FAIRY TAIL ~妖精の使徒~ (一時停止)
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プロローグ

ここは何処だ。

一言で言うなら部屋。二言で言うなら女の子の部屋ってところか。

ふむ、少し今の状況を整理してみよう。

ぬいぐるみや小物が多数置かれている部屋の中心にあるコタツに俺は入っている。

しかし何故そんな事になっているかがまるでわからない。

わからないなら聞くしかないか。

そんな訳で俺は対面に座る少女へと改めて意識を向けることにした。

 

「えっと、ここは何処だ?」

「・・・・・すいません」

 

いきなり謝られてしまった。何故?どうして?Why?

・・・・・・ってちょっと待て!なんでこの子は涙を浮かべている?

やばい、わからないことだらけだ。

 

「と、取り敢えず落ち着いてくれ。そして知ってることを教えてくれ」

「はい。・・・・・・・・・・・・ぐすっ・・・・・・。わかりました、お話します」

 

待つこと数分。少女から聞かされた話は衝撃だった。

簡単にまとめると、二次小説によくある感じの[神の不手際による寿命の終了]だった。

・・・・・・ホントにあるんだな。こういうの。

 

 

「本当にすいませんでした」

「いや、もういいから頭あげて。それで、えっと・・・・・・」

「リンと呼んで下さい」

「じゃあリン、何でそれを俺に?偏見かもしれないけど、神っていうのは人間一人一人には興味がなく、こんな事気にしないと俺は思っていたんだけど」

 

本当は神の存在など信じてなかったというのは秘密だ。

言ってどうなる訳でもないし、本人にいないと思ってたなどとは言いたくない。

いるということがわかったし、それでいいだろ。

 

「確かに上司もそう言いましたし、大抵の神様はそういうものです。でも私はそれでいいだなんて思えなかった。だからここにお呼びしました」

「・・・・・・そっか」

 

この子 (神か?) はとても優しいんだな。

 

「それで、せめてものお詫びに転生して貰おうと思ったんですけど」

「転生?」

「はい。いける場所は創作物の世界に限られてしまうのですがどうでしょうか?」

「うーん」

 

転生は素直に嬉しいが、自分の次の人生を決めろと言われても正直決めづらい。

・・・・・・まあ、なんでもいいか。適当に決めるとしよう。

 

「なあリン、ペンと紙ないかな?」

「この空間では物質は、想像によって創造できます。要はイメージですね」

そう言われたのでペンと紙をイメージ・・・・・・本当に出てきた。すげぇな。

アミダでも作ろうと思ったがそういう事ならと思い、新たに創造。

出てきたのは回転する(というかしている)ダーツ版。

手に矢を創造し、的に向かって適当に放る。

刺さった場所をチェックすると【FAIRY TAIL】の文字が。

 

「じゃー、あそこで」

「そ、そんな感じで決めてしまっていいんですか!?」

「いいの、いいの」

「そ、そうですか。では能力はどうしましょう」

 

再び的に向かって矢を放る。

確認すると【D.Gray-man】の文字が。

 

「あれで」

「わ、わかりました。」

「よろしく~」

「他はどうしましょうか」

「これで十分だよ」

「身体能力などの設定はいいんですか?」

「その世界に準拠してくれればいいよ」

「容姿は?」

「まんまアレンはやめて。俺のキャラじゃないから」

「わかりました。他に望みは無いですか?」

 

そうだなあ。特に無い・・・・・・。いや、一つあった。

 

「じゃあ、記憶を消して送ってくれる?」

「えっ?」

「俺は生まれ変わり、その世界は俺の世界となる。だったら過去や原作の記憶とかはない方が自然だし、その方がいい」

 

そう説明したがリンは浮かない顔をしたまま黙ってしまった。

どうしたのだろうか。声をかけようとするとリンが口を開いた

 

「すいません。転生はその人の記憶がその世界の入場チケットみたいな物なんです。だから記憶を消すことはできません」

「そうか。ならしょうがないか」

「すいません」

「謝ってばっかだなぁ。笑ってくれよ。せっかく可愛い顔してるんだから」

「ふぇっ!?」

 

あ、固まった。ていうか顔真っ赤だ、可愛いなぁ。

 

「か、可愛いって///」

「おう、可愛いと思うぞ」

「あ、ありがとうございます///」

 

おう、これ以上は無い位に真っ赤だ。耳まで赤いよ。

それに少しだけだけどやっと笑ってくれた。

俺のためにずっと暗い顔させとくのも嫌だしな。よかったよかった。

 

「んじゃ、そろそろ行くかな」

「はい。・・・・・・さよならです」

「そんな悲しそうな顔すんなよ。もう会えないって訳じゃない・・・・・・よな?」

「会ってくれるんですか?私はあなたを殺したんですよ?」

「人間いつかは死ぬもんだ。それに悪いことだけじゃない、リンに会えたしな。だからまた会おう。リンは嫌か?」

 

リンは涙を浮かべながらも首を振り、言う。

 

「いいえ、私も会いたいです。また会いましょう。」

「ああ!じゃあ、また!」

「はい!」

 

すると俺の体が光りだし、薄くなっていく。

それとともに意識も徐々に薄れていき、やがて完全に気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

優しい人だった。

私は下級の位ながらも神だ。

人の思考や感情は自然に入ってくる。

あの人の言葉に嘘はなかった。

自分を殺した相手である私を、憎むどころか心配して気を使っていた。

それに、か、可愛いって///

思い出しても顔が熱くなる。

本気で言ってくれた言葉につい戸惑ってしまった。

今も高鳴っている私の胸。

この気持ちは、きっと・・・・・・・・・・・・。

 

 

 




どうも一時停止です。
格好良くタイムアウトと呼んで下さい。
え?格好良く無い?そんな馬鹿な・・・・・・

というわけで初投稿、初掲載のプロローグでした。
なんとも疲れました。今後が不安です。
いろいろ至らない点があると思いますので精進したいと思っています。

今後の展開の練習として神様が主人公に惚れるところを書いてみましたがどうだったでしょうか?
なかなか難しいものですね。
この先、リンちゃんに出番があるかは私にもわかりません(オイ)




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セカンドストーリー開幕

気がつくと俺は地面に寝転がっていた。

体を起こすと近くには一通の封筒と分厚い本、そしてカバンがあった。

取り敢えず封筒を手に取り封を切る。

中には手紙があり、こう書かれていた。

 

『リンです。無事に転生できたようで良かったです。記憶を消すことは出来ませんでしたので、原作の記憶が自然に薄れるように、原作開始のおよそ10年前になっております。容姿はD.Gray-manのキャラクターたちを基にさせて頂き、原作開始までは肉体的な老いは止めてあります。能力などの詳細はお近くの本に記載しておきましたのでご覧下さい。ここはもう貴方の世界なので原作は気にせず好きに人生を歩んでください。

それでは貴方の人生が良きものでありますよう祈っています。

 

P.S. また会う日を楽しみにしております                   』

 

ふむ。どうやら無事に転生したみたいだ。

荷物をあさり、鏡があったのでそれを使って容姿の確認をする。

なんと銀髪だった。まあ神ノ色なんて何でもいいんだが少し驚いた。

んー、容姿はアレンと師匠のクロスを混ぜた感じか?

といっても二次元と三次元じゃ印象はやっぱ違うな。上手く例えれん。

自分の顔にアレンと同じく五芒星(ペンタクル)の刺青があるのは変な感じだ。

そして・・・なるほど。見た目は変わってるが歳は変わらず20歳前後ってところか?

服装も初期のアレンタイプだな。

黒いコート(フード付き)に左胸のローズクロス。両手に手袋をしていた。

左手の手袋を外してみる。アレンみたいに真っ赤だが普通の手だ。

右手も外してみたが、こちらはいたって普通の手でした。

よし、物は試しだな。とりあえず発動してみるか。

 

「イノセンス、発動!!」

 

おお、発動した。体に何やら力強さを感じる。

左手は初期の十字架(クロス)形態だ。やはり最初から神ノ道化(クラウンクラウン)の状態なんていう都合のいい展開では無いようだ。そのまま転換(コンバート)をして剣形態や銃携帯にしてみようとしたが上手くいかない。

もしかして本当に最初期の状態か?

ひとまず発動を停止し、本を手に取る。

中には各種イノセンスの特徴や扱い方、他にも導術や修行方法などが詳しく記載されていた。

更には左目のことまで書かれていた。

アレンは左目でAKUMAの魂が見えていたようだが、俺には何も見えない。

がしかし、成長と共に相手の魔力の質や強さなどがなどを視認、察知することができるようだ。今はピンとこないがコレってすごいことじゃないのか?

少しそれたが話を左手に戻そう。

それによると転換(コンバート)は今でもできるようだ。

集中とそれに伴うイメージが必要のようだ。

もう一度発動し、今度はしっかりと集中。明確なイメージを頭に浮かべる。

それによって、非常にゆっくりとだが転換(コンバート)ができた。

しかしこの早さでは闘いには使えない。練習が必要だろう。

何度か繰り返して慣らしたあとに、他の武器も同じように練習してみた。

その結果わかった事がいくつかある。

今の俺では元帥クラスの武器は扱えないこと。

女より男の武器の方が上手く扱えるということ。

発動時間による精神的疲労(+この世界では魔力の低下も)の具合などだ。

まあ、どれも必然といえるだろうから今は特に気にすることはない。

ひとまず街を探すか。その後は修行をしながら旅にでも出るとしよう。

東に向かおう。理由?適当だけど?

こうして俺の第二の人生が幕を開けた。

 




次回からしばらくオリジナルストーリーです。
とはいっても断片的な過去話にオリ主を突っ込んで繋いでいくだけですが。


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第零章
第一話


転生しておよそ8年。いろんな事があったなぁ。

 

潜在魔力が凄く高そうな少女と出会った。父親を探しているらしい。

 

二人の弟子を持つという氷の造形魔法を使う魔道士と友人になった。いい女だ。

 

緋色の髪を持つ少女や青髪の少年少女と一緒に旅をした。

 

本が好きだという子と話が合った。風読みの眼鏡をプレゼントした。

 

岩を操るハゲと手合わせした。ギルドに勧誘されたな。

 

短い間だが強い目をした少女を弟子にした。あいつは強くなるな。

 

緑色のゴリラに絡まれていた少年少女を助けた。

なにやら白髪の少女に懐かれてしまったようだ。

桜頭の少年にはライバル視されたみたいだが。

 

導術を覚え、ゴーレムを作成した。最近ティムキャンピーが誕生した。

 

方舟の制御にも手を出し始めた。まだまだ未熟だけどな。

 

酒が大好きな青年と仲良くなった。酒を飲んで闘う武術を開発中だとか。

 

街を潰していた闇ギルドと闘った。あれは流石に死にかけた。

途中で庇っていた少女とはぐれてしまったが、あの子は逃げ切れただろうか。

今では無事を祈るしかない。

 

壊滅寸前だった評議員の魔法部隊に代わり闇ギルドを潰した。

新人だという二人に修業をつけてくれと頼まれた。

 

星霊界を救いにいった。あれも死にかけたなぁ。星霊王とも仲良くなった。

なんか特別だという鍵をもらった。ちょいちょい使っている・・・・・・というか勝手に出てくる。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・なんか、アレじゃね?偏ってね?

当時は何とも思ってなかったけど振りかえるととんでもなくね?

・・・・・・・・・・・・まあ、いい。気にしてもしょうがない。

今俺がすべきこと、それは助かる方法を考えることだ!!

只今、絶賛落下中!!(高度およそ300m)

やばい、どうしよう。どうすればいいんだ!?

やっぱアレか!?でもアレ苦手なんだよなぁ。ってもう20m位しかない!?

仕方ない。出来なきゃ死ぬんだ、気合入れろおぉぉぉ!!

 

「イノセンス、発動!!  黒い靴(ダークブーツ)

 

集中だ, 同調(シンクロ)率を上げろ!! 威力最大、範囲固定。

 

「円舞『霧風』!!」

 

蹴りの衝撃にて生み出された竜巻が落下先に渦巻く。落下の勢いを殺すために放ち、風でクッションを作る為に行ったのだが、それでも勢いを殺しきれずに地面に激突する。ものっそい痛いが何とか生き残ったようだ。思わず安堵の息をこぼすと俺に話しかけてくる野郎が一人。

 

「おー、大丈夫かあ?」

「ギリッギリだこの野郎。高々と打ち上げてくれやがって、手合わせでやる範疇超えてんだろーが。走馬灯まで見えたわ」

「はっはっは。お前も力入ってただろうが、お互い様だ。」

「ちっ」

 

そう言われては反論ができない、確かに多少ムキになってしまった。辺りを見回すと闘う前より地形が荒れ果てており、少々罪悪感が湧いてくるがそれも僅かな間だけ。とりあえず煙草を取り出し火をつけると、ティムが飛んできて肩に止まる。灰皿代わりに煙草の灰をティムに喰わせてから改めて視線を男に向ける。

 

「まあいい、疲れた。飲みに行こうぜ、近くの街にいい店があるんだ。」

「お、いいねぇ。お前の奢りでな」

「何でだよ!」

「俺が勝ったからだよ」

「そんな賭けしてなかっただろーが!!」

 

たまたま出会って、強そうだという理由で手合わせが始まった。

ただ、それだけ。それだけで闘い始めるあたり、俺も戦闘狂だな。

だが、ただそれだけの出会いがこの先の俺の人生を大きく変えることになった。

 

 

 

場所は変わってとある酒場。

ここで先ほど激闘を演じた二人の実力者が酒を飲みながら話をしている。

 

「ん?じゃあお前はマグノリアに行くのか?」

「そういうことだ」

 

そう、今俺はマグノリアへと向かっている。

ある雑貨屋へと届け物を運んでいる途中、いわゆる仕事中なのだ。

 

「そりゃ、悪い事したな。仕事が遅れるだろ」

「気にしなくていい。期限には余裕があるし、なにより俺の意思で決めた事だ」

「そうか。なら妖精の尻尾(フェアリーテイル)ってギルドへ行ってみな。面白い奴らが大勢いるぜ?」

「気が向いたらな・・・・・・。ぼちぼち行くわ、宿を探さねーとな」

「おう。またな」

 

そう言い残し、男の片割れが席を立つ。最初は文句を言っていたがきっちりと二人分の金を払っていったが、それは彼が真面目だとかいう訳では決してない。

 

(いつもならどさくさに押し付ける所だが、負け惜しみと取られるのは気に食わん)

 

要するに只の負けず嫌いだった。

 

 

 

 

 

 

翌朝、俺は荷物をまとめると宿を出て町の入口に来ていた。

そこには昨日の男が立っており、声をかけてきた。

 

「よう。」

「まだ何か用か?」

 

男は質問には答えず、ふところから何か取り出し、こちらに放って言った。

 

「その手紙を昨日言った妖精の尻尾(フェアリーテイル)のマスターに渡してくれ」

「・・・・・・気が向いたらって言っただろうが」

 

正直行くつもりは無かったので面倒いのだが・・・。

 

「いいじゃねえかそれくらい。それじゃあ頼んだぜ」

 

そう言うと奴はそのまま歩いていく。どうやら話は終わりのようだ。

仕方ない。だが一つだけしておかねばなるまい。

 

「待てコラ。お前名前は?」

 

男は足を止めると首だけで振り向いて言った。

 

「ギルダーツ。ギルダーツ=クライヴだ。」

「そうか。俺はアラン。アラン=クロスフォード」

 

そのやりとりを最後に俺たちは完全に別れ、お互いの旅へと戻っていった。

 

 

 




はいキンクリしました。
とんだ時間は機会があれば個別に載せたいと思ってます。
また時系列は多少意識しましたが、曖昧なものもあるのであまりアテにしないで下さい。

ギルダーツ登場。
ええ、彼には勝てませんよ。
そしてやっとこさ名前が判明。
アラン=クロスフォード。これからもよろしくです。


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第二話

ギルダーツと別れた俺はマグノリアに向かっており、旅は順調に進んでいた。

残り距離にしてあと半日ほどで着くだろう。

しかし空が徐々に黒さを増しており、雷の音が僅かに聞こえてくる。

そのため俺は移動を早々に切り上げ、寝床を作り上げることにした。

木判で晴らす事もできるが自然は出来るだけ自然のままにしたい。

幸い依頼の期限もあと2日と余裕があるので問題も無い。

 

岩壁を隣人の鐘(チャリティベル)の内部破壊でほら穴を作る。

一日分の薪は確保したし、火も起こせた。

食事は買っておいた保存食や集めた果物で済まそう。

うん、準備はオッケーだ。

あとは寝るだけなんだが、空が暗いとはいえ時間はまだだいぶ早い。

刀でも研ぐか。荷物の中から砥石を取り出し、コップに水を入れて、刃物を研ぐ。

 

しばらく集中していたためか、気がつくと外は雨がだいぶ強くなっていた。

あらかた刃物は研いだし、そろそろ寝るか。寝袋を取り出し中に入って目を閉じる。

数分がたっただろうか、夢の世界に旅立とうとしていた俺の意識は、

 

 

 

グオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

 

きゃあああああああああああああ!!

 

 

轟く咆哮と女性と思われる悲鳴によって一気に覚醒した。

 

 

すぐさま体を起こして辺りの気配を探る・・・・・・あっちか!!

察知した方向に向かって走り出す。その間も重厚な咆哮は続き、辺りの獣たちが逆方向へと逃げていく。どうやら方向は間違っていないみたいだ。

 

・・・・・・見えた!! 何だありゃあ。2m程ある巨大な赤毛の獣。昔みた緑ゴリラの様に二足歩行をしており、その腕はとてつもなく太い。そばにうずくまる女性の胴の2回りは太い。そこまで考えてようやく俺は弾かれたように動き出す。

マズい、女は動けないようだった。獣がその太い腕で叩きつけようとする。

ぎりぎり割り込んだ俺はその腕を何とか受け止めた。

 

そこであらためて後ろを振り返り確認すると女性は二人いた。

近くで見ると思ったより若い、少女か?

一人はキャミソールを着たつり目のポニーテール。

如何にも気が強そうだが今はボロボロで呆気に取られた様にこちらを見ている。

もう一人は赤を基調としたワンピース姿で、同じように傷を負っていた。

痛みがあるのか顔をしかめている。

二人共良く似た顔立ちをしており髪色も白髪で同じだ。姉妹だろうか?

まだ少し幼い感じがするが将来は大層美人になるだろう。

・・・・・・というか見覚えがある、時間が経っていたのですぐには思い出せなかったが、いわゆる原作メンツだろう。まあ今はそんな事関係ない。取り敢えず声をかけるべきか。

 

「大丈夫か?」

 

 

 

 

 

私のせいだ。

私が二人を連れ出したから・・・。

いつもS級のクエストに行く時は一人だった。

今回もそうするべきだったんだ。

自信を持たせるためにエルフマンを誘った。

本人は嫌がったけど無理やり連れ出そうとした。

そしたらリサーナも付いて行くと行った。

私はS級になったばかりだ。

二人も連れて行って大丈夫かと少しは思った。

けど私はお姉ちゃんだ。

弟達に弱気な所は見せたくなかった。

だから了承した。

私がいれば大丈夫、全部任せておけと見栄を張った。

しかし討伐目標の獣が強かった。

みんな疲労し、傷ついた。

エルフマンがそれまで成功していない全身テイクオーバーを行った。

その結果討伐対象は逃げ出し姿を消した、安堵した。

でもその後に問題が起きた。エルフマンが暴走したのだ。

野獣と化した弟は凄い力で暴れた。

私とリサーナで止めようとしたが、疲弊していた私達ではたちうち出来なかった。

もう足が動かない。このままでは二人共やられる。

とっさにリサーナを後ろへ突き飛ばし、私は振り下ろされる腕に対して目をつぶった。

・・・・・・・衝撃がこない?恐る恐る目を開けるとそこには信じられない光景があった。

私と同じくらいの歳であろう男が、両腕で攻撃を受け止めていた。

黒いコートを着た銀髪の男。出血しているのか左腕が赤い。

重い攻撃を受けたであろうその男の足は地面にめり込んでいた。

首だけでこちらを見た男は何事もなかったかの様に口を開いた。

「大丈夫か?」・・・・・・・・・・・・と。




今回は別視点をひとつ書いてみました。
うまく書けてますかね?

隣人の鐘がしれっと登場。
出せる場所が思い浮かばないのでせめてここでとw。


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第三話

さて、受け止めたはいいけどどうするかな。

おそらく二人はミラジェーンとリサーナだろう。だとするとこの獣はエルフマンのはずだ。

あまり傷つけたくはないが対処法がわからない。このまま暴走させておくのも問題だ。

刻盤(タイムレコード)で時間を吸い出しても発動を止めれば戻ってしまうだろう。

とりあえず距離を取るとしよう。懐に潜り込んで拳を繰り出し、吹き飛ばす。

 

「よし。とりあえずごぺっ!?」

「テメー、弟に何しやがる!!」

 

急に殴られた。弟想いも結構だがこれはあんまりじゃないか?

・・・・・・たしかこいつらは似た魔法を使ったはずだ。なら対処法も知っているか?

 

「弟? じゃあどうすればいんだよ?」

「わかんねえ! わかんねえけど・・・・・・助けてぇんだよ!!」

「うん、助けるんだ! やろうミラ姉」

「よく言った、やるぞリサーナ」

「一度落ち着け。二人共ボロボロだろう、さがってろ」

「うるせぇ!! てめぇには関係ねえ!!」

「もう巻き込まれてんだよ」

「誰も頼んじゃいねえ、だからすっこんでろ!!」

 

やっぱりミラとリサーナで間違いないようだ。

あの獣もエルフマンみたいだしな。

まあ、それはいいか。今はそれより・・・・・・。

 

「いいから冷静になれ」

「ぐっ・・・・・・」

 

落ち着かせるために低い声で威圧感を出してみたが効いたみたいだ。

しかしやりすぎたか?

ミラが黙り込んでしまった。

ミラの肩をつかみ、目を合わせる。

 

「冷静になれ。あいつを助けたいなら尚更だ」

「で、でも・・・・・・」

「ミラ姉、その人の言うとおりだよ。一旦落ち着こう」

「そうだ。俺にはあいつの状態がわからない。だけどお前らならあいつを救う方法がわかるんじゃないのか? だから助けよう、俺も力を貸してやる」

「・・・・・・多分だけどあいつは今内側の魂に意識を乗っ取られてる」

「だったらその内側の奴を黙らせればいいんだな?」

「理論的にはそうだけどそんなのどうすれば」

「・・・・・・・・・・・・」

 

・・・アレならいけるか?

わからないが今はそれしか可能性がない。一か八かやってみr。

 

「・・・がッ!!」

 

ダメージから回復したヤツが飛び出してきて殴られた。

考え事に集中しすぎていたために反応が一瞬遅れて吹き飛ばされてしまう。

 

「オイ!!大丈夫か!?」

 

ガラガラと音を立てて岩が俺を覆っていく。

くそ、ダメージはそんなでもないが頭を打ったようだ。

ふらふらして立ち上がることができない。

その時、俺の耳に静かながらも力強い言葉が響いてきた。

 

「もうやめよう、エルフ兄ちゃん」

 



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第四話

「もうやめよう、エルフ兄ちゃん」

 

霞む視線を向けるとリサーナが両手を広げ立ちはだかっていた。

その後ろの方ではミラが倒れている。

おそらく動けないであろうミラはそれでも必死に声を上げ続ける。

 

 

「止めろリサーナ!!」

「大丈夫だよミラ姉。」

 

一度振り向きミラにそう返すと、エルフマンへと振り向き声をかける。

 

「もうやめようエルフ兄ちゃん。もう大丈夫だから、ね?」

 

それでも止まらない。

ゆっくりとした足取りだが確実にリサーナに近づいていく。

 

「リサーナぁ!!」

「バカ野郎!! さっさと逃げろ!!」

 

ミラに続いてアランも声を張り上げる。

が、聞く気がないのかリサーナはエルフマンに向かって話し続けている。

 

「ほら、早く帰らないとみんな心配するよ? マスターにも怒られちゃう」

 

そして遂にリサーナの前に立つ。

その腕がゆっくりと振りかぶられていく。

 

そして・・・・・・

 

「「逃げろぉおおおおおおおおおおおお!!」」

妖精の尻尾(フェアリーテイル)に帰ろう?」

 

・・・・・・その腕がリサーナに振るわれた。

 

 

 

 

 

 

 

自分の体ほどある腕に殴られたリサーナは、何度かバウンドを繰り返しミラのそばに吹き飛ばされた。

 

「・・・・・・リサーナ? おい、・・・・・・リサーナ!」

 

ミラが呼びかけるが反応がまるでない。

必死に呼びかけ続けるミラに対して近づくエルフマン。

それを見た瞬間、俺は弾かれたように走り出す。

とはいえダメージは大きく、視界は歪み足がふらつく。

 

それでも走り続ける。

これ以上はやらせない!!

【同調/シンクロ】率を上げながら、右手で左手首を掴む。

そのまま左腕を引き抜かんばかりに強く引く。

徐々に左腕が姿を変えていく。

ソレはこの8年間の修行でも未だ完璧には扱えない。

十字架の描かれた大剣、神ノ道化(クラウンクラウン)退魔の剣。

その剣を逆手に持ち直し走る。

しかし、奴は既に二人の目の前にいた。

再び振り上げられる腕。

ミラはリサーナを庇う様に抱きしめるとその目を閉じる。

腕の上昇が止まる。あとは振り下ろすだけだろう。

 

いい加減にしろ!!

大事なもんだろうが!!

守るべきものだろうが!!!!

 

「テメエ!! 家族じゃねえのかよ!!!!」

 

ヤツの動きが一瞬停止する。

頼む神ノ道化(クラウンクラウン)あいつを救ってくれ!!

 

「おらぁああああああああああああ!!」

 

雄叫びを上げながら、退魔の剣を走っていた勢いのままに投擲した。

剣はヤツの胸に刺さり、その体ごと吹き飛ばして後方の大木に縫い付けた。

そして俺は勢いのままに転倒し、無様に転がり続けた結果、ミラ達の少し隣でやっと停止した。

 



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第五話

今回は新たなイノセンスが登場です!


 

「おい、大丈夫か?」

 

地面に寝転がったまま、ミラに声をかける。

俺の声を聞いて、おそるおそるといった感じでミラは目を開いた。

 

「ど.どうなったんだ?」

 

声を出すのもしんどかったので、視線と共に指をさす。

その方向ミラが目を向けると、一度大きく目を見開く。

そして(今までもうっすらと涙を浮かべてはいたが)ボロボロと泣き出してしまった。

 

 

「エ.エルフマン・・・・・・ひっく・・・。」

「お、おいおい泣くなよ」

 

な、何で泣くの!? 俺何かした!?

もう一度確認してみよう。

・・・うん。エルフマン(獣形態)が左胸に大剣が刺さった状態で動いてないね。

・・・・・・ってまさか。

 

 

「迷惑かけたな・・・ぐすっ・・・。あいつを止めてくれてありがとう。遺体は私が責任を持って片付ける・・・・・・。」

 

だあぁああああああああああ!!

やっぱり盛大に勘違いされてるうぅうううううううう!!

あまりの事に疲労や痛みも忘れ跳ね起きる。

 

「ち、ちがう!! あれは・・・」

「いいんだ・・・。あのままだと近くの町にも被害が出てたかもしれない。あんたのした事は正しいよ。」

「い、いやだから・・・」

「いいんだって!!全ては弱い私に責任があるんだ!!それより先にリサーナだ」

「だから・・・」

「おい!! お前も左腕ヤられてるじゃねえか!!早く治療を「アイツは生きてる!!」・・・え?」

「驚かせてすまない。あいつは生きてるよ」

「で、でも心臓にあんな大剣が」

「あの剣は肉体を傷つけない。あいつを操っていた内側の精神と暴走していた魔力だけを攻撃したんだ。だからあいつに外傷はない」

「じゃ、じゃあエルフマンは」

「ああ、見てみろよ」

 

二人であらためて目を向けると巨大な体躯が少しずつ縮んでいく。

しばらくするとソレは完全にエルフマンの姿へと戻った。

そしてゆっくりと目を開いた。

 

「うう・・・・・・、あれ? 姉ちゃん?リサーナ?」

「エルフマン!!」

 

歓喜の声が上がる。

これでひとまず安心か。

そう思ったが俺たちは未だ危機の真っ只中にいたことを思い知る。

 

 

 

 

しばらくしてマズイ事になった。

エルフマンを正気に戻した。

多少の怪我や疲労感はあるだろうがそれだけだ。

問題はそこじゃない、リサーナだ。

ミラとエルフマンが必死に呼びかけた結果、目を開けたがその後に異変が起こった。

リサーナの体が光りだしたのだ。

そして徐々に薄くなり、光の粒子となり天へと昇っていく

ミラとエルフマンは涙を流し続けている。

理屈は解っていないだろうがこのままだとマズイ事になるのは明らかだ。

 

俺は思い出した。確かこれはアニマとかいうモノの仕業だったはずだ。

アニマが弱っているリサーナを魔力として吸収しているのだろう。

だったらやりようはある。

アニマを逆流させればリサーナを救えるはずだ。

今日は力をかなり使った。さらにコレは俺の苦手とするモノだ。

これまで以上の負担となるだろう。

だが、それで諦める理由にはならない。

集中だ。これまでにない程に。

同調(シンクロ)率を最大限上げていく。

範囲はここら一帯だ。

 

「イノセンス発動!! 刻盤(タイムレコード)

 

 

発動と同時に天空に大きな時計盤が出現する。

二人が驚いているようだが気にしている余裕は無い。

 

刻盤(タイムレコード)よ、時を巻き戻せ!! 時間逆行(リターン)

 

 

時間逆行(リターン)。この技は時間吸収(リバース)とよく似ている。

対象空間の時間を逆流させ、空間内を一定の時間がたつ前の状態に戻す技だ。

時間吸収(リバース)は発動を止めると吸い出した時間も元に戻るが、時間逆行(リターン)は戻らない。

巻き戻した時間はそのままである。

もちろん強力な分リスクが存在する。

 

まず生物には作用しない。

つまり俺が指定したのはリサーナではなくアニマだ。

その結果アニマは逆展開を始める。

 

天へ昇っていたリサーナがゆっくりと降りてくる。

それをミラとエルフマンが受け止める。

透けていた体も元に戻ったが、リサーナの怪我自体は変化していないため危険な状態には変わりない。すぐさま治療が必要だ。

 

「ぼーっとするな!! 早く医者に連れてけ!!」

「あ、ああ!!」

「お前は!?」

「俺は今動けん、いいから行け!!」

 

刻盤(タイムレコード)の発動中は基本動けない。これもリスクの一つだ。

まして膨大な集中力と魔力を使う時間逆行(リターン)を使用中だ。

二人は少し逡巡したが、リサーナを背負って走りだした。

二人が走りながらもこちらに振り向き声を掛けてくる。

 

「すまない!! 恩に着る!!」

「あんたも無事でいてくれ!!」

 

悪いが二人に返事をする余裕は無い。

かろうじて小声で声を出す

 

「ティム、二人について行ってくれ」

 

俺の声を聞いてそれまで服の中に隠れていたティムキャンピーが顔を出す。

こちらをジッと見つめて迷っているようだ。

 

「俺なら大丈夫だ。行ってくれ」

 

その言葉を聞いてティムはすごいスピードで二人の走っていった方向へと飛んでいった。

ティムの姿が視界から消えてしばらく待った。・・・・・・そろそろいいか。

俺は時間逆行(リターン)を停止し、刻盤(タイムレコード)をしまう

 

そして・・・・・・・・・・・・

 

「ガハッ!!」

 

俺は盛大に吐血し、倒れ込んだ。

 



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第六話

前回でた【時間逆行】はオリジナルです。


俺は今地面に倒れている。

時間逆行(リターン)の最大のリスク。

それは使用者の、つまりは俺の命を削る所にある。

時間逆行(リターン)の使用中は肉体が内側からボロボロになるのだ。

本来 [時] というものは人が操れるものではない。

神の領域を踏み荒らす行為とも言えるだろうから軽いほうだとは思うが・・・。

 

「やっぱりしんどいな」

 

仰向けに体制を変えながら愚痴をこぼす。

取り敢えずしばらくは動けそうにない。

ないのだが・・・・・・。

 

「おいおい、マジかよ」

 

思わずため息が出る。

空のアニマが展開しつつあるのだ。

どうやらあっちの奴らは諦めずに再び起動したらしい。

今の俺はボロボロ、もしかたらと思っていたら案の定だ。

俺の体が吸収され始めている。

先ほどのリサーナ同様光り、浮き上がる。

 

「どうなんのかなー、俺」

 

転生して世界が変わったのにまた別世界?

エドラス編スタート?

勘弁してくれよまったく。

 

・・・・・・というか魔水晶(ラクリマ)にはなんないよね?

流石にそれはマズイよ!? 死亡(ゲームオーバー)だよ!?

うわぁあ、スッゲエ怖くなってきた。

何か地獄の門に見えてきたよ。

ふとそう思った時、急にアニマが閉じた。

となると浮いてた俺は急下降、そのまま地面に叩きつけられる。

 

「へぶっ!?」

 

ぐああああああ!! き、きく・・・。

ただでさえ時間逆行(リターン)の影響でしんどいのに・・・。

痛みにもがきつつ、ふと顔を上げるとそこには人が立っていた。

 

「だ、誰だ?」

「・・・・・・・・・」

 

聞いてみたが返答がない。

とりあえずしっかり観察してみた。

杖を何本も持っている様だが顔を隠しているため男か女かも解らない。

しかし見たことがある。というか知ってる見た目だった。

先ほどあの3人とあったからだろうか、薄くなっていた過去の記憶が刺激されつつあるみたいだ。

俺はこいつを知っている。

しかし・・・・・・

 

「大きくなったなあ」

「・・・!! 私が解るのか!?」

 

あ、しまった。声に出てしまったみたいだ。

まあいいか。真偽おりまぜて適当に合わせよう。

 

「いや、もしかしてと思ってカマかけたんだが・・・・・・。やっぱりそうなのか?」

「・・・・・・不覚。次からは気を付けよう。」

「そうだな。理由は知らんが正体を隠すんならそうしろ」

「相変わらずな物言いだな。・・・・・・アラン」

「そういうお前は少し変わったか?・・・・・・ジェラール」

 

何とも懐かしい再会である。

色々と話をしたいものだが忘れてはいけない。

俺は現在重傷である。

ジェラールもそれは理解しているようだ。

 

「話は後だ。まずはお前を運ぼう」

「悪いけど頼むわ」

「任せておけ。おそらくあいつらも同じ所に向かっているはずだ」

「ん?あいつら、知り合いか?」

「ああ・・・同じギルドだ。あまり交流はないがな」

 

ジェラールが杖を出しながら言う。

魔法なのか俺の体が浮き上がり、歩き出すジェラールに付いて行く。

これなら多少話もできそうだ。

 

「ギルドねえ。そこでも正体隠してんのか?」

「ああ。悪いが秘密にしてくれ」

「了解。じゃあ目的地についたら後は俺一人でいいぞ」

「すまない」

「いいって。その代わりって訳じゃないが、後で俺の荷物も回収しといてくれないか?今回の依頼品もそこにあってな」

「わかった」

「んー、じゃあ後はガフッ!!」

「あまり喋らない方がいいと思うが・・・」

 

そんなこんなで多少の雑談を交えながら俺は運ばれた。

 

 



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第七話

 

俺は現在、森を歩いている。

あと20mもいけば家があるらしく、そこに凄腕のギルド専属薬剤師がいるそうだ。

その周りにはギルドメンバーなどがいる様なので俺はミストガンと別れて自分で歩いていた。

(今はそう名乗ってるのでそう呼んで欲しいとのことだ。ちなみにそこの場所を知っていることについてどう言い訳するかをアイツは考えていたが、俺がティムキャンピーのおかげでわかった事にすると言うと安堵したようだった。)

この状態では正直かなりしんどいが何とか歩みを進めると本当に家があった。

周りには複数の人間(おそらくギルドのメンバーだろう)と猫(猫!?)が一匹おり、皆どこか不安気な表情をしている。

とりあえず話しかけようとした時に、一人が急に此方に振り向き声をかけてきた。

 

「誰だお前、初めて嗅ぐ匂い・・・・・・いや、この匂いどこかで?」

 

に、匂い!? もしかして俺臭い!?

確かに野宿が多いから風呂は入れないことも多いけどそんなに!?

凄い気になるが後回しだ。今はやるべき事が他にある。

 

「リサーナはどうなった?」

『 !! 』

「何でリサーナの事を知ってやがる!?」

「まさか敵か!?」

 

どうやら入りを誤ったようです。凄い誤解を受けているみたいだ。

皆が一様に魔力を高めている。特におじさん二人がやる気マンマンだよ。

臨戦態勢のようだがこっちはそろそろマジにヤバイ。

弁解する体力もほとんどないんだが・・・・・・。

このままじゃ本当に死ぬかな~、と考えたところで――

 

「やめんかバカタレども!!!!」

 

家のドアが開いて小さいじいさんの一括がとぶ。

何とも言えぬ迫力だ。ビリビリきたぜ。

他の奴らも動きを止めたが、納得がいかないようで口を開く。

 

「で、でもよマスター。こいつ怪しいぜ」

「ああ、真っ黒なコートに変な刺青。怪しすぎる」

「黙っとれい。 マカオ、ワカバ」

「じいさん、本当に大丈夫なのかよ?」

「大丈夫じゃ。その者から邪気は感じん」

 

じいさんのその言葉で他の奴らも臨戦態勢を解く。

どうやら相当の実力者のようだ。というかおそらくマスターだろうな。

 

 

「すまなかったな、お前さん」

「気にしないでいい。それよりリサーナは?」

「そ、そうだじっちゃん!! リサーナは大丈夫か!?」

「安心せい。峠はこえた。まだ目は覚まさんが命に問題はない」

 

『よっしゃーーーーー!!!!』

 

じいさんの言葉を聞いて他の皆が歓声を上げる。

ああ、よかった。助かったんだな。俺も・・・そろそろ・・・げん・・・か・・・・・・い。

 

「話は聞いておる。お前さんがあいつらを助けてくれた―――。お、おい!?」

 

何か言ってるようだが耳に入ってこない。

俺はそのまま意識を手放していった。

 

 




アランは基本原作知識を忘れていますが、記憶を刺激されることでうっすら思い出したります。
ちなみに今回はアランがフラフラの状態でそこまでの余裕がなかった・・・、という事で。


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第八話

「・・・・・・・・・・・・」

 

目が覚めるとそこは知らない天井。

ゆっくりと体を起こすが体全体がとてつもなくだるい。

こりゃしばらくかかるかなあ、などとぼんやりと考えていると声がかけられた。

 

「目が覚めたかい」

 

視線を向けるとそこには一人の老婆がいた。

 

「あんたは?」

「私はポーリュシカ。妖精の尻尾(フェアリーテイル)の専属薬剤師さね」

 

そして、ちょっと待ってなと言って部屋から出ていってしまった。

ふむ。あのあと倒れた俺はそのまま治療されたってわけか?

色々と確認したいがどうしようもないな。

とりあえずポーリュシカさんが帰ってくるのを待つか、と考えたところでちょうど帰ってきた。・・・・・・早かったな。

その後ろには小さいじいさんがついてきていた。

確かあの時に回りをおさえてた人だな。

 

「目が覚めたそうじゃな。調子はどうじゃ?」

「ぼちぼちですかね。痛みはないですが・・・・・・」

「そうかそうか」

「ところであなたは?もしかして妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔道士ですか?」

「うむ。マスターをしているマカロフ=ドレアーじゃ。よろしくのう」

 

そういって手をニュっと伸ばしてきた(リアルに長さが伸びた)のでこちらも手をだして握手と自己紹介をする。

 

「話はあいつらから聞いた。家族(ガキども)を助けてくれて心より感謝する」

「いえ、たまたま近くにいただけですから」

「むう。しっかりしとるのう、うちの奴らに見習わせたいくらいじゃ」

「ネコ被っているだけですよ。ホントの俺は黒いですよ」

「ますます面白い」

 

と、そこまで話した所で新たな人物が2人現れた。

とはいっても見覚えがある。倒れる寸前に相対してた奴らだ。

 

「よう、邪魔するぜ」

「目が覚めたってな」

「マカオにワカバか、どうした?」

「いや、その・・・」

「なんというか・・・・・・」

 

二人してどことなく歯切れが悪い。

俺とマカロフさんが揃って首を傾げた時だった。

二人が凄い勢いで頭を下げた。

 

「「スマン!!」」

「えっと、何が?」

 

俺にはよくわからない。

マカロフさんに視線を向けるがニッコリ笑うだけで答えてはくれない。

とりあえず話を聞いてみると・・・・・・。

 

「つまり仲間を助けてくれた恩人(俺)に攻撃しようとした事に対する謝罪と、改めて感謝をって事ですか?」

「そのとおりだ」

「俺らが最初に疑ったから他の奴らもつられちまったんだ。本当にスマネェ」

 

なるほどそういう事か。だとしたら俺の答えは決まっている。

 

「頭を上げてください、俺は気にしていませんから」

「で、でもよう」

 

どうも煮え切らないな。仕方ない、少し本音で話すか。

 

「仲間が危険な時に知らないヤツが現れたら警戒するのが普通だ。率先して動いたお前らを評価こそすれ、恨みなどしねえよ」

「お、お前」

「それに過ちと認めてすぐさま謝りに来たんだろ。それは当たり前のように思えて中々できることじゃねえ。年長者なら特にな」

 

最後の部分は冗談めかしてニヤッとしながら言ってやった。

口調の変化に多少驚いたようだが、理解はしてくれた様で頭を上げてくれた。

ただマカロフがニヤニヤしてるのは少しイラッとする。

話を進めようと思ったがここでポーリュシカさんからストップがかかった。

 

「そこらへんにしときな、怪我はまだ完治してないんだ。マカロフ、あんたも少しは気を使いな」

「おお、スマン」

「俺なら平気ですよ」

「3日も眠り続けた人間が何言ってんだい」

「・・・・・・・・・・・・え?」

 

今なんて・・・? 3日って言った?

 

「冗談ですよね?」

「いや、本当じゃよ」

 

マカロフまでそんな事を言うので、俺は目の前の二人に視線を向ける。

すると二人は戸惑ったように小さく、しかし確実に頷いた。

あれから3日ということは、仕事の期限を過ぎたということだ。

 

「マジか・・・。」

「おいおい」

「どうしたってんだ」

 

ズーンと落ち込んだ俺を見て二人が慌てている。

俺はこのザマだししょうが無い

 

「悪いけど、一つ頼まれてくれないか」

「お、おう。何だ?」

 

近くに置いてあった俺の荷物から依頼品とある封筒を取り出す。

 

「これは俺が受けている依頼の品でな。この街の雑貨屋に届けるために向かっていたんだ。俺が3日間寝てたということは期日は昨日だ。だからこの品と依頼主に貰っていた前金を雑貨屋に届けてくれないか?勿論俺も後日正式に謝罪に行く」

「わかった、まかせろ」

「でもよう、前金は別にいいんじゃねえのか? 遅れも一日だし貰っちまったらどうだ? 仕事のルール上も特に問題ないんだろ?」

「ケジメだ。俺のプライドの問題だからいいんだよ」

 

その言葉を聞くと二人はもう何も言わずに出ていった。

さて、まだ疲れてるしもう一度寝ようかと思ったが、もう一個用事があったのでついでに済ましておこう。

 

「マカロフさん」

「んー?」

「これ、ギルダーツからあなた宛への手紙です」

「!! あやつに会ったのか!?」

「え、ええ。」

「マカロフ!! いい加減出て行きな!! 患者の前で騒ぐんじゃないよ!!」

「おお、すまぬ。また来るわい」

 

そんなやり取りを経てマカロフさんも出て行った。

今度こそ寝ようとして体を倒す。

ポーリュシカさんもそんな様子をみて出ていこうとするが一つ聞きたいことがあった。

 

「ポーリュシカさん」

「なんだい?」

「リサーナはどうしたんですか?」

「あの子は昨日で完治したから出て行ったよ」

 

そう言ってそのまま出て行ってしまった。

しかし、その時見えた影のある表情が気になって、俺は中々眠ることができなかった。

 

 

 



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第九話

あれから二週間が経過した。

俺の怪我も完治し、やっとこさ退院できることになった。

 

「世話になったな、ポーさん」

「その呼び方は止めろといったはずだよ」

「まあまあいいじゃねえか。今更だろ」

「まったく・・・。さっさと出て行きな」

 

そこそこ一緒にいた事もあって俺たちの会話もだいぶ軽くなったと思う。

 

「治療費はいくらだ?」

「いらないよ」

「は?」

「別に金には困ってないさね。それにアイツ等の恩人だからね」

「・・・・・・俺は本当にアイツ等を救えたのかな?」

 

俺が目覚めた次の日、あの3人が来た時に俺は衝撃を受けた。

左目で見たリサーナの魔力が限りなく無に近い状態だったのだ。

聞くと魔力を収める器ともいえる機能が異常をきたしているらしい。

今のリサーナは器にヒビが入った状態のようなもので魔力を貯めれない。

結果魔法が使えない状態だそうだ。(ミストガンとも話したがおそらくアニマの影響だろう。魔力は生命にも関係することなので時間逆行(リターン)も中途半端になったのかもしれないが、詳しいことは不明のままだ)

本人は「魔法が使えない人の方が多いんだし、気にしてない。ギルドの手伝いでもするよ」と気丈に振舞っていたが、それまでずっとあったモノがなくなったのだ。

辛くないはずがないだろう。

 

「あまり気にするんじゃないよ。あんたのせいではないし、少しずつだけどヒビは修復されるんだ。いつか魔法が使えるように治るさ、あたしも手伝うんだからね」

「・・・そうだな。本人が前を向こうとしてるんだから、俺が水を差してはダメだな」

「あんたも、出来るだけあの技は使うんじゃないよ。負担が大きすぎる」

「わかってるよ。極力使うつもりはない」

 

あの技というのは時間逆行(リターン)のことだ。

この期間中、雑談の中でいくつか俺の能力や魔法についても話した。

医者から見ても、やはり時間逆行(リターン)のリスクは危険なものらしい。

改めて忠告をしてくれる辺り、心配してくれているのだろう。

それはさて置き出発だ。体の感覚も戻さねえとな。

しかし話はまだ終わってなかったようだ

 

「ちゃんと妖精の尻尾(フェアリーテイル)には行くんだろうね?」

「・・・・・・やっぱ行かなきゃダメ?」

「当たり前だよ。あんたが行かなきゃ私が色々言われるんだからね」

「あー、しゃあねえか」

 

実は、妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーとは殆ど顔を合わせていない。

リサーナの事も大げさにしたくないし、マカオたちのように謝りに来られるのも鬱陶しいので、完治したらギルドに顔を出すという事で此処へは来ないようにしてもらっていたのだ(マカロフとミストガンは例外だが、二人共忙しいのだろう。2~3回顔を出しただけだった。ちなみにあの3人はちょくちょく来た)。

幸いポーさんの人間嫌いとも利害が一致したので、怪我の回復ためにもその方がいいという後押しをしてもらった。

その為、俺が勝手に出て行ったらポーさんに迷惑がかかる。

仕方なく俺はポーさんに場所を聞いてギルドへと向かうことにした。

 

 

 



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第十話

今回の話を書いて・・・・・・、自分にハーレムは書けるのか本気で心配になりました。
少しだけ書いてみたが凄い苦戦したうえにイマイチな気がするけどどうですかね?
グダグダにならないように気をつけたい・・・。


というわけでやってきました妖精の尻尾(フェアリーテイル)

いや、思ったよりデカイな。

旅の最中にもよく耳にした有名ギルドだしこんなもんなのか?

何やら騒がしいがとりあえず入るか。

 

「お邪魔しますよ~・・・ってへぶっ!!」

 

いきなり何か、というより誰かが吹っ飛んできた。

反応が遅れてそいつの下敷きになってしまう。

クソ、あの程度が反応できないとは・・・・・・。

これは早いとこカンを戻さなくてはなるまい。

 

「何しやがんだグレイ!!」

 

いや、とりあえず降りない?

俺の上から退いてくれない?

 

「ああん? 何か文句あんのかクソ炎」

 

そう言いながらもう一人、俺の上に乗ってきてにらみ合いを始める。

 

いや、文句あるよ。

いいからどけやお前ら、重いんだよ。

 

「上等だ。やってやんよ半裸ヤロー」

「かかってこい。マフラーバカ」

「たれ目ヤロー」

「つり目ヤロー」

 

いや小学生か(小学校ないけど)。いいからどけよ。

そんな想いは届かないみたいで睨み合いながら悪口をいいあう二人。

あ~、なんかムカついてきたな・・・。

未だに言い合ってるし、俺のことは無視だし。・・・よし、殴ろう。

 

「いい加減に・・・・・・「「ん?」」しやがれっ!!」

 

バキッ!!

 

「「ぐはっ!?」」

 

二人まとめて殴り飛ばす。

結構強く殴ったつもりだが、体制を立て直して綺麗に着地する二人。

思ったより強い奴らなのか、俺のなまりが原因か。

 

「「いきなり何しやがる!!」」

「うるせー!! 人の上でピーチクパーチク喧嘩しやがって、ガキかテメーら!!」

「こいつと一緒にすんじゃねえ!! 変な格好しやがって!!」

「全裸のやつに言われたくねえよ!!」

「うおっ! いつのまに!?」

「「うわっ、うぜー・・・・・・」」

「なんだとクソ炎! ってかテメエもハモってんじゃねえ!!」

「やんのかひんやり野郎!!」

 

そういってまたもや俺を無視しての言い争いが始まる。

ああ・・・、なんか萎えた。

もう帰ろうかなと思ったが、マカロフを見つけたのでそちらに行く。

カウンターに座っているので、俺は普通に椅子に座って向かいあう。

 

「よう、来たぜ」

「おお、お前さんか。」

「全く何なんだあいつらは」

「悪いのう。元気が有り余っとるようでな」

「いや、ただのアホだろ」

「否定はせん」

「というか俺が来る必要は無かっただろう? もう行っていいか?」

「なんじゃい、急ぎの用事でもあるのか?」

「そういう訳じゃねえけどよ」

「じゃあええじゃろ。そろそろ帰ってくるころじゃろうしな」

「あ? 帰ってくるってだ『ただいま~』・・・あいつらか?」

「そうじゃ。お~い、お主らちょっと」

 

そう言って、入って(帰ってか?)きた奴らを呼ぶマカロフ。

その中にはミラとリサーナの姿もある。

とりあえず声をかけるか。

 

「よう」

『え?』

 

俺の方を見て女性陣が固まってしまった。何で?

 

「完治したんでな。顔をだしにっ!?」

 

急にミラとリサーナが抱きついてきた。

多少驚いたが何とか受け止める。

しかし二人は抱きついたまま何も言わない。

どうしたものかと思っていたが、同じく唖然としていた女性陣が動き出した。

 

「「「もしかして・・・・・・、アラン?」」」

「え? そうだけどわっ!?」

 

残りの3人も飛びついてきた。

その結果、流石に支えきれずに椅子から転げ落ちてしまった。痛え。

・・・・・・なんか静かだと思ったら、周りの視線を一身に集めていた。

 

 

 

 

 

 

色々説明&整理中・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「つまりお主はここにいる全員と面識があると?」

「まあ、そういうことだ」

「しかしミラ達を助けてくれたのがアランだったとはねえ」

「相変わらず優しいねえ~」

「それでこそアランだ」

「・・・たまたま近くにいただけだ」

「あははっ。照れてる~」

「うるせえよ。」

 

というかですね・・・・・・

 

「いい加減離れませんかね?」

 

ミラ、リサーナ、エルザ、カナ、レビィの5人に抱きつかれたままなので言ってみたのだが・・・・・・

 

『え? なんで?』

 

即答ハモリのうえ、疑問形で返されてしまった。

いや、別に嫌ではないよ?

いい匂いがするし、やわからい感触も気持ちいい。

そう、悪くない。決して悪くないが周りの視線がちょっと痛い。

これはどうしたもんかねえ・・・。

すると遠巻きに見ていた男性陣も集まってきた。

 

「よう。完治おめでとさん」

「しっかしモテモテだなぁオイ」

「マカオにワカバか。久しぶりだな」

 

先ほどバカやってた二人(あと青い猫が増えてた)も話かけてくる。

 

「俺はグレイだ。お前がリサーナ達を助けてくれたんだって? ありがとな」

「その話はもう止めてくれ。何度も言ったがたまたま近くにいただけだ」

「んー・・・・・・。」

「どしたの、ナツ?」

「なんかどっかで嗅いだ匂いなんだけどなあ。ハッピーは知らねえか?」

「実はオイラもなんとなく・・・」

「ナツ、ハッピー、私達は小さい頃に一度会ってるんだよ?」

「え?何処でだ?」

「ほら、私達が森バルカンにやられそうになった時に助けてくれたじゃない」

「・・・・・・。あん時のやつかー!! 勝負しろコノヤロー!!」

「またいきなりだね、ナツ」

 

すると抱きついてたエルザが突如離れてナツに近づき・・・・・・、一撃で黙らせた。

そしてこちらにゆっくりと歩いてくる。

え? なに? 怖いんだけど!?

いつの間にかくっついていた奴らもいなくなってるし。

そんな俺の焦りなど意に介さずエルザは口を開く。

 

「アラン」

「な、なんだ?」

「あの時は断られたがもう一度頼む。妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入ってくれないか?」

「・・・・・・はい?」

「それいいっ!!」

「入りなよ、アラン」

「ん~、でもなあ・・・・・・」

 

正直悩む。ここは楽しそうだが旅を続けるのも捨てがたいしなあ。

そんな俺の空気を感じ取ったのか女性陣が何やら目配せをし・・・・・・、何故かまた抱きついてきた。そしてそのまま上目遣いで・・・・・・

 

『お願い、アラン』

 

ぐうっ!! これは効く。

心が一気に持ってかれる。

何とか立て直そうと葛藤する俺に更なる攻撃がきた。

 

「ところでアランよ、ギルダーツの手紙に書かれていた伝言を伝えるぞい」

「な、なに!?」

「《よう。お前 妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入れよ。そしたらまたやりあえるぜ。

  まあお前が尻尾まくって逃げるってんならそれでもいいけどなあ》じゃと」

 

・・・・・・あんのタコ、好き放題言いやがって!!

それに、お前がいつ帰ってくるかわかんねえじゃねえか!!

とはいえ、俺も負けたままじゃおさまらんし、何より腹が立つ。

あのヤロー、ぶん殴ってやる。クックック・・・・・・。

 

「何やら黒い笑顔しとるがどうするんじゃ?」

「ああ、決めた。妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入る」

「よし、じゃあ改めて自己紹介せい」

「アラン=クロスフォード。何人かは知り合いや顔見知りもいるがこれからよろしく頼む」

 

こうして俺は妖精の尻尾(フェアリーテイル)の一員となった。

 

 




前に本編で書いた主人公のファミリーネームが間違ってたので改めて自己紹介を。
主人公のフルネームは、後書きに書いてあった【アラン=クロスフォード】が正しいです。
どうもスイマセンでしたあぁぁぁぁ!!

ちなみに、次回は戦闘シーンを書いてみる予定です。



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第十一話

今回はバトル回。
こんな感じでいいのか不安です。


改めてそれぞれと自己紹介を済ませたあとにナツが話かけてきた。

 

「アラン、俺と勝負しろー!!」

「やめた方がいいぞナツ。アランは強い」

「ん?ミラ達はともかく、エルザも知ってんのか?」

「ああ。なんせ私の師匠だ」

『師匠!?』

「それは大げさだろエルザ」

「なにをいう。私の今の実力はお前のおかげだ」

「アホ。俺は最初に少し手を貸しただけだ。後はお前の力だ」

「む、むう。ありがとう」

「何故照れる」

「私もアランに魔法習ったんだー」

『レビィも!?』

「うん。私の文字魔法(ソリッドスクリプト)はアランに教わったんだ」

「ギルダーツの手紙にも強かったと書かれていたぞい」

「あのオヤジが!?」

「おいおい、マジか」

「どんな実力なんだこいつ」

 

なんか色々大げさになってないか?

それにレビィのは教えたとは少し違うと思うぞ?

まあでも勝負はちょうどいいか。

 

「よし。やるかナツ」

「へへ、そうこなくっちゃ」

「え?やんのか!?」

「体がなまってるからな。リハビリにちょうどいい」

「ず、ずるいぞアラン! 私も頼む!!」

「んー、調子見ていけそうだったらな」

 

そういって場所を変えるために全員で外に出る。

ギルドの前で、少し距離をとって向かい合う俺とナツ。

ていうか賭けはやめろよ、お前ら。

しかも殆どはナツに賭けてる。クソ、仕方ないんだけどなんかなあ。

俺に賭けているのは先ほどの女性陣のみ・・・いや、今ヘッドホンをした金髪の男が俺に賭けた。

そして賭けを仕切っていたワカバが締め切り、マカロフが俺たちの中央にやってくる。

 

「それではナツ対アラン。始めい!!」

「いくぞ!!」

 

開始と同時に突っ込んでくるナツ。

そのまま炎を纏った拳をくりだしてくる。

 

「火竜の鉄拳!!」

 

体をそらして躱し、左手で反撃に殴りとばす。

 

「くそっ!! こんにゃろう!!」

 

またもや接近してきて拳や蹴りがとんでくるが全て受け止め、いなし、殴る。

 

「マジかよ、ナツが押されてやがる」

「しかもあいつはまだ剣も抜いてない上に、魔法も使っていないぞ!!」

「いや、それだけじゃない」

「どういうことエルザ?」

「別にアランは剣で闘うだけじゃないからな。抜いてないのはそう問題じゃない」

「じゃあ何が問題なんだ?」

「よく見ろ、アランは左手しか使っていない」

『なっ!?』

「おいおい、どんだけ強えんだあいつ!?」

「まさかナツが負けるのか!?」

 

周りが騒がしい。エルザ辺りが気づいたかな?

だがもう一つの方がわかる奴はどれくらいいるかな?

まあそれはともかく、自分の現在の状態は概ね把握できたな。

そろそろ決めるとするか。

 

「くっそぉ!! これならどうだ、火竜の翼撃!!」

 

今度は両腕に炎を纏わせて突っ込んできた。

中々の速度だが―――

 

「ふんっ!!」

 

ドゴン!!

 

「グハッ!?」

 

――――まだまだだな。

そのまま地面に叩きつけてノックアウトしてやった。

 

「そこまで! 勝者アラン」

「マジでナツに勝ちやがった」

「しかも左手だけで」

 

ふう。全快には程遠いがそこそこはいけるな。

もう少し体を動かしたいところだ。

 

「次、誰かやるか?」

「よし、私がいこう」

「お、エルザか」

「お前には負けっぱなしだったからな、今回こそは勝たせてもらおう」

「よし。かかってこい」

「勿論抜いてくれるんだろうな」

 

そう言われたので腰の六幻を抜く。

するとまたもや周りが騒めく。

 

「なんだあの剣」

「黒一色で刃が無い?」

「あれでエルザと闘うつもりなのか?」

 

ちなみにエルザは知っているので驚いていない。

じゃあ、やりますかね。

同調(シンクロ)率を高めながら刀身の根元に指先を沿えて刃先へと滑らせる。

(イノセンス、発動!!)  ズバババババババババ、ヴン!!

 

それまでになかった刃がその姿を見せる。

 

「では、アラン対エルザ。始め!!」

 

「換装、天輪の鎧!!」

「おいおい、いきなりだな」

 

エルザが換装したのは天輪の鎧。

周りに剣が滞空しており使用者の指示を待っているようだ。

 

「いけっ!!」

 

エルザの合図により滞空していた剣が一斉に向かってくる。

なるほど、スキがない配置とタイミングだ。

が、まだまだだ。手にした六幻で全て切り払う。

 

「さすがアランだ。では、これならどうだ!!」

 

更に複数の剣を出現させると、輪になって回転しながらこちらに向かってくる。

あれは素のままじゃちょっと厳しいな。

仕方ない、こちらも魔力を使おう。

 

「舞え、剣たちよ!! 循環の剣(サークル・ソード)!!」

「災厄招来! 界蟲一幻!!」

「何だありゃ!?」

「魚!? いや蟲か!?」

 

六幻を振るとそこから界蟲が飛び出す。

お互いの技がぶつかり合って消滅する。

そこからエルザが飛び出してきた。技を出すと同時に走り込んでいたのだろう。

ちょいと意表を突かれたが見えている!!

 

「もらったあぁ!!」

「はあぁっ!!」

 

エルザと俺、双方の動きが同時に止まる。

それぞれの得物が互いの喉元に突き付けられていた。

 

「そこまで!!」

「・・・引き分けか。強くなったなエルザ」

「いや、お前は病み上がりだ。本調子ならば私が負けていただろう」

 

互いの健闘をたたえ合う俺たち。

 

「ていうか最後の方、動きが速すぎて見えなかったんだけど・・・・・・」

「どっちもバケモンだな」

「エルザと互角だしな」

「あいつも怪物だな」

 

なんか周りの奴ら失礼じゃねえか?

(ちょっとお仕置きしてやるか)と考えたその時、突如雷撃がとんできた。

 

「うおっと!?」

 

咄嗟に左手で受け止めたが、結構な威力だったため手袋が破れてしまった。

そして、先ほど俺に賭けてた金髪の男が話かけてきた。

 

「よう、次は俺とやろうぜ」

 

・・・こいつは強いな。

おそらく気づいているだろうし、今の俺じゃチョイとしんどそうだ。

 

「悪いが今日は疲れた、また今度な」

「疲れた?下手な嘘はやめるんだな」

「いや、嘘じゃないだろ。ナツとエルザと連戦したんだぞ?」

「ああ、病み上がりなんだしこれ以上はキツイだろ」

「そうだよ、やめてラクサス!!」

「マスターも止めてくれよ!!」

 

周りのメンバーがラクサス止めようとするが効果がない。

更に、マカロフが黙ったまま動こうとしないのに困惑してるようだ。

そんな周りの様子を見てラクサスは話を続ける。

 

「こんだけいて俺とジジイしか気づいてないのかよお前ら」

「気づいていない?」

「なんのことだラクサス」

「こいつはナツとエルザ、両方の闘いで一歩も動いてないんだぜ?」

『なにいっ!?』

「つまりこいつは全然本気じゃなかったってことだ。それがリハビリのためなのか、手加減なのか、はたまた別の理由なのかはしらねえがな」

 

ラクサスの言葉を聞いてマカロフ以外は衝撃を受けたようだ。

エルザに至っては「不覚、気づかなかった。私の完敗だ」などと地面に手をついている。

 

「それにだ。その赤黒い左手、左胸にローズクロスの黒いコート。

 間違いねぇ、お前が噂のエクソシストだろ?」

「エクソシストだと!?」

「色んな噂があるがどれも信じられない様な実力を示すものばかり」

「聖十の魔道士に勝るとも劣らないだとか・・・」

「ゼレフ書の悪魔を倒したとか・・・」

「闇ギルドをいくつも潰したとか・・・」

「正体不明のフリーの魔道士。わかっているのは黒いコートでエクソシストと名乗っており、その左手は血塗られたように赤いってことだけ」

「その正体がアラン!?」

 

うわー、めちゃくちゃ尾ヒレついてる。

まあ事実なのもあるけど、ちょっと大げさすぎじゃねえか?

周りの視線が痛い。だから黙ってたのに。

 

「さあ、もう嘘はいいだろ?さっさと始めようぜ」

「別に嘘ではないんだがな・・・。なあ、お前は何で闘いたいんだ?」

「あ?強えヤツと闘って勝つ。そしたら俺はもっと強くなれる。俺は最強になりてえんだよ!!

 だから本気でこい、手を抜きやがったらぶっ殺すぞ!!」

「じゃあ尚更闘わない」

「なんだと!?」

「今の俺は完調じゃない。本気でやるにはカンを取り戻す必要がある。そのためにはある程度の時間が必要だ。本気で闘って欲しいのならしばらく待ってな」

 

「・・・・・・ちっ」

 

俺の言うことに納得してくれたのか、徐々に闘気を収めていくラクサス。

いかにも不満げだな。しょうがないから言っておくか。

 

「そう焦るなよ、闘う時は本気でやってやる。約束だ」

 

その言葉を聞くとラクサスは一人でギルドの中に入っていってしまった。

 

「やれやれ、俺らも戻ろうぜ」

 

その後に俺の歓迎の宴が開かれた。

そこでエクソシストについての質問攻めにあってしまったのだった。

 

あ、紋章は左手の甲に黒で入れました。

 

 




んー、アランやりすぎですかね?
バトルがショボイと思われる方は御手数ですが脳内補正をお願いします。
アランのバトルを各自で盛り上げてご覧ください。



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第十二話


お気に入りが100件を超えました。
皆さん、ありがとう。


妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入ってから1ヶ月が経過した。

しばらくは簡単な依頼などをこなしながら感覚を取り戻す日々が続いた。

少しずつ依頼の難易度を上げていき、時にはナツやグレイなどのギルドメンバーと勝負して、他のイノセンスの扱いも慣らしていった。

そしてやっと万全と言える状態になった。

となればやることがある。ラクサスとの勝負だ。

今朝ティムキャンピーに手紙をラクサスに届けさせた。

今は昼過ぎ。そろそろ来る頃だろう。

案の定、それから数分後にラクサスは現れた。

ラクサスは若干不機嫌な顔で話しかけてくる。

 

「こんな所に呼び出しやがって、どういうつもりだ」

「お前が望んでいた勝負をしようと思ってな」

「それはわかってる。何故こんな場所で、という意味だ」

 

そう、ここはマグノリアからそこそこ距離のある荒地。

俺はそこにラクサスを呼び出していたのだ。

 

「本気でやりたいんだろ? ここなら気を使わずに済むからな」

「そういうことかよ」

 

ラクサスは納得したようで、ニヤリとしながらマントを脱ぐ。

そして魔力を高めていき、バチバチと帯電し始める。

俺も手袋を外し、魔力を高める。

 

「そのコートは脱がなくていいのかよ」

「コレは特別性でな。軽くて丈夫なうえに、あらゆるダメージも軽減してくれる優れものだ。なんなら今度作ってやろうか?」

「いらねえよ。そんなモンに頼りやがって、この貧弱モンが」

「やかましい。俺が作ったんだからコレも俺の実力だ、この筋肉バカ」

 

そんな軽い挑発を互いに口にする。

さて、軽口もここまでだな。

左腕に集中をし、甲にある紋章に魔力を送るようにする。

これが中々に効率的で、位置をここにしたのはラッキーだったと思う。

 

「(イノセンス発動!!)神ノ道化(クラウン・クラウン)!! さあ、こい!!」

「うらぁ!!」

 

雷化したラクサスが眼前に出現し拳を繰り出してくる。

それをギリギリだが何とか受け止める事に成功する。

そのまま互いにジリジリと力を押し込みあう。

 

「やっぱり強えな。並のヤツじゃこのスピードには反応すらできねえ」

「そりゃどうも。だが、まだまだこれからだろ?」

「ハッ!! 当たり前だ」

 

余裕を見せたがホントにギリギリだ。

今も徐々に押し込まれている。

あのスピードにこのパワー。ホント強いなコイツ。

しかし、押されてばかりじゃいらんねえだろ!!

 

「う・・・らぁっ!!」

「おっと」

 

思いっきり力を入れて押しのける。

後ろに跳んで体制を整えるラクサスに急接近する。

 

破滅ノ爪(エッジ・エンド)!!」 ザンッ!!

 

爪を強化した一撃を繰り出すが再び雷化したラクサスに躱される。

 

「中々の威力だが当たらなきゃ意味がねえな」

「だったらこれでどうだ? 爪ノ王輪(クラウン・エッジ)!!】」

 

ヒュンッ、ズガガガガガガガッ!!

 

左手から王冠リングを伸ばし、一回転しながら振るう。

ソレは鞭のように周囲全体をなぎ払う。

 

「! ・・・チッ、――オラァ!!」

「なにっ!?」

「「があぁぁ!!」」

 

野郎・・・・・・、爪ノ王輪(クラウン・エッジ)がヒットする瞬間に避けきれないと割り切りやがった。

回避を捨てて雷撃による攻撃をしてきたため、互いに攻撃が直撃した。

 

「油断ならねえヤツだ」

「お互いさまだ」

 

 

パワー・スピード共にラクサスの方が上。

しかし、汎用力・判断力はコチラに分があるみたいだ。

後手になりがちだが確実に対応できており、戦況はほぼ互角である。

そのままどれくらい闘っていただろう。数分か、数十分か。

気の抜けない状況ゆえに、時間の感覚が濃かったはずだ。

お互いにかなり疲労しつつある。

 

「ハァ、ハァ。まだやるか?」

「ハァ、当たり、ハァ、前だ」

 

ふぅー、と互いに一度呼吸を整える。

 

「まさかここまでやるとは思ってなかったぜ」

「へっ、余裕だっての」

「・・・・・・オイ」

「あ?」

「本気でいくからな、死ぬなよ?」

 

そういうとラクサスはボロボロになった上着を脱ぎ捨てる。

そして魔力を高めながら大きく息を吸う。

おいおい、まだ上があんのかよ? いや、確かコレは・・・・・・。

よく見ると犬歯のあたりが鋭く伸びている。やはりそうだ!! マズイ!!

 

「雷竜の咆哮ォ!!」

十字架ノ墓(クロス・グレイヴ)!!」

 

バリバリバリバリガガガガガガガッ!!

 

「――――ッ!」

 

咄嗟に十字架ノ墓(クロス・グレイヴ)を放ったが完全に押されている。

そして、徐々にヒビが入り・・・・・・、完全に破られた。

俺の視界は雷撃の渦に埋め尽くされた。

 



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第十三話

「ハァ、ハァ、・・・・・・ふぅー」

 

大技の影響で荒れた息を何とかしずめる。・・・・・・やったか?

強いのはわかっていたが、まさかこの状態にさせられるとは思わなかった。

ジジイには隠しておけと言われている滅竜魔法。

俺のはナツと違って魔水晶(ラクリマ)を埋め込んだニセモンだが十分強力だ。

残りの魔力を全てつぎ込んだ全力の咆哮。アイツの出した技も打ち破った。

しかし反動がひどい。体がフラつき、気を抜くと倒れそうだ。

アイツの姿は見えない。咆哮の威力によって辺り一面が砂塵に覆われているからだ。

それでもあの一撃を受けて無事であるはずがない。これで俺の勝ちだ。

少しずつ砂煙が風に流され、しばらくして視界が開けた。

・・・・・・何だあれは?

眼前にアイツの姿はなく謎の物体、ウニを彷彿とさせるようなトゲの壁がそこにはあった。

あまりの事に呆然としていたが、ソレがパラパラと崩れていく。

そして、全て崩れたそこにはボロボロになったアイツが立っていた。

・・・マジかよ、もうガス欠だぜ。だが・・・、俺は負けねえ! 俺が、最強だ!!

 

 

 

 

 

危なかった。ギリギリで間に合った。

天針(ヘブンコンパス)を使った技、加護の針 東ノ罪(イーストクライム)

本来は対象を完全に覆う防御の技だが咄嗟だったため前面だけに出して盾にした

とはいえ直撃を防いだだけでダメージはかなり受けた。

体がかなり痛む。魔力も振り絞ったから殆ど尽きた。まさに満身創痍だ。

ラクサスの様子を見るとあちらも似たようなものみたいだ。

しかし、目はまだ死んでいない。

だがこちらも気持ちは同じ、勝つのは俺だ!!

 

「「おおおおおおおおッ!!」」

 

同時に飛び出し、拳を繰り出す。

互いの拳が互いの顔面を捉え・・・・・・、双方共に崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺たちが倒れてから数分程たっただろうか。

先に口を開いたのはラクサスだった。

 

「・・・・・・おい」

「あん?」

「今回は引き分けだ。だが次は俺が完璧に勝つ!」

「・・・・・・できれば俺は戦いたくねえな。お前との勝負はしんどすぎる」

「けっ。逃がさねえよ」

 

そう言いながら近くの木に移動し、もたれるように座るラクサス。

そして先ほど脱いだ上着から葉巻を取り出して吸い始める。

やはりまだ移動する程の体力は戻ってないようだ。

同じように俺も煙草を取り出して吸い始める。

煙草に興味があるのかラクサスが話しかけてくる。

 

「見ないタイプだな。どの銘柄だ?」

「ああ、コレは俺のオリジナルだ。俺の魔力は少し特殊でな。それを安定させる、まあ言っちまえばリラックスのための道具だ。通常時は特に必要もないしな。」

 

ちなみに無臭という嫌煙家に配慮したモノになっている。

だから形だけで本質は煙草と違くね、と最近思ったのは内緒だ。

 

「コートに煙草、あとティムキャンピーとかいうゴーレムだったか?色々作っているようだがお前本当に魔道士か?なんか微妙だぞ」

「だからエクソシストって名乗ってんだよ」

「それもどういう意味なんだ?」

「・・・・・・秘密だ」

 

うん、説明しづらい。これまでも聞かれたことはあるから、その度に自分なりに色々考えてみたがまとまらなかったので途中で諦めたのだ。

元々意味なく名乗ってたからなあ。前世の説明する訳にもいかんし。

でもこれからも聞かれるのか?だとしたらやっぱり考えるべきか?

などと、俺が思考のスパイラルに入りかけたのを止めたのは体の痛みだった。

 

「―っ!! ・・・・・・痛え」

「はっ。なんだこのくら―っ!!」

「お前も痛がってんじゃねえか」

「ちぃ・・・」

「はあ。しょうがねえな」

 

コートの懐から天針(ヘブンコンパス)を収めている巻き布を出す。

針を2~3本引き抜き、少しだけ回復した魔力を込める。

 

「動くなよ?」

「は?――ッ!?」

 

針をラクサスに向けて投擲する。

反応しようとしたみたいだが、やはりダメージが深いのだろう。

まともに動けずに針が体に刺さる。

 

「テメェ、何を!?」

「落ち着け、痛みはないはずだ」

 

そう一声かけ、同じように自分の体にも針を刺す。

針が刺さった箇所から体がじんわりと温まり、疲れを癒していく。

ラクサスも気づいたようだ。目が説明を求めている。

 

「針治療って知ってるか?」

「・・・・・・確か人体にあるツボを針で刺激することで効果を得る療法のことだよな?」

「・・・・・・・・・・・・」

「どうした?」

「いや、見た目によらず博識なんだな」

「うるせーよ!! ・・・・・・で、これはその針治療なのか?」

「ああ、俺の魔力を込めているから効果は更に高くなる」

「便利なモンだな」

「あ、でもあまり動くなよ。あくまで自然治癒力を底上げしてるだけで回復魔法とかじゃないからな。無理をするとクセになるぞ」

「じゃあもう少し休むか・・・」

 

俺も幾つか知りたいことがある。

昔の記憶も薄れていることだし、本人の口から直接確認しとくに越したことはない。

ちょうどいい機会だから色々と聞いておくか。

 

「ところで、お前の滅竜魔法はナツとは違う感じがしたな」

「あ? 炎と雷だから当たり前だろ」

「そうじゃなくて・・・・・・。何ていうか天然と養殖みたいな?」

「・・・・・・」

「それにお前の体内魔力の流れが普通と違ったしな」

「んなもんどうやって見たんだよ」

「俺の左目はそういうモンなんだよ」

「・・・・・・俺は滅竜魔法の魔水晶(ラクリマ)を体に埋め込んだ擬似的な滅竜魔道士(ドラゴンスレイヤー)なんだよ。ジジイに言われて隠してるからな、誰にも言うんじゃねえぞ」

「なるほど、わかった。あ、もう一ついいか?」

「んだよ?」

「お前とマスターの関係は?」

 

その言葉にラクサスはピタリと動きを止めた。

訝しむような視線を向けつつ口を開く。

 

「・・・・・・どう言う意味だ?」

「左目でみた魔力が似てるんだよ。血縁関係でも中々ないレベルだからな。少し気になった」

「確かに俺はジジイの血縁だ。だがな、俺は俺だ。断じて【マスターの孫】なんて存在じゃねえ!! 俺は【ラクサス】だ!!」

「お前・・・・・・、なに当たり前の事言ってんだ?」

「!?」

「そりゃあ魔力の質が親に似ることはありうる事だがな、同じように親が魔道士でも魔法が使えない、あるいはその逆だってこの世界には腐るほどある当たり前の事だろ? だったらお前の力はお前のモンだ。わざわざ主張するほどの事か?」

「だ、だがお前も気になったんじゃ――」

「だから言ったろ、【血縁関係でも中々ないレベルだから気になった】って。それ以上の意味なんか別にねえよ」

「・・・・・・」

「さて、ぼちぼちいいだろ。帰るとするか」

 

何か思うところがある様だが、俺にはもう聞きたいことはない。

話しているうちに体の疲れも大分とれたし、もう針を抜いてもいいだろ。

腹も減ったし、何か食いたいな。

 

「おい・・・・・・、アラン」

「ん、どした?ラクサス」

「酒は飲めんだろ?少し付き合え」

「いいけど飯もあるところにしてくれよ?」

 

どこか清々しい顔になったラクサスと、俺はマグノリアへと戻った。

ちなみに荒地とはいえ流石にやりすぎてしまったようだ。

私闘がマスターにバレてたっぷりと絞られたのは余談である。

 




テテテテン♪ ラクサスの好感度が上昇した。
はい、という訳でアランとラクサスはそこそこ仲がいいです。
時々、煙草や葉巻を吹かしながら酒を飲む仲です。

今回出た『針治療』は独自の解釈に基づきます。
また『針』の漢字は『鍼』だったりもしますがこの作品ではこちらの『針』で通します。
天針ですしね。

ちなみに次回から原作に突入する予定です。
その前にアランのステータス紹介なんかを入れようかなあ、などとも考えています。



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行間


前回記載した通りに原作の前に主人公紹介です。


 

名前:アラン=クロスフォード

年齢:不詳(20歳前後と思われるが転生の際のプチ不老+ある事情で正確にはわからない)

魔法:イノセンス各種

好きなもの:仲間、酒、綺麗なモノ

嫌いなもの:醜悪なモノ

 

綺麗なモノ、醜悪なモノには人も入っている

ただし、ただ外見の美しさではなく内面も見ている。

 

各種イノセンスの熟練度

神ノ道化(クラウン・クラウン):普通に使用可能。ただし退魔の剣は余り使いたがらない。

六幻(ムゲン):三幻式まで使用可能、ちなみに形態は初期の鍔無しタイプで装備型。

黒い靴(ダークブーツ):装備型。リナリーより熟練度は低い。

鉄槌(てっつい):各種『判』使用可能、オリジナルあり。

天針(ヘブンコンパス):各『罪』使用可能。オリジナルあり。

刻盤(タイムレコード):ミランダより熟練度は低い。大きなリスクあり。

クロウリーのイノセンス:ある事情によりまだ使えない。吸血による強化はできないがある程度自分の血液を操作できるので、止血などに用いている。

聖人ノ詩篇(ノエル・オルガノン):原作程度の熟練度。オリジナルあり。

隣人ノ鐘(チャリティ・ベル):低熟練度、というか基本使わない。

断罪者(ジャッジメント):元帥イノセンスでは一番の熟練度。高火力ゆえに広範囲な元帥のイノセンスの中で的確な規模を選んで攻撃できるため便利。

聖母ノ柩(グレイヴ・オブ・マリア):遺体がないが使えるらしい?

楽園ノ彫刻(メーカー・オブ・エデン):使えるが好みではないためあまり使用しない

寄生型/対アクマ獣(ラウ・シーミン):獣いないのでムリ!!

神狂い(マドネス):使用可能だが広範囲ゆえに使いどころが難しい。威力が強すぎて人に使いづらい。

方舟:利用可能。ただし膨大な魔力とそれなりの時間が必要なのであまり使わない。

今のところ(ゲート)の設定数は3~4つ

 

チャオジー、スーマン、イエーガー元帥、第三エクソシスト(サード)などのイノセンス、技は使えない。

ただし鴉の秘術やクロスの導術はある程度の使用が可能。

相変わらず女性のイノセンスの扱いが苦手で必要最低限しか使わない。

元帥のイノセンスは緊急時及びS級クエストでしか使っていない。

 

クロス同様、研究者の一面を持ち色々な物を作ったり、解析して自分のモノにしたりする。

寄生型を持ってるからかアレンほどではないがよく食べる。

とはいえ大量に食べなくても問題はないのでどちらかと言えば普通量より少し多めの食事が多い。

 

基本の装備はコートに六幻を腰にさした状態。換装の要領で他の武器を切り替える。

また、方舟の影響か異空間の容量が以上に大きく、ほぼ無限にものを入れておける。

オリジナルあり、となっているものは考えてますがもしかしたら出ない可能性もあります。

簡単な初級レベルで使える魔法や隠し玉などの禁則事項は記載していません。

 

 




書き漏らしはないですかね?
とりあえずこんな感じです。
次回こそは原作に入りたい。


ちなみに――――
ラビとクロウリーのイノセンスに新しく名前をつけようかと思っています。
クロウリーのは血の宿命(ディープ・ブラッド)とかどうですかね?
・・・・・・ええ、・・・・・・自分はネーミングセンスがありません。



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原作突入
第十四話



ついに原作突入です。


俺が妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入っておよそ2年の月日が流れた。

この2年間はこれまで以上に修行に打ち込んだ。

リサーナを完璧に助けれなかったことやラクサスとの勝負。

それらの事が俺を修業に集中させたのだろう。

灰色ノ聖櫃(グレイアーク)(リンに貰った本をそう名付けた)を読み込み、試していなかった事も一通り試した。

 

そして俺はS級魔道士になった。

今もS級依頼の帰りでハルジオンの港に来ている。

そこで妙な噂を聞いた。魔道士が何やら悪事を働いているらしい。

依頼ではないので解決する義務はないが、まあついでだ。

とりあえずそいつらの目的の把握と必要ならば殲滅、それが今の目的。

情報収集の結果、どうやら噂は黒のようだ。

今夜に行われる船上パーティで何か起きそうだ。

こっそりと忍び込んでみるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

夜になり、船が出港してから約30分。

警備は思ったより雑でスムーズに仕事が進められている。

一通り船内を見回ってみたが、集められたのは若い女の子たち。

意識はあるようだが様子が変だ。おそらく魔法、症状からして魅力(チャーム)だろう。

この後の動きを考えていると近くの船室から声が聞こえた。

覗いてみると都合よく今回の容疑者が集まっているようだった。

そしてその中に奴らの味方とは思えない金髪の少女がいた。

何故味方じゃないとわかるか?

複数人で押さえつけられており、そのうえ涙を浮かべているヤツが仲間とはおもわないだろう?

それに、見たことがある。今では大分薄れてしまった前世の記憶。それが刺激された。

ボスであろう男が熱された鉄を少女に押し付けようとする。

仕方ねえ、行きますか。

 

「そこまでだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故こうなってしまったのだろう。

私はただ自由になりたかっただけなのに。

だからこそあの窮屈な家を飛び出した。

ママや屋敷の皆との別れは寂しかったがそれでも追い求めた。

出来る事なら魔道士ギルドに、憧れの妖精の尾(フェアリーテイル)に入りたい。そう思ってた。

たまたま妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔道士、それも有名な火竜(サラマンダー)を名乗る人物に出会った。

正直に言って、いけ好かない人物だった。

でもこれで私も妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入れると思ったら我慢できた。

しかし、それは罠だった。私に知らされたのは他国への奴隷の道。

悔しかった。涙が溢れた。こんな奴らに夢を汚された。

彼のいるギルドがこんなのだったなんて。

信じたくない、でも・・・

これが妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔道士か。最低だ!!

ヤツが奴隷の烙印を押そうとしてくる。

ああ、もうだめなのかな。そんな考えがよぎった時だった。

 

「そこまでだ」

 

静かに、そしてどこか力強さを感じる声が聞こえてきた。

相手のボスが驚いたような顔をする。

私を押さえつけていた連中も同じ気持ちなのか拘束が少しゆるんだ。

しかし、抜け出すことはできない。

仕方なく私も顔だけで声の主を確認する。

そしてひどく驚いた。そこにいたのは私の憧れの人物だった。

色々と伝えたいことがあったはずなのにあまりの事に声が出ない。

すると次の瞬間、いきなり彼が消えた。いや、消えたように見えた。

彼は一瞬で私の目の前に現れた。よく見ると私の周りにいた奴らが気絶している。

まさかあの一瞬で!? 全然見えなかった。

彼は此方に一度視線を向けると、敵へと向き直る。

するとアチラも気を持ち直したのか彼に向かって話し始めた。

 

「何者だ、きみぃ? 勝手に人の船に乗っちゃダメじゃないか」

「そりゃ悪かったな。てっきりこの船で悪事が行われると思ったもんで」

「そりゃあいいがかりだ。僕はただパーティを開いただけだよ?」

「な、何を言ってんのよアンタ!! 奴隷船だってさっき・・・・・・」

「ん~? もしかしてまだ酔ってるのかな? まったくしょうがないなぁ」

「なっ!?」

 

思わず声が止まってしまった。なんて言い草だ。

しかし彼は大丈夫だというようにコチラを見てまたもやアイツに向き直る。

 

「下手な嘘を言ってもらってなんだが、さっきの話は聞いていた。それに使用禁止となっている魅力(チャーム)の魔法も使用しているようだしな。他にも聞きたいことがいくつかある。おとなしくしてもらおうか」

「嫌だといったら?」

「力づくで」

「はっはっは。力づく? どうやら僕を知らないようだね。僕は妖精の尻尾(フェアリーテイル)火竜(サラマンダー)だよ? そこらの魔道士が勝てると思っているのかい?」

妖精の尻尾(フェアリーテイル)ねぇ・・・」

 

そうだ。彼なら妖精の尾(フェアリーテイル)をよく知っているはず。

同じギルドのはずなのに相手は知らない様子。何かがおかしい?

そう思っていた所に新たな乱入者が現れた。

 

バキィッ!!!!

 

船の天井をぶち破って少し前に知り合った少年、ナツが現れた。

 

「き、気持ち悪い・・・。や、やっぱダメだ」

 

と思ったらダウンしてしまった。

一体どういう事なのだろうか。

彼がナツを一瞥したあとに上を見上げる。

私もつられて見てみると、穴の向こう側に青猫、ナツと一緒にいたハッピーが空を飛んでいた。彼は驚いた様子もなく、ごく普通に話しかける。

 

「ようハッピー。何やってんだ?」

「ちょっとね。アランこそ何やってんの?」

「仕事帰りだ。ま、丁度いい。この娘頼む」

「あい」

 

そんなやり取りをしてると思ったらハッピーに持ち上げられて私は空に向かった。

突然の事に驚くが、慌ててハッピーに伝える。

 

「ちょっと待ってハッピー!! あの二人は!?」

「一人しか無理。それにあの二人ならあの程度問題ないからね」

「なにを言って――」

「それより、ルーシィ」

「何よ!?」

「羽消えた」

「くそネコーーー!!」

 

私たちは海へと落下した。

 



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第十五話

 

海に落ちた私は奴等に捨てられた鍵を拾ってアクエリアスを呼んだ。

私ごとだったのは不満だけどおかげで船を岸に戻せた。

去り際に彼氏のアピールをしてきてウザかったので文句を言おうとしたが

彼女は船の方を見て「そうか・・・、あいつがいるのか。ふふっ」と笑っていた。

滅多に見ない彼女の素直な笑顔をみて言葉に詰まっていると彼女は星霊界へと帰ってしまった。

誰か知り合いでもいたのかな? もしかして彼が?

少し気になったが今はそれどころではない。

早くナツたちを助けに行かなきゃ!!

私が船内に戻った時、ほぼ全員がのろのろと立ち上がりつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

おおう。やっと止まった。

急に船が流されだしたのは流石に少しビビった。

魔力の感じからして星霊。もしかしてアクエリアスか?

 

「と、止まった」

 

お、ナツが復活した。

となると・・・・・・・、やっぱりアイツ等も平気そうだ。

 

「大丈夫かナツ?」

「・・・・・・何でアランがいるんだ?」

「今頃かよ。まあちょっとな」

「そうか。それよりアイツ――」

 

とそこへ先ほどの少女が戻ってきた。

まあナツはあっちに集中してるし、アイツ等も気にしてないようだが。

しょうがない、俺が対応するか。

 

「よう、無事だったか」

「へ? あ、はい。 て、そうじゃなくて――」

「悪いが話は後だ」

 

ナツが飛びかかってきた雑魚2人を殴り倒した。

そして肩にある妖精の尻尾(フェアリーテイル)の紋章を見たアイツ等が騒ぎ出す。

 

「あの紋章!! 本物だぜボラさん!!」

「バカ!! その名で呼ぶな!!」

 

なるほど少しだけ聞いたことがあるな。

 

紅天(プロミネンス)のボラ。数年前に巨人の鼻(タイタンノーズ)って魔道士ギルドから追放された奴だね」

「聞いたことがある・・・。確か魔法で盗みを繰り返して追放されたって」

「ま、要するに小物だな」

 

あ、ナツが攻撃された。でも炎だから効いてないし食ってる。反撃にぶん殴った。

おお、みんなビックリしてる。初見だと驚くよなあ、滅竜魔法。

ボラとかいうヤツなんか吹っ飛んでったし。

 

「おいナツ、後で引き渡すんだからアイツ逃がすなよ。動けないくらい殴っとけ」

「おお、わかった」

 

そういってナツも空いた穴から飛び出していった。

さて、俺たちも―――っと。

 

「待ちな兄ちゃん、オメェらは逃がさねえ」

「もうボスはヤられたんだぜ。意味があんのか?」

「うるせー!! このままやられっぱなしでいられるか!!」

「そうだ!! お前たちだけでも痛めつけてやる!!」

「だとさ、よろしくハッピー」

「あい!?」

「冗談だ。二人共下がってな」

 

ハッピーと少女を後ろにして奴らに向き直る。

左目の力を使いながらグルッと見渡す。

 

「魔道士はいないみたいだな。俺もさっきの奴と同じように魔法が使えるがそれでもやんのか?」

「しつけえぞ!! いいから死んどけッ!!」

 

いい加減しびれをきらしたようで3人程こちらに向かってきた

一人に回し蹴りを決めてまとめて吹っ飛ばす。

残りはざっと20人ってとこか。

 

「いい度胸だ。全員、気合入れてかかって来やがれ!!」

「なめんじゃねぇぞ!!」

「かかれー!!」

『うおおおおおっ!!』

 

 

 

 

 

 

数分後・・・・・・

 

 

 

「ふう。ま、こんなもんか」

「す、すごい」

「相変わらず理不尽な強さしてるね」

 

あの大人数を一人で倒した彼は、倒れた奴らを積み上げた上に座っていた。

私も助けに入ろうとしたが、そんなスキはなかった。

しかも、魔法使わずに全員倒しちゃった。

 

「よし、ナツんとこ行くか」

 

彼に続いて私とハッピーも一緒に外に出る。

そして・・・・・・、そこには惨状が広がっていた。

 

「何コレー!?」

「はあ。またやりすぎたなナツの奴」

「それがナツです」

 

呆然としているとナツが向こうから走ってきた。

その後ろには大量の軍の人がいる。

 

「おーい!! 逃げんぞ!!」

「あいさー!!」

「ハッピー、俺は依頼人に報告があるから別方向だ」

 

え? わ、私はどうすればいいんだろ?

皆の対応の早さに混乱してしまう私に彼が声を掛けてくる。

 

「君はどうする?」

「わ、私は・・・、私を妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入れて下さい!!」

 

し、しまった。何を言ってるのよ私は!? そんな場合じゃないでしょ!?

しかし彼は戸惑った様子もなく言った。

 

「そうか。ナツ、この娘を頼む!!」

「わかった、行くぞ!!」

 

すれ違いざまにナツに手を取られる。

そしてそのまま流れで走り出す。

走っているのは私とナツ、それとハッピーが飛んでおり彼は立ち尽くしたままだ。

 

「え!? な、なんで!?」

「だって俺たちのギルドに入りてーんだろ?」

「あい。それにアランなら大丈夫だから気にしないで」

 

それって・・・・・・

 

「来いよ」

「うん!!!!」

 




アランが残ったのに深い意味はありません。
オリジナルストーリーなどには行きませんのであしからず。



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第十六話


今回はそこそこ長くなりました。
でも前半が淡々としすぎかなあ?

ティムキャンピーの描写が出来無い。
ですので各自でご想像くださいw

あとはルーシィとちょっと絡みます。


 

私が妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入ってから1週間が経過した。

ギルドに来て最初にミラさんと出会った。ミラさんは雑誌で見るよりも凄い美人だった。

一緒にリサーナという妹さんも働いていて彼女も美人だった。

そのあとにマスターが現れてお説教が始まった。

でも次第に話が変わり、その話に引き込まれた。凄いカッコよかった。

その時聞いた事なんだけど、ハルジオンの件は彼が上手く収めてくれたそうだ。

 

ミラさんとリサーナの2人に彼の事を聞いた。二人共凄い嬉しそうに話してくれた。

少し顔が赤かった様な気がするけど・・・・・・もしかして?

私とアランさんとの出会いも2人に話した。と、言っても私が一方的に姿を見ただけだから、あっちは私の事を知らないだろう。それでも私は助けてくれた彼にお礼を言いたい。

そこまで話すと2人は笑みを浮かべてある事を教えてくれた。

 

友達も出来た。名前はレビィちゃん。本が大好きで、私が小説を書いている事を聞きつけたらしく、読者第一号の予約者になった。レビィちゃんとも彼の事を話した。

どうやら彼女も、というよりギルドメンバーのほとんどが彼に友好的な感情を持っているらしい。

彼は相当の人気者の様だ。レビィちゃんとは本の事でよく話すらしい。

私もいろいろ話してみたいなぁ。

 

ギルドの依頼は、マカオさんを助けに行ったり、エバルーとかいう嫌なヤツから本を取り返したり、色々な仕事をした。

まだ入って間もないけどこれだけは自信を持って言える。このギルドはサイコーだ!!

そして今日、彼が帰ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

ふう、やっとギルドに着いた。

ハルジオンの件も思ったより時間がかかったが、まあ上々の結果だろ。

依頼人も報告を受けて喜んでくれたしオッケーだ。

よし。とりあえず酒と飯だな。ミラたちに何か作ってもらおう。

 

「うーす、帰ったぜ」

 

入口で一声かけてから中に入る。

そこからは声を掛けてくる連中に言葉を返しながら進む。

 

「おかえりアラン」

「ようカナ。相変わらず飲んでんな」

「まあねー。今度付き合ってよ」

 

「よう、お疲れ」

「服を着ろグレイ」

「うおっ!?」

 

「やあ、お疲れ様。仕事はどうだった?」

「問題ねえよ、ロキ」

「ふふ、流石だね」

 

「お帰りー」

「おうレビィ、後で土産があるぞ。シェストの本だ、探してたろ?」

「うそっ!? やったー、ありがとアラン!!」

 

「アラン、俺と勝負しろー!!」 ダッ!!

「オッケー」         バキッ!!

「ごぺッ!?」         グシャッ!!

 

「凄い人気ね、ナツはともかく」

「それがアランです」

「ん? あの時の娘か。改めて自己紹介といきたいが少し待っててくれ、報告を先に済ませる」

「は、はい」

 

「ミラ、リサーナ、ただいま」

「「おかえりなさい、アラン」」

 

と、こんな感じで俺はギルドに帰還した。

 

 

 

 

 

 

 

 

マスターが不在だったので俺は依頼の結果報告をミラとリサーナにした。

今は一通りの報告が済んで2人には飯を作ってもらっている。

よし、待っている間に自己紹介といくか。

カウンターの椅子に腰掛けたまま、体の向きを金髪少女の方に変える。

 

「それじゃあ改めて、アラン=クロスフォードだ。よろしくな」

「ルーシィです。よろしくお願いします。アランさん、少しよろしいでしょうか?」

「アランでいいぞ。敬語もいらん。それで何だ?」

「あ、はい・・・、じゃなくてええと、私、お礼が言いたくて」

「お礼?」

「うん。アランs・・・・・・は私を2回も助けてくれたから」

「2回? 船の事じゃないのか?」

「うん。私はもう1回助けられてるの」

「・・・・・・スマンが思い出せない。魔道士の事ならすぐ思い出すはずなんだが」

 

俺は左目で魔力を見た魔道士は忘れない。

というよりすぐ思い出すと言った方が正確か。

魔力を目にした時、過去にその魔力を見た時の事が頭に浮かぶのだ。

コレも左目の力なのか、視認をきっかけとして記憶を思い出しているだけなのかは定かではないが、とにかく過去に見た魔力はほぼ絶対に忘れないのだ。

周りには説明がメンドイので何か聞かれたら魂が見えるの一言で済ますが。

 

「ううん、アランは知らなくて当然なの。」

 

そして、ルーシィは過去のことを話してくれた。

簡単にまとめると

・馬車で移動中に山賊たちに襲撃される

・そこに妖精の尻尾(フェアリーテイル)の紋章を入れた銀髪・黒コートの男(俺)参上

・そいつが山賊全員ボコボコにして去っていった

 

との事だ。確かにそんな事があった気がする。

 

「つまり、その時ルーシィは馬車の中に居たと?」

「うん。そうなんだ」

「なるほど。だから俺は見てないのか」

「だからね。その時とハルジオンでの事、どうもありがとう」

「たまたま近くにいただけだ。気にしなくていい」

 

そう言うとルーシィは「あははっ」と笑い出した。

何故そこで笑う? よく分からん。

と、そこに飯を持ってミラとリサーナがやってきた。

2人は俺の前に皿を置きながら口を開く。

 

「ね、ルーシィ。言ったとおりでしょ」

「ええ。まったく一緒でした」

「私達を助けてくれた時もそう言ってたもんね~、アランは」

「アランって口が上手いのに変なところで単純というか、ワンパターンなのよね」

「・・・・・・どういうことだ?」

「ルーシィがお礼を言ったらアランは絶対さっきの言葉を返す、って私とリサーナで予想したのよ」

「アランったら照れちゃって~」

「だから別に照れてはないからなリサーナ」

「あはははははっ」

 

俺達のやり取りを見てまたルーシィが笑ってるよ。

くそ。何か悔しいな。

 

「まあ、それはともかくアラン」

「うん。食べて、食べて」

「そうだな。んじゃ、いただききます」

 

うん。いつもの事ながらうまい。

ちなみに俺はあまり自炊をしない。

長く旅をしていたので料理も出来無い訳ではないのだが正直メンドくさい。

S級依頼の報酬も大金のため、金銭にも困らずに店やギルドで食べることが多い。

まあ、たまにミラ達が飯を作りに家にも来てくれるのだが。

それにミラ達の料理は店の料理に負けず劣らずうまいからな。

夢中で飯を頬張る俺にリサーナが話しかけてくる。

 

「どうアラン? 美味しい?」

「ああ。どっちもうまい」

「も~、そこは《美味しいよ、リサーナ》って言って欲しいなぁ」

「あ、それは私も言って欲しいなぁ」

 

などと盛り上がってる二人を置いといて俺は食事を続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごちそうさま。 ・・・・・・ふあ~、眠いな」

 

飯を食ったら、睡魔が襲ってきた。

仕事中はハードであまり眠れなかったからなあ。

 

「大丈夫? 帰って寝る?」

「んー、メンドイ。 ミラ、空き部屋借りていいか?」

「いいけど・・・・・・、今回はどっち?」

「深い方だな。2~3時間位だと思う」

「わかったわ」

 

そこでナツの失敗談などをルーシィに話して楽しんでいたリサーナがこちらに加わってきた。

 

「え、アラン寝るの? じゃあ私がアレしてあげようか?」

「だめよリサーナ。アレは私がしてあげるの」

「ミラ姉は前にやったんだから今回は私に譲ってよ」

「リサーナだって何回か抜けがけしたじゃない」

 

そしてそのまま二人で言い合いを始めてしまった。

しょうがない止めるか。

 

「はいはい、喧嘩しない。 まだ日も高いし仕事があるんだろ? 嬉しいけど今回はいいよ」

「む~、でも・・・・・・」

「はぁ、仕方ないわね」

 

2人共、渋々だが納得してくれたようだ。

そこで、首を傾げながら俺たちのやり取りを聞いていたルーシィが口を開いた。

 

「あの~。アレって何ですか?」

「「「・・・・・・・・・・・・」」」

 

この時俺たち3人の思考は一致していた。

それはつまり――

 

「そうか、ルーシィがいたな。じゃあ今日はルーシィに頼むか」

「そうね、頑張ってルーシィ。大丈夫よ、気持ちいいから」

「いいなぁ、ルーシィ。アランと甘い時間を過ごせるなんて」

 

――ルーシィを弄るという方向に。

 

「え? え? な、何が? 甘い時間って・・・・・・?」

 

何を想像したのか真っ赤になっていくルーシィ。

この慌てようが実に面白い。

 

「さ、行こうかルーシィ」

「い、行くって何処に?」

「ベッド」

「ベッド!?」

「「いってらっしゃ~い」」

 

悪乗りを続ける俺たち。

そしてここに新たな乱入者が現れる。

 

「何してるの? アラン」

「ああ、ちょっとルーシィと寝ようと思って」

「え!? そうなのルーちゃん!!」

「ち、ちがっ、私は、べ、べべべ、べつにそんな・・・・・・(ゴニョゴニョ)」

 

 

そんなルーシィの様子を見て悟ったのだろう。

レビィが呆れたように言葉を発する。

 

「はぁ。アラン、あんまりルーちゃんをからかわないの」

「はっはっは。面白かったんでつい」

「もう。それにアレなら私がしてあげるから」

「おっ、マジで? 仕事はいいのか?」

「今日はチーム別行動の日だから問題なし」

「マジで? じゃあ行くか」

「うんっ」

 

レビィの腰に手を回してそのまま歩き出―――。

 

「「ちょっとまったーーー!!」」

 

―――せなかった。

ミラとリサーナの2人が俺たちの前に立ち塞がったからだ。

 

「ちょっとレビィ、抜けがけなんてずるいわ!!」

「そうだよ。レビィは一番回数が多いんだから遠慮してよね!!」

「2人は仕事があるんでしょ?私は暇なんだからいいじゃない!!」

 

そしてそのまま3人で言い合いを始めた。

さっきミラとリサーナを止めたばっかなのに何でこうなった?

・・・・・・・・・・・・俺のせいか。

ま、いいや。いい加減眠気も限界だし俺は寝よう。

 

白熱する3人を置いて、俺はギルドの奥の部屋へと移動した。

コートを脱いでイスに置き、ラフな服装へと換装する。

さっきはああいったが、やっぱりアレはあった方がいいなぁ。

まあ、あの状態じゃあ仕方ないか。

そしてベッドに潜り込むとすぐに眠りに落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

あのままだったら一体どうなってたんだろう?

皆色々言ってたけど、気持ちいいとか甘い時間とか。

それにベ、べッドって言ってたし、も、もしかして本当にソウイウコトを?

しかも3人ともした事があるみたいだし・・・・・・。

思わず顔が熱くなる。でもアランなら・・・・・・。な、何言っているんだろう私は。

ていうか3人ともまだ言い争ってるし。

でもアランの寝顔か。・・・・・・・・・・・・見てみたいな。

う、うん、ちょっと行ってこよう。

ち、違うよ?ほらあれ、そう、アクエリアスの事を知ってるか聞きに行くだけ。

うんそう、だから全然やましい気持ちはないんだから。

 

 

 

部屋に入ってみるとアランは既に眠っていた。

横にあるイスにはアランがいつも着ているコートが置いてあった。

ベッドに近づいてアランの顔を覗き込む。

・・・・・・うわぁ/// 

いつものカッコイイ感じとはまた少し違う印象。

穏やかな、どこかあどけない寝顔を見てつい胸が熱くなる。

これは反則級の威力ね。

 

しばらく眺めていると急にアランが手を挙げた。

そのまま何かを探すように手が宙を彷徨う。

何となくその手を握った瞬間―――

 

「え? きゃっ!!」

 

―――物凄い力でベッドに引きずり込まれてしまった。

び、びっくりし・・・・・・え? 

気づけばベッドの中でアランに抱きしめられていた。

 

「ちょ、ちょっとまってアラン!! わ、私初めてでそんないきなり「スー、スー」―――」

 

ね、寝てる。もしかして寝ぼけてるだけ!?

うわ~、恥ずかしい///

私早まってとんでもない事を言ってなかった?

とりあえず状況を確かめてみる。

ベッドの中で向き合って寝ており、私の顔はアランの胸に埋めるような形になっている。

また、離れようとすると力が強くなる。どうやら逃がしては貰えないようだ。

 

しかしこの体制はマズイ。

密着しているせいでアランの匂いと体温を敏感に感じてしまうのだ。

改めて意識するとどうにも恥ずかしいものがあり、私はアランに背を向けるように体制を変える。

これぐらいなら動かしてもらえるようだ。

しかしこれが失敗だった。

背後から腰に手を回され密着しているこの状況。

アランの動きが目に見えない分、余計にドキドキする。

というか腕枕状態だけど苦しくないのかな?

それにいつまでこの体s―――!!

 

「ア、アラン///?」

 

またも抱き寄せられ密着具合が上がる。

更に私の頭の下にあった方の手がむ、胸に触れている。

それに腰に回っていた手も更に下に移動しつつある。

こ、これはちょっと・・・・・・。

アランの名前を2、3度呼ぶが起きる気配は皆無だ。

そして胸と太ももまで降りていた手が動き出す。

 

「んっ、あぁ、やめっ///」

 

決して強い動きではなく、優しく撫でる様な感じだ。

羞恥に体温が上昇し、じわじわと体が疼きを覚える。

 

「あっ!! ――くぅ―――」

 

思わず大きな声が出てしまい慌てて口を閉じる。

ど、どうしようこのままじゃ。

そこまで思ったときに部屋の扉がノックされた。

ソレに反応したのか位置はそのままだが手の動きが止まる。

 

「ルーシィ、居るの?」

「ミ、ミラさん? 助けてください!!」

 

ガチャっとドアが開き、先ほど口論をしていた3人が入ってきた。

 

「やっぱりここにいたのね」

「みんな助けて~」

「ごめんルーちゃん、無理だよ」

「え? な、何で!?」

「アランの眠りには特殊な時があってね。今回はソレに当たるんだけど、その時のアランはよっぽどの事が無いと起きないの」

「何でそんな事に!?」

「本人曰く、《昔旅をしていた頃は野宿が多くて熟睡出来なかった。だからいざ安全な所で熟睡すると反動でそうなるんだと思う。俺寝るの好きだし》だって」

「しかも、女性を抱き枕にしちゃうのよ。それで一度捕まえたら起きるまで絶対に離してくれないの。全員体験済みだから間違いないわ」

「じゃ、じゃあさっき言ってたアレって・・・」

「うん、抱き枕役の事だよ」

「ど、どれくらいこのままなの?」

「程度は違うけど本人が寝る前に2~3時間と言っていたから長くてあと2時間半くらいかしら」

 

そんな、あと2時間以上もこのままなんて。

しかし3人は私とは全く別の思いらしい。

 

「いいなぁルーシィ。私もアランと寝たかったなあ」

「仕方ないわよリサーナ。私たちはまだ仕事があるんだし」

「でもまた1人増えるのかぁ。ローテーションが減っちゃうね」

「ど、どういう事?」

「え?だってルーちゃんもアランのこと好きなんでしょ?」

「な、何を言って―――」

「あはは、バレバレだよルーシィ。それとも自分ではまだ気づいていないのかな?」

「・・・・・・・・・・・・」

「まあともかく、ルーシィは今日仕事お休みね」

「え? アランが起きたら行けるんじゃ・・・・・・」

「んー、絶対とは言えないけど骨抜きにされて動けなくなるんじゃないかなあ」

「うん、そうだね。手の位置を見るに既に始まってたみたいだし」

 

つ、つまり皆も同じ体験をしてきたと・・・・・・?

色々1度に聞かされてパニックに陥り掛ける私を更なる言葉が襲った。

 

「でも今回はまだマシじゃない?」

「そうだね。時々アランは上半身裸で寝てる時もあるしね」

「私なんかその時に、直接触られたし」

 

ち、直接ってつまり服の中に手を・・・・・・!?

そ、それはダメ!!

まだ心の準備が・・・・・・。

だけど相手にはそんなこと関係が無かったようだ

 

「んっ!! ちょっ、~~~~~~~///」

「あ、動き出した」

「じゃあルーちゃん、頑張ってね」

「なんなら一緒に眠っちゃえばいいわよ」

「ちょ、ちょっと待って!!」

「「「ごゆっくり~~~」」」

「お願い、待って~~~!! ―――んんっ///」

 

その後本当に2時間以上そのままだった。

詳細については黙秘させて頂きます。

 




という訳で多少のキンクリです。

ルーシィとの絡み、どうでしたかね?(震える声)
相変わらず不安でいっぱいですが頑張りマス。


次回はエルザ登場予定です。


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第十七話

エルザのターン!!


あの後起きた俺はルーシィを抱きしめていた。

俺にとっては特に気にする事でもなかったのだがルーシィにとっては違ったらしい。

しばらくは俺を見ると顔を赤くして逃げていた。

まあそれも1週間経った今では普通に戻ったけどな。

その間にあった会話を簡単にまとめてみよう。

 

「悪いなあんな事して」

「う、ううん。嫌じゃなくてビックリして恥ずかしかっただけで――」

 

「アクエリアスとは知り合いなの?」

「星霊とは殆ど知り合いかなあ。友達ってとこだ」

 

「モニカの本? 確かレビィにあげたなあ、聞いてみたら?」

「ウソ!? 凄い読みたかったんだー、ありがとう!!」

 

「あ、あのね、よければ私も今後は抱き枕に、その、なってもいい・・・・・・かな///」

「マジで!? よろしくー」

 

―――こんな感じか。機嫌が直ったようでよかった。

 

ちなみにこの間は特に仕事はしていない。

え? じゃあ何をしてたかって?

そりゃカナと酒飲んだり、ミラやリサーナと買い物したり、レビィやルーシィと本の話で盛り上がったり、まあ要するに皆と親交を深めていたんだ。いわゆるデートとかかな。

もちろん男性陣との交流もあったぞ。ナツを殴ったり、グレイを蹴ったり、エルフマンを頭突いたり、ロキを絞め落としたり。いわゆる私刑とかかな。

いやアッチから挑んできたんだよ? ・・・・・・半分くらいは。

 

そして、今日もこのギルドは騒がしい。

マスターが定例会でいないから余計・・・・・・いや、いつもこんなもんか。

いつも通りにナツとグレイが喧嘩を始め、ロキがルーシィを口説きだす。

あ、星霊魔道士って事に気づいて逃げてった、――――と思ったら帰ってきたな?

 

「ナツ!! グレイ!! マズイぞ!!」

「「あ?」」

「エルザが帰ってきた!!」

「「あ!!!?」」

 

へ~、帰ってきたんだ。

エルザと会うのは久しぶりだなぁ。

周りはどうも慌てている様だが。

 

「マジかよ、帰ってきたのか!?」

「俺たちの平穏がぁ~!!」

「怪物の襲来だー!!」

 

何とも言いたい放題である。

そんな中、まだエルザに会った事のないルーシィは皆のリアクションに疑問を感じているようだ。

恐らく他に聞いても要領を得ないと思ったのだろう。

何時も通りに振舞う俺に質問してきた。

 

「どんな人なの? そのエルザって人」

「ちょっと天然な所がある素直な女の娘」 ピタァッ!!

 

周りで騒いでいた奴らが一斉に視線を寄越してきた。

 

「その[何言ってんだこのバカは!?]みたいな顔やめてくんねーかな」

「いやいやいやいや、その通りだこのバカ!!」

「あんな怪物捕まえてアホかテメーは!?」

「あれは女じゃねぇ!! メスだ!!」

 

いやホントに言いすぎじゃね?

俺間違ったこと言ったか?

しかし奴らの勢いは留まらず未だにアホだ、バカだと罵倒してくる。

うん、ちょっとムカついてきた。

 

「よしわかった!! 覚悟しろお前ら!!」

「あ? 何言ってんだバカ!!」

「黙ってろやアホ!!」

「今各々が言ってた言葉を全てエルザに伝える!!」

『スイマセンでしたーー!!!!』

 

などとアホなやり取りをしている内に噂の人物が姿を現した。

そしてそのまま説教タイムに突入!!

グルッと見回して目に付いた人物に注意、注意、注意。

そして一通り言い終わったあとに再び口を開いた。

 

「アランはいるか? 緊急の話があるのだが」

「おう、こっちだ。おかえりエルザ」

「ただいまアラン。よかった、帰ってきてたか」 

 

そのままこちらに近づいてきて俺の頭に手を回し―――

 

「ストップ」

「な、何故だアラン。もしや私の事が嫌いに!?」

「違う。抱き寄せる時は鎧をやめろって言ったろ、痛えんだから」

「そ、そうか。よかった」

 

そう言うとエルザは私服へと換装し、改めて俺を抱き寄せた。

うむ、いい感触だ。胸に顔をうずめる形になっており、実に心地いい。

しかしそこでミラとリサーナの抗議の声が上がる。

 

「ちょっとエルザ、いつまでそうやってるの!?」

「そうだよ、緊急の話があるんでしょ!?」

「ふむ、そうだったな。では話そう」

「「そのまま!?」」

 

どうやら離すつもりは無いようだ。

まあ俺は別に構わないが、周りの視線が少し鋭くなってきたな。

そんな事に気付く様子もなくエルザは話し始めた。

 

「実は仕事先で厄介な話を耳にした。マスターに判断を仰ぎたいが不在なのでな。早期解決が望ましいと思われるので力を貸して欲しい」

「ん、別にいいぞ。だが俺1人でいいのか?」

「私達2人で十分だと思うが、ダメか?」

「ダメって訳じゃないが万全を期すべきかと思ってな。まあ詳しい状況を知ってるのはお前だけだからな。お前がそれでいいと言うならそれでいい」

「・・・・・・そうだな、その通りだ。ナツ、グレイ、お前たちもついて来てくれ」

「「ああ!!??」」

 

エルザの言葉に周りがざわつく。

ミラなんか最強チームとか言ってる。

まあ、間違ってはいないと思う。

最強の問題児チームだと言えるだろうし。

いや、俺はまともだよ?

むしろ暴走する馬鹿どもを止める側だもん。

俺のカバーがあっても被害出すだろうなぁコレは。

 

「詳しくは明日、移動中に話す」

 

そう言ってエルザはギルドを出て行く・・・・・・何故か俺を引きずりながら。

 

「何で俺も?」

「久しぶりの再会だからな。付き合ってもらうぞ」

「ま、いいけど。」

 

 

そしてそのまま2人はギルドを後にした。

しばらくして唖然としていた皆が覚醒した時に女性陣が『ああー!! 抜けがけ――!!』と叫んだことを彼らは知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、移動した先が―――

 

「何で俺の家?」

「いいじゃないか。」

 

ちなみに俺の家は借家ではない。

仕事でいない時も多くて毎月家賃を払うのは手間だったので、金もあったし思い切って一軒家を買ってしまったのだ。

独り身には少々広めの家だが問題はない。

というか徐々に女性陣の私物が増えてきてる気がするんだがな。

べッドも皆に言われて寝室の大部分を占めるような大きさのモノを改めて購入した(一度換装で異空間に入れてから部屋に入って出した)。

うん、そうだよ? 結構皆が泊まりに来るよ。

こんだけ大きいと掃除も大変だと思うが実はハウスキーパーの様な事をしてくれるヤツがいる。

そういう仕事が好きで進んでやってくれるのだ。他の家にも行ってるからいつでもって訳ではないがそれでも大変助かっている。

そいつにも偶に迫られてるんだけどな・・・・・・。

とまあ俺の家についてはこれくらいにしてそろそろ中に入るとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうだアラン?」

「エルザ・・・・・・、まさかこんなにうまくなっているなんて」

 

思わず声を漏らしてしまう。

いくらなんでも短期間で上達しすぎだろう。

まさかここまでのテクニックを身に着けるとは。

 

「ふふっ。自分で言うのもなんだが、なかなかだろう?」

 

エルザが妖しく微笑む。

いつもの凛とした表情とのギャップがまたたまらない。

 

「ああ、最高だエルザ」

「そう言ってもらうと私も頑張った甲斐があるというものだ」

 

いや、本当にすごいよ。

ミラやリサーナにも負けてないんじゃないか?

 

「まだまだいけるだろう?」

「ああ、頼む」

「まかせろ」

 

 

 

――――そうしてエルザは俺の茶碗を持ってキッチンと消えていった。

まあ、すぐ戻ってきたんだけどな。

そして俺は食事を再開する。

 

「しかし本当に上達したなあ」

「ああ、私も皆に負けていられないからな。花嫁修行の一環みたいなものだ」

「そうか」

「・・・・・・相変わらずだなお前は」

 

そして俺たちは食事を終えた。

 

「ふう。美味かったぜエルザ」

「次はもっと上手くなっているからな。期待しておくといい」

 

ソファーへと移動してゆったりとした時間がしばらくの間流れる。

もう時刻は夕暮れ。特にやる事もないな。本でも読むか。

そこへ洗い物をしてくれていたエルザがやってきた。

 

「本を読んでいたのか?」

「ああ。といっても俺の研究書だがな」

「ふむ。見てもいいか?」

「いいぞ。理解できるかは保証せんが」

 

その言葉を聞いてエルザは積んであった本を1冊手に取る。

そしてパラパラと中身を確認していくがどうやら、というよりやはり理解はできないようだ。

美しい顔が徐々にしかめ面へと変わっていく。

 

「やっぱり無理だったか」

「ああ。私にはとても理解できない。やはり向いていないようだ」

「気にすることはない。俺は魔道士でありながら科学者だからな。それなりに複雑な研究もしているさ」

「ふむ。しかし意外だな。研究書とはこんなに簡単に読めていいのか? 他の人に読まれないように厳重に保護をするイメージだったのだが。確かに内容は解らなかったが読むことができたぞ?」

「そうだな。勿論俺もそういった対応はしてあるぞ。エルザには発動してないが」

「む、そうなのか? 流石にそれは聞くわけにはいかんだろうな」

「まあ3つの内2つなら教えてもいいぞ」

「いくら何でもそれはマズイだろう」

「いんだよ。ある意味それで当然だからな」

「?」

 

解ってないみたいだな。

まあそれも当然か。

 

「いいから聞いてくれ」

「・・・・・・わかった。聞かせてくれ」

「1つ。妖精の尻尾(フェアリーテイル)の人間であること」

「ふむ」

 

まあギルドの仲間ってだけで見せることも叶わないが。

それが2つめの――――

 

「2つ。俺が信頼している人物である事」

「む、むう///」

 

エルザが赤くなる。

内容を聞いて自分が信頼されている事を自覚したんだろう。

しかしこの反応、まったくかわいいヤツめ。

 

「な? この理由なら教えるのも当然だろ?」

「そうだな。――ありがとう///」

「おう。 まあ3つめは科学者の性として秘密にさせてもらうがな」

「いや十分だ」

「まあ解除魔法(ディスペル)などで解くか、俺が例外的に許可をしない限りはこの3つの条件を満たさなければ俺の研究書は読めないって訳だ」

 

さて、今日はこのくらいにして風呂でも入るかな。

明日はハードな仕事になりそうだし早めに休むのも悪くない。

立ち上がろうとしたその時にエルザが隣に座り、しなだれかかってきた。

 

「どした?」

「察しろ」

「まあいいが。仕事の話でもするか?」

「それは明日ナツたちと一緒に説明する。少しの間こうさせてくれ」

「風呂に入ろうと思ったんだが」

「む、そうか。じゃあ一緒に入るか」

「オイオイ、明日は仕事だぜ?」

「わかっている。そういう事はまた今度に取っておくさ。・・・・・・不本意だがな(ぼそっ)」

 

まったく・・・・・・、聞こえてるっつーの。

でも正直俺も同じ気持ちだ。

エルザとあったのは久々だからな、仕方ないことだろう

まあ今回は我慢しよう。またの機会を待つとするさ。

 

「そうか。じゃあ風呂いくか」

「ああ」

 

その後、俺たちは風呂に入って眠りについた。

ん? 勿論一緒に寝たが何か問題でも?

それに先ほど述べた通り、過ぎた真似はしてない。

まあ、ちょっとしたふれあいというか交流というかスキンシップというかそんなのは少々あったと言えなくもないが・・・・・・ここでは詳細を伏せさせていただこう。

 

 

 




アランは魔道士でありながら科学者でもある。
クロス元帥の感覚で捉えてもらえればOKです。
まあ今後のご都合主義の伏線という感じですかね~。


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第十八話


最近他の作品のネタばかり思いつく。
おかしい・・・まだこの作品で書きたいこと全然書けてないのに。


 

俺は現在駅のホームに来ている。

エルザは一度寮に戻って自分の荷物をまとめてから来るようだ。

また大量の荷物を持ってくるんだろうなあ。

しばらくするとナツとハッピー、グレイ、あと何故かルーシィがやって来た。

というかお前ら来て早々ケンカすんじゃねえよ、メンドくさい。

ある意味お決まりのやり取りをこなしていると今度はエルザが現れた。

 

「すまない、待たせたか?」

「荷物多っ!!」

 

やっぱそう思うよなあ。

まあいつもの事だし仕方ねえか。

2人が自己紹介を終えた所でエルザに話しかける。

 

「おいエルザ。分けてあるんだろうな?」

「ああ、いつもすまないな。よろしく頼む」

「何の事?」

「エルザの荷物をしまうんだよ」

「しまう?」

「ん、説明すんのもメンドイし実際に見せるわ」

 

荷物の周りから皆を下がらせ十分な空間を確保する。

そのまま魔力を使って荷物周りの空間範囲を指定&固定する。

よし、準備完了。

 

「オン―― a(アバタ) u(ウラ)m(マサラカト) 導式転移(オン・エリク)

「ちょっ、荷物が、――ええっ!?」

 

術を発動した事で荷物が地面に沈み込んでいく。

まあ地表に(ゲート)を開いたのでそう見えるだけで実際には方舟の異空間に送っただけなんだけどな。

そして10秒程の時間で荷物は完全にその姿を消した。

 

「何したのアラン!?」

「荷物を異空間に入れただけだ。ルーシィも入れときたい荷物があるならいいぞ?」

「い、いや、私はいい・・・・・・」

 

ふむ、どうも驚いているようだな。

後で簡単に説明してやるか。

ちなみに他の奴らは特に気にしていないようだ。

ナツに至ってはエルザと話し始めて「条件がある」とか言ってる。

どうやら帰ってきたらナツとエルザが勝負することに決まったようだ。

エルザにはまだ勝てねえだろうが取り敢えず―――

 

「ナツがエルザとバトんならグレイは俺とだな」

「!?」

「思う存分かかってこい」

「いや、俺はいいから!! 大丈夫だから!!」

「そんな喜ぶなよ」

「喜んでねえ!! ていうかマジで嫌だ絶対嫌だー!!」

 

 

「(ねえハッピー。何でグレイはあんなにも嫌がってるの?)」

「(アランもエルザと一緒でとても強いんだけど2人には大きな違いがあるんだよ)」

「(大きな違い?)」

「(あい。エルザは物理的に傷つくだけだけど、アランは精神的にも傷つけられるんだよ)」

「(せ、精神的にって・・・・・・)」

「(想像してみてルーシィ。自分の技を全て、それも余裕たっぷりに欠伸とかしながらやり過ごされるんだよ。酷い時は本なんか読み出しちゃう。そして最終的には拳一発で沈められるんだ。理不尽でしょ?)」

「(そ、それは・・・・・・確かに)」

 

 

「お前たち、それくらいにしておけ。列車も来たことだし行くぞ」

「おっしゃー!! 燃えてきたぁー!!!!」

 

数分後、乗り物酔いによって列車の中でダウンするナツの姿がそこにあった。

隣に座っているグレイが軽く罵倒するがそれに反応する事も出来ない様子だ。

ちなみに俺は2人の対面の席で、ルーシィとエルザの2人に挟まれるように座っている。

隣が女性2人とはいえ、元々2人掛けの席のため中々の密着具合である。

というか2人とも寄り添ってきている感じである。

まあそれはおいといて確かにナツの状態はうざい。

はあ、仕方ねえな。

 

天針(ヘブンコンパス)。――ほいっと」

「おおおおおぉぉう、うっぷ ――お? な、なんか少し楽になった」

「何をしたんだ?」

「ちょっとした治療だ。気休めだが少しは楽になったろ?」

「お、おう。サンキュ、アラン。・・・・・・うっぷ」

 

まあ完全に平気にはならんわな。

次の研究は乗り物酔いにするか?

・・・・・・そそられねえな、止めとこう。

だが身体能力強化の方向で考えるならどうだ?

それなら多少興味がわくな、面白そ『ドゴォッ!!』・・・・・・ん?

思考の途中に何やら不穏な音が聞こえてきた。

意識を外に向けると何故かナツがダウンしている。

 

「どうした?」

「なに、私も少し手助けをな。少しは楽になるだろう」

「・・・・・・そうか」

 

どうやらナツが殴られて気絶したらしい。

なんというかご愁傷様だ。

 

「(ていうか気付いてなかったんだ)」

「(あい。アランは考え事してるとこんな感じになるんだよ)」

 

聞こえてんぞハッピー。

別に最低限の警戒はしているから問題ねえよ。

そして少しの雑談の後に今回の仕事についての話を聞くことになった。

要するに闇ギルドの鉄の森(アイゼンヴァルト)が得体の知れない魔法の封印を解こうとしているらしい。

そしてその魔法はララバイと呼ばれているらしい。

 

「ララバイ・・・・・・ね」

「知っているのか!?」

「少しだけな。もし俺の予想が正しいのなら危険だがまだ確証は無いからな。取り敢えず俺はソレについての知識を掘り起こしてみる。」

「教えてくれてもいいんじゃねえのか?」

「多くの人間が先入観を持つのは良くないんだよ」

「わかった、頼む」

 

そうして俺は話を切り上げる。

確か昔の研究にそんな魔法があったはずだ。

異空間から幾つか研究書を取り出して読みだした。

 

「アラン?」

「無駄だな。もう聞こえてねーよ」

「ふふっ。流石だな」

「それがアランです」

 

 

 

 

 

 

 

――――よし。一通り読み終わった。

しかしこの状況は何だ?

何故かエルザが運転している魔導4輪の屋根に乗っている。

しかもかなりの速度を出している。

どうやらあの列車を追いかけている様だ。

それにナツは何処だ?

そう思ったその時、何故かその列車からナツが飛び出してきた。

おいおい、凄い勢いで飛んでくるぞ?

このままぶつかったら痛えだろうな。

後ろにはグレイがいるから避けるわけにもいかないしな。

・・・・・・別にそんな事ねえな。考えがまとまったので避けてみた。

その結果ナツとグレイは衝突した。うっわ、痛そう。やっぱり避けて良かったわ。

 

その後、情報を改めて交換するとどうやらナツは鉄の森(アイゼンヴァルト)と接触したようだ。

特徴を聞くと【3つ目のドクロの笛】を持っていたらしい。

というかそれって―――

 

「3つ目のドクロの笛・・・・・・」

「どうしたのルーシィ?」

「ううん・・・・・・まさかね、あんなの作り話よ」

「いや、アレは現実に存在する」

「ララバイの正体が解ったのかアラン!?」

「ああ、待たせて悪かった。ルーシィも気づいたんだろ?」

「うん。でもまさか実在するなんて・・・・・・死の魔法 呪歌(ララバイ)

 

その後、ルーシィが話す呪歌(ララバイ)について細かい修正や解説を入れながら俺たちは移動をした。

そして鉄の森(アイゼンヴァルト)が占拠する駅にたどり着いたのだった。

 





天針(ヘブンコンパス)便利w



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第十九話

いつもより早い更新
さあ、バトル回だ!!


 

現在オシバナ駅内部。

そこで俺達5人と1匹が1つのギルドと相対していた。

まあダウン中のナツを頭数に入れていいかは悩むとこだが。

改めて意識を奴等に向けると鎌を持った男、エリゴールが口を開いた。

 

「来たな、妖精の尻尾(フェアリーテイル)

「貴様らの目的は何だ?」

「まだわからねえのか? 駅には何がある」

 

そう言ってエリゴールは風の魔法を使い宙へと飛び上がった。

そしてにやけた笑みを浮かべながら放送機器を叩いた。

 

呪歌(ララバイ)を放送するつもりか!?」

「音量を上げれば町中に死のメロディが響くだろうなあ」

「大量無差別殺人だと!?」

「ああ、そうだ。何も知らない愚か者どもに死神が死を与えに来たのだ」

「あんたバッカじゃないのっ!!」

「残念だがお前らは闇の時代を見ることなくここで死ぬっ!!」

 

話は終わりとばかりに敵の1人が攻撃を仕掛けてきた。

狙いは後ろにいるルーシィ達か。

仕方ねえ、助け――は要らなかったか。

ナツが復活し相手の魔法を打ち破った。

やり取りを見るにナツが列車内で鉢合わせたのはアイツか?

まあいい、そろそろ俺も言わせてもらおうか。

 

「おい死神」

「あん? ッ!! ――ま、まさかテメエは!?」

「ん、俺の事を知ってんのか?」

「闇ギルドでお前を知らん奴はいねえだろうよ。いくつもの闇ギルドをたった一人で潰した経歴を持つ漆黒の断罪者。妖精の使徒(エクソシスト)、アラン=クロスフォード!!」

 

アラン=クロスフォードには多種多様な二つ名が存在する。

自身はエクソシストと名乗っていたが物好きな人間がそれぞれの考えた名称で呼んだ結果だ。

ちなみに漆黒の断罪者とは闇ギルドなどに所属する者たちの間で広まったもので、エクソシストの他には黒の聖職者や紅手の神父などと呼ばれたりするのが一般的である。

まあ実際は酒・娯楽・女などが大好きといった本職の神父や修道女が聞いたら卒倒するような男なのだが十字架の入った黒いコートを着ていれば聖職者と思われるのも仕方のない事かも知れない。

また、身内以外には基本いい顔をする男なので世間の人気も結構高いのだ。

滅茶苦茶な評判が多い妖精の尻尾(フェアリーテイル)にあのエクソシストが入ったという噂を聞いたファンの中で少なくない人数がショックを受けたというのはまた別の話。

 

「別に積極的に潰してる訳じゃねーんだけどな。売られたケンカを買っただけだ」

「テメエとは一度戦ってみたかったがな。今は時間が惜しい」

「そう言わずに付き合えよ。ああ、変なごまかしはいらねえから」

「!! ・・・・・・何の事だ?」

呪歌(ララバイ)の放送なんてつまらないウソをつくなって言ってんだよ」

『!?』

「ど、どういう事だアラン!?」

「いいから聞いてろ。死神、その笛は演奏者以外の者が音を聞くと呪殺される。それで間違いないな?」

「ああ、今更何を言っている?」

「へえ。じゃあお前の仲間も全員死ぬ気なんだな?」

『!!!?』

「そうか!! それじゃあ結局エリゴールしか生き残れねえ!!」

「その通りだ。さて、本当の狙いは何だ?」

「ちぃ、やはりテメエは邪魔だな。お前ら、ここは任せる。奴等に闇の力を見せてやれ。油断するんじゃねえぞ」

 

そう言ってエリゴールは奥へと消えていった。

未だに奴の本当の狙いはまだ見えねえ。

今見失うのは得策じゃない。

エルザもわかっているようでナツとグレイに追うように指示をだした。

さて、後は雑魚どもの殲滅か。

 

「魔導4輪の運転で疲れたろ?休んでなエルザ。ルーシィ達も下がってていいぞ」

「待てアラン、私も闘うぞ」

「はあ、そういうと思った――よ!!」  ズバアッ!!

 

最後の言葉と共に六幻を抜刀、一閃する。

敵の群れの中に斬撃が走り地面に線を刻んだ。

その線は敵を大体1:3の割合で分割していた。

 

「じゃあそっち側よろしく」

「まてアラン!! そっちの負担が大きすぎるだろう!!」

 

残念ながら抗議は受け付けねえよ。

いい具合に数はいるようだし最近使ってなかった武器も使ってみるか。

 

「なんだ、俺らの相手は野郎かよ」

「どうせなら美人の姉ちゃんがよかったなあ」

「なあにコイツを倒してから遊べばいいさ」

 

ギャハハハッと下卑た笑いを漏らす馬鹿ども。

エリゴールの忠告を何も活かしてねえな。

 

「さて、気合入れてかかってきやがれアクマども」

「アクマ?」

「アランは悪の道に堕ちた魔道士をアクマって呼ぶんだ」

 

説明ご苦労ハッピー。

てか下がってろって言ったろ2人とも。

奴らもやっとやる気になってきたみたいだ。

 

『やっちまえ!!』

「まずは、黒い靴(ダークブーツ)!!」

 

停止した状態から一瞬で最高速(トップスピード)に乗り、翔けるアラン。

武器を手に突っ込んで来ていた敵を飛び越え着地。

動きについてこれずにいる奴らの背後から強烈な蹴りを繰り出す。

追いつけないと判断した者たちが魔法による遠距離攻撃を繰り出すが当たらない。

時にゆっくりと舞い上がることもあるが攻撃は全て無駄に終わる。

当たったと思ったときには急上昇や急下降によって避けられているのだ。

 

「なんだコイツ!?」

「速すぎる!! 攻撃が当たらねえ!!」

「おい、広範囲の魔法が使える奴は集まれ!! ――――今だうて!!」

 

少しは頭が回るヤツもいるようだ。

魔法による一斉攻撃。タイミングも悪くない。

だが――――

 

聖人ノ詩篇(ノエル・オルガノン) ――ふっ!!」

「は? ――ちょ、ぎゃあああああ!?」

「あらら、ご愁傷様」

 

――――アランには届かない。

聖人ノ詩篇(ノエル・オルガノン)の糸で敵の一人を引き寄せ盾にした。

その結果、生贄となった男は味方の総攻撃を受けてズタボロになる。

そして今度は聖人ノ詩篇(ノエル・オルガノン)によって敵を切り裂いていく。

魔法も全て糸によって防がれるか受け流されるため、近づくことが出来ない。

 

「今度は糸!?」

「クソッ、近づけねえ!!」

 

因みに黒い靴(ダークブーツ)は解除している。

元帥クラスのイノセンス以外ならば同時装備も可能だ。

しかいこの程度の奴らならその必要はない。

それに同時装備は魔力を余計に消耗するので解除したのだ。

 

「クソっ!! なら先にあいつらをやるぞ」

「オラァッ!!」

「きゃああっ!?」

「アラン助けてーー!!」

「ったく、天針(ヘブンコンパス)

 

ガードが硬いアランを諦め、ルーシィたちに攻撃が及ぶ。

しかしその攻撃もアランが出現させた針の壁によって全て阻まれる。

しかもそれだけで終わらない。

アランがパチンと指を鳴らすと壁が爆発、針が拡散して敵に突き刺さる。

一つ一つが魔力を宿して突き刺さった結果、たいした外傷はないが戦闘不能となる者が続出する。

特に手に武器を持って近づいていた者たちは逃れようも無かった。

 

「畜生!! いったいどうすりゃいいんだよ!?」

「知るか!! 怯むんじゃねえ!!」

 

ふとエルザの方に目をやると天輪の鎧を換装していた。

そろそろ決めるようだ。こちらも遅れるわけにはいかねえな。

 

「俺もそろそろ決めるか。最後は神槌(ミョルニル)だ」

 

次は何がくるかと身構える一同。

だがアランの手に現れたモノをみた男たちは程度の差こそあるものの一様に気を抜いた。

何故ならその手にあったのはとても小さな槌だったからだ。

どんな武器か知れないものの、これまでに見た武具やいつも見ているエリゴールの大鎌と比べても驚異になるとは思えなかったのだろう。

実際にこれまでの事を忘れ大きな態度で挑発する輩まで出てくる始末だ。

 

「はっ、なんだそのチンケな武器は!!」

「魔力切れかオイ!!」

「そう慌てんな。イノセンス発動、大槌小槌、満・満・満!!」

 

アランが言葉を紡ぎながら槌を回転させると徐々に嘲笑が止んでいく。

それもそのはず、先程はとても小さかった槌がどんどんと巨大になり、今では身の丈をゆうに超える大きさになっているのだ。

2~3度槌を軽く振った結果、男たちは一箇所へとまとめる様に吹き飛ばされた。

 

「さてトドメだ。イノセンス第2開放”判”○火」

「ちょ、ちょっと待て!!」

「残念だが俺は《あいつ》とは違う。アクマを救済なんかしねーんだよ」

「な、何言って――!?」

「劫火灰燼 火判!!」

『ギャアアアアアア!?』

 

槌を地に叩きつけるとソコから炎のヘビが姿を現す。

そしてソレは一固まりになっている男どもを飲み込んだ。

しばらくして炎が消えるとそこに立つ人間はいなかった。

皆倒れ伏しているが火加減はしておいたので死んだ者は皆無だろう。

 

アランはいつの間に取り出したのか火のついた煙草を加えている。

こんがりと焼かれた敵を見渡し神槌(ミョルニル)をしまう。

倒れ伏す者に背を向け、煙を吐き出しながら彼は最後の言葉を紡ぐ。

 

「愚かなアクマに十字架の断罪を」

 

 




色々使ったけど技は全然使ってないですね。
あ、ラビの【鉄槌】は【神槌(ミョルニル)】となりました。
ええ、想像していた人はたくさんいたと思います。



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第二十話


読者の皆様{FAIRY TAIL ~妖精の使徒~}を読んでくださりありがとうございます。
今回は作者のちょっと長い話を聞いてください(嫌だという方は本編へどうぞ( ^ω^))
私は考えていました。クロウリーのイノセンスの名前をです。
色々考えていましたが、いいひらめきが来ることもなく苦しんでいました。
そんな時あるアニメを見ました。
そのアニメの主人公は我を忘れて人に噛み付き、エネルギーを吸収します。
そんな化物になった自分に恐怖を感じた主人公に仲間は言いました。
『カミツキ』・・・・・・と
主人公は当然『噛み付き』だと思いましたが違いました。
神が憑いたような状態ということで『カミツキ』だと。

コレだっ!!!!

いいじゃんコレ。
イノセンス(神の力)に吸血として噛み付く。
ぴったりじゃん!!
しかしそこで作者は気付いたのです。
ええ。感のいい方は既に気づいたことでしょう。

ティモシーの『憑神』を忘れていたーーーッ!!
名前も被るしダメかーーー!!

だがそこで更に考えた。
『憑神』ってチートだし出さなくていいんじゃね?・・・・・・と。
っていうか何ならクロウリーのと合体して噛み付いて憑くって感じならいんじゃね?
まあ使うかはわかんないけど。
それで魔力が高い奴には憑けない(AKUMAのレベル差みたいに)。

という訳で合体!!
名前は『神憑き』にしてルビを考えようとなりました。
まあ暫く登場予定もないし、気が変われば名前も変わるのかもしれないのですがw
長々とお付き合いいただきありがとうございました。

では本編へどうぞ!!



ルーシィは驚愕していた。2人の男女、その実力にだ。

あれだけ大勢いたギルド1つ分の人数を瞬く間に倒してしまったのだから。

 

「・・・・・・すごい」

「全部で109個存在すると言われ、世界中に散らばっている神の結晶とも呼ばれる不思議な力を帯びた謎の多い物質。アランはその物質を武具や自身の体内に埋め込む事で様々な能力を発動して闘う。それがアランの魔法、”イノセンス”だよ」

「エルザもアランもホントに強いのね」

「2人の実力はこんなもんじゃないけどね」

「ええ!?」

「エルザは換装できる鎧が他にもたくさんあるし、アランはよく使うイノセンスを今回の戦闘で使ってないからね」

「それに威力が強すぎてそこらの魔道士には使えない代物もあるしな」

「お疲れー、アラン」

「おう」

「ど、どんだけなのよ」

 

その後、エルザの方にいた男が1人逃げていった。

エリゴールの所に向かうかもと思ったエルザはルーシィにソイツを追わせた。

その為今ここにいるのは倒れている大勢を除けばアランとエルザの2人だけである。

エルザとしては少しアランとゆっくりしたいが状況がそれを許してくれない。

 

「ひとまず私は住民を避難させてくる。アラン、お前はどうする?」

「ん、俺は意識あるヤツから本当の狙いを聞き出すわ」

「わかった、よろしく頼む」

「そっちもな」

 

エルザと別れた俺は意識のある人間を探し始めた。

取り敢えず近くにいた1人をターゲットとする。

 

「さて、じゃあ聞かせてもらおうか?」

「へ・・・、たとえ殺されたって喋んねえよ・・・・・・」

「お、そういう根性は嫌いじゃねえぞ。ただ・・・・・・相手が悪かったなぁ。」

 

その時の男の顔はとても黒く、見る者がゾッとするような笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちっ・・・・・・狙いはマスターの方かよ」

 

情報を吐かせることに成功した俺はエルザのもとへと向かっていた。

早くしないとこの場所に閉じ込められる事になるだろう。

しかし、着いたエルザの近くには既に俺たちを閉じ込めるための魔風壁が発動していた。

 

「遅かったか」

「アランか。すまない、エリゴールを逃がした」

「気にすんな。魔風壁(ソレ)の解除が先決だ」

「出来るのか!?」

「導術も似たようなもんだからな。本職の奴らには劣るがやってみるさ」

「頼む」

 

魔風壁の解析をしていると、ソコに新たな人物が現れた。

 

「アラン!! エルザ!!」

「グレイか。その様子だとお前も知ったようだな」

「まあな。魔風壁(ソレ)は何とかなるのか?」

「とりあえず解析中だ。しかし間違いなく時間はかかるぞ」

「クソッ!!」

「何か方法はないのか!?」

「・・・・・・あった。 鉄の森(アイゼンヴァルド)には呪歌(ララバイ)の封印を解いたヤツがいるはずだ。俺は解除を続けるからお前らはソイツを探してこい!!」

「そうか解除魔道士(ディスペラー)!! 行くぞグレイ!!」

「ああ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくしてエルザ達が戻ってきた。

ナツやルーシィも一緒で敵の1人を背負っているようだが・・・・・・。

話を聞くと、仲間に刺されたらしい。

おそらく俺達をここから出さないためだろうな。

 

「すまない」

「いや、気にするな」

「アラン、魔風壁の解除は出来そうか?」

「解除は出来る。だが・・・・・・30分はかかるな」

「そんなにか、クソッ!!」

 

そんな流暢にしていたら手遅れになる。

・・・・・・仕方ないか。

 

「エルザ、今から刻盤(タイムレコード)で駅周辺の時間を巻き戻す。魔風壁が消えている間にここから出ろ」

「何だと!?」

刻盤(タイムレコード)の発動中、俺は動けないからお前らだけでエリゴールを追え。俺は魔風壁を解除して後から追う」

「違う、そうではない!! 刻盤(タイムレコード)はお前の体にとてつもない負荷がかかるのだろう!?」

「そうだアラン!! それは無茶だ!!」

「2人の心配は嬉しいが今はコレしかねえだろ。大丈夫だ、今回使うのは時間逆行(リターン)じゃなくて時間吸収(リバース)だからな」

「くっ・・・・・・(だといっても酷い負担だろうに)」

「んじゃ、いく「あーーーーーーっ!!」・・・・・・何だ?」

 

発動しようとした時にハッピーの声が響き渡った

少し離れたところでルーシィとナツと一緒に話してたと思ったんだが。

何やらあっちで閃いたようだ。近づいて耳を傾ける。

ハッピーがカバンの中から何かを取り出す。

あれは、星霊の鍵(処女宮)――――そうか!!

バルゴなら魔風壁の下、地面を掘って外に出れる。

しかし、話を聞くにまだ契約を結んでないようだ。

星霊は契約を大事にするからな、ここは俺がやるか。

バルゴを呼ぼうと鍵を手にするルーシィに声をかける。

 

「待てルーシィ、その鍵は契約がまだなんだろ?」

「そうだけど時間がないでしょ。契約は後回しにして力を貸してもらうわ」

「いや、大丈夫だ。俺が呼ぶ」

「え!?」

「まあ見てろ」

 

そうして俺は懐から1つの鍵を取り出す。

特に変わった形状ではないがソレは独特の雰囲気を醸し出している。

何よりその色が異質、黒というのが一番近いとも思えるがそれも正確ではない。

例えるなら夜空。透き通るような、それでいて包み込まれるような淡い色。

その夜色の鍵は俺が星霊界に行った時に星霊王から貰った鍵。

自分の意思で呼ぶのは久しぶりだな。

 

「我、星の観測者(スターゲイザー)の銘を受けし者。

 星の明友よ、その輝きで我を照らせ。」

 

鍵にポツポツと光が灯り始める

それは夜空に瞬く星の様な輝きだ。

そして光は広がり夜色の鍵は眩い光の鍵となる。

よし、どうやら応えてくれるようだ。

 

「我等を結ぶ絆の道を今此処に繋ぐ。

 顕現せよ!! 処女宮の扉!! バルゴ!!」

 

鍵が一際強く輝き辺りを照らす。

そして光が収束し星霊がその姿を現した。

 

「お呼びでしょうか、ご主人様」

「その呼び方は止めろって言ったろ」

「これは失礼しましたアラン様。久々にアラン様から呼ばれて私感激であります」

 

ふと皆の方に視線を向けると皆が固まっていた。

 

「どうしたお前ら?」

「だ、誰?」

「誰って・・・・・・バルゴ」

「痩せたな」

「っていうか別人でしょ!?」

 

どうやらルーシィ達はバルゴが自在に姿を変えれることを知らないらしい。

 

「説明は後だ。バルゴ、地面を掘ってくれ。魔風壁の外に行きたいんだ」

「かしこまりました。ではいきますっ!!」

 

そしてバルゴは外へと通じる穴を掘った。

それを通って俺たちは駅の外へと脱出をした。

 




という訳でバルゴ登場。
アランの自宅のハウスキーパーも彼女です。
鍵の詳細は次回に回します。



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第二十一話

書きたいことは決まってる。
なのに何故か進まない。
何故なんだ。
不思議。

なんかスイマセン(-.-;)


 

現在、俺達は魔導四輪で爆走中である。

魔風癖の外に出るなり飛んで行ったナツとハッピー。

2人の後を追いかけている。

まあその2人の姿はとうに見えない。

おそらくは既にエリゴールにと戦闘に入った頃だろう。

俺も神槌(ミョルニル)黒い靴(ダークブーツ)で追いかけてもいいが・・・・・・まあナツでも大丈夫だろ。

それに――

 

「さて、じゃあ聞かせてくれる?」

 

――いい加減、ルーシィがあの鍵について聞きたくて我慢出来ないみたいだしな。

ちなみに運転はまたもやエルザだ。

俺が変わると言ったんだが「2人とも中途半端に魔力を減らすくらいなら私1人が請け負う。お前は万全の状態で備えてくれ」といって聞かなかったのでこうなった。

魔導四輪は先程のものよりも少し大きく、中には俺、ルーシィ、グレイ、鉄の森(アイゼンヴァルド)解除魔道士(ディスペラー)(カゲというらしい)、あと未だに消えていないバルゴの5名がいる。

となると・・・・・・

 

「よっと」

「へぶっ!?」

 

カゲに打撃を入れて気絶させる。

つい先程意識が戻ったばかりのカゲは哀れにも再び意識を手放した。

 

「なにしてんの!?」

「あの鍵はあまりひろめていいもんじゃねえんだよ。今から教えれるのも星霊魔道士だからってのが大きい」

「あ、あのさ、俺は違うけどいいのか?」

「お前がいいって言うなら気絶させんぞ。ってかするか」

「イヤですごめんなさい勘弁してください」

 

自分で聞いてきたくせに速攻で意見を翻すグレイ。

でも本当にそうなんだよな、どうするか。

逡巡しているとバルゴが助け舟を出してくれた

 

「其方の方は貴方の大切なお仲間とお見受けします。でしたら話してもいいと思われます」

「だとよ、感謝しとけグレイ」

「あ、ありがとうな」

「いえ。お気になさらず」

 

じゃあ問題もなくなった所で改めて話すか。

懐から先程の鍵を取り出し、2人に見せる。

 

「さっきも思ったけど不思議な鍵ね」

「だな。言葉にしにくい力を感じる」

「グレイ、持ってみろ」

「いいのか?――って何だこりゃ!?」

 

グレイに鍵を差し出すがその手が鍵を掴むことはなくすり抜けてしまう。

 

「次はルーシィだ」

「え、でも――触れた!?」

「俺は触れなかったのに?」

「で、でもこれ何の力も感じない。只の装飾品みたい」

 

ルーシィは鍵を持つ事が出来た。

だが、言ってしまえばそれだけだ。

 

「ルーシィ鍵をこちらに」

「まただ。この感じ」

「いったい何なの・・・・・・?」

 

再び鍵に独特の雰囲気が宿る。

その様子に2人が首を傾げる・

 

「この鍵は契約を結んだ者――今では俺だ――しか使うことができない。星霊関係の魔法道具だから星霊魔道士であるルーシィは鍵に触れ、そうでないグレイは触れることすら出来ない。まあルーシィでも使用することは出来ないがな。むしろ俺が使うことを見てなければ鍵を見ることも難しかったかもな」

「聞いた事もない道具ね」

「当たり前だ。世に出回ったのは俺で2人目。歴史からも忘れ去られた一品だよ」

「おいおい・・・・・・」

「それはともかく、何でバルゴを喚べるの?バルゴは他の星霊と違って横道十二門よ。対応する鍵は世界に一つだけのはずなのに」

「それはこの鍵がマスターキーだからだ」

「「マスターキー?」」

「全ての星霊を喚ぶことができるんだよ」

「え・・・・・・、ええええええぇ!!!?」

 

やっぱり驚くよなあ。

特に星霊魔道士ならこれの重大さがわかるはずだし。

他にももう少し機能があるがそれは今のところ秘密だな。

 

「そ、そんな驚くもんなのか?」

「当たり前よ!! 星霊魔法の概念を覆すわ!!」

「そう。だからこの鍵の事は内緒にしてくれ」

「わかった。でもそんな鍵を一体何処で?」

「それも言えない。だが・・・・・・ルーシィには何時か教えれる日が来るかもな」

「そう・・・・・・。前に星霊と友達って言ったのはそういうことなのね」

 

色々と思うところがあるのだろう。

車内が静かになったところで今まで黙っていたバルゴが口を開いた。

 

「ところでルーシィ様、鍵は受け取って頂けたでしょうか」

「あ、うん。さっき受け取ったわ」

「そうですか、ありがとうございます」

「契約はまた落ち着いてからさせてもらうわね」

「かしこまりました。お待ちしております」

「そういえば・・・・・・契約はアランと被らない形になるのかしら?」

「あ、その心配はないぞ」

 

この鍵に契約は存在しない。

いつでも好きな時に好きな星霊を喚べる。

しかし星霊は本来の鍵との契約者が優先される。

つまりルーシィがバルゴと契約をしたとして、俺が喚んでる時にルーシィに喚ばれればそちらへ行くし、逆にルーシィが喚んでるときに俺が喚んでも効果がない。

だから俺は星霊魔道士のような主従関係ではなく、友人関係のようなものなのだ。

そのことをルーシィに説明した。

 

「なるほど。じゃあ私が気にする事はないと」

「そういうことだ」

「私としましてはアラン様にはもっとお喚び頂きたいのですが。ハッピー様がアラン様のお知り合いと知っていたらアラン様に鍵をお渡しできましたのに」

「えっと、渡した方がいいのかしら?」

「いや、いい。それは本職のお前が持つ方がいいものだ。バルゴもそれはわかっているだろ?」

「はい。出過ぎた真似を申し訳ございません。ついアラン様への熱い気持ちがもれてしまいました。ですが先ほど言った通り、もう少し私をお喚びくださいますようお願いいたします」

「わかったよ。お前にはアイツ共々世話になっているしな」

「そしてお仕置きを!!」

「却下」

 

相変わらずお仕置きを求めるバルゴ。

っていうかお前のお仕置きの基準がわからねえよ。

コイツには感謝こそすれ怒る理由がない。

もしかしてコイツMなのか? ソウイウコトなのか?

 

その後もバルゴが隣に座ってきたり、かと思えばご奉仕しますと俺の前にかがんできたりと騒がしい時間が流れた。

カゲが目を覚まして文句をしばらく言ったあと愚痴に意向、それに対しグレイがキザなセリフを飛ばしてしばらく経ったところでナツ達を発見、合流した。

エリゴールは倒していたので一件落着かと思ったのだがカゲが呪歌(ララバイ)を奪って逃走。

俺達は再び追跡――しかも今度は走って――を始めるのだった。

 

(ちなみにバルゴは星霊界へ戻った)

 





次回で呪歌(ララバイ)編は終了です。
たぶん、きっと、おそらく、終わる・・・・・・はず。



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第二十二話

風邪をひいてしまいました。
皆さんもお気を付けて。




日が沈みかけてきた頃、俺たちは定例会の会場であるクローバーの街へとたどり着いた。

そしてカゲを発見したがその前には我らが妖精の尻尾(フェアリーテイル)のマスター、マカロフが対峙していた。

 

(なんだ、心配いらなかったな)

 

エルザ達はすぐに飛び出そうとするがそれは2人のギルドマスターに止められた。

見覚えがある方だったので挨拶をするとしよう。

 

「お久しぶりです。マスターボブ、マスターマインゴールド」

「おう、久しいな」

「あら~、相変わらず可愛いわねアランちゃん♡」

 

俺達がのんびりと挨拶を交わしているとエルザが声を荒げる。

 

「何を呑気にしているのだアラン!! 早くカゲを止めねば!!」

「黙ってなって、面白い所なんだからよ」

「そうよ~、邪魔しちゃだ~め♡」

「面白いかどうかはともかく、俺達の出る幕じゃねえよ。他のマスター達も気づいているようだし何も問題はねえ」

「で、でも大丈夫なの!?」

「心配すんなルーシィ。俺らのマスターを信じろ」

 

その後、マスターの全てを見透かした言葉によりカゲは戦意を喪失した。

マスターの語ったギルドの在り方にはカゲだけでなくナツたちも感服したようだった。

周りに弛緩した空気が広がっていく。

これにて一件落着かと思われた。

がしかし、幕はまだ降りていなかったようだ

呪歌(ララバイ)から黒煙が吹き出し怪物へと姿を変え、正体を現したのだった。

 

 

 

 

「腹が減ってたまらん。貴様らの魂を喰わせてもらうぞ」

「魂って喰えるのかーー!? うめえのか!?」

「味は知らんが少なくともうまそうには見えん」

「知るか!! アランも答えんな!!」

 

平常運転のナツとアランにツッコミを入れるグレイ。

そんな2人を無視してマインゴールドが説明をする。

あの怪物が呪歌(ララバイ)そのもの、つまり生きた魔法。

魔法界の歴史上最も凶悪だった黒魔道士ゼレフ。

彼が作ったとされる生きた魔法――――アレと同じ。

 

ドクン!!

 

鼓動が高鳴る。

アレとは違うし比べてもはるかに弱いだろう。

だが・・・・・・

 

ドクン!! ドクン!!

 

どうしても鼓動の高鳴りが止まらない。

頭では分かっていても体が反応してしまう。

俺ってこんなに執着するタイプだったか?と思いつつも、もう止まれないことは理解した。

――――ぶっ潰す。

そんな俺の心情を察した訳でもないだろうがララバイが口を開いた。

 

 

「誰の魂から食ってやろうか」

「おい、そこのウドの大木」

「む?」

「俺の魂は如何かな? 極上モンだぜ?」

『アラン!?』

「はっはっは。面白い、貴様の魂から喰ってやろう」

「って訳だ、お前ら手ェ出すんじゃねえぞ」

「ア、アラン」

「エルザ、皆を下げといてくれ。危ねえからな」

「!・・・・・・わかった」

 

どうやらエルザは察してくれたようだ。

グレイやルーシィに声を掛けて下がってくれるが例外が一人。

 

「引っ込んでろナツ」

「嫌だ!! 俺もやるぞ!!」

「悪いが譲れねえ。 ゼレフ書の悪魔には少なからず因縁がある。 アイツは俺の得物だ」

「・・・・・・わかった。その代わり帰ったらお前も俺と戦え!! それが条件だ!!」

「くっくっく。あいよ」

 

思わず笑ってしまった。

ぶれねえなあナツは。

 

「別れの挨拶は済んだか?」

「ああ、待たせたな」

「お前の魂を頂く!!」

 

それしか言えねえのかコイツは。

繰り出してきた拳をバックステップで躱す。

仮にもゼレフ書の悪魔なんだし加減は必要ねえよなあ。

 

 

――イノセンス発動。

 

アランの両肩に半円状のスパイクが付いた肩当てが出現する。

そのままゆっくりと手の先へとソレは移動し

 

「なぶれ 神狂い(マドネス)

 

アランが両手を合わせると一つの輪になった。

そしてその輪から二つの刀身が姿を現した。

神気が感じられるがどこか禍々しい刃が光る。

 

「こいやあああぁあああああ!!」

 

アランの咆哮。

それを受けてララバイが再び拳を繰り出す。

それをかいくぐって足を切りつけるアラン。

 

「そんなもんか?」

「小癪な」

「おっと――――ってオイオイ」

『うおおおおおおおぉ!?』

 

ララバイが口を開き無数の光弾を打ち出す。

避けたが光弾はそのまま周りのギャラリーに向かって飛んでいく。

アランが現在使用しているのは元帥のイノセンス。

この場合他のイノセンスの同時発動はできない。

よく防御に使う天針(ヘブンコンパス)は使えない。

グレイが防ごうとしているが一度手を出すなと言った手前、他の手を煩わせるのは許容できない。

となると打てる手は1つ。

懐に手を入れて取り出すは数枚の札。

その中央には『防』の字。

その札を光弾の向かう先に放つ。

 

「秘術” 防羽(まもりばね)”」

「――なんと」

 

ギャラリーの前に出た札が障壁を広げ光弾を全て防ぐ。

あらかじめ魔力を込めておいたので札はそのまま障壁を展開し続ける。

この闘いの間位は持つだろう。

呆気にとられる周りをおいて、再び神狂い(マドネス)の刃が振るわれる。

 

その後の戦闘は一方的だった。

アランがひたすらに切り刻む。

ララバイが反撃するも躱され、防がれ、流される。

時間にして5分もしないうちにララバイはボロボロの姿になっていた。

左腕に至っては完全に千切れ、傍に転がっている。

 

「くううううぅ!!」

「ゼレフ書の悪魔と言ってもこの程度か」

「もうよい!! 貴様ごと全員滅ぼしてくれるわ!!」

「いかん!!」

 

自棄になったララバイが大きく息を吸い込む。

集団呪殺魔法 呪歌(ララバイ)

その力を完全に発揮しようとする。

だが・・・・・・

 

「かっ!? な、何だ!?・・・体が、うご・・・か・・・・・・ん」

「秘術” 縛羽(しばりばね)”」

 

ララバイの体が盛大に光る。

いや、正確にはララバイの体に貼り付けられた大量の札が発光している。

先程の札と違い、中心には『縛』の文字があった。

 

「気づかなかったか? 切りつけると同時にお前の体に張り付けていた」

 

アランがララバイを一方的に追い込めたのは此処にも理由がある。

”縛羽”は相手の動きを止めるものではない。

相手の動きを遅くするものである。

徐々に遅くされていたララバイはそれに気づかずにいたため、アランの動きに追いつけずにそのまま圧倒されたのだ。

まあ、”縛羽”を使ってなかったとして2、3分寿命が延びた・・・か?といった程度だが。

 

それほどの実力差なのに何故相手の動きを封じたか。

細かい理由は多々あるが、一番の理由はコレだ。

 

神狂い(マドネス)火葬舞(デデルーパ)

 

ララバイを完全に消滅させる。

そのための一撃には少々魔力を込める時間がいる。

更に、完全に制御しきれていない技なので相手が動かない方がいいのだ。

そして今、その準備が整った。

神狂い(マドネス)は炎を纏って高速回転し、大きな炎の輪となっている。

 

「魂を失うのはお前の方だったな」

「ま、待て・・・・・・」

「断る。あばよ」

 

アランの一撃がララバイの中心を打ち抜く。

恐るべき魔法界の負の遺産は只の木屑と化した。

飛び散った木片も炎が燃やし、浄化していく。

 

というかあっちでナツが火を食べようとしてるし。

「熱っ!! 何だこの炎熱すぎる、食いづれぇ!! はふっ・・・・・・ふー、もぐもぐ。!!・・・・・・うめえーーーー!!」

あ、食べた。

多少神気が混ざってるけど喰って大丈夫なのか?

 

まあ、ララバイは間違いなく消滅した。

これで一件落着だな。

 

 

「愚かな悪魔に十字架の断z――――あっ」

 

最後にエクソシストとしての言葉を紡ごうとしたが出来なかった。

ララバイは完全に消滅したが威力が強すぎた。

対象を打ち抜いた神狂い(マドネス)はそのまま直進。

定例会の会場に見事命中、粉々にしたのだ。

 

(久々に派手にやったなあ)

 

何時ものアランなら直に謝罪と賠償を済ませ、復興に力を貸すのだが今回は違った。

ゼレフ書の悪魔を倒し、普段なら使用を控える力を派手にぶっぱなした。

つまるところ、高揚していた。

 

「・・・・・・逃げるか。ハハッ」

 

駆け出したアランにエルザ達が続く。

炎を食べ続けていたナツはハッピーが回収した。

並走していたマカロフが口を開く。

 

「アラン、お前だけはまともだと思ってたんじゃがなぁ」

「悪いなマスター。今日だけは勘弁してくれ」

「・・・・・・ま、偶にはええじゃろ」

 

走り続ける妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔道士たち。

会場を破壊された他のギルドマスターたちが彼らに視線を向ける。

やはりアイツ等は滅茶苦茶だ。

そしてマスター達の視線は先頭を走る男に集まる。

非常識なギルドにおける唯一ともいえる常識人だったはずだが遂に毒されたか。

 

銀髪にローズクラウンが刺繍されている黒いコート。

その顔の左目には五芒星(ペンタクル)。傍らには金色のゴーレム。

先程の戦闘で見せた雰囲気は何処へやら、仲間たちに快活な笑顔を向けている

男の名は アラン=クロスフォード

妖精の使徒(エクソシスト)の異名を持つ魔道士

 

これからも妖精の尻尾(フェアリーテイル)は問題ばかり起こすのだろう。

取り敢えず、今の自分たちがするべき事は

 

『捕まえろーーー!!』

「逃げろーー!!」

 




なんか終わりがグダグダに、あれー?

これにてララバイ編は終了です。
まあ、事後処理の話が残ってるんですけどね。

鴉の秘術について
色々調べても曖昧な点が多かったのでオリジナルで。
勿論原作通りのもありますし、出ます。
が、原作通りじゃないのもでる予定なのでよろしくお願いします。
そして少し解説を
鴉の札はあらかじめ魔力を込めて作成済みです。
札を持って少し魔力を送るだけで起動するためほぼノータイムでの使用が可能。
勿論イノセンスより攻防力は低いです。
しばらく使わないと魔力が抜ける使い捨ての札ですので時々新たに補充・作成をしています。

悪魔の島に入る前にオリジナルをいれようかなぁとも考えてます。
といっても単発の話ですけど。
前にも述べた通り、各キャラのアランとの出会いの過去編や日常編かなぁ。
ヒロイン勢でカナやレビィが全然出れてないので彼女らとのデート話もいいかも。







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番外編01 レビィとアランの出会い


大分期間が空いてしまいました。
感想やメッセージを下さった方に返事することも出来ず申し訳ありません。
また、まだ連載するのは不可能に近いのでまた期間が開いてしまうと思います。
詳しくは活動報告に載せたいと思いますので宜しければそちらをご覧になって下さい。



とある日の妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

「アラン遅いね」

「もうそろそろ来る頃でしょ」

「「そうそう、気にすることねえよレビィ~」」

 

魔道士ギルド妖精の尻尾(フェアリーテイル)は今日も平常運転だ。

幾つかの集まりに分かれているようだがどこもかしこも騒がしい。

唯一静かなのはギルドの中でも良識のある2人、レビィとルーシィが会話をしているこのテーブルだ。とはいえ彼女たちの後ろで野郎が2人言い争っているのであくまで周りと比較して静かという具合だが。

 

これもいつもの光景ゆえに誰も気にしていない。言い争う2人、ジェットとドロイはどちらもレビィに片思い中(2人とも告白はしたが瞬殺だった)であり、レビィの気を引こうとして衝突しているのだが当の本人、レビィも気にしておらず、最初は戸惑っていたルーシィも今では完全なスルーである。

 

まあ不憫な2人はほっといて話を戻すとしよう。

彼女らが話しているのはいつもの本の事ではなかった。いや、関係ある事ではあるのだが直接本の内容などではなかった。

彼女らの手にはある魔法アイテムがあった。

『風詠みの眼鏡』・・・・・・品質にもよるが2~32倍の速度で本が読める

 

「私のも少し前のタイプだけどレビィちゃんのって結構古いタイプよね?」

「そうだね。ずっと使い続けてるからコレ」

「へー。何か思い入れでもあるの?」

「えへへ。ちょっとねー」

「えー、なになに?教えてよー」

「ダーメー。秘密だよー」

「ええー?」

 

何とも微笑ましい光景である。周りで騒いでいた奴等もその様子を見ており、言い争っていたジェットとドロイに至ってはレビィをみてデレデレの状態だ。

だが例外はあるもので騒ぎ続けている者達の姿もあった。

これもお馴染みのナツとグレイの喧嘩である。

いつも通りの日常の中のいつも通りのやり取り。

しかし今日はそんないつも通りの中にイレギュラーが起こる。

 

「オラァッ!!」

「ぐほっ!?」

「「きゃああっ!?」」

 

ドグシャア、ズザザザザピシッガラガラガラ

 

ナツに殴られたグレイが吹っ飛び2人のテーブルに激突。

イスやテーブルを巻き込みながら崩れ落ちる。

 

「イタタ・・・・・・」

「ちょっとアンタたち!!」

「わ、悪い」

「すまねえ、大丈夫か!?」

 

テーブルなどが壊れるのは何時もの事(それもどうなのだと思わないこともないが)だが今回はそれにレビィとルーシィが巻き込まれた。

とはいえ、2人とも妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔道士だ。

女とはいえ荒事の経験もあるし、怪我もそれなりにしてきた。

だからこそ今回のコレも文句こそあれ、咎めるほどのことじゃない――はずだった。

レビィの傍に彼女のモノである風詠みの眼鏡が落ちていなければ。

いや、レンズにヒビが入っていなければ――だ。

そしてそれに最初に気づいたのはルーシィだった。

 

「レビィちゃん、それ」

「あ、ああ……」

 

ゆっくりとヒビの入ったメガネを持ち上げるレビィ。

流石に周りも静かになっており、元凶であるナツとグレイも神妙な顔で黙っている。

そしてレビィの目から涙がこぼれた。

 

「「レビィーーー!?」」

「「ゴメンナサイーーーー!!」」

 

普段から明るく笑顔を振りまいているのがレビィという少女である。

今回のような事も苦笑ですまし、たとえ怒っても可愛らしさが前に出てしまう。

そんな少女の涙は周りの男達を狼狽させるには十分すぎる代物だった。

ちなみに前者がジェットとドロイ、後者がナツとグレイである。

 

「だ、大丈夫だから……」

「でもレビィちゃん」

 

大丈夫と言うもののレビィの涙は止まらない。

必死に止めようとしているのか体が小刻みに震えているが涙は止まらない。

ジェットとドロイが必死になだめているが効果は皆無であり、ナツとグレイに至っては土下座をしてゴメンナサイゴメンナサイとひたすら謝り続けている。

そんな様子を見ていたギルドの古株であるマカオが口を開き、同じテーブルにいたワカバにカナ、そしてロメオと会話を始める。

 

「別にアイツらをかばう訳じゃねえが……」

「だなぁ。アランのヤツがいなくてよかったじゃねえの」

「女を泣かしたとなるとアランは容赦無いからねえ」

「やっぱ魔道士ってスゲエんだな」

 

約一名感想がズレている者もいるが彼らの意見は正しい。

男女問わず仲間を大切にする男だが女には更に優しい。甘いとさえ言える。

しかも今回はナツ達に一方的に非がある。

これをアランが知ろうものなら血の雨が降るかもしれない。

そして彼らは知らなかった。

その説明は完全なるフラグであるという事を。

 

「ういーす。おはようさん」

 

妖精の使徒(エクソシスト)の異名を持つ黒衣の断罪者がギルドにやって来た。

 

 

 

 

○○○

 

 

「ん? ヤケに静かだな、何かあったか?」

 

質問を投げかけるアランに何と答えたらいいものか分からずに押し黙ってしまった周囲を訝しみながらもアランは周りの視線の先へと自らも目を向ける。

よく見えないが聞こえてくる声からジェットたちだと判断して歩み寄るとそこには一人の少女が項垂れていた。背を向けているので確証はないが、何やら様子がいつもと違うことに気づき声を掛ける。

 

「レビィ、どうした?」

「!!」

 

アランの声を聞いた瞬間、レビィは見えないようにゴシゴシと涙を拭い立ち上がった。

アランに見えないように眼鏡を背後に隠し、そのまま笑顔で告げる。

 

「あはは、ちょっとこけちゃって。でも大丈夫」

「おい、レビィ――」

「あ、仕事行かなきゃ。ごめんねアラン、また後で」

 

何か言いたげなアランに一方的に告げ、レビィはそのままギルドを出て行った。

その後をルーシィがそそくさと追いかけていく。

しかし、アランは見逃さなかった。

レビィの頬にうっすらとだが涙の跡が有り、歯を食いしばって出ていくのを。

気になるが今すぐ追いかけても恐らく無駄だろう。

逃げるように去っていった彼女の姿を見てそう考えたアランはその場にいた男達へと意識を移す。

 

視線を向けた瞬間に首が飛ぶんではないかという程の勢いで横に降ったジェットとドロイを見て、次にナツとグレイに視線を向ける。

2人は汗をダラダラと流し絶望的な表情をしていた。

ほぼ間違いはないと思ったが、念の為に周囲にグルッと視線を向けるとギルドにいた全員が一斉に首を縦に振った。

決まりである。2人の顔面を掴み上げ、力を込めながら問いかける。

 

「さて、詳しく聞こうか?」

「「ぐあああああああっ!?」」

 

メリメリと頭にアランの指がめり込む。

周りもその光景を見て痛々しい表情をしており、中には実際に受けた時の記憶がフラッシュバックしているのか頭を押さえてうずくまる輩もいる。

 

「は、話す!! 話すから離してくれー!!」

「ダメだ。そのまま話せ」

「し、死ぬ!! 左腕は死ぬーー!!」

「安心しろ。しばらくしたら右手と左手入れ替えてやる」

「「ぎぃやああああああああああああああああああああ!!」」

その後しばらく妖精の尻尾(フェアリーテイル)から悲鳴が聞こえ続けた。

 

 

 

○○○

 

 

「はぁ、はぁ。……グス」

 

咄嗟にギルドを飛び出したレビィはしばらく走り続けた後に立ち止まった。

荒くなった息を整えると改めて悲しみが湧き上がり、再び涙が溢れた。

 

「ふう、やっと追いついた。急に飛び出すんだもん」

「ゴメン……」

「ううん、気にしないで。取り敢えず魔法屋に行ってみよ?もしかしたら直せるかも知れない」

 

結果として眼鏡の修理は不可能だった。

店主が言うには型が古すぎてダメらしい。

今の型だとレンズが割れてもレンズを入れ替えて治せるが、レビィのモノだとフレームと一帯になっていてレンズのみの交換ができないと言われたのだ。

今は在庫も切れていて明日には入荷するからまた明日来てくれと言われた。

明日までに壊れた眼鏡を元に準備しておくと言われたので、眼鏡を預けて2人は店をあとにした。

そしてやって来たのは小さな公園だった2人でベンチに腰をかける。

しばらく飲み物片手に座っていたが、意を決してルーシィは聞くことにした。

 

「あの眼鏡の事、聞かせてくれない?」

「・・・・・・アレは、アランに貰ったモノなんだ」

「アランに?」

「うん。まだ私が小さい頃だったなぁ」

 

 

 

△△△

 

 

 

小さい私はまだ魔法が使えなかった。

それは普通のことかもしれないけど周りの子供たちは魔法を既に使える。

ナツにグレイ、エルザやミラ、ラクサスなんかもそうだ。

エルフマンとかも未熟ながらに練習して魔法に慣れようとしていた。

でも私は全然だったんだ。

いつか私もって思っていたけど不安はずっと心にあった。

 

その日もそうだった。

ナツ達が喧嘩を始めて、エルザとミラが便乗する。

最初は只の殴り合いも徐々に魔法の応酬になった。

エルザ達は魔法がなくても強かったけど私はそれもダメで。

だから私は逃げるようにギルドを後にしたんだ。

それなら魔法の練習でもするべきなんだろうけど、あの時の私はそんな事からも逃げていた。だから私はいつものように本屋に行っ(にげ)たんだ。

 

最近毎日のように来ている店だけあって店員さんとは顔見知りだ。

カウンター奥に座るお爺さんに挨拶をして店の中を見て回る。

この店は立ち読みを許してくれているのでお小遣いに限りのある子供には非常に助かる。

勿論できれば買いたいがここぞという時のために我慢も必要である。

そして今日、その我慢を解き放つ時が来た。

大好きな小説の最新刊。それも最後の一冊である。

自分はとても好きなのだがあまり大衆には広まっておらず、読書家たちのみぞ知る隠れた名作となっている。そんな理由から発行数は少数であり初版を逃すと手に入れるのが非常に困難である(一度経験したがとてつもなく苦労した)。

発売日を忘れているとは自分も相当キテいるなと思いつつも、気持ちを切り替えて財布を覗く。・・・・・・足りない。

もともと立ち読みを前提に来ていたため手持ちが少なかった。

お爺さんにまた来ると言って店を飛び出す。

一度寮に戻って貯金を引っ張り出し、再び店に戻った。

そして本は――――そこには無かった。

焦りでいっぱいになりながらもお爺さんに聞いてみようとした私はそこで見た。

銀髪に黒いコート、左目の上に刺青をした男の人が例の本の会計を済ませている姿を。

 

 

 

 

△△△

 

 

「もしかしてそれが?」

「うん。アランとの出会い」

「へぇー。あれ、でもそれって結構昔の話だよね? アランの姿が今と変わってなくない?」

「(あはは、何で思考が見えてるんだろ?)それは色々と事情があるみたいだよ。今はまだ話せないけど時期が来たら話すって言ってるから皆待ってるんだけどね。」

「き、気になるけど取り敢えず続きを聞かせてくれる?」

「あ、うん」

 

 

 

 

 

△△△

 

私は勇気を出してその本を売って欲しいって頼んだんだ。

結果から言うとアランは私に本を譲ってくれた。それも無償で。

自分は旅の途中で今すぐ読める訳でもないし他の街でも買えるからって。

その後はその本や他の本の話でとっても盛り上がって気づいたら日が暮れかけてたよ。

アランはそれまでに読み終わって持て余していた本を沢山くれてマグノリアを出て行ったんだ。

今思えばその時にはもうアランに惹かれていたのかもね。

 

次にあったのはそれから約半年後だった。

相変わらず魔法が使えなくて、その日も私はギルドを出てたんだ。

公園でベンチに座ってずっと自己嫌悪。

考えれば考えるほどグルグルと悪い思考が回り続けて、最終的には魔道士になるのを諦めようかな・・・・・・なんて考えるくらい。

あはは、バカだよね。でもその時の私は真剣だった。

そして、そんな時にアランが現れたんだ。

思わず抱きついちゃってね、そのまましばらく泣き続けたんだ。

アランは何も言わずに受け止めてくれた。

子供だからって軽く考えないで私の話を真剣に聞いてくれた。

そしてアランは自分の事も少し話してくれた。

今でこそ自分は魔法を使って旅をしているが魔法を使えるようになったのはつい最近だとも。

 

 

「よしレビィ。魔法の練習をしよう」

「え?」

「最近覚えた魔法があるんだけどそれがレビィにピッタリだと思う。俺も少しししか出来ないけどやってみようぜ」

「・・・・・・うん、わかった!!」

 

 

そして私が教えてもらったのが今使っている文字魔法だったんだ。

本に書いてあった魔法だったからソレを読んだり、アランに魔法のコツや感覚なんかを聞きながら私は頑張った。

そして―――初めて魔法が使えたんだぁ。

fireの字から出た火はライター程度の大きさだったけど、凄い嬉しかった。

思わずまたアランに抱きついちゃったりして・・・・・・。

あの時の感動は今でもはっきり覚えてる。

 

そしてアランは喜ぶ私を連れて魔法屋に行ったんだ。

私はよくわからなかったけどアランが店の人と一言二言交わして暫くすると、店の人が何かを持ってきてアランに手渡した。

そしてそのままアランは私の顔にソレを掛けたんだ。

 

「うん、よく似合ってる」

 

ソレは最近発売されたばかりの『風詠みの眼鏡』だった。

 

「え、アランこれは?」

「プレゼントだ。魔法成功の記念に」

「ダ、ダメだよこんな高いモノ貰えないよ!!」

 

時が経ち、ありふれた物となったモノも発売されたばかりの当時はとてつもなく高価だった。

勿論、既に愛書家となりつつあった私も欲しかった。

だけど一子供が手を出すことなどとても出来ないような値段だったから諦めてたし、断ったんだけど結局なし崩し的に貰う事になってしまった。

 

そしてアランが街を出て行く時間になってしまった。

もう遅いし今日は宿に止まればとも言ったのだが、仕事がちょっと遅れ気味だと言って出て行く姿勢を変えなかった。

そんな状態なのに自分に時間を割かせてしまって私はまた自己嫌悪に入ってしまったのだが、アランもどうやら失言だったらしく必死に慰めてくれた。

笑いながらレビィのためなら安いもんだと言われた時には顔が熱くなった。

アランを見送るために話しながら来たのだが、街の出口に着くとアランが真面目なトーンになって口を開いたんだ。

 

「それとな―――」

「え?」

「さっき自分の事をいてもいなくても同じ存在って言ってたいたがそれは違うぞ」

「・・・・・・」

「レビィが皆のことを大事に思っているように、皆もレビィの事を大事に思っているさ」

「でも私、皆みたいに強くない」

「いいじゃねーか、それでも。たとえ前に出れなくとも、影となり後ろから支える。それこそ誰にでも出来る事じゃない。何事も本当に大事なのはそういった支えてくれる存在だ。魔導4輪だって見た目がいくら立派でも中の歯車が一つでも狂えば役に立たない。だからもっと自信を持て」

 

ニカっと笑いながらそう言ってアランは街を出て行った。

 

 

 

 

△△△

 

「これが私とアランの昔の出来事。その後もマグノリアや仕事先で偶然出会ったりもしたけど」

「なるほどね、そんな事が。もしかしてレビィちゃんのチーム名のシャドウギアって」

「うん。その時聞いた話からね」

「なるほど。そんな事があったんだんね」

「まあ、他の皆もアランとは色々あったみたいだけどね」

「へー。でもその割にはアランってギルドに入ったの最近だよね。誰も誘わなかったのかな」

「ううん。私も含めて大勢が誘ったみたいだよ。私の時は『今は色んな所を旅して魔法を鍛えたり見聞を広げたい』って断られちゃったんだけど」

「私前にアランの旅を本にしたら凄い売れるって聞いたことがあるけど、話を聞く限り本当にそうなりそうね」

「あはは、実際にオファーがあったらしいよ。断ったみたいだけど。私達には偶に話してくれるから今度聞いてみなよ。小説のネタに出来るかもよ?」

 

 

そのまま2人は話を続けた。

暫く話し続けて街が夕焼けに染まりつつなった。

そろそろ帰ろうかと2人が話しを切り上げようとした時、公園に一人の人物が姿を現した。

 

「ここにいたのか」

 

今日の話の主軸であったアラン・クロスフォードその人だった。

 

 

 

 

□□□

 

「アラン何でここに?」

「ナツとグレイをシメて聞き出した。眼鏡、壊れちまったんだってな」

「うん・・・・・・。ごめんね、アランに貰った大切なモノなのに」

「違うのアラン、レビィちゃんは悪くないわ!!あれはナツたちが――」

「わかってるわかってる。周りにも聞いたしアイツらの仕業って事も聞いたよ」

「でも・・・・・・」

「俺としちゃあこんなに長い間使ってくれてたことが凄い嬉しいよ。ありがとなレビィ」

 

ポンポンとレビィの頭を撫でるアラン。

瞳を潤ませながらコチラを見上げてくるレビィの仕草に思わず抱きつきかけたが、グッと堪えて本題に入ることにする。

 

コートの内側からある物を取り出しレビィに手渡す。

それはパッと見、長方形の箱だった。

しかしレビィには見覚えのあるデザイン。

それもそのはずで件の風読みの眼鏡を入れていたケースだったからだ。

眼鏡とセットで貰ったものなので眼鏡と同じで愛着がある。

 

「開けて見な」

 

言われるままに開けてみるとそこにはレンズが直っており、フレームや塗装なんかもしっかりと修繕されたレビィの眼鏡だった。

 

「え、何でこれ?」

「最初に魔法屋に行った時に店主に聞いて預かった。そしてそのまま自宅で直してきた。だいぶガタがきてたみたいだからレンズだけでなくフレームなんかもしっかりしといたよ」

「ありがとうアランっ!!」

 

感激のあまりアランに抱きつくレビィ。

アランもレビィの背に手を回して優しくさする。

2人の周囲にピンク色の空気が充満する。

そしてレビィが顔を上げてアランを見つめる。

レビィがそっと目をつぶり、アランが顔を近づける。

そのまま2人の影がかさな――

 

「あー、ごほん!!」

 

――る前に、見事取り残されて空気となっていたルーシィの大きな咳払いが2人を現実へと引き戻した。

レビィが顔を真っ赤にしてアランから離れる。

本当はまだくっついていたかったがルーシィの前では流石に恥ずかしいようだ。

ちなみにアランは気にしていないようだ。豪胆なものである。

 

 

 

 

3人でギルドに戻る道すがら、アランは事の次第を2人に話していた。

 

「え!?じゃあ直したっていうより作り直したの!?」

「ん。まあ、そうなるかな」

 

アランはただ修復したのではなく、新しいレンズに魔法を掛けて作成したのだ。

 

「あれ?でもソレってやばいんじゃ・・・・・・」

 

ルーシィの疑問ももっともで、今回のアランの手法は商品の権利侵害に当たってもおかしくはない。そんな心配は無用とばかりにアランは2人に問いかける。

 

「2人とも風詠みの眼鏡の発明者の名前を知ってるか?」

「えっと、確かフォード社のラン・アクロスって名前だったような」

「うん。他にも色んな魔法アイテムを生み出してる天才発明家よね」

「そういう事だ」

「「?」」

 

疑問符を浮かべる2人に軽く笑ったあと、光ペンを取り出して空中に文字を綴る。

 

Ford company = Lan Across

 

そしてペンをシュッと振るとcompanyの部分が消え、他の文字が動き出した。

そうして入れ替わり完成したのは次の文字。

 

Alan = Crossford

 

「と、いう訳だ」

「「ええぇーーーーっ!?」」

「ま、とは言っても俺の研究を知人に提供しているだけさ。作っても問題にはされないけど権利はあっちのものだし」

「何かさらっと言ってるけど・・・・・・」

「うん。とんでもないことだね」

 

そのまま歩き続けてルーシィとは彼女の自宅で別れた。

レビィはそのまま一緒に歩いている。

そしてアランの自宅へとたどり着いた。

 

「さて、着いたがどうする? 泊まっていくか?」

「ううん、今日は帰るよ。一度ギルドに顔出して来る」

「ナツ達なら多分ダウンしてるぞ?」

「あはは、でも他の皆にも会っときたいし」

「そうか」

「ありがとね」

「眼鏡の事なら気にしなくていい」

「ソレもだけど・・・・・・、昔の事とかね。アランがいないと今の私はいなかった」

「それこそ気にしなくていい。アレは俺がしたくてやったことだし――」

 

最後まで言うことは出来なかった。

レビィが急に俺を引っ張り口を塞がれたのだ。――キスによって。

急なことに反応が遅れた俺にレビィはニコッと笑っていった。

 

「それでも私は救われた。ありがとうアラン。大好きっ!!」

 

そう言ってレビィは走って行ってしまった。

 

「不意打ちはずるいな・・・・・・」

 

俺の顔は夕暮れと合わせてとても赤くなっているのは明白だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

本日のボツシーン

 

アラン「特性魔改造による機能をご紹介しよう。元来の速読昨日は勿論、赤外線機能や暗視効果に望遠モード。録画モードで撮った映像を魔水晶で確認可能。更に今回のようなことがあっても大丈夫なように衝撃に対して瞬間的に簡易防御魔法を発動し傷つかない。極めつけはコレ、レーザービーム発射機能。出力MAXで打てばナツの咆哮並みの威力が出る」

レビィ&ルーシィ 「「スゴッ!!」」

アラン「ちなみに一般発売するとしたらお値段800万ほど」

レビィ&ルーシィ 「「高ッ!!」」

 

 

 

 




しばらく更新できないと思うので今回は番外編です。
レビィだけでなく他のメンバーとの出会いなんかも書ければいいなあと思っていますが今回はこんな感じになりました。


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