イーリス聖王国の魔道士がオラリオに来るのは違っているだろうか? (カルビン8)
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旅立ち

 初めまして、FEに転生しそこからダンまちに来るというお話です。細かいツッコミは勘弁してくだされ


「どうしてこうなったんだろう・・・」

オレは溜息を吐いた、日本にいた時トラックに跳ねられ死んだと思ったいつの間にか赤ん坊になっていた。それからしばらく経って今世の両親の会話を聞いてみるとどうやらここはFE覚醒の世界だということがわかった。

冗談じゃない、オレなんてただのモブだろ、よく分からんけどいきなり見せしめなんかで殺されてしまうに違いない!そういう厳しい世界なのだここは!

そう思って死にたくないから一生懸命に修行してラスボスのギムレーをみんなで協力して滅ぼしたってのに。国外追放?ふざけんな!まあ?オレは強いスキルとか強い魔法とか知ってたし?どういう事が起きるのか多少知ってたけどさ。

オレの戦い方やまるでこの先を知っているような行動をとったオレに対してビビった上の連中が騒いだ結果がこれだ。ここはもう安全じゃない、いつ殺されるかわかったもんじゃない。追放される前に自ら出てってやらぁ!けどその前に行こうと思っているとこがあるんだ。

真っ黒の建物の喫茶店だ。店の名前はヒラグモという。

「いらっしゃい・・・何用ですかな?」

 

そこには胡散臭い喋り方をする男が居た。

「旅に出ようと思ってな、挨拶にきたんだ」

「旅、ですか?追放の間違いでは?ククク・・・」

「よく知ってるな」

「腕のいい情報屋を知っていますので」

 

この男の名はヒサヒデ、神軍師であるルフレに負けず劣らずと言われた知将だ。この人には戦いで何度もお世話になった。

「オラリアとやらに行くのですかな?」

「何で知ってんだ?」

「ヘルメス殿がオラリオから来たとそう言っていたのであなたの事を知らない人達がそこにはたくさんいてここよりは過ごしやすいのではないかと思いまして」

「流石だな、その通りだよ」

 

相変わらず頭の切れる男だ、オレにもその頭脳を分けて欲しいぐらいだ。ヒサヒデとヘルメスの二人はどこか自分に似ているような気がして出会ってお互いすぐ仲良くなった。腹黒さとスケベなところがそっくりだ。

 

「それにあのアスフィという女の事が頭から離れないのでしょう?あの体つきはたまりませんなぁ〜」

 

「うっさいわ、このどスケベ!それよりだな、今まで世話になった本当にありがとう」

 

「いえいえそんな大したことはしてないのでお気になさらずに」

 

感謝の言葉を言ったオレに対し謙遜するヒサヒデ。

「では新たな旅立ちに祝して平蜘蛛で一杯どうですかな?」

 

「いいのか?」

 

「はい、特別ですがね」

 

なんとこの店の名前にもなっている平蜘蛛という茶器を使いお茶を飲ませてくれるようだ。

 

「毒とか入ってないよな?」

 

「そんなことするわけないでしょう?クックック・・・」

 

平蜘蛛の中にあるお茶を茶碗に入れ差し出してきた。

 

「苦い・・・」

 

「まだまだこどもですな」

 

どうやらまだうまいと感じられるほど成長していないみたいだ。それからどうでもいい話をして店を出るとき、店に一人入ってきた。

 

「ここにいたのかいシエン」

 

「ルフレ・・・」

 

そこにいたのは聖王の半身とも言われたルフレだった。オレとしたことがルフレの魔力を探知してどこにいるのか分かるはずなのに気づかないなんてな。

 

「止めてくれるなよ、オレはここから出ていく」

 

「君を止められるとは思っていないよ、これを渡そうかと思って」

 

ちょっと止めてほしかったとか言えない・・・。おい、ヒサヒデ、そんなニヤついた顔でこっちみんな!

 

「これは、トロンの魔道書?」

 

「うん、けどただのトロンじゃない、シエン専用にしたものなんだ」

 

分かる、この黄色の魔道書はすさまじい力を秘めている。ちょっとやそっとの奴らでは扱えないだろう。

 

「ありがとな、いってくる」

 

「気を付けてね、それと忘れないでほしい、どれだけ離れても僕たちは強い絆でつながっている」

 

「ああ、わかっている」

 

あんな大変なことに巻き込まれて何度も絶望したさ、でも力を合わせて乗り切った。未来を変えた、忘れるわけがない。

 

オレは二人に別れを告げ、食料や道具を持って異界の門まで来た。この門をくぐってしまったらもう後戻りはできない、帰ってこられる保証もないし、ちゃんとオラリオとやらの場所に行けるのかどうかも分からない。

だがそれがいい、自分の知らない場所には不安しかないのは当たり前だ、世界を救ったんだ。これからだってきっと上手くいくさ。

さあ行こう、そしてさよなら、イーリス聖王国、そして死ねイーリス聖王国上層部のやつら。そうしてオレは門をくぐった。

 




はい、読専だったオレが書いてみたものです。うん、まあなんだ、3000字ってどうやったらいくの?仕事で執筆の時間ないよ?というわけで、更新速度は気にしないでください。
エタる可能性がかなり高いです。読んでくれる人がいるのかどうかすらわかりませんが、それなりに頑張っていきたいと思います。
この作品は、異界の門をくぐったときにいろんな年代のオラリオにたどり着くifルートを考えています。行き詰ったときとかは別ルートを書くかもしれません。 
今回は初めて書くのでオレTUEEEヘスティアファミリアルートになります。
それとこのFE覚醒の世界は難易度ハードです。ルナは無理じゃないかなぁ。


名前 シエン
クラス ソーサラー
年齢 22歳 身長164㎝
顔 普通 黒髪 黒目
出身 イーリス聖王国と隣国のペレジア国の国境付近の村  
職業 元魔法研究者
服装  
 黒衣で黒いマントを着ている。背中には魔道書が入る鞄を装着していてその上にマントを着ている。

軍で一番ペレジア兵を殺害した。

ステータス カッコはダンまちでの神の恩恵なしでの大体の強さ
HP  61 (耐久とは別なので不明) 
力   9 (レベル1)                   
魔力 48 (レベル7か8)               
技  50 (レベル7か8)               
速さ 42 (レベル5)                 
幸運 50 (そんな基本アビリティはない)            
守備 38 (レベル4)                 
魔防 45 (耐久とは別なので不明)           

ギムレー(難易度ハードの時)
HP   88 
力  41                 
魔力 31              
技  38              
速さ 33                 
幸運 33                   
守備 41               
魔防 38 
これは追放待ったなしですね


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シエンについての設定

基本的に今までに書いてあるシエンの事を書いてあります。
また、ネタバレが含まれる可能性があります。回覧注意!
目次
シエンのプロフィール
覚醒でのシエン
ヒサヒデ
ヨシヒロ
エメリナ
アスフィ
ヘルメス
屍兵
匂いの箱


オリ設定
【魔法】を持っていない人は【精神力】を持っていないという設定
裏事情
なぜならば闇魔法の【リザイア】は体力と【精神力】を奪う【魔法】なのでダンまちの世界だと【精神力】が切れると【精神枯渇】を引き起こすので。ダウンしているところを【魔法】ですぐに倒せてしまうため

シエンのいた覚醒の世界
シエンのいるFE覚醒の世界線では原作で死んだか死んでいないか曖昧な人はだいたい死んでいます。そのため、ギムレーを倒す前に行けるようになるマップは行けませんし、そもそもマップがあったとしてもギムレーを倒す方が大事です。ギムレーは1ターンで倒しました。
ギムレーが滅んだことで屍兵も同時に滅んだ。(別の世界線にはいる)

魔道書
シエンの魔道書は言わば本の形をした精神力を消費する魔剣。しかも【魔力】が高ければ高いほど威力が上昇する。精神力を消費するので魔剣と違って魔道書を使って敵を倒すと【魔力】と【器用】の経験値を得ることができる。
魔道書や杖は【魔法名】をいう必要はないが気合いを入れるために思わず言っていたりする
シエンは神将器の魔道書を作れる可能性がある

水の魔道書【ウォーター】

シエンオリジナル魔法の一つ、出来上がったのがギャンレルを倒した後のイーリスの平和な2年間に開発することができた。この魔法を発動した際には魔法陣が発生しそこから水が出てくる。魔法で出来た水は飲むことができ、魔法の発動を終了しても残り続ける。まだ上位クラスの魔道書は作れていない。

岩の魔道書【ストーン】

シエンオリジナル魔法の一つ、【ウォーター】と同じ2年間に開発することができた。発動した際は魔法陣が発生しそこから自分のイメージした岩の塊が出てくる。【魔力】【器用】が高いと大きなものが作れ、細かい部分を作れるようになる。イーリスでは砦やお風呂を作っていた。
【魔力】Lv.7クラスで岩を作り出すとアダマンタイト以上の強度がある。

【ブリザー】

英雄王マルスのいた時代に存在している魔法(最低でも2000年以上前)
凄まじい冷気で敵を凍らせる
イーリスにいた時各地に残されていた資料から復元することに成功
かき氷を作る際に使用した

オリジナル魔法の杖(覚醒の世界にはないだけ)

【レスト】

状態異常を回復させる

シエンが使った場合は自身の魔法円に入っている者をも回復させる。現状は下層の猛毒を完全には解毒することはできない。


ロキルートで手に入れたもの

【炎の台座】(レプリカ)縦40センチ、横30センチの小さめの盾

8歳のシエンの体(118センチ)には大きすぎるので背中辺りに装着している。上着→盾→マント→バックパックといった感じ。
椿が作った物で材料はミスリルのみで作られている。
その盾には五つの窪みがあり、そこに時計回りに白、赤、青、緑、黒の【魔宝石】をはめこみ完成。
椿から直接貰いに行き、シエンが手にした時に【神秘】が発動して、白色の盾だったが金色の盾になった。この事で椿に【神秘】を持っている事がバレてしまい、バラされたくなくば直接契約を結ぶ事を脅・・・提案され契約する事になった。

原作2週間前ヘスティアファミリアルートで手に入れたもの

防具
【ヘスティア・バンブレーズ】
肘から手首までを守る鎧。【神聖文字】を刻んで【ステイタス】が発生している防具。
装備者が獲得した【経験値】を糧に成長、進化していく。
防具と同じヘスティアの恩恵を授かったものにしか使いこなせない(つまりベルも使用可能)


名前 シエン

クラス 僧侶→ダークマージ→傭兵→ダークマージ→ソーサラー

年齢 22歳 

顔 普通 黒髪 黒目

出身 イーリス聖王国と隣国のペレジア国の国境付近の村  

父親 ダークマージ

母親 シスター

職業 元魔法研究者

服装  

 黒衣で黒いマントを着ている。背中には魔道書が入る鞄を装着していてその上にマントを着ている。

 

軍で一番ペレジア兵を殺害した。

 

覚醒でのシエン

 

イーリス聖王国の魔道士で転生者でもある。FE世界に来た事がわかり、死なないために幼い頃から魔法の修行をして親顔負けの魔力を手に入れる事ができた。

その噂を聞いたペレジアのギャンレルがシエンの居る村を滅ぼしシエンを手に入れようとするも村の人々に妨害されて取り逃がしてしまう。

このことよりシエンはペレジアを憎み、ペレジア兵絶対殺すマンになってしまう。シエンの戦い方は単独で突っ込み敵からダメージをわざと受け、闇の魔道書【リザイア】を使うといった戦法で見たものは魔道士の皮を被ったバーサーカーの様だと怖れた。

また、新しい魔法の開発や大昔にあった魔法や杖を復元させるなどといったこともあり、魔法に関する才能はかなり高い。

しかし、平和となりペレジアと和睦する際にシエンがいると和睦はしないと言われ、その魔法の才能と戦闘力を恐れていたイーリス聖王国上層部がこれを理由にシエンを独断で追放することになってしまう。

シエンをいなくなってから13日たったころにイーリス聖王国上層部の人間が謎の急死するといった事が多発した。

 

イーリス聖王国での二つ名

【イーリスの守護者】

 

イーリス十六神将

参考 徳川十六神将

 

屍兵との戦いで活躍したイーリス聖王国出身の人物のこと

邪竜ギムレーを滅ぼした人数も16人だったため、十六神将という風になった。

 

敵対国での呼ばれ方

【イーリスの悪魔】

 

イーリスの悪魔について

 

ペレジアに捕まった第一王女エメリナを助けに行くが助けられずエメリナは自害する。

それによりイーリス軍は撤退することになる。

その時シエンは暴走、追撃してきたペレジア兵の3分の1をほとんど殲滅する。残りはヨシヒロ(後のイーリス大将軍)とサツマハヤト達と協力してほとんど全滅させた。生き延びたわずかなペレジア兵が国に戻り恐ろしげに話したのがきっかけ。

 

・フレデリクに王族に仕えるものとして恥をかかないように作法、マナーを教えてもらった。

・リヴェリア、王女には弱い。なおアスフィの事をシエンはよく知っていないので普通に接している。

・メシマズには耐性がある。

・お酒にあまり強くない、ほとんど飲まない

ヒサヒデ

ヒノモトと呼ばれる国からの転生者、クラスは神軍師またはアサシン

 

前世では悪名高かったらしいが自分を部下にしてくれた主には忠誠を尽くしていたらしい。

今世では、現代を生きた甘ったれたシエンを鍛えた師匠。なお、ヒサヒデから見ればまだまだ甘く見えるようだ。

喫茶店ヒラグモの店長で数カ月に一度、腹黒サミットなるものを開催する。

そこには、小言のうるさい男やなんでもあげちゃう男やキンカンみたいな男など現れるようだ。

シエンが出て行ったという情報を聞いたとき、サミットに来ていたほとんどの人物が黒い笑みを浮かべていたという。

 

ヨシヒロ バーサーカーまたは勇者

 

ヒサヒデと同じ所から来た転生者

前世では撤退戦において凄まじい戦果を挙げたという。

ペレジアからの撤退戦の時、単独で戦っていたシエンを援護すべく独断で殿を決行するがいつのまにか、かつての仲間たちが周囲にいた。

その時、捨てがまり戦法とシエンの転移魔法のレスキューを利用した【捨て拾いがまり】なる戦法を編み出す。

命を捨て敵に襲いかかり仕留め、殺されそうになるとシエンの多重レスキューで命を拾うという仲間は死なず、敵は死ぬ戦法。

これを行うには、死を恐れない狂気と高ステータスと転移魔法と強い信頼がないと出来ない、最強のヒットアンドアウェイを完成させた。しかもスキルとの相性も抜群にいい。

 

これにはルフレもドン引きでクロムからは二度とやるなと注意される。

しかし、この程度でやめてはサツマハヤトの名折れ。2年後に再び実行する機会があり、バジーリオが死ぬ未来を変えるきっかけにもなった。

その暴れぶりに覇王ヴァルハルトはこう言い残した。

 

「聖王クロムに過ぎたるものは二つあり、一つは悪魔のシエン、そしてもう一つは真の勇者ヨシヒロ」

 

そして覇王ヴァルハルトはヨシヒロに討ち取られた。

ヨシヒロはギムレー討伐には参加せず、イーリス聖王国に迫り来るペレジア兵を撃退する役目を引き受けた。

 

そして仲間は誰一人死なず撃退するという奇跡を起こす。(ギムレーが滅ぶ事によってペレジア兵が正気を取り戻し、撤退した。)

 

その後イーリスの大将軍になるが戦友のシエンが出て行ったことを知ると、大将軍をやめ、前世の時に居たような暖かな土地を目指し仲間と共に旅立った。

その後、妻との間に3人の男の子が生まれた。

ヨシヒロとその三兄弟は親子ではなく、まるで本当の四兄弟のようだったという。

 

エメリナ

24歳で死去

イーリス聖王国の第一王女だった。病死した父王の後を10歳にも満たないのに後を継ぎ、国の立ち直しをした。この時に無理矢理戦わせられていた人を解放した事でイーリス聖王国はかなり弱体化したと思われる。シエンはこの当時5歳で軍に所属していたがこの事で軍から出ることになる。

家がないシエンはエメリナの計らいでクロムやリズ達と一緒に住むことになる。クロム達とはこの時仲良くなる。

貴族や上層部の連中は王族と平民が一緒に住むことに猛反対したがエメリナは押し切った。このことからシエンは上層部の連中に嫌われ始めた。

平和な国を作るべく力を尽くしたがペレジアとの戦争が起こってしまい、囚われの身となってしまう。エメリナを救援に来たクロム達だったが敵の増援で逃げられなくなってしまう。エメリナは自分が助からない事を悟り、クロム達が逃げる機会を作るために戦場にいる人々に平和について説き、崖から落ちた。

この時はまだ辛うじて生きてはいたが救援に来たペガサスナイトの親衛隊を撃ち落とした屍兵(兵種 アーチャー)にダメ押しで矢を全身に射かけられ絶命する。そして遺体となったエメリナと親衛隊は屍兵に持ち抱えられ屍兵が現れた時にあった魔法陣と共に消え去った・・・

 

オラリオ

アスフィ・アル・アンドロメダ

 

原作時 22歳

 

みんな大好きリューさんの親友

 

ヘルメスの旅に付き合っていた時に突然現れた異界の門にヘルメスが突っ込んでいき、一緒にイーリスに来てしまった。

FE世界ではステイタスがうまく機能せず、転移先にいたペレジア兵に襲われそうになっていたところ、ペレジア兵絶対殺すマンと遭遇し助かった。

ヘルメス達が来たときはシエン達がギムレーと戦闘する数日前の時だった。

シエン達がギムレーを撃破するところを見たいとヘルメスが駄々をこね、飛翔靴で渋々見に行くことに。ギムレーの動きに当たっただけで即死というオワタ式を無事クリアし、ギムレーが滅びるところを見届けた。

しばらくシエンの屋敷に滞在しヘルメスと共に異界の門をくぐりオラリオに無事戻った。

ステイタスを更新したところ当然Lv.4にランクアップした。ヘルメスは大喜び、本人は「もう絶対イーリスに行かない、もうヤダ・・・」とのこと。

 

今でもいつレベルが上がったのかよく分かっていないためオリジナル要素満載になるキャラ

 

ヘルメス

 

シエンをオラリオに誘った元凶。

突然現れた異界の門に何のためらいもなく入る。ペレジア兵に襲われそうになり、神威を発動しようとするが発動せずかなり焦っていたところ、ペレジア兵絶対殺すマンに遭遇し助かった。

FE世界にいる人々がステイタス無しでも強いことに非常に驚き是非とも一人でもオラリオに連れて行けるように暗躍しようとするが、寒気を感じやめた。

そして、シエン達がギムレーを戦闘することを聞いて見に行き、ギムレーの滅びるところを見届け、シエンをオラリオに来るように勧誘する。

しばらくシエンの屋敷を拠点に覚醒の世界をドラゴンに跨り、探検する。

神竜族の王女[チキ]に会い、とあるものを預かる。お土産もたくさん買い(シエンの金で買った)アスフィと共に異界の門をくぐりオラリオに無事戻った。

 ちなみにヘルメスが暗躍していた場合、異界の門をくぐる前に抹殺されていた。さりげなく、自分自身が生き残る未来を勝ち取っていた。

 

屍兵

ギムレーの魔力によって生み出された異形の兵士であるが、大昔にはプロトタイプが作られていたという(FE 覚醒、FE エコーズより)

屍兵には特有の【魔力】を持っているため、場所をすぐに割り出すことができる。

匂いの箱 覚醒ハード以降4800G

使用すると魔法陣が現れ黒い煙と共に屍兵が出現する。ゲームではいい経験値稼ぎアイテム

全部倒したと安心していると不意打ちで現れたりする。覚醒では屍島にてクロムは殺されかけた。

 

使用した者の強さと同じか少し強いくらいの屍兵が出現、匂いの箱から黒い煙が出続ける限り屍兵が出現し続ける。魔石を食べることでより強くなるが心臓部分に魔石が出来るため弱点が増えてしまう(オリジナル設定)

 




設定の見直しって大切だと思った


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ヘスティアルート
小さなウサギと変な老人


投稿して自分で読んで見づらくて編集する。皆さんが見る前に読みやすくなるまでもうしばらくお待ちください。
ダンまちを読んでると自分の二次創作物が滑稽に見えてくる辛い


「うおおおおお!?」

 

異界の門をくぐりすぐ着くのかと思いきや不思議な空間をただひたすら落ちていく。

 

「あ!?オレの道具が!?」

 

なんということでしょう・・・落ちていくうちに不思議な力の所為で道具や食料が入ったバッグが開き散らばっていくではありませんか・・・

 

「なんでだよ!?おかしいだろ!?ちゃんと装着してたんだぞ!?」

 

誰もいないのに叫んでしまうオレ、職業柄一人でいることが多く独り言が多くなっていた。

 

「これだけは、これだけは勘弁してくれ!!」

 

オレはバッグからルフレからもらった[トロン]の魔道書(まどうしょ)を取り出し抱え込む。

 

「な、なんだよ?ぐ、ああああ!?」

 

不思議な力はオレを包み込み、その際に生じた激痛でオレは意識が途切れた。

 

 

 

「う、うわあああああああああ」

「グギャギャギャ」

 

僕、ベル・クラネルはモンスターの群れに襲われていた。

ほんのちょっとした出来心だった。ちょっとだけ村の外に出てみて、周りを見てみようと思い歩いていたらモンスターに遭遇してしまった。

 

「グギャアア!」

「ヒッ!?」

モンスターは雄たけびをあげ僕は思わず声を出してしまう。

このままでは殺されちゃう!逃げなきゃ!そう思っても足が動かない。

 

そのとき空に不思議な模様が現れそこから人が落ちてきて地面に叩き付けられた。

 

「・・・・・ッ!なんだ?ここは?オラリオってとこに着いたのか?いてて・・・」

 

全身黒ずくめの服装でマントを着た黄色い本を持った男の人だった。

 

「グギャ・・・」

 

なんだろうあの人が現れてからモンスターたちの様子がおかしい。

よく見ると震えていた、怯えているんだ。

 

「そこの子供」

 

「は、はい!」

 

「そこにいる気持ち悪い生き物はなんだ?」

 

この人はモンスターを知らないのかな?

 

「モ、モンスターです!」

 

「ふーん、襲われていたのか?」

 

いま僕はピンチなのにこの人は暢気そうにそう言った。

 

「そ、そうです!助けてください!」

 

 

 

 

目を覚ました俺の目の前には気持ち悪い声で鳴くモンスターと呼ばれる生き物に襲われている白い髪の赤い目をした、まるでウサギのような少年がいた。

 

 

助けてほしいそうなので精神力(マインド)を[トロン]の魔道書(まどうしょ)に流し込み魔道書(まどうしょ)を光らせる。

でもなんか体の調子がおかしいような?今はそれより早く始末するか

 

「ほいっと」

 

そういったオレの手のひらから複数のレーザーのような雷を出現させそのままモンスター達の頭を狙う。

当たった瞬間ジュッ!と音を立ててモンスターたちの頭はなくなった。

少年の様子を見ると呆然としていた。どうやらやり過ぎてしまったようだ、

とはいえ今の俺にはこれしか攻撃手段がないのだ。

 

「おーい大丈夫か?無事か?怖がらせてしまってゴメンな、もうちょっとうまくやれたらよかったんだけど」

 

「すごい・・・すごい!あなたはもしかして英雄なんですか!!」

 

「え、英雄?違う違う、オレは魔道士さ」

 

「でも僕のことを助けてくれました!僕にとっては命の恩人で英雄です!」

 

オレのことを大げさに褒める少年、まっすぐな目で見つめられて少しだけ照れていると

 

「ベル!無事か!?」

 

「おじいちゃん!」

 

ベルと呼ばれた少年はここに駆けつけてきた老人に抱きつく、なんだかあの老人からは変な感じがするな

 

「バカモノ!あれほど村の外には行くなといっただろう」

 

「ご、ごめんなさい、でもこの人が助けてくれたんだ!」

 

老人に叱られるベル、そしてオレに気付いた老人はベルを連れて俺に近づいてきた

 

「うちの孫を助けてくれたのは、お前さんか、ありがとう」

 

「助けてくれと言われたから助けただけです」

 

頭を下げた老人にオレはそういった。頭を上げ老人はオレの服装を見て

 

「見慣れない服装じゃ、どこから来たんじゃ?」

 

「あーそれは「空から落ちて来たんだよ!」そうなのか?」

 

オレが答えようとしたらベルが答えた。オレは気を失っていたから知らなかった。

 

「うん!空に変な模様が出てきてそこから落ちてきたんだ!」

 

「ほう、そんな不思議なこともあるのか、まあウチに来るといい、ベルを救ってくれたお礼がしたい」

 

「おじいちゃん信じてないでしょ!」

 

ベルの言ったことを適当に聞いてオレにお礼をしたいといってきた。

 

「お礼よりちょっと聞きたいことがあるんですけど、ここはどこですか?」

 

「ここは地図にも載っていない田舎の村じゃよ、ここよりずっと南に行くとオラリオという迷宮都市がある。」

 

「オラリオ!?そうか、オレはちゃんと辿り着くことができたんだな」

 

老人はオラリオがここにはあるということを教えてくれた。行ってみたいがここに来る前に食料や道具を落としてしまったため、オラリオに行く途中で餓死してしまう可能性が高い。どうしようかとオレが考え事をしていると

 

「あの、オラリオに行っちゃうんですか?」

 

「ああ、そうしようと思っているんだが食べ物がなくなってしまってな。これではオラリオに行くことができなくてどうしようかと考え事をしていたんだ」

 

「そういうことならうちの畑仕事を手伝わないか?そうしたら採れた食べ物を分けてやろう。ベルもお前さんを気に入っているようだからな、ウチにしばらく泊まって話をしてやってはくれないか?」

 

「いいのか?そんな簡単に決めて?」

 

「お前さんは悪い奴ではない、儂のカンはよく当たるんじゃ」

 

自信満々にへんなこという老人。そしてベルは目を輝かせ

 

「うちに泊まっていくの!?やったー!お話いっぱい聞かせてください!」

 

何やら勝手に話が進んでいきオレはどうやらこの二人の家に泊まることになった。

それにしてもこの老人から発するこの感じはなんなんだ?いったい何者なんだ・・・

 




シエンが辿り着いたダンまちの世界は原作より3年前でベル君が11歳という設定になっております。
FEの魔道書(まどうしょ)、ダンまちの魔道書(グリモア)、いちいち変換するのメンドクサイ


ベル・クラネル
とても素直な少年で純粋無垢、突然現れたシエンに対して興味津々な様子


謎の老人

ベルの祖父でベルの話を軽く流していたが実はシエンの正体を知っている。


シエン

イーリス聖王国の魔道士で転生者でもある。FE世界に来た事がわかり、死なないために幼い頃から魔法の修行をして親顔負けの魔力を手に入れる事ができた。
その噂を聞いたペレジアのギャンレルがシエンの居る村を滅ぼしシエンを手に入れようとするも村の人々に妨害されて取り逃がしてしまう。
このことよりシエンはペレジアを憎み、ペレジア兵絶対殺すマンになってしまう。シエンの戦い方は単独で突っ込み敵からダメージをわざと受け、闇の魔道書(リザイア)を使うといった戦法で見たものは魔道士の皮を被ったバーサーカーの様だと怖れた。
また、新しい魔法の開発や大昔にあった魔法や杖を復元させるなどといったこともあり、魔法に関する才能はかなり高い。
しかし、平和となりペレジアと和睦する際にシエンがいると和睦はしないと言われ、その魔法の才能と戦闘力を恐れていたイーリス聖王国上層部がこれを理由にシエンを独断で追放することになってしまう。
シエンをいなくなってから13日たったころにイーリス聖王国上層部の人間が謎の急死するといった事が多発した。


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シエンの力

老人とベルの家に行く途中

「そういえば名前をいうのを忘れていたな、オレはシエン」

「僕はベル・クラネルです!」

「ワシはまあ、適当にじいさんとでも呼ぶといい」

「(なんだそりゃ・・・)はぁ、わかりました」



二人の家に居候することになって数か月後、オレはベルに話をしていた

 

「というわけでマルスは無事暗黒竜メディウスを封じることに成功し、シーダと結婚し幸せに暮らしましたとさ、おしまい」

 

「あー面白かった!マルスってすごいんですね!」

 

「そうだな、きっとすごかったんだろうな(オレがゲームで遊んでた時は宝箱を開けるだけだったけどな)」

 

オレはベルに英雄王マルスの話をした、もちろん胸糞悪い点は全部カットだ、話すのにはかなり苦労したが。

 

「おい、二人とも休憩はそれくらいにして畑仕事するぞ」

 

「はーい!」

 

「わかったよ」

 

畑仕事をするのにやってきたじいさんに返事を返す。

じいさんはもっと気楽に話せと言ってきたので敬語を使わず、そのようにさせてもらっている。

さて、仕事手伝うとするか!

 

「腰イテー!」

 

「なんじゃだらしない、こっちに来る前何しておったのじゃ?」

 

「(戦いが終わってからは)部屋に閉じこもってデスクワークがデフォルトだった」

 

「・・・やれやれ、これだから若いもんは・・・」

 

「で、でふぉると?」

 

畑仕事は慣れていなくてとてもキツかった、特に腰にダメージがきた。ギムレーを倒すよりきついんじゃないのか?

 

じいさんが今まで何をしてきたかを聞いてきたから戦いのことを言わずに伝える。

ベルはどうやら言葉がわからなかったようだ。

 

「にしてもじいさんは物書きだったんだな」

 

「まあな、まあ大したものではないが」

 

「そんなことはないと思うぞ、英雄たちのことを書いてある興味深い本だった。」

 

「僕もおじいちゃんの本大好きだよ!」

 

「フフ、そうかそうか、なら書いた甲斐があったというものだ」

 

そうして畑仕事が終わり夕食が終わった後に、じいさんはベルが寝た後に自分の部屋に来るようにと、オレに言った。

 

「入るぞ、じいさん」

 

「おう、入っていいぞ」

 

じいさんに入室の許可をもらい部屋に入る

 

「なんか用か?」

 

「それはだな、ワシはお前さんがイーリス聖王国という所から来たということを知っていることについてだ」

 

「!!・・・なぜそれを?」

 

じいさんはいきなりとんでもないこと言ってきた。オレのことを知っているのはこちらにはあの二人しかいない。

 

「ワシにはヘルメスという友神がおってな、そいつが楽しそうに嬉しそうに言ったのだ、突然現れた変な門をくぐったら、イーリス聖王国という所に着き、そこで友人ができて英雄と思わしき人物にも出会ったと」

 

「また英雄か・・・」

 

「お前さんのことじゃよ」

 

「オレ?そんなわけないだろ、英雄ってのはみんなから支持されるやつのことだ」

 

「嘘じゃな、お前さんはそんな風に思っていない」

 

なんだこのじいさん、オレの嘘を見抜きやがった・・・なんなんだいったい?

 

「なんだ、ヘルメスのやつは言っておらんかったのか?神に嘘は通用しないということを」

 

「・・・神だと?じいさんが?」

 

「ああそうだ、感じておっただろう?ワシが近寄ってきたときにワシの神威を」

 

「そういうことか、あのへんな感じは」

 

どうやらあのへんな感じはじいさんが神だったかららしい、でもヘルメスの時は感じなかった。どういうことなんだろう?

 

「そんな神様であるじいさんがなぜこんなところにいるんだ?」

 

「・・・ちょっと言えない事情があってな。ひっそり暮らしておったのじゃよ」

 

「それより、オラリオに行くのじゃろう?」

 

どんな事情があるのか聞こうとしたが言いたくないのか話を変えてきた。

 

「そのつもりだけど?」

 

「お前さんのような、何にも知らなくて強い奴がそこに行くと神々が自分自身の子にしようとしてくるだろうな」

 

「まじかよ、でも追っ払えばいいんじゃあ」

 

「無駄じゃよ、神々はな自由気ままで自分勝手なんじゃよ、ワシも神だからなワシもお前さんに興味津々じゃ」

 

そして、じっとこっちを見るじいさん

 

「気持ち悪いなぁ、オレにそんな趣味はないぞ」

 

「ワシもないわい!女にしか興味がないわ!ハーレム最高!!」

 

スケベジジイじゃないか、ヘルメスと友神ということのだけはある。

 

「それでだな、お前さんワシの神の眷属[ファミリア]に入らんか?」

 

「神の眷属[ファミリア]?」

 

じいさんに説明を聞くとどうやらこの世界では神が自分の気に入った人をファミリアに加えると背中に[神の恩恵]を授けるそうだ。この[神の恩恵]を受けて経験値[エクセリア]というのを得て、背中に神々が使う[神聖文字]を神血を媒介にして刻むことで対象の能力を引き上げる、つまり強くなることができるらしい。たとえば、[モンスターを倒した]とか[魔法の修業をした]とかだ。

 

「え~どうしよっかなぁ~自分の名前も明かさない怪しいじいさんの下に就くってのもなあ」

 

どうやらオレはじいさんに気に入られ勧誘されているようだ。

 

「おまえさんには素質がある、どスケベのな」

 

「そこかよ!?力じゃねえのかよ!?」

 

「ふん、力なんぞ戦っていればいくらでも強くなれるわ!」

 

「まあそうかもしれないけど、なんだかなぁ」

 

「で、どうするのじゃ?入るのか?入らないのか?入るのであればワシの名前を教えよう」

 

「順序が逆なんだよなぁ、まぁいいやこれまで世話になってきたし話した感じ悪い神じゃないっぽいし」

 

「おお!そうか!では早速授けるとしよう、ようこそシエン。ゼウス(ワシ)のファミリアへ」

 

「やべ、ミスったわ、めっちゃやばい神だったわ。なあ、入るのやめていいか?」

 

「だめじゃ、ほれあきらめて背中を見せい!そして刻むぞ!」

 

「あ、ちょ、やめ、アーーーー!!」

 

そうしてオレの背中には雷のシンボルに跨がる鷲の絵が刻まれた

 

シエン

 

Lv.1

 

力 :I0

 

耐久 :I0

 

器用 :I0

 

敏捷 :I0

 

魔力 :I0

 

 

魔防 :D

 

《魔法》

【ミラーバリア】

・速攻魔法

・敵の飛び道具や魔法を反射する。反射する際は向きを自由に変えられることができ、いろんな攻撃も防ぐことができる。形は精神力を消費すると自由に変えられる。

・魔法を反射したとき魔法の威力が上昇する。

・空中に足場を作ったりできるが透明で見えない。

参考 餅

 

【】

 

【】

 

《スキル》

【封印】

・本来の力、スキルが出せなくなる(神の恩恵を受ける前の能力が-Lv.2、力はLv.1のまま、幸運は50)

・自分のピンチの時や感情の変動で解除可能

 

【魔法の探究者】

・魔力と器用が成長しやすくなり、限界を超える

・力が全く上がらなくなり、耐久が上がりづらくなる

 

【道具節約】

・幸運×2%で武器や魔道書の使用回数が減らない●●も減らない(新品のままになる)

 

【魔道具作り】

・(FEにある)武器、魔道書、杖を作ることができる。

 

【魔力追跡】

・生き物の[魔力]、[精神力]を覚えどこにいるのかを探知できる。レベル、魔力が上がるごとに範囲拡大。【魔導】の補正も入る。ただしダンジョン内では不安定。

・任意発動、精神力を消費しない

 

多重魔法(マルチマジック)

・複数の魔法を同時に発動、または魔法を発動しながら別の魔法も発動できる。

 

 

 

「おおーこんな感じになるのか、体に違和感があったのは【封印】の影響か」

 

「」

 

「じいさん?」

 




なんだよ・・・・(文字数)結構書けんじゃねえか・・・へへ

あ、主人公は黒髪、黒目です(いまさら)それと能力ですがドーピングアイテムも使っています。

ヒサヒデ
ヒノモトと呼ばれる国からの転生者、クラスは神軍師またはアサシン
前世では悪名高かったらしいが自分を部下にしてくれた主には忠誠を尽くしていたらしい。
今世では、現代を生きた甘ったれたシエンを鍛えた師匠。なお、ヒサヒデから見ればまだまだ甘く見えるようだ。
喫茶店ヒラグモの店長で数カ月に一度、腹黒サミットなるものを開催する。
そこには、小言のうるさい男やなんでもあげちゃう男やキンカンみたいな男など現れるようだ。
シエンが出て行ったという情報を聞いたとき、サミットに来ていたほとんどの人物が黒い笑みを浮かべていたという。
さあ、いったいどういう意味で笑みを浮かべたんでしょうねえ~


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優男と苦労人

お気に入り登録、コメントに評価、本当にありがとうございます!

あ、そうだ(唐突)シエン達がギムレーを討伐したターン数は1ターンでした。
早くしないと大陸壊れちゃーーう。



オレに恩恵を刻んでフリーズしているじいさんに話しかける。

 

「なあ、能力全部0になってるけど弱くなったって事か?」

 

「・・・・ハッ!!い、いや、そうではない、ステイタスはこれから刻んでいくもの、つまり素の能力+α(ステイタス)になるんじゃ、しかし素の能力も【封印】の影響で弱体化しているようだな、【封印】の影響でまだ出てないスキルがあるなんてどうなっとるんじゃ本当に・・・」

 

「オレも生きるために頑張ったからな」

 

「なんてやつじゃ、まあいい今日はもう遅いそろそろ寝た方がいい」

 

「おう、お休み」

 

「うむ、お休み(こりゃヘルメスと相談せねばな、田舎に置いておくには勿体なさすぎる、一度こっちに来てもらうか、シエンに会いたいかもしれないしな)」

 

「そうだ、シエンよ何か欲しいものはないか?」

 

「欲しい物?そうだなぁ、魔道書を書きたいからそれに必要な物が欲しいな。あと、水晶や魔法石、杖かな。」

 

「さらっと恐ろしい事を言うなお前は・・・」

 

「そうか?魔道書が無いとオレは戦えないから絶対必要なんだけど」

 

ルフレからもらった特製のトロンだけではあまりにも不安だ。せめて移動手段としてでも使うことのできる、風魔法(ウインド)の魔道書は作っておきたい。

 

「・・・どうやら、ワシの知っている魔導書(グリモア)とシエンの魔道書(まどうしょ)は全然違うみたいじゃの」

 

「そうみたいだな、それよりじいさん、買い物にでも行くのか?護衛しようか?」

 

オレはこの村の外のことは全然知らないが、じいさん一人だけで買い物に出かけるのは危険だからやめておいたほうがいいと思うけど。

 

「問題ない、知り合いに頼んで持ってきてもらうからな。楽しみに待っているといい。」

 

「そっか、じゃあ楽しみに待っておくよ。」

 

そうしてオレは自分の部屋に戻り眠りについた。

 

 

 

ヘルメス・ファミリア  ホーム  

アスフィ・アル・アンドロメダ

 

シエンが寝てから数日後

 

「おーい、アスフィー、なんか手紙が届いてるよ?」

 

「誰宛ですか?」

 

「えーと、ヘルメス様宛てみたい。」

 

「わかりました、私が持っていきます。」

 

やれやれ、また厄介ごとでしょうか?ヘルメス様に関わることは大体碌なことがありません。

とはいえ、ちゃんと報告しなくてはいけない、私はヘルメス様の部屋へ向かった。

 

「ヘルメス様、お手紙です」

 

「おお、ありがとうアスフィ、いったい何が書いてあるんだろう」

 

そうしてヘルメス様は読み始めた、すると顔の表情がよくなっていく。

どうやら悪いことではないようですね。読み終わって私に話しかけてきた。

 

「アスフィ!!旅に出るぞ!!」

 

「はぁ、またですか?数か月前にとんでもない目にあったのに」

 

「フフフ、聞いて驚くなよ?どうやら数か月前にあった彼がこちらの世界に来ているらしい。」

 

「!!」

 

「魔道書や変わったものを作るのに材料が足りないから持ってきてほしいと書いてあった。」

 

「まさか本当にこちらに来るなんて」

 

「そうだな、余計なことをせずに普通に誘って正解だったよ、オレは彼に会いに行きたいけどどうする?」

 

「行きます」

 

「即答だね」

 

そんなの行くに決まっているじゃないですか、私の考え付かなかった魔道具の数々、うまくいけば作っているところを見せてもらえるかもしれないですから。

 

「ふーん?そんなに彼のことが気になる?」

 

「私は彼とはヘルメス様が思っているような関係ではありません。」

 

「オレはシエンを魔道具作成者として気になるかって意味で言ったんだけど?」

 

「・・・・・」

 

「ま、まて、アスフィ!?無言で爆炸薬(バーストオイル)を出そうとするんじゃない!!」

 

変なことを言ってニヤニヤしている顔を粉砕してやろうかとすると、顔を青ざめて取り乱す主神・・・

 

「・・・はぁ、準備をして行きますよ、ヘルメス様」

 

「ソ、ソウダネ。ハヤクイコー」

 

 

 

地図にない田舎の村  シエン

 

「やあ!久しぶりだねシエン!」

 

「お久しぶりです、シエン」

 

楽しみに待ってろといわれてから十数日後

そこには、水色の髪に銀枠の眼鏡をかけた理知的な雰囲気の女性、アスフィと橙黄色の髪の胡散臭い男、ヘルメスが荷物を持ってやって来た。

ん?ヘルメスからもじいさんほどではないが変な感じ(神威)がするぞ?イーリスでは感じることはなかったのに。

 

「おい、じいさん、知り合いってこの二人のことだったのか?」

 

「そうじゃよ、ヘルメスは運び屋でもあるからな」

 

「こ、こんにちは」

 

道具の件での知り合いはどうやらこの二人のことだったようだ。

オイオイ、ベルよ、そんなに怯えんなよ、ますますウサギっぽいぞ。

 

「二人とも元気そうだな」

 

「当然じゃないか親友(マブダチ)よ!」

 

「私も会える日を楽しみにしていました。」

 

そういって笑みを浮かべる二人、美形っていいなぁ。

 

「この後どうするんだ?荷物持ってきてくれたけど」

 

「しばらくの間はこやつらはウチに泊まることになっておる。」

 

「そっか、ならオラリオってのがどんなところなのか教えてくれよ」

 

「いいぜ、代わりにウチのアスフィにシエンの作る魔道具を見せてやってはくれないか?」

 

「もちろんいいぞ、アスフィにも協力してもらったらもっと面白いものができるかもしれないから協力してくれないか?」

 

「もちろん協力しましょう。シエン、きっとできますよ私たちならば」

 

しばらくの間楽しいことになりそうだぜ・・・ゆるせベル、話はまた今度だ。

 

 

 

「ハ、ハハハ、ハハハハハハハ!!なんだこれは!!Lv.1なのに発展アビリティが発現していて!応用力の高い魔法!数多くのスキル!これで全力じゃないだって?なんなんだこれは!!ハハハハハ!」

 

「む、無茶苦茶ですね・・・シエン、これは大変なことになりますよ・・・」

 

二人が来たその夜、オレのステイタスを書いてある用紙を見て一人は大笑い、もう一人は呆れ、今後のオレが苦労するだろうと言ってきた。

 

「だから言ったじゃろう・・・ヘルメスよ、とんでもない奴を連れてきたな」

 

「ハハハ、オレの目に狂いはなかったってことさ!」

 

「これは逆に狂っているのでは?」

 

酷い言いようだ、まるでオレが狂ってるみたいじゃないか!

 

「そうじゃよ」

 

じいさん、心を読むな

 

「こんなんじゃからここに置いておくにはもったいなくての、おぬしらがオラリオに戻る時、一緒にこいつを連れてってはくれんかの?」

 

「オレは大賛成だぜ!!」

 

「ヘルメス様・・・シエン、あなたはどうなのですか?」

 

また話が勝手に進んでいくよ・・・ああ、アスフィ・・・お前だけだよ、オレの話を聞いてくれるのは

 

「オレもオラリオには行きたいと思っていた、付いて行っていいか?」

 

「「もちろん」」

 

「でも、畑仕事が忙しくなる時期はじいさんのところに戻るからな」

 

「やれやれ、そんなこと気にしなくても構わんのだがな」

 

「そういうわけにはいかない、さんざん世話になっておいて、はいさよならはないだろう。ステイタス更新する必要があるし」

 

「わかった、忙しくなってきたらヘルメス宛てに手紙を出そう、ヘルメスから手紙を貰ってくれ」

 

そんな感じでオレのオラリオ行く方法は決まった。そうして次の日から魔道具作りが始まった。

 

「よし、完成だ!!」

 

「うまくいったでしょうか?」

 

魔道具作りをしてしばらくたったある日、オレの目の前には出来上がった緑色の魔道書があり、アスフィが質問してきた。

 

「ちゃんと機能してるぞ。こいつは風魔法(ウインド)系統の魔道書で、これ一冊で【ウインド】、【エルウインド】、【ギガウインド】を放つことができる。」

 

「これ一冊で三つも魔法が・・・」

 

「ただし、普通の魔道書より少し多めの精神力を使う必要がある」

 

アスフィは戦々恐々としていた。分からなくもない、オレもまさか本当にできるとは思わなかったしな。

 

ゲームでは一人最大5つしかアイテムを持つことができなかった。そうなるとどうしても持っていける魔道書の数は限られてくる。回復薬を持てばさらに減る。

もっとたくさん魔法を使う方法を考えたところ、同じ属性の魔道書の内容をひとまとめにして、似ている部分、共通している部分を省略してみたのだ。

だから1.5倍ほど分厚いし、その分精神力の消費も多くなった。むしろ1.5倍の分厚さで済んだことに驚いた。もっとうまくやれば通常のより優れた魔道書を作ることができそうだ。

 

「私はあなたの魔法に関する才能が恐ろしいです。」

 

「オレ一人じゃ無理だったよ、アスフィが手伝ってくれたからできたんだ」

 

アスフィにも見てもらってアイディアをもらったり、【神秘】を使ってもらってできた魔道書だ。

 

「アスフィ」

 

「はい」

 

「ありがとな、おかげでとんでもないものができた。」

 

「いえ、こちらこそ近くで見せてもらって勉強になりました。」

 

「そうだな、お礼に一冊書いてやるよ、なんかリクエストない?」

 

「そうですね・・・では、水の魔道書とかできますか?」

 

「もちろんできるぞ、任せておいてくれ」

 

水か、イーリスでも最初に作ったオリジナルの魔道書は水魔法だったな。軍では水はとても大事だったからな。その次は岩魔法を作ったっけ。

 

こうして楽しい時間は過ぎていき、いよいよオラリオに行く日が来た。

 

「シエン、気を付けて行ってくるじゃぞ」

 

「いってらっしゃい!シエン!」

 

「行ってくるよ、二人とも元気で!」

 

 

 




やべーよ、ベル君めっちゃ空気じゃねえか・・・

今回は書いててとても楽しかったぞ、オリ設定書くのってなんか楽しい。

アスフィ・アル・アンドロメダ

19歳

みんな大好きリューさんの親友

ヘルメスの旅に付き合っていた時に突然現れた異界の門にヘルメスが突っ込んでいき、一緒にイーリスに来てしまった。
FE世界ではステイタスがうまく機能せず、転移先にいたペレジア兵に襲われそうになっていたところ、ペレジア兵絶対殺すマンと遭遇し助かった。
ヘルメス達が来たときはシエン達がギムレーと戦闘する数日前の時だった。
シエン達がギムレーを撃破するところを見たいとヘルメスが駄々をこね、飛翔靴で渋々見に行くことに。ギムレーの動きに当たっただけで即死というオワタ式を無事クリアし、ギムレーが滅びるところを見届けた。
しばらくシエンの屋敷に滞在しヘルメスと共に異界の門をくぐりオラリオに無事戻った。
ステイタスを更新したところ当然Lv.4にランクアップした。ヘルメスは大喜び、本人は「もう絶対イーリスに行かない、もうヤダ・・・」とのこと。

ヘルメス

シエンをオラリオに誘った元凶。
突然現れた異界の門に何のためらいもなく入る。ペレジア兵に襲われそうになり、神威を発動しようとするが発動せずかなり焦っていたところ、ペレジア兵絶対殺すマンに遭遇し助かった。
FE世界にいる人々がステイタス無しでも強いことに非常に驚き是非とも一人でもオラリオに連れて行けるように暗躍しようとするが、寒気を感じやめた。
そして、シエン達がギムレーを戦闘することを聞いて見に行き、ギムレーの滅びるところを見届け、シエンをオラリオに来るように勧誘する。
しばらくシエンの屋敷を拠点に覚醒の世界をドラゴンに跨り、探検する。
神竜族の王女[チキ]に会い、とあるものを預かる。お土産もたくさん買い(シエンの金で買った)アスフィと共に異界の門をくぐりオラリオに無事戻った。
 ちなみにヘルメスが暗躍していた場合、異界の門をくぐる前に抹殺されていた。さりげなく、自分自身が生き残る未来を勝ち取っていた。


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オラリオに到着、いきなりハプニング発生!?

太陽が顔を出していない朝、オラリオの正門付近にて

「ヘルメス、じいさんのファミリアの事って言わないほうがいいんだよな?」

「そうだねぇ、バレたら大変なことになるかも?あ、それと二強ファミリアに目をつけられないようにね?(無理だろうけど)」

「神ロキと神フレイヤだっけ?問題ないだろ?まあ、気をつけるよ」

「それとオラリオに入る際には身分証明が必要になるからバレたらまずいから無断侵入でよろしく!!ダンジョンに潜ることと魔石の換金のことはアスフィに任せてくれ!また後で合流しよう!さらば!!」


「・・・ハァ!?アスフィなら頼もしいけど、そこはオレに任せてくれ!じゃないのかよ!!」

「シエン、嫌でも慣れますよ。この理不尽さに(虚ろ目)」

「向こうでも破茶滅茶だったけど苦労してんだな・・・つーかどうしよう早速問題発生じゃないか!!」



大変なことになった、ヘルメスはオレに無断侵入しろと言ってきた。捕まったらどうしよう、オレが頭を抱えていると

 

「シエンこれをあなたにこれを差し上げます」

 

「これは?」

 

漆黒兜(ハデス・ヘッド)、これを被ると透明状態になります。しかし、匂いや気配は隠せません。オラリオに入ってからの事は私に任せてください、それでは御武運を」

 

「アスフィ・・・(トゥンク)アスフィの優しさが心に染み渡るでえ・・・」

 

「何を言っているんですか・・・私とヘルメス様は正門から、シエンはどうしますか?」

 

アスフィの優しさに頼もしさに心を堕とされながら考える。

 

「オレは・・・このオラリオを囲む市壁の上から侵入する」

 

「かなりの高さですよ?」

 

「こんな時に役に立つのがこいつさ」

 

そう言ってオレはマントをめくり、背中に装着したバッグの中を見せる。中には緑の分厚い魔道書が入っている。

 

「こいつを発動させてその反動で上に行く」

 

「無茶苦茶ですね」

 

「頭の悪いオレにはこれしか思いつかなかった」

 

「(スルー)これはオラリオの地図です、ここにヘルメス・ファミリアがあります、ここを目指してください」

 

「ここね、了解!また後で!」

 

 

オレは地図を貰いアスフィと別れ、正門から離れた所に行った。

 

「さーてとまずはこいつからだ」

 

オレは漆黒兜(ハデス・ヘッド)を被り、背中のバッグの中にある緑の魔道書に精神力を流し光らせ、【ウインド】を発動し、反動で体を浮かして

 

「その次にこれ」

 

【エルウインド】を発動させて強い風を起こし、一気に体を上昇させる。

 

「はい到着っと」

 

あっと言う間に市壁の上に到着する、楽勝だな!さて、ヘルメス・ファミリアに向かおうか・・・!?

なんだ?この人とは違う変わった魔力は?オレは顔を横に向けると離れた所に

 

「・・・・・」

 

金髪金眼の少女がこちらを見ていた。手にはかなりの業物の剣を持っている。鍛錬中だったのか?

この子、かなり強いのか?バレているのか?わかんねぇ

 

「・・・・・」

 

そ、そんなことないよな?な、何故こちらに来る!?なんで走って来る!?逃げるしかねぇ!!

オレは市壁から飛び降りオラリオに入った。

 

くっそ!全然引き離せない!それどころかどんどん距離が縮められていく!?なんて速さだ!だかオレは捕まるわけにはいかない!

 

よく見ると朝日も出てきたな、上手くいくか分からないが仕方ねえ、魔法を使ってみるか!

それにしてもあの少女ずっと無表情だな、怖えよ、ペレジア兵もオレに追われている時こんな感じだったのか?まあ、あいつらのことなんざどうでも良いが。

 

オレは目の前のT字路の左に行く、そして少し行ったところでそして少女も現れ突っ込んで来る。

 

「ミラーバリア!!」

 

少女の少し前にバリアを張る、そして反射する対象は太陽の日差し!光の角度も変えて顔面に食らわせる。

 

「!?、ッ〜〜〜〜〜!?」

 

よし、目くらまし成功!!で、突っ込んで来たよな?

ゴツン!!とバリアにぶつかり鈍い音がした。

 

名も知らない少女よ、お前の速さは素晴らしかった!だが、しかし、まるで全然!オレを捕らえるには程遠いんだよねぇ!

魔力は覚えた、もう会わねえからな?じゃあな!

オレは少女が痛みに悶えている間に精神力を消費し、少女を閉じこめるようにバリアを変形させて再び逃走を開始する。

 

かなり離れた後に遠くから音がしたがなんだったんだろうか?

その後バリアを解いた。

 

 

 

T字路

アイズ・ヴァレンシュタイン

 

「・・・痛い」

 

ぶつけた頭を触る、おそらくたんこぶが出来ていると思う。

私は怪しい気配を感じて、誰かを追ってみたけど魔法を使われ、逃げられてしまった。逃げられる際、妙に馬鹿にされたような気がして、イラっとした。

 

ぶつかった透明な何かに手で触れる、とても硬くL v.5の私がぶつかっても傷一つついていない。リヴェリアの防御魔法とどっちが硬いだろうか?

しばらく待っても消滅しない、入ってきたT字路から出ようとすると何かにぶつかった・・・

 

「・・・・・!?」

 

閉じ込められた!?上から出られるだろうか、いや、無理だろう。

かなり優れた魔法だ、そんな隙はないはず・・・

とはいえこのままだとここから出ることができない、姿も分からない何者かに馬鹿にされたような気がして腹が立ってきた、これくらいも壊せないの?と。

 

目覚めよ(テンペスト)

 

風を発生させる、ここから出るにはこれを壊すしかない、そう決めた。私は負けるのが嫌いなのだ。剣に風を付加させ、見えない何かに突撃する。

 

「リル・ラファーガ!!」

 

しかし、アイズは苛立ちにより忘れていた。この見えない何かは光を反射した事を・・・

 

必殺の一撃はビクともせず、後からやって来る暴風はバリアに触れ威力が上がり、バリアの中を暴れ回る。例えるなら室内に突然竜巻が発生した感じだ。

アイズは、防御しようとするが間に合わず自分自身の魔法にやられた。まさか、母の風(エアリエル)にやられるとは思ってもいなかった・・・

暴風は収まり、バリアは解け、何か聞こえたような気がした・・・

悔しいでしょうねぇ、と。

 

ヘルメス・ファミリア

 

シエン

 

無事(?)ヘルメス・ファミリアに到着し、ヘルメスの眷属の人に案内されヘルメスの部屋に行く。

 

「まったくひどい目にあったぜ・・・」

 

「何かあったのかい?」

 

「市壁の上にいた金髪金眼の少女に見つかって追いかけられた・・・」

 

「さすがのフラグ回収力だね」

 

「シエン・・・どうやらあなたのオラリオでの冒険は終わってしまったようですね」

 

「え、なんで?」

 

「その金髪金眼の少女・・・おそらくは、アイズ・ヴァレンシュタイン【剣姫】と呼ばれていて、ロキファミリアのLv.5、神ロキのお気に入りです。」

 

「」

 

なんということだ・・・どうやらオレはとんでもないことをしてしまったようだ。

 

「こうなっては仕方がないね、オレにも責任があるオレが何とかしよう」

 

「ヘルメス?」

 

「オレはギルドの取り仕切っている神にコネがあるのさ、そこでシエンを冒険者として登録させよう。けど、ギルドの厄介ごとを手伝うことになりそうだけど」

 

「いやだけど、仕方ないか・・・じいさん、恨むぞ、オレが改宗する場合はどうなるんだ?」

 

「そこは本当の意味で冒険者として認められるから、厄介ごとはしなくてもよくなると思う」

 

「思う?」

 

「思おう、そもそもこんな事態あったことないからわからないんだ。昼ごろにでもギルドに行って登録しに行こうか」

 

かなり不安だがなんとかやっていけそうだ。

 

「シエン、宿屋はどうするんですか?」

 

「なんか適当に探すよ、世話になりっぱなしだし」

 

「水臭いじゃないか!!親友(マブダチ)!!ウチにいるといい!!」

 

「いいのか?」

 

「もちろんさ!そのほうがおもしろ、ンンッ!向こうでも俺たちもシエンの屋敷で世話になったんだ、自分の家だと思ってくつろぎたまえ!!」

 

こうしてオレはヘルメスのところに世話になることになり、ギルドに行って冒険者になることができた。

 

 

ギルドの本部地下、地下神殿 昼ごろ

ヘルメス

 

オレはシエンを冒険者にする為にウラノスに会いに来た。

 

「やあ、ウラノス久しぶり」

 

「ヘルメスか、何用だ」

 

「ちょっと頼みごとがあってね、知っているかもしれないけど今日の早朝に何者かがオラリオに侵入したことを知っているかい?」

 

「それなら知っている。【剣姫】が何者かに襲われ大けがをしたと噂になっていたからな」

 

「なら話は早い、その人物なんだけどオレの知り合いでね、このオラリオに滞在したいみたいなんだ。それでダンジョンに入る許可と魔石の換金の許可がほしくてね」

 

「・・・・・」

 

「もちろんタダとは言わないぜ?ギルドの裏の仕事を手伝ってくれるように了承を得た、使える駒は多いほうがいいんじゃないのかい?」

 

「・・・・わかった、手配しよう」

 

「よろしく頼むよ、ああ、正式に冒険者になる時は裏の仕事は勘弁してほしいみたいだ」

 

「・・・・善処しよう」

 

「(すまない、シエン)さて、オレはこれで失礼するよ」

 

さあ、イーリスの英雄よ、君の冒険を俺に見せてくれ!!

 

 

 

ロキファミリア  朝の10時頃

 

アイズ・ヴァレンシュタイン

 

私は重い体を引きずりなんとかファミリアに戻ることができた。そこには、ロキとリヴェリアがいてケガをした私を見て血相を変えて近づいてきた。

 

「ど、どないしたん、アイズたん!?そないな怪我して!」

 

「ダンジョンに潜っていたのか!?しかし、時間的にもそう深い階層に潜ってはいないな、何があった?」

 

「わからない、市壁を越えてきてオラリオに誰かが入ってきて、追いかけたらやられた。」

 

「「!!」」

 

「都市外の冒険者か、しかし第一級冒険者のアイズを倒すなど考えられないな」

 

「そんなことどうでもええ!!ウチのアイズたんが傷物にされたんや!!この落とし前は必ずつけたる!!さ、アイズたん、けがの手当てするで!」

 

そうしてリヴェリアの回復魔法で治療してもらった。そうして、フィン、リヴェリア、ガレス、ロキが集まり私はどんなことがあったか話した。

 

 

 

「つまりLv.5のアイズたんの攻撃にビクともしない透明な壁が現れ、風を反射したちゅーわけやな?」

 

「うん」

 

「とんでもない魔法じゃのう」

 

「とんでもないどころじゃないぞ、ガレス。私たちのようなエルフにとっては天敵のようなものだ」

 

「ンー、なにかその人物についてわかるものがあるといいんだけど、アイズ何か知らないかい?」

 

「わからない、【ミラーバリア】って聞こえた、声は男の人だったと思う」

 

「魔法名だけか?詠唱は?」

 

「してなかった」

 

「ますますとんでもないな、フィンどうする?」

 

「その男の正体が目的が分かるまで街に出るときは団体行動させるよう指示を出そう、それと」

 

「どうした?」

 

「僕の親指が疼くんだ、これから先このオラリオでとんでもないことが起きるかもしれない」

 

「ガッハッハ!!なにを今更!とんでもないことなら今まで数えきれないほどたくさんあったわ!!」

 

「確かにそれもそうだね、でも用心しないと、アイズ?」

 

「・・・今度会ったときは必ず勝つ」

 

 




シエンがオラリオに侵入したことはフレイヤも知っています。

オレにフレイヤ様のことを書くなんて畏れ多くてできない(魅了済み)

追加情報

シエン

身長 164㎝
イーリス聖王国での二つ名
「イーリスの守護者」

敵対国での呼ばれ方
「イーリスの悪魔」

アイズ

13歳 L v.5

市壁の上で鍛錬していたところ、シエンと遭遇する。そして、追いかけるがまんまと、してやられ逃げられてしまう。

大怪我をしてリヴェリアに治療してもらったがたんこぶだけは治していない。シエンとの再戦をする為に次の日からオラリオ内を歩き回ることが多くなった。しかし、シエンにスキルの効果で場所を把握されており出会えない。


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オラリオの恐ろしい人達

2次創作を始める時はダンメモのログインボーナスでもらった星4チケットでロキが3回、ヘルメスが1回、ウラノスが1回だったので最初はロキルートを考えていました。
てか、アシストキャラ出づらいはずなのになんで・・・全部アシストなの・・・

魔力の追跡の設定ちょっとミスったかも
精神力って漏れ出してくるのかな?
魔力で見つけているのか、精神力で見つけてるのかわからなくなってきた。とりあえず魔力ってことにしとこ


オラリオに来て10日ほど経ったあたりにあの少女がやられたという噂が聞こえなくなって来た。

まだまだ油断はならないが出来るだけあの少女の魔力を感じ取れるギリギリの位置を保ち続けている。

あの少女がダンジョンに潜ったら、うまく探知することができないな。

 

どうやらダンジョンでは何かしらの力が働いているのだろうか?二人に聞いてみると

 

アスフィは言っていた。ダンジョンは生きているのだと、ヘルメスは言っていた。神ウラノスの祈祷によりダンジョンからモンスターは出てこないのだと。多分そこらへんが作用しているんじゃないかな。

 

「だと思うんだけど、どう思う?リューさん?」

 

「いきなりどう思う?と言われても訳がわかりません」

 

「ま、そうだよね。アルヴの水お代わり」

 

「かしこまりました」

 

昼頃、オレが今いるのは豊饒の女主人という酒場で食事をとっていた。オラリオに着いてから次の日にこの店を見つけてから毎日来ている。

食器を運んでいた薄緑色の髪をした空色の瞳のエルフ、リュー・リオンさんに質問した、すると真面目に返答してくれた。そのあと、アルヴの水を持って来てくれた。

 

「どうぞ」

 

「ありがとう、あーうまい!やっぱいいねこの水!」

 

「どうして酒場なのにお酒ではなく高い水を飲むのですか?」

 

「あーそれはね、お酒は飲めないし飲まないようにしてるんだよ」

 

「なぜ?」

 

「魔道士たるもの、いついかなる時も万全の状態でいるべし、これオレんとこでの規則なんだ」

 

「それはいい心がけですね」

 

「でしょ?でも、酒好きな魔道士にとってはちょっときついかなとは思うけど」

 

この規則はオレの魔法の先生に言われたことだ。ちなみに先生は大の酒好きでこの規則のことを言いながら酒を飲んでいて説得力のかけらも無かった。

 

それに高いこの水なんだが、これはイーリス聖王国で飲んでいた水とどこか似ているのだ。

 

「魔道士ですか、シエンさんは魔法を使えるんですか?」

 

「まあね、女将さん!料理美味しかったです、お金ここに置いときます!」

 

「あいよ、また来な坊主!リュー!坊主を店の出入り口まで連れて来な!」

 

「はい、ミア母さん」

 

オレは店の出入り口まできた、そしてリューさんが小声で話しかけてきた。

 

「シエンさん」

 

「ん?」

 

「あなたは何者なんですか?」

 

「冒険者だけど?」

 

「とぼけないでほしい、あなたのマントからは人の血生臭い匂いがする。」

 

「・・・・・」

 

「私の友人は、とても鼻がいいのでわかってしまう、それも一人や二人ではないたくさんの人の血の匂いがすると。そしてその目、あなたは私と同じ目をしている、復讐者の目だ」

 

「シエンさんあなたは「おーい!シエンここにいたのかい?」・・・」

 

オレはリューさんに問い詰められている時、ヘルメスの声が聞こえた。

 

「お?なんだい?リューちゃんとデートの約束でもしているのかい?アスフィに言っちゃおうかなー」

 

「そんなんじゃねえよ、ヘルメス。すまんなリューさん、また今度食べに来るよ」

 

「・・・またのご来店お待ちしています」

 

そう言ってオレは豊饒の女主人を後にした。メインストリートを歩いている最中ヘルメスに言う。

 

「助かったよヘルメス」

 

「なに、お安い御用さ」

 

「なぁヘルメス、リューさんはなんかあったのか?」

 

「まあね、けどもう終わったことさ。デリカシーの無い男は嫌われるぜ?」

 

「そうか、覚えておく」

 

「おいおい、随分と素直じゃないか」

 

「誰だって知られたくないことは一つや二つあるもんだろ?オレにだってある、ヘルメスなんてありまくりだろう?」

 

「まあね」

 

そう、誰だって知られたくないことはあるのだ。なら聞かないほうがいい、それにリューさんには友人がいる。

誰かに聞いて欲しくなったらその友人に言うだろう、部外者であるオレには関係の無い事だ。

 

変わった魔力が動き出した。あの少女、魔力制御に慣れてきたか、魔力を抑えて少しずつだけど探知に引っかかりにくくなってきている。たまたまこちらに歩いてきているだけだと思うが離れたほうがよさそうだな。

オレのスキルのことは知らないはずなんだけど頭のいい人がいるのか?

 

「・・・近づいてきてるな」

 

「アイズちゃんかい?」

 

「そうみたいだ、またホームで会おう」

 

「人気者は辛いね」

 

「代わってくれないか?」

 

「遠慮するよ」

 

オレはヘルメスから離れ最近見つけた、北西のメインストリートの路地裏の地下にある魔法関連の道具を扱う店へと向かう。

 

 

 

 

「やれやれ、彼も大変だねぇ」

 

「お?なんや、ヘルメスやないか?オラリオにおるなんて珍しなあ」

 

「やあ、久しぶりロキ、アイズちゃん」

 

「・・・こんにちは」

 

「なあ、聞いたいことがあるんやけど」

 

「どうしたんだい?」

 

「ここ最近、怪しい奴見なかったか?」

 

「怪しい奴?最近噂の?」

 

「せや、ウチのアイズたんに大怪我をさせおったからに落とし前をつけさせようと思っとるんや!」

 

「大ケガ!?女の子にケガをさせるなんて、なんてひどい奴なんだ!!」

 

「せやろ!だからこうして団員達で探しとるんやけど姿がわからんから苦労しとるんや、なんか知らんか?」

 

「最近戻ってきたから知らないな、オレ用事があるから。それじゃあねロキ、アイズちゃん」

 

「まてやこの腹黒神」

 

ロキは薄く目を開き、ドスの効いた声を出しヘルメスが去るのを止める。

 

「調べはついとるんや、自分らが帰ってきた時にそいつは現れたんやそんときに侵入してきたんやろなぁ。」

 

「それにギルドの方に行ったら普段見かけない人、黒ずくめの男が来たっていうとったで、自分何か知っとるやろ?さっさと言えや」

 

「・・・お願い、します・・・」

 

「被害者のアイズちゃんにそう言われたら言わないわけにはいかないな。ほとんどバレているなら直接顔を合わせて話をさせたほうがいい、か」

 

「なんや、やっぱり知っとるんやないか!どんな奴なんや!」

 

「英雄さ」

 

「英雄やと?」

 

「本人は違うって言ってるけどね、オレは確信している」

 

「一度全てを失い、怒り狂い、また新たにできた大切な人達を守るために己が傷つくことを躊躇わず戦い続け、巨悪にも打ち勝った」

 

「・・・・・」

 

「余りにも強すぎてそこから追い出された、そんな英雄さ」

 

「名前はなんて言うんや」

 

「名前はシエン、イーリスの悪魔と呼ばれた最強の魔道士さ」

 

「・・・シエン」

 

「ハッ!!なんたらの悪魔とか知らへんけど最強の魔導士はウチのリヴェリアや!今度ウチのホームに来るように言うたってや」

 

「わかったよ」

 

 

 

北西メインストリートの路地裏の地下 レノアの店

 

何やらオレの知らないところでまた話が進んでいるような?何か寒気がするな。今はそれよりお店に入ろう。

 

「こんにちは、レノアさん」

 

「ヒッヒッヒ、よう来たねぇ坊や」

 

そこには黒いローブを着た白髪のまさに魔女って感じのお婆さんがいた。ここのお店にはオレが作る道具の材料が結構ある。今はほかに客がいないな。

 

「お店の品見せてもらっていいですか?」

 

「ああ、構わないよ、気に入ったの買っていきな」

 

「お金に余裕がないから素材だけで勘弁してください」

 

「お金になりそうな物は持っているじゃないか、坊やの持ってる魔道書とやらが」

 

「これは大切な物なので本当に勘弁してください」

 

「ヒッヒッヒ、あたしは諦めないよ」

 

このおばあさんはかなりの魔法の使い手だ。出会った時、背中にあるものはなんだと言われ、魔道書を見せると目を見開き、それをよこせと言ってきた。もちろん渡せないので断った。

 

いつか、時間ができた時に欲しいと言ってきたやつを作って渡そうかと思っている。この店に飾ってある魔道具にはとても興味があるからそれと交換してもらおう。

ん?何やら大きな魔力が近づいてくる。今は地下にいる逃げられないな。

 

「レノアさん、今日誰かこの店に来るんですか?」

 

「なんだい、分かるのかい?大した坊やだね。そうさ、毎度毎度杖の修理にやって来る困った客が来るのさ」

 

「邪魔をする、レノア、杖の調子が悪いみたいでな見てくれないだろうか?」

 

「わかったよ、もっと大切に扱っておくれよ」

 

「すまない」

 

お店に来たのはなんとまあ、綺麗で気品のある深緑の長い髪の翡翠色の目をしたエルフだった。

・・・・・なんだかイーリスの第1王女様を思い出すな

 

「先客が居たのか?」

 

「そうさ、この坊やはなかなかのやり手だよ、お前さんが来ることをわかっておったようだしね」

 

「ほう・・・」

 

オレの方に近寄って来たエルフさん、なんだろうひれ伏さなきゃいけない気がして来たぞ。

 

「はじめまして、私はリヴェリア・リヨス・アールヴ、レノアと話していたところすまないな」

 

「あ、ああ、いえ大したこと話してなかったのでお気になさらず」

 

「そんなわけないだろう、あたしはこの坊やと大切な話をしていたのに、坊やこのエルフは王族で冒険者になっている変なエルフだよ」

 

「レノア!余計なことは言わないでくれ」

 

おばあさんは仕返しと言わんばかりエルフさんの事情を話してきた。

それよりも、お、王族だとおおお!?普通に立っている場合じゃねぇ!!オレはその場でひれ伏した。

 

「無礼な態度誠に申し訳ございません!どうかご容赦を!」

 

「あ、頭を上げてくれ、今は立場としては同じ冒険者なのだ、そう硬くならなくていい」

 

オレの行動に驚いたのか、動揺しているリヴェリア様。

 

「ヒッヒッヒ!こいつは面白いものが見れたねぇ、リヴェリア、新しい従者が一人増えたねぇ」

 

「いい加減にしろ、レノア!・・・君の名前は?」

 

「わた、オレはシエン。元イーリス聖王国の魔道士です。」

 

オレは立ち上がり返事をした、偽ることもできたが同じ冒険者だと言ってきたこの王女様になんでか嘘はつきたくなかった。

 

「イーリス聖王国?聞いたことがないな、レノアは?」

 

「あたしも聞いたことがないねぇ」

 

「シエン、いつ来たんだ?」

 

「えーと、10日ほど前です。」

 

「・・・そうか、その時ウチの子が怪我をしたんだが犯人がまだ見つからなくてな、何か知らないか?」

 

そう言ってこちらを微笑んで見てくるリヴェリアさん、オレの背中には冷や汗が流れる。

 

「いえ、知らないです、サヨナラ!!」

 

嘘をつきたくないと言ったな?あれは嘘だ。そして、逃げようとするが、逃すまいと手を強く握られ、リヴェリアさんはこう言った。

 

「ちょっとウチまで来てもらおうか」




イーリス聖王国 喫茶店 ヒラグモ

ヒサヒデ
平蜘蛛を磨きながら
「(あの、甘ったれはどうしておるかのぅ、女に甘く、その上王女にとんでもなく弱いからの、ま、目の前で自殺でもされたら誰でも傷つくか、ワシは違うけどな?クックック)」


シエンのいるFE覚醒の世界線では、原作で死んだか死んでいないか曖昧な人はだいたい死んでいます。そのため、ギムレーを倒す前に行けるようになるマップは行けませんし、そもそもマップがあったとしてもギムレーを倒す方が大事です。


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イーリスの悪魔

怪しげな魔道士が現れた!!

アイズ

戦闘コマンド

戦お?
戦お?
戦お?
戦お?

ダンメモの子供になるイベントはキャラ崩壊が凄まじくめっちゃ笑った

【魔法】を持っていない人は精神力を持ってないというオリ設定でいきます。
大丈夫かな?矛盾点出てこないかな、不安だ


オレ、シエンは今ロキ・ファミリアにいます。そして目の前には

 

「・・・・・戦お?」

 

戦いたくて仕方ない戦闘中毒者がいた。こうなってしまったのは少し前のことである。

 

 

 

オレはリヴェリアさんに手を掴まれ、ロキ・ファミリアの門前に着いた。ここまでくる途中、いろんな人に見られて目立つのなんの困った事になった。

 

「副団長!お疲れ様です!!」

 

「門番の仕事、ご苦労。さ、開けてくれ」

 

「あの、そのヒューマンは?」

 

「なに、知り合いだ、逃げようとしたから引っ張って来た」

 

「わ、分かりました。開門!!」

 

そう言って門が開き、門をくぐる。そこには、城のようなものが建っており、訓練場みたいな所もあった。

 

「随分大きい建物ですね・・・」

 

「ロキの趣味だ、人もそれなりにいるから大きくせざるを得なくてな・・・どうした?」

 

「・・・いえなんでも」

 

立ち止まったオレにリヴェリアさんが話しかける。変わった魔力がこっちに近付いてくる、帰って来るのか?

 

「アイズの居場所がわかるのか?」

 

「ええまあ」

 

「そうか、とんでもない力だな」

 

「そんなことないですよ、練習すれば誰でもできますって」

 

「あの少女に魔力の制御を教えたのはリヴェリアさんですか?」

 

「ああ、その通りだ、しかし居場所がバレて君に会えなかったようだがな」

 

「結構近くまで来るようになってヒヤヒヤしましたよ」

 

そんなことを言っていると金色の髪の小さな少年がホームの前に立っていた。

 

「リヴェリア、お帰り、用事は済んだかい?」

 

「フィン、ただ今戻った。用事は済んだ、その時アイズを倒した犯人を見つけた」

 

「ど、どうも」

 

「はじめまして、詳しい話は後で聞くよ。それとリヴェリア、そろそろ手を離してもいいんじゃないかい?もう逃げられないだろうし」

 

「そうだな」

 

そう言って手を離された。柔らかい手だったなぁ、でもどこにあんな力があるんだ?オレより力あるだろ、なんか凹むわ。

 

「今帰ったでー、ってなんやこいつ?」

 

「・・・ただいま」

 

「「おかえり二人共」」

 

なんかエセ関西弁喋る、朱色の髪をした女性とあの時の少女が帰って来た。神意を感じる・・・この女性は神か。

 

「黒ずくめの男、こいつか!ウチのアイズたんを傷物にしてくれおったのは!!」

 

「き、傷物!?違う違う、そんな事してないですよ!」

 

「アイズは君の魔法で大怪我をしたんだよ」

 

「怪我?オレは防御魔法を使っただけだけど、もしかして魔法とか使った?」

 

「・・・(コクリ)」

 

あらかわいい、ってそうじゃなくて

 

「ごめんな、あれ反射するんだわ、バリアはもう少ししたら解除するつもりだったけど待てなかったか」

 

「自分、ウチのアイズたんに怪我させてどう責任とってくれるんやろなぁ!!」

 

「え、えーと、あの、そもそもあなた誰ですか?神様だという事はわかるんですけど」

 

「なんや自分、ウチのこと知らんのかいな、ウチはこのロキ・ファミリアの女神のロキや!!」

 

「ロキ?男神の名前・・・なんで女神なんだろう?」

 

オレは疑問に思った事が声に出てしまった。

 

「「あ」」

 

「・・・ほう、自分よほどの命知らずみたいやな・・・」

 

「え?」

 

「アイズたん!!リベンジマッチや!!こんなんボコボコにしたれぇ!!」

 

「・・・うん、・・・シエン」

 

「な、なにかな」

 

「戦お?」

 

 

そんなことがあって、現在訓練場にいる。どうしてこうなった、ロキといったら男だろ?なんで女神なんだよ!知らんでそんなん!

 

「やあ、大変なことになったねぇ、シエン?」

 

なぜかここにいるヘルメスとアスフィ

 

「なぜ神ロキが女神って教えてくれなかったんだ?」

 

「え?ロキは女神だぜ?当たり前だろう?それとも知らなかったのかい?」

 

「知らなかったよ、なんで女神なんだろうって言ってしまったよ・・・」

 

「ク、アハハハハ!!シエン!君はオレを笑い殺す気かい?アハハハハ!!」

 

そう言って笑い転げるヘルメス、仕方ないだろあっちじゃ男神だったんだから

 

「シエン、女神に対してそれは失礼ですよ」

 

「後で謝りに行くよ、さてやるか」

 

「待ってくれシエン、【ミラーバリア】は禁止だ。それ以外で戦ってくれ」

 

「は?」

 

「一度その魔法で倒しているんだろう?だったら別の方法でアイズちゃんに勝ってくれ、結果が見えてる戦いは面白くない」

 

「戦う方の身にもなってくれよ・・・」

 

「ダンジョンの件、ギルドの件」

 

「く、卑怯だぞ!ヘルメス!!」

 

「シエン諦めてください、応援してますから」

 

「わかったよ!やればいいんだろ!どうなっても知らないからな!」

 

そう言って二人から離れる。あの少女は魔力を持っていたな、なら新しく作ったこれを使うか。オレは腰につけた数本の杖と腰につけた魔道書の入ったバッグを見た。

 

 

 

 

「本当に宜しいのでしょうか?ヘルメス様」

 

「なに、シエンなら間違いなく勝てるさ、オレは見たいんだ【封印】が解除されたシエンがどんな戦いを見せてくれるか」

 

「シエンは強すぎる力が原因でここに来ました、【封印】が解けたシエンをここの人々が見て恐怖したらまたシエンはここから・・・」

 

「それはまだないさ、この世界に平和が訪れない限りシエンはここから旅立つ事はない、隻眼の黒龍の事は話した。危険なところに大切な人達を置いて旅立つような奴じゃないぜ、シエンは。それにそのうちバレる」

 

「・・・・・」

 

「戦いが始まるぞ、さあ、シエン!イーリスの悪魔と呼ばれたその力、このヘルメスに見せてくれ!!」

 

 

 

アイズ・ヴァレンシュタイン

 

私の目の前には怪しげな気配を持つ黒ずくめの男の人がいる。

前回は負けたけど今回は勝つ!けどバリア?に気をつけてないと

魔法を使われる前に接近して切り込む!!

 

「フッ!」

 

「うお!?やっぱ速いな!」

 

躱された?でも躱しきれなくてマントは裂けた、魔法は使わないの?

 

「魔法は・・・使わないの?」

 

「ヘルメスの奴がその魔法使わず戦えってさ、戦う方の身にもなってほしいよ」

 

「・・・・・」

 

バカにしているんだろうか、でも本当にうんざりした顔をしている。

でもこっちは手加減するつもりはない、全力で行く!!

 

「目覚めよ!」

 

「まあ、そうくるよね・・・」

 

あの魔法がこないのなら心配なく【エアリエル】を使える。一気に片をつける!

 

 

 

 

訓練場で戦うシエンを見てロキ達は疑問に思った。ロキが代表をしてヘルメスに聞く。

 

「なんや?魔法使わんのかいな」

 

「一度それで勝ったそうだから、その魔法は使うなって言ったんだ」

 

「その結果あのザマやで」

 

そこには地面に転がっているシエンがいた。かなり怪我を負っている。一方でアイズは無傷だ。

 

「力、耐久、敏捷、は全部負けてるからね。器用はどうかわからないけど」

 

「英雄とかいうとったけど大したことないやんか、多少は骨のあるようやけど」

 

「フフ、それはどうかな?」

 

「なんやと?」

 

「お楽しみは、これからだぜ!ロキ!!」

 

 

 

 

 

体が冷たい・・・血が抜けていっているせいか・・・このまま殺される事は無いとは思うけど負けるのかオレは・・・首を動かしてオレは後ろを見る。

 

そこには心配そうな顔をしているアスフィとオレなら勝てると疑わなくて笑みを浮かべているヘルメス・・・

 

・・・わかったよ、やってやるよ、死ぬなよあの時の少女!

 

その時、背中が妙に熱くなった。【封印】が一時的に少し解除された。

ドッ!と魔力が溢れ出し体の外へと出ていく。その魔力は目に見えて黒紫色だ。【封印】されていたスキルも解除されている事がわかる。そして立ち上がる。

 

「さあ、ここからだぜ、死ぬんじゃねえぞ。」

 

 

 

 

 

身体中から黒紫色の魔力を溢れ出すシエンを見てロキは言う。

 

「なんやあれは」

 

どんどん溢れ出す魔力、体全体を覆い、シエンの姿が見えなくなる。

だが目と口の部分は分かりづらいが別の色、赤紫色だった。揺らめく魔力、それはまさに紫炎のようだった。悪魔・・・確かにそれにふさわしい姿だった。

 

「フ、ハハハハハ!!これだよ!これを見たかったんだ!オレは!前は遠くから見ることしか出来なかったから近くで見たかったんだ!」

 

また見る事ができて大喜びのヘルメス。

 

「ロキ、この戦いは中止だ。このままだと・・・」

 

「僕の親指に頼らなくてもあれは見ればわかる、あれは危険だ」

 

リヴェリアとフィンが戦いを中止するようロキに言う。

 

「ウチもそうしたい、けどアイズたんの目はまだ死んで無い、ウチは信じるで、アイズたん・・・」

 

 

 

 

「さあ、戦お?」

 

そう言って私に近づいてくる紫の塊。

速い!?さっきと全然違う!でも、私と同じくらい速さだ。でも十分付いていける!

 

「ハァ!!」

 

私は剣を紫の塊に突き出す。次はどうでる?

 

「普通の奴ならここで避けるだろうがオレは違うぞ」

 

そう言って突っ込んで来た。紫色の何かを貫き、体に届く、肉を刺している感覚がする。どうして避けないの!?

危険な感じがして剣を引き抜いて距離を取ろうとする。

 

「無駄だ」

 

足が動かない?足を見ると黒い手のような影に掴まれていた。まずい!何かわからないけど本当にまずい事が起きる気がする!さらにもう一度【エアリエル】を!!

 

「エア「サイレス」リエル!!」

 

紫の塊が腰につけていた杖を手に持ち、魔法を唱える。ま、魔法が発動しない!?そんな魔法を持っているの!?しかも、短い魔法名に割り込んできた!?

 

「無駄だと言ったはずだよ、少し早いが良い子は寝る時間だ」

 

そう言われた後、黒い霧のようなものが私の体に触れた瞬間激痛が走り、何かが奪われている感覚がして意識が遠のいていく。紫の塊は囁いてきた。

 

「オヤスミ、アイズ・・・」

 




シエン「オレが紫の塊?・・・違う、オレは悪魔だぁ」

シエン

【封印】→【覚醒】

覚醒状態になると素の力とスキルを扱う事ができる。

【単独行動】 みんなで力を合わせたとはいったいなんだったのか

精神力自動回復(大)言わば発展アビリティ【精癒】みたいなもの

【呪い】

自分の影が相手との接近戦になった時に黒い手のような形になり、具現化する。相手の足などに掴まり動きを阻害する。【魔力】、Lvの高さにより強力になる。【魔導】の補正も入る。任意発動、これは精神力を消費する。

【復讐】

ダメージを受けるたび魔法の威力上昇、体力を全回復すると威力は元に戻る。身体中から黒紫色の魔力が出てくる

【魔殺し】

相手が【魔法】を持っている場合直感が良くなる(命中率、回避率上昇。魔力、精神力の動きからの魔法の先読みなど)

【????】


武器説明

サイレス

杖、本来覚醒の世界には存在しないがシエンが発明した杖。(FEの別作品には登場している)相手の魔法の発動を封じる。【魔力】、発展アビリティの【魔防】が高いと抵抗する事ができる。
ゲームではダークマージ、ソーサラーは杖は使えないが、シエンは使える。

今思ったら闇の魔法使いが杖を使えないってどういう事なの・・・

リザイア(改)

黒色の魔道書、黒色に光る。ゲーム(FE 覚醒)でこの魔道書のせいでゲームバランスが壊れてしまった。ダークマージ、ソーサラーが扱う事が出来る。

相手に黒色の霧をぶつけた時、ダメージを与え体力と精神力を奪い取る。緑色の霧に色が変わり、術者の体にまとわりついて奪い取った体力と精神力で自分の体力と精神力を回復できる。

日本語むずい


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戦いの後

主人公が神様に振り回されっぱなし・・・どうすればいいんだ!!

今わかりました、彼は神の玩具だったんですね


目の前で倒れている少女に【リザイア】の効果で外傷を負わせずに勝利することができた。それ以外の魔法だったら死んでしまうかもしれなかったからな。

 

「悪いな、今回も俺の勝ちだ」

 

かなり大人げなかったかな?背中が冷えていくのを感じる、オレの体を覆っていた魔力は消え、オレは傷を治す為に回復薬を飲む。そして、戦いが終わったことを悟り少女のところにリヴェリアさんが近寄っていく。

 

「アイズ、しっかりしろ!この症状は精神疲弊(マインドダウン)か、アイズ、これを飲め、マジックポーションだ。」

 

「・・・・ん」

 

リヴェリアさんはマジックポーションを取り出し飲ませる。手馴れているな・・・神ロキが少女に近付いてくる。

 

「アイズたん、大丈夫か!?すまんなぁ、もっと早くに止めるべきやった・・・」

 

そうだ、謝らないと・・・

 

「あの、神ロキ・・・」

 

「な、なんや」

 

「さきほど、女神に対して失礼なことを言い申し訳ありませんでした」

 

そういってオレは頭を下げる。その態度に驚いたのか。

 

「お、おう。ウチが女神やってわかってくれたらええんや、それよりアイズたんになにしたんや」

 

「精神力と体力をいただきました。精神力は回復できても体力はすぐには回復しないでしょう」

 

「ヤバイ魔法やな、詠唱、魔法名も聞こえんかったし、どないなっとんねん・・・」

 

オレも心からそう思う。オレは【魔法】を持っている人達の敵みたいなもんだな。

 

「にしても自分なにもんや?アイズたんに勝てるやつなんてそうはおらんで?」

 

「何者と言われても」

 

「ヘルメスは自分がなんたらの悪魔いうとったで」

 

「おい、ヘルメス・・・何勝手に人の事情喋ってんだ?」

 

「ごめんよ親友、脅されてたから言わざるを得なかったんだ」

 

「ハァ、でも自分より強いファミリアに脅されてたらしょうがないか」

 

「自分、ヘルメスんとこの子なんか?」

 

「シエンでいいですよ、ヘルメスの眷属ではないです。ヘルメスに主神のことを話さない方がいいと言われてるので言えないです、すみません」

 

でも、喋ったらどうなるんだろう?オラリオから追い出されるとか?

 

「そか、それなら聞かないでおくわ、それと、もうちょい楽に話そうや息苦しいで、ウチのことはロキでええでシエン君」

 

「じゃあオレはロキさんと呼びますね」

 

なかなかフレンドリーな神様だ、それに家族思いなようだな。

 

「・・・う」

 

「アイズたん!?気が付いたんか!」

 

「うん」

 

もう気が付いたのか!?あの回復薬かなり優れものなのか?調べてみたいな。なんだ?こっちをみているな。

 

「シエン」

 

「な、なんだい?」

 

こ、このパターンは!?まさか、まだやるつもりか!?

 

「どうしたらそんなに強くなれるの?」

 

「え、強く?」

 

少女はコクリと頷いた。よかった・・・また戦うのかと思ったぞ。

 

「どうしたらと言われても、生きるために、守るために鍛えたらいつのまにかに強くなったとしか言えないな」

 

「それにその幼さでこれだけ強かったら凄い方だろ、それでも強くなりたいのかい?」

 

「うん」

 

即答する少女、こっちでの強くなる方法は知ったがまだ実感はしてない。あっちのやり方だと人や化け物を殺せば強くなれるよ、なんて言えないしなぁ。

 

「うーん、参考になりそうにないなごめんな」

 

「そう・・・」

 

「でも、あんまり無理しない方がいいぞ、無理するとロクなことがないからな」

 

うんうん、と頷くロキさんとリヴェリアさん。かなり言われてきたんだろうな・・・日が暮れてきたな、帰ろうか。

 

「さて、お邪魔したし帰りましょ(ギュルルル)・・・・」

 

盛大に腹が鳴った、恥ずかしさで顔が真っ赤になっているだろう。ロキさんはニヤニヤしながら言ってきた。

 

「なんや、悪魔とか言われとるみたいやけど腹がなるっちゅうことはちゃんと人間やないか」

 

「悪魔?ロキ、それは一体何のことだ?」

 

「食事の時にでも教えるでリヴェリア、せっかくやシエン君、ウチで食べていかへん?」

 

「しかし、これ以上お邪魔するわけには」

 

「そういうなシエン、遠慮しすぎはかえって失礼だぞ、ウチで食べていくといい」

 

リヴェリア様が仰られたので跪き言う。

 

「ハッ!ご好意感謝いたします!・・・あ」

 

「シエン・・・硬くならなくていいと言ったはずだぞ」

 

「す、すみません、つい、癖で」

 

そう言って立ち上がる。

 

エルフ以外の人達は驚き、エルフ達は王族に敬意を表するシエンに対して感心した。

 

「なんでや!?なんで神であるウチに跪かんでリヴェリアに跪くんや!?」

 

「ロキさんに足りないものそれは!情熱、思想、理念、優雅さ、勤勉さ、そして何よりもォォォオオッ!!気品が足りない!!」

 

「「「確かに」」」

 

「うわーん!みんな嫌いやー!!」

 

そう言ってホームに走り去っていくロキさん、ちょっと言い過ぎたかな。

 

「シエン、その癖をなんとか直してくれ、このままではオラリオを歩くことが出来なくなる」

 

「な、なんとかします」

 

「オレとアスフィもお邪魔していいかい?」

 

「ええ、構いませんよ」

 

二人も一緒に食べていく事になった。助かった、1人でよく知らない人達に囲まれて食事なんて勘弁だ!

 

 




ゼウスの眷属がオラリオに居たらホントどうなるんだろう。

イーリスの悪魔について

ペレジアに捕まった第一王女エメリナを助けに行くが助けられずエメリナは自害する。
それによりイーリス軍は撤退することになる。
その時シエンは暴走、追撃してきたペレジア兵の3分の1をほとんど殲滅する。残りはヨシヒロ(後のイーリス大将軍)とサツマハヤト達と協力してほとんど全滅させた。生き延びたわずかなペレジア兵が国に戻り恐ろしげに話したのがきっかけ。

ヨシヒロ

スキル

死地からの生還

死地から生きて戻るたび魔力、魔防、以外のステータス+1(永続)

死線

与えるダメージ+10
受けるダメージ+10

待ち伏せ+

相手から攻撃する時必ずこっちから先制攻撃する

太陽+

与えたダメージ分回復する。

カウンター

接近戦にてダメージを受けた時、受けたダメージ分相手に返す

剣の達人

剣を装備中与えるダメージ+5

ヨシヒロ バーサーカーまたは勇者

ヒサヒデと同じ所から来た転生者
前世では撤退戦において凄まじい戦果を挙げたという。
ペレジアからの撤退戦の時、単独で戦っていたシエンを援護すべく独断で殿を決行するがいつのまにか、かつての仲間たちが周囲にいた。

その時、捨てがまり戦法とシエンの転移魔法のレスキューを利用した【捨て拾いがまり】なる戦法を編み出す。
命を捨て敵に襲いかかり仕留め、殺されそうになるとシエンの多重レスキューで命を拾うという仲間は死なず、敵は死ぬ戦法。
これを行うには、死を恐れない狂気と高ステータスと転移魔法と強い信頼がないと出来ない、最強のヒットアンドアウェイを完成させた。しかもスキルとの相性も抜群にいい。

これにはルフレもドン引きでクロムからは二度とやるなと注意される。
しかし、この程度でやめてはサツマハヤトの名折れ。2年後に再び実行する機会があり、バジーリオが死ぬ未来を変えるきっかけにもなった。
その暴れぶりに覇王ヴァルハルトはこう言い残した。

「聖王クロムに過ぎたるものは二つあり、一つは悪魔のシエン、そしてもう一つは真の勇者ヨシヒロ」

そして覇王ヴァルハルトはヨシヒロに討ち取られた。
ヨシヒロはギムレー討伐には参加せず、イーリス聖王国に迫り来るペレジア兵を撃退する役目を引き受けた。

そして仲間は誰一人死なず撃退するという奇跡を起こす。(ギムレーが滅ぶ事によってペレジア兵が正気を取り戻し、撤退した。)

その後イーリスの大将軍になるが戦友のシエンが出て行ったことを知ると、大将軍をやめ、前世の時に居たような暖かな土地を目指し仲間と共に旅立った。
その後、妻との間に3人の男の子が生まれた。
ヨシヒロとその三兄弟は親子ではなく、まるで本当の四兄弟のようだったという。


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食事?

食堂に向かう途中
「シエン・・・アイズって呼んで」

「え?」

「アイズって呼んで?」

「あ、アイズ?」

「・・・うん」

「えぇ・・・(困惑)」

ロキやリヴェリアが名前で呼ばれていて自分が呼ばれていないのが気に食わなかった様子(戦闘中に囁かれた内容は聞き取れなかった)

ダンメモでヴィルガを倒した時の鳴き声がスマブラDXのドンキーが大ダメージを受けていてスマッシュ技を食らった時に出す声に似ている。



食堂

「さ、君はここの椅子に座ってくれ」

 

「は、はい分かりました」

 

金色の髪の小さな少年(なんか偉そうな人)に言われた場所に座る前にボロボロになったマントを脱ぎ、背中に装着したバッグを床に置く。

 

「よいしょっと・・・え?」

 

道具を置き、椅子に座ろうとして前を見ると目の前の席にリヴェリアさんがいて、オレから見たその右には金髪の髪の小さな少年が、その隣にロキさんが、オレから見たリヴェリアさんの左には髭が長いドワーフがいた。

 

前世を思い出す・・これは就活の面接じゃないのか!?やべえ、胃が痛くなってきた!オレの左右は?右にアスフィ、その隣にヘルメスが、じゃあオレの左は?顔を左に向けると

 

「・・・・・?」

 

目が合い首を傾げるアイズ・・・なんでいるの?君結構オレにひどい目にあわされたのに・・・普通距離をとるだろ?なんでだ?

 

「それじゃあ、いただこうか」

 

その声がきっかけに騒がしい夕食が始まった。どうやらロキ・ファミリアではそのときホームにいる人みんなでご飯を食べるのが決まりらしい。結構いいなそういうの。

さて、オレも食べようか・・・イーリスでフレデリクに食事の作法を習っていたので作法には結構自信ありだ!

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・・なんかしゃべれや!!」

 

ここだけ静かに食事するのに我慢できなかったのか大声を出すロキさん。無理だよ、作法に自信はあってもオレには喋る余裕がない。

 

「とりあえず自己紹介でもしようか、僕は小人族のフィン・ディムナ、ロキ・ファミリアで団長をしているよ」

 

「私はハイエルフのリヴェリア・リヨス・アールヴだ。副団長をしている。」

 

「ワシはドワーフのガレス・ランドロックじゃ。よろしくのう。」

 

「・・・・アイズ・ヴァレンシュタイン」

 

「そしてウチが主神のロキや!ヘルメスは知っとるから今度はシエン君の番やで」

 

「オレはシエン、イーリス聖王国の元魔法研究員でした。今はヘルメスのところで世話になっています」

 

「イーリス聖王国?聞いたことがないね?リヴェリアは?」

 

「私もない」

 

「わしもじゃ」

 

「ウチも聞いたことないでヘルメスは知ってるんやろ?」

 

「ああ、もちろんさ、とても興味深いところだったぜ?なあ、アスフィ?」

 

「はい、私たちの常識が通用しないようなところでした。何度死にかけたか・・・」

 

ああ、アスフィのハイライトが消えていく・・・そういえばアイズとの戦闘中、ヘルメスが遠くで見ることしかできなかったって言ってたな・・・

え!?まさか、ギムレー戦の時見ていたのか!?なんて無茶を!!

 

「アスフィ・・・お前あの時いたのか・・・よく死ななかったな」

 

「ホントなんで私生きてるんでしょう・・・」

 

「さすがはオレのアスフィだぜ!!」

 

「おまえは反省しろ」

 

「ハッハッハ!!断る!!」

 

「ハァ、もうヤダ・・・」

 

そういって落ち込むアスフィ、うん苦労してるな。

 

「なんや、ずいぶんと仲ええやんか」

 

「いったいどんな体験をしてきたんだろうね・・・」

 

「その話も気になるがシエン、元魔法研究員とはどういうことだ?」

 

リヴェリアさんが聞いてきた。

 

「はい、新しい魔法を開発したり、大昔にあった魔法や杖の復元などをしていました、たぶんそれも原因で国から追い出されたんでしょうけど」

 

「魔法を開発!?大昔の魔法の復元だと!?」

 

リヴェリアさんは目を大きく見開き大声で言った。周りの人たちの話し声が消えてこっちの話に耳を傾けている。

 

「ガッハッハ!魔法についてはよくわからんが大した奴よのお主!」

 

「・・・・すごい」

 

そんな風に言われるとなんだか照れるな。

 

「どんな魔法を作ったんだ」

 

興味津々のリヴェリアさん

 

「最初に水の魔法、次に岩の魔法、その次は案が浮かばなくて作れませんでした」

 

「水の魔法に岩の魔法、水を持ち運ばなくてよくて、岩で障害物を作り足止め、ダンジョンの遠征に是非ともほしいね」

 

「案が浮かばなくて作れないということは案が浮かべばまた新しい魔法ができるということか・・・」

 

「なあ、シエン君!今その魔法できるんか!?」

 

「できますけどとても弱いです、でも強くできます。」

 

「どうやるんや?」

 

「魔法の仕組みを本に書くんです。それに精神力を流して魔法発動。その本を魔道書といいます」

 

魔道書(まどうしょ)魔導書(グリモア)とはまた違ったものか・・・」

 

九魔姫(ナイン・ヘル)、シエンの魔道書は本の形をした精神力を消費する魔剣です、しかも【魔力】が高ければ高いほど威力が上昇します。精神力を消費しますから、魔剣と違って魔道書を使って敵を倒すと【魔力】と【器用】の経験値を得ることができます。実験したところ確認できました。」

 

まじで!?いつの間に実験してたの!?魔剣って経験値得られないんだ・・・

 

「シエン、私にくれた魔道書ですが、大体どのくらい使えますか?」

 

「アスフィ達が持ってきた素材で作ったのは初めてだから分からないけど、イーリスで書いた時は50回は使えたぞ」

 

「ご、50回!?そんなに使えるのか!?」

 

「ンー、差別化されてるとはいえ魔剣より遥かにいいね」

 

「まじかいな、シエン君!!一冊うちらにくれへん!?」

 

「まあ、そういうと思いましたよ、でもどんなのが欲しいかわからないので今すぐはできませんよ」

 

「書いてくれるんか!?おおきに!」

 

「けどそのかわり、ダンジョンについて教えてくれないですか?」

 

「ダンジョンのこと?」

 

そうダンジョンのことだ、アスフィに教えてもらうことになってはいるが、いかんせんアスフィはヘルメス・ファミリアの団長で忙しくて、書類の前にため息をついている姿を見るとダンジョンについて教えてくれなんて頼めるわけがない・・・

なので独学で学んでいる、ギルドで教えてもらおうにもオレはちゃんとした冒険者じゃないから行きづらいのだ。

 

「なんや、そんなんお安い御用やで!ダンジョンの知識ならどこにも負けへんで!リヴェリア!シエン君にダンジョンのこと教えてあげてや」

 

「わかった、しっかり教えよう」

 

おお、リヴェリアさん直々に教えてもらえるのか!?これは光栄だな!あれ?男たちから殺意が飛んで来ると思ったら憐みのような目で見られているぞ?アイズはなんか震えてるし・・・

 

「シエン君、リヴェリアの教えはとても厳しいんだ。それで何人もの団員が逃げ出しては捕まりさらに長い時間聞かされたんだ、君はいったいどうなるかな?応援してるよ」

「あ、あの、リヴェリアさん?ほどほどでいいですよ?」

 

「そういうわけにはいかない、君は魔道書を作る、私はダンジョンについて話すだけ、これでは君は割に合わないからな。だから私の知っているダンジョンの知識全てを教えよう・・なに遠慮することはない」

 

周りの人は青ざめ、倒れる人がいるほどだ、どんだけやばいんだ!?

 

 

「それはともかく、悪魔ってなんだい?」

 

 

「それは、ちょっと食事中に語る内容じゃないけど、簡単にいうなら、アイズちゃんとの戦いのような事をモンスター(屍兵)相手にシエンは今までずっとしてきたんだ。そんなシエンを怖れた人々はシエンの事を悪魔と呼んだんだ」

 

ヘルメスはオレがペレジア兵を殺しまくったことを言わないで説明する。

 

「・・・無理するなって言ったシエンの方が無理してる」

 

「生きるためには無理をせざるを得なかったんだよ・・・」

 

なかなか痛いところを突いてくるアイズ。

 

「今聞いたこととこれまでにあったことをまとめるとダンジョン探索に必要な魔法を持っていて」

 

「まだ新たに魔法を作ることができ、魔剣のような物を作れる」

 

「壁を張って(タンク)もできるの」

 

「・・・そして強い」

 

「決まりやな・・・なぁ、シエン君」

 

「何ですか?」

 

「採用!!ウチんとこに改宗せえや!!」

 

やっぱり就活の面接じゃねぇか!!




リヴェリアにダンジョンのことを教わることになって

「すまんアスフィ、アスフィの承諾を得ずにかってに他の人にダンジョンのこと教えてもらうことになって・・・」

「いえ、私も忙しくて教えることができませんでした。ですが勝手なことをしたシエンには罰を与えないといけませんね」

「な、何をすればいいんだ?」

「私の気に入っているお店で愚痴を聞いてもらいます」

「それぐらいならいつでもいいぞ」

「よろしくお願いしますね」

「すいませーん、ダンジョンですけどぉぉ(潜ってくるのに)まーだ時間がかかりそうっすかねぇー」


アイズとの戦闘で【サイレス】と言っていますが言う必要はないです、気合いをいれるためであったりアイズを動揺させるためにでもありました。

アイズがシエンの隣に椅子に座ったのは、もともとそこがアイズの席だったからです。それにひどい目に合うのは今まで結構あったので気にしていないです。


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透明迷路

バベルの塔 頂上にて

「フレイヤ様がお気に召されたあの男とアレンが接触しました」

「あら、それでどうなったの?」

「戦闘となりアレンの動きを封じて、その場を去ったようです」

「そう、オッタルとあの子が戦ったらいったいどちらが勝つのかしら?戦える機会があるといいわね」

「はい」




ロキさんから改宗するよう言われたのを断ってから数日後の午前中

 

「よし、今日の講義はここまでだ」

 

オレはリヴェリアさんのダンジョンについての講義を受けていた。

 

「私の講義にちゃんと付いて来られるのは珍しいぞ」

 

「確かに厳しいですけどわかりやすいですし、事前に予習すればちゃんと理解できますよ」

 

「その通りだな、ハア、ウチの団員たちもお前のように勉強してくれたら・・・」

 

そう言って溜息をつくリヴェリアさん(ママン)、この人も苦労してるなぁ。

 

「でも一度講義を受けているんでしょう?」

 

「ああ、でもちゃんと覚えているかどうか怪しい・・・ちょうどいい機会だ。この際全員講義を受けさせるか・・・」

 

この後この事聞いた団員達は絶望するだろうな、オレのせいで済まない・・・おや?向こうから4人組の女の子達がやってきた。

 

「あ、リヴェリアとシエンだー!ねぇねぇ、勉強終わったんならダンジョンに行こうよ!」

 

「ティオナか、もう少しでお昼になるからダンジョン探索は食事の後にしような」

 

今話しかけてきた子はアマゾネスのティオナ、元気いっぱいの子だ。見ているだけでこちらも元気になれる、そんな子だ。

 

「そうよ、ティオナ。団長にお昼ご飯を作ってあげないといけないんだから」

 

そう言ったのはティオナと双子の姉のティオネ、どうやら団長のフィンさんにゾッコンらしい、団長のフィンさんはなんと少年のような顔をして40代のおじさんらしい。

けどオレは幼い見た目で1000年以上生きたやつ知ってるからそんなに驚かなかった。

 

「こ、こんにちは」

 

アイズの後ろに隠れてビクビクしながら挨拶してきたのは、エルフのレフィーヤ。エルフにしては喜怒哀楽がわかりやすい珍しい子なんだとか。怯えているのはオレの戦い方を見て怖くなったんだそうだ、これが当たり前だよなぁ。

 

「シエン・・・お昼まで時間がある・・・戦お?」

 

そして戦いを仕掛けてくる、アイズ。

 

「魔法の修行したいからまたにしてくれ・・・」

 

冗談じゃない!あんな戦いばかりじゃ疲れるわ!!

 

「シエン、魔法の修行とは何だ?」

 

「オレの使っている魔法の調整と試したいことがあるんですよ」

 

【ミラーバリア】は形を変えることが出来る、どれくらいまで変えられるのか、それをするためにどれだけ精神力が必要になるのか、これは絶対確認しておきたい。

 

「・・・でも、透明で見えないよ・・・?」

 

「アイズ、魔法は目で見るんじゃない、感じるんだ。もともと、目に見えない精神力を使っているんだ、なんとなくはわかるはずだぞ」

 

「シエン、どんな事をするのか見ていいか?」

 

「いいですよ、それじゃこの4人にはオレの魔法の中で探索してもらおうか」

 

「「「「魔法の中を探索?」」」」

 

「出来るかどうかわからないけどやってみよう、下着が見えないような服装と敷物を用意しようか」

 

オレの考えている物が出来たらかなり面白ことになりそうだ。

 

準備を終わらせ、訓練場に来た。では早速、

 

「【ミラーバリア】!!」

 

そして、精神力を消費しさらに大きく、長くし複雑化する。そうしたら透明迷路の完成だ。

精神力の節約するために、バリアの厚みはそこそこにしてある。維持するのも大変だからな。

 

「何にもないよ?」

 

「何にも見えないわね」

 

「・・・なにかあるのはわかる」

 

「こんな事できるんですか・・・」

 

「凄まじいなこれは・・・」

 

バリアは具体的に言うと幅150センチ高さ200センチのトンネルだ。

だからバリアの上に乗ることが出来るが透明の為下から上を見ると下着が丸見えになってしまうから、着替えてもらったんだけど・・・着替えてない人もいる・・

 

「君たち冒険者は透明の不思議な迷路に出くわした。この迷路に挑戦しても良いし、しなくてもいい、さぁ、どうする?」

 

「挑戦する!!いっくぞ〜!!」

 

「ティオナさん!そこ入り口じゃないです!」

 

「へ?(ゴツン)いったーい!」

 

「なにやってんのよ・・・」

 

「・・・こっち」

 

そうして4人は透明迷路に入っていった。さて、オレは上から見下ろすとするか、

 

「【ミラーバリア】!!」

 

そう言って階段の形をしたバリアを作り、その先に平らなバリアを作る。

オレは透明な階段を登り、平らなバリアの上に敷物をひき、その上に座る。さて、誰が最初に出られるかな?

 

「とんでもないものを作るな、お前は」

 

「そう言って平然と登ってくるリヴェリアさんもとんでもないと思いますよ?」

 

リヴェリアさんもどうやらどこに足場があるのかわかるようだ。そして、敷物の上に座る。

 

「なかなか意地悪な迷路だな、しばらくは一本道、その先は四つの分かれ道で全員を分断、それぞれにゴールはなくすべて行き止まりとはな」

 

「行き止まりに着いてからが本番ですよ」

 

行き止まりの天井には人一人が通れる穴が空いているのだ。そこから出て歩いていくとゴールだ。風とか吹いてるとわかりやすいが、どうなるかな?

おや?ティオネの様子が?

 

「なんだこのクソ壁はァァァ!!」

 

おめでとう!ティオネはバーサーカーティオネに進化した!!

って呑気にしてる場合じゃない!ティオネはキレて近くにあったバリアを殴る、蹴る。しかしバリアは傷一つ付かない・・・

おいおい、血が出てんぞ・・・こりゃ不味いな。

 

「シエン!」

 

「分かってますよって、ティオネ!それ以上はダメだ!退場!!」

 

そう言って蹴っていたバリアを消滅させ、迷路から出るように言うが、ティオネは出て来ずにまた別のバリアに攻撃し始める。

 

マジかいな・・・しょうがないな、リブローの杖(遠距離回復魔法)を使うか・・・ほいっと、

ティオネの周りに聖なる光が現れ包み込み、傷を癒していく・・・

 

「なんだ?このクソ光は・・・」

 

聖なる光をクソ呼ばわりするティオネの姉御・・・マジパネェっす。

 

「リヴェリアとシエンか、どうして宙に浮いているんだい?」

 

「それはですね「団長〜!」え?」

 

フィンさんが現れると今まで暴れまわっていたのが嘘だったかのように大人しくなった。そして、バリアを正確に避けてフィンさんに近づいて来る。

は、速い!?バリアを感じているのか!?

そしてあっという間にフィンさんの隣に着いた・・・嘘だろ・・・

 

「ティオネ、アイズ達となにをやっていたんだい?」

 

「シエンの作った透明迷路を歩いていました!」

 

「そうか、透明の迷路なのにどうして僕の所に簡単にたどり着けたのかな?」

 

「団長の匂いを嗅ぎつけてきました!!」

 

「・・・そうか、それはすごいね・・・」

 

うん、オレもすごいと思う・・・でも怖いよ・・・

 

「そっか!!ティオネみたいに壁を攻撃して壊して脱出すれば良いんだ!!」

 

「・・・確かに」

 

「あ、アイズさんにティオナさん!?ちゃんと攻略しましょうよ!」

 

そう言って壁を攻撃し始める二人・・・レフィーヤはそんな二人を見てオロオロしている。

あーもう、めちゃくちゃだよ・・・リヴェリアさん頭抱えてるし・・・

 

「あ、フィンさん、そこ階段になってるんで気をつけてください」

 

「僕にはよく分からないけど階段があるんだね?」

 

そう言ってオレ達のところまでやって来て敷物の上に座る。

 

「透明迷路を作るか、それはすごいね、でもなんのために?」

 

「オレの魔法の訓練とアイズ達に魔法の感覚を掴んでもらおうとしているんですが」

 

「その結果がこれかい・・・」

 

「は、はい・・・で、でも始めたばっかりなんで!いきなりできたりなんてしないですよ!」

 

「そうかもしれないけど、壊して進もうとするなんて・・・」

 

「・・・・・」

 

あ、リヴェリアさんが立ち上がって階段を降り、迷路に入って行く・・・そしてアイズとティオナとレフィーヤを連れて出てきた。

オレには分かる・・・リヴェリアさんの魔力が揺らめいている、荒ぶっている!めちゃくちゃ怒ってる!!

 

「お前達4人は、後でこの迷路を攻略するための反省会をしてもらう」

 

「えー!メンドk」

 

「私も反省会に参加する、いいな?」

 

「「「「ハイ・・・」」」」

 

「フィンさん」

 

「なんだい?」

 

「面倒見のいいお母さんですね・・・」

 

「だよね」




オレはこの回で夜まで話を進めるはずだったのに迷路で遊んでいたら3000字いっていた・・・

レフィーヤ・ウィリディス

12歳 エルフL v.2

将来リヴェリアの後継者として期待されているエルフの女の子。シエンが来たことで学問をリヴェリアが担当し、実戦をシエンが担当してレフィーヤを鍛えることになった。それにより原作開始時より【魔力】が高くなっている。また、シエンの鍛錬のおかげで魔法に対する感覚が鋭くなっている。



アレンが現れた!!

【ミラーバリア】!シエンの周りにバリアが現れる

アレンの攻撃、ミス!シエンにダメージを与えられない!

【ミラーバリア】!アレンの周りにバリアが現れる、出られない!

シエンは逃げ出した!!

シエンを倒せたらたくさん経験値得られそうだな・・・

あれ?こいつ、は◯れメタルじゃね?


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猫男

まさかこの作品を高評価して頂くとは・・・ありがとうございます!
魔力と精神力の設定とかかなりガバガバですが、暇つぶし程度に読んでいってくださいね。


四人組が反省会をすることが決まり、お昼になって食事を取り、いざダンジョンへ!そうなるはずだったんだが・・・

 

「こうしてエリウッドは氷竜族のニニアンと一緒に暮らし幸せになりましたとさ、おしまい。」

 

「へー、こんなお話があるんだ!!おもしろーい!!」

 

「種族を超えた愛・・・私も団長と・・・」

 

「・・・ゼフィールかわいそう・・・」

 

「あ、アイズさん、物語ですからそんなに落ち込まなくても・・・」

 

「草原の民・・・チッ!」

 

「小柄な勇者ローラン、どんな人物だったんだろうね」

 

「友のために戦ったヘクトル・・・なかなかいい御仁じゃの」

 

「神将器の魔道書か・・・シエン、作ることはできないのか?」

 

「人と竜が共存出来る世界か、想像もつかへんな」

 

オレはベルと同じ様に物語を語っていた。食事中にティオナがオレに何か知ってる英雄譚はないか?と言ってきたので、内容はちょっときついからベルと同じように内容をカットしたり、改変して【烈火の剣】について食事の後にその場で話したら、他の人も席を立たずに聞いていた。あれ?ダンジョンは?

 

草原の民の話に興味を示したのは銀色の髪で顔に刺青を入れている狼人、ベート・ローガ。

かなり乱暴者らしいがフィンさん達は本当は優しい奴と知っているらしい。ツンデレかな?

 

「ねえねえ!もっとお話聞かせてよ!」

 

「・・・私も聞きたい」

 

「ちょっと、ちょっと待って・・・休憩させて・・・喉が渇いたから」

 

そうして水分補給する、この流れなら【封印の剣】の流れがベストだが、でもこんな子供に教えていい内容かなぁ?ゼフィールのその後とか悲惨すぎるぞ・・・【烈火の剣】も大概だけど・・・

 

それとリヴェリアさん、何サラッととんでもない要求してるんですかねぇ!?無理だって!

 

「はやくはやく!!次の話を!」

 

「まてまて、どの内容にしようか考えてるから」

 

「・・・ゼフィールのその後が気になる・・・幸せになったんだよね・・・?」

 

「」

 

おおう、なんと返事をしたらいいんだろうか・・・アイズはゼフィールに幸せになってほしいと思っている様だ。オレもそうだったよ・・・

めっちゃごまかしてぇ、でもロキさんがいるから嘘がバレちまう・・・

空気読んでくださいよ、ロキさん!!

 

「もちろんだよ、また問題は起きたけど幸せになれたよ」

 

「ホント?」

 

「本当だよ」

 

「・・・じゃあ、その後の話をして・・・?」

 

「」

 

すっかりハマっちゃってるよ・・・この子・・・

 

それにしても、人と竜の共存・・・か、こちらでいうと人とモンスターの共存・・・無理じゃないかなぁ。

モンスターは話せないらしいし、大昔から人間との溝が深すぎる・・・モンスターが話を出来るのであれば話は変わってくるが、でもすぐに仲良しこよしというわけにはいかないだろう。

 

「わかったよ、なら話すとするか・・・【烈火の剣】から20年後の【封印の剣】の物語を」

 

この後オレは【封印の剣】の物語を語った・・・

その後また他の話をせがまれたのは分かりきっていたことだった・・・

 

 

「つ、疲れた。オレよく覚えていたなあの内容・・・」

 

他の話はまた今度という事で、オレはロキ・ファミリアから出た。ごめんな、ダンジョン・・・行ってあげられなくて・・・コンドイクカラ・・・楽しみにしててね?

 

そういえばそろそろ夜ご飯を取らねば、よし【豊饒の女主人】に決まりだな!

オレは【豊饒の女主人】に行ったら店の前には鈍色の髪を後頭部でお団子にまとめ、そこから一本の尻尾が垂れている。変わった髪型をしている、女の子シル・フローヴァがいた。

可愛いけどしたたかで腹黒いんじゃないかとオレは思っている、だがそれが良い。シルはオレを見つけると話しかけてきた。

 

「あ、シエンさん!こんばんわ、今夜はウチで食事を取っていきませんか?」

 

「そうしようかと思ってきたんだ、相変わらず繁盛してんな、席空いてる?」

 

「はい、大丈夫ですよ。結構混んでますけど席は空いてますので、お客様一名入りまーす!」

 

そうしてお店に入って空いてる席を探すと、カウンター席にこの間の夜に襲いかかってきたオレよりちょっと背の低い黒と灰の毛並みを持つ猫人の隣が空いていた・・・どうしよ・・・

 

「坊主、そんなとこに立ったってんじゃないよ、さっさと座りな!」

 

女将さんに叱られたので仕方なく猫人の隣に座ると気づいたのか話しかけてきた。

 

「!?テメェはあの時の・・・」

 

「やあ、あの時襲ってきた猫男くん」

 

「・・・アレンだ、そんな変な呼び方すんじゃねぇ」

 

「アレンね覚えたぞ、あ、リューさん!アルヴの水と今日のオススメを1つ!」

 

「かしこまりました」

 

「あ?テメェ、酒じゃなくて水飲むのか?」

 

「お酒は飲まないんだ、誰かさんの襲撃に対応できるようにね?」

 

「チッ!」

 

「お待たせしました、アルヴの水と今日のオススメです。それとシエンさんは、お酒を飲めないし飲まないそうです」

 

「ぷ、ははははは!!テメェ、飲めねぇのかよ!?ダセェ!」

 

そう言って大笑いするアレン。

 

「しょうがないだろ・・・飲めないものは飲めないんだ、苦いの無理。リューさんバラさないでよ・・・」

 

「すみません」

 

「くくくくく、こいつは面白いことを聞いたぜ」

 

「そういうアレンは猫人なんだから、猫舌じゃないの?」

 

「あ?」

 

あら図星?急に雰囲気が変わったぞ?

 

「ぷーくすくすくす。おいおい、本当かよ。でも悪いことじゃないし、血の気の多い男が猫舌・・・これはギャップ萌えだな!」

 

「なにわけわからねぇこといってやがる!いいか?このこと他の奴らにバラすんじゃねえぞ!」

 

「え〜どうしよっかなぁ〜」

 

「バラしたら殺す」

 

「はっはっは、寝言は寝て言ってくれ」

 

アレンはスピードタイプだ。だからオレに勝つには魔法名を言い終わるより速くなるかバリアを破壊できるように【力】を上げる必要がある。

奇襲なら嫌という程、戦友とやってきたからオレならこのタイミングでやるというのが分かる。

とはいえ、うかうかしてられないな。魔法名を言うスピードを上げる訓練か、また別の手段を考えないと・・・

アレンはベートと同じタイプだな。けどベートは何か違う気がする、ベートの履いている銀色のブーツもなんか気になるし、魔力はないと思うけど何か【魔法】を持っているそんな気がする。

 

「わかったよ、言わないよこんな面白いこと」

 

「・・・テメェと喋ってると調子が狂う」

 

「オレは楽しいけど?」

 

「るせぇ!テメェを殺すのはオレだ、首を洗って待ってやがれ!」

 

そう言ってお金を置いて出て行った。

 

「シエンさん、【女神の戦車】(ヴァナ・フレイア)に対して何をしたんですか?」

 

「いきなり襲いかかって来たから、攻撃を防いでその後動きを封じて逃げた」

 

「Lv.6相手にまともに相手出来るなんて・・・貴方は本当に何者なんですか・・・」

 

「普通の魔道士だよ、え?アレンはLv.6なんだ、へー。確かオラリオで一番強いのはLv.7だっけ?それならもう少し力を使わないとダメかもな」

 

「普通の魔道士って・・・しかも本気じゃなかったんですか・・・」

 

リューさんは呆れていた、でもね人には相性があって半端なパワーなら圧勝できるけど、半端じゃないパワーの持ち主だったらあっさりやられるんだよなぁ。

しかも【封印】の解除のラグもある、ホントあっさりやられるかもしれない。【封印】なんとかしてぇなぁ・・・

 

「プププ、ね、猫男・・・アレンも変なアダ名をつけられたニャー」

 

「アーニャ、彼は貴方の兄でしょう?シエンさんに対して訂正を求めては?」

 

「いや、面白いから全然オッケーニャ」

 

今笑っている茶色の髪の猫人はアーニャ、なんとなくアホっぽいが憎めないやつだ。ていうか、アレンはお兄さんだったのか・・・似てねぇ!?

いや待て、まだ全然アレンのこと知らないからもしかしたら似ているところとかあるかもしれない、今度会う時要チェックだな!

さて、喋ってお腹も空いたし食べよう!何やらシルの笑みが気になるが食べる方が大事だ!

 




ちなみにシエンは神将器の魔道書は作れる可能性はありまぁす!
アイズにはゼフィールは死んでいないようにぼかして言いました。

ベートが魔法を発動した時は【封印】状態のシエンはほぼ負けます。相性最悪です。試合ではなく殺し合いになります。

【魔殺し】のスキルがなくても気づいちゃうシエン、さすがはイーリスの悪魔だ!

シエン「や め ろ」

接触 意味 他の人と交渉を持つこと。連絡を取ること。

襲撃、奇襲、接触とはいったい?うごごご!?

シル・フローヴァ
シル・ヴァー
シルバー
・・・まさかね?


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ようやくダンジョンへ

オラリオのどこか
???「くそ、ここはいったいなんなんだ!全てはあの悪魔のせいで・・・おのれ・・・必ずや目にもの見せてくれる!!」

????「ほう、あの男私好みだな・・・そこの君、私のファミリアに入りたまえ、そうすれば力を与えよう・・・」

???「は?よくわからないが奴を倒す力ならなんでもいい!ファミリアってのに入ってやる!」


ヘルメス・ファミリアにて

 

「ふんふんふーん」

 

「ずいぶんご機嫌ですねシエン」

 

「こういうのは楽しんでやらないとね」

 

オレは今、鼻歌を歌いながらアイズとの戦闘でボロボロになったマントを修復中だ。捨ててもいいがイーリスから持ってこれた、わずかな物だから大事にしたい。

こちらではさまざまな防具、火耐性のあるマントなどがあるようだからいつかそんなマントを作ってみたい。【神秘】か【鍛治】の発展アビリティが必要みたいだけど。

Lv.2以上にならないと発展アビリティを手に入れられない・・・オレがLv.2になるのはいつになるんだ?

普通の人は数年かかるみたいだ。オレはどうなるんだろう?何年も待ってられないぞ・・・

 

「今日は何をするんですか?」

 

「ダンジョンに行こうと思う、リヴェリアさんから18階までならいいって」

 

「初のダンジョン潜りで18階まで行けるなんて・・・いえ、シエンですものね・・・」

 

「なんだよ」

 

「いえ、シエンの強さに呆れてるだけです」

 

「生き残るために強くなっただけなのになぁ〜」

 

「あそこは過酷過ぎます」

 

ホントそれ、弱かったら死ぬ、強かったら追い出される・・・どうすればよかったんだろうな・・・

オレにはわからない、だから【封印】なんてスキルが出たんだろうか・・・

 

マントの修復を程々にダンジョンに向かった。2階層にはベルのところの村にいたゴブリンがいた。

また新しく書いた、赤い魔道書の【ファイアー】で瞬殺、魔石も溶けてしまった。次にコボルトの群れも緑色の魔道書【ギガウインド】でコマ切れに。キラーアントはルフレから貰った魔道書【トロン】で消滅した・・・・

 

「・・・・・よわ・・・」

 

よ、弱すぎる・・・まるで歯ごたえが無いけど調子に乗ってはいけない、オレの戦闘方法は精神力を使う戦い方、精神枯渇を起こしたら死亡確定、精神力管理をしっかりしないとな。精神力節約の為に魔法だけでなく武器での戦闘もしてみるか・・・

 

今オレがいる階層は10階層、そこには深くない霧が発生しており真っ白な草原が広がっていて葉と枝を失った枯木も存在していた。

ここいいな、ダンジョンの中で魔法の修行をする時には良いかもしれない。

うーん、この真っ白な枯木を杖にすることが出来そうな出来なさそうな・・・取り敢えず回収しよう。

そう言って腰につけていた短剣を取り出し枯木を持ちやすいように切り落とす。うん、このアスフィから貰った短剣いい切れ味だな。

 

「ブギッ」

 

お、オークだ!丁度いいな、イーリスでも剣を使った接近戦はやってきたんだ!くらえ!

オレはオークに急接近してその腹に短剣を突き立てるが、歯が刺さらなかった・・・

 

「へ?」

 

「ブギ?」

 

オレとオークは変な声が出た。

え?弾かれた!?うそ、私の【力】低すぎ・・・

 

「ブギッ!ブッ!ブギギギギギ!!」

 

こいつ・・・笑ってやがるのか・・・そういえばオレが向こうにいるとき、兵種【傭兵】の時は力が上がりやすいはずなのに全然上がった感覚がしなくて魔力ばっかりあがってる感覚はあったっけ・・・

 

「ブギ」

 

「ブギ」

 

増援か・・・めんどくさいな、合体魔法をやってみるか・・・

オレは赤色の魔道書と緑色の魔道書に精神力を流し込み【エルファイア】、【エルウインド】を同時に発動させる!

 

オレの周囲に竜巻を発生させそこに火炎を乗せると竜巻は火炎竜となって周囲を焼き尽くしていく・・・

 

「「「ブギャアアア!?」」」

 

オーク達は火炎竜に巻き込まれ燃え尽きていった・・・あ、魔石も・・・

焼き尽くしたのはオーク達だけではなかった・・草も枯木もすべて燃えていく・・・これやばいんじゃないの・・・オレしーらね・・・

そうしてどんどん次の階層に潜っていった・・・そうして辿り着いた17階層、ここにはゴライアスという階層主がいるらしい・・・

 

「オオオオオオオッッ!!」

 

人の体格によく似た形、そして体の色は灰褐色、大きさは約7Mくらい・・・

小さいな・・・デカイけど小さいな・・・ギムレーと比べると・・・

 

「オオオオオオオッ!」

 

オレに近づいてきて足でオレを押し潰そうとするが

 

「【ミラーバリア】!!」

 

オレは【防御魔法】を発動する今回のバリアは一味違う、形がまるでウニのようにトゲトゲだからだ・・・そんなとこにおもいっきり足を踏み下ろしたら・・・

 

「ゴ?アアアアアアッッ!??」

 

ゴライアスの足にたくさんの穴が空き、血が噴き出す、うわぁ・・・やったのオレだけど痛そう・・・まだ終わらないけどな

バリアの形状を精神力を消費して更に変化させる。

貫通したトゲを花が開くように開かせ、まるでサンダルを履いてるようにしてその場から動けなくする。そして、【トロン】を顔にぶつける、ジュッ!!っと音がなりゴライアスの顔が溶けてなくなって、ゴライアスの体が倒れた・・・魔石を回収しようにもオレの【力】ではゴライアスの体に傷をつけることができないので放置した。オレじゃない誰か、頼んだぞ!

どうやらこのレベルのモンスターにはオレの【魔法】は通用するみたいだ。でも状態異常には注意しないとな、1人で冒険してるから助けてくれる人がいない・・・仲間がいたらなぁ・・・そう思いながら18階層にたどり着いた。

そこには緑が溢れて、天井には大きな水晶があって周りの木にも水晶があったりと訳の分からない光景が広がっていた。

ここには街があるが生憎とそこに用は無い、ここにたどり着くのと魔法の杖を作るのに役立ちそうなアイテムを手に入れるのが目的だ。

オレは森の中を歩く、この階層にはモンスターが生まれないが、別の階層からはモンスターがやって来るのでここも一応危険だ。注意してどんどん進んでいくと・・・

 

「・・・迷ったなこれは・・・」

 

迷いました・・・地図もないし土地勘もなし!当たり前だな!

焼いちゃってもいいけど大切な資源だし変に環境を変えると大変なことになりそうだしな、最悪【風魔法】で空飛んで森から出ればいいや、アスフィから貰った兜もあるしバレないだろ。

そうして適当に進んでいくと武器がたくさん刺さっている場所に出てきた。十字架もある・・・お墓なのかな・・・

お花が供えられている、誰かここに来たのかな?オレは供え物はないが手を合わせ祈る。亡くなった人たちが安らかに眠れますように・・・

 

こうしてオレの初のダンジョン潜りが終わった。手に入れられた魔石はまさかのゼロ!溶ける、バラバラになる、消滅するといった事で全く得られなかった・・・力加減が難しいな。

でも、枯木や水晶などの新しい杖の材料も手に入れたし、ダンジョン探索に必要な事も新たに分かった。まだまだこれからだな!

そうしてオレは【豊饒の女主人】に行った。

 

「いらっしゃいませ」

 

「お?リューさんか、いつもの頼むよ」

 

「かしこまりました」

 

オレは席につき料理を待つ、しばらくしたらリューさんがいつものを持って来てくれた。

 

「お待たせしました、アルヴの水と今日のオススメです」

 

「ありがとう、いや〜今日初めてダンジョンに潜ってね?疲れてお腹が空いちゃったよ」

 

「そうですか・・・どのくらい潜ったのですか?」

 

「18階層」

 

「は?」

 

「18階層まで潜ったよ、リヴェリアさんに許可されたのはそこまでだったからね」

 

「シエンさん、すみませんが今貴方のレベルはいくつですか?」

 

「ん?レベル1だけど?」

 

「なんて自殺行為を・・・リヴェリア様に許可を頂いたとは?」

 

「ああ、ダンジョンについて全然知らないからリヴェリアさんに習っているんだ、それで許可が出たのが18階層までだった」

 

「レベル6とまともに戦えるならそこまでは大丈夫だとは思いますが用心してください」

 

「ああ、もちろんだよ。ダンジョンに潜って足りないものがまだまだたくさんある事を知ったよ。しばらくは10階層位までにしようと思う」

 

「ええ、それがいいかと」

 

「話変わるけどリューさんは結構強いよね?昔冒険者とかやってなかった?」

 

「たしかに冒険者でした、何故分かったのですか?」

 

「立ち振る舞いと【魔力】の強さでかな?」

 

「・・・本当に何者なんですか貴方は・・・」

 

「普通の魔道士って前に言ったでしょ、それより18階層で森の中にお墓があったんだけど何か知らない?」

 

そう聞いたらリューさんの表情が少し変わった。

 

「・・・いえ、知りません・・・それで?」

 

「いや、お花が供えられてたから誰か来たのかなってあんな森の深いところまでなかなか行けないと思うけど、あ、オレもお祈りしたぞ」

 

「・・・そう、ですか、きっと亡くなった方々もお祈りしてくれたことに感謝していますよ」

 

「そうだといいな、オレたちも亡くなった人たちの分しっかりと生きていかないとな」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「なんでリューさんがお礼を言うんだ?」

 

「さあ?なんででしょうね」




アスフィから貰った短剣
アスフィがシエンの為に選んで買ったプレゼント、切れ味抜群で性能を重視するシエンにはぴったりの品物
シエンはこれを貰ってダンジョンから戻った後にアスフィにお返しに作った魔法の杖を渡した。

ちょっとダンまち1から6巻を見直してきますので更新を一時ストップします。


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変な冒険者様

なんかダンまち読んでいたらお話が出来ましたので更新します!


シエンがダンジョンを潜ったその日の夕方
ロキ・ファミリア

「アイズさん、どうやらシエンさんダンジョンに潜ったらしいっすよ?」

「・・・本当?」

「なんといきなり18階層まで行ったみたいっす。聞いた情報をまとめると、さまざまな魔法を使ったり10階層を焼け野原にして、17階層のゴライアスをボコボコにしたみたいっす」

「・・・・・」

「シエンのやつ・・・確かに18階層までの許可は出したが初のダンジョン潜りで本当に18階層まで行ったか・・・今度会った時じっくりと話を聞かせて貰わないとな」


同時刻、ヘルメス・ファミリアにて

 

何やら悪寒がしたがまあいいだろう・・・それよりも

 

「完成じゃああああ!!」

 

「恐ろしいものができましたね・・・」

 

黒色のマントを修復が完了した、ただしアスフィの【神秘】付きで・・・その際さまざまな機能が搭載された

さっそくこのマントに精神力を流し込むと・・・

 

「おお、伸びる伸びる!!掴める!元に戻る!」

 

伸びます、形を変えてものを掴めて、元に戻せる、硬くもなる。破けても精神力を流せば修復できるおまけ付きだ!

ふふふ、怖かろう・・・マントで魔道書を掴んだ状態で魔法を発動する事もできる!!

このマントはいわば【ミラーバリア】を魔法名言わないバージョンだ。接近された時はこのマントの出番だな、反射は出来ないけど・・・

防具扱いだからこれで敵の攻撃を防いだら【耐久】も上がる!怪我しなくても【耐久】を上げられるなんて、かなりすごいな!!

 

「アスフィのお陰だよ!ありがとうな」

 

「いえ、お役に立てて良かったです」

 

「フフフ、魔法多数同時発動・・・さらに魔法が楽しくなるな・・・」

 

「そんな恐ろしいことしないでください・・・」

 

そしてマントには新しくフードを付け、魔道書が入る内ポケットも付けた。火、風、雷、闇、水、岩、回復、防御の同時発動・・・

ククク、ワクワクが止まらないぜ・・・

 

次の日オレは新しいマントを着てダンジョンに向かう、バベル付近にて

 

「お兄さん、お兄さん。黒い髪のお兄さん」

 

オレの腹あたりから声が聞こえてきた。クリーム色のゆったりとしたローブを身につけ深くかぶったフードから栗色の前髪がはみ出ている。そして目を引くのは背負っている大きなバックパックだ。

 

「突然ですがサポーターなんか探していませんか?」

 

サポーターはダンジョン内で荷物を持ってくれたり、倒したモンスターの魔石を取ってくれたりする人達のことだ。

力のない人達がやる事なので馬鹿にされがちではあるが、命を張ってやる立派な仕事だとオレは思っている。

 

「サポーターかぁ、オレは雇ったことないから勝手がわからないけどいいのか?」

 

「構いません!冒険者様のお手伝いをさせてください!」

 

「そっか、ならよろしく頼むよ、小さいのにしっかりしてるな。オレの名前はシエン、君は?」

 

「リリはリリルカ・アーデです!リリと呼んでください!シエン様!」

 

「・・・様付けか・・・ちょっと嫌なんだが、なんとかならんか?シエンでいいぞ?」

 

「いえ、そういうわけにはいきません。けじめをつけないと他の冒険者様に生意気なサポーターという風潮が流れてしまうのです」

 

「・・・そうか、ならいいがダンジョンに潜る前にまずはその【魔法】を解いてもらおうか?」

 

「!?な、何を言っているのですか?落ちこぼれのリリが【魔法】なんて・・・」

 

「そんなことを言っても無駄だ、君の体に纏わり付いている【魔力】で姿を変えているんだろう?【魔法】はかなり詳しいんだ。ダンジョン内で精神枯渇を起こしてぶっ倒れても困る・・・ああ、逃げても無駄だぞ?君の【魔力】は覚えた、どこに行こうがどこにいるのかわかる」

 

「・・・本当にお詳しいんですね・・・」

 

「これでも元魔法研究員でね?【魔法】のことが大好きなのさ」

 

「・・・【響く十二時のお告げ】」

 

そう【詠唱】すると姿が変わり、小人族の少女の姿になった。

随分と腕も細い・・・栄養あまり取ってないな・・・それはともかく

 

「ほー面白い【魔法】だな!新しい魔法の杖の案が浮かびそうかも!」

 

「どんな魔法の杖ですか?」

 

「そうだな、出来て名前を付けるとしたら【へんげのつえ】と言ったところか・・・必要な材料とか全くの不明だがやりがいはあるな、あんな事やこんな事に使ったりして・・・ククク!!」

 

「リリのお株を奪わないでください!というかそんなの作れるんですか?!」

 

「分からん!だけど楽しそうだ!さて、こんなとこで突っ立ってないでダンジョン行くぞダンジョン!イクゾー!デッデッデデデデ!(カーン)デデデデッデッデッデデデデ!」

 

「あーもう!分かりました!ついて行きますよ!なんなんですか!?この変な冒険者様は!?」

 

こうしてオレは新たな仲間(?)リリルカ・アーデと共にダンジョンに向かった。

 

 

リリは今日お金を稼ぐため新たなカモを探してバベル付近に居ました、そしたらぼんやりとしたアホそうな黒ずくめの男を見つけ声をかけました。

 

そのカモはあっさり自分をサポーターとして雇ってくれました、ちょろいと思っていたらリリの使っている【魔法】【シンダー・エラ】(変身魔法)を見破ってきました・・・逃げようとしましたがどこに行っても【魔力】を覚えたから必ず居場所がわかると言われ、目を見ると本当のことだと分かりました・・・なんですか!?そのインチキ能力は!?リリにください!!

 

どうしようもなくなったので【魔法】を解除すると目を輝かせ、新しい魔法の杖が作れそうだとシエン様は仰いました。どうやらシエン様は変わった道具を作れるようです。その時のシエン様のお顔は下衆でした。

 

それにしても【へんげのつえ】とかリリの存在価値がなくなってしまいます!?でも本当に作れるのでしょうか?もし出来たらアイディア料として1つ欲しいです。

そうしてシエン様は変な事を口走りダンジョンに掛けて行きました・・・こうなってはヤケです!たっぷり稼がせてもらいますよ!シエン様!

 

・・・ダンジョンに潜った結果今までで一番の稼ぎでした・・・潜った階層は10階層まで、シエン様は護衛しながらダンジョン潜った事ないからほどほどにという事で10階層という事になりました。そして10階層に行くまでさまざまな事がありました・・・

 

出てくるモンスターは全て【魔法】で倒して【魔法】は1人3つまでしか使えないはずなのにリリが見た感じ10種類は使っていたような気がします・・・

 

キラーアントというモンスターに出くわし、キラーアントを瀕死状態にすると仲間を呼ぶという習性を利用して、狭い通路に誘き出しわざと袋小路に入り、前からモンスターが来るようにして魔石稼ぎを始めました・・・リリは必死で魔石を集めました。ええ、死ぬかと思いましたよ・・・しばらくアリは見たくありません・・・

 

10階層に着きオークが出現したら、シエン様はリベンジじゃあああ!!と言ってオークに突撃しました。あの短剣なかなかのものでしたね・・・

そして凄まじい速さで突撃しオークを倒した!っと思ったのですがオークの腹に刺さらず弾かれていました・・・オークに笑われる冒険者は初めて見ましたね・・・若干シエン様は落ち込んでました。

 

そしてシエン様は怒ったのかマントの二ヶ所が青と黄色に光りだすと水と雷が現れ合わさり、オークにぶつけオークを倒しました。

【魔法】は一つしか発動できないのに二つ、しかも詠唱どころか魔法名すら言っていない・・・リリの常識が壊れたような気がしました。

本当に【魔法】に優れているようです。

昨日噂になってた10階層の焼け野原になった原因はシエン様なのでは?と聞くと

 

「リリのようにカンのいい子は好きだよ・・・」

 

と言って三日月のように口を歪ませリリに笑いかけてきました・・・気持ち悪いですシエン様。

 

10階層にある枯木を回収して喜んでいるシエン様、

 

「これは良い杖になりそうだ。昨日焼け野原になった10階層がもう元通りになっている、ダンジョンの修復力はどうなってんだ?不思議だ・・・」

 

不思議そうにしていましたがリリはシエン様の方が不思議です。何か他の冒険者と違う気がします。

儲けたお金は7対3で分けましたがシエン様がその後でよく働いた分とご飯をよく食べるようにとお金をくださいました。実質5対5でした。

 

サポーターなのに・・・・・・ホント、変なの・・・




黒いマント
シエンがイーリスから持ってこれた物の一つ。ただの布だから防御面では役に立たなかったが、アスフィの力を借りる事でとんでもないマントになった。
作るのに使用した素材は再生力の高いモンスターのドロップアイテムと下層に出てくる蜘蛛のモンスターのドロップアイテムである糸
蜘蛛のモンスターのドロップアイテムを使用しているせいか装備していると毒耐性がつくようだ。


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シルからのクエスト

水の魔道書【ウォーター】

シエンオリジナル魔法の一つ、出来上がったのがギャンレルを倒した後のイーリスの平和な2年間に開発することができた。この魔法を発動した際には魔法陣が発生しそこから水が出てくる。魔法で出来た水は飲むことができ、魔法の発動を終了しても残り続ける。まだ上位クラスの魔道書は作れていない。

岩の魔道書【ストーン】

シエンオリジナル魔法の一つ、【ウォーター】と同じ2年間に開発することができた。発動した際は魔法陣が発生しそこから自分のイメージした岩の塊が出てくる。【魔力】【器用】が高いと大きなものが作れ、細かい部分を作れるようになる。イーリスでは砦やお風呂を作っていた。

オラリオのダイダロス通り
リリとのダンジョン探索を終えてから1日後

怪しげな男「よし、この武器と食料を持ってあそこに・・・」

怪しげな黒ずくめ「・・・・・(【エルウィンド】)」

怪しげな男「な、なんだ!?貴様!?いつからこk(バタン)」

怪しげな黒ずくめ「(やれやれ、何処でも変な奴はいっぱいいるな・・・オレを含めて、そしてギルドもなかなか真っ黒だな・・・なんだ?この付近に中々の【魔力】の持ち主がいるな)」

謎の黒いマント「あれ程の力を持つ者がいるとは、私達の協力者となってくれるならどれほど心強いか・・・ウラノスに報告だな」


リリとのダンジョン探索を終えてから数日後

 

現在オレはロキ・ファミリアでリヴェリアさんにダンジョン潜った事について話す事になった・・・

 

「初のダンジョン潜りで18階層まで潜ったやつなどいない、ありえない偉業だ。確かにお前なら余裕だろうが、なぜそんなことをした?」

 

リヴェリアさんの【魔力】が少し動きがある、怒っているのか?変なこと言ったら怒られそうだな。

 

「上層のモンスターが弱すぎてもう少し歯ごたえのあるモンスターと戦いたくて下に潜りました」

 

「そうか、ではなぜ10階層を焼け野原に?」

 

「精神力が勿体無いので短剣でオークを倒そうとしましたが、傷一つ付けられなくてオークに笑われました。その後に増援が来たので一気に焼き払いました」

 

「・・・?オークに笑われた?傷一つ付けられなかった?」

 

「はい」

 

「私がお前を引っ張って来た時、抵抗しなかったのは?」

 

「【力】が無さ過ぎて振りほどけませんでした・・・」

 

「・・・・・なんというか極端だなお前の能力は」

 

「オレもそう思います・・・」

 

リヴェリアさんは極端過ぎるオレの能力に呆れていた、女性より【力】がないって結構きついぞ・・・

 

「でもおかしいことじゃないよね?だってアタシ【力】はあるけど【魔力】ないし!」

 

「確かにおかしいことじゃないのう」

 

【魔力】がない人と少なめの人が慰めてくれたがダンジョンの上層部で通用しないのはカッコ悪い・・・

 

「【力】をつけるなら簡単・・・戦お?」

 

「確かにその通りだがアイズとの戦いでは【力】の差がありすぎて、戦いにならなくて経験値にならないと思う・・・」

 

それにアイズ達には言っていないがオレにはあの【スキル】があるせいで全然伸びないだろうな・・・

 

「ま、それより一度ステイタスを更新しにオラリオを出ようかと思いまして」

 

「えー!?オラリオから出ていくの!?一緒に冒険しようって言ったじゃん!」

 

「今までの経験がどんな形でステイタスに影響が出るのか知っておく必要があるからな、ごめんな」

 

【スキル】の影響でどれくらい伸びるのか楽しみだな。ベル達、元気にしているだろうか・・・

 

「・・・いつ帰ってくるの?」

 

「分からん、少しばかりはしゃぎ過ぎたからな。ほとぼりが冷めるまでゆっくりしてるよ、何かあったらヘルメスに言ってくれよ?そしたらオレのとこまで手紙届くから、困ったことがあったらすっ飛んで来るさ」

 

「言葉通り飛んで来そうやな・・・」

 

「うん、僕もそう思うよ」

 

そうしてオレはロキ・ファミリアを出た。

 

 

シエンが出てから

 

「団長、シエンさんについて気になることが・・・」

 

「どうしたんだい?アキ?」

 

フィンに近づき小声で話しかけたのは猫人のアナキティ・オータム、通称はアキ、Lv.4でとても優秀で鼻が効く。

 

「あの、シエンさんのマントからなんですけど人の血の匂いがするんです」

 

「ンー、冒険者同士での喧嘩ならよくあるけど?」

 

「少なくとも10人近くはやっています。あのマントは前もかなり濃い血の匂いがしていましたがアイズにやられて修復した時には匂いは消えていたのにもう血の匂いがします。わずか数日でトラブルに巻き込まれたか、巻き起こしたか・・・注意した方がいいかもしれません・・・」

 

「わかった・・・注意しよう、はしゃぎ過ぎた・・・か」

 

「なーに心配することあらへん!困ったことがあったらすっ飛んで来るゆーとったやん!そん時堂々と聞けばええ!」

 

「さらっと会話に入らないでくれるかな?けどその通りだね、何をしたかは直接話しを聞けばいいし嘘をついてもロキなら分かる。今はオラリオから出るみたいだしこれ以上は問題は起きないだろう」

 

「団長がそういうのであればこれ以上は言いません」

 

「でも僕じゃ気づかなかったよ、ありがとう、アキ」

 

「これぐらい大したことじゃないですよ」

 

「アキ?団長と何話していたの?話さないと分かるわよね?」

 

「大事な話よ、だから落ち着いてティオネ」

 

「大事な話?まさか!?アキ、貴方団長のことが!?」

 

「あーもう、めんどくさい事になった・・・」

 

「フフ、アキ、ティオネに説明よろしく頼むよ?」

 

「団長がしてくださいよ〜」

 

 

オレはロキ・ファミリアを出てヘルメスに暴れ過ぎたのでオラリオを出ることを伝え、オラリオを出る前に豊饒の女主人に来た。

 

「あ!シエンさん!いらっしゃいませ!」

 

「よ、シル。いつもの頼むよ」

 

「はい!お酒と一番高いお料理ですね!」

 

「違う、アルヴの水と今日のオススメだ」

 

「すみません、間違えました」

 

といってあざとく自分の頭を軽く小突いた後アルヴの水を取りに行き、注文した料理をシェフに伝えた後、水を持ってこっちに来た。

 

「はい、アルヴの水です!」

 

「ありがとう」

 

「あの・・・シエンさんにちょっとお願い事があるんですけど・・・」

 

「なんだいきなり?」

 

シルがオレにお願い事?なんだろう?

 

「実は新しい料理を作ろうとしているんですけど必要な材料が足りなくなってしまいましてその材料が夜のセオロの森林にしかないんです」

 

セオロの森林とはオラリオから真っ直ぐ東に進んだ先に連なったアルブ山脈、その麓(ふもと)に広がる大森林のことだ。モンスターも出るみたいだが比較的弱いのしかいないためそこまで危険ではない、冒険者は。

 

「夜の森ィ?絶対迷うぞ?他の人には頼めないのか?」

 

「すみません、森に詳しいリューもちょっと用事があって居ないんです・・・だめ・・・ですか?」

 

上目遣いでこちらを見てくるシル、でも無理なものは無理だ。

 

「すまんちょっと「シエンさんが私達とは違う世界から来たって事他の人に言っちゃいますよ?」・・・!?」

 

そう小声でオレに言ってきた、オレのことがバレてる!?またヘルメスか!

 

「私がそのことを知ったのは赤色の髪をしたアンナっていう綺麗な女性の人で人が来ないようなところで商売をしている人です。少し前にダイダロス通りで会いました」

 

アンナさんかよ!?なんであの人が来てんだ!?いや、あの人なら居てもおかしくないか・・・アンナさんだもんな・・・

 

「それにシエンさんの事よく知っているみたいですよ?シエンさんの事、英雄だって言ってましたし」

 

「オレは英雄なんかじゃない」

 

「まあそれはいいです、クエスト受けてくれませんか?」

 

「・・・受けさせて頂きます」

 

「ありがとうございます!美味しいお料理が出来たら1番に作ってあげますね!」

 

最初からクエスト受けさせる気満々だったろ!この腹黒少女め!

 

【冒険者依頼】受注

・依頼人:シル・フローヴァ

・報酬:新作のお料理

・内容:夜のセオロの森林にしかない料理の材料の入手

・備考:『材料を手に入れようとすると大きな猪に邪魔されるかも、気をつけてください!』




ダンまち外伝10巻読みました。アキ有能すぎィ!
アイズの謎だったスキルが判明しました。
そのスキルが考えていたシエンの設定にぶっ刺さりまくっていて下手したらアイズに殺される可能性が出てきました・・・

アニゴジを見てきました!バルチャー最高!見た目は地球防衛軍のウイングダイバーをイメージすればわかりやすいかも?
バルチャーに乗った主人公は中の人的にトランザム!!とかいうかと思った。


シエンは英雄とは自分達にとって都合のいい駒のことだと思っています。

大きな猪・・・一体何者なんだ・・・


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緊急クエスト 【力】対【魔力】

ヘルメス・ファミリア

「おや?シエンどうしたんだい?ベル君達のところに行くんだろう?」

「そうしたかったんだけど、シルに弱みを握られてクエストを受ける事になった・・・」

「ハハハ!それは災難だったね。シルちゃんはなかなか強かだからなぁ。それで?クエストの内容は?」

シエンはヘルメスにクエスト内容を言う。

「なるほどね、確かにこの材料ならセオロの森林にあるぜ。気をつけて行ってくるといい」

「おう、分かった。行ってくるよ」

「アスフィ、映像の撮れる魔道具を持ってセオロの森林に出かけるぞ。コイツは面白いことになりそうだ・・・神のカンがそういっている!!」

「ハァ、まだ私仕事が残っているんですけど・・・シエン・・・気をつけてくださいね・・・」



オレはシルからクエストを受注し、セオロの森林に行く許可を貰いにギルドへ向かった。

 

そして、最近オレの担当のアドバイザーになったハーフエルフのエイナ・チュールを見つけた。ギルドでも人気の美人さんだ。

 

「あれ?シエンさん?今日オラリオから出て行くって言ってましたよね?どうしたんですか?」

 

「そうしようと思っていたんだけど友人にクエストを受けてほしいと言われてな、それでクエストをこなす為にセオロの森林に行く許可が欲しいんだ」

 

「分かりました、許可を取っておきます。でも夜の森はとても危険です。シエンさん、十分注意してくださいね?」

 

「分かってるって!それじゃ行ってくるよ」

 

「お気をつけて、でも大きな猪が出るって情報はなかったと思いますけどってもういない!?」

 

そうしてオラリオから出る許可を貰ってセオロの森林に向かう、馬車で向かうらしいがそんな時間は勿体無いのでオレは高く跳び上がってから【ギガウインド】を使って凄まじい風を起こしその反動で森に向かって空を飛ぶ。目にゴミが入らないように【ミラーバリア】をゴーグルのような形にして顔にくっつける、痕が残ったりしそうだな・・・

 

しばらく飛んだら森林が見えてきて入り口で着陸する。さて、クエスト開始だな。ホントにあるのかなぁ料理に使う材料が・・・見た感じは絶対料理に使うようなものじゃないと思うけど・・・

 

しばらく探してみると森林の開けたところにシルが欲しがっていた材料っぽいものが!よし!これでクエスト完了だな!材料を採ろうと近寄る。

 

その時、空から大きな黒い影が現れて持っている大きな大剣をオレに振り下ろしてきた!!ギリギリで躱し、大剣は地面を叩く。

ズドォォン!と大きな音を立てて砂煙が舞う・・・

おいおい・・・誰だよ・・・こんなこと仕掛けてくるのは!!

 

砂煙が収まりその場には2Mを超える錆色の髪をした大剣を持った猪人がいた。

 

「・・・・・」

 

ジッとこっちを見る猪人。コイツ、強いな・・・アイズ達よりも・・・見た目もゴツゴツしてて、パワータイプか?

 

「オレは【猛者】オッタル、お前の力見せてもらうぞ・・・」

 

「悪いけど・・・オレはそこにある材料が欲しいだけなんだ・・・オレにはアンタと戦う理由が無いから戦うのやめない?」

 

「そういうわけにはいかない・・・・・フンッ!」

 

そう言って急接近してきて大剣をオレに振り下ろしてくる。

こっちの都合を考えてくれ!大きな猪ってコイツのことかよ!?人じゃねーか!?

 

「【ミラーバリア】!!」

 

「ム、しかし弱いな・・・ハァ!!」

 

バリアで大剣の勢いを殺すことは出来たが更に力を入れて無理やり押し付けてバリアを砕きやがった!どうする・・・オレのやる事はコイツと戦う事じゃ無い、逃げるか・・・

 

オレは背を向けて逃げ出そうとするが、しかしまわりこまれてしまった!!

 

「遅い・・・」

 

「クッ!」

 

アンタが速すぎんだよ!素のオレより速いだろ!

どデカイ大剣が迫ってくる!【魔法】が間に合わねぇ!?マントに精神力を流し込み硬化させてガードだ!

迫ってきた攻撃をマントで防ぐ事にしたオレだが【魔法】より弱いマントのガードでは防ぎきれず吹っ飛ばされてしまう。空中で体勢を整えて着地する。

 

「オレと本気で戦え・・・戦わなければヘルメスファミリアを襲撃し皆殺しする」

 

「!?」

 

「そうすればお前も少しは戦う気になるだろう・・・」

 

何を言っているんだコイツは・・・?皆殺し?バカじゃないのか!?

そんな事して何のメリットもない、デメリットだらけだ!

けどアイツの目・・・あれは本気だ・・・本気でやろうとしている・・・ふざけやがって・・・オレの友人を殺すだと?させっかよそんな事!!

オレの背中が熱くなる、【封印】が解除されて【魔力】が吹き荒れる・・・

 

 

【魔力】が上がるたびにシエンのプレッシャーがどんどん強くなっていく・・・先に攻撃に動いたのはオッタルだった。

 

「【ミラーバリア】・・・」

 

オッタルの大剣がシエンのバリアにぶつかり火花が散る。今度は壊れない。オッタルはすぐさまその場を離れようとするが足が動かない、足元にはシエンのスキル【呪い】で出来た黒い手がオッタルを捉えていた。

 

「オオオオオオ!!」

 

気合いを入れて無理矢理黒い手の呪縛から逃れるオッタル、しかしその動作はシエンの【魔法】を放つのには十分過ぎた。

シエンのマントにある【トロン】の魔道書が輝き、複数の雷の矢がオッタルの肩に刺さる。

 

「グッ!?」

 

「【ミラーバリア】」

 

怯んだオッタルの周りには透明な障壁が現れる。オッタルは大剣を何度も斬りつけて傷一つ付ける事はできない・・・

 

「(なんだこの【魔法】は、さっきと全然強度が違う)」

 

シエンは緑の魔道書を使い宙に浮き上がって行く・・・

 

「(バカな!?魔法を二つ発動するだと!?この【魔法】の強度も全く変わっていない!?)」

 

オッタルは驚愕した、魔法を二つ発動する事、そして先に発動している【魔法】は全く強度が変わっていない事を。

シエンはある程度まで浮き上がりその状態を維持しマントの内ポケットにある【ストーン】の魔道書に精神力を流す、魔道書は鈍色に輝きセオロの森林を覆う大きな魔法陣を作り出す。

オッタルは何やらとんでもないことが起きる気がしてバリアから出るために攻撃していると頭上が暗くなっていき見上げるとそこには見たこともない大きな魔法陣がありそこから巨岩が作り出され自分に向かって落ちてくる。

 

「(二つじゃない、三つ・・・まて!?雷、障壁、空中移動、巨岩、四つだと!?【魔法】は例外でもない限り三つまでのはず、しかも現在三つ発動中・・・どうなっている・・・)」

 

巨岩がバリアに触れるギリギリでバリアは消失しオッタルに迫る!

 

「(躱す事ならできる・・・だが)」

 

そう、この戦いを自分の主神が見に来ているのだ、主神の護衛役は自分以外にもいるが逃げ遅れ巨岩の下敷きになってはたまらない。

 

「オオオオオオオ!!」

 

オッタルはその場を踏み止まり巨岩を待ち受ける、巨岩がオッタルに触れ凄まじい重さが体にのしかかるが持ち堪える・・・そして声が聞こえてきた・・・

 

「へぇ、やるじゃん。ならば後10個程どう?」

 

魔法陣は消えていなかった、悪魔が口走った言葉通り巨岩がオッタルの支えている巨岩の上に更に10個降り注ぐ・・・

 

「グ、アアアアアア!!」

 

流石のオッタルもこれには耐えられない。重さに耐え切れず押し潰された・・・セオロの森林の二分の一は巨岩に埋め尽くされてしまった。これがバレたら自然の中で生きてきたエルフ達、中でもハイエルフのリヴェリアはブチギレ確定である。

 

「・・・・・さてクエスト再開するか」

 

怒られる前にオラリオから出て行く事を決意し再び森に降り立ち材料を入手しセオロの森林を後にする。

 

 

シエンがセオロの森林を去った後、美の女神フレイヤはある巨岩に近づく

 

「オッタル、無事かしら?」

 

そう話しかけるとフレイヤの足元の地面が盛り上がりそこから傷だらけのオッタルが現れる。オッタルは巨岩の下敷きになる寸前で地面に穴を掘りやり過ごしたのだ。

 

「フレイヤ様、戦い敗れ無様な姿を晒してしまい申し訳ございません・・・次は必ず勝ちます」

 

「私もオッタルの戦いに邪魔になってしまったようだし気にしないで頂戴、そして次の戦いを楽しみにしてるわ。」

 

「ハッ!」

 

「あの野郎・・・オレと戦っていた時とまるで違う・・・オレじゃあ遊びにもならないってか・・・」

 

フレイヤの護衛役だったアレンはシエンとの戦いで相手にされていなかった事に苛立ち歯をくいしばる。

 

「それにしてもあの子の【魔力】凄まじかったわね、しかもまだ完全には発揮していなかった・・・フフフ、ますます欲しくなっちゃう」

 

シエンはまだ完全には本気ではなかったのだ、ペレジア兵や屍兵以外には余程のことがない限りはフルパワーは出さない、次の戦いの為に【魔力】を残しておく為に・・・

 

「欲しいけどアッサリ魅了して私の物にするのもつまらないわね・・・貴方達があの子を倒した時魅了するというのもアリね・・・そうしましょうか」

 

「「ハッ!必ずや奴を倒して見せましょう」」

 

「期待してるわ(フフフ、異世界からの迷い人さん?私をもっと楽しませて頂戴?)」

 

フレイヤはシエンをただ魅了するのではなく自分の眷属達の成長の為に利用する事に決めた。シエンの困難はまだまだ続く・・・




【猛者】オッタル

29歳 猪人 Lv.7

オラリオ最強の冒険者だったがシエンに敗れる、自分より強い者がいることを知り、まだまださらなる高みに行けるとダンジョン潜りを再開する。
自分を押し潰した巨岩を砕き、ある程度の大きさの物をヘファイトスファミリアにて加工してもらい、石の大剣を手に入れた。


魔殺しの大剣

シエンの【ストーン】にて出来た巨岩を砕き加工した物。【魔力】Lv.7クラスで岩を作り出したのでアダマンタイト以上の強度がある。
作られた際に【鍛治】スキルが働いたのか、石の大剣に魔法が触れると魔法を打ち消す退魔の大剣となった。【魔道士絶対殺す大剣】の誕生である。


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後始末はちゃんとしましょう

シルのクエストでシエンが現れるまでスタンバってたオッタルさん・・・まじお疲れ様です・・・


オラリオ 午前中 豊饒の女主人にて

 

「ほい、料理に必要って言ってた材料だ」

 

オレはクエストを終えて次の日にシルに材料を届けにきた。

 

「ありがとうございます!これで新しい料理が出来ます!すぐに作りますからちょっと待っててくださいね!」

 

「あ、ちょっと!オレは今日帰るk」

 

シルはオレの話を聞かないでキッチンに向かう

 

「シエンさん、シルの作ってくれる料理です。食べていってくださいね」

 

リューさんが味見役(いけにえ)になれと言ってくる・・・

 

「明らかに料理に入れるような物じゃなかったけど大丈夫か?」

 

「・・・おそらくは」

 

やっぱりリューさんも不安そうだ・・・オレ大丈夫かな・・・

 

「出来ました!さあどうぞ!」

 

出来上がった新料理を見る、見た目はよさそうだ見た目は・・・味は・・・味はどうなんだ・・・

オレはシルを見る。顔にはやく食べてっと書いてあるように見える。

ええい、ままよ!メシマズは向こうにもいたんだ!神の恩恵も得た!胃袋よ耐えてくれよ!オレは料理を食す・・・

 

「どうですか?」

 

「なんかよくわからない味だ・・・」

 

シルが聞いてきたが正直微妙だ、味がない・・・料理のうまい感想が言えなかった。

 

「うーん、まだまだ改善が必要ですね。シエンさんまたいつかクエスト頼んでもいいですか?」

 

「今度は大きな猪に遭遇するクエストは勘弁してくれ・・・」

 

簡単なクエストを受けてあんな大規模の戦いになるとは思わなかった・・・備考欄には注意して見る事にしよう。

少し考え事をしてると近くの冒険者達からの会話が聞こえてきた。

 

「おい、聞いたか?セオロの森林に突然巨大な岩石が現れたんだとよ」

 

「ハァ?森に突然岩石が現れた?あり得ないだろ」

 

「それがどうやらマジなみたいだ、昨日セオロの森林に行こうとしていた奴が空に見たこともない魔法陣が見えたらそこから巨岩が現れたんだとよ、魔法陣が消えて少し経った後にその巨岩を調べる為にそれを削り、オラリオに持ち帰って岩石を鑑定してもらったら見たこともない貴重なものって事で高く売れるらしいぞ!」

 

「マジかよ!?オレも行こうかな?でもなんで儲け話をオレに?」

 

「その岩石は並みのやつでは削れないらしく【力】の高い奴が必要なんだ!だから協力してくれないか?」

 

「任せろ!どんだけ硬いか知らないが、安全に思いっきり【力】を振るえるってことはあまりないから腕試しには丁度いいな!食事も終わったし早速行こうぜ!女将さん、お勘定!」

 

そう言ってお金を置いて出て行った。

情報が届くのはやっ!?流石迷宮都市だな・・・そう思っていると

 

「絶対シエンだニャ」

 

「シエンさんだね」

 

「シエンさん、やりすぎです。片付けはしっかりなさい」

 

「やり過ぎについてはリューは人の事言えないニャー」

 

オレがシルのクエストを受けたことを知っている店員さん達は巨岩が現れた原因はオレだと察した。森育ちのリューさんは森林を傷つけたオレに対して少し怒っているように見える。

 

「よー、ミア母ちゃん!ちょっとお邪魔するでー」

 

ロキさんがお店にやってきた、・・・リヴェリアさんを連れて

 

「おっ?やっぱおったなシエン君」

 

「なんでここにいるってわかったんですか・・・ロキさん」

 

「カンや」

 

「そのカン、ズルくないですか?」

 

「ズルくないで、神やから」

 

「そんな事はどうでもいい。シエン、話したい事があるからちょっとウチまで来てもらおうか」

 

「・・・はい・・・」

 

ああ、終わった。オレは、ロキファミリアに行く事になった・・・

 

 

シエンがいなくなった豊饒の女主人にて

 

「おい、あの黒マント何者だ?あんな奴ロキファミリアにいたか?」

 

「いや?いなかったと思うぜ、それより九魔姫はやっぱ美人だなぁ・・・」

 

「当たり前だろ?ハイエルフだぜ?オレもお知り合いになりてぇ〜」

 

「そんな美人さんと仲のいいあの黒マント・・・許すまじ!!」

 

「ああ!だけどよ、九魔姫と知り合いって事はあの黒マントメチャクチャ強いんじゃねぇの?」

 

「かもな、主神に報告でもしとこうか」

 

さっきのやり取りでリヴェリアと仲がいい(?)と思われているようで注目されてしまったシエンだった。

 

「ニャフフ、シエンは最近の話題にニャッているニャ」

 

「それにしてもセオロの森林を岩石まみれってどうやったらできるんだろうね?」

 

「シエンさんはやはりとんでもない魔導士のようですね。シル、シエンさんの事について知っている事はありませんか?」

 

「え?リュー、シエンさんの事が気になるの?」

 

「ええ、あれ程の【魔力】の使い手はそうはいません。シエンさんが都合がいいなら私の早朝の鍛練に付き合ってもらおうかと」

 

「あっ、そういう事・・・」

 

「リューはクソ真面目だからニャー」

 

「バカ娘共!くっちゃべってないでさっさと仕事に戻りな!」

 

 

 

ロキファミリアにて

 

「実はこういう事がありまして」

 

オレはクエストを受けてハプニングが起きたことを言った。

 

「あんの色ボケ女神、やっぱシエン君に目ぇつけとったか・・・シエン君はウチのもんやっちゃうに・・・」

 

「いや、ロキさんのものじゃないですけど」

 

「何があったかは理解したが、お前がやった事だろう。ちゃんと後始末をしてこい。」

 

「・・・はい」

 

後始末めんどくせぇ、やり過ぎなきゃ良かった・・・

 

「ねぇシエン!アタシも手伝おうか?」

 

「ティオナ?それは助かるけどいいのか?」

 

「うん!だってシエン【力】ないでしょ?アタシ【力】には自信があるから任せて!」

 

【力】ないでしょ・・・子供の悪意の無い言葉は突き刺さるでぇ・・・でも心強いな

 

「団長〜ギルドからのクエストっす」

 

黒髪の特徴の無いのが特徴の男、ラウル・ノールドがフィンさんに連絡しにやってきた。

このラウル君、あまりぱっとしないがなんとL v.4だ。周りの人達が凄すぎて、自己評価がかなり低いらしいがフィンさん達からは期待されているみたいだ。

自分に自信が持てるようになればもっと強くなれると思うな。

 

「ギルドからクエスト?」

 

「はいっす、セオロの森林に現れた巨岩を破壊するようにとの事っす、ってどうしたんすかシエンさん?」

 

おおぅ、ロキファミリアにも迷惑がかかっちまったよ・・・

周りの人達からの視線が辛いぜ・・・

 

「ラウル、報告を続けてくれないか?」

 

「は、はい。巨岩なんですが硬さがアダマンタイト以上の強度で壊すのにかなり苦労しているみたいっす。しかもそれがセオロの森林の半分くらい埋め尽くしているみたいっす」

 

「ほう・・・」

 

「(ガクブル)」

 

リヴェリアさんの声にオレの体の震えが止まらない・・・

 

「あと、見たこともない鉱石なので高く売れるっす」

 

「ほう、見たこともない鉱石か、それは気になるのう。フィン、ワシも行っていていいかのう?そのほうが速くクエストが終わるだろうからの」

 

「・・・そうだね、こうなっては仕方ない、さっさと終わらせよう。シエン、勿論協力してもらうよ?」

 

「こちらこそよろしくお願いします・・・」

 

「オラリオから出る許可を貰いに行き、馬車の手配をしないとね」

 

「あの、ティオナとガレスさんを抱えて空飛んでいくんで馬車はいらないですよ?」

 

「「「は?」」」

 

「え!?空飛べるの!?やったー!!ティオネ!!アタシ空飛べるって!!」

 

「とても信じられないわね・・・」

 

「リヴェリア、すまんの。空の世界とやらを楽しんでくるわい」

 

「今度私もシエンに頼んでみようか・・・」

 

「・・・羨ましい」

 

「いや、アイズさんは【魔法】を利用して滑空とかできるじゃないっすか・・・」

 

ティオナは大はしゃぎだ。やっぱ空飛ぶってワクワクするよね

 

「どれくらいでセオロの森林に着くんだい?」

 

「昨日の夕方くらいに出発して夜になる前に着きました」

 

「速すぎるね・・・」

 

「荷物は持たない場合ですけどね、今回は2人と武器を運ぶので少し遅れるかも・・・」

 

「問題ないよ!それって長く空を飛んでいられるってことでしょ!!」

 

「まあ、そうだけど、途中降りるかもな。休憩挟んで飛んでいく予定だ」

 

「準備してくるね!」

 

そう言ってティオナは自分の部屋に走って行った。あんまり物は持っていけないんだが分かっているだろうか・・・

 

 

オラリオの外

 

ティオナは案の定たくさんの荷物を持ってきていたが小鞄に収まるくらいの量に減らした。

 

「さて、行きますか」

 

「うん!」

 

「楽しみじゃのう」

 

オレはマントに精神力を流し込み両端を伸ばして右側にティオナを包み、左側にガレスさんを包んだ。

 

「このマント伸びるんだ!?すごーい!!」

 

「もうなんでもありだのうお主・・・」

 

「道具がなかったらあまり出来る事はないんですけどね、では飛びますよ」

 

背中のバッグにある緑の魔道書に精神力を流し込み、【ウインド】を発動して浮き上がり次に【ギガウインド】を発動してセオロの森林向けて飛ぶ。目にゴミが入らないようにゴーグルっぽいのも忘れずに2人の分も作る。

 

「すごい!本当に飛んでる!!」

 

「うむ!風が心地よいの、シエンよワシの顔になにか付いておるようだが?」

 

「目にゴミが入らないようにバリアを展開しているんです」

 

「わざわざすまんの、【魔法】の二つ発動とはずいぶん器用じゃな」

 

「【魔法】だけが取り柄なので、さてどうやって壊します?」

 

「このスピードを生かし、巨岩に激突するぞ!」

 

「え?」

 

「なに心配するなアダマンタイトクラスの耐久なら十分破壊できるわい!」

 

「アタシは出来るかわからないけどやってみる!」

 

えぇ・・・いいのかそれで・・・流石ドワーフだなぁ(白目)

オレは激突したらミンチになりそうなのでこの2人を離すしかないな。

 

「あ、見えてきましたよ!あの岩です」

 

「ずいぶんデカイの・・・じゃがやり甲斐があるわい!やるぞ、ティオナ!」

 

「りょーかい!!」

 

そう言って2人はマントから出て武器を持ち、【ギガウインド】で加速した状態で岩に激突する。

ガレスさんの激突した巨岩はガレスさんの斧によって真っ二つ!!

ティオナのも同様に真っ二つだ・・・

 

何この人達・・・コワイ・・・

 

「なんだぁ!?いきなり岩が割れたぞ!?こっちに倒れてくる!?逃げろォ!!」

 

あ、マズ!?あれは逃げきれないな、魔法を!!

 

「【ミラーバリア】!!」

 

「あれ?岩が浮いてるぞ?おっとそんなこと言ってる場合じゃねぇ!離れねぇと!」

 

よし!なんとか間に合ったな・・・2人は暴れまくってるからオレは周りの冒険者達に被害が出ないようにカバーしないとな・・・

 

岩石の破壊作業はオレも【トロン】で岩石を部分的に穴を空けて割りやすいようにして、ガレスさんより【力】の低いティオナの援護をした。オレ1人でも壊せるが帰るための精神力を残しておいてとのことで精神力の節約させてもらった。有難いことだ。そしてついに

 

「やっとおわったー!!」

 

「なかなかの強度だったのう、この鉱石を椿の奴にでも持っていくか」

 

「椿?」

 

「うむ、ワシの専属の鍛治士でなオラリオではトップクラスの鍛治士じゃ」

 

「武器か、どんなものがあるんだろうな」

 

トップクラスか、流石ロキファミリアだ。色んなファミリアに繋がりがある。

 

「いてて、手がいたーい!」

 

「ちょっと待ってろ、今治すから」

 

オレは腰にある【リライブ】の杖を使い治療した。

 

「すごい、もう手が痛くなくなった!ありがと!!」

 

「回復もできるのか・・・」

 

「それとこのお湯で手を洗うか?」

 

オレは【ストーン】【ウォーター】【ファイアー】を利用して石の桶を作り水を生み出し火を突っ込んでお湯を沸かした。

 

「なんて贅沢な【魔法】の使い方なんじゃ・・・」

 

「ねえねえ!これって大きくしたらお風呂作れるんじゃないの!?」

 

「おっ?カンがいいな!イーリスで遠征の時、こうやってお風呂作ってたんだ。」

 

「ダンジョン遠征では綺麗好きのエルフ達が欲しがるの」

 

「ロキさんにも魔道書を渡す約束してましたし、水と岩の二冊差し上げましょうか?」

 

「いいの!?」

 

「リヴェリアさんの講義の分と今日の後始末の手伝いしてもらったその分だ。遠慮なくもらってくれ」

 

本当に助かったからな、ちゃんと借りは返すぞ。ありがとう2人共

 

 

この後2人をオラリオに運びオレはオラリオを出てベル達の村へ向かって飛んだ。




戦闘描写って難しい・・・


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人の噂は75日で消えるって本当?

ダンメモの今回のイベントでのキャラの服装が最高なんじゃ〜
オッタルを止められる人物【ナイト・オブ・ナイト】、原作に出てきてないもう一人のL v.7の人の事かも?
でも冒険者ではない男の人で海の上ってどういう事なんだ・・・冒険者を引退したんだろうか・・・


雷魔法【トロン】

強さはトールハンマーが1番強いです。
【サンダー】【エルサンダー】【ギガサンダー】【トロン】【トールハンマー】(配信アイテム)

という感じです。ビームみたいに真っ直ぐ飛んだり、相手に突き刺さったりする。スマブラでもルフレが使っていたりする。

アイズの【エアリエル】を【エアリアル】と勘違いしてた・・・恥ずかしい・・・


シエンと別れてロキファミリアに着いた二人

 

「ただいまー!」

 

「今戻ったぞ」

 

「お帰りぃ二人とも、お疲れ様やったな。ん?その持ってる本はシエン君がつこうとった奴やな」

 

「うん!シエンがリヴェリアの勉強のお礼と今回の件でのお礼だって!」

 

「魔道書は水と岩の2種類じゃ、上手く使えば風呂を作ったりできるそうじゃ」

 

「なんやて!?」

 

「本当なのかガレス!?」

 

「ンー、これはダンジョン遠征で体の汚れを落とせて気分的にサッパリして士気向上に役に立つね」

 

ロキファミリアの女性陣は驚き、ダンジョン遠征でお風呂が入れると分かり喜んだ、中でもエルフ達が大喜び。

 

「詳しいことはシエンから取り扱い説明書を貰っておる、リヴェリアよ魔道書と説明書を渡しておくぞ」

 

「ああ、大切に預からせてもらう。よし、では早速風呂を作る練習だな」

 

「岩の魔道書はかなり応用が効くね、障害物だけでなく砦を作る事も出来そうだ・・・いったいどんな砦を作ろうかな。魔道書を譲ってくれた彼には感謝しないといけないな」

 

「それもええけど、石像作ろうで石像!!等身大アイズたん作るんやー!!」

 

風呂を作ろうと意気込むリヴェリア、どんな砦を作ろうか考えるフィン、アイズの石像を作りたがるロキ。

 

「やれやれ、これでは岩の魔道書はすぐ使い物にならなくなるのう・・・」

 

「「「あ・・・」」」

 

ちなみに岩の魔道書も50回使える、シエンは【道具節約】のスキルの影響で無限に使うことが出来るがロキファミリアにはそんなスキルを持っている人はいない。

 

「ホンマや、いくら魔剣より使えるゆうてもこんなんすぐ使い物にならなくなるで」

 

「ロキ、説明書にはどうやらこの魔道書は50回使えるようだ、それと連絡をくれたらまた魔道書を作ってくれるそうだ」

 

「また50回かいな・・・でも代価はどうすんねん」

 

「たくさんは一度には作れないが無料でいいそうだ。新しい魔道書のアイデアとダンジョン遠征でちゃんと全員無事に戻ってくることが条件のようだ」

 

「・・・そか、でも代価ではなくお礼として何か考えておかんとな!」

 

「勿論だ、こんな希少な物を貰ったのだ。礼をしなくてはな」

 

 

 

 

地図にも載ってない田舎の村 午前中

 

オラリオからぶっ飛ばしてきて戻ってきたオレは爺さん達の家に着いて、ドアをノックする。しかし誰も出てこない。

 

「おーい、じいさーん、ベルー・・・いないのか?」

 

どうやら家にはいないようだ、ならば畑に行こう

 

「あ!シエンだ!お帰り!!」

 

「なんじゃもう帰ってきたのか」

 

「ちょっとやり過ぎて悪目立ちしてしまってな、ほとぼりが冷めるまでここで畑の仕事を手伝うよ」

 

畑にはベルと爺さんがいた。家にいなかったからちょっと心配だったけど杞憂のようだ。

 

「シエン!オラリオでどんなことがあったか聞かせてよ!」

 

「ああ、いいぞ。ホント、色んなことがあったなぁ・・・」

 

「オラリオに行ってから1ヶ月も経たないうちに何をしでかしたんじゃお前さんは・・・」

 

オレはオラリオであったことを話しながら畑仕事をした。ここは平和だなぁ

 

夜、ベルが寝てから爺さんの部屋に行った。部屋に男二人、何も起きないはずもなくステイタス更新をしてもらった。

 

シエン

 

 Lv.1

 

 力 :I0→I0

 

 耐久 :I0→I 13

 

 器用 :I0→H156

 

 敏捷 :I0→I 7

 

 魔力 :I0→G214

 

 

 魔防 :D

 

《魔法》

【ミラーバリア】

 ・速攻魔法

 ・敵の飛び道具や魔法を反射する。反射する際は向きを自由に変えられることができ、いろんな攻撃も防ぐことができる。形は精神力を消費すると自由に変えられる。

 ・魔法を反射したとき魔法の威力が上昇する。

 ・空中に足場を作ったりできるが透明で見えない。

 参考 餅

 

【】

 

【】

 

《スキル》

【封印】

 ・本来の力、スキルが出せなくなる(神の恩恵を受ける前の能力が-Lv.2、力はLv.1のまま、幸運は50)

 ・自分のピンチの時や感情の変動で解除可能

 

【魔法の探究者】

 ・【魔力】と【器用】が成長しやすくなり、限界を超える

 ・力が全く上がらなくなり、耐久が上がりづらくなる

 

【道具節約】

 ・幸運×2%で武器や魔道書の使用回数が減らない●石も減らない(新品のままになる)

 

【魔道具作り】

 ・(FEにある)武器、魔道書、杖を作ることができる。

 

【魔力追跡】

 ・生き物の【魔力】、【精神力】を覚えどこにいるのかを探知できる。レベル、魔力が上がるごとに範囲拡大。【魔導】の補正も入る。ただしダンジョン内では不安定。

 ・任意発動、精神力消費しない

 

【多重魔法マルチマジック】

 ・複数の魔法を同時に発動、または魔法を発動しながら別の魔法も発動できる。

 

復讐(ふくしゅう)

・ダメージを受けるたび【魔法】の威力上昇、体力を全回復すると威力は元に戻る。身体中から黒紫色の【魔力】が出てくる

 

「・・・かなり基本アビリティが向上しておるの。前からあったスキルにも少しわかるところができて、物騒なスキルも出てきたぞ・・・」

 

爺さんはオレのステイタスを用紙に写してオレに渡してきた。

どうやら【封印】が解除されたことが影響して【復讐】が使えるようになっていた。

にしても【力】が全く上がってねぇ!?

けど代わりにスキルの影響で【器用】と【魔力】が上がっているな。

 

「爺さん、【器用】と【魔力】の上がり方はこれが普通か?」

 

「お前は魔法特化のエルフに怒られるぞ。普通なわけないだろう!元々強いから基本アビリティは伸びにくいはずなのにとどまることを知らずバンバンあがりおって!」

 

どうやら普通ではないらしい、イーリスではもうこれ以上【魔力】の成長が感じられなかったがこっちでさらに強くなれるのはなんとも複雑な気分だ・・・

魔道書と魔法の杖の製作と【魔法】の鍛錬とそれなりの相手との戦闘でこれだ。成長促進スキルってすごいな!?

 

「さて、お前さんはどうするつもりじゃ?ロキとフレイヤに目をつけられおって」

 

「・・・どうしよ?」

 

「自分でやった事だ、なんとかせい・・・ワシは知らん」

 

「えぇ・・・じゃあ好きなようにさせてもらうぞ、じいさんのことは話さねえけど」

 

「やり過ぎんようにな・・・」

 

そんな事当たり前じゃないか・・・今度は気をつけないとな!

でもしばらくはここでゆっくりさせてもらおう。

 

オレは人の噂は75日ということわざ通り、()()()瞑想や魔道書作りなどをして大人しくしていた。

たまにギルドから怪物祭という行事をする為に手伝えと手紙が来て、手伝いに行ったり(常に透明状態になっていた)ロキファミリアから追加の魔道書を届けたりもした。(透明状態でも流石にバレるのでヘルメスに頼んだ)

 

オレが【魔法】の鍛錬をしているとベルが自分もしてみたい!と言ってきたので一緒にやってみたがまるでダメだった。ベルは諦められずしばらく続けてはみたが魔道書は全くの反応ナシだった・・・

ベルは気を落としていたが神の恩恵を得て、【魔法】の勉強をしたら得られるかもな。リヴェリアさんもそう言ってたし。

でも今、仮に魔道書が使えたとしても2度目は使わせなかったけどな。下手に力を得て村の外に飛び出して魔道書を使って精神枯渇でぶっ倒れてモンスターの餌になりましたなんて事になってしまうからな。

魔道書を掴んでうんうん唸っている間はマジで使えたらどうしようとちょっとヒヤヒヤしたが。

 

そんなこんなして75日経った、じいさんにステイタス更新をしてもらってから再びオラリオへ行こう。

 

「じいさん、行ってくるよ」

 

「気をつけての」

 

「おう」

 

オレはオラリオへ【エルウインド】を使い飛んだ。

 

「うわぁ・・!!いいな!ボクもシエンみたいに【魔法】を使ってみたいなぁ・・・おじいちゃん?どうしたの?」

 

「(あの馬鹿者は75日間一体何をしたんじゃ!?なんだあの基礎アビリティの成長と発展アビリティの成長は!!)ん?いや、何でもないぞ」

 

シエン

 

 Lv.1

 

 力 :I0→I0

 

 耐久 :I13→E496

 

 器用 :H156→C689

 

 敏捷 :I 7→I 54

 

 魔力 :G214→F365

 

 

 魔防 :D→C




オラリオのどこか

??「・・・・ウ・・・オオ・・」

禍々しい魔法陣の真ん中には仮面を顔に着けた怪物がいた

???「クックック・・・完成だ・・・!」

魔法陣を発生させている人物は嗤う。
あの悪魔への復讐の為に・・・


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その男、触るな危険!

前回の基本アビリティの上昇の理由はDBの悟空がナメック星に向かった時に宇宙船で自分に気弾をぶつけてたのを参考に村の外の崖の下で修行していました。
その結果、発展アビリティ【魔防】が上昇しました。ちなみになんですが、ガレスの【魔防】の発展アビリティはEです。(原作設定)

今思うと気弾のコントロールをミスったら宇宙船壊れるよなぁ・・・


オラリオに着いたぞ!

 

うん、前より確実に早く着いたな。神の恩恵って すげー !!

これ、クロム達に与えられたらどうなるんだろ・・・オラリオ崩壊待った無しだな!!ぜってぇ来んじゃねぇぞあいつらァ!!

 

あ、アンナさん(死の商人)がもう来てたわ・・・(絶望)

 

こっちに来ているなら一度会って挨拶しておきたい、そしてイーリスはどうなっているのか聞きたい。聞いても意味がないことはわかってるけどね・・・

 

今は昼頃、久々に豊饒の女主人で昼食にしよう!

 

「こんにちはー」

 

オレは店に入ると相変わらず賑やかだった、夜は冒険者でいっぱいだが昼はそれほど冒険者はいなくて一般人の方が多いようだ。

 

「あ!シエンさん!?お久しぶりです!私シエンさんが来なくて(懐が)寂しかったんですからね!」

 

「あーそうかいそうかい、そりゃわるかったねー」

 

「シエンさん、お久しぶりです。ご注文は?」

 

「アルヴの水と今日のオススメで頼むよ、リューさん」

 

「かしこまりました、しばらくお待ちください」

 

「シエンさん!無視しないでください!」

 

オレに話しかけて来たリューさんに注文を頼んだ。シルは無視の方向で、下手に関わるとからかってくるからなこの子は

 

「アッハッハ!ホントに賑やかだなぁここは・・・」

 

「そうでしょう?とてもいいお店なんですよ!あ、いらっしゃいませー!」

 

「高い酒を一つ頼む、それとツマミをな。席は・・・おお、君か。隣に失礼する。怪物祭の時、協力感謝するぞ。君のように他の冒険者も協力してくれたら・・・全く冒険者は自分勝手が過ぎる!」

 

お店に入ってきたのは少し小太りの緑色の目をした年取った男のエルフ、ギルド長のロイマン・マルディールさんだ。

同族からは【エルフの恥】と呼ばれているがこれぐらいの小太りのおじさんくらい普通だと思うけどね、話しかけやすいし。上層部の連中なんかと比べるとよっぽどマシだぞ。

 

「こんにちはロイマンさん、お酒を飲んでいいんですか?まだお昼なんですけど・・・」

 

「構わん、もう仕事なら午前中に終えた。午後からは自由時間だからな」

 

なにこの人・・・有能すぎる・・・午後から自由時間だと!?なんて羨ましいんだ・・・

 

「ふふふ、今日の私は気分が良い。店長!彼にも酒を出してくれ!支払いは私が出す」

 

「あいよ!」

 

やだ、太っ腹・・・お酒飲めないのに・・・断らなきゃいけないのに・・・好意に応えなきゃ(ゴクンゴクン)

しばらく食事を一緒にして軽く話をした後ロイマンさんは席を立った。

 

「ロイマンさん、ご馳走様でした」

 

「うむ!良い飲みっぷりだった。おっと、そろそろカジノに行く時間だ。君、またギルドの仕事手伝ってくれよ。では、失礼する」

 

そう言ってロイマンさんはお金を払い店を出て行った。さて・・・と、うっぷ・・・

 

「・・・リューさん、ロイマンさん出てった?」

 

「はい」

 

「・・・トイレ借ります」

 

ああ、やっぱりお酒はダメだったよ・・・

 

「大丈夫ですか?」

 

「大丈夫じゃらい・・・」

 

お酒の影響で頭クソいてぇ・・・リューさんにちゃんと言葉伝わってんのかなこれ?あ、なんだかねむ・・く・・・

 

 

 

「すやぁ・・・」

 

「・・・寝ましたね」

 

「寝ちゃったね・・・」

 

「意外な弱点だニャ・・・」

 

アッサリとシエンは眠りに堕ちた・・・まだ昼頃だというのに

 

「ニャフフ!これはイタズラのチャンスニャ!」

 

「ちょっとクロエ!お客様に失礼だよ!やめときなって」

 

店員の黒髪の猫人のクロエ・ロロと店員のヒューマンのルノア・ファウストがやってきた。

 

「フッフッフ、こんな所で眠ってる奴が悪いんだニャ!」

 

「それもそうだニャ!シエン!これはアレンの分ニャー!」

 

イタズラしようとしてシエンに触れようとする二人、しかし・・・

 

「「!?」」

 

触れる直前で手を引っ込め、その場から離れる。黒色のマントの両端が鋭くなってアーニャとクロエのいた場所まで伸びていた。しかも伸びてきた場所は心臓付近だった・・・

 

「な、なんて奴ニャ・・・酔っ払って寝ているのに」

 

「何のためらいもなく急所を狙ってきたニャ・・・」

 

「冒険者さん酔っ払ってる分容赦無いね・・・」

 

「リュー!あのマントが伸びたよ!?」

 

「ええ、眠っているのにとんでもなく器用だ・・・隙だらけなようでまるで隙がない・・・」

 

「おいおい見たかよ今の・・・」

 

「いや、あのマントの動きが速すぎて見えなかったぞ・・・」

 

「それを回避した店員達もヤバすぎだろ・・・」

 

周りにいた人も驚く、そして全員思った。この人にだけは酒は与えてはいけないと・・・

 

「バカ娘共、なに突っ立ってんだい!お客様が注文を待ってんだよ!さっさと仕事に戻りな!アタシの拳骨を食らいたいのかい!?」

 

「わ、悪かったニャ、母ちゃん!拳骨だけはー!!」

 

「すみません今戻ります。ミア母さん、シエンさんはどうしますか?」

 

「ほっときな!下手に触ろうとすると串刺しにされるよ!ったく、とんでもない坊主だよ」

 

 

「すやすや」

 

「まだ寝てる・・・」

 

「ううーん、【良成長】は神スキルぅ・・・」

 

「なんなのニャ、この寝言は・・・」

 

シエンはまだ寝ていた・・・昼頃は客の数はまだ少なかったが夜になると血の気の多い冒険者達が多くやって来る。そしてついに手癖の悪い冒険者も現れた・・・

 

「なんだぁコイツ寝てんのか?ヒック!マントの内ポケットになんか入ってんな」

 

なんとこの酔っ払いの男、人の物を弄りだしたのだ!!店員達に緊張が走る・・・

止めたいが止めに行った自分も一緒に串刺しになる可能性があるのだ!

 

「お客様、人の物を勝手に触れるのはご遠慮ください」

 

これ以上は流石にまずいと感じたリューが近寄り男に注意する。

 

「あぁ!?なにやろうと俺の勝手だろうが!ヒック!おっしゃ盗れたぜぇ、なんだぁこの黒い本はぁ、売ったら高く売れるかもなあ!?」

 

「お、おいやめとけよ」

 

酔っ払いの仲間も流石にまずいと思ったようで止めようとする。

この酔っ払いの男が掴んだ本は【リザイア】の魔道書だった。

そして運が悪いことにこの男、【魔法】を使えるため精神力を持っていた。この酔っ払いの男は知らない、この魔道書は普通の魔道士には扱えないダークマージとソーサラーの専用の闇の魔道書だという事を・・・

 

「(なんでしょうこの本、嫌な感じが)!?その本を離しなさい!?」

 

「ったく、しつけぇなあ!これはオレのモンだと言って、ん?本から手が離れねえ・・・なんだ?体に・・・ちからがはいらねぇ・・・」

 

【リザイア】の魔道書が男から精神力を勝手に奪い本が黒く光りだす・・・そして【魔法】が発動し黒い霧がなんと術者に襲いかかった!!

 

「ギャアアアアアアアアッッ!!?」

 

「おい!大丈夫か!?クソ!どうなっているんだこの本は!?」

 

黒い霧に襲われた術者に激痛が襲いかかる。本が体力を奪い、精神力を全て奪い取り、男は精神枯渇になって気絶した・・・

周りの人達は見たこともない出来事に困惑し怯えた。そんな時!

 

「ううーん、あ〜よくねたぁ〜。ん?なんでこの人倒れてんだ?あ、オレの本・・・おいおい、人の物を勝手に盗ったらドロボウ!!って親に言われなかったのか?」

 

呑気に目を覚ましたシエンがいた。

 

「オイ、テメェ!オレの仲間になにしやがった!?」

 

「いや、なにもしてないけど・・・おいしょっと、本は汚れてないな、よかったよかった」

 

「良くねぇよ!!」

 

「あー、精神枯渇でぶっ倒れてるだけだからしばらくしたら目を覚ますだろ、それと自業自得だな。オレを恨むのはお門違いってもんだ」

 

「ぐっ・・・」

 

「さて、かなり長いことここに居たな・・・リューさん、迷惑かけたからお金ちょっと多めに置いてくよ」

 

「はい、またのご来店お待ちしています」

 

「てめ、待ちやがれ!!」

 

「ユーラリユールレリー(高音)」

 

若干まだ酒が抜けていないのかご機嫌に歌い出し、去って行くシエン

 

「おお、なんて美声・・・ってもういねぇ!?」

 

シエンに関しての噂がオラリオにて聞かなくなっていたが、再びやって来て早々にやらかしてしまうシエンだった。




エメリナ
24歳で死去
イーリス聖王国の第一王女だった。病死した父王の後を10歳にも満たないのに後を継ぎ、国の立ち直しをした。この時に軍の縮小を行い、イーリス聖王国はかなり弱体化したと思われる。シエンはこの当時5歳で軍に所属していたがこの事で軍から出ることになる。
家がないシエンはエメリナの計らいでクロムやリズ達と一緒に住むことになる。クロム達とはこの時仲良くなる。
貴族や上層部の連中は王族と平民が一緒に住むことに猛反対したがエメリナは押し切った。このことからシエンは上層部の連中に嫌われ始めた。
平和な国を作るべく力を尽くしたがペレジアとの戦争が起こってしまい、囚われの身となってしまう。エメリナを救援に来たクロム達だったが敵の増援で逃げられなくなってしまう。エメリナは自分が助からない事を悟り、クロム達が逃げる機会を作るために戦場にいる人々に平和について説き、崖から落ちた。
この時はまだ辛うじて生きてはいたが救援に来たペガサスナイトの親衛隊を撃ち落とした屍兵(兵種 アーチャー)にダメ押しで矢を全身に射かけられ絶命する。そして遺体となったエメリナと親衛隊は屍兵に持ち抱えられ屍兵が現れた時にあった魔法陣と共に消え去った・・・


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運命を変える

6月19日から始まるダンメモのイベント、グランド・デイ当日編
かなり内容が原作に関わってくるみたいでとても楽しみだ!

【ファイヤボルト】って毎回収録してたんすね、マジすげぇ・・・


豊饒の女主人を出て安い宿に泊まった次の日、外を歩いていると

 

「あ、シエンじゃないですか」

 

「お、アスフィじゃん久しぶり、ヘルメスは?」

 

アスフィに出会った。ヘルメスはいないな。

 

「ヘルメス様はまたどこかに旅に行きました。心配ですが、ヘルメス様なので大丈夫でしょう」

 

「変な信頼だな、オレならホームの外に絶対出させんぞ」

 

神から恩恵をもらっているのにその神がいなくなったら恩恵の力を出すことができないからな。ダンジョンの中を探索中に主神がやられたらと思うとゾッとする。

 

「私もできるならオラリオでじっとしていて欲しいですけどいつのまにかいませんし、大人しくしてたらそれはそれで不気味です・・・なのでヘルメス様が旅に出て心配すること考えることをやめました・・・」

 

「・・・オレ絶対ヘルメスファミリアには入らんわ」

 

「私としてはウチのファミリアに入って欲しいですけどね。シエン、私と一緒にヘルメス様のお守りという苦労をしませんか?」

 

「ヤダ」

 

そんなことをしてたらストレスで禿げるわ!!絶対入んねぇからな。

そんなこんな話していてまた寝泊まりの許可をもらいアスフィと別れた。

 

ダンジョンに行こうと中央広場に来て、バベルの塔に向かおうとしたが見知った人物が広葉樹が植えられている中央広場の一角の木陰で男達に殴られていた。

 

「おいアーデ!もっと金もってんだろ?早く出しやがれ!」

 

「・・・ウッッ!」

 

「おいおい、それぐらいにしておけよ。昨日、黒ずくめの男にやられたからって八つ当たりはダサいぜ?」

 

「うるせぇ!そうだ、良いことを考えたぞ!おいアーデ!黒ずくめの男が持ってるもん盗ってこい」

 

少女を殴っていたのは昨日酔っ払ってシエンの物を盗ろうとしていた男とその仲間達だった。少女にシエンの持ってるものを盗ってくるようにと言う。

 

「黒ずくめの男?」

 

「そうだ、豊饒の女主人にいた奴だ。アイツの持っているものはかなり金になりそうだから「誰の持ってる物を盗ってこいって?」そう、こんな奴ってテメェ!?」

 

「よ、昨日ぶりだな。名前を考えるのもめんどくさかったモブ野郎」

 

「なにを言ってやがる!?チッ、クソが!おいさっさと行くぞお前ら!」

 

そう言ってどこかに去っていった・・・リリを置いて。

 

「やれやれ、面倒なことになったな。おっと、久しぶりだなリリ」

 

「シエン様・・・」

 

「顔を怪我してるな。ちょっと待ってろ治してやっから」

 

オレは【リライブ】の杖を取り出しリリの治療をする。光がリリの体を包み込み怪我したところが治っていく。

 

「これは・・・」

 

「回復の杖だ、リリまだ痛いところとかないか?」

 

「いえ、もう大丈夫です」

 

「にしてもなんだったんだアイツら、知り合いか?」

 

「はい、ソーマファミリアの冒険者様です。リリもソーマファミリアの一員です」

 

「ソーマ?」

 

「はい、ソーマ様とは」

 

リリ曰くソーマとはお酒の神さまのようだ。自分の眷属の事は興味がなくお酒の事のみ興味があるようだ。酒づくりにはお金がかかり、その金を献上してきた眷属にすごくうまい酒を飲ませるんだそうだ。また飲みたくなってお金を集め渡す、酒を飲む。その繰り返しでファミリアが成り立っている。

 

「なるほどそういう事で俺の物を盗ろうとしていたのかアイツは。というかソーマファミリアいらなくね?オラリオの治安が悪化してんじゃねぇか」

 

酒が飲めないオレとしては必要ないと思う。ファミリア経営に興味がないってんなら神ソーマだけをギルドが管理すればいいと思うぞ。

けどそうしたら酒狂いの奴等がギルドを襲撃に来るか?

悪い奴らがギルドを潰すために利用しそうだな・・・充分ありえる。めんどくせぇ・・・邪魔だな、消すか?

 

「シエン様?」

 

「ああ、すまん考え事してた。リリはソーマファミリアから抜けた方がいいんじゃないのか?」

 

「そうしたいのですけど抜けるためにお金が必要なんです・・・」

 

「うっわ・・・えげつねぇ・・・抜けるに抜けられないってか」

 

力のない奴は絞られるだけか・・・そしてお金が無いから抜けられない

 

「うーん、どうにかうまく抜ける方法はないかな・・・」

 

「・・・どうしてそんなことを考えるのですか?」

 

「そりゃあんな事されてたらなんとかしたいって思うだろ、だが良い方法が思いつかない・・・金ならなんとか出来そうだが抜けた後にちょっかいをかけて来そうだからな」

 

久し振りにリリを見たらまた痩せ細っているしこのままでは死んでしまうかもしれない・・・けどどうすれば良いんだ・・・

 

「あーもうわかんねぇ!止まっててもしょうがねぇし、とりあえず金を稼ぐか。だがまずは食事だ!体力つけねぇとな、そんな身体つきじゃあぶっ倒れるぞ。付いて来いリリ、オレの奢りだ!その後ダンジョンでのサポート頼むぞ!」

 

「シエン様・・・はい!任せてください!」

 

オレ達は豊饒の女主人に向かった。オレでは良い方法が分からないけどお店で何か良い方法が聞けるかもしれないからな。なんとかしてやりたいよホント。

 

「いらっしゃいませ!おや?今日はお一人じゃないんですね」

 

「おう、オレはいつものでリリはどうする?」

 

「リリはジュースとパスタで」

 

「遠慮しなくても良いぞ、この子もオススメのやつで頼むわ。リリ、食べきれるか?」

 

「大丈夫です。食べれます」

 

オレとリリはカウンター席に並んで座る。お、小人族用に椅子も高く出来るのか、有難い気遣いだな。でかいバッグパックも預けて料理を待つ。

 

「あら?シエン君じゃない、久しぶりね」

 

赤い髪の旅商人のような格好の女性、アンナさんがお店にやって来た。

 

「お久しぶりです、アンナさん。本当にこっちに来てたんですね」

 

「ええ、私はどこでも商売するわよ。」

 

「どうやってあっちに帰るんですか?」

 

「内緒」

 

「あの、シエン様こちらの方は?」

 

「おお、すまんな。この人は商人のアンナさん、姉妹がたくさんいてみんな一緒の顔をしていてオレは見分けがつかない。そんな不思議な人だ。アンナさん、この子がリリルカ・アーデです。今オレのサポーターをしてもらっています。」

 

「あら、可愛らしい子ね。彼、とても変で暴走しがちだから大変だけどよろしくね」

 

「わかりました、アンナ様。リリの事はリリとお呼びください。アンナ様はシエン様とはどんな関係で?」

 

「リリちゃんね。そうね、彼には色々特別なサービスをする関係よ」

 

「変な言い方しないでください、たくさんの紙や杖や情報を買ったり魔道書や治療の杖を売ったりする持ちつ持たれつの関係だ」

 

誤解を招きそうな言い方はやめて欲しい、店員さん達の視線が冷たくなったじゃないか。

 

「シエン君、リリちゃんはちゃんとご飯食べてるの?頬も痩けてるじゃない!」

 

「ああ、その」

 

「シエン様のサポーターをするのはこれで2度目です。それまでは他の冒険者様のサポーターをしていたのでシエン様は悪くありません。」

 

「あら、そうなの?その他の冒険者というのはこんな可愛い子になんて酷い事するのかしら!シエン君!なんとかしなさい!」

 

「いや、あの、なんとかしたいんですけど。どうすればいいかわからなくて・・・」

 

「何うだうだ言ってるの?自分の敵となるものは全てをやっつけてきたのに」

 

「あっちとこっちでは事情が違うんです。オラリオでそんなことすればあっという間に周りが敵だらけになってしまいます」

 

「面倒ね」

 

「どうしたもんか・・・ソーマに金渡して改宗を求めるしかないか?してくれないならソーマを天界に帰すしか方法がないが・・・脅すと後々面倒だからなぁ、やっぱ消すか!」

 

「もうちょっと考えて下さい!物騒過ぎますよ!?神様を消すって本気ですか!?」

 

「リリちゃん、私達の国にはギムレー教団ってのがあってね。その信者達はギムレーこそが神竜だと言っていてその神といわれたギムレーを滅ぼしたのがシエン君達なの、シエン君は神殺しの人達の一員なのよ」

 

「あの邪竜がいたらオレ達に未来はなかったからな、だから滅ぼした。ギムレーは復活したばかりで本調子ではなかったようだけどな」

 

「本当どうなっているんですか・・・」

 

「人間、死ぬ気でやれば神だって殺せるんだぜ?」

 

「説得力がありすぎるわね・・・」

 

なかなかいい案が浮かばなくて悩んでいた時

 

「私はソーマファミリア団長のザニス。お前がウチのソーマファミリアの団員を傷付けたのか?」

 

お店に入ってきたザニスという男がオレに話しかけてきた。

 

「オレは傷付けていない」

 

「しかしお前の持っている荷物でウチの団員が怪我をしたのだ。謝罪として金を支払え」

 

は?なんだこいつ?人の物を盗ろうとして痛い目にあったのに難癖つけてきやがった。

 

「・・・まあ、それはどうでもいい。この子、リリルカ・アーデがアンタのとこのファミリアから脱退するにはどうしたらいいんだ?」

 

「金が必要だ」

 

「金か、まあ大切だな。オレがこいつの分の金を出したら改宗させてくれるか?」

 

「いいだろう、1億ヴァリスだ」

 

「いっ1億ヴァリス!?」

 

リリが仰天している。確かに法外な金額だがそんな事で諦めるわけないだろ。

 

「わかった、だが今はそんな金は持ってないから後日ソーマファミリアに持っていくということでいいか?」

 

「!?・・・何故だ?なぜ力を持たない小人族を手に入れようとする?」

 

「可哀想だと思ったからだ、リリの体はもうボロボロだ。このままでは死んでしまうと思ってな。知り合いが死にそうになってて見ているだけなんてオレには出来ない。だから退団させる、そこからはリリの自由にさせるさ。もし退団した後にちょっかいをかけるようならその時は覚悟をしておいた方がいい・・・」

 

「・・・いいだろう、交渉成立だ。謝罪の分はサービスしてやる。後日持ってくるように」

 

偉そうな事をいってザニスは去って行った。チョロいなアイツ。

 

「よかったなリリ。退団させてくれるってよ」

 

「はい!リリはとても嬉しいです!って何やってるんですかシエン様!?1億ヴァリスですよ!?どうするおつもりですか!?」

 

「アスフィに金を借りようかと思ってな。後で倍にして返すって言えば貸してくれるだろ。誰も傷つかないし問題なし!」

 

「はぁ、シエン君は大馬鹿ね・・・でもそういうの嫌いじゃないわ」

 

「リリ、ここがお前の運命の分かれ道だ。退団した後何をするのかしっかり考えな」

 

「そんなのはもう決まっています。シエン様の入っているファミリアに入れてください」

 

「なぜだ」

 

「団長のザニス様は、リリにちょっかいを出さないとは言いましたがハッキリ言って信用できません。それに他人に大金を払わせて自分だけ楽に生きるなんて事は出来ません。

リリは戦うことはできません、けどこんなリリを救ってくださるシエン様の力になりたいんです!お願いします!」

 

そう言ってリリはオレに頭を下げた。確かにアイツは信用ならないし、リリはオレの知らないところでまた暴行を受けるかもしれない。参ったな、こんなストレートに気持ちをぶつけられると断れないぞ・・・

 

「わかった、だが弱いままじゃダメだ。オレが直々に鍛えてやる。お前の力は【頭脳】と【魔法】と【器用】だ。それだけあれば絶対強くなれるさ、自分を信じろ、リリ」

 

「でもどうやって強くなるんですか?」

 

「この魔道書を使って戦えばいい、そうすれば強くなれる」

 

オレは【ファイアー】の魔道書をリリに渡す。

 

「これはシエン様の本・・・」

 

「そいつの書き方をリリに教える、すぐに書けないとは思うけど何度も練習すればできるようになるだろ。オレとは違ったものが出来そうで楽しみだな。おっ?食事も出来たようだな、少し気が早いが改宗祝いといこうか、期待してるぜ?助手さん。」

 

「こちらこそよろしくお願いします!シエン様!」




リリルカ・アーデ

12歳 小人族 女の子

原作でベルに会うより早くシエンに会い大きく運命が変わった。自分自身に冒険者としての才能はないとは思ってはいるがまだ幼い事もあって冒険者として戦う事を諦めきれていない。
頭も良く、自分自身の【魔法】をただ使うだけでなく、部分変化させたりと器用な事ができるため、シエンはリリが魔道書を上手く使い、その過程で強くなれると期待している。

改宗後、オラリオでは1億ヴァリスで買われた小人族と少し話題になった。


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リリの才能

改宗したとある日

「なあリリ!腕相撲しようぜ!」

「腕相撲?腕を組んでこうですか?」

「そうだ、じゃあ逝くぞ・・・よーいどん!!」

「自分でスタートを言うなんてずるいですよ!えい!!(バタン!)」

winner↑ リリルカァ↓

「orz」

「あ、あれ?勝っちゃいました?ハッ!?これはシエン様に勝つという偉業を遂げたのでは!?」

ランクアップは出来ませんでした。


ザニスに1億ヴァリスを払いリリを無事退団させてウチのファミリアに改宗することが出来た。

オラリオに戻ろうかと思ったがリリを鍛えるのにわざわざオラリオに行く必要がない気がして、ベルと爺さんのところに住むことにした。

しばらくしたらヘルメスからの手紙でザニスは1億ヴァリスを手に入れて気分が良かったのか酔い潰れて寝ていた所、神酒(ソーマ)中毒の団員が金を手に入れるためにザニスを殺害したそうだ。奴に相応しい最後だな。

ギルドはこんな危険なファミリアを存在させておくわけにはいかなくなって、ソーマファミリアは解散。神ソーマをどうしようかと悩んでいると、美の女神に引き取られたようだ。

1億ヴァリスはオレのところに戻ってくるみたいだがアスフィに返して、約束通りもう1億ヴァリスをアスフィに支払うと返事をしておこう。

 

リリが改宗してから9ヶ月、この世界に来てから1年と少し経った。その9ヶ月の間はギルドからの依頼をこなしたり、その際にロキファミリアに行き鍛錬、ダンジョンの遠征にも付き合ったりした。こっちに戻ってきたらリリの鍛錬をしている。そのリリは期待以上の成長をしていた。

 

オレが部屋で新しい魔法の杖について考えているとオレの部屋の前に【魔力】を感じ取った。

 

「入っていいぞ」

 

「失礼します、シエン様!遂に出来ましたよ!!()()()()()()()!!」

 

とうとうやりやがった、こいつ・・・改宗した際にレアスキル【魔道士の助手】が発現してそれの影響でオレと同様の魔道具が作れるようになったのだ。

しかもこのリリの魔道書は、共通語で作られている。オレが作る魔道書の魔法文字を共通語にして作り上げた。文字通り、リリの魔道書。

この世界で初の魔道書だ。間違いなく偉業だ。

おそらくこれはランクアップしたな・・・いいなぁ

オレは魔道書の中身を確認する。精神力を流して本も光る。・・・問題ないな。

 

「問題点はないぞ。おめでとうリリ。完成だ!」

 

「・・・ッ!やったぁぁぁ!!」

 

努力の報われた瞬間だ、リリの気分は最高潮だろうな。

この魔道書はオレが単独で作る魔道書より4倍近く分厚い、何故そんなに分厚い物になったかというと一冊の魔道書の内容を4回書き記した物だからだ。このアイデアはリリが考えたものでもある。

 

最初に【ファイアー】の魔道書を使って鍛錬し始めた時は、たくさん【魔法】が使えると驚いたがしばらくするともっと使えるようにしないとリリはダンジョンでは使えないと言った。

オレはスキルの影響で無限に使えるから問題ないがリリはそういう訳にはいかないのでどうすればいいか一緒に考えた結果、リリが魔道書の内容をさらに書き足したら使用回数が増えるのではないかと考えついた。そうして魔道書を書いた結果、分厚くなった。

これは何回使えるんだろうな、最低でも180回は使えるだろうが数えるのが大変そうだ。

 

魔道書を作るのはかなり時間がかかったがそれよりも治療の杖を作るのが非常に上手い。あんなこともあったしな。

 

とある日

 

「シエン様、怪我を治す杖はありますけど状態異常を治す杖はないのですか?」

 

「あるにはあるんだが・・・今手元にある材料ではオレは作れないんだ。ダンジョンに行くのにそういう杖は絶対必要なんだけどな」

 

「どんな杖か教えてください!リリが作っちゃいます!」

 

「えぇ・・・出来るのか?まあいいか、杖の名前は【レスト】、作り方はこうしてこんな感じだ」

 

「分かりました!任せてください!」

 

5日後

 

「出来ました!どうですか?」

 

「はやッ!?え、もう出来たの!?と、取り敢えず村の外にいるモンスターを状態異常にして何回治せるか実験だ!」

 

実験終了

 

「え・・・20・・・回・・・?」

 

「うーん、少ないですねぇ。もっと改良が必要ですね」

 

「・・・・・(いやいやいや、レストは使用回数は10回までなんですけど・・・というかなんで作れるの!?改良ってマジでかよ・・・)」

 

「シエン様?」

 

「リリ先生!オレに作り方をお教えください!!orz」

 

「ええッ!?」

 

 

なんて事もあったしなぁ。全くとんでもないやつだ・・・

作り方を教えたらオレより凄いもの作って今度はオレが教えてもらうことになってしまったじゃないか!

 

・・・べ、別にいいし!オレ、物作るより戦う方が得意だし!く、悔しくなんてないし!(震え声)

 

「シエン、部屋に入るね。リリ、どうしたの?そんなにはしゃいで」

 

「ベル様!これがはしゃがずにいられませんよ!いやっほー!!」

 

う、うるせぇ・・・けど昔より元気になったと思えばいいか。今ではちゃんと毎日食事をして健康体になっている。元気になってホント良かったよ。

それとベルに対して様付けをしている。どうも自分より背が高かったり冒険者だったりするとその相手に様付けしてたらしくその癖が抜けないらしい。

でも爺さんは名前がバレたらヤバイからお爺さんと呼んでいる。最初爺さんがゼウスだと知った時は目を大きく見開いて驚いていたが今では女性にちょっかいをかけるスケベジジイだとわかり若干距離を置いている。ゼウスだからねしょうがないね・・・

 

「ベルが来たってことは鍛錬の時間か?」

 

「うん!そうだよ!僕だって【魔法】を使えるようになるんだ!」

 

村でリリが魔道書を持って鍛錬していたところをベルが見ていて、また【魔法】の鍛錬を始めた。精神力を持ってないと無理と言ったがやると言って聞かない。ベルは意外と頑固なところがあるようだ。

もしいつか冒険者になって【魔法】手に入れるため、使いこなすための鍛錬はしている。【魔法】の勉強、【魔法】を使うにあたっての心構え、精神力を上昇させるトレーニングとかをだ。

必死に頑張るベルを見て思う、オレとリリとベル、3人でいつか一緒に冒険できるといいな。

 

 

夜、爺さんの部屋にて

 

「・・・よくやったのう、ランクアップじゃ」

 

「!?〜〜〜〜ッッ!」

 

どうやらリリは無事ランクアップしたらしい、良かったな。叫び声をあげなかったのもナイスだ。

オレは今部屋の外にいる。ベルが起きてこっちに来るかの確認とリリの裸を見ないようにするためだ。そろそろもう入っていいかな?

 

「爺さん、リリ、入っていいか?」

 

「おう、構わんぞ」

 

「大丈夫ですよ」

 

オレは部屋に入る。リリの目が少し赤いな、感動のあまり泣いたか?

 

リリルカ・アーデ

 

 Lv.1 →Lv.2

 

 力 :I42 → I0

 

 耐久 :E475 → I0

 

 器用 :SS1097 → I0

 

 敏捷 :F357 → I0

 

 魔力 :SSS1398 → I0

 

 【魔道】: I

 

《魔法》

【シンダー・エラ】

 ・変身魔法

 ・変身像は詠唱時のイメージ依存。具体性欠如の際は失敗。

 ・模範推奨

 ・詠唱式【貴方の刻印は私のもの。私の刻印は私のもの】

 ・解呪式【響く十二時のお告げ】

 

《スキル》

縁下力持(アーテル・アシスト)

 ・一定以上の装備過重時における補正

 ・能力補正は重量に比例

 

【魔道士の助手】

 ・【魔力】と【器用】が成長しやすくなり、限界を超える

・ 支持している人物のスキルを習得する

 

【魔道具作り】

 ・(FEにある)武器、魔道書、杖を作ることができる。

 

多重魔法(マルチマジック)

 ・複数の魔法を同時に発動、または魔法を発動しながら別の魔法も発動できる。

 

「なぁにこれぇ、インチキスキルもいい加減にしろ!!」

 

「お前が言うな」

 




ギルドやオラリオの人々から見たシエン

シエン

男 ヒューマン 23歳 所属ファミリア 不明

見た目は普通で背はそこまで高くはない。酷い目にあっている小人族を助けたりギルドの仕事を手伝うなど性格は悪くない方だ。しかし常識を知らなく、喋り方がコロコロ変わるかなり変わった人物。
見た事も無い魔道具を所有しており、手に入れようとしたものは死にかけたらしい。
お酒には弱く少し酔うと寝てしまうほど、だが酒場で寝ている彼に触れるのは死を意味するそうだ。

敵対する者には容赦が無い。音も無く敵に近づき一撃で仕留める。仕留め損なっても追跡し確実に消す、人質を取られても人質ごと殺すなど冷徹な部分もある。
私が付いて来ていることを知っており、一切隙を見せない恐ろしい男(????情報)

L v.1(L v.7クラス?)

どうみてもL v.1とは思えない力を持っており、噂によるとオラリオ最強の【猛者】を倒したらしい。
神々がL v.を尋ねたところ嘘をついてはいなかった。

友好関係

都市最強派閥のロキファミリアの冒険者達と買い物をしていたり、鍛錬をしたり遠征にも行ったりと仲が良いようだ。
特に【九魔姫】には頭が上がらないらしく、悪さがバレて逃げようとしていたところに現れた【九魔姫】からは逃げることを止め、手を掴まれロキファミリアに連れていかれる光景があったようだ。
エルフが相手に触れるのは基本的に信頼できる人物だけなのでかなり親しい間柄の様子。オラリオのエルフ達の評価は賛否両論。

ヘルメスファミリアの神ヘルメスと【万能者】とは友人らしい。神ヘルメスもシエンのことをマブダチと呼ぶほどだが神ヘルメスの事なので胡散臭い。
【万能者】との間柄は友人、仕事仲間といった感じのようだ。時々喫茶店で神ヘルメスに対する愚痴をシエンに話す【万能者】の姿があったという。
オラリオにいる時はヘルメスファミリアにて寝泊まりしているようだ。

戦闘スタイル

【精神力】を使用するものしか使わない。【攻撃魔法】【防御魔法】【回復魔法】【特殊魔法】といった様々な【魔法】を使う。
驚く事に【魔法】を使いながら他の【魔法】を使ったりするところや3つ以上【魔法】を使えることから何かしらのレアスキルを持っているようだ。
【力】は極端に低くオークの腹に短剣が刺さらないほど低いそうだ。


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鍛錬

????????

????「・・・・・・・・・・・・・・」

遥か昔、狂気に囚われた人により造られしものはその場所の封印を破るその時まで力を蓄え続ける・・・世界を滅ぼすために


村の外の崖の下

 

「【ファイアー】!!」

 

「【ミラーバリア】」

 

リリが放った火球がオレのバリアに当たり威力が上昇し反射してリリの元へ向かう。

 

「【ウインド】!」

 

跳ね返ってきた火球の軌道を風でずらし、リリは火球に当たらないところに移動して火球の横っ腹に

 

「【ファイアー】!!」

 

火球をぶつけ、相殺させた。

 

「おし、いい感じだ。自分の【魔法】より強い【魔法】を使う相手には真っ向から立ち向かうのではなく【魔法】の隙、【弱所】をつけ」

 

「はい!!」

 

【弱所】とは【魔法】を放つ時の癖や動揺などによって生まれる【魔法】の泣き所だ。そこを突かれるとその【魔法】は半分も威力を発揮することもできない。格下が格上に勝つ時にはそこをつく場合が多い。

 

今はリリの【魔法】を跳ね返し、リリが自分の【魔法】を見て自分の癖を見直す特訓をしている。跳ね返すと威力も上がるので自分より強い者と戦うこともしている。

 

「次は【弱所】を減らすようにゆっくり丁寧に精神力を使うんだ。ここには敵はいない安心してやるんだ。」

 

「はい!」

 

戦闘経験はあまりないようだがその分【魔法】の攻撃に関する変な癖もなくて指導が楽だな。他のやり方を知っていると前のやり方にこだわったりするからな。

リリは一生懸命に努力している。継続は力なりだな、まだまだ強くなれるさ、頑張れよリリ。

 

「少し休憩だ、リリはよく頑張るな」

 

「・・・リリは今まではよわっちいままでした。けど今は少しずつですけど強くなってます。強くなっていることを実感できます。そのことがたまらなく嬉しいんです!だから頑張るんです!」

 

「それはいいことだ。けど、頑張り過ぎるなよ。」

 

「はい!」

 

オレも負けてられないな、力を得ることを躊躇っていたら死ぬ・・・オレもさらに強くならないとな。この先何があっても後悔しないように・・・こっちでは静かに暮らそうと思っていたが無理か・・・

 

「今日の鍛錬は終わり!おつかれさん」

 

「あ、ありがとうございましたぁ・・・」

 

鍛錬が終わり村に俺たちは戻った。リリはもう精神枯渇になるギリギリの状態だ。毎日、限界まで精神力を使っている。

それは精神力の最大量を増やすのと減った精神力の回復力を鍛えさせている。

 

魔道書に精神力を流し続けるだけでこの状態になるから結構簡単だ。ただしこれは絶対に安全な場所でないとできない方法だ。オラリオでやらせるわけにはいかない。

 

帰った後は風呂に入り爺さん達と喋りながら食事をして、魔道具作り、瞑想、ベルが寝たらステイタス更新。うん、なんて充実した生活なんだ・・・

もう少しゆっくりしていたいがそろそろオラリオに行くか、リリもオレとの対人戦ばかりではダメだ。他の人達とも戦わせて対人戦を慣れさせる必要がある。リヴェリアさんにお願いしてレフィーヤとの模擬戦を頼もうかな。

それにモンスターとの戦い方も教わらないとな、やることがたくさんある。

リリも頑張ってるしオレも頑張らないと!

 

次の日

 

「リリ、オラリオに行くぞ」

 

「オラリオにですか?」

 

「リリがどれだけ強くなったかダンジョンで腕試しするのと金を稼いでアスフィに金を返さないとな」

 

「そうですね、アスフィ様にはお世話になりました。リリも恩を返さないといけませんね」

 

オラリオに行くことは決定だな。

そういえば爺さんが言っていたな。ランクアップするとギルドに報告しないといけないがオレたちはゼウスファミリアの一員なので報告すると面倒な事になるから報告するわけにはいかない。バレなきゃ犯罪じゃないんですよ・・・ククク

 

ランクアップすると神々からランクアップした者に二つ名が与えられるらしい。基本的に痛々しい名前ばかりだがそれがカッコいいとこっちの人達は感じているようだ。ベルはどんな二つ名がカッコいいか聞いてみるとベルは黒い天使(ダークエンジェル)なんかをカッコいいとか言って目を輝かしていた。

 

『僕は【黒い天使】ベル・クラネルだ!(キリッ)』

 

マズイな、非常にマズイ・・・神々の笑いの種になりそうだぞベルよ・・・

リリもバレた時どんな二つ名がつけられるんだろう・・・不安だ・・・ロキさんにマシな二つ名をつけてもらえるように頼もうかな。

 

そうだオレもステイタスを更新してもらわないと・・・さて、一体どのくらい伸びたかな?

 

シエン

 

 Lv.1

 

 力 :I0

 

 耐久 :A841

 

 器用 :SSS1769

 

 敏捷 :C613

 

 魔力 :SSS1572

 

 

 魔防 :C

 

《魔法》

【ミラーバリア】

 ・速攻魔法

 ・敵の飛び道具や魔法を反射する。反射する際は向きを自由に変えられることができ、いろんな攻撃も防ぐことができる。形は精神力を消費すると自由に変えられる。

 ・魔法を反射したとき魔法の威力が上昇する。

 ・空中に足場を作ったりできるが透明で見えない。

 参考 餅

 

【ミスト】

 ・速攻魔法

 ・体と装備品を霧状にする、その状態で移動可能。物理攻撃の無効化、ただし魔法攻撃は有効。例外あり。

参考 ワ○ピースの自然系の悪魔の実

 

【】

 

《スキル》

【封印】

 ・本来の力、スキルが出せなくなる(神の恩恵を受ける前の能力が-Lv.2、力はLv.1のまま、幸運は50)

 ・自分のピンチの時や感情の変動で解除可能

 

【魔法の探究者】

 ・【魔力】と【器用】が成長しやすくなり、限界を超える

 ・力が全く上がらなくなり、耐久が上がりづらくなる

 

【道具節約】

 ・幸運×2%で武器や魔道書の使用回数が減らない●石も減らない(新品のままになる)

 

【魔道具作り】

 ・(FEにある)武器、魔道書、杖を作ることができる。

 

【魔力追跡】

 ・生き物の【魔力】、【精神力】を覚えどこにいるのかを探知できる。レベル、魔力が上がるごとに範囲拡大。【魔導】の補正も入る。ただしダンジョン内では不安定。

 ・任意発動、精神力消費しない

 

【多重魔法】

 ・複数の魔法を同時に発動、または魔法を発動しながら別の魔法も発動できる。

 

復讐(ふくしゅう)

・ダメージを受けるたび【魔法】の威力上昇、体力を全回復すると威力は元に戻る。身体中から黒紫色の【魔力】が出てくる

 

【????】(用紙には書いてはいない)

 

・?

 

「もうワシは驚かんぞ・・・ほれ、これじゃ」

 

爺さんはオレにステイタスを書き写した用紙を見せる。

 

「おっ?新しい【魔法】、まだまだオレも伸びるか。けどランクアップはいつなんだ?」

 

「お前さんより強い奴を倒すことで手に入る上質な経験値を得るとランクアップできるぞ。そんな奴はそうそういないがな・・・【魔法】も特殊な感じだの。物理攻撃の無効化・・・魔道士の弱点をまた一つ減らしたな。」

 

「だが精神力をたくさん消費しそうな【魔法】だな、部分的に変化させて精神力を節約して使うかな」

 

「(用紙には書いてはいないが新しく出てきたスキルもある・・・これはまだワシにも解読ができなかったがきっとシエンの役に立つであろうな)気をつけて行ってくるのだぞ」

 

「ああ、また忙しくなったら連絡をくれよ?」

 

「こっちのことは心配せんでもいいというのに・・・わかった、その時は連絡をする。行ってこい」

 

「行ってきます」

 

そうしてオレ達はオラリオに旅立った。今回はリリも【風魔法】をつかって移動しているからオラリオに着くのが遅くなった。

 

「到着っと、なかなかの【魔法】の持続力だなリリ。」

 

「な、なんの、これぐらい、大したことじゃな、いです・・・ゼェ、ゼェ・・・」

 

もうちょっとゆっくりきてもよかったんだがリリが魔道書の消費をケチって1回の発動で行くと言ったので頑張ってもらった。

魔道士がケチケチしてると戦場では死を招くんだけどなぁ・・・

そこら辺は注意しておくか。




ダンメモのエピソードリューのリューさんの姿が素敵すぎィ!!BGMも良すぎィ!!
グランドデイの熱いボス戦の開始時にアシストの水着ヘスティアの「よーし、あっそぶぞー!」が空気読めてなさすぎて笑った。


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睡眠は大事(真顔)

仕事が忙しくて疲れて寝る・・・執筆時間が取れない・・・
外伝6巻読んでわかった事
ゼウス、神威を隠せることが判明、神である事を隠すことが出来る

・・・・やっちまったぁ


オラリオに到着してヘルメスファミリアにリリと一緒に行く事した。

 

「オラリオはやっぱり賑やかですね」

 

「そうだな、田舎は静かでいいけど娯楽は少ないし不便だからこっちの方がいいな(安全ではないが)」

 

そんな風に喋りながらヘルメスファミリアに向かって歩いていると周りの人達が

 

「おい、あの黒マントと小人族って確か」

 

「ああ、そうだ9ヶ月前くらいに話題になってた奴らだ。オラリオに来たのか、また騒がしくなるぞ」

 

オレ達(神々)は一向に構わんッッッッッッッ!!」

 

いろんな人達が盛り上がっていた。思わずため息が・・・

 

「・・・なあ、リリ」

 

「・・・なんですか?」

 

「帰ろっか?」

 

「リリも帰りたいですがそうもいかないでしょう」

 

「そうだな、さっさと金を返してまた田舎で生活でもするか・・・」

 

「無理だと思いますけど・・・」

 

そんな話をしていたらヘルメスファミリアに着いた。アスフィのところへ行き泊まる許可をもらわないとな。

 

「よ、久しぶりアスフィ。」

 

「お久しぶりです。アスフィ様」

 

「お久しぶりです。2人とも元気そうでなによりです。」

 

「アスフィは・・・元気そうじゃ、なさそうだな・・・」

 

アスフィに挨拶しにいったら目の下に酷いクマがあるアスフィがいた。

 

「泊まりの件ですね。構いませんよ。好きにつかってください」

 

「それはありがたいけど。なあアスフィ、オレに出来る範囲でなら仕事手伝うけど何かないか?」

 

「リリも手伝います!」

 

タダで泊まるわけにはいかないし、今のアスフィは見てられないしね。せっかくの美人さんが台無しだ。

 

「二人共・・・有難うございます。では二人には都市外に荷物の配達、あとダンジョンでこのメモに書いてある素材を取って来てくれませんか?」

 

「了解、荷物の配達はオレに任せてくれ、速攻で終わらせる。リリはダンジョン上層で素材集めを頼むよ。精神枯渇になっても助けてくれる人はいない、気を抜くなよ。」

 

「はい!」

 

リリは前より強くなったので冒険者としてソロでダンジョン探索だ。今まで勝てなかったモンスターに勝てるようになって浮かれないように注意しておく。

 

モンスター「精神枯渇して倒れていたのでムシャムシャしてやった、後悔はしていない」

 

なんてことになったら大変だ。気をつけてくれよホント・・・

リリはダンジョンに行き、オレは配達する荷物を預かる。

 

「シエン、これらの荷物の配達をお願いします。かなり遠い所に届ける荷物もあるので無理しないでくださいね?」

 

「場所さえ分かれば問題ないって、旅感覚で行ってくるよ。それとアスフィは寝ろよ」

 

オレは地図を貰いオラリオから旅立つ。さてこの世界にはどんな国があるんだろうか、楽しみだ。

 

 

 

「なあ、アスフィ〜、シエンに配達を依頼してよかったのか?」

 

シエンが旅立った後に犬人のルルネ・ルーイがアスフィに話しかける

 

「彼なら配達の依頼を達成できるでしょう、何か問題でも?」

 

「いやさ、確か配達する場所に男性進入禁止のテルスキュラがなかったか?」

 

「・・・・・ありましたね」

 

アスフィは【万能者】らしくないミスをした。でも仕方のないことだ。疲労に睡眠不足、ミスをしてもおかしくはない。今頃シエンは大空を飛び回っているだろう。速攻で終わらせると言っていたからにはとんでもない速さで移動しているはずだ、追いつけるはずがない。

 

「(ごめんなさいシエン・・・戻ってきた時私に出来る範囲でお礼をしますから)」

 

アスフィはシエンの無事を祈ることしか出来なかった。

 

 

ダンジョン上層

リリルカ・アーデ

 

迫って来るモンスター達、以前のリリなら逃げの一択だったでしょうね。

けど今は違う!以前使っていたバッグパックより小さめの方に入っている【魔道書】に【精神力】を流して光らせて放つ!

 

「【エルサンダー】!」

 

「ギィギァァァ!!?」

 

群れをなしていたモンスターを一網打尽!スッキリ爽快ですね。シエン様の指導を受けたのです。こんなモンスターに戦闘でやられません。

上層で群れにあった時は【エルサンダー】ではなく【ウインド】で充分ですね。

 

それにしても魔法名を言ってしまう癖はなかなか抜けませんね。シエン様は

 

『魔道書の光る色でどの系統の【魔法】を使うかバレるが出来るだけ魔法名は言わないようにな。ま、オレも気合を入れて放つ時は思わず言ってしまう事もあるがな。』

 

と言われました。

もともと【魔法】は詠唱するもの。それがこんなに素早く使え、強力な【魔法】だなんて反則もいいところですね。まあ魔道書を持ってないと使えませんが。そこは注意しておかないと・・・

 

「あ、これは」

 

素材を発見です。でもこれらで一体何が出来るのでしょうか?アスフィ様の考えていることは分かりません。

またダンジョンの壁から新しいモンスターが現れ始めましたね。

余計な事は考えないで今は上層で素材集めて無事に帰らなくては。

 

 

「イィィヤァホォォォ!!」

 

配達を始め数日後、現在オレは【ギガウインド】を発動しながら世界中を飛び回っている。大声で叫んでいても誰も気付かないしたまにはこういうストレス解消も良いもんだ。

荷物もこれがラスト!えーと?テルスキュラだっけか?ずっと東南にある海と断崖絶壁に囲まれた陸の孤島らしい。

お?見えてきたな、そろそろ漆黒兜を被るか姿をバレたら面倒だ。にしてもあっついなぁ、日差しが出ている中、海の上を長いこと移動しているから日焼けしてしまったよ。

なんだ?闘技場があるな・・・誰が戦っているのかな。

オレは上空からみるとそこには大勢のアマゾネス達が戦いを見ていて興奮し雄叫びをあげていた

 

砂色の髪をしたアマゾネスが相手アマゾネスの急所に一撃を食らわせると相手は動かなくなり死んだ・・・

 

オイオイオイ、アマゾネス同士で殺し合いかよ・・・事情はわからないがやべえな。

俺らの国々の方がもっとやべえがな・・・ん?生き残った方のアマゾネスがこっちを見ているな?見えないはずなんだけどそれなりにやるのか、取り敢えず出直しだな、逃げよ。

オレは一時撤退することにした。

 

 

「・・・・・」

 

砂色の髪のセミロングのアマゾネス、バーチェ・カリフは先程何者かの視線を感じ空を見るが何もいなかった。しかし確かにいた・・・雄が。

神の恩恵により強化された嗅覚が確実にシエンの匂いを捉えていた。姿は見えなかったが確実にいた事はわかるし強者だとなんとなくカンでわかった。カンが違ったとしていても最近は種の繁栄の道具である雄のストックも減ってきているので捉える事は確実だ。

久しぶりに手応えのある相手と戦えるかもしれないと黒い紗幕で隠れた口元に笑みを浮かべた。

ひとまず主神であるカーリーと姉であるアルガナ・クリフに報告だ。

 

 

オレは孤島の端付近に降りた。なにやら寒気がするがひとまず依頼の確認だ。

『神カーリーに荷物を渡す』

・・・楽勝じゃねぇか!街の人にこの神のことを聞いて本人に渡す。

あれ?街ってあったっけ?・・・・・無かったわ(絶望)

 

しばらく悩んでいるとなにやら闘技場がある方向から砂煙が巻き上がっているのが見える。目を凝らして見るとアマゾネス達がこちらに向かって走ってくるではないか!?オレはすぐさま空に飛び上がる。

 

「ここら辺だ!雄の匂いがする!確実に捕らえろ!」

 

「了解!姿の見えない雄だなんていったいどんな奴だろう」

 

「捕らえろ!捕らえろ!捕らえろ!」

 

姿が見えないのに何故居場所がわかったんだ?

バレるとしたら探知能力に長けた奴がいるのかそれともティオネのように匂いを嗅ぎつけてきたか。アマゾネス達は共通語ではない言葉で喋っている。これでは会話が出来ない、街以前の問題だったわ。こりゃ直接神を訪ねるしかないな。世界中の人が共通語を使うもんだと思ってたけどここはそうではないようだ。考えが甘すぎたわ。

他に手段はないし、相手を傷付けずに堂々と行くか。




みんな、オレは熱中症にはかからねぇからよォ・・・だからみんなも熱中症になって倒れるんじゃねぇぞ・・・


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魔戦士

「休日ゥ〜?誰それ?オレ、休日出勤☆鈍いなァ!オレが休日だよォ!」



オレは上空から降り透明状態を解除する。すると降りた付近にいたアマゾネス達が一斉に襲いかかってくる。

 

「いたぞ!捕らえろ!さらに増援を呼べ!」

 

「顔は・・・普通ね」

 

「黒ずくめ、何か不気味・・・」

 

なに言っているかわからないが目線がオレの顔と服にいって顔を歪めているから、オレの顔や服装が気に入らないんだろう・・・泣いてないぞ

 

「【ミラーバリア】」

 

敵の攻撃が届きそうになったのでバリアを展開し攻撃を弾き、次に形を透明迷路の時みたく長くする。誰も入ってこれない安全通路の出来上がりだ。もともとこっちは配達に来ていて戦いに来たわけではないから怪我させないようにしないとな。

さて、神室を探しに行くか神カーリーはどこかな〜

 

「なんだ?何かにぶつかったぞ!?」

 

「く、斬りつけても傷一つ付きやしない・・・」

 

「もっと強い仲間を呼んでくるんだ!くそ!ついに主神の部屋まで侵入を許してしまった・・・」

 

たくさんのアマゾネス達の歓迎をバリアで受けながら移動してついに派手な装飾品で飾られた神室っぽいところにたどり着いた。【魔力】をそれなりに持つ人もこの中にいるみたいだし当たりだろうな。

NKT(長く苦しい戦いだった)・・・

オレはドアをノックする。

 

「入ってよいぞ」

 

中から童女のような声が聞こえてきた。若干偉そうだし言葉わかるしこの声の人物が神カーリーだろうな。

 

「失礼します。お荷物を届けにきまし・・・あぶな!?」

 

部屋に入る許可を得たのでドアを開け入った瞬間に蹴りが飛んできた!避けられないのでマントを伸ばし壁を作り硬化する。マントは二箇所蹴りによって凹んだ。

 

「ほう、ここまでやってくるだけあってバーチェの言う通りなかなかやるのう。アルガナ、バーチェ、武器を下ろせ。」

 

「わかった」

 

「・・・・・」

 

「ほれ、こちらはもう攻撃はせんぞ。その妙なマントを元に戻しお主の顔を見せんか」

 

そう言ってきたのでオレは警戒を解かずにマントを元に戻した。そこにはアマゾネス達と同じように褐色の肌を持ち、鮮血のごとく赤い髪、背丈はいたいけな少女のようで模した骸骨を繋ぎ合わせた首飾りと牙を生やした仮面をつけている神がいた。

それとアルガナとバーチェと呼ばれた二人のアマゾネスがいた。服装は露出が激しすぎて直視しづらいぞ・・・

片方はさっき闘技場で戦っていた方だな。髪色も顔も似ている・・・姉妹か?

 

「なんか、パッとせんのう・・・普通じゃ」

 

「・・・こちらが注文されていた品物です。お受け取りください」

 

なんか腹立つけど仕事だ、これを渡したら終わりだ耐えろオレ!

 

「うむ、確かに受け取ったぞ。ご苦労」

 

「色々お騒がせしましたのでこれにて失礼しま「まて」・・・?」

 

品物を渡し終わり帰ろうとすると結わえた髪を腰まで伸ばしたアマゾネスのアルガナが共通語でオレに話しかけてきた。

 

「私と闘え」

 

「」

 

お、話通じると思ったらこれだよ!もうオレはお家に帰りたいの!勘弁してください・・・

 

「まあまてアルガナよ、元々はバーチェがこの男と闘いたいと言っておったのだ。二人で一緒に闘うといい。」

 

「いやあの、私は闘うつもりはないのですが・・・」

 

「なら品物は受け取らぬ、そして二度とヘルメスから品物を注文をせぬ」

 

こんのロリババァ・・・ッッ!なにふざけたこと言ってんだ!

しかしヘルメス達に迷惑をかけるわけにはいかないし闘うしかないのか・・・

 

「・・・わかりました」

 

「ふふふ、どんな闘いが始まるのか楽しみじゃのう!」

 

こうしてオレは闘うこととなり、アマゾネス達が闘う闘技場に向かった。

やる気でないなぁ・・・

 

 

 

 

 

闘技場に着きそこで目にしたのは観客席にいるたくさんのアマゾネス達だ。そこに女好きの爺さんを放り込んだらどうなるのかとか気になった。

 

「これからアルガナとバーチェが来訪者との闘いを始める、皆の者!瞬きをせずにしかと見ておくのじゃ!」

 

ロリババァが開始を宣言する。いよいよ始まる。

始まりと共にアマゾネス達が騒ぎ立てる。

目の前にいた2人が左右に分かれてオレを挟撃しようとしてきた。

 

「【ミラーバリア】」

 

拳と蹴りを【魔法】で防ぐ。

 

「グッ!?」

 

「・・・硬い」

 

「だが攻撃し続ければ砕けるはずだ!」

 

「・・・(コクッ)」

 

激しい攻撃のラッシュをする度に二人の胸が揺れる。その胸は豊満であった。

あ〜たまらねぇぜ・・・

 

『汝は戦士に非ず!汝は戦士に非ず!』

 

なんだぁ?なんか周りのアマゾネス達が騒ぎ立てているな。胸を見過ぎ?戦闘中なので不可抗力です。

 

「あやつらはお主が守っておるのが気に食わんのじゃ。妾も血肉が踊る闘いが見たいのう?」

 

要はオレの戦い方が気に入らないってことか、前より【耐久】が上がったとはいえ【力】の高いアマゾネスの攻撃を食らったらボロボロになるな。

 

「申し訳ないですけどこれがオレのやり方です。突破できない方が悪い」

 

「それはそうじゃがお主面白くないじゃろ?」

 

「面白さはいらないし、闘うつもりはないって言ったじゃないですか・・・」

 

「嫌じゃ〜血肉踊る闘いが見たい〜見たいのじゃ〜!!」

 

うぜぇ・・・神が駄々をこねんなや・・・

 

「わかりましたよ・・・ほれ【解除】っと」

 

「ッ!カーリー!余計な事を!!」

 

「・・・その余裕、命取りとなるぞ」

 

なんて言ってるかわからないけどアルガナって奴は余計な事をとか言ってるんだろうな。

とはいえさっきの攻撃のラッシュは目では追うことは出来たが回避が追いつかない。マントでなんとかするしかないな。

 

「【食い殺せ(ディ・アスラ)】」

 

バーチェの右手を黒紫の光膜が覆う。その光の膜は粘度を富み、蠕動を繰り返し禍々しい。

 

あれは明らかに食らったらヤバイな・・・しかも超短文詠唱かよ・・・

 

「隙だらけだ」

 

「!!」

 

バーチェの【魔法】を注意して見ていたらアルガナが背後に現れた。

耳元で囁くほど密着している。不味い、はやく【魔法】を!

 

「【ミスト】!」

 

あっちが超短文詠唱ならこっちは速攻魔法だ!

アルガナはオレの首筋に噛み付こうとしたが全身が霧状と化しているオレには嚙み付けなかった。霧状で移動してアルガナから離れ元に戻る。

 

「姑息な手を・・・」

 

危ねぇ・・・でもなんで噛み付こうとしたんだ?そのまま切ったり、殴った方が速かったはず・・・何かあるな

 

「私を忘れてもらっては困る」

 

「クッ!」

 

真っ正面からバーチェが突っ込んできて右ストレートをぶちかましてくる。マントでなんとかしないと!【精神力】をマントに流し変形、硬化させた。バーチェの拳がマントにぶつかり、マントが凹む。さっき神室で防いだ時と同じ様に防げたのだが、ジュウゥゥと音を立てて拳を防いだところが溶けていた!色的にも毒・・・なのか?

【毒耐性】のマントが溶けるなんて・・・やっぱりあの拳の攻撃をもらうわけにはいかないな。

不気味な能力を持ったのが二人いるのは厄介だな・・・まとめてカタをつけるか。

 

オレはバーチェから距離を取りながらマントに【精神力】を流し修復し、マントでオレの体全体を守る様に包み込む。

 

「守っても無駄だ!」

 

バーチェの【魔力】が近づいて来るのがわかる。アルガナは気配でなんとなく居場所を掴む。自分自身を守ろうとするのはフェイクだ。敵を釣り、確実に仕留める。

射程範囲は闘技場の観客席ギリギリまでの全体攻撃!

新しく作った魔道書【ブリザー】に【精神力】を流し込み魔道書がアリスブルーに輝き発動!

 

「なんだあれは!?」

 

「不味い!?何かはわからないがあれを発動させるな!?」

 

マントの一部が魔道書の光で明るくなり気づいたようだがもう遅い!オレを中心に猛吹雪が発生する。全てを凍てつかせる強力な冷気、逃げ場はない!ちょっと頭冷やそうか・・・

アルガナとバーチェの身体を冷気が襲い氷付けになった・・・

 

「さて、まだやるんですか?」

 

オレはロリババァを睨む

 

「ほほほ、テルスキュラでもトップクラスの二人がやられた以上他の者たちでも敵うまい。おぬしの勝ちじゃ、血肉は踊らなかったがなかなか変わった闘いで面白かったぞ!」

 

『ゼ・ウィーガ!ゼ・ウィーガ!ゼ・ウィーガ!』

 

「あの、アマゾネス達はなんと言っているんですか?」

 

「汝こそ真の戦士と言っておるんじゃ、なんとまぁ見事な手のひら返しよの・・・そういえばお主それだけ強いのだ二つ名は?」

 

「L v.1でまだ無いですけど」

 

「なんと!?ふふふ、下界の子供達は妾を楽しませてくれるのぅ。そうじゃ!お主の二つ名はまだ無いのじゃろう?妾が決めてやる。【精神力】のみで戦う者、【魔戦士(ませんし)】じゃ!」

 

【魔戦士】、FEでは魔法耐性の高い剣使いの事なんだがまあ悪くないしいいか。けど勝手に決めていいのか?

 

「ありがとうございます、それではこれで失礼します」

 

「うむ、またいつでも来るといい。歓迎しておるぞ!」

 

二度と来るもんか!!




絶対破れない防御壁って絶望感半端ないですね

?????「L v.5のアマゾネスが二人・・・来るぞ!シエン!」


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レベルアップしたい・・・

ブリザー

英雄王マルスのいた時代に存在している魔法(最低でも2000年以上前)
凄まじい冷気で敵を凍らせる
イーリスにいた時各地に残されていた資料から復元することに成功

オラリオに来てからはロキファミリアに新しい【魔道書】の案を出して欲しいと頼むとリヴェリアから氷の魔法は無いのか?と手紙が送られてきたのでとりあえず作った。

【ブリザー】を最初に使ったのはアルヴの水をこの魔法で凍らせたこと。そしてナイフで氷を薄く切って器に乗せその上にシロップをかけてかき氷を作った。
ベル達には暑い時期によくかき氷を作ってとせがまれた。


最後の品物を配達し終わり、テルスキュラを出て無事オラリオにたどり着き昼頃、ヘルメスファミリアに戻ってきた。

 

「やっと戻ってこれた・・・ただいま〜」

 

「お帰りなさいシエン、配達お疲れ様です。そしてすみませんでした。」

 

ホームに入りアスフィを見つけ挨拶をすると謝られた。え?なんだろ?

 

「配達してきた場所でテルスキュラがあったと思うのですが」

 

「ああ、あったな」

 

「あそこは男子禁制という事を伝えるのを忘れました。本当にすみません。」

 

「まあまあ、間違いなんて誰でもあるし別にいいよ。無事ちゃんと戻ってきたし、けどもうあそこにはいかないけどな!」

 

あそこに行くたびに命の危険があるなんて本当にごめんだ。

 

「ですがそれでは私の気が済みません」

 

「別にいいのに。ならそうだなぁ、またどこかに食べに行こうぜ。そして、配達中に何があったかを聞いてもらうか」

 

オレは前にあったアスフィの罰と同じような事を言う。

 

「それは・・・ふふ、ではその話楽しみにしてますね」

 

「ああ、次は素材集めだったよな?」

 

「はい、上層はリリルカさんがやってくれましたので中層をお願いします。」

 

「任された、あれ?リリは?」

 

「ダンジョンに入っているようですね」

 

リリは上層はクリアしたみたいだな、リリと一緒にダンジョン探索するときは中層にチャレンジしてみよう。

さて、ロキファミリアには最近行ってないし挨拶にでも行くか

 

「久しぶりにロキさんとこに行ってくるよ」

 

「わかりました、リリルカさんにはシエンが戻ってきた事を伝えておきますね」

 

「よろしく頼むよ」

 

こうしてオレはヘルメスファミリアを後にした。

ロキファミリアを行く途中にあるジャガ丸くんのお店に金髪の見知った子、アイズがいた。

 

「ジャガ丸くん、小豆クリーム味ください」

 

ジャガ丸君とはオレが見た感じコロッケのようなものなのだが・・・小豆クリーム味!?なんてもん売ってんだオラリオは!?

 

「よ、久しぶりアイズ。随分背が伸びたな、オレと同じくらいか」

 

久しぶりにアイズに会ったら背が伸びていた。14歳か、まだ背が伸びるかもな。

 

「シエン、久しぶり・・・シエンも少し変わった?」

 

「え?どこがだ?背は伸びてないけど」

 

「ううん、背じゃなくて気配・・・かな」

 

「気配?」

 

「前は変な感じだったけど、今は違う。変な感じはしない」

 

どういう事だ?ステイタス更新で何かあったのか?また爺さんにステイタス更新してもらうときに聞かないとな。

 

「それでシエン、どこに行くの?」

 

「ああ、ロキさんに挨拶しに行こうかと思ってロキファミリアにね」

 

「なら一緒に行こ?」

 

「おう。それとアイズ、それ美味いのか?」

 

オレはアイズが食べているジャガ丸くん小豆クリーム味を指差す。

 

「うん、美味しいよ?シエンも食べるべき・・・」

 

アイズは持っているジャガ丸くんをオレに近づけてくる。

 

「い、今はお腹空いてないからいいよ」

 

周りから視線を感じ拒否する。食っていたらロキさんに伝わって面倒な事になるかもしれないからな・・・

 

 

 

「お帰りなさい、アイズさん!」

 

「ただいま」

 

「こんにちは、またオラリオに来たんでロキさんに挨拶に来ました」

 

「少しお待ちを・・・主神に確認をとりますので」

 

門番に止められたのでその場で待っていると

 

「おっかえり〜〜!アイズたん!!とう!!」

 

大声を上げてこちらに向かって砂埃を巻き上げ走ってくるロキさんがいた。そしてアイズに向かって覆いかぶさるようにジャンプし襲い掛かる!

 

「イヤ・・・シエン」

 

「はいはい・・・」

 

襲い掛かって来たロキさんを拒絶しオレに受け止めるように言うアイズ。オレはマントを伸ばしロキさんを受け止める。

 

「ああ^〜アイズたん、絹のように柔らかくて触り心地ええなぁ〜ってマントやないかい!?」

 

「どうもこんにちはロキさん、お変わりのないようで」

 

オレはロキさんをマントから降ろす。

 

「おう!久しぶりやなシエン君!アイズたんはウチのお気にやで?家族とのスキンシップはおかしくないやろ?」

 

「思いっきり拒否られてましたけど・・・」

 

「」

 

「ま、またオラリオに来たのでまたいろいろお世話になります」

 

「・・・よろしく、お願いします。また、戦おう?」

 

ロキさんは少し固まっているけどアイズが代わりに挨拶してきた。

 

「・・・程々にな?」

 

「善処、します?」

 

なんで疑問形なんだ?戦うのを了承したらアイズは目を輝かせた。善処って絶対ないな。戦う気満々だよこの子は・・・

 

「挨拶だけじゃあなくてウチでゆっくりしてくとええでシエン君」

 

「お邪魔します」

 

そうしてオレはロキファミリアのホームに入った。

応接間に案内されお互いなにがあったか話す。

 

「レフィーヤがL v.3に!?おお、それはめでたいですね!」

 

「ふふん、うちの子はみんな優秀やからな当然や。まだまだ強くなるでぇ!」

 

「私ももっと強くなる・・・」

 

「レフィーヤのレベルが上がってみんなも更に強くなろうと必死になっとる、ウチのファミリアの空気は今いい感じや」

 

「こっちはリリ、リリルカ・アーデの鍛錬とオレ自身の鍛錬と魔道具の研究ですね。数日前にオラリオに来ていたんですけどヘルメスのとこの配達の仕事を手伝っていて世界中を飛び回ってました。」

 

「ほーん、大空を飛び回るか・・・それは楽しそうやなぁ。ん?よー見たらシエン君、顔日焼けしとらんか?」

 

「はい、南の島に行って来ましてそこに着くまでに長い時間太陽の光を浴びて顔が日焼けしました。行った場所はテルスキュラってとこなんですけど」

 

「テルスキュラ!?あそこは男子禁制だったはずやで!?ヘルメスの奴、よくそんなとこ行かしたなぁ。」

 

「配達に行ったのに何故か闘うことになりましたからね・・・」

 

「私も(シエンと)戦いたい」

 

「(スルー)闘いに勝ったら二つ名を付けられましたよ【魔戦士】だそうです」

 

「【魔戦士】かぁ、無難やな。つか何勝手に決めとんねん!」

 

あ、やっぱり勝手に決めたらダメなんだ。ロキさんも怒ってるし。

 

「ウチがシエン君の二つ名決めようと思とったんに!【原典(オリジナル)】とか!アイズたんはなんかないか?」

 

あんたもか!アイズは食べているジャガ丸くんを見て言った。

 

「私も考えた。【ジャガ丸くん】」

 

食い物じゃないか!?絶対考えてないだろ!

 

「なんだ騒がしい・・・おや?シエンか」

 

ギャーギャー騒いでいたらリヴェリアさんがやって来た。

 

「お久しぶりです、リヴェリアさん。あの、手紙ありがとうございました。おかげで新しい魔道書出来て助かりました。」

 

「そうか、役に立ったのなら良かった。で、どんなのを作ったんだ?」

 

「それはですね」

 

「ほう、それはすごい。ならこういうのはどうだ?」

 

「あ〜なるほど、ではそれをこうしてこうでどうでしょう?」

 

「ふふ、それは面白いな」

 

「あはは、でしょう?」

 

「二人とも楽しそう・・・」

 

「ちょっとウチらには入っていけへんな・・・」

 

ハッ!意見を交換し合うのが楽しくて夢中になって二人のことをほったらかしになってしまったか。

 

「ゴメンゴメン、二人共。すいませんリヴェリアさん、この続きはまた今度で」

 

「ああ、そうだな。アイズとロキは何を話していたんだ?」

 

「えーと、なんやっけ?・・・ああ!こういう事や!」

 

ロキさんは先ほど話していた内容をリヴェリアさんに伝える。

 

「なるほどな」

 

「そもそもレベル上がってないんで二つ名は付かないんですけどね」

 

「そんな強いのにLv.1てホンマどないなっとんねん・・・」

 

「教えてくれロキさん。オレはあと何回戦えばいい?どうしたらレベルが上がる?」

 

「そんなん知らんわ」

 

「私と戦おう?」

 

「自分より強い相手と戦うか他の分野で神々に認められる偉業を成し遂げるしかないな」

 

「うーん、ロキファミリアの遠征に付き合って最下層に行くとか?」

 

「L v.1で行くんか!?」

 

「そうでもしないとレベル上がらなそうですしねぇ」

 

「我々としては頼もしい限りだが」

 

「一緒に行こ?」

 

「・・・よし!少しずつ潜る階層を増やしていくとしようか。状態異常を仕掛けてくるモンスターが怖すぎるけど・・・そこは対策して行くしかない!目指せレベルアップ!!」

 

ダンジョン探索では【対異常】の発展アビリティが絶対欲しい!なんとか手に入れてみせる!

 

「おっしゃ!なら次の遠征の時頼むでぇシエン君!」




最近暑いですね。


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高すぎる壁

原作でのベルの回想に出てくる爺さんがカッコ良く書かれていることが多いけど、今回のダンメモのイベントでやっぱりクソジジイってわかって安心した。


オレはレベルアップする為に今度の遠征について行くことを決めた。

 

「随分お邪魔したし帰りましょうかね・・・」

 

オレは立ち上がり帰ろうとするがアイズが道を塞いだ。

 

「・・・・・(戦おう?)」

 

オレの目をジッと見てくるアイズからはなんとなく何を言いたいのか分かるがわかりたくない。

 

「いや、オレ帰るから」

 

「・・・・・(しょぼーん)」

 

「・・・・・ああもう!わかったよ!だからそんな顔するなって」

 

表情にあまり変化のないアイズだが落ち込んでいる時はわかりやすいな。リヴェリアさんもすまなさそうにオレを見ている。わかりましたよ・・・

 

「一対一は前やったしなぁ、そうだ!リヴェリアさん、レフィーヤは今居ますか?」

 

「ああ、居るが。もしかしてレフィーヤの力量も見るのか?」

 

「はい、どのくらい強くなったか見ておきたくてですね。良いですか?」

 

「勿論だ、レフィーヤにとって良い経験になるだろう」

 

「ならレフィーヤを訓練場に呼んでくるで〜」

 

「お願いします、さてオレらも行こうかな。今回はボコボコにされないように勝ってやるかな」

 

「・・・!負けない!」

 

アイズは気合十分、元気だなぁ。オレにもその元気を分けてくれ・・・

 

 

訓練場 アイズ・ヴァレンシュタイン

 

再びシエンと戦う時がきた・・・前に戦った時より私は強くなっている。そしてさらに強くなる!

 

「あ、アイズさん!一緒に頑張りましょう!」

 

今回はレフィーヤも一緒、レフィーヤには高火力の【魔法】で援護してもらおう。

 

「うん、【目覚めよ(テンペスト)】!」

 

シエンも前と変わっている、油断できない!全力で行く!

 

「ハッ!」

 

「それはもう食らわないぞ。痛いのは勘弁だ」

 

シエンのマントが伸びて盾に!?それに破けても直っていく!?

 

「よし、アイズの攻撃にもついていける。マントさまさまだな」

 

「・・・ッ!まだこれから!」

 

訓練場

 

「いいな〜アタシも戦いたいなぁ〜」

 

ティオナの目の前ではアイズとレフィーヤがシエンと戦っている。その戦闘はロキファミリアにいるものが見に来ていた。

 

「シエンがあの二人と戦うって言ったんだから我慢しなさい」

 

ティオナの姉であるティオネも見に来ていた。正直ティオネも戦いたいがフィンに許可を得ていないので我慢している。

 

「それにしても丈夫やなぁ、あのマント」

 

「そうだね、アイズの【魔法】を付加した剣を防いでいる」

 

「ああ、破けても直ぐに修復される」

 

「回避をしないところを見るとどうやら体はまだアイズの動きにはついてはいけてないようじゃがの」

 

「ハッ!道具に頼りっぱなしじゃダンジョンでは役には立たねえよ」

 

今回の戦いではアイズの攻撃にマントで対応しているため前のようにボロボロにされることなくシエンは戦えている。今回の戦いではシエンはなんでもありの戦いにしている。魔道士が接近戦をするのは間違っているがいざという時にはしなくてはならないのだ。

 

「【解き放つ一条の光、聖木の矢幹。汝弓の名手なり】」

 

シエンとアイズが戦っている間に杖を持ったレフィーヤが詠唱を始め、足元には山吹色の魔法円を展開する。

 

「【狙撃せよ、妖精の射手。穿て、必中の矢】!」

 

【魔法】を放つための詠唱を高速で終わらせる。魔法円から強い光が立ち上り【魔法】が発動する!

 

「【アルクス・レイ】!」

 

光の矢が猛スピードでシエンに向かって突き進む、この魔法は自動追尾の属性付きなので躱すことは出来ない。アイズはレフィーヤの魔法名を唱えたのを聞き、光の矢を受けない場所まで退避する。

その矢はシエンに直撃する。当たった衝撃で周り中に砂埃が舞う。

 

「やったか!?」

 

ロキファミリアの団員が声を上げるがその砂埃は突然吹いた風によって消え去る。

 

「ペッペッ!口ん中に砂が入っちまったよ。レフィーヤ、今の一撃なかなか良かったぞ。」

 

砂で汚れたがシエンは無傷だった。

レフィーヤは流石にシエンを【魔法】で倒せるとは思ってはいなかったが自慢の一撃が通用しないことに驚愕した。

 

「オレからのお返しだ、受け取れ」

 

シエンのマントの内ポケットに入っている黄色の魔道書が輝き、大きな雷の球、【サンダー】が地面を抉りながら高速でレフィーヤに向かって行く。

 

「レフィーヤ!!」

 

アイズはレフィーヤを抱え【サンダー】を躱す。その時抱えられていたレフィーヤの顔は真っ赤になっていた。

 

「大丈夫?」

 

「(は、はわわ!アイズさんがこんな近くに)だ、大丈夫です!」

 

「・・・・・(どうする)」

 

アイズの剣技も防がれレフィーヤの【魔法】も通用しない。しかも障壁もスキルも使わずにこの力の差、アイズには通用しない強大な壁があったが

 

「あーもう我慢できない!!アタシも混ぜろー!うおりゃああああ!!」

 

ジッとしていることに耐えかねたティオナが乱入しウルガをシエンに叩きつける。

そう、この戦いはなんでもありなのだ。

 

「え?」

 

まさか乱入してくるとは思ってもおらず不意をつかれたシエンは急いでマントで防ぐもティオナの【力】で振るうウルガは防ぎきれずマントは斬られシエンも真っ二つになった。

 

「・・・あれ?」

 

『ええええええええ!!??』

 

「おいこら馬鹿ゾネス!何やってんだ!?」

 

「いやだってアイズの攻撃も防げたし大丈夫かなーって、あれ?いない」

 

地面には真っ二つになったシエンはいなかったが霧状のなにかがいて声が聞こえてきた。

 

「死んだと思った?な〜んちゃって☆オレはティオナがマントを切ってオレが切られる間際に【魔法】を発動していた。」

 

シエンはそう言って霧状態から人型になった。

 

「ビックリしたよシエン!」

 

「それはこっちのセリフだ、本当に死ぬかと思ったぞ・・・オレもまだまだだな・・・」

 

シエンは額についた汗を拭う。ティオナには【魔力】はないので探知出来ず、切りかかってきた時も殺気は感じなかった。だから反応が遅れた。切りかかるのに殺気を放たないのはとても恐ろしく感じた。

 

「で、オレと戦う奴らが増えているんだが?」

 

「団長には許可をとったわ」

 

「てめえのふざけた態度がムカつくから蹴り飛ばす」

 

ここでティオネとベートが参戦、1対5か・・・ちょっとまずいか?

 

「よーし!いっくよー!!」

 

「・・・うん」

 

「レフィーヤはシエンに隙があったらダメージを与えられなくても魔法をぶつけなさい、ベートはあの二人の援護」

 

「わかりました!」

 

「チッ、指図すんじゃねぇ!」

 

ロキファミリアを引っ張っていくの次世代の冒険者達の反撃が始まった。

アイズとティオナが先行してシエンに突撃する。

 

「フッ!」

 

「てぇえい!」

 

二人の全力がシエンに襲い掛かるがマントに防がれてしまう。

 

「うそ!?さっきは斬れたのに」

 

「ならばさっきより【精神力】を流せば良いだけだ」

 

シエンのマントの3つの内ポケットが赤、緑、アリスブルーに輝きだした。

 

「いけない!二人共離れなさい!!」

 

「もう遅い」

 

【エルファイアー】【ギガウインド】【ブリザー】の同時発動、2つの大竜巻に火と冷気が吸い込まれ片方は火炎竜、もう片方は猛吹雪となりそれぞれが二人を襲った。

 

「クッ!」

 

「うわわ!か、体が凍って動けないよー!」

 

アイズはギリギリかわすことができたがティオナはかわしきれず足が凍り身動きが取れなくなった。

 

「ティオナ!?テメェ・・・ブッ殺す!!」

 

「ティ、ティオネさん!?落ち着いて下さい!」

 

シエンに突撃しようとするティオネを落ち着かせようとするレフィーヤ。

 

「オレを無視してんじゃねぇ!」

 

ベートが崩れた前線を立て直すべくシエンに接近戦をしかけ、メタルブーツで鋭い二度蹴りを放つ。

ベートの【力】はティオナより低い、なので簡単にマントで防げるのだが。

 

「ッ!?やはりその靴、特殊なものか」

 

ベートのミスリル製のメタルブーツは魔力吸収の属性を持つ特殊武装。シエンの放った【魔法】を片足に火炎竜をもう片足に猛吹雪を吸収させていたのだ。

その為マントは一部焼き焦げたり、凍りついたりした。

 

「へ、なかなかいい威力出んじゃねえか」

 

「確かにいい靴だな。だが吸収し切れないほど強力な【魔法】だったらどうかな?」

 

「・・・ッ!かかってきやがれ!」

 

「私もまだいける!」

 

シエンの【魔力】が膨れ上がり、マントの内ポケットが全て輝きだす。アイズ達を殺さないように加減をしていたがあの靴を壊すのには【魔力】を抑えていてはできないからだ。

 

「お、おい。あれヤバくないか!?」

 

「に、逃げろォ!」

 

「ストォォップ!そこまでや!これ以上はあかん!殺し合いになってまう!」

 

えーこれからだったのに・・・ま、アイズ達の力を測ることも出来たしまあいいか。




うだうだ言っても結局闘っちゃうシエン

戦闘で複数のキャラを登場させるのって大変、レフィーヤ【魔法】一回しか撃ってねぇ・・・


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望まれぬ来訪者

ギムレー狂信者の商人「嗚呼、ギムレー様・・・この世界の人間達の血を、肉を貴方様に捧げます・・・」

商人はオラリオ全体を揺るがすであろう自分の商品を撫でた・・・


闘いはロキさんの制止で強制的に終わり再び応接室へ

 

アイズ達には若干不満があるようだがしょうがない。冷静になって考えてみればベートとの闘いは加減が効かない、メタルブーツの魔力吸収を突破する攻撃をしたらベートの足がなくなってしまうからな。あそこらへんが収めどころだろう。

 

「また勝てなかった・・・」

 

「シエン、またやろうね!」

 

「もう真っ二つは勘弁だ・・・」

 

【ミスト】で何とかなったけどなかったら死んでたんじゃないかな・・・爺さん達のところにいた時に【ミスト】を発動させてみたら精神力をたくさん使うものだと思っていたがそうでもなかった。

 

「【魔法】が全く通用しなかった・・・私ももっと頑張らないと!」

 

「私は戦えなかったわね・・・」

 

「テメェはキレやす過ぎるんだよ、ちったぁ抑えろ」

 

レフィーヤは自分の力が通用しないことを理解し、さらに強くなるためにやる気を出している。さっきの戦いではあまり相手をしてやれなかったから今度は一対一にしよう、オレがレフィーヤの【魔法】を受けるサンドバッグになる感じでやればいいはずだ。オレも【耐久】とか上がりそうだし鍛錬にはなるだろう。

ティオネの戦い方は見ることができなかったな、前に透明迷路をやった時に暴れまくってたしキレたら予想外の攻撃をしてきて手がつけられそうもなさそうだ。

 

「いやー良いもん見せてもろうたで。またウチの子と戦ってなシエン君」

 

「そうだね、今度は僕と相手をしてもらおうかな?」

 

「私の【魔法】も食らっても大丈夫だろうか・・・」

 

「やってみなくてはわからんだろうのう」

 

え、今度はこの3人と戦うの?

 

「だ、団長!大変っす!」

 

ラウルが慌てて応接室に駆け込んできた。さっきは訓練場に来てなかったしホームの外にいたのかな?

 

「どうしたんだい、ラウル?」

 

「そ、それが、18階層に新種のモンスター達が出現し、リヴィラの街が襲われたらしいっす!そしてそのモンスターがダンジョン上層を登ってきて、もしかしたら地上に来ようとしているみたいっす!」

 

あれ?モンスターって18階層では生まれないんじゃなかったっけ?

 

「新種か」

 

「しかし今はゴライアスが出現しているはずだが?」

 

「副団長、どうやらそのゴライアスを倒し登ってきているみたいっす・・・」

 

「ゴライアスを倒した、つまりL v.3以上のポテンシャルを持っているわけか」

 

「しかも複数いるみたいです。外見は全身黒く、目が赤く光って武器や防具を身につけてるみたいっす。そして戦闘も連携を取れていたらしいっす」

 

「・・・誰がそれを言っていたのかな?」

 

「リヴィラの街を治めていたL v.3のボールスさんです。リヴィラの街にいられなくなったので地上に来てギルドに説明してるみたいっす」

 

「話を聞きに行こう。シエンはどうするんだい?」

 

「オレも行きます!!」

 

どうやらオラリオで異常が起きたみたいだ。今聞いた情報だけでも分かる。奴らだ、屍兵が現れたんだ!!・・・まてよ?リリは今日ダンジョンに行ったんじゃあ・・・ッッ!!

オレは慌てて【魔力追跡】を発動する。

・・・・・良かった。どうやらリリは無事にダンジョンから出ていてヘルメスファミリアにいる。そしてアスフィや他の知り合いもオラリオの地上にいるみたいだ。

にしてもなぜ奴らがここに?一体どうやって?

そう考えているとアイズにくいっとマントを引っ張られる。

 

「シエン、どうしたの?何か知ってるの?」

 

そうアイズが言うとここにいる人の視線がオレに集まった。

 

「もしかしたらオレが知っている奴らかも知れなくてな。アイズ、意外と察しがいいんだな」

 

「意外は、余計・・・」

 

「シエンその新種について何か知っているのか?」

 

「ええ、嫌という程知ってますよ。屍兵達のことはね・・・」

 

 

リヴィラの街 朝 路地裏

 

「なあ、オレ達どうやったらもっと強くなれると思う?」

 

オレ(人間のカーマ)は狼人のイーケと猫人のニーエに聞いてみた。

 

「・・・しらねぇよ」

 

「お前そればっかだな」

 

「ッ!当たり前だろ!」

 

そうだ!オレは神の恩恵を得て強くなれたんだ、まだまだ強くなれるはずなんだ!L v.2になるのも4年ほどかかったがちゃんと強くなれたんだ!

 

「でもよ、オレらL v.2になってこれで9年経つんだぜ・・・もう、無理なんじゃ・・・」

 

「諦めたくないのはわかるけどよ・・・」

 

そんなこと言ってっから強くなれねえんじゃねえか!オレは諦めねぇぞ、どんな手を使ってでも強くなってやる!!

 

「おや、旦那達何かお困りですか?」

 

「あん?」

 

オレ達が話し込んでいたら道の向こうから道具をたくさん持った男がいた。オイオイ、ここは無法者が集まる場所だぜ?そんなヒョロヒョロじゃあ荷物ぶん取られちまうぞ・・・

 

「強くなりたいやら聞こえたので強くなれる手段がわからなくて困っているのでないかと思い声をかけた次第」

 

「ああ、まあな」

 

「そう簡単なことじゃねえけどよ」

 

「そんなことを言うってことは何か知っているか!教えてくれ!」

 

「これを使えば簡単に強くなれますよ」

 

そう言って男は持っているものを見せてきた。なんも変哲も無いちょっと匂う箱だった。

 

「臭!?」

 

「臭えぞ、これ!!」

 

あの二人は鼻がきくからな臭いがキツイのだろう。オレはそうでもないがな。

 

「これをどうやったら強くなれるんだ?」

 

「これを開くと強くなれますよ」

 

「ありえねぇ」

 

「そんなバカな話はないだろ」

 

他二人は否定的だった。オレもそう思う。開くだけで強くなれるとか、そんなの今までのオレ達の頑張りはなんだったんだって話になる。だがそんなことはどうでもいいオレは強くなりたいんだ!

 

「・・・いくらだ?」

 

「「!?」」

 

「4800ヴァリスになります」

 

「ただの箱なのに高いな?まあいいが」

 

「地上での価格と同じなのですがね。ああ、そうそう。使うのでしたら誰にも見られない場所がよろしいでしょうね。例えば森の中とか」

 

「最後に聞く、これを開くだけでいいんだよな?」

 

「ええ、もちろん・・・開いて強くなれなかったら代金はお返ししますよ」

 

18階層の深い森の中

 

「おい、本当にやるのかよ」

 

「絶対ヤバイやつだって」

 

「じゃあなんでついてきてんだよ、ちょっとは期待してんじゃあねえのか?」

 

「「・・・・・」」

 

「なにも起きなかったら金返してくれるって言ってたじゃねぇか。やって損はねぇ、開けるぞ・・・」

 

そう言ってオレはこの箱を開けた・・・

すると中から黒い煙が噴き出し、魔法陣が箱を中心に現れた!なんだこれは!?

 

「なんだ!?」

 

「一旦離れろ!?」

 

「だから怪しいって言ったんだ!!」

 

少し黒い煙の出る量が落ち着いてきたな、一体なにが・・・

 

「ウ、グオ・・・」

 

「オオオ・・・オ」

 

目の前には全身黒くて目が赤く光って錆びた斧と籠手を持っているモンスターが現れやがった!?なんなんだあれは!?

 

「「オオオオオオオ!!!」」

 

オレ達を見つけると急に襲いかかって来た!動きはオレ達と同じくらいか!?

 

「来たぞ!」

 

「ぶっ殺せェ!」

 

「シァアア!!くらえ!!」

 

ニーエは短刀で斧を持った奴の一体を斬りつける。よし!ちゃんと斬れる!攻撃は通じる!

あの男、強くなれるってのはこいつらを倒せばいいってことか!

 

「ニーエ、無事か!?」

 

「ああ、問題ない!」

 

「一気に片をつk」

 

「「イーケ!?」」

 

森の中で突然現れた薄汚い服を着て短刀を持った新種のモンスターがイーケの首を跳ね飛ばした。

二体だけなら彼らにもなんとかなっただろう。だが箱からは黒い煙が出続けて魔法陣も残っていた。まだ別のモンスターが出現することを彼らは今理解した。

 

「クッ!逃げるぞ!ニーエ!数でこちらが不利だ!」

 

「あ、ああ!イーケすまねぇ!」

 

そう言って二人は森から出るために敵に背を向け走り出す時に

 

「ガッ!?」

 

「ニーエ!?・・・クソ!!」

 

ニーエの胸、心臓ある付近に5本矢が突き刺さっていた。ここにシエンがいたならわかっていただろう。スキル【流星】が発動したのだと。カーマはニーエを置いて逃げた。

 

「ハァ、ハァ、奴らはまだ来ていないか・・・クソ!なんだあれは!」

 

「おや?どうやら使われたようですね」

 

「テメェ!!」

 

森の中には先ほど会った男がいた。

 

「強くなることができましたか?」

 

「ふざけんな!!なんだあれは!開けたら強くなれるんじゃなかったのか!!」

 

「ええ、開けてあれを倒せればね。アレを倒せた人は実際にいますよ?それにこんなところで大きな声を出してはバレますよ?・・・どうやら手遅れのようですがね」

 

二人の周りにはモンスターがいて、もはや逃げることはできなかった。

 

「おい!こいつらはお前が操れるんじゃないのか!?」

 

「無理ですよ、ですので一緒にギムレー様の贄となりましょう・・・」

 

「ギムレー!?なんだそれは!」

 

「ギムレー様・・・この世界の者達だけでなく私の命も捧げます・・・」

 

その言葉を言った直後に周りにいた新種のモンスター【屍兵】が二人に襲い掛かり無残な死体となった。

 

他の屍兵が死体を食らっている中、ニーエを殺した屍兵のスナイパーがカーマの腰袋に入っている石、魔石を取り出した。

なにを思ったかそれを口に含み噛み砕き飲み込んだ・・・

 

「オ?オオオオオオオ!??」

 

スナイパーの腕の筋肉が膨れ上がり赤い目の光も強くなる。魔石を食べる事でより強くなったのだ!

それを見ていた屍兵達は森の中にいる魔石を持っているモンスターを襲い始めた。さらなる力を求めて・・・




屍兵
ギムレーの魔力によって生み出された異形の兵士であるが、大昔にはプロトタイプが作られていたという(FE 覚醒、FE エコーズより)

匂いの箱 覚醒ハード以降4800G
使用すると魔法陣が現れ黒い煙と共に屍兵が出現する。ゲームではいい経験値稼ぎアイテム
全部倒したと安心していると不意打ちで現れたりする。覚醒では屍島にてクロムは殺されかけた。

使用した者の強さと同じか少し強いくらいの屍兵が出現、匂いの箱から黒い煙が出続ける限り屍兵が出現し続ける。魔石を食べることでより強くなるが心臓部分に魔石が出来るため弱点が増えてしまう(オリジナル設定)

幼少期アイズなら喜んで使いそう

スキル

【流星】
自身の【技】の四分の1 %で発動
与えるダメージの半分の威力を5回攻撃する

没ネタ
森の中 ニーエに向かって
スナイパー「メテオショットォ!グォレンダァ!」



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屍兵って?

ダンジョン中層

屍兵「オオオオオオオ!!」

????「・・・新種か、だが」

屍兵「ガッ!?」

男は持っていた石で出来た大剣で屍兵を真っ二つにした

????「・・・弱い」



すみません、前話での少し前の時間を朝にします。そうしないとボールスが地上に来るのが速すぎるので。いろんな人の作品見てると地上から18階層がクッソ近く感じてしまう


イーリスにもいた屍兵がオラリオのダンジョンにも現れたかもしれないのでオレとロキファミリアの面々はボールスという人に話を聞くためにメインストリートにある大神殿、ギルド本部に来た。

 

「ロキファミリアだ」

 

「黒ずくめもいるぞ」

 

「地上に戻ってきたボールスも顔色も悪かったし何かあったのか?」

 

ギルドにいた冒険者達はオレ達が来たことに色々喋り始める。勘のいい冒険者は何かトラブルが起きたことに気づいているみたいだな。

 

「リヴェリア様!?それにシエンさんも」

 

「久し振りだなエイナ、ゆっくり世間話でもしたいところだが今はそういう事をしている場合ではないからまた今度だ」

 

「よ、エイナ久し振り。ボールスさん?って人と話がしたいんだけどなんか会議室みたいなのない?ここじゃあ少し話せないんでな」

 

「わ、分かりました。今案内します」

 

久し振りにエイナとあった。エイナもリヴェリアさんに縁があるみたいだな、またいつか話を聞こう。

 

会議室

 

「やあボールス、無事で何よりだよ」

 

「フィンか、なぁにが無事で何よりだ。今まで儲けてた分が全部パァだ!」

 

ボールス・エルダーさんが会議室に入ってきた。

筋肉隆々の巨漢で凶悪な人相に黒い眼帯をしたいかにもといった風貌で上半身には袖無の戦闘衣を身に付け、盛り上がった肩や腹筋を剥き出しにしている男だった。

 

「ボールス詳しい事情を話してくれないかい?」

 

「ま、話してやってもいいがそれには金が「あぁん?」・・・いや何でもありません・・・」

 

ボールスさんは情報料を貰おうとしていたようだがティオネの脅しで大人しくなった。ナイスティオネ!フィンさんは苦笑しているけどな

 

「では話してくれるかい?」

 

「・・・ああ、とんでもない奴らだったぜ。あれは今日の朝だったな。いつも通り店で商売していたら森の辺りからよ黒い煙が上がってたんだ。そんなところで火を起こす馬鹿はいねえ、森で何が起きてるか見るために街で高いところから見ると新種のモンスターが森から大量に出て来やがったんだ!」

 

「そのモンスターの姿は今噂されている通りかい?」

 

「そのハズだ、オレが地上に戻った時に流した噂だからな。話を戻すとその新種のモンスター達がオレたちの街に向かって来たんだ。街は湖に浮かぶ島の最上部に築いてる。そうやすやすと来れないとと思っていたんだが」

 

「空飛ぶ飛竜と馬にやられたんですね?」

 

「何でテメェその事を!?」

 

ボールスさんは目を大きく開けてオレを見た。おお、凄い迫力・・・

 

「彼はシエン、ボールスの言っていた新種のモンスターの事を知っているみたいなんだ」

 

「だったら話が早いな。こっちが武器や人を集めている間、そいつらの上に乗っていた奴らにアッサリ街は蹂躙されちまったんだ・・・」

 

「飛んでた飛竜や馬は武装をしていましたか?」

 

「・・・いや、していなかったと思うぜ」

 

となるとドラゴンナイトとペガサスナイトか・・・上級職の奴らはいないのか?

 

「よく無事だったね」

 

「ハッ!命あっての物種よ、逃げるのは得意だぜ!」

 

「威張って言うことじゃないと思うけど・・・」

 

「いやティオナ、逃げるのが上手いってのはとても大切な事だぞ?」

 

死ぬより逃げて生きている方がオレはいいとおもうけどね。それをヨシヒロに言ったらブン殴られそうだから言ってないけど

命を惜しむな名を惜しめ!とか言われそう

 

「それよりボールスさん、そいつらの中でこんなの持っていた奴いなかったですか?」

 

オレはマントの内ポケットに入っている赤い魔道書を見せる

 

「・・・!?ああ!確かに持っていたぞ!ゴライアスを奴らが倒す時にいた奴が持っていた!ってなんでオメェが持ってんだ!?」

 

「まあ、それは後で言いますよ」

 

「ゴライアスを倒すところを見ていたとはね」

 

「オレもただ逃げるってのは気に食わねぇ、少しでも奴らに勝つ為の情報を手に入れようとしたのさ」

 

そう言ってドヤ顔を決めるボールスさん、これはドヤってもいいな。

 

「それで何かわかったかい?」

 

「おう、奴ら妙に戦い慣れていて連携が取れるみたいだ。全身アーマーの奴がゴライアスの攻撃を受けてその隙に他の奴がゴライアスの両ふとももを切り落とし身動きを取れないようにしてその本を持った奴が火を浴びせ弓矢を持った奴は矢を浴びせたんだ。そして倒したらゴライアスの魔石を食っていてその間にオレは逃げたぜ」

 

「連携に魔法に弓矢、かなり頭がいいみたいだね」

 

「モンスターがシエンと同じ魔法を使うとは、興味深いな」

 

「魔石を食ったって事は強化種になったということか。その時よりもさらに強くなっているハズじゃ。L v.4クラスはあるかものう」

 

ロキファミリアの首脳陣が屍兵に対する感想を言った。オレの知ってる屍兵は人の肉を食らう事で己の体を維持し強くなる事を知っているが魔石を食うなんて知らないぞ。屍兵もダンジョンに適応しようとしているのか・・・

ダンジョンのモンスターと同じ強化種になったという事は心臓付近に魔石があるかもしれない。弱点が一つ増えたな

 

「あれが魔法!?どうなってやがる・・・L v.4クラスとかダンジョン上層にいる冒険者やモンスターは全部奴らの餌食になっちまうぞ!」

 

「オレが片付けに行きますよ、奴らの戦い方ならよく分かってる」

 

「・・・私も行く」

 

「ダメだ、アイズはL v.5で戦えるかもしれないが奴らと戦ってはダメだ」

 

「どうして?」

 

「奴らは人の姿をしている。しかもところどころ傷だらけでまるで殺された人のような姿、オレがいた国では奴らのことを屍の兵士、屍兵と呼んだ」

 

実は本当に死んだ人を利用して出来たなんて言えないな

 

「屍兵・・・」

 

「アイズの心に悪影響を及ぼしたくないからな。おまえ絶対戦闘中に動けなくなるぞ」

 

「シエンは平気なの?」

 

「オレは屍兵を殺しまくってもう何にも思わないから平気だ」

 

「ンー、それは平気って言わないんじゃないかな?」

 

フィンさん、オレは生きるために必死だったんだ。おかしくなってもしょうがないね

 

「ま、国で屍兵絶対殺すマンとも言われたシエンさんに任せとけってアイズ!」

 

「・・・う、うん(引き気味)」

 

『(なんて物騒な二つ名なんだ・・・)』

 

そこにいる人は皆そう思わざるを得なかった・・・

その後少し話をした後ヘルメスファミリアへ戻った。

 

「よう、リリ。無事だったか」

 

「シエン様!はい、今日はダンジョン潜りを程々にして上がってきました。リリも街で話を聞きました、運が良かったです・・・」

 

「危機管理がしっかりしてるから生き延びたって事だ。運じゃないさ。リリ、ヘルメスファミリアでジッとしてろよ?すぐに片付けてくるから」

 

「シエン様・・・お気をつけて」

 

オレは準備をしてダンジョンに潜ることにした。

 

ダンジョン10階層 その日の夕方

 

冒険者の声もモンスターの声もせずダンジョンは不気味な程に静かになっていた。

 

「さて今のところは問題なしっと」

 

今のところは屍兵は一体も遭遇していないが油断は禁物だ。現在【魔力追跡】を発動中だ。上の階や下の階はうまく探知できないが今いる階は探知できる。

・・・しばらく前から反応があったけど無視していた。大きな【魔力】とそれに比べたら小さな【魔力】の二つの反応の二人。

 

「なんでお二人さんがついてきているんですかねぇ、リヴェリアさんとフィンさん」

 

「あはは、バレていたか」

 

「だから言っただろうシエンには意味がないと」

 

そう言って二人共近寄ってきた。意味無いとかそう言っていた割にリヴェリアさん【魔力】抑えてましたよね?

 

「今回だけその屍兵とやらが出てくるわけではないかもしれないからな。実際にこの目で見ておくことにしたのだ」

 

「って言っているけど実際はシエンの事が心配でついて来たんだよね?」

 

「・・・フィン、余計な事を」

 

「リヴェリアさん、ありがとうございます。ではフィンさんはなんでまた」

 

「ンー、リヴェリアが言っていたこともあるけど将来君が僕らのファミリア入ってくれるかもしれないからね。今のどれくらいの力があるのか分析する為だよ」

 

そう言ってオレを見上げ笑みを浮かべているフィンさん。心配はしてはくれているんだろうけど、分析か。敵対した時にどのように対処するか考えるためでもありそうだな。団長だからもしもの事のために嫌なことも考えないといけないのか。

 

「そうですか。団長って損な役回りですね」

 

「ふふ、まあね」

 

嫌味もアッサリ流されたよ、敵わないねホント




レノアの店

「やれやれ、ようやくできたかい。あの坊やの杖が」

「ああ、貴女がデザインした通りの物だ。だが良かったのか?代金を取らずに彼の持つ魔道具と交換するとは」

「金だけ持っていてもしょうがないだろう、あの坊やの持っているものにはとても興味があったから充分さ、ヒッヒッヒ!さて今度来た時に渡すとしようかね。このノーヴィ・マジックウォンドをね」


ちなみに価格にしたら3億500万ヴァリスになります


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ああ!

18階層
オッタル
「(先程から会う新種のモンスター、この階から出現しているのか。人の気配が多数あるな・・・この気配はあの男か、また再戦する機会が来るとはな)」


ダンジョン10階

頼もしい2人の冒険者と共に11階層へ向かおうとすると屍兵特有の【魔力】をオレのスキルが感知した。

 

「・・・どうやら来るみたいですよ」

 

オレの言葉に武器を構える2人。そして霧の中から赤い目の光が多数見えてオレたちを見つけると襲いかかって来た。

 

『オ、オオオオオオオオ!!』

 

「これが屍兵か、確かに見たことのないモンスターだね」

 

「本当に死んだ人のようだな、アイズに見せないというのも頷ける」

 

そんな感想を言う2人。さて、さっさと始末しないとな。探知しながら【トロン】発動し的確に頭と心臓付近を撃ち抜き、頭は無くなり体の真ん中辺りには風穴ができた。そして体を維持できなくなった屍兵は黒い霧となって消滅した。

フィンさんは屍兵のいた場所に移動し落ちているものを拾う、拾ったものは魔石と武器だった。魔石が取れたと言うことは狙いが少しずれたか。

 

「魔石を持っているということはガレスの予想通り強化種になっているようだね」

 

「屍兵を倒すと武器が残るのか、だが他の屍兵も持っていたから出るはずだが・・・ないな。倒すとドロップアイテムを落とすといった解釈で良さそうだな」

 

「2人共落ち着いてますね・・・」

 

「今まで様々な経験をして来たからね」

 

「そういうことだ」

 

「それじゃあどんどん行きましょうか」

 

 

ダンジョン中層 フィン・ディムナ

 

「オ、オオ・・・」

 

「ウ、ガァ・・・」

 

「悪いがなんにもさせやしない」

 

現れた屍兵という新種のモンスターに対して瞬殺していく目の前にいる魔道士シエン。彼は味方でいる時はとても頼もしいが、もし敵対した場合、逆にとても恐ろしい存在になるだろう。敵対した時、シエンを倒す為にもシエンの持っている力を見極めなければならない。そのために今回ついて来た。

膨大な【魔力】と【精神力】、多才で強力過ぎる【魔法】。今まで見た感じだとシエンはモンスターを倒すよりも人を殺すことに特化しているといってもいい。リヴェリアが言うには【魔力】を探知して人を探すと言うのだから僕らの居場所は常にバレバレだ。匂いで僕の居場所を分かるティオネも怖いがシエンの方が恐ろし過ぎる・・・

敵対している場合は落ち着いて寝ることはできないだろう。昔、オラリオにいた闇派閥にシエンがいなくて本当に良かったよ・・・

 

それにしてもこれだけ強いのにシエンがオラリオに来るまでに彼についての噂が全く無いなんてとても考えられない。イーリス聖王国というところから来たといっているが僕らは知らない。神ヘルメスは知っているようだけどロキにまた話を聞いてもらうように頼んでおこう。

シエン、君は一体何者なんだい?

 

 

18階層 シエン

 

無事オレ達は屍兵が湧いて出て来ているであろう階層にたどり着いた。そこでの光景は以前来た時と全く違っていた。

 

「なんだ・・・これは・・・?所々森が無くなっている・・・」

 

「これはひどいね、あちこちがめちゃくちゃに荒されているよ」

 

天井にある大きな水晶から放たれる光は立ち昇る黒い煙によって遮られ視界は薄暗く。森があった場所は所々木々がなぎ倒されていたり、火によって焼き尽くされていた。

湖に浮かぶ島にあるリヴィラの街の上空には大きな飛行物体の影が見える。

 

「リヴィラの街が屍兵に制圧されていて黒い煙は森の方からのようですね」

 

「シエン、どうするんだい?」

 

フィンさんは俺に尋ねてきた。少し考えて俺は言う。

 

「・・・そうですね。森に行きましょうか、おそらく屍兵が現れている原因はあの黒い煙です。あれを止めることができればこれ以上は出てこないですから。そこから一体一体始末して行きましょう。それにリヴィラの街を取り返して森に向かったとしてもまた空から制圧されるだけで意味がないと思います」

 

「黒い煙が原因?」

 

「はい、あの立ち昇る煙で分かりました。おそらく屍兵を出現させる匂いの箱という道具を使ったんでしょうね」

 

「モンスターをおびき寄せるアイテムはあるけどモンスターを出現させる道具があるなんてね」

 

「危険ですけど箱を開いた人と同じくらいの強さの屍兵が出てくるので見方を変えると強くなるにはもってこいなんですけどね」

 

「・・・他のファミリアには言えないな。その箱を手に入れ強くなろうと躍起になるだろう」

 

「何故それを僕らに教えてくれたんだい?」

 

「ティオナが開けたら第一級冒険者クラスの屍兵が出現しますからね、それの出現を防いでもらうために言いました」

 

「知らなかったら確かにティオナが見つけたらとりあえず開きそうだね」

 

「確かに否定できないな」

 

 

ロキファミリア

 

「へっくち!」

 

「ティオナ、大丈夫?」

 

「うーん、風邪かなぁ?」

 

「ハッ!バカゾネスのテメェが風邪を引くわけねぇだろうが」

 

「なにをー!!ベートのバーカバーカ!」

 

 

ダンジョン18階層

 

オレ達は森に入り黒い煙が上がっているところを目指し歩いていく。

 

「ウガァ!」

 

「ハッ!」

 

フィンさんは持っている黄金の槍で襲いかかってきた屍兵を突き殺し。

 

「セイ!」

 

「グギャ!?」

 

リヴェリアさんは持っている杖で屍兵の顔を殴り潰し頭は千切れ飛んでいった・・・

信じられねぇ、なんてパワーだ・・・オレはありえないものを見たかのようにリヴェリアさんを見る。

 

「【魔法】を放つよりこちらの方が速いからな。だからそんな風に見ないでほしい」

 

「アッハイ」

 

前に手を握られた時も【力】はあるように思えたがここまであったのか・・・今明かされた衝撃の真実だった。首を千切飛ばしても動揺しないこの王女様怖ェ!

 

「それにしても黒い煙が上がっているところに近づいて行っているのに屍兵とあまり遭遇しないね」

 

「そうですね、探知しても屍兵の数が少なく感じます。あ、また一つ【魔力】の反応が消えた・・・19階層へ向かう方の反応が消えたから19階層から誰かが上がってきて黒い煙を目指しているのかもしれません」

 

「もしかしたら下層から戻ってきた人がいるのかもね」

 

「L v.4クラスを軽々と倒せるほどの人物はそうはいないが、【魔力】を持っているものだけとはいえ居場所が分かるその【スキル】は反則だろう」

 

「【魔力】を強く感じ取るように修行しただけなんですけどね。・・・そろそろ黒い煙にも近いですね、さっさと終わらせに行きましょう」

 

「少し待ってくれないかい?あそこの草陰に何かあるみたいだ」

 

先に行こうとするとフィンさんが何かに気がつき静止するように言ってきた。

 

「フィン、何かあったのか?」

 

「・・・死体だよ。服や道具も落ちているね」

 

フィンさんが見つけたのはどの種族か判断できないほど食い千切られた死体と服と道具があった。道具の方をよく見るとギムレー教団の人が身につけているものがある。なるほど、コイツが匂いの箱を持って来たということか。オレは死体となった人の荷物の中身を見ると見た感じ何の変哲のないが何か強い力を感じる石を見つけた。これは・・・

 

「シエン、どうやら下層から上がって来た人物の登場だよ」

 

石に気を取られていたらどうやらこの階層に来た人が近くに来ているとフィンさんは言った。この威圧感はあの男か、鈍色の石を手に掴みこの気配を放つ男が来るのを待つ。

 

「フィンにリヴェリアにお前か」

 

2M以上もある大きな体を持つ猪人のオッタルが現れた。前にあった時には持っていなかった大剣を持っている。

 

「オッタルならあの新種のモンスターも倒せてもおかしくないね」

 

「馬鹿にするなフィン、あの程度造作もないことだ」

 

「リヴェリアさん、フィンさんとオッタルは知り合いなんですか?」

 

「ああ、昔からそれなりに会う機会があってな。私やガレスも同じくだ。シエン、その手に掴んでいる石は何だ?」

 

「あの死体の持ち物だったんですが拾っちゃいました。これは竜石ですね」

 

「竜石、シエンの話していた物語に登場したマムクートという種族がそれを持ち戦うと言っていたな。まさか物語にある物が実際に存在するとは」

 

「流石にこれを置きっぱなしには出来なくて。もしかしたらダンジョンのモンスターが食べた場合また違った強化種が出来てしまうかもしれませんから」

 

「それはまずいな」

 

「なのでひとまず地上まで持って行こうかと思いまして拾ったんです」

 

「そんなこと言わなくても別に私が取ろうとしないから安心してくれ」

 

リヴェリアさんは苦笑しながらそう言った。オレがこれを欲しがっているのはリヴェリアさんにはバレバレだった。

 

「二人共、もういいかな?早くこの黒い煙を止めに行こうか」

 

「あ、すいません。今行きます・・・ってこの人も行くんですか?」

 

「ああ、そうみたいなんだ」

 

「そういや、前あった時にオレの名前は言ってなかったな。オレはシエン」

 

「・・・オッタルだ」

 

互いに自己紹介をしてその後黒い煙を吐き出している箱まで辿り着いた。

 

「ありましたね、取り敢えず匂いの箱を閉じましょうか」

 

オレはマントを伸ばして今も煙を出している箱を閉じた。手で触れるのもなんか危険そうだからマントでやった。これでもう屍兵は湧かないな。にしてもこれの処理どうしようか・・・地上には持って行くわけにはいかないし壊して大丈夫だろうか?




ゲームだったら使ったら無くなるけど実際にあったらどうやって処理するんでしょうね


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屍兵の正体

ロキファミリア シエン達がダンジョンに潜っている時
「ねぇねぇアイズ!これ、新しい本買ってきたんだけど一緒に読もう!」

「・・・これなんの本?」

「英雄達の軍記物語だって言っていたよ」

「アンタ本当に本を読むの飽きないわね・・・どこで買って来たのよ」

「えーと、裏路地にいた赤い髪の女の人だったよ。めったに手に入らない本なんだって!だから思わず買っちゃった!」

「それは騙されてるわよ。しかもこれ共通語じゃないし読めないじゃない」

「大丈夫!ロキがいるから!ねえロキ、これ読んでよ!」

「ウチは神やから読めるけどなになに・・・ティオナ、お手柄やな」

「え?なんで?」

「これは【イーリス聖王軍記】ちゅうみたいや」

「イーリスってことはシエンについて何かわかるかもしれないってこと!?」

「せやな、フィンとリヴェリアが居らんけど先に読んどくか。シエン君も一緒にいる時に読んでもええなぁ、どないしようかなぁ〜(ゲス顔)」



森の中の屍兵を倒した後に匂いの箱について相談した結果、オレはアンナさんに渡して元の世界に戻してもらうことに決めた。もし無理だとしたらどのファミリアとも中立なギルドに預けることに決めた。ギルドの人たちは神の恩恵を得ていないので例え屍兵を出現させたとしても大した強さではないからだ。まあ開けたら大災害だけどな。

まったく、余計なものを持ち込んでくれたよ・・・

 

リヴィラの街

 

制圧されたリヴィラの街を取り返すべく戦っているのだが・・・

 

「グオオオ!」

 

「・・・ハッ!」

 

「グギャ!?」

 

襲いかかってくる屍兵はオッタルが大剣を振り回すことによって消滅する。

つ、強すぎる・・・アレ?オレらいらなくね?

 

「フィンさん、前にオッタル戦ったことがあるんですけど、やっぱ無茶苦茶強いですね」

 

「オラリオで最強の冒険者だからね。でもそんな彼を君は倒した」

 

「倒したというか岩で生き埋めにしただけですけど・・・」

 

戦闘ではこっちの攻撃が強すぎて殺してしまう可能性が非常に高いので手加減をしなくてはいけない。他の能力が全部負けているように思えるので下手をするとあっさりやられてしまうだろう。例えるなら防具を着けず拳銃を装備している感じかな。

あれ?オレは【魔力】以外は格下だからこれ真面目に戦ったらレベルアップするんじゃね?

なんだっていい!レベルアップするチャンスだ!

・・・ん?なんだ?遠くにいる屍兵の一体が止まったな・・・

 

「【ミラーバリア】!」

 

オレはバリアを目の前に展開した瞬間に矢が五本突き刺さってそのままの方向にはね返したが遠くにいた屍兵に躱された。ほぼ一度に5本矢を放つという事はスキル【流星】を持っているという事。弓を扱うという事はソードマスターになった後に弓の使える上級職に変えた屍兵がいるようだな。

コイツがゴライアスをやった奴らの一体に違いない

 

「シエン、今のは?」

 

「どうやら他の屍兵とは格の違う奴がいたようですね。上級職のスキルも持っているようですし奴がエースですね」

 

「居場所は?」

 

「奴の【魔力】を覚えたのでバッチリ把握してます。先程の奴の特徴は接近戦に慣れていて待ち伏せが上手く素早いことですね。まあ、待ち伏せは問題ないですが」

 

「なぜ特徴が分かるんだ?」

 

「兵種によって得意分野が分かれているんですよ。そして兵種によって習得出来るスキルも決まっていますのでその屍兵がどのような兵種をこなしてきたのか分かります」

 

「・・・シエン。もしかしたら君にもその兵種があるのかい?」

 

「ええ、【ソーサラー】といって【魔力】が伸びやすく【魔法】に特化した兵種ですよ」

 

「死んだ人間のような姿、兵種にスキル・・・まさか」

 

フィンさんは理解してしまったようだ。ま、これだけ分かったら勘づくよな。

 

「そのまさかですよ。アレはオレの居た国の死んだ人を利用して出来た兵士達です」

 

「・・・死んだ人を利用するだと?なんて卑劣な!」

 

「死んだ人ということはシエンもそうなってしまうのかい?」

 

「いえ、屍兵になるにはデスマスクが必要で屍兵を作り出した本体がもういないので大丈夫です(ただし別の世界線にはいる)」

 

「そうか、それは安心したよ。君が屍兵となって襲いかかってくるなんて考えたらゾッとするよ」

 

「強い奴が死んだ時は死体が残らないように消滅させてましたね」

 

「話はそれぐらいにしておけ、・・・くるぞ」

 

オッタルがそう言った後に空に飛んでいたドラゴンナイトやペガサスナイト達が強襲してきた。先程より速い、捨て身の特攻という事か。

 

「シエン!」

 

「了解!」

 

こちらに向かって飛んできている屍兵達に極太な火炎放射の【ギガファイアー】を放ちまとめて焼き尽くす。これで空の部隊はもういない、他はまたあの屍兵の足が止まったという事はくるか!

 

「【ミラーバリア】!」

 

今度はリヴェリアさんに向かって矢を放ったようだがそうはさせない。先程と同じようにして返す。

 

「シエン、すまない。助かった」

 

「防御は任せてください。にしてもあの弓使いは厄介ですね。こちらが別の事に気を取られていたら攻撃してすぐにその場から離れる。オレの【魔法】では街中に被害が出ます」

 

「確かに厄介だが場所が分かればこちらのものだ。ここは私に任せてくれ、【間もなく、焔は放たれる。忍び寄る戦火、免れえぬ破滅。開戦の角笛は高らかに鳴り響き、暴虐なる争乱が全てを包み込む。至れ、紅蓮の炎、無慈悲な猛火。汝は業火の化身なり。ことごとくを一掃し、大いなる戦乱に幕引きを。焼きつくせ、スルトの剣――我が名はアールヴ】」

 

リヴェリアさんが【詠唱】を行うと足元に展開された魔法円は翡翠の色に輝き、無数の光粒を舞い上がる。【詠唱】が完成するときには魔法円が拡大して街中に広がっていき、弓を使う屍兵のいる場所まで魔法円が拡大したことがわかった。

 

「【レア・ラーヴァテイン】!!」

 

魔法円から突き出す天井にも届く炎柱が屍兵のいる建物ごと焼き尽くした。建物は完全になくなってしまった、建物は犠牲になったのだ・・・屍兵を倒すそのための犠牲にな・・・

あれ?これってもしかしてこの範囲全部射程内?こんな高火力がこの範囲全体に展開されるとか悪夢でしかないな。

オレが敵のいる場所を教えて防御魔法を展開してリヴェリアさんが【魔法】をぶっ放す。

なんだよ・・・結構いいコンビじゃねえか・・・へへ

 

「シエン、なぜにやけている?はやく屍兵を眠らせに行くぞ」

 

 

この後屍兵達は全滅した。どうやらあの屍兵が今回出てきた中で一番強い個体のようだった。どんな魔石や道具を落とすのか気になって焼け跡に行くと白色の弓【シャイニングボウ】(覚醒にはありません)が落ちていた。これは【魔力】が高いと威力が上がるという変わり者の弓で精神力を消費して矢を作り出す武器だ。屍兵は鉄の矢を使っていたようだった、意外にケチだったのか?

オレはこれを拾い、フィンさんたちのところに戻り片膝を立ててリヴェリアさんに献上した。

オレは頭を下げていてわからなかったが、後で聞いた話ではリヴェリアさんは困ったような顔を受け取って見ていたオッタルの無表情がすこし崩れていたとフィンさんが笑って言っていた。

残った屍兵の反応はもうないのでこれで終わり、帰りましょうということになったときにオッタルが口を開きこういった。

 

「オレと戦え」

 

しってた、だが今回は戦うことにした。ここなら派手に暴れても問題ないだろう。




ジャガーノート「ワイの出番は?」
カルビン8「上層中層はウラノスの祈祷がよく届いているので出てこれない」
ジャガーノート「(´・ω・`)」

ロキファミリア 聖王軍記を読み終わって

「(略)・・・こうして聖王クロムとルフレ達によって邪竜ギムレーは滅びイーリス聖王国は平和となったとさ。・・・なんやこれ?行くところで問題ばっか起きて戦って、戦闘して倒した敵は屍兵となって再び立ち向かってくる。戦いで自軍の兵も死んでくからそれも屍兵に・・・神も協力的じゃなくて嘘も見抜けないから裏切りが頻繁に起きる。シエン君のいたところハードすぎるやろ!」

「・・・ロキ、これって本当にあった話なのよね?」

「せや、ノンフィクションやで。多少は盛っているかも知れへんけどこの本に書いてある通りのポテンシャルがあればそらL v.1でも無茶苦茶強いはずやで」

「・・・シエンがオラリオに来た理由は書いてないの?」

「イーリス聖王についてメインで書かれているからシエン君のことはあくまでおまけやからな」

「ねーロキ。これ誰が書いたの?」

「著者は【ダサい手槍】さんや。なんやこの名前」


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ロキルート
ロキ?男神の名前・・・なんだ女神か


話ができたので投稿開始
ヘスティアに会ってないのにヘスティアルートとはいったい?うごごご!?


異界の門をくぐると不思議な空間にたどり着いた。ヘルメス達のいる世界は何処かと探っていると不思議な力に包まれオレの体に激痛が走る。その痛みに耐えきれずオレの意識は飛んでしまった。

 

オラリオ 路地裏 冬

 

異界の門からシエンが落っこちて水溜りに落ちた。落ちてきた衝撃で目を覚ましあちこちを見渡した。中世によくありそうな建物がたくさんありどこか暗い。空にはどんよりした雲があり雨が降っている。

水溜りに落ちた事で自分の持っている荷物、主に魔道書が濡れていないかをチェックしようとしたがバッグは無くてルフレがくれた【トロン】の魔道書のみがあった。これ以上濡れないように拾い上げ懐に入れた。

この時にシエンは気付いた。たくさんの本を書いた事で出来た手の豆の数が少ない事を、自分の手が小さくなっていることを。

縮んでいるのか?とシエンは恐る恐る水溜りを覗いて自分の顔を見てみた。目にクマができていて痩せた幼い顔、間違いなく自分の顔だ。つまり?

 

「若返ってるぅぅぅぅ!?」

 

薄暗いオラリオに幼い少年の高い声が響き渡った。

あり得ないとシエンはそう思ったが先程の異界の門をくぐった時に激痛に襲われた事が原因だとすぐに理解した。

 

「どうすんだよこれ、食料もないぞ・・・」

 

これから先、生きていく上で必要な食事もない、服装は何故か今の小さなシエンにちょうどいいくらいのサイズになっていた。そんなことより食料をなんとかして欲しかった。そんな事を思っていたら

 

「ヒャッハー!!子供はっけーん!ぶった切ってやるぜェ!!」

 

「オイオイ、テンション上げすぎだろこの変態野郎!まあぶった切って泣いてる姿は見てェがよォ!ギャハハハハ!!」

 

なんともハイテンションな自分と同じ黒ずくめの男達が屋根から下りてきた。シエンはなんて治安の悪い街なんだと思った。

とはいえ相手はこちらを殺害する気満々で使い慣れたまだ乾いていない血が付いた短剣を持っている。

シエンは自分の体を見て今自分がどの時期の自分かを目線や手の豆の数や魔力で今は7歳くらいだと分かった。相手の力量を測ることは難しいがそもそもこの年の時は魔力ばかり鍛えていて耐久も速さもあまりない。兵種の傭兵、スキル【武器節約】を手に入れてしばらく経った頃のはずだ。

今は専用【トロン】を使う事は出来るかどうかわからない、つまりはほぼ死ぬということである。どうしたものかとシエンは考えていると黒ずくめの男達はシエンが怯えていない事に気が付いた。

 

「んん〜僕どうしたの?オレ達が怖くないのかい?お目目をくり抜いてあげようか?」

 

「キモいなお前!じゃあオレはその足を細切れにしてあげるね!」

 

「・・・」

 

シエンの動揺を誘う為に喋りかける二人、しかしシエンは動じず目を逸らさない。邪竜ギムレーを滅ぼした者達の1人であるシエンにこの程度の小悪党に怯むわけがなかった。

 

「・・・来た」

 

「「・・・へ?グハァ!!??」」

 

シエンが言葉を漏らした時にシエンと同じくらいの背の金髪の少年が黄金の槍で黒ずくめの2人を薙ぎ払い気絶させる。

シエンは【魔力】を持った人物の居場所を把握する力を身に付けている。今は下手に動くと危険で何も出来ないので全盛期ほどではないが【魔力】を持っている人物を探っているとこちらに高速で一直線に近付いてくる【魔力】に気がついた。だからこそ怯える必要はなかった。

 

「やれやれ、静かな街に大きな声が聞こえてきたものだから急いで来たらこれだ、全く忙しいったらないよ。ガレス、その2人の闇派閥の人を捕らえてくれ。僕はあの子に話を聞く」

 

「分かった」

 

金髪の少年はシエンに話しかける。

 

「君、もう大丈夫だよ。よく1人で耐えたね」

 

「あれぐらい大した事ないです。あの、ここは何処ですか?」

 

「いや大した事だからね?ここはオラリオさ、身なりも雨で濡れているけど悪くない。何処から来たんだい?ご両親は?」

 

「イーリス聖王国、でも変な門をくぐったらいつの間にかここにいた。親はもういない」

 

シエンは異界の門とは言わずに金髪の少年に事情を話した。

 

「・・・ご両親のことを聞いてすまない。イーリス聖王国、聞いた事がないね。僕らの主神が知っているかもしれないな。ずぶ濡れだと風邪を引いてしまうし、うちのファミリアにこないかい?痩せているし食事も出そう」

 

「いいんですか?」

 

「もちろん、じゃあ行こうか。あ、そういえば自己紹介がまだだったね。僕はフィン、フィン・ディムナだ。君は?」

 

「シエン、イーリスのシエン」

 

シエンはフィンについて行くことにした。いい人か悪い人かはまだ判断できないがこの少年は今の自分よりかなり強いことが感じられた。イーリスにいる時にオラリオの仕組みについてアスフィに聞いているからファミリアというのはなんとなく分かっている。共通語はまあまあ分かる。後でしっかり教えて貰えばいいだろうと思った。

シエンがフィンとガレスと一緒にロキファミリアに向かう時にはどんよりとした雲は一部割れ、日差しがシエン達に舞い降りた。

異界の門をくぐってシエンが現れた事、これがオラリオにとって吉兆なのか凶兆なのかはまだ誰にもわからなかった。

 

 

ロキファミリアに向かう最中 フィン・ディムナ

 

先程急に親指が疼きだして警戒していると少し離れたところから笑い声が聞こえて来た。何かあると思い急いでその現場に行くと僕と同じ身長くらいの少年と2人の闇派閥の人間がいた。その少年は怯えているのかと思いきやまるで怯えを見せず大したことはないと言い放った。

僕には信じられなかった、何も持たないただの子供が殺戮者2人を前に動じないなんて事を。それに喋り方も何やら子供らしくもなかった、話を聞いてみるとどうやら親を失っていたようだ。謝罪をするともう気にしていないのか素っ気なかった。吹っ切れているのか、それとも親が死んだ事を受け止めきれていないのか、僕にはわからない。

目にはクマがあり、痩せた幼い顔。どこか最近ウチのファミリアに入ったアイズを思わせる少年だ。年齢も同じくらいだろうか?

ファミリアに来るように誘うと若干警戒はしているようだがついて来るようだ。

ん?最近はずっと雨ばかりだったのに雲の一部が割れて太陽の光が僕らを照らした・・・

 

「ガレス、これは吉兆なのかな?」

 

「さあの、ワシは神ではないから分からんが良いことが起きるって思えば起きるかもしれんのう」

 

「・・・・・」

 

この光を受けているこの少年は光を見て一体何を思っているんだろうか

 

ロキファミリア 応接室

 

「おう、フィンにガレスお疲れさん!どや?闇派閥の奴らとっ捕まえて来たか?」

 

「ただいまロキ。闇派閥の連中を捉えてガネーシャファミリアに送って来たよ」

 

「そのときに闇派閥の連中を相手に動じない、なかなか見所のある小僧を見つけて連れて来たわい」

 

「・・・こんにちは」

 

シエンは濡れた服を脱ぎ、濡れた本を乾かし体を温めていると変な関西弁を喋る朱色の髪をした細目の男が現れて挨拶をした。その男からは何やら変な感じがした。なんとなく人とは違うのではないかと思えるくらいに。

ヘルメスは俺は神だ!とか言っていたがヘルメスからは変な感じはしなかったのでシエンはヘルメスとは別の存在として慎重に喋る事にした。

 

「んん〜なんや?元気ないなぁ。背もアイズたんとおんなじくらいやし年も近いんとちゃう?君いくつや」

 

「7つ、名前はシエンです」

 

「ふーん、自分、ウチのファミリアに入らへんか?」

 

「「ロキ!?」」

 

フィンとガレスは驚愕した。年齢と名前を喋っただけでファミリアに勧誘するなんて女性以外ではあり得なかったからだ。

 

「なんやこう、ビビッときたんや!今ここでこの子をウチのファミリアに入れとかんと絶対後悔するような気がしてな。神の勘や!間違いない!!」

 

「無茶苦茶だね・・・まあ僕も賛成だけど」

 

「この小僧を連れて帰った時にちょっとだけだが雨が止んで太陽の光がワシらを照らしたんじゃ。もしかしたら、もしかしたりするかものう」

 

「少し待ってください。ここに入ったら何をするんですか」

 

オレはこのファミリアがどのような事をするのかを聞いてみるとロキが説明をした。ロキファミリアは探索ファミリアでダンジョン探索を主に行うファミリアなのだという。新階層到達や隠し部屋を見つけるなどなど。しかし今は闇派閥が地上で暴れているためダンジョンへ遠征をすることができないそうだ。

闇派閥、オラリオで殺人を行う危険な集団でギルドは様々なファミリアを協力させて闇派閥を壊滅させるつもりらしい。

このロキファミリアやガネーシャファミリアやフレイヤファミリア、そして正義のファミリア、アストレアファミリアが主なようだ。

つまりここに入ると闇派閥に目をつけられるというわけだ。

しかしこんな小さな子供を受け入れてくれるファミリアはそうないだろうし、弱いファミリアに入って一緒に死ぬなんて真っ平御免だ。

 

「分かりました、オレをこのファミリアに入れてください」

 

「おっしゃ!新しい眷属ゲットや!!ロキファミリアにようこそ!これからよろしくなシエン!それとその硬い話し方は家族になるんやからもうちょい楽にしいや」

 

「ロキ、リヴェリアに言わなくて良いのかい?」

 

「・・・まあええやろ」

 

「適当じゃのう」

 

「リヴェリア?」

 

名前からして女性のようだが誰だろうか。

 

「リヴェリアはハイエルフでこのファミリアの副団長なのさ。それで団長が僕、小人族のフィンだ。呼び方はフィンでいいよ。よろしくねシエン」

 

「ワシはガレス・ランドロック、ドワーフじゃ。ワシはガレスでいいぞ。よろしくのうシエン」

 

「よろしく・・・・(なんだ?この感覚は?)」

 

オレは友好の証として2人と握手をする。すると外に大きな【魔力】が一つと変わった【魔力】が一つ近づいてきているのに気がついた。

 

「どないしたんや?」

 

「このホームに【魔力】を持った人が2人近づいてきてる。1人はとても大きい【魔力】、もう1人は小さな【魔力】だけどなんか変わった感じで普通じゃない」

 

「【魔力】を持っとるもんの居場所がわかるんか!?まだ神の恩恵を授けてないんやけど!?」

 

「わかる、だから先程フィンとガレスが一直線に近づいてきてたのがわかったからそんなに怖くなかった」

 

「やっぱり只者じゃないね」

 

「もともと持っている力なんじゃろうか」

 

3人はシエンの持っている力に驚愕した、そして安堵した。もし闇派閥に入っていたらオラリオは終わっていただろうから。

 

「これは期待大やな!ヒャア!我慢ならん!ここで刻むでェ!ウチの恩恵を!!」

 

そうしてシエンの背中にロキの血が垂らされて滑稽な笑みを浮かべている道化師のエンブレムが刻まれた。そこにはシエンの情報が書いてあった。それを見たロキは顔を引きつかせながらシエンの背に他の人に【ステイタス】を見られないように錠を施した。そしてロキは羊皮紙に概要を記した。

 

シエン

 

Lv.1

 

力 :I0

 

耐久 :I0

 

器用 :I0

 

敏捷 :I0

 

魔力 :I0

 

 

魔防 :H

 

《魔法》

【ミラーバリア】

・速攻魔法

・敵の飛び道具や魔法を反射する。反射する際は向きを自由に変えられることができ、いろんな攻撃も防ぐことができる。形は精神力を消費すると自由に変えられる。

・魔法を反射したとき魔法の威力が上昇する。

・空中に足場を作ったりできるが透明で見えない。

参考 餅

 

【】

 

【】

 

《スキル》

 

【魔法の探究者】

・魔力と器用が凄まじく成長しやすくなり、限界を超える

・力が全く上がらなくなり、耐久が上がりづらくなる

 

【祈り】

【幸運】%で即死するような攻撃を受けても耐える

 

【呪い】

・自分の影が相手との接近戦になった時に黒い手のような形になり、実体化する。相手の足などに掴まり動きを阻害する。【魔力】、Lvの高さにより強力になる。【魔導】の補正も入る。任意発動、これは精神力を消費する。

 

【復讐】

・ダメージを受けるたび魔法の威力上昇、体力を全回復すると威力は元に戻る。身体中から黒紫色の魔力が出てくる

 

【道具節約】

・幸運×2%で武器や魔道書の使用回数が減らない竜石も減らない(新品のままになる)

 

【魔道具作り】

・(FEにある)武器、魔道書、杖を作ることができる。

 

【魔力追跡】

・生き物の【魔力】【精神力】を覚えどこにいるのかを探知できる。レベル、魔力が上がるごとに範囲拡大。【魔導】の補正も入る。ただしダンジョン内では不安定。

・任意発動、精神力消費しない

 

多重魔法(マルチマジック)

・複数の魔法を同時に発動、または魔法を発動しながら別の魔法も発動できる。

 

シエン、フィン、ガレスは羊皮紙を見た。2人は顔を引きつかせ、シエンは困惑した。

 

「スキル多いね・・・」

 

「発展アビリティが発現しとるぞ・・・」

 

「力が全く上がらないってなんだよ・・・」




原作から9年前です。シエンとヘルメス達があったのは原作から3年前なのでシエンは6年間原作をできるだけ壊さないようにしないとヘルメス達が6年後に異界の門を通って行かないかも?

シエン 7才 ダークマージ

父親 ダークマージ
母親 シスター

精神は身体に影響されるようで幼い頃を思い出し、言葉数が少なく物静かになっているがファミリアの仲間達と喋るときは少し増える。
不思議な力によって若返ったので全盛期の時の影響もある

素のステータス
HP   14
力   4                 
魔力 25              
技  15              
速さ  9                 
幸運 50                   
守備  6               
魔防 21

ボツスキル
怒り
赤の呪い
理由 FEの必殺をどう扱えば良いかわからないため。怒りはエラッタして入れたいかも。

祝 文字数が1話で初5000字突破!!


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異質な子供

ロキ「(羊皮紙に書いてないけどもう一つ発現している【魔法】があるけどこれは言えんな。フィン、リヴェリア、ガレスと相談せんと)」

【魔法】
ドラゴンフォーゼ
詠唱 【姿が変わりゆけども決して変わらぬは己の心】
竜変化 竜種に特効ダメージを与えられる
【魔力】が高ければ高いほど【耐久】【敏捷】に超補正
空中を浮くことが出来る
【魔法】を無効化する。(回復と強化は受け付ける)
スキル【光の波動】が【魔法】発動している間に任意発動出来る

スキル
【光の波動】
【精神力】を消費して光を発する。
呪い、怪我を治す。増血作用あり


オレはロキファミリアに入ることにして神の恩恵を刻むといろんなことが書いてあった。能力がゼロばっかりだが力が落ちている感じはしない。これからは素のステータスは上がらずステイタスが上昇するようになるのだろう。さっきから感じた【魔力】を持った2人がここに来たな。

 

「3人共、今戻ったぞ。ん?客人か?」

 

そこには髪色が翡翠で細長い耳を持つ長身の女性のエルフがいた。どこか気品にあふれていてイーリスの第一王女を思わせた。今は亡き第一王女・・・いかん、鼻の奥がツンとした。落ち着けオレ。

 

「・・・誰?」

 

もう一方の金髪の金色の瞳を持つ今とオレと同じくらいの大きさの少女が来た。なんだか切羽詰まっていて余裕のない表情だ、子供がする顔じゃない。

 

「おお!2人ともおかえり、ほんまや!シエンの言った通りリヴェリアとアイズたんが帰って来たで!」

 

「シエン?この少年の名前か?」

 

「せや、それで今日からウチらの家族になったんや」

 

「・・・ロキ、私は聞いていないのだが?」

 

「さっきなったばっかりやしな。シエン、リヴェリアとアイズに挨拶や」

 

「これからよろしくお願いします」

 

オレは2人に頭を下げ挨拶をした。

 

「こうなってしまってはしょうがない、私はリヴェリア・リヨス・アールヴ、ハイエルフでこのファミリアの副団長をやらせてもらっている。よろしく頼むぞ」

 

「ロキ、ハイエルフというのはなんだ?」

 

エルフとどういう違いがあるのかロキに聞いてみたら

 

「ハイエルフっちゅうんはエルフの中でも上位種、ようは王族やな」

 

やはり王族か。クロムといいリズといい、オレは王族にやたら縁があるな。

 

「ではリヴェリア様とお呼びいたしましょうか?」

 

「今は同じ冒険者だ。そんな硬くならなくていい。それよりシエン、お前は冒険者となってなにを成すつもりだ?」

 

どうやら王族ではなくリヴェリアとしてみて欲しいらしい。冒険者となって何をしたいのか・・・か。前は生きることで精一杯でギムレーを倒した時は正直もう人生をやりきった感があった。このオラリオも今は真っ暗闇だ。生きる為には強くならなくてはならない。まずはそこからスタートだな。

 

「やりたい事は分からないです。けど今は生き残る為に強くなりたいです」

 

「生き残る・・・か」

 

「はい、先程闇派閥の連中に襲われて生きる為には強くならないといけないとより思いまして」

 

「リヴェリア、シエンはな【魔法】に関する才能はピカイチなんやで!リヴェリアもうかうかしてたらあっちゅうまに追い越されるで?」

 

ロキがリヴェリアさんにオレのステイタスを書いてある羊皮紙を見せた。リヴェリアさんは羊皮紙を見て驚きを隠せないようだ。

 

「なんだこれは?」

 

「やっぱりそう思うよね」

 

「ぶっ飛んだ小僧じゃろう」

 

「シエン、たとえどれだけ力があろうとも知識がなければ意味がない。アイズと一緒に基礎知識を養って貰う、勉強だ」

 

どうやらリヴェリアさんが教師となって教えてくれるようだ。これはありがたいな。アイズと言われた金髪の少女は「勉強・・・」と嫌そうな顔をしていった。勉強が嫌いなんだろうか。

 

「アイズ、勉強が嫌いなのか?」

 

「勉強なんて意味ない。それより戦う方が大事」

 

「戦うのは確かに大事だけど、知識が無いとオレはダンジョンに何があるのか分からなくて怖くて潜れない。ダンジョン探索では必要な事だから意味はあると思うけど」

 

「シエンの言う通りだぞアイズ。やっておいて損はないんだ。むしろ為になる」

 

「・・・ッ!でもあの本の量はおかしい!!」

 

「本の量?」

 

「これが基準だ」

 

そこには山積みになった様々な本がいっぱいあった。7歳の子供にこれはきついんじゃないかな・・・取り敢えず読んでみようと一冊の本を見ると

 

「あっ」

 

「どうした?」

 

「ところどころ読めない・・・」

 

共通語をしっかり把握していない為なんとなくでしか理解できなかった。

 

「シエンは共通語の勉強からか・・・ん?あの本は何だ?」

 

リヴェリアさんは乾かしていた魔道書に気がついた。オレは魔道書を手に取ってみるとちゃんと乾いていた。試しに【精神力】を流してみると黄色に輝いた。どうやら今のオレでも使えるようだ。攻撃手段は一つできたな。

 

「シエン!何をしている!?」

 

リヴェリアさんがオレの持つ黄色の魔道書を見て言った。他の4人も本に釘付けになっている。

 

「ちゃんと使えるか確認していたんです。どうやらちゃんと使えるみたいで安心しました」

 

「僕も気になってはいたんだけど魔導書とは違うみたいだね。ロキ、読めるかい?」

 

「シエンちょい借りるで。んん〜?どうやら【魔法】を習得出来る魔導書とは違うみたいやな。ほい、シエン返すで。けどこれ誰が書いたんや?見たことないもんやけど」

 

「オレの友達、オレも魔道書を書ける」

 

「ホンマか!?」

 

「父さんに魔道書の書き方、母さんに杖の作り方を教わった」

 

「とんでもない両親じゃのう」

 

「そんな事はない。やり方がわかれば【魔力】と材料さえあれば出来る」

 

「・・・これは他のファミリアには言えないね」

 

「ああ、神々が何としてでもシエンを手に入れようとするかもしくは・・・」

 

子供にはお前は殺されるとは言いづらかったのかリヴェリアさんは言葉を濁した。

 

「よし!話はこれくらいでええやろ。空き部屋がまだあったはずやからそこをシエンの部屋としようか。ほな案内するで夕食の時ウチのファミリアにいる子達を紹介するから楽しみにしてな」

 

場の空気を変えるようにロキは話を終わらせた。魔道具作成用に机とか欲しいな。

 

ロキの部屋

 

シエンを空き部屋に案内してそこで自由にするように言ってロキは自室に戻った。そしてロキファミリアの首脳陣である、フィン、リヴェリア、ガレスを呼んだ。

 

「さて、集まってもらったのは言わなくてもわかると思うけどシエンのことや」

 

「そうだろうね」

 

「聞いたことのないスキルばかり持っておったしのう」

 

「あんなに幼いのにどれだけの経験をしてきたんだろうか」

 

ステイタスは経験によって基礎アビリティが上昇したりスキルが生まれたりするものだ。かなり幼い頃から鍛え上げられたとリヴェリアは思った。

 

「成長促進スキルは他の子達にも言えん、ファミリアん中で絶対孤立してまう」

 

大したことをしてないのにステイタスがガンガン上がっていったら誰だってズルいと思うはずだ。

 

「それにな、羊皮紙には書いてなかったけど実はこんな【魔法】をもっとったんや」

 

そう言ってロキは羊皮紙に書いてない【魔法】について話した。

 

「ドラゴンフォーゼ・・・」

 

「これは確かに言えないのう」

 

「『怪物趣味』の予兆かもしれんな」

 

言葉通りハーピィやラミヤなどのモンスターなどに欲情してしまう異常性癖の人物の言葉で下界では最大級の蔑称である。

 

「夕食の最中にモンスターについてどう思っているんかシエンに聞いてみるわ」

 

「頼んだよ」

 

「ワシも話を聞きに行っていいか?あの小僧が何を言うのか楽しみでな」

 

「ガレス、これは深刻な問題なんだぞ」

 

「ワシらが深刻な問題に思っておってもあの小僧は気にしないと思うがの」

 

「生き残ること、僕らに出会う前は一体どんな環境で育ったんだろうね」

 

「今はウチの眷属や、ウチらが守ってやればまた別の目的が生まれるはずや。きっと大丈夫やで」

 

「アイズ同様にとんでもない子を眷属にしたな、ロキ」

 

「しゃあないやん、ビビッときたんやから。アイズたんに良い影響になるとええんやけど」

 

食堂

 

「みんな、今日から新しい家族になったシエンやよろしく頼むで」

 

「よろしくお願いします」

 

みんなの視線が集まることは最近なかったし緊張するなぁ。さて、オレの席はっと

 

「シエンはここやウチの前」

 

ロキに促されて席に座った。目の前にロキ、ロキの右手にはフィン、リヴェリアさん、ガレスといった重役の人達が集まった場所だった。

え?なにこれ?

 

「さて、食事にしよか。シエン、好き嫌いはあるか?」

 

「好き嫌いはあるけど嫌いな物が出てないから大丈夫」

 

フォークやナイフを器用に使って食事をする。食事のマナーはバッチリだぜ。リヴェリアさんの視線が気になるな。

 

「ふむ、見事な作法だな。誰に教わったんだ?」

 

「イーリスの王子の側近に教えてもらいました。王子のそばにいるものとして必要なことって言われまして。けど他の貴族の人に嫌われて追い出されましたけどね」

 

「嫌な事を思い出させてしまってすまない」

 

「あのままあそこにいたら殺されていたかもしれないのでこれでよかったんだと思ってます、フフフ・・・」

 

「「「「・・・・・」」」」

 

カチャカチャとスプーンやナイフが皿に当たって出る音がだけが聞こえる。やっべ、やっちまったわ、食堂の空気が死んだわ。でも本当のことだしなぁ

 

「ゴホン!それはそうとしてこれからはダンジョンに潜ってモンスターと戦うことになるけど。モンスターのドラゴンの事はどう思う?」

 

「どう思うって言われても。襲ってくるんなら倒すだけだけど?」

 

「そかそか、それならええんや」

 

「?」

 

なんだったんだ?今の質問は

 

「シエン、明日は冒険者となるためにギルドに行って冒険者登録をしにいく。私と一緒に行くぞ」

 

「はい分かりました。あの、ご飯美味しかったです。ご馳走様でした」

 

食事もそこそこにして食堂の空気を破壊した張本人はサッサッと自室に戻るとしますか。

 




食堂

「思った以上に辛い場所にいたんだね」

「なにを言うか楽しみにしていた自分を殴ってやりたいわい」

「リヴェリアに対して若干遠慮しているのはそのことも関係があるんかもしれんなぁ」

「そんな事を言われても私はどうしようもないのだが。ハァ、困ったものだ」

「頑張ってや、ママ」

「誰がママだ」


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はよ寝ろ

FEで必殺1%を連続で引いた時の絶望感は凄まじいですよね・・・




シエンの部屋

 

食堂の空気をぶち壊したオレは部屋に戻った。ロキにオレの部屋に案内された時に本の材料を頼んでおいたので丸テーブルの上に置いてあった。寝るまでに時間があるし魔道書作りでもしようか。やり方はインクにオレの【精神力】を流し込み、そして書く。それだけだが今のオレだと【精神力】の量が少ないからすぐにはできないだろう。毎日コツコツとやるのが1番だ。

 

「ッ!ぐぬぬ、なかなかインクに馴染まないな」

 

早速問題が発生した。オレの【精神力】がインクにうまく馴染まないのだ。向こうでは魔道書に適したインクを使っていたからな。今は【精神力】を100流したら1くらいしかインクに馴染まず99は無駄になる。非常にもったいない。

逆に考えるんだ【精神力】を無駄にしちゃっても良いんだと。それだけたくさんの【精神力】を使用するという事はステイタスにも影響するはずだ。多分無駄じゃないはず・・・

しばらく紙に魔法文字を書いていると頭がボ〜としてきて集中できなくなって目の前が真っ暗になった。あ、風呂に入ってないや・・・

 

シエンの部屋

 

「シエン、そろそろ風呂に入る時間だよ」

 

「・・・」

 

フィンはシエンの部屋のドアをノックしたが返事がない。ドアノブを回すと鍵が閉まっておらずドアが開いた。

 

「シエン、失礼するよ」

 

フィンはシエンの部屋に入った。そこには丸テーブルにうつ伏せになっていたシエンがいた。丸テーブルの上には羽ペンとインクと紙があって何かを書いていたことが分かった。疲れて眠ってしまったのかと思っているとよく見たらピクリとも動かず精神枯渇の症状が出ていた。

 

「やれやれ、一体なにをしていたらこの状態になるのやら・・・ん?この文字」

 

フィンはシエンをベットに運び、丸テーブルにの上に置いてある魔法文字の書いてある紙を見つけた。フィンには解読出来なかったがこの文字にはなにかしらの力が宿っている事を感じた。この文字を書くのに【精神力】を使用したのだと察した。

 

「(魔道書を書ける、か。どんなものかは聞いていないけど本当にとんでもない子だよ。この本が完成するのが楽しみだ。)おやすみ、シエン」

 

そう言ってフィンはシエンの部屋を後にした。

 

夢の中

 

そこは砂漠が広がっており大きな竜の骨の上には今にも落ちそうになっている女性がいた。

 

「私は無力で愚かでした。クロム、リズ、シエン。後は頼みましたよ、私はあなたたちのことを愛しています」

 

そして身を投げ、地面に叩きつけられた。遠目ではもうピクリとも動いていないように見える。

 

「姉さん!」

 

「いやぁぁぁぁ!!」

 

「エメリナ様!」

 

「ギャハハハハ!!見事な死に様だゼェ!王女エメリナァ!けどなぁテメェは後のことを全て放り投げた無責任ヤローだァ!ギャハハハハ!!」

 

「う、ああ、ギャンレルゥゥゥゥゥゥゥ!!許さない・・・絶対に許さない!」

 

その後撤退戦となり第1王女エメリナを失った悲しみが【魔力】を増幅させ、シエンは仲間と協力してペレジア兵を全滅させることになった。

 

シエンの部屋

 

「ハッ!?・・・夢か・・・クソッ!」

 

目を覚ますとベットの上で全身汗だくになっていた。外はまだ明るくなっておらず太陽は登っていない。

 

「もう、あんな事があってたまるか。その為には強く、強くならないと・・・」

 

あの夢を見た原因はともかく、強くなるための励みとなるならばあの時の頃を思い出すのもまあ良いだろう。頻繁に見るのは勘弁してほしいが。

さて瞑想にオレに発現した【魔法】の研究に魔道書製作、やる事が山積みだな。今日から頑張ろう。

 

食堂

 

鍛錬をこなしたらなんかフラフラな状態で食事をとりにきた。なんなんだこの症状、イーリスにいた時はこんな症状出なかったぞ。

 

「ようシエン!おはようさん!ってまた元気ないなぁ。クマも取れてないし、しっかり身体休ませんといかんで?」

 

昨日とはまた別の席に座り食事を取っているとロキが隣に座って話しかけて来た。ちょうどいい、この原因を聞こう。

 

「おはようロキ・・・、【魔法】の修行していたらフラフラになってしまって・・・【魔法】が原因の筈なんだけど何か知らない?」

 

「それはな、精神枯渇ちゅうんや。精神力を使いすぎると意識が遠くなってぶっ倒れしまうで」

 

「なるほど・・・わかった。治すためにはどうするんだ?」

 

「精神力を回復させるマジックポーションを使用することや。価格はポーションより高いけどな。もしくは精神力を使わず休んでおくとか」

 

マジか・・・今オレは金を持ってないし、もし金を持っていても紙、杖、水晶、魔法石の為に使うから常に金欠になりそうだ・・・

何処でも魔道士は必要なものが多すぎる・・・辛い

辛い現実から目をそらし食事にする。サンドイッチと野菜になんか綺麗な水にした。

 

「ふーん、エルフっぽい食事やな」

 

「栄養のバランスを考えてのことだ。にしてもこの野菜うまいな!瑞々しくて甘い、これならたくさん食べれるぞ!」

 

「野菜嫌いではないとは感心だな、アイズにも見習ってほしいものだ」

 

「ひふぇひあひゃん!?(リヴェリアさん!?)」

 

反対の席にリヴェリアさんが座って来た。おお、今日もお美しい・・・

 

「シエン、食べ物を口に含んだまま喋るな」

 

「(ゴクン)すいません、驚いてしまいまして」

 

「それはすまないな、ところで他にも飲み物があった筈なのになぜその水を?」

 

「これですか?透明で綺麗な水なんで飲んでみようと思いましてリヴェリアさんはこの水を知っているんですか?」

 

「ああ、その水はアルヴの水だ。霊峰と呼ばれるアルヴ山脈から採水された水でエルフがよく好むものだ。無論私もよく飲む」

 

「そうなんですか?ん〜美味しい!普通の水とは訳が違いますね!」

 

「ふふふ、そうだろう。それはいいのだが、シエンあまり体調が優れていないのか?よく顔を見せてみろ・・・これは精神枯渇になりかけているのか・・・昨日から一体何をしていた?」

 

「えーと、気がついたらベットで寝ていて目を覚ました後は寝付けなくて【魔法】の鍛錬をしてました」

 

「馬鹿者!!そんな体調でしっかりとした鍛錬などできるものか!お前はその目の隈が消えるまで【魔法】の鍛錬をすることを禁止する!」

 

「そ、そんな!?オレの生きがいを奪うなんて・・・おかしいですよ!リヴェリアさん!」

 

「(スキルで魔法が好きって分かるからなぁ、なかなかにえぐいでクォレワ・・・)」

 

「だったら早寝早起きの規則正しい生活を送ることだ。文句は受け付けん。それと食事が終わったら私の部屋に来い、勉強を行う。【魔法】に関しての知識も学んでもらうぞ」

 

「ぐぬぬぬ・・・」

 

リヴェリアの部屋 勉強を始め初日

 

オレ、シエンはリヴェリアさんの部屋で共通語の勉強をしています。教えてもらうはずなのだが自習中だ。何故なら・・・

 

「アイズ!何処にいる!早く出てこい!!」

 

アイズが絶賛逃亡中だからだ。アイズが勉強を始めて3日で逃走した。1日で覚える量も半端ではなくリヴェリアさんもかなりのスパルタ指導らしいからだ。

オレ?必死にやればなんとかなるもんだ。【スキル】を使えば居場所はわかるが勉強を優先するようにと言われたので自習をしている。

 

「シエン、今戻った。どれ・・・ほう、共通語も殆ど覚えたようだな。ならばアイズと同じ内容を勉強してもらう。アイズ、少しペースを落として勉強の時間も減らす」

 

お?少し楽になるか?ちょっと気になって【スキル】を使って居場所を探ったら中庭でフィンと会っていたようだし何かあったな。

 

「ただしシエン、お前は今のままだ」

 

「ゑ?」

 

「どうやらお前は優秀なようだからな。厳しめでいく覚悟しろ」

 

「そんな〜」

 

オレの情けない声や表情にアイズは

 

「プッ」

 

笑いやがった・・・アイズが笑ったのは初めて見たな。子供らしく表情豊かならば可愛らしいものを・・・

 




晩酌して夜早く寝ると次の日は気分爽快。元気に仕事ができるぞ!みんな怪我なく頑張ろうぜ!


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レポートを書こう!

勉強中 アイズが逃げている間

「シエン、ちょっとええか?」

ロキが真剣な表情をして言った。

「なんだ?」

「自分のスキル、他のもんに喋ったらあかんで。わかるやろ?」

「ああ、気をつける。・・・そうだ、このファミリアに図書館はあるか?あるとしたらモンスターやダンジョンについての本を見たい」

「図書館もそういう本もあるで、あとで教えたるわ。それとシエンの気づいたアイズの変わった【魔力】についても喋ったらあかん。本人にもや」

「わかった」

アイズの【魔力】・・・何かあるのか?


リヴェリアさん教室が終わり食堂で食事をとる。オレの席はどうやらアイズの目の前に決まったようだ。

 

「魔法の鍛錬の禁止か、習慣になってるから止められるかなぁ・・・」

 

リヴェリアさんはオレの体のことを心配して言ってくれたのは分かるがそう簡単にやめるわけにはいかない。疲れない程度にやるとしよう

 

「クックック・・・」

 

「シエン、なんとなく何考えてるか分かるけど多分バレるで」

 

オレの隣にロキが椅子に座る。

 

「なんでだ?」

 

「リヴェリアは洞察力に長けとるしウチは子供が嘘をついとるのを分かるからな。リヴェリアの尋問にウチもセットでおったら確実にバレるで?」

 

なんだそれは!騙し騙されの世界において嘘が通じないなんてそれは反則だろう・・・

 

「グッ!ならば早く寝て体調を元に戻すしかないか・・・」

 

「なんでそんなに鍛錬したがるんや?」

 

「習慣というのはとても大事だし少しでもサボったら元の感覚に戻すのに時間がかかるから続けないとダメなんだ。それに【魔力】も伸びるかもしれないなら十分やる価値はある」

 

「ほーん、よう考えとるもんやなぁ」

 

「・・・習慣」

 

「でも今はしょうがないから少し休みにするかな。午後からは冒険者登録へギルドに行くのと武器や防具を手に入れることだったか」

 

ギルドには登録だけでなく図書館にない資料を借りたい。無理ならギルドで許可をもらって書き写させてもらう。

 

ギルド

 

「シエン、ここで冒険者登録をする」

 

ギルドはオラリオの都市運営、冒険者や迷宮管理、魔石の売買を司る機関だ。今は恩恵を授けたものはいないそうだが、それなりに【魔力】を持ってる奴がいるな。誰だ?

 

「ローズ、冒険者登録しに来たぞ」

 

「ハァ?また?この間にあの子供を登録しに来て、また来たのも・・・子供じゃない・・・」

 

受付には気だるそうな狼人の女性がいた。この間の子供というのはアイズのことだろう。オレは差し出された用紙に名前だけを記入した。

こちらの世界には出身地のイーリス聖王国ないので書かなかった。

 

「シエンもアイズ同様にこちらで指導する。武器や防具はまたギルドの物をもらおう」

 

「はいはい、分かりました。それで?シエン君、何か質問とかない?」

 

「質問じゃないけどお願いがあります」

 

「何かしら?」

 

「ダンジョンにおいての死亡者リストを貸してもらえませんか?」

 

「え?・・・えーと、何に使うのかしら?」

 

「ダンジョンの上層についてどれほど危険なのか実際に知りたいからです」

 

「なるほどな。ローズ、すまないが貸してもらえないだろうか?責任は私が取る」

 

「こういうの頼まれるの初めての事だから貸していいのか悪いのかわからないけど。そうだ!ならシエン君にクエストをお願いするわ」

 

クエストか、流石にタダで貸してはもらえはしないようだ。

 

「この本の死亡者リストをシエン君が別の紙にまとめて欲しいのよ。期限はなしで資料が出来た時に本も一緒に持って来てね。大切なものだから絶対無くさないでね?」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「シエン、武器や防具をサイズ調整してもらってこい。私はここで待っている」

 

「分かりました」

 

そう言ってシエンは他のギルドの職員の後をついて行った。

 

「ローズ、あの子をどう思う?」

 

「分からないわ、あのアイズって子よりはマシだと思うけどかなり慎重で子供らしくないわね。貴方になんかよそよそしいし、子供が死人者リストを貸してほしいなんて言わないでしょ、普通」

 

「まあ、確かにな。私も昨日にあったばかりでどういう子なのかは分からない」

 

「でもこういう情報を大切にする子は珍しいし貴重ね。ねぇ、ロキファミリアでやっていけそうにないならギルドに勤めないか聞いといてよ」

 

「断る、我々のファミリアにとっても重要な人財だ」

 

そんなこんな話しているとシエンが戻ってきた。

 

「よし、装備もしっかりしているな。この後どうする?」

 

リヴェリアはシエンに聞くと変わった返事が返ってきた。

 

「ファミリアに戻って研究します」

 

「なに?」

 

「・・・へぇ」

 

「ロキが図書館に資料があるって言っていたのでそれも確認してダンジョンの通路を把握したいと思います。ダンジョンにはいつでも行けるのでまだいいです」

 

「(危険なモンスターの把握とダンジョンのルートの把握を優先するか)分かった、では戻るとしよう。ローズ、また来る」

 

「出来上がるのを楽しみに待ってるわ」

 

 

ロキファミリア前

 

「あの、リヴェリアさん」

 

「・・・」

 

オレはリヴェリアさんに声をかけたが返事がない。聞こえているはずなんだけど・・・

 

「リヴェリアさん?」

 

「私はリヴェリアサンではない、リヴェリアだ。お前が私の名前をちゃんと言うまで話さない」

 

「・・・」

 

なんてめんどくさいんだこの人は!

なんか俺の会う王族の人はやたらフレンドリーな人多くないか?クロムとか全然王族っぽくないし・・・

とはいえ年上の女性には礼儀正しく接するもんだしなぁ。

でも本人がそうして欲しいって言うんだからそうしよう。ただのリヴェリアとして見よう。

 

「り、リヴェリア・・・あのさ、ギルドでそれなりの【魔力】持った奴を感じたんだけど何か知らない?」

 

「それは本当か?・・・そういえばローズが昔言っていたことがあったな。夜に目を離しているうちに自分の書類がなくなった、『幽霊』がいると」

 

「『幽霊』・・・何者かは分からないけど【魔力】は覚えたからいつでも追跡できる」

 

「まさかそんな奴を探知出来るとはな・・・大した奴だよお前は」

 

そう言ってリヴェリアはシエンの頭に手をポンと置いた。リヴェリアがシエンを見下ろしたら、シエンは平然としていたがちょっと頰が赤くなっていた。大人びてはいるがまだまだ子供だとリヴェリアは思った。

 

シエン自室

 

オレは図書館にて必要な本、モンスター図鑑、ダンジョンの地図を借りてきた。ギルドから借りてきた死亡リストで早速レポート作りを開始した。

 

「えーと、書くのはテーマ、目次、実験内容、必要な道具、手順、結果、考察、参考文献っとこんなもんかな。さて、問題は死亡者リスト・・・何年前からのデータかは分からないけどなかなか分厚いな・・・」

 

オラリオの冒険者はほとんどがL v.1だ。そのためダンジョンの上層までしか行けないので上層で死亡している人が多い。だから本の内容はほとんどが上層のことばかり書いてある。逆に中層や下層となると冒険者の数が一気に減り、死んでいる人の数も少なくなるのであまり載っていない。全滅したらどうやって死んだか分からないから載っていないだけで本当はもっと亡くなった冒険者は多いのだろうな。

 

「えーと?ウォーシャドウに切り裂かれて死亡、ウォーシャドウに切り裂かれて死亡、霧に紛れて奇襲してきたネイチャーウェポン持ちのオークに潰されて死亡、ウォーシャドウに切り裂かれて死亡・・・ウォーシャドウ強すぎじゃね・・・?」

 

「うん」

 

ウォーシャドウはどうやら冒険者たちの鬼門のようだ。素早く長い腕で鋭い三本の指を使って切り裂いてくる。

新米の冒険者では接近戦しかできないし遠くで戦おうにも【魔法】を持っているのはそうそういないしで辛いってことか。

死亡率が高すぎる、こりゃひでえや要注意だな。ん?今返事があったぞ?

 

「アイズか、なんでここに?」

 

「リヴェリアがシエンのやっているのを見に行くようにって言われたから来た」

 

いつのまにかアイズが俺の部屋に来ていた。集中していたから気づかなかったよ・・・アイズが居ようがやる事は変わらんけどな

 

「これ、色んな色を使っていたり、絵?があって分かりやすい」

 

「ああ、これは棒グラフって言うんだ。モンスターごとにやられた人数を左のメモリに書いてメモリより右側に棒を書いていく。それぞれの棒の下にはモンスターの名前を書くんだ。文字だけじゃすぐは理解できないがこれがあればなんとなくわかるだろ?」

 

「うん、冒険者はウォーシャドウに1番やられてるってよく分かる。出てくる階層やモンスターの特徴も別の所に書いてあるね」

 

文字だけの資料なんて読む気が失せるからな、後で読むときのことを考えて分かりやすくする。ま、オレ以外読む奴なんていないだろうけどな!

 

「これ、リヴェリアに見せてくる、それじゃ」

 

「え?ちょ、アイズ!?まだ書き終わってないんですけどォォォォ!?」

 

アイズはまだ途中だったレポートを持っていった。座っている状態で手を伸ばしたが間に合わなかった。速い!?どうやら今はオレの方が遅いようだ・・・7歳の子供に速さで負ける魔道士、こりゃみんなに笑われるな・・・




【悲報】フェルズ、シエンに常にマークされる

原作でも幼少期のアイズは結構喋ります。9年後、なんであんなんになったんや・・・
よく関わってくるティオナがいなかったら一体どうなっていたことやら


美人の女性に触れられたら誰だって動揺するよなぁ!!


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馬鹿者(シエン)

クロム「ヘックション!!」

ルフレ「大丈夫かい?クロム?」

クロム「どこかで誰かオレのことを噂しているな・・・」


応接室

 

「ンー、なるほど新米冒険者にとってウォーシャドウは強敵なのはわかっているけどこうして数値化して【ぼーぐらふ】というのにするとよく分かる」

 

「やはりただの小僧じゃないのう」

 

「しかもまだこれで未完成、出来上がりが楽しみだ。これをシエンに返しに行ってくれ。それとそろそろ夕食だから食堂にくるようにとも言っておいてくれ」

 

「うん」

 

アイズは資料を持って応接室を出てシエンの部屋へ向かう。今は夕方でもう少しで食事の時間となる。食事を取ったら中庭で剣の素振りをしようかと考えていていたらシエンの部屋についた。アイズは部屋に入る前にドアをノックした。

 

「シエン、入るよ?」

 

「・・・」

 

だが返事はない、そしてドアノブを捻るとやはり開いている。さっき入った時と同じだった。返事がないがアイズはシエンの部屋に入った。部屋の中はまだ来て1日しかたっていないのに床には紙が散らかっていて足の踏み場が無い汚部屋だった。

 

「・・・」

 

アイズが入って来ていることにも気付かず、丸テーブルの上に固定して置いてある紙に両手にペンを持ちひたすら何かを書きなぐっていた。何をしているのだろうと床の紙を退けて横顔を見るとギョッとした。顔中が汗まみれで顔色もおかしかったからだ。シエンの書いた紙を見てみると黒インクで書かれた文字が赤くなって発光していた。何か特別なものなのだろうか?さっき書いていた資料とは別のものを書いていることにすぐ気がついた。

 

「・・・ッ!あーもう無理!!ぜんっぜん書けねぇ!いつ終わるんだよこれ・・・ん?アイズか?オレの書いた紙をリヴェリアに持って行ったみたいだけど持って帰って来てくれたか?」

 

シエンは二本のペンをテーブルに置き、愚痴った後にアイズが来たことに気がついた。

 

「うん、はいこれ。リヴェリアが出来上がりを楽しみにしてるって。それともうご飯だから食堂に行かないと」

 

「もうそんな時間か、なら行こうか。でもなんでオレの書いた紙を持って行ったんだ?」

 

「リヴェリアがこの【ぼーぐらふ】の事知ってるのか聞きたくて持って行った。聞いたら知らなかったみたいだけど」

 

「アイズはマイペースだなぁ。次からは持っていくかどうかはオレに言ってからにしてくれよ」

 

「分かった、勝手に持って行ってごめんなさい。それでさっき書いてたのは何?」

 

「話の切り替えはやいな・・・まあいいけど。これは朝言ってただろ?魔道書を書けるって、それの続きをしていたんだ」

 

「そうなんだ・・・文字が赤色に光っていたけど?」

 

「それはオレが黒インクに【精神力】を流し込んで書くとそういう風にって・・・あああああ!?しまった!?」

 

得意げに話していたシエンは突然声を上げた。朝の食堂のことを思い出したのだ。リヴェリアに【魔法】の鍛錬は禁止されていることを早速破ってしまったのだ。「約束?知りませんなぁ〜。これは鍛錬ではなく本の作成ですが?クックック・・・」とか頭の中で聞こえてきたがそういうわけにはいかない。相手には屁理屈や嘘は通用しないからだ。

 

「やってしまったのはしょうがない。謝れば許してくれるだろう」

 

「本当にそう?」

 

「そんな不安になるようなこと言わないでくれよ・・・そうだ、リヴェリア達以外にオレが魔道書を書けること言ったらダメだからな」

 

「うん、ナイショ」

 

食堂

 

「リヴェリア、早速禁止されてた事を破ってしまってごめんなさい」

 

オレはリヴェリアの座っている席に行き頭を下げて謝った。はやく謝らないと気分悪いからな。

 

「反省しているならそれでいい。あの書いていたレポートはいつ頃できる?」

 

「わからない、3週間くらいだと思う」

 

「出来上がりを楽しみにしてるぞ」

 

「はい」

 

無事お許しも出たので席に戻ろうとすると小さな声で

 

「あまり調子にのるなよクソガキ・・・」

 

「・・・」

 

という小さな子供にキレる人間の冒険者がいた。まさか入って2日で恨まれる対象になるとは思わなかった。関わるだけ無駄なので無視をして自分の席に戻り食事を終えた

オレが去っていくところをロキが見ていることを気付かなかった

 

中庭 夜

 

「・・・」

 

部屋に篭って紙を書いてるのにも疲れたので中庭に来た。そこには剣を握り素振りをしているアイズがいた。よく頑張るなぁ、飲み物持って来て正解だったか?

 

「おい、クソガキ。ここは突っ立っている場所じゃねぇ、先輩のオレが手合わせしてやる。感謝しな」

 

「お断りします」

 

先程なんか言ってた男の人間がやって来た。今は強制クエストとかでみんな忙しいはずなのにコイツは暇なのか?それとも精神的に疲れているのか?

 

「そういうなよ、先輩の言うことは聞くもんだぜッ!」

 

そう言って訓練用の刃を潰した剣で切りかかってきた。まじかコイツ!

だが目が追いつかないわけじゃ無い、十分追える。【敏捷】は圧倒的に負けてるから最低限の動きで見切って躱す!魔道書は無いが【魔法】がある。周りに気を回してる場合じゃ無い、目の前の敵に集中だ!

 

「くそ、くそ!何故あたらねぇ!」

 

「・・・」

 

オレは攻撃の当たる寸前でヒラリと躱し、少し離れて一定の距離を保ち続ける。そもそも今のオレは背が低く剣を当てづらいハズ。今いる場所は中庭で人の目がよく届く場所だ。しばらくしたら誰か通りかかって止めてくれるだろう

 

「だがお前も避けるばかりでオレを倒すことはできねぇだろ!お前はオレに敗れる()()なんだよ!!ハハハハハ!!」

 

戦っている人間はカッコつけて言ったつもりなのだろう。だか覚醒の滅びの未来、運命を切り開いた者たちとして聞き捨てならなかった。

 

「・・・変える」

 

「あ?」

 

「その運命を変える!!」

 

誰かが来るまでの時間稼ぎは止めだ。コイツを倒す。だが倒す手段は【魔法】だが練習不足で防御しかできない。ならばリヴェリアに教えてもらった【アレ】をやるか・・・

 

 

 

アイズの目の前では小さな子供が自分より大きな相手に攻撃を躱しうまく立ち回っていた。

 

「シエン、すごい・・・」

 

「アイズ、アレが駆け引き、立ち回りだよ」

 

「やっぱ、こうなったかぁ。けどええもん見れてるし、まあええか」

 

「良くはない、後で注意しておかないとならん」

 

「うーむ、気分が悪いのはあやつだけではないだろう。一度若造どものガス抜きでもしてやらんといかんのう」

 

ロキはなんとなくこうなるだろうと気付いて他の3人を連れて中庭に行くと戦いが起きていた。戦っている2人に気づかれたらこの戦いが終わるだろうから今はアイズを呼び寄せ隠れて見ている。

 

「・・・かえる」

 

「なんや?」

 

「その運命を変える!!」

 

「・・・顔つきが変わったね」

 

フィンの言う通り先程よりシエンの顔が表情がキツくなり【魔力】が高まっていく・・・

 

「バカな・・・ありえん。この【魔力】は・・・上級、いや第二級冒険者クラスだぞ!」

 

L v.2が上級冒険者でL v.3、4が第二級冒険者だ。少なくとも今のシエンは上級冒険者を超える【魔力】を持っているとリヴェリアは驚愕して言った。

 

「とはいえシエンには攻撃手段はなかろう?どうするつもりなんじゃ?」

 

「・・・ガレスたった一つだけあるよ【アレ】がね・・・闇派閥の連中がよくやるじゃないか・・・僕の親指の震えが止まらないよ」

 

「膨大な【魔力】、闇派閥・・・まさか!?あの小僧!?」

 

「?」

 

「・・・そうか!そういえば今日私が【魔法】を扱う上で注意しておくこととして言っていた。クッ!早く止めねば!!」

 

「ダメやリヴェリア」

 

「ロキ!」

 

「見てみいあの顔、小さくても大きな相手に立ち向かう男の子の顔をしとる。邪魔したらアカン、あの子の冒険なんや」

 

「しかし!」

 

「自分の持つ力で痛い目にあうのも大事なことや。シエンが勝つって信じて待つ。それがママってもんや。さあ戦局が変わるでぇ、どうするんやシエン?」

 

 

【魔力】が十分に高まったことでシエンは敵に突っ込んでいった

 

「ウワァァァァ!!」

 

「ハハハ!ヤケになって突っ込んできたか!甘いんだよ!」

 

突撃してきたシエンを待ち構え横薙ぎに剣を振るう。シエンは当たるまえにスライディングをして敵の股下を潜り抜けるという小さな体を持つものだけができる行動をする。そしてただ潜り抜けるだけでなく下半身にぶら下がっている男の急所を握り締め引っ張った!

 

「なに!?躱しただと!?おい!よせ!?う、グアアアアアアアア!!??」

 

子供とはいえ、神の恩恵を受けたばかりの冒険者でもゴブリンを倒すこともできる力を得ることができる。そんな力で急所を握られたらたまったものでない。

この戦いを見ている男達は皆青ざめていた・・・

 

「あ、アハハハ・・・子供って残酷だね・・・」

 

「あの小僧、なんて恐ろしいことを・・・」

 

勿論L v.6の第一級冒険者の2人も冷や汗をかいていた。

 

シエンは動かなくなっている内に男の背中に張り付き【アレ】の準備を終わらせた。そしてリヴェリアに言われたことを思い出していた。

 

『シエン、【魔法】を扱う上で注意しないといけないことがある』

 

『それは・・・なんですか?』

 

『それは【魔力】の制御を失敗した時に起こる【魔力暴発】だ。それによって【魔法】を使用者はボロボロになってしまいその後の戦闘では戦えなくなる。あえてそれを引き起こす馬鹿者がいるがな』

 

そして、その馬鹿者は【魔力】の制御をやめ【魔力暴発】を引き起こした。中庭は無茶苦茶になりゼロ距離での大爆発により相手も勿論シエンもただで済むわけがなく吹き飛び転倒した。

 

「ガハッ!?このクソガキ・・・!」

 

「・・・・・」

 

人間の男はそれなりにダメージを負ったがまだ膝をついておらず戦える状態だがシエンは吹っ飛んだ時に打ち所が悪かったのかピクリとも動かなくて血が流れ続け危険な状態だ。

薄れゆくシエンの意識、目の前の男には意識が行かずに【魔力】を感じとるとリヴェリア達の【魔力】を見つけた。

 

「(なんだよ・・・ずっと見てたんならもっと前に止めてくれよ・・・)」

 

コイツを倒すとか思っていて早く止めてくれと勝手な事を思うシエン。ボンヤリと見えるリヴェリアの姿にエメリナを重ねて昔に言われた事を思い出す。

 

『クロム、リズ、シエン・・・あとは頼みましたよ』

 

消えてしまいそうな透明な笑みを浮かべ崖から飛び降りたエメリナを思い出し意識を再び覚醒させ、身体を動かす。

 

「・・・ッ!!・・・死ねない」

 

上半身を起こし次に震える足で立ち上がったシエンに冒険者の男は驚きを隠せなかった。

 

「なに!?」

 

「こんな所で死んでたまるかああああああッ!!」

 

ズタボロになった体に鞭を入れ黒紫色の【魔力】が止まる事なく噴き出し体を覆っていく・・・黒目であった目と口からは分かりづらいが赤紫の【魔力】を吐き出している。スキル【復讐】発動したのだ。

 

「おおおおおおおおおおッッッ!!!」

 

全身に【魔力】を纏ったシエンは雄叫びを上げて人間の男を睨め付けた。

 

「ひっ!?」

 

明らかに異常な【魔力】を撒き散らしL v.1とは思えない重圧をかけてくるシエンに人間の男は怯み腰を抜かし尻餅をついた。

 

「・・・・・」

 

そして一歩、一歩、フラつきながらも確実に近づいてくるシエンに恐怖した。

 

「ひっ!?や、止めろ!?こ、これ以上・・・オレに近づくなああああああッッッ!!・・・・・」

 

そして叫び声を上げた後シエンの重圧に耐え切れず男は気絶した。

 

「・・・どうだ。お前の言ってた・・・運命とやらを・・・変えてやった・・・ぞ」

 

男が戦闘不能になったのを確認した後にシエンも左腕を伸ばし人差し指を突き出し倒れた・・・




やられキャラの導入が下手ですいません・・・
人間の男はシエンと同じくL v.1です。今はオラリオの治安が悪く自由に歩くことが出来ず、思い通りにステイタスも上がらずでストレスが溜まりまくり。冒険者は血の気が多いので年下の子供だろうが冒険者なので喧嘩をしかけました。
冒険者だからしょうがないね

ボツネタ
男にしがみつき
シエン「くらえ!だいしゅきホールド大爆発!!」
男「グワー!」


今回のダンメモのイベント面白いですね
ロキがアイズに噛まれるのをご褒美だと言ってアイズに噛まれに行ってそれでもアイズに逃げられるとかあったらよかったなぁ


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あなたは何者なの?

フィンの日記 ●月●日
フィン「新しい家族が増えたことなので今日から2人についての観察日記のようなものをつけていきたいと思う。アイズは強くなることに執着していてあの幼さで鬼気迫る姿勢はとても痛ましいものだ。皮肉なことに今日、模擬戦をした所剣術には光るものがあると思われる。もう1人の子供のシエンはハッキリ言ってよく分からない事が多すぎる。僕らの知っている常識を知らず、子供らしくない。そして【魔法】関係についてかなりの知識があるようだ。この2人は後々ロキファミリアに大きな影響を与えると僕は確信している。」

トリックスター「お、なんやおもろそうなことしとるやん、ウチもコメントしてくわ」


中庭 夜

 

2人が倒れ戦いが終わった事でリヴェリアはその場で2人の治療を始めた。

 

「まさか本当にやるとはね」

 

「あの威圧感、勝利に対する執念が凄まじかったわい。とても子供だと思えん」

 

「シエンはなにをやったの?」

 

「シエンは攻撃手段を持ってなかったから今日の勉強で注意することとして教わった【魔力暴発】を敢えて発動して吹っ飛ばしたんや。けど第二級冒険者クラスの【魔力】で暴発してあの程度の被害だったのはなんでなんやろ?」

 

「ロキ、2人の治療が終わったぞ」

 

ロキはシエンの戦いについて疑問に思ったがリヴェリアが治療を完了させた事でその疑問について考えるのをやめた。

 

「ホンマか?シエンはかなり血を流しとったからもうしばらく時間がかかると思っとったけど」

 

「それはシエンの力(【魔防】)の影響だと思われる。打ち所が悪かった所以外怪我は少なかった。朝には目を覚ますだろう。その時にはたぁっぷりと説教をしてやらねば・・・」

 

「あはは、ほどほどにね・・・」

 

アイズがいるので発展アビリティとは言わずにロキにシエンの力だとリヴェリアは言った。

 

「にしてもあれほどの【魔力】を持つのならば魔道書?と言ったか。おそらくはあやつにとっての攻撃手段なのだろうがそれを作らせるのは止めさせておいた方がいいのではないか?過剰な力は身を滅ぼすぞ」

 

「そしたら攻撃手段がなくて追い詰められた時シエンはまた自爆するで?」

 

「「「・・・・・」」」

 

目を離すことは死を意味するアイズ同様困った子と3人共思った。

 

「そうだ、シエンの部屋なんだが机と紙をフィンの執務室に持って行っていいだろうか?」

 

「ああ、構わないけど。どうしてだい?」

 

「あの馬鹿者の部屋にいろんなものを置いておくとそれを触っているうちに夜更かしをしてしまいそうでな。フィンの所だったら少しはマシになるだろう。あと見張りの意味でもある」

 

「わかったよ」

 

「本当にありえそうだのう」

 

「ならウチもフィンの所にお邪魔してシエンの様子を見たるわ」

 

こうしてシエンの汚部屋はすぐさま綺麗になるのだった。

 

次の朝 食堂

 

「シエン、大丈夫?」

 

強くなることで必死のアイズだが隣に頭や首に包帯グルグル巻きの人がいたら流石に気になった。

 

「大丈夫、大丈夫。切り傷とかは全然ないから」

 

と強がってはいたが外傷は少なくても【魔力暴発】の影響で体の中はボロボロだった。そして頭の上には目で見てわかるくらい大きなタンコブが出来ていた。

 

「おー見事なタンコブや。リヴェリアの拳が光って唸ったんやな!」

 

「死ぬほど痛かったぞ・・・ロキ、オレの部屋にあった道具が無くなってるんだけどどこに置いたんだ?」

 

「ん?リヴェリアは説教だけして教えてくれんかったんか?それで道具なんやけどフィンの執務室に置いてあるで」

 

「執務室、要は見張りってことか」

 

「そんな言い方すんなや、シエンのやってることみんな興味津々なんやで?」

 

おそらくはその通りなんだろうが落ち着いて作業が出来るかが問題だな。

 

「お、アイズたんどこ行くんや?もうちょっと食べておかんと・・・」

 

「いい、もう食べた。勉強の時間まで剣を振ってくる」

 

アイズは最低限の食事をして食堂から出て行った。神の恩恵で身体が強化されたとはいえ少なすぎだろ・・・お腹が減らないのか?

 

「あ〜行ってもうた・・・」

 

「・・・ロキ、オレがアイズの様子を見に行ってくる。ご馳走さま」

 

「頼むわ、ウチも後で追いかけるから先に見に行ってや」

 

オレは【スキル】を使ってアイズの居場所を探し出し、その場所へと向かった。

 

中庭

アイズは中庭で訓練用の短剣を握り素振りをしていた。原因は昨日ここであったフィンとの模擬戦とシエンの戦いの所為だった。自分と同じくらいの歳の子供が自分よりも大きく強い相手を倒したからだ。意識しないわけがない、もっと強く為に彼等以上に努力するだけだ。

 

「お、アイズはやっぱここにいたか。もうしばらくしたらリヴェリアの部屋に行って勉強の時間だぞ」

 

素振りをしていると原因の一人がやってきた。やっぱり?とはどういう意味だろうか。だがそんなことはどうでもいい、強くなる為には戦うだけだ。

 

「ねえ、私と戦って」

 

「いや、そろそろ移動しないとまた怒らr」

 

「ちょっとだけでいいから、お願い」

 

「・・・分かったよ、ちょっとだけな。ハァ、魔道士が接近戦すること自体ナンセンスなんだけどなぁ」

 

お願いしたら戦ってくれるみたいでよく分からない言葉を喋っていた。なんとなくロキと通ずるものがあるような気がした。

それにしても相手に張り付いて【魔力暴発】をしておいてよく言ったものである。

 

「それじゃあやるか」

 

そう言ってシエンも同じ訓練用の短剣を握った。その時、シエンの【道具節約】が発動し短剣は不思議な光に包まれた。お手軽な不壊属性の短剣の完成だ。

 

「・・・なるほど、こっちではこうなるのか」

 

「・・・?」

 

なにやらシエンは呟いたようだがアイズには上手く聞き取れなかった。時間も限られているので早速シエンに接近し剣を振るう。

 

「フッ!」

 

「(まだまだ荒っぽいが迷いがない、いい切り込みだ)・・・」

 

振るう、避ける、振るう、避ける、アイズが攻撃してシエンが避ける。先に息を切らしたのはアイズの方だった。

 

「どうして・・・反撃・・・しないの?」

 

「別にする必要がないからな、怪我させたら悪いし」

 

「ッ!!やあ!」

 

その言い草にカチンときたアイズは短剣を大振りに振るう。しかし、シエンはしゃがみ込み短剣をかわし精神力を消費し【呪い】を発動させた。影が手のような形に実体化してアイズの両足を掴み動きを封じた。

 

「なに・・・これ」

 

「【スキル】だよ。勝負はついたし、ほらそろそろ時間だからこれくらいに・・・」

 

「まだ終わっていない!う、くあああああ!!」

 

負けを認めたくないのか声を上げ足を動かそうとしている。

【魔力】に特化しているシエンの拘束は外れるはずはないのだが、千切れる音がした。シエンはアイズの足の筋肉が悲鳴を上げているのかとギョッとして見ると黒色の拘束していた手が千切れていた・・・

 

「え・・・?」

 

アイズは自分のやったこととはいえ困惑していた。力が足りないのなら【スキル】を使えばいいと思い任意発動をした結果、発動したのだ。

フィンとの模擬戦の時にも使おうとしていたがフィンは言った。『僕にその【スキル】は発動しないよ』と、だがシエンには発動した、してしまった・・・

 

アイズは短剣を下ろしシエンを見る。黒い髪で黒い瞳で同じくらいの背の男の子、その筈なのに何故こうも違和感を感じてしまうのか・・・本当に人なのか、そう疑問に思ってしまった。

 

「ねえ」

 

「ん?早くリヴェリアの所に・・・」

 

「シエンは何者なの?」

 

「何者・・・と言われてもオレはイーリス聖王国から来た人間だけど?」

 

「そう、だよね・・・モンスターじゃ・・・ないよね?」

 

「当たり前だろ?変なこと聞くなぁ、なんか様子が変だけど大丈夫か?」

 

「ううん、なんでもない、なんでもないから。早くリヴェリアの所へいこ?」

 

「・・・?まあ、勉強のやる気出てきたのはいいことだしまあいいか!調子悪いようならリヴェリアに診てもらったらいいしな」

 

「うん、そうする・・・」

 

そう言って一緒に、でも少し距離をとってリヴェリアの部屋へ向かう。そうだ、あり得ない、あり得るはずがない。この隣で呑気そうにしている彼がモンスターな訳がないのだ。もし、本当にモンスターだとするならば・・・人間の敵だとするならば・・・

 

私はシエンを殺さなくてはならない・・・

 

アイズの『背中』から黒い炎が揺らめいた。

 

「アカン、1番まずい相手に気づかれてもーた・・・」

 

後からアイズの様子を見にきたロキはアイズの背中の炎を見て冷や汗を流した




幼少期から闇落ち要素満載なアイズ怖スギィ!
これにはタナトス様もニッコリですわぁ・・・

書いたのはいいけどこの先の展開うまく書けるかなぁ・・・
詰まったら変更するかも・・・

シエンの評価
ロキ「面白い奴」
フィン「よくわからない子」
リヴェリア「馬鹿者」
ガレス「将来が楽しみな小僧」
アイズ「人間?モンスター?モンスターならコロサナキャ・・・」

他ロキファミリアの皆さん「子供らしくない爆発するヤベー奴」

アイズのスキル

【復讐姫】アヴェンジャー

・任意発動
・怪物種に対し攻撃力高域強化
・竜種に対し攻撃力超域強化
・憎悪の丈により効果向上


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タイムスリップ!?

フィンの日記●月●日
フィン
「シエンがファミリアに入って早速問題が発生した。アイズとの模擬戦をした日の夜にシエンが団員と戦っていた。最初はあまりやる気のないようだったが相手の発言に顔つきが変わった。後日に何故やる気になったのか聞くと、『運命は絶対じゃない。オレたちを決めるのは運命じゃない、決めるのはオレたち自身の足掻きだ』と言った。どうやら受け売りの言葉らしいがとてもいい言葉だ。【運命】はシエンにとって自身を奮い立たせる言葉のようだ。」

トリックスター「ほーん、なかなかええ言葉やん。」
リヴェリア・リヨス・アールヴ「その結果勝つ為に暴発したんだがな、あの馬鹿者は」
ワシ「まあ死なずに済んだからいいじゃろうて」
フィン「これ僕の日記なんだけどなんでみんな見て書いてるのかな?別に構わないけど・・・」


リヴェリアの部屋 昼頃

 

「よし、今日はここまで午後は各自好きなようにして良いぞ」

 

「ん?今好きなようにって言ったよね?」

 

「・・・言ったぞ。だが無茶はするなよ」

 

「おっしゃあああああ!!食事の後から鍛錬をやるしかない!」

 

シエンはアイズと一緒に勉強をし終えた後に遠回しに鍛錬をしていいか聞くと、どうやらボロボロだが【魔法】関係のことをしていい許可を貰った。神の恩恵を得てから体の治りや体力の回復も早くなったので目の隈はもうなくなっていた。

シエンはアイズを置いて急いで食堂に向かった。だがアイズは席を立たずに座ったままだった。

 

「どうしたアイズ?勉強の方もあまり集中出来ていないようだったが」

 

「うん、ちょっと気になることがあって・・・」

 

「気になること?私でよければ言ってみるといい」

 

「・・・うん、シエンって本当に人間なのかなって・・・」

 

「!?、それは・・・一体どういうことだ?」

 

アイズが先程の戦いで感じたことをリヴェリアに話した。

 

「なるほど、【スキル】がシエンに対して発動して、人ではないと思ったんだな」

 

「うん、もしシエンがモンスターだとしたら私は・・・」

 

「まて、それ以上は言うな。言ってはならない・・・」

 

言葉は強い力を持つ。一度口にしてしまえば行動に移したり誰かが聞いていたりするのだ。何より何もわかっていない状態でファミリアの仲間同士殺し合いとかシャレにならない。

 

「アイズ、その事はほかの誰にも言っていないな?」

 

「うん、リヴェリアの部屋に行く前に誰も会わなかったから言ってない」

 

「よし、この際にハッキリさせておいたほうがいいな。昼頃からフィン達を執務室に呼んでシエンの正体について考えるとしよう。シエンも呼んで話に加わらせる。さて、私達も食堂に行こう。」

 

「うん、リヴェリアはシエンがモンスターだったらどうするの?」

 

「・・・分からない、シエンについては本当に私も分からないんだ・・・」

 

フィンの執務室

 

シエンは昼から鍛錬をするはずだったがロキに執務室に来るように言われて執務室に入った。そこにはロキ、フィン、リヴェリア、ガレス、アイズがいた。

 

「これで全員揃ったね」

 

「フィン、一体何をするんだ?何をするかロキから聞いて無いんだけど」

 

「それは今から君が何者なのかについて話し合いをするんだよ」

 

「何者?いや、人間だろ。出身地は前に言ったし」

 

「イーリス聖王国やっけ?そんな国ウチは聞いたことないで」

 

「うん、僕らも聞いたこともないよ。シエンは変な門をくぐったらいつの間にかオラリオにいたって言ってたけど。」

 

「天界や下界があるようにその門をくぐったら世界を飛び越えてきたーなんて」

 

ロキは冗談で言ってみてシエンを見ると無言でロキから目を逸らしていた。

 

「・・・マジ?」

 

「サジ、バーツ。じゃなかった、その通りだよ。誤魔化していてもしょうがないし正直に言ったほうがいいか・・・」

 

シエンはイーリス聖王国にヘルメスとアスフィが来てオラリオに来るように誘われた事、くぐったことで若返った事を言った。

 

「なるほどな、本当は22歳でその異界の門をくぐってこっちにやってきたってわけやな?」

 

「道理で子供らしくないところが多いわけじゃ、けどワシからしてみればまだまだヒヨッコじゃな。」

 

「アスフィというと【万能者(ペルセウス)】か。確か最近レベル2になったはずだ。」

 

「そのアスフィに共通語を教えてもらった。」

 

「出身地については別世界にあるってこと分かった。それで次に何者ってことなんだけど。アイズの【スキル】が君に発動したということはシエン、君は人間では無い事になるんだ。」

 

フィンはシエンが人ではないかもしれないとシエンに言った。

 

「え・・・?いやいやいや!オレの両親は人間の魔道士(ダークマージ)とシスターだぞ!?なんでその二人から生まれたオレが人間じゃ無いんだよ!」

 

「シエン、これがアイズたんの【スキル】や」

 

シエンはアイズの【スキル】だけが書いてある用紙をロキから貰った。

 

「えーと?モンスターに大ダメージ、ドラゴンに特大ダメージ。恨みで更に威力上昇・・・なるほど、あの時のアイズの異常な【力】はそういう事だったんだな。つまりオレはモンスターかドラゴンのどっちか、もしくは両方かという事か」

 

「シエン、ドラゴンはモンスターだろう?」

 

「イーリス聖王国ではドラゴンは神聖な生き物、ダンジョンにいるモンスターと違って魔石はないんだ。オレの言ってるドラゴンはダンジョンのモンスターのドラゴンとは別のものだな。あっちの世界には神の竜、神竜だっている」

 

「神の竜やと!?」

 

「人の姿をしていたり竜の姿をしていたりしたな。困ったことがあったら(ギムレー戦の時)助けてくれたし」

 

「早速ワシらの常識を覆しおったぞ・・・」

 

「ああ、私の知らない未知の世界だ」

 

「それじゃシエンはモンスターじゃなくてドラゴンってこと?」

 

「うーん・・・」

 

シエンは考えた、少なくとも今の自分は人ではないのかもしれない。だとしたら何か原因があるはずだ。そして思い当たる事を言ってみた。

 

「ドラゴン、神竜、しんりゅうといえば宝箱、神竜の・・・あ・・・」

 

「「「「「あ?」」」」」

 

原因は遺跡に潜った際に見つけた【神竜の涙】だった。遺跡での戦闘で軍功第1位として貰って使ったのだ。しかし使ったのは大人の時、今は子供なので効果はないはずなのだが・・・

 

「(異界の門を潜った時にただ若返るだけでなくて何か体の変化が起きたんだろうな。記憶だって大人の時のもあるし)」

 

「シエン?何かわかったのかい?」

 

「フィン、多分わかった。強くなれるアイテム【神竜の涙】を使った影響だ。おそらくオレの身体が変化したんだと思う。ある意味怪物っていうのもあっているかもしれない」

 

「強くなれるアイテム!?そんなもんあるんかい!?」

 

「シエン、ズルイ!私も欲しい!!」

 

「アイズ!人ではなくなるかもしれないのだぞ!!」

 

「なるほどのう、つまり元人間、または竜人(りゅうじん)といったところかの。ダンジョンのモンスターではないという事ならば問題はないじゃろうて」

 

「お、カッコええやん!竜人!それに【二つ名】ええやつ閃いたわ!!」

 

「なあロキ、ちょっと思ったんだけど【スキル】か【魔法】に竜化できるのとかない?もしかして隠してないか?」

 

「・・・察しがええなぁ、そこまでわかっとるんならしゃあなしや。あるで!竜化のレア【魔法】が!!」

 

「おお!マジか!!使ってみたいけどどれくらいの大きさになるのか分からないからその【魔法】の練習もできないし、地上で使ったらモンスターが地上に出てきたって街中大混乱になるから使えないじゃないか!!」

 

「使ったらどうなるかよくわかっているね」

 

「フィン、人目のつかないダンジョンの広いところでなら使っても大丈夫か?」

 

「絶対大丈夫とは言えないけどそれが最善かな、あと更に人のいない夜中がいいと思うよ」

 

「使う時周りの見張りを頼んでもいい?」

 

「もちろん、僕もみてみたいしね。場所は・・・そうだね、霧があってそれなりに広い11階層がいいかな」

 

「私も行きたい」

 

「ダメだ」

 

11階層に行く道中に出てくるモンスターを倒す気満々だったアイズをリヴェリアが止める。

 

「にしても異世界か〜ヘルメスのやつええなぁ〜行ってみたいわ〜」

 

「ヘルメスって神だったのか?向こうではロキみたいな神威ってのを感じなかったから自分を神だと勘違いした人だと思ったけど。」

 

「随分酷いこと言うな・・・シエン、また時間あった時に別世界の話聞いてええか?」

 

「もちろん、けどここにいる人だけにしか言うなよ?」

 

「当たり前やんか!こんなおもろいこと他の神々が知ったらたちまちシエンは攫われてしまうで」

 

「物騒だな、ヘルメスはオラリオはもう平和になったから来ても大丈夫って言ってたのに。昔はこれ以上に酷かったのか?」

 

「いや、全然平和じゃないよ。今が一番酷いかもしれないね」

 

「世界を飛び越える・・・まさか。シエン、その【万能者】なんだが、年齢がいくつか知っているか?」

 

「えーと、向こうであった時は確か19歳だったはず」

 

「なん・・・やと・・・?」

 

「これは・・・とんでもない体験をしているねシエン」

 

「?」

 

オレは何か変な事を言っただろうか?

 

「シエン、この世界での【万能者】はまだ13歳だ。」

 

「え・・・?って事はオレは6年前のオラリオに着いたってことか・・・?」

 

「タイムスリップや!!うははは!こないなこともあるんやなぁ。これだから何があるかわからん下界は最高や!!」




サジ、マジ、バーツ
マルスがいた時代の3人の戦士

異世界から来て若返った事は言いましたがシエンは自分が転生者である事を言っていません。

シエンに対するアイズさんジャッジ

アイズ「よく分からないので保留」

【神竜の涙】覚醒バージョン
体力+5 他のステータスを+2するドーピングアイテム
凄まじい力を秘めているものなので若返ってもその効果はついてきてシエンの身体を変えた。完全にドラゴンにはなっていないのでポ○モンでいうノーマル、ドラゴンといったところ。

カルビン8「シエンの体がそうなってしまったのは私の責任だ。だが私は謝らない」


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わたしはそうりょシエン、戦うことはできませんがちりょうのつえが使えます

フィンの日記 ●月●日
フィン
「誰かがこの日記を見ていることを考え詳細は省くがシエンの事について様々なことが分かった。夜中にダンジョンに潜り、ある【魔法】を試した。その【魔法】は強力で上層階の階層主とも言われているインファント・ドラゴンを跡形もなく消し飛ばした。今はこの程度で済んでいるがシエンが強くなり最下層にいる竜種のモンスターにも有効ならばこれほど頼もしい事はないだろう。アイズには心に余裕が出来るまでしばらく見せられそうにない。」

トリックスター「ウチも見たかったわ〜」
リヴェリア・リヨス・アールヴ「貴重な体験もさせてもらったしな(空中に浮き移動)」
ワシ「ウム、快適じゃったわい。シエンはネイチャーウェポンにも興味を示しておったのう。小さく切って何本か持ち帰ったが何に使うのじゃろうか?」


オレが正体を明かしてから3週間が経った。この3週間にあったことは、フィンが見た目の割にアラサーだという事が分かったり、食事が終わりお風呂に入りに行く際にロキが女湯に入ろうとしてロキは男神だと言った時に「ウチは女神で何が悪い!修正したる!」とぶん殴られたこと。

アイズがオレのことを監視しているのか近くにいることだ。オレに恨みはないと思うが怪物の補正と竜種の超補正でどんだけ【力】が上がるんだろうか?とても興味深い・・・オレが攻撃を食らったら死にそうだけど

 

執務室

シエンは執務室でレポートの作成が完了して見直しを終わらせた。

 

「や、やっと終わった・・・」

 

「おつかれ、シエン。本当は1週間ほど前に終わっていたのにね」

 

フィンが書類整理が終わったのかシエンに話しかけてくる。

シエンが自身の事情を話したことでレポートの内容を自重しないで書いた結果、リヴェリアにこれをギルドに提出することはできないと言われロキファミリアでしか読むことが許されないものとなった。

その為、ギルドに提出するレポートは文章だけでリヴェリアに手伝ってもらって書いたという形で提出する事になった。貴重なギルドの資料を長い間持っているのは後で何か言われるだろうから早く返すためにシエンはレポートを1週間で書き上げた。

 

「ンー、これならあまり怪しまれないだろうね」

 

「あまり?」

 

「うん、あまりね。しょうがないだろう?7歳の子供が書くには内容が良すぎるからね。僕が下級冒険者の頃にあったらヴァリスを払って購入したいくらいだ。」

 

このシエンのレポートには危険なモンスターについて第一級冒険者がかつて注意していた事が書いてあり、とても価値があるものとなっている。フィン達にとっても初心に戻る良い機会だったと快く引き受け書いていた。

 

「シエン、僕からお願いがあるんだけど・・・」

 

「何のお願いか察せられるけど聞こうか」

 

「中層、下層、最下層編も書いてくれないかな?勿論報酬は払うよ?」

 

「だろうと思ったよ・・・ギルドに資料を借りられたら書いてみるよ。」

 

後々に中層や下層の知識が必要になるのでシエンはフィンのお願いを引き受ける事にした。

この後にギルドに提出したレポートの内容が高く評価され中層、下層の資料も借りられるようになってそれぞれの階層についてのレポートを提出しなければならなくなり、さらに毎年更新する羽目になるのだがまだこの時のシエンは知る由もなかった・・・

 

「そういえば気になっていたんだけど昨日ダンジョンで手に入れた木材はどうしたんだい?」

 

「ああ、あれか?あれなら削って杖にしてその先っぽにリヴェリアから貰った水晶を使って治療の杖【ライブ】を作ったぞ。これで戦うことはできないが、ちりょうのつえを使えるようになったな!まだまだ実験段階で杖は手作り感が凄いけど研究して水晶ではなく魔宝石を使ったらもっと凄いのが作れそうだ!!」

 

以前に使っていたものを使えるようになりちょっとずつ興奮しながら話すシエン。

 

「・・・さっそくやらかしてくれたね君は」

 

このライブの杖は【精神力】を杖に流し込み水晶が光って怪我を治すというものだ。【魔力】が高いとそれに比例して回復力も上がる。

何よりこの杖があれば【回復魔法】を持っていなくても【精神力】さえあれば誰でもヒーラーになれるのだ。杖には使用回数があるとはいえダンジョンを冒険する上では喉から手が出るほど欲しい必須のアイテムになるだろう。さらに優れたものを作るために必要なものもわかっている始末。

 

「オレは!ダンジョン探索に革命を起こすぞォ!フィン!!」

 

「もしこれをシエンが作れることがバレたら一生杖を作り続けることになるだろうね。現状君にしか作ることができないのだから」

 

「ウグッ!た、確かに・・・でもあったら便利だしなぁ」

 

隠し事は必ずバレるものなのでこの魔道具が作れることがバレてしまうのは時間の問題だろう。

 

「そこはロキ達と相談して決めよう。【精神力】を持っている家族全員に持たせることになるだろうから完成品ができるのを待っているよ。」

 

「わかってるよ、今は一番これが必要な時だろうからな。もうこんな時間か、ロキにステイタスを更新してもらって寝るとするかなぁ」

 

「シエンおつかれさま、おやすみ」

 

「フィンもそろそろ寝ろよ、おやすみ」

 

ロキの部屋

 

シエンはロキの部屋に行ってステイタスを更新してもらった。

 

シエン

 

Lv.1

 

力 :I0

 

耐久 :I0→I27

 

器用 :I0→G272

 

敏捷 :I0→I5

 

魔力 :I0→F391

 

 

魔防 :H

 

《魔法》

【ミラーバリア】

・速攻魔法

・敵の飛び道具や魔法を反射する。反射する際は向きを自由に変えられることができ、いろんな攻撃も防ぐことができる。形は精神力を消費すると自由に変えられる。

・魔法を反射したとき魔法の威力が上昇する。

・空中に足場を作ったりできるが透明で見えない。

参考 餅

 

【ドラゴンフォーゼ】

・詠唱 【姿が変わりゆけども決して変わらぬは己の心】

・竜変化 竜種に特効ダメージを与えられる

【魔力】が高ければ高いほど【耐久】【敏捷】に超補正、空中を浮くことが出来る

・【魔法】を無効化する。(回復と強化は受け付ける)

スキル【光の波動】が【魔法】発動している間に任意発動出来る

参考 FEの魔竜、遊◯王のドラゴン達

 

【】

 

《スキル》

 

【魔法の探究者】

・魔力と器用が凄まじく成長しやすくなり、限界を超える

・力が全く上がらなくなり、耐久が上がりづらくなる

 

【祈り】

【幸運】%で即死するような攻撃を受けても耐える

 

【呪い】

・自分の影が相手との接近戦になった時に黒い手のような形になり、具現化する。相手の足などに掴まり動きを阻害する。【魔力】、Lvの高さにより強力になる。【魔導】の補正も入る。任意発動、これは精神力を消費する。

 

【復讐】

・ダメージを受けるたび魔法の威力上昇、体力を全回復すると威力は元に戻る。身体中から黒紫色の魔力が出てくる

 

【道具節約】

・幸運×2%で武器や魔道書の使用回数が減らない竜石も減らない(新品のままになる)

 

【魔道具作り】

・(FEにある)武器、魔道書、杖を作ることができる。

 

【魔力追跡】

・生き物の【魔力】【精神力】を覚えどこにいるのかを探知できる。レベル、魔力が上がるごとに範囲拡大。【魔導】の補正も入る。ただしダンジョン内では不安定。

・任意発動、精神力を消費しない

 

多重魔法(マルチマジック)

・複数の魔法を同時に発動、または魔法を発動しながら別の魔法も発動できる。

 

【光の波動】(竜変化中のみ)

【精神力】を消費して光を発する。

呪い、怪我を治す。増血作用あり

 

 

「3週間でとんでもないことになってんでこれ・・・」

 

「【精神力】を使いまくっているから【魔力】と【器用】の伸びがすごいな。これでちょっとは魔道書を書くのが楽になるといいんだけど」

 

「自分がモンスターを倒すようになったら、いったいどうなってしまうんや・・・」

 

「もっと伸びるだろうな、限界を超えるってどれくらいまで行くかな?」

 

「ふふふ、ウチが強うなるわけやないけどワクワクするなぁ!」

 

「にして自分が強くなるのが実数値で分かるっていうのは良いもんだな」

 

「けど更新せんと強くなれないってデメリットがあるけどな。更新する度に美少女の柔肌見て触れることができるでェ、グヘヘ」

 

ロキは鼻を伸ばし、いやらしい笑みを浮かべる。どう見てもスケベなオッサンだ。

 

「ほどほどにな、おやすみ」

 

「おう、おやすみシエン」

 

次の日 中庭

 

「フッ!」

 

「まだまだ!」

 

朝食前にシエンとアイズは模擬戦を行なっていた。シエンの正体がわかってから毎朝続けている。

シエンの剣術はイーリスの基礎、基本しか出来ない。剣といっても青銅の剣とサンダーソードくらいしか使っておらず、サンダーソードも接近戦では使わず雷を敵に浴びせるといった力のない魔道士としては正しい使い方をしていた。

なのでシエンはアイズの剣を受け止めるほどの【力】はないので避けるか受け流すことや【呪い】を使い、複数の影の手がアイズの足を掴もうとうねうね蠢かせている。そのためアイズは距離を取らざるを得ない。

 

「クッ!攻め切れない・・・」

 

「ほれほれどうした?離れたら攻撃できないぜ?【スキル】使って攻めて来てもいいけど、千切っても千切っている間にまた別の影の手を作って拘束するけどな。バリアもあるし」

 

「降参・・・また負けた。どうすればシエンに勝てるかな」

 

「いや接近オンリーじゃキツイって、オレが反応出来ないくらい速くなるか、バリアを簡単に破壊出来るくらいに【力】を上げるとかかな?」

 

シエンとアイズはまだダンジョンに潜る許可を貰ってはいないので他の仲間達とは違ってホームにいる時間が多くやれる事が自主練か勉強くらいだ。

シエンはそれら以外にやることが多すぎてアイズと一緒に模擬戦をする時間があまりとれない。

アイズは一人になると中庭で素振りばっかりしていて寂しそうなので出来る限り相手をしている。フィンやガレスもアイズの相手をしに来たりしている。

 

「また戦おう?」

 

「時間が取れたらな。さ、朝ご飯にしよう腹ペコだ。」

 

「うん」

 

シエンとアイズ、二人一緒に食堂に向かって歩いていく。二人の間にはまだ距離があるが前よりは近づいていた。




冒険の書
シエンの書いたレポートのことで勉強嫌いの幼少期アイズですらよく読んでいた。
上層、中層、下層についての注意点、第一級冒険者による指揮官、魔導士、盾としての心構えやアドバイスが書いてあったりと非常に価値の高いものとなっている。ロキファミリアには絵やグラフを使った詳しく分かりやすい内容が書いてあるものが置いてある。
レポートが完成してから数年後以降は接近戦についてのアドバイスが多くなる。中でもツンデレな狼男のアドバイスは的確でフィン達からの評価は高い。
最下層についての情報はギルドが情報規制をしているためギルドからは情報を得ることはできないが最下層に遠征をするロキファミリアにとっては関係のないことで最下層編はロキファミリアにしか置いておらず遠征に行ける冒険者のみにしか読む事を許されていない。

ギルドは提出されたレポートの内容をそのまま利用し本にして売り出そうとしたがそれを知ったロキが激怒して取り止めとなった。
誰も見れないのでは意味がないので複数写本して持ち出し禁止という条件でギルドに置いてある。


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さらなる力

フィンの日記●月●日
フィン
「シエンとアイズが家族となってから4ヶ月がたった。アイズは鍛錬に勉強をよくこなすようになり。僕ら第一級冒険者のお守りつきでのダンジョン探索に行く事を許可した。剣さばきもますます冴えてきてファミリアに入ってきた時の頃と比べると雲泥の差と言っていいだろう。しかし、防御が雑で倒す事のみを考えた攻撃でよく怪我をしてしまう。それを見ていたシエンは自分自身はなんともないかもしれないが周りの人から見ると危なく見えるな・・・と言って遠い目をしていた。おそらく彼も同じような事をしていたんだろう。少しアイズに注意して怪我を【ライブ】という杖で治療する。どうやら杖は完成したらしくまた新たな杖を執務室で作っている。何を作っているのか気になって事務作業が止まってしまうほどだ。」

トリックスター「ウチも思わずガン見してしまうほどやで」
リヴェリア・リヨス・アールヴ「前に言ってた【魔道書】とやらがもうすぐ完成するらしい」
ワシ「両手に羽ペンを持って用紙に文字を書き殴っている姿はいつ見ても驚くばかりじゃ。【魔法】の並行詠唱なんぞ楽勝なのではないか?」


早朝の中庭 アイズ

 

いつもなら私は訓練用の短剣を持って素振りをしているが今日はまだしていない。目の前に起きている【魔法】を見ているからだ。

 

「やった・・・やったぞ!!フハハハハ!!作成してから4ヶ月!やっと、やっと!!ようやくまともなダンジョン探索が出来る!!アイズが戦っていてオレが棒立ちという戦闘スタイルがようやく終わる!!」

 

赤く光り輝く赤い本を左手に持って右手に拳を作り振り上げ高らかに笑うシエン。私の【スキル】が発動した時はモンスターだと思っていたけど正体がわかってしばらく一緒過ごしたらなんとなく違うのではないかと思えてきた。そもそも元人でありこんな喋って笑って人を襲わず【魔法】の事にかかりっきりのモンスターがいるわけが無い。

 

それにシエンに人ではなくなって思う事がないかと聞くと『神の恩恵を持ってない一般人から見ればオレらは人であって人ではない化け物だろ?悩むだけ無駄無駄ァ!』と笑って言っていた。

それを聞いて真剣に考えていた自分がバカバカしくなってシエンがモンスターかモンスターではないとかなんかどうでもよくなった。

 

「WRYYYYY!!」

 

「シエンうるさい」

 

「アッハイ、ごめんなさい」

 

お日様の光を浴びながら仰け反り叫んでいてうるさかったので一言言ったら黙った。けど興奮していて中庭を喋らずゴロゴロ転がっている。どうやら嬉しさを隠しきれないその姿は可笑しくて思わず小さく笑ってしまった。すると転がっていたシエンは動きを止めてこっちを見てきた。

 

「お?今笑ったな?」

 

「・・・笑ってない」

 

「まあそういう事にしといておこうか、フフフ・・・」

 

シエンは私を見ていなかったハズなのに何故か笑っていた事を察してしまう。とても不思議で何から何まで見透されているようで不気味だ。

 

「なんやなんや?朝っぱらからテンション高いなぁシエン」

 

「お、ロキ!見てくれよこれ!!ついに出来たんだ【ファイアー】の【魔道書】が!!」

 

「ホンマか!?ウチも見てみたい!ちょっとシエンのいいとこ見てみたい!」

 

「ハイ!【ファイアー】!【ファイアー】!【ファイアー】!」

 

ロキに扇動されたシエンは【ファイアー】と呼ばれた赤い本をまた赤く光らせるとシエンの周りに光る文字が輪っかになって現れてシエンの手前に火球が現れて火球を3つ放った。リヴェリアからは【魔法】について学んだけど詠唱をしていないし火球を連射している。リヴェリアの言っていたことが何一つ当てはまらず訳がわからない・・・

 

「そしてさらに【ミラーバリア】!」

 

「おお!火球が見えん障壁に閉じ込めて乱反射させとるんやな。つかさらっと【魔法】を複数発動させんなや!!あんなかに閉じ込められて周り中から【魔法】が襲いかかってくるなんて怖ァ・・・」

 

ロキはテンションが上がったら下がったりと忙しそう。これからはシエンもダンジョン探索で戦うことが出来るみたいだ。けど私の倒すモンスターが減るとなるとちょっと困る。私は強くならないといけないのに・・・

あ、中庭が【魔法】でめちゃくちゃになってるけど大丈夫なのかな?

 

執務室

 

「早朝にこんな事があったんや!いや〜早起きして正解やったで!」

 

「そういうの極東の言葉では早起きは3ヴァリスの徳だっけ?」

 

「ヴァリスではなくて三文だったはずじゃ」

 

「シエン、【魔法】を使う時は中庭ではなく訓練場でやる事だ。いいな?」

 

「ハイ、ゴメンナサイ・・・」

 

フィン達が会話している中でシエンは床に正座しながらリヴェリアに説教を受けていた。頭には拳骨を貰ったのかまたタンコブが出来ている。

 

「それにしてもよう出来とるなぁ。【ファイアー】やっけ?」

 

「そう、俺たちにとっては基礎中の基礎の【魔法】だ。それを作るために【精神力】は足りないわ、【精神枯渇】でフラフラになって書きミスしてその紙を書き直しになるわで作るの苦労したぞ・・・」

 

「これは私たちも使えるのか?」

 

「【精神力】があってそれをこの本に流し込める事ができれば使える・・・ハズ」

 

「なんやはっきりせんなぁ」

 

「しょうがないだろ?向こうの材料じゃなくてこっちの材料で作ったのは初めてなんだから。これからどんどん実験して新しいのを作っていくから楽しみにしといてよ」

 

え?これからどんどん新しいのが出来ていくの?【魔法】って3つまでだったような・・・

 

「ンー、この本は【精神力】を必要とする魔剣の様なものと考えて良さそうだね。朝から何度も使っていた事らしいし数回しか使えないってことではなさそうだ。」

 

「オレは【スキル】が発動してるからずっと使えて何回使えるか分からないから協力してもらっていいか?」

 

「それならば私が協力しよう。」

 

「リヴェリアなら問題なさそうだね。頼んだよ。シエン、頑張っている君にはこんな物を用意したんだ」

 

そう言ってフィンは2つ羽ペンをシエンに渡した。良いなぁ、私もフィン達に認められて武器が欲しい・・・

 

「これは?羽ペンならもう持ってるけど」

 

「ただの羽ペンじゃないよ。これは【万能者】の発明品でね。少量の血をインクの代わりにできるんだ。」

 

「なにィ!?血をインクの代わりにできるってことはオレの魔道書作りがかなり楽になるんじゃないか!?」

 

そう言って早速シエンは試してみた。こういった【魔法】関係のことになると普段とは違う真剣な顔をする。

 

「自分の血だから【精神力】が馴染みやすいのは当然か。それをインクの代わりにする・・・ハァ、アイツ天才かよ・・・今まで必死こいて【精神力】を絞り出して書いていたのがバカみたいじゃないか・・・ハハハ・・・フフフフフフフフフフ」

 

そういって机に突っ伏して感情のこもってない声で薄ーく笑っている。かなり怖い・・・

 

「ハァ、まあいいや。これからは楽に書けると思えば・・・それにこれはこれで書き方が変わるだろうから色々試さないとな。よし!アスフィも頑張ってるしオレも頑張らないと!みんな、次に書いて欲しい【魔道書】のリクエストとかないか?」

 

「ンー、いざ聞かれると悩むね」

 

「火ときたら次は氷か?」

 

「岩石とかはどうじゃ?」

 

「ウチといったら変化やろ!変身魔法や!」

 

「アイズは何かないか?」

 

【魔法】、なんだろう・・・お母さんも【魔法】を持っていたような・・・

 

「風、かな」

 

「風、【ウインド】系か・・・色々応用が効くし、いいな。よし、【ウインド】を作るとしよう!アイデアをありがとな、アイズ。」

 

リヴェリア達の案ではなく私の言った【風】が採用された。なんだか嬉しいな。

シエンは2週間後に【ウインド】を完成させたけど血を使い過ぎて貧血を起こして倒れた・・・頭が良いのか頭が悪いのかよく分からない

 

ロキファミリア 一ヶ月後

 

「なんでもっとモンスターを倒させてくれないの!?リヴェリアの分からず屋!」

 

「馬鹿者!そんな事をしては疲労で倒れモンスターの餌食になってしまうだけだ。私たちがいなかったら何度死んでいたかわからないような場面がいくつもあっただろう!?身の程を知れ!」

 

「・・・ッ!」

 

アイズはリヴェリアに言われた事に反論できなくなると背を向けて執務室から飛び出して行った。シエンは魔道具製作を一旦やめてリヴェリアになにがあったかを聞いた。

 

「リヴェリア、ダンジョンで何かあったのか?」

 

「10階層に行ってオークに殺されかけた。」

 

「10階層ってオイオイ、早過ぎないか?オレとアイズはほぼ同じくらいに冒険者になってもう少しで半年ってくらいだろ?もうちょい行ったら中層じゃないか・・・」

 

「確かに早いね。けど9階層はもうクリアできたんだろう?」

 

「ああ、それで10階層に行ったんだが今までとは違う視野の妨害、霧の立ち込める場所での戦闘はまだ慣れてなくては酷い目にあったという事だ。」

 

「ウチとしてはちゃんと生きて帰ってきてくれてホッとしたわ。ありがとな、リヴェリア」

 

「うーむ、暫くは9階層までで我慢してもらうしかないのう。というかお前さんは最近ダンジョンにいかんな。」

 

「地上でオレは鍛錬と魔道具作製とたくさんやる事があるからな。そういやロキ、確かオレはランクアップできたよな?」

 

「「「なに!?」」」

 

「出来るで、【魔道書】を作ったあの日にランクアップが可能になったんや。フィン達には驚かすためにもうしばらく黙っとこうかと思っとったけど。」

 

「この世界には無い【魔道書】の作成に成功か・・・確かに偉業だな」

 

「で?なんや、ランクアップするんか?」

 

「まさか、まだまだ【器用】と【魔力】が伸びるんだろう?だったらまだしないさ、Lv.2になった時にLv.1だった時の能力値が潜在値(エキストラポイント)として影響するんならもっと伸ばすまで。少なくともアイズより先にランクアップするつもりはない。アイズはただでさえ急ぎ過ぎているのにこれ以上焦らすのはまずいだろ。」

 

「ロキ、ちなみにどんな【ステイタス】になっているんだい?」

 

「こんな感じや」

 

そう言ってロキは処分せずにいたシエンの【ステイタス】が記している用紙を見せた。

 

シエン

 

Lv.1

 

力 :I0

 

耐久 :E473

 

器用 :SS1058

 

敏捷 :G204

 

魔力 :SSS1589

 

魔防 :G

 

 

「魔力SSS・・・そうか・・・これが限界を超えるという事か」

 

「モンスターを倒してはいないけど、魔道具を作るのも結構大変なんだぞ?さて、街中にいるアイズを探してくるよ。」

 

そう言ってシエンは執務室から出て行った。

 

「やれやれ、あの二人には本当に驚かされるよ。」

 

「だがオラリオを甘く見ているようにもみえる。」

 

「地上も危険じゃからの」

 

「なにも悪いことばかりじゃあらへん、いいことだってあるかもしれんし。こっそりついていくか、なにが起こるか楽しみや!ガレス、ウチのお守りを頼むで」

 

「ハァー、なんでワシが・・・」

 

ヘファイトスファミリアの店

 

アイズはオークを倒せる壊れにくい上等な武器を探しにホームを飛び出し街に出た。そして武器屋にたどり着いたのだが・・・

 

「た、高すぎる・・・」

 

飾られていた短剣の値段はゼロが7つあった。あまりの高さに思わずひっくり返りそうになる。

今までに溜めたヴァリスでは到底買えそうにない。肩を落としながらトボトボ歩いて帰る。ホームに早く着くために裏路地を使って近道していると・・・

 

「おーい、アイズー、いたいた!ここを通っていたのか」

 

「シエン?」

 

アイズが通ってきた道からシエンが追いついてきた。アイズは知らないがシエンは【スキル】を使ってアイズの居場所を把握してやって来たのだ。

 

「こんな暗いところを通っていたら危険だぞ。さ、表通りから帰ろう」

 

そう言ってシエンはアイズに近づいて行ったが。

 

「そうはいかないぜ!その金髪金眼、噂の【人形姫】だろう?テメェを殺ればロキファミリアにとってはいい嫌がらせになりそうだからなぁ!ここで死んどけや!!」

 

そう言って黒ずくめの人達が物陰から現れてアイズに向かって襲いかかろうとするが

 

「【ミラーバリア】、悪いがそういうわけにはいかないな」

 

「なに!?これ以上先に行けねぇ!なんだこれは!」

 

 

シエンはアイズを守るためにドーム状に障壁を張った。襲いかかった黒ずくめの連中の武器はアイズには届かなかった。そして今度は黒ずくめの連中全員を逃がさないために大きめにドーム状の障壁を張った。

 

「【ミラーバリア】」

 

「なに!?詠唱なしで【魔法】を発動だとォ!」

 

「奇襲は失敗だ!逃げるぞ!」

 

「イテェ!なんだぁ!?出られねぇぞ!?」

 

「逃がさん、ガレス頼んだ」

 

「「「え?」」」

 

シエンは後ろを振り向かずに後ろにいるであろうガレスに問いかける。

 

「なんじゃ気がついておったのか」

 

「悪いこと起きたけど悪者捕まえて街にとってはいい事したなぁ。ガネーシャとこの眷属達、悪いけど頼むで」

 

「ハッ!闇派閥の連中の捕縛、ご協力感謝します」

 

ロキがゾウの仮面を付けたガネーシャファミリアの冒険者達を連れてやって来てガレスと協力の下、事態は収束した。

そして路地裏から出てホームに向かって歩いていく。アイズは若干不機嫌そうにしている。

 

「なんやアイズたん?そんなほっぺたプクーって膨らましてかわええやんか。どうかしたん?」

 

「さっき襲われた時何も出来なかった・・・私は弱い」

 

「こやつがおかしいだけじゃ、気にすることはない」

 

「ひっどいなぁ、あの【魔法】を突破されたらオレはあっさりやられるんだが?なんとかなる相手で良かったよ。」

 

「シエン今度また戦って。ダンジョンのモンスターよりシエンと戦えばもっと強くなれる気がする。」

 

アイズはシエンに対人戦を申し込んだ。現状ではシエンの【力】がなさすぎて受け流す事すらも危ういので剣での模擬戦はやめていた。

しかし【魔道書】を使っての多彩な攻撃が可能となった今のシエンとならば強力な【魔法】を受けるたびに【耐久】が、躱すたびに【敏捷】の経験値を多く得られると思ったからだ。

 

「やるとしたら訓練場でな。中庭でやったらまたリヴェリアに怒られる」

 

「うん、絶対負けない」

 

どこかの建物 夜

 

「うーん、欲しい!あの子達ウチに欲しいなぁ!【人形姫】もいいけど。あの黒ずくめの子、あの目!あの雰囲気!絶対何人もの人を殺ってるって!ウチに必要だ!!」

 

神タナトスは興奮も収まらずに欲しい欲しいと騒ぐ。

 

「他神様よ、そいつはどこのファミリアのやつなんだ?」

 

闇派閥の幹部、ヴァレッタはタナトスに聞いた。

 

「ロキファミリア」

 

「ぶっ殺す」

 

ロキファミリア、どちらかというと【勇者】に深い恨みがあるヴァレッタは暗い笑みを浮かべながら即答した。

 

「うーん、【人形姫】はなんとかなりそうだけど、そっちの黒ずくめの子は無理かなぁ」

 

「あぁ?なんでだよ?」

 

「なんか自己紹介したら殺されそう」

 

「ギャハハハ!神のアンタが殺されるのかよ!とんでもねぇイかれっぷりだな!どんなガキかいっぺん見てみたくなるじゃねーか!勧誘してもよし、ならないなら殺してもよしだな。なぁフィ〜ン、テメェの苦しむ顔が眼に浮かぶぜェ!」




原作のベル君の【ステイタス】の上がり方はおかしい
発展アビリティもバンバン上がるし・・・

街中も物騒なのに単身でアイズを探しに行くのか・・・(困惑)
そしてヤバい奴らに目をつけられるシエン、ヤバい奴らは惹かれ合うからしょうがないね


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精神崩壊

フィンの日記●月●日
フィン
「二人がファミリアに入って8ヶ月たった。少し落ち着いて周りが見えるようになってきたアイズには新しい武器、ソード・エールを与えシエンと共に順調にダンジョン探索をしている。今では12階層まで行けるようになっている。二人とも【ステイタス】の伸びも良くアイズがより強くなるためにランクアップのことをそろそろ聞いてくるだろう。何かまた一波乱ありそうだ。」

トリックスター「中層のモンスターが上層に上がってくるかもしれんから見守りよろしく頼むで。ランクアップのことは・・・頼んだ!!」
リヴェリア・リヨス・アールヴ「最近私とは一緒にダンジョンに行ってないな・・・」
ワシ「お主は口うるさ過ぎるんじゃ。大切なのは分かるが痛い目にあうのもまた大事な事じゃて。ま、痛い目にあう前にシエンがなんとかしてしまうがの」


オラリオ 昼

 

真昼間だろうと関係なく爆発音が鳴り建物が壊れていく。闇派閥達の宴が始まった。

 

「ふははははは!壊せ!奪え!殺せ!!オラリオを混沌に陥れるのだ!!」

 

闇派閥の幹部【白髪鬼(ヴェンデッタ)】ヒューマンのオリヴァス・アクトは仲間達に鼓舞する。

 

「オリヴァスの野郎、派手にやってんな。こっちも負けてらんねぇぞ!フィ〜ン!楽しい宴の始まりだァ!!」

 

同じく闇派閥の幹部筆頭、【殺帝(アラクニア)】ヴァレッタ・グレーデも悪意の限りを尽くす。今日もオラリオは真っ暗闇の中だった。

 

ロキファミリア 昼 同時刻

 

「闇派閥の連中を討伐に行く!僕、ガレス、リヴェリアの3つの隊列作りそれぞれ現場に向かう!行くぞ!!」

 

「私も行く!」

 

「ダメだ、お前はまだ見てはいけない戦場だ。」

 

「心配するでない、ちゃんと戻ってくるからの。」

 

そう言ってフィン達はホームから出て戦場へと向かった。

 

「闇派閥の連中はモンスターとは違って策を使ってくる。それにレベルだって上だろうしホームで大人しくしてようぜ?」

 

「せや、暇ならウチと一緒に遊ぶか?痛くせぇへんで?ハァハァ・・・」

 

「うわ・・・」

 

「シエン、私と戦って欲しい」

 

アイズはロキの言葉を無視してシエンと一緒に模擬戦をしに訓練場へ行った。

 

次の日 訓練場

 

早朝からも訓練場でひたすら対人戦に励む二人。

 

「フッ!」

 

「おっとォ!良い一撃、だァ!」

 

シエンはアイズの剣戟をギリギリで躱す。以前は【スキル】を使って動きを封じていたがそれではお互いに得るものが少ないので使わないようにしている。

魔法特化型のシエンは【力】は勿論、【敏捷】も負けているためどんどん押されていって最後に両手を上げた。

 

「参った、降参だ。」

 

「【魔法】を使わないの?」

 

シエンに勝ったが手を抜かれているようで不満そうなアイズはシエンに言った。

 

「そんなこと言ってまた前みたいに丸焦げになりたいのか?オレがどんだけリヴェリアに叱られたか・・・」

 

シエンは叱られた事を思い出して体を震わせる。

ある時アイズはシエンとの模擬戦でそれなりに精神力を使った【ファイアー】をくらった事がある。火球が直撃して火球の爆発に巻き込まれて大怪我を負ったことがあった。危うく火傷の傷跡が残るところだったとシエンはリヴェリアに大目玉を食らった。

 

「私は気にしない」

 

「オレが気にするんだよ・・・」

 

「せや!アイズたんの可愛らしい顔に傷がついたらシエン!自分ギルティやで!」

 

「ロキ、来ていたのか」

 

「暇やからな。一旦休憩しよか?」

 

いつのまにか訓練場に来ていたロキが休憩するように言う。

 

「【魔法】を使っとらんとはいえ、シエンに勝てるようになるとはなぁ・・・やるやんかアイズたん」

 

「アイズは時々キレのいい【技】を繰り出してくるからな。油断ならないよ。」

 

アイズは誰にも剣技を習ってはいなかったが昔は父親の剣技をよく見ていた。意識はしていなかったがどうやら父親の剣技を真似ていたようだ。

 

「なんでまたここに来たんだ?」

 

「事件の方はケリがついたみたいでな、その報告や。どうやら夕方には戻ってくるみたいやで。」

 

「・・・そう」

 

「お?なんやなんや?リヴェリア達のこと心配しとったんか?それをリヴェリア達が聞いたら泣いて喜ぶで?」

 

「・・・別に心配してない」

 

「泣くかどうかは分からんけど嬉しく思うだろうな。素直じゃないなぁ。ま、オレは心配してなかったけどな!」

 

「嘘やな、そんなこと言っといて【魔力追跡】をしとったんとちゃう?」

 

「ソ、ソンナコトナイデスヨー。オレ、ウソツカナイ」

 

神に嘘が通用しないことを知りながら平然と嘘をつくシエン。どう見てもバレバレである。

一応心配はしていたがフィン達の追跡から逃れた敵が本拠地に戻るところを探ろうとはしていたが出来ず意味がなかった。

 

「(オレが相手の正確な位置を把握するには【魔力】、もしくは【精神力】を覚える必要がある。相手がそれらを持っていなかったら追跡できない。ならば魔宝石の【魔素】を覚えて、それをそいつに持たせたらいけるか?もしくは砕いて飲ませるか・・・フィンと要相談だな。)くくく・・・」

 

「まーたなんか悪いこと考えとるやろ」

 

「失礼な、オレは明日をより良くするために考えているだけだぜ?」

 

「・・・ま、ええわ。アイズたん、シエン、ちょっと街にお出かけと行こか」

 

「街ィ?事件が終わったばっかりなのに?」

 

「だからこそ行くんや。それにフィン達にお疲れ様会として飲み会の場所を取りに行く。主神命令や!行くで!!」

 

街中

 

昨日事件が起きたことで人々の表情は暗く元気がない。

また事件が起きないかどうかパトロールしているギルド職員や剣と翼のエンブレムを見に着けた赤髪の少女や覆面の冒険者などが行く先々にいた。

アイズは闇派閥が暴れまわることで招いた事柄なのだと察した。

 

「何で・・・人同士で争っているの?」

 

「話をしても合わないからさ、合わなくて自分達を害するのだとすれば・・・どちらかが滅びるまで殺しあうしかない。」

 

「物騒やなシエン。でも暴力ってのも子供達の否定できない本能の一つやろうなぁ」

 

「・・・」

 

アイズは自分が戦う動機もそれに含まれるのではないかと思った。

 

「ま、それでもみんな明るい明日ってやつを望んで色々頑張っているんやけどな。アレとかな」

 

ロキが指差す先に建っていたのは看板にジャガ丸くんと書かれた屋台だった。

 

「最近できたばっかりの料理らしくてな、せっかくやし食べてこか」

 

ロキが注文すると三つ分の芋が店員からそれぞれに渡された。

潰した芋に衣をつけて揚げたもので出来立てで油と芋の匂いがする。

アイズは興味深げに見ていて、シエンにとっては懐かしい、前世で母親がよく作ってくれた暖かい食べ物であり、すぐにかぶりついた。

 

「・・・うまい、・・・うめぇ」

 

一口また一口と食べるたびに前世を思い出し思わず涙を流してしまうシエン、軽いホームシックに陥った。

 

「え?何で泣いとるん?そんな美味かったんか?」

 

涙を流すシエンを見て見当違いなことを言うロキ。アイズはというと、はむはむ、と一心不乱に食べていた。

 

「おお!アイズたん気に入ったんか!おっしゃどんどん食えや!店員さんもう一つ追加!」

 

「毎度!」

 

結局さらにもうひとつ追加して満足そうに食べたアイズだった。そしてシエンは軽くうつ状態となりテンションがガクッと下がった。

 

中央広場

 

「オレは・・・オレは・・・なにをやっているんだ何でこんなところにいるんだイーリスはどうしたんだ仲間はどうしたんだかあさんかあさんかあさんブツブツブツブツ」

 

「シエン、大丈夫・・・?」

 

「あかん、これはあかん奴や・・・でもどうすればええんや・・・」

 

まるで長文詠唱のようにブツブツとうつむきながら喋り続けるシエン。

 

「あら・・・ロキじゃない?」

 

「まぁ、本当。お久しぶり」

 

「おお!ファイたんにデメテル!」

 

そこにバベルから二柱の女神が現れた。一方は紅の髪、もう一方はふわふわとした蜂蜜色の髪。前者は右眼を覆う大きな眼帯、後者は驚くほど大きいふくよかな胸が特徴だ。

 

「二人ともなにしとるん?」

 

「私は自分のテナント帰り。デメテルは食料の配達よ」

 

「ロキ?そこにいる子達は貴方の眷族かしら?」

 

「せやで!こっちの可愛らしいのがアイズたんや!こっちが・・・さっきから調子が悪いんやけどシエンっちゅーんや!二人とも期待のスーパールーキーやで!二人共、この二神はヘファイストスとデメテルやで挨拶しいや」

 

「・・・こんにちは」

 

アイズは知らない相手なのでおずおずと挨拶をした。シエンは・・・

 

「やらなきゃやられるオレが・・・オレが・・・オレがやらなきゃやらないといけないんだみんなを助けるんだ殺してやるみんな皆殺しだ」

 

「「「「・・・」」」」

 

言っていることが無茶苦茶だった。シエンは精神崩壊を起こしていてとてもじゃないが挨拶をできる状態ではなかった。

闇魔道士は強力な闇魔法を使う影響か心や精神が不安定な者が多かったりする。国から追い出されることになったり身体が小さくなったりとそれなりに精神的にもキツかったが前世の親を思い出してついに精神が耐えきれなくなった。

 

「この子、大丈夫・・・なわけないわね。なにがあったの?」

 

「ジャガ丸くんを食べたんや。そしたら涙流して食べてそれからずっとこれや」

 

「・・・あんなに美味しいのに・・・なんで?」

 

「・・・」

 

デメテルは黙ってシエンの前に移動し膝を折ってシエンを抱きしめる。

 

「ほら、もう大丈夫よ。なにがあったのかしら?言ってごらんなさい?」

 

デメテルに抱かれてシエンはその状態のまま話し始めた。

 

「無理だよ、無理なんだよ!オレは優しくもないし強くもない!自分のことしか考えない、ろくでなしだ!村のみんなが命をかけて守ってくれたけどオレは、オレは村のみんなの希望になんてなれないんだ!オレの手は今はもうどうしようもなく人の血で汚れてしまってるんだよ!なんでオレが殺らなくちゃならない!!もう、殺したくない、戦いたくないよ・・・」

 

出てきた言葉は生き残る為に己を殺しひたすら敵兵を、人を殺害してきた魔道士の本音だった。

 




遊戯王GXのカミューラのテーマを聴きながら書いてたらなんかシエンが精神崩壊を起こしてしまったよ・・・
戦いたくないとか言い出したぞコイツ・・・どうすりゃいいんだよ・・・
闇魔法
ダークマージ、ソーサラーのみが使える強力な魔法(あるスキルをもっている場合使える)シエンは下級闇魔法【リザイア】のみを使っていた為、精神汚染はそこまで酷くなかった。なお、使用頻度は半端ではなかった模様。


あっそうだ(唐突)
ポケモン、スマブラ、のぶやぼ、FEと立て続けに新作のゲームが出る為更新が更に不安定になると思われます。どうかお許しを


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神出鬼没の商人

バベルの最上階 フレイヤ
シエン達がデメテル達と会っている時

「(あの【人形姫】と言われた子の魂は金色、こんな輝きは初めて見たわね。けどそれより気になったのはもう一人の子。魂は黒色、けど真っ黒じゃない。様々な色を混ぜ合わせて出来た黒といった感じね。ここに私が関わったらこの子の魂はどのようになるのかしら?黒、それとも銀色・・・?フフフ、面白くなりそうね)」


中央広場

デメテルに抱かれて喋っていたシエンだったが不躾な銀色の視線に身を引かせる。

 

「ッ!?」

 

右、左、周りを見渡すがそんな視線を持った人はいない。まだ視線は感じた。上、バベルの塔からだった。

 

「あら?もう大丈夫なのかしら?」

 

「・・・もう大丈夫です。あの、服を汚してしまってすみません。」

 

「いいのよ〜貴方が落ち着いたのならそれで。いつでも私の胸に飛び込んできてもいいのよ?」

 

正気を取り戻したシエンであったがデメテルの言葉に感動していた。

いつでも胸に飛び込んできてもいい、そんな言葉が存在しているなんて・・・

感動のあまり、塔からの視線のことはスッカリ忘れてしまった。

 

「なぁ、ロキ」

 

シエンは振り返って真剣な表情をしてロキに問う。

 

「なんや?」

 

「デメテルファミリアにコンバージョンしていいか?」

 

「ダメに決まっとるやろ!さっきまで戦いたくない〜とか言っとったんはどうなったんや!!」

 

「泣いて叫んだらスッキリした。やっぱ溜め込むのは良くないな・・向こうでは誰が聞いているか分からないし軍の士気にも関わるから言えなかったけど。すまんロキ、アイズ、心配かけた。御二方にもお騒がせして申し訳ありませんでした。」

 

そう言ってシエンはロキ達に頭を下げる。

 

「軍?、士気に関わる・・・?ロキ、貴方とんでもない子を眷属にしたようね・・・」

 

「せやろ?かなりの変わり者でなぁ。シエン、ホンマに戦いたくないなら戦わなくたってええんやで?」

 

ロキはシエンの本音を聞いて戦いから遠ざけようした。戦うことより研究や実験を好む為、どちらかというと魔法大国に行った方がシエンの心のケアになるだろう。

 

「ロキ、今のオレの居場所はロキファミリアだ。その居場所を脅かそうとしている奴らが今、オラリオで暴れまわっている。オレだけが戦いから逃げるわけにはいかない。」

 

シエンはロキファミリアに入った以上は厄介ごとがある事なんて最初から理解していた。嫌な事一つや二つのために逃げるなんて事はしない。このくらい慣れっこだった。

 

「それにほっといたら死んでしまいそうな奴の事も心配だしな。」

 

そう言ってアイズの事をチラッと見る。

 

「ふふふ、我慢が出来る良い子なのね。改めて挨拶するわ。私はデメテル、よろしくね」

 

「私はヘファイストスよ。武器や防具を作っているわ。よろしく。」

 

「こちらこそよろしくお願いします。」

 

そう言ってお互いに改めて挨拶をした。デメテルはシエンとアイズの背を見比べてロキに言った。

 

「ロキ、この子達は野菜を好き嫌いなく食べているのかしら?」

 

「食べとるで、特にシエンはよく野菜を食べとるんやけど・・・背が伸びないんや・・・」

 

シエンは8ヶ月前と比べて全くと言っていいほど背が伸びなかった。だいたいフィンと同じくらいだ。もちろん原因は神竜の涙の影響で身体が不安定になっているからである。

 

その後、色々話して女神達と別れた。そして目的の店、【豊饒の女主人】に辿り着いた。

 

「今日の飲み会の場所はここやで。これから先、お世話になると思うから場所を覚えとき。女将〜今日の夜、ここで宴会してもええか〜?ええよな〜?」

 

ロキは店に入るなり背の高い人に話しかけた。

 

「ああん?人が足りなくて忙しいって時に・・・わかったよ!ただし貰うもんはキッチリ貰うよ!」

 

「ほな、頼んだでぇ!あ、それとあの色ボケ女神に言っといてや、うちの子に手を出したら許さんってなぁ・・・」

 

「なんだい・・・今度はアンタのとこの子かい・・・本当にあの女神は・・・」

 

先程シエンが視線に気が付いたようにロキも気が付いていた。ここのオーナーはフレイヤファミリア元団長、ミア・グランド。L v.6の冒険者だ。この店で得た情報は主神である女神フレイヤの下に行く為、ロキはミアに警告を促した。

 

「一応言っとくけど・・・あんまり期待しないでおくれよ?」

 

「なんも言わんよりちゃんと言っといた方がええやろ。話はこんくらいにしといてと、ほな、また夕方くるで〜」

 

夕方 豊饒の女主人

 

「おっしゃ!みんなお疲れさん、今日は宴会!飲めや歌えええええ!!」

 

『うおおおおおおおおお!!』

 

暴れていた闇派閥の冒険者達を捕らえて頑張った眷属達にロキは豊饒の女主人にて宴会を開いた。

シエンとアイズは同じテーブルで小人族用の椅子に座り食事を取ることになった。

 

「突然何かと思えば宴会か、事前に言っておいてくれても良かったんじゃないか?」

 

「ロキとしては僕達を驚かせたかったんじゃないかな」

 

「かもしれんが、ただ単にロキが酒を飲みたかっただけかもしれんのう。ガッハッハ!」

 

「(ギクッ!)そ、そんなわけないやんか!みんな頑張っとるんやから、これぐらいしてやらんとな!なっはっは!」

 

ロキが宴会を開いた理由はなんとなく二つの意味があると3人は察した。

 

「・・・まあそういうことにしておこうか。アイズ、お前の皿を渡してくれ。私が取り分ける。」

 

「うん、ありがとう」

 

そう言ってリヴェリアはアイズの皿に食べ物を盛り合わせた。

 

「シエン、お前のも・・・どうした?」

 

リヴェリアは食器に手が届かないシエンにも皿に盛り合わせようとしてシエンを見るとシエンは誰もいない場所を見ていた。

 

「どうしたんや、シエン?」

 

「店の外に知り合いがいる。この感じは・・・」

 

裏路地に突然現れた【魔力】、それはシエンと同じように異界の門をくぐって来た可能性があり、それにこの神出鬼没な感じはあの人物しかいない。

 

「街は何やら静かだけどここの店は賑やかね。って、あら?誰かに似ているような・・・もしかして、シエン君じゃない!?なんか格好が変わってるけど!?」

 

顔が全く同じでたくさんの姉妹がいて絶対に人が来ないようなところにレアアイテムを売っている、赤い髪の旅商人のような格好をした女性のアンナだった。アンナはシエンのいるテーブルに近づいた。ロキファミリアの眷属達は知らない人物の登場に少し静かになった。

 

「お久しぶりです。アンナさん」

 

「やっぱりシエン君ね。そんな格好になって一体どうしたの?」

 

「こっちに来た時に何か影響を受けたんですよ。アンナさんは影響を受けなかったんですね。」

 

「どうやらそのようね。」

 

そう言ってアンナはシエンに近づき、シエンの頬を掴んだ。

 

「頬っぺたがプニプニじゃない!羨ましいわ・・・」

 

「いきなり何をするんですか・・・今まで出来たことができなくなったりと結構大変なんですけどね」

 

そう言って二人は話をしていたらロキが会話に加わってきた。

 

「シエン、この美人の姉ちゃんは誰や?紹介してくれへんか?」

 

「分かった、この人はアンナさん。商人なんだけど変わったところで珍しいアイテムを売っている人なんだ。アンナさん、この人はロキといって、女性だが女好きのおっさんみたいな奴です。」

 

「初めまして、ロキさん。今紹介にあったアンナです。」

 

「こちらこそよろしくな。って誰がおっさんみたいやねん!ウチは女神やっちゅうのに!」

 

『(普段の行動からしてどう見てもおっさんなんだけど・・・)』

 

ロキファミリアの眷属達は口には出さなかったが心の中でツッコミを入れざるを得なかった。

 

「それでどうしてこちらに来たんですか?」

 

「新しい取引先を見つけたくてね。いろいろなところを巡っていたの。そしたらここに着いたってワケ。ところでシエン君、何か買っていかないかしら?」

 

「通貨がヴァリスですけどいいんですか?」

 

「ヴァリス?ここのお金なら構わないわ。今取り出すから、ちょっとまってね。」

 

そう言ってアンナさんは、店長さんに許可を取って空いているテーブルの上にアイテムを置いていく。周りの人達も物珍しい道具に会話が弾んでいく。

 

「おい、なんだアレ・・・見たことねぇぞ」

 

「稲妻のような形の剣もあるわ・・・魔剣かしら?」

 

「なあ、商人の姉ちゃん!オレも何か買っていいか!」

 

「ええ、構わないわよ。けど商品には触らないでね。」

 

「でもあの袋にどうやってあれだけの物が入っているんだ?魔道具なのか・・・?」

 

店にいた冒険者達は珍しい道具をよく見ようと席を立ち道具の置いてあるテーブルに集まった。

オレはアンナさんにこの世界では武器がとんでもない値段で売買されている事、価値観が全く違う事を伝えた。

 

「なるほどね、そうなるとここにある物の値段は・・・」

 

そう言ってアンナさんは置いてある商品に値段を付けていった。

 

「へぇ、色んなものがたくさんあるね。」

 

「この杖に本、シエンが作った物によく似ているな。」

 

「それに見た感じ武器の質もよい。かなりやり手の商人じゃな。」

 

フィン、リヴェリア、ガレスも商品を見てそれぞれ感想を述べていく。3人はシエンと同じ別の世界から来た人物だと実感出来た。

 

「うへぇ、そりゃこんだけ良ければこれくらいの値段はするよなぁ・・・」

 

「え!?このサンダーソードっていうのはそんな効果があるの!?ぜひ購入したいわ!!」

 

「おいバカ!その魔剣の値段をよく見ろ!オレ達に買えるワケないだろ!」

 

アンナさんが決めていった価格に騒然として、けどそれくらいはするだろうと納得していく冒険者達。残念ながらアンナさんの商品を購入することの出来る冒険者はいなかった。

 

「あらら、流石に高すぎたかしら・・・」

 

「そんな事ないで、アンナちゃん。妥当なくらい・・・いやもうちょっと高くてもおかしくないで(ホンマ、シエンをウチのファミリアにに入れといてよかったわ・・・こんなヤバイ代物をシエンは作れるようになるかもしれんのやからな)」

 

「残念だけど店じまいね。あっそうだわ、ねぇシエン君。貴方にあったら渡しておこうかと思っていたものがあるの。」

 

商品を片付けているアンナはシエンに渡す物がある事を思い出してある本を渡した。

 

「これは・・・」

 

「これ、私には読めなくてね。貴方なら読めるんじゃないかと思って・・・」

 

渡された本は魔道具の作り方を記したものだった。本の文字は全て暗号化されていて読めない代物となっていた。だがシエンは読むことが出来る、何故ならこれはシエンが書いたものだからだ。

ただ、これは自分の家の地下に置いていたはずだったが・・・

 

「アンナさん、この本誰から買ったんですか?」

 

「イーリスの上層部の方よ。この本を買う前にシエン君のお屋敷が壊されるって事件があったから多分その時に見つけたんじゃないかしら。でもその人しばらく前に謎の急死で亡くなられたのよね・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・おやしき?」

 

「立派な家ってことや。急死って絶対に嘘やろ・・・報復されとるやん!」

 

どうやら上層部の人間が人を使い、シエンの家に侵入して盗み出したようだった。手に入れたのはいいが残念ながらその本を読み解くことができずアンナに売り渡したという事になる。

だがそれが誰かにバレてしまいその人物の怒りを買って消された・・・

 

「お屋敷ってシエンが持っていたのか!?」

 

「それってすごいお金持ちって事よね!?ということはシエンは、おぼっちゃま!?」

 

謎に包まれていた少年の明かされた衝撃の真実に驚くロキファミリアの眷属達。

 

「オレはもう帰らないから別に家がどうなろうとも構わない。それでこれをタダでオレに渡した理由は?」

 

「それに記されている魔道具を作って私に売って欲しいの。素材が足りない時は手配するわ。」

 

「・・・・・ある程度の物しか作れませんけど」

 

「構わないわ、それじゃ商談成立ね。」

 

そう言って荷物をまとめて出入り口に移動して振り向き、シエンに爆弾発言をした。

 

「よろしくお願いするわね。イーリス十六神将様!」

 

「・・・・・・えっ!?ちょっとそれどういうことですか!?アンナさん!!」

 

言われた事を理解した後にアンナを探すために店を出るとその姿はなく、【魔力】を探っても見つけられなかった。おそらくもうこの世界にはいないのだろう。

 

「オレがいない間にイーリスはいったいどうなってるんだよ・・・」

 

この後、店に戻ったらシエンはめちゃくちゃロキ達に質問された。

 

とある場所 夜

 

「他神様よ、それはいったいなんなんだ?」

 

「んー?これかい?よくわかんない。」

 

フィン達との戦いを終え、拠点に戻ってきたヴァレッタはタナトスが持っている少し匂う箱に興味を示した。

 

「なーんか怪しい商人にね、たくさんの人を殺すいい道具がないか聞いたら、これをオススメされたから買っちゃった。」

 

「勝手に買うなよ、他神様・・・使えるってんなら使ってみるか。ヒヒヒ!いったいどうなるかなぁ〜フィ〜ン!」

 




スマブラ楽しー!!
更新遅れてすみません!仕事もまだ忙しいので更新はまだ不安定になります!

フィン 34才 119センチ
アイズ 8才 124センチくらい
シエン 8才 118センチ・・・

イーリス十六神将
参考 徳川十六神将

屍兵との戦いで活躍したイーリス聖王国出身の人物のこと
邪竜ギムレーを滅ぼした人数も16人だったため、十六神将という風になった。


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イレギュラー

今回は場面がコロコロ変わります。

フィンの日記 ●月●日
フィン
「シエン達がファミリアに入って約一年経った。アイズのステイタスも伸びが悪くなり、そろそろ頭打ちというところまでいった。もうこれ以上強くならないのかと焦り、最近アイズは落ち着きがなく、身の安全とゆっくり慎重に強くなる事をアイズに言っているリヴェリアとはよく喧嘩ばかりしている。1人例外がいるがここまで早くランクアップ出来るものはそうはいないだろう。前例がなくどう対処すればいいか判断に困っている。ここ最近は闇派閥が地上で暴れていない、嵐の前の静けさでなければいいのだけど・・・」

トリックスター「あかん!それはフラグや!」

ワシ「リヴェリアの一言がないのう、アイズのことでかなり悩んでいるのかのう・・・」


ロキファミリア ホーム 執務室 夜 雨

 

アンナさんがオラリオにやってきてから約4ヶ月がたった。その間にホームにアンナさんが作って欲しい魔道具の材料を持ってきてそれをオレが利用して魔道具を作ってアンナさんの持ち物と交換したりした。

前に提出した上層のダンジョンのレポートの出来が良かったのか今度は中層の分を作るようにローズさんから依頼を受けた。

そしてフィンのいる執務室で話しながらレポートを書いている。

 

「なかなかに危険な箇所が多いな、状態異常を仕掛けてくるモンスターも続々増えてくる。対策として【対異常】の発展アビリティが欲しいけど・・・」

 

「シエン、君は毒とか麻痺とか食らったことはあるのかい?そういった経験からステイタスに反映されるから状態異常にならないと【対異常】は得られる可能性は低いよ。」

 

「そりゃそうか、まあ今のオレは常に異常状態なんだけどな・・・もしかしたら手に入れられるか・・・?」

 

シエンは【対異常】の発展アビリティを欲しがったが得られる可能性はかなり低いとフィンは指摘する。

 

「さて、どうだろうね。それにしてもギルドには困ったものだよ。この忙しい時に遠征に早く行けと催促してくる。」

 

「いや、無理だろ。もうちょっと地上が落ち着かなきゃ安心してダンジョンに潜れないだろう?遠征に行ってる間にロキがやられて全員恩恵無しになったら全滅だぞ」

 

「そうならないように今度ギルドに遠征を遅らせるように交渉してくるよ。」

 

ギルドにもなんらかの理由があるのだろうが数年は遠征は無理だろう。現状はダンジョンに潜るよりも地上の方が圧倒的に危険だからだ。今のところはギルド本部にも被害は出ていないがいつ出てくるかは誰にもわからないのだから・・・

 

「それにしてもアイズとリヴェリアの帰りが遅い・・・シエン。」

 

「今やっている・・・。・・・いた。大体バベルの塔とウチのホームの間くらいの北のメインストリートだ。けどリヴェリアしかいない。」

 

「リヴェリアだけ?」

 

「ああ、しかも何か様子がおかしい。全く動かないし【魔力】も何か不安定だ。アイズは探知できないからおそらくダンジョンにいると思う。」

 

「・・・取り敢えずガレスと一緒にリヴェリアの所に行ってくる。情報ありがとう。」

 

フィンはリヴェリアがアイズとまた口喧嘩をしたのだと大体予想がついていた。全く動かないというのは気になるが、落ち込んでいる時には昔よく喧嘩をしていたドワーフのガレスを連れて行き発破をかけてもらうのが一番だと思い、ガレスと一緒にリヴェリアのいる場所へ向かった。

 

「・・・3人の様子を見にウチもちょっと出かけてくるわ。」

 

「ならオレもいく。夜は危険だから1人で行かせるわけにはいかない。」

 

フィンが出て行ってしばらく経った後にロキが出かけると行ったのでシエンもロキと一緒に雨の中、リヴェリアのいる場所へ向かった。

 

フィン達がリヴェリアのところまで行く何時間も前の出来事

 

雨の中、リヴェリアと口喧嘩をして別れて剣を片手に持ってダンジョンに向かって走っているアイズを見た者がいた。

 

「ねぇ、ヴァレッタちゃん。今回の襲撃なんだけどさ、ちょっと予定変更してみない?」

 

「ああ?今更かよ、めんどくせえな。」

 

「ちょっとあの【人形姫】ちゃんをウチにスカウトしようと思ってさ。あの子から死の匂いがするんだ、放っておけないくらいに・・・」

 

「ケッ!この変態野郎が・・・大切に育てているあのガキを奪えればフィンにとってもいい嫌がらせになるだろうしなァ。

それに今まではただ私達が暴れるだけだったが使い方が少し分かったコイツを使ったらいったいどんな被害が出るかなァ・・・ひひひひひ!」

 

ヴァレッタは片手に匂う箱を持ちながら、壊れたように笑い続けた。

 

「(ヘンタイなのはヴァレッタちゃんの方じゃないかな?)」

 

そんなヴァレッタを見てタナトスは心の中でツッコミをいれた。

オラリオには今までにはなかったイレギュラーが今夜起きようとしていた。

 

北のメインストリート

 

シエンとロキが追いついた時、3人の話し合いは終わっていてリヴェリアはアイズがダンジョンにいることを聞きダンジョンに行こうとしたその時、地面が揺れた。

 

「揺れたな。」

 

「どこのバカや、ダンジョンで【神威】を発動させたバカは!」

 

「ロキ、ダンジョンで【神威】を発動させたらどうなるんだい?」

 

「分からん!ダンジョンは神々を嫌っているからロクなことにはならんはずや!」

 

「フィン団長!大変です!ガネーシャファミリアからの情報で闇派閥が北東の工業区を襲撃してきているそうです!」

 

『!?』

 

ロキファミリアの団員からの急報にその場にいた全員は驚きを隠せなかった。

世界唯一の魔石産業を誇るオラリオにとって、魔石製品を生産する北東の工業区は重要な場所だ。もしここが破壊されたら経済的被害は計り知れないことになるだろう。

その報告を聞きフィンはすぐさま指示を出す。

 

「ガレスは先に向かってくれ!僕は全体の指揮をとる!君はホームにいる総員を連れてきてくれ。」

 

「分かった!」

 

「了解です!」

 

ガレスはすぐさま現場に向かい、団員はホームに向かった。

 

「私は・・・」

 

「リヴェリア、君はアイズの元へダンジョンに行くんだ。この連続の出来事はあまりにも臭すぎる。」

 

「しかし、私はあの子の親になる資格は・・・」

 

「資格?バカなことは言ってくれるな、リヴェリア。それは今日までアイズと一緒にいた君自身を侮辱する言葉だ。今までの行いは嘘だったのかい?」

 

「リヴェリアとアイズの絆はそう簡単には断ち切れないものだとオレは思うぞ。」

 

「せや、家出した娘を迎えに行くのは母親の仕事やで!」

 

「・・・お前達、すまない。行ってくる!」

 

そうしてリヴェリアはダンジョンに向かって走って行った。

 

「フィン、総員って言ってたけどオレは?」

 

「君はロキを連れてホームに戻り待機していてくれ。」

 

そう言ってフィンもガレスのいる工場に向かって走っていった。

 

「じゃ、オレらはホームに戻ってお留守番するか。」

 

「せやな、みんな頼むで・・・」

 

シエンとロキはホームに向かって歩き始めた。

 

北東 魔石製品工場

 

「邪魔だ!どきやがれェ!」

 

「ここは通さない!そうはさせるかァ!」

 

暴れ回る闇派閥の横暴を押さえつけるのは先行して現れたガネーシャファミリアの団員達。大派閥であるガネーシャファミリアに勝てるはずもなく、徐々に押されていく闇派閥の者達。そこに駄目押しと言わんばかりにガレスが到着した。

 

「おお!ロキファミリアの【重傑(エルガルム)】ガレス・ランドロックが来たぞ!」

 

「よし!ロキファミリアの援軍が来る!もう一踏ん張りだ!!」

 

『オオオオオオオオオオ!!!!』

 

増援が来るとわかり、士気が向上してガネーシャファミリアの団員達の攻撃は苛烈になっていった。そうして、1人、また1人と闇派閥の者達は倒れていった。

 

「やれやれ、ワシが来ても来なくてもあまり問題はなさそうじゃったかのう。」

 

「すまないガレス、ようやく着いたよ。状況は?」

 

「ほぼこちら側が優勢で終わりそうじゃ。じゃが、呆気なさすぎる。」

 

「うん、僕の親指も疼いている。まだ何かあるはず油断はできないね。」

 

フィンは今まで数々の経験を得て、虫の知らせに近いものを習得していた。なにかが起ころうとしている時は親指が疼くことによって知らせてくれる。

 

「その通りだぜェ!フィ〜〜〜ン〜〜〜!!!!私からのプレゼントだァ!受け取りやがれェ!!」

 

大きな声とともに突然現れたヴァレッタは箱を開きフィンの目の前にぶん投げた。それと同時に戦っていた闇派閥の者達も撤退を始める。

 

「これは・・・?」

 

フィンが見たものはどこにでもある箱だった。箱は開いていてそこから勢い良く黒い煙が吹き出して空へと昇っていく。箱のある付近には見たこともない魔法陣が現れていた。

匂いの箱、それはシエンのいたイーリスにて存在していたアイテム。その箱を開いた人物と同等クラスの強さを持った【屍兵】が魔法陣から現れるのだ。

 

「オオオォ・・・」

 

「ゥウウ・・・」

 

全身には傷を負っており体色は黒に近い紫、顔はデスマスクをつけており口からは箱と同じ黒い煙を吐いていて目は赤く光っていた。

 

「新種のモンスターか?」

 

「いや待て!あのモンスターが持っている本、シエンの持っているやつによく似ていないか!?」

 

現れたマントを着ているモンスター達は魔道書を発動、彼らの周りに魔法文字が円を作り現れる。魔法の発動の合図だ。

 

「ッ!?全員退避!?」

 

火炎、大竜巻、雷の槍がフィン達のいる場所に向かって襲いかかった。フィン達にダメージを与えるだけでなく建物に火が付き壊れていった。

 

「ひひひ、ひひひゃはははは!!!コイツはスゲェ!さぁドンドン暴れやがれ!!」

 

黒い煙からは新しい屍兵が現れる。天を駆ける馬に跨ったモンスター、飛竜に跨ったモンスター。鎧を纏った馬に跨ったモンスター達。

 

「・・・・ギギギ」

 

「シャアアアアア!!」

 

「あ?あっぶねェ!?コイツら誰でも構わずに襲いかかってくるのか。あの箱はもう回収は出来そうにないな、取りに行ったら殺されちまいそうだ。あばよフィン!!」

 

ヴァレッタの近くにいたモンスターはヴァレッタに向かって攻撃を仕掛けた。その攻撃をかわし、箱を開けた人物でも操ることができないことを確認するとヴァレッタも他の闇派閥の人と同様に撤退をした。

 

「オオオ・・・カミ・・・コロ・・・ス」

 

「モンスターが喋った!?」

 

「神を殺す?まさか!?」

 

現れたモンスターが喋ったことに驚くフィン達。神を殺す、その言葉の意味はとてもシンプルだった。

 

『オオオオオオオオオオ!!!!』

 

魔道書を持ったモンスター達は再びフィン達に向かって魔法を一斉射撃。その攻撃を防いでいる間に空を移動できる馬や竜に跨ったモンスター達が空中に舞い上がりオラリオ中心部にあるバベルの塔に向かって一斉に移動を始めた。

 

「なにッ!?一斉に飛んだ!?」

 

「クソ!空中にいたら攻撃が届かない!」

 

「おい・・・あのモンスター達、バベルの塔に向かって移動してないか・・・?」

 

「あいつら、バベルの塔にいる神々を殺しに行くつもりなのか!?」

 

バベルの塔はダンジョンに行くための場所でもあり、上に上がれば店があったり神々が住んでいる。屍兵達は神の【神威】を感じ取り居場所を把握して神がたくさんいるバベルの塔に狙いをつけた。

 

「不味いぞフィン!このままだと工場区とバベルの塔が破壊されてしまうぞ!!」

 

「ガレスは工場区にいる新種のモンスターを全て倒せ!攻撃魔法、遠距離攻撃の出来る冒険者は僕と共にバベルの塔へ向かう!急げ!!」

 

フィンは急いで指示を出し、空中にいるモンスターを追いかける。

小人族は他の種族に比べて目がいいので空中を移動している黒い体躯と翼を持った馬に跨ったモンスターが魔道書【トロン】を片手に持ちバベルの塔に向かって魔法を撃とうとしているのが見えた。

 

「ッ!間に合えェェ!!」

 

フィンは持っている黄金の槍を黒い馬に向かって投擲した。

 

「グォオオオ!???」

 

しかしその槍は飛竜に跨っていたモンスターが庇い、武器で軌道を逸らして別のモンスターに当たった。フィンの一撃は魔道書を持っているモンスターに届くことはなく、雷の槍がバベルの塔に向けて放たれた・・・

 

ロキファミリア 匂いの箱から屍兵が現れた時

 

「ッ!?この・・・感じは・・・まさか!!」

 

無事ロキと共にホームに戻ることができたシエンだったが、新たに現れた【魔力】を感知した。

 

「どうしたんや!」

 

「バカな!?ありえない!なぜ奴らが、【屍兵】がここにいるんだ!?」

 

「しかばねへい?なんやそれ?」

 

「詳しい話は後だ!アイズがランクアップするのを待つつもりだったが急いでフィン達に伝えるにはランクアップするしかない!頼むロキ、【ステイタス】の更新を!発展アビリティは【神秘】で!」

 

「・・・分かった。シエン、フィン達の力になってあげてくれや。」

 

ロキは急いでシエンの【ステイタス】を更新、ランクアップの手続きをした。

 

シエン

 

Lv.1→Lv.2

 

力 :I0→I0

 

耐久 :B768→I0

 

器用 :SSS2411→I0

 

敏捷 :C609→I0

 

魔力 :SSS3694→I0

 

魔防 :G→F

神秘 :I

 

【魔法】

 

【ミラーバリア】

・速攻魔法

・敵の飛び道具や魔法を反射する。反射する際は向きを自由に変えられることができ、いろんな攻撃も防ぐことができる。形は精神力を消費すると自由に変えられる。

・魔法を反射したとき魔法の威力が上昇する。

・空中に足場を作ったりできるが透明で見えない。

()()()()()()()()()

 

【ドラゴンフォーゼ】

詠唱 【姿が変わりゆけども決して変わらぬは己の心】

・竜変化 竜種に特効ダメージを与えられる

・【魔力】が高ければ高いほど【耐久】【敏捷】に超補正(()()()()()()()()()

・空中を浮くことが出来る

・【魔法】を無効化する。(回復と強化は受け付ける)

スキル【光の波動】が【魔法】発動している間に任意発動出来る

 

スキルは変化なし

 

「【魔法】の効果が少し変更されたな。」

 

「レベルアップする事でいろんなことが変わるのは当然のことや。さ、いってきい。」

 

「おう!行ってくる!」

 

そう言ってシエンは上着を着て【魔道書】が数冊入るくらいのバックパックを背負い窓から外へ飛び出してから【ウインド】を発動して風を起こしたその反動で空中を飛び、移動開始した。

 

「(屍兵の数は工場区に22、いや23体。だがまだ新たに出てきてるな、もしかして誰か匂いの箱を手に入れて使ったのか!?アンナさんも来ていたし他の人も来ている可能性はあったな。クソッ!油断した!)」

 

空中を飛んで狙い撃ちされることを避けるため地上から数メートル上を空中移動している最中に敵の居場所の索敵を再度行った。

レベルアップした事によって更に探知の性能が向上して屍兵の持つ特有の【魔力】から敵の数を正確に把握した。

フィン達のいる工場区にそのまま行こうとしたがダークペガサス、ドラゴンナイト達が南西に動き始めたのを感知した。

 

「(屍兵は敵を見つけ次第襲いかかるハズ。そうしないということはそれよりも優先することがあるということ。そして奴らがこのまま行けばバベルの塔・・・・そうか!そういう事か!!)」

 

シエンはかつての屍兵との戦いの経験から屍兵達が何を狙っているのかを理解した。

 

「(不味い!このままだと間に合わない!あの【魔法】で一気に行く!!)」

 

シエンは【ウインド】の発動を止めて地上に降りて走りながら詠唱を行う。

 

「【姿が変わりゆけども決して変わらぬは己の心】」

 

「【ドラゴンフォーゼ】!!」

 

詠唱を行い足元には魔法陣が現れて【魔法】発動するとそこから光が溢れ出てシエンを包み込んだ。

その光が消えた後に現れたのは全長3.5Mの黒い眼に鋭い牙に長い首、全身には白銀の鱗があり長い尻尾、両翼の翼膜は翡翠色のドラゴンだった。

 

再び地上から浮き、高速移動を開始する。レベルアップの影響により前よりも段違いに速くなりバベルの塔の真下に辿り着いた。

空中にいるダークペガサスの【魔力】が膨れ上がるのを感じ見上げると今まさに【魔法】をバベルの塔に向かって発動しようとしているところだった。

 

「オオオオオオオオオオ!!」

 

シエンは一気に上に浮き上がり、放たれた【トロン】を受け止めた。

 

 

 

別の場所

 

ヴァレッタは戦線から離脱してモンスターがバベルの塔に向かって【トロン】が放っているのを見た。

 

「ひひひひひ!!マジかよあのモンスター共!私達には出来なかったことをいとも容易くやってくれやがった!!私もまだまだ甘かったな・・・あ?」

 

【魔法】によって塔は破壊されず一匹の白銀のドラゴンが【魔法】を体で受け塔を守っていた。

 

「ハァ!?モンスターが神のいる塔を守っただとォ!!??なんだよそれ!?」

 

 

別の場所

 

「おい、なんだよあれ・・・また新たなモンスターか?」

 

「綺麗・・・」

 

「(あれは・・・シエンか。打つ手がなくなっていてホントに焦ったよ・・・)」

 

放った槍を防がれ打つ手のなくなっていたフィンは心の中で安堵した。

 

「団長!あれはいったい何ですか!?」

 

「あれはシエンだ。今まで黙っていたがシエンは竜化のレア魔法を持っていて、能力の向上、更に【魔法】による攻撃を受け付けない。」

 

『!?』

 

団員達はその魔法の情報を聞き驚愕した。魔法は戦いにおいて切り札だ。しかしシエンはそれを受け付けない、魔導士に対して最悪の相手だからだ。

 

「上手く防いだけどまだ終わっちゃいない。誰か僕に槍を貸してくれ。」

 

「どうぞ!」

 

「ありがとう。シエン!!僕を乗せろ!!」

 

フィンは団員から槍を受け取るとシエンに向かって叫んだ。

 

スキル【指揮戦声(コマンド・ハウル)

・一定以上の叫喚時における伝播機能拡張

・乱戦時のみ、拡張補正は規模に比例

 

フィンは地を蹴りシエンに向かって高く跳び上がる。

シエンはフィンの叫びを聞き、突っ込んできたフィンのスピードを受け流して背中に乗せた。

 

「うわっと!危ない危ない・・・フィン、無茶をするなぁ。」

 

「君なら必ず乗せてくれると信じていたからね。さて、反撃開始だ!!」

 

屍兵達はターゲットをシエン達に変え襲いかかってきた。

 

バベルの塔の中

 

「なんだあのモンスター!?」

 

「いや、あれモンスターか?なんかオレ達に近いものを感じるような・・・」

 

「オレも乗りてェ!」

 

神々は自分達を守ってくれたドラゴンに興味津々で2人の空中の戦闘を楽しんでいた。

 

「にしてもあの黒いモンスターはなんなんだ?今まで見たことがないぞ。」

 

「私もだ。」

 

「だったら名前をつけないとな!」

 

「よし、ならば地獄の闘士、【ヘル・ミッショネルズ】と名付けよう!!」

 

「長えよ、死んだ人間っぽいし【屍兵】でいいだろ」

 

戦いをよそにモンスターの名前が付けて非常事態にも関わらず楽しんでいる神々もいた。

 

「あの【勇者】が乗ってるドラゴンにも名前をつけようぜ!」

 

「それなら私にいい名前が浮かんだのだけどいいかしら?」

 

塔の最上階に住んでいるフレイヤはこの戦いを近くで見ようと下りてきていた。

 

「おお!フレイヤ様!いい名前とは?」

 

「ウフフ、そう慌てないで。そうね、【ファヴニール】なんてどうかしら?」

 

ファヴニールは、魔法の力でドラゴンに姿を変える者のことだ。魔剣グラムを持ったシグルズに殺されたが・・・

別の意味で【抱擁するもの】だったりする。

フレイヤは人の魂を見ることが出来てシエンの魂が前よりも強く輝いていることからランクアップを果たした事を知って【二つ名】を授けた。

 

「【ファヴニール】・・・」

 

「フレイヤ様がそう言うならオレは大賛成だぜ!」

 

「そうだそうだ!!フレイヤ様万歳!!」

 

そうしてロキの知らないところでシエンの【二つ名】は決まってしまった。

 

 

「・・・!?」

 

4ヶ月前に受けた銀色の気配にシエンはゾクリと体を震わせた。

 

「シエン、大丈夫かい!?」

 

「ああ、なんでもない!それよりさっさと終わらせよう!」

 

フィンとの協力で屍兵の数もだいぶ減り残り数体といったところだ。

 

「グォォォ!!」

 

ドラゴンナイトが斧を持って突撃してくるとフィンが槍で防ぎ、シエンは精神力を消費して竜特効の白銀のブレスを吐いた。

 

「ギギャアアアァァ・・・・」

 

そのブレスを食らったドラゴンナイトの屍兵はブレスに飲まれ消滅した。ブレスを躱し他の屍兵が襲いかかってきた、【トロン】を使いバベルの塔に攻撃しようとしていたダークペガサスだ。

 

「シエン、残りは?」

 

「ガレスのところももう片付いている。これでラストだ!」

 

突っ込んできたダークペガサスの屍兵の槍をフィンが応戦しシエンはペガサスのほうに小さくブレスを吐き、隙を作り出そうとするが、しかし容易く躱され距離を取られてしまう。

シエンは確かに速くなったがまだまだ相手の方が速かった。

 

「(速い、急いで倒さないととオレの精神力が尽きてしまう・・そうなればオレ達の負けだ)」

 

「シエン、落ち着いて。焦ってはいけないよ。」

 

フィンはシエンの精神力が尽きそうになって焦っている事を見抜き声をかけるがシエンは軽い精神枯渇に陥り、体がふらつきバランスを崩した。

その隙を逃さず再びダークペガサスが突撃してシエンの体に風穴をあけるべく槍を突き刺そうとすると。

 

「【ミラーバリア】!!」

 

「グオ!?」

 

シエンは精神力を絞り出して竜化している状態で別の【魔法】を唱え槍を弾いた。

屍兵は見たこともない反撃に隙を晒した。その隙をフィンは見逃さなかった。

 

「今だ!!」

 

「ゴァ!?」

 

フィンはシエンの背を蹴り、敵の懐に突撃して持っている槍で屍兵の胸を貫いた。すると屍兵はゆっくり体が消滅した。

土台にされたシエンは少し呻き、空中にいるフィンをまた背に乗せた。

 

「やっと・・・終わったな・・・流石にこれ以上は持たんぞ。」

 

そのまま地上に降りて探知した所、屍兵はもう出現していなかった。

 

「おつかれシエン。ゆっくり休んでくれ。」

 

シエンは【魔法】を解除して体を横にして眠った。

 

この日シエンとアイズは神の恩恵を得てからレベルアップするまでの期間が約一年という短さで世界最速記録を叩き出すのだった。




シエンの竜化した時の色は、黒色、朱色、白銀色のどれにしようかでめっちゃ悩んだ。
空中戦とか書けるわけないよ・・・
発展アビリティの他の候補は【魔道】【工作】でした。

ボツネタ

フィン、スキルあり「シエン!!乗せてくれ!!」

シエン「なんて声・・・出してやがる・・・ride on・・・」


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新たな仲間

フィンの日記 ●月●日

フィン「この日の夜、僕達は今までに見たこともない新種のモンスターに遭遇した。そのモンスターは【魔道書】を持っていた事からシエンが何か知っているのでないかと事件が終わった後に聞いてみた。
簡単に書くと
匂いの箱を開けた者と同等クラスの力を持っている事。
武器を使い襲ってきたりする事。
倒した後にアイテムを落としたりする事だ。
匂いの箱という物を工場区で発見できたがそれはもうすでに壊れていたため、シエンによるともう出現しないという事らしい。」

トリックスター「フィン達が開けたら第一級冒険者クラスがうじゃうじゃ湧くってことかいな!?」

リヴェリア・リヨス・アールヴ「なんだその危険な物は!?」

ワシ「オラリオ崩壊待った無しじゃな・・・」

アイズ ステイタス Lv.1 シエンがいることで原作とは少し変わった。

力 :C609

耐久 :C689

器用 :A821

敏捷 :A820

魔力 :H100



ロキファミリア 事件から数日後

あの出来事の後に緊急神会が行われ、新種のモンスターは【屍兵】と名付けられ、屍兵が地上で現れ暴れまわった事件は【ヘル・ミッショネルズ事件】と言われるようになった。

今までに見たこともないモンスターの為、ギルドは情報を集めようとしているが知っている人が覚醒の世界にいる人だけなのでまるで集まらないようだ。

あの箱が一つしかないってことはあり得ないのでまたどこかで取引されていると思うと寒気がする。

今回の事件から空中戦ももしものために出来るようにならなくなりフィンから【ウインド】の【魔道書】を大量に作るように言われオレも忙しくなった。

 

お昼になり魔道具制作を途中にして執務室から食堂に移動し席に座ると、フィンがヒューマンの少年と猫人の少女をみんなが見える位置に連れてきた。

 

「今日から新しく僕らの家族となる冒険者が二人増えた。これから仲良くやってほしい!二人共、自己紹介をしてくれ。」

 

「ら、ラウル・ノールドです!よ、よろしくお願いします!!」

 

黒い髪のツンツン頭の少年で見た目はなんとも普通だった。なんだか親近感を覚える。

 

「アナキティ・オータムです。家族からはアキと呼ばれてましたのでアキと呼んでください。」

 

こちらも黒髪の黒い尻尾の美少女で美少女好きなロキがいかにも好きそうな感じだった。

 

「君達二人の席はあの小さい二人の席の近くかな。」

 

フィンは新入り二人の席をオレ達の席の近くにした。二人共13歳らしくて年はそう近くはないがまだ他の仲間たちより喋りやすいということだろう。

 

「えーと、シエン君とアイズちゃんッスよね?これからよろしくッス」

 

「私達はまだまだ分からないことだらけだから色々教えてほしいな。」

 

「こちらこそよろしく」

 

「・・・よろしく」

 

お互いに挨拶をして食べながら喋る事になった。

 

「二人共ランクアップってどうやったら出来たんっすか?」

 

ラウルは今オラリオで持ちきりの話題である世界最速ランクアップを果たした二人に聞いた。

 

「オレは【魔道書】を書いたり【屍兵】を倒したから。」

 

「ワイヴァーンを倒した。」

 

「「・・・え?」」

 

ラウルは【魔道書】というのはよく分からなかったが【屍兵】は分かった。数日前に起きた事件で【屍兵】は一体一体が強く、ガネーシャファミリアの眷属でさえも苦戦したというほどだというのにそれを目の前の少年が倒したと言い。

もう一人はダンジョンの中層に出てくる竜種をLv.1撃破したのだと言う・・・。

 

「ハハハ!ダメだぜ新入り!そいつらの真似をしたら幾つ命があっても足りねぇぞ?」

 

「そうよ、確かにレベルアップするためにはより強いモンスターと戦う必要があるけど一人で戦う必要はないのだから、協力しましょう?」

 

「「は、はい・・・」」

 

話を聞いていた他の先輩達も話に加わってきて新入り二人に無理しないように言う。

自分達よりも小さい子供達がとんでもない無茶をしたのだと思った。

 

「えっと、シエンだっけ?【魔道書】というのはどういうものなの?」

 

アキはシエンに【魔道書】というものについて尋ねた。

 

「詳しくは言わないけど【精神力】を持っていれば【魔道書】の数だけ【魔法】を使える。」

 

「・・・・・【魔法】って3つまでしか使えなかったはずよね・・・」

 

「フィンは【精神力】を消費して使う魔剣って言ってた。」

 

「なるほど・・・それをシエンが書いているの?」

 

「そういう事。だからダンジョンに行く時間がなかなか取れなくて大変なんだ。」

 

シエンはわかりやすい魔剣を例に出してアキに教えた。なお、教えてもらったアキの笑顔は引きつっていたが。

 

「どうやらオレ達とんでもないファミリアに入ったみたいっすね・・・」

 

「ええ、そのようね・・・」

 

ラウル、アキの所で話が盛り上がっている頃、自分の椅子に座っているロキは不機嫌だった。

 

「面倒な事になった・・・」

 

「ロキ、何があったか聞かせてもらえるかい?」

 

悩んでいるロキにフィンが話を聞きに来た。

 

「実はな・・・」

 

それは緊急神会にて【屍兵】についての情報交換だけかと思っていたがそのままの流れでまさか二人の【二つ名】を決めることになるとは思わなかったからだ。

 

緊急神会

 

「アイズ・ヴァレンシュタインは【剣姫】に決定!」

 

「お〜ええやん」

 

「やりますねぇ!」

 

「オレのファミリアに114514!(いいよ来いよ!)」

 

「誰がやるかボケェ!次はシエンやな。シエンの【二つ名】はウチがとっておきのを考えてきたんや。それは【ファ・・・】」

 

「【ファヴニール】なんてどうかしら?」

 

「おいこら!色ボケ女神!!ウチが言おうと思っとったんに何言っとるんや!!しかも同じとか!」

 

「ウフフ、同じなら問題はないでしょう?」

 

「【二つ名】には問題はない。だが自分が名付けようと思ったのがウチにとっては大問題や。」

 

女神フレイヤは基本的にバベルの塔の最上階で人を眺めているだけなのだが気に入った子供を見つけると積極的に動く。普段は神会にも顔を出さないが今回の緊急神会に来たのもこれを見通してのことだった。

 

「ロキ、私最近アクセサリー(子供)が欲しくてね。白銀の竜の鱗が欲しいの。」

 

「誰がやるか!!」

 

「えっ、てことは昨日の事件で現れた【ファヴニール】と今決めた【ファヴニール】が同じって事はあれはやはり子供!?」

 

「人をモンスターに姿を変える【スキル】、【魔法】どっちだろうな?気になる〜」

 

「どっちだっていい!レアだぜ!今度会ったら話しに行こうかな」

 

「おい抜け駆けは許さねぇぞ!オレも行く。」

 

神々は特別、前代未聞といった事に興味津々であの手この手で、もて遊ぶ。それによって子供達の人生が狂わされたりするのだが。

 

「おいお前ら・・・下手にウチの子に手ェ出したらどうなるか分かっとるんやろうなぁ・・・」

 

『すみませんでした!!(手は出さないけど会わないとはいってない)』

 

天界では邪神とも恐れられたロキの言葉に神々は萎縮し黙り、そのまま緊急神会は終わった。

 

ロキファミリア

 

「てことがあったんや・・・」

 

事情をフィンに話すと苦笑した。

 

「まあレベルアップするこの事で名前が売れてバレてしまうのはしょうがないんじゃないかな?神々の反応はともかく」

 

「忠告しても絶対あいつらちょっかいかけてくるで!ホンット神ってやつはどうしようもないな!!」

 

「ロキが言ってはいけないと思うけどね・・・」

 

ロキも他の神々にも負けず劣らず好奇心が強く人間臭い。度々いろんな子供にちょっかいをかけたり、面倒ごとを自身の子供に押し付けたりなどやらかしている。

 

「要注意なのはあの色ボケ女神や。シエンは外出する時は絶対に一人にしてはならん!」

 

「ンー、後はシエン自身に気をつけてもらうしかないね。」

 

ロキファミリア 鍛錬場

 

ラウル、アキの歓迎会も終わり。シエンは魔道書製作の続きをしようとしたがアイズにレベルアップによる認識のズレを調整するために模擬戦をして欲しいと言われ模擬戦をする事になった。

シエン自身も調整が終わっておらずちょうどいい機会なので模擬戦の相手役を引き受けた。

 

「さてやるか」

 

「うん、いくよ。【テンペスト】!」

 

アイズは【魔法】の詠唱をするとアイズを守るように風が吹き現れた。そしてアイズの剣、ソードエールに【風】を付与した。

 

「攻守一体の【魔法】か、いい【魔法】だな。」

 

「うん、大切な【魔法】」

 

そうして期待の新人同士の模擬戦が始まった。

 

「どうだい二人共、あの子達の戦いは」

 

この模擬戦を見に来ていたフィンが連れてきたラウルとアキに尋ねる。

 

「す、凄いっす・・・」

 

「あんなに小さいのにどうしてあれほど速く戦えるのか不思議です。」

 

「ハハハ、それが神の恩恵の力だよ。そしてランクアップした事で、前のレベルより段違いに速くなるからね。」

 

目の前では小さな子供が高速に動き回り。二人が接近戦に入るとシエンの影が複数の黒い手に変わり、アイズに取り付こうとするがアイズの風の鎧によって弾かれる。

アイズはそのまま突撃してシエンを斬りつけようとするがシエンは【魔法】を使い身を守る。そして距離を取るために【ウインド】を使い空中に逃げる。

 

「空を飛んだっす!?」

 

「嘘!?本当に飛べるなんて・・・」

 

「シエンの【魔道書】は使い方次第でいろんな事ができる。それにあれはまだ初級らしいよ?」

 

「初級!?じゃあもっと強力なやつもあるって事っすか!?」

 

「ああ、全く末恐ろしいよ・・・」

 

あの子達がどこまで行けるのかどこまで強くなれるのかフィンはこのからの先のことが楽しみだった。

 

「ふぅ、あっぶねぇ・・・アイズ相手に接近戦はやっぱりダメだな。あの【魔法】のせいで拘束できない。」

 

シエンは空中でアイズの【魔法】の分析をしていた。接近戦では予想以上に厄介な【魔法】だと理解した。

 

「風の【魔法】を使えるんなら当然ここに来れるわなぁ・・・」

 

「逃がさない」

 

アイズはシエンの【ウインド】の使い方を真似て、空中に跳び上がり【エアリエル】の風を身体で受け、空中に浮かせていた。

ちなみにアイズの装備アーマードレス・ロキカスタムのスカートはめくれて下に履いていたスパッツは丸見えである。

そんな事を気にせずマジ顔なアイズという、なんともシュールな光景に苦笑いを浮かべるシエン、心の中でリヴェリアに後で叱られるだろうなと思った。

 

「グヘヘへ!アイズたんのスカートめくれ過ぎやろ!ナイスやシエン!」

 

「何をバカなことをいっている・・・後で三人の説教だな。」

 

「ゑ?堪忍してやママ!」

 

「誰がママだ。」

 

「ロキ、余計なことを言わなければよかったのう・・・」

 

空中

 

アイズはシエンのいる空中にまで上がってきたのはいいが初めてのことで動きがぎごちなかった。空中で動くたびに【精神力】を消費するため戦う事に集中できないからだ。

 

「ほれほれ追って来いよアイズ〜」

 

シエンは寝たきりのポーズでアイズを挑発して更に距離を取った。シエンもレベルが上がった為【魔力】と【精神力】が上昇しアイズよりも【精神力】には余裕があった。アイズの【精神力】を全消費させて【魔法】を使わせない作戦だった。

人一倍負けん気の強いアイズはその挑発に乗りシエンに追いつこうとする。同じレベル2ではあるが【魔力】の潜在値が圧倒的に負けているアイズではこれ以上【エアリエル】の出力をあげることはできずシエンに追いつくことはできなかった。

シエンがワザと速度を落として時々追いつきそうになってもジグザグに動いて追跡を躱された。シエンよりも【敏捷】は上だがそれも空中では役に立たなかった。空中戦はシエンの方が上手だった。

 

「シエン君、あんなに動いて気持ち悪くならないすか?」

 

「さあ?慣れているから大丈夫なんじゃないかな?」

 

「あっ降りてきた。」

 

シエンはアイズの【精神力】の量が残りわずかになった事を探知して地上に降りた。アイズもフラつきながら降りる。

 

「・・・頭がガンガンする。」

 

「それが精神枯渇ってやつだ。ここがダンジョンの中じゃなくて良かったな。ダンジョンの中だと死んでたぞ。」

 

「・・・」

 

シエンは今回の模擬戦で調整だけでなく、アイズに【魔法】を使うデメリットを身体で覚えてもらう為に模擬戦を行なったのだ。

 

「これぐらいで二人共もういいだろう。アイズはリヴェリアにマジックポーションを貰ってくるといいよ。それで症状が治まるから。」

 

「・・・うん」

 

フィンはもう決着がついた事を感じて模擬戦を終了させた。

空中戦、【敏捷】が役に立たず【魔力】【精神力】を持つものが制する戦いにフィンは自分も飛んでみたいと興奮を覚えずにいられなかった。

 

そしてアイズの精神枯渇の症状が治まった後にロキ、シエン、アイズはリヴェリアにそれぞれお説教を食らうのだった。




あけましておめでとうございます!


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炎の台座

フィンの日記 ●月●日

フィン「ラウル達が入って数週間経った。ラウル達がいる影響で二人共何か変わるかと思ったがそんな事はなく。シエンは魔道具作りに専念していたり、アイズは毎日ダンジョンに入り浸っている。新たな発見といえば、シエンが【魔道書】の製作中にインクをこぼし、一からやり直しになるところだったが。よく見ると紙がこぼしたインクを弾いていてやり直しにならずに済んだという不思議なことが起きた。これもまた【神秘】の力なのだろうか。」

トリックスター「【神秘】はウチらの軌跡を引き起こすもんや。まだまだ分からないことがたくさんあるけど、今回の件はそうだと思うで!」

リヴェリア・リヨス・アールヴ「なるほど、興味深いな・・・」

ワシ「椿の奴と一緒に鍛治仕事をさせるとどんな武具ができるかのう」


ガネーシャファミリア 藍色の髪の麗人 シャクティ・ヴァルマ

 

「あの【屍兵】とやらの情報は手に入ったか?」

 

「いえ、残念ながら・・・」

 

あの事件から数日経ったが新種のモンスターの情報はなかなか手に入らない。情報を持っていると思われるファミリアは実際に戦ったロキファミリアと我がファミリア、ガネーシャファミリアだ。

分かっていることは姿や形、武器や【魔法】を使ったりなどだ。モンスターがそんな事が出来るなんてとても信じられん。

空を飛ぶ馬や竜が現れた時は我々では手を出すことができず、易々とバベルの塔を攻撃されてしまった。

 

だが、突然塔の麓から白銀の竜が登り攻撃を防いでくれた。その竜は緊急神会で【二つ名】を与えられた【ファヴニール】のシエン。

ロキファミリアに新たに入団した謎のヒューマン、レベルアップに約1年と信じられない速さでLv.2になった。しかもまだ8歳だという。

あの【屍兵】と戦った感じでは大体Lv.4くらいだったからレベルアップしてもおかしくはないだろう。

が、たとえ戦う前にLv.2だとしてもLv.4クラスを焼き尽くすなどはあり得ないのだ。そして【屍兵】が塔に攻撃するタイミングで現れて攻撃を防ぐ・・・怪しい、怪し過ぎる・・・。

なんらかの【スキル】を持っていることは間違いないがその子供が【屍兵】について何か知っていると私のカンが言っている。

 

「シャクティ!失礼するゾウ!俺がガネーシャだ!」

 

そう言って部屋に入ってきた我が主神、顔を覆うゾウの仮面。浅黒い肌のガネーシャだ。

 

「何か用か、ガネーシャ。」

 

「おう!ちょっとオラリオ内を探索していたら旅商人にあってな!とても珍しい物だというから買いたいのだ!!ファミリアの貯金で!」

 

この間は山車を買ったのにどうやらこの主神はまたやらかすようだ。また団員達が泣いてしまう事になるだろうな・・・私はもう諦めたが

 

「で、その買いたいものとはなんだ?」

 

「魔法の本、それに何十回も使える雷の魔剣に回復の杖だ!」

 

「何だその馬鹿げた道具は・・・ああ、神には嘘は通用しないという事は本当という事か・・・」

 

ん?待てよ・・・あの【屍兵】も同じような物を持っていたような・・・もしかしてその人物も何か知っているかもしれないな

 

「ガネーシャ、その人物をホームに連れて来て・・・いや私も行こう。直接話しがしたい。もしかしたら今回の事件の情報を得られるかもしれない。」

 

「よし!ならば行くぞ!!待ってろ旅商人!俺がガネェェェェシャだぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

オラリオの治安を守るのが我々ガネーシャファミリアの使命。何としてでも情報を手に入れなければ・・・

 

ロキファミリア ラウル シエンの部屋

 

「なるほど、ダンジョンの上層はこういう風になっているんすね。」

 

「そ、ここが危険な場所で霧が発生して今まで戦ってきたモンスターが勢揃いしていて一匹一匹強化されて出現する。」

 

俺は今シエンの部屋でダンジョンについて勉強をしてるっす。年下の子供に教わるってのはとても恥ずかしいけど、実際に知らないから知っている人に聞くのが一番っすね。

それにシエンの教え方は絵を使ったりしてわかりやすい。ファミリアに入って数週間、シエンと話していると年上の兄ちゃんと喋っているような感じがして変な感じっすけど。

 

シエンの部屋は【魔道書】や杖や紙でいっぱいで綺麗に並べられているっす。

俺がこのファミリアに来る前は執務室で作業をしていたらしいけど自分の部屋で道具を作る事が許されたみたいっす。

部屋を綺麗にしていないとまた執務室に移動すると副団長に言われたみたいっす。シエンにとって副団長は頭が上がらない相手みたいっすね。

 

「よし、ダンジョン上層についてはこんな感じ。随分覚えるのが早いなラウル。」

 

「シエンの教え方が上手いからっすよ。シエンはダンジョンに行かなくていいんすか?アイズ()()はいつも行っているのに。」

 

「アイズにさん付けって・・・」

 

俺が初めてダンジョンに潜った時、出てくるモンスターに怯えてて震えていたのに。小さな女の子が顔色一つ変えずに切り捨てる姿にオレは恐怖した。とてもじゃないけどちゃん付けなんてもう呼べないと思うっす・・・

 

「今はもうちょっと中層に向けての装備を整えたいからまだ行かなくていいかな。おっ?アイズが無事地上に戻ってきたな、リヴェリアも一緒だ。よかったよかった。あー、お茶うま。」

 

そう言ってお茶を啜るシエン。

団長からシエンは【魔力】を探知する力を持っていて、団員一人一人に【魔素】の違う【魔宝石】を持たせて居場所を常に把握するようにしていると教えてもらったっす。

全員の居場所を把握なんて頭の中一体どうなってるんすかね?

 

ロキファミリア ガレスの部屋 さらに数日後

 

「ガレスー、いるかー?」

 

「おるぞ、入ってもいいぞ。」

 

シエンはガレスの部屋をノックしてガレスが居ることを確認して部屋に入る。部屋の壁には武器が掛けられていたり、本や道具を置いてある。

 

「お主がわしの所に来るなんて珍しいのう。何かあるのか?」

 

「盾が欲しくてね。ガレスって、武器や防具って作れるか?」

 

「ワシは手入れをしたりするくらいじゃ。それにウチのファミリアに工房はないから無理じゃ。ちなみにどんな盾が欲しいのじゃ?」

 

「いたってシンプルな盾かな。けど【神秘】の力を使ってイーリスにあった国宝、【炎の台座】を再現したい。」

 

「【炎の台座】?」

 

「本当は【ファイアーエムブレム】という。けど、ファイヤーエンブレムって言い間違いする人がいるから。【炎の台座】でいいかなって」

 

「その盾はあらゆる願いを叶えると言われていた。けど実際はそうではなくて世界の危機が訪れた時に【覚醒の儀】に必要になるものだったんだ。」

 

「【覚醒の儀】・・・」

 

「王家の人間には神竜ナーガの力が宿っているんだ。その力を目覚めさせるのに【炎の台座】を使って、虹の降る山を登って【覚醒の儀】を行うんだ。」

 

「なるほどのう。いろいろ聞きたい事があるがつまり、その盾に似た物を作りたいって事じゃな?」

 

「そういう事、【神秘】の事を他の派閥にバレたらまずいからウチのファミリアでなんとか出来ないかな?」

 

なんでも【神秘】の発展アビリティ持ちは10人にも満たなくてレアの中レアだからだ。今更感はあるが隠しておいた方がいいだろう。

 

「残念ながらムリじゃ、口が硬いかどうかは保証できんが腕の立つ鍛治職人なら紹介できるぞい。ワシと直接契約しておる、ヘファイストス・ファミリア団長、椿・コルブランドじゃ。」

 

とある平屋造りの建物の前 シエン

 

オレはガレスに連れられ北東のメインストリートから第2区画の中心にある工房に辿り着いた。

 

「椿、入るぞ。」

 

「・・・」

 

ガレスが声を掛けるが建物の中からは返事は返ってはこない。ひたすら金属の打撃音が響くだけだった。

 

「・・・ええい、上がるぞ。シエンもこい」

 

「わかった。」

 

しばらく待ったが何の反応もなかった為、待ちきれずオレ達は建物の中に入った。工房の奥には褐色の肌に黒の短髪。身長は170センチくらいの豊満な胸を持つ上半身はさらしだけで下半身は真っ赤な袴姿の女性だった。ガレスが言うには彼女はハーフドワーフらしい。

 

「・・・ふう、こんなものかな。・・・何奴ッ!・・・何だガレスではないか。中に入ってくる前に声を掛けてくれと散々言ったのに。」

 

ようやく気がついたのかオレ達を見た。背中からは分からなかったが彼女の左目に眼帯をつけていた、目に怪我でもしたのだろうか?

 

「ワシは何度も言ったんじゃがのう・・・」

 

「そうか。全く気づかなんだ!あっはっはっは!許せ許せ!!」

 

そう言って笑いながら詫びを入れる椿、ガレスの側に1人の子供がいることに気がついた。

 

「ん?ガレス、そこの童は何者だ?前に会った【人形姫】と同じくらいの歳に見えるが。」

 

「シエンじゃ。巷では噂になっている筈じゃが。」

 

「最近は工房に篭っておって知らんかったわ。それで手前に何の用だ?武器の新調か?」

 

「ワシではない。こやつが盾が欲しいと言ってな、それでお主に作って欲しいんじゃ。」

 

「よろしくお願いします。」

 

「まあガレスには世話になっているからそれくらいなら・・・で?シエンといったか。どんな物を手前に作って欲しいのだ?」

 

「こんな感じのです。」

 

シエンはガレスに話した内容を話して、設計図を渡した。

 

「なるほど、国宝のレプリカを作って欲しいって事だな。引き受けた。」

 

椿はあっさりと引き受けた。

 

「えっと、そんな簡単に引き受けていいんですか?」

 

「うむ、先程言った通りガレスには世話になっているし、こういった物を作るのもまた手前にとってもいい経験になるだろうからな。無論、金は取るぞ?」

 

「その代金はワシが払おう、ランクアップ祝いじゃ。」

 

シエンはホームにヴァリスを取ってこようとしたがガレスが払ってくれることになった。

 

「ありがとう、ガレス。」

 

「なに、前の事件でも活躍したんじゃろう。これくらいの事はさせてくれ。」

 

「ほう、なかなかやるではないか、お主。では作るためにこの設計図を借りるぞ。数日後には出来ると思うから楽しみに待っているといい。」

 

「よろしくお願いします。」

 

そうしてシエンは椿に【炎の台座】を作る事を依頼して、言われた通り数日後に取りに行き手に入れた。




原作ではアイズは入団してから半年経った時に椿に一度会ってます。
その時は短髪だったので今回も椿は黒髪の短髪という事にしています。

【炎の台座】(レプリカ)縦40センチ、横30センチの小さめの盾

シエンの体(118センチ)には大きすぎるので背中辺りに装着している。上着→盾→マント→バックパックといった感じ。
椿が作った物で材料はミスリルのみで作られている。
その盾には五つの窪みがあり、そこに時計回りに白、赤、青、緑、黒の【魔宝石】をはめこみ完成。
椿から直接貰いに行き、シエンが手にした時に【神秘】が発動して、白色の盾だったが金色の盾になった。この事で椿に【神秘】を持っている事がバレてしまい、バラされたくなくば直接契約を結ぶ事を脅・・・提案され契約する事になった。

性能
装備していると【魔宝石】を埋め込んであるので【魔法】の威力が上昇(杖の代わり)
詠唱【リフレクト】と唱えると精神力の消費無しで近接攻撃を防御、遠距離攻撃を反射する障壁を展開する。


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ガネーシャ杯

フィンの日記 ●月●日

フィン「今日も2人はいつも通り。ここ最近では、なにやらガネーシャファミリアが前の事件の影響から下級冒険者、上級冒険者のレベルアップを狙って大会を開こうとしているらしい。ギルドから期待のルーキーの二人に出場してほしいと言われた。困ったもんだ。」

トリックスター「人気者は辛いな〜。けどウチの子の晴れ舞台やな!やったれ二人共!」

リヴェリア・リヨス・アールヴ「アイズはともかく、シエンのやつは出るか?」

ワシ「見せ物にされるのは絶対に嫌がるだろうのう・・・」


ダンジョン中層

 

「逃げろォォォォ!!」

 

「・・・倒す!」

 

「待てアイズ!このルームから通路に逃げるんだ!細い一本道ならば複数同時に相手をしなくてもすむ!」

 

現在、シエンとアイズそして団員達はモンスターの群れに遭遇してモンスターに追われている最中だ。それをどうにかするべくシエンはアイズに通路に逃げる事を指示する。

 

ダンジョンの簡単な仕組みは、ルームがありルームとルームの間には通路がある。そして下の階層ほど階層の面積が広くなり40階層地点ではオラリオ全域ほどあるといった感じだ。

 

シエン達はルームから出て通路に移動したが前からもモンスターの群れが襲いかかってきた。

 

「嘘だろ!?」

 

「このままでは挟み撃ちを食らうぞ!?」

 

「面倒な・・・アイズ!前は頼んだ!!後ろはオレに任せろ!!」

 

「うん!【吹き荒れろ】!」

 

アイズは【エアリエル】を発動して前から襲いかかってくるモンスターの殲滅にかかった。アイズの発展アビリティ【狩人】も発動していてより効率よく撃破できる。他の団員達もアイズと同じ前のモンスターにかかっていった。

 

「【ミラーバリア】!」

 

シエンは【魔法】を発動して通路に障壁を張りモンスターの移動を防ぐ。

 

「ガッ!?」

 

「ガルゥ!?」

 

突然に現れた見えない障壁に激突して動きの止まったモンスター達。そこにシエンの追い討ちがかかる。

 

「【ミラーバリア】!」

 

更に【魔法】を発動させた、モンスターの群れの最後尾に。

シエンの障壁は【精神力】を使って形が変化することが出来る、先に張った障壁の形を鋭い棘のものにして後ろにある障壁も同じようなものにしてどんどん幅を狭めていった。

 

「グガッ!?」

 

「ゴ・・・グ・・ァ・・・」

 

モンスター達がその障壁に押しつぶされて叫ぶこともできず串刺しになり生命を維持できず死に絶えて血と灰と魔石を残して消滅した。

 

「よし」

 

「よし、じゃねぇよ!?なんてえげつない事を・・・うっぷ・・・」

 

後ろからのモンスターを殲滅した事を確認して前の方を見るとシエンのやった事を見ていた団員がいて青ざめて言った。

 

「アイズはっと、殆ど片付けてるな。オレの出番はナシか」

 

前の方の群れはアイズ達が殆ど片付けており、もうおしまいといった感じだった。

 

「これで終わり・・・」

 

「そうだな、ただ最近はモンスターの群れに遭遇する事にが多くなったな。」

 

「それはお前らが他のファミリアの連中に目をつけられているからだよ。」

 

「はぁ、だよなぁ。」

 

「?」

 

シエンは理解してアイズは何故目をつけられているのか分からず首を傾げた。

 

「モンスターの群れ押し付ける【パス・パレード】、要は嫌がらせをしているってわけさ。地上で嫌がらせをやればバレてしまうがダンジョン内ならば誰がやったかバレづらいからな。とはいえ、ロキファミリアに喧嘩を売ってくるなんてそれなりのやつかもしれんな。地上でも気を付けろよ二人共。」

 

「わかった」

 

「分かりました。」

 

「よし、今日はこのくらいにして引き上げよう。」

 

そして今日のダンジョン探索は終了した。

 

『グゲゲゲゲ・・・』

 

ただ中層では珍しく上層にいる蛙のモンスター【フロッグ・シューター】の鳴き声に似た声が聞こえたのがシエンの頭の中に疑問として残っていた。

 

夜、ダンジョンからホームに戻り体を綺麗にしていつもの場所で夕食を取る。そこにロキが重大な発表があると言い出した。

 

「みんな、今日もお疲れさん!ちょっとだけウチの話に付き合ってくれや。2週間後にオラリオの最東端にある闘技場にてバトルトーナメント【ガネーシャ杯】が開催される事になった。」

 

「なんでまたそんな事を、闇派閥がやってきて危なくないか?」

 

「そこはガネーシャがなんとかするみたいや。最悪、神の鏡で中継して見てもらうって方法もあるしな。闇派閥の連中との戦いに負けないように冒険者同士戦わせて経験値を得てランクアップを出来る者を増やそうという魂胆や。あ、アイズたんとシエンは出場決定な?」

 

「強くなれるなら参加する。」

 

「ハァ!?ふざけんな!!何勝手に決めてんだロキィ!!オレは参加しないぞ。手の内を晒すなんて真っ平御免だ!!」

 

片方はやる気満々、もう片方は不満ありありだった。

 

「いや、他の神々も自分らに興味津々でな。断りきれんかったんや、それに」

 

「それに?」

 

「ウチの子が大舞台で活躍しとるとこ見たいやん?」

 

「ロキの都合じゃねぇか!!面倒臭いことになったな・・・」

 

残念ながらシエン達の出場は決定でどうしようもなかった。今更うだうだシエンが言っても意味はないので素早く食事を取った後は自室に戻り、魔道具製作に励むのだった。

 

時間は少し戻り 食堂 シエンが出てった後

 

「さっきのシエン、無茶苦茶怒っていたっすね。」

 

「あの子も怒る時は怒るのね。なんか安心したわ。」

 

「え?なんでっすか?」

 

「だって、あまりにも子供らしくないんだもの。けど、不機嫌な時に撒き散らしていた【魔力】は子どもらしくなく凄まじかったけどね。」

 

「とても、怒ってた。」

 

「いや〜やっぱまずったかな。」

 

「ロキ、そりゃシエンも怒るっすよ。俺はシエンと会ってまだそんなに時間は経ってないけどシエンは表に出たがらない目立ちたくないってタイプだと思うっす。」

 

3人で話をしているとロキが話に入ってきた。

 

「ウチもそのことはよう分かっとる。けどなぁ、レベルアップして目立った以上は実力を示さないと他の冒険者に舐められるんや。今回の大会はある意味いい機会なんやで。」

 

「それは私たちじゃなくてシエンに言ったほうがいい。」

 

「・・・せやな。アイズたんの言う通りや。ちょっと行ってくるわ。」

 

正論を言うアイズにロキは返す言葉もなく、シエンの元に行くのだった。

 

「と言うことなんや。嫌かもしれんけどすまん!この通り!」

 

ロキはさっきアイズ達に言った事をシエンに伝えた。

 

「・・・分かったよ。今度同じようなことがあったら勝手に決めないで相談してほしい。」

 

「分かっとる。まかしとき!」

 

渋々シエンは出場することを了承した。そして大会の優勝商品は何なのか聞いた。

 

「魔剣に治療の杖らしいで。」

 

「絶対にアンナさんが関わってんなこれ・・・ガネーシャファミリアにも商談を持ちかけたか。」

 

「ガネーシャのとこは金をいっぱい持っているからガッポリ儲けれそうやな。」

 

「ガネーシャファミリアはギルドとも仲がいいんだっけ?てことは【屍兵】の事も理解しただろうな。フフフ、知らない方が良かっただろうに。」

 

「死んだ人間を利用して作ってあの箱から出た【屍兵】は開けた奴と同じくらいの強さになって出てくるんやろ?おっそろしいでホンマ・・」

 

「死んで神の恩恵を失った冒険者の場合だと強いのは出来ないと思うけどな。生きたまま【屍兵】にしたらどうなるかは知らんけどね。」

 

「そ、そんなことができるんか!?」

 

「いつかの機会に話してやるさ。【屍兵】を生み出した元凶、天才錬金術師フォルネウスの話をな。さて話はお仕舞いだ。魔道具作るから静かにしててくれよ。」

 

「めっちゃ気になる!話してくれへん?」

 

「話す時は聞きたい人集めて話す。一人一人話すのは面倒だからまた今度。」

 

そうして、ロキを部屋から追い出して魔道具製作に戻った。

 




戦いたがらない主人公を戦わせるのって結構大変なんだと今更ながら気づいた。
今回はちょっと短めです。

【神の鏡】原作6巻
下界にて行使が許されている【神の力】
神ウラノスの許可が必要。
千里眼の能力を有し離れた土地においても一部始終を見通すことができる。(原作)
ただし声は聞こえないと思われる。(考察)


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大会その1 主神の裏切り

フィンの日記 ●月●日
フィン「大会の前日になった。あの二人だけじゃなくLv.1、Lv.2の団員達も出場が出来るのでこの2週間彼らも鍛錬を頑張っていた。出場の出来ない僕らは観客席で彼らの試合を見届けたいと思う。闇派閥の連中に邪魔などさせない。」

トリックスター「どうやらこの大会は特殊ルールがあるみたいやで。なんやろな〜」

リヴェリア・リヨス・アールヴ「この2週間はシエンと模擬戦をメインに行った。【魔力】【魔法】の扱いについては文句の付け所がないな。」

ワシ「ダンジョンで模擬戦をしていたお主らを見たがその階層はボロボロになっておったのう。」


大会当日

 

いよいよ大会当日となり数々の事件で静まりかえったオラリオにこの日ばかりは少し活気が戻った。今回の舞台の闘技場の周りには厳重な警備がされており闇派閥の連中も暴れることはできても即座に捕縛されてしまうだろう。

もちろん捕縛される前提で現れる可能性も十分あるので油断はならないが。

 

闘技場に着き、選手控え室にシエン達ロキファミリアのメンバーが向かう時、フィン達からの激励があった。

 

「君達はロキファミリアの代表だ。悔いの残らない戦いをするようにね。」

 

『はい!』

 

「お主らの熱き戦いを見せてくれい!」

 

『はい!』

 

「熱くなるのはいいが【大木の心】を忘れずにな。」

 

『はい!』

 

「オレがガネーシャだッ!」

 

『はい!・・・ん?』

 

「なにサラッと混ざっとんねん!ガネーシャ!!」

 

激励の中に関係のない声が聞こえてロキがツッコミを入れた。

 

「ちょっとロキに用があってだな!前に言ってた特殊ルールなんだが・・・・かくかくしかじか。」

 

「ほうほう!おもろそうやんそれ!楽しみにしとるで!!」

 

「確かに伝えたゾウ!ではさらばだ!!」

 

そう言ってガネーシャは走り去っていった。

 

「ロキ、神ガネーシャはなんと言っていたんだい?」

 

「内緒や!大会が始まったら分かるから楽しみにしとき!」

 

「なーんか、やな予感が・・・」

 

「何があっても勝つ、それだけ。」

 

「ホントにブレないなアイズ・・・」

 

「頑張るっすよ二人共!」

 

「頑張ってね、応援してるから。」

 

入団して間もないラウルとアキは出場せず、シエンとアイズに言葉をかける。

 

「やるだけやってみるよ。さ、行くか。」

 

「うん。」

 

控え室に入る前にガネーシャファミリアの団員にクジ引きをさせられて控え室に入った。

先にいた冒険者達の視線が一気にロキファミリアのメンバーに向いた。

 

「おい、ロキファミリアだぜ。」

 

「そりゃ、出場するって書いてあったじゃねぇか。来て当然だろ?」

 

「あんなガキがLv.2にねぇ〜、ケッ!一体どんなズルしたんだか。」

 

「なんだ?嫉妬か?みっともねぇの!」

 

「るせー!」

 

厳つい顔の男達がシエン達を見て悪態をついて。

 

「・・・ハァ、ヘルメス様。なぜ私をこんな大会に出場させたんですか・・・優勝賞品が気になるとは言いましたが・・・」

 

アクアブルーの髪色をして銀枠の眼鏡をかけた少女は溜息をつき。

 

「ねぇリオン!来たわよ、期待のルーキーの2人が!どんな戦いを見せてくれるのかしらね!」

 

「アリーゼ、他人の事より今は集中して・・・」

 

「やれやれ、そんな余裕がないから青二才なのだリオン。」

 

「輝夜!私はアリーゼの事を思って・・・」

 

シエン達を見ていたはずなのに仲間達と口喧嘩を始める少女達。

一癖も二癖も有りそうな冒険者達にシエンは厳しい戦いになるような予感がした。

 

シエン達が待っている間に会場ではいよいよ大会が始まろうとしていた。闘技場の観客席は空席もあるがまだ集まった方だろう。

 

「オレがガネーシャだッ!」

 

「はい!開催の挨拶ありがとうございました!では今回の大会のルールを紹介します。」

 

開催の挨拶?が終わり、隣にいたガネーシャファミリアの団員が魔石製品の拡声器を片手に声を響かせていた。

 

「ルールは至ってシンプル!基本は一対一の戦いになります。しかし、戦う前に冒険者の所属しているファミリアの神にこのカードを引いてもらいます!」

 

そう言って茶色のカードを観客に見せる。何処ぞの決闘者が使うものによく似ていた。

 

「そしてこのカードに書いてある事を守って戦う。場外、選手はこの闘技場から出てはいけません。失格となります。カードに書いてある事以外ならば何でもありです!最後に、もう無理だと思ったら降参をしてください。主神が降参させても構いません。では選手達に引いてもらったクジの結果で対戦する冒険者が決まります。第1回戦はこの二人です。闘技場にあがってください!」

 

第1回戦

ロキファミリア シエン 対 オグマファミリア モルド・ラトロー

 

「早速かよ・・・」

 

「頑張ってシエン。」

 

シエンは背中のバックパックにある4冊の魔道書、腰につけた小さい体に合わせた短めの杖を両腰に2本ずつ、背中に盾がある事を確かめて控え室を出た。

 

「ヘッ!」

 

「相手はガキだぜ?手ェ抜けよ?」

 

「誰が抜くかよ!ぶっ潰してやる!!」

 

モルドは取り巻きと軽く話をして控え室を出た。

そして両者は闘技場に上がり選手の登場に会場は盛り上がった。

 

『おい、あんなちっちゃいのが戦うのか?』

 

『なんかたくさん道具を持ってるな・・・』

 

『怪我して泣いたりしないか大丈夫かしら?』

 

『オオオオオオオ!!!』

 

『やれよモルド!生意気なガキをブッ殺せェ!!』

 

随分と過激な発言があるが日々鬱々していたのも影響があると思われる。

 

「では選手が戦いを始める前に神ロキ、神オグマにはカードを引いてもらいます。どうぞ!」

 

ガネーシャファミリアの団員は観客席にいるロキ、オグマそれぞれの前に移動して持っている盤の上に置かれているカードの束を引くように言った。

 

「よし、引いたぞ。えーと、なになに?【魔道具の使用禁止】?」

 

「おっとォ!なんという事だァ!!【ファヴニール】は魔道具をメインに戦う冒険者だと聞いています!いきなり大ピンチだ!!」

 

神オグマが引いたカードはシエンにとってかなりの痛手だった。だがまだ、まだ何とかなる。

 

「さすがはオグマ様だぜ!ありがてぇ事だ!」

 

「・・・」

 

「おっしゃ、次はウチのターンやな。大丈夫やシエン、ウチが勝てるために最高のカードを引いたる!いくで!!」

 

そう言ってロキは気合を入れてカードを引いた。

 

「アースガルズ・ドロー!!ウチの引いたカードは【精神力の使用不可】のカード!この効果によりこの試合での【精神力】の使用がでk・・・ハッ!?」

 

「・・・・・(うん、まあそうだよな・・・見事なフラグだったもんな・・・)」

 

だがその気合は最悪の状況を生み出した。己の主神が自分の眷属にトドメを刺したのだ。この効果によりシエンの勝利は絶望的となり会場の観客席にいる神々はロキには見えないように顔を伏せ、笑うのをこらえていた。

魅力の影響で周囲の人を惑わせてしまう美の女神フレイヤは黒いローブを着て観客席に座っていた。

顔だけを晒していたフレイヤは上品に手で口元を隠して小馬鹿にするように言った。

 

「うふふふふ、ロキ、ちょっといけてないんじゃないかしら?」

 

「・・・なんかどっかであの色ボケがウチのことをバカにしとるような気がするなァ!!」

 

控え室では会場がどうなっているのか分からないため神がやってきて神の鏡を使って会場の様子を見せていた。

なお、大会が始まる前に神ウラノスには許可を取ってある。

 

「プッ!ギャハハハハハハ!!!腹いてぇ!」

 

「お、おい・・・そんな笑ってやるなよ・・・ふ、ふふ。ロキにバレたらどうなるか、ブフフッ!!」

 

「流石ロキ!俺たちにできないことを平気でやってのける!!そこに痺れる憧れるゥ!」

 

控え室ならロキにはバレないとゲラゲラ大笑いをする神々。本来なら選手の為に静かにしているのが正しいが神にはそんなことは関係なくフリーダムだった。

 

「そんな・・・」

 

「アイズ、今日シエンが持ってきた精神力を必要としない武器って何か知っているか!?」

 

「えっと・・・モンスターから魔石を取り出すためのナイフだった筈・・・」

 

「あっ・・・」

 

「終わったな・・・」

 

ロキファミリアの団員達はもうシエンがこの試合で勝つことができないと察してしまった。

 

「これは・・・厳しいね・・・」

 

「精神力の使用の不可に魔道具まで封じられるとは・・・」

 

「何をやっとるんじゃロキは・・・」

 

観客席にいたフィン達もこの条件でシエンが勝つのはかなり厳しいものだと思った。

 

「そんな・・・それじゃあシエンは負けるっすか!?」

 

「ラウル、まだ戦いはまだ始まってないわ。信じましょう、シエンを」

 

「・・・そうっすね。きっと何とかなるっすよね。」

 

ラウル、アキは年下の先輩の勝利をただ信じるだけだった。

 

「ギャハハハハハハ!!運命の女神様はオレ様に微笑んでくれてるのかもなぁ!!魔導士なのに【魔法】が使えないなんて余りにも悲惨すぎて思わず同情してしまうぜ!!この運はカジノで活かしたかったな!!」

 

対戦相手のモルドも同情しているといってかつ爆笑していた。

自分の武器を全て封じられた魔導士に何が出来るのだとそう言った。

 

『そ、それでは始めてください!試合、開始!!』

 

若干声が震えているガネーシャファミリアの団員の開始の合図で試合が始まった。

 




原作14巻でわかった事
ジャガーノートは階層によって強さが違うのが生まれる。
深層で生まれた場合は第一級冒険者のパーティですら倒してしまうほど。(原作)
上層は神ウラノスの力により出現はしないと思われる。そう思いたい。(考察)
リューさんは11歳でアストレアファミリアに入った事(原作開始時にはオラリオに10年いる事になる)
五年でLv.4(13巻のステイタス公開から見るにおそらくLv.5へランクアップ可能)
なんか各レベルごとに一年ちょっとでランクアップしていて十分にヤバイんですけど・・・
現在は8年前で13歳もしくは14歳なのでLv.2後半って事にしてます。

輝夜は喋り方がよく変わるので喋らすのむずい・・・


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大会その2 敗北者はどっち?

控え室 アストレアファミリアの少女達

「いよいよ始まるわね、どっちが勝つかしら?」

「あのオグマファミリアの方がかなり有利みたいですが。」

「だがあの子供は全然動揺していないな。大勢の人に囲まれて戦うってことになるのに、場慣れでもしているのか?だとしたらまだわからんぞ、リオン」


モルドは一気に試合にカタをつけるべくロングソードを片手に持ちシエンに突撃した。

 

「オラァ!!」

 

「・・・」

 

シエンはスキル【道具節約】が発動した壊れないナイフで応戦する。

Lv.2になったことで強くなれても【力】の差は歴然で受けきることはできない。アイズとの模擬戦同様に受け流しをして反撃のチャンスを伺った。

 

「チッ、そんなチャチなナイフが折れねぇなんてよ。何かのスキルか、気に食わねぇ!」

 

「・・・」

 

「さっきから黙ってばかりで何か喋れねぇのか?アァン!?」

 

そう言ってモルドは凄んで見せてもシエンは顔色一つ変えずにただジッとモルドの様子を見ているだけで喋りもしない。

いくら相手の剣さばきがアイズの剣さばきより劣っていたとしても受け流しきれない場合は腕が切り落とされてしまう為シエンには喋るだけの余裕はなかった。現状はシエンが圧倒的に不利だ。

 

「(・・・ったく。こんなんでどうやって勝てってんだよ。今は受け流すことに集中するか、なんとかスキを見せてくれるといいんだけど)」

 

「オラァ!まだまだ行くぞォ!!」

 

 

控え室では上級冒険者達がシエン達の戦いを見ていた。

 

「やれ!モルド!!」

 

「ルーキーに格の違いを思い知らせてやれ!!」

 

モルドを応援している者達。

 

「にしてもあのペラッペラのナイフは全然折れないな。どうなってんだ?」

 

「変な光がナイフから出てるし何かのスキルじゃね?」

 

「もしかして持ってる物を不壊属性を付加するスキルとか?」

 

「なんだよそれ!?反則かよ!?」

 

「いやわかんねぇけどよ・・・そうかなって」

 

冷静にシエンの持っているスキルを分析している者がいたり。

 

「あのガキンチョやるな。オレだったらさっさとリタイアしてるぜ。」

 

「ああ、うまく受け流して今のところ怪我一つ負ってねぇ。魔導士ってのは接近戦は苦手なはずなのにな。」

 

「だが今のところは攻勢には出れていない。ここからだな。」

 

そう言ってシエンのことを認めているものもいた。

 

そんなこんなで10分間シエンとモルドは打ち合った。モルドが主に攻撃して疲れが出てきて呼吸を乱し、肩で息をしていた。対してシエンは防御に徹していたのでまだ体力に余裕があった。

 

「(・・・ッざけんな!なんでこのオレ様がこんなガキにあしらわなければならねぇ!体格差もあるしリーチ差はとんでもねぇくらいにあるってのに!)」

 

『おいおい、こんなガキにいなされてんじゃねぇぞ!』

 

「ッ!(クソ!他人事だと思って好き勝手言いやがって!!)」

 

モルドはシエンにナイフ一つで己の攻撃を受け流されていることに焦りが出ていた。そして観客からヤジが出てきて焦りによって剣さばきが疎かになっていった。

そしてそんなチャンスを逃すシエンではなかった。

 

「ッゼァアアアア!!」

 

「・・・フッ!」

 

モルドはロングソードを大振りに振り下ろしシエンの頭を狙ったがそれをシエンはナイフで受け流しながらモルドの懐に潜り込んだ。

 

「何ッ!?ぎゃあああああ!!??」

 

そしてシエンはナイフをモルドの腹に突き立てモルドの体からは鮮血が飛び散った。モルドの腹に出来たキズにさらにナイフをねじ込んだ。

 

「年下のガキにいっぱい食わされる気分はどうだ?」

 

「ッ!?」

 

その時のシエンは口元を大きく歪ませ笑み浮かべていた。

 

『ヒッ!?』

 

『うわぁ・・・』

 

『マジかよあのガキ・・・』

 

『えげつねぇ・・・』

 

『ひひっ、ひひひひひひ!!良〜い顔するじゃねぇか!他神様が気に入るのも分かる気がするぜ!』

 

『でしょ!?ヴァレッタちゃん!ちくしょー!なんでロキんとこの子なのかなぁ!!』

 

各地で神の鏡を通して見ていた人達はドン引きしていた。明らかにモルドがシエンの頭を狙っていた方が危険ではあったが、相手の腹を突き刺して抉る幼い子供の暗い笑みのインパクトが強すぎた。尚、闇派閥の連中は大喜びしていた。

 

「クソがァァァァ!!」

 

「・・・」

 

ここからは戦いは一方的だった。シエンはひたすら守りに徹してモルドが腹の傷により動きが鈍ったところを狙って攻撃していた。誰がどう見てもシエンの勝利は目前だった。

 

「降参する。」

 

『・・・は?』

 

勝ち目のないモルドが降参するのではなくシエンが降参した。

 

「ハァ!?なんでや!もう勝ちが決まっとったやないかい!!」

 

「ンー。このまま続けていてもシエンはもう戦えなかっただろうしね。」

 

「どういうことや?」

 

「ロキ、シエンの両手を見てごらん。震えてるだろう。格上の相手の攻撃を長い時間受け流していたんだ。おそらくもう物を持てないくらいを疲労しているはず。」

 

「・・・引き際っちゅうことか」

 

「それにシエンは【魔法】が使えなくても戦えるって事を周りの人達に証明した。それはロキの目的は達成したという事。失うものは無いしそれに手の内を見せたくないときたら・・・」

 

「さっさと試合をやめるって事か・・・まあ、しゃあないか・・・」

 

「試合に負けて、勝負に勝ったといったところかの。」

 

「・・・アイツを鍛えた私としてはもう少し頑張ってもらいたかったがな。」

 

「あの時笑っていたシエンはめっちゃ怖かったっす・・・」

 

「やっぱり普通じゃないわね。あの子・・・何者かしら?」

 

そうしてシエンの戦いは終わった。会場から降りていったシエンの顔は清々しい顔で対するモルドは苦虫を噛み潰したような顔で降りていった。

 

「畜生がッ!!」

 

モルドは控え室に行く通路で立ち止まり壁を殴りつけた。相手が降参したから勝ったが、実質は負けていた。あのガキを侮っていたばかりに負けた。不甲斐ない己自身にイラついていた。

 

「お〜い、モルド!大丈夫か!」

 

「傷だらけじゃねぇか、ほらハイポーションだ。」

 

「・・・ありがとよ」

 

モルドはハイポーションを飲んだ事で体の傷が塞がり体のだるさが治っていった。が、気持ちは晴れなかった。

 

「・・・」

 

「・・・まあ元気出せよ。」

 

「そうだ!カジノにでも行こうぜ!そうすりゃ嫌な事だって忘れられる!」

 

「・・・ああ、そうだな。・・・よし!オレは棄権する!行くぞオメェら!!」

 

「「あ、待てよモルドーー!!」」

 

戦いは納得のいくものではなかったがその事から目を背け、モルドは大会を棄権して取り巻き達と一緒にカジノに向かうのだった。

あの会場には居たくはなかったのだ、モルドが恐怖したあの子供の笑みをもう見たくなかったから・・・

 

 

「ただいまー」

 

シエンは控え室に戻って仲間達に気軽に声をかけた。

 

「おかえり?」

 

ホームに帰ってきたわけでは無いので言葉があっているか分からないのでとりあえず返事をするアイズ。

 

「勿体ねえな、シエン。もうちょっとで勝てたのに。」

 

「別に、オレは勝つのがオレの目的ではなかったからこれでいい。」

 

「かーッ!可愛くねぇの!!」

 

ドライなシエンに呆れる団員。

 

「アイズ、ありがとな。いつもの模擬戦が無かったらあの持久戦の作戦は取れなかった。」

 

イーリスにいるころのシエンは戦争が後半になると剣をほとんど握っていなかった。

アイズとの模擬戦で剣を使う戦い方を思い出していたのだ。それがなかったらシエンは手首を切り落とされていただろう。

 

「・・・どういたしまして。また、やる?」

 

「ほどほどに頼む・・・もう剣でアイズに勝てる気がしねぇからな。そんじゃ、オレは観客席に行くわ。頑張れよアイズと先輩達。」

 

そう言ってシエンは控え室を後にするのだった。




まあ、シエンならこうするかなって。勝ってもいいことないし・・・
今後モルドは原作通りカジノに没頭していきます。


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大会その3 未来の友人の為に

イーリス聖王国 シエンがまだイーリスにいるころ シエンの屋敷

「なあ、アスフィ。」

「何ですか?」

「いっつもサンダルだけど寒くないのか?」

「寒くありませんよ。私は神の恩恵を授かっており、その影響で身体が強化されていますので寒さとか暑さには強くなっているんです。」

「へー、結構便利なんだな。その【おんけー】てのは。」

「シエン、せっかくだしオレの眷属にならないか!」

「自称神は黙ってろ。」

「ヒドイ!」

「そんでその金の翼が付いたサンダルだけど普通じゃねぇな。何かあるのか?」

「詳細は言いませんがこれは私が作った物でして、とても大切な物なんです。」

シエンは知らなかったがアスフィはとある海の王国のお姫様で籠の中の鳥のような生活をしており。そんなアスフィをヘルメスが連れ去ってオラリオに連れてきた。

宮殿にいる時に外に飛んでいた鳥を見て自分も何にも縛られずに自由に空を飛べたらと思っていた。
その時のことを思い出し、【神秘】で作ったのがそのサンダルだった。

スキル【呪い】の具現化を実体化に変更しました。
こいつ、意味知らずに使ってたらしいっすよ?


シエンの戦いが終わった後、試合は順調に進んでいった。シエンはロキ達のいる観客席に移動してそこで観戦をしていた。

闘技場では覆面をしたエルフが冒険者を圧倒していた。

 

「あのエルフ、アストレアファミリア所属だっけ?なかなか強いな。」

 

「そうだね。今、勢いのあるファミリアの一つで君たちと同様に物凄い勢いで強くなっているエルフだ。二つ名は【疾風】、疾風のリオン。」

 

「ふーん。ま、一応【魔力】を覚えておくかな。」

 

「【疾風】の勝利!では次の試合はこの2人です!」

 

ヘルメスファミリア

アスフィ・アル・アンドロメダ 対 イシュタルファミリア タンムズ・ベリリ

 

「・・・私ですか。」

 

「イシュタル様に勝利を」

 

「今回のルールは、決まりました!【魔道具使用不可】と【アンティルール】です!魔道具使用不可は説明しましたので省略させてもらいますが、アンティルールは勝者が相手の持ち物を一つ奪うことが出来ます!」

 

『!?』

 

「早めに降参しといて良かった・・・」

 

今回のルールに会場にいる人たちは驚き、シエンは【魔道具】を奪われる事にならずにすんでホッとしていた。

 

「(何ということです・・・【魔道具】が使えないとなれば、最初に戦っていたあの子供と同様に私には勝機がありません。降参するべきなのでしょうが、敗北者は持ち物を奪われる。嫌でも戦わなければならない!)」

 

【万能者】の二つ名を持つアスフィは【魔道具】と短剣を使って戦う冒険者である。【魔法】もあるが詠唱に時間がかかるので実質使用不可。シエンと同様に不利な条件で戦うことになった。

 

 

「降参・・・します・・・」

 

「勝者、タンムズ・べリリ!」

 

しばらく戦った後勝ち目がないと察したアスフィは悔しげに降参した。

 

「さあ、アンティルールにより【万能者】の持ち物を手に入れられます!」

 

黒髪褐色の少年タンムズはアスフィを見て身につけていた【魔道具】に興味を持ち、アスフィの履いている金の翼が装飾されているサンダルも【魔道具】なのではないかと思いそれを欲した。見た目も悪くないし主神に献上する為でもあった。

 

「では、【万能者】が履いているそのサンダルを貰う。」

 

「!?」

 

「早くしろ。」

 

「クッ・・・」

 

アスフィはその場でサンダルを脱ぎ、裸足になって手を震わせながらタンムズに手渡した。

 

「次の試合を始めます!両者会場から降りてください!」

 

アスフィは肩を落とし拳を握りしめて控え室に向かった。

 

「やあ、アスフィ。運が悪かったね。」

 

「ヘルメス様・・・」

 

アスフィの主神ヘルメスは観客席から控え室の行く通路に立っていた。アスフィはヘルメスに詰め寄り言った。

 

「ヘルメス様ッ!なぜ私をこの大会に参加させたんですか!!そのせいであのサンダルが・・・」

 

「お、落ち着けって。いや、神のカンってやつでね?参加させた方がいいな〜って。」

 

「そんな適当な・・・」

 

「それにそう悲観する必要はなさそうだぜ?」

 

「え?」

 

「あの小さな竜が取り返してくれるかもしれない。」

 

ヘルメスは観客席でアスフィの試合を見ていたシエンを見ていた。一度も会ったこともないのに妙に集中して見ており、アスフィがサンダルを脱ぎ、手渡す時は顔を歪ませていたのだ。

 

「そんな事が・・・でもなぜ?」

 

「さあ?俺にもわからないけど。もしかしたらね。」

 

ロキファミリアが座っている観客席

 

「・・・」

 

シエンは黙っていた。だが体からは凄まじい【魔力】を滾らせ怒りを抑え切れずにいた。

 

「ア、アキ。何でシエンはあんなに怒っているんすか?」

 

「知らないわよ・・・」

 

2人は小声で会話する。シエンが怒ってるのは少し前のことだ。

 

アスフィの試合が終わった後、タンムズは闘技場から降りずに観客席に跳び移り褐色の美の女神イシュタルに手に入れたサンダルを献上した。

 

「イシュタル様、こちらが【万能者】から手に入れた物にございます。」

 

「タンムズ、見事な勝利だったな。褒めてやるぞ、流石は私の自慢の眷属だ。」

 

「ハッ!」

 

そう言ってイシュタルはサンダルを履こうとしたがサイズが合わなかった。

 

「献上してくれたものだが、少しばかり私の足に合わないな。お前の気持ちは嬉しいが他の奴に渡すことにしよう。」

 

そう言ってイシュタルは足を軽く振って履いていたサンダルを放っぽり出した。そして床に落ちたサンダルは落ち方が悪く金の翼の付いた部分から落ちて翼が折れた。

 

「おや?壊れてしまったな。後で捨てておけ。」

 

「ハッ!」

 

そう言ってタンムズはサンダルをそこらにいた同じ眷属の仲間に手渡して自分も控え室に向かって移動を始めた。

 

「ふざけやがって・・・!!」

 

シエンは今の一部始終を見ていた。見ていたことで美の女神の【魅力】に若干やられていたがアスフィのサンダルを雑に扱ったことで【魅力】から醒めて激怒していた。シエンの【魔力】が一気に吹き荒れた。

 

「シ、シエン!?いきなりどうしたっすか!?さっきまでなんかトローンとしていたのに!?」

 

「お、落ち着いて!!」

 

「止めるな、あの女神をぶちのめさないと気が済まねぇ!!」

 

『!?』

 

いきなり物騒なことを言うシエン。ロキファミリアの眷属達に衝撃が走る。

 

「あ、アカン!?それだけはあかんて!」

 

「ンー、流石にそれは許可はできないかな。」

 

「落ち着くんじゃ、まだ大会は終わっとらんぞ。まだ何があるかわからんじゃろうに。」

 

「落ち着け、【大木の心】を忘れるなと言ったはずだぞ。シエン。」

 

「クッ・・・」

 

フィン達の言葉で少しは落ち着きを取り戻すシエン。だかシエンの怒りは収まらない。

あのサンダルはアスフィの大切な物なのだ。それを雑に扱って壊れたからおそらく捨てるのだろう。シエンはそれが許せなかった。

 

シエンは降参した事を後悔した。もしかしたらあのタンムズとかいう奴と戦い、アンティルールになってサンダルを奪い返すことができたかもしれなかったからだ。

今のアスフィは自分の事を知らないだろうがシエンにとっては友人なのだ。大切にしているサンダルをなんとしてでも取り返したかった。

 

「・・・ちくしょう。」

 

シエンは俯き、服を強く握りしめ怒りを抑えようとするしかなかった。

 

そうしている間に時間過ぎ、アイズは一回戦を勝ち再び出番が来た。

 

ロキファミリア アイズ・ヴァレンシュタイン 対 イシュタルファミリア タンムズ・ベリリ

 

「そして特殊ルールは、神ロキが引いたカードは【タッグバトル】、神イシュタルが引いたカードは【ガチアンティルール】!」

 

『?』

 

「説明を致します!タッグバトルはお互いにもう1人冒険者を加えて戦うというものです。加わった冒険者が敗れても負けにはなりませんが今回対戦する2人が敗北、もしくは降参した場合は試合終了となります!」

 

「お助けの人は負けても問題なくて、アイズたんかタンムズって子が負けたらゲームセットって事やな。」

 

「ガチアンティルールは前のアンティルールとは違い相手の持ち物だけではなく、なんでも一つ手に入れる事が出来ます!!」

 

「ほう。」

 

「まじかいな・・・」

 

『オオオオオオオ!!??』

 

「ではまず選手は闘技場に上がってください!」

 

アイズとタンムズは闘技場に上がった。妙に盛り上がっている会場を不思議に思い、そして先程の説明を受けて驚いた。

 

「ではまず共に戦ってくれる仲間を決めてください!」

 

「ゲゲゲゲ!!それは勿論アタイだよなァ、タンムズゥ?」

 

そう言って観客席から飛び上がって闘技場に着地したおかっぱ頭の2Mくらいの大きさのモンスター・・・いやアマゾネスのLv.3【男殺し】フリュネ・ジャミールが言った。

カエルの鳴き声のような声にシエンは聞き覚えがあったが今は気にしなかった。

それよりも気になったのは武器だった。

 

「ゲゲゲゲ!【人形姫】!その不細工な面ァぶっ潰してやるよォ!」

 

自慢の大戦斧を担ぎ、反対の手には雷の形をした斧を持って物騒な事を言うフリュネ。

 

「(あの雷の形の斧は・・・まさか!?アイツらのファミリアにも商人が接触したのか!?)」

 

「では【剣姫】はどうしますか?」

 

「えっと・・・」

 

そう言われて自分の仲間達がいる観客席を見るアイズ。

アイズはフリュネのレベルに興味がなくて知らないが一緒に戦う仲間をリヴェリアにしようかと考えていたが【魔力】を滾らせてやる気満々のシエンが目に映った。オレを選べとそう言っているように見えた。

 

「なら、シエンで」

 

シエンは観客席から闘技場に降り立ち、アイズの隣に移動した。

 

「おおっと!レベル差があるにも関わらず【ファヴニール】が参戦だ!なんだか一回戦の時と違い様子がおかしいですが、どうしたのでしょうか?」

 

「ちょっ!?アイズたん!?そんな簡単に!?」

 

「フフフ、こちらが有利になったな。」

 

「では何を手に入れるか決めます。神イシュタルからどうぞ!」

 

「そうだな、ならば・・・最近話題になっているその【ファヴニール】という小僧を貰おうか。」

 

そう言ってイシュタルは自分を睨めつけている子供に視線を向けた。

 

「チッ!ふざけおって!ならば「待ってくれロキ!」・・・ん?」

 

「オレが相手から手に入れられるのを決めてもいいか?」

 

「・・・ええで」

 

そしてロキは自分が決めるよりも賭けられている本人に任せた方がモチベーションが上がると思いシエンに任せた。

 

「アイズ、悪いけどオレが決めてもいいか?」

 

「うん、特に欲しいものとかはないから。」

 

「ありがとな。ではオレが相手から貰うものは【万能者】から手に入れたサンダルを貰う。」

 

『!?』

 

「うそ・・・」

 

「だから言ったろ、アスフィ?」

 

金や道具ではなく壊れたサンダルを要求するシエンに会場にいる人達は驚いた。

 

「フ、フハハハハ!!()()()()()でいいのか!?いいだろう!!」

 

シエンにとって苛立つ言葉を言うイシュタルにさらに腹を立てた。

 

「アイズ。」

 

「ん?」

 

「絶対に勝つぞ。」

 

「うん。」

 

「ゲゲゲゲ!!ぶっ潰してやるよォ!!」

 

「イシュタル様に勝利を!!」

 

「では、試合開始です!!」

 




前書きの鳥のカゴ云々カンヌンはオリジナル設定です。お姫様は本当です。

【魅力】に抗ってくれないと物語が・・・


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大会その4 生ぬるい戦場

フィンの日記 ●月●日

フィン「旅商人のアンナから興味深い資料をもらった。それを書いておこうと思う。

とあるペレジア兵の記録

イーリスには悪魔がいる。

その悪魔は火を扱えば人を焼き尽くし灰すら残さず。

風を扱えば全てをなぎ倒し風の刃で切り刻む。

雷を扱えば空から必殺必中の雷が降り注ぐ。

闇を扱えば人の生命を全て奪い尽くす。

水と岩を扱えば城を水没させる。

その悪魔の名はシエン、決して近寄ることなかれ・・・」

トリックスター「・・・・・そら追放されるわ・・・」

リヴェリア・リヨス・アールヴ「・・・多少内容は盛っているのであろうがこれは・・・」

ワシ「あやつはどれだけ暴れまわったんじゃ・・・」





試合開始とともにフリュネは斜め前にいるアイズに突撃した。真正面にいるシエンを無視して。

 

「くらいなァ!」

 

図体に合わず素早く、あっという間に距離を詰めて大戦斧でアイズに攻撃を仕掛けた。

 

「【ミラーバリア】」

 

「ゲゲェ!?」

 

アイズに斧が届く前にシエンの【魔法】が間に合う。レベル差があるとはいえフリュネの斧は見えない障壁の前に止まった。

 

「なんだ!?攻撃が止まった!?」

 

「詠唱無しの【魔法】だと!?おいおい、そんなのありかよ!?」

 

「というか、【魔法】を既に2つも持ってるのかよ・・・」

 

観客席からシエンの使った【魔法】に関して様々な感想が出る。

シエンはフリュネが接近しているので【呪い】を発動して、影を複数の黒い手に実体化させてフリュネを捉えようとした。

 

「おっとぉ、ゲゲゲ!小癪なガキだねェ!だけどこれならどうだい!!」

 

しかし、素早い身のこなしでそれらを躱しつつ距離をとってフリュネは雷の形をした斧を掲げる。すると突然シエンの頭上に雷が現れて降り注いだ。

 

「シエン!?」

 

「なんやあの斧!?魔剣か!?いや、魔斧!?」

 

「おおっと!フリュネ選手が使った武器は優勝賞品のサンダーソードと似ております。【ボルトアクス】だァ!!」

 

「優勝賞品もあんな感じなのか・・・」

 

「見た感じ発動も速いし、いいな」

 

フリュネが使ったボルトアクスに興味を示す観客達。雷を食らったシエンといえば。

 

「・・・(アイツ、【魔力】がないのにあれを使ったのか・・・このくらいなら問題はないが寧ろアイズが不意打ちで食らったほうがマズイか。)」

 

無傷だった。そして、【スキル】によってフリュネに【魔力】がない事を確認した。

 

「ゲゲゲェ!?何故だァ!?」

 

「そら、シエンに効くわけないやろなぁ・・・」

 

「魔法耐性は凄まじいからね。」

 

「そもそも、あまり威力が出て無かったと思うが。」

 

「ガッハッハ!これは頼もしいわい!」

 

無傷なシエンにフリュネは驚愕して、ロキ達はそれを当然だと思った。【魔防】の発展アビリティがFもあるのだから。(ガレスはE)

 

「こちらも忘れてもらっては困る。」

 

「【吹き荒れろ(テンペスト)】!」

 

離れたフリュネの代わりにタンムズがアイズに接近した。アイズは【エアリエル】を発動して剣に風を付加して対応する。

シエンはアイズにフリュネを近づかせないようにフリュネの攻撃がきても対応できるくらいまでに近づいた。

 

「このクソチビがァ!舐めんじゃないよォ!」

 

フリュネは身につけていた袋から何かを取り出し口に入れ飲み込んだ。すると先程よりも更に速くなりシエンに接近した。

 

「ゲゲゲェ!」

 

「クッ・・・!(速い!?薬によるドーピングか!?)」

 

フリュネは大戦斧を横にふるってシエンの首を跳ね飛ばそうとする。

その攻撃を食らう前にシエンは背中から倒れながら【エルウインド】を発動して地面すれすれに浮いて斧を躱した。フリュネの大きさは約2Mでシエンは118Cでフリュネは腰を落として攻撃しなくてはならず対してシエンは斧を躱すのは容易であった。

 

「なにィ!?」

 

「食らえ。」

 

必殺の一撃を有り得ない方法で躱されて動揺するフリュネにその状態で【精神力】を消費して【トロン】の魔道書が黄色に輝き、雷の槍が現れてフリュネの脇腹に突き刺さった。その槍から全身に高威力の電撃が襲いかかった。

シエンは浮きながらその場から離れて体制を戻し着地した。同時刻、何処かの王様が脇腹を押さえた。

 

「ギィヤァァァァァァァァァ!!!???」

 

「し、信じられません!?レベル差があるにも関わらず【ファヴニール】は【魔法】により圧倒しています!!というか、風と雷、2つを同時に使っているように見えましたが・・・」

 

「うーむ、あれはガネーシャだな!!」

 

「ちゃんと解説してくださいよガネーシャ様ァ!!」

 

わからないので適当に誤魔化すガネーシャ。

 

「へぇ、やるじゃない。あのルーキー。」

 

「【魔法】を使いながら移動するとはかなり器用ですね。【魔力暴発】を引き起こしていない。」

 

「また腹か・・・」

 

「背中のバックパックが光っていたな、何か仕込んでいるのか?」

 

「なんかバチバチいってるけどさっきの【ボルトアクス】ってのより威力高くね?」

 

「クッ・・・ガ・・・ァ・・・?」

 

身体に蓄積したダメージに意識を持っていかれ手からスルリと大戦斧とボルトアクスが滑り落ちた。

シエンはフリュネに3Mほど近付き、【呪い】を発動させて実体化した影の手でボルトアクスを拾った。【道具節約】のスキルが発動する。

 

シエンはボルトアクスを手に持ち、【精神力】を注ぎ込み斧の周辺に電撃を発生させた。

そして斧をフリュネに向かって横に振るうと斬撃が雷を纏い飛んだ。

 

「なにィ!?ガァァァァ!???」

 

フリュネは身体が痺れて動けなくて雷の斬撃が直撃した。シエンは【魔力】が高いのでその分ボルトアクスの雷の威力も上昇する。フリュネとは威力がダンチだった。

 

「なんや!?あんな使い方もあるんか!?」

 

「へぇ、面白いね。雷の槍とかないかな?ぜひ使ってみたいのだけど。」

 

「魔導士が斧を使うとはな。」

 

「【魔法】関連なら何でも使いこなす奴じゃからのう。今度斧の使い方を教えるとしよう。」

 

「・・・クッ!(このままではフリュネが死んでしまう!あのフレイヤに対する貴重な戦力が失う訳にはいかん。残念だがリタイアさせるしかない!だがあのクソガキ、タダでは終わらんぞ!)」

 

イシュタルは眷属達にポーション等を持たせてガネーシャファミリアの眷属にフリュネをリタイアさせることを言い、眷属達を闘技場に移動させた。

 

「ここで【男殺し】、神イシュタルによりリタイアになりました。【ファヴニール】は攻撃をやめて下さい!」

 

その指示を受けてシエンは攻撃をやめた。

イシュタルファミリアのアマゾネス達がフリュネの治療を始めたところを見て、シエンはアイズを援護しに行こうとして背を向けた時にアマゾネス達はシエンに向かって襲い掛かった。

 

「(悪く思わないでよね、小さな坊や。イシュタル様の命令には逆らえないの。)」

 

シエンは何かが近づいてくる気配を感じて振り返り、アマゾネス達が襲いかかってきたことを知ると【エルウインド】と【エルファイアー】に精神力を流して発動した。

自分の周囲に竜巻を起こしてそこに火を纏わせて火炎竜を作り出した。

 

「え?」

 

「グッ!熱い!」

 

「なんて竜巻なの・・・吸い込まれる!!」

 

シエンに襲いかかっていたので突然現れた火炎竜に対応できず吸い込まれて巻き上げられた。そしてそのまま闘技場の外へ吹き飛ばされた。

選手は闘技場から出てはいけない、アマゾネス達は退場となった。

 

「なん・・・だと・・・?バカな!?【魔法】は3つまでの筈だ!!」

 

「別に3つ以上【魔法】を使えてもいいだろ?戦術の幅が広がっていいしな。それにしてもイシュタルだったか、バカなことをする。自らの防御を薄くするとはな。」

 

「貴様!何をする気だ!!」

 

「そこ。」

 

「グッ!?」

 

タンムズはアイズと戦っていたが突然現れたシエンの竜巻に気を取られて余所見をしてそこにアイズの一撃が入ってよろめいた。

 

シエンはタンムズに分かりやすいようにイシュタルを見ずに手の平を向けてバックパックにある【トロン】に精神力を注ぎ込んで発動準備を終わらせる。

 

「まさか!?」

 

「オイオイオイオイ!?シャレにならねぇぞ、それは!!」

 

「ウフフフ・・・」

 

「クソ!?イシュタル様!!」

 

タンムズはシエンが神殺しを行おうとしているに気が付いた。タンムズはアイズの事を忘れ、イシュタルを救うべく観客席へと走り出した。

 

「まあ、()()()()()()。」

 

シエンは言葉を濁して雷の槍をイシュタルへと放った。タンムズは観客席に行くことが間に合わずイシュタルは殺されてしまうだろう。

 

「戻れタンムズ!!【嘘】だ!ヤツは嘘を付いている!!ヤツの狙いは・・・」

 

自分に向かってくる雷の槍に怯えながらもタンムズにシエンの狙いが自分はない事を伝える。そう、本当の狙いは。

 

「【ミラーバリア】」

 

シエンはイシュタルに放った雷の槍の前に障壁を展開して槍が当たると威力が上がり向きを変えてタンムズの方へと跳ね返した。

タンムズは突然向きを変えて襲いかかってきた雷の槍にどうすることもできず身体を貫かれた。

 

「なに!?」

 

「防御だけじゃない・・・【魔法】を反射するなんて・・・」

 

「ええ、見た感じ槍がさっきより大きくなっていた。つまり威力が上がっているということ。」

 

「これはこれは、えげつない。このヘルメスが名付けるとしたら【魔導士殺し(マジックスレイヤー)】といったところかな。」

 

「せ、戦闘続行不可能と判断して試合を終了させます!勝者【剣姫】!!」

 

審判によって試合は終了した。しかしアイズは納得いかないような顔をしていた。

 

「・・・私、全然戦ってない。」

 

「わ、悪かったって、後でジャガ丸君買ってあげるからそれで勘弁してくれ・・・」

 

「・・・なら、いい。」

 

「ホッ・・・(いいのか・・・やっぱちょろいわアイズ。)」

 

「何か言った?」

 

「なんでもないよー。さてと、【万能者】のサンダルを貰おうか。」

 

しばらく闘技場で待つとガネーシャファミリアの団員が壊れたサンダルを持って来た。それをシエンは受け取り闘技場からヘルメスファミリアがいる観客席の所に行きアスフィに渡した。

 

「はいこれ。」

 

「あ、ありがとうございます。けど、なぜ?」

 

「手放すのを嫌そうにしていたからな。大切なものなんだろう?」

 

「ええ、そうです。このお礼は必ず。」

 

「そういうのはいいから。オレが勝手にやったことだから気にしないでいい。」

 

そう言ってシエンは相手の返事を待たずにその場を離れた。

 

「言っただろう、アスフィ。なんとかなるって。」

 

ヘルメスはニヤニヤしながらアスフィに言った。

 

「(【ファヴニール】、シエンですか。私は借りはちゃんと返す主義なんです。いつか必ず返させてもらいますよ。)」

 

今のアスフィは離れていくシエンを見てそう思うのだった。




来週からは更新頻度が落ちます(確定)

今回の戦いはシエンの人間らしさを出しています。シエンはモンスターではないというアピールですがどう見ても危険人物です。
相手は格上だから殺されるかもしれないし、しょうがないね。

ドーピングはFE世界にある【速さの薬】です。

【魔導士殺し】のルビはソーサラーイーターにしようと思ったけどなんか違う気がしてボツ。

魔導士の英訳はソーサラーなんですけどね。

これにて大会編終了です。ベート(14才または15才)とかでるかなと期待していた方はごめんなさい。好青年ベート君はイメージできなかったです。
ベート君は大会には出ずにガネーシャファミリアの警備に協力していました。
優勝はアリーゼで準優勝がリュー、3位が輝夜になりました。
アイズは次の試合にリューと当たり敗北。

大会でのシエンの装備
4冊の魔道書
【エルファイアー】
【エルウインド】
シエン専用【トロン】
【リザイア】相手に黒い霧をぶつけてダメージを与えてそのダメージを与えた分体力と精神力を回復する。【神秘】によって精神汚染をしない物を作成に成功。
モンスターに使った場合はどうなるかわからないため使用していない。
え?【屍兵】相手に使いまくってた?・・・仕様です。

四本の杖
【リライブ】回復の杖
【リブロー】遠距離回復可能の杖
【レスキュー】転移魔法、遠くにいる仲間を使用者の付近に転移させる。イレギュラーが起きた時の為に装備
覚醒をプレイして簡単にお店で購入できたのは個人的にヤバイと思った。
【サイレス】魔法の使用不可、魔導士対策


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大会の後

FE新作の発売が7月になっちまったよォォォォォォ!!
ポケモン新作が冬に発売!楽しみだァ!!


アストレアファミリア

 

「今日の大会で私達アストレアファミリアが1位、2位、3位と表彰台を独占!やったね!」

 

「その3人がまとめてレベルアップだもんな、羨ましいぜ〜」

 

「ならライラも出場すればよかったのに。」

 

「あんな運要素全開の大会に出るかよ!それに手の内がバレるのはもっと嫌だかんな!」

 

赤髪のポニーテールのヒューマンのアリーゼ、ピンク色のショートヘアの小人族のライラが話し合う。

アリーゼ達は大会が終わった後に自分達のファミリアにて宴会を開いていた。

 

「手に入れた【魔道具】は相当に貴重な物ね。使っても良し、高値で売りさばいても良し!」

 

「【魔道具】ですか・・・」

 

「あん?どうしたんだよリオン?」

 

リューは魔道具と聞いて大会で【魔道具】を使っていた子供を思い出した。

 

「いえ、あの子供が降参せずに順調に勝ち進んで私達が戦うことになったら勝てていたかどうかと思いまして。」

 

「これだから生真面目エルフは・・・別にいいだろ〜戦わずに済んだならそれで良しだろ?」

 

「ですが。あの子供はLv.2になったばかりだというのに格上をあっさり倒してしまった。」

 

能力はレベルの差で圧倒的な違いが出来る。それにもかかわらず【魔力】のみで倒してみせた。

 

「確かにあれは凄かったわね。【魔法】を使う人にとっては天敵もいい所よ。けど私たちも負けてられない、もっともっと強くなるわ!」

 

「アリーゼ、そうですね。もっともっと、強くなりましょう。」

 

豊饒の女主人

 

「おっしゃ!今日はみんなお疲れさん!乾杯や!!」

 

『カンパーイ!!』

 

代わってロキ達は豊饒の女主人にて宴会を開いた。出場していない人も混ぜての大宴会だ。

 

「宴を開くなら酒を飲まずにはいられんのう!」

 

「ほどほどにしておいてくれよガレス。」

 

「そう固い事を言うでないわリヴェリア。」

 

「そうやでママ!よし!ガレス、飲み比べをしようやないか!」

 

「このワシに挑むか、受けて立つぞ!」

 

「ガレスさんが勝つのに10000ヴァリスだ!」

 

「だったら俺はロキに10010ヴァリス!」

 

『ワッハッハ!!』

 

「誰がママだ。ハァ、全く困ったものだ・・・」

 

ロキとガレスは飲み比べを始めをどっちが勝つか賭けまで始まる始末。リヴェリアは深いため息をついた。

 

「お前達はあんな風になるんじゃないぞ。」

 

アイズ、シエン、ラウル、アキに酒飲みにならないように言った。

 

「うん。」

 

「魔道士に酒は不要だ。せいぜい嗜む程度だろ。」

 

「はいっす。(けどガレスさん達、楽しそうっす・・・お酒を飲むってどんな感じなんすかね・・・)」

 

「私も嗜むくらいにします。」

 

「ああ。それくらいがいい。せっかく集まっているしちょうどいい。聞きたいことがある。お前達は今後どう強くなっていくつもりだ?」

 

「ひたすらダンジョンに潜って強くなる。」

 

アイズはリヴェリアの質問に即答する。その答えを聞いて若干眉をひそめた。

 

「いや、そうだけどそうじゃない。リヴェリアが聞きたいのは具体的な計画。成長プランだ、アイズ。」

 

「成長ぷらん?」

 

「オレでいうならそうだな。どんどん厄介なモンスターが出てくるから【対異常】を手に入れる為に毒とか麻痺を主に使ってくるモンスターと戦うつもりだ。そうすれば手に入れられるかもしれないしな。そんでLv.3になるのは階層主のゴライアスを集団で倒した時かな。」

 

大会で格上を倒してみせたシエンはレベルアップする為の偉業を成し遂げた事になったのでいつでもLv.3に上がれるようにはなっている。前の時と同様にしばらくは基礎アビリティを貯め続ける方針だ。

 

「ふむ、なるほど。ならばシエンは【対異常】を習得しようとしている団員達のパーティーに入って冒険してもらうことになりそうだな。しばらくはダンジョン探索に勤しむといい。部屋に篭ってばかりだと習得できないぞ。」

 

「わかったよ・・・マ魔王。」

 

「誰がマ魔王だ。馬鹿者。」

 

耳のいいハイエルフのリヴェリアは変なことを呟いたシエンの頭に手刀を下ろす。

 

「オレは、二人みたいに戦えないからパーティーを組んで地道に上層のダンジョン攻略を進めていくっす。レベルアップはいつになるのかはちょっと予想がつかないっす・・・」

 

「私もラウルと同じです。」

 

「よし、二人とも無理をしないようにな。アイズ、お前はどうするんだ?」

 

「私は、よく分からない・・・」

 

アイズは今まではがむしゃらに戦っているだけだった。モンスターの特徴を知り、戦闘技術を磨いているがそういう計画は立てたことはなかった。

 

「ならばこれから考えていけばいい。私も手伝おう。」

 

「ありがとう、リヴェリア。」

 

「あの、話は変わるっすけどシエン()()は大会で特別賞みたいなのを貰っていたっすけど何だったんすか?」

 

大会で印象の残る試合を繰り広げた人物という事でシエンは特別賞を貰っていた。

ちなみにいくらなんでもありとはいえ観客席にいた神を利用してまで勝とうとしたシエンは危険な人物として、この大会には出禁となった。

 

「そういやそんなの貰ってたな。箱に入っていてまだ開けてなかったな。」

 

「どんなものか見せて欲しいっす!」

 

シエンは出禁にされた事を不満だった為、その事を忘れようとするために箱の事は気にしていなかったがラウルが中身が気になったため中身を確認することにした。

 

「ん?」

 

「・・・これは」

 

「なんすかこれ?」

 

「仮面じゃないかしら?」

 

そこに入っていたのは神ガネーシャがつけているものと同じの赤色の象の仮面だった。

 

「これはガネーシャが付けとるヤツやないか!けれどもシエンには大きすぎるな。ちょっと借りるでェ、みんな!これを付けてみたいモンはおるかー!?」

 

「勝手に持ってくなよ・・・別にいいけど」

 

酒を飲んで酔っ払っているロキがやってきてひったくるように箱に入っている仮面を取り眷属達に告げる。

 

「なんだそれ!?俺にやらせろーー!!」

 

『いけェ!ケビーン!!』

 

酒で酔っぱらった亜人のケビンはその場のノリで仮面を装着した。

 

「装ちゃーく!よおしやるぜ!【俺がガネーシャだァ】!!」

 

ケビンはガネーシャが大衆に向かってよくやるポーズをしてお決まりのセリフを言った。

その姿、声はまるで本物と同じのようだった。

 

「おお!?スゲェ!!そっくりじゃねえかケビン!」

 

「ハハハ!ホントホントそっくりだ!」

 

「フフフ、もう一回だ!【俺がガネーシャだァ】!」

 

そっくりと言われ調子に乗ったケビンは再びポーズを取りセリフを言う。

 

「【俺がガネーシャだァ】!」

 

「似てる似てる!」

 

「【俺がガネーシャだァ】!」

 

「おーいもういいぞ!他になんか無いのか!」

 

「【俺がガネーシャだァ】!」

 

「いやもういいって!」

 

だがケビンは同じ事をやり続ける。

 

「【俺がガネーシャだァ】!【俺がガネーシャだァ】!【俺がガネーシャだァ】!【俺がガネーシャだァ】!【俺がガネーシャだァ】!【俺がガネーシャだァ】!【俺がガネーシャだァ】!【俺がガネーシャだァ】!【俺がガネーシャだァ】!【俺がガネーシャだァァァァァ】!!」

 

「お、おいケビン!?しっかりしろ!!」

 

「酒の飲み過ぎながら大声出して頭がおかしくなっちまったか!?」

 

「【俺がガネーシャだァ】!」

 

「いやもういいから!」

 

「まさか、呪いのアイテムか!?」

 

「神ガネーシャがそんなものを作るわけないだろ!」

 

「【俺がガネーシャだァ】!【俺がガネーシャだァ】!」

 

この仮面は神ガネーシャがスキル【神秘】を持ったとある人物に頼み作って貰ったものでこれを付けて楽しんでもらいたいと思い作ったものである。

そのとある人物はその独特の仮面をあまり好ましく思っておらず装着して試していなかった。その感情がよろしくなかったのか、ガネーシャの仮面は呪いのアイテムとなってしまったのだ。

 

ガネーシャの仮面(呪い)

 

効果

ポーズと声をそっくりに再現できる。全てにおいてポーズと声を出す事を最優先させる。呪いにより取り外す事はできない。

 

「どうすればいいんだ・・・」

 

「【俺がガネーシャだァ】!」

 

「ケビン・・・」

 

心配されているにもかかわらずただひたすらにキレのいいポーズを取り続けるケビン。

 

「これってもはや【呪い】じゃね?」

 

「呪いのアイテム、【呪い】・・・?」

 

眷属の一人が言った【呪い】と言う言葉にロキはこれを解決できる人物を思い出した。

 

「それや!!」

 

「なにか閃いたのかロキ!」

 

「あったりまえやろ!ウチは神やで。こうピンときたんや!シエン!こっちに来てくれや!」

 

「なんだよ?酒なら飲まないぞ。」

 

ロキは呪いを解くことができるシエンを呼んだ。【ドラゴンフォーゼ】を発動している時に使用できるスキル【光の波動】を使えばなんとかなると思ったのだ。

 

「なるほど、まさかこんなことになるなんて思わないししょうがないか。」

 

「ミア母ちゃん!すまんけどちょっと席をずらさせてもらうで」

 

ロキは竜化したシエンはかなり大きくなるので邪魔になる席をずらそうとするとシエンは止めた。

 

「いやこのままで大丈夫だ。ロキ。 【姿が変わりゆけども決して変わらぬは己の心】」

 

以前は詠唱を始めると足元から魔法陣が出ていたが、今回は右肩に魔法陣が現れて指先にも現れた。

 

あの事件から少しでも長く竜化をしていられるようにする為にはどうすればいいか考えたシエンは身体を大きくせずに一部分だけでも竜化できるようにすればいいと閃いたのだ。できるようにする為に夜にこっそりと訓練場で練習していた。

 

「【ドラゴンフォーゼ】!」

 

詠唱が終わり【魔法】が発動すると右腕から光を発して光が消えると右腕の部分だけが服がなくなっていて鋭い爪を持った五本の指を持ち腕は白銀色の鱗で覆われていた。

 

「これなら席をずらす必要はないだろ。」

 

『おおおおお・・・』

 

「ホンマに器用なやっちゃなぁ・・・初めて見るけど色ボケ女神の髪色にそっくりな鱗やな。」

 

「【オレがガネーシャだァ】!」

 

「おお、そうやった。ほなシエン、ケビンを治したってくれや。」

 

ロキがシエンの腕を見ているとケビンが喋り出したので治すようにと言った。

シエンはスキル【光の波動】を発動する為に精神力を消費すると竜化した右腕がまた光り始めた。

シエンはケビンの元に移動して顔の位置まで浮遊した。

一部分とはいえ【魔法】を発動しているので浮遊することが出来る。

そして【光の波動】の効果で解呪も出来る。

 

ポーズを決めているケビンの仮面に光る竜化した右手で掴み取った。

 

「よし、取れた。こういうのに効果あるのか分からなかったからヒヤヒヤしたぞ・・・」

 

「ようやったシエン!」

 

「あれ?オレはいったい何を・・・?」

 

「ケビン!正気に戻ったんやな!?良かった良かった!よし、今日はこれで解散や!!」

 

ケビンが元に戻ってめでたしめでたし。

 

「ロキ、戻ったら後で説教だ。それとしばらく禁酒をしてもらう。」

 

「!?、そ、それはかんべんしてくれやぁ!ママァ!」

 

「誰がママだ。」

 

迷惑をかけたロキにはリヴェリアからお説教と禁酒のコンボを食らうロキであった。




なんか最凶のアイテムを作ったのかもしれない・・・
三下感たっぷりのロキしか書けない。決めるときには決めるかっこいいロキが書きたい・・・

ボルトアクスは返しました。

誰がママだネタはしつこかったかも

ケビン
外伝9巻にて登場
アイズに酒を勧めて酔っ払ったアイズに切られるという不憫な役割だった。


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試し斬りの付き添い

フィンの日記 ●月●日

フィン「シエン達がLv.2になってから数ヶ月でシエンはLv.3へと至ることが可能になった。早い、あまりにも早すぎる・・・これが成長促進スキルの力なのだろうか・・・」

トリックスター「これは他の神々には言えんな・・・勘のいいやつはなんとなく気付くやろなぁ、魂の強さを見れるあの色ボケとか」

リヴェリア・リヨス・アールヴ「このままいけば私達と同じLv.6までいけるのだろうな。」

ワシ「ガッハッハ!ワシらも負けてはおらんのう!」


ロキファミリア シエンの部屋

 

「ふあぁ、よく寝たなぁ。やっぱ、睡眠を取るって大事だよなぁ〜」

 

大会が終わってから約半年経った。あれからシエンはリヴェリアに言った通り【対異常】を取得する為に色々するようになった。朝、目を覚まして、まずやる事といえば。

部屋の隅に置いてある袋を手に取り袋の口を開いて顔を突っ込む事だ。

 

「さてと、やるか。スー、ハー、スー、ハー・・・うう、ぎぼぢわるい・・・」

 

その袋の中にはパープルモスのドロップアイテム、毒鱗粉が入っていて呼吸する事で身体にその鱗粉を入れていき、毒状態になる事である。

 

「だ、だるい・・・はやく毒消し毒消し・・・」

 

しばらく毒状態を続けて自分で決めた時間が来たら解毒薬を飲んで治す。

 

「・・・ふう。少しずつ慣れてきたかな。これで【対異常】を取れるといいんだけどな・・・」

 

毎日やりたいところではあるが中毒になるかも分からないので数日に一度やるくらいに抑えている。

【対異常】を手に入れたとしてもアビリティを強化する為には続けて今よりも強力な毒物を摂取する必要があるかもしれない。

今後のことを考えるとシエンは思わず溜息を吐いた。

 

「これからも続けていかないといけない、か。継続は力なりだな、さあ今日も頑張るかな。」

 

体の調子を崩しながらもシエンの1日は始まるのだった。

 

「おはよーっす・・・」

 

シエンは食堂に行き食事を取ろうとするとラウルに会った。

 

「シエンさん、おはようっす。また具合が悪そうっすね・・・」

 

「まあな、やらなかったら手に入れられないかもしれないからな・・・」

 

「オレもやっておいた方がいいっすかね?」

 

「・・・そこは自分でよく考えて実行したほうがいいぞ。下手したら死ぬから・・・」

 

「死!?本当っすか!?」

 

身体に毒を入れる量を間違えたり、解毒薬を飲む前に倒れてしまったりしたらそのままあの世行きである。

 

「やるとしたら誰かに手伝ってもらってやるこった。」

 

「き、気をつけるっす・・・そういえば今日、椿さんの所に行くんすよね?」

 

「ん?あー、そうだった・・・ちょっとド忘れしてたわ。」

 

大会に出て反省する点は防具を全然身につけていないことだった。対人戦で本を持っている手を切り落とそうとしてくる相手も出てくるだろうからまず必要に感じたのは籠手だった。

そして次は頭を守るための兜、心臓や肺を守るための胸当て、風魔法で逃げるという手もあるが足を守るためのブーツに膝当、臑当などなどが必要となり買いそろえる必要があった。

お金はあったので椿に相談するとどうやら椿が作ってくれるという事となった。

専属契約となっているので格安で作ってもらえることになったが持っていたお金は底を尽きて、それどころか借金をする羽目になった。(470万ヴァリスほど)

若干背が伸びるのを諦めてはいるが、もしかしたら伸びるかもしれないのでサイズが合わなくなったら格安でメンテナンスすることを約束させた。

 

「オラリオトップクラスの上級鍛治師と専属契約かぁ、羨ましいっす・・・」

 

「確かにすごい鍛治師かも知れないけど鍛治以外の事は基本大雑把だしからかってくるわで大変なんだぞ。」

 

椿は背の低いシエンをマスコット扱いしようとしたり人肌の温もりが恋しいから抱きしめさせてくれだの、いきなり暑いと言って服を脱ぎ出したので目を逸らすとすけべ小僧めといってからかってくるのだ。

そんな椿にタメ口で話をするようになった。

ちなみに椿はシエンのことをシエ吉と呼んでいる。

 

「ま、まあ仲がいい事は大事っすから。それくらいは我慢したらどうすっか?」

 

「他人事だと思って・・・はぁ、慣れるしかねぇか。行ってくる。」

 

「夜遅くなったらだめっすよ〜」

 

 

椿の工房

 

シエンは北東メインストリートから第二区画の中心にある平屋造りの建物、椿の工房へたどり着いた。

 

一応ノックはしたが毎度毎度返事はないのでドアを開け入る。

工房の中ではカン、カンと金属を叩く音が鳴り響き、その音源の元へ行くと椿が居た。声をかけようとしたがシエンが入ってきたのにも気付かないほどの集中して鉄を打っているため終わるまで瞑想でもして待つことにした。ざっと二時間ほど。

 

「よし、これはなかなかの出来だな。ん?なんだシエ吉ではないか。相変わらず間の悪いやつよの。」

 

「・・・・・」

 

椿は武器を作り上げようやくシエンに気が付いた。椿はシエンに話しかけたが返事は返ってこず目を閉じてじっとして瞑想の修行を行っているようだった。

 

「手前も集中すれば周りが見えなくなるがお主も大概だな。」

 

椿はシエンの修行が終わるまでに煤で汚れた身体をお湯で洗い流し、食事を取った。その辺りでシエンは目を開けた。

 

「・・・ん?あれ、終わったのか」

 

「うむ、しばらく前にな。今度は手前がシエ吉を待っていたわけだ。」

 

「それは悪かったな。それで出来上がった防具は?」

 

「それはちゃんと出来ておるぞ。これだ。」

 

椿は出来上がった防具をシエンに渡した。基本はミスリルのインゴットで作ったのか白色で出来ていた。

シエンは防具を早速身に付けて体のサイズに合っているかを確認した。

 

「うん、問題ないな。軽くて丈夫そうだ。」

 

「でもお主は珍しいな。魔導士なのに防具を身に付けるとは。手前の知る魔導士は皆、布の装備なのだが。」

 

「そんなこと知ったことじゃない。オレが必要だと感じたから頼んだんだ。」

 

ミスリルヘルムを装備して相手から顔が見えづらくなったシエンが椿に言った。

 

「黒の服に白の防具に赤いマント、派手になったな。」

 

シエンは黒のマントを身につけていたが今は赤いマントを身につけていた。

この赤いマントは精霊達がサラマンダーウールで作った物で炎耐性が強くオマケに防寒機能もある。(1着約10万ヴァリス以上)

そこにシエンはマントの内側に真ん中と両端にポケットを作ってもらうように頼み、魔道書が3冊入れることができるようになった。

これにより戦闘中に使える魔法の数が更に増えることになる。

 

更にシエンは白銀の鱗をマントの内側に縫いつけて【神秘】を使った。魔法を無効化することが出来て精神力を流すと魔道書が反応して魔法を発動出来るという意味不明のマントの作成に成功した。

 

「うーむ、いつ見ても良い鱗だ。なあシエ吉よ、その鱗を手前に譲ってくれ!いい装備が作れそうな気がするのだ!」

 

「考えておくよ。さて、装備は貰ったし帰るとするk」

 

シエンはやることを終えたので帰ろうとすると

 

「まあまてシエ吉よ。まだ時間もあることだし手前に付き合え。」

 

「なにするつもりなんだ?」

 

椿は先ほど作った武器を片手に持ち言った。

 

「ダンジョンに試し斬りに行こうと思う。シエ吉、付いて来い。」

 

バベルの塔の前

 

「さて、ここから地下に行ってダンジョンで試し斬り。武者震いがするなシエ吉!」

 

「しねーよ・・・」

 

シエンは若干テンションが低めに返事をした。

シエンは椿の試し斬りにはあまり興味が無かったが借金があるので椿の倒したモンスターの魔石やドロップアイテムを入手してそれ売って金にするつもりだった。

金を持っていないとシエンの魔道具作りはストップしてしまうからだ。

椿に聞いたところ、そういうことをやっても構わないと言われたので付き添いとして付いてきた。

 

「では、出陣だ!!」

 

戦闘衣を着ている椿の後に大きなバックパックを背負ったシエンが続いた。

シエン達がバベルの塔に入った後に二人組の冒険者がバベルの塔を見ていた。

 

「おい、見たか?」

 

「ああ、見たぜ。顔は見えなかったがあの派手な赤のマントにくっついていた白銀の鱗、間違いねぇ【ファヴニール】だ。」

 

「【単眼の巨師(キュクロプス)】が一緒にいるが他に護衛はいない。こんなにいいチャンスはやってこない。やるぞ!」

 

「ああ、あの移動ルートを利用し奴らより先回りをして、子竜の捕縛作戦を開始する。」

 

オラリオに蔓延る悪がまた暴れ出そうとしていた。




椿の言動、服装を確認するためにダンまち外伝4巻を見直したんですがベート達ってフィン達が合流するまで58階層で8時間戦い続けたんですよね。(ガレスがメインで暴れていた。)汚れた精霊との戦闘がなかったとしてもレベルアップしただろうな・・・
それでもなぜガレスがレベルアップ出来ないのか・・・オッタル、アンタいったいなにやったんだよ・・・

スパロボ楽しー!


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ヘスティアファミリアルート 原作 約2週間前
ウサギと小さな神


ロキファミリア編を書くモチベが落ちたので代わりに投稿します。


異界の門をくぐると不思議な空間にたどり着いた。ヘルメス達のいる世界は何処かと探っていると不思議な力に包まれオレの体に激痛が走る。その痛みに耐えきれずオレの意識は飛んでしまった。

 

オラリオ 古い教会付近 夕方

 

「今日もダンジョンでゴブリンをたくさん倒せた。昔は何も出来ずに殺されそうになったけど、【神の恩恵】って本当にすごいなぁ・・・」

 

教会付近で独り言をしているのは髪が白色で赤い瞳の少年ベル・クラネルだ。

彼は数日前に神ヘスティアと一緒にファミリアを立ち上げたばかりである。

もちろんヴァリスがない貧乏ファミリアだ。彼の主神のヘスティアは、じゃが丸君を売っている店のアルバイトをして稼ぐ事でファミリアを支えている。

 

ベルもヘスティアにばかり苦労もかけられないので今日もダンジョン探索をしてそれなりに稼ぎ、教会の下にある自分達のホーム行こうとしていた。

 

その時教会付近に何者かの呻き声が聞こえた。

 

「・・・う・・・」

 

呻き声のしたところに顔を向けると全身黒づくめの男がうつ伏せになって倒れていた。

 

「人?あの、大丈夫ですか!?ケガをしている・・・大した治療もできないけど、このまま放って置くことなんて出来ない。ホームに連れて行こう!」

 

お人好しのベルはその男を背負おうとすると男の懐から黄色の本が落ちた。表紙には見たこともない文字が書かれておりベルには読み解くことはできなかった。

 

「何だろうこれ、見たことがない・・・ハッ!?それよりも運ばないと!!」

 

ベルは男を背負い黄色の本も持って教会の地下にあるホームに移動した。

 

「神様ー!ただいまー!」

 

「やあベル君。おかえりーって誰だい!?その人!?」

 

なにやらオーバーリアクションをする黒髪ツインテールの幼い容貌の女神ヘスティアが居た。

 

「この人教会の近くで倒れていて怪我もしているみたいなので手当てをしたいんです。」

 

「ベル君、君ってやつは見ず知らずの人になんて親切なんだ!確かにそうだね。怪我したままで放置なんてしたら神の名折れだ!すぐに治療をしよう!」

 

「はい!」

 

治療を終えてしばらくした後

 

「・・・う、ここは?」

 

オレは目を覚ますと周りを見渡した。どうやら異界の門から出ることが出来てどこかにたどり着いたようだ。今はベットの上に乗せられている。

 

「あ、気がつきましたか?」

 

そこには白い髪の赤い目のウサギみたいな少年がいた。オレはどうやら相手の言葉を理解できるらしい。

 

「あ、ああ。ここは?」

 

「ここは僕たちのホームです。あ、僕たちと言っても僕と神様、ヘスティア様の事なんですけども。」

 

「神様?そんなのがいるのか?・・・ッ!?」

 

オレは身体を起こそうとすると腰辺りに激痛が走る、どうやらこの別世界に辿り着いた時に腰を打ってしまったのだろう。気を失って覚えていないが・・・

 

「あ、身体を動かしたらダメですよ!怪我をしていたんですから。」

 

「・・・君がこの部屋に運んできてくれたのか?」

 

そう聞くと目の前のウサギ君は頷いた。このウサギ君は随分とお人好しなようだ。前にいた世界でオレが倒れていたらオレを恨んでいる連中が抹殺していただろう。

 

「ありがとな。手当もしてもらったみたいだし借りができてしまった。」

 

「そんなこと気にしないでください。」

 

ウサギ君は笑って気にしないように言ってきた。オレは何かお礼をくれと言われるばかりだと思っていたがそんなことは全くなかった。

いかに自分が汚れてしまっているかがわかってしまう。なんていい子なんだ・・・

 

「ベル君、彼は目を覚ましたのかい?」

 

「はい、目を覚ましたみたいです。」

 

べつの部屋にいたのか今いる部屋にロリ巨乳が入ってきた。この女の子からは変な感じがする、どうやら只者ではないらしい。この子がウサギ君が言っていた神様なのだろう。気をつけて話してみよう。

 

「貴女がこの家の主人でしょうか?」

 

「まあね、僕はヘスティアさ。君は?」

 

「私はシエン。治療をしていただきありがとうございました。」

 

「それはベル君に言ってくれよ。君を連れてきたのは彼なんだから。」

 

ヘスティアはウサギ君ことベルに感謝するように言ってきた。この少年はベルというのか。

 

「ベル、だったな。改めて助けてくれてありがとう。」

 

「どういたしまして。あの、シエンさんはどうして教会付近で倒れていたんですか?」

 

「それはちょっと不思議な門をくぐってな。変な場所に着いてしまったんだ。そこから出るために移動してその後に気を失ってしまってな。その後はどうなったのか覚えていないんだ。」

 

「不思議な門・・・神様何か知りませんか?」

 

「いや、それだけじゃあ僕も分からないな。」

 

「あ、そういえばここはどこなんだ?」

 

オレが目を覚ましてここがどこなのか知らないので聞いてみた。

 

「ここはオラリオですよ。」

 

ベルが今はオレのいる場所について教えてくれた。どうやらオレはヘルメスが言っていたオラリオに奇跡的にもたどり着くことが出来たようだ。オレは小さくガッツポーズをした。

 

「そうか、どうやら無事に辿り着いたようだな。」

 

「シエンさんもオラリオに来て冒険者になりたかったんですか?」

 

「冒険者というのはよく分からんがヘルメスに勧められてな。オラリオってところで一から始めるのもいいかなって思ってやって来たんだ。」

 

オレがヘルメスの名前をいうとヘスティアの表情が変わった。

 

「君はヘルメスの事を知っているかい!?」

 

「はい、旅をしていてたまたま私がいた場所にきてしばらくの間滞在していきました。その時にオラリオのことを聞いたんです。そしてオラリオに来ないかと誘われました。お知り合いで?」

 

「そりゃもうね。胡散臭さは半端じゃなくて信用ならない神だよ。そんなヘルメスが君の事を誘うんだ。君、前にいた場所で何かやったんじゃないかな?」

 

このヘスティアという神は嫌な所を突いてきた。ヘルメス、お前神だったのか・・・

 

「え、まぁ、それなりに・・・やらかしました。」

 

「やっぱりね。で、君はこれからどうするんだい?ヘルメスの所に行くのかい?」

 

「いえ、行くつもりはありません。アイツなんか色々やらかしてそうな感じがしますのでヘルメスのファミリアというのには入るつもりはありません。」

 

「だとしたら僕のファミリアに入らないかい?」

 

「え?」

 

「事情はよく分からないけど、一から始めたいというなら僕達のファミリアどうかな?最近出来たばかりで仲間がいないんだ。是非入ってくれないかな!」

 

「僕からもお願いします!」

 

どうやらオレは勧誘されているらしい。話を聞いてみると友神の所でニートライフを送っていたらキレられて追い出されて数日前にベルを見つけてファミリアを作ったらしい。

ベルも田舎育ちらしくてろくに戦ったこともなし。まさに出来立てほやほやの無い無い尽くしのファミリア・・・面白いじゃないか!

 

「わかりました。是非私をそのファミリアに入れてくれませんか?」

 

「やっぱりダメだよね。こんな出来立てのファミリアじゃ・・・ってええええええええええ!?」

 

「私をこのファミリアに入れてくれませんか?」

 

「い、いいいいいいのかい!?本当に何もないんだよ!?」

 

「ならばこれからどんどん大きく強いファミリアにしていけば良いのではないでしょうか。それがとてもやりがいがあると思いましてね。それに怪我の治療もしてもらいましたし、そのお礼です。」

 

「あ、ありがとう!これからよろしく頼むよ!シエン君!!」

 

「シエンさん、よろしくお願いします!良かったですね神様!」

 

「うん!君が彼を助けたおかげさベル君!!」

 

そう言って二人は抱き合って喜んでいた。仲のよろしいことで。

 

「ファミリアの仲間になってくれるということで、早速君に【神の恩恵】を授けたいと思う。さ、上着を脱いてくれ。」

 

「上着?分かりました・・・いててて」

 

上着を脱ぐ時に体を動かしたため怪我した所が若干痛むが我慢だ。

【神の恩恵】は背中に刻むようでこの恩恵を受けている状態でモンスターを倒したりすると経験値を得ることができる。背中に神々が使う【神聖文字】を神血を媒介にして刻むことで対象の能力を引き上げる、つまり強くなることができるらしい。

 

シエンの背中にヘスティアの血が垂らされて炉のエムブレムが刻まれた。そこにはシエンの情報が書いてあった。

 

シエン

 

Lv.1

 

力 :I0

 

耐久 :I0

 

器用 :I0

 

敏捷 :I0

 

魔力 :I0

 

【魔法】

 

【ミラーバリア】

・速攻魔法

・敵の飛び道具や魔法を反射する。反射する際は向きを自由に変えられることができ、いろんな攻撃も防ぐことができる。形は精神力を消費すると自由に変えられる。

・魔法を反射したとき魔法の威力が上昇する。

・空中に足場を作ったりできるが透明で見えない。

 

【】

 

【】

 

 

《スキル》

 

【魔法の探究者】

・魔力と器用が凄まじく成長しやすくなり、限界を超える。

・力が全く上がらなる。(ランクアップ時による全能力上昇の時は例外)

・耐久が上がりやすくなる。

 

【呪い】

・自分の影が相手との接近戦になった時に黒い手のような形になり、実体化する。相手の足などに掴まり動きを阻害する。

・【魔力】やLvの高さにより強力になる。

・【魔導】の補正も入る。任意発動、これは精神力を消費する。

 

【復讐】

・ダメージを受けるたび魔法の威力上昇、体力を全回復すると威力は元に戻る。身体中から黒紫色の魔力が出てくる。

 

【道具節約】

・幸運×2%で武器や魔道書の使用回数が減らない竜石も減らない(新品のままになる)

 

【魔道具作り】

・(FEにある)武器、魔道書、杖を作ることができる。

・作った本人が使用時には威力が上昇する。

 

【魔力追跡】

・生き物の【魔力】【精神力】を覚えどこにいるのかを探知できる。

・レベル、魔力が上がるごとに範囲拡大。【魔導】の補正も入る。

・ただしダンジョン内では不安定。

・任意発動、精神力消費しない

 

多重魔法(マルチマジック)

・複数の魔法を同時に発動、または魔法を発動しながら別の魔法も発動できる。

 

「・・・なんじゃこりゃあああああ!!」

 

ヘスティアはシエンのステイタスを見て絶叫した。

 

「(なんなんだよこれ、魔法がもう発現していてあと2つも習得が可能。いやまだそれはいい、問題はこのスキルの多さだよ!成長促進スキルと呪いとか復讐とかやばいのが満載だよ!一体何をやらかしたんだい君は!!取り敢えず成長促進スキルは誤魔化してあとで伝えよう。)」

 

「か、神様どうかしたんですか?」

 

「まあ、ちょっとね。とんでもないのがあったから驚いちゃったんだ。ごめんよ。シエン君、これが君のステイタスだ。」

 

ヘスティアはシエンの【魔法の探求者】以外のステイタスを羊皮紙に記してシエンに渡した。

 

「なんか能力のところが0ばっかりなんですが。」

 

「みんな最初はそうなんだよ。それで能力のところは基本アビリティというんだ。他に発展アビリティというのがあるんだけどそれはまた他の機会に話すよ。」

 

シエンは先ほどまでは気がつかなかったがこの世界に来て自分の体に違和感を覚えた。

それは以前持っていた魔力を感じることができないのだ。つまりいま自分は大幅に弱体化していることを察した。

これから強くなるというのはステイタスが上昇するという事。つまりFE世界でのステータスはこれ以上上昇しないという事だろう。

 

だがこの神の恩恵というのも悪くなく、授かっただけで五感が以前よりも良くなっているような気がするのだ。神の恩恵というだけの事はある。

 

「あの、僕にも見せてもらっていいですか?」

 

「ああ、いいよ。こんな感じだった。」

 

「ええええええええ!!??なんですかこれ!?【魔法】があるじゃないですか!?スキルもこんなにたくさん!!凄いですよシエンさん!!」

 

「いろいろあったからなぁ。このスキルを活かすには【魔力】をメインで上げていくのが良さそうだな。あと魔道具作りもしないと、でも金を稼がないと材料を買えないし・・・フフフ、やる事がいっぱいだな。面白くなってきたぜ。」

 

オラリオにてシエンの新たな生活が始まったのだった。




この世界は原作から約2週間前を想定しています。

魔法の探求者の変更
発展アビリティの魔防をなくした代わりに耐久が上がりやすくなるように変更しました。

シエン 身長164㎝ 22歳
ベル 身長165㎝ 14歳
ヘスティア 身長 140㎝ ン億歳

シエンの素のステータス
大幅に弱体化させました。幸運は転生特典で50のままです。

HP   12
力   2                 
魔力 13              
技  11              
速さ  5                 
幸運 50                   
守備  3               
魔防  9


ヘスティアの髪型がツインテール
ベルがヘスティアファミリアに入って原作が始まる前にヘスティアにあげたリボンで髪型がツインテールになっている。
いつ頃あげたのか忘れてしまったのでベルがファミリアに入って数日後という事にしている。

シエン

イーリス聖王国の魔道士で転生者でもある。FE世界に来た事がわかり、死なないために幼い頃から魔法の修行をして親顔負けの魔力を手に入れる事ができた。
その噂を聞いたペレジアのギャンレルがシエンの居る村を滅ぼしシエンを手に入れようとするも村の人々に妨害されて取り逃がしてしまう。
このことよりシエンはペレジアを憎み、ペレジア兵絶対殺すマンになってしまう。シエンの戦い方は単独で突っ込み敵からダメージをわざと受け、闇の魔道書(リザイア)を使うといった戦法で見たものは魔道士の皮を被ったバーサーカーの様だと怖れた。
また、新しい魔法の開発や大昔にあった魔法や杖を復元させるなどといったこともあり、魔法に関する才能はかなり高い。
しかし、平和となりペレジアと和睦する際にシエンがいると和睦はしないと言われ、その魔法の才能と戦闘力を恐れていたイーリス聖王国上層部がこれを理由にシエンを独断で追放することになってしまう。
シエンをいなくなってから13日たったころにイーリス聖王国上層部の人間が謎の急死するといった事が多発した。


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オラリオでお世話になる人々

オリ設定として魔法を習得しないと精神力がないということになっています。

冒険者
神の恩恵を得て戦う者達の総称。

たくさんのお気に入り登録ありがとうございます!


異界の門をくぐり、無事(?)オラリオにたどり着くことに成功したシエンはヘスティアファミリアに入団するのだった。

 

「魔道具といえば・・・あ!?アイツから貰った魔道書!なあベル!黄色い本を見なかったか!?」

 

「黄色い本、それならソファーの上にありますよ。」

 

オレは顔を動かしてソファーのある場所を見るとルフレに貰ったオレ専用の【トロン】の魔道書があった。

 

「よ、よかった〜。あれ?でも他のものはなかったか?」

 

「いえ、見当たらなかったです。」

 

どうやら他に持っていた物はどこかにいってしまったらしい。なくなったのならまた作ればいいがこのルフレから貰った魔道書がなくならなくて本当に良かった。

 

「この本、大事なものなんですか?」

 

「ああ、そうだ。親友から貰った大切な魔道書なんだ。」

 

「魔道書ってなんですか?」

 

「これはな、魔力を持っている奴が魔法を使うための物なんだ。」

 

ベルに魔道書を持ってきてもらいオレは魔道書を手に持ち、使えるかどうかを試してみた。

今までのやり方で発動させようとすると体から何かが抜けていくような感じがした。

おかしい、今までこんな事はなかったのに。

魔道書は魔法を発動させるためのなにかが足りず。魔道書が光るだけで終わった。

 

「グッ、ダメか・・・しかも体から何か抜けていった感覚がする。」

 

「それは、精神力の事かな?」

 

「精神力?」

 

ヘスティアによると精神力というのはこの世界で魔法を使う上で必ず使うもののようだ。これを消費して魔法を使うらしいのでオレの体から抜けていったのもそうなのだろう。あの空間に入った事でオレの体にも何かが変化したと思われる。

魔力が上がったら精神力も上がるようだ。

 

「なるほどな。魔力をないとオレは大したことはできないから、他の魔道書を作って攻撃のレパートリーを増やさないといけないな。」

 

「まあ、話はこれくらいにして新たな団員を迎えた宴をしようじゃないか!」

 

「それは良いですね神様!」

 

その後に小さな宴を開いてそれぞれの事を話し、お互いの常識の違いを確かめ合って驚き、笑ったりと楽しいものだった。

 

次の日

 

「ふあ〜あぁ・・・よく寝たなぁ・・・」

 

「やあ、おはようシエン君。」

 

「おはようヘスティア。」

 

オレはベッドから起きたらソファーで本を読んでいたヘスティアに挨拶をした。

昨日の宴の時にヘスティアには話し方が堅苦しすぎるとのことで話し方を戻した。ベルにはこれからは仲間だからオレに対して敬語で話さなくて良いと言った。

 

「あれ?ベルは?」

 

「ベル君ならもうダンジョンに行ったよ。」

 

オレは壁に備え付けてある時計を見ると午前7時のようだ。早すぎないか、ベル・・・

 

「さて今日は、シエン君が冒険者となる日だ。その冒険者登録する場所には僕が案内するよ。」

 

「ありがとう、助かるよ。」

 

「ふふん、任せてくれよ!」

 

今日はバイトが休みなのかオレの事に付き合ってくれるらしい。ありがたい事だ。

 

このオラリオという街は広大な面積を誇る円形状の形をしており、堅牢な市壁に取り囲まれていて都市中央には、天を衝く白亜の巨塔がそびえていて都市の中央から放射状に、北、北東、東、南東、南、南西、西、北西の八方位に巨大な大通りが伸びているそうだ。

 

ちなみにヘスティアファミリアは北西と西のメインストリートに挟まれた区画にある。

 

早速冒険者登録しに行くために北西のメインストリートにあるギルド本部に向かう事にした。

道を歩いているとエルフにドワーフに猫人といった人とは違う亜人がいっぱいいる。改めて別世界に来たのだと実感できた。

 

「それで冒険者登録をする場所ってのはどこなんだ?」

 

「それはね、ギルドでするのさ。」

ギルドは白い柱で作られた万神殿(パンテオン)。

ダンジョンの管理機関でありオラリオの運営を一手に引き受ける。

オラリオの住人として一定の地位と権利を約束する冒険者登録、迷宮から回収される利益を都市に反映させるため、ダンジョンの諸知識・情報を冒険者達に公開、探索のサポート等も行うようだ。

 

「やあアドバイザー君、彼の冒険者登録を頼むぜ!」

 

オレはヘスティアと一緒にギルドに入ると受付にいたほっそりと尖った耳の女の人に登録をお願いした。

 

「はい、分かりました。ではこの書類に記入をお願いします。」

 

オレは手渡された羊皮紙に字を書こうとして手が止まった。

あ、オレこの世界の字書かねえや・・・

読み方はアスフィに多少教えてもらったのでなんとか読めている。

 

「あの、どうかされましたか?」

 

手の止まったオレに受付の女性が話しかけてくる。

 

「ちょっとすみません。」

 

そう言ってヘスティアに字が書けないことを話す。なんたる迂闊!

 

「なら僕が書いてあげるよ。」

 

「すまん、ありがとう。」

 

「困っているときは助け合いさ。それにこれから読めるようになっていけばいいよ。」

 

そう言ってオレの事をヘスティアは書類に書いていくが実際書いたところは名前と年齢だけだった。出身地や身元も空欄だ。

他国や他都市の密偵や諜者などの特殊ケースを除けば誰でも冒険者になることができる。

 

「シエン、さんですね。ではシエンさんのアドバイザーには私エイナ・チュールが担当します。これからよろしくお願いします。」

 

「こちらこそよろしくお願いします。本当に分からないことだらけで・・・」

 

「ではまず共通語の勉強を始めましょうか。」

 

「・・・はい。ヘスティア、どうやら長くなりそうだから悪いけど先に戻っててもいいぞ。案内してくれてありがとな」

 

「そうだね。なら僕はホームに戻るとするよ、頑張ってねシエン君。」

 

さっきのヘスティアに書類を書いてもらった事でオレが共通語というのを書けない事を察しられてギルド本部のロビーに設けられた小さな一室で勉強会が始まったのだった。

 

「・・・覚えるの早いですね。」

 

「まあなんとかね。これ覚えないと何も始まらないからな。」

 

この部屋に押し込まれてそろそろ昼過ぎといったところだろう。エイナの指導により読み書きをマスターする事に成功した。多少読み方を知っていたとはいえ必死にやればなんとかなるもんだ。

彼女とも話し方を元に戻した。

 

「ではベル君がギルドに来たらダンジョンについての勉強を始めましょうか。」

 

「ゑ?」

 

「え?じゃないですよ。もしかしていきなりダンジョンに行くつもりだったんですか?」

 

「いや、流石にそれはないけど。戦闘準備しないと死んじゃうし・・・はっきり言って今のオレでは何もできない。」

 

ダンジョンに潜るためにもこれは一刻も早くに初期魔法【ファイアー】の魔道書を作らないといけないな。本を作るための材料を手に入れて怪我を治す【ライブ】の杖を作らないと。

そう考えているとドアにノックがされてピンク色の髪の童顔の女性が入ってきた。

 

「エイナ〜、弟君がエイナに用があるって〜」

 

「弟君?ベル君の事か、わかった今行くから。シエンさん、少し待っててくださいね。」

 

そう言ってエイナは部屋から出て行った。弟君、ベルよお前はあんなに綺麗な人に弟扱いされているのか、羨ま憎たらしいぞ・・・

少し時間が経った後にエイナがベルを連れて部屋に戻ってきた。

 

「よう、ベル。ダンジョン探索お疲れさん。」

 

「うん、シエンもエイナさんの勉強会に参加するの?」

 

「まあな、知らないことばかりだからありがたいことだな。」

 

「嬉しい事を言ってくれますね。シエンさん。では早速始めましょうか。」

 

そうしてエイナによる勉強会が始まった。

 

「ベル君は上層のモンスターを全部暗記、そしてダンジョンの通路を覚えてね。」

 

「うえぇ!?僕、疲れてヘトヘトなんですけど!?」

 

「そんなに大声出すくらい元気なら問題なし!しっかり覚えるまで帰さないからね!!」

 

「ひえええええ!?助けて、シエン!」

 

「悪いなベル。オレも大変なんだ、頑張ろうぜ。」

 

この後オレとベルはめちゃくちゃ勉強した。

 

夕方 北西メインストリート

 

日が暮れ出した夕方、勉強で真っ白に燃え尽きたベルと多少元気なオレは一緒にホームに戻るために歩いていた。

 

「つ、疲れた。ダンジョンにいた時よりずっと疲れたような気がする。」

 

「まあまあ、生活が充実してる事はいい事だぞ。リア充だな。」

 

「【りあじゅう】?」

 

ベルは聞き慣れない言葉に頭を傾げる。

神様達もそんな言葉を使っていたような気がする。

 

「ま、それはいいとしてギルドから支給された防具にナイフ。かなりの安物だがないよりマシだろ。次の問題は、魔道具を作るための材料だな。」

 

「えっと、どうやって作るの?」

 

「結構簡単さ、羽ペンとインクと紙さえあれば出来る。エイナに聞いたんだがこの北西のメインストリートにあるリーテイルって道具屋さんがあるみたいでな、そこで購入できそうだ。ただなあ、杖と水晶はないと思うんだ。」

 

「杖って魔導師が使うものみたいだから魔導士専門のお店に行かないとないかもね。」

 

「ヒッヒッヒ、あるよぉそんな店。」

 

「「!?」」

 

突然に会話に加わってきた黒いローブを身に纏った長い白髪の鷲鼻のお婆さん。そしてこの怪しい口調いかにも魔女といった感じだ。

 

「うわ、びっくりしたぁ。お婆さん、そのお店は何処にあるんですか?」

 

「アタシが開いている店にあるよ。外で買い物をして店に戻ろうとしたら魔道具の材料を欲しがっている坊や達の話し声が聞こえてねぇ。つい話しかけてしまったのさ。ヒッヒッヒ。」

 

なんとまあいいタイミングであったものだ。ただこのお婆さんの視線が気になる。その視線はオレを目を見ているのではなく胸、オレの背負っている【トロン】が入ったバッグを見ているような気がするのだ。【魔力】もかなり持っているように感じるし油断できないお婆さんだ。

 

「ねえシエン。そのお店に寄って行こうよ!もしかしたらシエンの欲しいものがあるかもしれないよ。お婆さん、お店の物を見せてもらってもいいですか!」

 

「あぁ、もちろん構わないよぉ・・・ヒッヒッヒ!」

 

う、うさんくせえ・・・怪し過ぎんだろ!真っ当な店なんだろうな、ホント。

結局オレ達はお婆さんの後をホイホイとついて行った。

場所は北西メインストリートを曲がった路地裏の奥深く。地下への階段を下りてそこにあったのは怪しげな店だった。

 

「ここさ、さっお入り。」

 

「「お邪魔します。」」

 

店の中は広く蛇やトカゲの瓶詰めにされたものが置いてあったり、店の奥では大きな黒い鍋から赤い湯気が立ち上っていたりと怪しさ満載でいかにも魔女っぽい店だった。

 

「シエン、このお店はどう?」

 

「ああ、いい品揃えだ。質が良い水晶や魔法石、杖が置いてある。今後も是非とも通いたいくらいだ」

 

「そいつは嬉しいねぇ。それで何か買っていくかい?」

 

「申し訳ないがお金がなくてね。買うことが出来ないんだ、冷やかしで悪いね。」

 

「なに構わないよ。せっかく来たんだ水晶と杖をサービスであげるよ。」

 

「え、本当ですか!?」

 

ベルは驚いているが絶対裏があるだろ。タダより高いものはないぞ。

 

「ただし、坊やのバッグに入っているものを見せてくれたらねぇ・・・」

 

「やっぱりか、さっき話していた時もオレを見ていなかったのはそういう事だったんだな。」

 

「ヒッヒッヒ、流石に気が付いていたかい。なに、見せてもらうだけで構わないよ。貰おうなんて思っちゃいないさ。ま、売ってもらえるならそれなりの額で買い取るつもりだがねぇ。」

 

このお婆さんはここで奪ったりはしないだろう。もしそんなことをすればギルドに言いつけてやるか。

オレは背中のバッグを下ろして魔道書を取り出してお婆さんに見せた。

 

「おお!?これはこれは、アタシもそれなりに生きてきたけどこんな魔法文字は見たことがないよ。これはどういうものなんだい?」

 

オレはベル達にした魔道書の説明をした。するとお婆さんの目が光ったように見える。

 

「気が変わった。坊や、コイツをアタシに売ってくれないかい。高く買い取るよ。」

 

「ほらやっぱりそうなったじゃないか、見せるだけって言ったろ。それにコイツはオレ用にカスタマイズされたものだからお婆さんには使えないぞ。また他にこのタイプの魔道書が手に入ったら売りに来るからさ。」

 

「チッ、しょうがないねぇ。ほら約束通りすきなものを持っていきな。」

 

「おう、ありがとな。なら・・・これとこれだな。」

 

オレはまとめて置いてあった水晶と木の杖をそれぞれ一番良いのを貰おうとしたが二番目に質のいい物を手にした。

 

「へえ、わかるのかい。良い目をしてるね。」

 

「これでも一応魔道士なんでね、物の違いはわかるつもりだ。それと一番良いのをもらっては悪いからな。」

 

「ヒッヒッヒ、アタシはレノア。また来な、坊や。」

 

「坊やじゃない、シエンだ。今度は金を持ってまた来るよ。」

 

そう言ってオレ達はレノア婆さんの店を出た。

 

「材料を貰えて良かったねシエン。」

 

「おう、これで杖はなんとかなりそうだ。これでアシストは出来るからダンジョンに行く時はベルのサポーターとして行くかな。」

 

エイナに教えてもらったがサポーターとは冒険者がダンジョンにて活動をしているのを助ける者のことで基本的に荷物持ちだ。その為に馬鹿にされがちだが、冒険者が荷物を持たずに戦える利点はかなり大きいと思う。

 

「そっか、ならよろしくお願いするねシエン。」

 

「任しとけ。あ、でもベルは朝早いから起こしてくれよ。オレ、そんなに早く朝起きれないんだ・・・」

 

「うん、分かったよ。明日からダンジョン探索頑張ろうね。」

 

そうしてオレ達の1日は終わった。




アスフィ・アル・アンドロメダ 22歳

みんな大好きリューさんの親友

ヘルメスの旅に付き合っていた時に突然現れた異界の門にヘルメスが突っ込んでいき、一緒にイーリスに来てしまった。
FE世界ではステイタスがうまく機能せず、転移先にいたペレジア兵に襲われそうになっていたところ、ペレジア兵絶対殺すマンと遭遇し助かった。
ヘルメス達が来たときはシエン達がギムレーと戦闘する数日前の時だった。
シエン達がギムレーを撃破するところを見たいとヘルメスが駄々をこね、飛翔靴で渋々見に行くことに。ギムレーの動きに当たっただけで即死というオワタ式を無事クリアし、ギムレーが滅びるところを見届けた。
しばらくシエンの屋敷に滞在しヘルメスと共に異界の門をくぐりオラリオに無事戻った。
ステイタスを更新したところ当然Lv.4にランクアップした。ヘルメスは大喜び、本人は「もう絶対イーリスに行かない、もうヤダ・・・」とのこと。

ヘルメス ン億歳

シエンをオラリオに誘った元凶。
突然現れた異界の門に何のためらいもなく入る。ペレジア兵に襲われそうになり、神威を発動しようとするが発動せずかなり焦っていたところ、ペレジア兵絶対殺すマンに遭遇し助かった。
FE世界にいる人々がステイタス無しでも強いことに非常に驚き是非とも一人でもオラリオに連れて行けるように暗躍しようとするが、寒気を感じやめた。
そして、シエン達がギムレーを戦闘することを聞いて見に行き、ギムレーの滅びるところを見届け、シエンをオラリオに来るように勧誘する。
しばらくシエンの屋敷を拠点に覚醒の世界をドラゴンに跨り、探検する。
神竜族の王女チキに会い、とあるものを預かる。お土産もたくさん買い(シエンの金で買った)アスフィと共に異界の門をくぐりオラリオに無事戻った。
 ちなみにヘルメスが暗躍していた場合、異界の門をくぐる前に抹殺されていた。さりげなく、自分自身が生き残る未来を勝ち取っていた。


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ダンジョン探索

二次小説を書いて一年、あっという間だったなぁ。
これからも皆さんが楽しめるように頑張っていきます!

評価、お気に入り登録、コメント、本当にありがとうございます!!



翌朝 午前5時

 

「ほら、シエン起きて、朝だよ。一緒にダンジョン探索に行くんじゃなかったの?」

 

「んー?もう朝か?もうちょい寝させてくれ〜」

 

「ほら、行くよ。」

 

「分かったよぉ、準備するから待っててくれぇ〜。」

 

ベルに起こしてもらい装備を身につけてバッグパックを担ぎ、魔道書を持ってそして昨日貰った水晶と木の杖で作った回復の杖【ライブ】を持った。

 

「待たせたな、行こうか。」

 

「うん!」

 

そしてオレ達は八本のメインストリートが合流する中央広場に移動して天を衝く白亜の摩天楼【バベル】に入った。

 

エイナに教わったがバベルはダンジョンの蓋として機能していて冒険者のための公共施設(シャワールーム、簡易食堂、治癒施設、換金所など)の他に、開いているスペースには色々な商業者にテナントとして貸し出されているらしい。

また二十階から上はギルドの管理のもと神達に賃貸されている。

 

そんなこんなで地下一階に移動した。そこにはダンジョンに通じる大広間があり。

床の中央には地下迷宮の出入口の大穴(直径10M)が口を開けている。

 

「地下なのに明るいって変な感じだな。」

 

「僕もそう思うよ。あ、モンスターが来たよ!」

 

大穴を通り、しばらく歩くと通路の向こうからコボルトがやって来た。ベルはナイフを持って待ち構える。オレも魔道書を持つ。

 

「ギャアア!」

 

「うわっ!?お返しだ!」

 

ベルはコボルトの攻撃を躱し、ナイフをコボルトの胸に突き刺す。

 

「グ、ギャ・・・ァ」

 

コボルトは苦しげな声を上げて息絶えた。オレは倒したコボルトに近づいてナイフを取り出してコボルトの胸を切り裂き魔石を取り出した。

 

するとコボルトの体が灰となった。魔石はモンスターの核でそれを失うと灰になってしまうようだ。けど、魔石を取り出した時に付着した血は灰になっていない・・・なんでなんだ?

 

この魔石をギルドの換金所に持って行くとヴァリスと交換してもらえる。これから先はこれを行なって金を稼いでいく訳だ。

 

「よし、取れたぞ。結構小さいな、指二本で摘めるくらいだ。」

 

「もっとダンジョンの奥深くになると大きいのが取れて価値が高いみたい。けど僕達にはまだまだ無理だね・・・」

 

「ああ、【冒険者は冒険してはいけない】だったな。地道に頑張るか。」

 

今の言葉はエイナが言っていた言葉で要は無茶をするなという事だろう。

いざという時には無茶はしないといけないが、なるべくリスクからは避けていかないとな。

 

「シエン!前からまた来るよ!」

 

ベルがまたコボルトが接近していた事を教えてくれた。今度は三体か、ここは【魔法】の使い所だな!

 

「ベル!オレが奴らを魔法で分断させる。任せろ!【ミラーバリア】!」

 

連携の出来ていない敵を分断するのは簡単だ。速い奴と遅い奴の間に奴らが変えられない壁を張ってしまえばいい。

 

「「グギャ!?」」

 

「グル?」

 

遅い二体は壁の向こうに置き去りとなり、一体は見えない壁に遮られて引くことが出来ない。ふふふ、これは使えるな・・・

 

「やあああああ!!」

 

「グギャァァ!?」

 

コボルトが一体のみならば負けはしない。ベルが突撃をしてコボルトに襲い掛かり倒す。それを見たコボルト達は逃げようとするがそうはさせん。

 

「【ミラーバリア】!」

 

コボルト達の背後に障壁を張って逃げ場を断った。さっきはオレ達が襲われる立場だったが今度はコボルト達が襲われる立場になったな。若干コボルト達の目が潤んでいるように見えるが気のせいだろう。

この後一体一体を障壁から出して撃破した。

 

「よし、これでどうよ!」

 

「う、うん。上手くいったね・・・なんか悪い事をしたような。」

 

「ふん、襲いかかってくる奴が悪いんだ。気にするな。群れで襲い掛かってくるなら分断してそれぞれを倒す。戦闘の基本だぞ。」

 

オレ達も生きるのに必死だ。生きるためならば使える手は使うに限る。

その後も1、2階層で戦い続けて精神力切れになりかけたので地上に戻る事にした。

 

日差しが眩しい、どうやらまだ昼ごろのようだ。オレの精神力がもっとあればまだ潜れていたが無いものはない、今後も頑張ろう。さて、換金所に行き換金しようか。

 

「シエン!スゴイよ!今までの稼ぎの中で一番の稼ぎだよ!」

 

どうやらベルが一人でダンジョンに潜っていた時よりも多くの収入を得ることが出来たらしい。オレが荷物持ちをしていた事でベルは戦闘に集中出来ていたし大きめのバッグパックを持っていたから魔石をたくさん運べたからだろう。

 

「流石にもっかい潜るのは勘弁してくれよ?オレはもうギリギリだ・・・」

 

「うん!結構時間もあるしどうする?」

 

この後はエイナによる勉強会もあるしギルドに留まっているのもいいが・・・あっ!アスフィ達にオレがオラリオに来たことを伝えないと!

 

「ベル、オレはちょっとヘルメスファミリアに行ってくるよ。」

 

「僕も一緒に行ってもいいかな?」

 

「おう、ギルドに場所を聞いて行くとしようか!」

 

ヘルメスファミリア

 

オレ達はヘルメスファミリアに辿り着いた。

 

「お、あん時のヒューマンじゃないか。忠告したのにまた入団しに来たのか?」

 

目の前には耳と尻尾の生えた浅黒い肌の女性がいた。どうやらベルは知りあいらしい。

 

「いえ、そうではなくて。僕もファミリアに入ることが出来ました。ヘスティアファミリアっていうんですけど。」

 

「へぇ!それは良かったな。お前じゃ素直すぎてウチは合わないと思っていたから別のファミリアに入れたなら良かったぜ。それで何か用か?」

 

「それはオレです。ヘルメス、様とアスフィは居ませんか?」

 

「ヘルメス様とアスフィなら今旅に出ているよ。いつ帰ってくるかは分からないけど二人に何か用か?」

 

「二人に伝言を、イーリスの魔道士がオラリオに来た。そう伝えてください、それで二人に伝わるはずです。」

 

「イーリスの魔道士がオラリオに来た、分かったよ。帰ってきたら伝えておく。」

 

「ありがとうございます。それでは、ベル行くぞ。」

 

「あ、うん。それじゃ失礼します。」

 

「おう、じゃあなー!・・・イーリス、ねぇ。3年前にアスフィがそんな所に行ったとか言っていたような・・・ま、二人に伝えれば何か分かるだろ。それよりなにか金儲けになることないかな〜」

 

ヘスティアファミリア

 

「「ただいまー」」

 

「お帰り〜二人共。」

 

エイナの勉強会を終えてオレ達はホームに帰ってきた。バイトが終わっていたのかヘスティアが先に帰って来ていた。

オレ達は食事をしながら話をする。

 

「神様!今日はいままで一番の稼ぎでしたよ!シエンが協力してくれたおかげです!!」

 

「本当かい!?うわ、本当だ!5000ヴァリス!!僕は時給30ヴァリスなのにこれはスゴイよ!!」

 

やはり命がかかっているだけにヘスティアと比べると儲けはなかなかのものだ。5000ヴァリスってどれくらいの価値があるんだ?

ジャガ丸君とやらは30ヴァリスだったが。

 

「その時、シエンが【魔法】を使ってその時に僕が切りかかって・・・」

 

「うんうん」

 

ベルは初めて【魔法】を見た事をヘスティアに興奮しながら説明してヘスティアはそんなベルを温かい目で見ている。この世界では【魔法】は切り札のような扱いらしい。

オレ、向こうだと連発して使ってたのに・・・

 

食事も終わりステイタス更新の時間だ。上着を脱ぎ、ヘスティアが神の血を背中に垂らしステイタスを更新した。

 

「はいこれ、シエン君のステイタスだよ。」

 

シエン

 

Lv.1

 

力 :I0

 

耐久 :I0

 

器用 :I0→I53

 

敏捷 :I0→I8

 

魔力 :I0→I97

 

魔法 スキル は略します。

 

「おー伸びてる伸びてる。」

 

器用と魔力が伸びているな、ライブの杖の作成と今日ダンジョンで魔法を使ったことが影響したんだろう。

 

「レベルが低いからまだ上がりやすいってこともあるんだろうけど、伸び過ぎだよ!!」

 

「本当だ、僕のステイタスと比べても全然違う・・・」

 

ベルのステイタスが気になったので見せてもらった。

 

ベル・クラネル

 

Lv.1

 

力 :I37→I40

 

耐久 :I5

 

器用 :I43→I45

 

敏捷 :I97→H102

 

魔力 :I0

 

スキル

 

【魔法】

 

【】

 

なるほど今日は早めに切り上げて帰って来たが普通はこれくらいの伸びなのか。

昔から魔力を使う兵種だったから【魔力】の伸びは良かったがこちらでは勝手が違うはずなのになんでだ?

 

ステイタス更新も終わり、オレは瞑想をして精神力を扱う修行をしているとヘスティアが大切な話があると話しかけて来てベルのいない所で話し合うことになった。

 

「シエン君、話というのはね。君のステイタスの事なんだ。」

 

「オレのステイタス、あの伸び方についてか?」

 

「うん、そうさ。実はね、君には伝えていないスキルがあってね。」

 

オレはヘスティアに【魔法の探求者】のスキルの事を教えてもらった。なかなかに便利なスキルだ。耐久が上がりやすくなるのが特に良い。魔導士は防御が低いからそれを改善できる。

 

ヘスティアによるとどうやらこれは誰も発現した事がないレアスキルらしく神々はレアとか限定とかに目が無くてもしバレてしまうと神々にオレは弄ばれてしまうそうだ。

だから絶対にこのスキルの事を話してはいけないとヘスティアは言った。

 

「わかった、気をつけるよ。」

 

「頼んだよ、これは君のためでもあるんだからね。」

 

秘密はいつかバレるものだ。だからバレてちょっかいをかけられる前にもっと強くなる必要があるな。




ダンメモのイベントで原作前の話があってベルはヘルメスファミリアに入団するためにルルネの入団試験を受けています。

アスフィっていつ頃に帰ってくるんだろう・・・外伝3巻の時には帰ってきていたけど・・・

リーネ、お前さん16歳だったのか・・・
11歳で遠征に参加ってスパルタ過ぎるだろ・・・なにやってんだよ団長!


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いつもの、そしてベルの運命の出会い

魔道書の事は詳しく書かない方がいいのかな・・・
流石に3回目となるとしつこいし新鮮さがないけど書かざるを得ないのだ・・・


ベルとのダンジョン潜りは数日経った。オレの魔力がどんどん伸びていきベルのアシストを出来る回数が増えていった。

 

「よし、今日も良い感じに稼げたな。」

 

「うん、10000ヴァリスだね。」

 

初めてダンジョンに潜った時よりも二倍稼ぐ事が出来た。そして山分けだ。

ようやく魔道書を作る資金が出来た。

 

「ベル、帰りにリーテイルによって行きたいんだがいいか?」

 

「うん、良いよ。」

 

リーテイルは北西のメインストリートにあって、ごつごつとした加工石で構築された二階建ての道具屋で冒険者通りに面する敷地を勝ち取っただけあって冒険者の評判は高く、品揃えも多い方なんだそうだ。

 

もちろんオレの欲しかったペンやインクに紙もあった。早速購入してこれで準備万端だ。ホームに戻ろう。

 

ホームに戻り早速魔道書作りに取り掛かった。もちろん簡単ではない、今まではインクに魔力を乗せてやっていたがこっちでは精神力を乗せてやる事になる。

精神力を消費すると精神枯渇に陥って気絶する。そうなれば紙はまた書き直しになる。

紙もあまり枚数に余裕はない。慎重に、でも高速で書く。オレはペンを両手に持ち精神力を流して本作りに取り掛かった。

 

「神様、僕、魔道書というのはよく分からないんですけど。大変なんですね。」

 

「僕も見た事がなかったけど必死に頑張ってるね。」

 

二人はシエンの邪魔にならないように小声で話をしていた。

魔道書作りを取り組んで30分程すると。

 

「だあああああああ!!無理!何ヶ月かかることになるんだこれ!?」

 

シエンは魔道書作りをギブアップした。

 

「え、どうして?順調に書いていたと思うけど・・・」

 

「精神力が全ッ然足りん!精神力がインクに全然馴染んでくれないんだ・・・」

 

どうやらこの世界で魔道書を作るためにはそれなりに時間がかかってしまいそうだ。だが【ファイアー】の魔道書くらいは早く欲しい。簡略化して突貫で作るしかないか。

それでも多少は時間がかかるだろう。

 

「だが諦めるわけにはいかないな。絶対に作り上げてみせる!」

 

こうしてオレの魔道書作りは始まった。

そしてすぐ出来るわけもなく、時間はベルの運命の出会いまで進むことになる。

 

約1週間後

 

「ヴゥォォォォ!!」

 

「ほあああああああああ!!??」

 

「くっそぉ!?なんで3階層にミノタウロスが出てくんだよ!?おかしいだろォ!!」

 

現在オレとベルは3階層を爆走中だ。何故ならば中層の15階層辺りに出てくるミノタウロスというモンスターに追われているからだ。

中層のモンスターを倒せるのは冒険者がLv.2でないといけないらしい。

つまりオレたちでは無理だと言う事だ。

 

「ハッ、ハッ、ハッ・・・」

 

「ヴォッホッホ!」

 

この野郎、オレ達が逃げているのを追い回して楽しんでやがる・・・

奴の方が速いはずなのにわざとだな!!ならばこれならどうだ!!

 

「チッ、【ミラーバリア】!」

 

オレは走りながら通路に障壁を張りミノタウロスが追いかけてくるのを妨げる。さあ、どうする!

 

「ヴォッ!?・・・オオオオオオオ・・・・ヴォオオッ!」

 

ミノタウロスは障壁にぶつかった後少し下がり。助走をつけて自慢の頭のツノを透明な障壁にぶち当てて破壊した。

 

「流石にダメか。だが、時間は稼いだ!」

 

「何をしたのシエン!?・・・うわッ!?」

 

オレより速いベルは後ろにいるオレがなにをしたのか気になり振り向きながら走っていると足元にあった窪みに足を取られ転倒してしまった。

 

「ベル!?早く立て!クッ、追いつかれるぞ!!はやくッ!」

 

「あ、ああ、足が・・・動かな・・・」

 

ベルはミノタウロスに恐れをなして動けなくなってしまう。

無理もない、まだ冒険者になって間もないのだ。なら戦う事に慣れているオレがやるしかない!

もう少しだけ時間を稼いでベルを背負って逃げるんだ!

 

「ヴゥオオオオオオオオ!」

 

ミノタウロスは白髪の少年よりも奇妙な力を使う黒髪の男を危険視したのか狙うことにした。先ほどまでは油断していたが邪魔をするならば手加減をしないとばかりに頭を下げ頭のツノを突き出しながら速度を上げた。

あまり敏捷が高くないシエンはあっという間にミノタウロスに追いつかれてシエンは突き飛ばされそうになる。

 

「(速い!?)【ミラーバリア】!」

 

シエンは障壁を張ったがミノタウロスは先ほどより力を込めて突撃している為にあっさりと破られてしまう。

 

「ムヴゥゥゥゥゥゥゥン!!」

 

「グァァァァ!?」

 

ミノタウロスはシエンの柔らかい体にドスリとツノを突き刺し勢いよく頭を振り上げる。シエンの体は宙を舞った。

 

「シエン!?」

 

空中に舞っているシエンを心配するベルだがそれどころではない。己の命を粉砕する敵が近づいて来ている。

 

「フゥー!フゥーッ・・・ヴゥオオオオオオ!!」

 

自分を邪魔するものはいなくなった。目の前の貧弱そうな白髪の子供の命を刈り取ろうとしたその時。ミノタウロスの胴体に一線が走った。

 

「ヴォ?」

 

そこから凄まじい剣戟が走りミノタウロスの体はバラバラになっていく。その時に血飛沫が吹き出して目の前にいたベルの身体中に付着した。

 

「・・・大丈夫ですか?」

 

ミノタウロスを倒したのは金髪金眼の少女だった。その少女の名は【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタイン このオラリオでも最強の一角と言われているLv.5だ。

 

ベルは今起きた出来事に呆然としながらもその少女から眼を逸らすことは出来なかった。綺麗だ、とても綺麗な少女だ。

男が困っている女の子を助ける。そういう風になれと祖父から言われていたが配役は全くの逆だった。

 

「だぁああああああああああああ!?」

 

恥ずかしさと極度の緊張状態から混乱してしまいベルは勢い良く起き上がり全速力で逃げ出した。

 

 

「お、おい!どこ行くんだ、ベルッ!?」

 

ベルは逃げ出してしまった、オレを置いて・・・

 

「・・・・」

 

「・・・つ、・・・くくッ!」

 

見たことがない少女は目を見開いて立ち尽くしていてその後ろには灰色の髪をした犬みたいな耳の生えた獣人が笑いを堪えていた。

 

少女は獣人をすこし睨んだ後、倒れているオレのところにやって来た。

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

「いや、大丈夫じゃない。背中をやられてな、立てない。」

 

「ごめんなさい、私達のせいで。」

 

見たことのない少女、けどエイナの勉強により多少知った情報から彼女がアイズ・ヴァレンシュタインだと分かった。そしてロキ・ファミリアだったはず。

現在は遠征とやらでダンジョンの奥深くに行っていたらしいが戻って来たのか・・・

それで彼女がいうには17階層に大量のミノタウロスがやって来てそれを倒していると半分近くが逃げ出して上へ、上へと向かって行ったらしい。

 

「なるほど、そんな事もあるのか。今度から気をつけないとな。」

 

確かに彼女たちのせいでこの事が起きたのかもしれないがそこまで怒ることでもない。冒険者は命がけの職柄、何が起きたって自己責任だ。命があっただけで儲けもんだろう。そもそも、大量に現れたミノタウロスが悪いのだ。

 

「あの、これ・・・ハイ・ポーションです。使ってください。」

 

彼女はオレの背中の傷に目が付いたのか回復薬をくれた。ハイ・ポーションはポーションより回復力が高く傷口を塞ぎ、体力を回復させるものだ。

ベルが知っている店で【青の薬舗】というところではポーションが500ヴァリスでそれより効果のあるハイ・ポーションのほうは数万ヴァリスの値がするようだ。・・・値段が上がりすぎじゃないか?

 

「え、いいのか?ありがとな。あ、でもすまない。身体を起こせないから背中にかけてくれないか?振りかけても傷は治るんだっけ?」

 

「はい、治りますけど。良いんですか?」

 

なにやら彼女は躊躇っているようだが特に問題はないだろう。黒いマントを傷口からずらして黒い服も同様にずらした。

すると背中にハイ・ポーションが垂らされ傷口が塞がり体力が戻っていく・・・体が楽に動く!

 

「おお・・・んん!?もう痛みがねぇ!?スゴイなこの回復薬!?本当にありがとな!【剣姫】さん!」

 

オレは体を起こしてお礼を言うと彼女はダンマリとしたままだった。顔は無表情のようだけど目も見開いているようだから驚いているのか?

 

「ん?どうかしたのか?」

 

「いえ、なんでも・・・」

 

「おい、アイズ!終わったならさっさと戻るぞ!こんな雑魚に構ってんじゃねぇ!!」

 

先程から黙っていた獣人がもう用はないとばかりさっさと引き上げて行った。

 

「本当にごめんなさい。それじゃ・・・」

 

「いや、いいって。えっと、遠征だっけ?お疲れさん。」

 

彼女も獣人の後について去って行った。さて、オレも帰るとするか・・・

ロキ・ファミリアの遠征部隊の後をつけて行けばモンスターに襲われることはない。

ベルの奴、ちゃんと戻れたんだろうな・・・

 

「(なに、あれ・・・)」

 

灰色の狼人のベートと共に仲間達の元へ戻るアイズの頭の中には先程の出来事でいっぱいだった。逃げ出した少年、それに黒づくめの男、それが問題だった。

 

基本的に背中にはステイタスが刻まれていて他人には見せないようにするものなのだが、彼はきにしなかったので背中に回復薬をかけてあげた。

するとステイタスをロックしていなかったのか他の人も見れてしまう状態だった。それにアイズは神聖文字をすこし読み解く事ができる。

名前、レベル、基本アビリティ、魔法は丸見えでスキルは所々血がついていて読み取れなかったがスキルが多かった。

 

あり得ない、少なくともLv.1が持っているとは思えないのが多すぎる・・・

 

「おい、アイズ。どうした?なんか様子が変だぞ。」

 

「いえ、なんでも」

 

「・・・そうか、ならいいけどよ。なんか悩んでんならバb・・・リヴェリアにでも相談しとけよ。」

 

そうだ、困った時はリヴェリアに聞こう。きっと何かわかるはず・・・

 

 

 

シエン

 

Lv.1

 

力 :I0

 

耐久 :I0

 

器用 :C687

 

敏捷 :I67

 

魔力 :B758

 

【魔法】

 

【ミラーバリア】

・速攻魔法

・敵の飛び道具や魔法を反射する。反射する際は向きを自由に変えられることができ、いろんな攻撃も防ぐことができる。形は精神力を消費すると自由に変えられる。

・魔法を反射したとき魔法の威力が上昇する。

・空中に足場を作ったりできるが透明で見えない。

 

【】

 

【】

 

 

《スキル》

 

【呪い】

・自分の影が相手との接近戦になった時に黒い手のような形になり、実体化する。相手の足などに掴まり動きを阻害する。

・【魔力】やLvの高さにより強力になる。

・【魔導】の補正も入る。任意発動、これは精神力を消費する。

 

【道具節約】

・幸運×2%で武器や魔道書の使用回数が減らない竜石も減らない(新品のままになる)

 

【魔道具作り】

・(FEにある)武器、魔道書、杖を作ることができる。

・作った本人が使用時には威力が上昇する。

 

【魔力追跡】

・生き物の【魔力】【精神力】を覚えどこにいるのかを探知できる。

・レベル、魔力が上がるごとに範囲拡大。【魔導】の補正も入る。

・ただしダンジョン内では不安定。

・任意発動、精神力消費しない

 

多重魔法(マルチマジック)

・複数の魔法を同時に発動、または魔法を発動しながら別の魔法も発動できる。




原作では5階層でミノタウロスに遭遇していますがシエンがいるのに無茶はしないと思うので3階層までミノタウロス君に来てもらいました。特に問題ないしね。

話の最後にあるステイタスはアイズが読み取れたものです。
ベートはアイズと二人きりで話している時には流石にリヴェリアのことを●●●とは言えませんでした。


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ウサギの跳躍

FE新作、はよ来い来い!!


ロキファミリアの遠征部隊の後をつけて無事地上に戻りバベルの塔の一階にはベルがいなかった。

 

「どこ行ったんだよ・・・ん?」

 

オレは外に出て地面を見ると血の跡が北西メインストリートに伸びていた。

あいつまさかバベルの塔にあるシャワーを使わずに血だらけで移動しているのか!?

オレはその血の跡を辿ってたどり着いたところはギルド本部だった。

 

「え?なんでここなんだ?」

 

オレにはなぜベルがここに移動したか分からなかった。すると中から知り合いの声が聞こえてきた。

 

「えぇ!?ベル君、君はシエンさんをダンジョンに置いて出てきちゃったの!?」

 

「すいません!?急いでダンジョンに戻って探しに行きます!」

 

どうやら今頃気がついたらしい。どんだけ混乱していたんだ・・・

オレはギルドに入ってベルを探しているとロビーに設けられた小さな一室からベルが飛び出して来た。

 

「よう、ベル。無事だったんだな。」

 

「シエン!?置いていってごめんなさい!!僕、すぐに逃げ出したりして・・・」

 

オレにあった途端にこれでもかってくらいに頭を下げて謝ってきた。

 

「今度は勘弁してくれよ。オレは今はソロでダンジョンに潜るのには慣れてないんだからな。」

 

「うん、本当にごめん・・・」

 

「いいって、それで血塗れのままここまで来たみたいだけど何しに来たんだ?」

 

「それは・・・その・・・」

 

ベルは少し顔を赤らめて言いづらそうにしている。

 

「シエンさん、ベル君はどうやらヴァレンシュタイン氏のことを好きになってしまったようで彼女の事を知るためにここに来たみたいです。」

 

「え、エイナさぁん・・・」

 

「なるほどねぇ、でも付き合うっていってもかなり厳しくないか?力の差もあるし何よりファミリアが違うのは致命的だと思うのだが・・・」

 

「グフッ!?」

 

「私もそう言ったんですけど諦めきれないらしくて・・・」

 

「ま、ダンジョン探索に更にやる気を出してくれるなら別にオレはいいがな。さて、オレは換金に行ってくるよ。」

 

換金で手に入れた金額はざっと2000ヴァリス、潜った時間も短いししょうがないよな。換金が終わりベルとギルドの出口に移動すると見送りに来てくれたエイナがベルに言った。

 

「ベル君、女性は強くて頼りがいのある男の人に魅力を感じるから、ベル君が強くなったら彼女も振り向いてくれるかもよ?」

 

そうなる可能性はかなり低いがおそらく彼女なりにベルを励ましているのだろう。ベルもその事に気がついたのか笑みを浮かべその場を駆け出して振り返ってエイナに向かって叫んだ。

 

「エイナさん、大好きー!!」

 

「・・・えうっ!?」

 

そう言ってベルはその場を去って行った。オレはエイナを見ると顔を真っ赤にしたエイナがいた。あれ?もしかして満更でもない・・・?

 

「モテる女性は大変だね〜」

 

「もう、からかわないでください!」

 

「ハッハッハ!じゃあな〜!」

 

少しエイナをからかった後にオレもギルドを後にした。

 

「神様、ただいまー!」

 

「ただいまー」

 

その後、ベルと合流してホームに帰ってきた。

部屋にはソファーに寝っ転がっていたヘスティアが起き上がってこちらに向かってきた。

 

「おかえりー二人共。今日はいつもより早かったね?」

 

「いや、ちょっとダンジョンで死にかけちゃって・・・」

 

「ああ、予想外の出来事が起きてな。本当にヤバかった・・・」

 

「本当かい!?無茶はしないでおくれよ?君達に死なれたりしたらボクはとても寂しくて悲しいからね。」

 

「大丈夫です。神様を一人になんてさせませんから。」

 

「おっ?言うじゃないかベル君!なら大船に乗ったつもりでいるから覚悟しておいてくれよ?」

 

その後に何が起きたかを説明して食事をしてステイタスを更新する事になった。

 

シエン

 

Lv.1

 

力 :I0

 

耐久 :I0→H120

 

器用 :C687→B701

 

敏捷 :I67→I85

 

魔力 :B758→B796

 

以下略

 

うーむ、特に耐久が伸びたな。今までは敵の攻撃を受けなかったから耐久は1つも上がらなかったけど今回ばかりは流石に上がった。スキル万々歳だ。

ベルのほうはどうなったのだろうか・・・

ん?ヘスティアがなにやら不機嫌なようだ。何かあったのか?

 

「神様、このスキルのスロットはどうしたんですか?何か消したような跡があるような・・・」

 

「ん、ああ、それね!ちょっと間違えて書いちゃってね!いつも通り空欄だから安心して。」

 

「ですよねー・・・」

 

おいヘスティア、そんなあからさまに怪しい挙動で言っても信用ないぞ、そしてベル。あっさり信じるなよ・・・

後でベルのスキルについて聞いておくか?いや、ヘスティアに相談された時に聞くか。神々には嘘はつけないらしいから下手に知っておくのはマズイ。

他のファミリアの神にベルはスキルを持っていないですと言えなくなる。

ベルの初のスキルはどんなスキルなんだろうな・・・

 

 

ベル・クラネル

 

Lv.1

 

力 :I82

 

耐久 :I13

 

器用 :I96

 

敏捷 :H172

 

魔力 :I0

 

【魔法】

 

【】

 

スキル

 

【憧憬一途】

 

・早熟する。

・懸想が続く限り効果持続。

・懸想の丈により効果向上。

 

シエンは知るよしもないがベルの目覚めたスキルはシエンと同様、いやそれ以上のものだった・・・

 

次の日

 

「シエン、今日も頑張ろうね!」

 

「おお〜」

 

今日も朝5時に起こされ、寝不足なオレとベルは共に西のメインストリートからダンジョンへと向かう。

その途中になにやら嫌な感じがした。

 

「「・・・!?」」

 

「ベル、お前もか?」

 

「うん、何というか誰かに見られているような・・・」

 

すぐさまオレたちは振り返るがそんな怪しい格好をした奴はない。

何というか物を値踏みをするかのような無遠慮すぎる視線を感じる・・・

 

「あの、これ落としましたよ?」

 

背後から声をかけられ振り返ってみるとそこにいたのはヒューマンの少女だった。

顔は可愛らしく髪は薄鈍色、後頭部でお団子にまとめてそこからぴょんと一本の尻尾が垂れている。

服装は白いブラウスと膝下まで丈のある若葉色のジャンパースカートにその上から眺めのサロンエプロン。

何だこの美少女は・・・服装からしてここらへんにあるお店の店員か?それにさっきの視線はいったい・・・何者なんだ・・・

 

「あの、これ・・・」

 

その少女が持っていたのは魔石だった。オレは昨日換金したはずなんだが・・・

 

「ベル、これお前のか?」

 

「あれ?ボクも昨日渡したと思うけど・・・昨日は色々ありすぎてちょっと記憶が・・・もしかしたら渡しそびれたのもあったのかも。すみません、ありがとうございます。」

 

「いえいえ、お気になさらないでください。」

 

そう言って店員さんは微笑んでいた。とてもさっきの視線をするような人物には見えない。

 

「こんなに朝早くにダンジョンに行かれるのですか?」

 

「はい、少しでも稼いでおかないといけないので。」

 

「・・・そんなところだ。」

 

ちょっと警戒気味に返事を返した。少し話して離れようと思ったがその時オレ達の腹が鳴った・・・

 

「「「・・・・・」」」

 

確かに今は朝早くてご飯は抜いてきたが二人同時に腹が鳴るか・・・

 

「フ、フフフ・・・お腹が空いているようですね。少し待っててください。」

 

店員さんはクスクスと笑っていて近くにあるお店に入っていって少ししたらバスケットを持って戻ってきた。中にはパンとチーズが入っているのが見える。

 

「よかったらこれを貰ってください。」

 

「そんな、悪いですよ!これは貴方の朝ご飯では!?」

 

「このまま見過ごしてしまうと私の良心が痛んでしまいそうなんです。だから冒険者さんどうか受け取ってくれませんか?」

 

す、すげえ・・・よくそんな言葉が出てくるな・・・そんなの断れるわけがない。

 

「そ、それじゃあ、ありがたくいただきます・・・」

 

「そのかわり、今夜私の働く酒場で晩御飯を取ってもらいますね。」

 

そう言って店員さんはにっこりと笑った。

・・・やっぱり油断ならねぇやこの店員・・・

 

「してやられたなベル・・・」

 

「うん・・・」

 

「うふふ、あのお二人のお名前は?」

 

「僕はベル・クラネルと言います。」

 

「オレはシエン。」

 

「ベルさんにシエンさん・・・ですね。私はシル・フローヴァ、今晩お待ちしていますね。」

 

オレ達は強かな店員シルと別れ、ダンジョンへと向かった。

 

「フッ!!」

 

「ギャウッ!?」

 

「任せろ!くらえ!!」

 

今はダンジョン一階層、コボルトと戦闘中だ。昨日、ミノタウロスに襲われるという予想外の出来事からやはり攻撃手段が必要と思い、睡眠時間を削ってまで魔道書を遂に完成させた。作ったのは【ファイアー】の魔道書、魔法陣が現れてそこから火球が飛び出してくるといった物だ。

ただし、かなり急いで作ったものだから質が悪い、精神力の消費も半端ではない。【トロン】よりは随分マシだが・・・

 

魔道書に精神力を送り込むと赤く光りだして目の前に魔法陣が現れる。標準をコボルトに合わせ火球を発射した。

 

「ギャウアアアアアアアア!!??」

 

コボルトは突然現れた火球に反応できず、直撃して燃え尽きた。

残ったのはコボルトの魔石だけだった。

魔石が残らなかったら、今後は使用できないところだった・・・

 

「うっし!いい感じだな!」

 

「いいなぁ、僕も魔法を使ってみたいよ・・・」

 

「だったら魔法に関しての知識を学ばないとな、そういうのはしたことはないんだろう?」

 

「うん、お伽話の本ならよく読んでいたけど・・・」

 

流石にそれは魔法とは関係がなさそうだ・・・まあお伽話は馬鹿にはできないがな。意外なところで現実に関わっていたりするからなぁ・・・

 

「ま、今はやれる事をやろうか。オレだってベルが羨ましいぜ。力が上がるんだからな。オレはコボルトですらギリギリなんだぞ・・・だから接近戦は任せたぞ!」

 

「・・・そうだね、任せて!」

 

ベルが前衛で俺が後衛、仲間が増えたらもう少し楽になるだろうか・・・

 

シエン

 

Lv.1

 

力 :I0

 

耐久 :H120→H124

 

器用 :B701→B745

 

敏捷 :I85→I87

 

魔力 :B796→A867

 

以下略

 

ベル・クラネル

 

Lv.1

 

力 :I82→H138

 

耐久 :I13→I42

 

器用 :I96→H147

 

敏捷 :H172→G259

 

魔力 :I0

 

 

「「・・・・・えっ」」

 

ダンジョン探索を終えてステイタス更新をしてもらうととんでもない結果が出た。ベルのステイタスの熟練度の成長も半端ではないからだ。

上昇値トータル200オーバーだと!?、絶対オレと同じ成長促進スキルがあるな・・・

マズイな、これではあっという間に置いていかれそうだ・・・負けてられない!




魔道書 ファイアー(粗悪品)
インクに精神力をあまり馴染まさずに魔法文字で書いた物。作成時間約1週間。

威力0 使用回数3回

シエンが突貫で作った魔道書、主に自分が使うためだけに作ったもの。試作第1号。
精神力の消費が本来の物よりも多く、スキル【道具節約】がないと3回しか使えないなど、ろくなものではない。
この先どんどん研究を重ねてマシな物が出来上がっていくようだ。


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覚醒の時

地の文を増やせるように頑張っていきます。


オレ達はステイタスを更新し終えて朝方に出会ったシルとの約束通り、西メインストリートに装備を整えて向かった。 ヘスティアはバイトの打ち上げがあるらしく別行動だ。

 

「えっと、この辺だっけ?」

 

「そうだな、ここら辺であったよな・・・?」

 

オラリオの朝と夜とでは全く違う。夜になるとどこに何があるのかわからなくなる。

キョロキョロと見回していると朝見た薄鈍色の髪のシルが見えた。目があって向こうも気がついた。

 

「あっ!シエンさんとベルさん!」

 

「よ、夕ご飯を食べにきたぞ。」

 

「こ、こんばんわ・・・」

 

「約束通り来てくださったんですね!席はこちらです!お客様お二人様入りまーす!!」

 

そんな声を出さなくても・・・そのせいで複数の客がこっちを見ているじゃないか・・・

オレ達の席はカウンターであまり目立たない端っこだった。こういう配慮は有難い。

店の名前は【豊饒の女主人】か、覚えたぞ。

 

「アンタ達がシルの呼んだ客かい?パッとしない顔と冒険者らしくなく可愛らしい顔じゃないか!」

 

店長と思われる恰幅の良い女性が話しかけてきた。

 

「「ほっといてください・・・」」

 

顔の話題は勘弁してください・・・

それにしてもここの店員美人さんばっかりだな!

しまいにはエルフまでいるし潔癖ってイメージだけど珍しいな・・・

 

だかそれよりも気になるのはここの店員達、全員出来るな・・・力を隠しているみたいだが立ち振る舞いが違う。

 

「そこの黒い坊主、ウチの店員をジロジロ見てんじゃないよ。さっさと注文しな!」

 

どうやら探っているのを勘付かれて怒らせてしまったようだ。詮索はされたくはないって事か。

 

「すいません、ではジュースとパスタをお願いします。」

 

ジュースが200ヴァリスでパスタは300ヴァリスかかった。高ッ!?

一食50ヴァリスで充分なのに・・・

 

「あいよ。そっちの坊主は?」

 

「あ、はい。僕も同じものをお願いします。」

 

しばらく経った後に店長さんから頼んでいたものを受け取った。パスタは山盛りでジュースもコップからこぼれてしまいそうなくらいに入っていた。

ただ高いだけじゃないんだと少し感心した。

二人で大人しく食べているとシルがやってきた。

 

「どうです?楽しんでますか?」

 

「・・・圧倒されています。」

 

「楽しんでいるよ、馬鹿騒ぎはちょっと前のことを思い出すしな。」

 

クロム達と一緒に遠征に出て敵を倒して城を奪い取った時、邪竜ギムレーを滅ぼした時はみんなで飲んだっけ・・・そん時はルフレはいなかったけど、懐かしいなぁ。

 

「どんなことがあったんですか?私気になります!」

 

「シルは仕事があるんだろうが・・・」

 

「給仕の方は十分に間に合ってますので、大丈夫ですよ。いいですよね?」

 

「・・・ほどほどにしな。忙しくなったらすぐに働いてもらうからね!」

 

え、仕事を途中にして休憩が出来るのか!?何というお店なんだ・・・

 

「というわけで聞かせてもらえますか?」

 

「シエン、僕も聞きたい!」

 

「・・・少しだけな。オレの出身はイーリス聖王国というところで・・・」

 

オレはベル達にイーリスでどんなことがあったかを少し話した。

こんな王様がいる、とんでもなく強くて頼もしい奴がいる、協力して頑張って国を守ったのだと。

 

「シエンって凄かったんだね。」

 

「今じゃあこの有様だけどな。」

 

「ふふふ、面白い話ですね。色んな人とお話しするのはやっぱり楽しいです。」

 

「そうか?知らない人に話しかけるのは結構勇気がいると思うけど・・・」

 

「そんな事はないですよ、知らない人と触れ合うのが、ちょっと趣味になってきているというかその、心が疼いてしまうんです。実際にベルさん達に会ってシエンさんのお話を聞かせてもらって新しい発見もありましたし。」

 

「すごいこと言うんですね。」

 

オレもあいつらと出会わなかったら今の自分も無いわけだし、そう思うと人とのふれあい、出会いは大切だな。

 

「ニャア!ご予約のお客様ご来店ニャ!」

 

星4来いッ!!・・・ハッ!?俺はいったい・・・

 

猫耳のウエイトレスさんが大勢の団体組が現れたことを告げる。

昨日あった【剣姫】さんもいるしロキ・ファミリアの団体さんかな。

個人的に一番気になったのは綺麗で気品のある深緑の長い髪の翡翠色の目をしたエルフだ。

確かリヴェリア・リヨス・アールヴさんだっけか。エイナがいうにはエルフの王族、ハイエルフなんだとか。

…………なんとなくイーリスの第1王女様を思い出すなぁ。

あ、ロキ・ファミリアの団員の魔力覚えておこっと・・・前にあった時は気がつかなかったが【剣姫】さんの魔力はなんか変だな。普通じゃない感じがする・・・

 

「・・・・・」

 

「ベルさん、ベルさーん」

 

ベルは顔を真っ赤にして【剣姫】さんを見ている。シルの呼びかけが聞こえていないようだ。本当に惚れてるのか、険しい道だぞベル。

 

「おっしゃ、みんな遠征お疲れさん!今日は宴や!飲んで歌えぇ!」

 

『カンパイ!!』

 

似非関西弁を喋る朱色の髪の人が音頭を取ると宴が始まった。 神威を感じるし神だったか。

 

「ロキ・ファミリアさんはうちのお得意さんなんです。彼等の主神のロキ様が私達のお店を気に入られてしまって。」

 

ロキ・ファミリアはトップクラスの強さを持つファミリアだったはず、そんなに良い店なのかここは。綺麗な店員さんがいっぱいいるからそれが目当てだったりして。

 

しばらく経つと酒が回り始めたのか前に会った灰色の獣人が大声で話し始めた。

 

「そうだ、おいアイズ!お前のあの話を聞かせてやれよ!」

 

「あの話?」

 

「あれだよ、帰る途中で見逃したミノタウロスが3階層まで上がって行って時にいたじゃねえか。あのトマト野郎がよ!」

 

その話が聞こえたのかベルの体がビクッと強張った。

 

「いかにも駆け出しって感じでよ!足が動かねぇで震えてやがったぜ!」

 

「ほう、で?その冒険者は無事やったんか?」

 

「アイズが間一髪ってところで倒したんだよ。そういえば黒づくめ野郎もいてぶっ倒れてやがったなぁ。みっともねぇ、雑魚なら雑魚らしくもっと上の階層でモンスターと遊んでろってんだ!」

 

獣人の悪口は止まらない、顔を見る感じかなり酔っている様だ。悪酔いするタイプかな?

・・・それにしても雑魚・・・か。向こうだと化け物だの悪魔だの散々言われてきたけどこっちでは雑魚か。世界が違うとこうも変わるか。

 

「いい加減にしろ、ベート。ミノタウロスを逃したのは我々の不手際だ。巻き込んでしまったことをその者達に謝罪する事はあっても酒の肴にする権利はない。恥を知れ」

 

「ハッ!ゴミをゴミといって何が悪い。」

 

聞くに耐えんな、さっさと食べて頃合いを見て帰るか・・・

ベルのほうを見ると俯いて若干震えていた。獣人の言葉はまだ続いた。

 

「雑魚じゃあ釣り合わねえんだよ、アイズ・ヴァレンシュタインにはな!」

 

その言葉を聞いてベルは椅子を蹴飛ばして立ち上がり外へと走り去って行った。ベルの向かったあの方向は・・・ホームとは逆、そういう事か・・・

 

「ベルさん!?」

 

突然のベルの行動にシルは追いかけようとするがオレは止めた。周りの客の視線がこちらに向いているが無視する。

 

「待てシル、お前じゃ追いつけないし店の仕事があるだろう。アイツの行った場所はなんとなくわかる、任せてくれ。」

 

「あぁ?テメェはあん時の転がってた黒づくめ野郎じゃねぇか!?」

 

「ベートッ!」

 

「ああ、あん時転がってた情け無い黒づくめ野郎だよ。さっきまでアンタの言ってたのはどうしようもない事実。」

 

「分かってんなら雑魚は大人しくしてればいいんだよ!」

 

「そういう訳にはいかない。全ては弱肉強食、弱いままだと奪われるだけだからな。あんな思いはもうごめんだ・・・」

 

焼かれた家、失った大切な人達、全てを守るなんて事は出来ないけど、せめて身近にいる人達だけでも守りたい。

ベルの向かった場所、ダンジョンに行かなくては・・・

 

「店長さん、料理美味かったです。これオレ達の代金です。」

 

「・・・あいよ、ちゃんと帰ってくるんだよ。また美味いもん食わしてやるからね。」

 

「それは楽しみにしています。では「まって」・・・ん?」

 

シエンは店から出ようとしたら後ろから声をかけられた。アイズ・ヴァレンシュタインからだ。

 

「あの、ごめんなさい。私の仲間が悪口を・・・」

 

「でも本当の事だからな。反論できないし・・・まあいいじゃないか!ふふ、それにしてもアンタ謝ってばっかりだな。そんなショボくれた顔してっとせっかくの宴が醒めちまうぞ?」

 

「待ってほしい、私からも謝罪をさせてもらいたい。君達が被害を被ったのは我々の責任だ、すまない。」

 

ハイエルフのリヴェリアはシエンに謝罪をした。

アイズからシエンのステイタスの事を聞いていてL v.1の冒険者が多数のスキルを持つなどあり得ないのでその人物に興味を持ったがまさかこの場にいるとは思ってもいなかった。

 

「いえいえ、ダンジョンでは何が起きるか分からないのに上層だからと油断していた我々が間違っていたのです。それに【剣姫】様には助けていただいたのでこちらこそお礼を、有難うございました。」

 

そう言ってシエンは恭しくお辞儀した。その姿に周りにいたエルフ達は感心していた。

 

「・・・今の私は君と同じ冒険者だ。だからそんなに畏まって礼をしないでほしい。」

 

「これは失礼しました。王族の方となるとどうしてもこうなってしまいましてね。うちの王も気にしないんですけど従者の人や貴族達が口煩くて厳しくて厳しくて・・・」

 

「そうか、君も苦労していたのだな・・・」

 

シエンは若干同情されたが今はそんな場合ではない。リヴェリアさんと話を少しにベルを追いかけるために今度こそ店を出た。ダンジョンへ急がなくては!

 

ダンジョン一階、二階、三階とスムーズに降りて行く事は出来たがベルに会う事は出来なかった。ただダンジョンの通路には回収されていない魔石がポツポツとあるのでベルがこの先にいる事だけは分かる。大きめの魔石を回収しながら更に階段を降り、6階層にてようやくベルを見つけることができた。1つ目の黒色の人影の様なモンスター【ウォーシャドウ】と遭遇している。

 

「やああああああ!」

 

「・・・!?」

 

6階層での戦闘能力は随一とも言われるモンスターをベルは持っていたナイフで胸の奥にある魔石を破壊して倒した。

ここまでがむしゃらに戦ってきたのか身体中に怪我をしており、かなり酷い。

また新たにモンスターがダンジョンの壁から生まれて疲弊しているベルに襲いかかる。

 

「【ミラーバリア】!」

 

「・・・!?」

 

「グッ、ああああああ!!」

 

ベルに襲いかかろうとした所を透明な障壁を張って防ぎ、ウォーシャドウの爪による攻撃を弾く。

その隙をベルは逃さずに疲れている体を声を上げて奮い立たせてウォーシャドウを倒す。

 

「間一髪だったな、ベル。」

 

「はあ、はあ、・・・シエン。」

 

「無茶し過ぎだ、オレが来なかったら死んでたかもしれないんだぞ。」

 

そう言ってオレはライブの杖を使ってベルの怪我の治療にかかる。

 

「シエン・・・僕、馬鹿だったよ。弱い僕があの人に好きだと言ったって振られるだろうし、釣り合わないんだ。あの獣人に反論できない弱い自分が悔しい。」

 

「・・・そうだな。」

 

「あの人に振り向いてもらうために僕は強くなりたい・・・!」

 

ベルはあの獣人に腹を立てていたわけではなかった。弱い自分自身に腹を立てていたのだ。

勉強会の時、エイナにランクアップするにはどうすればいいかと聞いたところ、手段としては自分よりも強いモンスターと戦い上質な経験値を得ることだそうだ。

剣姫はL v.5、つまり最低でも4回は自分よりも格上と戦う必要がある。

惚れた女の子に振り向いてもらうために4回以上死ぬかもしれない戦いを挑まないといけない。

 

「馬鹿か。」

 

「馬鹿でもなんでもいい!やるんだ!」

 

「死ぬかもしれないんだぞ?前に戦ったミノタウロスの事を忘れたわけじゃないだろ?」

 

「やる!!」

 

ベルはオレから目を逸らさずに真っ直ぐと見つめ己の意思を告げる。

コイツは馬鹿だ、大馬鹿だ。だけど自分の気持ちに嘘をつかない真っ直ぐな心を持つ、いい馬鹿だ。

 

多分コイツは一人でも突っ走るのだろう、だが一人でこのダンジョンを攻略するのには限界がある。協力する人が必要だ。

・・・こっちの世界では大人しくして魔道書を売ったりして金を稼いで余生を過ごす・・・そんなつもりだったのにそんな事はなくなりそうだな。

 

「分かったよ。ベル、お前が耐えきれない攻撃はオレが防ぐ、お前が怪我をして立てなくなったら治療して立たせてやる。だから、お前の思うがままに思いっきりやってみな。」

 

「シエン・・・ッ!」

 

「応援してやっから絶対に死ぬんじゃねぇぞ、ベル。さ、もうひと暴れしてやろうぜ!」

 

「うん!」

 

目標を持った奴は迷いがない、必要な事に対して面倒だと思わずに自らこなして己を高めていく。

きっとこれからベルは物凄い勢いで強くなっていくだろう。

ベルについて行くって決めたんだ。ベルの足を引っ張るわけにはいかない、オレも強くならないと。




ベートって言葉はキツイけれど、本当はいい奴なんだよなぁ・・・


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タイトルが思いつかない

夏は仕事の都合上更新が遅れがちになります。
それと7月26日からはしばらく更新できないと思いますのでご容赦を・・・




オレ達は獣人の男に馬鹿にされてダンジョンに潜って鍛えていたが疲労もそれなりに溜まってきたので地上に戻りホームに戻る事にした。

外はもう既に日が昇り始めて教会の入り口に着くと眠そうにしているヘスティアが教会にいた。

 

「神様・・・ただいま戻りました」

 

「ただいま」

 

「・・・ん、ふ、二人共何処に行っていたんだい!?うわ、服がボロボロだ。まさかダンジョンに行っていたんじゃないだろうね!?」

 

「・・・・・ごめんなさい」

 

「・・・一体何があったんだい?」

 

ホームに戻り、事情を聞こうとするがいつもの元気がないベルに違和感を覚え、優しく問いかけるヘスティア。しかし、ベルは押し黙って答えることはなかった。

 

「・・・分かったよ、君は意外と頑固だからね。事情は聞かないよ。さ、一晩中戦っていたんだろう?疲れているし早く寝ようじゃないか!」

 

「はい、・・・神様」

 

「ん?なんだい?」

 

「僕、強くなりたいです・・・」

 

「・・・きっとなれるさ、おやすみベル君」

 

そう言ってベルはソファで寝ようとするがヘスティアがベッドをベルに譲り、そこで寝た。やはり疲れていたのかすぐに寝息が聞こえてくる。

ベルが寝た事を確認した後にオレに事情を聞きに来たがベルが言っていないのにオレが言うのもなんだから言わなかった。

オレも早く寝よう・・・

 

 

 

「いらっしゃい、おや?あの時の坊やじゃないか。もう手に入れたのかい?随分と早いねぇ・・・」

 

帰ってきた日の時間は正午近く、レノアさんのお店にやって来た。ベルは疲れ切っていたのかオレが起きた時もまだ眠っていたため、ダンジョン探索は今日はやめておいた。

その分時間が出来たのでまたライブの杖を作るために水晶と杖を買いに来た。

一応ファイアーの魔道書があるが攻撃手段がまだ少ないので売りたくはない。

 

「こんにちは。いや、杖と水晶が買いたくてやってきたんだけど」

 

「そうかい、杖といえば前にあげた杖は何に使ったんだい?」

 

オレはレノアさんに作ったライブの杖を見せながら説明した。

 

「なんだいその馬鹿げた杖は・・・精神力さえあれば誰でもヒーラーになれて【魔力】が高ければ高いほど性能が上がるとかそんなものは誰でも欲しがるよ・・・というかアタシによこしな」

 

この世界では戦闘で使う武器や道具は馬鹿みたいに高い。数回魔法を放つ魔剣とやらでさえ数百万ヴァリスかかるほどだ。

20回近く治療を行えるこの杖はいったいどれだけの値段がするのだろうか・・・こんなのをタダで渡してボロ儲けさせる訳にはいかない。

 

レノアさんは自分の店に並べて商品にしたがっていたが断った。オレ自身まだオラリオの物価をよく分かっていないので正確な値段が判断できなかったからだ。

というか儲けた金をどうやって運ぶんだ?弱小ファミリアが突然に金を稼ぎ出したらホームを襲撃されてしまうかもしれない。

クレジットカードとかないのかな・・・ないか・・・

 

それに何本も欲しいと言われたらウチのファミリアの行動も制限されるし、今すぐに売る必要があるわけでもない。

それにこちらの素材ではまだ一本しか作ったことがない。正直あまり自信がない、まだまだ研究が必要だ。

そういう理由がある事をレノアさんに伝えた。

 

「ヒッヒッヒ、意外と慎重だねぇ・・・けどアタシは諦めないよ、チッ」

 

舌打ちが漏れてるぞ、レノアさん・・・オレは杖と水晶を買って店を出た。

ちなみに杖と水晶は少し安めに売ってくれた。恩を売るというか逃がさないというか・・・やり方が露骨過ぎるぞ・・・

 

「ただいまー」

 

「あ、おかえり、シエン」

 

ホームに戻るとベルが起きていた。ヘスティアに昨日の夜に稼いだ経験値をステイタスに更新したらとんでもない成長をしていたらしい。上昇値トータル300程・・・

ベルはその事についてヘスティアに成長期なのだと説明を受けたそうだ。

 

「で、明日からどうするんだ?」

 

「うん、明日からまたダンジョンに行くよ。神様に許可も貰ったし」

 

「分かった。あ、その前にシルから渡されたバスケットを返しにいかないとな」

 

「あ、うんそうだね。けど、ちょっと気まずいし行きづらいなぁ・・・あ!?僕お金払ってなかった!?急いで渡しに行かないと!」

 

「それならオレが払っておいた。けど、明日はあの店には行くぞ。シルがお前のことを心配していたから顔を合わせて無事だったと安心させてやらないとな」

 

ベルはそれを聞いて頷いた。それとオレに食費の代金を渡そうとしてきたが奢りという事にしておいた。

その後に食事をしている時ヘスティアに言った。

 

「約束して欲しい、二人共無理はしないって」

 

「神様、僕は・・・」

 

「・・・」

 

「強くなりたいっていう君の意志をボクは反対しない、尊重もする。応援も、手伝いも、力も貸すよ。・・・だから。・・・お願いだから、ボクを一人にしないでおくれ」

 

ヘスティアはオレ達に無茶はするな、死ぬなと言ってきた。ベルはその言葉を聞いて泣き出しそうな顔をしているが、オレはそれを約束することはできない。これから先は絶対に無理をする羽目になるだろう。そして死ぬかもしれない・・・オレだってまだ死にたくないけどこんな職柄だから死ぬ覚悟はある。

 

「無茶、しません。頑張って、必死に強くなりに行きますけど・・・絶対に神様を一人にはしません」

 

「オレもヘスティアを一人にはさせない」

 

「うん、二人共信じているよ」

 

そしてヘスティアは早速二人のために動こうと決める。近々開かれる【ガネーシャ主催 神の宴】に参加して、同じく参加するであろう友神であるヘファイストスに会い、二人に似合う武器を作って欲しいとお願いするのだ。

ベルはナイフ、シエンは・・・?

シエンが何を使っているのかわからないので聞いてみた。

 

「シエン君、君は武器を使ったりはしないのかい?」

 

「武器?使いたくても使えないんだが、そもそもオレの武器はこの本だ」

 

シエンは武器を使わない、というか使えないとの事なのでヘスティアはシエンには武器ではなく防具を作ってもらう事にしようと思った。

 

「そうだったね。二人共、ボクは明日の夜に友人のパーティに顔を出そうかと思う。そのため何日か部屋を留守にすると思うんだけど、構わないかな。」

 

「構いませんよ、友達は大切ですから是非行ってきてください」

 

「別に構わないけど・・・パーティに行くならドレスはあるのか?ウチにはなかったと思うが・・・」

 

「うん、持ってないよ。だから一番マシなものを着ていくつもりだけど」

 

「いや、ダメだろ!?ちゃんとした服装で行かないと馬鹿にされるぞ!お前が馬鹿にされるって事はオレ達も馬鹿にされるって事だ。せめてパーティに相応しいドレスは着てくれ」

 

ヘスティアは問題なくパーティに行けると思ったがそうは行かなかった。まさかシエンに服装の事に指摘されるのは思わなかった。いつも杖やら本を持って黒づくめで出歩いているシエンには言われたくはなかった。

 

「いや、そんなお金はないし・・・勿体無いじゃないか」

 

「必要経費だッ!ベルッ!!明日早くから起きてダンジョンに行き、昼頃までに出来るだけ稼ぐぞ!ヘスティアのドレスを買うためにッ!」

 

「ハッ、ハイッッッ!?」

 

普段、夜遅くまで瞑想と魔道具の研究をしているせいで寝不足で朝は起きられないシエンが早く朝起きようとしている事に成長を感じつつ自分の事に気にかけてくれた事に感謝した。

 

「・・・それじゃあ、お願いしようかな。よろしく頼むぜ!」

 

「あ、服を選ぶセンスはねぇからそこは自分でお願いな」

 

「・・・そこも「オレに任せてくれ!」っていうべきなんじゃないかなぁ・・・カッコつかないねシエン君・・・」

 




ライブの杖 使用可能回数20回ほど

精神力を消費すると水晶が光り出しそこから傷を癒す聖なる光を発する。
魔力が高ければ高いほど回復力が増す。
シエンが使用した場合は若干ながら体力も回復する。
その為、ベルの目覚めも早かった。


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急所にあたった!

ダンまち二期楽しみですね、アポロンファミリアとの戦闘する際の周りの風景とかベル達と城がどのくらいの距離があるのか、いったいどんな布陣なのか・・・参考にしたいですね。


怪物祭 どこかの喫茶店

「そんでどんな男を狙っとんのや」

「うふふ、1人は透明な色をした魂を持つ子、もう1人の子は色んな色を混ぜ合わせて出来た黒。けど、その黒色の子の輝きは少しばかり濁っていてちょっと愛してあげたくなるわね」


「オラァ!【ファイアー】乱れ打ちィ!!」

 

【ファイアー】の魔道書に精神力を流し込み、多数の魔法陣を発生させて目の前にいるモンスターの群れに目掛けて発射する。

 

『ギィヤァァァァアアア!??』

 

「ス、スゴイ・・・」

 

時間は午前7時、豊饒の女主人によってシルにバスケットを返してから急いでダンジョンに入り現在は6階層にて大暴れしている。店に寄った際にベルが昼のご飯をシルから貰った事にイラついて大暴れしているわけではない、決して。

 

「時間は昼までと決めているんだ。まだだ、まだまだいける!!」

 

「お、落ち着いて!」

 

「オラァアアアアアアアア!!!【トロン】!!」

 

【トロン】の魔道書にも同じ事をして縦50Cの雷の槍を生み出して発射する。

この魔法は貫通力が高く、高い攻撃力を持つ。一直線に走った雷の槍はモンスター達を貫いてモンスターは魔石を残して黒い灰となって消滅した。雷の槍はそのままダンジョンの壁に突き刺さり壁に穴を開けた。

 

「ふぃ〜、爽快!」

 

「や、やりすぎじゃない・・・?通りかかった人にそれが当たったら大変なことになるんじゃあ・・・」

 

ベルは初めて【トロン】を見て頼もしく思ったがもしこれが冒険者に当たったらどうなるかを想像して冷や汗をかいた。

 

「当たったら?そりゃあ、身体に穴が空くな」

 

「ヒッ!?」

 

「だが、この階層では【トロン】はオーバーキルだな。【ファイアー】で充分だ。さ、またモンスターを探しに行くぞ、ベル」

 

「う、うん」

 

オレ達は昼になるまでにダンジョンで暴れまわった。ヘスティアのドレスの代金は足りるかなぁ・・・

 

「6階層!?ベル君にシエンさん!この間3階層でイレギュラーがあったとはいえ死にかけたっていうのに、何やっているんですか!?」

 

ギルド本部にて魔石の換金をしたらそれなりに稼ぐことが出来た。しかし、稼いだ金額をエイナに怪しまれて問い詰められて6階層に行ったことがバレた。どうやら午前中で稼ぐには3階層ではあり得ない額だったらしい。オレとしたことが・・・

 

「ご、ごめんなさいッッ!!」

 

「すまんなエイナ!ちょっと急いでいるんでお説教はまた今度な!」

 

「あ、コラ!二人共待ちなさーい!!」

 

これからヘスティアのドレスを買いに行くのでオレとベルは逃げる様にギルド本部から抜け出した。今度エイナに会うときが怖いぞ・・・

 

 

 

「まったくもう、今度会ったらうんといってやるんだから」

 

あっという間にギルド本部から逃げ出した白黒コンビに溜息を吐くエイナ。そんなエイナに同僚のミィシャが話しかけた。

 

「どうしたのエイナ〜。大声出していたけど」

 

「あ、うん。ちょっとあの二人がね・・・」

 

エイナはミィシャに先ほどにあったことを話した。

 

「へぇ!凄いじゃん!冒険者になって半月ほどで6階層まで行ったなんて私、今まで聞いたことがないよ!」

 

「私も聞いたことがないよ・・・それに見てこのドロップアイテム」

 

「え?これって・・・【ウォーシャドウの指刃】!?それにこんなにたくさん・・・どうやってやったんだろう・・・」

 

「それは私が聞きたいよ・・・」

 

新米冒険者にはあり得ない速度でのダンジョン攻略を行う白黒コンビに担当アドバイザーであるエイナは頭を抱えるのだった。

 

 

ギルド本部から逃げ出してホームに戻りヘスティアと合流して北のメインストリートへと向かう。ヘスティアによるとそこはいろんな種族の服が売っているらしくそこでドレスを決めるようだ。

 

「うーん、どれにしようかな〜。ベル君、どれが良いかな?」

 

「え!?えーと、これとかどうですか?」

 

「決まったら言ってくれよな〜zzz」

 

オレは朝早くに起きて張り切って金稼ぎを頑張ったからか疲れで眠気が襲いかかってきた。店の中にある椅子に座るとすぐさま眠りについた。

 

「シエン、ほら起きて。神様のドレスが決まったよ」

 

「んあ?お〜、決まったか〜」

 

「全くもう、レディが服を選んでいる時に眠るって、キミってヤツは・・・」

 

「悪かったって、頑張って稼いでたんだから許してくれ。それで、ドレスは・・・よく似合ってるな。流石は女神様だ」

 

ヘスティアのドレスは黒の布地で豊満な胸を自慢するかのように胸元をさらしている物だった。ヘスティアが着ているからか嫌味に感じない、なんというかよく似合っていた。

ドレスの代金を払い店を出た。所持金はほとんど使う羽目になったが、まあしょうがないだろう。

 

「二人共、本当にありがとう!じゃあボク、パーティーに行ってくるよ。それと前にも言ったけど帰ってくるのはちょっと遅くなるかもだからホームのこと頼んだよ!!」

 

「はい、分かりました。神様、楽しんできてくださいね!」

 

「他の神様からなにか良い情報を聞き出してくれよな〜」

 

ヘスティアはパーティ会場へ向かっていった。時間はまだ昼の中頃、ホームに戻って他の杖と魔道書の研究をするとしますかね・・・

 

 

ガネーシャファミリアのホーム 【アイアム・ガネーシャ】

 

 

「ふー、ついたついた。ゲェッ!?ここをくぐるのかい・・・悪趣味だなぁ」

 

へスティアはベル達と別れてパーティ会場にたどり着き、中に入ろうとしたが会場の入り口はガネーシャ像の股間だったので嫌々ながらも中に入った。

会場の中には多くの神々がいて食事を食べながら各々談笑していた。ヘスティアも滅多に食べられない豪華な料理を無心に貪っていた。日持ちしそうなものを持ち帰りたかったがドレスでタッパーを持ち歩いて帰るところはないだろうと思い留まり使わなかった。

 

「うんまぁああああい!?ベル君達にも食べさせてやりたいなぁ・・・」

 

「なにやってんのよ、あんた・・・」

 

振り向くとそこには紅い髪と真紅のドレスを着ている右眼に大きな眼帯をしている親友のヘファイストスがいた。

 

「ヘファイストス!やっぱり来ていたんだね、今日来て正解だったよ」

 

「なに?いっとくけどもうお金は貸さないからね」

 

ヘスティアが友神の所でニートライフをしていたのがこの女神の所だった。ヘスティアには散々苦労をかけさせられていた。

 

「ふっふーん!それならもう大丈夫さ!今までは何度も助けてもらったけど今はそのおかげで何とかやっていけている!親友の懐を食いあさる真似なんかするもんか!」

 

「ドレスも着れているくらいだし、まあ、そのようね」

 

「あら?ヘスティアじゃない、お久しぶりね」

 

「キミは・・・フレイヤ!?」

 

ヘファイストスと話していると銀髪の美の女神、フレイヤが会話に混じってきた。ヘスティアはこの女神が食えない性格をしているため少し苦手だ。

 

「キミも来ていたのかい?珍しいね」

 

「たまには顔を出しておかないとね、ヘスティアのドレスとても似合っているわよ」

 

「えへへ、ありがとう。ボクの眷属の子が選んでくれたものなんだ。ボクは私服でもいいっていったんだけど馬鹿にされるからダメだって言われてね」

 

「へえ、親想いのいい子なのね」

 

「うん、本当にいい子達なんだよ!」

 

「子達って事はもう一人増えたって事かしら。前についに一人目の眷属が出来たー!って喜んで自慢しに来たのを覚えているけど」

 

「うん、最初はベル君で二人目がシエン君だよ。毎日頑張ってダンジョン探索をしているんだ」

 

「・・・へぇ、そうなの」

 

ヘスティアが自分の大切な眷属の事を二人に自慢していたが話の区切りができた所でフレイヤは用事を終えたのか去って行った。その後に二人で他の神々に会いに行き話し合ったりした。その時に遭遇したロキとは一悶着があったが。

 

「さてそろそろ帰ろうかしら」

 

帰ろうとし始めたヘファイストスにヘスティアは本来の目的を果たすために覚悟を決めて友人に話しかけた。

 

「あの、そのぉ・・・ヘファイストスに頼みたいことがあるんだけど・・・」

 

「・・・また頼み事?さっき言ったことは何だったのかしら?」

 

「ウグッ!?」

 

このままでは親友との関係は最悪になってしまうかもしれない。しかし、これからも頑張っていく2人のためにも臆するわけにはいかなくて親友の目を逸らさずに真っ直ぐ向き合い言い放つ。

 

今までとは違った様子にヘファイストスは事情を聞くぐらいはしようと思った。

 

「・・・一応聞いてあげるわ。なにを私に頼むのかしら?」

 

「2人に武器や防具を作って欲しいんだ!!」

 

 

 

 

ヘスティアがパーティに行ってから2日経ったがまだ帰ってこない。オレとベルはいつもの様にダンジョン探索をしている。

エイナのお説教から逃げ出した次の日にエイナにギルドで会ったのだが妙に忙しいそうでお説教はしばらく後ということになった。事情を聞くとなにやら怪物祭とやらを開催するらしくそれの準備で忙しいそうだ。

 

調べたところ怪物祭とは【ガネーシャ・ファミリア】主催の催しで東にある闘技場にダンジョンから連れてきたモンスターを放ち調教するのだそうだ。

 

調教というのは素質に依るところも大きいようだがモンスターに自分のことを格上だと認識させて従順にさせてしまうことだそうだ。

 

「ふーむ、なるほどオラリオの領民の不満のガス抜きといったところか。だがどんな風にやるかは興味があるな」

 

「シエン、明日はどうする?僕、こういうお祭りは初めてだからその・・・」

 

どうやらベルはお祭りに行ってみたいようだ。モンスターの調教する所とかも見てみたいし行ってみようかな。

 

「そうだな、たまには気分転換のためにも・・・行くか怪物祭に!」

 

「うん!行こう!」

 

次の日

 

昨日もヘスティアは帰ってこなかった。神の恩恵はまだあるみたいなのでヘスティアが天界に帰ってしまったということはないようだが心配だ。【神の宴】とやらはもう終わっているようだからどこか知らないところに行っているのだろう。

仲間の居場所をすぐに分かる手段が欲しくなるな、レノアさんの店に売ってた魔宝石の魔素を覚えてスキルで辿るって方法が使えそうだ。これなら【魔力】を持っていなくたって見つけることが出来る。よし、次は魔宝石を入手するために金稼ぎと節約をしよう!節約は今日は祭りなのでナシだ!

西メインストリートを歩いていて闘技場に向かっていると猫人に呼び止められた。

 

「おーい、待つニャ!そこの白黒頭ー!」

 

声をかけてきたのは豊饒の女主人の店員さんだった。

 

「おはようございます、ニャ。ちょっとお願い事があるのニャ」

 

「何ですか?」

 

「はいこれニャ、シルのお財布。これを怪物祭に行ったシルに渡して欲しいのニャ」

 

「えっ、シルさんは今日はお店の仕事はお休みですか?」

 

「ええ、そうです。お二人共、それで申し訳ないのですがシルにその財布を渡してはもらえないでしょうか?」

 

今度はエルフさんが現れて頼まれた。ちょうどオレ達も怪物祭に行くし問題はなさそうだ、ただ見つけられるかどうかは別として・・・

 

「わかりました!」

 

「了解、会えるかどうかは分からないけど任された」

 

「「よろしくお願いします(ニャ)」」

 

予想外の依頼を頼まれながらもオレ達は東メインストリートにある闘技場に向かって移動を始めた。

 

 

「うわぁ・・・」

 

「うーむ、こんなに人が多いとシルを見つけられるのか?」

 

闘技場に向けて歩いていくと大勢の一般客がいた。多すぎてシルを見つけることは出来るのだろうか。

 

「ねぇ、シエン。二手に分かれて探そうよ。一緒に探すよりもそっちの方が早く見つかるかもしれないし」

 

「そうだな、見つかったら闘技場に向かうことにしよう」

 

ベルからの提案で別々に探すことになった。早く見つけないと闘技場での見世物が終わってしまうな。キョロキョロと首を振り周りを見渡していると誰かに激突した。

 

「あいたッ!?」

 

「おっと、すまん・・・ってヘスティアじゃないか。どこ行ってたんだ?」

 

ぶつかった相手はヘスティアだった。格好はいつもの私服だったのでどうやらホームに戻って着替えたようだ。

 

「あ、シエン君!あー、ちょっと寄り道をしていたのさ。でも良いものを持ってきたぜ、ほらこれ!」

 

どこに行っていたのかは誤魔化されたがヘスティアはオレに黒色の防具【バンブレーズ】を渡してきた。(肘から手首までを守る鎧)

オレが触れた途端に胎動するように紫紺の輝きを放つ。その光でなにやら【神聖文字】に似た刻印を見つけた。えーと?ヘファイ、スト、ス・・・マジか!?あの武器や防具で有名なヘファイストスファミリアが作った防具かコレッ!?

 

「おい、ヘスティア。これは・・・」

 

「これはね、ボクからの贈り物さ。なにも出来なくていつも帰ってくる君達を待っているだけじゃ嫌だから、だからボクも君達の力になりたいんだ」

 

このパンブレーズはヘスティアが言うにはヘスティアの【神聖文字】が刻まれているらしく【ステイタス】が発生している。つまり生きている防具で装備者が獲得した【経験値】を糧にすることでこの防具も進化していくらしい。

 

・・・ヤバくないかこの防具、オレが強くなればこの防具も強くなっていくし進化って一体どんな成長をするのか楽しみだ。

でも待てよ、こんな凄い防具を買えるほどオレ達には金はないのだが・・・

 

「ヘスティア、オレ達の為にこんな凄いものをくれてありがとう」

 

「ふふーん!まあね!「幾らだ?」・・・え?」

 

「これを買う為には幾らかかったんだ?オレだけに買ったと言うことはないだろう、ベルにもまた別の物を用意しているはずだ。いったい幾らかかったんだ?しばらく、いや、永遠に貧乏生活になることになったんじゃ・・・」

 

「あ、いや、その・・・これはボクが背負うべき借金だ!君達の手を借りないさ、何十年、何百年経ったって返してみせる!」

 

値段は言ってはくれなかったがやはりとんでもない値段のようだ。何百年って・・・どんだけ高かったんだこれは・・・値段を知りたいが知らない方がいいような気がした。取り敢えず左腕に装備はしておこう。

この後ヘスティアはベルにも何かを渡す為にベルを探しに行った。

 

オレは単独でシルを探しているが未だに見つけることはできていなかった。もしかしたらベルの方が先に見つけて闘技場にいるかもしれないと思い闘技場へ向けて歩き始めたら辺りが悲鳴や騒ぎ声が聞こえてきた。

 

「モンスターだぁぁぁぁぁああ!?」

 

「いやぁぁぁぁぁ!?」

 

「パパ、ママ!どこにいるの!?うえーん!!」

 

「何故だ!?なぜ脱走しているんだ!?なにがどうなっているんだ!?」

 

オイオイオイ、冗談じゃないぞ・・・モンスターの脱走とかシャレにならない。

なにが起きているのか事情を知る為にギルド職員とガネーシャファミリアの眷属の人を探して聞くとどうやらモンスターが脱走してめちゃくちゃに暴れているらしい。

逃げたモンスターはソードスタッグ、トロール、シルバーバックだ。

エイナの勉強会にて知っているモンスターはシルバーバックだけだ。その他の2匹は知らないという事は上層に出てくるモンスターではないという事。

つまり中層や下層クラスの強さを持ったモンスターということになる。

よし、逃げよう!かないっこない!ベル達と会ってすぐにここから離れなければ!

 

「ベルー!!ヘスティアー!!あとシルー!どこにいるんだー!!」

 

東メインストリート付近を走り回ってベル達を探しているがまるで見つからない。あちこちの建物が潰れていたりしていて明らかにモンスターの仕業だと思える。ここら辺にモンスターがいたということ、くそッさっさと逃げてェ!!

 

「ブルルッ!」

 

「うえーん!パパ、ママァ!!」

 

「マジかよ・・・」

 

探していると小さな子供と角が曲刀のような形をした物が二つ生えている鹿のようなモンスターと遭遇した。これがソードスタッグって奴か!

よりにもよってオレが遭遇してしまうのか!?ちくしょう・・・

 

「うえーん!うえーん!だずげでぇ!!」

 

「ッ!!」

 

子供はオレに助けを求めてくるのだがこんなの勝てないぞ!?

 

どこかの屋根の上

 

「ウフフ、好きな子にちょっかいをかけたくなるのは男だけではないわ。さあ見せて頂戴、貴方達の今持っている力を・・・輝かせなさいその魂を・・・」

 

美の女神フレイヤはこれから起きるであろう出来事に体を震わせた。

 

 

「ブルゥ!!」

 

「【ミラーバリア】!・・・グッ!?」

 

ソードスタッグは子供に向けて突撃をすることで命を奪おうとするがそこはシエンが透明の障壁を張ることで防ごうとするが勢いを少し殺すだけであっさり破壊される。再び子供に危機が迫る。

 

「【ミラーバリア】!【ミラーバリア】!【ミラーバリア】!【ミラーバリアー!!】」

 

「ブルゥ!?」

 

1つ張るだけで破壊されるのならば何枚も展開することで子供の目の前でソードスタッグの角がバリアに刺さったままになり身動きが取れなくなる。

シエンは戦えなくはないと少しばかり安心した。

 

「おい!そこの子供!早くこっちに来い!はやく!!」

 

「ヒック、ヒック・・・うえええん!」

 

「・・・くそ!しょうがねえ!」

 

シエンは泣いてばかりの子供を抱えて逃げる為に子供に近づいた。しかし近づいて来たシエンにソードスタッグは視線を向けて邪魔をする者を粉砕するべく足に力を込めてバリアからツノを引き抜き、シエンに向けてツノを向けて突撃する。

 

「オラァ!」

 

シエンは【ファイアー】を複数放ち、ソードスタッグにダメージを与えようとするがソードスタッグは鹿のような姿をしているだけに素早く全てかわし接近する。

 

「(ヤバイ!?)くッ!?・・・ッッ!??」

 

迫る角に左腕のバンブレーズで突撃を受け流し身体を右に逸らした。しかし相手の力が強すぎて防具は無事であったが腕の方が衝撃に耐えきれず左腕の骨が折れる嫌な音がした。左腕に力が入らない・・・

モンスターに背を向ける形で子供のところまで走り辿り着いた。モンスターが弾丸のようにまっすぐ突っ込んで迫ってくるッ!!

 

「おい!大丈夫か!?」

 

「た、助けて!」

 

「オレが助けてほしいよ!だかやるっきゃねえ!!」

 

シエンは【魔力】を高めると怪我をしたことで【復讐】が発動する、身体から黒紫色の【魔力】が吹き荒れる。そして目から口からは赤紫色の【魔力】が噴き出した。見た目は黒紫色の人型でウォーシャドウに似ているが禍々しさは段違いだ。

 

「あ、あくま・・・?」

 

子供は見て正直な感想を述べた。シエンはこっちの世界でも悪魔呼ばわりされて若干苦笑しながらも迫るソードスタッグを見つめ【トロン】の魔道書に精神力を注ぎ込み黄色の魔道書は【復讐】の影響からか紫色に輝き出す。

 

「ブルゥ!!」

 

シエンの姿は少し変わったが構わずに突撃を続けるソードスタッグ、再び蹴散らすために接近する。

 

「【ミラーバリア】!」

 

「ブルゥ!?」

 

再び張られた障壁に突撃を止められ驚愕するソードスタッグ、【復讐】の効果は【魔法】の威力を高めるものでバリアの強度も上がっていたのだ。

 

「【ミラーバリア】!【ミラーバリア】!」

 

シエンは再び障壁をモンスターの左右に張った。上から見るとコの形になる。

そして形を変形して口の形にして上に跳んで逃げられないようにドーム状にした。

 

「トドメだァ!!【トロン】!!」

 

ソードスタッグの目の前のバリアの下側を変形させて穴を作り紫電を撒き散らす紫色の雷の槍を穴に向かって発射した。下側に撃っても地面に穴を開けるだけで意味がないがシエンはここでもう一工夫をした。

 

「【ミラーバリア】!」

 

シエンは地面の上にバリアを展開してそこに雷の槍を当てて威力を上昇させつつ向きを変えソードスタッグの腹下からぶち当てた。

 

「ピィィィィー!??」

 

周りに障壁が展開されて身動きを取ることができず雷の槍が直撃して腹下から背中に大穴出来上がった。反射して威力の上がった槍はドームを破壊して空高くへと登り、雲を穿った。

胸の中にある魔石を失ったモンスターは例外なく生き絶える。ソードスタッグも同様に消滅した。

そこには黒い灰とドロップアイテムの【ソードスタッグのツノ】が落ちていた。

 

「へへ、なんだよ・・・やれば出来るじゃねえか」

 

膨大な精神力を消費したシエンは黒紫色の【魔力】を抑えて腰を落として座り込んだ。

 

「あ、助けてくれてありがと。お兄ちゃん!」

 

「無事か?両親のところに行きたいだろうけどちょっと待ってな。もう少し待ったらさっきの空に行った【魔法】を見て誰か来るはずだ。」

 

シエンの言葉通りしばらく待つとゾウの仮面を被ったガネーシャファミリアの冒険者が複数やって来てシエンは事情を話して子供は両親のところに連れていってもらえることになった。

 

「もうはぐれたりするんじゃないぞ。元気で」

 

「うん!じゃあねー!ありがとー!」

 

泣きべそをかいていた子供は泣き止んでシエンに礼を言って去って行った。

オレもあの子供も無事でめでたしめでたし・・・と思ったがベル達のことを忘れていた。

慌てて2人の事を聞いてみるとベルとヘスティアはシルバーバックに遭遇して無事ベルが倒して帰っていったそうだった。

二人が無事で安堵したオレは折れた左腕を気にしつつ東のメインストリートを後にした。やれやれ、破茶滅茶な怪物祭だったな・・・

 




トロンが雲を穿ったとき

「ウフフ、良いわ、とても良い。魂の輝きが増して、濁りが消えていっているわね。また遊びましょう・・・ベル、シエン」

防具
【ヘスティア・バンブレーズ】
肘から手首までを守る鎧。【神聖文字】を刻んで【ステイタス】が発生している防具。
装備者が獲得した【経験値】を糧に成長、進化していく。
防具と同じヘスティアの恩恵を授かったものにしか使いこなせない(つまりベルも使用可能)

現状の防具の能力
・装備中【魔力】が高ければ高いほど強度を増す
・装備中【魔法】の威力上昇

ソードスタッグを倒す前のシエンのステイタス

シエン

Lv.1

力 :I0

耐久 :H120

器用 :S989

敏捷 :I89

魔力 :SS1084


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再会

怪物祭から数日後 ヘルメスファミリア

「あ、お帰りヘルメス様、アスフィ!」

「やあ、ただいまルルネ。留守番ご苦労!」

「ルルネ、ただいま戻りました。オラリオで何か変わったこととかありましたか?」

「オラリオで変わってないことなんてあるわけないじゃんか」

「・・・それもそうですね。で、何かあったんですね?」

旅先でヘルメスに散々苦労をかけさせられて、やっと帰って来たら早々に面倒ごとがある事に思わず溜息を漏らすアスフィ。

「あ、いや、まあね。アハハ・・・あ、そうだ!ヘスティアファミリアってとこの真っ黒の奴から伝言があったんだ!」

ルルネは話を変える為にシエンに頼まれていた伝言の事を思い出して話した。

「ヘスティアファミリア?聞いたことがありませんが・・・」

「へぇ、ヘスティアはようやくファミリアを作る事ができたのか、どんな子供がいるのか興味があるな」

「最近できたみたいだぜ?そんでその団員から伝言なんだけど、『イーリスの魔道士がオラリオに来た』だったはずだ」

「ッ!!・・・そうですか。でしたら一度会っておかないといけませんね」

「あれから3年・・・やっと来たか。イーリスの英雄よ」

「え、英雄!?どういう事、ヘルメス様!?」


「完治まで2週間だな」

 

「そうですか・・・」

 

怪物祭の次の日、オレは左腕の怪我を【青の薬舗】にいる神ミアハに診てもらったら治るまで2週間ほどかかることがわかった。安静にしていてそれくらいの時間がかかるので何が起こるかわからないダンジョンに潜ることはやめておいたほうがいいと止められた。

 

「もっと早く治る方法はないですか?ウチは貧乏ですから金を稼がないと」

 

「うーむ、ウチには置いていない万能薬のエリクサーを飲めばすぐ治るのだが・・・一番良いので50万ヴァリスするぞ?それを買う為に稼いでいる間に治ってしまっているはずだ」

 

「そうですか・・・ではホームで大人しくしていようと思います。診察してもらってありがとうございました。これは怪我を見てもらった診察料です」

 

「いや、ただ診ただけだから別に代金は「・・・有り難く頂いておく・・・」別にいいではないか、ナーザよ・・・」

 

神ミアハの喋っているところに割り込んで来たのは犬人のナーザ・エリスイスさんだ。

おっとりとした喋り方の人で何かとオレとベルに商品を買わせようとしてくる。

まあ、実際にオレはここのマジックポーションにはお世話になっているが。

 

「診察をしたんだから・・・その分を貰うのは当然」

 

「ミアハ様、オレもちゃんと払わないと気が済まないので払わせてください」

 

「う、うむ・・・すまぬな」

 

「はい、ありがとうございました。それじゃ」

 

そうしてオレは青の薬舗を後にした。2週間かぁ、金もないのにどうしよう・・・

 

「ただいまー!神様、シエン!」

 

「お帰り、ベル君」

 

「お疲れ、ベル」

 

本日のダンジョン探索を終えてベルはホームに戻ってきた。ベルはダンジョンの6階層のモンスター相手では歯ごたえがなく7階層をソロで探索しているようだ。

・・・え?何この子怖い・・・

 

「ソロでの探索は危険だから慎重に行けって言ってんのにお前という奴は・・・」

 

「う、うん。エイナさんにも言われたよ。それで防具が頼りないから一緒に買いに行く事になったんだけど・・・」

 

「なん・・・だと・・・?そうか、楽しんで来いよ、エイナとのデート」

 

「ぬわぁにィィイ!?デートだとぉ!ボクもベル君とした事がないのにあのアドバイザー君なんて強かなんだ!!」

 

「いや、違いますって!シエン、ややこしくしないでよ!」

 

ヘスティアも会話に混じってきてカオスな事になった。取り敢えず明日はベルのダンジョン探索はお休みになるという事が分かった。

2週間もあればマジでオレのステイタスが魔力以外ベルに抜かされるかも・・・

 

そんなこんなでベルの買い物デートも終わり新しい防具を身につけたベルはひたすらダンジョンに潜りメキメキと力をつけていった。

オレがダンジョンに潜れなくて魔石やドロップアイテムを持つのが困難なので他の派閥の冒険者にサポーターを頼んだりとなんとかやっているみたいだ。

そのサポーターの名はリリルカ・アーデといい、髪はブラウンの背がかなり低く幼い犬人の子供だが会って話してみると結構しっかりした子だ。それで所属のファミリアはソーマ・ファミリア、生憎と知らないファミリアだったのでギルドで調べると・・・あまりいい噂は聞かないファミリアのようだ。

だが、ベルの決めた事なので文句を言うつもりはない。その人物が本当に悪い子なのかどうかは一緒に冒険していないオレにはわからないからだ。

ただ一つ気がついた事といえば【魔法】を持っている事、しかも常時発動しているみたいだ。そのお陰で【魔力】はもう覚えていて居場所はすぐに突き止める事ができる。何かやろうものならば逃しはしない。

 

ベルがダンジョン攻略を続けているところ、オレはというと魔道書の研究と修行しかやる事がなかった。

片腕が使えないのでペンが片腕でしか使えず、書くスピードが遅くなっている為研究は遅れている。インクも紙も少なくなってきているから替えの物を買ってこよう。

お金は持っていなかったがソードスタッグを倒した時のドロップアイテムを売ったことで多少できたので良質の魔道具の素材を買いたいな。

 

北西のメインストリートを歩いてリーテイルに向かっていると懐かしい【魔力】を持った人物が近くにいる事が分かった。その人物はオレに気が付いていないので近付き話しかけた。

 

「よお、久しぶりだな。アスフィ」

 

「シエン、ですか。お久しぶりです。本当に来ていたんですね」

 

久しぶりに会ったのはヘルメスファミリア団長のアスフィ・アル・アンドロメダ。髪は水色で銀縁眼鏡を掛けたキリッとした表情の女性だ。そしてヘルメスのお守りをしている苦労人でもある。

 

「ああ、まあな。こっちに来てまだ数週間しか経ってないからここのことはよく分からないが退屈しない賑やかな街だな」

 

「まあ、問題ごともたくさん起きますけどね。シエン、怪我をしているのですか?」

 

「怪物祭の時にモンスターが脱走したみたいでな。その時にソードスタッグってのと戦う羽目になってやられちまったよ。前のオレなら近づける前に仕留められただろうに」

 

「前のオレという事は今は違うという事ですか、確かに前に会った時に比べてなんだか【魔力】の圧が違うというか・・・」

 

「流石にわかるか、こっちに来る時に門を潜ったろ?あの時にアクシデントが起きて多分弱体化したんだと思う」

 

「そうですか、それは困りましたね。少し困った事が起きたので力を貸してもらおうと思ったのですが」

 

どうやらアスフィは困っている事あるようだ。以前のオレの力を借りたいってことはかなり強いモンスターの討伐とかそんなんだろうな。というか、サラッと困り事に巻き込もうとしないでくれ。

 

「代わりに魔道具を作ってはもらえませんか?」

 

オレを連れて行けないと分かるとアスフィは魔道具を求めてきた。が、オレには戦闘で使う便利な魔道具は材料がないから作れないし、まだこっちではライブの杖しか使った事がないのだ。その事をアスフィに伝えたら少し考えた後に

 

「ならば、必要になりそうな材料は私が提供します。余った材料はシエンの好きにしてもらって構いません。勿論別に報酬も渡します」

 

どうやら必要なものは用意してくれるみたいだ。だが怪我をしている今の状態でちゃんとしたものができるかどうか・・・

 

「どうやら怪我もしているようですし前報酬としてこれが良さそうですね」

 

アスフィはオレの包帯ぐるぐる巻きになった左腕を見て自分の腰につけているホルスターから何かの液体の入った試験管を取り出した。

 

「これはエリクサーです。これならばすぐに治るでしょう」

 

「ちなみに期限は?」

 

「明日の夜までです。その日の夜に使い勝手を確認して次の日にダンジョンに行くつもりです」

 

・・・報酬はどんなものになるかは分からないが、かなり無茶な依頼だった。

オレの力が必要なくらいの危険な事に挑むのだったら死人も出るだろう。

アスフィの真剣な表情からどんな手で打っておきたいのだろうな、どこまで力になれるか分からないがやるだけやってみよう。

事情を知っていて力を貸さないで知り合いが死にましたなんて絶対に嫌だ。

 

「分かった、どれだけ力になれるか分からないけど。作れるだけ作ってみる、任せてくれ」

 

「すみません、かなり無茶ですがお願いしますね。頼みましたよ、魔導軍将殿」

 

「恥ずかしいからそれを言うのはやめてくれ」

 

アスフィの言った【魔導軍将】とはオレ達がギムレーを倒した後、クロムからイーリスで最も優れた魔道士ということで名乗るように言われた事が原因だ。

ルフレの方が潜在的なスペックも上だからルフレが名乗ればいいじゃないかとは思っている。

ちなみに他の将軍はみんな知り合いばかりでクロムの自警団からの出身がほとんどだ。

 

「では、私はホームに戻り材料を持ってそちらのホームに向かいます。エリクサーは先に渡しておきます」

 

「わかった、それと言わなくてもわかってるとは思うけど魔道具を作ったのはオレだと言うなよ?いつかはバレるだろうけどまだまだ秘密にしておきたい。悪目立ちはゴメンだ」

 

「ええ、分かっています。それではまた後で会いましょう」

 

アスフィにオレが魔道具を作っている事を言わないように約束してもらいひとまず別れた。

せっかく手に入れたお金は魔道具を作るために精神力を使うので全部マジックポーションに変わるのだった。




魔導軍将
イーリス聖王国の魔法の扱いが優れている将軍の事。

原作ではウダイオスをアイズが倒した2日後の夜にフェルズが24階層の事件の事に手を打ち始めるので、その次の日にヘルメスファミリアのルルネに接触して前書きに繋がっています。


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異世界の魔道士の本気

FE 風花雪月、難易度は何故ハードまでしかないんだ・・・
ルナティックまであってもいいじゃないか・・・


オレはアスフィと別れてホームに戻った。そこにはテーブルにうつ伏せになって寝ているベルがいた。よく見るとどうやら本を読んでいたようで読んでいる最中に眠ってしまったというところだろう。気持ちよさそうに寝ている。

 

オレはこの後の依頼をこなす為に腕を治すことにした。

エリクサーの半分を左腕にかけてもう半分を飲んだ。少し待った後に腕を軽く動かしてみると痛みはなくて問題なく動く、まさに万能薬といったところだろう。

後でやってくるアスフィを迎える為にホームを出て壊れた教会の外に出て待機する。

しばらく待つとアスフィと沢山の荷物を背負った前に会った獣人がやって来た。

 

「シエン、お待たせしました。材料はこちらです、ルルネ」

 

「はいこれ、シエンだっけ?頼んだぜ!」

 

アスフィにルルネと言われた獣人はオレに材料を渡してきた。水晶に杖に魔宝石が沢山ある。いったいどんなものを作ってやろうかな。

 

「ちなみにアスフィ、どういったものが優先的に欲しいんだ?回復かアシストか」

 

「そうですね・・・時間もありませんし回復でお願いします」

 

回復か・・・ならば範囲回復魔法のリザーブと遠距離単体回復のリブローを目標に作るとしよう。

 

「分かった、回復系だな。早速ホームで作ってみるよ、わざわざ運んできてもらってありがとな」

 

「いえ、かなり無茶な事を頼んでいるのです。これくらいはさせてください」

 

「いや、アスフィは持ってきてないだろ!私が持ってきたんだけど!?」

 

「黙りなさいルルネ!元はと言うと貴方のせいではないですか!」

 

「うう、ご、ゴメンよぉ〜」

 

事情はよくわからないがどうやらルルネが楽にお金稼ぎをしようとしていたらしいが、そんなうまい話はなくて何やら厄介ごとに巻き込まれたようだ。

 

「話が逸れました。それではシエン、頼みましたよ。期限は明日の夜、お忘れなく」

 

「頼んだぜ!イーリスの魔道士!」

 

そう言って二人は帰って行った。さて、やれるだけやってみますか!

 

 

ヘスティアファミリア ホーム 午後7時

 

「ただいま〜。いや〜今日もバイト疲れたよ」

 

「・・・ZZZZ」

 

「・・・・・ぐぐぐぅ・・・」

 

「えーと、なにこの状況・・・?」

 

ヘスティアは今日のバイトを終えてホームに戻って来たらベルはテーブルにうつ伏せになって寝ていて、シエンは少し離れたところで大量の水晶と魔宝石を散乱させていて魔宝石を手に持ち精神力を魔宝石に流し込んでウンウン唸っていた。

 

「・・・・ッ!?ハァ、ハァ・・・ヘスティアか・・・ッ!そうだ、すまんヘスティア!!悪いけどすぐにステイタスの更新をしてくれ!今すぐ!!」

 

「へ?い、いいけど・・・」

 

シエン

 

Lv.1

 

力 :I0

 

耐久 :H120→F367

 

器用 :S989→SS1254

 

敏捷 :I89→H121

 

魔力 :SS1084→SSS1891

 

 

怪物祭からステイタスの更新をしていなかったのだが今日更新してみると恐ろしい結果が出た。【魔力】の伸びが尋常じゃない、そのおかげで精神力も上昇している。もっといい物が出来るようになるはずだ!

 

「・・・ランクアップ可能みたいだよシエン君、おめでとう。まったく、いったいどうなっているんだい君は・・・」

 

どうやらソードスタッグを倒したのが偉業だと認められてランクアップが可能になったようだ。そりゃそうだよな、バリアが通用しなかったらオレは死んでいたようなもんだ。トロールとかいういかにも力の強そうなモンスターが相手だったらペシャンコにされていただろう。

 

「で、どうするんだい?ランクアップするのかい?」

 

「いや、まだやめておく。まだまだステイタスの伸びは悪くなっていないんだろ?伸びしろはまだあるんならもっと伸ばすまでだ。それと悪いがベルには黙っておいてくれ」

 

「相変わらず隠し事が多いね。分かったよ、ボクもベル君には黙っておく。確かに焦って取り返しのつかないことになっては大変だ」

 

というわけでベルにはまた内緒事が増えた。その後にベルがヘスティアに起こされてステイタスの更新を行った。

 

ベル・クラネル

 

Lv.1

 

力 :B737

 

耐久 :F355

 

器用 :B749

 

敏捷 :A817

 

魔力 :I0

 

【魔法】

 

【ファイアボルト】

・速攻魔法

 

「・・・・・ッッ!???」

 

ベルは声を上げて喜びたかったがシエンが部屋の隅で集中してなにか作業をしているのが見えてなんとか声を抑え込んだ。だが、念願の魔法を手に入れたのだ!ベルの口元がにやけっぱなしになっている。

 

少し落ち着いた頃にベルはどのような魔法なのかを考えてみたが、シエンの魔法と同じでおそらくは魔法名を発音するだけで発動するものと思った。

それよりも今はこの魔法を試してみたくてウズウズしていた。

しかし、ヘスティアにはもう遅いのでまた明日に試すように言われて大人しくソファに横になって眠ろうとしたがそんなことは出来ず、夜中にホームを飛び出してダンジョンへと向かった。そこで再びアイズと出会うのだがそれはまた別の話。

 

「ハァ、ハァ、ハァーー・・・おしッ!もう一丁!」

 

一方でシエンは徹夜で魔宝石や水晶に精神力を注ぎ続けていた。頭がクラッときた時に買ったマジックポーションを飲み精神力を回復させてまた作業に取り掛かるという身体を騙し騙しで無理をしていた。

だがその無理のおかげでコツを掴み始め様々な魔道具を生成することに成功していた。

今、新しいものを作り終えて同じものを作ろうとしていたらベルが帰ってきた。ベルはホームにいたはずなんだが集中していて気がつかなかったようだ。

 

「うぅぅぅあ、僕はなんて馬鹿なことを・・・」

 

ベルは独り言をウンウン唸っていて再び集中することができず事情を聞くことにした。

どうやら手に入れた魔法を試していて精神枯渇に陥りダンジョン内で眠っていて目を覚ますと【剣姫】さんに膝枕をされていたようだ。

それで目を覚ましたベルは混乱の余りまた逃げ出してしまったらしい。

また逃げたのかベル・・・それと【剣姫】さんよ、なんでダンジョン内で膝枕をしているんだ?どういうことだ!?まるで意味がわからんぞ!?

あ、頭が痛くなってきたな、寝よう。きっとこれはオレが疲れていてベルの言っていることをちゃんと聞き取れていないのだろう。そうに違いない。

 

目を覚まし時計を見ると午前10時頃でオレの疲れ切っていた身体は元に戻っていた。精神力がなくなった時の気だるさがまるでない。神の恩恵、万々歳だな本当に。

 

その後は順調に魔道具を作り上げて夕方にアスフィのいるヘルメスファミリアに届けに行った。

出来上がったのは【リカバー】二本、【リブロー】が三本、【リザーブ】が二本、そして空間転移魔法の【レスキュー】が一本だ。流石にこれ以上は材料が足りなくなって作ることが出来なかった。正直【レスキュー】はもう一本作っておきたかった。

ついつい作るのが出来上がるのが嬉しくて貰った材料をほとんど全部使ってしまったが後悔はしていない。

残ったのは白色と黒色の魔宝石のみでそれぞれをベルとヘスティアに渡した。これでオレのスキルで二人の居場所は丸分かりになる。ベルは魔法を使えるようになったのでこれからは【魔力】を探れば見つけられるが一応持たせておいた。

 

「貴方という人は本当に・・・やってくれますね」

 

「うおッ!?なんだこれ!?こんなの見たことないぞ!?へぇ、こんな風になってんだな、昨日の今日でよく作ったな!」

 

シエンの持ってきた魔道具に呆れと溜息をこぼすアスフィと初めて別世界の魔道具を見たルルネは実際に触ってみて感想を述べる。

 

「【リカバー】と【リブロー】と【リザーブ】と念の為に【レスキュー】を作っておいた。【レスキュー】はもう一本作っておきたかったが無理だった。すまん」

 

「いえ、充分過ぎますよ!?これだけでいったいどれほどの価値があると思っているんですか!?」

 

「えーと、どれくらいの価値があるんだ?アスフィ」

 

ルルネから尋ねられてアスフィは少し考えてから言った。

 

「・・・数億ヴァリス」

 

「「!?」」

 

アスフィにオレが作ったものにとんでもない値段をつけた。値段を聞いたルルネの目が光ったように見えて興奮しているのか尻尾をブンブン振っている。

 

「よし!売ろう!そうしようぜ、アスフィ!!」

 

「オレは悪目立ちは嫌なんだけど?もし、売ろうとしたのなら・・・」

 

オレはルルネに向かってにっこり笑いながら【魔力】を漏らして怒ってますアピールをしながら言った。

 

「じょ、冗談だって!本気にするなよなぁ!アハハハハッ!?」

 

「まったく、この金に目がないこの駄犬はッ!まったく反省してないですね!!」

 

「悪かったって、アスフィ〜」

 

「あはは、そんじゃオレが手助けしてやれるのはここまでだ。後はアスフィ達の頑張り次第」

 

「ええ、そうですね。それでは報酬の方を」

 

「いや、今はいいよ。疲れて持って帰れる気がしないし」

 

「それでは私の気が済みません。・・・ちょっと待っててください」

 

そう言ってアスフィはホームに戻ってなにか入っている袋を持ってきた。

 

「これは私の作った羽ペン【血潮の筆】と防水加工がされている紙です。血をインクの代わりにする事が出来て書いた文字が水に溶けない品物です。よかったら魔道書製作の時にでも使ってください」

 

そう言ってアスフィはオレにそれらが入った袋を手渡してきた。

 

「す、スゲェ!?なんてもんを作ったんだアスフィ!?これが報酬でもオレにとっては十分過ぎるくらいだぜ!あ、なんだか新しい魔道具を閃いちゃったかも、さっさと帰って研究じゃあ!!」

 

「無理をさせた私が言うのはなんですが貴方は寝なさい、シエン・・・喋り方がおかしくなってますよ」

 

「おう、研究が終わったら寝るわ。じゃあなアスフィ、オレが起きた時に死にましたなんて許さないからな。絶対に全員無事で帰って来いよ!」

 

「結局研究はするんですね・・・」

 

シエンは新しい魔道具を抱えてホームへと帰って行った。アスフィの呟きは新しい魔道具のことを考えていたシエンには届かなかった。

 




【リカバー】
・回復対象が全回復する。
ダンまちではいうならば精神力が回復しないエリクサーといったところ。
【リブロー】
・遠距離から回復を行える杖
・【魔力】が高いほど範囲が広がる
【リザーブ】
・範囲回復魔法、全員を回復させる。ただし使用者は回復しない。【リブロー】の上位互換
・【魔力】が高いほど範囲が広がる。
【レスキュー】
・空間転移魔法
・味方を自分の周りに転移させる。
・【魔力】が高いほど遠くから転移させる事が出来る。


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秘密は思わぬところでバレるもの

ダンジョン24階層

アスフィ達はダンジョンの食料庫にて激戦が繰り広げていた。
敵は死んだはずの人間に蛇のような図体をして頭が花のようになっている新種のモンスター。
アスフィ達のパーティよりも個人の強さよりも上であるがそこはアスフィの指揮と団員達の連携でなんとか対応をする事ができていた。

「やれ、ヴィスクム!ひたすら産み続けるのだ!!」

「!!」

しかし新種のモンスターよりも巨大なモンスターがひたすらに新種のモンスターを産み続ける事により状況は悪くなる一方だった。
仲間達は傷付き倒れそうになるがアスフィはシエンに作ってもらった杖の数々を使いこなし治療して仲間達を奮い立たせていた。
新種のモンスターは【魔法】や【魔力】に反応して襲いかかってくるが三年前の出来事に比べれば大したことになかったが数が数だけに厄介だった。

「私を守ってください!私の魔法で全て倒します!!」

【千の妖精】と呼ばれるエルフが吠えた。この場は彼女の魔法で切り抜けるしかないとアスフィはシエンから受け取った杖を握りしめて覚悟を決めた。

「全員【千の妖精】のもとへ!彼女に全てを委ねます!そしてこの先誰一人死ぬことを許しません。さあ、戦局を変えますよ!」



「ふあぁ〜、眠り足りね〜」

 

アスフィの依頼を終えてホームに戻って眠り、次の日起きた時には昼頃になっていた。ホームにはシエン以外誰もいない。

かなり無理をして魔道具を作っていたので気だるさは今はないが無理をせず今日はホームから出ないことにしたので再び実験をする事になる。

昨日アスフィから貰った魔道具を試すのに丁度いいだろう。

 

「えーと、血をペン先につけてっと・・・おお!本当にインクの代わりになってる!?」

 

早速羽ペンの使い心地を確かめてみるとアスフィが作っているだけに高性能だった。普通のインクでは精神力が馴染みにくかったがオレの血をインクの代わりに使うのなら精神力はよく馴染むのだろう。これは性能のいい魔道書が出来そうでかなり期待ができる。

紙の方はもう少し魔道書を書く練度を上げてから使おう。足りなくなったらアスフィに頼んで買うかな。

あ、今は金がないんだった・・・よし、ダンジョンに行こう。ほどほどの階層までならオレでも行ける。

 

 

 

「いや〜ホントに死ぬかと思ったよ。レフィーヤ、あの時魔法をぶっ放して蹴散らしてくれてありがとな!」

 

「いえ、皆さんが守ってくれたおかげです」

 

アスフィ達は依頼を終えてダンジョンの上層まで上がって来ていた。依頼の途中に援軍としてロキファミリアとデュオニュソスファミリアの眷属達がやってきたおかげで全員無事だった。

 

「それよりもアスフィさんが持っていた杖の方が凄かったですよ。無詠唱であれほど強力な回復魔法を出来るなんて私は聞いたことがありません」

 

「うん、すごかった」

 

アスフィは魔法を持っているのだが戦闘では使う事があまりなく【魔力】は持ち腐れとなっていたがシエンの魔道具を使うのならば無駄にはならないのでこれにより戦場で新たな活躍が期待できるだろう。

 

「だよな!これを売ったらとんでもない値段になるってアスフィが言ってたんだけど作った奴が悪目立ちはしたくないって止められてるんだよな〜」

 

「いったいどんな人なんでしょうね、フィルヴィスさん」

 

「さあな。まあ、こんな物を作れるような奴の居場所がバレたらロクでもない冒険者や神々がやって来る事は目に見えている」

 

「た、確かに。けど遠征の時にも使えると思いますから何本か作ってもらいたいからどんな人か知っておきたいです」

 

「うーん、アスフィ?」

 

「ダメですよルルネ。約束です」

 

「だってさ、悪いなレフィーヤ」

 

「ですよね・・・」

 

なんて雑談しながらアスフィ達はダンジョンの上層を歩いているととあるルームにて真っ黒のマントを着ている人物に遭遇した。

その男は左腕に防具を装備していて左手に杖を持ち、右手には赤色の魔道書を持ってモンスターと戦っていた。ちなみに今いる階層は9階層だ。

 

「あれは・・・アスフィさんが持っている杖と似ている・・・」

 

「あの野郎は・・・真っ黒野郎じゃねぇか。なんであいつがこの階層にいるんだ?」

 

シエンは出てきたモンスター達に対して引けを取らず、魔道書を使い魔法陣を複数展開してそこから火球を発射した。

発生の速すぎる魔法に対処出来ずにモンスター達は一瞬にして燃え尽き魔石を残して消滅した。

 

「・・・速い」

 

「あ、あの人詠唱してないですよ!?どうなっているんですか!?」

 

「レフィーヤ、落ち着け。先程あの本が赤く光ったのが見えた。それが詠唱の代わりなのだろう」

 

「・・・チッ!(あの真っ黒野郎の匂いはヘルメスファミリアの女が持つ杖や水晶にこびり付いて匂いと全く同じ。・・・つまりあの野郎がこれを作ったというわけか。いったいどんな力を持ってやがんだ?)」

 

ベートは【神の恩恵】により4段階強化された嗅覚でシエンが杖の作った人物だと察した。

彼女達の声が聞こえたのかシエンはそちらに振り向き声を掛けた。

 

「お、アスフィじゃないか!前に言っていた厄介ごとは終わったのか?」

 

「ええ、終わりましたよ。全員無事です」

 

「それは良かったな。・・・なんか他のファミリアの人らもいるみたいだけど・・・これは黙っておいたほうがいいのか?」

 

「そうですね、ギルドの方でも情報規制をしていたので迂闊に喋らないほうがよろしいかと」

 

「ひえ〜怖い怖い。やれやれ、オレも巻き込まれてしまったのかもなぁ。・・・さてキリがいいしオレもそろそろダンジョンから出ようかな。同行させてもらっても?」

 

「ええ、構いませんよ」

 

アスフィとシエンは話し合いをしながらダンジョンを歩いていく。ダンジョンで必要な物やこんな物があったらいいなど互いにアイデアを出していきメモを取っている。そして出てくるモンスターも瞬殺していった。

 

「ルルネさん、あの二人仲が良さそうですね」

 

「私もそう思うぜ。アスフィはいっつも気難しそうな顔をしているけどアイツと喋ってる時はなんかこう表情が柔らかいんだ。いつもこうだったらなぁ〜」

 

「だったら私に余計な面倒ごとを押し付けないでくださいね、ル・ル・ネ?」

 

「ハ、ハイ・・・」

 

「ハハハ、いやルルネがどうにかなってもヘルメスがいるから無理だろうなあ」

 

「ハァ、もうやだぁ・・・」

 

ケタケタ笑いながらも非情な現実を叩きつけていくシエンに溜息と弱音を吐くアスフィ。

 

その後ダンジョンを出て、アスフィ達と黒い髪のエルフは自分達のホームへと帰って行った。オレも帰ろうかとした時に

 

「おい、真っ黒野郎」

 

「え?真っ黒?あ、オレか」

 

「あの杖はテメェが作ったんだろ?そいつらだけでなくウチにも回してくんねーか?」

 

「なぜオレが作ったと思ったんだ?」

 

「オレの鼻の良さを舐めんなよ。杖についている魔宝石にはテメェの匂いがこびり付いてんだ。誤魔化そうとしても無駄だ」

 

前に罵倒してきた人物が話しかけてきた。ギルドにて誰かを調べたのでようやく分かった。

名前はベート・ローガ、狼人でロキファミリアのL v.5だ。

調べたところ彼はかなり口が悪く、超実力主義者らしく他のファミリアの冒険者達にも罵倒して喧嘩が起きる事はよくある問題児のようだ。

前に会った時に色々言われて多少は腹が立ったがまあそれは置いておこう。

 

問題はオレが杖を使った事がほぼバレてしまっている事だ。匂いか、急いで必死に作っていたから手汗とか付いていたんだろう。匂い消しとかが必要か、今度からは気をつけよう。

 

材料をオレに持ってくる事や他の人にバラさない事などなどを条件にした。後はお互いの神様に許可を取ったら契約成立となる事になった。

都市最大派閥のロキファミリアと交流できるのはウチみたいな弱小ファミリアにとっては非常にありがたい。ベルも【剣姫】さんに会いやすくなるし遠征についていく事ができたり、オレ達の知らないような情報もたくさん手に入る。

ただ問題はもし契約が公になるとロキファミリアの敵対している派閥に狙われることになってしまうし、オレがロキファミリアに引き抜かれてしまうかもしれないことだ。

トリックスターと言われる神ロキの事だ、油断はならない。そこら辺はヘスティアにお任せだな。・・・大丈夫だよな?

 

 

 

「おかえりぃ、三人共。よう無事やったなぁ。で、どうだったんや?24階層の事」

 

アイズ達はアスフィ達と別れてホームに戻り24階層で何があったのかを応接間にて三人はロキに話した。

 

「ほーん、そないな事があったんかいな」

 

「はい」

 

「で、その戦いで超便利な魔道具を使ってて、たまたまその作成者を見つけてこれから取引したい・・・か」

 

「ロキ、ダメですか?」

 

「うーん、ええと思うけど。まずその子に話を聞いてみてからやな。んで、ウチに来るように言っといてや」

 

「・・・ああ」

 

三人はロキに許可をもらう事ができた。

あの万能者が使っていた杖は回復に優れていた杖だった。しかもまだ使っていない種類もあってそれもおそらくも凄まじい効果を持ったものなのだろう。

それがロキファミリアでも使用する事ができれば遠征での危険も少しばかりは減るはずだ。

その子供の主神はロキの気に入らない神ではあるが愛する自分の子供達の安全のためならばそんな事はロキにとっては些細な事だった。

 

「さて、いったいどんな代物なんやろなぁ。ワクワクしてきたで!」

 

ヘスティアファミリア

 

「ロキの所にバレてしまったか・・・」

 

「すまん、匂いでバレるなんて思わなかった」

 

「いや、バレてしまったらしょうがないよ。問題はどうするかだよね、シエン君」

 

場所はシエン達のホーム、シエンはヘスティアと戻ってきたベルにバレてしまった事を話し相談していた。

 

「この機会に繋がりを持つ事が大事だと思う。なにせ相手は最大派閥だ、かなりの利があるはずだ。悪くないと思うしそもそも見逃してくれると思うか?」

 

「確かにロキだったら絶対に『だったらこの魔道具の事を他の神々にバラす』とか言いそうだ・・・完全に詰んでるね」

 

「シエン、どうするの?」

 

「多分相手から訪ねに来るだろうからその間にいくつか魔道具を作っておくか。魔道書は・・・持っていかない事にしよう。もし対立した時に使われたらとんでもない脅威になる。いや杖だけでも十分にヤバいんだけどな・・・」

 

バレた事によりこの先、ずっと魔道具を作る羽目になる未来が見えてシエンはため息を吐くのだった。




ダンまち15巻を買いました。
激アツなバトルもいいですが日常編もいいものですね〜


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杖の可能性

ダンメモのイベントのアルゴノゥト、最高だった・・・


オレが魔道具を作れる事をロキファミリアにバレてから次の日の朝、黒髪のなんというか普通の青年がウチのホームにやってきた。

 

「初めまして、自分はロキファミリアのラウル・ノールドっていうっす。えーと、主神が契約の件についてウチのホームで相談したいとの事でもし時間があったらついてきてくれないっすか?」

 

「オレは時間はあるけどベルとヘスティアは?」

 

「僕は大丈夫だよ」

 

「ボクも行けるぜ」

 

「それは良かったっす。じゃあ、行くっすよ」

 

二人共時間があったので3人で最大派閥ロキファミリアへ向かう事になった。

オレは昨日使っていた杖だけを持ってラウルという人物について行った。

 

「ここがウチのファミリアっす」

 

北のメインストリートを歩き北の目抜き通りから外れた街路沿いに長大な館が立っている。高層の塔がいくつも重なってできている邸宅は槍衾のようでもあって赤銅色の外観もあって燃え上がる炎のように見えた。

塔でも一番高い中央の塔には道化師の旗が立っている。

 

「おお〜、さっすが最大派閥。でっかい建物だなぁ」

 

「ぐぬぬぬ、いつかボクらだって立派な家を手に入れてみせる!」

 

「ここにヴァレンシュタインさんが住んでいるんだ・・・」

 

シエンは立派な建物に素直に感心してヘスティアは対抗心を燃やし、ベルはアイズの事を考えていた。

 

「ここが応接間っす。ロキを呼んでくるので少しここで待っていて欲しいっす」

 

そういってラウルは応接間を出て行った。その入れ替わりに翡翠色のプロテクターを持った金髪金眼の少女、アイズ・ヴァレンシュタインが入って来た。

思わぬ人物の登場にベルは腰を上げて逃げようとするがオレは【呪い】を発動させて黒い影でベルの足を拘束した。

 

「うわわっ!?」

 

「おいこらベル。どこに行こうというんだ?そもそもここはロキファミリアのホーム、大人しくしとけ」

 

「いや、つい・・・」

 

「あの、これ・・・」

 

そう言って彼女はおずおずとプロテクターをベルに差し出した。最近ベルが身につけていたものだったが昨日帰って来た時に落としたと言っていた。

それを彼女が見つけて拾ったのだろう。

 

「あ、ありがとうございます!よかった〜無くしたと思っていたんです」

 

「あの、私達の仲間が貴方達に悪いことを言ってしまってごめんなさい。その事をずっと謝りたかったから」

 

「い、いえそんな!?僕が弱いのは本当のことですし、ヴァレンシュタインさんが助けてくれなかったらあのまま死んでいましたし、こちらこそありがとうございましたッ!」

 

そう言ってようやく謝ることのできたベルだった。アイズに夢中なベルにヘスティアは面白くなさそうに頰を膨らましてその光景を見ていた。

 

「ぐぬぬぬ・・・ッ!」

 

「いやーお待たせや!なんやドチビ、なにリスみたいに頰を膨らましとるんや?」

 

「・・・なるほど。レノアが褒めていた真っ黒の男とはやはり君のことだっだのか」

 

しばらくすると神ロキとリヴェリアさんが応接室に現れて話し合いをする事になった。どうやら実物を見たくてオレ達をホームに呼んだらしい。

それにしてもリヴェリアさんはレノアさんの事を知っているのか、やっぱりあのお婆さんはかなり優秀な魔法使いなのかもしれない。

そしてオレは杖をテーブルの上に置き、杖の説明をした。

 

「ほーん、そういう効果があるんやな」

 

ロキはシエンが持ってきた杖を弄りながら思った。

なんだこの便利な杖は、と。

ステイタスの話になるが【魔力】は精神力を使わないと伸びない、つまり魔法を使わないといけない。

しかし、ダンジョンには適していない魔法もあるし、地上で使おうにも規模がデカすぎて使うことができなかったりする。

だが、治療魔法は違う。ダンジョンでは怪我をするのは当たり前で地上でも訓練をしていれば怪我をする。そしてそれを治すために【魔法】を使うので使用頻度が他の魔法に比べて非常に多いのだ。

【魔法】を何度も何度も使えば経験値は溜まっていく、つまり【魔力】が上がる機会増えるということだ。流石に第一級冒険者になると経験としては、しょぼいのでそうそう上がらないだろうが。

この杖は【魔力】さえ持っていれば誰でもヒーラーになれて、怪我の治療だけでなく使用者の【魔力】を成長させるのに適したものと言える。

 

「私もこれを使えば治療することができる?」

 

「そうだなアイズ、確かにこれは凄いものだ。ベートが必要だといったのも頷ける」

 

「あんまり人には知られたくはなかったんですけどね。こちらとしてはオレがダンジョンに行く時間を取られてしまうのであまり作りたくはないんですけど・・・」

 

「にしし、悪いなぁにいちゃん。1週間ほどしたらウチらはダンジョンに遠征しに行くつもりなんや。材料は用意したるからじゃんじゃん作ってくれや!」

 

「う、また忙しくなるんですか?」

 

「ああ、ホンマや。あ、ちゃんと金は払うから安心しとき。いくらや」

 

「ふっふっふ、ならば依頼料をザッと1億ヴァリスで手を打とうじゃないか!」

 

話は商談へと変わりヘスティアは膨大な金額を要求をした。ヘスティア自身もお金を手に入れて少しでもマシな生活を送りたいとも考えているし、シエンもしばらく前にホームに缶詰状態で頑張っていたのだ。なるべく高くしてロキが激怒してこの話をなかったことにしても良し、その後の交渉で依頼料の金額を下げる事で作る物の数を減らしてもいい。

ヘスティアは少しでもシエンの負担を減らしたかったからだ。

 

「アホかァ!そんなアホみたいな金払うわけやろ!それにウチらが材料持ってくるんやで?だから100万ヴァリス!!」

 

「だったら別にシエン君に頼まなくていいんだぜ?9999万ヴァリス!」

 

「全然減っとらんやんか、セコッ!?101万ヴァリス!」

 

「君だってそうじゃないか!9998万ヴァリス!」

 

「102万ヴァリス!」

 

「9997万ヴァリス!」

 

二神は互いに唾を吐き散らしながら交渉を進めた。

 

「これは時間がかかりそうですね・・・。リヴェリアさん、参考にどういったものが欲しいんですか?」

 

「どういったものと言われてもな。君の名前はシエン、だったな。シエン、種類は?」

 

「今の所できるのはアスフィに渡した、単体回復魔法、遠距離回復魔法、範囲全体回復魔法、空間転移魔法に後は「待ってくれ」」

 

そう言ってリヴェリアはシエンが話しているところに割り込んだ。聞いた話を整理して理解しようとして額に手を当てて目を瞑った。

 

目の前の真っ黒の男の事を魔道具のことに長けたレノアが認めるだけのことはある。この男は素晴らしく優秀でそして危険過ぎる。作れるものはまだあるのだろう、絶対に敵に回してはいけない相手だ。

ティオナが遠征に行くたびに言う愚痴の『深層に一気に移動する方法はないか』というのはあるはずがないと断言出来ていたがまさか本当にその方法が見つかるとは思わなかった。

空間転移魔法、そんな魔法は長く生きてきたリヴェリアも聞いたことがなかった。

リヴェリアは手を下ろし目を開けてシエンに聞いた。

 

「サラッととんでもない言葉が聞こえたんだが空間転移魔法というのはどういったものなんだ?」

 

「遠くにいる仲間を自分の付近に転移させるものですね」

 

「というと遠くに送ることはできないのか?」

 

「ええ、まぁ」

 

そう言って頰をかきながらシエンは苦笑いをしながら答えた。実はそういった杖を作ることができるのだが今聞かれているのは呼び寄せる杖で遠くに送ることができないのかという風に解釈してそう答えた。

シエンとしても仲間を遠くに送り届ける杖を別のファミリアの為に作ることは避けたかったのだ。

 

「・・・ふむ、1億ヴァリスでも安上がりなくらいだな」

 

「金は仲間の命には変えられませんからね。見えているのに助けられなくて出来たのは手を伸ばすだけ・・・そんなのが嫌でその杖を作れるように頑張ったんです」

 

「シエン・・・」

 

「いや、すいませんね。ちょっと湿っぽくなっちゃって、今回作る事になったら任せて下さいね!絶対に死なせませんから!」

 

そう言ってリヴェリアに向かって自信に溢れた笑みを向ける。さっきの言葉からこの男も戦場に立ってたくさんの死を見てきたのだろう。少しでも死人が減るように彼は死に物狂いで努力してその杖を作り上げたはず。

 

「シエン、君は尊敬に値するヒューマンだ」

 

「尊敬だなんて、言い過ぎですよ。オレはそんなに褒められた人じゃないですから」

 

褒められて照れて頰が赤くなったシエンは謙虚に言ったが覚醒の世界では戦争中だからしょうがないとはいえペレジア兵を大虐殺している。とてもじゃないがまともではないと自覚しているため尊敬してもらいたくはなかった。きっと幻滅するだろうから。

この場で空気を読まない天然アイズが言った。

 

「え?でもルルネが『シエンはイーリスの英雄だってヘルメス様が褒めていた』って言ってたよ?」

 

アイズの一言にその場に居た人達は沈黙した。

 

「え」

 

「え」

 

『英雄ゥ!??』

 

その場に居た人達は声を揃えて言った。二神は目を大きく開けて驚愕して、応接間でのんびりしていたロキファミリアの団員達も驚きを隠せなかった。中でも英雄に強い憧れを持っているベルの目の輝きっぷりが半端ではなかった。そして英雄と呼ばれたシエンは肩を震わせていて、こう叫ばざるを得なかった。

 

「ヘルメスゥゥゥゥ!!余計なこと言いやがってェェェェ!!あとお喋りルルネ!ぜってぇ許さねえ!!」

 

 




バサーク「おいおい」混乱
サイレス「オレ達を」沈黙
スリープ「忘れてもらっては」催眠
ドロー「困るぜ!」敵の転移
ウィークネス「お楽しみは」弱体化
禍事罪穢「これからだ!」敵の最大体力を半分


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意外な才能

ああ、最高だ・・・FE


「英雄ってどういう事、シエン!?」

 

「オレがヘルメスに聞きたいぞ・・・なんでオレが英雄なんだよ。あの野郎、色々言いふらしてんじゃないだろうな」

 

「あ〜、ヘルメスならあり得るだろうね」

 

「せやな。せやけど自分、ミノタウロスにやられたって聞いたからL v.1かL v.2やろ?それなのにヘルメスに英雄呼ばわりは変な感じやな」

 

ロキ達はシエンがこちらに来て弱体化しているのを知らないのでとてもじゃないがロキ達からしてみて英雄と呼ばれるくらいに強そうに見えなかった。

しかし力を隠している場合もある。アイズからの情報でスキルをたくさん持っているようなので油断はならない人物という評価になった。

 

「この話はもういいですよね?それよりも商談の方はどうなったんですか?」

 

シエンはこの話を嫌がったのか話題を変えようとした。

 

「ふふふ、激論を終えて無事依頼料7000万ヴァリスをいただく事になったのだ!」

 

「うえええええッッ!?本当ですか神様!?」

 

「物凄い金額だけど、どうやって持ち帰るつもりなんだ?小分けにしてロキファミリアを往復しても怪しまれるし、オレ達は金狂いのソーマファミリアの奴らに目ェつけられたんじゃなかったのか?」

 

「うぐッ!」

 

「なんや、金に目が眩んで何も考えとらんかったんか。ハァ、これだからドチビは・・・」

 

「なんだとッ!?」

 

なにやら喧嘩になりそうだったのでヘスティアをオレ達が、神ロキを向こうの団員達が止めた。

ヘスティアが頑張って交渉したのに申し訳ないが依頼料はオレ達が持ち歩いても怪しまれないくらいの金額となった。

神ロキは「ボロ儲けやー!」と騒いだが流石に割りに合わないと思ったのか【剣姫】さんがオレ達を鍛えてくれることになった。

アイズはベル達の異常な成長スピードの秘密を知るためというアイズなりの思惑があるのだが目標であり憧れの人であるアイズに修行をつけてもらえることになってベルは大喜びだった。逆にヘスティアは面白くなさそうな顔をしていた。

場所はオラリオを囲む市壁の天辺でそこは立ち入り禁止で誰も来ることはなく人の目にもつかない修行には絶好の場所だという。

修行の時間帯は早朝に決まった。恥ずかしい話ではあるがウチは貧乏なので生計のためにダンジョンに潜らなければならないからだ。

・・・起きられるのかオレ。

 

 

ヘスティア達がロキファミリアのホームを出てからロキは幹部を呼び出して緊急会議を開くことになった。勿論会議の内容はシエンについてだ。

 

「おし、みんな集まったな。ぶっちゃけ、あの子はウチに欲しい。なんやアレ、反則やろ」

 

ロキは机の上に置いてあるシエンから見本としておいていった杖を見ながら言った。少しずつではあるがシエンのダンジョン探索の様子は噂されつつあった。【魔法】のみを利用してダンジョンを攻略する黒づくめの冒険者がいると。アイズ達に聞いた話では光る本を持って【魔法】を放っていたこともあったようでおそらくそれも作ることが出来るのだと実際にシエンに会ってロキは確信していた。

 

「ンー、僕は直接会っていないから分からないけどロキがこのファミリアに必要というのであればいいんじゃないかな。リヴェリアはどう思った?」

 

ロキファミリアの団長、小人族のフィン・ディムナは副団長のハイエルフのリヴェリアに尋ねた。

 

「・・・そうだな。レノアが興味を示して気に入っているだけのことはあった。回復だけでなくかなり特殊な魔法を発動出来る杖を作ることが出来るみたいでベートが遠征に必要だと言ったのにも納得がいった。彼が少し前の頃の闇派閥にいたらと思うとゾッとするほどだ。敵に回すと厄介になることは間違いない」

 

オラリオの魔導士で最強ともいわれるリヴェリアが他派閥の魔導士を褒めたことに他の幹部達も興味を持ち出した。

 

「ほう、リヴェリア、お主がそこまで言うとはのう」

 

老兵のドワーフ、ガレス・ランドロックが自分の長い顎髭をしごきながら言った。

 

「それにヘルメスが言うには国の英雄らしいんや」

 

「英雄!?それ本当なの、ロキ!」

 

「せやろ、アイズたん」

 

「はい、ルルネが言っていました」

 

「うわー!会ってみたかったなー!」

 

「でも国の英雄と言われるくらいならもっといろんな人に知られているはずなのにそれらしい噂は聞いた事はないわね」

 

英雄という言葉に激しく反応した人物はアマゾネスの双子姉妹の妹のティオナ・ヒリュテ。逆に冷静に考え違和感を覚えたのは姉のティオネ・ヒリュテ。

 

「ケッ、英雄だかなんだか知らねェがミノタウロスにやられるくらいの雑魚だ、大した事はねェだろうよ。・・・あの反則じみた杖の事は認めてやるが」

 

24階層の戦いでベートもシエンの作った杖を持つアスフィにより戦闘中に【リザーブ】による範囲回復魔法による治療を受けていた。

傷付いた仲間達を瞬時に回復させて立て直すこと出来るのは何が起きるかわからない遠征においても非常に重要なことで必要だと感じた。

だからこそあの時声をかけたのだ。

 

「へぇ、ベート。自分、ミア母ちゃんとこであんだけ馬鹿にしとったんになぁ」

 

「るせー!」

 

そう言ってこの話は終わりと言わんばかりにブーツで机に軽くかかとを落とした。

 

「くくく。ま、ヘルメスにはもうちょっと色々聞いてみないと分からんし、あの子には遠征に行くのに必要なもんを作ってもらう事になってちょくちょく会うことにもなりそうやからそこで仲良くなっていくしかないな。あ、本人は英雄呼ばわりは嫌そうにしとったし、この事は秘密って事で眷属の子らには頼むで」

 

「わかったー!!」

 

「絶対に話すわね、このバカ妹は・・・」

 

次の日

 

「改めてよろしくね、リリ」

 

「はい、ベル様!」

 

中央メインストリートの広場にてベルのサポーターだったリリルカ・アーデとベルがサポーター契約をして一緒にダンジョン探索をする事になった。

オレは魔道具を作る予定ではあったがロキファミリアは今材料集めをしているので今日はまだ材料が届かないそうなのでオレも一緒にダンジョン探索する事になった。またダンジョンに潜れなくなる為少し感覚を取り戻しておかなくては。

 

「リリルカ・アーデだったな。前に少しあったシエンだ。これからよろしく」

 

「お久しぶりです、シエン様。リリこそよろしくお願いします!」

 

「早速ダンジョンに行こうよ。今日は何階層まで行く?」

 

「オレは単独では9階層まで行けることが分かっているから10、11階層は行けるかもだな」

 

「なら、10階層にまで行きましょうか。余裕がありそうならば11階層といった感じで行きましょう。ベル様、シエン様よろしくお願いしますよ」

 

久しぶりに一緒にダンジョン探索をすると以前よりもベルの戦闘での俊敏さが上がっており敵を見つけ次第に襲いかかり反撃をくらいそうになったらすぐさま引く、ヒットアンドアウェイが出来ている。魔石やドロップアイテムはリリが自分の体よりも大きいバッグパックに収納していく。・・・正直オレの出番がない。

11階層に行く前に少し休憩をする事にした。

 

「ベル、随分と強くなったなぁ。オレの出番がないぜ」

 

「そうかな?」

 

「そうですよ!信じられないほどの速さでのダンジョン攻略です。リリも驚いています」

 

「うまく戦えているのはリリ達がいて安心して戦えるからだよ。僕一人じゃ絶対に無理だよ」

 

「・・・自分の力に過信していないのならば大丈夫そうだな。さ、行こうか11階層に」

 

ベル・クラネル

 

11階層は10階層と同じく霧の立ち込める場所で大型モンスターのオークが出現する。エイナさんによると稀にインファントドラゴンと言われる竜種のモンスターも出現する。

 

「フッ!」

 

「ブギャアアア!?」

 

手に持っている神様のナイフをオークに突き刺して仕留め、次のモンスターに斬りかかる。

インプにゴブリンとニードルラビット、様々なモンスターを倒すことができた。

霧が出ていると周りが見えづらく、リリの身の安全が心配になるけど今日はシエンがいるから大丈夫だ。やっぱり一人で戦っている時と違って安心感が違う。本当に頼もしいや。

 

「グォォオオオオ!!」

 

モンスターを倒していると霧の奥から咆哮が聞こえてきた。聞いたこともない雄叫びに僕の体が硬直する、いったいなんだろう?

 

「ベル様!引きましょう!この咆哮はインファントドラゴンです!!」

 

インファントドラゴン!?まさか本当に現れるなんて!?

確かレアモンスターの四本足で竜種で上層の主みたいだったはず・・・。前にシルバーバックを倒した事はあったけどエイナさんにはソロで戦って勝てる相手ではないのでインファントドラゴンからは逃げろと言われている。急いでこのルームから出なくちゃ!

 

「おー、なかなか良い声で鳴いてんじゃねぇか。ちょっと低めの声、おそらく寝てた所を起こされて怒ってるんじゃないのか?」

 

「・・・え?シエン、わかるの!?」

 

急いで逃げようとしているとシエンがモンスターの事を気にかけていた。寝ていて起こされた?僕には全然わからなかった。

 

「さて、こっちでも上手くいくかな?スゥ、〜♪」

 

そう言ってなんとシエンは突然に歌い出した。シエンは聞いたことのないような歌を歌うと霧の奥にいるであろう主の動きが止まった。そんな馬鹿な!?

 

そしてズシン、ズシンと足音が遠ざかって行き、ダンジョンは静まり返った。周りに耳をすませると寝息のようなものが聞こえてきた。ほ、本当だ・・・眠ってる。

 

「よしよし、うまくいったな。さて、起こさないように静かにこのルームから出るぞ」

 

僕達はインファントドラゴンが眠っているうちにルームから出て10階層に戻った。

 

「ふぅ、危機一髪でしたね。ベル様」

 

「うん、本当に。シエンのおかげで助かったよ。それでさっきの歌は何?」

 

「あの歌か?あれは暴れている竜を大人しくする歌だ。また子竜の子守唄とかにも使われているぞ。ま、ダンジョンにいるモンスターにも効いて良かったよ」

 

「凄いですシエン様!もしかして調教師だったりしますか?」

 

「いや違うな。昔、よく竜と触れ合っていてな。世話をしたり飛竜の背中に乗って飛んだりしてたからなんとなく竜の状態がわかってしまうんだ。ま、今回はマグレだよマグレ」

 

さ、流石はシエン・・・僕達の常識に当てはまらない男だ。

けどシエンの事を知れたような気がする、シエンの育ったイーリス聖王国・・・いったいどんなところなんだろう

 




相変わらずFEに没頭中なので更新は不安定です。申し訳ありません!



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特訓開始、そして不本意なランクアップ

FEを三周したので少しずつ更新していきたいと思います。
難易度ルナティックの無料DLが来たらまた150時間ぐらいやり直しだな!(アヘ顔)


市壁の上

 

「・・・フッ」

 

「ぐああぁあああ!?」

 

「ぐへッ!?」

 

太陽が出ていない暗闇の中でオレ達の特訓が始まった。【剣姫】さんが特訓を引き受けたが何をやるのか決めておらず実際に戦ってみようという事になり戦闘をしている。

それとオレ達は【剣姫】さんから名前で呼んで欲しいと言われた。

 

戦ってはいるがアイズからしてオレ達は弱すぎて先程から地面に転がされてばかりだった。

ダメージを負っているので【スキル】が発動しようとするが抑える。いくらバレにくい市壁の上でも黒紫色の魔力が立ち昇ったり魔法を放ったりしたら他の人に市壁の上で何かやっているという事がバレてしまうからだ。

僅かに発動した時のベルとアイズは初めて見るのでそれはそれは動揺していた。

オレにできるのはせいぜい【呪い】でアイズの動きを制限する程度だが反応速度がケタ違いの第一級冒険者にはなんの意味もなかった。

 

「・・・・・」

 

「あっ・・・」

 

どうやらベルは当たりどころが悪かったのか気絶してしまった。アイズはやり過ぎてしまったと少し落ち込んでいたが倒れているベルのもとに行って座り込みベルの頭を自分の膝の上に乗せた。どう見ても膝枕だった。・・・なんで?

 

「・・・」

 

「・・・」

 

その場に静寂が訪れる。オレって場違いじゃないかな・・・

 

 

 

「へぇ、あの子達。また強くなったようね」

 

誰にもバレないような場所で特訓をしているにも関わらず、バベルの塔の最上階にいるフレイヤからは丸見えだった。

 

市街の上には眩い金色の魂に無色透明の魂、そして少しずつ輝きを取り戻し始めた黒色の魂が見えた。

フレイヤは人の魂の色を見ることが出来る。その色を見てその人物がどのように成長しているか見ることも出来るのだ。因みにロキからはチート呼ばわりされている。

 

彼らがぶつかり合うたびに魂はより強く輝きを放っている。その輝きを見るのは楽しいが自分が気に入っているものが自分の知らないところで強くなっているのは気に食わなかった。

 

「あの子達が強くなっているのは良いことだけれども、ちょっと近すぎるわね。どのくらい強くなったのか確かめるのと少しばかり警告しておく必要があるかしら」

 

 

 

「・・・・・ツ!あ痛たた・・・頭いてぇ」

 

アイズとの特訓が始まり4日ほど経った。今はロキファミリアに渡す魔道具を製作中なのだが何故か上手くいかなくなってきていた。

最近、ステイタスの更新をしてから精神力を使おうとする度に頭が痛み、体のあちこちが痛むのだ。だから夜に修行をすることもできなくなってきている。

最初は特訓での怪我で痛むのだと思い特訓に行かないようにしたのだがどうやら関係がないらしい。

神ミアハに頼んで診てもらったが原因は不明との事だ。

 

 

シエン

 

Lv.1

 

力 :I0

 

耐久 :F367→D457

 

器用 :SS1254→SSS1584

 

敏捷 :H121→H154

 

魔力 :SSS1891→SSS2691

 

現在のオレのステイタスはこんな感じだ。

【魔力】と【器用】はいつも通りだが【耐久】の伸びがとても良い。最近は怪我をしていなかったので【耐久】は4日でこれだ。

ただこれを見ているとなんとなくだが身体の異常の原因がどう見ても【魔力】だと分かる気がする。

基本アビリティの限界が999だというのに2倍以上になっている。明らかに異常だ。オレ自身がゴム風船に例えると分かりやすいかもしれない。

 

ゴムが【耐久】でゴム風船の中に入っている気体が【魔力】もしくは精神力だとする。【耐久】がたいして増えていないのに【魔力】がどんどん増えていく。

つまりオレの体は増え続ける【魔力】に耐えきれないのではないだろうか。

解決策としては簡単で【魔力】を使わずに【耐久】を上げる特訓をするとかかもしれない。

しかし今は魔道具作りをしなければいけないのでそれが出来ない。正直限界だし身体が悲鳴をあげている今、いつ破裂してしまうかわからない恐怖の方が強い。不本意だがランクアップをせざるを得ない・・・もっと【耐久】をあげておくべきだったな。

 

次の日

 

「うん、ボクも君の考察通りだと思うよ」

 

オレは朝にヘスティアに昨日考えた事を言ってみると納得のあったように頷かれた。

 

「ミアハがわからないのも無理がないよ。だって【魔力】が上がりすぎて身体がおかしくなるなんてそんな子は今までいなかったんだから。それでどうするんだい?ランクアップするのかい?」

 

「ああ、頼む。正直辛い。この痛みが経験として【耐久】が上がるとしても僅かだろうし魔道具作りをしたら【魔力】がもっと伸びちまって意味がなくなってしまう・・・」

 

「あはは・・・それ絶対に他の冒険者に言わない方が良いよ。どう聞いても嫌味にしか聞こえないから」

 

「そうだな、気をつけるよ。それじゃよろしく頼む」

 

 

 

シエン

 

Lv.1→Lv.2

 

力 :I0→I0

 

耐久 :D457→I0

 

器用 :SSS1584→I0

 

敏捷 :H154→I0

 

魔力 :SSS2691→I0

 

発展アビリティ

 

魔導 :I

・足元に魔法円が発生。(魔法円の色は黒色)魔法の威力、効果範囲、持続力、安定性などが上昇

 

【魔法】

 

【ミラーバリア】

・速攻魔法

・敵の飛び道具や魔法を反射する。反射する際は向きを自由に変えられることができ、いろんな攻撃も防ぐことができる。形は精神力を消費すると自由に変えられる。

・魔法を反射したとき魔法の威力が上昇する。

・空中に足場を作ったりできるが透明で見えない。

・一度に複数展開することが可能

 

 

「はい、これが君のステイタスだよ」

 

「あれ?魔法の効果が追加されてるな」

 

「そのようだね。ランクアップしたり【魔力】が上がる事で魔法の性能が良くなったりするんだ。発展アビリティは前に聞いた通り、火力アップの【魔導】にしたよ」

 

ランクアップすると発展アビリティを習得することが出来る。これは今までの経験から出現するものでモンスターを倒しまくっていたら【狩人】が習得できたりオレのように【魔法】をよく使用している場合は【魔導】を習得することが出来る。

この発展アビリティは基本アビリティよりも成長しづらいモノらしい。

また前のレベルの時に貯めた基本アビリティは消失するのではなく潜在値としてステイタスに反映されるようだ。

つまりオレは【力】がまったく上がらないままランクアップしたのでほかのLv.2に成り立ての冒険者と比べるとオレの方が弱いという事だ・・・ちくしょう

 

 

無事ランクアップを終えて今日の魔道具製作のノルマ以上を終えて(ただしステイタスの変化により何度か失敗した)早速【耐久】を上げるためにアイズの特訓を受けに来た。精神力を使用しても頭痛もしないし気分が良い。

現在は昼頃、今日は一日中特訓の日のようだ。

 

「よっす、ベル。頑張ってるか?」

 

「あ、シエン。体調が悪いって言っていたけどもう大丈夫なの?」

 

「ああ、もう大丈夫だ。またしばらくしたら再発するかもしれないけどな」

 

「それ、大丈夫じゃない・・・」

 

「ま、対処法を見つけたんだ。それさえやってればなんとかなるはずさ。アイズ、オレも特訓よろしくお願いします!」

 

「うん、よろしくお願いします」

 

 

アイズ・ヴァレンシュタイン

 

「フッ!」

 

「む、おっと!」

 

私はシエンに近付き鞘で胸を突こうとするとそれに反応して躱された。数日前から来なくなったシエンの動きが変わっていた。いったいなにがあったの?

 

「ハッ!」

 

シエンの影が手の形になって私を捕らえようとしてきたけどまだまだ遅い。けれどこれは前に見たけどやはり違う。影の速さが上がり、手の本数が前は一本だけだったが8本に増えていてシエンを守るように円陣を組んでユラユラ揺れている。凄く不気味・・・

4本が私に迫って来たけど躱しつつ前よりも速く接近する。シエンは目を見開き口が動き始めたけどもう遅い。今の勢いのまま鞘で鳩尾を突いた。シエンは吹き飛んで市壁の上から落ちそうになって・・・落ちた。

ちょっとやり過ぎたかも。

 

「ぬわー!?」

 

「シ、シエンンンンン!?」

 

ベルと一緒にシエンが落ちた所に駆け寄って上から見るとシエンは落ちておらず、手の形の影が市壁を掴んでいてその影が枝分かれをしてシエンを掴んでいた。

市壁を掴んでいる手を縮めて上に移動を始めて無事戻って来た。

スゴイ、あの影にあんな使い方があるんだ。

 

「び、ビックリしたー!初めてやったけど上手くいってよかったぜ・・・」

 

「本当に無事で良かったよ」

 

「シエン、ゴメン・・・」

 

「ま、まあ落ちてないから気にするなよ。それより続きをしようか」

 

その後、日が暮れるまで特訓をした。ベルも戦い方がますます上手くなっていく、そしてシエンは間違いなくランクアップをしている。

前に戦った時よりも反応速度が速くなっていて、それに戸惑い調整できていない感じは私も5回経験したことがある。だからこそランクアップしていると分かる。

シエンが冒険者になったのは約1ヶ月前だという。それなのにもうランクアップ、早い、あまりにも早過ぎる。これはロキに伝えないと



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絶体絶命

シエンとベルが一緒に戦ってる時、全然なくね?
中層編は何とか絡ませたいです・・・

原作を見て間違いを修正しました。

魔法陣→魔法円(マジックサークル)

シエンの魔法を使う時が魔法陣で足元が魔法円、これは間違えそう・・・


今日の1日特訓が終わり3人で帰宅中だ。外はもう薄暗く星が見えている。

特訓はランクアップしてもオレは結局地面に転がされてばかりだった。ちょっとはマシになるかなと思っていたがそうは甘くはなかった。レベルの差というものは恐ろしいな。

 

「今日は大変だったね、シエン」

 

「そうだな。ベルは今日一回も気絶してないじゃないか。ベルこそよく頑張ったな」

 

「うん、2人ともよく頑張っていたと思う」

 

「・・・!アイズさん、また明日も特訓お願いします!!」

 

「・・・・・」

 

「アイズさん?」

 

ベルが元気よくお願いしたにもかかわらずアイズはベルの方を見ずに前方を見ていた。薄暗く見え辛いが何者かがいる、少し【魔力】を探ってみると所々に【魔力】持っている輩がそれなりにいる。

 

よく周りを見てみるとポール式の魔石街灯が壊されている。これは偶然ではない、間違いなくコイツらはオレ達を襲う気満々だ。

オレは相手にバレないようにいつでも魔道書を発動できるように準備しておく。

 

すると猫耳の生えた男が襲いかかって来た。服装は暗色のインナーに暗色のバイザーで顔を見ることが出来ない。

高すぎる【敏捷】にどうすることもできなくて携えた槍で撃ち抜かれそうになるが真横から伸びたサーベルがそれを防いだ。

アイズが防いでいるうちにオレはベルを連れて後ろに移動を開始する。アイズの邪魔をするわけにはいかない。

すると人家の屋上から四つの影が現れた。どう見ても相手側の増援だった。

アイズと襲撃者の戦いにその四つの影も加わり戦いは激しさを増していった。

あいにくとオレ達が分かるのはぶつかり合った時に飛び散る火花だけであったが。

 

「シエン!アイズさんが!!」

 

「わかってる、だがオレ達では何もできないし邪魔だ。急いでこの場を離れて助けを呼びにいくぞ。そうすれば相手側も正体を知られたくはないはず、必ず退却するさ」

 

「・・・ッ!わかった・・・急ごうシエン!」

 

何もできないという言葉に若干傷付いたベルはすぐさま助けを呼びに行くためにその場を離れようとするがそれをさせないとさっき感じた【魔力】を持った連中が現れた。【魔力】を持っていない奴も合わせて10人だ。

流石にそう簡単に逃げる事は出来ないか。

 

「【ファイアボルト】!!」

 

ベルは相手の足元に稲妻のように走る炎を打ち出した。対人経験が少なく人に直撃させるのに抵抗があったのだろう。優しい子ではあるが今はそんな余裕はない、まだまだ甘いな。

 

「うおッ!?」

 

「コイツ、詠唱なしで魔法を使いやがった・・・」

 

「気をつけて奴らを取り囲め!」

 

ベルの魔法を見た襲撃者達はオレ達を四方八方から同時に攻めて来た。

しかし、何故だろう。ベルを襲おうとする奴よりもオレを狙っている奴の方が速い!?

 

「【ミラーバリア】!」

 

「なんだ!?近寄れないぞ!?」

 

「チィ!」

 

「また無詠唱か!どうなってやがる!?」

 

障壁をドーム状にして出現させて敵の攻撃を弾く、もちろんそれだけじゃない。弾かれて隙が出来たところで【呪い】を発動、今は敵がそばにいる絶好のチャンスだ。薄暗くても光さえあれば影は出来る!

 

音も無く手の形になった影は速めの敵の足をしがみつき、その足をへし折った。まずは足だ、機動力を落としてオレ達が逃げれるように、もしくは確実に倒す。正直手加減する必要はないのだがアイズと戦っている連中に狙われたくはない。

【呪い】はオレのステイタスによって強化、融通が利くようになる。【力】がなくても大丈夫だ。

 

「「「ぐあぁああああ!???」」」

 

「足がッ!?足がァ!?」

 

「おい!どうした!?」

 

「そこ!」

 

「グァ!?」

 

騒いだ奴らにベルを狙っていた奴らが気を取られているうちにベルは攻撃を仕掛ける。ベルは特訓の影響からか上手く立ち回れている。上手く蹴散らせたし追撃は来ない、すぐさま撤退を・・・

 

 

 

「クッ!この化け物め・・・」

 

アイズは一人で第一級冒険者クラスの襲撃者5人を相手に善戦していた。

それはアイズも少し前にL v.6に上がっており体の感覚の調整も出来ているためだった。

また、シエンがベルを連れてこの場から離れようとしてくれたお陰で思いっきり戦えるのもある。

アイズの後ろからは何やら悲鳴がきこえて来る。どうやらまだ逃げきれていないようだ。

襲撃者達は武器を構えてまた襲いかかってきた。小さな四人の襲撃者がそれぞれの武器でアイズに攻撃をして猫人も襲いかかって迫って来るが・・・アイズを無視してベルとシエンのいる所に神速をもって襲いかかった。

アイズはそちらに向かおうとするが四人の襲撃者が邪魔で追いつけない。

 

「シエン、逃げ」

 

アイズはシエンに危機が迫っている事を伝えようとするがもう遅い。シエンの背中を襲撃者の槍が貫いた。

 

「「シエン!?」」

 

「グボッ、ゴハッ!?ウ、オオオオアアア!!」

 

心臓付近を貫く一撃、普通ならばショック死するがシエンに宿る力がそうはさせなかった。血を吐きながらも腹を貫いた槍を掴み叫び【復讐】が発動する。

薄暗くて分かりづらいが黒紫色の【魔力】が瀕死の重傷からか膨大に溢れ出てLv.2とは思えないほどの重圧を放つ。

すぐさま精神力を持っているトロンの魔道書に注ぎ込み黄色の魔道書からは紫電を撒き散らし足元には黒色の魔法円を展開、【魔導】も発動させる。

まだ終わらない、同時に【呪い】も発動して40本を超える黒い手が襲撃者を捉えようとする。

 

「チッ!」

 

襲撃者は槍をシエンの体から引き抜き、自身を捉えようとして来る黒い手を薙ぎ払い撤退に成功する。黒い手はシエンから5M辺りで動きが止まった。

 

「(クソッ!遅・・・過ぎて話に・・・ならねえ・・・ッ!!)」

 

スキル、魔道書の発動準備、【魔導】、それらを同時に行い使った時間は約2秒。他の魔導士からすれば信じられないほどの速さだが格上の相手からすればあくびが出るほどに遅かった。

もはや意識は朦朧としていて必殺の一撃は狙いを定められない、それに放っても容易く躱されるか放つ前に近づかれて刺し殺されるかのどちらかだ。

気になるのは何故自分を殺さないのかだけは気になりつつもシエンは前に倒れて気を失った。

 

「シエン!?」

 

「目的は達成した。人もそろそろ気づき集まってる筈だ、引くぞ」

 

襲撃者達はベルが倒した冒険者達を回収して去っていった。残ったいるのはベルとアイズ、そして血溜まりを作っているシエン。

 

「シエン!しっかりして!シエンッ!」

 

「落ち着いて、ベル」

 

敵が去った事を確認してからベルはシエンに駆け寄って叫ぶ。僅かに息をしているが呼吸が浅く体がどんどん冷たくなっていく。

アイズは常備しているエリクサーをシエンの傷口に振りかける事で傷はたちまち塞がった。

 

「これで大丈夫」

 

「本当ですか!?良かった・・・本当に、良かったッ!」

 

「でも血を流し過ぎているからバベルの治療施設に連れて行こう」

 

そうしてベルとアイズはシエンを治療施設に連れて行った。

その後、シエンは無事命を落とさずに済んだがしばらくは目を覚まさないだろうとベル達は医師に言われた。

シエンを、大切な仲間が倒れた事に強いショックを受けたベルはアイズに今まで以上に厳しい特訓をしてもらうようにお願いした。

 

 

そして数日後

 

「・・・う、ここは・・・?」

 

シエンは重い瞼を開けてベットから身体を起こし周りを見渡した。少なくとも自分達のホームではないことは分かった。よく見ると包帯ぐるぐる巻きにされているベルとリリが眠っていた。

 

「シエン君・・・?シエン君!!目を覚ましたんだね!?よかったぁ・・・」

 

それとヘスティアがいた。ずっと見ていたのか目の下にクマがある、しばらくは対あまり眠れていないのだろう。

 

「やかましいぞヘスティア。頭に響く・・・それと心配かけたな」

 

「・・・ッ!本当だよ!!全くもう、君達は無茶ばっかりするんだから!約束したってのに!」

 

「ああ、いや。しょうがないだろ、逃げきれなかったんだから・・・あ!?魔道具!!」

 

ヘスティアと会話をしていると依頼されていた魔道具のことを思い出した。まだ途中だっていうのに・・・

 

「・・・ハァ。君ってやつは本当にそればっかりだね。なんだか怒っていたのになんだか馬鹿らしくなってきちゃったよ。その事なんだけど」

 

ヘスティアによるとロキファミリア達はもう既に遠征に出かけており、いないのだという。

また今回の件はロキファミリアのせいではないが医療費を出してもらう事になった。今回作ったものはそれくらいではお釣りが出るくらいだから気にしなくていいとの事だそうだ。

ベルとリリは上層でミノタウロスに遭遇して・・・倒したらしい。

オレは理不尽だったけどお前の方が無茶してないか、ベルよ・・・

 

 




ベル君とヒロインの決闘はカットします。詳しくは原作3巻を読んでください。

襲撃者のアレンがシエンを狙ったのは、フレイヤがシエンの魂を見てベルと戦わせるミノタウロスがあっさり倒されてしまう事を分かってしまい。その邪魔をさせないためにはシエンを遠ざける必要があったので病院送りにすることにしました。
また、シエンの考察した【魔力】についても同じ事を感じており、お節介ながらシエンの心臓付近を貫いて【耐久】の上昇に貢献しました。

愛だからしょうがないですね。


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トラブルメーカー達

リューさんの堅苦しい喋り方を再現するのは難しいですね。
オレは言葉を知らなすぎるので小説を片手に辞書で言葉の意味を理解しようとしています。
小学生の頃、真面目に漢字の勉強をしとけば良かったかなぁ・・・


ベルがミノタウロスを倒してから3日経った。ミノタウロスを倒した日と次の日は眠り続け二日目にベルは目を覚ました。

ヘスティアとリリがその事で安堵した後にベルはお説教を半日食らってそのもう半日は、ぼーっと過ごしていたようだ。

 

オレはというとあの戦いでもうボロボロにやられたのが悔しかったので同じ手を食らわないようにするために自身の強化に取り組んでいる。

魔道書の製作、魔法の発動時間の短縮するために何度も精神力の練り方を練習した。【魔法】は6文字だけなので発声練習とかはしなかったがあの至近距離で6文字を唱える時間がまずないだろう。あれはムリだ。

 

話は変わって魔道書だが実は製作にかかる時間を大幅に減らす事に成功した。

【呪い】の黒い手に新しく買った羽ペンを握らせて紙に書くようにしたからだ。もちろん相手がいないとスキルは発動しないので書いている時にヘスティアかベルがいないと使えないやり方でもある。

おかげで2日間で複数の魔道書を作ることが出来た。

 

そんな忙しい2日間を終えて3日目、この日はオレとベルのランクアップをギルドに報告しに行く日だ。(ベルはランクアップ出来る状態)

ベルがランクアップ出来ると知った時から口がにやけっぱなしになっている。

目標に少し近づけたという事だから嬉しいのだろう。

オレとしてはこの尋常ではない速さでのランクアップは周り中の冒険者達に嫌がらせを食らったりするのではないかと不安だ。

ウチは弱小ファミリア、後ろ盾がない以上叩き潰すのも簡単だ。

まぁ、かかってくるのならば潰すだけだ。

 

「あっ、ベルさんにシエンさん!」

 

「シルさん!おはようございます!!」

 

「よっ、おはよう。シル」

 

「お二人共、おはようございます」

 

西のメインストリートを歩いていると豊饒の女主人の店からシルが現れて挨拶を交わす。ベルは前にもらったバスケットを返却する。いきなりギルドに向かわずにここに来たのはこれが理由だ。

 

「シルさん、お弁当ありがとうございました!!」

 

「いえいえ、それにしてもベルさん。なんだか元気が良くて嬉しそうですね」

 

「あはは〜、分かっちゃいます?実はですね・・・」

 

ベルはランクアップ出来る事をシルに伝えた。すると一瞬、シルの目が餌を見つけた野獣のような眼光を放った・・・ような気がする。

 

「それはおめでとうございます。ベルさん!それはお祝いをしないといけませんね!!」

 

「あっ(察し)」

 

「え?」

 

「どうでしょう、今日の夕方ウチで祝賀会を開くのは?」

 

まあ、そうなるよな・・・本当に油断ならない女の子だよ・・・

 

 

ギルド本部

 

「1ヶ月半で、Lv.2!?」

 

ギルドにエイナの叫び声が響いた。余りにもあり得ない事に驚いたエイナは思わず大声を上げてしまった。

その声に神が、冒険者達、ギルドの職員達が知ってしまった。この二人組もしくはどちらかがランクアップしたのだと。

 

「ハッ!?ご、ごめんっっ!二人共ちょっとこっちに来て!!」

 

エイナは自分がやってしまった失態を謝りつつ面談用ボックスに移動した。この場所は防音などの機能面は充実している。

 

「いや、でもいずれ分かる事ですし・・・」

 

「まあ、その通りでもあるけどなベル。そういえばロキさんに聞いたところアイズがLv.2になるのに一年かかったそうだ。ちなみに1番最速で。それを上回ってしまったベルは神々に狙われるだろうなぁ・・・」

 

エイナもシエンと同意見だった。間違いなくベルは神々にどうやってそんなに速くランクアップ出来たのかを根掘り葉掘り聞かれることになるだろう。若しくは勧誘の嵐に巻き込まれる筈だ。本当に大変な事をしてしまった。

 

「ッ!?いや、でも待ってよ。シエンもランクアップ出来たんだっけ・・・いつ?」

 

「怪物祭の時だな」

 

「僕よりも先じゃないか!?」

 

そしてエイナはまたとんでもない事を聞いてしまう。実はシエンの方がランクアップが早かったという事実。もう何が何だか、衝撃の出来事にエイナは頭痛がしてきた。

 

「あ、あのね。二人共、ちょっと私もお仕事しなくちゃいけなくて今日までの冒険者の活動記録を教えて欲しいんだ」

 

「えっと、何故ですか?」

 

ベルの活動記録を公開して他の冒険者達も同じような事をすればLv.2になれますと伝えるためだ、とエイナは言った。

 

「ククク、無理だろそんなん。ミノタウロスを単独撃破してくださいとか」

 

「はぁ、だよねぇ・・・って!シエンさん!!貴方も大概ですからね!?何ですか1人でソードスタッグを倒したって!?いくら調教用のモンスターだからちょっと弱ってるといっても24階層に出現するモンスターなんですよ!?死にたいんですか貴方!!」

 

「シエン、そんなモンスター倒したの!?」

 

「いや、そんなモンスター教えてもらってないし子供が狙われてたから無視して逃げれなかったんだよな〜」

 

「へぇ、そのモンスターについて教えなかった私のせいと言いたいんですね?」

 

「あ、ヤベッ!?いやいやいや、エイナさん!!そのような事はございまs「問答無用!!シエンさんにはダンジョンに出てくるモンスターについてしっかり学んでもらいますからね!!」ぐぬぬ・・・」

 

余計な事を口走ってしまい今度からのエイナの勉強会は厳しいものになりそうだ。トホホ・・・

その後ベルはランクアップした時に出てきた発展アビリティの相談をしてオレ達はホームへ戻った。

 

「ただいま戻りました、神様!」

 

「ただいま。やれやれ、大変だったよ」

 

「お帰り、2人共。ギルドへの報告は終わったようだね」

 

「はい!それでエイナさんと相談して発展アビリティは【幸運】にすることにしました!」

 

「よし、分かった。それじゃあ早速更新しようか!」

 

シエン

 

Lv.2

 

力 :I0

 

耐久 :I0→E497

 

器用 :I0→H148

 

敏捷 :I0→I19

 

魔力 :I0→H181

 

発展アビリティ

 

魔導 :I

・足元に魔法円が発生。(魔法円の色は黒色)魔法の威力、効果範囲、持続力、安定性などが上昇

 

【魔法】

 

【ミラーバリア】

・速攻魔法

・敵の飛び道具や魔法を反射する。反射する際は向きを自由に変えられることができ、いろんな攻撃も防ぐことができる。形は精神力を消費すると自由に変えられる。

・魔法を反射したとき魔法の威力が上昇する。

・空中に足場を作ったりできるが透明で見えない。

・一度に複数展開することが可能

 

【】

 

【】

 

 

《スキル》

 

【魔法の探究者】

・魔力と器用が凄まじく成長しやすくなり、限界を超える。

・力が全く上がらなる。(ランクアップ時による全能力上昇の時は例外)

・耐久が上がりやすくなる。

 

【呪い】

・自分の影が相手との接近戦になった時に黒い手のような形になり、実体化する。相手の足などに掴まり動きを阻害する。

・【魔力】やLvの高さにより強力になる。

・【魔導】の補正も入る。任意発動、これは精神力を消費する。

 

【復讐】

・ダメージを受けるたび魔法の威力上昇、体力を全回復すると威力は元に戻る。身体中から黒紫色の魔力が出てくる。

 

【道具節約】

・幸運×2%で武器や魔道書の使用回数が減らない竜石も減らない(新品のままになる)

 

【魔道具作り】

・(FEにある)武器、魔道書、杖を作ることができる。

・作った本人が使用時には威力が上昇する。

 

【魔力追跡】

・生き物の【魔力】【精神力】を覚えどこにいるのかを探知できる。

・レベル、魔力が上がるごとに範囲拡大。【魔導】の補正も入る。

・ただしダンジョン内では不安定。

・任意発動、精神力消費しない

 

多重魔法(マルチマジック)

・複数の魔法を同時に発動、または魔法を発動しながら別の魔法も発動できる。

 

 

気絶してから初のステイタス更新だ。前よりも【魔力】と【器用】の伸びが悪くなっている。

それに比べて【耐久】の伸びが尋常ではない。アイズとの特訓と襲撃者との戦闘により凄まじい伸びだ。だが、毎度毎度身体に穴が空くのは勘弁してほしい・・・

暫く考えているとベルのステイタス更新も終わった。ベルになにやら新しいスキルが出たようだがベルは何故かメチャクチャ凹んでいた。

せっかくのスキルが手に入ったのになんで凹んでいるんだ?

 

「あ、そろそろ出かけないと・・・」

 

「神様、今日お仕事があったんですか?」

 

「いや、今日は3ヶ月に一度開かれる【神会(デナトゥス)】の日なんだ」

 

神会(デナトゥス)】それは神々がバベルの塔の30階に集まり集会を開くことだ。なんでも今年最初の会のようだから少なくとも今は3月だという事はわかる。

それでその会合でランクアップした者の二つ名を決めるのだという。

ただこの二つ名が問題で神々が笑い転げるような二つ名でもこの世界の住民達にとっては目を輝かせるようだ。

例としては【漆黒の堕天使(ダークエンジェル)】もベルにとってはカッコいい、強そうと思ってしまうそうだ。

 

えっと、これって名乗り上げたりしないといけないものなのだろうか・・・?

オレは少し妄想してみる・・・

 

『僕は【漆黒の堕天使(ダークエンジェル)】ベル・クラネルだ!!』

 

「ブッフォッッ!!クフフ!腹が、痛い!可笑しいなっ、傷は治ったはずなのにッッ!くかかかかか!!」

 

「ええ・・・シエン、いきなりどうしたの?大丈夫・・・?」

 

「わ、わりッ。ツボったわ・・・【漆黒の堕天使(ダークエンジェル)】ベル・クラネル、クフフフッ!!」

 

ベルは突然に笑い始めたシエンに眉を潜め、ヘスティアはシエンが二つ名を聞いて笑いを堪え切れない様子を見てシエンが神々のセンスについてこられているのに驚いていた。

 

「ヘ、ヘスティア。もっとマシな二つ名はないのか?フフ、オレ、耐えきれないぞ・・・ククク」

 

「ボクは君が神々のセンスについてこられているのに驚きだけど。そうだね、出来るだけ無難なものを手に入れられるように最善を尽くすつもりだよ」

 

そう言ってヘスティアはホームから出て行った。その背中からは死地に向かう戦士のように見えた。

 

その日の夜

 

「や、やっと着いた・・・!」

 

「神って普通の人並みの身体能力しかないはずだったよな?何であんなにしつこくてタフで、隠れてある場所がバレるんだよッ!腐っても超越者って事か」

 

2人はシルに約束した通り、豊饒の女主人にやって来た。距離的にもそう時間はかからないはずであったが途中でどうやってランクアップしたのか、またはウチに入ってくれ、と神々に言われ、道を塞がれて通れなくなってしまったのだ。しまいには力づくで背中を見ようとしてくる神もいたりして大変だった。

 

「ベルさん、シエンさん!こっちですよー!」

 

シルがオレ達が来たことに気付き、座っている丸テーブルから声をかけてきた。そこにはシル、リュー、リリがいる。美少女勢揃いだ、最高かよ・・・

 

『ベル?ベル・クラネル・・・か?』

 

『確か二つ名は【リトル・ルーキー】だったっけか?』

 

『あの真っ黒は【ダークソーサラー】のシエン・・・か』

 

『ミノタウロスを倒したって話だぜ?』

 

『んなもんウソに決まってんだろ。死ぬだろ普通』

 

『でもあの真っ黒の奴の情報はあんまりねぇな。ダンジョンでもあまり見かけなかったしよ』

 

シル達のいるテーブルに向かう途中で通りがかるテーブルにいる冒険者達に見られ囁き声が聞こえてくる。

ベルはいろんな人に視線を向けられて動揺していながらも席へと向かった。

 

「もう、遅いですよ2人共」

 

「ごめんごめん。神様達に足止めを食らったり回かけまわされちゃって・・・」

 

「上級冒険者になった者の宿命です。気にしないほうがいいかと」

 

「そうだよねぇ、あれ?2人共席に座っているけど・・・?」

 

「ミアお母さんが私達を貸すから存分に笑って飲め、との伝言です」

 

ま、マジか・・・そういうお店じゃないと思っていたんだけどラッキーだ!

オレ達は椅子に座って飲み物を頼み乾杯をした。

席はリリ、ベル、シル、リュー、オレだ。

 

飲み物はリリは果汁、ベルは酒に挑戦し、シルは果実酒、リューはお水、オレはアルヴの水だ。

アルヴの水はちょっとお高いお水だ。名前からしてリヴェリアさんのご先祖様が見つけて名付けたんじゃないだろうか。

 

「シエンさん、お酒飲まないんですか?」

 

「まあな、魔道士はお酒を飲むと精神が乱れるから酒を飲まないんだよ。それにオレはこの水を気に入っている」

 

シルが質問してきたがオレは基本的には飲まない。ここはオラリオ、帰りにまた襲撃があってもおかしくはないしいつでも万全な状態で戦えるように警戒は必要だ。

 

「それにしてもすごいですね。まさか冒険者になって1ヶ月ほどでランクアップしてしまうだなんて」

 

「いやぁ、色んな人に助けてもらったおかげですよ」

 

「謙遜しなくていい。ミノタウロスを倒したことは壮挙と言うべきです。もっと自分を誇っていい」

 

「ハイ・・・」

 

リューの凛々しい眼差しがベルをじっと見つめそう言った。ベルは照れ臭くてその視線を避けるように顔を伏せて小さく返事を返した。

うーん、微笑ましい。

ミノタウロスを撃破か、オレも見てみたかったなぁ。

 

「シエンさんはどうやってランクアップしたんですか?」

 

「え?まぁ・・・色々よ」

 

シルがオレにも聞いてきて誤魔化した。シルなら信じてくれるかもしれないが周りには冒険者が耳をたてている。迂闊に言うわけにはいかないだろう。

誤魔化したことに若干の舌打ちが聞こえた。

 

「ふふ、そうですか。私は鹿を倒したと聞きましたが」

 

「・・・!?」

 

ウソだろ・・・この事はアスフィと朝にエイナにしか話してないはず。気がきくアスフィが喋るはずがないし、とんでもない個人情報をエイナが漏らすわけがない。

聞いたと言ったからには怪物祭の時に誰かが見ていたんだろう。まあ助けた子供は見ていたが。

だがあの時はオレのソードスタッグを倒したという噂は出回らなかった。

なのにシルは知っている、もしかすると怪物祭の騒ぎを起こした人物と関わりがあるのかもしれない。

豊饒の女主人、少し調べる必要がありそうだな。

 




インファントドラゴンは体高が150Cで体長が4Mを超えるほどなのに
アニメ版とダンメモ版がめちゃくちゃ大きく見えるのはなんでなんだ・・・

体高 動物が立ったときの足から頭頂までの高さ。

・・・オリ設定でインファントドラゴンは首長竜なので首の長さを合わせて体高4Mという事にしておきます。なんか納得いかんので


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旅商人との再会

二つ名 【ダークソーサラー】

神会にてシエンに与えられた二つ名

名付け親はロキ、ヘルメス

あまりにもシエンの情報が少なすぎる為、困っていたがヘルメスがシエンが向こうではソーサラーだった事から【ソーサラー】を提案し、真っ黒の服装から【ダーク】を連想して出来た。




シルの情報通ぶりに驚きつつも会話を続け食事をしていると

 

「クラネルさん、シエンさん、貴方達はランクアップしてこの先どうするつもりですか?」

 

「え?この先ですか・・・?」

 

「ベル、お前は防具がボロボロになってるみたいだし防具を買いに行ったほうがいいんじゃないのか?」

 

「それもそうだね。それじゃ、明日買いに行ってこようかな」

 

「申し訳ありませんベル様。リリは明日用事がありまして一緒に行くことができません・・・」

 

「それなら私が付いていってもいいですか?」

 

リリはどうやら用事があって同行することが出来なかったが代わりにシルが付いてこようとした。それを聞いたリリは表情を変えた。

 

「え?」

 

「私もベルさんと一緒にお買い物がしたいな〜なんて」

 

シルはベルを見つめ懇願する。

・・・やれやれ、オレはお邪魔だから明日は修行にするか。

 

「シエン様!なにを諦めたような顔をしているのですか!?シル様は関係ないので付いてこないでくださいくらい言ってくださいよ!?」

 

「いや〜、お邪魔かなって」

 

「シエン様、本音は?」

 

「裏路地で刺されないかな、コイツ」

 

「ちょっと何言ってるのシエン!?」

 

「ベルさん、では一緒に「何言ってんだいこのバカ娘は」あいたッ!?」

 

シルが付いて行くと騒いでいたら店長さんの拳骨がシルの頭に落ちた。シルは捨てられた子犬のような目をして交渉していたが店長さんには通用せず失敗に終わった。

最近シルはよく出かけていたりサボっていたりと好き勝手にやり過ぎていたようだった。

 

「話は逸れてしまいましたが、その後はどうするのですか?」

 

リューが話を戻し先程の質問をしてきた。装備を整えてその次、オレ達は中層にチャレンジするつもりだ。とはいってもベルもランクアップしたばかりで自分の力を把握できていないので12階層でしばらくは様子見になるだろう。その事をリューに伝える。

 

「なるほど、それは妥当でしょう。しかし、中層は甘くない。上層に比べてモンスターの出現率早く、処理が間に合わなくなってきます。それに前にクラネルさんに聞きましたがシエンさん、貴方のパーティーの役割は攻撃、防御、回復、だそうですね」

 

「ああ、まあね」

 

「1人でそれらをこなせるのは素晴らしいのですが、いくらなんでもシエンさんの負担が大き過ぎます。なので負担を減らす為にも貴方達はパーティーを増やすべきだ」

 

【ファミリア】の勧誘、新人の教育、などなどを考えたらすぐに中層には行けそうに無い、やれやれ困ったな。

 

 

 

「ハッハッハ、パーティの事でお困りかァ?【リトル・ルーキー】」

 

僕達がこの先の事を考えていると別のテーブルに座っていた客が声を張り上げていた。その客、冒険者は仲間の二人を連れて僕達のテーブルまでやってきてリューさんとシエンの後ろで止まった。

 

「話は聞いたぜ、仲間が必要なんだろぅ?なんなら俺達のパーティにお前ら二人を入れてやってもいいぜェ!?なぁに困っているのならば助け合いだ」

 

いきなり現れた冒険者達は僕達をパーティに入れてくれると言ってきた。お酒も飲んでいてかなり酔っている様子だ。

 

「申し訳ないがお断りする。オレ達のパーティに入ってくれる仲間を探しているんであってどこかのパーティに入ろうとは思っていない。それにあんたらはオレ達のことを見ているのではなく別の所に視線を向けているように感じる。その様なパーティに入る事は出来ない」

 

しかし、シエンはスパゲッティを食べていた手を止めて後ろを見ずに断った。そうだ、僕達がこの人達のパーティに入れたとしてもリリも入る事が出来るとは言い難い。それにリリは冒険者達を嫌っている、リリにも配慮した仲間を増やさないと。

 

「んだとテメェ、ルーキーのくせして調子乗ってんじゃねぇぞ!?」

 

シエンが断ったのが気に食わなかったのか冒険者がシエンに拳を振るう。

シエンは後ろを見ずにスパゲッティをフォークに絡めた。いや、そんなことしている場合じゃ無いでしょ!?

 

「なに!なんだこれは気色悪りぃ!?う、動けねぇ!」

 

シエンに拳が当たりそうになった時にシエンの足元から無数の黒い手がシエンの後ろにカーテンの様に広がり、冒険者の拳が当たった所から黒い手が絡め取り足も掴み行動を不能にした。

あの襲撃から接近戦の対処を考えていたみたいだけど上手く行ったみたいだ。

 

「モルド!?」

 

「おい、大丈夫か!?」

 

「元の席に戻っていうのなら拘束を解くけど?」

 

「馬鹿にすんじゃねぇ!?このぐれぇ引き千切って・・・」

 

「抵抗するならば拘束している部分をへし折るぞ」

 

「イダダダッ!?ま、まて!分かった!戻るから離してくれ!!」

 

モルドと言われた人はシエンに戻ると懇願して離してもらった。その人はシエンの事を鋭い目つきで見てその後席に戻った。結局シエンは一度も彼を見る事はなかった。

 

「なにやら騒がしいわねぇ。ってあら?シエン君じゃない!?珍しい偶然もあったものね」

 

お店に入ってきた赤髪の女性がシエン見つけ僕達のテーブルにやって来た。旅商人だろうか色々荷物を持っていた。その女性はリリの隣にイスを持ってきてシエンの隣に座った。

 

「お、アンナさんじゃないですか。いや、久しぶりですね、商売うまくいっていますか?」

 

「ぼちぼちね。このオラリオって所はなかなか面白いじゃない。気に入ったわ」

 

「シエン、この人は?」

 

「ああ、そうだな。この人はアンナさん。旅商人で人がいない様な所でお店を開いている変わった人だ。けど売っているものはとても珍しい物ばかりなんだ」

 

「君、名前は?」

 

「ベル、ベル・クラネルです」

 

「ベル君ね。うちの店をどうぞよろしくね!来てくれたら特別サービスしちゃうわよ?」

 

と、特別サービス!?い、いったいどんな事をされるんだろう・・・そう思っているとリリがまたすごい顔になっていて、シルさんはニコニコと笑っているはずなんだけどなにか怖い。シエンは呆れ顔でため息を吐いていた。

 

「アンナさん、あんまりウチの団長をからかわないでやってくださいよ」

 

「うふふ、ごめんねベル君。それでベル君が団長?シエン君がファミリアっていうのの団長かと思っていたけど」

 

「ベル達が作ったファミリアにオレが入ったんですから当然でしょうに」

 

そう言って二人は仲よさそうに話している。もしかしてシエンの事を良く知っているんじゃないかな。聞いてみよう。

 

「あの、アンナさん。イーリスってどういう所なんですか?シエンはあまり教えてくれなくて」

 

「私も聞きたいです!」

 

「うーん、そうねぇ。イーリス聖王国というのは平和で穏やかな国ね。それで神竜ナーガを神として信仰しているわ」

 

「え・・・神、竜?竜ってモンスターの事ですよね?それを神として信仰しているなんて・・・」

 

「その神竜ナーガ様はどの様な神なのですか?」

 

「いにしえの時代、世界の破滅から救った神竜よ。邪竜を封印する力を人間に授けたとされて守護神として崇められているわ。伝承によると人の姿を借りて現れるみたいで男性であったり少女だったりと定まらないみたいよ」

 

「・・・・・」

 

世界の破滅、守護神、人の姿になれる・・・な、なんだか混乱してきた。

 

「邪竜というのは?」

 

「邪竜ギムレー、世界を破滅させようとした竜ね。とてつもない大きさの竜だったわ」

 

「だった?という事は見たことがあるんですか!?」

 

「ええ、だってシエン君達が倒しちゃったんだもの。あまり時間はかからなかったみたいだけど。ね、魔導軍将のシエン君?」

 

え、シエン達が倒した?世界を破滅させるような竜を・・・?

もしかしてシエンってものすごく強かったんじゃ・・・僕達はシエンに目を向けると目を逸らされた。

 

「こっちに話を振らないでくださいよ・・・それとその呼び方はやめてください」

 

「いいじゃない、聖王が貴方のことを認めていた証よ」

 

「ルフレの方が潜在能力的にも上で強いじゃないですか、なんでオレが・・・」

 

「戦場であれだけ大暴れしておいて認めないわけないでしょうに、魔道士の皮を被ったバーサーカーさん?」

 

「バ、バーサーカー・・・いったいイーリスではなにをやっていたのシエン!?」

 

「血生臭いから言わん。ずっと戦い続けていたんだオレ達は、そしてようやく平和になった。それだけだよ」

 

「そんな平和になったイーリスを飛び出したシエン君にある物を持ってきたわ」

 

そう言ってアンナさんは荷物から本を取り出した。なんだろう、いつもシエンが書いていた魔道書に似ている・・・それにシエンも驚いている。

 

「ちょっとアンナさん。これはオレの家に隠しておいた本ですよね?なんで貴方が持っているんですか?」

 

「ちょっとお宝探しを・・・ね?」

 

「おい!」

 

「でも苦労したわよ、何度死にかけたことか・・・屋敷に殺されるとか嫌よ。他にもシエン君の屋敷に宝があると信じて行って帰ってこなかった人なんて山ほどいるんだから。それに手に入れたのはこの本一冊だけで暗号だらけで読めないし行って損したわ」

 

「泥棒しに行ってなんで文句を言っているんですかねぇ・・・」

 

ちょっとシエンの【魔力】がふつふつと上昇している気がする。絶対に怒ってるよ!?

屋敷に行って帰ってこれないっていったいどんな屋敷なんだ・・・

 

「ごめんなさいね、取り敢えずこの本を渡しておくわ。私には意味なさそうだし」

 

「・・・そりゃどうも」

 

アンナさんはシエンが本を受け取ったのを見て席を立った。

 

「それと聖王からの伝言ね。『オレ達はどんなに離れていても絆で繋がっている。また会おう、友よ』だそうよ」

 

「ルフレと同じような事を・・・それじゃオレからは『エメリナ様から託された国を民を守ってくれ。いつか、また会おう』でよろしくお願いします」

 

「分かったわ。それじゃあね」

 

そしてアンナさんは店から出て行った。その後僕達は食べてお喋りしている間シエンの表情は柔らかかった。




シエンの魔道書のパワーアップフラグです。

暗号は日本語とローマ字を組み合わせたもので転生者しか読めないものになっています。
タケミカヅチファミリアなら解読できるかもしれません。


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価値観の違い

FEルナクラ引継ぎなし、クリアァァァァ!!
もうやりたくない・・・ペガサス怖いよぉ!!
とか思っていたけどハードだと難易度に満足できず、ぬるすぎるので結局またルナクラをやるオレでした。


昨日楽しい祝賀会を終えて今日、オレ達はベルの壊れた防具の代わりになる物を買いに来た。その防具は前にエイナとデートした時に見つけたものであり、もう一度そこに行けば売っているかもしれないとのことでその場所に向かった。

 

「こちとら命懸けでやってんだぞ!もうちょっとマシな扱いをしてくれ!」

 

その鍛冶屋に向かうと中から大声が聞こえてきた。ちょうどその鍛冶屋に用があったので巻き込まれるのは困るが入る事にした。

そこには店員に赤い髪の170Cほどの男が店番の人に何か防具のようなものを持って話しかけていた。

店番の人は迷惑そうにしていたがオレ達がやってきた事でこっちに意識を持ち話しかけてきた。

 

「これはいらっしゃいませ。何のご用ですか?」

 

「あの、防具が壊れてしまいまして。新しくヴェルフ・クロッゾさんの防具って入荷していないですか?」

 

「!?」

 

ベルがそういうと店員さんは目を見開き、赤髪の男はベルの方を見て大笑いした。

 

「フッハハハ!どうだ、オレの作品を必要としてくれる顧客の1人はいるんだよ!」

 

「えっと、あの・・・」

 

「あるぜ。ヴェルフ・クロッゾの作品が!!」

 

そう言って赤髪の男は持っていた防具をベルに突き出した。どうやらベルが気に入っていた防具を作ったのはこの人物のようだ。

作った本人に会うことができたので店にいる必要がなくなったから店を出てバベルの塔の8階にある小さな休息所にて話し合うことになった。

 

「へぇ、おまえらが今話題のルーキーか!」

 

「は、はいそうです」

 

「そうらしい」

 

話してみると気さくな男で喋りやすかった。所属しているファミリアはヘファイストス・ファミリア。かなり良いところのファミリアにいる。

 

「あー、それでなんだがオレの作品を選んでくれたお前に直接契約をお願いしたい」

 

なんでも冒険者は鍛治師のためにダンジョンからドロップアイテムを持ち帰り鍛治師は冒険者の為に強力な武器を作成し、格安で譲る。そういった契約らしい。

 

「えっ?僕なんかでいいんですか!?」

 

「おいおい、いくらなんでも自己評価が低すぎるだろ。それをいうんだったら俺はLv.1の無名の鍛治師だぞ」

 

「だったら2人ともこれから強く立派な冒険者、鍛治師になっていけば問題ないんじゃないか?」

 

「アンタ、なかなか良いこと言うな」

 

「あの、僕で良ければよろしくお願いします!」

 

「よし、これからよろしくな。ベル!」

 

2人はがっしりと力強い握手を交わした。男の友情という奴だ。オレもこの間痛い目にあったし防具くらいは作ってもらえないだろうか・・・

 

「早速だが、お願いがあるんだがいいか?」

 

「え?あ、はい」

 

「ああ、勿論見返りはさせてもらう。お前さんの装備をオレがタダで全部新調してやる」

 

「本当ですか!!」

 

「それでだ、代わりに俺をお前のパーティに入れてくれ」

 

ウチのファミリアの眷属が増えるわけではなかったがどうやら仲間が1人増えた。実力がどれほどのものか知らないといけないから明日からダンジョンに潜らないとな。

 

 

「こんにちは、レノアさん」

 

「ヒッヒッヒ、久しぶりだねぇ。シエンの坊や」

 

夕方、ベルには先に帰ってもらいオレはレノアさんの店に来ていた。アスフィやロキファミリアから材料を受け取っていたからこの店に行く事はなかったのでなんだか久しぶりに会ったような気がする。

 

「今日はなんのようかい?」

 

「これを持ってきた。ほら、ライブの杖」

 

「!?・・・ヒッヒッヒ。やっと持ってきてくれたかい」

 

オレは杖をレノアさんに渡す。受け取ったレノアさんは杖を凝視して観察をし始めた。

 

「やはりアタシが見たことがないものだね。とてもじゃないけどアタシに作れそうにない」

 

そう言ってレノアさんは悔しがった。まあ、オレのスキルを使用して作ったものだからそう簡単に真似されたらたまったものでない。

 

「まあいい、それよりそっちの本を渡してはくれないのかい?」

 

「これは売り物じゃないから渡せないよ。杖で我慢してくれ」

 

レノアさんは杖も欲しかったようだが魔道書も欲しがった。しかし、魔道書は渡せない。スキルで作ったものとはいえ誰かの手に渡って研究されて万が一、量産されたらたまったものじゃない。渡せるとしても同じファミリアの仲間ぐらいだろうな。

ライブの杖を渡した代わりに魔道具の材料をたくさん貰いホームへ帰宅した。

かなりの重量のはずなのになんともない。

【力】が全く上がっていないにもかかわらずランクアップするだけで格段に上がるなんてなんかずるいよなぁ・・・

 

次の日

 

「やってきたぜ、11階層!」

 

オレ達は4人揃ってダンジョン探索に来ている。今いるのは11階層のスタート地点、この階層では霧が発生するが始点だと発生しない。休憩するにはもってこいの場所だ。10階層から降りてくるモンスターには気をつけないといけないが。

ヴェルフがパーティに入れて欲しいというのはランクアップして発展アビリティ【鍛治】が欲しかったようだ。同じファミリアの仲間に協力してもらえればいいと思ったがどうやら仲があまり良くないらしくのけ者にされていたらしい。

 

「はあ、【アビリティを獲得するまでの間だけ】なんて一時的に人数が増えただけじゃないですか!それが達成されたらまた3人に逆戻り、一歩進んでまた戻ってどうするんですか!!」

 

まさかたった1日でパーティの仲間が増えた事に驚いたリリだがパーティの条件に不満を爆発させていた。それにリリは勝手にパーティの仲間が増えた事が若干不満がっていた。

 

「いや、相談せずにパーティの仲間を増やしたのは悪かったって。でも人柄は悪くなさそうだし、ベルもこれからヴェルフに装備を作ってもらう事になるんだ。ならその鍛治師も強くなってもらうのは悪くはないんじゃないのか?」

 

「う、まあそれはそうかもしれませんが」

 

「なんだ、そんなに俺が邪魔か、チビスケ?」

 

「チビスケではありません!リリにはリリルカ・アーデという名前があります!!」

 

「そうか、ならリリスケだな」

 

「・・・ああもういいです!好きに呼んでください!」

 

ヴェルフはリリを小馬鹿にしているような気がするがまあこれから仲良くやっていけばいい・・・はずだ。

 

「リリ、今更だけど紹介するよ?この人はヴェルフ・クロッゾさん。【ヘファイストス・ファミリア】の鍛治師なんだ」

 

「・・・クロッゾというとあの魔剣鍛治師の?」

 

リリはヴェルフの事を、いやクロッゾという家名に反応した。魔剣、こっちの世界にもサンダーソードとかボルトアクスとかがあるんだろうか・・・

ヴェルフはばつが悪そうな顔を浮かべ、口の形をへの字にしていた。

リリがいうには【クロッゾ】は一昔前にとある王家に【魔剣】を献上する事で貴族の地位を得た名門の鍛治師の名前のようだ。今は没落しているらしい。

 

【魔剣】というものについても教えてもらったが魔法を放つことができる剣らしく何度か使うと壊れてしまうようだ。威力もこの世界の魔法よりも劣っているらしい。

 

精神力を使用しない分、差別化はできているとは思うが・・・オレの魔道書の方が良くないか?

 

「まあ、そんなことどうでもいいだろ?ダンジョンに来てるんだからやる事は一つだ」

 

どうやら昔話が嫌だったらしく話を流された。するとダンジョンの壁からビキリ、という壁が裂ける音がした。モンスターが生まれる瞬間だ。お喋りはどうやら終わりらしい。

 

壁から現れて体を丸めて転がってくるのは数匹のハード・アーマード、直接見るのは初めてだが事前にエイナとの勉強にてどんなモンスターか学んでいる。

背中に硬い皮膚があり丸くなる事で敵の攻撃の衝撃を和らげる頑丈なモンスターだ。なんというかアルマジロみたいだ。

だが生憎と接近戦オンリーで中途半端な攻撃力ではオレの敵ではないがここは新作の魔道書でも試してみるか。

 

シエンは腰に取り付けた鞄から水色の魔道書を取り出して手に持ち精神力を込める。するといつもの通り水色に光りだし足元には魔法円が現れる。

シエンの前に魔法陣を展開しモンスターに標準を合わせ魔法陣から水が勢いよく発射した。

転がってくるハード・アーマードを直撃しその回転速度は落ちていき停止してしまい、背中より柔らかめな腹を見せてしまう。その隙を見逃さず更に【トロン】を発動した、L v.2になって撃つのは初めてだが雷の槍がより太く速くなっておりモンスター達の腹を貫き絶命させ黒い灰にした。

 

「・・・ふざけろ。なんだよそれ、まるで本の形をした魔剣みたいじゃねえか」

 

魔剣は数回使うと折れてしまう。だがシエンの使っている魔法を放つ本は壊れる様子をまるで見せない。その力でモンスターを蹂躙するその光景を愕然とした様子でヴェルフは見て思った。何度使っても壊れない、まるで魔剣の完成形ではないかと。

 

湧いて出たモンスターを倒してベル達はリリに魔石の回収を任せて休憩に入った。ベルは魔石の回収を手伝おうとしていたがリリは自分の仕事なので任せて欲しいと言ってベルに休憩を勧めた。

 

「シエン、アンタが使ってたあの本はなんなんだ?」

 

ヴェルフは休憩中に早速シエンに()()()のことについて尋ねた。

 

「これか?これは魔道書といって簡単に言えば【魔力】さえあれば誰でもこれに書かれている魔法を使うことのできる本だ。流石にずっとは使えないけどな。だから何度も試して、より長持ちして高威力のものを作ろうと頑張っている」

 

「・・・その魔道書が持ち主を守らず先に壊れていく事に何か思う事はないか?」

 

ヴェルフは魔剣が嫌いだった。武器は使い手の半身、それが使い手を守らずに勝手に砕けてしまうのが許せなかった。魔剣を手に入れて強くなった気になった連中も気に入らなかった。魔道書の事は知らないが魔剣に似た物を作り出すシエンがどう思っているか気になった。

 

「いや、別に。壊れるのってそんなの当たり前だろ?だからたくさん作って持っておくし、魔道書は見ていると本の輝きとかがおかしくなったりするから壊れるタイミングも何となく分かってもらえる。持ち主を守らずって言われてもそれはその持ち主の力量が足りんかったからだろ、魔道書のせいにされてもなぁ」

 

しかし相手は数多の戦場を前線で駆け抜けた別世界の魔道士、鍛治職人のヴェルフと価値観が違っていた。

シエンからすれば戦場では魔道士が持っている魔道書が壊れる前に死ぬのが当たり前で、死んだ兵から奪い使って壊れたら捨てる。美術価値としてもあるような気がするが戦争中なので飾っておくという事はなく生き残ることが最優先でスキルの影響でシエンが使う魔道書は壊れずとも他の兵士の魔道書は壊れていくからひたすら作り続け、兵士を戦場へ向かわせて戦況を有利にすることだけを考えていた。

 

「お前はッ!?・・・いや、何でもねぇ。オレは魔剣、お前は魔道書、畑違いだからとやかくは言わねえ」

 

「・・・?」

 

壊れていく事に何も関心を持たないシエンに激怒しそうになったがシエンのなぜ怒っているのか分からないというような顔をしているのを見て自分の価値観を相手に押し付けるのは良くないと思いヴェルフはそれ以上何もいう事はなかったが戦闘では頼りになるが物を作り出す者としては仲良くなれそうになかった。

 




ヴェルフはちょっと価値観的にシエンと武器のことに関して仲良くなれそうにないかも・・・

水の魔道書【ウォーター】

シエンオリジナル魔法の一つ、出来上がったのがギャンレルを倒した後のイーリスの平和な2年間に開発することができた。この魔法を発動した際には魔法陣が発生しそこから水が出てくる。魔法で出来た水は飲むことができ、魔法の発動を終了しても残り続ける。まだ上位クラスの魔道書は作れていない。


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中層への準備完了

FEルナクラ2回目クリア!
対策さえしてればペガサスなんてもう怖くないぜ!
もう応撃状態のディミトリだけでいいんじゃないかな・・・
新作ポケモンがそろそろ販売されますね。そういうわけでまた更新が遅れます。


ヴェルフとの話を終えてちょっとギスギスしながらも一緒に休憩していると他の冒険者達も集まってきた。他の冒険者達は周りを見渡して休憩に入ったり残っているモンスターを探しに行ったりしている。

今ここのルームはオレ達が暴れまくった事で壁が砕けたり地面がえぐれたりしているが少しずつ元通りになろうとしていてその間はモンスターが出現しないらしい。このダンジョンって不思議だ、まるで生きているみたいだ。

そんなことを考えていたらベルの右手が白色の光を放っていた・・・え、なんで?

 

「おいベル、お前の右手光っているぞ」

 

「なんでだ?あっ、・・・そういえばお前、スキルが出たって言ってたな。でもなんで今なんだ?」

 

「う、うん。けどこれなんだろう・・・?」

 

3人でその光りながらも鈴のようにリン、リンと音が鳴る右手を見ていると

 

「オオオオオオオオオオオッッ!!」

 

どこからか雄叫びが聞こえてきた、なんか聞き覚えのあるような・・・

そんな事を思っていたら冒険者達もその声のする場所を見つめていた。そこからは前に見た首長の小竜。レアモンスター、インファントドラゴンが現れた。

 

現れた小竜はすぐ側にいた冒険者をその太い尻尾で薙ぎ払い暴れ始める。周りにいた冒険者達は今は全員の力を合わせ撃破しようと試みた。

 

「シエン!」

 

「いや、ダメだな。かなり怒り狂ってて、オレの声が届かないだろうよ。それに他の冒険者達の叫び声もオレの声も消されてしまう」

 

「何を言っているんだ2人共?そんな事言ってる場合じゃねぇ!リリスケェ、逃げろ!?」

 

シエン達から離れて魔石回収をしていたリリがインファントドラゴンに狙われていた。ヴェルフが声を掛けてその声に気付いて顔を上げたリリの目の前には巨大なモンスターが突撃してきていた。走りながらも口元に炎が漏れ出し火炎を放つ準備を整える。そんな時ベルが咄嗟に白色に光る右手を突き出して叫んだ。

 

「【ファイアボルト】!!」

 

今までの【ファイアボルト】は緋色だったが今回のは白色で威力と大きさが段違いだった。打ち出された炎雷はインファントドラゴンを撃ち抜いたがただでは死ぬまいと準備をしていた火炎をリリに向かって放った。

 

「【ミラーバリア】」

 

しかしその悪足掻きはシエンの障壁によって塞がれ反射され自身へと返り小竜は自身の放った攻撃によって燃え尽きた。残ったのは魔石のみ。

その場にいた者たちの視線はインファントドラゴンを一撃で葬り去ったベルに向かっていた。ベルの右手はもう既に光っておらずいつものベルの手だった。

 

 

インファントドラゴンと遭遇したその日の夜。

 

「へぇ、そんなことがあったんだね。ボクの考えだとベル君のそのスキルは逆転の力だよ。自分よりも強大な敵を打ち倒すための力、つまり【英雄の一撃】だね」

 

ヘスティアに今日のダンジョンで起きた事を話した。するとベルに新しく出たスキル【英雄願望(アルゴノゥト)】について教えてもらった。

 

「なるほど、必殺の一撃といったところか。カッコ良くていいスキルじゃないか、ベル」

 

「そうかな?」

 

「うんうん、そうに決まってるよ!ベル君」

 

欠点としてはチャージしないと使えないようだがそこはパーティの仲間達で時間を稼げば良い。

もっと長い時間チャージするとどれだけの威力が出るのやら・・・頼もしい事だ。

 

 

 

レベル2になってから9日経った。新パーティーでの連携もそこそこなものになりオレとベルも成長し続けた。

オレは【魔力】を上げるためには【耐久】が必要になることが分かったのでダンジョンのパントリー付近で耐久を上げる特訓をするようになった。

そこならばあまり冒険者がやって来ないので好き勝手できるからだ。

やる事は簡単でベルがひたすら【ファイアボルト】を撃ち続けそれをオレが堪え続けるといった事だ。

最初ベルがそのことを聞いたときはそんな事はできないと拒否したがなんとか説得して協力してもらっている。

ベルは上層の敵では経験値をあまり得られないが同じレベル2との戦いならば経験値をもっと得られるはずなので対人戦もやっている。ヴェルフも一緒にだ。

 

「ほらほら、近づけないと倒せないぞ!」

 

「クソッ、近づこうとしたら変な手が現れて近づけねえし、魔法もバンバン撃ってきて、離れて遠距離攻撃をしようとしたらはね返すとか、ふざけろ!」

 

そんな訳で今もダンジョンでベルとヴェルフを特訓中だ。ヴェルフはあまりの理不尽さに愚痴らざるを得なかった。

 

「【ファイアボルト】!!」

 

ベルは右手を突き出し魔法を発動させる。高速の炎雷がシエンに届きシエンは左腕につけた【ヘスティア・バンブレーズ】を突き出して魔法の軌道を僅かに変えて右手で目が焼けるのを防ぐ。この戦闘でもベルの魔法だけは防がないルールにしている。

 

「ッ痛!やっぱり効くなぁ」

 

ベルの放った魔法は目眩しでシエンに近づこうとする。しかし5M近づくとまたあの黒い手が複数現れてベルの移動を妨げ、また別の複数の黒い手はシエンに覆いかぶさるように広がりシエンの居場所を分からなくしている。

そしてさっきの魔法のお返しと言わんばかりに複数の魔法陣が現れる。

 

「ッ!?マズい!」

 

ベルは急いでその魔法陣の魔法が発射される場所から離れるとその後に火、水、雷、岩石が先ほどベルのいた場所に発射された。

 

「【ミラーバリア】」

 

シエンはベルが別の場所に移動している事を見なくてもスキルのおかげで分かるので先ほどの場所に障壁を張り、今いる場所に向きを変えて障壁に触れた事で威力が上昇した魔法をぶつけようとする。

 

ベルは魔法が向きを変えたのを見てから再び回避、ベルの速さがあればなんとか避けられた。そして黒い手が形を保てず消えていきシエンの元の影に戻った。

特訓終了、シエンの精神力切れだ。

 

「あー、頭がクラクラする・・・」

 

「シエン様、マジックポーションです」

 

「お〜、ありがと。効くわぁ〜」

 

シエンはリリからマジックポーションを受け取って栓を開け飲み、精神力を回復させていった。

 

「結局近づく事は出来なかったね」

 

「ああ、【ダークソーサラー】とかいう割には随分とカラフルな攻撃をしやがるぜ全く・・・」

 

「いや、近づかれたらオレはお終いだから。ほれ、2人ともお湯を用意したから手とか顔を洗っときな。サッパリするぞ」

 

シエンはそう言ってお湯の入った石の桶を2つをベルとヴェルフに一つずつ渡してライブの杖を使って2人を治療し始めた。

この石の桶はシエンの新しい魔道書【ストーン】によって出来たものだ。そこに【ウォーター】で水をよび出し、そこに【ファイアー】の火球を入れてお湯に変えるという贅沢な魔法の使い方だった。

 

「うん、サッパリしたよ。それと治療もありがとう、シエン」

 

「俺も助かった。にしても本当にとんでもない魔法の使いたい方だなお前は」

 

「ハハハ、でもサッパリしたろ?気持ちもうまく切り替えられるし、オレは悪くないと思ってるけどな。・・・ん?」

 

シエンはふとライブの杖を見ると魔法石にヒビが入っているのを確認する。どうやらこの魔法石は限界の様だ。もう1、2回使うと割れてしまうだろう。

 

「あ、ヒビが入ってるね」

 

「そうだな、確か76回使ったっけな」

 

「76回!?そんなに使っていたのか、その杖・・・」

 

「ああ、まあな。でもそろそろ限界らしい。今度はもっと長持ちして性能の良い物を作ってみせるさ。・・・今までありがとな、お疲れさん」

 

ライブの杖はもともと30回ほどしか使えないがこちらに来て作った物はかなり性能が上がってきている。シエン自身が強くなればなるほどもっと良いものができる様になるだろう。シエンは役目を果たしつつあるこのライブの杖に感謝の言葉を贈った。

 

「さて、帰ろうぜ。今日の特訓でどれだけ伸びてるか楽しみだ!」

 

「うん、そうだね。僕も結構良い感じに伸びているから楽しみだよ」

 

そう言って2人は話し合っているところヴェルフはリリに話しかけた。

 

「おい、リリスケ。どうなってるんだあの2人、顔を合わせる度にとんでもねぇくらいに強くなってるぞ」

 

「リリにもよく分かりませんが、おそらく何らかのスキルが働いているんでしょうね」

 

「スキル、か」

 

「しかしそのスキルがあったとしても毎日あれほど頑張っているのですから強くなって当然でしょうね」

 

リリもそんな強くなれるスキルがあればと思う事はあるが、強くなれるとはいえ本当は防ぐことが出来るのに身体中に火傷を負ってでも受け続けることなんて出来ないだろう。スキルがあろうと無かろうとあの2人の強くなろうとする意志が強いのだ。

 

「やれやれ、このままだとどんどん突き放されちまうな」

 

「ではヴェルフ様もベル様の魔法を受け続けてみてはどうですか?」

 

「冗談言うなよ、俺の命が燃え尽きちまう」

 

 

次の日 ギルド本部

 

オレとベルはギルドの本部に来ていた。パーティーの連携もそれなりになって来たのでいよいよ中層に挑戦をするためにエイナに許可をもらいに来ていたのだ。ベルがエイナと相談をしていてオレは待合室で考え事をしていた。

そうしているとベルが戻ってきた。

 

「シエン!」

 

「ベル、どうだった?」

 

「うん、【サラマンダー・ウール】のクーポン券を使って買ったなら、13階層、14階層までならいいって」

 

「精霊の護符だっけか?たしか中層からは火を吐いてくるヘルハウンドが出現するんだったな。それのための対策か」

 

「・・・いよいよ中層へって感じがするね」

 

「ああ、そうだな。さ、行こうかヴェルフとリリと一緒に中層へ!」

 

「うん!」




岩の魔道書【ストーン】

シエンオリジナル魔法の一つ、【ウォーター】と同じ2年間に開発することができた。発動した際は魔法陣が発生しそこから自分のイメージした岩の塊が出てくる。【魔力】【器用】が高いと大きなものが作れ、細かい部分を作れるようになる。イーリスでは砦やお風呂を作っていた。
【魔力】Lv.7クラスで岩を作り出すとアダマンタイト以上の強度がある。

今回のステイタス更新

シエン

Lv.2

力 :I0

耐久 :B758

器用 :C641

敏捷 :H154

魔力 :A833

ベル

Lv.2

力 :F321

耐久 :G284

器用 :F307

敏捷 :D597

魔力 :C643


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中層大進撃

ヘスティアのバイト先のジャガ丸くんのお店

「いらっしゃいませー!!あっ、タケじゃないか!」

ヘスティアがバイトをしていると客として、タケ、神タケミカヅチが現れた。
彼はまた別のところではあるが同じジャガ丸くんを販売するお店にてバイトをしている。

「おう、ヘスティア。ジャガ丸くんの売り上げもいいし、ファミリアの経営も順調のようだな」

「えへへ、まあね。今日からベル君達は中層に行くんだぜ!」

「もう行くのか、実は俺の眷族たちも今日中層に挑戦するんだ。アイツらならきっと全員で帰ってくるはずさ。それと一つ気になっていることがあるんだが、ヘルメスのヤツがお前んとこのベル・クラネルに興味を示しているようだから気をつけた方がいいぞ」

何気ない会話ではあったがこの後にこの二つのファミリアの眷族達が出会い、アクシデントが起きる事を二神はまだ知らなかった。


中層13階層 通路

 

現在オレ達は中層に来ている。13階層はルームとルームを繋ぐ通路が先が見えないほどに長く、上層に比べると暗いが通路の幅は少しばかり広い。

また、壁の隅には井戸のようにぽっかりと空いた縦穴、下の階層に繋がる落とし穴があった。上層にはなかった物だ。一筋縄ではいかない、そんな感じを思わせてくれる。

 

「それにしても派手だな、コレ」

 

ヴェルフはそう言って着流している光沢に溢れた赤い生地の【サラマンダー・ウール】に触れる。

これは精霊が己の魔力を編み込んで作成した一品、精霊の加護が宿った特別の装備品でべらぼうに高かった。4人分でゼロが五つ並んだほどだった。因みにウチのファミリアの総資金は40万ヴァリスだ。

 

ベルとヴェルフは防具の下にインナーと着流を身につけオレとリリは服の上から全身を覆い隠すほどのロープを着ている。オレも似たような事をしているから、精霊レベルにはいかないかもしれないが作ることができるかもしれない。

それにしても派手な色だ、真っ黒野郎から真っ赤野郎に大変身だ。

 

これを着ているのはヘルハウンドの吐く炎対策だ。なんでもレベル2にランクアップを果たした冒険者の死ぬ原因がこのモンスターなんだそうだ。

新しく行けるようになった場所で死ぬ要素が満載とはダンジョン探索は本当に地獄だな。なんでこんな自殺行為をするのか、自分が言うのはおかしいが訳わからん職業だ。

そんな事を考えていると一本道の奥から何かが駆けてくる音が聞こえてきた。

オレ達は臨戦態勢を作る。

 

現れたのは真っ赤な目をした黒色の四足獣のヘルハウンド、3匹だ。それにしてもどうしてダンジョンのモンスター達は目が赤く光っているのだろうか・・?

 

「よし、行くぞ。ベル!」

 

「うん!シエン、頼んだよ!」

 

ベルとヴェルフは三匹のヘルハウンドに突撃していく。2対3では不利ではあるがそこはオレの出番だ。二匹のヘルハウンドを取り囲むようドーム状の障壁を出現させる。

 

「【ミラーバリア】!」

 

突然に現れた謎の障壁に激突して動きを阻害されて動けない犬二匹。前にもやったこの戦法はどうやら中層のモンスターにも通用するようだ。

 

「バッ、・・・バゥ!」

 

自由に行動できる一匹のヘルハウンドは2人によってあっさりと倒されてしまって残るは檻に閉じ込められた怯えた犬二匹だ。

少しずつ距離を縮めてくる冒険者達を退ける為に下半身を高く、上半身を低くし炎を溜めて放った。

しかしその放った炎はドーム状になっている障壁によって阻まれ、それどころか跳ね返ってきた。もちろん逃げ場所などない。

 

「「グルッ!?オオオオオオオオオオオッ!??」」

 

自業自得、自身の放った炎にてヘルハウンド二匹は焼き払われるのだった。

 

「(頼もしい、頼もしいんだけど・・・)」

 

「(なんてえげつない事をしやがる・・・)」

 

「(魔法の殺意が高すぎませんか、初見殺しが過ぎますよシエン様!)」

 

ベル、ヴェルフ、リリはこの無慈悲すぎる光景を見てこの男を敵に回してはいけないとそう思った。

 

地上

 

「アスフィ、彼らの近状はどうだい?」

 

橙黄色の髪色の男神ヘルメスは側近の水色の髪のアスフィに尋ねた。

 

「どうやら彼らは今日人数分の【サラマンダー・ウール】を購入したとバベルの者が言っていました」

 

「へぇ、ランクアップしてから僅か10日で中層に挑むか、早いね」

 

「また、高威力の魔法も有しておりインファントドラゴンを一撃で仕留めたと言う情報がありました」

 

「そんな強力な魔法も持っていると」

 

「また、ミノタウロスを倒したのもロキファミリアが弱らせたのを掠め取ったからだと【インチキ・ルーキー】とも言われています」

 

「ハハハッ、面白い事を言うじゃないか!!けどオレ達の恩恵はそんなに甘いもんじゃないんだけどなぁ。ま、気持ちは分からなくはないけどね。それでシエンは?」

 

「変わった魔道具で多数の魔法を使い続ける金持ちの冒険者という風に言われているようです。また、豊饒の女主人で同じレベル2相手に少し力を見せたようでただの冒険者ではないという様にも見られている様です」

 

「ふふふ、やはり目立ってきているなシエンは。彼はあまりにもこの世界の者達とは違い過ぎる、目立つのは当然さ。ロキもフレイヤ様もシエンに興味を示している様だし、モテる男は辛いね。彼、取られちゃうかもよアスフィ?」

 

「何のことでしょうか?」

 

「いや、10日間ほどシエンには会っていないし寂しいんじゃないかなって、イテテテテ!?」

 

「はあ、馬鹿なこと言ってないでさっさと行きますよ。私はヘルメス様と違って忙しいんですから」

 

アスフィはヘルメスが冗談を言うとヘルメスの耳を引っ張りながら歩いていく。それを見た街の人達はいつもの光景とばかり苦笑をしていた。

 

再びダンジョン

 

ヘルハウンドを倒して長い通路を抜けルームに辿り着いた。そのルームはドーム状で天井が高く中央には尖った巨岩がある。なんだか今すぐ落ちて来そうな風に錯覚してしまう。

ルームにある岩陰に赤い光が六つあるのが見える。モンスターが三匹、いや三羽が待ち伏せしていた。ウサギの外見をしたモンスター【アルミラージ】、額には鋭い一角が生えていて後ろ足で立っているため大きさはリリくらいの大きさだ。

 

「あれは・・・ベル様!?」

 

確かにオレもベルに似ている様に見えるな。

 

「いや、違うよ!?」

 

「ベルが相手か・・・冗談きついぜ」

 

「だから違うって!!」

 

『キュイイイ!!』

 

そんな事を言っていたらモンスターはそこらにある大岩を砕いてその中から天然武器を手に入れた。そんな簡単に武器が手に入るのか!?

 

「グルル!!」

 

「ガウガウ!!」

 

「ヘルハウンドが二匹現れました!!まだ増えてます!!」

 

「チィ、もう増援か!」

 

「流石は中層、上層とは全く違うな!」

 

次々に現れるモンスター達を撃破していると見知らぬ冒険者達六人組がオレたちが入ってきた入り口とは別のところからルームに入って来てオレ達の方へ向かってくる。なんだ?なぜだか猛烈に嫌な予感がする!

オレ達のすぐそばを通り過ぎる様にして俺たちの後ろへ駆けて行きルームから脱出した。

 

「いけません!モンスターを押し付けられました!」

 

ダンジョン経験の長いリリだからこそ分かった。自分が遭遇したモンスターを他のパーティになすりつけるこの行為を【怪物進呈(パス・パレード)】という、それをオレ達にやられたという訳だ。

そしてすぐさまこのルームに大量のアルミラージにヘルハウンド、ハード・アーマードが侵入して来た。

いくら何でも多すぎる、やろうと思えば倒せるがベル達が巻き添いをくらってしまう。

場所を変える必要があるな、オレ達も押し付けた奴らと同じように撤退しなくては!

 

「ベル!一旦引くぞ!オレ達も通路に逃げるんだ!!」

 

「そうですね。ベル様、ヴェルフ様、急ぎましょう!!」

 

しかし、悪い事が起きると立て続けに悪い事が起きるのはよくある事でビキリ、ビキリとダンジョンのどこかが割れる音が聞こえてきた。

 

「・・・上!?」

 

先に気づいたのはベルで全員で上を見ると大量の蝙蝠型のモンスター【バッドバッド】が出現した。大量に出現したのはまだいい。問題は天井が脆くなった事で崩れ落ちて来た。このままだと生き埋めになっちまう!?

 

「【ミラーバリア】!!」

 

オレはすぐさま自分達の頭上に複数の障壁を展開してルームの端から端まで伸ばした。自分達の頭上だけだと結局は身動きが取れなくなってしまう。そして間に合った障壁の上に落石が落ちた。

 

「・・・グッ!?」

 

さ、流石にこれは動きながら障壁を展開し続けるのは無理か、誰かにオレを抱えてもらわないと逃げられない。だがベル達は大量にいるモンスター達を相手にしていてそんな余裕はない。

 

「・・・しまっ!?」

 

「シエン、後ろだ!」

 

ベルが相手にしていたモンスターの中でハード・アーマードがベルを避け転がりながらシエンの背中に体当たりをかました。ヴェルフが声をかけたが間に合わなかった。

背中から突然の衝撃によりシエンは転倒してしまい更に魔法も解けてしまった。再び落石が始まった。

 

「逃げろ!!!」

 

シエンは転倒したまま【呪い】を使いハード・アーマードを掴み持ち上げひっくり返して、自分の上に覆い被せながらベル達に言った。

ベルはヴェルフとリリを抱えて出来るだけ落石に巻き込まれない位置に全速力で移動した。

そして地に落石が落ち轟音が鳴る。ルームは無茶苦茶になり砂煙が舞っている。

ベル、ヴェルフ、リリは多少怪我をしているだけで済んだがシエンはどこにいるのか分からなかった。

 

「シエン・・・」

 

「早く探さねえと!モンスターが!」

 

「ヴェルフ様、もう遅かったみたいです・・・」

 

「グルル・・・ッ!」

 

「キュイイ!!」

 

ルームが崩れた轟音が聞こえた他の場所にいたモンスター達がこのルームにやって来てしまった。入り口と出口、どちらからも現れて逃げようにも埋もれているシエンを見捨てることはできない最悪の事態だった。

 

「ふざけろ・・・ッ!モンスターの出現が早すぎる!」

 

愚痴も言っている暇もなく再び戦いが始まろうとしていた。あまりにも悪い事態にリリは目を伏せていると近くに落とし穴があることに気がついた。リリはこれを使いこの事態を脱する事を思いついたが、それは生き埋めになっているシエンを見捨てる事になってしまう。

しかしこのままでは全滅だ。それだけはしてはいけない、それにシエンも逃げろと言っていた。彼ならば必ず何とかするはず・・・

リリは考えば考えるほど自分達に都合のいい言い訳を思いついてしまう自分が嫌になってくるがここは自分が悪者になることを決意してベルに言った。

 

「ベル様、もうこのルームから出ることは不可能です。ですのでこの落とし穴に落ちて生き延びましょう」

 

「リリ、何を言ってるの!?シエンを置いて逃げるわけには・・・」

 

「シエン様はリリ達に逃げろと仰いました。それはシエン様が自分の事は自分でするから大丈夫だという事です。ですが現状、リリ達は大丈夫ではありません」

 

「リリスケ、お前・・・」

 

「酷い奴と蔑まされても嫌われても構いません!ベル様、ご決断を!」

 

ベルは必死に懇願をしているリリを見た。彼女の目には涙が浮かんでいて歯を食いしばっている。彼女も本当はこんな事をしたくはないのだと理解した。

目の前にいるモンスターもいつ襲ってくるか分からないすぐ行動に移さなければならない。

 

「・・・分かったよ。行こう・・・」

 

「ベル様、ごめんなさい・・・」

 

「ううん、後でシエンにたくさん謝らないとね」

 

「はいッ」

 

そう言ってリリはバッグパックの中身を落とし穴付近に巻き散らした。シエンが這い出て来た時に自分達がどこに行ったかを知らせるためだ。その行動を見たモンスター達が一斉にベル達に襲い掛かった。

ベルはまた2人を抱えて落とし穴に落ちた事でその場の窮地を脱する事ができた。シエンを置いて・・・




ベルを落とし穴に落とすのにすごく苦労しました・・・
シエンとかいう奴のせいで落ちてる最中に足場作ってやり過ごした後に出てきたり落石を防いだりと全然落ちる気がしませんでしたから。
蝙蝠君は落石と障壁にサンドイッチされて全滅しました。


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地下の楽園へ

ガンダァァァァァムッッ!!


ダンジョン

 

ベル達が落とし穴に落ちて危機から脱出してから数十分ほど経つと瓦礫が崩れてシエンが出てきた。

周囲を見渡すと瓦礫だらけで所々に魔石が散らばっているだけでモンスターはいなかった。シエンはスキルを使ってベル達の居場所を探ってみたが発見する事はできなかった。上の階に逃げたのかそれとも下の階に逃げたかのどちらかだ。

もう少し周りを見ると落とし穴を見つける事ができてその付近にはリリが持っていた道具が散らばっていた。おそらくベル達は他の場所に逃げる事ができずにあえて落とし穴に落ちたのだとシエンは察した。

中層を初めて行きレベル1の冒険者が2人を連れての移動はあまりにも危険すぎる。地上に戻り応援を頼むという手はあるがそれでは遅すぎるのでシエンは躊躇う事なくベル達が落ちたであろう落とし穴に身を投じる。

 

「あの六人組の冒険者、地上に戻ったら覚えてろよ!特に黒髪の女の【魔力】は覚えたからな!」

 

 

ダンジョン中層 ベル

 

落とし穴に落ちてからしばらくたった。正確な時間を知る為に小型の時計を見る必要があるけどそんな余裕すらない。その一瞬の隙を突いてモンスターが襲ってくるかもしれないからだ。この薄暗いダンジョンの中でちょっとした物音にすら敏感に反応してしまう。いつ何処でモンスターが出てくるか分からないこの緊迫感に僕達はすっかりまいっていた。

ヴェルフは周りを見渡し、リリは僕がシエンから貰った白色の魔法石を少し砕いた物を地面の上に置いていく。これはシエンがもし僕達の落ちた落とし穴に入ってここに降りた時の為の道標、【スキル】持ちのシエンならきっと察してくれるはず。

 

「・・・行き止まり」

 

「チィ・・・」

 

「ダメですね、ここが何処なのか。さっぱりわかりません」

 

僕達が歩いた先はまたもや行き止まりだった。リリの言う通り完全に迷子だ。僕とシエンは13階と14階のマップは頭に入っていたが僕は立て続けに起きたハプニングでもう思い出すことすらできない。

 

「・・・・・・ベル様、ヴェルフ様。一旦ここで休憩にしましょう。それと今後の事について相談したい事があります」

 

来た通路を引き返そうとするとリリがそれを止めた。ここで休憩するのは周りに壁だけでモンスターが来るとしたら、いままで歩いてきた方向からしかないからだろう。もし今いる場所からモンスターが生まれたとしても戦闘準備くらいは間に合うはず。

だから僕は腰を下ろして休憩することにした。それを見てヴェルフもリリも座り休憩、作戦会議が始まった。

リリはバッグパックの中からシエンが作ったライブの杖で僕達の治療を始めながら喋り出した。

 

「ベル様、落ち着いて聞いてください。これはリリの予想なのですが今リリ達は15階層にいるのかもしれません」

 

「「!?」」

 

リリの言ったことに僕とヴェルフは動揺した。確かに落ちている時間は長く感じたがまさか15階層まで落ちているとは思わなかったからだ。

ますます地上、いや上層へ登る事すら難しくなったんじゃ・・・

 

「ですがこれは逆にチャンスとも言えます。このまま14階層への階段を探す為に動き回り消耗するよりも敢えて各地にある落とし穴に入る事で18階層を目指します。そして18階層にいる冒険者達のパーティーに混ぜてもらい地上に脱出する。これならば確実に帰ることが出来ます」

 

「なっ!?」

 

「リリスケ、おまえ正気か?」

 

上を目指すのではなく敢えて地下に潜る、そんなこと考えもしなかった・・・やっぱりリリは頼りになる。頭が良く切れる。

 

「ま、待てリリスケ。確かにいい考えだが18階層に行く為には17階層の奥地に行く必要があってそこにはゴライアスがいる筈だ!流石にそれは避けてはいけねぇぞ!」

 

「いえ、それは大丈夫な筈です。ロキファミリアの遠征は今から10日前です。その時にゴライアスを撃破しているはずです。避けては通れませんし倒した方が安全に通れますから。ゴライアスが復活するのには約2週間かかりますので今ならば問題はありません」

 

「しかし下に行けば行くほどモンスターは強くなり、そもそも17階層に行けるかどうかも分かりません。ベル様、どうしますか?リリはベル様の判断にお任せします」

 

「そうだな、このメンバーでリーダーはお前だ、ベル。オレもお前の判断に従うぜ」

 

僕の決断で全滅するか、無事生還できるかが決まる。もし、もしも上手くいかなかったからと思うだけで全身から汗が止まらない。こんな責任を負えない、嫌だと投げ出したいくらいだ。引くも地獄、進むも地獄、頭がおかしくなりそうだ。

だけど死にたくはない、今の僕には家族がいる。神様を悲しませるわけにはいかない。シエンにだって誓ったんだ、僕はあの人に振り向いて貰いたいと。こんなところで終わるわけにはいかない、シエンにだって笑われてしまう!

 

「いこう、さらに下の階層に。絶対に全員で生き残るんだ!」

 

「はい!」

 

「おう!」

 

「そうだな」

 

・・・ん?なんだか1人多いような・・・?

 

「「「シエン(様)!?」」」

 

いつの間にかシエンがやって来ていた。モンスターを倒した時に出てくる黒い灰を少し被っているだけで見た感じ怪我とかはなさそうだ。本当に無事でよかった!

 

「あの、シエン。ごめんなさい!僕達はシエンを置いて逃げてしまって・・」

 

「いや、オレは逃げろって言ったし無事だったから気にするなよ。それにまだ助かった訳じゃない、気を引き締めろよ。話は変わるが途中から聞いていたけど上に行かずに下に行くって事か?」

 

「は、はい。シエン様が来られたので楽になるはずです」 

 

シエンも無事で全員揃った。これなら18階層にだっていけるはず!絶対に生き残ってみせるんだ!

 

地上、夜

 

この日の朝、ヘスティアがベル達が帰ってこない事を怪しみ、ヘファイストスの所にヴェルフが帰って来ていない事を確認しリリの下宿先にも訪れて話を聞いてもまだ帰って来ていないことが判明した。

ヘスティアはベル達に授けた【神の恩恵】が生きている事でベル達が生きている事を確信している。しかし帰ってこないという事はまだダンジョンにいて何かしらのアクシデントにあったに違いない。

いても立ってもいられないヘスティアはエイナにクエストを発注した。内容は【ヘスティアファミリアの救出】。

それを知りヘスティアに協力することにしたのが集まった者たちがいた。

 

「ヘスティア、スマン!」

 

集まって早速謝罪をしたのは神タケミカヅチだった。彼の眷属がクエストの内容を知り自分達が怪物進呈をした相手のことを知り謝りに来たのだった。

そしてその救出に大男と黒髪の少女に目隠れの少女の3人が参加する事になった。

 

「ヘスティア、あの子に伝えて欲しいの。仲間と意地を秤にかけるのはやめなさい、と」

 

ヘファイストスは自分の眷属が巻き込まれた事を知りヘスティアにヴェルフが入団する時に作った魔剣を持ってきて伝言を伝えた。

 

「いや〜、彼に会うのは久しぶりだねぇ。それに・・・彼には渡しておきたいものがあるしな」

 

そして久しぶりの友人に会いたいとダンジョンに潜ってまで会いにいこうとするヘルメスに付き添いのアスフィ。

 

「ヘルメス様とヘスティア様を護衛をする為に協力してくれて感謝します、リオン」

 

「いえ、シルの友人でもある彼らを私も失いたくはない。知らせてくれて感謝します、アンドロメダ」

 

覆面を被ったエルフこと豊饒の女主人にて働く女性リュー・リオンも参加した。

 

「さて行こう!ダンジョンに!無事でいてくれよ・・・ベル君、シエン君、サポーター君にヴェルフ君!」

 

ダンジョン

 

「ヴォォォオオオ!?」

 

「ガルゥアアアア・・・」

 

次々に現れるモンスター達は威勢良く飛び出してくるがその雄叫びは2人の冒険者によってすぐさま悲痛の叫びとなった。

ミノタウロスは目にも止まらない速さで移動して切り裂くベルによって倒されライガーファングは高速の火球をぶつけられた瞬間に起きた爆発に巻き込まれて爆散した。

 

「【燃えつきろ、外法の技】、【ウィル・オ・ウィスプ!】」

 

ヴェルフが唱えたのは長短文詠唱の魔法だ。ヴェルフの右腕から陽炎がうまれてそれが相手を包み込む。

効果は【魔力暴発】を強制的に引き起こすものだ。しかも相手が使う魔法の威力、魔力が高ければ高いほど爆発力が膨れ上がるという魔道士殺しっぷり。

どう見てもシエンの天敵だった。

モンスターが魔法を使ったわけではないがヘルハウンドが吐く炎も有効だったらしく戦力として戦っていた。

 

「ふぅ、いい感じだな。ヴェルフ、それ良い魔法だな。頼しすぎて怖いくらいだ」

 

「何言ってやがる。オレの詠唱が完了する前に魔法を放たれたら意味がねぇっての」

 

「シエン様、ヴェルフ様。はい、マジックポーションです。精神力を回復させてください」

 

「助かるぜ、リリスケ」

 

「オレはまだまだいけるからまだいいよ」

 

現在は17階層、この階層は岐路も少ない単純な一本道ばかりで道が広くなっていく方向へと向かうとこの階層の奥地に辿り着くことができる。もう少し、あともう少しで18階層だというのに何故か嫌な予感しかしない。

 

「なあ、モンスターの出現率が低くないか?」

 

そう、モンスターの気配がするとはいえ襲ってくる気がまるでないのだ。ひたすらジッとして何かが生まれてくるのを恐れているかのような・・・

 

「・・・少し急ぎましょう」

 

リリもなんとなく嫌な予感がしたのか全員に先を急ぐように言う。走りはしなかったが早歩きで移動して遂に奥地に辿り着いた。

そこは大円形の入り口から広間の奥まで約200Mはありそうで幅は100M、地面から天井までは20Mといったところだ。壁も天井も岩石の塊で形成されているが左側の壁面だけツルツルで表面は凹凸が一つもない。この壁は【嘆きの大壁】とも言われている。ここからゴライアスが生まれて来るのだとここにいる誰でも分かった。

 

オレ達がいざ18階層へと続く洞窟を目指し30Mほど進んだ時、左手にある壁がベキリと音が鳴った。

 

「・・・!?」

 

「ふざけろ・・・」

 

「そんな・・・まだ10日しか経ってないというのに!?」

 

「ホント、嫌がらせの天才だな。ダンジョンってのは・・・急げ!!」

 

壁にヒビが入る音が止まらずそこから視線を外しオレ達は走り出した。今いる位置から20Mほど走った時、壁が崩れそこから7Mほどの灰褐色の体皮の黒い髪の人型のモンスター【ゴライアス】が道を阻むかのように誕生した。

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!」

 

「ヒッ!?」

 

「ウグッ」

 

モンスターの中には強烈な【咆哮】をする事がある。この【咆哮】には相手の心と体を恐怖で縛りつけ強制停止に陥れる効果がある。

レベル1であるリリとヴェルフは推定レベル4といわれるゴライアスの【咆哮】をモロにくらい足が止まってしまう。

その機会を逃すゴライアスではなく、手を組み拳を振り下ろすダブルスレッジハンマーを繰り出した。

 

「やらせるか!【ミラーバリア】!!」

 

振り下ろされるハンマーにすぐさま障壁5枚で対応する。1、2枚目が容易く割られ3枚目が少しヒビが入った後にすぐ割れた。

 

「グッ、かなり、やる!」

 

シエンは思わず両手の掌を障壁に向かって突き出した。意味はないかもしれないが気合は入った。この障壁が破られたらシエン達はミンチになる、それだけは避けなければならなかった。

4枚目が破られ1番精神力を込めた5枚目の障壁でゴライアスの拳は止まった。

障壁にはゴライアスの手の小指辺りから出血した血が付着していた。

 

「グオオオオオオオオオオオ!!!」

 

自分の拳を塞がれた事に苛立ったのかシエン達を潰そうと何度も何度も拳を振り下ろす。5枚目の障壁も耐え切れないのかヒビが入りだんだんと広がっていく。

 

「グ、グググ・・・」

 

「シエン・・・」

 

「だ、黙ってろ。お前に出来ないことをやるのがオレの仕事だ!お前らは先に洞窟に向かえ!!オレが道を作る!!」

 

「どうやって!?」

 

「こうすんだよ・・・・・・・【ミラーバリア】!!」

 

シエンは自分の左手の方向にトンネル型の障壁を張った。強度は今張っている5枚目よりもある。ただ生憎とベル達には見えないが。

 

「左手の方向にトンネルを作った!オレの指差す方を真っ直ぐ突っ走れ!!奴の注意はオレが引きつける!あとはリリ、アレを使え!お前が頼りだッ!上手くやってくれよ!!」

 

「は、ハイッ」

 

ベル達はシエンの指差した方向へ走り出した。リリはシエンの腰に付けていた杖を一つ借りて同じく走り出す。

シエンは更に【呪い】を発動する。トンネルがある方向と逆側に影を伸ばす。ベル達がゴライアスの攻撃を食らう確率を減らした。影の長さは5Mと短いがゴライアスの背中を取り奴の視界から出るには充分過ぎる。

 

「オオオオウウウウアアアアッッ!!!」

 

更なる一撃で遂に5枚目の障壁も破られてしまう。遂にシエンが挽き肉になってしまうかと思いきや。

 

「【ミラーバリア】!!」

 

シエンはもう一度障壁を貼り直す。今度は一枚だけ、トンネルと同じくらいの強度だ。再びゴライアスの拳はシエンの目の前で止まった。

 

「オオオオオオオオオオオオオッッッッ!!」

 

「お前の言葉は分かんないけど、とてつもなくウザいだろ?」

 

何度も何度も壊しても再び現れる見えない障壁にゴライアスは絶叫する。黒褐色の顔が僅かに赤みを帯びているのが見えて明らかに怒っているのがわかる。

 

「シエン様ー!!」

 

ベル達は無事トンネルを潜りゴライアスの背後を取ることに成功していた。

 

「よし、頼む!」

 

「はい!【レスキュー】!!」

 

リリがシエンから借り受けた杖は転移魔法のレスキューだった。シエンの足元に魔法陣が浮かび上がり魔法陣から光が立ち昇りシエンの姿がその場から消えた。そしてリリのすぐそばに魔法陣が現れてそこからシエンが現れる。

 

「よくやった!さぁ、逃げるぞ!!」

 

「リリは逃げ足なら負けませんよ!」

 

シエンはリリが昔からずっと魔法を使って生きてきたことを聞き、最近魔法を覚えたベルとは違って魔法の扱いに慣れていると思い、杖を託したのだ。

 

「ゴォ!?」

 

突然消えたシエンに驚愕するゴライアス、周りを見渡し後ろを振り返ると忌々しい赤色のローブを着た生き物2体が洞窟目掛けて走っているのが見えた。

生憎とリリはレベル1で魔力もそこそこな為シエンが転移できた場所はゴライアスから40Mといったところだ。ベルとヴェルフはもう洞窟付近に待機している。

 

「オオオオオオオオオオオ!!」

 

ゴライアスは絶対に逃さないとばかり雄叫びを上げながらグルリとシエン達のいる方に身体を向けて一歩を踏み出し、後ろ足を前に出そうとした。

 

「【ミラーバリア】!!」

 

シエンは後ろを振り向きながら魔法を発動して長方形の障壁をゴライアスの後ろ足を前に出そうとしている空間に展開した。

 

「グオ!?オオオオオオオオオオオッ!???」

 

突然足元に障害物が現れそれに足を取られてバランスを崩してしまい、つんのめって大きな音を立てて転倒した。

シエンとリリはゴライアスが倒れている間に洞窟に辿り着き、ゴライアスの雄叫びを背に洞窟へと飛び込んだ。




今回の話
昼過ぎ、ベル達が落とし穴に落ちて数十分後にシエン復活して同じく落とし穴へ

15〜16階層を半日(地上は夜中の2時くらい)

朝、ベル達捜索クエストを発注する

地上では昼、17階層奥地へ

夜、ベル達捜索隊出発

シエンがいる分、原作よりも1日早く18階層に到着している


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ロキファミリアとの交流

今年ももう終わりですね・・・良いお年を!!


シエン達が洞窟に飛び込んだ後その先は下り坂となっておりゆっくり降ると出口と思われる場所から光が見えた。ずっと暗い場所を歩いて来たからか妙に眩しく見えた。

 

「ここは・・・」

 

洞窟から出ると見渡す限り森、森、森。どうやら18階層に到着したらしい。それに何やら知人の魔力も感じるがまずは全員無事だったことを喜ぼう。

 

「シエン、僕たち・・・」

 

「そうだな、全員無事に18階層に辿り着けたらしい、よく頑張ったなベル」

 

「よ、よかった〜」

 

ベルはそう言って座り込んでしまう。

 

「もう何度意識を失いそうになったことか・・・」

 

「よく頑張ったな、それにさっきは良くやってくれた。助かったぞ」

 

リリもヴェルフも同様に座る、戦闘をしなくても周り中が敵だらけでしかも攻撃を喰らったらほぼ即死、オレ達以上に精神が疲弊しているだろう。その中でゴライアスとの戦闘でも頑張ってくれた、この経験でランクアップしても良いんじゃないだろうか。

 

「初めて中層に潜って18階層に辿り着くなんてな。とんでもないな、お前ら2人共」

 

「何言ってんだか」

 

「そうだよ、ヴェルフ。僕たち、みんながいたからこそ辿り着けたんだよ」

 

ヴェルフだってヘルハウンドの火炎攻撃を未然に防いでくれたりと頑張っていたし自前の武器で数多くのモンスターに立ち向かってくれた。ベルの言う通り全員の力を合わせたからこその結果だ。さて、そろそろ近いな。

 

「さて、出迎えも来たことだし、ついて行くか」

 

「出迎え?」

 

「ああ、なあアイズ」

 

オレは森に向かって話しかけた。するとそこから見覚えのある金髪の少女が現れた。

 

「・・・驚いた」

 

そう言っても全く表情は変わっておらず相変わらずの無表情だった。

 

「アイズさん!?どうしてここに!?」

 

「17階層が揺れているのとゴライアスの叫び声を聞いて冒険者が襲われているかもしれないから・・・助けにきたんだけど」

 

「もう、ここまで来たんだね。驚いた」

 

「え、いや、みんなのおかげですよ!」

 

「なあ、シエン。お前らって【剣姫】と知り合いだったのか?」

 

「ああ、まあね。よく会うよなぁ、オレら。そうだ!ロキファミリアが帰る途中なら後ろからついて行けば帰れるんじゃないか!」

 

「そうだな!」

 

「リリもそれなら確実だと思います」

 

「アイズ、今は遠征の帰りなのか?だったら一緒についていって良いか?」

 

オレはアイズに質問するとアイズは答えてくれた。

今は無事に遠征が終了して帰り途中だったのだが下層のモンスターの毒に仲間がやられてしまい戦闘不能状態になっていて動かすのも危険な状態らしい。

なので今はこの階層に留まって地上で専用の解毒剤に買いに行ってその人物が戻ってくるのを待っているのだと言う。

 

「その人が戻ってくるのは何時ごろになりそうなんだ?」

 

「分からない・・・あと2、3日かかるかも」

 

流石に2、3日飯抜きはキツイ・・・アイズ達だって遠征帰りで食料がろくに残っていない筈、食料を譲ってくださいなんて言いづらい。食料問題のことを考えていたらオレの腹が鳴った。丸一日食べていなかったのだ、オレは悪くない。

 

「・・・・・」

 

「レベル2でも腹がなるんだな」

 

「とはいえ、困りましたね。2、3日間、水のみは厳しいです」

 

「それなら私達の野営地に来る?」

 

「いいんですか?アイズさん達も遠征帰りであまり食料に余裕は無いんじゃあ・・・」

 

「うん、大丈夫。野営地に案内するからついて来て」

 

もう言ってアイズは野営地のある場所に案内してくれるらしくオレ達は付いて行ったが・・・

 

「おお、これはこれは・・・!なかなか良いな。ベル、コレも頼むよ!」

 

「シエン、そろそろ先に行こうよ・・・」

 

なんとこの森、水晶が生えていた。掌に収まりそうな物、オレの体よりも大きい物だったりと様々だ。これらでいったいどんな杖ができるのか気になって仕方がない。歩いて見つけるたびに足を止めじっくりと見てベルに切り取ってもらいオレが持っていた。

 

「グオオオオッッ!!」

 

シエンが水晶集めに夢中になっていると突然熊のような獣がシエンに襲いかかって来た。このモンスターは今までの階層では見たことが無い。つまり18階層よりも下からやって来た強力なモンスターだ。

 

「オレの邪魔をするな」

 

モンスターが襲いかかって来た時の雄叫びでどこにいるのか判断して振り返り【呪い】を発動させる。黒い影の手は地面を這ってモンスターの足を絡めとり転倒させ手も地面に縫い付けるように拘束する。

モンスターはシエンを睨め付けようと顔を合わせるとシエンの手に持っている【トロン】の魔道書が黄色に輝いていて左腕に着けた【ヘスティア・バンブレーズ】の文字の彫ってある部分が紫紺に輝き、シエンの足元に魔法円、シエンの目の前には魔法陣が現れてそこから雷の槍が発射された。

拘束されていたモンスターは雷の槍が頭から股下まで貫通して真っ二つにされてしまい魔石を残さずに黒い灰だけを残して消滅した。

 

「・・・夢中になるのも程々にって事か。今はコレだけで十分だろうし行くか」

 

その後は大人しくアイズ達のいる野営地に無事辿り着くことができた。そこには他種族の亜人達が沢山いた。

 

「あー!!アルゴノゥトくんだ!それと英ゆッモガモガ!?」

 

「あーもう、このバカはやっぱり言いそうになったわね」

 

肌が褐色のよく顔の似たアマゾネスの2人がオレ達のことに気が付いて近寄って来た。1人が英雄と言いかけたところをもう1人のアマゾネスが目に見えないほどの速さで口を塞いだ事によって最後まで言うことはなかった。

 

「アイズさん、この人達は・・・ん?あー!この間のヒューマン!!」

 

「ひっ!?」

 

山吹色のした長い髪と細長い横長の耳を持ったエルフがベルを見て大声を出して睨めつけている。どうやら知り合いのようらしいがその割にはベルは怯えているが。

 

「なんだ騒がしい・・・おっ、ヴェル吉ではないか!なんだ?手前達がいなくて寂しくなってここまで来たか?愛々しい奴め」

 

「おい、バカやめろ椿!!」

 

褐色の肌に黒の長髪。身長は170センチくらいの豊満な胸を持つ女性だった。

そんな彼女にヴェルフは頭を撫でられている。それをオレたちに見られるのが嫌だったのかその手から逃れようと離れた。

 

「やれやれ、弄りがいのある奴よ。・・・ん?お主ら、その武器と防具は?」

 

そう言って椿と呼ばれた女性はベルのナイフとオレの左腕につけていた防具をマジマジと見ていた。

 

「神様、神ヘスティアから頂きました」

 

「コレを装備してるとなんだか魔法のキレが良くなる変わった防具です」

 

「そうかそうか、大事にするといい。確か、シエンと言ったな。お主の作った魔道具にはこの遠征で随分助けられた。感謝するぞ」

 

「お助け出来たのなら光栄です」

 

「あのような杖を作り出したのならロキファミリアの連中も放ってはおけまい。自分のところの所属に入れようと躍起になる筈だ、大変なことになったな」

 

「おい、まて離せ!!」

 

最後の言葉は少し小ささの声で言って椿さんは去って行った。ヴェルフを連れて・・・

 

「こっちだよ」

 

オレ達はアイズに連れられ野営地にあったテントの中で一際大きい物の中に入った。中にはロキファミリアの団長さん、リヴェリアさん、年取ったドワーフがいた。

 

「やあ、また会ったね。ベル・クラネルにシエン、そちらの小人族は・・・」

 

「リリルカ・アーデです」

 

「初めまして、リリルカ・アーデ。それでいったいなんのようでここに連れて来たんだい、アイズ?」

 

「シエンがお腹を空かせていたから食料を分けてあげようかなと思って」

 

「そうか、まあ食料ならなんとかなる。それに寝床も用意しよう。君達にはいろいろ助けられたからね」

 

ベルはシエンがさっき椿に礼を言われていたのでシエンに助けられたという事は分かったが自分が助けた覚えはないので首を傾げていた。

 

「それにしてもなぜこの階層まで来たんだい?」

 

フィンはベル達に事情を聞いた。中層に初めて挑戦して怪物進呈をくらって上層に戻れなくなり、敢えてこの階層まで潜って他のファミリアのパーティーに合流して地上に戻ることを。また予想以上に早くゴライアスが復活して無事に逃げ切ってここに辿り着いたことを。

 

「ガッハッハッハ!!中層に初めて挑戦してその日に18階層に来たのか!?やるではないかこの若造達は!!」

 

「ガレス、少しはその笑いを抑えてくれ。シエン、お前の作った魔道具にはこの遠征でかなり、いやこれがなかったら全員無事で戻っては来られなかっただろう。礼を言う」

 

事情を知ってドワーフのガレスが大笑いし、杖を作ってくれたシエンにリヴェリアが軽く頭を下げた。

 

「いえ、お役に立てたのなら良かったですよ」

 

「ふふ、リヴェリアも彼のことが随分と気に入ったようだね」

 

「からかうな、フィン」

 

「おっと、失礼。話は変わるけど短い間、君達を客人としてもてなそう。周囲と揉め事を起こさなければだけど」

 

ロキファミリアの首脳陣との話はその後少し話して終わった。無事に食料を分けてもらえて更にテントまで貸してもらえることになったシエン達がテントに向かっている所、先ほどのテントでは首脳陣達で話し合いをしていた。

 

「まさかいきなり18階層までくるとはね」

 

「ああ、信じられない事だ。あのミノタウロスを倒した出来事もまだ10日ほどしか経っていないというのに。無謀過ぎる」

 

「リヴェリア、生きておるならそれでいいではないか。あの若造達とはロキに教えてもらった相撲とやらであやつらの力量を知りたいんだがのう」

 

「それはダメかな、僕達が彼らに近づくと他の団員がみんな、彼らに殺到することになるだろうからね。それでは彼らの迷惑になってしまう」

 

「立場、か。厄介なものじゃのう・・・」

 

「先程シエンは毒にやられた病人の治療の手伝いをしてくれると言ってくれた。専用の解毒剤がないと出来ない毒相手にどうするのか、楽しみだな」

 

「やっぱり気に入ってるじゃないか」

 

「黙れフィン」




正直前二つのサブタイトルは失敗だったと思います


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ロキファミリアとの交流その2

ゼノブレイド2にハマってました


「・・・・・」

 

毒に侵されて苦しんでいる冒険者達が集められているテントでシエンはこの階層で手に入れた水晶と木の枝を加工して新たに作った杖で治療を行なっていた。今使っている杖は状態異常を治す【レスト】の杖だ。

因みに食事は携帯食料を分けてもらいすぐに食べて杖を作っていた。

 

この杖は意外にも覚醒の世界では存在しないか、流れ行く歴史の中で消えていった魔法だ。なぜ作ることができるかというと何故かアンナさんが持っていてそれを複製する事に成功したからだ。あの人は何でもありだから問題はない。

 

「う、うう・・・」

 

「よしよし、効いてきている・・・」

 

一気に治すのではなくゆっくりとゆっくりと杖に精神力を込めてレストの効力を高めていく。病人の顔の表情が明るくなっていく。

神の恩恵によってタフになっているとはいえ相手は重症者、いきなり強力な回復は体に毒かもしれない。オレの足元には黒色の魔法円が展開している。魔法を維持しやすくなっているし、とても安定している。いい発展アビリティを手に入れたものだ。

ただ、黒色の魔法円から黒色の粒子が溢れて杖から白色の光を放っている光景はなんとも混沌としていた。

最初の1人目を癒していると杖の先にある水晶がピキリと音を立てた。そろそろ壊れるサインを出している。まだ完全に解毒をしていないというのに・・・

そしてすぐ後に水晶は砕け散った。

 

「く、なんて強力な毒なんだ・・・普通なら一回だけで治るってのに・・・」

 

「いや、もう殆ど治っているに等しい状態だ。私達でも全快は難しい、君は良くやっている」

 

そう言って褒めてくれているのは近くに座って他の人を治療していたハイエルフのリヴェリアさんだ。

 

「はあ、はあ。その通りだよ・・・。前に比べるとずいぶんマシになった。はあ、ありがとう・・・」

 

オレが治療していた人からも礼を言われた。完全に解毒出来なかったのがかなり悔しい。オレの鍛錬不足だろうか・・・

 

「すまん、喉が渇いた・・・ケホッ!み、水を・・・」

 

「誰か水を持ってきてくれないか?」

 

「すみません、副団長。今、水を切らしていて森の中にある泉から他の人が組んできている最中です」

 

「そうか。済まない、少し待っててくれ」

 

「それならオレがなんとかしますよ。はい、お湯」

 

毒によって体力が奪われ熱も出ていたのだろう。汗をよくかいていて冒険者は水を欲しがった。

それならばオレの出番だ。3つの魔法を発動し魔法陣から石の桶を作り出し魔法陣から水を生み出し、さらに魔法陣から小さな火球生み出して桶に溜まった水の中に突っ込み、ぬるいお湯にして差し出した。

 

「あ、アンタ・・・凄えな。魔法を一気に三つも同時に・・・」

 

「そんな事よりほら、お湯だ。喉が渇いていたんだろう?」

 

「済まねぇ、助かる・・・」

 

そう言って冒険者はゆっくりとお湯を飲み、落ち着いたのだろうかその後すぐに寝息をたてて眠った。

 

「おい、アンタ。オレにも水を、冷たいやつ!」

 

「オレにも!」

 

「えっ!?貴方達、さっきまで苦しそうにしていたのになんでそんなに急に元気に・・・?」

 

「しらねぇよ・・・でもなんかあの魔法を使ってた冒険者の杖の光をちょっと浴びていたからか少し、いや、かなり元気になったんだ!」

 

他の病人が起きてきてオレに水を求めてきた。急に元気になった病人を看病していた治療師が驚いていた。

 

「(だが、シエンが治療をしていたのは1人のみ。少し浴びた程度で良くなる毒ではない、他にも何か原因が・・・)」

 

リヴェリアは考えながら周りを見渡していると気がついた。元気になったと言っている冒険者の足元にはシエンの魔法円の内側に入っていて、すぐ隣にいる病人は魔法円に入っておらずまだ苦しそうに寝込んでいた・・・。つまりこの魔法は1人だけを治すのではなくシエンの黒色の魔法円の中にいれば回復する、範囲回復能力を持っているという事だ。

 

「(ここの階層に来てすぐに作り上げたものでここまでの効果があるとは、いったいどうなっているんだ)」

 

それになんて事もないように魔法を三つも同時に扱う始末、シエンの非凡さにリヴェリアは顔には出さなかったが動揺していた。

 

「1人だけしか回復できないはずなんだけどな・・・ああ、アレのおかげか」

 

シエンもこの現象について自分が持っているスキルの影響だと気づき、壊れた杖を置いてもう一本のレストの杖を使い治療をしていったがやはり全員完治することはなく、モンスターの恐ろしさを思い知るのだった。

 

ダンジョン内の夜 野営地

 

「みんな、聞いてくれ。もう話は聞いているかもしれないけど、今夜は客人を迎えている。彼らは仲間の為に身命をなげうち、18階層まで辿り着いた勇気ある冒険者達だ。同じ冒険者として少しでもいい、敬意をもって接してくれ。ではいただこうか」

 

杖を作り治療を終えたらあっという間に夜になって全員で食事会となった。

この18階層では他の冒険者に話を聞いた所、なんと昼と夜がやってくるらしい。森にクリスタルが生えるという変な場所だけに天井にもびっしりとクリスタルがあって天井の中心には一際目立つ大きなものがあったりした。一際大きな物は白色で周りにあるものは蒼色、まるで地上の太陽と空のようだ。

それらのクリスタルは光を放っており時間が経つと光が消えて暗くなる。その事を夜と言っているそうだ。

 

食事会といってもキャンプファイヤーのように沢山の人が大きな輪になって座っているものではあるがこれはこれで良いものだ。

場所は客人という事なので人気のない所に座っている。

並び順はアイズ、ベル、リリ、ヴェルフ、オレ・・・なんだがいちゃいけない人が1人混じっていた。リリはなんで貴女がそこにいるんですかといわんばかりにアイズを睨め付けていたがアイズは良くわかっていないのか首を傾げていた。

 

食事はというと二つの果物にパンにスープ。果物はなんとダンジョンで採れたものなのだという。ダンジョンは人を殺すだけではないという事なのだろうか・・・?

試しに見た目が綿菓子に蜂蜜を乗っけているような果物をかじってみた。

 

「あ、甘い・・・。たくさんは食えないなこれは」

 

「ウグッ!?あ、甘い・・・」

 

見た目通りなかなかの甘さで一個で十分だった、ベルは意外にも甘いものが苦手で口に含んで顔を歪めた後目を瞑り喉を鳴らして呑み込んだ。まだ一回しかかじっていないのでまだまだ残っている。

 

「ベル、甘い物苦手?」

 

「え、ええ。実は苦手です・・・」

 

「それならばベル様、その残った果物はリリが食べましょうか?」

 

「う、うん。お願いしようかな・・・」

 

「ん?それならオレに任せろ。うん、甘いな!」

 

「あー!?ヴェルフ様!何やってるんですか!?」

 

「ぐぼッ!?おいリリスケ!吐いてしまいそうになったじゃねぇか!?それに何怒ってるんだ??」

 

ベル達は果物以上に甘々な事をやっているかとヴェルフが台無しにしてリリに蹴飛ばされていた。

 

「ねーねー、アルゴノゥト君。あたしもそこに座っても良いかな?」

 

「色々と聞きたいことがあるのよ。いいでしょ?」

 

「うわっ!ティオナさん!?ティオネさん!?」

 

昼にあったアマゾネスの2人組が強引に割り込んできてベルの左右に座る。どうやらオレがいない間に仲良くなったのだろう。確かレベル5の第1級冒険者だったな。髪が短い方がティオナで長い方がティオネだな。

 

「ねぇねぇ、どうやったら能力値オールSに出来るの?」

 

「ブッ!?ぐほッゴホガハ!??」

 

片方のアマゾネスの発言にオレは吹き出してむせた。

え?ベルのステイタスがバレている!?

ヘスティアが刻んだ文字は神聖文字、オレ達には読むことはできないはず。ヘスティアが他の神に話すはずがない。もしかして読むことが出来る人がいるのか・・・?

わざわざ神の言語を勉強しようと思う物好きな冒険者なんてそうはいない。博識そうな冒険者・・・いるじゃないか!

そう思って顔を上げた先にいたリヴェリアさんを見ると会話が聞こえていたのかオレの反応から察したのか顔を逸らされた。やっぱり貴女か・・・

 

「確かに気になるわね。教えなさいよ」

 

そう言ってティオネがベルににじり寄っていく、きわどい服装にベルは顔を真っ赤にしていた。

 

「え?いやその・・・」

 

「あはは!顔を真っ赤にして可愛いー!」

 

美少女アマゾネス二人組にからかわれ続けるベルに他の男冒険者達の目が凄いことになっていた。ベル、お前は明日まで生きていられるのか・・・

 

「えっと、あ、あー!そうだ!!僕、シエンが前にいた国のことが気になるんだ!!何か無い!?」

 

「ちょ」

 

返答することができないベルはオレにまさかのキラーパス。ティオナの興味がオレに向いたような気がする。アイズもこっちを見ているしリヴェリアさんの耳もピクッと動いたのが見えた。この流れでNOとは言いづらい、言っても問題なさそうな事は・・・

 

「国のことよりも、その国の宝剣についてなら喋ってもいいかな。冒険者的にはそっちの方が興味ありそうだし」

 

「シエンの国のホウケン?いったいどんなの?」

 

「聖剣ファルシオン、最強の竜殺しの剣さ」

 

「聞かせて」

 

竜殺しと言ったらアイズの表情が真剣なものになった。竜と何かあったのだろう。

 

「ああ、遥か昔からある剣でな。王族の中でも限られた者にしか扱うことの出来ない剣だ。竜を真っ二つにしたり封印したり出来る。オレは王様に頼んで使わせてもらったが丸太の一本も傷つける事はできなかったなぁ」

 

「そうなんだ・・・」

 

「へー!剣なのに封印できるって不思議だね!」

 

「さらっと言ったけどそんな物を使わせてもらうことが出来るなんて、シエンだっけ?その王様とはどんな関係かしら?」

 

「オレとあいつはお互いに友達と思っているな」

 

「王と友達ってお前、意外に凄いやつだったんだな」

 

「意外ってそりゃあんまりだろ、ヴェルフ」

 

「シエン、封印って言ったけど。何を封印していたの?」

 

「とんでもなくデカイ竜さ。砂漠にその竜が封印されてる状態で残っていた。まあ、少し前に復活したんだが・・・」

 

「それが邪竜ギムレー・・・」

 

「おっ、よく覚えてたなベル」

 

「どんなモンスターだったの?」

 

「人をムシケラ呼ばわりして人が苦しむ様を見るのを楽しんでいた奴だったな。特殊能力も多くてその竜に心酔している奴らが神だと言っていたのもまあ、分からんでもない」

 

「モンスターが、神・・・?」

 

アイズは唖然としていた。ここじゃあ竜はモンスターだから神なんてありえないしなぁ。向こうには魔石をつけた生き物なんていないからモンスターなんていない。だがゾンビとかはなんだったんだろうか・・・

 

「ムシケラ呼ばわりって・・・もしかしてその竜、喋るの!?」

 

「ん?ダンジョンのモンスターに喋るのとかいないのか?」

 

「そんなのいるわけないじゃない、そのモンスターは喋るのね・・・」

 

モンスターではないと誤解を解こうとか考えていると周りが妙に静かで冒険者達がこちらを見て話を聞いていた。流石にちょっと喋りすぎたかな?

 

「話はずれたけどファルシオンはそんなモンスターを倒すほどの力を持った剣って事だな」

 

「おもしろーい!もっといろいろ話してよ!!」

 

そろそろ話を切り上げようとしたらティオナに話を強請られた。イーリスに関係のない話で誤魔化すとしよう。長い夜になりそうだ・・・




オリジナル魔法の杖(覚醒の世界にはないだけ)

レスト

状態異常を回復させる

シエンが使った場合は自身の魔法円に入っている者をも回復させる。現状は下層の猛毒を完全には解毒することはできない。


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ロキファミリアとの交流その3

風花雪月のアップデートまであと少し・・・


18階層 野営地

 

ダンジョンの中でテントを張り、その中で寝るという変わった体験をした。しかしダンジョンの中で熟睡する事は出来ずオレは目を覚ましてテントを出た。天井を見上げるとびっしりと貼り付いているクリスタルの光がほんの少し明るくなってきているような感じがしてダンジョンの中の朝が始まりそうな気がした。

 

「あれ?珍しいね、シエンが僕より先に起きているなんて」

 

いつもの習慣として【魔力】のトレーニングの瞑想をしにテントから離れ場所を移そうとするとテントからベルが出てきた。確かにオレの方が先に起きているのは珍しいと思う。そうだ、今回のダンジョンの探索で新たに出た課題について話しておこう。

 

「まあ、確かに珍しいな。それよりもベル。ダンジョンの中だけどちょっと軽めのトレーニングをしようか」

 

「それは良いけど、いつもの瞑想とか?」

 

「それもするけど今回のダンジョン探索でオレが気になった事はゴライアス戦のことだ。ベル、お前は障壁がどこにあったか分からなかっただろ?」

 

「うん、全く見えなかった。ゴライアスがいきなり転倒してたくらいだし今思うと見えなくて突然現れるなんて恐ろしいね」

 

「そこでだ、ベル。お前にはオレの障壁がどこにあるのかを感知出来るようになってもらう」

 

「ええ!?けど僕はシエンみたいなスキルはないから出来ないんじゃ・・・」

 

「そんなの関係ないぞ。ベルは【魔力】と【魔法】を持っているから特訓すれば感覚みたいなものが掴めるはずだ。それにオレの障壁がどこにあるのか分かるようになったら空中に足場を作ってそこで戦う事だって出来る。ベルが出来るようになれば戦闘においてかなり有利になる」

 

「く、空中で戦う!?そんな事が・・・」

 

ベルにはなんとか頑張ってオレの【魔法】の探知を出来る様に頑張ってもらいたい。対人戦では相手側に【魔力】に優れた者がいたら逆にオレの障壁は利用されてしまうだろう。それはまずい。

 

「別に今すぐ出来るようになれというわけじゃない。訓練をするためにロキファミリアの団員に野営地を少し離れることを伝えよう」

 

「ここでやれば良いんじゃないのかな?」

 

安全性から見るとここで特訓した方がいいかもしれないが他の派閥の冒険者に見られるのはちょっと面白くない。

 

「周りの人から見ると何にもないところを恐る恐る移動している変な人に見られることになるんだが?」

 

「いったい何を僕にやらせるつもりなんだ・・・」

 

「地上でならいつでも鍛錬は出来る。こういう危険な場所での特訓はそう出来ないからな。しっかりやるぞ」

 

【魔法】をうまく使う為の修行である瞑想だってダンジョンの中でわりかし安全な場所で修行できるというのも貴重な体験だ。【魔法】はダンジョンという危険な戦場で使う事が多いのにそのダンジョンの中で【魔法】を使う為の練習をせず、安全な(安全ではない)地上で瞑想の修行をするのは非効率だ、戦場でやるからこそ得られる物がある。

ダンジョンで【魔法】を丁寧に発動なんてベルは今までやった事はない、魔法の制御が良くなるかもしれないし、きっと良い経験になるはずだ。

 

ロキファミリアの団員に少し離れることを伝えてリリとヴェルフがいるテントには書き置きを残し場所を変えた。木々が少なく草原が広がりモンスターが身を隠しづらく、それでいてロキファミリアの野営地も見える良い場所だ。そのまま腰を下ろすと草の水っけで尻が濡れてしまうので【ストーン】で二つ石の板を作り出し置く。

 

オレとベルは気を落ち着かせ石板に腰を下ろし呼吸して【魔力】【精神力】の制御を行う。瞑想は交代交代で行う事にした、2人とも目を瞑っているのは流石に危険過ぎる。

そして瞑想を終えてもう一つの特訓をする事にした。

 

「よし、それじゃあ。目の前に障壁を張るからそこから何か感じ取ってくれ【ミラーバリア】」

 

ベルは見えない障壁にゆっくりと手を近づけて触ってたり、目を閉じて何かを感じ取ろうとしている。感覚でいいから何か掴んでくれるといいんだが・・・

 

 

野営地 朝 レフィーヤ

 

「ねえねえレフィーヤ!昨日シエンの話、面白かったね!」

 

「は、はい。聞いたことのないような話ばかりで新鮮でした」

 

「よし、早速今日も聞きに行こっと!」

 

今日も朝からティオナさんは元気です。あのアイズさんに近寄っているヒューマンとリヴェリア様が気にしているヒューマンが18階層にやって来てからいつも以上にテンションが上がっているように見えます。

 

「アンタねぇ、団長から言われた事を忘れてる?あのシエンって冒険者の正体を掴むためでもあるのよ?昨日言っていた事は嘘を言ってないとは思うけど余りにも私達との価値観が違いすぎるし、あの神ヘルメスとの知り合いだなんて怪しさ満点じゃない!」

 

少し前にもヘルメスファミリアの人達と共闘した事がありましたがその時にヘルメスファミリアの団長のアスフィさんが使っていた杖の効果は凄まじい物でした。

今回の遠征でもその杖を作ったシエンというヒューマンに製作を依頼して私達にも使わせてもらうと手早く杖の回復魔法を発動でき戦闘中でも大助かりでした。最下層の休憩所でもアイズさんがその杖を使って治療をしている姿はとても綺麗だったなぁ・・・

 

「・・・リヴェリアもシエンの言ってた国について知らないって言ってた」

 

「リヴェリア様でも知らないなんて・・・いったいどんなところなんでしょうか、イーリスって国は」

 

「だったらシエンに聞きに行けばいーじゃん!いこいこ!」

 

彼らのテントに行っても目当ての2人は見つからず、書き置きが残されていた。事情を知っている団員の方に聞くとどうやら今は野営地を離れているらしいです。

 

「アルゴノゥト君はどこかな〜」

 

「あ、いた」

 

「え?どこどこ?本当だ!おーい!アルゴノゥトくーん!!」

 

少し歩いて木々の少ない草原に出るとすぐに彼らは見つかりました。なにやら黒い粒子のような物が見えましたがおそらくあれは【魔導】によって現れる魔法円の粒子だと思われます。私も【魔導】の発展アビリティを持ってますからなんとなく分かりますがティオナさんが声を掛ける前に消えてしまいました。いったいどんな【魔法】を使っていたのでしょう?

 

「おっはよー!アルゴノゥト君、シエン!」

 

「お、おはようございます」

 

「おはよう、ティオナは元気だなぁ」

 

「えへへ〜、あたしはいつでも元気だよ!ねぇシエン、またなにか面白い話聞かせてよ!」

 

「昨日散々喋ったじゃないか・・・」

 

「おはよう、2人とも起きるの早いね」

 

「アイズさん、おはようございます」

 

「おはよう、ダンジョンの中で寝るってのは初めてで、あまりぐっすり眠れなかったよ」

 

「うん、それはよくわかる」

 

「身体も汚れていて気持ち悪いのもあったかもしれんけど。そうだ、この辺りに風呂を作ってもいいか?」

 

「えっ!?シエン、お風呂を作る事が出来るの!?」

 

「まあな」

 

なんとシエンさんはお風呂を作る事ができるようです。一応森の奥には泉があってそこで水浴びをする事ができますがお風呂に入れるのだというのならお風呂のほうがいいです!

 

「貴方、そんな事ができるのね・・・。風呂、混浴・・・!!これはチャンスね!!風呂を作る許可は私が必ず取ってくるから絶対に作っておきなさいよ!!団長〜♡一緒に入りましょう〜♡」

 

「速い、もう見えなくなった・・・これが第一級冒険者か。流石に混浴の許可は出ないだろうけど・・・ティオネは団長さんの事が好きなのか?」

 

「うん」

 

「そうですね」

 

「そうなんだよ〜。いっつもフィン、フィンって言ってるよ」

 

団長の事でティオネさんが暴走するのはいつもの事です。こ、混浴の許可はおそらくは出ないでしょう。

 

 

「なら、ササッと作っておくか」

 

オレは早速お風呂作りを始めた。アイズ達が来なくても風呂を作る気満々だったので3つの魔道書を持ってきている。

まず足元の草が鬱陶しいので先ほどの石板をもっと面積の広いものを地面の上に現れた魔法陣から生み出して置く。排水を外に出す孔もちゃんとある。

石板の上にバスタブ、脱衣所を二つ作る。バスタブは小人族のフィンさんとリリの為に浅い部分も作っておこう。

全員入り終わったらバスタブは力持ちの冒険者にぶん投げて捨ててもらう事にしよう。明日もここを使うかも知れないからな。

 

石板の周りを囲むように塀を作る。男女で別の入り口を作りその付近の塀には共通文字で男、女という文字を浮き出させておく。これで間違えて脱衣所、お風呂に入ってくる事はないはずだ。

勿論、男風呂と女風呂の間にも塀を作っておくがオレがお湯を作って運ぶ為のパイプを通すために孔もある。塀の外でお湯を作り、男女の風呂に運ぶものだ。

孔の大きさはパイプとピッタリなので覗きを疑われる心配はない。

後はバスタブにお湯を入れるだけだ。

 

「よし出来た!」

 

「本当に出来ちゃった・・・」

 

「すごい・・・」

 

「こんな魔法の使い方があるなんて」

 

「うわぁ、気持ちよさそう!よし、早速入ってくる!朝風呂だー!!」

 

そう言ってティオナは女湯に突撃していった。オレも男湯にさっさと入ろう。

 

 




上手く伝わるといいなぁ・・・
排水問題が地味に厄介だった。
髪の毛の長い冒険者が多いから風呂から上がった時に髪の毛を乾かすのすごい大変そう・・・


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ロキファミリアとの交流その4、そして・・・

ダンメモでもこのイベントの話が出てくるとは思わなかったよ・・・
ロキファミリアの団員の年齢とかもわかったし、ありがとうダンメモ!


18階層 草原 朝

 

「あぁ〜気持ちいいわ〜」

 

「うん、まさかダンジョンでお風呂に入れるなんて思わなかったよ」

 

オレとベルは今、朝風呂を満喫していた。風呂に入ろうとした時に桶がないことを思い出し急遽作った。女風呂にいるティオナに塀越しで伝えて石桶を放り投げたので大丈夫なはずだ。横は塀が邪魔でなにも見えないが天井は青い空があって開放感に溢れている。

 

「やあ、お邪魔するよ」

 

「おお、本当に風呂があるのう。酒でも持ってくれば良かったわい」

 

「ガレスさん、そんなことをしたら副団長に叱られるっすよ」

 

「ガッハッハ!冗談じゃわい!」

 

ゆっくり風呂に入っているとロキファミリアの皆さんがやって来た。風呂の大きさはキャンプにいた人全員が余裕を持って入れるくらいなので問題はない。フィンさんがこっちにいるという事はティオネはフィンさんと混浴に入る許可を得る事ができなかったという事だろうな。まあ、そうなったらそれはそれで困るわけでもあるが。

 

フィンがやって来たのは立場の事もあるがこういった場所ならばシエンに話しかけるいい機会でもあったので風呂に入りに来た。

 

「マジで風呂がある・・・シエン、お前はなんでも出来るんだな」

 

「前に石桶を作っただろ?それを大きくしただけだから大した事じゃない」

 

ヴェルフも一緒にやってきて風呂に入る。ヴェルフは驚いているが塀を建てる事を除けば前に作った石桶をデカくしただけだ。

 

「いや、大した事だと思うよ。遠征では水を自由に使えるという事はないからね。風呂に入れるなんて事はまずない、それに僕の身体に合わせて風呂を作ってくれた事に感謝するよ。今度遠征に行く時には是非とも同行してほしいくらいだ」

 

「あはは、下層とかはまだオレには早いと思うので遠慮しておきますよ」

 

「そうかい?それは残念だ」

 

まさかフィンさんに遠征のお誘いをされるとは思わなかった。遠征に誘われたことにベルは驚いていたがオレは遠慮した。中層からは今のオレたちの誰かが欠けて攻略出来るほど甘くはないからだ。オレが遠征に行って帰って来たらベル達が全滅してましたなんて洒落にならない。

 

「にしても良くランクアップしたばかりで18階層まで来れたっすね・・・。ランクアップしたてのレベル2が2人にレベル1が2人、普通死ぬっすよ?」

 

この前ウチのホームにやって来た事があるラウルがオレ達の強行突破についてそう評価して身体を震わせていた。自分がもしそんな状況に陥ったらと想像したんだろう。他の冒険者達もウンウンと頷いていた。

 

「なあ、実際に中層はどうやって突破したんだ?」

 

「えっと、中層にある落とし穴を使って下を目指しました。モンスターとの戦闘は接近戦は僕とヴェルフ、盾と魔法と治療はシエンがやってくれました。あとリリも治療をしてくれました」

 

「ンー、シエンはウチでいうと、リヴェリアとガレスみたいだね」

 

「負担は大きそうじゃが出来立てのファミリアならばこれでもまだマシじゃの、魔法職なんぞそうそう出会えん」

 

「ガレス、他所のことは僕達は言えないよ。僕達だって最初から盾も魔法も揃っていたじゃないか」

 

「ま、ドワーフとエルフで相性は最悪じゃったがの!あの頃はよくくだらんことで喧嘩をしたもんじゃわい!」

 

いつの間にかオレ達の話からフィンさん達の昔話に変わっていった。若い冒険者達にとっては今では有名な冒険者達の昔話は貴重なもので大いに盛り上がった。

 

 

「なんだか向こうは盛り上がってるね、楽しそう!」

 

「うん」

 

「どうやら団長達の昔話をしているみたいですよ」

 

「団長と一緒に混浴したかったのに・・・」

 

「流石にそれは許可できん」

 

「手前はそれでも構わんのだがなぁ、裸の付き合いというのは大事だぞ?思いもよらぬ話が聞けるかも知らないからな」

 

男湯でフィン達が話で盛り上がっているところアイズ達も風呂を楽しんでいた。

いつもならば泉の覗きを警戒して好きに入る事ができなかったが今回は塀によって囲まれて覗き対策はされていて仮に塀を登り覗こうものならば彼女達の魔法の応酬が始まるだろう。

実はこの中で風呂を楽しんでいるのはリヴェリアでいつもはハイエルフのリヴェリアの肌を見せるまいとエルフ達の重苦しい警備の中で泉に1人で入っているだけだったのでこうやって大勢で入るというのはダンジョンでは珍しい事だったからだ。

 

「あ、筒からお湯が出て来てる!」

 

「という事はシエンがあがったって事?」

 

「ティオナー、湯加減はどうかな?」

 

「うん!丁度いいくらい!ありがと!」

 

ティオナがそう返事を返すとシエンの気配が少し遠ざかったような気がしたので彼女達はまた話し始めた。

 

「でもこれってホント便利だよねー。遠征でもお風呂に入り放題じゃん!頼んだら一緒に来てくれないかな!?」

 

「ベルのファミリアは今2人しかいないから無理だと思う・・・」

 

「ならシエンが来なくともあの本を交渉して貰えばいいじゃない。同じ魔導士のレフィーヤやリヴェリアなら出来るでしょ?」

 

「え、ええ。おそらくは」

 

「この遠征に出る前に会った時には回復系統の杖だけを作ってきた。攻撃手段にもなるあの魔導書を我々に渡すとは思えん」

 

「手前も少しヴェル吉からあれについて聞いたが簡単に言えば本の形をした魔剣だそうだ。しかも魔力が高ければ高いほど威力を増してしかも壊れにくいときた。全く、魔剣を作れる手前達のお株を奪われた気分だな」

 

椿の言葉に彼女達は驚愕する。杖ですら強力なのに魔剣以上に優れた本の形をした魔剣を作れる事に。

 

「攻撃魔法を覚えてなくてもあの本があれば火とか出せるようになるって事!?」

 

「そういえば魔法の詠唱抜きで発動してたわよね。対人戦でもかなり使い勝手がいいんじゃないかしら」

 

「すぐにもらう事は出来ないかも知らんがこれからもヘスティアファミリアと交流していけばいつかは手に入れられるだろう」

 

「仲良くするのなら得意だよ!お風呂から上がったらアルゴノゥト君と模擬戦でもしようかな。他にすることもないし!」

 

そう言ってティオナは風呂から上がり脱衣所に入って行った。

 

「せっかく風呂に入ってサッパリしたのにまた汗かいてどうするのよバカティオナ・・・」

 

行動力の塊である自分の妹に呆れるティオネだった。

だがフィンの事になると周りが見えなくなって暴走しがちでもあるティオネと似たもの姉妹だとロキファミリアの仲間達は思っている。

 

夜 開けた中心地

 

朝、昼と模擬戦を行いあっという間に夜になった。ベルはティオナの相手をしていると途中からアイズが参戦して戦いに激しさを増した。

アイズとまた模擬戦を行う事ができて嬉しかったベルだが前と同じようにボコボコにされた。

 

「つ、疲れた・・・」

 

「アルゴノゥト君はよく動くから余計に疲れたのかもね!あたしはまだ暴れ足りないかな〜」

 

「私もまだやれる」

 

「もう勘弁してください〜!?」

 

「・・・ん?」

 

ベルが叫んだ時にシエンは何やら見覚えのある魔力が滑り降りてくるのを探知した。忘れるはずはない、何せ自分が渡したものなのだから。だからこそここにくるのはあり得ないはずなのに・・・そう思っているとまた身に覚えがあるのが2つ感じ取った。そしてもう2つ・・・

 

「いったいどうなってるんだ・・・?」

 

「シエン、どうかした?」

 

「ベル、落ち着いて聞いてくれ、ヘスティア達がやって来た。・・・ん?なんでヘスティアがやってくる必要があるんだ?」

 

「え・・・?神様が!?でもどうやって!?」

 

「護衛を雇ってこっちに降りて来ている。アスフィもいるって事はまさかヘルメスもいるのか?うわー、絶対に面倒な事になるぞこれ・・・」

 

シエンがヘスティア達がやってくる事を探知して頭を抱えていると

 

「(アイズから聞いたとリヴェリアから聞かされていたが本当に探知能力持ちでもあるのか・・・やはり得難い人材だね)それは本当かい?」

 

「ええ、まあ。えーと、神がダンジョンに来たら不味いんでしたよね?」

 

「うん、ギルドから罰則だね」

 

「何やってんだって言いたいけど心配してやって来てるんだから怒りたくても怒れな「ぐぬあぁっ!?」・・・」

 

「本当に、神様の声だ・・・会いにいかなくちゃ!」

 

オレ達が降りて来た17階層へ上がる階段付近まで行くとアスフィにヘルメス、ヘスティア、覆面を被って顔を隠したつもりでいるリューにオレ達を囮にして逃げ出した奴らもいた。

やけにデカい男にサイドテールの黒髪の少女に目隠れの少女がいた。

 

「ベル君、シエン君!!よかった無事だったんだね!?」

 

そう言ってベルとオレを包み込むように一緒に抱きしめた。いくらヘスティアが与えた神の恩恵が消えていない事でオレ達が生きている事がわかっていても元気でいるかはわからない、不安でいっぱいだったはずだ。

こんなに心配されると思っておらずなんだか少し照れ臭いものがある。

 

「は、はい。リリもヴェルフも無事です」

 

「そうか、みんな無事で良かったよ」

 

「やあ、シエン。久しぶりだね」

 

ヘスティアによる抱擁から抜け出すと橙黄色の髪を持つ男ヘルメスが話しかけて来た。

 

「ヘルメスも元気そうで何よりだな。・・・それと本当に神だったんだな、あっちで色々言って悪かったな」

 

「全くだ!これからはオレのことも敬意を持って話すように」

 

「それはない」

 

「グハッ!?そりゃ無いぜ・・・」

 

「自業自得です、ヘルメス様」

 

「それにしてもなんでまたヘルメスまでここにやって来たんだ?地上でのヘルメスのお守りは他の団員でも良かったはずだが」

 

「いや、なに。今話題の【リトル・ルーキー】に会ってみたくてね。それに君に渡すように言われた届け物があるしね」

 

「届け物?」

 

そう言ってヘルメスは懐からなんの変哲も無い石を取り出した。魔石でも無さそうだし何なのかと思いながらそれを受け取ろうとするとその石は僅かに白色に発光した。オレはこの光に見覚えがあった。間違いなく竜石だった。

 

「ふむ、やはりチキちゃんの言う通りだったね。やはりシエンには適性があるみたいだ」

 

「いや、おかしいだろ。オレは人間だぞ?」

 

「チキちゃんが言うには神竜の涙を飲んだのが原因だって言ってたぜ?まだステイタスにその経験がスキルとして出てないだけじゃないか?」

 

まさか全能力を向上させる神竜の涙にそのような効果があるなんて知らなかった。神秘の塊である竜のアイテムだけあってとんでもないな。

 

「あの、いったい何の話を?」

 

「おお、君が噂の【リトル・ルーキー】ベル・クラネルだね?初めましてオレはヘルメスだ、よろしく」

 

「は、はい・・・初めましてヘルメス様」

 

「やいヘルメス、その石はなんだ!?シエン君にいったいなにをしたんだ!?」

 

「いやなにもしてないって。オレはただ届け物を渡しただけさ、それに事情ならシエンが1番知ってるんじゃないかな?」

 

「シエン君!いったいどう言う事か言ってもらおうじゃないか!?」

 

「人間がどうのこうのっていってたけど・・・」

 

ヘスティアとベルがどう言うことかと聞きに来た。オレもまだ少し戸惑ってはいるが声を落としてヘスティア達の耳元に伝えた。

 

「いや、あの・・・人間を辞めちゃった・・・かも」

 

「「え?・・・えええええええええええ!????」」

 

思いもよらない返答に2人はポカンとした顔をした後にその言葉を理解して2人は叫び声をあげ夜のダンジョンに響き渡った。




リヴェリアの1人で泉に入るのはオリ設定です。でも外伝9巻を見た感じだとアイズなら入ってくれるかな?

竜石
竜族が扱うことのできる石。その石を使うことで己の身体を竜に変身させることができる。
その石を見た事が無い人にとってはただの石にしか見えない。

チキ
神竜族の王ナーガの娘で強大な力を持つ竜人で年は3000歳になる。
ナーガは5000歳で死去。


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シエンの戦闘記録

久々にロキ編を見直す機会があってちょっと見ているとこのルートと矛盾してる部分が出てきて辛い。



衝撃の事実が明らかになって叫び声を上げてしまったベル達に周りにいた人達の視線が一気にこちらに向いた。

 

「ベル、どうしたんだ?」

 

「ヴェルフ、いやちょっと、かなり混乱してて上手く言えないけど気にしないで」

 

ベルは混乱しながらもヴェルフに事情を話さなかった。この人、人間じゃないんです。なんて言えないよなぁ・・・

オレとしてはもうこうなってしまった以上どうしようもないし受け入れるしかない。イーリスでもまずいがここの世界でこの竜化の力を持っているのはまずすぎる。

この世界ではオレしかこんな事は出来ないだろう、神々が寄ってたかって来るはず。前にランクアップした時だって散々追い回されたし、この場合なら一生付け回される可能性すらある。ベルやヘスティアにも迷惑をかけるかもしれないし脱退するべきか、だがベルの道を手助けすると約束したしいったいどうしたらいいんだ。

仮に脱退したとして何処に行けばいいんだ・・・

 

「シエン君、君が何者であってもボクは離しはしないぜ?そんな事をしたら神の名が廃るしボクらは家族なんだから!」

 

なんて事を俯いて渋い顔で考えていたらヘスティアが話しかけて来た。

 

「ヘスティア、だが・・・」

 

「迷惑をかけない家族なんていないよ。みんなで力を合わせればなんとかなる!なんとかしてみせる!!それでシエン君はどうしたいんだい?」

 

「オレは神々につけまわされるなんてゴメンだし、ベルとヘスティアに迷惑もかけたくない。けど、2人と一緒にいるとトラブルだらけで大変だけど・・・毎日が楽しい。だから、まだ一緒にいたいが・・・ダメか?」

 

「ダメじゃないさ!まだ、じゃなくてずっとだぜ?」

 

「そうだよ、シエン。僕達同じファミリアの家族じゃないか。それに僕と約束した事忘れた?」

 

「・・・忘れるわけないだろ。ベルに出来ない事はオレがやって助ける」

 

「うん、だからこれからもよろしく」

 

「うん、ボク達の物語はこれからだ!!」

 

そう言ってベルは手を差し出してくる。オレも手を差し出して握手してヘスティアが両手でオレ達の握手した手を包み込み、顔を上げて打ち切りになりそうなセリフを言った。

 

「・・・すみません、お話の所申し訳ないのですが。謝罪を、自分はタケミカヅチファミリア所属のヤマト・命と言います。この度は本当に申し訳ありませんでした」

 

話は終わったあたりで魔力を持った黒髪の少女が地面に正座をして額を地面につけて土下座をした。誠心誠意という事なのだろうがそこまでしなくても・・・

 

「いくら謝れても簡単には許せません。貴方達が押し付けてこなければリリ達は18階層にまで逃げに来なくて良かったのですから」

 

「まあ、そりゃそうだ。シエンだってあのあと生き埋めになってそれを見捨てて俺達は逃げた。そんな事をしなくてもよかった筈だからな」

 

「あの、その、・・・本当にごめんなさい」

 

ちょっとおどおどして謝ってくるのが目隠れの少女、名はヒタチ・千草。

 

「あれはオレがやった事だ。そして俺はあれは間違っていたとは思っていない」

 

彼女達を守るためなのか彼女達よりも一歩前に出てきたのが身長が190Cほどありそうな巨漢。名はカシマ・桜花というらしい。

話を聞くに仲間が怪我をして戦線を維持できなくなり撤退していた時にオレ達になすりつけたそうだ。仲間の命と他人の命なら仲間の命の方が大切に決まっている。まあ、分からなくもない。

 

「それを被害に遭った俺等を前によく言えたもんだな、大男!」

 

ヴェルフが桜花を睨めつけながらに言う。このままでは一触即発と言ったところだろう。終わった事で喧嘩をしてもしょうがないしちょっと話に混ぜてもらう。

 

「まあまあ、良いんじゃないの?生き埋めにあったとはいえ怪我もしてないし全員無事なんだからさ。なぁ、ベル?」

 

「そうだね。僕も桜花さんの立場だとしたらそうしていたかもしれないし悪気はなかったんだから・・・」

 

「ですが、このままはいおしまいと言うわけには・・・」

 

「だとすればここは一つオレ等に借りが一つできたって事にして今度オレ等が困っている時に助けて貰えば良いだろ」

 

「そう言う事でしたら・・・」

 

「・・・割り切ってはやる。だが、納得はしないからな。大男」

 

「ああ・・・それでいい」

 

なんとか話はまとまっただろうか、それにしてもリーダーとは責任を負わないといけない面倒な立場だな。ウチはベルがリーダーで良かったよ。

 

「クラネルさん、シエンさん。無事でしたか」

 

タケミカヅチファミリアの冒険者達とは離れた後覆面を被ったエルフのリューが小声で話しかけて来た。

 

「リューさん!?なぜリューさんがここに!?」

 

「神ヘルメスに、冒険者依頼を申し込まれました。貴方達の捜索隊に加わってほしいと」

 

「やっぱり只者じゃないなリュー。ヘスティアを守ってここまで連れて来てくれて助かったよ、ありがとう」

 

「いえ、大したことではありませんので」

 

「さて、話は終わったかい?ここにずっと立っているわけにもいかない。どこか休める場所はないか、シエン」

 

「今オレ達は遠征帰りのロキファミリアの野営地でお世話になってる。そこに行ってヘルメス達も泊めてもらうように頼んだらどうだ?」

 

「そうだね、そうするとしよう」

 

そうして野営地に着きヘスティア達、神々がダンジョンに本当にやって来た事に驚きつつもヘルメスの交渉により殆ど全員が泊まれることになった。(リューは途中で姿をくらましてどこかへ行ってしまった)だがテントは足りず男は野宿という事になりそうだ。

 

「いやー、ダンジョンの中を旅するのもまた良いものだねぇ」

 

「ああ、どうしてこんな事に・・・ロキファミリアに借りができてしまいましたし、罰則が・・・もうやだぁ」

 

野営地に戻り、オレ達が離れた時に食事の準備が終わったのだろう。全員で食事会が始まった。オレの隣にヘルメスがその隣にアスフィが座って食事をしている。ヘルメスはクリスタルがたくさんくっついている天井を見上げながらカップに入った果実、ゴードベリーを飲んだ。これはゼリー状の果肉の味が酒に通ずるものがあるらしい。ノンアルコールの酒といったところだろうか。

アスフィはこの後に待ち受けているであろう罰則に嘆きつつゴードベリーを飲む。その姿は意地悪な上司に苦労をしてお酒を飲んでるOLだった。

 

「ハッハッハ!ヘスティアも言ってただろ?困っている時は助け合いって、・・・だからオレを助けてくれアスフィ?」

 

笑っていたヘルメスは表情をキリッとして甘い声でアスフィに囁いた。しかし今の余裕のないアスフィには逆効果だった。

 

「・・・シエン、そこの駄神を捕らえてください。少しぶっ飛ばしますので」

 

「ちょっ」

 

「オッケー。ヘルメス、アスフィを弄りすぎた君がいけないのだよ」

 

「あれっ!?足が動かな、シエン何をするんだ!あ、アスフィ・・・?そんなに怒った顔をしているとシワが増え・・・ギャアアアアアアアアアア!???」

 

それを聞いたアスフィは主神の頬を打ちヘルメスは絶叫をあげた。シエンは【呪い】を使って足を拘束したがそれが外れてしまうかもしれない威力だった。

 

「全く!私がいったいどれだけ貴方の起こしたトラブルを尻拭いして来たと思っているんですか!!少しは反省してください!!」

 

「わかったわかったって。あいててて・・・さてオレ達もロキファミリアに世話になっているわけだし一つ余興をしようじゃないか」

 

もう十分余興になっているとシエンは思ったが口には出さなかった。そしてヘルメスは懐から一冊の本を取り出した。表紙に書かれた文字はここの世界のものではなくイーリスで使われている文字だった。

 

「え、なにその本の文字!ヘルメス様、あたしそれ見た事ないよ!」

 

「そりゃそうさ、これはシエンのいたイーリス聖王国で使われている文字だからね」

 

シエンはヘルメスの持っている本の文字を読み取るとこう書かれていた。【イーリス十六神将記】と。

 

「タイトルは何ですか・・・?」

 

「それはねアイズちゃん。イーリス十六神将記、神に滅ぼすことができなかった邪竜を討ち滅ぼした16人の英雄について書かれた本さ」

 

「英雄!?あたし聞きたーい!アイズもそう思うでしょ!?」

 

「うん、ベルは?」

 

「僕も聞きたいです!」

 

「おいヘルメス!」

 

「しょうがないじゃないか、もう()()で大人しくしてるつもりはないんだろうシエン?それに何より・・・オレがッ!語りたい!!」

 

もう何を言ってもこの男は黙らないだろうとシエンは分かってしまい、ため息を吐いた。

 

「はぁ・・・」

 

「そのため息は話しても良いと判断するぜ?とはいえ16人も話してたら寝る時間になりそうだし1人だけにしよう」

 

「どんな人?」

 

「そうだね・・・」

 

そう言ってヘルメスは本のページをめくり手を止めた。そしてオレをチラリと見た後に喋り出した。

 

「よし、彼にしよう。イーリス十六神将の1人、【魔導軍将のシエン】」

 

「「「「ッ!?」」」」

 

ヘルメスの声を聞いた人達が一斉にこちらを見た。それを見てヘルメスはニヤついていた。だろうなぁ、その反応を楽しみにしてたんだろお前!

 

「本に名前が載るなんて・・・凄いよシエン!!」

 

「フフーン!そんな彼を眷属に迎えたボクの目は狂いは無かったようだね!」

 

ベルはオレを尊敬の目で見ていてヘスティアは得意げになっているが本の内容がまともである事をオレはただただ祈るだけだった。

頼む、まともな事を書いてありますように!!

 

「続けるよ、魔法の才能に溢れ、闇魔法と光魔法を得意とする魔道士。歴代の魔導軍将の中でも唯一の平民の生まれ。幼い頃から聖王クロムと友人でもあり聖王エメリナの計らいにより同じ王宮で一時的に共に過ごした事もある」

 

「(なるほど、その時に作法をしつけられたということか)」

 

「しかしそれをよく思わなかった王族、貴族達の嫌がらせによりシエンは追い出される事になり国を出て、北の実力主義の連合国フェリアへ向かい闘技場にて自身を鍛え、その強さを気に入った西の王バジーリオの一時的な家臣として迎えられる。この年にあった闘技大会にも参加してバジーリオを勝利に導き、統一王にのし上げた。この時まだ8歳だったという」

 

「・・・すごい」

 

「いや、アイズさんも大概っすからね?」

 

「それから数年の間フェリアに留まり続けて聖王クロムがイーリス自警団を作り上げたという噂を聞くと西の王バジーリオに別れを告げてイーリスに帰還し自警団に入団してクロムの護衛に努めた」

 

「その後、軍師ルフレと出会いイーリスと隣国のペレジアによる戦争が起き、最前線で戦い時に撤退戦では殿を務めて聖王クロムを逃すなど活躍する。そしてシエンの住んでいた村を滅ぼしたペレジアの暗愚王ギャンレルを討ち取り復讐を果たす。その暴れっぷりに「お前は魔道士ではない」などと言われる事もよくあったそうだ」

 

「魔道士が最前線で戦う?どうやってだ?」

 

「戦争って事はコイツは人殺しなのか!?」

 

「お前達、少し黙れ」

 

「アハハ、まあ事実なので・・・」

 

モンスターから人を守るのが英雄と言われているこの世界の人達からすれば人殺しが英雄だなんておかしいよなぁ。だからオレのことを英雄だなんて言い触らすのはやめてほしいと思っている。

 

「王がいなくなったペレジアとは休戦となり一時的に平和が戻る。その間にシエンは新たな魔法を生み出す事に成功し過去にあった魔法を復元させる事にも成功する。それらを使い、水不足や水害を堤防を作る事で問題を解決し困っていた人達に【賢者】と呼ばれるようになる」

 

「過去の魔法の復元!?凄いじゃないかシエン君!!困っている人も助けてるし立派だぜ!!」

 

「賢者ってほど賢くないんだけどなぁ」

 

「平和になって約2年後、別大陸ヴァルム大陸を治める。ヴァルム帝国がイーリス大陸に攻め込んでくることが分かり、それを阻止してヴァルム大陸に乗り込み皇帝ヴァルハルトを討った」

 

「別大陸の皇帝まで倒したの!?」

 

「いや、オレじゃないけどな。オレの戦友が殺った」

 

「その後すぐにペレジアにて邪竜ギムレーが復活を果たす。シエン達は虹の降る山を登り聖王クロムが覚醒の儀を行いファルシオンの真の力を引き出す事に成功。ギムレーとの決戦の地、ペレジア国の西の孤島に存在する始まりの山へ向かった」

 

「この時私達はシエンと出会ったんです。ここにいる人達が本当に強くてヘルメス様と私は殺されかけたんですがシエンに助けてもらいましたね」

 

「そうだなぁ、正直よく無事だったなって思うぞ。レベル4、5クラスの盗賊が50人くらいいたよな」

 

「(レベル2の彼がレベル4、5相手に勝った!?いったいどういう事なんだ?)」

 

「邪竜ギムレーとの戦いは苛烈を極めたが死者を出さずに短時間にて終わった。その後しばらく経った後にシエンはイーリス聖王国から消えた。シエンは上層部にやたらと嫌われており裏で消されたとも言われていたり、ルフレに遠くに行くと言い残し別の大陸に渡ったとも言われている」

 

「(実際にはルフレは死んだようなものだけど書く必要は無かったんだろうな)」

 

「なるほど、そうやってオラリオに来たわけか」

 

「ちなみにシエンが行方不明になった後にイーリス上層部の人間が謎の急死を遂げるなど不可解な事件が多発した。殺されたシエンの恨みだと騒がれたが実際のところ原因は不明である」

 

「ンー、これは王が統治をする際に邪魔になったのかな?」

 

「さあどうでしょうね?」

 

フィンさんから聞かれたがオレはとぼけておいた。イーリスを離れる前に奴らの罪状をクロムに渡したりなんてしてませんよ?




後半はシエンの過去のお話、理解しなくても、流し読みでも問題ないです


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リヴィラへ・・・?

原作5巻を読んでなんでダンジョンの中でステイタス更新してもダンジョンが怒らなかったのかと不思議に思った。


ヘルメスが本を読んだ後、そろそろ寝る時間となった。オレ達はその場を離れる時にアイズから明日街へ行かないかと誘われて行く事になった。

その寝る前にヘスティアにオレとベルがテントに来るように言われて行くとステイタスを更新する事になった。

ダンジョンの中というわけで羊皮紙はなく内容は口頭で伝えられた。

 

 

シエン

 

Lv.2

 

力 :I0

 

耐久 :B758→B770

 

器用 :C641→B720

 

敏捷 :H154→H158

 

魔力 :A833→S941

 

スキル NEW

 

【竜化】

 

竜石を持っている時自身の姿を竜に変える。

 

ベル

 

Lv.2

 

力 :F321→E428

 

耐久 :G284→E417

 

器用 :F307→F395

 

敏捷 :D597→B784

 

魔力 :C643→B709

 

 

 

「神様、シエンに本当に新しいスキルが出たんですね」

 

「うん。スキルにするかどうかは悩んだけれど」

 

「とんでもなく強い奴に会った時にこのスキルがあったほうがいいと思ってヘスティアにスキルにしてもらうように頼んだ」

 

「分かっているとは思うけど。絶対に人前でやってはいけないよ」

 

「勿論だ。とはいえどんな姿になるのか、大きさはどのくらいなのかも分からないのはちょっと不安だ。一回試しておきたいな」

 

「気持ちは分かるけどまたの機会にしてくれよ?ロキの子に見つかったらどうなることか。あ、ヴェルフ君を呼んでくれないかい?渡さないといけない物があるんだ」

 

せっかく手に入れた力を試せないのは残念だが諦めるしかない。またの機会とはいったいいつになるんだろう・・・

その後、ヘスティアはオレ達が連れて来たヴェルフに神ヘファイストスからの言伝をいい魔剣を手渡してオレ達はテントを出た。

 

「これがヴェルフの作った魔剣か」

 

「シエンの魔道書よりも使い勝手の悪いけどな」

 

テントの外に出て野宿する場所でオレ達はヴェルフの作った真っ赤な大剣の魔剣を見せてもらっている。持ってくるときは白布に包まっていた。数回使ったら壊れる魔剣、ヴェルフはもっと使えるようにしたりとかしないのだろうか?

 

「なあ、ヴェルフ。持ち主を置いて壊れる魔剣が許せないんだよな?」

 

「ああ、そうだ」

 

「だったら、壊れない魔剣を作る事は出来ないのか?」

 

「壊れない・・・魔剣?」

 

「いきなり出来たりとかしないだろうから、出来る過程でいくつもの魔剣が壊れるかもしれないけど。やってみる価値はあるんじゃないか?」

 

ヴェルフは今まで自分が魔剣を作れると知ったら魔剣を作れとしか言われなかったが壊れない魔剣を作れと言われたことがなかった。ヴェルフにとってはその言葉は眼から鱗だった。

 

「ク、ハハハ!!そんな事今まで言われたことがないぜ!折れるのが嫌なら折れないものをつくる。確かにその通りだな。不壊属性なんて物もある、もしかしたら実現できるかもしれねぇ」

 

「オレの魔道書も壊れるからあまり人の事は言えないんだけどな」

 

「なに、構わないさ。それより、シエンの魔道書について詳しく教えてくれないか?鍛治師だけの技術じゃ折れない魔剣を作るのは難しいかもしれねぇ」

 

「勿論、ならオレは魔剣について教えてもらおうかな」

 

オレ達は夜遅くまでアイデアを出し合った。ヴェルフとは少し仲良く慣れたような気がした。

 

野営地

 

シエン達がテントに移動した後フィン達、遠征組はその場でヘルメスが話した話題で盛り上がっていた。

 

「アイズ!ヘルメス様の言ってた話、面白かったね!!」

 

「うん」

 

「そのシエンが話の内容について否定してなかったし本当のことなんだろうけど。そんなに強いのならゴライアスなんて簡単に倒せると思うわ」

 

「けど、倒さずにここまでやって来ましたね」

 

「私がベル達の鍛錬に付き合っていた時もそこまで強くなかった」

 

アイズ達も他の仲間達同様にシエンについて話していて、なぜ本の内容に書かれていた程の力を持っていないのかに疑問を感じていた。

アイズは実際に戦ってみた事があるが簡単に吹き飛んでしまったり、襲撃をされた時もシエンがあっさりやられてしまっている事からそこまで強いとは思えなかった。

 

「だが、治癒魔法については制御も完璧で文句のつけようがないほどだった。あれは1年や2年などで身につく物ではない長年魔力を使い続けた者に違いない」

 

「ンー、故郷では強かったのにオラリオに来てからはまるで力が通用しない・・・か」

 

「怪我をしておるようには見えんかったのう。なんらかの事情で弱くなっておるとかじゃなかろうか」

 

フィン達も考えてはみるが何らかの事情で弱くなってしまったぐらいしか分からなかった。

 

「今日はアルゴノゥト君と戦ったけど明日はシエンと戦おうかな〜」

 

「あの若造の力を見る良い機会じゃの。ワシも見に行くとしよう」

 

「ティオナ、本気でやるんじゃないわよ?相手はレベル2なんだから本気でやったらアイツ死ぬから」

 

「大丈夫、大丈夫!まっかせといて〜!」

 

「ハァ、本当に大丈夫かしら・・・」

 

ティオネの不安は消える事はなく、その日の夜を終えて次の日がやってきた。

 

 

次の日の朝、オレが目覚めてロキファミリアの人達に食料を貰いに行くとそこにはティオナが待ち構えていてベルと同じく対人戦をしようと言われた。

正直ボコボコにされるだけなので止めておいたほうがいいのだが格上と戦う事で偉業を達成してレベル3になれる状態にしておきたい。もしランクアップ出来なくても良い経験値になるはずなので戦うことにしたのだが・・・

 

「頑張るっす、シエンさん!」

 

「いつ倒れても治療できるぞ!」

 

「ティオナ、程々にしといてやれよー!」

 

ギャラリーが妙に多くロキファミリアの首脳陣も全員観戦に来ていた。場所は前に風呂を作った草原だ。

オレの装備はサラマンダーウールのローブに【ヘスティアバンブレーズ】を左腕に装着して魔道書【ファイアー】【トロン】【ウォーター】【ストーン】を背中のバックパックに入れている。

杖は今回は使わないがリリにここで作った【リライブ】の杖を持たせておいた。オレの戦いが終わった後に治療をしてもらうためだ。

あと一応竜石もバックパックの中に入っている。

 

「それじゃあ、いっくよ〜!」

 

その言葉通り約5M前にいたティオナが自身の背を超える大双刃を片手で持ち突っ込んで来ようとする。相手は接近戦のエキスパート、懐に潜りこまれたら終わりだ。だがこの距離ならアレが使える!

シエンはすぐ【呪い】を発動させて自分の目の前にカーテンのように展開して自分の姿を見えないようにする。

 

「そんなのぶった斬るから問題なし!おりゃああああ!」

 

ティオナは大双刃(ウルガ)を横に薙ぎ払うようにしてカーテンを切り裂いた。一気に勝負をつけるために近づこうしたがそこにはシエンがいなかった。

左右を見てもどこにもおらずいるのは冒険者達で皆上を見て唖然としていた。

その様子に違和感を感じて上を見ると多数の火球がティオナ目掛けて落ちてきて地面に当たると爆発し始めた。

 

「うそ・・・?」

 

「宙に浮いてる・・・?」

 

シエンが地上から約10Mほど高い位置にいて足元には障壁を展開して乗り場にしていた。その足場はそれなりに歩き回れるように展開してある。

さらに足元に魔法円を展開しながら下向きに多数の魔法陣を展開してそこから【ファイアー】を連発している。

先程のカーテンはシエンが空中に【ミラーバリア】を多数展開して上がっていくところを見られないようにする為のものだった。

その光景を見てベルはなぜ自分に障壁に触れさせていたのか分かった気がした。シエンはベルにこの乗れる障壁が何処にあるのか分かって活用して欲しかった事を。

 

「なんて奴だ・・・」

 

「これではティオナさんは近づけない!?」

 

「ああもう、邪魔!」

 

降り注ぐ火球をウルガで薙ぎ払うティオナ、飛び上がってシエンに近づこうとしても障壁に頭をぶつけ地上に戻されてしまう。どこに障壁があるのか探ろうとしてもティオナは【魔力】を持っておらずそういったものを探知するのは苦手だ。

・・・が、逆にシエンには居場所を探知されないという利点も有る。その為、シエンは魔法円、魔法陣を展開している事で視界が遮られて真下にいるであろうティオナの居場所を正確には把握していなかったりする。

 

草原は【ファイアー】が地面に着弾するたびにボロボロになっていき辺りは火の海となる。ティオナもウルガを振り回して火球を弾いてはいるが爆発に巻き込まれて少しずつではあるが怪我を負っていき追い込まれつつあった。

シエンは火球が弾かれているのを見てティオナがその場所から動いていない事を知り次の行動に移した。

 

「あれは・・・?」

 

冒険者の1人がシエンが新たな複数の魔法陣を生み出した事に気がついた。そしてその魔法陣からは大量の水が現れてティオナのいる場所に降り注いだ。

 

「バカな!?宙に浮いて火球を撃ちながら更に水を生み出すだと!?」

 

「魔法は一つしか発動できないんじゃなかったのか!?」

 

「こんなの無茶苦茶です!!」

 

「・・・レフィーヤは、言ってはいけないと思う、よ?」

 

この降り注いだ水は地面を濡らして水溜りになりティオナもびしょ濡れになった。まだ火球も一緒に落ちてきて火球がその水溜りに落ちる事で水は一気に温度を上げて蒸発し始めた。ティオナの足元にも水溜りに浸かっていたのでティオナにもその影響が出た。

 

「そんな事をしても痛くもなんとも・・・アッツ!?」

 

ティオナはその熱湯の熱さから足元を見て思わず軽くジャンプしてしまう。火球からは完全に意識を離していて降り注ぐ火球の直撃を受けることになった。

 

「ティオナ!?あの野郎・・・ッ!!」

 

「落ち着くんだ、ティオネ。君の妹はこのくらいでやられたりするのかい?」

 

「いえ、そんな事は!」

 

ティオナが攻撃にやられ続けているところを見てシエンに激怒したティオネだがフィンに言葉で押さえられた。

そんな状況でもシエンの攻撃は収まる事を知らずただひたすらに精神力を消費して【ファイアー】を撃ち続ける。

冒険者達はレベル5のティオナに対してシエンがこれ程一方的に立ち回るなんて思いもしなかった。

だがそれも終わりを告げる時は来た。

 

シエンがレベル2とはいえ圧倒的な【魔力】にそれを上昇させるアビリティに装備のおかげでティオナに確実にダメージを与えて追い込んでいった・・・が、それが良くなかった。

 

【大熱闘】(インテンスヒート)

 

ティオナが持つレアスキルでもう一つのスキル【狂化招乱】(バーサーク)が発動した後に発動するもので瀕死時における全能力高補正というものだ。死に近づけば近づくほど更に能力が上昇していくためティオナは追い込まれれば追い込まれるほどどんどん強くなっていくため、もはやシエンの【ファイアー】のダメージなど受けていなかった。

 

「よぉーし、今度はこっちの番だね!」

 

ティオナはスキルにより赤い息を吐きながら地面を蹴り飛ばして跳躍した。猛烈な速さで飛び上がるティオナを遮る障壁は今の状態のティオナにはただの紙切れ当然でティオナの頭突きによってガラスが割れるような音を立てて割れていった。10Mなんて高さもお構いなしにひとっ飛びでシエンのいる場所まで辿り着いた。

 

「なにッ!?」

 

急にティオナが現れた事で動揺するシエンだったがすぐにティオナの立っている場所の障壁を消去しようとしたがそれよりも速くティオナが近づいた。

 

「おっ返しだああああああ!!」

 

「ぐあああああああ!!???」

 

ティオナは持っていたウルガを振り回して刃の付いていない部分をシエンの土手っ腹に叩きつけた。するとシエンは面白いように吹っ飛び足場の障壁の外に出てしまいそのまま草原に叩きつけられた。

 

「シエン!?」

 

「おい、あれ大丈夫か!?ティオナは手加減してたんだろうな!?」

 

「死んだんじゃないの〜?」

 

空中に展開していた障壁は消えてティオナは地上に着地して遠くにいるシエンを見ると殴られた腹を押さえながらも歯を食いしばり立ち上がった。

 

「グッ、ゴホッゴホッ!!」

 

「続ける?」

 

「いや、降参だ・・・。まだまだ遠く及ばない、か」

 

立ち上がったとはいえシエンがティオナに対して出来ることはなく敗北するだけだったので降参することにした。レベル差というのを嫌というほど知ったシエンだった。




本当はレフィーヤと戦わせたかったけど戦闘狂ではなく乗り気ではないと思うからボツ!
ダメージを1ずつ与えてたら敵が発狂して手に負えなくなって敗北した話ですね。

原作 レフィーヤ 
Lv.3

力 :I79

耐久 :H107

器用 :H184

敏捷 :G226 このときの原作のベルより少し速い

魔力 :C688 レベル2での最終熟練度はS 外伝6巻より

魔導:H

対異常:I

妖精追奏
・魔法効果増大
・攻撃魔法のみ強化補正倍加(強力な魔法に目が行きがちだが個人的にこれが1番やばいと思う。レベル5並みの砲撃を行えるというのも納得できる)


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リヴィラへ!

更新遅くなってすみません!スマホをタッチすることに疲れたので遅くなりました。

戦闘終了

「ティオナさん!大丈夫ですか!?」

「うん!平気平気!」

「けど酷い火傷よ、さっさとリヴェリアに治療してもらいなさい」

「うん、ティオネ。行ってくる!」

そう言ってリヴェリアのもとに行く途中にティオナは先ほどの戦いを思い出す。

「(最初で最後の一撃をシエンのお腹にかましたけどなーんか変な物に当たったような・・・?頑丈な鎧でもつけてたのかな?)」

手加減をしていたとはいえ傷をあまり負っていなかったシエンに首を傾げるティオナだった


ティオナとの模擬戦が終わりそれぞれティオナはリヴェリアさんにオレはリリに治療してもらった。18階層の中央の大樹よりも西に湖が広がっていてそこにポツンと浮いている島にあるというリヴィラに向かう事になった。

行くメンバーはオレ達のパーティーにタケミカヅチファミリアの3人、アイズ、レフィーヤ、ティオネ、ティオナにヘスティア、ヘルメス、アスフィだ。

 

孤島に入るためには湖に浮いている丸太の上を歩いて辿り着き、そこから頂上にあるというリヴィラに向けて歩いて登っていく。

 

「ぜェ、ぜェ・・・まだ着かないのかい?」

 

「おお、良い眺めだ」

 

「ほ、本当だね」

 

余裕のあるヘルメスとバテているヘスティアは高いところから18階層の全体を見回して感想を言う。

南には17階層へ繋がる洞窟、東には森が、北には木が疎らに立つ湿地帯。遮るものがないので徘徊しているモンスターなどが目に入る。

本当にいい景色だな。なんでダンジョンにこんな光景が広がっているのやら・・・

 

無事頂上に辿り着きそこには【ようこそリヴィラへ!】と書かれたアーチ門があった。

 

「歓迎されてるなんて思っちゃダメよ。ぼったくり店ばかりなんだから」

 

「完全に足元見てるよねー」

 

「シエン、この街を経営するのは、他ならない冒険者達です。細かいルールなどはなくそれぞれが好き勝手に商売を営んでいます」

 

アスフィに教えてもらったようにあちこちにならず物の格好をした店があり、置いてある物の値段は地上で買える物の数倍、いや数十倍はあった。換金所もあるようだが地上の半額以下で取引もされているようだった。そこの換金所を開いているのはレベル3のボールスという男で実質このリヴィラで最も強いらしく彼が仕切っているようだ。

 

「さて、この人数で移動するのは周りに迷惑だしここからは自由行動にしないか?もちろん単独行動は危険だからせめて2人組み以上になるようにしてね」

 

ヘルメスの言う事に全員が賛成してグループを作り散らばっていく。

オレはベル、ヘスティア、アスフィ、ヘルメス、アイズ、レフィーヤの組みになった。ヘスティアはなぜヴァレン某が付いてくるんだとちょっと怒り気味になっていてレフィーヤはアイズが気になっているベルを睨めつけていた。

なんだろうか、大好きな姉を知らない男にとられたとかそんなところだろう。

 

「ハハハ、賑やかでいいじゃないか!」

 

「そうだな、ベル達といると本当に退屈しないな」

 

ヘスティア達がギャーギャー騒いでいるのを止めずに歩きながら店を眺め見て話をする。

 

「嫌いじゃないだろう?こういうのは」

 

「まあな、こっちに来た時は誰にも知られず細々と生きていくつもりだったのにこうなっちまったよ」

 

「ハハハッ、それは無理ってものさ。オラリオは世界で1番熱い都市ッ!絶対ボロが出て注目を浴びるに決まっている。ま、親友であるオレがいる限り細々となんて生かしてはおかなかっただろうよ。それに・・・」

 

おちゃらけた感じで話していたヘルメスが少し真面目な顔をして次のように言った。

 

「シエン、君には『三大冒険者依頼』にも挑戦してもらいたかったしね」

 

「ッ!?」

 

「アイズさん?どうかしたんですか?」

 

ヘルメスの言った三大冒険者依頼という言葉が聞こえたのかアイズの顔付きが穏やかなものから無表情に戻りシエンとヘルメスの話に耳を傾けた。

 

「その三大冒険者依頼ってのはなんなんだ?」

 

「子供達が【古代】と呼んでいる時代、ダンジョンから地上に進出した強力な三体のモンスターの討伐の事さ。そのうちの二体は討伐されたんだけど残る一体がとんでもなく強かったみたいでね、それがまだ生きているんだよ。その残る一体の名は黒竜と呼ばれている」

 

「黒竜討伐・・・それをオレに手伝えと?」

 

「実は君をオラリオに誘ったのは巨大なドラゴンを倒した経験を持つからでもあってこの依頼に協力して欲しかったんだけど・・・」

 

どうやらヘルメスにも事情があってオレをオラリオに誘ったようだった。だが・・・

 

「あの様じゃあ、無理だろうな。今のオレでは」

 

ヘルメスの期待に添えないようだがティオナに簡単に敗北するようではその黒竜とかいうモンスターには歯が立たないだろう。

 

「だから今よりも早くあの頃のシエンを越えるほどに強くなってくれ。五感はすでに前よりも鋭くなっているから後はひたすらに強くなっていくだけだ。もちろん、君が強くなれるようにオレも協力するよ」

 

「ちなみに黒竜に挑んだ時の最高レベルは?」

 

「レベル9だ」

 

黒竜討伐、やるとは言っていないがどうやらとてつもなく遠い道だった。レベル9で無理ならばオレはレベル10、もしくはそれ以上を目指す必要がある。

今のオラリオで最高レベルは7のようだしいったいどうしたらそこまで行くことができるのやら・・・

 

 

「全く、ただのバックパックがあんなに高いとは、有り得ません!」

 

「砥石も見てきたがあんなすぐ使ったら壊れそうな物が売られているなんてな・・・」

 

それぞれ欲しい物を見つけようと別れていたがあまり良い物がなくて何も買わずに全員が集合することになった。そろそろ野営地に戻ろうかと思った時、ふと目についた店があって1人でその店に向かった。

 

「あら、いらっしゃい」

 

「何やっているんですかアンナさん・・・」

 

そこで商売をしているのはアンナさんだった。しかしアンナさんはオレを見て怪訝な顔をした後に察したのか表情を笑みに戻して言った。

 

「なるほどね、私は貴方とは初対面だけど、どうやら私の姉妹とは知り合いのようね」

 

「そう言うって事はまた別のアンナさんって事か・・・。本当に見分けがつきませんよ」

 

「ウフフ、ちゃんとよく見れば分かるわよ。さて、アンナの秘密のお店にようこそ!珍し物、いっぱいあるわよ?」

 

そう言ってアンナさんは店の商品を見せてくれた。さて、いったいなにが売られているのやら・・・

 

       FE世界での効果

【天使の衣】 HP+7

【力のしずく】力+2

【精霊の粉】 魔力+2

【はやての羽】速さ+2

【竜の盾】  守備+2

【魔よけ】  魔防+2

 

・・・・・ドーピングアイテムしか売ってねぇ!?ほ、欲しい!欲しすぎる!!

 

「アンナさん!これらはいったいいくらですか?」

 

「うーん、そうねぇ・・・ここでの価値を考えれば・・・1つ100億ヴァリスといったところかしら?」

 

「いや、そんな金持って来れないから!いやまあ納得はできますけどッ!!」

 

「シエン、1人でどこに行って・・・。あれ?アンナさん?」

 

法外な値を言われ少し騒いでいるとベル達がやって来た。前にあったアンナさんとは違うと教えると全く顔が同じでビックリしていた。わかる、すごく分かるぞ、ベル。

 

「へぇ、これは凄い物を売っているじゃないかアンナちゃん」

 

ヘルメスはどうやらこれらがどういうものか分かっているようだ。あっちで見たことがあるのかもしれない。ただ、このドーピングアイテムが神の恩恵を与えたものに対してどのように影響を及ぼすのかは不明だ。力のしずくを使って【力】が2しか上がらなかったらまるで意味が無い。レベルが高い人からすると価値があるかもしれないが。

 

「それで、どれを買うのかしら?」

 

「確かに欲しいが・・・これって証文で購入できるのかな?」

 

「証文ってなんだい?ヘルメス」

 

「ああ、ダンジョンの中で現金を持ってくる冒険者はいないだろう。けど物をここで買いたい者は冒険者の名前とファミリアの()()()()()を契約書に記入して渡して買うんだ。後に地上で証文を渡したファミリアから人が来てその人に現金を渡すシステムさ、あると便利だぜ?」

 

あるじゃないかクレカっぽいのが、これは後で()()()()()を作る必要があるな。生憎とオレに絵のセンスはない。

 

「申し訳ないけど現金限定ね。私またここに来れるかどうかわからないから」

 

このアンナさんも世界を飛び越えてやって来ているらしく現金のほうが都合が良いようだ。つまり、ここで購入は不可能ということだ。効果を知っているヘルメスは大変残念そうな顔をしていたがそんな顔をしてもまけて貰えなかった。

 

「うーん、ここでは売り上げが出ないわね。他の場所に行こうかしら?それじゃあ、またいつか会いましょう」

 

そう言ってアンナさんの店が煙幕に包まれた後にその場所には何も残っていなかった。相変わらずよく分からない移動方法だ。

 

「ねぇねぇ、さっき売ってたアイテムってなんだったの?とんでもない値段だったけど・・・」

 

「あれくらいの価値はある貴重なアイテムだったんだ」

 

「流石にあの値段は手を出せないな、知らなくても問題ないよどうせ買えないだろうし。さて、そろそろ野営地に戻ろうかティオナちゃん」

 

「えー!気になるなぁ」

 

ティオナがどういう物か聞いてきたがオレとヘルメスでなんとか誤魔化した。ティオナがあまりしつこく聞いてこなくて助かった・・・。あまりあのアイテムの事を知っている人が増えたら絶対にこっちにやってくるアンナさん達は追われる事になるだろう。まあ、かなり強いので返り討ちにしてしまうだろうが。

問題なのはこっちにやってこなくなることだ。貴重なアイテムを売り出すアンナさん達はなんとしてもこっちの世界にやってきて欲しい。

 

そろそろリヴィラから出ようと歩いていると前に見たことのある3人組に遭遇した。

 

「テ、テメェは!?」

 

「モルド、あいつらあの時の」

 

「もうここまで来たってのか!?」

 

オレとベルがここまでやって来たことにかなり驚いていて顔を怒らせていたがふと動きが止まりこっちを軽く睨んでオレ達を避けて通り過ぎた。

ちょっかいをかけようとしたが今こちらにはロキファミリアの冒険者がいるから接触を避けたって事だろうな。

 

「シエン、彼等と何かあったのかい?」

 

「店で少しな」

 

「・・・へぇ、彼等はシエン達を目の敵にしてるのか」

 

「おい、余計なことするなよヘルメス。今はただでさえ異常事態なのに面倒事はごめんだぞ」

 

「はは、分かってるって。()()()()()()()()()()()・・・」

 

ヘルメスは離れていく3人の冒険者を見ながら小さく呟いた




レフィーヤは登場する必要はあったのだろうか・・・

ファミリアクロニクス フレイヤ編を読みました。読んだ感じだと最恐のレベル9はまだ生きてるっぽいですね。オッタルが7年前に会っているのでもしかしたらまた登場するのかも?
他の作者様も強い強いって言っておられましたが本当に強いわこの猪・・・
あと戦闘続行条件は能力に比例の意味が分からなかった。


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引き抜き

7年前エグすぎません?ロキ編が書ける気がしない・・・
敵側が強スギィ!ロキ編シエン、ハンデ背負ってても厳しいな


昼、シエン達はリヴィラを出て再び野営地に戻った。ティオナが風呂に入りたがったのでシエンは再び風呂を沸かすことにした。もちろんバスダブは新しいものに取り替えてある。

 

「いや〜ダンジョンの中でお風呂に入れるなんて思わなかったよ」

 

「それは自分もです!シエン殿でしたね、後で礼を言わなければ!」

 

「命様は随分と興奮なさってますね」

 

「み、命はお風呂が大好きだから・・・とても嬉しいんだと思う・・・」

 

ダンジョンに来てから水浴び等をしていなかったヘスティア達にとってシエンの作り出した風呂は大好評だった。

 

「ねぇ、ヘスティア様〜。ヘルメス様が言ってた事以外でシエンの事について知らない?」

 

「うーん、実はボクもシエン君の事はあまり知らないんだ。ヘルメスの言ってたことなんて初めて聞いたよ」

 

「・・・アスフィさんは何か知りませんか?」

 

「私も彼についてはあまり知らないのですが、大体はあの本に書いてある通りだと思います。強いだけでなく魔法を研究して皆の生活を楽にしようとした魔道士」

 

「強いという割にはティオナに負けてたけど」

 

「・・・まあ、そうですね」

 

実際に弱体化する前のシエンを知っているアスフィは本当なら第一級冒険者など軽く捻り潰してしまう事を知っているが彼女は余計な事は言わないでおいた。

 

 

「いや〜、いい湯だねぇ」

 

「・・・」

 

「気に入ってもらえて何よりだ」

 

場面が変わって男風呂、ヘルメスと桜花も風呂を気に入っていた。極東生まれである桜花にとっては風呂は身近な物であったが彼の所属しているタケミカヅチファミリアは極貧で風呂に入る事が出来なかったので実は久々だったりする。

 

「それにしても、この壁の向こうには美女美少女達の花園があるのか・・・ベル君、この先に興味はないかい?いやあるよな、覗きは男のロマンだぜ!!」

 

「え、ええ!?何を言ってるんですかヘルメス様!?それはまずいですよ!!」

 

「向こうに丸聞こえだろうし、さよなら己の欲望を隠さなかった哀れなヘルメス」

 

「なんかオレに対して容赦なくないかシエン?」

 

「だったらもうちょいまともにしてたらどうだ。アスフィが不憫でならないぞ・・・」

 

「誠実なアスフィと自由奔放なオレで釣り合いが取れてるだろう?」

 

「何の冗談だ、どう見てもマイナスだろうが・・・」

 

『シエン、もっと言ってやってください!』

 

『アスフィ君、苦労してるんだね・・・』

 

『リリ達でいいなら愚痴でも聞きますよ?』

 

『すみません、後で聞いてもらってもいいですか?』

 

やはり先程の会話は向こうにも聞こえていたらしいがヘルメスはというとヘラヘラとした顔をしていてまるで応えていなかった。このくらい慣れっこなのだろうか?

その後オレは一足先に上がり熱い湯を沸かしてパイプに注ぎ込んでいると黄金色のした髪の小人族のフィンさんがやって来た。

 

「悪いね、ウチの家族の我が儘を聞いてもらって」

 

「いえ、オレも昨日の夜に入ってなくて気になっててちょうど良かったですから気にしないでください」

 

「そうかい?なら、よかった。隣、いいかい?少し話したい事があるんだ」

 

「構いませんよ」

 

そう言ってオレの隣に座り込んだ。なんだろう、この人グイグイくるが嫌味がないイケメン補正なのか?

そういや椿さんが引き抜きが云々言っていたな、話ってのは多分それか?

 

「君はなぜ冒険者になったんだい?」

 

「特に理由とかはないですね。ウチのファミリアが出来立てでどこまで行けるのか面白そうだったので冒険者になりました」

 

「・・・・・」

 

「でもオラリオに来る前は本当は冒険者になるつもりはなかったんですよ?ちょっと国に居づらくなったので自分の事を知らない土地で細々〜と生きていけれたらな〜くらいにしか考えてなかったです。・・・けど今は」

 

「今は?」

 

「なんだかウチの団長の事に目が離せなくてですね。アイツ、事あるごとに事件に巻き込まれてほっといたら死んじまいそうでしてね・・・。それにとんでもない壁に挑もうとしてるんですよ、だったらそんな奴の背を支えてやる奴が1人でもいたらいいなってそう思ったんです。ヘスティアファミリアで共に強くなってベルを支える、これが今オレのやりたい事です!」

 

「・・・そうかい(やれやれ、これは引き抜けそうにない・・・かな?)」

 

「ま、大きなファミリアに入るとそれなりに優遇しては貰えるとは思いますけどそれなりに制限もくらいそうですし、過去の因縁とかにも絡まれそうですし、とばったりも受けそうだからってのもあったので出来立てのファミリアに入ったというのもあるんですけどね?」

 

「・・・バレていたかな?」

 

「ハハハ、自分でもちょっと派手に動きすぎたかなと自覚はあるので・・・。それにヘルメスが余計な事をしてくれましたし。もし、未だにこのオラリオが治安が悪かったのだとしたら自分の身の危険を感じてロキファミリアに入団していた・・・そんな事があったかもしれませんね」

 

「僕としてはいつでも来てもらいたいけどね。リヴェリアも気に入っているようだし?」

 

「フフ、それはなんとも光栄な事で・・・。断ったからといっても回復の杖とかは融通しますから心配なさらずに」

 

「それを聞いて安心したよ。これからもよろしく頼むよ、シエン」

 

フィンさんは手を出してきたのでオレも手を出して握手をした。よし、ロキファミリアとの繋がりが出来た。どうしようもなく困った事が起きたら巻き込んでやる。

握手していると何かがドサリと落ちるような音が聞こえて女湯から騒ぎ声が聞こえてきた。

 

「やれやれ、随分と大胆な・・・一体誰だろうね?」

 

「ハハハ、これだからアイツと一緒にいるのは飽きないんですよ」

 

ちなみに覗きをしたのはベルではなくヘルメスで風呂上がりにアスフィにボコボコにされていた、まあしょうがないね。




かなり短くてすみません。なんか区切りがいいのでこれくらいで投稿します。


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嫉妬と娯楽

毎年ダンメモの神シナリオ作るの本当にどうなってるんですか、大森藤ノ先生!

#3周年解説にてアスフィが7年前にはタラリアを作る事ができてない事が判明・・・orz ロキ編がァァァァ!!
ダンまちの二次創作されてる作者様は藤ノ先生のTwitterを見てみる事をオススメします。自分達の知りたいけど本に書いてない情報がわんさか出てきます。

例えば 
 リューは故郷の大聖樹を守護する番人=『守り人』の一族です。幼少期からエルフの戦士として教育を受けていました。
ので、神の恩恵を授かる前から地の能力が非常に高いです。アイズ並みの成長はそこにも起因しています。

ステイタス発現前に実力をつけている者は、苦労を重ねずランクアップするパターンが多いです。
フィンやリヴェリア、ガレスもこのタイプでした。

などなどあります。ランクアップの条件については本当に助かる。


「アイテテテ、少しばかり愛が重すぎるぜアスフィ」

 

「もういい加減にしてくださいヘルメス様!私がどれだけロキファミリアに謝り倒したと思っているんですか!」

 

風呂を上がった後の事、女湯にダイブしたヘルメスの奇行に激怒したアスフィはロキファミリアに謝り倒しながらヘルメスをしばき倒した。

それを見た彼女達はアスフィを憐み、同情してアスフィに免じて許した。

ボコボコにされたヘルメスだったが口元が緩んだままだった。

 

「それで先程から笑っているのですか?少し不気味ですよ」

 

「フフフ、それはだな・・・。シエン達のステイタスを見ることができたからさ!」

 

見ることができたのは風呂に入っている時だった。余りにも無用心過ぎてヘルメスは吹き出しそうだった。そして笑いを堪えながらも確認したところ、もう既にレベル2の半ばを超えており何故そうなったのかもスキルを見て納得できた。さらに【竜化】のスキルも発現していることも確認できた。

 

「まさか、そんな事が・・・」

 

「ヘスティアはまだ下界に降りてきて間もないからステイタスのロックの仕方を知らないのかもしれないな。シエンにそれとなく伝えておくとしよう」

 

 

夕方 シエン

 

・・・大変な事があった。その事を思い出すと今食べてる食べ物が喉を通らない。

覗きをしたヘルメスに一言言ってやろうと思い、居場所を見つけ訪ねると言われた。

 

「シエン、ステイタスがいい感じに育ってきてるじゃないか! レベル3まで後少しくらいか?」

 

なんとヘルメスにステイタスがバレていたのだ。何故その事をと思ったがよく考えてたら裸になって一緒に風呂に入っていたな・・・。あの時ニヤニヤしていたのはそのせいだろう。

 

「まあ、ステイタスを見せてもらった礼だ。ステイタスのロック、背中を見てもステイタスを見えない状態にする方法をヘスティアにオレが教えておくよ」

 

おそらくベルの背中も見られているはず、オレ達はとんでもない授業料を払わされたものだ。自分の油断で大変なことになってしまい、もう覗きの事に関して言ってやろうという気にもならなかった。

 

 

「・・・ハァ」

 

「シエン、元気ないね。どしたの?」

 

「いやちょっと、反省中でな・・・」

 

「覗きの事?あたしは気にしないけど」

 

「その対策が甘かったというのもあるけどもっと大変な事になってな」

 

「?」

 

夕食中、少し落ち込んでいる(ヘスティアも)とティオナが話しかけて来た。わざわざ教える必要は無いと思い言葉を濁しておいた。

ティオナがオレに話しかけているのは現在ベルがいないからだ。ここよりも東の森の中を爆走中でレフィーヤがベルの後を追いかけているようだ。同じ階層とはいえダンジョンの中ではオレの探知能力は安定しなくなる、出来れば戻って来て欲しいのだが・・・。

 

「もう終わった事だし切り替えていくかな」

 

「じゃあさ!またお話ししようよ!」

 

「例えば?」

 

「うーん、シエンのいたイーリスってどんなモンスターがいたの?」

 

ティオナが話題を振ってきたので答えようとする。ドラゴンはモンスターとは別として考えて他にいるとしたら・・・あれしかいないな。

 

「そうだな、もういないけど屍兵ってのがいたな」

 

「へ〜、特徴は?」

 

「身体は人間で黒紫色に変色してて目が赤く光って口からは黒い煙を吐いていた」

 

「ま、待ってほしいっす。身体は人間って・・・ッ!」

 

「ああ、死んだ人間を利用して生まれたのが屍兵だ。生前の記憶のある奴や若干喋る奴などがいた。オレの知り合いも戦場で死んでて再開した時に屍兵にされてそれを殺した事もあったなぁ・・・。戦場で人が死ねば死ぬほど屍兵は増える、厄介な奴らだったな」

 

騒がしかった野営地の空気がシエンの発した言葉で凍りついた。シエンはモンスターと言っていたがそれは自分達が知っているモンスターとはまるで違っていた。

 

「それでちょっと調べてみたんだがその屍兵はな、自然に発生したのではなくある人物が作り出したもののようなんだ」

 

「その人物は、テーベの天才錬金術師フォルネウス、だろ?」

 

「なんだ、知っていたのかヘルメス」

 

「君の屋敷にあった本に書いてあったのを見つけてね。それにしても数千年前の人物が現代までシエン達を苦しめ続けたなんてね」

 

フォルネウスとはヘルメスが言った通り錬金術師であり、彼の研究テーマは死者の肉体を動かし、あのままに操る兵士にすること。それが後に屍兵と呼ばれ。

もう一つはまったく新しい完全なる生物を生み出す事だった。その完全なる生き物は後にギムレーと呼ばれるようになった。

つまり、この人物こそが全ての元凶だった。

 

「そんな事があったなんて」

 

「その男は人をなんだと思っているのだ」

 

「シエンはそんなモンスター達と戦っていたんだね」

 

「まあな、だからまだこっちのモンスターの方が気が楽なんだよ。・・・余計なことを考えずに済む」

 

そんな事を話していると東の森の辺りから光が立ち昇るのが見えた。その後に鳥系のモンスターだろうか、それが悲鳴を上げて空に逃げていくのが見える。

 

「なんだ今のは!?」

 

「あの魔法、もしかしてレフィーヤ!?」

 

「シエン君!」

 

「ああ、あそこにベルの魔力も感じる。心配するな、ヘスティア。あそこには強い覆面さんの魔力もある、しばらくは大丈夫なはずだ」

 

「よし、アイズ達は先行してレフィーヤとベル・クラネルの救出を、第3級冒険者(レベル2、3)は待機だ」

 

『はい!』

 

シエンは不安定ながらもベル達の居場所を把握して状況を伝えた。それを聞いたフィンが素早く指示を出してアイズ達を現場に向かわせた。

結果、2人は怪我をしていたが五体満足だった。野営地に戻ってくる時はベルとレフィーヤは騒ぎながらも前のような険悪な感じはしなくなり距離も少し縮まっているように思えた。やはり喧嘩するほど仲がいいって奴だろう。

ヘルメスとアスフィはベル達の探索の時に姿を消していた。用事ができたと言っていたがどうしたんだろうか?

 

リヴィラの街

 

「クソッタレが!なんであのガキどもがここに来てんだ!?あいつら、レベル2に上がったばかりのはずじゃねぇか!ふざけやがって!!」

 

「おーおー、荒れてんなぁモルド」

 

「るせぇ!!てめえらも人事じゃねぇぞ!?生意気な新人がもうここまでやって来たんだ!ずっと昔からここにいる俺らはさぞかしいい笑い者だろうなぁ!」

 

ここはリヴィラの街のとある酒場、そこでモルドは酒を飲みながら荒れていた。言ってしまえば彼の嫉妬でしかないがここにはオラリオで数少ない上級冒険者がそれなりにいる。そこにいきなり現れた新人に同じ領域に入られたのならば胸中穏やかでない。

それに今神々で話題になっている話題の新人ならばなおさらだった。

それからぐちぐちとその場にいた冒険者達とだべっていると娯楽に飢えた神がやって来た。

 

「ははは、わかりやすいくらいに盛り上がってるなぁ」

 

そこに現れたのはヘルメスと付き人のアスフィだった。モルドは昼頃に新人2人と共にいた事を思い出し、今話していた内容を聞かれていたのではないかと内心肝を冷やしながらも身構えた。

 

「そう身構えなくていいさ、ちょっと面白そうな悪巧みが聞こえて来てね」

 

「だとしたらどうするんで?そのお供1人で俺達の悪巧みを止めさせますか?」

 

「そんな事はしないさ、好きにするといい。オレは君達みたいな無法者も大好きだぜ?この下界は優等生ばかりじゃつまらない」

 

ヘルメスは笑い続けながら言った。その本性を下界の万物を『娯楽』と捉える神の性を垣間見せた。清濁併せ飲む、のではなく、清濁併せ持つ。

そんな神を目の前にモルドは気圧された。

 

「ベル君とシエンを襲いたいんだろう?だったら、今後のオレ達の予定を教えとこうか?」

 

「信用していいんですか、神の旦那?」

 

「おいおい、オレはヘルメスだぜ?子供に嘘はつかないよ。まあ、オレは協力は出来ないけど・・・化物も倒す勇気のお守りなら君達に貸してもいい」

 

そう言ってヘルメスはアスフィから小型の兜を受け取りモルドの眼前に晒す。形状は帽子に近く、前部には鍔も伸びている。色は漆黒だった。

 

「これは・・・」

 

「ウチの【万能者(ペルセウス)】が作り出したものさ。効果のほどは保証しよう」

 

モルドは息を呑み、周りにいた者達も目の色を変えた。オラリオに名を轟かす稀代の魔道具製作者の作品。魔法、スキルと並ぶ力を与えると言われている【神秘】の道具だ。

 

「こ、これがあれば・・・あの生意気なアイツらも・・・ッ!」

 

「さぁ、オレを楽しませる、面白い見せ物にしてくれ」

 

ヘルメスは笑みを深くしてそう答えた。




この夜の時にあの人物がいましたが、あの装備のせいでシエンは居場所を把握できていません。

読んでて思ったこと。
ヘルメス、思いっきり協力しとるやないかーい!!


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魔道士の教え

FFCCをやるのでしばらく休みます!

・・・と思っていましたがあっさりクリアしたので更新します!!
なんだかなぁ、10数年待ち望んでいたのにあっさり終わって悲しい気持ちになりました。



野営地 朝

 

今日、ロキファミリアは地上に戻るべく準備をしている。昨日の夜に下層で受けたという猛毒を治すための薬が次々と届き投与した結果、全員の解毒に成功したからだ。その帰りにオレ達も同行する予定のはずなのだが・・・

 オレ達の主神、ヘスティアの姿が見えなかった。探知をしても頭にノイズがかかっているかのようで上手く居場所を探る事ができない。

 

「シエン!大変なんだ!!神様が、神様が!!」

 

「どうした、ベル。そんなに慌てて」

 

「これを見つけて、神様は誰かに拐われたみたいなんだ!」

 

狼狽したベルがオレの元を訪ねて来てベルが見つけたという置き手紙を読んだ。

 

『リトル・ルーキー、女神は預かった。無事に返して欲しかったら1人で中央樹の真東、一本水晶までこい』

 

・・・大変なことになった。誰がこんな事をしたのかは心当たりはある、あの時の酔っ払いの冒険者だろう。アイツはオレにやられても懲りていなかったという事だろうか? 連れと合わせて3人だけで誘拐・・・ありえない。ここは野営地、それなりに人数もいるしいったいどうやって・・・?

 

「気になることは山程あるが、ひとまず相手の思惑に乗るか。・・・ベル!単身で一本水晶まで行け。オレは囚われたヘスティアを探してくる。・・・出来るか?」

 

「勿論!行ってくる!!」

 

そう言ってベルは防具を着てヘスティアナイフ、ミノタウロスのドロップアイテムでヴェルフが作ったという牛若丸という短刀を持って駆け出した。

ベルを見送った後にオレはヴェルフ達にヘスティアがいなくなったことを告げた。ただし、今一番頼りになるはずのリュー、ヘルメス達は見つからなかった。

 

「シエン、どうするんだ?」

 

「ベルが万全に戦えるようにヘスティアの救出、そしてベルの援護が必須だ。ヘスティアの救出は不安定ではあるが探知出来るオレが行く。ヴェルフ達はベルの援護を頼みたい!」

 

「分かった!」

 

「俺達、タケミカヅチファミリアも助太刀しよう」

 

「そうか、よろしく頼む!よし、作戦開始だ!」

 

 

一本水晶 ベル・クラネル

 

「来たぞ!」

 

僕はシエンと別れて一直線に目的地まで辿り着いた。大きな水晶の後ろから前に見たことのある強面な冒険者が姿を現した。

 

「よく来たじゃねぇか、勿論1人で来たんだろうな?」

 

「そうだ!僕1人だ、神様を返してください!」

 

「いいぜ?このモルド様に勝てたらなぁ!出て来いお前ら!!」

 

そう言ってモルドは合図をすると森に隠れていた他の冒険者達がゾロゾロと姿を現した。

 

「へへへ・・・」

 

「ホントに来やがったぜ、馬鹿な奴」

 

「主神を人質に取ってんだ。従わざるを得ねぇじゃねえか、無理いうなよギャハハハ!!」

 

「さあ、こっちに来やがれ。戦いの舞台は用意してあるぜ!」

 

ベルは今までにこのような悪意にまみれた視線を受けた事はなかった。それ故に萎縮しつつもモルドの後をついて行き、ひらけた場所に着いた。

モルドは自身の持っていた剣を抜き構える、ベルも同様にナイフと短剣を持ち二刀流の構えを取った。それなりに様になっているのか周りにいた冒険者も少し感嘆した。

 

「あの忌々しい魔道士はどうした?」

 

「ここには来ていないですよ」

 

「・・・それもそうか!1人で来いって言ったもんなぁ!」

 

実はモルドは自身を軽く捻ったシエンが来ていないことに安堵していた。仮にやって来たとしてもこの大勢の相手にはどうにも出来ないと思っているが来ないなら来ないでいい。

 

「さあ、決闘を始めるとしようじゃねぇの!ただし、今から始まるのはただの一方的な蹂躙だがな!!」

 

そう言ってモルドは隠し持っていた漆黒の帽子を被る事で姿が見えなくなりベルを痛めつける為に襲いかかった。

ベルは突然に消えたモルドに対応出来ず脇腹に強烈な衝撃を受けて転倒した。

 

「ガッ!?」

 

「マジかよ!?本当に姿が見えねぇ!!」

 

「モルド、もっと痛ぶっちまいな!!」

 

「オラッ、いつまでも寝てんじゃねぇぞ!ルーキー!!」

 

妬みや嫉妬、やっかみといったあらゆるものがベルに襲いかかる。このような事はベルにとっては初めての事で身体が竦んだ。

騒ぎで聞こえづらくなったモルドの土を蹴る音が迫ってきたのでなんとか震える身体を抑えてその場から離れ、辛うじてモルドの攻撃を躱す。

 

「ハッ!なんだぁ!ウサギみてぇに震えてるじゃねぇか、さっきまでの威勢はどうしたよ!!」

 

モルド達の悪意はまだまだ続いた。

 

 

 

ベルが冒険者達に嬲られている所より少し離れ場所にて観察している二人組がいた。

 

「ヘルメス様、これで満足ですか?」

 

「辛辣だなぁ、アスフィ・・・。けどこの光景は今でなくてものちに行われる可能性はあった。ならば今のうちに経験させておこうと俺が思ったんだ」

 

「・・・・・」

 

主神の言い様には思うところがあったが納得できる事なだけに言い返すことができない。出る杭は打たれる、彼らは目立ち過ぎたのだ。

シエンはともかく、ベル・クラネルという少年は基本的に善人だ。そしてこのオラリオにてあった人物、神は運良く善人だった。

それ故に神ヘルメスはベルの悪意に対する抵抗力の無さを危惧した。

いわばこれは神ヘルメスからの贈り物といったところだろう。送られる側は堪まったものでないが。

 

「シエンに何されても知りませんよ、私は庇いませんからね」

 

「彼に魔道具を貸した時点で共犯者さ、そうはいかないぜ?・・・っと、そんな事を言っていたらもう来たのか、カンが良過ぎるのも考えものだな」

 

ヘルメスはベルから視点を変え、頭上を見上げた。そこには空中を駆ける魔道士がいた。

 

 

場面は少し戻りヘスティアは一本水晶から少し離れたところで木に縛りつけられていた。そこには見張りの冒険者が二人いる。

 

「ちょっと君達!いったい何をしているのかわかってるのか!」

 

「へへへ、俺達なりの歓迎会をしてるんすよ。あのルーキーにね」

 

「・・・ッ!」

 

ニタニタ笑う冒険者を見てロクな歓迎会ではない事を察することができる。そしてベルの足を引っ張ってしまっている事に頭を俯かせ唇を噛み締めていると足元に魔法陣が浮き上がってきた。その魔法陣から光が溢れてヘスティアを包み込んだ。

 

「これは!?」

 

「うおっまぶし!」

 

「なんの光!?」

 

そして光が消えた後にはそこにいたはずのヘスティアはいなくなっていた。

 

「おい!女神様がいねぇぞ!」

 

「嘘だろ!?いったいどこに!?クソッ、近くを探すぞ!」

 

ヘスティアを見失った冒険者達はその場を離れてヘスティアを探すべく移動し始めた。

そのいなくなったヘスティアはというと、彼らのほぼ真上にいた。

 

「あれ?ここは・・・って高っ!?それにシエンくん!?君のおかげかい?助かったよ!」

 

シエンはなんとかヘスティアの居場所を探知してそこに行く途中で敵に遭遇する事を避けるために【ミラーバリア】で空中に複数足場を展開してヘスティアいる場所の真上に移動しレスキューの杖で転移させたのだった。今はヘスティアを抱き抱えている状態だ。

 

「助けに来るのが遅れてすまんかった。さて、このままベルのとこに行くぞ」

 

「そうだね!ボクが無事だという事を早くベルくんに伝えないと!じゃないとあの子は安心して戦えない!」

 

全員でベルを助けにいっている為、ヘスティアを元野営地の場所に送っても誰もおらず彼女を守る者もいないのでシエンはヘスティアと共にベルの元へと急ぐのだった。

 

一本水晶 

 

シエンがヘスティアを救出してベルの元へと向かっている間も姿の見えないモルドの攻撃は続いていた。主に拳や蹴りだけで持っている剣は使っていなかった。剣で斬ってしまえばすぐに終わってしまう、より長く痛ぶるには肉弾戦の方がよかったからだ。

しかし、だんだんと戦いの流れが変化しつつあった。

 

ベルはモルドの足音をした場所からすぐさま2Mほど離れるようになった。それだけでも敵の攻撃は回避できる。

それに自分が見られているという【視線】も感じた。

オラリオに来てからやたらと視線を感じるようになったベルは視線に関して感覚がより鋭くなっていた。シエンのような魔力探知はできないが、とある女神による視線によって強化された視線を感じる能力ならばベルの方が上であった。

そして少し離れた木々の上から自分を見つめる二つの視線も感じとれた。

 

「(クソが、いったいどうなってやがる!?何故あたらねぇ!)」

 

少しずつながらベルの被弾が減り焦り始めるモルドに対して他の視線も感じ取れるだけ余裕の出てきたベル。

ベルはこの状況で少し前の鍛錬のことを思い出した。

 

 

『ん、んん?』

 

『そこじゃない、もうちょい右だ』

 

地下18階層で始めた朝練でベルは障壁に触れようと目を凝らしていたが見つけることができない。シエンに場所を教えてもらってもまるで分からなかった。

上手くいかないので一度休憩する事になった。

 

『どうだ?何か掴めたか?』

 

『ぜ、全然分からないよ』

 

『まあ、ベルは魔法を使えるようになったのは最近だから魔力の流れってやつを感じるのはやっぱり難しいのかな』

 

『うん・・・これじゃシエンの【ミラーバリア】を利用して戦えない』

 

『焦らなくてもいいさ、見えないなら見えるようにしてしまえばいい』

 

そう言ってシエンは地面の土を掬い、障壁のある場所へと放った。障壁は土を防いだ後にはね返し土は地面の上に落ちた。

 

『あっ・・・』

 

『これで場所はわかったろ?見えなくたって場所を把握する方法はいくらでもある。ま、今回の鍛錬には関係はないけどな!ほら、続きをするぞ!』

 

『うん!頑張ってみるよ!』

 

・・・・

 

・・・

 

 

「(そうだ!姿が見えないのなら・・・!)」

 

ベルは自分のいる場所の近くに生えている青水晶を右手で掴み折って握りしめバラバラにした。

 

「ウオラァァァ!!」

 

姿の見えないモルドが突撃してきた気配を察してその場所へと砕いた物を投げつけた。

 

「なに!?」

 

青く光る水晶の破片、それをモロに被った透明のモルドの体が光り輝きモルドの姿が見えなくてもはっきりとそこにいることが分かった。ベルはすぐさま右手を突き出し魔法を唱える。

 

「【ファイアボルト!】」

 

「ガアアアアアッッッ!??」

 

緋色の炎がモルドを呑み込んだ、相手はシエンではないので若干手加減をしているがモルドを倒すには十分な威力だった。

 

「クソッタレがァ!もう遊ぶのは終わりだ!ブッ殺してやる!!」

 

目を怒らせて叫ぶモルドは抜剣しベルへと向ける。そしてまた戦いを続けようとすると空から何かが降りてきた。

 

「やめるんだ!」

 

「か、神様、それにシエン!」

 

「なんとか俺達も間に合ったみたいだな」

 

「ヴェルフ、リリ、みんな!!」

 

「よく頑張ったねベル君、このとおりボクは無事だ!もう戦う必要はないよ、もう止めるんだ!」

 

「・・・るせぇ!こんなガキに舐められてたまるか!女神がなんと言おうが関係ねぇ、お前らァ!やっちまえ!!」

 

ベルの仲間達が集まって来たがモルド達の方が人数が多い、頭に血が登っているがままに総攻撃をするように指示を出した。

再び戦いが始まると思われたがヘスティアが静かにベルを守るように前に移動した。

 

「・・・やめるんだ」

 

ヘスティアは静かに一言言い放ち神威を解放する。下界の者を平伏させる神の威光。この場にいる全ての子供達の動きが止まった。ベル達だけじゃない、モルド達も傷付かせないためにもヘスティアは神威を解放したのだ。

 

「剣を引きなさい」

 

「う、あ・・・」

 

普段のヘスティアとは思えないような口調に顔でヘスティアは諭すように告げた。

 

「うああああああ!!」

 

そして1人の冒険者がその威圧に耐えきれず逃亡、1人、2人とどんどん逃げ出しモルドももう戦える状態ではないと判断して撤退した。

 

「ベル君、無事・・・じゃないね。早く治療をしないと」

 

「リリにお任せを!」

 

ヘスティアは振り向きベルに改めて見ると傷だらけで見ていられなく治療をしようとするとリリが飛び出しリライブの杖を使いベルの傷を癒していった。あとポーションを飲ませて体力も回復させる。

 

「うう、ごめんよ。本当にボクが捕まったせいでこんなことになってしまって・・・」

 

「いえ、神様が悪くないですよ。神様を守れなかった僕のせいですし・・・」

 

「なんでも自分のせいにするもんじゃないぞベル、守れなかったというのであればオレにも責任がある」

 

「いやボクが」

 

「いえ、僕が」

 

ベルとヘスティアの自分が悪い合戦が始まった。

 

「ああもう、なんでこんなお人好しばっかなんだよ。普通、連れ去ったアイツらが悪いになるだろ・・・」

 

「それがベル様ですからね」

 

シエンは思わずため息を吐きながら愚痴ると前にベルに救われたというリリが呆れたようにでも誇らしげに言った。

ヘスティアも無事に取り戻しモルド達を追い払ったのでシエンは地上に戻るべく歩き出そうとしたところで足場が揺れた。

とびっきりの嫌な予感がした。




レスキュー

転移魔法 足元に魔法陣が現れそこにいた人物を使用者の近くに転移させる。

シエンが使った場合は魔法陣に入っている人達をまとめて転移させることも出来る。(複数人まとめて転移しても使用回数は一回とする)


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階層主

やっとやで・・・


「な、なんだ!?地震か!?」

 

「これは・・・嫌な揺れだ」

 

リューがそう言うとシエン達もまた悟った。イレギュラーが起きると。

そしてそれはすぐに起きた。天井の水晶の光が薄暗くなり、天井中央の1番大きいものの中に何かがいた。

ダンジョンはさらに振動し、何かが入っている水晶に衝撃を与え、バキリとヒビが入った。間違いない、あの何かが生まれるのだろう。

 

「あれは・・・モンスター!?」

 

「そんな、ここは安全階層ですよ!?」

 

「今は非常事態だからそんな事は関係ねぇぞ、リリ助!」

 

「おいおい、まさか、ボクのせいだって言うのかよ。たったあれっぽっちの神威で・・・冗談だろ?・・・もしかして、ダンジョンにバレた!?」

 

誰もが神威を使い争いを止めたヘスティアを見た。確かにヘスティアにも責任があるのかもしれないがそんな事は後だ。シエン達は南の17階層に上がる穴に急がなくてはならない。

 

 

「いや、あれはヘスティアのせいじゃない」

 

木から降りてヘスティア達の元に行こうとしていたヘルメスも一旦足を止め真上に起きている光景を見ていた。

 

「ヘルメス様、今度は何をやらかしたんですか!?」

 

「流石にオレもあんなことはできないな。厄介な事になってきたな、だがそれがまた面白い!」

 

「なに馬鹿な事を言ってるんですか、さっさと逃げますよ!?」

 

「いや、多分」

 

ヘルメスが言葉を続けようとすると南の方から岩の雪崩が起きて17階層に上がる穴が塞がれてしまった。ダンジョンが憎い神を逃すまいとしている事が嫌というほどに伝わって来る。

 

「あ、やっぱりね。アスフィ、リヴィラの街に行って応援を呼んで来るんだ」

 

「ああもう!分かりましたよッ!いつもこんな事ばかり!これで死んだら恨みますからね、ヘルメス様!!」

 

そう言ってアスフィは西にあるリヴィラの街に向けて移動を開始する。

天井にいたモンスターがいよいよ姿が分かってきた。七Mほどの人型のモンスター、ゴライアスだ。短足の猫背で全身の体色は本来のと違い黒色で背中まで長い白髪の頭髪があった。

 

「ちょっと変わってはいるが、階層主だな。さて、オレ達が勝つか、負けるか。どっちだろうな」

 

まさに絶体絶命の危機だというのにヘルメスはそう怯える事なくどこか達観してこの状況を楽しんでいるように見えた。

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」

 

天井に生まれたゴライアスは重力に引かれ中央樹に目掛けて落下した。落下先にあった。中央樹を押し潰して着地に成功する。これでシエン達は19階層に逃げることもできなくなった。

 

「・・・へ?」

 

なんともマヌケな言葉を漏らしたのはモルド達だった。ベル達の戦いからに逃げてきた彼らは中央の大草原まで来ていたのだが運悪くそこはゴライアスが降ってきた場所に非常に近かった。

そして着地したゴライアスの赤い瞳がモルド達を見て最初の獲物に見定めた。

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

「うわわわわわああああああ!???」

 

モルド達は他のパーティが階層主を倒した後に18階層にくる冒険者達だったのでゴライアスとまともに戦うことなんてあり得なく逃げ一択だった。

 

「黒色のゴライアス!?」

 

「17階層で見た奴よりもずっと強く、素早い!?」

 

シエン達も東の森を抜け大草原にてゴライアスが起こしている惨劇を目の当たりにする。

 

「早く助けないと!?」

 

ゴライアスに襲われているモルド達を助けに行こうとベルは飛び出そうとする。

 

「待ちなさい」

 

飛び出そうとしていたベルを止めたのはリューだった。

 

「本当に彼らを助けるつもりですか?このパーティで」

 

現状のベルのパーティはゴライアスに立ち向かうにしては貧弱すぎる。レベル4のポテンシャルを持つゴライアス相手に無駄死にするつもりかとリューは言っているのだ。

 

「助けます!」

 

ベルは少し躊躇った後にはっきりと答えた。

 

「貴方はパーティのリーダー失格だ」

 

「ッ!?」

 

「だが、間違っていない」

 

リューはそう言ってベルに微笑した後にいち早くモルド達のいる大草原へと駆けて行った。

 

 

 

「全く、ベルはお人好しだよなぁ。あんな事をされたってのに」

 

「うん、でも見捨てられないから」

 

本当にどうしようもない奴だった。助けに行ってお前自身が死んだらどうするんだ?

死なせないようにオレがなんとかするしかないな。ホントにトラブルばっかりだけど飽きさせない奴だよ。

 

「みんなもゴメン!だけど、力を貸して欲しい!」

 

「勿論です!サポートはリリにお任せください!」

 

「俺もやるぜ!ベル!!」

 

「大型モンスターとはあまりやり合ったことはないんだがな。まあ、なんとかなるだろ。オレ達にできる事をやるぞ、ベル!」

 

「俺達、タケミカヅチファミリアも協力しよう」

 

「ベル殿、自分も微力ながら援護します!」

 

「わ、私も、頑張るから」

 

「みんな・・・、よし、行こうッ!!」

 

ベルの呼び掛けに応え、大草原に急ぐオレ達。さて、いったいオレ達に何が出来るのやら・・・

 

 

 

「なんだよ、あれは・・・」

 

ここはリヴィラの街、リヴィラの街でも階層中央付近の大草原に落ちた漆黒の巨人が暴れているのが見えた。ここ18階層ではモンスターが生まれない筈なのに現れるというイレギュラーにここの冒険者達は動揺し動くことができなかった。

 

「ボールス、いますか!?」

 

「アンドロメダ!?お前どこから現れたんだ!?」

 

「そんな事はどうでもいいです!早く、冒険者と武器を集めなさい!あの階層主を倒します!」

 

「討伐だと!ふざけるな!あんなのを相手にする必要はないだろが、逃げるほうが勝ちだ!」

 

「そう出来てたら私だって逃げてます!南の洞窟は崩れて通ることができなくなってます!諦めて戦いなさい!」

 

「・・・畜生め。やるしかねぇかッ!お前らァ!アレとやんぞ!今から逃げ出した奴は二度とこの街に立ち入りは許さねぇからな!」

 

アスフィに必死の説得でリヴィラの街のリーダーのボールスは黒色のゴライアスを倒す指示を出す。動き出した冒険者を見てアスフィはその場から離れ、ゴライアスのいる中央の草原へと急ぐのだった。

 

中央の大草原

 

中央の大草原では戦闘が始まっていた。といってもモルド達がただひたすらゴライアスの太腕から逃げている状況だ。モルド達もタダでやられているだけではなくなるべく被害が出ないようにバラバラに散って行く。

 

『スゥ・・・・アァ!!』

 

ゴライアスは軽く息を吸い吐き出した。それはもっとも離れていた冒険者に直撃し彼は吹き飛び、糸の切れた人形のように転げ回り止まる。

 

「は、咆哮(ハウル)?」

 

「嘘だろ!?アレが!?」

 

『恐怖』を喚起し束縛する通常の威嚇ではなく、【魔力】を込め純粋な衝撃として放出される巨人の飛び道具だ。

予想外の飛び道具に青ざめるモルド達。だがそれだけにとどまらない。

ゴライアスは雄叫びをあげると北、東、西、南、あらゆる所からモンスター達が現れる。ゴライアスが呼んだのだ。

 

『ひ、ひえええええええ!?』

 

モルド達が震え上がりながらも応戦しているとゴライアスが近づいてくる。冒険者の1人が捕まりそうになっていたその時、疾風の如く駆けてきた冒険者が間に合った。

 

「フッ!」

 

それは纏ったケープをなびかけたリューだった。ゴライアスの死角の真横から持っていた木刀をゴライアスの膝に一閃しバランスを崩させる事によりゴライアスの攻撃から冒険者は逃れることが出来た。

 

「おおおおお!」

 

「ハァアアア!!」

 

痛めた膝を見ているゴライアスの隙を桜花と命がリューに続き斧と刀で攻撃するが斧は欠け、刀は刀身が折れる。ゴライアスの身体は尋常ではない硬さだった。

 

「早く離脱を!」

 

ゴライアスが2人目掛けて【咆哮】を撃ち込もうとしているのをリューが見てそう呼びかけるも間に合わない。

 

「【燃えつきろ、外法の業】」

 

【咆哮】を放とうとしていたゴライアスの口元が爆発する。この対魔力魔法を放ったのはヴェルフだ。今の現象を起こしたのをヴェルフをゴライアスはギロリと睨めつけ再び【咆哮】を放とうとする。

 

「【トロン】!」

 

ゴライアスの行動よりも速くヴェルフやリュー達よりも離れたところから雷の槍が飛んできた。ルフレから貰ったシエン専用の魔道書【トロン】に精神力を込めて本を光らせていつでも戦闘準備万端なシエンだ。

シエンは攻撃するだけでなくこの場所で怪我をした人を移動しながらも【リライブ】の杖を使い治療を開始し即座に回復させる。

 

「て、テメェは!?」

 

「邪魔だ、サッサっとどっかいけ!」

 

シエンは素早くモルド達全員を治療する。なにか言ってるようだがそんなのにかまっている暇はない。

それは【魔導】により威力の上昇した【トロン】を食らったゴライアスの身体に穴が空いてないからだ。この世界に来て今までにはない強敵だ。

 

17階層にて出現する普通のゴライアスはレベル4相当のポテンシャルを持つ、しかしこの個体は違っていた。シエン達は知らないがたくさんのモンスターとの戦闘経験のあるリューは思った。

このゴライアスのポテンシャルはレベル5に届くと。

 

「グオオオオオオオオ!!」

 

マッドビートル、バクベアー、ガン・リベルラ、ミノタウロス・・・あらゆるモンスターがこの場へとやって来る。

 

「邪魔くせえ!全員伏せろ!!」

 

シエンは足元に黒い魔法円を浮かび上がらせ、シエンの周りに多数の魔法陣を展開しシエンを中心に魔法陣が回転を始める。そこから現れるのは雷の槍で冒険者達に当たらないように高さを調整し全てを塵に変えた。

 

「あの量のモンスターを一撃で!?」

 

「速すぎる・・・」

 

「なんという・・・」

 

「流石はヘスティアファミリアの魔導士だぜ、シエン!」

 

「とはいってもあのゴライアスには何にも効いてないからな!覆面さん!そこんとこ頼んだ!!」

 

「お任せください」

 

シエン達のゴライアスとの戦いはまだ始まったばかりだ。




複数のトロンの回転はガンダムWのローリングバスターライフルをイメージしました。


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階層主2

あけましておめでとうございます!

皆様にとって明るい年になりますように!!


シエンが迫り来るモンスター達を一掃した頃、ヘスティアと千草は中央から西にあるリヴィラに向かおうとしているとアスフィが支援を頼んだボールス達に会った。

 

「あれ?君達は!?ボク達はこれからリヴィラに応援を頼もうと思っていたんだけど」

 

「その応援ですぜ、女神様よ!それで、リヴィラに避難するので?今現在リヴィラには誰もいませんが」

 

「・・・ならば君達の側にいた方がまだ安全だね。もちろん戦う事は出来ないから怪我の治療くらいだったら手伝うよ!」

 

「了解しましたぜ!おいお前ら!中央から真南の小高い丘に拠点を作るぞ!出来次第中央のバケモン退治だ、急げ!!」

 

リヴィラのボス的なボールスは次々と指示を出し、冒険者達は持ってきた武器を置き、切り倒した木を地面に突き刺したりして丘に簡易的な拠点が出来上がった。その後冒険者達は武器を手に取り唸り声を上げて中央に向かって走って行く。

 

「へ、ヘスティア様。これなら・・・」

 

「うん、勝てるかもしれない。こんなにも沢山の冒険者がいるんだ!」

 

中央

 

「お待たせしました、援軍を呼んできましたよ!シエン、リオン!」

 

「僕もやるよシエン!」

 

援軍を呼んできたというアスフィとモンスターに襲われていた冒険者達を助けていたベルが前線にやって来た。ベルは他の冒険者に譲ってもらったのか大剣を握りしめている。

 

「クラネルさんは私と共にあのモンスターを撹乱します。今の貴方ならば私に着いて来れる」

 

「シエンは魔法によるアシストを。攻撃、防御、回復にあと空中に足場を作ってください。リオン、どこに足場があるか感じ取れますね?」

 

「はい、先程シエンさん達が空中から降りてきた時も感じ取れました。いけます」

 

リューは只者ではないとは思っていたがオレの魔法を感じ取れるか、なかなかにやるな。それにしてもオレだけやる事多くない?

 

「それでは私は「お前ら!【万能者】が最前線で戦うぞ!その間にどデカい魔法や矢を準備するんだ!!」・・・」

 

アスフィは前線から引き下がろうと言うつもりだったのだろうが片目に眼帯を付けてる大男が勝手に勘違いをして周囲の冒険者達に指示を出した。これではアスフィは引くことができなくなった。

 

「オオオオオオ!!」

 

「どうやらゴライアスは待っているのも飽きてきたみたいだぞ。アスフィも来いよ、最前線になぁ!!」

 

「シエン!?ああ、もう!どうしてこんな事になってしまうんですかァ!」

 

再び動き出したゴライアスに向かってオレ達は動き出す。前衛壁役の盾持ちのレベル2.3のドワーフがゴライアスの【咆哮】を受け止め、後方には魔法円を展開する多数のエルフを始めとする魔導士達。(なおシエンは最前線)着々と魔法を放つ準備を整えていく。

それを見逃すまいとゴライアスが攻めようとするならばアスフィが持つ爆炸薬がゴライアスの胸元に直撃し破裂して視界を妨害する。

 

「よし、今だ!!攻めるぞ!!」

 

シエン達以外の前衛達もゴライアスに攻めかかる、もともとこの非常時に集められたメンバーなので連携なんてあったものじゃない。ただメチャクチャに襲い掛かる。

 

「オオオオオオ!!」

 

「ヒッ!?」

 

ゴライアスが雄叫びを上げ前線の1人の冒険者に殴りかかった。周りには他の冒険者がいるがその1人は逃げ遅れたのだろう、直撃コースだ。

 

「【ミラーバリア】!!」

 

無色透明な障壁がゴライアスと冒険者の前に突然に現れるがほんの1、2秒のだけ拳を押し留めた後に粉々に砕け散った。だがそれだけあれば充分、シエンは【呪い】を発動し黒い手が冒険者を鷲掴みにして後方には放り投げつつ【ファイアー】を20発ほど連射する。ゴライアスに着弾し爆発による煙でゴライアスの視界を奪う。アスフィの真似だ。

ゴライアスは煙を振り払う為に拳を無茶苦茶に振り回す、その間にシエンも引く。シエンを狙おうとしてもリューが背後から襲いかかり体勢を崩す、そして他の冒険者達が襲い掛かる。この繰り返しだ。

ゴライアスとしては鬱陶しい限りだろう。・・・だが、まるで効いていない。

 

「あれだけ攻撃してるのにまるで応えていない!?」

 

「あのゴライアスはどうやら自己再生能力に長けているようですね。怪我を治す時に赤い光が出ています。魔力を消費して回復しているのでしょう」

 

「前衛、引けぇっ!!デカいのをぶち込むぞ!」

 

ボールスの号令にシエン達はすぐさまその場を離れた。それと同時に魔導士達が準備をしていた魔法を叩き込んだ。

火、雷、氷柱の雨、風の渦がゴライアスに怒涛の勢いで直撃し、一時的にその場は静まり返る。

 

「やったか!?」

 

魔導士の1人が勝ちを確信した時、砂煙を振り払う豪腕が見えた。その姿が見えた時、そこにいる冒険者達は驚愕した。

そこにいるゴライアスは全くの無傷だったからだ。先程の前衛達の攻撃の方が効いていただろう。

 

「そんな・・・」

 

「魔法耐性が凄まじく高いんだろうな、オレの【トロン】があんなにもあっさり弾かれたくらいだ。納得がいくってもんよ」

 

「そんな事冷静に言っている場合じゃありませんよシエン!・・・ッ!来ます、退避ィ!!」

 

魔法を受けたゴライアスはこちらの番と言わんばかりに拳を握りしめて思いっきり地面に叩きつけた。大草原が割れ、凄まじい爆発を起こし衝撃波を発生させた。

 

「逃げ切れねえ!【ミラーバリア】!【ストーン】!」

 

迫り来る衝撃波から逃れられない事を察したシエンはシエンの周囲にいる冒険者達を守るように障壁を張りつつ障壁の外に石の障壁を生み出した。

衝撃波はゴライアスの拳よりも強くないようで石の障壁によって防ぐ事に成功した。

 

「・・・よし!これくらいなら凌げる!」

 

「流石だね、シエン」

 

「ですが、私達以外の被害は甚大なようですね・・・」

 

衝撃波によるシエン達以外の冒険者達の被害は甚大だった。前衛のみならず後衛の魔導士達も衝撃波に巻き込まれており立ち上がる事もできなくなっている。そしてゴライアスは再び動き出す。

 

「オオオオオオオオオオオオ!!」

 

ゴライアスが叫ぶとこのフロアにいるモンスター達が中央に集まろうと動き出す、このままではまだ立ち上がることが出来なくなっている冒険者達は蹂躙されてしまうだろう。

 

「アンドロメダ、私はあのモンスターの足止めをします。手伝ってください。クラネルさん達は後衛の立て直しをお願いします」

 

リューはアスフィに援護を頼んだ。シエン達は知らないがアスフィのレベルは4、リューと同じでかつて共に戦った戦友でもある。

 

「私と貴方の2人で足止めですか、決定打に欠けますが仕方ありませんね」

 

「アスフィ、【リザーブ】の杖を持ってないか?それがあれば一気に戦況を整えることができる」

 

「ええ、持っています。私よりも貴方の方が上手く使えるでしょう、使ってください。リオン、行きますよ!」

 

アスフィから【リザーブ】の杖を受け取り、彼女達と別れた。シエン達は真南にある拠点を目指し移動する。ゴライアスから十分に離れた今、シエンは【リザーブ】の杖に精神力を込める。

 

【リザーブ】、これは周囲にいる仲間を回復させる杖である。この杖にはあまり回復力はないのだがこれを使用する者の【魔力】が高いと回復力、更に回復範囲が増えるという代物だ。まさにパーティに一つは欲しい代物である。

 

「ハアァアアアア!!」

 

【魔導】も発動してこの杖を作ったシエン限定の効果も発動する。その効果は【魔力】【魔導】の高さによる回復効果範囲の倍加。

シエンの足元に現れた黒色の魔法円を超え、現在戦っている冒険者達のいる場所全てを飲み込むほどの大きさの魔法陣を展開し、そこから白緑色の粒子が溢れ傷ついた全ての冒険者達を癒した。

 

「こ、これは?」

 

「い、痛くねぇ。折れてた腕が治っている!?」

 

「寝っ転がってる場合じゃねぇ!モンスター共を押し返すぞ!!」

 

南の拠点に運び込まれていた怪我人も当然魔法陣の範囲に入っており全て完治した。ゴライアスに怯えていた冒険者達も武器を持ち立ち上がる、再びゴライアスに向かっていく。崩れていた戦況が立ち直り始めた。

 

「一体何が・・・?」

 

「この光、シエン君さ。この戦況をあっさり変えるなんてね。ベル君、君だって負けちゃいないよ。君の全力をぶつけるんだ!!」

 

ヘスティアは前線で戦っているであろう中央に視線を向ける。ここからが反撃の時だ。




【リザーブ】
・周囲全体回復魔法

・魔力の高さにより回復力が変化する

・シエンが使用した場合は回復範囲が更に広くなる
・体力も回復する


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半覚醒

遅くなってすみません・・・

厳しい評価有難う御座います!なかなかに考えさせられるコメントでした。
こういうの素直に嬉しい


『オオオオオオオオオオオオ!!』

 

各所で回復した冒険者達の雄叫びが上がる。士気が上がっているのかモンスター達の討伐される速度が上がっていて中央にやってくるモンスターの数も減っていてゴライアスの相手をしているリュー達の負担も減っていた。

 

「この光はいったい?」

 

「シエンですよ。弱体化していたとしても流石は彼の国が誇る魔導軍将殿ですね、侮れない!」

 

アスフィ達も切り傷程度であるがダメージを受けておりシエンの【リザーブ】による回復が施される。怪我だけでなく体力も全快だ。

アスフィ達に迫ろうとしているモンスター達も雷の槍に貫かれ魔石を残し消滅していく。

 

「・・・とはいえこの状況を打開するには強力な何かが必要です。アンドロメダ、何かありませんか?」

 

「それがあればこんな前線には来ていませんよ!」

 

アスフィ達が必死で足止めしつつ攻撃してもすぐさま回復してしまい、魔法には異常なまでの耐久性を誇るイレギュラーの階層主。回復する為には魔力を消費していることから、その魔力の源である魔石が徐々に小さくなりそれと同時にモンスターも弱くなっていくが現状ではあまり現実的とは言い難い。仮にそれで階層主を倒したとしても残る冒険者は僅かであろう。とても勝利とは言えない。この状況を打開する者、誰しもが【英雄】を求めていた。

 

中央より少し南 ベル・クラネル

 

「よし!全員回復してるな!これでまたゴライアスが拠点に行くのを遮ることができる!」

 

100人近くはいるであろう冒険者を瞬く間に回復させたシエン。・・・凄い、本当にシエンは凄い。それに比べて僕は・・・。

いや、そんなことを考えるな。僕にしか出来ないこと、それをやるんだ!

【英雄願望】、そうだ僕にはこれがある。前に使ってみて分かったことだが体力と精神力を大幅に削られる諸刃の剣。この後の戦闘では僕は使い物にならなくだろう。失敗したらどうしよう、ゴライアスに当たらなかったらどうしよう、そんなネガティブなことを考えてしまう。

けど、この状況を変える為にはこれしかない。僕は蓄積を始める、右手に白い光粒を収束させ大剣も白く輝きだした。リン、リンと鈴の音色が鳴り響く。

 

「この光、インファントドラゴンの時の・・・。よし、試してみる価値はある!ベル、後どのくらい時間がかかる!?」

 

「まだまだ掛かる!」

 

「具体的なのを知りたいがまだ2度目だもんな、無理もない。出来る限り貯めろ、時間稼ぎはオレ達がやる!」

 

そう言ってシエンは再び前線へと飛び出して行った。魔道士でありながら自らを危険を晒すシエンを不安に思いながらも僕は僕のやるべき事に集中した。

 

 

 

再び前線へと戻るオレは【トロン】によるダメージが見込めない事から足元ばかりを狙いゴライアスの体勢を崩すことのみに集中する。一直線に雷の槍が足を撃つと思いきや【ミラーバリア】を多数展開して【コ】を描くように槍の軌道変え膝裏に直撃させる。ただただぶつけるだけじゃない、工夫をすれば役に立つ。

 

「オオ!?」

 

「ハァ!」

 

「オオオオオオ!??」

 

後ろからの槍の直撃により左膝を曲げることになり体勢が崩れる。その隙を逃さずリューが木刀で右足の太ももを打つとゴライアスは体勢を保てず右に転がり転倒する。伝えてないのに良くもまあやってくれたものだ。機転が効く。

オレが2人に手招きするとゴライアスに追撃せずこっちに寄ってきた。

 

「手短に言う、ベルのスキルでアイツを倒す」

 

「クラネルさんの、ですか?」

 

「それはインファントドラゴンを倒したというあの噂の?」

 

「ああ、アイツは現在その準備をしている。その間はオレ達でアイツを足止めする。いいか?」

 

「「了解!」」

 

話を素早く終わらせリューはゴライアスに接近、アスフィはリューよりも少し離れた位置に、オレは更にその後ろだ。オレは時間稼ぎをするだけでいい、ベルに繋がなくては!

 

ゴライアスは迫り来るリューを見つつも黒ずくめのシエンを見つめた。自身にロクな怪我を負わせる事はできないが先程の強大な魔法を扱ったのはアレなのだと勘が働いた。アレを潰せばまた揺れる、そんな気がした。

 

「オオ、オオオオオオ!!」

 

迫るリューに向かって突撃する。リューはその巨体に触れるだけでも跳ね飛ばされてしまうだろう。リューはゴライアスの突撃を躱さざるを得ない。

 

「アンドロメダ!逃げてください!」

 

次にゴライアスはアスフィに迫る。その時アスフィへの道に自身の大きさを超える石の障壁が突然に現れてアスフィの居場所も分からなくなるが構わずにゴライアスは突き破る。破壊した後に彼女の姿を見つけることができても無視、狙いはシエンのみだ。

 

「(私を攻撃しない?狙いは・・・まさか!?)シエン、逃げなさい!!奴の狙いは!!」

 

「オオオオオオオオオオオオ!!!」

 

アスフィがゴライアスの狙いに気付いてもゴライアスが咆哮を上げる事でそれを妨げる。リューも追いつき木刀を使い殴りつけても無視、全力でシエンを潰しにかかっていた。

 

「【ミラーバリア】!」

 

シエンは障壁を貼りつつも距離を取ろうとするがゴライアスの方が速く、追いつかれてしまう。ゴライアスは障壁を拳をぶつける事で軽々と壊し、拳を開き手のひらの内側にシエンを掴み取った。ゴライアスはもう片方の手をシエンを掴んでいる手を包み込んで万力の力で握り潰した。

 

シエンが握り潰されたその状況は全ての戦場で戦っていた者達に見えていた。レベルの高い者、目の良い者達はゴライアスの拳の隙間から赤い液体が流れ出てきているのが見えた。いったい何なのか、語る必要もないだろう。

 

ゴライアスは拳を開くと黒ずくめの塊が地面に吸い寄せられるように落ちた。それで終わる事はなく拳をシエンのいる場所に叩きつけ続ける。その光景に目を背ける者も現れる。自分もああなるのだと強烈すぎる光景が今その場で行われていた。

 

「あ、ああ・・・シエン、様?」

 

「おいおい、ふざけろ・・・」

 

リリ達も同様で助けに行かないといけないが足がすくむ、動ける者はリューとアスフィ以外にいないと思われたが1人だけいた。

 

「あ、ああ、ウワアアアアアアア!!シエンから!離れろォオオオオオオ!!」

 

素早く動きだしたのは【英雄願望】をチャージ中だったベルだ。とても大剣を持っているとは思えないほどの神速でゴライアスに迫る。チャージは終わっておらず中途半端だったが黙ってみていることなどできなかった。大切な仲間が、ファミリーの命が奪われようとしているのだ。

 

この場にはもう自分に致命的なダメージを与えるものはいないと油断していたゴライアスは前からベルが近づいてきているのを気にしない。ニタリと笑みを浮かべながらシエンを殴り続けることをやめなかった。

 

「ぜやあああああああああああ!!」

 

ベルは白色に輝く大剣をシエンを殴り続けている腕を叩き斬る様に横薙ぎに振るうと白色の斬撃が飛びその斬撃が振り下ろしていたゴライアスの右腕に当たり、身体からズリ落ちた。

ベルの大剣は役目を終えたのかスキルに耐えきれなかったのか砕け散った。ベルもスキルを使った事により体力を奪われており片膝をつき動けなくなっていた。

 

「切れ、た?」

 

「やれるのか?勝てるのか!?」

 

「やれる!やれるぞ!!お前ら、【リトル・ルーキー】を守れェェェェ!!」

 

『おおおおおおおおおおお!!』

 

ベルが見せた勝利への可能性は他の冒険者達の士気を大いに上げた。動けなくなっているベルを救い出そうと冒険者達は中央に集まろうと走りだした。

 

「ベル様・・・!拠点にはあの大剣よりも良さげな物がありました。リリが持ってきます!!」

 

「リリスケ!?」

 

「リリがここにいても何も意味がありません!シエン様が生きているかはヘスティア様に聞いてきます!」

 

リリは自分のできる事をしようと拠点へと走りだした。ヴェルフはヘスティアから渡された白い布で覆われた魔剣を剥き出しにして構える。「自分の意地よりも仲間の命を優先すべき」とヘスティアより聞かされたヘファイストスの言葉が胸に刺さる。

もし中層で魔剣を振るっていたらこんな所に来ずに良かったのかもしれない。死ぬような思いをする必要なんてなかったのかもしれない。そんな言葉が頭に浮かんだ。

 

「(畜生ッ!だが今はそんな事を考えてる場合じゃねぇ!リリスケも自分にできる事をやろうとしている。今は意地を捨てる、俺も俺にしか出来ない事をやる!)」

 

ゴライアスの近くにベル達がいるために魔剣を使って攻撃して巻き込むわけにはいかないので構えるだけで留める。ヴェルフもまたゴライアスに攻撃する機会を狙ってただ待つだけだ。

 

 

「オ?オオオオオオオオオオオオ!???」

 

ゴライアスは何が起きたのかわからないといった感じだったが、自分の右腕を切り落とされた事を自覚するとシエンから標的をベルへと切り替え右腕を再生しながら残っている左腕でベルを殴りつけようとした。

ひ弱な兎がミンチになりそうになった時にリューが駆けつけベルを抱えて拳を避けた。そのままゴライアスから距離を取るために走り続ける。

 

「う、リューさん!?」

 

「間一髪でしたね、クラネルさん」

 

「は、はい。そうだ!シエン!シエンは!?」

 

ベルはシエンがいる場所を見ると地面が割れていたり殴りつけていたことから凹んでいる。埋まっているのかシエンの姿は見えなかった。

 

「クラネルさん、シエンさんが心配なのは分かる。あのゴライアスの標的が貴方になった事であのゴライアスはシエンさんを攻撃する事はないでしょう。出来るだけ彼からあのモンスターを引き離します」

 

リューは取り乱しているベルに冷静に諭す。ベルはそれを聞いて少し落ち着けを取り戻した。

 

「このハイポーションを飲んで体力の回復を、あのゴライアスを倒せるのは貴方しかいません。私はゴライアスを近づけさせないように足止めします。頼みましたよ」

 

「は、はい!」

 

そう言ってリューはベルに微笑んだ後にゴライアスに向かって走りだした。リューから貰った回復薬を飲み、体の調子が戻ったベルはシエンがいる場所をチラリと見た後に中央から離れ南の拠点へと走りだした。

 

「ヘスティア様!!シエン様が!!」

 

ベルよりも先に拠点に辿り着いたリリはヘスティアを見つけシエンの安否を尋ねた。

 

「サポーター君、安心してくれ。大丈夫さ、シエン君は生きてるよ。僕の恩恵は消えてない」

 

「本当ですか!?ベル様に伝えないと、それと武器を」

 

その言葉にリリはホッとした後に拠点に置いてある武器を探し始めた。探していると一本だけ黒色の剣のような物を見つけた。他のものとは違い妙な威圧感を感じるような気がした。

 

「(なんでしょうこれは?これならば行けそうな気がします!)」

 

とてもリリには持てそうにない大きさではあるがスキル【縁下力持】によってどんな重いものでも持てるようになっているのでベルの元へ運ぶ事も可能だ。 

リリはベルの元へと急ぐのだった。

 

最前線 シエン

 

ゴライアスに握り潰されオレはしばらくの間、意識が途切れ真っ暗になっていた。今はどうやら生きているようだが身体のあらゆる部分が動かない。それに視界も真っ暗で口の中には血の味と土の味がした。地面の中に埋まっているのだろうか?戦況はどうなっている?ベルは?みんなは?

・・・分からないことだらけだ。体がダルい、身体がもう休めと催促をしてしてくる。もう寝てしまいたいくらいだ。

 

「シエン、聞こえますか!?聞こえているのなら早く出て来なさい!今、ベル・クラネルがあのゴライアスを倒そうとしている!」

 

上から微かにアスフィの声が聞こえる。彼女らしくなく大きな声をあげるということはなかったのに。そしてアスフィの言ったことをぼんやりと理解する。あの、ベルが?オレが手も足も出なかったゴライアスを、倒す?出来るのか?

 

「倒すためには時間稼ぎが必要です、私達だけでは足りません!貴方の力が必要なんです!」

 

そうだ、ベルの【スキル】か。うまくいったんだな。オレの力が必要、か。アスフィにそんなこと言われたら頑張るしかないじゃないか・・・ッ!

身体に力は入らない、けどオレには必要のない事だ。オレに必要なのは【魔力】と【魔法】のみだ。

 

ゴライアスがシエンを殴り続けた場所から黒紫色の魔力が少しずつ地面の割れ目から溢れ出てくる。それが一部の地面を吹き飛ばして黒紫色の物体が地面から僅かに浮き上がった。

全身は黒紫色の炎のように燃え上がり人の形はもはや見えず、以前のように目と口からは赤紫色の炎が出ている。今回はさらに両肩と思わしき所から黒紫色の炎が噴き出しており、魔力の圧が尋常ではなくこの場にいる者たちの視線を釘付けにした。

 

「な、なんだよあれ・・・」

 

「バケモンか!?」

 

相変わらずの扱いにシエンは失笑しそうになるが呼吸するだけでも辛いのでやめておいた。今はただやるべき事をやるだけ、【魔力】を全開にして【魔導】も発動、トロンの魔道書にも触れて精神力を流し込み魔道書は黒紫色に光を放ち準備は完了した。

いつもの倍以上の大きさの魔法陣がシエンの目の前に出現し、そこからゴライアスと同じくらいの大きさの紫電を纏った雷の槍がゴライアスへと突き進む。

その射線状にいた冒険者達は慌ててその場を離れた。

 

「ゴォ!?オオオオオオオオオオオッッ!?」

 

自分の同じくらいの大きさの雷の槍をもろに受けたゴライアスはベルのいる場所から遠くへと追いやられた。が、ゴライアスは無傷。今のシエンでもダメージを通す事は出来なかった。

 

「(こちとら瀕死でパワー全開だってのにッ!・・・落ち着け、オレは時間稼ぎをすればいいんだ。押し戻すだけでも十分だ!)」

 

自分のやるべき事を、勝利を掴む為に魔道士は再び立ち上がった




握り潰さそうになった時に全身に【竜化】を始めた為、硬化が間に合わなかった部分が大変なことになってます。

シエンの浮遊移動の仕方はロックマンエグゼのフォルテをイメージをしています。(オーラを纏いながら直立状態で移動)



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