訪れた世界は歪んでしまうのだ!!その歪みが滅びの現象を(``````)引き起こして(``````)しまうのだ(`````)!!」

 

「俺が滅びの現象の原因?冗談はよせ」

 

電王 ガンフォームに姿を変えて遠距離からの銃撃でやり過ごそうとする士。

鳴滝はスーパーハンドと梅花の型で軽々と銃撃を弾いていく。

一流の拳法家の力を引き出すスーパー1アームズの力があってこその技だった。

 

「冗談では無い。貴様は存在するだけで世界に危機を齎す。身に覚えは無いか?貴様を世界の破壊者と(``````)認識して(````)排除しようとした者を(``````````)!!」

 

「まさか、あの剣崎一真は…………」

 

「そう、世界が貴様を消す為に生み出した存在だ!!ウィルスに対する抗体のようにな!!」

 

「なら、お前は何者だ!!」

 

「それは最初に言っただろう?世界の悲鳴の代弁者だと!!」

 

鳴滝の拳が士に直撃する。

右拳が一直線に士の胸板に突き刺さる。

衝撃は一気に背中まで突き抜ける。

仮面の下で吐血する。

鳴滝はそこで一旦後ろに下がる。

まるで助走距離を稼ぐように。

危険な臭いを感じながらも拳の直撃を受けたばかりの士は動けなかった。

鳴滝は一切の躊躇無くカッティングブレードを三度倒す。

 

スーパーライダー月面キック!!

「スーパーライダァァァァァァァァァァァァ!!ゲツメェェェェェェェェェェン(月面)!!キィィィィィィィィィィィク!!」

 

鳴滝は空高く飛び上がる。

ロックシードの音声に合わせる様に叫ぶ。

そして、満月を背面に映しながら急降下しながら蹴りの体勢に入る。

避ける暇すら無く士にスーパーライダー月面キックが直撃する。

ディケイドの装甲にヒビが広がっていく。

そのまま吹き飛ばされ、五度程地面を跳ねた後にようやく勢いは収まり地に転がる。

波打ち際に転がる形になりながら変身が解除される。

 

「ぐッ…………ガハッ……………………」

 

吐血しながら上半身を起こす。

それが限界だった。

足には力が入らず起き上れるような状態では無かった。

鳴滝はアームズを解除して通常のフィフティーンの姿に戻り、黄泉丸を士の首筋に当てる。

 

「これで終わりだな、ディケイド」

 

「それはどう………かな………」

 

息絶え絶えながらも悪態を吐く士。

口元の血を拭いながら鳴滝に視線を返す。

士の眼はまだ死んではいなかった。

その眼に諦めは一切無かった。

 

「さっきの話……………納得出来ない部分があるんだが?」

 

「ほう、何処だ?」

 

「前提が、だ。アポロガイストみたいに世界の融合を加速させる力を持っている奴がいる大ショッカーが原因の可能性もあるんじゃないのか?」

 

「奴らは貴様の力を利用しているに過ぎない。貴様に世界と世界を繋ぐ橋を作らせ、侵攻しているに過ぎない。それによって歪んだ世界同士の融合を加速させるなど容易い。力の方向性に手を加えればいいのだからな。ゆえに始まりは全て貴様なのだ。奴らが利用している物は全て貴様が下地を作ったに等しいのだ!!」

 

「屁理屈だな」

 

「理由はどうあれ貴様を消すのには変わりないからな」

 

「それにしても、お前がこうも直接的な手に出て来るとはな」

 

「今回は事態が事態なのでな。貴様が箱庭に来なければこんな手は使わんかったよ」

 

「俺が箱庭に来たからだと?」

 

「そうだ。箱庭は全ての世界と繋がりを持つ存在だ。箱庭の歪みは全世界に影響する。それだけは防がねばならないからな」

 

(ん?)

 

そこで士は何か違和感を覚えた。

鳴滝の言っている事は本人の口調からして嘘では無い。

けれど、違和感はあった。

まるで、鳴滝自身が(`````)何かを勘違いしている(``````````)ような。

 

「少し話し過ぎたな。では、死ぬがいい!!ディケイドォォォォォォォォォォォ!!」

 

「いやいや、鳴滝さん。それだけはやらせないよ」

 

鳴滝が黄泉丸を振り上げた時だった。

何処からともなく声が響いた。

そして、銃声と共に黄泉丸が弾き飛ばされた。

銃声がした方に士も鳴滝も視線を向ける。

銀色のオーロラがそこにはあり、そこから海東が姿を現すのだった。

手元でディエンドライバーを回しながら海東は笑みを浮かべる。

 

「士、久し振りだね」

 

「遅いんだよ」

 

「おや、僕が来ると思ってたのかい?」

 

「お前は、俺の死に様を見ないで終わる気なんて無いだろ?」

 

「そうだね。僕は君の死に様はこの目で見ておきたい。だから、困るんだよ。僕のいないところで死なれちゃね」

 

士の隣に立ち、海東は士を見下す。

距離を取っていた鳴滝は忌々しそうに話しかける。

 

「海東君、どうやって此処に?」

 

「生憎士の目印なら手元にあるので」

 

言いながら海東はディケイドのカードを鳴滝に見せ付ける。

それは士の所持する変身用のカードとほぼ同一の物だった。

同質の物は共鳴する。

それを利用して座標を固定してこの場に駆け付けたというわけである。

 

「そういえば、士。鳴滝さんから何か聞かされたかい?」

 

「俺が世界を歪めて滅びの現象を巻き起こす元凶だとさ」

 

「彼の言う事はあんまり真に受けない方がいいよ」

 

「どういう事だ?」

 

「たぶん、半分ほどは合ってる。でも、もう半分はたぶん間違っている」

 

「根拠はなんだ?」

 

「簡単な事さ。彼は自分の事を世界の悲鳴の代弁者と言っただろう?」

 

「言ったな」

 

「それが合ってるけど間違ってもいるんだよね。彼は悲鳴そのものなんだ」

 

「そうか、大体分かった。つまり、あの”剣崎一真”の同類ってわけか」

 

「そういうこと。歪んだ世界は確かに悲鳴を上げた。そして、その悲鳴の集合体が鳴滝さんだ。ようは被害者の一方的な視点ってことさ。そんな偏った視点の言う事が全て真実なわけないだろう?」

 

「確かにな」

 

「いいや、私の言葉は真実だ!!戯言で罪から逃れられると思うなよ、ディケイド!!」

 

激昂するように叫ぶ鳴滝。

その叫びに込められた憎悪は先程より強く感じられた。

海東が手を伸ばすと、士は手を取って立ち上がる。

ふらつきはするが立つのが問題無い程度には体力は回復した。

 

「まだ戦えるかい?」

 

「当たり前だ」

 

不敵に笑いながら二人は並び立つ。

それに対する鳴滝はまるでその身に溜め込む憎悪が具現化したかのように禍々しいオーラを放っているのだった。

 

 





海東乱入でした!!
鳴滝の正体と滅びの現象についての説明回でもありました!
具体的な事は次回ですが
鳴滝の正体や滅びの現象に関してはディケイド本編でも正体不明なので独自解釈がだいぶ入ってます。
この回の説明は口頭で言われただけなので合ってるかどうかは後々です

V3の技には未使用の26の秘密も混じっています

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!


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視点の違いと認識の差と出された結論


テレーン回です


 

鳴滝が言っている事も一部は合っているのだろう。

世界の悲鳴に集合体である鳴滝にとってディケイドが世界を歪めるのは肌で感じ取れるレベルの事なのだろう。

だが、”悲鳴”には怨念なども混じっている。

それらが混じった時点で視点はどうやっても偏る。

偏り、大事な事を見逃してしまう。

 

「士は確かに世界を歪める存在だ。”世界”がわざわざ自身の世界の英雄を元に抗体を生み出す程度にはね。でも、彼らはすぐに士を消しはしなかった」

 

「それがどうしたと言うのだ!!」

 

「分からないのかい?士は一度記憶と力を失っているんだよ(`````````````)?それなのに消しはしなかったんだ。この意味が分かるかい?」

 

「そういう事か。大体分かった」

 

「何を勝手に納得している!!」

 

鳴滝が激昂する。

士と海東は涼しい顔で受け流す。

攻める側は完全に逆転していた。

 

コネクト、プリーズ

「分からないならそれがお前の限界ってわけだ」

 

銀の銃弾が士の背中に迫ったと思いきや軌道を変える。

軌道を変えた銃弾は士をするりと避け、その正面にいた鳴滝に向かう。

鳴滝は黄泉丸で銃弾を弾くと、士の背後を睨み付ける。

そこには空間を繋げてこの世界に入って来た晴人がウィザーソードガンを構えて立っていた。

 

「ウィザード、何故此処が分かった?」

 

「世界移動は何度か体験していてね。その揺らぎを感じて入ったら案の定というわけさ」

 

「ディケイドを連れ出すのに世界を大きく揺らがせ過ぎたか」

 

「まぁそんな事はどうでもいいよ。話はよく分からないけど…………あんたはどうやら俺の仲間の敵みたいだね」

 

「私はディケイドの敵に過ぎないよ」

 

「さて、話を戻すとして世界が生み出した士に対する抗体である紅渡や剣崎一真は力を失った士にわざわざ力を取り戻させた上で世界を旅させた。貴方はその意味が分かって無い」

 

「アレは世界を救う為に必要な行為であっただろう?最終的にディケイド始末するのを含めてな」

 

かつて、士と仲間たちが行った世界を巡る旅。

その始まりは紅渡だった。

彼も世界が、キバの世界の英雄である仮面ライダーキバを元に作り上げた抗体の一人だったのだ。

彼の言葉に従い士たちは世界を巡った。

紅渡の真の目的は士を、ディケイドを利用し新たな物語を紡ぐことによって世界を再生させることだった。

しかし、本来は破壊によって紡がれるはずだったも物語を士は仲間となり、救ってしまった。

役目が果たされず世界が消滅に傾いた時に九人の英雄を元にした抗体がディケイドを消す為に集結したのだった。

それにより、ライダー大戦が開幕した。

ディケイドを消す為に融合した世界のライダーたちが動く。

士も世界の破壊者としての役目を受け入れ、激情態となりその力を持って全てのライダーを倒した。

そして、仮面ライダーキバーラによって世界の破壊者は倒され、新たな物語が紡がれた事で世界は再生された。

その後、役目を終えた士は仲間たちの想いによって復活した。

それ以降は抗体たちは士の前に姿を現してはいない。

姿を現さない理由、それは抗体たちも役目を終えた事により消えたのかもしれない。

 

「アレは世界を救う為に必要な行為でもあり、士を試してもいたのさ」

 

「試すだと?」

 

「彼らは何も始めから士を消す為に行動していたわけでは無いってことさ。彼らは本当に世界が危機を迎えるまでは士を放置していたしね」

 

士を消すのなら何もアポロガイストを倒した直後でなくても良かったのだ。

何時でも士を消すチャンスはあった。

それでも、彼らはそこまで待っていた。

その理由は士を見極める為だった。

結果的にとはいえ、士は幾つもの世界を救った。

それ自体は彼らも認めてはいたのだ。

たとえ、それが本当に世界を救う事でも無いとしても。

 

「確かに最終的に世界は救われた。それでも、ディケイドが世界を歪め続けている事は変わりあるまい」

 

「けど、その歪みは大ショッカーが余計な事をしなければ致命的にはならなかった物だ」

 

「滅びの現象は奴らなど関係無しに起こる物だ!!それでも十分に世界は滅びるのだ!!」

 

「あぁ?何言ってんだ?馬鹿か、テメェは!!」

 

そんな叫び声と共に空間に穴が開き、デンライナーが現れる。

そこからモモタロスと映司、アンクが飛び降りてくる。

 

「確かにこいつはいるだけで世界はヤベェかもしれねぇがそれで滅びる程、俺らは弱くねぇよ!!」

 

「そうだな。その通りだ!!」

 

士は不敵に笑いながらモモタロスに同意するように続ける。

最早鳴滝の言葉などに惑わされる要素は無くなっていた。

 

 

「確かに俺は世界を歪める存在かもしれない。なにしろ、世界の破壊者だからな。だが、俺が俺如きが生み出した歪みで起こるような現象に滅ぼされる程、”世界”は弱く無い!!幾つもの世界を巡って俺は人々を見てきた。強い奴もいれば、弱い奴もいた!!それでも、奴らは生きていた!!どんな危機が訪れようとそれを乗り越えて生きていたんだ!!そんな奴らが簡単に滅ぼされる程弱いはずが無いだろう!!現実を見れていないのはお前なんだよ、鳴滝!!世界の悲鳴の代弁者だかなんだか知らないが、世界の弱い部分、悲観的な部分しか見ていないお前が”世界”を分かった気になっているなよ!!」

 

 

出した結論を士は言い切った。

鳴滝が見逃していた物、それは人々の強さだった。

いや、見てはいたのだ。

そして、理解もしていた。

けれど、鳴滝は心の奥底でそれを信じれていなかった。

それゆれに弱い部分、悲観的な部分ばかりに目を奪われていたのだ。

実際に具体的な滅びの現象はクウガの世界のガミオ復活くらいだった。

アレは規模が規模なだけに多数の死者も出た。

それでも、人々は乗り越えた。

他の世界では問題こそ発生した物のそれは、世界で起こり得る問題の延長線でしか無かったのだ。

確かに士の、ディケイドの存在は世界の許容量をオーバーさせる。

けれど、零れ落ちて発生した問題も人々の力で解決させれるのだ。

その強さが人々にはあるのだ。

 

「だが、箱庭で発生している問題はどうだ!!」

 

「それこそ、大ショッカーのせいって奴ですよ。そもそも箱庭の許容量は普通の世界より遥かに大きい。それに異常を発生させるなんて士だけじゃ無理だ。明らかに他の要因あってこそ起こり得る事です」

 

普通の世界をコップだとするならば箱庭は湖だ。

普通の世界ならば士と言う氷を落とせば揺らぎ溢れる。

だが、箱庭なら氷を落とした程度では揺らぎなど微々たる物だ。

つまり、湖を揺らがせ溢れさせるほどの何かが起きているという事だ。

鳴滝は周囲を見渡す。

何時の間にかこの場には士、海東、晴人、モモタロス、映司、アンクとそれなりの人数が揃っていた。

このまま戦闘を続けるのはどうにも分が悪いという話であった。

 

「ふむ…………今日は分が悪いようだ。この場は一旦引くとしよう」

 

そう言って変身を解除し、背後に銀色のオーロラを発生させる。

その目には変わらず憎悪と怨念が籠っていた。

士を睨みながら口を開く。

 

「忘れるな、ディケイド。幾ら理屈を並べたところで貴様が世界の破壊者であることは変わりない。貴様が存在し続ける限り、世界は歪み続けるのだ!!」

 

それだけ言って鳴滝は銀色のオーロラの向こうへと消えて行くのだった。

それに合わせて周囲の風景も変化する。

何処ともしれない海岸から士が元いたカフェに戻ったのだった。

 

「チッ、戦いにはならなかったか。今回は助太刀しに来ただけだから俺は帰るぜ」

 

「そうか」

 

言ってモモタロスはデンライナーに乗り込み、何処かへと消えて行くのだった。

映司は士に近付き、肩を貸す。

 

「大丈夫ですか、士さん?」

 

「一応は、な。それより、お前は十六夜と交渉に言ったんじゃなかったのか?それがどうしてあいつと一緒にデンライナーで現れた?」

 

「交渉が終わった時にオーナーさんが士さんに危機が迫っていると教えてくれたんで駆け付けたんですよ。詳しくは後で話します」

 

そこまで長い話でも無いのだが、士の傷を見て後に回す。

一通りの交渉が終わった後に映司たちはターミナルから帰ろうとしていた。

その時にオーナーから士の危機を教えられて、モモタロスたちの力を借りて鳴滝の世界に突入したのだ。

何故士の危機をオーナーが知っていたかは分からなかった。

 

「さて、僕は僕でやる事があるし、一旦お別れだ」

 

「また何か盗みに行く気か?」

 

「さぁて、それはどうかな。少なくとも近い内に会える気はするよ」

 

手をヒラヒラと振りながら海東は背中を見せて去って行くのだった。

士はうんざりとした顔をしてそれを見送るのだった。

 

「晴人くんとアンクはどうする?俺は士さんを宿に送ってくるけど」

 

「俺はもう少しそこらへんを見てくることにするよ」

 

「俺もだな。宿に行っても特にやることは無いしな」

 

それぞれ確認するとそれぞれ別れるのだった。

アンクと晴人はそれぞれ適当に街を歩きに行き、映司は士に肩を貸しながら宿へ向かうのだった。

 

「悪いな、映司」

 

「いいですよ。俺達は仲間なんですし、これくらい普通ですよ」

 

とはいえ、士としては怪我自体より怪我がゲームに影響するかどうかが心配なのだった。

体力自体は回復してきているが、全身が痛む事には変わりなかった。

 

 






一応の決着なのでした!
さすがにフィフティーンの力があるとはいえ全員を相手にする気は無い鳴滝なのでした
士の影響云々はほぼ独自解釈です

鳴滝がフィフティーンの力を使えるのは悲鳴の具現化みたいな物です
世界そのもの力を使ってる的な?

それでは、質問があれば聞いてください!
感想待ってます!!


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様変わりと決意の引退と二度滅びし者


アランの親父さん死ぬの速過ぎィ!!




______”風浪の鉱山”居住区画の露天街。

山脈の谷間に造られた露店街は蛇の様に細長い道にずらりと店が並んでいる。

衣類や食器類などの雑貨は勿論のこと、鉱山で採れる鉱石を加工して作られた装飾品も数多く売られていた。

 

「霧崎、これなんかどう?」

 

「いいね。けど、こっちも似合うんじゃないか?」

 

「そう?でも、色合いが好みじゃないわね」

 

「そうか………………なら、これなんかどうだ?」

 

「ん~いいじゃない!!」

 

その装飾品の髪飾りをラッテンと霧崎は選んでいた。

その後ろに黒ウサギ、アーシャ=イグニファトゥスとアルマティアがいた。

アーシャの買い物に付き合う為に露店街へと足を運んだのだが、何時の間にかお熱い二人が二人で熱中していた。

 

「あはははは……………すみません、アーシャさん」

 

「いや、こっちが付き合わせてるんだし別にいいよ」

 

「いえ、これは確実にあの二人が悪いです」

 

「アルマさん、何か不機嫌な様ですがどうかしましたか?」

 

「べ、別に不機嫌などではありません!!」

 

黒ウサギは何故アルマが不機嫌か分からずに首を傾げる。

アーシャはアルマがチラチラとラッテンと霧崎に視線を送っているのに気が付いていたがあえて口出しはしないのだった。

むしろ、口を出せば面倒な事になる気しかしなかった。

そうこうしている内に髪飾り選びは終わったようであった。

ラッテンの髪には翡翠色の硝子玉が付いた簪のような物が刺さっていた。

霧崎のヘアバンドにも翡翠色の硝子玉が付いたヘアピンのような物が付いていた。

アルマはそれを見て頬を引き攣らせるが一瞬で元に戻る。

 

「さーて、ゲームもあって昼まだだけどどうする?」

 

「俺はラッテン達を待ってたからまだだぞ」

 

「この際ですし、皆さんで買い食いすればいいのでは?」

 

「YES!!黒ウサギも御煎餅しか食べていないので大歓迎です!!」

 

「審判業そっちのけでしたけどね」

 

「そうだな」

 

アーシャとアルマが黒ウサギに言葉の棘を刺す。

ラッテンとグリフィスの戦いを放置して差し入れの御煎餅を齧っていたのだから当然の報いなのだった。

アルマの方は単純に注意する的な意味合いもあったが。

アーシャは呆れながら一つの衣服屋を選んだ。

 

「私はちょっと買う物があるから、買い食いするならその辺で待ってろよ」

 

「おう」

 

「分かったわ」

 

「分かりました」

 

「YES!!ではお待ちしている間にオススメの店を探しておくのです!!」

 

ウサッ!!とウサ耳アピールをしながらアーシャと別れる。

一同は店から離れすぎない出店を物色し始める。

鉱山の近隣で獲れる食材は限りあるが、幸いなことにこの近くには河も森もある。

 

「あ、そうだ。アルマ」

 

「何ですか、霧崎殿?」

 

「ほら、お前の分だ」

 

言いながら霧崎はアルマに蒼い硝子玉が付いた髪飾りを渡した。

予想外の贈り物にアルマは目を丸くする。

 

「私などにいいのですか?」

 

「皆に渡してるからな」

 

「へ?」

 

ラッテンの方を見るとラッテンの背に張り付くメルン、メルル、メリルも硝子玉を付けていた。

それぞれ色は違うがラッテンやアルマの物と同じ硝子玉なのには違いない。

ようは霧崎は近しい女性に渡しているだけなようだ。

とはいえ、硝子玉の色でラッテンのだけは特別だと察せはしたが。

それでも、貰えただけで今は十分だった。

 

「ありがとうございます、霧崎殿」

 

「アルマとはまだ付き合いが短いし、親交の印みたいに思ってくれ」

 

「はい」

 

硝子玉を大事そうに握りしめながら返事するのだった。

それも見ながらラッテンは小さく頬を膨らませる。

意味は分かっていても納得出来ない物は出来ないのだった。

一同は”金目禿”の姿焼きを食べつつ、アーシャを待つ。

 

「アーシャさんのご相談とは何なのでしょう?やはりコミュニティのことでしょうか?」

 

「そうじゃない?ジャックが居なくなって色々あるだろうし」

 

「ウィラも気落ちしていたしな」

 

「私は聞いた話だけですが柱を失い、方針も決まっていないのであれば不安になっても仕方ないかと」

 

「コミュニティの主力と言うのは戦闘力に限ったものではありません。執務、外交、工房整備etc。……………………様々な分野でその才を発揮するものが組織の主力と成り得るのです」

 

「ふむ……………そういう意味ではそのジャックという方はオールマイティな人材だったのですね」

 

「そうだな。参加者(プレイヤー)主催者(ホスト)も出来て内外全般取り仕切ってたらしいからな」

 

「…………………………」

 

ラッテンは何か思うところがあるのか少し黙るのだった。

霧崎は写真を数枚取り出してアルマに見せながらジャックの事を説明する。

子供を愛し子供に愛されたカボチャの道化師。

ジャックの存在は”ウィル・オ・ウィスプ”のみならず”ノーネーム”にとっても大きかった。

ラッテンの義手の設計の基本形を作ったのもジャックだ。

彼が設計図を用意していなければアルマの定着は出来なかっただろう。

借りは多くあるがもう返せないのだ。

ラッテンが”金目禿”を骨ごとバリバリと喰らい、それに関してアルマに注意されている頃。

衣服屋の中からアーシャが出てきた。

 

「よっ。お待たせ」

 

「そんなに待ってないわよ」

 

ラッテンは(`````)軽く答える。

だが、他の面々はそうもいかなかった。

霧崎は思わず箸を手から落とす。

黒ウサギはウサ耳を跳ねさせて驚いている。

アルマは表面的にはそこまで変化は無いが目を見開いてはいた。

それほどまでに、衣服屋から出てきたアーシャは異様だった。

 

「それで、その服どうしたの?」

 

「おう。アーシャ様の初スーツ姿だ。似合うだろ?」

 

「んー大体85点ってとこかしら?」

 

「おい、どういう基準だ」

 

「独断と偏見と趣味」

 

「ようは適当ってことか」

 

額に手を当てて溜息を吐くアーシャ。

とはいえ、その姿は物静かだった。

普段のゴスロリツインテールから一転、今はタイトなスーツに身を包みネクタイを首に締めている。

ロングストレートに青髪を下したその姿からは子供っぽさが消え、僅かだが洗練された雰囲気を感じさせている。

 

「そういう反応はそういう反応でやりにくいな。普通は霧崎たちみたいな反応をするもんじゃね?」

 

「私はコミュニティの壊滅を二度体験している女よ?」

 

「あー・・・そうか、そうだよな。あんたにとってはそうか。でもまぁ、私としてはあの衣装は着納めって事で色々と感慨深いんだけどね」

 

「あぁそういう事ですか」

 

アルマが納得したように呟く。

黒ウサギも事情を察したかのように息を呑む。

 

「アーシャさん。もしや参加者を引退なさるのですか?」

 

「は!?」

 

「そうだよ。ギフトゲームプレイヤー・”アーシャ=イグニファトゥス”は店仕舞い。此れからはコミュニティの参謀として運営に関わるつもりだから、よろしくな!!」

 

背伸びした様子でネクタイを締めるアーシャ。

霧崎だけは訳が分からず首を傾げる。

 

「一応聞くけど私の所為?」

 

「違う!!引退は前々から決めてたんだよ。今回のゲームで成績を残せなかったら参加者は引退するって」

 

「なら、良かった。もし私の所為なら別のゲームで完全に叩き潰してから引退させるつもりだったから」

 

サラッと恐ろしいことを言うラッテン。

霧崎は考える様に顎に手を当てる。

その様子を神妙な顔で窺っていた黒ウサギは、静かに問いかけた。

 

「…………………アーシャさん。よろしければ、事情をお聞きしても?」

 

「事情ってほどのことでも無いけど……………まぁ、よくある話だよ。私が参加者をやってたところでコミュニティの食い扶持を稼げそうに無いからさ。_______私、才能無いし」

 

一同静かにアーシャの話を聞く。

アーシャの瞳は何時に無く真剣であった。

引退を決意するには、並々ならぬ決意があったに違いない。

近くの縁台に腰を下したアーシャは天を仰いで少し遠い目をする。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

その後、アーシャは自身の憧れを、参加者に拘ったわけを話すのだった。

”鬼姫”連盟の収穫祭のことを、それに対する想いを語った。

その瞳はとても輝いて見えた。

それらを聞いた上で霧崎は問う。

 

「引退はちゃんと納得した上での行動なんだな?」

 

「勿論さ。私が参加者を続けてもうちの子供達が食べていけない。_____ジャックさんはもう居ない。あの人は蒼炎の旗印(シンボル)に殉じて死んだ。なら私は組織の二番手として動き始めないと。私が夢を見ていられる時間は…………………終わったんだから」

 

一流の参加者として、この修羅神仏の集う箱庭に名を刻む。

この世界の住人なら誰もが一度は抱く本懐を彼女は諦めた。

新しい道を歩む為に、アーシャは青髪を下してスーツ姿になったのだ。

その視線、その瞳を見て霧崎は頷く。

 

「納得しているなら俺から言うことは何も無いな。今のあんたなら後悔はしないだろうし」

 

「あら、意外にあっさりなのね」

 

「そこまで口出しするべきことでも無いだろ?」

 

「私としては霧崎ならもっと何か言うかと思ってたんだけど」

 

「後悔さえ無いなら言わねぇよ。むしろ、何か言うとしたらお前じゃないのか?」

 

「そうねぇ………………」

 

ラッテンは一旦考える様にする。

その間に黒ウサギとアーシャは視線を交わし合って微笑みあっていた。

それらは”守られる側(子供)”から”守る側(大人)”になる決意をした者の笑みだった。

 

「二度滅びた身が何を言っても説得力は無いだろうからあんまり言わないけど。柱を失った気持ちくらいは分かるわよ。私は主を失ったのも二回だし。だから、今から貴女が歩む道も茨だとは言っておくわ。失うことには慣れない方がいいし、失うことへの恐怖はあった方がいいからね」

 

言外に自分のようになるな、と伝える。

ラッテンは慣れてしまった方であるから。

コミュニティが滅びるのも盛者必衰程度の認識である。

 

「まぁ、それはそれとして今回の勝ち方は私的にも腑に落ちる物では無かったし、優勝して箔付けておいてあげるわよ」

 

「ほう。それは今回のゲームという事でいいのですか、マスター?」

 

「当たり前よ」

 

「一気に大きく出たな」

 

いきなりの優勝宣言に悪乗りする面々。

ラッテンもラッテンで悪乗り全開で答える。

 

「えぇ、やってやるわよ。というわけで、適当に準備するから手伝いなさい」

 

「「は!?」」

 

驚く黒ウサギとアーシャ。

そんな二人を別に口を大きく歪ませて思いっきり悪人顔をするラッテン。

やれやれと言った様子でそれを眺める霧崎とアルマ。

何やら物騒な企みに巻き込まれそうな一同なのであった。

 

 





日常回でした!
霧崎が硝子玉を渡したのは契約している面々でした


それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!


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軍神の気紛れと勝ち逃げと怪盗のマシン


今回は視点変更多めです



「良かったですね、士さん」

 

「全くだ。こっちは明日もゲームがあるってのにボコリやがって」

 

士と映司は旅館で休んでいた。

かなり傷付いていた士であったが今は綺麗さっぱり傷が消えていた。

旅館の入口でばったりと御門釈天に出会い、士の傷を見た釈天が軽いノリで治したのだった。

手に持っていた瓶と臭いからして既に酒が入っていたのだろう。

おそらく酒が入っていたがゆえのノリでの行動だが士にとっては運が良かったのだった。

 

「じゃ、俺もこれで」

 

「自分の部屋に行くのか?」

 

「いや、俺も少し街を見てきます」

 

「悪いな、付き合わせて」

 

「助け合うのがライダーですから」

 

そう言って映司は士の部屋を出ていくのだった。

士はカメラを取り出して現像を始める。

時間も出来たので今日撮った分を確認するのであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方、その頃十六夜は旅館へと向かっているところであった。

先程ゲームを終えたところであり、体を休めるのも兼ねていた。

とはいえ、本題は御門釈天に色々聞く為でもある。

拳を握ったり開いたりしながら自身の調子を確かめる。

精神的なスランプは感じていたが、此方に関しては不調というより変調であった。

 

「やっぱりまだ感覚が掴めないな」

 

戦闘になれば発動出来はするのだが調節は難しかった。

イメージが大切なのは分かるが何かが引っ掛かっているかのようだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

旅館に着くと待っていたのは見覚えのある顔だった。

白夜叉の補佐をしていた女性店員もとい現在は女性店長だった。

旅館そのものが”サウザンドアイズ”の店舗であり、帝釈天と面識のある彼女が来ていたのだった。

しばらく会話をしながら案内される。

その間に”天軍”の成り立ちの話も聞かされるのだった。

 

「ははあ。ディストピアについては色々と説明を受けていたが、魔王一体を倒す為にそりゃまた大仰な組織を作った物だ」

 

「私もそう思います。しかしそれでも押し切られたというのですから、額面通りの大魔王だったのでしょうね。________ですが、それと同格の大魔王を倒したというのだから、貴方の幸運には恐ろしいものがあります」

 

皮肉を込めて女性店長が笑う。

遠回しに”貴方が魔王を倒したのは偶然に過ぎない”と言いたいのだろう。

それはここ数カ月で散々認識していた事だった。

ン・ガミオ・ゼダの時も魔神の時も自分の力不足は散々感じた。

そして、映司達や霧崎との差も感じた。

だから、十六夜はその皮肉を否定するでもなく笑って受け止めた。

 

「ああ。俺もそう思う」

 

「殊勝で結構。その心掛けを忘れずに。_______と、着きましたね」

 

旅館の奥の一室に辿り着く。

天然温泉の入り口に掛けられた暖簾には”本日貸切”の札が掛けられていた。

桶と手拭いを渡された十六夜は其処で女性店長と別れるのだった。

その際、彼女はこんな言葉を残した。

 

「しかし_____どんな英傑であれ、魔王退治とは古来幸運が絡むもの。手にした勝利を疑う必要はないかと思われますよ、十六夜様」

 

名前を呼ばれ、驚いたように女性店長の背中を見送る。

姿勢を正したまま去って行く彼女を見据えたまま、十六夜は肩を竦めた。

 

「……………やられたな。初めて名前で呼ばれたと思ったら、同時に見透かされるとは」

 

見事に一本取られてしまった。

しかも勝ち逃げと来た。

此れでは立つ瀬がない。

次に出会ったら名刺でも頂こうと胸に刻み、十六夜は男湯の暖簾を潜った。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「そういえば、ラッテンさんはペストさんが心配では無いのですか?」

 

「いきなり何よ?」

 

「いえ、この数ヵ月特にそのような様子が無いので気になって」

 

振り回される中で黒ウサギはふとラッテンに尋ねるのだった。

ラッテンは今更という顔をしつつ答える。

 

「別に心配はしてないわよ。マスター自身は(```````)無事なのは確実だし」

 

「分かるのですか?」

 

「一応ね。無事なら何とかしているでしょ。マスターが目的を諦めるはずが無いし、私は再び合うのを待つだけよ」

 

軽く言うラッテン。

黒ウサギは一応納得はするのだった。

その様子を見ていた霧崎はラッテンに後ろから声を掛ける。

 

「無理はしてないんだよな?」

 

「当たり前よ。今更霧崎に隠し事をするわけないでしょ?それにアルマと記憶共有されるから隠し事しても意味無いし」

 

「それもそうか」

 

「そうよ」

 

「で、何隠してる?」

 

「へ!?」

 

「さっきの言葉、明らかに含み持たせてたよな?」

 

「いや~・・・ま、隠してもしょうがないか」

 

諦めたように息を吐くラッテン。

霧崎の背後にいるアルマの視線もあっての事ではあるのだろう。

 

「マスター自身は確かに無事だけど、唆されているかどうか(``````````)は別よ」

 

「どういう事だ?」

 

「前の復活し立ての頃ならともかく最近のマスターは頭首くんに感化されてたしね。頭首くんごと口車に乗せられてる可能性はあるにはあるわ」

 

「あいつがそんな簡単に乗せられるか?」

 

「口が上手い人の心当たりは割とあるのよね。特にあの人の系譜(``````)とかね」

 

「そうか…………………って、そういや契約が問題あるのか」

 

「そう言うこと。マスター次第ではあるんだけど、もしかしたら霧崎も巻き込みかねないのよ」

 

「だから、あんま言いたがらなかったわけか」

 

申し訳なさそうな顔をするラッテン。

確かに契約に従うとしたら立場的に面倒な事は起きかねない。

けれど、その契約にも抜け道はある。

何より霧崎としてはラッテンを裏切る気は無い。

 

「ま、大丈夫だ。巻き込まれようがヤバくなろうが俺が助けるよ。俺の力は守る為の物だからな」

 

「霧崎~」

 

ラッテンの頭をポンポンしながら微笑む霧崎。

ラッテンは嬉しそうに頬を緩ますのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

爆発音が響く。

爆風でマントを揺らしながらルパンは駆ける。

彼は大ショッカーの基地に侵入し、データを盗んでいるところであった。

 

「ふむ。あそこまで本部を秘匿している連中が堂々と支部を構えているのに違和感はあったがまさか俺を狙った罠だとはな」

 

ルパンガンナーで戦闘員を撃ち抜きながら壁を駆け上がる。

大ショッカーの基地を発見し、侵入をしたはいいが基地そのものがゴキブリホイホイの様に罠であったのだ。

どうもどうやらサイバロイドZZZとルパンガンナーというサンプルを手に入れる為に用意していたらしい。

とはいえ、ルパンも罠自体は確保していたので脱出そのものは容易かった。

ちゃっかりデータも入手はしていた。

 

「さらばだ、諸君!!」

 

基地の外壁の上に立ちながら叫ぶ。

叫んだ直後に跳び、外壁の外側の崖に飛び降りる。

ルパンは侵入から脱出まで変身も重加速も使わなかった。

侵入は敵の狙い通りとはいえ計画通りに行ったので使う必要は無かった。

脱出は明らかに変身や重加速を使わせようとしているのが見え見えであり、そこで素直に使うのは癪に障るので使わないで無茶な手を使って脱出したのだ。

ついでに基地の所々に置き土産は残していた。

 

「それでは、土産を楽しんでくれたまえ」

 

迎えに来たマシンの上に着地し、指を鳴らす。

直後に今までとは比では無い爆発音が響き渡る。

基地の要所に仕掛けていた爆弾が一斉に爆発するのだった。

マシンに腰を掛けながら息を吐く。

 

「作っておいて正解だったな」

 

マシンはバイクに近い形をしていた。

実際に元はバイクであった。

表面は黄金に塗装されている。

前輪後輪のタイヤが横倒しになり、飛行する為のホバーとして機能している。

マシン後部には翼のような物が広がり、後部にはジェットのような物が取り付けられている。

機体そのものは単独で動かせ、サイバロイドZZZボディとリンクしている為、ルパンの意志で自由に呼び出せる。

今回もルパンが飛び降りてくる地点で待機しているように操っていた。

 

「さて、データは無事かどうか」

 

ダミーの罠用の基地とはいえ機材そのものは生きていたので機械生命体の力を使う事でネットワークを探り目当ての情報を盗んだのだ。

ウイルスの類が無いか入念にチェックを入れてからデータを直接取り込む。

今回データを手に入れたのは自身の拡張の為だった。

サイバロイドZZZボディは確かに強化ロイミュードとして通常のロイミュードよりは強力だ。

しかし、それは進化前を比べた上での話だった。

ゆえに超進化や次世代のシステムを得る為にデータが必要だったのだ。

そして、今回無事にデータは手に入れた。

 

「よし、無事ではあるな。中身の確認は落ち着いたらするとしよう」

 

マシンに跨り、ルパンは何処かへと向かっていく。

箱庭に舞い降りた怪盗は更なる力の可能性を手に夜闇へと消えて行くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「チッ、捕獲は失敗したか。しかも、データまで中途半端とはな。…………怪人も配置しておくべきだったか。とはいえ、最低限(```)は成功したから良しとしよう。元より俺の仕事では無いしな」

 

何処かのモニタールームにて三島は呟くのだった。

生きた機材がダミーの基地にあったのはわざとではあった。

だが、その意図自体は依頼された三島も把握していないのだった。

生け捕りにが望ましいが、最低限データを盗らせる事が出来ればいいとの話であった。

三島としては特に何かしら計画しているわけでは無いので引き受けたが、その最低限の部分には何か引っ掛かりを感じるのであった。

 

「全くわざわざデータを渡して何をしたいのやら?」

 

つまらなさそうに息を吐きながら三島は立ち上がり、自室へ向かうのだった。

 

 






ルパンのマシン登場でした
まだまだ拡張の余地は残ってたりします
名称は後々

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます


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男湯と湯煙と運命の悪戯


温泉回です


 

十六夜が湯殿に入ると御門釈天、ルイオス、グリーが酒盛りをしていた。

釈天の周囲には接待の為に集められた女性が集まっていた。

釈天が武勇伝を語っていたようである。

その後、ゲームを交えつつ釈天とアジ=ダカーハの正体に関する考察について話す。

そして、湯から出る直前に釈天は酔った勢いで十六夜に褒美をやると言い出す。

十六夜は少し悩むとグリーを親指で指し。

 

「この男______鷲獅子(グリフォン)の英雄に、相応しい獣王の翼を」

 

______願いを口にした瞬間。

”サウザンドアイズ”の湯殿は、眩いほどの極光に包まれた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

時は少し遡る。

温泉街の旅館にて霧崎とラッテン達は一旦別れた。

ラッテン達が温泉に行くので霧崎は別行動というわけである。

ラッテンに振り回されていた黒ウサギとアーシャが解放されたのは、十六夜が参加していたギフトゲームの終了を告げる銅鑼が鳴らされた頃だった。

アーシャはくたくたになった様子で宿に戻り、黒ウサギはウサ耳を萎れさせてラッテンとアルマの背後を歩く。

初めて仕事をサボタージュしてしまった黒ウサギは、心の底から恨めしそうにラッテンを睨む。

 

「うう…………憂鬱なのです。十六夜さんになんと言われるか…………」

 

「マスター言われてますよ」

 

「え~別に何とかなってたようだし良くない?」

 

「全然良くありませんよ!!」

 

スッパーン!!とハリセンと同時にウサ耳を伸ばしてラッテンの頭を叩く黒ウサギ。

どうもどうやら新しくなって伸縮ツッコミ機能が追加されたらしい。

 

「まぁ何はともあれ温泉よ!!温泉!!」

 

「そうですね。土埃も落したいところですし」

 

「YES!!”ノーネーム”お風呂女子会を開くのですよ!!」

 

ウサッ!!とウサ耳を伸ばして提案する黒ウサギ。

特にアルマとはまだこういう場を設けていなかった。

加入したのが最近なので仕方なくはあるのだが。

しかし、女湯の入口に着くと、”本日貸切”の札が出ていた。

 

「あやや?どなたかが借り切っているご様子なのですよ?」

 

「ん~?たぶん接待じゃない?」

 

耳を澄ませてラッテンが軽い調子で言う。

男湯から歓声が響いているのは聞こえるが具体的なところは分からない。

けれど、ラッテンの耳は少々特殊なので会話も多少は聞けるのだ。

おそらく”六本傷”が貸し切っているのだろうとして一同は中に入って行く。

女湯の脱衣所に入ったラッテン達は各々の衣服を脱いで籠に入れる。

途中で誰かの衣服がある事に気付くがあえてスルーするラッテン。

脱ぎ捨てるように全裸になり、さっさと湯殿に向こうとした所でアルマに止められる。

 

「何よ?」

 

「せめて、タオルくらい巻いてください」

 

「女だけだし別にいいでしょ」

 

「女性だけでも最低限という物があるんですよ」

 

渋々と言った感じでラッテンは布を体に巻く。

それぞれ用意して湯殿に入ると、全員が感嘆の声を上げた。

 

「これは素晴らしい…………!!」

 

「いいわね~これ!!」

 

一番に声を上げたアルマが早足で進み出る。

西欧出身の彼女にとって露天風呂という文明は物珍しいのだろう。

物静かな彼女には珍しく熱の籠った声だった。

その隣でラッテンもテンションを上げる。

割とさっぱりしているラッテンではあるがこういう物は好んでいるのだった。

 

「お二人とも楽しそうですね」

 

「そうねぇ…………こういう質がいい物は私の好みにストライクなのよね~」

 

「屋内の浴室とは違った趣があってとても良いです。マスターの記憶で知識はありましたが想像以上です。少し湯気が濃いので足元には気を付けねばなりません_________っ、マスター下がって!!」

 

突如声を荒げて二人を庇うアルマ。

ラッテンも風切り音で察していたが体は魔に合わない。

右手から稲光を発したアルマは湯煙の向こうから伸びる蛇蝎の剣閃を弾き飛ばす。

一拍遅れてラッテンは、義手の掌に仕込んでいるギフトカードからハーメルケインを取り出し構える。

視界が不明瞭な為に何者の斬撃か定かではないが、その剣の冴えにアルマは瞳を尖らせる。

今の剣閃は直撃を狙った物では無い。

恐らくは、彼女達の肢体を隠している布だけを切り裂こうとしたのだ。

 

「連接剣………!!此れだけの剣技を持ちながら婦女子の素肌を晒そうとするとはなんという破廉恥な!!一体何者です!?大衆浴場とはいえ許されぬ行為があります!!……………………………ありますよね、マスター?」

 

「いや、別にいいんじゃない?どうせ風呂だし」

 

「聞く相手を間違えました。…………ありますよね、黒ウサギ殿?」

 

「え、ええ。そうですね」

 

「にしても、今の剣どっかで覚えがあるような」

 

アルマの問いに空返事で答える黒ウサギ。

それを他所にラッテンは記憶を遡る。

薄布一枚を的確に狙う蛇蝎の剣閃。

どこかでそれを見た気がしていた。

そして、辿り着く。

それを見たのは”ヒッポカンプの騎手”開幕直後だった。

というよりも、連接剣を使い研ぎ澄まされた剣技をこんな馬鹿な行為に使う騎士は一人しか思い当たらなかった。

湯煙の向こうを見つめながら、ラッテンは適当な調子で問うた。

 

「もしかして女王騎士の仮面の人?確か………………フェイスレスだっけ?こんな所で何してるわけ?」

 

「_______それは、此方の台詞です。この時間帯は私が貸し切っていたはずですが?」

 

華蘭、と桶を叩き付ける音が湯殿に響く。

湯煙の向こうで姿は確認できないが、その声は紛れもなく女王騎士フェイスレスの物だった。

ラッテンはハーメルケインをギフトカードに戻す。

何処か静謐な雰囲気を漂わせるフェイスレスだが、今の声音には焦燥らしきものが感じられた。

そして、ラッテンは息遣いから何か別の感情を押し殺しているような何かも感じていた。

何はともあれ、珍しい声音だとは思われた。

とはいえ、勘違いして入って来たのはラッテンたちだ。

一応入浴していいかどうかを問うべきなのだろう。

ラッテンは後頭部を掻きながら湯煙の奥へと進む。

すると、また連接剣による蛇蝎の剣閃が放たれた。

 

「これはどういう意味かしら?」

 

「そのまんまですよ」

 

金属音と共にラッテンは問う。

今度は義手の左腕で防いだのだった。

切断する気の剣閃ならともかく布を剥ぐ為の剣閃なので義手でも防げたのだ。

だが、今の剣閃は殺気が微量だが混じっているのを感じた。

今の言葉にも何処か自嘲するような色を感じた。

具体的には何も分からないのでそこは聞かないが何やら近付いて欲しく無い理由があるようだ。

 

「背中くらい流すけど?」

 

「いりませんよ」

 

「黒ウサギはフェイスレス様には助けられた覚えがございます!!お礼になるかどうかは分かりませんが、背中の一つでも流させてくださいな!!」

 

「結構です」

 

「あら、意外と冷たいのね」

 

「そんな事はどうでもいいので人の話を聞いてください!!」

 

何やら慌てて湯水を掻き湧けて離れていく音がした。

女王騎士の慌ただしい姿などレア中のレアでは無いだろうか。

ラッテンの悪戯心に火が付くと同時に一つの可能性に思い当たる。

もしやと思い湯煙の向こうへと問いかける。

 

「貴女……………もしかして、仮面外してる?」

 

「______ッ!?」

 

その瞬間。

湯殿に居合わせた全員に衝撃が走る。

そう、それ故の貸切なのだ。

どんな時でも仮面を外さなかったフェイスレスが今、姿を晒している。

この美味し過ぎる状況にラッテンの悪戯心は最高に高まる。

口の端が釣り上がる。

その笑みのまま叫ぶ。

 

「アルマ、邪魔しないでよね?」

 

「分かっていますよ」

 

「よし」

 

言うなりに緑色の硝子玉を湯煙に向けて投げる。

そして、霧崎から貰った硝子玉を指で弾く。

直後に緑色の硝子玉を中心に小規模とはいえ、風が発生し、湯煙が薄くなる。

 

(風の恩恵!?何故彼女が?)

 

フェイスレスは内心で叫びながら正面を警戒する。

あくまで小規模なので完全に湯煙は晴れてはいなかった。

なので、場所は分かっても顔は見えない状況だ。

少しずつ後退しながら近付いてくる物音に警戒する。

だが、その警戒は不意討ちによって破られる。

 

「ひゃッ!?」

 

「意外と可愛い声出すじゃない」

 

いきなり、尻を撫でられて思わず声を上げてしまう。

体を震わしてしまうが、一瞬で我に返る。

反射的に振り向こうとする体を押さえ込み、逃れる様に走ろうとする。

それよりラッテンの手の方が速かった。

曲がりなりにも悪魔であるラッテンは音を立てずに水面を歩ける。

なので、踏み出しの音すらも無い。

反応し切れず、手が脇を通り抜け、胸をまさぐる。

 

「うひゃあッ!?」

 

慣れない刺激にまたも声を上げてしまうフェイスレス。

その声にゾクゾクしながらラッテンはフェイスレスに足払いを掛ける。

まさぐられる胸に意識が集中していたフェイスレスは避けることすら出来ずに足払いを受けてしまう。

フェイスレスの体が浮くのと同時にラッテンは自分の方に正面が向いて倒れる様に調整を入れる。

激しい音と共にフェイスレスは尻餅を着くような形で倒れる。

つまり、ラッテンと向き合う形となる。

 

「_______ッ!!」

 

「え?」

 

フェイスレスは恨めしそうにラッテンを睨む。

しかし、ラッテンはその視線に反応することは出来なかった。

フェイスレスの素顔を見た瞬間にラッテンは固まっていた。

端整な顔付きに蒼い瞳、それ自体は何の問題も無い。

ただ、その”顔”がラッテンを固まらせた。

見覚えなどあるはずも無い。

なのに、何故か運命的な何かを感じさせるのだった。

 





温泉回前編でした
え?全然温泉じゃないって?
まだ前編ですから!(笑)

ラッテンの反応については次回で!


それでは、質問があれば聞いてください
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未知の記憶と繋がる単語と取り乱す騎士

「一曲分…………という約束だったものね。夢は見られましたか、御客様?」

 

「………………………ええ。とても素敵な夢だったわ」

 

「あーあ………………負けちゃった。ま、さっきの一撃で殆ど致命だったんだけど。加えて全力の演奏とかやっちゃったもんだから………………………悪魔の霊格が持たなくなったみたい」

 

「……………………」

 

「じゃあね、可愛いお嬢さん。ご静聴感謝します♪マスターによろしくね」

 

「此方こそ。素敵な演奏をありがとう」

 

 

◇◇◆◇◇

 

 

頭が割れそうな痛みと共に身に覚えの無い記憶が浮かび上がってきた。

それはあまりにも鮮明で、まるで実際に体験したかのような記憶だった。

あまりの痛さに顔を歪め、額を押さえる。

その様子を怪訝に思ったのかフェイスレスが声を掛けてくる。

 

「どうしました?この顔は(````)貴女には(````)何の関係も(`````)無いはず(````)ですが(```)

 

しかし、そんな言葉など今のラッテンの耳には届いていなかった。

意味の分からない記憶に困惑しながらも一つの可能性に思い当たりはした。

もしかしたら、この記憶は別の世界線での自分の記憶なのかもしれない。

何かが(```)鍵となってその記憶が今のラッテンに流れ込んだのかもしれない。

だが、普通はそんな事は起きるはずが無い。

幾ら箱庭があらゆる世界と繋がる場であったとしてもそれはありえないのだ。

浮かんだ光景は明らかに箱庭だった。

ならば、ありえるはずが無いのだ。

別の世界線の箱庭と繋がるなどありえない。

何故ならそれは高次次元の壁を越える事になるからだ。

箱庭と繋がる過去現在未来を含めた全てを一塊と見た”世界”において箱庭は一本しか存在しない。

過去現在未来はあっても並行する物は無いのだ。

あったとしても、それは時間軸や空間軸よりも高位の次元の壁を超えた先にしか無い。

ゆえにありえないのだ。

きっかけがあったとしても起こり得ないのだ。

世界そのものが(````````)現在進行形で(``````)揺らいでるような(````````)場合でも無ければ(````````)

だから、訳が分からないのだった。

困惑し、右目から血涙を垂らしながらラッテンは絞り出すかのように呟いた。

 

「久遠……………?」

 

「ッ!?」

 

その一言だけで明らかにフェイスレスの様子が変わる。

驚いたような顔をし、虚を突かれたようになる。

そして、我に返るとラッテンに掴み掛かった。

 

「久遠?久遠と言いましたか?何故!!何故貴女がその名を(`````````)知っている(`````)!?」

 

「知らないわよ!!あんたの顔を見たらいきなり浮かんできたのよ!!」

 

「は?それはどういう意味ですか」

 

「そのまんまよ。あんたが何に必死になってるかは知らないけど、私は何も知らないわよ」

 

ラッテンはフェイスレスの眼をまっすぐ見ながらはっきりと言い返す。

浮かんできた単語なだけで意味も知らなければ何を意味するかなど分かりもしなかった。

ゆえに今の言葉は真実である。

それは瞳を見たフェイスレスも察したようだった。

だからこそ、落胆するかのように息を吐くと自嘲するかのように言った。

 

「そうですか。少し取り乱してしまいましたね。御見苦しい所を見せましたね」

 

「確かにあそこまで必死になるあんたは珍しいんでしょうね」

 

互いに溜息を吐きながら背を向ける。

ラッテンは湯桶を手に取るとフェイスレスの頭に被せる。

当然フェイスレスは困惑したかのように文句を言う。

 

「いきなり、何をするんですか!?」

 

「見ておいて今更だけど……………顔見られたく無いのでしょう?なら、それで隠しておきなさい」

 

言うだけ言うとラッテンは湯煙の向こう側、アルマ達の方へと歩いていく。

頭痛も問題無い程度には収まり、血涙も止まっていた。

 

「どうでした、マスター?」

 

「見れなかったわよ」

 

「それは残念でしたね」

 

「えぇ、とても」

 

そのまま流れに任せて先程の事を無かった事にしようとするラッテン。

有耶無耶にしようとする空気ではあるが、ラッテンの背後から立ち上る覇気はそれを許さなかった。

その覇気の発信源は言うまでも無くフェイスレスである。

 

「何を有耶無耶にして済まそうとしているのですか?未遂であれ(`````)、無礼は無礼。決死の覚悟があってのことと受けとっても構わないでしょうか?」

 

カチャリ、と連接剣の繋ぎ目を緩める湯桶の騎士。

檜の湯桶でスッポリと首から上を覆っているので表情は読み取れないが、今まさに怒髪天を衝くが如く怒り狂っているのは間違いない。

ラッテンは冷や汗をダラダラと流しながらも背は向けたままである。

 

「さっきまでのは冗談ってことで………………」

 

「そうです。何事も落ち着きが大事ですよ?」

 

「Y、YES!!ラッテン様のおふざけなのです!!後で説教しておきますから此処は黒ウサギの、」

 

「ウサ耳を差し出すから」

 

「ご勘弁を、ってラッテンさん!?」

 

「わかりました。ウサ耳二つで許しましょう」

 

 

カチャリ。

 

 

「なにゆえ!?何故に悪くない黒ウサギの耳が質に!?」

 

「死地だけにじゃないかしら?」

 

「YES!!って別に上手くはございませんからこのお馬鹿様!!」

 

スパーンッ!!とウサ耳を伸ばしてラッテンの頭を叩く黒ウサギ。

フェイスレスはしばしそのやり取りを聞き取りつつ、溜息を吐いた。

先程までの状況から考えれば茶番でしか無い状況に加えて、自身の状況を考え本当に嫌になる状況だった。

 

「……………」

 

 

カチャリ!!

 

 

「はいお待ちを!!天丼芸をしている余裕は今の黒ウサギにはございませんので!!お詫びに御背中流しますから、ささ、此方に此方に!!」

 

黒ウサギは前進に脱兎するという斬新な戦術でフェイスレスの手を握り、流し台に連行する。

彼女が本気で怒っている気配に感付いたからだろう。

黒ウサギもフェイスレスも離れた事を確認するとアルマとラッテンは表情を変える。

アルマとラッテンは常時記憶を共有している為にわざわざ言わなくても先程ラッテンに何が起きたかは分かっていた。

分かった上で茶番に付き合っていたのだった。

 

「それで、先程のは何ですか?」

 

「だから、私も知らないわよ。記憶を共有している私達が両者共に知らない事を私が応えられるわけが無いでしょう」

 

「それでも、考察くらいはしているのでしょう?」

 

「おそらく別世界線の私だけど、何で別世界線の記憶が映ったのかは分からないわ」

 

「そこらへんはもしかしたら映司殿達の領分かもしれませんね」

 

「ありえるわね~」

 

「そう言えば、彼女も交えて話をしたいのですが問題は無いですか?」

 

「たぶんね。何か抱えてはいるけど話せはするはずよ」

 

ラッテンはそれだけ言うと黒ウサギとフェイスレスの方へと歩み寄る。

アルマもそれに続く。

ラッテンはセクハラを交えながら女性陣は背中を流し合い、湯船に浸かるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

十六夜は風呂上りに土産物を眺めていた。

何かしら面白い物を探してもいたが、気を紛らわせたいという面もあるにはあった。

御門釈天とは飯を喰った後という約束なのでそれまでの暇潰しも兼ねていた。

 

「ん?」

 

「お」

 

偶然ではあるが霧崎と出会うのだった。

お互いに一人でブラリと歩いてるだけだったので少し話すことにする。

 

「ラッテンとかはどうした?」

 

「温泉行った」

 

「だから、一人寂しく歩いてたわけだ」

 

「寂しくは余計だ、寂しくは」

 

大事なことなので二回言うのだった。

とはいえ、あまり間違っても無いが。

 

「お前の方は何してんだ?」

 

「釈天の奴が夕食食い終わるまでの暇潰しだ」

 

「お前も似たようなもんじゃねぇか」

 

ジト目で睨むが十六夜は涼しい顔で受け流す。

実際寂しい云々とは無縁な男ではあった。

二人でしばらく歩いていると十六夜はちょうどいい機会だと思い付く」

 

「そうだ。少し話せるか?」

 

「いいけど、俺が話せる事なんて少ないぞ?」

 

「別にただお前が体験した世界の危機とやらについて聞いてみたいだけだ」

 

「それなら映司さんとかに聞いた方が良くないか?」

 

「あいつらは今何処歩いてるか分からねぇんだよ」

 

「あぁ、そういう事な。けど、どの道話せる事は少ないぞ?」

 

実際アゲハ達とは参加開始時期は違う。

それに加えて一時期は意識を失ったままであり、不参加な事件もあった。

最後のゲームもアゲハと天戯弥勒の未来での最終決戦も見ては無い。

現代での最後の攻防も近くにはいたが、直接見たわけでは無い。

だから、当事者ではあるがメインについて話せることは少ないのだ。

後々聞いた事もありはするが伝え聞いた話で正確かどうかすら分からないのだ。

 

「構わないさ、それでも」

 

「そうなのか?」

 

「何かヒントを得られたらいいくらいの話だからな」

 

頬を掻きながら答える。

十六夜としては珍しい反応ではあった。

何か思うところがあるのかもしれないが、霧崎は察し切れなかった。

だけど、何かしらの悩みを抱えてるくらいは分かっている。

ゆえに面倒ではあるが了承するのであった。

とはいえ、立ち話もアレなのでカフェなりなんなりで話すことにするのだった。

 

 





温泉回してない温泉回パート2でした!
ラッテンとフェイスレスの関係性は本人たちが意識してない部分で繋がりがあったり

それでは、質問があれば聞いてください
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現状確認と次期頭首選出と後悔の先

 

華蘭、と鹿威しの音が湯殿に鳴り響く。

一騒ぎはあった物の今は落ち着き、静かに寛いでいる。

黒ウサギは背筋とウサ耳を伸ばし、蕩けそうな声を漏らす。

 

「何とも麗らかな時間なのです。最近の激務が嘘の様なのですよ」

 

「確かにね~。素晴らしいと言えるレベルの湯ね。どっかの騎士様は今の状況が不満なようだけど」

 

「………………そんなことは無いですよ」

 

横目でフェイスレスを見ながら言うラッテンに、イラッとした様に否定するフェイスレス。

どうやらまだ怒っているらしい。

とはいえ、ラッテンが見る限り先程の件よりも一人になりたいのを邪魔されたのが原因っぽく思えはしたが。

湯桶を被っているせいで顔は見えないが息遣いなどである程度は察せるのだった。

表面上は落ち着いているが、内心ではかなり溜め込んでいると感じていた。

それを察しながらもアルマは、コホン、と咳払いをして注目を集める。

 

「外部の方がいますが、こうして裸の付き合いが出来る場を設けられたのも何かの縁。此処は一つ、”ノーネーム”の現状について少し話し合いませんか?」

 

「現状といいますと?」

 

小首を傾げる黒ウサギ。

素振りだけで耳を傾けるフェイスレス。

アルマは指を三本立てて問題を提議した。

 

「まず、”ノーネーム”は長らくリーダーが不在の状態です。此れによって滞っている執務が多々あります。一番大きい案件は、新たに加盟したいという申し出を保留にさせていただいていることでしょうか?」

 

「YES。対魔王、対”ウロボロス”を目的とした大連盟の案件でございますね」

 

ピッとウサ耳を立てる黒ウサギ。

 

「此方は盟主を”ノーネーム”とし、”六本傷”、”ペルセウス”、”ウィル・オ・ウィスプ”を中心に締結。保留とさせていただいているのが”サラマンドラ”、”覆海大聖(海を覆いし者)”、”ラプラスの悪魔”、”龍角を持つ鷲獅子(ドラコ=グライフ)”でございます」

 

「まったく”階層支配者(フロアマスター)”が大体揃ってるとは豪勢な物ね。”鬼姫”連盟は仕方ないでしょうけど」

 

”鬼姫”連盟は四桁の下部組織が集まって出来た少し特殊なコミュニティなのだ。

事情が込み入っている故に仕方ない面があるというわけである。

 

「そして此方から誘いを掛けているのが”混天大聖(天を混沌せし者)”、”酒天童子”、”ケーリュケイオン”___________そしてかの大魔王”クイーン・ハロウィン”です」

 

「は?」

 

此処で湯桶の騎士(フェイスレス)は素っ頓狂な声を上げた。

そこから白夜叉が不在な今、下層の秩序を守る為には三桁の階層支配者(フロアマスター)が必要だと話があること。

それならば、三頭龍の戦いにおいていち早く立ち上がった女王に話を通すのが良案ではないかという話があること。

フェイスレスが階層支配者(フロアマスター)なら頼もしいということ。

などをフェイスレスに話した。

それに対してフェイスレスは自身が実力で第三席に身を置いているのでは無く、とある恩恵を持っているからという事を話し、自身が女王に勅命を受けており自身が階層支配者(フロアマスター)になることは無いと話した。

それに加えて槍使いのメイドが派遣されたら逃げることを勧めるのだった。

話が一段落するとアルマが手を上げる。

 

「女王の件はわかりました。ですがその返答を受け取ったとしても、対応できる者が今の”ノーネーム”には居ません。頭首不在となれば女王の機嫌を損ねる事も考えられます。………………黒ウサギ殿。私が言わんとしていること、理解していただけますか?」

 

直接的な言葉を避けてアルマが告げる。

本題に入ろうとしていることを察した黒ウサギは、ウサ耳を伸ばして頷く。

 

「………………此れ以上、ジン坊ちゃんの帰りを待つことは出来ない。そういうことでございますよね?」

 

「ええ。此れだけ巨大な大連盟を築くとなれば、盟主は代行を立てるわけにもいかないでしょう。新たな頭首を選出する段階に移らねばなりますまい」

 

厳しいアルマの言葉に、一同は黙り込む。

ジンとアルマは出会ったことは無いが、ラッテンの記憶にはあるので知ってはいる。

だからこその言葉である。

捕虜の交換に一縷の望みを託してはいたが、”ウロボロス”から連絡を受けないことには動きようが無い。

大連盟の盟主に代行を立てることは容易いが、ジンが帰って来た時に改めて頭首に戻ることは不可能だろう。

 

「ジン殿は己の意志で”ウロボロス”に残ったと聞き及んでいます。きっと彼にしか成せぬ何か(``)があったのでしょう。なればこそ”ノーネーム”はその意思を汲み取るべきです」

 

「…………YES。少なくとも今の様にコミュニティの動きが停滞することをジン坊ちゃんは望んではいないのです」

 

そこで黒ウサギは一旦言葉を切る。

確かに新たな盟主は必要だ。

しかし、それを誰にするかという問題があった。

候補としては十六夜、映司、霧崎の三人が有力ではあるが選び難い部分もあった。

そこでしばらく黙っていたラッテンが口を開く。

 

「それなら、霧崎が頭首でいいでしょ」

 

「何故霧崎さんなんですか?」

 

「基本的には消去法ね。まずは映司だけどアレは上に置くべき奴じゃないでしょ。上に置いておくより自由にさせた方がいい人材よ。というより、下手に上に置いたら暴走しそうな気がするし。十六夜に関しては分かるでしょ(``````)?」

 

「そう……………ですね」

 

「それに霧崎は意外に全体を見れるし、無茶はしないから割と安牌ではあるのよね」

 

「まぁ………そこには同意ですね」

 

アルマも黒ウサギもその部分には納得した様に頷くのだった。

しかし、それはそれでどう頭首と認めさせるかという問題はある。

けれど、そこらへんはクロアが当てがあるとは言っていた。

何でも前頭首の推薦に加えて各方面に調整を加える準備自体はあるらしい。

何はともあれ一先ず話は纏まりはするのだった。

だが、本人が了承するかどうか別ではあったが。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「くしゅん」

 

「どうした?」

 

「いや、たぶん何でもない」

 

何処かで噂をされているのか霧崎は前触れも無くくしゃみをするのだった。

鼻を啜りながらコーヒーを口に含む。

十六夜と霧崎は宿近くのカフェにいるのだった。

 

「それで、何処から話したものかね………………」

 

「お前が話しやすい様にしてくれればいいが」

 

「まぁ、まずは俺が最初に参加したゲーム辺りかね」

 

そう切り出して自分が体験した事を順次語り始める。

ワームの様な禁人種との戦い、”脅威(メナス)”が覚醒した話、アゲハを庇い死に掛けた話、その後の修行の話…………その他もろもろ簡潔に話すのだった。

十六夜は静かにそれを聞いていく。

 

「一、二年の内にそんだけ経験するとかお前も結構な人生してるんだな」

 

「本当にそうだよな~」

 

霧崎は苦笑するように同意する。

霧崎自身もとてもでは無いが良い思い出とは言え無い体験ばかりだった。

 

「まっ、何はともあれ生き残れただけで御の字みたいなもんだよ」

 

「そういうもんか」

 

「思うとこも変わるとこもあったとは思うけどそんなもんさ。逃げてばっかだったツケを払わされた分もあるだろしな」

 

「それで何で戦場カメラマンになったんだ?」

 

「見てみたくなったんだよ。あんな糞みたいな気分を、人を殺した気分を好き好んで味わってる馬鹿の顔をさ。色んな理由はあるんだろうけど、あいつら(````)を見たからこそ思うんだよ。戦争をやってる連中が本当に”人殺し”をしている自覚があるのか疑問にね。だから、”眼”になろうと思ったんだ。自分と同じ人間を殺してるんだぞってな。それでも殺し合いしたいならキチンと自覚をした上で殺し合えってな」

 

溜息を吐くようにしながら言う。

十六夜も戦場は一度見た。

それゆえにその凄惨さも経験している。

だが、霧崎はそれよりも多くの物を見てきたのだろう。

霧崎は胸のポケットからボロボロになった宝くじを取り出す。

 

「なんだそれ?」

 

「絶対に当たるはずだったけどハズレちまった宝くじさ。俺のお守りだ。これがハズレた時はメチャクチャがっかりしたんだけどさ、同時に嬉しかったんだよな。この先どうなるかなんて決まってないから好きにすればいいって言われたような気がしてな」

 

笑ながら言う。

どこかの刑事に似たような話をしたような気がするが特に気にしてはいない。

十六夜の方を見ながら付け加えるように言う。

 

「”運命”なんてそんな程度なもんじゃねぇかと思うんだよ。だから、お前も何時までも悩んでる必要は無いと思うぞ?お前はお前らしくお前の道を進めばいんだよ。とはいえ、一人で抱え込み過ぎるのも駄目だけどな。それで待ってるのは破滅に近い物だからな。それで泣くのは女の子だし、そんな涙は見たく無いしな」

 

「…………そうか。確かに悩んでも仕方ないのかもな。けど、答え(``)がな………………」

 

答え(``)なんて焦らなくてもいいんだよ。焦らなくても自ずと分かる物さ。それより停滞する方がよっぽど駄目だしな」

 

逃げて逃げて後悔しまくった過去を思い出しながら霧崎は言う。

とはいえ、自分の言葉が合っているとも思ってはいない。

どう答えを出すかなんて個人による物なのだから。

 

 






温泉回終了~かな?
え?温泉回らしいきゃっきゃっうふふが無かった?
あのメンバーで期待出来るとでも?
冗談として話の流れ的に仕方なかったのですよ


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地下牢の少年と本物の連盟と道化を名乗りし者

 

____________山岳に出来た天然の地下牢。

鉱山街の賑わいとは対照的に、人の気配は露程にも感じられない洞穴の最奥に殿下は投獄されていた。

定刻に食事を持ってくる者が現れるまで、彼は一人きりで過ごしている。

捕虜の扱いというよりは、罪人の扱いだ。

鎖こそ繋がれてはいないが、小さな水樹の苗から流れる水で渇きを癒し、土埃を僅かに洗い流すという過酷な環境にある。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

望月 朧はそれなりの数の戦闘員の前に立ち塞がっていた。

数だけを見れば圧倒的に不利だが、余裕の笑みを浮かべている。

 

「君達も()を狙っているようだね。けれど、()は僕が目を付けた男だ。君達なんかに渡すわけにはいかないのさ」

 

「何者だ、貴様は!!」

 

「望月 朧。ただの道化さ(``````)

 

両手を広げ、ふざけた口調で言う。

本人的にもふざけた言い方ではあるが込められた意味は違った物でもあった。

戦闘員たちは話すのを切り上げて朧へと襲い掛かって行く。

話すだけ無駄と感じたのだろう。

 

「ちょうどいいし、新しいプログラムを加えた生命融和(ハーモニウス)の実験台になってくれよ」

 

言いながら朧は腕を異形に変化させる。

擦れ違い様に軽く腕を振るう。

それだけで戦闘員たちが細切れになっていく。

以前吸収した改造兵士の力である。

腕には刃のような物が生えている。

それが微振動し触れた物を全て切断しているのだ。

朧は冷たい笑みを浮かべたまま戦闘員たちを惨殺していくのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「あれ?十六夜君たちじゃないか。こんなところでどうしたんだい?」

 

「お前こそ何で此処にいる?」

 

「俺は街を見て回ってきた帰りだよ」

 

「俺達は少し話をしていたところだ」

 

十六夜と霧崎の話が一段落したところで宿に帰って来たところの映司にばったり会うのだった。

そこへ同じく帰って来たのか晴人も現れる。

 

「晴人君も今帰ったところ?」

 

「そうだな。街は一通り見終わったんで」

 

「おい、十六夜。ちょうどいいんじゃねぇの?」

 

「そうだな」

 

「どうかした?」

 

霧崎の言葉に頷く十六夜。

後から来た映司と晴人は何の事かと首を傾げる。

十六夜はそんな二人の方を向くと意を決したかのように口を開く。

 

「ちょうど時間も空いてるし、いい機会だからお前達の話を少し聞かせてくれないか?」

 

「俺達の話?」

 

「具体的にどんな事が聞きたいんだ?」

 

「そうだな…………………お前達が経験した戦いとかを話せるとこだけでいいから聞かせてくれないか?」

 

十六夜の言葉に二人は少し考える様にした後に顔を見合わせ、頷き合う。

最近の十六夜の様子を見ていた二人はだからこそ頷く。

 

「いいよ、俺達の話なんかで良ければ」

 

「まぁ隠すようなことじゃないしな」

 

そう言うと二人はカフェに入って十六夜たちの近くの席に座るのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

殿下が投獄された地下牢に現れたのは混世魔王だった。

混世魔王は”サラマンドラ”と交渉し、サンドラを解放する事で殿下の身柄を自由にしたと話す。

その上で自身の成り立ちを語り、殿下にとある提案をした。

本物の魔王連盟を作らないかと言う提案を。

近い内に開催されるであろう太陽主権を用いたゲームで”ウロボロス”の横っ面を殴り飛ばす為に。

 

「____俺様と組もうぜ、殿下。そして神群共を、お前の人生を縛ろうとした輩の全てを百億万度の焔で(```````)焼き尽くしてやろうぜ(``````````)…………………!!」

 

真正面から、同じ舞台で挑み蹂躙する。

混成魔王は己の使命を全うする為に。

殿下は己の本当の自由を手に入れる為に。

 

「…………………………、」

 

混世魔王の話を聞き終えた殿下は、岩肌に身を預けて思考する。

今まで考えることの無かった己の人生の指針を、初めて模索する。

今まで命じられるままに生きていた殿下は、命令を完遂する為の思慮はあっても、自分自身の為の人生を考えたことは唯の一度もなかった。

肌寒い風の吹く地下牢を、沈黙が支配する。

混世魔王に急かす様子は無い。

彼はその気になればいつでも逃げる事が出来る。

向かい合った二人が睨み合って一〇分以上経った頃。

フッと殿下は口元に笑みを浮かべた。

 

「混世魔王。なんだかんだ言ってるが………………要するに、俺の持ってる”龍”の太陽主権にあやかりたいだけなんだろ?」

 

「ヒハハ!!それも無いと言ったら嘘になるな!!」

 

二人は緊張を解す様に共に笑った。

だが二人が口にしたことが全てというわけではない。

殿下は混世魔王の復讐心は本物だと思った。

この男の熱量を、素直に羨ましいとも思った。

立ち上がった殿下は無言で牢獄の鉄格子に手を掛けて泰然と笑う。

 

「唆されているようで癪だが、小気味のいい甘言だった。いいぜ、乗せられてやるよ」

 

「………………ヒヒ。後戻りはできねぇぜ?」

 

「構わないさ。どうせ目的の無い人生だ。…………ああ、いや。一つ出来たか」

 

ほう?と混世魔王が意外そうに声を上げる。

鉄格子を握る手に力を込めた殿下は、一瞬だけ瞳に劇場を宿し、

 

「奴らの________俺を縛ってきた”ウロボロス”の横っ面を、全力で殴り付ける。それが出来たら最高に気分がいいのは間違いない…………………!!」

 

華奢な腕からは想像出来ない剛力が殿下の右腕に宿る。

星の地殻に比するというその剛力を受けた鉄格子は、為す術もなく容易く撓んで崩壊した。

同時に息を呑むような音が何処かで響く。

鍵を他所に投げ捨てた混世魔王は、盛大に下卑た笑い声を上げて彼を歓迎した。

 

「ヒハハハハハハハハハハハッ!!よォし、ならお前さんのモチベーションは其処に決定だ!!俺様は大聖の野郎をぶん殴る!!お前は”ウロボロス”をぶん殴る!!複雑な事情説明なんざいらなかったな!!………………ヒヒ、何だよやっぱり俺様の思った通りだ!!俺様達は、上手く噛み合うだろうよ!!」

 

「目的が噛み合っただけだろ。__________それで、お前は何者だ?」

 

「気付いていたのか」

 

「さっきな」

 

先程の息遣いは殿下の耳にも届いていた。

混世魔王と殿下のやり取りを盗み聞いていた者は物陰から姿を現す。

それと同時に何かを殿下たちの方へと投げた。

べチャリという音と共にそれは地に落ち、少し転がって殿下の足元まで来る。

それは大ショッカー連盟の戦闘員の首を詰めた袋だった。

 

「君を狙っていた者達さ」

 

「何のつもりだ?」

 

「君の敵じゃないと示す証拠を見せてるんだよ。こっちは無駄になったけどね」

 

言いながらもう一つ投げる。

今度はチリンという音と共に転がり落ちる。

今度の物は先程混世魔王が持っていた物と同じ鍵だった。

 

「それで、俺の敵じゃないならお前は何者なんだ?」

 

「望月 朧。道化さ(```)

 

「何が目的だ?」

 

道化というのはあえて追及せずに目的を問い質す。

明らかに怪しい男ではあった。

快楽主義者に近い臭いを感じ取れる男だ。

聞かれた朧は静かに笑みを浮かべながら答える。

 

「君に面白い物を見せて貰うことさ」

 

「どういう意味だ?」

 

「君からは彼ら(``)とは違うけど輝く物を感じる。君なら彼ら(``)とは違った面白い物を見せてくれると思ってね」

 

「俺達の話は聞いてたんだろ?そんな事の為に箱庭のほとんどを敵に回したいのか?」

 

「そんな事?僕にとっては重要なことさ。つまらない人生なんて僕は嫌だからね。大切なのは、アーティスティックで、ファンタスティックでエキセントリックな人生!!君なら僕を退屈させずに楽しませてくれそうなんだよ!!」

 

テンションを上げて語り出す朧。

殿下は頭を右手で抑えながら察する。

この男はイカれてる類の人間だと。

だが、イカレ具合はともかくとして使えそうにはみえた。

なので、精々利用はさせてもらうことにはするのだった。

 

「いいのか?」

 

「いざとなれば消せばいいさ。それよりだ。これからどうするんだ?」

 

「それは僕に考えがある」

 

階段から予想外の声が響いた。

ジン=ラッセルと彩里鈴の気配が殿下の前に出ると彼は意外そうに瞳を見開いた。

 

「やっほー、殿下。地下の暮らしは快適だった?」

 

「そんなわけないだろ。……………でも驚いた。リンはともかくとして、ジン。お前も俺達と組むのか?」

 

「______、」

 

「ヒハハ!!この坊主が持つ”精霊使役者(ジーニアー)”は便利だからなァ!!誘いを断った魔王どもを俺達の手で倒し、此奴に従わせるって戦法よ。上手く噛み合えば一年で戦力が調うぜ!!」

 

下卑た笑みを浮かべる混世魔王。

だが殿下が言いたい意図は其処では無い。

 

「混世魔王の台詞じゃないが、後戻りはできない道だぞ。まず間違いなく”ノーネーム”に帰る事は一生出来ない。______それでもいいんだな?」

 

殿下は念を押す様にジンへ問う。

混世魔王の作戦で行くのなら、彼は連盟の要に成るだろう。

生半可な覚悟で参加させるわけにはいかない。

しかしそれは杞憂だった。

ジンは笛吹道化の指輪にそっと触れると、揺れることの無い覚悟を秘めて頷いた。

 

「僕には………………僕ら(``)には、太陽主権のゲームに参加しなきゃいけない理由がある。それが巡りに巡って”ノーネーム”を助けると信じている。君が心配するようなことは何も無い」

 

朧はその目を見て思う。

あぁ、これは唆された目だと。

確かに決断は自分でしたのだろうが誘導された様な匂いがあった。

せめて破滅に向かないようにね、と心の中で思いはするのだった。

 

「残念だけどアウラさんは先生の許に残る事になりました。グーおじ様は私達と一緒に付いて来てくれるそうだから、これからも一緒だよ。まずは身を隠そうと思うから北側に潜伏しよう」

 

「そうか。……………ゲームメイカーは継続でいいんだよな?」

 

殿下は当たり前のように問うて、リンは当たり前のことを笑顔で答えた。

 

「当然!!殿下みたいな世間知らずを放り出すわけにもいかないものね!!」

 

「ありがたくって涙が出るぜ。でもいいのか?お前が箱庭に来た理由って、家族を助ける為じゃなかったか?」

 

「その辺は変わらないけど、その為には頑張って詩人にならないといけないからね。殿下にはその辺り協力してもらうからヨロシク!!」

 

ビシッとふざけて敬礼をするリン。

殿下は呆れながら苦笑を浮かべて了承した。

 

 

 

 






殿下サイド回でした!
朧は殿下サイドに合流しました
ただし、信用は一切されていない
道化を名乗る理由は後々


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謎の破壊跡と巨人の噂と魔法使いの経緯

 

 

殿下が投獄された牢獄が破られたことが知られたのは、半刻ほど経った後のこと。

此れより数年間、彼らが表立ってコミュニティを襲ったという記録は存在しない。

だが不可解なことに、これよりすぐ旧”       ”が封印したと思われる魔王の封印塚が次々と破壊されるという事件が発生した。

激しく争った跡もあれば、大ショッカー連盟の構成員と思われし怪人や戦闘員の死骸の山が築かれている物もあれば、封印塚が壊されただけというものもあったが、これらの事件には共通の出来事が重なっていた。

封印を解かれたはずの魔王は、何処のコミュニティを襲うことも無く人知れず姿を消していたのだ。

この封印塚が破壊されるという珍事件は目立った被害もなかったということで調査は一年程で打ち切られた。

怪盗アルティメット・ルパンや大ショッカー連盟の目立つ事件やNEVERやネガタロス達による暗躍などもあり、半年後には誰の記憶にも残らなかった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

あらかた片付けられてはいたが三頭龍アジ=ダカーハの分身体の生き残りは潜んでいた。

様々な物と同化し、特性を得る双頭龍とその血肉から産まれる化物達。

それらを全て探し出すのは難しい面があった。

それゆえに人里を襲う事件が時折発生していた。

だが、同時にこんな噂も広まっていた。

助けを呼ぶ声に応え、光と共に現れる巨人が存在すると。

 

「巨人が私達を助けてくれたんです」

 

「双頭龍の前に光と共に現れて私達を守ってくれたんです」

 

噂によればその巨人は赤色や青色に体色を変化させる事もあるのだとか。

体色を変化させた後は戦い方も変わり、様々な双頭龍に合わせた戦い方をするのだとか。

興味本位に双頭龍達を倒し終えて飛び去った巨人を追い掛けた者もいたが、巨人は途中で光となって姿を消したらしい。

助けられた者達は巨人に感謝し、瞳に光を取り戻しているのだった。

正体は分からないが確かに存在する物としてその巨人の噂は広まっていた。

 

「へぇ、そんな事があったのか」

 

子供達から巨人の話を聞きながらアスカ・シンは呟くのだった。

多少尾びれ背びれが付き始めてるの聞きながら苦笑していたが、その訳は子供達には察せないのだった。

リーフラッシャーを眺めながら一人呟く。

 

「皆を助ける為とは言え、ちょっと暴れ過ぎたか?」

 

あまり目立って箱庭に影響を与えすぎるのは良く無いとは考えていた。

三頭龍との戦いの後はフラフラと各地を巡り、噂にある通り双頭龍などに人里が襲われているところに遭遇したら変身して助けていたのだった。

三頭龍の戦いの時にマクスウェルによって分身体が送られて被害が出た土地の復興を手伝いながら旅をしているとはいえ、よくよく双頭龍と遭遇する悪運には自分で苦笑する。

 

「体が馴染んできているのか、ダイナとして戦える時間は伸びてきているけどあんまりやり過ぎるのも良くないよな~」

 

自分は本来なら箱庭にはいない人間である。

放っておけなくはあるのだが、あまり現地の人間が独力解決する場を無くすのはどうかと思っていた。

しかし、箱庭を離れるわけにもいかなかった。

各地を巡っている内に自分が知っている何かに似たような臭いを感じていたのだ。

自分達と因縁があるかもしれない相手が暗躍している可能性があった。

なので、各地を巡り様子を見ているのだった。

時折ゼロなどに向かってメッセージを送る事で異常な事態は無いか探ってもいるのだった。

 

「さて、手伝うとするか」

 

考え事を切り上げてアスカは復興の手伝いをする為に立ち上がる。

今優先すべき事は街の人たちの手伝いをすることだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「語るとしてもまず何処から話すかな……………」

 

十六夜の方を向きながら晴人が呟く。

まずは晴人から話す事になっていた。

晴人は何処から話すべきか悩んだ末に始まりから話す事にした。

サバトに巻き込まれた事、絶望を乗り越えて魔法使いになった事、白い魔法使いにコヨミを託された事を話す。

 

「今にして思えば全部仕組まれた事だったんだけどな」

 

それから魔法使いとして戦ってきた事を話した。

魔力を持つ人間ゲートを絶望させ、ファントムを産み出させる為に暴れるファントム。

そのファントム達との戦いを語って行く。

ゲートにも、人間にも、ファントムにも色んな奴はいた。

晴人は絶望を希望に変え戦い続けた。

そして、それら全てが一人の上の掌の上での戦いだった。

 

「笛木は白い魔法使い、ワイズマンという二つの顔を使って俺やファントム達を誘導していたんだ。必要な数の魔法使いを揃えさせる為に」

 

「娘を生き返らせる為にか………………」

 

全てを仕組んだのは笛木という男だった。

笛木は死んだ娘を甦らせる為にサバトを起こした。

それにより、多くの人々が強制的に絶望させられてファントムと化した。

魔法使いになった晴人を除き全て。

それだけの命を犠牲にしても娘は甦りはしなかった。

肉体は賢者の石によって復活した。

だが、復活したのは肉体と言う器だけだったのだ。

人格は、魂は復活しなかった。

だから笛木は次なる計画を実行した。

四人の魔法使いを使って更なる広範囲でサバトを起こす事だった。

その間に器を保ち、守らせる為に晴人を利用したのだ。

ワイズマンの姿でファントムにゲートを襲わせ、ファントムを増やす様に指示をしておきながら実際は魔法使いを生み出す為の行動だった。

魔法使いになるには体内にファントムを宿す必要がある。

その為には一度ゲートを絶望させ、ファントムを発生させた上で肉体という卵の殻が破られる前に絶望を乗り越えさせ無ければならない。

ゆえに計画は遅々として進まなかった。

それでも、四人揃い笛木は遂に本性を現してサバトを実行した。

晴人も一時的にはコヨミを救う為にそれを受け入れ掛けていた。

だが、仲間の言葉と行動、そして真にコヨミを救うという事がどういう事か考えた上で笛木と戦った。

結果的に相討ちに終わるがそこに乱入する者が現れる。

 

「それが人格を保ったままファントムになった男、ソラだ」

 

「確か殺人鬼だったか?」

 

「あぁ、奴は多くの女性をファントムになる前から殺していたんだ」

 

ファントム・グレムリン、またの名をソラ。

彼は人格を保ったままファントムになるという稀有な存在だ。

その理由は不明確だ。

狂気や執念がファントムとしての人格を飲み込んだのかもしれない。

何はともあれソラは人間に戻る事を渇望していた。

それだけを見れば当然な願いでもあった。

強引に連れ去られて無理矢理怪物に姿を変えられたのだ。

人間に戻りたがるのは当然だろう。

ソラは晴人と笛木が相討ちになった隙に笛木を葬り、コヨミの体内から賢者の石を奪いとった。

それによってコヨミは消滅した。

ソラは賢者の石をその身に取り込むと魔力を集め、人間に戻ろうとする。

コヨミを救う為に晴人とソラは対立する。

コヨミの力が悪用されるのを防ぐという意味合いもあった。

晴人は賢者の石を取り戻すとその力でソラを打ち倒した。

 

「奴は決して許されない事をしてきた。でも、救われない奴でもあったんだ」

 

「そうかもな。罪はともかくとして願望は分からない事も無いからな」

 

その後、賢者の石を利用されない為にも誰の手にも届かない場所に置く為の旅を始める。

そして、封印された魔法使いのいる世界に引きずり込まれた。

そこで士と共にとある少年を救った。

それから時が経ち、オーガと出会う事になる。

 

「オーガって確かこの前味方を喰ってた奴じゃないか?」

 

「あぁ、どうやら大ショッカーの手で復活したようだ」

 

オーガは喰ったファントムの力を自らの物に出来る強力な敵であった。

晴人は一度敗れ、賢者の石を奪われてしまう。

賢者の石と晴人の願望を利用されてコヨミは間違った形で復活し、街を破壊し回った。

晴人は苦悩を振り切り、コヨミを救う事に成功し、賢者の石を取り戻す。

だが、隙を突かれてオーガに精神世界アンダーワールドに侵入されてしまう。

オーガの狙いは晴人の体内のドラゴンなのだ。

賢者の石が奇跡を起こし、晴人は自身のアンダーワールドに入り、オーガと戦う。

晴人の希望が溢れた世界においてオーガに負けるはずなど無く、見事に勝利するのだった。

そして、コヨミへの未練も振り切る。

自身のアンダーワールド内のコヨミに賢者の石を託す事で一つの区切りを付けるのだった。

それから数年後に再び封印されていた魔法使いと戦うことになる。

 

「俺の話はこのくらいだな」

 

鎧武との共闘などの話さなくても問題無い部分は省いた上で語り終える。

晴人も語る事で少しはすっきりしたようだ。

区切りを付けているとはいえ抱え込んでいる物が無いといえば嘘になる。

だから、たまにこうして打ち明けると多少は楽になるのだった。

 

「希望に絶望ね………………俺の希望か………………………」

 

「お前が何に悩んでるかは知らないけど一人で抱え込むとろくな事にならないぜ。一人で抱え込めば壊れるだけって俺の恩師も言ってたしな」

 

晴人の言葉に頷きながら十六夜は再度自身の願望を見つめ直す。

十六夜の願望、それは自覚はある。

夢に見る程度には、帝釈天の話に期待してしまう程度には自覚はあるのだ。

ピースは揃って来ているような気はしていた。

そして、次に映司の話を聞くのだった。

 

 






アスカは復興を手伝いながら旅している形です
移動は歩きな時もあれば、ヒッチハイクしている時もあれば、変身している時もあります

後半は晴人の過去話でした
ほぼ本編の確認レベルですが


それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!


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欲望の語りと集まるピースと神魔の誓い

 

「俺の一番の後悔はあの時、あの子を助けられなかった事だ」

 

映司は己の始まりから話し始める。

中東の紛争地帯で女の子を救えず、目の前で死んだ事を。

その後家族の政治的利用の為に自分だけが救い出された事を。

あれが始まりではあった。

あれによって映司の中での様々な事が変わったのだ。

十六夜も、霧崎も黙って話を聞いている。

二人も紛争地帯に行ったことはあるし、その凄惨さも知っている。

だからこそ分かる物もある。

晴人も察しはしていた。

 

「それから旅を続けて、久し振りに日本に帰って来た時にアンクに出会い、オーズの力を手にしたんだ」

 

今朝出会った刑事と異形の腕を助ける為に映司は戦いに身を投じたのだ。

そして、映司の欲望は満たされた。

その時は自覚は無かったが戦いを続けていく内に理解する事になる。

それからはグリードとヤミーとのオーメダルを巡った戦いが続く。

その裏で動いていたのが鴻上会長だ。

鴻上ファウンデーションという巨大企業の会長であり、オーメダルを錬金術師たちに作らせた先代オーズの子孫。

欲望こそが進化を促すエネルギー、欲望こそが人を輝かせる素晴らしい物という信念に基き行動する鴻上会長は悪意は無い。

だが、悪意が無いからこそ問題を起こす。

元を正せばノブナガも、恐竜メダルも、アンクロストも、錬金術師ガラも、ポセイドンも悉くが鴻上会長が原因であった。

鴻上会長とは別に暗躍する者いた。

真木清人、鴻上ファウンデーションの研究員である。

彼の思想は美しい物は美しいままに終わらせるべき、つまり終末を信念とする物だ。

カザリに裏で協力し、グリードを使った実験を繰り返していた。

全てはグリードの暴走を利用して世界に終末を齎す為に。

様々な想いと欲望が乱れる中で大きな変化が起きるのは恐竜メダルが解放された時だった。

 

「恐竜メダル、紫のメダルの欲望は”無”。だから、俺の空っぽだった欲望の器に共鳴して俺の体内に潜り込んだんだ」

 

更にアンクの半身であるアンクロストも動き出し状況は巡り巡り変化していった。

映司は体内に入った紫のメダルによってグリード化が進行する。

同時期に真木も体内に紫のメダルを取り込みグリード化をしていた。

そして、全ての転機はアンクがアンクロストに取り込まれた時だった。

アンクを取り戻す為に映司はアンクロストと戦い、勝利した。

その際に紫のメダルの真の力が判明する。

無の欲望の力は欲望の塊であるコアメダルを破壊する事が出来たのだ。

グリード達は肉体を失ってもセルメダルさえあれば復活出来る不死の存在ではあった。

だが、紫のメダルはそのグリードに死を与える。

アンクは失われていた半身を取り戻すが、同時にコアメダルを三枚失っていた。

グリードにとってそれは致命的だった。

それゆえにアンクは失われた物を取り戻す為にメダルの器になることを決断した。

アンクはグリード側に付いたのだった。

それからグリード達との戦いは苛烈になっていく。

九枚のメダルを揃えて完全体になるグリードも現れた。

その圧倒的な力の前に映司たちも押され始めるが映司のグリード化が進行した事によって辛くも勝利していく。

グリード達が散っていく中で映司は遂にアンクと直接対峙する。

ぶつかり合う中で映司は自身の欲望を自覚する。

 

「俺は力が欲しかったんだ。力が、何処までも届く腕がね。全てを守る為の力をずっと欲していたんだ。だから、アンクにオーズの力を貰った時には叶っていたんだ。俺の欲望は満たされていたんだ」

 

アンクの望みは”命”を得ること。

グリードは五感が薄い。

それゆえに求める。

人間の欲望を喰らう事で自身の欲望を満たす。

だが、アンクの欲望は簡単に満たせる物ではなかったのだ。

ゆえに欲望の器になろうとしていたのだ。

ぶつかり合い、映司は遂に完全にグリード化する。

その暴走を止めたのはアンクだった。

だが、トドメを刺す事は出来なかった。

共に戦う内に情が移っていたのだ。

それを見た真木はアンクを見限る。

そして、最後に残ったグリード、ウヴァをメダルの器にして暴走させて全ての終末を始める。

和解した映司とアンクはそれを止める為に真木と戦う。

アンクの力を使ったコンボで真木を打ち破り、欲望の器を破壊する。

欲望の器崩壊の余波によって映司の体内にあった紫のメダルは全て砕けた。

それによって映司のグリード化も消える。

しかし、同時に真木によってヒビを入れられていたアンクのコアも割れてしまうのだった。

アンクの意志、仲間達の呼び掛けによって映司は人の手を掴むという事を理解する。

何でも一人で出来るという事は強いというわけでは無い。

何処までも届く腕、それは人と人が手を取り合っていく事で出来る物だと気付く。

 

「それから、俺はアンクのメダルを直す方法を探す為に世界を旅したんだ」

 

鴻上ファウンデーションの研究員という扱いで映司は世界を巡った。

真木との決戦でメダルは失われたがそんな物は関係無かった。

そして、真木との決戦から時が経った後に未来からの敵が現れる。

それは真木との決戦の時に出現したワームホールによって未来に送られたメダルをその身に取り込んだ存在だった。

突如現れたアンクと共闘し、敵からメダルを奪いオーズの力を再び手にする。

未来の仮面ライダーと共闘し、敵を倒すとアンクも姿を消した。

アンクは未来で復活した存在であり、敵が発生させたワームホールによって現代に来ていたのだ。

映司は頑張ればまたアンクに会えると確信し、再び旅に出る。

 

「それからは知っての通りだよ。箱庭に来て、アンクを復活させる事が出来たというわけさ」

 

「望みは叶ったというわけか。………………お前、もう”ノーネーム”に、箱庭にいる理由が無いんじゃないか?」

 

「いや、あるよ。黒ウサギちゃんとの約束はちゃんと果たさないといけないからね。それに大ショッカーを放置したら俺の世界も危ないし他の世界も危ないんだ。放っておけるわけが無いだろ?」

 

「何処までも他人の為か」

 

「いや、俺の為でもあるさ。もう誰かが悲しむ顔は見たく無いし、あの子のような事は起こしたくないからね」

 

「そうか、そうだよな。お前はそういう奴だ」

 

「十六夜君ももっと俺達を頼っていいんだよ?」

 

「………………」

 

「晴人君も言った通り、一人で抱え込んでもどうにもならない時はある。俺達は仲間なんだから頼ってくれないとむしろ困るよ」

 

「善処する」

 

そう言いながら十六夜は時計を見る。

長話を聞いていた事もあってそれなりに時間は経っていた。

御門釈天の食事もそろそろ済んだ頃だろう。

 

「そろそろ戻るか」

 

「そうだね」

 

「ラッテン達も風呂上がった頃だろうしな」

 

「これから予定はあるのか?」

 

「釈天の奴に話を聞きに行く予定だけど、お前らも来るか?」

 

映司達は頷く。

一行は宿に戻る為に会計を済まして店を出る。

 

「確かに一人で悩んでても仕方ねぇし、色々見る必要はあるよな」

 

誰にも聞こえ無いような小さな声で十六夜は密かに呟く。

ピースはあらかた揃った。

後は自分で答えを出すだけだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

釈天、クロア、ラプ子Ⅲはアジ=ダカーハと十六夜の関係性、その霊格の正体、そしてディストピアについて語っていた。

第三永久機関がそれらの中核である事が分かり、彼らの正体の推測も立てられたのだった。

 

「真の理想郷は閉鎖世界を超えた先に在ったのかもなあ。俺達は黒死病(ペスト)や疱瘡の大流行の歴史を創る事で啓蒙思想の発達を促し、年代記の収束点を消す手段をとっちまったが……………今となっちゃ分からず仕舞いだな」

 

「…………そうか。他に方法があったのかもしれないのか」

 

釈天、クロア、ラプ子Ⅲは共に苦々しい顔で黙り込む。

如何せん魔王ディストピアは強過ぎた。

神殺しという点に於いて奴はアジ=ダカーハを上回っていただろう。

とてもではないが手段を選んでいる余裕も時間も無かったのだ。

しかしそんなことは、病の大流行の犠牲者たちには関係無い。

彼らの怨嗟が世界から消えることは決してないだろう。

 

「………………キハハ。まあ”人類最終試練”は滅んだんだ。此れからは時間がたっぷりある。機を見て違う方法や年代記がないか、また考察し合おうじゃねえか」

 

「そうですね。その時は”黒死斑の御子(ブラック・バーチャー)”の意見も是非参考にしたいところです」

 

「ああ。この件はあの娘こそ時代の生き証人だ。あの時代の支柱となる可能性を秘めているのは間違いない。何としても奴らの手から取り戻さねば」

 

三人の神霊と悪魔は共に頷き合う。

かつて彼らは、己の未熟を人類に押し付けてしまった。

人が人の手で滅ぶだけならばそれは必定だが、神々の世界の干渉で命が零れるのは間違っている。

今はまだ予断を許さぬ状況が続いているため動けないが、全てが落ち着いてから救いを齎す事を共に誓い合う。

そして、釈天は振り向かずに背後に向けて言葉を掛ける。

 

「何時まで盗み聞きしているつもりだ?」

 

「何だ気付いていたのか」

 

「当たり前だ。俺を誰だと思っている?」

 

「酔っ払いのおっさんだろ」

 

「まぁ、今はそういう事にしておいてやるか。世界の破壊者ディケイドよ」

 

「今の話を聞いてたらお前らの方が世界の破壊者に見えるけどな」

 

「痛いとこを突いてくれるな。だがまぁ、今は危害を加えるつもりは無いから出てきたらどうだ」

 

「まぁ戦うつもりなら傷を治したりはしないよな」

 

士は物陰から姿を現す。

釈天達は近くに来るように促しながら御猪口を渡す。

士は受け取りながら座る。

 

「それで?わざわざ声を掛けたって事は何かあるんだろ」

 

「そうだな。お前と情報を共有して警戒しておきたい事があってな」

 

酒を口に含みながら話し合いを始めるのだった。

 

 





ほぼ映司の語りでした

神魔の誓いを士が盗み聞きしていたのは情報収集目的に近いです
ラッテンはペストの実体験までは知らない扱いです

それでは、質問があれば聞いてください
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人類の先と煉獄の借りと確かに感じる物


ガッチリミナー!コッチニキナー!ガッチリミナー!コッチニキナー!


_________まあ、尤も。

 

(ペストを救うには、既に手遅れなのだけどな。相変わらず詰めが甘い奴らだ)

 

ザザッ_______と、雑音が僅かに漏れる。

盗み聞きをしていたとある詩人(ノイズ)は、神魔の誓いを嘲笑ってその場から席を外す。

ディケイドに関する案件も気になりはしたが、欲張りはしなかった。

その詩人(ノイズ)を出迎える様にアポロガイストは立っていた。

今は白いスーツの人間体である。

 

「欲しい情報は手に入ったのか?」

 

「あぁ入ったさ。それで、わざわざそんな事を聞きにきたわけじゃないだろ?」

 

「貴様は私に何をさせたいのだ?」

 

アポロガイストは睨み付けるようにしながら問う。

三頭龍の戦いから三カ月アポロガイストは詩人(ノイズ)が手を組むに相応しいか見極める為に行動を共にしていた。

詩人(ノイズ)の話には興味があり、大ショッカーに戻るには無様を晒し過ぎた。

復活したとはいえあまり選択肢は無いのであった。

 

「お前にはアポロの、真人類の霊格(``````)を得て貰う(`````)

 

「真人類?何だそれは?」

 

「かつて【神】が、己と寸分変わらないレベルで作り上げてしまった原初のヒトのことさ」

 

「私がそれになれるとでも?」

 

「なれるさ。お前なら、否、お前だからこそ(````````)な。GOD機関に属するアポロガイスト、それだけで因果は成立するのさ」

 

「意味が分からんな」

 

「だろうな。お前はただ凄まじい力を手に出来るとでも思っていればいいさ」

 

ニタリと笑みを浮かべながら詩人(ノイズ)は言う。

アポロガイストとしては半信半疑だった。

詩人(ノイズ)の胡散臭さは筋金入りだ。

 

「私がそれに成ったとして貴様に何のメリットがある?」

 

「切り札になるのさ。いや、伏せ札と言った方が正しいか。何にせよ、特大のイレギュラーになることは間違いない。どの勢力に対してもな」

 

「ようは貴様が動きやすくなるという事か」

 

「あぁイレギュラーは混乱を生む。そして混乱の中でこそ俺は自由に動き回れるのさ」

 

「何から何まで貴様の都合では無いが道理に合いはするな」

 

掌の上を転がされているようで気にくわないが自身にもメリットはありそうな話だった。

それに因縁の決着を付ける為にも更なる力は必要だった。

ゆえにアポロガイストは詩人(ノイズ)と手を組む事を決断するのだった。

詩人(ノイズ)があの場に居合わせた事、そしてアポロガイストと手を組んだ事が後の大局を大きく左右する事になるのは、これより数年後の話。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「共有しときたい情報って具体的には何なんだ?」

 

「あぁ大ショッカーについてな。その情報があるか無いかで太陽主権のゲームプランが変わるからな」

 

「それは俺に対する用件でもあるよな、変態(クロア)

 

「そうだぜ、兄弟(ブラザー)。ついでに十六夜の報酬の件でもちょっと相談が、」

 

「ういーっす。釈天はまだ起きてるか?」

 

ハッと障子の向こうに視線を向ける。

ラプ子Ⅲはすぐに姿を消し、クロアは箪笥の陰に擬態する。

士も空気を読んで特に反応はしない。

釈天はすぐに顔をだらしないオヤジに変えた。

 

「来たか。入っていいぞ!!」

 

「Y、YES!!そ、それではお邪魔いたします!!」

 

「失礼します」

 

「失礼するわよ」

 

「…………………失礼します」

 

おや?と意外そうな声を上げる御門釈天。

彼の部屋に足を運んだのは十六夜だけでは無かった。

映司と晴人が十六夜の後に続く様に入り、何やらブツブツと呟いている霧崎も入る。

湯上りの浴衣に着替えたラッテンと女王騎士のフェイスレスがギスギスした様子で入る。

そして、かなり緊張してウサ耳をそわそわさせている黒ウサギが同伴していた。

 

「何だ、士も来ていたのか」

 

「少し話をしていてな。十六夜はともかくお前らはどうして?」

 

十六夜の後ろの晴人映司の方を向きながら言う。

映司は頬を掻きながら霧崎やラッテンの方にチラリと視線を向けながら話す。

 

「あんまり放置しておかない方がいいと思ったからついてきたんですよ」

 

「俺は話に少し興味あって来たけど、お前がいるって事は来てちょうど良かったみたいだな」

 

「そうだな。お前達にも無関係では無い話だし、続きは十六夜達の話が終わった後でいいからお前達を交えて話すか」

 

士が釈天に視線を向けると釈天も同意する様に頷いた。

続いて黒ウサギが、その場に跪いて頭を垂れる。

 

「こ、こ、こ、この度は下界までご足労いただき、ま、誠に感謝いたします!!た、大した御持て成しは出来ませんが、せめて酌の一つでもと思い!!」

 

「おお、噂の”月の兎”か。話は聞いているぞ。此処にいるのは人間の出資者、御門釈天でしかない。そんなに緊張せんでいいぞ!!」

 

ガチガチに体を強張らせている黒ウサギを見てさしもの釈天も苦笑いを浮かべる。

主神を前に緊張しているのは分かるが限度があるだろうか。

同伴していた十六夜も呆れながら笑った。

 

「まあ、少なくとも恩義があるのは間違いないな。何せこの主神はお前を救うために、」

 

「十六夜よ。無粋な軽口は男の値打ちを下げるぞ」

 

釈天は十六夜を睨みながら釘を刺す。

フェイスレスとギスギスし、無言の牽制をし合っていたラッテンにもその言葉は届く。

そして、自分が何を言ったかを思い出す。

 

『そもそも善神だというのならあんなものが現れた時点で駆け付けて来なさいよ!!それすら出来ないのに対価を取るってどんな善神よ!!大体眷属の一人くらいを救わないで何が善神よ!!そんなものは私は善神と認めない!!』

 

自分が吐いた暴言にビクリと体を揺らして全身からダラダラと冷や汗を流す。

冷静になればどう考えても神に吐いていい言葉では無い。

魔王のコミュニティに所属していた時代ならともかく正規のコミュニティに属してる今なら尚更だ。

 

「あー、えっと、黒ウサギを煉獄から助けたのは貴方様でしたか…………あの時の借りは何と言うか、その、謝罪を含めて私に出来ることなら何でもいたしますのでコミュニティの方にはどうか………………」

 

「あわわわわわわわ!!な、なんとお詫びを申せばよいのか………………!!戒律を破って鎧と槍を使ったのは黒ウサギですのに…………………!!」

 

「ええい、良いと言っているだろう!!元より”月の兎”には借りがあったのだ!!それを返しただけでしかないわッ!!ほれ、湿っぽい話をするぐらいなら酌しろ酌!!」

 

バツが悪そうに頭を掻いて猪口を前に出す御門釈天。

女性に軽蔑されることには慣れていても、感謝されるのは慣れていないのだろう。

十六夜はその様子を見てニヤニヤと笑みを浮かべてはいたが、そこで話を切った。

からかうのも楽しそうではあるが臍を曲げられては意味が無い。

が、先程までとある事(````)を聞いたせいで半ば意識を飛ばしていた霧崎がそのやり取りを聞いて我に返って真剣な表情になる。

 

「あの時、あんたがラッテンと黒ウサギを助けてくれたのか…………………深く感謝する。俺はあの場にいなかったから…………………………」

 

「あの場は仕方なかっただろう。何より気にする事は無い。先ほども言ったが”月の兎”に借りを返しただけなのだから」

 

深く頭を下げる霧崎。

それに対して御門釈天も真剣に返す。

心情を察したのだろう。

あの時、霧崎は本人もかなり危険な状態であり、意識を失っていたのだがそれは何の慰めにもならないのだから。

それ見ながら黙っていたフェイスレスが、ラッテンに皮肉を込めて告げる。

 

「守られてばかりで、借りも返せ無いような身でよくあんな事(````)を言えましたね」

 

「返す借りが無いんだから返せるかどうかなんて関係無いでしょう?それに本当にヤバい状況でもギリギリまで切り札を隠してる奴に言われたくないわよ」

 

ラッテンも皮肉を込めて返す。

その様子は先程までと一変していた。

釈天が”月の兎”に借りを返しただけと言った時点でラッテンは完全に切り替えていた。

言質が取れたならば、ちまちまとした事を気にする性格では無い。

むしろ霧崎からの想いを感じて吹き上がってもおかしく無いくらいだ。

ゆえにそれに水を差したフェイスレスには皮肉で応じる。

二人は再びギスギスとした空気を醸し出すのであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

アンクは高台の上に座って空を眺めていた。

右手にはアイスを持って食べていた。

 

「………………」

 

空はキチンと青いし、アイスの味もキチンと感じ取れる。

グリードの五感は薄い。

視界にはノイズが走り、味は感じられず、耳もノイズが走り、触れた感覚も感じる臭いも薄い。

それによって欲望が満たされることは無い。

しかし、今のアンクは視界は鮮明であり、味は正確に感じ、耳も聞こえれば、感触も分かるし、臭いも分かる。

かつて、人間の体に憑いていた時も五感はあったが今はグリードとしての正常な状態だ。

箱庭の技術は割れたメダルを修復するだけでなく五感をも与えるのだった。

 

「この借りくらいは返しといてやらないとなぁ………………」

 

アンクの静かな呟きは風の中に消えていく。

自然を眺め、空を飛ぶ鳥を見てアンクは静かに笑みを浮かべるのだった。

 

 

 






半分は暗躍回でした!
真人類云々の詳しいことは後々の本編で!
仮面ライダー1971-1973に登場した概念です

ラッテンは結構図太いです
通す筋は通しますが切り替えは速いし軽いです


それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!


この章も折り返しにきましたが、第一部完したら勢力纏めなどを活動報告で出すつもりです


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対立する主張と察する正体と軍神の提案

 

 

十六夜、霧崎、ラッテン、フェイスレスは座敷の中に足を運んで下座に座る。

今は特に話の無い士、映司、晴人は部屋の隅に座って耳だけを傾ける。

黒ウサギは釈天の隣に座り、緊張し切った様子で酌をする。

 

「女王に会いたいか…………………女王か。悪いけど、”クイーン・ハロウィン”とは面識ねぇな」

 

話を聞いて釈天は考え込むようにしながら言う。

ラッテンとしての用件はそれだった。

温泉でフェイスレスの素顔を見た時に浮かんだ光景、”久遠”という単語。

それらの鍵を女王が握っている気がしたのだ。

フェイスレスが女王騎士という立場なのもあるし、世界線関連の事ならば女王に調べて貰える可能性もあった。

とはいえ、あまり期待していたわけでも無いので特に反応したりはしない。

一応、保険は連れて来てあったが。

 

「そうなのですか?」

 

「かなりの美人と聞いてるし是非ともお近づきになりたいとこだが、俺は昔っから太陽神とは相性が悪いんだよ。仲介人がいれば話も通せるかもしれないが………………ああ、そうか。だから女王騎士が居るのか」

 

フェイスレスに視線が集まる。

そう、保険とは彼女の事である。

来るまでに少々悶着はあったが本命はそれだった。

黒ウサギが酌をしながら、御門釈天に懇願する。

 

「無理は承知でございます。如何に女王が大魔王といえども帝しゃ」

 

「ん?」

 

「み、御門釈天様の申し出であれば無下には出来ないはず。我らの同士の目的の為、そのご威光に縋らせてはいただけないでしょうか…………………………………?」

 

ふむ、と御門釈天は考える素振りを見せる。

 

「他ならぬ英雄たちの頼みだ。それぐらいなら引き受けても問題無い。女王騎士の仲介があればさほど問題無く話も通せるだろう」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「私からも感謝します。これで私の目的も(`````)叶います」

 

良い方向に話が進み感謝するラッテン。

実のところ、女王に会えるのならば聞きたい事もあるが頼みたい事もありはするのだった。

御門釈天の力が借りれないならば地道を重ねて会うつもりであったが手間は省けた。

しかし、話を聞いていたフェイスレスがいきなり立ち上がった。

 

「______いえ、お待ちください」

 

「何よ?」

 

「何故私が仲介人を素直にやる事になっているのですか」

 

「不満なの?」

 

「先程までの事があって良く言えますね。普通に”ノーネーム”としての話ならばともかくとして今の話だと貴女個人の話に近いじゃないですか」

 

「それが」

 

「貴女の手助けを私がするとでも?」

 

「いいじゃない、別に。私はあんたがうじうじやってるから一言言っただけでしょうが」

 

「人の領域に易々と踏み込んで来て言う台詞ですか」

 

至近距離で睨み合うラッテンとフェイスレス。

普段なら此処でアルマか、霧崎が止めに入る所ではあった。

だが、この場にアルマはおらず、霧崎は別件に気を取られている。

つまり、止める者がいない。

そして、御門釈天も口出しはしない。

むしろ、隠れているクロアやラプ子Ⅲと共にフェイスレスを観察していた。

彼らは彼女から複数の知り合いと近い物感じていた。

まるで、その者達の血を引いているかの様な感覚だった。

 

「貴女には分からないでしょう、生まれてすら来れなかった者の願望が!!それを掴むチャンスが遠退いていく絶望を!!」

 

「えぇ、分からないわよ!!でも、それを諦めて簡単に絶望してるのは気にいらないのよ!!チャンスがあるというのなら最後まで足掻きなさいよ!!」

 

その最期が(`````)近いんですよ(``````)!!」

 

「なら、もっと必死になりなさいよ!!」

 

十六夜は目を丸くしながら珍しい物を見たとでも言う表情でそれを眺める。

黒ウサギは、どう止めたらいいのか分からずにアワアワしている。

映司と晴人は頭を抱える。

先程まで沈静化してはいたが、映司達と合流する前もこれに近い状況にあったのだ。

映司達が割って入った故に此処まで激化はしてなかったが。

御門釈天達は二人のやり取りと感じる気配からとある可能性を思い浮かべる。

釈天がクロアが擬態している陰に視線を向けると頷く様な反応が帰って来た。

 

「まぁ待つがいい。そのまま言い合ってるだけでは熱くなるだけで解決はしないだろう」

 

御門釈天は静かだがはっきりした声で割って入った。

それに気圧されたのかフェイスレスもラッテンも一旦は落ち着く。

二人の視線が釈天に向くと、釈天は一つの提案をする。

 

「お互いの言い分は平行線で、互いの意見に納得がいかない。ならば、決闘で決着を付けてみたらどうだ?自分の意思を貫き通したいのならばな。ちょうどよく二人とも”金剛の鉄火場”の本戦に勝ちあがっているだろう」

 

「それをすることで私にメリットがあるのですか?」

 

「そうだな。お前が勝ったらお前と女王のゲームにクリアへの道筋を用意してやろう」

 

「ッ!?」

 

その言葉にフェイスレスの顔色が変わる。

彼女は疑問に思っているのだろう。

何故自分と女王の(``````)ゲームの事を(``````)知っている(`````)のかと。

釈天はクロアから聞いていたアカレッドによる元”ノーネーム”のメンバー回収の件を思い出したのだ。

アカレッドはズレを利用して本来召喚されるはずだった者を見つけ出した。

その者を”鍵”として元”ノーネーム”のメンバーを回収するという話だった。

元”ノーネーム”と縁がある”鍵”と元”ノーネーム”の面々と近い物を感じさせるフェイスレス。

それらには繋がりがあると思えた。

それだけでは情報が少ないがフェイスレスとラッテンの口論から漏れた話と既視感の様な何か(````````)が合っていると思わせた。

 

「…………………信じ難い話ではありますが分かりました。乗せられるとしましょう」

 

「さて、お前の方は問題無いか?ラッテンよ」

 

「私の方がメリット薄い気がするけどまぁいいわよ。その仮面の騎士を殴り飛ばせるのならね」

 

「それでは、決まりだな。”金剛の鉄火場”のルールに従い二人で決闘するがいい」

 

話は纏まった。

変な方向性に進みはしたが纏まりはした。

フェイスレスとラッテンは視線で火花を散らしながら部屋を出るのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

しばらく経って部屋には御門釈天と士、映司、晴人だけになる。

すると、隠れていたクロアとラプ子Ⅲが姿を現す。

 

「クロアさん、いたんですか」

 

「十六夜の奴には黙っててくれよ」

 

そんな会話を交えながら各自近くに座る。

士だけに話すつもりが二人増えた。

とはいえ、むしろ好都合だとクロアは納得する。

 

「話をする前に映司に頼みたい事があるんだがいいか?」

 

「内容によりますけど……………話をする前に頼む事なんですか?」

 

「あぁ、お前がこれで受けてくれるかどうかで内容も変わるからな」

 

見方を変えれば了承するのを強要しているようにも見えなくは無い。

とはいえ、そう受け取る程映司も鈍感では無い。

前提条件の確認に近い物だと考え、静かに頷くのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方、霧崎はまだブツブツと独り言を言っていた。

御門釈天にお礼を言った時は冷静になっていたがぶり返したのだ。

 

「いや、本当に、何で俺が頭首なんだ」

 

霧崎を悩ませるのはそれだった。

温泉を出た後にラッテンからサラッと言われたのだ。

 

「霧崎、たぶん次の頭首はあんたよ」

 

それを聞いた瞬間、霧崎は茫然自失し、次の瞬間に困惑した。

完全に予想外の事だったのだ。

次の頭首は少なくとも自分は無いと思っていた。

自分という可能性を完全に排除してたゆえに大いに混乱するのだった。

何より受け入れるにも大きすぎる立場だった。

頭を抱えながら自室で月を眺めるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ラッテンは宿の自室にてアルマに説教されていた。

記憶を共有しているからこそ先程の一件も当然知れている。

 

「何で貴女は自制と言う物を知らないのですか!!」

 

「だって、うじうじしてるのを見たらイラッとしたんだもん」

 

「”もん”じゃないんですよ、”もん”じゃ!!」

 

ラッテンの言い分も分からない事は無い。

だが、見方を変えればラッテンが一方的に難癖を付けてる様に思われても仕方ない場面でもあった。

特にフェイスレス側からして見れば明らかにそうだろう。

彼女からしてみれば自身に一切関係無いラッテンが勝手に突っ込んで来て挑発するかの様に言い放っていったのだから。

とはいえ、決闘する事になり、お互いそれで納得するならば抑えは効く面はある。

それを踏まえた上でアルマはラッテンに問う。

 

「それで、勝算はあるのですか?」

 

「あるわよ。私が勝算の無い勝負を受けると思ってるの?」

 

「えぇ、とても思いますよ」

 

アルマの視線に思わず眼を反らすラッテン。

感情に任せてしまうタイプであることは分かっているし、自覚もあるのだった。

記憶を共有しているとはいえ、思考つまり考え方は違う。

なので、話し合う事にも意味はある。

相手は女王騎士であるフェイスレス。

あの仮面の騎士の実力は察せている。

純粋な実力ならラッテンより遥かに上だろう。

だが、それはあくまで純粋な実力なら、だ。

ゆえに二人は策を練る。

フェイスレスを倒す策を、あの仮面の騎士を自らのフィールドに引きずり下ろす方法を。

 

 






フェイスレスとラッテンが決闘する事になるのでした
帝釈天たちが感じてる既視感はラッテンが見た光景と近い物です
そんなデジャブを複数のキャラが感じるのは”ズレ”が原因だったりします

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!


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スピーチと軍神の答えと逃げない者

 

 

________”金剛の鉄火場”・本戦当日。

舞台を映し出す巨大な壁と観客席。

黒ウサギは舞台の壇上に上がると、観客席に向かって笑顔で手を振った。

 

「いよいよ”金剛の鉄火場”の本戦開始まで半刻となりました!!今回の審判役は”ノーネーム”所属の黒ウサギと!!第三桁”忉利天”よりゲスト審判で来ていただいた、御門釈天様の実況で進行させていただきます!!」

 

____雄々オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォ!!

黒ウサギが壇上に上がると、鉱山全体を揺らす歓声が起きた。

この舞台で正式に”サウザンドアイズ”専任の審判ではなくなった彼女だが、ファンにとっては関係の無いことである。

何時もの横断幕もバッチリ靡いている。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

控室にて霧崎カブトは頭を抱えて座り、ダラダラと汗を流していた。

結局流されるまま此処まで来てしまった。

 

「俺が頭首ねぇ…………向いて無いはずなんだけどな……………………」

 

顔を引き攣らせながら呟く。

そして、仲間達ならどうするか思い浮かべる。

夜科アゲハならきっぱり断って我の道を行くだけだろう、雨宮桜子ならアゲハの後をついていくだろう。

朝河飛龍も断るだろう、望月朧は…………引き受けても断っても好きにしかやらないだろう。

結局のところ参考になるタイプなど周囲にはいないのだった。

あえて言えば八雲祭なのだが、彼女の場合はカリスマと経験から来る物が大きい。

それを自分に期待できるとは思えないのだった。

その時、控室の扉をコンコン、と叩く音が聞こえてきた。

 

「カブトさん。少しよろしいでしょうか?」

 

「黒ウサギか。いいけど」

 

首を傾げながら霧崎は答える。

黒ウサギは控室に入ると霧崎の様子に苦笑するのだった。

 

「心中お察しいたします。ですが、黒ウサギもカブトさんは頭首に向いていると思いますよ?」

 

「十六夜はともかく映司さんの方が適任だと思うけどな………………」

 

「十六夜さんが向いて無いのは分かっているのですね」

 

「あいつは自由にやらせておいた方がいいタイプだろ。似たような奴を(```````)見てきたからな(```````)。とはいえ、自由にやらせ過ぎると壊れるタイプでもあるから俺達でそこらへんサポートしてやるのがちょうどいいんだよ」

 

「黒ウサギからしたら映司さんもそういう傾向があると思いますよ?」

 

「映司さんはそうなる前に周りを頼れるタイプだと思うけど」

 

十六夜の場合は一人で全部抱え込んで三頭龍に一人で挑んだような事をまたやるだろう。

そこらへんは天戯弥勒に一人で挑み、ミスラを片付けた後にぶっ倒れたアゲハに重なる部分がある。

だけど、映司の場合は違う。

普段から言っている通りに助け合うのが大事だと理解してるし、アンクの様に心から信頼してる味方もいる。

晴人や士などのように同じような力を使う味方もいる。

それに昨日聞いた話から一人で抱え込んだらどうなるかを経験している。

だからこそ、無茶はしないと思えるのだ。

 

「けれど、映司さんも自由に動くべき人材だと黒ウサギは思うのです」

 

「そこは同意だけど、あの人なら自由にやりながらも何だかんだ纏めてくれそうな気がするんだよな~」

 

「期待し過ぎな面があると思います。それに黒ウサギはカブトさんも纏めるのに向いてると感じますよ?」

 

「何処が?」

 

「カブトさんは周囲をよく見ているじゃないですか。その上で慎重に動けるタイプです。大きな組織を動かすには必要な物です」

 

「そうかねぇ………………」

 

「カブトさんは映司さんも向いてると言いましたが、黒ウサギとしては映司さんは少数の集団を纏めるのに向いていますが、規模が大きくなると違うと思います」

 

「………………………だよなぁ」

 

そこで霧崎は観念する。

結局言い訳を挙げていたに過ぎないのだ。

後は受け入れるか、どうかだけの話だった。

 

「黒ウサギはカブトさんなら大丈夫だと思います。ラッテンさんやアルマさんが困った時に支えてくれるでしょうし、そこそこ信頼があるのですよ?」

 

「それ初耳なんだけど」

 

「三頭龍との戦いの時に正面切って言い返して恐慌状態に陥るのを防いだのはカブトさんとラッテンさんです。それにあの時、カブトさんに助けられた人はかなりいるのです」

 

それは事実だった。

あの戦いの時、霧崎は三頭龍の正面で戦い続けていた。

流石に全てとは言い切れないが、多くの攻撃を霧崎が受け止めていたゆえに守られた人は多い。

その姿に魅せられた人は多数いるのだ。

 

「分かったよ。やるよ、頭首」

 

「いいんですね?」

 

「しょうがないだろ?皆して外堀を埋めていくんだから。でも、あんまり期待しないでくれよ」

 

霧崎は諦めた様に、顔を引き攣らせ頭首になることを受け入れる。

これから先苦労するだろうが、それもまたしょうがないと思うのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

______そして、開幕の時間となった。

観客席は一つの空席も作る事無く埋まっていた。

千客万来とは正にこの事だろう。

相変わらず売り子として走り回っていた狐娘のリリは、狐耳をひょコン!!と立てながら品物を捌いている。

今回は他の年長組の少年少女も同じように売り捌いている。

これから先、”ノーネーム”が単独主催するゲームも増えてくるだろう。

少しでも彼らに経験を積ませてやろうという黒ウサギの親心だった。

ちなみに、大ショッカーへの警戒も兼ねて映司と晴人も観客席の陰にいる。

彼らも年長組の様子を微笑ましく見守っているのだった。

 

(十六夜様たちの戦いを見て、将来的に参加者(プレイヤー)を目指す子たちも出て来るかもしれない。そんな時の為に、私がしっかりしないと!!)

 

ひょコン!!と狐耳を立てて握り拳を作るリリ。

丁度、品物が半分ほど捌けたその時。

開幕の銅鑼が一つ鳴り響いた。

 

「大変お待たせいたしました!!”金剛の鉄火場”の本選を始めさせていただく前に、我ら”ノーネーム”の新しい頭首_______霧崎カブトさんから開幕の言葉をいただきます!!」

 

____雄々オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォ!!

割れんばかりの喝采の中、霧崎カブトが進み出る。

壇上に立った霧崎は、マイクを渡されると、冷や汗を流しながら観客の前に立つ。

”六本傷”と”ペルセウス”と、そして旧”      ”の名残を残す赤い布地の旗。

緊張によってバクバクしている胸を落ち着かせる為に掲げられる旗を、そして観客席を見渡す。

 

(ん?)

 

よく観客席を見ると見知った顔があった。

望月朧が笑顔で手を振っていたのだ。

あの顔はこの状況を明らかに楽しんでいる顔だ。

それは霧崎としてはイラッとする物であった。

その苛立ちのおかげか、緊張はすっかり消えた。

下手をして朧に笑い話にされるのも癪である。

霧崎は静かにマイクを近付け、第一声を口にした。

 

「俺は………………………”ノーネーム”の中じゃ弱い方だ。いや、弱いというより守りに特化してる分戦闘じゃ役に立たないだな。アジ=ダカーハの時も正直俺がどんだけ役に立ったかなんて怪しいレベルだ。あの勝利は他の奴らが命を懸けたからこその勝利だとは思う」

 

「________、」

 

そんなことは無いと、観客席の一部から声が上がる。

霧崎が前線にいなければ犠牲の数は大幅に増していただろう。

 

「俺より頭首に向いている奴はそれなりの数がいるだろうし、俺が頭首になる事に不満を感じる奴もいるだろう。俺としても正直他に任せたいところであったんだ。でも、一人はまだ悩んでるしこういう立場を押し付けるべきでは無い奴だ。もう一人は俺より頼りになるけど、自由にしているのが一番な人だ。結果的に俺に回ってくるわけだけど、文句を言いたい奴もいるとは思う」

 

自嘲的に言う霧崎に観客席がざわついてくる。

霧崎はそれでもまっすぐ前を見て続ける。

 

「でも、俺は逃げない(````)。逃げて後悔するのはもう御免なんだ。だから、俺は逃げずに受け入れる。文句を言いたいなら言えばいい。俺はそれを受け止めた上で前に進む。決まった運命なんて無いんだからせめて良い運命へと進めるように俺は頑張りたい。それには、俺じゃ力が足りないかもしれない。だけど、俺には支えてくれる仲間がいる。仲間がいるからこそ逃げずにいられるんだ。仲間を頼ることは別に恥じることじゃないんだ」

 

それは観客以外に、いまだ悩む仲間に向けた言葉でもあった。

霧崎は笑みを浮かべて言い切る。

 

「俺に出来ることは守る事くらいだ。だから、それで全力でやっていこうと思う。頭首として、一人の人間として俺は守りたい物を守っていく。それはコミュニティであり、仲間であり、今いる様な愉快な連中でもあり……………大切な人でもある。でも、俺だけじゃ出来ることも限りがある。だから、その時は力を貸してくれると助かるぜ」

 

対魔王、対”ウロボロス”、対”大ショッカー”の同盟の頭首だからこそそう言うのだった。

観客は同意する様に、賞賛するように拍手を送るのだった。

朧も面白い物を見れたのか笑みを浮かべながら拍手するのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

その時、十六夜は御門釈天と会ってはいた。

つまり、霧崎のスピーチは聞いていないのだが、それでも想いは伝わっていた。

十六夜は恥も外聞も捨て釈天に自分がどれほどの実力か、アジ=ダカーハにどうやったら一人で勝てるようになるか聞いているのだった。

それに対して釈天は弾けるような哄笑で答えるのだった。

 

「そればかりは自分で探せ。此処で見つからない様なら旅にでも出て探して来い。”ノーネーム”はお前が一人がいなくなったくらいでどうにかなっちまうほど、弱くねぇだろ?」

 

御門釈天は十六夜に背を向ける。

これ以上答える気はない、ということだろう。

 

「まあ、不名誉な勝利とはあのアルジュナにして涙させるほどの痛みを伴う。簡単に乗り越えられるものではないよな。ましてや死闘の果てに理解した相手なら尚のことだ。______全く。正義(アレ)(コレ)を背負わされて、さぞかし重たかったろうに」

 

「っ、……………」

 

最後の言葉は、魔王アジ=ダカーハに捧げられた手向けだった。

この善神と悪神の両側面をもつ大神は、誰よりも深くかの魔王のことを理解していたのだ。

 

「なあ、十六夜。駄神の自覚のある俺だが……………お前の痛み、正しく理解しているつもりだ。だからこそ腐らないで欲しいとも思っているぞ。何と言ってもお前の神話は、まだ始まってすらいないのだから」

 

それだけ告げると、御門釈天は笑いを噛み殺して実況席に戻って行く。

後はもう十六夜が決めることだ。

門矢士はまだ口出しするつもりのようだが、後押し程度の物だろう。

それにピースは揃っていた。

あとは十六夜が答えを出すだけなのだ。

歴史の歯車となって世界を救うことになるか。

或いは別の戦いに身を投じることになるのか。

どちらに転んでも……………最高に楽しいに違いないのだから。

 

 





本戦開幕でした!
新頭首は霧崎という事になりました

次回はいよいよバトル開始です

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!


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謎の風と権能の一端と”金剛の鉄火場”

大銅鑼の音が、洞穴全域に響き渡る。

ゲーム開始の合図である大銅鑼の音は鉱山全域にまで鳴り響いて彼方へと続く。

ラッテンは、霧崎のスピーチを思い出して頬を緩める。

そのままスキップする様に洞穴内を進んでいく。

様々な色で彩られた洞穴を進んでいくと人影がチラリと視界に入る。

直後にラッテンは左腕の掌に仕込んだギフトカードからハーメルケインを取り出して斬り掛かる。

 

「………………」

 

人影は、フェイスレスは既に構えていた連接剣で不意討ち気味に撃ち込まれたハーメルケインを受け止める。

視線が交差する。

フェイスレスの眼には憤怒が宿っていた。

だが、ラッテンは一切気にしない。

 

「さーて、決闘を始めるとしましょうか」

 

「始めるも何も貴女の方から不意討ちしているじゃないですか」

 

「開戦の合図なんて必要だったかしら?まさかと思うけど卑怯なんて言わないでしょうね?」

 

「えぇ、貴女はそういう性格でしたね!!」

 

言い合いながらも戦況は変わる。

フェイスレスが一旦ラッテンから離れようとするがラッテンは逆にハーメルケインに力を込める。

フェイスレスが耐える為に足に力を入れた瞬間だった。

 

「ッ!?」

 

足場が泥の様にぬかるみ、踏ん張りが効かなくなる。

そうなれば当然力を入れたラッテンによって弾き飛ばされる。

ラッテンの周囲にはメルン三姉妹がいた。

それを見たフェイスレスは察する。

足場がぬかるんだのは三姉妹の仕業だと。

 

「よくやったわ。メルン、メルル、メリル!!」

 

「甘いんですよ!!」

 

フェイスレスは即座に体勢を取り直すと、連接剣から弓に持ち替えて素早く矢を放つ。

ラッテンは軽く髪飾りに付いている硝子玉を弾く。

すると、ラッテンの前に風が巻き起こる。

それによって矢の軌道がズレてラッテンから外れる。

それはフェイスレスの予想内ではあった。

既にフェイスレスは弓から二本の剛槍に持ち替えている。

呼吸を整え、鼓動の加速に血液と筋力を合わせる。

そうして繰り出される槍撃は、正に練磨の極致と呼ぶに相応しい柔らかさだった。

とてもラッテンには防げる物では無かった。

そう、ラッテンにはだ。

稲妻を伴って山羊座の神獣がラッテンとフェイスレスの間に割り込む。

鉄壁の防御を誇る女神_____”アルマティアの城塞”の加護が槍撃を防ぐ。

 

『マスター!!』

 

「分かってるわよ!!」

 

槍撃を防いだ直後にアルマによる防御に穴が開く。

流動なその身は防ぐ際に穴は無くてもこうして作り出す事が出来る。

その穴からハーメルケインによる突きが放たれる。フェイスレスは首を反らして突きを回避する。

そのまま天井に槍を放つ。

 

『っ、天井が崩れます!!マスター、捕まってください!!』

 

「必要無いわ!!」

 

再び風が巻き起こり、崩れた天井と鍾乳石からラッテンを守る。

しかし、風が止んだ頃にはフェイスレスの姿は無かった。

 

「……………種が割れたかしら?」

 

『というより、何かを仕込んでいるのを感付かれたのでは?』

 

「さすがに誘いが露骨過ぎたようね~」

 

ラッテンは特に気にした様子も無く頭を掻く。

もったいないので仕掛け(```)を回収した後に、崩れた鍾乳洞から”金剛鉄(アダマンティウム)”を回収する。

何にせよ、まだ戦いは始まったばかりである。

周囲を警戒しながらラッテンとアルマはフェイスレスを探すのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「「「「「ra…………Ra、G、EEEEEEEEEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」」」」」

 

その鳴き声と共に鍾乳洞そのものが、まるで生命を得た様に鼓動を刻み始める。

此れは与える側の恩恵_____”権能”と呼ばれる力だった。

 

「囲い込め、アルゴルッ!!奴を逃がすな」

 

「GEEEEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

 

脈動する鍾乳洞は牙と成り爪と成って逆廻十六夜を襲う。

十六夜は軽薄な笑みを口元に浮かべてはいるが、反撃も出来ないまま攻めあぐねている。

 

「チッ…………!!”金剛鉄”を悪魔化させたら流石に厄介だな、ルイルイ!!」

 

決して速すぎるというわけではないが、”金剛鉄”を多量に含んだ大地の全てが蛇蝎の魔物となればいくら十六夜でも捌き切るのは容易では無い。

鋭利な牙が頭上から十六夜を襲う。

星を揺るがす一撃は未加工の”金剛鉄”ならば容易く打ち砕くが、それでも何時かの戦いのときのようには行かない。

軌道を読んで最小限の動きで回避し、右手を淡く光らせる。

紋様が浮かぶレベルまでは今は必要無い。

軽く力を集中させて横薙ぎに振るい、”金剛鉄”の牙を粉々にする。

触れた部分から流し込まれた力は本体に届く前に部位を切り離されてしまう。

ならば、発現させる力に出力は必要無い。

砕くのに必要な最低限の力が出せてればいいのだ。

十六夜は興が乗ってきたとなかりに獰猛な笑みを浮かべて犬歯を剥く。

 

「ハッ………………!!ペルセウス座が消滅した時にアルゴールも消滅した物だと思ってたんだがな!!どういうことだルイルイ!!」

 

「アジ=ダカーハ戦で得た功績が評価されて、三分の一だけ戻って来たんだよッ!!召喚は出来ないが、アルゴールの権能を行使することは出来る!!何時かの雪辱、此処で晴らさせてもらうからな!!今度は妙な力に頼らずに!!僕自身の力で!!……………………あと、ルイルイ言うなッ!!」

 

前回はゾディアーツスイッチを使い、ペルセウスゾディアーツとなって戦っていたルイオス。

けれど、今回は生身のルイオス自身の力で十六夜へと挑んでいる。

前は妙な力に惑わされていたが、今回は自分自身の力で戦い勝つ為に。

あの力に惑わされ頼った事はルイオスも後ろめたさを感じていた。

それを晴らす為の戦いでもあった。

飛翔する具足で縦横無尽に飛び回りながらルイオスは機会を窺う。

十六夜もルイオス自身が仕掛けてくるタイミングを虎視眈々と狙っているのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

十六夜とルイオスと戦っている場所の近くに士もいた。

そこでグリーと対峙していた。

 

「どうしたんだ、その翼?」

 

グリーの背には失われたはずの翼があった。

つまり、新たなる翼が与えられていた。

 

『これは帝釈天様から頂いた神格付きの翼だ』

 

「それは良かったな」

 

『良くは無いのだ!!』

 

グリーの言葉には憤怒が混じっていた。

どうも話を聞くと十六夜が帝釈天から褒美を貰えるという話になったようだ。

その際にグリーに獣王の翼を与える様に言ったらしい。

それでその要求通り、グリーには神格付きの翼が与えられた。

だが、グリーはそれには納得していなかった。

 

『誰がそんなことをしてくれと頼んだッ!!私にとってあの傷は誉れであっても恥では無いッ!!________それを何だ、人の了承も得ずに勝手に治しおって!!」

 

「……………大体分かった」

 

士は苦笑しながら頷く。

そして、あえて聞く。

 

「それで、お前は十六夜と戦いたいわけだ」

 

『そうだ。あの大戯けを矯正しなければならないからな!!』

 

とはいえ、ゲームには時間制限がある。

先に始めていたルイオスには決着まで待つつもりだが、その後に二人戦える余裕は無いだろう。

ならば、どちらかが戦えない事になる。

二人は静かに視線を合わせる。

 

「譲ってくれるわけがないよな?」

 

『当たり前だ』

 

「なら、どっちが十六夜の奴と戦うか決めるとするか」

 

言いながら士はディケイドライバーを腰に巻き付ける。

ライドブッカーからカードを取り出すとグリーに向けて駆けて行く。

グリーも士に向かっていく。

 

「変身!!」カメンライド!!ディケイド!!

 

『GEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!』

 

ルイオスの後にどちらが十六夜と戦うか決める為に二人はぶつかり合う。

ライドブッカーと鷲獅子の爪が火花を散らし始める。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

アンクも離れた場所でゲームを眺めていた。

 

「用件は何だ、真木」

 

アンクは背後の物陰に振り返りもせずに話し掛ける。

姿は見ていないが気配を感じた故に声を掛けるのだった。

アンクの予想通り、物陰から真木清人が現れる。

 

「おや、気付いていましたか」

 

「グリードの、しかもお前の気配を俺が見逃すと思うか?」

 

アンクは振り返らずに話す。

顔を見る気は無いようだ。

とはいえ、不意討ちされないように警戒も怠らない。

 

「世間話をする間柄でもありませんし、単刀直入に聞きますが。大ショッカーに付く気はありませんか?今なら幹部待遇で迎えられると思いますが」

 

「お断りだ。俺は俺のやりたいようにやる。誰がお前らに付くか」

 

「そうですか。では、その選択後悔しないように」

 

それだけ言うと真木の気配が消える。

アンクが振り向くと真木の姿はキチンと消えていた。

何をしに来たのか、それが不明瞭だった。

アンクを勧誘に来たのならばあっさり過ぎる。

おそらく他の目的があったのだろうが、すぐに姿を消したので考察の仕様も無かった。

ただ分かるのは此処も奴らにとっては簡単に入り込める場所だと言うことだろう。

不気味な物を感じさせるが、アンクは興味無さそうに視線を外し、ゲームの鑑賞に戻るのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ん?」

 

一方、映司と晴人も会場に妙な気配を幾つか感じていた。

だが、それが何かは分からず目立つ動きをする者がいるわけでも無いので対応の仕様が無いのだった。

 

 

 





はい、ゲーム開幕でした

フェイスレスvsラッテン
十六夜vsルイオス
士vsグリー
となっています

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力技の罠と神剣と記憶の影響

 

蛇蝎の剣閃を左腕で受け止める。

火花が散る中でラッテンはそれでも前に駆け込む。

蛇蝎の剣閃は捻じれ、背後から襲い掛かるが、それはアルマに任せていた。

 

「ハァァァァァァァァァァァ!!」

 

「だから、狙いが露骨なんですよ!!」

 

ハーメルケインによる突きをフェイスレスは蹴り上げる事で対処する。

更に素早く剛槍に持ち替え、槍撃を放つ。

だが、それは魔法陣によって防がれる。

ラッテンは何時の間にか左手に風切り笛を持ち、口元に当てていた。

それによる演奏とハーメルケインを共鳴させて直接ハーメルケインを吹かなくても魔法を発動させたのだ。

だが、遠隔操作ゆえに脆く、既にヒビが入り始めている。

それでも、フェイスレスは踏み込まずに一撃入れると後退する。

あのまま懐に入ればラッテンの思う壺だと判断したのだ。

本来は後方支援型のラッテンがフェイスレス相手に接近戦を挑む事自体が何かを狙っている様に考えているのだ。

おそらく、その内一つはメルン三姉妹による足場崩しだろう。

カウンターを狙ったフェイスレスの足場を崩して大きな隙を作るのを狙っているのだ。

それに加えてアルマティアの城塞が積極的に動かないのも不気味ではあった。

そして、未だに原理不明な風の恩恵の事もある。

ハーメルケインを吹いて起こすのならばまだ分かる。

だが、あの風は髪飾りを弾くという単純動作で発生する。

それのロジックが一切分からないのだった。

ラッテンも余裕は見せながら一定のペースは崩さない。

 

「さて、そろそろ仕掛ける?」

 

『今此方から仕掛けるのは愚策ですよ』

 

「まぁそれは分かってるけどね!!」

 

ラッテンはそう言うと口にハーメルケインを添えて、演奏を始める。

魔力を伴った音が周囲に響いていく。

 

「ッ!?」

 

フェイスレスは直感的に何かヤバいのを感じ取る。

そのまま放っておけば致命的な事態に繋がりかねないと判断する。

弓を持つとラッテンに向けて矢を放っていく。

それも自動防御するアルマティアの城塞に防がれていく。

同時に大きくヒビ割れる様な音が周囲に響き始める。

それに加えて体の動きが鈍く感じる。

ラッテンの本来の霊格はネズミと人を操る悪魔だ。

今は霊格の強化と拡大に伴い、”笛吹道化”としての面が大きくなっている。

それゆえに魔力を込めた演奏によって魔法を発動させるハーメルケインと相性が合致して自在に使いこなせる。

とは言っても、本来の力の方が使えなくなったわけではない。

むしろ、使う機会が無かっただけで強化されているくらいだ。

そう、人を操る力も強化されている。

さすがにフェイスレスを操るレベルでは無いが、動きを鈍くするくらいなら容易い。

ついでに、メルン三姉妹の霊格を魔力を込めた演奏によって強化する。

先程の足場崩しとは比べ物にならない事が起きる。

フェイスレスの足場とその頭上の天井、それら全てを崩壊させたのだ。

大量の瓦礫が動きが鈍ったフェイスレスへと襲い掛かる。

大質量で広範囲の崩落はさすがのフェイスレスでも動きが鈍った上では回避は出来まい。

あとは押し潰れるだけだ。

 

「さーて、やったかしら?」

 

『それ、フラグですよ』

 

「分かってても言いたくなるものよ。仮面の騎士様がこんな力技でやられるとは思えないのよね~」

 

冷や汗流しながらラッテンは瓦礫の山を眺める。

これは相手が警戒して近付いてこなかった場合の為に用意していた策ではあるが、此処まで上手く行くと逆に心配になるのだ。

アルマもその点に関しては同感なようで警戒は解かない。

そんな二人の警戒に応える様に何かを砕く様な音が瓦礫の山から響く。

 

「これは……………」

 

『えぇ、来ますね』

 

二人が言うや否や瓦礫の山が内から弾けてフェイスレスが姿を現す。

フェイスレスが出てきた場所からは見事にトンネルが出来ていた。

崩落が起きる程度に脆くしたのに加えて落下によるダメージもあってフェイスレスなら砕ける程度の強度ではあったのだろう。

フェイスレスが崩落の中で生き残ったのは彼女の技量ゆえだった。

彼女は足場と天井が崩れる中で瓦礫の崩れ方と落下位置を計算した。

その上で足場を確保しながら剛槍による槍撃を瓦礫に叩き込んだ。

それによって軌道をズラし、ちょうどフェイスレスが避難できる程度の空間が発生する様に調整したのだ。

後は岩を再度崩落させないように気を付けながら瓦礫を砕き、奪取したわけだ。

しかし、それでも無傷では済まなかったようで鎧は傷付き、所々血が流れている個所もあり、仮面にもヒビが入っていた。

 

「無茶をしますね、貴女は」

 

「確実に倒すならこれくらいしなきゃでしょう?」

 

「いいでしょう。どうやら、私は貴女を甘く見ていた様だ。それに詫びるのも兼ねて私の根元たる権能を見せてあげますよ」

 

言いながらフェイスレスは剛槍をギフトカードに仕舞った。

素手で戦うとは思えなかった。

何より”権能”という言葉の時点で嫌な物しか感じなかった。

なので、ラッテンは短期決戦を仕掛ける為にアルマに跳び乗る。

 

「仕掛けるわよ、アルマ!!こうなれば力技で押し切る!!」

 

『了解ですよ、マスター!!どうなろうが知りませんからね!!』

 

鍾乳洞が崩れるのではないかというほどの稲妻が迸る。

実際に先程の崩落もあってポロポロと破片が落ちてくる。

ラッテンはハーメルケインを吹き、アルマの霊格を更に強化する。

これがフェイスレスの思惑通りの行動だとしても力技で押し切るという気迫を持って叫ぶ。

 

「この一撃を持って、あんたの面倒くさいしがらみごと吹き飛ばしてやるわよ!!」

 

雷霆と成った山羊座の星獣が嘶きを以て応える。

大気が熱膨張を起こして雷鳴を響き渡る。

ギリシャ神群最強の楯は、今正に最強の矛となってその頭角を向ける。

一度この迅雷が奔れば、万象の全てが灰燼に帰すことは必定だ。

この星獣の一撃は原子すら残さず仇敵を討ち滅ぼすだろう。

 

(雷霆に比する一撃。此れは流石に躱せませんね)

 

守ることなど出来はしない。

いなすことなど以てのほか。

ならばどうすればいいのか_________そんなのは、決まっている。

 

「イージスは砕けない。それに任せた猪突猛進さが貴女の敗因ですよ」

 

視線に憂いが灯る。

それと同時に、彼女はギフトカードから一振りの銅剣を取り出した。

それが何なのかを悟った瞬間、アルマは絶望的な悲鳴を上げた。

 

『っ、いけないッ!!』

 

一直線に腹部を貫くはずだった突進は、その銅剣を避けるかのように体を反らして滑って行く。

乾竹割りに一刀両断するつもりだった銅剣は、最強の楯の腹部を裂く偉業をなす。

敵対していた両者は、互いが必殺の念を込めて振りかぶった一撃を外したことに舌打ちを漏らした。

フェイスレスもまた、今の一撃で勝負を付けるつもりだったのだ。

だが、ラッテンにとってはそれどころでは無かった。

 

「グッ…………ガバッゴハ、ガアアアアァァァァァァァ!?」

 

「マスター!?」

 

ラッテンは血を吐きながらのたうち回る。

全身が引き裂かれるような痛みに襲われていた。

人型になったアルマが声を掛けるが反応する余裕も無かった。

どうして人型になったのか、どうしてアルマの体から全ての霊格が(``````)失われている(``````)のか気にする余裕も無い。

 

「ッ、しまった。そういうことですか。その神剣_____”天叢雲剣”はマスターにとって致命的な存在ということですか」

 

ラッテンを庇うようにしてフェイスレスの前に立つアルマ。

神剣の名に反応する余裕もラッテンには無い。

何故なら今の彼女は存在そのものが危うくなっているのだから。

 

「えぇ、どうやらその様ですね。周囲全ての異能や恩恵(ギフト)、魔術などの霊格を不能にする万物調律の神剣。どうやら此れは貴女の天敵なようですね」

 

その権能はまさしくラッテンにとって致命的だった。

恩恵によってその身に宿した異能や霊格を、不能にする。

それはつまり、ラッテンをこの世に繋ぎ止めている術すら無効化しているという事だ。

そうなれば彼女の体が崩壊していくのは必然だ。

もはや、太刀打ちするどころか勝負を続けることすら不可能かと思われた。

その時、アルマとフェイスレスの間に何かが転がってきた。

それに二人が気付いた時には破裂し、大量の煙を吐き出していた。

 

「煙幕ですか…………ッ、ぐぶ__ッ!?」

 

煙に気を取られた隙を付くかのように煙を突き破って蹴りが放たれる。

いきなりの事に対応し切れずに蹴りはフェイスレスの腹に突き刺さる。

フェイスレスはそのまま耐え、踏み留まろうとはせずに背後に自ら跳ぶことでダメージの軽減を試みる。

 

「悪魔を舐めんじゃないわよ」

 

ラッテンは口に溜まった血を吐き捨て、口元の血を拭いながら呟く。

全身を襲う激痛はまだあるが、耐えて立っているのだった。

アルマが支えるように背中に手を添えるとラッテンは吹き飛んだフェイスレスを指差す。

 

「とりあえず範囲外まで逃げるから時間稼ぎよろしく」

 

「分かりましたよ」

 

囮扱いではあるが、今ラッテンに消えられてはアルマも困るので苦笑しながら引き受ける。

ラッテンは壁に持たれ掛かりながら歩いていく。

隠し持っていた煙玉を使い、フェイスレスに蹴りを入れるまでは良かったがそれはそれで無茶をしているのは確かだった。

体を引きずるようにしてその場を離れていく。

アルマはその姿を見ながら溜息を吐く。

呆れたような表情をしながらフェイスレスを先に行かせない為にも立ち塞がる。

フェイスレスは咳き込みながら立ち上る。

その姿からアルマは”天叢雲剣”のリスクを察するのだった。

煙が晴れ、フェイスレスとアルマは向き合う形になる。

フェイスレスは、真っ直ぐアルマを見て剣を構える。

アルマは斬られた腹部を押さえながら仁王立ちし、冷や汗を掻きながらも不敵に笑う。

 

「マスターの蹴りがそれなりに効いたようですね。私を置いて、マスターを追ってもいいんですよ?」

 

「意地悪な物言いですね、山羊座の女神。この神剣は周囲にある全ての神秘を断ち切る権能。それは使用者である私も例外ではない」

 

そう___即ち、所有者であるフェイスレスもまた霊格が減衰し身体能力が只の少女のものに成り下がっているのだ。

ゆえに先程悪魔の膂力を持つラッテンの蹴りが耐えれずに吹き飛ばされ、咳き込む程にダメージを受けていた。

しかし、女王騎士である彼女には霊格を失って尚、卓越した剣技がある。

先程のはあくまで虚を付いて不意討ちが出来たからこその結果である。

この状況で彼女を倒すには、彼女以上の技量を持つ者が圧倒してみせるしかない。

 

(それはあくまで正面から相手をした場合の話。マスターならあの手この手足掻くでしょう。とはいえ、私も私でやれる事はやりますか)

 

武芸百般とまでは言わないが、アルマティアもかなり高度な武術を修めている。

それでもフェイスレスに勝てるかどうかは怪しかった。

それでも、時間稼ぎで済まさずに自分で片付ける程度には気合いをいれてアルマはフェイスレスに挑む。

らしくは無いと思っていた。

共有する記憶に影響されたのかもしれないが今は構わなかった。

笑みを浮かべながらアルマは仮面の騎士に向かっていく。

 

 





ラッテン&アルマvsフェイスレス一色でした!
後方支援型がフェイスレスと戦えてるのはあえて接近戦を仕掛けた上で随所で搦め手使う事で罠を警戒させて深く切り込まれるのを防いでいるからです
接近戦出来るのは大体アルマのおかげです

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!


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騙し合いの末と星座の騎士と旅立ちの決意

 

 

(クソッタレが!!あの隠者の恩恵は本当に厄介だなッ!!)

 

ルイオスの姿は消えていた。

隠者の兜を使って姿を消しているのだ。

アルゴールの相手をしている隙に使われたのだった。

十六夜は”金剛鉄(アダマンティウム)”の大蛇を引き千切りながらルイオスの居場所を探る。

ハデスの恩恵を受けた隠者の兜は十六夜と相性最悪である。

霧崎からPSIの事を教わったとはいえ、さすがにイアン式ライズは使えない。

時折命令を出す為に声を発するが、それ以外は全くと言っていいほど気配が感じられない。

結果として十六夜は不意討ちを受けない為に随時走り回ることを強要されている。

それに加えて悪魔化した”金剛鉄(アダマンティウム)”の使い方が嫌らしかった。

十六夜の体力を削ることに集中しているのか、足払いを掛けるかの様にし掛けてきたり、避けた先に鋭く尖らせた”金剛鉄(アダマンティウム)”が待ち受けている事もある。

更に道中の所々が何か激しい争いでもしたかの様に破損しており、走破するのを苦労させる。

とはいえ、一時間やそこら走り回った程度で体力が尽きることは無い。

けれど、此れではルイオスの持ち点は維持されてしまう。

十六夜は獰猛な笑みを浮かべると洞穴の角に張り付き、見ることの出来ないルイオスへと叫ぶ。

 

「ルイルイ、最後の勝負だ!!自分の力で勝つんじゃ無かったのか?姿を見せてかかってこいッ!!」

 

安い挑発だが、失敗するのは分かっている。

十六夜の狙いは三手先の攻防にある。

すると狙い通りとばかりに、彼の周囲の岩盤が悪魔化して脈を打ち始めた。

 

(きやがったな……………!!)

 

十六夜は不意を突かれたかのように両手両足を拘束される。

洞穴の角に背を預ければ、ルイオスは間違いなくその部分を悪魔化させると読んでいた。

そして最後の一撃は、ルイオス自身が決めに来ると言うことも。

先程言っていたようにルイオスは今回自分自身の力で戦うことに意味がある。

それゆえの拘りでもあるのだろう。

 

「そのまま押さえ付けておけ、アルゴールッ!!最後は僕が決めるッ!!」

 

声の距離からして約十メートル付近。

意外に近くまで来ていた事に気が付いた十六夜は、すぐに右足の拘束を引き千切り、その場で地面を蹴り崩した。

 

「しゃら、くさいッ!!」

 

轟音と共に巻き上がる弾丸の嵐。

蹴り上げられた岩石は真正面全域に散弾となって飛び散り洞穴全域を揺り動かす。

鍾乳洞はその衝撃で天井にヒビが入り、鍾乳石が槍の様に降り注ぐ。

しかし十六夜の本当の狙いは別にあった。

 

(よし、土煙が上がった。此れで何処から来ても動きが分かる!!)

 

イアン式ライズはライズ波動を放射し、相手の生命波動を感知する。

蝙蝠の超音波や海棲哺乳類の音波に近い仕組みだ。

ようは一定ペースに放たれる波に何かがぶつかり反射した物を感じ取るという事だ。

もちろん十六夜にはそんな芸当は出来ない。

ならば、どうするか。

その答えがこれだ。

巻き上がる土煙に空間が満たされれば姿が見えなくとも、土煙の歪みで動きを見る事が出来るというわけだ。

この恩恵(ギフト)は”ペルセウス”が持つ恩恵で最も驚異的だ。

一撃で仕留めねば二度とチャンスは来ない。

拳に力を込める。

まだ片足以外は悪魔化した岩盤に拘束されているがこんなものは何時でも解き放てる。

現に右腕周辺は淡く光らせた右腕から流れ込むエネルギーによってヒビが入り、即座に崩れるレベルになっていた。

ギリギリまで拘束されていた状態の方が釣れると判断したのだ。

土煙の流動を僅かでも見逃さないように瞳を凝らす。

右方向に土煙が揺れた途端、十六夜は瞳を見開いた。

 

「____そこかッ!!」

 

右腕を何時も通りに振るえば既に内部がボロボロになっていた岩盤は積み木のように崩れていった。

そして、勢いのままに拳を突き出す。

まだ制御が完全では無いゆえに土煙にもエネルギーは流れ込み激しい光を周囲に撒き散らしながら十六夜の拳は土煙を消し飛ばして現れた隠者の兜を正確に捉えて砕き飛ばした。

だがその直後、十六夜の瞳に驚嘆の色が広がる。

 

(っ___________!?ルイオスが居ない!?隠者の兜と飛翔の具足だけだと!?)

 

その瞬間、嵌められたのは自分の方だと気が付く。

ルイオスは隠者の兜と飛翔の具足を囮にして、十六夜から渾身の一撃を引き出したのだ。

そして、ルイオスにとっても予想外だろうが周囲の土煙も消し飛ばされた事によって十六夜の姿は浮き彫りになっていた。

時間にして刹那にも満たない隙を、ルイオスは見逃さなかった。

 

騙し合いは(`````)僕の勝ちだ(`````)_______逆廻十六夜ッ!!」

 

上空から十六夜の背後めがけて落下するルイオス。

対して十六夜は拳を突き出したまま姿勢が崩れ、ルイオスが何処にいるかまだ把握出来ていない。

此れで互いの明暗は完全に分かれた。

獅子座の恩恵も星霊殺しの鎌が相手では分が悪い。

体内を脈打つ”何か”による光の力も全身に巡らせれる程制御も把握も出来ていない。

ライズもバーストもまだ咄嗟の対応が出来るレベルでは無い。

見様見真似による技も即座に出せる物では無い。

しかもルイオスは上を取り、十六夜は下に居る。

体勢的にも此処から迎え撃つのは不可能だ。

だが騙し合いで劣勢を取らされた十六夜の沸点は、そんな条理に降るほど柔ではない。

 

「上等だッ!!だったら、上下左右、全方位纏めて(``````)ふきとばしゃ(``````)いいんだろうがッ(````````)________!!」

 

右手を包む淡い光は途端に光る紋様に変わる。

紋様は右腕から右頬まで広がる。

そのまま振り被った拳を、大地に突き立てる。

瞬間、大地震を錯覚させる程の衝撃が鉱山街全域にまで届いた。

十六夜が全力全開の本気で拳を叩き付けた岩盤は突き立てられると同時に粉滅し地殻にまで衝撃を届かせてヒビを入れる。

周囲はそれどころでは無く地割れかと思える勢いで瓦解していく。

山は傾き沈み、洞穴は各所で崩落が始まり、観客席にも岩石が幾つも落ちてくる事態に陥った。

それに対して誰よりも速く映司は動く。

オーズドライバーを腰に巻き付け、白のメダルを入れて、オースキャナーに読み込ませる。

 

「変身!!」

サイ!!ゴリラ!!ゾウ!!サゴーゾ!!サゴォォォォォゾ!!

 

サゴーゾコンボに姿を変えるなり、映司はドラミングする事で周囲の重力を操る。

それによって観客席に落ちる岩石を一つ残らず空中に留めさせる。

それを黒ウサギが”疑似神格・金剛杵(ヴァジュラ・レプリカ)”で纏めて打ち砕いていく。

 

「映司さん、ありがとうございます!!」

 

「いいよ、このくらい。観客の人達に怪我をさせるわけにはいかないしね」

 

更に何故かいたマンドラとサラも落石を砕いていく。

その頃、鉱山の貯水池では。

 

「変身」

ウォーター!!ドラゴン!!ザバザババシャーン、ザブンザブーン!!

 

晴人はウォータードラゴンに変身して白雪姫と共に、貯水池の水が街に流れてしまわないように堰き止めていた。

それに加えてドラゴタイマーで分身して、街の方もサポートしていた。

レティシアとクロアも彼らをサポートしていた。

白雪姫は苛立ちながら苦言を漏らす。

 

「ええい、主殿は加減を知らんのか!!」

 

「全くだ。今回は白雪殿と晴人がいたから何とかなったが、流石に反省して欲しい。一歩間違えたら大災害だ。

 

「キハハハハ!!ま、三分の一は俺様の空間跳躍のおかげだけどな!!」

 

「あいつに反省しろって言っても無駄だろうしな~」

 

彼らは苦言を口にしつつも、同時に十六夜のことを理解していた。

彼が本気の拳を振るわねばならないほどゲームに取り組めていることを素直に安心してもいるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

十六夜とルイオスの戦いに決着が付いたのは、全ての騒ぎが沈静化する少し前のこと。

右肩を激しく斬られた十六夜と、岩盤に叩き付けられたルイオス。

しかし立っているのは十六夜だった。

ルイオスの一撃は十六夜が大地に拳を叩き付けた衝撃で斬撃が鈍り、致命傷を与えるに至らなかった。

そして二度目の一撃を叩き込むことも無く、ルイオスは倒れ伏した。

ルイオスは脱力したまま倒れながらも、悔しそうに歯噛みをする。

 

「くそ………………くそ、くそ、また負けた…………!!此れだけの好条件で、捨て身まで何もかも全て上手くいっても、………………まだ、勝てないのか………………!!」

 

ドンッ、と地面を叩く。

ルイオスなりに決意を持って臨んだ一戦だった。

そうでなければ単独で一番の難敵である十六夜に真正面から挑み掛かったりはしないだろう。

前回のゾディアーツスイッチを使った状態での一戦より善戦はした。

だが、そんなことは何の慰めにもならない。

十六夜は肩で息をしながらその様子を見ていた。

ルイオスが言う通り、全ての面においてルイオスに天秤が傾いていた。

十六夜が倒れていなかったのは、基本能力がルイオスを上回っていたからに過ぎない。

それ程に際どい勝負だった。

_________しかし、本当にそれだけだっただろうか?

 

「……………………」

 

壁に凭れ掛かり、何かを言おうとして止めた。

此処まで格下に噛み付かれた経験が十六夜には無い。

それは格下が相手でも全力を尽くすのが十六夜の流儀だったからだ。

どんな相手にも万策を用意してゲームに臨み、その上で捻り潰してきたのではなかったのか。

ならば今回はどうだ?

逆廻十六夜はルイオス達に対策を用意していたか。

答えは否だ。

最近は道の先が不明瞭になり、自身の力にばかり目を向けていた。

 

(……………クソが。無様なのは俺の方だろうが)

 

万策を尽くしていない勝者が、善処を尽くした敗者に何を語れという。

お互いに惨めになるだけだ。

そのまま去ろうとした十六夜だったが、意外にも声を掛けたのはルイオスの方だった。

 

「覚えとけ………………次は…………………次は、必ず僕が勝つ。”ペルセウス”の名誉は、いつか必ず返してもらうからな………………………!!」

 

「________。」

 

滾る様な闘志を背中に受けて、首だけで振り返る。

其処にはもうボンボン坊ちゃんなど居はしなかった。

己の目標を見定めた一人の戦士が、万感の意思を込めて十六夜を睨み付けていた。

 

「……………ハッ。いいぜ、何時でも来い。好きなだけ相手してやるよ、星座の騎士」

 

言葉は自然と零れていた。

口元には愉しさを堪えられない笑みがあった。

随分と久し振りに本心から笑った気がした。

地盤がボロボロになるまで砕けた鍾乳洞を進んだ十六夜は、正面に立つ最後の敵を見た。

 

「…………最後はあんたか、門矢士」

 

「グリーの奴に順番を譲って貰っただけだ。お前が随分と苦戦してたから残りは五分程だぞ?」

 

そんなに経っていたのか、と十六夜は呟く。

体感からすればそんなに時間が過ぎ去ったようには感じられていなかったが、一刻近くルイオスと戦っていた事になる。

士はボロボロになった衣服を手で払う。

どうやら士は士でそれなりに手古摺ったらしい。

十六夜は士に向き合いながら何時か見た悪夢を思い出す。

自分と士が対峙し、黒ウサギの声を振り切って拳をぶつけ合い、それによって世界が崩壊していく悪夢を。

士とこうして対峙した事によってフラッシュバックしてくる。

まるで針が刺さったかの様に頭痛がする。

そんな頭を押さえる十六夜の姿を見ながら士は言う。

 

「色々悩んでいる様だが、そんな悩み俺が破壊してやるよ」

 

「は?」

 

「仕立てられた英傑とか、課せられた伝承とか何だか知らないがお前を縛る”運命”は俺が壊してやる。何て言ったって俺は破壊者だからな」

 

冗談めかした言い方に十六夜は思わず苦笑する。

十六夜としてはン・ガミオ・ゼダの件といい、魔神の件といい規格外の敵とそれに対する映司達や霧崎の対応。

自身の先を行くと思われる光景を散々見せ付けられて悩みが深まったというのにこれである。

解決へのピースも与えられてるのである意味でイーブンではあるのだが、苦笑したくもなる。

 

「あんたは何で俺に対してそこまでするんだ?」

 

三頭龍アジ=ダカーハとの戦いの後の対応全てを含めた上で言う。

士は少し視線を反らしながら答える。

 

「俺のかつての旅は世界の歯車を正しく回す為に仕組まれた物だった。そして、俺は使い潰された。今はこうして自由になってはいるけどな。そうして使い潰されるのは俺の様な奴で十分なんだ。お前のような奴はレールに乗らずに好きにした方がいいんだよ。旅の行先は自分で決める物だからな」

 

「ハッ、____」

 

今度こそ心の底から笑う。

ようは何だかんだ言ってただ、士がお人好しというだけの話ではあった。

自分のように潰されないように十六夜を導いているわけである。

ついでに、”運命”からは抜け出せて自分の道を進めるという前例でもあった。

 

「そうかよ。なら、いいか」

 

笑ながら十六夜は士から視線を外し、観客では無くこのゲームを見ている”ノーネーム”メンバーに向けて言う。

 

「俺はしばらく”ノーネーム”を離れる。箱庭って世界を思いっきり値踏みしてきてやるつもりだ。だから、その間は頼んだぜ」

 

言うことを言い終ると士の方に向き直る。

もう頭痛も悪夢もどうでも良くなっていた。

自分と士がぶつかった程度で壊れる世界ならその程度だったという事だろう。

それならそう値踏みするだけの話である。

 

「それじゃあ、始めるか」

 

「あぁ、_______”ノーネーム”所属、逆廻十六夜だ。覚悟はいいよな?」

 

「通りすがりの仮面ライダーだ。それは此方の台詞だ」

 

士は腰に巻いていたディケイドライバーを開きながら十六夜に向けて駆ける。

走りながらカードをディケイドライバーに投げ入れ、閉じる。

十六夜もそれに合わせる様に拳を構えながら士に向けて駆ける。

頭痛が酷くなるが、そんな物は意地で振り切る。

残像が重なり、士が完全に姿をディケイドに変えると同時に両者の右の拳が衝突する。

それだけで、空間が揺らぐ。

天地を揺るがし、時空を歪ませる力を持った両雄の最後の決戦の幕が開ける。

 

 





vsルイオス決着でした!
次いで士vs十六夜開幕です

士が十六夜を気に掛ける理由は色々あります
一つは三頭龍と十六夜の決着を見た事でもあります

それでは、質問があれば聞いてください
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宝珠と残る白銀と旅立つ者達


今回で第一部完です


 

______フェイスレスは、朦朧とする意識の中でラッテンの行方を捜していた。

アルマには勝利した。

が、殺してはいない。

勝負を見届けさせる為に足の腱を斬るに留めた。

”天叢雲剣”のリスクはあれだけでは無い。

使用時間が長ければ長いほど、ゴーストナイトである彼女が箱庭にいられる時間が擦り減ってしまうからだ。

ラッテン程致命的では無いが消耗はあるのだ。

 

(本当に何をやっているんでしょうね、私は)

 

心の中で思いながら自嘲する。

決闘するまではらしくは無いとはいえ許容範囲だ。

だが、因縁の相手でも無いラッテン相手に”天叢雲剣”を使うのは明らかにおかしい。

手としては有効だ。

それは確かにある。

けれど、わざわざ自身が箱庭にいる時間を擦り減らしてでも使う意味があったかと言えば別だ。

確かにラッテンは気に入らない。

因縁の相手、自身の双子になるはずだった存在。

それを見付けることすら出来ずに女王とのゲームの期限が迫り、半ば自棄になっていた部分もあった。

心の中で諦めていた部分もあった。

自身の事をろくに理解もしてないラッテンがずけずけと踏み込んで分かった様な事を言ってくるのにイラついたのも事実だ。

それでも、それでも、幾ら理由を並べようが此処までの事になる理由は見当たらなかった。

まるで、何か大きな物に(`````)仕組まれた(`````)ような感覚に陥るがいくら何でもそれは考え過ぎだろう。

頭を押さえながら考えていると鍾乳洞、否、鉱山そのものが大きく揺らいだ。

それによって鍾乳石が天井から落ちてくる。

 

「______ッ」

 

笛の音が聞こえて来たのはその時だった。

相変わらず不意を狙ってくる。

とはいえ、フェイスレスは別に警戒を解いているわけではない。

何が起きようが対処するつもりだった。

そして、予想通り風が吹き始める。

笛の音に共鳴するように風は捻じれ、落下する鍾乳石や岩石を包み込んでいく。

そのままフェイスレスに向けて鍾乳石や岩石が飛んでくる。

 

「ハッ!!」

 

フェイスレスは剛槍を振るい、それらを撃ち落していく。

風に包まれる中で視界の端にラッテンを捉えた。

ラッテンはハーメルケインを口から離し、声を上げる。

 

「”ノーネーム”所属、ラッテン。最後になるだろうし、名前を教えてくれる?」

 

「”女王騎士”所属、…………………………久遠(``)彩鳥。尋常に参ります」

 

一瞬躊躇う様にしながらも名乗った。

ラッテンは名を聞いた途端に苦笑するがすぐに気を取り直してハーメルケインを口に添える。

すると、風が更に強まった。

まるで、フェイスレスを拘束するような暴風だった。

風の種自体はラッテンにとっては簡単だった。

風を起こす恩恵を宿した宝珠を遠隔で軌道させてるに過ぎない。

ラッテンの左腕の義手の掌にはギフトカードが仕込んである。

それを利用して接近戦で目を引きながら宝珠をばら撒いていたわけである。

更にアルマとも霊格を同調させたラッテンの霊格はそこそこ大きくなっている。

それにより、出来ることの幅も広がっている。

その一つが単純な音に魔力を乗せることだった。

髪飾りの硝子玉には宝珠起動用の式を刻んでいた。

その状態で弾く事によって音叉の様に宝珠と硝子玉が共鳴して起動するというわけである。

とはいえ、そこまで簡易化するとただ起動させるだけしか出来ない。

だが、今はハーメルケインによって遠隔で操作している。

そうする事で複雑な指示も出せるというわけだ。

岩陰に元々宝珠を仕込んでいたのでフェイスレスは罠の中に飛び込んできた事になる。

けれども、ある意味においては仕方ない事でもあった。

宝珠のサイズはビー玉と同じ程度である。

種も割れて無い状態でそれに気付けと言うのも酷である。

そして、風による拘束も囮に過ぎない。

 

「DeeeeeeeeeeeNNNNNN!!」

 

フェイスレスの背後からディーンが鋼の拳を放つ。

フェイスレスは風の拘束を引き離し、右に跳ぶ。

何か来るかまでは読んでいた。

 

「何故、鉄人形が……………」

 

ディーンが隠れているのは予想外だった。

それゆえに躱し切れなかった。

ディーンの拳はフェイスレスの左腕を掠めていく。

ディーンの巨体では鍾乳洞内を動けない。

それどころか、自重で足場が崩れていくはずだ。

そこまで、考えてディーンが小型化しているのに気が付く。

 

(しまった………………!!神珍鉄は巨大化するだけの恩恵じゃ無かった………………!!)

 

そう、ディーンは小型化も可能だった。

それを失念していた事を悔やみながら左腕を押さえる。

掠めた部分は鎧が剥がれ、血が流れていた。

だが、動かせない程では無い。

此処から先の展開は読めていた。

ゆえに武器を剛槍から持ち変える。

着地と同時に足元が崩れていく。

メルン三姉妹の力だろう。

此処までは分かっていた。

ラッテンのやりそうな手である。

だから、フェイスレスは弓に持ち変えていた。

ディーンが体の向きを変えて、二発目の拳を放つまでまだ時間はある。

倒れていく自分の体の軌道、風、その他諸々の計算を一瞬で終わらせて矢を放とうとした瞬間だった。

 

「がっ…………!?」

 

フェイスレスの視界が真紅に染まった。

頭が割れるような痛みを感じ、平衡感覚も狂う。

手で目を拭って夥しい量の血が眼球から流れているのを認識する。

おそらく耳からも血が流れているだろう。

しかし、フェイスレスには何が起きたか分からなかった。

 

「可聴域外音はもちろん知ってるわよね?」

 

「まさか…………………」

 

「そのまさか、可聴域外音に魔力を込めてあんたの脳に直接ダメージを与えさせて貰ったわ」

 

よく見ればラッテンの左手には風切り笛があった。

ハーメルケインによる演奏で風を巻き起こすという派手な行動はフェイスレスを拘束する以外にも意味はあったのだ。

その派手な行動に目を向けさせて左手の風切り笛で可聴域外音を奏でていたわけである。

こんな大きな隙をラッテンが見逃すわけが無く、ディーンと共にフェイスレスへ飛び掛かる。

フェイスレスはプライドも何もかも捨て去った。

こんな形で、こんな所で、ラッテンなどに敗れるわけにはいかないのだ。

フェイスレスはギフトカードに手を伸ばす。

 

「神秘を断ち切れ、”天叢雲剣”!!」

 

ギフトカードより再び神剣が引き抜かれる。

ディーンは二発目の拳を放つ前に自重に耐えられずに崩れていく。

ラッテンも再び全身が激痛に襲われ、多量の血を吐き出す。

たとえ、平衡感覚が狂っていようと騎士の勘は狂わない。

リーチと位置関係からしてフェイスレスが振り抜いてラッテンを斬り裂く方が速い。

そして、恩恵によって現世に繋がれているラッテンにとって”天叢雲剣”に斬られ、数日間霊格が回復しないのはチェックメイトに等しい事だった。

神剣を振り抜く直前にフェイスレスはラッテンの右手にハーメルケインが無い事に気付く。

 

(何処に_____ッ、)

 

気付いた時には手遅れだった。

ハーメルケインはギフトカードに収納される途中(``)であった。

つまり、収納し切る前にギフトカードの恩恵も無効化されたというわけだ。

ギフトカードに収納されるはずだった長物の質量が一気に解放される。

 

「カハ………ッ、!?」

 

一瞬で距離の優位も何も無くなる。

解放されたハーメルケインはフェイスレスの右腕を貫く。

そのまま、神剣を振り抜くよりも速く右腕を押さえる。

そこからフェイスレスがギフトカードに手を伸ばした瞬間に宙に放り投げていた風切り笛を掴み取り、フェイスレスの胸に突き刺す。

加減はせずに深々としっかりと刺す。

そうでもしなければ返す刀で真っ二つにされていただろう。

 

「まさか、”天叢雲剣”の恩恵をそんな風に利用するとは思いませんでしたよ」

 

「こんな物一度限りの手よ」

 

「………………私の負け、ですね」

 

「こんな勝ち方で悪いけど、私の勝利ね」

 

互いに苦笑しながら同時に崩れ落ちる。

両者共に限界だった。

それでも、致命傷かどうかの違いはあった。

フェイスレスは間違いなく致命傷を受けていた。

 

「これで貴女の主張を受け入れる事になるわけですが、死んではどの道意味が無いじゃないですか」

 

「それは悪かったわね。詫びに一曲サービスしてあげるわよ」

 

ラッテンは壁に凭れ掛かりながら、ハーメルケインを手に取り口に添える。

そして、フェイスレスに捧ぐ曲を奏でる。

 

 

◇◇◆◇◇

 

 

ラッテンの演奏は一時の夢をフェイスレスに見せた。

優しい父がいて、優しい母がいて、そして______姉妹のいる夢を。

籠の外の世界で、両親と姉妹と一緒に、何に縛られることも無く笑顔で走り回る光景。

ハロウィンの夢を、家族と共に見る。

それに加えて別の世界線の情景も何故か流れ込んできた。

違う形で”彼ら”と関わり、姉妹と争い、敗北した光景を。

まるで自身が敗れるのが世界の歯車のように感じて苦笑する。

 

 

◇◇◆◇◇

 

 

フェイスレスも壁に凭れ掛かりながら静かに演奏を聞いていた。

その頬には血とは別に透明の液体も流れ落ちていた。

 

「ご静聴ありがとうございました」

 

「此方こそ礼を言っておきます。最期に良い夢が見れましたよ…………」

 

その言葉を最期にフェイスレスは、久遠彩鳥は消えていった。

唯一つ_______彼女の魂を模したような、白銀色のギフトカードを残して。

それをラッテンが拾い上げると同時に_____閉幕を知らせる銅鑼が、舞台一帯に鳴り響いた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

____ゲームのオチを話すのであれば。

優勝者は、二人分のギフトカードを確保したラッテンに決定した。

逆廻十六夜と門矢士はゲーム終了を無視して戦い続けた。

やがて、互いに体力が尽きたのか同時に倒れて引き分けに終わった。

それから、数日後士は忽然と姿を消した。

元々士は無所属であり、目的が一致していたから行動を共にしていた形だ。

おそらく旅に出たのだろう。

 

「俺もしばらく”ノーネーム”を離れるよ」

 

士に続く様に映司も軽い身支度をして旅に出た。

何でもクロアの依頼もあるようで止める者はいなかった。

同時にアンクも姿を消していた。

確実に映司の旅に同行したのだろう。

 

「あんたは旅に出ないのか?」

 

「さすがに俺まで離れるわけにもいかないだろ?それに、俺の旅は一区切り付いてるからな」

 

晴人は”ノーネーム”に残って霧崎達のサポートに回るようだ。

魔法は便利なのでサポートにはちょうどいい塩梅だ。

 

「仲介頼むはずの仮面の騎士も消えちゃったし、自力で女王に会いに行ってみるわ」

 

一番意外だったのはラッテンも旅に出ることだった。

彼女は白銀色のギフトカードを眺めながら届けないといけない物も出来たしね、と呟いていた。

 

「安心して、私はすぐに戻ってくるから」

 

明るくそう言って少量の荷物を持ってアルマと共に旅立った。

霧崎に対する視線に未練がたらたらだったので本当にすぐに戻ってくるかもしれない。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

そして、逆廻十六夜だが。

特に誰に告げるわけでもなく。

鞄一つ分の荷物を持って、名前も知らない川の岸で釣りなど嗜んでいた。

帰る場所が決まっているのだから、仰々しい別れなど必要無い。

ふらりと旅に出て、ふらりとまた戻る。

そういう生活を続けたくなったのだ。

しかし、その後を黒ウサギとグリーが大荷物を持って追い掛けていた。

二人の話を聞いて、十六夜は付いてくることを特に止めはしなかった。

旅は道連れ世は情けという。

ならば箱庭の何処までも付き合って貰おう。

 

「差し当たって夕食を確保するところから始めたいんだが…………この川は駄目だな。近くの街まで行こう。ひとっ飛び頼むぜ、相棒(グリー)

 

『ああ。此方こそよろしく、我が騎手よ』

 

「く、黒ウサギも忘れちゃいやですよ!!」

 

ヤハハと笑って手綱を握る。

黒ウサギが十六夜の後ろに座るのを確認すると、鷲獅子(グリフォン)は獣王に相応しい嘶きを上げて天を翔た。

空を踏みしめて走る彼は、追い風が来るのを確認して呼びかける。

 

『強い追い風が吹くぞ!!一気に飛ばすから掴まれ!!』

 

「おうよ、好きなだけ飛ばせ!!今なら世界の果てでも付き合うぞ!!」

 

「YES!!対岸の果ては未だ未知の領域と聞き及んでいます!!きっと素敵な土地もございますよ!!」

 

そりゃあいいと、三人は共に笑いながら天を翔ていく。

沈む夕日を大空から眺める。

天と地が左右対称になって染まるその絵は正に幻想の世界の物だ。

彼らは同じような景色を、あるいはこれ以上の景色を追い求め、幾度も見ることになるだろう。

時の果て、世界の果て、異世界の果てまで彼らの手は届くに違いない。

 

 

彼ら問題児たちが綴る神話は_______まだ、始まったばかりなのだから。

 

 






第一部完でした!
具体的に脳をどう傷付けたかはスルーで!

ネクストプロローグの前に幾つか短編挟む予定です

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!


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唯一と原点と始まりの一
零とプロトタイプと始まりの男



仮面ライダー1号公開中です!
春映画ですけど期待して大丈夫ですよ

今回は番外編です


某所。

箱庭であって箱庭で無い場所。

大ショッカーの本拠とはまた別のところにある研究所。

そこでとある研究が行われていた。

本来ならば本拠で行われている研究ではあった。

だが、一定の段階を過ぎた頃から暴走の危険性を考えられて此方に移されたのだ。

一本の柱に培養液が満たされ、その中を人影が浮いていた。

それをレム・カンナギと真木清人は眺めていた。

 

「大体予定通りには進んでいますね」

 

「あぁ、ほぼ成功と見ていいだろう」

 

「では、あとは」

 

「性能テストをすれば”器”は完成する」

 

研究は大分完成が近付いていた。

その成果が浮かんでいる人影である。

二人が性能テストを行う為に培養液を抜き、実験室にサンプルを移そうとした時だった。

研究所に警報が鳴り響く。

二人は特に気にする様子も無かった。

 

「どうやら侵入者のようですね」

 

「此処へ来るとは意外ではあるな」

 

監視カメラの映像を見ようとモニタに手を伸ばした時、研究室の外で破壊音が響く。

それを聞いて察する。

同時に別の操作を始めるのだった。

程無くして扉が戦闘員ごと吹き飛ばされる。

二人の背後の大型モニタに扉と戦闘員が突き刺さる。

 

「礼儀がなっていませんね」

 

「だが、我々は君を歓迎しよう。何者だ、貴様は?」

 

カツン、カツンと足音が響く。

扉が吹き飛ばされた跡からは煙が入り込んでいる。

その煙を突き破るようにして黒いジャケットを着こんだ男が入ってくる。

その瞳、その風貌、全てが圧倒的な男だった。

その一挙一動から力強さを感じさせる。

 

「俺は本郷猛。貴様達、ショッカーの敵だ」

 

本郷猛、全ての始まりの男が今この場に現れたのだ。

真木も、カンナギも特に驚きはしない。

この男なら何処に現れようがおかしくない。

本郷の纏う雰囲気にはそれだけの説得力があった。

 

「厳密に言えば私達はショッカーでは無いのですが…………細かいことはいいでしょう。それで、貴方はどうやって此処に?」

 

「そうだ。此処は我々以外は入れない(`````````)はずだ」

 

「簡単なことだ。貴様らの仲間が移動に使っているオーロラを利用させて貰っただけだ」

 

大ショッカー連盟は別に箱庭だけを狙っているわけでは無い。

第一目標として箱庭を設定しているだけで他の世界にも干渉はしている。

むしろ人員の補充や物資の調達はそちらの方が主なルートである。

本郷はそうして各世界に送り込まれてる大ショッカー構成員が移動に使っているオーロラを見つけ出して侵入してきたわけである。

 

「侵入がその方法であるとするならば、本拠では無く此処に来たのは我々にとって幸運であったのかもしれませんね」

 

「貴様らが具体的に何を行おうとしているかは知らないが…………多くの世界を巻き込んだ計画には違いあるまい。被害の規模が大きくなる前に俺が潰そう」

 

「ふむ。我々の動きを察知し、侵入してきたのは素直に賞賛しよう。だが、いささか無謀ではあったな」

 

「そうですね。敵の基地に単独で突入する程愚かな事はありませんね」

 

何時の間にか本郷は囲まれていた。

改造兵士レベル3を改造したと思われし個体が数体出現していた。

一体は天井に張り付き、また一体は物陰から瞳を輝かせ、また一体は壁の側面に張り付いている。

普通ならば絶望的な状況のはずだった。

いかなる強者でも警戒はするはずの光景だった。

それでも、本郷は余裕を崩さない。

 

「ふふふふふふふ」

 

「何がおかしい?」

 

「一体、何時俺が一人で来た(`````)と言った?」

 

「何?」

 

複数の足音が響く。

カンナギが周囲を見渡すと複数の人影が集っていた。

何時からそこにいたかは定かでは無い。

だが、それよりも異様な事であった。

多少の差異はあれど、全員同じ顔であった。

つまり、”本郷猛”が複数同時に存在しているのであった。

 

「別に貴様らが驚く事じゃないだろう?」

 

「我々はそれぞれ違う道を(````)歩んで来た(`````)存在なのだから(```````)

 

つまりは、それぞれ別の世界の”本郷猛”がそれぞれ大ショッカー連盟の動きを察知し、別々に侵入してきたというわけである。

何故彼らが一堂に会す様な事が起こったかは本人たちにも分からない。

ただ確かな事はそれぞれの使命は同一であり、大ショッカー連盟を倒すという意思は一致している事だ。

それだけ分かれば問題無い。

無駄な問答など必要無しに彼らは共に戦う。

それが多くの人々の自由と平和を守る事に繋がるのだから。

 

「これは流石に予想外ではありますね。ですが、それでも三人です」

 

「まだ数では此方の方が優位というわけだ」

 

「ちょうどいいのであなた方が実験台になって貰いましょう」

 

真木は密かに進めていたモニタの操作を終える。

同時に柱にヒビが入り、培養液が溢れ出す。

ヒビはドンドン広がり最終的は多くの破片を撒き散らし、中身が飛び出す。

そう、計画の要であるサンプルが解放されたのだ。

 

「0号計画の到達点、まだ試作品。いわばプロトタイプですが性能を確かめるにはちょうどいいでしょう」

 

「始まりの男が相手であればこれ以上ないデータが手に入るだろう。変身」サメ!クジラ!オオカミウオ!

 

言いながら真木とカンナギも姿を変える。

真木はメダルに身を包み恐竜グリードに。

カンナギは専用のベルトに三枚のコアメダルと一つのアストロスイッチをセットして超銀河王に変身する。

培養液から跳び出したプロトタイプの姿は改造兵士の系譜を素体にしている為、改造兵士レベル3と酷似した姿をしていた。

違う箇所は額に埋め込まれた紅い球、第三の眼と腰に装着されるベルトだった。

プロトタイプは第三の眼によって脳を刺激される。

そして、本郷猛を目標と刻まれる。

目の前に目標である本郷猛を確認し、プロトタイプは吼えた。

 

「GAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

 

その咆哮に合わせるかの様にナノマシンがプロトタイプの表皮を別物に変えて行く。

これはかつてHOPPER Ver.3に使われた技術の応用だ。

ナノマシンを使う事によって肉体をより最適に、戦いに適した姿へ変換しているのだ。

プロトタイプの姿は完全に変貌し、獰猛な獣から無機質な仮面とスーツに包まれた姿になる。

飛蝗を思わせるヘルメットに黄色のマフラー、手袋、ブーツを装備した姿はショッカーライダーを連想させた。

ショッカーライダーと決定的に違う面は手の先が鋭く尖っている事、足が飛蝗のような筋繊維を感じさせる見た目になっている事。

そして、ベルトの中心に風車が無く、空虚な穴があるだけな事である。

そのぽっかりと開いた穴はプロトタイプ………………プロト0号の空っぽな中身を現してるかのようであった。

 

「行くぞ!!」

 

「おぉ!!」

 

三人の”本郷猛”もそれぞれポーズを取る。

左腕を腰の位置に置き、右腕を左斜め上に伸ばす。

同時にそれぞれの腰にベルトが出現する。

一人にはシャッターの付いたベルトが、一人には三つのタイフーンが付いたベルトが、一人には大型のカバーが付いたベルトが。

 

「「「ライダァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」」」

 

右腕を円を描く様に右側へ動かしていく。

そのまま右斜め上に伸ばす。

一人はシャッターが開く、一人は三つのタイフーンが回転し風を取り込み始め、一人は大型のカバーが開かれる。

 

「「「変身ッ!!」」」

 

右腕を右腰に持って行き、左腕を右斜め上に伸ばす。

同時にそれぞれのタイフーンが強く回転する。

 

「トォ!!」

 

一人は飛び上がり、更に強くタイフーンに風を取り込む。

そうする事で姿が変貌する。

緑の仮面に赤い瞳、銀の手袋にブーツを身に纏い、スーツには二本のラインが入った姿へと変身したのだ。

もう一人は三つのタイフーンが風を取り込むと同時に強化服がベルトから広がって行く。

ナノマシンによって構成されたスーツに身を包み、飛蝗を思わせるヘルメットを装着する。

装着と同時に口元を隠すかのようにクラッシャーが閉じられる。

強化服はのっぺりとして凹凸の無い正にスーツと言える物だった。

もう一人は体に風を纏うようにして姿を変える。

濃い緑色の鎧を全身に纏う。

鎧は頑強であり、見ただけで力強さを感じさせた。

三者三様の姿に変わり、敵に向き合う。

同時に改造兵士レベル3改造体達が飛び掛かる。

 

「ライダー返し!!」

 

頑強な鎧を身に纏った本郷が飛び込んできた勢いのまま改造兵士を地に向けて投げる。

自身の跳躍力に加えて本郷の膂力を加えた威力で地に叩き付けられた改造兵士は水風船の様に破裂した。

肉片を撒き散らし、血溜まりへと姿を変えたのだ。

 

「ライダーパンチ!!」

 

三連タイフーンの本郷は改造兵士の動きを完全に見切り、最小限の動きで改造兵士の攻撃を回避する。

そのまましゃがみ込むと下顎から殴り上げる。

改造兵士の首は鈍い音と共に引き千切れ、天井の赤い染みとなる。

頭部を失った改造兵士はそのまま崩れ落ちた。

 

「ライダー反転キック!!」

 

飛び掛かって来た改造兵士を真上に跳ぶことで回避すると天井に足を付け、それを蹴る。

その反動のままに真下の改造兵士に蹴りを放つ。

立ち上がり、本郷の方を向いた改造兵士は真っ二つに蹴り抜かれるのだった。

 

「AAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

 

プロト0号は改造兵士たちの惨状を気にもせずに飛び込んで行く。

プロト0号が走るだけで足元は崩れていく。

だが、それは力を制御出来ていない証でもあった。

有り余る力を制御しているのであれば足元を崩さずに走る事も可能なのだから。

プロト0号は何の躊躇いも無しに懐に入り込み、拳を放つ。

三人の本郷は経験ゆえにそれを軽く回避する。

しかし、同時に脅威も感じていた。

今の拳は三連タイフーンの本郷以外は掠れてまともに視認できていなかった。

それに加えて外れた拳は空ぶっただけで研究所の壁を盛大に吹き飛ばしているのだった。

本郷達は無言で頷き合うと銀の手袋とブーツの本郷にプロト0号を任せて、真木とカンナギに向き合う。

 

「良き終末を…………」

 

鎧を纏う本郷、ネオ1号とも呼べる者に対して真木は紫の光弾を連射する。

ネオ1号は無造作に腕を振るうだけで、光弾を軽く弾き飛ばしていく。

45年間の戦いの中で進化していったその肉体にとってそのくらいは容易かった。

真木は足元に冷気を這わせるが、ネオ1号の前では意味が無かった。

見た目通りの膂力を持って足が凍結しようと強引に走破し、真木の目の前へと辿り着く。

 

「ライダァァァァァァパァァァァンチッ!!」

 

風を纏った拳が深々と突き刺さる。

真木はセルメダルを撒き散らしながら吹き飛んでいく。

どうにか勢いを殺すと胸に手を当てる。

 

「恐ろしい人ですね。ただの拳のはずなのにコアメダルを砕かれるかと思いましたよ」

 

三連タイフーンの本郷は超銀河王を放つ光弾を紙一重で回避し続けていた。

改造人間として極限まで研ぎ澄まされた超感覚があるからこそ出来る芸当だった。

1㎜ズレれば当たっている距離感を保っての回避など普通の神経をしていればまず出来はしない。

 

「おのれ、ならばこれはどうだ!!」

 

カンナギは未来のコアメダルとSOLUスイッチの力を全開にして時間を止める。

時間が停止した空間で悠々と本郷へと近付いていく。

そのままマントを刃に変化させ、首を斬り落とすかの様に振り抜く……………はずだった。

 

「何ィ!?」

 

「ハァァ!!」

 

振り抜く前に腕を掴まれ、胸に拳を叩き込まれた。

それによって時間停止も解除される。

そう、時間停止は今解除されたのだ。

では、何故本郷が動けたのか。

それはカンナギにも理解は出来なかった。

 

「ライダーチョップ!!」

 

プロト0号が放つ拳に対して手刀を叩き込む。

動きは捉えられなくとも経験と勘が体を動かしていた。

新1号のライダーチョップによって弾き飛ばされた腕は明らかに折れていた。

だが、改造兵士の再生力とナノマシンによる自動再生を併せ持つプロト0号は即座に回復する。

しかし、再生している間は動きが鈍くなる。

つまり、まともに攻撃を入れるチャンスでもあった。

 

「GAAA」

 

プロト0号は動く方の腕で足元に手を刺し込み、地面を大きく抉り取り、それを鈍器の様に振り回す。

新1号は飛び上がり、蹴りの体勢に入りながら体に回転を加える。

高速回転によって蹴りの威力を高めるのだった。

 

「ライダァァァァァァスクリューキックッ!!」

 

抉り取った岩石は新1号の回転蹴りによって大きな穴を開けられる。

そのまま回転蹴りはプロト0号に突き刺さり、プロト0号は回転したまま地を二、三度飛び跳ねる形で吹き飛ぶ。

新1号はプロト0号が起き上る前に駆け寄る。

 

「ライダーきりもみシュートッ!!」

 

プロト0号を持ち上げると、竜巻のような回転を加えて真上に投げ飛ばす。

新1号は他の”本郷”の方を向き、叫ぶ。

 

「皆、行くぞッ!!」

 

「「おう!!」」

 

三人の”本郷猛”は息を合わせると同時に飛び上がる。

そのまま全員タイフーンを強く回転させて風を纏う。

 

「「「ライダートリプルキックッ!!」」」

 

三方向からライダーキックが放たれ、プロト0号を蹴り抜いていく。

貫かれたプロト0号は火花を散らし、断末魔を上げる暇すら無く爆散した。

三人の”本郷猛”は真木とカンナギの方へと向き直る。

 

「ふむ。どうやらプロトタイプは性能不足のようですね」

 

「いいや、”器”としてはちょうどいいくらいだろう」

 

息を切らしながらも実験結果に話し合う科学者二人。

その様子を怪訝に思って問いかけようとした時、空中から無数の光弾が降り注いだ。

 

「どうやら遅かったようですね」

 

「いいえ、ちょうど実験も終わったちょうどいい頃合いでしたよ」

 

「素体はまた作ればいいだけの話だ」

 

「貴様、何者だ!!」

 

「大ショッカーグリードとでも名乗っておきましょうか」

 

突如現れた怪人は三人の”本郷猛”に対して軽く名乗る。

大ショッカーグリードは本郷達には興味が無いようで真木とカンナギの無事を確認すると即座にオーロラを出す。

逃げるつもりなのだろう。

 

「逃がすと思っているのか?」

 

「それは知りませんがいいのですか?この基地は(`````)放棄しますよ(``````)?」

 

一瞬、その言葉の真意は分からなかった。

だが、直後に激しい警報が鳴り響き意味を理解する。

基地を放棄する、つまり自爆するという事である。

 

「急いだ方がいいですよ?」

 

自爆の警報に本郷達が気を取られた隙に大ショッカーグリード達はオーロラの中へと姿を消した。

数十秒後、研究所は自爆し、存在していた(``````)空間ごと(````)消滅した(````)

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「あれで死んだと思いますか?」

 

「死ぬわけが無いでしょう。相手はあの本郷猛なんですよ?」

 

確信を持って大ショッカーグリードは言う。

ショッカーの宿敵、仮面ライダー。

その始まりの男、本郷猛があんな単純な手で倒せるとは思っていない。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

世界に存在する唯一の”仮面ライダー”として戦ってきた男、全てのライダーを束ねる男、45年以上戦い続ける男。

違いはあれど、全てが”本郷猛”だった。

彼らは爆発の寸前に各々のサイクロンに乗り込んでどうにか脱出したが、同時に大ショッカーへの手掛かりも失った。

だが、その程度で諦めるような男でも無い。

 

「ショッカーの野望は必ず砕く。それがどんな大規模な組織を相手にする事になろうともな」

 

そう呟き、”本郷猛”は再び歩き出す。

大ショッカーの野望を砕く為に動き出す。

人類の自由と平和を守る為に”本郷猛”は戦い続ける。

 

 

 






本郷猛が大ショッカーの動きを捉える話と0号計画の進行具合でした
0号は形としては出来上がっていて微調整の最中という段階です
完成形のヒントは空洞と大ショッカーグリードが駆け付けた事です

三人の”本郷猛”が登場しましたが
三連タイフーン、シャッター付き新1号、頑強な1号で大体どれがどの作品の本郷かは分かると思います

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!

次回、IF root after


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IF root after
お嬢様と猫連れ少女と外れた歯車



今回からあの二人のその後的な話です


 

少女は逃げていた。

背後からは怪しい集団が迫っていた。

 

「…………家出をするつもりがまさかこんな事になるとはね。私の運命には文句が言いたいくらいよ」

 

自嘲するように呟く。

少女はようやく自由になった身だった。

時は第二次世界大戦終戦直後、日本は様々な物が変化していた。

その一つが財閥の解体だった。

彼女は日本の中で五本指に入る財閥だった。

しかし、発言力の強い本家当主が解体に反対していた。

なので、彼女が呼び出されて説得をする羽目になった。

それら全てを終わらせてようやく自由を手にして旅だったのにこれなのだ。

まるで運命が彼女を自由から遠ざけてる様に見えてもおかしくは無い。

 

「止まりなさい!!」

 

彼女は背後に迫る集団に向かって叫ぶ。

彼女の様な十五歳の少女が本家当主を説得出来たのには訳がある。

いわく、彼女が口にした言葉は絶対だという。

掟や決まりごとがあるわけでも無い。

洗脳や催眠、暗示の類ですら無い。

本人にも何故かは分からない。

けれど、事実として彼女の言葉は本家当主を十数秒満たない時間で説得した。

そして、その言葉を受けた集団の大半は動きを止めた。

けれど、集団の背後を歩く者達には通用しなかった。

 

「ヒトデ、ヒットラー!!何をしている!!小娘一人の言葉で動きを止めているんじゃない!!」

 

「そうだぜ!!そんなガキくらいさっさと殺しやがれ!!」

 

ナチスの紋章を付けたヒトデの様な怪人と片腕に鉤爪を装備するライオンの様な怪人が動きを止めた者達へ叫ぶ。

だが、動きを止めた集団はピクリとも動かない。

それほどまでに少女の言葉は強力だった。

けれど、怪人達に通用してないのもまた事実だ。

少女は少しでも時間を稼ぐ為に叫ぶ。

 

「そこの変な奴らを攻撃しなさい!!」

 

その叫びと同時に集団は上司と思われし、怪人達に攻撃を仕掛ける。

その間に少女は駆ける。

そこまで運動は得意では無く。

並と言っていいレベルの少女は息を切らす。

此処まで全力で走って来たのだから仕方ないだろう。

 

「チッ!!聞いていた通り、あのガキの力は厄介だな」

 

「だが、吾輩たちに効かない程度だ。殺すのは容易い!!」

 

ブラックサタンの生き残りである幹部、デッドライオンとGOD悪人軍団の一人であるヒトデヒットラーは襲い来る戦闘員たちを薙ぎ払いながら話す。

戦闘員など幾らでも変わりが利くので彼らは倒すのに躊躇などしない。

黒タイツに全身を包むブラックサタン戦闘員はサタン虫さえあれば幾らでも補充できる。

GOD戦闘工作員も軍服に身を包みゴーグルとマスク、帽子を付けたヒトデヒットラー直属の物であるが幾らでも後釜は利く。

そこへ、一つの集団が飛び込んで来る。

 

「「「デーボスジャンプ!!」」」

 

「デーボ・ナガレボーシ!!」

 

「デーボ・ウイルスン!!」

 

「デーボ・ヒョーガッキ!!」

 

「「「我ら、恐竜を絶滅させた仲良し三人組!!」」」

 

「「「ゼツメイツ!!」」」

 

三体の怪人がジャンプしながら現れ名乗りながら戦闘員を薙ぎ倒し、最終的に名乗りの衝撃波で全て消し飛ばした。

その様子をデッドライオンは呆れた目で見る。

ヒトデヒットラーは無視して増援の戦闘員に少女を追わせる。

 

「何で私がヒトラー総統の怨霊に狙われてるのかしら。冗談でも悪趣味にも程があるわよ」

 

物陰に隠れて息を整えながら呟く。

終戦直後という事もあって少女もヒトラーの存在は知っていた。

実際はGODがヒトラーの死骸を改造した怪人なのだが少女には怨霊に見えるのだろう。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

少女は逃げていた。

少女の背後から黒いタイツと紫色のタイツの二色が混じっていた。

 

『お嬢、大丈夫か?』

 

「うん、まだ大丈夫」

 

紅葉柄の朱色の振袖を着込んだ少女は抱えた三毛猫と話しながら駆けていた。

走る速度はとても人間が出せる物では無かった。

三毛猫と話している事も加えて、この少女は普通の枠に入る人間では無かった。

その力を持っても背後から迫る集団を振り切ることは出来ない。

少女も背後の集団が普通じゃないことは察していた。

 

「てい」

 

背後に迫ってきていた追手を振り向かずに蹴り抜く。

そのまま数人の追手を蹴り飛ばし、他の追手に衝突させる事でビリヤードの様に弾いていく。

蹴りの威力も常人のそれでは無い。

彼女は友達になった動物の能力が使えるのだ。

それゆえに動物とも会話できる。

蹴りも馬の脚力を使った物だ。

 

『お嬢、何か狙われる事に心当たりはあるか?』

 

「ううん。そもそも目立つほど何かをした記憶が無いんだけど」

 

彼女と三毛猫は振袖を着て出かけようとした先で襲われた。

あまりにも唐突過ぎる襲撃に大層驚いた物だった。

今着ている振袖は少女のお気に入りの一着だったのだが、逃げている内に泥まみれになっていた。

更にところどころ解れるどころか破けている部分もある。

その有様はちょっとやそっとで修復出来る物では無かった。

大体追手のせいとはいえ、残念なことには仕方なかった。

 

「中々やるな、小娘!!だが、貴様はこのチーターカタツムリ様と!!」

 

「アリマンモス様が始末してやる!!アリアリアリー!!」

 

チーターとカタツムリの要素を持つ改造人間、チーターカタツムリが鞭の様な腕を地面に叩き付けながら叫び。

それに合わせる様にアリとマンモスの要素を持つ改造人間、アリマンモスが咆哮を上げる。

少女はその姿を見て、顔を顰める。

 

「気持ち悪い」

 

動物好きな少女にとって二つの動物を混ぜ合わせ、人型にした姿は気味が悪くて仕方ない物だった。

少女は地面を思いっきり蹴り上げ、大量の砂煙で姿を隠す。

その上で木を駆け上り、枝から枝へと渡っていく事で追手から姿を暗まそうとしていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

時間軸が違う対象に言うのはおかしいが、とある組織にとって同時に二人の少女は狙われていた。

彼女達は主流から外れたはずの歯車だった。

本来乗るはずだった流れからは押し出されてそれぞれの道を行くはずだった少女達は、彼女達を押し出した存在に狙われる。

歯車は”ズレ”て歪んだ動きを見せていたが、全体は壊れてはいなかった。

一部は軋みを上げているが、致命的では無い。

歪みを、崩壊を完全にする為に必要な物、それが二人の少女だった。

本来なら輝く道を行くはずだった歯車である少女達は、外れてなお影響は強かった。

失われなければ全てが修正できる可能性が残る程度には重要な存在だった。

ゆえに、それを破壊しようと組織は動く。

致命的な歪みを生み出す為に。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

爆発と共に少女が隠れていた物陰が吹き飛ぶ。

少女はそこを離れていたが余波は受けていた。

 

「いきなり形振り構わなくなってきたわね……………」

 

少女にとっては意図が分からなかったが怪人達も多少は焦っていた。

自分達が発生させた時空の歪みの副産物、それが少女達だった。

時空の歪みの波を観測する中で歪みの影響を一切受けない時空があった。

それが二人の少女が存在する時間軸だった。

そこから、それらしき存在を見付けるのにも時間は掛けていた。

ゆえに急いでいる。

時空の歪みを探知できるのは彼らだけでは無い。

そして、少女たちを見付けられるのもまた然りである。

加えて彼らは本来自分達が存在していない時空で暴れている。

この行動が何時探知されてもおかしくないのだ。

だから、作戦は目立たずに迅速に終わらせる手筈だった。

しかし、少女たちが予想以上に抵抗した為に迅速さを優先したのだ。

怪人達が本気を出せば並の人間に近い少女はなす術も無い。

何とか立ち上がり、走るが背後からデッドライオンが飛び掛かる。

 

「デッドハンド!!」

 

「きゃっ、」

 

デッドライオンの鉤爪が伸び、少女の足を切り裂く。

少女はバランスを崩して倒れ、足を押さえる。

幸い傷は浅いが血は流れ、痛みも半端では無くとても走り続けるのは無理な惨状だった。

 

「此処で功績を上げて、俺がブラックサタンを再建してやるぜ!!」

 

「私を守りなさい!!」

 

デッドライオンがトドメを刺そうと近付いたところで命令を受けた戦闘員たちが割り込む。

舌打ちし、鬱陶しそうに叩き飛ばしていくが数が多く纏わりついてくるので中々抜け出せない。

その隙に少女は何とか逃げようと画策するが傷付いた足では満足に動けない。

そこへ、二つの足音が響いてくる。

 

「何をしているのだ、貴様達は!!」

 

「…………………」

 

金色に身を包んだ怪人と所々甲殻類の混ざった鎧武者が現れる。

金色の怪人は足止めされている怪人達を見ながら溜息を吐く。

そのまま剣に力を溜めて行く。

 

「このネオグリフォーザーが一瞬で消し飛ばしてやろう!!」

 

ネオグリフォーザーが剣を振るうと同時に鎧武者も刀を振り下ろす。

それぞれの刃から溜め込まれたエネルギーが斬撃波となって少女に迫る。

少女は唖然として自身に迫る斬撃波を見るのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「逃がす物か~!!」

 

アリマンモスが自身の前方にエネルギーを溜め、光弾を作り出していく。

だが、その前に土煙を破る様にして漆黒の鎧の様な装甲に包まれた怪人が現れる。

 

「何をモタモタしている!!」

 

怪人は剣を横薙ぎに振るう。

それだけで土煙も木々も斬り裂かれ、視界が明瞭になる。

少女は驚きながらもどうにか斬られた木を蹴って距離を稼ごうとする。

そこにアリマンモスの光弾が放たれる。

少女はどうにか回避するが余波までは逃れられなかった。

吹き飛ばされ、地に叩き付けられそうなところをどうにか受け身を取り、地を転がる事で衝撃を軽減する。

 

「ハァ!!」

 

しかし、転がった先にチーターカタツムリの粘液が撒かれてしまう。

勢いを殺し切れずに少女は粘液に突っ込む。

 

「何……………これ………………」

 

『ベタベタするで!!』

 

「俺の粘液からは逃れる事が出来ないのだ!!」

 

少女と三毛猫は粘液に動きを封じられる。

どう動物の能力を使っても脱出は出来なかった。

追い詰められたと言っても過言では無い状況である。

そこに何かが飛び込んで来る。

 

「トドメは!!」

 

「我々が!!」

 

「やらせて!!」

 

「貰おう!!」

 

四体の怪人が声を合わせる様に割って入る。

そのまま横並びになると、名乗りを始めた。

 

「我らの色鮮やかさ!!」

 

「見て驚いてちょーだい!!」

 

「デェェェェェェェボ!!ハルダモンネ!!」

 

「デーボ!!ナツダモンネ~!!」

 

「デーボ、アキダモンネー!!」

 

「デーボ!!フユダモンネェェェェェェェェェ!!」

 

「最強!!」

  「デーボ!!」

    「モンスター!!」

      「チィィィィィィィィム!!」

 

「「「「こぉぉぉぉぉぉう()!!撃団!!四季!!」」」」

 

攻撃団・四季は名乗りを上げ終えるとそれぞれの武器を重ね合わせる。

漆黒の怪人は頭を押さえ、チーターカタツムリとアリマンモスは呆れた目で見ている。

攻撃団・四季の武器の中心点に四体の怪人のエネルギーが収束していく。

 

「春!!」「夏!!」「秋!!」「冬!!」

「「「「デェェェェェェェェボス!!フィニッシュ!!」」」」

 

四色が重なり合った四季のエネルギー弾が少女に向けて放たれる。

ふざけた連中ではあるが、実力は確かである。

エネルギー弾には少女を消し飛ばすに十分な威力があった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

少女たちの眼前には”死”が迫っていた。

そんな危機的状況の中で少女たちの口は自然と動く。

 

「誰か、助けて」

 

そう、自然と言葉を紡いだ。

同じ言葉ではあるが、意味合いは違った。

けれども、それに応える言葉は確かにあった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

空間に穴が開き、線路が伸びてくる。

未来と認識される少女の時代においてもありえない光景が今正に目の前にあった。

線路を通り時空の穴から時の列車が二両飛び出してくる。

列車はそのまま少女を守る様に交差して、攻撃団・四季の春夏秋冬・デーボスフィニッシュを弾き飛ばした。

列車が通り過ぎると四つの人影が現れていた。

 

「貴方達は………?」

 

少女は首を傾げながら問う。

いきなり現れた列車とそれから降りたらしき謎の人影に困惑しているがゆえの反応だった。

人影のうちの一人の男は笑みを浮かべながら口を開いた。

 

「大丈夫、俺達は君を助けに来たんだ」

 

「つまり、味方だ。安心してくれ」

 

「あぁ、こんなに傷だらけになって…………ごめんな、もう少し早く来れなくて」

 

「デネブ、お前は少し落ち着け」

 

二人の男と二人の異形は少女を守る様に怪人達と少女の間に立つ。

少女は味方と聞いて安堵したように力を抜く。

 

「俺は野上幸太郎。こっちは相棒のテディだ」

 

「よろしく」

 

「俺はデネブ。こっちが桜井侑斗。侑斗と呼んでやってくれ」

 

「勝手に言うな、デネブ!!まぁいい。さっさと、終わらせるぞ!!」

 

「分かってるよ!!」

 

言いながら二人は腰にベルトを巻き付ける。

幸太郎はライダーパスを、侑斗はゼロノスカードを手に持つ。

 

「「変身!!」」

ストライクフォーム!!アルタイルフォーム!!

 

幸太郎はライダーパスをベルトにかざす。

同時に姿がプラットフォームに切り替わり、その上に鎧が装着される。

同時にテディがマチェーテディに姿を変える。

侑斗はゼロノスカードをベルトに差し込む。

プラットフォームに姿を変え、その上に鎧が装着される。

ゼロガッシャーを手に持ち、怪人達を指差す。

 

「最初に言っておく!!俺達はか~な~り~強い!!」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

少女はそれまで助けてとは叫べなかった。

叫べば助けてくれる者もいるだろう。

だが、それは望んで助けるわけでは無い。

少女の言葉に強制されての行動だ。

ゆえに助けてとは言え無かった。

言えば、他人を強制的に死地に送り込む事になるから。

けれど、追い込まれて最後の最後には叫んでしまった。

周囲には誰もいない。

それもあるが心の底からの叫びでもあった。

そして、その叫びに真に応える者がいた。

 

「え?」

 

「まさか…………こんな形で現れる事になるとはな」

 

少女の前に迫っていた斬撃波は何故か消えていた。

代わりに白い車と一人の男が少女の前に現れていた。

白い車は前面に二門のガトリング砲が搭載されていた。

更にボンネットには立花レーシング(```````)のマークがあった。

男の姿を見て、怪人達の顔も驚愕に染まっていた。

何故なら男はこの場この時代どころか本来存在すらしていないのだ。

その男が突如現れれば驚愕もするだろ。

 

「あ、貴方は…………私を助けに?」

 

「そうなるかな?まぁ助けを呼ぶ声に応えただけだ」

 

少女の問いに男は軽く答える。

それは男は少女の力の影響を受けていない事を意味していた。

その事実に気付いた少女の眼頭は熱くなっていた。

自身の言葉の影響も受けず、ただ助けに来るような経験はこれまでの人生ほとんど無かった。

ゆえに嬉し涙も出掛けてしまう。

 

「貴方は何者なの?」

 

「俺は黒井響一郎……………またの名を仮面ライダー3号」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

時代が(```)望む時、仮面ライダーは必ず甦る。

 

 






襲われる少女達でした!!

未来に電王組が行ったのは電王組くらいしか未来に行けないからです
ディケイドが参戦しないのにも理由はあります

3号に関しては次回説明します
現れた理由は少女の本質と最後の一文がヒントです


それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!


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砂漠と写真館と旅の道連れ

「変身!!」

 

黒井は腰にベルトを出現させると、左腕を右斜め上に伸ばす。

同時に右手でベルト右側の突起を押す。

その後、右腕を円を描く様にして左側へと回していく。

右腕が体の前に来ると左手でベルト左側の突起を押す。

すると、ベルト前面のシャッターが開かれ、タイフーンが出現する。

両手を広げ、タイフーンを回転させる。

 

「トォ!!」

 

飛び上がるとタイフーンが風を吸収する。

そのエネルギーを持って姿を変えて行く。

 

「その姿、やはり3号か!!」

 

「何故貴様が存在している?」

 

デッドライオンとヒトデヒットラーが叫ぶ。

彼が存在するのはそれほどに異常な事態だった。

黒井は無視して少女の方を向く。

 

「助けに来たのがこんな姿で不満かい?」

 

「いいえ。あいつらより全然いいわ」

 

「そうか」

 

それだけ聞くと黒井は腕に付いた鎖を鳴らしながら敵の方に向き直る。

腕に力を込めると電撃が走り、内部が一瞬透けて見える。

そのまま戦闘員たちに殴り掛かる。

指を鳴らすとトライサイクロン前面のガトリング砲が戦闘員たちを吹き飛ばしていく。

 

「ライダーパンチ」

 

「デッドハンド!!」

 

3号の拳とデッドライオンの鉤爪が衝突する。

拮抗する事すらせずに明確に結果が出る。

デッドライオンの腕にヒビが広がって行き鉤爪は砕け散る。

 

「俺のデッドハンドが打ち負けただと!?」

 

「ヒトデ、ヒットラー!!」

 

ヒトデヒットラーが鞭の先からロケットヒトデを連射する。

黒井は後退しながら回避し、飛び上がる。

電撃が足に走り、先程同様に内部が透けて見える。

その構えからデッドライオンは察した。

 

「ライダーキック」

 

「チッ」

 

「貴様、何を!?」

 

デッドライオンは近くにいたヒトデヒットラーを掴み、自分の前に出して盾にする。

抵抗するヒトデヒットラーを強引に押さえ付ける。

3号のライダーキックはそのまま盾にされたヒトデヒットラーを貫く。

 

「おのれ………………GODに栄光あれッ!!」

 

捨て台詞と共にヒトデヒットラーは爆散した。

その余波でデッドライオンは転げ回る。

そこへ追撃を加えようと黒井が歩を進めたところに今まで背後で見ていたゼツメイツが攻撃する。

 

「「「デーボス滅ボール!!」」」

 

三体で撃ち合ったボールに三体分のエネルギーが込められて撃ち出される。

別に回避は出来るのだが、あえて黒井は迎え撃つ構えをする。

拳に力を込め、殴り返そうとした時だった。

新たな乱入者が現れ、ボールを蹴り返した。

 

「「「うわぁぁぁぁぁ!?」」」

 

蹴り返されたボールはゼツメイツの近くに着弾してゼツメイツを吹き飛ばした。

転がり回るゼツメイツと下がってくるデッドライオンを無視してネオグリフォーザーが叫ぶ。

 

「貴様、何者だ!!」

 

「赤の魂を受け継ぐ者!!アカレッド!!」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「幸太郎、カウントは?」

 

「30…………いや、22でいい」

 

「どういう意味だ!!」

 

「お前達は22カウントで十分ってことだよ」

 

「ふざけるな!!」

 

「何でもいいから、行くぞ!!」

 

「22…………21………………20………………」

 

テディのカウント共に戦闘が始まる。

デーボ・ハルダモンネの三味線から放たれる音符攻撃を回避し、懐に飛び込んで行く。

 

「19…………18……………」

 

デーボ・フユダモンネが振り下ろすクリスマスツリー型の棍棒をマチェーテディで受け止めると先端の銃口から銃撃し、デーボ・フユダモンネを怯ませる。

そのまま横薙ぎに振るい、デーボ・アキダモンネごと斬り飛ばす。

 

「17……………16………………」

 

デーボ・ナツダモンネのドリルをしゃがんで回避し、侑斗はデーボ・ハルダモンネの懐に飛び込む。

そのままゼロガッシャーを振り上げて三味線を両断する。

 

「15…………14…………13…………」

 

侑斗の背後を狙うデーボ・ナツダモンネをデネブが指先から放つ弾丸で吹き飛ばす。

その間に侑斗はゼロガッシャーをボウガンモードに変えてデーボ・ハルダモンネとデーボ・ナツダモンネを撃ち抜いていく。

 

「12………………11…………………10……………」

フルチャージ!!

 

幸太郎はライダーパスをベルトにかざす。

生じたエネルギーをマチェーテディに収束させて飛ぶ。

デーボ・フユダモンネは危機を察してデーボ・アキダモンネを盾にする。

振り下ろされた刃はデーボ・アキダモンネを真っ二つにして爆散させた。

 

「9…………8……………7……………」

フルチャージ!!

 

「おらぁ!!」

 

ゼロガッシャーをソードモードにしてエネルギをー収束させる。

デーボ・ナツダモンネは密かに後退し、デーボ・ハルダモンネは迎え撃つように刀を構える。

交差の一瞬に勝負は決まった。

一閃された腹から火花を散らすデーボ・ハルダモンネの方に振り向き、Aを描くかの様に斬り裂いた。

 

「6…………5…………」

 

「やはり、春と秋は駄目ですね~」

 

「本命は夏と冬だよーん!!」

 

「「夏冬ビーム!!」」

 

デーボ・ナツダモンネとデーボ・フユダモンネが二体の力を合わせたビームを放つ。

着弾点から激しい爆発が上り、二体はやったかと思い安堵する。

だが、爆炎を突き破る様に幸太郎が飛び出てくる。

 

「3………2………1…………」

フルチャージ!!フルチャージ!!

 

更に爆炎を突き破る様に緑の光弾が放たれる。

爆炎の中には何時の間にかベガフォームになっていたゼロノスが立っていた。

そして、幸太郎がベルトにライダーパスをかざして足にエネルギーを収束させる。

 

「0」

 

光弾に貫かれ、幸太郎に蹴り抜かれる

デーボ・ナツダモンネとデーボ・フユダモンネはカウントが終わると同時に爆散する。

 

「言った通りだったろ?」

 

「まだ我々がいるぞ!!」

 

「アリアリアリアリアリ、マンモ~!!」

 

ネオガイルドン、チーターカタツムリ、アリマンモスが向かってくる。

チーターカタツムリが放つ粘液を肩のバルカンで撃ち落していき、その間に幸太郎が迎え撃つ。

アリマンモスの突進を軽く回避すると、背後に蹴りを入れてバランスを崩させる。

そこから回し斬りをネオガイルトンに放つ。

二体を幸太郎が引き付けている間にゼロノスがチーターカタツムリと斬り合う。

 

「最初に言っておく!!胸の顔は飾りだ!!」

 

「知った事か!!」

 

粘液の上を高速移動するチーターカタツムリ。

ゼロノスは肩のバルカンでばら撒かれた粘液を散らして移動範囲を絞って行く。

 

「そこだ!!」

フルチャージ!!

 

高速移動するチーターカタツムリの軌道上に刃を置いておく。

そのまま刃にチーターカタツムリが触れると同時に振り抜く。

Vを描く様に斬り裂かれたチーターカタツムリは火花を散らして爆散した。

 

「ショッカー万歳!!」

 

マチェーテディ先端からの銃撃でネオガイルトンと距離を取る。

すると、アリマンモスが分身し、突進してくる。

 

「アリアリアリアリ!!」

 

「そんな物は俺には通用しないよ」

フルチャージ!!

 

幸太郎はアリマンモスの分身が突進してくるのに合わせて二、三歩下がって狙いをズラす。

軌道修正してくるがそこまでが狙い通り。

時間差を少しでも増やし、一体一体振り抜く時間さえ稼げれば十分だった。

突進してきた全てのアリマンモスを斬り抜くと、アリマンモスは一つとなって爆散した。

 

「おのれ!!」

 

「おっと」

 

幸太郎は収束させたエネルギーを霧散させずにネオガイルトンの剣を受け止める。

そこにゼロノスがゼロガッシャーを重ねる。

一気に二人分の力が加わり、ネオガイルトンの方が劣勢となる。

二つの刃を受けて体から火花を散らしながら後退する。

だが、さすがにやられはしなかった。

 

「どうする?まだ続ける?」

 

「チッ、今回は此処で引いてやろう。だが、次出会った時は殺す」

 

それだけ言い残してネオガイルトンは銀色のオーロラへと姿を消した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「アカレッドだと!?」

 

驚きながらもゼツメイツは攻撃を仕掛ける。

デーボ・ナガレボーシの隕石弾を躱しながらアカレッドは間合いを詰める。

デーボ・ヒョーガッキが足場を凍結させていくが寸前でアカレッドは跳んだ。

そこでニンジャレッドへ姿を変える。

 

「隠流・満月斬り!!」

 

秘剣カクレマルを持ち、円を描き、振り下ろす。

斬り下ろして着地すると同時に今度はハリケンレッドに姿を変える。

すると、不思議な空間が発生する。

 

「超忍法・影の舞!!」

 

障子が閉まり、その中でゼツメイツを次々と斬り裂いていく。

三体を吹き飛ばし、更に姿を変える。

今度はアカニンジャーだった。

忍者一番刀を構えて忍シュリケンを回す。

 

ザ・ワザ!!ナンジャナンジャ!!ナンジャナンジャ!!アカジャー!!ニンジャー!!ニンジャイッセン!!

「シュリケン忍法奥義!!忍裂斬!!」

 

最初に回転しながら斬り裂き、そこから高速移動しながら様々な方向から斬撃を加えていく。

斬り終わった時には胸に40のスーパー戦隊の紋章を付けたアカレッドの姿に戻る。

ゼツメイツは火花を散らしながら倒れていく。

 

「何故、忍者で………」

 

「三人纏めて、」

 

「爆発四散~!!」

 

爆炎を立てながら散っていくのだった。

ネオグリフォーザー、鎧武者、デッドライオンの方に向き直ると黒井が隣に立った。

 

「味方と思っていいんだな?」

 

「勿論だ。遅れはしたが私の目的も彼女を助けることだからな」

 

「まだ俺達が残っているぞ!!」

 

迎え撃つように黒井とアカレッドが構える。

鎧武者が放つ斬撃波を躱しながらネオグリフォーザーの懐に飛び込む。

剣の間合いの中に入りながらも更に距離を詰める事で剣を振り抜けないところまで踏み込む。

この距離では黒井のが優位だった。

的確に距離を保ちながら拳を叩き込んでいく。

 

「舐めるなぁ!!」

 

「おっと」

 

黒井はネオグリフォーザーが力を溜め込むのを察知して距離を取る。

直後にネオグリフォーザーは全方向に衝撃波を放つ。

 

「烈火大斬刀!!」

 

アカレッドは炎を纏った巨大な刀を持って鎧武者の放つ斬撃波を逆に斬り裂きながら突っ込んでいく。

鎧武者の刀を一撃目で弾き飛ばし、二撃目で蟹の鋏になっている腕を斬り飛ばし、三撃目で胴体を斜めに斬る。

多量のセルメダルが傷口から溢れ出す。

更に傷口を抉る様に烈火大斬刀を傷口に突き刺した。

 

「3号!!」

 

「おう!!」

 

「行かすか!!」

 

ネオグリフォーザーが黒井の背に向けて剣を振り下ろすがアカレッドが新たに取り出した剣で受け止める。

その間に黒井は飛び上がる。

勢いを付けて烈火大斬刀に蹴りを入れる。

 

「ライダー………」

 

蹴りを受けた烈火大斬刀は完全に鎧武者を貫通する。

そこへ先程の蹴りの勢いで上に跳んでいた黒井が落下する様に蹴りを入れる。

 

「反転キック!!」

 

蹴り貫かれた鎧武者は火花を散らし、セルメダルを撒き散らしながら爆散する。

黒井は着地しながら手首をいじる。

デッドライオンは撒き散らされたメダルの中から蠍、蟹、海老のコアメダルを回収する。

 

「チッ、あっさりやられやがって…………本当に何で存在してるんだよ、お前は!!」

 

「さぁな?強いて言うならお前達が時空を歪めたおかげかな?」

 

「何ィ!?」

 

散々言いながらもデッドライオンは距離を詰めようとはしない。

片腕を失った状態では勝てないと分かっているからだ。

一方、アカレッドは龍撃剣でネオグリフォーザーの剣戟を捌き切っていた。

 

「たぁ!!」

 

ネオグリフォーザーの剣を真上に弾き、無防備になった胴を一閃する。

更にティラノロッドへと武器を持ち変える。

 

「ティラノロッド!!」

 

「ぐぅぅぅぅ」

 

ネオグリフォーザーの腕を弾きながら一撃一撃を入れて行く。

そのまま足払いを掛けた上で武器を持ち変える。

ガブティラファングを装備し拳を構える。

 

「岩裂パンチ!!」

 

宙に浮かされていたネオグリフォーザーは回避の仕様が無かった。

直撃を受けて火花を散らしながら吹き飛んでいく。

それでも、爆散せずに立ち上がる。

 

「なぁ、今回は引いておこうぜ」

 

「チッ、仕方がない。だが、我らが怨めば怨む程我らの主であるボルドス様の力が増すことを忘れるな!!」

 

銀色のオーロラを発生させて捨て台詞と共に退却していくのだった。

黒井は息を吐きながら変身を解く。

 

「どうやら単純に役目を終えたら消えるというわけでも無さそうだな」

 

「君はこれからどうする?」

 

「特にやる事も無いし…………………彼女を守るつもりだけど」

 

「なら、彼女を連れて付いて来てくれ」

 

言ってアカレッドは少女へと歩み寄って行く。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「貴方たちは何で私を助けてくれたの?」

 

「君の父親に依頼されたからさ」

 

「お父さんに!?」

 

少女は先程からは考えられない勢いで喰い付いてきた。

これには幸太郎も侑斗も驚くのだった。

テディが軽く説明していく。

 

「あぁ、君の父親に君が狙われるだろうから保護してくれと頼まれたんだ」

 

「えっと、君のお父さん自身がこれないのは…………」

 

「デネブ!!余計な事は言うな!!」

 

「でも、侑斗…………この子何年もお父さんと会って無いんだろ?」

 

「それでも、だ」

 

侑斗はデネブの頭を叩きながら諫める。

父親の事は言わないでくれと頼まれていた。

本人曰く自分で言いたいらしい。

 

「うん、大丈夫。私は大丈夫。お父さんが私を忘れずに覚えてくれて心配してくれてるだけで大丈夫」

 

「そうか……………」

 

「それで、君は私達が保護する事に。つまり、NEWデンライナーか、ゼロライナーに住んでもらうことになっているのだけれどいいかな?」

 

「貴方たちに付いていけば何時かお父さんに会える?」

 

「それは俺達にも分からない。けど、君のお父さんは君に会いたくないわけじゃない。それは確実だ」

 

「つまり、会えない理由があるって事だね。それなら、私は貴方たちに付いていきます。その方がお父さんに会える可能性もありそうだし」

 

「それじゃあ、決まりだな」

 

頷き合いそれぞれ列車を呼び寄せる。

再び次元の穴が開いてNEWデンライナーとゼロライナーが姿を現す。

そこで、少女は名乗って無い事を思い出す。

 

「私は春日部耀です。こっちは三毛猫。これからよろしくお願いします」

 

「こちらこそ、よろしく」

 

列車が到着し、それぞれ乗り込んでいく。

列車が発車して時の砂漠へと向かっていく。

次の到着駅は過去か未来か。

それは彼女の運命が決めるだろう。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

少女と黒井、アカレッドはトライサイクロンに乗り込んでとある場所に向かっていた。

 

「そういえば、君が復活している理由を聞いて無かったな」

 

「復活と言っていいか分からないがね」

 

黒井が言うには大ショッカー連盟が歴史改変マシーンによって生じた時空に干渉した時点で黒井の意識はぼんやりと発生していたらしい。

ただし、何も干渉出来ずただ時空の波に流されるだけではあった。

いわば、幽霊に近い物である。

そんな状態から意識がはっきりしたのは少女が襲われた時だったらしい。

何時の間にか少女の近くを漂っていた。

そして、「助けて」という言葉と共に実体化したというわけである。

 

「なるほど。……………時代に望まれた(```````)か」

 

「一人で納得しないでくれるか?」

 

「すまない。その少女の能力の一部に霊格を強化するという物がある。助けてという言葉が君に力を与え君達(``)の性質と絡み合って君の存在を確かな物にしたのだろう」

 

「よく分からんがつまり彼女のおかげというわけか」

 

チラリ、と助手席に座る少女を見る。

自身の境遇的に素直に感謝していいか分からないがそれなりに大きな借りが少女にはあるようだ。

少女としては二人に大きな借りが出来たと考えていた。

アカレッドは少女の方を向いて本題を話し始めた。

 

「一つ、君に協力して欲しい事があるんだけどいいかな?」

 

「まずは内容を言ってください。貴方たちには借りがあるので恩返しも含めて協力するのはいいですが内容次第です」

 

「それもそうだな。簡潔言えば人探しだ」

 

「人探しに私が役立つのですか?」

 

「あぁ、君と言う触媒が私が探す者達の元へと導いてくれるんだ」

 

「話がよく分からないのですが」

 

「そこらへんは今向かっている所に到着してから説明した方がいいな。と、言ってる間に見えてきたな」

 

目的地は小さな写真館だった。

だが、終戦直後の時代としては浮いていた。

何が、とは言え無い。

それでも確かに見る者が見れば分かる違和感を放っていた。

 

「光写真館ね」

 

看板を見ながら黒井が呟く。

その背を少女が突っついた。

黒井が振り向くと少女は少し目を反らしながら問う。

 

「貴方は何時まで私に付いてくるつもりですか?」

 

「悪かったか?」

 

「いや、そうじゃなくて……………別に私を守り続ける必要は無いはずですよね?」

 

「好きでやってるだけだ。気にしなくていい」

 

「そう……………ですか」

 

「そういえば、名前を聞いて無かったな。レディ、名前を聞いてもよろしいですか?」

 

「ふざけないでください。私は久遠飛鳥。どれだけの付き合いになるかは分かりませんが今後もよろしくお願いします」

 

「此方こそね」

 

言いながら二人は写真館の方を向く。

アカレッドが先導して写真館へと足を踏み入れて行くのだった。

旅立ちは邪魔が入った彼女の旅。

旅の道連れを増やし、彼女の旅は再会する。

彼女の行先は運命のみが知る。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

外れた歯車は巡りに巡って再び回り出す。

回った先に何が待つかは誰も知らない。

歪んだ世界の行く末は誰の手からも外れて行く。

 

 






飛鳥と耀のその後でした!
それぞれ時の列車と光写真館に行きついたとさ

アカレッドの目的は前章のクロア達の会話を見れば分かるかと
3号復活に関しては時空の歪みでシュレティンガーの猫のごとく存在していると存在してないが重なった状態になっていたのが飛鳥の声で存在しているに傾いた形です

幸太郎たちが助けに来たのは耀のお父さんの依頼でした
協力関係は別に精霊列車に限らないというわけです
というより、精霊列車の協力云々より先に話が進んでいたりします

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!

次回はネクストプロローグです!


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Another Prologue
出資者と謎の令嬢と父の研究



今回で完全に第一部完です!!


「つまり、奴らは失敗したわけか」

 

「そのようです」

 

「まぁよい。私の計画の支障になるような存在では無いからな」

 

「では、私はこれで」

 

言って大ショッカーグリードは大首領の前から姿を消した。

それに合わせる様に革ジャンにサングラスをかけた男が入ってくる。

男はカーテンに映る大首領の陰に目も向けずに話を始める。

 

「支障にはならないが、歪みを完全な物にするには必須では無いのか?」

 

「その程度は関係無い。歪んでいれば因果を捻じ曲げるくらいは可能だからな」

 

「楽観的だな。それもディケイドを箱庭に封じ込めているからか?」

 

男の言葉を無言で肯定する大首領。

彼らの言う通りディケイドは箱庭から出られない状態にある。

厳密に言えば出られはする。

だが、一度出てしまえば再び箱庭に戻ってこれなくなるだろう。

ディケイドはディエンドやダイナなどと違って巡る世界を意図的に選べはしない。

だからこそ、箱庭で危機が続いている間は箱庭を出るわけにはいかないのだ。

そして、ディケイドが箱庭を出られないという事は他のライダーとライダーを繋ぐ者もいなくなる。

世界を渡れる存在は少ないのだ。

ディケイドさえ封じておけばライダーが集結するのは防げるわけである。

とはいえ、”本郷猛”の様に大ショッカー連盟の動きを察知している者もいはするが。

 

「貴様の働きも期待しているぞ、結城丈二(````)

 

「俺はディケイドへの復讐が出来ればそれでいい」

 

結城丈二は大首領に背を向けて去って行く。

大首領の声はいかにも楽しそうな物だった。

結城丈二、かつて大ショッカー大首領をしていた時代のディケイドに片腕を奪われた男。

サングラスの奥に隠された瞳の真意は誰にも分からない。

彼は幹部待遇として大ショッカー同盟に迎えられているのだった。

 

やれる事をやるがいい(``````````)。どう足掻くかを楽しませて貰おう」

 

大首領は結城丈二が単純に大ショッカー連盟に協力する気では無いのは分かっていた。

分かっていた上で懐に引き入れたのだ。

どう足掻くかを愉しむ為に。

 

「調子に乗れる内に乗っていろ。今に慌てる時が来る」

 

結城丈二もまたそれには気付いていた。

その上で仕込める物を仕込み、来たる時に備える為に誘いに乗ったのだった。

全ての頂点にいる大首領を引き摺り落とす為に。

様々な思惑を交えながら大ショッカー連盟の暗躍は進んでいく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

_________ゴールデンウイークのその日。

兄が失踪してから、三年の月日が経った。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

梅雨の前線というにはまだ早すぎる五月五日のこと。

西郷焔と彩里鈴華は葬式の帰り道にいた。

______二人はカナリアファミリーホームの出資者(パトロン)であり幼い頃から良くしてもらっていた富豪の御爺の葬式に出席していた。

本当の家族の様に接してくれていた恩人の訃報に気落ちしているのもあるが本当の問題は出席していた先で告げられた長男と思われし男性の一言に在った。

”申し訳ないが、君たちが在籍している孤児院への出資を取りやめさせてほしい”という旨を突然突き付けられた二人は、反論の余地を与えられることも無く門前払いを受けたのだ。

唯一打ち切られることは無い出資元だと思っていただけに、二人の受けた衝撃は激しかった。

これで最後の出資者もいなくなってしまった。

チェックメイトである。

カナリアファミリホームは、事実上の解散を余儀なくされたのだ。

半年で十二か所あった出資元が全滅。

うち三つは経営難だが他は明らかにおかしかった。

誰かが仕込んでいるのは確実だった。

二人の間に沈黙が流れ、鈴華は気まずさに負けて、雨の空を見上げた。

 

「………………最近は大雨続きだね~。お日さまもお月さまもすっかりご無沙汰だよ」

 

「梅雨にはまだ早いっていうのにな。異常気象にしても何が起きてるんだか」

 

「そうだね~。晴れる日は来るのかな?」

 

「さあ。……………とりあえず、電車は来たぞ」

 

カタンカタン、と三十分ほど遅れていた電車がホームにやってくる。

扉が開くと、人間の密度と雨の湿度で熱せられた空気が一斉に溢れ出た。

 

「_______よし。まずは気合いを入れて、目の前のことから何とかしよう!!」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

そんな二人を監視している眼があった。

スーツ姿の女性は傘をさしながら二人を眺めていた。

 

「はい、分かりました。では、そちらに向かいます」

 

女性は二人が電車に乗るのを確認すると何処かへと電話し、自身も移動を始めるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

_____カナリアファミリーホーム・正面玄関。

電車の中で蒸し殺されそうに成りながらも、二人はなんとかカナリアファミリーホームに辿り着いた。

しかも帰りは樹海の大雨のような密度に襲われたもんだから手に負えない。

鈴華は帰るや否や上着を脱ぎ捨てて叫ぶ。

 

「くあー超濡れた!!超あり得ない!!お風呂!!お風呂!!超お風呂の用意は出来てる!?あと姉弟(ブラザー)、私先に入っていい!?」

 

「オッケー了解。女が体冷やすんもんじゃねえよ兄妹(シスター)

 

焔はバラバラの靴を整えながら気前よく答える。

すると鈴華はピタリと足を止めた。

 

「……………………なんかさ。最近の焔は、イザ兄に似てきたかも」

 

「ああん?」

 

「何でもない。先に入りまーす!!」

 

ドタバタとお風呂場に駆け込む彩里鈴華。

靴を整えていた焔は、見知らぬ誰かの靴があることに気が付く。

片方は御門釈天としてもう片方は謎だった。

御門釈天は十六夜と顧問弁護士が失踪した後、後継不在のファミリーホームに現れて雇われ管理人を名乗り始めたのだ。

初めは不審に思ったものの用意された書類に怪しいところは無く、何よりカナリアファミリーホームの秘密を知っていた事もあり、一先ず彼に預けてみようということになったのだ。

自称世界を旅するフリーエージェントということだが、彼が優秀な傭兵である事はこの数年で理解している。

此れで女と酒にだらしなく無かったら偉人になれただろう。

応接間に向かい焔は御門と出資について話し合う。

諦めかけ、遠い目をする焔。

だがその肩を御門釈天が力強く掴んだ。

 

「まだ分からんぞ。今日はその話を持ってきた。後はお前次第だ」

 

「……………え?」

 

「ほれ、久藤のお嬢様が施設案内から戻って来たぞ。襟を正せ!!」

 

御門釈天が焔の背中を叩いて服装を整えさせる。

何のことかと混乱する焔だったが、そんなものは施設の階段から降りて来た人物の姿によってすぐに吹き飛んだ。

彼女が階段を降り切ると、自然に焔と視線が交差した。

 

「……………その方が、西郷教授の………………?」

 

「そうです、久藤彩鳥お嬢様。ほら、挨拶しろよ焔」

 

御門釈天に挨拶を促される。

しかし西郷焔はその女性を見るや否や、驚愕して固まっている。

紹介された少女______久藤彩鳥の金髪は、金塊の輝きというよりもむしろ太陽の様に燦々とした輝きや、黄金の穂波を彷彿させるほどに麗しかった。

顔立ちは幼いながらも整っており、日系ハーフであることを匂わせる。

身長を見るに自分と同年代だと思われるが、彼女の持つ独特の雰囲気はより完成された高貴な女性を感じさせていた。

そんな彼女に思考を奪われていた焔だが、すぐに彼女が何者なのかを推測した。

 

「久藤……………もしかして、エヴリシングカンパニーの?」

 

「はい。その会長の娘です。……………英名もありますが、日本ではやはり日本名を名乗るのが良いと思いました。貴方の名前をお伺いしても?」

 

「……………すいません、名乗り遅れました。西郷焔です。よろしくお願いします」

 

「お嬢様はお前の一つ下、つまり十二歳だ。しっかりしてるだろ?しかも超美少女だ」

 

ニヤニヤと笑みを浮かべる御門釈天をスルーして、西郷焔はどうして彼女がカナリアファミリーホームに足を運んだのかという理由を必死に考えていた。

西郷焔がそんなことを考えていると、久藤彩鳥はクスリと笑って小首を傾げる。

 

「立ち話もどうかと思うので、同席してもよろしいですか?」

 

「あ、勿論です。気が利かずにすみません。すぐにお茶でも、」

 

「いいえ、構いません。私は貴方とお話しする為に来たのですから」

 

十代の少女とは思えない静謐な声音に思わず緊張する。

これは相当に手強い相手だという認識を強く持つのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

久藤彩鳥の話を要約すればこうだった。

エヴリシングカンパニーの開発部さえ匙を投げた永久駆動ナノマシン、焔の父親の研究の再現を依頼したいという物だった。

焔の様な少年に頼む案件では無いように見えるが、焔には”再現する力”がある。

それがあったとしても専用の施設と数十年という歳月が必要だろう。

つまり、焔の人生を買取たいと言ってるのだ。

代価はカナリアファミリーホームの運営費。

研究費用諸々も全て出資する。

それが人生の対価として相応しいかどうかを、今判断しろという事である。

 

(…………………ほんとに、御門のおっさんが持ってくる話はろくなのがねぇ)

 

悩む素振りはしてみたがここの少年少女は受け入れ先が見付からなかった者たちばかりだ。

つまりファミリーホームが無くなれば、その子たちの受け入れ先も無くなる。

なら、初めから答えは一つしかない。

 

「一つだけ、お願いがある」

 

「何でしょうか?」

 

「この研究が完成したら、きっと世界は大きく姿を変える事になると思う。使い方によっては、星の在り方を変えてしまうほどに。………………全然覚えていない親父だけど、そういう使い方を望んではいないと思う。それを約束してくれるなら_______」

 

焔は立ち上がり、彼女に右腕を伸ばす。

 

「_____俺の人生、アンタに売ってもいい。彩鳥お嬢様」

 

「勿論です。高く買い取らせていただきます」

 

互いに小さな手で握手を交わす。

その手を離した瞬間に大きな声が全く違う方向から響いてきた。

 

 

「ハッピーバースデー!!新たなる焔君の誕生を祝福しよう!!」

 

 

焔と彩鳥はビクリと肩を揺らした上で声のした方を見る。

御門は睨み付ける様にしてそちらを見る。

声のした方からは長髪のスーツ姿の女性が男性が映ったパッドを手に歩いてきていた。

どうやら声はパッドの方から響いたようだ。

 

「誰だ、あんたは?」

 

御門が睨んだまま問う。

先程までの会話を聞かれていた上に交渉が成立したタイミングで割り込んできたのだ。

怪しさしか無かった。

 

「おっと、名乗るのが遅れたね。私は鴻上光生。そちらにいるのは秘書の里中君だ」

 

「名刺をどうぞ」

 

名刺を焔、彩鳥、御門に渡す。

そこには鴻上ファウンデーション会長、鴻上光生とあった。

会社は聞いたことが無いが大物だと言うのは分かった。

 

「此方の交渉は聞いていたようですが、目的は何ですか?」

 

「私もこの孤児院を援助しようと思っていてね。君達が先にいたので待っていただけだよ」

 

「本当にそれだけですか?」

 

「そうだね。少し私達にも協力して貰いたいとも思っている」

 

「ナノマシンの研究の分け前を寄越せと?」

 

「いや、そちらはどうでもいい」

 

「え?」

 

永久機関の研究をどうでもいいと言い切る鴻上に三人は面をくらう。

その間に里中がパットを操作する。

そこにはメダルの様な物が映っていた。

それは、御門と彩鳥には見覚えがあるようだった。

 

「私は欲望の力、オーメダルの研究を進めていてね。焔君の力を少し借りたいと思っているのだよ。勿論、ナノマシンの研究を優先して構わない」

 

「それは、どんな物なんですか?」

 

「古代の王が使っていた力だよ」

 

「いや、それだけじゃなんとも…………」

 

「里中君、アレを見せてあげたまえ」

 

「はい」

 

鴻上が指示をすると里中は鞄からジュースの缶のような物を取り出す。

里中がそれを少しいじると缶が変形し、動物の形となって動き出す。

 

「これらの動力となっているのもメダルだ。だが、それはセルメダルだ。私はコアメダルを作り出したいと思っていてね。その手伝いを焔君にして貰いたいんだよ」

 

「その代価に出資をすると」

 

「更にいざという時の護衛も手配しよう」

 

「待ってください。先に交渉していたのは此方です。焔さんには此方の研究に力を入れて貰わないと………………」

 

「その点は安心していい。里中君、彼女に例の書類を」

 

「分かりました」

 

里中から書類の束が彩鳥に渡される。

それを見ながら彩鳥は御門と相談する。

書類を読み終えると彩鳥は溜息を吐きながら言う。

 

「いいでしょう。此方としては文句はありません。焔さん、後の判断は貴方に任せます」

 

「え?いや、その書類何なんだ?」

 

「焔さんには関係無いです」

 

「………………まぁ、いいや。鴻上さん、貴方はその力で何をしたいんですか?」

 

「欲望は世界を変えるんだよ。私は欲望で世界を発展させたいのさ」

 

「はぁ…………」

 

何を言っているか理解できずに困惑する。

とはいえ、目を見る限りは悪意は無かった。

ただ、胡散臭さはどうにも抜けなかった。

 

「……………少し時間を頂いていいですか?」

 

「いいとも、私は何日でも待とう。気が向いたら連絡したまえ。里中君、あれも渡しておいてくれ」

 

「…………はい」

 

渡されたのは複数の連絡先が書かれた紙だった。

探偵事務所、何処かの高校の教師、警察官、考古学者、と役職に纏まりは無かった。

その纏まりの無さに焔は首を傾げる。

 

「困った事があれば頼りたまえ」

 

「そうですか………」

 

何の説明も無しにそう言われても苦笑いしか返せないのだった。

気を取り直して御門の方に向き直る。

 

「何はともあれ、安心した。悔しいけど言ってやる。ありがとうよ、御門のオッサン!!すげえ感謝してる!!」

 

「ハッハッハッ、せめて御門さんと呼べと言ってるだろテメェ。いいから他の連中も呼んで来い。お嬢様を紹介してやれ。此方は俺達に話があるようだしな」

 

焔は立ち上がり、軽い足取りで走って行く。

その背中はまだまだ子供のものだ。

その背中を御門と釈天は辛そうに見送る。

そして、里中に視線を移す。

 

「この内容は本当なのですか?」

 

「あぁ、本当だ。世界が(```)融合している(``````)のは間違いない(```````)

 

「私も鴻上ファウンデーションという大会社は知りません。私が知らないという事は此方の世界にそのような会社は無かったのでしょう」

 

「私もエヴリシングカンパニーなどという名は聞いた事が無い」

 

「互いに世界的な大企業で、それを互いに知らないのはおかしいな。だが、世界が混じっているというのなら何故パニックにならない?」

 

「これは私の推測だが、違和感を感じない様に何らかの力が働いているのだろう。私達の様に特異な力に触れている者は気付いているようだがね」

 

「そもそも何で私達に声を掛けたんです?」

 

「私の情報網を舐めて貰っては困るよ。戸籍的に謎な御門釈天君と知り合っている会長令嬢、それらが交渉しようとしている少年。接触を試みるには十分だと思うがね?」

 

「目的は?」

 

「互いに情報交換と行こうじゃないか。先程の反応から我々の知り合い、映司君の事を知っているのだろう?」

 

「………………話は後日にしましょう」

 

「確かに今君達とこういう話をするのは無粋だね。連絡先は渡しておくから今度は直接会って話すとしよう」

 

言うだけ言って渡すだけ渡して里中と鴻上は去って行くのだった。

胡散臭さだけはどうにも抜けなかった。

彩鳥は御門に視線を向けて問う。

 

「世界の融合の件、貴方は何か知っているんじゃないですか?」

 

「薄々はな。原因は今調べてるところだ。どんな世界と融合したかも含めてだが」

 

頭を抱えて溜息を吐く。

そちらは今考えても仕方ない事ではあった。

異常な事態ではあるが、具体的な被害は何も無い。

ゆえに対応に困る物でもあった。

原因は分からないが、元凶は両者共に察してはいるのだ。

けれど、それも即座にどうこう出来る話では無い。

それを含めて鴻上には話を効く必要があた。

とはいえ、今大事なのは焔の方であった。

二人は切り替える事にして話題を変える。

共に戦士の顔と成って口を揃えて言う。

 

「”西業”の”焔”ですか。箱庭出身者なら誰もが戦慄する名前ですね、帝釈天」

 

「全くだよ、女王騎士。それとも、フェイスレスと呼んだ方がいいか?」

 

「……………その呼び名は、外界だとかなり恥ずかしいですね」

 

「いやいや、それ以上に恥ずかしいことがあるだろ。あれだけ派手に自暴自棄になっておきながら、まさか人格を保ったまま転生して新しい人生エンジョイしてるなんて思わんかったわ」

 

「そ、それは私だって戸惑ったんです!!見舞いに来てくれた師匠曰く、天文学的な確率の奇跡だとか……………ま、まあ、箱庭に戻る予定もないのでいいのですけれども」

 

僅かに頬を染めてさっと視線を逸らす。

如何やら立つ鳥跡を濁さず、とは行かなかったようだ。

ラッテンに見付からない事を願うだけである。

 

「しかし、全ての問題が解決したと思っていたが………………もう二、三悶着ありそうだな」

 

「………………それは、彼が新たなる最終試練になるというのも含めてですか?」

 

「まさか。それだけはさせねえよ。その為に_____軍神(オレ)が地上に降りたのだから」

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

僅かに一瞬だけ帝釈天の霊格が膨張する。

丁度その時、雲の間から日が差した。

どんなに激しい雨が続いても、晴れる日は訪れるのだ。

ドタバタと慌ただしい足音が幾つも聞こえてくる。

二人は先程までの空気を消し、今はカナリアファミリーホームの歓迎を受ける事にした。

 

 






第一部完でした!!

十六夜の世界と平成二期の世界が混じりました!!
原因は時空が歪みまくった余波です!!
神々の力とか、修正力やらのおかげで市民は融合に気付かず違和感無く生活しています

結城丈二は大ショッカーに出てきたGACKTの方です

それでは、質問があれば聞いてください
感想待ってます!!

ラストエンブリオには入る予定です!!
勢力図とかは活動報告で出すつもりなのでお待ちを!!


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ラストエンブリオ1 嵐と兄の帰還と異世界召喚
刃物と通り魔と金色の獅子



久々の更新になります
今回からラストエンブリオに突入します
タイトルは変わらず進行予定です!


 

風都の路地裏。

そこで左翔太郎は異形の存在を目にしていた。

普段からドーパントと戦っている翔太郎だが、目の前の存在は異質だった。

始まりは通り魔事件を調べている時だった。

現場を巡っている時に路地裏に逃げ込む影を見かけたのだ。

それを追い掛けた先にいるのが目の前の異形だった。

 

「ったく、どうなってやがる。ただの通り魔事件じゃ無かったのか?」

 

「カカカカカカカカカカカカッ!!」

 

人型がどんどん崩れて膨れ上がって行く。

白い不定形の肉体に目玉が蠢く異形はその視線を翔太郎に向ける。

 

「フィリップ、化物が現れた。変身だ」

 

『すまない、翔太郎。今は無理だ』

 

「まだ終わらないのか?」

 

ダブルドライバーを腰に付けてフィリップと通信する。

手元から金属を弄る音を聞いて状況を察する。

フィリップは現在とある人物から送られてきたデータを元にとある装置を製作していた。

もうすぐ完成間近であるとは翔太郎も聞いていた。

 

『あと少しだね。でも、だからこそ手が離せない』

 

「分かった。なら、こっちは俺一人で片付ける」

 

言うと翔太郎はダブルドライバーを外してロストドライバーを腰に付ける。

コートの内ポケットからジョーカーメモリを取り出し、構える。

 

ジョーカー!!

「変身!!」ジョーカー!!

 

ロストドライバーにジョーカーメモリを差し込んで傾ける。

黒い風と共に翔太郎の体が黒い装甲に包まれていく。

包まれる一瞬前に翔太郎の顔には紋様が浮かぶ。

仮面ライダージョーカーに姿を変えると翔太郎は異形に向けて手を向ける。

 

「さぁ、お前の罪を数えろ!!」

 

同時に異形が全身を膨張させて襲い来る。

軽く身を捻って突進を回避する。

異形は翔太郎の背後にべチャリと着地すると口から何かを出す。

 

「ガイアメモリだと」

 

ナイフ!!

「GAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

 

叫びながらナイフメモリを己が身に取り込んでいく。

そのままナイフドーパントへと姿を変える。

ただし、異形なのは変わらない様でナイフドーパントとしての姿を保ちながら関節を感じさせない動きをする。

 

「化物の上にガイアメモリを持ってるとは厄介だな。だが、俺の敵じゃねぇ」

 

腕をまるで鞭の様に撓らせ、刃物に包まれた腕を振るう。

路地裏ゆえに狭く左右にはそこまで動けない。

ゆえに翔太郎は伸びてきた腕を跳んで回避し、そのまま左の壁を蹴ってナイフドーパントの背後に着地する。

ナイフドーパントの背に蹴りを入れ、体勢を崩したところに拳を叩き込む。

腰を捻り上半身だけ振り返り、壁を大きく削りながらナイフドーパントは裏拳の要領で腕を振るう。

しゃがみ込みながら翔太郎はジョーカーメモリをベルトから外してマキシマムスロットに入れる。

マキシマムスロットのスイッチを押してマキシマムドライブを発動させてメモリの力を最大に高めて腕に集中させる。

 

ジョーカー!!マキシマムドライブ!!

「ライダーパンチッ!!」

 

ナイフドーパントの捻じれた腹に低姿勢のまま紫のオーラを纏わせた拳を叩き込む。

全身に衝撃波が伝わる様な音が響き、一瞬遅れてナイフドーパントが吹き飛んでいく。

ビクンビクンと体が振るえたと思うとナイフメモリが排出されて姿が異形へと戻る。

 

「浅かったか。メモリブレイクされてないな」

 

完全にトドメを刺す為に翔太郎が近付いていくと異形は再び口から何かを出す。

それは血がこびり付いたナイフの様な物だった。

おそらく通り魔事件に使われた物だろう。

異形は腕に様な物を伸ばして何かしらを描き、ナイフをその上に置く。

すると、黒い力の塊が出現し、その中から翼と角を生やした悪魔の様な化物が現れる。

翔太郎が驚く間も無く異形は呼び出した化物に喰らい付き取り込む。

更に再びナイフメモリを取り込む。

 

ナイフ!!

「コレガ……………インガ……………コレガ、ホラー(```)……………AAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

 

「何がどうなってやがる?」

 

困惑する翔太郎を他所に異形はナイフドーパントに姿を変える。

今回は更に大きく姿を変えていた。

先程出てきた化物ような角があり、その先はナイフの様な刃物になっていた。

肉体は筋肉質に膨れ上がり、身に纏う刃物も大きさと鋭さが増していた。

周囲を振るわす咆哮を浴びながら翔太郎は冷や汗を流す。

 

「さすがにこれは不味いかもな」

 

ただのドーパント相手ならばジョーカーで片付けられる自身はあった。

だが、目の前の相手はただのドーパントでは無い。

翔太郎の知らない”何か”を取り込んだ上に何処まで強化されているか分からない。

何より路地裏という狭い場所で戦うには相手が大きい。

ほとんど回避出来る隙間が無いのだ。

路地裏から出ればいいのだが、出る前に敵は一撃放てる。

隙を見せれば手痛い一撃を受けるかもしれないのだ。

 

「やるしかねぇか」

 

後方へ下がるのを捨て、拳を構える。

逃げを捨て、カウンターを狙う事にしたのだ。

その時だった。

 

「キマイラが妙な魔力を感じると言うから来てみればどういう状況だ、これ?」

 

一人の男が路地裏に現れていた。

大きな荷物を背負った男が暢気に話しながら翔太郎とドーパントを見ていた。

翔太郎は顔を歪めながら叫ぶ。

 

「おい、此処は危ねぇぞ!!速く逃げろ!!」

 

「おっと、皆まで言うな。悪いが俺は一般人じゃない」

 

男は言いながら銃のような物を取り出す。

それを奥のドーパントに向けると躊躇無く引き金を引く。

放たれた光弾がドーパントを怯ませる。

ドーパントの巨体では躱す隙間が無かったのだ。

 

「そこじゃ戦いにくいだろ?」

 

「お前、何者だ?」

 

「俺は仁藤攻介。魔法使いだ」

 

言いながら仁藤は左手に指輪を嵌める。

ポーズを取り、指輪をベルトの側面に差して捻る。

 

「変身!!」

ロック!!オープン!!L!!I!!O!!N!!ライオーン!!

 

ベルトの前方が開き、仁藤の前方に魔法陣が展開される。

魔法陣は仁藤の方へと近付いていく。

魔法陣を通り抜けると金色の獅子の戦士へと姿が変わっていた。

 

「お前も仮面ライダーだったのか」

 

「おう、俺はビーストだ。よろしくな」

 

ドーパントが怯んだ隙に路地裏から出てきた翔太郎がその姿に驚く。

まだ聞きたい事はあったが路地裏の壁を削りながら跳び出してくるドーパントでそれどころでは無くなる。

二人は横に跳んでドーパントを回避する。

足も刃物になっているようで着地と同時に地面に切り傷が出来る。

 

「状況は分かってるのか?」

 

「怪物退治だろ?手伝うぜ」

 

「助かる」

 

最低限の確認をして二人はドーパントに向き合う。

ドーパントは変身前の異形を思わせる眼を体表に出現させると二人を見る。

 

「AAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

 

咆哮と同時に大量の刃物を背から射出する。

仁藤はダイスサーベルで弾き、翔太郎は軽く躱していく。

そのまま距離を詰め、仁藤はダイスサーベルで斬り掛かる。

刃物に包まれた腕とダイスサーベルがぶつかり合っている間に翔太郎は足払いを掛ける。

体勢が崩れたところをダイスサーベルで斬り払う。

 

「さぁ、ランチタイムだ!!」バッファ!!ゴー!!バッファ、ババババッファ!!

 

バッファマントを右肩に装備する。

バッファマントを前に突き出してドーパントに突進する。

増した膂力と装甲で体表のナイフを砕いて怯ませる。

更にダイスサーベルで何度か斬り付けた後にダイスサーベルのサイコロ部分を回転させる。

 

フォー!!バッファ!!セイバーストライク!!

「オラァ!!」

 

ダイスサーベルの側面にバッファのリングを差し込んで回転を止める。

セイバーストライクを発動させてダイスサーベルを振るう。

同時に四匹の魔力で形成されたバッファがドーパントに突進していく。

バッファの突進によって体表のナイフが次々と砕かれていく。

 

「やるじゃねぇか」

 

翔太郎は仁藤の肩を叩きながら並び立つ。

数の利がある分押せていた。

一気に畳み掛ける為に二人は構える。

 

「決めるぜ」

 

「おう」

 

翔太郎は再びベルトからジョーカーメモリを外してマキシマムスロットに入れ、スイッチを押す。

仁藤は左手の指輪を再びベルトの側面に差し込む。

 

ジョーカー!!マキシマムドライブ!!

ゴー!!キックストライク!!

 

「メインディッシュだ!!」

 

「ライダー……………キックッ!!」

 

両者共に高めたエネルギーを足に集中させた上で跳ぶ。

仁藤の前面に複数の魔方陣が展開される。

それを火の輪潜りの様に通り抜けながら蹴りを放つ。

翔太郎はシンプルに紫のオーラを纏わせた足で蹴りを放つ。

二人のキックは同時に決まり、ドーパントを貫く。

 

「決まったぜ」

 

火花を放ちながらドーパントは爆散する。

今度こそナイフメモリは完全に砕け散った。

そして、それ以外は全て魔力へと変わり魔法陣となってビーストドライバーに吸い込まれる。

 

「ごっさん」

 

戦いは終わり二人は変身を解く。

とはいえ、それはそれで翔太郎は頭を抱えていた。

ドーパントを倒せたのはいいが、通り魔事件はそれでは良くないのだ。

犯人は今相手にしていた異形で間違いない。

けれど、それをどう説明するかが問題だった。

 

「まぁフィリップに相談して、その後に照井に教えるか」

 

分からない事は一先ず置いといて仁藤の方を向く。

仁藤は何やらベルトと会話している様だったが翔太郎が見ている事に気付いて顔を上げる。

 

「今回はありがとうな」

 

「いや、久々に帰国したらたまたま出くわしただけだし、魔力補充も出来てちょうど良かったし礼はいい」

 

「そうか。あんた、普段は何をしてるんだ?」

 

「遺跡を調べたりとかだな。これでも、考古学者なんでね」

 

「その考古学者が何で風都に来てるんだ?帰国したって事は何か目的があるんだろ?」

 

「あぁ、良い情報を提供してくれる人が何か頼みたい事があるから来てくれって言って来てな。普段世話になってるし断る理由も無いから帰国したんだ」

 

「そういう事か。なら、此処に来たのは本当に偶然ってわけか」

 

「そうだ。というわけで、俺は用があるから行っていいか?」

 

「聞きたい事は済んだしな。縁があったらまた会おう」

 

「おう」

 

そう言って二人は分かれるのだった。

残った翔太郎は何か残っていないか路地裏を探索していた。

ふと、空を見上げる。

一応青空であったが普段より風が強く感じていた。

 

「こりゃ近々荒れるかもな」

 

そんな事を呟きながら捜査を続けるのだった。

 

 





はい、風都でのとある出来事でした!
再開一発目ラストエンブリオ一発目で既に問題児色が一切無いのでした
とはいえ、世界的には世界の融合によって平成二期世界と十六夜の世界が融合してるので割と関係ある話ではあります

今回出てきた正体不明の怪物二匹については後程
片方は岩代作品寄りの存在で、片方はどっかの騎士の敵です

今回は0話的な話でしたけど次回くらいには焔達の話に入れるかと

それでは、質問があれば聞いてください
設定などは活動報告で公開してます
感想待ってます!!



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反逆と高利貸しと動き出すモンスター

「完成だ!!これでまた私の野望が現実に近くなる!!」

 

蛮野は黒いドライブドライバーを前に歓喜していた。

復活よりそれなりに時間が経過し、メガへクスのシステムと言う縛りから脱出するのに手間は掛かったが解放されていた。

そして、自身の研究を押し進め新型のバンノドライバーを完成させるのだった。

 

「おや、蛮野博士。何か完成したのかい?」

 

「戦極か。貴様にはかんけ、グァ!?」

 

声を掛けられたと思うと同時に背中より斬り付けられていた。

まさかこのタイミングで攻撃されるとは想定しておらず傷が深々と広がる。

火花が散り、内部の構造が丸見えになる。

 

「何をする!?」

 

「しばらくの間観察したがどうにも君は期待外れだったようだ」

 

「なんだと…………………」

 

「ロイミュードも、ベルトも君の発明品は全て誰かの技術の延長線上じゃないか。新たな物を期待した私とは失望するしか無いわけだ」

 

「私を愚弄するつもりか!!」

 

「その点で言えば君はあの三流以下だ。興味もそそられないし用済みというわけだ」

 

「だが、私がいなければロイミュード関連の技術を、ゴブゥ!?」

 

戦極の方を向いた蛮野の胸を何者かの腕が貫く。

計算通りと言えばそれまでだがあまりにも事があっさり進み過ぎて戦極は更に失望の色を見せる。

コアを掴まれ、蛮野は苦しそうに呻く。

 

「その心配はいらない。君の代わりの人材は既に見付けているからね」

 

「YES。蛮野様(```)、後のことは私に任せてください」

 

「貴様……………まさか、004か!!」

 

「イグザクトリー!!貴方は使い捨てるつもりの駒に消されるのです」

 

「クリム・スタインベルトをコピーしたロイミュード。君が仕込んだ服従プログラムを排除した上で再生させて貰ったよ」

 

「馬鹿な!!そんな機械人形より私の方がよっぽど…………………」

 

「グッバイ!!」

 

そんな一言と共に蛮野のコアが握り潰される。

蛮野だった肉体は塵に変わり、握り潰されたコアの破片は新型バンノドライバーに吸い込まれていく。

004はドライバーを手に取り、ニヤリと笑みを浮かべる。

 

「安心したまえ、蛮野。君の残した物は私が十全に利用し尽くすのだから」

 

「君には期待してるよ。今度こそ私が望む予想外の物を見せてくれると」

 

「ご期待に沿うことを約束しよう」

 

かくして蛮野は消され、004がその後釜として収まるのだった。

クリムの記憶と蛮野の悪意を併せ持った004は今は消えたとある未来の様に笑みを浮かべる。

自身の野望を成し遂げる為にかつての主人すら踏み台にして。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

五月晴れの朝。

西郷焔は絶賛逃亡中だった。

御門釈天の運転する車の中で経理報告書を整える。

孤児院の子供たちの為に買った大型テレビを誤魔化す必要があるのだった。

というわけで、久藤彩鳥には今捕まるわけにはいかないわけだ。

釈天と雑談しながら作業を進めているとあることに気付き、叫ぶ。

 

「って、危ない釈天ッ!!」

 

車が細い路地に向けて右折したその直後、それを遮るかのように黒い高級車が前に滑り込んできたのだ。

交通事故一歩手前の荒業に二人は同時に舌打ちを鳴らす。

だがその黒塗りの高級車が誰のものか分かった途端に天を仰いだ。

………………というか、近所でこんな高級車を乗り回す者など、二、三人しかいなかった。

 

「………………この馬鹿テル。追いつかれてるじゃん」

 

「許せ。プリトゥが運転手として雇われているのを忘れていた」

 

ハンドルに凭れ掛ったままげんなりとする御門釈天。

高級車の運転席からは白髪褐色肌のスーツの女性が降り、後部座席の扉を開ける。

すると、鈴の音のような軽やかな声が響いた。

 

「………いい天気ですね、先輩。釈天さん。絶好のドライブ日和かと思われます。それと、此方は鴻上会長から先輩へのプレゼントだそうです」

 

「______、」

 

エウリシングカンパニーの会長の娘であり、学校の後輩であり、そして西郷焔の飼い主である久藤彩鳥はそう言ってアタッシュケースを焔に手渡した。

風鈴のように涼やかで静謐な声で親しみの籠った言葉だった。

口元には静かな笑みも浮かんでいる。

だが、瞳は笑っていなかった。

今にも襲い掛かってきそうなほどにお怒りである。

獰猛なご主人様を前に焔は腹を括る。

 

「……………どうも、彩鳥お嬢様。これの中身は何ですか?」

 

「私も聞いてはいません。困った時に役立つ物とだけ」

 

鴻上会長とは鴻上ファウンデーションの会長である。

底のが見えず、真意も分かりにくい人物であり行動の意図が読めない事が多々である。

とは言っても意味の無い事はそこまでしないので何かしら意味はあるのだろう。

焔がどうにか話題を反らそうとすると彩鳥の目が更に鋭くなる。

 

「本題がそれで無いのは分かっていますよね?」

 

「まだ一時間経ってないですよ」

 

「今完成されていない経理報告書が一時間後に完成しているとは思えません。何か理由があると推測されます。……………話して頂けますね?」

 

冷ややかな視線に圧が籠る。

こうなるともう手が付けられない。

どんな理由を付けても彼女を言い包めることは不可能だろう。

なので、破れかぶれに玉砕粉砕上等であった。

焔は天を仰ぎ、額を叩いて観念したように頭を下げた。

必死に弁明し、頼み込んだ結果、彩鳥個人に貸し付け三つということで話が進んだ。

一連の流れに焔は困惑するがその間に経理報告書は奪い去られる。

処理は彩鳥からの贈与という形でされるのだろう。

後部座席の扉を開いた彩鳥は、シートを軽く叩いて乗るように催促する。

 

「さて、参りましょう。貸しの回収一つ目として、今日は鈴華と私をエスコートしてもらいます。よろしいですね、先輩」

 

パンパンと座席を叩く彩鳥。

一難去ってまた一難。

金で人徳の貸しを作るとは、流石は天下に名立たるエヴリシングカンパニーの御令嬢。

見事な高利貸しである。

こうなると、もうどうにもならない。

焔は三度目の天を仰いで苦笑いを浮かべた。

 

「…………了解。それで手打ちにしてくれるなら安い物ですよ」

 

「全くです。…………………ッ⁉」

 

彩鳥は何かに気付いたかの様に振り返る。

だが、そこにはただ路地が広がっているだけであり人の気配も無かった。

焔に気付かれないように釈天とプリトゥに視線を向けるが首を振られるだけだった。

 

「どうかしたのか?」

 

「いえ、気のせいだったようです」

 

一先ず気のせいだということにしておいて焔の方を向き直す。

その後、しばらく彩鳥が孤児院に泊まることになるのを告げ承諾を受けた。

焔が車に乗り込もうとすると、急に日差しに陰りがさした。

 

「…………あれ。随分と速い到着だな」

 

台風二十四号の東京到着は今日の夜と予測されていたはずだ。

幾らなんでも早すぎると思った焔だが、半日単位で気象庁の予測が外れるなどよくあることである。

だが御門釈天はその天候を、不穏な瞳で見上げた。

 

「此れは尋常じゃないな」

 

「荒れるかな?」

 

「ああ、大荒れだろうな。今夜は家に帰ったらもう出るなよ」

 

釈天はそれだけ告げると、愛車を走らせて颯爽と何処かに向かっていた。

焔も、なるべく早く帰った方がいいという程度の認識を頭の隅に置いておき、久藤彩鳥と彩里鈴華の買い物に付き合うのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

何処かの暗闇。

軍服を身に纏った眼帯を付けた男が焔の写真を眺めていた。

 

「これがかの西郷博士の息子であり、粒子体の研究者である西郷焔か」

 

暗闇の中には幾つもの光る瞳が浮かび上がっている。

男以外にもこの場に複数の何かがいることは確かだった。

そして、何処からともなく男でも周囲の何かでも無い声が響く。

 

「ゼネラルモンスターよ。今回の作戦、貴様に任せていいな?」

 

「勿論です。お任せください、大首領。我らが必ずや西郷焔を捕らえ、その技術をネオショッカーないし大ショッカーの為に役立たせましょう」

 

「では、以後の作戦は貴様の好きにするがいい」

 

「ところで、大首領。魔神提督は何処に?」

 

「奴には別の任務を任せている。貴様には関係の無い事だ。まずは貴様の任務に集中するのだ」

 

「分かっております」

 

それを最後に通信は途切れる。

通信が切れたことを確認するとゼネラルモンスターは暗闇に潜む者たちの方に向き直る。

 

「聞いての通りだ。我らはこれより西郷焔捕獲作戦を開始する」

 

ゼネラルモンスターの声に合わせて、ヒャイー!!やケイー!などの鳴き声が響く。

ゼネラルモンスターは淡々と作戦を説明していく。

作戦自体はシンプルな物だった。

台風に乗じて孤児院を襲撃するというだけの作戦だ。

だが、現在来ている台風の規模を考えれば有効な手段ではあった。

 

「作戦の決行は今夜だ。各地持ち場に付いて待機しておけ」

 

そうして暗闇に隠れていた気配は散り散りになる。

更に数人には西郷焔の監視を任せておく。

指示を出し終えるとゼネラルモンスター本人の気配も消えるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「へぇ、今動いているのはネオショッカーか。まぁどんな組織かは知らないけど僕が介入するまでも無い規模かな」

 

とある路地裏にて長髪の男が呟く。

彼の周囲には黒タイツの者が、ネオショッカーの戦闘員アリコマンド達が転がっていた。

無残な死体となったそれらから記憶を読み取りながら長髪の男は興味を無くしたかの様に落胆した表情を見せる。

期待外れの予感がするものの長髪の男はあえて観察を続けるのだった。

目当ての物が現れるのを期待して。

 

 




ラストエンブリオ編第二話にして実質の第一話でした
とはいえ、焔パート短いですが

平成二期の世界が融合しているので鴻上ファウンデーションも普通に存在します
詳しくは活動報告を見てください

それでは、質問があれば聞いてください
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大嵐と潜む陰と怪物の脅威


エグゼイドの正式発表来ましたね
外見に特に文句は無いですよ
もうどんな姿が来ようと驚かないように鍛えられてますので


「里中君、彼らは集まったかね?」

 

「いえ、全員日本にはいますが集まる気配はありません」

 

鴻上の質問に秘書の里中は淡々と答える。

鴻上はケーキを作っているが会長室の窓から見える空は既に雲に包まれていた。

それを気にもせずにマイペースにケーキ作りを進める。

 

「それは不味いな。そろそろ彼らが必要な事態が起こるというのに」

 

「おそらくですが、収集を掛ければ集まるかと」

 

「出来れば自らの意志で集まって欲しかったが仕方ない。もしもの時はそうするとしよう」

 

遂に激しい雨が降り始め、窓を叩く。

雷鳴轟く中でも彼は顔色一つ変えないのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

(さてさて……………此奴は参ったな。この時点でも本物の”天の牡牛(グガランナ)”を超える成長速度。今の俺で何処まで戦えるか………………!!)

 

御門釈天の前には闘牛のような咆哮を上げる積乱雲の牡牛が今にも突進してきそうな勢いで存在していた。

御門釈天は臨戦態勢を取っている。

目の錯覚でなければ、彼の全身からは稲光を彷彿させる輝きが僅かに見て取れた。

積乱雲の牡牛はそれを見て益々激しい咆哮を上げる。

大嵐はより強く勢力を伸ばして、東京に上陸しようとしていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

西郷焔は大嵐の中で久藤彩鳥を追い掛けていた。

孤児院の彩鳥が泊まる部屋に案内した後に彩里鈴華が学校に動物小屋の様子を見に行ったと告げた途端に焦りだし飛び出していったのだ。

飛び出す前に聞こえた爆発音が決め手となったのだろう。

そして、釈天の不在。

悪条件が重なり過ぎていた。

後輩を一人で行かすわけにもいかないので焔は合羽を身に纏い、アタッシュケースを持って彩鳥と鈴華の元へ急ぎ向かっているところだった。

焔は懐か幾つか缶の様な物を取り出す。

蓋を開ける要領でカンドロイドを起動させる。

 

「彩鳥達を探してくれ」

 

動物に変形したカンドロイド達がそれぞれ指示に従って動いていく。

その背後で影が蠢く。

幾つかの陰に瞳の様な物が浮かび上がる。

背後より迫りくる物を焔は気付かない。

まさに飛び掛かったその瞬間に。

奇声が聞こえて振り返った瞬間にやっと気付く。

背後より迫るアリコマンド達に。

 

「え?」

 

咄嗟の事に体は動かなかった。

年齢としてまだ中学生。

多少護身術は身に付けて筋トレくらいはやっている。

だが、本職としては研究者。

荒事にそこまで慣れているわけでも無い。

ゆえに出来ることなど何も無かった。

けれど、救いの手はあった。

 

「そこまでだ!!」

 

突然声と共に光弾が放たれ、焔に飛び掛かろうとしていたアリコマンド達が吹き飛ばされたのだ。

いきなりの乱入にアリコマンド達が混乱している間に次々と光弾が放たれていく。

分が悪いことを察したのかアリコマンド達は一目散に退却していった。

焔が光弾が放たれた方を見るとそこには見慣れた顔がいた。

 

「伊達さん!!」

 

「よぉ、焔。元気にしてたか?」

 

伊達明。

世界各国を巡る医療チームに所属する戦う医者(ドクター)である。

以前鴻上会長に雇われて仮面ライダーバースとして戦っていた時期もあった。

その時の目的である手術費も稼ぎ、手術も無事成功し、戦いも終わったので本職に戻っている。

焔とは以前鴻上の紹介で会ったことがあるのだ。

焔が考案したバースシステムの改良案のテストパイロットとして呼び戻されたのだ。

その際に焔に護身術などを叩き込み、日頃鍛えておくよう教えたりもしていた。

豪雨で顔が見えにくいとはいえ間違う相手では無かった。

 

「伊達さんはどうして此処に?」

 

「そりゃ、こっちの台詞だな。この嵐の中で何で一人で外に出た?」

 

焔は事情を簡略に説明する。

時間は無いので移動しながらの説明となった。

伊達も一応それで状況を把握する。

 

「なるほど、会長が言ってたのはそういうことか」

 

「何か知ってるんですか?」

 

「いや、具体的には何も。ただ、今は会長にお前の護衛を頼まれた身でな。ちょうどいいし俺も嬢ちゃん達の迎えに付き合うぜ」

 

「ありがとうございます!!」

 

そうして二人は嵐の中を学園に向けて進んでいく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

焔と伊達が飼育小屋まで辿り着いたちょうどその時だった。

頭部から二本の角を生やし、家畜を貪り喰らう巨躯の怪物がいた。

そして、それに向かっていく人影があった。

 

「ッ_____⁉」

 

同時に甲高い金属音が鳴り響いた。

激しい雨にも拘わらず、眼前で火花が飛び散る。

両者が打ち合った鋼の数は六つ。

刹那以下の攻防だが、互いの勝敗を決するには十分すぎる時間だった。

巨躯の怪物は両足から血を流してその場で跪いた。

焔は何が起きたのか理解出来ないまま、目の前に吹き飛ばされてきた人影を抱き留め、さらに驚愕した。

 

「彩鳥!?何やってるんだお前ッ!?」

 

「っ、それは、此方の台詞です……………な、何で先輩まで……………!!」

 

「お前が飛び出していったからだろッ!!鈴華なら大丈夫だってあれほど言ったじゃねぇか………………!!」

 

言い返そうとした彩鳥だが、それ以上は続けられずケホッと咳き込む。

 

「…………情け…………ない。まさか、一〇合も打ち合えないほど、鈍っていたなんて…………!!」

 

苦しそうに身を捩らせた彩鳥は、そのまま気を失った。

伊達が即座に駆け寄って様子を見る。

見れば脇腹に酷い裂傷が刻まれている。

出血によるショックで気絶したのだろう。

 

「こりゃヤバいな。焔、応急処置は出来るな?」

 

「伊達さんがやった方が上手いはずですよ?」

 

「アレは足に傷を負ったとはいえ確実に起き上がってくるぞ。足止め役は必要だろ?」

 

巨躯の怪物に視線を向けながら伊達は言う。

何時動き出しても対応出来るように警戒は怠っていない。

 

「焔、アタッシュケースを開けてみろ」

 

「これですか?」

 

鴻上からの贈り物であるアタッシュケースを開ける。

すると、中にはバースドライバーとバースバスターが入っていた。

鴻上はこういう状況を想定して護身用に送ったのだった。

伊達はそれを確認すると数十枚のセルメダルを焔に押し付ける。

 

「ドライバーは試作品で、バースバスターはお前用に調節した物だ。それ使って最低限は自分で身を守れ」

 

「でも、伊達さんはどうやって足止めを」

 

「会長からちゃんとこれを借りて来てるさ。ほら、さっさと行け。遅れる程に嬢ちゃんが危険な状態になるぞ!!」

 

「すみません。お願いします!!」

 

「おう、任せておけ」

 

彩鳥を担いで走っていく焔を背に伊達は巨躯の怪物の前に立ち塞がる。

腰にバースドライバーを巻き付ける。

セルメダルを取り出して指で弾き、掴み取る。

バースドライバーにセルメダルを投入して回す。

 

「変身!!」

 

銀の鎧が伊達の体を包み込んでいく。

仮面ライダーバースへ姿を変える。

手を叩き合わせた後に挑発するような仕草をする。

 

「さて、お仕事開始と行きますか。来いよ、牛ちゃん。相手をしてやるぜ」

 

挑発に反応したわけでは無いだろうが怪物、ミノタウロスは足を引きずりながらも突進してこようとする。

一瞬横に回避することも考えたが背後の校舎の事を考えて方針を変える。

セルメダルをバースドライバーに投げ込んで回す。

 

キャタピラレッグ!!

 

そんな機械音と共に足にキャタピラの付いた装甲が装備される。

突進を開始するミノタウロスにバースバスターの弾丸を叩き込んでいくが軌道がズレる様子は一切無い。

仕方がないのでバースバスターを一旦しまって再びバースドライバーにセルメダルを投入する。

 

ショベルアーム!!

 

左腕にショベル型の装甲を装備する。

突進してきたミノタウロスの突進を正面から受け止める。

角は左腕のショベルで掴み取る。

右腕は頭頂部に添えて、足のキャタピラの出力を全開にする。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

『GEEEEYAAAAAaaaaaaaaaaaa_________!!』

 

拮抗しているようで差は明白だった。

正面から受け止めた伊達ごとミノタウロスは校舎に突っ込む。

校舎全体を震わす衝撃共に昇降口にミノタウロスの頭部が突っ込み伊達は吹き飛ばされる。

昇降口に引っ掛かる形にはなっているが周囲にはヒビが広がっている。

ミノタウロスの怪力ならば砕いて中に入ってくるのは簡単だろう。

だが、それよりも先にミノタウロスの頭部にバースバスターの銃口が押し付けられる。

 

「くらいやがれ、牛野郎」セルバースト!!

 

銃口に収束されたエネルギーが放たれ、ミノタウロスは昇降口から吹き飛ばされる。

転がるようにして校庭まで吹き飛ぶ。

首は折れて無いが血は止まらずに流れ続ける。

だが、それで止まる怪物でも無い。

頭部から血を垂れ流しながらも再度突進に入ろうとする。

 

「させるかよ!!」

 

バースバスターから放たれた光弾が斬り裂かれていた足を貫く。

さすがに傷口を抉られるのには耐えられず、体勢を崩して倒れこむ。

畳み掛ける様にセルメダルをバースドライバーに投入する。

 

ブレストキャノン!!

 

胸部前方に砲台であるブレストキャノンを装備する。

そこからどんどんセルメダルを投入して出力を高めていく。

ミノタウロスが起き上がった時には出力は最大まで高まっていた。

最早回避する術など無い。

正面からミノタウロスを見据えて叫ぶ。

 

セルバースト!!

「ブレストキャノンシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥト!!」

 

最大まで出力が高められたブレストキャノンから放たれる光線がミノタウロスを貫く。

どんな怪物であれ、この一撃を受けて無傷ではいられない。

 





バースvsミノタウロスでした!

パワーではミノタウロスが上ですがまだ暴れるだけの存在なので立ち回りでどうにかあんる感じです
次回は遂にあいつ登場です!

それでは、質問があれば聞いてください
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大戦斧と兄との再会と輝ける四肢


ついにあいつ登場です!


 

完全に撃破するまでは行ってないがミノタウロスは崩れ落ちる。

息も絶え絶えで起き上がるのも難しいだろう。

伊達は息を吐いて軽く力を抜く。

ミノタウロスに近付き、どうにか拘束しようと画策する。

そんな時だった。

積乱雲から何かが吐き出されてミノタウロス近くに叩き付けられる。

 

「何だ!?」

 

伊達は困惑しながらも落ちてきた物体に目を向ける。

落ちてきたのは大戦斧だった。

数人がかりでなければ持ち上げられないであろうサイズの大戦斧はまるで太陽のように輝いていた。

瀕死のミノタウロスが大戦斧を掴み取る。

それだけで事態が急変したのを伊達は察した。

筋骨隆々の身体に数倍の力が宿り、先程までの傷は瞬く間に癒えた。

 

「何がどうなっている?」

 

伊達は疑問に思いながらもバースバスターを再び構え直す。

先手必勝とばかりに光弾を放つがその悉くが大戦斧の軽い一振りによって弾き飛ばされる。

その様子を見て分が悪いことを察する。

だが、距離を取る間など無かった。

一気に距離を詰められる。

振り降ろしはギリギリのところで回避する。

けれど、直後に大戦斧が横薙ぎに振り回される。

 

「ぐぅ!?」

 

さすがに回避のしようが無く弾き飛ばされる。

校舎の壁を突き破っても勢いは収まらず突き刺さる。

そのまま崩れていく校舎の瓦礫に埋もれるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

激しい音と共に校舎が崩れるのを焔は見た。

応急処置をする為に第三学研に向かっている途中だった。

背後から激しい音が聞こえて振り返った時にはもう後者は崩れていた。

 

「一体…………何が……………」

 

呆然とする焔の前に巨体が降ってくる。

大地を揺らし、伊達が足止めしているはずのミノタウロスが焔の前に立ち塞がる。

本能的に逃げることは無理だと察する。

無意識の内に彩鳥を庇う。

ミノタウロスは無抵抗になった獲物にも容赦はしない。

大戦斧が大きく振り上げられる。

西郷焔は振り上げられた大戦斧を睨み______次の瞬間、死を覚悟した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「…………………強化(ライズ)開始(オン)

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

______そして。

その背中は、一陣の風と共に現れた。

 

「……………え?」

 

焔は素っ頓狂な声を上げて視界に現れた背中を見上げる。

刹那の視線を覆したその俊足は、疾風迅雷と喩えても尚形容しきれない。

人間の知覚速度を遥かに超えた俊足で現れた男は、人間の三倍はあろうかというミノタウロスが振り下ろした戦斧を、輝く(´´)右腕一本で受け止めていた。

何故輝いているのかはさっぱりだが、おそらく校舎すら簡単に崩壊させた怪力を身じろぎ一つせずに受け止めていた。

だが、焔が本当に驚いたのは其処ではない。

自分より背丈が高く、鍛えられた背中。

共に背丈が変わっているから、幼い頃に見たものとは若干違って見えただろう。

しかしたとえ姿形が変わったところで、それが誰なのか見間違えることなどない。

首には、五年前に渡しそびれたはずのネコミミのヘッドホンがぶら下がっていた。

頭の片隅で、この窮地を救えるのは状況的に彼だけだと分っていながら、この人だけは絶対に駆けつけないだろうと思っていた_______そんな、在りえるはずのない背中。

西郷焔を庇った彼_____逆廻十六夜は、戦斧を受け止め憤怒を込めて言い放った。

 

「…………………テメェ。人の弟に(´´´´)何しやがる(´´´´´)

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

呆気にとられた西郷焔だが、それは一瞬のこと。

ミノタウロスとの間に飛び込んできた逆廻十六夜に、彼は怒声をぶつけた。

 

「お______遅いッ!!今まで何してやがったイザ兄ッ⁉」

 

「ハッ、三年ぶりの第一声がそれか!!お前こそ何してるこんな場所で!?」

 

「見りゃ分かるだろッ!!牛畜生に襲われてるんだよッ!!あと再会は五年ぶりだ、間違えるな馬鹿野郎!!」

 

緊張の糸が切れたように畳み掛けて吠える焔。

確かに、怪牛に襲われているのは一目瞭然だ。

だが聞きたいことの本質は其処では無い。

他にも聞きたいことは多々あったが、今はその時ではないと共に理解している。

互いに言いたいことを端的に述べた後、二人は全く同時に行動を起こした。

 

「俺がこの牛の相手をする!!お前はすぐに逃げろ!!」

 

「逃げるけど、後輩の応急措置が先だ!!彩鳥の容体が危ない!!」

 

あん?と怪訝そうな声を上げて首だけ振り返る。

 

「……………なるほど。聞こえたか、鈴華!!」

 

「あいさ!!」

 

何処からともなく彩里鈴華の声が響く。

それと同時に、その場から焔たちの姿が消えた。

二人の姿が消えると十六夜は右腕の輝きを消す。

身体を螺子の様に捻り、真正面に向けてミノタウロスの鳩尾を輝く右足で蹴り抜いた。

直後にミノタウロスは内から弾けるような衝撃に襲われる。

そうして怯んだところに拳を振り上げる形で叩き込む。

ミノタウロスの巨体を宙に浮かせ、その状態で蹴りを叩き込んで吹き飛ばす。

あの巨体を宙に浮かすことも、吹き飛ばすことも人間の身体能力とは思えない剛力だが、十六夜は特に誇ることも無く肩を回して仁王立ちする。

 

「ようやく再会したな、金牛宮(タウロス)。随分と手間を取らせてくれたじゃねぇか」

 

力の制御が出来ていることを確認しながら、吹き飛ばした方へと突き進む。

あの程度で止まる相手ではないことは重々承知している。

ミノタウロスは絶叫を上げて襲い掛かってきた。

 

『GEEEEEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa___________________!!』

 

土煙を纏めて吹き飛ばしながら奔る戦斧。

先程までとは遥かに速く強靭な一撃。

恐らくは怪牛の腕力というより、この戦斧そのものが力の根源なのだろう。

対する十六夜は徒手空拳。

避けるかいなすかしなければ、五臓六腑を撒き散らして砕けるのは必定だ。

しかし十六夜は身を守る素振りすら見せず、

 

「ハッ______しゃらくさいッ!!」

 

_____戦斧を(´´´)輝く紋様の(´´´´´)浮かんだ右腕で(´´´´´´´)殴りつけた(´´´´´)

 

『GYaaa……………!?』

 

短い閃光と共に戦斧が大きく弾き飛ばされる。

ミノタウロスは初めて感情的な鳴き声を発する。

もし言葉に出来るのならば「そんな馬鹿な!?」とでも言いたかっただろう。

加えて今起きたことは決して比喩ではない。

十六夜はミノタウロスが全力で振りかぶった一撃を拳で受け止めて、まるで何かが爆裂したかのような閃光と衝撃と共に弾き飛ばしたのだ。

 

『_______!!』

 

勢いを抑え込まれるどころか跳ね返されたミノタウロスは、痺れる両腕を抑えながら即座に飛び離れる。

だが、それで逃がす十六夜では無い。

飛び離れるとほぼ同時に十六夜も踏み込んでいた。

十六夜も十六夜で拳が痺れているが、その上で構える。

 

「大した一発だが、残念だったな。お前が金牛宮を司るように、俺は獅子宮を預かってる。おかげさまで刃物(ヒカリモノ)が効かない身体に成っちまってな。どうしてもその得物で来るなら、殴殺するつもりで来た方がいいぞ」

 

『…………!!』

 

ミノタウロスが更に距離を取ろうとする前に輝く拳がその体に突き刺さる。

内から弾け突き抜けて行く衝撃と共にミノタウロスは地を何度か跳ねるようにして吹き飛んだ。

 

「ついでに、お前の動きは見えてるぜ」

 

指先で挑発する十六夜。

血を吐きながらもミノタウロスは起き上がる。

牛の表情からは分からないが、得心はしたらしい。

戦斧を構え直して、出方を窺う素振りを見せる。

 

(……………………?おかしいな。以前は知性が無い様子だったが)

 

何か劇的な変化でもあったのか________しかしその思考が答えを出す前に、ミノタウロスは咆哮を上げて襲い掛かる。

だが、何度も同じ斬撃を繰り返すほど愚かでは無かった。

瓦礫の山に突進したミノタウロスは巨体と戦斧を生かし、周囲の瓦礫を纏めて吹き飛ばして襲ったのだ。

 

「お………………………!!」

 

意外な戦術に思わず声を上げる。

瓦礫の弾丸は何かしらの装甲の破片を巻き込んで十六夜に飛来する。

それぞれ一つ一つが建物を破壊するほどの威力があるだろう。

故に十六夜は_____消し飛ばすことにした。

 

裂破(バースト)起動(オン)……………………ど、っせいッ!!」

 

十六夜の腕の輝く紋様が腕全体に纏う様な物から直線的な物に変容する。

一喝と共に構えを取ってから放たれた拳が瓦礫の山に触れる。

その瞬間、目を眩ます様な光が広がる。

一瞬にして真正面の瓦礫全てが光に包まれて消滅した。

ただ破壊のみをプログラムされた裂破(バースト)の波動は触れた瓦礫を一瞬で塵に変えたのだ。

当然ミノタウロスも射程範囲内である。

裂破(バースト)波動に呑まれたミノタウロスは全身を肉は裂け、骨が軋むような感覚に叫び声を上げる。

 

『GEEEEEEEYAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaa………………!!』

 

「よしよし、段々と畜生らしい悲鳴になってきたじゃねぇか。…………………ったく、大人しく迷宮(ラビリンス)の奥に引きこもっていればいいのに、らしくない真似して外界まで出てきやがって。……………………しかもピンポイントで俺の身内に手を出すとは、どういう了見だ?」

 

唇を歪ませて笑みを作る逆廻十六夜。

彼は今、珍しく本気で怒っていた。

だがそんな問いにミノタウロスが答えを返せるはずもない。

全身から血を流しながら尚も闘志を緩めないミノタウロス。

十六夜も拳を握りこんで臨戦態勢に入る。

 

 





はい、十六夜vsミノタウロスでした!

伊達さんは性能差で負けたというより敵性能がいきなり跳ね上がったせいで対応できずに負けた感じです
十六夜の新技については後々

それでは、質問があれば聞いてください
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メールとナメクジと異世界召喚

今年の夏映画も中々良かったです
夏映画の先行登場のエグゼイドは派手でした
ゴーストは無双は無いけど良い話ではありました

それでは、本編です


一方の西郷焔と久藤彩鳥は、第三学部研究室の部屋の中心に来ていた。

意識が朦朧としている久藤彩鳥だが、先程体感した現象に驚嘆の声を上げた。

 

空間跳躍(テレポーテーション)……………………!!まさか、これを鈴華が…………………………………?」

 

「彩ちゃん、大丈夫!?」

 

彩鳥が驚いてる中、今度こそ見間違いが無い形でその兆帖を目の当たりにする。

この第三学研には焔と彩鳥の気配しか感じられなかったはずなのに突如、彩里鈴華が目の前に姿を現したのだ。

 

「鈴華………………貴女は今、何を」

 

「そんなの後だよ後!!今は止血が先!!焔、包帯で何とかなる!?」

 

「それだけじゃ無理だ!!針と消毒液、あと室長の机の下にある箱を取ってくれ!!」

 

「了解!!針と消毒液はコレ!?」

 

虚空から次々と現れる医療器具。

鈴華が右手を無作為に動かすと、左手の下に次々と医療器具が姿を現しているように見える。

彩鳥は益々以て驚愕した。

 

(これは……………………只の空間跳躍(テレポーテーション)ではない……………………!?)

 

「彩鳥。麻酔して縫合するから、軽く服を剥ぐぞ。我慢してくれ」

 

その間も手際よく応急処置を続ける焔。

臓器に傷が入っていないことを確認して安堵するものの、流した血が多すぎる。

外が大雨だった為、血がどんどん流れてしまったのだ。

次の行動に移ろうとした時だった。

窓に大量のナメクジが張り付いていることに気が付く。

 

「何だ、一体……………」

 

奇妙な状況に困惑していると煙が発生する。

同時に張り付いていたナメクジ達が一つになって人型に変わる。

怪人が擬態していたのだ。

 

「俺はネオショッカーの怪人、ナメクジン!!我々と一緒に来てもらおうか!!」

 

ナメクジンが叫び声を上げながら要求する。

焔はバースバスターを構え、鈴華も何時でも能力を使用出来るように構える。

敵がどういう存在なのかは分からないが自分たちを狙ってることは確かだ。

そして、ついていけばどうなるかも明白だった。

ゆえに抵抗の構えを見せる。

それでも怪人は構わないという様子だった。

アリコマンドが怪人の背後から湧いてくる。

 

「無駄な抵抗はよせ。貴様たちはもう逃げられないのだ!!」

 

「そいつはどうかな?」クレーンアーム!!

 

そんな声と共にクレーンが伸びてくる。

そのままナメクジンとアリコマンドを縛り上げる。

 

「何だ!?」

 

「助っ人参上!!ってな」

 

乱入してきた伊達はナメクジン達を縛ったままクレーンアームを振り回す。

その勢いでナメクジン達は第三学研の壁を突き破って外に放り出される。

 

「遅れて悪いな」

 

「伊達さん、無事だったんですね!!」

 

ミノタウロスが焔たちの前に現れたのでてっきりやられたのかと思っていたのだ。

伊達の無事を確認して安堵するように焔は息を吐く。

 

「まぁちょっと苦労したけどな。今度こそ敵は俺に任せておけ」

 

そう言って伊達はナメクジン達を放り投げたことによって出来た穴から飛び降りる。

実際のところは装甲にヒビが入ってたりしたのだが、暗さゆえに焔たちは気付かなかった。

伊達も特に問題は無かったので、余計な心配を掛けないために場所を移したのだった。

焔は気を取り直して彩鳥の応急処置を続ける。

 

「輸血しないとまずい。すぐに病院に運ぶぞ、鈴華」

 

「あー…………………………それは難しいかも?」

 

何?と予想外の声を上げる焔。

 

「………………何故?お前の物体転移(アポート&アスポート)ならわけもないだろ?伊達さんやイザ兄が牛畜生やナメクジ野郎を抑えてくれてる今しか逃げられないぞ」

 

「私も初めはそう思ったんだけど…………………校舎から出た途端に、落雷に狙い撃ちされてさ。イザ兄が助けてくれなかったら黒焦げになってたと思う」

 

鈴華の言葉に、怪訝な顔をする焔。

半信半疑ではあるものの、落雷に襲われるというのなら、迂闊に研究室を出るわけにもいかない。

 

「仕方ない。造血剤を使おう。あともう一つ、これはエヴリシングカンパニーから預かっている貴重な研究対象なんだが………………命に関わる状況だ。御目こぼししてくださるとありがたいぞ、彩鳥お嬢様」

 

「……………ええ。先輩にお任せします」

 

そう言って取り出したのは不透明な液体が入った三つの円形カプセル。

カプセルの表面には第三種星辰粒子体(3S. nano machine unit)と書かれていた。

 

(三つしかない貴重な”原典(オリジン)”だが、お嬢様の命がかかっている。背に腹は替えられない)

 

その内の一つを注射器で吸い上げて彩鳥に注入し、残り二つを上着の中に隠す。

一先ずこれで応急処置が終わったと安堵する焔。

だが休む暇も無く、今度は落雷が研究室の窓を貫いた。

 

「っ、二人とも伏せろ!!」

 

砕けたガラスの破片が一体に飛び散る。

軽く混乱状態に陥る焔だが、そうも言っていられない。

研究室の机に隠れながら雷雲を見上げ、様子を窺う。

そこで、この夜で最大の驚愕を得た。

 

(積乱雲が………………牛の形をしてる………………!?)

 

生き物のように蠢く積乱雲。

全長にして数十㎞はあるだろう。

その姿、その現象が自然界に於いて有りえないものだと悟るまでそう時間はかからなかった。

しかも最悪なことに、積乱雲の牛は焔たちが隠れている研究室を睨んで敵意を露わにしている。

 

「……………………なんてこった。あれじゃ本当に”天の牡牛”じゃねぇか………………!!」

 

台風二十四号”天の牡牛”。

その皮肉的な名称に歯噛みする焔。

必死に策を練るが、ワイルドカードは全て使い果たした。

彼に打つ手はない。

万策尽きたと思われた時________彩鳥が、声を上げた。

 

「………………先輩。手紙は届いていませんか?」

 

「は?」

 

「手紙です。こんな時の……………最後の脱出装置として、貴方に届いているはず………………!!」

 

_____手紙。

そういえば今朝から彩鳥も釈天も同じことを言っていた。

焔の許に何かしらの”絶対にありえない(´´´´´´´´)”手紙が届いてはいないか、と。

その言葉を受けて焔は記憶を探る。

そして、一つのメールを思い出す。

第三学研のメンバーにしか教えられていないはずのメールアドレスに届いた、差出人不明のメール。

 

「くそ、間に合えッ!!」

 

携帯を取り出してメール欄を探す。

”天の牡牛”は巨大な積乱雲を纏ったまま急速に降下してくる。

それは比喩では無く、正に天が落ちてくるかのような光景だった。

メールボックスの中からようやく見つけた焔は、文面を確認しないまま連打する。

すると三人を包み込むような極光が周囲を満たした。

だが”天の牡牛”は怯むことなく天を地に落とす。

直後、三人のいた第三学研は爆撃にでもあったかのように跡形も残らずに砕け散った。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

気が付けば彩鳥は漆黒に包まれた空間にいた。

 

「ここは…………?」

 

周囲を見渡しても何も無い。

自身の姿を見ると傷や汚れが消えていた。

現実感が薄い空間故に現状を一切把握出来ずにいた。

 

「ふむ、どうやら違ったようだな」

 

「貴方は…………………」

 

突然声が聞こえ、そちらを振り向くと奇妙な姿をした”何か”が宙に浮いていた。

人型ではあるが、人間のような気配を感じない。

”何か”は思案するように彩鳥を観察していた。

 

「時空の揺らぎを感じたから干渉してみたのだが興味本位で手を出す物では無かったな。そもそも奴に時空を移動する力は無いのだから当然なのだが」

 

”何か”は彩鳥を無視してぶつぶつと呟く。

聞こえてくる声は女性の物だった。

 

「まぁいい。余り面倒ごとには関わりたくは無いが拾った物は拾った物だ」

 

言いながら彩鳥の方へと近付いてくる。

彩鳥は警戒して構えるが関係ないように進んでくる。

 

「貴方は何者なんですか?」

 

「ただのサイキッカーさ。この姿ではネメシスQと名乗った方がいいかな?」

 

聞いたことも無い名だった。

転生前ですら聞いたことが無いのだ。

今の彩鳥が知る余地も無い。

 

「知り合いの知り合いがどうも別の世界にいるようでな。私の世界にまで揺らぎを届かせる者ならもしやと思ったわけだが違ったようだ。もしかしたら、そちらの世界に私の世界の住人がいるのかもしれないな」

 

「つまり、私が此処にいるのは偶然ということですか?」

 

「そうだな。謝っておこう。………………まぁついでだな。どうやら才もあるようだし切っ掛けは与えておこう」

 

「何をする気ですか!?」

 

「ただの詫びだよ。お前のPSIを目覚めさせるだけさ」

 

ネメシスQが腕を伸ばして彩鳥の額に触れる。

それだけで頭に何か電流が流れたように感じた。

脳の回路が変わったかのような感覚だった。

同時に意識が遠のいていく。

 

「これは一時の夢のような物だ。私が開放すれば即座に意識が肉体に戻る」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

再び視界が変化する。

彩鳥は急な変化に困惑しながらも首位を見渡す。

薄暗かったはずの夜の帳は燦々とした太陽の光に解け、まるで舞台に知らせるかのように眩い世界が瞳に映る。

大気が頬を擦るように激しく通過していく。

だがそれは突風によるものではない。

西郷焔、久藤彩鳥、彩里鈴華の三人は…………地上4,000mほどの地点から、自由落下していたのだ。

 

「なっ!!」

 

「わっ!?」

 

「っ……………!!」

 

眼前には見たことのない風景が広がっている。

天を衝くかと錯覚させるほどの大樹。

その幹を寄生木にする巨大な怪鳥や、根元に広がる水上都市。

落下に伴う圧力に苦しみながらも、西郷焔と彩里鈴華の二人は同様の感想を抱き、同様の驚愕を胸に抱く。

 

「ど…………何処だ此処!?」

 

二人の混乱、此処に極まる。

流石にこの展開は予想していなかった。

何よりこのまま自由落下していけば水面に叩き付けられて即死するのは目に見えている。

______だが心配することは無い。

来訪者が大地に辿り着く直前に緩衝の恩恵が働くことを、久藤彩鳥だけが知っていた。

 

(ああ……………………やはり、この世界に帰ってくる運命なのですね……………………)

 

先程の妙な干渉は置いておき只一人、静謐な瞳で全てを受け入れて達観する彩鳥。

 

 

そう______三人が呼び出された世界は、完全無欠に異世界だった。

 

 





異世界召喚回でした!

ネメシスQが介入してきたのは時空移動による”世界”の揺らぎを直接感じ取ったがゆえです
本来なら十六夜の世界→箱庭の移動でPSYREN世界まで揺らぎが届くことは無いのですが色々とあって届くようになった感じです

それでは、質問があれば聞いてください
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標的と突撃と音速のデルザー

焔たちが箱庭に召喚された瞬間にそれは動き出した。

銀色のオーロラを潜り抜け、音を置き去りにして加速する。

マッハ5にまで達したそれは今まさに落下している焔たちとの距離をどんどん詰めていく。

 

「あれが粒子体の研究者というガキか。いいだろう。我が加速と衝撃を持って確保するとしよう」

 

それは鳥の様な怪人だった。

四本の腕の内二つに翼があり、そこに設置されたジェットによって加速しているのだ。

あと数秒で焔たちに手が届くというところだった。

いきなりそのスピードが掻き消される。

まるで空間そのものが粘り気を持ったかのようだった。

 

「これは重加速か!!」

 

「ご名答」

 

声が視線を向けると一人の男が立っていた。

怪盗アルティメット・ルパン。

今や箱庭を騒がせるまでになった怪盗だった。

ルパンはルパンガンナーを怪人に向けながら挑発にするように話し始める。

 

「アレは俺も狙ってる物でね。邪魔をさせて貰う」

 

「貴様、俺を誰だと思っている?」

 

「知らないな」

 

「俺はデルザー軍団の改造魔人の一人、ジェットコンドル!!加速を武器にする俺が重加速対策をしてないと思ったか?」

 

ルパンに対抗するようにジェットコンドルも重加速粒子を放って力場を形成する。

蛮野を大ショッカーに引き入れた故にその技術は共有されている。

自身にロイミュードの力を取り込むことで更なる加速の域に達しているのだった。

それでも、ルパンはやれやれと言った様子で首を振る。

 

「まさかあの(´´)デルザー軍団が来ているとは確かに予想外だ。けれど、俺もそちらの予想を超えているのさ」

 

言いながらルパンは金色のマッハドライバー炎のような物を取り出す。

それを腰に巻き付けると金色のシグナルバイクを手に取る。

ドライバーを開き、金色のシグナルバイクを入れて閉める。

 

「俺は既に超進化態に到達している。更に超進化態の力を十全に発揮するのがこのルパンドライバーだ」

チェェェェェンジ!!ネクストォルパッーン!!

 

ルパンドライバーから宝石のようなエネルギー体が周囲に放たれる。

それらがルパンの肉体に集まっていき、新たなる装甲となる。

大きくは姿は変わらなかった手足と胴に装甲が足された程度ではあった。

それでも纏うオーラは完全に変わっていた。

 

「それでは、お見せしよう。俺の新たな力を!!」

 

ルパンが芝居掛かった動きで腕を振る。

濃密な重加速粒子がルパンを中心に放出される。

重加速を超えた重加速。

何もかもを停止に近い状態にする超重加速をルパンは引き起こしたのだ。

しかし、相手は仮にもデルザー軍団の一人。

これで狼狽える様な物では無かった。

ジェットコンドルはジェットの出力を際限無しに高めていく。

 

「舐めているのは貴様の方だ。俺の加速はこの程度では止まらない!!」

 

何時も程の速度では無いがジェットコンドルは動き出す。

超重加速をジェットの出力で強引に振り切っているのだ。

ルパンが指を鳴らして金色のマシン、ライドルパンを呼び出す。

その上に飛び乗るとジェットコンドルとの空中戦に入る。

ジェットコンドルはバイラルコアを握り込むと腕の形を変化させる。

 

「普段に届かないとはいえ俺の速度で放たれる弾丸を躱し切れるか?」

 

「さぁて、どうだろうな?」

 

腕を銃に変化させたジェットコンドルは追ってくるルパンを狙い、弾丸を放っていく。

ルパンもルパンガンナーで放たれる弾丸を撃ち落とし、撃ち漏らしを回避しながら隙間を縫って光弾を放っていく。

ジェットコンドルは紙一重で回避しながら身を捻る。

マッハを超える速度域での急停止急旋回は命に関わる。

だが、デルザー軍団の改造魔人の肉体ならばそれすら容易く行える。

銃に変化させていた腕に別のバイラルコアを押し当てて巨大な剣に変化させる。

そのままルパンへと正面から突進していき剣を振るう。

ルパンも最大限の回避行動を取りながらルパンブレードを振るう。

擦れ違い様に一際大きな火花が散る。

ルパンは左肩の装甲にヒビが入り、ジェットコンドルは額部にヒビが入る。

どちらも掠った程度で影響は無い。

怪盗と音速のデルザーの戦いは続く。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

焔たちが消えた報告を受けたゼネラルモンスターは首領と話しをしていた。

 

「どうやら”女王”辺りが保険を用意していたらしく。ターゲットは箱庭に消えたようです」

 

「こちらでも確認している。お前は一度箱庭に戻るのだ」

 

「そちらで捕獲計画を進めれば良いのですね?」

 

「そういうことだ」

 

「しかし、此方には逆廻十六夜がいるようですが」

 

「そちらの対処は魔神提督に任せてある。お前は自分の仕事を進めるのだ」

 

「はっ」

 

ゼネラルモンスターが頭を下げると首領の気配は消える。

ゼネラルモンスターは銀色のオーロラを出現させると部下と共に箱庭へと戻っていくのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「やってるねぇ。僕もあのお宝は手に入れたいんだけど………………アレは後が面倒なんだよね。もう少し熟してからじゃないと色々と影響が出過ぎる」

 

遠目から怪盗と音速のデルザーの戦いを眺める者がいた。

海東大樹、またの名を仮面ライダーディエンド。

ルパンとはまた別口の怪盗だった。

 

「さて、割り込むなら此方だけどもう少し様子を見た方が良さそうだね」

 

戦いを眺めながら漁夫の利を狙うように待機するのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ルパンガンナーから放たれる光弾が頬を掠める。

ギリギリの回避で最短ルートを進んでルパンへと突っ込んでいく。

ルパンは上半身を背後へと倒して突進を回避する。

更にルパンガンナーの銃口を向けて真上を通り過ぎるジェットコンドルに弾丸を叩き込んでいく。

ジェットコンドルも擦れ違い様に刃を振るう。

刃はルパンの左腹から左肩までを装甲を削るように通り過ぎる。

ジェットコンドルは肋付近にある噴出口に弾丸が直撃し、煙を噴き上げてバランスを崩す。

そこを狙って追撃しようとするが邪魔が入る。

 

アローナウ

 

そんな音と共に魔力の矢がルパンとジェットコンドル両方に向けて放たれる。

互いにそちらを向くと魔法の箒の様な物に乗った仮面ライダーメイジが三体迫ってきていた。

だが、それは明らかにおかしな事だった。

現在ルパンとジェットコンドルの周囲には超高濃度の重加速粒子が充満している。

コアドライビアを持ち、なおかつ超重加速に対応出来る身で無ければまともに動けるはずが無いのだ。

それなのにメイジは普通に行動している。

ジェットコンドルは首を傾げているが、ルパンはすぐに答えに思い当たった。

 

「あの男が邪魔をしているというわけか」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「音速のデルザー君はともかく彼には気付かれたかな?まぁバレたところで問題はないんだけどね」

 

仮面ライダーディエンドに変身した海東はメイジを召喚してジェットコンドルとルパンの戦いに乱入させたのだった。

目的としてはお宝から遠ざけることもあった。

だが、別の意味合いもあるにはあった。

 

「万が一君が負けても詰まらないからね。これはプレゼントと思ってくれたまえ」

アタックライド!!インヴジブル!!

 

ルパンがいる方向に銃口を向け、軽く撃つような動作をした上で姿を消すのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「意思も持たない人形風情が邪魔をするなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ジェットコンドルは三体並んで飛ぶメイジに突っ込んでいくと真ん中のメイジの頭部を掴む。

そのまま勢いのまま振り回し、地面へと直行する。

それだけで既に首が捻じ曲がり掛けているが、ジェットコンドルの眼中には無い。

激しい火花と共に凄まじい速度でメイジが地面に擦り付けられる。

耐えきれなくなったメイジの身体は砕ける前に光となって消えた。

 

「隙ありだ」ルパァンショット!!

 

一方、置き去りにされたメイジはジェットコンドルの高速飛行による衝撃波を浴びて体勢を維持するのが精一杯になっていた。

その隙を付いて、ルパンはゼロ距離まで近付いていた。

ルパンガンナーをメイジの身体に押し付けてルパンドライバーの上部スイッチを一回押す。

ルパンガンナーにエネルギーが凝縮され、放たれた光線がメイジの胸を大きく貫く。

その上で横薙ぎに斬り捨てる。

そのメイジが光となる間に残っている最後のメイジがルパンに向けて鎖を放つ。

 

チェインナウ

 

「甘いな」

 

ルパンは爪先で足場にしているマシンを叩く。

すると、鎖が届く直前に高度が急激に下がる。

更にハンドルに軽く蹴りを入れる。

マシンは急速にメイジの下へ移動し、急浮上する。

 

「終わりだな」ルパァンスラッシュ!!

 

二度ルパンドライバー上部のスイッチを叩く。

ルパンガンナーの刃にエネルギーが収束する。

そのまま斬り上げるようにしてメイジを真っ二つにする。

光となって消えるメイジを背にその勢いのままジェットコンドルへと突撃していく。

 

「貴様もそろそろ終わりにしてやろう!!」

 

「いや、俺はまだまだ終わらないさ。俺の目的(´´´´)はまだ果たされていないからな」

 

お互いに最高速度で突撃する。

ジェットコンドルは空間に満ちる重加速粒子によって本調子では無いがマッハを超えている。

それえによって発生する衝撃波によって地面にヒビが撒き散らされていく。

ルパンはルパンドライバー上部スイッチを三度叩いた上でルパンガンナーの銃口に掌を押し当てる。

 

スペシャル!!アルティメット!!ルパァンストラッシュ!!

「これで決まりだ」

 

ルパンガンナーの刃が撓る(´´)光の刃へと変貌する。

加えて周囲に宝石状のエネルギー体が放たれる。

 

「この程度まやかしにすらならんわァ!!」

 

ジェットコンドルは腕一本を刃に変えたまま突っ込む。

擦れ違うその瞬間に周囲に放たれていたエネルギー体が光の刃に収束する。

それによって光の刃の輝きはより一層増すのだった。

機械の抉れるような音と共に決着は付いた。

互いに振り向き、互いの惨状を目の当たりにする。

ジェットコンドルは刃に変えていた腕が完全に捥がれ、その上で胸元に深い傷を刻まれていた。

ルパンは左脇腹が大きく抉れていた。

その破片をジェットコンドルは興味無さそうに投げ捨てる。

抉られたところから上半身全域にヒビは広がっている。

互いに傷は深く下手すれば相討ちが濃厚な状況でもあった。

ゆえにどちらが言うまでも無く撤退する流れとなった。

ジェットコンドルは銀色のオーロラを展開する。

 

「今回は痛み分けということにしておいてやろう。生きていることを幸運に思え」

 

「それは此方の台詞なんだがね」

 

「我らデルザーは貴様らとは違うのだ。たとえ死のうとも何度でも(´´´´)蘇る」

 

何やら含みを持たせた言い方をしながらジェットコンドルはオーロラの奥へと消える。

ルパンも変身を解除するとマシンに跨る。

マントをたなびかせながら次なる獲物の元へと向かっていくのだった。

 

 





粒子体争奪戦の一部でした
割と色んな勢力が粒子体や焔そのものを狙っているのでした

ルパンvsジェットコンドルになりました
ジェットコンドルはいわゆる設定だけ存在した幻のデルザー軍団です
とはいえ、最近ライスピに出てきましたが
今回のはそれに加えてロイミュードの力も得ています

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落下と救出作業と鴻上の誘い

自分たちを狙う襲撃者の存在にも気付かずに焔たちは落下していく。

気付かないのも無理は無い。

距離はあり、今は落下への対処で一杯一杯だったのだから。

焔の提案によって鈴華の力を使い、自分たちを180度方向を変えさせることで落下エネルギーを軽減しようと試みた。

結果的に上手くいって相殺自体には成功した。

ただし、鈴華だけは反転が上手くいかず、水面に対して平行に飛んでしまう。

 

「わひゃあ!!」

 

結果、水面を水切り石の様に転げまわって悲鳴を上げた。

肩口から落ちて水面を二回バウンドした鈴華は、幸運にもその勢いで川辺に押し上げられる。

そこに一人の男が駆け寄っていく。

 

「大丈夫か?」

 

「私よりも…………ケホッ、……二人を………………」

 

激しく打ち付けられて咳き込みながらも駆け寄った男に大河に落ちた二人を頼む。

男は命に別状が無いのを確認すると静かに鈴華を降ろして立ち上がる。

懐から取り出した指輪を装着しながら男は軽く言うのだった。

 

「任せな。俺は魔法使いだからな」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

大河に落ちた二人は完全に勢いを殺すことは出来なかったが、幸いにも水面の下にあった柔らかい何か(´´)に助けられた。

生物的な柔らかさだったが確認する暇は無い。

誤算は大河の流れが速く、深度が予想より深かったことだろう。

伊達より渡されたアタッシュケースの中身があればどうにか出来たかもしれないが今は鈴華の傍に転がっている。

何よりあったとしても取り出す暇は無かっただろう。

一人ならともかく意識を失っている彩鳥がいてはそこまでの余裕は生まれない。

何より担いだままでは岸まで泳げない。

激しい水流に流される中、焔は岸に向かって必死に泳ぐ。

このままでは彩鳥の容体はどう転ぶか分からない。

一刻も早く体を乾かす必要があったが、この状況ではまず焔が助からない。

 

(流れが…………速すぎる……………………!!)

 

河の水を飲み、歯噛みしながらも必死に体を動かす。

限界を超えて有りっ丈の力で水を掻く焔。

いよいよ覚悟を決めなければならないかと走馬灯が過ぎった途端______妙な音声が聞こえてくる。

 

バインド、プリーズ

 

(な、何だ……………!!)

 

リキッド、プリーズ

 

突然魔法陣が浮かび上がったと思うとそこから水の鎖が飛び出して焔たちを大河から引き上げる。

更に大河の上を半液体状の何かが駆け、焔たちに近付いてくる。

そのまま焔たちを掴むと岸にまで一気に運ぶ。

全く理解出来ない光景に呆然としてされるがままになる。

岸に押し上げられると焔の手が優しく包まれる。

 

「大丈夫ですか!?」

 

聞いたことのない少女の声が聞こえてくる。

焔の手を掴んだのは少女なのだろう。

だが、先程の現象を彼女が起こしたかどうかは分からなかった。

喘ぎながら岸に寝そべると、土の香りと日差しの暖かさが嫌味なくらいに心地好く感じた。

________兎にも角にもこれで一息つける。

助かったという安堵と共に、焔は急激に意識が遠くなるのを感じた。

しかし此処でふと、自分たちを助けてくれたであろう人物に礼を告げてないことを思い出す。

せめて一言だけでも礼を告げようとして奮起する。

だがそこで、本日最後の驚きが襲った。

 

「危ないところだったな」

 

『私の……………私の頭の上に墜ちてきたのは誰だああああああああああ!!』

 

自分たちを引き上げた半液体状の物体が鎧を纏った人型に変わる。

それとほぼ同時に大河から超巨大な蛇の鎌首が上がる。

先程川底で当たったのはあの大蛇の頭だったのだ。

最早反応を示すだけの力も無い焔は、皮肉気に笑うしかない。

 

「お待ちください、白雪姫様!!おそらく彼らは召喚されたばかりで_____」

 

少女が体を張って大蛇を説得する傍らで鎧を纏った何者かの姿が変わっていく。

鎧は一瞬で霧散し、青年の姿に変貌したのだ。

バースシステムと似たような物なのかと思いながら朦朧とした意識を少女に向けて見上げる。

腰元まで伸びた青色の髪は、柔らかい月の光を彷彿させる。

彼女は、体の一部が明らかに人間と異なっていた。

 

(……………)

 

頭上に生えた長い突起物(ウサミミ)

短い尻尾。

青味のかかった長い髪。

僅かに見えたそれだけのシルエットでもうツッコミ処が満載なのだが、ツッコむ間もなく其処で意識が途絶える。

 

「救出のお手伝いありがとうございます、晴人さん」

 

「頼まれたし、見たからにはほっとくわけにもいかないしな。それで彼らは何者なんだ?」

 

「流石の黒ウサギでも状況が良く掴めないのですが。このキャットな耳当てを見る限り、十六夜さんのお知り合いということでいいのですよね?」

 

『それにしては随分とひ弱だがな。一応鍛えてはいるようだが。まあ、放置しておくわけにもいくまい』

 

三人とも頷き合う。

大蛇も怒ってはいるが、捕って食おうというわけではないらしい。

バニーガール姿の少女______黒ウサギと自称する少女と、自称魔法使いの青年と、白い大蛇は、焔と彩鳥、そして鈴華の三人の背負うと、天を見上げて一路、巨大な大樹の下へと歩き始めるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

_____宝永大学付属学園中等部校舎。

校舎の壁に張り付くナメクジンに向けてバースバスターから光弾が放たれる。

ナメクジンは器用に動いて回避していくが、伊達の狙いはそこでは無かった。

ナメクジンが張り付いていた校舎の壁が崩れ始める。

光弾は元より壁を崩すために放たれていたのだ。

ナメクジンは落下しながら溶解液を下にいる伊達に向けて吐き出す。

 

ショベルアーム!!

 

伊達はショベルアームを展開するとそこそこ大きい瓦礫を掴み上げ、ナメクジンに向けて放り投げる。

それが溶解液に対する盾となる。

溶解液は全て瓦礫に降り掛かり、瓦礫は瞬く間に溶けて無くなる。

そこからナメクジンは更に溶解液を吐き出そうとするが、伊達の方が動きは速かった。

瓦礫によってナメクジンの視界が塞がれている間にバースバスターの先端に下部のメダル入れをセットしていた。

銃口にセルメダル数枚分のエネルギーが凝縮されていく。

 

「これで終わりだ、ナメクジ野郎!!」セルバースト!!

 

凝縮されたエネルギー弾が放たれる。

空中のナメクジンに躱しようは無い。

エネルギー弾と共に空へと打ち上げられていく。

 

「ネオショッカーに栄光あれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

ナメクジンは断末魔を残しながら花火のように空中で爆散するのだった。

それを見届けて伊達は変身を解く。

バースの装甲が霧散して元の姿に戻るのだった。

ちょうどそこに里中が現れる。

 

「そちらは終わったようですね」

 

「焔達はどっかに消えちまったけどな」

 

「そちらは想定内です」

 

「里中ちゃんはどうして此処に?会長から何か伝言でもあるのか?」

 

「伝言はありますが伊達さん宛では無いです」

 

「じゃあ誰だ?」

 

「彼らです」

 

里中が指さした方を見る。

そちらには何故か大嵐が消えた澄み切った空の下で瓦礫の上に座る少年とその向かいに立って話している男がいた。

片方には伊達も見覚えがあった。

 

「伊達さんは一旦休んでいて貰っても構いませんがどうします?」

 

「俺も行く。どうやら焔達と無関係じゃ無さそうだしな」

 

そうして二人は目的の人物たちの方へと歩いていく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「よう、釈天。こんなところで何をしてんだ?」

 

「伊達に、里中か。そりゃこっちの台詞だぞ」

 

「知り合いか?」

 

「一応な」

 

伊達と里中が来た頃には二人の話も大体纏まっているところだった。

伊達と里中は十六夜に軽く自己紹介し、十六夜も名乗ると本題に入る。

 

「会長からお二人に伝言です」

 

「俺はともかく十六夜にもか?」

 

「えぇ、確証は無いですがおそらく関係はあるかと」

 

言いながら里中は小型モニターを取り出す。

電源を入れると男の顔を映し出す。

モニターにもカメラが付いている辺り、リアルタイムで通信しているのだろう。

 

「あんたが鴻上か?」

 

「そうだ、私が鴻上ファウンデーション会長の鴻上だ」

 

「何の用だ?俺としては鴻上ファウンデーションとは一切関わりが無い気がするんだが」

 

「それは当然だ。今から関係を作るのだからね。いや、ある意味では私たちと君はそれなりに関係ありそうなんだがね」

 

「どういう意味だ?」

 

「此方の話だよ。それよりビジネスの話をしようか」

 

「ビジネスだと?何を企んでいる?」

 

「別に企んではいないさ。私としては君の弟である焔君とは協力関係にあるので君とも協力したいだけさ」

 

「あんたと焔の関係はともかく俺にどう協力するつもりだ?」

 

十六夜としては焔との関係も気になりはしたが、そこは本人たちの問題であるのであまり踏み込みはしない。

だが、鴻上と名乗ったこの男は十六夜の事情を大なり小なり知っているかのような口調だ。

釈天関係ならともかくこの男の様な存在が箱庭を知っているとは考えにくい。

だからこそ、警戒を見せる。

 

「君が焔君達と追い掛けていた怪物を追う手伝いをしようじゃないか」

 

「それであんたに何のメリットがあるんだ?」

 

「私の知り合いが数人ほど数年前から姿を消していてね。どうもそれが君と似たような状況なんだよ。だから、少しでも手掛かりが入ればいいのさ」

 

「………………」

 

理由としてはそうおかしくない。

話を聞くとその知り合いは十六夜とほぼ同時期に姿を消したらしい。

全世界に情報網があるらしいこの男が見付けられない辺り、異世界に消えた可能性も前例的にあるにはあるらしい。

だが、どうにも胡散臭さが出ているのだった。

十六夜がどう返すか迷っていると釈天が割り込んでくる。

 

「悪いが今は此方だけで解決させてくれ。本当に力が必要になったら連絡する」

 

「そうかい。君がそういうなら私はそれで構わないよ」

 

「話が早くて助かるよ」

 

「では、里中君。話は終わりだ」

 

「分かりました」

 

里中はモニターをしまうと名刺を十六夜に渡して立ち去っていくのだった。

伊達も鴻上と話があるようで里中の後を追うように走っていく。

十六夜は、釈天に視線を向ける。

 

「良かったのか?」

 

「良いも何も鴻上の様子的に今回は顔見せがメインだ。話に乗っかる必要は無い。それに…………」

 

「それに?」

 

「あいつに借りを作ると後が面倒だ」

 

「そういう事か。なら、あいつらに協力を仰ぐのは最後の選択肢ってわけか」

 

「一応選べる範囲内の選択肢ではあるけどな」

 

「それにしても鴻上ファウンデーションに、エヴリシングカンパニーか。よく伝手があったな」

 

「前者は勝手に寄ってきただけだ。後者はそりゃああの会社は……………ああ、そうか。お前はまだお嬢様に会ってないんだったな」

 

はあ?と声を上げる十六夜。

釈天はニヤニヤ嫌らしい笑みを浮かべながら歩き始めた。

 

「兎にも角にも、現状の把握が最優先だ。今後も含めて作戦会議をするぞ」

 

「いいけど、どこで?会社?」

 

「それもいいけど、あそこ汚ねぇからな。カナリアファミリーホームを借りて、明日にでも方針を固めよう」

 

_____ピクリ、と片眉を歪ませる十六夜。

何か言いたいことがある様子だったが、特に文句を言う事も無く後に続く。

二人は解決に向けてカナリアファミリーホームに歩き始める。

其処でふと、十六夜は天を仰いだ。

 

(そういえば…………………焔たちは、箱庭の何処に落ちたんだろう……………?)

 

 




十六夜サイドには鴻上会長が乱入してくるのでした

十六夜的にも鴻上ファウンデーションは聞き覚えが無い感じです
それでも大企業とは察せるあれこれがあるのです

それでは、質問があれば聞いてください
活動報告にて設定纏め公開中です
感想待ってます!


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目覚めと水の大樹と裏方の魔法使い



まさかの全世界兄上化計画である
いや、デミアの正体なんてバレバレだったけどそういう絵面にしちゃう!?的な
やってる内容はシリアスでも絵面がどうやってもシュールなゴーストでした

そして、来週は帰ってきた豪快な奴らである


それでは、本編です


 

某所。

何処とも知れぬ闇の中。

そこに二本角の兜と黄金の鎧を身に纏った男が立っていた。

 

「お呼びでしょうか、首領」

 

『魔神提督。お前はあの世界にて逆廻十六夜の相手をするのだ』

 

「始末してよろしいのですね?」

 

『好きにするがいい。だが、肉体は回収するのだ』

 

「分かりました。箱庭の方はいかがしましょう?」

 

『そちらはゼネラルモンスターに任せる。お前は奴に専念するのだ』

 

魔神提督は頷くと銀色のオーロラを潜り抜け、姿を消す。

残ったのは点滅する怪しい光のみだった。

それもやがて闇に消える。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

____”アンダーウッドの大瀑布”大樹の貴賓室。

藁葺きのベッドの上に寝かされていた西郷焔は、慣れない寝心地でふと意識を覚醒した。

だが意識を覚醒しただけで体は重く、簡単には起き上がれそうにない。

 

(……………何処だよ、此処)

 

仰向けになったまま、状況を確認する。

体調から推測すると半日は眠っていたらしい。

身体の倦怠感は疲労というよりも、半日も身体を動かしていないことによるものだ。

となると、残る問題は此処が何処かという話である。

 

(そういえば、落下中に馬鹿デカい大樹が見えたな。あそこまで運ばれたのか?)

 

もしそうならば、此処は大樹の中ということになる。

手足が拘束されている様子は無い。

自分たちを浚うと言った連中を思い出して多少心配はしたが、いらぬ心配の様だった。

どうやら安全な場所であることは間違いないようだ。

部屋の内装はどうなっているのかと首を横に向けた途端____ベッドの隣に、二本の不自然な突起物が見えた。

 

「………………」

 

____ウサッ。

という擬音と共に。聳え立つ二本の突起物(ウサミミ)

寝ぼけて朦朧としたままの焔は、「なんだコレ?」と小首を傾げながらソレに手を伸ばして引っ張った。

 

「ていっ」

 

「フギャア!!」

 

ベッド脇から上がる悲鳴。

それと共に飛び上がるウサ耳ロリータの少女。

 

「ちょ、ちょっとお待ちを!!触るまでなら黙って受け入れますが、まさか名乗り合う前に黒ウサギの素敵耳を引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですか!?」

 

「好奇心の為せる業」

 

「既視感有り余るフリーダム発言禁止ッ!!」

 

スパァーン!!とハリセンを取り出して側頭部を引っ叩くウサ耳ロリータ。

_____うむ、もはや何も驚くまい。

積乱雲の牡牛や牛頭のミノタウロスにナメクジ人間を見た直後である。

ウサ耳少女が一人や二人現れたところで何するものぞだ。

あれに比べたらウサ耳の一つや二つや三つや四つ可愛い物だ。

何より悪意も敵意も感じない辺り、敵対する意思はないように思えた。

その後、焔は鈴華や彩鳥の安否を聞き、互いに名乗り合う。

詳しく色々聞こうとしたが、それは他の二人と合流してからとなった。

兄である十六夜の話を聞きながら歩いていると、汽笛のような物が聞こえてくる。

 

「今のは……………汽笛か?此処には列車があるのか?」

 

「YES!!最近普及が始まった精霊列車でございますね。ご覧になりますか?」

 

精霊列車_______何とも聞きなれない単語に、益々以て好奇心が疼く。

その様子に気が付いた黒ウサギは笑いを噛み殺しながら脇道に逸れて、大樹の外に足を踏み出す。

その途端______一陣の風と共に、西郷焔の視界は静水と深緑の色に支配された。

 

「わっ!!」

 

大樹の中心、地上250m地点で横薙ぎの風が吹く。

それと同時に二度目の汽笛が上がった。

焔は手摺りから身を乗り出して下を確認する。

其処で更に驚嘆する。

遠目でハッキリと見えなかったが、この巨大な大樹は大河の上に乗りかかる形で生えていたのだ。

大樹の幹からは吸い上げた静水を滝のように、或いは雨の様に、或いは霧雨の様に零して街に降り注いでいる。

水上都市はそれを水車た水式昇降機(エレベーター)のように動力として活用する為の形態に進化したのだろう。

目を凝らせば水路の下には旧都市と思われる街が沈んでいる。

そして焔は眼下に水中から巨大な列車が現れる光景を見る。

興奮した焔はウサ耳を掴んで、一気に階段を駆け下りる。

途中で水式昇降機(エレベーター)に飛び乗り、勢いよく地上に下りていく。

街中に足を踏み入れる。

街中でも至る所に水路が張り巡らされ、噴水は光の加減で造形が変わって見えるという高度な水芸を披露している。

市場は熱気と人に溢れ返り、奇妙な装飾品を売る店もあれば、見たことも無い料理を披露して瞳と鼻孔を擽る。

焔は唖然としたまま絶句しているが、人込みの向こうで、良く知る声が上がった。

 

「お、焔だよ彩ちゃん!!やっと来たみたいだぜ!!」

 

「ええ。女性を二人も待たせるとは、仕方のない先輩です」

 

林檎飴を両手に持ってはしゃぐ鈴華と、苺のオムレットを手に持つ彩鳥。

二人は焔を確認すると人込みを掻き分けながら焔の許にやってくる。

一方の焔は、目の前の光景に視線を奪われたまま、未だに硬直していた。

黒ウサギはそんな彼の顔を覗き込んでウサ耳を傾げる。

 

「焔さん?どうしました?」

 

「あ、いや、どうしたもこうしたもないっていうか……………世界規模でツッコミどころしかないっていうか、」

 

唖然______としたまま、何をどう形容していいのかわからず、曖昧なことを呟く。

獣人と思われる者たちが闊歩し、精霊としか形容できない小人が噴水で遊びまわる。

そんな幻想的な光景を前にして思考回路が焼き切れたというのもある。

鴻上会長などに振り回されて見た超常現象など序の口だったと思えるのが現状である。

果たしてこの光景を前に、頭を抱えて途方に暮れるべきなのか。

鈴華たちみたいに全てを受け入れて楽しむべきなのか。

思い悩む焔に、黒ウサギはウサ耳を揺らして笑いかけた。

 

「まあまあ。積もる話もありますし、まずはお昼にいたしませんか?」

 

「……………………………そう、だな。いい店はあるか?」

 

「そうですねぇ。今の季節だと………………………桜見鳥の姿焼きや、ペリュドンのハムエッグなどがよろしいかと!!」

 

これはまた随分と肉食なウサギがいたものである。

益々以てツッコミを入れたかった焔だが、腹が減っていたのも事実だ。

異世界初めのアクションとして、先ずは腹ごしらえをするとしよう。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

そんな少年少女の姿を遠目で笑みを浮かべながら眺める者がいた。

操真晴人、魔法使いである。

 

「若いってのはいいねぇ」

 

彼は彼でまだ二十代であり、若いの範疇なのだが思わずそう呟くのだった。

両親を幼い時に失った晴人は楽しそうにする光景が多少眩しく見えるのだった。

ただ三人の少年少女の中で金髪の少女は何処か見覚えがあるように思えた。

 

「どっかで見たことがある気がするんだよな。たぶん箱庭で……………」

 

「どうしたんだい、兄ちゃん?」

 

「いや、見覚えのある顔を見かけたんだけど何処で見たのか思い出せなくてな」

 

「人違いなんじゃねぇの?」

 

「そうかもな」

 

「それより、ドーナツはいるかい?」

 

そこそこ顔馴染の露店の店主が商品を見せながら言ってくる。

晴人はその中から迷いもせずに一つ指さす。

 

「プレーンシュガー」

 

「またかよ!!たまには他のも買ってくれよ」

 

「いいだろ、別に?」

 

「まぁ毎度毎度買ってくれるのはありがたいんだがね」

 

頑なな晴人に店主は渋々と言った形で従う。

晴人は毎度毎度プレーンシュガーしか頼んでいないようだった。

そんな事は気にもせずに晴人は周囲を見る。

何時も通り活気に溢れた市場だ。

だが、妙な気配が幾つか隠れていた。

それらの全てが新しく箱庭に召喚された少年少女に視線を向けている。

 

見られているな(´´´´´´´)

 

「誰にだ?」

 

「何でもないよ」

 

「そうか。ほれ、何時ものだ」

 

「ありがとさん」

 

金を払ってプレーンシュガーの入った袋を受け取る。

歩きながら妙な気配の位置を確認する。

溜息を吐きながら指輪の付けた手を腰に当てる。

 

コネクト、プリーズ

「全く新しく来た奴には楽しんで欲しいのに無粋な邪魔をするなよ」

 

現れた魔法陣の向こうにプレーンシュガーの入った袋を置く。

そうして準備を終えると、少年少女を狙ってると思われし気配のところへと向かう。

新たな来訪者の楽しみに、無粋な邪魔を仕掛ける者を排除する為に。

希望を守る魔法使いは裏で奔走する。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

何処かの宇宙。

箱庭でも焔たちの世界でも無い宇宙。

漂う小衛星の上に立つ巨人がいた。

 

「ようやく捉えたぜ、時空の捻じれを」

 

世界と世界が干渉し合う時に発生する波紋を感じ取っていた。

とはいえ、彼も意識して集中しなければその波紋を感じ取ることは出来ない。

つまり、感じ取れる程に大きい干渉が行われたということだ。

 

「この大きさからして今度こそ間違いは無いだろ」

 

彼は銀色の鎧を纏うと右腕の先に装着された刃の先端を虚空に向ける。

すると、その先の空間が歪み、世界に穴が開く。

彼はこれで世界を移動するのだ。

だが、無制限に移動できるわけでもない。

一回移動するにもそれなりに消耗する。

けれど、普段は行くべき世界が分かっているのでそこまで関係無い。

しかし今回は行き先が不明瞭だった。

声は届いた(´´´´´)のだが、相手の居場所が上手く感じ取れなかったのだ。

ゆえに何者かが激しく行き来する次元に狙いを定めて移動を狙ったのだ。

彼は虚空に生まれた次元の穴へと消えていく。

次元の穴は彼が通れば即座に消える。

残る物は何もなくただ虚空が広がるだけだった。

 

 





はい、初めての異世界体験でした!

晴人はすぐに合流する予定だったけど気を利かせて問題の種を排除してる感じです

最後の巨人はアレです
唐突に登場して全てを持ってくアレです

それでは、質問があれば聞いてください
設定は活動報告で纏めているので設定関連はそちらでも
感想待っています!!


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海馬と使い魔と傍迷惑な大蛇



変化が少ないと纏めるのも苦労するという

それはそれとして豪快な奴らが帰ってきましたね
シルバーは事務所に土下座までして出演する豪快具合ですよ
次の日曜はスーパー戦隊通算2000回記念ですよ!

それでは、本編です


『 -第二次太陽主権戦争 招待状 -

 

  拝啓、西郷焔様。

   貴方は箱庭の世界で行われる”第二次太陽戦争”への参加資格を得られました。

  本線参加資格を得る為には先ずは”黄道の十二宮”、”赤道の十二宮”に属する星獣を一匹以上使役してください。

 

  目標討伐星獣”金牛宮”

   勝利条件:①”金牛宮”の化身の討伐。

   勝利条件:②雷光を掻き消し、星をあるべき姿に戻せ。

 

 

  ※ルール概要・開催期間

   此方は予選ゲームとなりますので、開催期間は七年間とさせていただきます。

   七年が過ぎ去ると自動的にゲーム敗退となります。

   誰が討伐しても西郷焔様が討伐したことになりますので、遠慮なく協力者を募ってください。

 

 

  ※注意事項※

   この参加枠は西郷焔様に第二次太陽主権戦争に参加していただく為に設けられた特別参加枠です。

  もしも参加を棄権・放棄・無視、或いは予選敗退された場合は西郷焔様が保有している特別参加枠、及び固有の恩恵(ギフト)千の魔術(プロト・イデア)”を回収させていただきますのでご容赦ください。

   尚、開催期間中は箱庭から出られませんのでご注意ください。

  延長については考慮しますが、なるべく期間内に全ての攻略条件をクリアするようにお願いします。

 

 

                                                                              敬具

 

                                                               第二次太陽主権戦争 進行役”ラプラスの小悪魔”』

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ふ…………………………ふざけるなッ!!」

 

突如響く怒号にガーデンレストランの客席がざわめく。

焔達をつけていた者たちを排除した晴人もその声を聞く。

何の騒ぎか確かめる為にも晴人は客席を進んでいく。

 

「ん?黒ウサギちゃんに……………」

 

晴人が辿り着いた時には焔たちは落ち着き、結論を出しているところだった。

晴人はいまいち状況を把握していないので声を掛ける。

 

「よぉ」

 

「あ、晴人さん!!来ていたのですね」

 

「これ、どういう状況?」

 

「それはですね………………」

 

「あ、あの時の魔法使いさん!!」

 

黒ウサギが説明しようとしたところに鈴華が割り込む。

あの時は意識がぼんやりしてはいたがどうやら晴人の顔は覚えていたようだ。

近付いてきて晴人に頭を下げる。

 

「あの時は助けてくれてありがとうございます!!」

 

「いや、別にそんな頭を下げられる程でも無いよ。助けるのは当然だろ?」

 

「ところで、貴方は黒ウサギさんの知り合いということでいいのですか?」

 

「えぇ、黒ウサギたちの同士です」

 

「操真晴人だ。よろしくな」

 

そんな風に受け答えしながら黒ウサギから経緯の説明を受ける。

どうやら食事しながら箱庭について説明してる途中で招待状を確認することになり、その内容が内容だった為に動揺したらしい。

今は女王に会うという目的を定めて落ち着いたところなのだ。

 

「ところで、どんな魔法使えるんですか?」

 

「そうだな…………………こういうのとかかな」コネクト、プリーズ

 

腰に指輪をかざして魔法を発動させる。

手頃な大きさの魔法陣を展開するとそこに手を突っ込んで離れたところに置いておいたドーナツを取り出す。

その光景に鈴華は素直に目を輝かせる。

焔も露骨には態度に出さないが興味津々ではあった。

彩鳥のみ見慣れてるような様子だ。

その姿に晴人はやはり何処かで見覚えがあるような感覚になるが口には出さない。

 

「と、ゆっくりもしていられないな」

 

「どうしたんだ?」

 

「生活費を稼がないといけないんですよ」

 

「…………………先輩。鈴華。急ぐのはいいですが御二人は参加費の代替となるものを持っているのですか?」

 

彩鳥の冷静なコメントを受けて、二人は黙り込む。

黒ウサギは軽く笑って手を挙げた。

 

「ご安心ください。御二人は十六夜さんのご家族。いうなれば我らの恩人のご家族です。参加費用は黒ウサギのポケットマネーから都合させていただきますとも!!」

 

「そうだな。俺も少しは出すよ」

 

「おお、黒ウサに晴人さんったら太っ腹!!」

 

「悪い、稼いだら必ず返すから。まずは簡単そうなゲームで手慣らししたいけど、何がいいかな?」

 

「それならさっきいい店があったぜ姉弟(ブラザー)!!きっとあれがギフトゲームの舞台_____」

 

「ちょっと待ったああああああああ!!」

 

ディフェンド、プリーズ

 

その時、大河から巨大な水柱が上がった。

周囲の観客は何かのショーと勘違いしたらしく微笑ましい笑顔を浮かべて拍手を送っている。

だが近くに居た当人たちにとって事は甚大だ。

全身が河の水で濡れ、テーブルの上の料理も押し流されてしまった。

ただし、晴人のみ前方に魔法陣を出してずぶ濡れになることを防いでいた。

 

「あっ……………」

 

まだ半分も食べてない料理の数々が河に流されていく。

それを切なそうに見つめる鈴華。

だが大河から飛び出してきた人物は気にした様子もなく、焔たちの前に舞い降りた。

 

「話は聞かせてもらった!!貴様らの初ギフトゲーム、この白雪姫が取り仕切らせてもらおう!!」

 

「うん、白雪ちゃんらしいな」

 

「し、白雪様!!どうしてこんな無意味ではた迷惑でド派手な登場を!?」

 

「良く知らないけど、格好つけたかったんだろ」

 

「そうですね先輩。それ以外考えられません」

 

「そ、そんな自己満足な理由であんな美味しそうなご飯を犠牲に………………!!」

 

「や、やかましい!!神格保持者の一人として、ファーストインパクトを重視したまでのこと!!上下関係は最初が肝心だというであろう!?」

 

ウガー!!と牙を剥いて憤る着物姿の女性、白雪姫。

どうもどうやら十六夜から受けたアレコレの憂さ晴らしを焔達にするようだ。

ついでに十六夜の家族とはいえ無償で貸し借りするのは教育に悪いとも言う。

そんなこんなで焔たちは白雪姫のゲームを受けることとなり、黒ウサギが審判を担当することになる。

話が纏まると白雪姫は大河に飛び込み、大蛇の姿で現れる。

 

『………………うむ。では乗るがよい。舞台区画まで連れて行こう』

 

「はーい!!」

 

「途中で水底に潜るとか無しだぞ」

 

『操真晴人。貴様はどうする?』

 

「俺も付いていくかな」

 

素直に返事する鈴華と、懐疑的になりながらもどこか楽しそうな焔。

特に用事もない晴人も同行する。

そんな賑やかな面々とは対照的に落ち着き払っている少女______久藤彩鳥を、黒ウサギは横目で見る。

 

「それでは我々も行きましょう。……………ところで、彩鳥さん」

 

「何ですか、黒ウサギさん」

 

「もしやと思ったのですが………………以前、黒ウサギと何処かで会っていませんか?」

 

「-----……・・・・・。いいえ、初対面です」

 

静謐で無感情な応答。

黒ウサギは一瞬だけ寂しそうに笑った。

 

「いえ、ならばよいのです。________ささ、白雪様のゲームに向かいましょう!!」

 

クルリ、とスカートを靡かせて立ち上がる黒ウサギ。

三人も勢いよく立ち上がり、”アンダーウッド”の散策を開始するのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

_____”アンダーウッド舞台区画”海馬(ヒッポカンプ)の放牧場。

焔達三人が遊覧を楽しんでる横で赤色の鳥、黄色のタコ、青色の馬のような小さい何かが晴人の周囲に現れる。

晴人はそれを確認するとそれぞれを軽く撫でる。

 

「お疲れさん」

 

役目を終えたそれぞれは魔法陣の奥へと姿を消す。

その様子が気になった黒ウサギが声を掛けてくる。

 

「何かあったのですか?」

 

「いや、ちょっと周囲を見て来て貰ってただけさ」

 

「そういう時は大体何かあるときのような気がするのですが」

 

「黒ウサギちゃんが気にすることでは無いよ」

 

そんな会話の横で焔が興味を持った視線を向けてくる。

それに気付いた晴人も焔の方を向く。

 

「今のはカンドロイドみたいな物なのか?」

 

「カンドロイドってのがよく分からないけど、アレは俺の使い魔みたいな物さ」

 

「使い魔、ね。やっぱ魔法使いがいるってことはそういうのもいるんだな」

 

言いながら今度は鈴華の声に釣られて水上馬車の方に視線の向ける焔。

この世界に来てからは未知ばかりであり、色々と興味を惹かれるのだろう。

そういった様子を見ると晴人も微笑ましくなるのだった。

そうこうしている間に目的地に辿り着く。

面々を降ろして自身も人の姿となる。

そこでゲームの説明を始める。

水上馬車を使った白雪姫との障害物レースをするらしい。

ルールが示された羊皮紙を焔達へと渡す。

 

『 ギフトゲーム -”ヒッポカンプの水上騎手”-

 

  ・参加資格:主催者側が招いた者たち。

  ・勝利条件:主催者”白雪姫”より速く大樹を一周する。

  ・ルール概要

   一、参加者側は地図を見て好きなルートを選択して良し。

   ニ、主催者側はあルート選択は自由だが、水上に頭を上げる際は立ち止まること。

   三、参加者側は転覆した場合、即座に立て直せばその場から再スタート可。

   四、ゲーム中は等間隔で相手を妨害することが出来る。

 

 

  ・参加者側の勝利報酬:ギフトカードを一枚贈与。及び衣食住の保障。

  ・主催者側の勝利報酬:逆廻十六夜に今日までの無礼を全て謝罪するよう説得する。

 

 宣誓:上記のルールを尊重し誇りと御旗の下、ゲームを開催することを誓います。

                              ”ノーネーム”白雪姫 印』

 

三人はその文面をサッと読んで黒ウサギに問う。

 

「これは?ゲームルールか?」

 

「YES!!箱庭のゲームルールを示す”契約書類(ギアスロール)”でございます。文面に目を通して合意してもよいと思うなら、その旨を主催者にお伝えくださいな」

 

ふむ、と焔は一考する。

確かめるべきことを確かめていき、裏が無いか探る。

聞くことを終えると何やら十六夜が多大な迷惑を掛けたのが分かり、申し訳なくなるのだった。

 

「さて、そろそろ始めようか。水上馬車は好きなのを使え。あとは力を貸してくれる”海馬”が居ればよいのだが………………」

 

そう言って周囲を見回す白雪姫。

丁度その時、”海馬”の群れの中から一頭が凄まじい勢いで走ってきた。

真っ直ぐに此方に向かってきたその”海馬”は、鈴華と彩鳥の間に突進するように頭を突き出した。

 

「わっ!!」

 

「っ、お前は…………………!!」

 

鈴華は驚いたように後ろに下がり、彩鳥は軽く受け止めながらその”海馬”を見る。

その馬は”海馬”の中でも取り分けに美しかった。

 

「す……………凄く綺麗………………!!」

 

「ああ。馬は門外漢だけど、こんな美人はちょっといないんじゃないですかね?」

 

「うむ。こやつは”海馬”の群れの王、ヒュトスと言ってな。三年ほど前まで女王騎士(クイーンズ・ナイト)の騎馬として従軍しておったのだ」

 

「女王騎士………………っていうと、例の”クイーン・ハロウィン”の?」

 

「YES!!とても強くて、何度も黒ウサギたちを助けてくれた、勇敢な騎士様でした。そして此方の”海馬”は、三年前の”ヒッポカンプの騎手”で十六夜さんたちと優勝を競い合った一頭なのですよ!!」

 

ヒヒン、と嘶きを上げて応じるヒュトス。

彩鳥は首の下を優しく掻きつつ、嬉しそうに小声で呟いた。

 

「……………久しぶりですね、ヒュトス。元気そうで何よりです」

 

ヒヒン、と心なしか嬉しそうに応じる”海馬”のヒュトス。

その様子を見た晴人は違和感を確信へと変化させつつあった。

白雪姫は大仰に頷いた後、”契約書類”と街の地図を手渡す。

 

「準備は調ったな。それでは、明日の昼頃にレース開始ということで如何だ?」

 

「それだけあれば準備には十分っすよ。_______あ、そうだ。一つ聞いておきたいんですけど」

 

焔は周囲をぐるりと見回し、幾つかの水上馬車を見る。

そしてヒュトスの体型を確認し、ニヤリと笑う。

 

「この水上馬車……………別に、俺が設計しても構わないよな?」

 

「ほう。自身ありか?」

 

「ああ。むしろこういうのが得意でね。勿論、間に合わなかったらその時は別の手を考える」

 

「YES!!それでしたら図面を焔さんが考えて、組み立ては樹霊に依頼しましょう!!そうすればあっという間に完成するに違いないのですよ!!」

 

よし、と楽しそうに頷く焔。

鈴華と彩鳥は存外楽しそうにしている焔を見て、お互いに笑みを噛み殺すのだった。

 

 





説明回と言っても大体原作と変わらないので豪快にカットでした
焔達の流れ自体はそこまで変化ないので!
あくまでこの時点ではですけど!

晴人が警戒してるのは後々で


それでは質問があれば聞いてください
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設定面での質問があればそちらでも聞いてください
感想待ってます!


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雑兵蟻と隊長蟻と朝の運動


はい、今日はジャグラー死す!ですよ
ウルトラマンオーブは土曜朝九時放送!

と言うのは置いといて本編です


早朝。

孤児院の屋上に十六夜は立っていた。

周囲を見渡すと怪しい気配を幾つか感じていた。

 

「ったく、此処まで監視してやがるのか。それとも、此処まで手を出すつもりか?」

 

言いながら十六夜は床に手を付ける。

そのままイアン式ライズの要領で波動を放つ。

生命エネルギーの薄い波を放ち、反響で敵の位置を探っているのだ。

敵はそこまで遠くにおらず、なおかつ一ヶ所に固まっていた。

もしかすると今から行動するところなのかもしれない。

 

「仕方ねぇ………………やるか!!」

 

呟いた直後に十六夜は敵のいる方角に目掛けて跳躍する。

それはさながらロケットの発射のようだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「此れよりあの孤児院に襲撃を掛ける!!作戦は伝えた通りだ!!速やかにガキども回収した上で逆廻十六夜を排除する!!」

 

上官の指示にアリコマンド達がネオショッカー式の敬礼を返す。

此処には戦闘員の教官である隊長蛇塚が来ているのだった。

今まさに行動を始めようとした時だった。

空から逆廻十六夜が降ってきたのだった。

 

「な、何だ!?」

 

「よぉ、この世界まで来て俺の家族に手を出そうとかふざけた事企んでるじゃねぇか」

 

十六夜が着地した地点はまるで砲弾が着弾したかのように抉れていた。

それでも隊長蛇塚は慌てずにアリコマンド達に十六夜の周囲を囲ませる。

自身も右腕を剣に変えて戦闘態勢に入る。

 

「まさかバレているとはな」

 

「問答をする気はねぇ。チビ達が起きる前に終わらせてもらうぞ」

 

そこから先は迅速だった。

十六夜は地を蹴り、一気に距離を詰める。

正面にいたアリコマンドの首を掴むとそのまま他のアリコマンドへと投げ付ける。

まるでボーリングの様にアリコマンド達は吹き飛び、木々へと衝突する。

背後から槍を持つアリコマンド数体が飛び掛かる。

軽く避けて逆に槍を掴む。

そのまま横薙ぎにして数体のアリコマンドを弾き飛ばす。

同時に槍も折れる。

ナイフを持って斬り掛かってきたアリコマンドの首を掴んで、瞬時に首を折る。

そこに隊長蛇塚の指示で銃撃が放たれるが掴んでいたアリコマンドを盾にした上で投げ付ける。

壁として視界を封じている間に飛び上がり、銃撃していたアリコマンド達が気付く前に上から奇襲する。

銃は地面に叩き付けられて粉々になり、アリコマンド達は血溜まりの様に弾け飛ぶ。

 

「おのれ!!」

 

「さすがにこんな奴らだけで俺を倒せるとは思って無いよな?」

 

「行け、強化アリコマンド!!」

 

隊長蛇塚の号令と共に雰囲気の違うアリコマンド達が前に出る。

十六夜は多少は警戒しながらも距離を詰めて拳を放つ。

数体は回避しようとする中で一体動かずに正面から受け止めようと構えていた。

構わずに拳を打ち込み、アリコマンドは両手で受け止める。

骨が砕ける音が響き渡る。

だが、他の個体とは違い吹き飛ばずに踏み止まった。

 

「へぇ」

 

とはいえ、両手が使えない時点で敵では無い。

裏拳で頭部を弾き飛ばすとアリコマンドは首を回転させながら吹き飛んでいった。

その隙に何体かのアリコマンドが蹴りを放ってくる。

十六夜は正面から迎い打とうとするが、先程の拳を受け止めた個体が頭に過ぎって回避に方針を変える。

避けたのは正解だった。

アリコマンド達の蹴りは地面を軽く抉る程度の威力は伴っていたのだ。

 

「確かに他の雑魚とは違うみたいだな」

 

「当然だ!!強化アリコマンド達はスカイキックを修得した個体に更なる改造と薬品を与えた者だからな!!」

 

「あぁ、確かに他よりは強いな。だが(´´)

 

更に蹴りが放たれる。

十六夜は今度はキチンと構えを取る。

拳を握り込み、正面から拳を放つ。

拳と蹴りが衝突する。

一瞬の静寂の後にアリコマンドの足関節から血が噴き出る。

骨が砕ける音と共に足がひしゃげる。

完全に押し負ける。

勝負にすらならなかった。

そのアリコマンドは他のアリコマンド同様吹き飛ばされて水風船のように弾け飛んだ。

 

「それだけだ。俺には届かねぇ」

 

横合いから放たれたアリコマンドの拳を軽く回避する。

さこから伸び切った腕を右手で殴り上げる。

関節が逆に曲がり、骨すら飛び出る。

のたうち回る暇もなく左手で頭部を掴まれ、背後にいたアリコマンドに叩き付けられる。

三体同時に三方から襲い掛かってくる。

十六夜派は真上に跳び、一体を着地時に踏み潰しす。

更に跳躍し勢いをつけた上での後ろ回し蹴りで一体の頭部を蹴り飛ばす。

残り一体が放った拳を左手で軽く払い飛ばし、その胸板に拳を叩き込む。

肋骨が砕け散った音と共にアリコマンド最後の一体が吹き飛ぶ。

が、その間に隊長蛇塚が十六夜の背後に回り込んでいた。

剣に変化した右腕を振るうが十六夜には傷つかない。

獅子座の恩恵の力によって刃が弾かれているのだ。

 

「悪いが俺に刃物は通らないぞ」

 

「ぬぅ!!」

 

裏拳の要領で背後に向けて振り回された腕をバク転の様な動きで回避していく。

残る敵は最早隊長蛇塚だけになっていた。

 

「兵隊たちは全滅の様だな。どうする?降参でもするか?」

 

「降参などするものか。貴様には此処で消えてもらう!!」

 

言いながら隊長蛇塚はベルトの様な物を取り出す。

そこにオーメダルのような物を入れると今度はガイアメモリを取り出す。

 

「我が新たなる姿をその目に焼き付けるがいい!!」アント!!アリ!!

 

ガイアメモリは腰に巻かれたベルトに吸い込まれていく。

ベルトによってアントメモリとアリメダルの力が最大限に解放される。

仮面ライダーコアを解析し、超銀河王のギンガオードライバーのシステムを応用した力なのだ。

これによってドーパントの能力が何倍にも膨れ上がる。

スーパーアントドーパントへと姿を変えた隊長蛇塚は溶解液を十六夜に向けて吹き掛ける。

当然十六夜は回避する。

溶解液は当たったアリコマンドの死骸を骨すら残さずに溶かし切った。

溶解液を回避しながら距離を詰め、拳を放とうとした瞬間に隊長蛇塚が腕を振り上げる。

警戒して一歩下がると一瞬前までいた場所に隊長蛇塚の腕が振り下ろされる。

その一撃は地面に大きくヒビを入れる程の威力だった。

躱していなければ十六夜でもダメージを受けていただろう。

 

「すぐに終わらせてやろう」

 

「あ?」

 

隊長蛇塚が唐突に咆哮を上げる。

大気を震わす程の振動が伝わってくる。

同時に周囲に転がっているアリコマンドの死骸がセルメダルへと変わっていく。

そうして生まれた大量のセルメダルは隊長蛇塚へと集まっていく。

セルメダルを取り込めば取り込むほど膨れがっていく。

全てを取り込んだ時、その姿は異形の巨大蟻と化していた。

 

「おいおい、マジか」

 

完全に姿が変わると共に巨大蟻は跳躍した。

そこまでの高さを跳んだわけでは無い。

だが、その質量は馬鹿に出来ない。

十六夜は割と本気で落下地点から外れる。

激しい音と共に落下した巨大蟻が地を揺らす。

十六夜を視認すると叫び声を上げて突進してくる。

横に跳んで転がるように回避する。

そこに向けて足の一本が振り下ろされる。

両腕を持って受け止める。

ダメージは無い。

受け止めれはする力ではある。

けれど、それは足場がしっかりしていればの話だ。

足元にはどんどんヒビが広がっていく。

足場が崩れればさすがに耐えきれはしない。

なので、力の方向性を反らして斜めに受け流す。

反らされた一撃とは言っても大地を揺らす威力はある。

 

「斬れないのならば圧殺するまでだ!!」

 

休む間も無く大顎を広げて突っ込んでくる。

大顎に挟んで潰して始末する気なのだろう。

確かに今のままでは挟まれたらヤバい。

そう、今のままならば。

 

「ウォーミングアップは終わりだ。強化開始(ライズオン)

 

呟きと共に十六夜の右腕に淡い光で描かれた紋様が浮かび上がる。

軽く構えた上で右側の大顎を殴り上げた。

まるで内から弾けたように大顎がへし折れる。

折れた側の大顎は回転しながら落ちてくる。

隊長蛇塚が唖然としている間に真下に潜り込む。

瞬く間に左側の足がもぎ取られていく。

バランスを崩して倒れるところを真下より殴り上げる。

接触場所から何かが流れ込み、拳の威力以上の破壊が内部で巻き起こる。

ボロボロと体からセルメダルが溢れ出す。

 

「おのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

巨大蟻の頭部のみが外れ、残り全てがセルメダルに変わる。

それらが地に落ち、土煙が巻き起こる。

それによって十六夜の視界が塞がれている間に隊長蛇塚は十六夜に接近する。

そのまま怪力の腕を振るう。

だが、それはあっさりと躱される。

 

「悪いがこの程度じゃ奇襲にならねぇよ」

 

たとえ視界が塞がれようとPYIを修得した今ならば敵の位置は分かるのだ。

後は正面からぶつかり合うのみ。

十六夜の拳と隊長蛇塚の拳が衝突する。

両者の動きが止まる。

拮抗しているように見えた。

けれど、それは錯覚である。

直後に隊長蛇塚の腕から血が噴き出す。

外骨格の硬さもあり、骨は砕けなかった。

それでも、力の差は歴然だった。

十六夜は隊長蛇塚が固まってる数瞬の間に数発の叩き込む。

それだけで外骨格全体にヒビが入る。

 

「これで終わりだ」

 

輝きの強さが増す。

濃縮された一撃が隊長蛇塚に叩き込まれる。

全身の外骨格が弾け飛ぶ。

同時に変身も解ける。

ベルトも粉々に散り、排出されたメモリとメダルも砕けた。

隊長蛇塚は全身血塗れとなって地を転がる。

その胸倉を掴み取る。

 

「幾つか聞かせてもらうぞ」

 

「話すと思うか?」

 

「話させるだけだ」

 

「無駄だ!!」

 

カチリと隊長蛇塚の口の中から音がする。

その音と隊長蛇塚の笑みから十六夜は狙いを察する。

隊長蛇塚を投げ捨てた上で距離を取る。

 

「ネオショッカー、万歳!!」

 

そんな叫びと共に爆炎が上がる。

隊長蛇塚最後のあがき。

それは自爆だったのだ。

作戦は失敗した。

これ以上失態を重ねず、情報を渡さない為に自身を葬ったのだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

孤児院に戻ると釈天が玄関前で煙草を吸っていた。

 

「騒がしかったようだが何があった?」

 

「ちょっと朝の運動をしたくらいだ」

 

「その様子じゃ、情報は何も掴めなかったみたいだな」

 

「まぁ、そんなもんだ」

 

「まぁ何はともあれ夜は明けたし打ち合わせといくか」

 

「何処でやる気だ?」

 

「腹ごしらえを兼ねて近所の店でだ」

 

「そうか。支度するから待ってろ」

 

言って十六夜は孤児院の中に入っていく。

早朝から思わぬ運動をしてしまったので風呂に入って着替えるつもりだった。

釈天を待たせる点は一切考慮してない。

 

 






ネオショッカーの刺客vs十六夜でした

スーパーアントドーパントはガイアメモリの蟻の記憶をコアメダルの力で増幅強化してる感じです
アリメダルはコアメダルですけどサソリカニエビ同様紫メダルで無くても壊せる仕様です
ガラ製だけど性質的にはポセイドン系列に近いです
ベルトに関してはカンナギ製の試作品です

質問があれば聞いてください
活動報告にて設定纏め上げてます
設定関連の質問があればそちらでも
それでは、感想まっています!


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水上馬車とペンキの罠と同時攻撃作戦



ゴーカイジャーは豪快にやってきて豪快に去っていきましたね!
五年の歳月が立っているのに再び集まったメンバーに感謝を!

ゴーストは……………何というか展開的には、要素的にはいいと思いますよ?

それでは、本編です


逆廻十六夜と御門釈天は、孤児院近くのフランス料理店”ドン=ブルーノ”に足を運び、情報共有を行うのだった。

途中で釈天の部下であるプリトゥも合流する。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「では、作戦開始だ」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

______”アンダーウッドの舞台区画”精霊列車の出入り口前。

 

「……………?なんか天気が崩れてきたな」

 

昨日までの快晴が一転、天候は劇的に崩れ始めていた。

大樹の上は暗雲が立ち込め、僅かだが稲光も放っているように見える。

だが街中の賑わいはその対極で、ゲームの開催を今か今かと待ちわびているように見えた。

いつの間にか観客席まで設けられている。

そんな中で焔、鈴華、彩鳥は作戦を立てていく。

全員持ち場に就くと白雪姫が水面からのそりと巨大な鎌首を上げて彼らを見下ろした。

 

『ふむ、準備は出来ているようだな。______では再確認するぞ。まず”精霊列車”が出発したらゲームスタートだ。この巨大な水樹”アンダーウッド”を左回りに一周し、この位置まで先に戻って来た方が

勝者となる。水上都市の裏側はまだ未開発の土地だが、細かい水路は通っている。好きな道を選んでゴールを目指すがよい』

 

「はーい」

 

「わかりました」

 

「ところで質問だけど。このレース、体当たりとかして相手を直接妨害するのは無しだよな?」

 

『安心せい、そんな無粋な方法は取らん。そのような勝ち方をしたところで観客に非難されるだけであろう?ゲームはルールを守って戦うから神聖なのだ。________但し、自身の恩恵(ギフト)を行使するのは合法だがな』

 

「オッケー。それを聞いて安心した」

 

互いに位置に就く。

水上都市というだけあって少し移動するだけでも舟橋を経由する必要がある街だ。

本来ならもっと多くの船が街を横断しているのだが、今は地主とやらのおかげでそれも極めて少ない。

どうやらギフトゲームの興行収入の方が実入りがいいらしい。

後で観戦料をせしめねばなるまいな、などと考える焔と鈴華。

”精霊列車”が発車する振動で水面が揺れる。

彩鳥は鞭を入れる準備をしつつ、耳を澄ます。

貨物を下した”精霊列車”が大樹の中から出て来て汽笛を鳴らすと同時に、黒ウサギはゲーム用の銅鑼をの前に立ち、片手をあげて開催の宣言をした。

 

 

「それでは”ヒッポカンプの水上騎手”______スタートなのです!!」

 

 

ドオオォン!!と、大きな音を立てる銅鑼。

同時に響く開催の汽笛。

彩鳥は白雪姫より僅かに早く鞭を入れ、スタートダッシュを決めた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

銅鑼の音が響く中で動き出す者たちがいた。

水辺から突如として泡が噴き出し、人のような形を作っていく。

それはサンショウウオの様な特徴を持った怪人となる。

サンショウジンという水辺なら何処へでも瞬間移動できる能力を持った怪人だ。

その視線は水上馬車へと向けられている。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

大樹の枝にアオカビやキノコが集まっていく。

それらは段々と人型へと固まっていく。

アオカビが集合し、アオカビジンになる。

キノコが集合し、キノコジンとなる。

両者の視線は眼下を走る馬車に向けられている。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

地中を何かが移動する。

河の端へと辿り着くとその姿を現す。

赤い甲羅を纏い、蟹の様な人型が姿を現す。

カニンガージンは水上を走る馬車へと狙いを定める。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

それら全てが眺められる場所にてゼネラルモンスターは笑みを浮かべる。

 

「全員配置についたようだな。三ヶ所同時攻撃は上手くいきそうだな」

 

「それはどうかな?」

 

「何者だ!!」

 

ゼネラルモンスターが叫ぶと同時に赤いマントをはためかせながら襲撃者は斬り掛かる。

ゼネラルモンスターはスティックで剣を受け止めると、左手の鋼鉄のアームを振るう。

だが、紙一重のところで襲撃者は身を引いて回避する。

襲撃者は見知った顔だった。

というより、現時点で最も警戒している対象だった。

 

「ウィザードか!!何故我らの計画を知っている!!」

 

「お前たちが動いてるのは知っていたんでね。偵察を済ましていて正解だったぜ」

 

そう言うウィザードの腕にガルーダが止まる。

偵察としてプラモンスターを放っていたのだ。

それゆえに晴人は即座にウィザードに変身してゼネラルモンスターを襲撃できたのだ。

 

「しかし、貴様が此処にいては部下の行動を邪魔できまい!!」

 

「そうとも限らないぜ?」

 

言いながら晴人は腕に装着された物を見せつける。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ウォータードラゴン!!

 

サンショウジンが水上馬車に迫ろうとしている時だった。

水面に魔法陣が現れ、その中から青い鎧とマントを纏ったウォータードラゴンのウィザードが姿を現す。

 

「ハァ!!」

 

「げげっ!?」

 

ウォータードラゴンは両手にソードガンを構え、ガンモードにして引き金を引く。

放たれた銀弾は一発残らずサンショウジンに命中してその身を吹き飛ばした。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

キノコジンとアオカビジンはほぼ同時に毒胞子を放とうとしていた。

それらは放たれたが最後、大勢の命を奪う代物だった。

 

ハリケーンドラゴン!!

 

放たれる直前に緑の魔法陣が現れる。

そこから既にドラゴンの翼を生やしたハリケーンドラゴンが姿を現す。

同時に暴風が巻き起こり、キノコジンとアオカビジンの胞子を一つ残らず押し返す。

 

「お前らの好きにはさせるかよ」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「死ねぃ!!」

 

カニンガージンは水上馬車に向けて溶解泡を放とうとする。

 

ディフェンド、プリーズ

ランドドラゴン!!

 

直前に岩壁がカニンガージンの目の前に現れる。

更に岩壁に黄色の魔法陣が映し出され、そこからランドドラゴンが飛び掛かる。

ウィザーソードガンをソードモードにしてカニンガージンへと斬り掛かる。

カニンガージンは左手の鋏でどうにか切り結ぶ。

 

「危なかったな」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ドラゴタイマーの力によって晴人は分身していたのだった。

そして、他の怪人を他の形態が相手にしているからこそフレイムドラゴンのウィザードが此処にいる。

 

「おのれ、厄介な奴め!!」

 

「あいつらの邪魔をさせるわけにはいかないんでね。それに希望を守るのが魔法使いの役目だ。アレはきっと希望へ繋がる。だから何が何でも守らせてもらうぞ!!」

 

ソードガンとスティックが何度も何度も接触して火花を散らす。

斬り付けながらも晴人は指輪を手にする。

それをソードガンへとかざす。

 

コピー、プリーズ

 

魔法陣がソードガンに重なり、もう一本のソードガンを生み出す。

剣閃の速さが二刀になったことで増していく。

ゼネラルモンスターは忌々しそうにしながらも何とか受け止めていく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

その頃、焔たち一行は鈴華の能力を利用して白雪姫の頭上にペンキをぶちまけていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

サンショウジンは鞭を手に取り、ウォータードラゴンへと挑み掛かっていく。

ウォータードラゴンは体を回しながら紙一重で回避していく。

 

「逃げるな!!」

 

「逃げてはいないさ」

 

首を狙って飛んできた鞭を一閃。

あっさりと軌道を見抜いて斬り裂く。

けれど、目の前にはサンショウジンはいなかった。

 

「消えた?」

 

「こっちだ!!」

 

背後から声が聞こえると同時に鞭が背中に叩き付けられる。

水辺なら何処へでも瞬間移動出来る能力を使って背後へと移動したのだ。

サンショウジンは次々と転移することで居場所を掴まれることを防ぎながら鞭を放つ。

転移を意識してどうにか掠らせる程度に済ませているが積み重ねれば厄介である。

ウォータードラゴンは指輪を付け替えるとウィザードライバーにかざす。

 

リキッド、プリーズ

 

「なんだと!?」

 

魔法によって体を液状化させる。

鞭は液状化した体を空しく通り抜ける。

サンショウジンが動揺した隙に飛び上がると再び指輪を変えてかざす。

 

チョーイイネ!!ブリザード!!サイコー!!

 

真下に向けて強大な冷気を放つ。

サンショウジンは放たれた冷気によって体の芯まで凍結する。

水辺ごと凍らされたので逃げる間も無く凍結したのだ。

 

チョーイイネ!!スペシャル!!サイコー!!

 

更にドラゴンの尾を生やすと落ちる勢いのままに叩き付ける。

凍結したサンショウジンに防ぐ方法などあるわけもなく水面ごと粉々に砕け散るのだった。

 

「ふい~」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ハリケーンドラゴンは二体の怪人の周囲を旋回して竜巻を巻き起こす。

それによって二体が撒き散らす毒の胞子が漏れ出すことを防ぐ。

 

「喰らえ、アオカビ爆弾!!」

 

「悪いがお断りだ」チョーイイネ!!サンダー!!サイコー!!

 

ウィザードライバーにリングをかざす。

雷を放ってアオカビジンが投げ付けたアオカビ爆弾を焼却する。

近付けばヤバイことは分かっているので出来るだけ遠距離で対処する。

が、放った雷が予想以上の結果をもたらす。

空気中に撒き散らされていたアオカビの胞子にまで引火したのだ。

まるで全て一気に燃え尽きたかのように。

 

「なるほど。火に弱いってわけだ」

キャモナシューティングシェイクハンズ!!ハリケーン!!シューティングストライク!!ビュービュービュー!!

 

「ぐば、燃える!!わしが燃える!!」

 

雷を銃撃に纏わせて撃ち抜く。

そうすることで体内から燃やし尽くしていく。

完全に火達磨となってアオカビジンは灰となる。

 

「アオカビジン!!仇は俺が!!」

 

「それは無理だな。お前もこれでフィナーレだからな」チョーイイネ!!キックストライク!!サイコー!!

 

キノコジンは声がした真上を向く。

真上は竜巻の目つまりは空洞。

そこに魔法陣が広がっていた。

それを貫くように蹴りが放たれる。

雷すら纏った蹴りは竜巻内の胞子を全て燃やし尽くしながらキノコジンへと一直線に降ってくる。

避ける間も無かった。

ハリケーンドラゴンのストライクウィザードはキノコジンを貫いた上で燃やし尽くすのだった。

 

「これで毒が広がることもないだろ」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

カニンガージンはソードガンを鋏で受け止めながら頭部から溶解液を吐き出す。

ランドドラゴンは後方に下がりながらウィザードライバーにリングをかざす。

 

ディフェンド、プリーズ

 

岩壁が溶解液を防ぐ。

カニンガージンはは鋭利な鋏で岩壁を斬り裂く。

それとほぼ同時に岩壁に銀弾が撃ち込まれる。

両者の攻撃によって岩壁が砕け、粉となって宙に舞う。

それがカニンガージンの視界を塞ぐ。

 

「がっ!?」

 

後頭部に鋭い痛みが走る。

ランドドラゴンの肘打ちが後頭部に決まったのだ。

そこから畳み掛ける様にウィザードライバーにリングをかざす。

 

チョーイイネ!!スペシャル!!サイコー!!

「一気に決めさせてもらうぞ」

 

ドラゴクローを両腕に装備し、構える。

カニンガージンは不利を悟ると逃げる為に地中へと潜っていく。

蟹のような見た目をしているが、地中を高速移動できる能力を持っているのだ。

だが、みすみす逃がすわけもない。

 

「逃がすかよ」ドリル、プリーズ

 

ランドドラゴンは身体を高速回転させて地面を掘り進む。

そのまま黄色の魔力を身に纏って突進していく。

地中の中では追い付かれれば逃げ場は無い。

蟹の甲羅はドラゴンの爪で易々と貫かれてカニンガージンは爆散するのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「どうやら怪人は全員倒したようだぜ」

 

「クソ…………」

 

「俺もそろそろ決めさせてもらうぞ」

キャモナスラッシュシェイクハンズ!!フレイム!!スラッシュストライク!!ボーボーボー!!

キャモナスラッシュシェイクハンズ!!フレイム!!スラッシュストライク!!ボーボーボー!!

 

晴人はゼネラルモンスターに蹴りを入れて距離を取る。

二刀のソードガン両方にリングをかざして炎の魔力を纏わせる。

そのままゼネラルモンスターへと斬り掛かる。

 

「フィナーレだ!!」

 

業火を纏ったソードガンによる斬撃がゼネラルモンスターに迫る。

一撃はスティックで防ごうとするが、逆にスティックが焼き斬られる。

二撃目は左手のアームが吹き飛ばされる。

トドメの三撃目が振り下ろされる直前だった。

______巨大な稲妻が”アンダーウッド”を襲った。

轟と激しい雷鳴が鳴り響く。

気が付けば元より悪かった天気が嵐になっていた。

そう、ハリケーンドラゴンが竜巻を起こしても目立たない程にだ。

晴人の動きもそれに気を取られて一瞬止まる。

その隙をゼネラルモンスターは見逃さなかった。

即座に銀色のオーロラを出現させる。

 

「覚えていろ、貴様は必ず消してやる!!」

 

「あ、待て!!」

 

晴人が追い掛けようとした時は時すでに遅し。

ゼネラルモンスターはオーロラに姿を消すのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

稲妻を帯びた大戦斧をミノタウロスが投げ付け、焔達が乗った水上馬車を木っ端微塵に打ち砕いたのはその直後だった。

水路は二つに割れて氾濫し、水底に窪みを造って渦を巻く。

三人が乗っていた馬車は、”アンダーウッド”の水面に沈んでいった。

 

 




ゲームの裏での晴人vsネオショッカーでした

再生怪人は弱いというか
そもそも序盤怪人なのでドラゴン相手だと多少オーバーキル気味に
一方でゼネラルモンスター自体は生身でも一応切り結べるくらいにはなってます

それでは、質問があれば聞いてください
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ジャグラーはやっぱり死なないのでした


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後悔と避難と鳴り響く雷鳴


オーブはカードを奪われ、マガオロチは大暴れで大ピンチ
ジュウオウはクジラが大暴れ!
ゴーストはグレートアイザーが大暴れでした!

それでは、本編です


 

逆廻十六夜、御門釈天、プリトゥ=マーダは車で移動していた。

”境界門”を開く為に柴又帝釈天の寺院に向かっているのだ。

その移動の途中、十六夜は背後から妙な気配を感じていた。

 

「なあ、尾行されてないか?」

 

「だろうな」

 

「気付いてるのかよ」

 

「当たり前だ」

 

「放置でいいのか?」

 

「大方お前が今朝相手にしていた奴らだろ」

 

「ん?鴻上の奴じゃないのか?」

 

そこでプリトゥが口を挟む。

どうやら彼女は鴻上が監視を付けていると考えていたらしい。

そこで十六夜と釈天は今朝の襲撃者の事を話す。

 

「なるほどな。でも、それにしても堂々とし過ぎじゃないか?」

 

「そこまでは知らん」

 

「何か狙いがあることは間違いないけどな」

 

一先ず狙いが分からないので様子見ということで話を纏めて三人は先を急ぐのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

______”アンダーウッド”工業区画・第二製鉄場。

雷光の如き一撃が三人を狙ったと同時に。

西郷焔と久藤彩鳥は、工業区画の陸地に転移していた。

 

「わっ、」

 

「きゃ!!」

 

ドサリ、と音を立てて落ちる音。

それを追うように水路が轟音と共に砕け散った。

大戦斧と稲妻を打ち付けられた水路は水底に巨大な大穴を空け、大渦を造り出している。

一瞬でも遅かったら命が危なかっただろう。

三人とも五臓六腑をぶちまけるか稲妻に撃たれて焼死していたに違いない。

 

「っ、鈴華は………………?」

 

ハッと彩鳥と焔は顔を上げる。

鈴華も二人の隣で倒れていたが、様子がおかしい。

彩鳥が慌てて彼女に近付くと、腹部に大きな裂傷が出来ていた。

そして其処で思い出す。

彼女の恩恵は通常の空間転移とは異なり、自身の転移と対象の転送を使い分けなければならなかったということを。

二人の顔色は蒼白となり、共に渦を巻く水路を見た。

 

「ま………………まさか………………………!!」

 

______一瞬でも遅れれば命が無いタイミングだった。

自身を転移させるか、焔と彩鳥の二人を転移させるか。

二つに一つしか選べない状況で……………鈴華は、二人を助けることを選んだのだった。

彩鳥は二人を先に逃がす。

その後ろからは既にミノタウロスが迫っていた。

重戦車のように突進するミノタウロス。

だが何時までも強襲者に好き勝手させるほど”アンダーウッド”の住人は軟弱ではなかった。

 

「全員、配置に付け!!」

 

その号令を聞き、ミノタウロスは足を止めて背後を見る。

水路の対岸では”六本傷”のシャロロとポロロが工業区画内に居た同士を集めて、固定式大型弩砲バリスタに付くよう指示していた。

ポロロは鷲獅子の鬣を切っ先に纏めた采配をその手に持ち、躊躇うことなく振り下ろす。

 

「此奴が噂の星獣だ!!加減することは無い!!大型弩砲”フェイルノート・バリスタ”_____全弾ぶち込めッ!!」

 

鷲獅子の采配が旋風を巻き起こす。

その風と共に一斉発射される固定式大型弩砲の弾丸。

追尾の恩恵に加えて音速を超えた速度の弾丸が五十二発、ミノタウロスに襲い掛かる。

戦斧を失った今の状態では回避は不可。

何とか半数は叩き落すが半数は全身を貫く。

右腕を貫通し、両足を串刺し、武骨な胸筋を十二もの鏃が貫いていく。

 

『GEEEEEEEEYAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaa!!』

 

大気の震動が可視できるほど大きな断末魔の叫び。

その圧倒的かつ一方的な光景は、たった一匹を相手に此処までする必要があるのかと疑念を抱かせるには十分だ。

だがポロロは油断しない。

星獣がこの程度で死なないのは分かり切ったことだからだ。

次弾を装填させてすぐにぶち込めるように指示を出す。

黒ウサギはその間に彩鳥の許に駆け寄る。

 

「すみません、彩鳥さん!!黒ウサギが付いていながら、こんなことに成るなんて、」

 

「…………いいえ、仕方がありません。貴方は”箱庭の貴族”、そして”審判権限(ジャッジマスター)”を持つ者。戦いに参加できなかったからといって恥じることは無い。この場で恥じるべき者がいるとしたら____」

 

力強く言い切り、一人で立ち上がる彩鳥。

だが様子がおかしい。

黒ウサギは少し気圧されながら一歩下がる。

 

「………………彩鳥さん?」

 

ウサ耳を傾げて彼女の背中を見る。

その背中は先程までの少女のものとは思えなかった。

彼女から立ち上がる闘志に、黒ウサギは思わず息を呑んだ。

黄金の髪は闘志に呼応するようにざわめき、体幹に剣でも通っているかのような真っ直ぐで強健な力強さを湛えている。

当人すら自覚は無いが体内では”何か”が脈動していた。

その立ち姿は凡夫が見たとしても、鬼神の如き気迫を感じられただろう。

 

「情けない………………!!外界に降天して十四年………………よもや此れほどに腕が落ちているとは……………いや、鈍っているだけならまだしもッ!!守るべき学友を守れず、あの程度の敵を相手に(´´´´´´´´´´)後れを取るなんて……………………!!」

 

体内を脈打つ”何か”が全身を駆け巡る。

それと合わせるように身体能力が底上げされていく。

だが、今の彩鳥はそれを認識出来る精神状態では無かった。

むしろ、だからこそ起きている現象なのかもしれないが。

彩鳥の敵愾心に黒ウサギは思わず身構える。

投げ捨てられた二本の槍を手に取り構える彩鳥の姿にかつて看取った騎士の面影を重ねる。

久藤彩鳥____名前がよく似ていたから、その正体は察していた。

だが外見が黒ウサギの記憶と一致しなかった為、別人だと思っていた。

しかしもう疑う余地は無い。

気焔万丈の闘志を漲らせた彩鳥は、黒ウサギの記憶の中にある女王騎士の物に相違ないものだった。

そして彼女のその気迫に呼応してミノタウロスが目を覚ます。

如何に知性が乏しくとも、この気迫に気が付かないほど凡愚ではない。

ミノタウロスは全身に刺さった鏃を抜きながら、吠え猛った。

 

『GEEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!』

 

”六本傷”の部隊に背を向けて走り出すミノタウロス。

それを迎え撃とうと構える彩鳥。

その手の槍には光の紋様が浮かび上がろうとしていた。

しかしその時____遥か上空で雷鳴を轟かせる雷雲は目に見えるほど巨大な渦を巻き、大樹の枝葉が散るほどの雨風を吹かせ始めた。

黒ウサギはその異常な台風の発生に驚き、天を仰ぐ。

 

「これは………………いけない!!ポロロ様、今すぐ水上都市に避難勧告を出してください!!」

 

「それならもう出してる!!洪水が起こらないように防波堤の準備も進めて、」

 

「そんなのは無駄でございます!!防波堤の工作班にも、すぐ河沿いから離れるように伝達を!!すぐに動き出さねば…………間に合わなくなります………………!!」

 

黒ウサギの剣幕に押されるポロロ。

今にもぶつかり合いそうだった彩鳥とミノタウロスも、共に生物の様に蠢き始めた雷雲を睨む。

槍に纏われ掛けていた光は霧散していた。

ミノタウロスは衝突を止め、彩鳥から飛び離れて郊外に姿を消した。

 

「っ……………来る…………”天の牡牛”が……………!!」

 

遥か天空で、怪牛の咆哮が響き渡った。

”アンダーウッド”全域に響き渡るその咆哮は聞く者全てを震え上がらせた。

雷雲は稲妻の角を生やし、巨大な闘牛の様に成り変わっていく。

巨大な闘牛が身動ぎをすると、水上都市を二十四もの落雷が襲った。

 

ディフェンド、プリーズ

 

だが、魔法陣が現れて落雷を防いでいく。

全ては防げないが半数以上は守り切った。

彩鳥と黒ウサギを狙った四つの落雷も炎の魔法陣が防ぎ切る。

警戒して構えを取る彩鳥と黒ウサギの前に晴人が現れる。

 

「悪い、遅れた」

 

「晴人さん!!ありがとうございます!!でも、今まで何処に?」

 

「ちょっと野暮用にな。それより、俺はアレ(´´)の相手をするから黒ウサギちゃんは避難を頼む」

 

「分かりました!!」

 

「さぁ、行くか」

ファイナルタイム!!オールドラゴン!!プリーズ!!

 

ドラゴタイマーをウィザードライバーにかざす。

街中に散らばって魔法陣で人々を守っていた分身がそれぞれ緑、青、黄のドラゴンへと姿を変える。

それらは全て晴人と一つになる。

フレイムドラゴンの胸にドラゴスカルが出現し、背にはドラゴウィングとドラゴテイル、両腕にドラゴヘルクローを装備する。

仮面ライダーウィザード オールドラゴンに姿を変えた晴人は天に向けて飛び立っていく。

彩鳥はその背と”天の牡牛”を睨み付ける。

 

「黒ウサギさん!!近隣に実力者は!?」

 

「そ、それが、他の地域で行われている太陽主権戦争を監視するため、皆さん出張っていて…………”龍角を持つ鷲獅子(ドラコ=グライフ)”も”覆海大聖”も”ノーネーム”も、みんな今は主力が主張中で今は偶然戻ってきていた晴人さんくらいしかいないのですよ………………!!」

 

雨風に煽られるウサミミを押さえながら叫ぶ黒ウサギ。

このままでは不味いと悟った彩鳥は、大樹を指さして避難を訴えた。

 

「仕方ない……………大樹の中に逃げましょう!!女王の庇護下にあるというのなら、大樹の中は絶対に安全です!!避難はポロロさんと白雪様にお任せして、」

 

「いえ、彩鳥さんだけお逃げください!!黒ウサギは避難の手伝いをしてきます!!晴人さんにも頼まれましたし。今は鈴華さんのお傍にいてあげるべきです!!」

 

黒ウサギの言葉を受け、瞳を見開く彩鳥。

槍を手放した彼女は出会った時の少女の表情に戻り、申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「……………わかりました。此処はお任せします。お気をつけて!!」

 

彩鳥は黒ウサギに背を向け、”アンダーウッド”の大樹の方に避難する。

その間にも雨風は強さを増していく。

更に轟音が響き続ける。

”天の牡牛”が放つ稲妻を魔法陣で防ぎ、熱線で雷雲を削り、暴風で雲を乱し、雷で稲妻を相殺する。

晴人は”天の牡牛”相手に奮戦しているが出来ているのはほぼ足止めに等しかった。

さすがに雷雲そのものを相手にするには制限が多過ぎる。

本気を出せばダメージを与えれるかもしれないが街を守り切れなくなる。

晴人が稲妻を出来る限り防いでいるからこそ被害はそこまで広がっていない。

それでも全ての稲妻を防ぎ切れているわけでは無い。

それに稲妻だけが脅威なのではない。

増水や急流で荒れる水上都市の水路沿いも危険なのだ。

雷鳴が轟き渡る中、水上都市からはそれに負けないくらいの悲鳴が上がっている。

黒ウサギは歯噛みしながら天を睨む。

今は雷雨に蹂躙される水上都市を駆け抜けるしかなかった。

 

 





天の牡牛大暴れでした
災害そのもの相手にしたらあがくしかできないという
決定打与える為に大技放とうとすると街の守りが薄くなるというジレンマがあるのです

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オーブは次回遂にサンブレ登場です
暴走待ったなしのサブタイですね

ジュウオウはきっと燃える展開でドデカイオーが登場するでしょう

ゴーストは実質最終回でしたね
つまらなくはないけど多少首を傾げるっていう
要素要素はいいんですけど色々と雑なんですよね
一言で纏めるならですが


それでは、次回でとりあえずラストエンブリオ一巻終了だと思われます!


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治療と通話と途切れる境界


サンダーブレスター恐るべし
前回猛威を振るったマガオロチをボコボコという
さすがはゾフィー!さすがはベリアル!

ドデカイオーはドデカいのでした
バングレイは死亡フラグ立ってるようで死亡しない

ゴースト最終回!
さすがに最終回でファイナルステージへの前振りはどうかと思うんだ!

それでは、本編です


______”アンダーウッド”の大樹・沐浴の広場。

水上都市は大混乱に陥っていた。

大樹の中は地下水脈の為に掘られた洞穴まで全て避難民で埋まり、部屋という部屋が怪我人でによって占拠されていた。

これではまるで戦場の最前線である。

避難に要された時間は三時間程度だったが、迅速な誘導と助勢によって速やかに退避することが出来た。

中でも”天の牡牛”を直接相手にした晴人と氾濫した河沿いの救助を買って出た黒ウサギと白雪姫の活躍は目覚ましかった。

三時間休まずに救助活動に勤しんだ黒ウサギは、ヘトヘトになって白雪姫の上で寝そべっている。

その隣に晴人も座っている。

避難が完了すれば足止めも必要ないので退却してきたのだった。

 

「くあー…………疲れたのですよ。よもや嵐の中での救助活動がこんなにも大変だったとは。世の救助コミュニティに尊敬の念を抱かずにはいられないのですよ」

 

「お疲れ様、黒ウサギちゃん。俺も手伝えれば良かったんだけどな」

 

「晴人さんが足止めしていてくれなければ今頃どれだけの被害が出ていたか分からないのですよ」

 

『うむ。晴人も黒ウサギ殿もおらねば救われなかった者も多かっただろう。戦力が少ない中で共に良くやったものだ』

 

「いえいえ。白雪姫様こそ流石は水神なのですよ!」

 

各々賞賛を口にする。

事実、彼女たちの救助が無ければ多くの者がたちが下流に流されていた。

晴人が稲妻を八割防いでいなければ怪我人は更に増えていただろう。

協力に感謝した白雪姫は頭の上から二人を降ろし、自身も人の身に変幻する。

 

「さて、晴人よ。あそこで駆け付けるまでに何をしていた?普段ならば即座に来ていただろう?」

 

「ちょっと大ショッカーの連中がうろついていたから蹴散らしといただけさ」

 

「こんな時に更に面倒ごとの種が転がっているということですか」

 

「一応うろついてたのは全部片付けたけど、また来るだろうな」

 

「嵐対策に怪人対策が重なるか面倒だな」

 

とはいえ、今できることは少ない。

話は一旦置いておき、白雪姫は、大樹の上を指差す。

 

「さて、それは一旦置いておこう。随分と濡れたことだ。私はともかく、黒ウサギ殿が身体を冷やすべきではない。この真上に貴賓が使う大浴場がある。童たちと共に身を温めてくるがよい」

 

「い、いいのでしょうか?」

 

「構わん。”六本傷”には私から話を通しておく。黒ウサギ殿こそ昨日から大変だったであろう?少し身体を休めよ」

 

「分かりました。御言葉に甘えるのですよ!!」

 

ウサ耳を伸ばして上階に上がっていく黒ウサギ。

やれやれと笑いながら頭を横に振る白雪姫。

そのまま晴人の方を向く。

 

「お前もだ。操真晴人」

 

「俺も?」

 

「怪人に、アレと連戦したのだろう?どうせ見えない所に傷や疲れが蓄積してるのだろう。お前は現時点での最高戦力に近いのだ。大事な時に倒れられても困る。だから、さっさと医務室に行くなりして身体を休めよ」

 

「分かったよ」

 

晴人は頭を掻きながら薄く笑みを浮かべて医務室へと向かっていくのだった。

その姿に白雪姫は呆れた視線を向ける。

 

「……………さて。ではもう少し見回ってこようか」

 

白雪姫は改めて大蛇の姿になると、街中をもう一度探索しに水路に入る。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方、その頃。

彩鳥は鈴華が運び込まれたという病室を探し回り、ようやく見つけて駆け込んだ。

 

「鈴華!!無事ですか!?」

 

全身濡れたまま大急ぎで駆け付け、飛び込みながら名前を呼ぶ。

すると病室の奥で、不機嫌そうな焔が顔を覗かせた。

 

「………………彩鳥。静かに入れ」

 

「あ、す、すみません」

 

恥ずかしそうに頬を紅潮させ、小走りで焔に駆け寄る。

ベッドの上には、健やかに寝息を立てている鈴華が居た。

血色も良く命に別状は無さそうだ。

彩鳥は安心の余り、腰が砕けたようにへたり込みそうになった。

 

「よ、よかった…………………!!あの傷では命に関わる物かと…………………!!治療用の恩恵が”アンダーウッド”にあったのですね、先輩?」

 

「………………ああ。命に別状は無いはずだ」

 

焔は彩鳥と対照的に、沈痛な面持ちで鈴華の寝顔を見ている。

丁度その時、病室に彼らを探す声が掛かった。

 

「失礼。この中に西郷焔はいるか?」

 

「?此処にいるぞ」

 

焔が顔を出すと、ポロロは即座に真剣な顔で彼を見た。

 

「そうか。ならすぐに来てくれ。今回のゲームについて話を聞きたい」

 

「分かった。彩鳥は鈴華を見ていてくれ。もう安定しているから、目を覚ましたら汗でも流してこい。お前も濡れたままじゃ不味いだろ?」

 

「は、はい」

 

彩鳥は焔の雰囲気に一抹の不安を覚えながらも、言われるままにその場で待機する。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

呼び出された焔はポロロに今回の一件の全容を話した。

しばらく二人で話していると”クイーン・ハロウィン”からの手紙が届く。

その内容は西郷焔に対する呼び出しであった。

それを受けたポロロ達は慌てて準備をするのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

眼を覚ました鈴華は彩鳥と共に大浴場へと向かった。

そこで黒ウサギとシャロロと合流して一悶着の後に仲良く大浴場を楽しむのであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「……………三分オーバー、か。もう夕日は赤くなり始めているな」

 

焔は待ち合わせ場所である謁見の間の扉の前にいた。

遅れはしたがこれでも健闘した方なのであった。

豪奢な扉に手をかける。

薄暗い中で際立って光るその扉を開いた途端、彼の視界は太陽の光に包まれた。

 

「……………は、」

 

扉の奥は”アンダーウッド”とは全く違う場所に繋がっていた。

繋がったのは白亜の城の中庭でだった。

慎重に進むと花壇の色が変わる。

どうやら侵入者を驚かす為の仕掛けのようだ。

真っ直ぐに石畳を進み、ヴェールに包まれた中庭の中心に歩を進める。

上質な絹のヴェールに手を掛けると、焔は勢いよく捲る。

すると扉が開いた(´´´´´´´´)

扉の先には暖かな暖炉と寝室用のベッド。

そして客人を招く為のティーセットを用意した円形テーブル。

この部屋は”アンダーウッド”にある部屋の一つなのだろう。

背後は只の壁になっている。

発想のスケールが六段以上違う存在だということを焔は察する。

目の前には二つの扉がある。

ヒントが無いか部屋の周囲を探る。

そこで古時計がおかしいと気付く。

古時計は進んでいなかった。

十二時から三分だけ進んだ状態で止まっていた。

ちょうど焔が遅刻した時間だった。

 

(______っ、南無三………………………………………!!)

 

直感的な閃きを信じ、古時計の時間を少しずつ戻していく。

一分、二分、三分と時間を戻すと________

カチリ、という音がした。

 

 

「______いらっしゃい、西郷焔」

 

 

背後のテーブルに突所として現れる人の気配。

西郷焔は飛び跳ねそうになる心臓を押さえながら、先程以上に身を震わせて勢いよく振り返る。

其処に座っていたのは_____正しく、太陽の化身だった。

太陽を彷彿させる燦々とした黄金の御髪。

無造作に流されているというのに、まるで穂波が山吹色の風に靡くように柔らかく広がっている。

瞳は清水の蒼と森林の翠を溶け合わせた宝玉のように輝き、焔を真っ直ぐに見据えている。

焔は門外漢でありながら無意識に悟る。

______この目の前の少女は、神霊ではない。

人類の信仰によって生まれた神霊では断じてない。

ケルト神群にある太陽の祭事を神格化させたものだと言っていたが、それはこの少女を人間が物質界で認識できるように雛形を与えただけに過ぎない。

昼と夜、生と死、春夏秋冬、星と星の境界線を支配する、箱庭三大最強種の一角。

太陽の星霊”クイーン・ハロウィン”。

その黄金の女王が、西郷焔を静かに見据えていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

何もできないまま棒立ちになる焔。

それを見かねたのか_____黄金の女王はフワリと金髪を靡かせ、焔の頬に触れた。

 

「…………。(´)は、貴方(´´)を、傷つけない(´´´´´)

 

「ッ!?」

 

両手が焔の頬を包み込む。

突然の行動に焔は身構える。

美しい瞳が焔を下から覗き込む。

すると彼女____女王と呼ばれている少女は、僅かに小首を傾げて焔に告げた。

 

「これでもう大丈夫。ゆっくりと深呼吸して息を整えなさい」

 

「…………は、」

 

「鼓動。少し治まったでしょう?」

 

焔は胸に当てていた右手を握りしめる。

まだ幾分か速いように感じたが、それでも緩やかに平常時に戻ろうとしていた。

過呼吸寸前だった呼吸も今は辛くない。

視線で問うと、女王は少しだけムッとして説明してくれた。

 

「貴方に”私は安全だ”っていう暗示をかけたわ。時折いるのよ、こういう手間をかけないといけない人」

 

「…………そうだったのか。御心遣い感謝します、女王陛下」

 

「そんな堅苦しい物言いはやぁよ。せめて女王にして欲しいわ」

 

愛らしい唇をツンと尖らせる女王。

暗示と共に、威光も和らいで見えるようになったらしい。

長い溜息を吐いた焔は、顔を上げて自己紹介した。

 

「改めて、初めまして。西郷焔です。時間に遅れて申し訳ありません女王」

 

「本当に。私と約束した刻限を破って生きている人、貴方を入れて九人だけよ。次からは気を付けて欲しい物ね。______ではどうぞ。同席を許可します」

 

呆れたように恐ろしいことを告げる。

まだ警戒心が解けない焔だが、同席を勧められてまずは腰を落ち着ける。

そこから女王に質問形式で聞きたいことを聞いていく。

そんな中で焔の携帯電話の着信音が鳴り始める。

女王が繋がるはずのない電話を繋げたらしい。

焔は怪訝そうに顔を歪めながらも律儀に電話に出る。

すると意外な人物の声が響いた。

 

『…………………よう。久しぶりだな、焔』

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

__________葛飾区、柴又帝釈天・本堂。

十六夜たちは迅速かつ無音で境内に忍び込んだ。

本堂に忍び込んだ途端に物陰からアリコマンド達が襲い掛かってくる。

だが、相手が悪かった。

十六夜、釈天、プリトゥという手練れたちの前ではただの戦闘員などゴミに等しかった。

死屍累々の山の上に十六夜は座り込んで釈天が作業を終えるのを待つ。

床板に隠された神印に触れ、本堂を青白い光で包む。

御門釈天は一息ついたように溜息を吐く。

 

「”忉利天”程の門は開けないが、簡単な会話をする分にはこれで十分だろう。

女王の側近に連絡を取るから少し待ってろ」

 

「あいよ」

 

十六夜は足元のアリコマンド達を見る。

今回は戦闘員のみで怪人はいなかった。

そんな戦力では十六夜たちに勝てないくらいは分かっているはずだ。

なのに、戦闘員のみで襲い掛かってきた。

その理由を考えているところで釈天が声を掛けてくる。

 

「おい、十六夜」

 

「ん?どうした?」

 

「女王に繋がったが、焔も同席しているらしい。俺はバレたら困るからお前が出ろ」

 

はあ?と素っ頓狂な声を上げる十六夜。

釈天は間髪入れずに携帯電話を投げて寄越す。

とはいえ、まさかこのタイミングで焔と話すことになるとは想定してなかった。

事件が解決してから軽く別れを告げられれば上出来だと思っていたからだ。

 

(………………ま、気負うこともねえか)

 

十六夜は携帯電話に耳を当てると、何時もの調子で挨拶した。

 

「よう。久しぶりだな、焔」

 

そこから先は多少トラブルはあったが互いの今までを軽く語り合う。

しばらくして女王が両者に対して今回の事件の始まりを語り出す。

そして事件の核心を話始めたところで通話は途切れるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

幾つかの問答の末に女王はこう言った。

 

「その言い方じゃ教えてあげない」

 

彼女はとある言葉を焔の口から聞きたかった。

焔自身に気付かせたかった。

孤児院の為、家族の為、友人の為____誰かの為に人生を捧げてきた少年が、己の感情の為に戦いを始めるのであれば。

それはきっと、燃え盛る炎のように激しくも情熱的で、見ているだけで愉しい復讐劇の幕開けになるに違いない。

 

「_______、」

 

焔は、そんな女王の遊び心を知りながら。

答えを察しながら。

踊らされるように、その言葉を紡いだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

_________逆廻十六夜は、何度掛け直しても繋がらない電話をその場に叩き付けた。

 

「…………………やってくれたな、あのド腐れクソ女王」

 

有りっ丈の怒りを込めて叩き付けられた携帯電話は、無残にも砕け散った。

吼え猛ってこそいないが、此れほど怒りを爆発させたのは三年ぶりだ。

八つ当たりの相手が寺院ではなく携帯電話だったのは幸いだっただろう。

 

「参ったな…………女王の奴、完全に境界を閉じやがった。こうなると日本にいる俺達じゃ箱庭に繋げることは不可能だ。これで十六夜を箱庭に帰す算段が付かなくなった。……………厄介なことになったぞ、此れは。プリトゥは考えがあるか?」

 

「私には無理。知り合いに境界操作は居ない」

 

「だろうな。となると、太陽主権戦争が始まるまでは帰れないぞ。どうする、十六夜?」

 

釈天は茶化しながらも真剣に問う。

だが意外にも、十六夜は即答した。

 

「一つだけ心当たりがある。其処なら箱庭に繋がっているかもしれない」

 

「ほう?国内か?」

 

「いいや、海外だ。俺の相棒が其処で待ってる。一度でいいから神殿を見てみたいって五月蠅かったんでそのまま置いてきた。……………それで、アンタたちはどうする?」

 

首だけ振り返り十六夜は二人の神霊に問う。

彼らは彼らで手詰まりだ。

他に行く当てがないのなら、十六夜に付き合うのも悪くないだろう」

 

「いいだろう。但し人里での移動は車と飛行機を使え」

 

「わかってるっての。流石に故郷を破壊するつもりはねぇよ。ただ、こいつらはどうする?」

 

足元に転がるアリコマンドを指差しながら問う。

このまま移動すればいずれまた襲い掛かってくるだろう。

襲い来るなら蹴散らすまでだが、今はそんな足止めに構ってる場合でも無い。

 

「それは此方に任せておけ。あんまり使いたく無い手ではあるが奴の力を借りるとする」

 

それぞれの意思を確認し合い、空港に足を向ける。

プリトゥは携帯電話を開いて十六夜の偽造パスポートを用意しながらふと、思い出したように問う。

 

「そういえば、逆廻十六夜。お前は今回の一件に対して、本当に無関係なのか?先程のやり取りを見た感じだと、女王とも面識があるように思えたが」

 

「事件そのものには無関係だ。……………が、そうだな。ミノタウロスについては知っていることもある。アイツが外界に召喚されたのは、俺が迷宮ゲームに挑んでいる時だからな」

 

十六夜が告げると、二人は驚いたように顔を見合わせた。

 

「………おい。その話は聞いてないぞ」

 

「話す必要が無いと思っていたからな。………………けど此処まで大事になった以上、お前たちにも話しといたほうがよさそうだ。移動しながら説明するぞ」

 

釈天の愛車に乗り込んだ十六夜は、二人に事の始まりを話し始める。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

全ての始まりは今から一週間前_____ギリシャ神話に記述された伝承のギフトゲーム”Minotaur thethrone in labyrinth”に遡る。

十六夜は其処で経験した神魔の遊戯と、一匹の怪物について語り始めた。

 

 

 

 





一巻終了!
今回は実質二話分の文字数だったり!
次回から二巻が始まるよ!
二巻からあいつらやあいつらも大暴れ予定です!

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次週はエグゼイド始まるよ!
ついでにエグゼイドアイコン付きゲーマドライバーも発売だよ!


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ラストエンブリオ2 怪牛と列車大決戦と重なる再会
クレタ島と同行者と不穏な影達


マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクションX!
エグゼイドは今日一話が放送でしたね
中々面白くなりそうな予感はしました
ちなみにガシャットの声はザルバこと影山ヒロノブさんだとか


何か毎度特撮感想いう場になってる気がする!
それはともかく本編です!


地中海の空は、文句無しの快晴だった。

水飛沫を飛ばしながら走るフェリーはやや揺れが激しいものの、この青空と美しい海の色は不快な乗り心地を気にさせることは無い。

透き通るような地中海の海と潮風は、観光をするにはこの上なく好ましい。

自然界の至宝とも云うべき景観は、ちょっとした異世界を彷彿させる。

逆廻十六夜、御門釈天、プリトゥは”ドン=ブルーノ”の友人のフェリーを使ってクレタ島まで向かっていた。

超大型台風”天の牡牛”が通過した傷痕がかなり残っていたが、それはそれ、商売は商売ということらしい。

そのフェリーには彼ら以外も乗っていた。

左翔太郎、伊達明、仁藤攻介の三人だ。

彼らは”大ショッカー”への対策として釈天が鴻上に依頼して集めて貰った。

 

「……………そこまで繋がりがあるんなら、その鴻上ファウンデーションに船も用意して貰えば良かったんじゃないのか?」

 

「それはやめといた方がいいぞ」

 

「あんたは確か伊達明だったか?」

 

「おう」

 

「何でだ?」

 

「会長は確かに頼めば貸してくれるだろうが、後が面倒なんだよ」

 

「あいつは”欲望”を第一にしてるくせにそこらへんが本当にアレだからな」

 

「そこまで言うほどか」

 

伊達と釈天の言葉で多少は察する。

プリトゥの方はエヴリシングカンパニーに伝手があるようだが、彩鳥と共に外国に行ってることになってる為に利用できない。

彩鳥が一緒にいないことがバレたらマズイからだ。

一方、翔太郎は離れたところでフィリップと電話をしていた。

 

「ったく、所長の奴は勝手に妙な依頼を受けやがって…………………」

 

「仕方が無いよ。彼は金払いはいいからね」

 

「だからと言って海外まで飛ぶことになる依頼を簡単に受けるなって話だ」

 

「風都が心配かい?」

 

「当たり前だ」

 

「そこは安心してよ。その為に僕は残ったんだ。照井竜もいるしね」

 

「それより、アレはちゃんと彼に渡して置いてよ」

 

「いいのか?」

 

「結城丈二から送られたデータと検索した彼の情報を合わせればちょうど適合すると出たんだ。間違いないよ」

 

「そうか。なら、後で渡しておく」

 

その後、翔太郎は一言二言交わしてから通話を切った。

コートの中からブレスの様な物を取り出す。

それを眺めながら一人呟く。

 

「結城丈二……………ライダーマンか。一体何を目的でフィリップにデータを送ったんだか」

 

渡せば分かるか、と呟きながら水平線を眺めるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「そろそろ着くみたいだな」

 

クレタ島の方を眺めながら仁藤が呟く。

十六夜は仁藤から妙な気配を感じていた。

仁藤自身の気配と、力の塊に近いような何かの気配を。

 

「なぁ、仁藤攻介だったか」

 

「どうした?船酔いでもしたか?」

 

「お前の中には何がいる?」

 

「ん?お前キマイラの事が分かるのか?」

 

「キマイラ?」

 

「俺の中にいるファントムだ」

 

「………………なるほど。晴人の奴と似たような物か」

 

「お前、晴人を知ってるのか。最近全然顔を見てないんだが、何処にいるか知ってるか?」

 

「いや、何処にいるかは知らない」

 

嘘では無かった。

現に一年ほど十六夜も晴人とは会ってないのだ。

現状を把握してはいない。

仁藤も納得してクレタ島の方に向き直る。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

三人で被害や焔達について話をしていると焔達への評価は十六夜と釈天たちで大きく食い違っていた。

十六夜は焔と鈴華のイメージが箱庭に行く前で止まり、釈天はその成長を見て来たのである意味仕方ない事ではあるのだろう。

その二人の様子を見て、プリトゥは賭けを提案する。

十六夜は焔達が敗北する方に、釈天は勝利する方に賭けた。

そして、プリトゥは焔達の勝利に賭けた。

ちょうどその時に、船着き場に到着した。

プリトゥは軽やかな足取りで男二人に背を向けて、ヒラヒラと手を振って先行する。

十六夜は怪訝な表情で釈天を見て、釈天は楽しそうな笑みを刻む。

何故なら帝釈天は知っている。

農耕の神霊_____文明発起の大地母神プリトゥヴィ=マータは、遥かな昔、二人の戦士の後見人を買って出たことがあった。

そしてその何れもが世界に名を轟かすほどに大成し、一時代を築くほどの傑物となって見せた。

一人目は、神々の王に。

二人目は、世界の王たる器を。

そして彼女は今、焔が三人目となると示唆した。

此れが何を意味するのか_____俄然、楽しくなってきたじゃないか。

 

(焔が俺達に並ぶっていうなら、こんなゲームで躓かれちゃ困る。精々気張ってもらおうじゃねぇか)

 

五年ほど彼らを見守ってきた釈天だが、彼の才覚の評価は保留のままだ。

西郷焔の器を確かめるにはいい機会かもしれないと思い直し、ギリシャの孤島・クレタ島に足を向けるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

十六夜たちの跡に続く様に伊達たちも船を降りていく。

 

「そういや、今更だがお前たちはどうして依頼を受けたんだ?」

 

「経費はおっさん持ちっていうし、クレタ島の遺跡をじっくり眺めるチャンスだったからな」

 

「俺は所長が勝手に受けた依頼に付き合わされてる感じだな」

 

「そうか」

 

答えを聞いて考える。

仁藤も翔太郎もどちらも仮面ライダーである。

何時もなら伊達や後藤を呼ぶ鴻上が、今回は彼らまで招集した。

そこまでする意味があるのかと伊達は考えていた。

 

(どっちかというと釈天の奴に借りを作るのが目的か?)

 

伊達は釈天の正体は知らないが、何かあることだけは察していた。

会うことは少ないが、ただの人間で無い事は怪人たちを相手してきた勘で分かるのだ。

ゆえに実益より借りの方に意味がありそうな気もするのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「準備は整った。あとは奴らを倒すのみ」

 

魔神提督が暗闇の中で呟く。

彼の背後には無数の光があった。

蠢く影の中で瞳が光を反射しているのだ。

それは全てが魔神提督の配下、ネオショッカーの戦力だった。

彼らは銀色のオーロラを潜り、進行を開始する。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

______大樹と大瀑布の水上都市”アンダーウッド”。

轟々と吹き荒ぶ風が、大樹の幹に打ち付けている。

西郷焔、彩里鈴華、久藤彩鳥はそんな中でゲームの考察をしていた。

 

『 -第二次太陽主権戦争 招待状 -

 

  拝啓、西郷焔様。

   貴方は箱庭の世界で行われる”第二次太陽戦争”への参加資格を得られました。

  本線参加資格を得る為には先ずは”黄道の十二宮”、”赤道の十二宮”に属する星獣を一匹以上使役してください。

 

  目標討伐星獣”金牛宮”

   勝利条件:①”金牛宮”の化身の討伐。

   勝利条件:②雷光を掻き消し、星をあるべき姿に戻せ。

 

 

  ※ルール概要・開催期間

   此方は予選ゲームとなりますので、開催期間は七年間とさせていただきます。

   七年が過ぎ去ると自動的にゲーム敗退となります。

   誰が討伐しても西郷焔様が討伐したことになりますので、遠慮なく協力者を募ってください。

 

 

  ※注意事項※

   この参加枠は西郷焔様に第二次太陽主権戦争に参加していただく為に設けられた特別参加枠です。

  もしも参加を棄権・放棄・無視、或いは予選敗退された場合は西郷焔様が保有している特別参加枠、及び固有の恩恵(ギフト)千の魔術(プロト・イデア)”を回収させていただきますのでご容赦ください。

   尚、開催期間中は箱庭から出られませんのでご注意ください。

  延長については考慮しますが、なるべく期間内に全ての攻略条件をクリアするようにお願いします。

 

 

                                                                              敬具

 

                                                               第二次太陽主権戦争 進行役”ラプラスの小悪魔”』

 

「………………改めて読むと、随分舐めてくれた内容だな。誰がクリアしても俺の勝利だと?まるで助けてもらうこと前提みたいじゃねぇか」

 

「まあ、我々は初心者ですからね」

 

苦言を零しながらも読み解いていく。

そうして幾つかの仮説を立てながら最終結論まで辿り着く。

ミノタウロスは、先天的に怪物だったのではない。

謎の要因Xによって、後天的に怪物と呼ばれるようになったのだ。

そこから更に焔が思考の海に沈みかけると鈴華が報酬の話をし始める。

女性陣がその話を楽しく広めている時だった。

バタン!と勢いよく扉が開き、ネコミミをピンと伸ばしたシャロロが飛び込んできた。

 

「はいはーい!!お客さん方、起きてますかー!?」

 

「…………シャロ姉。もう少し気を遣って入室しろよ」

 

何事かと視線を向ける三人だったが、その後ろから現れたもう一人の少年に意識が移る。

”アンダーウッド”を纏める少年ポロロ=ガンダックは、焔を見つけるや否や、腰に手を当てて憮然と仁王立ちする。

焔は顔の上から書籍を退けて体を起こす。

 

「よっ。準備出来たって感じの顔だな」

 

「ああ。ご注文通りの品を用意したぞ。特注品も特注品の、最新型だ。試運転の名目で貸し出すけど、絶対に壊すなよ」

 

「悪い、何から何まで。貸出料金は女王に付けておいてくれ」

 

「……………。サラッと怖い事言うなお前」

 

呆れたように溜息を吐く。

ポロロは過剰に女王を恐れているようにも思えたが、彼の立場を考えるとそうせざるを得ないのだろう。

藁葺きのベッドから立ち上がった焔は、鈴華と彩鳥に視線を向ける。

______さあ、反撃の準備は整った。

”アンダーウッド”を取り巻く”天の牡牛”を睨み付け、焔は上着を着込む。

反撃の狼煙を上げる為、彼は彩鳥と鈴華を連れて大樹の地下工房_____精霊列車の車庫に足を向けるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

焔達の背を見ながらシャロロはポロロに話しかける。

 

「ねぇ、アレを出すのはいいとして”奴ら”に感付かれない?」

 

「心配するな。そっちも対策済みだ。その為に手を結んだんだからな」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

何処かの次元の狭間。

そこを走る列車があった。

 

「ほう。遂にアレが動くか。ちょうどいいチャンスだ。あの列車、俺が貰い受ける!!」

 

シャロロの予想通り、動きを察知する者がいた。

悪の軍団を自称する者たちの一応のリーダーが。

 

 




嵐の前の静けさ的な
いわゆる準備回でした

十六夜たちと同行してるメンバーは箱庭にいない平成二期メンバーで自由に動ける人選です
鎧武&ドライブも一応同一設定ですがそこらへんは前半四作と関わり薄い&Vシネマが残ってるなどあるので保留です
でも、関わらないとは言ってない

ラストのは活動報告の敵勢力纏めを見ると察しやすいかもです

それでは、質問などありましたら感想などで聞いてください
設定纏めを活動報告で公開中ですのでそちらでもどうぞ
感想待ってます


ちなみに次のMOVIE大戦は坂本監督担当だとか


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闇の軍団と道を違えた者と超巨大精霊列車


ギャラクトロン現るでしたね!
まさか朝から腹貫きやるとは思わなかったよ!
来週はサンダーブレスター再び!

エグゼイドはいいですね!
来週も期待ですね!

一番の驚きはMOVIE大戦にパックマン参戦ですが

それでは、本編です


______同刻、大樹より北の廃墟。

痛みに悶え苦しむミノタウロスの許にジン=ラッセルとペストが現れていた。

ジンによってミノタウロスはアステリオスという名前(ギフト)を取り戻した。

同時にその姿は怪牛から少年へと変化した。

しばらくジンとミノタウロスが話していると大地が揺れ始める。

途端、大樹の根元から______瀑布と見紛うほどの、巨大な水飛沫が立ち上がる。

大樹の地下から巨大な鉄の塊が飛び出し、大河の上を走り出したのだ。

同時に”天の牡牛”もそれを追い掛けて移動を始める。

アステリオスは西郷焔に会うという目的があった。

ジンとペストの仲間であるらしい白額虎に協力して貰い追跡することになる。

そこでジンはアステリオスの勘違いを正すように呟く。

 

「ああそれと、あれは城じゃないよ。そして軍事用でもない。武装なんてバリスタぐらいしかないんじゃなかったっけな」

 

「……………何?ではなんだ?」

 

訝しげに問い掛けるアステリオス。

あれほど巨大で堅牢な造形をしていながら、戦いに用いないことに違和感を覚えたのだろう。

あの城塞ならば箱庭を襲う最悪の敵_____かの天災たちとさえ戦えるはずだ。

しかしジンはハッキリとその意見を否定する。

アレは断じて、争いの為に造られたものではないと、彼は知っている。

ジンは苦笑いと共に、鉄塊の移動要塞の正体を口にした。

 

「あれは、超巨大精霊列車”サン=サウザンド”号。今回の太陽主権戦争の中枢と運営を担う予定地であり……………僕が一方的に友人と思ってる奴が作った、最高傑作さ」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

その精霊列車の出現に合わせるように次元が歪む。

そして不吉なアナウンスが流れ始める。

 

『間もなくシャドーラインの烈車が参ります。命の惜しい方は、黒い線の内側まで下がってお待ちくださーーい!』

 

黒い闇より列車の軍団が出現する。

ネガデンライナー(改)feat.幽霊列車を中心に幾つものクライナーが飛び出す。

 

「アレこそ俺たちの基地に相応しい代物だ!!どうやら主力共も留守してるらしいからな。今の内に奪い取ってやるぜ」

 

ネガタロスが狙いを付ける。

その背後でゴーストイマジンと武神鎧武が立ち上がる。

今は利害が一致しているので武神鎧武も協力的なのだ。

だが、駆紋戒斗は立ち上がらずに座ったままである。

ネガタロスはそちらを向いて問い掛ける。

 

「お前は行かねぇのか?」

 

「くだらん。こんな些事に俺は興味が無い」

 

「そうか。なら、いいさ。そこで俺たちの戦いを眺めていな」

 

戒斗は別にネガタロスの協力者というわけでも無い。

見極める為に同行しているに過ぎない。

ゆえに興が乗らなければ協力もしない。

 

『作戦はどうするのだ』

 

シュバルツ専用クライナーに乗り込んでいるシュバルツ将軍が通信してくる。

ネガタロスは特に悩むことなく答えを返す。

 

「囲んで乗り込んで制圧する。単純な作戦で十分だろ」

 

『了解した』

 

そうして闇の列車たちは精霊列車を囲んでいく。

悪の軍団による攻撃が始まる。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

______超巨大精霊列車”サン=サウザンド”号・第一車掌室。

豪快な試運転はその派手な見掛けに違わぬ衝撃を車内に与えていた。

何せ家屋を飲み込むほどに巨大な水飛沫を上げての出発だ。

忙しなく走り回る獣人の車掌たちは衝撃と相次ぐトラブルで右往左往している。

その中でも一際騒がしい、長靴を履いた三毛猫がいた。

車掌の一人らしいが_____怪猫の類なのだろうか。

短い尻尾の先が二叉に裂け、二本足で歩き回っている。

精霊駆動機関の炉心の中にいる小さな群体精霊たちに関西弁の檄を飛ばしつつ、三毛猫車掌は二本足で飛び跳ねながら声を上げる。

 

「あかんあかん、速度の出し過ぎやでチビすけ共!!こんなに速度出しとったら霊脈(レイライン)に入られへんやろ!!速度落とせ落とせ!!」

 

「おとさなーい!!」

「おとせなーい!!」

「おとしたらつかまるー!!」

 

ウッキャー♪_____と、轟々と燃え盛る炉心から顔を出してはしゃぎ始める、赤いマントの炎の群体精霊たち。

何処か茶化した様子なのは、彼女たち炎の群体精霊の陽気な性格から来るものだろう。

同じく石炭の山から顔を覗かせた地精______二叉のとんがり帽子を被った精霊が、窓の外を指さして叫ぶ。

 

「牛!!空から牛と敵きてる!!メルルたち、逃げる!!速度落とせない!!」

 

「ええい、詳しく説明されんでもわかっとるわい!!でもありがとな二番目!!」

 

ビシッ!!と爪を立てる三毛猫車掌。

状況は把握できたが、改善方法は見つかっていない。

 

「せやけど参ったな。この速度のままじゃ、霊脈の超加速ができんやないか。延々と大河と地表付近を奔ることに……………」

 

「いいや、それでいい!!ガンガン飛ばせ三毛猫!!」

 

右往左往している機関室に、ポロロの声が響いた。

先頭車両の中でも一番煤だらけになるこの機関室に頭首である彼が来るのは珍しい。

三毛猫は慌てて敬礼の姿勢を取る。

 

「せやけど二代目!!このままやと牛畜生に襲われる上に”奴ら”が襲撃してきます!!”サン=サウザンド”号が破壊されたり、奪われるようなことになったらどないするんです!?」

 

焦りながらも端的に状況を伝える三毛猫車掌。

ポロロは即答気味にまず答える。

 

「”奴ら”については問題ない!!その為の要請はもうしてあるし、魔法使いにも頼んである!!」

 

ポロロの言葉に合わせる様に明るいアナウンスが流れ始める。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

『烈車がまいりまーす!!白線の内側に下がってお待ちください!!』ビルドレッシャー!!

 

アナウンスと共にオレンジ色の烈車が飛び出してくる。

虹色の線路を走り、クライナーを弾き飛ばしていく。

 

「ザラムの奴が来たか。しかし、レインボーラインが此処まで勢力を広げているとはな」

 

現れたレインボーラインの烈車を眺めながらシュバルツ将軍が呟く。

通信機に手を伸ばすと他のクライナーを操作している闇博士マーブロに連絡する。

 

「挟み撃ちにして片付けるぞ」

 

『了解だよ~』

 

複数のクライナーがビルドレッシャーを囲んでいく。

同時に砲撃をしようとした時だった。

その更に周囲から新たな烈車たちが現れる。

 

ファイヤーレッシャー!!ポリスレッシャー!!

 

最初に現れたビルドレッシャーは囮だったのだ。

自身に敵を引き付けた上でサポートレッシャーが姿を現す算段だったのだ。

ファイヤーレッシャーとポリスレッシャーの砲撃によってクライナーは次々と撃ち落とされる。

ビルドレッシャーはそのままシュバルツ専用クライナーに側面を擦り合わせる。

火花を散らしながら”サン=サウザンド”号から距離を取らせて行く。

その間にネガデンライナーは”サン=サウザンド”号と並走するまでに近付いていた。

車体をぶつけようとした時だった。

 

ディフェンド、プリーズ

 

魔法陣によってネガデンライナーが弾き飛ばされる。

”サン=サウザンド”号の屋根の上には晴人がいた。

晴人は誘うように手招きする。

 

「自ら招き入れはするが、車内にはいれねぇってかいいだろう。その誘い乗ってやろうじゃねぇか!!」

 

逆に乗り込まれるのを防ぐ為にネガタロス、ゴーストイマジン、武神鎧武だけで”サン=サウザンド”号の屋根に飛び乗る。

そこには当然晴人が待ち構えている。

 

「まさか誘い入れるとは思わなかったぜ」

 

「あいにく此方は武装が無いんでね。白兵戦の方がやりやすいんだ」

 

「警戒させて少人数で来たところを叩くってわけか」

 

「まさか大将が一番に来るとは思わなかったけどな」

 

「これが一番確実だからな」

 

言ってネガタロスとゴーストイマジンが越にベルトを巻き付ける。

ライダーパスを手に持つとベルトにかざす。

 

「「変身!!」」

ネガフォーム!!スカルフォーム!!

 

ネガタロスはネガ電王に、ゴーストイマジンは幽汽 スカルフォームに姿を変える。

武神鎧武は常に武装している状態の為に変身はしない。

晴人もリングを指に付けてウィザードライバーを起動させる。

 

シャバドゥビタッチヘンシーン!!シャバドゥビタッチヘンシーン!!

「悪いがあんたら全員を相手にするとなると余裕が無いんでね。変身!!」

インフィニティー!!プリィィィィィィィィィズ!!ヒースイフードボーザバビュードゴーン!!

 

ウィザードライバーにインフィニティーリングをかざすと晴人の身体から透明なドラゴンが飛び出し、周囲を回り始める。

足元に現れた魔法陣が上がっていき、晴人の姿を変えていく。

体中輝く宝石に包まれたような装甲に包まれる。

仮面ライダーウィザード インフィニティースタイルに姿を変えたのだ。

その手にアックスカリバーを持ち、構えを取る。

 

「さぁ、ショータイムだ!!」

 

「果たしてお前のショータイムになるかな?俺の強さは別格だぜ?」

 

「貴様は……………あの時の戦士か!!今度こそ屠ってくれる!!」

 

「戦いごたえのありそうな奴じゃねぇか!!」

 

各々の武器を構え、一対三の戦いが幕を開ける。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「車掌、後は頼んだぞ」

 

「今は鉄道警察隊長です!!」

 

「どっちでもいいだろう」

 

ビルドレッシャーの操縦を任せて、虹野明は戦場へと向かう。

今ぶつかっている相手は直接相手にする必要があると確信しているのだ。

その背に元車掌が声を掛ける。

 

「明君、これを持って行ってください!!」

 

「……………分かった」

 

渡された物をしっかりと受け取り明は屋根の上に上がる。

並走して体当たりを繰り返すクライナーの屋根の上にはシュバルツ将軍が待ち構えていた。

 

「久しいな、ザラム」

 

「まさかお前が生き返ってるとは思わなかったぞ、シュバルツ」

 

かつて夢を共にし、袂を分かち敵対していた者が再会する。

片方は虹を見て、その心に光を灯し、生きる場所を得た男。

片方は恩を返す為に戦い、最期に光を得て皇帝の先を行き散った男。

その二人が再び会い見えたのだった。

 

 

 





ネガタロス達参戦でした
狙いは”サン=サウザンド”号の強奪です
後々の事を考えると今が一番狙い時なのです

レインボーラインは一部ラストの時点で協力関係になっていました
大ショッカー連盟対策に用意されていたのでした
別の事に活用されているわけですが
小学生組は当然いません

それでは、質問があれば聞いてください
設定纏めを活動報告にて公開中です
設定関連の質問はそちらでもOKです
感想待ってます!


ウィザード以降の主役ライダーが冬に集合するっぽいけど坂本監督なら上手く料理してくれるでしょう!
問題は影も形も無いサブライダーですが


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雷牛と柘榴と堅牢な装甲



サンダーブレスター再びでしたね
まるで赤い通り魔のような暴れっぷりでした
その赤い通り魔の配信も最終回を迎えたわけですが

それでは、本編です


「因縁の再会ってところかな、ザラム君」

 

「マーブロか。お前も復活してるとはな」

 

ビルドレッシャーを挟むようにクライナーが更に並走してくる。

その屋根の上には闇博士マーブロが乗っていた。

 

「二対一だけど文句は無いよね?シュバルツ君も別に構わないだろう?」

 

「ふん。ザラムとの決着も今はそこまで拘りは無いからな」

 

「悪いが、二対一ではないぞ」

 

「え?」

 

「「ニ対ニだ」」

 

言った瞬間に明のタンクトップが姿を変えて怪人となる。

怪人はそのまま手にした刃でマーブロに斬り掛かる。

マーブロが杖で刃を受け止め、怪人の顔を見て納得する。

 

「そうか。ザラム君の傍には君がいたか」

 

「まだ連れていたのか、タンクトップシャドーを」

 

「俺の仲間だからな。タンクトップ、こいつを受け取れ」

 

「おうよ」

 

明が投げ渡した物を軽く受け取るタンクトップシャドー。

それは紫色のアプリチェンジャーとパープルレッシャーだった。

元車掌が渡した物をそのままタンクトップシャドーに渡したのだ。

二人は背中合わせになりながら同時にアプリチェンジャーを開く。

 

「させないよ」

 

『変身いたしまーす!!白線の内側に下がってお待ちくださーい!!』

 

二人の前方に白線が出現する。

マーブロが放った光弾も全てそれによって弾かれる。

二人はレッシャーを手に持ち、アプリチェンジャーにそれを読み込ませる。

 

「「トッキュウチェンジ!!」」

トッキュウ6ゴウ~!トッキュウ6ゴウ~!

トッキュウ7ゴウ~!トッキュウ7ゴウ~!

 

二人の身体にスーツが纏われる。

更に二人の頭部周りをレッシャーが回る。

それによって発生した線路が二人に合わさり、マスクとなる。

二人はトッキュウ6号とトッキュウ7号へと姿を変えたのだ。

明はユウドウブレイカーを構え、タンクトップはトッキュウブラスターを両手に持つ。

此方も列車の上での決戦が始まるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「けど、”天の牡牛”の方はどうするんだ?」

 

「この精霊列車の車体は全体の四〇%が”金剛鉄(アダマンティウム)”で出来た特別製だ!!ちょっとやそっとじゃ壊れることは無い!!このまま速度を上げて突っ走れッ!!」

 

「りょ、了解です二代目ー!!」

 

ポロロは焔の問いに答えながら檄を飛ばす。

三毛猫車掌は大慌てで石炭を放り込む。

それから焔が精霊列車の動力や女王に付いてポロロに聞いている時だった。

 

「しゅ、しゅうげきー!!しゅうげきー!!」

 

「しょうげききますー!!」

 

「落雷注意!!みんな、掴まって!!」

 

会話の最中、幼い声と溌溂した声の二つが列車の中に響いた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

轟く雷鳴。

輝く雷光。

天空より落ちたその稲妻は的確に精霊列車を打ち据える。

当然その影響は屋根の上で戦う者達にもある。

晴人、ネガ電王、幽汽、武神鎧武はそれぞれ起用に稲妻に対処しながら戦いを続ける。

 

「オラオラオラァ!!」

 

幽汽は稲妻を斬り裂き、刃に纏わせながら突き進む。

それを稲妻を回避すらせずに受け止め続ける晴人が迎え撃つ。

互いの刃が激しい火花を散らしながら打ち付け合われる。

その間に稲妻の軌道を完全に読み切って躱し続けるネガ電王が背後から近付く。

武神鎧武は何処からともなく花弁を出現させ、それらを盾にすることで稲妻を対処する。

そうして幽汽と剣戟を続ける晴人の背後から両者が斬り掛かる。

 

「何ぃ!?」

 

「なんだと!?」

 

だが、困惑した声を上げたのは斬り掛かった当人達だった。

インフィニティースタイルの鎧は斬撃を弾き飛ばしたのだった。

晴人はインフィニティーリングをウィザードライバーにかざす。

 

インフィニティー!!

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

晴人は高速移動しながら周囲の三人を連撃で斬り飛ばす。

時間を操作している高速移動にネガ電王たちは対処し切れずに吹き飛ばされる。

更に吹き飛ばされて宙に浮いてる状態に連続斬りが加えられる。

一人辺り数十度斬られた上で屋根の上を転がっていく。

 

「クソッタレが!!」

 

「硬い上に速いとはな」

 

考え無しで幽汽は再度突っ込んでいく。

ネガ電王は冷静に観察しながら何処か隙は無いかと探る。

 

「やはり、今のままでは歯が立たんか。では、この力ならば!!」

 

言いながら武神鎧武は新たなロックシードを取り出すのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方で獲物は決して逃がさぬと蠢きながら積乱雲が迫ってくる。

意思を持った大嵐は渦を巻いて蠢き、その姿を一匹の偶蹄類に変えていく。

”天の牡牛”は稲光を発しながら、天空を揺るがす程の雄叫びを上げた。

 

『GEEEEEYAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!』

 

蹄で天を掻き疾走する巨大な獣。

その姿はもはや目視できる範囲ではどれ程の巨体を誇るのか正確に測ることさえ難しい。

稲光を鋭い角に変え、高密度の積乱雲を総身にし、今まさに天を落とす勢いで迫る。

その影響は当然至近を並走するネガデンライナーにもある。

加えて”サン=サウザンド”号ほど頑丈では無いので被害も大きい。

”サン=サウザンド”号は雷雨を受けて激しく揺れる。

だが、稲妻で大地が削られるが、精霊列車はその軌道を外れない。

激しく車体が揺れるだけである。

一方のネガデンライナーは雷雨の流れ弾によって装甲を徐々にだが焦がし削られていく。

故にか、ネガデンライナーの屋根の上に戒斗が姿を現す。

 

「騒がしいと思えばこういう事か。いいだろう!!貴様は俺が相手をしてやる!!」バナナ!!

 

戒斗はバナナロックシードを取り出して開錠する。

その頭上に円状のクラックが出現してバナナ状の鎧が出現する。

 

「変身!!」

ロックオン!!

カモン!!バナナアームズ!!ナイトオブスピア~!!

 

軽く指でロックシードを回して戦極ドライバーにセットする。

カッティングブレードを降ろすとロックシードが解放される。

頭上のバナナ状の鎧が降ってきて頭部に重なる。

全身にスーツが纏われ、鎧内部で兜が装着される。

アームズが展開されて鎧として纏われ、戒斗の手にバナスピアーが収まる。

仮面ライダーバロン バナナアームズに変身したのだ。

そのまま戒斗はカッティングブレードを一回降ろす。

 

カモン!!バナナスカッシュ!!

「ハァァァ!!」

 

バナスピアーから巨大なバナナ状のエネルギー体が展開される。

戒斗が勢いよくそれを振り下ろし、”天の牡牛”の肉体を削っていく。

 

『GEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!』

 

戒斗を敵として認識したのか、”天の牡牛”は”サン=サウザンド”号だけでなく戒斗へも攻撃を集中させる。

集中して降り注ぐ稲妻に対して戒斗はヘルヘイムの植物を操り防ぎながらカッティングブレードを二回降ろす。

 

カモン!!バナナオーレ!!

 

バナスピアーを足元に突き刺す。

すると、バナナ状のエネルギー体が無数に地面から生えてくる。

それを利用して稲妻を弾き飛ばしていくのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「あっちも派手にやってやがるな。まぁ俺のネガデンライナー(改)feat.幽霊列車を守ってくれるならそれでいいんだが」

 

戒斗を眺めながらネガ電王が呟く。

視線を現状の戦場の方に戻すと武神鎧武が何かを取り出していることに気付く。

 

「使うのか」

 

「出し惜しみする理由も無いだろう」

 

現在は幽汽が晴人の相手をしている為に二人はフリーなのだった。

攻撃は弾かれるとはいえ放っておけるわけでも無い。

ゆえに手を出してこない相手は意識はしつつも放置しているのだろう。

その間に武神鎧武はゲネシスコアを取り出し、自身の戦極ドライバーにセットする。

身に纏われていたブラッドオレンジアームズが果実状に戻って本体から離される。

武神鎧武はブラッドオレンジロックシードとザクロエナジーロックシードを両手に持つと同時に開錠する。

 

ブラッドオレンジ!!

ザクロエナジー!!

 

頭上にクラックが出現し、ザクロエナジーアームズが出現する。

武神鎧武はブラッドオレンジロックシードとザクロエナジーロックシードを戦極ドライバーにセットする。

そのままカッティングブレードを降ろす。

 

ロックオン!!

「ふん」

ミックス!!ブラッドオレンジアームズ!!邪之道オンステージ!!ジンバーザクロ!!ハハッー!!

 

空中でブラッドオレンジアームズとザクロエナジーアームズが混ざり合う。

融合して陣羽織状の鎧となって武神鎧武に纏われる。

武神鎧武 ジンバーザクロアームズと姿を変えたのだ。

右手には無双セイバーナギナタモードがあり、左手にはセイヴァーアローが収まる。

 

「我が新たな力を見せてやろう!!」

 

新たな力を手にして、武神鎧武は晴人へと襲い掛かる。

それを目にしてネガ電王は自身の手にする携帯電話状のアイテムを見るのだった。

 

「出し惜しみする必要は無いねぇ………………」

 

仮面の下でネガタロスは不敵な笑みを浮かべるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

焔は今も正常に走り続けてる精霊列車に驚いて、瞳を瞬かせる。

 

「す……………凄いな。ちょっと聞いたことが無いぐらい豪快な雷雨の雨に衝撃音だったぞ」

 

「ふふん。このぐらいで驚かれちゃ困るな。まだまだ本当の力はこんなもんじゃないぞ。霊脈(レイライン)の中にさえ入ってしまえば此方のもんだ。後はミノタウロスの迷宮まで一直線って寸法よ」

 

ポロロは横転して逆さまになった体勢で精霊列車の性能を誇る。

しかし己のコミュニティが星獣の連撃を弾き、時の列車もどきの襲撃に耐えるほどの恩恵を作り上げたのだ。

頭首ならば誇りたくもなるだろう。

身体を起こしたポロロは尚も揺れ続ける精霊列車の手摺りに掴まって、思い出したように告げる。

 

「ほら、今の内に女王に会いに行け。物好きなあの人のことだから、今頃は無断で貴賓室か謁見の間を占拠して物見遊山でもしてる頃だろうよ」

 

「分かった。何から何まですまない。お礼はきっと何かの形で」

 

「いいってことよ。十六夜の旦那には山ほど借りがあるからな。その身内なら俺たちの身内みたいなもんさ。気軽に構えておいてくれ」

 

ヒラヒラと手を振り、焔を見送るポロロ。

しかし此れだけの巨大な精霊列車を軽く貸し出してくれるとは、何とも気前のいい少年である。

或いはそれほど多大な借りが十六夜にあるのだろうか。

何れにせよしばしの猶予が出来たことに代わりはない。

焔は手摺りに掴まりながら別車両に向かう。

だが安穏と構える焔とポロロの与り知れぬ所で、別の脅威が迫っていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

そして、同時期に精霊列車の真上に銀色のオーロラが出現していた。

 

 





三対一でも押せるインフィニティーなのでした
実際インフィニティーにダメージを与えれたのは笛木と賢者の石で強化されたグレムリンくらいという
仮にも映画ボスであった武神鎧武の攻撃もあっさり弾いていたという

ジンバーザクロアームズはセイヴァーの力が逆説的に武神鎧武に流れた感じです
武神鎧武が進化した結果オリジナルと同様の強化形態になったけど使うロックシードは違うというわけです
存在的に近い物が引き寄せられた的な

それでは、質問があれば聞いてください
設定纏めが活動報告にて公開中です
設定関連の質問はそちらでもOKです
感想待ってます!


エグゼイド三話は坂本監督担当ですよ!


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迫る虎と真紅の矢と降り注ぐ者


ゼッパンドン強し
中身がジャグラーなせいで動きが人間味溢れていましたね
次週は遂にオリジン登場です!

それでは本編です


銀色のオーロラよりボトリボトリと怪人が降り注ぐ。

ガメレオジンが、クモンジンが、コウモルジンが、サソラジンが、ドクバチジンが、カマギリジンが、ムカデンジンが、コブランジンが、アリジゴクジンが、ハエジゴクジンが、ゴキブリジンが”サン=サウザンド”号へと降り立つ。

続く様にアリコマンドも次々と送り込まれる。

その中心に立つのはゼネラルモンスター。

今回の襲撃の指揮者である。

 

「ターゲットは車内だ。暴れろ。好きに暴れるがいい。どの勢力よりも先にターゲットを確保できればそれでいいのだ!!」

 

屋根を伝い怪人たちは侵攻を始める。

怪人たちは嵐を気にもせずに進んでいく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

____”サン=サウザンド”号・最後尾車両。

”天の牡牛”とネガタロス達に襲われている現状だが、更なる脅威への対処に右往左往する羽目になっていた。

”六本傷”のコミュニティ戦闘部門を担当しているシャロロ=ガンタックは監視精霊である”ラプラスの小悪魔”・通称ラプ子Ⅸから緊急の知らせを聞いていた。

シャロロは特別製の車掌帽と愛用の三叉槍(トライデント)を肩から担ぎ、顔に緊張を走らせる。

 

「何時もの馬鹿と”天の牡牛”以外の襲撃者………………?何処の物好きっすか、ラプ子Ⅸ。もしかして”大ショッカー”の連中?」

 

「そちらも現在進行形で来てますね。扉が開いてる気配を感じます」

 

「マジですか。でもまぁ、そちらはどうにかなるとして…………他にもいるの?」

 

「えぇ。まだ距離がある為にわかりかねますが、虎の幻獣と騎乗者が一人です。凄まじい速さで接近してきます」

 

シャロロは途端に表情を険しくした。

 

「ほほう。未知の敵っすか。しかし天下の”六本傷”が作り上げた最高傑作”サン=サウザンド”号の試運転を襲うとは不逞な輩!!”六本傷”の主戦力はすぐに迎撃準備!!あと誰かポロロ君に”大ショッカー”も来たって伝えておいて」

 

「げいげきじゅんびー!!」

 

「たま詰め開始ー!!」

 

「しょうこうきのよういー!!」

 

ウッキャー♪と楽しそうにドタバタ走り回る群体精霊と、緊張した面持ちで準備を進める”六本傷”の戦士たち。

シャロロも胸当てとグローブを着け直すと、こっそりラプ子Ⅸに問う。

 

「……………で、どれぐらい強そう?私たちでもなんとかなる?」

 

「”大ショッカー”の方は幹部級が来てますがおそらく大丈夫です。ただ此方は普通にぶつかりあっては難しいかもしれません。唯でさえこの大嵐に、時の列車もどきの襲撃もありますから。パッと見たところ高位の幻獣……………或いは、神獣クラスかと」

 

「うひゃあ、マジか!!なら騎乗者は魔王の可能性も考えとかないと不味いっすねー!!」

 

シャロロは冷や汗を搔きながら槍を強く握り緊張を強める。

唯でさえ”天の牡牛”という強力な星獣が襲ってきている状況だ。

それに加えて並行して時の列車もどきの襲撃があり、”大ショッカー”も幹部級を連れてきている。

そこに魔王まで加わるとなると笑えない程に最悪な状況である。

警備の問題で最後尾まで足を運んでいた鈴華、彩鳥、黒ウサギもシャロロと合流する。

話し合った結果、シャロロ達は内部に乗り込んできたところを奇襲、彩鳥と鈴華は彩鳥の策を実行することとなるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

三両の列車が並走する上で剣戟の音が鳴り響く。

タンクトップシャドーが変身したトッキュウ7号はトッキュウブラスターを両手に持ってマーブロに斬り掛かる。

 

キリマース!

「オラァ!!」

 

「ハハッ、やるねぇ。でも、変身したところで僕に勝てると思っているのかい?」

 

ニ刀を杖で受け止め、大爪で弾き飛ばす、

更に杖を振るって光弾を撒き散らす。

7号は後方に跳びながらトッキュウブラスターを銃に変形させる。

 

ウチマース!!

 

マーブロも爪で銃弾を防ぎながら光弾を放ち続ける。

だが、防御に意識を裂いた分、弾幕は薄くなる。

そこを狙って7号は至近距離へと詰め寄る。

マーブロも察知して杖を振り下ろすが、トッキュウブラスターによって弾き飛ばされる。

7号は拳を握り込んで、マーブロの懐に全力で叩き込む。

 

「腕は落ちてないようだな」

 

「お前こそな」

 

シュバルツの剣とユウドウブレイカーが何度も何度も打ち付け合われる。

互いに引くことなく斬り込み続け、互いの攻撃を一手一手破っていく。

何処まで行っても平行線な斬り合いではあった。

だから、それをあえて明は崩す。

一歩下がり、距離を取ろうとする。

シュバルツはその隙を狙うように強く踏み込む。

それに目掛けてユウドウブレイカーを投げ付ける。

シュバルツは即座に叩き落すが、至近距離で投げ付けられ、そちらに意識を向けたのだ。

そこを突くように明は身を沈めると地に手を付いてシュバルツに向けて蹴りを放つ。

 

「ぬぅ」

 

怯んだところを近場に転がるユウドウブレイカーを手に取って斬り付けようとする。

その時、足場にしていた車両が激しく揺れる。

一旦、離れたクライナーが側面を叩き付けてきたのだ。

それによって明は体勢を崩す。

その隙にシュバルツは距離を取る。

 

「まだ運は私を見放していないらしい」

 

「そうみたいだな」

 

あくまで仕切り直し。

二人は再び斬り合いを始めるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「どういう状況だ、これは?」

 

「聞いてくれるな。此方も把握し切れていない」

 

”サン=サウザンド”号に対する襲撃者の一組であるアステリオスは困惑しながら白額虎に問う。

白額虎も白額虎で状況を掴みかねていた。

何せ入り乱れる勢力が幾つか分からないのだから。

”サン=サウザンド”号の周囲には幾つもの列車が走っており、攻撃を仕掛けている。

その列車たちもまた別の列車と戦闘を繰り広げている。

その全てが”天の牡牛”に攻撃されており、列車側も”天の牡牛”に対して攻撃を仕掛けている。

特に”サン=サウザンド”号と並走する列車の屋根の上に立っている者が”天の牡牛”をメインで相手にしている。

列車同士のぶつかり合いの他にも列車の屋根の上で複数の勢力が入り乱れて戦っていることが伺える。

更に銀のオーロラから現れてる者達もいる。

傍から見て状況を完全に掴めという方が無理だろう。

アステリオスもそれは分かってはいた。

ゆえに様子を見る為にも待機の姿勢でいるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

セイヴァーアローから矢の様なエネルギー体が放たれる。

真紅に染まった矢は斬り合いを続ける晴人と幽汽の周囲に着弾する。

武神鎧武のは幽汽が近くにいることなど微塵も気にしないで次々と矢を放つ。

 

「テメェ!!俺を巻き込んでるんじゃねぇよ!!」

 

「貴様など知ったことか。勝手に対応するのだな!!」

 

「このまま仲間割れ………………とはいかないよな」

 

幽汽は文句を言いながらも武神鎧武に剣を向けたりはしない。

後で何かしらの落とし前は付けるにしても今の敵は目の前の晴人だと認識しているからだ。

武神鎧武の放つ矢を弾きながら再び晴人へと斬り掛かる。

晴人は武神鎧武の矢を無造作に手で払いながら幽汽を迎え撃つ。

武神鎧武は矢が無意味だと把握すると無双セイバー ナギナタモードを右手に持って斬り掛かる。

 

「新たな力を持って貴様を倒してやろう」

 

「俺とお前にそんな因縁無いはずなんだけどな」

 

苦言しながら晴人は武神鎧武の斬撃をアックスカリバーで受け止める。

無双セイバーとアックスカリバーで鍔迫り合いになると武神鎧武は手首を捻り、大橙丸側を使ってアックスカリバーを弾き飛ばす。

懐が空いた隙にセイヴァーアローの刃を振るう。

だが、その刃もインフィニティーの鎧に傷を付けることは無かった。

更に横合いから斬り掛かってきた幽汽の刃も左手で受け止める。

 

「そのくらいじゃ俺の希望に傷は付けられねぇよ!!」

 

回転斬りの要領で二人纏めて斬り飛ばす。

武神鎧武は転がりながらもセイヴァーアローの弦を弾いて矢を放つ。

その間に晴人はインフィニティーリングをウィザードライバーにかざしていた。

 

インフィニティー!!

 

全身に魔力を纏わせ、時間軸に干渉して高速移動をする。

セイヴァーアローから放たれた矢は晴人を捉えることなく消えていく。

距離を詰められ、セイヴァーアローで防御する前に斬り上げによって弾き飛ばされる。

そこに肘打ちを叩き込んで怯ませる。

そこからリングをウィザードライバーにかざす。

 

バインド、プリーズ

 

武神鎧武と幽汽の周囲に複数の魔法陣が出現し、そこから透明の輝く鎖が飛び出して両者を拘束する。

さすがにインフィニティー程では無いが、そこそこの強度を持つ鎖だ。

武神鎧武も幽汽もそう簡単には抜け出せない。

 

「こんな物で俺を縛れると思っているのか?」

 

「思ってはいないさ。少し時間を稼げればそれでいい」ターンオン!!

 

言いながら晴人はアックスカリバーをアックスモードに変える。

アックスカリバーにインフィニティーリングをかざして必殺技を発動させようとした時だった。

 

「何!?」

 

背後から黒い影が飛び掛かってくるのだった。

反射的に振り返って斬り裂く。

斬り裂かれたのはアリコマンドだった。

周囲を見渡すといつの間にか晴人たちはアリコマンド達に囲まれていた。

四方八方にアリコマンドが潜んでいた。

幽汽と武神鎧武に意識を向けていたせいで気配を消して近付いてきていたのに気付かなかったのだ。

 

「チッ。どうやら野暮な奴らが来たようだな」

 

ネガ電王もアリコマンドを斬り裂きながら呟く。

頃合いを見て新たな力を試すつもりだったが興が削がれていた。

彼らの周囲にはアリコマンド達だけではなく怪人たちも集まりつつあるのだった。

 





ネオショッカー襲来でした!

戦いは更なる乱戦となるのでした
インフィニティーに関してはラスボス級か最強フォーム級辺りの攻撃を基準としてます
オールドラゴンの攻撃すらあっさり弾くレベルですので

それでは、質問があれば聞いてください
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乱入のネオと利害の不一致とゼネラルの正体





 

「邪魔すんじゃねぇよ、雑魚どもが!!」

 

幽汽は拘束を振り解くとアリコマンドの首を掴んで足場に叩き付ける。

首が折れる音と共にアリコマンドは動かなくなる。

そのまま周囲に群がるニ、三体を纏めて真っ二つにする。

アリコマンドの群れに紛れてカマギリジンが幽汽に斬り掛かっていく。

両手の鎌で斬り掛かるが、幽汽はヒラリヒラリと回避し、腹を蹴り飛ばす。

怯んだ隙にライダーパスをベルトにかざす。

 

フルチャージ!!

 

刃にエネルギーを収束させてアリコマンドごとカマギリジンを叩き切ろうと駆ける。

カマギリジンはどうにか防ごうと鎌で受け止める。

だが、無駄だった。

受け止めた瞬間に鎌にはヒビが広がってあっさり折れるのだった。

そのまま横に一閃、縦に一閃されて切り刻まれる。

火花を散らしながら爆発するのを見もせずに幽汽は背後に刃を突き出す。

肉が貫かれる音と共に背後から不意討ちしようとしていたアリジゴクジンの腹に刃が突き刺さったのだ。

 

「それで不意討ちのつもりか?」

 

アリジゴクジンは腹から刃を抜いて何かしらの攻撃を仕掛けようとする。

しかし、今の幽汽は晴人との戦いを邪魔されて機嫌が悪かった。

アリジゴクジンが何をするよりも早く間合いを詰め、刃を振り掛かる。

縦に一刀両断し、周囲のアリコマンド共々爆発四散させるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「無粋な連中だな」

 

武神鎧武はアリコマンドの首を無双セイバーとセイヴァーアローで次々と斬り落としていく。

更に片目を光らすと何処からともなく花弁を舞わせる。

腕を軽く振るうと花弁の一枚一枚が刃の様な鋭さと共に放たれる。

アリコマンド達は避けることすら出来ずに貫かれていく。

そこに目掛けて無数の針が放たれる。

一瞬速く察知した武神鎧武は後方に跳ぶ。

一瞬前まで武神鎧武がいた位置に無数の針が突き刺さる。

突き刺さった場所は泡立ちながら溶けていく。

軽く見上げるとドクバチジンが武神鎧武を狙っていた。

どうやら空中から武神鎧武を一方的に狙うつもりらしい。

とはいえ、現在は嵐が吹き荒れる中で列車上の戦闘である。

そう高くは飛べないし、速く動くことにも力を裂けてはいない。

ゆえに格好の的であった。

武神鎧武は無双セイバーを腰にしまうとゲネシスコアからザクロエナジーロックシードを取り外し、セイヴァーアローに取り付ける。

 

ロックオン!!

「貫け」ザクロエナジー!!

 

セイヴァーアローから真紅の太い矢が放たれる。

真紅の矢は嵐の影響を一切感じさせずに一直線にドクバチジンへと向かっていく。

矢を避ける為に急に動けば絶妙なバランスで保っていた均衡が崩れる。

具合的に言えば列車に置いて行かれる羽目になる。

ゆえに躱せなかった。

防ぐ術も無く貫かれて空中で爆散する。

その爆炎をすぐに見えなくなった。

だが、ドクバチジンを貫いた矢は貫いた後も勢いをそのままに拡散して無数の矢に変わる。

降り注いだ矢はアリコマンドを貫き周囲を血の海に変える。

それも雨風に洗い流されていくのだが。

死体の間をムカデンジンが駆けていく。

武神鎧武はザクロエナジーロックシードをゲネシスコアに戻して即座に無双セイバーを抜く。

ムカデンジンの攻撃を受け止めると無双セイバー峰側の突起を引いて引き金を引く。

放たれた銃弾がムカデンジンを貫いていく。

そこから素早くカッティングブレードを降ろす。

 

「弱者は消えるがいい」

ブラッドオレンジスカッシュ!!ザクロエナジースカッシュ!!

 

無双セイバーとセイヴァーアローの刃に真紅の力が収束する。

それを武神鎧武が振るえば真紅の刃状のエネルギー体が放たれる。

ムカデンジンの手足は斬り落とされ、直後に踏み込んできた武神鎧武によって斬り刻まれて爆散する。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「せっかくあいつらを倒すチャンスだったんだけどな」

 

拘束から抜け出した幽汽はと武神鎧武を横目で見ながら晴人が呟く。

周囲の十数体のアリコマンドが各々刃物を持って一斉に斬り掛かる。

それら全てを防御もせずに受け止める。

インフィニティーの鎧には傷一つ付かない。

アリコマンドたちはそれぞれ驚いたり、困惑したりなどの反応を示す。

晴人はアックスモードのアックスカリバーを回転斬りの要領で振るう。

晴人に一斉に斬り掛かったアリコマンド達は纏めて斬り飛ばされる。

その光景に怯むアリコマンドもいたがどの個体も再び晴人へと襲い掛かる。

命令に逆らえる様な状態では無いのだろう。

一気に斬り倒そうと思ったところで側頭部を殴られたような衝撃を受ける。

勿論インフィニティーの鎧には傷一つ無い。

だが、傷は無くても衝撃くらいは感じる。

眼を凝らすとどうもどうやらアリコマンドの集団の隙間を縫うように高速移動している怪人がいた。

それが分かると晴人はインフィニティーリングをウィザードライバーにかざす。

 

インフィニティー!!

「そこだ!!」

 

インフィニティースタイルの高速移動は普通の高速移動とは違う。

時間に干渉するタイプの物である。

ゆえに普通の高速移動相手ならば優位なのだ。

体を高速で動かすのに力を使っている相手に普通に動く感覚で対応出来るのだから。

高速移動している怪人はゴキブリジンだった。

晴人はゴキブリジンを追い越すと正面からソードモードのアックスカリバーで斬り掛かる。

高速移動している状態で正面から刃に衝突し、刃の方もそれなりの勢いである。

どうなるかは一目瞭然であった。

真っ二つになったゴキブリジンは上半身は爆発し、下半身は解ける様に消えていった。

晴人はそのままアックスカリバーをアックスモードにするとインフィニティーリングをかざす。

 

ハイタッチ!!シャイニングストライク!!キラキラッ!!キラキラッ!!

 

頭上でアックスカリバーを回す。

すると、アックスカリバーはどんどん大きくなっていく。

ある程度の大きさになると横一線に振るう。

精霊列車の屋根の上にいたアリコマンド達はそれによってごっそりと削られる。

けれど、幽汽と武神鎧武はそれくらいでやられる様な相手でもない。

幽汽と武神鎧武はどうにか回避しているのだった。

 

「邪魔者は大体消えたようだな」

 

「これで続きがやれるなぁ!!」

 

「しつこい奴だな」

 

苦笑しながら晴人は迎え撃つ。

そこに生き残っていたハエジゴクジンとクモンジンが飛び出してくる。

が、最早幽汽の眼中にネオショッカーの怪人は無かった。

ただライダーパスをベルトにかざす。

その後方で武神鎧武も再びザクロエナジーロックシードをセイヴァーアローに装着させていた。

晴人はアックスカリバーにインフィニティーリングを五回かざす。

 

フルチャージ!!

ロックオン!!ザクロエナジー!!

ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!ハイタッチ!!プラズマシャイニングストライク!!キラキラッ!!キラキラッ!!

 

最早哀れですらあった。

幽汽によって斬り飛ばされたハエジゴクジンとクモンジンは真紅の矢に貫かれ、晴人が遠隔操縦する高速回転する刃に斬り刻まれたのだから。

上空で爆発する二体の怪人を気にしないまま戦闘が再開される。

二体の怪人を貫いた矢が拡散し、晴人へと降り注ぐ。

晴人は真紅の矢の雨を平然と弾きながらコネクトの魔法でソードガンを取り出す。

晴人が操る高速回転するアックスカリバーが武神鎧武へと襲い掛かる。

無双セイバーとセイヴァーアローでどうにか受け止めるが体ごと弾き飛ばされる。

その間に幽汽の刃と晴人のソードガンがぶつかり合い火花を散らす。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「邪魔くせぇな」

 

飛び掛かろうとするコウモルジンに向けてネガデンガッシャーガンモードの銃弾をばら撒く。

意外に正確な射撃によって羽を撃ち抜かれてバランスを崩す。

そこに”天の牡牛”の稲妻が襲い掛かり、一瞬でコウモルジンは灰に変わる。

身を捻って360度に銃弾をばら撒く。

吹き飛ぶアリコマンドを盾にしてサソラジンが駆けてくる。

ネガ電王はネガデンガッシャーを素早く組み替えてロッドモードに変える。

そのまま軽く回してサソラジンの腕を弾いた上で横薙ぎにして身体を宙に浮かす。

ライダーパスをベルトにかざして足にエネルギーを集中させる。

 

フルチャージ!!

 

ネガデンガッシャーを足場に突き刺して体を浮かしてサソラジンに蹴りを入れる。

アリコマンドの集団に蹴り飛ばされたサソラジンに向けて着地の勢いを利用してネガデンガッシャーを投げ付ける。

サソラジンごと複数のアリコマンドが串刺しとなって盛大に爆散する。

ネガ電王はネガデンガッシャーを拾い上げると集団の奥にいるゼネラルモンスターに刃を向ける。

 

「よくも邪魔してくれたん」

 

「それは此方の台詞でもあるな」

 

「いや、俺の台詞だ。何故なら俺の方が先に襲撃したからだ」

 

「……………我々が敵対する理由は無いはずだ。貴様はこの列車が欲しい。我々は標的を確保すればそれでいい。利害は一致するはずだ」

 

「違うな。俺とお前らの利害が一致することは無い。何故なら俺の最終目標の為にはお前たちも消えて貰わないといけないからな」

 

「そうか。ならば、死ぬがいい」

 

言いながらゼネラルモンスターは構える。

その身は内側から膨れ上がっていく。

 

「ゼネラルモンスター……………本体!!」

 

ゼネラルモンスターの姿が一変する。

ネオショッカーの怪人ヤモリジンへと姿を変えたのだ。

ヤモリジンは鞭を構えながらネガ電王へと向かっていく。

 

「いいぜ。相手にしてやるよ、三流。覚悟しておけ。俺の強さは別格だ」

 

ネガ電王はネガデンガッシャーをソードモードに変えて迎え撃つ。

 

 





vs再生怪人 ネオショッカー編でした!
再生怪人、しかも序盤組というわけでついでの様にぶっ倒されるのでした
仮にも全員ボス級ですので
まだ全滅したわけでは無いので数体います

それでは、質問があれば聞いてください
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今日はオリジン登場回ですよ!(土曜九時)


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再度の接触と返却の武具と嵐を貫く一矢



今週は遅れました!



アステリオスと白額虎は精霊列車側の思わぬ反撃に苦戦していた。

周囲で起きている戦闘が突入の邪魔にならないと判断して乗り込もうとした時だった。

甲板に弩砲が現れ一斉掃射をしてきたのだ。

それだけならば問題は無かった。

それだけならば。

反撃しようとした弩砲は消え、回避したはずの弾が自身たちを囲んでいたのだ。

その数は徐々に増えていく。

対処に追われ、甲板に足止めされるのだった。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

敵を翻弄しているのは久藤彩鳥の策だった。

鈴華の恩恵を利用して弾を送り込んでいるのだ。

 

「遠くないうちに種がバレるとは思いますが、これでしばらく時間が稼げるはずです。この間に霊脈の中に入ってしまえば超加速が始まり引き離せるはず」

 

「……………。そっかー。彩ちゃんは物知りだねえ」

 

何気ない笑顔と言葉に彩鳥の鼓動が跳ねる。

今のは失言だった。

彩鳥の今までの言動を鑑みても、彼女が箱庭の関係者だと気が付くのは時間の問題だろう…………というか、そろそろ秘密を守るのも限界だ。

今のままでは彼女もやりにくいし、何より鈴華や焔に秘密を造っているのは心苦しい。

誤魔化すように踵を返した彩鳥はラプ子Ⅸを鈴華に預け、前方の車両に向かって歩き始める。

 

「鈴華。ラプ子Ⅸ.此処をお願いします。私は少し、女王に謁見してきます」

 

「え?あ、うん。一人で大丈夫?」

 

「ええ。もし危なくなったら黒ウサギさんを頼ってください。この車両で動ける中では、彼女が突き抜けた最高戦力ですから」

 

笑顔で言い残し、最後尾車両を去る彩鳥。

鈴華は去り際の言葉に、ポカンと半口を開いて驚いていたが、それも当然だろう。

あんな幼くも愛らしいウサ耳少女を頼るよりは、まだ騒がしくも努力しているシャロロを頼るべきだと考えたのだろう。

彩鳥はそんな彼女の心情を読み取りながら小さく笑う。

そろそろ傍観を決め込むのにも限界が来ている。

 

久藤彩鳥も_______己の剣を握る時が来たのだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

西郷焔は息を切らしながら群体精霊の一匹、地精のメルルに連れられて貴賓室の前まで来た。

その手にはバースバスターがあった。

箱庭に来る前に伊達明に渡されたアタッシュケースの中にあった物の一つだ。

反動を小さくするように改造されてはいるが、それでも焔が普通に撃てるようになるにはそこそこ鍛える必要があった。

護身術の一つとして教わったのだが、意外なところで役に立った。

此処に辿り着くまでの間にそれを使ってアリコマンドをどうにかやり過ごしているのだった。

 

「ここ!!女王の部屋、ここ!!」

 

「ありがとな。案内はここまででいいから、お前は機関室に帰っていいぞ」

 

ぴょん!!と焔の頭から飛び降りたメルルは、トッタカトッタカと可愛らしい足音を立てて去っていく。

その焔の背後に不穏な気配が迫っていた。

ズルリズルリと何かが這うかの様に迫っていく。

焔は気付かずに扉へ向き直る。

飛び掛かられる一瞬前だった。

 

「先輩!!」

 

彩鳥が叫びながら飛び出してきて、手に持った槍で焔の背後の壁を突き刺す。

同時に血が飛び散るが、彩鳥は構わず槍を振り下ろして両断する。

途端に絶命したガメレオジンが姿を現す。

いきなりの事に焔は呆然とする。

 

「危なかったですね、先輩」

 

「……………ああ、ありがとう。それで、その槍はどうしたんだ?」

 

「車内に敵が潜んでるようだったので拝借しました」

 

よく見たら彩鳥が通ってきた道にはアリコマンドの影が幾つも倒れていた。

そこに最早驚きは無かった。

 

「それで先輩はまた女王に呼び出されたのですか?」

 

「いいや、此方の用件で来た。そっちは?」

 

「私は……………………ええ、先輩と似たようなものです。預けていた物を返していただこうかと」

 

彩鳥は極めて自然な仕草でそれを口にする。

これももう驚きはしない。

何故なら、彼女は事の始まりから既にこの異変を知っていた節があるからだ。

だが、それで立場が変わるわけでもない。

焔は敢えて問い返さずに真剣な表情を浮かべて頷いた。

 

「そうか。並の相手じゃないってことは知ってるんだよな?」

 

「ええ。それはもう先輩以上に」

 

「マジかよ。その辺りの話も聞いてみたいが、それはまた帰ってからだな」

 

焔と彩鳥は共に頷き合う。

それぞれが別の事情を抱えていることを理解し合っているのなら、語るべき時を待つべきだろう。

そうして二人は中に入っていく。

中には女王と執事服を着た使用人らしき女性がいた。

中に入る際のマナーで一悶着あったものの一先ず落ち着く。

まずは彩鳥から話すべきと焔が一歩下がり、彩鳥が前に出る。

焔の手前、どのように切り出すべきか逡巡した彩鳥だが____彼女も決断すれば行動が速い。

最初の一言はこうあるべきと思い至り、優雅に一礼した。

 

お久しぶりです(´´´´´´´)、女王。スカハサ先生。女王騎士”フェイスレス”、只今戻りました」

 

「そう。久しぶりね。貴女の体感時間では十四年ぶりになるのかしら、スカハサ」

 

女王が視線で尋ねると、スカハサと呼ばれた女性は歩くキャンドルランプが運んできた紅茶を注ぎつつ同意する。

 

「左様でございます、女王。_____ふふ、彩鳥も元気そうで何よりよ。その騎士号は転生前の物だから、名乗るなら久藤の姓か英国姓を名乗るようになさいな」

 

「恐縮です。以後はそのように。……………先生もお変わりないようですね。今は執事長(ロード・バトラー)に就かれているのですか?」

 

「そうよ。似合う?」

 

執事長のスカハサは腰に手を当ててポーズを取る。

彩鳥は思わず苦笑いで同意するが、確かに似合ってはいた。

執事服のタイトな服は体のボディラインがハッキリ見える為、長身で抜群のプロポーションを誇る彼女が着ると立っているだけで絵に成るほどだ。

異性、同性を問わず魅力的に映るのは間違いないだろう。

彩鳥は困ったように愛想笑いを浮かべつつ、当たり障りのない言葉で続ける。

 

「先生なら何を着ても似合うかと思われます」

 

言葉を言い切る前にスカハサの手が彩鳥の額に伸ばされた。

怪訝な顔をしながらスカハサは首を傾げる。

 

「妙なところが開いてる(´´´´)わね。自覚が無いということは妙な干渉を受けて開かれた(´´´´)か」

 

「何の話ですか?」

 

「説明するには面倒そうなのよね。かといって、教える暇も無いし……………仕方がないか」

 

言いながらスカハサは彩鳥の額を軽く弾いた。

弾かれた一瞬彩鳥の頭に激痛が走る。

眩暈がし、ふらつくがそれもすぐに回復する。

 

「何をしたんですか?」

 

「安定させといたわ。一先ず意図せず暴発することは無いでしょう。自覚無しでスイッチ入ることはあるかもだけど」

 

いまいち分からなかったが深く聞ける雰囲気では無かったので先程の続きを口にする。

 

「ところで、他の師は来ていないのですか?」

 

「来てはいないけれど、報告は逐一入っているでしょうね。今頃貴女のこの度の醜態に、怒り心頭となっているに違いないわ。現に私がそうだもの」

 

柔和な笑みを浮かべるも、瞳を滾らせて怒りを伝えるスカハサ。

苦い表情で顔を下げる彩鳥と、紅茶を口に運びながら心底楽しそうに微笑む女王。

話を進めると女王は虚空から白銀のカードが出現させる。

スカサハは女王の意思を察し、口元に手を当てて怪しげに微笑んだ。

 

「なるほど。愛剣を返して再評定、というわけですか」

 

「そういうこと。使い慣れた武具を取り上げられたまま敗北したんだもの。一度くらいの敗北は大目に見ても良いでしょう?」

 

女王はカードを指先で弾くと、回転させながら彩鳥に渡す。

スカハサは後ろで腕を組み、笑みを消して告げる。

 

「_____そういうわけだ、久藤彩鳥。女王は敗北を不問にすると言っている。次こそはギリシャの怪物と中華の俗物に、アルスターの流儀を見せてあげなさい。

 

出陣せよと、瞳に鋭い光を浮かべて命令する。

彩鳥は”クイーン・ハロウィン”の旗印が刻まれているカードを一瞥し恭しく頭を垂れた。

 

「勅命、謹んで承ります。______それでは先輩。先に失礼します」

 

「あ、ああ。けど大丈夫なのか?」

 

「問題ありません。これより先は先輩にも鈴華にも指一本____いえ、髪の一本ほどの危害も加えさせませんから」

 

静かに微笑んで、貴賓室を後にする彩鳥。

まもなく扉の向こうから最後尾に走り去っていく音が聞こえた。

此れから襲い来る敵を迎え撃ちにいったのだろう。

その音が完全に消え去ると、二人は西郷焔に視線を向けた。

そこから焔は先日の答えを返し、その上で自身の考察を元に交渉をする。

それによって焔はスカハサに師事することになり、情報を得る。

話が一段落したところで外部からの衝撃によって精霊列車が激しく揺れるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

列車の甲板は乱戦を極めていた。

晴人とネガタロス達とゼネラルモンスターが戦っていたのは比較的に前方の車両だったのだが、戦闘している内に最後尾まで下がってきたのだ。

そして、白額虎とアステリオスもその乱戦に巻き込まれたのだ。

 

インフィニティー!!

 

高速移動する晴人と白額虎が何度も何度もぶつかり合って火花を散らす。

ヤモリジンに姿を変えたゼネラルモンスターが尻尾を鞭のように振るう。

ネガ電王と幽汽が尻尾の鞭を弾きながら近づこうとすると真上に影が出来る。

飛び上がり、大きく振り被った大戦斧をアステリオスが降り落とす。

さすがに大戦斧の直撃は不味いので、ゼネラルモンスター、幽汽、ネガ電王、武神鎧武は後方に下がって回避する、

武神鎧武は地を転がりながらもセイヴァーアローを構える。

そこから正確にアステリオスに向けて矢を放つ。

アステリオスはほぼ反射的に矢を弾き飛ばす。

乱戦は敵味方入り乱れる形であり、”六本傷”も鈴華も迂闊に手を出せなくなっている。

 

「仙虎よ。お前の仲間とやらはまだ来ないのか?何時まで待たせる?」

 

『うむ、待たせたな。噂の相方が来たらしい』

 

息を整えながら問うアステリオスに対して仙虎は牙を剥いて笑う。

同時に嵐の風向きが変わる。

”天の牡牛”はいまだに戒斗と戦闘中ではあるものの積乱雲そのものに変化は無い。

にも拘わらず風向きが劇的に変化したのだ。

新たなる乱入者は精霊列車を壊す為に力を蓄え始めたのだ。

それに感付いた白額虎は焦り始める。

 

『今から止めても間に合わん!!一度離れるぞ!!』

 

アステリオスを背に乗せ直して白額虎は精霊列車を離れていく。

一方のアステリオスも焦っていた。

精霊列車を、その中にいる西郷焔を殺されるのは困るからだ。

術者ごと白額虎も殺すかと考え始めた時だった。

精霊列車”サン=サウザンド”号の甲板から、天を穿つ様に奔る一条の閃光。

千里の先でも撃ち貫けるかのような洗練された一矢は荒れ狂う水流と暴風の隙間を縫うように突き進み、見事術師の首を撥ね飛ばした。

 

「…………………な、」

 

絶句するアステリオス。

それはまさに絶技と呼ぶのが相応しい一刺しだった。

飛距離がではない。

荒れ狂う雨風を読み切り、操られる雨風が術師を守る最中、たった一矢で敵の首級を挙げるなど、正に神域としか喩え様のない弓技だ。

精霊列車の甲板の上に立っていたのは一人。

嵐の中にあっても輝きを失わぬ金髪を靡かせ、憤然と此方を睨み付ける少女。

平時の仮面を脱ぎ捨て、戦士の顔を露わにした女王騎士_____久藤彩鳥が、一人と一匹の前に立ちはだかっていた。

 

 





大乱戦からの新たな乱入者からの彩鳥参戦でした!

焔サイドはほぼ原作通りです
彩鳥とスカハサのやり取りの意味は後々
大体ネメシスQのせい

それでは、質問があれば聞いてください
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感想待ってます!


最近何故か異様に眠いのであった


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提督の軍勢と乱入流星と呼び起こされし者



メトロン夕焼けに死す!
ジャグラーはガチでボコられてるのでした

まさかゲンムの正体がバラドだったとはなー(棒)
嘘吐きが敵の策略にはまって信頼値を0に落とされるのでした
まぁ多少違和感くらい覚えろとは思いますが

はい、更新遅くなって申し訳ありません
本編です


クレタ島は台風二十四号の直撃を受けた為、一般人は立ち入り禁止となり、半ば無人となっていた。

復旧作業を行っているそうだが、それは真実を隠す為の方便だろう。

何せ実際に足を運んだ十六夜たちが見たクレタ島には、一人も滞在していなかったからだ。

しかし、確かに気配は感じていた。

何者かに見られているという感覚が確かにあった。

 

「やっぱいるよな」

 

「あぁ、視線をひしひしと感じるな」

 

周囲を警戒しながら一同は進んでいく。

その先に堂々と立つ人影があった。

 

「よく来たな。此処が貴様たちの墓場だ」

 

人影が軽く腕を振るう。

同時に砲撃音が鳴り響く。

人影の背後から大砲によって放たれたのだ。

御門釈天が慌てて前に出て、金剛杵を振るい雷撃によって全ての砲弾を焼き払う。

爆炎によって視界が塞がれてる間に一同は物陰に隠れる。

翔太郎も、伊達も、仁藤も既にベルトを腰に巻いていた。

人影は爆炎を腕を振るうだけで払いのける。

 

「恐れるがいい。貴様らの相手はネオショッカー再生怪人部隊だ!!」

 

その声と共に崖の上に数々の人影が出現する。

勢揃いすると個々が高らかに名乗りをあげていく。

 

「アルマジーグ!!」

 

「ヒルビラン!!」

 

ネオショッカー戦車隊を率いるアルマジロの怪人とヒルの怪人がいた。

 

「シビレイジン!!」

 

鞭を持ったシビレエイの怪人がいた。

 

「オオカミジン!!」

 

殺人音波を放つ狼の怪人がいた。

 

「サイダンプ!!」

 

「クラゲロン!!」

 

かつて共に作戦を進行したサイの怪人とクラゲの怪人がいた。

 

「コゴエンスキー!!」

 

冷気を操る雪男の怪人がいた。

 

「「ムササベーダー!!」」

 

兄弟のムササビの怪人がいた。

 

「マダラカジン!!」

 

毒を操るマダランの怪人がいた。

 

「ゾウガメロン!!」

 

頑強な亀の怪人がいた。

 

「ドクガンバ!!」

 

毒鱗粉を持つ毒蛾の怪人がいた。

 

「グランバザーミー!!」

 

地球最高の改造人間を自称するハサミムシの怪人がいた。

 

「ヒカラビーノ!!」

 

包帯を操るミイラの怪人がいた。

 

「オオバクロン!!」

 

悪夢を操るバクの怪人がいた。

 

「トリカブトロン!!」

 

卑怯なトリカブトの怪人がいた。

 

「ドブネズゴン!!」

 

毒をばら撒くネズミの怪人がいた。

 

「マントコング!!」

 

「タコギャング!!」

 

ウイルスをばら撒く怪人がいた。

 

「キギンガー!!」

 

アマゾンの使者である熱帯樹の怪人がいた。

 

「ドラゴンキング!!」

 

ガラパゴス島の使者であるドラゴンの怪人がいた。

 

「ガマギラス!!」

 

巨大な頭なカエルの怪人がいた。

 

「オカッパ法師!!」

 

「ウニデーモン!!」

 

鬼の様なウニの怪人とそれをサポートする河童の怪人がいた。

 

「クチユウレイ!!」

 

歯型の爆弾を持つ幽霊の怪人がいた。

 

「ゾンビーダ!!」

 

ゾンビを増やすゾンビの怪人がいた。

 

「ミミンガー!!」

 

耳を集めるゾウの怪人がいた。

 

「ドロニャンゴー!!」

 

血液を集める猫の怪人がいた。

 

「ヘビンガー!!」

 

スカンボジアから来たりしヘビの怪人がいた。

 

「アブンガー!!」

 

スカイキックをコピーせしアブの怪人がいた。

 

「カガミトカゲ!!」

 

鏡を操るトカゲの怪人がいた。

 

「ドロリンゴ!!」

 

不定形である怪人がいた。

 

「ザンヨウジュー!!」

 

化石ガスを操る三葉虫の怪人がいる。

 

「タガメラス!!」

 

鋭い刃を構えるタガメの怪人がいた。

 

「リングベア!!」

 

両手に旗を持つクマの怪人がいた。

 

「黄金ジャガー!!」

 

 

「ジャガーバン!!」

 

 

幹部と思わしき男の背後に立つ怪人がいた。

ネオショッカーの蘇りし怪人たちが集結していた。

 

「この魔神提督率いる軍団に踏み潰されていくがいい!!」

 

魔神提督が腕を振ると砲撃が更に激しくなる。

物陰に隠れる十六夜たちは苦笑いを浮かべる。

 

「まさか此処まで集まってるとはな」

 

「流石に予想外ではあったな」

 

「けど、これ”ズレ”に影響が出るんじゃ?」

 

「倒し切れば問題は無い」

 

「それでこっからどうするんだ?」

 

「面倒だし正面から強引に突破するか?」

 

「今の状況だとそれが最善かもな」

 

「いや、ちょっと待て」

 

その言葉と共に一同は戦車隊の方に顔を向ける。

すると、青い光が戦車隊に向けて突っ込んでいくところだった。

青い光が消えて中からバイクに乗った人影が現れる。

 

「ハァ!!」

 

バイクから光弾が放たれて戦車隊へと突き刺さる。

幾つかの戦車は動力をやられて煙を上げて爆発していく。

 

「貴様……………何者だ?」

 

「仮面ライダーメテオ。お前たちの運命は…………俺が決める」

 

仮面ライダーメテオこと朔田流星はインターポールの捜査官である。

調査の為にクレタ島に来たところこの現場を目撃したのだった。

攻撃を受けてる者に加勢する為に即座に変身して突撃したのだ。

その流星を挟むようにアルマジークとヒルビランが構える。

流星は動じることなくメテオギャラクシーを操作する。

 

マーズ、レディ? OK!!マーズ!!

「ホワッチャ!!」

 

突撃してきたヒルビランの懐に潜り込んで灼熱の星を纏わせた拳を叩き込む。

一発だけでは無い。

初撃で浮いた体に何度も何度も拳を叩き込む。

ヒルビランの肉体は焦げ渇いていき、ヒビが全身に広がって砕け散った。

 

「オートバイク部隊!!」

 

アルマジーグが叫ぶとオートバイクに乗ったアリコマンド達が流星に向けて殺到する。

流星もマシンメテオスターに跨って迎え撃つ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「アレは弦太朗のダチの奴か」

 

翔太郎が遠目で見ながら呟く。

流星の参戦によって砲撃は弱まった。

その隙に翔太郎たちも変身する。

 

「行くぜ、フィリップ。大丈夫か?」

 

(此方は問題ないよ。それよりも本当にエクストリーム無しで良いのかい?)

 

「あぁこっちは所詮亡霊だ。使うまでも無い」ジョーカー!!

 

(君が良いというなら僕もこれ以上は聞かないよ)サイクロン!!

 

「「変身!!」」サイクロンジョーカー!!

 

ダブルドライバーにガイアメモリを差し込んで展開する。

翔太郎の身体は風に包まれ、仮面ライダーW サイクロンジョーカーに姿を変える。

 

「「さぁ、お前たちの罪を数えろ」」

 

ネオショッカーに向けて言い放つ。

そして十六夜、釈天、プリトゥの方に向き直る。

 

「俺たちが道を作るからあんた達は先に行きな」

 

「良いのか?」

 

「元々あんたらは子供の加勢が目的なんだろ?なら、そっちに行ってやれ」

「怪人の相手は僕らの仕事みたいなものだからね」

 

「さすがにこの数相手だと俺達全員此処に残ることになるけどな」

 

「十分だ。感謝、」

 

「皆まで言うな」

 

伊達と仁藤も前に出る。

二人もバースとビーストに既に変身している。

 

「さぁて、お仕事開始と行きますか!!」

 

「ランチタイムだ!!」

 

バースバスターとダイスサーベルを構えて二人は一足先に敵へと向かっていく。

Wは思い出したように懐を漁ると取り出した物を十六夜に投げ渡す。

受け取った物を眺めながら十六夜は怪訝な顔をする。

 

「なんだこれ?」

 

「さぁ?俺らもどういう物かは知らねぇ」

「僕らは製作とそれを君に渡すことを頼まれただけだからね」

 

「誰にだ?」

 

「「結城丈二だ」」

 

その名に聞き覚えは無かった。

とはいえ、詳しい状況を聞ける状況でも無い。

十六夜たちも身構える。

W達が道を切り開くと言っても十六夜たちもある程度敵を振り払う必要はある。

 

「行くか」

 

「そうだな」

 

こうして魔神提督率いる再生怪人部隊との戦いが幕を開けた。

流星のおかげで弾幕は薄くなったが続いてはいる。

その隙間を各々は進んでいく。

アリコマンドたちが砲撃に巻き込まれることなく突撃してくるが構わず薙ぎ倒していく。

というよりも、アリコマンドでは止めることは不可能に近かった。

釈天が軽く金剛杵を振るえば雷撃によって消し飛び。

プリトゥが目の前のアリコマンドを前方に投げ付ければボーリングの様に数百のアリコマンドが吹き飛ぶ。

十六夜が拳を振るえば地面ごと抉り飛んでいく。

そんな十六夜の前にアブンガーと他と雰囲気の違うアリコマンド達が並び立つ。

 

「行け!!」

 

アブンガーの号令と共にアリコマンドたちは蹴りを、否、スカイキックを放っていく。

確かに他のアリコマンド達とはレベルが違う。

だが、十六夜は一切脅威は感じない。

怪人ならともかく相手は雑兵。

恐れるに値しない。

正面から拳で迎え撃つ。

十六夜の拳とアリコマンドのスカイキックの激突は一瞬で終わる。

アリコマンドの足が砕け、衝撃が全身に及び血を溢れさせて吹き飛んでいく。

 

「こんなんじゃ俺には届かねぇよ」

 

サイクロントリガー!!

「悪いな。早速手間取らせて」

 

横合いから高速射撃でWが割り込む。

スカイキックを放つ前のアリコマンド達を正確に撃ち抜いていく。

十六夜は特に気にすることなく構えを取る。

 

「いや肩慣らしくらいにはちょうどいいさ」

 

そう言うとアブンガーへと突っ込んでいく。

わざわざ自分から突っ込む十六夜に釈天は金剛杵を振るいながら頭を抱える。

アブンガーはアリコマンド同様構えを取ると大きく飛び上がって十六夜に向けてスカイキックを放つ。

 

「アブンガースカイキック!!」

 

十六夜は少し集中し、右腕に紋様を軽く浮かばせた上で拳を放つ。

衝突前の一瞬だった。

先程Wが渡した物が紋様と共鳴するように光り出す。

そのまま幻影を生み出す。

 

2ゴウ!!マキシマムドライブ!!

2ゴウ!!スキャニングチャージ!!

2ゴウ!!リミットブレイク!!

2ゴウ!!プリーズ!!

2ゴウ!!スカッシュ!!

2ゴウ!!フルスロットル!!

2ゴウ!!オメガドライブ!!

 

「何だ?」

 

そんな音声と共に一旦外に放たれたガイアメモリ、オーメダル、アストロスイッチ、ウィザードリング、ロックシード、シフトカー、眼魂が吸い込まれる。

同時に十六夜の横に仮面ライダー2号の幻影が現れる。

十六夜は一先ず気にせずに拳を放つ。

その瞬間に幻影は十六夜と重なる。

重なった時十六夜は何かの後押しを受けたような感覚になるのだった。

 

「あがっ!?」

 

衝突の瞬間に勝負は付いていた。

アブンガーのスカイキックは十六夜の拳に完全に負けていた。

足から縦にヒビが広がり、頭部まで達する。

更にそこの破壊の力が流れ込み、内から破壊され爆散するのだった。

 

「なるほどね」

 

その一幕を見たフィリップは自分が作った物の機能を完全に察するのだった。

 

 

 





ネオショッカー再生怪人部隊との戦い勃発でした

十六夜の新技の説明は次回で
大体ギンガストリウムと似たノリです

再生怪人部隊と言えば崖の上に集合からの名乗りですよね!(昭和特撮感)
さすがに文章でやるとアレだなとは思いますが

それでは、質問があれば聞いてください
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塞ぐ者と開く者と先を急ぐ者


ハイパーゼットン再び!
オリジンをあそこまで圧倒するとは
スペック的には特にフュージョンアップ形態と優劣自体は無いっぽいですね

全員のレベル3が出揃った直後にレベル5が登場するという
永夢の過去はパックマン関連とは別なのかどうか
どうでもいいけどプロトは商法が汚過ぎると思うんだ
何はともあれ二人は顔出し確定
鎧武は代役にしても似た人っぽくって安心です

それはそれでは本編です!


「つまりアレは地球の記憶にアクセスして望んだ力を引き出す装置なんだよ。だから僕が作る必要があったんだ」

 

フィリップが十六夜に渡した装置の解説を始める。

ブレス型の装置は地球の記憶にアクセスし、それらをガイアメモリ、オーメダル、アストロスイッチ、ウィザードリング、ロックシード、シフトカー、眼魂という形に具現化させる。

それらによって力を整え、十六夜の体内に流れる”何か”と同調させる。

”何か”の性質を地球の記憶から引き出した物と合うように調整し、十六夜にその力を宿すのだ。

とはいえ、長続きする物でも無く引き出した経験をそのまま利用できるわけでは無い。

せいぜい一発技を撃てば”何か”は元に戻る。

 

「よく分からねぇがあいつ用に調整された強化アイテムってとこか」

「そうなるね。おそらく今の段階では結城丈二がプログラムとして仕込んだ戦士の力しか使えないだろうけどね」

 

加えて十六夜自身がある程度引き出した力の事を知っていないといけないようだ。

先程の仮面ライダー2号は士によって聞かされて知識はあった為に発動したのだ。

Wは十六夜の隣に立ち、フィリップがそれを十六夜に伝える。

 

「ようは”これ”と同じ要領で使えると思っていいんだな?」

 

「原理的には似たような物だからね」

 

十六夜の腕に浮かんだ紋様を見ながら頷く。

けれど、今はゆっくり喋っている場合では無い。

周囲から次々と怪人たちが押し寄せてくる。

更にクチユウレイも口を大きく開きながら突進してくる。

Wはトリガーマグナムにバットショットを取り付けた上でトリガーメモリを差し込む。

 

トリガー!!マキシマムドライブ!!

「「トリガーバットシューティング!!」」

 

圧縮された風の弾丸がクチユウレイの巨大な口の中にある頭部を正確に撃ち抜く。

爆散すると共に周囲のアリコマンドも吹き飛ぶ。

その間にヒートトリガーに姿を変える。

 

ヒートトリガー!!

「周囲を気にしなくていいのは助かるな」

 

「悪いな」

 

「元々道を切り開くのは俺達の役目だ。お前は焔たちの為にも力を温存しとけ」

 

言いながらトリガーマグナムにトリガーメモリを差し込む。

全身に炎が纏われ、更には銃口にも業火が収束する。

 

トリガー!!マキシマムドライブ!!

「「トリガーエクスプロージョン!!」」

 

トリガーマグナムの銃口から極大の熱線が放たれる。

収束された炎は真っ直ぐと進み、アリコマンドたちを焼き払っていく。

そのまま迫っていた軍団にぽっかりと穴を開けるのだった。

 

「行きな」

 

「おう」

 

開かれた道を十六夜、釈天、プリトゥが駆けていく。

だが、当然魔神提督がすんなりと通すわけが無い。

腰から剣を抜くと雷を纏わせて振り下ろす。

 

「行かせるものか!!」

 

釈天が防御の為に金剛杵を構えようとしたがその前にWが動いた。

銀のメモリを構えると走りながらダブルドライバーに差し込む。

 

メタル!!ヒートメタル!!

「させるかよ!!」

 

割り込むように魔神提督の前に立つ。

魔神提督が振り下ろした剣を背に出現したメタルシャフトで受け止め、炎を纏った拳で殴り付ける。

魔神提督は追撃を警戒して多少距離を取る。

 

「邪魔をするな、仮面ライダー!!」

 

「悪いがそいつは無理な相談だ」

「君らの様なの止めるのが僕らだからね」

 

メタルシャフトに炎を纏わせながら魔神提督に向かっていく。

魔神提督も剣に雷を纏わせながら迎え撃つ。

炎と雷がぶつかり合い、火花を散らす中で十六夜たちは先に進む。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

伊達はバースバスターでアリコマンドたちを撃ち抜いていく。

弾が切れると銃口下部の突起を取り外す。

突起を傾けるとそこに向けてトリケラカンドロイドがセルメダルを射出する。

満タンになるとバースバスターに補充し、アリコマンドへと撃ち放っていく。

 

「そんな豆鉄砲が通じる物か!!」

 

ゾウガメロンがその頑強な装甲に身を任せて突進してくる。

バースバスターから放たれる弾丸も傷すら付けれない。

伊達はゾウガメロンの突進を転がるように避けるとセルメダルを取り出す。

セルメダルをバースドライバーに投げ入れダイヤルを回す。

 

ドリルアーム!!

「これならどうだ、亀野郎!!」

 

「ぬぅぅぅぅ!?」

 

腕に装着されたドリルを力任せに叩き付ける。

火花と共に装甲が徐々に削れていく。

殴りつけるがヒラリヒラリと回避され、カウンターのように叩き込まれる。

 

「こうなれば必殺岩石落とし!!」

 

ゾウガメロンは大きく飛び上がると球体上に身を丸める。

そのまま伊達に向けて落下する。

ゾウガメロンはその頑強な装甲と体重を武器とするのだ。

ゾウガメロンの体重と頑強さに落下エネルギーが加わればとてつもない威力となる。

伊達はドリルアームを解除すると新たに二枚バースドライバーに投げ入れてダイヤルを回す。

 

クレーンアーム!!キャタピラレッグ!!

「今回は会長に好きにメダル使っていいと言われてるんでね。大盤振る舞いだ!!」

 

クレーンアームを鞭のように振るって落下してくるゾウガメロンに引っ掛ける。

そこからキャタピラレッグを使い全力で回る。

そうすることで軌道を変える。

更にその場で回り続ける。

クレーンアームの先にゾウガメロンが付いていることを利用したのだ。

まるでモーニングスターを振るうかのように周囲のアリコマンドを吹き飛ばしたのだ。

何周か回るとクレーンアームを解除してゾウガメロンを勢いのまま投げ付ける。

解放されたゾウガメロンは勢いのまま地面に突き刺さる。

球体状態を解除して立ち上がり、激昂する。

 

「よくもやってくれたな!!だが次で決めてやる!!」

 

「いいや、次は無い。何故ならもう終わってるからだ」

 

球体状態を解除した時点でキャタピラレッグを利用して近付いていた。

その手にはバースバスターが握られている。

銃口をゾウガメロンに押し付けて引き金を引く。

 

「馬鹿め。俺に豆鉄砲は通じないことを忘れたか!!」

 

「それはお前の甲羅が万全だったらだろ?」

 

「何?あ、しまった」

 

「もう遅い」

 

先程ドリルアームで削られた部分に零距離で銃弾が放たれる。

薄くなった部分は容易く砕ける。

砕けた部分から体内に弾が入る。

入った弾は装甲の硬さゆえに貫通せず内部で弾ける。

ゾウガメロンは内から爆散していくのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ダイスサーベルを使ってアリコマンドを斬り倒しながら仁藤はリングをビーストドライバーの側面に差し込む。

 

ゴー!!バッバ、ババババッファ!!

「オラァ!!」

 

肩にバッファマントを装備すると強化された力のままに突進していく。

アリコマンドは受けとめようとするがまるでボーリングのピンの様に跳ね飛ばされていく。

 

「こいつらは倒してもキマイラの餌にはなりそうに無いんだよな」

 

「オオオオオオオオォォォォォォォ!!」

 

ビーストドライバーを見ながら呟いているとゾンビの怪人ヒカラビーノが包帯を伸ばして襲ってくる。

不意討ちに驚きながらもダイスサーベルで包帯を斬り裂きながら応戦する。

 

「ん?お前ファントムみたいだな。もしかしたらキマイラの餌になるかもな」

 

「何を言っている?」

 

仁藤の言動に首を傾げながら包帯を伸ばして攻撃を続ける。

ダイスサーベルで包帯を斬り裂きながらも仁藤は接近していく。

その間にヒカラビーノは周囲に転がる戦闘員に仮面を被せ、毒素を注入する。

そうすることでゾンビを増やせるのだ。

仁藤がある程度近付いたところでゾンビ化したアリコマンド達を動かさせる。

ある者は仁藤の足にしがみつき、ある者は腕を掴み、ある者は背中に飛び掛かる。

それぞれ仁藤の動きを拘束する様に絡みつく。

 

「動けまい!!」

 

「こんなくらいで俺が止まるかよ!!」

 

バッファの力を全開にして絡みついてくるゾンビアリコマンドを振り払って突進する。

油断していたヒカラビーノは包帯を咄嗟に放つもバッファマントによって全てが弾かれる。

衝撃音と共にヒカラビーノはは弾き飛ばされる。

されどゾンビの怪人しぶとさは筋金入りであり、ノロノロと立ち上がる。

その間に仁藤はダイスサーベルのサイコロを回転させた上でリングを側面に差し込む。

 

4!!バッファ!!セイバーストライク!!

「トドメだ!!」

 

左右にダイスサーベルを振るう。

それによってエネルギー体のバッファが二体ずつ放たれる。

そして挟み込むような形でヒカラビーノに突進する。

四体の魔力の塊に押し潰される形となって成す術なく爆散した。

 

「なんだ。魔力は持ってなかったのか」

 

若干ガッカリしながらも戦闘を続行する。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

流星はオートバイク部隊と激しくぶつかりあっていた。

自身の死すらいとわない突撃を続けるアリコマンドたちをメテオはヒラリヒラリと回避していく。

その上で狙いを定め、拳を叩き込んだり仲間同士で正面衝突させていく。

ある程度数が減るとマシンメテオスターからビームを放ち、吹き飛ばしていく。

 

「ええい、何をやっている」

 

「部下に当たるより自分で戦ったらどうだ?」

 

「うるさい!!俺の念力を喰らえ!!」

 

オオバクロンが念力を放つ。

だが、流星は視線で狙いを読んで回避していく。

そのままマシンメテオスターで突撃する。

オオバクロンは回避しようがなく突き飛ばされて地を転がる。

 

「拘束しろ!!」

 

アリコマンド達が一斉に流星に向けて飛び掛かる。

攻撃の為では無い。

流星の動きを止める為に捨て身の突撃をしたのだ。

オオバクロンの隣にトリカブトロンが並び立つ。

 

「手伝ってやろう」

 

「どうせ手柄が欲しいだけだろう?」

 

「否定はしない」

 

「まぁいい。ライダーを一人消せるならば安い物だ!!」

 

そうしてオオバクロンとトリカブトロンはアリコマンドごと流星を抹殺する為に攻撃を仕掛ける。

両者が共に猛毒の液体をぶちまける。

だが、それが流星に届くことは無かった。

 

「怪人らしいといえば怪人らしいが卑怯な奴らだ」

サターン、レディ?OK!!サターン!!

 

土星型のコズミックエナジーによる斬撃波が放たれ、アリコマンド達ごと毒液を吹き飛ばす。

弾かれた毒液は跳ね返るように怪人の方に飛び散る。

トリカブトロンは咄嗟にオオバクロンを盾にする。

 

「トリカブトロン!!貴様ァ!!」

 

「俺の為の犠牲となれ」

 

「いいや、お前もすぐに同じところにいく」

リミットブレイク!!OK!!

 

「な、いつの間に!?」

 

答えを聞く前にコズミックエナジーを纏った拳の連打が叩き込まれる。

全身を砕くような衝撃に包まれながらトリカブトロンは爆散する。

その横でオオバクロンも自身たちの毒液によって跡形もなく蒸発しているのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ネオショッカーと仮面ライダーたちの戦いが激化する中、その様子を眺める人影が二つ崖の上にあるのだった。

 

 





vsネオショッカー本格開戦でした

十六夜の新装備は検索したデータを力として具現化して十六夜に上乗せする装置です
例としては前回のは2号の力を十六夜に上乗せしたのです
ただし技一発で上乗せは解除されます

謎の二人は次回明らかに!

それでは、質問があれば聞いてください
設定纏めを活動報告にて公開中です
そちらでも質問があれば返信で聞いてください
感想待ってます!


仮面ライダーマッハ&ハートは良い物でしたよ
ハートもマッハチェイサーも格好良ければ話の中身も面白かったです
ただしドライブ勢の参戦は微妙に保留続行
平成ジェネレーションズのベルトさん次第です


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西瓜鎧と圧倒的な刃と用意されし物


地球から逃げ出す宇宙人と言う不穏な話なのでした
明かなフラグ
オーブも残り三話となりました
次回はジャグラーとの一騎打ち!
あの光線を遂に使用だとか!


それでは、本編です


 

「黒の菩薩樹残党が関わってないか調査しに来たが…………まさかこんなことになっているとはな」

 

「どうしますの?」

 

「もちろん加勢する。正体はどうあれ奴らは敵だ」

 

「分かりましたわ」

 

短く会話を終えると崖の上の二人は錠前を、ロックシードを取り出す。

腰には戦極ドライバーが巻かれている。

ロックシードが開錠されると共にクラックが開く音が響く。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「放て!!」

 

アルマジークの号令と共に戦車隊が次々と砲撃をする。

メテオの襲撃を受けて数は減っているが未だにその脅威は健在である。

バースとビーストが戦闘している領域にアリコマンドの被害を考えずに撃ち込まれていく。

 

「味方の被害はお構いなしのようだな」

 

「このままじゃこっちが追い込まれるだけだぞ」

 

伊達と仁藤は砲撃そのものは躱すがその直後に押し寄せてくる怪人たちに苦戦していた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「Wめ!!魔神提督の邪魔をするな!!」

 

「貴様の相手は我らだ!!」

 

「翔太郎!!」

「分かってる!!」

 

フィリップの声に叫び返す。

メタルシャフトで魔神提督と打ち合う中、黄金ジャガーとジャガーバンが背後より迫ってくる。

大幹部を相手にする中でそちらを相手にする余裕は無い。

冷や汗を流す中で予想外の救援が現れる。

 

ドリアンアームズ!!ミスターデーンジャラァァァァァァス!!

「背後からの攻めは卑怯でなくて?」

 

ギター音が混じる電子音と共に二刀のノコギリの様な刃ドリノコを構える仮面ライダーブラーボこと凰蓮・ピエール・アルフォンゾが割り込んだのだ。

黄金ジャガーの槍を巧みに弾き、ジャガーバンの剣を力技で弾きその上で盾ごと吹き飛ばす。

 

「卑怯かどうかなど重要では無い!!」

 

「確かに卑怯ではあるな」

 

叫び返すジャガーバンと納得する黄金ジャガー。

凰蓮はその反応は特に気にせず戦極ドライバーのカッティングブレードを倒す。

頭部のモヒカンにエネルギーが収束する。

それを開放し、極大なエネルギー体として頭を振るう。

その規模ゆえに黄金ジャガーとジャガーバンは防ぎながらも吹き飛ばされていく。

 

「あんたは?」

 

「ワテクシは味方よ。雑魚の相手はしてあげるから坊やはそいつに専念しなさい」

 

「誰が坊やだ!!」

「翔太郎、落ち着いて魔神提督に集中してくれ。悪いね、助かったよ」

 

それだけ言葉を交わす。

Wはそのまま魔神提督と切り結び、ブラーボはアリコマンドを薙ぎ倒していく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

砲撃を続ける戦車隊に一つの大きな塊が突っ込んでいく。

 

スイカアームズ!!大玉ビックバン!!

 

巨大なスイカ型の球体が唐突に落下する。

その質量で戦車を押し潰す。

 

「何が起きた!?アレに向けて一斉砲火だ!!」

 

アルマジークの指示で砲塔は全てスイカ球体に向けられる。

砲口が火を噴く前に球体は変形を始める。

 

ジャイロモード!!

 

飛行形態へと展開したスイカアームズは飛び上がって砲弾を全て回避していく。

更にお返しとばかりにスイカアームズも砲撃を放つ。

次々と戦車は火柱へと変わっていく。

 

「何者だ?」

 

流星はマシンメテオスターで低空飛行をするスイカアームズと並走しながら話しかける。

 

「呉島貴虎だ」

 

鎧の中からそんな言葉が響く。

その名を聞いて流星は正体を察する。

相手もそうと分かって名乗ったのだろう。

 

「ユグドラシルの後始末に各地を走り回ってる男が何故ここに?」

 

「今回の件にその問題が関わってる可能性があったんでな」

 

「そうか。なら、味方と思っていいんだな?」

 

「それで構わない」

 

それだけを確認すると互いに別の方へ顔を向ける。

貴虎は戦車隊を一つ一つ丁寧に潰して回る。

流星は砲撃を搔い潜りながら司令塔へと接近していく。

メテオスターから光弾を放ち、土煙を巻き上げる。

 

「ぬぅ!?」

 

ジュピター、レディ?OK!!ジュピター!!

「ホワチャ!!」

 

土煙を突き破る形で木星型のエネルギー体を拳に纏わせて流星が飛び出す。

メテオスターに乗ったまま木星の拳を叩き込む。

アルマジーグは球体形態になる間もなく拳を叩き込まれ吹き飛んでいく。

そのまま戦車に体がめり込む。

流星はそのまま追撃する。

 

「トドメだ!!」

メテオ!!リミットブレイク!!

 

バイクから飛び降り、青いオーラを纏ったキックを放つ。

戦車ごとアルマジーグを貫き、爆散させる。

そちらはたいして見もせずに怪人軍団に突撃していく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「さすがに限界か」

 

最後の戦車を叩き斬りながら貴虎は呟く。

戦車隊と打ち合いしては埒が明かなかったので鎧モードに変形させ、その薙刀で戦車隊を斬り裂いていたのだ。

その間は集中砲火を受け続けたがスイカアームズの強度でごり押しすることで切り抜けた。

それも限界。

スイカアームズは火花をあげながらかろうじて立っているだけだった。

 

「それ!!」

 

「ふん!!」

 

そこに河童の皿と鬼のこん棒が投げ付けられる。

河童の皿は爆発し、鬼のこん棒は装甲にめり込んだ。

その攻撃は確かにスイカアームズにトドメを刺すものだった。

あくまでスイカアームズにだが。

一際大きな火花をあげて爆発するスイカアームズの爆炎から人影が飛び出してくる。

上空からは二つの鎧が降ってきている。

 

ミックス!!メロンアームズ!!天下御免!!ジンバーメロン!!ハハッー!!

「はぁ!!」

 

二つの鎧は人影の上で融合し、人影と重なる。

それによって貴虎は仮面ライダー斬月 ジンバーメロンアームズへと変身した。

ゲネシスドライバーの方がエナジーロックシードの力は引き出せるがスイカアームズからチェンジするなら此方の方が手っ取り早いのだ。

そして貴虎にとってもこの姿で十分だった。

素早くこん棒を投げ付けたウニデーモンへと間合いを詰める。

 

「何ぃ!?」

 

「遅い!!」

 

その一閃は必殺の一閃。

戦極ドライバー開発初期からヘルヘイムで戦い続け、今も戦う男の一撃はただの一閃でも威力が違う。

ウニデーモンを無双セイバーで容易く真っ二つにする。

 

「これをくらえ!!」

 

その隙に皿爆弾を投げ付けるオカッパ法師。

だが、それはメロンディフェンダーを中心に展開された電磁バリアによって阻まれる。

ジンバーメロンアームズになったことでメロンディフェンダーの防御性能が向上している。

貴虎の手にはいつの間にかソニックアローが握られていた。

 

ロックオン!!

「吹き飛べ」

メロンエナジー!!

 

ソニックアローから緑の矢が放たれる。

皿爆弾を投げ続けていたオカッパ法師の胸に大きな黒々とした穴が開く。

鋼鉄より硬い甲羅すら貫かれていた。

 

「カーパ……………」

 

苦悶の声を細々と漏らしながらオカッパ法師は倒れながら爆散した。

貴虎はその間にも次々とアリコマンドを蹴散らしていく。

無双セイバーで裂き、ソニックアローで貫き、メロンディフェンダーを投げ付け吹き飛ばす。

嵐の様な勢いだった。

 

「ならば、これならどうだ!!」

 

ドロリンゴが貴虎の前に立ち塞がり、姿を変えていく。

ドロリンゴは姿を自由に変えられるのだ

しかし、貴虎は特に気にもしなかった。

 

「スカイライダーの力できさぐばぁ!?」

 

「遅い。それに姿を変えようと貴様は貴様だ」

 

姿が変わった直後に一閃斬り裂かれる。

姿をスカイライダーと同様にしようと中身はドロリンゴ咄嗟の対応すら出来ずに散るのだった。

 

「びびびびびびびびび~!!」

 

「わぉーん!!」

 

「ビーダー!!」

 

「ベイダー!!」

 

シビレイジンが電気を鞭に纏わせながら放ち、オオカミジンが殺人音波を叫ぶ。

ムササベーダー兄弟が上空から火炎を放ちながらナイフを持って襲い掛かる。

貴虎は戦極ドライバーに手を掛けるとゆっくりとカッティングブレードを降ろす。

 

メロンスカッシュ!!ジンバーメロンスカッシュ!!

 

メロンディフェンダーをサーフボードの様にして電磁バリアを張りながら滑っていく。

右手に無双セイバー、左手にソニックアローを構え刃にエネルギーを収束させる。

電気、殺人音波、炎を電磁バリアを弾きながら高速ですれ違う。

ムササベーダー弟のナイフを軽く弾き、正面から一刀両断する。

その後方のムササベーダー兄はナイフを持った腕をソニックアローで斬り裂き横一閃で裂く。

無双セイバーの弾丸をオオカミジンの口に撃ち込み黙らせた上でソニックアローで×字に斬り裂く。

シビレイジンが放つ電気を躱し、電磁バリアで反らしながら接近し、鞭を一瞬の接触で斬り裂いた上で無双セイバーを左肩から右腰まで振り下ろす。

纏めて三十秒も掛かっていなかった。

その全てを擦れ違い様に撃破し、爆散させた。

 

「今まで戦ってきた相手に比べればお前たちなど弱い」

 

勝ち残り去っていった男、自身の研究に全てを利用した男、救済を求めた男、全てを飲み込む機械を脳裏にちらつかせながら小さく呟く。

メロンディフェンダーを蹴り上げて持ち直す。

そのまま怪人軍団を吹き飛ばしていくのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「なめているのか。何故本気を出さない?」

 

「さてな。自分で考えてみたらどうだ?」

 

メタルシャフトを構えながら挑発するように呟く。

強がってはいるが息は切れ始めていた。

大幹部との一騎打ちであるエクストリーム無しでは苦戦するのも仕方ない。

それでもフィリップを風都に残したのは理由がある。

敵は何処にでも現れる。

この島に来る前に路地裏で出会った怪人のように。

照井もいるが念には念を入れた上でフィリップは置いてきたのだ。

 

「行くぜ」

 

「まぁいい。本気を出さぬならそのま、グゥ!?」

 

剣を振り上げた魔神提督の横に何かが突っ込んだのだ。

Wの右手には携帯電話の様な物が握られていた。

それを使ってハードボイルダー、否、飛行装備をしたハードタービュラーを呼び出したのだ。

 

「あらかじめ船に乗せといて助かったぜ」

「君が気を引いてたのもあるだろうけどね」

 

「貴様ら、舐めた真似を…………」

 

「さて、仕切り直しといこうぜ」

 

ハードタービュラーに跨りながら再びメタルシャフトを構えるのだった。

 






斬月&ブラーボ参戦でした

ジンバーメロンは小説版で登場しました
小説版はカブト以外良い物です

貴虎は基本的に圧倒的に強い扱いです
劇中でほぼ唯一戦極ドライバーでゲネシスドライバーを破った男ですから
開発者自ら認める性能差を覆した男ですから

それでは、質問があれば聞いてください
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感想待ってます!

どの世界と繋がってるかは設定纏めの世界関係の方参照です


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嵐のコマと現れし龍と名乗りし王


オーブは遂に最終決戦ですね!
ガイさんとジャグラーの因縁はAmazon版で!なので本編としてはほぼ決着編でしょう
劇場版でもジャグラーが暗躍するって確定してますが

エグゼイドはチームになってないチームと言う
根は良い奴らだけど面倒な連中過ぎるという

平成ジェネレーションズは最高でしたよ!
さすがは坂本監督って感じです

それでは遅くなりましたが本編です


「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

リングベアがブラーボに向けて一直線に突進する。

そのまま怪力任せに腕を振るうがあっさりと躱される。

しゃがんだ姿勢のままリングベアの動きに合わせて削るようにドリノコを振るう。

更に立ち上がりながら振り返ってもう一撃叩き込む。

 

「動きも力も良いけどワテクシにはまだまだ足りないわね」

 

「おのれ!!」

 

リングベアが繰り出す攻撃を正確に見切って次々と回避していく。

決して力任せな動きでは無い。

それでもブラーボに当たらない。

凰蓮の傭兵経験とアーマードライダーとしての経験で合わさった戦闘能力に付いていけてないのだ。

 

ドリアンスカッシュ!!

「ハァ!!」

 

ドリノコにエネルギーを収束させて斬り裂く。

振るう腕を関節をへし折る形で弾き、一瞬動きが止まったところを両断する。

そのままドリアン型のオーラを飛ばしてアリコマンドの群れを消し飛ばす。

 

「行くぞサイダンプ!!」

 

「おう、クラゲロン!!」

 

先にクラゲロンが突っ込んでくる。

隙だらけの突進であり怪しみながらも正面からドリノコを振るう。

そこまでクラゲロンの思惑通りだった。

衝撃を吸収する体でダメージを軽減しドリノコを受け止める。

その背後からサイダンプが全力で突進する。

クラゲロンは衝突の一瞬前に軟体動物が元であるがゆえの柔軟性でヒラリと離脱する。

ブラーボは咄嗟にドリノコを交差させて受け止める。

とはいえ、相手は突進を得意とするサイの怪人。

押され出すがそれでも受け止め続ける。

その間に片手を起用に動かしてカッティングブレードを倒す。

それを見たクラゲロンが慌てて声を上げる。

 

「下がれ!!サイダンプ!!」

 

「遅いわよ」

ドリアンスパーキング!!

 

頭部のモヒカンにエネルギーが収束し、極大のエネルギー体と化す。

それを力任せに頭で振るう。

当然至近距離にいたサイダンプは躱すことも出来ずに吹き飛ばされる。

追い打ちのようにカッティングブレードを倒す。

 

ドリアンオーレ!!

「トドメよ」

 

片方のドリノコにエネルギーを纏わせた上で投げ付ける。

回転するドリノコは投げ付けた先にいるクラゲロンに回転刃のように迫る。

防ぐ術は無く躱す間もなく到達するはずだった。

サイダンプが割り込む前は。

 

「ぐぅ……………」

 

「あら、男を見せるじゃない」

 

投げ付けると同時にブラーボは間合いを詰めていた。

サイダンプに突き刺さったドリノコを掴んで一気に振り下ろす。

大きな斬れ目が出た体を回し蹴りのように弾き飛ばす。

 

「サイダァァァァァァァァァァンプ!!」

 

爆散していくサイダンプにクラゲロンが叫びをあげる。

だがブラーボは待たずにドリノコを振るう。

両の刃にエネルギーは溜まり後は振り下ろすだけ。

その状態でなおクラゲロンは一矢報いる為に動いた。

擦れ違い様に互いの一撃が決まる。

結果として先に崩れ落ちたのはクラゲロンだった。

 

「良い一撃だったわ」

 

「ネオショッカーに栄光あれぇぇぇぇぇ!!」

 

深く刻まれた傷痕から火花を散らしながら爆散する。

ブラーボは胸をさすりながらも続けてアリコマンド達を狩っていく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

魔神提督はハードタービュラーで空を飛ぶWに向けて両腕を向ける。

指先からミサイルを次々と発射するが撃ち落とすことは叶わない。

メタルシャフトでミサイルを弾き飛ばしながらメモリを変える。

 

ルナ!!トリガー!!ルナトリガー!!

 

トリガーマグナムを手にして弾丸を放っていく。

ルナの力によってミサイルを正確に撃ち落とした上で魔神提督を追尾する。

 

「ぬぅん!!」

 

魔神提督は剣を引き抜き雷を纏わせた一閃で弾丸を全て叩き落す。

 

「やっぱりエクストリームが必要じゃないか?」

 

「いや、行けるだろ」

 

「確かにトリガーの火力なら魔神提督に致命傷を与えることはできるよ。でも、それは防がれなければの話だ」

 

「大丈夫だ。俺たちは別に単独で戦ってるわけじゃねぇんだ」

 

魔神提督と膠着状態とも言える戦いを繰り広げながら翔太郎は呟く。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

OK!!マーズ!!

 

灼熱の拳が叩き込まれコゴエンスキーは体内の冷凍ガスとの温度差によって全身にヒビが広がる。

そのまま拳を振り抜かれて粉々に砕け散るのだった。

 

「一気に決める!!」メテオストーム!!

 

メテオストームスイッチをメテオドライバーにセットしてメテオストームへと姿を変える。

メテオストームシャフトを手にしてアリコマンドを弾き飛ばしていく。

 

「俺の運命は嵐を呼ぶぜ!!」

 

マダラカジンとタガメラスの攻撃をさばきながらも高速移動して攻撃を仕掛けようとしているグランバザーミーに気付いていた。

アリコマンド達を弾き飛ばしてでも強引に攻撃してきたがそこを逆に利用してメテオストームシャフトによる突きを放つ。

だが、それはギリギリのところで回避する。

アリコマンドを盾にしてどうにか攻撃そのものはやり過ごす。

 

「思った以上に速いな。なら、これならどうだ」

メテオストーム!!リミットブレイク!!

 

メテオストームスイッチをメテオストームシャフトにセットする。

グランバザーミーに攻撃を当てるには一手足りない。

ならば、その一手を埋めればいい。

タガメラスの影からグランバザーミーが迫るのを視認した直後にメテオストームシャフトでタガメラスを突く。

グランバザーミーは攻撃の隙を突く為に影から高速移動して鋏を構え得ようとするがその前にメテオストームシャフトの先端から射出された物がタガメラスを貫く。

 

「メテオストームパニッシャー!!」

 

予想外の攻撃にグランバザーミーは対応出来ずに右足に直撃する。

メテオストームシャフトから放たれた蒼い彗星のようなコマはアリコマンド達を貫いた上でスイッチに戻る。

畳み掛ける様に流星はメテオスイッチをドライバーにセットする。

 

メテオ!!リミットブレイク!!

「ダァァァァァァァァ!!」

 

向かってきていたマダラカジンを貫き嵐の様なエネルギーを纏いながら突き進む。

躱そうにも右足を損傷したグランバザーミーには無理であった。

悪あがきに炎を吐き、鋏を振るう。

炎は嵐に吹き飛ばされ、鋏は腕ごと弾き飛ばされる。

メテオストライクはグランバザーミーを貫き通すのだった。

 

「ネオショッカー万………歳……………!!」

 

火花を散らしながらグランバザーミーは爆散していった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「貴様中々やるようだな」

 

「貴様こそな」

 

貴虎は黄金ジャガーと相対していた。

黄金ジャガーは槍を構え、貴虎は無双セイバーと盾を構える。

互いにじりじりと間合いを計る。

 

「隙だらけだぁぁぁぁぁ!!」

 

そんな時に貴虎の背後からジャガーバンが迫る。

当然気付いていたのでメロンディフェンダーで防ごうとするが、その前にブラーボが割り込む。

ジャガーバンの剣を弾き飛ばすと同時にドリノコを振るう。

ジャガーバンは慌てて盾で防ぐが対応しきれず後退していく。

 

「大丈夫ですか、メロンの君」

 

「大丈夫だ。そちらは任せていいな?」

 

「えぇ、お任せあれ!!」

 

その間も黄金ジャガーは構えは解かなかったが攻撃は仕掛けてこなかった。

 

「作戦では無かったのか」

 

「当たり前だ。戦いとは正々堂々やる物だ」

 

「そうか」

 

「あぁ」

 

「では、始めよう!!」

 

合図も無しに同時に動き出す。

槍と無双セイバーが火花を散らし始める。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「鬱陶しい奴らめ!!」

 

膠着状態から動きが無い戦いに魔神提督が苛立ち始めると剣に纏われし稲妻が大きくなる。

魔神提督の操る怒りによって強まるのだ。

それを振るおうとした時だった。

魔神提督とWの間にドクガンバが割り込む。

 

「何を………………」

 

魔神提督が続きを言う前にドクガンバに弾丸が叩き込まれて爆散する。

それによって風下の魔神提督に向けて毒鱗粉が振り掛かる。

慌てて剣を振るい稲妻を持って鱗粉を焼き払う。

 

「あらよっと!!」

 

剣を振るったその瞬間に手首に攻撃を受けて剣を取り落とす。

更に右腕に何かが巻き付く。

そこでカメレオマントを装備して姿を消していたビーストを視認できるようになる。

 

「貴様……………!!」

 

怒りに震えながら左腕の指ミサイルを放とうとする。

その前に左側頭部に弾丸が直撃する。

とはいえ、一発では怯ませるくらいの効果しかない。

けれど、一瞬意識を向けさせれば十分だった。

クレーンアームが魔神提督の左腕に巻き付く。

 

「き、貴様等ァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

「今だ!!やっちまいな!!」

 

「おう!!」

 

隙を逃すわけが無く即座にトリガーマグナムにトリガーメモリをセットする。

銃口にエネルギーが充填されていく。

魔神提督は怪力に任せて拘束を振り解こうとするがもう遅い。

 

トリガー!!マキシマムドライブ!!

「「トリガーフルバースト!!」」

 

翔太郎とフィリップの声に合わされて無数の弾丸が放たれる。

一発一発の威力では魔神提督に致命傷は与えられない。

だが、ルナの力があれば弾丸は操作できる。

それによって正確に一ヶ所に全弾集中させる。

幾ら装甲が頑強だろうと耐えられる物では無い。

直撃と同時に拘束が解かれ、魔神提督は成す術も無く吹き飛ぶのだった。

 

「終わったか?」

 

「終わったんじゃねぇか?まだ雑魚は残ってるけどよ」

 

「いや、奇妙だ」

「どうした、フィリップ?」

 

「何故奴の身体は爆散しない?」

「幹部だし他の怪人とは違うんじゃないのか?」

 

「お、のれ……………」

 

小さく声が漏れる。

確かに致命傷ではあったのだろう。

だが、一気に終わらせる程でも無かったらしい。

加えて戦いはまだこれからである。

それを告げるべく上空に巨大な銀色のオーロラが出現する。

 

「おいおい、一体何が来やがるんだ?」

 

「何をしている、魔神提督」

 

声を轟かせながらそれは姿を現す。

その姿はまさしく巨大なドラゴン。

ネオショッカーの頂点、ネオショッカー大首領がこの世界に現れたのだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

一方、十六夜と釈天はクノックス宮殿にあった空間の亀裂から箱庭の大迷宮まで来ていた。

プリトゥは何者かの襲撃を受けたグリーの治療の為に外に残っていた。

そこで敵と思われし稲妻を纏った剛弓を持つ青髪の少年と”平天大聖(天を平定せし大聖者)”牛魔王、そして純血の龍種の少女と相対していた。

釈天は青髪の少年を見たまま固まっていた。

よほどの衝撃を受けた様子だった。

 

「____世界王よ。お前が姿を見せたのなら名乗りを上げる、という予定では無かったかな?」

 

「私が名乗るのですか?」

 

「当然だ。客将の俺達では華に欠けよう。我らが連盟の名、高らかに名乗られよ」

 

微笑んで更に一歩下がる牛魔王。

世界王と呼ばれた龍種の少女は、コホン!!とわざとらしく咳き込んで玉座を立ち、両手を広げる。

十六夜は身構え、臨戦態勢を取った。

仮にも相手は純血の龍種。

つまりは最強種の一角だ。

もし戦うのであれば、死闘を覚悟せねばならない。

世界王と呼ばれた少女は誇るように、そして楽しそうに己が組織の名を口にした。

 

 

「では、改めて名乗りましょう。___心して聞くと言い、終末の英傑よ!!護法の王よ!!我らは太陽主権の戦争に参戦し”終末論(カリ=ユガ)”を乗り越える為に集結した。十天の王座!!其の名は!アヴァターラ!!”此度の主権戦争を制する、最強の王群であるッ!!」

 

 

世界王が天を指すと、巨大な旗印が三人の背後に靡いた。

十人の王を示す王冠と太陽の運行を意味する転輪が描かれている。

その旗印が何を意味するのかを語ろうと胸を張る世界王だったが、それは叶わなかった。

 

彼女が天を指さした途端_____迷宮に、地鳴りが響き始めた。

間もなく空間を打ち破るように汽笛が鳴り、迷宮の空を覆い尽くすように巨大な精霊列車が落下してきたのだ。

 

 





ネオショッカー大首領&アヴァターラ参戦でした!

魔神提督はまだ終わりでは無いのです
大首領もただの大首領では無かったり

次からは列車パートに戻ります

それでは、質問があれば聞いてください
設定纏めを活動報告にて公開中です
それでは、感想待ってます!




これより平成ジェネレーションズのネタバレ注意

活躍しないライダーは存在しないという最高具合です
先輩組も美味しい活躍します
鎧武はライブラリ音声ですが違和感はそこまで無いです
ある意味一番美味しい参戦の仕方をしますし
マイティブラザーズやパズルゲームやパックマンはほぼ今後の伏線要素ですね
天下統一魂はほぼオレスペクターネクロム融合形態みたいなものです
見て損は無いどころか興奮し続けれる内容です



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光る矢と虚空の鍵穴と新たなるグリード


遂にラスボス!マガタノオロチ出現!
圧倒的な強さでオーブを倒してしまうのでした
そして嫌がらせ全開なジャグラーという

クバル散る!
本当に無様に散るのでした!
ある意味ジニス超恐ろしい!

ゲンムの正体が明かされるのでした!
メタ的には分かってたけどね!
来週はいよいよゾンビゲーマー出現
そしてまさかのレーザー退場である
いや、促販リストに名前が無いから察してはいたけどさ


それでは、本編です


精霊列車内にて焔はスカハサに事情を聞いていた。

そんな中でスカハサが突如顔を強張らせ、警戒心を募らせる。

 

「…………あの未熟者。怪牛を仕留め損なったか」

 

「は?」

 

「ごめん、事情説明中止。これヤバいやつだ」

 

素っ頓狂な声を上げる焔。

既視感ある浮力が彼を襲ったのは、その直後だった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

彩鳥の放った一撃は精霊列車の上空に、激しい鮮血を撒き散らした。

そちらに気が向いた一瞬だった。

三つの音声が同時に響き渡った。

 

フルチャージ!!フルチャージ!!ブラッドオレンジスカッシュ!!ジンバーザクロスカッシュ!!

 

一瞬の隙が生じたヤモリジンにネガ電王、幽汽、武神鎧武が迫る。

気付き、咄嗟に鞭を振るうが遅かった。

鞭は幽汽に斬り裂かれ、距離を詰められ一閃入れられる。

一閃を受け硬直した体はネガ電王が放った弾丸に撃ち抜かれる。

トドメに果実の切り身の様なエネルギー体を潜り抜けて放たれた武神鎧武のキックに貫かれる。

 

「我がネオショッカーに栄光あれ!!」

 

断末魔と共にゼネラルモンスターの姿へと戻り爆散していった。

晴人は彩鳥を守るように立ち塞がる。

再び三対一の形で向き合う。

そこに高速飛行する何かが飛び込んでくる。

 

「やはり、ゼネラルモンスターごときでは駄目だったか」

 

「何者だ?」

 

「我が名はネオショッカーグリード。大首領の命により参上した」

 

角の生えた兜のような頭部、胸には龍の顔、背には龍の翼を生やすグリードが剣を構える。

胸元の龍の頭部より火球を放ち牽制した上で稲妻を纏いし剣を振るう。

再び乱戦が開幕しようとしていた。

彩鳥は背後の戦闘を気にかけつつも術師に集中する。

一矢によって撃ち抜かれた首は、クルリクルリと宙を舞っている。

雨風を読み切って放たれた一矢は天を穿つが如く直進し術師の首を撥ね飛ばした。

其れは人の身で可能な技ではない。

神域と呼ばれる程に研鑽された武錬があって初めて実現する一矢だ。

反撃を予想していなかった術師が為す術もなく的になったのは必定だろう。

次いで放たれる三本の矢。

何れも必殺の軌道を描いて首無し死体に迫る。

だが首の無い死体に矢を放つなど、死体に鞭を打つより卑劣な行為だ。

首を飛ばし生命活動を停止させた以上、これ以上の行為は必要ない。

しかし、違和感はあった。

首を撥ね飛ばされた胴体は撃ち抜かれたまま硬直している。

不動のまま滞空していた首無し死体は___落下することなく、上空に留まっていたのだ。

 

「……………ちぇっ。バレちゃ、」

 

首無し死体が動き、クルリクルリと弧を描いて落下してくる生首を受け取り胴体に装着した瞬間だった。

切断面が癒着する一瞬前に淡く光り、爆発を引き起こしたのだ。

更に胴に放たれた三本の矢が突き刺さる。

今度は矢自体が淡く光り、内から弾ける。

精霊列車の上空に大量の肉片が撒き散らされる。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

彩鳥の背後の甲板では此方は此方で上空の事など気にせずに激しい戦いが続いていた。

幽汽の斬撃を躱しながら火球を至近距離で放ち吹き飛ばす。

武神鎧武が放つ矢を剣で斬り払いながら距離を詰めようとする。

ネオショッカーグリードが矢を斬り払ってる隙を狙ってネガ電王が斬り掛かる。

ネガデンガッシャーの刃の側面を叩いて弾き飛ばす。

そのまま腰を振って龍の尾でネガ電王を武神鎧武の方へと殴り飛ばす。

次いで斬り掛かってくる晴人の対応をしようとするが手が遅れる。

一撃目で剣を弾かれ、二撃目を装甲が厚い腕で受け止めようとしてそのまま斬り裂かれる。

左腕からセルメダルを溢れさせながら後退すると背中に矢が突き刺さる。

動きが止まったところに幽汽の荒々しい一撃が叩き込まれそうになる。

ギリギリのところで剣で受け止め蹴りを入れる。

前方と後方から晴人とネガ電王がほぼ同時に斬り掛かる。

ネガ電王の方に踏み込み、足払いで体を浮かせた上で掴み晴人の方へと投げ飛ばす。

そこに火球を放ち続け纏めて吹き飛ばしを狙う。

晴人は投げ付けられたネガ電王を避けると火球をお構いなしに突っ込んで行く。

爆風に押されはするが装甲には傷一つ無い。

間合いを詰めて鍔迫り合いになったところで幽汽が大振りに剣を振り抜く。

ネオショッカーグリードはさすがに火花を散らしながら体勢を崩す。

だが、インフィニティースタイルである晴人は正面から受け止めた上で幽汽を斬り飛ばす。

 

ターンオン!!ハイハイハイハイハイタッチ!!プラズマシャイニングストライク!!

「ハァァ!!」

 

アックスカリバーをアックスモードに変えてプラズマシャイニングストライクを発動させる。

アックスカリバーを上空に投げ付け、遠隔操作によって直角にネオショッカーグリードへと落ちていく。

ネオショッカーグリードは転がるようにギリギリのところで回避する。

アックスカリバーは甲板を貫き姿が見えなくなる。

 

「隙だらけだ!!」

 

「それはどうかな?」

 

ネオショッカーグリードが火球を放ち、ネガ電王がネガデンガッシャーガンモードで乱射する。

その全てを装甲で弾き飛ばしながら腕を振り上げる。

 

「ぐぉ!?」

 

甲板を突き破り、ネオショッカーグリードの足元からアックスカリバーが出現する。

セルメダルを血が噴き出すかのように撒き散らす。

そこから回るように腕を振るい、セイヴァーアローを構える武神鎧武、ネガデンガッシャーを組み替えていたネガ電王、立ち上がろうとしていた幽汽を斬り飛ばす。

武神鎧武はダメージによって姿を維持できなくなり、ブラッドオレンジアームズの姿に戻る。

ネガ電王も幽汽も変身が解け、イマジンの姿に戻る。

 

「こりゃ分が悪いか………………」

 

呟いた直後に上空でアステリオスが戦斧を構えるのを見る。

そこで何をしようとしているのか察する。

 

「さすがにアレに巻き込まれるつもりはねぇな。一旦引くか」

 

ネガタロスは言うなり他の面々を連れて自分の列車に飛び移る。

同時に”サン=サウザンド”号からネガデンライナー(改)feat.幽霊列車が離れ、何処かの異空間へと消えていく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「どうやら今回は此処までのようだな」

 

「決着は付けなくていいのか?」

 

「それはまたの機会としよう」

 

シュバルツ将軍と闇博士マーブロも時を同じくしてクライナーに乗り込んで消えていった。

まるで何か察したかのように。

 

「俺達はどうする?」

 

「あいつらが引いたなら仕事も終わりだ。あとはあっちで片付けるべきことなんだろう」

 

虹野明とタンクトップシャドーもビルドレッシャーに乗り込んでレインボーラインへと帰っていくのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

少し時を遡る。

彩鳥は爆発を眺めながらも追撃に矢を放つ。

 

(やはり、生きてましたか)

 

爆発の直前に動いた死体を思い返しながら考える。

爆発を受けたはずの死体は胴に空いた穴を何時の間にか塞ぎ、首も癒着させる。

 

「へぇ、中々やるじゃん」

 

カッと瞳を見開いた術師は雨風を凌いでいたローブを脱ぎ捨て、先程まで流体を操っていた七つの宝玉を奔らせる。

彩鳥が射た矢は、空を駆ける七つの宝玉によって阻まれた。

 

(………………それにしてもやはり先生に何か仕込まれましたか)

 

スカハサとのやり取りを思い出す。

本来なら矢が爆発するような恩恵を彩鳥は持っていない。

それなのに何故かそれは起きた。

ならば、要因として考えられるのはアレしか無かったのである。

何がどうなって爆発と言う結果が発生しているかは分からないがスカハサが与えた物では無いのも察している。

スカハサの言葉から考えても彩鳥の中で動き始めていた何かを安定させたような口振りであった。

何よりスカハサは弟子にこういう恩恵を与える様なタイプでも無い。

結論が出ないことを考えても仕方ないと頭の片隅に置き、剛弓を仕舞う。

あのタイミングで防がれるのなら、この距離ではもう射貫くことは難しい。

先程の油断ももう無いだろう。

 

(白い毛皮の虎に、首を斬られ、胴に穴が開いても死なない身体。そして虚空を駆ける宝玉。…………なるほど。先生が言っていた中華の俗物とは彼女のことでしたか)

 

敵の出自を看破する彩鳥。

此処まで完璧に符合する伝承は世界広しといえど一つしか無い。

しかし彩鳥の予測が正しければ、敵は魔王に比肩する敵ということになる。

それも彼女の記憶が正しければ、遥か昔に封印された魔王の一人だ。

真実ならば、先手を取れても侮ることは出来ない。

警戒を怠ることなく敵を睨み付ける彩鳥。

だが首を斬られ、胴に穴を開けられた術師は特に何をすることもなく、薄い笑みを浮かべたまま精霊列車を見送った。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

術師の正体は中華神話”封神演義”の申公豹であった。

今回の太陽主権戦争のゲームルールに合わせて年齢制限をクリアする為に肉体年齢を下げているようだ。

白額虎とアステリオスとようやく合流する。

幾つか会話を済ませるとアステリオスは右手に己の本来の武器である”ラブリュス”を取り出す。

ケラヴノスに比べるとかなり小さいが、此れは元々戦に使う為の武器では無い。

真の用途は別にある。

鬼気迫る形相で体を起こしたアステリオスは、高速で去っていく精霊列車に両刃斧(ラブリュス)の先端を向けて睨み付ける。

何かを察したのか精霊列車と激しく対立していた者たちは次々と離脱していっていた。

元々アステリオスにとっては邪魔でしか無かったので好都合である。

彼は依然として”ミノタウロス”に救いが必要だとは思っていない。

しかし、どうしても解き明かさねばならない謎が出来た。

それを知るのが西郷焔と云う人物ならば、此処で逃がす訳にはいかない。

迷宮の語源に相当する”ラブリュス”の戦斧を掲げたアステリオスは両手を捻るようにして______鍵穴を開く様に、虚空を斬った。

 





ネオショッカーグリード参戦!
登場作はHEROSAGAです!

乱戦は一旦終わるのでした
ネガタロスとしてはゲームに巻き込まれる気は無いので引きました

彩鳥の力は十六夜と似たような物ではあります
本人自覚無しで、無意識に使ってるからあの形となってます

それでは、質問があれば聞いてください
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落下列車と禍々しき血と刃の巨人

間を空けてすみませんでした!

何ともあれオーブ最終回良かったですね!
ジャグラーとの共闘からの諸先輩方の力とかね!
オリジンサーガもAmazonで配信中!
綺麗なジャグラーが見れるよ!

エグゼイドは本編にもブラザーズ参戦!
入手経緯は劇場版と違うけど要因はM内のバグスターウィルスっっぽい?
何はともあれ活躍が楽しみです
え?月末にはパラドクスのかませ?
それは置いといてですよ!

それでは本編です


 

視界が七つの光に包まれる。

直後に精霊列車は落下を始める。

眼下には迷宮が見える。

甲板にいた晴人は周囲を見渡して状況を把握する。

同時にネガタロス達が何故撤退したのか察する。

さすがにこの状況に巻き込まれるのは避けたかったのだろう。

何はともあれこのまま落下するのはマズいだろう。

どうにかして落下速度を落とそうと動き出したところで背後から火球が放たれる。

 

「まだやるのか?」

 

「当たり前だ。落下した方が此方にとって都合が良いからな」

 

「そうかよ」

 

何時の間にかネオショッカーグリードが起き上がっていた。

セルメダルをこぼしている傷口は塞がっている。

翼を広げて晴人に向かって迫ってくる。

晴人はしゃがんでネオショッカーグリードの攻撃を避ける。

甲板にソードガンを突き刺して身を支えながらリングをウィザードライバーにかざす。

 

フレイムドラゴン!!ボーボー、ボーボーボー!!

コネクトプリーズ!

ドラゴタイム!ファイナルタイム!

オールドラゴン、プリーズ!

「ダァァ!!」

 

フレイムドラゴンに姿を変えると素早くドラゴタイマーを取り出す。

早急に操作してウィザードライバーにかざす。

空中に身を投げ出すと同時に四色のドラゴンが晴人の身体と重なる。

両腕にドラゴヘルクロー、背にドラゴウィングとドラゴテイル、胸にドラゴスカルを装備したオールドラゴンとなる。

そのままネオショッカーグリードと正面から衝突する。

剣とドラゴクローが火花を散らし、熱線と火球が入り乱れる。

ドラゴウィングで竜巻を発生させて火球を消し飛ばした上でネオショッカーグリードを拘束する。

台風の目とも言える場所から突撃しドラゴクローを振るう。

剣によって防がれるがそのまま弾き飛ばす。

弾き飛ばした先に回り込み、ドラゴテイルを叩き込む。

ネオショッカーグリードはセルメダルを撒き散らしながら吹き飛んでいく。

 

「やはり強いな。…………………今は(´´)そちらが」

 

「何?」

 

「事実を言ったまでだ」

 

牽制するように火球を放ちながらネオショッカーグリードが呟く。

ドラゴクローから斬撃波を放ち、火球を全て斬り裂き、ドラゴスカルから熱線を吐き出す。

左腕に熱線を掠らせながらギリギリ回避する。

その上で精霊列車に向けて火球を放つ。

晴人はその火球の悉くを撃ち落としていく。

時間稼ぎだとは理解している。

それでも撃ち落とし損ねるわけにはいかないのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

銀色のオーロラから姿を現したネオショッカー大首領の姿はあまりにも強大だった。

W達の数倍どころでは無いサイズのドラゴンだった。

 

「なんだ、こいつは……………」

「検索を完了した。奴はネオショッカーの大首領だ。かつて八人ライダーが倒したはずのね」

 

「おいおい、何でそんな大物が……………」

「味方の回収だったらいいんだけどね」

 

様子を見るようにしながら距離を取る。

ネオショッカー大首領の視線は魔神提督の方を向いていた。

魔神提督は火花を散らす体を押して口を開く。

 

「申し訳ございません、大首領……………」

 

「今の私は気分が良い。今回のみチャンスをやろう」

 

言ってネオショッカー大首領は自身の手から大量の血液を落とす。

それは魔神提督を包み込むように落ちる。

大首領の血液を浴びた魔神提督の眼が紅く輝く。

それに合わせるように血液から目を光らせたアリコマンドたちが誕生していく。

 

「マジかよ」

「検索結果にこんな能力は記されていない」

 

「当たり前だ。我が新たなる力は此処では無く”箱庭”で得たものだからな。星の本棚にすら載っているはずが無いだろう」

 

話す間にも血は広がり未だに生き残る怪人たちに力を与える。

ドブネズゴン、マントコング、タコギャング、キギンガー、ドラゴンキング、ガマギラス、ゾンビーダ、ドロニャンゴー、ヘビンガー、カガミトカゲの眼が輝く。

そして、黄金ジャガーとジャガーバンもその力を受け取る。

 

「”絶対悪”たる三頭龍の因子をこの身に取り込み、私は無限の兵隊を統べる存在となったのだ!!」

 

ネオショッカー大首領の瞳がギョロリと動く。

一つの瞳のはずだった。

だが、その内部に見えるのは三つの眼だった。

三頭龍の因子が肉体に影響を与えているのだ。

ネオ生命体が回収した三頭龍の因子。

それを取り込むという実験の成果を確かめる為の襲撃だった。

ゆえにネオショッカー大首領が自ら現れるのだった。

魔神提督も何時の間にか起き上がっていた。

トリガーフルバーストによって受けたダメージも何時の間にか消えていた。

その手には何故かガイアメモリがあった。

 

「我が究極の力を見せてやろう」マジンテイトク!!

 

そのメモリは魔神提督そのもののメモリだった。

メモリは胸板に刺さり、魔神提督の体内に入る。

 

「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 

叫びと共に周囲の足元が吹き飛ぶ。

外見そのものはそう変わりは無かった。

だが、纏う雰囲気は先程の倍以上に感じられた。

 

「アレは以前に見たな」

「あぁ、自身の記憶を取り込んで強化する手法だ。彼らの得意分野なんだろう」

 

死神博士メモリを思い起こしながら呟く翔太郎とフィリップ。

周囲の状況は絶望的だった。

正面にはネオショッカー大首領と魔神提督。

囲むように強化された怪人と戦闘員がいる。

絶対絶命と言えなくも無かった。

だが、そこで止まるような彼らでは無い。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ったく、また湧いてきやがったな。しょうがねぇな。大盤振る舞いだ!!」

クレーンアーム!!ドリルアーム!!ショベルアーム!!キャタピラレッグ!!カッターウィング!!ブレストキャノン!!

 

伊達はバースドライバーにセルメダルを流し込んで全武装を展開装備する。

バースデイに姿を変えた伊達はそのまま怪人軍団に突っ込んで行く。

カッターウィングで高速移動しながら突進し、キャタピラレッグで削っていく。

着地と同時にクレーンアームを鞭のように振るう。

先端に付いたドリルアームも合わさって吹き飛ばされていく。

 

「GAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

 

突進してきたドブネズゴンをショベルアームで掴み取ると地面に叩き付ける。

そこからキャタピラレッグとカッターウィングの出力を合わせた速度で地面を引きずる。

幾人かの戦闘員を巻き込みながら火花を散らす。

最終的に岩盤に叩き付けられて爆散する。

 

「強化されてようが大した程じゃねぇな」

 

「それはどうかな」

 

全身に油を纏ったガマギラスがその油によってショベルアームの攻撃を無効化する。

油で滑って攻撃が当たらないのだ。

一方的にイボ爆弾を投げ付けてくる。

 

「大首領の力で油は無尽蔵だ!!」

 

「そうかい。なら、これならどうだ?ブレストキャノンシュート!!」

 

「あ」

 

イボ爆弾を躱しながら狙いを付けてチャージしていたエネルギーを開放する。

ブレストキャノンから放たれた光線がガマギラスを貫き、背後の戦闘員達すらも吹き飛ばす。

幾ら油でも光線は滑らせることが出来ない。

ガマギラスは間抜けな表情のまま爆散した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「しつこい奴らだな!!」

 

無限に湧きだすゾンビーを相手にしながら仁藤が叫ぶ。

ゾンビーダが配下であるゾンビーを無限に生み出して操っているのだ。

 

「無限の兵士相手に何処まで持つかな」

 

「一気に全部喰らってやるよ!!」

ハイパー!ゴー!ハイ!ハイ!ハイ!ハイパー!!

 

仁藤はビーストドライバーにハイパーリングを差し込み姿をビーストハイパーに変える。

腕の装飾品を鞭のように振るい、吹き飛ばした上でミラージュマグナムの弾丸を叩き込む。

周囲のゾンビーを全て消し飛ばした上でゾンビーダにも弾丸を叩き込んで杖を破壊する。

それと同時にゾンビーが灰となって消える。

 

「しまった!!」

 

「終わりだな!!」ハイパー!!マグナムストライク!!

 

ミラージュマグナムにハイパーリングを差し込んで魔力を充填させる。

獅子の弾丸が放たれ、ゾンビーダがその身に宿す魔力ごと喰らい尽される。

そのまま背後から迫っていたカガミトカゲに弾丸を叩き込む。

だが、それは鏡分身だった。

 

「貴様では見抜けまい!!」

 

鏡の力を使い分身した状態で仁藤に迫る。

左手にミラージュマグナム、右手にダイスサーベルを構えて迎え撃つ。

隙を見てダイスサーベルにハイパーリングを差し込む。

 

6!!ハイパー!!セイバーストライク!!

「こんなもん、全部一気に武器飛ばせばいいだけだろ!!」

 

ダイスサーベルからカメレオ、ドルフィン、ファルコ、バッファの魔力体が大量に放たれる。

視界内に居たカガミトカゲと戦闘員を軒並み吹き飛ばす。

全ての鏡は砕け散り、本物が姿を現す。

 

キックストライク!!

「トドメだ!!」

 

「おのれ、こんな手で……………」

 

蹴り抜かれ、魔法陣に包まれ爆散するのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「無駄に足掻きおるわ」

 

変わらず抵抗するライダー達に対して呆れるように呟く。

その上で口から火炎を吐こうとする。

念力など様々な能力を使えるネオショッカー大首領だがこの場で絶望感を与えるならば火炎が最適と判断したのだ。

だが、その火炎が吐かれることは無かった。

ヒーローとは仮面ライダーだけでは無い。

彼らは必要とされる時、前置きすら無く現れるものだ。

 

「オラァ!!」

 

次元の穴が突如開き、銀の鎧を纏いし巨人が出現する。

巨人は即座に鎧を解除し、ネオショッカー大首領に向けて蹴りを放つ。

完全なる不意討ち。

火炎を吐く直前にネオショッカー大首領は吹き飛ばされるのだった。

 

「ん?此処は箱庭じゃねぇな。次元を移動する気配を感じたんだが………………外れだったか」

 

頭を掻く様にしながら巨人が呟く。

どうやら巨人は箱庭を目指して次元を移動していたらしい。

その目印として次元移動の気配を利用したが、箱庭では無くこの世界に辿り着いたようだ。

起き上がりながらネオショッカー大首領は巨人を睨み付ける。

 

「貴様ァ………何者だ!!」

 

「俺か?俺はゼロ、ウルトラマンゼロだ!!」

 

二本の刃を構えし巨人が高らかに名乗りを上げるのだった。

 

 






ゼロ参戦!
割とそこそこ前から伏線自体は張ってたり
本格的なのは次回からです
ゼロクロニクルやってるからって狙ったわけでは無いですよ

ネオショッカー大首領は魔改造されてます
三頭龍の因子以外にも色々加わってたりとか
大首領があっさり前線に出るのはライスピに近い事情だったり


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燃える拳と強靭なるドラゴンと鎮まりゆく決戦


ゼロクロニクルはまずベリアル銀河帝国!
列伝と合わせたら何回目だ!って感じではありますが
何時見てもマルチバースは凄い光景です

アザルドレガシー降臨的な
過去回想の時もキチンとジョージだったという拘り振り
不死身系の末路は宇宙追放ですが一度やってるという
あるなら太陽逝きですかね

一人で二人なマイティブラザーズ!
平成ジェネレーションズ見てたら今更な永夢のゲーム病患者判明
何で肉体消滅してないかはたぶんパラド辺りが関係してそう
どうみても誕生してたのパラドでしたし

それでは、本編です


 

「ウルトラマン……………そうか、貴様がヤプールが言っていた」

 

「何だ。お前はヤプールの関係者か。なら、話が速いぜ!!」

 

ゼロは両手に持つゼロスラッガーを打ち合わせながらネオショッカー大首領に向かっていく。

ネオショッカー大首領は火球を吐き出しながら翼を広げ、再び身を浮かす。

火球を斬り裂きながらゼロも飛びつくように斬り掛かる。

すると、ネオショッカー大首領の影が蠢き、刃のようになって襲い掛かる。

 

「何!?」

 

防御はしたが不意を突かれた為、ゼロスラッガーは弾き飛ばされる。

更に迫りくる影の刃を後方に飛び下がりながら回避する。

三頭龍の因子をその身に取り込んだネオショッカー大首領は三頭龍の能力の一部を使えるのだ。

影の刃もその一つである。

 

「エメリウムスラッシュ!!」

 

額から細かい光線を連射して影の刃を撃ち抜く。

あらかた消し飛ばした上で改めてネオショッカー大首領に飛び掛かる。

ウルティメイトブレスレットからゼロランスを取り出して突く。

ネオショッカー大首領は側面を叩き、弾き飛ばす。

ゼロはランスを回しながら何度も突く。

 

「噂通り凄まじいな、ウルトラマンゼロよ」

 

「どんな噂か知らねぇがテメェらが次元を渡り歩いて何かを企んでいることは俺も知ってはいるぜ。本拠地が箱庭だってこともな」

 

箱庭はありとあらゆる世界線と時間軸と繋がっている。

ゼロはウルティメイトゼロとなることで世界を超えれるが目標座標が無ければ狙った場所には行けない。

加えて箱庭は幾多もの世界と絡み合っているがゆえに入りにくい。

だから、ゼロは待っていたのだ。

ダイナの声を起点としてそこから生じる時空の歪みを察知し狙いを付けて移動する。

成功率は低い。

現に今回も箱庭では無くこの世界に現れた。

そんな事情を知ってか知らずかネオショッカー大首領は笑い飛ばす。

 

「何が可笑しい?」

 

「確かに今の我らの主な活動場所は箱庭だ。だが、本拠地は別だ(´´´´´´)

 

「何だと?どういう意味だ!!」

 

「さてな。だが、まぁ貴様はちょうどいいな」

 

「何がだ」

 

「我が新しき力の試運転にだよ。我らが計画の邪魔をする者達への見せしめとする為に直接出向いたが貴様が相手なら試すにちょうどいい!!」

 

「はっ、テメェに俺が倒せるわけねぇだろ!!」

 

言いながらゼロは左手を振り下ろす。

それに合わせ、弾かれてから上空に漂っていたゼロスラッガーがネオショッカー大首領に向かって突撃する。

気付いた時には遅かった。

回避する前にゼロスラッガーはネオショッカー大首領の背を斬り裂く。

それによって発生した隙を逃す訳が無い。

ゼロランスをがら空きの胴に向けて突き立てる。

その間にゼロスラッガーは頭部へと戻る。

 

「…………………どういうことだ」

 

ゼロランスは完全に直撃した。

だが、その切っ先はネオショッカー大首領を貫いてはいなかった。

それどころか傷一つ付けれていなかった。

背も同様だ。

ゼロスラッガーが降ってきた衝撃は隙を作り出しはしたが、傷は付けれていなかった。

 

「貴様は確かに強い。だが、貴様でも私に勝てはしない」

 

「そんなもんやってみなくちゃ分からねぇだろが!!」

 

言いながらゼロは右手に炎を纏わせるとゼロランスを殴り付ける。

ネオショッカー大首領は顔を歪めると慌てて距離を取る。

その胸からは血が垂れていた。

傷はすぐさま再生する。

ゼロはゼロランスをゼロディフェンダーに変形させて火球を防ぎながら不敵に笑う。

 

「どうした?いきなり傷を付けられてビビったか?」

 

「おのれ………………」

 

誘うように挑発するゼロ。

ネオショッカー大首領は顔を歪めながら翼をはためかせてゼロに突進する。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「どうやら、あいつは味方ってことで良いようだな」

「あぁ、少なくとも敵は同じのようだ」

 

上空でぶつかり合う巨人とドラゴンが発生させる衝撃波を身に感じながら翔太郎とフィリップは身構える。

直後に雷の刃が振り下ろされる。

真横に転がるようにしながらWはトリガーマグナムの引き金を引く。

ルナの力による弾道操作で弾丸は魔神提督に向けて飛んでいく。

しかし、弾丸は左手で軽く弾き飛ばされる。

ネオショッカー大首領の血を浴び、ガイアメモリを取り込んだ魔神提督はそれまでとはレベルが違った。

稲妻を纏う剣は射程など関係無いかのような出力で振るわれる。

ルナトリガーの火力ではダメージも与えれない。

かといってヒートトリガーでは攻撃を掻い潜りながら命中させるのは難しい。

ヒートメタルになったとしてもメタルの鈍重な動きでは射程距離まで近付くのが難しい。

有体に言えば手詰まりだった。

攻撃は凌げないことはないが、ダメージを与える手段が無いのだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

マーズ、レディ?

OK!!マーズ!!

「ホワチャ!!」

 

「なぐばぁ!?マントコング!!助けてくれ!!」

 

「貴様の事など知るか、タコギャング!!」

 

火星の力を宿した拳を連続して叩き込まれてタコギャングが悲鳴を上げる。

マントコングはタコギャングの頼みを無視して左手の鉄球で流星に殴り掛かる。

流星は連打を止めるとタコギャングを盾にして鉄球を防ぐ。

直後に鉄球が爆発してタコギャングは爆風に包まれて散っていった。

爆風を突き破りながらストームシャフトでマントコングに迫る。

 

「仲間を殺してもたいして気にしてないようだな」

 

「奴は前から気に食わなかったのだ!!」

 

「そうか。別にどうでもいいが」

サターン、レディ?

 

ストームシャフトで突きながらメテオギャラクシーを操作する。

マントコングはストームシャフトによる攻撃を出来るだけダメージが少なくなるように受けながら打撃を叩き込む。

右手に全力を込めて殴り付ける。

メテオギャラクシーに指をかざす。

 

OK!!サターン!!

 

「ぬぐぅぅぅ!?」

 

マントコングの全力の一撃を土星の力を纏った拳で迎え撃つ。

一瞬拮抗したが弾き飛ばされたのはマントコングの方だった。

そのまま土星の力を開放し、円形の斬撃がマントコングを斬り裂く。

 

「悪いが俺はお前の相手をしている暇は無い」

メテオ!!リミットブレイク!!

 

ストームシャフトに青いコズミックエナジーを纏わせて叩き込む。

火花を散らしながら吹き飛んだマントコングは倒れながら爆炎に包まれるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「そちらは任せたぞ」

 

「任されましたわ、メロンの君!!」

ドリアンオーレ!!

 

貴虎が言うや否や凰蓮はカッティングブレードを倒す。

モヒカンにエネルギーが充填される。

そのまま頭部を振るうと巨大なエネルギー体となり、ジャガーバンやアリコマンド達を吹き飛ばす。

貴虎はそれを背に黄金ジャガーと向き合う。

 

「悪いがお前の相手をしてやる時間は無くなった」

 

「だが、俺を倒さねば先には進めないぞ」

 

「それは分かっている!!」

 

言いながら無双セイバーを振り下ろす。

黄金ジャガーは紙一重で躱し、槍を放つ。

貴虎は鎧に槍を掠らせ火花を散らしながら左手のソニックアローを振るう。

一歩引いてギリギリのところで回避すると素早く突きを放つ。

ソニックアローで突きを受け止め、その軌道をなぞる様に無双セイバーで薙ぐ。

黄金ジャガーは上半身を後方に倒して鼻先を掠めながら無双セイバーを躱す。

そのまま勢いよく上半身を起こして貴虎に頭突きをくらわす。

一瞬怯んだところに槍を叩き込む。

さすがに回避しきれずに地を転がる。

当たる直前に一歩下がってたゆえに浅くダメージは其処まででも無い。

貴虎は無双セイバーを腰に戻すとソニックアローから矢を放つ。

黄金ジャガーは槍を回して矢を放つ。

その間に立ち上がり、同時にメロンエナジーロックシードをソニックアローにセットする。

 

メロンエナジー!!

 

散弾のように矢が放たれる。

だが、一発一発が先程までとは比べ物にならない威力だった。

黄金ジャガーは槍を構えて突撃する。

ネオショッカー大首領の血液によって強化された身体能力をフルに使って矢の隙間を走り抜ける。

矢を潜り抜けたところでソニックアローを投げ付けられる。

体を沈め、体勢を低くして頭上を通り過ぎさせる形で回避する。

ノンストップで駆け抜けた勢いをそのまま叩き込むべく槍を構える。

無双セイバーの引き金を引いて弾丸を放つ。

まだ避けれる距離ではあった。

しかし、回避すれば勢いが死ぬ。

ゆえに黄金ジャガーは最低限の動きで回避する。

避け切れなかった弾丸が左肩を抉るが、そのまま駆ける。

 

メロンスカッシュ!!ジンバーメロンスカッシュ!!

 

カッティングブレードが倒される。

同時に足元からメロンディフェンダーが飛び出す。

防御の為では無い。

元より受け切れるとは思っていない。

交差は一瞬だった。

 

「………………負けたぜ、仮面ライダー」

 

一瞬の交差の後互いに背を向けて止まっていた。

駆け抜け突きを放った姿勢の黄金ジャガー。

無双セイバーを振り切った貴虎。

勝敗は明白だった。

貴虎の持つメロンディフェンダーには抉れたような跡が残ってはいるものの貴虎本人には傷は無い。

対して黄金ジャガーには一閃の深々とした傷が刻まれていた。

黄金ジャガーは無駄な足掻きはせず、槍を地面に刺したまま倒れ、爆散するのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「終わりだ、二色の仮面ライダー!!」

 

「チッ、さすがにヤバいか」

「いや、間に合ったよ」

 

攻防を繰り返すうちにWは追い詰められていた。

魔神提督がトドメを刺すべく稲妻を纏った剣を振るうおうとした時だった。

 

「メテオストームパニッシャー!!」

 

流星がストームシャフト先端からコズミックエナジーを纏ったコマを放つ。

魔神提督は鬱陶しそうにコマを弾き飛ばす。

そのまま地面に剣を突き刺し、指の先端からミサイルを放つ。

しかし、それは貴虎が張った電磁バリアに阻まれる。

 

「待たせたな」

 

「助太刀するぞ」

 

「おう」

「これで手は揃ったね」ヒートメタル!!

 

言いながらヒートメタルに姿を変え、メテオと斬月と並び立つ。

一対一では手数も火力も足りなった。

だが、これで三対一。

手数は揃い、火力もどうにかなる。

決戦の幕が閉じるのは近付いていた。

 

 






vsネオショッカーも大詰め!
残りは怪人数体と魔神提督とネオショッカー大首領のみ

ゼロはオリジンサーガのムサシが何時までも辿り着けないでいる的な?
ウルティメイトフォースゼロの面々と宇宙守りながらチャンス待ちというか

Wがエクストリーム使わないのは後々
フィリップが風都にいるのに多少は意味があったり


それでは、質問があれば聞いてください
設定纏めを活動報告で公開中!
設定関連はそちらでも聞いてください
感想待ってます!



ジュウオウvsニンニンも公開しましたね!
今回も中々に良かったですよ!
内容的には割と終始バトルです
まだネタバレには速いですし今回はここらへんで!


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甦る絶技と開転珠と現れし影の城

グレンファイヤー散る!(棒)
まだまだ仲間集めのターンなベリアル銀河帝国でした!
明日はミラーナイト回ですよ!

不死身のアザルド死す!
不死身系ありがちなコア砕けば良いタイプでしたね!
それでもジューマンとの因縁など燃えましたが

Mの謎が色々明かされていくエグゼイド!
社長が明らかに話を反らしているというか
表面上の真実を明かすことで奥を覗かせないようにしてる的な
パラドが大変身言ってた辺りパラドとMの関係は割と明白になってきたような

それでは、本編です
ちなみに今回で200話です


列車の甲板にいる彩鳥は正確に状況を把握していた。

 

(仙虎に乗っている少年…………彼がミノタウロスの正体か⁉)

 

両刃斧をその手に持つ少年が虚空を斬ると同時に、視界が七つの光に包まれた。

迷宮のゲーム盤に呼び出されたのだと察するのは難しくない。

晴人が怪人とぶつかりながら甲板から離れていくのを視界の端で見る。

あちらの協力は難しいだろう。

彩鳥は渡されたギフトカードから愛剣を取り出す。

すると、自然に笑みが零れた。

かつて数多の修羅神仏に挑み、死闘を潜り抜け、拝火の魔王とさえ切り結んだ愛剣だ。

敵地とはいえ、僅かばかりの懐かしさを抱くことぐらい許されるだろう。

だがそれは本当に刹那にも満たない時間。

彩鳥は直ぐに身構えた。

 

(______来るッ!!)

 

妖精族の錬鉄術で鍛えられた剣を正眼に構え、直進してくる二つの敵影を迎え撃つ。

先程のように何かが脈打つような感覚は無い。

元より正体の分からない力に頼る気は無い。

だが、それでも何かしらの違和感は残っているのだった。

対する申公豹、白額虎、アステリオスは虚空を駆けて彩鳥に迫る。

特に申公豹は先程の狩りがある。

突出するように先手を取った。

 

你好ー(ハロー)你好ー(ハロー)、首斬り騎士!!見惚れる様な矢をありがとう!!コイツは僕からのお返しだ、粉々に吹っ飛べこの野郎ッ!!」

 

申公豹はあ先程流水をかき集めていた宝珠____”開転珠”と呼ばれる七つの宝貝(パオペイ)を巧みに操り彩鳥を囲い込む。

この宝貝(パオペイ)と呼ばれる武器は中華の仙道だけが創作できる武器型の恩恵だ。

この飛翔する七つの珠は流体を操って空を駆ける武具なのだろう。

攻防速の全てが揃った、万能型の宝貝(パオペイ)

特化している分野がないものの、戦略性が高い。

この類の武具は数を集めて使われると厄介なことこの上ない。

”開転珠”は四方八方、上下左右から囲むように七体同時に襲い掛かる。

彩鳥は怯まずに強行突破を選ぶ。

下方に向かって走り、正面の二つを斬り落として正面を開ける。

振り返り、残り五つに突貫し申公豹本人を討つ為に動く。

幾らなんでも無謀である。

迎撃する為だろうが、此れでは物理的に手が足りない。

 

「ハッ、驕ったな首斬り騎士!!」

 

五つの”開転珠”が彩鳥に迫る。

流体を操作する宝貝(パオペイ)は視覚化できるほどの密度の高い風を纏い、艦砲もかくやという勢いで呻りを上げる。

だが彩鳥の瞳に恐怖の色は無い。

愛剣の柄を僅かに捻る。

すると、刀身が分かれ、剣の軌跡が弧を描いた。

蛇蝎の剣閃と恐れられた絶技が今、仙道の秘奥に挑む。

 

「ふっ____!!」

 

呼吸を合わせる。

流体の軌道を読む為に瞳を凝らす。

恐らくは刹那の狂いが死を招く。

連接剣が描く蛇蝎の軌跡が的確に”開転珠”を捉える。

とはいえ、”開転珠”を叩き落せる威力は無い。

ならば、生き延びる術は一つであった。

連接剣が渦巻く”開転珠”の一つに巻き込まれた瞬間に激しく引き直すことで気流を乱して軌道を変えた。

それによって”開転珠”は次々と衝突し、彩鳥と申公豹の間に阻むものは何も無くなった。

一気に距離を詰めようとしたところで白額虎とアステリオスが割り込んでくる。

上段から両刃斧が振りかざされるが、剛槍を取り出し、僅かに傾けられた槍の柄を滑らせて虚空を切らせる。

偶然などでは無い。

持ち主の制御の利かないタイミングを見計らって彩鳥は槍を傾けたのだった。

 

「っ……………貴様、先日とは別の者か⁉」

 

飛び退いて距離を取るアステリオスと白額虎。

忸怩たる思いだが、近接では分が悪いと咄嗟に判断したのは正解だろう。

彼女の振るう武技は何れも蒸気を逸している。

だがそれを逃す程彩鳥の追撃は手緩くない。

一度崩したなら徹底的に追い込め。

師にそう叩き込まれてきた彼女は、喰らい付けば簡単には離さない。

剣と槍を収めた彼女は、剛弓を取り出して速射を放つ。

一息で三度放たれた矢は全てアステリオスを掠めていく。

その冴えに、敵対していた三人は己の敵が神域の技量を持つのだと認識を改めた。

けれど、どれだけ実力があろうとどうしようもないことはある。

精霊列車の落下などが正にそうだ。

先程まで残っていた霊脈の加護が完全に消えれば落下は加速する。

彩鳥は焦りながら周囲を確認する。

晴人はまだ交戦中で駆け付けれそうには無い。

 

(不味い………………このままでは迷宮に激突する……………………!!)

 

甲板に槍を突き立てた彩鳥だったが_____その時ふと、目の前に鈴華が現れた。

 

「彩ちゃん、掴まって!!」

 

「鈴華!?ど、どうして甲板に⁉」

 

「話はあと!!今は列車の落下を止めないと!!」

 

「と、止めるのですか⁉落下を!?鈴華が⁉」

 

どうやって!?と、すっかり少女の顔に戻る彩鳥。

意外にも鈴華は冷静だった。

慌てふためく彩鳥を尻目に、鈴華は真っ直ぐ申公豹を見る。

彼女に向って手を伸ばした鈴華は掴まっていた左手を離し______

 

 

「浮かせる方法なら_____あの子が(´´´´)持ってる(´´´´)!!」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

火花が散る。

刃と刃が衝突する音が響き渡る。

剣とドラゴヘルクローが幾度となくぶつかりあっている。

空中戦において障害物は無い。

互いに最高速で飛び回った上で正面からぶつかり合う。

ネオショッカーグリードの剣はぶつかる度に欠けるが、セルメダルによって再生する。

戦況は晴人が押していた。

それもそうだろう。

元々ネオショッカーグリードはインフィニティースタイルの一撃によって大量のセルメダルを撒き散らした状態であった。

加えて攻撃を受ける度にセルメダルは散っていく。

セルメダルが散る度に力は失われていく。

魔力切れの可能性があるとはいえ長期戦になればネオショッカーグリードが不利なのは明白なのだ。

だが、それでも、ネオショッカーグリードは時間稼ぎに徹していた。

まるで今ここで自分が倒れる分には構わないかの様に。

晴人を精霊列車の救援に向かわせない方が重要なのかのように。

実際ネオショッカーグリードはグリードである。

ネオショッカーメダルを核にセルメダルで肉体を形成してるだけの生物である。

つまり此処で倒されてもコアメダルさえあれば幾らでも復活できるのだ。

ゆえに自身の敗北すら算段に入れて戦闘を続ける。

けれど、晴人も晴人で焦っているようには見えなかった。

 

「どうした?助けに行かないのか?」

 

「いや、大丈夫さ。俺の助けなんて必要ないのは分かってる」

 

「それはどうかな?ガキどもが判断を間違うくらいはあるだろう!!」

 

「無いよ。あの子がいるんだ。それは無い」

 

精霊列車に向けて放たれる火球を吹き飛ばしながら晴人は不敵に笑う。

晴人は彩鳥の正体には感付いている。

加えて女王が乗っていることも把握している。

だから、自分が行かなくてもどうにかなるだろうとは考えている。

それに万が一の時の仕込みも済ませてはいた。

そうこうしている間に視界の端で精霊列車に変化が起きる。

精霊列車の下で暴風が巻き起こり、落下が減速する。

それでも落下は止まらなかったが列車が影に包まれ、無事地面に降ろされる。

その光景はネオショッカーグリードの思惑が失敗したことを意味していた。

 

「チッ、女王の側近が手を出してくるとはな」

 

意識が精霊列車に向いた一瞬。

その隙を晴人は逃さなかった。

即座に間合いを詰めるとドラゴテイルをネオショッカーグリードに叩き付ける。

 

「ぐぅ!?」

 

「そろそろフィナーレと行こうぜ」

 

ネオショッカーグリードを真上に叩き上げるとドラゴウィングをはばたかせる。

暴風を巻き起こし、雷を纏う竜巻とする。

その中心にネオショッカーグリードは放り込まれる。

前後左右に逃げれば雷と暴風に襲われる。

逃げ場は上下にしか無い。

下からは晴人が迫ってくるがゆえに実質一択であった。

 

「逃がすかよ」

 

逃げた先には黄色の魔法陣が待ち受けていた。

そこから強力な重力が発生し、強引に晴人の方へと押し戻される。

重力と加速して突っ込んでくる晴人相手に回避の術は無かった。

擦れ違い様にドラゴヘルクローが振るわれ、ネオショッカーグリードの腹部は大きく抉られセルメダルが撒き散らされる。

残ったセルメダルで表面だけでも再生しようとした時だった。

傷口から徐々に凍結していっているのに気付く。

 

「なんだ、これは………………」

 

「言っただろ?フィナーレだって」

 

直後に雷を纏う竜巻がネオショッカーグリードを中心に収束していく。

その中でネオショッカーグリードは雷に貫かれていく。

晴人は前面に幾つもの魔法陣を展開する。

加えて胸部のドラゴスカルに魔力を収束させる。

 

「ハァァァァァァァ!!」

 

ドラゴスカルから熱線が放たれる。

熱線は魔法陣を通過するたびに魔力が付与されていく。

そして、収束した竜巻を丸ごと吹き飛ばす規模となる。

魔力を帯びた劫火の奔流は竜巻ごとネオショッカーグリードを一片残さず消し飛ばすのだった。

 

「ふぃ~」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「あっちは決着がついたみたいね」

 

影の城(Dun Scaith)”を展開しながらスカハサが呟く。

車体を影で受け止めて緩やかに地に降ろしているところだった。

鈴華が”開転珠”を申公豹から奪い取り、落下を支えたまでは良かった。

しかし、奪ったばかりの彼女では十全に使いこなせず落下速度を落とすので精一杯だった。

そこでスカハサが出てきたのだった。

申公豹は白額虎に連れられて姿を消していた。

更に装備を奪われるのを防ぐ為だろう。

彩鳥は彩鳥で己の技量が錆びついているのを感じていた。

とはいえ敵が敵ゆえに慣らしには丁度いいと思っているのだった。

背後から鈴華たちの声が聞こえてくる。

迷宮の瓦礫と埃を払いのけて精霊列車から出てきた鈴華は猫の様に髪を振りながら立ち上がり、その後ろに西郷焔とスカハサが続く。

 

「こ、今回こそ駄目かと思った…………!!私、箱庭に来てから三回くらい死にかけてるんですけども。労災とか下りないのかなこれ!!どうなの姉弟(ブラザー)!?」

 

「いやあ、下りないんじゃないか兄妹(シスター)?」

 

「あら、それぐらいなら女王が払ってくれるんじゃないかしら?ああ見えて、女王は金払いはいいわよ?」

 

「………………。鈴華、先輩、先生。空気を読んでください」

 

彩鳥は窮地を生き延びたものの、間の抜けた声を上げる仲間たちに対しドッと疲れたように右肩を下げる。

だが安堵するには少し早かった。

 

 




ネオショッカーグリード散る!
とはいえ、グリードの特性考えれば的な

焔サイドは原作とあまり変わりなく


それでは、質問があれば聞いてください
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感想待ってます!


社長が監察医は”追放”したと言ってる辺り復活フラグなような



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蠢く怪牛と足裏の弱点と収束する悪の怨念

ラストエンブリオ四巻四月に発売決定!


それはともかくジュウオウジャー良かったですね!
一年楽しめましたね!
ジニスの正体は驚きましたがそれはそれでありですね
あれだけ余裕だった敵の正体がコンプレックスの塊という
オチは笑いましたね
まさかの世界融合という

エグゼイドは社長マジ外道
パラドの離反フラグ立ってますね


それでは、本編です


「迷宮と聞いて先回りしたけどどうやらお宝は無さそうだね。いや、クリアしないとお宝が現れないタイプかな?何はともあれ今の僕には無駄足だったようだ」

 

迷宮の出口付近にて海東が呟く。

彼は対峙するアヴァターラの面々と十六夜と釈天を横目に見ながら上空から落ちてくる列車を見る。

 

「まぁ君たちには期待してるよ」

 

それだけ言うと銀色のオーロラを出現させて何処かへと消えていくのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

白額虎と申公豹はペストの指示でアステリオスを置いて迷宮から撤退していた。

十六夜と釈天も精霊列車へと向かおうとして立ち塞がったアヴァターラの面々とぶつかり合っていた。

十六夜は牛魔王と、釈天はアルジュナ(´´´´´)と戦闘を始める。

 

「動くな、転移能力者」

 

そして、焔達の前にそれは現れた。

瓦礫の向こうから”疑似神格・星牛雷霆(プロト・ケラヴノス)”を手に持ったアステリオスが現れたのだ。

それゆえに彩鳥すら下手に動けなくなる。

一振りで迷宮ごと吹き飛ばされる。

ゆえに鈴華も彩鳥もスカハサも動けない。

アステリオスは西郷焔を見つけると問うた。

 

「其処の男。俺に_____”ミノタウロス”に、何か言うべきことは無いのか?」

 

問われた当人である焔は驚愕した瞳のまま固まっていた。

アステリオスがミノタウロスの正体だと知ってから、焔は硬直したまま顔を強張らせている。

 

「________マジ、かよ」

 

信じられない、と。

アステリオスの問い掛けとは無関係の言葉を呟く。

アステリオス自身の疑問を解く鍵を握っているのかと考える。

雷霆を傾けてアステリオスが再度問う。

 

「どうなのだ?お前は、俺の何を知っている!?俺のこの少年の姿は何だ!?俺は………………クレタ島の怪牛・アステリオスではないのか………………!?」

 

隠していた本心が焦りと共に零れる。

最後通牒の意図が込めた視線で問う。

焔は視線に気付いていたが、答えはすぐに返さない。

己が納得する答えが出るまで言葉を発さない。

だが、地鳴りが遠く響き、雷光が迷宮に満ちている。

それほど時間が無いことにようやく気付いた焔は、突然顔を上げた。

 

「アステリオス。…………………落ち着いて聞いてくれ。多分今から、恐ろしいことが起きる(´´´´´´´´´´)

 

予想外の言葉だった。

傍聴していた彩鳥達でさえ訝しげに顔を見合わせている。

何を示唆しているのかすら判断に困る言葉だった。

焔も言葉を選ぶように逡巡した後______最後の勝利条件を。

”雷光を掻き消せ”を口にした。

 

 

「アステリオス。お前は_______ミノタウロスじゃない(´´´´´´´´´´)

 

 

その真実を口にした途端。

真なる食人の怪物が、迷宮に鼓動を響かせ始めた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ガァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

キギンガーが自身の足から根を張り、そこから大量の樹木を生み出す。

それらを操ってバースデイとビーストハイパーに襲い掛からせる。

更にその隙間を縫うようにヘビンガーも身を捻じらせて迫る。

加えて背後から釵を構えたドラゴンキングがアリコマンドを引き連れて退路を塞ぐ。

 

「背後は任せたぜ」

 

「そっちは任せるぜ」

 

視線を交わして互いに動き出す。

仁藤は腕の装飾物を鞭のように振るい、樹木ごとヘビンガーを弾き怯ませる。

そこから振り返りドラゴンキングとアリコマンド達にミラージュマグナムから弾丸を放ちながら向かっていく。

伊達はカッターウィングとキャタピラレッグの出力を最大にしてキギンガーに突っ込んで行く。

ドリルアームを接続したクレーンアームを振り回しながら樹木を弾き飛ばしていく。

零距離まで詰め寄るとショベルアームでキギンガーを掴み取り、カッターウィングで宙に浮かぶ。

抵抗の為に根を強めるが焼け石に水だった。

ブチブチと根は千切れ、地面から離される。

キギンガー本体から離された樹木はたちまち腐り落ちる。

ヘビンガーが右腕と頭部の蛇を伊達に向けて放ってくるがキギンガーを盾とする。

 

「ガァァァァ!?」

 

「ぬぅ……………」

 

「欲しいなら返すぜ」

 

キギンガーを投げ飛ばし、ヘビンガーを怯ませる。

その間に間合いを詰め、キャタピラレッグを押し付けて肉を抉りながら蹴り飛ばす。

仁藤はミラージュマグナムを振り回すようにしながら発砲してアリコマンド達を撃ち抜いていく。

 

「数が多いから助かるぜ」

 

「雑魚を倒したくらいで調子に乗るな!!」

 

釵を両手に構えたドラゴンキングが斬り掛かる。

ダイスサーベルで受け止め、ミラージュマグナムを撃ち込む。

身を捻らせて回避すると手首を狙って釵を振るう。

両腕の紐を振って対応する。

慌てて釵で防いだところにミラージュマグナムを撃ち込まれる。

距離を詰めてダイスサーベルで上段から斬り込む。

釵を重ねて受け止める。

そこで仁藤はダイスサーベルのサイコロ部分を回転させる。

ハイパーリングを差し込んで停止させる。

 

3!!ハイパー!!セイバーストライク!!

「オラァ!!」

 

至近距離から大量の動物状の魔力が放たれる。

回避などできるはずも無く吹っ飛ばされる。

余波によって周囲のアリコマンドは残らず消し飛ぶ。

 

「我が盾がぁ!?」

 

そこに凰蓮に押されるジャガーバンが転がり込んでくる。

盾は砕かれ、剣にもヒビが広がり満身創痍なのは一目で分かった。

そこにキギンガーとヘビンガーも転がり込んでくる。

 

「そっちも終わりみたいだな」

 

「あぁ、後はトドメだ」

 

「それじゃあ、纏めてトドメといきましょう」

 

伊達、仁藤、凰蓮が並び立つ。

ネオショッカーの怪人はこの四体が最後だった。

伊達はブレストキャノンに全エネルギーを集中させる。

仁藤はハイパーリングをミラージュマグナムに差し込む。

凰蓮は戦極ドライバーのカッティングブレードを倒す。

 

「ブレストキャノンシュゥゥゥゥゥゥゥゥト!!」

 

ハイパー!!マグナムストライク!!

「メインディッシュだ!!」

 

ドリアンスカッシュ!!

「ハァァァァァ!!」

 

ブレストキャノンに集中させられたエネルギーが解放される。

ミラージュマグナムから獅子の頭部のごとくの巨大魔力弾が放たれる。

ドリノコに集中されたエナジーが刃型になって放たれる。

 

「我らが倒れてもいずれ………………」

 

断末魔を残してキギンガー、ヘビンガー、ドラゴンキング、ジャガーバンは爆散した。

伊達はバースデイから通常のバースへ戻る。

 

「さて、後は残党か」

 

「食い残しは無しにしないとな」

 

「仕事はキチンと完遂する物よね」

 

三人は残るアリコマンド達を狩っていくのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「ストロングコロナァゼロ!!」

 

ゼロは姿を赤く変えると拳に炎を纏わせてネオショッカー大首領に殴り掛かる。

影を操り防ごうとするが関係無しに殴り飛ばす。

 

「グゥゥゥゥ……………効かぬ!!効かぬ!!効かぬわぁ!!」

 

後退させられながらも火球をお返しとばかりに放つ。

衝撃は受けてるようだがダメージは変わらず薄いようだ。

ゼロは火球の中を走り抜ける。

無造作に振るう腕で火球を弾き、ある程度まで距離を詰めると右手にエネルギーを集中させる。

 

「ガァァァァァァルネイトバスタァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

至近距離から高熱のエネルギー弾を放つ。

だが、ネオショッカー大首領は陰で炎を反らしながら耐えていた。

それも想定済みではあった。

ゼロは更に距離を詰めると掴み掛かる。

 

「ウルトラハリケーン!!」

 

持ち上げ、回転させ、竜巻の如く上空に投げ飛ばす。

ネオショッカー大首領は虚を突かれながらも即座に勢いを殺して体勢を立て直して翼を広げる。

 

「あまり調子に乗るなぁ!!」

 

「ぐっ!?」

 

念力によってゼロを地面に押さえ付ける。

その間に特大の火球を生成する。

しかし、黙って見ているゼロではない。

今度は身体を青く染める。

 

「ルナミラクルゼロ…………」

 

声色がはっきりと変わる。

普段とは変わり、落ち着いた様な雰囲気を纏わせる。

超能力特化の姿であり普段より強化されたウルトラ念力でネオショッカー大首領の念力を打ち破る。

 

「今更遅い!!消し飛ぶがいい!!」

 

「フルムーンウェーブ」

 

ネオショッカー大首領が放った特大火球を異次元へと送る。

ウルトラゼロランスを構え、更に超能力で増殖させたゼロスラッガーを周囲に浮かす。

そこで地上で魔神提督と戦うフィリップが叫ぶ。

 

「奴の弱点は右足の裏だ!!」

 

ゼロは無言で頷くとゼロスラッガーを放ちながらネオショッカー大首領へと向かっていく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「貴様!!余計なことを!!」

 

魔神提督の剣とメタルシャフトが鍔迫り合いする中で魔神提督が叫ぶ。

踏み込もうとしたところで危険を察知して後退する。

先程まで魔神提督がいた場所をメテオストームシャフトが貫く。

更に貴虎が斬り込む。

魔神提督は剣に稲妻を纏わせて弾き飛ばそうとするが電磁バリアに阻まれる。

更に大振りの隙を突く様に流星が蹴りを入れる。

 

ルナ!!メタル!!

 

ルナの力によってメタルシャフトが鞭のように撓る。

変則軌道の攻撃を弾きながら近接で攻めてくる流星と貴虎を捌く。

捌く限界が近付くと魔神提督は目付きを変える。

そこに何かを感じた貴虎と流星が後退した途端に魔神提督を中心に衝撃波が放たれる。

 

「おい、いきなり力が増幅してないか?」

「何かしらのエネルギーを吸収してるようだね」

 

「じゃあ、止めた方が良いな」

「止めれるかは分からないけどね」

 

言いながらメタルメモリをダブルドライバーから抜いてメタルシャフトに差し込む。

メタルシャフトを回すとWの周囲に黄色い円のエネルギー体が出現する。

 

メタル!!マキシマムドライブ!!

「「メタルイリュージョン!!」」

 

無数の円盤が魔神提督に襲い掛かる。

全てを纏めて防ぐことは出来ない。

直撃し、その姿が爆煙に包まれる。

 

「やったのか?」

 

「いや、たぶんやれてねぇ」

「今ので倒せるなら苦労はしないよ」

 

「だろうな」

 

「当たり前だ!!この魔神提督が貴様らごときに敗れるはずが無い!!」

 

土煙を斬り裂いて魔神提督が姿を現す。

その身は妙なオーラを纏っていた。

 

「ネオショッカーの怨念こそが我が力!!貴様らへの呪いが我を強くするのだ!!」

 

見れば戦場のあちらこちらから何かしらのエネルギーが魔神提督に集まっていた。

ネオショッカー大首領の血とガイアメモリを取り込んだことによってネオショッカーの怪人の怨念をその身に吸収する力を得たようだ。

それでもライダー達は動じない。

やることは何ら変わりは無いのだから。

 

 




ネオショッカーとの決戦も残るは幹部と大首領になりました

魔神提督は戦場に残る怨念吸収以外にも血肉を吸収して自身の血肉に変えてたりします

ネオショッカー大首領は三頭龍取り込んでも弱点は変わらず
フィリップの前では弱点は隠せない的な


それでは、質問があれば聞いてください
活動報告にて設定纏め公開中です
感想待ってます!


ちなみに土曜九時からゼロクロニクル放送中です
ついでにジュージューバーガーは本日発売!


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提督の最期と魔龍の叫びと輝きの矢


ベリアル帝国完結!
ウルティメイトフォースゼロ結成でしたね!
来週からはベリアル無双!
ゼロの出番は半月ほど無い!
ゼロクロニクルなのに!

キュウレンジャー初回で全員集合はさすがに無かったですね
惑星ジャグジャグは笑えばいいと思います
分からない人はウルトラマンオーブを見るのだ

エグゼイドはパラド無双からの社長のネタバレ
やーい!お前ゲーム病!は小物過ぎですよね
来週は研修医としての人格が消えてるっぽいですね


それでは、本編です


「ミラクルゼロスラッガー!!」

 

無数に増殖したゼロスラッガーがネオショッカー大首領を囲むように舞う。

ネオショッカー大首領は鬱陶しそうに影の刃で弾く。

その防御を潜り抜けて幾つかはネオショッカー大首領に当たるが傷は無かった。

ゼロランスを手にして突きを放つが龍爪に受け止められる。

 

「幾ら数を増やそうが効かぬ物は効かぬぞ!!」

 

「それはどうかな」

 

言った直後に額からエメリウムスラッシュを放つ。

ネオショッカー大首領は慌てて首を反らして回避する。

影の刃を放ちながら距離を取る。

ゼロはゼロランスで影の刃を弾きながらエメリウムスラッシュを放ち続ける。

ゼロスラッガーの操作を並行して行い四方八方からネオショッカー大首領に襲い掛からせる。

ネオショッカー大首領は攻撃に対処しながら特大の火球を生成する。

狙いを定めて放とうとする直前、視界の端で捉えた。

ゼロスラッガーによって反射されるエメリウムスラッシュを。

 

「貴様……………初めからこれを狙って!!」

 

「気付いたところで遅いぜ」

 

無数のゼロスラッガーも至近距離からのエメリウムスラッシュも目眩ましだったのだ。

本命は合わせ技。

手数で押していると思わせ、ゼロスラッガーによるエメリウムスラッシュの反射を隠していたのだ。

そして、防御の隙を突き抜けてネオショッカー大首領の右足の裏を幾つかの光が一つになった光線が貫いた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

眼は話していなかった。

それでも捉え切れなかった。

一瞬で間合いは詰められていた。

魔神提督は既に剣を振り被り、Wへと降ろしているところだった。

 

「ぬぅ?」

 

だが、それを通す程甘くも無い。

魔神提督の剣は割り込んだ無双セイバーとメテオストームシャフトに阻まれた。

Wはルナの力でメタルシャフトを鞭のようにうねらせて魔神提督へと放つ。

魔神提督はギリギリ鎧に掠らせる形で回避する。

そこから地を蹴って流星に肘打ちを叩き込む。

 

「ぐっ…………………」

 

吹き飛び、地を削る。

追い打ちを掛けるように剣を振るうがそこに貴虎がソニックアローから矢を放つ。

高速で放たれる矢だが魔神提督は正確に斬り落としていく。

貴虎は構わず矢を放ちながら距離を詰めていく。

 

「無駄だと分からんのか!!」

 

「いや、無駄では無い。さっきのお返しだ……………ホワチャ!!」リミットブレイク!!OK!!

 

起き上がりながらメテオギャラクシーに指をかざす。

蒼いコズミックエナジーを拳に纏わせて魔神提督の胸に叩き込む。

さすがに耐えきれずに吹き飛ぶ。

しかし、地面から足は離れず、倒れはしない。

そこに貴虎が懐に潜り込む。

 

「一発一発は通用しないようだがこれはどうだ?」メロンエナジー!!

 

「ごぐぅ!?」

 

ほぼ零距離で最大までチャージされた矢が放たれる。

鎧にヒビが入り、足が地を離れる。

それでも倒れない。

吹き飛ばされながらも着地で勢いを殺す。

 

ヒート!!メタル!!

「ウォォォォォォォォ!!」

 

着地地点に待ち構えていたようにWがヒートメタルとなってメタルシャフトを振るう。

直撃の寸前で剣で防ぐ。

そこを狙うように貴虎が矢を放つ。

矢は分裂し、一本が無数になって振り掛かる。

 

リミットブレイク!!

「メテオストームパニッシャー!!」

 

更にメテオストームシャフトからストームトッパーが放たれる。

矢の合間を潜り抜けるように魔神提督へと向かっていく。

魔神提督が剣を強く握ると同時に再び怨念が収束する。

そのまま回転斬りのように剣を振るう。

 

「まだだ!!こんな物で儂を倒せると思っているのか!!」

 

Wは弾き飛ばされ、矢もストームトッパーも吹き飛ばされる。

鎧のヒビも何も無かったかのように再生する。

さすがに疲労も蓄積し、息を切らせながら翔太郎が愚痴る。

 

「チッ、不死身なのか奴は!!」

「そんなはずは無いよ」

 

「だが、このままでは埒が明かないぞ」

 

「此方は疲弊し、奴が強くなるんじゃじり貧だ」

 

「いや、大丈夫だ。このまま攻撃を続ければ倒せるよ」

「お前がそういうのならそうなんだろうけどさ」

 

「まぁ他に出来ることがあるわけでもない」

 

「やれるだけやるしかないな」

 

魔神提督は左手を突き出すと指からミサイルを放つ。

それぞれ防ぎながら距離を詰める。

纏めて吹き飛ばす為に剣に稲妻を纏わせる。

それが振るわれる直前に地面からストームトッパーが飛び出す。

剣を弾き上げて稲妻の軌道を反らす。

更に落下するように魔神提督へ向かっていくが今度は弾き飛ばされる。

けれど、その時には流星は距離を詰めていた。

弾かれたストームトッパーをメテオストームシャフトに回収する。

そのまま勢いに身を任せて体を回転させる。

その間にメテオストームシャフトにセットしてあるメテオストームスイッチを連打する。

 

「倍にして返すぞ!!」リミットブレイク!!マックスパワー!!

 

「ぐがぁ!?」

 

叩き付ける様にストームトッパーを放つ。

防御の為に構えた剣は弾かれ、胸を抉るように直撃する。

ストームトッパーは胸から左肩を抉るように駆け抜けた。

更にヒビが広がったと思うと先程再生したはずの鎧部分も割れ落ちる。

 

「思った通りだ」

「どういうことだ?」

 

「彼は再生していたんじゃなくて補填していたんだ。治ったわけじゃないし定着するまで時間が掛かるんだ」

「よく分からねぇがダメージ自体は残ってるってことだな!!」

 

魔神提督は傷を治していたのではなく吸収した血肉で欠けた部分を補填したのだ。

ゆえに完全に傷が無くなったわけでは無い。

時間が経てば同義だが、短時間ならば定着せずに剥がれ落ちる。

追い打ちをするようにメタルシャフトにメタルメモリを差し込む。

戦極ドライバーのカッティングブレードを倒す。

 

メタル!!マキシマムドライブ!!

「「メタルブランディング!!」」

 

メロンスカッシュ!!ジンバーメロンスカッシュ!!

「ハァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

メタルシャフトに火炎を纏わせて突撃する。

当然魔神提督もダメージを押して反撃する。

火炎と稲妻が衝突する。

だが、左肩を抉られた状態で耐えられずに体勢が崩れる。

剣を弾き、胸に叩き込む。

ヒビは更に広がる。

それでも耐え、腕を掴むと流星に向けてWを投げ飛ばす。

続くように貴虎が斬り込む。

初撃の横一閃は同じように振るわれた魔神提督の剣と火花を散らす。

次の縦一閃は受けとめる為に横に構える。

 

「ダァァ!!」

 

「なんだと!?」

 

縦一閃を受け止めた途端に剣全体にヒビが広がり、そのまま砕け散る。

幾ら稲妻や怨念を纏おうとダメージそのものは蓄積している。

ゆえに砕けた。

更に斜めに斬り上げる。

縦一閃と逆袈裟斬りの傷から同時に血が溢れる。

 

「今だ!!」

 

「分かった」メテオ!!リミットブレイク!!

 

ジョーカー!!マキシマムドライブ!!

「これで決まりだ」

 

メテオスイッチをメテオドライバーに差し込みONにする。

サイクロンジョーカーに姿を変えてジョーカーメモリをマキシマムスロットに差し込む。

 

「ハァ!!」

 

「「ジョーカーエクストリーム!!」」

 

嵐を纏ったようなメテオストームのキックが魔神提督を蹴り抜く。

中央の線で分割された風を纏った蹴りが魔神提督に叩き込まれる。

全身から魔神提督は火花を散らし、ゆっくりと倒れていく。

 

「大首領、万歳!!」

 

叫びながら倒れ、同時に爆炎を上げる。

それとほぼ同時に残っていたアリコマンドたちも爆散していく。

そして、爆炎は上空のネオショッカー大首領へと収束していく。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

散っていったネオショッカーの怪人たちの怨念や血肉は上空へと昇ってネオショッカー大首領に吸収されていく。

血の呪いで自身に全てを還元させているのだ。

 

「役立たず共め。結局全滅か」

 

「そういうお前もそろそろ終わりだ!!」

 

「我が弱点を突いたからと調子に乗るな!!我が力はその程度で弱まらん!!」

 

「だが、面倒な加護は消えたぜ」

 

ゼロの言う通りダメージは普通に通るようになっていた。

先程までの絶対的な防御力はもうないのだ。

それでも、容易く倒せる相手でも無い。

むしろ火力は怪人たちを吸収した分増している。

瞬時に特大の火球をゼロを囲むように生成する。

 

「消し飛ぶがいい!!」

 

大火球を一斉に放つ。

更に龍の顎の形にした影を複数叩き込む。

360度からの大火球に加えて影の龍である。

回避は不可能。

激しい爆炎が巻き起こる。

様子を見る様に滞空するネオショッカー大首領。

そこに、突然爆炎の中から光の刃が飛び出す。

 

「何ぃ!?」

 

予想外の攻撃に対応し切れず、左の翼を影の刃ごと持っていかれる。

爆炎を斬り裂く様に銀色の鎧を纏ったウルトラマンゼロが姿を現す。

 

「ウルティメイトゼロ!!」

 

ウルティメイトイージスを装備したゼロは無傷であった。

右腕のウルティメイトゼロソードから伸ばしたソードレイ・ウルティメイトゼロを解除してネオショッカー大首領へと向かっていく。

ウルティメイトゼロの剣戟をネオショッカー大首領は鉤爪と影の刃で防ぐが手数が劣っているにも関わらず押されていく。

 

「何故だ。何故そんな鎧を装着した程度で我が押されている」

 

「こいつは人々の想いが詰った鎧だ!!死者の魂を貪ったお前ごときが対抗できる力じゃないんだよ!!」

 

影で消し飛んだ翼の代用をするが万全の状態の飛行とは程遠い。

加えて代用に使っている分影の量は減る。

それ故にゼロの動きに対応し切れない。

高速で飛び回るウルティメイトゼロによって全身に細かい傷が付けられていく。

 

「しかし、貴様に我を殺すことは出来ない!!」

 

「何だと?」

 

「我が身は既に呪いそのものと同義。我を倒し、飛び散った血肉は呪いを残す。大地は枯れ、海は汚染され、動植物は新たなる怪物となる!!こう言えば貴様らは手出しが出来ないだろう?」

 

「はっ、そんなことかよ」

 

あっさりとゼロは答える。

同時に残っていた翼も斬り落とす。

更に蹴り上げ、自身の真上にネオショッカー大首領を押し上げる。

鎧を解除して右腕に集中して弓のようにする。

それをネオショッカー大首領に向けて突撃する。

弓の先端はネオショッカー大首領を貫く。

 

「何をするつもりだ!?いや、まさか!!」

 

「気付いたところで遅いぜ!!」

 

言っている間にも弓にエネルギーがチャージされて光が灯っていく。

火球や影の刃が放たれるがお構いなしに上昇を続ける。

そして、大気圏を突破して宇宙空間に出る。

 

「おのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「宇宙空間で消し飛ばせば汚染も何も無いだろ!!これで終わりだぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

最大までチャージされたファイナルウルティメイトゼロが放たれる。

ウルティメイトイージスごと射出されて光となって飛んでいく。

ネオショッカー大首領は抵抗するが最早逃れようは無い。

 

「確かに此処で終わりのようだ。だが、(貴様ら)がいる限り、(我ら)は何度でも、」

 

「蘇ろうが関係ねぇ。その度に倒すだけだ!!」

 

そうして背を向ける。

ネオショッカー大首領は内側から膨れ上がり、光となるかのように爆散した。

ウルティメイトイージスは光となってゼロのウルティメイトブレスに回収される。

 

「フィニッシュ!!」

 

爆炎を背にかつて一体化していた人物と似たようなポーズを取るのだった。

 





vsネオショッカー決着!
ゼロクロニクルと若干被った!
ゼロクロニクル自体はバレで始まるの知ってたけど此処まで進行被るとか予想してないよ!

ネオショッカーは完全壊滅ってわけでは無いです
というより再生怪人軍団に壊滅は無いというか
そこらへんは後々に

二巻分はあと二話くらいで終わると思います
決着とエピローグ的な配分になるかと
三巻分は今のところ未定です
四巻の内容次第ではあります


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牛の正体と消える牛角と蠢きだす迷宮


春映画はSH大戦Z以来の白倉米村金田トリオ確定!
察しろ!だが、楽しめ!
意外にオリキャスは多いぞ!

銀河伝説第一章はほぼベリアル無双!
知ってた!
割と強いとこ見せるゾフィー!
スーツあったからモブになった海外組!

キュウレンジャーは金銀加入!
能力チートじゃね!?
次回はオレンジ参戦!

エグゼイドは研修医人格消滅!
タドルファンタジー誕生!
研修医人格復活!
タドルファンタジーヤバい!
社長が凄いサンドバックしてる!

それでは、本編です!


 

白亜の石造りで出来た迷宮の中心。

世界王が異変に気が付く。

当初の目的通り”天の牡牛”捕獲に乗り出す。

 

「ふふ。迷宮の勝者は逃げ出すように這い出るのか。それとも名誉ある凱旋となるのか。楽しみですね」

 

滑らかな長髪を掻き揚げると、円錐状に広がって雅な風を吹かせる。

しかし円錐状に広がった長髪が回転と共に閉じると、少女姿の世界王は風と共に姿を消した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

異変が起こる迷宮の中でいつの間にか現れていた影が床に転がる一つのメダルに手を伸ばす。

 

「やはり調整途中のコアメダルでは奴らを排除できませんか」

 

呟きと共に拾い上げようとした時だった。

銃声と共に影とメダルが弾き飛ばされる。

影が銃声がした方に視線を向ける。

そこには弾き飛ばされたメダルを掴む海東大樹がいた。

 

「貴様か…………ディエンド」

 

「別に君たちを邪魔するつもりは無いんだけどね」

 

「ならば、何故それを」

 

「答えは単純。これがお宝だからさ。迷宮を探しても何一つ見つからないと思ってたところに思わぬ拾い物だったよ」

 

「貴様にくれてやるつもりは無い!!」

 

影は、大ショッカーグリードは背の触手の様な六枚の翼を海東に向けて振るう。

海東はディエンドライバーに素早くカードを入れて発砲する。

 

「変身!!」カメンライド!!ディエンド!!

 

銃口から放たれたプレートが触手を弾き飛ばす。

姿を変えた海東の頭部にプレートが突き刺さる。

そのまま海東はディエンドライバーにカードを数枚入れて引き金を引く。

 

カメンライド!!ライオトルーパー!!メイジ!!クロカゲ!!

「ネオショッカーメダルのお礼さ」

 

三体のライオトルーパー、同じく三体のメイジ、続けて三体の黒影が召喚される。

召喚されるや否や大ショッカーグリードへと襲い掛かる。

が、振るわれた触手によって即座に八つ裂きにされる。

召喚された者が光となって消える間に海東は腕を振る。

 

アタックライド!!インビジブル!!

「それじゃあ、また何処かで」

 

言いながら完全に姿を消すのだった。

大ショッカーグリードでもインビジブルを使った海東を追うのは不可能だ。

元より深追いをするつもりも無かった。

既に相当の力を手にしている物の未だに未完成には変わりない。

本気のディエンドを相手にするにはまだ時期が早いのだ。

 

「だが、いずれ奪い返してやろう」

 

呟きながら今後迷宮で起こる異変に巻き込まれない為にも銀色のオーロラを出現させる。

オーロラの奥に大ショッカーグリードが消えた後は静寂に包まれるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

異変を感じながら牛魔王との戦いで傷だらけの十六夜は別のことに驚愕していた。

牛魔王は無傷で立っている。

攻撃を直撃させてこれである。

淡く光る内部破壊は全て察せられて回避された。

左翔太郎から渡された物は動きもしない。

加えて相手は本気を出してもいない。

だが(´´)、それらを上回る程の驚きに十六夜は包まれていた。

それは牛魔王の正体、否、牛魔王が以前化けていた姿についてである。

十六夜の知り合いで、尚且つ金糸雀の家の少年少女とも面識がある。

牛魔王が化けるに相応しく外界から箱庭に渡った可能性がある者。

そんな条件に当て嵌まるのは一人だけだったのだ。

牛魔王は十六夜の反応を見ながら芭蕉の扇を取り出して、一薙ぎ振るう。

 

「まあ、そういうわけだ。積もる話もあるのだが、此度はお開きにして……………今は急を要するようだ。今日の所は_____焔の下に飛んで行くがいいッ!!」

 

「な……………ちょ、ちょっと待て、まだ話は終わってねぇぞクソジジイ_____!!」

 

大地から吹き上げる風を受けて、十六夜の身体が宙に舞う。

流石の十六夜も地表から風が吹いたのでは踏ん張ることもできはしない。

芭蕉扇_____大地より突風を巻き起こす仙術を宿した宝貝。

本来は彼の妻である鉄扇公女の宝貝なのだが、今回の仕切り直し用の武具として預かってきたのだろう。

突風の吹くままに迷宮の彼方に吹き飛んで行った十六夜を見送った牛魔王は、棍棒をひょいと担ぎ上げ、精霊列車の方角を見て呟く。

 

「………………本当なら俺も駆け付けてやりたいが、焔達にはまだ合わす顔が無い。後は頼んだぞ、十六夜」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

時を同じくして、アルジュナと御門釈天の戦いにも決着が付いていた。

とある理由で弱体化していた釈天はアルジュナに追い詰められていた。

そこに帝釈天の神格が預けられている黒ウサギが救援に駆け付ける。

それによってアルジュナは撤退し、黒ウサギと釈天も迷宮から脱出する。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

焔が真実を口にした途端、アステリオスの牛角が砕けた。

同時にケラヴノスは威光を失い、アステリオスの手から転げ落ちる。

彼は激痛と衝撃に襲われ、その場に膝を突いた。

 

「グ、ッガ……………!?」

 

言葉を紡ごうとしても上手く出てこない。

聞きたいことも問わねばならないことも山の様にあった。

激痛の苦しみよりも言語を発せない苦痛の方が今は大きい。

西郷焔の口にした言葉。

あの真意を問いたださねば、死んでも死にきれない。

 

”_____お前は、ミノタウロスじゃない”

 

では、此処にいる己は(´´´´´´´)、一体何だというのだ。

怪牛ミノタウロスとは迷宮に巣くう食人の魔獣ではないのか。

クレタ島の王子ではないのか。

記憶にある地中海の潮騒と空は、偽りの記憶なのか。

 

 

星と雷光の名を持つ少年_____アステリオスとは、一体何者なのだ………………!?

 

 

答えの無い煩悶に捕まったまま、謎の少年は地に臥して動かなくなった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

白亜の岩塊は迷宮の中に溶け込み、鼓動を響かせ始める。

鳴動し始めた迷宮は瓦礫さえも地表に飲み込んで巨大な突起物を造り始めた。

岩肌に脈を打つ姿は生命体を彷彿させる。

或いは正に生物だったのかもしれない。

頭蓋を造り、腕を生やし、牛角を造り出す白亜の怪物。

其れが何者であるのかを把握するのは容易かった。

______”牛頭の人喰い迷宮(ミノア・ラブリユス・ラビリントス)”。

生贄を欲する牛頭の魔人が、白亜の鎧を身に纏って吼える。

 

『GEEEEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa_______________!!』

 

焔たちの下へと急ぐ晴人へも牛頭の群れが襲い掛かる。

四方八方全てが敵だと思える大軍だった。

だが、その全てを砕き散らして進む。

 

「こんなもので俺を止められるかよ」

 

オールドラゴンのままである晴人は全身に強力な魔力を纏っているに等しい。

さすがに直撃すれば衝撃を受けるがダメージそのものはほとんど無い。

一回転し、ドラゴテイルで周囲の牛頭を吹き飛ばし、ドラゴウィングの風で瓦礫を牛頭に放っていく。

前方にドラゴスカルからの熱線を放ち、消し飛ばして道を開く。

道を埋める様に現れる障害をドラゴヘルクローで砕き散らしていく。

同じように襲われているであろう焔たちを思い浮かべ一気に大火力で吹き飛ばそうとした時だった。

指を鳴らすような音が場違いにも響き渡る。

 

「え?」

 

直後に晴人の周囲が一変する。

迷宮にいたはずの晴人は何処かの客室に居た。

武装を解いてフレイムドラゴンの姿で様子を窺う。

警戒しながら振り向くとそこには女王の姿があった。

 

「一体何の用でしょうか、女王様?」

 

「その態度は別にいいけど。わざとらしいと機嫌を損ねると覚えておきなさい」

 

「分かってますよ」

 

言いながら晴人は力を抜いて変身を解く。

女王の姿を見たことで大体察した。

これが女王以外の仕業だったら慌てていただろうが女王の場合は意味合いが異なるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

精霊列車がスカハサの”影の城”に包まれていく。

その周囲では牛頭の群れが次々と姿を増やしている。

鈴華と少年は既に中にいる。

焔と彩鳥も一旦退く為に走っていた。

彩鳥は焔のことを考えて意を決して足を止める。

 

「っ、先輩は先に行ってください!!ここは私が____」

 

食い止めます、とは続かなかった。

彼女が決死の覚悟を決めたその直後、激しい風が吹き始める。

突然の強風を受けて精霊列車に体をぶつけた焔は、足を止めてその場に膝をついた。

 

「っつ、やべ…………………!!」

 

すぐに体を起こす焔だが、その隙を見逃さなかった一体が焔に襲い掛かる。

風は尚も強く、しかし突風が運んできた飛来物が、牛頭を頭から叩き潰した。

 

「________んの、クソジジイがああああああああああああああああああッ!!」

 

ズドガァンッ!!と、ド派手な爆発音と共に飛来してきた彼____逆廻十六夜は、着地と同時に白亜の迷宮の地盤を突き破るほどの勢いで拳を叩き付ける。

加えて淡い光が線となって地面を奔る。

周囲の牛頭が次々と内から砕け散っていく。

如何に再生し続ける牛頭の怪物といえど、木っ端微塵に砕かれては簡単に修復できない。

焔は破片に頭をぶつけて星を散らしたが、すぐに頭を振って十六夜を見る。

 

「イ、イザ兄!?なんで此処に!!しかも前回よろしくピンチのタイミングってどういうことだよ、どっかから見張ってたのかアンタ!?」

 

「なわけあるか!!コッチはこっちで事情があるんだよ!!」

 

いつかの様に反射的に言い争う兄弟二人だったが、状況が状況だ。

彩鳥は予想外の救援に感謝しつつ、十六夜に向かって叫ぶ。

 

「いざよ____ああえと、先輩のお兄さん!!一つ向こうの客車まで走ってください!!そこの窓から精霊列車に乗り込めます!!」

 

「ああん?」

 

不機嫌そうに彩鳥を見る十六夜。

見慣れない金髪少女だと思ったのだろう。

年齢からして焔と同じ学生か___と、その時だった。

蛇蝎の連接剣を見た十六夜は、目が点になるほど意外そうな視線を向けた。

 

「あれ……………その連接剣って、」

 

「つ、積もる話は後にして、早く走ってッ!!」

 

脱兎の如く精霊列車の客室に走る彩鳥。

内心で「一番気付かれたくない人に気付かれた……………!!」と半泣きになっていたが、後の祭りだ。

そもそも晴人に気付かれた時点で手遅れではあった。

”影の城”の防備は既に半分まで迫っている。

十六夜は状況に混乱しながらも、焔を肩に抱えてその後ろに続くのだった。

 

 





色々と合流するのでした!
あと残りは二話と言ったな
アレは嘘だ!
決着とエピローグでもう二話必要になりそうです!

晴人と女王に関しては次回なり!

海東はネオショッカーメダルを入手するのでした

それでは、質問があれば聞いてください
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質問はそちらでも!
感想待ってます!


あ、仮面ライダーゲンム最新話配信開始されてますよ!
ただし最終話は玩具買え!パターンだけどな!


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輝く戦斧と迷宮の最期と繋がる光

仮面戦隊ゴライダー!
なんやそれ!って以前に味方側のメンバーが割と凄いという
でも、剣崎死んでないよね?

銀河伝説はメビウスとレイの出会いでした
カプセル怪獣強くなったね!

キュウレンジャーはオレンジが割とガッツリ敵対してて驚いた
最後に仲間になる枠かな?
次回はピンクが遂に変身!

恐怖を乗り越えてXX!
キースラッシャーはようやく必殺技をしよう
お化けが苦手な闇医者には笑う
スナイプレベル50は火力半端なかったですね
社長はまたサンドバックに

それでは、本編です


_____”サン=サウザンド”号の客車。

全員が逃げ込んだ後、車両は全てスカハサの”影の城”に覆われた。

車両内にて焔達は十六夜に状況を説明している。

そこでアステリオス≒ミノタウロスと推察し、”ミノタウロス”___食人の怪物の正体がクレタ島の王子アステリオスの王墓だったと結論付ける。

そこから生贄は鎮魂の儀式であり、アステリオス自身も生贄だった可能性が見えてくる。

そこで焔と鈴華はアステリオスを連れて帰ると言い出す。

当然十六夜が反対する。

 

「責任?そんなもん、全責任を背負う(´´´´´´´)に決まってんだろ(´´´´´´´´)

 

「つまらない意地じゃない。人としての意地です(´´´´´´´´´)

 

二人はそう宣言する。

それを見て十六夜も呆れながらも納得はする。

椅子に腰を掛けて話を進めようとした時だった。

 

「あぁ、此処にいたのか」

 

指輪を光らせた晴人が客室に入ってきた。

予想外の人物の登場に一同キョトンとする。

それもそのはず晴人は敵と交戦したまま姿を消していたのだから。

 

「よう、十六夜。久しぶりだな」

 

「久しぶりって言っても一年くらいだろ?」

 

「まぁそうだな」

 

「で、お前は何で此処にいるんだ?」

 

「俺の担当してた仕事が一段落したから黒ウサギちゃんに付き合ってた。そこでネオショッカーが現れたんでね」

 

「相手をしてたわけか。ついでに、こいつらの手助けか?」

 

「そういうわけだ」

 

話ながら視線を焔たちに向ける。

彩鳥だけ露骨に視線を反らす。

自身の正体を察している人物が増えたのだから当然だろう。

 

「悪いな。途中で離れちまったけど大丈夫だったか?」

 

「はい。でも、晴人さんはどうやって車内に?」

 

「確か俺達が最後に入ったはずなんだけど」

 

「そこは魔法の力で、って言いたいところだけど女王に呼び出されてな」

 

「え?女王が自らですか?」

 

意外そうな顔をしながら彩鳥が会話に混ざる。

女王が自ら介入してくるとは思わなかったのだろう。

 

「あぁこれ以上の干渉は協定の枠外だってな」

 

「協定ですか?」

 

「そういや、そんなこと決めてたな」

 

協定とは太陽主権戦争に対する乱入者に対する扱いである。

”大ショッカー連盟”を初めとしてルール度外視で主権戦争に乱入してくる者達を女王や白夜叉たちは懸念していた。

奴らはゲーム開催中にあくまで部外者として乱入してくる。

しかも巧妙に主催者が干渉しにくいタイミングで、だ。

ゲームを台無しにされるわけにはいかないが、主催者が直接干渉すれば全体に影響が出る。

何より下手に動いて魔王連盟などに口実を与えるのは良くない。

これが神霊などによる干渉ならやりようはあるのだが、敵はそうでは無いから厄介なのだ。

そこで特例処置として晴人のような者たちに介入をさせるのだ。

事前に全体に対してはルールを無視して介入してくるようでは投入されること伝えてある。

もちろん無条件にではない。

主権戦争運営側と一定以上の権限を持つ者が許可した上で介入が許される。

今回はそれがラプ子と女王ということだ。

敵は撃破されるか、撤退した為これ以上の介入は過剰というわけである。

 

「そういうわけでこれ以上は手を貸せない。悪いな」

 

「いや、此処まで来れたら大丈夫です」

 

そして、話は戻る。

十六夜は改めて口を開く。

 

「条件は一つ。こいつが暴れた時の保障だ。焔。お前ならこの迷宮をどう踏破する?晴人の協力抜きでお前の力で、あの怪物たちと戦えるのか?」

 

「………………それは、」

 

言い淀む焔。

彼の所有する恩恵が戦闘用でないことは明らかだ。

沈める方法は見当が付いてる。

アステリオスを王墓に返すことだ。

これを採らないのならば、手段は一つ。

 

「____ミノタウロスを、迷宮の怪物を倒す」

 

「出来るのか?お前に?」

 

「出来る、と思う。いや出来ないと俺が太陽の主権戦争に招かれる辻褄が合わない。だからきっと、俺にはあの戦斧が使えるはずだ」

 

全員の視線が一つに集まる。

其処には十二星座中最大の破壊能力を秘めた戦斧_____刃から雷光を放つ”疑似神格・星牛雷霆(プロト・ケラヴノス)”があった。

十六夜は顎に手を当てて思考を奔らせ、勝算を練る。

 

「……………ふぅん?確かにお前の恩恵なら扱えるかもな」

 

「扱えるさ。粒子体の研究と孤児院の帳簿に比べれば、むしろ簡単なぐらいだ」

 

十六夜の問いに即答で応える。

ならばこれ以上、十六夜が問うべきことは無い。

椅子に勢いよく座り足を組んだ十六夜は、三人に対して獰猛に笑いながら告げた。

 

「其処まで言うなら見ててやる。ま、精々チビッ子ども」

 

チビッ子じゃねぇ、と即座に反論する焔と鈴華。

彩鳥は義兄弟たちのやり取りを羨ましそうに見ていたが、コホンと咳をして注目を集める。

 

「話は纏まったようですね」

 

 

三人は顔を見合わせて頷き合い、最後の戦いに挑むのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

静寂が迷宮の中を支配していた。

アステリオスは迷宮の王墓と一体化して全てを把握していた。

…………流行り病に罹ったこと。

…………父王に生贄にされたこと。

…………後に、少年少女の殉死者の魂が弔われたこと。

全てを知り、少年は何も望むことは無いと思っていた。

___ただ、許されるなら。

亀裂の向こうから吹く潮風を今一度、人肌で感じてみたかった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

攻防の末に白亜の怪牛の眼前に一人の少年が現れた。

正に目と鼻の先、手を伸ばせばすぐに届く距離。

 

(……………)

 

怪牛は抵抗の無駄を悟り、反撃の代わりに視線に力を込めた。

西郷焔が手にしていたのは”疑似神格・星牛雷霆(プロト・ケラヴノス)”。

太陽を司る黄道の十二星座の武器の中で最強の破壊力を秘めた一振り。

無作為に振るうだけでも山岳を切り崩し、海を二つに別つ力を持つ戦斧。

雷霆の原型であるこの武器は神雷を無限に溜め込むことができる。

短時間とはいえ刀身が赤く輝くほどの力を溜めたのであれば、この程度の迷宮は即座に破壊できるだろう。

______覚悟しろ、と焔の視線が訴える。

怪牛も全てを受け入れ、最後に空を見上げた。

地中海の潮騒は遠く、手を伸ばしても届きそうにない。

 

 

だがそうあるべきなのだろう。

塵は塵に、灰は灰に。

死者は大地に還るのが運命。

瞳を閉じた怪牛は千に束ねられた神雷を受け入れる。

振るわれた斬撃は唯の一度だったが、それは最早斬るという概念ではない。

触れるより先に対象は熱に焼かれて溶け、溶岩になった直後から蒸発を始める。

元素すら残さないその一撃は正真正銘、神々の雷霆によるもの。

迷宮の怪物ミノタウロスは_____星の輝きにも似た雷光によって焼き払われた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

光となって消えたネオショッカー大首領を地上から眺める者がいた。

 

「データ取集は成功。サンプルも入手。用は済みましたね」

 

ネオショッカー大首領の血液を入れたケースを厳重に仕舞いながら白服の男は「X」の文字が書かれたアタッシュケースを持って姿を消すのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ネオショッカー大首領が倒されると同時に残っていたアリコマンドも全て消えた。

変身を解いた翔太郎、伊達、仁藤、貴虎、凰蓮、流星の前にゼロが降り立つ。

 

「俺はウルトラマンゼロ。別世界から来たって言えば分かるか?」

 

「あぁ、あんたが悪い奴じゃないってくらいはな」

 

「戦闘中の口振りからして此処は目的地じゃない様だがまだ何か用があるのか?」

 

「一応関わったから連中がどういう奴かぐらいは聞いておこうと思ってな」

 

そこからゼロに対してネオショッカーの事を話す。

とは言っても、翔太郎たちも分かっていることは少ないのであまり話せることは無かった。

だが、ゼロは納得した様に頷く。

 

「つまり、アスカが俺を呼んだ理由はこれか。ヤプールも関わってるようだしほっとくわけにはいかねぇな」

 

「何か知ってるのか?」

 

「いや、こっちの話だ。何はともあれ教えてくれて助かったぜ。また会うかどうか分からねぇがいずれ同じ場所に行くことになるかもな」

 

そう言うとゼロはウルティメイトイージスを装備して開いた次元の穴に消えるのだった。

それを見届けると貴虎と凰蓮も荷物を纏める。

 

「私たちは次の仕事があるのでな。何か用があれば此方に連絡してくれ」

 

「じゃあ、風都に来たら俺を頼ってくれ」

 

言いながら翔太郎と貴虎は名刺を交換する。

荷物を終えた二人は去っていた。

去り際に凰蓮は沢芽市に来たらうちの店もよろしくね、と言い残していくのだった。

 

「お前たちはどうするんだ?」

 

「俺たちは雇い主が戻ってくるまで待つかな」

 

流星の問いに顔を見合わせながら答える。

依頼された仕事は十六夜たちの護衛なので帰るに帰れないのだ。

 

「そういうお前はどうするんだ?」

 

「俺は一旦仲間に連絡してそれ次第だな」

 

一先ず残ったメンバーは待機するのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

ゼロは次元を移動しながら考えていた。

 

「箱庭を拠点にする組織か。それが本当だとするなら厄介だな」

 

加えてヤプールも関わっているという。

ヤプールの狙いは確実に復讐だ。

その対象は光の国のウルトラマンだけでは無い。

何処まで被害が広がるか分かった物では無い。

何より宇宙警備隊として放置できるはずが無い。

 

「親父にも知らせておく必要がありそうだな」

 

対処法を考えながら行き先を調整する。

光の国を思い浮かべながら別の知り合いの顔も脳裏に浮かぶ。

自分と共闘したことがある面々を。

知っていると知らないでは対応の幅が変わる。

 

「一応あいつらにも伝えておくとするか」

 

呟きながら行き先を追加する。

まずは光の国を目指して次元を移動するのだった。




決着でした!
あっさり目というか変えれるところが少ないというか……………

ゼロはウルトラ側に事態を伝える立場に
大ショッカー連盟はそっち系統の参加者が少ないので不干渉で逆に気付かれてないのです

協定については後々大々的に
たぶん次巻分辺りで


それでは、質問があれば聞いてください
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感想待ってます!

次回エピローグなり!


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観光とそれぞれの帰路と帰れなかった者


ゼロクロニクル銀河伝説編!
ようやくゼロが登場という

キュウレンジャー!
ワシピンク覚醒であとはサソリオレンジと和解するのみ!
博士殺害の件はどうなるやら

エグゼイド!
元社長がノリノリである
レベルXと言いながらまだまだぶっ飛ばされる
次回は半裸変身だヨ!

ニコ生でウルトラマンXが終わりましたね!
やはりXは良い!


それでは、本編です


ふと、懐かしい潮騒が耳の奥を擽った。

幼い頃によく波打ち際で走り回っていたことを彷彿させるその音は、紛れもない地中海の潮騒だった。

優しい木漏れ日の光に包まれながら、そっと一筋の涙が流れる。

何故ならこの暖かさは_____死後の夢にしては、聊か以上に優し過ぎたからだ。

 

(………………)

 

静かに瞳を開く。

廃屋というには整いすぎた部屋の一室。

白亜の石造りの家は自分が生きていた時代とは少し趣が違うものの、長い年月をかけて研鑽を積んできた形跡が見て取れる。

クレタ島の______ミノア文明の生きた系譜が現代に残っているのかと思うと、少し嬉しかった。

耳を澄ませると、隣の部屋から少年少女と青年の声が聞こえてくる。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「____流石は”エヴリシングカンパニー”だな。事情も聴かずに即日保護に乗り出してくれるとは思わなかった。彩鳥お嬢様にはいくら拝んでも拝み足りねぇ」

 

「ふふ、それほどでも。しかし不思議なことでもないですよ。今回の一件が進めば先輩は”エヴリシングカンパニー”の中でも重役に等しい権力を得るかもしれません。そうでなくとも粒子体の研究者がfパスポートも持たずに海外に居るなんて状況を放置しておくわけにもいきませんから。開発部のエドワード=グリームニルなんて気が気じゃない様子でしたよ」

 

「焔はそうかもしれないけど、私は完全に只のお供だけどね!!」

 

ビシッ!!と親指を立てて何故か晴れやかな声。

直後に壁にもたれ掛かってる男の方を向く。

 

「「で、何で伊達さんは此処にいるの?」」

 

そこにいたのは伊達明だった。

焔達がクレタ島に出ると何故か伊達明も同じ島にいたわけである。

ついでなのでアステリオスの様子も見てもらった。

伊達としては別件の依頼で来ていたところに焔達が来て驚いたのだが。

 

「言っただろ?十六夜や釈天の護衛で来てたって」

 

「エヴリシングカンパニーの依頼ですか?」

 

「いや、鴻上会長の方だ」

 

「あの人ですか………………」

 

彩鳥は露骨に顔を歪める。

鴻上に関わるとろくな事にならないからだ。

解決策も用意するとはいえ問題の発生源に近い。

おまけに借りを作ると後が怖い。

そんな男がわざわざ関与してくる程面倒な物は無い。

焔は思い出したようにアタッシュケースを取り出す。

 

「伊達さん、これは返しすよ」

 

「使わなかったのか?」

 

「バースバスターは使ったけどドライバーの方は一切使ってない。そもそもこれ試作型じゃん。俺が使える代物じゃないって」

 

「だろうな。会長も何を考えて渡したんだか」

 

二人で首を捻っていると隣の部屋からアステリオスが出てくる。

その姿を確認すると伊達以外の三人はそれぞれ別々の驚きで迎える。

 

「よう。もう起きていいのか?」

 

「問題無い……………のだが、此れはどういうことだ?どうして俺はまだ顕現している?お前たちはどんな魔法を使った?」

 

戸惑いを隠せないアステリオスに、今度は焔と鈴華が驚いた。

 

「あれ?なんかイザ兄の話と違うね。ギフトゲームって勝利条件を全てクリアしたら、主催者を問答無用で服従させられるって聞いたけど」

 

「死んだとしても無理矢理復活させるって辺り、神様の箱庭って感じだよな。_____お前は、何も感じないのか?」

 

焔に指摘されて、ふと胸に手を当てる。

確かに西郷焔と今の自分には何かしらの楔の様なものが感じられた。

どうやら外界にあっても服従の契約は生きているらしい。

そんなアステリオスの様子を見た焔はニヤリと笑って腰に手を当てる。

 

「ふふん。まあ、そういうわけだ。お前には悪いけど此れから太陽の主権戦争とやらに参戦しなきゃいけないんでな。お前には否が応にも協力してもらうぞ」

 

「……………それは別に構わんが。本選まで俺も外界で暮らすのか?」

 

「勿論だ。けど他だ飯は許されないぞ。年齢は十六歳ってことにして、ドン=ブルーノのフランス料理店で自分の生活費は稼いでもらうからな」

 

既に其処までプランを立ててあるとは用意周到なことである。

 

(何故俺を助けたのだ…………などと聞くのは、やはり無粋なのだろうか)

 

戦力が欲しかったというのも事実だろう。

しかし根本的な理由は別にあるように思えた。

それはきっと怪牛だった彼には理解できない、御人好しな理由なのだろう。

アステリオスは苦笑いを浮かべずにはいられなかった。

その様子を眺めながら伊達は隣の彩鳥に小声で話しかける。

 

「大丈夫か、お嬢様」

 

「それはどういう意味で、ですか?」

 

「何か具合が悪そうだったろ?」

 

伊達は四人を見つけた時に彩鳥が他の三人に気付かれないようにふらついていたことを目撃していた。

何かしら具合が悪いのでは、と思っていたのだが彩鳥は首を振る。

 

「ただの貧血ですよ。……………ただ、」

 

「ただ?」

 

「何か、自分の中に何か混ざってるような感覚はありますけど」

 

「?」

 

「上手くは説明できませんが原因自体は薄々は察しているので問題はありません。体調などに影響が出る物でも無いでしょうし」

 

「そうか。だったら、大丈夫なんだな?」

 

「はい」

 

そうこう話している内に焔達はアステリオスに観光案内させることにしていた。

 

「不法滞在になるけどな」

 

「まあまあ。せっかくのゴールデンウィークですし、それぐらいは許されるでしょう」

 

そういって小走りで扉に駆け寄る彩鳥。

その様子から問題は無いと伊達は判断するのだった。

彼女が扉を開くと、燦々とした太陽の光が部屋を満たしていく。

高台にあるこの家からは町が一望でき、白亜の街並みが視界を埋め尽くした。

_____一瞬だけ、過去の情景が脳裏を過ぎる。

だがそれは本当に一瞬の事だった。

 

「……………この丘も、随分様変わりしたな」

 

「おや、知ってる場所?」

 

「ああ。此処からならクノックス宮殿も遠くはない。方角的には____」

 

四人はそれぞれ家を出て歩き始める。

伊達はそれを後ろから眺めながら付いていく。

間もなく自己紹介を終えた彼らは、クレタ島最大の観光地を目指し始める。

彼らとは互いに……………ここから先、長い付き合いになる予感がした。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

伊達以外の面々は各々別行動を取っていた。

仁藤攻介はクレタ島が無人なのをいいことに気ままに遺跡や文献を調査に行った。

 

「皆まで言うな。こんなチャンス滅多に無いからな。会長の依頼に対しての報酬でもあるしな」

 

考古学者という本職としての眼を輝かせながら言っていた。

朔田流星は仲間に連絡を終えるとマシンメテオスターで去っていった。

 

「俺がいると都合が悪そうだし、何より次の仕事が入った財団Xに何か動きがあったらしい」

 

そう言って仲間と合流する為に走り去ったのだ。

左翔太郎はフィリップから電話を受けた。

 

「そうか。予想通りだな」

 

どうもどうやら風都で何か事件が発生したらしい。

既に照井竜とフィリップが捜査を始めている。

翔太郎としては予想の範囲内だった。

依頼が来る前から風都では何かしら動きの予兆があった。

ただのミュージアム残党とは違う連中が動いていたのだ。

だからこそ、翔太郎はフィリップを風都に残していた。

 

「悪いが急用ができた。風都を守るのは俺の仕事なんでな。先に帰らせてもらうぜ」

 

そう言うなり慌てる様に帰っていった。

ゆえに島に残っているのは伊達明と仁藤攻介だけだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

そして、クレタ島に滞在している者は別にもいた。

同じく飛ばされた逆廻十六夜は、怒りで全身を戦慄かせながら小さく叫ぶ。

 

「なんで……………精霊列車は箱庭に帰ったのに…………俺だけ外界に飛ばされてんだよッ!!おかしいだろド腐れ女王ッ!!何の嫌がらせだこれはッ!!」

 

きっと意味なんか無いんだろうけどなッ!!

……………と、辺りを構わず吼える十六夜。

彼も自棄になっているのだろう。

だが彼も実のところ分かっていた。

迷宮の性質を考えると、出口から入った十六夜たちがクレタ島に帰されるのは当然の流れだったのだろう。

同じく傷だらけで戻ってきた釈天と、グリフォンのグリーの傷の手当てをしていたプリトゥはその様子を見てカラ笑いを浮かべた。

今後の方針を話し合う釈天とプリトゥだが、その中で耳を疑うものがあった。

 

「オイちょっと待て。護法十二天って”天軍”だろ?”主催者”じゃないのか?」

 

「いや、俺達じゃない。黒ウサギは審判として参加するみたいだけどな。ゲームの運営とルール制定をするのは前回の優勝者と、優勝者が指定したコミュニティだけだ。…………まあ、開会式を迎えれば分かることさ。それよりお前、開会式までどうするんだ?」

 

釈天の質問に、十六夜は言葉を詰まらせた。

流石に開会式が始まれば迎えが来ると思いたいが、今の十六夜は戸籍が残っていたことを除けば無一文の青年である。

それでも生きていくことは難しくないものの開会式までに問題を起こさずに生きていく自信は無い。

となると、やはり道は一つしかないだろう。

 

「あー………………其処の社長さんや。柴又帝釈天の会社には、野郎一人と鷲獅子一人を雇う余裕はあるか?」

 

釈天はニヤニヤと笑いながら十六夜の提案を受け入れた。

 

「いいぜ。他の社員もお前の噂を聞いて興味がある様子だったからな。あとうちは出来高払いだから、給金は仕事内容によるぞ」

 

「…………なるほど。だからプリトゥは金持ちで社長は財布が軽いのか」

 

痛いところを突かれてサッと視線を逸らす釈天と、えへんと胸を張るプリトゥ。

 

 

護法十二天の経営する会社となればさぞ奇怪な仕事が飛び込んでくるだろう。

更にどうも別の世界が混じったことで自分がいた頃と変わった物もあるだろう。

開会式まではまだしばらく時間がある。

どうやらそれまでは退屈せずに済みそうだと、十六夜は苦笑いを浮かべるのだった。

 

 





ラストエンブリオ二巻終了!
残り部分は三巻分と共に!
とはいえ、三巻分は少なくとも四巻の後でですが

それでは、質問があれば聞いてください
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どの世界が繋がってる扱いなどはそこにて
感想待ってます!


3月11日!
つまりは今週末!
劇場版ウルトラマンオーブ公開です!


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ミリオン・クラウン0
Heretic Crown 0


久しぶりの更新です!

エグゼイドは終わってビルド始まってますね!

ジードも中盤!
今月はいよいよロイヤルメガマスター登場!

今回は問題児&ラストエンブリオというよりミリオンクラウンサイドです!
とは言ってもミリオンクラウン本編と全然関係無い番外も番外ですが!

それでは、番外な本編です


 

三百年前に人類文明は滅んだ。

文明を失った人類は今、星を満たす栄華の残滓によって慎ましい生活を送っている。

在り方すら歪んだこの星の海上にて二つの巨影がぶつかり合う。

 

「ゼットン星人!何を企んでいる!」

 

「知れたこと!我らが野望はただ一つ!侵略だ!」

 

「この状態の星をまだ侵略するというのか!?」

 

「勘違いするなよ、オーブ。この星での目的は前準備に過ぎない」

 

巨影の片方は巨人であり、もう片方は異形だった。

巨人と異形は叫びながら組み合う。

 

「前準備だと?」

 

「そう前準備だ。この星の環境は我らにとって最高の実験場だからな!」

 

「そのゼットンが実験結果か!」

 

「いいや、こいつはまだ試作品に過ぎない。そしてただのゼットンと一緒にするのはやめてもらおうか!」

 

巨人は手に光を収束させて光の輪を作り出す。

それは高速回転する光の刃だ。

光の刃をゼットンと呼ばれる異形に投げる。

 

「このゼットンはEXゼットン!進化したゼットンだ!」ゼェェェェトン!

 

EXゼットンは投げ付けられた光輪を腕で弾き砕く。

そのまま距離を詰めると巨人に殴り掛かる。

巨人は身体の紋様を紫に発光させると移動速度を上げて回避する。

だが、ゼットンはそれを見切って更に拳を繰り出す。

巨人は紋様を赤く発光させて受け止めようとするがパワーで負けて吹き飛ばされる。

巨人は海面を大きく波立たせながら倒れる。

 

「なら、これだ!」

 

巨人の全身が輝く。

事の始まりは数時間前にこの地球にてクレナイ・ガイが異星人の基地を発見するところに遡る。

明らかにこの時代の人間の施設では無い建物に潜入するとそこでゼットン星人がゼットンを培養していたのだ。

気付かれる前に片付けるつもりだったがゼットン星人ではなくゼットンに感付かれてしまい今に至る。

ゼットン星人がEXゼットンと一体化した為にガイも巨人に姿を変えて戦闘が始まったのだ。

 

「タロウさん!」ウルトラマンタロウ!

 

「メビウスさん!」ウルトラマンメビウス!

 

インナースペース、精神世界のような場所でガイはオーブリングを取り出してウルトラマンの力が入ったカード、フュージョンカードを読み込ませる。

左右にウルトラマンタロウとウルトラマンメビウスが並ぶと、ガイはオーブリングを掲げる。

 

「熱いやつ、頼みます!」フュージョンアップ!ウルトラマンオーブ!バーンマイト!

 

タロウとメビウスがガイと重なり、その力を与える。

スペシウムゼぺリオンからバーンマイトへと姿を変える。

巨人の名はウルトラマンオーブ。

宇宙を守る光の戦士の一人である。

かつて別次元の地球を救ったようにこの地球も救いにきたのではない(´´´´)

それは今を生きる人類の役目である。

彼は別の使命でこの地球に来ていた。

目の前のゼットン星人もその使命の対象の一人であった。

角が生えた紅い姿になったオーブは拳に炎を纏わせてEXゼットンに殴り掛かる。

 

「紅に燃えるぜ!」

 

EXゼットンは受け止めるが衝撃を殺し切れずに後退する。

殴り返すように繰り出してきたEXゼットンの拳を左腕で叩き落すと右の拳を叩き込む。

 

「おのれ!」ピポポポポポポポポポ、ゼェェェェェェトン!

 

「ストビュームバースト!」

 

EXゼットンが放つ火球とオーブが前面にエネルギーを溜めて撃ち出した光弾がぶつかり爆発する。

オーブは爆炎を突き破り、爆発の衝撃波で動きを止めていたEXゼットンに炎を纏った蹴りを叩き込む。

海面に倒れ込むがよろめきながら素早く立ち上がる。

だが、そこに全身に焔を纏ったオーブが突進してくる。

 

「ストビュームダイナマイト!」

 

「こうなれば仕方ない!粒子解放(´´´´)!」

 

衝突の寸前にEXゼットンの姿が消えた。

空振りする形になったオーブは纏っていた炎を霧散させる。

 

「どうなって…………グッ!?」

 

周囲を見渡そうとした瞬間に背後に火球が炸裂する。

その後も周囲から無数の火球が放たれる。

目を凝らすと周囲を残像が残るような速度でEXゼットンが移動しているのが見えた。

ゼットンの特性の瞬間移動では無い。

アレは無音で姿を消す。

今目の前で行われてるのは高速移動だ。

さっきまでとは明らかに動きが違う。

 

「これこそがこの星での実験成果だ!オーブ!貴様もいずれ我らが計画の邪魔となる!今ここで消させてもらうぞ!」ゼェェェェェェトン!

 

「原理は分からないがそう来るならこっちも別の手を使うだけだ!」

 

オーブが再び光に包まれる。

インナースペースでオーブリングを構える。

 

「メビウスさん!」ウルトラマンメビウス!

 

メビウスのカードをオーブリングに読み込ませる。

力の粒子がメビウスの姿となってガイの隣に立つ。

 

「ギンガさん!」ウルトラマンギンガ!

 

ギンガのカードをオーブリングに読み込ませる。

力の粒子がギンガの姿となってガイの隣に立つ。

 

「輝きの剣、お借りします!」フュージョンアップ!ウルトラマンオーブ!メビュームエスペシャリー!

 

メビウスとギンガの姿がガイに重なる。

バーンマイトからメビュームエスペシャリーにオーブの姿が変わる。

クリスタルを身に付けた鋭い姿となり、腕から光剣を伸ばす。

 

「眩い光で未来を示せ!」

 

「姿を変えたくらいでこのEXゼットンに勝てるはずが無い!」

 

「それはどうかな」

 

光剣で火球を斬り裂きながらクリスタルで七色の剣を作り出す。

次々と剣を生み出し、周囲に漂わせる。

 

「メビュースピンブレード!」

 

生み出した剣を四方八方に射出する。

EXゼットンも高速移動しながら回避行動をする。

だが、それでも逃れられない。

避けたとしても横を通り過ぎる剣が逃げ道を塞ぎ、避けた剣も背後から襲い掛かる。

動きを緩めた途端に剣の先から光線が放たれる。

バリアを張って防ごうとした瞬間にオーブが身を回転させながら腕から伸ばした光剣で斬り裂く。

肩から袈裟斬りされ、傷口から体液が溢れる。

先程まで過剰に発光していた部位も光を薄めていく。

 

「おのれ、粒子体が流れ出てしまったか」

 

「これで終わりだ!」

 

オーブの周囲に浮かぶ剣から放たれる光線がEXゼットンの身体を貫いていく。

クリスタルの剣の一本を掴むとその周囲に四本の剣を纏わせる。

五本の剣によって強大な光の刃が生み出される。

 

「メビュームスぺシャリーブレード!」

 

縦に振り下ろされた光の刃によってEXゼットンは蒸発していく。

消滅の一歩前でゼットン星人はEXゼットンから分離する。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

光剣から逃れたゼットン星人は近くの島にいた。

基地は先程のオーブの戦闘で吹き飛んでいたので戻る場所は無い。

他の同士と合流する為に連絡を取ろうと通信機を組み立てていた。

 

「やはり適合率の低い状態では高速移動が精一杯か。だが、この戦闘データは次の個体に活かせる」

 

「いいや、次なんて無い」

 

「貴様、ジャグラー!」

 

独り言に割り込んだ声に感付いて銃を抜くが遅かった。

既に刃は振り抜かれ、ゼットン星人は両断されていた。

下半身から上半身が滑り落ちる中でゼットン星人は苦悶の声を漏らす。

 

「何故………貴様まで…………」

 

「あいつを倒すのはこの俺だ。なら、あいつのいるところに俺がいても不思議じゃ無いだろう?」

 

力尽きたゼットン星人は服を残して溶解する。

ジャグラーが刀を鞘に納めるとちょうどガイが駆け付けてきた。

 

「よう、遅い到着だな」

 

「何でお前まで此処に…………」

 

「それはお前には関係無い話だろう?そういうお前はまた任務か?」

 

「どうだろうな。俺はただこの地球で異星人たちの企みを止めに来ただけだ」

 

「その様子じゃまだ何も知らないみたいだな」

 

小馬鹿にした様子のジャグラーに掴み掛かる。

 

「お前、何か知ってるのか?」

 

「さぁな?俺はダークリング探しに忙しんだ。お前に構ってる暇もこんな地球をどうこうする暇も無い」

 

「…………ダークリングがこの地球にある?いや、持ってる奴が来ているのか!?」

 

ジャグラーは特に答えずに去ろうとする。

ガイもこれ以上問答しても意味は無いとして歩き出す。

そこで何かを思い出したかのようにジャグラーが振り向く。

 

「この状態の地球でも守る価値はあるのか?」

 

「状態なんて関係無い人が強く生きているそれで十分だ」

 

「そうか。なら、一つ教えてやるよ。お前が思ってる以上に異星人にとってこの状態は価値があるぞ」

 

「どういう意味だ…………あいつ、知ってる上で動いてるな」

 

ガイが振り向いた時にはジャグラーの姿は消えていた。

ガイから見てもこの地球は特異だった。

数々の次元を見てきたが此処まで姿を変えた地球は初めて見た。

だが、それは異星人にとって侵略する意味も失せたのではと考えていた。

ゆえにゼットン星人が何者かと繋がって怪獣を育てていたのを発見した時は驚いたものだった。

単独で動いていたのならまだ疑問に思うことも無かった。

しかし組織として動いてるからには何らかの計画が動いてるに違いない。

人類とこの地球の事情にガイは関わるつもりは無い。

けれど、そこに異星人が手を出そうと言うなら止めるだけである。

その星の命運を異星人が害していい理由は無いのだから。

ジャグラーの発言の真意と異星人たちの目的を探る為にガイも動き出すのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

地中の奥の更に奥深く。

地球の中心に近い場所にて”何か”が脈を打っていた。

遠い銀河の果てより飛来した”何か”が。

 

 

 





というわけで、ミリオンクラウン編という名のオーブ編でした!
続くようで続かない!
少なくともこの続きはミリオンクラウンが三巻は出て地盤が固まったらね!

本質としては地球外からの干渉とそれを防ぐ側的な?
基本的にはオーブ中心と思わせて人類文明の果てということで他の遺物が眠ってたりする予定です
何はともあれ今回は単発回なので次の更新はあったとしてもラストエンブリオの新刊が出たらです!

それでは、質問があれば聞いてください
活動報告にて設定纏め公開中です
どの世界が繋がってる扱いなどはそこにて
感想待ってます!

平成ジェネレーションズに参戦するメンバーがヤバいよね!
特にフォーゼとか無理だと思ってた!


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