東方神聖魔 (東来)
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幻想入り
ようこそ、幻想郷へ


「どうしてこうなったぁぁぁぁぁ!?」

 

紅葉の木がたくさんある中、一人の少年が佇んでいた。

木が風によってざわめき、そして風がやむと、鳥のさえずりがよく聞こえる。

少年はこのようなことになったか、その場で座り、考えていた。

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

少年は、来月の生活費を銀行から下ろした帰り道だった。

日は沈みかけており、今は夕方を指す時間帯だった。     

少年の名は、天上想雅(てんじょうそうが)、ごく普通な高校生。

茶色の髪、蒼い瞳、顔立ちは良い方だろう、身長は170㎝は超えているぐらいだ。

少年は日本人とヨーロッパ人との間にできた、いわゆるハーフっていうやつだ。

しかし、想雅の両親は数年前に他界している。

いままでは、日本人の父親方の祖父と祖母に、預けられていた。

今は一人で暮らしている。生活費はアルバイトで稼いだお金と、両親が残してくれた遺産で生活をしている。ほとんどはアルバイトで稼いだお金を使っているが、両親が残してくれた遺産はほとんど使う時がない。しかし今回は学校のほうでの教材費を払わなくてはいけないので、珍しく下ろしたのだ。

 

「帰りにスーパーでも寄るか……」

 

想雅は冷蔵庫の中が空っぽのことを思い出して、スーパーに寄った。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

すでに外は闇に包まれ、優しく月の光が差し込んだ部屋。

想雅は買い物した食材を冷蔵庫に入れた後、自室に入っていった。

電気を付け、居心地の良い自室が目の前に広がった。

想雅は高校の荷物を置き、ベットの下から、素敵雑誌(やらしい本)ではなく、

一振りの刀を取り出した。

刀の名は、神刀(しんとう)「風牙」(ふうが)

天上家に代々伝わる刀だ。

全長は1m以上、そのうち、刃渡りは90㎝、だいたい刀で言うところの太刀の分類する刀。

しかし、なぜ、神刀と付いたのか、

江戸時代中世、嵐が止まず、川の増水や、農作物に被害が出ており、皆は『神様が怒っておる』

と言い始めた。そこで一人の男が立ち上がった。男は想雅の先祖にあたる人であり、このあたりを治める藩主であった。

男は神様に嵐を止まらせるべく、この地方の神様が居るとされる滝まで行くことになった。

一緒に行動を共にしていた村人を滝の近くで別れ、一人滝に、向かっていった。

神様の怒りを治めるべく、村人が用意した、酒、米、飯、果物など滝の前の崖に置き、崖から突き出ている、二つの岩にしめ縄を付けた。

岩にしめ縄を付けた瞬間、大きな雷が男の目の前に落ちてきた、男は雷ではなく一緒に落ちてきた物(・・・・・・・・・・)に驚いた。それは……刀だった。

男は思った、『これは神様がくれた刀』だと、男はその刀に神刀「風牙」となずけ、天上家の家宝となった。

想雅は神刀「風牙」を持ち、庭へ出た。

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

刀を振り終わり、夕飯も食べ終わった後、想雅は自室に戻った。

 

「なんか今日は疲れたな……」

 

想雅は今日、あったこと思い出してみた。

高校入学初日、寝坊した。

高校到着、ぎりぎりセーフ。

クラス分けされた教室に行く、みんな席に座っていた。なんか地味に恥ずかしい。

入学式、校長の話が長かった。あまり聞いていなかった。簡単に言えば、寝ていた。

教室、自己紹介。「天上」とか名乗ったせいで、みんなにすごい人かと思われた。

下校、部活に入部しないかとかいろいろ言われた。当然、一人暮らしなので、すべて断った。何十回も、部活加入に出くわした。

銀行に行き、スーパーで買い物し、今に至る。

 

「道理で疲れたわけだ」

 

想雅は今日のことを思い出しながら、目が閉じってっていった。

 

「やばい、まだ寝てはい…けな…い」

 

目が閉じていくと同じに目の前で何か開き始めた。その中から一人の金髪の女性が出てきた。

 

「あ…もう…ね…の…ね」

 

金髪の女性が何か言っているが、想雅には、とぎれとぎれに聞こえるだけだった。

自室のベットからいきなり落ちた。ベットから落ちたのではなく、ベットの中に落ちた。(・・・・・・・・)

しかし想雅はそんなことは知らずに落ちいった。

しかし、金髪の女性が最後に行った言葉だけが良く聞こえた。

 

「ようこそ、幻想郷へ」

 




どうも初めまして、東来です。初投稿の二次創作どうでしたか?満足できる物語でしたか?

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは次回をおたのしみに。


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白狼天狗

「今日も異常なし」

 

木の上で少女はつぶやいた。

小女の名は、犬走椛。

妖怪の山の警備をしている白狼天狗だ。

椛は毎日、人間が山に入らないように監視している。もし人間が入ってきたら、忠告をし、。それでも山に入ろうとすると、攻撃をしかける。

 

「今日も平和で何よりです……、え?」

 

椛は驚いた。

今までいなかった人間が突然、姿を現したのだ。

さっきまでは見かけなかったのだが、目を離した瞬間、現れた。

しかし、そこが問題ではない。問題なのは、

『その人間が妖怪の山に侵入した』ということだ。

 

「まさか、この千里眼に見つからずに侵入できるなんて」

 

椛はいそいでその人間がいる場所へ向かった。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

「絶対原因はあの人だよな……」

森の中で想雅は原因を考えていた。

ここに来る前、自室にでてきた金髪の女性が俺をここに連れてきた以外しか心当たりがないのだから。

あるアニメの猫型ロボットのどこでも○アでここに来たわけがないし、勇者として異世界から召喚されたなら、まず、「勇者様!勇者様!」と歓喜の声が自分の耳に届くはずだ。

え?なんでそんなに詳しいかって、休日やアルバイトがない日とかに、アニメは見ている。

俺は夢の世界の住人になったりはしないし、30歳超えて魔法使いにもならない。

 

「こんなところで一人で居たってなにもならないしな」

 

家の家宝である神刀「天牙」が近くに落ちていたので、それを拾い、歩き始めた。そして考えるのをやめた。

 

 

数分後

 

 

「歩いても、歩いても、森、森、森……」

 

「なにこれ、神様のいたずら!?」

 

想雅は空を仰ぎながら歩いていた。宛がないまま数分が経っていた。

 

「あぁ、女神様。自分に祝福を」

 

想雅は空に女神様が見えた。

今日の疲れと、昨日の疲れが残っているのだろうか。

しかし女神様は応援するのかのように、まんべんの笑みで微笑んでいた。いや……

爆笑している。

さすがにイラッてきたので空に向かって小石を投げた。

 

「幻覚を見るほど疲れがたまっているのかな」

 

想雅は考えるのをやめたはずなのに、また考えていた。

ガサッ

想雅は後ろの茂みから気配を感じた。

 

「だ、誰かいるのか」

 

想雅はおそるおそる訊いてみた。

茂みの中から、一人の少女が出てきた。

白髪の髪、赤い目、江戸時代のような服を着ており、頭の上でぴくぴくと動く獣耳、犬のように動く尻尾、人間ではないことがわかる。

椛は、想雅に話した。

 

「どうやって侵入したかわかりませんが、」

 

それより目に止まったのは、

片手に持っている、剣。もう片方は、紅葉が描かれている盾。

想雅は悟った。

 

『殺される』

 

「これより先、どうしても通ると言うなら……」

 

想雅は体を反転させ、そして……

 

「俺はまだ死にましぇん!」

 

全力でダッシュして、逃げた。

 

「え?…ちょっと…待ちなさい!」

 

想雅が逃げたほうに椛も走った。

 

 

数分後

 

 

想雅はまだ逃げていた。

何分走っただろうか。逃げるのが必死でわからない。

アルバイトでよく体力仕事のほうが多かったから、なかなか体力が切れなかった。

しかし、数分も走ったせいで体力も限界に近かった。

 

「ちょっと止まりなさい」

 

片手に剣……。やっぱり怖い。

 

「まだ死にたくないーーーーー!」

 

「え?勘違いしてない」

 

「勘違いも何も、片手に凶器持って、待てって言って待つ輩がどこにいるかぁぁぁぁぁ!」

 

想雅は忘れていた。神刀「天牙」のことを。

それがあるのにもかかわらず、逃げるので精いっぱいだった。

 

「そっちは危ないーーーーー!」

 

「凶器を持ったお前に言うと嘘にしか聞こえぇぇぇぇぇん!」

 

それでも想雅は止まらない。しかし注意した時はもう遅かった。

想雅はすでに滝の上。そして、

 

「なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

 

想雅は真っ逆さまに落ちた。

落ちながら想雅は思った。

 

「そういえば刀あったんじゃん」

 

そして、想雅は滝へと消えてった。




え?主人公が死んだって。まさかww


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神様登場

「女に追いかけられて滝に落ちるとか、男が泣くぞ」

 

「は?」

 

いきなりのふざけた発言に、想雅は間抜けな声で答えた。

目覚めたとき、想雅は目を疑った。

真っ白な世界、白以外何もない、果てなき白。

しかし、その真っ白な世界の中に一人だけこっちを見ながら歩いてきた。

 

「ふざけた声の主はお前か?」

 

「いかにも」

 

答えた男は、

前髪だけは黒く、他は金髪、指には指輪、神話に出てきそうな服装だが、雰囲気的になんかチャラい。チャラい男が笑いながら話してきた。

 

「まさか女に追いかけられて、落ちたなんてマジワロタ。ププッ ( ̄m ̄*) 」

 

想像どうりにチャラかった。

 

「片手に剣を持っていて追いかける、逃げるしかないだろ」

 

「お前も武器を持っていたのに?(*´Д`)=3ハァ・・・ 」

 

「ため息つくな、逃げるので精いっぱいだ」

 

「さっきのは図星か?( ̄ー ̄)ニヤリッ」

 

チャラ男に言われたことは、正解だった。しかし、こいつに言われると腹が立つ。あと顔文字つけんな。

 

「それより、ここはどこだ?」

 

さっきから気になっていたことだった。チャラ男のことも気になるが……。

 

「ここは、『アストラル界』だ。お前の国で言うと、『もうすこしで三途の川』だ。( ・´ー・`) ドヤァ・・・」

 

「いや、ドヤられても……」

 

こいつの話がうざい。川○シェフ並のドヤ顔だった。

 

「そして、俺は神だ。( ・´ー・`) ドヤァ・・・」

 

「いちいちドヤるn……は?」

 

「だから、俺は神だ。( ・´ー・`) ドヤァ・・・」

 

「上田?」

 

「だ~か~ら、俺は神だ。( ・´ー・`) ドヤァ・・・」

 

「いちいちドヤるなぁぁぁぁぁ!」

 

「だから、ゆとり世代は。 ┐(´~`)┌ ヤレヤレ」

 

「関係ないと思いますけどねぇ!?」

 

こいつの相手は疲れる。

 

「……で、神様は俺に何の用ですか?」

 

「そうそう忘れるところだった。想雅、お前は、覚えているか?( ?´_ゝ`) 」

 

「滝のことか?」

 

「やはり覚えていないか……。(´・ω・`)」

 

どうやら滝に落ちたことではないらしい。滝ではないならなんだ?

 

「どういう事だ」

 

「いやぁ、ねぇ。俺があげた能力のことだけどな。(*´Д`)=3ハァ・・・ 」

 

「いずれ思い出すだろ。(*゚∀゚)*。_。)*゚∀゚)*。_。)ウンウン」

 

「一人で感心するな」

 

顔文字を付けるのが普通になっていた。もう突っ込まねぇぞ。

 

「まぁ、がんばれや。\(゜∀\)#(/∀゜)/ガンバッテ~!!」

 

チャラ神に記憶やら能力やら、いろいろなことを言った。

記憶ってなんだ?まさか十年前の記憶に関係しているのか。

想雅が考えていると、チャラ神が近づいてきた。

 

「『もうすこしで三途の川』と言ったが、お前は死んではいない。お前の意識だけこっちに持ってきているだけだ。魂ごとこっちに持ってきたら、肉体が腐ってしまうからな。ありがたく思え。

(* '-^) ⌒☆パチン」

 

顔近い、顔が。

どうやら俺は死んでいないらしい。いや死んでたまるか。

 

「死んだとしても『加護』が働いちゃうけどな。( 'ノω')コッソリ 」

 

「ん?何か言ったか?」

 

「い、いやなにも。( ̄ー ̄; ヒヤリ」

 

「それより、お前の意識を戻すぞ」

 

チャラ神が言った瞬間。

強烈なめまいがした。そして一瞬にして気を失った。




残念。生きていました。


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忘れ去られていた能力

戦闘シーンがやっと出てきた。
あと今回は長いです。




目を覚ましたとき、想雅はどこかの部屋で目覚めた。

昔ながらの敷き布団、木とイグサの匂いが香り、壁には掛軸がかかっている。

どうやら和室らしい。

枕元には、忘れられていた神刀「風牙」が置いてあった。

布団の上で想雅は上体を起こした。滝に落ちて死んだと思っていたが、チャラ神が言ったことは本当だったらしい。

 

「助かったか……」

 

九死に一生を得た、と想雅はほっとした。

布団から出て刀を取ろうとした時だった。

 

「痛ッ!!!」

 

右肩に激痛が走ったのだ。

右肩を触ると、手に血がついていた。滝に落ちたとき、岩に当たったのだろう。

しかし、肩には包帯が巻かれており、幸い出血死は免れた。

誰かが俺をここに連れて来て、傷の治療までしてもらったらしい。いったい誰が……。

あの場にいたのは、俺とあの獣耳っ娘、まさかあの子にここまで連れてきてもらったのだろうか。

もしそうなら、後で謝罪とお礼をしておこう。

左手で刀を取り、和室を後にするのだった。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

「ここは山の中だったのか」

 

想雅は縁側を歩いてきた。森だと思いこんで迷っていたが、本来は森ではなく山だったらしい。

ここから遠くても紅葉(こうよう)が美しい。いつか紅葉(もみじ)狩りでもしたいものだ。

想雅が紅葉(こうよう)を見ていると、奥のほうから何やら話し声が聞こえてきた。

 

「椛、どういうことだ」

 

奥の部屋を覗き込むと、そこには、獣耳っ娘と、漫画とかで見たことある天狗が居たのだった。

獣耳っ娘のとなりにもう一人の少女が居た。少女も同じように頭に耳が生えており、尻尾も顕在だった。

 

「妖怪の山の中腹まで人間を侵入させ、あろうことか命まで助ける……。なぜだ」

 

「……」

 

ん?人間……。俺のことか?

話し聞く限り、俺であることは確かだ。

天狗?らしきおっさんに獣耳っ娘はだんまりだった。

 

「それほど言いたくないのか」

 

天狗はため息をついた。

 

「なら、それなりの処分を下そう」

 

なんかこれ、俺のせいじゃねぇ。すごく罪悪感が……。

想雅が罪悪感に浸っていると、

 

「大天狗様!考えを改めてください!」

 

(かえで)は黙っておれ!これは妖怪の山の問題だ!」

 

楓と呼ばれた少女は考え直しを申し出たが、大天狗は聞く耳を持っていなかった。

大天狗とやら、あれはコスプレの一種かと思ったが、違ったのか。

想雅は自分に責任を感じたのか、もう立ち聞きはようそと思った。

 

「すこしいいか」

 

想雅は大天狗の前に姿を現した。

 

「なんじゃ」

 

大天狗は立ち聞きしていたのを知っていたかのように、冷静だった。

 

「さっきまで話を聞いていたが、なんか俺のせいでこうなっていないか?」

 

「無論そうじゃ」

 

「なら彼女じゃなく、俺にその処分は下されないか?」

 

「まぁそうじゃな」

 

大天狗は難なく頷いた。

 

「しかし、強引に突破したのは大目に見るが、誰にも見つからずに妖怪の山の中腹まで侵入したのは別じゃ」

 

「侵入?ここはそんなに人が来ないのか?」

 

「ここは妖怪の山じゃからな」

 

妖怪の山、道理で天狗や犬の妖怪もいるんだな。

 

「しかし、これは妖怪の問題だ。人間の問題ではない」

 

「処分は決定事項だ」

 

な・ん・だ・と……。

 

「何が決定事項だ。ただの強引にしかすぎねぇじゃねぇか」

 

「今、何と言った……」

 

大天狗は形相な目で想雅を睨みつけた。しかし不思議と恐怖は無かった。

 

「何が決定事項だ。ただの強引にしかすぎねぇじゃねぇかって言ったんだよ!」

 

想雅は怒った。そんな理不尽な事あってたまるかってんだ。

椛、楓は焦っていた。なんせ大天狗は彼女らの上司に当たるからだ。それが人間なら命も無い。

 

「これは妖怪の問題だと言ったはずだ。人間は口を出すな」

 

大天狗は冷静のまま、形相な目で睨んでいる。

 

「俺は人間としてではなく、一人の男として、天上想雅としてその処分に議論する!」

 

言いたいこと言えた、と想雅は思った。それが人間相手ならまだしも、相手は妖怪だ。どう受け取るかはあいつ次第だ。やばい、やばい、ついカッとなって言ってしまった。まさかここで死ぬか。

想雅は先のことを考えていなかった。

 

「ハハハハハハッ!」

 

大天狗は大いに笑った。なんか俺、変なこと言ったか。

 

「まさか、人間としてではなく、一人の男としてくるとは」

 

「な、なんかおかしかったか?」

 

「すまぬ、すまぬ」

 

謝りながらも、大天狗は言った。

 

「男として言うのならば、断ることはできぬな」

 

大天狗は何か思いついたようだった。

 

「小僧、一つ賭けをしてみないか?」

 

「賭けだと」

 

「あぁ、もしお前が儂に勝ったら、椛の処分のことは水に流そう。しかしお前が儂に負けた場合は、」

 

「煮るなり焼くなり、好きにしろ」

 

「ハハハッ、そう来なくて面白くない」

 

なんか大天狗は楽しそうだ。ついやけくそになって言ってしまったが、まぁ悪くない。負けたら死ぬけどな。

 

「なら小僧、こっち来い。賭けの準備だ。せいぜい楽しませてくれよ」

 

「おっさん、あんたもな」

 

「おっさん?」

 

「俺にしたらあんたはおっさんに分類される」

 

「その減らず口はいつまで続くか楽しみだな」

 

やはり楽しそうだな。想雅は大天狗の後に着いていくと、後ろからつままれた。

 

「ん?どうした」

 

「なんで?」

 

「なんでって、そりゃぁ……」

 

想雅は考えた。しかし、

 

「なんでだろうな」

 

「え?」

 

「だけどな、俺のせいで誰かが罰を受けるのは、まっさら御免だ」

 

自分が犯したことは自分で償う、想雅の心にはそう決めていたのだ。

 

「後な、こんなに可愛い子(・・・・)が罰を受けるなんて、俺には到底無理だ。だからおっさんの意見に反対したんだ。それでは不満か?」

 

「……!!!//////」。

 

「顔が真っ赤だぞ。具合でも悪いのか」

 

「な、何でもありません!」

 

椛は想雅から離れた。

なんだろう、この感じは……。

初めての気持ちを感じながら椛は、大天狗が待つ場所まで行った。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

山の開けた場所で決闘は行われた。

 

「ルールは簡単だ。どちらかが戦闘不能、もしくは降参したら負けとなる」

 

確かに簡単だ。しかし、相手は妖怪だ。人間の俺が勝てるのかわからない。

しかも利き手の右肩は負傷中、今回は左手でやるしかない。

想雅は左手で刀を構え、戦闘態勢をとった。

 

「そういえば小僧、右肩負傷していたのだったな。ハンデを付けてやろうか?」

 

「これは男と男の決闘だ。ハンデなしで頼む」

 

「あいやわかった」

 

想雅は断った。ハンデ付けてもらったら勝てるという希望が見えたかもしれない。

しかし、これは決闘だ。あいまいな気持ちでは男は名乗れない。

 

「この小石が地面に落ちたら、決闘開始だ」

 

大天狗が小石を拾いそれを空に向かって投げた。

そして、

 

コンッ

 

決闘の幕が今、切って下ろされた。

 

「うおぉぉぉぉ!」

 

想雅が斬ってかかる。

大天狗はひらりとかわした。さすが妖怪だと言うだけはあるか。

しかし、想雅にはそのような余裕はなかった。

利き手である右肩を負傷しては、本気を出せないからだ。

 

「利き手である右腕を負傷してなお、この太刀筋とはあっぱれじゃ。しかし!」

 

「この大天狗も、負けてはおらぬ!」

 

刀を振り、それを想雅はガードする。

 

「くっ!」

 

ガードしたのはいいが両腕で刀を支えているため、右肩には大きな負担が掛かっていた。

肩から血が滲み出ていることが包帯越しでもわかった。

 

「やはりハンデは必要だったか?」

 

「余計なお世話だ!」

 

刀をはじいた。両者下がったかと思われたが、

 

「あまい!」

 

大天狗が漆黒の翼を広げ、想雅に突進してきた。

想雅は思いもよらない動きに驚きを隠せなかった。

そして、

 

ガシッ

 

想雅は大天狗に頭を鷲掴みにされた。

そのまま、上空へ上がり、

 

「それは反則だろぉぉぉぉぉ!」

 

「男なら小さいこと気にするな」

 

「気にするわぁぁぁぁぁ!」

 

そして、

 

「終わりだぁぁぁぁぁ!」

 

大天狗の咆哮と同時に、上空から急降下し、

想雅は地面に叩きつけられた。

 

「クハッ!」

 

想雅は血ヘドを吐き、気を失った。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

「ここは……」

 

想雅が目覚めたところは、見覚えのある白い空間ではなかった。

そこには、自分が空から落ちている瞬間だった。

落ちているのは自分だけではなく、飛行機にのっていた乗客も落ちてきた。

飛行機?なぜ俺は飛行機から落ちたということ知っているのだろう。

だめだ思い出せない。

 

「もしかしたらこれは、失った過去の記憶か?」

 

真上から何やら光が飛んできた。その光は想雅を包んだ。

 

『少年よ。汝は何のために力を(ほっ)する』

 

力……。

俺はこの時なんて答えたのだろう。失った記憶だ、わかりはしない。

 

『僕は……』

 

なんだこれは、口が勝手に。

 

『みんなを守るため力を欲する』

 

『よくぞ答えた少年よ。なら受け取るがよい、汝が望む力を!』

 

想雅はここで記憶が途切れた……。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

「小僧、動かぬな……」

 

大天狗はつまらなそうに想雅を見ている。

もうすこしやると思ったんだが、見込み違いか……。

 

「これは儂の勝ちか」

 

大天狗は想雅に背を向けた。

私のせいであの人が、死んでしまった。

椛はそう思った。隣にいた楓が泣き始めてしまった。

彼女は人が死ぬのを初めて見るからだ。

椛は楓を抱いた。

私のせいで……、私のせいで……。

椛も泣きそうだった。

 

ガラッ

 

「まったく、女を泣かせるなんて男が廃るぜ」

 

がれきの中から想雅が出てきた。

体はボロボロのはず、肋骨が数本、いや肋骨以外も折れているだろう。

しかし想雅は立つ。守るべきもののため、己のせいで人を傷つけないために。

 

「その体でまだ立つか」

 

「あきらめが悪いもんでね」

 

たとえ、がれきの中だろうが、地獄の果てだろうが、はいつくばってでも、女を泣かせやさせない。

 

「だがこれで終わりだ!」

 

大天狗がまたもや漆黒の翼を広げ、想雅に突進を仕掛けた。

 

『我は誓おう、(つるぎ)のような鋭さを、光のような速さを、鋼のような折れぬ意志を、我は、我行く道を突き通そうぞ!』

 

想雅は何かを唱えそして……

 

「なにぃ!?」

 

大天狗は驚いた。すでにそこには想雅はいない(・・・)のだから。

 

「どこに消えた!?」

 

あたりを見渡すが想雅の姿はどこにもない。

 

「どこを見ている!」

 

「な!」

 

大天狗が気付いた瞬間はもう遅かった。

想雅は斬りかかった。

斬、斬、斬。無数の斬撃が大天狗を襲う。

 

「人間の小僧に出し抜かれるとは、参った」

 

大天狗はその場に倒れた。

決闘の結果、

 

想雅の勝利。

 

大天狗が降参し決闘は終わった。

想雅のところに椛、楓が走ってきた。

 

「だ、大丈夫ですか」

 

「大丈夫だ、問題ないぃぃぃぃぃ!?……」

 

右肩から大きな血の噴水が噴き出た。

おいおい、俺は何回意識を失ったら気が済むんだ。

椛、楓の声が聞こえていくさなか、想雅の意識は遠くなっていった。




能力キターーーーー!!!



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決闘を終えて

想雅は見覚えのある部屋で目覚めた。

滝から落ちた時、目覚めた部屋だった。

 

「なんでここに来て3回も意識を失わないといけないんだ……」

 

いやほんと、こんなに意識を失ったのは初めてだ。っていうか意識を失う事態、初めてだった。十年前は知らんが……。

意識を失う確率が半端ない。意識失うグランプリだったらすごい成績を収めることもできるだろうか?

現実にそんなグランプリなんてありゃしない。あっても参加はしない、絶対だ。断言できる。

 

「しかし、あの力はなんだろう……。失った記憶?を見たら、なぜできると思ったんだ俺は……」

 

「まぁ後でチャラ神にでも聞いてみるか」

 

この力はチャラ神が知っているだろう。『アストラル界』でチャラ神は能力がどうたらこうたら言っていたな。そいつに聞くのが妥当だろう。しかし、気になることは、あれは本当にチャラ神(・・・・)なのかだ。口調が違ったし、違うやつとも考えられる。

 

「ん?」

 

想雅は右肩を触ってみた。

さっきから痛みが無い思っていたが、傷は治っていた。

腕を回してみるが、痛みがなく完全に完治したのだろう。

 

「いや、まてよ……。肩の傷が治っているということは、俺、何ヶ月意識を失っていたんだ」

 

肩の傷は大きく、しかも血の噴水も出たのだ。そう簡単に治るはずはない。つまりだ、俺はすごく眠っていたことになる。

ここに来て早くも、何ヶ月という歳月が尽きてしまったんだ。滝に落ちた時は1日で目覚めたらしいが、

障子が開き、見覚えのある少女が入ってきた。

 

「意識は戻ったみたいですね」

 

「あぁ、おかげさまで」

 

椛はほっとしたかのように胸をなでおろした。

 

「このたびは本当に申し訳ございません」

 

いきなり、土下座をした。

 

「な、なにが」

 

想雅は慌てた。いきなり土下座なんて俺なんかした!?

 

「あなた様に重傷を負わせたことです」

 

「え?それ?」

 

「え?」

 

想雅が言ったことに、獣耳っ娘は目を丸くした。

 

「それは、俺の意志でやったことだし、君が抱え込まなくても」

 

「し、しかし」

 

「謝罪する方は君じゃなくて俺の方なんだ」

 

「俺は君のことをてっきり俺を殺しに来たんじゃないかって、それで頭が真っ白になり、話も聞かずに逃げてしまった。本当に申し訳ない」

 

想雅は土下座をした。女の子に土下座されるなんて自分には性に合わない。

 

「あ、頭を上げてください」

 

椛は慌てた。謝っているのは私であって、あなたではないからだ。

 

「そのことは私もお詫び申し上げます。いきなり人前に出てきた格好が、片手に刀、もう片方は盾、あなたが殺されると思ってもしょうがないことです。刀をしまっておけば、滝に落ちることはありませんでした。誠に申し訳ありませんでした」

 

「いや、俺が……」

 

「いえ、私が……」

 

この状態は、もう謝り合戦にしか見えない光景だった。

ついに、

 

「な、何が楽しいのですか?」

 

自分が思っていることが、つい表情に出てしまった。

 

「わるい、わるい。こう言い合っても、終わりがなさそうに見えてな」

 

椛もわかったのか、笑みがこぼれてしまった。

 

「それも、そうですね」

 

なんだかいい雰囲気だ。

 

「そういえば、君の名前は?」

 

まだ名前を聞いていなかったはず。

 

「私は、犬走椛といいます。妖怪の山の警備担当の白狼天狗です」

 

椛か、いい名前だな。

 

「……!!!//////」

 

「ん?どうした?」

 

「何でもありません」

 

「いい名前だなんて……」

 

椛はそっぽを向いてしまった。俺、本当に何かやったのか。

 

「と、ところであなたのお名前は」

 

そうだった。まだこっちも名乗っていなかったな。

 

「俺は、天上想雅だ。この世界に来て右も左もわからない人間だ。よろしく」

 

「て、天上!?」

 

やはりその反応か……。

 

「いやそんな大層な苗字じゃないから、気にしないでくれ」

 

「は、はい」

 

この(くだり)もなれるもんだな。最初と比べれば……。

 

「もうすぐで、朝食が出来上がりますので用意できたら、縁側を歩いて二つ目の扉の先に食事ができるところがありますので、そこでお待ち下さい」

 

「あぁ、すまないな」

 

朝食か、ここに来てからいろいろなことがあったからな、なんか懐かしく感じるような気がする。

ん?……朝食……。

 

「そういえば俺どれぐらい寝ていた」

 

すごく気になることだった。

 

「そうですね……。だいたい一週間と二日(・・・・・・)ぐらいですね」

 

エ? イッシュウカントフツカ?……

よ、よし聞き間違えかもしれないからもう一度訊いてみよう。

 

「そ、それって本当?」

 

「はい。本当です」

 

マジスカ……。

 

「化け物じゃねぇぇぇぇぇか!」

 

ちょ、待て、俺人間だぞ。純粋な人間だぞ。人種だけ違うだけの純粋な人間だぞ。

化け物でしたーーーってオチか……

笑えねぇぇぇぇぇよ!一週間と二日、俺人間やめちゃったのか!?

想雅がパニックになっていると椛から追加攻撃が、

 

「あと、肋骨だけじゃなく他の骨も折れていました」

 

ハ?ナンデスト……

人間をやめたレベルじゃねぇよほんと……

まさかその状態のまま、おっさんとやりあったのか……

人体の不思議こえぇぇぇぇぇ!

出版社が販売中止するレベルだろ!

自分で自分をツッコんでいたらすごく疲れた。

 

「か、顔色が悪いですが大丈夫ですか」

 

「だ、大丈夫だ問題ない……。用意してすぐ行くから」

 

椛は先に部屋を出て、その五分後、精神がすぐれないまま想雅は部屋を後にした。

しかし、想雅の心の中でこう決めた。

 

よしあのチャラ神、一回ぶん殴るか。



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探そうマイホーム

朝食はいたって普通だった。米飯、魚の塩焼き、味噌汁、豆腐、漬物と見覚えのある食材だった。

想像していたのは、人肉とか何かヤバい雰囲気を出した食材だとかだ。

なんか失礼な想像をしていた。忘れよう……

食卓には椛ともう一人、小さな白狼天狗の……ん?

 

「君の名前は?」

 

小さな白狼天狗はおどおどしてしまった。

あれ?質問の仕方が悪かったのかな。

 

「大丈夫ですよ想雅、この子は少し人見知りなだけですから」

 

そうか、ならよかった。

 

「楓、自己紹介を」

 

「はい。椛先輩」

 

楓と呼ばれた少女は想雅の前に来るや否、正座をして礼をした。

 

「犬走楓と申します。まだ修行の身ですが、よろしくお願いします」

 

「天上想雅だ。天上と言ってもそんなに大層な名じゃないからそこん所よろしく」

 

「自分の苗字をそこまで、注意したいのですか」

 

「この名字だとなんか、『けっこうすごい人物』や『財閥関係の人』とかよく思われていたからな」

 

たしかに初めて聞いたときはすごそうな人だと思うが、自己紹介の前に大天狗を倒してしまていたので楓にとってはすごい人と思っている。

 

「自己紹介もお互い済んだみたいなのでそろそろ、お食事しましょう」

 

椛がそう言うと楓が元の場所に戻り、いつでも食べれる状態となった。

 

「では」

 

「「「いただきます!」」」

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

「「「ごちそうさま!」」」

 

朝食を食べ終わった時だった。いきなり障子が開き、タイミングよく大天狗が出てきた。

 

「なんだ食べ終わるのを待っていたのか?」

 

「気付いていたのか」

 

「障子に姿が見えていた」

 

「気付いていたなら声ぐらいかけろよ」

 

「見えていたおっさんの姿が傑作だった」

 

そう障子から透けていた大天狗の姿は、縁側で持っていたお茶をすすったり、本を読んだりと、

一人で何かやっていたので、すごくぼっち乙とか言いたかった。

それには椛も楓も苦笑い。

 

「ま、まぁいい。ここに来たのはお前に話があるからだ」

 

気を取り直した大天狗は、食卓の上座に着いた。

 

「お前は外来人だろ」

 

「外来人ってのは、この世界の外から来た人のことか」

 

「そうだ」

 

外来人……弥生時代の時、日本以外からやってきた人のことを、いや違った。

あれは渡来人だった。

 

「まずは家を探してもらう」

 

家か……たしかに俺の家はこの世界の外だな。戻り方もわからないから、ここで住まう場所を探さないと。

 

「しかし大天狗様、想雅をここに身を置くこともできるはずでは」

 

「それもそうじゃがな……ここに人間が住まうと、妖怪たちからの攻撃やいたずらとかが絶えない気がしてな」

 

たしかに妖怪の住む場所に人間が入ってきたら妖怪たちもいい迷惑になってもおかしくないな。

 

「それでじゃ、人里に行って、小僧には家を探しに行ってもらう」

 

妖怪が住まう場所もあるらな、人間が住まう場所もあってもおかしくない。

 

「おっさん、俺はここに来たばかりだから人里の場所なんて知らんぞ」

 

「そこんところは任せろ」

 

こうして俺のマイホームを探すことになった。

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

「まかせろと言われても、信用していいのかわからん」

 

まだ知り合って一週間とちょい、いや二日か。一週間眠っていたからな。

想雅は今、大天狗との決闘の場であった、山の開けた場所に来ていた。

やっぱり大天狗に落とされた時、できた穴はまだあったか……

いや、直せよ。ほかの妖怪がはまったらどうするんだ。

それでも大天狗か。

いろいろおっさんに突っ込んでいると、

 

「大天狗様に言われてきた者で~す」

 

空から少女の声が聞こえた。

黒い髪、赤い目、椛やおっさんと違って、フリル付きの黒スカート、白の半袖シャツと外の世界のような恰好だった。付け足すといったら翼は無く、飛んでいた。

少女は想雅の目の前に舞い降りた。

 

「どうも、清く正しい文々。新聞の記者、射命丸文です」

 

「ど、どうも、天上想雅だ」

 

「それではさっそく、想雅さんに質問したいことがあります」

 

「おい、待て。おっさんに何を言われてここに来た」

 

「やはり噂どうり大天狗様のことをおっさんと……」

 

「人の話聞いているかなぁ!?」

 

人の話聞かずメモを取り始めやがった。

 

「聞いていますよ。大天狗様から想雅さんの家さがしの手伝いをしろと命令がありました」

 

「なら取材より家さがしをしろ」

 

「え~、まだ聞きたいことたくさんあります」

 

「わかったから、家さがしが終わってからいくらでも答えてやるから」

 

「今言いましたね。い・く・ら・で・もと」

 

わお、目が鋭くなった。これが新聞を書き上げる人の目か!?

 

「あぁ、男に二言はない」

 

「じゃ、早くぱっぱと終わらせましょう!」

 

本当に大丈夫なのか、この子。

そういえば妖怪って人里歩いても大丈夫なのか。

想雅の不安は膨らむばかりだった。

 

 

 

 

------○●○-----

 

 

 

 

「どうでしたか?大天狗様と戦った感想は」

 

「家探しが終わってからだろ」

 

「いいじゃないですか。探すまで時間がありますし」

 

今は3回目(・・・)の不動産屋に居る。

さっきので気付いたとおり、人里に今物件がない状態のようだ。

 

「まぁ、暇だな」

 

「ではでは、どうでしたか」

 

「まぁ、一言で言うと強かったかな」

 

「ほうほう、強かったと」

 

妖怪と戦って弱いという奴がいるのだろうか

力があったおかげで勝てたからな。

そういえば、俺の力はなんだろう?

 

「それでは次の質問」

 

「想雅さんの骨を見たとき、ものすごく砕けていましたが、それはどうやって治しましたか?そもそも、想雅さんは人間なのですか?」

 

うん。自分でも不思議な質問がきた。これは答えにくい。

 

「文、さっき骨を見たって言ったよな」

 

「えぇ、いいましたよ」

 

「ここにはレントゲンという機械があるのか」

 

「ありますよ。にとりのところへ行ったときに、ちょうど椛と会ったので、一緒についてきました。それで、にとりが作った、レントゲンという機械であなたの骨を見ました」

 

だから椛は、骨が砕けていることを知っていたのか。

にとりって言う子すごい物を作るもんだな。

 

「質問に戻しますね。骨をどうやって治しましたか」

 

「俺にもわからない……」

 

「起きたら治っていた状態だったからな」

 

「そうですか。もう一つ、あなたは人間ですか」

 

「人間だ」

 

「言い切りましたね」

 

ま、自分でもわからないがな。

人間をやめた記憶もないし、やめない。十年前の記憶は置いといてだ。

 

「探している物件のことですが」

 

不動産屋が探し終えたようだ。

 

「ありませんでした……」

 

やっぱりか!?

1回目でダメで、2回目でもダメだったからだいたい予測してたよ!?

なにここに来てからの不運の連続。

滝に落ちるは、おっさんと戦い体がボロボロになるはで!?

想雅が落ち込んでいると、

 

「お、お客様。物件は無くても土地ならありますがどうでしょうか?」

 

土地か、土地ねぇ……

土地があっても家が無ければな……

なら建てる(・・・)ってか、どれだけ金がかかるんだよ。

ん?建てる(・・・)……

できるんじゃね。できるかもなアレだったら。

 

「ならそこに案内してくれ」

 

何事もチャレンジだ!

当たって砕けろだ!

家ではないが土地へと想雅たちは向かった。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

「ここです」

 

人里から数分といったところか、だいたい人里と妖怪の山の中間地点のところだ。

まぁ、目の前に湖があるから景色はいいだろう。

 

「いくらだ?」

 

「えーと、この広さの土地ですとだいたい、四百円(四百万円)ですね」

 

「四百円か……」

 

安い、と思ったがこの世界のお金の価値ってどうなんだ。

土地だから数百万ぐらいはするであろう。

 

「お金の心配はいりませんよ。大天狗様がそのお金をだしてくれますから」

 

なら心配ないだろう。

想雅はその土地を買うことにした。

 

「お買い上げありがとうございました」

 

不動産屋は想雅たちから離れていった。

 

「終わりましたし、そろそろ取材の方を」

 

「家を建ててからだろ」

 

「家なんてそんじゃそころじゃできませんし、待てません」

 

「まぁ見てなって」

 

できるかわからいけどな。

想雅は両手を前に突出し何かを唱え始めた。

 

『我は求めたり、休息を呼ぶ広間よ。我が身を守る盟約の砦よ。孤高な宮よ。これ成り立つとき、我は事に憂いなし』

 

唱え終わると、目の前が輝き、そこには……

 

「よっしゃ、家ができた」

 

想雅は家が無事完成したことにホッとした。

だって完成しなかったら恥ずかしいじゃん。

文は驚きを隠せないでいた。

 

「こ、これが想雅さんの能力ですか」

 

「たぶんそうだと思う……」

 

無事、家探しは終わったのだった。(探すって言うより作った)

家の内装は、この世界のことと合したので、和風に仕上がっている。

家の中に入ってみたが、外見道理で、広い……

一部屋、一部屋がだいたい十何畳、一番広いところで百畳いやもっとあるかぐらいの広さだ。

もっと小さくてよかった気がする。

その夜は文の質問攻めによる眠れない夜を過ごした。



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知ることが多すぎて、俺の脳内メモリーが処理落ちしてしまう

「またここかよ」

 

想雅は見覚えがある、白い空間にいた。

朝まで文に質問攻めにあって、やっと眠れると思ったらここだよ……

 

「やぁ、グットモーニング。(*´∀`)ノ」

 

「こっちは、グットナイトだよ!」

 

ほんと勘弁してくれよこのチャラ神。

 

「要件無いなら寝るぞ」

 

「No、No、No。俺が帰るまで意識は戻りませ~ん。(●´∀`)σ」

 

「マジかよ……」

 

「神様は嘘をつきません。(ο´ω`ο)ゝ」

 

寝ように寝れねいじゃねぇか。生き地獄かこれは、

16歳だぞ、成長期だぞ。

 

「まぁ要件はあるからゆっくりしとけ。~~\(´μ`。)/~~」

 

「こっちはゆっくり寝たい」

 

「そうそう。意識はこっちにあるが、お前の体はちゃんと寝ているから安心しな。⊂(^ω^)⊃ セフセフ!! 」

 

「おい待て。体が寝ていたとしても、意識が寝ていないと寝たという感覚がないと思うのだが」

 

「気付いちゃった。(*´Д`*)」

 

「お前、俺をはなっから寝させない気だろ」

 

「ハズレ( ̄x ̄)乂ブーッ!」

 

うぜぇぇぇぇぇ!

 

「正解は、この世界は何やらかの結界みたいのが張り巡らされていてな、なかなかこっちに行きにくいんだよ。(*゚∀゚)*。_。)*゚∀゚)*。_。)ウンウン」

 

「一人で頷くな。あと神様だろそれぐらい簡単に破れるだろ」

 

「気付いちゃった(。*´Д`*)」

 

こいつ神様は嘘をつきませんとか言っておいて嘘つきまくるな。

 

「まぁ、簡単に言えばお前が急に意識をなくしたらどう思う。もしそこが戦場だったらどうだ。( ̄ー ̄)ニヤリ」

 

「た、確かにな……」

 

チャラ神が言ったことが現実に起きたら俺死ぬな。完璧に……

 

「その話は終わり、終わりって言ったら終わり。(`・ω・´)シャキーン」

 

チャラ神が強制的に話を終わらせた。

 

「で、本題に入るが、お前は忘れていた能力は使えたか?( ´,_ゝ`)」

 

「使えたが……その能力は俺のなくした記憶と関係があるのか」

 

「関係あるさ、なんせ記憶を消すほどの力を使ったからな。(*゚∀゚)*。_。)*゚∀゚)*。_。)ウンウン」

 

そんなすごい能力を使ったのか、ヒェェェェェ、昔の俺その時点で人間やめちゃった!?

 

「チャラ神、俺は人間だよな」

 

チャラ神に恐々と聞いた。

 

「人間だ。そこは断言できる。(*゚∀゚)*。_。)*゚∀゚)*。_。)ウンウン」

 

本当に信用していいのかこいつは!?

 

「話を戻すぞ。その能力のことはどのくらい把握しているか?( ´,_ゝ`)」

 

「何かを唱えて、それを現実にする……ぐらいか」

 

「まだ、そのお子ちゃまみたいなところか。ァ '`,、'`,、'`,、'`,、((´∀`●))ァ '`,、'`,、'`,、'`,、 '`,、」

 

「爆笑するな!こっちは記憶がないんだぞ!」

 

「お前に能力のこと一つも教えていないからな。(′∀`)σケラケラ」

 

「おい。殴るぞ」

 

チャラ神は待て待てと動作をした。神様を脅す。なにか気分がいいな。

 

「よ、よく聞け、一回しか言わんぞ。(`・ω・´)シャキーン」

 

「お前の能力は三つある。(*´∀`)」

 

「三つか……」

 

「神様の気まぐれで渡したやつだかなら。( ・´ー・`) ドヤァ・・・」

 

もういい、ツッコまない

 

「あれ?ツッコまないのか?щ(゚▽゚щ)」

 

「いいから話を続けろ」

 

「(´・ω・`)ショボーン」

 

「でだ、まだお子ちゃまな君にその能力のことを、この神様じきじきに教えてやる。( ̄^ ̄)えっへん」

 

「……お願いします」

 

ここで何か言ったらすごく面倒なことになりそうなので、素直に聞いておこう。

 

「まず一つ目だ。(▽〃)。oO」

 

「最初に与えた能力は、『聖を司る能力』だ。( ・´ー・`) ドヤァ・・・」

 

「『聖』……?」

 

「ま、いきなり聞いても『聖』って何って感じだな。簡単に言えば『聖剣』と同じ能力みたいなことだ。神や妖精などによって聖なる力を与えられ、超自然的な力を持っており。神が持つ『聖剣』はと神の象徴であり、英雄が持つ『聖剣』は王権の象徴や民族の勝利の象徴であることが多いっと言う具合だな。(*´∀`)ノ」

 

「さっぱりわからん」

 

「難しすぎたか……、簡単に言えば、『悪を(くじ)き邪を砕く』って具合だ。(●´∀`)σ」

 

「要するに、悪魔などの悪しき存在に大ダメージを与えるというところか」

 

「そんなところだ。言っておくがこの力で聖剣その物は創れんぞ。(´ー`)フッ」

 

「そういえば、俺の体が異様に回復力がすごいんだが……」

 

「それも『聖』の力だ。どうだすごいだろ。( ・´ー・`) ドヤァ・・・」

 

まず一つ目は『聖を司る能力』か……

この力で人間レベルじゃない回復力を得たのか。

 

「二つ目に与えた能力は。(▽〃)。oO」

 

「『魔を司る能力』だ。( ・´ー・`) ドヤァ・・・」

 

「『魔』……、それって『聖』の力によって消滅してしまわないか」

 

「チッ、チッ、チッ。それは違うな。((-ω-。)(。-ω-))フルフル」

 

「『魔』とは、『魔剣』の力だ。狭義では、『聖剣』との対比で、邪悪な力を持ち不幸や災禍をもたらす剣の意味で用いられることもあるが、お前の能力の場合は、通常は傷付けられない神や魔物を斬るなど、何らかの特別な能力を有しており、その所持者に大きな力を与えことができるわけだ。(*´∀`)ノ」

 

「傷つけれないものを斬る……か」

 

二つ目は何やらすごい力があるらしいな。

 

「で、最後はな。(▽〃)。oO」

 

「『言霊(ことだま)を創造する能力』だ。( ・´ー・`) ドヤァ・・・」

 

「『言霊』は知っているか?( ´,_ゝ`)」

 

「全く知らん」

 

「なら一から説明するぞ。『言霊』とは言葉に宿っている力のことだ。簡単に言えば、『聖』や『魔』などとに近い特殊な力だな。たしか、『霊力』だったかな。声に出した言葉は現実の事象に影響を与え、発した言葉の良し悪しによって吉事や凶事が起こるとされている。(*´∀`)ノ」

 

「うん。もうオワタ」

 

さっきから俺の能力は説明が面倒なやつばかりだな。新たな力『霊力』って、

 

「『言霊』には二つ種類があってな、『想像によって創られる言霊』と『神を知ることによって創られる言霊』がある。(●´∀`)σ」

 

『想像によって創られる言霊』、『神を知ることによって創られる言霊』。

またわけわからない言葉が出てきた。

寝ていないから頭が割れそうだ。

 

「一つ目の『想像によって創られる言霊』は、お前が妖怪を倒したと気に使った『閃光の言霊』、家を造るときに使った『創造の言霊』という具合で、思ったことを現実にすることができるのだ。しかし、こいは想像にだけ特化してあってな、これで『神を知ることによって創られる言霊』と同じことをすると死ぬぞ。( ・´ー・`) ドヤァ・・・」

 

「二つ目の『神を知ることによって創られる言霊』は、『想像によって創られる言霊』とは違い、神の能力に特化した言霊だ。こいつを使えば、その神様が使う能力を使うことができるのだ。神話を読んでいたら自然に出てくるだろう。(*゚∀゚)*。_。)*゚∀゚)*。_。)ウンウン」

 

「お前の中にも『霊力』はある。しかしな、『言霊』を一度はまだしも、連続で使用すると、廃人になるぞ。特に、『神を知ることによって創られる言霊』を使うときは気を付けろ、『霊力』を使い果たすぞ、今の状態だったらな。修行して霊力を高めれは、ニ、三度は使っても大丈夫だ。

(*゚∀゚)*。_。)*゚∀゚)*。_。)ウンウン」

 

「どうだ?( ´,_ゝ`)」

 

「頭が痛いです」

 

能力を使い間違えただけで死ぬって俺の能力怖ッ!

ヤバい、すごく眠たい。はよ帰らせよ。

 

「これでも簡単にまとめたんだぞ。ε=( ̄。 ̄;)フゥ」

 

これでもか!?すごく疲れる……

 

「それじゃ、意識戻すぞ。ワーイ♪\(^ω^\)( /^ω^)/ワーイ♪」

 

「一ついいか?」

 

「なんだ、手短に頼む。(´Д`υ) 」

 

「お前が俺に能力を与えたとき、あの声はお前か?」

 

「そうだが、それがどうした?( ´,_ゝ`)」

 

「いや、今とは違いまじめだからお前じゃないかと思っていた」

 

「まぁ……後から平和ボケしたからな。(*゚∀゚)*。_。)*゚∀゚)*。_。)ウンウン」

 

そんだけの理由であんなチャラくなったのか!?

神様って状況に流されやすいのか。

 

「もういいよな、戻すぞ。(*^o^*)」

 

初めと同じで急激なめまいがした。

そういえば、あいつに一発殴るのを忘れていた。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

意識が戻った時は、もう正午だった。

よし一発だけじゃ足りんな。もう十発殴ろう。

想雅は意識が寝ていなかったため、睡魔にやられながら、チャラ神を殴ることを思っていた。

そして、起きたのが夕方を過ぎたぐらいだった。

 

「そういえば、飯どうしよっかな……」

 

飯を食べずに寝てしまったため、お腹が空っぽだ。

この世界のお金など持っていないため、飯を食べれない。

 

「おっさんのところに相談しに行くか」

 

ここのことを訊くのは、知っている限りでは大天狗しかいない。

立ち上がり、障子に手をかけた時だった。

 

「無視なんてつれないわね」

 

後ろから女性の声が聞こえた。

振り向くとそこには、見覚えのある女性だった。

 

「居たのか……」

 

「あなたの寝顔、じっくり見させてもらったわ」

 

俺が寝ていた時にも居たのか!っていうか不法侵入だろ!

 

「人間?であるあなたが大天狗を倒すなんてね」

 

女性は微笑した。

気付かないもの無理はないな、決闘に集中していたからな。あと人間のあとに?を付けないでほしい。

 

「君の名前は」

 

「レディからではなく、あなたからでは?」

 

どこの英国紳士だ。

 

「わかった。俺は天上想雅だ。誰かさん(・・・・)のおかげでこの世界にいる」

 

「八雲紫、妖怪よ」

 

「紫、俺に何の用だ」

 

「あなたに聞きたいことがたくさんあるわ」

 

おいおい、文みたいに質問攻めされるのか。また……

 

「できるだけ短くしてくれ」

 

「努力するわ」

 

さいですか……

 

「まず、あなたは人間?」

 

おい、またこのことか……、俺そんなに人間に見えないのか?

 

「人間だ」

 

「あの再生力で?」

 

「そうだ」

 

おいおい、疑われているぞ俺……

 

「あなたの能力は?」

 

「少し長くなるがいいか?」

 

「えぇ、かまわないわ」

 

 

-----少年説明中------

 

 

「たしかにすこし分かりにくいわね」

 

「そっち系の知力を持ち合わせていない俺はまったくわからない」

 

「わからないのに、その『聖を司る能力』や『魔を司る能力』のことがわかったの」

 

「まぁ、俺にもいろいろあったのさ」

 

「次は私の方ね」

 

 

-----少女説明中-----

 

 

「わかったかしら」

 

幻想郷、異変、弾幕ごっこ、スペルカード……か

ここに来てからいろいろ覚えることが多いな。

紫は立ち上がり、何やら不気味な空間が開いた。

 

「もういいのか」

 

「これぐらいの情報でいいわ。そういえば、あなたお金がなかったんですっけ」

 

「あぁ、こっちの世界じゃ一文無しだ」

 

紫がポケットから一切れの紙と、十円玉ぐらいの銅貨を出した。

 

「これがあれば、あなたの『言霊』とやらで量産することは可能でしょう」

 

「大丈夫なのか……」

 

紫は胡散臭く笑った。信用していいのかわからんな。

 

「最近、結界を破って侵入してくる輩がいるのだけど、知らない」

 

侵入……、結界……、破る……、あっ。

 

「たぶんそれ、俺の知り合いだ」

 

「そう、ならいいわ。それでは、ここで失礼するわ」

 

いいんっスか……

 

「ちょっと待ってくれ」

 

想雅は紫を引き留めて、何やらか話した。

すこし話し合いになったが、何とか和解した。

 

「そういえば、聞こえていたかもしれないけど言うわね」

 

紫は一呼吸を置いて言った。

 

「ようこそ、幻想郷へ」




なんか、すごく能力難しいな……これ、


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一時帰ってきた世界だが、すぐに幻想郷行き

想雅が一時、元の世界に帰ってきただけです。


想雅は、見慣れた部屋に一人で何やら、荷物を準備していた。

今、想雅がいるところは、幻想郷の外にある本来の家にいる。

幻想郷の外にいるわけは、紫を引き留めた時だった

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

「ちょっと待ってくれ」

 

想雅は不気味な空間の中へ帰る紫を、引き留めた。

 

「何かしら?」

 

「俺を、元の世界へ帰してくれ」

 

「無理ね」

 

「即答かよ……」

 

まぁ、見る限り紫は当然のことのように俺を元の世界に帰してくれないだろうな。

この世界、幻想郷のことをいろいろ教えてくれた時点で、だいたいわかっていたことだった。

しかし、元の世界でいろいろとやることがあるので、想雅は諦めなかった。

 

「しかしな、こっちにもいろいろとやらなければならない事があるんだ」

 

「とか言って、逃げるつもりなんでしょう?」

 

「無理やり連れてきた人が言う口か」

 

「無理やりではないわ。ただ、スキマに落としただけよ」

 

「了承もなく落としたことも、無理やりと言いますけどねぇ!おかげで、何回も死にかけましたからねぇ!」

 

「生きているからいいじゃない」

 

まぁ、確かに生きているからいいか……じゃなくて!

 

「まずは、落ち着いて話を聞いてくれ」

 

「……わかったわ、一応聞くだけ聞いてみるわ」

 

一応ですか……

 

「元の世界では、俺は高校生なんだ。まずは、この世界に住むのなら、高校側に退学届を出さなければならない。それでもしないと、先生が家まで訪問して来て、もしも俺がいないとばれたら、捜索届を出され、学校側にも、警察側にも、迷惑が掛かってしまうし、自分を育ててくれた、爺ちゃん、婆ちゃんにも迷惑が掛かってしまうし、バイト先のみんなにも……」

 

「わかったわ!聞いていても埒がなさそうだから連れて行ってあげる!」

 

え?もう少しで終わりなんだけどな……まいっか、元の世界に帰れれば。

 

「一つだけ約束してくれない?」

 

「なんだ?」

 

「向こうの世界には、一時的に返すだけ。時間が過ぎたら迎えに行くから」

 

「わかった」

 

自分の後ろで、不気味な空間が開き始めた。

 

「これって、紫の能力なのか?」

 

「えぇ、私は、『境界を操る程度の能力』よ。あとそれはスキマと言うのよ」

 

程度(・・)ってどういうことなんだ?」

 

「それ以上でもなく、それ以下でもないということだわ」

 

「さっぱりわからん……」

 

それ以上、それ以下……まず何がそれ以上で、それ以下なのかが分からない。

 

「それなら、俺の能力も、程度がつくのか?」

 

「どうかしら、あなたの能力は未知だから、それ以上なのか、それ以下なのかわからないのよ」

 

「おいおい、俺って本当に人間なのか?」

 

そんなこと言われたら、ますます自分が人間なのかわからなくなってきたぞ。

 

「人間ではないのなら、私の式神になってみない?」

 

「いや、自分は人間デス」

 

「最後の方、カクついていたけど、大丈夫?」

 

「ダイジョウブデス」

 

想雅は人間なのか不安になりながらも、スキマへと進んでいった。

 

「言っておくが、異変や弾幕ごっことかすごく楽しそうなものを聞いて、逃げるはずないだろ。そんなことを人生、一度も経験しないで生きていくなんて、絶対後悔するからな」

 

「子供ね」

 

「子供でいいさ、大人になってからじゃ、楽しめないことが多いからな」

 

想雅は笑顔で言った。

 

「これからよろしくな、紫」

 

「……//////!!!」

 

スキマの中に消えていく想雅を見送りながら紫は思った。

 

「さっき感じた感情……まさか」

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

「ふぅ、これで全部か、意外と荷物が少ないもんだな」

 

高校に退学届を出して、バイトを辞めて、

さすがに、爺ちゃん、婆ちゃんに事情を話すのは身が重かったけど、案外、すんなり受け入れていくれた。

 

『ふぉ、ふぉ、ふぉ。自立して、仕事に就くなんて、儂はいい孫を持ったものじゃよ。なぁ、婆さんや』

 

『そうですね、爺さん。しかし想雅や、葬式には出てきておくれよ』

 

いい爺ちゃん、婆ちゃんを持ったものだ。うん。

なんか誤解されていたけど……気のせいだろう。

で、荷物のことに戻るが、服と実用品だけを持っていくことにした。

タンスや調理器具など、幻想郷で買った方がいいだろう。せっかく、量産したお金もあるのだから、

え?犯罪ですって、いやだな。犯罪なんて起こしていませんよ。え?お金を作るのが犯罪?ばれなきゃ犯罪じゃないんですよ。『作る(・・)』じゃなくて、『創る(・・)』ですから。

 

「しかし、時間が余ったな」

 

予定より、五時間早く終わってしまった。紫は何を基準としてそんな長い時間を用意したか。

あれか、女性は身支度が長いっていう、俺は男だ。女性と同じにされては困る。

 

「どうしたものかな……」

 

時間が余ったと言ってもな……何をする。

そこらへんぶらぶらするか?テレビでも見て暇つぶしするか?本でも読むか?

ん?読む……

チャラ神に言われた、『聖剣』や『魔剣』、神話と言うものを見てみるか。

さっそく目的が決まれば、図書館へと想雅は行った。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

聖剣、魔剣、神話について調べてきたが、さっぱりわからん。

聖剣、魔剣にはいろいろな種類の剣があって覚えにくいし、唯一覚えられたのが、アーサー王が使ったとされている、『聖剣エクスカリバー』。北欧神話の主神、オーディンがシグムントに渡したとされている、『魔剣グラム』と言う具合だ。

神話の方は、さっぱりわからん。

チャラ神が読めばわかるとか言っていたが、まったくわからん。しかし、器の中にわずかずつ知識という水がたまっていくように感じた。神話事態を読むより、その神様一つに絞り、そしてよく知る方が効率的にはいいだろう。

そして、図書館で本を読み更けたせいで、当然時間に遅れた。

 

「遅いじゃない」

 

「すまない。図書館で自分の能力のこと調べてきた」

 

「そう……」

 

紫はそっぽを向いてしまった。

当然のことだ。時間に遅れてしまったのだから。

 

「それじゃぁ、開いてくれ、紫」

 

「……」

 

あれ、聞こえていないのかな?

 

「おーい、紫さんや」

 

「……」

 

無視されていた。

いや本人には聞こえているだろう。

時間に遅れたことをそんなに怒っているのか?

遅れたこと言ったが、そんなに怒っていなかった気がするが……

なんか気まずい……なにか言わないと。

もういい、やってしまえ!

 

「遅れたこと、誠に申し訳ありませんでした!」

 

想雅は、全力の土下座で、自分の部屋に屈した。

 

「……で?」

 

「で?って、俺に何をしろと?」

 

「時間に遅れた人がそのような口を訊いてよいのかしら?」

 

「すみませんでした!あなたが言うことを何でも聞きますから!」

 

「何でもと言ったわね」

 

「はい、言いました。男に二言はありません」

 

「そう……考えておくわ」

 

考えておくのか……、人がいないところで言ってほしいものだ。万が一、誰かがその現場に居たら、何かすごくヤバいことになるだろうな。

 

「開くわよ」

 

紫の前にスキマが開かれ、想雅、紫はその空間へと消えていった。




次回は博麗神社に行きます。


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Let's go 博麗神社、exciting 弾幕ごっこ

文字数が6000文字超えちゃった。(・ω<) てへぺろ

長いけど、ゆっくりしていってね。


幻想郷に戻ってから、一週間。

毎朝の日課として、椛と稽古をしているところだ。もちろん剣術だ。

その数分後、稽古が終わり休憩時間となった。

そういえば、幻想郷にある自分の家のポストに、文々。新聞という物が入っていた。

名前から察するに、文が出したことは確かだ。その中に、俺の記事があった。しかし、その中に書かれていたのは……

 

『大天狗様が謎の少年によって倒されました。その謎の少年のインタビューに成功しました。少年の名前は、天上想雅。大天狗様との一戦の前で、大怪我を負いながらも、みごとに勝利しました。しかし想雅は、大天狗様との一戦の傷と、一戦前の傷が、一週間と二日で治ってしまいました。彼は化け物でしょうか。彼の写真を撮り忘れていたので、次回の記事に載せます』

 

ほかに、もろもろ書いてあった。

おいおい、化け物と書いてあるぞ……人間ということは話していたのだが。

人を化け物扱いにしておいて、ゆるさん。

フフフフフ、どのように調理してやろう。

 

「そ、想雅さんが、すごくブラックな感じになっています……」

 

楓が怯えていた。そんなに怖いのか。フフフフフ……

そういえば、なんか応援らしきことやっていた。その間、なぜか疲れなかった。

 

「楓。稽古していた時、なんか応援みたいなことしていたが、どういう事なんだ?」

 

「それはですね。私の能力は、『元気にする程度の能力』なのです」

 

楓はドヤ顔で言った。なんかすごくかわいい。

 

「あぁ。つまり、応援することによって、元気なままの状態を維持できると」

 

「そ、そうです……」

 

楓の獣耳がしおれた。しかし、かわいい。

しかし、これだけは言っておく。俺はロリコンでもないし、ペドでもない。勘違いはしないでほしい。

 

「しかし、この能力は自分には効果がないのです。応援すると自分の体力が消耗しますから、決して便利ではありません」

 

「ということなので、すこし休ませていただきます……」

 

「ちょ、おい!」

 

楓が、想雅の膝を枕にして、眠り込んだ。

男の膝枕って、どうなのだろう。実際は女の子がするのではないだろうか。

 

「仲良くなって何よりです」

 

横で椛が笑っていた。しかし普通の笑顔ではなく、黒いオーラを発していた。

女の子の扱いって難しいなぁ……

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

自宅の帰りに、紫に会い、異変のことを知りたいのなら、博麗神社に行けと言われた。

博麗神社の場所なんて知らないから、当然スキマを使って行く。

スキマの中で、紫にスペカ(スペルカード)を作れと言われた。作った挙句に、紫で検証。

それで、作ったスペカは4枚。作った後、すぐに博麗神社の階段前(・・・)に着いた。

 

「スキマって便利だな」

 

長い階段を上りながら、つぶやいた。ほんと便利だよスキマ。階段の前ではなく、神社の前だったら最高なんだけどな。紫め、わざとやったのだろう。

息を切れながら、やっとの思いで博麗神社に着いた。

 

「誰もいない……」

 

着いたのはいいが、紫から博麗の巫女がいるとか言っていたが、誰もいなかった。神社がぽつんとあり、風の音だけ聞こえた。

 

「一句できた」

 

一呼吸置き、

 

「閑さや岩にしみ入る蝉の声」

 

まさにその状態。俺が今思った感想だ。パクリではない。これはパクリですか?いいえ自分の感想です。

紫に、どこにも見当たらないのなら、賽銭箱にお金を入れれば出てくると言っていた。お金はいくらでも量産できるので別にいいが、本当に入れるだけで出てくるのだろうか。

まぁ、やってみなきゃ、わからないからな。

とりあえず、2円札とついでに銅貨5枚(外の世界の値段だと、約2万500円)を入れた。ついでに銅貨を入れたのは、お札の2円だけ入れると音がしないからである。

 

チャリン

 

賽銭箱の中で、銅貨の音が鳴った。また静けさが通った。

お金を入れたのだから、お参りぐらいしておこう。

 

「幻想郷で無事生活ができますように」

 

実際のところ、気絶が3回と何やらか不幸なことが続いていた

上条○麻のように「不幸だぁぁぁぁぁ!」とは言わない、あえてそうしてる。

この際、願っていても損はないだろう。

 

ドタドタドタドタドタ!

 

どこからともなく足音が聞こえた。次第に足音は大きくなっていった。その音の主が神社の廊下を走ってきた。少女は来るが否、賽銭箱の中を探り始めた。それは普通、人がいなくなってからやるやつだろ!

 

「2、2円札と銅貨が5枚!ありがとう。助かったわ」

 

しかし、さっきの行動を見る限り、お金に困っていたのだろう。この神社、結構高いところにあるせいか、参拝客が来ないのだろう。しかし景色は良かった。神社前まで着いて振り返ったら、幻想郷を見渡せるぐらいだった。俺の家は、デカいのですぐに分かった。ここからも見えるって相当なデカさだろ。

 

「私は、博麗霊夢。この博麗神社の巫女よ」

 

「俺は、天上想雅だ。妖怪の山と、人里の間にあるあの家に住んでいる」

 

「あなたが、想雅ね……」

 

「俺を知っているのか?」

 

「えぇ、一通りのことは、紫から聞いているわ。人間をやめたらしいね」

 

「やめていない!」

 

紫め、適当なことを言うな!

俺の人間として生きているのが、化け物として生きているに変換するなよ。自分でも人間なのか心配なのに……チャラ神に人間と言われたが、それでもすごく心配なんだよ。平和ボケする神様なんだからよ!

 

「え?でも、人間をやめたって」

 

「やめていない。俺の能力が化け物染みているだけだ」

 

「そう。で、ここに来たわけは?」

 

「異変について教えてほしい」

 

「わかったわ」

 

 

-----少女説明中-----

 

 

「……ということよ」

 

紫と言ったことと同じだが、ところどころ詳しく教えてくれた。

異変のことを教えてくれる前に、お茶でもどう?と言われたので、お言葉に甘えてお茶を用意してもらった。異変のことを教え終わった後は、お茶のない湯のみが、俺の隣に置いてある。ずっと持って置くのもなんだしな。

 

「詳しいことわかったよ。ありがとう」

 

「え、えぇ。どういたしまして……/////!!!」

 

あれ、赤くなった。熱でもあるのかな。ただ単に、お礼をしただけなのだが……

いやまてよ、このような状況、前にもあったような。

 

「どいてくれぇぇぇぇぇ!!!」

 

空から少女の声が聞こえてきた。しかし、想雅が気付いた時は遅かった。

失速しているためスピードは速く。『閃光の言霊』を唱えることができなかった。

 

「おうふっ!」

 

そして、想雅は少女に激突し、気を失った。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

あれ、ここはどこだ?

川の向こうのお花畑でおばあさんが立っている。ここはどこなのか聞いてみよう。

 

「あのー、すみません。ここはどこですか?」

 

川の向こうなので、声を張り上げ訊いた。

おばあさんが振り返ると、片手に鎌を持っていた。

 

「ここは、三途の川。ここを渡れば、あの世じゃ。さぁ、こっちにいらっしゃい」

 

どんどんおばあさんが近づいてくる。

気付けばもう、そばにいた。(・・・・・)

 

「さぁ、こっちにいらっしゃい!!!」

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

「ハッ!」

 

「気付いたようね」

 

気付くと、霊夢の顔が目の前にあった。

 

「なんか、三途の川の向こうのおばあさんが、鎌持ってこっちに来いと言われた。すごくリアリティ半端なかった……」

 

「大変だったわね」

 

想雅は起き上がり、たった今、霊夢の膝の上で寝ていたことがわかった。

 

「れ、霊夢、なぜ、膝枕を!?」

 

「したかったからしただけよ」

 

過ぎたことだし、まいっか……ってよくねぇよ!人生初の膝枕がさっき会ったばかりの少女って、ま、まぁ。考えてみれば可愛い子だからいいか。気を失っていたけど……

 

「そういえば、激突した子は?」

 

自分のことより、落ちてきた子だ。なんせ、あんな高いところから落ちてきたのだから、傷だけではすまない。俺は化け物染みた回復力を持っているからな……

 

「お、おう。目が覚めたのか」

 

男らしい口調で、一人の少女が心配そうに話しかけてきた。

片側だけおさげにして前に垂らした金髪、白のブラウスのような服の上に黒いサロペットスカートのような服を着用し、スカート部分に白のエプロンを着けた服装、リボンのついた黒い三角帽、

見るからに、魔女か魔法使いだとわかる。

 

「少し頭がクラクラするが、問題ない。君は大丈夫なのか」

 

「まさか、衝突したやつに心配されるなんてな。私も大丈夫だぜ」

 

怪我をしているところがなくてよかった。

自分も衝突して死ななくてよかった。死んだら、文の新聞に、『空から落ちてきた少女に衝突して、天上想雅が死亡しました』って書かれたらシャレにならん。

親方~!空から、おにゃのこが~!の方が、衝突しないで済んだがな……現実は甘くない。

 

「そういえば、名前がまだだったな」

 

「私は、霧雨魔理沙。普通の魔法使いだぜ」

 

「俺は、天上想雅だ。言っておくが、人間はやめてない」

 

「人間をやめたって書いてあったんだがな」

 

「あれはデマだ。信用しないでくれ」

 

「まぁ、本人が言うのなら、本当だな」

 

よかった信じてもらえた。あのクソ天狗、もう許さん、許さんと言ったら許さん。

 

「大丈夫なら、弾幕ごっこしようぜ」

 

「あんた、けが人を(いたわ)ることできないのかしら」

 

「弾幕ごっこか……まっ、いいだろ」

 

「そ、想雅!?」

 

「大丈夫だ。めまいは治った」

 

「そういうことじゃなくて」

 

「ん?どういうことだ」

 

「あんた、スペルカード持っている?」

 

「あぁ、持っている。ついさっき作った」

 

「なら、大丈夫そうね」

 

魔理沙が来ることを紫は知っていて、そのためにスペルカードを作らせたのか。

弾幕ごっこに、スペルカードは必要不可欠らしい。

こうして人生初体験の弾幕ゲームの始まりだ。

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

弾幕ごっこ開始前、霊夢からこのような質問がきた。

 

「空を飛ぶことできるの?」

 

当然できない、人間だから。しかし、霊夢、魔理沙の二人はどうやら飛べるらしい。人間なのに飛べるとは、解せぬ。

霊夢は、『空を飛ぶ程度の能力』というものを持っており、自由に空を飛べるらしい。

魔理沙は、空から落ちてくる前、箒で空を飛んでたらしい。まさに魔法使いだ。あと、別に無くても飛べるらしい。それで、なぜ落ちてきた……

俺が持っている、『言霊を創造する能力』を使えば簡単だが、その分、霊力を多く使用する。そのことを言ったら、霊夢から、「霊力だけを使って空を飛べばいいじゃない」と言われた。

とりあえずやってみたら、飛べた。なんだ簡単じゃんと思った自分が怖い。

 

「空も飛ぶことができなかったのに、弾幕ごっこって」

 

魔理沙は笑っていた。笑うな!人間だれしも飛べるわけじゃないんだからよ!

 

「まあまあ、そんな感情的になるなよ。結果的に飛ぶことができたし、いいだろ」

 

はぁ……結果的に飛べたからいいか。

なれないといけないな、この生活。

 

「ルールは、知っているか?」

 

「大丈夫だ、問題ない」

 

「それじゃ、スペカ枚数は4枚、残機は3機だぜ。準備はいいか?」

 

「あぁ、いつでもかかってこい」

 

そして、弾幕ごっこの幕が下りた。

 

「最初は、こいつだ!恋符『マスタースパーク』」

 

巨大なレーザーが、想雅の目の前に広がった。

 

「大天狗を倒した力を見せてもらうぜ」

 

プレッシャーかけるなよ。スペル名が噛みそうじゃないか。

想雅は刀を後ろに構え、そして前に突き出す。

 

「見せてやるよ、俺の力を!魔剣『グラム・スピリット』」

 

刀から、マスタースパークより小さなレーザーが発射された。

そして、魔理沙のレーザーと想雅のレーザーがぶつかり合った。

 

「小さなレーザーで、私のマスパは破れないぜ」

 

「それはどうかな」

 

見る限りでは、魔理沙の方が有利だが、それは違った。

想雅から放たれたレーザーは、魔理沙のマスタースパークを貫いて、マスタースパークを消滅した。そして、レーザーは魔理沙の方へ。

 

「なっ!」

 

魔理沙は避けようとしたが、反応に遅れたため被弾した。

 

「な、なんで小さいレーザーに私のマスパが負けたんだ」

 

俺が使った、魔剣『グラム・スピリット』は回転力を使った『魔』のレーザーである。『魔』の力により自分に大きな力を与えられ、小さいため速度は速く、レーザーを回転させることにより、威力が強くなり、さらに、レーザーの先は円錐になっているため、全ての圧力が先に集まり、回転力+圧力+速度+『魔』の力により、膨大な大きな力を発揮する。グラムは図書館で覚えた魔剣の名前を採用した。

そう、魔理沙のマスパを破ったのは……以外!それは回転!

 

「小さいやつにもステータスはある。そう希少価値だ」

 

「まだだ!魔符『スターダストレヴァリエ』」

 

魔理沙の周りを魔方陣が回り、そして広がり、想雅を囲むように、七色の星型の弾幕を設置された。魔方陣は回りながらも無数の星形の弾幕をばらまき、想雅に迫ってきた。

 

「無数の弾幕で被弾率を高めるわけか。だがしかし!」

 

「拘束『龍王の威光』」

 

想雅の目が赤く光り、無数の弾幕たちと、魔方陣が停止した。

 

「う、動かないぜ……」

 

さらに、魔理沙の行動さえも封じたのだ。

動きを止めているうちに、弾幕の軌道を確認、確認と……

 

「続いて、無双『斬月』」

 

ほかのスペカを使ったことにより、魔理沙の行動が自由になり、弾幕も動き出した。しかし、無数の斬撃が、想雅の周りから広がっていく。

斬、斬斬、斬斬斬。

斬撃が無数の弾幕を1つ残らず切り裂き、魔理沙に斬撃が迫ってきた。

 

「さっきのようにはいかないぜ!」

 

魔理沙は無数の斬撃に負けず、避ける、また避ける、さらに避ける。しかし、魔理沙にも限界がきた。避ける瞬間、箒に斬撃に少し触れてバランスを崩してしまい、斬撃にヒットした。

 

「残りの残機は1か……、まだやるのか?」

 

「まだやるぜ。たとえ残機が1だけでも、あきらめないぜ」

 

それが本音なのかそれとも、ただの負けず嫌いなのか。

 

「最大パワーだぜ!魔砲『ファイナルマスタースパーク』」

 

「王の力よ、我に勝利の道しるべを!王剣『ロード・オブ・ザ・エクスカリバー』」

 

マスタースパークより強力なレーザーと、刀に『聖』の力を送り、長くそして大きく(かたど)った刃、

それらが衝突しあった。想雅の弾幕により、魔理沙のレーザーが消え、居たと思われた想雅はそこにはいなかった。

 

「もらった」

 

『閃光の言霊』を唱えてあった想雅は、刀を振りかざし、刃を魔理沙の方へ向けた。

 

「その攻撃をかわすのは簡単だぜ」

 

余裕に魔理沙はかわした。

しかし、斬撃は空間ごと切り裂いていた。

その空間から、大きな剣の形をした弾幕が、放たれた。

当然、想雅の刀を避けただけなので、空間との距離は至近距離レベルだった。

そして、魔理沙はその弾幕に被弾した。

 

 

 

 

-----○●○------

 

 

 

 

「至近距離なんてずるいぜ……」

 

「すまん、すまん。次からはちゃんと遠距離から撃つから」

 

初の弾幕ごっこは勝ったのか?わからん。

 

「まぁ、魔理沙の弾幕も強かったからな。またやるときも手合せ頼む」

 

「おう、わかったじゃあな~」

 

想雅は、霊夢と魔理沙に別れを告げ、霊夢からは、「また来なさいよ」と赤い顔で言われた。

博麗神社から飛び、自宅へと向かった。

想雅が行ってしまった後、さっきまでは変化がなかった魔理沙の心が、ドクンと波打った。そして、想雅を思うと、顔が赤くなってしまった。




そろそろキャラ設定かな……


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キャラ設定

 
今回は、想雅と、楓です。


名前:天上想雅

 

種族:人間

 

外見:茶色の髪、蒼い瞳、顔立ちは良い方、身長は170㎝は超えている。

 

能力:『聖と司る程度の能力』

 

   

『聖』の力を扱う能力。悪魔など、悪しき存在に大ダメージを与える。

また、化け物並みの回復力を誇るが、想雅は人間のため、大きな傷だとせいぜい1週間は掛かる。

また、即死の場合は、意味はない。

 

   『魔を司る程度の能力』

 

『魔』の力を扱う能力。通常は傷付けられない物、神や魔物を斬るなど、何らかの特別な能力を有しており、その所持者に大きな力を与えことができる。

 

   『言霊を創造する程度の能力』

 

この能力には、『想像によって創られる言霊』と『神を知ることによって創られる言霊』がある。

『想像によって創られる言霊』は、思ったことを現実にすることができる。しかし霊力の消    費は、半端なく、連続で使うと廃人になる。霊力を高めれば、連続で使っても廃人にならない。

また、『神を知ることによって創られる言霊』と同じことをすると、死ぬ。

『神を知ることによって創られる言霊』は、、『想像によって創られる言霊』とは違い、神の能力に特化した言霊。これを使えば、その神様が使う能力を使うことができる。しかし、『想像によって創られる言霊』と同じに、使いすぎると廃人になる。

 

性格:優しいが、すこし感情的になりやすい。

自分のことより、他人の事が気になりやすい。

 

備考:両親が他界してしまい、今まで父親方の祖父と祖母に、預けられていた。高校生になり1年前から、一人暮らしを始めている。日本人の父親にはあまり似ていないが、父親のなぜかモテやすい体質を持っており、当然のように想雅も父親のようにモテやすい体質になった。しかし、本人は自覚なし。

想雅が持っている能力は、『程度』がつかないものと紫は言っているが、想雅はつくものと考えている。

 

想雅のイラストです。

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

名前:犬走楓

 

種族:白狼天狗

 

外見:白髪で山伏風の帽子を頭に乗せている。髪はポニテで結んである。

 

能力:『元気にする程度の能力』

 

対象の相手を、元気づける能力。元気にすることによって、ブルーだった気持ちも一気になくなってしまう。やりすぎると、「最高にハイってやつだ!」となる。

また、元気になることによって、対象の相手の、持久力、精神を疲れさせない。

この能力は自分には効果を発揮せず、疲れてしまう。

 

性格:基本的に人見知りである。慣れると、よく甘えてきたりする。

 

概要:椛の後輩であり、妖力の使い方に慣れてはいないため、まだ修行の身である。

 

楓のイラストです。

 

【挿絵表示】

 

 




想雅の体質って……、恐るべき天然フラグメイカー

幻想入りはここをもって終わりです。
次回は、紅霧異変です。


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紅霧異変 ~悪魔異変~
ほのぼの日常は、闇の中へ


キャラ設定で刀と、スペカを書いていなかったので、こっちに書いておきます。




刀名:神刀『風牙』

能力:不明

備考:天上家に代々伝わる刀。
   全長は1m以上、そのうち、刃渡りは90㎝、だいたい刀で言うところの太刀の分類する
   刀。江戸時代中世、先祖が神の怒りを治めるべく、貢物を用意し、崖から突き出ている
   2つの岩に、しめ縄を巻きつけた瞬間に落ちてきた。
   当時、鞘はなく、丸裸だった。なぜ落ちてきたのかは今だ不明。
   謎多き刀である。



スペル名:無双『斬月』

     複数の斬撃を展開して攻撃する。弾幕を切るときは、弾幕の軌道を見て使わないと、
     消滅させるのはほとんど無理。拘束『龍王の威光』を使い、動きを止め、使う場合が、
     多い。

     拘束『龍王の威光』

     動くものを一時的に行動不可能にする。動くものだと言っているが、時間は止めれな
     い。無双『斬月』と一緒に、よく使われる。

     王剣『ロード・オブ・ザ・エクスカリバー』

     空間を切り、空間内から、『聖』の力を持つ大きな剣を発射させ攻撃する。
     切れば斬るほど、空間は増え、そこから大量な剣が発射される。
     『王の()く道に、何人(なんぴと)たりとも、邪魔はさせない』という王道の意志が込め
     られている。

     魔剣『グラム・スピリット』

     刀の先に、『魔』の力を込め、発射させ攻撃する。
     回転力+圧力+速度+『魔』の力により、膨大な大きな力を発揮する。
     威力は抑えてある。死なない程度に……

この章にはあと2枚のスペカが登場します。ご期待を、
     


想郷に夏が来た。日差しは暑く、紫外線も気になる季節。男の俺は気にしていないが、女の子たちにはさぞかし嫌いな季節だろう。しかし、夏が嫌いという奴は、冬が来ると、夏がいいと言う奴が多い。

夏を知らせ、1週間という短い時間に、メスを引き付けようと頑張るセミの鳴き声。朝から、ジリジリ五月蠅い。

 

「最悪の目覚まし時計だ……」

 

都会では味わえない五月蠅さすぎるセミの声。爺ちゃん、婆ちゃんの住む田舎と同じぐらい五月蠅いと言える。

幻想郷に来てから、三ヶ月あまり経っている。

自分の能力には、だいたい慣れてきているが、まだ、『神を知ることによって創られる言霊』は使っていない。てか使えない。

ちょくちょく外の世界の方に行って調べてくるのだが、まったくこれといった情報は無し。『ギリシャ神話』、『北欧神話』、『ケルト神話』、『日本神話』などをいろいろ読んできたが、前回同様、器の中にわずかずつ知識という水がたまっていくような感じだ。やはり図書館や本屋などで置いてある、本はあまり参考にならない。

想雅は服を着替え、腹が減っているため、台所へ向かったが、米、魚、漬物といった、朝食しか作れる程度しかなかった。幻想郷で食料は確保しているが、パン、フルーツ、オリーブオイルといった異国の食料、調味料がないため、外のスーパーで買っていている。和食だけではなく洋食も食べている。

移動手段か?それはな、言霊を使用している。紫に毎回頼むのはちょっと、迷惑な気がしてな。

朝食を済ませ、準備が整ったところで、想雅は人里へと向かった。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

今日も活気にありふれた、人里の商店街エリア。

商店街の人たちには感謝している。

家具屋のおじさん、八百屋のお爺さん、魚屋のあんちゃん、蕎麦屋のおかみさん、団子屋のおばちゃん、おじちゃんたちは、幻想郷に来て間もないころ、よくお世話になっていた。

来て間もないから安くしておくよ。とか、よっしゃ、かっこいい兄ちゃんにサービスや。など、親切な人たちだ。そのおかげで、寂し死にしないですむ。

あと、寺小屋もあったな。

青のメッシュが入った銀髪。頭には頂に赤いリボンをつけ、六面体と三角錐の間に板を挟んだような形の青い帽子を乗せている綺麗な先生が居た。教え方も上手だったが、歴史の授業になると、無欠席無遅刻無早退の俺でも分からない単語が飛び交っていた。宿題を忘れた子に、頭突きしている場面もあった。すごく痛そう……

この、ほのぼのしている日常を話しているうちに、すでに買い物は終わっていた。このほのぼのとした雰囲気をまだ味わいたいので、行きつけの団子屋に向かい、店内の椅子に腰かけた。

座ったと同時に店内のおばちゃんが、お盆にお茶が入った湯呑を持ってきた。

 

「おばちゃん。団子5本お願いします」

 

「いつもありがとねぇ~」

 

おばちゃんは仕事場に戻り、団子屋の店主であるご主人に注文の団子を頼んでいた。

この団子屋は、味は良いし、店も綺麗だが繁盛しておらず、向かいの蕎麦屋を妬んでいる。

向かいの蕎麦屋は、福の神が訪れたことのあるという、大繁盛している店であるが、繁盛している本当の理由は、店自身の努力と、おかみさんの笑顔だった。俺も行ったりするが、おかみさんの笑顔は生き生きとしており素敵だった。

待つほど数分、運ばれてきた団子を食べ始める。ピンク、白、緑の順に刺さっている三色団子を、静かな店内で一人で食べる。すごく寂しい。

その静けさゆえに、眠たくなることも多かった。しかし、今は朝だ。二度寝っていうレベルの時間帯だ。

睡魔に襲われながらも団子を黙々と食べる。満腹になったとき、睡魔に負けその場で寝てしまった。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

目が覚めたら、外はすでに夜になっていた。……ってすごく寝過ごした!

なんでこんなに寝ちまったんだ俺は!どうせなら起こしてくれよ団子屋のおばちゃ……ん?

団子屋のおばちゃんが店内で倒れていた。いやそれだけではない。団子屋の店主、向かいの蕎麦屋のおかみさん、遊んでいた子供たち、みんな倒れていた。

急いで外に出て、初めて気付いた。

想雅が夜と思った正体は、太陽の光を遮るように濃い紅霧。そのため薄暗く寒さが感じられる。しかしそれだけではなかった。その紅霧から感じられる、不吉な物が人里の人たちの体に悪影響を及ぼしていた。

想雅が無事なのは、『聖』の力により、不吉な物を浄化しているからである。

この惨事を見て、想雅は確信した。

 

異変だ

 

確信がついた想雅は急いで博麗神社へと向かおうとした。

進行方向から、人影が近づいてきた。

青のメッシュが入った銀髪。頭には頂に赤いリボンをつけ、六面体と三角錐の間に板を挟んだような形の青い帽子を乗せている、そう寺小屋の先生をやっている女性だった。

 

「君は大丈夫か?」

 

寺小屋の先生が話しかけてきた。

 

「は、はい。大丈夫です。あなたの方は?」

 

「あぁ、私も大丈夫だ」

 

何だろう。英語の授業の最初の挨拶みたいな……、いやそんなことより。

 

「これは異変ですかね」

 

「異変だ。それ以外考えられない。さっき、龍神の石像見てきたが目が赤く染まっていた。この霧は妖力、魔力によって作られていて、普通の人間なら、短時間で倒れてしまう」

 

龍神の石像。龍神を崇めることを人間が忘れないように河童が作った物だと聞いた。

的中率7割程度の天気予報になっており、目の色が、白で晴れ、青で雨、灰色で曇り、赤で異変である。今回は赤なので、異変だとわかる。

 

「えーと、お名前は?」

 

「上白沢慧音だ。寺小屋で先生をしている。別に敬語を使わなくてもいいぞ」

 

「ならお言葉に甘えて。天上想雅だ。妖怪の山と、人里の間の家に住んでいる」

 

自己紹介も終わったことだし、ちょっと聞いてみるか。

 

「慧音の話聞いている限り、俺と慧音が人間じゃないと聞こえるだが……」

 

慧音がビクンと体を震わせた。

 

「い、いやー、それは……、そう!私はこういう物に抗体があってな、このくらいの妖力、魔力では倒れないんだ!」

 

慌てて慧音が言った。なんかとって付けたような感じだった。

 

「そうですか……。あ!少し動かないでくれ」

 

想雅はそう言い、慧音のでこにに手を当てた。

 

「ななななな、何をするんだ……//////!?」

 

想雅の急な行動に、慧音はパニックになった。

 

「あー、やっぱり、少し妖力と魔力が体の中に入っているな。少し待ってくれ」

 

「……え?」

 

想雅の手のひらから、白い光が発され、光は慧音の体全体を包んだ。そして、光は消えた。

 

「体の中に入っていた、妖力、魔力は消えた。抗体があるとはいえあまり無理しない方がいいぞ。無理して倒れたら、元も子もないからな」

 

「さっきの能力はなんだ?」

 

「この力は、『聖』と言ってな。悪、邪などの不吉なものに抗体があって、それを使えば、体に害をなす物、悪しき物を浄化したり、倒したりすることができるらしい」

 

「らしい?」

 

「まだ、この力の能力は、完全に使いこなしているわけではないからな。あと体には気を付けろよ」

 

「あぁ、以後気を付ける」

 

「じゃ、俺は異変解決のため、博麗神社に行ってくるから」

 

「頑張れよ」

 

慧音に手を振りながら、博麗神社へと向かった。

小さくなる人影を見て、慧音は思った。

面白い人間だと。

しかし、思ったのはそれだけではなかった……




最初の方、口数少なかったな……

あと、確認テストが近いな。投稿遅くなるかも……
まぁ、当然テスト勉強しないのがオチなんですけどねww

想雅「そのふざけた幻想をぶち壊す!魔剣『グラム・スピリット』」

え?ちょ、なんでいる!?あと、威力押さえてあるよね!?

想雅「いや、全然」

ちくしょぉぉぉぉぉ!!!

地面が揺らいだ。

数分後。

テスト勉強しよ、勉強。..._〆(゚▽゚*)





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空腹の妖怪

 
 exルーミア注意警報。

 幼いルーミアを求めている方は速やかにブラウザバックをお奨めします。




博麗神社に向かう途中、霊夢と魔理沙に出会った。

 

「遅いじゃない」

 

「ごめんごめん。団子屋で寝ていた」

 

「寝ていたって……、案外、呑気(のんき)なのね」

 

霊夢が呆れたようにため息をついた。

このような事態なのに、よく寝ていられたものだと。

 

「人里を見て来たが、ほとんどの人たちは、倒れていた」

 

「この霧は、妖力、魔力の塊らしいんだぜ。普通の人間じゃ倒れるのも普通だろ」

 

「多くの犠牲者を出さないうちに、早く異変を解決しましょう」

 

「霊夢はただ、面倒だから、早く終わらせようとしているんだぜ」

 

「ま~り~さ?余計なことを言わない」

 

「悪い悪い!本当に悪かったから、その札をしまってくれ!」

 

なんだかんだで、今日も元気な二人だな。

 

「そ、そういえば、想雅。その手に持っている袋はなんだ?」

 

「ん?これか。食材が入っている」

 

「早く家にしまいに行って。その間に、魔理沙をすこし……」

 

「ちょ、霊夢!さっき謝っただろ許してくれ!想雅、早くしまってきてくれ~」

 

女の子って怒ると、取り返しのつかないことになるからな。

想雅は言霊を使い、家に帰り、食材をしまってきたが、戻ってきたときには……

言わないでもわかるな?

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

「まったく、霊夢は酷いぜ……」

 

「私はただ、早く異変を解決して、人里のみんなを一日でも早く助けたいのよ」

 

「はいはい、おっしゃる通りです」

 

紅霧の流れに逆流して、飛んでいた。

進むにつれ、妖力、魔力が濃くなってきた。

霧が深いため、視界が悪いが、発生源に近づいているのは間違いない。

先頭の霊夢、魔理沙が止まった。

 

「ん?何かあったか?」

 

「想雅、あれ」

 

霊夢が指をさした、先には、黒い球体が動いていた。

しかし、動きがおかしかった。

右にフラフラ、左にフラフラ。

まるで、酔っぱらったおっさんみたいな動きだった。

そして、三人の視界から、ログアウトしていった。

 

「「「……」」」

 

三人とも言葉が出なかった。

 

「ど、どうするんだ、あれ……」

 

それから数秒、魔理沙が話を切りだした。

 

「どうしようかしら……」

 

霊夢と魔理沙が、さっきからチラチラこっち見てくるのだが……

それからまた数秒、魔理沙が挙手をした。

 

「私が、あれの正体を見に行くぜ……」

 

「私も、異変の首謀者だった時のことも考えて……」

 

霊夢も挙手した。

またチラチラ見てくるんだが……、俺もやれってか……

 

「それなら、俺が……」

 

「「どうぞ、どうぞ」」

 

「やっぱり、こうくると思っていたよ!チクショウ!」

 

ダ○ョウ倶楽部のネタだった。なんでこんなこと知っているんだ?あいつらは。

そうだよな、二人とも女の子だ。危ない目には合したらいけない。

 

「霊夢は、人里のみんなを一日でも早く助けたいんだよな。魔理沙も、あの黒い球体の正体が分からないまま行かせるわけにはいかないよな。いや……、なんかすまん」

 

無意識に俺は謝っていた。

 

「いやいや!別に想雅に謝ってほしいとか思っていないから!なぁ、霊夢」

 

「そ、そうよ!」

 

結果、霊夢と魔理沙に慰められました。

無意識って怖い。

 

「そ、それじゃぁ、私たちは先に」

 

「ちょっと待ってくれ」

 

二人を引き留め、想雅は慧音にやった時と同じに、手をでこに当てた。

当然、二人はパニックになった。

 

「動かないでくれ。体の中に妖力、魔力が少し入っている」

 

想雅がそれを言うと、二人は顔が赤くなりながらも落ち着いた。

 

(顔が赤く見えるのは霧のせいだろうか)

 

想雅の『聖』の力が二人の体に流れ込み、入っていた妖力、魔力をすべて浄化させた。

 

「この先、妖力、魔力が強くなっているから、念のため取り除いた。あまり無茶するなよ」

 

「……そう、ありがとう」

 

「……あ、ありがとうなんだぜ」

 

二人のお礼を訊くと、想雅は黒い球体が、ログアウトしていった、場所へと消えてった

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

黒い球体が、ログアウトしていった森へと入って行った。

ここにも紅霧が充満しており、普通の人間だと死にいたる量だった。

自分の進行方向には、紅霧の妖力だけではなく、少量の妖力が感じる。落ちていったのは妖怪だとわかった。

紅霧が深いためか少量の妖力を頼りにして、見つけ出さないといけない。

 

「ん?あれか……」

 

想雅は地面に倒れている少女を見つけた。

髪は黄色のボブ。 白黒の洋服を身につけ、スカートはロングである。 左側頭部に赤いリボンをしている。

少女はムクリと立ち上がり、周りを見渡し、早速想雅を見つけ、何事もなかったかのように話しかけてきた。

 

「あなたは、食べれるじんr……」

 

少女がいきなり倒れた。

想雅は急いで、少女を抑えるが、その拍子に少女の左側頭部についている赤いリボンが木の枝に引っ掛かり、ビリッと破れてしまった。

しかし、そのことには想雅は気にしていなかった。いや気にしてはいられなかった(・・・・・・・・・・・・)

少女から、黒いオーラが噴出し、少女を覆った。その瞬間に想雅は少女から離れていたため、黒いオーラに飲み込まれずに済んだ。

そして、少女を覆ったオーラは拡散し、その中から、少女から見違えるような女性が出てきた。

黄色のボブではなく黄色の長髪、背中に漆黒の翼が生え、右手に聖者の十字架を変形させた漆黒の大剣、先ほどとはまるで違う強大な妖力、しかしそれだけではない。さっきまで感じられなかった魔力が感じられた。

想雅は確信した。

この異変はこの妖怪の仕業だと。

確信した想雅は、刀を身構えた。

女性は無言で想雅に迫ってきて、右手に持っている大剣を振り下ろした。

 

「クッ……」

 

大剣を止めたが、想雅の足元にはクレーターができていた。

大剣を押しのけ一旦距離をとった。

女性は左手に魔力を込め、想雅の方へと、無数の闇の弾幕を放った。

 

「スペカを使うか。無双『ざn……」

 

想雅がスペカを使おうとしたが、その前に女性が倒れかけていた。

スペル名の詠唱を中断し、無数の弾幕を避けつつ、急いで女性の方へと向かった。

今度は女性の私物に傷をつけることなく受け止めた。

 

「ぉ……す……ぃた……」

 

「なんだ?言ってみろ」

 

「おなか……すい……た」

 

「……」

 

あまりにも意外なことで想雅は言葉が出なかった。

 

『我は誓おう、剣のような鋭さを、光のような速さを、鋼のような折れぬ意志を、我は、我行く道を突き通そうぞ!』

 

想雅は女性を抱え、『閃光の言霊』を詠唱し急いで自宅へと帰って行ったのだった。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

想雅は家に一時帰宅し、女性を自室に置いておき、料理の準備をしていた。

 

「はぁ……なんかドッと疲れた……」

 

包丁で具材を切りながらため息をついた。

言霊に、自分の霊力を半分以上根こそぎ持っていかれた。想雅の霊力は、霊夢より少ないため、少し持っていかれたとしても、想雅には結構きつかった。

 

「三ヶ月間、能力のことばかりやっていたから、全く霊力の方に、手をつけていなかったのが失敗だったな……」

 

またもや、ため息。

 

「しかし、あの女性はなんなんだ」

 

倒れたと思ったら、起き上がって、攻撃してきたが、また倒れる。

理由は、「おなかすいた」って、何日も食べていなかったのか。

そのことはいい。より問題なのは、

 

「あの女性が、異変の首謀者かもしれないしな……」

 

あの時感じた妖力と魔力。。

しかしあの様子を見る限りでは、今回の紅霧を作り出すのは不可能に近い。しかしあの妖力と魔力の大きさだ。念のために訊くことはする。

無言で迫ってきたときは、正直肝が冷えた。

料理を作り終えた想雅は、女性が居る自室へと足を運んだ。

料理の匂いに気付いたのか、女性はムクリと立ち上がった。

 

「ここは……どこ?」

 

「俺の家だ。倒れていたもんだから勝手にここまで連れてきた」

 

「あなたの家に!もしかして意識がないあいだに、私にあんなことやこんなことにする気だったでしょ!」

 

「断じて違う!とりあえず料理を食べてくれ、お腹が空いたままだとまともに話ができん」

 

「睡眠薬とか入ってないでしょうね」

 

「お前の中では、俺はどういう存在なんだ!」

 

「意識のない女の子を家に連れ込んだ変態」

 

「はぁ……、ツッコむのに疲れた。とりあえず早く食べてくれ」

 

女性は、疑いながらも、料理を口の中に入れた。

 

「おいしい!」

 

「ならよかった」

 

まぁ、とりあえず料理は口に合った。

 

「睡眠薬とかはいt「入れていないからな」……」

 

女性はようやく大人しくなり、料理を食べていった。

 

 

数分後

 

 

「ごちそうさま」

 

「お粗末様でした」

 

今日買ってきた食材のほとんどを食べてしまった。

食事中に女性の名前を聞いておいた。名前はルーミアって言うらしい。

 

「お腹が満腹になったことだし、本題を話す」

 

一呼吸おいて、

 

「ルーミア、お前はこの紅霧異変の首謀者か?」

 

「その根拠は?」

 

「リボンがとれたとき、大きな妖力と魔力を感じた」

 

「あのリボンは封印のお札みたいなもので、私では取れないの。今の妖力と魔力は本来の力」

 

「封印されたのはいつだ?」

 

「紅霧が発生する前から」

 

今の妖力と魔力は本来の力ねぇ……って封印解いたのか!?

紅霧が発生する前からなら、紅霧は作り出すのは困難だ。

つまり、ルーミアはシロだ。

 

「すまないな、疑って」

 

「いいのよ。あと今回から料理ごちそうしてね」

 

「あぁ、わかt……は?」

 

「だから、今回、つまり今日から料理をごちそうしてねって言ったのよ」

 

「いやそこじゃなくて、なんで俺がごちそうしなきゃならない」

 

「え?だっておいしかったもの。あと、面倒くさい」

 

「おいしかったっていう感想は素直に受け止めるけど、面倒くさいって言う感想は、明日から本気出すと同じレベルだぞ」

 

「なにそれ、おいしいの?」

 

「とにかく、疑ったのは悪いと思っている。しかし、なぜ俺がごちそうしなきゃならないおかしいだろ」

 

「えー、お願い」

 

ルーミアが想雅に四つん這いで近づき、上目遣いで想雅を見つめた。

その眼差しは、ウルウルしており、今でも泣き出しそうな眼だった。

 

(ちょ、それ反則だろ!?)

 

想雅はハァとため息をつき、ルーミアに言った。

 

「……わかった」

 

「やったーーーーー!」

 

ルーミアが天井に拳を突き立て、ガッツポーズをした。

想雅は台所に置いてある刀を取りに行って、異変解決に向かった。

ルーミアがいってらっしゃいと手を振っていた。

 

 

 

 

 

 

 



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妖精はこんな霧でも元気ですよ

「発生源はどこだ?」

 

さっそく出オチである。

さっきから進んでいるが、霧ばっかりで飽きてきたころだった。

どうせなら、ルーミアに訊けばよかった。なぜあの時、訊かなかったのだろうか。

しかし、後悔しても遅い。

想雅は、右に行ったり、左に行ったりと、自宅までの道のりが分からない状態だった。

言霊を使えば、発生源の場所を探知できるが、今の状態で使ってしまうと、明らかに落ちる。

落ちて生きていたとしても、霊力の回復に時間が掛かってしまい、霊夢たちだけで異変を解決しそうだ。俺の出番がなくなってしまう。

これだけは言わせてもらう。

 

「不幸だぁぁぁぁぁ!」

 

上○さんのように頭を抱え叫びました。

スッキリした。叫んでも現状は変わらないけど……

 

「しかし、さっきから寒いな」

 

ルーミアの時には感じなかったが、さっきから寒い。夜で寒いのはわかるが、夏の夜にしても気温が半分ぐらい下がっているように感じた。風邪引いたのかな俺……

 

「―――に――――――ぁ―――しょ――――し―――」

 

「なんか幻聴が聞こえたな。ますますヤバいな」

 

幻聴が聞こえると言うのは、死が近いことを意味する。

しかし、気分は悪くない。妖力、魔力は『聖』の力で浄化している。

 

「そこの人間、あたいとしょーぶしろー!」

 

「チルノちゃん、やめようよ」

 

自分の後ろから、二人の少女が向かってきた。

髪は薄めの水色で、ウェーブがかかったセミショートヘアーに青い瞳。背中の羽は六枚で、青か緑の大きなリボンを付けている。服装は白のシャツの上から青いワンピースを着用し、首元には赤いリボンが巻かれている子。

髪の色は緑、左側頭部をサイドテールにまとめ、黄色いリボンをつけている。服は白のシャツに青い服を着ており、首からは黄色いリボンを付けている。背中からは虫とも鳥ともつかない縁のついた二枚の羽が生えている子。

 

「お!ちょうどよかった。この霧のはっs「あたいとしょーぶしろ!」……」

 

こいつ聞いていない。あの少女の頭の中は、弾幕ごっこしかないのか。

しかも隣にいる緑髪の少女は、止めようとしているみたいだけど、まったく聞く耳を持っていないようだ。

 

「人間。あたいに恐れて言葉がでないのか?」

 

「いや違う。馬の耳に念仏だなと思った」

 

「うまのみみにねんぶつ?」

 

少女は首を傾げた。

 

「チルノちゃん、人の意見や忠告に耳を貸そうとせず、少しも効果がないことのたとえだよ」

 

「へ?馬?ちゅーこく?」

 

緑髪の少女が耳打ちするも、馬の耳に念仏の意味があまりわからないようだ。

 

「うーんもう!そんなことより、あたいとしょーぶしろ」

 

そして少女は考えることをやめた。

 

「勝負したら、この霧の発生源教えてくれる?」

 

「いいよ」

 

何も考えないで返事を返しただろ。やはり頭の中は弾幕ごっこ。

 

「君は、ちょっと離れておいてね」

 

「あ、はい」

 

緑髪の少女は素直に聞いてくれた。うん、いい子だ。

 

「それじゃ、開始といこうか」

 

緑髪の少女が後ろに下がリ終った後、弾幕ごっこが開始された。

 

「せんてひっしょう!氷符『アイシクルフォール』」

 

氷の弾幕が展開された。

しかし、少女の正面に弾幕は通っていないところがあった。なに俺を誘っているのか?

それでも、想雅は発生源の場所を早く知りたいため、あえてそこに行った。

 

「なんで当たらないのよ!」

 

え?俺を誘ったわけじゃないの?

想雅は少女の言葉を聞いて驚いた。

普通、弾幕が通っていないところに誘き出して、そこに集中砲火というシナリオだと想雅は思っていたが、別にそういうこともなく、ただ弾幕をそこに展開する発想がなかっただけだった。

この子の頭の中は弾幕ごっこだけど、戦略とか勝利の方程式みたいなものはないのか?

 

「ま、まだよ!凍符『パーフェクトフリーズ』」

 

カラフルな小弾を放射状に展開され、動いている弾幕が動きを止めた。そして尽かさず、カラフルな小弾を放射状に展開させた。そして止まった弾幕は、先ほどとは軌道を変え、想雅に向かってきた。

 

「これだと、動きを止めて軌道を確認したとしても、軌道を変えてしまうから、拘束『龍王の威光』は意味がないな」

 

弾幕の動きを止めたところで、弾の軌道を変えることはできぬぅ!ってか。

 

「なら!無双『斬月』」

 

無数の斬撃が展開され、少女の放った弾幕はことごとく消滅させた。

 

「あたいの弾幕を切った!?」

 

なんか刀の感触が気持ち悪かったが……、まいっか。

 

「むー、これでもくらえ~!雪符『ダイアモンドブリザード』」

 

氷の弾幕がまた展開された。

今度のは、凍符『パーフェクトフリーズ』より弾の数は多いが、さっきのより遅い。

想雅は、ひょいひょい避けていった。

 

「あ~!また当たらない!どうして!」

 

「次はこっちだ!聖矢『フェイルノート・スターダスト』」

 

指先に『聖』の力を込め、斜め上に打ち出した。

打ち出された弾は、一定の高さまでくると、まるでシャワーのように複数のレーザーが少女に向かってきた。

 

「この程度の弾幕をかわすことなんて、朝飯前よ!」

 

しかし、この弾幕はただ拡散しただけではなかった。一つ一つのレーザーが少女を正確に狙ってきた。獣を射抜く矢のように。

 

「こんなはずじゃ……」

 

そして、少女は弾に当たり、落ちていった。

 

 

 

 

-----○●○------

 

 

 

 

落ちていくところ、想雅は少女を抱き、緑髪の少女に誘導され、湖の岬までたどり着いた。

 

「ん……しょうぶは?」

 

少女が目を覚ました。

 

「そうか……あたい負けちゃったんだ……」

 

少女は残念そうに頭をガクリと落とした。

 

「まぁ……、そんなときもあるさ」

 

「そんなときじゃない!いつもだもん!」

 

少女は想雅の言葉にひどく反論した。

少女の目には涙が浮かび上がっていた。

 

「さいきょーなのに、さっき弾幕ごっこした人間にバカにされるし、それだけじゃない、いつもいつも誰かがあたいのことをバカにしているもん!どりょくして、どりょくして……」

 

少女はついに泣き出してしまった。

さっき弾幕ごっこしたって、たぶん霊夢か魔理沙のどちらかだ。

だいぶ辛いことだったのだろう。俺も自分のことをバカにされたら傷つくそれが普通だ。傷つかないやつなんていない。人間も、人間以外の人たちも、皆、心を持つ生物だからだ。

 

「相当辛かったんだな。俺はこの勝負で君のことを知った。そう君の強さも、努力もだ」

 

「今どうしようもなく辛いことや、悲しくて流した涙は、全て肥料。今は辛いかもしれないけど、これからたくさん色んな経験をして行ったら必ずいつかきれいな花が咲くんだ」

 

少女が顔を上げた。

 

「ど、どういう意味?」

 

「努力を積み重ねれば、最強になれるということだ」

 

「なれるの?」

 

「あぁ、なれるさ。ある有名な哲学者が言った。『世界には、きみ以外には誰も歩むことのできない唯一の道がある。その道はどこに行き着くのか、と問うてはならない。ひたすら進め』とね」

 

「今は泣け。ひたすら泣け。満足するまで泣け。それが君の努力の証。恥ではないく誇りだ」

 

少女は想雅に抱き着いてきた。

そして泣いて、ひたすら泣いて、満足するまで泣いた。

 

数分後

 

満足したのか少女は想雅から離れ、吹っ切れた顔だった。

 

「あ、ありがとう……」

 

「どういたしまして」

 

うんよかった。先ほどの元気な姿に戻って。

 

「そういえば、君たちの名前は?」

 

「あたいはチルノ!さいきょーの妖精だよ」

 

「私は、大妖精です」

 

「俺は天上想雅だ。この霧の発生源はどこなんだ?」

 

「たぶん紅魔館という、この湖の岬にある洋館だと思います。霧が出てくるのを見ました」

 

緑髪の少女が答えた。

名前からして、凄く怪しいな。

 

「そこの館には、吸血鬼という妖怪が住んでいます」

 

吸血鬼。日光、ニンニク、十字架、流水など、弱点が多い怪物だ。

本当はそれが弱点なのか知らないが……

まさか、有名な吸血鬼さんとやらに会えるとは、幻想郷ってすごい。

 

「その紅魔館というのはどこにあるんだ?」

 

「向こうに進んでいけばあると思いますよ」

 

大妖精がさした方向は自分の後ろの方だった。

途中で過ぎたのか俺……いやあっちこっち行っているから過ぎたって言っていいものか……

 

「ありがとう。じゃ、ちょっくら行ってくる」

 

「気を付けて」

 

「じゃーな。そーが」

 

チルノ、大妖精に見送られ、想雅は霧の中へと消えていった。

 

「ねぇ、大ちゃん」

 

「なぁに、チルノちゃん」

 

チルノが大妖精に質問する。

 

「なんでそーがは、腰にあんなもの(・・・・・)つけていたんだろう?まさかバk「チルノちゃん!それは言っちゃダメ!」うん。わかった……」

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

一方、想雅の自宅では、

 

「何かないかな~」

 

ルーミアが台所をあさっていた。

 

コン

 

あさっていると、ルーミアに何かにあたった。

ルーミアがそれを手に取った。

 

「これって、想雅の()なんじゃ……」

 

 



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紅魔館の主

想雅の一枚目の新スペカの紹介です。



聖矢『フェイルノート・スターダスト』

  『聖』の力を込めた弾を上空に打ち上げ、拡散させ、無数のレーザー(追尾機能搭載)
   を落とす。
   このスペカには、『騎士の名において必要とされる必中の矢よ。決して逃すな、
   (ゆえ)に悪しき物をを射抜け』という思いが込められている。







大妖精が指した方向に、一直線に飛んでいくと、

大きな館の姿が見えてきた。

遠くから見ると、霧の色とが同じなため、見落としてもおかしくない。

想雅は館の門の前へと降りた。

 

「ん?誰かいるな」

 

門の前には、一人の女性が立っていた。

華人服とチャイナドレスを足して2で割ったような淡い緑色を主体とした衣装。 髪は赤く腰まで伸ばしたストレートヘアー。側頭部を編み上げてリボンを付けて垂らしている。

しかし、寝ていた。立って寝ていた。

ところどころ、傷が目立つが寝ている。霊夢か魔理沙がやったのだろう。

 

「傷がついているし、ほっておくのも何かな……」

 

スルーして紅魔館に乗り込んでもいいが、なんせ傷ついている。

なんでこんなに傷がついているくせに、寝ているんだ。

寝ている時点で、門番の仕事をやっていない。

苦労して見つけた紅魔館なのに、こんな姿を見たらなんかやる気がなくなる。

 

「はぁ……とりあえず起こすか」

 

ため息をつき、門番を起こし始めた。

 

「おーい、起きろー」

 

門番の頬っぺたをペチペチと叩いた。

 

「や、止めてくださよぉ~、もう、そんなに入りませんですから~」

 

うん。完全に夢の中。

そこまで熟睡する門番がどこにいるのやら……

想雅はしょうがなく門番のでこに手を当て、『聖』の力で回復を行った。

 

「う、う~ん……、ハッ!ななななな、何をしているんですか!?」

 

門番は気付いて、後ろへと下がり、拳法のような構えをとった。

 

「いや、傷ついていたから、治療していただけだったんだが……」

 

「え?」

 

門番は、体のあちこちを触った。

 

「ほ、本当だ。ありがとうございます」

 

「そんじゃ、通らせてもらうわ」

 

治療も終わったし、そろそろ霊夢たちと合流しないとな。

 

「だ、ダメです!たとえ名前を知らない人に傷を治していただいたとしても、ここから侵入させないのが、門番の役目ですから!」

 

門番が想雅の前へと立ちはだかった。

 

「そういえば、名乗っていなかったな。俺は天上想雅だ。この異変を解決するためにここに来た」

 

「ど、どうも、紅魔館の門番をやっています。紅美鈴です……って、あなたが天上想雅さんですか!?」

 

美鈴になぜか驚かれた。

 

「ん?そうだが……」

 

「し、失礼しました。どうぞ中へお入りください」

 

「?」

 

想雅は何が何だか理解が出来なかった。

美鈴に紅魔館の中へと案内された。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

館内は、外見と同じ、屋内も赤色を基調とした装飾となっている。館の外観に比べ内部は広く見える。

入ってすぐ見えるエントランスホールは、弾幕戦を行えるほど広く、中央には光る魔方陣のようなものが回っている。

そこに、見覚えのある巫女装束の少女の霊夢と、メイド服を着た女性の二人が弾幕ごっこをやっていた。

 

「咲夜さ~ん。天上想雅さんをお連れしました~!」

 

美鈴の声が届いたのか、咲夜さんと呼ばれた女性がこっちを振り向き、そして……

 

「お待ちしていました。天上想雅様」

 

「おっわ!」

 

先ほどまで、霊夢と弾幕ごっこをしていたのだが、今は想雅の目の前にいた。

 

「驚かせてすみません」

 

「い、いや大丈夫だ」

 

しかし、一瞬の出来事だったな。俺の『閃光の言霊』のような肉眼では捉えられない速さで移動したのか。

 

「想雅さんは、お嬢様に会ってもらいます。それではこちらです」

 

「いや……まったく話が見えないのだけど……」

 

さっきから話が見えない。門を通さないとか言って、あっけなく館内へ入ることできたし、次はメイドさんにお嬢様がお待ちですと言われたが正直なんで俺が会わなくてはいけない。霊夢や魔理沙でいいと思うが。

 

「詳しいことは、お嬢様からお聞き下さい」

 

「そこのメイド!いつまで想雅と話しているのよ!」

 

「すみません。そこの五月蠅い巫女が読んでいますので、私はこれで」

 

咲夜は霊夢のところに戻り、弾幕ごっこは再開された。しかし、ナイフが無限に出てくるように見えるのは俺だけだろうか?壁や床に刺さっているナイフが一瞬に無くなっている。回収しながら戦っているようだった。

 

「それでは、私がお嬢様のところまで案内します」

 

美鈴がお嬢様とやらのところまで案内するようだ。大丈夫なのかこの居眠り門番は……

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

館内の長い廊下を進んでいくと、大きな扉の前で美鈴が立ち止った。

 

「この扉の向こうに、お嬢様がお待ちです」

 

どうやら案内はここまでらしい。

美鈴の目線が、想雅の下半身に目が下りていた。

 

「何見ているんだ?」

 

「い、いや、そんな装備で大丈夫なのかなって思いまして……」

 

「大丈夫だ、問題ない」

 

イーノッ○並に自信満々で言ってみた。フラグを立てたとかいうなよ。

美鈴が大きな門を開け、想雅は入っていた。

部屋の奥に方で、一人の少女が、王様が座っていそうな椅子に腰を掛けていた。

水色の混じった青髪に真紅の瞳、身長は霊夢、魔理沙よりさらに低いが、背中に大きな翼が生えており、シルエットは大きく見える 。

ナイトキャップを被っており、周囲を赤いリボンで締めている。衣服は、帽子に倣ったピンク色。

まぁ、一言で言うと、幼女が座っている。

 

「よく来た、天上想雅。私はレミリア・スカーレット、この紅魔館の主よ」

 

「えーと、レミリアでいいか?俺に何か用か?」

 

「あなたの実力を見させてもらうわ」

 

「単に俺と、弾幕ごっこをやりたいだけなのか?」

 

それも(・・・)……あるわ」

 

それも(・・・)?」

 

「えぇ、私が見た運命は、あなたはあの子(・・・)を救ってくれる」

 

あの子(・・・)?」

 

「あなたが私に勝てたら話すわ」

 

そう言ってレミリアが戦闘態勢を取り始めた。

想雅もレミリアに続き、刀を抜いた……

 

「あれ?」

 

しかし、想雅が抜いたのは、葉が緑、茎が白。味噌汁、豆腐などに薬味としてよく使われる物。

 

「なぜネギ……」

 

そう、想雅が抜いたものそれはネギだった。

 

「まさかあのときか」

 

ルーミアにご飯を作っていた時に刀を台所に置いて、そして刀を取ったわけではなく、買い物した時に買ったネギを持って行ったのか。

 

「あなた……もしかして私をバカにしているの?」

 

レミリアの表情が険しくなった。

 

「い、いや……別にバカにしているわけじゃなくてな……刀と間違えてネギを持ってきたわけで……えーと……」

 

「言い訳は終わり?」

 

レミリアからどす黒く紅いオーラが立ちこんできた。

 

「気分が変わったわ!あなたはここで死になさい!」

 

「可愛い子がそんな物騒なこと言いうな!お父さん泣いちゃうから」

 

もう遅かった。すでにレミリアは聞く耳を持っていなかった。

 

「愚かな生物に刻印を!天罰『スターオブダビデ』」

 

想雅の視界全体にレーザーを展開され、丸弾とリング弾を発射された。

 

「ここで死んでたまるか!無双『斬月』」

 

当たり前のように弾を斬り、そしてレーザーも斬った。

 

「まさか、ネギってこんな強いのか……」

 

ネギの場合、弾を斬らずに消滅してしまうのが普通だ。しかし、チルノの弾と同じく、弾を斬っていた。

 

「そんな、植物ごときに私の弾幕が……」

 

レミリアは唖然としている。それもそうだ。ネギごときに弾幕を斬られるとは思っていなかったのだ。

 

「い、意外とやるわね」

 

「素直に受け取っておくよ」

 

「しかし、これで終わりよ! 神槍『スピア・ザ・グングニル』」

 

レミリアの右手に、紅く光る槍が出現した。

 

「王の行く道に、何人とたりとも、邪魔はさせない!王剣『ロード・オブ・ザ・エクスカリバー』」

 

想雅はネギで空間を斬り、『聖』の力が宿った剣を出現させた。

そして両者のスペカは衝突した。

見た限り、両者互角に見えるが、すこしレミリアの方が有利だった。

 

「どうやら私の勝ちみたいね」

 

「それはどうかな」

 

想雅はまたネギで空間を斬り、剣を出現させた。しかも無数に。

 

「……嘘!」

 

「それが本当なんだな」

 

無数の剣がレミリアのスペカを破壊し、レミリアへと向かった。

 

 

 

 

 




次回から投稿ペースが遅くなります。
テストやら、受験やらとで、ほんと忙しくなるんっスよ。
だいたい3月までは投稿ペースが遅くなります。すみません……

投稿できたとしてもだいたい月に2、3個ぐらいです

なにとぞよろしくお願いします。





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紅霧の理由

二週間ぶりにパソコンの前に立って、キーボード打っていたら、すごく誤字がいっぱいあった……

誤字は直してあると思いますが、どこかなっていたなら笑わず、温かい目で見守ってください。








レミリアに無数の剣が向かった後、レミリアは飛ばされ、一時的に意識を失った。

数分して、レミリアは目覚めた。

 

「植物ごときに、私の弾幕が負けるなんて、屈辱だわ……」

 

「もう灰になったけどな」

 

ありがとう、戦友ネギ。お前の代用は、まだ家にあるから心配しないでくれ。

ネギはすでに灰になっていた。

無数の剣の出現の後、力に耐えられなかったのか、想雅の手元から、灰となりサラサラと落ちていった。

 

「ま、まぁいいわ。今回はあの子を助けてほしいからわざと負けてあげたのよ」

 

「で、あの子というのは?」

 

「私の妹の、フランドール・スカーレットのことよ」

 

フランドール・スカーレットか、妹と言うなら吸血鬼に間違いない。

 

「フランは、生まれてからの半分以上は地下で過ごしているわ。あの子の力が恐ろしかったのよ。だから私は地下に閉じ込めたのよ。しかしね、あの子も出ようと思えば出られるの、だけど出ようとしないの」

 

「フランドールの力?」

 

「『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力 』よ」

 

「つまり、俺にその能力をどうにかしてほしいのか?」

 

「いいえ、違うわ……」

 

話を聞く限り、そのフランドールの力をどうにかしてほしいとしか思えない。

 

「先週、フランの状態がおかしくなったの」

 

「おかしくなった?」

 

「『狂気』が一気に増大したの」

 

レミリアがそのまま続けていった。

 

「前から『狂気』はあったわ。わたしが地下に閉じ込めたせいでね。けど、増大した『狂気』は私ではどうにかできなかったわ。以前とは比べ物にならないぐらいにね」

 

「その『狂気』をどうにかしてほしいと」

 

「えぇ、そうよ。妹を助けられないなんて、姉失格だわ」

 

「違う」

 

「え?」

 

レミリアは驚いた。

 

「レミリアはフランドールを助けたいから、この異変を発生させたんだろう?」

 

「ち、違う。私はこの幻想郷を乗っ取ろうと思っていたのよ。フランのことなんか……」

 

「言ったよな、『あの子を助けてほしい』と、そこからすでにフランドールを思って言っているだ。異変は俺を呼び込む餌ってやつだろ」

 

「そ、それは……」

 

「今訊いているのは異変のことじゃない。フランドールをどうしたいのかだ。どうなんだよ。助けたいのか?それとも、ほっといておくのか?」

 

「助けたいわ……、もっとあの子と一緒にいたいわ。あと、謝りたいわ」

 

「わかった」

 

「助けてくれるの?」

 

「あぁ……と言いたいところだが、刀がないと正直勝てるのかわからん」

 

想雅には、格闘技の心得はない。幼少から剣術だけをやっていたためである。

爺ちゃんから、『一つのことだけを極めろ』と教えられていたため、格闘技などの肉弾戦はド素人……まではいかないと思うが、それが吸血鬼なら、死が訪れることは間違いないだろう。

 

「頼りがいがあるのか、ないのか……」

 

レミリアは呆れていた。

 

「……ッ!」

 

レミリアの体が、ビクンと動いた。

 

「どうした?」

 

「大きな力が近づいてくる」

 

「あー、この妖力、魔力は……」

 

うっすら感じていたが、何かがこっちに向かってきている。

しかし、想雅は気付いていた。あの行き倒れ妖怪だということを。

 

「そーが!刀忘れていたぞー!」

 

大きな衝撃と共に、ルーミアが壁を突き破ってやってきた。何とも豪快なお邪魔しますだろうか。小学生でも無いぞこんなこと。

 

「ちょっとあなた!壁からじゃなく、玄関から入ってきてよ!」

 

「え?この館に玄関ってあったの?壁しか見えなかったわ」

 

「あなたが正面しか見ていないからでしょう!?」

 

登場した瞬間にレミリアに怒られていた。

まぁ普通は玄関から入ってくるものだろう。しかし、ルーミアは違った。逆に壁を突き破って入ってきた。なんと奇想天外なことだろう。

 

「そのことはもういいわ」

 

「よくないでしょう!?」

 

ルーミアがレミリアを無理やり振り払い、ルーミアが想雅に歩み寄ってきた。

しかし、片手に大剣を持ちながら近づいてくるところ、ホラー映画にありそうな場面だった。

 

「サンキューな。ルーミア」

 

「当然のことをしたまでよ」

 

よし、これでフランドールを助けることができる。

 

「それじゃレミリア、案内してくれ」

 

「はぁ……わかったわ」

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

紅魔館は予想していたよりも広かった。

館内も十分広いくせに、地下にも部屋があった。そこには町の図書館では見られないほどの本が、本棚に並べてあり、その本棚がたくさんあった。

エントランスホールから広いと思っていたが、まさかここまで広いとは思っていなかった。

ルーミアも興味津々にあちらこちら見ていた。まさに初めて見るものに興味を抱いた小学生みたいだった。その分、レミリアはしっかりとしていた。ルーミアがどこかにフラフラしようとすると止めてくれている。だが、ルーミアが壊した壁のことを話していたが、ルーミアは全く聞く耳を持っておらず、最終的にはレミリアが「うー」と言い、先ほどまであったカリスマが無くなり、普通の幼女化とした。

 

「ん?あれは魔理沙か?」

 

一部の空間だけ本がバラバラと床に落ちていた。そこには見覚えのある白黒の魔法使いの魔理沙と、本の下敷きになっている女の子がいた。

長い紫髪の先をリボンでまとめ、紫と薄紫の縦じまが入った、ゆったりとした服。さらにその上から薄紫の服を着、ナイトキャップを被っている。また服の各所に青と赤のリボンがあり、帽子には三日月の飾りが付いている。全体的にゆったりとしたその服装は寝巻きのように見える。

 

「お、想雅じゃないか」

 

魔理沙は想雅に気付き、こっちに走ってきた。

 

「どこにもいないと思っていたが、図書館にいるとわな」

 

「いや~、異変解決のついでに目ぼしいものでもないのかなって、この館を調べていたんだぜ」

 

「目ぼしいものってお前、何か盗む気だな……って言う以前に手に持っているし」

 

「盗むって物騒な、借りていくだけだぜ。一生な!」

 

「そういうのを一般的に盗むって言うんだぞ、魔理沙」

 

魔理沙の頭に手刀を入れた。

 

「い、痛いぜ……想雅」

 

「盗もうとした物は返しておくからな」

 

魔理沙が落とした本を拾い、持ち主だと思う紫髪の女の子の方に行った。

紫髪の女の子を本の山の中から引っ張り出そうと頑張っている女の子がいた。

赤い長髪で頭と背中に悪魔然とした羽、白いシャツに黒色のベスト、ベストと同色のロングスカートで、ネクタイを着用している女の子だった。

 

「手を貸すよ」

 

「いいんですか!けど、この本の山からパチュリー様を引っ張り出すのは無理でしたよ。この本の山をどうにかしないと救出は不可能と思います」

 

「この本の山をどうにかしればいいんだな。少し下がっていろ」

 

想雅は本の山に手を置いた。

 

『存在有りして、事は無し。事実を塗り替え、それを真実とかさん』

 

想雅は、『真実の言霊』を使い、目の前にあった本の山は、一瞬にして無くなり、空だった本棚に収まっていた。

霊力は、だいたい回復していた。霊力の量が少ないから……

 

「た、助かったわ……」

 

紫髪の女の子は、ムクリと立ち上がった。

想雅は、魔理沙が盗もうとした本を渡した。

 

「ありがとう。私は、パチュリー・ノーレッジよ。あっちの悪魔みたいのは小悪魔よ」

 

「パチュリー様からご紹介に上がりました。小悪魔です。パチュリー様を助けていただきありがとうございます」

 

「俺は、天上想雅だ。これで魔理沙が本を盗もうとしたことはチャラにしてくれ」

 

「わかったわ……いきなりだけど、さっきのアレは何?呪文を詠唱しているように見えたのだけど」

 

「さっき唱えたやつは、『真実の言霊』だな」

 

「なぁ、想雅。その『言霊』ってやつはなんだ?」

 

魔理沙が質問した。

そういえば、霊夢にも説明していなかったな。あいつらに使ったのって、初めての弾幕ごっこ以来だったな。その時は、霊夢も魔理沙も気付いていなかったからなぁ。説明し損ねた。

 

「『言霊』は、一般的には日本において言葉に宿ると信じられた霊的な力のことだ。簡単に言えば、魔法の呪文みたいなものだ。この能力を使うと、俺は霊力が低いから、半分以上は無くなる。」

 

「霊力の半分以上って、想雅の霊力ってそんなに低かったのかよ」

 

「能力のことばかりに集中していてな、霊力のこと忘れていた」

 

「その半分以下の霊力で、フランを助けるというの」

 

またレミリアが呆れている。

 

「俺の能力は『言霊』だけじゃないんでね」

 

「『言霊』以外にもなにかあるの?」

 

パチュリーからの質問だ。

 

「それはフランドールを助けてからだな」

 

想雅はパチュリーにそう告げ、紅魔館のさらなる地下へと足を運んだ。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

「ここに、フランがいるわ」

 

分厚い扉の前に着いた。

 

「それじゃ行ってくる」

 

「気を付けてね」

 

「フランドールより俺のことを心配してくれるのか?」

 

「それはそうでしょ。あなたは人間、フランは吸血鬼、その差は歴然よ」

 

「だけど、俺は吸血鬼に勝った」

 

「そ、それはわざと勝たせてあげたって言ったっでしょ!?しかも、今のあなたの霊力は、半分もないのでしょう。自殺行為にも程があるわ」

 

「ご忠告どうも」

 

想雅は扉に手を当てて、扉を押した。

 

「あ、そうそう」

 

扉が開いたところで、想雅は何か思い出したかのようにレミリアに言った。

 

「レミリア、少しは素直になれよ」

 

レミリアにその言葉を告げ、扉の奥へと進んでいった。

 

「……余計なお世話よ」

 

 

 

 

 




本当は、次回話と合わせる予定だったんですけど、なんかここがきりがいいと思いまして、

次回話は、明日、投稿します。






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『狂気』は故に、弱いのである



フランとの戦闘シーンです。





扉の向こうは、やっぱり赤が中心とした壁だった。

奥には、お姫様が眠るようなベットがありその上には、棺桶らしき物が置いてあった。十字架を模ったデザインが入っており、十字架の真ん中にはバラのデザインが入っていた。

吸血鬼って言うのに十字架のデザインが付いた棺桶かよ。

部屋中にぬいぐるみの散乱しており、どのぬいぐるみも綿が出ている状態だった。

部屋の真ん中に、少女が立っていた。

濃い黄色の髪をサイドテールにまとめ、その上からナイトキャップを被っている。 瞳の色は真紅。服装も真紅を基調としており、半袖とミニスカートを着用しており、 またその背中からは、一対の枝に七色の結晶がぶら下ったような特殊な翼が生えている。さらに、手には先端にトランプのスペードのようなものが付いた、グネグネと折れ曲がった黒い棒のようなものを持っている。足元はソックスに赤のストラップシューズを履いている。

 

「君がフランドールかい?」

 

「そうよ。あなたは人間?新しいおもちゃかしら」

 

「おもちゃ言うな。フランドール、君を助けに来た」

 

「助けに?私を?……アハハハハハ」

 

フランドールから紅黒い、オーラが立ち込めてきた。それは、レミリアの発したオーラにはなかった、悪意が出てきた。想雅はこれを『狂気』と感じた。

 

「そんなことより、私と遊びましょ!ね!」

 

フランドールは、瞳を紅く光らせ、笑った。しかし、その笑いは、普通の笑いではなかった。

 

「遊ぶ?なにして?」

 

「こ・わ・し・あ・い!」

 

「い!」と同時に、弾幕が飛んできた。

 

「ちょ、待て!」

 

しかし、弾幕は待ってくれない。

想雅は右に避けた。分厚い扉に弾幕が当たり、穴が開かない程度にへこんだ。

 

「避けた避けた!キャハハハハハ!」

 

フランドールは笑いながら、手を拍手させた。

 

「これなら、少しは楽しめそうね」

 

「こっちは死にかけるんだが……」

 

「簡単に壊れないでね。禁忌『クランベリートラップ』」

 

部屋端に数個の魔法陣を出現させ、縦横に移動させつつ想雅を狙い撃ちにしてきた。

 

「クッ、やるしかないのか。無双『斬月』」

 

斬撃が弾幕を斬り、魔方陣までもが斬撃によって斬られた。

 

「スペカを切り刻んじゃうなんて、おもしろいよ!」

 

弾幕ごっこ中でも、フランドールの笑いは絶えない。

 

「でも、これはどうかしら、禁忌『フォーオブアカインド』」

 

フランドールが4人に分身した。

そして、4人から弾幕が放たれた。

 

「これは、ヤバいかもな……」

 

フランドールを傷つけるわけにはいかない。

ましてや、フランドールたちは動くため、よくシャッフルされている。どれが本物なのか、わからないまでに。

想雅はスペル詠唱を行わずに、ただただ、避けることに専念した。

 

「アハハハハ、避けてばかりじゃつまらないわ!人間!」

 

しかし、避けてばかりだと人間である想雅は、息を切らしていた。

 

「クッ、このままだと……何か策はn……グッ!」

 

想雅の左足にフランドールの弾幕が掠った。それにより、バランスを崩し、床へと倒れてしまった。

フランドールは弾幕を放つのをやめ、想雅に言った。

 

「あ~、やっぱりつまらない。もういいわ、死んじゃえ。禁忌『レーヴァテイン』」

 

スペードのような形をした、グネグネと折れ曲がった黒い棒のようなものから真紅の炎が吹き上がり、大きな剣の形となった。

今まで、笑っていた顔が歪み、瞳から涙を零した。

 

「ご……めんな……さい……」

 

想雅はその言葉を聞き逃さなかった。

 

「『魔』よ!」

 

刀身に『魔』の力を込め、薙ぎ払うように迫ってくる炎の剣を刀で受けとめた。

刀身にだけではなく、自分の体全体に『魔』を送り込み、体を強化した。そのおかげで想雅の体はピクリとも動かず、その場に止まった。

 

「フランドール!聴こえるか!……って熱っ!めっさ熱っ!」

 

しょうがない、炎だもの。

 

「俺はお前を助けに来たって言ったよな。つまりここから出れると言うことだ」

 

「外に出たとしてもお姉様は私を仲間外れにするわ!そしてまた地下おくりよ!」

 

「そんなことはない!レミリアは君を地下に閉じ込めたことを悔やんでいる」

 

「嘘よ!」

 

「違う!レミリアはもっと君と居たいと言った。君に謝りたいと言った。レミリア……君のお姉様は助けてほしいと言った!君を!君の『狂気』から!」

 

「お姉様が……」

 

『狂気』がみりみる消えていき、炎の剣も消えた。やっと言葉が届いたのだろう。

 

『惑わされたらダメですよ。お嬢ちゃん。』

 

男の声が部屋から聞こえた。

 

「だ、だけど……お姉様が……」

 

『すべては人間が言うことなんですよ。嘘に決まっているじゃありませんか』

 

「誰だ!」

 

しかし、想雅の声は部屋にこだまするだけ、男には届かなかった。

 

『もしかしたら、お嬢ちゃんのお姉さんが送り込んできた、刺客かもしれませんよ』

 

「そんなことをレミリアがするか!」

 

想雅の言葉と、男の言葉がフランドールの頭の中をグルグル回り、フランドールはどうすればいいのかわからなくなっていた。

 

『はぁ……もうすこし『狂気』高めるしかなさそうですね』

 

「アグッ!」

 

フランドールは頭を抱え、その場にうずくまった。消えかけていた『狂気』が、フランドールの体から溢れてきた。

 

「まだ終わっていないよ!まだまだ楽しみましょ!」

 

フランドールの『狂気』が、異常に高まった。

想雅は悟った。

フランドールの異常に『狂気』が増えたことそれは、あの男によって高められたもので、フランドール自身が望んだものではないと言うこと。

 

「これで消えなさい!秘弾『そして誰もいなくなるか?』」

 

フランの姿が消えて部屋に想雅だけが残り、弾幕だけ想雅を狙いに襲いかかってきた。

 

「早く『狂気』をどうにかしないとな……」

 

『狂気』があれば、あの男に異常に増やされてしまう。『聖』の力があれば、消滅させることはできる。しかし、『狂気』を一気に消滅させなければならない。フランドールに傷をつけたら逆効果になり、『狂気』を消滅しずらくなる。なら説得しかない。

 

『この弾幕に触れ、居なくなりなさい!私の前から消えなさい!』

 

「君の前で、居なくなるものか!消えるものか!」

 

『そんなの嘘よ!』

 

部屋端に弾幕が出現し、部屋の中心に向かうように、展開した。

 

「痛ッ!」

 

想雅の脇腹に弾幕が被弾した。

 

『ほら当たった。あなたは避けられずに、消えていくのよ!』

 

「俺は消えない……、君を助けるまでは、『狂気』を消すまでは……」

 

今まで姿を消していたフランドールが部屋の真ん中に出てきた。

 

「どうして……どうしてどうしてどうして!お姉様にお願いされたから!」

 

「違う……」

 

「だったら……!」

 

「泣いている女の子を見捨てるほど俺は堕ちていないんでね」

 

「……!!!」

 

フランドールは自分が泣いていたことに気付いていなかった。気付けば涙がボロボロ零れてきた。

 

「な、なんで涙が……」

 

「その答えは、とっくに出ているはずだ」

 

「答えが……出ている……」

 

フランドールの中に『狂気』以外の感情あった。

この嫌な物から助けてほしい。これは自分の望んだものじゃない。その思いは、異常な『狂気』が自分の中に入ってきた時だった。しかし、その思いは叶わなかった。お姉様がやってきたけど、自分じゃない物がお姉様を追い返した。本当は助けてほしいのに……

新しい人間がやってきた。自分じゃない物は追い返そうとせず、次は、殺そうとした。

何度も、何度も、殺そうとした。しかし、殺そうとしているにもかかわらず、人間は私を殺そうとしない。むしろ助けようとした。相手は人間、私との実力の差がありすぎる。しかし、この人なら助けてくれるかもしれない。この嫌な物から助けてくれるかもしれない。

 

「……て」

 

「言いたいことがあるならはっきりと言え!」

 

「助けて!!!」

 

「承知した!」

 

想雅は走ってフランドールとの距離を詰める。

 

「だ、ダメ!近づいちゃ……アグッ!」

 

フランドールが頭を抱えた。

 

「馬鹿ね、近づいたら消えちゃうのに。恐怖で頭がおかしくなっちゃのね。QED『496年の波紋』」

 

円形に並んだ弾幕を低速で発射させ、 円形の弾幕は部屋中の様々な位置から次々と発射され、部屋端で反射する。 その光景は水面の『波紋』のようにも見える。

 

「『恐怖』?バカ言え!これは『勇気』だ!」

 

想雅は、波紋使いの男爵の言葉を思い出した。

 

「『勇気』とは『怖さ』を知ることッ!『恐怖』を我が物とすることッ!」

 

ノミのように、自分より遥かに巨大な人間にところかまわず攻撃をしかけて戦いを挑むのは『勇気』と呼べるのか?

 

「『恐怖』を支配した時、心は鋼のように乱れないッ!」

 

答えは否である。それは『勇気』とは呼べない。

 

「人間賛歌は勇気の賛歌!人間のすばらしさは勇気のすばらしさ!」

 

ノミのそれは、恐怖を知らない愚かな行動である。

 

「いくら強くても、『狂気』!お前は『勇気』を知らん!」

 

『勇気』とは、『恐怖』を知った上でそれを克服し、立ち向かうことを言う!

 

「これが俺の『勇気』の形だぁぁぁぁぁ!」

 

弾幕を避けて、フランドールの目の前までたどり着いた。途中弾幕に当たりながらも突っ走ってきた。そしてフランドールを抱いた。

 

「クッ、離せ!」

 

「『狂気』!フランドールの中から消えてもらうぞ!『聖』の力よ!」

 

フランドールの体は暖かい光に包まれていった。体から赤黒いオーラが噴出してきた。

そして、ガスが切れたようにオーラはでなくなり、フランドールは倒れかかり、想雅の胸の中で眠った。

 

「よくがんばったな」

 

想雅は、運良く残っていたベットにフランドールを寝かした。

 

「さぁ、出てきてもらおうか」

 

想雅の後ろで、燃え上がる炎が出現し、しばらくすると、手に燃え盛る長槍を持った男が姿を現した。

 

 

 

 

 

 






『狂気』は、人間の『勇気』には敵わなかったのです。


次回は、フランに異常な『狂気』を与えた人物との弾幕ごっこ……いや、完全の戦闘です。




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悪魔大総統



戦闘描写が5000文字超えたぁ……これって長い方なのかな?

鍋やっていたら、異様にネギの量が凄かった……しかもデカかった。
なにこれ……ネギのお告げか……


「俺が与えた『狂気』がこうも容易く人間に消滅されるとはな」

 

灰色の髪が両目にかかるまで伸びており、瞳の色は炎のように赤く、見た目では二十歳前半の青年だった。服装は、黒と赤が基準としたロングコートであり、中に着ているシャツを胸までワイルドに開けている。どこか悪がっきぽい影があった。背中には、6枚の悪魔ような翼が生えており、片手には燃え盛る炎槍があった。

 

「東の果ての大陸に来て、いい感じに感情が荒ぶっていたお嬢ちゃんがいたのはいいが、まさかここまで期待外れとはな……」

 

男は床に着地し、想雅の方へ歩いていた。

想雅は戦闘態勢をとったが、男は想雅を無視してフランドールのところまで歩いて行った。

 

「まぁ、『狂気』の代償で、命はもらっておくか……」

 

「おい、待て」

 

男がやっと想雅と目を合わせた。

 

「なんだ?人間。お前も何か力が欲しいのか?」

 

「いらん。フランドールの命を頂くって聞き捨てならないな」

 

「それが悪魔と契約した者の代償だ。それが『狂気』なら命を頂いてもおかしくないだろ」

 

「契約?なんだそれは。フランドールが望まない力をお前が無理矢理与えただけだろう」

 

男が想雅から目を逸らし、フランドールの胸に手を置いた。

想雅は刀を抜き、男に斬りかかった。しかし、男は炎となり、その場から消えた。

 

「おい人間。何をする」

 

男は少しイラだったのか想雅に鋭い目つきで睨んだ。その眼は次やったら殺すぞという感じだった。

クッ!なんていうプレッシャーだ。

 

「お前こそ、フランドールに何をしようとした」

 

「お前に問う。俺の邪魔をするのか?」

 

「あぁ」

 

「お前に問う。なぜ邪魔をするのだ?」

 

「俺は理不尽な死は好まないのでね」

 

「お前に問う。俺と殺りあうのか?」

 

「出来れば、大人しく帰ってもらいたいね」

 

「ククク……ハハハハハ!さっきの戦闘といえ、お前はおもしろい人間だな!」

 

男は高笑いで言った。

 

「それは結構……」

 

「しかし!契約の邪魔をする者はここで消えてもらう!」

 

しかし、大人しくは帰ってもらえなかった。

 

「冥土の土産に聞いておけ!俺の名は、アウナス。30の軍団を従える大総統だ!吸血鬼の命もろともお前の命を貰ってやる!」

 

なんか戦闘モードにはいっちゃった。

 

「俺の名は、天上想雅だ。理不尽な死を阻止すべくお前を倒す!」

 

アウナスはなぜか笑い始めた。

 

「ハハハッ!天上だと……カッ!人間の小僧風情が!?結構大層な名じゃねぇか」

 

「そんなこと言っているといつか足元すくわれるぞ!」

 

こいつ……人の名をバカにしやがった……

想雅は床を蹴り、アウナスへと前進して行った。

刀で斬りつけようとした瞬間、アウナスが炎へと変わり、想雅の前から消えていった。

 

「太刀筋はいいが、この俺には刃は無意味」

 

アウナスが火球を2,3個打ち出した。

想雅はアウナスが放った火球をすべて避けたが、避け終えた瞬間を狙ってアウナスが炎槍を投げた。

想雅はギリギリのところで避けたが、左腕を掠ってしまった。

 

「グッ!熱ッ!」

 

掠り傷でも熱い。しかし熱さは尋常ではなかった。傷から熱が広がり体全体までもが熱く焼けるような感じだった。

 

「掠り傷でも俺の炎槍は体中に熱をまわす。どうだ苦しいだろ」

 

想雅の体に『聖』の力が働き、傷を回復すると同時に、熱く焼けるような状態は治って行った。

しかし、完全ではない、アウナスの力が強いため、熱がなかなか『聖』の力によって浄化できていないのだ。

 

「ほう……まだ動けるのか」

 

「フランドールをまだ助けていないのでね。拘束『龍王の威光』」

 

想雅の目が紅く光り、アウナスの動きを封じた。

 

「動けぬな……」

 

アウナスは涼しい顔をしていた。こっちは熱いのになんだあの顔。

刀身に『聖』の力を込め、アウナスに斬りかかった。

刀身がアウナスの脇腹に差し掛かろうとしていた時、アウナスの体が炎に変化し、そのまま姿を消した。

 

「お前の技は、あくまで()の動きを一時的に不可能にしただけのことだ。しかし()ではなく、()はどうだ。俺が炎になればその拘束とやらには引っかからないだろ?」

 

アウナスが後ろに現れ、言ったことは本当だ。このスペカは、動くものを一時的に行動不可能にする技だ。しかし、弱点が2つある。時間は止められないことだ。あと一つは、この技は指定したものの動きを一時的に行動不可能にするというものだ。指定なしだったら俺は動けなくなってしまうからだ。

 

「頭がよく回るな」

 

「これでも悪魔の大総裁だ。人間の総裁と同じにされては困る」

 

やはりこいつは人間を見下していやがる。

 

「しかし……俺の体に傷を負わせるとはな」

 

アウナスのシャツが赤く滲んでいるのが見えた。炎に変化する瞬間、想雅に脇腹をすこし斬られてしまったのだ。

 

「刀身には『聖』の力を流し込んでおいたからな」

 

「『聖』の力か……しかし、所詮人間の力だ」

 

アウナスの脇腹に炎が包んだ。先ほどまで見れた傷は消え、コートまでもが治っていた。

 

「おいおい……まさにチートじゃないか……」

 

想雅にはチート能力にしか思えなかった。

 

「グボッ!」

 

アウナスが口から血ヘドを吐いた。炎のように熱い血が、想雅のところまでとどいた。

 

「な、なぜだ……なぜ人間ごときの『聖』の力が……貴様、この力元からあった能力ではないな」

 

「あぁ、神様から頂いた力だ」

 

アウナスは「そうか……」と呟き、顔を抑えクククッと笑い始めたのだった。

 

「やはり貴様はおもしろい人間だ!神から与えられた力なら、このアウナス!容赦せん!」

 

アウナスは腕を天井に上げ、何かの呪文を唱え始めた。しかし想雅には何の言葉なのかさっぱりわからなかった。

唱え終わると、部屋を覆う魔方陣が展開された。そこから数十人の悪魔らしき者が召喚された。

 

「何かお呼びでしょうか。アウナス様」

 

一人の悪魔がアウナスに話しかけた。

 

「あの人間の命を取れ、あとベットで寝ているお嬢ちゃんの命もだ」

 

アウナスは命令を出すと、炎になって姿を消した。

 

「悪く思うなよ人間。これもアウナス様のご輿望だ」

 

「グヘヘヘ、あっちの女の子の命取りてぇ~」

 

「フランドールには指一本も触れさせん」

 

「姫様を守る騎士のつもりだってよ「「「「ガハハハハハハハハハハ!」」」」」

 

悪魔たちは大笑いした。

 

「笑うばかりでずいぶん余裕だな……」

 

想雅はため息をついた。

 

「フンッ!人間の小僧が、実力の差を教えてやる」

 

一人の悪魔が想雅に向かって突進してきた。

想雅は刀身に『魔』の力を込め、突進してきた悪魔に斬りかかった。

 

「グボラッ!」

 

悪魔は鈍い音とともに、その場に崩れ落ちた。

 

「安心しな、峰打ちだ」

 

「オ、オメェ……」

 

『魔』の力によって刀身が強化されてるため、一発でも呼吸困難な痛みだ。

悪魔たちがざわめき始めた。

 

「な、なんだあの一撃は……」

 

「一撃で倒しやがったぞあの人間……」

 

「い、いやあれはまぐれだ。そう違いない」

 

「「「「「うん!」」」」」

 

おいおい、悪魔がみんなで「うん!」ってどこの仲良し女子高生ですか……

 

「うおぉぉぉぉぉ!」

 

一人の悪魔が、威勢のいい声で想雅に突っ込んできた。

想雅は同じく、『魔』の力で斬りかかろうとしたが、

突っ込んできた悪魔の後ろで、3人の悪魔たちが呪文を唱え、魔方陣から複数の火球が飛んできた。

おい!マジかよ!仲間が目の前にいるのにお構いなしかよ!

想雅は後ろに下がり、火球を避けたが、突っ込んできた悪魔は火球の餌食となった。

 

「うおぉぉぉぉ!チョー気持ちぃぃぃぃぃ!」

 

火球の餌食になったかと思われた悪魔が煙の中から走ってきた。先ほどまでの威勢のいい声は損なわれず、おまけにチョー気持ちいというドM発言もがついてきた。

 

「でいやぁぁぁぁぁ!」

 

悪魔の太い腕がブンと降りかかってきた。

想雅は『魔』の力で、体を強化したが、壁まで吹き飛ばされ大きい轟音と共に、煙の中へ消えた。

 

「いよっしゃぁぁぁぁぁ!」

 

威勢のいい声が部屋にこだました。

火球を打ってきた悪魔3人組が近寄り、ハイタッチをしてた。

 

「やっぱすげぇなお前のドM力は!」

 

「すこしお前にひいたぜ!」

 

「いやー、キモかった」

 

「俺のドM力がこんなにすごいわけがない!」

 

悪魔3人組とドM悪魔は大きく高笑いした。

 

「おいおい、勝った気になっているようだな」

 

煙の中から想雅が出てきた。

悪魔3人組とドM悪魔は言葉が出なかった。それもそうだろう普通ならその一撃でしんでいるのだから、まぁ俺の場合は『魔』で強化したんだが頭がクラクラするぐらいだった。

最後のやつひでぇなキモいとか。

 

「ななななな、なぜだ!あの一撃を食らって生きていることは……まさか!お前、真のドMか!?」

 

「違うと断言する。王剣『ロード・オブ・ザ・エクスカリバー』」

 

刀で空間を斬り、剣を出現させ、悪魔3人組とドM悪魔の方へ向かった。

悪魔たちは反応に遅れ、見事に当たった。

 

「ぎゃー!浄化される!」

 

「浄化加減にまじひくわー」

 

「いやー、ピンチ」

 

「浄化される~だけど気持ちぃぃぃぃぃ!」

 

悪魔3人組とドM悪魔は浄化はされなかった。ギリギリのところまで抑えてあったのだ。

ドM悪魔は「も、もういちど~」とか言ってたので、刀の鞘で腹を突き、気を失わせた。

 

「残ったやつは、ぱっぱとかたずけますか」

 

空間を斬り、剣で残った悪魔たちを蹴散らした。

しかし、悪魔たちは死んでいない。いや殺していない。

想雅の後ろで、眠っているフランドールは無事だ。

床に魔方陣が展開され、床に倒れていた悪魔たちは消えっていった。

 

「ったく、使えん奴らだな……」

 

アウナスが姿を現し、ため息混じりに言った。

 

「怖くて逃げていたんじゃないのか」

 

「人間に?俺が?カッ!そんなはずないだろッ!」

 

アウナスは笑うと同時に、火球を頭上に作った。しかしその火球は大きくせいぜい3メートルはある。

アウナスはその巨大火球を放った。

 

「避けれるか、いや避けれんだろ!ハハハハハ!」

 

クソッ!後ろにフランドールがいることをわかってやっているな。なんて下劣な奴だ!

 

「そのふざけた幻想をぶち壊す!魔剣『グラム・スピリット』」

 

刀身の先に『魔』の力を込め、勢いよく突き出す。

レーザーが巨大火球に衝突した。

 

「そんな貧弱なレーザーで俺の火球が破壊できるかぁぁぁぁぁ!」

 

しかし、レーザーは一向に押し返されることがない。ドリルで回転しながら掘るように火球の中へと入っていく。

そして、巨大火球を貫通し、アウナスへと向かった。

 

「!」

 

アウナスは判断が遅れた。自分の火球が破壊されるわけがないと思っていたからだ。

それでも避けたが、アウナスの右腕が消失していた。

 

「グガァァァァァ!」

 

そのまま落ちていき、床に屈服してしまった。

貫かれた火球は爆発したが、炎は床までは落ちず、空中で消失してしまった。

 

「な、なぜだ……なぜ俺の火球が……人間ごときに……」

 

アウナスは床に倒れながら、悔し紛れに言った。

消失している右腕は、再生はしておらず、血がドバドバ出ていた。

 

「いつか足元をすくわれるといったよな?人間を甘く見るとこうなるんだよ」

 

アウナスは立ち上がりながら、何やらぶつぶつ言っているようだった。

 

「に――――――ふ―――が……―――げ――――――ぜい――――――」

 

アウナスから異常な『悪』が噴出されてきた。

右腕が再生し、体中から炎が巻き上がった。

 

「人間風情がぁぁぁぁぁ!なぜだぁぁぁぁぁ!この俺が人間の小僧ごときにぃぃぃぃぃ!」

 

アウナスは表情を変え、激昂した。

巻き上がった炎は部屋全体に広がり、火炎地獄と化した。

アウナスは右手に、炎槍を出現させ、槍のから、『悪』が混ざりに混ざった炎を噴出させた。

 

「灰も残さず、燃え消えろぉぉぉぉぉ!」

 

アウナスが想雅に向け、炎槍を投げようとした。

しかし……

 

「なっ!」

 

投げた進行方向は、ベットで眠っているフランドールに向かっていた。

 

『我は誓おう、剣のような鋭さを、光のような速さを、鋼のような折れぬ意志を、我は、我行く道を突き通そうぞ!』

 

「カハハハハハ!お嬢ちゃんが死ねばお前はどうなるんだよぉぉぉぉぉ!絶望するのか?嘆くのか?恨むのかぁぁぁぁぁ!?」

 

アウナスが言ったときは想雅の姿が見当たらなかった。

 

 

ドスッ!

 

 

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

想雅は『閃光の言霊』を唱え、フランドールのところまで瞬時に移動した。そして自分の左肩に炎槍が刺さり、痛みと熱が体に伝わり今でも倒れそうだった。

 

「……ん、私は……きゃぁぁぁぁぁ!」

 

想雅の叫び声でフランドールが起き、口を手で押さえ涙を浮かべ、顔が真っ青になった。

そしてフランドールは瞬時に悟った。

自分のせいであの人が死んでしまうと……

 

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

 

フランドールは震えながらもそう言った。

 

「だ……いじょうぶだ……フランドール……体は大丈夫か……」

 

「そんなことよりあなたの傷の方がッ!」

 

想雅の左肩から炎槍が消え、アウナスの手元に戻った。

左肩から大量の血が噴出した。

想雅の体がふらついたが、足を踏ん張り、大勢を保った。

クッ……正直ヤベェ……意識を保つだけでも辛い……この調子だとあと一分保つかどうか……

 

「ハハハハハッ!いいざまだな人間!しかしもう終わりだ。お嬢ちゃんもろども灰になれぇぇぇぇぇ!」

 

アウナスから再び炎槍が放たれた。

 

「聖歌を歌え!聖音を奏でよ!故に、悪を挫き邪を砕け!聖槍『ロンギヌス・レクイエム』」

 

刀を床に刺し、右手に槍の形状をした『聖』の力が出現した。

そして、アウナスが放った炎槍に向け放った。

炎槍をガラスのようにパリンという音と共に消滅させ、聖槍がアウナスの体に刺さった。

 

「グガァァァァァ!」

 

アウナスは吠えた。悪魔にとって『聖』の力は毒だ。

そのまま倒れると思っていたが、アウナスの頭上に巨大な火球を作り出した。

 

「まだだ!まだ死なんぞぉぉぉぉぉ!」

 

「うるせぇ!さっさと尻尾を巻いて元の場所へ引きかしやがれ!」

 

右腕を斜め下に振り払い、そして拳を握った。

アウナスに刺さった聖槍はそれに反応して、白く、輝き、神々(こうごう)しく、十字架の形をした爆発を起こした。

 

 

ゴォォォォォォォォォォ!

 

「に、人……間めが……、まだ……死なん……ぞぉぉぉぉぉ!」

 

アウナスの断末魔と共に、爆発は治まった。

部屋中に揺らめいていた炎は爆風と共に、消えていた。

 

「お……終わったの……か……」

 

想雅は前のめりに倒れた。

霊力……きれた……

そのまま想雅は気を失った。




悪魔大総統アウナスの登場でした。悪魔らしくできたのだろうか……
だいたい1、2話ぐらいで紅霧異変は終了します。

あと、この小説を5000URまで見てくれてありがとうございます!
今年の冬は越えられそうですww


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話を聞く限り、神様がチートすぎて……



最近、食事にネギ出る回数が増えました。
冬はネギの季節ですよねぇ。

今回は『アストラル界』でチャラ神と、ある天使に出会います。まぁ、すぐ名前がわかるんですが……
今回もチャラ神はウザさMAXです。

感想ありがとうございました!
では、ごゆっくり。






想雅が、目を覚ましたところは、真っ白い空間、『アストラル界』だった。

それほど驚くことではない、だが、それほど驚くことがある。

なぜか俺は美女に膝枕されていた。しかし、想雅の意識はもうろうとしており、「なぁ~んだ、それだけか……」という思いだった。

それから数秒、今の自分の態勢に気付き、美女から後ずさりするように下がった。

 

「驚かせて、ゴメンね」

 

美女は、わびるように相手に手を出した。

 

「い、いいえ……お構いなく」

 

ウェーブのかかったブロンドの髪を腰まで伸ばしており、碧色の目をしている。、服装は、白い清楚なワンピースと、その上に、ところどころ黄色い線が入ったローブを着ていた。ローブの上からでも、出ているところは出ており、引き締まっているところは引き締まっている。頭部の上に金色の輪っかが漂う。……って、輪っか!?

 

「初めまして、天上想雅さん」

 

美女は俺の名前を知っているらしい……っていうか輪っかって、あれしかないよな……

確信がついた想雅の目の前で、美女の背中から、10枚の白い翼が出現した。

 

「私はガブリエルです。支長が外せない用事があるので、私がその代理としてきました」

 

聖母のような笑顔でガブリエルさんは微笑んだ。

わぁ……美しい笑顔で微笑まれて、なんか疲れが吹っ飛んだわぁ……癒されて力が出ない……

 

「だ、大丈夫ですか!どこが体調が優れていないようですが……」

 

「だ、大丈夫です」

 

ふぅ……危うく堕ちそうだったわ。あぶね。

 

「一ついいですか?」

 

「私が答えれる範囲だったら、お構いなく」

 

ガブリエルさんが自己紹介してから、疑問があった。

 

「その支長って人は誰ですか?」

 

「あなたもよく知っている人ですよ……ほら、向こうから歩いてきましたよ」

 

ガブリエルさんが向いた方向に目線を逸らすと、うん。やっぱりあいつだ……

 

「いや~、ゴメンゴメン。外せない用事があったからs「死ねぇぇぇぇぇ!」え?……

( -_-)=○()゜O゜)ヒデブッ!」

 

世紀末の暴走族のような断末魔をあげ、チャラ神は飛んでった。

 

「なにすんだよ!意識だから痛いと感じるんだぞ!(# ゚Д゚) ムッキー」

 

「お前がいちいち意識をこっちに飛ばすおかげで、こっちは寝不足になるんだよ!」

 

「いいじゃん。どーせ暇なんだし……( 'ノω')コッソリ 」

 

「た、たしかに暇だけどさぁ……」

 

「ならいいじゃん。(゚∀゚)アヒャ」

 

「アヒャ……じゃねぇよ!」

 

想雅とチャラ神が言い合いをしていると、そこにガブリエルが入ってきた。

 

「はいはい、喧嘩はここまで。支長もあまりこっちに想雅さんの意識を飛ばさないで下さいよ。想雅さんもこまっていますから」

 

「なんで俺だけ……(´・ω・`)ショボーン」

 

チャラ神がいじけた。

 

「そんなことより支長、大事なお話があると言っていませんでしたか?」

 

ガブリエルさんが思い出したかのようにチャラ神に言った。

 

「そ、そうだな。こんなことでイジイジしていても何も起こらないし、ちゃっちゃと要件済ませて帰りますか。(*゚∀゚)*。_。)*゚∀゚)*。_。)ウンウン」

 

立ち直り早いな……

 

「ま、要件はお前もわかっている通り、アウナスのことだ。(*´∀`)」

 

たしかにアウナスのことは気になるな。しかし、なぜソロモン72柱の悪魔が幻想郷に……

 

「アイツは生きている。(`・ω・´)シャキーン」

 

マジすか!あの爆発で!

 

「よかったな。悪魔殺しの称号がつかないで。(゚∀゚)アヒャ」

 

うざい。ただそれだけだ。

アウナスが死んでいないことになると、また幻想郷に来そうで怖いな。

 

「まぁ、あの爆発で、ギリギリのところで炎に変わり、冥界へ来てそのまま病院おくりだったからな……今頃、病院のナースさんに看護を受けて……クソッ、羨ましい。(;一ω一||)ちぇっ」

 

おーい、チャラ神。本音こぼれているぞ。

 

「アウナスの現状はこんなもんだ。当分病院という檻の中に閉じ込めておくからな。

(-ι_- )クックック」

 

チャラ神は体を回転させ、帰ろうとしていた。

 

「支長。あともう一つ要件がありますよ」

 

そこでガブリエルさんがチャラ神に耳打ちした。

 

「ろっと!忘れるところだった。⊂(^ω^)⊃ セフセフ!! 」

 

すでに忘れていただろ。

チャラ神が顔を険しくして言った。

 

「近頃、悪魔や魔獣、神が地上をウロウロし始めた。どうも平和じゃおもしろくないという奴らがほとんどでね。強者を求めているのか、世界を求めているのか、自分の欲を満たすことを求めているか、奴らは何を求め地上に降りたのかわからん。幻想郷も例外ではないぞ。今回のアウナスの件といい、奴らは何考えているのか予測がつかん。~~\(´μ`。)/~~」

 

まじめになっても顔文字は変わらない……

 

「それだけではない、奴らには、決して朽ちない肉体を持っているというおまけつきだ。神話があるかぎり不死身だ。伝説、神話の英雄や天使、堕天使、悪魔、魔獣も例外じゃない。

~~\(´μ`。)/~~」

 

チャラ神がやれやれとお手上げのポーズを取った。

 

「今回のアウナスのこといい、それってチートじゃねぇか」

 

「お前が勝てたのは、運っていうやつだ。人間は不可能を可能にするからな。うん恐ろしや。

(*゚∀゚)*。_。)*゚∀゚)*。_。)ウンウン」

 

いや、運無いっスよ。

幻想郷に来てから、意識失う回数が多いんだ。

 

「と、いう具合だ。じゃ、もう帰るから。(*^o^*)」

 

「ちょっと待て」

 

想雅はチャラ神を引き留めた。しかし、チャラ神の顔は嫌そうな表情だった。

 

「なんだよー、速く帰ってガブリエルと一緒に食事でも行こうとしたのに~。(´・ω・`)ショボーン」

 

「お前、支長なのか?」

 

さっきから気になっていたことだ。

ガブリエルさんが「支長、支長」って先ほどからチャラ神に言っていたのからだ。

 

「うん。そだよ。( ・´ー・`) ドヤァ・・・」

 

軽いな、おい。

こんなやつが支長じゃないだろ……こんなチャラい奴。

想雅は疑っていると、ガブリエルさんから声が掛かった。

 

「なんですか?」

 

「支長はあんなんでも、神界支部治安部隊総司令官総司令部の支長なんですよ」

 

「え?神界支部治安部隊総司令官総司令部……え?」

 

訊く限り、なんかすごい役職だな……しかしあいつに限ってそんなことは……

チャラ神の方を向く、どこからどう見てもチャラい男にしか見えない。

 

「ん、なんだよ。文句あっか。(゚⊿゚)ァ?」

 

「ま、まさか~、ガブリエルさん冗談ですよねぇ?」

 

改めて、ガブリエルさんに再確認っと。

 

「冗談ではありませんよ。支長は、一夜にして、アトランティス大陸、ムー大陸、レムリア大陸の3つの大陸を沈めた神様ですよ。ついでに私は支長の秘書です」

 

「え?えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

マジですかぁぁぁぁぁ!あんな奴が!都会に繰り出せばいくらでも見ることができるチャラい男が!

しかも、ガブリエルさんが秘書って、結構苦労しているんだろう。あんなんで大丈夫なのか?神界

というところは……

やはり、人は見た目で判断してはならないというものだな。しかし、伝説の大陸のみなさん、さぞかし屈辱だな……

 

「もういいか?早よ帰りたいんだが、いや、帰らせろ。(°言°怒)」

 

「あと一つだ。お前は意識飛ばすので限界と言っていたが、本当は楽勝じゃねぇのか。アウナスなんか普通に通り抜けて来ただろ」

 

「気付いちゃった(。*´Д`*)」

 

「よーし、歯食いしばれ~」

 

「ちょ、まて!話すから!本当の事話すから!その拳しまってくれ!

アタヽ( ̄△ ̄ゞ=ヾ ̄△ ̄)ノフタ」

 

ま、話だけは聞いておいてやる。場合によっては殴るだけ。

 

「さっきガブリエルが話した通り、俺は神界支部治安部隊総司令官総司令部の支長なんだよ。立場が立場だ、そう簡単に地上に下りることができないんだよ。( ・´ー・`) ドヤァ・・・」

 

うん。殴っちゃおうかな。最後のドヤ顔、自分が偉いということを見せつけやがったな。

 

「わかった……が、今回だけだぞ。仏の顔も三度までだ」

 

「わかった。じゃ、意識を戻すぞ。(*^o^*)」

 

急にめまいがした。やはりこれにはなれない……

ガブリエルさんが手を振っていたので、俺も手を振るようにした。

めまいの途中、チャラ神がガブリエルさんに食事誘っていたが、あの行動からして断られたな。

ハハ、ざまぁ。

 

 

 

 

 






大天使の一人、ガブリエルさんが登場しました。
おっとりしていていいですね。まさに天使!マジ天使!
設定上、天使の階級は大天使が最大になっております。
そこんとこ、よろしく!

おどろきのチャラ神がまさかの支長!あんなんでも支長です。
大丈夫か?神界……

神様チートっス。
朽ちない体って……
アウナスでもこのチートぶりなのに、カオスだな……だが、人間には不可能を可能にする力がある。ある意味、人間もチートだな……



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にぎやかなことは実にいいものである



前回、新スペカを紹介していませんでした。すみません……

聖槍『ロンギヌス・レクイエム』

  『聖』の力を込めた槍を作り、相手に投げ、爆発させる。(弾幕ごっこの場合は爆発はさせな
  い)
  このスペカには、『聖歌を歌え。聖音を奏でよ。故に、悪を挫き邪を砕け』という思いが込め
  られている。

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり。




想雅はある一室で目を覚ました。

赤を中心にした部屋……まぁ、見ただけでここがどこか分かるんですけどねぇ……

外は明るく、紅霧が無くなったのを確認した。これでひとまず異変解決ってわけか。

しかし、俺はどれだけ寝ていたのやら。

 

「お兄様ぁ~!」

 

濃い黄色の髪をサイドテールにまとめ、その上からナイトキャップを被っている少女、フランドールが想雅に抱き着いた。

 

「グフッ!」

 

抱き着いてきたのはいいが、抱き着くっていうより突進だなこれは……みぞおちクソ痛い。その振動で左腕もクソ痛い。ま、まぁフランドールが助かったのが何よりだがな。

 

「よかった……よかった……」

 

フランドールは想雅の胸で泣いている。

やはりフランドールは根はいい子だな。あのクソ悪魔生きているっていうのは気に障るな。

 

「フランドールの方は大丈夫なのか?」

 

「フランと呼んで」

 

「あ、あぁ、わかった。フランの方は大丈夫なのか?」

 

「うん、私は大丈夫。お兄様の方こそ大丈夫?」

 

「だ、大丈夫だ……」

 

だが痛い。痛いったら痛い。痛いもんはしょうがない。

 

「とか言って本当は痛いんでしょ」

 

扉が開き、部屋にもう一人はいてきた。

水色の混じった青髪に真紅の瞳の少女と、銀髪のボブに両方のもみあげ辺りから、先端に緑色のリボンをつけた三つ編みを結っている女性が入ってきた。

 

「さらっと人の心を読むな」

 

「やっぱり、あなたって自分の事より、他人の方が気になるでしょ」

 

はぁ……とレミリアはため息をついた。

 

「本当は、お嬢様は嬉しいんですよ」

 

「さ、咲夜!何言うのよ~」

 

レミリアは咲夜にポカポカ叩いていた。

やっぱり外見は幼女にしか見えん。

叩き終わるとレミリアはゴホンと咳払いして言った。

 

「とにかく、フランを助けてくれて心から感謝するわ」

 

レミリアは想雅にお辞儀した。

 

「当たり前のことをやったまでだ」

 

「だけど、その頼みごとで私はあなたに傷をつけてしまったわ……」

 

「それはお姉様のせいじゃないわ!すべては私のせいだもの……」

 

「気にするな。今俺はここにこうして生きてる」

 

「だけど……」

 

「そんな暗い顔するなよ。せっかく姉妹の再開だからもっと喜べよ。ここだと大した話ができないだろ。俺は大丈夫だからもっと話して来いよ」

 

「ありがとう……」

 

レミリアはフランと手をつなぎ部屋に出ようとした。

 

「咲夜はここに残りなさい。想雅の看病もかねてね。私とフランで話し合ってくるから」

 

「わかりました」

 

レミリアは気遣ってくれたのかここに咲夜を置いてくれるらしい。

 

「そういえば、フラン」

 

「ん?なに?」

 

「なぜ俺のことを『お兄様』と」

 

「名前知らないから」

 

さいですか……

レミリアたちと入れ替わりにパチュリーと小悪魔が入ってきた。

 

「体の調子はどう?」

 

「左腕以外は良好だ」

 

想雅が寝ているベットの隣にある椅子に座った。

 

「まぁ、あれぐらい寝ていれば治るでしょう」

 

「?治る」

 

「レミィから聞いてないの?あなた3日間も高熱で寝込んでいたのよ」

 

3日間の高熱ってインフルエンザじゃあるまいし、いやアウナスの炎食らっていたあたりから、体調に異変があったな。

 

「見ただけでもだいぶ良くなったと思うわ」

 

そう言うとパチュリーは想雅の目の前に来て……って近い!顔が近い!

 

「約束通り、あなたの能力について教えてもらうわ」

 

「あぁ、約束だったもんな」

 

なんだろう、目の前にきたらなんか脅迫みたいな感じだったな。

 

「まず1つ目、『聖と司る程度の能力』だ。今回のフランが異常な『狂気』に見舞われた現況のアウナスを追い払ったときに活躍したように、悪魔など、悪しき存在に大ダメージを与えるものだな。あと、回復力は通常より早い。大怪我でだいたい1週間ぐらいだ。即死の場合は……たぶん意味はないと思う」

 

「そう……ってアウナス!あのソロモン72柱の!?」

 

「あぁ、そうだ。今回奴は、フランの少しの『狂気』に反応して幻想郷に来たらしい」

 

「次に2つ目、『魔を司る程度の能力』だ。これに関してはよく分からないが、簡単に言うと、強大な力を与えてくれるらしい」

 

「強大な力ねぇ……それってあなた以外にも使える能力かしら?」

 

「わからねぇが、たぶん可能だと思う」

 

他人にも、『魔』の力を与えるっていう発想はなかった。

能力って、人に話すと使い道などがよくわかるな。

 

「あとは、通常は傷付けられない神や魔物を斬るなど、何らかの特別な能力を有しているらしい」

 

パチュリーはふーんと軽くうなずいた。

 

「最後の3つ目、『言霊を創造する程度の能力』だ。この能力には2つの力がある。まず一つ目に、『想像によって創られる言霊』だ。この前、パチュリーが埋もれていた本にかけたものだ」

 

「よく短時間で創れたものね」

 

「この能力は想像したことを『言霊』に創り変える能力だからな、詠唱しないと意味はない」

 

「2つ目は、『神を知ることによって創られる言霊』だ。こいつは試したことがないから内容はまだわからん。神話を読めば使えるらしい」

 

「あと、その二つの能力の扱いが逆になると死ぬらしい」

 

「……死と隣り合わせな能力ね」

 

ほんとだよ。今は使っていないからいいけどさ。間違えたら死ぬんだぞ。どうやって死ねのかわからない分、怖いんだよ。爆発とかシャレにならないから。

 

「いい情報だったわ、ありがとう」

 

「力になれて何よりだ」

 

パチュリーは椅子から立ち、小悪魔と共に扉の方へと歩いていった。

 

「ちょっと待ってくれ」

 

想雅はパチュリーを引き留めた。

 

「なに……」

 

「パチュリーが居るところって図書館だったよな。そこに神話に関しての本ってあるか?」

 

「あるわ」

 

「それをm「読みたいのね?」……はい」

 

最後まで言わせろよ。

 

「わかったわ、少し待っていて」

 

パチュリーは部屋から出ると、何か嬉しそうに鼻笛を立てながら歩いて行った。

 

「パチュリー、嬉しそうですね」

 

「えぇ、パチュリー様は本が好きな人が好きですから。ある魔法使いを除いて」

 

ある魔法使いって、絶対魔理沙のことだな。本を盗もうとしたし。

 

「3日間、来てはパチュリー様の本を盗んでいき、ついでに想雅様のお見舞いと言い張るのですよ」

 

お見舞いは嬉しいが、ついでに盗人って……そこはお見舞いだけにしようぜ。

想雅は、ハハハ……笑うしかなかった。

そうだよな。笑うしかないかったもん。だって、あの妖気、魔力が近づいてくるのだもん(・・・・・・・・・・・・・・)……

絶対壊してやってくるもん。

 

「そーーーーーがーーーーー!」

 

 

バリィィィィィン!

 

 

黄色の長髪の女性が窓を破って入り込んできた。

部屋に入り込んですぐに、想雅に抱き着いた。

 

「想雅ー!会いたかったよー」

 

「お、おう。心配かけたな」

 

抱き着かれて困るんですけど、当たっているんですけど、特に胸とか、胸とか……

痛い!チョー痛い!腕が左腕に当たって、チョー痛い!

 

「あなた想雅様から離れなさい!痛がっているでしょ!」

 

ナ、ナイス……咲夜。

ルーミアは咲夜に言われると、想雅からしぶしぶ離れた。

 

「だ、だって、お腹すいたもん……」

 

 

ぎゅるるるるるるるるるる……

 

 

何だろう、涙が出そう……ルーミアのお腹の音が部屋中に響き渡った。

うん、予想はしてたよ。3日間も家に帰ってなければさすがにこうなるって予想していたよ……

しかも、『会いたい』って食事を作ってくれる人に会いたいという意味ね。ハハハ……

 

「ったく、わかったよ。今から作るからm」

 

ベットから出て立とうとすると、急に立ち眩みが……

 

「想雅様は立たないでください。あれだけの出血したのですから、この人の食事は私が作りますから」

 

「す、すまないな……」

 

しかし、ルーミアは頬を膨らませた。

 

「え~、想雅のご飯がいい!」

 

「駄々こねないの。想雅様は貧血状態なんですから、ご飯作りませんよ」

 

「わー!すみません!駄々こねませんから!」

 

ルーミアは咲夜にごめんなさいと手を合わせていた。

 

「な、何さっきの音!」

 

扉がバンッ!と開き、レミリアとフランが入ってきた。

レミリアはルーミアを見て、窓を見て、そしてルーミアを睨みつけた。

 

「またあなたなのね!窓を割ったの!壁の件でも、なんで玄関から入らないの!」

 

「窓が見えたから」

 

「それは理由じゃないでしょ!」

 

次は、パチュリーと小悪魔が入ってきた。

小悪魔だけに、本持たせているな。パチュリーはパチュリーで1冊の本を持て来ては椅子に座って読むし、自分も持てよ。

 

「こ、これが神話に関する本で……す!」

 

ベットの隣にある、机に小悪魔が本を置いた。7、8冊はあるな……しかも太い……

読めるのか?辞書サイズだぞ。

扉が開き、美鈴が入ってきた。

 

「レミリアお嬢様。霊夢と魔理沙が来ました」

 

美鈴の後ろから、霊夢と魔理沙が入ってきた。

 

「よぉ、想雅。目が覚めたんだな」

 

「魔理沙がまた盗みに来た……」

 

パチュリーは魔理沙の方を向くと、ぼそりと言った。

 

「いやいや、今回は想雅の見舞いに来たんだぜ」

 

いや、ぜってー違うだろ。背に持っている本はなんだよ。

 

「体の調子はどう?」

 

霊夢が部屋内の人混みを抜け想雅の方へ近づいた。ってか人口密度多ッ!

 

「熱は下がったが、左腕と痛みと、貧血の症状がある」

 

「熱は下がったのね……よかった」

 

霊夢はホッとした。

あと、魔理沙とパチュリーがここで弾幕ごっこしようとしているんですけど……

レミリアはルーミアに説教しているが、ルーミアのボケでカリスマブレイクしちゃったし、咲夜はレミリアを慰めているし、小悪魔はパチュリーを止めようとしているみたいだけど、まったく聞いてないし、美鈴に限って、なんか寝ているし……

 

「はぁ……あの二人止めてくるわ」

 

霊夢はため息をつきながらも、魔理沙とパチュリーの方へ歩いて行った。

そういえば、フランはどこ行ったんだ?さっきまでいたはずなんだけどなぁ……

そのフランは、想雅の服の袖をちょんちょんやっていた。

 

「どうした?」

 

「横、座っていい?」

 

「あぁ」

 

フランは想雅の横に座った。

 

「なぁ、フラン」

 

「なに?」

 

「にぎやかなのは、意外といいだろ」

 

「うん!」

 

フランの笑顔は、幸せの笑顔だった。

 

 

 

 






これで、紅霧異変編はおしまいです。
最後にフランちゃんの幸せの笑顔が見れてよかったです。

次回は紅霧異変が終わってから、1週間後のことを描きます。




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霊力の修行 ~英雄と神格化の人間~
今更かよ!霊力の修行




紅霧異変が終わって1週間。サブタイトルのご察しの通り、想雅の乏しい霊力の修行です。

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり。




紅霧異変が終わって、約1週間。まぁ、この1週間は紅魔館で過ごしたんだけどねぇ……

まず、朝起きがヤバかった。

朝起きたら、ベットの中にフランがいた、しかも右腕をガッチリと掴んでいた。ルーミアは左腕を枕にして寝ていたし、そのときは痛みも引いていたから痛くはなかったが、なんか柔らかいものが当たっていた。朝から心臓に悪いったらありゃしない。

何より凄かったのは咲夜だ。

紅魔館の一切を取り仕切る立場におり、家事一切をほぼ一手に引き受けている。館が広いため、時間を止めないとやっていけないらしい。咲夜の、『時間を操る程度の能力』があるからこそ、今の紅魔館は成り立っているのだろう。さすがメイド長。

パチュリーから借りた、神話の本を読んでいたが、専門用語が多く、あまり理解できていない。前もって図書館で調べていたが、全く分からなかった。結局、紅魔館の地下図書館で調べる羽目に……ってか、本が多すぎるんだよ。探すので疲れる。まぁ、詳しいことを調べられるからいいが。

そんな日常は早く終わったな。

 

「なんか早かったな……」

 

「なに、もっとそこに居たかったわけ」

 

ルーミアが目を細めて、想雅を見た。

 

「いや、楽しいと時間が立つのがあっという間だなと思ってな……ってお前、太陽が昇っている時でも平気なのかよ」

 

そういえば、紅魔館に居る時、太陽が苦ってって聞いたな。しかしなぜ普通に隣に歩いている。

 

「封印が解けたからよ。妖力も元に戻ったし、これぐらいの光なら、簡単にくたばらないわ」

 

そーなのかー。

っていうか、俺が目を覚ました時、普通に飛んできたな。もっと早く気がつけよ俺。

しかし、この湖の周りを歩くは初めてだな。結構小さいんだな、なぜ俺はこんな小さいのに迷った。別に方向音痴ってわけじゃない。

まぁ過ぎたことだしまいっか……

 

「なぁルーミア。この前言った、『俺が作った料理がいい』っていたな。紅魔館の食事もなかなかだぞ」

 

紅魔館の料理は一言で言うと、うまい。

和食ではなく、洋食が出てきた。館自体西洋の雰囲気がしていたからな。ほんと美味かった。

だが、肉料理に人肉が出るとは思わなかった。さすがに食べなかったが、ルーミアが人肉と言わなかったら食べていた。人間が人間を食べるって共食いだ。人肉はまずいと聞いていたが、妖怪と人間の味覚では何か違うのか?

 

「始めた食べた味がしたから、あと……想雅が作ったから」

 

ルーミアが想雅を見るなり、そっぽを向いてしまった。

えーと、訊いちゃいけなかったんか?

まぁ、おいしいと変わりがないということだな……ってかルーミア歩くの速くね。

 

「ルーミア、歩くの速くないか?」

 

「え?別にさっきと同じ速さなんだけ……ど」

 

ルーミアの視線が地面にいった。

地面に何かあるの……か……

 

「なぁぁぁぁぁ!」

 

はい。地面の中にボッシュートでございます。

 

「そーーーーーがーーーーーー!」

 

ルーミアの薄れていく声を聞きながら、目玉が無数にあるスキマへと落ちていった。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

ある場所に、スキマが開いた。そこから想雅がダストシュートされるように落ちた。

 

「痛ッ~!」

 

想雅は落下時に背中を強く打ちつけた。やっと左腕の傷が癒えたのに、次は背中を強く打ちつけたとか、何この不幸っぷり、禁書目録の主人公じゃあるまいし……

まぁ、落ちた寸前に目玉が見えたから誰が犯人かわかるけどな。

 

「なぁ紫……スキマにご招待は、段取りっていうやつがあるだろ……」

 

スキマから想雅をスキマへご招待した張本人、紫が出てきた。

 

「あなたに会いたいからよ」

 

「それにも、段取りっていうやつがあるだろ……」

 

想雅はため息をついた。こいつには常識は通じないのか……

 

「っていうか、せっかく完治したのに扱い酷くね」

 

「それはそれよ。今はあなたに修行をつける予定なの。今回の異変で何か感じたことはない」

 

それはそれって……紫自体に常識という言葉がないのか?

今回の異変でねぇ……感じたというか失敗したというか……

 

「霊力が少ない」

 

「そうよ。あなたの今の霊力は、一般人と変わりないのよ。だから異変の時、『言霊』使うのを控えていたでしょ。まったく能力の事ばかりじゃなく基礎を組み立てないと」

 

はい。おっしゃる通りです。

異変のときに気がつきました。

 

「ここで使うわ。あなたは今から私の家で、1ヶ月間滞在しなさい。これは命令よ」

 

想雅が遅れたときに、紫が怒ってしまい、どうにもなれで言ってしまった約束だ。

 

「いいけど……」

 

「い、意外と簡単に了承してくれたわね……あと、けどって何?」

 

紫は、想雅が意外とすんなり了承たのが、予想外だった。

 

「今、俺の家ではある腹ペコ妖怪が居る。少し家を離れるぐらいならいいが、今回は1か月間だ。家を壊されそうで怖い」

 

前のような、無言で斬りにかかってくる姿を見て、殺されそうで怖い。

 

「で、その腹ペコ妖怪がどうにかなればいいのね。任せて頂戴、私に心当たりがあるから」

 

「なら、問題ないな」

 

「これで成立したわね。さぁこっちよ」

 

紫に手招きされ、それに想雅はついていた。

っていうか、ルーミアのこと紫に頼んでよかったのか?なんか胡散臭かったっけど……

 

 

 

 

 






紅魔館での1週間、フランとルーミアに抱き着かれて、なんて妬ましい。

次回、修行開始です。



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修行開始といくが……


月に、2,3話しか上げられないと言ったが、あれは嘘だ。
凄く上げたいという衝動が止められなかった。
受験がそろそろ近いのに……っていうかあと一週間したら冬休みジャン。速いな。
いや、いやだな。受験勉強が本格的になっちまう。

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり。






紫に手招きされた後、またスキマに落とされた。

なんでこう、ボッシュートされるのだ。解せぬ。

落とされた先は、一軒の家が、視界に映ったが……

 

「痛ッ!」

 

また背中を打ちつけた。痛い……連続で背中にダメージ……痛い……

段取りってさっき言ったのに訊いてねぇ……最初から訊く気なかったのか。

想雅の上にまたスキマが開いた。

エ?マジデ?

 

 

ゴスッ!

 

 

「ガッ!」

 

さらに追加攻撃。紫に腹を踏まれた。くそ痛い!

い、いや痛いっていうもんじゃない。なんかこう……内臓が飛びでそうな勢いの痛さだ。

紫は下を見て、ウフッっと笑い、何もなかったかのように想雅のお腹から足を外した。

外す時、足に力れるから、マジで痛い。

 

「い、いてぇぞ……紫……出るところ、考えろよぉ……内臓が飛び出るところだったぞ……」

 

想雅はただ地面に這いつくばるだけだった。

立てん。痛すぎて、立てん……

 

「出てないからいいじゃない」

 

「そういう問題じゃなくてなぁ……」

 

こ、こいつ……気配りっていうもんができねぇのか……

想雅はまだ痛む腹を押さえながら、ゆっくり立ち上がった。

な、なにが修行だ。こんなようじゃ、俺の命に関わりそうだ。

 

「やっと立ったようだし、さ、入りましょう」

 

誰のせいだよ……想雅はため息は今の状況ではつけないので、内心で思った。

紫が扉を開いた。

 

「おかえりなさい、紫様。おや、後ろの方は誰ですか?」

 

金髪のショートボブに金色の瞳を持ち、その頭には角のように二本の尖がりを持つナイトキャップを被っている。この尖がりの中には狐耳ようなものがピクピク動いていた。

紫よりは身長は低いと見える。

服装は古代道教の法師が着ているような服で、ゆったりとした長袖ロングスカートの服に青い前掛けのような服を被せている。腰からは金色の狐の尾が九つ、扇状に伸びている。

 

「あ、挨拶が遅れた……天上想雅だ……」

 

「私は八雲藍だ。それより大丈夫か?」

 

「あぁ、大丈夫だと思う……内臓が飛び出そうな感じだが……」

 

「さっきから、痛い痛いって、私が重いみたいじゃない」

 

「とりあえず、休むといい」

 

紫の家に上がり、居間へと案内された。

藍に「くつろいでてくれ」と言われたので、机の前に座った。

少し経った後、藍がお茶を持ってきた。

 

「お茶を飲めば、多少は落ち着くだろう」

 

「サンキュ……」

 

さすがに寒くないため、冷たいお茶だった。

想雅はそれを一気に飲み干した。言われた通り、多少は腹の調子が良くなった。

夏だから、うまいと感じる。

 

「……で、その霊力の修行内容はなんだ?」

 

「少しは話せるようになったのね」

 

「あぁ、お陰様でな」

 

紫はニコッと笑った。

想雅も笑った。ただし、笑顔の方ではない。

 

「修行内容だけど、あなたには藍と戦闘してもらうわ」

 

「それとどう俺の霊力と関係あるのか?」

 

別に今までとの弾幕ごっこと変わりはないはずだが……

 

「ただし、条件付きでね」

 

「条件?」

 

「あなたは1ヶ月間、霊力以外の力を使うのを禁止するわ」

 

「ちょっと待てぃ!霊力以外って、『聖』の力と、『魔』の力が使えないというのか!?それで戦闘!?」

 

たしかに今までの俺は、聖』の力と、『魔』の力に頼りっぱなしだった。

しかし、いきなり霊力だけで戦闘しろと。霊力なんて、『言霊』と空を飛ぶをとき以外使っていない。

 

「そうよ。そうでもしないとあなたの霊力が一向に上がらないわ」

 

「にしても無茶苦茶じゃねぇ!?」

 

「短時間で霊力を上げる方法はそれしかないわ。修行時間が長ければ、もっとゆっくり霊力を上げられるわ。ならいっその事こっちに住む?」

 

「いや、遠慮するよ」

 

「そう……それじゃぁ、外に出ましょう」

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

外に出て、結構開けた場所に来た。

空は相変わらず青い。そう地球は青かった。まぁ、どうでもいいことだ。

目の前では藍が立っている。少し離れたところでは、紫がスキマに座りながら見ている。

スキマって座れるものなのか?てっきり落とすだけかと思っていた。

 

「なぁ、藍。お前は九尾の狐なのか?」

 

先ほどから触れていなかったが、気になる。それが人間の本能、珍しいものを見ると気になってしょうがない。いや、子供の興味心か?どっちでもいい。

 

「あぁ、そうだが。想雅は妖怪を怖くないのか?」

 

藍も不思議だった。ほとんどの人間は妖怪に恐れを成しているからだ。

 

「最初のうちはそれは怖かったさ、逃げたいぐらいにな。しかしな、少しの間だけ妖怪と暮らしていたんだ。不思議に恐怖心が無くなってな。一緒に過ごすのも悪くないと思ったんだ。しかも、一人一人に個性があって、面白い。有名な九尾の狐とならば、今は話せるだけでも光栄なぐらいだ。しかし、今は九尾の狐ではなく、八雲藍して、修行相手として、正々堂々とやってもらいたい」

 

「そうか……一つ聞くが、妖怪と人間が共存して暮らせることはできると思うのか?」

 

藍は想雅に訊いた。

この幻想郷は、紫様が創った世界。妖怪と人間が共存して暮らせる理想郷だ。

 

「俺は、人間と妖怪次第だと思う。人間は妖怪を恐れ、妖怪は人間を襲う。妖怪は人間を喰らい、人間は妖怪を退治する。どう考えても相容れない存在と言える。しかし、この世界を見れば、だいたい共存していると思うが……あぁー、わかんねぇー!まだ人生16年しか生きていない人間が言うもんじゃないよな」

 

「「フフッ」」

 

紫と藍が笑った。

 

「あなたをこの世界に連れてきて正解だったわ」

 

「そうですね……って紫様!連れてきたって!神隠しをしたのですか!?」

 

藍が紫の方へと行ってしまった。

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

あれから数時間後、藍の説教時間は終わった。

途中、紫がスキマで逃げた……と思っていたが、スキマが想雅の後ろで開き、紫が出てくるなり想雅の背中に隠れた。そして紫に、「そ、想雅ぁ~。あなたも何か言ってよ~」と涙目で言われたので、しょうがなく藍に俺がここにいる理由を言った。藍も納得してくれたようだったので、それで説教の幕は下りた。っていうか修行の時間減ってねっ!

 

「まぁ、そういうことだ。紫のことは責めないでくれ」

 

「本人が言うから、いいが……」

 

「そ、それより、ちゃっちゃと修行を始めましょう!」

 

紫の目には少し涙が浮かんでいた。藍の説教は凄いのか……

 

「なぁ、一ついいか?」

 

「ん?なんだ?」

 

「霊力だけで戦えるのか?」

 

「そうとでもしないと霊力が上がらないわ」

 

「いやそういうことじゃなくて、霊力でどう戦えばいいんだ(・・・・・・・・・・・・)?」

 

「「え?」」

 

紫と藍は目を大きく見開いた。

 

「ど、どうやってて、普通に霊力弾を打てばいいんだが……」

 

藍はそう答えるが、

 

「だから、その霊力弾が打てないんだよ。っていうか打ったことが無い」

 

「そうならば、あなたは弾幕ごっこにスペカしか使っていないと……」

 

「そうだ」

 

紫と藍はお互いの顔を見るだけだった。

2人は、この調子で、修行が続くのかと思っていた。

 

 

 

 

 





そう。想雅は弾幕ごっこでスペカしか使っていない。
霊力弾なんてもってのほかだ。


がんばれ想雅!笑いの神はお前に微笑んでいるぞ。いや、爆笑している。





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紅魔館は賑わいが絶えない



月曜日が英単語コンクールだ!そんなこと知ったことか!
100門だぜ。ハハハ、オワタじゃねぇが、覚えるのが大変だ!
最高にハイってやつだぁぁぁぁぁ!(やけくそ)

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり。




霊力弾の作り方は簡単だった。

霊力を使って、形をイメージするだけだった。

まぁ、『言霊』の能力で、想像しているため、このようなことは朝飯前ぐらいだ。

しかし、それは問題ではなかった。より問題なのは……

 

「やっぱりあなたは霊力が低いのね」

 

「痛ッ!」

 

そう。霊力が低すぎて、途中でぶっ倒れた。しかも怪我付きで……今は紫に治療してもらっている。

まぁ、怪我したのは、ぶっ倒れた時に藍の弾幕に当たり、遠くに飛ばされたわけだ。

正直、骨が何本か逝ったかとおもったが、運がよく折れてもおらず、ひびも入っていなかった。

 

「今の状況なら、戦闘より、地道に上げていくしかなさそうね」

 

「そうしてくれ。能力が使えないなら、俺はただの一般人」

 

「そうね。だけど、もうそろそろ日が沈みかけているから、修行の続きは明日ね」

 

夕暮れの太陽は燃える炎のようだった。

なんだろう、太陽に吼えたい気分になった。

今、ルーミアどうしているのかなぁ……

 

「そういえば、ルーミアの食事のことで心当たりがあるとったな。その心当たりとは?」

 

「えぇ、紅魔館の吸血鬼に任せたわ」

 

「ちょ、それって、任せたじゃなく、押し付けただろ!」

 

ルーミアがレミリアたちに迷惑がかかっているな。謝罪しないと……

 

「はぁ……ちょっと紅魔館までスキマで移動させてくれ」

 

「いやよ。そう言ってあなた逃げ出そうとすうでしょう」

 

「前もそう風に言ったな。それで俺が逃げたか?」

 

「時間に遅れた」

 

紫が、ジト目で見てきた。

 

「あ、うん。それもあるが……結果的に逃げていないだろ」

 

時間が遅れたことは曲げられない真実だが、逃げていない。

 

「はぁ……わかったわ」

 

紫がスキマを開いた……って、え?ナンデスト!?マタッスカ!?

 

「なぜだぁぁぁぁぁ!」

 

想雅の下にスキマが開き、綺麗にシュッと消えた。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

目玉がたくさんある空間を通して、紅い建物、紅魔館へと落ちた。

夕暮れのせいか、より一層紅く見える。

はい、お察しの通り、背中ぶつけました。何この不幸の連続……

今日で、3回落とされ、3回背中ぶつけて、1回紫に腹踏まれた。何この凄いこと、言葉がでねぇ……

門の前で、美鈴が寝ているな。すごくやる気がなくなる風景だな。

 

「おーい、美鈴。起きろー」

 

美鈴の頬をペチペチ叩く。

 

「えへへ、もう食べられませんよ~」

 

この状況、前にもあったような気がするなぁ……

 

「もういい……通るぞ」

 

美鈴を起こすことを諦め、門を通り抜けた。

紅魔館の扉に手をかけて、入った。

 

「おーい、誰かいるかー!」

 

大きな声で、誰でもいいから読んだ。

おう……大きいから声が響く響く。

 

「お呼びでしょうか?」

 

「ろっとぉ!?」

 

指パッチンを使いの時を操る力を持つ黒髪赤目の大天使のような感じに驚いた。

 

「びっくりさせるなよ、咲夜……」

 

「すみません。想雅」

 

急に咲夜が後ろに現れた。マジで驚いたぞ。

咲夜が「想雅」と呼んでいるわけは、まぁ俺がそう呼んでくれと言ったからだ。

 

「何か用ですか?」

 

「あぁ、ルーミアの事でな。どこにいるか案内してくれないか?」

 

「わかりました」

 

咲夜が、ルーミアのいるところへと案内させてくれた。

改めて見ると、やはり大きな館だな。しかも、メイド恰好をした妖精がたくさんいるしなぁ……

どんなけ広いんだこの館は……

 

「そういえば、美鈴が寝ていたぞ」

 

想雅がそう言うと、咲夜が一瞬にして消えた。

客人を置いてどこに行ったんだか。

 

「お待たせしました」

 

「お、おう、どこ行っていたんだ……って咲夜!服に血が!」

 

咲夜のメイド服に、血がついていた。まさか……

 

「あ、これですか。美鈴をすこし……」

 

「ねぇ!殺していないよね!?」

 

や、ヤバい。俺のせいで美鈴が……

 

「それくらいじゃ、門番は務まりませんよ」

 

後ろに美鈴の姿が……って

頭から血がぁぁぁぁぁ!やっちまったぁぁぁぁぁ!

 

「ちょっ!今治すから!」

 

美鈴の頭に手を添え、『聖』の力を流し込んだ。

ホントすまん、美鈴。そんなつもりはなかったんだ。つい、遊び心で。

 

「これで出血は止まったな。すまん美鈴!」

 

想雅は手を合わせ、美鈴に謝った。

 

「いや、私が寝ていたのが悪かったのですから」

 

美鈴は笑った。

 

「ここです。ルーミアが居るのは」

 

ギギィ……と扉が開き、ルーミアとフランドールが弾幕ごっこをやっていた。

すごく部屋が散らかっています。ゴォォォォォ!や、ドォォォォォ!と響き部屋が揺れていた……ってヤバくね!

部屋の隅で、レミリアがうずくまっていた。

弾幕を避けながら、レミリアの方へと駆け寄った。

 

「大丈夫か!れm「そーーーーーがーーーーーー!」オウフッ!」

 

レミリアが想雅に抱き着いた、っていうより突進してきた。

レミリアの目には涙が、これはカリスマブレイクしたな……

しかし痛い……なぜ今日は痛い目に……

まぁ、今は俺の首にナイフが突きつけられていますが……

 

「お嬢様から、お離れ下さい」

 

離れたいですよ。思いっきり掴んでいて離れないんすよ。

 

「「想雅!(お兄様!)」」

 

やっと想雅の存在に気付いたのか、弾幕ごっこを中断し、想雅の方に寄ってきた。

 

「お兄様ーーーーー!」

 

「アベシッ!」

 

フランが、想雅に突進した。

なぜ……俺だけこんな目に……

 

「想雅ーーーーー!」

 

「ヒデブッ!」

 

次はルーミアが突進してきた。

い、意識が……飛ぶ……、と言っている間にも、美鈴が寝ていた。そこに、サクッとナイフが刺さったぁぁぁぁぁ!?

ちょ、またッスか!?しかも咲夜はやり遂げたという顔しているし。

 

「とりあえず、離れてくれぇぇぇぇぇ!」

 

想雅の声が紅魔館に響き渡った。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

とりあえす、みんな落ち着いた。

美鈴の治療も終わったし、そろそろ本題に入りますか。

 

「すまんっ!レミリアッ!」

 

俺は地面に向かって屈服した。その衝撃で頭が痛い。

 

「え?ちょっと、何!?あなたが何かしたの!?」

 

そのレミリアは戸惑っている。

 

「ルーミアが迷惑をかけた!」

 

「い、いやそれは、スキマ妖怪から押し付けられたいうか……」

 

「いきなりですまないが、ルーミアを1ヶ月間ここに、居させてくれないか」

 

「話が見えないのだけど……」

 

「そのかわり、俺がレミリアの言うこと、一つ、何でもやるから!」

 

その言葉で、レミリアが驚き、考え込んだ。

 

「話が見えないけど、分かったわ。あなたが何でも言うことを聞くのなら、1ヶ月間、腹ペコ妖怪を預かるわ」

 

「え?何?私が悪いみたいに聞こえるのは何故?」

 

ルーミアが小首を傾げている。

 

「すまないな、迷惑かけるつもりはなかったんだ」

 

「いいのよ」

 

ふぅ、これで一件落着かな。

紫め、やはり押しつけやがったな。

想雅はまたスキマに落とされた。

 

「なんで今日は、よくスキマに落ちるんだぁぁぁぁぁ!」

 

その言葉と共に、想雅はスキマの中に消えていった。

突然の事に、紅魔館のみんなは、ポカーンとしているしかなかった。

 

 

 

 

 






ほんと単語覚えるの大変だぁ、単語帳片手にキーボード打つの難しい!
間違えて単語のスペルを打ってしまうオチだ!
あと、英語の文章を書かんといけない!
もう、ダメだぁ……おしまいだぁ……、なんて無い!
人間には不可能を可能にする力があるからだぁぁぁぁぁ!

(前書きも、後書きもすべてやけくそ)

黒歴史だぁ……


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女の子と同居ってこんなことあるよね



まったく、おもろいよ人生って……
椅子の足に指ぶつけるし、廊下が濡れていて滑ってこけそうになるわで、その後壁に足ぶつけるし、やっとランチだと思ったらハシが落ちるし……
長年経験して不幸って連続で起こるもんだなと悟ったし……ほんとおもしろいよ……

今回はちょっとしたサービスシーン付きです。

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり。




くそ、また落としやがった!

何だよ今日は、足元時々スキマか!そんな予報あってたまるか!

目玉が無数にある空間から、見覚えがある部屋の中へと落とされて……いなかった。

 

「せいやッ!」

 

落ちる瞬間に体をひねり、背中の落下ではなく、足の着地へと変わった。

立ち上がり、そして……

 

 

バァ―――――――――――ン!

 

 

ディオとジョナサンが初めて出会うシーンのような効果音が聞こえた。

お、おぅ……足がジンジンしやがる……

 

「すこしは登場がマシになったわね」

 

「お陰様でな……っていうより、スキマを出すタイミングぐらい空気読めよ」

 

「要件が終わったから、ありがたく開いてあげたのよ」

 

「こっちは、ありがたくとも思えないんだが……」

 

要件が終わったが、さよならの1つも返さないって失礼すぎるだろ!

 

「それより、あなた能力を使ったわね」

 

紫の目線が、一気に鋭くなった。

 

「あぁ、使った」

 

「言い訳はしないのね」

 

「約束を破ったのには変わりがないからな」

 

「素直でよろしい。早く家に入りなさい、夕食ができているわ」

 

紫に言われ、想雅は家に入った。

食事の香りが、玄関まで漂ってきた。

台所から、藍が顔を出した。

 

「お、帰ってきたか想雅。もうすぐで夕食ができるから、居間で待っているといい」

 

藍にそう言われ、ふすまに手をかけた。

 

「そういえば、紫は食事とかは作らないのか?」

 

「そんなめんどくさいことしないわ」

 

えー、めんどくさいって、ルーミアとおんなじ理由か……

来月から本気出すレベルだろ……妖怪の賢者さんがこんな感じでいいのか?

今月が8月だからか?暑すぎて気力がそがれる。9月から本気を出すってか?

想雅はそんなことを思いながらふすまを開けた。

そこには、小さな女の子が、ちょこんと座っていた。

茶色の髪、頭にはナイトキャップをかぶっており、頭にある猫耳がピコピコ動いている。

衣装は、赤を基調とした服、後ろから尻尾が二つゆらゆらと揺れていた。

赤を見ていると紅魔館を思い出す。

 

「おかえりなさい!紫様!」

 

猫耳の子は紫に気付いたのか、ちょこちょこと寄ってきた。

 

「ただいま、橙」

 

紫は、橙と呼ばれた猫耳の女の子の頭の上に手を、そっと置いた。

 

「紫様、隣の人は誰ですか?」

 

隣の人、俺の事だな。

 

「挨拶が遅れた、俺は天上想雅だ。1ヶ月間、修行のためここに居る。よろしくな」

 

「私は、橙。よろしくね」

 

想雅は、「そうか」と呟き、橙の頭に手を添えた。

 

「う、うにゃ~」

 

橙は嬉しそうに顔をうずめた。

 

「できましたよ~」

 

なんだろう……後ろからドス黒いオーラが……藍、俺何かやったか?

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

夜は終え、朝を迎えた。

修行中は使っていない部屋を貸してもらった。

別に何も起こらなかった。まぁ俺が食事のあとすぐ寝たからな。そのあとは知らん。

部屋の扉が開き、藍が入ってきた。

 

「起きたか、朝食ができるまで時間があるから、風呂に入ってこい。昨日入っていなかっただろ」

 

「お、おう、何かいろいろすまないな。こっちが居候しているのに」

 

「気にするな。人数が増えたからってあまり変わらないもんだぞ」

 

藍が微笑んだ。なんだろう……母性が感じる。

 

「藍って母親みたいだな」

 

「それはよろこんでいいのか……」

 

藍がしばらく考え込んでいる。

 

「それじゃ、お言葉に甘えて風呂にはいってくるわ」

 

「ん?わかった」

 

藍は振り返って想雅に返事を返すが、また考え込んだ。

そんなに考え込むことなのか……?

まぁ、兎に角、風呂場に着いた。

昨日、風呂に入っていないから頭がかゆい。

想雅はそんなことを思いながら、服を脱いだ。

まぁ、こんな朝方に風呂入っている奴はいないからな安心して入れる。おっと、ここでフラグ立てたと思た奴、挙手しろー。

風呂場の扉に手をかけ、開けた。

 

「意外と広いもんだなぁ」

 

風呂場内は以外にも広かった。自分の家よりは小さいが……別に自慢しているわけではない。

広いからって別にいいもんじゃない。兎に角、掃除が大変だ。よく滑って頭を打つ。すごく痛いんだよ。

風呂で思い出したんだが、よくアニメとかである「カコーン」という音はなんだろう。

真っ先に、ケロ○ンの桶を思い出す。自分が思うには、桶の音だと思うのだが……うーん、謎だ。

 

「~~~♪」

 

その声で想雅の思考はカチコチに固まった。

待て待て待て待て待てッ!いやアレは空耳だ!幻聴だ!

いや~、こんな朝早く風呂入る奴は、俺だけだよな~ハハハッ。

 

 

カコーン

 

 

次は音で想雅の動きがカチコチに固まった。

いやいやいやいやいやっ!待てアレは何かが落ちただけだ!ポルターガイスト現象だ!

いや~、こんな朝早く風呂入る奴は、オレダケダヨナ~ハハハッ

 

 

ザ―――――

 

 

その次の音に想雅の意識がカチコチに固まった。

NoNoNoNoNo!アレは……えーと、そうだ!風呂が爆発したんだ。うんそう違いない。

イヤ~、コンナアサハヤクフロニハイルヤツハ、オレダケダヨナ~ハハハッ

 

「誰かいるの?」

 

聞き覚えがある声に想雅の全ての機能がカチコチに固まった。

次の瞬間、運の悪いことに湯気が晴れ、そこには……

 

「想……雅?」

 

この家の主、八雲紫の姿が露わになった。

彼女は一糸まとわぬ姿で体を想雅に晒してしまっていた。

想雅は初めて血の気が引いた。

 

「「……」」

 

しばしの沈黙……

紫の顔がみるみる赤くなっていった。

そのことに気付き、想雅の全ての機能が起動し……紫に背を向け……そして……

 

「すんませんでしたぁぁぁああぁぁああああぁぁぁぁあああぁぁぁ!!!」

 

想雅はダッシュした。

 

『我は誓おう、剣のような鋭さを、光のような速さを、鋼のような折れぬ意志を、我は、我行く道を突き通そうぞ!』

 

無我夢中に『言霊』唱えた。

服が入っている籠に光速に手をかけ、光速に着替え、光速に刀を持ち、光速に外へと消えていった。

紫は、ポカンとしていた。

 

 

 

 

 






なんか修行らしいこと何もしていないな……
次回は、やっと修行シーン。

感想待っています!
次回もお楽しみに!



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弾幕鬼ごっこ



もうすぐ冬休みになるからといって更新が早くなるわけではない。
逆に遅くなる可能性がある。

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり。




「なぁぁああぁぁぁぁあああぁぁぁああああぁぁ!」

 

ただ今、光速移動中です。

ヤバい!ヤバい!ヤバいぃぃぃぃぃ!見ちゃったぁぁぁぁぁ!

どうしてこうなった!?勢いで飛び出して来てしまったぞ!

なんであの時、藍が紫が入っていることを言わなかったんだ?

え?何、精神攻撃ですか!?いや、ご褒美だったけど……

いやいやいや!何考えているんだ。

くそう。どうしてこんなに不幸なのだ。いや、ご褒美だったけど……

 

「だから、なぜこんなことを考える!」

 

想雅は叫んだ。

左にダッシュ、右にダッシュ。もうどこから来たのかわからない。

俺に足りないものはなんだ?そうだ!

 

「俺に足りないのはッ!それはッ!」

 

ホーリーに所属するアルター使いの一人で、「速さ」と「文化」に異様なまでの執着を見せる男を思い出した。

 

「情熱思想理想頭脳気品さ優雅さ勤勉さッ!そしてなりよりもぉぉぉぉぉ!」

 

後ろに下がり。

 

「速さがたr……ガァッ!」

 

な、なんだ、いきなり……

し、心臓が……クソ痛い。締めつけられるように痛い。今までこんな症状はなかったはずだ……

クソッ、まともに呼吸ができない……

悔いがあるとしたら、クー○ーの名言を最後まで言えなかったことだ。

想雅の下にスキマが開き、想雅は中へと消えていった。

 

「世界を縮めたかったぜ……2分8秒ぐらいは……」

 

その思いは叶えることができなかった。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

もうすでに見慣れた空間に落ち、床に落ちた。

 

「グガァッ!」

 

次は、腹から落ちた。

痛てぇ……心臓が痛いから余計に痛い……

目の前には、紫と藍が想雅を見下ろしていた。

藍が近づいて、想雅に言った。

 

「すまない。紫様が入っていることを知らなかったんだ。朝はだいたい寝ていることが多いから……ホントにすまないッ!」

 

藍は想雅に謝った。しかし想雅は、

 

「……」

 

無言だった。話すことができない。

心臓の痛みと、腹の痛みで。

 

「お、怒っているか?」

 

藍はおどおどしている。

 

「お……こって……いな……い、たんに……はなせ……ないだ……けだ……」

 

想雅は呼吸が乱れながら言った。

 

「まぁ……今回は私の不注意でもあったわ……男と同居ってこういうこともあるよね」

 

紫は顔を赤めらせながら言った。

 

「こっ……ちも……すまな……い」

 

「ところで、なんでそんなに苦しそうなのだ?」

 

「すこ……し……のうりょ……くをつか……ってn「そんなに無理に言わなくていい、息を整えてから言った方がいいぞ」……すま……ない……」

 

とりあえず、藍から水を貰った。

ヤベェ……なかなか水がのどに通らねぇ……

やっとの思いで水を飲み、深呼吸を2,3回行い、少しは息が整った。

 

「なんでそんなに苦しそうだったんだ?」

 

「なんか『閃光の言霊』を使ったら、心臓が痛み、呼吸が困難になった」

 

紫と藍が考え込んだ。

 

「それって、想雅自身が閃光になったの?」

 

「いやなっていない。自分の足で走った」

 

紫と藍がわかったような感じで言った。

 

「たぶん、自分の足を使っているからだと思うわ。そうじゃないと心臓が痛むことなんて無いわ」

 

想雅にはあまりピンとこなかった。

 

「簡単に言えば、走った後どうなるのかしら?」

 

「疲れるな」

 

「そうよ。あなたが使った『言霊』は人間の限界を超えた速さを自分の足で走っているのよ。それで自分の体がもたなかったのよ」

 

なるほどねぇ……人間の限界を超えた速さで走っていたなら、そりゃぁ痛くなるだろ。

俺は数秒しか使ったことしかなかったからな、それでもその後はどっと疲れるんだよな。

限界を超えると動けないことがわかった。これだけでもいい情報だ。

 

「想雅の息が整ったことだし、修行に入るわよ」

 

「おいおい、また藍と戦わせる気か?無理だぜ」

 

「分かっているわ」

 

紫はスキマを開いた。

 

「さぁ、ついてきて」

 

足元じゃなくてよかった……っていう時期が俺にもあった。

 

「紫ぃぃぃぃぃ!なぜだぁぁぁぁぁ!」

 

足元にスキマが開き、想雅は落ちていった。

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

はぁ……俺はなぜこう不幸なのだろう。

目玉がいちいちこっち見ている気がして気持ちが悪い。こっち見んな!

落下先は、どこかの森……いや山だった。

 

「イデッ!」

 

『言霊』を使ったため、霊力が半分以上無い状態なので、判断力が鈍り、背中を打った。

一歩遅れて、紫と藍がスキマの中から出てきた。

 

「そうそう、忘れものよ」

 

想雅の真上でスキマが開き、刀が降ってきた。

 

「アヴドゥルッ!」

 

ちょ、何すんだ紫……刀の鞘、意外と痛いんだぞ……

 

「裸を見た当然の酬いよ……」

 

ごめんなさいしか言えねぇんだよ。過ぎてしまった物事だからよ。

想雅は重い体を立たせた。

 

「で、こんな山の中で何かやるのか」

 

「もう少しで来るわ」

 

誰かとここで待ち合わせしているのか?

想雅が考えていると、

 

「紫様~!藍しゃま~!」

 

どこからか橙の声が聞こえてきた。

想雅が上を向くと、そこには木の枝の上に立っている橙の姿があった。

橙は木の枝からジャンプし、クルクルと回転しながら着地した。うーん、10点!

 

「今回の修行は、橙と弾幕鬼ごっこをやってもらうわ」

 

「弾幕鬼ごっこ?」

 

聞いたことない弾幕ごっこだ。

 

「簡単にいえば、弾幕ごっこと鬼ごっこが合体したものよ」

 

「つまり、弾幕ごっこをしながら鬼ごっこをしろと……」

 

「そういうことよ」

 

おいおい、正気か?

まぁ、弾幕ごっこならできるのだが、鬼ごっこをしながらって……

 

「ルールは簡単よ。弾幕ごっこをしながらタッチすること、もちろん鬼は想雅よ」

 

ですよねー。

 

「それじゃぁ、橙、頼んだわよ」

 

「はい、紫様」

 

「藍は監督役としてここに残って」

 

「はい」

 

「で、お前は何をするんだ?」

 

「家に帰って寝る」

 

紫はそう告げ、スキマの中へと消えていった。

本当に大丈夫か?

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

それから数分、山の中を移動しながら、弾幕ごっこをと鬼ごっこが始まった。

とりあえず言おう、橙が意外と速い……っていうか山の中を熟知している。木の枝をつたったり、茂みの中に入り、見失なって弾幕打たれ、目の前にいると思っていたら消えたりと、さすがに疲れが出てくる。

 

「どこを見ているのッ!」

 

「うわぁ!」

 

茂みの中から、橙に驚かされた。

 

「ねぇ、ちゃんと私を捕まえようとしているの?」

 

「当たり前だろ」

 

想雅はそう答えるが、橙の姿は茂みから消えていた。

 

「鬼さんこちら手の鳴る方へ」

 

橙の声と、手をたたく音が上から聞こえてきた。

 

「そこッ!」

 

想雅はつかさず霊力弾を上に放つ。

 

「甘いよ」

 

橙は見るも簡単に避けた。

そのまま、木から木へと移り変わっていき、地面まで下りた。

 

「こっちも行くよ」

 

橙から弾幕が放たれる。

想雅は避ける。しかし、目の前にはすでに橙の姿はない。

 

「まだまだ行くよ」

 

橙の姿はすでに想雅の後ろにいた。

想雅は気付いたが、橙のスペカが詠唱される。

 

「仙符『鳳凰卵』」

 

橙の周りに魔法陣が出現し、そこから円状に楔弾が放たれた。

 

「俺もスペカが無いとキツイな……」

 

想雅のスペカはすべて『聖』、『魔』を使った技ばかりである。

作ればいいが、紫に修行中スペカを作ること禁止されている。

 

「しかしなんなんだ、橙の瞬間移動らしきことは……」

 

先ほどから橙の姿が消えてばかりだった。

いたと思っていたが、そこにはすでにおらず、どこかにいるという摩訶不思議なことが起こっている。

考えているうちに、橙の弾幕に被弾した。しかも腹を直撃。

 

「ゴフッ!」

 

想雅はそのまま地面に倒れた。

 

「今日はここまでだな」

 

藍が割って入ってきた。

 

「いや、まだいける……」

 

「もうお前は霊力がスッカラカンだろ」

 

うっ……正解だ。

もう動けない、霊力が無くなって……

 

「今回ので2つ分かった。1つ目お前は橙を狙っているか?ただただ橙がいる方に撃っているだけだろ。橙自身を狙っていない。2つ目は、霊力を無駄に出している。どれだけの少ない量で作るか、どのくらいの力で敵を倒せるかを考えながらやるといい」

 

「難しいことだな」

 

「まぁ、そんなに焦らなくてもあと1ヶ月もあるんだぞ」

 

「1ヶ月でマスターできるのか?」

 

「さぁな、お前自身だと思うがな」

 

橙に触れることすら出来なかったが、藍から、いいアドバイスを貰ったので、それを基準として、やっていきますか。

動けない想雅の下に、いつもの事のようにスキマが開いた。

ほんと、なぜこうなる……

 

 

 

 

 






修行といても最後の方しかやっていなかった。
次回は、キングクリムゾンして3週間後になります。すごくぶっ飛んだな。

感想待っています!
次回もお楽しみに!




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修行の成果



冬休みキタァァァァァ……と言いたいところだが、いやだぁぁぁぁぁ!
受験が、受験がぁぁぁぁぁ、本格的になってしまう!
そうだ、ネギ喰おう。

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり。




雨の日も、風が強い日も、修行に明け暮れた。

いやぁ……さすがに雨の日は外に出ないで、室内で霊力のコントロールをやっていた。

藍に言われた二つの中の一つ、どれだけの少ない量で作るかというやつと、どのくらいの力で敵を倒せるかを試していた。

霊力が少なくても当たってもダメージなど無いし、かと言って多すぎても俺の霊力の量では戦闘向きではない。難しいわホント……

さすがに橙と弾幕鬼ごっこだけではない。さすがに橙と毎日やるのは、俺の体にも負担が掛かるし、橙の体にも負担が掛かってしまうため、週4回という感じでやっていた。

あと3日はどうしたかって?休んでなどいない。ちゃんとやっている。

言われた、二つの中の一つのその者自身を狙うをやっていた。

修行の相手は、藍に頼んだ。さすがに狙って撃っているが、容易くかわされてしまった。

そしてキング○リムゾン……3週間たった。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

スキマを通って……いや落ちただった。

妖怪の山の奥にある、マヨヒガというところに落ちた。

マヨヒガは俺と橙が弾幕鬼ごっこをやっているところだ。

 

「今日こそ捕まえてね」

 

「あぁ、鬼の恐ろしさを見せてやるよ」

 

まったく、今日も変わらず余裕な橙だな。

まだ、あの瞬間移動の謎を解いていないから、また橙が勝つだろう……いや勝てみせる!絶対にだ!

 

「いくぞ」

 

「どこからでもどうぞ」

 

想雅は目の前に、霊力弾を放った。

それを橙は華麗にかわし、想雅の目の前から消えた。

想雅は瞬時に後ろを向いたが、そこには橙の姿はなかった。

 

「さすがに同じ手はやらないよ」

 

「それぐらいお見通しだ!」

 

想雅は左手を、左側の茂みの方へ突出し、霊力弾を放つ。

茂みから橙の姿が飛び出し、想雅はつかさずそこにも霊力弾を放つ。

橙は空に避けた。

 

「空中におびきだして、そこに霊力弾を撃つね……だけど甘いよ!」

 

橙は空中でもその身軽で華麗な避け方をした。

おぉ、空中のマト○ックスだ……

避け終わった橙は、地面に着地した。

 

「さすがに空中では移動(・・)できないけど、避けるぐらいはできるよ」

 

ん?移動……

なんだろう、そこに引っ掛かる。

その移動ってやつは、本当に瞬間移動だったのか?むしろ普通に移動しただけだったり……

 

「そろそろいくよ!仙符『鳳凰展翅』」

 

橙の周りに出現した魔法陣から楔弾が放たれた。

魔法陣から楔弾が放たれるという点は、仙符『鳳凰卵』と同じだが、発射される弾の数が数倍に増えているため、純粋に避けるのが難しくなっている。

 

「スペカは使えないが、防いでみせる!」

 

想雅は目の前に、霊力を集中させ、霊力の剣を作った。

そしてその剣を回転させた。

橙から放たれた弾幕は、普通に剣に当たるが、どんどん消滅していった。

 

「へぇ~、すごいね」

 

「あ、あぁ、すごいが、霊力の消費が凄い」

 

想雅が作り出した霊力の剣は、攻撃に使うことも可能だが、防御に使うことも可能である。

しかし、攻撃と違い欠点があった。

攻撃の場合、剣を作り、撃ちだすだけだが、防御の場合はその形を維持しなければならなく、霊力を流し続けるしかない。

 

「なんで、霊力を多く消費するのにやったの?」

 

「興味本意でね」

 

理由は、やってみたかっただけだ。別に後悔などしていない、むしろ清々しい気分だ。

 

「想雅はやっぱりおもしろね」

 

「あぁ、おもしろいだろ」

 

想雅と、橙は一緒に笑った。

 

「だけど、今は修行。本当に笑うのはあなたが負けてからね」

 

「いや、俺は勝って笑い、喜ぶぜ」

 

橙の姿が消える。

やはり、移動ではなく瞬間移動の方だったのか?

移動なら音ぐらいなら聞こえるはずだが……

想雅は心を無にして、耳をすませた。

 

 

ザッ!ザッザッザッ……

 

 

右側の方から音が聞こえた。

 

「そこだぁぁぁぁぁ!」

 

霊力の剣を作り、放つ……

 

「きゃぁぁぁぁぁ!」

 

ビンゴ!

橙に命中した。

想雅は橙に近づきタッチした。

 

「想雅の勝ち」

 

「あぁ、そうだな」

 

想雅は橙の手を引っ張り、立たせた。

すると、橙が抱き着いてきた。

 

「どうした?」

 

「ねぇ、修行が終わっても、また遊んでくれる?」

 

「いいぞ」

 

「やった~!」

 

橙は想雅から離れ、その場で万歳をした。

想雅は足元のスキマに落ちていたため、声だけが聞こえ、その動作は知らなかった。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

見覚えがある部屋に想雅は落とされ、見事に着地した。

 

「霊力を多く消費しても、少しはまともに動けるようになったわね」

 

「あぁ、お陰様で」

 

1日の半分の寝ている紫に言われてても、嬉しくない。

しかも冬になると、冬眠までするらしい。すごくツッコみたい……

 

「そろそろ、最終段階に入るわ」

 

最終段階か……長かったのか?短かったのか?

まぁ、最終段階までよく死なずにこれたものだなぁ……

 

「今度こそ、藍とやってもらうわ」

 

「つまり、リベンジというわけか」

 

「まぁ、あなただったらそうでしょう。けど今回は、あなたがどこまで成長できたのかを見るためなのよ。言っているのもなんだから、さっさと行きましょう」

 

成長ねぇ……興味本意や好奇心旺盛なことはかわりがないがな……

想雅はそう思いながらも、スキマへと落ちていった。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

久しぶりに開けた場所に出た。

空はやっぱり青い。

太陽の光は暑いが、風が来て、気持ちいなぁ~。

想雅の霊力は完全に戻っていなかったため、一時の休憩となった。

休憩が終わり、紫から声がかかった。

 

「さぁ、始めましょう」

 

想雅と藍は同時に立ち会った。

 

「想雅、準備はいいか?」

 

「あぁ、いつでもいいぜ」

 

次第に二人は離れ、距離をとっていった。

 

「お前から先行でいいぞ」

 

「あぁ、そうさせてもらう」

 

藍に先行を頂いたので、想雅はありがたくもらった。

 

「行くぞッ!」

 

想雅は前方に、全力全身した。

刀を抜き、抜刀した。

藍は後ろに避けようとしたが……

 

「……ッ!」

 

藍は上空に避けた。

 

「抜刀時に刀に霊力を流し込んで長くしたな」

 

想雅は刀に霊力を流し込み、霊力刀を作った。その長さは刀の2倍。

しかし、2倍になったことで、扱い方も難しく、上段の斬りと、薙ぎ払いしか今は出来ない。

 

「スペカが使えない以上、こうして補わないといけないからな」

 

「なら、こっちも少し本気をだすぞ。式神『前鬼後鬼の守護』」

 

藍がスペカを取り出し、詠唱した。

左右に黄色と緑の大弾を打ち出した後、それぞれの大弾がさらに小弾をばら撒きながら想雅へと向かっていく。

ばら撒かれた小弾のいくつかは時間差を置いて想雅狙いへと変化した。

 

「クッ!避けにくい」

 

俺狙いだけならまだしも、小弾をばら撒きながらきやがるから避ける範囲が限られていた。

 

「ならここは、速さで決める」

 

想雅の左手に霊力で作った槍を作り出した。

その槍を藍に定めを決め……

 

「大は小を兼ねるのか速さは質量に勝てないのか、いやいやそんなことはない速さを一点に集中させて突破すればどんな分厚い塊であろうと砕け散るゥゥッハッハッハッ、ハー!」

 

○ーガーの早口名言をいいながら投げる。

藍は想雅が投げた霊力槍に気付き、手で払った。

槍は小枝が折れるように、儚く木端微塵に消え去った。

 

「弱いぞ、想雅」

 

「速さに執着した結果だからな。だが、たくさんあるとどうかな」

 

想雅が放つ霊力槍は速さに特化しているため、強い衝撃を食らうと、木端微塵に消え去さってしまう。

しかし、霊力をあまり消費しないため、連続で放つことができる。

想雅は両手を使い、霊力槍を投げていく。

 

「クッ!」

 

藍は続けて払うが、速さに追いつけず避けることになった。

それが想雅の狙いだった。

一度避けてしまうと、槍の速さに払うことが追い付けず、避けるだけになってしまう。

 

「この短期間ですごい成長ぶりだな」

 

「ありがとう。ところで、手は大丈夫か?」

 

「あぁ、大丈夫だ。想雅は戦闘中でも、他人の事が気になるのか?」

 

「今までからの経験からというと……そうだな。気になってしょうがない、たとえ妖怪だろうと、何だろうと」

 

「守備範囲広いな」

 

「それが俺のいいところだろ」

 

「そうだな」

 

藍はクスリと笑った。

 

「次、行くぞ!式神『十二神将の宴』」

 

藍が次々と魔方陣を展開し、 それぞれの魔方陣から、動物?らしき者が12体あらわれ、それぞれ異なる弾幕が放たれた。

 

「密度高ッ!」

 

弾幕は複数のパターンが重なり合っており、密度も高い。

しかし、全体としては完全なパターン弾幕であった。自分で抜けるところを決めてしまえば 安定した突破ができるように思えた。

 

「おっととと……とぉッ!」

 

しかし、それは思えただけで、できるとは確信はなかった。

見事に想雅に被弾した。それでバランスを崩し、無数の弾幕が襲ってきた。

普通なら、そこは防御するのがあたりまえだが、しかし想雅は違った。逆に!

 

「そうだ。落ちよう」

 

想雅は霊力で飛ぶのを止め、地面に向かって落ちていった。

運がよく弾幕には当たらず、霊力を再び出して速度を落とし、回転しながら華麗に地面に着地した。

 

「冷や冷やしてしまったぞ」

 

「すまない。人間の可能性を試したかった。何事もチャレンジだからな」

 

なんでこういうときだけ運がいいんだろう……

しかし、霊力を速度を弱めるためにすごく使ってしまった。だが、全方位に霊力剣を展開して防御するよりは、大変マシの行動だった。

 

「こっちからも行くぜッ!」

 

想雅は、ギル○メッシュが使う『王の財宝』のような感じに剣を展開させ、藍に向け放った。

 

「凄い量の弾……いや剣だな」

 

藍は避けていく。

 

「まだまだぁぁぁぁぁ!」

 

想雅は両手に霊力槍を作り出し、放つ。

 

「それだと……」

 

藍は感じ取った。想雅は霊力残量を考えていない。

その予想は的中し、想雅は……

 

「もう動きたくないでござる……」

 

戦闘に集中しすぎて、霊力のことを考えておらずバタンと倒れた。

藍は想雅の弾幕をすべて避けきったあと、想雅のもとへと行った。

 

「あれで最後決めるつもりだったんだがな……」

 

「霊力の使い過ぎだ」

 

「あぁ、今の霊力だと、『言霊』なら最大3回(・・)までしかつかえないしな……」

 

霊力の修行結果は『言霊』だと最大3回までしか使えない。しかし、霊力の使い方がよくわかった。

想雅は、それだけでも満足していた。

 

 

 

 

 






修行が最終段階に入りました。いやまだ最終段階は終わっていませんけどねww
さて、次回は天狗の頭領との戦闘です!

感想待っています!
次回もお楽しみに!



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天狗の頭領




今回は前回の後書きに書いた通り、天狗の頭領と想雅が戦います。
あとあと、すこしゲイ注意警報、発令!


では、ごゆっくり。





修行の最終段階が終わって、丸2日。

修行自体は終わったのだが、期間がまだ過ぎていいないため、『聖』と、『魔』がまだ自由に使えない状態だ。修行は終わっているので、紫の承諾があったときだけしか使えないようになっている。

とりあえずは終わったので休むことができるのだが……

 

「暇だ……」

 

すごく暇なのだ。重大なことだから2回言った。

マヨヒガに行って橙と弾幕鬼ごっこをやったり、霊力のイメージを作ったりと修行染みたことをやっているが、正直暇を持て余している状態だ。

今は、縁側に座って霊力槍の練習をしている。

練習内容はいたってシンプル。

地面に刺した木の棒に霊力槍で当てるという物だ。その棒をどんどん小さくしていき……とりあえず、どこまでいけるんだ?木の棒の可能性とやらは?まぁいい、小さくしていきながら距離もどんどん遠くに移動させている。

この練習をやっていると、獲物を見つけた猟師さんみたいに、緊迫感が味わえる。

外すと爆破、外すと自爆、外すとバルス、とか思いながらやっていた。ホント暇すぎてこのような事ばかりしか考えていない。暇すぎると脳が働かない。

最終的には、木の棒が見えないほどに小さくなった。マサイ族じゃないから全く見えん。

マサイ族って、視力凄いもんだな。その視力のおかげでサバンナでも迷わないらしいからな。ジャンプ力も凄いとか聞いたがどうなんだろうか?しかも一人前の大人になるためにライオンと戦わないといけないとか、どんなけ過酷なんだよ!しかも骨みたいな棒で戦うらしい。

ライオンに立ち向かう、まさに勇気ッ!

もっとも今はライオンの狩りは禁止されている。ライオンたちもマサイ族には近づかないらしい。

ライオンに恐怖を植え付けたなマサイ族。

おっと、暇すぎてマサイ族について語ってしまった。

想雅が、語っているうちに藍が、買い物から帰ってきた。

 

「お帰り、藍」

 

「ただいま。今から昼食を作るから、紫様を起こしてきてくれ」

 

「わかった」

 

藍に言われ想雅は紫の部屋に向かって行った。

紫の部屋の前に立ち、ふすまを3回叩く。ふすまって叩くものなのか?

 

「紫~。起きているなら返事しろ~」

 

想雅は呼んだが、当然の如く返事は帰ってこない。

っていうかたくさん寝て、頭がガンガン痛くならないのか?

 

「とりあえず、入るぞ~」

 

ふすまに手をかけて開く。

部屋には、布団が1枚、その中に紫がいるのか膨らんでおり、もぞもぞと毛虫のように動いていた。

想雅は布団に近づき、ポンポンと布団を叩きながら言った。

 

「おーい、起きろー。もうすぐで昼飯ができるぞー」

 

しかし、返事が無くもぞもぞ動くだけだった。

いっその事、布団を無理やり剥ぎ取ろうと思ったが……

 

「え?」

 

布団を叩いていた手が、布団から出てきた紫の手に捕まっており、そのまま……

 

「なぁぁぁぁぁ!」

 

布団の中へと引きずり込まれた。

布団の中は、いい匂いがした。これが女性の匂い……いやいやいや!何考えているッ!?

しかも、紫の寝顔が目の前に見えた。

ヤベェ……心臓の鼓動が速くなってきやがった。しかも案外可愛い寝顔だし……まてまてまて!何でときめこうとしているんだ俺はッ!?

 

「ぅん……ん~……」

 

やばいやばいやばい!ガチでやばい!この状態どうやって抜け出すんだ!?

そんなことを考えていたがもう遅かった。

 

「ちょっ!やめっ!オフッ!」

 

紫の腕が想雅の首に伸び、そのまま引き寄せられ紫の胸の中へと埋もれてしまった。

 

「モゴモゴモゴ……」

 

「ぅん……あっ、あっん!」

 

もうだめだ、おしまいだ……

想雅はもがくが、余計に首が、紫の腕にフィットしていきもう抜け出せない状態になった。

しかも、色っぽい声を出すし……俺の思考回路が全く働かない。

 

(やばい!息が……息がぁぁぁぁぁ……)

 

想雅はそのまま呼吸ができないまま、気を失った。

ハハハ……胸に埋もれて窒息死とかシャレにならねぇぞ……

ふすまが開く音がしたと思うが、想雅の意識はもう遠くにいっていた。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

想雅はある空間で目覚めた。

川の向こうにはお花畑があった。

 

「ここって……」

 

そう。ここは、想雅が鎌を持ったおばあさんに襲い掛かれそうになったところだ。

お花畑にはそのおばあさんの姿はなく、一人の男が立っていた。

まぁ、とりあえず聞いてみるか……嫌だけど……

 

「すみませ~ん、ここはどこですか~?」

 

川の向こうが側まで聞こえるぐらいの声を張り上げた。

男が声に気付いたのか振り返ってきた。その瞬間、想雅の背中に寒気が通った。

 

「ここは男の秘密の花園。ところで少年やらないか?」

 

その男は、ちょっとワルっぽい自動車修理工に働いていそうな、青いツナギを着用している。

一言で言うと、そこに阿○さんが居る。

 

「い、いや、いいです……」

 

男は想雅の方に近づいてきて……っていうより瞬間移動して想雅の目の前に来た。

 

「わぁっ!」

 

想雅は驚き、後ろに下がった。

 

「男は度胸!なんでもためしてみるのさ」

 

青ツナギの男はどんどん想雅に、近づいてきた。

 

「俺はノンケだってかまわないで食っちまう人間なんだぜ」

 

「来んな!このゲイやろぉぉぉぉぉうッ!」

 

拳に『魔』の力を込め、青ツナギの男へと殴りかかった。

そして、青ツナギの男はぶっ飛ばされた。

 

「ウホッ!いい男!」

 

断末魔を上げながら飛んで行った。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

「シュワットッ!」

 

想雅は何者かから逃げるように飛び起きた。

はぁ……はぁ……夢の中にゲイが……マジで寒気がした。

お、おぅ……まだ寒気がしやがる。

 

「目覚めたようね」

 

想雅の横に紫の姿が映った。

 

「あぁ、おかげでゲイに会っちまったがな」

 

「ところで、なんで私の部屋に居たの?」

 

紫は、顔を赤しながら訊いた。

そりゃぁ、恥ずかしいだろうよ。おかげでこっちは御褒美……げふんげふん、死にかけたからよ。

 

「お前を起こそうとしたら、急に手を掴んできて布団の中に引きずり込まれたんだよ」

 

「そうなのてっきり襲いに来たんじゃないかと……」

 

「そんなこと俺はしない」

 

「そうね。普通の男は猛獣みたいだけど、あなたはヘタレさんだったわね」

 

「ヘタレ言うな」

 

なんでヘタレ言われなければいかん。

 

「おーい、そろそろできたぞー」

 

藍に呼ばれ、想雅と紫は部屋を出ていき、食事がすでに並んだ部屋へと行った。

 

「遅かったじゃないか」

 

「とんだ主人様に殺されそうになったからな」

 

想雅はそう言ったが、藍は何言っているかわからなかった。

想雅と紫は、席に着き、食事を始めた。

 

「ところで紫様。昨日の一件はどうでしたか?」

 

藍が紫に何かを訊いた。

 

「一応、了承は貰ったわ。食事後に行こうと思っているのだけど……どうかしら想雅」

 

え?何。そこでなぜ俺に回ってくる。

わからんが、一応返事ぐらいしておいた方がいいだろう。

 

「い、いいんじゃないかな」

 

想雅はそう返した。すると、紫の顔がニヤァってなり、藍の顔が驚きを隠せない状態だった。

 

「そう。おもしろくなってきたわ」

 

紫の表情が普通の状態に戻り、食事を食べ始めた。

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

食事が食べ終わった後、いきなりスキマに落とされた。

そのスキマの中に珍しく紫も一緒に入った。

スキマを抜けると、長い階段前に出た。

長い階段といえば、博麗神社だと思うが、想雅の視界の周りは山ばかりが連なっていた。

とりあえず紫が階段を上って行ったので、想雅も紫について行った。

 

「なぁ、紫ここは妖怪の山か?」

 

「えぇ、そうよ。今回は暇人の想雅のためにある人と戦闘を行ってもらうわ」

 

戦闘ねぇ……まぁ暇つぶしにはなるか……

何も訊かず返事を返したが、案外悪いことではない。

 

「ところで俺は誰と戦闘するんだ」

 

「天狗の頭領の天魔様と戦ってもらうわ」

 

「ちょい待て、それって俺が負けるフラグが立っていないか?」

 

「霊力だけで想雅が勝てる相手じゃないことはわかっているわ。さすがに鬼じゃないわよ」

 

ふぅ、とりあえず安心だな。『聖』と『魔』が使えるだけで偉い違いだからな。

 

「一つ言っておくわ。今回は弾幕ごっこじゃなく、完全な戦闘よ」

 

エェ?ナンデスト。

 

「帰る」

 

想雅は帰ろうとしたが、目の前にスキマが開き、元の場所へと戻ってしまった。

 

「おい。何をする」

 

「そう簡単に帰さないわ」

 

「あのな、俺は何の内容か知らず承諾してしまt「何も聞かない想雅が悪いのよ」……たしかにそうだが……」

 

「幻想郷に帰る前に言ったよね。『男に二言はありません』と」

 

「ウグッ!」

 

あぁ、言ったとも。言いましたとも。

しかし、今回は完全な戦闘、しかも天狗の頭領と、ハハハ……死ぬぜ。

 

「やっぱりあなたはヘタレさんだわ……」

 

「わかったよ!行けばいいんだろ!」

 

「わかればよろしい」

 

そんな会話をしているうちに、門らしき物が見えた。

門の前に、文らしきもの発見。

ちょうど新聞に書いてあった『化け物』というワードのことが聞ける。フフフ……

 

「あややや、紫さんと想雅さんじゃありませんか。ご用件はなんでしょうか?」

 

「天魔様と戦闘をしに来たわ」

 

「わかりました。では私が天魔様のところまで案内します」

 

文は背を向け、門を開けたが、想雅は文の肩を掴んだ。

 

「よぉ、久しぶりだな」

 

「久しぶりですね……って想雅さん痛いです!痛いです!あと顔が笑っていませんッ!」

 

エェエ?ワラッテイナイダッテェェェ?

 

「さぁ、新聞に書いてあった『化け物』と書いた理由を聞かせてもらおうかぁ?」

 

「え、えーと……そのぉ……あ!要件を思い出しましたので、では失礼しますッ!」

 

文は想雅の手から逃れると、一瞬にしてその場を離れた。

 

「逃がすかぁぁぁぁぁ!目標、上空!ただいまから、目標を駆逐するッ!」

 

手に霊力槍を作り、文に向けて放つ。

文は想雅が放った、霊力槍に当たったのか、墜落していくのが見えた。

 

「ふぅ~、とりあえずスッキリした」

 

「いきなり、会って何しているのよ」

 

「俺にもいろいろあったのさッ」

 

「あれ?文様は?」

 

後ろから聞いた覚えのある声が聞こえた。

 

「おう、椛。久しいな」

 

「えぇ、お久しぶりですね」

 

なんだろう、すごく懐かしく感じてしまう。最後に会ったのは1ヶ月前のはずだが。

 

「あ!想雅様~!」

 

屋敷の中から、小さな白狼天狗が出てきた。

そして想雅に飛びついた。

 

「楓も、久しぶりだな。元気にしていたか?」

 

「はい!いつでも楓は元気です!」

 

「そうかそうか」

 

「えへへへ」

 

想雅は楓の頭を撫でてやる。それに楓は嬉しそうに顔を埋める。

 

「とりあえず、天魔様のところまでお連れします」

 

椛は笑っているが、どこか黒いオーラが出ていた

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

目の前に見える館に入るのかと思ったが、館の裏側に行き、そこには階段がありそこを降りて行った。

降りた先は、見覚えのある開けた場所であった。

 

「ここって、藍と弾幕ごっこをやったところじゃないか」

 

見事に切り抜かれた感じがあり、空が青く映え、風も草を揺らしながら通っていた場所は、藍と弾幕ごっこをやったところだった。

その場所に一人の女性らしき人が立っていた。

 

「お待たせしました。天魔様」

 

天魔様と呼ばれた女性は、紫の声に気付いたのか振り向いた。

髪は文のような黒髪であり、腰のところまで伸びており、頭には天狗に見慣れた赤い山伏風の帽子をかぶっており、耳にはヘッドホンらしきものが装着されていた。

服装は、山伏の格好をしており、その上から胸当てをつけており、またその上から長い結袈裟らしきものを羽織っており、胸のあたりにはボンボンがついており、翼には白い布がかぶさっていた。

深緑色でフリルが付いたロングスカートを履いており、赤い靴は底が天狗の下駄のように高くなっている。

手には刃が大きい槍のような剣のようなものを持っていた。

 

「待っていたぞ、スキマ妖怪。ほほう、この少年が……」

 

天魔と呼ばれた女性は、想雅をじろじろ見た。

 

「は、初めまして、天魔様。俺は天上想雅です」

 

「うむ、私は天魔だ。今回の戦闘は楽しみにしておるぞ」

 

わぁ……なんかすごく期待されているし……

 

「それじゃぁ、そろそろ始めるとするかな」

 

天魔は想雅に背を向け、定位置に移動した。

想雅も後に続くかのように、移動した。

 

「椛!試合開始の合図を出してくれ」

 

「あっ、はい!」

 

天魔は椛に合図を任せた。

一時の無言……風の音と、草が擦れる音しか聞こえなかった。

 

「初めッ!」

 

椛の声が、耳に届き想雅は、天魔の方へ走って行った。

 

「真っ向勝負だな。おもしろいッ!」

 

天魔も想雅と同じく、翼を広げ、想雅に向かっていく。

2人の刃がぶつかり、火花を散らした。

 

「なかなかいい太刀筋じゃないか。想雅よ」

 

「何度もそのことを言われまくってきたが、刃が当たったことなんてほとんどないぞ」

 

過去を振りかえしてみれば、刃なんて当たったことなんてほとんどない。

まず、大天狗との戦闘で、何回か。具体的な数はわからない。そして3ヶ月という長い月日が流れ、ルーミアが無表情で襲い掛かってきたときに、1回。アウナスのときは弾幕で倒したから……え?刃が当たったのって1回だけ……ハハハ、なんかの間違えじゃないのか……

 

「ふん、嘘をつくとはな」

 

「いや嘘じゃないです。思い返してみれば、ほとんど当たっていないっス」

 

刃を押しのけ、後ろに下がる。

 

「逃がさないぞッ!」

 

天魔がもっていた、大きな剣が変形していき、銃の形へと変わっていった。

 

「あれは銃剣だったのか!?」

 

「正解ッ!」

 

天魔が銃の引金を引き、銃弾を放つ。

想雅は左に避けたが、左肩に当たってしまい、その衝撃で後ろに倒れてしまった。

 

「いてぇぇぇぇぇ!か、肩がぁぁぁぁぁ……って」

 

想雅は左肩を触ってみたが、痛みはあるが、肩から血は出ていなかった。

 

「さすがに、殺しはせんよ」

 

ハハハ、ありがてぇな……

天魔は銃から剣へと変形させ、想雅の方に向かって来た。

想雅は手に、霊力槍を出現させた。そして天魔の方に投げた。

 

「……ッ!」

 

天魔は霊力の塊が向かってくることに気付き、体を捻り、避けた。

しかし、想雅は霊力槍を投げるのをやめず、作っては投げ、作っては投げの繰り返しだった。

 

「数が多いな。ならッ!」

 

天魔が剣を振るうと、暴風が起こり霊力槍が木端微塵に散ってしまった。

風が収まった後、天魔の目の前に想雅の姿が消えていた。

 

「消えた……いや、光速の動きで移動している」

 

天魔は、想雅が光速で移動しているのに気づき、剣を自分の後方へと振った。

 

「クソッ!見破られたかッ!」

 

「速いのには慣れているんだよねッ!」

 

天魔は想雅の刀を払い、剣を振り下ろす。

想雅は刀で、向かい受け止めたが、案外にも力が強く、地面にクレーターができた。

 

「辛い……『魔』の力よ!」

 

想雅は『魔』の力を、刀身と自分の体に流し込み大勢を保った。

そこから、天魔の剣を払い、斬りかかる。

 

「……ッ!」

 

想雅はまだ、光速の状態のため、斬撃も速くなり、外野からは、動いていないように見えていた。

 

「も、椛先輩……すごいですね」

 

「そうですね……」

 

「いてててて……まったく想雅さんは容赦がありませんね……」

 

紫の隣に、文がボロボロな姿でやってきた。

 

「あら、生きていたのね」

 

「簡単に殺さないでくださいよ。とりあえず見ている限りでは、想雅さんの方が有利に見えますけど……」

 

「それはどうかしら?」

 

文は紫が言ったことがわからなかった。だが紫は『閃光の言霊』の弱点を知っているからである。

想雅は斬撃を数発入れた後、自分の腕が限界を感じられた。

そして、最後の一撃に『魔』を思いっきり流し込み、斬りかかった。しかし天魔は受け止めるのではなく、後ろに避けた。

 

 

ゴォォォォォォォォォォンッ!

 

 

想雅の刀が地面まで到達し、大きな地響きと共に、砂煙を巻き上げた。

 

「はぁ……はぁ……、弱点を知ってしまったから、少し気が引けたな……」

 

想雅はここで腕を壊すことを恐れた。腕が使い物にならなければ、想雅の負け同然だからだ。

 

「しかし、土煙が上がり過ぎだな」

 

大きな砂煙が上がったおかげで天魔の姿を確認することができない。

しかし、ガチャンという音が聞こえた。

 

「剣を銃に変形させたか……」

 

姿は確認されなくても、変形の音が、聞こえた。

つまり、この煙の中にいる。

想雅は地面を力いっぱいけり、上空に下がったが、

 

「なッ!ガァァァァァッ!」

 

想雅は絶句し、声を上げた。

この砂煙の中、銃弾が想雅の胸、左わき腹、右足に一発ずつ同時に当たったのだ。

想雅はそのまま地面に落ち、ほどなくして暴風が起こり天魔の姿が見えたときに理解した。

 

「だから同時に銃弾があたったのか……」

 

天魔の翼にかかっている白い布のところから5つの銃が出ており、そのうち3発が想雅にあたったのだ。

 

「だいたいね、君の場所は分かっていたんだよ。砂煙が上がった後は、敵がどこから来るのかわからないからその場にいた方がいい。しかしね、逆にこっちから音を出すと、君は私がいる場所から遠ざかるために後ろに下がる」

 

「すべてお見通しだったのか……」

 

「いやいや、すべて推測だよ」

 

その状況を見ていた文は、

 

「紫さんが言った通り、まったくの有利じゃないわけだったですね」

 

「えぇ」

 

「なんであの光速の動きをやめたのでしょうか?」

 

「想雅の場合、あの能力には弱点があるのよ」

 

「弱点?」

 

「人間や私たち妖怪は限界というものがあるでしょう。想雅は、その人間の限界を超えた速さで動いているのよ。そのままやり続けていたら体に限界が訪れ、その場で倒れるわ」

 

「そうですか……ところであの空に浮いているものはなんでしょうか?」

 

文が指をさした先には、何かが浮いていた。

その何かが、想雅と天魔に向け急降下してきた。

 

「立てるか?」

 

「あぁ」

 

想雅はゆっくりと立ち上がった。

しかし、想雅、天魔はその急降下してきた何かに気付いてはいない。

 

「想雅さん!天魔様!そこから離れてくださいッ!」

 

文の声が、想雅、天魔の耳に届いたが、想雅には「何言っているんだ?」ということしか思えていなかった。しかし、天魔は上空から何者かの気配を感じ取った。

 

「想雅!そこから離れろッ!」

 

しかし、遅かった。

何かが地面まで到達し、大きな地響きと、砂煙があたりを襲った。

天魔はギリギリのところで気付き後ろに下がったのはいいが、想雅は反応したのはいいが、銃弾が当たったところが痛み、その場に崩れ、砂煙に巻き込まれてしまい、吹き飛んでしまった。

 

 

 

 

 






天魔様はあんな感じでよかったのかなぁ……
天魔様に関する情報が少なすぎて、ちゃんとできたかどうかわからない。


感想待っています!
次回もお楽しみに!



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黄金の剣を持てる者


さて、何者かの登場です。
想雅と、天魔様の戦闘に乱入してくるなんて、度胸あるねぇ~

では、ごゆっくり。




想雅、天魔に向け急降下してきた何かは、砂煙の中で立ち上がり、暴風を起こした。

砂煙が、飛ばされ何かの姿が確認できた。

その者は、黄金に輝く毛並を持っており、(たてがみ)までもが太陽の光により輝いている。

翼も、黄金に輝いており、どこか硬い感じにとらえられた。右腕には、黄金の剣を持っていた。

 

「フフフ、やはり来て正解だったな」

 

黄金の獣は、嬉しそうに肩で笑っていた。その行動を見て、想雅以外の人たちは身構えた。

想雅は、天魔との戦闘の痛みと、暴風に飛ばされた痛みがあるため今は立ち上がることができない。

黄金の獣は、赤く恐ろしく光った双眼で、想雅を見た。

 

「カッ!小僧は死んだのかぁ?まぁいい、おい、そこの女。俺と一戦交えようぜ」

 

黄金の獣は、視線を天魔に変えて言った。

いや、死んでねぇぞ。まだポックリ行く歳じゃねぇんだよ。

 

「それは無理な相談だ」

 

「そうかッ!」

 

黄金の獣は、天魔に向け突進していった。

天魔は、黄金の獣の行動に一瞬戸惑ったが、剣で応戦した。

 

「おい、貴様。私は断ったはずだ!」

 

「フン、知ったことか。俺は強き者を求めここに来た。戦わず引き下がることなどできねぇんだよ!」

 

黄金の獣は、天魔の剣をはじき、斬撃を繰り出す。

斬撃は遅いのだが、一発一発に、重みがある攻撃をしてくるため、天魔の剣が折れそうな勢いだった。

 

「クッ……」

 

「おらおらどうした女ぁ?俺をあまり期待外れにするなよぉ?」

 

やばいな……天魔様が押されている。クソッ!なぜこんな時に立てないんだ!俺の体は!

想雅は、立とうとするが、思い通りに体が動かなかった。

霊力はまだあるのに……体が動かん。意識が朦朧としていやがる。

飛ばされた後、頭を地面に打ち付けたせいで脳震盪が起こったのだった。

 

「はぁぁぁぁぁ!」

 

黄金の獣の後ろから、椛が斬りかかろうとした。

しかし、黄金の獣の翼がそれを防いだ。

 

「なッ!」

 

「あまいあまい、その程度では俺の体に傷は与えられんぞ。俺の翼は、剣のように鋭く、盾のように硬いからなぁ!」

 

椛の剣を払い、体を捻らせ、天魔と椛に翼で斬ってかかる。

天魔は、隙を見て後ろに下がったが、椛は盾でガードするが吹き飛ばされてしまった。

 

「くぅッ!」

 

椛が飛ばされている途中、文が空中でキャッチし、そのままゆっくりと地面に降ろした。

 

「文様、あれはいったい……」

 

「さぁ、わかりませんね。ただし一つ分かることがあります」

 

文は、黄金の獣を見ていった。

 

「あれは外の世界から来た者(・・・・・・・・・)ですよ」

 

天魔と互角な戦いをしているものなど、文は聞いたことがなかった。

もしあったとしたら、文の情報網に引っ掛かるはずだからだ。

 

「紫様ッ!」

 

藍が紫の元へやってきた。

 

「あら、藍。遅かったわね」

 

「申し訳ございません。結界を治すのに時間が掛かりましたので」

 

「まぁいいわ、それよりアレの正体はわかるかしら?」

 

「いいえ、あんな黄金に輝く獣人なんて見たことがありません」

 

その黄金の獣は、嬉しそうに高笑いした。

 

「ハハハハハ、いいぞいいぞぉ!何しても攻撃を通せないというその皮肉顔ぉぉぉぉぉ!」

 

「クッ!名を名乗らずに戦いに挑むとはな!戦士としての恥だぞ!」

 

「フンッ!負け犬の遠吠えよ!まぁいい、戦いに挑んだお前の言葉に免じて教えてやろう。俺の名は、クリュサオルだぁぁぁぁぁ!」

 

クリュサオル……奴は、ポセイドンとゴルゴーン三姉妹の一人メドゥーサの息子。ペルセウスがメドゥーサの首を斬ったことにより、その血が海に流れ込み生まれた。

双子であり、兄がペガソスである。

黄金の毛並みと鬣を持っており、翼は剣のように鋭く、盾のように固いと、奴が言った言葉に当てはまった。

黄金の剣は生まれた時から持っており、それをよく振り回したということから、剣術においては、よっぽどの手慣れということが分かる。

想雅の頭にある言葉がよぎった。

 

―――――決して朽ちない肉体を持っている―――――

 

想雅はその言葉を思い出したが、意識がまだ朦朧としているため、天魔たちに伝えようとしても、言葉がなかなか出てこなかった。

奴の翼が強靭なくせに、その分朽ちない体を持ている。アウナスと同じくチートレベルな事だった。

 

「名も名乗ったことだし、さっさとかたずけるか」

 

クリュサオルは、黄金の翼を広げ、天魔へと向かった。

天魔は剣を銃に変形させ、クリュサオルに向け撃った。

クリュサオルは剣ではじき、天魔の懐へと入り、みぞに一発、拳を入れた。

 

「クハッ!」

 

「カカカカカ!楽しかったぜ。だがもう、さよならだ!」

 

クリュサオルは愉快そうに笑い、体を回転させ、翼で天魔に攻撃した。

天魔はギリギリのところで銃でガードしたが、体勢が保つことができず、吹き飛ばされた。

 

「まずは、一人……次は倒し損ねたアイツだな」

 

クリュサオルは椛に狙いを定めた。

 

 

ドォォォォォン!

 

 

「……ッ!」

 

クリュサオルは後ろからの銃声に気付き、翼で弾丸をはじいた。

 

「部下には……手を出させん……」

 

ボロボロになった天魔が銃でクリュサオルに向け放った。

 

「まだ死んでいなかったか……なかなかしぶといな」

 

クリュサオルは呆れた顔で、天魔の方に飛んで行った。

天魔は銃で撃ち続けるが、クリュサオルの剣さばきですべての弾丸がはじかれた。

クリュサオルが目の前に来たときは、翼に隠してある5丁の銃で撃つが、翼にすべてはじかれた。

 

「クッ!」

 

「最後まで手こずらせやがって……痛みも無く殺してやる」

 

クリュサオルは黄金の剣を振りかざし、天魔に向け斬りかかる。

天魔は剣でガードしようとするが、銃のままらしく変形に間に合わない。

天魔が終わったと思っていたが、

 

 

ガキィィィィィン!

 

 

「……ッ!」

 

天魔の目の前には、脳震盪で意識が朦朧としていた想雅が、『閃光の言霊』を使い天魔のもとに行き、クリュサオルの剣を受け止めていた。

 

「小僧……生きていたのか」

 

「簡単に殺すな……まだポックリ逝く歳じゃねぇんだよ……」

 

まだ、頭はクラクラするが、だいたいは動けるようになったな、しかし、言葉が出にくいと言うのはなぁ……『言霊』使うときに言いにくいんだよな。どうにかならんもんかねぇ……

想雅はクリュサオルの剣をはじき光速で斬りだす。

 

「ぬ、ぬぅぅぅ!」

 

クリュサオルは想雅の光速の動きに目が追えず、翼で自分の目の前を覆うだけだった。

それでも、想雅は容赦しない。刀身に『魔』の力を込め、斬りにかかる。

 

「ガッ!」

 

クリュサオルの黄金の翼が、想雅の斬撃により傷がつけられた。

しかし、それだけでは想雅は止まらない。

クリュサオルの後ろをとり、つかさず斬撃を撃つ。

 

「グガァァァァァ!」

 

クリュサオルは倒れるも、地面に倒れるのではなく空中に飛び、体勢を保った。

翼に傷がつけられてなお、飛べるとはさすがだな……感心している場合じゃないが……

 

「小僧……俺の体に傷をつけたな……」

 

「俺の能力はお前たち神話の奴らに、効果覿面(こうかてきめん)だな」

 

「そうか。俺を傷つける能力か……おもしろい、ククククク……」

 

クリュサオルが不気味に笑い始めた。

 

「おもしろいぞぉぉぉぉぉ!小僧!俺はこういう刺激的なものを求めていたんだよぉぉぉぉぉ!」

 

クリュサオルは想雅に向け嬉しそうに言った。神話の奴らってこんなに戦闘狂なのか?

 

「いいぜいいぜいいぜぇぇぇぇぇ!」

 

クリュサオルが猛突進で想雅に向かった。

想雅は来るかと思ったが、クリュサオルが急に体勢を崩し、地面へと落下していった。すれすれのところでクリュサオルは体勢を戻し、自分の左足に目をやった。

 

「左足に矢か……どこかに隠れているのか?」

 

クリュサオルはあたりを見渡すが、矢を放った人物は視界に入らなかった。

それもそうだ。矢を放った人物は、上空にいたからだ(・・・・・・・)

 

「……ッ!上か!」

 

気付いた時はもう遅かった。

すでに3本の矢がクリュサオルに向け飛んできていた。

クリュサオルは避けるが、2本、自分の右肩と左胸に刺さった。

 

「ガァァァァァ!」

 

膝が地面に着き、クリュサオルが叫んだ。

上空に飛んでいた者はクリュサオルに向け言った。

 

「クリュサオルよ。お前は己の欲のために自由が過ぎている。身をもって己の愚かさを知れ!」

 

クリュサオルは上空にいる何者かを睨めつけた。

 

「貴様は……」

 

 

 

 

 

 





クリュサオルに向け矢を放った人物は誰か?
しかも、クリュサオルは知っていそうな口ぶりだったが……

ポセイドーンとゴルゴーン三姉妹の一人メドゥーサの息子のクリュサオルの登場です。
こいつは、RPGなどではよく黄金の鎧をまとった騎士の姿で登場するが、それは実は誤りで、本当の姿は金色の毛並みと黄金の鬣を持ち、翼も金色の天馬なのですよ。
ここでは、あえて黄金の獣にしていますけど、馬だとぶっちゃけなんかなぁ~なんだよね。
黄金の剣を持っている。それって二足歩行の馬になるわけでしょ。正直キモいと思うんだよねぇ。
というわけで独自の解釈が含まれる場合がありますが、なにとぞよろしくお願いします。

感想待っています!
次回もお楽しみに!



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半神の英雄



さぁ、第3者の登場です!
その人物はクリュサオルの事を知っており、またクリュサオルもその人物の事を知っています。
……っていうか、想雅が幻想郷に来てから、異様に巻き込まれやすくなったな。
ハッ!まさかこれが想雅の不幸の力かッ!

感想ありがとうございました!
では、ごゆっくり。




クリュサオルは、上空から地上へと降りてくる者も凝視した。

太陽の輝きを思わせる山吹色の髪、顔立ちもよく、高身長で、恐れを見せない(たくま)しい金色の瞳。眉目秀麗の美青年が、翼が生えた白き馬に乗って、地面に倒れこんでいるクリュサオルを凝視しながら言った。

 

「貴様は、まだ暴虐を続けているのか。その傲慢さを恥とは思わぬのか?」

 

「フフフ、自分の欲を満たすことが恥とは思わんねぇ。しかしまぁここまで、貴様が追ってくるとはな」

 

「怪物を殺め、邪を屠るは我が宿業と言えること、これこそが私を英雄たらしめる偉業であり、動機でもある。そのことを止めるのは、何人(なんぴと)たりとも許されぬことなのだ」

 

「クク、ご立派なことで」

 

クリュサオルは笑いながらも、体に刺さっている3本の矢を取りながら立ち上がった。

 

「兄者よ、まだ英雄の乗り物になっているのかぁ?優雅な外見とは裏腹に気性の荒い兄者がぁ!ハハハッ、皮肉なもんよっ!」

 

クリュサオルが天馬の方を向き、皮肉そうに言った。

兄者って……ペガソスのことだよな。言葉話せるのか?

 

「フンッ!貴様のような愚弟が俺に言えたことか。その骨の髄まで達しない貴様の頭の方が皮肉と思える」

 

しゃ、しゃべったぁぁぁぁぁ!

普通の馬だと思っていたが、天馬って話せるのか!?

 

「兄者にも嫌われたものだな……」

 

クリュサオルは空を見ながらも、皮肉そうに言った。

青年は、天馬から降り、懐から剣を取り出した。

 

「クリュサオル、貴様に選ばせてやろう。大人しく戻るか、もしくは私に倒され、その傲慢さを恥として知るか。どちらがよい」

 

剣をクリュサオルに向け、忠告をした。

 

「そんなこと決まっているだろうが」

 

クリュサオルは肩で笑いながら、狂った表情で青年に向け言った。

 

「貴様を殺して、傲慢さを(ほま)れと知るッ!」

 

クリュサオルは黄金の翼を開き、青年へと突進していった。

黄金の剣を振るい、青年の頭部へと襲い掛かったが、青年は黄金の剣を自分の剣で、防ぎ、前へと薙ぎ払う。

クリュサオルは上空に避け、再び青年へと襲い掛かった。

青年は黄金の剣を受け止めるのではなく、右に避け、クリュサオルの後ろをとり、尽かさず背中に斬撃を入れ込む。

クリュサオルは途端に翼で青年の剣を防ぎ、地面に着地した瞬間、翼で払い、後ろへと下がった。

 

「さすがは我が母メドゥーサを屠ったことだけはあるなッ!」

 

「単に貴様の腕が鈍っているだけではなかろうか」

 

「フンッ!減らず口よッ!」

 

クリュサオルは青年に突っ込むが、青年は弓を取り出し、背中に背負っている矢筒から矢を3本取り出し、クリュサオルに向け放った。

クリュサオルは自分の翼で防ぎながら青年へと迫った。しかし、目の前には青年の姿は視界の中には映らなかった。

 

「どこを見ておる」

 

「……ッ!」

 

青年の声で気付くも前に下がるが、その時に青年の剣が左足を斬り、空中で体勢を崩し、地面へと倒れた。

 

「貴様は剣の腕は良いが、戦術において全くの素人だ」

 

「過程や、方法なんぞ、ただの飾りにすぎぬ……」

 

「それが素人の考え方なのだよ」

 

クリュサオルは立ち上がり、自分の翼を広げ、空へと飛び立った。

 

「……逃げるつもりか」

 

青年は矢を3本取り出し、同時にクリュサオルに向け放った。

 

「ガァァァァァ」

 

矢はクリュサオルの脇腹、足、腕に1本ずつ外さすに刺さった。

クリュサオルは落下していき、地面に到達した。

青年は、クリュサオルが落ちたところまで行き、ドスのきいた声で言った。

 

「怪物は英雄に屠られるのが運命よ」

 

しかし、クリュサオルの意識はすでに失っていた。

青年はペガソスを呼び、背中にクリュサオルを乗せた。

 

「では、目的も果たせたし、そろそろ行くか」

 

「しばし待ってくれ」

 

青年はペガソスから離れ、想雅のもとへと近づいてきた。

しかし、青年は想雅に目もくれず、天魔の方へと歩みよった。

 

「乙女よ、大丈夫か?」

 

青年は天魔に手を差し出した。

天魔は青年の手を払い、青年に向け言った。

 

「私はあなたには助けてもらってなどいない。私は向こうの少年に助けられたのだ」

 

「フフフ……ふられてしまったか」

 

青年は笑いながら、次は紫たちがいるところに歩み寄った。

 

「想雅」

 

「ん?どうしましたか?」

 

「手を貸してくれ」

 

天魔は想雅に手を差し出した。

 

「わかりました」

 

想雅は天魔の手を引っ張り立たせた。

青年は、紫の方へ寄り……なんか口説き始めたぞ、あいつ

 

「なぁ、あいつどう思う」

 

天魔から青年に関する疑問がきた。

どう思うって……どう見ても女たらしの男にしか見えん……美青年で女たらしって、もうサイコーなほどのプレイボーイじゃないか。美形な顔立ちしやがって。

 

「天魔様の次に、紫を口説くと言うことは相当の女たらしですね」

 

天魔様は美女だから口説きたくなることはわかるが、紫は外見は美女だが生活面がダメダメなんだよなぁ……アイツ人を見かけで判断しているのか?

 

「ますます、面白い乙女だな、君は」

 

「離してちょうだいッ!」

 

プレイボーイは紫の腕を掴んだ。

アイツ、たぶん失敗したな。しかも、強引な手にかかったし……

紫がこっち向いたし、なんか言う気だな

 

「想雅ッ!どうにかして頂戴ッ!」

 

「は!?」

 

なぜそこに俺が出る!?どうにかしろって……

 

「乙女よ、あの少年とはどのような関係なのだ?」

 

うわぁ……プレイボーイの目が鋭くなっているし、っていうかこっち見んな!その美形の顔を見せるな!

しかしまぁ、めんどくさいことになりそうな予感がプンプンするぜ。

紫が小声で言った。

 

「……夫よ」

 

「「「「え?」」」」

 

紫が何か言ったと思うが、想雅と天魔には聞こえなかった。

そして、しばしの沈黙……

 

「「「「えぇぇぇええぇぇぇえぇえぇぇえぇぇぇぇぇ!」」」」

 

ふぁっ!?何!何なんだ!向こうで何が起こったんだ?

椛はあたふたしているし、楓は拍手していたし、藍は目を見開いているし、文はなんかメモ帳らしきものにメモっているし……プレイボーイは「ほほう……」とか言って頷いているし……

何だろう……予想が的中したような気がする。

 

「聞こえるか、少年」

 

少年……あぁ俺の事ね。その場に男は、プレイボーイと俺しかいないか。

 

「ここはひとつ、私と決闘をしないか?」

 

「はぁ?決闘」

 

呼ばれた瞬間、想雅はなんでそんなことしなきゃならんのだと思った。

それもそのはずだ、紫が言った言葉は想雅には聞こえていなかったのだから。

 

「少年が私に勝利すれば、この乙女の事は諦めよう。逆に少年が負ければこの乙女は私が貰っていくぞ」

 

「いやぁ……それ以前に貰うっていうのは無理があるだろ。立場的にも、人物的にも……」

 

貰うって、ここから紫が居なくなるっていうことだろ。

まず紫がいないと、幻想郷は成り立たんだろ……あと、生活面を見てみろ。いろいろとまぁ……めんどくさいぞ。

 

「ほほう……妻を取られるのが怖いのか?」

 

「はぁ?なんで紫が俺のt……」

 

なんか紫がポーカーフェイスでこっちにメッセージを送っているな。え~と、なになに……

 

(ちょっと!私がどうなっても構わないの!?)

 

(はぁ!?まずなんで紫が妻なんだ!?)

 

(そ、それは、まぁ……成り行きで……)

 

(成り行きでも限度っていうことがあるだろ!しかもプレイボーイと決闘って……)

 

(いいじゃない!美しい妻ができたんですから!)

 

(まぁ、たしかにいいけど……ってそういうもんじゃないだろッ!)

 

(いいのはいいのね……とりあえずここはのって頂戴!)

 

のって頂戴って……だからあんな大声で驚いていたのか、っていうより文が書いていたメモってこのことか!情報が漏れる前に早く始末しなければ……おっと、物騒なことを言ってしまった。正しくは口封じだ。

 

「……で、少年。どうなのだ?」

 

どうなのだと言われてもなぁ……まず、紫が居なくなれば幻想郷は成り立たなくなってしまう。しかもよりによって紫が妻って、まぁ悪くはないな……そんなことを考える俺の頭がどうかしているなぁ!?

 

「あぁ、わかったよ。紫が居なくなれば、こっちはいろいろと困る物でね」

 

プレイボーイのことも考えて、紫の面倒は出来やしないだろう。

 

「そうだろう。特に夜とかな。ハハハハハッ!」

 

ななななな、何言っているんだこいつはぁ!?

 

「とりあえず、今ここでやり合うのは私は構わないが、少年の体が万全な状態で戦いたい」

 

「優しいもんだな……」

 

「万全な状態で戦わなければ、我の英雄としての誇りを汚すことになる。一人の英雄として、少年と正々堂々な戦いをしたいのよッ!」

 

アウナスと違い根はしっかりしているのだな……いきなり戦闘だとこっちが負ける確率がほぼ、いや完全だろう。

 

「でだ、少年。万全な状態にはどれくらいかかる」

 

「霊力のことも考えて、体の回復の事も考えて、ある(・・)ことも試してみたい事も考えて……だいたい1週間ぐらいだな」

 

「うむ、わかった」

 

プレイボーイはペガソスに向かい、背中に乗った。

 

「それでは1週間後、またここに来るとしようッ!」

 

そして、ペガソスが天へと駆け上がり、プレイボーイが想雅たちに聞こえるように言った。

 

「少年よ、覚えておけ!我の名はペルセウスだ!ほかの名もあるが、ここではそう名乗らせてもらう!では、さらばだ!」

 

ペルセウスは自分の名を名乗り、雷光と共にその場から消えた。

英雄神か……なんだろう幻想郷に来てから、異様に不思議なことに巻き込まれやすくなったな。

 

 

 

 

 






ペルセウスのとーーーーーうじょう! (゜ー゜☆キラッ

この英雄の設定を説明しましょう。
 ・美男子=プレイボーイ、女たらし
                 以上!

え?それだけか!って、いやいやここで能力の事話したらつまらなくなるでしょ!
あと、次回でこの章は終わります。

感想待っています!
次回もお楽しみに!



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英雄と神格化の人間

さて、ペルセウスと想雅の白熱した決闘の幕開けだぁ!

感想ありがとうございました!
では、ごゆっくり。




ペルセウスと1週間の一時休戦の約束をした。さすがに英雄とか、誇りとか五月蠅かったのでさすがに裏切るということはまずは無かろう。

その日は、『言霊』をあと1回使うと、バッタンキューになるため、夕方ぐらいから食事を取らずに寝た。

朝起きた後、朝食を取り、()の物をペルセウス戦で試したかったので、紫に紅魔館へスキマで落としてくれた。もう、普通でお願いしますよ……行くたびに体が痛むので。

そこから紅魔館へとひきこもった。心配はしなくていい、ちゃんと日光浴びたから。図書館の紫もやしの人じゃないから。

一週間後、決戦の時がやってきたが、時間の指定をしていなかったため、いつそこに向かえばいいのかわからないので、天魔様の屋敷で待機していた。

 

「なぁ、想雅よ」

 

「なんですか?」

 

想雅がお茶を飲んでいるときに、天魔様から声がかかった。

 

「スキマ妖怪と婚約していることは、本当なのか?」

 

「ブッ!」

 

ちょ、いきなりすぎる。しかもお茶を飲んでいる最中だぜ。噴き出たわ!

まぁ、思えば、ペルセウスが帰った後、すぐにスキマへと自由落下していったからな……天魔様、椛、楓、文にもまだ嘘だと言うこと言っていなかった。っていうか新聞にそのこと書いたのか?

まだ書いたという形跡はまだなかったが、見つけたら即嘘だということを言おう。

 

「い、いや、嘘ですよ。紫が幻想郷にいなくなると、いろいろヤバいじゃありませんか。そこは、あえて紫の口車にのったのですよ」

 

「そうか、そのことを部下に伝えておく。そうでもしないと文の奴は記事に書きそうだからな」

 

「そうですね……」

 

想雅と天魔が話していると、

 

「天魔様。決戦の場に、雷光と共に男が現れました」

 

その知らせを聞くと、想雅は立ち上がり、天魔、椛、楓、文とその決闘の場まで行った。その間に天魔は椛たちに、「紫は妻ではないと」説明してくれた。椛はよかったと思うように胸をなでおろし、楓は「そうですか~」と言って素直に納得してくれた。文というと、納得はしたと思うが、衝撃なスクープだったため捨てきれていない状態だった。まぁ、そのまま掲載されたときは……どうなるのかわかるよな……

紫はペルセウスが破ってきた結界の修復をしてから来るらしい。

決戦の場は綺麗な満月が見えており、その光が美しく照らしていった。

かの英雄はペガソスにすでに降りており、さわやかな笑顔と共に想雅に言った。

 

「ついに再開できたな、少年よ。このときを待ちくたびれたぞ」

 

その顔をこっちに向けるな。夜なのにまぶしく思えるわ!

想雅はペルセウスの前まで歩いていった。

 

「あぁ、こっちも待ちくたびれた。お前を待つのにな」

 

はぁ……こんなに待つのなら、まだ紅魔館にこもるんだったなぁ……

まぁ、満月が出ているだけでも決闘らしいな。こればかりはよかったと思える。

 

「乙女の姿が見当たらないのだが」

 

「ん?あぁ、紫の事か。あいつならどこかの英雄様が破ってきた結界の修復をしているところだな」

 

「ハハハッ、それはすまなかったな」

 

ペルセウスは高らかに笑い、ペガソスを後ろに下がらせた。

 

「あら、満月の日に決闘なんて素敵じゃない」

 

想雅の後ろからレミリアの声が聞こえた。

 

「なんだ、来たのか」

 

レミリア以外にも、咲夜、パチュリー、小悪魔、フラン、ルーミアがいた。ていうより今回の戦闘、人が多いな。

 

「あんた人の家に来て『1週間、ここにこもらせてくれ』とか言ったおかげで、理由が気になってしょうがなかったのよ」

 

「あぁ、その時はすまなかった。あいつと戦うための力が欲しかったからな」

 

想雅はペルセウスへと目線をやる。

 

「力が欲しいと書いていたけど、私の本を読んで力になるの?」

 

パチュリーから疑問そうに質問された。

 

「俺にとっては相当な力を手に入れたと思う」

 

それもそうだ。チャラ神に言われた通りに読むことを繰り返し続けていた。回数を重ねていくうちにそのことが頭の中に入っていき、器の中に水がたまっていく感じが捉えられた。

 

「あいつあら強大な神力が感じられるわ。それでも戦うというの?」

 

「あぁ、そうだ」

 

戦わなければ、紫が居なくなり、幻想郷が保てなくなってしまうからな。

 

「少年ッ!準備はいいかッ!」

 

ペルセウスから孤高な声が聞こえてきた。

 

「それじゃぁ、そろそろ行ってくる」

 

想雅はその場から離れようとすると、フランが服の裾をつまんできた。

 

「……死なないでね」

 

「あぁ、生きて帰るさ」

 

とりあえず、殺されるのは勘弁だな。英雄だから殺すまではいかないと思うことを願おう。

 

「想雅。がんばって」

 

「あぁ」

 

ルーミアから声がかかり、想雅はそれに強く頷いた。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

夜空に、想雅とペルセウスが移動していた。っていうかペルセウス、ペガソスいなくても飛べるのかよ!なんだよ、かっこよく見せたいわけか!美男子以上にかっこよく見えるわ!

ある地点まで到達すると、ペルセウスは鞘から剣を出し戦闘態勢を取った。想雅もそれに続き、鞘から刀を取りだした。

 

「美しき満月の夜。我にふさわしき舞台だな」

 

「そうだな。お前のその美顔がよく映えていて、余計に美しく見えて腹が立つ」

 

「少年もその美しい顔を持っているではないか」

 

「あんたに褒められても、ただの嫌味にしか聞こえないけどな」

 

「クククッ、よく回る舌だなッ!」

 

ペルセウスは剣で斬りかかるのではなく、弓を出現させ、矢を撃ってきた。

しかもそれは速く、矢は確実に想雅を狙ってきているため、直感で避けなければなかった。

 

「避けてばかりでは、我に傷を1つも与えることはできぬぞ」

 

想雅は、霊力槍を作り出し、ペルセウスが放った矢へと投げる。

しかし、矢は速いため想雅の動体視力では追いつけず、なかなか落とすことができなかった。だが、矢を撃ち落とせなかった霊力槍は、ペルセウスへと一直線に向かっていく。ペルセウスは避けながら想雅へと矢を放っていく。さすが英雄だと言うだけはあるな。おいおい、感心している場合じゃないぞ。

 

「なかなか当たらぬか……」

 

ペルセウスは3本の矢を構え、想雅へと放った。

想雅はは1本目を避けることはできたが、同時に来たためか2、3本目は避けられず、顔と足を掠ってしまった。

 

「ふむ、3本の矢は同時に避けることができないか」

 

ペルセウスは同じく、3本の矢を放った。

 

「クッ!やはり来たか。拘束『龍王の威光』」

 

想雅の目が赤く光り、矢の動きと、ペルセウスの動きを拘束した。

 

「ほほう、我と矢の動きを封じたか。だが、この程度ッ!」

 

ペルセウスは力任せに腕を振るい、想雅の拘束を解いた。

 

「なっ!」

 

想雅は今まで力任せに破られたことが無いため、正直驚きを隠せなかった。

おいおい、マジかよ……英雄様マジパネェッス。

 

「英雄は敵の前では立ち止まることは許されない。英雄は常に孤高であるべきだ」

 

ペルセウスの拘束が解かれたとしても、矢の動きは解かれてはいなかった。

想雅は3本の矢の向きをペルセウスに向けた。そして、拘束を解いた。

矢はペルセウスの方へ向かい、ペルセウスはすべての矢を剣で払おうとしたが、1本だけは払うことができず、体を捻らせ避けた。

 

「少年よ。我の矢に何かしたか」

 

「あぁ、強力な力を流し込んだ」

 

3本の矢に『魔』の力を流し込んで拘束をといたため、普通の矢の力を強力に上げた物が向かってくるというのにもかかわらず、ペルセウスは2本は払いのけたのだった。

そのペルセウスはどこか面白そうな顔をしていた。

 

「弓で戦っても何も面白味もない。次は我が剣で戦おうぞ」

 

ペルセウスは弓をしまい、鞘から剣を取り出した。俺的には最初からそうして欲しかったよ。

想雅は体と刀身に『魔』の力を込め、ペルセウスへと向かった。

2人の刃が互いに火花を散らした。どちらも互角に見えるが、相手は英雄。どう考えてもペルセウスの方が1歩、2歩いやそれ異常に上手(うわて)だった。

 

「剣は戦士の象徴。少年は戦士ならば、剣のような鋭く硬い覚悟を持っているであろうッ!」

 

「あぁ、俺は覚悟をしてこの決闘に挑んでいる。決闘に勝利するということは、逆に負けるということも覚悟して来ている。だが、俺は負けない。負けてはいけない。この決闘に勝利するッ!」

 

「よい覚悟だッ!」

 

ペルセウスは想雅の刀を払い、斬りかかろうとした。想雅は払われた力を利用し、自分の体を回転させ剣を受け止める。ペルセウスは足を使い想雅に攻撃を仕掛けてきた。想雅は足で防御するが、後ろに蹴り飛ばされてしまった。

 

「騎士の名において必要とされる必中の矢よ。決して逃すな、故に悪しき物をを射抜け。

聖矢『フェイルノート・スターダスト』」

 

『聖』を込めた弾を上空に打ち上げ、一定の高さまで来ると拡散し、無数のレーザーを落とした。

すべてはペルセウスに向けて、必中させる。しかし、ペルセウスは無数のレーザーを剣で薙ぎ払いながら避けていた。

 

「追尾機能搭載レーザーもこのありさまかよ……」

 

無数のレーザーはペルセウスによってすべて避けられ、消滅させられた。

 

「時間稼ぎなど無駄なことだ」

 

「俺は時間稼ぎではなく、倒す気でやっているのだがな」

 

アウナスの時は、奴が異常なほどの悪を放出させたおかげで勝てたのも同然だ。悪にとって『聖』は毒。それが異常なほど多ければ多いほどダメージは大きくなっていくのだ。だが、今回はペルセウス、英雄として崇められた神様。悪など持っていないのも同然なのだ。

 

「面白い決闘だった。だが、これで終わらせる」

 

ペルセウスの背から光り輝く太陽のような物が出現し、手からは弓が出現した。だが、今まで使っていた弓とは違い、太陽のように輝いている黄金の弓を出現させ、その黄金の弓の弦を引いた。弓を中心にして光が集まり、黄金の矢が出現した。そのことに想雅は疑問を抱いた。

 

「なぜあんたは、太陽の神格が使える(・・・・・・・・・)?」

 

「この前言ったであろう。ほかの名もあるとなッ!」

 

ペルセウスは答えると同時に矢を放った。放たれた矢は、輝きを増し閃光となって想雅に襲い掛かってきた。

 

「ガァァァァァ!」

 

想雅は避けようとしたが、速さは矢の方が上のため、避けたと同時に左肩を矢によって貫かれた。

その衝撃によって想雅は吹き飛ばされ、地上へと落下していった。

 

「クッ、このままだとペシャンコになっちまう……『魔』の力よッ!」

 

想雅は『魔』を体に流し込み防御態勢を取った。しかし、それが本命ではない。刀を鞘に収め、すこし刃を出した状態にした。刀身に『魔』を流し込み、一気に刀を押す。

 

 

ゴォォォォォォォォォォ!

 

 

暴風と轟音が起こり、そのまま地面へと落下していった。

ペルセウスは想雅が落ちていったことを確認して、自分も地上へと降りていた。

 

「死んだか……いや、まだ生きているな」

 

砂煙の中から、歩いてくる想雅の姿を見たからであった。

 

「いててて、足が……足がジーンとしていやがる」

 

風がクッションとなり大怪我は免れたが、足がジーンとしてしまった。

 

「あら、まだ戦っていたのね」

 

想雅の隣からスキマが開き、紫と藍が出てきた。

 

「まだとか、逆に『英雄相手によく頑張っているね』と褒められたいよ」

 

ったく、のんきに出てきたがって、こっちは幻想郷の未来を託されていると同じことをやっているんだぞ。

 

「そうですよ、紫様。あいつから強力な神力が滲み出ていますよ。人間である想雅がよくその者を相手している時点で、よく頑張っていますよ」

 

藍……ありがとう。どうせなら、紫じゃなく藍のほうが妻がいいよ……って今は違うだろッ!おかしいだろ俺の脳内ッ!

 

「おぉ、乙女よ。我の勝利を見届けに来たのか」

 

ペルセウスはやっと会えたばかりか、嬉しそうに紫に言った。

 

「別にあなたの勝利を見に来たわけではないわ。私の夫がどこまで頑張っているか見に来ただけよ」

 

「ハハハッ、そうか。だが、少年を倒せば乙女は我の物になる。心して待たれよ」

 

ペルセウスは笑った。

 

「紫様、やはり助太刀した方がよろしいかと……」

 

「そこの乙女よ!これは我と少年の決闘である!何人たりとも決闘を汚してはならん。故に、それが我の英雄としての誇りであり、少年の戦士としての誇りであるッ!」

 

「あいつの言う通りよ。これは男と男の戦い、女が踏み入れる場所じゃないわ」

 

紫が言ったことに藍は従うしかなかった。

紫たちは、レミリアたちがいるところへと向かった。

 

「ふむ、では続きと行こうか」

 

ペルセウスは黄金の弓の弦を引き、矢が出現させた。

 

「全てを屠り、焦土と化せ。魔剣『グラム・スピリット』

 

想雅は矢が放たれる前に、スペル詠唱をし、『魔』のレーザーを放射した。

ペルセウスは1歩遅れて、矢を放った。

閃光のようにほとばしる矢と、『魔』の力のレーザーがぶつかり合った。互いに押し合うのが、両方とも、進行方向からずれた。

 

「ガッ……」

 

「クッ……」

 

放った物は、両者の腕を掠った。

 

「我に傷を与えたか……少年よ。名を何という」

 

「天上想雅だ」

 

「天上想雅……天上の爪牙(てんじょうそうが)か。よい真名(まな)だ」

 

ペルセウスの手元から黄金の弓が消え、剣を取り出した。

 

「天上想雅よ!汝は我に倒される資格あり!本気でいくぞッ!」

 

ペルセウスは全力で想雅に向かう。

剣を振るい、想雅を斬ろうとするが想雅は刀で受け止める。だが、それだけではペルセウスは止まらない。刀を払い、想雅に斬りかかった。想雅は避けるが、胸を少し掠ってしまい、体勢を崩してしまった。ペルセウスはそれを確認して、また斬りかかる。想雅は転がるように横に避け、『魔』の力を流し込んだ拳で地面を殴る。

大きな砂煙が起こり、想雅の姿は消えた。ペルセウスは横に薙ぎ払い、風を起こし砂煙を払った。

しかし、目の前には想雅の姿が映らなかった。

 

「剣の乱舞よ。華麗に踊り、月より美しくあれ。無双『斬月』」

 

想雅はスペル詠唱をし、無数の斬撃がペルセウスに向け放たれる。しかし、ペルセウスは冷静に黄金の弓を出現させ、矢を放つ。

矢は斬撃の嵐の中を一気に通り抜け、気付けば目の前に迫っていた。

想雅は刀で防御するが、『魔』の力を刀身に集中していたため、体に『魔』の力が回らず、刀より先に体が耐えられなくなり、遠くに吹き飛ばされてしまった。刀を鞘に収め、『魔』の力を流し込み一気に押し込んだことによって、速度は落とせたが、バランスを崩しているため、上手に着地とまではいかなかった。

 

「ド派手に飛んできたわね」

 

紫にふざけた口調で言われた。

飛んで行った先は、紫たちがいるところだった。

 

「兎に角、痛い……」

 

いてぇ……体中がいてぇ……ド派手に飛んできて地面に背中が当たって痛い。

 

「あら、さっきの強きな言葉はどこに行ったかしら」

 

レミリアからもなんか言われた。

 

「おいおい、あんたらは応援という言葉を知らないのか」

 

想雅は呆れながら立ち上がった。

 

「天上想雅よ。まだ決闘は終わっておらん!こちらに来るのだ!」

 

想雅はペルセウスの言葉を聞くと、その方向へと歩み寄ろうとした。

 

「一度訊くわ。あなた勝てる見込みはあるの?」

 

紫から質問された。

 

「あぁ、そのために紅魔館にこもったからな」

 

想雅はそう答え、ペルセウスのところへと向かった。

 

「乙女と話すほどの余裕があるとはな」

 

「女の子はお話が好きみたいなんでね……ペルセウス!お前を倒し、俺は勝利するッ!」

 

「ほう、見せてみろッ!汝の勝利の形をッ!」

 

ペルセウスが高らかに叫び、想雅は能力のもう1方の『言霊』を唱えた。

 

「我は不敗の剣を持つ武勇を轟かす軍神なり。我は義だ。故に、邪を屠る勇敢なる武勇者なり。我は不敗だ。故に、勝利し続けることが我が偉業であり運命(さだめ)なり。我は剣だ。故に、斬れぬものを許さない必殺の剣なり。我は王だ。故に、孤高である神族の高みなり。勝利に輝く我を、邪悪なるものは討つあたわず!」

 

 

ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!

 

 

想雅から強大な神力があふれ出した。想雅から神力が感じられたことにより紫たちは驚いているのが感じられた。

想雅が右腕を横に出すと、腕全体に光がほとばしり、銀の鎧が装着されていた。

 

「ほほう……それが汝の力か……」

 

ペルセウスは興味を示しいながら想雅を見ていた。想雅は刀を鞘に収め、思った。

まだだ、まだ足りない……俺に勝利をもたらす『不敗の剣』が……!

 

「我がもとに来たれ、孤高であるために、不敗の剣よ。閃光にして偉業なる剣よ。邪を屠り、悪を挫くがために、輝ける刃を振るい勝利を遣わせ!」

 

想雅が言霊を唱えると同時に、目の前に光が集まり、一つの剣が出現した。

想雅は銀の腕で取り鞘から剣を抜く、そして、光り輝く刃はまるで勝利を模った剣となって降臨した瞬間だった。

 

「さぁ、第二ラウンドの始まりだ」

 

「フッ、そうこなければ面白くないッ!」

 

ペルセウスは地面を蹴り、想雅へと斬りかかった。それを剣で受け止め、前へ押し斬り、斬りかかる。ペルセウスもそれを受け止め、払い、足で想雅に攻撃してきた。想雅は後ろに避け、ペルセウスへと斬りかかった。

 

「クッ……少しはやるようになってきたなッ!」

 

想雅の剣と、ペルセウスの剣が火花を散らしながら、競り合ってた。

そして、ペルセウスの手元から剣を飛ばし、前に薙ぎ払う。ペルセウスは剣を飛ばされたのにもかかわらず冷静にかわした。

 

「我の手元から、剣を飛ばすとはな。褒めてつかわそう」

 

「英雄様に褒められるなんて、一生無いと思っていたぞ」

 

「しかし、少年が()だったとはな……今まで気配を隠していたのか?」

 

「いいや、気配など隠せる技術は俺にはない。だが、神話の神様の能力を言霊にして、自分を神格化させる(・・・・・・・・)ことは可能だ」

 

「奇妙な技だな……」

 

と、ペルセウスは不思議そうに言った。だが、顔は笑っていた。久しぶりに白熱した決闘をやったのだから、ペルセウスは今、凄く心を躍らせていた。

 

「このように心が躍ったことは久しぶりだ。天上想雅よ。我が誇りに賭け汝を倒すッ!」

 

ペルセウスの背に太陽が現れ、手元に黄金の弓を出現させ弦を弾く、弓に光が集まり矢ができた。だが、まだ光が矢に集まっていた。

 

「我が日輪の力を借り、一矢を必中させん。我は才知だ。我は武勇だ。我は日だ。東から上りし夜を照らすは太陽の理、邪悪なるものは抗えず、屠られるのが光なり、また光は強き光により輝きを失う物なり!」

 

ペルセウスが『言霊』を詠唱し、矢が閃光に包まれ、何人たりも貫く必中の矢となった。

 

「天上想雅よ。我が太陽の光と、汝の不敗の光はどちらが上なのかここで、決着をつけようッ!」

 

黄金の弓から、閃光の矢が放たれた。想雅はその矢に向け走った。そして、自分の剣で斬りかかった。

 

「グッ……つ、強い……」

 

矢は強く、重く、そして神々しく想雅の剣を貫こうとしていた。だが、想雅も負けてはいなかった。

 

「一閃であらゆるものを絶つ剣よ。全ての命を刈り取り屠るために、我に絶対なる不敗を与えるため、勝利の光が宿りし刃を振るいたまえ!」

 

想雅の剣が、強く輝き、閃光の矢を斬りこもうとする。あと……もうすこしだ……

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

想雅は剣に全ての力を込め、ペルセウスの矢を絶ち斬った。

 

「なッ……!」

 

ペルセウスは驚き、想雅はペルセウスに向け、突進し斬りかかった。ペルセウスは黄金の弓で防御するが、想雅の剣により絶ち斬られ、脇腹を斬られてしまった。

 

「グッ……!」

 

ペルセウスは体勢を崩したが、想雅に挑もうとした。だが、想雅の剣はすでにペルセウスの目と鼻の先にあった。

 

「俺の勝ちだな」

 

「あぁ、汝の勝利だ……」

 

ペルセウスは負けたことを自ら悟り、抵抗をしなかった。

 

「さぁ、我の命をその刃で斬るがよい。それが勝者たる象徴だ……」

 

「いや、そんなことはしない」

 

想雅はペルセウスに向けていた剣を下した。それに、ペルセウスは驚いた。

 

「な、なぜだッ!」

 

「いや、あんたら殺せないだろ」

 

「どういうことだ?天上想雅よ。何か勘違いしていないか」

 

は?勘違い?神様とかは体が朽ちないのだろ。

 

「たしかに我らは体が朽ちることが無い、それはただ単に体が朽ちないだけであり、命は朽ちる。我らの命はたしかに不死だが、それは寿命。殺せは我らは死ぬ」

 

そういうことか、体は朽ちぬが命は朽ちぬとはかぎらないか……だが、

 

「それでも俺はお前を殺さない。英雄様を殺すとか俺には無理だ。罪人にはなりたくないからな」

 

ペルセウスは「ふっ」と笑い、立ち上がった。

 

「甘いぞ。天上想雅。それでは戦乱の中を勝ち抜くなど無理の話だ」

 

「戦乱の中とか、俺はゴメンだな」

 

「ハハハハハッ!汝は面白い奴だな」

 

ペルセウスはペガソスを呼び、またがった。

 

「なぁ、勝者の証として、1つ訊いていいか?」

 

「あぁ、それが汝の勝利の証となるなら」

 

「あんたはなぜ太陽の神格が使えた。あんたは英雄のはずだが……」

 

「たしかに我は英雄ペルセウスだ。しかし、ペルセウスというのはギリシアだけでの呼び名ではない。ローマの地での呼び名でもあった。我は太陽神ミトラス。それが我のもう1つの名であり、ペルセウスと同じ本来の名でもある」

 

「なんかややこしいな」

 

ペルセウスなのかミトラスなのかわからんな……

 

「我は異国の地でも崇められるのは悪くはない」

 

ペルセウスはペガソスの綱を引き、上空へと駆け上がった。

 

「天上想雅よ。汝は我の宿敵であり、刃を交わした友でもある。また汝のところに行くこともあると思うが、そのときは我が勝利を飾ろうッ!フフフッ、我が妃アンドロメダに土産話ができたな。乙女に伝えておけ、今は諦めるが、また迎えに行くと、では、さらばだッ!」

 

ペルセウスは雷光と共にその場から消えた。

 

「はぁ……やっと終わった。つかれt……」

 

想雅はその場に倒れた。

 

 

 

 

 




英雄ペルセウスと太陽神ミトラスは接点があったなぁ。やっぱり神話は深いなぁ……
想雅が使った神の『言霊』は何の神様の『言霊』だったか、次回話でわかります。そうそう、当てても構わないよ。
これにて、霊力の修行 ~英雄と神格化の人間~ は終わり。
今回、戦闘シーン書きたかったから長くなっちゃった。
次回は、春雪異変に突入します……いや、考えてみればもう少し先の事だな。

感想待っています!
次回もお楽しみに!




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出現せし謎の塔異変
謎の塔は現れた


あけましておめでとうございます!
今年も『東方神聖魔』をよろしくおねがいします。

春冬異変と言いましたが、時が流れ過ぎていたため、急遽物語を変更しました。すみません。
春冬異変は次の章となります。

感想ありがとうございました!
では、ごゆっくり。





僕には大好きな両親と、生まれた時からずっと一緒にいるペットがいた。

フランス料理が作るのも食べるのも好きで、本場フランスで修行をして、日本でもシェフをしていた面白く真面目な父さんと、何にも優しく、涙もろいところがあるが明るいフランス人の母さん。そして、幼いころ、よく一緒に遊んだり、昼寝したり、食事を取ったり、兄みたいな存在だった大きな犬。

しかし、その記憶は失った。あの日の出来事で……

僕は一人で初めて飛行機に乗った。小学生になったお祝いに、フランスに住んでいる爺ちゃん、婆ちゃんに会いに行く途中だった。そのときに悲劇が起こった。

急に機体が揺れだし、緊急のアナウンスが聞こえた。

 

『みなさん、この便のエンジンにトラブルが発生しました!至急、安全な体勢をお取りください!』

 

みんながパニックになった。その中に自分も含まれている。

泣き、怒り、恐怖、意識を失う人もいた。しかし、その状態はほんの数秒、本当の恐怖の始まりにしかなかった。機体が急に降下始めたのだった。降下していくにつれ機体の部品が外れ、扉までもが外れてしまった。そして恐怖が起こった。

僕は扉の近くの席に座っていた。そこから吸い込まれるように扉があった近くまで飛んでいき、そして、外に出てしまった……

数秒後、予想もしていなかった奇跡が起きた。

飛行機が光の翼に包まれた。しかし、それだけではなかった。包まれたのは飛行機だけではなく、外に出ていった人たち、そう僕もその翼に包まれていたのだ。

そして、人気(ひとけ)のない森林地帯のところで着陸した。

みんなは喜び、抱き合いなどと歓喜の声がそこらじゅうに聞こえたということ『だった』。

『だった』……そう、これは両親や、テレビに映っていた人、お巡りさんから聞いた話なのだ。

その事故のことは僕は知らない。なんせ僕は記憶を失っちゃったんだから……

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

ペルセウス戦で使った『言霊』のことで、その決闘にいた人たちが家に押しかけてきた。

みんなが同時に何か言うから耳に入ってこない。聖徳太子じゃないからまとめて聞くことはできない。そのことでみんなに話し合い、代表として紫が訊いてきた。

 

「想雅、あの決闘の時に使ったアレは何?」

 

「アレ……あぁ、『言霊』のことね。まぁ、自分でも初めて使ったからなんて言えばいいかわからない。まぁ、わかっていることだけは言う。あれは一時的に自分を神格化させる『言霊』らしい。それには条件があるらしく『神話を理解しないと使えない』と、『その神話に登場する神様の能力しか使えない』ということだな。詳しいことはわからんが、神様になるのではなく、あくまでも一時的な感じかなぁ……」

 

「一時的な感じねぇ……だけど、あの時感じられた神力はどこから湧いて出てきたの?」

 

「自分が倒れたのでだいたいは予測がついたのだが、たぶん霊力を代償にして神力ができたんじゃないかと思う」

 

「それで人間に戻るとき十分な霊力が足りずに倒れたと」

 

「まぁ、そういうところかな」

 

紫は理解したのか、理解していないのかわからない素振りを見せた。俺でも理解しかねるものだからなぁ……

 

「で、今回の決闘で使った神様は?」

 

「ダーナ神族の王、ヌアダ」

 

と、想雅は言い、質問攻めは終わった。そして秋が終わり、雪が降る季節がやってきた。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

先日、大みそかが終わり新年を迎えた。今日は日の出と共に覚めた。今日は久しぶりに早く起きた気がしたなぁ、いつも寒いため布団に包まってばかりだったからな。まぁ、遅くても9時ぐらいに起きる。

身を起こそうとするが、何か柔らかいものが手に当たった。

 

「ん?なんだこの感触は?」

 

確認のため、もう一度触った。

 

「っん……あんっ……」

 

待て待て待て!この声はなんだ。この柔らかいものの主か!?いやいや、そんなことない。ここに住んでいる女の子はルーミアだけのはず、あいつは昨日自分の部屋に行って、すぐに寝ていたということは確認した。じゃぁいったい何なんだ。これは……

想雅は恐る恐る布団の中を覗いた。

 

「なああぁぁあああぁあぁぁぁああぁぁぁぁ!」

 

想雅の声が家中に響き渡った。

想雅は布団から飛び起き、後ろへと後ずさった。自分の後ろにあるタンスに運悪く頭をぶつけた。

 

「いってぇぇぇぇぇ!」

 

また響き渡った。

いてぇよ……マジで……まさかタンスの取っ手の金具にぶつけるとは、面積狭いから圧力が集中してより一層痛い……新年早々不幸なことが起こりやがった。いや布団の中でルーミアが寝ていたのはご褒美だったけど……って新年早々煩悩が凄いなぁ!俺!

 

「おはよー。想雅」

 

「おはよーじゃねぇよ!なんで俺の布団の中にいた!」

 

ルーミアはまだ眠たい目を擦りながら、想雅の方へと近づいてきた。

 

「んー、想雅と寝たかったから」

 

「寝たかったら……じゃねぇぇぇぇぇよ!こっちは新年早々ドッキリ企画にあった気分だよ!」

 

ホントびっくりするわ……なんでそんな理由で布団の中に入ってくるかなぁ……こいつは……

 

「はぁ……朝食の準備をしてくる」

 

「想雅」

 

「なんだ?」

 

「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」

 

「あぁ、あけましておめでとう」

 

さすがにルーミアの万遍な笑みで、想雅は笑って新年のあいさつを返した。

 

 

 

 

------○●○-----

 

 

 

 

新年ということで、人里はどの店も賑わっていた。しかし、今日の目的は買い物ではない。

 

「元旦なのに賑わっていないな……」

 

「いつものことよ」

 

想雅とルーミアは博麗神社へと赴いた。しかし、人が誰一人いない。人里はあんなに賑わっているのにこの寂しい感じ、温度が違いすぎる。

 

「ま、まぁ、神社と言ったら幻想郷で知っている中では博麗神社しかないからな……神社だから参拝したら何かご利益はあるだろう……たぶん」

 

「たぶんって何よ。文句有るの?」

 

「いや、ありません」

 

霊夢が神社の中から出てきた。しまった、聞かれていたのか……

とりあえず、想雅とルーミアは参拝をした。賽銭箱に多めにお札や銅貨を入れた。ルーミアにも渡したから……結構な額になったんじゃないかな。先ほどルーミアに止められたが、「まぁ、金なんて霊力があるかぎりいくらでも創れるし、別に困ること無いしなぁ」と想雅は言い、ルーミアは何も言わないまま賽銭箱に投げ込んだ。

 

 

チャリン、チャリン、チャリン、チャリン、ガラガラガラガラ……

 

 

お金の音が鳴り終わり、一礼、二拝二拍手一拝、一礼とし想雅とルーミアは参拝し終わった。え?何願ったって?それは、『不幸なことがおこりませんように』と、へ?ルーミアは?知らない。聞くつもりもない。聞くほど馬鹿じゃない。女の子には1つや2つ隠し事はあるということ、それを聞き出そうとする男たる恥だ。

霊夢が何やら驚くように近づいてきた。

 

「ねぇ!?今凄いお金が入る音したけど、いくら入れたの?」

 

「なぁ、ルーミアいくら入れたっけ?」

 

「さぁ?」

 

「入れた本人たちもわからないってどのくらい入れたのよ……って凄く多ッ!」

 

霊夢は賽銭箱の中を見て、驚いたいや、驚きが隠せないほど衝撃だった。

 

「おみくじでも引いていく?タダで」

 

珍しいな。霊夢からタダという言葉が出てくるとは。

 

「じゃぁ遠慮なく。ルーミアは?」

 

「うん、引く」

 

霊夢は、いったん神社の中に消え、手にみくじ筒を抱きながらやってきた。

最初に想雅が振り、10番が出た。次にルーミアが振り、7番が出た。

 

「はい。これが想雅のおみくじで、こっちがルーミアの」

 

霊夢からおみくじが渡され、さっそく中身を見た。えーと、まずは中吉か、まぁ、いいほうだろう。っていうかここで運勢使ったとかは無いよな。書かれていることはと……なになに……

 

「『失くしたものは戻れぬが、道を決めたのならその姿は前に現さず、しかしそれ以上の境地へとは踏み出すな。己までもが失う形となるであろう』……と、なんだこれ」

 

こんな文、今までおみくじを引いたがこんな文は初めて見たな。俺がいた外の世界とは違った者だろうか……

 

「ルーミアはどうだった?」

 

「悪くも無く、良くも無く」

 

「つまり、普通ということか」

 

おみくじに普通という言葉はあるのか?まぁ、兎に角、無事参拝は終了した。長い階段を下り、人里の方へと歩いて行った。時間は経つが賑わいは変わっておらず、より一層人が多くなっていた。

 

「ん?どうしたルーミア?」

 

ルーミアが立ち止り、ある1点を見つめていた。

 

「想雅、あの塔前からあった?」

 

「塔?」

 

ルーミアに言われ、その方向へと視線をずらす。そこには、先ほどまでなかった塔がそびえ立っていた。しかし、龍神の石像の目は赤く染まってはおらず。白く染まっていた。

 

「もういちど、霊夢のところに行くか……」

 

 

 

 

 

 




想雅が使った『言霊』の神様はダーナ神族の王、ヌアダでした。
ヌアダは一騎打ちで右腕を斬り落とされた。ケルトの掟として肉体の欠損は王権の喪失を意味するためヌアダは王の座を降りた。しかし後に、医神によりヌアダの右腕は、銀の腕の義手を得て力を回復する。そして王の座に君臨した。

『不敗の剣』というのは、ヌアダが使ったとされている宝剣クラウ・ソラスこと。
さまざまな名前があるがヌアザの場合だと、『不敗の剣』勝利し続ける剣という。
まさに神様と戦う想雅にぴったりな名前。

感想待っています!
次回もお楽しみに!



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謎の塔は……それは置いといて


そういえば、もうすぐ受験ジャン☆ ヤベェ……すっかり忘れていた。
投稿ペースが落ちると思いますがなにとぞお願いします。まぁ、落ちるのかは知らんが……

感想ありがとうございました!
では、ごゆっくり。




妖怪の山の近くに、謎の塔が出現してた。まさか異変と思ったが、龍神の石像の目の色は赤く染まっていなかった。だが、状況が状況だ。新年早々異変を起こさせる前に、霊夢へと相談しにいった。

 

「おーい、霊夢!いきなり塔が出てきたぞ!」

 

「わかっているわ。さっきいきなり視界に現れてびっくりしていたところよ」

 

霊夢は新年早々何現れているんだって思いながら言っていた。

すぐそばには、縁側に座っている魔理沙もいた。謎の塔が現れたせいかここに来たのだろう……いや、博麗神社に来るときいつも見かけているな。

 

「魔理沙。お前もあの塔のことで来たのか?」

 

「いいや、霊夢にお茶をたかりに来た」

 

「新年から何してんだよ……」

 

やっぱり、別にあの塔のことじゃなかったな……霊夢の行動を見る限り、やっぱりいつもに出没しているんだな。

 

「しかし、あの塔にはお宝の匂いがプンプンするぜ」

 

魔理沙は置いてあった三角帽を頭の上にかぶせ立ち上がった。

 

「お前は行く気満々だな」

 

「あれは、お年玉みたいなもんだと考えればいいぜ」

 

お年玉って、えらい大きいな……

霊夢が出てきて、魔理沙にお茶を渡し、それを飲みながら言った。

 

「異変を起こされる前に、さっさとあの塔のことも調べないとな」

 

まぁ、それが妥当だろうな。

 

「まったく、新年早々に何やってくれたんだわ。私の縁側でお茶をすする時間を返しなさい」

 

おいおい、こっちの巫女さんはなんか行きたく無いオーラが滲み出ているんだが、異変を解決するのが巫女の本分でしょが。まだ、異変は起きていないけど。

 

「まぁ、兎に角、異変を起こされる前に調べる必要はあるだろ」

 

「わかっているわ」

 

霊夢はこうなると思っていて、お茶を取りに行くときに準備していたらしい。

新年早々、運が悪いのか悪くないのか……

 

「そ~がぁ~……」

 

「ん?どうした?」

 

先ほどまで無言だったルーミアがお腹を抱えて想雅の事を呼んだ。

 

「……おなかすいたぁ~」

 

いや、朝食食べただろ。なんですかその目はウルウルしたって俺はやらないから……な……

ダメだ。見てられない……

 

「はぁ……霊夢少し時間を貰えないか?」

 

「腹が減っては戦ができぬね……」

 

想雅はルーミアを連れて家まで帰った。その後ろから霊夢と魔理沙も想雅たちについてった。

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

「出来たぞー」

 

「ごーはーん!」

 

「待ちくたびれたわ」

 

「やっと来たか」

 

想雅が料理を持っていくと、3人の女の子から待ちくたびれたのか声が上がっていた。え?ルーミア、霊夢、魔理沙……なんで3人かって?まぁ、霊夢は朝食を取っていなかったらしくルーミアの食事を作るなら自分のも作って欲しいとお願いされた。これは断ることができなかった。

魔理沙も同じく朝食を取らずに霊夢のところに来たらしく、お腹が空いていたらしい。結果的に2人分作るのなら、3人分作っても同じだろと、魔理沙からも願いされて、しょうがなく作った。これも断ることができなかった。まぁ、料理が趣味だから別に人数が増えたところで何にも変わらないけどな。

 

「人に食事を作らせといて、その言葉は無いだろ」

 

「おなかすいたもーん」

 

「同じく」

 

「以下同文」

 

想雅は苦笑しながら、3人の前に料理を置いていく。そして、ルーミアは置かれたと同時に料理を食べていった。最後の料理を置き終わった後、霊夢から質問がきた。

 

「想雅、この香ばしい匂いがするこの料理は何?」

 

お皿に入っている焦げ目がついた料理の事を想雅に訊いた。

 

「これはグラタンと言ってな。食材を加熱する際に焼きすぎてしまったものが発祥とされているんだ。焦げ目がついたこの黄色い奴はチーズと言って、牛乳を発行させたもので、その下には、エビ、玉ねぎ、キノコが入っている」

 

「なぁ、想雅。これはなんだ?」

 

魔理沙からも質問がきた。カップに入った琥珀色したスープを指した。

 

「このスープはコンソメと言って、牛肉・鶏肉・魚などからとった出汁に脂肪の少ない肉や野菜を加えて煮立てるんだ。まぁ、簡単に言えば、洋風の味噌汁?みたいなものだ」

 

「「?」」

 

2人ともあまり理解できていないようだ。

 

「まぁ、とりあえず食ってみろ」

 

想雅はにそう言われ、霊夢と魔理沙は不思議がるも、料理を口に運んだ。

 

「……ッ!おいしッ!」

 

「うん、これはウマいなッ!」

 

霊夢と魔理沙は無我夢中に食事にありついた。数分後、3人とも食事を食べ終わりそろそろ、塔へと行こうとなった。

 

 

 

 

 

 





今回は短かったな。朝からどっか行ってそこで、階段に足ぶつけるわ、甘いもの食って酔うわ、オロロロロロ……となるわ、おいて行かれるわで、これでも末吉ですぜ。凶レベルだろこれ……

感想待っています!
次回もお楽しみに!



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謎の塔は何を待っているのか



はぁ……受験が近い……しかも、その前にテストもあるし……
早く終わらないかな……

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり。




食事が終わり、妖怪の山の近くに出現した、塔の前までやってきた。

 

「近くで見ると、まぁ……デカいな」

 

「そうね……」

 

魔理沙と霊夢は塔の上を見上げ、気が遠そうな顔で言った。ホントデカいな、この塔。外見はヨーロッパ系のラテンな雰囲気を醸し出しており、ところどころ窓……いや、穴みたいな窓がついていた。簡単に言うと、傾いていないピサの斜塔みたいなものだった。しかしまぁ、こんなもんがいきなり現れるものなぁ……幻想郷どうかしているぜ。

 

「にしても、不気味ね」

 

「確かにな」

 

だが、塔があるのはいいが何かがおかしい……そうだ、人の気配が全くしない。

 

「兎に角、早く入ろうぜ」

 

魔理沙が塔の中へと入ろうとした。しかし、

 

「なぁッ!」

 

入口の近くで電流みたいのが走り、魔理沙が驚いたような声を出し倒れた。

 

「魔理沙ッ!」

 

霊夢が魔理沙によった。

 

「おい霊夢。これ結界らしきものが貼ってあるぞ」

 

魔理沙が近くにあった小石をその結界らしきものが貼ってある入口に向け投げた。魔理沙が言った通りに、小石は電流が流れた後力を失い、真下に落ちた。

 

「これだと中に入ることは難しいわね」

 

ルーミアがやれやれとため息が混じりながら言った。ったく、新年早々こんな面倒なことが起こりすぎだろこれ、中吉なのに凶レベルに近いぞ。

 

「想雅、どうにかできない?」

 

「俺は便利屋じゃねぇぞ」

 

俺の能力と言ったらな、『聖と司る程度の能力』、『魔を司る程度の能力』、『言霊を創造する程度の能力』だぜ。『言霊』なら無効化することは可能だが、塔の中がどうなっているかわからず、あまり使うのは自分としてはあまり使いたくない。『聖』は邪悪のものを倒すためのもので結界破りの力なんてない、『魔』は通常は傷付けられない物、神や魔物を斬るなど……いや、もしかしたらイケるのか?これがそうなら、アウナスの時とペルセウスの時のアレが確信がつく。

 

「まぁ、用はためしだな」

 

想雅は鞘から『魔』の力を宿した刀を抜き、入り口前の結界に向け、斬りかかった。刃ははじかれることもなく綺麗に一閃し、何かが破れる音がした。

 

「なんとか結界はどうにかなったな」

 

想雅は刀を鞘に収め、「ふぅ……」と息を漏らした。ルーミアが近づいてきて想雅に言った。

 

「ねぇ、想雅。今何かが壊れる音がしたんだけど、アレって……」

 

「お察しの取り」

 

これであいつらのことに確信がついた。アウナスとの戦闘時、魔剣『グラム・スピリット』が奴の右腕を吹き飛ばしたとき、なぜかあいつは腕を再生しなかったこと。ペルセウスとの戦闘時、奴にも同じく魔剣『グラム・スピリット』が腕に掠った後、やつの黄金の弓が消失した。そして結界を斬ったこと、このことによりこの『魔』とは、通常は傷付けられない物つまり、能力も斬ることができるということに確信がついた。

神や魔物だけではなく能力までも斬れるとは、チャラ神め……変な力を与えたもんだよ……

 

「あなた、やっぱり便利屋じゃない」

 

霊夢から、やっぱりと確信がついた表情で言われた。

 

「はぁ……なんだって呼べよ。兎に角、行くぞ」

 

想雅は霊夢たちを連れ、塔の中へと侵入した。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

塔の内部は、外見よりも広く感じられた。しかし、薄暗くてあまり見えない。

 

「まったく、これじゃぁ真っ暗で何も見えないぜ」

 

想雅たちは、かすかな光を頼りに塔の奥へと入って行った。

 

「どっかから明かりを持ってこないとだめだな……」

 

想雅は目をしかめながら、前へと進んでいった。すると、足元に何かを踏んだのか足場が急に光りだした。

 

「塔が光りだした……」

 

ルーミアが目を見開いて言った。足場が光りだしたおかげで部屋中は見渡すことができた。しかし、足場が光りだしただけではなかった。

 

『キィィィィィィィィィィッ!』

 

何の叫び声がした。それは人の叫び声ではなく、幽霊の嘆きの声ではなく、獣の遠吠えでもなく、絹が擦れるような、今でも壊れそうな悲しい声のように聞こえた。だが、その声は次第に薄れていき最終的には聞こえなくなっていった。

 

「なぁ、想雅。さっきの声はいったい……」

 

「さぁな。俺にも見当がつかん」

 

あの声も、この光る床の事も、人気がない事も、出現した謎の塔も、不思議なことがありすぎる。ホント困るぐらいにな。幻想郷……不思議すぎる。想雅はそう思いながら、霊夢たちと塔の奥へと進んでいった。

 

「なぁ、何かの気配が感じられないか……」

 

魔理沙が警戒した声で言った。

 

「いや、この塔は無人のはz……」

 

想雅は答えようとした瞬間、何かが近づいてくる音がした。しかし、その音は足音ではない、風のような透き通るような感じだが、少し重みがあるようにも捉えられた。とはいえ、足音でなければなんなんだ音は、上から落ちてくるような……

 

「上から来るぞッ!気をつけろッ!」

 

想雅の声に、霊夢たちが反応し、とっさに後ろに下がった。

 

 

ドォォォォォォォォォォッ!

 

 

想雅の予想通りに何かが上から、轟音と砂煙と共に落ちてきた。砂煙が晴れるまで想雅たちは待っていた。何かは、砂煙が晴れた後、上体を起こした。

姿は大きな石像みたいだった。この場合はゴーレムといた方がいいのか?石像と言えるのか体が少し透けて見えた。二つの黄色の目を光らせながら言った。

 

「シンニュウシャハッケン、シンニュウシャハッケン。タダチニハイジョスル」

 

「警告は無いのかしら……」

 

ゴーレムは警告をしないまま、想雅たちに襲い掛かってきた。

 

「まぁ、やるしかないだろ。霊夢」

 

「そうね」

 

魔理沙と霊夢は二人で、ゴーレムへと向かった。

 

「ねぇ?想雅、私たちは行かなくてもいいの?」

 

「行っても行かなくても、あいつらは強いさ。まずは俺たちの仕事をやろう」

 

想雅は振り向き、先ほどのゴーレムに似た石像が後ろにいることを気付いていたのだ。

 

「それじゃぁ、やるぞ」

 

「えぇ、いつでもどうぞ」

 

想雅は左、ルーミアは右へと散開した。

手元に霊力槍を作り、ゴーレムに向け放つ。しかし、ゴーレムに当たるが傷は与えられず、無傷の状態だった。その攻撃に気付いたゴーレムは想雅に向け歩いて行った。

 

「ハイジョ、ハイジョ」

 

ゴーレムの右腕から振るわれた剛腕を想雅は、後ろに下がり避け、また霊力槍を放つが、思った通りに当たったと同時に、消滅させられた。

 

「おいおい、なんだよこいつは……」

 

マジで硬い。硬い以外の何物でもない。硬いったらありゃしない。頑丈すぎて俺の霊力槍が通らない。防御もしない。

 

「はぁぁぁぁぁッ!」

 

ゴーレムの後ろからルーミアが剣で斬りかかった。刃はゴーレムに当たり火花を散らすが、そこから傷を与えることができない。

 

「クッ、こいつ、硬い……」

 

ゴーレムは左腕を後ろに振り回し、ルーミアに攻撃しようとしていた。ルーミアはゴーレムの背中を蹴り、後ろに下がり、左手から魔力弾を複数放つ。ゴーレムは防御しないかと思われたが、右腕で頭を防御した。ん?なぜ防御する。防御しないとヤバい事でもあるのか?

 

「念のため、確認しておくか……」

 

想雅は霊力剣を作りだし、ブーメランのように放った。霊力剣は綺麗な弧を描きながらゴーレムの頭へと向かった。ゴーレムは左腕で防御し、想雅に向け、目からレーザーを放った。想雅はそれを避けた。

 

「ビーム機能も搭載していたのか。まぁ、確認したいことはできたし……ルーミアッ!」

 

ルーミアは想雅の声に気付き、想雅のところへと向かった。

 

「なに?」

 

「アイツの倒し方がたぶんわかった」

 

「たぶんって……」

 

「まだ、確証がないからな……」

 

想雅は一呼吸を置いて言った。

 

「とにかく、あいつの頭を狙え。体に当たった物はガードしなかったが、さっき頭に向け撃った物はあいつはガードした。つまり、頭に攻撃を通したら奴らにしたらヤバいと思うからにしか思えん」

 

「わかったわ」

 

ルーミアは想雅の提案を聞くと、ルーミアは想雅のそばから離れ、想雅はスペル詠唱をした。

 

「龍は獰猛である。あらゆるものを挫かせる眼を持つがために。拘束『龍王の威光』」

 

想雅の目が赤く光り、2対のゴーレムの動きを止める。

 

「グググググ……」

 

「ガガガガガ……」

 

ゴーレムたちは動きを封じられ、その場に棒立ちの状態となった。

 

「霊夢ッ!魔理沙ッ!こいつの頭を狙えッ!」

 

想雅の言葉を聞き、霊夢たちはゴーレムの頭に向け、集中砲火をした。

 

「ギギギ……」

 

「はぁぁぁぁぁッ!」

 

ルーミアもう一体のゴーレムに向け、剣を振るい、見事にゴーレムの頭を切断した。そして、想雅がスペカを解除したと同時に、2体のゴーレムは倒れ、消えていった。

 

 

 

 

 

 






グングニル食べたい……アカンッ!黄昏ていたわ。あぶねぇあぶねぇ……え?もう言ったってそうかもなぁ……最近、疲れてんだ俺の脳内が……変な夢見せられて……アレは恐怖以外のなに物でもなかったんだ。

感想待っています!
次回もお楽しみに!



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謎の塔は宝はあるものか


やっとテストが終わった……はぁ、まだ気が抜けない……受験がある。
入試の過去問やっているが、特に数学が酷い。ほかの教科は?聞くな……いつも惜しいところまでいっているんだ。まだいいだろ、何も考えないよりは……

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり。




ゴーレムを倒し終わったのはいいが、今の状況がねぇ……

 

「ねぇ、想雅。いつになったらてっぺんまで着くの?」

 

「そんなこと、俺に訊くなよ……」

 

そうだ。階段が凄く長い。博麗神社の階段より長く、一段一段の石が大きく、つま先をぶつけそうなのだ。そしてすごく急だ。一段上がるにつれ落ちそうになるぐらいだ。

たぶん、1時間ぐらいは上っているのだろう。普通の階段ならいいが、ここの階段は螺旋状に作られていた。上っている時間はそれより長いかもしれない。

 

「お、あそこから光が漏れているぞ」

 

魔理沙が指を指した先は、異様に光が強くなっていた。あそこに何かがあるのだろうか?

想雅たちはとりあえずそこに向かった。そこは広い空間になっており、ゴーレムが出てきた空間より広く感じられた。

 

「しかし、広いもんだなぁ……」

 

想雅は、興味深そうに言ったが、霊夢たちはある一点に集中していた。

 

「ねぇ……ツッコみたいところがあるのだけど……」

 

霊夢が苦笑いしながら、あるものに指差した。それは、想雅の隣にいる一人の少年?らしき幽霊だった。その体は青く光っており、空間の光よりも一際強く光っていた。

 

「その幽霊って、あなたの守護霊?」

 

「いやいや、光っている守護霊なんて聞いたことないぞ」

 

誰だよ。この少年……先祖なら知らんくてもおかしくないが、まず違うと言いきれるのは、光っていることだ。光っている守護霊なんか知らんぞ。珍百景だろ。

 

「動けば、これが守護霊じゃないというのが証明できるだろ」

 

魔理沙からの提案で、とりあえず動いてみた。しかし、想雅について行くように幽霊の少年は、そばをついて言った。

 

「おいおい、マジで守護霊なのか……」

 

「そうらしいね……」

 

魔理沙と、ルーミアも苦笑した。

 

「はぁ……まぁいい。このことは後にして、まずはこの塔の事を調べないとな」

 

想雅は、「また面倒なことが、増えたな……」と呟き、空間の奥へと進んだ。しっかし、まぁ、こんなものが幻想郷に来たもんだな。だいたい、なんでこんなものがいきなり出現するのやら……幻想郷おかしいだろ。いや、この世界は常識に囚われてはいけないんだっけ?

 

「ん?あそこに何かいないか?」

 

魔理沙が目をしかめて言った。そこには騎士の鎧らしきものが椅子に座っていた。

大きさは想雅より少し大きく、光の反射により黒色の鎧が光って見えた。形状は、プレートアーマーだろうか……しかし、そこに騎士に鎧が座っているだけで、ここの空間に人の気配は無い。思えば俺、いつから人の気配に気づくようになったんだ?いや、勘?かな?うん、そうだ。

 

「なに一人で感心しているのよ……」

 

「とりあえず、初めのお宝はこの鎧だな」

 

魔理沙がしめしめと笑いながら、その鎧に近づいた。その鎧に触ろうとした瞬間。

 

「おわッ!」

 

鎧が急に動きだし、魔理沙はそれに驚き、後ろに下がった。

その鎧のスキマから、青白いオーラ噴出しているのが見え、右手からランスを作り出し、それを想雅たちに向け突き立てた。

 

「汝ラ、直ちにこの塔から立ち去レ。そうすれバ、我は汝らに手を出さヌ……」

 

男の声らしき物が鎧から発せられた。

ただの甲冑かと思っていたか?ねぇねぇ、甲冑だと思っていたか?残念。動く甲冑だってか?

 

「別に、帰るのはいいが……ここに何があるかぐらい教えてくれよな」

 

魔理沙はこの先にお宝があると思って黒騎士に質問した。

 

「……教えることはできヌ……」

 

「そうか、なら易々引き返すわけにはいかないなッ!」

 

おいおい、魔理沙。お前……諦めも肝心という言葉知らないのか?

 

「想雅、何言っているかわからないな。私はお宝を見逃さないことを、強いられているんだぜッ!」

 

カッコよく言っても、それはただ単に興味心だろ。あと、ぜってー盗むことも考えているだろ。っていうか人の心を読むな。まずそこからだよ。

 

「退かぬカ……なラ……」

 

黒騎士は、手に持っているランスを天井に突き立て、何かの呪文を唱えた。

 

「なぁ、想雅。アレ何言っているかわかるか?」

 

「まったく」

 

アウナスと同じくわけわからん呪文を唱え始めたな。もしや、アウナスと同じく、眷属みたいな奴を召喚するのか?想雅はそう思っていると、思っていたことと同じく、空間全体に魔方陣が展開し、甲冑をきた騎士たちが部屋中に召喚されていた。

 

「貴様らハ、ただならぬ罪を犯そうとしていル……この世のならヌ、世に進む道だ。なラ、誰がその道を正さなければならなイ……それハ、罪を犯した者ダ……」

 

黒騎士がそのように想雅たちに向け言った。霊夢、魔理沙、ルーミアが戦闘態勢に入るが、ただ一人、黒騎士の言葉で何かが引っ掛かった人物がいた。

 

「この世ならぬ道……」

 

想雅はあのおみくじに書かれてあった。『それ以上の境地』という言葉とその言葉が引っ掛かっていた。

 

 

 

 

 





ふぃ……小説投稿で一腹、まぁ、書いている時はお茶を飲むんじゃなく、コーヒーなんだけどな……
微糖のコーヒーって甘くない?俺はやっぱりブラックだ。え?それが厨二病?いや、知らんうちにブラックがイケる口になっていた。人の慣れって怖くね?

黒騎士のイメージ画像はこちらデース!(´∀`)☞http://seiga.nicovideo.jp/seiga/im2082839
これってここに貼っていいのかな?ダメだったら消すのですが……
見れない人はすみません。イメージは、Fate/Zeroのバーサーカーみたいな感じな鎧です。分からない人は、ヤフるか、ググってください。っていうかバーサーカーって意味は『狂戦士』だよね?この謎の黒騎士はFateのバーサーカーのように狂っているのかな?いや、狂っていくのかな?まぁ、それは次回話だな。

これ書いていて思ったことなんだけど、黒騎士が騎士たちを召喚したのって、思えば、Fate/Zeroのライダーじゃね?まさに、王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)だ。いや、騎士の軍勢だな。


感想待っています!
次回もお楽しみに!



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謎の塔は来てはならぬ境地への道である



テスト終わったー、いや、\(^o^)/オワタ。
まじでヤバかった。特に主要5教科が、副教科は平均点、よゆーに超えていたぜ……
受験の日にちが指で数えるぐらいになった。そろそろだな……

感想ありがとうございました!
では、ごゆっくり。




床から光が漏れている空間で、誰かさんのせいで俺たち4人は甲冑を着た騎士たちに囲まれていた。

 

「おいおい、魔理沙。まったくお前が余計なこと言うから……」

 

「しょ、しょうがないだろ。お宝がありそうだったからな」

 

「魔理沙、あなたは諦めという言葉は知らないの?」

 

「お金に欲を出している霊夢が言う言葉かよ」

 

「2人共、こんなところで争っていても意味無いわよ」

 

ルーミアが騎士たちに警戒しながらも、霊夢、魔理沙に呆れながら言った。

はぁ……なんでこう不幸なことに巻き込まれやすいんだ俺は……おみくじ、中吉じゃなくて、実は凶だろ……まぁ、そんなこと考えてもしょうがないし、自分の運のせいにしてもこの状況を打開出来るわけじゃないからな。しかし、入ってきた入口も綺麗に騎士たちにガッチリ防御されていて、騎士型の砦みたいだなアレは……

 

「まったく……何なんだよ、この塔は……」

 

入口に結界貼ってあったし、入り口付近にはゴーレムが振ってきたし、最終的には騎士たちに囲まれる。はぁ……ぜってー凶だ。大事なことだから2回言ったぞ。

 

「人の子よ……」

 

「ん?誰だ?」

 

何者から、声がかかった。その声はこの塔に入った時に聞こえた、絹が擦れるような小さな声だった。想雅は空間中見渡すが声の主らしき人物は見当たらない。

想雅が探していると、服の裾を、ちょいちょいと引っ張る感触が感じた。想雅がそこに目をやると、想雅にくっついていた、光る守護霊の少年が想雅の目を見ながら言った。

 

「人の子よ……僕は、向こうに行きたい……」

 

少年は、虚ろな目をしながら言った。

 

「どうして?」

 

想雅は疑問に思った。なぜ、黒騎士が守る場所に行きたがるのかだ……

 

「僕は、『どうあがいても完全な姿になれない』という宿命を背負ってしまった……僕は、そんな絶望的な思いはもうしたくない、早く完全な姿になって、その宿命から逃れたい……」

 

少年は、『どうあがいても完全な姿になれない』という宿命から解き放たれたいらしい。

確かに、自分の本来の姿になれないというのは、想雅自身も悲しい気がした。だが、完全な姿になった後はどうだろう。少年の完全な姿が、『悪』を持つ者だったら、欲望のままに暴れる化け物だったら、黒騎士がそこを守る理由もわかる。想雅はそういうマイナスな考え方もした。

少年が言った。『絶望的な思いはもうしたくない』という言葉で、想雅の心が動いた。絶望というものは、希望が失われかけている証拠だ。そんな……希望が無い明日なんて、俺は嫌だ。なら、やることは決まった。

 

「わかった。お前に明日を見せてやる」

 

想雅は、黒騎士を倒すことを決めた。

 

「お前たち、やるぞ」

 

「そ、想雅、マジで言っているのか?あの大軍の中に行けと……」

 

「この事態を招いた魔理沙が言うな。まぁ、さすが俺は鬼じゃないがな」

 

想雅は霊夢、魔理沙、ルーミアの3人を自分の近くに呼び寄せた。そして、

 

「「「……!!!//////」」」

 

「ちょ、おいッ!暴れるなよッ!」

 

3人の顔が一斉に真っ赤になった。それもそうだ。想雅は3人に抱き着いたのだから。落ち着いたところで、想雅は自分の『魔』の力を3人に流し込んだ。そして、3人から離れた。

 

「ふぃ……まぁこれで、死ぬことはあまり無いだろう」

 

「そ、想雅。私たちに何をしたの?」

 

ルーミアが顔を真っ赤にして言った。そりゃぁ、恥ずかしいだろう。俺も同じだ。

 

「お前たちの体に、『魔』の力を流し込んだ。一定の間、お前らの霊力、妖力、魔力が強力になった。これであの騎士たちを倒すことは少しは楽になるだろうと思う。あと、剣や槍に攻撃されるだけじゃ体に傷はつかない」

 

「ま、マジかよ……」

 

「傷がつかないだけで、痛みはあるがな。そこは、まぁ……ガンバッ!」

 

想雅は霊夢たちに親指を立てた。

 

「気楽に言ってもらえるわ……」

 

霊夢が呆れながら言った。

 

「貴様ラ……無駄口を叩く、余裕があるのカ……フフフ、まぁいイ……」

 

黒騎士は、怒っているのか笑って言うのかわからんな。いまいち感情表現ができていないのか?単に不器用なだけなのか?

 

「罪人は、裁かなければならヌ……騎士よ……蹂躙せよッ!」

 

黒騎士の命令と共に、騎士たちは想雅たちに攻撃を仕掛けた。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

想雅たちは、騎士たちの攻撃と共に一人ずつに散開した。

 

「よっしゃッ!想雅が言ったことが確かかこれで調べさせてもらうぜッ!恋符『マスタースパーク』」

 

魔理沙は騎士たちに向け、いきなりスペカを詠唱した。

ミニ八卦炉を中心とし、魔力が集中していった。その光は神々しく光っていた。うわぁお……ここまで光るとは……予想外デス。しかし、嫌な感じしかしない。

 

「ちょ、魔理沙ッ!こ、これ以上は……」

 

「いけえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!」

 

想雅が魔理沙に何か言おうとしたが、それよりも先に魔理沙がマスパを撃ちだした。

マスパの極太レーザーは騎士たちを蹴散らしていった。なんだろう……人間ボーリング?

騎士たちがボーリングのピンのようにボンボン飛んで行った。飛ばされた騎士たちは地面に着くと、光に包まれ消えていった。そして、マスパが壁に激突する。想雅は「あぁー」とやっちまったと言うような感じに呟いた。しかし、壁は無傷。

 

「おー、つえー」

 

「壁が壊れてねぇ……この塔、本当に石でできてんのか?」

 

想雅はあんぐりと口を開けた。しかし、今は戦闘中、敵がそんなスキを見逃すはずがなかった。

一人の騎士が想雅に向け、槍で攻撃してきた。想雅は、今までこの塔に関してすごく疑問に思っていたため、その攻撃に気付いていない。想雅は気付き、槍を下に避けた。そして、騎士の足を足払いし、騎士が空中に浮いたところを、刀の鞘で撃ちだす。鞘に当たった後、騎士はその場に崩れ落ちて、その場で消えた。その騎士が消えた後、また新たな騎士が現れた。よく見たら、蹴散らして誰もいなかった魔理沙のところが、蹴散らした騎士の人数と同じだった。

 

「なにこれ、無限増殖?」

 

「ホントよッ!もうッ!めんどくさいったらありゃしないわッ!」

 

想雅が驚いたように言うと、その言葉に霊夢が反応し、想雅に大声で言った。

 

「能力や、体が強化されても、このままだと、時間の問題だわッ!……ってまたッ!霊符『夢想封印』」

 

霊夢は周りに集まった騎士たちを、スペカで一掃した。しかし、息を整えてすぐに新たな騎士たちが現れた。

 

「ルーミアは……」

 

残る一人、ルーミアは、えーと、お、いたいた。

ルーミアは手に持っている剣で、ひたすら向かってくる騎士たちを蹂躙していた。

 

「ただ私に向かってくるだけじゃ、勝てないわよ。もっと頭を使いなさい、頭を」

 

ルーミアは騎士たちをバカにするように言いながら、戦っていた。って何しているんッスかルーミアさん。バカにするより、戦闘に集中しんさい、集中。まず、お前が人の頭をバカにする以前の問題で、あんたはどれぐらい頭が悪いと思っているだよ。しかし、ルーミアにバカにされている騎士たちは、戦闘方法を変えずにルーミアに攻撃していた。

 

「まったくもう……人の話ぐらい聞いてもいいのにねッ!」

 

ルーミアは斬り終わった後、体から妖力を出し、周りにいた騎士たちを吹き飛ばした。ルーミアの戦闘を見ていると、周りから騎士たちが襲い掛かってきた。

 

「そういえば、俺もまだ戦闘中だったなッ!」

 

想雅は刀を鞘に収め、刃に『魔』の力を込め、一気に押し込んだ。

想雅を中心にして、爆風が起こり騎士たちは吹き飛んだ。そして、構わずスペル詠唱。

 

「騎士の名において必要とされる必中の矢よ。決して逃すな、故に悪しき物をを射抜け。

聖矢『フェイルノート・スターダスト』」

 

『聖』を込めた弾を上空に打ち上げ、一定の高さまで来ると拡散し、無数のレーザーを落とした。

空間上にいた騎士たちは、想雅のスペカですべてを貫かれ、消滅していった。そして、残ったレーザーは黒騎士に目標を変え、貫かんと突っ込んでいった。

 

「フン、この程度……」

 

黒騎士は鼻で笑い、手に持っていた槍で薙ぎ払い始めた。数発薙ぎ払った後、黒騎士は走り始めた。

走っている先は、想雅が立っている。そして、黒騎士は想雅に向け、槍で突いた。

 

「せいッ!」

 

想雅は槍を払い、黒騎士に向け、『魔』の宿った拳で殴り始めたが、殴る前に黒騎士は横に避け、想雅を追い越した。

 

「なッ!」

 

想雅は黒騎士が避けたことが、予想外だった。『魔』の拳を撃ち込まれるのは、さすがに甲冑を着ているがヒビが入るのはそうだが、そのことを敵が知っているわけじゃぁない。じゃ、なんだ。

想雅が黒騎士の方を向いていた瞬間。

 

「ガァァァァァッ!」

 

無数の弾幕が想雅を襲った。そして、想雅は空中を舞い、床に落ちた。

 

「クソッ……まさかな……」

 

弾幕に襲われたときに全てを理解した。黒騎士は元から俺を倒すために、槍で攻撃したわけじゃない。実際の目的は、槍ではなく、俺が使ったスペカの追尾機能搭載レーザー(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)で俺を倒す気だった。クソッ……なんて奴だ。召喚された騎士らとは違って、ちゃんと考えながら行動していやがる。

想雅は痛む体をゆっくり起こしながら立ち上がった。

 

「貴様に近づいてみたガ……やはり、奴がいたナ(・・・・・)……」

 

奴がいた……こいつはこの少年のことを知っているらしい。

 

「なおさら、貴様は倒さなければならヌ……」

 

黒騎士は持っている槍を想雅に向け投げた。想雅はその槍を打ち払い、黒騎士に攻撃を仕掛けようとしたが、その黒騎士が自分の目の前にいることに気付き、黒騎士は手に持っている剣で想雅に攻撃し、想雅がそれを刀で受けとめ、押し返し、刀で斬りかかる。黒騎士は剣を持っていない手に盾を出現させ、その盾で受け止めた。

 

「クッ……やっぱ、実力の差か……」

 

黒騎士は戦闘だけではなく、戦術にも懸けているぜ、これは……

その言葉に反応した黒騎士は、想雅を小バカにするように不気味に笑いながら言った。

 

「ククク、そのとおりダ……」

 

黒騎士は手首を捻り、盾を少しだけ動かした。その動きで今まで当たっていた刀が、盾をずらしたせいで、下に斬り落とされるように、床に向かって勢いよく斬りかかった。その隙に黒騎士は想雅に剣で斬りかかった。

 

「あ、ヤベッ!……」

 

想雅の背中ががら空きだったため、黒騎士の剣がダイレクトに当たってしまうと思った瞬間。

 

「……ッ!」

 

横から来た弾幕が、黒騎士は頭に直撃し吹っ飛んでいった。

 

「想雅ッ!大丈夫ッ!?」

 

今まで、騎士たちをバカにしていたルーミアが、想雅がピンチのことに気付き、魔力がこもった弾幕を黒騎士に向け撃ってくれたのだ。

 

「あぁ、何とかな。サンキュー」

 

想雅はゆっくりと立ち上がり、黒騎士の方を見た。

 

「「なッ……!」」

 

想雅とルーミアは絶句した。

奴……黒騎士の兜が外れているまではいいのだが、実際にあるはずの中身が無いのだ(・・・・・・・)。え?

 

「お、おい、ルーミア……お前……」

 

想雅は錆びついた機械のように、ギギギ……とルーミアを見た。

 

「わ、私は殺っていないわよッ!な、なんなのよ、その目はッ!?私をそんな目で見ないでくれるッ!?」

 

想雅は「えー」と言いながら黒騎士の方へと目を移すと、またまた絶句するような出来事が起こった。

 

「女ヨ……不意打ちとハ……」

 

頭が吹っ飛んだ黒騎士が、何もなかったかのようにムクリと起き上がり、外れていた兜を拾い上げた。

 

「ほ、ほら、言った通りでしょッ!」

 

「まぁ、そうだが……アイツ人間じゃねぇ……」

 

何アイツ……鋼の錬○術師のアル○ォンスか!

黒騎士は兜をはめ込み、騎士たちに告げた。

 

「騎士らヨ……我はこの男とやり合わなければならなイ……その間、何人たりとも邪魔をさせるナ……」

 

その言葉に反応した騎士たちは、ルーミアめがけてに突っ込んできた。

 

「想雅ッ!私の事はいいから、あの黒騎士を頼んだわよ」

 

ルーミアもその騎士たちに向け走って行った。おう……さっそく蹴散らしている。

 

「さて、邪魔者も消えタ……我と存分に戦えるナ……」

 

「俺は嬉しくもなんとも無いぞ……」

 

想雅はため息交じりに言った。

 

「ならなぜ、我と戦ウ……奴が言ったからカ?」

 

「その奴とは、俺の隣にいる少年のことか?」

 

「そうダ……奴に(たぶら)かされているだけではないカ?」

 

「誑かされている?どういう意味だ?」

 

「奴が求めている向こう側は、『涅槃(ねはん)』に達する場所ダ……決して踏み入れてはいけない境地ダ……故に罪ダ……貴様は自ら命を投げ捨てる行為みたいなものダ……」

 

「涅槃……」

 

涅槃……ニルヴァーナの字義は『吹き消すこと』『吹き消した状態』であり、すなわち煩悩の火を吹き消した状態を指すのが本義である。『人間の本能から起こる精神の迷いがなくなった状態』つまり、悟りを開くと言うことだ。

何が言いたいかというと、悟りを開いてしまうと、その場で実態を保つことができずに消えてしまうと言う物であるのだ。

 

「どうだ、これで我がここを守る理由が分かったであろウ……」

 

「あぁ、そうだな。だがよ、俺は少年を向こう側へと行かせる」

 

「貴様……死にに逝くつもりカ……」

 

「なら、悟りを開かなければいいだけだろう?」

 

「たしかにそうダ……しかし、悟りを開かない奴は穢れを持つ者、よって我は貴様を排除すル……」

 

先ほどの黒騎士とは違った。

今まで出ていた青白いオーラが、一瞬のうちにドス黒いオーラに変わった。黒いオーラは空間上に行きわたり、そのオーラに触れた騎士たちは次々と消されていった。そして騎士たちが消えると黒いオーラは黒騎士のところへと戻った。

 

「そ、想雅。何このオーラ」

 

騎士が消えたことに驚きながら、霊夢が近づいてきた。

 

「あぁ、たぶん俺のせいだ」

 

「次は想雅のせいか」

 

魔理沙が笑いながら近づいてきた。

 

「まず、この状況になった現況が何言っているのよ……」

 

魔理沙の発言にツッコみながらルーミアが近づいてきた。

 

「まぁ、こんな状態にさせたのはすまない。だが、このまま、アイツをほっとくわけにはいかない」

 

「確かにね。あんな奴が外に出たら、ヤバいことになりそうね」

 

「まったく、こんなことになるんだったら来ない方がよかったぜ……」

 

「言い訳をしない」

 

「分かってるって……」

 

魔理沙はしぶしぶルーミアの言った言葉に従った。忘れるなよ。これお前が元凶だから。

 

「フフフ、4対1……なかなか楽しめそうだナ……」

 

黒騎士は不気味に笑い。黒いオーラを噴出させた。

 

 

 

 

 

 






黒騎士が狂い始めた……もう、バーサーカーだな。
あと、2、3話ぐらいでこの章は終わります。

感想待っています!
次回もお楽しみに!



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謎の塔は勝利を求めた


イヤッホー、明日が受験だぁぁぁぁぁ!
日ごろのまとわりつくあの受験が明日でおさらばだぜッ!
まぁ、こんなノリには実際ならないんですけどねぇ……

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり




黒いオーラが想雅たちに向け、刃のように無数に襲い掛かってきた。想雅は下に避け、霊夢と魔理沙は上空に逃げたが、なぜかルーミアだけが剣で応戦していた。ルーミアの剣と黒い刃は火花を散らしながら、やり合っていた。しかし、黒い刃は、先端から2つに分かれ、ルーミアに再び攻撃を仕掛けてきた。ルーミアは間一髪のところ、避けることができたが、そのまま黒い刃の追撃が始まっていた。

 

「ルーミアを追撃……霊夢ッ!魔理沙ッ!気をつけろッ!」

 

想雅は2人に忠告を呼びかけ、ちょうど黒い刃が追撃を仕掛けてきたので、そのことに2人は気付き、避けることができた。想雅にも黒い刃が迫っていたので、横に避け、刀を振り下ろした。

黒い刃は綺麗に切断され、姿を保てなかったか黒いオーラとなって、黒騎士のところに戻って行った。

 

「先端に攻撃しなければ、霧となって消えるのか」

 

その現状を見ていた。霊夢たちは黒い刃の先端じゃないところに攻撃をし、黒い刃を見事に消し去った。しかし、1つ2つ消したところで、現状は変わらない。むしろ、攻撃時に数秒のスキが開き、そこに尽かさず攻撃してくる。

 

「質より量だナ……」

 

黒騎士は、やはりと思いながら言った。

 

「それじゃぁ、俺は力より速さだッ!無双『斬月』」

 

想雅はスペカを詠唱し、複数の斬撃を展開して周りの黒い刃を次々を斬りかかった。そして、スペカの詠唱後、想雅は次に『言霊』を詠唱した。

 

「我は誓おう、剣のような鋭さを、光のような速さを、鋼のような折れぬ意志を、我は、我行く道を突き通そうぞ」

 

想雅の姿が、黒騎士の視界に消えた。

 

「逃げタ……いや……」

 

黒騎士は視点を変え、誰もいない場所へと目を逸らした。そして、黒騎士は黒いオーラで剣を作りだし、甲冑全体から黒いオーラを出し、その視点の先へと流した。すると、誰もいないはずの場所に何者かが目に捉えられない速さで移動していることが分かった。黒騎士はその方向に甲冑から出した黒いオーラで刃を作り出し、何者かがいるところへと攻撃を仕掛けた。

 

「クソ、視界が悪い……」

 

黒い刃が自分に向かってきているのを知らない想雅はその場に立ち止り、状況確認をしていた。

 

「なんなんだよこの黒い霧は、まさか黒騎士の奴が部屋中に充満させたのか?」

 

視界が悪くては前にも後ろにも進めん。左側から何やらか、すごい物音が聞こえるが、霊夢たちが黒騎士と戦っているのだろう……ってそれだと俺が戦闘から逃げたみたいになっているぞ。女の子たちだけに任せているヘタレ野郎じゃないかッ!って今、自分でヘタレであることをさらっと言っちまったなッ!あぁぁぁぁもうッ!なんでだッ!

想雅は1人で漫才をしていた。そこに、黒騎士に放たれた黒い刃が想雅の首に掠る。

 

「……ッ!」

 

いきなりの出来事で想雅はパニックを起こし、その場から閃光の速さで移動した。黒い霧を抜けると、こっちを見ている黒騎士の姿が視界に入り、自分の手元に霊力槍を作り出し、黒騎士めがけて放った。

 

「フンッ!」

 

黒騎士は持っている剣で薙ぎ払った。薙ぎ払ったっと同時に黒い斬撃が想雅に向け放たたれ、想雅は霊力剣を放ち、相殺した。

 

「まだだッ!」

 

想雅は黒騎士を中心にし、グルグルと周りを回転し始めた。黒騎士からは、想雅が分身して見えていた。想雅は霊力槍を作り出し、黒騎士に放つ。それも複数。

 

「数が多イ……」

 

と、黒騎士は呟き、霊力槍を薙ぎ払っていった。しかし、数が多いため、払えずに残るものもあった。それは黒騎士の甲冑に当たり、傷をつけていく。黒騎士も今回ばかりは苦しい雰囲気だった。

 

「今だッ!霊夢ッ!魔理沙ッ!ルーミアッ!黒騎士にめがけて集中砲火だぁぁぁぁぁッ!」

 

想雅の声が、空間中に響き渡り、霊夢たちに完全に言葉が届いた。

 

「魔理沙ッ!ルーミアッ!」

 

「分かっているぜ、霊夢ッ!」

 

「それじゃぁ、いくよッ!」

 

「「「神霊『夢想封印』(恋符『マスタースパーク』)(夜符『ナイトバード』)」」」

 

3人のスペル詠唱が空間中に響き渡り、3人から弾幕が放たれた。おぉ……これ弾幕ごっこだったら完全に1回はピチュるな。想雅がそう思いながら、黒騎士にめがけて霊力槍を投げ続けていた。

霊夢のスペカは、霊符『夢想封印』の名前と、色とりどりの大き目の弾幕と少し似ているが、この光は妖怪がもっとも嫌う光らしく、近くにいるルーミアも少し苦笑していた。

魔理沙のスペカは、俺との初めての弾幕ごっこで使った極太レーザーである。魔法『ファイナルマスタースパーク』より弱いが、侮ってはいけない、本人曰く「弾幕はパワーだぜッ!」とはこう意味であると……

ルーミアのスペカは初めて見るものだった。緑色に光る弾幕が複数展開され黒騎士に向け放たれていった。

おいおい、これって弾幕ごっこに使ったら完全に1回はピチュるな。おっと、大事なことだから2回言ったからな。だって、大玉の弾幕、極太レーザー、複数の小さな弾幕……もう完全にオワタ式だからな。しかも、俺の『魔』の力も加わって……って、

 

「黒騎士の近くにいる俺もあぶねぇじゃねぇかッ!」

 

自分も危険だということに想雅は気付き、その場から離れる。想雅が離れた瞬間、黒騎士は黒いオーラでドーム状な物で自分を防御するように作った。そして、

 

 

ドゴォォォォォォォォォォッ!

 

 

塔がもの凄い勢いで揺れ、空中に浮いていた霊夢たちは何ともなかったが、床で立っていた想雅は、床に倒れ、弾幕が着弾したときに、床が破壊されその欠片が想雅に襲い掛かってきた。

 

「痛ってッ!痛痛痛ッ!オウフッ!」

 

最後に当たってきた欠片が異様に大きく(大きいといってもせいぜい10センチぐらいの欠片)が、想雅のちょうどみぞおちに入り、床に屈服した。

 

「い、痛てぇ~」

 

「想雅、みっともないわよ」

 

霊夢から、なんか声がかかった。誰のせいだよこの状態は、半分お前らで、半分俺だからな。何?自業自得だって?ハハハ、まさにそうだな。

 

「まぁ、被害は想雅にダメージが当たっただけだからな。黒騎士が倒せればいいってもんよッ!」

 

魔理沙が、「どうよッ!」と言いながら想雅に自慢げに言ってきた。おいおい、当たってだけってお前……人の心配すらしないのか……

 

「いいえ、まだ気を抜くのは早いと思うわよ……」

 

ルーミアが、ある一点を見つめていた。そこには、

 

「「なッ!」」

 

霊夢と魔理沙が、まさかっと思いながら驚いた。え?俺は?今絶賛みぞおち中。ホント痛くてしゃべれん。今は呼吸を整えている最中だ。

霊夢たちが驚いた視線の先には、3人の弾幕をくらったはずの黒騎士が立っていた。その周りは弾幕の影響によりえぐれており、黒騎士のいるところから半径約3メートルだけ元の形を保っていた。

 

「先ほどの攻撃は、なかなかな物だっタ……おかげで、左腕の籠手が吹っ飛んでしまったゾ……」

 

黒騎士が、自分の左腕を想雅たちに見せつけるように前に出した。しかし、その開いた穴から黒いオーラが噴出し、みるみる腕の形に変化していった。次に、剣。その次に銃らしき形に変化し、そして、その銃口を想雅たちに向け、銃弾を放つ。

 

「ちょ、息まだ整えていないんですけどッ!」

 

想雅はバッ!、と立ち上がり、霊夢たちとその場から離れた。銃弾の先には誰もいなくなり、当たらないと思っていたとき、銃弾の内部から何かが出るように変化していき、そして、銃弾から無数の黒い刃が出てきた。

 

「「クッハッ!」」

 

そのことに気付くのに遅れた想雅と魔理沙は、2、3本の刃を体に掠り、床に落ちた。

 

「魔理沙ッ!」

 

「想雅ッ!」

 

霊夢とルーミアは、2人の名前を呼ぶが、2人を助ける暇はなかった。

黒騎士から、黒いオーラが噴出し、霊夢たちの足元までやってきた。

 

「霊夢ッ!気を付けてッ!」

 

ルーミアは霊夢に注意を呼びかけたが、すでに時遅し、

 

「きゃぁぁぁぁぁッ!」

 

黒いオーラが無数の刃となり、霊夢を襲った。霊夢は中に舞い、そこにルーミアが駆けつけ、霊夢を見事キャッチした。しかし、その行動は敵にスキを与えた物だった。

 

「なッ!」

 

ルーミアにめがけて無数の黒い刃が向かってきた。ルーミアは剣を持っている手で黒い刃を払っていくが、霊夢を持っている状態なので自由に動くことができない。また来る黒い刃を払おうとするが、ルーミアの手から、霊夢が落ちそうになっていたため、そっちに意識がいってしまい、逆に黒い刃が剣を払ってしまった。

 

「クッ!ヤバい……ッ!」

 

ルーミアは無防備の状態になってしまい。そこに尽かさず黒い刃がやってくる。

ルーミアは弾幕で応戦し、黒い刃を消滅させていくが少なくなる場面が無くなっていた。

 

「龍は獰猛である。あらゆるものを挫かせる眼を持つがために。拘束『龍王の威光』」

 

黒い刃の動きが拘束され、想雅が放った、霊力剣によってすべて切断されていった。

 

「だ、大丈夫かッ!?」

 

「私は大丈夫だが、霊夢が……」

 

想雅が近づくと、霊夢はハッ!と目を覚まし、ルーミアの腕の中から降りた。

 

「私も大丈夫よ。想雅の『魔』の力のおかげでね。だけど、少し痛むわね……」

 

霊夢は痛むところをさすりながら想雅に言った。『魔』の力はまだ、働いているのか……俺の場合なんか、自分が発動しないと、『魔』の力が働かないからな。よくそれで怪我を負うのが多いからな。なんだよ、所有者にはこんな目に会わせといて、他の人には、永遠と続くみたいなのは?俺が自分より他人が気になるからか?まぁ、それはそれでありがたいのだがな。

 

「これって、私らに勝ち目がないんじゃないのか?」

 

魔理沙が皮肉そうに言った。

 

「おいおい、この状態に招いた本人が言う言葉かよな……まぁ、勝ちい目はないけどな、0%じゃあないと思うぞ」

 

「と、言うと?」

 

「奴の黒いオーラが、何かしらの『邪悪』の形だったら、勝てる予知があると思う」

 

「なら、それしか方法が無さそうだな。で、私らは何をすればいいんだ?」

 

「そうだな……霊夢とルーミアは、黒い刃の駆逐だな。まぁ、それには俺も参加するが、俺の声が聴こえたら、その場からいったん離れろ。少し危なっかしいことになるからな。たぶん。で、俺がスペカを使い、黒騎士の動きを止める。それで、奴のオーラが『邪悪』なものなら、勝ったのも同然だ。しかし、奴のオーラが『邪悪』なものじゃない場合は、霊夢とルーミアは、黒い刃の駆逐に当たってくれ。そして、俺の掛け声と共に魔理沙が、奴に大ダメージが与える攻撃をしてくれ」

 

「お、おう……なんか私の役目が重大だな」

 

魔理沙は、苦笑しながら言った。

 

「無駄口は終わったカ……?まだ余裕があるとはナ……」

 

黒騎士は銃に変化していたオーラを、腕に戻して言った。

 

「まぁいい、ここが貴様らの墓場となるのだからナ……」

 

黒騎士は甲冑全体から黒いオーラを噴出させ、黒い刃で攻撃してきた。

 

「行くぞッ!」

 

想雅の掛け声と共に、3人は散開した。

 

「はぁぁぁぁぁッ!」

 

ルーミアは襲ってきた黒い刃を、弾幕を展開しながら消滅していく。剣を使いながら弾幕を使うのはもってのほか難しい。俺にとっては相当のレベルに値する。

ルーミアの足元に黒いオーラが立ちこみルーミアに攻撃をしようとしたとき、

 

「はッ!」

 

ルーミアの周りにお札が展開され、結界によって黒い刃の攻撃を防いだ。攻撃が止んだ時、結界もろども、黒い刃を剣で薙ぎ払った。

 

「どうやら、ルーミア用に結界の改良が必要だわ……」

 

「ふふふ、その時はお手柔らかにねッ!」

 

迫ってきた黒い刃を剣で薙ぎ払い、その奥から来る刃は霊夢の弾幕によって消滅した。

そのころ、霊夢とルーミアにまかせっきりの想雅と魔理沙は、何やらか3人の弾幕によって破壊した床の欠片をもくもくと拾っていた。

 

「なぁ、想雅。こんな石ころを何に使うんだ?」

 

「ん?まぁ、黒騎士の動きを止めるための中間素材っていうところかな?」

 

想雅は石を持てる最後の石ころを拾い、魔理沙もだいたい限界まで拾っていた。

 

「よしッ!霊夢ッ!ルーミアッ!下がれッ!」

 

想雅の声が聴こえると、2人は言われた通りに、後ろに下がり、想雅と魔理沙は、石ころを上に向かって投げ、想雅は『言霊』を詠唱し始めた。

 

「鋭きは、決して貫くとこと運命(さだめ)られた刃の理。硬きは、何人(なんぴと)たりとも折れることを許されない鋼の理。強きは、一人ではあらず我らで立ち向かうことが軍の理。それ(すなわ)ち剣の存在。一点の曇り無き義は、決して邪悪なものには(くじ)かぬ。それが我の宿命であり、偉業と言えるものだと」

 

上空に上がった石ころたちは、急に光だし、無数の剣となった。

 

「ほウ……奇妙な技ヨ……」

 

黒騎士は、展開してた黒いオーラを自分の甲冑の中に戻した。

 

「まずは、初撃の2発ッ!」

 

想雅が手を黒騎士に向け払うと、命令を受けたかのように、2振りの剣が黒騎士に向け攻撃を始めた。

 

「はぁぁぁぁァッ!」

 

黒騎士は向かってきた1振りの剣を下に避け、自分の体を捻らせ、通った剣を掴み、もう1振りの剣を、掴んだ剣を使って迎撃した。

 

「こんなものカ?」

 

「まだまだぁぁぁぁぁッ!」

 

続けて、複数の剣を放つ。

黒騎士は目の前から飛んできた剣を掴み、次からやってくる剣を次々に迎撃した。しかし、想雅も甘くはなかった。攻撃した時に開いたスキを狙って、尽かさず剣を向かわせた。しかし、甲冑を着ているくせに身軽な動きをして、避けきったが、煙の中から1振りの剣が出現し、黒騎士は持っていた剣を投げ、相殺した。そして、落ちてくる一方の剣を掴み、もう一方を迎撃する。片方の剣を床につき刺し、向かってくる剣を掴み、それを使いながら、複数の剣を迎撃する。黒騎士が上を向いた時に、自分に向かってきた剣を、薙ぎ払い、持っていた剣を想雅へ返した。

 

「させないわッ!」

 

想雅に向かってくる剣を、霊夢が霊力弾を放ち相殺させた。

 

「ナイスッ!霊夢ッ!」

 

想雅は霊夢に向け、親指を立てた。

 

「ねぇ?想雅。私たちの力が必要じゃない?」

 

「いいや、まだ本気を出していないのでね。しかし、まぁこんなところで拝めるとな……」

 

想雅は黒騎士に向け放った剣を、黒騎士がみるみる迎撃していくところを見て、あることを思い出した。バー○ーカーの登場時に、アー○ャーが、○ーサーカーむけ、王の○宝(ゲート・オブ・バ○ロン)を使い、ことごとく迎撃されたシーンを思い出した。

まさかな。すげぇよあの黒騎士。あのシーンを再現しやがった。

 

「派手な攻撃をしておいて、その程度カ?」

 

「まったく、見てわからないのか?まだまだ、たっぷり剣は残っているぞッ!」

 

想雅は、話すと同時に剣を黒騎士に向かわせた。

 

「フン。先ほどと何も変わっておらヌ……」

 

黒騎士は先ほどと同じように、剣を掴もうとするが、

 

「……ッ!」

 

掴んだと同時に、黒いオーラで形成されていた腕が、剣の光に消滅させられた。そのことに驚いた黒騎士は、向かってくる剣を黒い刃で攻撃するが、跡形もなく黒い刃は消滅し、黒騎士に向け剣が飛んできた。

 

「ぬ、ぬうゥ……」

 

黒騎士は避けるが、次々に向かってくる剣に苦戦を強いられた。ある剣は黒い刃を貫き、違う剣は、強力な力で黒い刃をねじ伏せ、床もでも破壊する。そう。想雅が放った剣たちは皆、『聖』の力や『魔』の力が宿った強力な剣となっていた。

 

「『聖』の力が効果覿面だな。よしッ!」

 

想雅は確信がついたのか、スペル詠唱をし始めた。

 

「聖なる鎖よ。狂気を(むさぼ)り喰らい、悪を刈り取れ。束縛『レイジング・グレイプニル』」

 

想雅の腕から、『聖』の力で模った鎖が5つ、黒騎士に向かっていった。それに気付いた黒騎士は避けようとするが、まだ迫り来る剣らに逃走路を断たれ、無理でも行こうとするが、さまざまなところに剣が当たり、その場に崩れた。そして、『聖』なる鎖に捕まった。抗おうとするが『聖』なる鎖は奴を逃がさないと完全に縛りついている。

 

「グ、グゥ……ギギギ……」

 

「ハッ!」

 

想雅は腕から伸びている鎖を引っ張り、黒騎士の態勢を崩した。

 

「今だッ!魔理沙ッ!強力な一撃をブチかましてやれぇぇぇぇぇッ!」

 

「よっしゃぁぁぁぁぁッ!最大パワーだぜッ!魔砲『ファイナルマスタースパーク』」

 

ミニ八卦炉から、極太レーザーが発射された。そのレーザーはまっすぐ黒騎士に向かい黒騎士を巻き込んだ。

 

「グォォォォォ……ォォ……ォ……」

 

黒騎士の声が徐々に小さくなっていき、黒騎士はその場に倒れた。

 

 

 

 

 

 





ふぅ……黒騎士が倒れた。なんだろう、この章……Fate/Zeroの要素がありすぎだ。
なんか想雅は、○ーチャー、まぁ、ギル○メッシュだし……黒騎士は、バーサーカーだし……
なんにせよ、想雅たちが黒騎士を倒しことができたし、深く考えることをやめよう。うん、それがいい。
そうそう、次回でこの章は終了です。

明日は受験……まぁ、よほどの事が無い限り、受かることだろう。

感想待っています!
次回もお楽しみに!



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勝利の塔はいつでも不思議である


受かると言ったな、アレはマジだ。
受験が終わったー。で、合格しました。テストは結果はまぁまぁだと思うが、面接が自分的にもよくできたと思う。全部答えられたから、( ・´ー・`) ドヤァ・・・ってしました。
これで何も心配なく投稿できるぜッ!
いきおいで書いちゃって、9000文字いっちゃった。(・ω<) てへぺろ
そうそう、この小説を、10000UR以上、見てくださってありがとうございます。それ言うのはもっと前だったんですけどね……

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり





魔理沙のスペカで黒騎士が光に飲み込まれた。そして、黒騎士はその場に立ったまま、甲冑が崩れていた。

 

「つ、ついにやったの……か?」

 

極太レーザーを打ち終わった魔理沙はその場に座り込み、「はぁ~」と息を漏らした。

 

「魔理沙、それフラグ」

 

霊夢が冗談を交えて言ってきた。たしかに、魔理沙が言った奴は完全にフラグだな。

まぁ、甲冑が崩れたことも確認したし、復活することはないだろう。うん、そう違いない。

兎に角、一件落着だな。ハハハッ!

想雅が心の中で笑っていると、服の裾をちょいちょい引っ張ってくる感触があった。

 

「ん?どうした、少年?」

 

想雅は少年の方を向き、少年は無言で、ある一点を指差した。そこには、

 

「なッ!」

 

想雅は思わず声を上げてしまった。だって、アレだぜ、アレアレ。まさかと思うけど……

 

「どうしたの?想雅……って、え?」

 

ルーミアが想雅に話しかけてきたが、想雅が見ている方向に自分も見てみると、先ほど倒した黒騎士から青白いオーラが出ていたのだ。

 

「おいおい、マジかよ……」

 

魔理沙は、「今度こそヤバいぜ……」と苦笑しながら言った。

黒騎士から出てきたオーラは、何かになろうと形を作っていた。下の方から、足、腰、腕、体、頭の順で作られていき、そして、一人の男性の姿になった。

ボサボサの金髪、着ているものは先ほどの甲冑ではなく、黒いロングスーツを着ていた。

想雅たちは、驚きながらも戦闘態勢を取った。しかし、そのことを見ていないのか、男性は近づいていき、ある距離まで来ると男性は立ち止った。

 

「そう、ピリピリするなよ。俺はもう戦闘する意思はないんだからよ」

 

想雅たちは、先ほどとは口調が違っていたためってきり別人だと思った。

 

「『誰だ?』って聞きたそうな表情(かお)してんで自己紹介させてもらうがよ おれぁ……誰だ?」

 

男性は自分の名前を憶えていないらしく、その場で考え込んでいた。

なんだこいつは……自分の名前も覚えていないって、どこかに頭ぶつけたのか?それともただのバカなのか?

 

「ねぇ、想雅?あいつはバカなの?」

 

「そんなこと知らん」

 

そして、男性は考えるのをやめたのか、頭を掻きはじめた。

 

「あぁ~、わっかんねぇ~。なぁ坊主。名乗らなくていいか?」

 

「……別にかまわん」

 

男性は、そうかと頷き、想雅たちに話しかけてきた。

 

「さっきはすまなかったな。急に攻撃してしまって」

 

「ホントだぜ。まったく」

 

魔理沙が偉そうに男性に向け言った。っていうより事態の発端はお前だからな。

 

「こっちらも、抑え込もう押したんだが、負の感情の方がよっぽど強すぎてな。お手上げ状態だったんだ。まぁ、それを止めてくれた君たちには感謝している」

 

男性は、想雅たちにお辞儀をした。

 

「ホント、止めれてよかった。そのまま、塔から出たら、幻想郷が大惨事になるところだったぞ。というより、聞いていいか?」

 

「俺に答えれる質問なら」

 

「なぁ、あんたは今の状態を見ている限りでは、負の感情なんて無いように見えるのだが……」

 

さっきから、あの黒騎士と似てつかない。さっきの狂乱ぷっりと、この気が抜けたような感じじゃ、まったく想像がつかん。

 

「見た感じそう思うだろ?違うねッ!人は見かけで判断しちゃあいけないね。これでも、自分の手を血に染めた者だよ」

 

男性は、顔を背き、強く否定した。

 

「俺は、一国の王に遣える騎士の1人だった。騎士だから、よく戦場の前線にたったもんだよ。初めは怖かったさ。痛いのも、死ぬのも、殺すのも……しかしよぉ、何回も戦場に赴き、過酷な戦火の中を駆けていくうちに、慣れちまったよ。痛みにも、死ぬのも、殺すのも……そこから俺はすでにおかしくなってきたんだ」

 

男性は、険しい表情になりながら、自分の唇を噛みしめた。

 

「殺戮に手を染め、残虐のことをした……だけど、そんなこと俺は知らない、殺らなきゃ殺られる、そんだけだったんだよ。そして自分を見失なった。その時に、この『勝利の塔』のことを聞いたんだ」

 

「これが勝利の塔」

 

勝利の塔……最上階まで上ると、涅槃に達することができる塔。

 

「そして、俺は、こんな嫌な自分から抜け出せられる。もうこんな思いは嫌だ。と思いながら、この塔まで来て、最上階まで出たどり着いた。だが、自分は涅槃に達しなかった。それに俺は絶望した。そして、涅槃に達する場所で、腰についていた剣で、自分の胸を貫いた……やっと死ねると、思ったら、気付いた時には、狂気を持つ騎士になっていた。『あー、俺もアイツと同じで、どうあがいてもこの感情から逃げられないという宿命を背負ったんだな』と思ったんだ」

 

男性は虚ろな目で、想雅たちに目線を戻した。

 

「そして、何百年の時が流れた。そのあいだに俺は塔にやってくるものを、次々殺していった。入り口付近にいたゴーレムたちも俺が作ったものだ。そして、人が全く来なくなり、『やっと、誰も殺さなくてすむ』と思ったときに、君たちが来て、俺の狂気を消滅してくれたんだ」

 

うーん、深い。それしか言えねぇ……昔の事なんか俺全く知らんからな。

たしかに、こいつが言った言葉はわかる。慣れたくないものなのに、慣れてしまう。俺も人間の慣れが怖い。いろんな意味で……

 

「なんか、すまなかったな。苦しいこと聞いて」

 

「いや、構わんよ。人に話すと気が楽になるっていうだろ?」

 

男性は、先ほどのうつろな表情から、笑顔に戻った。

 

「そういえば、お前はこの後どうするんだ?」

 

「ん?このあとねぇ……さぁな。このままほっつき歩くという手もあるにはあるのだがな。俺はもう静かに眠りたい」

 

「そうか、なら一緒に来るか?」

 

想雅の思いもよらない言葉に、男性は驚いた。

 

「もう一度言ったって同じさ。また涅槃に達することができない」

 

「どうだろうな?過去のお前は、死にに行くことだった。だが、心のどこかで、まだ死にたくないとか思っていなかったか?俺の予想だと、その意思が強すぎて、悟りが開けなかったんだと思うぞ。今のお前なら、涅槃に達することができるはずだ。もう満足しているだろう?」

 

男性は、想雅から目線を逸らし、「フフフ」と笑った。

 

「な、なんだよ。おかしいこと言ったか?」

 

おいおい、笑うな。こっちが恥ずかしくなるだろうがッ!

 

「すまん、すまん。なんか坊主に慰められている今の俺を見ていて、笑えてきたんだ。決して坊主に対して笑ったわけじゃない。むしろ、勇気をもらった感じだ」

 

男性は、どこか希望が見えたと思うような感じな雰囲気になった。

 

「で、どうするんだ?行くのか?行かないのか?」

 

「当然、行くに決まっている。速く寝たいッ!もう動きたくないッ!」

 

おいおい、こいつ、今さらっとニート発言しやがった。

まぁ、こいつの勝手だが、他人があーだこーだ言うことじゃない。

 

「決まったことだし、坊主ッ!」

 

「あ、ちょっと休憩させてくれ。お前と一緒に悟ってしまう」

 

そうだった、悟らない方法が、『言霊』を使うことだった。すっかり忘れていたよ。

 

 

 

 

-----○●-----

 

 

 

 

休憩が終わり、俺と、黒騎士だった男性、光る少年と、最上階へ行くべく階段を上っていた。

 

「なぁ、坊主。あのお嬢ちゃんたちはおいて言っていいのか?」

 

男性が不思議そうに言った。

 

「ん?あぁ、あの場で3人に『言霊』かけたら、俺が廃人になるぜ」

 

「お……おぅ……」

 

男性は、「なんか変なこと聞いて、すまなかったな」と言った。

 

「それよりも、少年がめっさ光っているんだが……」

 

そうだ。最上階へ近づくにつれ、少年の体が、肉眼では直視ができないぐらい凄く光っていた。

 

「そりゃぁ、そうだろ。もうそろそろ本来の姿になるんだからよ。せいッ!」

 

男性が、いきなり光り始めた。

 

「まぶッ!ちょ、やめろッ!そっち向いていなくても、めっさ眩しいんだよッ!」

 

「え?俺の顔が美しくて、直視することができないって?」

 

「お前の耳は腐ってるのかッ!」

 

「俺は幽霊。腐る以前に、それ自体無い」

 

「わかったから、発光するのをやめろッ!」

 

想雅は、男性の方を見ずに言った。男性は光ることをやめ、ご機嫌がいいのか鼻歌を歌っていた。

俺の顔が美しくてって、お前はペルセウスかッ!思えば、アイツと戦ったのって、5ヵ月前なんだよな……あの時は正直疲れた。あの戦い慣れた動きは黒騎士も同じだったな。俺は戦闘経験は無いに等しいし、基本的、俺は平和主義だしな。あと、ペルセウスの強敵曰く、友になったんだよなぁ。

 

「まぁ、からかうのはここまでにしてと……」

 

「お、オメェよ……」

 

うわっ、すげぇ腹立った。

 

「もうすぐで涅槃に着く。少し階段の雰囲気が変わってきたしな」

 

男性は、周りを見ながら言った。

たしかに、暗かった階段とは違うな。壁とかに、何やらかの彫刻が彫ってあるのがクッキリ見えるし、足元は、ドライアイスが水につかり白い気体を出しているように、白くなっていたし、いろいろと変わり映えしており、正直、「いきなりすぎるだろ……」と呟いてしまった。

 

「あと、もう少しだ」

 

男性が呟き、それから数秒後、少し開けた空間に出た。そこには大きな扉があり、その近くに全長2メートルぐらいある仏像が門の隣りに一体ずつ立っていた。

壁には、先ほどの彫刻と、数枚の絵が飾られていた。

 

「坊主、この扉の先は涅槃に達する空間だ。準備は出来ているか?」

 

「あぁ、悟らないように下の部屋で『言霊』は詠唱して置いた」

 

「そうか、では、開くぞッ!」

 

男性が扉を思いっきり開き、眩しい光が照らされながら、想雅たちは扉の中に消えていった。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

扉の向こう側に行き、たどり着いた先は、何もない真っ白な空間に出た。

 

「ここは……」

 

想雅はこの空間に見覚えがある。よくここにチャラ神が俺の意識をこっちに移動させて、くだらない話を聞かされている場所だった。そうここは、アストラル界。チャラ神が言うには、もう少しで三途の川らしい、あと、たまに人が入ってくると言うが、すぐ消滅すると言っていた。まぁ、悟ったら即消滅だからな。

 

「さてと、さっきからアイツの姿が見えないな」

 

うん、一緒に入って行ったあの男性の姿がどこにも見当たらない。

 

「あの霊体なら、『名無しの俺は、クールに去るぜ』と言って消滅したよ」

 

「おう、ありがと……ん?」

 

ありゃ?今誰かの声が聴こえたような。あの男性は消滅したから、ここにはいないし、少年はもっと寂しいような、絹が擦れるような声だったし……

想雅は、あたりを見渡すが誰の姿も視界に入らない。その動作を続けていると、服の裾をちょいちょいと引っ張る感触があった。想雅は、視線を下に向けた。

 

「まったく人の子よ、これで何回目だと思っているんだよ」

 

服を引っ張った本人が、なんか怒っていた。俺の隣りには、光る少年がいたんだが、この少年は光っていないな。

 

「えーと、君は誰?」

 

とりあえず、名前を聞くことにした。

 

「何言ってんだよ、知らない仲じゃないだろ?僕だよ。ぼーく」

 

知らない仲じゃない?俺はこんな元気がいい少年なんか知らんぞ。俺が知っている少年は、体全体が発光していて、めっさ目立つ子供なんだがな……しかし、知らない仲じゃないと言う言葉に引っ掛かるな。もし、あの光る少年が、この元気がいい小学生低学年みたいな少年だったら、俺のそばにいることに確信がつく。

 

「もしや、あの光る少年か?」

 

「うん、正解。やっとわかってくれたんだ」

 

少年は、クルクル回転しながら想雅のそばから離れた。

白髪のショートヘアー、琥珀色の眼、服装は、少し汚れたローブを着ていた。

 

「そういえば、自己紹介がまだだったね。僕は、ア・バオ・ア・クゥーっていうんだ」

 

「俺は、天上想雅だ」

 

「天上想雅ね……いい名前だね」

 

なんか、初学生並の身長の少年に褒められた。なんか違和感がある。

 

「なんか失礼な事思っていない?」

 

「い、いや、お構いなく」

 

こいつ、人の心読めるのか?

 

「自己紹介も済んだことだし、本題に入ろうか」

 

ア・バオ・ア・クゥーが、想雅を見つめた。

 

「ありがとう、ここまで連れてきてくれて。本当に感謝しているよ」

 

「いいや、当然のことをしたまでだ。それよりどうだ?解放された感覚は?」

 

「うん、素晴らしいよ。明日を見せてくれてありがとう」

 

ア・バオ・ア・クゥーが想雅に向け、ぺこりとお辞儀をした。うん、やっぱり誰でも笑顔が一番だな。

 

「お礼としてはなんだけど、願いを叶えてあげるよ」

 

「ん?願い?」

 

ア・バオ・ア・クゥーから、願いを叶えてくれると言う言葉が出た。俺は願いを叶えてもらうためにここまで連れてきたわけじゃない。しかし、少し気になることがあった。『失くしたものは戻れぬが、道を決めたのならその姿は前に現さず、しかしそれ以上の境地へとは踏み出すな。己までもが失う形となるであろう』というおみくじの言葉だ。その言葉が、今その時を現しているように思えた。

 

「それって、死んだ人に会いたいという願いはどうなんだ?」

 

「可能だよ。だけど、蘇らせることはできないよ。そこまで僕は便利じゃないよ。あくまで会わせるだけだね」

 

そうか……なら、

 

「俺の願いは、父さんと母さんに会いたい」

 

「人の子の、父と母ねぇ……わかったよ。その前に名前ぐらい教えてくれるかな。そうしないと、呼び出すことができないから」

 

「わかった……」

 

父さんと母さんの名前を人に教えるのは何時振りだろうか……っていうより少年って人でいいのか?幻獣のはずだが……

 

「まず、父さんの名前から言うぞ。父さんの名前が、天上真雅(てんじょうしんが)。母さんの名前が、天上クロエ。結婚する前の名前は……えーと、そうだ。クロエ・クロスウェルだ」

 

「天上真雅さんと、クロエ・クロスウェルさんは結婚して、天上クロエさんね。わかったよ」

 

ア・バオ・ア・クゥーは、後ろを向き、何かを唱え始めた。しかし、言葉の意味も理解ができなく、何語を話しているのかわからなかった。少年が、想雅の方に振り向いた瞬間、少年の後ろから眩しい光が立ちこんだ。

 

「ま、眩しい……」

 

なんだろう、今日は眩しいイベントが多い気がする。光が収まり、想雅が少年に視線を戻そうとした瞬間、会いたかった人たちが視界に映った。

 

「久しぶりだな、想雅。見ないうちに大きくなったな」

 

「久しぶり、ソーガ。会えてうれしいワ」

 

想雅の成長した姿を見て、しみじみ感じていた男性。

黒髪のツーブロマッシュウルフ、日本人と言うことが分かる黒い眼、相変わらずあごに髭が生えていた。服装は、白いワイシャツを着ており、ズボンはジーパンという普通の姿だ。

話し言葉の最後が片言になっている女性。

黄色がかかったような茶髪、日本人ではないと思われる蒼い眼、見た目は、20代前半らへんの女性に見える。服装は、白いシャツの上に黒いカーディガンを羽織っており、ズボンは隣りにいる男性と同じジーンズを履いていた。

想雅は、その2人を見て、思わず声を出した。

 

「あ……あぁ……父さん、母さん……」

 

あぁ……久しぶりだ。何年振りだろう……なんだろう、なぜか目から熱いものが……

 

「おいおい、どうしたんだいきなり、目から涙を流して」

 

「シンガさん、それぐらい察してくださいネ」

 

「わかっているさ、俺だって今凄く涙が出そうなんだよ。あまり言うなよ……」

 

「我慢はダメですヨ。私だって……」

 

想雅の両親2人とも、目から涙が出てきた。なんだこれは、家族全員涙もろいのか?それはそれで、感情表現が豊かって思っていいのか?しかし、まさかこんなところでおみくじの力が発揮されるとはな。まったくもって予想できなかった。

そして、涙が止まるまで数分が立ち、3人は改めて会話を始めた。

 

「想雅のところに来たのはいいが、何をしればいいんだ?」

 

真雅が、その場で考え込んだ。

 

「父さん、いきなりそれは……っと言いたいんだが、確かに何をすればいいんだ?」

 

おいおい、これじゃ、感動の再開が全くもって、意味がないじゃないか……

 

「とりあえず、世間話をしましょうヨッ!」

 

クロエがなんかノリノリのテンションで、世間話という話題が出した。母さんはやっぱり昔と変わらず、明るくムードメイカーだな。

 

「確かに、クロエが言うことには賛成だ。特に今の想雅の事が凄く聞きたい」

 

「そうネ、ワタシも聞きたいワ」

 

親からの質問攻めか……変な事聞かれそうな気がしてきた。

 

「まず、一つ目だな。えーと、爺さんと婆さんまだ生きているか?」

 

おいおい、いきなり縁起が悪いこと聞くのか?しかも、俺の事を聞きたいとか言って、爺ちゃん婆ちゃんのこととか……まぁ、親が子を心配するように、子が親を心配する気持ちはわかる。

 

「俺はいたって真面目に聞いているんだぞ」

 

そうでしたね、父さんはいたって真面目です。しかし、日本語をちゃんと使うように。

 

「今んところは、問題ないかな」

 

「そうか」

 

真雅は、安心したのか、少し笑っていた。ホント今んところはな。近頃の爺さん、婆さんはポックリ逝きやすいからな。おっと、俺も縁起がない事言ってしまった。

 

「次は、ワタシネ」

 

クロエは一呼吸置き、想雅に訊いた。

 

「ソーガって今、彼女とかいるノ?」

 

はい、きました。これを予感していたんだよ。2回目の質問でこれだよ。まったく……

 

「……いない」

 

想雅は、小さな声で言った。すると、誠雅と、クロエはお互いの顔を見て、

 

「「ふーん……」」

 

少しにやけた表情になって、想雅を見た。

 

「な、なんだよ……」

 

「いや、なぁ……ねぇ……」

 

「そうよネェ……」

 

何だよ、どっちもなんか意外そうな顔してよぉ……

 

「ま、まぁ……俺の血を受けづいているから大丈夫だろう。この体質の血が……」

 

父さんの体質は、なぜかわからないんだけどモテやすい体質だ。それが俺に……っていうより、モテたことなんかないな。教室の扉から、女子たちがヒソヒソ話していたし、ぜってー俺がハーフだからだろ。

 

「そうでしたよネ……それでよく他の女性と遊んでいましたよネェ……」

 

クロエから、何かしらの黒いオーラが出てきた。

 

「ちょ、クロエ……おまっ、想雅がいるところで……」

 

「ソーガ、こんな女たらしのような人にならないようにネ」

 

「は、ははは……」

 

女たらしになんてなる気がありません。元からそんな気はないんだ。ペルセウスになれっと言ったら、舌を切るぐらい、女たらしになる気はない。

これが数年前までは、当たり前だったんだけどな……

想雅がそう思っていた時だった。2人の足が少し、薄くなってきているように見えた。

 

「そろそろ、向こうに戻る時間だね」

 

ア・バオ・ア・クゥーが、3人の間にひょいと現れた。

 

「もう時間か、速いな……ま、想雅の元気な姿が見れたし、別に悔いは無いな」

 

「そうネ。ソーガ、楽しい時間だったワ」

 

真雅とクロエが、後ろに振り向き歩き始めた。

 

「父さんッ!母さんッ!」

 

想雅は2人を追いかけようとした。しかし、ア・バオ・ア・クゥーは目の前に立ちふさがり、想雅に警告をした。

 

「ここから先は、人の子でも入ったら、決して元の世界に帰れなくなるよ。肉体はあるけど、三途の川を超えちゃったら、戻れないと言っておくよ」

 

こういうことか、おみくじに書いてあったものは……

想雅はおみくじに書かれていた言葉のことを思い出した。

 

「ソーガッ!」

 

とつぜん、母さんから、声がかかった。

 

「Vos pensées, ces fiers que quiconque. Veuillez vie que vous pensez de vous-même. La pensée serait sauver le peuple toujours.(あなたの想いは、誰よりも誇らしいものよ。自分の想うように生きなさい。その想いは、必ず人を救うでしょう。)」

 

クロエが言った言葉は、想雅にはわかったが、真雅にはわからなかった。

 

「なぁ、クロエ。それどういう意味だ?」

 

「まともにフランス語を勉強しないで、ワタシの国に来た人にはわからないことヨ」

 

その言葉を想雅に伝え終わった。クロエは、真雅といっしょにその場から消えた。

 

「なぁ、ア・バオ・ア・クゥー。この後お前はどうするんだ?」

 

「そうだねぇ……どこか遠いところにでも行ってくるかな?」

 

行ってくるって、この塔ごとかよ。どんだけ凄いものなんだよ。

 

「それじゃ、人の子よ。少ししゃがんで、目をつぶって」

 

「ん?こうか?」

 

想雅は、ア・バオ・ア・クゥーに言われた通り、少ししゃがみ、目をつぶった。次の瞬間に、想雅のでこに、ア・バオ・ア・クゥーの指が触れ、そして、想雅にこう告げた。

 

「今日はありがとう。この思いは、僕が消えても忘れないよ」

 

急にめまいがした。これって、チャラ神の話が終わった後によく来る痛みに似ていた。想雅は閉じていた眼を開けた。そこには、体が優しい光に包まれ、足から順に消えていくのが見えて言った。

そして、その瞬間だけを見て、想雅の意識は遠くに行った。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

想雅の意識が戻った時には、どこかの部屋の布団の中で目を覚ました。

 

「知らない天井……いや、めっちゃ知っている天井だ」

 

ここは、自分の家の自室だ。意識が無い俺を誰かがここまで、運んでくれたのだろう。まぁ、だいたい察しはつくんだがな。時間的に言うと、夕方かな。真っ赤に燃える太陽が見える。

 

「あら、起きたのね」

 

自室にルーミアが入ってきた。

 

「お前が運んでくれたのか?」

 

「いいえ、霊夢と、魔理沙にも手伝ってもらったわ」

 

やっぱりね。

 

「しかし、いきなり床が光り出したと思ったら、知らないけど外に出ていたし、そこには想雅が倒れていたし、後ろ振り向いたら、もう塔が建っていなかったし……」

 

おいおい、俺って外で寝ていたのか?ア・バオ・ア・クゥーよもう少し考えて場所を選んでくれよ……まぁ、父さん、母さんに会えたし、久しぶりに話せたしよかったなぁ……

想雅は涅槃の空間で起きた出来事を思い出しながら、外の夕日を見ていた。

 

「Vos pensées, ces fiers que quiconque. Veuillez vie que vous pensez de vous-même. La pensée serait sauver le peuple toujours……」

 

母さんが最後言った言葉は、俺の名前の『想雅』に由来する言葉だった。

自分が想うことは、間違っていない。間違いだとしても、それを正すこともできる。自分の想うがままに生きなさい。決してあの人(父さん)みたいにはなってはいけません。あなたの想いが、誰かを救うこともあるでしょう……と

想雅は、自分の名前にしみじみ感じながら、太陽が沈むのを見た。

 

 

 

 

 





ふぅ~、出現せし謎の塔編は終わった。やっと春冬異変に入るぜぇ。
想雅の、父親と母親が登場しました。なんだろう……父親と、想雅の性格がまるっきり違う……

感想待っています!
次回もお楽しみに!



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春雪異変 ~怨霊騒動異変~
春が来ない幻想郷



春冬異変までやっと来たよぉ~。
受験も終わったし何も気にせず投稿できると思っていたが、2週間後に中学校生活の最後のテストが待ち受けている。フフフ、最後のテストつまりラスボス、見事に点数をめっちゃ伸ばして撃退してやるぅぅぅぅぅッ!
まぁ、受験が終わった俺には関係ないんだけど、あまりにも点数がヤバいと、受かったのに高校入学に支障をきたすような気がするんだ。
つまり、気を緩めるなってことだな。ハハハハハッ!

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくりしていってね。




さて、勝利の塔の一件が終わり、5ヵ月が経った。まぁ、俺が幻想郷に来て、1年が過ぎたと言った方がいいか。まぁいい。あの一件のア・バオ・ア・クゥーは、光に包まれ足から消えていったからに、たぶん涅槃に達し、消えたと思う。だからアイツは「僕が消えても忘れないよ」と言ったのだろう……

 

「えーと、あと買っていないものはと……」

 

今は、人里の八百屋に来ている。朝からルーミアがお腹すいたと五月蠅かったので、ただ今食材を調達中……まぁ、それは毎日の事なので慣れているのだがな。

ホント人の人生って変わりやすいものだ。1年という短い期間で俺の人生は、180度変わったみたいなものだ。妖怪、神様、悪魔、幻獣、幽霊に会ったり、自分に能力があったり、何度も死にかけたり、ほとんどが夢物語みたいな出来事だった。

そういえば、勝利の塔のことが終わった1週間後、島夢さんが開催した缶けりに参加したな。早朝にチャラ神がアストラル界ではなく、俺の目の前に現れて「速くやること済ませろ」と言われて、訳が分からないまま従ったら、チャラ神の後ろから光の扉が出現して、無理やり放り込まれたな。で、アイツの口から「1週間の間は、この扉使えないから迎えは1週間後な」と言われて扉を閉じやがったんだよな。まぁ、元の世界に帰ってきたら、ブチ転がしたがな。というより、チャラ神の能力はなんだ?あの光の扉はアイツが作ったように思えたんだがな。

とりあえず、買い物も済ませたし、さっさと家に帰るか。

 

「お兄さん。今日も寒いねぇ」

 

「えぇ、そうですね」

 

八百屋の爺ちゃんにそう言われ、想雅はそれに答えた。え?寒いだってぇ?俺が幻想入りしてから1年も経つのに?たしかしそうだが、今俺の視界に映るのが、真っ白の道と、空から降ってきた雪が見えるんだよ。確かめなくても寒いというのはわかる。

外の世界は、ここより暖かく桜までが咲きほこっていた。俺が来たときはすでに冬なんて終わっていたのに、これ異変だろ。霊夢よ、なんで解決しない。

想雅は首に巻いてあったマフラーを、たくし上げながらこの春が来ない状態の事を考えていた。

 

「朝から速いな、想雅」

 

寺小屋に向かっている慧音に呼び止められた。

 

「あぁ、家で五月蠅い腹ペコ妖怪がいるからな。朝から騒がしくてありゃしない」

 

想雅は、ため息交じりに苦笑した。

 

「なぁ、この異変はいつになったら解決するのだ?」

 

あぁ、やっぱり異変なんだ。4月あたりからおかしいと思ったんだが、やっぱり異変だったよ。何やってんだよッ!博麗の巫女。

 

「さぁ、霊夢の気分次第かな。まぁ、朝食を作った後、霊夢のところに行くよ」

 

想雅は、この異変はどうなるか分からないので、答えれることだけ答えた

まずは、霊夢からなぜこの異変を早役解決しないのか?を聞く。答えは当然「めんどくさい」だろうがな……

 

「そういえば、また悪霊が出たぞ。1ヵ月前から今にかけて毎日出ているらしいぞ。お前に会う前に魔理沙に会って、魔法の森も同じようなことがあったそうだ。このままほっておくと、後々面倒なことになると思うぞ」

 

へぇ……魔理沙が通ったのか、ということはちょうどすれ違いというわけだな。

やはり、最近になってから悪霊が増えているらしい。とりあえず人里のギリギリのところで倒されているため、今のところは人里に被害は無い。俺の家の近くにも出現する場合もあるが、その時はほとんどルーミアの暇つぶしによって倒されていっている。ご愁傷様です、悪霊諸君。

 

「それじゃぁ、寺小屋で授業あるからそろそろ行くぞ」

 

「頑張れよ」

 

想雅は慧音に別れを告げ、家に帰宅した。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

ただ今、博麗神社の階段を上っています。

家に帰宅途中に魔理沙に会い「どうせ、ルーミアに食事を作るのなら、私の分も作ってくれ」と言われ、しょうがなく作った。まぁ、おいしいと言ってくれただけでもうれしいもんだよ。隣りにいるのは魔理沙だけだが、って、え?ルーミアはって?アイツは「外が寒いから動きたくない」とか言ってたし「もし、悪霊たちが想雅の家に入ってきたらどうするの?」とか言われ、ルーミアは家でお留守番。

 

「なぁ、想雅。最近、悪霊どもが大量発生していないか?」

 

「そうだな……俺ん家の近くにも出没しているし、魔理沙の家の近くにも出没したらしいな」

 

「あぁ、さすがに私も、そろそろヤバいなと思って霊夢のところに行く途中に、想雅に会ったんだ」

 

「いや、お前、ぜってー待ち伏せしていただろ」

 

「あれ?ばれた?」

 

ばれたじゃねぇよ……今夜の飯も、また買いに行かんとダメになっただろ。これから、少し余分に買っていこう。うん、それがいい。

想雅と魔理沙が階段を登り切り、神社が目の前に見えた時、魔理沙が何かを思い出したかのように、想雅に言った。

 

「そういえば、さっきチルノに会ったぞ。5月になっても雪が降るから、結構テンションが上がっていたな。かと言って、弾幕が強くなっていなかったし、いつも通りに楽に倒せたぞ」

 

そういえば、俺にもチルノが挑んできてことがあったな。まぁ、その時はだいたい、俺の勝利だったな。まぁ、ついでにチルノと、一緒にいた大妖精に料理を振舞ってったなぁ。あいつらのおいしそうな顔を見て、俺はそれだけでもお腹いっぱいだった。

俺たちは、神社の縁側を通って、霊夢の家までたどり着いた。

 

「おーい、霊夢、居るかー?居ないなら入るぞー」

 

「いやいや、逆だろ。」

 

魔理沙は、ふすまを思いっきり開けた。そこには、こたつに入って寝転がっている霊夢の姿があった。

 

「玄関から入りなさいよ」

 

霊夢は、魔理沙と想雅を見ながら、起き上がってきた。うわっ……そこらへんが、ゴミで散らかっていやがる。

想雅は、自分から散らかっているゴミの片づけをしていった。

 

「なぁ、霊夢。春にもなって、まだ雪が降るのがおかしくないのか?」

 

「別にー、ただ春が来るのが遅いだけじゃないの」

 

霊夢は、こたつに置いてあったお茶を飲みながら答えた。

 

「春が来ないだけじゃないぜ。あと、悪霊どもが近頃大量発生しているんだ。まだ、人里には被害は出てないが、いつ襲われるかわからないぜ」

 

魔理沙は、春が来ない事、悪霊が大量に湧いている事を霊夢に言ったが、霊夢は聞く耳を持っておらず、ただ「はいはい」と聞き流すだけだった。

 

「なぁ、霊夢。お前どうしちまったんだよ。いつもの霊夢らしい怠け具合が、今日の霊夢はそれ以上に……」

 

「何よ、私らしい怠け具合って……」

 

霊夢は、ジッと魔理沙を見つめた。

 

「ま、まぁ、そんなことはいいとして、どうなんだ?霊夢。行く気は起きないのか?」

 

「まだまだ寒い。これではやる気が出ない」

 

「おいおい、それってやる気が起きないフラグがビンビンだぞ」

 

部屋の掃除が終わった想雅は、霊夢を見ながら言った。

 

「それじゃぁ、今の私にやる気を起こさせてよ」

 

霊夢は籠に入っているみかんを手に取り、皮をむき始めた。

 

「やる気て言ってもな……なぁ、想雅?」

 

「あぁ、いまいちやる気の起き方なんて知らない」

 

「なら、アレを試してみるか」

 

魔理沙は、みかんを食べている霊夢の背後につき、息をはき、霊夢の脇へと自分の手を添えた。

優秀な学生は、やる気スイッチを入れることで、気持ちを切り替えるという。通常は塾の先生に探してもらうことなどが必要だが、霊夢のスイッチは……

 

「そらッ!こちょこちょこちょこちょ」

 

「ちょ、ちょっとっ、魔理沙っ!そこはっ、脇はダメっ!」

 

魔理沙は霊夢の脇へと手を添えた瞬間、脇をこしょぐり始めた。

 

「おらおら、いつも脇をさらけ出している巫女さんが言うセリフか?」

 

「ちょっとっ、もうっ……」

 

おいおい、魔理沙……お前が悪役にしか見えんぞ……

 

「そんなにいじっちゃっ!らめぇぇぇぇぇッ!」

 

霊夢が、大きな声を上げて、その場で倒れた。呼吸が乱れ、白い息がハァハァとしており、巫女の服もいろいろとはだけていた。なぜか知らないが、霊夢の体から湯気みたいなものが吹き上がっていた。

霊夢が倒れて数分後、霊夢は諦めたかのように魔理沙に言った。

 

「もうっ、わかったわ。行けばいいんでしょ行けばッ!」

 

「そう怒るなよ。もとはと言えば、お前がちゃんと異変を解決しないのがいけないだろ」

 

霊夢は、頬を膨らませながら、そっぽを向いた。

 

「まったく、やれやれだな」

 

想雅は、手を横に上げ首をフルフルを動かした。

 

「霊夢もやる気が出たことだし、それじゃぁ、行きますかっ」

 

魔理沙は肩に担いであった箒にまたがり、その場から飛んで行った。

 

 

 

 

 





初めはこんな感じかな。すでにチルノは魔理沙に撃退されてしまったな。
受験が終わって、次の日に頼んでいた本が届きました。届いた本は、

儚月紗1~3巻、茨歌仙1~3巻、三月精1~3巻、香霖堂。

計10冊です。すごくお金を使ってしまいました。orz……まぁ、いっか!

感想待っています!
次回もお楽しみに!



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白銀の春



すみません、新スペカの紹介が遅れました。

束縛『レイジング・グレイプニル』

   自分の腕から5本の鎖を出し、敵を縛り、行動を制限する。鎖の先は小さな剣の形をしてい
   るので、攻撃にも使うことができる。
   意味は、『狂気を貪り食うもの』悪や邪が大きければ大きいほど強度が強くなる。

これで想雅のスペカが7枚。結構増えましたねぇ。

感想ありがとうございます。
では、ごゆっくり。




魔理沙のおかげ?でやる気を出してくれた霊夢だが、身支度を終わったと同時に神社から飛び出し、魔理沙と想雅から行方を眩ませた。

 

「まったく、そんなに怒らなくても」

 

「そりゃぁ、怒るだろ。いきなり、こしょぐられたんだからな」

 

流石の俺でも怒ることは怒る。なんか最近、俺がヘタレ疑惑という記事が文々。新聞に書いてあった。文を見つけた時には、もうピチュらせましたよ。さすがに一方的じゃない。ちゃんと本人の了承を受けてやったことだ。え?その行動がヘタレがやる事だって?何言っているんデスカ、ミナサン。オレハケッシテヘタレナンカジャアリマセンヨ……せめて優しいと言ってくださいよ、ハハハ……

 

「どうした、想雅。顔色が悪いぞ。風邪でもひいたのか?」

 

「イイヤ、問題ナイ」

 

魔理沙は、「体は大事にしろよ」と呟き、2人は神社を後にした。

空中移動している時はなぜかおかしい感じがする。人間なんて飛べる生き物ではないはずなのだからだ。今、俺が飛んでいるというのは、人間をやめましたという事なのかと思っている。幻想郷に住んでいる皆さんは、「飛べない方がおかしい」と言っていた。実際何が正しいのか、何が間違っているのかが、分からない。

 

「想雅、何考えているんだぜ?」

 

「ん?あぁ、なんで人は飛べるのだろうと考えていた」

 

「何故って、飛べない人間の方がおかしいと思うぜ。外の奴らみたいに」

 

「解せぬ……」

 

想雅が魔理沙とそんなことを話していると、目の前に一人の女性がいた。

瞳の色は紫、薄紫のショートボブに白いターバンのようなものを巻き、ゆったりとした服装をしている。 下はロングスカートにエプロンらしきものを着用。また首には白いマフラーを巻いている。

左胸あたりに首から腰までの白いラインが走っており、そこに銀を表す錬金術記号の一つに似た、四方向に矢印がついた槍のようなブローチをつけている。

しかし、その女性は戦闘意識を持っていないのか、そこら辺をふわふわ浮遊してた。そして、2人の耳に、今回の異変の原因かもしてないという言葉が聞こえてきた。

 

「くろまく~」

 

その言葉を聞いた魔理沙は、その女性に向け弾幕を放った。

 

「今日もすごく気分がいいn……って!?」

 

女性は、魔理沙が放った弾幕に気付き、横に避けた。

 

「チッ、惜しい」

 

「ねぇ!?あなたたちッ!いきなり何しているのよッ!」

 

え?それ俺も入っているのか?

 

「問答無用だぜ。想雅、迎撃準備に入るッ!」

 

「ちょ、ちょ、ちょいッ!待てぇぇぇぇぇいッ!」

 

魔理沙が、ミニ八卦炉からマスパを撃とうとしているところを、想雅は無理やりミニ八卦炉を、魔理沙の手から奪い取った。そして、魔力が十分に蓄えられていないプラス、いきなり魔力が途切れたためミニ八卦炉から、多大な魔力、つまり未完成マスタースパークが発射され、想雅はその衝撃で地面までマッハな速さで2人の視界から消えていった。

 

「クッソ、おい妖怪ッ!お前のせいで想雅が地面まで落下して行っただろッ!」

 

「ねぇッ!?何で私のせいになるのッ!?元はといえば、あなたのせいでしょッ!?」

 

「ここで、お前を倒したいのは山々だが、今、ミニ八卦炉が無い状態だとお前を倒すことができないから、今回は見逃してやる」

 

「何で、そう上から目線なの、あなたはッ!?」

 

魔理沙と、薄紫の髪の女性は、数分間言い争った。その頃、想雅は自分の体を『魔』の力によって強化していたため、どこにも傷はつかないまま、落下の衝撃であいたクレータの中で倒れこんでいた。

 

「体中、いてぇなぁ……」

 

想雅は1人森の中で傷は無いが、衝撃の痛みに悩みながら、魔理沙が来るのを待った。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

想雅が地面に落下して、数分後。魔理沙が救出に来たが、想雅は寒い気候の中1人だけほったらかされた為、少し風邪をひいてしまった。

 

「くしゅんっ、うぅ、寒~……」

 

今は、ミニ八卦炉のおかげで、そこらへんにあった木の棒を薪にして、体を暖めていた。思えばよく生きていたな。あの高さからなら死ぬだけでは物足りず、内臓やら眼球やらが飛び出そうな勢いだった。ましてや、肉片が飛び散りそうな勢いでもあった。ミニ八卦炉……恐ろしい子ッ!あと、『魔』の力……ありがとうッ!

 

「なぁ、魔理沙。お前のミニ八卦炉、凄く便利だな。レーザー撃ったり、火をおこしたりと……」

 

「あぁ、凄く便利だぜ。こいつで山1つ、焼き払えるからな。あと、シチューを作るときも凄く役立っているぜ」

 

山1つ焼き払うとか、大量殺戮兵器かよッ!?しかも、シチューを煮込むことができる火力まで便利だなぁ。

俺なんか、外の世界で買ってきたオーブンやら炊飯器やら、言霊使って、電力要らずの便利アイテムにしたしなぁ、そんな変わらんか?いや、山なんか焼き払えん。それ以上の火力になるとボーンだ。

 

「しかし、そんな物よく持っていたな」

 

「香霖に貰ったんだ」

 

香霖っていう人から貰ったのか……よくそんな物貰えたな。

 

「そうそう、あと頼んで、ミニ八卦炉を緋々色金製にしてくれたんだぜ」

 

「おまっ、緋々色金って……」

 

なんだかんだで、凄いマジックアイテムだな。

 

「ちょっと、スープでも作るから、少しここから離れるぜ」

 

魔理沙は立ち上がると、箒を置いて森の中へと消えていった。

想雅は暇になったのか、ふと空を見上げた。

相変わらず白い雲に覆われた空、その雲から大粒の雪がしんしんと降ってくるのが見えた。そういえば、あの薄紫の髪の女性はどうなったのだろうか。魔理沙と弾幕ごっこをしたのか、それとも、どこかに行ったのか、魔理沙の服装が乱れていないのを見て、たぶん戦闘にはなっていないだろうと想雅は感じた。

魔理沙が森の中に消えてから数分が経とうとしていた。雪の勢いは先ほどより量を増し、薪についた火も消えそうな勢いだった。想雅は体を丸くして、寒さをしのいでいた。

 

「魔理沙……遅いな……」

 

さすがの想雅さえもこの寒さには耐えられなかった。手がかじかみ、自分の息で手を温めていた。

そして、火が消えるという予想していたことが起こった。

 

「あぁ、火が消えたか……」

 

想雅はやっぱりと思ったような口調でその場から立った。想雅が立つことを待っていたのか雪の勢いは強くなっていった。

 

「これじゃぁ、歩くのもままならないな」

 

想雅はあたりを見渡すが視界が悪く、だいたい5メートル先までしか見えなかった。その視界の中に誰かが想雅の方へ向かってくる影があった。しかし、その影は魔理沙の物ではなかった。

影が少しずつ近づいてくると同時に想雅は戦闘態勢をとった。

想雅が後ろに下がると、影は前に進んでくる、何度もそのような状態だった。そして、想雅の背中に気が当たり、これ以上後ろに進むことができなかった。

その状態にもかかわらず影は迫ってくる。白いターバンのようなものを巻き、ゆったりとした服装をしている。 下はロングスカートにエプロンらしきものを着用。また首には白いマフラーを巻いている……って、この影は……

 

「やっと、見つけた」

 

薄紫の髪の女性は先ほどまで想雅を探していたのか、想雅を見つけた瞬間、腰に手を当て、「ふぅ」と息を漏らした。

 

「えーと……」

 

「レティよ。レティ・ホワイトロック」

 

レティと名乗った女性は、足元で倒れていた丸太に腰を掛け、想雅を見つめながら言った。

 

「あなた、この異変を解決するの?」

 

「当たり前だ。いつも寒くてしょうがない」

 

「そう……」

 

レティは想雅から目線を空に移した。すると、先ほどまで吹雪いていた雪が、急に勢いがなくなり空が見えるまで視界が回復した。

 

「さっきまでの吹雪は君のせい(・・)か?」

 

「えぇ、そうよ。しかも『せい』って私が何か悪いことしたみたいじゃない」

 

「わ、悪い……」

 

レティは膨れっ面で想雅を見た。

 

「私は、雪がこのまま降ればいいと思っているわ」

 

「何でだ?」

 

「私は、唯一生活することができるのは冬なのよ。冬は私の天下ともいえる時期なの」

 

天下とか、俺の目の前にいる女性は、本当に強いのだろうか?見た限りではそうは思わないのだが……

 

「なら一回やってみる?」

 

おいおい、心を読みやがったよこの人。何、幻想郷の人たちは皆、心でも読めるわけ?

 

「天下のレティ様に、俺は足元にも劣りません」

 

「あら、面白いね……えーと……」

 

レティはその場で考え込んだ。あ、そういえばまだ名乗っていなかった。

 

「天上想雅だ。妖怪の山と人里の間にある家に住んでいる」

 

「へぇー、あなたが想雅ねぇ……人間をやめた」

 

「や・め・て・な・い」

 

想雅は言葉1つ1つを強調していた。

まだその噂があるのかよ……たしかに俺の能力は人間レベルじゃない。そこは認めよう。だが、俺は人間だ。いまいち信用ならないチャラ神からも人間と言われた、れっきとした人間だ。

 

「え?でも天狗の新聞に書いてあってけど……」

 

「もうやめてください……これ以上いじめないでください……自分の存在が何なのか分からなくなってしまいます……」

 

想雅はその場でヘタレこんでいった。

 

「で、レティは冬がこのまま続けいいと思っているのか?」

 

「そうよ」

 

「それは無理だな。俺がそれに肯定しても無理だな。霊夢の奴はすでに異変解決に没頭していると思うし、アイツはやる気があれば完全にそのことを成し遂げてしまうやつだからな。まぁ、単に少しでも異変解決に手を出すと、あとに残すことがめんどくさいとかの理由だと思う。あとさっきレティに攻撃してきた魔法使いも同じで異変解決する気満々だし、俺一人がどう思たって、別に異変解決に何にも問題が無い」

 

「そう……」

 

レティは立ち上がり、その場から去ろうとしていた。

 

「何で俺にこんな質問を?」

 

「少し気になっただけ、私自身も季節の移り変わりは自然なものとして受け入れているわ。だから、今回の異変に干渉しないわ。私はただ、そこにある冬を満喫していただけ」

 

そうレティは言うと、雪の降る中、彼女は空に向け飛んでいき、想雅の視界から消えた。

 

「くっしゅんッ!おぉ、やべぇ……体が冷えてきた……」

 

 

 

 

 

 






書くことが無かったので少し自分に関してのことを……
最近、ボーっとすることが多くなってきたんだ。なんだろう、受験が終わった後なぜか暇に感じる。2週間後はテストなのに、俺凄く自信あるなwwまぁ、実際は自信なんてありません。ただただ、考え事みたいなものだと思います。
思うと、いつも前書きや後書きが雑談になっている気が……

感想待っています!
次回もお楽しみに!




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七色の人形遣いとの休息



テスト3日前……そんなことより、エクスカリバー食べたいです。おうふっ!ミスった。言葉がミスった。正しくはおうどんだ。

もう……話すことなくなった。

では、ごゆっくり。




数分後、魔理沙が森の中から出てきた。

 

「いやぁ~、キノコの採取に集中していたら帰り道がどこだったか忘れてさ~」

 

魔理沙が何気ない顔で想雅に言った。

おいおい、ちゃんと確認しとけよ……こんな寒空の下に1人って、凄く虚しい気分になるし、あと、たき火に火が消えたせいで、風邪が引き起こしやすくなってしまうのだよ。

 

「でも、こんなにキノコがあったんだぜッ!これでキノコシチューが作れるぜ」

 

魔理沙は自分の三角帽の中、たくさん入っているキノコを想雅に見せた。

普通にスーパーや、八百屋で見かけるものや、外の世界では見たことのないもの、ましてや、これホントに食えるのか?と思えるものまで、数、種類が知れないほどのキノコが盛り付けられるようになっていた。

 

「おぅ、それはよかったな……くっしゅんッ!」

 

想雅は、くしゃみをした。

 

「想雅、大丈夫か?」

 

魔理沙が心配するように、想雅に寄りかかってくる。

 

「たぶん、これは風邪かな……」

 

さっきから、体が冷え、体温が低くなっている気がするし、お腹も痛い。これを風邪と言わずになんと言う。

 

「なんか私が迷惑をかけてしまったな……」

 

「気にするな。それより、魔理沙が作ったシチューで体を暖めたい」

 

「お、おう……期待しろよ。しかしな、鍋が無いんだ……」

 

魔理沙が、「困ったな……」頭を押さえながら言った。しかし、その数秒後何かを思いついたのか想雅に向けはきはきと言った。

 

「そういえば、ここから少し歩いたところにアリスの家があったな。そうと決まれば、想雅、行こうぜッ!」

 

魔理沙は、想雅の服の裾を引っ張りながら、森の中へと消えていった。

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

あれからどれぐらい歩いただろうか……魔理沙は少し歩いたところとか言っていたが、そんなところなんか視界にも入らないし、それ以前に目の前が雪がちらつくと言わずに、少し吹雪いていた。また、レティの奴がやったのかと思ったが、その姿は無く気配もない。っていうか、俺が感じる気配っていうやつは『勘』みたいなものだ。霊夢と同じで異変の事なんか『勘』でわかるというのと同じ?なのかわからないが、たぶん同じだ。

すでに指先は完全に感覚が無くなってしまい、ホントに大丈夫かと思って来た

 

「なぁ、まだ着かないのか?」

 

「もうすぐだぜ」

 

もうすぐとか、どれぐらい歩かされたんだと思っている。いくら歩いても、木、林、森だぜ?しかも根本ら辺にキノコらしき物体(・・)も生えていたし、物体と言っているのは、見た目で「あー、こいつキノコじゃねぇ」と思っているからだ。しかもそれを魔理沙は、山菜狩りでもするかのように、ひょいひょいと取っていった。

 

「ホントにこんなやつが食えるのか?」

 

「想雅、見た目で判断してないか?こいつらだって食えばおいしいんだ。ほら、こいつなんて……」

 

「あぁ、わかったわかった、頭が痛くなりそうだ」

 

魔理沙が持っているキノコの話をしようとしていたので、想雅は強制的にやめさせるよう魔理沙の頭を押さえた。

 

「まぁ、ほとんどが見たことない奴だけどな」

 

「お前……俺にシチューを食べさせる気があるのか?」

 

「おう、モチのロンだぜ」

 

「わかった、お前が毒殺する気はわかった。しかし、まだ着かんのか?いくらなんでも遅すぎるだろ……」

 

と、想雅は愚痴を言いながら、白銀の道を歩いていた。

 

「そろそろだぜ……と言ってる間にあの家だぜ」

 

1つの木を超えた先に、一軒の家がぽつんと建っていた。家と言うよりは洋館と言った方が正しいのだろうか?

 

「おーい、アリスー。いるかー?いないなら入るぞー」

 

魔理沙はドアとノックしながら霊夢に言った、訳が分からない日本語を言った。

 

「だから、日本語を使えって……」

 

想雅が霊夢の家同様にツッコみを入れた。まったくこいつは日本語という言葉を知らないのか……俺は日本生まれのハーフで、主な語源は日本語、フランス語は……まぁ、日常会話や本に書かれている言葉は話せるが、字は書けない……言えるぐらいまだマシの方だと思う。

 

「あなた、日本語っていう言葉知っている?」

 

洋館の扉が開くと同時に、1人の少女が呆れ顔で、魔理沙に向かって言った。

金髪で肌の色は薄く、一見すると人形のような姿をしている。 瞳の色は、想雅と似て青。 青のワンピースのようなノースリーブに、ロングスカートを着用している。 その肩にはケープのようなものを羽織っており、頭にはヘアバンドのように赤いリボンが巻かれている。 イメージカラーとしてはトリコロール。パッと見はブルーが強調される。

 

「あなたは……天上想雅ね」

 

アリスと呼ばれた少女は、想雅のさまざまのところを見て、確信がついた表情で言った。

 

「あぁ、そうだ……君は?」

 

「私は、アリス・マーガトロイドよ。で、何か用なの、魔理沙?」

 

「あぁ、少し想雅が風邪をひちまってn……「それって、だいたいはあなたのせいじゃないの?」……ま、まぁ、否定はしないが……とりあえず、暖を取らせてくれ」

 

「……まぁ、いいわ。あなたたちは異変を解決しにいくんでしょ。完全に風邪をひいたら、解決に困るでしょ」

 

「ありがとう……」

 

風邪をひきかけている想雅は素直に礼をした。洋館の中に想雅と魔理沙が入り、アリスに室内を案内された。

室内は、洋風な造りになっており、どこか懐かしい感じがした。外の世界にある家の造りとほとんど同じ風だった。テーブルも椅子もあり、キッチンみたいなところもあり、ソファーもあった。幻想郷は時代遅れかと思っていたが、この風景を見てしまうと、一部だけと言いたくなってしまう。

 

「室内に何かあるの?」

 

「いや、何か懐かしい感じがしてな」

 

「そういえば、あなた外の世界から来たんだったわね」

 

アリスは想雅に、「そこに座って」と椅子を引き、想雅はそこに座った。その後、アリスはキッチンに向かい、何かをし始めた。魔理沙もアリスの後にキッチンに行って、アリスに何か言って、先ほどまで三角帽の中に入っていたキノコたちを取り出し始めた。しかし、そのキノコたちのうち、数個はアリスによって捨てられてしまった。魔理沙は「なんでだよー」とアリスに言っていた。

その風景を見て想雅は内心、「あー、こいつ、ぜってー毒殺する気満々だった」と思いながら苦笑した。そして、数分後アリスがお盆に紅茶が入ったティーカップを載せ、机までやってきた。

 

「今、あたたかい紅茶が入ったわ」

 

アリスが、手でティーカップを持ち、机に置いた。想雅はそれを手に持ち、あたたかい紅茶を口まで運んだ。うん、体が温かくなっていくぅ~、生き返るぅ~。

 

「どう?」

 

「おいしいよ」

 

「それは、よかったわ。部屋は寒くないかしら?」

 

「あぁ、ちょうどいい温度だよ」

 

「迷い歩いてすっかり体も冷えちゃったでしょうし、ゆっくり暖まっていくと良いわ」

 

「何もかもありがとう」

 

すげぇ、目の前に女神様がいる。先ほどから木しか見えない森の中を途方に暮れながら歩いていた時と全く違う温度差だぜ。もう外の温度が、訳が分からないよ。

 

「それより、魔法の森に無防備に入ってよく風邪を引いただけでいられたわね」

 

「ん?あの森に何かあるのか?」

 

別に歩いていた時から何も変哲が無いただの森にしか見えなかったんだが、あとわかっているところは、いろいろなキノコが冬でも取れるということだ。

 

「魔法の森は、人間も妖怪もあまり近づかないところよ。あそこには、比較的幻覚作用を持つキノコが多いから、よく体調が悪くなることがあるのよ」

 

「マジすか……」

 

おいおい、魔理沙。俺をどんなところに連れて行っているんだ。運よく風邪ひいただけでよかったものの、寒さ+幻覚ってマジで災厄なコンボじゃねぇか。RPGだったら、凍傷と混乱というレベルだぜ。

 

「あなた、やっぱり人間やm「やめてないです」……でも、y「お願いです。それ以上言わないでください。風邪が悪化してしまいます」……わかったわ」

 

アリスはクスリと笑い用意していた紅茶を口に運んだ。まったく、人をバカにして何が面白いのやら……想雅は紅茶を飲みながら外の景色を見た。その後、机からゴンッと何か大きなものが置かれたような音がした。

 

「完成したぞ想雅、これ食って早く風邪を治せよ」

 

魔理沙はいつの間にか目の前に置かれていた皿に、作ったシチューを注いだ。そして、想雅はそのシチューを口に運んだ。

 

「うまい」

 

想雅はその一言だけを言い、黙々とシチューを食べ始めた。

 

「そうね」

 

アリスもシチューを少しづつ口運びながら言った。

 

「お、おう、なんか照れるぜ……」

 

魔理沙は照れながらも、目の前の椅子に座り、自分で注いだシチューを食べ始めた。

 

「やっぱり作る人が違うと、ラグー(・・・)の味も変わるのか……」

 

「ラグーって何なんだ?」

 

想雅がボソリと言った言葉に魔理沙が反応した。

 

「ん?ラグーってのは、シチューの違う名前だな。普通、シチューは野菜や肉、魚介類を出汁やソースで煮込んだ煮込み料理の英語からその名前が来たんだ。フランス料理では調理方法や鍋の種類で呼称が分かれ、料理の名前ではラグーなどが対応する語として知られているんだ」

 

「「へぇ~」」

 

2人は想雅が言った言葉に関心を持ちながらも、シチューを食べていた。

 

「なぁ、アリス。今度想雅が作ったフランス料理ってやらを食べさせてもらったらどうだ?結構美味かったぞ」

 

魔理沙のいきなりの提案だった。しかし、アリスは冷静に答えた。

 

「確かに、食べてはみたいけど……想雅に迷惑じゃ……」

 

「なぁ、想雅。お前は何のために料理をしているんだっけ?」

 

魔理沙は「私は知っているぞ」と言う口ぶりで想雅に向け、言った。

 

「俺は、自分が作った料理でみんなを笑顔にしたい。笑顔こそが世界の理だと思っている」

 

と、笑顔で言った。

その言葉は、父さんから毎回教えられたことで、「笑顔こそが俺の唯一のご褒美だ。あ、いや、唯一はクロエだったな。ハハハハハッ!」となんか最後は違っていたけど……全く俺の親はバカップルだった。

 

「そう、なら今度お願いね」

 

「了解した」

 

何気なく普通な会話をしていると、急にアリスと魔理沙が今まで動かしていたスプーンの動きが止まった。

 

「ん?どうした?」

 

そのことに数秒経ってから気付いた想雅は、2人が見ている窓の方向を見てみるが、ただ雪が降っているだけの景色だった。別にどこも変わっていなかった。

 

「魔理沙」

 

「あぁ、わかった」

 

2人は立ち上がり、どこかへ向かおうとしていた。

 

「どこへ行くんだ?」

 

「少し魔理沙との約束を思い出したから、少しやってくるわね」

 

「なら、俺もいk「おいおい、女の子には知られたくない秘密があるんだぜ」……そうか」

 

想雅は立ち上がろうとしたが、途中に魔理沙にひきとめられ大人しく椅子に座った。

 

「それじゃぁ、行ってくるわね」

 

「行ってくるぜ」

 

「気をつけろよ」

 

2人は想雅に手を振り、玄関前まで来た。

 

「やっぱり来たわね」

 

「そうだな、しかもあの量だぜ。見たことないぞあの大軍」

 

「と言っても、家の前でウロチョロされるのは困るからさっさと掃除に向かいましょう」

 

「あぁ、わかっているぜ。あの怨霊の大軍なんか即消滅だぜ」

 

「ふふふ、期待はさせてもらうわよ」

 

2人は扉を開き、雪が降る森の中へと消えていった。

 

 

 

 

 

 





書くことねぇ~。はい、これ一言です。

感想待っています!
次回もお楽しみに!



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怨霊の攻撃


まぁ、中学校生活最後のテストが終わったし、あとは卒業だけだな。
3年間……長かったような、短かったような。まぁ、どちらにせよ、悔いはないな。

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり。




家を出た、アリスと魔理沙は家からそう遠く離れていない開けた場所に出た。

 

「おい、いるんだろ。早く姿を見せろッ!」

 

魔理沙が大きな声を張り上げて、そこらへんに誰かがいるのか呼びかけた。すると、木の陰から複数の人影が現れてきた。

片手に、想雅が持っている刀の一種と思われる武器を持つ者、槍を持つ者、青白い馬に乗っている者、その中には、この怨霊軍団を取り仕切る指揮官みたいな者の姿もあった。……そう皆、怨霊なのだ。

 

「ほほう、いろいろな怨霊がわんさか湧いていやがるぜ」

 

「そんな気楽な事じゃないわ」

 

アリスは、「はぁ……」とため息をつき、自分の家から持ってきた、メイド服っぽい青い洋服に、ブロンドのロングヘアーと頭のリボン姿。身の丈を超える武器などを持っている上海人形たちを展開させた。

 

「そんなことないぜ。こんなにたくさんなら、私の弾幕ですべてを吹き飛ばせるから、終わった後は凄くスッキリするんだぜ」

 

「所詮、あなたは野魔法使いね」

 

「温室魔法使いよりはよくないか?」

 

「都会派魔法使いよ」

 

魔理沙とアリスは戦闘態勢をとり、いつでも戦闘になっても動ける状態にした。そのことを確認したのか、馬に乗っている鎧を着た怨霊が、手に持っている槍を自分の頭上に持ってきて、攻撃の合図なのか槍を振りおろした。

その合図と共に怨霊たちが2人に向け、走って行った。

 

「最近、複数と戦うことが多くなってきたな……あの黒騎士みたいに倒してもまた、出現するということは勘弁だぜ」

 

あの黒騎士みたいに無限増殖は無いだろう、もしそうなら、今まで倒してきた怨霊たちもまた復活するのだから。しかし、そのようなところは見たこともないし、聞いたこともない。

 

「あなた……そこまで複数の敵と戦うのが嫌なの?」

 

「いいや、少し私のせいでそのような状況があったからさ」

 

「あなたなら、あり得ることね」

 

アリスは、少し笑みを浮かべながら言った。そして、二人は散開して怨霊たちに向かって行った。

 

「そらそら、行くぜッ!」

 

まず魔理沙が、向かってくる怨霊を弾幕で攻撃していった。しかし、1発食らっていても、怨霊は消えずに残っていた。そのことは魔理沙には想定済みだった。だいたいの怨霊は弾幕1発だけでは倒れない、複数の弾幕を当てるか、それともスペカで一気にかたずけるかのどちらしかない。しかし、それは魔理沙の場合だ。

アリスは、人形が持っている槍で攻撃しながら、弾幕を放っていた。前線で怨霊に攻撃する人形、後方から弾幕を撃って援護する人形、丁度いいぐらいの攻撃陣形を整えていった。

 

「私も、アリスみたいな人形が欲しいぜ……」

 

魔理沙はその光景を見て、羨ましそうな感じに言った。しかし、その光景を一瞬だけ見て、続けて怨霊たちに攻撃をした。まず、目の前にいる怨霊に3発の弾幕を放ち、その場に停止させる。それをやった後、後ろから刀を振り下ろそうとしている怨霊が出現し、魔理沙はそれを後ろに振り向きながら横に避け、視界に入って瞬間、至近距離の弾幕を浴びせた。怨霊が消えていくことを確認した魔理沙は、スペカを詠唱し始めた。

 

「アリスッ!避けろよッ!魔符『ミルキーウェイ』」

 

魔理沙を中心とし、大きな星形の弾幕を回転させながら展開していき、魔理沙は小さな星形の弾幕を展開していた。

 

「まったく、野蛮なことは変わりないわね」

 

アリスはその弾幕を避けながら、怨霊たちを倒していった。魔理沙もアリスに負けないほど怨霊たちを倒していった。そしてスペカの弾幕が終わり、2人の周りには、2人しかいないスッキリとした空間になっていた。

そのことを確認したのか馬に乗ってる大将格らしき怨霊が、手を後ろにやって怨霊たちを後退させていった。大将格の怨霊も、森の中へと後退していった。

 

「おいコラッ!逃げんなッ!」

 

魔理沙は途中で逃げられるのが気に入らなかったのか、逃げて行った怨霊たちを追いかけていった。

 

「ちょっと、魔理沙ッ!そんなに深追いを……もうッ!」

 

アリスは魔理沙を止めることを諦め、アリスも逃げて行った怨霊たちの方向へ走って行った。

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

あー、遅いなぁ……もうラグー食べ終わっちまったぜ。体の調子はだいぶ良くなったし、寒気など先ほどまであったのか?と思うぐらいスッキリしている。しかし、自分が風邪をひいたおかげで一つ分かったことがある。『聖』の力は、風邪などの病気を癒す効果があるということだ。

このおかげでだいぶ早い段階で治すことができた。しかし、『聖』の力だけではこんなに早くは治らない。体を温め、休息を取ることにより直しやすい状態を作ったからだ。アリスと魔理沙に感謝しないとな。

しかし、完全(・・)に治ったわけではない。

 

「少しとか言っていたが、まったく少しじゃない」

 

ラグーを食べ終わった後、ティーポッドに入っている紅茶を注ぎ、少し外を見た後、飲み始めた。

あの2人は外を見て、何かを思い出したようだが……雪以外何も見えない。見えるとしたら木の陰ぐらいだ。

 

「うーん、待っていてもしょうがないし、自分から行くか」

 

魔理沙に引き留められたにも関わらず、2人が心配なので想雅が行こうとしていた。椅子から立ち、刀を取ろうとした瞬間、窓から青白い人影のようなものが見えた。

 

「ん……あれは、怨霊か……ここにまで湧いているのは本当だったか……」

 

その怨霊は、森の中へと消えていった。

怨霊……窓……森……ハッ!

 

「まさかッ!ったく、アイツらはッ!」

 

想雅は急いで刀を持ち、バタバタして玄関から出た。

まっていろよ……近頃、奴らの動きが何だか戦闘慣れしている奴らが多くなってきたからな……

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

「クソッ!どこいったアイツらはッ!」

 

魔理沙は怨霊たちを追いかけ、森の奥深くへと入って行ったが、怨霊たちの姿を見失った。

その後にアリスが追い付いてきた。

 

「ちょっと、魔理沙ッ!あまり追わない方が……」

 

アリスは魔理沙にそう言うが、魔理沙は聞く耳を持たなかった。

そうこう言っているうちに、2人の目の前に1人の怨霊が姿を現した。その怨霊は2人を確認したのか、先ほどと同じに後ろに後退していった。

 

「絶対に何かがあr「待てやぁぁぁぁぁッ!」魔理沙ッ!」

 

魔理沙は怨霊を見つけると、凄い勢いで怨霊が後退していた場所に向かって行った。そこは少し開けており、魔理沙たちは木の陰で怨霊の姿を確認することができないが、怨霊たちは開けた場所の中心に来ているため絶好の的となっていた。

そして、木の陰から無数の矢が2人に向けて飛んできた。

 

「このために逃げていたのか……」

 

「そんなのんきな場合じゃないでしょッ!」

 

魔理沙とアリスは飛んでくる矢の軍勢を避けながら話していた。そして、矢の軍勢猛攻を避けきり、体を休めようとした2人だが、次に3人の馬に乗った騎馬兵たちが2人に向け走ってきた。

 

「行クゾ、オ前ラッ!」

 

「「オウッ!」」

 

今までの怨霊と違い、話すことができる3人組が魔理沙とアリスを中心としグルグル回り始めた。

そして、1人が2人に向け槍を構え攻撃を仕掛けてきた。

 

「ハッ!」

 

怨霊は2人に向け、槍で薙ぎ払うが華麗に避けられた。しかし、残った2人の怨霊も攻撃を仕掛けていくが、華麗に避けられていた。

 

「弓兵ヨ、放テェッ!」

 

1人の騎馬兵の掛け声と共に、木の陰から弓の軍勢が飛んできた。それを魔理沙たちは避けながら迎撃していった。

 

「おいおい……今までの奴らと全く違うぜ……」

 

「そうね、いつもより頭が回っているわ」

 

そして、弓の軍勢の攻撃が終わると、次に木の陰から、刀や槍を持った怨霊が2人に向け走ってきた。

 

「ったく、まだまだ出てきやがるッ!」

 

「その原因はあなたの気がするけどね……蒼符『博愛の仏蘭西人形』」

 

アリスの周囲から人形が出現し、その周りを周りながら弾幕を展開していく。

そして、青色の鱗弾を一発ずつ放つ。鱗弾は方向を転換し、白色の鱗弾に分裂する。更に鱗弾は方向を転換し、赤色の鱗弾に分裂する。弾幕の色の変化はなんだかフランスの国旗に見える。

 

「瞳の色が青くて、弾幕の増え方が少しお洒落なところがおフランスたる所以か」

 

「そのことを想雅が聞いたらどう思うのかしら」

 

魔理沙はが呟いたことにアリスはいい返した。

魔理沙は「口が滑った」と言い、アリスの弾幕に被弾しないように避けていった。怨霊たちも弾幕に当たり次々と消滅していくが、怨霊の中には、楯を持っている者もおり、なかなか倒すことができていない。

 

「なかなか、硬いわね……」

 

人形を駆使して戦うアリスも苦笑いしながら言った。

そして、展開していた弾幕が終わり、人形たちがアリスのもとへと帰って行った。その瞬間を逃さなかった1人の楯を持った怨霊が、楯を捨て、アリスの方へと向かって行った。

 

「アリスッ!」

 

「え……?きゃぁぁぁぁッ!」

 

アリスは魔理沙に言われ気付いたが、すでに時遅し、アリスは怨霊に突進され地面に座ってしまった。その怨霊はアリスに槍を構え……

 

「やらせるかぁぁぁぁぁッ!雪弾ッ!」

 

どこからか少年の声が響き、その瞬間、アリスの目の前にいた怨霊は体に何かが当たり、勢いよく飛んで行った。

 

「まったく、お前らは……病人に労わることはいいが、少しは頼れよ」

 

そう、その少年は……先ほどまで風邪をひいていた想雅だった。

 

「「想雅……」」

 

魔理沙とアリスは想雅の姿を見ると、自然に彼の名前が口から出た。

 

「お前らは少し休んでいろ。まぁ、こんな寒空では休むと言うのは、少し気に障るがな」

 

想雅は2人にそう言うと、怨霊たちがいるところへと歩いて行った。

その背中を見て、魔理沙とアリスは、心の中で少し変わった感情を抱いていた。まぁ、このことは想雅なんか知る由もない。

 

「さてと、怨霊どもッ!あんたらは何が目的で、人を襲うッ!」

 

想雅はお腹から声を張り上げ、怨霊たちに言った。

 

「目的ダト……?我ラハ全テハ、新皇(しんおう)様ノタメ、ソコニドンナ理由ガアロウトモ、全テハ、新皇様ノ命令。我ラハ、ソノタメノ軍勢ヨッ!」

 

騎馬兵の怨霊が、想雅に負けないぐらいの声を張り上げた。

 

「お前らに命令しているのは、新皇って奴か……」

 

「話ハイイ、貴様ハココデ死ヌノダカラナッ!弓兵ヨッ!」

 

想雅との話を終わらせ、騎馬兵はまた、弓兵に命令を出し、弓の軍勢が想雅へと向かって行った。

 

「騎士の名において必要とされる必中の矢よ。決して逃すな、故に悪しき物をを射抜け。

聖矢『フェイルノート・スターダスト』」

 

『聖』の力を込めた弾を上空に打ち上げ、拡散させ、無数のレーザーを落とし、向かってくる矢の軍勢を正確に狙い、その弓を放った弓兵も次々へと射抜いていく。

 

「一筋縄デハイカヌカ……オ前ラッ!奴二、アレヲヤルゾッ!」

 

3人の騎馬兵は1か所に集まり、3人同時に想雅へと向かって行った。

 

「続ケェッ!」

 

「「オウヨッ!」」

 

1人目の騎馬兵は、想雅に向け刀を振り下ろす。想雅はそれを横に避け、体制を整えようとしたが、次に騎馬兵の槍で攻撃されそうになり、急いで下に回り込む、そしてもう1人の騎馬兵も想雅に向け、槍で攻撃してきた。想雅はそれも下に避け、下から自分の刀で、槍の柄を斬った。

 

「イケルゾ、モウ一度ダッ!」

 

また、1人の騎馬兵が想雅へと攻撃を始めた。その時想雅は、雪玉を作っていた。

 

「『魔』の力よッ!」

 

創り終えると、想雅は足に、『魔』の力を込め、勢いよく飛んだ。そして、向かってきた騎馬兵を踏み台にし、それより遠くに飛ぼうとした。

 

「オ、俺ヲ、踏ミ台ニシタァ!?」

 

ガ○ダムに踏まれた、ド○のパイロット、ガ○ヤが言った言葉を口にした瞬間、騎馬兵は勢いよく地面に落とされた。そして、もう1人の騎馬兵が槍で攻撃しようとしたが、

 

「雪弾ッ!」

 

先ほど作っておいた雪玉を騎馬兵の顔にめがけて、おもいっきり放ち、騎馬兵は勢いに勝てず、馬からおもいっきり落下した。

 

「クソッ!2人ノ仇ィッ!」

 

槍を斬られた騎馬兵は、刀に持ち替え想雅へと攻撃をしたが、空中にいる想雅はその攻撃を、自分の体を捻り避け、その勢いで騎馬兵の顔面に蹴りを入れた。

 

「オブフッ!」

 

騎馬兵は勢いよく飛んでいき、1本の木を破壊して消えていった。

そのことを確認して、勝てないと思ったのか、怨霊たちの気配が消えていった。

 

「大丈夫か?お前ら?」

 

想雅は2人のもとへと駆け寄り、安否を確かめた。

 

「えぇ、ひとまずは……」

 

「しかし、よくわかったな私たちの居場所が」

 

「そのことは、『言霊』の力を借りて、居場所を探した」

 

『言霊』が優秀すぎて困るぐらいだ。あと、2回『言霊』を使ったら倒れるか……どうだろうな、今回の異変は……

 

「まぁ、怪我がなかったのはよかt……へくっしょんッ!」

 

想雅はくしゃみをした。

 

「あなた……無理してきたわね」

 

2人は想雅に呆れながら、3人はアリスの家へと帰って行った。

 

 

 

 

 

 





仲いいな、あの騎馬兵3人組は……ジェッ○スト○ームア○ックかけてきたぞ。
これなら、連邦の白い悪魔を倒せそうだな。

想雅……お前は悪魔か……騎馬兵を踏んで地面に叩きつけ、雪玉で地面に叩きつけ、蹴りいれて木に叩きつけ……あんた悪魔かッ!

感想待っています!
次回もお楽しみに!



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幽霊楽団の三姉妹


3月に入り、あと数日後に卒業式……なんか涙が出る気がしない。小学校の卒業式の時も涙なんてものなんか出てきたことが無い。むしろ、卒業していく自分の姿が少しづつ大人に向かっていくから、嬉しいという感情があった気がする。まぁ、そんなことより、おうどん食べたいです。

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり。




怨霊との戦いが終わり、また風邪ひいたのでアリスの家に行き、体を温めてから異変解決に乗り込んだ。

ただいま、俺は上空に向け、飛んでいる。

 

「アリスが言っていた、春が来るために必要な『春度』が冥界に集まっているらしい」

 

「なんだ、その『春度』ってのは?」

 

『春度』なんて言葉は、外の世界では聞いたことは無い。かと言って、幻想郷でも聞いたことが無い。ただ単に自分が知らないだけだと思う。まぁ、知識が無い俺でも、春が来ない原因は、その『春度』が足りないからだということはわかる。

 

「まぁ、簡単に話せば、春という季節の概念が一部、具現化したものらしいんだ。それが少ないせいで春が遅れているんだぜ」

 

そうか、そういう意味ね。もしかしたらと思ったがあっち(・・・)の方じゃなくて、よかった。

 

「そうそう、あとは変態度という意味もあるぜ。この場合は具現化した方だな」

 

「いらない情報だったよ……」

 

この現象が、変態度による異変だったら、もの凄いカオスだぜ……どれだけの変質者が大量発生してんだよ……

 

「しかしな、冥界って言ったら少し匂って来たな……」

 

「ん?何だが?」

 

「あそこには、閻魔様の裁判を終え、成仏もしくは転生が決まった霊たちがそれを待つ間過ごすところなんだぜ。だけど、そこに1つの矛盾が生まれるんだぜ」

 

想雅と魔理沙は、方向を変え、ある一点に『春度』が集まってきている場所があったので、移動をその方向に変えた。

そして、魔理沙が先ほどの続きを話し始めた。

 

「その矛盾とやらは、そもそも霊は、現世に出てきても何も触る事も出来ないし、喋る事も出来ない、出てきても意味が無い奴らばっかりなんだぜ。しかし、今回の怨霊どもは違って、話すこともできたし、武器を使って私たちに攻撃してきた。つまり、怨霊の出現は冥界はシロだと思う」

 

「魔理沙にしては最もな意見だな」

 

「想雅……普段お前は私の事をどう思っているんだよ……ま、いいか。何言われてもどうでもいいし……まぁ、さっきの怨霊のことは、あくまで予測だ。何かが冥界で起こって、そこから怨霊が湧いているということもある。もしくは、怨霊じゃなく亡霊ということもある。どちらにせよ、最終的には冥界に行かんといけないしな」

 

と、魔理沙は進行方向を向きながら、真顔で言った。

にしても、寒い。風邪ひいた後の後遺症かもしれん。風邪は治ったのはいいが、進行方向と風の向きがまったく違うので、向かい風+雪という災厄なコンビだった。

 

「ん?魔理沙、あの赤い物体はなんだ?」

 

2人の視界に赤い物体……人らしきものが見えた。その物体は、もう1人の白い服装をした人……羽が生えているから妖精か?まぁ、そんなことはいい。その2つの人影は弾幕ごっこをしているらしく、想雅と魔理沙がいるところまで弾幕が襲ってきていた。

 

「たぶん、霊夢の奴だな」

 

魔理沙はそう言って、霊夢だと思われる人物の方向へ飛んでった。想雅もその後に続いた。

途中で霊夢だと確認できる位置まで行き、まぁ、霊夢だったよ。で、弾幕が終わるまで、魔理沙とおしゃべりしながら、飛んできて来る弾幕を避けていた。数分後終わったのか、白い服装をした妖精はどこかに行ってしまった。

 

「よぉ、霊夢。ご苦労さん」

 

魔理沙は1人笑いながら霊夢に声をかけた。

 

「いたのね……」

 

その霊夢は、疲れた表情を見せながら……と言うより「めんどくさい」と顔に書いてあったような気がするが……その辺は触れないようにしよう。

 

「霊夢の方で何か情報はつかめたか?」

 

「それと言った収穫は無いわ。情報収集でいろいろなところ行っていたら、途中でマヨヒガに入ったり、そこで化け猫に遭遇したけど情報は無し。さっき戦った妖精からも、倒した後すぐどっかに行っちゃったから無しよ」

 

「私たちの方は、ちゃんと情報は手に入れたぜ。途中に怨霊たちの襲撃があったがな、想雅が返り討ちにしてくれたぜ」

 

魔理沙は自慢げに、霊夢にそう言った。霊夢は「自慢話はいいわ、その情報は?」と言い、魔理沙は「まったく、つれないぜ……」と言いながら、しぶしぶと話し始めた。

 

「その『春度』ってのが、冥界に集まっているのね……そうと分かれば、行くわよッ!2人共ッ!」

 

霊夢はさっさと済ませて、こたつに入って……っていうより、春来たらこたついらなくね?

 

「なぁ、さっきより元気出てないか?霊夢の奴……」

 

魔理沙は、「霊夢らしいぜ」と言いながら霊夢の後に続いた。想雅も2人を追いかけるように、いそいで向かって行った。

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

『春度』が集まっている場所に向かう途中、大きな雲の中に入り、視界が一気に悪くなった。あと、寒い。寒いったら寒いッ!雲の中にドボーン、寒いと言わずになんという。もし、寒くないと言った人がいたら、その人は人間じゃないか、幽霊などといった感覚が無い奴らだからな。

 

「おいおい、この先にホントに冥界ってやらがあるのか?」

 

「『春度』が雲の中に入って行っているのだから、そうとしか言えないいじゃない」

 

霊夢が、少し怒り気味に言った。

 

「まぁまぁ、とりあえずこの雲を抜けないとな」

 

魔理沙が霊夢をなだめるように、手を動かした。それから、何度も目の中に雪が入りながら雲の中を突き進んでいった。そして、やっとのことで雲を抜け出し、眩しい太陽の光が3人を出迎えた。

 

「久しぶりのお日様だぜ~」

 

「ホント久しぶりだわ」

 

「え?ちょ、俺まだ見えてないんだけど……」

 

想雅は、目に入ってきていた雪などを取り除きながら言った。ホント何にも見えん。目の前が真っ暗……っていうほどじゃないが、少しだけ光が漏れている。

 

「やっと、お日様が拝めr……」

 

想雅はやっとのことで目を開けたが……

 

「あぁぁ、目がぁ、目がぁぁぁぁぁッ!」

 

想雅は目の前ある太陽をまじまじと見てしまったため、ム○カ大佐のような叫びをあげ、また目くらましにあった。

 

「ああ…ああ…目があぁぁぁぁぁッ!」

 

想雅は自分の顔を手で覆い隠し、その場に崩れた。そして、霊力を十分に出すことができず、落下して行くようにも見えた。

 

「おっとッ!危なかったぜ……」

 

間一髪のところ、魔理沙が想雅の腕を掴んでいたため、落ちずには済んだ。

 

「す……すまない、魔理……沙……」

 

「掴んでおくから、その間に目を治せよ」

 

想雅は、言われた通りに目を治すことに精を出した。そして、1分もかからずに目が治った。

 

「お、早いな」

 

「目を中心にして、『聖』の力を流し込んだ。おかげでこの通り」

 

想雅は開けるようになった眼を魔理沙に見せた。

 

「ん?涙が目に浮かんでいるぞ」

 

「おっと、失敬」

 

想雅は慌てて涙を拭いた。魔理沙が腕を離し、想雅はちゃんと霊力が出せるようになったことを確認すると、霊夢の方を向いて言った。

 

「霊夢、想雅の目が治った……ぞ……?」

 

「どうした、魔理沙……?」

 

想雅もその方向に目線を向いたが、霊夢が……なんか3人の少女と弾幕ごっこをしてた。

金髪のショートボブに金色の瞳。その頭には円錐状で、返しのある黒い帽子をかぶっている。 服装は白のシャツの上から黒いベストのようなものを着用し、下は膝くらいまでの黒の巻きスカート。ベストに二つあるボタンは赤。スカートにも同じボタンが二つ付いている。また、ベストやスカートの裾には円や半円を棒で繋いだような赤い模様があしらってある。

身長は低めで、人間でいうと10代前半の少女でも小柄な部類に入ると思う少女。

髪は薄い水色で、全体的に強いウェーブがかかった、ふんわりした感じの髪質。瞳の色は青。 服装は、薄いピンクのシャツの上にこれまた薄ピンクのベストのようなものを着て、上同様薄ピンクのフレアスカートを履いている。 二つあるボタンは青で、ベストやスカートの裾には、視力検査記号を二つ並べて棒で繋いだような形の、青い模様があしらってある。襟の淵にはフリル付き。

そして、円錐状で返しのあるピンクの帽子を被っている。返しの淵には、ここにもフリルが付いている。また、返しは一箇所に切れ目アリ。

ベストの裾、スカートの端、襟の淵フリル手前、帽子の返しの淵フリル手前には黒いライン付きの少女。

髪色は薄い茶色。毛先に行くに従って強い内巻きの癖がついているショートヘアである。また、瞳の色は薄茶色。 服装は、白のシャツに赤のベストのようなものを着て、下は先ほどの2人の少女と違い、赤いキュロットを着用している。二つあるボタンは緑。三人の中では唯一、胸元を第一ボタン上まで開けている。ベストやキュロットの裾には白い模様があるが、妖々夢の時は谷側に点のあるジグザグ模様、花映塚の時には横向きの∫のような模様、となっている。なお、姉妹で唯一これらの模様がベストの肩フリル部にもある。そして返しのある赤い円錐状の帽子を被っている少女。

そして、3人とも、楽器を持っており、金髪の少女はヴァイオリン、薄い水色の髪をした少女はトランペット、薄い茶髪の少女はキーボードを持っていた。

 

「なんかあの3人は無理やり霊夢に攻撃されているみたいに見るんだが……」

 

「あぁ、俺もそう思う」

 

見る限り、霊夢が一方的に攻撃している。なぜそうわかるかって?実質、1対3だぜ。それでも霊夢の方が押している。3人の少女は逃げているように見えている。その中の薄い水色の髪をした少女だけが、弾幕で応戦していた……っていうより、弾幕の動きが滅茶苦茶で暴走しているようにも見えるんだが……

 

「はぁ……霊夢止めてくる」

 

「おう、頼んだぜッ!」

 

魔理沙が想雅に向け親指を立て応援した。その想雅は「やれやれだぜ」と言いながら霊夢の方に行くが……

 

「っとッ!アブネぇッ!」

 

霊夢と薄い水色の髪をした少女の被弾しなかった弾幕が想雅に向けやってきた。

 

「ったく、龍は獰猛である。あらゆるものを挫かせる眼を持つがために。拘束『龍王の威光』」

 

想雅の目が赤く光り、霊夢と薄い水色の髪をした少女、放たれた弾幕の動きを拘束した。

 

「この能力は……想雅なのね……」

 

霊夢が、違う方向に目線をやると、想雅の姿を確認した。しかし、このスペカが発動している間、姿を変えるか、無理やり振り払わなければ解かれることは無い。

 

「剣の乱舞よ。華麗に踊り、月より美しくあれ。無双『斬月』」

 

想雅はすべての弾幕を確認して、無数の斬撃を放った。次々と弾幕は斬られていき、想雅のスペカの斬撃が終わると、そこには何もないスッキリとした空間が広がった。

 

「なぁ、霊夢。あの子たちにいきなり弾幕ごっこを仕掛けただろ?」

 

「わかっていたの?ただ、やりたいからやった。別に後悔していない。むしろ清々しい気分だわ」

 

お前な……反省という文字が1つも入っていないぞ……

想雅は、霊夢の頭に手刀を入れた。霊夢は痛そうにその場にしゃがみ込んだ。

 

「まったく……あの3人はと……」

 

想雅は振り返り、3人の少女がいるところに向かった。

 

「大丈夫か?君たち」

 

想雅は3人の少女に話しかけた。それに返答したのは金髪の少女だった。

 

「はい、おかげで助かりました」

 

金髪の少女は想雅に向け、ペコリとお辞儀をした。

 

「まったく、あの巫女。私たちに向けいきなり弾幕を撃ってきたんだからね」

 

薄い水色の髪をした少女が少し怒りながら、想雅に言った。

 

「俺の連れが迷惑をかけてすまなかった」

 

想雅は3人の少女に謝った。まったく、霊夢が反省という文字を表さなかったから、俺が謝るはめになってしまったじゃないか。

 

「いいんですよ、運が良いことに怪我はありませんでしたし……」

 

薄い茶髪の少女が、助け船をくれた。ありがとう。

 

「そういえば、あなたはここではあまり見かけない人ですね」

 

「見かけないっていうより、1年前からここに住んでるんだがなぁ……」

 

「1年前からですか……そういえば、宴会には来たことはありますか?」

 

金髪の少女から、宴会という言葉が出た。

 

「というより、宴会っていつやっているんだ?」

 

「通常は異変が解決が終わってからですね。この前の紅霧異変が終わった後にやりましたよ」

 

「紅霧異変が終わった後……あいにく、その時は傷の治療をしていた」

 

紅霧異変が終わった後だったのか、宴会やったのは……そりゃぁ、知らないだろうな。

 

「そうですか……あ、私は2人の姉のルナサ・プリズムリバーと言います」

 

「私は、次女のメルラン・プリズムリバーよ」

 

「三女のリリカ・プリズムリバーです」

 

ルナサ、メルラン、リリカ……よし、覚えたぞ。

 

「俺は、天上想雅だ」

 

想雅も、3人に続いて自己紹介をした。

 

「では、想雅さんと呼ばせてもらいます。助けてくれたお礼で、私たちの音楽を聴いてくれませんか?」

 

「音楽か……「いいぜ、聴いていこうぜ。想雅」……わかった」

 

魔理沙……いきなり登場するなよ。心臓に悪い。

 

「ありがとうございます。メルラン、リリカ」

 

「あの巫女にも聴かせるというのは気に障るけど、恩人の願いならしょうがないわ」

 

「わかったわ、お姉ちゃん」

 

ルナサ、メルラン、リリカの3人は自分たちが持っている楽器で演奏を始めた。

その音楽は、素敵なものばかりだった。もうすぐで、異変解決の事を忘れるぐらい、心を許してしまうものだった。

3姉妹が奏でる音楽を数分聴いたところで、想雅、霊夢、魔理沙は3姉妹に別れを告げ、冥界へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 





音楽ねぇ……東方のBGMやボーカルは凄くいい曲ばかりですね。書くときはいつも東方系の曲をかけながら書いています。なんか、聴かないと聴くとではまったく、進み具合が違います。なんかノリノリでかけますのでね。

感想待っています!
次回もお楽しみに!



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半人半霊の庭師



さて、卒業しました。
教室でビデオレターみたいな者を見てほとんどの人が泣いていました。俺ですか?予想通りで泣けなかった。なんでだろう……次の事が関係しているのでしょうか?
その中で『これは誰のイメージでしょうか?』っていう物がありまして、それにレベルがありまして、1、2、3の中の最後の3でした。で、その俺のイメージが……

『鬼殺し』

Σ(°Д°;ファ!?

えーと、まぁ……はい……なぜか分からないけど『鬼殺し』というイメージでした。別にごく普通に生活していたんですがねぇ……どこで踏み外したんでしょうか?
おいおい、これだと幻想入りできんじゃねぇ?鬼殺しとか、萃香や勇儀に対しての対決が楽?になんのかな……?まず、鬼と太刀打ち出来たところで人間じゃねぇな?学校でも「お前……人間じゃねぇ……」とか言われていますが、人間です。はい。

卒業式後は、クラスのみんなで夕食を食べに行きました。結構面白かったです。
食べたのは焼き肉で、なぜか塩タンの食べる割合が多かったです。

入学式が始まるのが1ヵ月後で、暇そうに思うんですが、実際暇じゃありませんでしたわ……
今日は、武道の試験がありました。結果はわかりませんが、良くもなく悪くもないと言うところです。
組手の時、相手が顔面を狙って来たので、少しブチぎれて親指擦りむいてまだ新鮮な血が流れている足で2回蹴りました。やられたらやり返す、倍返しだってね。

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり。




「おいおい……まだこんな長い階段を上るのかよ……」

 

魔理沙が唖然とした声を漏らしながら、遠くを見ていた。

冥界へ突入し、いざ異変を解決しようとしたら目の前に果てが見えない階段が連なっていた。階段の端の部分に灯篭が一段ずつ置いてあり、ほのかな明かりが灯されていた。

 

「ま、まぁ、一時の休息だと思えばいいだろ」

 

流石に想雅も苦笑いしながら、魔理沙に向け言った。長い階段なんか博麗神社だけでいいぜ……あと、あそこは階段が急すぎて余計に筋力も使うし、体力も使うから辛い。だけど、この階段はただ長いだけで、疲れにくかった。しかし、足は疲れる……何回か休みながら、長い階段を上って行った。

無言で何やら気まずい雰囲気が3人の中であったが、急に魔理沙が話し始めた。

 

「これだけ上っても、霊の一匹や二匹出てきてもおかしくないんだが……」

 

「さぁね、ただ襲うタイミングを見計らっているんじゃないかしら?」

 

「奴らならあり得そうな話だな……おっ、もうすぐで頂上か?」

 

想雅が話していると、頂上らしきものが見えた。

3人はやっと着いたと思い、息を漏らした。そして、長い階段を登り切り、その視界には地上で見られなかった桜が満開に咲いていた。そして、その奥には『春度』が、大きな大木に吸収されていく姿も見られた。

 

「こんなところで花見でもするか?」

 

魔理沙が冗談を交えて言った。

 

「魔理沙1人でするといいわ。そして、怨霊に襲われなさい」

 

「おいおい、冗談にしてはシャレになっていないぜ……」

 

こんな感じに2人は楽しそうに話してた。

 

「楽しそうに話している暇があr「「あるッ!」」……あー、そうか……」

 

想雅は楽しそうに話している2人から離れ、満開に咲いている桜を見て回った。ホント桜は綺麗だな……1年に1度だけ花を咲かし、そして散る。その一瞬だからこそ美しいと思える。

想雅はそんなことを思いながら、目の前に落ちてきた花びらを手のひらで受け止めた。そして、その花びらが想雅の手から飛んでいき、想雅は飛んで行った方向を見た。

 

「この桜、さくらんぼ出来るんかな?」

 

想雅はふと思いついた言葉を口に出していった。

 

「この桜たちはそのような果実を実らせませんよ」

 

想雅が言った言葉に誰かが反応したように言った。想雅は声がした方向に視線を移した。そこには、1人の少女がこちらに向かい歩いてきた。

銀色の髪をボブカットにし、黒いリボンを付けている。白いシャツに青緑色のベストとスカート。そして、その少女の周りに霊体らしきものがフワフワ浮いていた。

そして、何より気になったのは、腰、肩にかけてある2振りの刀だった。

 

「さてと、いろいろ聞きたいことが山ほどあるんだが、とりあえず、そこをどいてくれないかな?」

 

「あなたは敵が目の前にいるのに、みすみす見逃せと言うのですか?」

 

この少女を説得するのは、結構骨が折れそうだな……っと、あの楽しげに話している2人は……は?

 

「あいつら……消えやがった……」

 

おいおい、あの脇巫女と野良魔法使いが人が話している間にどっか行きやがったぞ。何?俺を囮にすりためにわざわざ楽しそうに話しているフリをしたのか?

 

「あの脇巫女と白黒の魔法使いなら、先ほど会いましたよ。私が弾幕ごっこを仕掛けようとしましたが、脇巫女から「2人だと卑怯だから、次に一人だったら相手してあげるわよ」と言っていました。白黒の魔法使いは「花見に来たんだぜ」と言っていましたよ」

 

どう聞いても、嘘にしか聞こえないぞ……この子、もしや……

 

「なぁ、たぶんあの2人そんな理由じゃなくて、完全に異変解決しようとしているぞ。第一、ここにはあまり人間がこないだろ?わざわざ、冥界まで花見しに来るか?あと、2人あと卑怯とか、1人づつ、対決していけば解決するはなしだろ?」

 

銀髪の少女はその場で少し考えた。そして……

 

「たしかにッ!あの2人めッ!このままだと幽々子様が……」

 

あー、やっぱこの子。根が真っ直ぐすぎて、少しぬけてるわ。

銀髪の少女がクルリと回転し想雅に背を向けるが、また回転して想雅の方向を向いた。そしてその行動が無限ループのように続いて言った。

 

「お、おい、どうした……っとッ!」

 

想雅は少女に近寄っていくが、いきなり、少女が持っていた刀で斬りかかられた。想雅はギリギリのところで避け、後ろに下がって行った。

 

「やっぱり、目の前の敵を見過ごすわけには……ッ!」

 

うん、やっぱ、真っ直ぐすぎだわ。この子。

少女は「幽々子様なら、あの2人程度大丈夫……」と何やらブツブツと自分に言い聞かせているように見えた。

少女が想雅に目がけ、刀を構えた。想雅もそれに合わせて腰に刺さっている刀を抜いて、攻撃態勢をとった。

 

「どちらか選んでください。同じ剣士ならお互いの剣技で勝負するか、それとも、弾幕ごっこで勝負するか……」

 

「そうだな……どっちもはどうだ?」

 

「どちらも取るとは、命知らずですかね?」

 

「残念ながら、命は大事にしている方だ」

 

まいったな……どっちか迷って、どっちもにしちまった。まぁ、取り返しがつかないことはわかっている。

 

「それでは……魂魄妖夢、参りますッ!」

 

「天上想雅、推して参るッ!」

 

2人は掛け声と共に、走り始めた。

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

ガキィンッ!キィィィンッ!ガンッ!ガッ!

 

 

桜が舞い散る場所で、一人の少年と少女がお互いの剣技を披露していた。しかも、両者とも互角。一歩も譲らない激戦となっていた。だが、対戦は剣技だけではない。弾幕ごっこも入っているのだ。

 

「ハッ!」

 

妖夢が、刀から弾幕を放った。結構な難易度が高い技だな……俺なんか手から弾幕を放つだけが精一杯なのによ……

想雅は羨ましそうに思いながら、飛んできた弾幕を避けていった。

 

「隙ありッ!」

 

先ほどまで目の前にいた妖夢が、想雅の頭上に刀を振り下ろそうと構えていた。想雅は、刀でその攻撃を防ぎ、押し返した。そして、妖夢が地面に着地する前に、霊力槍を投げた。

妖夢はそれを空中で避け、また想雅に向け弾幕を放った。想雅は霊力弾を放ち、相殺させた。

 

「剣も弾幕を両者互角……しかし、スペカならッ!餓王剣『餓鬼十王の報い』」

 

妖夢が、想雅に向け走った。想雅は「来るッ!」と思い構えたが、途中で止まり、横一文字の斬撃を繰り出しその斬撃から無数の弾幕が展開された。

 

「クソッ!近くだから余計に弾幕が濃い……ッ!」

 

想雅は後退しながら、妖夢に向け弾幕を放つが、動きが早く中々当てることができない。ましてや、斬撃を繰り出すたびに、弾幕が濃くなっていくため、すべてをギリギリのところで避けている。そして……

 

「グッ!」

 

想雅は胸を被弾し、バランスを崩すが、地面を足で踏ん張り、かわしながら後退していた。

 

「これほどの弾幕を避けきるとは、中々腕はあるようですね」

 

「少し、胸を掠めたがな。しかし、なぜここまで『春度』を欲しがる?」

 

想雅は少し疑問に思った。これまで桜が満開に咲いているのに『春度』が欲しがるのか?

 

「幽々子様の願いだからです」

 

「願い?」

 

「えぇ、見えるでしょう。あの枯れた大きな桜の木が、あの木が桜の花で満開になったところを幽々子様が見たいと仰ったのです。主の命令に従うのが私の役目」

 

あれが桜の木ねぇ……メッチャデカい……しかも、なんか弾幕ごっこが繰り広げられているように見えるしな。

 

「人間2人相手なら、幽々子様は大丈夫でしょう」

 

話を終えると、妖夢は刀を構えた。

 

「さぁ、まだ始まったばかりですよ。獄神剣『業風神閃斬』」

 

妖夢の後ろから大玉の弾幕が展開されていた。そして、妖夢は斜めへと走り、よく展開されていた大玉の弾幕を一閃するかのように、いた場所から反対側まで移動した。斬られた大玉の弾幕は、小、中の弾幕となり想雅に襲い掛かった。

 

「チッ、しゃらくせぇッ!王剣『ロード・オブ・ザ・エクスカリバー』」

 

想雅の刀が、『聖』の力により刃が伸び、向かってくる弾幕を斬っていった。そして、想雅の刀は空間を斬り、その空間から『聖』の力を模った剣が出現し、妖夢に向け放たれる。

 

「弾幕を斬れるのが、あなただけではありませんッ!」

 

妖夢は向かってくる『聖』なる剣を手持ちの刀で一閃した。

 

「斬れぬものなど、あんまりないッ!」

 

これだと、俺に勝ち目がなくね?

想雅はそう心の中で思った。ハハハ……これは負ける覚悟が必要だな。だが、諦めるわけにはいけねぇんだよなッ!

想雅はスペカの発動を中止して、妖夢の弾幕を避けながら、刀を鞘に収める……

 

「『魔』の力よッ!ハァァァァァッ!」

 

刀に『魔』の力を込め、一気に押し込む。想雅を中心としたところで爆風が起こり、先ほどまで展開されていた弾幕ものども、吹き飛ばされていった。

 

「姿を眩ましですか……しかしッ……!」

 

妖夢は煙の中に弾幕を撃とうとしたが、煙の中から妖夢に目がけで霊力剣が飛んできた。それを妖夢は横に避けた。そして次は煙の左右から1つづつ霊力剣が飛んできた。そして、想雅本人が妖夢に向け、煙の中から出てきて、刀を構え走ってきた。

妖夢は、どれも後ろにかわそうとしたが……

 

「え?避けた弾幕が戻ってくる!?」

 

想雅が投げた霊力剣はブーメランのように妖夢の元へ帰ってこようとしていた。そして、左右から霊力剣、目の前からは想雅が向かってきているが、途中で弾幕を放ったため、とっさに空中へと逃げてしまった。

 

「かかったッ!『魔』の力よッ!」

 

想雅は『魔』の力を足に流し込み聴力を高め、妖夢に向け飛んで行った。

 

「え?ちょっとッ!速いッ!」

 

妖夢は驚きを隠せず、戸惑っているのが見えた。うん、俺もだよ。足に流し込み過ぎた。

てへぺろ。

想雅は、いそいで両手で妖夢を抱え込むように胸に抱きた。

 

「す、すまないが妖夢。落ちるかもしれんからちゃんと掴まっておけよ」

 

「分かりまs……って、え?えぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!?」

 

そして、そのまま大きな桜の木の元へと飛んで行ってしまった。

 

 

 

 

 

 






前書きに全部書いてしまった……話すことがねぇ……あっ!卒業後の事ですが、
まず合格した高校で教科書やら体操服やら買ます。で、その1週間後ぐらいに、また高校に行ってテストをします。いきなり忙しくなるフラグがビンビンビンビンビンッ!おっと、立ちすぎた。
まぁ、そんなことに気を使わず、家でまったりおうどん食べながらテレビを見ていると思いますがねぇ……今を楽しまなきゃねぇ?

感想待っています!
次回もお楽しみに!



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西行妖の復活



暇じゃないと言ったな、あれは嘘だ。
1日1日が暇すぎました。やることがほとんどない。明日は珍しく入学する高校で説明会みたいのがあるらしく、たぶん暇には……なるな。終わった後が暇……ってわけじゃなかったな。高校の方で課題が出るらしい。

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり。




「これで終わりよッ!霊符『夢想封印』」

 

大きな桜の木の近くで、脇巫女……つまり霊夢がスペルカードを発動した。

七色の大玉の弾幕は1人の女性に向け放たれた。

 

「ふふ……ここまでのようね……」

 

その女性は、負けることを悟ったのかその場から動かず、ただただ自分に弾幕が被弾することを待った。七色の弾幕は女性の周りをグルグル回転しながら、逃走路を封じていた。そして、弾幕は女性に向け攻撃して、被弾した……と思われたが……(・・・・・・・・)

 

「こ、このままだと……だ、弾幕が……しかもデカいのがッ!」

 

どこからか少女の声が響いてきた。霊夢と魔理沙はどこから聞こえているのか?とあたりをキョロキョロし始めた。しかし、弾幕に囲まれている女性はこの声が誰のものなのか分かっていた。

 

「ちゃんと掴まっておけよッ!今、弾幕を斬るからッ!」

 

どこからか少年の声が響き、この声は霊夢、魔理沙には知っている声だった。しかし、見つからない。

 

「ちょっと待ってくださいッ!あそこに幽々子様がッ!弾幕に囲まれてッ!このままだと、あなたの斬撃で幽々子様が……」

 

「弾幕ごっこの最中かよッ!手段は……手段は……」

 

「幽々子様ぁぁぁぁぁッ!」

 

「クソッ!一か八かだッ!落ちるなよッ!妖夢ッ!」

 

その声はだんだん近くなってきた。しかも、ものすごい速度で声が大きくなっていった。そして、七色の弾幕が衝突した。しかし、その場には女性はいなかった(・・・・・)

 

「アイツがいない……ッ!?」

 

霊夢が驚いた表情で地面に着地した。その後に、地面で鼓膜が破れそうな凄い轟音が響いた後、砂煙があたり一面に広がった。

 

「―――――ッ!痛ってェェェェェェェェェェッ!!!」

 

砂煙の中で、少年の断末魔……否、叫び声が響いた。しばらくして煙が晴れ、その中には先ほどまで、霊夢、魔理沙と戦っていた女性と銀髪の隣り半霊を連れている少女が座っており、そして、先ほどの衝撃で出来たとされているクレーターで、サイバイ○ンに自爆されたヤ○チャのようなポーズで2人が知っている少年が倒れていた。

 

「お、おい……想雅、大丈夫か……もの凄い音がしたぞ……」

 

魔理沙が少しビクビクしたような感じで、少年……想雅に話しかけた。

 

「お、お……こ、骨折だ……ふ、複雑骨折だ……」

 

さすがに、あの桜の並木道と、この大きな桜の木の近くとでは距離は近からず遠からずの位置のはずだが、『魔』の力によってものすごい速さで地面に着地したため、この痛みは複雑骨折までの痛みだった。しかし、足は折れていない。どこも折れていない。衝突前に『魔』の力で体を強化したためである。

 

「やっぱり、人間やめているわね……」

 

「や、やめてない……」

 

「言い返すぐらいの力はあるのね」

 

「というか、どうするんだ?想雅がこの調子じゃぁ……」

 

霊夢、魔理沙の2人はどうするか考えた。

 

「え、えーと、あまり状況が把握しずらいけど休むなら家に来ない?」

 

想雅に助けられた女性が、手を上げて2人に言った。

 

「敵の家に行くのは少し気に障るけど、この最しょうが無いわね」

 

霊夢、魔理沙は想雅を運びながら、女性の後に続いた。

 

 

 

 

 

-----○●○------

 

 

 

 

 

「ここは……どこだ?」

 

冥界に一人の男性が迷い込んだ。

 

「まぁいいだろう……この場所から強力な妖気が微かに感じる」

 

その男は、冥界に何かの目的……確認のために来たのだった。

男は、その場から歩き始めた。しかし、歩くたびに何かが擦れるような音がしていた。

 

 

キチ……キィン……ガス……

 

 

鉄と鉄がこすれ合う音、地面に足をつけるたびに聞こえる金属音……そう、鎧を装着していた。その鎧は戦国時代の物でもなく、室町時代の鎧でもなかった。もっと昔の鎧で、分厚く動きにくそうな形をしていた。そして、男は目的の場所へとたどり着いた。枯れた大きな大木がある場所に……

 

「さて……答えろッ!妖怪桜よッ!暴れたいであろう?血をすすりたいであろう?その望みがあるなら、今、我がその封印を解いてやろうぞッ!」

 

男は、腰に刺さっている刀を鞘から抜き、刃に怨霊(・・)を宿らせ、桜の木に目がけ構えた。

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

想雅たちが、女性の家に入って休憩をしていてから、数十分。やっとの思いで想雅が立てることができた。

 

「まだ足が震えているが、まぁ、歩けるぐらいには回復しただろう……」

 

この家……というか屋敷に運び込まれ、布団の中で寝かされていた。だって、足痛くて立てないし、座れないし……で、その間、足を中心に『聖』の力を流し込み痛みを消していった。ホント、便利だなこれは、人間やめたほどのだな……認めていないが……

『魔』の力は捨て身の攻撃、移動、防御。『聖』の力はその『魔』の力によって負担が掛かったものへの癒し……いいコンビでもあり、一歩間違えば死ぬというコンビでもあるからな。

想雅が痛みを癒していた部屋には誰もいなかった。想雅は、ふすまを開け、話し声が聞こえる部屋まで千鳥足のような歩き方で移動していった。その話し声が聞こえる部屋まで来た想雅がふすまを開こうとすると、中から怒っている霊夢の声が聞こえた。

 

「悪霊騒動もあなたたちがやったことでしょッ!さっきからやってない、やってないって……」

 

一瞬、想雅がビクンと跳ね上がった。一回深呼吸をしてから再びふすまへと手をかけた。

 

「本人たちがやっていないと言うんだから……っと、アブネ。」

 

想雅は、少しこけそうになったが踏ん張り、体勢を保った。ふと目線を戻すと、ジト目で見てくる霊夢と、笑っていた魔理沙、少し慌てていた妖夢、のほほんとして優しそうな……えーと……

 

「西行寺幽々子よ。以後お見知りおきを」

 

「あ、これはどうも丁寧に。俺は天上想雅だ」

 

見た感じ優しそうな人だな。まぁ、それは置いといて……

想雅は開いている場所を見つけると、立っているのが少し辛いためそこに行き、座った。

 

「で、話は戻すが、幽々子たちはやっていない」

 

「どうして言いきれるの?」

 

霊夢は不満そうな顔で想雅に言った。

 

「なぁ、魔理沙。お前、霊夢に会う前なんて言ったっけな。冥界では怨霊が湧かないとかの矛盾とかの……」

 

「あぁ、冥界では、閻魔様の裁判を終えた霊たちがいて、そいつらは話すこともできないし、何かを持つこともできないとかのやつか……確かにそう考えると、こいつらは部外者ってなるな」

 

魔理沙は自分で言った言葉にうなずきながら、意見を述べて言った。

 

「じゃ、じゃぁ、アレが怨霊じゃなく、亡霊だっt「あー、それはまず無いぜ」……どうしてよ」

 

「おいおい、少し頭に血が上りすぎじゃないか?霊夢。まぁ、確かに亡霊ということも考えれるが、まず違うと言いきれることがあるんだぜ。第一こんなに亡霊が増えたら、閻魔様も何やらかの手を打ってくるはずだ」

 

「ん?どうしてだ?」

 

想雅はなぜ亡霊の大量発生が閻魔様とやらに関係するのかが疑問に思った。

 

「まぁ、ここは霊夢に任せるぜ」

 

魔理沙は霊夢の肩をポンと手でたたいた。

 

「はいはい、亡霊というのは、死んだ事に気づいていないか、死を認めたくないという念が強すぎるという理由が成り立った時にできる、いわゆる人間の精神っていうところかしら。多くの亡霊は三途の川を渡らずに現世に止まることが多いわ。1ヵ月でこんなに亡霊が増えたら閻魔様も怒ること間違いなしだわ」

 

「だから、なんでそれが閻魔様に関係するn「知らないわよ」……」

 

霊夢、お前……それでも博麗神社の巫女かよ。

 

「まっ、簡単に言えば、幻想郷の均衡が崩れると言えばいいと思うぜ」

 

なるほどね……崩れたらこの幻想郷が終わっちまうしな。

 

「と、いうわけで霊夢、幽々子たちはシロというわけでいいな?」

 

「えぇ、少し頭に血が上りすぎたわ……だけど、怨霊騒動は解決していないわ」

 

「そうだな……手がかりと言ったら新皇っていうやつが怪しい。お前らは何かこいつに関して知らないか?」

 

想雅は4人に訊いてみるが、いまいちこれといった情報は無かった。想雅たちが()きず待った表情で考え込んでいると……

 

「……ッ!」

 

「ん?どうした幽々子?」

 

幽々子が急にこわばった表情をした。

 

「ちょ、ちょっと気分が悪くなっただけだわ……」

 

「ちょっとじゃなく相当顔色悪いぞ」

 

想雅が幽々子のでこに手のひらを置いた。

 

「別に熱があるわけでもない。なんならなんだ?」

 

想雅は幽々子のでこから手を離し、少し考えた。しかし、何も思い当たることは無い。次の瞬間……

 

「「「……ッ!」」」

 

幽々子と想雅以外の3人がビクンと体がしびれたような動きがした。

 

「ちょっと何よこれ……この妖力は……」

 

「さっきまで感じなかったぞ……」

 

「幽々子様、これは一体……?」

 

3人は、少し焦っている表情を見せながら、徐々に落ち着きを取り戻していった。想雅はそんな探知能力を身に着けていない。だいたいは『勘』というもので感じている。本人曰く、「俺って第6感が優れているのか?」と思うぐらいだった。しかし、それはあくまで『勘』であり、常日頃から感じているわけではない。1週間に1度ぐらいの(まれ)に反応するぐらいだ。

5人の囲んでいる机の上に急にスキマが開き、その中から紫と藍が出てきた。しかし、2人の表情は5人に会いに来たという表情ではなかった。

 

「幽々子……少しヤバいことになったわよ……」

 

紫は言一呼吸置いて言った。

 

「西行妖の封印が解かれたわ……」

 

そのことを聞いた幽々子の顔色が先ほどより、青く冷めたのであった。

 

 

 

 

 

 






さて、あの西行妖が復活しちまったな。

「なぁ、西行妖ってのは何なんだ?」

ん?ここでお前に言うとネタバレになるからヤダ。紫の奴から聞いてこい。まぁ、簡単に説明したら桜の化け物だな。

「俺、また変な奴と戦うのか……」

神様じゃないぐらいマシだろ?

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次回もお楽しみに!



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再封印……そして新王の正体



高校から思った通りに課題が出ました。はぁ……メンドイ……
まぁ、暇が減るからいいんだけど……

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり。




紫、幽々子の2人が話している間に、想雅は『西行妖』が何か分からないため、紫と一緒に来た藍に『西行妖』に訊いた。

まぁ、分からないのは俺だけじゃなく霊夢と魔理沙、妖夢も同じ状態だったんだけどな。

 

「なぁ、藍。西行妖って奴は何なんだ?」

 

「ん?あぁ、西行妖っていうのは昔、幽々子様の父親を始めとした多くの人間の精気を吸った妖怪桜だ。そいつの強さは私の主である紫様ですら手出し出来ないほどの力を持っていた。 しかし、やっとの思いで封印できた。そのためにはそれなりの代償があった、それは……幽々子様自身だ……」

 

「幽々子自身?どういうことだ?アイツは人間だろ?」

 

幽々子はものに触れるし、語源もはっきりとしている。そこで霊的じゃないことが分かっている。しかし、妖怪と言ったら想雅は納得するしかない。想雅は相手の霊力、妖力、魔力などは感じられないからだ。

 

「気付いていないのか?幽々子様は昔に亡くなられ、今は亡霊となってすごしているのだ」

 

マジすか……ってか亡霊ってなんだ?魔理沙が話していた怨霊騒動の原因の中に似たような言葉があったような、無かったような……

 

「続きを話すぞ。今回の異変の原因は西行妖を封印している亡骸の存在を知った幽々子様が『西行妖の花を咲かせれば封印に使われている者も復活するのではないか』と考えたんだ。そして、あの韓進半霊の子に『春度』を集めさせ西行妖に再び花を咲かせようとした。結果、地上に春が来なくなり霊夢たちが異変解決に乗り出し、復活を止めた」

 

「じゃぁ何でその西行妖が復活したんだ?」

 

そこに疑問を持った。藍が先ほど言ったのが『復活を止めた』ならその西行妖が復活したのか?もしかしたらすでに十分な『春度』が溜まったからなのか?

 

「分からない。だが、『春度』は十分に集まっていないはずだ」

 

分からない……か……。しかも『春度』が完全に集まっていない……だというと……

 

「なら、どこかの誰かさんが意図的に封印を解いた……とか?」

 

藍は少し考えた。

 

「確かに……しかし、紫様がかけた封印を解けるほどの実力を持つ者はこの幻想郷にはあまりいないはず……」

 

あー、これは直接確認しに行くしかないな。しかし、紫が手こずった相手……さすがにヤバい気がする……

さっきまで黙っていた霊夢が口を開き始めた。

 

「それより、その西行妖ってのを封印しないといけないんじゃないかしら?早くしないと地上にも影響が出るんじゃないかしら?」

 

「そうね……話していても何も始まらないわ。行きましょう。それより、覚悟はできているかしら?」

 

紫が笑いながら皮肉そうな顔で言った。

 

「あぁ、問題ない」

 

「えぇ、大丈夫よ」

 

「なんか分からないが、まだ完全に異変が解決したわけじゃないからな」

 

「私のせいでこうなってしまったのだから、私も行くわ」

 

「幽々子様が行くのなら、この妖夢、お供します」

 

7人の覚悟が決まったため、早速、西行妖がいる場所まで急いでいった。

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

「ほう……予想異常な妖力だな……封印されていたとはいえまだここまで力を蓄えていたとは……」

 

男は復活し、桜が満開となった西行妖を見ながら、面白そうに笑った。西行妖は力を吸収したいのか男に己の枝の先端を伸ばし攻撃を始めた。

 

「だが、我がお前に勝てるとまではいかぬ」

 

男はすでに抜いてある刀で、自分に向かってくる枝を斬っていった。しかし、向かってくる枝の数は変わらない。男は刀に怨霊を宿らせ枝を斬る。その斬撃は生きているかの如く迫ってくる枝をすべて刈り取った。男は枝が自分の周りに無くなったことを確認し、1歩足を動かした。

 

「さすがに殺しはせぬ、貴様は我が野望のため利用させてもらう」

 

西行妖は枝を斬られても(ひる)まなかった。いや、怯まずにはいられなかった。血を欲しているからだ。しかし、男は人間じゃない。ましてや妖怪じゃない。決して血が流れることがない存在……しかし、男は肉体を持っている。

再び男に枝が襲いかる。

 

「フン」

 

男は次は斬らず、木の幹まで枝を避けながら進んでいった。その途中で枝に当たった鎧はどんどん崩れていき見るからに先ほどまでより装甲が減っていた。

 

「我が手駒となれ妖怪桜よッ!」

 

男はついに西行妖の幹に触れ、怨霊を流し込んでいった。先ほどまで男を狙っていた枝は急に止まり、大人しくなった。

 

「これで貴様は我へ攻撃することができない。その分、貴様は先ほどより強くなった」

 

男は「フッ」と笑い、振り返った。そこにはスキマで移動してきた想雅たちの姿があった。

 

「お前か……西行妖を復活させたのが……」

 

想雅が低い声で言った。これが復活した西行妖……死にたくなるほどの美しさだな。落ちてくる花びらも何とやら……しかも枝が触手のようにウニョウニョしているし……完全に桜の化け物って感じだな。

 

「だとしたらどうするんだ?霊が()、妖怪が()、人間が()、……あと霊なのか人間なのか分からん奴がいるな」

 

男は「まぁいい」と呟き話しを続けた。

 

「で、貴様らは我の野望の邪魔をするというのかぁ?」

 

「野望だと?」

 

「あぁ、野望だ。我は憎き天皇の殺すため蘇った。今の時代その天皇は生きてはおらぬが、その血筋を持つ者がいるはずだ。我はそ奴らを殺し、次は倭国を我の手中に収める」

 

天皇の殺すため蘇った……もしやこいつが……ッ!

 

「お前か、怨霊騒動の首謀者こと新王というのは……」

 

新王という言葉に反応したのか紫が少し想雅に確認をした。

 

「そ、想雅、あなたが先ほど言った新王っていうのは本当なのかしら?」

 

「あぁ、こいつの部下が言っていた」

 

そのことを聞いた紫は「少しヤバいことになったわ……」と顔色を変え、男にも確認をした。

 

「御身は自らを新王と名乗り、朝廷を敵にした。御身はあの平将門でしょうか?」

 

紫は(うやうや)しく男に質問をした。

 

「そうだ。我の名は平将門。生前、関東を治めた新王なりッ!」

 

さすがの想雅も驚いた。想雅だけじゃない、藍、そして幽々子もだ。ほかの3人はあまり話しについてこれていなかった。

 

「まさかここで三大怨霊の一人、平将門と会うとはな……人生いろいろだ……」

 

想雅は苦笑いしながら、刀を抜き始めた。

 

「しかし、今はゆっくり話している場合ではない。これより地上を治めなければならない……」

 

将門は想雅たちから背を向けこの場から逃げようとしていた。

 

「おいッ!コラッ!待てッ!」

 

想雅は手元から霊力弾を将門に向け放ったが、西行妖の枝が将門を守るように束になった。

 

「今のこ奴は我の部下だ。せいぜい楽しませてやれよ」

 

そう言葉を継げると将門はこの場から消えた。

 

「封印で力が弱くなったとはいえ、まさか平将門の部下になるなんてね……予想外だったわ。それほど平将門の力の偉大さが分かるわ」

 

紫は天を仰ぎながら言った。

 

「それより紫様。早く西行妖を封印しなくては、冥界だけでは済まず地上にも影響が出てしまいます」

 

「わかっているわ。霊夢と魔理沙は地上に行って、人里の人たちを非難させたり、他に怨霊を撃退できる人たちを集めて来て」

 

紫が霊夢と魔理沙の2人に言った。まぁ、それが妥当だな。新王の奴は地上に向かって本格的に幻想郷を治めようとしているし、そのことを知らせる人がいないといけない。あと、2人は人間だ。紫でも手こずった相手には苦戦を強いられるだろう。運が悪ければ死の可能性もある。

え?俺。うん、人間だけど……なぜ俺も地上に行かないって?そんなこと紫に訊け。まぁ、アイツの前で英雄神のペルセウスに勝っちゃったし……たぶん、それで俺を高く買っていると思う。

 

「わかったわ。居ても邪魔にあるだけだと思うし。行くわよ、魔理沙」

 

「お、おう……じゃぁな」

 

2人は紫から言われたことを果たすために地上へと向かって行った。

はぁ、今からこんな化け物と戦うのか……霊力はそこそこあるが、『言霊』に加算すると2回しか使えない。修行の後から全く霊力の変動がない。何それ?霊力が俺をいじめているみたいだな……それでも少しづつは増えていると思う……いや、そう思いたい……

何とかあまり『言霊』を使用しないことだな。場合にもよるが……

 

「みんな、作戦を言うわよ。本当は幽々子の屋敷で言うつもりだったけど、ちょっとど忘れしちゃって言いそびれたわ」

 

おいおい……そんな大事な事忘れんなよ……それでも幻想郷を管理している者かッ!?

 

「想雅……あなた何か言いたそうな顔ね」

 

「いいや、何でもない。話を続けてくれ……」

 

「まぁ、いいわ。それで今は簡単に説明しるからちゃんと聞いてね。今から、私と藍が西行妖を封印するための術式を準備するわ。それには4、5分は掛かるわ。その間に私と藍の護衛を想雅、あなたに頼むわ」

 

「2人とはいきなりハードだな……」

 

ははは……2人を護衛って無茶苦茶だな。この最仕方がない事だし別にいいけど……これじゃぁ、『言霊』はほとんどの確率で使いそうだな……

 

「そのことには目を瞑って頂戴。幽々子の護衛は妖夢、あなたよ」

 

「主人を守るのは私の務めです」

 

「頼もしいわ、妖夢」

 

妖夢は少し恥ずかしそうに、幽々子から目線を外した。幽々子は「そういうしぐさも可愛いわ」と言い、妖夢は先ほどより恥ずかしく(うつむ)いてしまった。

 

「それじゃぁ、今から始めるわよッ!」

 

紫の号令と共に、みんなはそれぞれの位置に散開した。紫と藍は封印の術式を作り始めた。西行妖の標的は当然この2人だが、枝は想雅、妖夢、幽々子の3人まで攻撃できるほどの数があるため万遍(まんべん)無く攻撃が良き通ってた。

 

「まぁ、初めはこれだな。龍は獰猛である。あらゆるものを挫かせる眼を持つがために。

拘束『龍王の威光』」

 

想雅の目が赤く光り、生き物のように動いていた枝は急に止まり拘束された。

 

「少しは時間稼ぎは出来るな……」

 

「それって、最後の方に使った方がよかったんじゃないかしら?」

 

あっ……ま、まぁいいだろう。本当に最後に使った方がいいと思ったのは紫に言われた後だったからもう後悔しても遅い。

想雅は紫に向け、苦笑いした。紫は「やっぱり……」と呟いた。

 

「まぁ、こいつは無理やり解くか、俺が他のスペカか解除しないとこの状態は続くからな」

 

想雅はフォローをするように言った。しかし……

 

「想雅ッ!目の前を見ろッ!」

 

藍から声がかかり、目の前に視線を変えた。西行妖から黒い霧のような物が出てきていた。この状況、黒騎士の時にあったな……そして、黒い霧が形を変えていき、人型となった。

 

「想雅ッ!こいつらは怨霊よッ!」

 

なにぃッ!?西行妖って怨霊を作り出すのかッ!?おかしいだろ?奴は妖怪桜のはず……

 

「前に封印した時はこんなことが無かったはずなのに……」

 

紫もこのことは知らず、唇を噛みしめた。その怨霊たちは封印をしている紫たちではなく想雅を集中して攻撃してきた。

 

「想雅、加勢しますッ!」

 

妖夢が想雅に向かって来ようとするが、

 

「待て、今のお前は幽々子を守れッ!幽々子に護衛がいなくなったら怨霊たちが標的を変えるかもしれんッ!」

 

「しかし……ッ!」

 

「大丈夫だ。これでも悪魔やら英雄やらと戦ってきた身だ。簡単には死なない」

 

妖夢は納得したのか、幽々子の護衛に戻った。

さて、集中力が切れないように、怨霊たちと交戦するか。

想雅は少し前へ出て、紫と藍を守れる範囲と、怨霊と交戦し2人に被害が出ないギリギリの場所まで歩いた。

想雅は手に霊力槍を作り出し、怨霊目がけて投げた。その槍は怨霊の体を貫いた。貫かれた怨霊はその場に崩れたが、さすがに消滅とまではいかなかった。

 

「霊力槍では、さすがに威力不足か……」

 

想雅は自分に迫ってくる怨霊たちを見て呟いた。怨霊たちはお互いにフォーメーションを組みながら想雅に攻撃してきた。先ほど崩れた怨霊も今は立ち上がり、想雅へと向かってきた。

 

「霊力は残しておきたいし……一か八かの接近戦か……」

 

想雅は前方へと構え、いつでも戦闘できるようにした。

まず1人の怨霊が攻撃を始め、刀を振った瞬間、想雅は左にそれを避け、背中に『聖』の力を宿した斬撃を入れる。完全に斬撃が入り、浄化されるように怨霊が消えていった。想雅が背中を向けている間、槍を持った怨霊が攻撃してきた。想雅はしゃがみそれを避け、槍の柄の部分を斬り、『魔』の力を込めた足で腹に一発入れた。怨霊はその衝撃で飛んでいき、後方に控えていた怨霊たちを蹴散らしていた。

 

「よっしゃ、ストライクッ!」

 

想雅はよしと拳を握った。って喜んでいる場合じゃないな。

横から来る怨霊2人の攻撃を後方に下がり避けたが、先ほどまでストライクになった場所にすでに怨霊が存在しており、そいつらは弓兵だった。避けたと同時に後方からの援護射撃……想雅に攻撃してきた怨霊も巻き込む範囲だった。

こいつら……死ぬ気できてるな……すでに死んでいるがな。

 

「スペカを使いたいが……チッ、持ち手の霊力で何とか耐えるか……ッ!」

 

想雅は霊力弾で応戦するも矢の数が多いため、迎撃はほとんどできていない。

 

「すまないが、拘束を解かせてもらうッ!剣の乱舞よ。華麗に踊り、月より美しくあれ。

無双『斬月』」

 

想雅は先ほどまで西行妖の枝を拘束していたが、他のスペカの使用により拘束を解いた。しかし、枝も矢、怨霊と同じく想雅のスペカにより一掃されてしまった。しかし、枝の攻撃は止まらない。

 

「封印の方はまだかッ!」

 

想雅は紫に向け、言った。

 

「さっきからやっているわッ!だけど、何かが邪魔して封印が遅れているわッ!」

 

なん……だと……何かが邪魔って……

想雅は考えながら、迫ってくる枝を避けたり、斬ったりしていた。

 

「た、たぶんだと思うが……西行妖には怨霊を作り出すようなことができないはず、ならその怨霊たちが封印を遅らせていると思う」

 

藍がこう想雅に言った。怨霊か……この判断から言うと怨霊は平将門が与えた物ということになる。何強くさせてくれているんだッ!このままでも十分強いわッ!ならここは怨霊を一掃できる『聖』なる槍で……

 

「今から、西行妖の根元に槍を突き刺し、平将門が与えた怨霊の力を浄化する。その時に封印してくれッ!」

 

紫と藍は頷き、想雅はスペカ詠唱に入った。

 

「聖歌を歌え!聖音を奏でよ!故に、悪を挫き邪を砕け!聖槍『ロンギヌス・レクイエム』」

 

刀を地面に刺し、右手に槍の形状をした『聖』の力が出現した。

そして、西行妖の根元に向け、投げた。

ドスという刺さった音と共に、想雅は右腕を斜め下に振り払い、そして拳を握った。

根本に刺さった聖槍はそれに反応して、白く、輝き、神々こうごうしく、十字架の形をした爆発を起こした。

 

「今だぁぁぁぁぁッ!」

 

想雅の掛け声と共に、2人は封印をかけ、見事に再封印に成功した。

 

 

 

 

 

 






さて、三大怨霊の一人、平将門の登場です。
一応、どんな力を持っているかの紹介です。

・怨霊を自由自在に操ることができる。

・自分の後ろから追い風が吹き、飛び道具などの進行方向をずらす。

こんな感じです。
正式に紹介はしません。なんせ出番が少な……ゲフンゲフン。

感想待っています!
次回もお楽しみ!



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進撃の怨霊



今日の夜、元中学3年のクラスのみんなと飯を食べに行きました。
友人から集合場所を教えてもらったんですが、大事なところが抜けていて、先に目的地に到着しました。その道は結構な距離があったんですが、何とか気合で走って行きました。いまさら思ったことだがバス使えばすぐだった。
で、帰りの時、足が動かなくなり、また歩きえ帰ろうとしたんですが、大人しくバスで帰りました。

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり。




西行妖の封印後、俺、天上想雅は紫と藍、幽々子、妖夢に別れを告げ冥界から出た。冥界の外は黒く染まっている雲が太陽の光を遮るかのように広がっていた。これも平将門が何かをしたものだろう。雲の中から複数の怨霊が湧いている。

 

「あの雲……怨霊発生装置みたいな役割だな」

 

雲から湧いてきた怨霊たちの中には地上に向かっていく者もいれば、想雅に気付き、攻撃を仕掛けようとしている者もチラホラ見えた。

想雅は鞘から刀を抜き、戦闘態勢をとった。

 

「邪魔だッ!そこをどけぇぇぇぇぇッ!」

 

想雅は次々と向かってくる怨霊と戦闘しながら、地上へと向かって行った。しかし、地上に向かうには怨霊が湧いて出てくる雲の中を通らなければならない。だが、想雅は止まらない。

 

「『聖』の力よッ!」

 

想雅は体全体に『聖』の力を宿し、雲の中へと入って行った。通常、こんなに怨霊が湧く雲の中に入ると体がおかしくなったり、奴らに乗っ取られたりとするが、想雅は悪を浄化する『聖』の力で体を守っているため、体に支障は無い。想雅に近づいてきた怨霊は体に触れる前に浄化していっているところが想雅の目でも確認できた。

 

「こんな感じに平将門にも影響があればいいな……」

 

紅霧異変の時に現れた悪魔大総統アウナス。奴にも『聖』の力で対抗した。しかし、血反吐は吐いたもののそこまで体力や動きに支障は無かった。最後は西行妖にも使ったスペカで倒したが、まだ生きているという生命力を見せつけられた。

 

「アウナスが例外ということなのか……?」

 

想雅はそう思いながら、怨霊が湧いて出てくる雲の中を抜けた。目の前に広がった地上は、暗く。積もっている雪が白く目だっているように感じた。

 

「そういえば、平将門の奴……どこ行ったんだ?」

 

しかし、将門の位置は特定できない。まぁ、『言霊』を使えば場所なんて一発でわかるが、西行妖で霊力を多く消費していまったため、『言霊』で加算すると後、1回とちょっとぐらいだ。もし使って、将門の位置を特定したとしても、霊力があと雀の涙のようなものだ。こんなもので奴に勝てるはずがない。かと言って、霊力が回復するまで休憩というわけにもいかない。

 

「地上を治めるとか言っていたから……人里と考えることが妥当か……」

 

まず、治めるならその地の民を従えさせる。そう想雅は考えたのだ。

自分の家も気になるけど、ルーミアがいるから、もしもという事が無い限り大丈夫だろう。博麗神社も霊夢がいるから大丈夫だとして、まぁ、伊達に巫女はやっていないと思うし……魔法の森の方にも気になるが、まずは人里だな。その後にいろいろ探りを入れてみるか……

そうと決まれば、人里がある方角に体を動かし、そこに向かった。

 

 

 

 

 

-----○●○------

 

 

 

 

 

「クソッ!どこもかしこも怨霊だらけじゃねぇかッ!」

 

途中、怨霊の襲撃がありながらも、何とか目的地までに到着した想雅は荒らされた人里を見て唇を噛みしめた。今でも怨霊が人里に徘徊していた。

 

「とりあえず……里のみんなの安否を確信しなくては……」

 

想雅は怨霊があまりいない道を選びながら人探しをしていた。時には裏道を選び、本道を選び、屋根の上を登ったりしていろいろな移動をしていた。そして、やっとの思いで誰かを見つけることができた。

 

「大丈夫かッ!」

 

想雅は裏道で隠れていた少年に声をかけた。

少年は怯える表情を見せながら、想雅に言った。

 

「ぼ、僕は大丈夫です……それよりけーね先生が……」

 

少年が指を指した先に怨霊と戦っている慧音の姿が見えた。しかも、怨霊と言っても人型のものだけではなかった。狼のような形をした怨霊(この場合だと少し強化された低級霊)、大きな蜘蛛のような怨霊(土蜘蛛の強化版)、人間と鳥が合体した怨霊(ハーピーみたいだと思えばいい)など、ふと見ると何か怨霊バージョンの百鬼夜行みたいな現場だった……いや、感心している場合じゃない。

想雅は手元に霊力槍を作り出し、慧音に襲い掛かってきた狼の怨霊目がけて投げた。

 

「ギャウンッ!」

 

見事に狼の側面に命中した。狼はその衝撃で横に逸れ、慧音を通り越し倒れた。しかし、威力が低い霊力槍では消滅とまではいかなかった。その狼は数秒経つとゆっくり立ち上がり、霊力槍を投げた本人、想雅を探し始めた。残念ながら、探している方向にはいなかった。想雅はすでに上空へと飛んでいたのである。

 

「どこを見ているッ!」

 

想雅は霊力で飛ぶのをやめ、狼に向け落下した。落下の時、足で着地するために足にはすでに『魔』の力を宿し、刀にも『魔』の力を宿している。そして、刀の刃が狼の体まで達し斬撃を入れる。

衝撃で舞い上がった砂煙と共に狼はその場で消滅した。

想雅はまだ『魔』の力が宿っている刀を横に振り払い、その力で砂煙をはらった。

 

「そ、想雅……なのか?」

 

慧音は確認するかのように想雅に言った。

 

「おいおい、ほぼ毎日あっている人の顔でも忘れたのか?」

 

想雅は少し笑いながら言った。慧音とはほとんど毎日会っている。まぁ、理由なんてルーミアの奴が腹ペコすぎてよく買い出しに行っている途中でよく会うのだ。

 

「いや、空から人が降ってきて、何事かと思ったんだ」

 

「そうか、驚かせてすまなかった」

 

想雅は申し訳ないように言った。

で、問題の怨霊どもだが、少年がいた場所からではよくわからなかったが、結構いるな。だが、平将門の姿が見えん。ここは不発だったか……まぁ、怨霊どもは消滅しなければならない。

 

「この場にいる怨霊で全部か?」

 

「あぁ、こいつらで全員だ」

 

「そうか、なら向こうの裏道にいる少年と逃げろ」

 

「だが、お前だけでは……」

 

「あそこに子供一人だけじゃ危ないだろ?教師として生徒一人を救わずに成り立つと思うか?」

 

慧音は「うっ……」と言い、そして、「分かった」と呟き、少年がいる裏道まで走って行った。

 

「さて、1体ずつ倒しに行くというのは時間がかかりすぎるな……なら、これだな……全てを屠り、焦土と化せ。魔剣『グラム・スピリット』」

 

刀の先に、『魔』の力を込め、発射させた。

もの凄い轟音と威力、圧力、速度、回転が大通りの道を一直線に駆けた。次々に怨霊は吹き飛ばされ、掘られ(もちろんアッー♂的な方ではない)、体の一部がもげていった。さらに、触れただけでも怨霊たちは消滅していった。こいつらは平将門の能力で作られた能力の一部、想雅の『魔』の力は能力まで斬るため、触れただけでも消滅してしまうのだ。

 

「怨霊が自然で湧いてないのが幸いか……」

 

想雅は心の中で安心した。だが、スペカに触れていない怨霊はいる。魔剣『グラム・スピリット』の弱点は範囲が狭いことだ。威力は高いが先端がドリルみたいにあっているため複数の場合は使い勝手が悪い。まぁ、一直線に並んでいた場合は結構役に立つ。

 

「まぁ……あとは地道に倒していくしかないか……」

 

想雅はやれやれと肩を下した。そして、怨霊が群がっているところへと走って行った。

 

 

 

 

 

 






さて、次回は平将門との対決です。あとは、2、3話でこの章は終わります。
もう、これしか書くことがないんですよ……

感想待っています!
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平将門



はい、題名でネタバレですね。今回は平将門との対決です。
さて、想雅は勝てるのか?奴の怨念を浄化することができるのか?
まぁ、その展開は読んでからのお・た・の・し・み。

では、ごゆっくり。




「クッソ、アイツらに時間を取られすぎた……」

 

想雅は人里を襲っていた怨霊たちを皆、浄化させ平将門を探していた。今向かっている方角は俺の家……というか屋敷がある場所だ。なんだかルーミアの事が心配になってきてな。まぁ、そんなことで自宅に向かっているところだ。

しかし、怨霊どもが次から次からわんさか出てきやがり、倒すにもひと苦労だった。『聖』の力も『魔』の力も、そこでだいぶ使ってしまったため正直のところ、平将門に勝てるか分からない。

自分もまだまだということだな……思えば、悪魔や英雄と戦ってまだまだとか、俺ってもう人間やめようとしてねぇ?

 

「さて、そろそろ着くはずだな……」

 

想雅はふと下を見てやる。おぉ……やっぱり結構高いな。これ高所恐怖症の人だったら失神しかねない高さだな。

想雅は怨霊を見た時よりも、背中がゾクゾクとした。想雅はそう思いながら自宅の門の前へと着地した。

 

「わおぉ……門から怨念が湧き出ているな」

 

想雅はそう言うしかなかった。だってたぶんここに平将門がいると思うんだぜ。この怨念、普通の怨霊より凄まじく怨念が濃いんだぜ。こりゃぁ、ヒットしたかな。まぁ、いると仮定して戦闘態勢を取りながら入りますか。

想雅は、刀を構え自宅の門をくぐった。

 

「怨念は庭の方か……」

 

はぁ、よかった、自宅に居なくって。そこで戦闘したらどれだけ家に被害が出るか……え?言霊があるだろ?ま、まぁ、そうだな。

だけど、平将門の奴は不法侵入しやがった。よし、裁判にかけてやろうか。あ、いや、第一人間じゃねぇよな、アレは……肉体持っているけど……

想雅は将門が人間じゃないことを悟った。だって、何千年前の人物だよッ!確か、かこめかみに矢が刺さって死んだはずだしな……

庭に行く道を歩きながら、周りを見ているとやはり怨霊どもがわんさか湧いていやがる。

 

「アイツらを浄化したところで何も事態は収まらんしな……やっぱ親玉を倒すしか(すべ)は無いな」

 

想雅は残りの霊力、『聖』の力、『魔』の力の残量の事も考えて、そこら辺を徘徊している怨霊たちにばれないように息を殺しながら庭へと向かった。そして、刃と刃が交わる金属音が想雅の耳にも聞こえてきた。

 

 

ボォォォォォォォォォォンッ!

 

 

「ふぁッ!?」

 

想雅は庭のところで起きた轟音に驚いた。慌てて庭の方に向かうと……

 

「あ……あぁ……」

 

想雅はその場で足から崩れた。そこには傷だらけのルーミアが、先ほどの轟音で出来たクレータの中で倒れていた。そして、その近くに想雅が探していた平将門の姿も見えた。家は一瞬見た時は本当に先ほどまで人が住んでいたのか分からないほどの廃墟となってしまった。

 

「ルーミアッ!」

 

想雅は急いでルーミアの元へと駆け寄った。駆け寄ってわかった。うん、目のやり場に困る……

 

「何、目を逸らしているのよ」

 

ルーミアが不満そうに言った。い、いや、目を逸らしたくて逸らしているわけじゃないんだけどな……まぁ、ひとまず俺のコートでも着せとくか……

想雅は自分のコートを脱ぎ、ルーミアの肩に着せた。

 

「とりあえず、目のやり場に困るからこいつを着てくれ」

 

「そういえば、さっきから寒いと思っていたわ」

 

さっきから寒いと思っていたって……自分の服装見てわかることだろ。なんかこいつの抜けているところ見ると、調子狂うな……弾幕ごっこならこんな抜けているところ無いんだけどな……

 

「まぁ……、生きていてよかった」

 

「あら、心配してくれたのね」

 

「当たり前だ。ルーミアは休んでいてくれ」

 

想雅は平将門を睨みつけながら、ルーミアの言葉に答えた。

 

「いいえ、私はまだ戦えるわ。ほらこのとおり」

 

ルーミアはその場に立ち上がりクルクルと回り始めた。

 

「そうか、なら、他の場所に行って怨霊を倒しに行ってくれ」

 

「私もアイツとたたk「勝算は?」うっ……」

 

ルーミアは想雅に勝算について聞かれてしまったため、だんまりと無口になってしまった。それもそうだ。先ほどから平将門には、鎧までには傷がつくが肉体には一切の傷をつけられていないのもそうだ。しかし、言いだしっぺの想雅にも勝算があるか分からないのだ。想雅曰く、あまり女の子に傷をつけさせたくないと思っているらしい。

 

「アイツは俺がやる。いいな?」

 

「……わかったわ」

 

ルーミアは想雅に背を向け、どこかに向かおうとしている。そして、ルーミアが「そうそう」と言いながら思い出したことを言った。

 

「アイツにはさっきから弾幕が当たらないのよ。当たる前に地面に衝突したり、途中で消滅したり、進行方向がずれたりと……まぁ、アイツに弾幕は効かないのよ。それじゃぁね」

 

ルーミアは言いたいことが言えたため、その場から飛んで行った。

弾幕が効かない?それがアイツの力と言うなら、『魔』の力で斬るのみだ。

 

「さてと……住居不法侵入罪および、器物損害罪の疑いで平将門、あんたを浄化させる」

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁッ!」

 

 

ガキィィィィィンッ!

 

 

刃と刃が交わり、大きな光と共に火花を散らした。

 

「ほう、小僧。中々の強さじゃないか」

 

平将門は表情を1つも変えず、ただ無表情で、ただ冷酷な表情を見せた。これが戦乱の世を駆け回った新王の表情だ。戦いには情けは無用……それをよく知っている顔だ。だが、何千年ぶりの戦に心躍らせているのも無理はない。

 

「だが、これはどうだッ!」

 

平将門は、後ろに後退し怨霊を腕から弾丸のように飛ばしてきた。

想雅は、刃に『聖』の力を宿し、それを斬る。平将門も怯まずに撃つ、撃つ、撃つ……しかし、想雅は少し何かに引っ掛かった。

 

(いくら撃っても無駄なのに、なぜ繰り返し撃つのだろうか?肉体的疲労を狙っているのか?それとも、ほかに策があるとでもいうのか……?)

 

弾丸を斬っていくうちに謎は深まるだけ、かといってむやみに動いたりでもしたら奴の思うつぼとでも言っておいても過言ではない。だが、こちらも守ってばかりじゃ決して勝てるというわけでもない。なら、動くまで……だ……

 

「……ッ!」

 

何でだッ!あ、足が……足が動かないッ!

想雅は力いっぱい足を動かそうとするが、それは何かによって縛られたようにびくともしない。ふと足元を見てみると、想雅の足に黒く禍々しい腕が想雅の足首を掴んでいた。

 

「これは……ッ!怨霊ッ!」

 

触られて感じた。この毒々しい邪気、そして執念を……

想雅は足に『聖』の力を流し込み、自分の足を掴んでいた怨霊を剥がした。目を背けた瞬間、平将門は地面を蹴り、想雅へと攻撃を始めた。

 

「もらったァァァァァッ!」

 

平将門は刀を振り上げ、想雅に斬ってかかってきた。

想雅は後方に下がるも、少し胸のあたりを斬ってしまいバランスを崩した。そこに尽かさず平将門の刀が斬りかかろうとした。

足を踏ん張りぃ……体勢を整えてぇ……刀を振るうッ!

 

 

ガキィィィィィンッ!

 

 

両者の刃が交わった。そして、想雅は押し出し平将門の刀から自分の刃を離す。想雅も同じくそこに尽かさず刀を振るう。

 

「ハッ!」

 

平将門は足で地面を踏み、怨霊たちによって作られた壁で防御した。

両者は1歩、2歩、3歩、距離をとり体勢を整えた。

 

「まずは小僧を倒さなければ、日ノ本は治めることは出来ぬか……」

 

「なぜそこまで日本を治めることに執着する?」

 

「簡単な話だ。我は生前に日ノ本を治めることができなかった。我を殺した天皇のせいでだ。だからだ、我は天皇に復讐をするために怨霊として復活したのだッ!」

 

「つまり、あんたは復讐のために日本を治めようと」

 

聞くだけでも、相当な執念だな。

平将門が手に持っていた刀を地面に刺し、手と手を合わせて怨霊を自分の体にまとわせていた。しかし、ただまとうだけではなかった。徐々に体の中に吸い込まれていき平将門の様子が変わってきた。大きくなったり、小さくなったり、元の大きさに戻ったり、そのような動作が残像のように見えた。

 

「この姿になるのは、我の娘、瀧夜叉(たきやしゃ)を殺しに来た大宅太郎光圀(おおやけたろうみつくに)以来だ」

 

そして、平将門の体から黒い怨念が噴出された。先ほどまで人型だった平将門が怨念の中で、全長10メートルに及ぶ大髑髏(おおどくろ)へと変化したのだ。

想雅は「でけぇ……」と口をあんぐりさせた。

 

「だが、こいつは少し大味でな。あまり細かい動きができない」

 

「敵に情報を教えていいのかよ……」

 

「確かに言葉の恐怖より、無口の恐怖のほうがさぞ恐ろしかろう。しかし、あえて言おう。こいつはさまざまな人間の怨念がこもっている。つまり、人間を皆殺しにすることだけに生まれてきた存在なのだァッ!」

 

大髑髏の腕が振り上がり、想雅を叩き潰そうと攻撃してきた。

想雅は横に避け、幸いにも怪我は無かったが……

 

「マイハウスッ!」

 

自分の家がもう取り返しがつかないほどに滅茶苦茶になってしまった。しかし、それに構っている暇は無い。続いて大髑髏の薙ぎ払い攻撃が迫ってきた。次は上にジャンプしそれを避けたが……

 

「mes maisons!(俺の家がッ!)」

 

先ほどまで家とは言えない何やらかの物体は大髑髏の薙ぎ払いにより、綺麗さっぱりなくなりただの平地となった。想雅もショックのあまり英語からフランス語になってしまった。

想雅は自分の足が地面に着くと、大髑髏に向け弾幕を放った。するとルーミアが言ったとおりに弾幕の進行方向がずれ中々当たらない。しかし、想雅はそのような力を斬る能力があるため、刀を後ろに構え、大髑髏に刃を向けた。

 

「全てを屠り、焦土と化せ。魔剣『グラム・スピリット』」

 

刃の先端からレーザーが発射された。その攻撃を大髑髏は避けなかった。いや、避けなくてもよいと思っていたからだ。しかし、その考えは儚く散った。

 

「ヌ……オォォ……ウオォォォォォッ!」

 

大髑髏の頭がレーザーにより吹き飛び、頭から下の残った骨は崩れ去るように落ちていった。

 

「平将門は死んだか……?」

 

想雅の視界には平将門の姿が無かった。しかし、まだ怨霊どもはわんさかと湧いて出てくる。まだ、生きていると考えた方がいいか……いや、アイツはすでに死んでいた。

 

「やはり、ますます殺さないといけなくなったな……」

 

「……ッ!」

 

先ほどまで視界になかった怨念が一点に集中し始め、少しずつ人の型を取り始めてきた。やがて見覚えのある形となり、地面に刺さっている刀を抜いた。

 

「大宅太郎光圀と同じく大髑髏が敗れたか……まぁ、良かろう」

 

しかし、大髑髏になる前とは少し雰囲気が違うと想雅は思った。

 

「しかし、我が肉体を大髑髏の生贄にして作り出し、今はその肉体はただの骨。新たな肉体を探さなければ……」

 

その時、想雅の背中がゾクゾクとした。虫の知らせだろうか?ここから逃げろと本能が言っている。

 

「そうだ、そうだった。こんな近くに肉体があるではないカァ?」

 

平将門が顔に笑みを浮かべながら想雅を見た。それによりますます背中に恐怖が感じられた。

想雅は一旦体勢を整えようと、この場から離れようとしたが……足が動かない。足を怨霊によって掴まれていたのだ。急いで『聖』の力を宿し振り払ったが、また足を掴んできた。しかし、その手も先ほどと違った。怨念が強いためか『聖』の力の浄化速度が間に合っていないのだ。

 

「クッ……ッ!」

 

想雅は『聖』の力から『魔』の力へと切り替え、刀で足を掴んでいる手を斬っていった。しかし、斬る速度より手の湧く速度の方が速いため次々に怨霊の手が想雅の体に絡みついてきた。

 

「ガッ……ッ!クソッ!手に力が……」

 

ついに想雅の手から刀が離れてしまった。

徐々に体が手により上へと持ち上がってきた。想雅は暗くあまり見ることができない視界の中で、平将門が目の前に来たことを最後に気を失った。

 

「カカカッ!貰イ受ケルゾ、ソノ体ッ!」

 

 

 

 

 

 






平将門が大髑髏になったのは、『相馬の古内裏』と検索すれば出てくるでしょう。
詳しくはあまり乗っていませんが……

お、おい……想雅、どうした……?負けたのか……?お、おいったら……
やはり、怨念は強し。怨念は即ち人の『欲』
欲に勝てるものなぞ存在しないというわけか……

感想待っています!
次回もお楽しみに!



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想雅が選んだ道



高校から出された課題がまだ終わってねぇ~。どれもあと、数ページですわ。楽だった。
うん。今回はこれだけ。最近ネタ切れなんだ。物語じゃないよ。この前書きと後書きの方だよ。

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり。




いろんなところを周り、怨霊たちを倒し終えたので、私は今想雅の家まで戻っている。しかし、その家という物が見つからない。私がいた時までは廃墟レベルまでに収まっていたが、今となっては平地と言ってもおかしくないほど平らになっていた。

 

「だいたいあのあたりかな……」

 

ルーミアは建物の残骸が残る場所へと降り立った。そこには大きな骨の残骸もあった。

 

「あっ!そーーーーがーーーーーッ!」

 

ルーミアは想雅の姿を見つけ、そこに走って行った。しかし……

 

「……ッ!」

 

あと、数メートルというところで止まった。それもそうだ。想雅の体から実際感じられない、いや感じてはいけない、怨念が感じられたのだ。想雅だと思われる少年の周りには平将門の姿が見当たらない。たぶん逃げたのか倒されたのだろう。だが、なぜ想雅から怨念が感じられる?

想雅は振り向き、ルーミアを見つけたのかルーミアのところまで歩いて行った。しかし、ルーミアは後退していく、距離は変わらず無駄だと思ったのか想雅はそこで止まった。

 

「どうしたんだ?」

 

その声は普段聞き慣れている想雅の声だった。しかし、怨念が出ているため近づけない。ルーミアはすぐさまそう雅と思われる少年に質問をした。

 

「想雅……私の名前は?」

 

「だからどうしたんだよ。さっきからおかしいぞ」

 

「忘れたの?」

 

「いや、忘れていない。ちゃんとおb「いつまで誤魔化すつもり?」……ふふふ……」

 

やはり……とルーミアは思った。想雅だと思っていた少年は不気味な笑みを浮かべ、肩を笑わせた。

 

『フハハハハハッ!新たな肉体に移動して怨念の制御を(おこた)ったか。これなら正体がばれてもおかしくは無いな』

 

これは少しずつ奴の声に変わっていき、姿が見えなかった平将門の声が想雅の口から聞こえた。ルーミアは大剣を構え、いつでも攻撃できるように体勢を整えた。

 

『このような若人(わこうど)の肉体が手に入ったんだものだ。大切に扱わなければな。だが、さすがの我でもこのような怨念を浄化する輩は差ほど見たことないな……』

 

ルーミアが思うように、想雅の『聖』の力が極端に少なくなったのだろうと考えた。しかし、想雅に限ってそのような……いや、考えてみればよくあることだった。だが、だいたいが霊力がきれる程度だったが、今回は『聖』の力が無くなりかけているという例外な出来事だった。

 

『とはいえ、こ奴が最初の戦闘から弱っていてからのものだ。弱っていなければこの我もどうなったことか……』

 

ルーミアの読みは正解だった。やはり、この怨霊騒動には大量な怨霊が湧いているということ、つまり、想雅はその怨霊たちを浄化しながらここに来たというのだ。

私としたことが不覚だったわ。想雅は他人の事が気になりすぎて、あまり自分の事を考えない人だという事を……

 

『しかし、まだ乗っ取ったばかりだ。いざというときに動けなければ意味は無い。ちょうど体慣らしの(あやかし)がおるしな』

 

想雅の体を乗っ取った平将門は後ろに下がり、落ちていた想雅の愛刀、神刀『風雅』を掴み、刀を持っていない手で怨念の弾を撃ちだした。ルーミアはそれを交わし平将門に向け、弾幕を撃ちだした。しかし、乗っ取る前の状態と同じで弾幕の軌道がずれて、体には当たらないかった。

 

『いいのかぁ?こいつの体を傷つけて?』

 

「クッ……!」

 

やはり、想雅の体を傷つけるわけにはいかない。

平将門は動揺したなと「ふっ……」と笑い、続いて刀を構え、ルーミアに向け攻撃を始めた。

 

 

ギィンッ!ガッ!ギィィィィィンッ!ギンッ!

 

 

「想雅ッ!お願いッ!目を覚ましてッ!想雅ッ!」

 

「カカカ、無駄無駄無駄ァッ!いくら叫ぼうとも奴にその言葉が届くかァァァァァッ!」

 

2つの刃が交わり、火花を散らす。

平将門はルーミアの大剣の刃を刀で押さえながら、地面を足で叩いた。すると、地面から怨霊の腕が出現し、ルーミアは後退する他なかった。これも平将門の目論み通り、腕をルーミアの方に向け、そこから怨霊の腕をルーミアまで伸ばす。ルーミアは大剣に魔力を込めながら斬り続けるが、地面から出てきた怨霊の腕により、大剣の軌道を逸らされ、足首を掴まれてしまった。そして、地面へと叩きつけられた。

 

「くぅ……ッ!」

 

ルーミアは倒れた状態で一歩ずつ歩いてくる想雅を見た。そして気付けば目の前にその姿はあった。

ルーミアは(ひざまつ)くような感じで立ち上がった。

 

『さて、妖よ。体慣らしには多少なったが、このまま遊ぶわけにもいかん。こ奴の手で殺してやる』

 

「そ、想雅……」

 

平将門は刀を頭上に振り上げ、ルーミアを斬ろうとした。さすがのルーミアもここまでかと思い、目を瞑った。

 

――――――やっぱ、俺が殺人をやるなんて(しょう)にあわねよな。なぁ?ルーミア。

 

聞き覚えがある声が聞こえた。

ふと顔を上げてみると、刀を振り上げたままの想雅の姿が見えた。

 

『き、貴様ぁ……』

 

「よ、よぉ……無事で何よりと言いたいんだが……すまねぇ……」

 

彼の声は弱く、今でも倒れそうな声量で意識を取りかえした。その顔は申し訳なさそうな表情をしていた。

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

あ、あぁ……何も見えない……真っ暗だ……暗い暗い闇の中……俺は死んだのか?いや、平将門に体を乗っ取られたのか?そうだった……

痛い……暗い……寂しい……この空間は怨念の集まりなのか?

この空間では様々な感情が渦巻いていた。恐怖、憎しみ、執念、悲しみ、強欲、憤怒、嫉妬……感情がありすぎて、今の想雅の意識では2,3個しか感じられなかった。

チクショウ……完全な状態じゃなかったから負けたのか……思えば弾幕ごっこ以外の敗北は何気にこれが初めてだな。ははは……こんな状態でも俺は呑気なことを事を言っているのか……

想雅は自分で思ったことを苦笑いした。

っにしても、意識が中々元に戻らんな。あれか?平将門のせいか?想雅は手を動かしてみた一応動く、立ち上がろうとした。しかし、動かない。怨念で拘束されていた。ったく、それほど俺の体が気に入ったのか?ホモ的な意味じゃなく……

想雅は意識の中でも能力は使えるため、体全体に『魔』の力を宿し、力任せに怨霊を引きちぎった。

 

「ふぃ……少しは動くようになったかな」

 

想雅は意識の中で体の自由を少し取り戻した。

 

「しかし、真っ暗で何も見えん」

 

想雅はあたりを見渡した。立って見渡してもどこもかしこも真っ暗。黒一色だった。

 

「さて、どうしt……ガァッ!」

 

想雅の頭に激痛が走った。な、なんだぁ……くっそ、頭が割れる……

頭を押さえながら、その場に崩れた。何かが……何かが聞こえる……

 

―――――想雅ッ!お願いッ!目を覚ましてッ!想雅ッ!

 

この声は……ルーミア……なのか?なぜ彼女の声が?しかし、考える暇もなくまたもや想雅に頭痛が起こった。

 

―――――カカカ、無駄無駄無駄ァッ!いくら叫ぼうとも奴にその言葉が届くかァァァァァッ!

 

た、平将門……奴の声まで……

声が聞こえるということは完全に俺を乗っ取ってないと考えていいのか……なら、どこかで体を取り返せるのか?『聖』の力は……ダメだ。これぐらいの量だと奪回は不可能か……どうしたものか……グッ!ま、またなのか……

 

―――――さて、妖よ。体慣らしには多少なったが、このまま遊ぶわけにもいかん。こ奴の手で殺してやる

 

な、何だと……やめろ……やめろ……やめろ……やめろやめろやめろやめろやめろ……

 

「Cesseeeeeeeeeeeeeeeeeeeeezッ!(やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!)」

 

想雅は意識の中で叫んだ。すると、グッっと体が引きつけられるように暗闇の奥まで引っ張られた。(まぶた)を開けると、そこには跪くような体勢で目を瞑った。

 

「やっぱ、俺が殺人をやるなんて(しょう)にあわねよな。なぁ?ルーミア」

 

想雅の声に反応したルーミアが顔を見上げた。

 

『き、貴様ぁ……』

 

「よ、よぉ……無事で何よりと言いたいんだが……すまねぇ……」

 

クソッ……平将門が俺の体を乗っ取り返そうとしやがる。このままだと、ルーミアがこいつに殺される。俺の手によって……殺されるのは何とかして阻止しなければ……

 

「そ……想雅……なの?」

 

「あぁ、今はな……」

 

「ま、待ってッ!今から怨霊を外に出すからッ!」

 

外に出すから……ねぇ……無駄だ。ルーミア、お前にはこいつを出せる能力が無い。

ルーミアは想雅に手を伸ばしてきたが……

 

 

パァァァァァァァァァァンッ!

 

 

想雅はルーミアの手を払った。これは想雅本人がやったことだった。

 

「想……雅……?」

 

「……ろ……」

 

「え?」

 

想雅は意識が乗っ取らせそうな状態までなってきた。

 

「逃げろ。今すぐここから……」

 

「いやよッ!想雅を置いてなんて……ッ!」

 

「甘ったれたこと言うなッ!」

 

「……ッ!」

 

想雅の激昂がルーミアの体を震わせた。

 

「―――――っ……すまん。つい、大声を出しちまった……」

 

想雅はこんな時でもルーミアに謝った。

 

「これでも俺なりの優しさのはずなんだ……ガァァァァァッ!」

 

「想雅ッ!」

 

想雅は手を目の前に出し、「大丈夫だ」とルーミアにサインを出した。あと、「その場に止まれ」というサインも出した。

 

『こんな時に仲間割れかぁ?」

 

「黙れ。俺なりの優しさだと言っただろ」

 

ったく、まさかな……ここまでだとはな……

 

「さて、平将門。俺は貴様に屈しない。挫けないぜ」

 

『ハハハッ!ここまでしぶといとはなッ!あっぱれッ!しかし、貴様の残りの力では何もできないだろう?」

 

「ふふふ……そうだな。()の力に頼らなければな……」

 

『なんだとぉ?』

 

「聖なる鎖よ。狂気を(むさぼ)り喰らい、悪を刈り取れ。束縛『レイジング・グレイプニル』」

 

想雅の腕から『聖』なる鎖が5本出現した。しかし、対象になるものは無い。そもそも、最初からそんなつもりはないのだからだ。

 

『ヌ……ヌゥゥゥゥゥッ!』

 

5本の鎖は想雅の体に巻きつき、剣のようになっている先端は地面に突き刺さり、想雅を固定した。想雅は刀の持ち手を忍者が持つような感じで逆に持ち、そして……

 

 

ザク……ッ!

 

 

押し込んだ刀は想雅の腹を貫通し、紅い液体を刃の先端からポタポタと垂らし始めた。

 

 

 

 

 

 






それがお前が選んだ道か……さて、どうなるか……生き残るか。それとも、死か……
さてと、お気づきの方もいらっしゃると思いますが次回でこの春雪異変は終わりです。
さてさて、次回で想雅がどうなるか分かりますよ。

感想待ってます!
次回もお楽しみに!



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彼は天に旅立つ


さて、今回が『春冬異変』の最終話です。
想雅の奴はどうなるんかな……まぁ、どちらにせよ。それが運命というやつだな。
まぁ、俺は誰かが引いたレールの上を走るわけにはいかないからな。それ以前に出発と同時に、暴走して脱線だな。

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり。




想雅の足元に紅く染まった液体が広がるようにして、大地に滴っていた。白く染まっていた雪も紅く染まり、グチュグチュといった雪が液体になる音も聞こえた。

 

「カハッ!」

 

紅く、ドロドロした液体を想雅の口から漏れるようにして出てきた。一瞬クラッとなったが、『聖』なる鎖のおかげで何とか体勢を崩さずにいられた。

 

「そ……う……が……?」

 

ルーミアは青ざめたような表情をし、その場で力が抜けたように地面に崩れた。それもそのはずだ。目の前で人が死ぬような真似をしているからだ。人食い妖怪であるルーミアは人を喰らうのは問題ない。しかし、その人間に関してのことを知らないからであったからだ。しかし、想雅の場合は違う。彼とはもうすぐで1年の付き合いになる。ここまで彼のことを知った。彼がどのような人間なのか知った。

 

「想雅ぁぁぁぁぁッ!」

 

ルーミアはそこで叫ぶ他なかった。想雅のもとに行こうとするとまた「来るなッ!」と言われるのが目に見えているのだった。彼女はただ、「想雅……生きて帰ってきて」と念じるしかなかった。

 

『何をやると思たが、ただ自分の体に我を押しとどめただけではないか?貴様が死んだところで死んだあとの貴様の体を貰うだけだッ!』

 

「お前は俺を成仏させる気は無いのかよ……」

 

想雅は血を口から垂らしながら言った。ったく、こんな状況になるとはな……予想外だった……

平将門は「くくく……」と苦笑しながら言った。

 

「っかと言って貴様は我を押しとどめとどうする?浄化するとでもぉ?カッ!笑止ッ!」

 

平将門は甲高い声で笑った。こいつ……もとは人間のくせに人間をなめやがって……

 

「こうするんだよぉぉぉぉぉッ!『聖』の力よッ!」

 

想雅は刀の刃にありったけの『聖』の力を流し込む……!

 

「フンッ!所詮この程度か……貴様の浄化能力では我を浄化させるなど無理にひとs……グギャラァァァァァァァァァァッ!」

 

平将門は苦しそうに激昂した。それもそのはずだ。何せ『聖』の力が通常よりも強い力を発揮しているからだ。

 

「俺が自分の腹に刀をただ刺した愚か者と思ったかッ!『聖』は即ち光ッ!反射するものがあればそれはより輝き、人を導き、邪悪を砕くッ!俺が意識を取り戻せば簡単に貴様に抗えるという事だぁぁぁぁぁッ!……ゴフッ!」

 

想雅は叫び、その反動でまたもや血を吐いた。平将門は苦しそうながらも叫びをあげた。

 

『人間風情がぁぁぁぁぁッ!平民風情がぁぁぁぁぁッ!我に刃向うというのか……新王に反逆するのカァァァァァッ!』

 

「下剋上だよッ!新王ォォォォォッ!」

 

平将門は想雅に、想雅は平将門に向け、叫びながら言った。

 

「マダダ……マダ我ノ野望ハ……マダ……諦メハセヌゾォォォ……ォォ……ォォォォ……ォ……」

 

 

 

 

 

-----○●○------

 

 

 

 

 

 

声が少しづつ聞こえなくなり、やがて奴の声は想雅の口から聞こえなくなっていった。そのことを感じ取った想雅は『聖』なる鎖を自分の体から外し、鎖は消えていった。腹に刺さっていた刀も力いっぱいで引き抜き、その衝撃だったためか抜いた瞬間、刀の刃は「ピキッ……」と小さな音を立てた。その音はもう意識が遠い想雅には聞こえるはずがなかった。そして、彼の体は支えが無くなったかのように、後ろに倒れた。

 

「そぉぉぉぉぉがぁぁぁぁぁッ!」

 

ルーミアは倒れた想雅のところまで行き、想雅の体を支えた。そしてゆっくりルーミアはしゃがみ、想雅を自分の膝の上に寝かせるように楽な体勢を取った。

千切れた雲の隙間から、この春、初めての満月が映った。それは解けた帯に似ており、淡い花模様のようだった。

 

「そうがぁ……そーがぁ……」

 

彼女の瞳から熱い水滴がこぼれ始めた。それは悲しく、(むな)しい表情をした顔でポタポタと想雅の顔に流れて言った。それもそうだ。想雅の顔は平将門と戦う前のやる気がある面影ではなく、弱弱しかった。想雅は自然に涙が溜まった瞳へ手を持っていき、涙を拭いた。

 

「そーがぁ……」

 

しかし、拭いても涙はあふれ出てくる。なぜルーミアは泣いているのに俺は泣かないのだろうか……

 

「そんなに泣くな……ルーミア。お前の可愛い顔が台無しだぞ……」

 

想雅は意識が遠くなっても、普通に話しかけるような口調で言った。

 

「だ、だってぇ……そーががぁ……そーががぁ……」

 

ルーミアの口調が幼児のような甘える声を出していた。いつもと状態が違うルーミアに戸惑いながら、想雅は話を続けた。

 

「これは、俺が望んでやったことだ……だから、悔やまなくていい……」

 

想雅は徐々にルーミアの頬に手を持っていき、さするように触った。その手をルーミアがギュっと握った。しかし、彼の手にはほのかな温もりしか感じることができなかった。

視界には異変が解決したはずなのだが、月と一緒に雪が降ってきている。月光で白銀にきらめく雪は美しかった。だが、これもいずれかは消える。

 

「うぅ……だけどぉ……」

 

ルーミアはいやだいやだと顔を振るばかり……

 

「大丈夫だ……ちょっくら、ヴァルハラに行ってくるだけだから……」

 

想雅はこんな時でも冗談を交えて言った。しかし、『ヴァルハラ』といった言葉はルーミアは聞いたことは無い。しかし、その意味はだいたい把握していた。天に上っていくと……

 

「気を落さないでくれ。見てみろ、今宵の空はなんと綺麗なのだろう。俺はあそこへ少し休憩しに行くんだよ。最近、いろいろなことがありすぎて体を思うように休めていないからさ……」

 

想雅は空いている片方の手を上げ、輝いている月を指しながら言った。しかし、ルーミアの視線は想雅から離れなかった。

 

「なら……どうやってそーがに会いに行けばいいの?どうやって会えるの……?」

 

ルーミアは頬をリンゴのような赤色に染め言った。

 

「そうだな……その時は俺からルーミアに会いに行く……」

 

想雅はルーミアの顔を見ながら言った。

 

「だから、待ってくれ。俺の体が休み終わるま……で……」

 

想雅の意識が少しづつ遠くなっていった。ルーミアの手から離れそうになった手を、彼女は離れないようにギュっとしっかりと掴んだ。

 

「死んじゃやぁ……私を1人にしないで……」

 

「死ぬとか俺がさっきから言ってないことを先に口走りやがって……」

 

ルーミアは「ご、ごめんなさい……」と謝った。想雅は「そんな顔をするな……」とルーミアに聴かせた。

 

「お前は1人じゃない。霊夢に魔理沙、数えきれないぐらい人がいるだろ?お前を1人になんてしないさ…………俺は必ずまた会いに来る。例え死んだとしてもだ。どんな形で会いに行こうとも俺は行く。神様の言葉でも俺は抗い、会いに行く……」

 

想雅は最後の力を振り絞り、泣いているルーミアを抱いた。そして、彼は一呼吸を置き言った。その言葉はなぜか確信を持てるものだった。これのせいだろうか?俺が泣けないのが……

 

「俺はこの世に生を受けて(・・・・・)また戻ってくる。それまでのしばしの別れだ……だから……」

 

想雅が言った言葉に反応したのか、想雅の体が白く光り、少しづつ足から消えていった。その光はシャボン玉のような形をしており、フワフワと天に向かうようにして上って行った。

そして……時は来た……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「安心して待っててくれよ、ルーミア……」

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉を告げ、想雅の体は完全に光の泡と共に消え、光のシャボン玉はフワフワと上へ上へと上って行った。ルーミアの横にあった刀も想雅の命が尽きたせいなのか、ヒビが入ったところから「パリィィィィィン……」と静かに折れた。

ルーミアは想雅がいなくなったことを悟ると、その場に蹲り、声にならない悲鳴を上げた。

 

「想雅……私は……ルーミアは……あなたの事が……」

 

その言葉は彼が消える前に言うはずだったもの、しかし、言う前に彼は光となって消えていった。

それは、彼が目の前にいて言うのが恥ずかしかったという恥じらいがあったからだ。だから、伝えられなかった。

失くしてからわかる大切さ―――――

だから、この愛を永久に、捧ぐ―――――

彼が行ってしまった天に向けて―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大好き……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『だった』とは言わなかった。言ってはならなかった。この愛を過去のものにしたくなかったからだ。そして、彼が言った「待ってろ」という言葉も信じて――――――

彼女はまた1人、夜の中で泣くのであった……

その日、私は想雅を失った―――――

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

「簡単には死なんぞォ……ォォォ……」

 

幻想郷上空、1人の怨霊がフラフラ飛んでいた。

 

「小僧を少し侮っていた……不覚……」

 

彼はどこかで休息を得ようと、さ迷っていた。

 

「あらあら、こんにちは。怨霊さん」

 

彼の後ろから女性の声が聞こえた。バッっと振り向くとそこには、見覚えがある桃色の髪をした女性、人間か幽霊なのか分からなかった銀髪の少女が立っていた。

 

「何の用だ?」

 

桃色の髪をした女性は「ふふふ……」と笑った。

 

「平将門公、あなた様を成仏させようと参っただけですわ」

 

怨霊―――――平将門は「ハハハッ!」と笑い、戦闘態勢を取った。

 

「我を成仏だとぉ?笑止ッ!我は日ノ本を治めるまでは満足せぬ。ここで成仏させたら困る。だが、どうしてもと言うのならやってみろ。お前たちにその力があるのならばなッ!カカカッ!」

 

「幽々子様」

 

「分かっているわ、妖夢」

 

幽々子は妖夢に平将門に攻撃の指示を出した。

 

「さぁ来るのかァ?ヤルノカァ?ハハハハh……ヌォォォォォッ!」

 

その速さ、たったの3秒。平将門の体を妖夢の刀が一閃をしていた。

 

「この楼観剣は一振りで幽霊10匹分の殺傷力を持つッ!」

 

幽々子は「お見事」と妖夢に賛美した。

 

「ククク……クハハハハハッ!例え我が死んだところで怨念は消えぬッ!怨念は人の欲の塊ッ!決してなくならない欲の塊ッ!欲は罪である。決して誰にも理解されないが定めなのだからなァァァァァ……ァァァ……ァァァァ……ァァ……ァ……ッ!」

 

平将門は最後、幽々子たちの手によって倒されたのであった。その咆哮は幻想郷全土に響き渡るほどの声量だったという―――――

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

そして、春雪異変が解決した次の日、博麗神社で宴会が行われた。そこにはここの神社の巫女の霊夢、魔法の森から魔理沙、アリス。紅魔館のみなさん、今回の異変の首謀者えある幽々子、妖夢も集まった。この宴の中にはまだまだ沢山の人、妖怪、妖精が楽しんでいる。ごく一部は少し重たいような雰囲気だった。

 

「やっぱりルーミアは来ていないの?」

 

霊夢はレミリアに訊いた。今は想雅の家が倒壊したため紅魔館へルーミアは住んでいる。しかし、レミリアは顔を縦に動かした。

 

「アイツは部屋に閉じこもって返事も無いのよ。想雅が目の前で死んじゃったのが心に穴を開けたんだと思うわ」

 

レミリアは「いつものアイツじゃ無いと調子が狂うわ」と愚痴のように言った。それを聞いた霊夢たち苦笑した。魔理沙の奴は少しニヤニヤしていた。すると3人の目の前にスキマが開き中から紫と藍が出てきた。

 

「少し引っ掛かっていたことを確認してきたわ」

 

どうやら、紫はルーミアのあの発言(・・・・)について確認していたらしい。

 

「想雅が光になって消えていったという事は完全に幻想郷から体が消滅したことだとわかったわ。閻魔様のところにも行ってきて、「天上想雅ですか……地獄には来ていませんねぇ……」と言われたわ」

 

「冥界にも想雅の姿は見当たらなかったよ~」

 

紫が話している間に幽々子も入ってきた。

 

「想雅は最後、刀を腹に刺したはずだわ。その時は『聖』の力で傷を治すことは不可能な状態だったとルーミアからやっと聞き出せたし……」

 

「つまり、何が言いたいわけよ……」

 

「つーまーり、想雅は肉体ごと外の世界に引っ張られ、そこで死んでしまったのか。あとは、間一髪助かり、どこか生きているかという2つの答えが出たわ」

 

「どちらにせよ、不可解な答えだな」

 

「私だって生きていた中で初めてのケースなのよ」

 

魔理沙の答えに紫は言い返せる言葉が無かった。そして、話しているうちに宴会は終りを迎えた。結局、ルーミアは姿を現さなかった。

そして、想雅の家が建っていた平地にはたびたび、ルーミアの姿が目撃されることもあった。霊夢たち一同は「外に出れるまでは落ち付いてよかったわ」と安心した。妖怪は精神が最も弱く、貧弱なのだからだ。それといつもそばにいた人が目の前で突然の死となれば壊れてしまうのだろう。しかし、ルーミアは想雅に言われた言葉を覚えているからこそ、そこに立てている。

 

「『安心して待っててくれよ、ルーミア……』……ね。待ってるわ、想雅……」

 

心地よい風がルーミアの金色の髪をなびかせ、黄金のように輝いていた。

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

神界ではある男が仕事に追われていた。建物はベルサイユ宮殿のような洋風な雰囲気を出しており、その中央では噴水があり、そこの仕事場の人たちが休憩をしていた。その男はそれを羨ましそうにみていた。

 

「支長、あと100枚ですよ」

 

「うっはー、スパルタだねぇ……ガブリエル。(。-`ω-)ンー」

 

「いつもどうりですよ」

 

ガブリエルはニッコリしながら支長に言った。

支長と呼ばれた男、チャラ神は秘書のガブリエルから資料の確認を迫られていた。チャラ神はどんどんと書類にハンコを押していく。ガブリエルはチャラ神がちゃんとハンコを押しているか確認した。

 

「相変わらずお早いですね。ちゃんと見ていますか?」

 

「部下が優秀だから俺はハンコ押すだけで十分なんだよ。あと、面倒くさいしー。┐(’~`)┌」

 

「あらあら、初めのお言葉は嬉しく受け取りますね~」

 

ガブリエルはチャラ神が押し終わった書類を一つづつ丁寧に重ねていった。

 

「ねー、ガブリエル。トイレ行っていいかな?( ゚д゚ )ノ」

 

「そう言って逃げ出すつもりなんでしょう?」

 

「ねー、ガブリエル。ハンコの朱肉のインクが出にくくなったから、取り換えに行ってもいいかな?( ゚д゚ )ノ」

 

「予備はちゃんと机の引き出しにありますよ」

 

「ねー、ガブリエル。後ろの窓から飛び出していいかな?( ゚д゚ )ノ」

 

「弁償代と自分で後片づけができるならいいですよ。それと、サボった分の給料分は引いておきますよ」

 

「逃げることができないという絶望感、マジワロタ。orz」

 

と、何気に無駄話が多いと思っていたが何とかすべての書類にハンコを押し終わった。チャラ神は「ふぅ……(;・∀・)」机に置いてあった紅茶を飲んだ。ガブリエルは最後の確認として、チャラ神が座っている机の前にソファとテーブルがあったのでそこで確認し始めた。

 

「今日も平和だなー。こんなことがずっと続けばいいのになぁ。(*^o^*)」

 

チャラ神は後ろにある大きな窓から外を眺めて言った。眺めと言ってもそこに大地が広がっているわけではない。途切れ途切れに浮遊島があり、各島に神様が住んでいる。ガブリエルなどといった天使たちは天界という、神界より下の地域で暮らしている。

 

「さて、久しぶりに他の神様にでも会ってこようk「逃げないでくださいよ?まだ、仕事が山ほど残っていますから」……ガブリエル、俺をいじめて何が楽しいんだ?( ;∀;) カナシイナー」

 

チャラ神はガブリエルを見て言った。

 

「支長がサボってばかりだからですよ。自覚を持ってください」

 

「(´・ω・`)ショボーン」

 

チャラ神は椅子を座りながらしょげている。

 

「前々から言おうと思っていましたが、話の最後に顔文字をつけること気に入っているのですか?」

 

「うん、そーだよ。(゚∀゚)アヒャ」

 

チャラ神は先ほどのブルーな気持ちから一気に明るい気持ちへと切り替わった。そして、ガブリエルからの質問を軽く返した。

 

「はぁ……まだ仕事が残っているのか……面倒くさいn……ッ!」

 

頭の中にニュータイプのような電撃が走った。チャラ神はそのことに気付き、バッと立ち上がった。

 

「どうかしましたか?」

 

「すまないが少しの間だけ出かけてくるッ!少しだけだからなッ!サボりじゃないからなッ!出かけるだけだからなッ!逃げないからなッ!ヾ(・ω・´;)ノ」

 

「そこまで言うのなら、本当に少しの間だけですよ」

 

「サンキューッ!」

 

チャラ神は身支度を整え、いざどこかへ行こうとした。そして、チャラ神は思い出したかのようにガブリエルに言った。

 

「忘れんうちに言っておく。ラファエルにベットの準備をするようにと言っておいてくれ。それじゃ、アデゥ~!!(`・д・´)ゞ 」

 

チャラ神はエ○シャダイのルシ○ェルが使う神パッチンをした。その音と共に室内にはチャラ神の姿が消えた。

ついにアイツが死んだか……そして、頭に電撃が走ったからにはアイツはあそこで転がっているな。

チャラ神は空間を移動し、『アストラル界』まで瞬時に出現した。

 

「やっぱ俺の能力って便利だな。(*゚∀゚)*。_。)*゚∀゚)*。_。)ウンウン」

 

チャラ神はその場から動き、何かを探し始めた。

せっかく能力与えたんだから簡単に死なれたらこちとら困るんでね。おっ、いたいた。

チャラ神は真っ白な空間で1人の少年を見つけた。

 

「後は戻るだけだな……(v^ー゚)」

 

チャラ神はなぜVサインをやったのかは誰も知らない。チャラ神自身も分からない。ただやりたいからやった。別に後悔していない。むしろ清々しい気分だという感じだった。

よし、心拍数あり。保険でつけておいた『加護』はちゃんと働いてくれた。

 

「さぁて、コイツはどんな反応するのかなぁ?オラ、ワクワクすっゾ。((o(^∇^)o))わくわく」

 

チャラ神はその少年を担いだ。

 

「こいつを助ける俺、マジイケメンだわ-。(*゚∀゚)*。_。)*゚∀゚)*。_。)ウンウン」

 

チャラ神はまた神パッチンを行い、1秒もかからずにその場から消えた。

 

 

 

 

 

 





想雅の奴……逝っちまったか……あとの事はチャラ神に任せるか。落ちてた少年のことを……だいたいの人はこの少年が誰かってわかっていると思いますね。
前書きに書いたとうりに最終回です。次回は……オリジナル展開です。ご期待くださいッ!

感想待ってます!
次回もお楽しみに!



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時と空間をかける少年
波乱の目覚め




おひゃようごじゃいまひゅ(おはようございます)
ふぇ?ふぃるにみひぇているうふぃとぉぐぁいちぁらぁ?(え?昼に見ている人がいたら?)
こんふぃちは(こんにちは)
ふぇ?ふぉるにみひぇているふぃとぐぁいちゃらぁ?(え?夜に見ている人がいたら?)
こぉんばんふぁ(こんばんは)
ふぇ?あふぁにみひぇているふぃとぉぐぁ……(え?朝に見ている人が……)

ふぇんとくぅちぇぇえぇぇぇぇええええぇぇぇぇッ!
(メンドくせぇぇえぇぇぇえぇぇぇええええぇぇぇぇッ!!!)

とふぃあえすぅ、にふぁんゆーわーるみふぇくだちゃってありふあとうごしゃいます。
(とりあえず、20000UR見てくださって有難うございます)
こんぐぉとぉも、よろふぃくおねぐぁいしまちゅッ!(今後ともよろしくお願いしますッ!)
ふぉう、おふぁかいっふぁいでしゅ(もっと食べたい)
ふぉいッ!じまふしごふぉしふぉッ!(おいッ!字幕仕事しろ)

かんちょーありふぁとぉうごちゃいましぃたぁ(感想ありがとうございました)
でふぁ、ごゆっちゅり(では、ごゆっくり)




「ここはどこだ?」

 

俺は今見知らぬ天井を見ている。天井は汚れが無い綺麗な白色だ。

想雅はベットから上体だけを起こし、右手を握った。

 

「感覚がある。なぜだ?俺は死んだはず……」

 

想雅は全体的に長くなっている髪を視界が悪かったので、横に流した。しかし、すぐに元の場所へと戻ってきてしまう。想雅は「もういい……」といい、自分の髪に関してのことはやめた。

想雅はまずは自分がどこにいるのか確認をするため、初めは、いろんなところを見た。

まず、自分は全体的に真っ白い部屋のベットで寝ていた。そして、横を見てみると窓があり、青い空が見える。その近くにだいたいベットより30センチぐらい高い小物入れのような直方体の物が置かれており、その上に花がつまれた瓶が置いてあった。

それらを見て想雅は悟った。

 

「俺は病院にいるのか?」

 

俺は死んでいなかったのか?病院と言っても幻想郷にこのような施設は無いはずだ。なら何で俺はさっき病院のベットの中に眠っていたんだ?っという事は俺は生きている……ッ!?いやいや、俺は確実に……ッ!?いやいや、だったら何で俺はここにいる……ッ!?あー、もうッ!

 

「わっかんねぇぇぇぇぇッ!」

 

想雅はもう何が何だか分からなくなり、大声を出した。

 

「こうなったら、ここがどこか確かめるまで……だ?……イデッ!」

 

想雅はベットから動き、地面に足をついたことを確認して立とうとしたが、バランスが取れなくなりその場に倒れこんだ。

い、いてぇ……これは夢じゃねぇ……現実だ……やっぱ俺生きていた……なら、あの傷で生きている俺、人間やめてるじゃねぇかよ……いやいや、諦めるのはまだ早い。間一髪助かったっていう事があるはずだ。そう違いない。うん。

 

「クッソッ!体全体に力が入らない……」

 

何なんだこの言う事を聞かない体は……ッ!何か体にかけられているのか?いや、そのような不快な感じはしない。全体的に体の筋力が落ちている感じが……

想雅は力を振り絞り何とか立とうとするが、力を振り絞るほどの力が無く、また崩れてしまった。

くっそ、床が冷たいというのが目に染みるぜ……

想雅がこのような謎の行動をしていると、ガラガラと扉が開く音がした。

 

「あら想雅さんは?」

 

「おかしいですね、少年はここに寝てたんですが……」

 

聞き覚えがある女性の声と、聴き覚えがない女性の声が聞こえた。想雅は腕を上に上げ、ここにいますよサインを出した。これだけでも結構疲れる……もう、こんな体やだ……

 

「ここにいますよぉ~。助けてください」

 

想雅はその女性2人に助けを求めた。

 

「そ、想雅さんが目を覚ましたッ!支長に知らせてきますッ!」

 

「わかった。私は少年を助ける」

 

知っている方の女性はチャラ神に連絡を連絡を入れているらしい。もう1人の女性が俺の方に向かってくる足音をした。

 

「ずいぶんな寝相じゃないか、少年」

 

「いや、立とうと思いましたが倒れてしまいまして」

 

瞳は銀色、そしてメガネをかけている。白色の髪はポニテを折りたたんだような髪型をしている。服装は病院だったためか白衣を着ており、その中は白いシャツに赤いネクタイをつけていて、黒いスキニーパンツをはいていた。頭の上では金色の輪っかが漂っている。

想雅は彼女の手を借りて、やっとの思いで立ち上がりベットの上に腰を掛けた。

 

「まったく、君はこの2ヵ月間、ずっとベットに寝ていたんだから体が思うように動かないのは当然の事。筋力の低下が問題だ」

 

おいおい、サラリと凄い事言っちゃったぞこの人。2ヵ月間も眠りについていたのか……って眠っていたッ!?

 

「ど、どういう事ですか?眠っていたって……ッ!」

 

「ん?そんな事私に聞かれても分からないさ。急に支長に『ベット用意しろよ』と伝言が来ただけなんだからさぁ」

 

そう言って女性は積み重ねてあった椅子を持ち出し、想雅のそばに座った。その後にまた扉が開き、ガブリエルさんと、チャラ神、他にも、背はガブリエルさんと同じぐらいの女性と、小さな女の子が入ってきた。

 

「おー、起きたか、お寝坊想雅。(*^o^*)」

 

「うるせぇ」

 

チャラ神は「やぁやぁ。(*´∀`)」おはよう☆彡」と陽気に話しかけた。その後ろからガブリエルさんがひょこっと出てきた。

 

「お体の方は大丈夫ですか?」

 

「力が出ない以外は大丈夫です」

 

おぉ……さすが天使様。その神々しさが目に沁みます……

背が高いほうの女性が医者の女性の隣りに立った。それに続くように小さな女の子も背の高い女性の隣りに立った。

背の高い方の女性は、金髪のロングストレートヘアーのような髪型で、頭の後ろをハートアップで結んでいる。瞳の色は緑色で、ガブリエルさんと同じぐらい体系は良い方だと思う。服装は白色のブラウスと、黄色い線が入ったロングスカートを着ていた。

小さいほうの女の子は、桃色のセミロングヘヤーで、瞳の色も桃色だった。服装は白いレースヨークブラウスを着ていて、ところどころ赤い線や刺繍が入っており、白いスカートと黒いスパッツをはいていた。

そして、どちらも黄金の輪っかが頭の上に浮いていた。

 

「初めまして、(わたくし)はミカエルと言います。以後お見知りおきを」

 

「私はウリエルだ。気軽にウリエルと呼び捨てで呼んでくれ」

 

「あー、一応私がラファエルだ」

 

何だろう。凄く驚くことなのになぜか驚かない。そうか、悪魔や英雄、怨霊とかに会っているからか……しかも、ミカエルさん、ガブリエルさん、ラファエルさん、ウリエル……四大天使が俺の病室になにげ大集合しちゃったし、俺の人生どうしちまった?

 

「は、初めまして、天上想雅です」

 

想雅は、かしこまりながら言った。

 

「さてさて、皆の自己紹介も終わったことだし、これから本題に入るぞ。あー、ゴホンッ……(o´д`o)=3」

 

チャラ神は咳払いをして、この病室にいる全員の人に注目された。

 

「まず、お前は死んだ。( ・´ー・`) ドヤァ・・・」

 

「いきなりドストレートだな。あと、ドヤるな」

 

やっぱりね。あのそこで俺はちゃんと死んだのね。はいはい……ってえッ!?な、ななななな、なんで今、俺は生きとるんッ!

 

「『なんでだぁ?』って聞きたそうな表情(かお)してんで説明させてもらうんがよ。確かにお前は自分の腹を切って死んだ。Oh……ジャパニーズハラキリ。(*´∀`)」

 

いつもこいつはウザさMAXだな……

 

「よかったな、初めて人を殺したのが自分で。。゚(゚^∀^゚)゚。ギャーハッハッハッハッハッハハッハッハッハッハッハ !!」

 

「よくねぇよッ!あと、爆笑するなッ!」

 

はぁ……こいつの相手はホント疲れる……力が入らない状態だとめっちゃ疲れがたまるのが速い……

 

「で、話は戻るが……お前がなぜ生きているか心当たりはあるか?( ´,_ゝ`)」

 

心当たりか……必ず会いに行く……これは違うな。俺が生きていることに関係はあると思うが、違う。体を休める……これも違う。なら……

 

「『この世に生を受けてまた戻ってくる』か……?」

 

「そうだ、たぶんそれだ。(゚ェ゚(。_。(゚ェ゚(。_。*)コクコク」

 

チャラ神は数回頷いた。これと俺が生きていることに何か関係が……

 

「前にも言ったが、俺とお前は昔、出会ったことがあるというのは覚えているか?( ´,_ゝ`)」

 

「お前の口から聞いただけで、俺は記憶喪失だ」

 

チャラ神は「そうだったな。(;●∀●)ゝ”」と頭をかいた。

 

「まぁ、そこで俺はお前に能力を与えた。ここまでは言っているはずだ。ヾ( ゚∀゚)ノ゙」

 

「あぁ、そこまではな……」

 

「俺はもう一つお前にある『加護』を与えた。m9っ`・ω・´)シャキーン」

 

「『加護』?」

 

『加護』……ファンタジー物とかにある神様の『加護』ってやつか。実際にあるものだな。

 

「あぁ、そうだ。そこでお前に与えた『加護』はな……( ̄ー ̄)ニヤリ」

 

チャラ神の顔が想雅に近づいてきた。……って近ッ!近すぎるッ!やめろッ!

 

「『命の加護』だ。( ・´ー・`) ドヤァ・・・」

 

『命の加護』それで俺は生きているという事か……しかし、言葉との関係が見つからない。

 

「まぁ、こいつを発動するには1つ条件があってな……( ̄ー ̄)ニヤリ」

 

チャラ神はまた想雅に近づいた。こいつ……俺が力が出ないことを知っていてやっていることだな……

 

「その『加護』を受けた本人が自分で、『生きたい』と思わなければ発動できないんだ。

( ・´ー・`) ドヤァ・・・」

 

そこ、ドヤるところじゃないんだが……まぁ、俺がここにいる理由が分かった気がする。俺はそこまで死ぬことに未練を持っていたんか……まぁ、そうだろうな。16歳というこんな若さで死ぬんだ。誰だって未練は残るものだろう。

チャラ神は「そうそう。(´∀`∩)」と何か思い出したかのような口ぶりを見せた。

 

「まぁ、生き返ったことでちょっとしたオマケつきで生き返ったんだが……( ̄ー ̄; ヒヤリ」

 

チャラ神が想雅には、何か言いにくそうな感じだった。

 

「別に言いたければ言っていい」

 

「お、おぅ……(・A・)」

 

別に生き返っていると言う奇想天外前代未聞な体験をしているんだ。これ以上に驚くことは無いだろう……

心の決心が決まったのかチャラ神が想雅に向け言った言葉は……

 

「不老不死というちょっとしたオマケで生き返りましたッ!(・ω<) てへぺろ」

 

「ちょっとじゃねぇぇぇぇぇッ!人間やめてるじゃねぇかッ!俺ぇぇぇぇぇッ!」

 

想雅はお腹から大きな声を出した。はぁ……はぁ……やべぇ……酸欠だ……俺の体弱ぇ……

 

「やったねたえちゃn「オイやめろ」……命が増えt「オイやめろ」……(´・ω・`)ショボーン」

 

最後まで言えなかったのかチャラ神はいじけた。まぁ、こいつはすぐにいつもどうりに戻るだろ

う……

 

「まぁ、不老不死だと言っても、急所を一発やられたら死ぬんだけどな。簡単に説明すると、寿命と言う概念が無くなったと考えればいいさ。これで君も神様と同じ朽ちない体。家族がふえr「オイやめろ」……( TДT)」

 

一応、寿命の概念が無くなっただけで、心臓や頭、首が吹っ飛んだら死ぬのか……完全な不老不死ではないという事ね……しかも、神様と同じ朽ちない体になっちゃったし……

 

「まさに不老不死(笑)(゚∀゚)アヒャ」

 

「(笑)ってなんだ、(笑)は?」

 

「まさに不老不死(恥)(゚∀゚)アヒャ」

 

「神様の欠片もねぇなッ!」

 

「まさに不老不死(ピー)(゚∀゚)アヒャ」

 

「自主規制が入りやがったッ!お前、全世界の神様に土下座をしろッ!」

 

「まさに不老不死(ヘタレ)(゚∀゚)アヒャ」

 

「それ俺限定に言っているだろッ!」

 

こいつ、俺は神様と同じ朽ちない体の事を知っていながら、さらりと全世界の神様を敵に向けたな……しかも、自主規制も入ったぞ……いや、天使も魔獣も悪魔も堕天使も敵に向けているな、こいつ……

 

「でだ、その死んだ影響でお前の能力に変化があった。まぁ、そう仕向けたのは俺だけどな。HA☆HA☆HAッ!(゚∀゚)」

 

ほら、すぐにこいつはもとに戻った。どんな頭してんだよ……

 

「変化といても1つだけだけどな。(*゚∀゚)*。_。)*゚∀゚)*。_。)ウンウン」

 

1つだけでよかったぜ……これ以上人間やめたくない……

 

「その1つとは『言霊』に関しての事だ」

 

『言霊』ね……霊力を使用して、森羅万象を覆す力を持っており、よくお世話になっている。

 

「お前の『言霊』は、『想像によって創られる言霊』と『神を知ることによって創られる言霊』の2つがあったよな。こいつらが死んだ影響で1つの能力となり、正式に『言霊を創造する程度の能力』となった。1つになったせいか廃人にもならなくなったし、誤爆で死な無くなったしな。

(`・ω・´)キリッ」

 

「あぁ、心の底からよかったとおm……はぁッ!?誤爆ぅッ!?」

 

さっきからこいつの口から爆弾発言ばっかりじゃねぇかッ!誤爆って……何で自分の能力で誤爆しなきゃならないんだッ!

 

「誤爆でよかったな。体が溶けるとか、石になるとか、核爆発しなくて……よく、その制限がありながら生きていたな。((φ( ̄Д ̄ )ホォホォ」

 

「もう、こんな神様嫌だ……」

 

もう嫌になってきたわ……ホント今の自分の存在がギリギリ人間で止まっているというのに……

 

「あとは……霊力の使用量が2分の1に減ったぐらいかな。(▽〃)。oO」

 

おいおい、喜びたいけど素直に喜べねぇ……

 

「やったねそうg「オイやめろ」……能力が使いやs「オイやめろ」……何でセリフを言わせてくれないんだ……(´・ω・`)ガッカリ…」

 

た○ちゃんネタ使うんじゃねぇ。この野郎。

 

「支長、お話はよろしいでしょうか?」

 

「あぁ、いいぜ。( ゚д゚ )ノ」

 

チャラ神が話し終わったことを確認してガブリエルが想雅に向け何かを渡した。

 

「これは……」

 

想雅に渡されたのは一振りの刀だった。鞘から抜いてみると刃は虹色に輝いており、それはそれは美しく、神秘的な光沢を放っていた。鞘の部分も装飾が施してあり、その素材である木はこの世の物ではないような手触りをしていた。

 

「お前と一緒に折れていた刀が落ちていてな。刀が無いとお前は何にもできないから、『わく○くさん』に頼んで作ってもらったんだ。( ̄^ ̄)えっへん」

 

「ちょ、おま……今『わ○わくさん』って言わなかったか……?」

 

わくわく○ん、聴き覚えがある人もいると思うが、あのN○K番組の『つくってあ○ぼ』と言う番組の出演者であり、ゴ○リ君と一緒に楽しいものを作っている人だ。

 

「支長、想雅さんにはヘパイストス様と話さないと伝わらないと思いますよ」

 

ヘパイストス、、ギリシア神話に登場する神であり、古くは雷と火山の神であったと思われるが、後に炎と鍛冶の神とされた。オリュンポス十二神の一柱で、神話ではキュクロープスらを従え、自分の工房で様々な武器や道具、宝を作っているという。その象徴は円錐形の帽子、武具、金床、金鎚、矢床である。その名前の語源は『炉』『燃やす』という意味のギリシア語に由来するといわれているが、インド神話の火神ヤヴィシュタに由来するともいわれ、古くから小アジア及びレームノス島、シチリア島における火山帯で崇拝された神といわれる。

ギリシア神話を知っている人ならわかる神様だろう……

 

「それもそうだな。ホント、アイツが作るものと言ったら面白いものばかりでな、ついあだ名で呼んじまった。ァ '`,、'`,、'`,、'`,、((´∀`●))ァ '`,、'`,、'`,、'`,、 '`,、」

 

ヘパイストス……あんたは神様界の『わくわ○さん』だな……

 

「兎に角、その刀を大事に使えよ。何せ刃は希少なイェローリルだからな。これくらいの大きさだと城が何個変えることやら……あと、その鞘はわくわくさ○が作ったものじゃなく、ドライアドの力を借りて、ユグドラシルの木を加工したものだからな。皆に感謝しろよ。m9っ`・ω・´)シャキーン」

 

もう、こいつの口から出るものはほとんどが爆弾発言だな……イェロリールって知らんが、話によるとこの刀の刃で何個か城を変えるらしい。なんで、刀にそれを使った……ユグドラシルからとか、日本では世界樹と呼ばれているもので、オーディンはこれで知識を身に着けた。しかし、そのためには何かしらの代償が必要なはずだが……あと、ドライアドってあの木の精霊さんのことだよな、絶対に……もう、何が何だか……

 

「いろいろ、ハチャメチャな発言をしたが……その初めの顔からというとイェロリールの事が知らないと俺は思った。だから、説明する。ガブリエル後は頼んだ。\(゜∀\)#(/∀゜)/ガンバッテ~!!」

 

おいおい、説明を人に押し付けるな。

チャラ神は椅子を持ってきて座り、「あー、あー。(*´Д`)」とマイクテストのようなことをしていた。だいぶ話したもんな。そのおかげでこっちはヘトヘトだ……

 

「では説明いたしましょう。イェロリールというのはミスリル銀を超える強度と粘りを持ち、加工が非常に難しいといわれる幻の鉱石です。とても貴重な鉱石で、拳大のサイズで城1つ買うことが出来るぐらいの代物です。伝説上では虹色に輝き、魔力との親和性の高さから、昔は魔法使いの憧れとされていました。しかし、文献に残るのみで、その存在の真偽は定かではないのです。ここにイェロリールがあるのは、支長がどこかで拾ってきたと聞いています。通常、イェロリールで作られた物は壊れたり折れたりすることがありません」

 

うーん、だいたいはわかった気がする。どこかで拾って来たとかチャラ神の奴はどこをほっつき歩いていたのか……

 

「まぁ、要するに刀バージョンのデュランダルととらえた方が簡単だ。(*゚∀゚)*。_。)*゚∀゚)*。_。)ウンウン」

 

うわぁ、すっげぇわかりやすい。

チャラ神は「上出来だ。ガブリエル。d(゚∀゚)」といい、立ち上がった。

 

「伝えたいことは伝えたし、撤収しますか。ヽ(´3`)ノ 」

 

ホント最後の最後まで腹が立つな……

チャラ神とラファエル以外の大天使たちは想雅の病室から出てこうとした。

 

「じゃぁな、後はお前の頑張り次第だ。せいぜい早く退院できることを祈っているよ。不老不死(笑)並びに、『四大天使の弟(・・・・・・)』君♪ヘ(゚∀゚ヘ)アヒャ」

 

「ちょ、待てッ!チャラ神ッ!聞き慣れない言葉が……って……」

 

想雅はチャラ神からある言葉を聞き出そうとしたが、すでに扉から出て行ってしまった。3人の大天使は、ガブリエルはニッコリと笑い、ミカエルは「弟というのは響きはいいですね」と言っており、ウリエルは「人間の子を弟にすることなど天使としてどうなんだか……」と笑いながら言った。そして、3人の大天使は部屋を後にした。皆さん、OKしたのですか……

 

「ら、ラファエルさん……」

 

「ん?あー、そうだな。早く身体調査をやらなければな」

 

想雅はラファエルに助け舟を求めたが、その願いは届かなかった。

俺はこうして、生き返り、不老不死になり……まぁ、寿命という概念が無くなった人間と考えればいい。急所に当たると死ぬが……それと、城が何個か買える刀を貰い、そして、四大天使の弟と波乱な目覚めだった。

 

 

 

 

 

 






ふぃ……食べながらはつらいわ……

「新章そうそう何やってんだッ!」

誰かと思えば、不老不死(笑)じゃねぇか。久しいな。

「(笑)入れんな」

兎に角、生き返ってよかったな。

「まぁ、そうだな」

今回でいろんな人が登場したしな……

「そうだな。神様界のわくわくさ○もいたしな。しかも四大天使の皆さんの弟になっているとは……後でチャラ神にでも訊いてくる」

もうお前、隠す気ゼロだろ。

感想待っています!
次回もお楽しみに!




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ブラコンな大天使



明日……じゃなくて今日が入学式だ。長かった春休みが終わった、オワタ。
初めての高校生活が始まる……そして、人生に1度の青春を味わってみたい。
もう、名前でネタバレですね。天使の事を知っている人ならわかると思います。実際『ブラコン』なのか分かりませんがここではそうさせていただきます。

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり。




想雅が生き返って1日目の朝を迎えた。ちゃんと神界は朝、昼、夜といった時間帯でわかれており、地上と同じなためか、すぐに慣れてきた。

昨日はラファエルさんに身体調査をする前に、ミカエルさんがもう一度部屋に入ってきて、長くなっていた俺の髪を切ってくれた。その後、言われた通りに筋力が低下していた。まぁ、それは置いといて……初日はよく病院とかでやるリハビリだった。その光景も地上と変わってはいなかった。ホント内心はホッとした。

全体的に筋力が落ちていたためか、まずは基礎から始めた。それから1週間後、何とか走ったり、刀を振ったりといった動作ができた。しかし、俺のリハビリはこれだけでは治まらなかった……実質ぶっちゃけるが病院でやったリハビリはまだリハビリという物じゃなかった。

病室にチャラ神がやって来たときの事だった……それはそれはグットな快晴で、運動日和だった。

 

「おー、走ったり、刀を振れるところまで終わったか。でも、ちょっと遅かったかな?(▽〃)。oO」

 

「お前は人間である俺にどんな期待を背負わしているんだ……」

 

「っんーとね……大目に見て2日。(゚∀゚)アヒャ」

 

「バケモンじゃねぇかッ!」

 

2日とか、シャレにならないぐらいの化け物だな……まぁ、第一不老不死である俺が言えたことじゃないけどな。だが、たとえ不老不死とはいえ人間だ。そんな化け物のような回復力は……あったわ。俺、『聖』の力があったわ。怪我の時限定だけど……筋力には反応しなかった。それもそうだよな、寝ていただけだったもん。

 

「まぁ、そんなことをお前に伝えに来たわけじゃないし……(*゚∀゚)*。_。)*゚∀゚)*。_。)ウンウン」

 

「そうだったら、即刻お前をブチ転がしとったわ」

 

「神として言うが、お前ホント容赦ないな……(・A・)」

 

こんな神様がいるとか俺は信じない。第一こんなチャラい神様なんていない。

 

「その前に1ついいか?」

 

「1つならな。(゚∀゚)」

 

「なんで俺はあの四大天使の皆さんの弟なんだ?おかしいだろ血もつながっていないし、俺は人間だし……」

 

1週間の間にこいつは1回も顔を出さなかった。だから聞けなかった。気になるその『四大天使の弟』というあだ名が……

 

「まぁ、まず弟になった重大の理由がミカエルかな?(*´∀`)」

 

ミカエルさんとの間で何かがあったのか?まぁ、こいつの性格からいくと何かが起こってもおかしくないな……

 

「ルシファーとミカエルが兄妹という事は知っているだろ?( ´,_ゝ`)」

 

「いろいろな説があったが、本当に兄妹だったとはな……」

 

ここで驚きなことにルシファーとミカエルさんは兄妹だったという事がチャラ神の口からしっかり聞き取れた。

 

「結構昔のことになるんだが、ルシファーが堕天使になったという事もしっているだろ?

( ´,_ゝ`)」

 

ルシファーがすでに堕天使になっていました。まぁ、悪魔にならなくてよかったと俺は思うよ。悪魔と言ったらアウナスの事を真っ先に考えてすぐに戦闘になりそうだしな。

 

「その影響で、ミカエルが凄く落ち込んだ時期があったんだ。そのことは次第に受け入れられてきたらしくあまり仕事には影響はなかったらしい、さすが大天使だね。\(゜∀\)#(/∀゜)/」

 

そんなことがあったのか、本にはそんなことは書かれていなかったがこんなところで聞けるとかスゲェな……

 

「でね、結構な時間が流れたが、俺がミカエルにお前の写真を見せたんだ『こいつを弟にしてみないか?』って誘ってみたんだよ」

 

「結局、お前が元凶かよッ!」

 

ミカエルさんとか言っていたが、結局チャラ神が元凶じゃねぇかッ!

チャラ神は「まぁまぁ。ヘ(゚∀゚ヘ)アヒャ」想雅を宥めた。クッソ腹が立つ、特に顔文字が……

 

「思ったとおりに食いついてきて『い、いいんですか?本人の了承とかが必要じゃないですか?』となんだか嬉しそうな感じでキラキラと目が光っていたんだ。お前ならどう思う、その嬉しさに満ち溢れた顔をみせられると?ヽ(´3`)ノ 」

 

「た、確かに裏切れられずにはいられないな……」

 

「DA☆ROッ!だから、『アイツなら大丈夫だ。こっちから話はしておいてやる。まぁ、アイツはヘタレだから簡単にOK出してもらえるだろ』って言ったんだ。(*゚∀゚)*。_。)*゚∀゚)*。_。)ウンウン」」

 

「お前……OKを出すことを見越して……」

 

こいつ……俺の性格を把握してやがった。DA☆ROッ!って星とローマ字つけんなッ!ヘタレだからわかっていたことだって?第一ヘタレじゃねぇよ。

 

「で、その近くにいたガブリエルも『私も弟というものを持ってみたいですねぇ~』と羨ましそうにいう物だからいっその事、『四大天使の弟』にしてしまえという結果になったんだ。d(゚∀゚)」

 

こういう経緯だったのか……まぁ……俺は別にヤダとは言わない。ミカエルさんの期待を裏切ったりしない。

 

「ラファエルの奴は『別に問題ない。家族が増えるのは嬉しいこと』とか不思議そうだが嬉しそうだし、ウリエルの奴は『アイツらが弟をッ!?な、なら私も……』と恥ずかしながら言っていたしと、全員の了承が得てお前は弟になったんだぜ。m9っ`・ω・´)シャキーン」

 

皆さん、嬉しそうですね……まぁ、俺もこんな綺麗な姉さんを4人も出来て本音は嬉しい。これが1人っ子の兄妹を欲しがるエゴというやつかもしれない。ってかウリエルって見た目は幼女なんだけど、それって姉と捉えていいのか?妹に思えてくるんだが……

想雅は苦笑いした。

 

「よっし、さっさと行くぞ」

 

とチャラ神に連れてかれた。

この後、ウリエルのところについてここからリハビリレベルじゃないことが起こった。ウリエルがいきなり剣を抜き、炎をまとわせ攻撃してきた。

チャラ神が『だいたいは動けるようになったし、次は動体視力だ。( ・´ー・`) ドヤァ・・・』とドヤ顔交じりで言ってきた。当然ふざけんなと言いたいところだが、幻想郷に戻って弾幕ごっこの事を考えるとやる他なかった。このリハビリ、曰く戦闘は対戦相手が変わりながらも励み、それは1週間にも及んだ。

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

想雅が目覚めてから2週間が経っていた。今、俺は病室でミカエルさんに抱かれている。どうしてこうなった……え、えーと、まず、そのことに関して少し思い出してみよう。

まず、起きて、身なりを整えてた後顔を洗いに行った。洗面台は病室にベットの数と同じ数が配置されていた。おぉ、これは凄い。

で、洗った後、ミカエルさんとガブリエルさんが天界というところで買ってきてくれた洋服に着替えた。上は黒に黄色い刺繍が施されたTシャツに、その上から左の身頃にひっかかれたような黒い爪痕のような線が入っている白いシャツを着ている。下は黒のジーンズをはいている。

着替えた後、ガブリエルさんに頼んで持ってきてもらった神話に関する資料を読み始めた。紅魔館の図書館に書かれているものとは違い、1人の神様に関してのもののため多少は理解しやすかった。

呼んでいる最中に、ミカエルさんが病室に入ってきて、抱き着かれるという順序だ。

 

「み、ミカエルさん……これは一体どんな状況なんでしょうか……?」

 

想雅は戸惑いながらミカエルに質問してみた。

 

「んー?天界の仕事が忙しくてあまり『そー君(・・・)』に会えなかったから、オトウトエネルギーを補給しているの……あー、これ最高……」

 

『そー君』……はい、ご察しのとおりミカエルさんが俺に対して言うあだ名です。あだ名なんて小学生低学年以来ですよ。

オトウトエネルギー……聞いたこと無いっすよ。アレですか地上に無くて、天界、神界にだけある言葉ですか?

ミカエルさんが俺の頬っぺたに頬擦りし始めた。

 

「あー、少年。起きていr……」

 

運が悪いところにこの病院の院長のラファエルさんが入ってきた。俺とラファエルさんの目があった。ミカエルさんはというと、ラファエルさんが入ってきたことすら気づいていなかった……

ラファエルは「まったく……」と言いながらミカエルを想雅から剥がした。

 

「あん、ラファエル何するのよ。もう少し抱き着いていたかったのにぃ~」

 

ミカエルは「ぶぅ~」と頬を膨らませながら言った。

 

「ルシファー以来の姉弟だからといっても、君はこんなんでも天界を治める天使長なんだ。ブラコンの発動は控えてもらいたい」

 

「こんなんでもって……ラファエルは私のことどう見ているのよ……」

 

ミカエルは少しづつ声が小さくなりながら、落ち込んでいった。

 

「そ、そーくぅん……」

 

ミカエルが涙目になりながら想雅を見つめた。うん、めっちゃかわいい……美しいとか綺麗というのじゃなくて、子犬のようにかわいい……しかも、このうるうるした瞳。これが心にグッとくる。もう、これは負けたな……

 

「ルシファーの代わりになれるのなら別に俺は構いませんよ」

 

想雅はミカエルのおねだりのかわいらしさに負け、苦笑いで彼女に言った。

 

「ありがと~、そー君ッ!」

 

ミカエルはバッ両腕を開き、想雅に抱き着いた。ラファエルはジト目になり、「はぁ……」とため息をついた。

 

「少年、君はシスコンなのか……?」

 

「違います、1人っ子です」

 

うん、俺は1人っ子。それ間違えなくくつがえすことができない事実だ。しかし、実質的には末っ子だ。四大天使の一番下。この場合は1人っ子と言っておいた。シスコンと間違えられたからだ。

 

「あー、用件だけは伝えておく。朝食後、少し落ち着いたら支長のところに行け。何やら少年に話があるそうだ。私は仕事が残っているから自室に戻る」

 

ラファエルは想雅に伝えたいことを伝えて、病室を後にした。

 

「ねぇ、そー君。朝食はどうするの?」

 

「1階の食堂で食べてきますが……それがどうしたんですか?」

 

「それより……私が作った朝食を食べたくない?」

 

ミカエルがもじもじしながら想雅に言った。

 

「そうですねぇ……迷惑じゃなければ……」

 

「やった~、じゃぁ早く天界まで下りましょうッ!」

 

ミカエルは想雅の腕を掴み、そして、窓を開いた……って、え?

 

「ちょ、み、ミカエルさんッ!そこは窓ですよッ!玄関からぁぁぁぁぁッ!」

 

想雅は忠告の前に、窓から引っ張り出されそのまま天界まで直行した。

 

 

 

 

 

 






ミカエルが異常なほどのブラコンです。はい。
ルシファーとミカエルが兄妹なら、キャラ付けはブラコン設定DA☆ROッ!と思いましたのでこんな感じ。
おそして、もう少し書きたかったという……このまま続ければいいんですけど、キリがいいと思ったのでここで斬りました。書くと長すぎてキリが見えなくなりそうでしたから。俺は一度集中するとそれ以外の事はまるっきり眼中にない性格ですからねぇ……

感想待っています!
次回もお楽しみに!



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刀の美少女



高校生活が始まって1週間……今、迷っていることは-----

BU☆KA☆TU☆DAッ!

うん、高校になると中学と違い、めっちゃ部活がありすぎて迷っている……早く何とかせねば……

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり。




ミカエルさんの家で朝食を食べた後に、チャラ神がいるという神界支部治安部隊総司令官総司令部の支長の執務室まで、支部の中を歩いている。

 

「おいしかったです。ミカエルさん」

 

「ありがとー」

 

ミカエルは嬉しそうに笑った。

彼女の家は天界にあるなんというか……結構広い屋敷に住んでいた。聞いたところ天界を治める天使長という役職についているらしい。確かにミカエルさんは凄い人だ。見た目も完璧だし、天使長というのなら仕事も出来る方だと思う。しかし、ブラコンが無ければ完璧な人だと言えた。

天界というところは地上と変わらず、建物や人、お店が賑わっており、大都会のような感じをした。しかし、相手は人間じゃなく天使だ。あと、死んだ人もだ。

そのせいなのか俺は結構な数の天使、死んだ人に注目を浴びさせられた。まぁ、この場合は単に俺が珍しいんじゃなくて、俺の隣りにミカエルさんがいたからと思う。天使の男性から殺気の目がかかってきたもわかる……

 

「ここですよ~」

 

ある扉の前にガブリエルさんが立っていて、俺たちに気付いたのか手を振って誘導してくれた。

 

「おはようございます、ガブリエルさん」

 

「朝から元気ですね、想雅さん。ミカエル、ブラコンは発動していないでしょうね?」

 

ガブリエルがニコニコしながらミカエルに聞いた。一瞬、肩がビクッと動き、戸惑った表情を見せながら、その場で俯いた。

 

「やっぱり……あまり控えないと堕天してしまうのよ」

 

ガブリエルはしょうがない顔をして、言った。

堕天か……これはこれでヤバいな……書籍などとかに書かれている歴史が俺のせいで変わっちまうな。それだけは防がなければ……ガブリエルは「そういえば、支長から想雅さんにお渡しするものがありました」とスカートのポケットから何やら見覚えのある数枚のカードを取り出した。

 

「スペルカード……」

 

そう、彼女が持っていたのは紛れもなくスペルカードだった。しかし、そのカードには何も描かれても無ければ、装飾も施されていない。つまり、白紙のスペルカード……能力がアンインストールされたスペルカードとでも言っておこう。

 

「2週間前の想雅さんの服の中から出てきた物ですよ」

 

スペルカードは1枚だけではなかった。2枚目……3,4枚目と出てきて、合計で4枚の白紙のスペルカードが出てきた。想雅はそれを受け取り、スペルカードを使えないということを確かめた。やはり、そのカードからは何も感じられなかった。

 

「そういえば、チャラ神はどうしたのですか?アイツの姿が見えませんけど……」

 

目的の執務室はここの場所では間違えないが、チャラ神の姿が見えなければ、声さえも聞こえなかった。

 

「支長なら、いままで散々休んだ分の仕事を消化していますよ。中にはウリエルもいますが監視役というものです」

 

あー、そうかそうか。やっぱり、中身もチャラいのね。仕事をしないとかまだ遊び足りないという20代の言葉みたいの奴ですか?うん、アイツの自業自得だからしょうがない。

 

「それなら、外でスペルカード(こいつ)の技を作るので、少し席を外します」

 

想雅はそう言って2人の了承を得た後、外に出てスペルカードを作るのに励んだ。そのおかげで、4枚とも作ることができた。

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

チャラ神の仕事が終わったらしく、俺は外にいたがガブリエルさんに呼び出され、執務室まで歩いていった。扉を開け、中に入ると執務用の机らしき後ろで何気ない姿で座っているチャラ神と、その前にあるソファに座っているミカエルさん、ラファエルさん、ウリエルが座っていた。

想雅はガブリエルに誘導されるまま、目の前にあった1人用のソファに座った。その後に、ガブリエルはミカエルの隣りが開いていたため、そこに腰掛けた。

 

「ではでは、皆がそろったことだし、話を話しましょー、そうしましょー。(*^o^*)」

 

いつものテンションでチャラ神は席を立ち、机の前に出た。

 

「さて、今回は皆を呼び出したのは他でもない。想雅のリハビリがどこまで終わったかの確かめだ。(*´∀`)」

 

ここにみんなが集まったのは俺のリハビリ卒業のためのことらしい。チャラ神は「でだ……

( ´,_ゝ`)」と何かを続けるように言った。

 

「まぁ、リハビリ卒業試験の内容は簡単だ。想雅、俺と戦え。m9っ`・ω・´)シャキーン」

 

「は?」

 

想雅は一瞬何を言われていたのか理解しなかった。いや、理解しようとしたが理解しなかった。アイツと戦えだと?ふざけているのか、こいつは……まともに、こんなお茶らけた神様と戦えと……戦う気が失せてくるわ……

 

「なんで俺がお前と戦わなくてはならない」

 

「HA☆HA☆HAッ!簡単だ。俺がお前の保証人だからだ。そういうことも確認することが保証人の務めだからだ。(*゚∀゚)*。_。)*゚∀゚)*。_。)ウンウン」

 

うそぉん……んな、バカな……こいつが俺の保証人だと……!?メッチャ不安しかないわ……

 

「俺がお前と戦うことはわかったが、何で戦う必要がある?そのまま地上に帰してもいいだろ?」

 

それもそうだ。そのまま帰しても問題ほど体の動き、体力が戻っているとラファエルさんが言った。なのになぜ戦うか……

 

「俺自身の目でどこまで回復したか見てみたいだけだ。あと、もしお前が俺に勝てたら地上に帰す。それと、1つだけお前の言うことを何でも聞いてやる。( ・´ー・`) ドヤァ・・・」

 

なん……だと……こいつの口から『何でも聞いてやる』と言う言葉が出てきた。それほど、俺の回復状態が知りたいというわけか……しかし、あのドヤ顔が腹立つ。そこまで、負ける自信が無いという事なのか……?

 

「だが、お前が負けたらしばらくは俺のところで働け。あと、ミカエルたちの手伝いもすること。どうだ?お前が負けたとしても楽なものだろ?( ・´ー・`) ドヤァ・・・」

 

神界(ここ)の仕事が楽なのか知らんが、『何でも』という言葉は本当に何でもという意味なのだろうか……?まぁいいや……

 

「いいだろう」

 

「おぉ……そうかそうかッ!乗ってくれたかッ!てっきりヘタレだから断るかと……ヾ( ゚∀゚)ノ゙」

 

「お前……いつも俺の事をどう見ているんだよ……」

 

まったくこいつときたら……頭の思考回路が読めん。

 

「そういえば、想雅。その刀の能力を知っているか?」

 

想雅は「知らん」ときっぱり言った。

だって、前の俺の家宝の刀、神刀『風雅』にも何も能力が無かった。そこから考えるとこの刀にも能力が無いと考えるのも無理もない。チャラ神は「そうかそうだよなッ!(*´∀`)」とにやけながら言った。何だよ……持ち主が能力を知らないからってにやけるな……恥ずかしくなるだろ……

 

「親切な神様のこの支長がその刀の能力について教えてやろう……」

 

チャラ神は「えー、ごほんごほんごh……ゴフッ!ゴフ…… (||´Д`)o=3=3=3 ゴホゴホ」と声を整えていることに(むせ)た。ははは、ざまぁ……

チャラ神は深呼吸をして咽を治した。そして、ゴホンと咳払いをして言った。

 

「『美少女になる程度の能力』だ。( ・´ー・`) ドヤァ・・・」

 

「へぇ……この刀にそんな能力がねぇ……って、へ?」

 

想雅は聞き間違えなのか、疑問形になった。

いやいや、刀に『美少女になる程度の能力』ってありえますか?ありえんだろ。

第一、刀だぜ?命が無い……っていうわけじゃない。俺は折れてしまった家宝、神刀『風雅』は俺の友だと思っている。アイツがいたからこそ俺は、フランの狂気、アウナス、クリュサオル、ペルセウス、平将門と戦ってこれた。アイツは俺の戦友であり、俺たち天上家を見守ってきてくれた奴だ。そんなやつを俺は物扱いになんてしない。

しかし、今回は『美少女になる程度の能力』だといきなり言われ困惑している。

チャラ神は「おっ、困惑している困惑ぅ。(*´∀`)」と笑いながら言った。そして、手を叩くようにして想雅が持っている刀に呼びかけた。

 

「まっ、そんな能力あるわけない。お前のそういう顔が見たかっただけだ。別に後悔していない、むしろ清々しい気分だ。( ・´ー・`) ドヤァ・・・」

 

「お前……しばくぞ……」

 

嘘もほどほどにしやがれ……それでも神か……だから、俺はこいつを神様と信じない。

 

「さてと……おーい、起きろー。ご主人様が呼んでいるぞー。( ゚ロ゚ノノ゙☆ハイハイハイ」

 

「はぁ?何やってんd……って眩ッ!メッチャ光っているッ!」

 

持っていた刀が光り始めた。想雅は思わず手から刀を離してしまった。しかし、刀は宙を浮いたまま、光り続けている。

すると、目の前に可憐な少女が出現した。

白銀のロングヘヤー、瞳の色は碧く、肌は雪を思わせるような白さ、体系は小柄の方だった。しかし、そんなことはどうでもいい……ってわけじゃないが一応置いといてと……うん、マジでヤバい。だって、裸、全裸……わかる人だったら俺がどういう行動するか分かっているはずだ……

想雅は後ろに振り向き、そして……

 

「失礼しましたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 

全力の大声で叫び、執務室の扉を全力で開き、そして、長く続く廊下を全力で走って行った。

その光景を見たチャラ神はケラケラ笑いながら言った。

 

「女の裸を見て、そんな反応だったら地上に降りた後メッチャ困るぞ。。゚(゚^∀^゚)゚。ギャーハッハッハッハッハッハハッハッハッハッハッハ !!」

 

その反応は爆笑までいき、後ろにある机をバンバン叩きながら言った。少しして落ち着きを取り戻したチャラ神は視線を戻したが、四大天使から冷たい目線でチャラ神を見ていた。

 

「え?な、何だよ……( ̄ー ̄; ヒヤリ」

 

その反応を見た四大天使たちは「はぁ……」とため息をつき、ガブリエルがチャラ神に言った。

 

「支長、裸の女の子がいるのですから執務室から出てください」

 

「いいだろ?減るもんじゃないs……おっと、あぶねぇなッ!……って、( -_-)=○()゜O゜)ヒデブッ!」

 

ウリエルが炎をまとわせた剣を抜き、チャラ神に向け斬りかかった。しかし、チャラ神は普通に後ろに避けかわし切ったが。余裕を見せたせいかウリエルの拳に気付かず、後ろの窓を破り、紐無しバンジーをしながら落ちて行った。その時に「I can fly!」と聞こえたのは想雅の耳にしか聞こえなかった。

 

「ったく、あんなんで支長なんて聞いて呆れる……」

 

ウリエルは剣を鞘に収めながら、やれやれといった状態で言った。

 

「これなら、まだ少年の方がマシ……」

 

「そうね。そー君が支長になったあかつきに私が秘書になろうかしら」

 

「あらあら、ブラコンのミカエルにはできない仕事よ。まだ天界の天使長の方がお似合いですよ」

 

ミカエルは、可憐な少女に服を着せるため、天界へ降り、彼女に似合う服を選んでいた。

その間に、ガブリエル、ウリエルは想雅とチャラ神を探していた。チャラ神は玄関前の噴水の中にいて発見は簡単だったが、想雅は始めてくる本部に迷い込んでしまったため一時的に行方不明になってしまった。その数分後に本部を大捜索し、ラファエルによって発見された。

 

「少年……ドンマイ」

 

「その優しさが目に沁みます……」

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

想雅が発見された後、チャラ神は四大天使たちに執務室で説教されていた。その想雅は今、先ほど全裸だった少女と別の部屋で面会している。室内は執務室より広く、客室と思われる。その2人はソファに向かい合いながら座り、先ほどラファエルから出された紅茶を飲みながら、想雅は落ち着きを取り戻している。しかし……

 

(メッチャ見てくる……)

 

その少女は想雅のことを先ほどからジッと見ている。

おぅ……紅茶飲んでいる時にずっと見てくるって、一種の羞恥プレイか?そんなことは無いはずだ。うん、そう思いたい……しかし、本当に刀がこんな美少女に変わるとは……これでも能力じゃないというのか……どんな能力を備わっているのだろう。

想雅は戸惑いながらもティーカップからゆっくり口を外しながら「ふぅ……」と、一呼吸を置いた。

 

「ところで紅茶を飲まないのか?冷めてしまうぞ」

 

少女は「はっ」と気付き、目の前に置いてあった紅茶を飲み始めた。

初めて見たときも可愛らしかったが、改めて見ると、ミカエルさんが買ってきてくれた服が似合っており、その可愛らしさが改めて体験できる。俺の今着ている服もミカエルさんが買ってきてくれたものだ。ファッションセンスもいいのか……ある意味完璧な人だな……あの性格が無ければの話だが……

想雅は心で苦笑いしながら思った。少女も「ふぅ……」と言いながらティーカップから口を外した。

 

「そういえばまだ名前を聞いていなかったな……」

 

「ありません……」

 

少女は無表情できっぱり答えた。おぅ……速いな。

 

「だが、名前が無いんじゃぁ……不便だな……」

 

想雅は少女を見ながら、頭の中で考えた。

うーん、名前ねぇ……スペルカードなどはまず、頭にどのような感じの名前がいいかなと先に決めてから、弾幕を作り始めるからな。正直これと今じゃ全く現状が違いすぎる。

そうだな……『キアラ』はどうだろうか?フランス語で『光』を意味する言葉だ。これは、光のように暖かく包み込んで欲しいと言う意味だ。

あと、候補と言ったら、フランス語で『月』を意味する『リューネ』。これは月のように優しくなって欲しいと言う意味だ。

同じくフランス語で『空』を意味する『シエル』。これは少女の碧い瞳を見て思いついたものだ。

続いて、フランス語で『雪』を意味する『ネージュ』。初めて見たときにこの子の髪と肌を雪と見間違えるほど美しく、艶やかだったためだ。

やっぱり、名前を付けるのは難しいな……『キアラ』『リューネ』『シエル』『ネージュ』……光と月、空、そして雪……ん?この4つのキーワードで何かが出てきそうだ……

その間、少女は先ほどから想雅に見られているため、恥ずかしそうに頬を染め、俯いた。想雅は一瞬「嫌われたのかな?」と思いつつも考えをやめなかった。

そして、想雅は「これかな……」と呟き、少女に告げた。

 

「『ノエル』……はどうかな?」

 

想雅は少女の顔を見ながら言った。

 

「ノエル……私の名前がノエル……」

 

少女……ノエルは無表情ながらもどこか嬉しそうに思えた。

ふぃ……気に入ってもらってよかったぜ……4つのキーワードのおかげだな。『空に月が上り、その光が落ちてくる雪をより美しく輝かせる。それは精霊のよう可愛らしい』-----つまり、雪が降る季節であり、そのような不思議な現象が起こりそうなイベント-----『クリスマス』をフランス語に変換させた名前だ。

想雅は目の前の紅茶を飲みながら一息ついた。

 

「ところで、ご主人様(・・・・)の名前は?」

 

「ぶっ!ゲホゲホッ……」

 

ノエルのいきなりの質問に想雅は紅茶を少し吹いたと同時に、気管に紅茶が少し入ってしまったため、絶賛(むせ)ている。

 

「な、なぁ、ノエル」

 

「何でしょうか、ご主人様」

 

「どういうことだ?そのご主人様とやらは?説明が欲しい」

 

「ご主人様はご主人様です。私があなたのものだからです」

 

ノエルは揺るぎ無い表情で、想雅に言った。

 

「と、とりあえずご主人様はやめてくれ。ほかに呼び名は無いのか?」

 

「ならパパ」

 

「俺に隠し子はいません」

 

「お兄様」

 

「こんな可愛い妹がいるなんて滅相もございません」

 

「か……可愛い……」

 

ノエルの顔が急に赤くなった。

 

「ど、どうした気分でも悪いのか?」

 

「い、いえ……別に問題はありません」

 

ノエルはそう言うと先ほどと同じ無表情に戻った。

 

「お兄ちゃん」

 

「呼び方が変わっただけで、先ほどと変っていない」

 

本音をぶっちゃけると少し嬉しかった。うん、アリかと思った。

 

「あ・な・た」

 

「我が一生に一片の悔いなしッ!」

 

想雅は天井に向け、拳を上げた。

 

「では、あなたと……」

 

「ちょ、ま、待てッ!今のはノーカウントだッ!ノーカウントッ!ノーカンだッ!」

 

「……わかりました」

 

あ、アブネぇ……もうすぐでそれで呼ばれることになったわ……ホントマジでヤバかった……

 

「では、何と呼べはいいのでしょうか?」

 

「俺の名前を言えばいいと思うが……って、まだ言っていなかったな……俺は天上想雅だ。想雅と呼んでくれ」

 

「分かりました。マスター、と……」

 

「全然わかって無いじゃないか……もう、いい好きにしろ……」

 

「ダーリン」

 

「言葉が悪かった。マスターでいい……いや、そうしてくれお願いします……」

 

想雅は呼び名で悩ませられながらも、決して気を落とさなかった。ティーカップを掴み震えながら紅茶を口へと運んだ。その時にノエルが座っていたソファから動きだし、想雅の元まで行くと、彼の膝元に座った。

 

「お……っとっと……」

 

ティーカップから紅茶がこぼれそうになっていたため、体勢を整えながら紅茶がこぼれないように注意した。そして、落ち着いてから目の前のテーブルに置いた。

 

「何で俺の膝の上に……」

 

「マスターのそばにいるのが私の務めですから」

 

ノエルは嬉しそうに鼻歌を歌いながら体を少し横に振っている。

それから数分後、客室の扉がバンッ!大きな音をたてて開き、そこにチャラ神が『バァァァァァンッ!』という謎の効果音と共に顔を上げた。

 

「帰れッ!」

 

「酷ッ!Σ(゚Д゚)ガーン」

 

チャラ神は「まっ、どうでもいいがな。(゚∀゚)アヒャ」と気にしていない表情を取り、部屋に入ってきた。その後ろから四大天使たちが続いて入ってきた。

 

「ところでそいつの名前は決まったのか?」

 

「あぁ、決まった。いろいろ候補があって迷ったが最終的にそれらを組み合わせてたどり着いたのが、ノエルだ」

 

「へー、クリスマスの意味か……まっ、お前の場合だそれよりもっと深い意味があるだろう。(*゚∀゚)*。_。)*゚∀゚)*。_。)ウンウン」

 

チャラ神よ、分かっているじゃねぇか。想雅は少しだけ、ほんの少しだけチャラ神に感心した。

 

「さてと、おしゃべりはここまでにして……どこでやり合いたい?( ´,_ゝ`)」」

 

「質問の意味が分からないな……」

 

どこでやり合いたいとか、ここ以外どこにあるんだよ。ここに地下にミカエルのリハビリをした空間があるはずだ。やるとしたらそこだろう。

 

「ん?あぁ、選択肢が無かったな。まぁ、俺も空間を作りすぎていまいちどれぐらいあるか把握できていない……っと、いうことでランダムでいいな?( ゚д゚ )ノ」

 

「信用していいんだな?」

 

「俺は神だ。( ・´ー・`) ドヤァ・・・」

 

「信用ならないな」

 

想雅はそう思いつつも、身だしなみを整えた。

 

「さて、準備はいいか?(*^o^*)」

 

チャラ神は全員の顔を見て、確認した。

 

(よし)……幾三(いくぞう)。(゚∀゚)アヒャ」

 

うん、「よくいくぞ」がなんかの人の名前になった気が……いや、聞き間違いだと思う、そう信じてやる。

チャラ神は神パッチンをやり、部屋に居た7人は一瞬にしていなくなった。

 

 

 

 

 

 






うわぁぁぁぁぁッ!もっと書きたかった。予定では戦闘を終わらせるつもりが長くなってしもうた。
うん、もしそのまま書いていたなら前回のと合わせて20000は行きそうな文字数だ……
まぁ、今回もここまでで、次回からやっと戦闘という事です。

感想待っています!
次回もお楽しみに!



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11次元のチャラ神サマ



うん、予想どうり10000文字超えちゃった。初めてだ……精々8000ぐらいが最高だったのによ……後、チャラ神のセリフがありすぎるから顔文字をつけるのがめんどくさかった。
『ブラコンの大天使』から続けていたら完全に20000文字超えていたわ。あー、区切ってよかった。

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり。




チャラ神が指を鳴らした瞬間、自分の視界を疑う光景だった。

先ほどまでは1つの執務室だった場所が、1秒も経たずにして複数の島が浮いている場所へと瞬間移動した。しかし、神界で見た浮遊島とは少し違った雰囲気を覚えた。各島には城、砦といった中世ヨーロッパのような街並みをしているがそこに人間の姿、気配は無い。

 

「ここは俺が作った空間だ。ここだといくら暴れても誰の迷惑にならない……いや、直す俺に迷惑がかかったわ……(´・ω・`)ショボーン」

 

チャラ神は頭をかきながら、苦笑いで言った。彼は一歩踏み出したと同時に、まるで階段を上るようにして空中へと上がって行った。

 

「ほら、早よ来い。щ(゚▽゚щ)」

 

チャラ神は手を自分の方向へ動かし、想雅を誘導した。しかし、ヘタレ想雅には1つ心配することがあった。

 

「ノエル……いや、何でもない……」

 

想雅はノエルに何かを言おうとしたが、言うのを拒みチャラ神の場所へと向かおうとしたが、裾をノエルに引っ張られその場で「おうっ」と言ってしまった。

 

「私はマスターの剣、あなたの望むがままに……気にしないでください。私は決して折れません」

 

その言葉を聞いた想雅は「ふっ……」と笑い、少女の頭に手を乗せた。

 

「そうだったな。だが、これだけは覚えていてくれ。俺はノエルを『物』として扱わない。1人の『人』として、1人の『女の子』としてだ。前の俺の相棒もこんな感じで語りかけて言い聞かせていたことだ」

 

ノエルは「はい……」と呟き、白く光るとともに刀へと変わった。想雅は目の前に浮いているノエルを左手で掴み、右手で鞘を撫でるように語りかけた。

 

「これからよろしく。ノエル」

 

『はい、私はマスターと一心同体です。いつまでも傍にいます』

 

想雅は照れ臭そうに、鼻を擦った。彼は上を向いてチャラ神を見つけた。何やってんだアイツ……空中で寝ていやがる……あっ、起きた。このまま撃ち落とそうと思ったんだがなぁ……

そして、ため息をつきながら、彼はチャラ神の元へと向かって行った。

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

「さて、準備はいいかなぁ?( ゚д゚)ノ ハイ!質問!」

 

想雅は刀を鞘から抜き、準備万端の体勢にした。しかし、チャラ神は「やれやれ、だからヘタレは……┐(´~`)┌ 」とポーズと顔文字を出した。そういえば、アイツの顔の横に顔文字が出てくることをまだ言っていなかった。だから、アイツがどんな表情をしたのかが分かるんだ。

 

「『いいともぉ~』はどうした?『いいともぁ~』はぁ?m9っ`・ω・´)シャキーン」

 

「どうした」はこっちのセリフだ。笑って○いとも!みたいな掛け声は?想雅は内心そう思いながら体勢を崩さなかった。なぜかって?アイツはそうやって気を油断させておいて攻撃してくると判断したからだ。

 

「もういい……俺の指が鳴ったら始めるぞ。( ̄ー ̄;」

 

チャラ神が気を落としたが、すぐに立ち直り指を鳴らすポーズを取った。

太陽の暖かさと、涼しい風―――――

生き物の声すら聞こえない静かな空間―――――

そして、彼らは戦う―――――

この……神の力により作り出された空間にで――――ッ!

 

 

パァーーーーーーーーーーン……ッ!

 

 

澄みきった空気にチャラ神の神パッチンが響いた。しかし、両者一歩も動かない。

2人が睨めあう視線、その先には相手の姿を確実に捕らえられていた。だが、動かない。両者とも相手がどのような行動をとるのかを調べるためだ。

 

「おやおや、動かないのかな?もしかして俺を目の前にして怖気(おじけ)ついちゃったのかな?(*´∀`)」

 

「んなわけあるか。お前のその陽気な精神で俺の真面目な心に感染するからやめろ」

 

「いーーーーーやーーーーーだーーーーーッ!( ̄^ ̄)えっへん」

 

「小学生かッ!」

 

「これは本気ですか?いいえ、俺の陽気な精神です。( ・´ー・`) ドヤァ・・」

 

「こ○ゾン、パクんなッ!」

 

はぁ……はぁ……ったく、メッチャ疲れる。戦う前にこんなに体力を消費したら負けるのも同然だ。なら……こちらから勝負を仕掛け、短時間で終わらせるッ!

想雅は足に『魔』の力を流し込み、空気を蹴った。すると、先ほどまでいた場所に想雅の姿は無くなっていた。この場合は誰もが居場所を探すべくキャロキョロするのが当然だ。しかし……チャラ神は違った。逆に……

 

「探さなくてもいいさと……ガード(。・д・)ノ||」

 

チャラ神は目の前に正方形のバリアを作った。しかし、バリアは何者かにより斬られ、粉々に散った。砕けた瞬間、チャラ神は何かを掴もうと手ののばした。

 

「よし、ヒット。(゚∀゚)アヒャ」

 

彼は何かを掴んだ。目の前には先ほどいなくなった想雅の姿があった。チャラ神は想雅がいなくなったことを『魔』の力を足に流し込み、その力で空気を蹴り、肉眼では捉えられない速さで移動しているという事を先読みしていた。

 

「クソッ!」

 

想雅はチャラ神の手を振りほどこうとしたが中々外れない。チャラ神に蹴りを入れようとしたが、彼の足によって受け止められた。掴まれている腕に『魔』の力を込め無理やり外した。その外した衝撃を利用し、体を捻りもう一度チャラ神に刀を入れようと仕掛けた。だが、その攻撃は見事に避けられ、チャラ神の拳が想雅の腹に目がけて動いてきた。想雅は足にまた『魔』の力を流し込み、一時的に後ろに退いた。

 

「おいおい、これが本気とは言わないだろうな?┐(´д`)┌ ヤレヤレ」

 

「予想の遙か斜め上を行っていたがる……」

 

戦ってみて感じた。チャラ神は本当に強かった。これは疑いない真実であり、事実でもある。人は見かけによらないということはこういう意味なのか……

 

「まぁ、お前の能力を知っている俺としたらだいたいの事はわかっちゃうんだよねぇ。

<(; ^ ー^) マイッタマイッタ...」

 

チャラ神は申し訳なさそうに動作をするも、どこか余裕を見せているような表情だった。

 

「なら、ここは平等に俺の能力紹介ィィィィィッ!ワーイヽ(゚∀゚ヽ 三 ノ゚∀゚)ノワーイ」

 

待っていましたと言わんばかりでチャラ神1人だけ楽しそうに拳を上げた。

 

「俺の能力は『11次元を操る程度の能力』だ。( ・´ー・`) ドヤァ・・・」

 

ドヤ顔交じりで言った。しかし、想雅には『11次元』と言われてもあまり頭にピンとこない。

 

「そんな頭がお子様の頭に大大大ッ!ヒントッ!初めの0次元は『点』1次元は『線』2次元は『図形』3次元は『空間』4次元は『時間』5次元は『意識』6次元が『力』7次元が『自然現象』8次元が『記憶』9次元が『生命』10次元が『自由』最後に11次元が『法則』だッ!分からないならあとは自分で考えろッ!( ・´ー・`) ドヤァ・・・」

 

「簡単に言えば、能力が12個あるということかよ……」

 

「うん、そだよ。(゚∀゚)アヒャ」

 

おいおい、これじゃぁ俺に勝ち目がないじゃねぇかよ……初めっから俺を勝たせる気が0、うん、マジオワタ、ツミゲーだ。しかも、ほとんどが訳が分からない能力だ。自分1人では理解不可能だぜ。

想雅は苦笑いを超え、頭をガックリと落とした。しかし、ムクリと顔を上げ、自分の頬を叩いた。

 

「諦めたらそこで試合終了だッ!」

 

気合いを入れなおした想雅は「よしッ!」と体勢を戻し、胸ポケットに入れてあった1枚のカードを取り出した。

 

「ほう……これがスペルカードという代物か……((φ( ̄Д ̄ )ホォホォ」

 

チャラ神は興味深く、取り出したスペルカードをジロジロ見てきた。

 

「月は隠され、再び闇が始まった。だが、光は闇に(まさ)った。隙間から地を照らす月は今宵も美しく、光と闇が交わる時、幻想の世界へと(いざな)うであろう。夢想『朧月(おぼろづき)』」

 

想雅の体から霧状になった『聖』の力がチャラ神を覆い隠すぐらいの距離まで移動した。その霧の中に想雅は隠れ、チャラ神の視界からは完全に捕らえられることは不可能だった。

 

「悪魔だったら完全に逃げられなくて、浄化するレベルだな……あー、神様でよかったわー。

アリガト!(´▽`)」

 

チャラ神はくわばらくわばらと思いながら、あたりを見渡す。やはり周りは『聖』の力が散布された霧しか見えない。どこにも想雅の姿が見えない。

チャラ神の横から『聖』の斬撃が飛んできた。それをギリギリで避け、まだ余裕があるぞという事を示した。次の斬撃の方向は後ろからだった。場所を移動しながら斬ってくる。チャラ神は「厄介だな……(;●∀●)ゝ”」と呟いた。こんな深い霧のなかでは想雅本人も見えないはずだ。可能性なら、彼は無双『朧月』と言った。例え雲がかかったとしてもその光は雲をすり抜け、地上を照らす。想雅が月とし、霧が雲、そして自分を地上と考えた方がいいだろう。

 

「この霧はどこまで続いているのかが分からなすぎる……なら、答えは1つ……( ´,_ゝ`)」

 

チャラ神は神パッチンをし、その場から移動した。そこには霧はかかっておらず清々しいほどの青い空が見える。下を見ると霧が横に伸びている。

 

「霧ごと消滅させるッ!( ・´ー・`) ドヤァ・・・」

 

チャラ神が片手を霧の方へ向けると、霧全体を囲むようにして空間ができ、それを少しづつ圧縮していった。

 

「圧縮圧縮ぅッ!ヘ(゚∀゚ヘ)アヒャ」

 

最終的に霧は圧縮されていき、視界から消えた。

 

「俺ごと消滅させる気かッ!この駄神がッ!」

 

この怒鳴り声はチャラ神の頭上から聞こえた。

 

「おっと、ごめんごめん。ъ( ゚ー^) スマソ」

 

「ごめんで済むなら、治安部隊はいらねぇよッ!」

 

想雅はそのまま降下していき、刀を振るった。今度こそは完全に捕らえたと思った想雅だったが、その場所にはチャラ神の姿がいなかった。空間移動というものはあるが、そのためには指を鳴らさなければ発動できない。なら何なんだ……もしや……4次元の『時間』という能力か……ッ!

 

「残念ながら後ろだよぉ~ん。ヾ( ゚∀゚)ノ゙」

 

ふざけた口調でチャラ神は手を振っている。想雅は体を捻り、そいつに向け弾幕を放った。チャラ神はそれを笑いながら軽々しく避け、自分の手のもとにブーメランのような形をしたものを作り出し、想雅に向け投げる。想雅も同じくそれらを避けたが、ブーメランだったため元に戻ってくることをすっかり忘れており、気付いた時には刀に『魔』の力を流し込み、斬っていった。能力で作り出されたものだったため、それはそれは容易く斬れていった。

 

「龍は偉大である。あらゆるものを凌駕する覇気を持つがために。覇気『龍王の威圧』」

 

想雅の目が紅く輝き、チャラ神の動きを拘束した。

 

「HA☆HA☆HAッ!U☆GO☆KE☆NA☆Iッ!ァ '`,、'`,、'`,、'`,、((´∀`●))ァ '`,、'`,、'`,、'`,、 '`,、」」

 

このスペカは、消える前の拘束『龍王の威光』の上位互換のような物だ。動きを止める、目が紅く光るのは変わっていないが、必然的に変わっているところがあった。

チャラ神はペルセウスと同様無理やり、拘束を破ろうとしている。

 

「動くなッ!」

 

想雅は叫ぶと、紅く光る目がより一層、輝き出し動きをより拘束させた。このレベルまでに達すると、何も能力を持たない人間が気絶するぐらいの拘束だ。

 

「HA☆HA☆HAッ!面白いなッ!だが、まだだッ!(`・ω・´)シャキーン」

 

チャラ神は一瞬大人しくなり、負けを認めたかと思ったが……急に動きだし、先ほどとは比べ物にならないぐらいい容易く拘束から脱出した。

 

「嘘……だろ……?」

 

疑いを隠せない想雅に対して、先ほどから笑ってばかりのチャラ神が皮肉そうに言った。

 

「6次元は『力』。つまり、能力を作ることが可能だ。お前の能力もこの力を使って作り出した。今回のは『抗う程度の能力』だ。まぁ、与えた能力はもう1度作れないのが難点かな?

(*゚∀゚)*。_。)*゚∀゚)*。_。)ウンウン」

 

12個の能力と3個の能力では差がありすぎていやがる。次にチャラ神は目の前を突くようにして指を動かした。その後に何やら赤い点、青い点、黄い点といった色がついた点が次々と作り出されていく。

 

「GOッ! ( °▽°)=◯」

 

掛け声と同時に、その七色の点から線が出てきて、全てが想雅に向け動いていった。想雅は直線だから普通に避ければいいだろうと思っていたが、チャラ神は何かをその線に向け言った。

 

「想雅を確実に狙え。(゚∀゚)アヒャ」

 

その言葉と同時に一直線に進むはずだった線は方向を変え、想雅のいる方向へと向かっていった。想雅は何とか撒こうと必死に避けまわるが一向に七色の線は想雅という目標を捕らえている。

 

「クソッ!まだ使いたくはなかったが……しょうがないッ!」

 

想雅はまた新たなスペルカードを詠唱した。

 

「我は円卓を束ねる君臨せし王なり。11の騎士を従えし我は故に何を求め、勝利するのか。それは勝利を求める己にも分からぬ。聖王剣『エクスカリバー・コールブランド』」

 

想雅を中心とした周りに11の『聖』なる剣が出現した。ノエルの刃も通常より二倍に伸びたが重さは変わっていない。これは、王剣『ロード・オブ・ザ・エクスカリバー』の上位互換だ。

想雅は11の剣を七色の線に向かわせた。剣は線の先端ではなく側面から斬っていった。そこからだと先端より圧力が無く消滅の危険性が無いからだ。

 

「わぉ……『法則』をつけた線が次々と消滅していく……(´・ω・`)ショボーン」

 

チャラ神は表情を変えずに、「おぉ……」といったような感じで見ている。そして、七色の線は消えていき、次の標的はチャラ神となった。チャラ神は笑いながら避けていく、その間に想雅は一時的に距離をとり最後のスペカを詠唱した。

 

「英雄の魔となる奇怪の槍よ。稲妻の如く鋭き(やじり)と成り、確実なる勝利を遣わせ。

魔槍『ゲイ・ボルグ・レイン』」

 

刀を持っていない左手に『魔』の力によって作り出された槍を出現させた。本来ならそのまま投げるが、相手は12の能力を持つ神だ。一筋縄でいかないことはわかっている。左腕に『魔』の力を流し込み、その状態で思いっきりチャラ神に向け放つ。

スペカの発動と同時に、チャラ神と交戦していた11の剣は消滅し、チャラ神は目線を想雅へと移したが、先ほど放たれた『魔』の槍を凝視した。その槍は30の鏃と成り、チャラ神の視界から消えた。

 

「消滅……いや……(・A・)」

 

チャラ神はその場から動かない。じっと待つ。鏃が来るのを……

 

「……ッ!Σ(°Д°;」

 

視界から消えた鏃がチャラ神の足元から出現し向かってきた。チャラ神は予測していたことなので動揺もするまでもなく普通に避けた。しかし、その鏃の速度も尋常ではなかった。先ほど消えたのは空間を貫き、その空間を移動して攻撃をしてきた。つまり、音速を超えるスピードで攻撃をしてきた。

 

「おいおい、殺す気かよ……┐(´д`)┌ ヤレヤレ」

 

冗談だろ?と思いながらまだ向かってくる鏃を避けていく。図形でガードするも破壊されるのはわかっている。だから、ひたすら避けるしかない。そして、ついに避けきったチャラ神は息を少しだけ切らしたのであった。

 

「ふぃ……疲れた……<(; ^ ー^) マイッタマイッタ...」

 

額の汗を拭い、一息ついた。想雅はチャラ神の近くまで行き、彼が聞こえる距離まで動いた。

 

「ば、化け物がここにいる……」

 

「化け物とは失敬だな、まったく。(`д´)オコッタゾー」

 

チャラ神は手を仰ぎながら言った。

 

「ノエル……大丈夫か?」

 

『問題ありません』

 

「そうか、よかった……」

 

想雅も一息ついた。チャラ神は「さてさて……」と手を叩きながら言った。

 

「まーさーかー、とっておきは残してあるよねぇ?(゚∀゚)アヒャ」

 

「あぁ、特大なのがな……」

 

「なら、早く見せろ。お前の成長した姿をこの俺に見せてみろ。m9っ`・ω・´)シャキーン」

 

チャラ神は想雅は挑発するような言動で言った。ったく、簡単に言ってくれてんじゃねぇか……これから人間の下剋上が始まろうとしてんだけどな……このふざけた精神を叩きのめす。

 

「ノエル、少し手荒になるが……大丈夫か?」

 

『マスターは優しいのですね』

 

「そうか?」とノエルに答えた。優しいねぇ……あまり自覚が無いんだがな……まぁ、ペルセウスに言われた通り『戦乱の中を勝ち抜くなど無理』というのは本当だった。そのせいで俺はルーミアを残して死んでしまった。優しさだけでは救えないという事を改めて考えさせられた。しかし、本当に俺が優しいと言うのなら、俺はその意思を貫こう。それが俺であるからだ……

想雅は「ふぅ……」と息を吐き、心を安定させた。

 

「時は来た。(いにしえ)より来たるは偉業なる者の証なり。民には恵みを与え、罪人(つみびと)には裁きを下せ。闇を照らすは我の孤高なる双眼なり。全てを視る我が眼は汝らに裁きの報いを与えん」

 

 

ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!

 

 

ペルセウスの時と同様、想雅の体から多大な神力が溢れ出した。

想雅の髪が白に染まり、時々火花を散らしていた。そして、彼の右目は太陽のように燃え盛る灼熱の灼眼。左目は月のように神々しく光る美しい白眼。

 

「神格化か……( ´,_ゝ`)」

 

チャラ神はやっと来たかと言わんばかりに表情を変えた。

想雅は背中から炎の翼を展開させ、チャラ神に向け飛んで行った。

 

「風よ、汝の敵を刈れッ!」

 

想雅が叫んだと同時に、チャラ神に向けソニックブームが放たれた。チャラ神はそれを余裕で避ける。その後、チャラ神から複数の槍が放たれが、想雅も同じくそれらを余裕で避けきった。目の前に想雅が映り、剣を作り出し攻撃をしようとしかけたが、ノエルによって防御された。

 

「神力になった瞬間強くなったな……(*´∀`)」

 

「そりゃぁ、霊力とは比べ物にならないほどの強さだからな」

 

2人はお互いの顔が近い位置で話した。

炎の翼を羽ばたかせ、その炎で攻撃をしようとした。しかし、そのことはすでに読まれていたらしく。炎の軌道上に正方形のバリアが展開されており、攻撃は見事に受け止められた……と思われたが……ッ!

 

「風よ、我を導けッ!」

 

再び叫ぶと、炎の翼から蛇のように伸びた複数の炎がバリアが張っていないチャラ神の背中に回り込んだ。

 

「おっと、これは驚いたッ!(゚∀゚)アヒャ」

 

そうチャラ神は言ったが、本当は驚いてはいなかった。4次元の『時間』を使い時を止め、その場から退却した。

 

「そして時は動き出す……( ・´ー・`) ドヤァ・・・」

 

そう呟き、時を動かした。

想雅の目の前には奴の姿が無く、今の場所から少し後ろのところに映った。ったく、3次元の空間移動と言い、4次元の『時間』といい……何でこんなチート能力をアイツが持っているんだ。こんな能力はもっと適役がいたはずだと思うんだがな……

想雅がそう思っている一瞬の出来事だった。チャラ神が神パッチンをやり、空間移動したところまではよかった。しかし、自分の体が急に下に引っ張られるような衝撃を与えられ、気付いた時には浮遊島の煉瓦の時計塔にめり込んでいた。状況を理解できていない想雅の目の前にチャラ神が笑いながらやってきた。

 

「勝負はその気を緩めた瞬間に決まることだってあるんだぜ。さすがに冷酷になれとは言わないがな。(*゚∀゚)*。_。)*゚∀゚)*。_。)ウンウン」

 

「それは無理だ……俺は俺だ」

 

「そうかそうか……お前の想いは立派なものだからな。(*´∀`)」

 

チャラ神は「HA☆HA☆HAッ!(゚∀゚)アヒャ」と笑いながら、指を慣らし想雅のすぐ目の前に移動した。

 

「そんな優しさが他人にとっては苦痛に感じることだってある。そして、己さえも不幸にさせる。それだけは覚えておけ。m9っ`・ω・´)シャキーン」

 

想雅は左腕に炎を宿し、そのままチャラ神に向け殴る。しかし、神パッチンよりは遅く、当たらずに終わった。

んなこと、承知の上だ。俺が不幸になっても構わない。だが、他人が不幸になることは俺の心、信念、思いが許さない。俺は必ず幸せにする。

想雅は時計塔から抜け出し、自分の左目にある白く美しく光る月の眼を使い、体の傷を治した。

そのまま『聖』の力を使ってもよかったが……まぁ……成り行きだ。

 

「さて……そろそろこの空間に時間切れは……なかったわ。まぁ、だいたいは把握したし早めに決着をつけようじゃぁないか。d(゚∀゚)」

 

チャラ神は笑いながら言った。そして、その後ブツブツ何かを言い始めた。

 

「炎を操る……いや、太陽を司る眼……そして、傷を癒やす月の眼……俺が放った槍を余裕で避ける動体視力……そして、炎の軌道を自由自在に動かせる大気を操る……あー、アイツか……

(▽〃)。oO」

 

何かに納得したのか、想雅の方を見てその何かを告げた。

 

「お前の使った神は……エジプトの天空と太陽の神であり、エジプトで神々の中で最も古く、最も偉大で、最も多様化した神―――――『ホルス』……( ・´ー・`) ドヤァ・・」

 

想雅の背中がビクッと動いた。その反応をみたチャラ神がにやぁと笑った。

 

「HA☆HA☆HAッ!ZU☆かッ!ァ '`,、'`,、'`,、'`,、((´∀`●))ァ '`,、'`,、'`,、'`,、 '`,、」

 

想雅はそのことを言い返す言葉が見つからなかった。クソッ……なんでアイツは俺の神格を知っている……!?今までの戦闘の情報をまとめ、ホルスにたどり着いたのでもいうのかッ!?もしそうであるなら、俺は最初からアイツの罠に見事ハメられたという事になる……はぁ……なら次使う『言霊』もだいたいは察しがつかれる……だがなッ!

 

「漢として引き下がるわけにはいかねぇんだよッ!」

 

想雅は新たに『言霊』を詠唱した。

 

「我が元に来たれ、偉大なる神と成りて、不死の太陽よ。我がために輝ける翼を遣わし給え。疾走にして太陽たる隼よ。汝と我が交わる時、陽と陰が交わる時、絶対なる勝利の輝きを(ふるい)い、邪悪たるものを屠り給え」

 

 

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!

 

 

先ほどより想雅の神力が異常なほど上がっていった。体から現れ出る神聖なる太陽の炎が想雅を包み込んだ。その力はチャラ神の肌を通して感じられるほどの偉大さだった。

チャラ神はその強大な神力を感じたことにより、2柱が習合したと早くもわかった。

 

「エジプトの最も重要の神であり、ホルスの父でもある太陽神……『ラー』。(▽〃)。oO」

 

チャラ神は独り言のように呟いた。

 

「そして、その神の2柱が習合されしとき、暁の地平線に上るはホルスの如く……それ曰く、『ラー・ホルアクティ』であるからにして……( ・´ー・`) ドヤァ・・」

 

包んでいた炎が飛び散り、チャラ神へ巨大な火の粉となって飛んで行った。チャラ神はバリアを創り、それを防いだ。炎を飛び散らせた事により今まで炎によって包まれた想雅の姿が見えた。

大して変わっていないが、右目の太陽の眼から炎が出てきており、ブラッ○ロックシューターのような感じに漂っていた。

 

「これは予想以上にキツイ……」

 

その想雅の表情は少し辛そうな顔をしていた。それもそのはずだ。ベースは人間の身体。たとえ神になったとしても元は人間、異常なほどに負担が掛かる。しかも神様を2柱を習合させたことによりその負担はこれまでより比べ物にならなかった。かと言って想雅の体が人間ベースだとしても今は神の身体。一瞬にして倒れることは無いだろう。

 

「当たり前だ。お前は人間ベースの神様だからだ。ヘ(゚∀゚ヘ)アヒャ」

 

呆れるようにチャラ神は言った。う、うるせぇ……お前に勝てることといったらこれしかないんだからしょうがないだろッ!

想雅は心で言い返した。

 

「さてさて、俺もちょーーーーーと(・・・・・・・・)だけ本気を出してやる。(*^o^*)」

 

手をちょいちょいと自分の方へ動かし、想雅を挑発した。

 

「後悔しても知らんぞッ!」

 

想雅は炎の翼を羽ばたかせ、上空へと向かった。

 

「我よ来たれ。東から上る太陽の如く、暁の地平線の如く、我の元に現れしは我分身たる太陽よ。一片の曇りなき我に光り輝き給え」

 

想雅の後ろからペルセウスと同様、第2の太陽が出現した。しかし、ペルセウスの場合は光だけの太陽だった。想雅が出現させた太陽は、灼熱に輝き、プロミネンスもところどころ出てきており、本物に似た太陽だった。

 

「風よ、我を導けッ!」

 

第2の太陽から吹き出す複数のプロミネンスが奇妙な動きを見せ、チャラ神へと向かって行った。チャラ神は両手に剣を創り出し、切り刻もうとした。しかし、そのプロミネンスは先端から2つに割れ、斬撃を喰らうことは無かった。

 

「やはり、神の2柱になると中々一筋縄ではいかねぇな。(;´∀`)…うわぁ…」

 

持っている両手剣を想雅に向け投げた。しかし、プロミネンスにより防がれ、ドロドロに溶かされてしまった。

 

「来い、雨よッ!щ(゚▽゚щ)」

 

チャラ神は7次元の『自然現象』を使った。先ほどまで晴れていた空が一瞬により黒い雲に覆われ、そこから初めはポツポツ降る雨だったが、ザァーッ!と台風並みの強い大雨が降った。それにより、蛇のように動いていたプロミネンスが雨に当たったことにより動きが鈍くなってしまった。しかし、消えるというところまではいかなかった。このプロミネンスは第2の太陽、曰く不死の太陽から出てきている物であり、雨といった物でも消えることはまず無いからだ。だが、物理的に攻撃されてしまうと、衝撃に耐えるほどの耐久は持ち合わせておらず簡単に壊されてしまう。

 

「風よ、汝の敵を刈れッ!」

 

想雅の体から上空に向け、暴風が巻き上がった。その暴風により雲は消え去られ、清々しいほどの青空が見えた。

 

「ふぃ……7次元もこの有様かよ……やっぱり2柱と同時だと気が狂うな……<(; ^ ー^) マイッタマイッタ...」

 

頭をかきながらチャラ神は自分の周りに複数の剣、槍、斧、メイスといった武器を創り出し、一種の王の財○(ゲート・オブ・バビロン)となっている。

 

「さすがのお前も2柱には勝てないか……ならッ!」

 

想雅はノエルを頭上に突出し、第2の太陽から噴き出るプロミネンスはもちろん、その輝きまでもがノエルに宿され、灼熱たる太陽の刀となった。

 

「GOッ!( °▽°)=◯」」

 

「全てを無に戻せッ!」

 

チャラ神が複数の武器を放つと同時に、想雅もチャラ神に向け飛んで行った。

自分に向かってくる武器の軍勢を第2の太陽を使いながら次々を迎撃していった。想雅は燃え盛るノエルを揮い、チャラ神の体へと斬撃を入れる。

 

「だがな……この俺が負けるとは一言もいってないんだよなぁ~。(*゚∀゚)*。_。)*゚∀゚)*。_。)ウンウン」

 

その言葉が聞こえた瞬間、目の前にチャラ神の姿が無かった。また後ろかッ!と振り向いたがそこにはいない。いきなり下に引っ張られる感触が足に当たり、そのまま地面へと叩き落とされようとしたが、次に背中に衝撃が走りまた上空へと再び飛んで行った。いきなりの出来事で心の整理がついていない想雅は、空に上っている太陽を見て状況を把握した……

 

―――――これは……負けたな(・・・・)……

 

そのことを悟った想雅にいきなり腹に衝撃が走り、そのまま飛んでいく。その時にパァーンッ!と指が鳴る音がした。そして、顔を掴まれそのまま地面に落下して行った。

 

 

ゴォォォォォォォォォォンッ!

 

 

とてつもない衝撃と轟音が響き、手の隙間から笑っているチャラ神の顔が見えた。

 

「チェックメイトだ。( ・´ー・`) ドヤァ・・」

 

チャラ神は5次元の『意識』を使い、想雅の意識を失わせた。

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

目覚めるとそこは見覚えのある病室だった。

 

「マスターッ!」

 

想雅の体にノエルがしがみついてきた。その顔は赤く腫れており、先ほどまで泣いていたと思わせる感じだった。想雅は手をノエルの頭にのせ、宥めるように動かした。

 

「心配かけたな……」

 

横にはチャラ神が「やあやあ」と言わんばかりの表情をしていた。

 

「ホントすまん。ついつい久しぶりに楽しい戦いができてしまったてな、心を踊らされた。

(;●∀●)ゝ”」

 

ぜってー、俺を殺す気だっただろ……と言いたかったが今の現状、そんなことを言えるわけがない。

 

「俺は負けた……お前のその賭けとやらはなんだ?今からでも動けるぐらいはなっている」

 

「おっ、さすが不老不死(笑)ッ!(゚∀゚)アヒャ」

 

うざい……やっぱりうざい……

 

「なら過去に行ってくれ。m9っ`・ω・´)シャキーン」

 

「はぁ?」

 

過去に行けと?そんなおとぎ話みたいなことがねぇ……何ですか?神様はもう22世紀の猫型ロボット並みの便利さですか?タイムマ○ンですか?机の引き出しから行ける謎空間の事ですか?

 

「俺もまだこの能力を完全に把握できたわけじゃない。3次元の『空間』では異世界に行けることはわかったんだけどな。まだ過去に行けるということはまだやったことが無い。だから、今回、お前にその賭けをやってもらう。心配するな過去に行けるという自信はちゃんとあるから。これホントマジ。まぁ、約束だからな。では、今から行って来い。ヾ( ゚∀゚)ノ゙」

 

「ちょ、おまッ!今はアカンだろッ!」

 

「今からでも動けると言ったヘタレ君が何言っちゃっているのかなぁ?┐(´д`)┌ ヤレヤレ」

 

こ、こいつ……何でもいという賭けを使い、無茶なことを言いやがる。

 

「じゃっ、そういうことで~。行ってら~」

 

チャラ神は4次元の『時間』を使い、想雅が寝ていたベットの上に魔方陣みたいなものが展開された。

 

「異世界の空間移動と同じで1週間は迎えに行けない。それまで生きるんだな。

(*゚∀゚)*。_。)*゚∀゚)*。_。)ウンウン」

 

チャラ神は他人事みたいに言った後、想雅とノエルを過去へと飛ばした。その時に想雅は「こんな賭けやるんじゃなかった……」と今更遅い後悔をしていた。

想雅たちが飛ばされた後、病室に四大天使たちが入ってきた。

 

「もう行っちゃったんですか……オトウトエネルギーを貰おうと来たんですが……」

 

ミカエルはガックリと肩を落とした。

 

「帰ってこないという事は無い。1週間したらまた会えるさ。(゚∀゚)」

 

窓から見える青空を見ながらチャラ神は自信があるように答えた。ガブリエルは少し真剣な顔をしてチャラ神にこう言った。

 

「支長、今回はまだ想雅さんからはアレ(・・)は出てきませんでしたね」

 

ガブリエルはチャラ神に耳打ちするように言った。

 

「そうだな、アレ(・・)はまだ抑えられているというわけだな。このままずっとそうならこちらはメッチャ助かるんだけどな……(*´∀`)」」

 

チャラ神は話しかけてきたガブリエルたちの方を向き、先ほどの陽気な顔ではなく、完全な真面目な顔になった。

 

「これだけはお前らに言っておく。アレ(・・)が復活した時には……m9っ`・ω・´)シャキーン」

 

チャラ神は4人に指を指して宣言した。

アレ(・・)だけは決して復活させてはならん……地上、天界、神界などにどのような影響を及ばせてしまうかは分からない。しかし、下手をすれば俺ら神も死んでしまうほど強い。それが何のために作られているのか……何のために存在するかは分からない。だが、これだけは言える。アレ(・・)は決して理解されない物である。たとえ神の頭脳だとしても……それを知ってしまった物はそれなりの罰が与えられるだろう……

真面目な表情を変えずに、チャラ神はみんなに聞こえるように言った。その最後には顔文字がついていなかった……

 

この俺が想雅を殺す(・・・・・・・・・)……それがアイツに『生命』を与えた俺の罪だ……」

 

 

 

 

 

 






さて、過去へタイムスリップしていまった想雅御一考。そこで何が待つのか、原作の過去と言ったら、あの人や、あの人とも、あの人にも会えてしますからねぇ……

次回は第2回目のキャラ設定です。今回は想雅の変化したところと、あと2名の紹介です。
挿絵もつけるので遅くなるかもですです。

感想待っています!
次回もお楽しみに!



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調査資料 ~キャラ設定~

はいやっと来ましたキャラ設定。今回は想雅のことについて詳しく書き、そのほか変わったところを変更しました。あと、ノエルちゃんとチャラ神の設定についても書きました。

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり。




名前:天上 想雅 (てんじょう そうが)

 

種族:人間(日本人とフランス人のハーフ)

 

     (不老不死:決して死な無いというわけではない。頭や心臓などといった即死部分をや

      られると死ぬ。寿命の概念がなくなったと考えればいい)

 

性別:男

 

年齢:17歳

 

身長:178cm(幻想入りした時より3cm伸びている)

 

体重:57kg

 

身体的特徴:瞳は青色。髪はうなじまで伸びており、耳が隠れるほどの茶髪。ペルセウス程ではな

      いが顔は整っており、イケメン。

 

二つ名:神殺し、天上に抗えし爪牙、幻想英雄、四大天使の弟、ヘタレ筆頭、不老不死(笑)

 

好きなもの:料理全般(特にフランス料理)、普通に接してくれる人、認めてくれる人

 

嫌いなもの:自分、他人を見下す奴、理不尽な考え

 

特技:剣術、料理

 

能力:『聖を司る程度の能力』

 

    『聖』の力を扱う能力。悪魔など、悪しき存在に大ダメージを与える。

    また、化け物並みの回復力を誇るり、不老不死となった想雅は大きな傷でもせいぜい5日

    (不老不死になる前より2日縮んだ)は掛かる。同じく即死の場合は意味は無い。

 

   『魔を司る程度の能力』

 

    『魔』の力を扱う能力。通常は傷付けられない物(例えば能力。能力の場合は使用できな

    くなる時間が10秒程度……といった感じ)、神や魔物を斬るなどいった何やらかの特別

    な能力を有しており、その所持者に大きな力を与えことができる。

    また、体の一部に『魔』の力を流すと、その部分が強化され多大な力を発揮する。(例え

    ば、足に流し込むと通常より早く動ける。他人には消えたという感覚になる……といった

    感じ)

 

   『言霊を創造する程度の能力』

 

    死んだことにより、『想像によって創られる言霊』と『神を知ることによって創られる言

    霊』が合体し、一つになった。

 

    『想像によって創られる言霊』

 

    思ったことを現実にすることができる。しかし霊力の消費は死ぬ前より2分の1になった

    ことにより使いやすくなった。また、廃人にならなくなった。

 

    『神を知ることによって創られる言霊』

 

    『想像によって創られる言霊』とは違い神の能力に特化した『言霊』。その言霊を唱えれ

    ばその神の能力、武器といった様々なものを使用することができる。

    しかし、想雅の身体が人間ベースなので疲れたりといった長時間は継続不可能である。神

    と神を習合(神と神が合体し一つの神になること)させるといったことをやると、倍の疲

    労がかかってしまう。

    不老不死になる前は、姿が変わることが無かったが、何やらかの影響で外見に変化をもた

    らすこともある。

 

スペルカード:夢想『朧月』

 

       自身から霧状なった『聖』の力を散布させ、自分の姿を隠し、攻撃する。相手から

       自分の姿は捉えるとこができず、ほとんどの確率で想雅の優勢な攻撃となる。

       『月は隠され、再び闇が始まった。だが、光は闇に(まさ)った。隙間から地を照

       らす月は今宵も美しく、光と闇が交わる時、幻想の世界へと(いざな)うであろ

       う』という思いが込められている。

 

       覇気『龍王の威圧』

 

       拘束『龍王の威光』の上位互換。

       眼が紅く光るところと、動きを拘束は以前と変わっていないが、眼を強く光らせる

       とより強い拘束をかけることができる。2回で能力を持たないものが倒れ、3回4

       回と回数を重ねていくうちに拘束もより強くなる。しかし、回数にも限界があり、

       最大で5段階。

       『龍は偉大である。あらゆるものを凌駕する覇気を持つがために』という思いが込

       められている。

 

       聖王剣『エクスカリバー・コールブランド』

 

       自分の周りに11の『聖』なる剣を展開させ、刀の刃を2倍の長さにする。

       11の剣は自分が指示すると、生き物のように動き攻撃をする。また、11の剣を

       1つづつ刀身に吸収させると無数の斬撃を発動することができる。吸収された剣の

       数により斬撃の数も変わる。

       王剣『ロード・オブ・ザ・エクスカリバー』の上位互換である。

       『数で斬撃我は円卓を束ねる君臨せし王なり。11の騎士を従えし我は故に何を求

       め、勝利するのか。それは勝利を求める己にも分からぬ』という思いが込められて

       いる。

       

       魔槍『ゲイ・ボルグ・レイン』

 

       『魔』の力を槍の形に模った『魔』なる槍。

       相手に向け投げると、槍が30の(やじり)となり、追尾機能も搭載されてい

       るため、聖矢『フェイルノート・スターダスト』の上位互換と考えてよい。また、

       腕に『魔』の力を込めて投げるとその30の鏃が空間を貫き、音速を超えたスピー

       ドでその空間から狙い貫く。

       『英雄の魔となる奇怪の槍よ。稲妻の如く鋭き鏃と成り、確実なる勝利を遣わせ』

       という思いが込められている。

 

性格:優しいが、感情的になりやすい。そのため自分から事件に関与し、その後に後悔することが

   多い。

   自分より他人の事が気になりやすく、弾幕ごっこや戦闘中によく自分以外の人を見ている。

   自分以外の人が危ないときは、体を張っても守り抜く騎士のように堅い信念を持っている。

   このように完璧な主人公だが、少しだけ欠点がある。この小説を読んでいる皆さんならわか

   っていると思うが……ヘタレである。

   霊力の修行中にうっかり紫の一糸まとわぬ姿を見た時に、そのまま謝るか、紫に桶を投げら

   れるか、そのまま逃げればいいものの、『言霊』を使い逃げ出した。また、泣いている人を

   見捨てることができないほどのヘタレでもある。

   時々、言葉にフランス語が混じることがある。

 

備考:数年前に両親を亡くし、それまでは父親方の祖父祖母に預けられた。高校の1年前……中学

   3年生の時に両親と暮らしていた家に戻り、1人暮らしを始めた。その1年後、ひょんな出

   来事で紫のスキマに落とされ幻想入りを果たす。

   幻想入りを果たしたときより、霊力の量は上がったが、霊夢ほどは無くせいぜい凡人の上位

   に食い込むぐらいまでは上がった。

 

   想雅が体験した2回目の異変、『春雪異変』で怨霊を大量発生させ、日本を我がものにしよ

   うとしていた三大怨霊の1人、平将門の登場により彼の運命は変わってしまった。

   平将門を倒したと思われたが、奴は怨霊になり想雅の体に取り付いた。『聖』と『魔』と

   『霊力』が少ない状態だったため、追い出すことは不可能になっていた。その後、様子を見

   に来たルーミアを、想雅に乗り移った平将門が殺そうとしたため、想雅はやむ終えず自分の

   腹に刀を刺し、ありったけの『聖』の力を流し込み自害した。

   自害したことにより彼は死んだと思われたが、チャラ神の9次元『生命』の『加護』により

   不老不死となり復活した。

 

   まだまだ、能力のことはわかっていないが、自分なりに考えながら使っている。

   日本人の父親にはあまり似ていないが、父親のなぜかモテやすい体質を持っており、当然の

   ように想雅も父親のようにモテやすい体質になった。しかし、本人は自覚なし。

 

本人からの一言!

 

「優しさだけでは勝負に勝つことができないと言っているが、俺はそういうことができない。俺は俺だ。本当に優しいのなら俺はそれを貫く。俺の想いは誰よりも立派なものだからだ」

 

おうおう、かっこいい事言いやがって……

 

2枚目の想雅のイメージ画です。↓

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

名前:ノエル

 

種族:人間(ノエル曰く、「マスターがそう思うから」である)

 

年齢:不明

 

身長:149cm

 

体重:刀の状態では、神刀『風牙』より結構軽い。人間の状態は不明

 

身体的特徴:瞳は碧色、髪は白銀のロングヘヤー、肌は雪を思わせるような白さ、体系は小柄の

      方、凄く可愛い美少女

 

二つ名:白銀の姫、雪の精霊、刀幼女、prprしたくなる可愛らしさ

 

好きなもの:マスター(天上 想雅)、マスターが作った料理、マスターの膝の上、可愛いもの

 

嫌いなもの:マスターの嫌いな人、自分を『物』として扱う人

 

特技:早く寝ること

 

能力:不明(『美少女になる程度の能力』は特性であり、能力ではない)

 

性格:普段は無表情で滅多に感情を表に出さないが、自分が好意を抱いている想雅に対してだけは

   甘えることが多く、いつも傍にいる。基本的に羞恥心という感情を持っていないため、想雅

   に裸を見られても恥ずかしくない。むしろ、自分の全てを見てもらうから嬉しいらしい。

 

備考:神刀『風牙』が折れてしまった後、わくわくさん(へパイストス)によって創られた刀の美

   少女。

   ほとんどの詳細は明らかにされていないが、自分を1人の『人』、『女の子』見てくれる想

   雅に好意を抱いている。

   想雅に、「俺の言うことを聞かなくてもいい、ノエルはノエル。一つの存在だ。だから俺は

   君の自由、願い、人権を尊重する」と言われているため、マスターの言葉は絶対じゃないら

   しい。

 

では、同じくノエルちゃんから一言!

 

「私はマスターの剣、マスターの想うがままに……」

 

さすが、ヘタレ想雅を支える相棒ッ!その想いにしびれる、憧れるぅッ!

 

ノエルのイメージ画です。↓

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

名前:チャラ神(本命はシーザー・エレフセリア・チャラテオス)

 

種族:神(元人間)

 

年齢:神に年齢なんてあるわけないじゃ~ん。(゚∀゚)アヒャ

 

身長:186cm

 

体重:65kg

 

身体的特徴:瞳は灰色、髪は前髪が金髪で後ろ髪が黒髪、うざい言葉、行動を見せなければそこそ

      このイケメン

 

二つ名:チャラ神、神の中の神、絶対に逆らえない秩序の神、自由すぎる神、神じゃない神

 

好きなもの:自由、陽気、気楽、ポジティブ、平和、秩序、友情、努力、顔文字

 

嫌いなもの:うっとうしい奴、ねちっこい奴、自分を妨げる奴

 

特技:情報収集、仕事場から逃げる、言葉の最後に顔文字をつける。( ・´ー・`) ドヤァ・・・

 

能力:『11次元を操る程度の能力』

 

   0次元~11次元までを操れる能力。しかし、能力が多いため情報収取が得意、チャラ神で

   もすべてを把握できていないぐらい複雑である。その未知な能力は以下の通りである。

 

   0次元『点』

 

   地面、空中、水中など、どこでも使える能力。

   戦闘時にはあまり使えない能力だが、1次元と組み合わせて罠にすることが可能。

 

   1次元『線』

 

   自分の指から線を出して攻撃する能力。

   円周、曲線といった能力も所有しており、様々の動きをしたレーザーを創ることが可能に

   なる。

 

   2次元『図形』

 

   様々の形を創り出すことができる能力。

   創り出せるものは、縫い針といった小さなものから、治安部隊の支部のような大きな建造物

   を創ることも可能。その創るために必要な素材は、自分が持っていないと作ることができ

   ない。しかし、ほんの一欠けらでもあればどんな形、大きさも作ることが可能。

   チャラ神がいつも持っている素材は、鉄、金、銀、銅といった鉱物類や、布、糸といった生

   活に必要なものまで持っている。

 

   3次元『空間』

 

   空間を創り出したり、空間移動したりする能力。

   どんな大きさの空間も創り出せる。しかし、そこは空間だけで大地、海、空といったものは

   存在しないため、違う能力で創り出さないといけない。

   空間移動は指を鳴らすと半径1km以内までは移動可能。また、この空間移動を使えば、異

   世界に移動することも可能。(例えば、他の作者さんが書いた世界へ送り込むみたいな)し

   かし、1週間の間この能力は使用不可となる。

 

   4次元『時間』

 

   時間を操作することができる能力。

   時間を止めることは紅魔館のメイド、十六夜咲夜と同じだが、このチャラ神の4次元の能力

   はそこでは止まらない。

   時間停止時間は最大で10秒(ジョジ○のDIOが最大9秒)、過去にも行けるというタイ

   ムマシン並の凄さを持っている。しかし、3次元『空間』と同じく過去に行けば1週間の間

   使用不可となる。また、この能力で未来に行くことは出来ない。

   チャラ神曰く、「俺の『時間』は現在と過去を操る能力だ。未来まで操ってしまえば俺は完

   全なる勝者になってしまう。最強っていうのはつまらないことだ」と言っており、本人も未

   来までは望んでいない。

 

   5次元『意識』

 

   意識を操ることができる能力。

   意識を飛ばしたり、人の意識の中に入り込んだりといった精神攻撃を得意とする。(例えば

   相手の意識の中に『もの凄い船酔いをした』という意識を埋め込めば、相手は船酔いを起こ

   したと錯覚し、その揺れに耐えられず倒れてしまう)

   想雅を『アストラル界』に飛ばしたのもこの能力を使い、無理やり引き付けたというもの。

   しかし、記憶までは操作することができない。あくまで意識だけ操作だけらしい。

   また、この能力を使い自分の顔の横に顔文字をつけたりしている。

 

   6次元『力』

 

   能力を創り出すことができる能力。

   想雅の『聖を司る程度の能力』、『魔を司る程度の能力』、『言霊を操る程度の能力』。ま

   だ明かされていないが、ノエルの能力もこれにより創り出された。しかし、与えてしまった

   能力はもう1度創り出すことが不可能である。そのため、あまり人にこの能力を与えたりし

   ない。

 

   7次元『自然現象』

 

   自然現象を操ることができる能力。

   雨、雷、暴風、干ばつ、地震、津波、噴火といったことを操ってしまうとても危ない能力。

   この能力でアトランティス大陸、ムー大陸、レムリア大陸を1夜にして滅ぼすほどの人類の

   脅威となってしまった。しかし、地上ではその3つの大陸にしか使ったことが無く、使った

   とすれば自分が創った空間の中だけである。

 

   8次元『記憶』

 

   記憶を操ることができる能力。

   記憶操作、記憶消去といったことをすることができるが、これを使うには本人の意志を受け

   なければ発動することができない。しかし、この能力を使ったのは1度もない。

 

   9次元『生命』

 

   生命を操ることができる能力。

   創り出し、破壊したりといったことも可能であり、この能力を『加護』として使用すことも

   ある。この能力のおかげで想雅は不老不死となり生き返った。しかし、8次元『記憶』と同

   じく、意志がなければ発動できない。

 

   10次元『自由』

 

   自由を操ることができる能力。

   チャラ神自身が自由人であるためぴったりの能力である。使用するといったら、どこか行き

   たいときにこの能力を使えば、誰にもばれずに行動が可能である。そのため、これを使い仕

   事場から逃げ出すのも報告されている。隠密行動をするときには打ってつけである。

 

   11次元『法則』

 

   法則を創り出すことができる能力。

   1つのものに最大3つまで法則をつけることが可能。しかし、原型が無いもの、存在しない

   ものには使用不可である。(例えば、想雅自身に能力使用不可と法則をつけることは可能。

   しかし、能力といった原型が無いものには使用不可)

   また、この能力は相手の能力を無視して法則をつけることも可能。チャラ神曰く、「神様の

   言葉は絶対。m9っ`・ω・´)シャキーン」らしい。なんという絶対命令。

 

性格:自由、陽気、気楽、平和、友情、努力といったポジティブ思考を持ち、仕事から抜け出し、

   どこかに逃げるほどの遊び人。なぜそんなに遊びたいのならそんな役職についたのかと聞

   くと、「美人の天使たちがいるから~。(*^o^*)」といった遊び人の思考を持っている。

   しかし、実力は最高神クラスで、やる時はやる神様なので期待をして損は無いと思う。

 

備考:チャラ神……本命をシーザー・エレフセリア・チャラテオスと言い、元人間である。

   名前の由来は、シーザーは他の呼び名でカエサル、つまり女たらしの国王。エレフセリアは

   ギリシャ語で自由。チャラテオスのチャラはそのままで、テオスはギリシャ語で神。つまり

   チャラ神という。なんて遊び人な名前なんだろう……

 

   古代ギリシャの青年だった彼はゼウスのうっかりで雷撃をくらってしまい、一度死んでしま

   った。そのことで、ゼウスは彼を神として復活させ、自分の部下として働かせた。そして、

   ゼウスの命令でアトランティス大陸を壊滅させたと同時に、彼はゼウスのもとを去った。

   その後に、美人の天使たちを求め、神界支部治安部隊総司令官総司令部の支長となった。

   チャラくなってしまったのが、地上のチャラ男のおかげ(せいとは言わない)とチャラ神は

   言う。

 

   チャラ神は元々頭がよく、情報収集などといったことが得意。彼が『11次元を操る程度の

   能力』を開眼させたのが、次元について調べていた時だったらしい。その時は、0次元から

   1つづつ地味な作業をしながら能力として開眼させていたらしい。

   彼が言うには「11次元までしか開眼することができなかった。これ以上はもう無理。疲れ

   た。(´・ω・`)ショボーン」らしい。

   12個もある能力なんてこれまた物騒だな……

 

本人から一言お願いする!

 

「ねぇねぇ?今どんな気持ち?ねぇ?こんなチートレベルの俺を見て今どんな気持ち?ねぇ?

( ・´ー・`) ドヤァ・・・」

 

はい、うざいです。

これでもゼウス、オーディンといった最高神レベルの実力者なんですよ。

 

チャラ神のイメージ画です。↓

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

 




前回より詳しくかけたと思う。あれは簡単に説明しすぎた。後悔はしている。むしろじれったい気分だ。
チャラ神にもちゃんと本命はありました。神界支部の書籍にチャラ神の履歴書みたいなものがあってそれを見てみたら、『シーザー・エレフセリア・チャラテオス』とサインがされていました。本人にも聞いてみましたがそうらしいです。しかも、元人間。

イメージ画が汚すぎました。一応ペンタブはあるのですが、その書くためのソフトが使いにくいためお金が溜まったら別のを買うつもりです。はい。

感想待っています!
次回もお楽しみに!


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何?この近代化された過去は……



ふぃ……久しぶりの原作キャラの登場ですぜー。
やっと、登場させることができた。

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり。




現在見ている光景で想雅は叫ぶしかなかった。

 

「ここはどのなんじゃいッ!?」

 

想雅が見たものはたくさんの高層ビルが並んでおり、現代の日本を思わせるような光景だった。しかし、一つだけ違う点があった。ふと後ろを振り向くと、そこは山や平原、森などがあるサバンナ並の光景だった。一瞬、「現代のアフリカ……?」と思ったが、そこらへんには原住民の1人や2人も先ほどまで見ていない。しかも、ここに住んでいる人々の服装が少し奇妙な感じがした。まぁ、あの人たちから見てこっちの服装もそうとう奇妙だと思われているだろう。

 

「マスター、ここは本当に過去という物なのですか?天界に似ている感じがするのですが……」

 

ノエルが不思議そうに想雅を見ながら言った。

確かにそう思える一面がある。しかし、後ろの光景を見てここは過去というのが断言できる。俺が住んでいた時代はこのような光景を見たことない。こんな大平原の真ん中でこんな高層ビルが立ちすくむところなど見たことが無いのだから。

 

「とりあえず、現状を確認するために、情報でも……」

 

想雅は先ほどまで見ていた大平原に目を逸らし、情報収集をしようと進んだ時だった。

 

「あなたたち……あまり見かけない顔ね……」

 

横から1人の女性に声をかけられた。

長い黒髪を三つ編みにしており、前髪は真ん中分け。 左右で色の分かれる特殊な配色の服を着ている。具体的には、青と赤から成るツートンカラー。上の服は右が赤で左が青、スカートは上の服の左右逆の配色となっている。袖はフリルの付いた半袖で、全体的に色合い以外はやや中華的な装い。また服のあちこちに星座が描かれている。

 

「ここに来たときはビックリしましたよ。ここまで進歩していたとは……」

 

想雅は彼女の顔を見てやると、ビルを眺めるように言った。

 

「そう……あなたたちは旅人なのかしら?こんなところまで?」

 

銀髪の女性は想雅とノエルを見た。ノエルはそれに驚き、後ろに隠れてしまった。

 

何も持たないでここまでよく来れたわね(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)……」

 

想雅はビクッと背中を震わせた。やばいやばい絶対バレたってこれヤバい方面ですか?うん、少しは言い訳になると思っていたよ、少しだけは……

想雅が少し慌てた表情を見せたことを見た女性は彼に近づき耳打ちをした。

 

「何かの事情があることはわかったわ。ここだとあなたたちが目立ちやすいから私の家に来なさい」

 

女性は後ろに振り向き、こっちと言わんばかりに手をクイクイと動かした。

 

「とりあえず、情報をくれそうな人を見つけれてよかった……」

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

うわぉ……ここがこの人の家ですか……結構デカいし、なんか研究所みたいなところだな。実験されるのか?俺……

想雅はそんなことを思いながら中に入った。しかし、室内は研究所じゃなくて以外にも普通の家と同じ内装だった。すると、黒髪の女性を出迎えるおうに廊下の奥からテトてとと小さな足音をたて誰かがこちらに向かってくるように思えた。

 

「おかえり~、えーりん」

 

「ただいま戻りました、姫様」

 

姫様と呼ばれた少女は、ストレートで、腰より長い程の黒髪を持つ。前髪は眉を覆う程度の長さのぱっつん系の髪型。その少女……いや幼女は女性に頭を撫でられると「えへへ」と嬉しそうに顔をうずくめた。この人の娘さん?妹さん?なのか……?

 

「えーりん、この人たちは?」

 

姫様は純粋無垢な顔で想雅たちを見た。

 

「そういえば、まだ名前を聞いていなかったわね。私は八意永琳よ」

 

銀髪の女性と姫様はこちらを見つめてくる。

 

「私は、ノエル……」

 

想雅より早くノエルが名前を名乗った。

 

「ノエルちゃんって呼ぶね。私は蓬莱山輝夜っていうの、よろしくッ!」

 

姫様は嬉しそうにノエルの手を取って喜んだ。ノエルも同じく「輝夜ちゃんと呼びます」といい輝夜はより一掃に喜びを表現するためかノエルに抱き着いた。ノエルも一瞬驚いた表情を見せたが、嬉しそうに頭を撫で始めた。想雅と永琳はそれを喜ばしい目線で見ていた。

 

「あなたの名前は?」

 

「ん?あぁ、俺か……俺は天上想雅だ」

 

「そう……なら想雅と呼ぶわ」

 

うーん、今の状況はまだあんまり詳しいことを聞かれてないから安心だけど、この後がどうなるのかなぁ……ねぇ?

想雅がそんなことを考えている時に彼の服をちょいちょい引っ張る感触がした。そこに振り向くと今までノエルと抱き合っていた輝夜が想雅の方を見ていた。

 

「ねーねー、名前何て言うの?」

 

輝夜は想雅に名前を聞いた。そういえば、まだ言っていなかったな……

 

「俺は天上想雅だ」

 

「そーがって言うのねー。私、輝夜よろしくね」

 

「よろしくな、輝夜」

 

想雅は輝夜の頭を撫でた。永琳の時と同じく嬉しそうに顔を赤く染めた。その現状を見たノエルは羨ましそうに頬を膨らませた。想雅はノエルの機嫌が悪いと見たのか、輝夜だけではなくノエルも頭を撫でた。それによりノエルの機嫌はよくなり、想雅の心もほっとした。

 

「ところで、想雅とノエルはどういう関係なのかしら?」

 

「関係といってもn「兄妹です」そうそう、俺とノエルはきょうd……ん?……はぁぁぁぁぁッ!?」

 

ノエルの言葉に一瞬何言っていたのか考えたが、思わぬ言葉だったため大声を出さずにはいられなかった。その声で近くにいた輝夜が驚き、少し涙ぐんでいた。想雅は「す、すまない」と謝りながら輝夜を慰めていた。

 

「あなたたちが兄妹……少し信じがたいことだけど……」

 

やっぱり、無理がありますよねー。だって全く似てないもの。茶髪の俺と、白銀の髪のノエルとは完全に兄妹には見えませんよね……瞳の色が同じというのはいいとして……

そんなことを思っている想雅を余所に、ノエルは無表情で何気なく言った。

 

「兄妹らしく裸の付き合いもしました」

 

「おいコラ、そんなデマを言うな」

 

「私の一糸まとわぬ姿を一方的に見られました」

 

「そう……なら分かったわ」

 

「分かったんかいッ!いや、分かってほしくないんだけどなッ!」

 

一方的に見たんじゃなくて、視界に入っただけだからな。そんなやましい心なんて無かったからな。それで信じる永琳もどうかしているだろ。男が猛獣だからなのか?そんな感じじゃないぞ俺は、こんなかんじで大人しいからな。うんうん。

 

「ねーねー、はだかのつきあいってなぁにぃー?」

 

「大人になるまで我慢ですよ。輝夜ちゃん」

 

「はぁ……元の時代に帰りたい……」

 

想雅は弱気なことを言うが言葉だけじゃ変えられないことがあると実感した。こうして想雅たちは、永琳、輝夜に知り合ったのだ。

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

そして、4日のキングクリムゾンがかかった。え?その4日間は何をしていたって?別にそんな大層なことをやっていませんよ。

初めて知り合った次の日に、いきなり薬の実験台にされかけたり、風呂に入っている時にノエルと輝夜が押し寄せてきたり、布団の中に同じくノエルと輝夜が入り込んでいたり、また薬の実験台にされたり、そしてまたまた薬の実験台にされたりと、そんな大層なことヤッテイナイジャナイデスカー。ヤダー。

 

「マスター、黄昏ているのですか?」

 

ノエルに声をかけられた。

 

「いや、何だか大変だったな……って、2人とも俺の膝の上から降りてくれませんかねぇ?」

 

下を向くとそこには自分の膝に座っているノエルと輝夜の姿があった。右膝にはノエルが座っており、左膝には輝夜が座っているという何だかロリコンが喜びそうな状態だった。言っておくが俺はロリコンじゃないからな……っといっても膝を通して2人のお尻の感触g……おっと気を確かに天上想雅。ノエルは一応、胸は膨らみかけているから幼女じゃないが……って、そんなところまで知っている俺の脳内がどうかしているわッ!

想雅は1人煩悩と戦っていた。

 

「そーが、何しているの?」

 

「い、いや、何でもない……」

 

とりあえず無になるんだ。心を無にして何も感じず。そして悟りを開き涅槃に達しろ……ってすでに涅槃行ってきたんだがな。悟り開く前に涅槃に行くってインド僧涙目。

そんなインド僧が涙目になっている姿を思い浮かべている時、右側の扉が開きそこから永琳が中に入ってきた。

 

「想雅、ノエル。少しついてきて」

 

「ん?いきなりどうした。実験体になんてならんぞ」

 

想雅はまた実験体にされるのかと疑いながら言った。しかし、永琳の顔には「それより重要なことだわ」と言っているような顔だった。

 

「あなたは私の事をどう思っているのかしら?」

 

「人様をかってに実験台に出すこわーい人」

 

「そう、なら今からでも実験台にだそうかしら?」

 

まぁ、そんな冗談なことを言い合っているうちに本来の目的を忘れかけていた永琳だった。

 

「そんなことより、あなたたちに会いたいという人がいるわ」

 

俺たちに会いたいと言う人ねぇ……どんな人なんだ。

想雅はふぅ~んという何気ない顔で聞いている。

 

「……ツクヨミ様よ」

 

 

 

 

 

 






ロリロリ輝夜ちゃん。この時の姫様はこんな感じなのかな?
クッソウ……想雅の奴、ハーレム主人公のようなイベントを発動しまくりやがって妬ましい。あっ、あんなんでも一応主人公だった。

感想待っています!
次回もお楽しみに!



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月の神と月の神


さて、ツクヨミの登場です。
これで想雅が会った神様の数は3人目……って少なくない?もっとこう多い気がしたんだがな……
そういえば皆さんどのようにゴールデンウィークを過ごしますか?自分はたぶん1日中部屋にこもっているかもです。まれに外に出るかもです。

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり。




永琳に「ツクヨミ様が呼んでいる」と言われてた想雅たちは何かやらかしたのかと思ったが、外では買い物、散歩ぐらいしかしていないためそんな大事(おおごと)なことはしていないと思ったが、永琳の実験台よりマシだと思った想雅はノエルを連れてそのツクヨミとやらが住んでいる大きな屋敷に来ている。

っていうよりツクヨミってあのツクヨミだよな。漢字では月夜を見ると書いて月夜見だったな。簡単に解釈して言えばホルスの月の眼と同じ『闇を監視するもの』と考えた方がいいだろう。あとはツクヨミは『月を読む』ということから暦と結びつける由来説がある。

想雅はまだリハビリ途中の時に、病室にいるだけではつまらないので神様に関しての書籍を貸してもらったことがあったため、だいたい(・・・・)の事は頭の中に入っている。しかし、完全(・・)というわけではないため『言霊』として使用するのはまだ無理というわけだ。その間でまだ完全とは言えないが神様の神格を数体頭に叩き込んである。

想雅はノエルと、永琳、そして輝夜を連れ、今は長い階段を上っている。輝夜はそのまま家でお留守番するはずだったがそれがどうも本人には気に入られず駄々を捏ねたためしょうがなく連れて行くことにしたのだ。

そして、博麗神社より長くなかったため1、2分ぐらいで着いた。その途中で輝夜が「もう動けない……」と泣き語みたいなことを言ったため想雅は輝夜を背負って上っていたのだ。

 

「あぁ……夕日が綺麗だ……」

 

階段を上り終えた後、ふと後ろを振り向くとそこにはどこまでも続く高原の地平線に沈み行く太陽の姿があった。

 

「輝夜、今からツクヨミ様に会うから早く降りてくれ」

 

「えー、もっとそーがおんぶしてー」

 

「今は無理だが、ツクヨミ様と会った後ならいいぞ」

 

「わかった、約束ね」

 

輝夜は素直に想雅の背中から降りた。今まで気にしてはいな……いや気にしてはいたがノエルがずっと無表情のジト目で見てくるのはなんでだろう?何かしたか、俺は……?

 

「お持ちしておりました」

 

奥から1人の男性が出てきた。永琳がその男性に近づきいろいろと説明をして、男性は「こちらです」と想雅たちを案内した。移動している途中で縁側から見える庭は、日本文化のような雰囲気を醸し出していた。日本の風習ができる前にはすでに出来たいたのか……

そして案内人の男性がある障子の前で止まり「ここです」と言い、障子を開けた。そこには一人の女性が座布団の上に正座して座っていた。

漆黒に染まっている黒髪はまさに夜を現しているのかと思うぐらい美しく艶があり、先ほどまで目を瞑っていたため瞳の色が分からなかったが、想雅が部屋に1歩入ったことに気付いたのか、閉じていた目を開きその白く、月を現している黄色い瞳が露わになった。服装は黒と黄色を基調とした着物で月や星、雲といった装飾が施してあった。

 

「よく来ましたね、天上想雅くん並びにノエルちゃん」

 

その黒髪の女性は想雅とノエルの名を呼び、彼らを用意してあった座布団の上に座らせた。想雅は目の前の女性と同じ正座で座り、ノエルは正座の足が横に崩れた女座りをした。

 

「そう固くならなくてもいいわ、気楽にしてもいいのよ」

 

想雅は女性がそう言ったため正座からあぐらへと座り方を変えた。

 

「えーと、ツクヨミ様。何か俺たちに用があるのですか?」

 

「いいえ、何もないわ。少し永琳のところで住んでいる兄妹はどんな人なのか見たかっただけ」

 

何だよそれ……たったのそれだけで呼び出されるなんて思いもしなかった。何ですか?神様の威厳という奴ですか?そんだけで呼び出すなんて神様どんなけ暇人なんですか……

想雅が苦笑いしながらツクヨミの話を聞いていると、何やらか重要なことを話し始めた。

 

「君たちは月に行くことは決まった?」

 

「え?それはどういう……」

 

ツクヨミの口から予想外の言葉が出た。俺たちをただ見たいだけだったのにいきなりこんな重要な話しっぽいことを言い始めたし、この人は話の重要性という原理が無いのか?

 

「あれ?永琳から聞いていないの?そう、なら1からそのことについて教えるね」

 

その少し抜けているツクヨミ様からその月に行く計画について想雅たちに話し始めた。

 

「私の未来予知では今から3日後、この都市は数千、数万の妖怪によって壊滅するわ」

 

うわぉ……いきなりすぎる爆弾発言。ツクヨミは「このことはまだ永琳と部下たちにしか言っていない極秘情報よ」と言い、想雅たちに口止めをかけた。しかも、3日後といえば俺たちが元の世界に帰還する時間帯だ。

 

「ツクヨミ様、その未来予知とは?」

 

「私の能力『月を読む程度の能力』よ。月を見るということは暦上の未来だって見ることができるわ」

 

要するに未来予知の能力……戦闘になると厄介な能力になりそうだ。しかし、想雅は戦いを好まない基本的平和主義のヘタレなためそんなことしか考えていなかった。

 

「話を続けるよ。それで私が提案した誰1人も死なさず、安全に出来る計画、それは―――――『月面移住計画』よ」

 

「『月面移住計画』……」

 

その言葉を聞いた想雅はだいたいの意味をそれだけで理解することができた。

 

「要するに俺たちにその計画について協力しろと……」

 

「うん、そういうことよ。どう?協力してくれるかな?」

 

想雅は自分だけの意見ではどうしようもないためノエルの方を向いた。そのノエルの表情は「私はマスターについていきます」という表情だったため言葉を交わさずにその計画について協力することを約束した。しかし、計画に協力するとしか言っていないため月に行くということはまだツクヨミに言っていない。

 

「協力はありがとう。だけど君たち月に行かないとこのままだと死ぬよ(・・・・・・・・・・・・・・・)?」

 

一瞬想雅の眉がピクリと動いた。

 

「い、今何と言いましたか?」

 

「だから、月に一緒に行かないとこのままだと死ぬよ(・・・・・・・・・・・・・・・)って……」

 

彼女の顔は以前変わらないまま笑顔だった。笑顔でそんな物騒なことを言えるツクヨミ様マジパネェッス……そんなことを言えたのもツクヨミ様の能力の未来予知だろう。暦上の未来だけじゃなく個人の未来までを視ることができるというのは個人情報、プライバシーの侵害にあたりそうなものだった。しかし、そんなことはどうでもいい。

 

「月に行かないと死ぬと……?」

 

「そう、ノエルちゃんを庇った想雅くんが妖怪の攻撃で心臓をズバッ!……っとね」

 

ツクヨミは座ったまま手刀を斜めに斬り落とした。

 

「そんなリアリティ溢れるところまで見えるんですか……」

 

怖すぎる……怖すぎるわッ!未来予知。んなグロ映像みたいに見えるってツクヨミ様の精神は鋼のように堅い精神なんですか。俺だったら見た瞬間バッタンキューですよ。

 

「で、そう?一緒に行く気になった?」

 

ツクヨミは初めに想雅のその後の未来について話し、脅すように選択肢を絞っていく。しかし、想雅の思いは変わらない。

 

「いいえ、俺はこの地に残ってやることがありますので……」

 

「ふぅ~ん、滅びゆくこの都市にやることねぇ……」

 

ツクヨミは笑いながら想雅の目を見た。ツクヨミの能力は個人の未来を予知するためにはその人の目を見なければならないのだ。だからこうやって感心している素振りを見せながらちゃっかり想雅の未来を見ている。しかし、彼が死なない未来は月に行くこととある一部(・・・・)を除いて1つもなかった。そしてそのある一部とはそこだけがなぜか見ることができない。今までこのような体験が無かったため対処の方法が分からなかった。

 

「そうね……なら簡単なゲームをしようか」

 

「ゲーム……」

 

「そうそう、想雅くんが私に勝てたら協力だけで月に行かなくてもいい、だけど、負けた時は両方とも協力してもらうよ」

 

この状況、前にもあったな……チャラ神の賭け勝負だっけな。アイツの口車に乗ったおかげで過去にとばされたということがあった。しかし、今回はそんな無理難題な要求は無い。むしろ生き残れるというありがたいものだった。

 

「分かりました、受けて立ちましょう」

 

「わかったよ、じゃぁ夕食を食べ終わった後にここに集合でいい?」

 

想雅は頷き、ノエルと共に部屋を後にした。彼らを見送ったツクヨミは1人ボソリと呟いた。

 

「私はこの勝負で彼の可能性……未来を変える力があるのかをを見極める」

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

想雅とノエルは永琳の家で夕食をとり、少しお腹を落ち着かせてから家を出た。永琳と輝夜の動向は無く、2人だけでツクヨミに会いに行っている。階段を上った後、家の中ではなくすでに家に出ているツクヨミを見つけ、彼女は2人を連れてこの都市の外に出た。

やはりどこもかしこも平原でところどころに木が生えており、どこかサバンナを思わせるぐらいの風景だった。時はすでに夜を指している。ツクヨミの後ろから上っている今宵の月が満月で狼男が活発化するぐらいの美しさだと思えた。しかし、夜と満月を狙ってこのゲーム……いや、戦闘を行ったに違いないと想雅は思った。完全に俺に勝利して意地でも月に連れて行くというわけだな。

しかし、このような風景を前にも見た気がする……あぁ、ペルセウスの時か。アイツは月の光とその腹が立つほどの美しい顔で戦闘に挑まれたっけな?

 

「ここなら、人々の睡眠を邪魔することが無いよね?」

 

「これだけ離れていれば聞こえないと思いますよ」

 

3人に映る都市は豆のように小さくほのかに光が放っている。

 

「わかったわ。じゃぁ始めようか」

 

ツクヨミは普通にその場に棒立ちではないが戦闘態勢を取らずにその場に止まり、一方の想雅たちはノエルが光に包まれ刀となり想雅の手元へと自ら動いた。

 

「あれ?ノエルちゃんは……人間じゃなかったの?」

 

「いや、人間だ」

 

『そうです、私は人間です』

 

「そういうことにしておくわ」

 

想雅は刀を構え、戦闘態勢を取った。

ホント何でこう戦闘沙汰になることが多いんだよ……ここの人たちは話し合いという言葉を知らないのか?いや、話し合いが成立しないということを最初から分かっているからこんなことをするのか?どちらにせよ、こんなことになったのは俺の責任だ。別にそのまま月に行ってもよかったのだが、チャラ神の4次元『時間』の指定範囲がわからない。月に行っても使えるのなら行ってもいいが、そのことに関してチャラ神から何も聞いていない。

 

「すまないな、ノエル。俺のせいでこんなことに……」

 

『マスターのせいではありません。マスターの想いは誰よりも立派ですから』

 

「そうか……ありがとう」

 

想雅はノエルにフォローしてくれたお礼を言って、ツクヨミを見た。

―――――今から戦闘を始めることに驚くぐらい美しい今宵の月は彼らの戦闘を見届ける。

―――――果てが見えない地平線には先ほどまでいた都市が見える。

―――――そして、月以外にも星も美しく、大都市では見ることができないぐらいの美しさ。

―――――彼は月に行くことを拒み、地に残ることを決めるのか?

―――――彼女は彼の可能性を見極め、この後をどうするか?

 

「始めッ!」

 

ツクヨミの掛け声がかかると想雅は手始めに霊力槍をツクヨミに向け投げた。しかし、簡単にそれらの槍は避けられてしまった。だが、それは予測していたことだ。ツクヨミの意識が槍たちに行っている時、想雅は足に『魔』の力を込めツクヨミに向け一直線に突っ込むッ!

 

「んー、こっち」

 

ツクヨミが槍たちを避けきった後、すぐにその方向に光の壁を展開させた。しかし、そちらの方向に想雅はいない。想雅の姿はツクヨミの後ろに出現し斬りかかる。しかし、斬りかかったツクヨミは光となり消え、彼の後ろからツクヨミが姿を現した。

 

「……ッ!」

 

想雅はツクヨミの光の剣の攻撃をノエルで防ぎ、そのまま空中でサマーソルトキックを繰り出した。しかし、それも簡単に避けられまた彼らの距離が遠のいた。すると、ツクヨミが手元に光の弓を創り出しその弓の弦を引いた。その中心に光が集まりその姿はもう一度ペルセウスと対決しているようにも捉えられた。その光の矢は想雅に向け飛んできた。1つの矢が円を描くように動き、5本の弓へと増えたのだった。想雅はそれらをノエルで防ぎながら避けていく。だが、その矢は狙いが別々なため払いきれなかった矢が想雅の右足、顔に掠り、ツーっと血を流した。

その傷がついた2ヵ所に『聖』の力を流し込み、傷を防いだ。

 

「想雅くん……君は本当に人間?」

 

「あぁ、生まれたころから人間だ」

 

想雅はフッと笑いながら言った。

人間の速さを超えた移動力、そして回復力。これらを見て誰もが人間じゃないと疑ってもおかしくない。

想雅は服の胸ポケットからスペルカードを取り出し詠唱を始めた。

 

「月は隠され、再び闇が始まった。だが、光は闇に勝った。隙間から地を照らす月は今宵も美しく、光と闇が交わる時、幻想の世界へと誘うであろう。夢想『朧月』」

 

想雅から『聖』の力が散布され霧状となり、それを纏った。チャラ神に使った全体を囲むことは効率が悪かったため、部分的に自分を覆うことにしたのだ。

ツクヨミは尽かさず矢を放つ。しかし、想雅に当たると思われた瞬間、想雅の姿が霧状となりその場から消えた。しかし、ツクヨミには想雅の居場所が分かる。後ろに振り向き、そこに弓を放つ。そこには想雅の姿が確認されたが矢に触れる前に消え、また姿を隠した。だが、どこからか斬撃を撃ってくる。しかし、撃ってくるのは彼の分身だった。

個人の未来を予知するには目を見ることが必要。しかし、あの時に彼の目を見た。しかし、未来を予知することができなかった。次の行動がどうなのかはわからない。

 

 

「それなら私の分身に頼るしかないかな……」

 

ツクヨミはすぅ~と息を吸い、『言霊』を唱え始めた。

 

「かりそめの姿を暴き、本来の姿を現し給え」

 

頭上に光る月が光のカーテンらしきものを地上に降ろし、想雅の姿を捜索する。そして、彼の姿が確認されるとツクヨミは弓を引き矢を放った。その矢は正真正銘想雅の右足を突き刺した。

 

「グッ……!」

 

先ほどまで散布された『聖』の力が想雅に集中し突き刺された矢を引き抜き、傷をふさいだ。その間にツクヨミは欠かさず彼の目を見た。次の行動は……覇気『龍王の威圧』?というものを使うらしい。それがどんなものなのかツクヨミは知らないがだいたいの事は把握した。簡単に言えば逃げることができない拘束術といったところか……と

想雅はツクヨミの姿を確認すると次のスペカを取り出した。

 

「龍は偉大である。あらゆるものを凌駕する覇気を持つがために。覇気『龍王の威圧』」

 

想雅の目が紅く輝き、ツクヨミの動きを拘束した。しかし、彼女の表情は冷静でまた『言霊』を唱えた。

 

「自由を奪えし邪眼を祓え給え」

 

パリィィィィィン……と彼の拘束は儚く解かれた。

 

「未来予知にこの能力を破る力……まさにチートだ」

 

「月はあらゆるものを監視し、それに見合った裁きを下す……これが闇を監視するものよ」

 

ツクヨミは笑いながら想雅に説明した。

はぁ……また神様相手に俺は『言霊』を使うのか……しかも今回は女性だ。しかも早くもピンチになってしまった。相手が女性だったから少し手を抜いてしまったかもしれないな。だが、未来予知だからなんだ?能力を破る力だからなんだ?どこにも勝てないという文字は無いじゃないか。なら、俺は勝利のために使おう。己の未来を変えるためにこの『言霊』を使おう。

想雅は頭上に上る月を見ながら『言霊』を詠唱した。

 

「我求めるは決して貫くことを約束さえれた一矢を必中させん。悪しきものに一矢の対価を下し、裁きを与えん。我が望むは一片の悪も無き秩序なり」

 

 

ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!

 

 

想雅から強大な神力があふれ出した。

そのことによりツクヨミは驚きを隠せずにいられた。何せ人間と言い張っていた男がいきなり神力を溢れ出し、神になろうとしていたためだからだ。力を貸してもらうぞ『アルテミス』……

 

「もう一度訊くわ。あなたは本当に人間?」

 

「ツクヨミ様、この力はただ借りているだけのものです。決して俺が神様というわけじゃありません」

 

想雅は苦しそうながらもツクヨミに笑顔で答えた。想雅はノエルを腰に収め、ツクヨミと同じ目の前に弓を出現させ、矢を放った。

ツクヨミも同じくその矢を迎撃しながら想雅に攻撃を繰り出す。しかし、簡単に迎撃されてしまう。なぜならツクヨミは月の神であり決して弓が得意ではない。それに違い想雅は月の神でありながら狩猟の神でもある神の神格を使っているため弓の扱いは想雅の方が上手だった。

ツクヨミは迎撃することができなかった矢たちを避けながら想雅に向け撃っている。しかし、その矢も想雅にたどり着く前に迎撃されてしまった。

 

「少し……押されているわ……」

 

ツクヨミは苦し紛れに呟いた。しかし、呟いたから現状が変わることなんてない。行動するからこそ変わるものだ。それを今想雅がやっている。自分の未来を変えるため、曇りなき瞳でツクヨミを見つめる。ツクヨミも同じく想雅の目を見つめた。しかし、彼の未来は死ぬことに変わりが無かったが、その未来が一つづつ変わっていき初めは2つしかなかった生きる未来だったが、行動したことにより次々と変って行く。

 

「つ、ツクヨミ様……これで終わらせますッ!」

 

想雅は先ほどと違う『言霊』を詠唱した。

 

「獣よ。汝らは百の打撃を(もっ)て千を、千の打撃を以て万を、万の打撃を以て幾万を討つ者なり。秩序により立つ我のために、今こそその力を揮い給え」

 

月から光が想雅に向け降り立ち、想雅の周りに輝く数匹の獣が君臨した。ある獣は美しき毛並を持ち、まさに神の化身と呼べる白馬。ある獣は鋭い牙を持ち、悪しきものを喰らう聖狼。ある獣は上空を飛び、その速さを生かし敵に攻撃をする鳳。他にも牡牛、猪といった動物たちも想雅を守るように展開している。

想雅は白馬にまたがり、ツクヨミに向け走り始めた。

 

「我に続けッ!神の化身たちよ」

 

想雅の指示により獣たちが大きく鳴き初め、想雅の後をついて行った。

 

「牡牛よ。汝の角を使い我敵を屠り給え」

 

想雅が言うと牡牛がツクヨミに向け突進を始めた。一直線だったためツクヨミは余裕に空中に避けることができた。だからといって想雅は止まらない。

 

「鳳よ。汝の鋭き口で我敵を貫き給え」

 

複数の鳳がツクヨミに向け突進を始めた。しかし、1匹1匹が速き閃光と成りてツクヨミに攻撃をする。空中ではあまり避けるという行動がしにくいため、体勢を整えながら鳳の攻撃を避けていく。

 

「猪よ。汝の牙を使い我敵に鉄槌を下し給え」

 

猪がツクヨミの着地を狙い攻撃をする。それと同時に想雅は違う獣に指示を出した。

 

「狼よ。汝らの多彩な動きを使い我敵を喰らい給え」

 

猪の後ろから複数の狼が横に広がるように展開されていき、狩りの体勢をとっているように見える。ツクヨミは突っ込んでくる猪の背中に手を置き、そのまま空中へ逃げるがまだ鳳がツクヨミを狙っていたため、猪の攻撃を避けたとしても状況は変わらない。下を見ると狼たちが輪を描きながらグルグルと回っており、降りてきたときにいつでも捕らえることができる動きだった。彼女は獣たちに気を取られ過ぎており彼の存在を忘れていた。

 

「……ッ!」

 

自分の目の前をいきなり矢が通った。ふと飛んできた方向を見るとそこには忘れかけていた想雅の姿が見えた。その目を逸らした瞬間に鳳たちはツクヨミに攻撃を始めた。想雅に気を取られてしまったツクヨミは反応に遅れ、空中でバランスを崩してしまい地上に落ちて行った。

 

「ッ~。痛った~いッ!」

 

落ちて行ったツクヨミは背中をさすりながら立とうとしたが、彼女の目の前には白馬に乗って、弓を構えている想雅の姿と、彼女を逃がさないために狼たちが周りで見張っていた。

 

「俺の勝ちですね」

 

「正真正銘、想雅くんの勝ち」

 

想雅は神格化を解き、消えていく白馬から降りた。着地と同時にグラっと意識が揺らいだが何とか耐えることに成功した。今まで刀に変化していたノエルが彼を支えるようにして元に戻った。

 

「これで君たちの可能性がわかって、未来も変わりつつあるよ」

 

ツクヨミは着物についている砂を払いながら想雅たちに言った。こうして人間対月の神の戦いは幕を閉じた。

しかし、ツクヨミは彼の未来に不安を抱いていた。その不安は『月移住計画』についてのものではない。今は何者かによって封印されているが、いずれその闇が復活してしまうという未来が見えた。

そのことは想雅には告げずにただただ心の奥底に閉まってしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 





月の女神でもあり狩猟、淑女の神でもあるアルテミスの神格化。月の神対月の神ねぇ……もうごっちゃだな。
さて地上に残ることを決めた想雅、さて彼の未来は死の道か?それとも生きる道なのか?

感想待っています!
次回もお楽しみに!



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最後の日常


ゴールデンウィィィィィクが来たぁぁぁぁぁッ!ヒャッホォォォォォッ!(そのまま窓ガラスに突っ込む)
あっ、やることねぇや。(割れた窓ガラスの奥から這い出てくる)
小説でも呼んで暇をつぶすか……(何事もなかったかのように椅子に座り小説を読む)
何だこの残念な過ごし方は……(頭から紅い液体のような物が出てきたけど、たぶんトマトジュースだろう)
まぁ、外に出て友人とどこか行ってみるのもいいな……(よし、遊びに行くか)

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり。




ツクヨミ様との戦闘に勝利した3日後、ついに妖怪たちが都市に攻めてくる未来予知。そして、都民安全を確保するための『月移住計画』。さらに想雅とノエルが元の時代に変える丁度1週間が経った。

朝起きてからのその日、都市はまだ思っていたよりも静かで、嵐の前の静けさのようだった。しかし、決して静かではない。

外では都民の人々が話し込みをしており、長いときには2、3時間話す込むときもあった。だが、この長い会話も今日で聞けなくなってしまう。そう思うと心のどこかで寂しさを感じてしまう。

想雅は布団から出ようとしたが、両腕が何者かによってホールドされている。まぁ、だいたいわかっているがな……

彼は両腕が空いていないため何者かを起こさないように片足で布団をずらした。そこには右腕にノエル、左腕には輝夜といったサンドイッチ状態だった。これで何日目だ……ノエルと輝夜は元からこの部屋ではないはずなのだが、たぶん俺が寝ているときにコッソリ入ってきたのだろう。

そのホールドがかかっている腕を少女らを起こさないように想雅はゆっくりと腕を引いた。

まだ開けかけている瞼をこすりながら想雅は扉を開いた。

 

「顔でも洗ってくるか……」

 

想雅はぎこちない歩き方で洗面所まで行き、2,3回ほど顔を洗った。ふと顔を上げると鏡に映る自分の姿が映った。その顔は地上に残り、チャラ神が来るまで妖怪を倒さないといけないくせにそれに似合っていなくて、本当に地上に残る気があるのか?という顔をしていた。

しかし、顔はそのようなやる気が無い状態だったが、彼の心の中は生き残れるのかという心配感と、ノエルをこのような過酷な戦闘に連れ出すという後ろめたさがあった。

 

「はは……こんな時でも俺は他人のことが気になるのかよ……」

 

彼は自分に言いつけるように、皮肉そうな声で言った。

鏡に映る自分の青い瞳を見ながら、ツクヨミ様が未来予知により見えた俺の未来……そう『死』のことを考えた。

一応不老不死だが、それは寿命の概念だけが無くなっただけで決して死なないというわけではない。例えば、俺の心臓か脳といった即死の場所が斬られたり、貫かれたりすると、普通の人間と同じく死ぬ。簡単に言えば神々と同じく『体が朽ちることが無い存在』というわけだ。

俺は不老不死になる前に一度死ということを経験している。あの時はルーミアを助けることと、平将門を浄化させたいという思いが強かったのか自然と恐怖心が無かった。だが、いざとなって思うとやはり怖い。そうこれが当たり前なのだから。

想雅は決心をつけるかのようにもう一度顔を洗った。

「ふぅ……」と言いながら、かけてあるタオルで顔に着いた水滴を拭った。

鏡に映る自分の顔を見たときに、その後ろから黒髪の女性が通りかかろうとしていたが、洗面所にいる想雅を見つけ笑いながら言った。

 

「あら、今日は早起きじゃない」

 

「なんだ?俺がいつも寝坊しているみたいな口ぶりは……」

 

俺は寝坊なんてしてない。ただ、布団の中に入ってくる少女たちを起こさないように布団の中でゆっくりしているだけだ。決して2度寝なんかしない。

その女性……永琳には昨日まで実験台にされかけていた。されかけていただけだ。されていない。もし捕まったら自分の穴にデッカイ注射器を入れられてしまうのだから……今だに捕まっていないというのが唯一の救いだったりする。

 

「永琳、今日は俺が朝食作るよ」

 

「あなたって料理なんてできたの?」

 

「あぁ、一応、調理師の免許もあるし小さい頃から父さんに仕込まれたしな」

 

「意外だわ……」

 

「お前……弁当男子っていう言葉を知らないのか?」

 

想雅は永琳の前を通り手を振りながら言った。あれ?弁当男子ってこの時代にはまだ無かった言葉だけな?

そんなことを思いながら想雅は台所へと向かい冷蔵庫の中を確認したが、ほとんど食材が無く想雅は永琳の家を出て食材の買い出しへと向かった。

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

食材を買い出し、家に戻ってきた想雅は台所へと向かう途中寝起きのノエルと輝夜に廊下で出会った。

 

「おはよう、二人とも」

 

「おはようございます、ますたぁ~」

 

「おはよぉ~」

 

「今から朝食作るから顔を洗っていきなさい」

 

「「はぁ~い……」」

 

2人はまだ眠たいのか目をこすりながら洗面所まで行った。途中、輝夜がこけてその拍子にノエルも一緒に転ぶということもあったが、2人はお互いに笑いながら立ち上がった。

 

「ふふ、お父さんだわ」

 

「俺はまだ16歳だ。2人の子持ちとかどんな父親なんだよ」

 

永琳の冗談を想雅は苦笑いで返した。

台所まで行くと先ほど買ってきた食材を広げ、ささっと調理を開始した。

まずは、台所にオーブンシートを広げ、そこに先ほど買ってきたパイ生地を乗せて、フォークで空気穴をあけた。本当はパイ生地も一から作りたかったが時間がかかるため今回は市販のものを使う。

その後、200度のオーブンでパイ生地を5分焼き、生地が膨らんでいたらオーブンから取り出し、網で抑えて空気を抜き、今度は180度の熱でキツネ色になるまで焼く。

 

「生地が焼きあがるまで15分といったところか……」

 

それまで時間がかかるため、もう1つの朝食を作ることにした。

取れたて新鮮な卵を2個片手で持ちボールの中へと割る。そしてそれかき混ぜていき途中でコショウを少々入れて、またかき混ぜる。

次にフライパンにバターを強火でやや多いめに溶かし、なべ全体になじませる。バターが熱くなってきたら、その前に溶きほぐしておいた卵を流し入れる。

左手でフライパンの柄を前後に動かし、右手におはしを持って、フライパンに密着した部分の卵はすぐに焼けてかたまるので、手早くかき混ぜる。

全体がかたまりかけてきたためフライパンの柄を持ち上げ、底を斜めに引き上げ、おはしかフライ返しで卵を前方へ寄せるように巻いき、左手で持ったフライパンの柄の中ほどを右手で軽くたたきながら、卵をフライパンの中で回転させて全面を焼いた。

合わせ目が1回転して上にきたら、柄を逆手に持って想雅はお皿へと移した。そしてこれを後3回やらなければならない。

 

「おっと、15分だ」

 

4個目を作り終えた後、丁度15分経ったため生地をオーブンから取り出し、焼き上がった生地を4等分に切った。

その生地に挟むチーズクリーム作るため、想雅は新たなボールを取り出した。

ボールの中にクリームチーズと砂糖を入れてよく練り混ぜ、練り混ぜられた後に生クリ-ム、レモン汁、リキュール(蒸留酒に果実やハーブなどの副材料を加えて香味を蒸留酒に移し、砂糖やシロップ、着色料などを添加し調製したもの)を加え、角が軽く立つ程度になるまで泡立てる。

パイ生地に先ほど作ったチーズクリームを塗り、その間にフルーツを並べていく。

その上にパイ生地を乗せて、またチーズクリームとフルーツを並べ、最後にパイ生地を乗せて、粉砂糖をふりかけ、残ったフルーツを添える。

 

「よし、やっと完成だ」

 

想雅は出来上がった朝食を、食卓へと運んで行った。

そこには、待ちくたびれなかったのか輝夜が机に向かってぐでーっとしており、それと真逆にノエルはちょこんと座布団の上に乗っていた。永琳は先ほどから本を読んでいた形跡がある。

 

「おーい、できたぞー」

 

想雅の声に反応したのか輝夜が急にバッと体を起こし、「おっそいー」とぶーぶー言っているような口調で想雅に言った。

想雅は笑いながら「すまんすまん」と言いながら先ほど出来上がった朝食を3人の前へと置いていく。そして、ノエルの隣に来ると自分の分の朝食を置き、静かに座った。

想雅が両手を合わせるとそれに続くように3人も手を合わせた。

 

「それじゃ、いただきます」

 

「「「いただきます」」」

 

想雅は慣れた手つきで朝食を食べようとするが、3人はこの料理を始めてみるのか興味津々に見ていた。

 

「どうした?何か変な物でも入っていたのか?」

 

「何でもないわ。少し珍しかっただけ……」

 

永琳はそう言うと、想雅が作った料理を食べ始めた。

 

「……ッ!おいしい……」

 

「お口にあって何よりだ」

 

想雅はニッコリとほほ笑むと、次は輝夜に質問を受けた。

 

「ねぇねぇ、これなぁに~?」

 

「私も気になります」

 

輝夜が興味津々に2つの料理のことを想雅に訊いてきた。そういえば、まだノエルに俺が作ったところ一度も見せていなかったな……そりゃぁ、気になるよな。

想雅は2人が理解できるように黄色色をした料理を説明した。

 

「えーと、この黄色い料理はオムレツと言ってな」

 

「おむれつ?」

 

「そう、卵を割って溶いたものに、塩、胡椒などで味付けをして、バターや油をひいたフライパンで手早く焼いた卵料理だよ。元はモン・サン=ミッシェルというフランス原産の料理なんだ」

 

「へぇ~、そーなんだ。じゃぁこれは?」

 

輝夜は次にパン生地を何枚も重ね、その間にフルーツを挟んだ料理のことを聞いた。

 

「これはミルフィーユと言ってオムレツと同じフランス原産のお菓子なんだよ」

 

「みるふぃーひゅ?」

 

「ミルフィーユですよ、輝夜ちゃん」

 

ノエルは輝夜が言った言葉を修正するように教えた。

 

「三枚の生地の間にクリームとフルーツを挟んだお菓子で、表面に粉砂糖をまぶしたものだよ。フランス語で『ミル』は千、『フィーユ』は葉という意味で『千枚の葉』ということで一般的に知られているんだ」

 

想雅はわかりやすく説明したと思ったが、やはりこの歳では難しかったのか頭を傾けるような仕草をした。

 

「さっきからフランスフランスって言っているけど、それはあなたたちの故郷の名前なのしら?」

 

永琳は不思議そうに想雅に質問した。あっ、ヤベェ……ついフランスって連呼ちまった。それにモン・サン=ミッシェルも言っちゃったし……

想雅は少し戸惑いながらもその質問に答えた。

 

「あ、あぁ、確かに故郷と言ってもいいが……まぁ、俺たちとしたら『第二の故郷』と言ったところかな」

 

永琳は「そう……」と言ってそれ以上深入りはしなかった。

こんな日常的な会話も今日で聞けなくなってしまうのか……いや、まだ可能性があればもう一度ぐらいは会えるだろうか?

そんなことを思いながら想雅は朝食を取り始めた。もうすぐだ、ツクヨミ様が未来予知で妖怪が都市に攻めてくるときは……そして、俺の運命が決まる時でもあるのだ……俺は絶対に死なない。アイツと交わした約束を守るために……

あの夜に交わした約束を思い出しながら想雅は天井を見た。

 

「『安心して待っててくれよ』、か……」

 

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

想雅とノエルは『月移住計画』の詳細をツクヨミから聞くため、彼女の家まで歩いて行った。階段を上り終わった後、屋敷の奥から見覚えのある男性が現れた。

 

「お待ちしておりました。すでに皆様がご到着されていますのでお急ぎを……」

 

男性はそれを伝えると、想雅たちをその部屋まで案内した。

皆様?俺とノエル、ツクヨミ様以外にだれか来ているのだろうか?ましてや永琳と輝夜の2人ではないだろう。あいつらには「少し用事があるから出かけてくる」しか言っていないから、ツクヨミ様のところに行くとは言っていないからまずないと考えていいだろう。

 

「ここです、では私はここで……」

 

男性は彼らにお辞儀をして、通ってきた道を戻った。その途中後ろに振り返るとまた想雅たちに軽くお辞儀をした。想雅はその礼儀正しさに驚き、無意識に男性にお辞儀をした。

「ふぅ……」と想雅は息を吐くと、気合いをれるように拳を握った。

 

「ツクヨミ様、計画について少しご相談……が……って、え……?」

 

想雅は障子を開き、ツクヨミに計画の詳細を聞こうとしたが、その部屋は初めにあった時とは違う部屋で、広さは100畳もあるのかという大きな部屋だった。

その部屋に老若男女とわず十数名の人が集まっていた。

その奥に見覚えのある女性が手をくいくいやりながら想雅たちを呼んだ。

 

「あっ、来た来た。こっちこっち」

 

想雅たちはそれに従うまま想雅たちを呼んだ張本人、ツクヨミのところまでその部屋にいる人たちの視線を集めながら歩いて行った。

上座に座っているツクヨミの近くに2つの座布団が用意されていたため、ツクヨミの近くに想雅が座り、その横にノエルが座った。

 

「さて、全員そろったことだし、計画の詳細について話すわ」

 

ツクヨミが計画の詳細を話そうとすると、部屋の中にいる人たちが真剣な顔で耳を傾けた。

 

「最初にこれを言うわ。この『月移住計画』に協力してくれて感謝しているわ。だけど、まだ満足するのには早いわ。まだ、都民の移住が終わるまでまで慢心してはダメよ。その優越に浸っているときに失敗することが多いわ。だから、最後まで気を許さないようにッ!」

 

部屋全体に聞こえるぐらい透き通った声を上げ、その声を訊いた人たちはうなずく者もいれば、胸をドンと叩く者までいた。

 

「忠告をしたから、本題に入るわ」

 

本題に入った途端、部屋中にピリとした雰囲気が経ちこみ、想雅は唾を飲んだ。

 

「今から3時間後、この都市に数千、数万、もしかしたらそれ以上の数の妖怪が攻め込んできてこの都市は壊滅するわ。そのため、都民を移住用ロケットに誘導させる者、その誘導が終わるまで妖怪たちを食い止める者に分かれてもらうわ」

 

部屋中が騒ぎ始めた。それもそうだ移住用ロケットに誘導させる者はまだしも、数千、数万、ましてやそれ以上の妖怪の大群を食い止めることなんて死にに行くも同然な行為だ。

そのような混乱が招じているのにも拘らず無言に想雅は挙手をした。

 

「やってくれるの?想雅くん」

 

「はい、計画に協力した以上それを果たす義務があると思いまして」

 

その言葉を聞いたノエルも静かに手を挙げた。

 

「マスターにそのような覚悟があるのなら、私も挙手します」

 

想雅とノエルの言葉に一同、息を殺した。

このような歳もいかない子供に防衛を任せてもいいのかと。そのうち一人は幼気な少女だ。ツクヨミを除き部屋にいた一同がそのような不安が込みあがった。

その中から眼鏡をかけたインテリ系の男性が眼鏡をクイと上げながらツクヨミに「1つよろしいでしょうかな?」と挙手をした。

 

「構わないわ」

 

ツクヨミが発言を許可したため、彼はその場に立ち一同にこう言った。

 

「私は歳もそれほどいかないそんな子供ら2人に移住のための防衛を任せてもいいのでしょうかと思います。ましてや我々はその子供のことを全く知らないではないですか。聞いた話によると1週間前にこの都市に流れ着いたよそ者と聞きましたが……それは本当ですかな?」

 

眼鏡をかけた男性は想雅に返答を求めるような口ぶりを見せた。

 

「あぁ、そうだ」

 

想雅はそう返答すると男性はニヤリと笑い、次にこう言った。

 

「よそ者である彼らを本当に防衛できる信用してもよいのでしょうか?それ以前に防衛できるぐらいの力があるのか。例えば、攻めてくる妖怪の密偵ということもあり得ると思います」

 

一同が騒然とした。

確かに、妖怪が攻めてくる1週間前に旅人が流れ着くのはどう考えても妖怪の密偵と考えてもおかしくない……と考えている。

 

「その根拠と証拠は?」

 

想雅もその男性に負けないばかりに、彼に根拠と証拠を求めた。

 

「先ほども言いましたが、1週間前にあなたたちがここに訪れたという目撃証g「根拠はわかったが、俺たちが妖怪(・・)という証拠はどこにある?」そ、それは……」

 

想雅の言い返しにより彼は口を噤んだ。

一同の注目を集めてしまった想雅は少し戸惑いながらも、話を続けた。

 

「えーと、誰か妖怪に関する情報とかは……」

 

想雅は誰かに助言を求めるように言った。すると、1人の男性が手を挙げた。図体がこの部屋にいる人たちより大きく、服越しからもわかる屈強な筋肉を持つ男性だった。

 

「この『月移住計画』のため妖怪のことをいろいろ調べて分かったことだが、奴らは己の欲を満たすために暴れており、協力するような仲じゃないということが分かった。それを元にするとだ……別に密偵とか送り込むような奴らじゃないことがわかるな……」

 

屈強な男性の言葉を聞いて眼鏡をかけた男性は「くっ……」と悔しそうな声を出し、無言で元の場所に静かに座った。

これで俺たちが妖怪じゃないということが証明できたから少しは安心かな。

想雅は少し気を緩め落ち着きを取り戻してきている。だが、この時代の妖怪は気性が荒いらしい。元の世界では何だかんだで大人しいというか馬鹿馬鹿しいというか面白い奴らばかりだった。こんな妖怪は幻想郷だけなのかな?

ツクヨミが「あー」と何かを言いたそうにしていたため、想雅とノエルを加えた部屋の一同がツクヨミの方を見つめた。

 

「先に言っておくけど……想雅くんは私より強いよ」

 

その言葉を聞いた瞬間、部屋中の空気がピキッと凍るような感じを想雅は感じた。っていうかそれを今言う必要はあったんですかねぇ~、ツクヨミ様……

 

「つ、ツクヨミ様……そのような御冗談を……」

 

先ほど想雅の発言に負けた眼鏡の男性が頬をひきつらせながら「ははは……」と言っていた。しかし、ツクヨミは首を横に振った。

 

「神である私がそんな出鱈目な冗談を言うと思っているの?」

 

その言葉を聞いた一同は先ほど凍りついた空気から一変して騒ぎ始めた。やっぱ、こんな空気あまり慣れないな……それより横にいるノエルが俺の膝の上で寝ているんだが、別に問題は無いのかな……

想雅は寝ているノエルの頭を撫でながらそんなことを思っている。撫でているのは自分の精神を落ち着かせているためであって決してやましい気持ちなんて無い。

ツクヨミがその場に立ち想雅の方へと歩いていった。

 

「だから、こんなことも出来るのよ」

 

「おふっ」

 

そして、想雅を抱いた。このような公衆の面前で抱かれた為、とても戸惑っている。

ちょ、まっ、こんなところでダメですッ!ホントッ!ほのかに柔らかいものがあたっていますからッ!メッチャ恥ずかしいですッ!やめてください死んでしまいますッ!

 

「こんな感じでスキンシップも取れるんだからね」

 

想雅から離れそんなことを堂々と言うと元の場所まで戻って行った。運が良かったのか想雅の膝で寝ていたノエルは「う、うぅ~ん」と言っただけだった。ホントノエルはどこでも早く寝れるんだからな。

その現状を見た一同はしばしの沈黙が起こった後、妖怪に関して助言をしてくれた屈強な男性が手を挙げた。

 

「小僧に質問だが、旅人であるお前らがこの都市を護衛する意味がある。ここは我らの居場所であり、お前が守ることに何も利益が無いと思うがな」

 

男性は想雅がなぜこの『月移住計画』に関して関わるのかという質問をした。

確かに俺たちにとっては関係ない事だ。1週間無事でいられればいいことだがな……

 

「あなたは妖怪にこの都市を壊されるのを指をくわえて見ていろ……とでも言うのですか?」

 

予想外の想雅の発言に屈強な男性は「ほう……」と顎を人差し指と親指で押さえた。

 

「協力したから、命令だから……答えはNOだ。全ては自分の意志だ。守りたい人がいるから戦う、この都市が好きだから戦う。それだけの理由じゃ不満ですか?それ以前に守ることに理由なんて必要ですか?」

 

想雅はノエルを撫でながら言った。しかし、自分もそんな大層なことを言えた義理ではなかった。

平将門に乗っ取られたとき、ルーミアは助けることができた。しかし、俺が死んでしまったことにより逆に泣かせてしまった。つまり、事実的は守ることができた……が、結果的に守ることができなかったということだ。

男性は頷た後、笑うように自分の顔を手で覆った。

 

「ガハハハハッ!こりゃぁ一本取られた。いいだろう……ツクヨミ様、俺たちの部隊も護衛に回ります」

 

想雅の発言に「参った参った」と答えながら護衛に回ることに挙手をした。

 

「大佐らしいです。では私も……」

 

大佐と呼ばれた屈強な男は隣りにいた女性に少し笑われた。そして、その女性も護衛任務に回ることを決意したのかその場で静かに手を挙げた。

 

「中尉、ここは女が出る幕じゃない」

 

「そんなこと言って、誰が暴走したあなたを止めるのですか?」

 

「そ、それはだな……クソ、好きにしやがれ……」

 

中尉と呼ばれた女性はニッコリと笑いながら大佐に質問をした。しかし、それに戸惑った大佐は戦いのときは暴走するらしく何ていうか自ら護衛任務を置いて、1人戦いに行くみたいなことになるのか?

大佐は「久しぶりに暴れると思ったのだがな……中尉の奴……」とブツブツ言っていた。

 

「それじゃあ護衛の方は想雅、ノエル、大佐、中尉に任せるわ。意義ある者は挙手を」

 

意義ある者は……0人。

だれも、彼らに意義が無いということがわかった。

この後の会議は護衛任務の役割人がきまったため大きな騒ぎもなく事を成した。

 

 

 

 

 

 





さてさて、お分かりの人がいると思いますが次回妖怪たちと戦います。ゴールデンウィークだから早く書くことができるかもです。はい。

想雅がレッツ、クッキングしている時、これを見ていると料理ができそうだなと書いた自分も思ってしまった。

感想待っています!
次回もお楽しみに!



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月移住計画護衛任務



何か、いきなり高校でやったクレペリン検査の結果がこれだった。

・負けず嫌い(良い意味で買い負けにこだわり、上を目指すこと)

・機敏さ(素早く状況を掴んで、効果的な対応ができること)

・旺盛な好奇心(南緯でも興味がわき、実際に体験しようとすること)

うわぁお……まさに俺。( ・´ー・`) ドヤァ・・・

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり。




会議が終わった後、妖怪が攻め込んでくる時間帯までは少し時間があったため、護衛任務の配置と集合時間、護衛時間などといったことを訊いてから、想雅とノエルはその部屋を後にした。

会議が終わって間もないのに先ほどまで静かだった都市はすでに騒ぎ出している。今まで見ることが無かった移住のためのロケットが地上に姿を現していた。

妖怪が来る前にロケットに避難していても、後1、2時間の量では間に合わないだろう。だからそのための護衛任務だ。

想雅たちは避難中の人の波をかき分けながら前へと進んでいく。そして、目的の場所に到着するも「もういないだろう……」ということを空を仰ぎ呟きながら部屋へと入って行った。

しかし、誰かの帰りを待っていたのかと永琳が玄関まで出迎えてくれた。

 

「遅いじゃない。もうすぐ妖怪が攻めてくるのに……」

 

「すまんすまん、少し野暮用があってな」

 

「そんなことより早く準備しなさい」

 

永琳は急ぎながらそんな言葉を後にして身支度を整えて行った。しかし、想雅たちには身支度するのは不要だった。彼らは神の迎えを待っているからだ。

想雅はとりあえず玄関から居間へと向かった。そこには輝夜が寝転がっており、ふすまが空いたのに気付いたのかその方向に首を動かした。

 

「そーが、おかえりー」

 

想雅が帰ったのか、むくっと立ち上がり走っていくと想雅に抱き着いた。

 

「ただいま、輝夜」

 

そんな輝夜に対して想雅は優しく頭を撫でた。このようなやり取りも今日で最後か、寂しいねぇ……

後から入ってきたノエルは想雅が撫でるのをやめると、ガバッと輝夜に抱き着いた。

 

「ど、どうしたの?ノエルちゃん……」

 

「しばらくギュっとさせてください……」

 

やはり、ノエルも寂しいのだった。このような行動を見てしまうとノエルは刀ではなく正真正銘の人と同じで感情を持っていること、つまり彼女はすでに……いや、最初から人間なのではないのか?と思わせられることもある。しかし、このことを知っているのは俺を加え、チャラ神か四大天使の皆さんと一応人間と思っているツクヨミ様ぐらいしか知らないことだ。

しかし、その感情を感心するうえで少しの恐怖も思えた。

俺はノエルを人として、1つの存在として見ているが、もしも俺が物と見ていたら今のノエルの感情表現は無いだろう。挙句の果てにただ利用されるだけのものに……もう、これ以上は考えたくない。自分の心が痛んできやがった……

 

「どうしたの?早くしなさい」

 

永琳が居間の中に入って来た。想雅は彼女の方を向くがノエルはまだ離れたくないのか輝夜にずっと抱き着いたままだった。

そして、彼は彼女に告げた……

 

「今から俺たちは都市の護衛任務をしに行く」

 

その言葉を聞いた永琳は初めは嘘でしょ?と思ったが、先ほどの緩い表情は見せずにずっと真剣そのものの顔だったため彼女は信じる他なかった。

 

「そ、そんなこと……死にに行くと同じじゃないッ!」

 

「あぁ、そうだな。死にに行くだけだったらただの馬鹿野郎だ……だが、人を助けない方がクソッタレの大馬鹿野郎だッ!」

 

想雅は永琳に向け言った。

だけどよぉ……俺はそれ以上の馬鹿野郎だ。アイツを泣かせてしまった。いつもは本当に闇の妖怪なのかと思わせるぐらいの明るい笑顔を俺は崩しまった。

だが、そんな馬鹿野郎でも約束は守る……男には二言は無いからなッ!

 

「だがな、俺は死なない。あの日交わした約束を果たさないまで死ぬことは許されない……それが、馬鹿野郎とクソッタレの大馬鹿野郎以上の男が成さなければならないことだからだッ!」

 

彼の目は真っ直ぐだった。ただただその約束を果たすために生きようとする想いが……

 

「……わかったわ……だけど、生きて帰ってきて頂戴……」

 

「あぁ、必ずだ」

 

想雅は真面目の表情から緩くなり、「わかった」という笑顔の表情で言った。そんか会話をしている最中に想雅の服の裾をひっぱる輝夜の姿があった。

 

「どうした?」

 

想雅はしゃがみ、輝夜と目線を同じぐらいにした。

上からでは分からなかったが目線を同じにした瞬間、輝夜の瞳から涙が溢れ出ていた。後ろにいたノエルにふと目線をやると彼女の瞳からも涙が溢れていた。

この状態を見た想雅は「ノエルが輝夜に言ったのか……」と感じた。

 

「いっしょに……いかないのぉ……?」

 

輝夜は想雅に抱き着き、自分の顔を見せないように言った。しかし、すでに想雅に見られている。

 

「あぁ、そうだな……輝夜たちを避難させるまではな……」

 

想雅は輝夜を抱きながら頭を撫でた。

 

「ほんとぉ……かぐやたちをひなんさせてからいっしょにいくのぉ……?」

 

輝夜が返してきた言葉に想雅は口を噤んだ。

 

「あ……あぁ」

 

彼は自分の心を殺しながら言った。

想雅がそう言うと輝夜が自分から離れ明るい笑顔を見せた。それを見た瞬間こころの奥底がズキッと痛む感覚が想雅を襲った。想雅は自分の胸を押さえながら立ち上がった。

 

「ぐずぐずしていると逃げ遅れるぞ。妖怪が来るまで後数十分だ」

 

想雅はそう2人に告げ早く逃げるように指示をした。そして彼女らが玄関前まで行くと、想雅とノエルの2人は永琳と輝夜が人ごみの中に消えていくのを見送っていった。

 

「なぁ、ノエル」

 

「なんでしょう、マスター」

 

ノエルの顔は少し赤いが涙はすでに止まっていた。

 

「嘘より重い罪なんてあると思うか……?」

 

想雅が言った言葉にノエルは答えなかった。いや、答えようがなかったからだ。2人は今その状況に立っている、想雅にもノエル自身にも言えた義理が無いからだ。そして、想雅は「大丈夫だ、大丈夫だ」とノエルの頭を撫でた。

2人は心を落ち着かせてから、ツクヨミに指定された場所へと向かった。

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

想雅たちが指定された場所は妖怪たちが進んでくる門の近くだった。今は門の城壁に上り妖怪の現在位置を確認している。

 

「目標……100メートル圏内姿無し、200メートル圏内姿無し、300メートル圏内姿無し、400メートル……」

 

想雅の隣りに仰向けになって双眼鏡を覗いている男性が呪文のようにブツブツ言っていた。彼は頭にフードを被っていたためあまり顔を見ることができなかった。背中には大型のスナイパーライフルが備わっていた。

 

「そのスナイパーライフルは?どのような種類で?」

 

想雅は少し興味があったのか恐る恐る聞いた。

 

「NTW-20……」

 

NTW-20……やっぱり聞いてもわからない。スナイパーの男性はひょいと想雅に双眼鏡を渡した。そして、「見てみろ」と言われた為想雅は双眼鏡を近づけた。

しかし、平原だったどこも平原だった。妖怪の影や形すらなく美しいほどのぺったんこだった。

 

「10時の方向……約2300メートル付近に敵の姿確認……予想到着時間……約15分……」

 

10時の方向だから……今向いているのが北の12時の方向だから少し西に……2300メートル……うーん、見えない。影や姿も見えない。そして、予想到着時間が15分。やっぱ避難には間に合わないか……

 

「どう?妖怪は確認できたかしら?」

 

後ろの方から女性の声が聞こえてきた。想雅はふと後ろを見ると、階段を上ってきている女性の姿が見えた。その後ろから先ほどまで想雅の近くにいなかったノエルが上ってきた。

 

「目標……約2300メートル……いや、2200メートル……予想到着時間……約15分……」

 

想雅がその場に置いた双眼鏡を手に取り、素早く予想距離と予測時間を言った。

その間にノエルはトテトテと想雅の近くに寄り添った。

 

「何していたんだ?」

 

「中尉とお話をしていました」

 

何……だと……

こんな非常事態というのに呑気におしゃべりなんて……まぁ、女の子同士だし当たり前の事かな?

想雅は手元を見て霊力、『聖』の力、『魔』の力が安定しているか調べた。不老不死になる前と比べたらだいぶそれらしい能力になってきたと思うが、まだまだ調子は良いとは言えない。

 

「想雅……くんですよね?」

 

「え?あ、はい。天上想雅です」

 

急に声をかけられたため少し驚いたが、気を緩めないように言った。

 

「そんなに固くならなくていいわよ。何せあのツクヨミ様に勝った人ですから」

 

「いえいえ、滅相もございません」

 

想雅は頭を横に振りながら言った。

何だろう……中尉が誰かに似ているような気が……あぁ、ガブリエルさんと性格が似ているのか。おっとりしていているところがね。

 

「だけど、協力してくれてありがとう。本来ならあなたたちには関係なかったことなのに、巻き込んでしまって……」

 

中尉は申し訳なさそうに言った。

 

「気にしないでください。指をくわえて見てるぐらいならまだ行動した方がいいと思いましてね」

 

想雅は隣りにいるノエルを見ながら言った。

 

「おーい、オメェらーーーーーッ!そろそろ準備しろぉぉぉぉぉッ!」

 

高台の下から大佐の大きな声がその場にいる人たちの耳に響いた。

 

「あらあら、大佐がすでに張り切っていますね」

 

「大佐、凄く五月蠅すぎる……俺、疲れる……」

 

部下から愚痴が出ていますよ大佐さん。確かにこのテンションの高さには気がやられそうだしな。スナイパーの人には同感する。

スナイパーの人以外は高台から降りて戦闘の準備を始めた。まぁ、俺は準備するものは無いしな。しいといえば心を落ち着かせるぐらいだからな。しかし……

 

「マスター、大丈夫ですか?顔色が悪いようですが……」

 

落ち着かせようとしても落ち着けない。

ツクヨミ様が見た未来予知で俺が死ぬと予測されたこともあったが、それより怖いものが……

 

――――――そう、命を奪うことだ。

 

今回の護衛任務で妖怪たちの命を奪ってしまうという恐怖があるからだ。

別に殺そうとする気は無いはずなのだが、手が誤って殺してしまうということがあるかもしれないからだ。

勝利の塔の最上階で会った黒騎士も言っていた。

 

――――――初めは怖かったさ。痛いのも、死ぬのも、殺すのも……しかしよぉ、何回も戦場に赴き、過酷な戦火の中を駆けていくうちに、慣れちまったよ。痛みにも、死ぬのも、殺すのも……そこから俺はすでにおかしくなってきたんだ……

 

――――――殺戮に手を染め、残虐のことをした……だけど、そんなこと俺は知らない、殺らなきゃ殺られる、そんだけだったんだよ。そして自分を見失なった……

 

もし、今回妖怪を殺してしまったら狂気に染まった黒騎士みたいになるかもしれない。

俺は死ぬという恐怖より、狂気に染まる恐怖感が今心の中で勝っている。

死んだなら恐怖感もなく何も感じないままいられる。しかし、狂気に染まるということは生きたままただ本能の赴くまま、自分の意識がある中で殺戮を好む……そのようなことがあるかもしれない、だから怖いのだ、誰かの命を奪うというのは……

恐怖に脅えている想雅の両手をノエルがそっと手を添えた。

 

「私はマスターの剣、マスターが思うがままに……私はいつもあなたの傍にいます。だから、あまり一人で抱え込まないで」

 

「すまないな……みっともない姿を見せて、我ながらダメだな俺は……」

 

ノエルの顔を見ながら想雅は「ははは……」と苦笑いした。

 

「全員、集合しろッ!」

 

またもや大佐の大きな声が耳に響いた。ふと壁にかかっていた時計を見ると妖怪が攻めてくる5分前だった。想雅は急いで大佐のところまで行った。すでに大佐、中尉、スナイパーの人が集まっていた……って、え?

 

「すみません、これで全員ですか?」

 

「あぁ、そうだが……どうした?」

 

いやいや、どうしたじゃありませんよ。どう見ても人数が少なすぎるではありませんかッ!これで時間を稼ぐことができるのかよッ!

 

「ん?あぁ、そういうことか……確かに俺を含め、中尉と少尉そして小僧たちしかいない。あまりにも人数が少なすぎるといったところか……」

 

大佐は想雅が言いたいことがわかったのか、頷きながら言った。

 

「まぁ、人数は少ないが実力は本物だ。妖怪の数千、数万ぐらいは何とかなるしな」

 

大佐は豪快に笑いながら言った。

ま、まぁ、大佐の服越しからでもわかる屈強な筋肉を見れば大佐の実力はわかるが、中尉は女性だし、スナイパーの人……少尉はミステリアスで2人とも実力が分からない。ま、俺みたいなガキとノエルみたいな少女がツクヨミ様に勝ったって言ったら信じてもらえるのかと同じだな。

外見はともあれ大佐が言うのなら実力は本当だろう。

 

「さて……お前らついに時が来たッ!」

 

大佐はみんなに気合を入れるように張り切って叫んでいる。

 

「俺たちは戦をしに行くわけでは無いッ!あくまで時間稼ぎだッ!奴らを殺さなくてもいいッ!あくまで時間稼ぎだからだッ!我らと奴らの被害を最小にして時間稼ぎをするッ!被害を最小に収めるには一人ひとりの状況判断、行動力にかかっているッ!そこんところを忘れるなッ!」

 

大佐のカリスマが溢れながらみんなに言い聞かせていた。

 

「そして……皆、生きて帰還するようにッ!以上ッ!」

 

大佐はこれ以上話すことが無いため、想雅たちに背中を向けて前へと歩いて行った。その後に中尉が続いていき、少尉は門の高台へと上って行った。

 

「私はマスターの剣、マスターの想うがままに」

 

刀へと変化したノエルを想雅は掴み、大佐と中尉の後をついて行った。

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

地平線が目視できるぐらいの広い平原に目視できるぐらいの妖怪の大軍がこちらに向け攻めてきている。

都市との距離は約1500メートル。

 

『あーあー、マイクテストマイクテスト』

 

想雅の耳元から大佐の声が聞こえてきた。

ノエル以外の全員が耳にインカムを装着しており、お互いの状況や情報を伝えることができるようになっている。

 

『少尉、今の進行状況は?』

 

大佐がインカム越しで少尉に話しかけた。

 

『大佐たちとの接触予想時間……約1分半……避難状況……70%を切った……』

 

避難状況は問題なしか……だが、接触時間がもうすぐで来る……奴らが……

 

『このまま問題なく事が運べればだいたい15、20分……多くて30分だな』

 

だが、戦闘をするということはそれ以上の時間がかかることだってある。

大佐は今までの妖怪との戦闘で経験している。奴らは欲のままに動いている分、何も考え無しで真正面から突っ込んでくるだろう。しかし、この予測はあくまで予測だ。完全とは言い切れない。

 

『例え奴らが残ったとしても我らは時間が経てば引き下がる。いいなッ!」

 

『りょうかーい』

 

『了解……』

 

『わかりました』

 

全員の了承を確認したと同時に大佐は腕に巻いてある時計を見た。

30、29、28と接触時間まで迫ってくる。

大佐は自分の拳と拳を同時に合わせ気合を入れた。

 

『想雅くーん』

 

『あ、はい』

 

インカム越しから中尉の声が聞こえた。

そういえば、中尉の武器ってなかったような……大佐みたいに肉弾戦ではまず無いし、変わったところといえば戦闘服なのか大きな白いコートを着ていたような……

 

『一緒に頑張りましょうね』

 

『はい、お互い頑張りましょう』

 

中尉は想雅と自分に向けて応援をした。

話をしている間に妖怪の大軍はすでに想雅たちを捕らえたのか走ってくる者がいた。

 

『ただいまから都市護衛任務を開始するッ!諸君、心してかかれ!』

 

インカム越しの大佐の声が聞こえると大佐の近くにすで3体の妖怪たちが囲んでいた。そして1体の妖怪が大佐に向け襲い掛かってきた。

 

「フンッ!」

 

大佐の実力は想像を絶するぐらいだった。

向かって来た妖怪を自分の拳で腹に打ち込んだ。その衝撃が大きな音を出して妖怪はその場に倒れた。

しかし、倒れた妖怪を見たとしても残り2体の妖怪は止まらない。

2体目の妖怪が向かてきた。しかし、動作もなく大佐は小回りが効くと思わない巨体を動かしその攻撃を避けた。向かってきた妖怪が後ろを振り向こうとして瞬間、重みがかかった拳が顔面に直撃した……ッ!その妖怪は回転しながら飛んでいき地面に刺さった。

攻撃し終わった後を狙って3体目の妖怪が大佐の背中を自分の鋭い爪で攻撃した。しかし、大佐の軍服だけが切り裂かれたが、彼の肉体に目立った外傷はない……つまり、無傷だった。

確かに爪は入ったはずだが、彼の肉体に傷が一つもついていない。

 

「俺の筋肉はァァァァァッ!鋼よりも頑丈だァァァァァハッハッハッ……ハァッ!!!」

 

叫んだと同時に大佐は攻撃した妖怪のアゴに下からアッパーを捻じ込んだ。しかし、それだけでは治まらなかった。

上空に飛んで行った妖怪を追撃するかのように大佐は己の脚で地面を蹴り妖怪の近くまで飛んで行った。そして、その妖怪の顔を自分の手で鷲掴みにしそのまま地面に叩きつけた。その衝撃で妖怪は地面から浮き、その瞬間で大佐は妖怪の腹に向け己の剛腕の腕を打ち込んだ。

妖怪は弾丸のように飛んでいき目の前にいた妖怪たちを蹴散らしていき、地面に到着すると轟音と砂煙と共にクレーターができるぐらいの速度だった。

その光景を見た想雅はある言葉を溢した。

 

「ぶ、ブ○リーがいる……目の前にリアルブロ○ーがいる……」

 

目の前にリアル伝説の超サイヤ人らしき大佐がいるのだ。もう惑星破壊できるんじゃないかな。

 

「例え複数で来ようとも、このオレを超える事はできぬぅ!」

 

気を一気に放出するかのように妖怪たちに向け叫んだ。

 

「あらあら、いつも通りですね」

 

いつの間にか隣りにいた中尉が笑いながら言った。

アレがいつも通りなんですか?もう戦闘狂にしか見えませんけど……

想雅は苦笑いしながら後ろを振り向いた。そこには4体の妖怪たちが戦闘態勢をとっている。そして、想雅たちに向け1体の妖怪が地面を蹴った……がッ!

 

 

バシュゥゥゥゥゥン……ッ!

 

 

遠くから銃声が聞こえた。その瞬間妖怪の片腕が原型を止めないままはじけ飛んだ。

 

「グギャラァァァァァァァァァァッ!」

 

その妖怪はその場に倒れもがき苦しんでいる。その光景を見た3体の妖怪はキョロキョロとその弾丸が飛んできた方向を探している。

しかし、奴らの視力と動体視力では弾丸が飛んできた場所なんてわかりはしない。ましてやその姿さえ捉えることができないのだ。

 

「目標命中……誤差約0.8……風速0.4……」

 

そのスナイパーは距離が1500メートル地点にいる妖怪を狙撃した。

目標の誤差は肉眼、風速は感覚でとらえた。

彼は目標の誤差と風速を言うと同時にシリンダーの後部に親指を添えてそのまままっすぐ後ろにシリンダーを引き、弾丸を撃ち終わった薬莢を外に排出し、シリンダーを押し込みリロードをした。

その速さたったの4秒。

そして、目標たる妖怪に狙いを定め……打ち出すッ!

 

 

バシュゥゥゥゥゥン……ッ!

 

 

弾丸が打ち出させる音と反動ともに妖怪に向け一直線に向かって行った。またもや命中。そして、10秒もかからないまままた1体、2体と仕留めていった。

 

『調子がいいですね、少尉』

 

『前線を援護するのが自分の役目……当たり前……』

 

少尉はNTW-20のスコープを覗きながら言った。

想雅はまたある言葉を溢した。

 

「ゴ○ゴがおる……ゴル○13が……」

 

何この部隊……個性が強い人が2人もいるやないか……

○ロリー、○ルゴ13……このながれで行くと中尉も……

想雅が隣りにいる中尉を見ようとしたが、その中尉はすでに想雅の目の前に立っており、先ほどと比べ物にならないほどの数の妖怪が周りを囲んでいた。

想雅は援護に向かおうとしたが何やら鎖みたいな物体が地面に垂れていた。先をたどっていくと先端に剣みたいな刃が備わっていたためその一歩手前で止まった。そして1歩づつ後ずさりしていき、インカムから中尉の声が聞こえてきた。

 

『想雅くーん、その場から動かないでくださいね~』

 

先ほどまで垂れていた鎖が螺旋を描くように動きだし、周りにいた妖怪たちを蹴散らしていった。その動きはまさに生き物。その中心に中尉の姿が見えた。

長く白いコートの袖口から片袖に3本づつの鎖が垂れていた。想雅はそれと似た束縛『レイジング・グレイプニル』を思い出したためか自分の腹に手を添えた。自分を縛り、そして刀で刺したものだからだ……

鎖は中尉の袖口の近くまで戻っていく指と指のスキマに剣の刃らしきものを挟むと、近くにいた妖怪に向け放った。右脚、左わき腹、左腕に刺さるとその妖怪は鎖の力によって宙に浮き、妖怪が複数いる場所に投げられていった。

 

「なぁ、ノエル……」

 

『なんでしょうか?』

 

想雅はふと何かを思いノエルに話しかけた。

 

「俺たち要らなくね?」

 

今までの光景を見て想雅は思った。人数は少ないが実力は予想以上だった。ブロリ○、ゴルゴ○3、そして、鎖を自由自在に操る中尉……この中だと俺が1番の空気だと思う……

そんなことを思っていた時だった。インカム越しから少尉の声が聞こえた。

 

『ロケット1機目発射確認……2機目発射確認……護衛予想時間まであと7分……』

 

その情報を聞いた瞬間、想雅は後ろを振り向いた。上空にはすでに4機のロケットが月に向け発射されていた。

 

『よし上出来だ、そろそろ撤退の準備をしろ』

 

大佐の命令で想雅たちは後ろに少しづつ退却しながら戦闘を続けている。しかし、そううまくはいかない。

少尉から連絡が入った。

 

『緊急事態……ロケットに妖怪が向かっている……ロケットに近づけられたら狙撃不可能……』

 

上空を見ると鳥型の妖怪がロケットに向けて飛んで行っている。

 

『チクショウッ!鳥型の妖怪だとッ!?』

 

妖怪を調査していた大佐も驚きが隠せなかった。

 

『私の鎖でもあの距離は無理だわ……』

 

中尉もお手上げの状態だった。

上空では少尉の狙撃により撃ち落とされている妖怪がいるが、ロケットに難なく近づいている妖怪もいた。

 

『俺が向かいますッ!大佐たちは撤退の準備をッ!』

 

インカム越しから先ほどまで空気だった想雅の声が聞こえた。想雅は早く妖怪たちを落とすべく脚に『魔』の力を流し込み、上空に向け飛んだ。その速さは少尉の撃ちだす弾丸並、数秒もかからず目標の妖怪に近づいた。

 

「落ちろッ!」

 

想雅は刀で妖怪の翼を斬り落とした。翼を失った妖怪はバランスを失い地面に落下して行く。近くにいた妖怪たちが想雅に向け翼から羽の弾丸を飛ばしてくる。

 

「龍は偉大である。あらゆるものを凌駕する覇気を持つがために。覇気『龍王の威圧』」

 

自分に向かってくる羽の動きを拘束し、周りにいた妖怪の自由させ拘束した。

 

「ハッ!」

 

威圧を1段階強くし、より拘束を深めた。強さに耐えられなかったのか羽の弾丸たちは想雅に当たることなく儚く散った。

 

「もういっちょッ!」

 

もう一度威圧を強くした。今まで宙に浮いていた妖怪のほとんどは次々と白目を剥きながら気絶していった。残った妖怪は想雅自ら赴き、『魔』の力を込めた拳で腹に打ち込み気を失わせた。

そして、拘束を解くと同時に気を失った妖怪たちは地面へ落ちて行った。

 

『ロケット8機目発射確認……護衛予想時間まであと4分……』

 

そのことを聞いた大佐は張り切って皆に伝えた。

 

『よく耐えてくれた、少尉は続けて我らの護衛をッ!中尉、小僧、退却だッ!』

 

大佐の指示通りに少尉は想雅たちの護衛を続ける。想雅も地上に降りようとして地面を見ようとした瞬間だった。

 

「クエェェェェェェェェェェッ!」

 

想雅の頭上上空にまだ1体残っていたようだ。

しかも、その妖怪は先ほどの鳥形妖怪のような感じではなく、6枚の翼をもつ大型の鳥形妖怪だった。そいつは今打ちあがったロケット目がけて飛んでいた。

 

『緊急事態発生、上空に大型の妖怪が現れたりッ!大型妖怪を目標とし、ただいまから目標を駆逐するッ!』

 

『待てッ!小僧。無茶だッ!』

 

大佐は想雅を引き留めようとしたが、彼は見捨てることができずそのまま脚に『魔』の力を込め、即座にその大型の怪鳥に向かって行った。

 

「ハァァァァァァァァァァッ!」

 

想雅は『魔』の力を込めた刀で斬りかかろうとしたが、図体に似合わず細かい動きにより攻撃は避けられてしまった。

 

「クエェェェェェェェェェェッ!」

 

怪鳥は想雅に向け奇妙な声で叫んだ。

その声は想雅の耳を揺るがし船酔いのような目眩のような感覚に襲われた。一瞬バランスが崩れかけたが何とか耐えきり、体勢を戻すが目の前にはこちらに向かってくる怪鳥の姿が……ッ!

 

「マズイ……ッ!」

 

想雅は当たる範囲が少ない下側に避けようとしたが……

 

「ガァッ!」

 

奴の狙いは想雅自身だった。

怪鳥は下に避ける想雅を視界内に収め、自分の脚の爪で攻撃した。想雅は右肩をやられてしまい今度こそ体勢を崩してしまい落下していった。しかし、想雅は諦めなかった。

 

「英雄の魔となる奇怪の槍よ。稲妻の如く鋭き鏃と成り、確実なる勝利を遣わせ。魔槍『ゲイ・ボルグ・レイン』」

 

負傷している右腕ではなく手ぶらだった左腕に『魔』なる槍を出現させ怪鳥に向け投げた。

投げられた槍が30の鏃となり、多彩な動きを見せて怪鳥を貫いていくッ!

 

「クエェェェェェッ!クキュラァァァァァッ!」

 

6の翼を貫き、腰も貫き、足も貫いた。

怪鳥もバランスを崩し地面へ落下して行く……

 

「ノエルッ!」

 

『はいッ!』

 

想雅が呼ぶと左腕に鞘が出現しそれを掴んだ。そして、鞘を腰に構え、刀の刀身に『魔』の力を込めて……押し込むッ!

 

 

ゴォォォォォォォォォォッ!

 

 

暴風と轟音が起こり、そのまま地面へと落下していった。それと同時に轟音に紛れて怪鳥も落下した。

想雅は鞘から出た暴風により落下速度を抑え、衝撃を吸収させた状態で着地した……が……

 

「カハ……ッ!」

 

右腕から多量な出血を起こしその場に仰向けになって倒れた。

 

「マスターッ!」

 

ノエルが刀から少女に変化し、倒れている想雅に寄り添った。

想雅は右肩を集中的に『聖』の力を送り込み傷を癒やしている。

 

「だ、大丈夫だ……それより早く撤退を……」

 

先ほどの衝撃でインカムが壊れたのかザァァ……と通信が途絶えたままだった。五月蠅かったため耳から引き抜き、そこらへんに投げた。

その時、想雅の頭にある言葉がよぎった。夕暮れの日、ある一室の中で予知された言葉だった。

 

―――――月に一緒に行かないとこのままだと死ぬよ。

 

想雅の背中に寒気が生じた。

そして、その原因となる予知の言葉もだ……

 

――――――そう、ノエルちゃんを庇った想雅くんが妖怪の攻撃で心臓をズバッ!……っとね

 

俺……ノエル……妖怪……俺の方を切り裂いた爪。そう、ここに全てのピースが当てはまったのだ。

想雅はバッと顔をあげ、何も考えずに横を見た。そこには先ほど地面に落下し血だらけとなった怪鳥の姿が……

不意な出来事だったため、想雅は『聖』の力を流し込むことを中断し、ノエルを押し出した。

 

「きゃッ!」

 

押し出されたノエルはお尻から地面につき、急いで想雅の方を向く。

 

「逃げろ……ガッ!」

 

想雅もその場から逃げようとしたが、ノエルを押し出したため右肩の傷口が開いてしまい。その場に崩れた。

 

「キュエェェェェェェェェェェッ!」

 

怪鳥の奇妙な声によりより一掃逃げることが不可能になってしまった。船酔い、目眩、貧血、吐き気、幻聴……さまざまな症状が想雅を苦しめる。

そして、動けなくなった想雅を見て怪鳥は己の脚の爪を使い想雅に斬りかかるッ!

 

「マスターーーーーーーーーーッ!」

 

ノエルの叫び声が聞こえる中、想雅はこんなことを思っていた。

これが未来を予知するツクヨミ様の力か……チートなレベルだろこれ……ふざけんな……未来、未来、未来……何が未来だッ!未来は自分で進むものだ。誰が何と言おうとも自分の道だ。それが予知に世的丸だと?誰かが敷いたレールの上を大人しく走る義理なんて無いッ!

想雅は自分の甘さ、無力さに屈辱を味わっていた。

だがよ……アイツとの……アイツとの約束を……

 

「破るわけにはいかねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇんだよッ!クソッタレがァァァァァァァァァァッ!」

 

想雅は自分に向け激昂した。

想雅が吼えたことにより怪鳥の動きが一瞬だけ止まった。その時だった。

 

「グキャラァァァァァァァァァァッ!」

 

怪鳥が一瞬のうちにして燃え下がる炎に燃やされた。

 

「まったく、世話を焼く弟がいると苦労するものだな……」

 

怪鳥が塵になっていく時、その間から見たことのある少女が見えた。

 

「ウリエル……」

 

桃色をしたセミロングの髪型に、桃色の瞳。どこか神々しさを感じさせられる。彼女しかいない特徴だった。

想雅に押されたノエルは怪鳥が消えたと同時に想雅のもとに駆け寄った。

 

「マスタぁ……」

 

「すまないな、また心配かけて……」

 

その光景を見たウリエルは「ま、いいか……」と呟いた。

 

「早く来い。魔方陣が閉じるぞ」

 

ウリエルは魔方陣の場所を示すと、1人先に魔方陣の中に入った。

ふとあたりを見ていると大佐たちの姿が無く、すでに退却の後のようだった。

大佐たちは大丈夫だろうか……まぁ、あの人たちだ何とかしているだろう……そして、永琳、輝夜。今までありがとう、また会える日を楽しみにしているよ。

想雅はそんなことを思いながら魔方陣の中へと入り自分の元の世界に帰還した。

 

 

 

 

 

 






何かまた10000文字超えたし……なんだろう話数重ねるうちにどんどんと長くなっている気が……

前書きに書いたクレペリン検査の結果の最後にこんなものが……

『千里の道も一歩から』

え?なにこれ……急がずに行けと……ふん、無理だね。俺は速いことに意味がある。
三大兄貴の一人、クーガー兄貴ッ!使わせてもらうぜッ!

「この世の理はすなわち速さだと思いませんか、物事を速くなしとげればそのぶん時間が有効に使えます、遅いことなら誰でも出来る、20年かければバカでも傑作小説が書ける!有能なのは月刊漫画家より週刊漫画家、週刊よりも日刊です、つまり速さこそ有能なのが、文化の基本法則!そして俺の持論でさ-------ァ!」

「ああ…2分20秒…! また2秒、世界を縮めた…ァ!」

感想待っています!
次回もお楽しみに!



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捕食者と神殺し



初コラボが来たァァァァァッ!

今回は島夢さんが筆記している『東方戦愛禄』から、影神晴夢くんと影神龍桜ちゃんをご招待です。
これを読むときは先に島夢さんの『東方戦愛禄』を呼んでからだとありがたいです。

いやぁ……テスト後に書きはじめて、テストからの病み上がりでしたので時間がかかってしまいました。だけど、時間に見合った文字数となっていると思います。
え?文字数がどれぐらいだって?約20000文字ですよ奥さん。

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり。




「ったく何だよ、人が読書中に……」

 

想雅は神話を解読中にガブリエルから「支長がお呼びですよ」と言われ、解読を済ませた後にチャラ神がいる執務室へと向かった。

想雅曰く「解読とはただの読書」と言うまで、普通に読んでいるらしい。

もちろん、俺の隣りには相棒であるノエルがいる。先ほどまで俺の膝の上に寝ていたせいか少しポケ~……としている。ホントこの子寝付くのに10秒もかからないよ。

先週までこの世界と異なる世界……そう異世界に行ってきた。いや、行ったというより気付いたらそこにいたといえばいいだろうか?

そこには髪は黒…これ以上ないほどの漆黒と艶があり絹のように美しい腰まである長い黒髪。そして、美しい…そうとしかいいようのない容姿に可愛い……そんな言い方には一切当てはまらない美貌を持っていた。綺麗で美しい…しかし、触れれば自分が壊れてしまう…いや、喰われるような危険な美……実際喰われかけたんですがね……

想雅はその女性を思い出しながら苦笑いをした。

本当なら女性(・・)の方ではなく男性(・・)の方と殺り合いということだった。

まさか、女性の方と殺り合いと思っていなかったため、心の準備とやらが間に合わないまま殺り合いが始まってしまった。

結果は敗北。やはり年期の差と実力の差だったのか……いや、単に俺が女性だからといって無意識に手を抜いたのかもしれない。

しかし、結果は結果だ。

某アニメで「この世に残るのは『結果』だけだッ!『結果』だけが残るッ!」と、とある二重人格のスタンド使いも言った。

自分は敗北した。だが、その敗北をかてにして俺は次の道へと歩む。新たな出会いこそが始まりであり、新たなる続きだ。

 

「マスター、何かいい事でもありましたか?」

 

「いいや、ある人のことを思い出してな……」

 

嬉しそうな想雅の顔をジッとと見ているノエルと、ある女性の事を思い出し終わった後、先ほどまで読んでいた神話の解読文をまとめ、『言霊』にしている。

 

「うしっ、これで完成だ」

 

これでいつでも『言霊』の詠唱が可能だ。

そんなことをやっている間にチャラ神の執務室までたどり着いてしまった。あー、めんどいな、アイツが呼ぶといったらロクなことが無いからあまり期待しないでおこう……うん、それがいい。

想雅は大きな扉の片方の取っ手を掴み、扉を開いた。

 

「何か用か?チャラが……み……って、え……?」

 

想雅を呼び出した張本人チャラ神は想雅から見て右側のソファに座って、先ほど来た想雅に「よっ。(・∀・*)ノ ィョゥ」と紅茶を飲みながら片腕を軽く振った。その隣りには秘書のガブリエルさんが座っていた。

うん、その2人はいい。だけど……

想雅はチャラ神とガブリエルの2人から視線を逸らして、左側のソファに座っている男性と女性を見た。

 

「よお、遅かったな。想雅」

 

そのソファに座っている男性はチャラ神と同様に片腕を軽く振った。

漆黒の黒いショートの髪に、黒い双眼。体系はガッチリとしているわけでもなく、ヒョロとしているわけでもなく普通だった。しかし、身長は自分よりは高く感じた。顔立ちは整っておりイケメンと言えるぐらいのカッコよさもあった。

彼はどこかで会っているような会っていないような感じで、どこか久しいような感じもあった。

 

「おいおい、忘れたのか?俺だよ俺、晴夢だ」

 

晴夢と名乗った男性はやれやれと言わんばかりに残念な表情をした。

 

「え?あ、あぁ……どこか久しぶりに感じたのはそういうことだったのか……」

 

想雅は一瞬戸惑いながらも今までの口調考えると晴夢自身考えようがなかった。

 

「まぁ、俺の顔が分からないのも無理はない、俺が戻る前にお前が気絶していたからな。さて……元気にしていたか?ノエル」

 

「はい、晴夢さんもお元気で何よりです」

 

晴夢は想雅と同じく、片手を軽く振り挨拶をした。ノエルはペコリとお辞儀をした。

 

「ノエル、晴夢さんとずいぶん仲がいいな」

 

「はい、一度お話したので」

 

あー、俺が気絶している時ね。

あの時、ノエルを奪われたときはヤバいなと思ったな。ホントノエルがいないと俺って無力だな……

晴夢さんとノエルが話している間に想雅は隣りにいる女性に視線を移した。

桃色の長いストレートの髪、顔立ちはとても整っており、美しい、綺麗などといった感じの言葉が似合う美人さんだ。もし街中を歩けば10人中1000人は振り返るレベル……ってどこから湧いて出てきた990人ッ!?

スタイルもかなりよく、傍から見たらどこかのモデルさんと間違われるぐらいの良さだ。胸は見る限り大きすぎず小さすぎず、でも大きい方だと思う……って、煩悩卍退散ッ!煩悩卍退散ッ!

想雅は女性を見ながら頭の煩悩と戦っていると、こちらを見ていることに気付いたのかニッコリと笑いながら想雅に向け言った。

 

「顔を合わせるのは初めてだったな、私は影神龍桜だ」

 

口調は魔理沙、ウリエルと同じく男っぽい話し方だった。

 

「は、初めまして、天上想雅と言います。以後お見知りおきを」

 

想雅は先ほどまで煩悩を頭の中からアインストールをしていたためか、落ち着きのないまま自己紹介した。

想雅の異変に気付いたのか龍桜は想雅に声をかけた。

 

「ん?どうした?少し顔色が悪いぞ」

 

「い、いえ……お構いなく……」

 

「少しやましいことを考えていましたー」何てさすがに言えない。もし言ったら晴夢さんに殺されかねないし……命に関わることを言うほど俺はバカ正直じゃない。

チャラ神が紅茶を飲み終わり、ティーカップを目の前のテーブルに置くと「さて紅茶も飲み終わったし本題本題、と……( ´,_ゝ`)」一息つき終わったためかその場に立ち、自分の執務席の前に立ち、本題を告げた。

 

「えー、君たちをここに呼んだのは他でもない。察している者もいると思うが今回は想雅と晴夢君の一対一の殺り合いを行うためだ。щ(゚▽゚щ)」

 

「ちょ、待てッ!晴夢さんとは先週戦ったばかりだぞッ!」

 

想雅は晴夢がこの場にいる理由はだいたい察しがついていたのか、言葉に若干のブレがあったもののチャラ神が言ったことに反論した。

 

「お前が殺り合ったのは咲晴ちゃんだ。咲晴ちゃんは咲晴ちゃん、晴夢君は晴夢君だ。m9っ`・ω・´)シャキーン」

 

「そうだ、俺はお前と殺り合うためにここまで来た。俺は俺で、咲晴は咲晴だ」

 

晴夢はチャラ神が言ったことに頷きながら言った。

マジですか……俺の意見無視じゃないですかーヤダー。

 

「さすがに逃げると言ったら、男としての恥でもあり、自分を蔑むことだ」

 

うわぁお……最後のトドメの『男としての恥』……

咲晴さんの時と同じことを言われているような……まぁ、性格は似ているし言葉も似ているのもわかるだろう。しかし、先週にも戦って今日も戦う……結構ハードなことだな……それより先週負けてるし、ま、まぁ……トドメが来たなら受ける他ないよな。

 

「わかりました。だけど殺さないでくださいよ?」

 

「わかってるさ、だが、手が誤って喰らっちまうかもな」

 

「ぶ、物騒な事言わないでください……」

 

晴夢は「相変わらずのヘタレっぷりだな」と少し笑いながら言った。それに釣られたのか、龍桜、ガブリエルはクスリと笑ったが、なぜかチャラ神だけが異様にテンションが高い笑い声をあげた。

 

「HA☆HA☆HAッ!お前のヘタレは異世界にも認められるぐらいの偉大さかッ!

。゚(゚^∀^゚)゚。ギャーハッハッハッハッハッハハッハッハッハッハッハ !!」

 

「なぜかお前だけ(・・)に言われると無性に殴りたくなってくる……」

 

「HA☆HA☆HAッ!ワロスッ!( ・´ー・`) ドヤァ・・・」

 

「うぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!」

 

客人が来たとしてもチャラ神のウザさは変わらず平常運転。

 

「まっ、想雅をいじるのはここまでにして、もう用意してあるフィールドに移動スッゾ。準備はいいかなー?(*^o^*)」

 

チャラ神は想雅たちに自分の耳を傾けながら言った。

 

「おいおいどうした君たち?『いいともー』はどこ行った?『いいともはー』?щ(゚▽゚щ)」

 

想雅との戦闘でもやった笑って○いともと同じような発言をチャラ神は求めていた。

 

「なぁ、想雅」

 

「はい?」

 

「お前……大変だな……」

 

「晴夢さんが常識人で助かります……」

 

そんなことを2人がやり取りしていると、チャラ神が神パッチンをした瞬間、執務室に人影は1秒もかからずに消失した。

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

チャラ神の能力の1つ、3次元『空間』を使い彼が今回のために用意したフィールドに執務室にいた全員が空間移動して来た。

目線に広がるのは大平原。その平原に霧なのか雲なのか分からないものがところどころ漂っており、どこか神秘的なように感じる。

ふと目線の先を空に向けると、空中には2つの太陽、そして太陽の光を遮らない程度に透き通っているガラス状の浮遊島が浮いている。そのガラスの浮遊島から太陽の光が反射するようになっておりより輝きを増している浮遊島さえあった。

その浮遊島の上の方にリング状の輪っかが浮いており、その色はまさに神々が住んでいる神域だと思わせるように黄金色に輝いていた。

 

「さて、想雅と晴夢君は定位置に着いた着いた。(σゝ∀・)σ」

 

チャラ神は彼らを自分の能力を使い定位置に空間移動させた。一瞬の出来事なので晴夢は少し驚いた素振りを見せたがいつもの冷静さだけはぶれることが無かった。

晴夢はあることに気付きチャラ神に言った。

 

「おい、この距離だと結構近くないか?」

 

2人から見たチャラ神たちの場所はだいたい目で見て約300メートル。近すぎては巻き込まれる可能性が多いからだ。しかし、それ以外のことを考えるとまさに今から行われる殺り合いを観賞するような距離でもあった。

 

「あー、そのことは心配ないさ。俺は神様だぜぇ?( ・´ー・`) ドヤァ・・・」

 

自分の実力に相当自信あるのかドヤ顔の顔文字交えて晴夢に言った。晴夢は「そうか……」と呟き、今回の目標である想雅に目線を動かした。

 

「さてと……始めようか想雅」

 

「2度も戦うなんてハードルが高すぎでしょ……」

 

「まぁ、そんな野暮なことをいうなよ。俺はこれでも楽しみにしていたんだぜ」

 

「そうですか……」

 

「まぁ、何だかんだ言ってお前は結局受けたってくれたじゃねぇか?そういうところはお前らしいぜ」

 

少し笑いながら晴夢は戦闘態勢を取りいつでも準備万端の体勢になった。

 

「ノエル」

 

「私はマスターの剣、マスターの想うがままに……」

 

ノエルが白く光るとともに刀へと変わった。想雅は目の前に浮いているノエルを左手で掴み、右手で振り払い刃を晴夢に見せ、戦闘態勢を取った。

ふと想雅は気になるのかチャラ神たちがいるところに目線を逸らした。

想雅たちに背中を見せているチャラ神が能力の2次元『図形』を使い、白い丸いテーブルと白い椅子を3つ創り出した。そして、3人が椅子に座るとガブリエルが空間移動と共に持っていた袋に包まれているものをテーブルの上に置くと、そこから3個のティーカップとスコーンなどといったお菓子が入っているケーキスタンドが入っていたらしい。

何するためにここに来たんですか……戦闘を観賞しながらティータイムって前代未聞のチャレンジみたいのかよ……これじゃ、全力が出しきれないじゃないですかーヤダー

想雅は内心心配しながらも目の前の事に集中した。

 

「それじゃ、行くぜ?想雅」

 

「はい、俺も行きますよ……」

 

彼らはお互いに睨め合い、相手がどう出るかと考えている。しかし、どちらかが動かないと何も始まらない。

――――――両者の脚に雲のようなものが通り抜けるごとにひんやりと涼しく感じる。

――――――ガラスの浮遊島が動くごとに光が反射していき光のカーテンを創り出していく。

――――――捕食者は楽しそうに表情を動かし、神殺しは苦笑いしながらも真剣そのままの表情。

 

「天上想雅ッ!いざ、押して参るッ!」

 

「影神晴夢ッ!いざ、尋常に勝負ッ!」

 

先手は想雅が晴夢に向け地を蹴った。その瞬間に脚には『魔』の力を込めていたため、想雅以外の全員からは想雅が消えたとしか見えなかった。しかし、晴夢は冷静でどこから想雅が来るのかを見計らっていた。

だが、想雅自身も晴夢に見計らせることをさせない。

想雅は晴夢の後ろに姿を現し、『魔』の力を込めた足で蹴りかかる。

捉えたッ!と思った想雅だが、視線に晴夢の頭が消えた。視線を下に向けるとそこにはしゃがんでいる晴夢の姿が……

晴夢はニヤリと微笑し、己の右腕で想雅に殴りかかろうとする……

想雅は蹴りを入れていない足で空気を蹴った。ギリギリ晴夢の拳は想雅に届かず、先ほどと同じぐらいの距離が開いた。

 

今回は(・・・)結構小回りが効くじゃねぇか」

 

「今回はって……先週の咲晴さんとの殺り合いが手を抜いていたみたいじゃないですか……」

 

「違うのか?」

 

「え?手を抜いていたように見えましたか?俺は本気を出してやったはずなのですが……」

 

「無意識で手を抜いていたのか?ハハッ!怖ぇな無意識はッ!」

 

晴夢は笑いながら言った。

後から咲晴に何か言われるぞ、想雅。だが……これはこれで面白そうな展開になりそうだな。

表情だけではなく内心でも笑っていた。いや、この後に起こりそうなことに楽しんでいた。

想雅は何か感ずいたのか、「はは……」とぎこちない笑みを浮かべるだけだった。

 

「だがな……楽しみなのは今だッ!」

 

晴夢はそう叫ぶと、地面を蹴ると想雅に向かって行った。想雅は来るかッ!と刀を構えた。しかし、晴夢は向かっている途中に能力で想雅との距離を喰らい、想雅の目の前に移動した。

彼の目からは他人から見る『魔』の力の速度と同じ、瞬間移動したと感じた。

いきなりの出来事だったため、想雅は守りに入ろうと『魔』の力を込めた刀で防御しようと思ったが、すでに晴夢の拳は想雅の懐に入り込もうとしていた。

想雅はダメージを受ける覚悟で体に『魔』の力を流し込み……拳をくらった。

 

「ガ……ッ!」

 

流石に完全にとはダメージを防ぐことができなかった。

反動で一瞬体が浮き、拳から離れたところに晴夢が体を捻り、また想雅の懐に自分の脚で蹴る。

 

「ガァハッ!」

 

2度の衝撃をくらい想雅は一直線に飛んで行った。さすがに意識は飛ばなかったが腹あたりがジンジンする。これ『魔』の力を展開しないと内臓と骨もろどもグチャグチャのミックスジュースになるところだった。

 

「ノエルッ!」

 

想雅は叫ぶと、目の前に鞘が現れそれを手に取り『魔』の力を流し込んだ刀を一気に鞘に押し込む。

 

 

ゴォォォォォォォォォォッ!

 

 

轟音と暴風が現れ、周りに浮いていた雲らしきものが吹き飛ばされた。その暴風は晴夢のところまでとどいた。

 

「すげぇ風だな……」

 

そうつぶやく晴夢と……

 

「ん?あぁ、ただの微風か……( ´_ゝ`)フーン 」

 

と、別に驚きもせずただ聞こえる音に耳を傾けながら美女2人とティータイムを楽しんでいるチャラ神……

 

「本当に頑丈だな、この空間とやらは……」

 

龍桜が紅茶を飲みながら言った。

自分たちを覆うようにチャラ神が創り出した3次元『空間』はどこから見ても紙のような薄っぺらさ、増してや先ほど起きた暴風に耐えられるはずがないと思っていた。しかし、耐えきったのだ。あの暴風を崩れることもなくただただそこに固定されているように……

 

「そりゃぁ、ガルヴォルンだからな。( ゚Д゚)ウマー」

 

チャラ神はケーキスタンドに置いてあるスコーンを食べながら答えた。

 

「が、がる……?」

 

龍桜は頭の上に?を浮かべるような表情をした。

 

「ガルヴォルンですよ。ガルヴォルンはあらゆる攻撃を通すことが無い鉱物なの」

 

龍桜に丁寧にガブリエルが教えた。

そのようなやり取りをやっている3人のほかに先ほどの暴風により砂煙が上がった場所から想雅の姿が見えた。

 

「―――――ッ!痛てぇ……」

 

晴夢に殴られ蹴られたお腹をさすりながら想雅は立ち上がった。あー、せっかくミカエルさんに買ってもらった服に穴が空いちまった……結構お気に入りだったのにな……

想雅はしょんぼりとしたが目の前の事に集中した。とりあえず、晴夢さんが見えるところまで移動、と……

想雅は脚に『魔』の力を流し込み、晴夢が見えるところまで移動する。

 

「おっ、戻ってきt……ブッ!」

 

想雅の姿を見つけた晴夢は目線をそちらに向けた瞬間に吹き出してしまった。

 

「ど、どうしました?」

 

想雅は晴夢が笑っている原因が分からないため少しおどおどしている。それより先ほどは腹のところだけスースーしていたけど、今はなぜか体全体がスースーする。あれ?こんな通気性バッチリな服だっけ?

想雅は不思議に思いながらも晴夢が何故笑っているのか考えていた。

 

「想雅、気付いていないのか?」

 

笑いが収まったのか晴夢は想雅に指摘した。

 

「お前……服どこ行った(・・・・・・)?」

 

晴夢の言ったことに疑問を持ったが、確認のため一度自分の体を見てみた。

 

「服が無い……っていうより破れたのか……」

 

今まで『魔』の力を使って服が脱げたことなんてなかった。なら、どうして服が無いだろうか?可能性と言えば晴夢さんの攻撃により服に穴が開いた時に、『魔』の力を使い移動したせいで無駄な無駄な空気抵抗がかかったせいなのか勢いで敗れてしまったとしか考えられない。

しかし、今は戦闘中。服が無いからと恥ずかしがる場合ではない。

 

「気にしないでください。目の前の事に集中しましょう」

 

想雅は服が無くなったからといって別に恥ずかしがっていられない。相手はあの晴夢さんだ。

そんなことを考えている想雅にノエルが言った。

 

「マスター、カッコいいです」

 

フォローありがとう、ノエル。

想雅の肉体は別にムッキムキではなく、出ているところは出ていて貧弱な感じは見せない。その体を見た晴夢は感心するように言った。

 

「結構鍛えているな……肉体では俺の負けだな……」

 

肉体ならね、肉体なら。今回は実力、ボディービルダーの選手権ではないんです。

 

「さて、想雅も戻ったことだし続きでも始めるか……」

 

そう呟くと地面を蹴った晴夢が想雅に向かって行く。

想雅は先ほどのようなことにならないようにいつでも準備万端な体勢で晴夢が来るのを待つ。しかし、先ほどと違い距離を捕食しないまま想雅に向かって行き、左腕で想雅の腹に捻じ込もうとした。

想雅は空いている左腕で晴夢の拳を払い、下から刀を斬り上げる。

晴夢は払われた威力をかり、そのまま後ろに下がり刀を避けた。そして尽かさず想雅はスペルカードを詠唱した。

 

「龍は偉大である。あらゆるものを凌駕する覇気を持つがために。覇気『龍王の威圧』」

 

想雅の目が紅く光り、晴夢の動きを拘束した。しかし、動きを拘束しただけで彼の能力までは拘束できていない。

先ほどまで拘束されていた晴夢だったが、ガラスが砕けるような儚い音が聞こえたと同時に晴夢の動きが自由になった。だが、想雅は晴夢に向かって霊力槍を投げた。

彼は光速に動く槍を見て、左に避けた。

 

「おいおい、咲晴を縛れなかったのに俺を縛れると思ったか?」

 

「予想はしていましたが、晴夢さんと咲晴さんの前じゃ無力ですね」

 

「はは……」と言わんばかりに引きつった表情をする想雅。しかし、想雅は諦めない、某アニメのバスケ部の監督が言っていた。『諦めたら、試合終了』と諦めなければ例え一握りのチャンスに巡り合えるはずという希望を望んで……

 

「英雄の魔となる奇怪の槍よ。稲妻の如く鋭き鏃と成り、確実なる勝利を遣わせ。

魔槍『ゲイ・ボルグ・レイン』」

 

自分の左腕に『魔』の力によって作り出された槍を出現させた。想雅は投げると同時に自分の腕にも『魔』の力を流し込み、そのまま亜音速を超える速さで投げる。

槍は30の(やじり)と成り、晴夢に向かって行ったが途中で30もあった鏃が視界から消滅した。

不思議に思った晴夢だったが、意味もなく消滅させる意味がどこにあるのだと警戒しながら視野を広げた。だが、視野を広げても意味が無い。なぜなら……空間を貫いて向かってくるのだからだ。

 

「―――――ッ!」

 

自分の右足に何かが掠ったことに気付いた。

晴夢はその場から後ろに下がるが、その掠ったものに相手の距離なんて関係ない。空間と空間を貫きのは距離がいらないからだ。残り29の鏃が晴夢を襲う。それを晴夢は喰らおうとしたが……

 

(能力が使えねぇ……まさか、あの鏃の影響か?)

 

晴夢は何故能力が使えないのか考えながら鏃を避けていく。

自分に向かってくる鏃は確実に自分の体の一部を狙ってくる。心臓じゃないというのが想雅の優しさか……?一度ぐらい殺してもいいんだぜ?想雅。

ギリギリに避け、向かってくる鏃を霊力弾を撃ちだし相殺させる。そのような作業をやっている間に10秒が経った……

 

「ハッ!」

 

晴夢は残った鏃を喰らった。

鏃が消えたことにより、目の前にいる想雅に集中でき……どこいった?

晴夢の目の前には先ほどまでいた想雅の姿が無かった。

 

「こっちですよッ!」

 

想雅の声が聞こえた方向……自分の頭上を見るとそこには刀を腰に構えて斬りかかろうとする想雅の姿が……

晴夢は後ろに下がり、想雅の攻撃を避ける。しかし、想雅の狙いは攻撃するためではなかった。刀が地面に触れた瞬間、轟音と爆風と共に晴夢が吹き飛ばされた。しかし、飛ばされている途中に自分の速度を喰らいそう遠くには飛ばされなかった。

想雅がいる思われる砂煙は徐々に晴夢のところまでとどいていた。視界の邪魔だったため砂煙も喰らい、想雅の姿を確認しようとしたがまたそこにはいない。

 

「我は円卓を束ねる君臨せし王なり。11の騎士を従えし我は故に何を求め、勝利するのか。それは勝利を求める己にも分からぬ。聖王剣『エクスカリバー・コールブランド』」

 

晴夢の後ろから想雅のスぺル詠唱が聞こえた。

後ろを振り向くと、想雅を中心とした周りに11の『聖』なる剣が出現した。ノエルの刃も通常より二倍に伸びたが重さは変わっていない。

 

「さっきから逃げてばっかじゃね?」

 

「そう見えます?まぁ……実際逃げることも兵法の1つですよ」

 

想雅は刀を晴夢に向けるようにして11の剣を向かわせた。

 

「あの剣が『聖』の力か……捕食してやるッ!」

 

新たな力なのか楽しげに晴夢が叫んだ。

11の剣に自らと身の投げだし捕食しようとしたが、剣が生きているかのように散開され捕食は出来なかった。晴夢の後ろを取った剣が刃先を背中に向け攻撃しようとした。

 

「あまいぜッ!」

 

脚に力を入れ自分の体を捻り、それを捕食しようとした。しかし、その剣が捕食されないように違う剣ががら空きになった晴夢の背中を斬る。

 

「ガッ!」

 

バランスを崩し、その場にひざまずいた。その瞬間を狙って3の剣が晴夢に向かって行く。完全に体に入ったと思った瞬間、その剣たちは晴夢の体に吸い込まれるように消えて行った。

 

「これが『聖』の力か……何か安らぐな……」

 

本当に何ていうか……戦闘中なのに心が安らぐんですけど……何これ捕食して心が落ち着くのって意外と初めてじゃね?

そう内心思っていたが、今は戦闘中。安らぐならもっと暇の時にした方がいい。

3の剣が捕食されたことにより残りは8。数が少なくなったためか次は想雅自身も戦闘に介入した。

8の剣を駆使しつつ、想雅は晴夢に攻撃をしていく。

1の剣、2の剣、と先ほど喰われた剣の行動もどこかでフォローしないといけないため先ほどより剣のスピードが速い。

 

「ハッ!」

 

想雅は晴夢の目の前まで来て、構えた刀で斬撃を入れようとする。当然の如く避けられ、晴夢の右ストレートが想雅のお腹を捕らえた。しかし……

 

「――――――ッ!」

 

一瞬想雅の表情がニヤッと変わったことに気付き、攻撃を中止して後ろに下がる。その行動を見た想雅は展開されている剣に晴夢に攻撃するように誘導させた。自分は脚に『魔』の力を流し込み悟られないようにその場から動く。

晴夢は飛んで斬る剣を狙い喰らおうとするが、生き物のような奇妙な動きを見せ喰うことができない、霊力弾を放っても同じ。

後退中に背中の後ろから想雅の姿が出現した。しかし、彼と自分の距離は刀の刃が届く距離にはなかった。これも想雅の考えだ。

想雅は刀を薙ぎ払い無数の斬撃を繰り出し、晴夢へと追加攻撃を始める。

目の前からは剣が迫って、視界外からは無数の斬撃……面白れぇじゃねぇかよ……ククク……クハハハ……

 

「いいぞぉ……いいぞいいぞいいぞォォォォォォォォォォッ!おもしれェェェェェじゃねェェェェェかよォォォォォッ!想雅ァァァァァァァァァァッ!」

 

 

ボォォォォォォォォォォンッ!

 

 

晴夢を中心とした場所から衝撃波のようなものが広がり、向かってくる剣と斬撃を相殺した。想雅は『魔』の力を込めた刃で迫ってくる衝撃を斬り自分には被害が無かった。しかし、何ていうか寒い……上裸だからか?

衝撃を斬った後、視界を晴夢に戻した想雅だったがその晴夢はすでに目の前まで走ってきており、右腕の拳を握っている。

自分の体全体に『魔』の力を流し込もうとするが、間に合わず。結局腹だけしか『魔』の力が流れなかった。その腹を捕らえ思いっきり殴る。

 

 

ガスッ!

 

 

「グァッ!」

 

衝撃に耐えられなかったのか、先ほどは1度だけその場に止まったはずだったが全体に流れ込まなかったため、風を切るような速さで飛んで行った。飛んでいる間に地面についた衝撃に備えるために体全体に『魔』の力を流し込んだ。そして、刀にも『魔』の力を流し込み、鞘を出現させそれを掴み鞘に刃を押し込む。

 

 

ゴォォォォォォォォォォッ!

 

 

風圧のおかげで先ほどまでの速度が落ち、難なく地面に着地した。目線を目にやるとすでに晴夢がニヤとした表情を見せ、左腕で殴りかかる。

想雅は『魔』の力を込めた刀でそれを防いだ。

 

「楽しいな、想雅」

 

「こっちは命の危険性大ですよ……」

 

晴夢が防がれてもなお無理やり蹴りこもうとしているため、想雅は刀を少しずらし脚が自分の体に当たらない軌道を取らせた。

その行動は成功し、そのまま脚は地面に衝突。結構な量の砂煙が舞い上がった。

想雅は後ろに思いっきり飛び、砂煙の中から逃げ出した。

 

「まだだぜッ!」

 

しかし、晴夢の追撃は終わらない。

想雅が逃げたと同時に距離をとられないように、そのまま砂煙から姿を現す。

 

「月は隠され、再び闇が始まった。だが、光は闇に(まさ)った。隙間から地を照らす月は今宵も美しく、光と闇が交わる時、幻想の世界へと(いざな)うであろう。夢想『朧月』」

 

連続で攻撃されることが危ないと思ったのか、想雅は最後のスペルカードを詠唱した。

想雅から『聖』の力が部分的に散布され霧状となり、それを纏った。

晴夢は何かの防御系の力だろうと予測してそのまま想雅に殴りかかった。しかし、予測は不発。

触れた瞬間に目の前に存在していた想雅が霧となり散った。その瞬間、背中に激痛が走った。

 

「ガッ!」

 

バランスを崩しそのまま地面に落下して行った晴夢。彼の目の前から想雅が下りてくるのが見せた。彼の体の周りには霧状の物はなくスペルカードの使用か終わったと感じさせた。

 

「大丈夫ですか?」

 

「戦闘中に相手に気遣いする馬鹿がどこにいるんだ」

 

軽くツッコみを入れながらも服に着いた土などを払った。

 

「しかしなぁ……本当に咲晴の時とは比べ物にならないほど小回りは効いてるし、頭の回転も速いな……」

 

先週の戦闘とは比べ物にならないほど動きや実力が違った。やはり、想雅(こいつ)は女相手だと本気を出しているつもりが何故か分からないけど無意識に手加減をしている。

晴夢はそう感じた。

アイツの性格と言いい、人の良さは、戦闘中にもあるらしく。完全に平和主義者らしかった。

 

(少し想雅くんにはお話が必要ね)

 

自分の心の中から妹の咲晴の声が聞こえた。

 

「こりゃぁ、お話確定だな」

 

顔に手を当てながら笑っている晴夢の姿を見ている想雅は心の中で「戦闘狂が始まった……」と思い込んでいた。

そして、笑いが収まると、「ふぅ……」と息を吐いた。

 

「そろそろ、とっておきのアレ(・・)を見せてもいいんじゃないか?」

 

晴夢がニヤと笑いながら想雅に言った。想雅は晴夢が言いたいことが分かり「そうですね」と呟いた。

 

「それでは、やらせてもらいます……」

 

想雅は「すぅ~」と息を吸い、チャラ神たちに会う前に創った『言霊』を詠唱した。晴夢は肩を動かしながら戦闘態勢を取っていく……

 

「神々の王たる英雄よ、我は全てを見通し偽りを見破り、全てを聴き取り真実を視る。我炎の如く侵略し、我水の如く恵み、我大地の如く動かず、我風の如く速き、我雷の如く(とどろ)きたるは武勇の象徴。我権能(ちから)を持ちして今こそ龍を討たん。絶対的なる権能(ちから)を我敵の前に(あらわ)しめよ」

 

 

ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!

 

 

想雅の身体から多大の神力が溢れ始めた。

 

「――――――ッ!」

 

ガルヴォルンの空間の中にいる龍桜がビクッと体を震わせた。

 

「ん?どした。( ゚Д゚)ウマー」

 

そのことに気付いたチャラ神はガブリエルに紅茶を貰うと龍桜に目をやった。

 

「いや、そんな大したことではないのだが……本能が何者か(・・・)を恐れた……」

 

龍桜は自分の体を抱きながら言った。

 

「ん?あぁ……そゆことか。なら……( ´_ゝ`)」

 

龍桜が何について恐れているのかに気付いたチャラ神は彼女の傍に近寄り、耳に話しかけるように言った。

 

「君の中から恐怖を一時的に消去。( ・´ー・`) ドヤァ・・・」

 

チャラ神は11次元『法則』を使用し、龍桜に先ほど存在していた恐怖が先ほどからなかったかのように消え去った。

 

「恐怖心が……消えた……」

 

「あぁ、一時的に消させてもらった。(σゝ∀・)σ」

 

チャラ神は龍桜の傍から離れ、紅茶を飲み始めた。疑問に思った龍桜がチャラ神に質問した。

 

「しかし、先ほどの恐怖心は一体なんだったんだ?」

 

チャラ神の能力の事ではなく、先ほど感じた恐怖心の方が謎だったらしい。

 

「まぁ、アイツらの殺り合いが終わってから説明するさ……( ゚Д゚)ウマー」

 

龍桜は気になるままティータイムを続けながら、愛する恋人の戦闘を観賞した。同じく「そろそろ終盤か……(・∀・*)」と言いながらチャラ神も観賞し、ガブリエルも続いて愛する弟の戦闘を見守った。

 

「先週より美味そうな神力じゃねぇかよ、オイ」

 

晴夢は嬉しそうに言った。

 

「まだまだ解読は必要ですが、晴夢さんの期待には添えられると思いますよ」

 

想雅が笑顔で言うと、上裸だった体に光輝く神の(ころも)が出現し先ほどから感じでいたスースーさが無くなった。

その衣はなんだか力が湧いてくる感じがあった。さて……行きますか……

 

「行きますッ!晴夢さんッ!」

 

「どっからでも来いッ!想雅ッ!」

 

戦闘態勢をとった想雅に晴夢は拳と拳を合してその言葉に応じた。

想雅が地面を蹴った瞬間、想雅の姿が消えた。先ほどからの動きを考えるとこれも高速で移動していると晴夢は感じた。

晴夢はその場から動こうとした。しかし……

 

(動けない……ッ!?)

 

脚の方に何かが絡みついているように感じた。目線を下に向けるとそこには地面から生えてきたツタのような物が話す素振りも見せず晴夢に絡みついていた。

晴夢はそのツタを喰らい自分の動きを自由にしたが……

 

「グ……ッ!」

 

晴夢の右わき腹から痛みが走った。

そこに手を当ててみると手には赤いドロドロとした血がついていた。これは自然にできた傷ではない。明らかに鋭利なもので斬られた傷だ。そう考えていた矢先、またもや地面からツタが生えてきた。

晴夢はそのツタたちを捕食するが数が多くむしろ増えてく一方。そして、忘れたころにやってくる……

 

「ガ……ッ!」

 

次は左肩に痛みが走った。

どう考えても想雅が斬っているしか思い当らなかった。

 

「これが神格化か……やるじゃねぇか、想雅」

 

晴夢は嬉しそうに三日月のような笑顔を浮かべた。しかし、先ほどから増えているツタは攻撃を惜しまない。

ツタたちが一まとまりになり、ツタによって造りだされた緑の龍が現れた。その龍は当たり前のように晴夢を狙って突進する。

 

「面白いッ!」

 

晴夢は脚に力を入れ、自ら緑の竜に突っ込んだ。

手刀の形に拳を取り、まさに刃物という切れ味を見せる手。それが龍の口に到達すると……

 

 

ズザザザザザザザザザザァァァァァァァァァァッ!

 

 

葉と葉がこすれ合うような音を出しながら綺麗に真っ二つになった。そのツタがまとまったものが地面に落ちると同時にそこから木と草などが生え、野菜やフルーツ、木の実が実った。

晴夢は着地すると近くに生えていたフルーツに手を伸ばした。

 

「い、意外と美味い……」

 

興味本心で手に取ったフルーツだが、それが意外と美味い。

みずみずしく、戦闘後の水分補給の方が望ましいが今はまだ殺り合い途中。相手にスキを見せているのと同じだ。

 

「確かにおいしい……」

 

晴夢は振り返ると先ほど姿を消した想雅が近くに実っていたフルーツを手に取って言っていた。すぐさま手元に持っていたフルーツを捨て、想雅に向け走った。

想雅は手に持っていたフルーツを一かじりした瞬間、想雅を中心にして水が波となって晴夢に襲い掛かった。流れてくる水を喰らい目の前の視界を開けたが、そこにはまた想雅の姿が無い。

 

「……ッ!またかッ!」

 

左足を斬られた。

バランスを崩しかけたが何とか耐えこんだ晴夢。そして晴夢は後ろに振り向き右腕の拳で目の前に殴った。

 

 

ガキィィィィィンッ!

 

 

金属に当たった音がした。

 

「―――――ッ!読まれましたか……」

 

「さすがに同じ手は通用しないぜ……」

 

残念そうな表情をする想雅と、笑う晴夢……

晴夢は拳を自分の近くに戻し、右足で蹴ったが想雅にしゃがまれそれを避けられた。避けた想雅はそのまま晴夢の顎にアッパーを捻じ込もうと拳を上げるが晴夢がいち早く気づき、体を後退させた。

 

「あまいですよッ!」

 

想雅はそのまま腕を上に上げると共に、指を鳴らした。すると……

 

 

轟ッ!轟轟轟ッ!轟轟ッ!轟轟轟轟ッ!

 

 

荒れ狂う雷が想雅の後方から降り注ぎながら晴夢に進んでいった。雷が落ちるごとに地面はえぐられ、一撃でも当たればひとたまりもないぐらいの破壊力だった。

驚くのは破壊力だけではない。

空が光った瞬間すぐ落ちる。光った瞬間落ちるというとてつもない速さで落ちてきているのもわかる。

 

「マジでやべぇぞ、これぇッ!」

 

晴夢は落ちてくる雷を捕食しながら後ろへと下がっていく。

 

 

ピチャ……

 

 

「ん?」

 

足元が少し冷たかった。ふと足元を見ると……そこには……

 

(水ッ!)

 

気付くより先に雷が水面に到着した。

 

「ガァァァァァァァァァァッ!」

 

到達したと同時に水を捕食したため1、2秒だけ感電した。しかし、感電力は強かった。思わず意識がどこか逝きそうだった……そのまま晴夢は重力に逆らえず背中から倒れて行った。

 

「はぁ……はぁはぁ……」

 

やべぇ……疲れる……アイツ……俺を本気で殺しに来ないからこれはこれで辛すぎる……意外とこれ拷問に近い感じだな……いや、生き地獄というやつなのか……?

何かを考えながら晴夢は息を整えていた。そして立ち上がるとそこには先ほどと同じ息切れをしている想雅の姿が……

 

「ガタが来たか……」

 

人間の身でありながらあれだけの神力を使ったため息切れしてもおかしくない。想雅は疲れた表情を見せながら晴夢を見た。

 

「はぁはぁ……さすがにキツイ……しかも、調子に乗って神力使いすぎた……」

 

晴夢の考えていたことが的中した。

 

「おいおい、俺はお前の優しさで死にたくても死にきれない生き地獄状態だぜ?」

 

苦しい表情を見せながらも嬉しそうに笑っている。彼は今を楽しんでいる。

 

「ははは……すみません……犯罪者にはなりたくないんですよ……」

 

「それだと……俺が犯罪者だと言ってるじゃねぇか……」

 

「訂正します……犯罪者ではなく殺人者で……」

 

「どちらにしろ同じじゃねぇかよ……」

 

そう言いかえされると、想雅は「はは……」と苦笑するばかりだった。

晴夢は「さて……」といい三日月の笑顔を浮かべて言った。

 

「じれったい……全力で来い。俺も全力を出す……」

 

そう呟くと晴夢は腰を下げ戦闘態勢を取った。若干呼吸に乱れが生じているが、ほとんど問題なし。

 

「では、後悔はしないでくださいよ?」

 

「後悔?んなもんするかッ!さっさと来いッ!」

 

晴夢は手元をクイクイと動かし想雅を誘った。

 

 

轟ッ!轟轟ッ!轟轟轟ッ!轟轟轟轟ッ!

 

 

想雅のちょうど後ろに大きな雷が落下した。それに続きさまざまなところに雷が落ちて行く……

想雅の足元からは水が竜巻のように巻き上がり、想雅の刀、左手に炎が宿り、周りの地面からはツタが生えてきて龍の形をかたどって行く……それに続き暴風も吹き始めた……

 

「スサノヲより……あらぶっていらっしゃる……」

 

想雅と晴夢はお互いに走り出した。

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

「がぁ……はぁ……はぁ……」

 

つ、疲れる……アイツはホント殺してこねぇから、息切れがヤバい……

晴夢は目の前の風景を見た。

雷で落ちたところには大きなクレーターのようなものが複数できており、その中には水が溜まっており一種の池、湖になっていた。

真っ二つになっているツタで出来た龍はそこらへんに複数転がっており、そこからやはり野菜とフルツー、木の実が生えていることによりここら辺一帯が果樹園と化していた。

そうこのような光景を創ったのは想雅と晴夢の2人だ。短い戦闘の中でチャラ神が作り出した空間は初めの原型を止めておらず、逆に減ったというより増えてしまったと言った方がいいと思う。

 

「晴夢さん……そろろそ降伏してください……」

 

「想雅こそ……そろそろ倒れねぇか?」

 

二人はお互いに言い合った。

晴夢が想雅に向けダッシュすると想雅もそれに続き走って行った。想雅は刀を構え……晴夢は拳を構え……お互い打ち合った――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈍い音が響いた。

 

「ガハッ!」

 

想雅の刀は晴夢の身体には当たらず、晴夢の拳は想雅の腹を捕らえていた。そのまま押し込むように想雅を吹き飛ばした。

 

「ガッ!痛ッ!オウッ!カ……ッ!」

 

想雅は地面に転がっていった。

流石の晴夢ももう立たないだろうと思っていた矢先……フラフラしながら想雅が立ち上がった。

 

「ホントしぶてぇな……」

 

晴夢は半分呆れながらもその半分は嬉しさもあった。想雅に向け晴夢が走った。しかし、目の前に自分を立ちふさがるかのように一人の男が現れた。

 

「はいはい、ストップストォォォォォップッ!(・∀・)カエレ!!」

 

だが、晴夢にとっては戦闘の邪魔をしてきたと思った。そのままチャラ神に殴りかかろうとする晴夢……

 

「動くなッ!( ・´ー・`) ドヤァ・・・」

 

晴夢の動きが11次元『法則』により止められた。しかし、動きを止めただけでは……能力は縛れない。

 

「鬱陶しいッ!」

 

晴夢は11次元『法則』を喰らおうとするが……

 

 

パリィィィィィン……

 

 

ガラスが砕けたような儚い音が二人の耳に届いた。

 

「はい、よっと……よし、逮捕ッ!||Φ|(|゜|∀|゜|)|Φ||」

 

チャラ神は晴夢が殴りかかろうとした腕を掴み、それを後ろに移動させ関節技を決めた。

 

「痛いッ!痛痛痛痛痛ッ!」

 

流石に関節技を決められ、痛みが無いはずがない。チャラ神は空いている左腕で神パッチンをし、想雅の目の前までに晴夢を連れて行った。そして、晴夢の拘束を解いた。

 

「―――――ッ!何しやがるッ!」

 

「まぁまぁ落ち着けって……(」゚ロ゚)」オオオオオッッッ」

 

チャラ神は晴夢の機嫌を直しながら、想雅の胸板に触れて……押した。

想雅の身体はすでに意識が無いようにバタ……ッ!と倒れた。そういえば、神力が想雅の身体から感じにくかったのはすでに意識が無かったからなのか……

 

「ったく、このまま殴りかかっとったらコイツ……良くても全治5日間、悪くて……わかるよな?( ・´ー・`) ドヤァ・・・」

 

チャラ神の言葉に一瞬震えた。不老不死と言っても完全な不老不死じゃない。寿命の概念だけがなくなった不老不死だった。もうすぐで想雅を殺すところだったと……

 

「ヘタレの癖にしてホント根性だけはあるよな……(。*´Д`*)」

 

チャラ神は「おーい、起きろー」と言いながら想雅の頭に手を置いた。すると……

 

「ここは……」

 

想雅の意識が戻った。5次元『意識』を使いこの場に想雅の意識を戻したのだ。

 

「お前の負けだ……( ・´ー・`) ドヤァ・・・」

 

チャラ神自ら想雅の敗北を知らせた。想雅はその知らせを聞くと「はぁ……」とため息をつき立ち上がった。

 

「やっぱり、負けたか……」

 

想雅は頭をかきながら言った。

戦闘が終了したためか刀だったノエルは少女の姿へと戻った。

 

「しかし……まぁ……よく俺の空間を果樹園にしたな……( ´,_ゝ`)」

 

周りに生えているフルーツを見ながらチャラ神は言った。想雅本人もチャラ神が言うまでは周りを見ていなかったため改めて見るとこの神格化の規模に絶句した。

チャラ神に遅れ、ガブリエルと龍桜もその場に到着した。

 

「皆さん集まったことだし……そういや、龍桜ちゃんから法則消去。。(*´∀`)ノ」

 

そういうと、チャラ神は龍桜の恐怖心を消していた『法則』を消去した。龍桜自体には『法則』が自分から消えたということはわからない。

 

「ここで龍桜ちゃんが感じた恐怖心について教えよう。(´ー`)フッ」

 

晴夢は戦闘でわからなかった龍桜の状態を初めて知り、想雅は「あー」と何か思い当るところがあった。

 

「想雅が使った神格化は、英雄神マルドゥーク。古代バビロニアで信仰されていた神様でその実力は他の神様の2倍の権能を持ち、10倍の輝きを持つといわれている。炎を吐き、水、雷、風すらも操る神……元々、農耕神であるがためにこのような果樹園もできたというわけだ。(*゚∀゚)*。_。)*゚∀゚)*。_。)ウンウン」

 

英雄神マルドゥーク……そう言われても晴夢と龍桜の頭の中にはそのようなマニアックな神様の名前をあまり知らなかった。知っていたとしても名前ぐらいだ。

 

「その神とやらに私の恐怖心に何が関係あるんだ?」

 

龍桜はマルドゥークが英雄神と呼ばれている理由を知らないため聞くほかがなかった。

 

「まぁ、話すと長くなるが……ε=( ̄。 ̄;)フゥ」

 

「手短に頼む」

 

晴夢も彼女の龍桜が恐怖心を抱いていたことが気になっていたらしい。まぁ、恋人として当然の反応だ。

 

「マルドゥークは冒険心の強く、風を縄で縛ったり、神々の住居を守護するドラゴンに口枷をはめたりとイタズラを繰り返した問題児だった。そのことでバビロニアでもっとも古い地母神ティアマトはマルドゥークを倒そうとした。(*´∀`)ノ」

 

地母神ティアマト……また新たな神様の名前が出てきた。

ここまで聞いて龍桜がなぜ恐怖心が感じられたのかはまだ分からない。ただ想雅はだいたい初めからわかって、ガブリエルはティアマトの名前が出た時にわかった。

 

「ティアマトは、その姿は蛇とも竜とも言われ巨大、生み出した竜や蛇は数多いが最後にはマルドゥークに引き裂かれ、その身体は天と地になった。ティアマトは創造神として神話の中で数多くの竜を産み落とした。しかし、ティアマトは英雄神マルドゥークに倒されてしまう。マルドゥークに倒される竜の構成は世界中に散らばるドラゴン退治の物語に酷似(こくじ)する。たとえば聖ゲオルギオスが戦って勝利したドラゴンの物語、ミカエルと戦ったドラゴン……(▽〃)。oO」

 

先ほどまで何を言っているか分からなかった2人だったがだいたい察することができた。

 

「わかってきたようだな……マルドゥークが英雄と呼ばれている理由……即ち龍殺しの英雄。絶対的な権能を持つマルドゥークには相応しい呼び名だ。龍桜ちゃんはその龍殺しのマルドゥークに龍の本能から恐怖心を抱いたんだ。わかったかな?( ・´ー・`) ドヤァ・・・」

 

「あぁ、だいたいは……」

 

龍桜は考え込みながらもうなずいた。

 

「すみません、まさか龍桜さんを怯えさせてしまうなんて……」

 

想雅は申し訳ない顔で龍桜に謝った。

 

「気にしないでくれ、本気を出さなければ想雅が大事に至らないことも、それに晴夢が満足でき無いしな」

 

「晴夢さん思いなんですね」

 

龍桜は恥ずかしそうに俯いた。想雅本人はなぜ俯いているのかがわからなかった。何かしたか、俺は……

 

「想雅くん」

 

「はい?」

 

後ろを振り向くと、先ほどまで晴夢さんだったのがいつの間に変わっていたのか咲晴さんになっていた。

 

「無意識に手加減、ね……」

 

「あ、いや……そんなつもりは無かったんですけど……」

 

「私の初めてを奪った人なのに……」

 

「誤解を招くようなことを言わないでくださいッ!」

 

想雅は手を動かしながら言った。

 

「わかっているわ、想雅くんは優しい。それも無意識でするほどのお人好しさん。私としたら満足いかない事だけど、女性としたら嬉しい事よ」

 

満足いかない顔をするも、その反面は嬉しそうな表情だった。

 

「Si je n'étais pas dur, je ne serais pas à la vie. Si je ne pouvais jamais être tendre, je ne serais pas digne d'être à la vie」

 

咲晴の口から想雅が聞き覚えがある言語……フランス語が聞こえた。

 

「『タフでなければ生きてゆけない。 優しくなくては生きている資格がない』まさに想雅くんだわ……」

 

「俺ですか……」

 

この言葉はアメリカの小説家、レイモンド・チャンドラーの探偵小説『プレイバック』の中で出てくる、主人公フィリップ・マーロウの言葉である。この言葉は特に日本で人気を博しており、フランスやアメリカでは、座右の銘としては一般的ではない。それは自分という『個』が主体の欧米文化ではあらゆる衝突を幼いころから繰り返し経験しているためであるからだと想雅は思う。

日本人とフランス人のハーフである想雅はどちらの文化も把握しているため自分の考えも混じった。

 

「Français, et avez-vous parlé……(フランス語、話せたんですか……)」

 

想雅は本当に話せるのか確かめた。

 

「Je me demande blâmer Eh bien, frère avait une trace de l'autre langue en la réincarnation avant?(えぇ、兄さんが転生前にいろいろな言語を覚えていたせいかしら?)」

 

発音やアクセントは完璧とは言えないが、フランス人のハーフである想雅でも複雑な言葉では無ければ普通に伝わるほどの正確さ。

神様であるチャラ神と天使のガブリエル、想雅の相棒であるノエルには2人が何言っているかわかるが、龍桜だけが2人が何を話しているのかがわからなかった。

 

「Il semble que les gens de lettres originales.(元文芸人らしいですね)」

 

想雅が言った言葉に心の中から「元ってなんだッ!元ってッ!」と聞こえる晴夢の声が。当然想雅には聞こえない。咲晴だけが知っていること。

 

「Quand je vois M. Soga ce, sentant son frère ont été quelque part.(こう想雅君を見ていると、どこか弟の感じがしてきたわ)」

 

少し女狐の笑みを浮かべながら想雅に言った。想雅は「はは……」と苦笑いするばかり。

俺は後何人姉を持てば気が済むんだよ……怖いな、一人っ子の寂しさというのは……

 

「戦闘も終わったことだし、そろそろ帰らせて」

 

咲晴はチャラ神に頼むように言った。

 

「OKOK。じゃ、龍桜ちゃんも準備して。(●´∀`)σ」

 

そう言われると龍桜が咲晴の近くに駆け寄った。

 

「ちょっと待ってくれ」

 

チャラ神が3次元『空間』で2人を元の世界へ帰らせようとした矢先、想雅が止めるように入ってきた。

 

「咲晴さん、失礼します」

 

想雅が咲晴の名前を呼ぶと、彼女の手を握り『聖』の力を流し込んだ。

 

「女性の痛々しい姿は見たくありませんので……」

 

晴夢が戦闘で傷を複数負ったおかげで咲晴の体もボロボロ。例え人が変わっても同じ肉体。

 

「ふふ……本当に優しいのね」

 

『聖』の力を流し込むと共に彼女の肉体はみるみると回復していった。

 

「ありがとう」

 

「いえいえ」

 

微笑む咲晴と同じく微笑む想雅……その間にチャラ神が割って入るように言った。

 

「あ、そうそう……(゚∀゚)アヒャ」

 

チャラ神が神パッチンをやると、全員の目の前に野菜やフルーツといった食べ物がいきなり現れた。

 

「結構美味かったんだろ?想雅産の野菜とフルーツをみんなのお土産に持っていきな。

m9っ`・ω・´)シャキーン」

 

「お前が作ったような口ぶりをするな」

 

軽くツッコむように想雅が言った。

 

「まっ、そんなどうでもいいことはほっといて、準備はいいかな~?щ(゚▽゚щ)」

 

「言わないからな。いや、言わせねぇよ」

 

「(´・ω・`)ショボーン」

 

そんな表情を見せながらもチャラ神は2人を元の世界に帰す準備をした。

 

「想雅くん、今より強くなって私ともう一度殺り合ってくれるかしら?」

 

「えぇ、わかりました。今度こそは勝ちますよ」

 

「ふふ、期待して待っているわ」

 

その言葉を継げると咲晴と龍桜、野菜とフルーツの山が地面に展開された魔方陣により一瞬にして消え去った。

 

「De je Sakuha s'il vous plaît attendre…… je vais vous montrer qu'il est plus fort qu'il ne l'est maintenant.(俺は今より強くなって見せますよ……待っていてください咲晴さん)」

 

 






ざっとこんな感じかな……疲れた……

島夢さん、修正箇所等がございましたら、お気軽にメッセージをお送りください。

感想待っています!
次回もお楽しみに!



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放り出されて森の中


来週、英単語テストがある。しかも600個も覚えろと……殺す気かッ!

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり。


「次は……何だ……えーと……どこだここ……?」

 

さて、俺はどこに出たでしょーか?正解は森の中でしたーってこんな呑気な事言っている場合じゃねぇぞ。ここがどこか分からないとあまり行動できないし、第一、まず人一人っ子いない。情報を訊こうにも訊けるはずがない。チャラ神のやつ……もっといい場所選びやがれ……

 

「動こうにも動けねぇな……少しそこで待っててくれ、ノエル」

 

「はい」

 

その場にノエルを残し、想雅は上空へと上がって行った。

うわぁお……東西南北四方八方、森と山しか見えない。何ここ?都市に出たという方が珍しいのか?どちらにしろ人がいるところに行かなければどうにもならない。小屋でも人が住んでいたところでこちらとしたら大収穫だ。

想雅は上空から地上に降りた。

 

「どうでしたか?」

 

「どこも山や森だらけだ……ホントどうしよっか……」

 

そんなことを考えていた矢先だった。想雅の嗅覚にほのかに水の匂いがした。

 

「ちょっと確認のために行ってみるか……」

 

想雅はノエルを連れて水の匂いがした方向に行った。その途中に匂いが強くなっていき、水の流れる音も想雅の耳にもノエルの耳にも聞こえた。次第にその音が近づいて行き、木しか見えなかった視界にやっと水が流れる川が流れていた。

目視で川幅が五メートル、深さは数センチぐらいだろう……その水は調理にでも使えるぐらい透き通った美しい水で、川魚が水面から跳ねる姿が見える。

 

「うん、美味い」

 

綺麗な水なため想雅は川の水をすくいそれを口元まで運んだ。やはり美味かった。水道水のような味は消毒臭くはなく、大地の恵みが滴ったように感じた。ふと視線を上に向けると川の中に脚をつけてはしゃいでいるノエルの姿が見えた。

 

「こういうゆっくりしたことが毎日だったらいいな……」

 

ノエルの姿を見ると、今までの忙しさがまるで夢のようだった。チャラ神の奴め……いつになったら過去に飛ばすのをやめるんだ。一回で充分だろ。何が「一回だけじゃ足りない。あと数回やって確実のものにする」だ。

何で俺が過去まで遠征しなきゃならないんだよ……お前が行けよ。

今更ながらも想雅はチャラ神に愚痴をぶちまけた。

 

「険しい顔してどうしましたか?マスター?」

 

想雅は「いや、なんでもない……」と呟き、その場に立ち上がった。

にしても……人がいない。こんな美しい川にいると思ったんだが予想が外れたか。まぁ、川が流れていく下流の方に行けば人住んでいるところにたどり着けるだろう……

 

「とりあえず、行動にうつるか」

 

その場から動こうと思った時だった。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 

どこからか女の子の叫び声がした。

周りを見渡し声の主を探すが、この付近にはいなかった。

 

「マスター、こっちの方から聞こえました」

 

ノエルは川の中からすでに出ており、川の下流の方角に指を指した。

確かに下流の方から鳥がバサバサと飛んできているのが見えている。森が騒いでいるようにも思えた。

想雅たちはやっとのことで聞くことができた人の声のする方向に走って行った。

 

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

川の下流の方に走って行き、だいぶその声が聞こえたところまで来たと思う。そこで少し止まって周りを確認する。

そして川の下流の方に4,5体の妖怪に囲まれている女の子がいた。

 

「ぐへへへ、久しぶりに女が食えるなぁ」

 

「おい、これを見つけたのは俺だぞッ!」

 

「どちらにしろ食い物は食い物だ」

 

涎を垂らしながら女の子を見ている妖怪たち。

 

「や、やめてください……この籠にある野菜を差し上げますので……」

 

「んあッ!?野菜ごときに人間の価値があるかッ!」

 

妖怪が女の子にむけ怒鳴った。

 

「そんなことより早く食べようぜ」

 

そんなことを言った妖怪がお先に女の子に手を出そうとしていた。

 

 

ドゴッ!

 

 

「カハッ!」

 

鈍い音がその場にいる全員に聞こえた。

その鈍い音と共にその妖怪は森の中を突きぬけていくように飛んで行った。

 

「第3群と第4群の野菜はビタミン、カロテンが豊富なんだぜ?肉ばっか食っていると太るぞ?」

 

馬鹿にしたような口調である少年が少女を抱きながら言った。

茶髪の青の双眼を持つ少年と、雪のように美しい銀髪の碧い瞳を持つ少女……想雅とノエルだった。

想雅はノエルをその場に降ろした。

おっ、第一村人発見。服装から考えると……どうなんだろう?町民か、商人だろうと思う。時代は平安時代から鎌倉ぐらいだろうと推測しよう。というと900年から1000年ぐらいだな。

一人想雅が考えていると1人の妖怪がドスの効いた声で言った。

 

「おい、貴様。アイツをやったのはお前か?」

 

「ん?あぁそうだ」

 

その返答を聞いた妖怪は騒ぎ始めた。

「こんな山ん中に陰陽師だと……」「いや、服装がおかしいだろ。あいつらはもっと貴族っぽいぞ」「じゃぁ何だよ、こいつらは……」「あの人間が連れてきた女も美味そうだなぁ」「どちらにしろ食い物が増えただけだろ」

そんなことを言い始めていた。それよりちゃんと言葉が伝わるんだな。人間も進歩して、妖怪もちゃんと進歩しているのか……

 

「んなことはどうでもいいッ!さっさと殺るぞッ!」

 

そう言って1人の妖怪が想雅に襲い掛かってきた。

想雅は手元に霊力槍を創りだし、妖怪の懐に投げ込む。

 

「グッ!」

 

妖怪はその場に崩れ、丁度肺らへん入ったのか呼吸がまともに呼吸ができていない。ここら辺で妖怪たちが退いてくれるとありがたいんだけどな……無駄な殺生しないですむ。

 

「貴様ァッ!」

 

後ろに控えていた妖怪が想雅に自慢の爪で攻撃しようと襲い掛かってくるが、想雅がその攻撃の軌道を読み左に避け、『魔』の力を流し込んだ右脚で蹴りこんだ。

 

 

ゴスッ!

 

 

「グギャッ!」

 

妖怪は川の中へと高速で飛び込むように突き抜けた。

水しぶきが上がり、そこらへん一帯がビチャビチャになった運が良かったのか想雅たちがいる川岸は濡れなかったため、風邪をひく心配が無かった。

 

「そこらへんで退いてくれないか?無駄なやり合いはやりたくない」

 

苦笑した。早くやめてくれないか?と言わん口ぶりでその場に残っている妖怪に言った。

 

「そうしてやりたいのは山々だが、俺たちは生きることに人間を襲う。生きるためにやることだ」

 

想雅の言ったことに反論するかのように妖怪は言った。

そうだよな、生きるためにやることは例え罪であったとしても罪ではない。自分の命がかかっているからだ。そんな理屈は自分を正当化しているだけだ。

なら、俺が妖怪を殺そうとも人を助けるため、自分を守るという生き残るためにしょうがなくやったということにもなる。

だが、まぁ、俺は妖怪であっても殺しはしない。例え罪でがなくてもその殺した人の重みを背負ってい生きていく覚悟なんてできない。

 

生きるための食材があればいいんだな(・・・・・・・・・・・・・・・・・)?」

 

そう言うと想雅は手を目の前に突き出し『言霊』を詠唱した。

 

「太陽よ。大地よ。雨よ。我らに恵みを与えたまえ。我らに生きる意を与えたまえ」

 

詠唱後、想雅たちの目の前が急に光り出した。

目を瞑る者もいれば、驚くものもいる。想雅とノエル以外の人たちは当たり前の反応だ。

そして、光が次第に輝きを失っていき、その場には大量の肉や魚、野菜などが出現していた。

しかも、肉は血が滴っており、魚はピチピチと跳ねている。野菜も太陽の光に反応してみずみずしさが感じられた。

 

「こんぐらいあればいいだろ?」

 

想雅はニッコリと笑顔を浮かべ妖怪たちに言った。

一瞬言葉を失っていた妖怪が数秒して、想雅の言葉に気付き「あ、あぁ……」と絶句するような口調で言い、近くにいる女の子を解放した。

 

「あ、ありがとうございます……」

 

女の子は深々とお辞儀をした。

 

「いやいや、当たり前のことをしただけですよ」

 

想雅はいやいやと手を動かしながら言った。

 

「お、お礼はどうすれば……お金は持っていませんし……」

 

「お金はいらないよ。その代わりと何だけど……人がいるところまで案内してくれるかな?」

 

「迷ったのですか?」

 

「あぁ、そうらしい……」

 

想雅は頭をかきながら言った。それもそうだよ、いきなり森に放り出されたから方位磁針なんて持っていないし、太陽が昇る方向が分かればどちらが東で西ということが分かるが、どちらの方向に人が住んでいる町や村がわからない。

 

「わかりました」

 

そう女の子が言うと「こちらですよ」と言って想雅たちを連れて行こうとした。

 

「ちょっといいか?」

 

想雅の後ろから先ほど絶句していた妖怪が想雅に話しかけた。

 

「なんだ?」

 

想雅は振り向いた。

先ほどの女の子は少し驚いてビクビクしていた。

 

「お前は人間だよな?」

 

「あぁ、そうだ。人間以外の何者でもない」

 

「そうか……ならなぜ俺たちにそこまで優しい。人間は妖怪を退治し、妖怪は人間を喰らう。それが当たり前だ。しかし、お前は俺たちを殺さなかった。人間の女を襲っていたというのにだ……俺たちは退治してもいいはずだ」

 

想雅は「はぁ……」とため息をつき、その妖怪に向けこう言った。

 

「俺は無益な殺生をしない。人は当たり前だが、妖怪もだ。例え人に害を加えるのにもお前たちなりの理由があるはず。全ての行動には理由がある。理由が無い行動はただの馬鹿がやることだ。単に俺が誰かを殺す勇気が無いということになるな」

 

その答えを聞いた妖怪は「ククク……」と笑いたそうな声を出した。

 

「お前はどこか他の陰陽師と違うな」

 

「ん?俺は陰陽師じゃねぇぞ」

 

「なら神様か?俺たちに余るぐらいの食い物を何もないところから出したし……」

 

「神様でもねぇよ」

 

「ならなんだ?それ以外思いつくもんが無いんだが……」

 

その場で考える妖怪を余所に想雅は言った。

 

「しがない旅人さ」

 

 

 

 

 

 

 





もう六月か……速いな。夏休みまであと一か月だよ。やった。

感想待っています。
次回もお楽しみに。



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再開


はぁ……今日英単語テストかよ……
これでもかというぐらい投稿する俺ってすげぇ、ノー勉ではないからまだマシだな。

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり




さて、数時間森の中を歩き回りやっとの思いで人気(ひとけ)のある門の近くまで来た。

その門は朱い色を基調とした門でどこか中国にありそうな建物だった。しかし、想雅はこの門をどこかで見たことがあった。歴史の授業とかに出てきたり、小学校の修学旅行で行ったことがあった。

 

「平安京です」

 

想雅たちを案内した女の子はポケットの中からお金の形をしたものを取り出した。そのお金を門の近くにいる防人に渡した。

平安京ならこの門が羅生門なのか……?

 

「よし、通れ」

 

そう言われると女の子は防人に目の前を通り過ぎ、想雅たちもそれに続いた。どうやらお金は自分たちの分まで出してくれたらしい。道案内と通行料……いろいろと世話になっているな。

天皇が暮らしているためなのか、羅生門を抜けてすぐに人々が行きかう大通りが視界に入った。この時代になると物々交換ではなく、ここで使うことができる通貨を使って物を買ったりしている。

確か……この大通りは朱雀大路だっけな?奥に天皇の屋敷があるとか……

少し歩いたところで目の前にいた女の子がクルリと周り、想雅たちを見た。

 

「改めてお礼をさせてもらいます」

 

「お礼をするのはこちらの方だよ」

 

「少ししかありませんが、どうぞッ!」

 

勢いよく想雅の手につかみ、何かを渡すようにして想雅の目の前から人込みの中に消えるようにいなくなってしまった。ふと、渡された何かを見たらそれはお金だった。えーと、4つか5つはあるな……まぁ、これだけでは宿とかも探さないといけないし後で『言霊』使って複製するか……え?犯罪だって?いやだなぁ~奥さん。ばれなきゃ犯罪じゃないんですよ。

そんなことを心の中でやっていた想雅は一旦お金の事から離れ、来て数分の朱雀大路を見渡した。まぁ、一種の下町かな……ただ、人が多いけど……

そんなことを思っていると想雅の裾を引っ張る感触が来た。

 

「マスター、お腹が空きました……」

 

お腹の音はならなかったが、お腹が減ったような素振りを見せた。

 

「そうだな、あれからだいぶ時間が経ったし……少しあの店に寄ってみるか……」

 

想雅はノエルを連れて、ふと目に入ったお店に向かって行った。

人が多いためかき分けながらいき、やっとの思いでたどり着き目の前の長い椅子に座った。ちょうど想雅たちが座ったところには大きな傘のような物があり熱中症にはなりにくい仕様だった。

店の奥から、従業員であるおばあちゃんが出てきた。

 

「おや、見かけない顔だね?」

 

「えぇ、少しばかり旅をしていましてね。おばあちゃん、この店の名物ってなんだい?」

 

従業員であるためなのか、おばあちゃんの万遍な笑みはどこか故郷に帰ったような感じになった。

 

「そうだねぇ……三色団子とお抹茶かのぉ~」

 

「それじゃぁ、団子を6つと抹茶を二つ貰うよ」

 

「まいどあり~」

 

そう言っておばあちゃんがお店の中へと戻って行った。

そういえば、今は夏ぐらいだっけな。元の世界も夏だったし、過去と現在の四季は並行しているのか?いや、永琳に会っときは少し涼しいぐらいだったし……時代によりバラバラというか神様のみぞしる世界か……

そんなことを思っているうちにお店に入ったおばあちゃんが外に出てきて、考え事をしている想雅ではなく隣りで行きかう人を興味津々で見ているノエルに渡した。

 

「あっ、おばあちゃん。お金はこれぐらいで足りるかい?」

 

想雅は自分の隣りに差し出すようにお金を置いた。

 

「一枚余分さ、まいどあり~」

 

余ったお金を取らずにおばあちゃんは店の中へと戻って行こうとしたが、何かを言いたいがためなのかその場に止まった。

 

「そうだ、旅人さん。少しお話を聞いて行くかい?」

 

どうやらお話がしたいらしかった。まぁ、結構な時期を爺ちゃん婆ちゃんと暮らしていたから、まぁお年寄りがどんな性格なのかはだいたいは把握している。

よく爺ちゃん婆ちゃんに「よく話を聞いれくれるけど、退屈じゃないか?」とよく聞かれるが、長年の知恵やら昔話やらと興味がよく枠話ばかりだったから退屈ではなかった。まぁ、同じ話をするという以外はねぇ……

 

「えぇ、食べている間、暇ですので……」

 

想雅がおばあちゃんと話している時にはすでにノエルが団子を口の中へと運んでいた。想雅も一時的に話が終わると皿に置いてある団子に手を伸ばし食べ始めた。

うん、美味い。幻想郷にある団子屋にも負けず劣らずの美味さだ。やっぱり、日本の食べ物は昔っから美味い。

 

「ここの目の前の朱雀大路を進んだ奥に大きな屋敷があるでしょう」

 

「天皇の屋敷でしたっけ……?」

 

「そうそう、帝の屋敷」

 

やっぱり、あっていたか……うる覚えで覚えている平安京はだいたいあっているらしいな。じゃぁ、目の前に見える山が比叡山で、その近くに鴨川が流れていて……って、俺うる覚えじゃないじゃん……結構覚えているし……

 

「その近くに天皇の屋敷には劣るけど、近くに竹林がある屋敷があるのよ」

 

「へぇ……」

 

抹茶を飲みながら、静かにおばあちゃんの話を聞いている想雅と、すでにお昼寝に入っているノエル……って、寝るんかいッ!お腹がいっぱいになったからなのか?いや、それ以前に森の中を何時間も歩いたから疲れるのも無理はないだろう。しかし、ホント寝付くのが速いな……

内心ツッコみながらおばあちゃんの話を聞いていく。

 

「そこにこの都で一番美しい女性がいるという噂だよ」

 

「噂?」

 

噂ということは確かではないということだ。しかし、その噂でも今の状況だったら結構な暇つぶしとなる。

 

「私も小耳にはさんだ程度だからね。数多くの人が知っているから他の人にも訊いてみれば本当だと分かるかもね」

 

従業員であるためなのかそのような噂の情報はお客さんから仕入れているらしい。だから、ここまでの情報をわかるということだ。

 

「あとね、これも小耳にはさんだことなんだけどべっぺんさんの姿が長く腰まで伸びた美しい黒髪らしいよ」

 

黒髪という言葉に想雅はある女の子を思い出した。

あの子もストレートの腰まで伸びていた黒髪だったな……しかし、あの子は月にいるため安否も確認できない。たぶん、この世にはいないだろう。

そんなことを思っていた矢先にふと彼の口からある言葉が漏れた。

 

「もう少し遊んでやりたかったな、輝夜(・・)……」

 

あの時の悔いと共に気付いた時にはあの女の子の名前を呼んでいた。

おばあちゃんは想雅の口から出た言葉に一瞬驚いた。

 

「お兄さん……べっぴんさんの名前を知っていたのかい(・・・・・・・・・・・・・・・・・)?」

 

「え?」

 

おばあちゃんの口から出た言葉に想雅は戸惑った。

いやいや、輝夜は人間だったはず……なのに同じ名前……全く違う人かもしれないと、この考えは誰しも考えることだ。しかし、全くの同一人部かもしれないと考える人はごく一部を覗いていないだろう。

 

「お、おばあちゃん。輝夜(・・)っていう名前は確かなんですよね……?」

 

想雅は恐る恐る訊いた。もし本当なら会いに行かないとならない。もしも、全くの他人だとしてもだ。それがあの子……いや、あの子と彼女との約束だからだ。

輝夜のほかに想雅は黒の三つ編みをした女性の事も思い出した。

 

「えぇ、訊いた名前と同じだったよ」

 

「そうか……ありがとうございます」

 

想雅はお礼をいい、まだ残っている団子をノエルの寝顔や、行きかう人々を見ながら食べていった。

輝夜……そういえばこの時代から『かぐや姫』といった物語が出版されていたっけな?まぁ、俺たち現代人にとっては昔話となるな。その場合だと、最終的に輝夜は月に帰るということになるな。じゃぁ、なぜ地球に戻ってきた?何らかの目的があってだと思うが……

その目的が自分たちであるということはこの時はまだ気付いていなかった。

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

さて、時は夜。たぶん7、8時ぐらいだろう……

夕食は先ほど済まし、宿は……まぁ、輝夜だったら部屋を借りることぐらいできるだろう……違ったときは創る。そう無から創り出す。

え?何で夜に外に出ているかって……簡単な話だよ。

 

「ここが輝夜の家……ていうより屋敷……」

 

まぁ、察していた人もいると思うが目の前にある屋敷の中に侵入しようと思っている。はい?不法侵入だって?いやいや、知り合いに会いに行くだけですよ、やだー。しかも、あの子との約束だ。破るわけにはいかない。どれだけ俺がクソッタレの大馬鹿野郎だとしても約束は必ず破らない。必ず果たす。

 

「どうしますか、マスター。塀の上を上って入りますか?」

 

「まぁ、それが妥当だろう……」

 

そう言って想雅はノエルを抱きかかえ、霊力を使いその場に浮き塀の上に上った。上から見ると屋敷の全体が拝むことができるが、屋敷からの下の方は竹林が邪魔をしておりあまり状況を掴むことができなかった。

 

「とりあえず、降りてみなくてはな……」

 

先に想雅が塀から降り、続いてノエルが……想雅はノエルが下りてくると彼女を抱くように受け止めて、その場に降ろした。

竹林の中をかき分けていく、まれにタケノコも地面から顔を出していたり、少し地面が固いところがあり、そこにはタケノコが埋まっていると思う。地面に顔を出しているタケノコより地中に埋まっているタケノコの方がおいしいが、探すのに結構な苦労が強いられることになる。まずは地面のかt……おっと、もうすぐでタケノコ狩りの説明をするところだった。今は竹林を抜けることに集中しよう。

竹林をどんどんと進んでいくと、家の姿が見えてきた。

竹林の影から、すっと屋敷の姿を覗いた。

 

「これだけ広い屋敷なのに見張りが1人としていない……」

 

初めに感じたとこは見張りがいなかったことだった。そこまで警戒態勢が薄いのだろうか……

普通に竹林から出ていき、近くにある木や岩などに隠れながら屋敷の近くへと忍び寄って行く……

そして、屋敷の縁側だと思われる場所まで辿りつき、律儀すぎると思われるのか靴を脱いで縁側へ上がった。

 

「お邪魔します」

 

ノエル以外の人には聞こえないほどの小さな声で部屋に上がった。

えーと、ここの廊下で身近な部屋はあそことそこだな……

想雅はいちばん近い部屋を選び、少し中を覗いた。

 

(ここは……お爺さんとお婆さんのお部屋かな……)

 

中を見ると布団の中で寝ているお爺さんとお婆さんがいたため、ここが2人の部屋だと分かった。

もう一つの部屋は覗いてみるがそこは何もなかった。

しかし、廊下はまだまだ続いている。

想雅たちは廊下の奥までさし足、猫あし、忍び足のような感じで音を断たないように静かに歩いて行った。

 

「マスター、あそこだけが明るいです」

 

ノエルが指差した先は、廊下まで光が届いているため確かに明るかった。

中を確かめるために障子を静かに少しだけ開けた。そこには……

ストレートで、腰より長い程の黒髪を持つ。前髪は眉を覆う程度の長さのぱっつん系の髪型。服は上がピンクで、大き目の白いリボンが胸元にあしらわれており、服の前を留めるのも複数の小さな白いリボンである。袖は長く、手を隠すほどであり、左袖には月とそれを隠す雲が、右袖には月と山が黄色で描かれている。ピンクの服の下にもう一枚白い服を着ているよう。

そして下は、赤い生地に月、桜、竹、紅葉、梅と、日本情緒を連想させる模様が金色で描かれているスカートと、その下に白いスカート、更にその下に半透明のスカートを重ねて履いているようである。スカートは非常に長く、地面に着いてなお横に広がるほどだった。

それに関してはあまり驚かなかった……それもそうだ、それより気になること……

 

目の前にあの小さかった輝夜が成長した姿でいたからだ。

 

想雅は心の中で少し涙込んだが、それ以上にノエルは瞳に涙を浮かべるように今まであまり声を出さずに行動していたのに、つい気が抜けてしまい声を漏らした。

 

「輝夜ちゃん……」

 

その声が輝夜に聞こえたのか、バッと振り返った。

 

「誰ッ!?」

 

あちゃぁ……ばれちゃったか……まぁ、いつかはばれると思ったよ、こんな堂々と廊下を歩いていればな……

想雅はその場で呼吸を整えて、少ししか開けていなかった障子をガラガラと開けて自分たちの姿を輝夜にさらした。

 

「大きくなったな、輝夜……」

 

「久しぶり、輝夜ちゃん」

 

と、懐かしみを覚えながら輝夜に言った。

 

 

 

 

 

 





時は平安、妖怪が出没し、陰陽師が生まれる時代。
まぁ、無事にまた再会できたということは嬉しいことだな。そこは素直に喜ぶとしよう。
想雅のやつ……ついに犯罪に手を伸ばしたか……

感想待っています!
次回もお楽しみに!



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爺ちゃんってこんなに凄いマッチョの人だっけ?


あー、テストが2週間前か……まっ、いいか。その後夏休みがすぐだし……
英単語テスト600文字……まぁ、何ともいえない結果でした。クラス順位が7位で校内全体でだいたい半分ぐらいのランクに入りました。

感想ありがとうございます。
では、ごゆっくり。




「大きくなったな、輝夜……」

 

「久しぶり、輝夜ちゃん」

 

彼女の前に数億年前、必ず帰ってくるといって自分の目の前から消えて行った2人が数億年後に姿を現したのだった。

 

「想雅……?ノエルちゃん……?」

 

茶髪で青い眼を持つ少年と白銀の髪と碧い眼を持つ少女……あの2人しか考えられなかった。

輝夜はバッと立ち上がり2人も元へと飛び込んできた。飛んできたことにより重力には逆らえずそのままバタリと倒れてしまった。

 

「想雅ぁ~……ノエルちゃぁ~ん……」

 

やっと会えて嬉しいのか顔を涙ぐませて彼らの名前を言った。しかし、想雅たちにとっては少しヤバい事だった。

 

「ちょ、輝夜、バレるって。爺ちゃん婆ちゃんにバレるって」

 

想雅は大慌てになりながら言ったため静かになろうとしても逆効果だった。

その時、廊下の奥からドタドタとした音が聞こえてきた。想雅はヤバいと思ったが今この状況を1人でどうかすることはできない。ましてや隣りでやっとのことで輝夜に再会できたノエル対して邪魔をさせるわけにもいかない。

想雅は心の中でため息をつき「もうどうにでもなれッ!」というやけくそ気味になっていた。

そして、その音は徐々に近づいてきて想雅たちの頭の後ろで止まった。

 

「か、輝夜ッ!どうかしたかッ!」

 

ピシャッ!バンッ!という耳に悪い音をさせながらふすまが開かれた。しかし、爺ちゃん婆ちゃんの目線に超えの主である輝夜の姿さえ見えなかった。

おかしいと思った爺ちゃんは輝夜の部屋に一歩踏み出そうとした。

 

「痛ッ!」

 

ゴスッ!という鈍い音と少年の痛みを訴えるような声が聞こえた。しかし、その痛みは想雅しか感じなかった。ふと下を見た爺ちゃんは痛みもないような顔をしていた。

 

「輝夜に何をしておるッ!」

 

「いやいやッ!何にもしてないですよッ!」

 

何か勘違いされていたため想雅は全力で否定した。しかし、これも逆効果だった。

 

「そう言う奴が怪しいのだッ!」

 

そう言うと爺ちゃんは想雅の襟元を掴み輝夜から離し、お年寄りとは思えない怪力で庭に向け投げた。

 

「ガッ!」

 

運悪く、隠れるときに使ったりしていた岩に頭を思いっきりぶつけた。しかし、飛ばされたときにヤバいと思い『魔』の力を体全体に流し込んでいたのが不幸中の幸いだった。だが、怪我はしなくても痛みは感じる能力のため、完全に気絶した。

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

あれ、ここはどこd……と言いたいところだがめっさ見覚えのあるところだった。

目線の向こうにはお花畑……またあんな状況になるんかよ……

想雅は「はぁ……」とため息をついた。やはり、お花畑のところに一人の男性らしき人が立っていた。阿○さんじゃない事を祈るさ……

 

「よぉ、少年。速いのは好きか?」

 

「おわッ!」

 

目の前にいきなり男性が現れた。

これで三回目なのだ。やっぱり驚く事にはなれない。

 

「で、どうなんだ?」

 

その男性は想雅の口から答えが聞きたいのか、顔を近づけた。

 

「は、速いことは好きですよ。逃げる時にも必要ですし、戦闘時も速さは最大の攻撃にもなったりと様々なところで活躍ができると思います」

 

想雅は思ったことをスッと口に出た。

速いことは敵に悟られずに攻撃することも、逃げることもできる。まぁ、俺の戦闘スタイルは速さを取り入れた攻撃と連撃、相手に考える隙を与えないこと。

男性は「そうだな」と嬉しそうに言った。そして、次のような言葉を発した。

 

「この世の理はすなわち速さだと思いませんか、物事を速くなしとげればそのぶん時間が有効に使えます、遅いことなら誰でも出来る、20年かければバカでも傑作小説が書ける!有能なのは月刊漫画家より週刊漫画家、週刊よりも日刊です、つまり速さこそ有能なのが、文化の基本法則!そして俺の持論でさ-------ァ!」

 

クー○ーの名言が男性の口から出た。

 

「少年よ、お前は超えちまうのか?だったら進め、徹底的になァッ!」

 

そう男性は言うとその場から「ラディ○ルッ!グッド、スピィィィィィードッ!」と叫び想雅の視界から消えた。

 

「○ーガーの兄貴のように速い人だったな……」

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

想雅はどこかの家の布団の中で目覚めた。

上体を起こし、そのままの状態で部屋の中を確認する。

どこも変わっておらず、ましてや牢獄の中というわけでもなかった。まぁ、畳のイグサのいい香りが部屋からも布団からもした。

にしても、輝夜の爺ちゃん……どんな怪力の持ち主だよ……一瞬本当に驚いちまったぞ、俺の爺ちゃんもこんぐらい元気だが、さすがにここまでの怪力は持ってない。

 

「とりあえず、部屋から出るか……」

 

布団から出て、障子に手を掛けた。

パシャッ!という音と共に開けると、目の前には竹藪が広がっていた。あぁ、ここは輝夜の屋敷か……ということは……どうなんだ?意識が無かったから布団に寝かせてくれたのか、それとも意識がない為、憲兵にひき渡せずそのまま目覚めるのをまったのか……

どちらにしろ、誰かに確認しない事には分からな事実だ。

廊下に足を進めていくと、ちょうど石段の近くに自分の靴が置いてあったためそれを履き、竹藪の方に近づいて行った。

 

「にしても……立派な竹だな……」

 

想雅は生えている竹を撫でながら言った。

本当にいい竹だよ……伊達に何年も田舎に住んでいないからな。竹の良さの1つや2つ分かっているのは当たり前だ。

奥へ奥へと進んでいくと、竹をナタで斬っている輝夜の爺ちゃんの姿が……

額に出てきた汗を拭いながら竹を斬っている。

 

「手伝いましょうか?」

 

隠れていては失礼と思ったため想雅は素直に竹藪の影から姿を現した。いや、それ以前の問題で侵入するときは隠れながら行動していた想雅本人に言えたことなのだろうか……

 

「ん?おぉ、意識が戻ったか」

 

「えぇ、お陰様で」

 

想雅は苦笑いで爺ちゃんに言った。

 

「それより、なぜ儂の屋敷に侵入してきたんだ?」

 

やっぱり訊きますか……

 

「まぁ……都で聞いた噂の本人が輝夜本人なのかと、あの子との約束を果たしに……」

 

想雅は竹藪のスキマから見える青い空を見ながら言った。

 

「ほう……約束とは……」

 

そこまで訊くんすか……まぁ、侵入したものとして答える義務があるか……

 

「話すと長くなるのですが……簡潔にまとめると、あの子がまだこんぐらいだった頃に……」

 

想雅は自分の腰のあたりを手を置きながら言った。

 

「いろいろあって離れ離れになってしまったんです。『生きて帰ってきて頂戴』……それがあの子とその言葉を言った知人との約束なのですよ。だから俺たちは輝夜に会いに来た。自分たちが生きている証拠というものを見せに……」

 

爺ちゃんは「そうか……そういうことか……」と呟き、想雅に腰に掛けていたもう一つのナタを想雅に渡した。

 

「君のような人は初めてだ。ほとんどの奴らは輝夜をただ見に来ただけの奴ら、そして美しいだけで求婚を申し込んでくる貴族どもだったから、少しカッとなってしまってな。輝夜から聞いたことは本当らしいな」

 

想雅に背を向け、ナタで竹を斬っていく。想雅も爺ちゃんに続いて竹を斬っていく。

 

「ところで輝夜とはどんな関係なんだ?」

 

「そうですね……」

 

想雅は竹を斬りながら考えた。

 

「可愛い妹……ですかね?そんな感じです」

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

マッスル爺ちゃんと竹を斬っていること数分、このころの竹の値段が高く伐採と同時にお金儲けをしているらしい。全部斬ったところで地面にタケノコが残っているため、また新たな竹が生えてくるらしい。まさに無限ループ。

背中に担げるぐらいに竹を詰め込み、そのまま屋敷の方向に向け歩いて行く。

 

「あの……少し持ちましょうか?」

 

しかし、その背中に担ぐというレベルは爺ちゃんだけ違った。見るからに乗せている(・・・・・)と言っても過言ではないぐらいに斬った竹を積み上げられていた。

 

「若いもんに負けてはおらぬぞ。ハハハッ!」

 

甲高い声を上げながら大笑いしていた。

想雅は「は、はぁ……」と苦笑いをしながら言った。

俺を投げ飛ばした時の怪力といい、この筋肉爺ちゃんは一体体の構造がどうなっているんだ?この時代にプロテインみたいな栄養剤何てない。いつか絶対に腰にくるぞ、これは……

想雅が心配事をしていると、屋敷に出たつもりだと思ったが小さな小屋らしきところに着いた。その壁にいろんな長さの竹が立て掛けていた。

想雅はそこに立て掛けると爺ちゃんもドスンという音をしながら竹を続いて立て掛けていった。ドスン……ってどんなに重いんだよ……

 

「よし……屋敷に戻るぞ」

 

そう言って想雅を連れ屋敷まで戻った。

改めて見ると本当にデカい屋敷だな……えーと、何だっけ?し……あぁそうだった。寝殿造か……何か小さな川もあるしこの時代の貴族といったらこんな感じの造りだろう。

その川の中には錦鯉がいた。まぁ、お高いんでしょう?

ふと目線を変えると砕けた岩があった……ってそこって俺が投げ飛ばされてダイレクトアタックした岩さんじゃないですかーやだー。

 

「おーい、帰ったぞー」

 

爺ちゃんは誰かを呼ぶように屋敷内を呼んだ。

廊下の奥からドタドタという音が想雅たちの耳に聞こえてきて、キューと何かが擦れるような音と滑っている音が聞こえた。おいおい……落ち着けよ……

想雅はこの活発な動きはさすがに婆ちゃんじゃないと察していた。

 

「お爺ちゃんッ!想雅がいないッ!」

 

バッ!と目の前に輝夜が出現した。

 

「おはよ、輝夜」

 

想雅は何気にあくびをしながら「よっ」と言わんばかりに小さく手を挙げた。

 

「はぁ……びっくりした……」

 

輝夜は安心したのか自分の胸をなでおろした。

 

「ところで、俺ってどれぐらい寝ていた?」

 

想雅はいちばん気になることを輝夜に聞いた。

 

「えーと……3日ぐらいかな……」

 

「いいや、4日だぞ」

 

輝夜の言ったことに修正を入れるように爺ちゃんが言った……って、4日ッ!?たかが(・・・)頭を岩にぶつけただけなのにぃッ!?ってたかが(・・・)って普通なら重傷で何ヶ月ぐらいか意識が無いだろ……それに俺は4日かよ……

まぁ……後、平安時代にいられるのは3日っていったところか……

想雅は考えながら「そうか……」と呟いた。

 

「ところで5人の貴族の求婚の話はどうなった?」

 

爺ちゃんは輝夜に尋ねるように聞いた。

 

「一応、1人ひとりに私が出した珍しい宝物を見つけられたら結婚を認めるということにしたわ」

 

輝夜は「めんどくさい……」とため息をつきながら言った。

珍しい宝物……ということは石作皇子、車持皇子、右大臣阿倍御主人、大納言大伴御行、中納言石上麻呂といった5人の家族か……って何で知ってんだよ俺は……無駄なところで頭使いやがって……そういや、テストで「この5人テストに出すぞ」とか言われた覚えがあったな……

で、その5人1人ひとりに求めた宝物は……石作皇子は『仏の御石の鉢』藤原不比等は『蓬莱の玉の枝』右大臣阿倍御主人は『火鼠の裘』大納言大伴御行は『龍の首の珠』中納言石上麻呂は『燕の産んだ子安貝』だったはず……だーかーら、なぜ覚えたいたし……

 

「無理がありすぎるな……仏の御石の鉢とか蓬莱の玉の枝などは……」

 

想雅は苦笑いしながら言った。

その言葉から出た想雅は知らないはずなのにその難題の道具が出てきていた。

 

「想雅……知っていたの?」

 

「ん?何がだ?」

 

「私が出した難題の物のことを……」

 

「あっ……い、いや、勘だよ勘。この時代で珍しいものといったらこんな感じかな……って」

 

想雅は誤魔化しながら言った。

それより、輝夜と一緒にいる時間があと3日か……

 

 

 

 

 

 





たぶん次回で平安時代は終わりだと思う……いや、早く終わらせて想雅をルーミアに会わせないといけないしな……まぁ、もう一息だ想雅……

感想待っています!
次回もお楽しみに!



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満月の前夜



かぁ……のどと腹が痛い……
風邪は辛いものだよ……まぁ、普通の人よりは回復力はあるから明日には治っているだろう。
テスト1週間前……何してんだ俺は……

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり。




さて、あれから2日の時が過ぎた。その間に輝夜が難題を出した貴族たちが屋敷に入ってきた。

まず1人目、石作皇子の『仏の御石の鉢』は遥々インドで手に入れたものらしいが、本来の『仏の御石の鉢』は磨けば磨くほど光り輝くはずなのだが、その鉢は磨いても光らず偽物だとばれてしまったらしい。

2人目、藤原不比等『蓬莱の玉の枝』は初め輝夜自身も本物かと思っていたらしいが、想雅が部屋に入ってきて輝夜に耳打ちをした。その内容は「庭先にたくさんの職人たちが藤原不比等に『蓬莱の玉の枝』からお駄賃をくれ」と言ったのだ。

そのことを聞いた輝夜は呆れ、その職人たちを自分たちの部屋の近くの庭に呼び出し、藤原不比等もろども追い出した。

3人目、右大臣阿倍御主人の『火鼠の裘』は商人から高いお金を支払って『火鼠の裘』らしきものを輝夜の元まで持ってきた。そして、彼は自信たっぷりな表情で「火に入れてみましょう」といいその皮衣を火の中に放り込んだ。しかし、たちまちその皮衣は燃えていき跡形もなく灰となってしまった。さすがの右大臣阿倍御主人も騙されたと言いながら怒って屋敷を出た。

4人目、大納言大伴御行の『龍の首の珠』は龍を探しに海へと出たらしいのだが、その道中に嵐に巻きもまれてしまい彼は「生きた心地もありません」と天に向かって祈り続けた。その願いが届いたのかたちまちその嵐が静まり、何も持っていないのでは輝夜に見せる顔が無いためなのかそれっきり輝夜のところへと姿を合わせることが無かった。

最後の5人目、中納言石上麻呂の『燕の産んだ子安貝』は自分の屋敷の軒先に燕が巣を作っているのを見て、部下たちにすぐにやぐらを組ませて燕の巣の中へと手を入れた。しかし、掴んだのは『燕の産んだ子安貝』ではなくその巣の中にいた燕のヒナの糞だった。

恥をかかされたと思った中納言石上麻呂は輝夜の屋敷に乗り込み無理やりでも輝夜に求婚をした。だが、想雅と爺ちゃんの手によってそれはあっけなく終わってしまった。

 

「えーと、後いるものは……と」

 

想雅はただいま今晩の夕食の食材を買っていた。

羅生門の近くはお店とかが広がっているためいろんなものが売っていて食材には困ら無さそうだ。しかし、まぁ、昔というわけでオリーブオイルやバターと言った西洋の調味料などが無いというわけだ。でも僕はオリーブオイル……っていうわけにもいけないというわけだ。もこ○ち涙目。

 

「魚とネギだったと思います」

 

「おっ、サンキュ」

 

忘れてかけていた想雅に耳打ちをするようにノエルが言った。

その場から移動し魚とネギを買うと、買うことは済ましたため寄り道せずに帰ろうとした。しかし……

 

「触らないでッ!」

 

どこからか嫌がる女性の声が聞こえた。

想雅自身はこの声と声量だったためただ事ではないと察した。視界を広げるとあるところだけ人が集中しているところがあった。その現状を見てただ事ではないということがわかった想雅たちは寄り道をしないと決めていたが気になったためその場所まで言った。

人込みを掻い潜り、人の目線が集まっていると思われている1人の少女と数人の男たちがその少女に絡んでいた。

 

「いいじゃねぇかよ、なっ、俺たちと遊ぼうじゃないか?」

 

あー、何だ遊びの誘いですか……しかし、嫌だと言っているのにその少女の言葉を無視していやがるな。無理やりでも遊びたいのか?なら余所でやっとれよな……まぁ、見るからに悪いのは少女に突っかかっている男たちだな。

想雅はその男たちに呆れたのか見てられなくなったのか「はぁ……」と息を出し深呼吸をした。

 

「その娘が嫌がっているだろ、それぐらいわからないのか?」

 

人々の視線が想雅に集中した。想雅はそのことを気にせず前へと歩いて行った。ザ……ザ……ザ……と確実に地面を捕らえているような歩き方で……

流石の男たちもその威圧感で一瞬、背筋が凍ったがその動作をしているのはただのガキであったためその恐怖感は一気になくなっていった。

 

「なんだぁ?小僧、やる気かぁ?」

 

1人の男は拳をポキポキと鳴らしながら想雅に言った。おいおい、そんなにポキポキやっていると指の関節が曲がるぞ。

 

「やる気など無い。ただ大人しく帰ってもらうだけでいい」

 

想雅の表情は真剣そのものだった。しかし、その言葉を聞いた男たちは「ガハハハハッ!」と大笑いしていた。

 

「ふんっ、その減らず口を叩く口からやってやるぞ」

 

ブンッ!男が想雅の口に向け拳を揮った。しかし、想雅はその攻撃は今までの経験上もっとも低い位置に徹するぐらいの見切りやすかった攻撃だった。

その拳を受け流しながら掴み、そのまま自分の近くまで持っていった。そして、そのままの状態で男の脚に足払いを掛け体勢を崩してから『魔』の力を腕に少しだけ流し込み、回転をかけるかのように腕を上に振るった。

 

「ガッ!」

 

男は訳が分からないまま宙を舞い、気付いた時には腰と頭を中心とした部分が地面に当たり悶絶をしていた。

 

「―――――野郎ッ!」

 

その男の仲間の一人が腰の鞘から刀を抜き、想雅に斬りかかった。ホントこの時代になると容赦がねぇな……

想雅は内心を思いながら斬りかかってくる刀を避け、男の手元を狙い蹴り上げた。

 

「グッ!」

 

蹴られた為、その刀は宙を舞い想雅の近くの地面に刺さった。想雅はそれを使い、刃ではない方の部分を使い男の腹にみねうちを入れた。

 

「……ッ!」

 

言葉にならないほど痛いためか、一言も発さずにその場に倒れた。

「ふぃ……」と額にできた汗を拭いながら想雅は少女につかかっている残りの男たちに目線を向けた。

 

「なぁ、倒れている奴と共にこの場から大人しく退散してくれないか?無駄なやり合いはノーだからな」

 

想雅はそう言って早くいなくなってくれとヘタレらしく祈るばかりだった。今度は大人しく少女から離れその場から退散した。これによりたくさんあった人込みは無くなりいつもどうりの風景が視線に広がった。

 

「人込みも無くなったしそろそろ帰るか……」

 

そう呟いた想雅はノエルのところへと戻ろうとした。

 

「お、お待ちくださいッ!」

 

あの助けた少女から声がかかった。

想雅は振り返り彼女を見た。黒髪のロングヘヤー、着物も来ておりどこか貴族らしい雰囲気だった。そういえば、この時代に来てからゴタゴタに巻き込まれやすいな……

 

「助けていただきありがとうございます」

 

「いや、そんな感謝されるとこじゃない」

 

「どうかお礼でも……」

 

「必要ないさ、俺は俺の意志で動いただけだ。自分勝手な行動をお許しください」

 

「いいえ、そんなに改めないでください」

 

想雅はそう笑顔で言うと少女もニッコリと笑顔を浮かべた。

数分後、だいたいの話が終わり、買い物の食材が腐ってしまうためその場から去ろうとしていた。その時に少女から声がかかった。

 

「あ、あなたの名前だけでも教えいただけないでしょうか?」

 

想雅は「あー……」と言いながら考えた。まぁ、この時代だし名乗っても大きな問題ではないだろう。

 

「天上想雅だ」

 

「天上想雅さん……私は藤原妹紅です」

 

少女の名前も訊くとに背中を見せながら手を振った。

 

 

 

 

 

-----○●○------

 

 

 

 

 

 

輝夜の屋敷に帰るとすぐさまに調理に向かった。

台所には婆ちゃんがいたため2人と手伝いをやるといったノエルの3人で調理することにした。

まぁ、今回は婆ちゃんがいるため得意のフランス料理ではなく日本料理を作ることになった。だが、貴族の食べ物は塩っ気が強く、野菜も少ないため健康に良くないと聞いたことがあった。しかし、婆ちゃんが作る料理はどれも栄養バランスが整っており輝夜のことを考えていると感じた。

数分後、料理が完成したため居間まで運び込み、席には爺ちゃんと婆ちゃんがいて、俺の隣りにはノエルがいた。しかし、いつもなら自分の目の前にいるはずの輝夜の姿が無かった。

 

「少し輝夜の様子を見てきます」

 

そう言うと席から離れ渡り廊下を歩いた先の輝夜の部屋の前へとたどり着いた。障子に手を掛けようとしたが少しスキマが空いておりそこから光も漏れていた。一応覗いて見たがその部屋には誰もいなかった。

 

「待っておくか……」

 

一応、渡り廊下で会わなかったため輝夜自身が部屋に戻ってくる可能性も考えて想雅は輝夜の部屋で待つことにした。

部屋の隅に置いてあった椅子に目を逸らしてみるとそこには一枚の紙が広げてあった。人のプライバシーの侵害になると思ったが興味本心には勝つことができず、そっと静かにその内容を見た。

 

『姫様。次の晩の満月の夜にお迎えに上がります。御私宅の準備をお願いします』

 

と、最後の文がこう書いてあったのだ。差出人は不明。しかし、この『満月の夜にお迎えに上がります』というのはとうとう竹取物語の終盤、かぐや姫が月に帰る時が来たというわけになる。

だが、なぜ輝夜が地上にいたということに疑問に思う。それと時代が時代だ、俺とノエルが時間を遡ってから結構な年月が経っているはずだ。しかし、輝夜はまだ若々しかった。

疑問の上にまた疑問と、輝夜に訊き忘れていたことばかりが脳裏をよぎっていた。

 

 

パシャッ

 

 

想雅の後ろから障子が開く音がした。

誰かが来たということ……つまりこの部屋にいるはずの輝夜自身だった。しかし、想雅は振り返らずただどこかを真っ直ぐ見つめていた。

まぁ……簡単に言えば怖かったのだ。人のものを勝手に見た挙句、たぶん見せたくないものだと思う手紙を見てしまった。まったく、興味本心には人間勝てないな……

 

「見たの?」

 

輝夜が言い始めた。

その言葉は少し悲しいように思えた。だが、あくまで予想だ。輝夜の顔なんて背を向けていたら見ることができないからだ。例え首を動かしただけでも確認しにくく距離感もつかめない。

 

「あぁ……」

 

ただただしがない返事をした。しかし、返事だけではない。輝夜には聞かなければならないことがあったのだ。

 

「単純なことを忘れていた。あの時、輝夜はロケットに乗って月に向かったはず、なぜ地上にいる?」

 

想雅がそう言いながら振り向こうとし、正面を向いた瞬間に輝夜に抱き着かれた。戸惑った想雅だが輝夜の肩が振るいていることに気付いた。

その時、輝夜の頭が上がり、その表情は久しぶりに出会った時と同じ表情だった。そして、想雅に訴えた。

 

「想雅たちを探しに来たのよッ!」

 

衝撃な発言に想雅は言葉を亡くした。

確かあの時は「輝夜たちを避難させてから行く」と輝夜が言って俺が「あぁ」と返事をした。そうだ、一緒に行かなかったからこそ輝夜が地上に戻ってきてしまった。一緒に行くというのは嘘だということはわかっていた。そうでも言わない限り輝夜は「ここに残る」と言いかねないからだ。つまり幼い輝夜に言った言葉はその場しのぎみたいなものだった。

 

「心配かけたのはすまなかった。それよりどうやって地上に来た」

 

第一の関門はクリアした。次の問題はどうやって地上に来たということだ。

輝夜が地上に行こうとしても少なからず誰かが止めるはずだ。まぁ、永琳は確かだろうが……

 

「罪を犯したの……」

 

「つ、罪ッ!?」

 

想雅はまさかと思った。

輝夜……お前は俺たちに会い行きたいがために誰かを殺めたのか?それとも何かを盗んだりしたのか?

そんな心配をしていた想雅は次の言葉で一気に落ち着きを取り戻した。

 

「不老不死になったのよ。心臓に刺しても死なないの」

 

不老不死……そのおかげで輝夜は長年美しい身体を保ってきた、と想雅はわかった。想雅自身も存外ではないが……

 

「蓬莱の薬を飲み、不老不死になることは月の都での禁忌……それで私は地球に島流しになったのよ」

 

「島流しって……その域超えて天体流しじゃねぇかよ……」

 

「はぁ……」と月の都がやる島流しに顔を抑え、呆れを現しながらため息をついた。

何やってんだよ、月の人たちは……月に長年居すぎて頭のネジが吹っ飛んだんかよ……無重力無酸素空間での世界で俺がいない間どうなったんだよ。

それよりだ。

蓬莱の薬……聞いたことは無いが、不老不死の薬というのは竹取物語でかぐや姫が帝に渡したということがあるが、たぶん蓬莱の薬と不老不死の薬は同一と考えていいだろう。

 

「その蓬莱の薬というのを作ったのが、永琳だな」

 

「正解よ」

 

アイツの事だ。輝夜が地上に行こうとすると止めることは目に見えているが、まぁ……密かに作っていたと思われる蓬莱の薬を輝夜が飲んで島流しにされる。月の掟に逆らえば自分の命だけではなく輝夜の後までが危うくなる。いい判断だ、永琳よ。

 

「質問は終わり?」

 

「あぁ、これ以上はいい。ノエルにも伝えていいか?」

 

「私から伝えるわ」

 

「爺ちゃん婆ちゃんは?」

 

「……それも私から」

 

伝えることが辛いためなのか一瞬口を噤んだ輝夜。しかし、いつかは言わないといけないものだったため自分から伝えると言った。

 

「そういえば、私からもいい?」

 

「あぁ、答えれることはな……」

 

まぁ、こっちもずいぶん聞いたしな。それぐらいは、な……

 

「想雅とノエルちゃんは不老不死なの?」

 

あー、やっぱり訊いてきたか……まぁ、当たり前だな。何年たったか知らないが結構な月日が経っている。初めて出会った時と変わっていない外見に不思議を持っても当たり前。

 

「まぁ……そうだな。俺とノエルは不老不死だが輝夜とは少し違うな……」

 

「違う?」

 

「輝夜は心臓を刺しても死なない完璧の不老不死だが、俺たちは不老不死だが心臓や脳と言った即死の急所をやられると死ぬ」

 

想雅は自分の頭を指で刺しながら言った。

流石のチャラ神も絶対なる命を与えるわけにもいかないだろう。万が一、気が狂い神の恐怖になることがあるとしたらいくらやったとしても死なないだろう。

その質問の答えを聞いた輝夜は「これ以上いいわ」と言いながら想雅から離れた。

 

「そういえば、飯ができたぞ」

 

「わかったわ、今行く」

 

想雅は輝夜にそう言うと、急に輝夜に腕を掴まれた。

しかし、無理やりは離そうとはしなかった。こうやって触れ合えるのはあと1日だということだからだ……

 

 

 

 

 

 






もうすぐで2回目のタイムトラベルは終わります。まぁ、次回話なんですけどねぇ……
次の更新は2週間後ぐらいになりそうです。前書きでも書いた通りテストがありますので……

感想待っています!
次回もお楽しみに!



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月からの使者



1ヶ月ぶりの投稿……ねぇ……久しぶりすぎて何書いていたか忘れてた。
いやぁ……高校がマジで楽しすぎるんですのよwwしかも夏休みに入ってフリーな状態。
まぁ、この小説を投稿できたし良しとしましょう……ね?

あとあと、活動報告に書いた通りに新しい小説でも書こうかなと思っているのでよろしくお願いします。
実際のところ活動報告に書いた神話系の物語じゃなくなるんですけどねぇ……

甲子園の予選も始まったことだし、また熱い夏がやってくるな

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり。




今宵の月は美しい。それは真ん丸で神々しく輝いておりどこか優しく見守ってくれるような感じだった。

しかし、今日の満月を見るとどうしてもそういった感情が持つことができない。

『蓬莱の薬』を飲んだ罰で地球に島流しにした月の民たちはなぜまた輝夜を月に連れ戻しに来たのか?輝夜から聞いても「わからない」という一言だ。憶測だが地球で頭を冷やせ、と思っているのだろうか?

まぁ、今はそんな考えは置いておこう。

想雅は渡り廊下を歩きながら夜空に映えている満月を見ていた。その視線をふと下にやると、数百……いや、数千といった野郎たちがいた。

その男たちは帝の命令で輝夜の屋敷にいるのだ。輝夜が月に帰るという事をどこからかで耳にしたのかは不明だが、今はそんなことを考えている場合ではない。

廊下を歩いている最中に庭にたくさんいる男たちにジロジロ見られている視線を感じた。

「さっきから見かけるがあいつは誰だ?」「噂に聞いたんだが……輝夜様の屋敷に何度も出入りしているのを見かけてるらしいぞ」「もしや……輝夜様の婿さんか?」「中納言石上麻呂様を圧倒的な力で止めたとか……」「我らでは太刀打ちできないか……」「それより、イイ男だな……やらないか?」

最後のやつ誰だよ……この時代からホモは健在かよ……

想雅はそんなことを気にしながら輝夜の自室まで歩いた。

輝夜の自室の障子をゆっくりと開けると、輝夜とノエルが座っていた。爺ちゃん婆ちゃんは違う部屋で何かをやっている……というか監禁?帝がよこした兵たちにある一部屋に監視されている。

 

「そろそろ時間か?」

 

想雅はその場にあぐらをかき、輝夜に訊いた。

 

「えぇ、そろそろ来るはずだわ」

 

輝夜は少し険しい表情を見せながら呟いた。

『竹取物語』の話が本当なら、ここで庭にいる兵たちは謎の光により石像のように身動き一つも出来なくなってしまう、となっているのなら、俺とノエルも動きを封じられてしまうのではないか?まぁ、俺は『魔』の力を使って無理やり破るが、ノエルは普通の女の子だからそんな化け物染みた怪力を持ち合わせていない。その時はノエルにも『魔』の力を流し込むまでだな。

しかし、想雅の考えは浅はかだった。

タイムトラベル1回目のとき、彼ら月の民たちは独自の科学技術を進歩させていた。その時には対物ライフルのNTW-20がすでに完成されており、月に行く時のロケットなどと、歴史的にいえばだいたい20世紀後半ぐらいの進歩レベルだった。

なら、想雅が1回目に来たときと2回目に来たときでは当然のように時間が経っている。何を隠そうが輝夜たちに出会ったときから、平安時代まで……約、数億年は経っているのだと……

 

「「……ッ!」」

 

想雅とノエルの動きが急に止まった。

想雅はすぐに反応して、『魔』の力を全体に流し込み無理やり拘束を解いた。そして尽かさずノエルにも流し込み、拘束を解いた。力が弱い女性でも『魔』の力さえあれば超人的な怪力を得ることができるのだ。

想雅の視線がノエルに集中していた時、輝夜は障子を開け外を確認した。

 

「やっぱり……」

 

外の庭にいた兵たちは先ほど拘束にかかった想雅たちと同様に、その場にいる兵たちが頭から杭を打ちつけられたようにピクリとも動かない。

上を見上げるとどこかが光り輝いており、おそらくその光のせいで兵たちは身動きが取れないと考えた。そして、月が見える方向から徐々に何かが近づいてくるのが見えた。近づいてくるたびにそれが何なのかと……いや、このような状況を作り出せる人たちと察しはついていた。

 

「ただいまお迎えに上がりました、姫様」

 

片手に弓を持ったある一人が輝夜に近づいてきた。

その人は昔から傍にいていつも面倒を見てくれた人だった……

 

「永琳……」

 

永琳、と呼ぶとそう呼ばれた女性は「はい」と静かに答えた。

永琳は輝夜に触れるぐらいの距離を取り、輝夜に手を差し伸べた。

 

「では、行きましょう」

 

その言葉の矢先、永琳の目の前に思いもよらないことが起こった。

 

「大丈夫かッ!輝夜ッ!」

 

彼女の視線に映ったのは、この時代、この大地では珍しく目立つ茶髪の髪と銀髪の髪、眼は両方とも青く、碧く、と見覚えのある2人だった。

そう永琳が思いもよらないこととは、あの時に姿を消したまま戻ってこなかった少年と少女の2人……天上想雅とノエルだった。

想雅たちは輝夜の近くに来て初めて永琳が目の前にいることを察した。

 

「……よ、よぉ……」

 

「久しぶりね……」

 

「……」

 

「……」

 

その言葉を交わした後、しばしの沈黙……そして……

 

「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!?」」

 

彼と彼女の声が屋敷全体に響き渡った。

近くにいたノエルと輝夜は五月蠅かったため耳を両手でふさいでいた。

 

「ちょ、ちょっとッ!今までどこに行っていたのよッ!」

 

「い、いやぁ……まぁ……いろいろあってな……」

 

「いろいろって……人様に心配させておいてその答えは無いでしょう?しかも、どうしてまだ生きているの?あれから数億年は経っているのよ?」

 

「え?マジですか……」

 

ここに来てやっと自分たちがあれからどのぐらいの時間が経ったのか把握ができた。第一、輝夜に訊けば早かったのだが、そのことに関してのことをすっかり忘れていた。

 

「他にもいろいろツッコみたいところはあるけど……まずは仕事を片付けましょう」

 

永琳は想雅たちに背中を向け、片手に持っていた弓を引くと一緒に輝夜を連れて帰ろうとしていた一人の右肩を永琳の矢が貫いた。

その人の叫び声は聞こえてこなかったものの彼が苦しそうに肩を押さえているのが見えた。しかし、想雅とノエルの2人はどうしても理解できないことがあった。

 

「なぁ、お前は輝夜を連れ戻すために来たんじゃないのか?」

 

輝夜のもとに届いた手紙には『お迎えに上がります』と書いてあったはず……しかし、今永琳がやっている行動とは全くの真逆。『お迎え』というより『帰りたくないでござる』状態だった。

 

「元からそんな気は無かったわ」

 

と、さらっと他人事のように言った。

視線を輝夜に向けると知っていたような表情を浮かべていた。

 

「なぁ、輝夜。まさかお前も知っていたのか?」

 

「騙すなら味方からって言うでしょ?」

 

さいですか……

この光景を見た想雅とノエルはこの後自分たちが何をするのかがだいたい察しがついていた。

 

「つまり、俺たちはお前らの逃走計画に手伝えと……」

 

「あら、察しがいい」

 

「そうだと思ったよこんチクショウ」

 

想雅は頭をかきながらどうするかと考えた。

まぁ、月の人たちとやり合うことは免れない事だし、最低限殺さないようには戦闘不能にしておかないと追手とかが面倒なことになるしな……とりあえず、帝の兵たちと爺ちゃん婆ちゃんに危害を加えないようにこの場から逃げないとな。

しかし、想雅とノエル、永琳は動きやすい服装だが、輝夜だけが平安時代の女貴族が来ていた十二単ではないが、スカートの長さが足元までと驚異の長さだった。

 

「失礼するぞ、輝夜」

 

「え?」

 

想雅がいきなり何を失礼するのか理解できなかった輝夜はきょとんとした表情を浮かべた。しかし、想雅はそんな事を気にせず、バッと輝夜をお姫様抱っこをした。

 

「ちょ、ちょっとッ!いきなり何をするのよッ!」

 

「あ、暴れるなッ!落ちるぞッ!」

 

輝夜はバタバタと降りようとしていた。

 

「お前の服装じゃ逃げるのに苦労するからこうやって抱えているだけだッ!別にそんなやましい事なんて考えてないッ!」

 

そう想雅が叫ぶと納得してくれたのか少し輝夜が大人しくなった。

 

「べ、別にこのままでもいいけど……」

 

「ん?何か言ったか?」

 

想雅は聞いておらず、少し不機嫌になってしまったのか、ぷいとそっぽを向いてしまった。

ホント、女の子とかかわると何で俺はこうなってしまうんだよ……何が悪い、接し方か?

そんな考えを想雅は脳みその端っこに追いやった。

 

「じゃぁ……行くぞッ!」

 

想雅の号令と共に4人は屋敷を後にした。

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

「チッ!しつけぇなッ!」

 

想雅は自分に向かってくるレーザーらしきものを避けながらどこかに逃げようとしていた。

 

「おい、永琳ッ!どこまで月の技術が進歩しているッ!」

 

想雅は念のために月の住人であった永琳にどれぐらい進歩したのか訊いた。

 

「だいたいだけど……数億年よりは確実に進歩しているわ」

 

「それだけじゃわからんッ!もっと……使ってくると思う兵器とかは知らないかッ!」

 

「えーと、さっきのはレーザーを撃ち出す兵器で岩なら簡単に溶かすことができるわ」

 

「殺す気満々じゃないですかーやだー」

 

あのレーザーどんな熔解力なんだよ……岩なら簡単にって、いわゆる人間なら即熔解ってもんだろ?恐ろしいわッ!

そんなことより、俺たちと一緒に輝夜と永琳までも殺そうとしていやがる……

 

「他にも、近接攻撃に特化したビームサーベルや戦車、狙った目標に追尾するホーミング弾、それに宇宙からの人工衛星の攻撃などといった兵器があるわ」

 

「これ……完全に勝ち目無いだろ?」

 

想雅は苦笑いしながら言った。

 

「要するに逃げるが勝ちよ」

 

「簡単に言ってくれるじゃねぇかよ……」

 

そう言って想雅はレーザーが放たれたと思う方向に輝夜を落とさないように向きを変え、片手で支えると同時に胸ポケットからスペカを取り出した。

 

「龍は偉大である。あらゆるものを凌駕する覇気を持つがために。覇気『龍王の威圧』」

 

想雅の青い眼が紅く光り、向かってくるレーザーの動きを拘束した。

動きが止まったことを確認した想雅は抱えている輝夜を下ろし、輝夜と永琳に向け言った。

 

「あそこに見える竹林があるだろ?あそこに逃げろ」

 

想雅が見据えている先には確かに竹林があり、その量は尋常ではないぐらい竹がたくさん生えていた。そのため、逃げる、隠れるといったことは適していると想雅は判断した。

 

「また私たちを置いていくつもりなのッ!?」

 

近くにいる輝夜が想雅に向け不満な意見を出した。

まぁ、そうだよな……数億年前に「後から行く」と言って行かなかったわけだし、今回ばかりは譲れないと輝夜も思っているはず。

 

「じゃぁ、誰がアイツらの足止めをする?このままだと全員終わるぞ?」

 

想雅の言ったことは本気だった。

 

「そ、それは……」

 

流石の輝夜も言葉を亡くした。

輝夜と話している時、レーザーが放たれる音が想雅の耳に聞こえた。

 

「話の邪魔をするな」

 

想雅の眼がより一掃紅く光った。

拘束されているレーザーとそのレーザーは無残にも儚く散っていた。散ったレーザーの光の残留がキラキラと美しく光っているのがわかる。

 

「この拘束がいつまでも持つわけじゃない。早く逃げろ」

 

しかし、輝夜は納得がいっていないことは想雅自身にもわかっていた。想雅は輝夜の手を掴んで自分の方向へと引き、輝夜に抱き着いた

 

「えっ、な、何ッ!?」

 

いきなりの出来事だったため輝夜が戸惑った。

そして、戸惑う輝夜を余所に想雅は語りかけるように言った。

 

「今回もお前たちのところには戻ってこれそうにない。別に死ぬから帰ってこれないわけじゃない、俺たちにもいろいろと事情があってな。まぁ、俺たちも一応不老不死だし、会おうと思ったら会えるからそんなに悲しまなくていい。これで終わりではないからな」

 

そう語りかけるとゆっくり輝夜を抱いていた腕を外した。

 

「本当に?」

 

「あぁ、約束だ」

 

これで納得がいってくれたのか、輝夜は自ら永琳の近くに走っていた。

 

「後は頼むぞ、永琳ッ!」

 

「わかったわ、あなたたちも死なないようにねッ!」

 

そう言い残し、輝夜たちは竹林の中へと逃げて行った。

2人の姿を確認できなくなったと同時にノエルが想雅の傍まで来た。

 

「さて、ノエル。時間稼ぎと迎えが来るまでの時間、頼むぞ」

 

「私はマスターの剣、マスターの想うがままに」

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

 

想雅はノエルを構えるとその場に足を開き戦闘態勢を取った。

しかし、先ほどレーザーを撃ってきた本人の姿が先ほどから見えない。いや、レーザーの事だからどこか遠距離で撃ってきているのも可能性である。だが、実際のところそんな感じには思えない。

なぜか近くにいるという感覚があるのだ。

別に周りは視覚で確認する限り俺たち以外の人物は見当たらない。なら、なぜそんな感覚を覚える。誰も周りにいないはずなのだが……

 

「考えても無駄だな……」

 

そう呟いた矢先、キィィィィィ……と何かの音が想雅の耳に届いた。そして、その音が聞こえなくなるとバシュッ!といった何かが発射される音が聞こえた。

 

「……ッ!」

 

想雅は自分の頭を狙ってやってくるレーザーを見てギョッとした。こんな暗く頼りになるといったら月光ぐらいだ。しかし、それだけでは完全に脳天を狙うことができない。

想雅は姿勢を地面まで崩し、レーザーが向かってきた方向に霊力槍を撃つ。だが、放った方向には何も人の叫び声さえ聞こえない。すでに撃った後に移動している。

ただの時間稼ぎではこちらがやられるだけ、本気でやり合うしかない。相手は戦闘のプロフェッショナルと考えた方がいいだろう。

想雅は先ほどのキィィィィィ……という音はレーザーを溜めている音だと仮定して、たぶん発射には数秒かかったはず……なら、そこを狙って行けば……

想雅は左手に霊力槍を作り出し、その音が聞こえるまで備えた。

 

 

キィィィィィ……

 

 

「そこだッ!」

 

想雅はどこから音が聞こえるか耳を澄まして確認し、その方向に撃ち込んだ。

 

「グギィッ!」

 

どうやら想雅が想定した仮定は正しかったらしく命中したらしい。

想雅は霊力槍を撃ちこんだ方向に行くと人が倒れていることを確認した。その人は片手にハンドガンと同じぐらいの大きさをもっているレーザーガンらしきものを持っており、顔の方は某アニメの戦闘力を測るみたいなスカ○ターみたいなものが装着されていた。

 

「これ何だ?」

 

想雅はその顔に装着されていたス○ウターらしきものを取り、自分の耳に装着した。

何やらカチカチとやっているとピピピピピ……という何かを解析しているのか探しているのかと思わせる機械音が聞こえた。

 

「ん?何か赤色なのか黄色なのかわかんない物が表示されたな」

 

その機械音の後にはその○カウターのスクリーン上に暖色を基調とされた物が映し出されていた。中には青く緑くといった寒色もあるがだいたいの表示の仕方は暖色だった。

その形は常に人の形をしており歩いているような動きもしている。そして、人らしきものが止まると拳銃を構えるようなポーズを取った。

 

 

キィィィィィ……

 

 

「……ッ!」

 

想雅は気付いた。

これは人のような形をしたものじゃない……人そのものの動きだ(・・・・・・・・・・)、と。

想雅は霊力槍を作り出し撃ち出した。

生憎、レーザーの溜める時間よりは速く難なく気を失わせることに成功した。

 

「こいつで俺の居場所が分かったのか……月の民ってすげぇ……」

 

戦闘力を測るものではないというのはガッカリしたが、温度を測り敵の居場所を探知できるというのは凄いと思った。だから、こんな暗闇の中でも俺の居場所を察知できたんか……

 

「さて……こいつで探知しているのはあと3人……意外と少ないな」

 

このような状況ならもっと人が多くてもいいはず……何か作戦でもあるのか……

そんなことを考えていた時、スカウ○ー(温度探知機)から人がこちらに熱原体を構えて向かってくるのが確認できた。たぶん永琳が言っていたビームサーベルだろう。

想雅は居合の構えをして攻撃に備えた。

目を鋭くさせ目標を確認したと同時に打ち込む……

 

 

ピピピピピ……

 

 

スカウタ○(以下略)が何かの熱原体を確認した。

その熱原体は軌道を蛇のように動きながらこちらに向かってくるのが確認でき、その動きを見て想雅はホーミング弾だと察知した。

居合の構えを一時中断しようとしたが想雅はあることに賭けてみることにした。

 

(だいたいは逃げることを考えるがあえてここは……)

 

想雅は『魔』の力を脚に流し込み強く地面を蹴った。

丁度、ホーミング弾の下を通り一直線にその熱原体を持つ人にみねうち居合斬りを入れた。

 

「ガッ!」

 

腹に思いっきり撃ち込まれた人は熱原体を落としながら地面に倒れた。

それと同時に目標を見失ったホーミング弾はそのまま地面に激突した。その衝撃は地面を揺らした。

想雅は先ほどまで役に立っていたス○ウターを取ると足元に捨てた。

 

「ふぅ……あとは迎えを待つだけか」

 

そうい言って竹藪の方に向いた時。

 

 

ピピピピピ……

 

 

足元のスカ○ターが何かを探知したらしい。しかし、その音は先ほどのように静かな音とは違った。

音が大きくなっていくにつれ徐々に……徐々に想雅の額に汗が流れてきた。ス○ウターの音によりあまり周りの音が聞こえにくいがゴォォォォォ……という音がどこからともなく聞こえてきている。その音が近づいてくると同じに○カウターの音も大きくなっていく……

 

 

ピピピピピ……ピピピピピッ……ピピピピピッ!ボォンッ!

 

 

スカウターが爆発したと同時に嫌な感じを覚えた想雅は後ろに下がった。

 

 

ゴォォォォォ……ドォォォォォッ!

 

 

下がったと同時に目の前に何かが降ってきた。ギリギリ後ろに下がっていたため踏みつぶされることは無かったがその轟音は一つだけではなかった。

 

 

ドォォォォォッ!ドォォォォォッ!ドォォォォォッ!

 

 

合計4つの物体が砂煙をまき散らしながら地面に落下した。

その物体が落下後に数秒経ち、キィィィィィ……と金属と金属が擦れる独特な音が聞こえてきた。

ドォォォォォンッ!と先ほどと同じく地面が揺れる。

そして、先ほどまで立ちこんでいた砂煙は轟音が聞こえたと共に吹き飛ばされ、その物体の姿が現れた。

全長は20メートルを超えている人型ロボットだった。

装甲は真っ白、背中にはバックパックのような物でその上にビームサーベルの柄が刺さっていた。頭にはアンテナが数本付いており、片手にはビームライフルらしい物を持っていた。

 

「すでにガン○ムやん……」

 

そのガン○ムもどきが想雅に向けビームライフルを突きつけた。

 

『あー、あー、マイクテスマイクテス。おい、そこの少年。輝夜様と永琳様の居場所は知らないか?』

 

中にはやはり人が乗っていたらしい。

 

「知らない、例え知っていたとしても教えるわけにはいかないな」

 

想雅は見上げながら言った。

ロボットに乗っている人が無言でビームライフルを装填はじめた。

 

「やばッ!」

 

想雅は後ろに下がり撃たれる前に逃げたが……

 

 

バシュゥゥゥゥゥッ!……ゴゴゴッ!ゴゴゴゴォォォッ!

 

 

地面が抉れそれによりさまざまの大きさをした岩が宙に飛んだ。想雅は避けるがガ○ダムもどきはそんな岩を気にせず前に進んできた。

それに気付いた想雅は逃げようとするがロボットの頭部からバルカン砲のような物が乱れ撃ちされてきた。その弾は石に当たり跳ね返ると思ったが次々と破壊していく光景を見たため逃げられずにはいられなかった。

しかし、そのバルカン砲攻撃は1つだけではなかった。

 

 

バババババッ!バババババッ!バババババッ!

 

 

一機のロボットばかりに集中しすぎたためか残りの3機のロボットが想雅の左右後ろを塞いでおりそこからバルカン砲攻撃を仕掛けてきた。

四方八方から放たれるバルカン砲は岩を破壊していく、想雅は焦りの表情を見せてきた。

 

「チッ、逃げ道は……目の前かッ!」

 

想雅は目線を凝らし逃げ道を探すとちょうど図体がデカいためかロボットの又の間がトンネルみたいになっていた。

尽かさずそこに走っていきロボットの又の間を通り抜けた。

 

「よし、これでだいぶ……」

 

助かったと思った想雅だったが目の前に出現したある物体に絶句した。

形は球根型の約20センチの物体が浮遊していた。

想雅は察した……あれは……

 

「ファン○ルッ!」

 

想雅が叫んだと同時にファンネ○は先からレーザーを発射させたが、そのようなものをアニメで見たことがある想雅はすぐに察し、すぐに行動したため当たることは無かった。しかし、危機は終わらない。

次々とファ○ネルもどきが想雅を狙って瞬間的な動きを繰り返しながらレーザーを撃ていく。想雅はギリギリのところで避けているためだいぶ体力がきれてきた。その時だった。

 

「ガァッ!」

 

想雅の体が何かに縛り付けられるような痺れているような感覚におちった。体は宙に浮いたままそして周りにはフ○ンネルもどきが展開されていた。

一機のファ○ネルもどきが想雅に向けレーザーを放った。

想雅は『魔』の力を体に流し込み、その拘束を力づくに壊し刀でレーザーを斬った。しかし、レーザーは一機だけではない。

他の○ァンネルもどきも同じくレーザーを放つ、想雅は避けていくがさすがに全弾は避けることは出来ず当たってしまった。

 

「ガァァァァァァァァァァッ!」

 

『魔』の力により体には穴が開くことは無かったが、死ぬほどの痛みが想雅を襲った。当たったときにその場に崩れたためか一時的に動きが止まり残りのレーザーが想雅を襲う。

 

「グガァァァァァァァァァァッ!ゲホッ!ゲホッ!グッ……カハッ!」

 

あまりの痛みに叫んだと同時に咳き込んでしまい、ましてや血までも吐き出してしまった。

痛い……痛すぎる……岩を溶かすレーザー……死ぬほど痛い……体に穴が開かなかったのがよかったが……

その場に倒れながら想雅は思っていた。

こんなんだと……俺の寿命減ったな……あっ、寿命なかった……

 

「は、早く立たなければ……」

 

左腕で地面を掴み立とうとした瞬間。

 

 

ボォォォォォォォォォォッ!

 

 

とてつもない暴風が想雅を襲った。

死ぬほどの痛みを味わった想雅は思うように力が入らずそのまま飛ばされてしまった。その際に自分の手元から刀が離れてしまい。刀が想雅が倒れていた場所に刺さった。

暴風に飛ばされた後、力が入らない想雅は意識が遠のいていた。

 

「グガッ!」

 

最終的に木の幹に当たりそこから崩れていき屍のように力が入っていない。

こりゃぁ……骨が何本か逝ったな……体中が痛い……過去に行ってからこんな危ない状況が多いな……ははは……チャラ神め、俺を鍛え直しているのか?

想雅の脳裏にはこんな状況でもヘラヘラ笑っているチャラ神の姿が思い浮かぶ。

ふと目線を上にやると目の前まで迫ってくるロボット軍団が薄れている視界に見えている……

ここで終わりなのか……いや、ダメだ……約束を果たしていない……アイツと会うまでは死ねない……月移住計画のときもこんなこと思ったな……やはり俺は弱いな……

振動が少しづつ大きくなっていくことに徐々に想雅には焦りが見えていた。

ならどうする……どうすればいい……

 

『勝負はその気を緩めた瞬間に決まることだってあるんだぜ。さすがに冷酷になれとは言わないがな。(*゚∀゚)*。_。)*゚∀゚)*。_。)ウンウン』

 

その言葉が想雅の頭を過った。

やはり気を緩めていたか……なら冷酷になれと?無理だ、俺はそんな器じゃない……なら……

想雅はロボットの距離が数メートルになったとき想雅は大胆な考えを思いついていた。

 

「そんな器がないのなら自分が変わればいい……俺の考えは変わらないが、約束を果たすために俺は生きるためには手段を択ばない……」

 

想雅はすぅ……と息を吸った。

 

「我は孤高である。我は獰猛である。故に何人たりとも邪魔されぬ絶対者。灼眼に輝く双眼は覇者の証、鋭い角は王者の証、大きなる翼は我の孤高の証、我行く道が邪道だとしても我は決して屈さぬことを誓おうぞ」

 

想雅はふぅ……と息を吐くと何かを待つように夜空を見上げた。そしてゆっくりと瞼を閉じていった……

 

 

グィィィィィンッ!ガションッ!ブゥゥゥゥゥン……

 

 

ロボットが背中についているビームサーベルを手に取り起動させた。そして想雅に向け斬りかかる……

 

「カッ!」

 

想雅は急に眼を見開き威嚇するような声を上げた。

 

 

ガ……ガガガガ……ガガ……

 

 

攻撃してこようとしていたロボットの動きが止まった。

動きが止まるという事は想雅のスペカの1つ、覇気『龍王の威圧』が使用されたと考えれるが詠唱をしていないためそれが使われたことは無い。

想雅は脚で地面の掴むように立ち上がった。一瞬フラっとしたが倒れることなくその場に耐えきった。

そして地面をずっと見つめていた想雅の瞳は顔が上がると同時にその瞳が露わになった。

 

 

夜空に映える輝く青の瞳が……

 

 

その眼は、覇気『龍王の威圧』とは似ているが似ていない。

今回の瞳は本物の龍の瞳(・・・・・・)だからだ。しかし、これだけでは変化は止まらなかった。

頭の側頭部から角のような物が生えてきた。その角は純潔な白を思わせるように美しく、ただ一片の穢れもないほど綺麗だった。

そして、背中からは勢いよく白い翼が生えてきた。

想雅の姿は人間という存在から変化し……

 

 

龍となったのだ。

 

 

人間の形をした龍……即ち、龍人となったのだ。

しかし、これは『言霊』だ。自分から解けば元通りの人間になる。ただただその場しのぎみたいなものだ。

 

「フシュゥゥゥ……」

 

想雅は口から青い火の粉を吐いた。

おいおいおい……ここまでリアリティ何て求めてないぞ。ただこの場をしのげればいいだけだったんだが……想いが強すぎたらしい……まぁいい。

想雅はボロボロになっていた自分の体を触った。しかし、不思議と痛みもなく先ほどまであった傷もない。

 

「龍の再生力は流石だな……」

 

俺の『聖』の力は先ほどの傷だとだいたい30分から1時間で再生できる。それだと今の状況で完全に死ぬ。なら、再生力が高い龍に変化すればいいと思ったまでだ。まぁ、人間を一時的にやめるというのも結構辛い……

想雅は先ほどからずっとロボットを睨んでいる……

想雅は『魔』の力を脚に流し込み……地面を蹴ったッ!

 

 

ボゴォォォガゴォォンッ!

 

 

想雅の拳がロボットの頭を貫いた。そして、『魔』の力により速度が格段に上がったのにもかかわらず翼を広げ何も衝撃がなかったかのようにその場に静止した。

想雅は空気を吸うようにして青い炎を吐く準備をした。

 

『たかがメインカメラをやられただけだッ!』

 

だが、ロボットの頭部を破壊されたア○ロも黙ってはいなかった。

サブカメラで上空に上がっている想雅を見つけ出し左腕でビームライフルを構えた。想雅は今静止していたため狙い撃つには申し分なかった。

 

 

バシュゥゥゥゥゥッ!

 

 

想雅に目がけてレーザーを放った。

その想雅は先ほどから青い炎が口元から溢れ出していた。

 

 

ボゥッ!

 

 

ついに口から青い炎を吐きだした。しかし、ただの炎ではなかった。放たれると同時に不安定な形から徐々に形あるものに変化していき槍の形をした青い炎が完成した。

その槍は先ほど放たれたレーザーを貫き消滅させた。そのまま槍はロボットの左腕を貫いた。

それを確認すると想雅はロボットに翼を広げながら突っ込んでいった。

想雅の体がロボットの又の下を通ると実際は翼が引っ掛かるのだが今回はなぜか引っ掛からなかった。

右腕で地面を掴み、地面に刺さっていた刀を取ると回転するように体勢を整えた。

 

「大丈夫か?ノエル」

 

『大丈夫です、マスターこそ大丈夫ですか?』

 

「大丈夫だ、龍の再生力には驚かされたよ」

 

拳を開いて閉じて開いて閉じてを繰り返した。

 

『マスターはこのまま龍のままですか?」

 

「いいや、『言霊』を解けば人間に戻るさ。人間はやめたくないもんでね」

 

想雅たちは今は戦闘中のはずなのだが余裕のように話していた。それもそのはずだ……先ほど又の下を通ったロボットは脚が綺麗に斬られそのまま落下していった。

 

 

ドゴォォォォォォォォォォ

 

 

そのロボットはただ動けないだけの鉄塊になった。

 

「さてと……残りの奴も片付けますか……」

 

鉄塊になったロボットの方に振り向こうとした時だった。

 

 

シュバッ!シュバッ!

 

 

空気を斬るような音が想雅の耳に伝わった。

 

『な、なんだッ!?この剣はッ!?』

 

ロボットから人のような声が聞こえてきた。

そのロボットの方に目線を向けると数百……数千、いや下手したらそれ以上の数の光の剣が3体のロボットに一斉掃射されていた。

その無数の光の剣には想雅自身見覚えが無い、聖王剣『エクスカリバー・コールブランド』でもこのような数の剣を創りだすことは不可能。

無数の剣により斬りつかれ、貫かれたロボットは爆発をしないままその場に崩れていった。剣が一斉掃射されてから倒れるまでの時間、わずか10秒だった。

状況をまだ理解できていない想雅はその場に杭を刺されたように棒立ちだった。

 

「私の弟を傷つけたのですから当然の酬いですよ」

 

聞き覚えがある声が上空からした。

目線を逸らすと、月光に照らし出される白い翼、その翼は神々しく見惚れてしまいそうに映えている。頭の上には黄金に輝く天使の輪っかが……

 

「ミカエルさん」

 

想雅の声が聞こえたのかミカエルは想雅の姿を見ると一目散に降下してきた。

 

「そぉぉぉぉぉくぅぅぅぅぅんッ!」

 

「ちょ、ミカエルさんッ!その速度はヤバいでs……オフゥッ!」

 

想雅は勢いよくやってくるミカエルを両腕で抱え込みながら足を踏ん張った。

ズザザザザザァ……と滑って行き、想雅が脚に『魔』の力を流し込んだことによりやっとのことで止まった。

想雅はミカエルの顔をミカエルは想雅の顔を見ると、ミカエルは想雅に頬擦りをした。

まいったなぁ……と思う表情で半ば嬉しい想雅。

 

「ミカエルさんが来たという事は……時間ですね?」

 

「えぇ、迎えに来たわ、そーくん。それより立派な角ね」

 

「え?あ、あぁ……今すぐ戻します」

 

想雅は『言霊』解き元の人間の姿に戻った。

そんなやり取りをした後、ミカエルがやってきた魔方陣の中へと消えて行った。

 

 

 

 

 

 






次回でこの章は終わると思います。
早く、想雅をルーミアに会わせたいものですからねぇ……皆さんもそう思うでしょ?

感想待ってます!
次回もお楽しみに!



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ただいま

どーも、お久しぶりデース!
ということでやっと更新することができたしたー
いやぁ……約5ヵ月も小説を書けなかったのはキツかったッス。
テストが終わったと思えば、資格。資格が終わったとも思えばテストとかおかしすぎた。
まぁ、無事失踪はしないですんだぜ!

感想ありがとうございました!
では、ごゆっくり




元の世界に戻って早2日の時が流れた。

流石に1ヵ月もいれば病院での生活も慣れてきた。何ていうか……病院という概念は無くてホテルに長期間滞在みたいなものだった。

自然と退屈もしなく楽しい毎日だった。

想雅は楽しい時間がこうも早いものだと実感した。そして今、彼はノエルと共に執務室に向かっている。

カツカツと赤い絨毯がひかれている大理石から足音が小さく響く。

大きな窓から太陽の光が当たり温かい感じが体を通して分かる。そういえば、あまり雨が降ったことが無いな……いや、雲が空を覆い尽くす事態、この1ヵ月で2,3回あったか無かったぐらいだ。別に乾燥しているわけでは無く適度に潤いを保たせるように雨が調整されながら降っている。これも神の力か、天使の力で制御されているのだろ。

大きな扉……執務室の前まで来た2人はその扉を開き中に入った。

 

「おっ?やっと来たか。(*´∀`)」

 

青白い透明の電子パネルようなものを弄りながら想雅の到着を待っていたチャラ神が退屈そうな口調で言った。その電子パネルには様々な数式や文字、画像や動画と言ったパソコンのような役割をしている。

チャラ神はそれの端をトントンと2回触るとそのパネルは画面が消えるような感じで面前から消失した。

 

「何調べてたんだ?」

 

「これまで作った世界の数々を見直してたんだZE☆(゚∀゚☆キラッ」

 

「どれぐらい創ったか分からなかったんじゃなかったのか?」

 

「昨日まではな。久しぶりに数式を使って創ったからすんげぇ楽しかった。(´∀`∩)」

 

まさに何かを作り、その喜びに浸っている姿はまさに子供のようだった。

そんなことは気にせず、ぱっぱと要件を訊いた。

 

「で、俺たちをここに呼び出したからには何かあるんだろ?」

 

「うん、まさにその通り!m9っ`・ω・´)シャキーン」

 

チャラ神は軽いウィンクをした。目から何か星の形をした何かが出たがそれはツッコまないでおこう……まさにキラッ☆のようだった。

 

「さて、そろそろお前を地上に帰そうと思っている。(`・ω・´)キリッ」

 

その話がもちかけられた瞬間、想雅の反応が待ちくたびれたかのように目を丸くした。

 

「過去の転移の実験も兼ねて、お前の状態を確認したが今のところは何も異常がない。( ゚д゚ )ノ」

 

「そ、それなら……」

 

「あぁ、今すぐにでも戻せる準備は出来ている。Σd(゚∀゚)」

 

チャラ神はいつものチャラけた表情で言った。

そう言えばこいつの深刻そうな顔とか一度も見たことなかったな……てかそれ以前にそんな表情するか?こいつは……

想雅は地上に戻ることを楽しみにしているが、それ以上にノエルは今まで想雅がどんな世界にいたのかどんな生活をしていたのか楽しみにであった。

 

「楽しみです、マスターの住んでた世界」

 

「そうか?まぁ、楽しいところだよ」

 

楽しいところだあそこは……毎日がのんびりしていてたまに異変という大騒動が起こるがとても住み心地がいい世界だ。

 

「よし、心の準備はOKか?(゚∀゚)アヒャ」

 

流石に1ヵ月もいれば病院での生活も慣れてきた。何ていうか……病院という概念は無くてホテルに長期間滞在みたいなものだった。

自然と退屈もしなく楽しい毎日だった。

想雅は楽しい時間がこうも早いものだと実感した。そして今、彼はノエルと共に執務室に向かっている。

カツカツと赤い絨毯がひかれている大理石から足音が小さく響く。

大きな窓から太陽の光が当たり温かい感じが体を通して分かる。そいうえば、あまり雨が降ったことが無いな……いや、雲が空を覆い尽くす事態、この1ヵ月で2,3回あったか無かったぐらいだ。別に乾燥しているわけでは無く適度に潤いを保たせるように雨が調整されながら降っている。これも神の力か、天使の力で制御されているのだろ。

大きな扉……執務室の前まで来た2人はその扉を開き中に入った。

 

「おっ?やっと来たか(゚∀゚)アヒャ」

 

青白い透明のウィンドウようなものを弄りながら想雅の到着を待っていたチャラ神が退屈そうな口調で言った。そのウィンドウには様々な数式や文字、画像や動画と言ったパソコンのような役割をしている。

チャラ神はそれの端をトントンと2回触るとそのパネルは画面が消えるような感じで面前から消失した。

 

「何調べてたんだ?」

 

「これまで作った世界の数々を見直してたんだZE」

 

「どれぐらい創ったか分からなかったんじゃなかったのか?」

 

「昨日まではな。久しぶりに数式を使って創ったからすんげぇ楽しかった」

 

まさに何かを作り、その喜びに浸っている姿はまさに子供のようだった。

そんなことは気にせず、ぱっぱと要件を訊いた。

 

「で、俺たちをここに呼び出したからには何かあるんだろ?」

 

「うん、まさにその通り!」

 

チャラ神は軽いウィンクをした。目から何か星の形をした何かが出たがそれはツッコまないでおこう……まさにキラッ☆のようだった。

 

「さて、そろそろお前を地上に帰そうと思っている」

 

その話がもちかけられた瞬間、想雅の反応が待ちくたびれたかのように目を丸くした。

 

「過去の転移の実験も兼ねて、お前の状態を確認したが今のところは何も異常がない」

 

「そ、それなら……」

 

「あぁ、今すぐにでも戻せる準備は出来ている」

 

チャラ神はいつものチャラけた表情で言った。

そう言えばこいつの深刻そうな顔とか一度も見たことなかったな……てかそれ以前にそんな表情するか?こいつは……

想雅は地上に戻ることを楽しみにしているが、それ以上にノエルは今まで想雅がどんな世界にいたのかどんな生活をしていたのか楽しみにであった。

 

「楽しみです、マスターの住んでた世界」

 

「そうか?まぁ、楽しいところだよ」

 

楽しいところだあそこは……毎日がのんびりしていてたまに異変という大騒動が起こるがとても住み心地がいい世界だ。

 

「よし、心の準備はOKか?(。・д・)」

 

「Oui!」

 

チャラ神が指を鳴らすと一瞬にして想雅たちは執務室から消えた。

チャラ神は一人、静けさが戻った部屋で浅く息を漏らした。そして、指をチョンと空気に触れる動きをし、ウィンドウを開いた。

 

「1ヶ月間の監視でとりあえずはアイツ(・・・)は眠ったまま……いや、あまり慢心の憶測は後々の復活に支障をきたすな……┐(´д`)┌ ヤレヤレ」

 

ウィンドウの中には天上想雅に関する情報がいくつかのウィンドウで分けられていた。その中で最も重要視したのは1ヶ月前までの想雅になかったものが記されていたのだ。

チャラ神は手を合わせるようにウィンドウを閉じ、執務室のガラス張りの窓の方を向き、輝く太陽の光を目に入らないように片手を添えた。

 

「重く大いなる罪の死には、神の光は届くこと無し。汝罪を裁くのであれば、汝の義の想いを持ち、それに抗わんとする。( ・´ー・`) ドヤァ・・」

 

チャラ神の口からふと漏れた言葉は、何かを暗示するかの如くその言葉は静かな空間から消えて行った。

チャラ神の後ろには閉じ忘れたのか一つのウィンドウがぽつんと残っていた。

そのウィンドウに記されていたのは、少しラグが生じたのか全部は読み取れないが……

 

『▲つ+○罪の1□『#◆』●復○の!能▽あり、●×者、天@想◎▼直ち*$殺?&$し』

 

「おっと、消し忘れてた。( ´,_ゝ`)」

 

パチンと鳴らし、ウィンドウを閉じるとチャラ神はいつもの席で暇つぶしがてら執務をするのであった。

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

夏が始まったばかりの幻想郷、太陽が出ている時なら修造のように暑く感じるのだが、今の時刻は夜、日が沈んだばかりだが涼しくは感じる。

ある場所に2人が風と同時に転移してきた。

 

「そういえば、壊されていたんだったな」

 

想雅は首に手をやり、「あちゃぁ」と言いながら苦笑いした。これじゃ、ルーミアに不便がかかっちまったな……そういやアイツはどこに寝泊まりしてるんだ?博麗神社?それとも紅魔館?の、野宿というのも考えられる……やっちまったな俺。

 

「我は求めたり、休息を呼ぶ広間よ。我が身を守る盟約の砦よ。孤高な宮よ。これ成り立つとき、我は事に憂いなし」

 

建築……いや、創造する『言霊』はあの時と同じ感情に襲われる。無事完成した住居、何かをやりこなしたという満足感。

目の前に1ヵ月ぶりの自宅が創造された。

あの時と造りはほとんど同じ……とは言いかねるが、一部がレンガ造りといった西洋の造りにもなっている。

 

「まずは寝泊まりするところに問題は無し、と……」

 

手と手を払いながら次は何をするか考えた。

打倒に考えて……ルーミアを探すほかないだろ。

としたら、紅魔館か博麗神社ぐらいだな、アイツが知っているところは。

とりあえず想雅はここから一番近い紅魔館へと向かうことにした。

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

紅い煉瓦で造られた大きな建物の一部屋から仄かに光が漏れている。

その部屋には、金色の長髪と紅く怪しい双眼を持つ一人の妖怪が空に浮かぶ満月を見ていた。

 

「想雅がいなくなって1ヶ月も経ったんだ……早いなぁ……」

 

その妖怪、ルーミアには月光がどことなく切なく、儚いと感じている。

それもそのはず、満月の日は想雅がどこかに消えて行った時に空で輝いていたからだ。満月を見ると自然に想雅のことを思い出してしまう。

1ヵ月経った今でも想雅の事で心の整理がまだ少しできていない。

想雅は言った。

 

 

『安心して待っててくれよ、ルーミア……』

 

 

彼はまた私のもとに戻ってくる。

その言葉をただただ信じていた。しかし、1ヵ月も経った今、彼はまだルーミアの目の前に姿すら現していない……いや、幻想郷から気配すら感じない。

 

 

カツッ!

 

 

館の外から小さな何かが着地した音が聞こえた。

外が静かだったためその音はルーミアの耳にほんの少し聞こえた。

何かの聞き間違えだろうと館の玄関前の煉瓦道を見るとそこには明らかに誰かが一人立っている。

しかし、玄関前の大きな門が開いた音はしなかった。

塀を登っていたのか、それとも空からやって来たのか、しかし、塀を登ってくるのならもっと門に近い方だ。誰かが着地したのは噴水の目の前だった。

そして、シルエットからにして男だと分かる。

つまり……侵入者と……

この館の主であるレミリアが外出中のことを聞きつけたのか盗みにやってきたのかもしれない。メイドの咲夜も、門番の美鈴も、図書館の主のパチュリー、おまけの小悪魔、とフラン以外の者はここにはいない。

その男は堂々と玄関から入り込もうとしていた。

 

「はぁ……レミリアに居候させてもらっているし侵入者を追い返すぐらいはしよう」

 

ルーミアは窓から振り返り、玄関まで歩いて行った。

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

想雅は自宅から紅魔館に向けて飛んでいる。

ノエルは「飛べる」と自分自身は言っているが、実際やってもらい見てみたが、飛んでいるというのよりは浮かんでいるように見え、それに加え、まだ数秒しか空中に浮遊することしかできなかったのだ。

なので現在は刀になってもらっている。

 

「ん?紅魔館に明かりがついてない?」

 

遠くからでも見える赤煉瓦造りの屋敷ははっきりと見えるのだが、全体的に明かりはついていなかった。

想雅はとりあえず噴水前まで行き、そこに着地した。

 

「改めて見るが、ホント目に悪そうな屋敷だな……」

 

想雅は一直線に堂々と玄関まで歩いてった。

手が扉に触れるとゆっくりと音をたてないように開けた。

相変わらず狭いのか広いのか分からない玄関ホールだな、と思いながら歩いて行く。

ホールの中心ら辺に来たときだった。

二階の階段前に何者かが天井から現れた。その際に黒い翼を羽ばたかせながら着地をした。ふわりと月光に輝く金色の髪が宙を舞った。

想雅はその姿にその場に立ち尽くした。紛れもなくあの子だということに……

 

「ルーミア……」

 

ぼそっと呟いた想雅の声はこの広いホールには響かなかった。

 

「何者か知らないけど、ここが紅魔館と知ってのことかしら?主のレミリアも不在の時を狙って盗みにでも来たのかしら?」

 

彼女の赤い眼光は想雅に向けられた。

夜行性であるルーミアは眼光を向けている相手が想雅だと分かるのは容易のことのはずだが、ルーミアの心境はまだ想雅が帰って来てないという思いが強いためか、目の前にいる人物が想雅だと思わなかった。

想雅の耳に彼女の声が入り、ますます心の奥から感動と嬉しさの渦がみるみると大きくなってきた。

 

「ふぅ~ん、訊く耳を持たないということね……なら、力づくでも出てもらうわッ!」

 

床を蹴り、想雅に突っ込んでいく。

右手に漆黒の大剣を出現させ、容赦なく頭から振り下ろそうとした。

 

『マスターッ!』

 

ノエルの声が想雅の耳に響き、我に返ったようにハッ!とした時には大剣が目の前まで迫って来てる時だった。

刀を抜いて反応するのにはすでに遅しッ!ならば、ここは受け止めるッ!腕でッ!

想雅は頭上に両腕でクロスを組み防御態勢を取った。

 

「『魔』の力よッ!」

 

想雅は口に出すと同時に大剣が腕に触れた。

 

 

ドォォォォォッ!ガッ!ガガガガッ!

 

 

ホールの床が勢いよく粉砕され砂埃が舞い上がり、一体の造花や物などが吹き飛んだ。

ルーミアは砂埃の届いていない範囲に下がり、大剣で薙ぎ払うと風が起こり砂埃を瞬時に焼失させ、男の状況を確認した。

ルーミアの視線の先には直撃した腕が切り落とされてはおらず、それ以外に外部から目立った外傷は無い。

強いと言えば服が少しボロボロになっていることだ。

想雅は腕を降ろし、その表情をルーミアに見せた。その表情はやれやれと苦笑いしていた。

 

「おいおい、再開の挨拶にしては物騒じゃないか?ルーミア」

 

やっと彼女の視線にも、耳にも彼と断定できるものが得られた。

茶髪で青色の瞳、高身長の彼の姿は1ヵ月とほとんど変わりが無かった。

月光が想雅に当たりより彼が帰ってきたことを強調をしている。

 

「そ、想雅……?」

 

握っていた大剣が手元から離れ、その場に膝から崩れ落ちた。その際に床に金属音を響き渡らせた。

想雅は少しづつルーミアとの距離を縮めていった。

この一歩のためにどれだけの物事が起きたのだろうか。

数億年前の日本、ツクヨミ様との賭け、月移住計画、捕食者との殺り合い、古来からの最新鋭の兵器たち、と……

足を地につけるたびに今までの思い出が蘇っていく。そういや、誰かを殺すかもと思っていたが誰も死なずにすんだんだな……

そしてようやく彼女の前へと進んだ。

想雅は体を落とし、ルーミアとの背の高さが同じになるぐらいまでしゃがみ、そして……

 

 

―――――抱きしめた。

 

 

「ただいま、ルーミア」

 

想雅が耳元でそう呟いた時、自然とルーミアの瞳からポロポロと涙が溢れだした。

 

「遅いぃ……遅いよぉ~、そーがぁ~……。ずっとずっと……待ってたんだからぁ~……」

 

大人びた姿からは予想することができない子供のような口調、1ヵ月前もこんなことがあったなと想雅は思った。

 

「悪かった悪かった、いろいろと忙しくてな。早く帰ってくるのに遅れた」

 

想雅はルーミアの頭を慰めるように撫でた。

 

「ホントに……本当に、ルーミアが無事にいてくれてよかった」

 

想雅の瞳からもポロポロと涙がこぼれ始めた。

両者の再開に嬉しいのか、数分間涙を涙を零しながら抱き合った。

 

「もう大丈夫か?」

 

「うん、目の潤いが無くなりそう」

 

「それは危ないな」

 

想雅は手を差し伸べて、ルーミアを立たせた。

 

「ところでみんなの姿が見えないんだが……」

 

あたりをキョロキョロしながらルーミア以外誰もいないことを確認した。

 

「霊夢たちが異変を解決したから、レミリアたちは神社で宴をしに行ったわ」

 

道理でいないわけだ。

宴というのは前々から行ってみたいと思っていたし、神社にみんなに顔を合わせるがてら宴を楽しんでみるか……

 

「じゃっ、神社に直行するか」

 

目元にまだ溜まっていた涙を袖で吹き、玄関まで行こうとした時だった。

 

「誰かいるの?」

 

一階の右側の扉が開いた。

そこには、瞳の色は真紅、濃い黄色の髪をサイドテールにまとめ、その上からナイトキャップを被っている少女。

想雅の事をお兄様と呼び慕っている娘だった。

 

「フラン……」

 

想雅は振り返り、少女の名前を呟いた。

フランの腕がプルプルと震え、目元には大きな涙の粒がポロポロと滝のように流れ初めた。

 

「お兄様ぁぁぁぁぁぁっ!」

 

フランは勢いよく想雅に向け一直線に飛んだ。そのスピードは飛びつくというよりはもう突進のような速さだった。

 

「ちょ、フランッ!そのスピードは……あべしッ!」

 

想雅の忠告は遅かった。

そのままお腹にから一気に後ろに引っ張られたような感覚に襲われ、壁へと突っ込んでいった。

間一髪、『魔』の力を使ったため自分自身の体には目立った外傷は無かった。

 

「帰ってきてからすぐこんなボロボロになるとは普通思わんだろ……」

 

想雅は持たれながら天井を仰いだ。なんせこんなボロボロになるということを予測していなかったからだ……だけど、不幸とは言わない。寧ろこうして元気な姿を見られて幸運な気がする。

 

「お兄様だっ!ホントのホントのお兄様だっ!」

 

フランは想雅の胸に顔を埋めている。彼女の目には涙はすでに無かった。想雅に会えたことに嬉しさを抑えきれずに感動より嬉しさに溢れていた。

 

「ま、まぁ……とりあえず、心配かけたな」

 

フランの頭に自分の手を添えて、天井を見る……

その光景をジーっと見ているルーミアがムスッとした表情で言った。

 

「……で、この悲惨なホールを早くにでも直したらどう?」

 

「そ、それもそうだな……すまないがどいてくれるか?フラン」

 

「うんっ」

 

素直にフランが想雅から離れた。

想雅はズボンに着いたほこりなどを払いながら立ち上がり、改めてこのホールの悲惨さに気付く。

ホールというのには退化しており、ほぼ廃墟が崩れたような感じな光景だった。

 

「存在有りして、事は無し。事実を塗り替え、それを真実とかさん」

 

瓦礫の山となっていたホール一体が先ほどまで廃墟のようではなく、新居のように美しい状態に戻った。

こんなもんだろ、と言わんばかりに息を吐いた。

 

「次は俺の服か……」

 

修復の『言霊』を服にかけようとした時だった。

 

「ちょっと待って!」

 

フランが急に想雅の腕を掴んだ。

 

「うん?どした?」

 

「屋敷にいろいろな服があるからそれを着てってもいいよ」

 

「それだと、レミリアに迷惑をかけ……」

 

想雅は最後まで言えなかった。いや、言ったら負けだと思ったからだ。

何せ、フランの目は何かを期待するかのようにキラキラと輝いていたのだ。

 

「私もそれの方がいいと思うわ」

 

ルーミアに関しては何かニヤニヤするかのようにこちらを見てきたのだ。何かおかしいところでもあるのか?

 

「じ、じゃぁ……お言葉に甘えて……」

 

期待されるがままに想雅はどこかの部屋まで連れて行かれたのだった。そして、ルーミアがニヤニヤしていた理由も着てみて分かるのだった。

 

 

 

 

 

 




さて、この章も終わりに近づいてきましたねぇ
とりあえず、今月中には終わらせたいと思います。

感想待ってます!
次回もお楽しみに!


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久しぶり、みんな。そして、ただいま。



冬休みがこんなにも暇だと感じたのは初めてや。
なんか何もやる気がでないし、除夜の鐘が鳴る前に煩悩が消えた気分だ。
さて、あと3日で今年は終わり。
悔いは無い今年だった。

感想ありがとうございました。
では、ごゆっくり。




満月の空を下に、神社で賑やかに宴をやっている。

お酒を飲み交わしたり、話し合いなどをしたり、至るところに酔っ払いなどがいるがそれがいつもの光景である。

 

「想雅がいなくなってそろそろ1ヵ月ね……」

 

お賽銭箱の前の小さな階段に座って霊夢が酒を一腹交わしていた。

 

「そうだな、もうそんなに経ったのか……」

 

時間が流れるのは早いなと言わんばかりに隣りに座っている魔理沙が団子を食べている。

 

「宴会が実は『異変』だとは思わなかったぜ……」

 

この宴会が始まる数週間前、3日おきに何処かしらで宴会が行われていた。

参加する方もされる方もたまったものじゃないほどの多さだった。しかし、単に宴会が多いだけなら『異変』とは言いきれなかったのだ。

実はそれと同時に、より物騒なものが幻想郷を覆い尽くしていたのだ。

それは、空気に混じって漂う、ごく微かな妖気。

けれど誰かしらに危害を及ぼすでもなく、そもそも居るのか居ないのかさえも分からないぐらいの濃度だっため、誰も別段気に留めないまま度重なる宴会に興じていた。

無論、それは表面上の話だ。

実際のところは宴会の度に、腹の探り合いをしていたのだ。

そんな中、埒が明かないと思った霊夢たちは、本格的に真相解明のために動き出した。

それがつい先ほどに解決されたのだ。

3日おきの宴会は無くなっても異変解決の祝勝の宴会は無くならないのだ。

 

「まったく……異変が終わった後も宴会なんてどんだけどんちゃん騒ぎが好きなのよ。後片付けは私がやるのよ?それぐらい考えてほしいわ」

 

「まぁまぁ、楽しければ片付け何て苦じゃないぜ?」

 

魔理沙は苦笑いしながら手元の杯を手に取った。

2人の目の前に誰かが酔っているのか少しフラフラしているように近づいてきた。

 

「お二人さん、あそこには加わらないのか?」

 

薄い茶色のロングヘアーを先っぽのほうで一つにまとめており、真紅の瞳を持ち、その頭の左右から身長と不釣り合いに長くねじれた角が二本生えている。

服装は白のノースリーブに紫のロングスカートで、頭に赤の大きなリボンをつけ、左の角にも青のリボンを巻いている。

片手には伊吹瓢という紫の瓢箪を持ち、三角錐、球、立方体の分銅を腰などから鎖で吊るしている。

 

「妖怪の輪に入ったら私自身どうなるかたまったもんじゃないわ」

 

力を抜いたように霊夢は後ろに寝転び、しばしの疲れをとるようにした。

その霊夢の顔を覗くように少女が見下ろしている。

 

「……で、何か用でもあるの、萃香?あなたのせいで後片付けの方も疲れそうなんだけど」

 

萃香と呼ばれた少女……伊吹萃香は先ほどまでの異変『三日おきの百鬼夜行』を実行した張本人である。

この前の異変『春雪異変 ~怨霊騒動異変~』の影響で幻想郷から春を集めてしまったせいで桜の季節が梅雨前の短い期間だけになり、幻想郷では宴会が減ってしまった。そのことを不満に思い、能力で人を萃め霊夢たちに3日おきに宴会を行わせ、その騒ぎで他の鬼たちを幻想郷に戻そうとしたのだ。

しかし、結果は失敗に終わった。

本人には自覚は無いが、霊夢の能力によって萃香の『人攫い』が幻想郷の住人に通用しなかったことが原因だったらしい。

 

「しょうがない、それが博麗の巫女の仕事だろう?」

 

「異変解決が仕事よッ!」

 

萃香は笑いながら瓢箪に入っている酒を飲んだ。

この瓢箪は酒虫という少量の水を多量の酒に変える生物の体液が塗布されていることによって酒が無限に沸き出るようになっている。ただし、転倒防止のためのストッパーが付いており、一度に出る酒の量は瓢箪の大きさ分のみである。

出てくる酒は鬼専用の相当キツい酒なので、人間等が飲むと大変な事になるらしい。

萃香は「ぷはぁ!」と言い霊夢の隣りに座った。

 

「しっかし……神殺し、天上に抗えし爪牙、幻想英雄……天上想雅という人間が消えて1ヶ月も経つのか……ホントに二つ名通りに幻想になっちまったのかねぇ……」

 

萃香は実のところ、幻想英雄、即ち想雅と一度手合せをしたかったらしい。

今回の異変を起こした理由の第二の目的でもあったらしいが、その1ヵ月前に想雅自身の存在が幻想郷からまるっきりなくなったためその目的は果たせぬものとなっていたのだ。

 

「うまい事を言ったつもりだと思うが、想雅は幻想じゃなくて現実だぜ。まぁ、アイツの能力は幻想的なところはあるがな」

 

間近で見てる霊夢、魔理沙にとってあの能力たちは幻想以外の何物でもなかった。

悪を浄化し癒す『聖』の力、強大な力を持ちして悪を挫く『魔』の力、森羅万象を凌駕する『言霊』……

考えてみればどれも外の世界で忘れられてきている存在たちだった。

紫が想雅を幻想郷に連れてきたことに理由がつく。

 

「あら?お二人さん。今更気付いたのかしら?」

 

3人の後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「さらっと心の中読まないでくれる?」

 

霊夢が後ろを振り向くと、スキマの中から上半身だけをひょこりと出している紫の姿があった。その表情は変わらず胡散臭そうな表情だった。

 

「相変わらず神出鬼没だな、スキマ妖怪」

 

「久しぶりね、萃香」

 

2人はどうやら顔見知りらしい。

何年前に知り合ったのか、下手したら数百、数千年……いや、数万、数億年……全く予測がつかない。

彼女たちは妖怪だ。数億年も生きるのは出来ないことはない。

 

「あんたも宴会を楽しみに来たのか?」

 

「えぇ、下見も兼ねてね」

 

紫は近くに置いてあった杯を取ると自分の口に持ていった。

 

「それ私のお酒ッ!」

 

「いいじゃない、いくらでもあるのだから」

 

紫はスキマから4,5升のお酒を取り出した。

それを見た霊夢本人も「まったく」と言いながら取り出されたお酒をとり、杯に注いだ。

 

「あっ、そういえば……」

 

紫が何かを思い出したかのような口ぶりをした。

 

「ついさっき幻想郷に強い霊力を持った存在と、不思議な力をもつ存在2つが急に出現したわ。強い霊力のほうは霊夢ほどじゃないけれどね」

 

「なに?また異変なの?」

 

霊夢は予想通りの面倒くさそうな表情をした。

 

「でもね、何処か懐かしさがあるのよ……」

 

紫は夜空に浮かぶ月を見ながら言った。

そう、あの日、満月の日にいなくなった彼の霊力に似ていると……

 

「ん?何か見えないか?」

 

魔理沙が急に顔をしかめたような表情をした。

その視線の先には満月の光で、上空に飛んでいる3つの人影。

1つは小柄な少女でもう1つは女性のような姿、その真ん中に飛んでいる影は男性の形をしていた。

その存在たちは、上空からこちらへと高度を落としてきてる。

木と同じ高さまで来たときにそこで速度を落とし、ゆっくりと博麗神社の目の前に着地した。

 

 

 

 

 

-----○●○-----

 

 

 

 

 

濃い黄色の髪をサイドテールにまとめ、その上からナイトキャップを被っている。 瞳の色は真紅。服装も真紅を基調としており、半袖とミニスカートを着用しており、 またその背中からは、一対の枝に七色の結晶がぶら下ったような特殊な翼が生えている少女。

髪は黄色のロングヘアー。 白黒の洋服を身につけ、スカートはロングである。 見た目は大人の女性を思わせる雰囲気だが、少し子供っぽいところもある。

この2人は姿がはっきりしてからすぐに分かったが、その中心に立っている男性……

 

「なぁ、これ俺だとばれないよな?」

 

想雅が2人に聞こえるぐらいの声量で小言で話した。

 

「うん、たぶんまだばれてないよ」

 

フランは笑顔で想雅に言った。

想雅がばれるかばれないか心配の理由、それは……

 

 

見た目から想雅の特徴がない。

 

 

髪はうなじまで伸びており、耳が隠れるほどの白髪、瞳の色はいつもの青から紅に変化している。

まさに別人のような雰囲気だったが、顔立ちや体系などといった特徴は変わってはいなかった。もしかしたら勘が良い人ならわかるかもしれない。

漆黒のように深い黒のワイシャツとレザーパンツ。上から血のように紅いロングコートを羽織っており、背中にはフランドールの狂気を浄化するときに見た棺の薔薇に十字架の模様が描かれていた。

服装もたいへん想雅と異なっていた。

そして、より想雅だと感づかれないように、犬歯がより長く鋭くなり、背中からは蝙蝠のような翼が生えている。

まさに吸血鬼のような……いや、吸血鬼そのものだった。

このようになった理由は、ルーミアとフランが言うにはみんなにドッキリを仕掛けようと提案だった。

想雅自身それは案外乗る気でいたが、まさか自分が人間をやめることになるとは予想もしていなかった。

 

「人間またやめちまったよ……」

 

想雅は微笑をした。

その目の前に霊夢、魔理沙、紫、見覚えのない角が生えた少女がいた。

 

「あなた何者?」

 

霊夢が鋭い目つきでこちらを見てきた。

 

「吸血鬼……とでも言っておこうか……」

 

とりあえず自分だとばればいようにボロが出ないように気を付けて口調を変えた。ついでに声も少し低くした。

兎に角、今はばれていないな……紫とかそこら辺には少しの変化ぐらいなら感じられそうだがな。

 

「へぇ、吸血鬼ねぇ。私たち以外にももう1人いたのね」

 

後ろから聞き覚えのある少女の声がした。

首を動かし、その主の姿を見る。

 

「レミリア……スカーレット、か」

 

「私の名前を気安く呼ばれるなんて相当の上から目線ね」

 

いや、あなたの方が上から目線なんですけど、とツッコみをいれたかったが今の状態ではやった瞬間にばれる可能性が高まる。

 

「……で、何でフランとルーミアがそいつと一緒にいるのよ」

 

レミリアは呆れたような口ぶりで言った。

その質問に想雅は焦った。どう答えれば良いのかと……

適当な事を答えると怪しまれるし、最悪の場合、弾幕の嵐が起こる。

涼しい顔を見せているが、額には汗がこぼれ始めている。

 

「私はただついてきただけ!ねっ?お兄様っ!」

 

フランはそう言うと想雅の片腕にしがみついた。

 

「ちょっ!フランっ!?」

 

いきなりの出来事だったため想雅の口から間が抜けたような声が聞こえた。

それに気付いた本人はすぐさまクールな表情へと戻した。

 

「お兄様って……想雅じゃなかったの?」

 

想雅という言葉が出た瞬間、フランの体がビクッと跳ねた。そして、少しおどおどしている。

 

「私は……」

 

フランを庇うようにルーミアがその間に入って出た。

 

「この人と婚約することにしたわ」

 

その爆弾発言にしばしの沈黙が宴会で起こった。そして……

 

「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!?」」」」」

 

周りも驚いたが、想雅本人も驚いた。

 

「お、おいッ!ルーミアッ!何言っているんだよッ!」

 

流石に自分を誤魔化すというのは現状では想雅は出来なかった。

 

「あら?この声って……」

 

紫が先ほどの吸血鬼(想雅)の大声で何か引っかかったらしい。

ルーミアは空いている片方の腕にしがみついた。

その時、想雅の腰が急に光りだし、目の前に銀髪の美少女が現れた。

 

「マスターは誰にも渡せません」

 

美少女……ノエルは想雅に抱き着くように飛びかかってきた。

 

「の、ノエルまでかッ!」

 

すでにクールな吸血鬼の化けの皮が剥がれてしまった。

その少女を見たルーミアが笑っているのに笑っていないような黒い笑みで想雅を見つめた。

 

「ねぇ?『想雅(・・)』。この子は誰なの?」

 

「何だその笑っていそうで笑っていない笑顔は……」

 

ルーミアから予想外の言葉が出たため、周りの人たちは少しざわついたが、一呼吸置くと息を合わせたかのように同時に言った。

 

「「「「「『想雅』……?」」」」」

 

ビクッと吸血鬼(想雅)の体が振動した。

想雅はくっついているフランとルーミアの顔を見ると「ばれちゃったね」と言わんばかりのてへぺろ☆みたいな表情をしてた。

 

「はぁ……とりあえず3人共離れてくれ」

 

そう言うと、素直に3人共離れた。

想雅は着ていたコートをバサッと脱ぐとその瞬間に言霊を解いた。するとそこには……

髪はうなじまで伸びており、耳が隠れるほどの茶髪、瞳の色はいつもの青に戻り、いつもの優しい想雅の姿が目の前に現れた。

 

「簡単にもばれちゃったか……」

 

やれやれといったような表情で頭をかいた。

 

「まぁ、それより……久しぶり、みんな。そして、ただいま」

 

ニッコリと笑顔を浮かべ、やっと戻ってきたんだなと実感が湧いたのだった。






今年中にやっと終わらせれた……
さてと次回はどーしよっか……またオリジナルの物語かな?
何か幻想郷から離れて、外の世界での展開になりそうな気が……

感想待ってます
次回もお楽しみに



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京都四凶大騒動
京都 in 想雅




あけましておめでとうございます!
ことよろ!

え?もう正月がとっくに過ぎているのに今更かよ!?ってツッコみが聞こえてくる

学校が始まりまた忙しくなりましたよ
資格試験が今月で2つ?だったはずでしたからどちらを先にやるか迷っています。

感想ありがとうございました
では、ごゆっくり




真夏の太陽の下からこんにちは、天上想雅だ。

さて、俺はどこにいるでしょーか?

ま、まぁ……こんな冗談はさておき。俺は今京都にいる。

爺ちゃん婆ちゃんに顔を見せに幻想郷からこっちにきた。1年に1度ぐらいいかないと心配かけると思ったからな。別に観光じゃないからな。

え?じゃぁ、どこに居るかって……そ、それは……

想雅の目の前には池の真ん中に浮かぶ黄金に輝いている建造物、金閣寺の観光(・・)に来ている。

 

「黄金に輝くお城……美しいです」

 

その圧倒的な輝きを放つ寺にノエルは目を輝かせながら言った。

ま、まぁ……ノエルには幻想郷ではなくいろいろな景色を見て、世界の面白さを教えていることも兼ねている。本命は爺ちゃんたちに会いに行ったことだからな。ちゃんとそれを済ませてから観光している。

 

「ノエル、お城じゃなくてアレはお寺な」

 

まぁ、ノエルが喜んできれるなら城でも寺でもどっちでもいいけどな。

想雅はノエルの頭を撫でながら少し満足げな表情で金閣寺を見ている。しかし、暑いったらありゃしない。

どうせならこんな真夏じゃなくて秋に連れて来るべきだったな。まぁ、季節によって見方も変わってくるしこれはこれで良しとしよう。

 

「そろそろ違うところ行くか?」

 

金閣寺を見つめながらノエルはこくりと頷いた。

よっぽど金閣寺が気に入ったんだな……

とりあえずノエルが満足するまでその場で待つことにした。

やはり、ここは世界遺産と思わせるぐらいの人だかり。秋に来たら紅葉と金閣寺とのマッチングが素晴らしくより多くの観光者が来る。

想雅は見渡すように周りを見ている。しかし、観光客に混ざって神主のような服装をした男性が数人集まっていた。

イベントも無いのにここに神主のような人たちが集まるのはこの人だかりの中でも一際目立っていた。

 

「アイツはいたか?」

 

「いや、微かに妖気が感じられるところまでは探知できたんだが……そこからお手上げだ」

 

その人たちは何かを探している。

想雅は神主たちの中での秘密の話があるのかな……という具合に捉えていた。しかし、密会があるのならこんな人通りが多いところで話す人の気が知れない。

 

「兎も角だ。ここで立ち話しても意味がない。アイツの妖気を感じたところを徹底的に調べ上げるぞ。俺たちはその一つ伏見稲荷に向かう」

 

「分かった。迅速且つ正確に予言の元凶となる者を仕留めるぞ」

 

その神主たちは二手、三手ほど別れその場を後にした。神主の装束の背中に一筆書きをした星が書かれていた。

想雅はこの星……いや、五芒星を見て過去にタイムスリップしたことを思い出した。

平安時代に飛ばされ、何度か朱雀大路で見たことがある紋章だった……

 

「アレは……陰陽師、か……?」

 

目をしかめながら想雅は呟いた。

しかし、何故こんなところに陰陽師が?何か焦ってた気がするが兎に角俺らは観光を楽しむか……

 

「マスター、次はどこに観光に行くのですか?」

 

「そうだな……じゃ、伏見稲荷にでも行くか……」

 

 

 

 

 

-----○●○●○-----

 

 

 

 

伏見駅から降りると、そこから伏見稲荷の参道に入ることができる。

 

「着いたぞ、ここが伏見稲荷だ」

 

伏見稲荷の楼門の前まで入り、その両隣にある2匹の狐の像を見て言った。

一応、俺は何回かは行ったことはあるが、それは小さい頃の話なので道が覚えているか曖昧なんだよな……工事とかで道が変わってなければいいんだがな。

そういう心配を余所にノエルは興味津々に周りをグルグルを見渡している。

想雅はこの伏見稲荷の楼門から少し不穏な感覚を感じている。

 

「にしても、昔に来てたとしても人が居なさすぎじゃねぇか?もっと賑わっている筈なんだが……」

 

そう、周りには地元の人、ましてや観光客と言った人間たちはいない。ここには俺とノエルの2人しかいなかった。

 

「まぁ、昔は昔だな。今は訪れる人が少なくなっているかもな……」

 

楽しんでいるノエルを見て想雅は今は楽しむか……と思いそのことに関してのことは考えるのはやめた。

 

「なぁ、ノエル。ここには千本鳥居と言ったもんがあってな。多くの鳥居が建てられているところがあるんだ。行ってみるか?」

 

「はい!見てみたいです」

 

「よし、決まればさっそくだな」

 

想雅はノエルを連れ千本鳥居のところまでゆっくりと観光しながら行こうとした。

 

 

ザザザ……

 

 

背後の茂みから微かに揺れる音が聞こえた。

後ろを振り向き確認してみたが、先ほど揺れていた形跡は無かった。

 

「鴉とかでもいるのか?」

 

突然、茂みが揺れるのは珍しくも無くていつも通りの事だと認識した。

しかし、その音は徐々に……徐々にと大きくなり、もしかしたらこちらに近づいてくるかもしれないと思った。しかも、単独ではなく複数の音が茂みの中から聞こえてきた。

 

「いや、いちいちこんな面倒くさいところを通ってくるはずないよな……しかも、複数とか」

 

鴉ならもっと小さな音をたてながらくるはずだし、こんな複数の大行進何てカルガモ親子のみたいな行動はしないはずだ。

もしかしたら、ここには伏見稲荷とだけあって狐の親子とかいるかもしれない。

 

「ハハハッ、まさかな」

 

ここには狐が出ないことは想雅は知っていたためそんな馬鹿なと言わんばかりに小さく笑った。

その音はザッ……ザザザッ……ザザザッザッ……!と近くなったり遠くなったりとまるで何かから避けながら動いているようにも捉えられた。

 

 

ザッ……!

 

 

その音に警戒していた俺たちの前に―――――巫女装束らしき服装をした小さく可愛らしい女の子だった。

 

「女の子……」

 

ノエルのような銀髪……いや、それより白っぽく太陽の光でより美しく華やかに映えている長い髪。髪先は狐の纏められており、頭部には狐面らしきものが乗っていた。透き通るような紅い瞳。ノエルと同じく幼い容赦だ。

だが、狐面の後ろに生えているものを見て人間ではないというのを確信する。

 

 

―――――獣の耳

 

 

藍、橙と同じように頭部から耳が生えていた。お尻からはモコモコした尻尾が生えている。このモコモコ具合……藍と同じ狐のような気がする……

 

「くっ……こんなところで立ち止まったら……」

 

狐の少女は一度立ち上がろうとするとどこか体の調子が悪いのか、すぐにその場に崩れた。

 

「大丈夫か!?」

 

想雅はこれを見てただ事じゃない、と思い少女の元へと近づいた。

 

「マスター。この子、傷が……」

 

遠くて分からなかったがこの少女は傷ついていたのだ。そのため服も汚れている。

咄嗟に『聖』の力を使い、少女の体全体に流しこんでいく。

しかし、治療の途中。

少女が出てきた茂みの中から複数の何物かが次々と出てきた。

 

「お前らは……」

 

想雅は顔を上げると、見覚えのある服装に目をしかめた。

神主のような装束に五芒星……金閣寺で見たものと同じものだった。

 

「ん?何故ここに人がおる。人払いの術を使ったはずなのだが……」

 

神主たちは不思議そうに想雅たちを見ている。

 

「陰陽師……だよな?」

 

「あぁ、そうだ。だからこうやって妖怪を追いかけているのだ。そこを退け、少年」

 

彼ら―――――陰陽師は袖口から数枚の札を取り出し、戦闘態勢を取った。

 

「おい、陰陽師。この子が何をしたというんだよ」

 

「した?……予言でする(・・)んだよこいつは。この京都を壊滅させる悪しき者に……ッ」

 

1人の陰陽師が少し焦りを見せている表情で行った。

京都……俺の故郷ともいえる京都を壊滅させる……だと……

想雅の目はまさに鳩が豆鉄砲をくらったように驚きを隠せていなかった。

 

「しかし、少年。君はこの妖狐を見て何も思わぬのか?妖怪だぞ?」

 

妖怪なんて常日頃から見慣れているから妖怪の1人や2人驚くというのは失礼だと思う。うん。

 

「その表情から読みとるに、日頃から見慣れている、というわけか」

 

こいつ、心の中読みやがった……いや、ポーカーフェイスで読み取ったのか……

陰陽師は「それなら話は早い」と口ずさみ続けて言葉を並べた。

 

「人と妖は相まみえん存在だと知っているだろう?人は妖怪を退治し、妖怪は人を喰らう。だから我らは妖か「んなこと知ったこっちゃねぇよ」……は?」

 

話し途中に割り込んできた言葉と、予想外な言動に陰陽師は間抜けな顔をした。

 

「誰が人と妖怪は相まみえないと決めた?それ以前に、お互いがそう認識してきただけであって相まみえないという事を建前にして、ただただ避けてきただけじゃないのか?分かろうとしないからこうやって狐の少女を追いかけて退治する。他に手段はなかったのか?ずいぶん冷たい……心が無い機械のような奴らだな」

 

「我らはこの京都を守るために……」

 

想雅はそいうえば藍にも同じようなことを聞かれたような気がしたなと思いながら反論した。

人と妖怪は相まみえることは難しい。ただ難しいだけであってできないという不可能なことばじゃない。

 

「お前らがまだこの子を傷つけるというのなら俺は敵と見なし、この子を守る」

 

想雅はその場で足を少し開き戦闘態勢をとった。

 

「確かに分かろうとはしなかった。いや、避けていた……だが、今は京都の、人々の運命がかかっている。少年が妖狐を守ることが正義なら、我らは妖狐を退治し、京都を守ることが正義だ」

 

想雅が言った言葉に1人の陰陽師は納得した。しかし、話をまともに聴いていたのはその陰陽師1人だけであり他の陰陽師は何も不思議に思わず、ただ狐の少女を睨んでいるだけだった。

 

「どちらにせよ、君は我らの敵だ。式神解放―――――」

 

話していた陰陽師が2枚の札を空に投げ、上げた手で人差し指と中指だけで手刀を作り、それを下に降ろす!

 

「『狛犬』ッ!」

 

 

ドオォォォォン……

 

 

空から虎の大きさほどある狛犬が空から2匹落下してきた。

青い炎のようなもので形を保っており、透けて向こう側が見える。

 

()べて緤べよ、ひっしと緤べよ、不動明王の正末の本誓願をもってし、

この邪霊悪霊を搦めとれとの大誓願なり――――――』

 

「……ッ!」

 

想雅の視線が狛犬に注意がいっている間に他の陰陽師は想雅、ノエル、狐の少女を囲むように札を展開させていた。

 

『オン・ビシビシ・カラカラ・シバリ・ソワカッ!!!』

 

「グッ……!」

 

体が何者かに縛り付けられているような感覚に襲われた。その感覚は自分の動きさせも封じ、まさに金縛りの状態だった。

想雅は2人が心配になり力を振り絞りながら背後を見た。

ノエルは地面に倒れかけており、狐の少女はその場に倒れたままの状態で想雅と同じ金縛りの状態にあっている。

先ほどまで傷だらけだったため、体力が結構消耗されていると考えると、彼女が耐えられず気絶する可能性があり体に負担がかかってしまう。

 

「『魔』の力よッ!」

 

想雅は体全体に『魔』の力を流し込み、無理やり力ずくで金縛りを破った。

 

「なっ、不動金縛りを何も術式を使わず……ッ!」

 

予想外な出来事に陰陽師たちは一瞬戸惑った。その一瞬は想雅は逃さない。

2人が金縛りの原因の札を手刀で斬り、両腕で2人を抱きかかえ『魔』の力を使い地面を蹴り、彼らの目の前から逃げた。

 

「き、消えた……だと……」

 

陰陽師からはその場から瞬間移動したように見えた。

 

三善(みよし)殿」

 

狛犬を召喚させた陰陽師―――――三善は他の陰陽師に呼ばれたことに気がつかずその場で考え込んでいた。

あの少年は何者だ……妖怪は普段から見慣れているらしいが、何故喰われたり殺されたりしないのか?その時の妖怪が偶然友好的な奴だったとか?

……いや、それだと見慣れている以前に殺されている可能性が高い。

妖怪と戦える何かしろの力を所有していた、とも考えられる。それなら先ほどの瞬間移動にも納得がいくことだ。

三善は地面を見つめながら何やらかブツブツと言っていることに陰陽師が気付き、ポンと彼の肩に手をのせた。

 

「正義感が強いのはいいんだが、あんまり根を詰め過ぎては長生きしないぞ」

 

「正義に生きれることが出来るなら後悔はない」

 

「ははは……」ともう取り返しがつかないほどに正義に染まっているなと陰陽師は思った。

 

「とりあえず、逃がした目標の探索を夕暮れ時まで続行する。それ以降は各員、清水寺に召集すること。先ほど皆も見た通り、少年は何かしらの力を保持している。くれぐれも子供だからといって油断はしないように、いいなッ!」

 

「「「「「はっ!」」」」」

 

陰陽師たちはその場から散開し、再び妖狐の散策に向かった。

三善は呪文を唱えながら手持ちの数枚のお札と空へと投げると、札から鳥が召喚され四方八方へと飛んで行った。

 

「さて、私も行くとするか」

 

彼はどこか余裕そうな顔を空に見せていた。

 

「見つけ見つからなかったとしても、今日の夜中ぐらいに嫌でも出てきたくなるだろうしな……」

 

 

 

 

 

 






はい、またオリジナルな展開です。
今回は京都を舞台とした物語。東方キャラは出てくるのかなぁ……

感想待ってます!
次回もお楽しみに!



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投稿から2ヵ月も経ったのは神様の気まぐれでしょうか?いいえ、俺の慢心のせいですはい。
あれから更新できなくてすみませんでした。
学年末が1、2学期の成績関係なく赤点とったら補修になりましてや補修を失敗したら留年というプレッシャーに駆られ投稿ができませんでした。
兎に角、失踪する予定はないのでご安心してください(投稿ペースが速くなるとは言っていない。下手したら今回と同じようなことに……)

感想ありがとうございます
では、ごゆっくり……




満天な星空と光り輝く満月に近い待宵の月。人も草木も寝静まる丑三つ時―――――。化け物や幽霊が出る時刻といわれている。『丑満時』とも言われている時刻だ。

マンションや立ち並ぶ住宅街の近くにも、昔ながら風情を漂わせる民家の近くにも人が一人っ子いない。この時間帯なら普通な風景である。

しかし、そのいつも通りの風景に2人の影が映っていたのである。

その影は古い民家の屋根を駆けていた。

昔ながらの名残で家の壁と壁が繋がっているため壁同様に屋根も繋がっている。お陰で足音も最小限に抑えることができ、家主にばれることは少ない。

 

「何で急にあなたたちが追ってくるの……ッ!」

 

しかし、人を気遣って屋根をしている場合ではなかったのだ。

彼女ら2人はその背後から数人の男に追われていたのだ。

神主の装束のような服装、羽織には一筆書きで書かれた星形、いわゆる五芒星がかかれている―――――。2人を追いかけているのは陰陽師だった。

 

「逃げ足が速い狐だなッ……大人しく捕まれッ!」

 

彼らは札を取り、警告をした。しかし、彼女らは止まらなかった。

 

「あなたたちに大人しく捕まる理由なんてないわっ……」

 

警告を無視してでも逃げていく2人。その姿を見た陰陽師たちは互いに見合い、首を縦に振ると2人の周りへと解散していった。バラバラに散らせることで逃げ場をなくし、万が一突破されたとしても時間が少しでも稼げる。

 

「俺は正義だ。悪しき存在は抹消するッ!(とも)せ、(とも)せ、(とも)せ、悪に火よ刺せッ!」

 

クナイのように札を飛ばし、その札からは火が宿り、火針のように飛んで行った。

向かう先には狐と呼ばれし女性と少女―――――。彼女らは軽快な足取りでひょいと屋根から屋根へと飛び乗っていく。

避けられても陰陽師の攻撃は収まらない、確実に正確に狙いを定め放っていく。

右へ左へと逃げていこうとしても散開していった陰陽師たちに阻まれ思うように突破することができない。

 

「まさに鳥籠の小鳥、ね……」

 

彼女は苦笑を浮かべるしかなかった。しかし、上空ならと思い、隣りに走っている少女を片手で抱えた。

 

「に゛ゃ……ッ!」

 

猫のような鳴き声を上げた少女を余所に彼女は屋根を蹴り上空へと逃げた。

 

「そこをがら空きにしていたと思うなよッ!女狐ェッ!」

 

上空に逃げることも計算内、と言わんばかりな声を張り上げ、陰陽師らは上空へと札を飛ばした。

火針となった札は目標へと直進に進んでいく。

 

「一筋縄に行かないわ……ねッ!」

 

腕を火針の方へと突き立て、五芒星の魔方陣を目の前に展開させた。

突っ込んでくる火針はその魔方陣に衝突し、呆気なく火の粉となって散ってしまった。

しかし、陰陽師たちは怯まない。火鉢を放った後彼らは上空に上がり次の攻撃を整えていた。

 

「「「「「吹け、噴け、()け、一転の神風よッ!」」」」」

 

3枚の札を目の前に展開させ、変形すると無形の風が生み出された。

それをブーメラン型にし、いくつか2人に向け飛ばす。

綺麗に円を描いている風のブーメランが彼女らを襲った……しかし、先ほどと同じの防御結界を貼ると風は消されたのかと思うが如くに焼失した。だが、計画の内《・・・・》……

 

「式神解放――――――」

 

刀を構える姿勢をしながら、1人の陰陽師が風に乗って飛んできた。

 

「『霧断(きりたつ)』ッ!」

 

構える手元には札が掴んでおり、それを抜刀するように抜き取ると一瞬にして太刀とほぼ同じ刃渡りの刀が出現した。それを結界の方へ一気に振り下ろした。

しかし、この程度の式神ならこの結界は破ることは不可能に近い。

 

「式神で簡単にこの結界は破れないわ」

 

「何寝言いってんだ?誰もはなっから破る気(・・・)なんてないッ!」

 

その時だった。

刀の刀身がモヤモヤっと霧のように消えていった。

 

「きゃぁ……ッ!」

 

彼女は何かに衝突したのか如く、上空から地上へと落下していった。

 

「今だッ!」

 

指示するかのように叫ぶと同時に残りの陰陽師は何かを詠唱し始めた。

 

「「「「落ちろ、堕ちろ、堕ちろ、身を地上へ挫かせ縛らんとす。汝我は式を従えしものなり。我汝は縛り堕とすものなり。オンビシビシ・カラカラ・シバリソワカッ!」」」」

 

手と手を合わせ手拍子を鳴らすと、地上から数本の鎖が彼女らに向け襲い掛かってきた。その鎖は両腕と両足、胴へと延び、落下して行く体を強く地上へと引き込んだ。

落下して行く瞬間、指先から火を飛ばし少女に向かって行った鎖だけを払い、自分だけ鎖に囚われた。

 

「ぐっ……!」

 

地面と衝突する際に大きな衝撃音と振動が民家に届くかと思われたがどうやら鎖が出現した場所はあらかじめ結界が貼っており、自分たちはみるみると敵の罠にはまった、と感じさせられた。

少女は自分が縛られた後、縛られ勢いよく引き込まれた為自分の傍にすでにはいなかった。

 

「捕獲、完了……」

 

空からスーっと降りてきた陰陽師は一安心したのか彼らの表情は和らいでいた。しかし、1人だけ表情を変えず冷静な表情をしているものがいた。

 

「み、三善殿……?」

 

刀の式神を使った陰陽師、三善だった。

彼だけは他とは違い何故か不満そうな表情をしていた。

三善は捉えた狐の女性に歩み寄ると見下したような目線で刀を突きつけた。

 

「おい、化け物。もう一匹はどうした」

 

「あなたの方がよっぽど化け物に見えるわ……」

 

そう皮肉そうな笑みを浮かべた女性は唯一縛られていない指先を使い三善に向け青い火を放った。

 

「封じろ、印をかけろ。神前止まり木よ。朱の華表を落とし給え」

 

放たれた火は呆気なく刀で抹消され、詠唱された言葉と共に上空に札を打った。

 

「諦めの悪い女狐だ。貴様は既に敗北している」

 

三善は彼女から目を背け、後ろに待機している仲間たちに「逃がしたもう1匹を探し出し捕らえろ」と耳打ちをすると彼らは首を縦に振り、その場から散開した。

ある者は地上から式神を使い、ある者は空から式神を使役し、またある者は目を瞑り探知している者もいた。

 

「これで見つかるのも時間の問題だなぁ?」

 

再び女性に目線を戻すと、その表情は笑みを浮かべていた。

 

「あなた……相当酔っているわね……」

 

やれやれと言わんばかりな呆れた表情をする他なかった。

この人……この先長くないわね。まったく、正義感は強いのはいいけどほどほどにしないと後先後悔することになるわ。人って何でこう不思議なものたちばかりなの、人から見ても私たちも不思議だと感じるはずね……

 

「酔って結構。正義こそ俺の生き方だ」

 

ふっ、と言葉を漏らした瞬間、上空から何かが落ちてくるような音が聞こえてきた。

その音が徐々に大きくなっていくことに気付くと彼女は動きにくい体を動かし何とか空を見ようとしたがその正体はつきとめずに分かってしまう。

 

 

ゴォッ!

 

 

「……ッ!」

 

体はその落ちてきた物体によって再び地面とくっ付いた。

 

 

ゴッ!ゴッ!ゴッ!ゴッ!ゴッ!ゴッ!ゴッ!ゴッ!ゴッ!

 

 

物体は次々と落下して行き、体に大きいものを1つ、尻尾1つにつき1つずつ計10つの物体が彼女の体を固定した。

 

「この鳥居は体の自由以外に能力の自由も縛る。これで貴様はただの狐だ」

 

先ほど上空へ撃ち出した札は鳥居へと姿を変え彼女の能力を封じるために落下してきた。

 

「……」

 

私が捕まっても九天(くてん)さえ無事なら。でも見つかるもの時間の問題……誰か、誰でもいいわ……あの子を救って……

身動きが取れなく助けに行けないことに悔しがりながらも彼女はただただ三善を見つめるしかなかった。

 

 

 

 

 

――――――○●○――――――

 

 

 

 

 

陰陽師から逃げた想雅たちは鴨川の橋の下に身を潜めていた。

想雅は傷ついている狐耳の少女に『聖』の力を流し込んでいる。

 

「今の時代も陰陽師っているもんだな、てっきりいないもんだと……」

 

現代の陰陽術というのは昔と違い、かけ離れているとは聞いたことあるけど……どう見てもアレは昔とそっくりなような気がする。特別な儀式をして札に文字を書いて自分に幸運をもたらしたり、逆に他人を不運にしたりとテレビで紹介されているぐらいことしか知らない。ましてや漫画でよくある『式神』を使役するというのが目の前で起こった。

 

「まぁ、現に見たことだし……常日頃から妖怪や神様を見てるしな」

 

想雅は「別に珍しいことでもないな……」と現実を見た。

 

「にしても何だったんだあの陰陽師は……予言があーだこーだとか言ってたが、たかが予言だ。的中率が10割の奴のような流石においしい話なんてあってたまるか」

 

ブツブツと先ほどの陰陽師が言い放った言葉を否定しながら目の前のことに集中をする。

 

「これでよし……」

 

ひとまずはこの子の怪我の治癒は終わった。後は意識の回復を待つだけだな……しっかしまぁ、変なことに巻き込まれたな……いや、自分で巻き込まれにいったな……なんて言えばいいんだろうか。不幸?なのかこれは。

一息つき、下流へと流れていく川を眺めた。

真夏なためかところどころで水遊びしている子供たちがいる。泳げるほどの深さはないが水鉄砲や水切りといった遊びで夏を楽しんでいる。

想雅は昔を懐かしむように遊んでいる子供を見ていた。その横では少し羨ましそうな目で見ているノエルがいた。

 

「まぁなんだ……せっかく来たんだし遊んできてもいいぞ。後は俺が見とくから」

 

「で、でも……」

 

「気にすんな、あとはこの子の目が覚めるのを待つだけだからな。ほら、行ってきなよ」

 

後押しするように想雅は親指をたて「大丈夫」と現した。

一瞬考え込んでいた表情をしてたが、ノエルは「そ、それならお言葉に甘えて……」と嬉しそうな口ぶりを見せながら川の方へと近づいた。

しかし、橋の外側ではなく橋の下で水遊びを始めた。

想雅は、あの子を心配して近くで遊ぶことにしたのか……と思いつつも楽しんでいるノエルを見ている。

にしても、この狐の少女。どこからどー見てもモフモフの尻尾が9尾(・・)あるんだよな。誰が何て言おうとも皆口裏を合わせてこういうだろう。

 

 

『九尾の狐』であると――――――

 

 

だが、俺が知っている九尾の狐は金毛九尾の狐、三国伝来金毛玉面九尾。いわゆる『白面金毛九尾の狐』だ。

顔は白く、金色の毛並をしており、九つの尻尾を持つ。 また、玉面とも呼ばれることから、白の意味は元々、美しいという意味で与えられた表現とも考えられている。

強大な妖力の持ち主であり、その強さは全ての妖狐の中でも最強と云われている。日本では崇徳大天狗、酒呑童子と並ぶ三大悪妖怪と名高い。

金色の毛を持つ九尾の狐は俺も存じている通り八雲藍で、平安の時代に紫と知り合い式になったらしい。詳しいことはプライベートなためあまり踏み込んでいない。

話しを戻すが、白い毛を持つ九尾というのは実際のところ誰にも聞いたこともないし、見逃しているだけかもしれないが書籍に書いてあるところも見たことない。

まぁ、現に隣りにいるのが現状なんだがな……

 

「ぅん……」

 

「ん?」

 

可愛らしい吐息が隣りから漏れてきた。

その声に気付いたのか想雅の視線はノエルから狐の少女へと傾いた。

ビクビクと身体が痙攣(けいれん)したように動き、意識が戻ったんだなと確認できた。

想雅は無理に彼女の顔を覗かず、そのままの態勢で彼女が起きるのを待った。前に気絶したルーミアを家まで運んできたみたいに変な誤解が生まれなければいいんだがな……

少女は仰向けの状態のまま目を覚ました。

 

「ここ……は……」

 

目を覚ますと薄暗く左右から眩しい光が差し込んでいることが分かる。

少女は「捕まった……」と牢屋に入れられたのだと心底残念がるような心境だった。

 

「気分はどうだ?」

 

少年の声が耳に届いた。

監視する見張りの人だろうと少女は思った。

 

「どうもこうも災や……」

 

言葉の途中で何かの違和感を感じた。

陰陽師たちに襲われ体のあちらこちらに傷があるはず。しかし傷と感じるほどの痛みは無くまるで最初から無かったみたいに不思議と感じた。

それ以上に監視役が妖怪に向け先ほどのような気遣いができるような言葉を言うはずもない。もっと蔑むように言うだろう。

少女はゆっくりを体を起こし、少年の声が聞こえた方に首を動かした。するとその声の主の少年の顔が目の前にあった。

 

「……ッ!?!?!?」

 

声にならない悲鳴を上げ、後ろに跳び警戒し始めた。

 

「あ、いや、待てッ!俺はまだ何にもしてないッ!?」

 

「『まだ』じゃとォッ!?そなた、何かするつもりじゃったのかッ!?」

 

Oh(オウ)! Mon(モン) Dieu(デュー)!!(やっぱりこうなったァァァッ!!!)」

 

またもや同じような誤解を招かれ、語源がフランス語に変わるほどのショックに襲われた。

そ、そんなに……俺がそういうことやる奴に見えるのか……

 

「おうも……??そなた、言葉が通じぬのか?」

 

想雅が叫んだ言葉が聞き慣れないためか戸惑いを見せた。

 

fran(フラン)……いや、すまん。日本語でおけ」

 

「おけ……??そなたが使う言葉は奇妙なものじゃな……」

 

不思議に思い考え込んでいる少女が今の状態は落ち着いているため想雅は誤解を解くことが先決だと感じ、その場で少女に話しかけた。

 

「『まだ』と言っちまったがアレはただの言葉の綾だ。俺はただ気絶していた君をここまで運んでさっきまで治療してたんだ」

 

「ち、治療ッ!?そなたよッ!?服を脱がしてあんなことやこんなことを……ッ!?」

 

「んなわけあるかァァァァァァァァァァッ!!!」

 

誤解の上にまた誤解を招いてしまった想雅は「なんでこうなるんだよ……」と空回りした言動に頭を抱えた。

 

「さすがに脱がせる勇気はない……てか無理……理性がぶっ飛んじまう。ま、まぁ、治療したのはこの力でな……」

 

想雅は片腕を目の前に伸ばし仄かに光る手を少女に見せた。

 

「何じゃそれは?式神か精霊の(たぐい)なのか?」

 

「生憎、そういった他者の力ではないんだ。これは『聖』と言って、悪しき者を浄化したり傷などを治療したりできる代物だよ。君の傷を治療したものこの力があってこそできたんだ」

 

「ふむ、それで体が痛くないのじゃな」

 

「あっさりと信じるものだな……」

 

「信じるも何も、そうでなければ傷がまるっきり消えてなくなることなんて有より無の方が等しいじゃからな。それに、信じなければまたそなたの謎の言葉で返ってくるのじゃ」

 

「うっ……面目ない……」

 

図星をつかれた想雅はただ苦笑いをするしかなかった。

それにしても元気がいいなこの子は……あれだけ傷があったあとなのにここまで話したり動けたりするのは予想を斜め上を行ったな……

 

「あの子、目覚めたんですね」

 

濡れた足をひたひたと歩いてくるノエルが少女を見るなり安心した口調で話しかけてきた。

 

「見ての通りピンピンしておるぞッ!」

 

と、少女は反り返った体勢でドヤ顔交じりに言った。

その時だった。

先ほど襲われ傷つけられていたためか、巫女服の袴部分がずるっと足元へと落ちて行ったのだ。

 

「……ッ!?!?」

 

「んな……ッ!?」

 

少女は思わず、声にならない悲鳴を上げその場に蹲った。流石に急すぎたためか想雅は手で顔を覆い隠す前に見てしまったのだ(・・・・・・・・)……

 

「……のか?」

 

「……え?」

 

少女は蹲ったまま、ぼそぼそと何かを言った。

 

「見たのかッ!と聞いておるのじゃッ!?」

 

顔を赤めらせ想雅を睨みつけた。

 

「あ、いや、見たくて見たわけではなく……事故っていうかなんていうか……」

 

「つまり見たのじゃな……」

 

「……はい」

 

「うぅ……」と呻く少女と、「まさかな……」驚愕と恥じらいがある想雅。

おいおい、まさか履いてない(・・・・・)とはな……単に履き忘れていたのか、昔っから履いていないのか……ま、まぁ、余計な詮索は止めにしよう……

 

「マスター、それよりもあの子の服を新しく創るのは?」

 

「そ、そうだな……」

 

想雅は少女が着ている巫女服を思い出しながら『言霊』で創り上げた。

 

「これをあの子に……」

 

下を向いたまま想雅はノエルに完成した巫女服を渡し、「後の事は頼む」と不甲斐なく思った。

何で巫女服を思い出すたび、あの子のことを思い出すんだよ……べ、別に見たくていたわけでもないし!あれは事故だし!だからと言って思い出す俺は変態かァァァァァァッ!!!

頭の煩悩と戦いながらも落ち着きを取り戻すことに集中したのだった。

 

 

 

 

 

 





久しぶりに書いたためか凄くスランプしていることに改めて気づいた。
何とかスランプ脱出のためにも投稿ペースをちと速めなければ……(使命感

感想待ってます!
次回もお楽しみに!



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これが『ヘタレ』の真骨頂


何とか生きています。
5ヵ月ぶりという……何ともいえないこの感じ……まぁ、いろいろと忙しかったんですよ。

感想ありがとうございます
では、ごゆっくり




さて、俺、天上想雅は地べたで正座をしている。

何故だって?俺だって何でこうなるんだとつくづく自分の(つき)を恨むしかないんだよ。

心の中で嘆いていてもしょうがない。もうなっちまったんだから……

 

「いや、だからあれは突然に起きたことだから俺だってどーしよもなかったことなんだって……」

 

「しかしのぉ……見たのじゃろ?」

 

「はい、おっしゃる通りですはい……」

 

先ほどからこのようなやり取りを数分ほど続けている。

流石の狐の少女も「こやつは真に男なのか?」と呆れがすでに出ている。その一方ノエルは近からず遠からずの位置で2人のやり取りを眺めていた。

 

「そなたは素直なのか阿呆なのか全く分からんのぉ……」

 

「おいこら阿呆とは何だ阿呆とは」

 

「そのような口が利けるほど反省はしていないようじゃな」

 

「反省はしていますはい……」

 

と、言い返すもすぐに言い返され何度も縮こまるだけの想雅だった。

 

「助けられたのがこんな『意気地なし』の男だとは……」

 

「うぐっ……」

 

想雅は『意気地なし』という言葉に精神的ダメージを受けた。

ま、まだ浅い……たかがメインカメラをやられただけだ……

 

「マスターは『意気地なし』ではありません」

 

と、先ほどまで2人のやり取りを眺めていたノエルが地べに項垂れている想雅のフォローに入ろうとした。しかし、その後に出てきた言葉は余計に精神をえぐることになった。

 

「マスターは……『ヘタレ』ですッ!」

 

「ひでぶッ!」

 

世紀末の拳法殺しのような断末魔のような声を上げその場に両手を地べたにつけた。

 

「『へたれ』?なんじゃそれは?」

 

どうやらこの子はヘタレという言葉を聞いたことがないらしい。いや、安心するのはまだ早い。ここで追加攻撃がこないとは限らない……早く……早くノエルを止めなければ……

 

「い、いやそんなことy「『ヘタレ』はね……」」

 

話を逸らし、それを回避しようとしたが関係なかった。そのままノエルのターンだった。

 

「意気地なし」

 

「あべしッ!」

 

「情けない」

 

「へげえッ!」

 

「思い切れない」

 

「あわらッ!」

 

「優柔不断」

 

「うわばらッ!」

 

「などなど……といった人のことです」

 

次々に来る精神攻撃に対して想雅は世紀末の断末魔オールスターを一人でやっていたのかの如くにダメージを受けていた。

 

「ふむ、つまり……」

 

ノエルから『ヘタレ』に関しての説明を受けた少女はその場で考えこんだ。そして、今までより破壊力が強い爆弾発言を放った。

 

「『残念』というわけじゃな」

 

「Noooooooooooooooooooooooooooooooooooon!」

 

「Oh,my god!」と言わんばかりに想雅は頭を抱えそのまま地面に打ち付けた。

いてぇ……頭より精神ダメージの方がいてぇ……

 

「な、なんじゃいきなり……ただ『残念』と言っただけなんじゃが……」

 

「Arrêtez de le direeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee!(それを言うのをやめろッ)」

 

想雅は今まで『ヘタレ』と言われ続けてある程度の態勢はついていたものの、より強力な『残念』という言葉は初め言われた為なのか、想雅自身も「自分はヘタレかもしれない」と少しづつ自覚が芽生え始めたのか、どちらにしろ多大なショックを受けたことには変わりがない。

想雅は必至で少女の手を握り、訴えかけるかのように言いかけてきた。

 

「何を言っているのか分からないのじゃ……って、わ、分かったのじゃッ!分かったから手を離してくれんかえッ!?」

 

あまりにも必死な想雅を見て少女は少し引き気味だった。

必死な訴えにより分かってくれたことを確認した想雅は握っていた手を離し、また先ほどと同じ正座の状態で戻った。

 

「まだ正座を続けるかや?」

 

「い、いや、まだ説教?みたいなこと終わってないし」

 

「そ、そうじゃったな……」

 

少女自身、説教何てどうでもいいと思っていた。

こんなことしている間、時間が少しずつ無くなっていく恐怖感……徐々にそれが感じられる。

 

「あっ……」

 

少女は想雅を見て何かに気付いたのか考え込んだ。

見られている想雅は何かヤバいことをさせられるのではと思っている。第一、幻想郷で起こる異変や神様などとの死闘を繰り広げきた想雅にとって他愛もないはずなのだが……いつも死にかけているため今回も同じことになるのでは?と考えている。

 

「そなた……よくあの陰陽師共から逃げれたのう……」

 

あからさまに「言わないで下さい」と言っているような口ぶりでこの子は俺に探りを入れているつもりなのか?と疑った。

何にせよ立場的に大人しく吐いたほうがいいな。これ以上長引かせる訳にもいかんしな。

 

「ま、まぁ……ただ脚に力を流し込んで地面を蹴っただけだがな」

 

少女の表情はただ単に地面を蹴ったという言葉に驚いた。

 

「そなたよ……本当に人間かえ?」

 

「人間やってます」

 

想雅は少女の言葉に即座に反応し、1コンマより速く自分が人間であるという事を肯定した。

 

「……それより、そんなんで俺に探りを入れているつもりなのか?」

 

「な、なんとッ!早くもバレてしまったのじゃッ!」

 

どうやらアレで探りを入れてたらしい……想雅は一瞬にして察した。

あっ……うん。この子、アホの子だ。あえてそこは口に出さないでおこう……と心の奥底に閉まった。

 

「ば、バレてしまったならこの際致し方ないのう……」

 

「お、おう……」

 

探りいれたつもりが普通にバレて気まずい雰囲気になったが、ただ遠まわしに言わなくなったため面倒なことは無くなったといえる。

 

「そなた……先ほどの事を許して欲しいかえ?」

 

「モチの論です」

 

許して欲しいとも。だってもう……足の痺れが限界だ。痛いったらありゃしない。

 

「一つだけ……一つだけ九天(くてん)の願いを訊いて欲しいのじゃ」

 

狐の少女……九天は俯きながら想雅に告げた。正座をしている想雅からはその表情が窺えた。この子の表情は目が虚ろになっていて悲しみを告げているのであった。

想雅は「内容は?」と訊き、九天の言葉を待った。

 

「……母上が九天を庇って陰陽師共(やつら)に捕まってしまったのじゃ……九天だけの力だけじゃと足りなくて母上を救う事は無理も当然なのじゃ。このままじゃと母上は……母上は……」

 

最後の言葉だけは継げたくなくてそのまま口を閉じた。想雅もだいたい何を言いたいのかが分かっていたため特に問題が無い。

 

「わかった。その願いを引き受けた」

 

家族を失うのは俺は既に体感している。悲しみも、無気力さも、喪失感も……

知っている想雅だからこそどうにかしてやりたい、助けてやりたいと思っている。

 

「ふぇ?それは(まこと)かえ?」

 

考えもなしにすぐに返答した想雅に対して少しポカンとした。その間にノエルの方を見て彼女はコクリと首を縦に振った。

 

「あぁ、君の母親が命の危機にさらされているんだろ?力を貸して欲しいんなら手を差し伸べるのが普通さ。あと、足が限界だし……」

 

固い地面にさっきから正座とかで痺れがきており、足が可笑しくなりそうなぐらい感覚がマヒしている。主に胡坐や椅子に座ったりしているため完全に足が石になったように硬くなっている。動かしてみようもんなら倒れるのは目に見えているだろう。

 

「まぁ、何だ……成り行きとはいえ助けを求められたなら助ける。それが女の子からのお願いならなおさら」

 

「もし、九天が女の子じゃなければ引き受けなかったかえ?」

 

「はは……すまんすまん。言葉の綾……」

 

と、苦笑を浮かべながら立ち上がろうとすると

 

「いっ!?足がが……ッ」

 

案の定、足を攣った想雅は前に倒れ込んだ。

 

「むぎゅっ!?」

 

そして、目の前の九天をそのまま押し倒した。

 

「痛つつ……大丈夫か?」

 

と、倒してしまった九天を見た。

倒れた時に乱れた巫女服がギリギリのラインでガ肌を視界からガードしており、急な出来事だったため状況を掴めないことを察せるように目を真ん丸に見開いていた。

 

「あらあら、外がこんなにも暑いのにお(あつ)いわね想雅」

 

想雅は今の現状を見られたら絶対誤解を受ける人物の声が後ろから聞こえてきたことに体が固まった。

 

「おや?想雅は女の子を襲っているのですか?」

 

その誤解を面白ろ可笑しく捉えている人物もそこに居た。お陰様で事態が余計に悪化した方向に向かっている。

 

「そぉ~がぁ~……」

 

何でだろうか……後ろが見えてないはずなのに何故か黒いオーラが見えるのだろう……

ふと、視界をもう一度九天に向かせると、プルプルと震えており、顔が赤面しながら怒っていらっしゃる表情が想雅の視界に映った。

 

「この……」

 

想雅は悟った。

 

 

ここは大人しく()たれておこう……

 

 

「変態めッ!!!」

 

想雅の頬に強烈な平手打ちが入り、悲鳴と断末魔が入り混じった音が橋を飛び越え、夏の空へと飛んで行った。

 

 

 

 

 

 





投稿はなんとかできましたはい。
夏休み中に完全復活できればいいな……と思っておりますん。

感想待ってます!
次回もお楽しみに!



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