東方妖怪堂   (ノック)
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オリキャラ、設定紹介  ネタバレあり

今更ですが、オリキャラ紹介します。


 

名前 エル

 

年齢 16歳

 

性別  男

 

種族  人間(途中から半人半妖)

 

能力  契約する程度の能力

    

キャラ詳細

 

幻想郷の森で妖怪専門店【妖怪堂】を営んでいる少年。外の世界出身だが、幻想郷に迷い混んで、人里で暮らしていたが、途中から紫に10歳頃まで保護されていた。霊夢、魔理沙とは幼馴染みだが、とある理由から姿を消した。

 

妖怪に好かれる体質を持っている。エルの相棒はルーミアである。

 

妖怪堂の存在を知っているのは、一部の人間と妖怪だけ。

 

妖怪、人間、妖精から好意を寄せられているが、トラウマが原因で、気づいていない。

 

 

 

エルの使い魔と式神

 

レイ

 

エルが幻想郷に来て初めて出会った妖精である。感情表現が幼いからか、頻繁にエルに抱きついている。

 

能力 痕跡を辿る程度の能力

 

 

 

レイン

 

フランドール・スカーレットの狂気なる人格の存在だったが、エルが分離させて、式神として存在を確立させた。エルの事をマスターと呼んで慕っている。物凄く大食いのため、咲夜から説教を受けている。

 

フランドールの事を姉のように慕っている。エルの式神だが、紅魔館でフランドール専属のメイドをしている。

 

能力 ありとあらゆる耐性を与える程度の能力

 

 

 

 

 

 

 

 

 

名前 ロード

 

性別 男

 

種族 半人半妖

 

能力 ありとあらゆる力の欠片を集める程度の能力

 

 

キャラ詳細

 

エルの分身体で、記憶喪失のエルの代わりに、紅魔館でフランドール専属の執事をしている。ロードがエルの分身体と知っているのは、八雲家、紅魔館、四季映姫、伊吹萃香と一部の人間。

 

エルからは兄呼ばわりされている。

 

 

 

 

 

 

 

名前 ニーナ

 

種族 猫又

 

能力 不明

 

キャラ詳細

 

エルが幼い頃に出会った友達である。だが、先代博麗の巫女と霊夢からの襲撃を受けて、一時期エルから姿を消していた。それが原因でエルの悲しみを知り、霊夢に復讐を企んでいるが、エルと同じく人間が好きなため、霊夢以外には善意に行動している。

 

 

 

 

 

 

 

 

名前  黒牙

 

種族  猫神

 

能力 邪を祓う程度の能力

 

キャラ詳細

 

猫の神様で、普段は人里の商店街を散策して招き猫のような存在として扱われているが、幻想郷の掟を破る存在を断罪する存在である。

 

紫とは酒飲み仲間。

 

幻想郷の賢者の一人である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖怪堂

 

妖怪堂は妖怪の依頼を優先的に受ける妖怪専門店。品物やアドバイス等を支援する。だが、幻想郷の裏側から妖怪と人間を均等に保つ存在であるため、時には人間の暗殺もする。博麗の巫女に存在を知られてはならない条件で、紫がスポンサーをしている。

 

閻魔の裁きを受ける際は、地獄行きが確定しているが、閻魔の裁量によっては、閻魔の補佐をする仕事で、白紙になる慈悲を受ける事も出来る。



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本編


初投稿です。

文才0ですがよろしくお願いします




幻想郷の魔法の森に迷い混んだ少年がいました。

 

「道に迷った…‥どうすればいいんだよ…‥」

 

散歩していて気がついたら森に迷い混んだようだ。

 

「そろそろ夜になっちゃうよ。今日は野宿して明日朝早く起きれば良いかな。」

 

溜め息をつくと、鞄に入っている食糧を準備している最中に赤いリボンをつけている少女が、少年に近付いてきた。

 

 

「お前は、食べても良い人間?」

 

 

「ルーミア…‥毎回その質問で挨拶はやめない?」

 

 

「そーなのかー。エル久し振りなのか―」

 

 

「今日は元気が良いな。ルーミアは何してるんだ?」

 

ルーミアはエルを見るなり抱きついてきた。

 

 

「エル!お腹すいたのだ―」

 

 

「ハイハイ。今からご飯の準備するから待ってろよ。」

 

 

「わかったのだ―」

 

 

エルから降りて大人しくすると、ルーミアの頭を撫でながら調理器具を取り出して料理を始める。

 

 

「ルーミア。最近変わった事何かあったか?」

 

「うーん…‥最近人間食べてないからお腹が減りやすいのだー」

 

 

「紫さんに相談してみるよ。よし。肉が焼けたぞルーミア。」

 

 

ルーミアに肉を渡すと、嬉しそうに食べ始める。

 

 

「エルは、肉食べないのか―」

 

 

「肉苦手なんだよ。その代わり野菜食べる。」

 

 

「そーなのか―…‥ご馳走さまなのだ―」

 

 

「お粗末様。さて、野宿する準備するかな。」

 

 

調理器具をしまいテントの準備をしている。

 

 

「エル!?野宿するのか―!危ないのだ―」

 

 

「心配してくれてありがとなルーミア…‥」

 

 

「…‥…‥おやすみなのだー」

 

 

ルーミアは、恥ずかしそうにして逃げるようにテントに入るのを確認してからエルもテントに入って眠った。

 

 

「あらあら…‥こんなところで寝てたら妖怪に襲われるわね。明日は、エルに頼みたいことがあるからテントの周りに結界をしておきましょう」

 

 

紫は笑みを浮かべながらテントの周りに結界を施すと、隙間から出て封筒をテントの中に入れる。

 

 

「そろそろ、帰ろうかしらね。藍は結界の点検をしておいてね。」

 

 

「畏まりました。紫様。」

 

隙間から紫の式神で、九尾の狐…‥八雲藍が姿を表す。

 

 

「紫様。エル宛に依頼書が来ました。」

 

藍から木箱を受け取ると、中身を確認する。

 

「どうですか?」

 

 

「問題は無さそうね。この依頼は、来週辺りにエルに渡しておいてね。」

 

 

木箱を藍に渡して、1枚の依頼書を見て悩み始めると、藍は紫を心配そうに見つめていて…‥

 

 

「藍…‥どうしたのかしら?」

 

 

「紫様は悩み事ですか?」

 

 

「悩み事…‥違うわよ。依頼書の中に…‥をしてほしいのがあるみたい…‥」

 

 

「その依頼は、難しいと思いますが…‥」

 

 

「この依頼は、また今度エルに相談するとして帰るわよ。」

 

藍と紫は、スキマで帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝になると、エルとルーミアは目を覚まして朝食の準備をしている。

 

「ルーミア。肉が焼けたぞ。」

 

 

「わは―!いただきます!」

 

 

肉を受け取ると、嬉しそうに食べ始める。

 

「美味しいのだー」

 

 

「そうか。沢山あるから遠慮せずに好きなだけ食べろ。」

 

 

エルから肉を貰い食べ始めながら…‥

 

 

「エルは、これからどうするのだー?」

 

「にとりに頼んでいた物を貰いに行くんだよ。ルーミアは、どうするんだ?」

 

「一緒に行くのだー」

 

「食べ終わってから行くか。」

 

 

朝食を食べ終わると、道具をしまいテントを片付けると、懐から札を取り出して地面に落とすと…‥

 

 

青い渦が出現して、エルとルーミアが渦に呑み込まれて姿を消した。

 

 

 




次回は、妖怪の山に向かう予定…‥


だが、寄り道するかも…‥


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ルーミアとエルは、妖怪の山に到着します。

さらに、オリキャラ登場します

本編どうぞ


エルとルーミアは、妖怪の山に来ていた。

 

 

「どうやって行くのだー?」

 

「既に山を上る許可をもらってるから大丈夫だ。」

 

と言って、鞄から何枚か札を取り出す。

 

 

「許可はもらってるけど、襲われたら面倒だからな。一応、準備しとかないとな。」

 

 

ある程度準備を終えると、山を登り始める。

 

 

「エル…‥誰か来るのだー」

 

 

「ここから先は、関係者以外立ち入り禁止です。今すぐ立ち去りなさい。」

 

 

白浪天狗の少女が現れた。

 

 

「もう一度言います。ここから先は、関係者以外立ち入り禁止です。」

 

 

「俺は【妖怪堂】店長のエルだ。天魔に頼まれていた品を届けに来た。」

 

 

「天魔様の…‥本当かどうか確かめます。ここで待て…‥」

 

少女は飛んでいった。

 

 

「ルーミア。俺の店に先に向かってくれ。店の中に肉が大量にあるから全部食べていいぞ。但し、野菜とお酒には触れるなよ。」

 

「わかったのだー」

 

ルーミアは、エルの店に向かった。

 

「待たせました。確かに天魔様のお客様ですね。天魔様は、忙しいので私が代わりに届けておきましょうか?」

 

「この品をお願いします。」

 

 

エルは、何かを思い出したのか少女に…‥

 

 

「妖怪の山に河城にとりているか?これ、にとりから渡されたんだが…‥」

 

 

河童の絵が刻まれた金のメダルを見せる。

 

 

「このメダルは、妖怪の山への通行許可書です。天魔様から許可された者にだけ渡されます。」

 

「にとりの所に案内してくれませんか?」

 

「良いですよ。私は、白浪天狗の犬走椛 です。」

 

「改めて自己紹介します。俺は【妖怪堂】店長のエルだ。よろしくお願いします。」

 

 

エルは、椛の案内のもと妖怪の山に行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

エルと椛が、妖怪の山を上っている頃ルーミアは…‥

 

 

「やっと、ついたのだー」

 

ルーミアは、幻想郷のとある森にある古びた小屋に来ていた。

 

 

「お肉お肉~」

 

 

ルーミアは、小屋にある箱から肉を取り出す。

 

 

「いただきます!」

 

肉を嬉しそうに食べていると…‥

 

 

「ルーミア。久しぶりね。」

 

八雲紫が、入って来た。

 

 

「わは―!紫なのだー」

 

「エルは、いないかしら?」

 

「エルは、にとりに会いに行くと言ってたのだ―」

 

エルが居ないとわかると、居なくなった。

 

 

「すみません。エルさん居ませんか?」

 

小屋に箱を背よった赤髪の少女が、お酒を持って小屋に入って来た。

 

 

「ルナなのだーエルは居ないのだ―」

 

 

「そうなの?エルさんに頼まれてお酒を持ってきたのに…‥」

 

 

ルナは、お酒を木箱に入れる。

 

 

「ルナは、どうするのだー」

 

 

「エルさんに会いに行こうかな…‥」

 

 

「私は、ここで待ってるのだー」

 

 

ルナは、小屋を出てエルに会いに行く。

 

 



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エルは椛の案内で妖怪の山上っていた。

 

「にとりはどこら辺にいるんだ?」

 

「今頃だと、実験室にいると思いますが…‥着きました。」

 

椛に案内された場所は…‥

 

【河城科学開発室】と書かれた看板が掛けられた小屋がたっていた。

 

「椛…‥この建物…‥なんだ?」

 

「入りますか?にとりが居ると思うので…‥」

 

 

扉を叩くと、河城にとりが白衣姿で出てきた。

 

 

「エルと椛じゃないかい。どうしたんだい?」

 

 

「にとりに頼んでいた物を貰いに来たよ。」

 

 

エルは札を取り出すと、一瞬にして大量の胡瓜に変化する。

 

 

「胡瓜だ!貰って良いの!?」

 

 

「大量に出来たからお裾分けだよ。」

 

 

胡瓜を貰って大喜びをするにとりは、エルに抱き付く。

 

 

「にとり…‥急に抱き付くなよ…‥」

 

「わわわ!ごめん!」

 

 

にとりは頬を赤く染めてエルから離れると、エルと椛を小屋に入れる。

 

 

小屋に入ると、いろんな道具が散乱していた。

 

 

「にとり…‥少しは片付けないのか?」

 

 

「作るのに夢中で、忘れてたよ…‥」

 

 

にとりは苦笑いしながらお茶を出す。

 

 

「いただきます…‥あれ?これ…‥胡瓜…‥?」

 

「そうだよ。胡瓜茶を作って見たんだけど…‥どうかな?」

 

 

「旨いよ。俺は好きな味だな。てか、この胡瓜茶は外の世界のだよな。どうやって、調べたんだ?」

 

 

「紫さんの依頼で、一度外の世界に行ったときに飲んだんだよ。椛はどうかな?」

 

 

「美味しいですよ。」

 

 

「それは、良かったよ。そうだ!これが、頼まれていた物だよ。」

 

 

木箱から黒い腕輪を取り出すと、エルに渡した。

 

 

「ありがとな。」

 

 

「その腕輪は、何ですか?」

 

 

「この腕輪は、俺の能力を補助するための装置だよ。能力は秘密だがな。」

 

 

「えー!エル…‥教えてよ!」

 

 

にとりはエルの腕にしがみついている。

 

 

「にとり…‥近いぞ。」

 

 

「わわわ!」

 

 

「にとりさんとエルさん…‥仲が良いですね…‥」

 

 

「うん?友達だから仲が良いのは当たり前だろ。」

 

 

エルは残りの胡瓜茶を飲み干して、立ち上がる。

 

 

「そろそろ、帰るよ。仕事が残ってるからな。椛…‥帰るから道案内頼んだ。」

 

 

「わかりました。にとりさん。また来ますね。」

 

 

「またね~」

 

 

椛とエルはにとりと別れて、出ていった。

 

 

「エルさんは…‥これからどうするんですか?」

 

 

「どうするかな…‥椛。1つ質問するが、この山に【博麗の巫女】は来るのか?」

 

 

「【博麗の巫女】ですか?上司からの話で、よく聞きますが…‥この山には来ませんね。」

 

 

「そうか。ついたな。それじゃあ、帰らせてもらうよ。」

 

 

エルは山を下っていった。

 

 

 

 



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ついに紅魔館編スタート


エルは何時ものように、店の品物を並べたり掃除しながら過ごしていると…‥

 

「エルいるかしら?」

 

「紫さん。どうしましたか?」

 

お茶と茶菓子を出す。

 

「今日は、貴方に依頼が入ったから来たのよ。」

 

「仕事ですか。」

 

エルの表情が変わった。

 

「実は、幻想入りしてきた者がいるんだけど…‥」

 

「紫さん。異変を起こすんですね。」

 

「そうよ。貴方には、その者が起こす異変の手伝いをしてほしいのよ。」

 

お茶を飲みながらエルに封筒を渡す。

 

「拝見しますね。え!?紫さん…‥冗談ですよね!?」

 

「本気よ…‥」

 

「はぁ。わかりました。報酬は、後払い。条件は…‥…‥お願いしますよ。」

 

「わかったわ。異変を起こすのは、1ヶ月後よ。エルには、今から依頼主の所に行ってちょうだい。」

 

「え…‥うわぁぁぁ!?」

 

紫はエルの足元にスキマを開けて落とした。

 

 

 

 

 

 

紫にスキマで落とされたエルは、館の目の前に落ちた。

 

「痛い…‥この館かな…‥」

 

エルは立ち上がると、門の前まで近づく。

 

「門番は…‥寝てるな…‥」

 

門の目の前にいる門番の女性は気持ち良さそうに眠っていた。

 

「どうしようかな…‥」

 

すると、門番の頭にナイフが刺さりメイドが出現した。

 

「御待ちしておりました。エル様。私は、紅魔館の主…‥レミリア・スカーレト様の専属メイドの十六夜咲夜です。」

 

「改めて、はじめまして。【妖怪堂】店長のエルです。よろしくお願いします。」

 

「では、案内致します。」

 

咲夜は、門番にナイフを刺してエルを案内する。

 

門番の悲鳴が聞こえたが、聞かなかったフリをした。

 

 

「広すぎだろ!?」

 

「こちらです。」

 

咲夜に案内されて、扉の前に止まった。

 

「この部屋が御嬢様の御部屋でございます。失礼の無いように。」

 

咲夜は扉を、2回ノックすると…‥ 

 

「誰かしら…‥」

 

「咲夜です。エル様をお連れしました。」

 

「入りなさい。」

 

部屋の中には居ると、椅子に座っている少女がいた。

 

「咲夜は仕事に戻りなさい。」

 

咲夜が姿を消す。

 

「紅魔館にようこそ。私は、この館の主…‥レミリア・スカーレットよ。」

 

「俺は【妖怪堂】店長のエルです。よろしくお願いします。」

 

「貴方は珍しいわね。人間の敵…‥我々妖怪の依頼を受けてくれる人間は貴方くらいよ。」

 

レミリアは笑いながらエルを見つめる。

 

「よく言われます。人間なのに変な奴だと…‥」

 

紅茶を飲みながら…‥

 

「【妖怪堂】の説明をしてくれるかしら?」

 

「良いですよ。【妖怪堂】は、妖怪専門の何でも屋です。」

 

「妖怪専門?人間からの依頼はやらないの?」

 

「人間からの依頼もしますはが、妖怪からの紹介状が無い場合は受けません。」

 

「貴方は、人間は嫌いなの?」

 

レミリアの質問に、エルは笑いながら答える。

 

「人間が居なくなろうが、俺には関係無いので…‥八雲紫は、何か言ってませんでしたか?」

 

「聞いてるわ…‥貴方が人間でありながら…‥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖怪側の人間だってことをね…‥」

 

レミリアが呟いたと同時に雷が鳴り始めた。

 

 




小説は難しい…‥

次回は依頼内容が公開される 


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さて今回は、レミリアからの依頼内容が発表されます!

それでは、本編スタート!


レミリアの指示で、紅魔館のメンバーをホールに集めて、エルはレミリアの隣の椅子に座る。

 

 

「よく聞いて頂戴。1ヶ月後に起こす異変の協力者を

紹介するわ。」 

 

「皆さん。はじめまして。【妖怪堂】店長のエルです。異変を起こす協力者として来ました。よろしくお願いします。」

 

「よろしくお願いします。私は、門番の紅美鈴です。」

 

美鈴の後ろから悪魔の少女が恥ずかしながらエルを見る。

 

「私は、小悪魔のこあです。よ、よろしくお願いします。」

 

「こちらこそ、よろしく。」

 

すると、紫色の少女がホールに入ってきた。

 

「貴方が、【妖怪堂】の店長?本当に人間のようね。」

 

「貴方は…‥人間では無いな…‥」

 

「私は、パチュリー・ノーレッジ…‥魔法使いよ。図書館を管理してるわ。」

 

「よろしくお願いします。」

 

「依頼内容を伝えるわね。貴方には、パチェの管理している図書館の警備をしてほしいのよ。」

 

「警備ですか?」

 

パチュリーは、水晶玉を取り出すと光り出した。

 

「これが、紅魔館の見取り図よ。これを頼りに警備をしてほしいのよ。」

 

「わかりました。八雲紫からは異変に関する依頼と言われたのですが…‥」

 

レミリアから封筒を渡されると、中身を確認する。

 

「わかりました。その依頼を受けます。」

 

「咲夜。エルを客室まで案内して。」

 

「畏まりました。」

 

咲夜とエルは、客室に向かうためにホールを後にする。

 

レミリアは、他のメンバーに指示を出して部屋に戻る。

 

「これで、良いのかしら?八雲紫…‥」

 

部屋の扉にスキマが出現すると、紫が現れた。

 

「感謝致しますわ。レミリア・スカーレット。後は、異変を起こすだけですわ。」

 

「それにしても、妖怪賢者の貴女があの人間の協力をするなんて思わなかったわ。」

 

「エルは、私の大事な仲間ですもの…‥出来る限りの手助けはしますわ。」

 

紫は、部屋にあった紅茶を無断で飲んでいる。

 

「あの人間は、何者なのかしら?妖怪側の人間だと言ってたけど…‥」

 

「まだ、教えるわけにはいかないけど、これだけは教えるわ。エルは…‥妖怪側の味方で、どんなことがあっても、私達…‥妖怪を絶対に裏切らない存在よ…‥」

 

紫は、紅茶を飲み終えて姿を消した。

 

「絶対に裏切らないか…‥あの人間に、頼めるかもしれないかもね…‥」

 

レミリアは、紅茶を飲み終えて窓から夜の外を眺める。

 

「レミィ。私よ…‥ちょっと良いかしら?」

 

部屋に入ってきたのは、パチュリーだ。

 

「あの準備が予定より早く出来そうよ。どうする?」

 

「変更は無いわ。予定通り1ヶ月後に異変を起こすわ。それより、あの人間に怪しい所はないの?」

 

「わからないわ。明日から調べてみるわ。」

 

「そう。近いうちにあの人間にあの子を任せてみようと思うの…‥」 

 

パチュリーは、紅茶を飲み終えてレミリアを見る。

 

「レミィ…‥わかったわ。あまり無理しないでよ。」

 

パチュリーは、部屋を出ていった。

 

 




次回は…‥紅魔館での暮らしがスタートします。

お楽しみに…‥


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エルは客室のベッドの上で目を覚ました。

 

(客室…‥そうだ。レミリアさんの依頼で、来てたんだっけな。)

 

欠伸をしながらベッドから降りて服を着替えると、扉を叩く音が聞こえた。

 

「咲夜です。入って良いかしら?」

 

「どうぞ。」

 

「エル様。おはようございます。良く寝れたでしょうか?」

 

「良く眠れました。」

 

「朝食の準備が出来ましたのでホールに来てください。」

 

「わかりました。」

 

咲夜が部屋から出ると、服を着替え始める。

 

「それにしても、豪華な部屋だな。ヤバい、急いで向かわないと…‥」

 

エルがホールに急いで向かう途中で、メイド妖精を見かけた。

 

何やら困っているようだ。

 

「メイドさん。どうしたんだ?」

 

「お客様…‥実は、パチュリー様が本の整理をするので、こあさんを探しているのですが…‥」

 

「こあ?パチュリーさんの使い魔でしたよね?見てませんよ。俺は、こあさんを見てませんが…‥」

 

エルとメイド妖精が、会話していると、咲夜が現れた。

 

「エル様と貴女は何を話してるのかしら?」

 

「咲夜さん。こあさんを見掛けなかったか?メイドの妖精さんが探しているらしいんだけど…‥」

 

 

「わかりました。では、『仕事が終わり次第パチュリー様のところに向かいます。』とパチュリー様に伝言を御願いします。」

 

「わかった。伝えとくよ。」

 

エルにお礼を言ってその場から消えた。

 

「御客様…‥ありがとございます。」

 

「俺は、別に何もしてないよ。気にするな。」

 

無意識なのかメイド妖精の頭を撫でると、嬉しそうに目を細めている。

 

「ごめん!」

 

咄嗟に、撫でるのをやめた。

 

「大丈夫ですよ。私は、メイド妖精のリカです。よろしくお願いします。」

 

「俺は、エルだ。1カ月間の間は図書館の警備を任されているから、用があるときは図書館に来てよ。」

 

「わかりました!ては、私は、仕事に戻りますね。」

 

メイド妖精のリカは、何処かに飛んでいった。

 

エルは、急いでホールに向かう。

 

「すみません。遅くなりました。」 

 

「おはよう。エル。貴方の席は私の隣よ。」

 

指定された席に座ると、隣にレミリアが座っている。

 

「良く眠れたかしら?」

 

「大丈夫です。」

 

「朝食を食べ終えたら私の部屋に来なさい。今日の仕事の話をするから。」

 

「わかりました。」

 

レミリアと話をしていると、料理が運ばれた。

 

「咲夜の作る料理は美味しいわよ。遠慮せずに食べなさい。」

 

「いただきます。」

 

野菜サラダを少しだけ皿に取り食べ始める。

 

「美味しい。」

 

「ありがとうございます。スープもどうぞ。」

 

スープを受け取ると、飲み始めると、目を輝かせながらスープを飲み続ける。

 

「御馳走様でした。」

 

「もう良いの?肉料理もあるけど…‥」

 

「肉が苦手なんだ。」

 

「エル。10分後に私の部屋に来なさい。依頼内容に関した詳しい説明をするから。」

 

レミリアは、部屋に戻っていった。

 



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紅魔館の門前で戦闘が繰り広げられていた。

 

「美鈴さん。俺の方は、終わったぞ。」

 

「私の方も、終わりました。」

 

美鈴とエルは、紅魔館に侵入していた人間を処理していた。

 

「全く、咲夜さんが留守の時を狙って侵入してくるとは…‥」

 

「エルさん。助かりました。」

 

「美鈴さんが居眠りしていたのが原因だろ!レミリアさんに追加料金貰わないとな。」

 

剣を鞘にしまうと、札に戻してしまう。

 

「エルさん。咲夜さんには内緒にしてくれませんか?」

 

「仕方ないですね。その代わり、追加料金は美鈴さんが払ってくださいね。」

 

「わかりました。」

 

すると咲夜が、買い物から帰って来た。

 

 

重い荷物を持っているためか疲れている。

 

「咲夜さん。お帰りなさい。」

 

「エル、美鈴。今日も異常は無かった?」

 

エルは、咲夜の質問に頷いて門を開けると、メイド妖精達がエルに近づいた。

 

「どうしたんだ?」

 

「フラン様が、地下室を破壊して館内を暴れまわっています!」

 

「妹様が!?わかりました。エルは私と一緒に妹様の元に…‥」

 

すると、エルは咲夜の腕をつかむ。

 

「レミリアさんには妹が居るのか?」

 

「ええ。お嬢様には妹様が居るわよ。」

 

「何故、そんなに慌てているんだ?」

 

「妹様は、【ありとあらゆる物を破壊する程度の能力】があって地下に閉じ込めてるんです。」 

 

咲夜は、フランの事情をエルに話す。

 

「なら俺が、その妖怪を救いだしてやるよ…‥」

 

エルの右目が赤く光出すと、咲夜は警戒してエルから離れる。

 

「ちょっと、待ってください!咲夜さん。フラン様は、パチュリー様が眠らせました。」

 

「そうなのか?だったら、能力を解除しないとな。」

 

楽しくなさそうに能力を解除するエルを見て、少し安心している様子の咲夜。

 

「こあ。報告ありがとう。パチュリー様から他に何か、指示されなかった?」

 

「そうでした!パチュリ様からの伝言で、『レミィが、至急私の部屋に集合よ』だそうです。」 

 

「御嬢様が…‥?わかったわ。エルと美鈴は、私と一緒に御嬢様の部屋まで行くわよ。」

 

エルと美鈴は、咲夜とレミリアの部屋に向かった。

 

その様子を見ていた八雲紫は、何か決心した様子で頷いている。

 

「もうすぐ、異変の始まりよ。彼には、頑張って強くなってもらわないとね。私の…‥プランのために…‥」

 

笑みを浮かべると、紅魔館を見て紫は、謎の札を取り出して地面に貼り付けると消えた。

 

「異変の始まりが楽しみだわ。」

 

紫の姿が消えると同時に…‥

 

地面に貼り付けていた札が、突然と光りだして結界が出現した。

 

 



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神社の境内を、暇そうに掃除している紅白の巫女服の少女がいた。

 

少女の名前は、博麗霊夢。

 

幻想郷の異変解決や妖怪退治を行う博麗の巫女。

 

そんな少女は、退屈そうにしながらも掃除を終えると、部屋に戻りお茶を飲んでいる。

 

「霊夢!」

 

「来たわね。」

 

神社の外に出ると、白黒の魔法使いの格好をした少女がやって来た。

 

「魔理沙。どうしたのよ?」

 

「霊夢!お土産持ってきたぜ!」

 

白黒の魔法使い少女…‥霧雨魔理沙は、黒い小袋を霊夢に見せる。

 

「その黒い小袋。嫌な予感しかしないんだけど…‥何処で、拾ってきたのよ?」

 

「確か…‥霧の湖の所で見つけてきたぜ!」

 

小袋の中身が気になるのか

開けようとする。

 

「ちょっと、魔理沙!?やめな…‥「その小袋を…‥渡してもらおうか」誰だ?」

 

霊夢と魔理沙が振り替えると、黒のローブ姿仮面の人物が歩いてきた。 

 

「その小袋を渡すんだ。」

 

「この小袋は、私が先に拾ったんだから…‥渡すわけにはいかないぜ!」

 

「あんたは、何者?この小袋を狙う理由は?」

 

「俺は、この地に異変を起こす者だ。」

 

仮面の人物の発言に霊夢は、お払い棒と札を取り出して相手を睨む。

 

「異変を起こす?どうやって、異変を起こすつもりなのかしら。」

 

「教えても良いが、もう遅い!」

 

魔理沙が持っていた小袋が爆発して霧が発生した

 

「な、何よ!?この霧!?」

 

「どんどん、霧が広がっていくぜ…‥」

 

「異変の始まりだ。早く解決しないと幻想郷は、支配されるよ。」

 

仮面の人物は、霊夢と魔理沙そう言い残して歩き出す。

 

「ちょっと、待つんだぜ!何故、私達に教えたんだ!?」

 

「只の時間稼ぎだよ。君が持っていた小袋の力を解放させるためにね。最後に、教えてあげるよ。あの小袋は、幻想郷にばら蒔いた。君は、この異変を解決出来るかな…‥検討を祈ってるよ。」

 

 

笑みを浮かべながら仮面の人物は、霧を発生させて姿を消した。

 

「霊夢!今すぐ、異変解決しに行こうぜ!」

 

「魔理沙!ちょっと待ちなさい!すぐに、準備するから。」

 

霊夢と魔理沙は、異変解決するために調査に出掛ける。

 

「人里の方から向かうわよ。被害状況の確認するから。」

 

「わかったぜ。」

 

霊夢と魔理沙が人里に向かっている様子を監視していた男は仮面を取る。

 

「エル。私との約束は、覚えてるわよね?」

 

「覚えてますよ。紫さん。」

 

「なら良いわ。貴方の協力者になる代わりに博麗の巫女に【妖怪堂】の存在が知られてはならない。との約束はちゃんと守ってるようね。」

 

紫は空を見ながら笑みを浮かべていると、エルが回収するはずたった小袋を渡した。

 

「さて、霊夢と魔理沙を人里に向かわせてどうするのかしら?」

 

「レミリアさんに異変を起こさせます。紫さんには妖怪達に博麗の巫女には近付かないようにお願いできませんか?」

 

「良いわよ。私はこの異変を最後まで見届けさせてもらうわね。」

 

紫は姿を消した。

 

「戻りますか。」

 

エルは紅魔館に帰っていった。

 



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さあ。皆さん。

東方妖怪堂第9話の始まりです。

霊夢と魔理沙が、異変の調査に動き出します。

それでは、本編スタート


エルが博麗神社から帰っている最中に紅魔館では、異変を起こすための準備をしていた。

 

「お嬢様。パチュリー様が、準備が出来たとのことです。」

 

「わかったわ。美鈴が寝ないように監視しとくように。寝ていたらお仕置きしておいてね。」

 

「畏まりました。」

 

レミリアは紅茶を飲み終えると、窓の外を眺める。

 

「エルなら、フランを…‥」

 

「エルの事が気に入ったようね。」

 

レミリアの隣に紫が出現すると、呆れた表情で紫を見て溜め息をする。

 

紫はレミリアを、気にせずに勝手に紅茶を飲んでいる。

 

「あの子は何者なの?そろそろ、教えてくれないかしら八雲紫…‥」

 

「エルは妖怪の味方…‥だけでは、納得しないわよね。条件があるわ。」

 

「条件?」

 

「エルの存在を、博麗の巫女に教えないことが条件よ。」

 

「博麗の巫女に知られてはいけない理由は?」

 

「貴女だけには教えてあげる。…‥…‥」

 

 

 

 

 

 

その頃。霊夢と魔理沙は人里に向かっていた。

 

「霊夢。待ってくれよ!」

 

「魔理沙!早くしないと人里に被害が…‥わかったわよ!」

 

霊夢は一旦、地面に降りて一休みする。

 

「霊夢…‥やっと止まってくれたぜ。どうしたんだ?」

 

「う~ん。気のせいかしら?ちょっとね。妖怪の気配が消えてるのよね。」

 

「妖怪の気配が消えてる!?」

 

霊夢は辺りを見回している。

 

「霊夢に襲われたくないから逃げてるんじゃないのか?」

 

「失礼ね!魔理沙!」

 

霊夢は魔理沙に睨み付けながら近付いていくと、魔理沙は冷や汗をかきながら謝る。

 

納得していないのか霊夢は、溜め息をつくが許すようだ。

 

「休憩は終わりよ。少し、急いで移動するわよ。」

 

「わかったぜ!」

 

休憩を終えると、人里に向かう。

 

「それにしても、あの仮面の男。異変を起こすための時間稼ぎをするために、私達に教えるとは思わなかったぜ。」

 

「そうなのよね。時間稼ぎ…‥まさか!?」

 

霊夢は急に飛ぶスピードをあげて、見えなくなった。

 

「ちょっと!霊夢!?」

 

魔理沙もスピードをあげる。

 

 

「やっぱり…‥」

 

人里に到着して被害状況の確認をするが、人里に異変が起こった形跡もなく、怪我人もいない。

 

「何だよ!?被害無いじゃないか!?」

 

「魔理沙!完全にやられたわね。」

 

「巫女様!?不気味な霧が、空一面に広がっています!」

 

人里の住人が、震えている。

 

「何よ!?あの霧は!?」

 

霊夢が見たものそれは。

 

空一面に紅霧が広がっている光景だった。いずれは、幻想郷全体に広がるであろう。

 

異変発生の瞬間だ。

 

霊夢と魔理沙は異変解決に動き出した。

 

 

 



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10

レミリアはパチュリーと協力して、紅霧を紅魔館から発生させて異変を起こして、空を見上げる。

 

「第一段階成功したわね。レミリア・スカーレット。」

 

「そうね。八雲紫。私はこれより、異変の主犯として博麗の巫女を、招待するわ。」

 

「その前に、エルが戻って来ないと始まらないわよ。」

 

「エルです。レミリアさん入ってもいいですか?」

 

出掛けていたエルが、帰ってきたようだ。

 

「お帰りなさい。」

 

「あの紅霧はレミリアさんの仕掛けですか?」

 

「そうよ。パチェに協力してもらったのよ。エルは何処に行ってたのかしら?」

 

「博麗の巫女に挨拶してきただけですよ。」

 

レミリアの質問に答えると、出されていた紅茶を飲み干して立ち上がる。

 

「さて、俺は図書館の警備に戻りますね。そうだ。これをどうぞ。」

 

レミリアに金の十字架のペンダントを渡した。

 

「このペンダントは何かしら?」

 

レミリアはペンダントをよく見てみると、小さな魔法陣が刻まれている。

 

「この魔法陣は、血で刻んであるけど…‥まさか!?」

 

「その通り。俺の血を媒体に使って魔法陣を刻みました。」

 

「貴方の血?魔法陣の効果は?」

 

レミリアの質問にエルは、笑みを浮かべて答える。

 

「力を封印する効果です。ペンダントを身に付けている間は、霊力や魔力、妖力を封じ込める力をペンダントに刻みました。」

 

「このペンダントを私に渡す理由は?」

 

「このペンダントは、まだ未完成なんです。このペンダントをつけることで、力の暴走を防ぐことができます。」

 

「まだ未完成なのよね?危険じゃないのかしら?」

 

レミリアはエルに、殺気を放ちながら睨み付ける。だが、殺気を受けてもエルは平然としている。

 

「そうですね。レミリアさんに質問します。一番欲しいものは、何ですか?」

 

「妹…‥フランと仲良く暮らすこと。それが、私の願い…‥」

 

「理由は聞かないでおきますね。異変を起こした理由に関係あると思うので。」

 

エルは1枚の札を取り出して、血文字を刻み始める。

 

「レミリアさんの願いを叶える代わりに…‥俺と契約しませんか?」

 

「契約?」

 

「悪魔の契約と言ったらわかりますよね?」

 

エルの表情が、妖笑になり禍々しいオーラを発生させている。

 

「私と契約したいのね?対価は何なの?何を払えばいいのかしら?」

 

「レミリアさんが支払う対価は、『俺の存在を博麗の巫女に教えてはならない』

が対価です。」

 

「それだけで、良いの!?対価が安すぎない!?」

 

レミリアは、契約の対価が安すぎると思っているようだ。

 

「レミリアさんは、対価が安すぎると思ってるようですが、安いと思わないでください。この契約を破ると死にますよ。」

 

「わかってるわ。契約しましょう。」

 

エルとレミリアが、持っている2つの十字架のペンダントが光出して透明な糸で繋がった。

 

「これで、仮契約は完了しました。」

 

ペンダントをレミリアに返すと、いきなり咲夜が部屋に入って来た。

 

「御嬢様!博麗の巫女と人間の魔法使いが、襲撃して来ました。今、美鈴が戦闘しています。」

 

「博麗の巫女に人間の魔法使いか。レミリアさん。俺は美鈴の援護に行かせてくれませんか?」

 

「わかったわ。エルは美鈴の所に行きなさい。」

 

レミリアの了承を得て、直ぐ様美鈴の援護に向かった。

 

「八雲紫。エルは戦えるの?」

 

「大丈夫よ。でも、エルの専門は接近戦。弾幕もまだまだ未熟者だけど、剣術とや術札作成の才能はあるから問題ないわよ。」

 

紫は窓の外を見つめた。




やっと異変のストーリーまで進みました。

次回は、霊夢&魔理沙に戦闘します。

感想・評価、よろしくお願いします


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11

紅魔館の外では、霊夢と魔理沙が美鈴と弾幕ごっこで戦っていた。

 

「やっぱり、弾幕ごっこは苦手です!」

 

美鈴は、四方八方に弾幕を放ちながら相手に近付くが、そんな美鈴に魔理沙がスペルカードを発動させる。

 

「いくぜ!【恋符・マスタースパーク】」

 

七色の光線が、美鈴に向かって放たれた。

 

「これは、ピンチですね!【気符・星脈弾】」

 

「させないわよ!【霊符・無想封印】!」

 

霊夢のスペルカードの弾幕で、美鈴を襲うと思われた弾幕が、一瞬で消滅した。

 

「美鈴さん。助太刀に来ましたよ。ボロボロ見たいですが…‥休んでてください。」

 

黒フードに仮面姿の人物が、霊夢の弾幕を剣で防いで美鈴を助けたようだ。

 

「お前は、あの仮面の男!」

 

「また、会いましたね。人間の魔法使いと博麗の巫女。」

 

「さっきは、よくも騙してくれたわね!」

 

「騙される方が、悪いのでは?」

 

霊夢は、仮面の男に怒り気味だが仮面の男は興味がなさげなのか平然としている。

 

「さっさと、あの霧をやめなさい!人里の皆が困ってるの。」

 

「残念ながら、あの霧を発生させたのは俺じゃあ無いんですよ。」

 

「だったら、異変の黒幕に会わせなさい!」

 

仮面の男は、呆れてるのか溜め息をつきながら霊夢と魔理沙を見て言う。

 

「会わせろと言われて、会わせると思いますか?」

 

「なら、弾幕ごっこで戦いなさい!」

 

「仕方ない。スペルカードは2枚までだ。お前らは2人だから俺は、4枚使わせてもらうぞ。被弾は2回までだ。」

 

「良いぜ!」

 

「私達に勝てると思わないでね。」

 

仮面の男は、2人から離れると、スペルカードを宣言する。

 

「スペルカード発動!【剣符・剣反無双】」

 

剣の形をした弾幕が四方八方に発射されて弾幕同士が、重なったと思ったら反射される。

 

「弾幕同士が跳ね返されてるぜ!」

 

「なんて、めちゃくちゃな弾幕なのよ!でも、スペルカード発動!【霊符・無想転生】」

 

霊夢の姿が透明化して、弾幕をすり抜ける。

 

「何!?すり抜けた!?」

 

「このスペルカードを最初に使うなんて、相手が可哀想だぜ。スペルカード発動!【恋府・マスタースパーク】」

 

「流石に、ヤバイな!逃げるか…‥スペルカード発動!【契約符・クロックドリーム】」

 

エルは、周りの時を止めてから美鈴を担いで紅魔館に戻った。それと同時に、時が動き出した。

 

「仮面の男が居ないぜ!?」

 

「逃げたわね。それより、黒幕に所まで行くわよ!」

 

霊夢と魔理沙は、紅魔館に入っていった。

 

「エル。少し危なかったわね。」

 

「追い返すつもりだったんですがね…‥それよりも、レミリアさんの妹を助けなければ…‥」

 

エルは、レミリアの妹の部屋に向かった。



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12

東方12

 

エルは、美鈴を図書館のソファーに寝かせると、パチュリーが声をかけてきた。

 

「どうだった?私との仮契約の成果は?」

 

「まさか、パチュリーさんが俺と仮契約を望んでいるとは、思いませんでしたが…‥」

 

「エルとの仮契約は、私のメリットになるからしているだけ。ちゃんと、約束を守って。」

 

「大丈夫ですよ。パチュリーさんとの交わした仮契約の願いは叶えます。」

 

エルの首にかけてある金の十字架のペンダントを触れながら…‥

 

「パチュリーさん。レミリアさんの妹はどちらに?」

 

「妹様なら地下室よ。これを持っていきなさい。」

 

パチュリーから青い液体の入った小瓶を受けとる。

 

「妹様に使いなさい。魔法薬の効果は、精神を安定させることが出来るわ。」

 

「有り難く貰っておきます。」

 

エルは立ち上がると、美鈴が目を覚ました。

 

「エルさん。さっきは、ありがとうございます。助かりました。」

 

「気にするな。パチュリー。博麗の巫女はどうしてる?」

 

水晶玉に霊夢の姿が映し出された。

 

「今のところ、館内を迷ってるみたいね。」

 

紅魔館の館内は、パチュリーの魔法によって迷路のようになっていて、所々に罠が仕掛けられている。

 

「これ以上、博麗の巫女の行動を妨害はできないか。急いで、レミリアさんの妹を助けにいく。」

 

「人間の魔法使いの方は、私に任せてくれないかしら?」

 

「無理しない方が…‥」

 

パチュリーを心配しているエルを見て、笑みを浮かべる。

 

「大丈夫よ。貴方との仮契約で、体調の方は問題ないわ。まだまだ動けるわ。」 

 

パチュリーは、エルに金の鍵を投げ渡す。

 

「フランの居る部屋の鍵よ。この鍵を使えば、すぐに行けるわ。」

 

「それじゃあ、行ってくる。」

 

金の鍵を握り締めながら、部屋を出て行った。

 

エルの姿が見えなくなると、パチュリーの上の天井から魔法陣が展開された。

 

「さて、人間の魔法使いを歓迎しようかしら。」

 

「パチュリー様。御命令通りあの準備が、完了しました。いつでも、発動可能ですよ。」

 

「御苦労様。少しの間は、休んでなさい。」

 

「わかりました。パチュリー様。」

 

パチュリーは、こあに休むよう指示を出すと、自分の部屋に戻っていった。

 

「私は引き続き、博麗の巫女の監視をしようかしら。」

 

パチュリーは、ソファーに座り水晶玉を見て、霊夢の監視を続けた。

 

「パチュリー様。紅茶を御持ちしました。」

 

美鈴は、怪我が治ったのか紅茶を持ってきた。

 

「美鈴。もう大丈夫なの?」

 

「心配をかけてしまって、申し訳ありません。」

 

「そう。なら良いわ。美鈴もこっちに来て、一緒にお茶しましょ。」

 

「では、御言葉に甘えて。」

 

美鈴とパチュリーは、少しの間だけ楽しんだ。




東方妖怪堂第12話が終わりました。

ちょっと、ストーリ的におかしかったですかね?

次回は、いよいよ…‥

悪魔の妹が登場します。

感想・評価お願いします。


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13

東方妖怪堂第13話

悪魔の妹が登場します

本編どうぞ


エルは、紅魔館内を歩き回っていた。

 

「さて、フランの部屋は地下にあるみたいだが、道が複雑だな。まるで、迷路だ。」

 

複雑な迷路状態になっている廊下を進み続けると、微かに血の臭いが奥の部屋から漂ってきた。

 

「奥の部屋だな。」

 

部屋の扉の前に来ると、パチュリーから受け取った鍵を使い扉を開ける。

 

「さて、行こうか。」

 

部屋の中に入ると、床には壊れた人形が散乱していた。

 

「人形?」

 

「お兄さん。誰?」

 

部屋の奥から呼ばれたかと思うと、視線の先にベッドに座っている赤の帽子、宝石のような羽を持つ少女が、エルを見ている。

 

「俺はエル。君と遊ぶために来た。」

 

「私は、フランドール・スカーレット。フランと呼んでね。私と遊んでくれるの?」

 

「フランは地下室に閉じ籠っていても詰まらないだろ?俺と外に出ないか?」

 

「私の力は、生き物を壊しちゃう。だから、地下室から出られない。」

 

フランは、悲しい表情を見せながらエルに話した。

 

「俺は、フランの事…‥怖いと思ったこと無いよ。俺と友達になろう。」

 

「友達に…‥ふざけないで!私の事が怖くない?嘘をつくな!」

 

フランは怒りに任せて、エルの近くにあった椅子を破壊した。

 

「どう?これでも、私の事が怖くないと言えるの?」

 

「怖くないよ。嘘も言ってない。俺は、フランの友達になりたい。」

 

エルは、フランに笑みを浮かべながら少しずつ近付くが、フランの表情が怒りから悲しみの表情に変わる。

 

「来ないで!お願い!壊したくない!」

 

『ホントウハ、コワシタクテシカタナインダロ?アノオトコガトモダチニナリタイナンテ、シンヨウデキナイゾ』

 

「うるさい!私に話しかけるな!」

 

フランから黒いオーラが発生すると、瞳の色が黒色に変わる。

 

「瞳の色が…‥フランは、自分の力を恐れて…‥もう1つの人格が生まれた…‥フランの中にいる狂気なる人格…‥表に出てこいよ。」

 

フランからもう1人のから黒いフランが出て来てエルを睨み付ける。

 

『フフフオニイサンワタシトアソボ!』

 

黒フランは、スペルカードを取り出して、宣言する。

 

『禁忌・クランベリートラップ』

 

黒フランが、スペルカードを発動して弾幕を発生させる。

 

「そのスペルカード。弾幕との隙間がほとんどないぞ!どうやって避けるんだよ!?」

 

エルは、隙間を見つけては避けてを繰り返して反撃の手段を伺う。

 

『ヨケテバカリダトツマラナイ』

 

「無茶苦茶言うな!スペルカード発動!【剣符・剣反無双】さらに、スペルカード発動!【永続・繰り返される弾幕ごっこ】」

 

2枚連続発動させて1枚目のスペルカードの制限時間を伸ばした。

 

『ハハハソウコナクチャタノシクナイヨ』

 

「だけど、スペルカードを2枚連続はヤバイか…‥」

 

黒フランの1枚目の制限時間が終わり弾幕が消えた。

 

『アーアキエチャッタマダマダイクヨ』

 

黒フランの動きが早くなった瞬間。

 

「ぐはぁ…‥」

 

弾幕を避けて、エルに体当たりを食らわせると、壁に叩きつけられる。

 

「体当たりは…‥反則だろ…‥」

 

『サアオニイサンドウスル?』

 

「お前が、最初にやったんだ。後悔すんなよ!スペルカード発動!【契約符・弾幕結界】」

 

紫のスペルカードを発動させる。

 

『ナ!?ハンソク!』

 

黒フランが、弾幕に当たるが平気そうな表情をしている。

 

エルは最後の手段で、フランを抱き締めて叫ぶ。

 

「狂気の人格!俺を信じろ!フランを苦しみから解放してやれ!」

 

『オマエナンカシンヨウデキナイハナセ!』

 

「俺を信用できないなら…‥狂気…‥俺の中に入れ!それでも、信用できないなら、俺を殺せ!」

 

『ハハハ!オニイサンオモシロイヨ!』

 

フランから黒いオーラが消えて、エルの中に取り込まれる。

 

「ぐ…‥きつい…‥」

 

狂気を取り込んだと同時に苦しみ出した。

 

「お兄さん!しっかりして!」

 

「フラン…‥大丈夫か?俺は、少し…‥」

 

エルは、意識を失った。







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14

東方妖怪堂第14話

前回は、エルがフランの狂気を自分の体に取り込み助けましたね。さて、今回はどんな展開が待ち受けているのでしょうか…‥

それでは、本編どうぞ


紫の式…‥八雲藍は、スキマでエルの行動を見守っていた。

 

「紫様。エルが、フランドール・スカーレットの狂気を取り込んで、意識不明になりました。」

 

「何ですって!?急いで紅魔館に向かいエルの看病をしてきなさい。」

 

「わかりました。」

 

「それと、紅魔館の主に事情を説明して、暫くの間は紅魔館に居させてもらえるようにお願いしてきなさい。」

 

「わかりました。すぐに向かいます。」

 

藍を見送りすると、スキマを開いて博麗神社に向かった。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

「やっとついた。さて、紅魔館に入りたいが…‥」

 

紅魔館に到着するが、門番の美鈴は居眠りをしていて、困っている様子の藍。

 

「どうするか…‥」

 

「どうしましたか…‥貴女は、八雲の…‥」

 

咲夜が、出現した。右手にはナイフを握っている。

 

「八雲紫様の式の八雲藍だ。紫様の伝言を伝えに来た。主に会わせてもらえるか?」

 

「これは、御丁寧に。私は、レミリア・スカーレット様の専属メイドの十六夜咲夜です。わかりました。私に着いてきてください。」

 

「門番はどうするんだ?」

 

「また、寝てるわね。」

 

時を止めて、美鈴の周りに無数のナイフを仕掛ける。

 

「このくらいで、良いでしょう。」

 

時を戻すと、仕掛けられていたナイフが動き出して、美鈴に迫る。

 

「ギャァァァァ!」

 

「さあ。行きましょうか。」

 

「わかった。」

 

咲夜と藍は、美鈴を放置して紅魔館の中に入る。

 

「咲夜。どうしたの?お客さん?」

 

「妹様。御嬢様を見ませんでしたか?」

 

「御姉様ならエル兄様の看病で、部屋に居ると思うけど…‥」

 

フランは、咲夜の隣にいた藍を見て笑みを浮かべる。

 

「狐の御姉さん。エル兄様に会いに来たの?」

 

「そうだ。私は、八雲藍だ。よろしく。」

 

「紫姉ちゃんの…‥配下?」

 

「ちょっと、おしいな。私は、紫様の式だ。配下でも、間違いではないかな。」

 

「私は、フランドール・スカーレットよ。フランて呼んでね。藍姉様!」

 

フランは、藍と咲夜に微笑みを浮かべながら飛んでいった。

 

「貴女は、妹様を助けたエルをどう思いますか?」

 

「エルが決めたことなら何も言わない。」

 

「そう。此処が、エル様の部屋よ。」

 

部屋の中に入ると、ベッドに寝かされているエルが、パチュリーとレミリアに看病をされている所だった。

 

「貴女は?」

 

「八雲紫様の式…‥八雲藍だ。紫様から貴女に伝言を預かっている。」

 

封筒を、レミリアに手渡す。

 

「…‥…‥わかったわ。エルは暫くの間は、紅魔館が責任を持つわ。」

 

「それともう1つ。博麗の巫女にエルの存在を知らせないでほしい。」

 

「わかったわ。咲夜。外の方まで、お見送りして。」

 

「わかりました。御嬢様。」

 

藍は、紅魔館を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇

 

その頃。紫は博麗神社で、霊夢と魔理沙の話を聞いていた。

 

「レミリアが起こした異変の事なんだけど…‥」

 

「異変なら無事に解決したんでしょう?何かあったのかしら?」

 

「紫…‥異変の時に、仮面の男が現れたんだ。何か知らないか?」

 

「仮面の男?知らないわね。」(エルの事ね…‥)

 

お茶を飲みながら、霊夢の質問に知らないと嘘をつく紫。

 

「異変解決後の宴会は、暫く待ってほしいと言われたし。」

 

「宴会は仕方ないとして。仮面の男の方は、私も調べておくわ。」

 

「ありがとう…‥紫。でも、あの仮面の男の声…‥何処かで聞いたことあるような気がするのよね。」

 

「私は、帰るわね。」

 

紫はスキマで消えた。

 

 











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15

エルが、紅魔館に来て2ヶ月がたったある日の事。

 

「エル。此処に来て2ヶ月くらいだけど、体は大丈夫なの?」

 

薬を持ってきた咲夜は、エルの体を心配していると、ベッドの下からフランが顔をだす。

 

「エル兄様!大丈夫なの?」

 

「心配かけたなフラン。咲夜さんもすみません。」

 

「全く。心配したんですよ。御嬢様にも謝ってくださいね。あの日からショックを受けてしまわれまして…‥」

 

エルは、薬を飲み苦そうにしながら頷いた。

 

「それより、エル。お店の方は大丈夫なの?」

 

「大丈夫です。一応、休業の札をかけてあるので…‥」

 

「パチュリー様からは、明日くらいには動いても大丈夫と言われたわ。無理しないでください。」

 

咲夜は、夕食のお粥を置いて部屋から出ていった。

 

「フランは、友達出来たか?」

 

「うん。昨日は、魔理沙と弾幕ごっこしたの!」

 

「それは、よかったな。」

 

フランの頭を撫でると、嬉しそうにしている。

 

「フラン。少し、寝たいから、明日の朝までは誰もこの部屋に入れないでほしい?」

 

「わかった。明日になったら、起こしにいくね!」

 

フランは、部屋から出ていった。

 

「スペルカード発動【結界・絶対領域】これで、大丈夫だな。紫さん。居るんだろ?」

 

部屋の壁にスキマが開いて、紫が出て来た。

 

「あら、わかってたの?」

 

「今回の異変の依頼は、成功なんですか?」

 

「一応成功よ。かなり、危険の状態だったのよ。」

 

「依頼報酬の一部は、博麗神社にお願いします。」

 

「良いわよ。それと、頼まれていたアレ…‥問題ないわ。」

 

エルは、嬉しそうにしながら…‥

 

「もう、寝なさい。おやすみ」

 

スキマが消えた。

 

「…‥約束は守れよ…‥狂気…‥」

 

『ハハハ!ワカッテルヨヤクソクハマモル』

 

エルは、眠くなったのかそのまま眠った。それと、同時に発動されていたスペルカードが、解除された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

博麗神社では、1ヶ月前に起きた異変解決の宴会が、真夜中に開かれていた。

 

宴会では、人間以外にも妖怪や妖精が集まって騒いでいた。

 

「やっと、宴会が出来るようになったぜ。」

 

「でも、何か物足りないのよね…‥」

 

魔理沙は、酒を飲んで楽しんでいる。それにたいして、霊夢の方はというと、楽しくないのか、余り酒を飲んでいない。

 

「博麗霊夢。今宵の宴会に招待してくれて礼を言うわ。本来なら、異変を起こした我々紅魔館の所に招待するのが良かったんだけど…‥」

 

「紅魔館を半壊。それと、紅魔館に泊まっていた何も知らない客に迷惑をかけたのは、私達の責任なんだから。ほら、レミリア。酒を飲みなさい!」

 

「ちょ、霊夢…‥!?」

 

霊夢は、レミリアに抱き付いて離れない。

 

「紫。何で霊夢は、今回ばかりは機嫌が良いんだ?」

 

「異変解決の御礼に、人里の人達が少しばかりのお金と野菜を霊夢に渡されたのよ。」

 

「霊夢の機嫌が良くなるのもわかるぜ…‥」

 

 

魔理沙には、気づかれなかったが、紫は気づいていた。霊夢の表情が、少しだけ悲しみを浮かべながらの笑みだと。

 

 

 

 



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16

東方妖怪堂第16話

今回で、紅魔館編は終了となります



それでは、本編どうぞ




エルは、ベッドから起き上がって窓を見ると、朝日が部屋に差し込んでいる。

 

「良く寝た。ん?」

 

部屋の隅っこの床に座り込みながら寝ているレミリアを見て、笑みを浮かべる。

 

「心配かけちゃったな。起こしますか。」

 

「レミリアさん。起きてください。風邪引きますよ。」

 

「ふにゅう…‥」

 

「仕方ない…‥」

 

エルは、喉に触れて声を調整してから、咳払いしてから喋る。

 

「御嬢様様。朝です。起きてください。」

 

咲夜の声を出して、起こす

 

「咲夜…‥?」

 

レミリアが、目を擦りながら開けると…‥

 

「おはよございます。御嬢様。」

 

「な、何でエルが…‥!?ん?エルよね?」

 

「エルですよ。どうしたんですか?レミリアさん。」

 

「エル!もう体は大丈夫なのよね!フランの狂気を取り込んだと聞いて、どんなに焦ったかわかる?大丈夫じゃなかったら貴方の血を吸っちゃうから、覚悟しなさい!」

 

「大丈夫ですから!落ち着いてください!」

 

部屋に、咲夜とフランが入ってきて、レミリアを落ち着かせる。

 

「ごめんなさい…‥」

 

「気にしないでください。俺が無茶をしたのは確かなので。」

 

「今日で、紅魔館を出ていくのよね?」

 

「え!?エル兄様…‥出ていっちゃうの!?」

 

フランは、エルの腕にしがみつく。泣きそうだ。

 

「ごめんな。また、会いに行くからな。」

 

「わかった。」

 

「エル。異変の協力感謝するわ。依頼報酬は、八雲紫に預けてるわよ。」

 

「レミリアさん。仮契約の方は、どうしますか?」

 

「そのままにしておいて。」

 

「わかりました。暫く、預かっておきますね。」

 

身に付けている金の十字架のペンダントをレミリアに見せながら。

 

「パチュリーさん。お見送り…‥ありがとうございます。」

 

「仮契約の方は、切らないわよ。貴方は、紅魔館の一員なんだから。」

 

「また、来ますね。」

 

エルは、紅魔術を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エルは、山道を歩いて帰りを急いでいた。 

 

「この場所を通るのも、久し振りだな。2ヶ月くらいあの場所にいたからな。」

 

山道を歩くと、休業の掛かった小屋に到着する。

 

「やっと、帰ってこれた。」

 

「エル。お帰りなさい。」

 

「紫さん。来ていたんですね。」

 

紫は、エルにお金の入った小袋を渡された。

 

「依頼御苦労様。依頼報酬の一部は、博麗の巫女に渡しておいたわ。」

 

「ありがとうございます。それと、俺が、調合した魔法薬です。魔理沙に渡しておいて貰えますか?」

 

「わかったわ。暫くは、依頼は無いからゆっくり休みなさい。それと、ルーミアの機嫌が悪いわよ。この頃会えないとかで。」

 

「頑張ってみます…‥」

 

「私は、これで帰るわね。」

 

スキマで消えた。




次回は、日常編になります。


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17

東方妖怪堂第17話

今回は、日常編です

本編どうぞ


いつものように、部屋の掃除や品物を並べていると、小さな鬼の少女…‥伊吹萃香が、やって来た。

 

「萃香。久し振りだな。何か御用か?」

 

「うーん。そうだ!お酒に合う料理お願いしたいねえ…‥」

 

「酒に合う料理…‥そうだ!」

 

小屋に戻って、調理器具と食材を持ってくる。

 

「何作ってくれるんだい?」

 

「実は、知り合いの妖精から大量の魚を貰ったんだ。だから、焼き魚でも作ろうかな。萃香も昼飯食べるだろ?」

 

「良いね!」

 

「でも、危ないから…‥周りに結界を設置してと…‥」

 

何枚か札を取り出して、小屋の周りに結界を張ると、調理に取りかかる。

 

「さて、魚は骨まで食べれたら問題ないかな。」

 

右手をかざすと、炎が手のひらから出現してから魚に結界を張って焼き始める。

 

「さて、そろそろ焼けてきたな。萃香は、焼けたやつから食べててくれ。その間に、付け合わせの野菜を適当に作ってるから。」

 

「わかった!」

 

野菜を切って炒める。

 

「出来た。萃香。お客が来たようだ。」

 

「客?」

 

「ルーミア。隠れてないで、出てきてくれ?来てくれたら昼飯ご馳走するぞ。」

 

「わかったのだー!」

 

ルーミアは、木から降りてきて、エルに飛び付く。

 

「ルーミア。離れてくれないと、昼飯食べれないぞ。」

 

「それは、イヤなのだ―。」

 

エルから離れて、魚を食べ始める。

 

「エルはまだ、博麗の巫女を恨んでるのか?紫が心配してたよ。」

 

「今でも…‥恨んでますよ。博麗の巫女をね。ルーミア。俺の分の食べて良いよ。」

 

小屋に【本日休業】の看板を置いて何処かに出掛ける。

 

「エルは…‥本当に霊夢を恨んでるのかい?」

 

萃香の質問に答えず、歩き始めて、エルの後ろ姿は、見えなくなった。

 

「エル…‥紫に相談しなくちゃね。」

 

ルーミア「エル…‥無理してるのだ―」

 

ルーミアは、食べ終わったのかふよふよ飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エルは、仮面をつけて人里に来ていた。

 

「昼飯。まだだったな。団子でいいか…‥」

 

近くの茶屋に入ると、近い席に座ると、店員がエルにメニューを聞く。

 

「団子を3本ください。」

 

「見慣れないね…‥迷い人かい?」

 

「はい…‥」

 

「仮面をつけている理由は…‥?」

 

「火傷しているので…‥」

 

「はい。団子だよ。」

 

店員から団子を貰うと、食べ始める。

 

「美味しい。」

 

「それは、良かったよ。」

 

「御馳走様でした。」

 

御代を払い店から出る。

 

「人里を歩くかな。」

 

食後の散歩をしている途中で、霊夢と魔理沙が歩いているのを見掛ける。

 

(霊夢と魔理沙!?どうするかな。能力を使おうにも、回数制限あるし…‥)

 

エルは、後ろを向いて歩こうとしたら…‥

 

「仮面の男!見付けたぜ!」

 

「人里に来て何を企んでるのかしら?」

 

「博麗の巫女に普通の泥棒ですか。お久し振りですね。」

 

「私は、普通の魔法使いだ!」

 

「死ぬまで借りることを、泥棒と言います。どうでしょうか?貴女方は、御昼はまだなのでしょう?私が奢りますから

、落ち着いてもらえませんか?」

 

エルの提案に、霊夢は納得しているようだが、魔理沙はまだ怪しんでいて、警戒する。

 

「魔理沙。彼奴の言ってることに…‥嘘はなさそうよ。」

 

「霊夢が言うなら…‥」

 

「話は、食べながら…‥」

 

霊夢と魔理沙はエルについていった。 

 

 




次回は、霊夢と魔理沙とエルの話し合いです。


感想、評価お願いします


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18

東方妖怪堂第18話

今回は、エルと霊夢と魔理沙の昼食編


では、本編どうぞ


霊夢と魔理沙は、エルに連れられて一軒の店に到着した。

 

「この店は何?」

 

「俺の知り合いの店だ。大将!3人お願い。」

 

「何なんだぜ!?」

 

魔理沙は、店内を見る。

 

店内は、人里の他の店と変わらない木で建てた内装だが、見たことのない機械が埋め込められている。

 

すると、厨房から店主と思われる御老人が出てきた。

 

「いらっしゃい…‥決まったら、呼んでおくれよ」

 

店主は、3人にメニュー表を出して厨房に戻った。

 

「…‥…‥」

 

「…‥…‥」

 

霊夢と魔理沙は、メニュー表とにらめっこの状態で見ている。

 

「どうしたんだ?」

 

「値段が…‥高い」

 

「高過ぎるぜ!」

 

 

霊夢が見ていたのは、肉料理のページをエルに見せている。

 

「博麗は、何が良いんだ?」

 

「このページの中で、あんたのおすすめ…‥」

 

「わかった。で、霧雨は決まったのか?」

 

「茸料理が良いな。だけど、高いし…‥」

 

エルは、溜め息をついて店主を呼ぶ。

 

「大将。博麗には肉料理。霧雨には茸料理での大将のおすすめ。お願い。」

 

霊夢と魔理沙は、エルを見て、信じられなさそうな表情をしている。

 

「俺の奢りだと、言った筈だが…‥忘れたのか?」

 

「忘れてないけどよ。お前…‥私達に敵対心持ってるだろ?」

 

「敵対心は持ってるが、それがどうかしたか?」

 

「…‥…‥」

 

店員が、霊夢と魔理沙に料理を運ぶ。

 

「これは、丼?」

 

「私のも丼物だぜ。」

 

「お前達が、俺のおすすめで良いと頼んできたからな。食べてみろよ。」

 

 

霊夢と魔理沙は、興味津々に一口食べると、目を輝かせながら食べ続ける。

 

(さて、これからどうするか…‥霊夢と魔理沙には正体までは、バレてないが…‥)

 

考え事をしていると、霊夢と魔理沙は、もう食べ終えたようだ。

 

「あんた。これから、博麗神社に来てもらうわよ。」

 

「何でだ?」

 

「あんたが、危険人物かどうか紫に調べてもらうためよ。」

 

「妖怪賢者か?仕方ない。着いていこうかな。霧雨は、どうするんだ?」

 

「私も行くぜ!お前の事はまだ、信用できないからな!」

 

「別に、どうでもいい。大将。会計お願いします。」

 

「合計で、五千六百円じゃ。」

 

「めんどいから、一万円で、釣り入らないから。」

 

エルは、店から出ると同時に、霊夢と魔理沙がエルを追う。

 

「御馳走様。美味しかったわ。」

 

「う―ん。私にも、作れたら…‥」

 

「それは、良かったな。で、今から博麗神社に行くんだろ?案内してくれないか?」

 

「案内するのは良いけど、飛べるの?」

 

「一応な。」

 

「なら大丈夫ね。行きましょう。」

 

「それじゃあ、行きましょ。」

 

エルは、霊夢と魔理沙についていく

 

 




今回は、ここまで。

次回は、博麗神社編

感想、評価お願いします。


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19

東方妖怪堂第19話

博麗神社編

今回は、霊夢と魔理沙に博麗神社に連れてこられます。

本編どうぞ


霊夢と魔理沙は、エルを博麗神社に連れてきた。

 

「今、お茶を出すから待ってなさい。」

 

霊夢が台所に行くのを見て魔理沙は、エルの方を見て言う。

 

「その仮面は取らないのか?」

 

「取る必要はない。質問があるなら答えるけどな。」

 

「お前は、何処かで私と…‥会ったことあるか?」

 

「無い。」

 

「そうか。」

 

エルと魔理沙は、霊夢が戻ってくるまで、沈黙が続いた。

 

「お茶持ってきたわよ。」

 

「待ってたぜ!」

 

「そうだ。博麗。これは、差し入れだ。一応、渡しとく。」

 

エルは、一万円を霊夢に手渡した。

 

「一万円!」

 

「異変での迷惑料と御賽銭と口止め料だ。足りなかったか?」

 

「ありがとう!」

 

「やっぱり…‥怪しいぜ!お前…‥」

 

魔理沙に怪しまれているエルは、懐から小瓶を取り出して、魔理沙に手渡した。

 

「これは!?」

 

「八雲紫から渡されなかったか?あの魔法薬は、俺が調合したんだ。霧雨用に用意したんだけどな。」

 

「あの魔法薬は、お前だったのか!?」

 

「それと、パチュリさんからの伝言だ。『本を勝手に借りたりしないなら、私の出来る限りの協力はする』

だそうだ。正直に言えば…‥パチュリさんにも協力してもらった魔法薬だ。」

 

「何で、私に渡したんだ?」

 

「あの異変の弾幕ごっこの時に、怪我しただろ?それのお詫びだ。俺は、余り弾幕ごっこは得意じゃないから。俺の勘違いなら謝るが…‥これでも、信用できないか?」

 

「疑って、悪かったぜ。パチュリーに今度、借りてた本を返すと、伝えてほしいんだ。」

 

「伝えておく。」

 

その後。3人で、お茶を飲みながら楽しく話して、夕飯を食べ終えて寝る時間。

 

「今日は、魔理沙も泊まってよ。」

 

「良いぜ。」

 

「俺は、風呂に入ってくる。」

 

「ねえ。貴方の名前は?」

 

霊夢に名前を聞かれて、一瞬立ち止まる。

 

「名前?」

 

「そうよ。貴方の名前よ。まだ、聞いてなかったから…‥」

 

「俺の名は…‥わからない。」

 

一言だけ言うと、風呂場に行った。

 

「名前がわからないて…‥どういう…‥」

 

「やっぱり、何処かで会ったことあると思うんだ。」

 

「それにしても、もう8年か…‥」

 

 

 

 

 

風呂場についたエルは、札を取り出すと、四隅に札を張る。

 

「さて…‥侵入防止結界と防音結界発動…‥」

 

数秒後。風呂場に結界が張られる。

 

「このスペルカードだな。スペルカード発動!【召喚符・八雲藍】」

 

仮面を外して、スペルカードを発動させると、床にスキマが開いて、藍が出現した。

 

「久し振りだな。エル。」

 

「お久し振りです。藍さん。」

 

「それじゃあ…‥紫様からの指令を言うぞ。来年の3月の終わり頃に異変を起こすらしい。」

 

「来年…‥異変の協力ですか?」

 

「今回は違う。君には、博麗の巫女か主犯のどちらかを選んで協力するんだ。詳しい指令内容は、来週また話そう。それでは…‥」

 

藍は、煙の如く消えた。

 

「選んで…‥協力。博麗か主犯の…‥」

 

再び仮面をつけて、結界を解除する。

 

「そろそろ…‥寝るか。」

 

エルは、博麗神社の屋根に移動して眠った。




今回は、ここまで。

次回は、指令の内容が知らされます。

感想、評価よろしくお願いします。


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20

東方妖怪堂第20話

今回は、博麗神社から逃げ出します。

本編どうぞ


エルのとある夢

 

子供の頃。エルは、とある森に迷ってしまった。

 

「此処は、何処?」

 

途方にくれていたエルは、赤の猫又を発見した。

 

「赤色の猫?見たことない!」

 

「…‥…‥…‥」

 

猫又は、エルを見つめるとそのまま逃げていった。

 

その場面で意識が消えた時…‥

 

「起きて…‥」

 

誰かに呼ばれる声が聞こえて…‥エルは、目を覚ました。

 

「ちょっと、大丈夫?」

 

エルの目の前には、霊夢が顔を覗き込むように見ていた。

 

「博麗か。おはよう」

 

「アンタね。何で、屋根の上に寝てるのよ?」

 

「別に…‥」

 

「今日は、紫が来るから。」 

 

霊夢は、屋根から降りて朝食の準備を始める。

 

「あの夢…‥何で…‥今になって」

 

エルは、屋根から降りて井戸に向かうと、仮面を外して顔を洗う。

 

「今日は、紫さんが来るんだったな。」

 

仮面をつけて、部屋に戻ると、朝食の準備がされている。

 

今日の朝食は、焼き魚と味噌汁にご飯が並べられていて、既に魔理沙は食べる最中だ。

 

「エル。おはよう!私の隣に来ても良いぜ!」

 

「わかった。」

 

魔理沙の隣に座る。

 

「いただきます。」

 

「好き嫌い無いわよね。」

 

「大丈夫です。」

 

朝食を食べていると、萃香が酒樽を持ってきた。

 

「魔理沙!御酒飲もうよ!」

 

「萃香!朝から酒はやめなさい!」

 

「良いじゃん!君も酒飲もうよ!」

 

萃香は、エルに酒を渡す。

 

「…‥…‥…‥」

 

「萃香!やめなさい!飲むんなら食後にして。」

 

「わかったよ。」

 

「御馳走様でした。」

 

食べ終わると、食器を流台に置き洗い始める。

 

(どうしよう…‥まだ、俺の正体は知られてないが、このままじゃあ…‥時間の問題だ。仕方ない…‥)

 

食器を洗い終わると、素早く屋根に移動して札を飛ばした。

 

「逃げるか…‥」

 

「逃がさないわよ!」

 

エルの目の前に、霊夢と魔理沙の二人がいた。

 

「やっぱり、逃げる魂胆だったんだな!」

 

「元々俺は、お前らとは敵同士だ。」

 

「何者なの?何を企んでるのかしら?」

 

「言っただろ?異変を起こす者だと…‥去らばだ。」

 

エルの体から霧が発生して札を構える。

 

「逃がすか!」

 

魔理沙はマスタースパークを放って、エルに命中するが、札に変わった。

 

「札?」

 

「くそ!逃げられたぜ!霊夢?その札はなんだ?」

 

「【身代わり札】だわ。」

 

「逃げられたみたいね…‥」

 

何もない所からスキマが開いて、紫が姿を見せる。

 

「紫。あの仮面の男の事で、何か知ってることあるでしょ?」

 

「どうかしらね?」

 

「異変を起こす者だと…‥名乗ってた。この幻想郷で、何かを仕出かす前に阻止しなきゃ。」

 

「霊夢。あの人物の能力はわかったわ。【術札を作成する】程度の能力よ。」

 

「術札…‥まさか…‥」

 

「私はこれで、失礼するわ。」

 

 

 

 

 

 

博麗神社を後にしたエルは、迷いの竹林にある隠れ家の小屋に来ていた。

 

「危なかった…‥もう人里に行くのは危険かな。霊夢と魔理沙に見つかると、面倒だ。」

 

「そうよね。」

 

エルの背後から、紫が姿を現すと、驚いた拍子に倒れた。

 

「紫さん!驚かさないでくださいよ!」

 

仮面を取り紫を見る。

 

「ごめんなさいね。報告があるわ。博麗の巫女に貴方の能力がバレたわ。」

 

「流石にバレましたか。」

 

血を取り出すと、札に【炎】の文字を書くと赤の札が完成した。

 

「貴方の能力は、便利ね。」

 

「能力発動のコストが少し高いですけどね。」

 

「貴方に詳しい指令内容を言うわね。昨日の説明した通り、異変の主犯か博麗の巫女のどちらかを選んで協力して欲しいのよ。」

 

「異変の協力は、問題無さそうですが、博麗の巫女には協力しないと行けませんか?」

 

「博麗の巫女での協力は、表向きよ。貴方に頼みたいのは、博麗の巫女の監視を頼みたいのよ。最近は、修行を全然しないから困ってるのよ。」

 

「博麗の巫女を監視して、様子を見ろって事ですか?」

 

「どうかしら?」

 

「わかりました。異変の協力をします。」

 

「言い忘れてたけど、今回の異変は、妖怪にも被害…‥「やっぱり、博麗の巫女に協力します。」そう頼んだわ。」

 

紫は、姿を消した。

 

「指令だから仕方ないけど、俺に…‥何をさせたいんだ?まさかな…‥」

 

エルは小屋の中に入って眠った。

 

 




次回は、新たなオリキャラが登場するので、エルは出ません。

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21

東方妖怪堂21話

今回は、新たなオリキャラが登場しますので、エルは出ません。

本編どうぞ


此処は、幻想郷にある迷いの竹林。その竹林を散歩している一匹の黒猫がいた。

 

黒猫は、迷いの竹林を抜けて人里にやって来ると、子供達の声のする方へ歩いていく。

 

「猫神様!おはようございます!」

 

『元気が一番じゃ!気を付けての…‥」

 

「行ってきます!」

 

子供達は、黒猫の頭を撫でて駆け出していった。

 

散歩の続きをする黒猫は、一見の茶屋に足を止めると、邪魔にならないように席の下に寝転がる。

 

「あら。猫神様…‥これをどうぞ。」

 

茶屋の店主から団子を貰うと、美味しそうに食べ始める。

 

『御馳走様。美味しかったのじゃ!』

 

「喜んでもらえて、嬉しいわ。また明日ね。」

 

『また、来るのじゃ!』

 

黒猫が走り出し出すと、茶屋の入口の横に鈴が出現した。店主は鈴を拾うと、店内に飾る。

 

『今日も、平和じゃのう。何処に行こうか…‥」

 

人里内を歩いていると、氷の妖精チルノに出会うと、黒牙を見て近付いてくると…‥

 

「あ!黒牙だ!」

 

『チルノは、今日も元気じゃの…‥』

 

「今日もあたいは、元気一杯!」

 

『それは、良いことじゃ。これは、御守りじゃよ。』

 

黒牙はチルノに青い鈴を渡すと、喜んで鈴を鳴らすと、チルノと黒牙の周りに青いオーラが発生する。

 

「涼しい!何で!?」

 

『その鈴は、チルノを守る御守りじゃ。大事に持ってるのじゃ。いつか良いことがあるじゃろ。』

 

「ありがとう!じゃあね!」

 

チルノは、駆け出していった。その後を、追いかけるように次々と、妖精や妖怪が駆け出して行く。

 

『次は、何処を散歩するかの…‥人里から出るかの…‥』

 

黒牙は、門番に挨拶してから、人里を出て魔法の森に向かって歩き出すのだが、八雲藍の式で、猫又の妖怪…‥橙を見かけると近付く。 

 

「黒牙さん!今、何しているんですか?」

 

『橙。今から魔法の森に向かう所じゃ。』

 

「そうなんですか。私は、藍しゃまに頼まれて御使いです。」

 

『そうかの?では、またの…‥』

 

黒牙は橙に、別れをいって人里を出て、魔法の森に出掛けていった。

 

 

 

 

 

 

魔法の森に到着した黒牙は、木に登って赤い木の実を見つけると、食べ始めた。

 

『うん。これは、甘いの…‥』

 

別の木に飛び移ると、青い

木の実を見つけると、同じように食べる。

 

『これは、まだ駄目じゃ。そろそろ、帰るかの…‥寒くなってきたのじゃ。人里に戻らねば…‥』

 

黒牙は、木から降りて歩き始めると、雪が降り積もってきて、寒そうにしている黒牙は、少し急いで移動する。

 

『この冬の季節…‥嫌な予感が、してくるの…‥』

 

空を見上げながら呟いた。

 

 




次回は、異変が起こります。

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22

東方妖怪堂第22話

今回から春雪異変編スタート

本編どうぞ


冬の終わりが差し掛かる頃。霊夢は部屋にある炬燵で、まったりしていた。すると魔理沙が、慌てた様子で、部屋に入り込んできた。

 

「霊夢!これは異変だ!もう冬の終わりだってのに、雪が降り続けている。」

 

「魔理沙。少しだけ冬が長くなっているだけよ。」 

 

動こうとしない霊夢は、焦りを見せる魔理沙を見て溜め息をつく。すると、部屋の天井からスキマが開いて、紫が降りてきた。

 

「霊夢。これは、魔理沙の言う通り異変よ。」

 

「紫…‥」

 

「だから言っただろ!早く異変解決に行くぜ!」

 

「今回は、協力者を連れてきたわよ。」

 

紫の隣に、黒フードに仮面姿のエルが現れると、霊夢と魔理沙は警戒した。

 

「八雲紫。異変解決の協力するが、俺を博麗神社に連れてきて、どうするつもりだ?」

 

「霊夢と魔理沙と協力して、異変解決をするのよ。」

 

「紫!どういうこと!?」

 

「まさか俺が、博麗の巫女と人間の魔法使い(泥棒)と協力する日が来るとはな。」

 

「ちょっと待て!私は、泥棒じゃない!」

 

エルの発言に、起こり出す魔理沙を無視して、紫に異変の事を聞き出している。紫は、何も知らないようだ。

 

「早速だけど、異変解決に向かってもらうわよ。」

 

「わかったわ。魔理沙と貴方。仲直りしなさい!特に仮面の貴方!今回は、協力してもらうわよ!」

 

「ふん。裏切らなければ協力してやる。八雲紫…‥約束は覚えてるんだろうな?」

 

「安心しなさい。貴方が異変解決に協力してくれたら、貴方を見逃すわ。」

 

「ちょっと待って紫。何でそんな約束してるのよ!?」

 

紫の発言に驚愕する霊夢は、エルを睨み付けながら見ている霊夢。魔理沙は苛々しながら二人の話を聞き流す。

 

「俺は先に行かせてもらう。良いよな?八雲紫。」

 

「協力さえしてくれれば構わないわ。」

 

「ちょっと待って。勝手な行動何で許すのよ!?」

 

霊夢の言い分に溜め息をつきながらエルの方を見て説明する。

 

「あの人間の腕には、私の能力の一部が宿った腕輪を付けさせてるの。もし、あの人間が裏切ったら死ぬように境界を操ったから。大丈夫よ。」

 

「これが有る限り俺は、八雲紫の命令には絶対服従何だよ。今度こそ異変の調査に行かせてもらうぞ。」

 

「そうだとしても、監視を…‥」

 

「だったら…‥人間の魔法使い。俺の監視をしろ。」

 

監視人に魔理沙を指名すると魔理沙は…‥

 

「冗談じゃないぜ!何で私が監視をしなくちゃならないんだぜ!」

 

「これには、パチュリーさんの頼みでもあるんだよ。」

 

一枚の札を取り出すと、それが紫色の紙に変化して魔理沙に見せる。

 

「何々…‥《霧雨魔理沙がパチュリーノーレッジの本を盗まないように監視することを条件に願いを叶えるものとする…‥》なんだよこれ!?』

 

「パチュリーさんから頼まれた。俺も欲しいものがあるからこれを条件にしたら許可してもらったよ。だがら、行くぞ。」

 

魔理沙の腕をつかむと、飛んでいった。

 

「私…‥調査に行ってくる。」

 

霊夢も魔理沙とエルを追って飛んでいった。

 

「エルの正体がバレるのも時間の問題かしらね。」

 

紫は消えた。




今回は、ここまで

ストーリー構成…‥難しい…‥

次回は、異変調査が開始されます。

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23

東方妖怪堂第23話

春雪異変編スタートです


霊夢、魔理沙、エルの三人は、終わらない冬の異変…‥春雪異変の解決のために調査を行っていた。

 

「さて、何処の誰がこの異変を起こしたんだろうな?仮面の男。心当たりないか?」

 

「霧雨は俺を疑っているようだな。」

 

「今の容疑者は、お前しかいないんだよ。」

 

「魔理沙。仮面の男は主犯じゃないわ。そもそも紫が協力者として連れてきたんだから。」

 

「俺を容疑者として疑うのは自由だが何処から向かうんだ?」

 

「紅魔館から向かうか?何かヒントを得られるかもな。」

 

エルの提案に霊夢と魔理沙は考えながら二人で話し合っている。

 

「わかったわ。行ってみましょう。貴方は魔理沙の監視御願いね。」

 

「わかった。」

 

「そんな…‥」

 

魔理沙は落ち込むが、霊夢とエルは見て見ぬふりしてそのまま飛んでいった。

 

「ちょっと待ってくれよ!」

 

 

 

 

 

紅魔館に到着した3人は、入口前に立ち止まる。美鈴が寝ているため入るわけにはいかないのだ。

 

「美鈴さん。居眠りしてるよ…‥」

 

「門番の役割を果たせてないわね。」

 

「寒いぜ…‥」

 

すると、門が開くと咲夜が出てきた。 

 

「どうしたの…‥霊夢に魔理沙と…‥」

 

「お久しぶりです。咲夜さん。御元気そうで…‥」

 

「御元気そうでなによにです。寒いでしょうから入って。さて…‥」

 

「美鈴さんのお仕置きなら、俺がやりますよ。試したい札が出来ましたから。」

 

妖笑を浮かべて、美鈴に札を向けて唱える。

 

「炎符・炎神の一撃」

 

美鈴の立っている地面から炎が吹き出してきて、美鈴を燃やす。

 

「ギャァァー!?」

 

「やり過ぎたな…‥」

 

札を破り捨てると、美鈴に襲っていた炎が消えて、美鈴はボロボロになる。

 

「美鈴。次はないと思いなさい。」

 

「はい…‥」

 

霊夢と魔理沙とエルは、紅魔館に入れてもらい寒さを凌いだ。

 

「レミリア。咲夜を借りていいかしら?異変解決を手伝ってもらいたいの。」

 

「良いわよ。咲夜。あの三人の手伝いをしてきなさい。」

 

「畏まりました。御嬢様。」

 

「咲夜は今から出掛けるか?」

 

「一緒にいきましょう。」

 

「その前に、俺はレミリアさんと話があるから部屋の外に出てくれ。」

 

咲夜、魔理沙、霊夢の三人は部屋からでる。

 

「エル…‥仮面を外しなさい。今は、私しかいないから。」

 

「わかりました。」

 

エルは仮面を外すと、レミリアはエルを抱き締める。

 

「八雲紫から聞いたわよ。博麗の巫女と仲良くなったと言ってたわよ。」

 

「利害が一致してたから一緒に行動しただけです。俺は人間の敵ですから。」

 

「そう…‥」

 

「そろそろ行きますね。」

 

異変解決に向かった。

 



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24

霊夢、魔理沙、咲夜、エルの4人は、異変解決に向けての調査をしていたが、手掛かりがない。

 

「手掛かりが無さすぎるぜ!」

 

「あんたは、何か思い付かないわけ?」

 

「この状況で…‥いいこと思い付いた。」

 

「どうするんですか?」

 

「俺の使い魔に頼めばなんとかなるかも…‥」

 

懐から札を取り出すと、咲夜に渡した。

 

「ちょっと、札を持っててくれますか。」

 

「わかったわ。」

 

赤色の液体の入った小瓶を取り出す。中には血が入っているようだ。

 

小瓶を開けて一滴だけ血を札に染み込ませると、札が光だして青髪の少女が現れた。

 

「マスター。御命令を…‥」

 

「チルノ!?」

 

「私はチルノじゃないのです!私はレイです!」

 

レイと名乗る少女は、チルノとそっくりな容姿をしているが、瞳が黄色のようだ。

 

「マスター…‥寒いのです…‥」

 

「悪かったな。レイ。」

 

エルはレイに近づくとゆっくりと抱き締める。抱き締めると、レイは嬉しそうな表情をしている。

 

「どうしたんだ。」

 

「あんた…‥ロリコンだったの…‥」

 

「はあ!?何で、ロリコンになるんだよ!?」

 

霊夢の一言にエルは、すぐさま言い返すと、溜め息をすると、無言のまま先に向かっている。

 

「博麗!今から主犯の手掛かりを見つけるから待ってろ。」

 

「そうだった。それが目的だったわね。」

 

「どうするの?」

 

「レイ。これの痕跡を辿ってくれ。」

 

エルは光の粒をレイに渡すと、体が光だしてすぐに消える。

 

「辿れました。案内します。」

 

「レイ。貴女の能力は何なの?」

 

「俺が説明する。レイの能力は【ありとあらゆる痕跡の辿る】程度の能力。簡単に説明すると…‥魔力や妖力などの痕跡を調べて辿ることができる。」

 

「行くわよ。」

 

四人はレイについていくと、花びらが何処かに吸い込まれていく光景を見る。

 

「マスター。あの奥から強い霊力と妖力を感じるなのです。」

 

「霊力と妖力…‥!?博麗の巫女…‥悪いが先に行かせてもらう。レイ…‥博麗、霧雨、咲夜の3人の補佐をしろ…‥」

 

「ですが…‥」

 

「これは…‥命令だ。」

 

「なのです…‥」

 

エルは3人を見ずに行こうとするが、霊夢に腕を捕まれる。

 

「何を企んでいるの?」

 

霊夢はエルを睨み付ける。

 

「企む?博麗の巫女…‥俺は元々御前とは敵対同士なんだぜ。」

 

「何で、異変解決に協力したの?」

 

「八雲紫と取引したんだよ。前回の異変解決の妨害を見逃す事を条件に協力するとな。」

 

「な!?紫と取引!?」

 

「さて、教えることは全て教えた。異変解決のために先に行かせてもらう。」

 

エルは、札を取り出した。

 

「じゃあな。博麗の巫女。」

 

札から霧が発生してエルの姿が消える。

 

「いない!」

 

「レイ。案内してくれない。」

 

「わかったのです。」

 

霊夢、魔理沙、咲夜の3人はレイに着いていく。

 

 

 



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25

エルは薄暗くて長い階段をゆっくりと進んでいた。

 

「冥界は此処か。さて、奴らが来るまで待たないとな。」

 

目的地に到着すると、霊夢たちが来るまで術札の作成で時間を潰した。

 

「貴方が侵入者ですか…‥」

 

「久し振りだな。妖夢…‥」

 

エルの目の前に、白髪で刀を構えている少女…‥魂魄妖夢がエルを警戒しながら

近付く。

 

「質問します。ここに来た目的は?」

 

「異変解決が目的だ。ここを通してくれ。」

 

「やっぱり…‥幽々子様の邪魔をするんですね。」

 

「妖夢。西行寺幽々子を止めなければ後悔することになる…‥」

 

エルは妖夢を止めるべく説得をする。

 

「幽々子様の邪魔をすると言うのなら…‥貴方を斬ります…‥」

 

「悪いが斬らせないぞ…‥」

 

札を取り出すと、炎が出現して妖夢に向けて飛ばすが、妖夢はそれを剣で、斬り消した。

 

「貴方の実力は、こんなものですか…‥見損ないましたよ。」

 

「そろそろだな。」

 

「何がそろそろ…‥まさか!?」

 

エルの後ろから魔法陣が出現して、霊夢、魔理沙、咲夜の3人が現れた。

 

「さて、俺の役目は終わった。後は、勝手にやってろ。」

 

「待ちなさい。」

 

「何だよ。俺は今から異変の主犯を殺らないといけないんだけど。」

 

「殺しはダメよ。それだけは、約束して…‥」

 

「仕方ないな。主犯は殺さない。これで、良いのか?」

 

「良いわ。」

 

霊夢は掴んでいたエルの腕を離すと、妖夢の方を見る。

 

「さて、通らせてもらうわ。」

 

「覚悟するんだぜ!」

 

「幽々子様の邪魔はさせません。」

 

「博麗の巫女。ここは、あの二人に任せて主犯をぶっ飛ばすぞ!」

 

「でも…‥」

 

「異変解決は、御前の使命だろが!ここで立ち止まったら異変解決は出来ないだろ!」

 

エルは霊夢を抱き締める。

 

「…‥…‥わかったわ。行くわよ!」

 

「ふん。さっさと行くぞ。」

 

「く!?逃がしませんよ!」

 

「御前の相手は、私達だぜ!」

 

「私達に任せて、二人は黒幕を…‥」

 

「ありがとう。」

 

霊夢とエルは、階段を上って先を急ぐ。

 

「早く追いかけなければ…‥」

 

ナイフが妖夢の目の前を通り過ぎると、咲夜がナイフを構えている。

 

「霊夢の邪魔はさせないわよ。」

 

「私達が相手だぜ!」

 

「く…‥仕方ありませんね。相手になりましょう。」

 

咲夜と魔理沙は、妖夢に戦闘を開始する。

 

「【恋符・マスタースパーク】」

 

七色の光線が妖夢を狙い放出されるが、妖夢が剣で光線を斬り消滅した。

 

「こんなものですか…‥あの人の方が、数倍強いですね。」

 

魔理沙を睨み付ける。

 

「効いてないぜ…‥」

 

「貴女の時間は、私のもの…‥【時符・クロックワールド】」

 

咲夜は時を止めると、妖夢の周りにナイフを設置すると、時を動かす。

 

「え!?何時の間に…‥」

 

飛んでくるナイフを剣で捌きながら防ぐ。

 

「時止めですか…‥怪我したくなければ…‥此処から立ち去りなさい。」

 

「断るんだぜ!」

 

「なら、斬らせてもらいます…‥」

 

妖夢がスペルカードの発動を宣言する一瞬の隙をつき。咲夜が妖夢を気絶させた。

 

「咲夜…‥あれは、反則じゃないか。」

 

「そうかしら?さて、行くわよ。」

 

魔理沙と咲夜は、先を急いだ。



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26

魔理沙と咲夜は、妖夢を倒して霊夢達と合流するために先を急いでいた。

 

「咲夜。あの仮面の男のことで、聞きたいことがある。」

 

「どうしたの?」

 

「…‥…‥エルと名乗る人物…‥聞いたことないか?」

 

魔理沙の発言に動揺する咲夜だが、気付かれないようにして答える。

 

「エル?聞いたことないわ。貴女の知り合いなの?」

 

「…‥…‥小さい頃に、霊夢と一緒に遊んだ幼馴染みだぜ…‥」

 

魔理沙は深く帽子を被り咲夜に表情を見せないようにする。

 

「…‥…‥そのエルは、いつ頃姿を消したの?」

 

「…‥…‥妖怪の森に…‥…‥」

 

「それ以上言わなくても良いわよ。」

 

咲夜は泣いている魔理沙を抱き締める。

 

「ありがとう…‥」

 

「それにしても、長い階段ね。ちょっと疲れてきたわ。」

 

「ん?霊夢達だ。」

 

「咲夜と魔理沙あの剣士に勝ったのか。」

 

「簡単だったぜ!」

 

「よし。さっさと主犯を倒して春を取り戻すわよ。」

 

四人は階段を登り終えると、扇子を片手に持った着物の女性が現れた。その女性はエルを見ると、笑みを浮かべて喋りだした。

 

「久し振りね…‥」 

 

「久し振りだな…‥…‥西行寺幽々子…‥」

 

幽々子とエルの会話を聞いて霊夢がエルを睨み付ける。

 

「主犯と知り合いなの!?」

 

「やっぱり、信用できないぜ!」

 

霊夢と魔理沙に敵視されたエルは、何も言わずに幽々子を睨み付ける。

 

「咲夜。あの異変の黒幕を倒す。協力してくれ。」

 

「わかったわ。」

 

「博麗の巫女と魔法使い…‥話なら後にしろ。邪魔をするなら殺す。」

 

エルの瞳から殺気を感じ取った霊夢と魔理沙は、恐怖したのか後ろに下がる。

 

「準備できたわ。貴方のスペルカードで、全体強化出来ないかしら。」

 

「問題ない。俺のスペルカードはサポート程度しか出来ないがな。」

 

咲夜とエルはスペルカードを取り出して構える。

 

「早く始めましょう。スペルカード発動!【反魂蝶 一分咲】」

 

幽々子の周りから蝶の形をした弾幕が展開される。エルは、幽々子の弾幕を避けながら、進んでいくとスペルカードを取り出す。

 

「咲夜!奴のスペルカードが終わるのと同時に周りの時間を止めろ!俺が仕留める。」

 

「わかったわ。霊夢と魔理沙は何やってるのよ。」

 

「咲夜…‥あんな奴の言うことをどうして信用できる!?」

 

「そうだぜ!どうしてだ!」

 

霊夢と魔理沙の発言を聞いて咲夜は、二人を睨み付ける。その様子をエルは、辛そうにしながらも幽々子に対峙している。

 

(やっぱり…‥辛い…‥あの二人だけは…‥嫌いに…‥なれない…‥)

 

エルは仮面を取り掛けようとしたが、すぐに正気に戻り幽々子の弾幕を処理する。

 

「弾幕だけじゃあ、ダメか…‥咲夜やるぞ!【契約符・ロイヤルフレア】」

 

「そんな弾幕では、私は倒れないわよ。」

 

エルは、パチュリーのスペルカードを発動させて幽々子の行動を妨害するが、軽々避けられる。

 

「咲夜!今だ!」

 

「スペルカード発動!【時符・タイムロード】」

 

時計の針の弾幕が四方八方に展開されて、幽々子を取り囲む。

 

「残念だったわね…‥スペルカード発動【死符・死者の眠り】」

 

エルの目の前に幽々子の弾幕が迫り絶体絶命になる瞬間。

 

「【霊符・夢想封印】」

 

霊夢の弾幕が、幽々子の弾幕を消し飛ばした。

 

「大丈夫!?怪我はない!?」

 

「博麗の巫女!?何故、俺を助けた。」

 

「助ける理由なんて必要無いわ…‥異変解決の仕事は、私の役目。貴方は、私のサポートをお願い。」

 

「…‥今回だけは、指示に従ってやる。」

 

「あらら。避けられちゃったわね~」

 

「もう一度…‥スペルカード発動【霊符・夢想…‥「邪魔するぜ!【恋符・マスタースパーク】」ちょっと…‥邪魔!」

 

魔理沙が、霊夢の前に飛び出して、スペルカードを発動させる。幽々子は、魔理沙の出現により動きを止めてしまい弾幕に被弾するが無傷だ。

 

「私には効かないわね。」

 

幽々子は、笑みを浮かべながら扇子を降ると、エルの周りに蝶の弾幕が出現して取り囲んだ。

 

「囲まれたか…‥博麗の巫女。その蝶に触れたら死ぬぞ!絶対に俺に近づくな。」

 

「な!?」

 

エルは、札を取り出す。

 

「悪いが俺は、退散させてもらうぞ。咲夜!」

 

「わかったわ。」

 

「ちょっと、逃げるの!」

 

「黒幕…‥取引だ。春を返すならお前の願いを叶えてやる。」

 

エルは、霊夢を無視して幽々子に取引を提案する。

 

「あら。良いのかしら?」

 

「お前の目的は、春を集めて西行寺妖の花を咲かせることだろ?どうだ?」

 

「有難い話だけど、やめておくわ。春も返すわね。」

 

「そうか…‥博麗の巫女。異変は解決した。俺は、帰らせてもらう。咲夜。レミリアによろしくと伝えてくれ。」

 

「わかったわ。」

 

「ちょっと…‥あんた待ちなさい!」

 

霊夢は、立ち去ろうとするエルを呼び止める。

 

「八雲紫との契約は完了した。博麗の巫女…‥ここからは、敵対同士だ。」

 

エルの体が燃えて消滅した。

 



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27

あの異変解決から一ヶ月後。博麗神社では、宴会が開かれていた。紅魔館のメンバーや今回の異変を起こした主犯…‥西行寺幽々子と従者…‥魂魄妖夢の二人も宴会に来ていた。

 

「やっと来たぜ。今日は、異変解決を祝う宴会だから楽しもうぜ!」

 

魔理沙は、幽々子に酒を進める。

 

「美味しいわね。この御酒。」

 

「霊夢が持っていた酒だぜ。ちょっと借りてきたぜ。」

 

「勝手に借りたら霊夢が怒るわよ。」

 

「大丈夫だって。それより、あの仮面の奴は、来てないのか?」

 

「わからないわね~」

 

「そうか。紫に聞いてみないとな…‥」

 

魔理沙は、酒を飲み終えると、霊夢を探しに向かっている様子を上空で観察している者がいた。

 

「やっぱり宴会してるな。異変が解決したからか…‥」

 

エルは、見付からないように上空を移動しながら宴会を観察している。

 

「お久しぶりですね。」

 

「‥…‥射命丸文…‥」

 

エルに声をかけたのは、鳥天狗の新聞記者…‥射命丸文だ。

 

「まだ…‥恨んでいるんですか?博麗の巫女を…‥」

 

「だったらなんだ?関係無いことだろ。」

 

「異変解決の手伝いをしたそうですね。」

 

「八雲紫に依頼されたからな。」

 

エルは、その場を立ち去ろうとする。

 

「貴方は、宴会に参加しないんですか?霊夢さん達が貴方の歓迎会を計画されてました。」

 

「俺の歓迎会?悪いが参加しない。その変わり…‥」

 

札を取り出すと、一瞬に酒の入った樽に変化した。

 

「酒…‥ですか。」

 

「だが、人間が飲むと死ぬほど不味い酒だがな。」

 

「そういうことですか。わかりました。」

 

「俺は、帰らせてもらう。」

 

「わかりました。私は、貴方の味方ですよ。エル。」

 

「ありがとう…‥文…‥」

 

「見つけたぜ!宴会に参加しろ!」

 

魔理沙が、エルのところまで飛んでくると、エルの腕を捕まえる。

 

「宴会に参加してもらうぜ!」

 

「俺は参加しないぞ。面倒だ。」

 

「それなら無理矢理でも参加させるぜ。【恋符・マスタースパーク】」

 

魔理沙は、七色の閃光を放って、エルに命中するが無傷の状態でたっていた。

 

「無傷かよ!?」

 

「確かにお前のスペルカードの威力は凄いな。だが、俺には追い付けない。どんなに頑張ろうが、追い付くことはできない。」

 

「そんな…‥」

 

エルは魔理沙の顔を見ないで、立ち去りたい。だが、腕を捕まれているため、帰りたくても帰れない。

 

「帰らせろ。」

 

「絶対駄目だぜ!宴会に参加しろ!参加しないならその仮面を取るぜ!」

 

「卑怯だろ。わかった。参加すればいいんだろ。面倒だ。」

 

「仮面取ったら…‥「断る」そんな…‥」

 

魔理沙の説得により、エルは宴会に参加することに。エルを見た妖精や妖怪達は、歓迎してエルの周りに集まってきた。

 

集まってきた妖怪達に、テレパシーを送った。

 

『久し振りだな。俺の名前は、人間達には秘密にしてくれよ。わかったな。』

 

テレパシーを解除すると、霊夢と魔理沙がやって来た。

 

「やっと来たわね。何で宴会に来なかったのよ。」

 

「面倒だったからだ。その変わり酒を渡したはずだが。」

 

「確か…‥文が持ってきてたわね。」

 

魔理沙から酒を貰うと、飲みながら、周りを見渡す。

 

(賑やかだな。だから、宴会には参加したくなかったんだよ。)

 

すると、レミリアとフランが、料理を持ってやって来た。

 

「御兄様!久し振り!」

 

「久し振りだね。元気そうね。」

 

「レミリアとフラン。久し振りだ。余り宴会には行きたくなかったんだがな。騒がしいのは苦手だ。」

 

「だったら今度は、紅魔館に来なさい。招待するわ。」

 

「喜んでお受けするよ。」

 

「楽しみにしてるわ。」

 

レミリアとフランは、離れていったと、同時に妖精達はエルの周りに集まって来た。

 

「心配するな。楽しんでるよ。」

 

妖精達に笑みを浮かべる。

 

「またな。たまには、遊びに来いよ。」

 

エルは、姿を消した。

 



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28

紫に呼び場されたエルは、マヨイガに来ていた。

 

「紫さん。御用件はなんですか?」

 

「実は、エルに橙の遊び相手になってほしいのよ。」

 

「橙のですか。それは構いませんが、弾幕ごっこは無理ですよ。」

 

「大丈夫よ。橙の様子を見てくれるだけでいいわ。」

 

紫の後ろから橙が、怯えた表情で、エルを見ている。

 

「…‥橙です。」

 

「俺はエル。よろしくな。」

 

仮面をとって、橙を安心させると、エルに抱きついてきた。

 

「エル。橙を一日よろしくね。」

 

紫を見て、小さく頷いて見せると、スキマが出現して紫の姿が消えた。橙は、いまだにエルに抱きついている。

 

「橙。今日はどうするんだ?」 

 

「えーと。人里で、買い物…‥良いですか?」

 

「良いよ。買い物しようか。」

 

橙とエルの二人は、人里で買い物を始めて、先ず始めに向かったのは、八百屋だ。

 

「橙ちゃん。いらっしゃい。御使いかな?」

 

「はい!いつものお願いします。」

 

「まいど。」

 

八百屋での買い物を終えると、ルーミアとフランを見掛けて声をかけると、走ってきて、エルに抱き付いてきた。

 

「ぐは!?ルーミアにフラン!危ないだろ!」

 

「御兄様ごめんなさい。橙久し振り!」

 

「わはー。お久し振りなのだ―」

 

「フランとルーミア久し振り!」

 

「二人は、何処に行ってたんだ?」

 

「暇だったから散歩してたのだー」

 

「そろそろか。昼どうするんだ?」

 

「何か食べたいのだー」

 

「そうだ。俺が作ってやるよ。」

 

「そうなのか―」

 

エル、フラン、橙、ルーミアはの四人は、エルの店に向かった。

 

「彼奴を尾行するぜ。霊夢は、どうする?」

 

「良いわよ。バレないようにね。」

 

エルを監視していた霊夢と魔理沙は、エルの尾行を始めた。尾行されていると、気づかないエルは森を歩き続けている。

 

「昼御飯の希望はあるか?」

 

「肉が食べたいのだー。」

 

「私は、魚が食べたいです。」

 

「何でもいいよ。」

 

「そうだな。それよりルーミア。最近は人間を食べなくなっただろ。大丈夫なのか?」

 

「昨日。紫が食べてもいい人間を連れてきたから問題ないのだー」

 

「食べてもいい人間?大丈夫なのか?」

 

「閻魔の御墨付きなのだー」

 

「閻魔…‥」

 

エルとルーミアの会話を遠くから聞いていた霊夢と魔理沙は、怒りを露にする。

 

「紫を退治してもいいかしら?人里の人間を襲うなんて…‥」

 

「しかも、閻魔は何で許可したんだよ!」

 

「尾行するなら静かにできないのか?博麗の巫女、泥棒魔法使い。」

 

エルは、後ろを振り返りながら霊夢と魔理沙を見る。

 

「どうしたんだ。俺を尾行してたみたいだが…‥」

 

「御前は、小さい頃に…‥私達に会ったことがあるか?」

 

「何を言い出すかと思えばよ。笑える話だな。あるわけないだろ。」

 

「仮面をつけている理由はなんなの?」

 

「知る必要はないな。」

 

「最後に…‥何で…‥私達と敵対するの?」

 

霊夢は、何かを確信したのか少し泣きそうな笑みを浮かべエルを見つめている。

 

「…‥敵対か。それだけは…‥教えてやるよ。俺の友達を博麗の巫女に殺されたことだ。」

 

「え!?」

 

エルの発言に困惑する霊夢。霊夢の表情を見て前に出る魔理沙は、エルを睨み付ける。

 

「友達だと!?霊夢は…‥」

 

「覚えてないだろうな。俺の友達は妖怪だったんだからな。」

 

「妖怪…‥友達…‥?まさか!?」

 

「悪いが…‥話はここまでだ。フラン、橙、ルーミア。俺についてくるか?」

 

エルの表情を見て、頷くルーミア、橙、フランの三人は、エルに近付くと、周りに霧が発生して姿を消した。



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29

霊夢と魔理沙は、博麗神社に戻ると、エルに言われたのを思い出しながら悩んでいた。

 

「友達を博麗の巫女に殺され

た…‥か。」

 

「霊夢。あの男の言っていたことを信じるのか?私達を騙してるかもしれないんだぜ。」

 

「あの男は…‥嘘をついてない。あの男は…‥エルだわ。」

 

霊夢の発言に魔理沙は、涙を流しながら霊夢を掴む。

 

「そんなの…‥嘘だよな?」

 

「嘘だと…‥良いわね。」

 

霊夢と魔理沙の会話を隙間を使って聞いていた紫は、哀しげな表情を浮かべながら見ている。

 

「もう限界かしらね。霊夢と魔理沙があの子に気づいたとしても、あの子は心を開かない。」

 

「どうするのですか…‥紫様。」

 

「藍…‥橙の様子はどうだったの?」

 

「橙は…‥エルの看病をしています。」

 

「…‥説明しなさい。」

 

「実は、霊夢と魔理沙から立ち去った後のことです。」

 

藍は、語り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

回想

 

エル、ルーミア、橙、フランの四人は、エルの隠れ家で、ご飯を食べていた。

 

「おいしいのかー」

 

「魚…‥おいしい。」

 

「エル兄様。どうしたの?元気ないよ。」

 

エルは、仮面を取ると涙を流していた。

 

「やっぱり…‥あの二人は…‥俺の…‥」

 

「泣かないでなのだー」

 

「ルーミア。ありがとう…‥」

 

ルーミアを抱き締めている。

 

「レイ…‥出てきて…‥」

 

「マスター。大丈夫…‥泣かないで…‥」

 

「ごめん…‥」

 

エルは、レイとルーミアを抱き締めながら涙を流している。

 

「エル!大丈夫か!?」

 

「藍さん…‥俺…‥」

 

「我慢するな…‥」

 

「ごめん…‥なさい…‥」

 

エルは、安心したのか眠ってしまった。

 

「藍しゃま…‥」

 

「橙…‥エルは、大丈夫だ。フラン、ルーミア。エルを頼むぞ。」

 

「わかったのかー」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

「エル…‥最近は妖怪のために働き過ぎたのかも知れないわ。妖怪の味方でも、人間の子供。よし。藍。エルの歓迎会を開くわよ。指示するから準備しなさい。」

 

「畏まりました。紫様!」

 

「そうと決まれば…‥エルの知り合いを全員集めて、計画しなくちゃね。」

 

「妖怪か妖精なら、エルも拒絶しないでしょう。」

 

「妖怪の森は、大丈夫かしら?」

 

「天魔殿に許可を貰えたら良いのですが…‥」

 

「無理だったら、マヨイガに招待するわ。」

 

「少なくとも、霊夢と魔理沙は呼ばない方が良いわね。エルに負担が…‥」

 

「それもそうですね。」

 

「紅魔館のメンバーと、仲良しの妖精、妖怪のメンバーと、地霊殿のメンバーは駄目でしょうか?」

 

「エルの為なら仕方無いわ。後で、私が招待状を渡してくるわね。」

 

「それでは、計画開始!」

 

藍と紫は、姿を消した。

 

 

 



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30

今日もエルは、マヨイガに来ていた。だが今回は、橙以外にも来ていた。

 

「フラン、ルーミア、大妖精、橙で四人。紫さん。何か企んでますね?」

 

「今日から少しの期間は、仕事を休むように。」

 

「理由を聞きましょう。」

 

「妖怪と人間のバランスが今のところは、問題になってないから休んでもらえないかしら?」

 

エルは、紫を見る。何かを企んでいるのは、予想できるのだが、考えるのはやめて諦めた。

 

「わかりました。御言葉に甘えます。」

 

「私は、用事があるから。困ったことがあれば、藍に頼みなさい。」

 

紫は、姿を消した。

 

 

 

 

 

紫は、エルの歓迎会計画の為に地霊殿の正面玄関に来ていた。人里の団子を手土産に。

 

「久し振りですね。紫さん。」

 

紫に声を掛けたのは、地霊殿の主。古明地さとりだ。

 

「私に、用事があるみたいですね?」

 

「エルの歓迎会を計画してるのよ。さとりに依頼したいのよ。」

 

「ん?エルの歓迎会ですか?五年も会ってませんでした。わかりました。今回限定で、協力しましょう。」

 

「感謝するわ。人里の団子よ。皆で食べてね。」

 

「有り難く頂きます。エルの為なら、出来る限り協力しますので、私のみたいな妖怪も嫌わずに仲良くしてくれるのは…‥エルだけですから。エルに遊びに来てくださいと…‥伝えてもらえますか?」

 

「わかったわ。私もエルがいないとね…‥」

 

「それでは、紫さん。」

 

さとりは、帰っていった。

 

「次は…‥天狗の里に向かわないと。」

 

紫は、天狗の里に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

その頃。エルはというと、マヨイガで猫達と遊んでいた。

 

「心配しなくても、皆の分はあるから。」

 

猫達に小魚をあげると、エルの足に体を擦り付ける。

 

「懐かれてますね。エルしゃま。」

 

「橙も来いよ。」

 

エルは橙を抱き締めているが、恥ずかしそうにしている橙を見て、羨ましそうにしている。フラン、ルーミア、大妖精の三人。

 

「エルさん…‥」

 

「大妖精。どうしたんだ?」

 

「えーと。頭…‥撫で…‥」

 

「良いよ。」

 

大妖精の頭を撫でるエル。

 

「ルーミア、フラン。こっち来いよ。」

 

ルーミアとフランは、抱きついてくる。

 

「レイも出てこい。今日から暫くは、仕事は休みだ。」

 

「マスター!遊んで、遊んで!」

 

「暴れるなよ…‥」

 

暫くは、レイ、フラン、橙、ルーミア、大妖精と遊び尽くして、エルは昼寝をする。

 

「マスター…‥今日は、楽しそうだったな…‥」

 

「レイ。エルは…‥大丈夫か?」

 

「藍さん。マスターは、楽しそうでしたが…‥心は閉ざしたままです。あの頃から…‥」

 

「あの出来事がなければ…‥エルは、人間の敵にならなかった。」

 

「マスターは、今でも自分を責めてます。」

 

「エル…‥」

 

「藍!天魔とさとりから許可してくれたわ。場所は、天狗の里の一部の場所を借りれたわ。」

 

「本当ですか!?天狗の里の者から何も言われなかったのですか?」

 

「大丈夫よ。その代わり、妖怪の山に博麗の巫女を入れるなと、条件を出されたわ。それで、済んでよかったわ。」

 

紫は、眠くなったのか。隙間を開ける。

 

「私は、寝るわね。」

 

紫は、姿を消した。

 

「仕方ないですね…‥エルの為です。準備をしますか。」

 

藍も姿を消した。

 

「紫さんも藍さんも…‥心配…‥しなく…‥」

 

エルは、レイを抱き締めて眠った。

 

 



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31

数日後。エルは、マヨイガから出て、店に戻っていた。

 

「おい、狂気…‥もう覚醒してるんだろ。出て来いよ。」

 

エルの目の前に、フランの姿をした少女が現れた。

 

『ヤットデテコレタヨ!オニイチャンヒサシブリ~』

 

「今日は、御前の器を作成する。その方が、御前も自由に行動出来るだろ?」

 

『ワタシヲ!?ジユウニシテイイノ!?』

 

「勿論だ。だが、能力は制限させてもらうぞ。それが、絶対条件だ。」

 

『モンクナイ!ジユウニナレルナラ』

 

「よし。俺の式神になるか?器を維持するのに式神の方が都合が良いんだ。」

 

『オニイチャンニマカセル!』

 

「その前に、名前を決めないとな。」

 

『ナマエ!?』

 

「存在している証を与えないと駄目だろ?器をだけなのは、駄目なんだよ。」

 

『…‥』

 

「今日から御前の名前は、レインだ。思い付いた名前だけど、駄目かな?」

 

『ダメジャナイヨ!』

 

「器を作成するぞ。」

 

エルは、札を取り出して、札に血で文字を刻む。

 

「く!レイン…‥その札に触れて妖力を込めろ!」

 

レインは、エルの指示道理に、札に妖力を注ぎ込むと、札がレインに吸収された。

 

「成功だ…‥」

 

「…‥大丈夫…‥」

 

「レインは大丈夫か!?」

 

「…‥丈夫…‥エルは?」

 

「大丈夫だよ。レイン…‥今日からよろしく。」

 

「よろ…‥」

 

エルとレインは、マヨイガに向かう時に、紫に会った。

 

「エル。マヨイガに送るわよ。あら…‥私は、八雲紫。よろしくね。」

 

「私…‥レイン…‥エルの…‥式神…‥よろ…‥」

 

「ベースは、フランドールね。髪色の違い以外は、瓜二つね。」

 

レインの容姿は、青髪以外はフランと瓜二つだ。

 

「エル。レインの能力は何かしら。」

 

「確か…‥【ありとあらゆる耐性を与える程度の能力】」

 

「凄い能力ね。さて、レイン。貴女は、エルを裏切らないと誓える?」

 

紫は、真剣な表情で、レインを見つめる。

 

「エル…‥主…‥友達…‥助ける…‥絶対…‥」

 

「歓迎するわよ。レイン。一緒にマヨイガに行かない?」

 

「紫…‥エル…‥友達?」

 

レインは、紫の目を見る。

 

「友達だわ。」

 

「紫…‥よろ…‥」

 

「紫さん。レインに懐かれましたね。」

 

「紫…‥私…‥姉…‥どこ?」

 

「エル。フランドールに会わせてみる?」

 

「レイン…‥フランに会いたいか?」

 

「…‥…‥」

 

無言で、頷く。

 

「わかったわ。レイン。フランに会わせてあげるわ。」

 

「あり…‥とう…‥」

 

レインは、満面の笑みで、紫に感謝した。マヨイガに到着すると、眠くなったのか。エルの膝で寝てしまった。

 

 



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32

レインは、エルに連れられて紅魔館に来ていた。門番の美鈴は、いつも通り寝ていた。

 

「…‥…‥」

 

「…‥エル…‥どう…‥?」

 

「御待ちしてました。エル様。レイン様。八雲紫から連絡を承りました。どうぞ。」

 

「咲夜さん。また寝てるから…‥」

 

「わかったわ。後で、美鈴にはナイフの串刺しの刑ね。」

 

「程々にね。」

 

レイン、エルの二人は、紅魔館の館内に入り、荷物を置いとくため客室に向かう。

 

「…‥広い…‥」

 

「レイン。迷ったらいけないから、手を繋ぐぞ。」

 

「…‥子供…‥扱い…‥」

 

「してないから、怒るなよ。」

 

「…‥本当…‥?」

 

「してないよ。」

 

「なら…‥いい…‥」

 

レインは、エルの手を握ると、歩き始めた。すると、遠くの方から話し声が聴こえた。どうやら、言い争いをしているようだ。

 

「フランとレミリアだな。」

 

「…‥誰…‥?」

 

「友達の姉妹だ。喧嘩してるみたいだな。止めてくるか。」

 

「…‥止める…‥」

 

二人は、部屋をノックする。

 

「エルだ。入って良いかな?」

 

「御兄様!良いよ!」

 

「ちょっと、フラン!?勝手に…‥」

 

エルとレインは、扉を開けると、レミリアがフランをベットに押し倒していた。

 

「エル!?これは…‥」

 

「レイン。レミリアは、忙しいみたいだ。出直すか。」

 

「…‥そう…‥だね…‥」

 

エルとレインの茶番に、レミリアが我慢の限界らしい。怒り出した。

 

「エル!何か言うことないかしら?フランもふざけないで!」

 

「それは、謝るけど…‥私から退いてくれないかな?」

 

「…‥…‥」

 

無言で退けるレミリアは、レインを見る。レインは、エルの後ろに隠れてしまう。

 

「エル…‥その子は…‥」

 

「そうだ。レイン…‥大丈夫だ。レミリアとフランは、御前を絶対に拒絶しない。」

 

「わかった…‥」

 

レインは、フランを見る。

 

「…‥…‥」

 

「…‥私…‥フランドール。」

 

「…‥…‥レイン…‥」

 

「今まで、ごめんね。守ってくれて…‥ありがとう。」

 

「…‥!」

 

「これからも、よろしくね。」

 

「…‥御姉ちゃん…‥!」

 

レインは、フランを抱き締めて泣き出した。

 

「これで…‥一件落着だな…‥」

 

「エル!?大丈夫!?」

 

「く…‥大丈夫だ!レミリア!俺は…‥少し…‥休む…‥レインの存在は…‥内密に…‥しろ!」

 

エルは、気を失った。

 

「…‥エル…‥起きて…‥!?」

 

「大丈夫よ。レイン。気を失ってるだけだから。」

 

「…‥誰…‥!?」

 

「警戒しないで。私は、パチュリーノーレッジ。エルの友人よ。力を使いすぎて、気を失ってるだけだから。大丈夫。」

 

「…‥信じる…‥」

 

「貴女は…‥式神ね…‥」

 

「…‥エル…‥主…‥」

 

「今日は、此処に泊まりなさい。」

 

「…‥ありがとう…‥」

 

レインは、エルの看病をしながら眠った。



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33

翌朝。エルが目を覚ました。

 

「此処は…‥客室…‥そうか。レインを連れてきて…‥」

 

「…‥エル…‥」

 

「レイン。心配かけて…‥ごめんな。」

 

「…‥大丈夫…‥許す…‥」

 

レインは、エルを抱き締めている。すると、室内にフランが入って来た。

 

「御兄様、レイン。おはよう!御兄様は、大丈夫だった?」

 

「エル…‥大丈夫…‥御姉ちゃん…‥」

 

「フラン。心配かけてごめん。」

 

「御兄様。許すよ。だからね。笑ってよ!」

 

「ありがとな…‥フラン。」

 

エルは、フランの頭を撫でて、笑みを浮かべる。

 

「元気になったようね。」

 

「レミリア。心配かけたな。」

 

「フランを泣かしたら殺すわよ…‥」

 

「望むところだ。フランを泣かしたら、この命…‥くれてやる。」

 

レミリアの殺気を受けながら、不敵な笑みを浮かべるエル。だが、そんな二人を見て、怒り出しそうな雰囲気を纏う。レインとフランは、エルとレミリアを睨む。

 

「御姉様…‥」

 

「エル…‥」

 

エルとレミリアは、冷や汗を流し。二人に土下座する。

 

「…‥…‥」

 

「…‥…‥」

 

レインとフランの機嫌が悪い。

 

「レイン…‥悪かった。」

 

「…‥…‥」

 

「レイン…‥」

 

「…‥消えない…‥?」

 

「え…‥?」

 

「エル…‥消えない…‥?」

 

「レインを残して、死なないよ。」

 

「ん…‥なら…‥許す…‥」

 

エルは、レインを抱き締めて、頭を撫でる。

 

「エル様、レイン様。おはようございます。」

 

「おはよう。咲夜。」

 

「咲夜…‥おは…‥」

 

「朝食の準備ができましたので。御案内します。」

 

エル、レインは、咲夜に食堂に案内される。

 

「エル、レイン。おはよう。よく眠れたかしら?」

 

「…‥パチュリー…‥おは…‥」

 

レインは、パチュリーの隣に座る。料理が運ばれてきて、少しずつ食べ始める。

 

「…‥…‥おいしい…‥」

 

「それは、よかったわ。」

 

「レイン。食べ終わったら、外に出よ!」

 

「…‥わかった…‥御姉ちゃん…‥エルも…‥」

 

「わたったよ。」

 

エルは、野菜サラダを食べ終えると、金の鍵が光を放った。

 

「ん?どうしたんだ。にとり?念話するなんてな。」

 

『エル!ちょっと、工房まで来てくれないかい。』

 

「理由は?今、紅魔館にいるんだよ。」

 

『アリスと協力してエル専用の武器を開発したんだ!来てくれないかい?』

 

「後で連絡する。」

 

念話を解除すると、フランとレインに伝える。

 

「悪い。用事ができた。今日の夕方までに帰るから。許してくれ。」

 

「…‥レイン…‥一緒…‥行く…‥」

 

「わかった。その代わり…‥1週間は私の執事になって!私からの依頼!」

 

「仕方ないな。1週間はフランの執事になりますか。依頼されたからな!」

 

「やった!」

 

フランは嬉しいのか。エルを抱き締めている。

 

「フラン。執事になる代わりだけど…‥」

 

「仮面は取らなくても大丈夫。」

 

「ありがとな…‥」

 

エルとレインは、妖怪の山に向かった。

 



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34

レインとエルは、にとりに会うために、妖怪の山に向かっていた。

 

「エル…‥まだ…‥」

 

「そろそろだ…‥着いたな。」

 

エルとレインは、妖怪の山に到着すると、椛が目の前にやってきた。

 

「エルさん。お久し振りです。今日はどのような用事で?」

 

「にとりに呼び出されたんだ。工房に来てくれと。」

 

「わかりました…‥貴女は?」

 

椛はレインを見る。

 

「…‥レイン…‥エルの…‥式神…‥」

 

「私は犬走椛です。よろしくお願いします。」

 

「…‥よろ…‥」

 

「では、エルさんとレインさん。妖怪の山の案内をします。」

 

エルとレインは、椛と一緒に行く。

 

「それでエルさんは、何でにとりに呼ばれたんですか?」

 

「俺専用武器が完成したみたいでな。見に来てほしいんだとよ。」

 

「武器ですか。エルさんは武器とか使うんですか?」

 

「短剣とかな。護身用だが。」

 

「短剣ですか?」

 

「使いやすいんだ。殆ど、刀を使ってるけどな。」

 

「…‥エル…‥小屋…‥発見…‥」

 

レインの示す方向に、小屋を見つけた。椛は仕事なのか飛んでいった。

 

「にとりを呼ぶか。にとり。呼ばれてきたぞ!」

 

小屋から白衣姿のにとりが出てきて、エルに抱きついてきた。

 

「エル!久し振り!」

 

「…‥誰…‥離れて…‥」

 

「にとり。急に抱きついてくるなよ。」

 

「ごめんごめん。君がレインだね。私は河城にとり。よろしく。」

 

にとりの後ろから、人形を連れて歩いてくる黄色い髪の少女。

 

「久し振りね。エル。」

 

「シャンハイ」

 

「アリス。久し振り。上海も元気そうだな。」

 

「シャンハイ!」

 

上海はエルの頭の座り、ゆらゆらと体を動かしている。

 

「にとり。武器を見せてくれ。」

 

「わかった。」

 

にとりが取り出したのは、黒の手袋だ。

 

「手袋?布製では無いのか?しかも…‥結構重いな。」

 

「紫に頼んで黒曜石を貰ったんだ。黒曜石を含んだ手袋だよ。アリスにも協力してもらって。」

 

「手袋の魔法陣に太陽の光を集めることで、弾幕が放てるようになっているわ。貴方は、弾幕ごっこが苦手みたいだから…‥」

 

「ありがとう。ん?にとり、アリス…‥悪い。あの魔法使いが来たみたいだ。レイン。俺が呼ぶまで隠れていろ。」

 

「わかった…‥」

 

エルは仮面をつける。すると、魔理沙が飛んできてアリスとにとりを呼ぶ。レインは気づかれていない。

 

「仮面の男!何で此処にいるんだ!?」

 

「久し振りだな。霧雨。今回は只の散歩だ。」

 

「そんなの信用できないぜ!にとりとアリスには、手を出すな。」

 

魔理沙はエルを睨み付けるようにして、箒をエルに向ける。

 

「安心しろ。俺が敵対するのは、博麗の巫女と一部の人間だけだ。河城にとりとアリス・マーガレットには、手を出していないよ。」

 

「…‥…‥」

 

「魔理沙。私とにとりは、大丈夫よ。」

 

「本当みたいだな…‥さて、本題だ。仮面の男…‥御前の正体を言え!」

 

「教えるわけないだろ。」

 

エルは仮面を取られないように警戒しながら魔理沙を見る。

 

「どうして、何も教えてくれないんだ。エル!」

 

「誰のことを言っているのかわからないな。話にならない。紫!」

 

スキマが開いた。エルの隣に紫が出現する。

 

「どうしたのかしら?魔理沙と喧嘩でもしたのかしら?」

 

「紫!あの仮面の男はエルだよな!?」

 

「話は理解できたわ。魔理沙。残念だけど、仮面の男はエルじゃないわ。」

 

「嘘…‥「なら仮面を外してやろうか?」何だと!?」

 

エルは仮面を外すと、女の子だった。アリスとにとりは、動揺している。

 

「女!?私の…‥勘違い!?」

 

「だから仮面を取りたくなかったのよ。博麗には内緒にしてよ。誰にも言わないのなら霧雨を歓迎するよ。」

 

「…‥悪かったぜ。私は…‥帰る。」

 

魔理沙は箒に乗って、飛んでいった。

 

「帰ったようだな。」

 

「エル…‥その顔は!?」

 

「この顔は…‥」

 

エルは顔の皮膚を剥がすと、本当の顔に戻った。

 

「変装だ。外の世界の技術だけどな。念のために準備しといて正解だった。紫さん。助かりましたよ。レイン。紅魔館に先に向かってくれ。」

 

「わかった…‥」

 

「私も帰らせてもらうわ。」

 

レインと紫は姿を消した。

 

「俺も帰らせてもらうよ。にとり、アリス。」

 

「またね。」

 

「シャンハイ…‥」

 

「また会いに行くよ。上海。」

 

「シャンハイ!」

 

エルは上海の頭を優しく撫でると、エルの姿が消えた。

 



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35

エルとレインは紅魔館に戻ると、フランが美鈴と遊んでいた。どうやら弾幕ごっこで遊んでいるようだ。

 

フランの弾幕を避けきれずに被弾して気絶した。

 

「フラン。帰ったぞ。」

 

「…‥帰った…‥」

 

「エル、レイン!お帰りなさい!」

 

フランは二人を抱き締める。

 

「エル。明日から1週間私の執事になってよ。レインはメイドになってよ!」

 

「俺は依頼だから問題ないが。レインはどうする?」

 

「メイド…‥許可…‥」

 

「ありがとう!」

 

エルとレインは、明日から一週間の間。フランの依頼を受けることにした。

 

その後。咲夜とレミリアの二人にフランの依頼を受けることを報告すると、レミリアは喜んで許可をした。

 

「レミリア。依頼の期間中は、仮面は取らないからな。」

 

「良いわよ。許可するわ。」

 

「有り難い。明日の準備があるから失礼する。」

 

エルとレインは、部屋を出ていった。咲夜とレミリアは明日の準備などをしながら、話し合いをして依頼計画などを作成した。

 

「御嬢様。エルとレインの二人には、妹様の警護で宜しいでしょうか?」

 

「良いわよ。もう寝るから下がっていなさい。」

 

「畏まりました。」

 

咲夜は部屋を出ると、館内の戸締まりの確認をする。

 

「今日も1日が終わったのね。」

 

夜の月を眺めながら。

 

その頃。エルはレインと別行動で魔法の森に来ていた。

 

「夜なら自由に行動できるな。」

 

魔法の森を散策している。すると、怪我をしている野生の妖怪を見つけたら。どうやら黒の猫又のようだ。

 

「怪我しているな。治してやるから。」

 

エルが猫又の頭に触れる。猫又は嫌がる素振りは見せずに、エルを見ている。

 

「これで大丈夫だ。」

 

猫又の足にエル特性の御札をハンカチと一緒に結んで外れないように固定する。

 

「じゃあな。」

 

エルは猫又に別れを言って散歩の続きをする。猫又はエルが見えなくなるまで見届けると、小さく呟いた。

 

「…‥エル…‥」

 

猫又は姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

翌日。エルとレインは紅魔館に来ていた。

 

「美鈴。また寝てるよ。咲夜を呼ぶかな。」

 

「…‥そうだね…‥」

 

紅魔館に入り咲夜を探しに行く。図書館に入ると、咲夜を発見する。

 

「エルとレイン。今日からよろしくお願いします。レインは私と。エルは妹様の所に行ってください。」

 

「わかった。」

 

エルはフランの部屋に向かうと、フランが飛び付いてきた。フランを抱き締めたまま倒れた。

 

「今日からよろしくな。フラン。」      

 

「早速だけど、この服に着替えて。」

 

フランから執事服を渡されて、エルは指を鳴らすと、一瞬で執事服に着替えた。

 

「よし。御姉様の所に行こう。」

 

エルの手を掴むと、レミリアの部屋に向かった。

 

 



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36

エルは緊急事態に陥っていた。レミリアの部屋には、霊夢と魔理沙が紅茶を飲みながら待ち構えていた。

 

「霧雨と博麗。どうして此処にいるんだ?」

 

「私達は偶々だぜ!美鈴が寝てたから勝手に入ったぜ!」

 

「レミリア。説明しろ。どういうことだ?」

 

「えーと…‥」

 

「レミリアの責任ではないな。だが、一言俺に連絡はできただろ?」

 

「ごめんなさい。」

 

エルはレミリアの頭を撫でて、霊夢と魔理沙を見る。

 

「俺に用事があるんだろ?」

 

「紫も呼んで。」

 

「わかった。紫。」

 

エルの隣にスキマが開いて、紫が出現する。

 

「どうしたのかしら…‥霊夢と魔理沙…‥何で!?」

 

「俺に用事らしくてな。紫も呼べだと。」

 

「紫…‥仮面の男は、エルよね。友達だった妖怪を殺したのは私と母さんよ。人里から危険な妖怪がいるからと…‥頼まれたわ。」

 

霊夢は今まで忘れてしまった出来事をエルに話した。

 

「許さない…‥」

 

エルは体から黒いオーラを纏うと、瞳が赤く染まった。

 

「…‥!?霊夢、魔理沙。エルから離れなさい!?」

 

「…‥え!?」

 

エルは黒い球体を霊夢に放った。紫がスキマを使い球体を消すが、瞬時に爆発した。

 

「く!?」

 

紫、霊夢、魔理沙は、爆風で飛ばされた。エルは仮面を外すと霊夢を睨み付ける。

 

「よくも…‥俺の友達を殺しやがったな!テメェだけは、絶対許さねえ!」

 

「エル。落ち着きなさい!闇に呑み込まれては…‥」

 

「うるさい!俺は!」

 

「マスター!目を覚ましてください!紫様!レインを連れてきてください。急いで!」

 

「わかったわ。」

 

スキマを使ってレインを呼び寄せた。

 

「…‥エル…‥!?闇……呑まれる…‥止める…‥」

 

レインはエルに近付く。

 

「エル…‥私は…‥いなくならない…‥能力…‥発動…‥」

 

レインはエルを抱き締めると、光で包み込む。次第にエルの闇が消えて気を失った。

 

「…‥終わった…‥」

 

「紫…‥エルは…‥」

 

「気を失っているだけだわ。」

 

「…‥俺は…‥!?」

 

エルは目を覚ますと、霊夢、魔理沙、レミリア、レインを見る。

 

「レミリア。俺の分身を置いておく。フランの執事として使ってくれ。話は…‥今度するよ。」

 

「わかったわ。今は休みなさい。」

 

エルは起き上がると、部屋を出ようとする。

 

「エル…‥待つんだぜ!どうしてあの時。私達からいなくなったんだ?」

 

「エル…‥私は…‥」

 

「レイン…‥先に隠れ家に帰っている。俺の分身を置いておくから。何かあったら、分身を通して連絡しろ。」

 

「わかった…‥」

 

「エル…‥」

 

「紫さん。ごめんなさい。」

 

「今は休みなさい。」

 

「はい。霊夢、魔理沙。悪かった。」

 

エルは姿を消した。

 

「消えた!?紫!エルは!?」

 

「悪いけど、教えるわけにはいかないわ。」

 

スキマを開いて、姿を消した。

 

「…‥霊夢。帰るぜ。」

 

「うん…‥」

 

霊夢と魔理沙は、紅魔館を出ていった。



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37

エルが紅魔館から姿を消して二ヶ月。レミリア、咲夜の二人が、エルの行方を捜索していた。

 

「御嬢様。人里の方にはいません。」

 

「魔法の森を探したけど、いなかったわ。フランはエルの分身と一緒にいるわ。」

 

「咲夜。紅魔館に戻るわよ。フランが心配するわ。」

 

「はい。御嬢様。」

 

レミリアと咲夜は紅魔館に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃。紫は藍を連れて、エルの隠れ家に向かっていた。

 

「紫様。エルの様子はどうでしたか?」

 

「危険な状態だわ。エルの事は霊夢にバレてしまったわ。でも、エルの役目までは知られていないわ。」

 

「どうするのですか?次第にエルは…‥闇に呑まれてしまいます。」

 

「今は様子を見ましょう。」

 

隠れ家に到着して中に入ると、エルは部屋で眠っていた。

 

「紫様。歓迎会の準備が完了しました。紫様に頼まれていた…‥…‥は、保護いたしました。」

 

「藍はエルの近くにいなさい。エルを救えるように。本当なら、真実をエルに伝えないといけないけれど。」

 

「畏まりました。」

 

紫はスキマの中に入っていくのを見届ける。すると、エルは目を覚ました。だが、エルの様子がおかしい。

 

「藍さん!?何で…‥僕の近くにいるの!?」

 

「どうしたんだ!?」

 

エルは藍を見て、何故か怯えている。

 

「ごめんなさい。怒らないで!?」

 

(エルに何があったんだ!?確かめるか。)

 

「エルは何歳だ?教えてくれないか?」

 

「僕は10歳です。」

 

(10歳…‥エルが霊夢と魔理沙から姿を消していた頃だ。多少年齢に誤差はあるが…‥この現象は。)

 

エルは幼児退行していたのだ。しかも、今のエルの記憶は、10歳までの記憶しかない。

 

「大丈夫だ。エルは悪いことはしていない。安心するんだ。」

 

藍はエルの頭を撫でると、安心させる。

 

「そろそろ昼になる。何か食べたい物あるか?」

 

「無いです。手を握ってほしいです。ダメですか?」

 

「良いよ。エルが寝るまで一緒にいるからな。」

 

「ありがとう。」

 

エルは安心したのか。眠ってしまった。藍はエルの頭を撫でるのを終えると、隠れ家から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

紅魔館では、フランとエルの分身が弾幕ごっこをしていた。

 

「これで最後だ!」

 

「フラン!?降参だ!」

 

「勝ったよ!でも…‥疲れちゃった。」

 

「俺は仕事があるからそろそろ戻ってもいいか?」

 

「うん。私は昼寝してくるね。」

 

フランは地下室に戻っていった。

 

(本体の方で…‥何かあったな。)

 

分身は窓拭きしながら考えていると、咲夜が料理を持ってきた。

 

「昼の時間よ。簡単におにぎり作ったんだけど食べる?」

 

「頂きます。」

 

窓拭きを中断して、おにぎりを食べ始める。

 

「貴方はエルの分身よね。エルの居場所とかはわからないかしら?」

 

「無理だな。本体の方で何かあったみたいだ。普段なら記憶共有でわかるんだけどな。生きてるのだけは確かだ。」

 

「地道に探してみるしかないわね。貴方と妹様の弾幕ごっこを見たけど、能力はどうなってるの?」

 

「本体の【契約する程度の能力】は、俺は使えない。俺が使える能力は【欠片を集める程度の能力】だ。その名通り。霊力、魔力、妖力の欠片を集める能力。」

 

「その肉体はまさか。」

 

「そうだよ。本来なら本体の霊力を使って維持するんだが。本体が妖怪、魔法使いと契約したからな。魔力、妖力の欠片を集めて俺を維持出来るようになった。心配しなくても本体を敵対しないならば、俺も敵にはならない」

 

「安心したわ。昼休憩が終わったら仕事を終わらせてなさい。今日は窓拭きだけでいいから。」

 

咲夜は仕事に。分身は窓拭きの続きを始めた。

 

 



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38

紫は藍からの報告を聞くと、書類を取り出して何やら書き込む。

 

「この書類を閻魔様に届けてきなさい。」

 

「この書類は?」

 

「エルに関する報告書よ。今のエルには、10歳までの記憶しかない。このままでは、エルの人格が崩壊するわ。」

 

紫の発言に、藍の体が震え出す。

 

「防ぐ方法ならあるわ。エルの肉体年齢を私の能力で変更するわ。それで乗り切るしかないわ。」

 

「エルの仕事は!?」

 

「エルの分身に頼むしかないわ。それで様子を見て考えましょう。藍は紅魔館に行って分身に頼んで。霊夢にエルの役割がバレたら終わりだわ。」

 

「畏まりました。」

 

藍は紫のスキマを使って、紅魔館に向かった。 

 

「私はエルに会いに行きましょう。」

 

紫はエルのいる隠れ家に向かうと、エルが武器の作成をしていた。

 

「エル!?何やってるの!?」

 

「修業しなきゃ…‥」

 

紫はエルの顔を触れると、熱かった。風邪を引いているようだ。

 

「凄い熱よ。休みなさい。」

 

「でも…‥」

 

「休まないと、良くならないわよ。」

 

「わかりました…‥」

 

エルは布団には入り眠った。

 

「さて、やりますか。」

 

エルの身長を紫の能力で、境界を操る。エルの体が幼児化した。

 

「記憶も一部消しときましょう。」

 

エルの頭を撫でながら、一部の記憶を消す。すると、エルの熱が引いていく。

 

「熱が下がったわね。知恵熱かしら?明日また来てみようかしら。」

 

スキマで姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

紫がエルの様子を見に行く頃。藍は紅魔館に到着していた。

 

「さて、待たせてもらうか。門番が寝てどうするんだ。」

 

「あら。久し振りね。今日はどうしたのかしら?」

 

「エルに関する用事だ。大事な話がある。レミリアと話がしたい。」

 

「御嬢様とね。わかったわ。案内するわ。」

 

藍は咲夜の案内で、紅魔館に入る。藍は咲夜と一緒に廊下を歩いているとフランと分身を目撃する。

 

「咲夜。あの彼はまさか。」

 

「エルの分身よ。エルの代わりに妹様の執事をしているわ。」

 

「レインはいないのか?」

 

「レインなら御嬢様の相手をしてるわ。それで、彼も関係ある?」

 

「関係がある。彼に話しておくか。」

 

藍は分身に近づいて声をかける。

 

「八雲藍。俺に何か?」

 

「報告することがある。エル関係でだ。」

 

「本体に何かあったんだろ?教えてくれ。」

 

藍は分身に説明する。

 

「幼児退行による記憶喪失。八雲紫は本体を救うために、本体を幼児化させたのか。他に方法は?」

 

「それしか方法無かった。」

 

「そうか。本体は誰が引き取るんだ?能力はどうなっている。」

 

「今のエルは、能力すら満足に使えない。出来るとしたら…‥魔力、霊力、妖力での身体強化だけよ。引き取り先は、萃香に頼むつもりよ。」

 

「俺は賛成だ。期間はどのくらいだ?」

 

「未定だ。貴方にはエルの代わりに仕事を頼みたいの。」

 

「わかった。引き受けよう。決まったら教えてくれ。」

 

「わかった。決まり次第知らせる。」

 

藍は紅魔館を後にした

 

 

 



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39

紫に依頼で、萃香はエルと妖怪の山で修業していた。エルは萃香の手首を掴んで、投げ飛ばした。

 

「投げ飛ばされちゃったよ。」

 

そう言いながら、岩の弾幕をエルに投げつけた。迫ってくる岩をエルは、拳で破壊する。

 

「やっぱり、拳でやるのは、失敗だったよ。」

 

エルの拳は血塗れになっていた。萃香はエルの拳を見て急いで救急箱を取り出した。

 

「大丈夫か!?手当てするから。」

 

「大丈夫だよ。萃香御姉ちゃん。治せるから。」

 

エルは妖力を拳に纏うと、傷が消えて治った。

 

「妖力!?どういうことだエル!?」

 

「何で…‥僕は、人間…‥」

 

エルは気を失った。萃香はエルを抱えて、妖怪の山を出ると紅魔館に急いだ。

 

すると、遠くの方から地獄の閻魔…‥四季映姫がやって来た。

 

「伊吹萃香。貴女に話があります。」

 

「閻魔様。今はそれどころじゃないんだ!エルを紅魔館に…‥」

 

「エル!?わかりました。私も同行させていただきます。話は紅魔館の方で。」

 

「連れの死神はどうしたのさ?」 

 

「別行動です。それより、エル小さくなってますが…‥」

 

「事情があってね。仕事はエルの分身が代わりにやってるよ。」

 

「分身ですか。エルは何故気を失っているのですか?」

 

「エルは妖力を使ったんだよ。エルの能力は、契約者の能力を使うことは出来るが、妖力は使うことができないはず…‥」

 

「妖怪との契約で、妖力を宿したとしたら…‥エルが危険です。最悪の場合…‥妖怪認定されてしまいます。そうなると、エルが殺されてしまいます。」

 

「紫に会わないと!」

 

話し合っている間に紅魔館に到着すると、レミリアが門の前にいた。

 

「閻魔と伊吹萃香。どうしたのかしら?」

 

「レミリアさん。今回はエルに関しての話し合いをしに来ました。入れてもらえますか?」

 

「良いわよ。エルの分身から話は聞いたわ。エルを地下室に入れなさい。パチェに調べさせるわ。」

 

「私はエルの分身に話を聞いてきますので。」

 

「私も地下室に入れてくれ。エルの保護を頼まれてるんだ。」

 

「わかったわ。」

 

萃香は地下室に向かうと、パチュリーにエルを託して、地下室から出ていった。

 

その頃。映姫はエルの分身を発見して話を聞いていた。

 

「閻魔様が本体の心配をね。本体が閻魔様に裁かれた場合の判決は黒になるよな。白になることはないと思うが…‥」

 

「エル次第です。今のままだと、判決は黒です。エルの状態はわかりませんか?」

 

「わからないな。本体の種族が半人半妖になってることだけだ。どうするんだ?閻魔様。立場的に。」

 

「エルが妖怪…‥閻魔としてなら…‥わかりません。何故か…‥結果が見えません。」

 

「閻魔様。今日は休暇だろ。俺の客人としておもてなしをするぜ。」

 

分身はクッキーと紅茶の入ったカップを出現させる。

 

「本体を人間に戻す方法がある。契約解除すればいい。デメリットはコピーした能力が消える。」

 

「…‥人間に戻した方が良いのでしょうか…‥」

 

「それは、本体自身が決めることだ。」

 

「そうですね。エルの検査が終わるまで、待たせてもらいますね。」

 

映姫はエルの検査が終わるのを待つことにした。

 

 

 

 



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40

博麗神社では、霊夢と魔理沙がエルに会いたいと紫に頼んでいた。だが、紫は霊夢と魔理沙の頼みを断った。

 

「どうしてダメなの!?」

 

「そうなんだぜ!どうしてなんだ!?紫!」

 

「エルは人間を拒絶してるわ。霊夢と魔理沙。わかるわよね。」

 

「博麗の巫女…‥私の責任だわ。人里からの依頼だとしても、調べなかった私の責任。」

 

「…‥…‥紫。どうすれば…‥エルに会えるんだ?」

 

「一度だけ…‥エルに会うのを許可するわ。だけど、エルは記憶喪失になってるわよ。」

 

「記憶…‥喪失…‥」

 

霊夢は紫の発言に放心状態だ。魔理沙は動揺してはいたが、表情には出さなかった。

 

「今のエルは、人間を拒絶しないわ。記憶が無いわけだから。どうする?」

 

「紫…‥エルに会えるチャンスは、増やすことは…‥出来ない?」

 

「霊夢と魔理沙次第だわ。

だけど、エルが人間を拒絶した場合は、もう会わせることは出来ない。」

 

紫の冗談のない発言。霊夢と魔理沙は、紫を見て頷いた。

 

「明日。エルを連れてくるわ。最後のチャンスを無駄にしないで。」

 

霊夢は泣きそうな表情になりながら頷いた。

 

「紫。ありがとう…‥」

 

「私は霊夢と魔理沙が、エルと早く仲直りをしてほしいだけだわ。」

 

スキマの中に入って姿を消した。

 

「魔理沙…‥今日は…‥泊まって…‥」

 

「わかったぜ。」

 

霊夢と魔理沙は、神社の中に入った。二人の様子を見ていた藍と一匹の黒の猫又妖怪。

 

「博麗の巫女に会いたいと言っていたから連れてきたが、会わなくてもよかったのか?」

 

「会わない…‥私…‥原因…‥人里に行かなければ、問題にはならなかった。」

 

「エルには…‥会わないのか?今でも、自分を責めてる。紫様から事情は聞いているのか?」

 

「聞いてる。記憶喪失になってると。」

 

黒の猫又は、黒髪の少女に変化した。

 

「この姿ならエルに会えるよ。」

 

「人間になってどうするんだ!?」

 

「僕はこの姿で、エルに何度もあってるんだよ。人間で言う幼馴染みて事だよ。しかも…‥」

 

銀の鍵を見せる。

 

「契約の鍵…‥エルの契約者か!?」

 

「そうだよ。エルにバレるわけにはいかないんでね。紫さんは、エルの記憶を細工したみたいだけど…‥無駄だね。」

 

「どういうことだ。」

 

「エルの【契約する程度の能力】は、契約した者との記憶は消せないんだ。」

 

「何だと!?それじゃあ…‥何で、私と紫様との記憶は消えてないんだ?」

 

「紫が細工したんじゃないかな?細工してないんなら。霊夢と魔理沙との記憶は消えてるよ。」

 

「今からでもエルに会いに行くか?」

 

「明日。会いに行くよ。私は帰るね。」

 

姿を消した。

 

 

 



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41

エルは10日間。紅魔館で過ごし気がついたら体調が良くなった。最後の検査をして、紫から修行の許可をもらった。

 

「パチュリーさん。ありがとうございます。」

 

「別にいいわよ。この魔法薬を週に1回飲みなさい。魔力を安定させる薬よ。」

 

「わかりました。」

 

エルは魔法薬を受け取ると、こあが一冊の本を持ってきた。

 

「エルさん。この魔導書を受け取ってください。何かの役に立つかもしれないので。」

 

「ありがとうございます。それでは。」

 

エルは図書館を後にすると、レインを見つけると声をかけた。

 

「エル…‥大丈夫…‥!?」

 

「心配かけてごめんね。」

 

「…‥…‥」

 

レインはエルに抱きついて離れない。すると、エルの分身がやって来た。

 

「元気になったみたいだな?」

 

「うん。兄さん。」

 

「…‥…‥仕事の方は暫く休め。紫さんの許可は既にもらってるから。」(俺が分身であることを忘れている。問題ないか。)

 

「僕は妖怪の山に向かうよ。レインはどうする?」」

 

「紅魔館にいる…‥」

 

「わかった。フラン姉をお願いね。」

 

「わかった…‥」

 

エルは紅魔館を出ると、紫が待っていた。

 

「紫さん。どうしたの?」

 

「エル。博麗神社に用事があるんだけど、着いてきてくれないかしら?」

 

「わかりました。」

 

エルは紫のスキマに入る と、博麗神社に繋がっていた。スキマから出ると、霊夢と魔理沙がいた。だが、エルからしたら見知らぬ人なのだ。

 

「紫さん。あのお姉ちゃん達は誰?」

 

「紫。エルは…‥その…‥」

 

紫は霊夢を見て、小さく頷くとエルを見る。

 

「エル。暫くの間。霊夢と一緒にいなさい。わかったかしら?」

 

「わかりました。えーと、僕は…‥エルです。よろしくお願いします。」

 

「私は博麗霊夢。博麗神社の巫女よ。隣は泥棒魔法使い。」

 

「ちゃんと教えろよな!何が泥棒魔法使いだ!失礼だな!私は霧雨魔理沙。普通の魔法使いだぜ!」

 

「よろしくお願いします。

霊夢姉と魔理姉。」

 

霊夢と魔理沙は、エルの呼び方に目を見開くと、エルの頭を撫でている。

 

「エル。よろしくな。」

 

「エルは朝ごはん食べた?よかったら、一緒に食べましょう。」

 

「良いの?一緒に食べる!」

 

「霊夢。私の分も頼むぜ。」

 

「仕方ないわね。エルと魔理沙は、部屋に行って待ってなさいな。準備するから。」

 

そう言って、霊夢は台所に向かった。

 

「魔理姉は何処に住んでるの?」

 

「魔法の森に住んでるぜ。」

 

「そうなんだ。僕は今日から暫くは、此処に住むようにと紫さんに言われた。」

 

「そうなのか。なら毎日会えるな。」

 

「そうなの!」

 

魔理沙がエルと楽しく会話している。霊夢は台所で、朝食の準備をしながら考え事をしていた。

 

(エルの記憶喪失は、私達の原因で間違いない。エルは私達人間を拒絶している。エルに過去の話は禁句だわ。)

 

「できた。部屋に運びますか。」

 

料理を部屋に運ぶと、3人で食べ始める。

 

「幻想郷で魚は珍しいぜ。」

 

「紫から貰ったのよ。食糧は毎回貰うから。」

 

「…‥…‥…‥」

 

エルは食べていたが、途中で箸が止まる。

 

「どうしたの?」

 

「…‥…‥何でもない。」

 

急いで食べ終えて、食器を流しに置く。

 

「ちょっと、ランニングしてくるね。」

 

エルは神社を出ていった。

 

「…‥魔理沙。エルを追うわよ。」

 

「わかったぜ。」

 

霊夢と魔理沙は、エルの後を追った。



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42

エルは博麗神社から離れると、紫を発見する。紫から契約の鍵を受け取る。

 

「エル。貴方に依頼が来たわ。依頼内容は、人里にある寺子屋の手伝いよ。」

 

「わかりました。」

 

「エル、紫。私達には内緒にしなくても良いじゃない。」

 

「そうだぜ。」

 

得るが振り替えると、霊夢と魔理沙がいた。エルは後退る。

 

「霊夢と魔理沙。盗み聞きは良くないわね。」

 

「霊夢姉と魔理姉…‥何で!?」

 

「エル。教えてもらうわよ。記憶喪失は嘘なんじゃないの?」

 

霊夢の発言に、エルは紫の背中に隠れる。紫はエルの頭を撫でながら、霊夢を睨む。

 

「…‥…‥」

 

霊夢と紫との間に、嫌な空気が流れる中。魔理沙が我慢できずに紫を見て喋り出す。

 

「紫。質問に答えてもらうぜ。エルは本当に記憶喪失なのか?」

 

「エルの記憶喪失は本当よ。それで?」

 

「エルは何処で発見されたんだ?何故。エルは紫と一緒にいるんだ?」

 

「…‥…‥霊夢と魔理沙。私は貴女達にならエルの心の支えになると思ったんだけども…‥期待外れね。エル。貴方のお兄さんよ呼びなさい。」

 

エルは紫の言われた通りにする。紫の横にエルの分身が出現した。

 

「紫。呼ばれてきたがどうしたんだ?」

 

霊夢と魔理沙は、エルの分身を見て紫に問い質す。だが、紫は話さずに分身に耳打ちする。

 

「お前達が、エルの友達か。兄のロードだ。よろしくな。」

 

「ロードさん。どうして…‥エルは?」

 

分身…‥ロードは、霊夢と魔理沙を見てエルの頭を撫でる。

 

「エルの友達が人間に殺された影響だな。記憶喪失もそれが原因なんだろう。今まで溜め込んできたのが爆発して、精神的に来たんだろうな。様子を見るしかない。」

 

「そうですか。」

 

「俺は紅魔館に向かう。霊夢達と一緒いるんだ。」

 

「わかったよ。兄さん。」

 

ロードはその場から姿を消した。

 

「霊夢と魔理沙。最後のチャンスよ。貴女達にエルを預けるわ。」

 

紫は姿を消した。エルは霊夢と魔理沙を見て少し怯えている様子だ。霊夢はエルに近づくとエルを抱き締めた。

 

「ごめんね。今日はエルの歓迎会をしましょう。魔理沙。宴会の準備をするから手伝って。」

 

「何をすれば良いんだ?」

 

「エルの歓迎会をするから妖怪や妖精を呼んできて。宴会に参加させるわ。」

 

「わかったぜ。出来るだけ呼んでくるぜ!」

 

魔理沙は飛んでいった。霊夢はエルの頭を撫でていると、猫又の少女が現れた。

 

「エル。久し振りだね。」

 

「久し振り!ニーナ。」

 

「エルの友達?」(あの妖怪の妖気…‥エルの言っていた…‥)

 

「はい。私の名前はニーナです。猫又の妖怪です。」

 

「私は博麗霊夢。博麗の巫女。貴女もエルの歓迎会をしない?今日の夜に宴会するのよ。」

 

「それは楽しみですね。喜んで参加します。」

 

「エルはニーナと一緒にいなさい。ニーナ。エルをお願いできる?」

 

「大丈夫ですよ。」

 

霊夢はニーナにエルを預けると、宴会準備で出掛けた。ニーナとエルは、神社に残り掃除などをして霊夢の帰りを待つ。

 

「エルは楽しい?あの人間と過ごせて。」

 

「楽しいよ。ニーナも一緒にいればわかるよ。」

 

「楽しみにしてるね。」

 

エルとニーナは仲良く会話をして霊夢が帰るのを待っている。



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43

博麗神社を出た魔理沙は、今夜の宴会準備のために知り合いに声をかける。先ず始めに人里に向かった。

 

「この時間帯ならチルノ達がいるはずなんだが…‥」

 

人里に到着して門前に飛び降りて、中に入るために向かう。

 

「魔理沙じゃないか。久し振りだな。」

 

「紅妹も久し振りだぜ。

 

「今日はどうしたんだ。」

 

「霊夢が宴会を開くから、参加者を探してるんだぜ。」

 

「そうなのか。久し振りに、私も参加しようかな。夜に行けば良いのか?」

 

「そうだぜ!」

 

「なら、手土産に筍を持ってくるよ。楽しみにしてな。」

 

紅妹は迷いの竹林の方角に向かっていった。

 

「さて、次は誰を誘うかな。」

 

魔理沙は人里の奥まで行くと、チルノとルーミアの二人がいた。片手には果物の入った籠をもっている。

 

「ルーミアとチルノ。誰かのお見舞いか?」

 

「魔理沙なのだー!友達のお見舞いに行くのだー」

 

「エルの見舞いだよ。」

 

「エル!?そうか。今日の夜に霊夢のとこで宴会があるぜ。」

 

「宴会!行くのだー」

 

「あたいもいく!」

 

「待ってるぜ!」

 

魔理沙は一旦人里を後にして妖怪の山に向かうことにした。妖怪の山では椛が見張りをしていた。

 

「魔理沙さん。妖怪の山に何か御用ですか?」

 

「霊夢が夜に宴会をするみたいだ。」

 

「宴会ですか。」

 

「そうだぜ。暇なら来てほしいと言ってたぜ。」

 

「そうですね。時間が空いたら行かせてもらいます。」

 

「わかったぜ!楽しみに待ってるぜ!」

 

魔理沙は、博麗神社に戻って、宴会の準備をすることにした。

 

 

神社で留守番を任されているエルとニーナの2人は、宴会用の料理を作っていた。

 

「ニーナ。僕の袋から、お酒準備してくれない。」

 

「わかった!」

 

ニーナは袋からお酒を出すとエルに渡した。受け取ったお酒を少々だが、料理に入れる。

 

「これで宴会用の料理ができた。」

 

「楽しみだね。」

 

「友達を紹介するよ。ニーナも仲良くできるよ。」

 

「私でも仲良くできるかな?エルは私を守ってくれる?」

 

「絶対に守るよ!約束だ。」

 

「エル。そろそろ他の準備をしないと。」

 

「そうだね。僕は掃除をして来るよ。」

 

ニーナは笑みを浮かべる。エルが台所を離れて、宴会ができる準備をするために、掃除を始める。

 

「楽しみだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エルを裏切った人間に復讐出来るのがね。」

 

ニーナは黒い笑みを浮かべながら、エルの後ろ姿を見ている。

 

「そのためには、準備を進めないとね。エルの記憶を戻さないと、計画が進まないよ。どのようにして、エルを裏切った人間に、復讐しようかな。楽しみだよ。」

 

ニーナは黒い笑みをやめると、エルの手伝いに向かった。



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44

その日の夜。博麗神社では、宴会が開かれていた。紅魔館組からは、レミリア、フラン、咲夜、エルの分身……ロード、レインの5人が来ていた。

 

「霊夢!こっちに来て話しましょうよ!」

 

「レミリア!?ちょっと掴まないで!てか、酔っ払ってるわね!」

 

「咲夜。エルは大丈夫かな?」

 

「妹様。エルの所に行きましょう。確か、神社内の部屋にいたはずです。」

 

「後で行ってみるね。」

 

 

 

 

 

神社内の和室には、エル、ルーミア、チルノの3人がポーカーをして遊んでいた。

 

 

「ダイヤの9~ダイヤのキングの5枚が揃ったのだーロイヤルストレートフラッシュ!」

 

「あたいは、スペードの9、ハートの9、クローバーの9とジョーカー1枚とスペードの1でフォーカードよ!」

 

「僕は役無しだよ。ルーミア強いね。宴会に参加しないの?」

 

「エルが心配なのだー。チルノ。最強の酒があるのだー。飲まないのかー」

 

「最強の酒!?ちょっと飲みに行ってくる!」

 

チルノはルーミアの嘘に気づかずに、神社の外に出た。

 

「さて、チルノがいなくなったわ。エルはどうして宴会に参加しないかしら?」

 

ルーミアの雰囲気が一瞬で変わり、封印されていた本来の力が復活したが、容姿は少女のままだ。

 

「ルー姉……封印は!?」

 

「大丈夫。妖力を放出しない限り、あの巫女にバレることはないわ。」

 

エルは静かになると、涙を流し泣き出した。記憶喪失以前のエルは、悲しいことがあっても、涙を見せずに感情を完璧にコントロールしていた。

 

だが、記憶喪失になってからは、感情のコントロールすら不安定の状態が続き、ルーミアと2人になった途端。今までの悲しみが溢れて泣き出してしまった。

 

「大丈夫。今は私達だけよ。暫くしたら、宴会に参加しましょう。」

 

エルは静かに頷いて、ルーミアを抱き締めて泣き続けた。暫く泣き続けて落ち着いたようだ。

 

「エル。宴会に参加しよう。怖かったら、私の近くにいなさい。」

 

「うん……」

 

ルーミアとエルは、部屋から出ると霊夢と魔理沙がエルの元に走ってきた。

 

「エル。探したわよ。今日は貴方の歓迎会だから、参加するわよ。」

 

「私達と一緒に行こうぜ!」

 

「うん!」

 

エルは霊夢と魔理沙達と行こうとするが、ルーミアに近づいて手を繋ぐ。

 

「エル。いくのだー!」

 

ルーミアはエルを抱き締めて、飛んでいった。

 

「ちょっとルーミア!?」

 

「待つんだぜ!」

 

霊夢と魔理沙は、ルーミアを追いかけに行った。

 

 

 

 

 

エルはルーミアに降ろしてもらうと、咲夜とフランに会った。

 

「エル。御嬢様が心配していたわよ。」

 

「心配かけてごめんなさい。」

 

フランはエルを抱き締める。一瞬戸惑ったが、おとなしくなる。

 

「明日は一緒に遊ぼ!」

 

「良いよ。」

 

「ほら、宴会に参加しなさい。エルは挨拶してきなさい。」

 

「わかった!また、後でね!」

 

エルは挨拶回りに向かった。エルの後ろ姿を見て、霊夢はちょっと寂しそうにしている。

 

「霊夢。寂しいの?」

 

「………うん」

 

「今日は朝までやけ酒に付き合うわよ。」

 

「ありがとう。咲夜。」

 

霊夢と咲夜は一緒に酒を飲んだ。

 

 

 

 

エルは挨拶回りをするために歩いていると、妖夢が料理を運んでいるのを見かけて、声をかけた。

 

「エルさん!お久し振りです。」

 

「妖夢お姉ちゃんもね!手伝うよ。」

 

「それじゃあ、お願いします。」

(紫様からの話では、記憶喪失だと言われたのですが…様子を見ますか。)

 

「それにしても、たくさんあるね。」

 

「幽々子様は沢山食べますから。幽々子様。料理を持ってきました。」

 

「ありがとね~エルも久し振りね。一緒に食べましょ。」

 

「わかった!」

 

幽々子はエルを隣に座らせて、妖夢が料理を持ってきていた料理を取り分けて、幽々子とエルに運ぶと妖夢は、幽々子の隣に座って料理を食べ始める。

 

「この煮物美味しいわね~」

 

「良く染み込んでますね。」

 

幽々子と妖夢は煮物の美味しさに、箸が止まらない様子。エルは煮物を食べ終えると、お腹が一杯になったようだが、余りにも少ない。少食のようだ。

 

「ちゃんと食べないといけないわ。」

 

「僕…少食だがら。余り食べれないんだよね。」

 

「エルは苦手な物はありますか?」

 

「僕…肉が苦手で…ちょっと、散歩してくるね。」

 

エルは逃げるように、その場から離れた。幽々子は酒を飲みながら、妖夢にとある指示を出して、妖夢は幽々子の傍から離れた。

 



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45

挨拶回りをしているエルは、古明地こいしを見掛けると声をかける。エルに気づいたこいしは、お酒を片手にエルに近づいた。

 

「エル!久し振りだよ!」

 

「こいし姉…お酒臭い…」

 

「失礼だよ!エルも飲んで!」

 

こいしはエルに抱きついていると、さとりが駆け付けて、エルを救出した。

 

「こいし!エルから離れなさい!」

 

「さとり姉…助かった…」

 

エルはさとりの背中に隠れた。こいしに怯えている。

 

「こいし、エルに謝りなさい。」

 

エルの泣きそうな表情に、こいしは酒瓶を置いた。この行動に、こいしに近づく。

 

「ごめんね…」

 

「大丈夫…」

 

「仲直りできたわね。エルは挨拶回りをしないとダメよね。」

 

「うん…」

 

こいしはエルと離れたくないのか、掴んでいる腕を緩めない。少し考えて、エルの心を読んださとりは、こいしをエルに任せることにした。

 

「良いの?お姉ちゃん!」

 

「エルが良ければね?」

 

さとりの言葉にエルは頷いて、こいしの手を繋ぐと一緒に行動する。

 

「後で、エルを地霊殿に招待しないとね。」

 

 

 

 

 

 

エルとこいしが行動している頃。ロードは美鈴と神社の屋根で月を見ていた。

 

「平和ですね。」

 

「この平和が続けばいいけどな。」

 

「美鈴は宴会に参加しないのか?」

 

「この時しか、息抜きできませんからね。レインさんは、楽しそうですよ。」

 

レインが大量の料理を黙々食べ続けていた。それを見た幽々子が、対抗していた。

 

「食べ過ぎたら…ヤバそうだな。」

 

「妖夢さんでは、止められませんね。」

 

「たまには、こういったイベントも悪くないな。」

 

 

 

 

 

 

紫は幻想郷に施している結界の点検作業をしている。何時もなら、藍にも頼むのだが、今現在は宴会に参加しているので、紫だけで点検している。

 

「結界に異常はないわね。」

 

結界の点検を終えると、金の十字架に触れながら、隙間でエルの様子を見ている。

 

(エルの記憶が戻れば、能力も戻る。けど、それは幻想郷の崩壊を意味する。それだけは、阻止しないと。)

 

金の十字架を隙間に入れる。

 

(エルは契約能力で、妖怪、人間の能力を得すぎた。強い力は、持ちすぎると悲劇を引き起こす。これからの行動に、注意しないとね。)

 

紫は神社に行くと、宴会に参加した。

 

 

 

 

 

 

エルとこいしは藍の膝で眠っている橙を見て、起こさないように寝顔を眺めていた。

 

「エルは挨拶回りしなくて良いのか?」

 

「疲れたから、一休みしてるだけだよ。」

 

「私はエルの付き添いだよ。」

 

「料理を余り食べてないだろ?エルは男の子だ。沢山食べないと駄目だろ?」

 

藍はエルに肉料理を持ってくるが、食べようとしない。

 

「肉だけは苦手だよ!こいし、野菜料理持ってきてくれない?」

 

「わかった!」

 

「エルは肉食べないと、力がでないぞ?」

 

「……でも、食べると体調を崩しちゃうよ…」

 

藍はエルの肉嫌いに頭を抱える。野菜、魚は食べられるのだが、肉だけは食べられないのだ。

 

(やっぱり、肉は食べられないか。どうするか…)

 

橙の頭を撫でながら、暫く考えることに。

 





久し振りに、投稿を再開しました


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46

宴会から数日後、エルは紅魔館の庭で、フランと戦闘していた。フランは右手に持っている炎の剣でエルに斬りかかる。

 

「当たらないよ!」

 

斬りかかるタイミングを瞬時に予測したエルは、持っていた短剣で、炎の剣を捌いていく。

 

「少しだけ、ギアをあげるよ!」

 

魔力を纏い身体強化する。エルの行動に面白くなったのか、フランは無数の炎の弾幕をエルに向けて発射させる。

 

「これは…避けきれない!?」

 

炎の弾幕がエルに命中する瞬間に、大爆発が発生して、その爆破の余波をフランは受けて飛ばされた。

 

「エル、フラン大丈夫!?」

 

「妹様…大丈夫ですか?」

 

レミリアと美鈴が爆破音に気付いて、心配になり来たようだ。フランは倒れていたが、無傷のため安心した。

 

「エルは…」

 

「フラン姉は容赦ないね…」

 

苦笑しているエルの姿を見て、安堵しているレミリアと美鈴。エルも爆破の余波を受けていたにも関わらず、掠り傷程度で済んでいる。服も若干破けている。

 

「無事でよかったわ。」

 

「魔力でフラン姉の弾幕を相殺させたから…」

 

「エルさんも無茶しますね。」

 

フランとエルが無茶をしたので、少し説教をすると咲夜とロードがクッキーを持って出現した。

 

「妹様とエル様、お茶会の準備ができましたので、休憩してください。」

 

「咲姉…様付けはやめてよ!兄さんも何か言って!」

 

「良いじゃないか。俺なんて、咲夜から呼び捨てだぞ?」

 

「妹様直属の執事になるんだから、ロードは様付けは要らないわね。」

 

ロードがエルの分身体であることを知っている咲夜だが、ロードとエルを別人として見ているためか、ロードには、ため口で話している。

 

「レインはどうしたんだ?一応、エルの式神だよな?」

 

「パチュリーさんに呼ばれてたよ。手伝いだと思うけど…」

 

クッキーを頬張りながら話しているエルに、ロードが注意している。

 

「食べながら話すな。行儀が悪いぞ。」

 

「ごめんなさい…」

 

茶会を楽しんでいるフラン、エル、レミリアの所に、人里の守護者である上白沢慧音がやって来た。

 

「慧音先生!どうしたの?」

 

「エルに依頼していた日時が決まったからな。」

 

慧音から依頼書を受け取るり、中身を確認する。

 

「……夜に寺子屋に行けば良いんだね?」

 

「妖怪、妖精は夜の時間帯で受け入れられたからな。お願いできるか?」

 

「大丈夫だよ。何すればいいかな?」

 

「人間のする遊びを教えてあげてくれ。妖怪が人里に受け入れて貰うための、第一歩だ。」

 

「出来る限りやってみるよ。」

 

慧音とエルは詳しい話を後日にするため、その日の話し合いは終わった。

 

 

 

 

 

博麗神社では霊夢が料理をしながら、エルの帰りを待っていた。

 

「エルが帰って来たら、準備しないと…」

 

「焦りすぎだぜ?霊夢…」

 

魔理沙は魔導書を読みながら暇を潰していた。この頃最近は、霊夢とエルを心配してか神社によく泊まりに来るようになった。

 

「魔理沙も手伝ってよ!」

 

「へいへい。」

 

魔理沙と霊夢が台所で料理している隙に、黒い何かが出現したが、暫くして姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 



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47

夜の人里に来ているエルは、慧音の依頼を受けて寺子屋に向かっていた。人一人いない静かな人里。すると、白髪の少女、藤原妹紅がエルに声をかけた。

 

「エル、こんな遅い時間にどうしたんだよ?」

 

「慧音さんに依頼されて、寺子屋に行くところだよ。」

 

「私も一緒に行くぞ。慧音に用があるんだ。」

 

エルと妹紅は一緒に寺子屋に向かうことに、すると遠くの方で騒がしい声が聞こえてきた。

 

「エルだー!」

 

「エルさん、こんばんわ。」

 

ルーミアと大妖精が近寄ってくる。その後ろでは、チルノ、橙の二人がじゃんけんをしている。

 

「大ちゃん、何かあったの?」

 

「チルノちゃんと橙がエルさんの事で喧嘩しちゃって…」

 

「僕で喧嘩…何で?」

 

首をかしげているエルに、妹紅は小さく溜め息している。

 

(エルが記憶喪失だと聞いてはいたが、鈍感の所は変わらずか…)

 

 

喧嘩しているチルノと橙に近づくと、エルは喧嘩を止めるために、二人を抱き締めた。突然のエルの行動に、チルノと橙は喧嘩を中断する。

 

 

「チルノ…橙…喧嘩はだめだよ。」

 

涙目のエルにチルノと橙は喧嘩をやめた。ルーミアは面白くなさそうにチルノと橙を見つめている。

 

「解決したみたいだな。そろそろ、寺子屋に急がないと慧音に怒られるぞ。」

 

妹紅の言葉に、五人は急いで寺子屋に走っていった。

 

「エルは急がなくてもいいんだがな…」

 

 

 

 

 

 

寺子屋に到着したエル、妹紅、大妖精、ルーミア、チルノ、橙の六人は、慧音が来るまで教室で雑談している。

 

「慧音遅いのだー」

 

「まだかな…」

 

「気長に待とうよ。」

 

エルは夜食用に貰っていたお菓子をあげると、静かに食べ始めた。

 

「夜食用に貰ってたんだ。丁度よかったよ…」

 

「そうか。」

 

暫くして、慧音が大量の本を抱えて教室に入ってきた。

 

「待たせて済まない。今日の授業は自習とするが、読書をするように。」

 

本は小説が主だが、漫画も少なからずあった。これらの本は、慧音が紫に頼んで外の世界から取り寄せたものだ。

 

「………漫画まで、どうやって…」

 

「エルはこの本を知ってるのか?」

 

「………外の世界に…行ったことがある。」

 

妹紅の質問を曖昧に答え、漫画を一冊手に取り席に戻ると、静かに読書する。

 

大妖精は恋愛小説、チルノは絵本、ルーミアは料理本、橙は外の世界のアニメ雑誌を見ている。

 

「妹紅さんは読まないの?」

 

「……どの本を読もうか悩む。」

 

「それもそうだね。」

 

静かな時間が流れて、気が付くと、夜が明けていたようで、慧音は読書をやめるように言って、本を回収する。

 

「今日はここまで…」

 

寺子屋を出ると、霊夢が迎えに来た。

 

「霊夢姉…」

 

「帰るわよ。」

 

博麗神社に帰った。



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48

妖怪の山、山頂に突如神社が現れたのだが、それだけではない。三人の人影が神社から出てきた。

 

「諏訪子様、神奈子様。幻想郷ですよ!」

 

緑髪の少女、東風谷早苗は幻想郷の風を感じながら景色を眺めている。その後ろから、帽子を被った少女、洩矢諏訪子と注連縄が目立っている女性、八坂神奈子が早苗に笑みを浮かべている。

 

「さて…幻想郷に来たは良いけど…やることが沢山あるね。」

 

「挨拶回りやらしないといけないとダメだよ。妖怪の山の連中は、生張り意識が高いからね。」

 

「紫さんから幻想郷での掟は、聞いているので準備が出来次第、行きましょう。」

 

この光景を遠くから監視していた椛と文は、気づかれないようにその場を立ち去る。

 

 

「文様…天魔様に御報告しなくては…」

 

「そうね。それと、エルの方にも伝えておきなさい。あの少年は、人間でありながら妖怪側の味方をする人間。問題にはならないはずよ。」

 

「わかりました。」

 

椛はエルに伝えるために妖怪の山を飛び去った。だが、文と椛はエルが幼児化兼記憶喪失になっていることを知らない。その頃エルは、博麗神社で境内の掃き掃除をしていた。

 

「良い天気だよ。掃き掃除終わらせないとね。」

 

「エル。掃き掃除が終わったら今日の仕事は終わって良いわよ。」

 

「そうなの?でもどうして、霊夢姉。」

 

「紫から依頼を頼まれてね。忙しくなりそうだからよ。」

 

「わかった。掃き掃除が終わったら、兄さんに会ってくるね。」

 

「気を付けなさいよ。」

 

 

エルは掃き掃除を終えると、紅魔館に向かう。姿が見えなくなったタイミングで、紫が隙間から姿を現した。

 

「紫…依頼は?」

 

「………」

 

「お茶を出すわ…」

 

紫にお茶を出す。沈黙を保っていた紫から依頼内容が説明される。

 

「さて…近々、幻想郷で大規模な異変が発生するわ。」

 

「異変…解決はするわよ。私の役目だしね。」

 

「幻想郷が崩壊する規模の異変ではないから安心して良いわ。」

 

お茶を飲み、話を続ける紫。霊夢は煎餅を食べながら話を聞く。

 

「異変だけど、霊夢には人里に結界を施してほしいのよ。念のために…」

 

「人里に結界…わかった。他にすることは?」

 

「……そうね。」(エルの記憶が戻ると、エル自身に負担が…幻想郷にも影響が出かねない。)

 

深く考え込むと、霊夢が痺れを切らしたようだ。

 

「紫!何を考えてたの?」

 

「……うーん…結界以外出とくにないわね。何か思い付いたら教えるわ。」

 

紫は隙間に入り姿を消した。霊夢は紫の考えが検討もつかないようで、ちょっとイライラしている。

 

(大規模異変…ね。何が、起こるのかしら?)

 

 

 

 

エルは休憩中のレインとパチュリーがいる図書館で、静かに読書をしていた。

 

(エルとレイン…集中力が凄いわね。エルは記憶喪失だとしても集中力は変わらずね。レインは妹様の狂気らしいけど…妹様とは似ていない…そうとは…思えない。)

 

パチュリーは読書を中断して、エルとレインの観察をしていると、フランが入ってきた。

 

「パチュリー本読ませて!」

 

「妹様…図書館では静かにね?」

 

「わかった!」

 

フランがエルとレインがいる椅子の近くに座ると、エルが気配で気づいたようだ。

 

「フラン姉…いたの?」

 

「今さっきだよ!何読んでるの?」

 

「外の世界に関する雑誌だよ。何故かあった。」

 

「たまにだけど、本が増える時があるのよね?」

 

パチュリーは紅茶を飲みながら読書を続ける。

 

「エル……そろそろ…」

 

「ん…夕方になる。そろそろ帰るね。」

 

「気をつけて帰りなさい。」

 

エルは図書館を出ていった。レインは休憩時間が終わったので、メイドの仕事に戻る。

 

「妹様はどうするの?夕飯まで、まだ時間があるわよ?」

 

「そうだね…魔法の参考書が読みたい!」

 

「良いわよ。今、持ってこさせるわね。」

 

 

こあが何冊かの参考書を持ってくると、フランに渡した。

 

「館内で読むのなら自由よ。」

 

「静かにしてるね。」

 

 

 

 

 

妖怪の山にある天狗の集落では、突如現れた神社に警戒しているようで、数人の天狗が会議をしていた。

 

「妖怪の山は天狗の土地だぞ!許せるのか!?」

 

「こればかりは、どうしようもないだろ?奴等も天狗の里を攻める素振りも見せん。」

 

「何かあっては遅い!早急に対処しなくては…」

 

天狗の上層部が警戒をする中で、文は一つ提案を出した。

 

「あの方に依頼を出してはどうですか?」

 

「……妖怪堂の店主の人間にか?」

 

「人間に頼むなど…」

 

「ですが、あの方は天魔様の御友人で、人間でありながら、妖怪側の味方をする。我々の敵にはならないかと。」

 

「射命丸よ。勝算はあるのか?」

 

「今現在は危険度が不明です。此方を攻めなければ良いのでは?どうですか?」

 

文の発言に暫く議論する中で、上層部が決心した。

 

「……仕方あるまい…この問題は射命丸に一任することにする。」

 

「畏まりました。」

 

文は妖怪の山を飛び去り、エルを探しに向かった。



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49

紅魔館のロードが借りている客室に、紐で縛られている文が転がっていた。その近くには、窓ガラスの破片が飛び散っている。

 

(射命丸文だったか。本体と契約していない知り合い…予想はできるが…)

 

文はロードを見る。ロードは溜め息をして、紐を切り解放する。

 

「……俺に何のようだ?」

 

「エルさんに依頼をお願いしたいんですよ!」

 

「依頼…」(予想通りだ。射命丸文は本体が記憶喪失な事を知らない。)

 

ロードは頭を抱えながら、どうするか考える。とりあえず、文の依頼を聞くことにした。

 

「実はですね。妖怪の山に突如、神社が現れたんですよ。」

 

「神社…それで?俺に何をさせたいんだ?」

 

「貴方に話を聞いてきてもらいたいんです。ダメでしょうか?」

 

文の依頼内容は理解したが、話を聞いて来るだけの依頼内容に、深く考える。ロードは文を怪しんでいる。

 

「ふむ…話の内容は?」

 

「………妖怪の山を攻めるかどうかの話です。」

 

「………天狗の事情を俺に持ち出すのか?俺の立場をわかってるよな?霊夢は俺の立場を知らないんだぞ。」

 

「わかってるつもりです。」

 

ロードは気分を変えるため、紅茶を飲んで落ち着かせる。

 

「正直に言えば…依頼は受けたくないな。妖怪側の味方だが、限度がある。」

 

「そうですよね…」

 

文は見るからに落ち込んでいる。何とかしようと、ロードはしゃがんで、文の頭を撫でる。

 

「天狗側の事情に、俺が出るわけにはいかないだろ?だが、アドバイスならしてやるよ。俺が出来る限りだけどな。」

 

「エルさん…」

 

「それとだが、今はロードと名乗ってる。わかるな?」

 

「………わかりました。」

 

文の手を握り立ち上がらせると、紅茶とクッキーを取り出す。

 

「休んでいくだろ?」

 

「ありがとう…ございます…」

 

ロードと文が楽しんでいる頃。エルは迷いの竹林で、兎の妖怪達と戯れていた。

 

「かわいい…」

 

耳を撫でられてい兎は、気持ち良さそうに、大人しくしていると、妹紅が竹の子を抱えて歩いていた。

 

「エルじゃないか…何してんだ?」

 

「兎の妖怪と遊んでた!」

 

「………そうか。」

 

兎の妖怪は妹紅に近寄ると、足を頭を擦り付けている。

 

「兎だよな?化け猫が兎に化けているわけじゃないよな…」

 

「それは大丈夫よ。」

 

エルと妹紅が振り向くと、兎耳の制服姿の少女が立っていた。

 

「お姉さん…誰?」

 

「鈴仙・優曇華院・イナバよ。鈴仙て呼んでね。」

 

「僕はエルだよ!よろしくね…お姉さん!」

 

「で、鈴仙は何してんだよ?」

 

妹紅が鈴仙を睨みながら質問する。エルは妹紅の態度の変化に気づいたが、空気を読んで何も言わない。

 

「薬売りからの帰りよ。エル君もまたね。」

 

鈴仙は帰っていくと、妹紅がエルの方を見る。

 

「帰るか?送っていくけど…」

 

「うん!」

 

エルと妹紅は迷いの竹林を出ていった。すると、帰ったはずの鈴仙が戻ってきた。

 

「あの少年が…エル?聞いていた情報と違うわね?一応、報告しておきますか。」

 

 

 

 

 

エルと鈴仙が出会いから半年、人里の商店街を散策しているエルは、妖夢と夕飯の買い出ししていた。

 

「妖夢姉、買い出し終わったね。」

 

「今日は大人数ですから、買い出しが大変です。」

 

人里を出るところで、鈴仙と遭遇すると、声をかける。

 

「エル君、久し振りね。」

 

「久し振り!鈴仙姉ちゃん!」

 

鈴仙とエルははいタッチすると、お互いに笑みを浮かべる。妖夢がエルに駆け寄る。

 

「エルさんの知り合いですか?」

 

「鈴仙お姉ちゃんだよ!前にあった。」

 

「そうですか。私は魂魄妖夢です。」

 

「鈴仙・優曇華院・イナバよ。鈴仙て呼んで。」

 

妖夢と鈴仙は握手すると、互いに警戒していて、殺伐とした雰囲気になるが、エルの声で正気に戻る。

 

「鈴仙お姉ちゃんと妖夢姉…何か…怖い…」

 

エルを怖がらせてしまったようだ。それを察知したかのように、エルの使い魔であるレイと式神のレインが出現して、鈴仙と妖夢に殺気を放っている。

 

「マスターを怖がらせるな!」

 

「……………」

 

レイは威嚇していて、レインは無言で睨んでいる。

 

「ごめんなさい。」

 

「エルさん、済みません…」

 

「気にしてないよ。レイ、レインは怒らないで…」

 

エルの説得に無言で頷いて、殺気をやめる。

 

「妖夢姉。そろそろ帰らないと、霊夢姉に怒られる。」

 

「そうですね。帰りましょうか。」

 

「鈴仙姉ちゃん、またね!」

 

エルと妖夢は帰っていくと、鈴仙は迷いの竹林に向かっていった。



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50

博麗神社の縁側でお茶を飲んで、まったりしている霊夢とエルは突如、強大な力の気配を感じ取り、境内に出る。

 

「霊夢姉…」

 

「エルは神社に入ってて…」

 

霊夢がエルを中に入れようとするが、エルが咄嗟に霊夢の前に出て、飛んできた弾幕を殴って相殺させた。

 

「誰?」

 

「私の弾幕を相殺させるとは、根性あるね。」

 

境内に降りた諏訪子は、エルに笑みを浮かべると、霊夢がエルの前に出る。

 

「…何者なの?妖怪?」

 

「妖怪は失礼だね!私は神…名前は洩矢諏訪子だよ。」

 

「あんた…」

 

霊夢が何かを言いそうになる瞬間、エルが右手で霊夢を止める。この行動に諏訪子は、エルに興味を示した。

 

「神様のお姉さん、後二人誰か隠れてる?出てきてくれないかな?」

 

「……面白い子供だね!神奈子、早苗…出てきて!」

 

上空から早苗と神奈子が現れた。エルは警戒を緩めずに見据えている。

 

「私達は守矢神社の者です。幻想郷に来たので、挨拶回りに…」

 

「八坂神奈子だ。諏訪子と同じく神の一人だ。」

 

「私は東風谷早苗です。祝風です。」

 

「博麗の巫女、博麗霊夢よ。」

 

自己紹介をしている中、エルだけは三人を睨んで、警戒を解かない。その事に気づいた諏訪子だったが、笑みを浮かべるだけで、何も言わない。

 

「名前は何ですか?」

 

「敵に教える義理はないよ。」

 

「……困りましたね。」

 

早苗が困った表情をしているが、少し楽しそうな笑みでエルから離れる。

 

「用件は?」

 

「私が説明するよ。実はね、博麗神社に私達の分社を建てさせて貰えないかな?」

 

「分社…神社の小型バージョンね。良いわよ。」

 

「………良いの?何で!?」

 

諏訪子は霊夢の承諾に予想外だったようで、目を見開いた。

 

「分社を建てるのは構わないわよ。その代わり、多少の報酬は貰うけど。」

 

「………イメージしてたのと、違いますね。神奈子様…」

 

「どんなイメージよ?」

 

「面倒事はとりあえず、退治する的な…」

 

「否定できないわね。」

 

霊夢の言葉に、早苗は何故か呆れた表情に。

 

「平和的に解決…え!?」

 

早苗の顔スレスレで、霊夢の弾幕が通り過ぎた。

 

「何で!?」

 

「そこの神が最初に攻撃したじゃない?話し合いで解決したけど、する前に攻撃したから倍返しするわね。」

 

霊夢は陰陽玉を操り始めた。それを見た早苗は、冷や汗をかきながら諏訪子を見る。

 

「諏訪様!?どうするつもりなんですか!」

 

「いや……逃げるぞ!」

 

諏訪子がその場から逃げ出そうとした瞬間。エルが諏訪子の腕を掴み、逃がさないように押さえる。

 

「え!?」

 

「逃がさないからね…お姉さん?」

 

「早苗、神奈子…助けて!」

 

助けを求める諏訪子に、霊夢が早苗と神奈子に警告する。

 

「近づいたら…同罪だから。どうする?」

 

「………諏訪子、お仕置きされな。」

 

「諏訪子様…後で、迎えに行きますね。」

 

早苗と神奈子は諏訪子を見捨てた。霊夢の特大の弾幕が諏訪子に直撃したそうだ。

 

「…………痛い。」

 

「このくらいで許すわ。」

 

早苗、神奈子、諏訪子は霊夢からお茶菓子とお茶が振る舞われた。

 

「………信仰心が得られなくなったから……か。」

 

「信仰が無ければ、神は消えてしまうからな。」

 

「幻想郷に来た理由は、わかったわ。でも、人里の人間は来ないわよ。妖怪に襲われる危険があるから。守矢神社も妖怪の山にあるけど、妖怪の山は人間には危険過ぎる。」

 

「ですから、霊夢さんにお願いに来たんです!」

 

「そうね。人里には行ったの?」

 

「挨拶回りで少し…」

 

暫くアイデアを考えていると、エルが境内にある守矢神社の分社に手を合わせている。

 

「エル?お茶菓子あるわよ。」

 

「……あれ?霊夢姉…」

 

「手を合わせてたわよ。」

 

エルの無意識的な行動なのか、首をかしげている。

 

「……話し合い終わったの?」

 

「休憩。終わってないわ。」

 

早苗が境内にいるエルを見る。既にエルは早苗達を敵として見ていないので、警戒していない。

 

「お祈りしてるの?」

 

「……わかんない。でも、これ…何処かで見たことある。何処だろう…」

 

「………思い出せるといいですね。」

 

早苗はエルの頭を撫でる。すると、神社にルーミアがやって来た。右手には十円玉が握られている。

 

「霊夢。遊びに来たのだー」

 

十円玉を賽銭箱に入れるルーミアに、霊夢が出迎えた。

 

「ルーミア、お茶出すわ。」

 

「ありがとなのだー!エル久し振り!」

 

ルーミアに抱き締められているエルは、頭を撫でている。この光景を見ていた早苗だが、霊夢から教えられる。

 

「早苗。エルの隣にいるのルーミアは、人食い妖怪よ。」

 

「え!?」

 

「霊夢…この人間は、食べてもいい人間?」

 

「食べたら退治するわよ。」

 

霊夢が笑みを浮かべているが、目は笑っていない。

 

「……………そーなのか。」

 

その後、夕食に鍋を仲良く食べたそうだ。



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51

真夜中の人里から離れた林の中では、中年の男性が必死に何者かから逃げていた。

 

「何で、俺を殺そうと!?」

 

「お前はやってはならないことに手を出した。賢者に狙われてもおかしくないな。」

 

鬼の仮面に黒装束の人物は、小刀を取り出すとくるくる回し始める。

 

「妖怪を人里に入れ、妖怪に人間を襲わせることで、消そうとした。」

 

「俺は妖怪が嫌いなんだよ!?身内を妖怪に殺されたんだ!」

 

男性は怯えながらも、叫んで後ずさる。

 

「同情はするが、赤の他人ならやってもよかったのか?そんな貴様に生きる資格はない。地獄に落ちろ…」

 

小刀を振ると、男性が静かに倒れて、目を覚まさなくなった。

 

「………依頼完了。紫、後処理頼んだ。」

 

「御苦労様。悪いわね…ロード。」

 

「……今更だな。本体…エルに仕事が出来ない以上、俺がするしかないだろ?」

 

鬼の仮面を外したロードは、紫から依頼報酬である

小瓶を貰うと懐に入れる。

 

「本当に報酬は、あれでよかったのかしら?」

 

「俺を維持するのに必要な物だ。何を望めと?」

 

「……紅魔館まで送るわ。」

 

紫が紅魔館に通じる隙間を開くと、ロードは隙間の中に入り、帰っていった。

 

「さて、まさか…人里の人間が妖怪に人間を襲わせるなんて。対策を考えないと。」

 

紫は姿を消した。

 

 

 

 

 

 

早朝、紅魔館の廊下を掃除していたロードは、部屋に戻り、時間まで休憩をするが、眠そうなためか欠伸をする。

 

(真夜中の依頼はきつい。霊夢に知られると不味いからな。後で、本体に会いに行くか?今の俺は、本体の記憶を共有できないしな。)

 

紅茶を飲んで、時間を潰していると、フランが部屋に入って来た。ロードは紅茶の準備をする。

 

「どうしたんだ…フラン?」

 

「暇だよ…ロードは仕事あるの?」

 

「フランの御世話が仕事だ。本業の方は予定なしだ。」

 

「だったら、ロードと散歩に行きたい。」

 

ロードは笑みを浮かべると、フランの頭を撫でる。

 

「そうだな…悪い明日なら一緒に行けるな。」

 

「……仕方ないよね。」

 

「悪いな…フラン。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図書館の本棚の整理をしているレインは、パチュリーの読書を眺めている。すると、門番をしていた美鈴が入ってきた。休憩時間らしい。

 

「美鈴…休憩…?」

 

「はい。レインさんはこあさんの手伝いですか?」

 

「暇……だから……」

 

美鈴は適当に本を選ぶと、ソファーに座り本を読む。美鈴の隣に座っていたパチュリーは、欠伸をしながら本を読んでいる。寝ずに読んでいたのか、眠そうにしている。

 

「パチュリー……寝て…」

 

「これ読み終わっら寝るわ……」

 

「わかった……」

 

本の整理を終えから、再びパチュリーの様子を見ると、読書を続けていた。流石のレインがパチュリーに近寄ると、読んでいた本を取り上げる。

 

「レイン?本……を……!?」

 

「さっさと……寝て…」

 

「………レイン……?」

 

パチュリーの体を持ち上げて、寝室に向かう。

 

「レイン!?下ろしなさい!」

 

「寝る……こあ…監視…」

 

「わかりました!レインさん!」

 

パチュリーはレインとこあに、寝室に連れていかれた。

 



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52

博麗神社の境内で、エルは魔力と妖力の2つの力を試しに発動した。お互いに反発している。

 

(力の影響が強いよ…踏ん張らないと…)

 

力の余波をなんとか抑え込むと、冷や汗を流した。

 

「やっぱり…僕は…化け物…」

 

エルが短剣を取り出して、自分を刺そうとする寸前で、霊夢が短剣をお祓い棒で落とした。

 

「何してるのよ…」

 

「霊夢姉…僕は…化け物だよ。」

 

エルは悲しみの笑みを浮かべて、3つの力…霊力、魔力、妖力の球体を作り、周囲に浮かべる。

 

「霊夢…姉は知ってたでしょ?」

 

「エルは…思い出したの?」

 

「覚えてるのは、力の使い方と…」

 

両手を出して、エルが力を込める。すると、黄金に輝いた光を放ち、金の十字架を出現させた。

 

「それは…何!?」

 

「僕の力を制御する装置みたい。まだ、僅かながらしか使えないみたい。」

 

「私に言って、どうするつもりよ?」

 

「わかってるよね?幻想郷の掟…僕を殺さないの?博麗の巫女様?」

 

エルの言葉に、霊夢が目を見開いて、見続ける。

 

「……確かに、私はエルを退治しないとダメみたいね。」

 

「早く退治してよ…」

 

エルの行動に、霊夢の体が震え出して、近寄ろうとしない。退治するのを躊躇している。

 

「…どうしたの?殺さないの?」

 

「……嫌だ…」

 

「どうしたの?霊夢姉…」

 

「嫌…エルを退治するのは…それだけは…」

 

霊夢の拒否にエルは、魔力を体に纏う。

 

「幻想郷の掟に従わないなら…今から潰すよ。」

 

「何で…」

 

「幻想郷の掟では、人里の人間は妖怪になってはならない。これは…絶対なる掟だよ。博麗の巫女は…人妖を退治…殺さないダメだよね?霊夢姉…」

 

「でも、エルは妖怪じゃ…」

 

「この妖力を使える僕は…妖怪じゃないの?霊夢姉…使命を果たさなきゃ…ダメだよね?」

 

エルは霊夢に近づいている。

 

「嫌だ…お願いだから…そんなこと言わないでよ!」

 

「ダメだよ…僕を…殺さなきゃ…」

 

エルが霊夢に妖力を放つ瞬間。隙間が出現して、妖力の球体を相殺した。

 

「……この隙間は…!?」

 

「エル、貴方は何をしているのか…わかってるの?」

 

霊夢の前に紫が現れて、隙間で霊夢を守る。

 

「紫さん…何で…邪魔するの?」

 

「エルが霊夢を攻撃するからよ。弾幕ごっこなら止める気はなかったわ。」

 

「紫さんならわかるよね?僕は…人里の人間で…妖怪の力を持っている。霊夢姉が僕を殺さないなら…」

 

「エル…貴方は確かに妖怪の力を持っている。本来なら博麗の巫女に殺されるわね。でも、貴方は既に人里の人間ではないわ。」

 

紫の言葉にエルは動揺している。

 

「僕が…人里の人間…じゃない…どういうこと?」

 

「記憶を失う前…幼い時にエルは、人里の保護を放棄したのよ。貴方自身の意思で…」

 

この真実に霊夢は一瞬だが、幼い頃の記憶の一部を思い出した。

 

「……あの時なの?」

 

「霊夢姉…?」

 

「エルは…あの時から…恨んでたの?」

 

「違う…僕は…恨んでなんて……」

 

エルは突然、気を失った。



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53

神社の一室にエルを寝かせる霊夢は、紫に看病すると言って、エルの傍にいる。

 

(私のせいで…エルが…)

 

霊夢はエルの頭を撫でると、魘されている。

 

「霊…夢…ごめん…」

 

「エル!?しっかりして!」

 

魘されているエルの手を握り、呼び掛ける。すると、エルが目を覚ました。

 

「霊夢…姉…」

 

「よかった…目を覚ましたのね。」

 

「ごめん…なさい…」

 

「え…?」

 

「霊夢姉…ごめんなさい…」

 

エルは涙を流しながら霊夢に謝っている。謝罪の言葉を聞いて、霊夢は抱き抱えて起こす。

 

「何で、エルが謝ってるのよ?」

 

「だって…僕…霊夢…姉に…殺されようと…」

 

「言わないで!もし、言ってみなさい。本気で怒るわよ!」

 

霊夢の言葉に、エルは何も言えなくなった。

 

「私はエルがいなくなったあの日……泣いちゃってね。」

 

「え……」

 

「あの頃の私は…エルが目の前から消えた時…理由がわからなかったの。情けない話だわ。」

 

エルを抱き締める力が強くなる。

 

「もし、記憶が戻ったら…全ての怒りを私にぶつけなさい。私は抵抗しないわ。」

 

「そんな…何で…霊夢姉は…」

 

「私の気がすまないわ。」

 

「嫌だ…絶対嫌だ…頼まれても…やりたいない…」

 

エルの怯えたような表情に、霊夢が一旦エルから離れる。

 

「エル…今まで…ごめんね…」

 

霊夢が涙を流すと、エルは指で涙を受け止める。

 

「泣かないで…霊夢姉…今の僕を見てよ。」

 

「え…」

 

「僕には記憶がない。でも…僕は…許すよ…だから…泣かないで…僕を見て…」

 

エルの優しさに、霊夢の涙が止まった。

 

「エル、ありがとう。もう…迷わないわ。」

 

「うん!」(前の僕…霊夢姉には…手を出させないよ…どんな手を使っても、復讐はやらせない…)

 

疲れたようで、エルは眠ってしまった。霊夢は起こさないように部屋を出た。隙間が開いて紫が現れる。

 

(エルの自殺未遂…なんとかなったようね。霊夢にも感謝しないといけないわね。まさか、エルが霊夢に攻撃をすると思わなかったわ。)

 

エルの頭を撫でる紫は、今回の出来事が再び起こらないように対策を考える。

 

(今のエルの実力なら、能力を記憶喪失以前の状態に、戻すことができるわね。でも、まだ様子を見ないとダメね。何が起こるかわからないし…)

 

隙間を開いて、紫はもう一度エルの寝顔を見る。

 

(エルの記憶が戻れば…復讐心も戻ってしまう。そうなれば、幻想郷に危機が訪れてしまう。それだけは、阻止しないとね。)

 

 

紫は姿を消すと同時に、ニーナの声が部屋内に聞こえた。

 

「やっと、紫がいなくなったね。」

 

ニーナが眠っているエルの近くに姿を現した。

 

(博麗の巫女を許す?冗談じゃない!巫女が勘違いな攻撃をした原因で、エルの心を闇に染めたくせに…やっぱり、エルの記憶を戻さないとダメか。戻す方法を見つけないと。)

 

ニーナは闇に消えた。

 

 



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54

エルの自殺未遂事件から3週間後、博麗神社に早苗が手土産を持って遊びに来たようだ。

 

「霊夢さん!野菜のお裾分けに来ました。」

 

「早苗じゃない。今からお茶出すわ。エル、お茶菓子出しといてね。」

 

「わかった。霊夢姉。早苗さんもこんにちわ。」

 

戸棚から羊羹を出して皿に乗せる。

 

「エル君もこんにちわ。この羊羹、人里の有名店のですよね!?」

 

「エル、最近は人里で何でも屋を始めたらしいわ。力の制御も兼ねてらしいけど…」

 

「力の制御?」

 

「エルは…霊力と魔力が使えるようになったから、その訓練よ。妖力も使えるらしいし。」

 

「妖力!?半妖ですか?」

 

エルが右手から妖力の玉を浮かべると、クルクルと回転させて操っている。

 

「最近かな?この力得たの…紫さんに見てもらってたし。」

 

「そうなんですね。」

 

羊羹を頬張っている早苗。エルは羊羹を半分に分けて、皿に乗せて分社に供える。

 

「エルは毎日、分社にお供え物をしてるわよ。」

 

「え…毎日…ですか…!?まさか…」

 

「どうしたのよ?早苗。」

 

「諏訪子様と神奈子様の調子がよくなったらしく…」

 

早苗の言葉に、霊夢はエルが原因であることに気づいたが、幻想郷に悪影響を及ぼすものではないため放置する。

 

「問題ないわね。信仰が増えてるのよね?人里からは?」

 

「大丈夫です。分社を置かせて貰えてるので…でも、エル君のが、影響あるみたいですね。どうしてでしょうか?」

 

「…なんでかしらね?」

 

分社に手を合わせているエルを見ながら。考えている。

 

「…………ふう。霊夢姉と早苗さん…どうしたの?」

 

「なんでもないわよ。エル。今日はどうするのよ?」

 

「ルーミアが来ると思うけど…」

 

「だったら、私は買い物に行ってくるから、留守番頼める?早苗もダメかしら?」

 

「わかりました。エル君と待たせてもらいますね。」

 

「お願いね。」

 

霊夢は買い物に出掛けた。エルは箒を持ってきて、境内の掃除する。早苗も手伝うために立ち上がる。

 

「掃除は僕がやるから…」

 

「それだと、私は暇になっちゃいますよ。一緒にやった方が早いですよ?」

 

「それじゃあ…お願いします。」

 

「畏まりました!」

 

エルと早苗は一緒に境内の掃除をしていると、ルーミアが遊びに来たようだ。

 

「エル……と、ピーマン巫女?」

 

「私は東風谷早苗です!なんですか?ピーマン巫女って…」

 

「ピーマンダメなのかー…だったら…緑巫女。」

 

「そのまんまじゃないですか!」

 

ルーミアのボケに、早苗が突っ込む形になってしまった。

 

「疲れました。」

 

「貧弱なのかー」

 

「誰のせいですか!全く。」

 

ルーミアは眠たくなったようで、エルに抱きついて眠った。



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55

紅魔館の図書館ではニーナが何かを調べていた。エルの記憶を戻すために行動しているのだ。

 

 

(エルの記憶を戻して、計画を進めないと…だけど、邪魔なのは…)

 

ニーナが隣にいるレイを見ている。レイはエルの使い魔である。

 

(レイの【痕跡を辿る程度の能力】意外と厄介よね。エルに細工しても、一発で私だとバレる。)

 

調べ事を中断すると、咲夜がケーキと紅茶を準備していた。

 

「ニーナ様、ケーキと紅茶の御用意が出来ました。一休みに如何ですか?」

 

「ありがとうございます!いただきます。」

 

ケーキを食べながら計画を考える。

 

(博麗の巫女に復讐したいけど、幻想郷に罪はないのよね。私も幻想郷は居心地がいいし。復讐したいけど…あの巫女…エルに謝罪してる。復讐…どうしようかな。)

 

ニーナは当代の博麗の巫女、博麗霊夢に対する復讐心が膨れ上がっているが、悩んでいる。

 

 

(私の復讐は殺しはしないけど、エルを闇に落とした事を後悔させたい……でも、巫女に復讐したら、エルが暴走しかねない。矛盾過ぎる。)

 

ケーキと紅茶を堪能したニーナは、図書館を出て廊下内を散歩する。

 

(悩みすぎて疲れた…今日は何処で泊まろう。)

 

「ニーナ……どうしたの……?」

 

「レインは休憩?」

 

「窓拭き…終わり…ニーナは?」

 

「泊まる場所探してる。」

 

「霊夢の家は?」

 

「………………それは。」

 

レインはニーナを黙ってみている。何かを察したのか、小さく頷いた。

 

「霊夢と…エル…気まずい?取られたくない?」

 

「な!?」(確かに、エルは好きだけど…勘違い…いや、復讐を計画してることが、バレなければいいかな。)

 

「ニーナ…ガンバ…」

 

「何言ってるんですか!?」

 

レインは自室に戻っていった。

 

(どうしよう…復讐…考え直そうかな…巫女…あの頃の後悔してるみたいだし…)

 

気持ちを落ち着かせるため、散歩の続きをする。暫くすると、散歩を終えたニーナは図書館に戻っていた。

 

「ニーナは今日は泊まっていく?」

 

「パチュリーさん…良いんですか?」

 

「話したいこともあるし。良いわよ。」

 

「今日はお世話になります。」

 

今日はパチュリーの部屋に泊まることになったようだ。

 

「夕食まで時間あるから、休んでなさい。」

 

「わかりました。ソファーお借りしますね。」

 

ニーナがソファーに座る。

 

「今日は疲れたかしら?」

 

「調べ事をしてただけなので…」

 

出された紅茶を飲み、待ったりしている。

 

「何を調べてたの?」

 

「……エルの記憶を戻す方法を…大事な…思い出なので…」

 

「……私も協力するわ。」(八雲紫はエルの記憶が戻ると、危険だと警告していた。ニーナはそれを知らない。どうしようかしら…)

 

パチュリーは紅茶を飲みながら、どちらにするか考えるのだった。

 



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56

妖怪賢者の1人である黒牙は、博麗神社の屋根で日向ぼっこをしているが、眠そうである。

 

(眠いのじゃ…こんな日は…昼寝に限る…)

 

すると、遊びに来ていたルーミアが屋根に上がってきたて、眠そうにしている黒牙を見つけた。

 

「黒牙!久し振りなのだー」

 

「ルーミアかの…眠いのじゃ…寝かせてくれ…」

 

黒牙の頭を撫でるルーミアに気にしてないのか、おとなしく撫でられている。

 

「サラサラなのだー」

 

「毎日……手入れしてるからの………」

 

欠伸をしながら頭をルーミアに擦り付けている。気に入っている証だ。

 

「黒牙、猫なのだー!」

 

「当たり前じゃ……我輩は猫神じゃ!」

 

「ルーミアと黒牙うるさいわよ!静かに掃除させなさい!」

 

境内を掃除していた霊夢が、怒りながら霊力を纏い目の前に現れた。黒牙とルーミアは目を見開いた。

 

「霊夢!?掃除の邪魔をしたのは悪かった。怒りを沈めてくれぬか!」

 

「霊夢…ごめんなさい。」

 

「………全く。また、邪魔をしたら…夢想封印だからね……」

 

霊夢は境内の掃除に戻ると、黒牙は眠気がなくなったようで、屋根から降りて姿を消した。

 

「暇になったのだー」

 

「ルーミア、どうしたの?」

 

エルが屋根にルーミアを見つけて、ジャンプで上がり、屋根に着地した。

 

「暇なのだー」

 

「お昼寝でもする?今日は気持ち良さそうだよ。」

 

「嫌なのだー。エルと遊びたいのだー!遊ぼう…」

 

ルーミアがエルの腕を掴み離さない。

 

「わかった。その代わり、ルーミアも掃除を手伝ってね?お願いだよ。」

 

「…………わかったのかー」

 

「その間は何かな?」

 

エルの言葉に、ルーミアが涙目になり、今でも泣きそうである。少し、悪いと思ったのか、謝罪する。

 

「ルーミア…ごめんね。」

 

「意地悪なのだー」

 

「泣かないでね。ルーミア。」

 

エルがルーミアの頭を撫でると、ルーミアがエルの手を口に入れた。その行動に目を見開いた。

 

「る、ルーミア!?何してんの!?」

 

「ひかえひなのだー」

 

ルーミアがエルの手を甘噛みしている。

 

「ルーミア……離して!」

 

「嫌なのだー。許さないのかー!悪いと思ったなら、私と遊んで……」

 

「う……ごめん、もうしないから……離して……」

 

「…………仕方ないのかー」

 

手を出すと、エルは手を洗いに戻る。

 

「やり過ぎたのだー」

 

ルーミアは顔を赤くしながら呟くのだった。

 

 

台所で手を洗っているエルは、ルーミアの行動に少し、あたふたしている。

 

(ルーミアのバカ!僕の手を……甘噛み…なんで…)

 

エルも恥ずかしかったようだ。顔を水で洗い落ち着かせる。

 

「う…平常心…よし!戻ろう。」

 

境内に戻った。



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57

魔法の森にいるエルは、野生の妖怪…猫又と戯れていた。

 

「くすぐったいよ。ほら、魚を持ってきたからちょっと待ってね。」

 

持っていた札を魚に戻すと、その場で捌き始める。

 

「…後は、血を水で洗い流して…」

 

水の文字が刻まれた札から水を出して、血を洗い流す。

 

「猫の妖怪だけど、生は危ないよね?」

 

さみしにした魚を火で炙ると、猫又に食べさせた。

 

「急いで、食べなくてもいいよ。まだ、たくさんあるからね。」

 

エルの言葉に、猫又はゆっくりとちびちび食べ始める。すると、他の動物系の妖怪が集まってきた。

 

「魚あるけど食べる?」

 

エルの言葉に、その場に座り込んで、おとなしく待っている。

 

「ちょっと待ってね。」

 

暫く時間が経ち、持ってきていた魚は、全部なくなった。

 

「今日の仕事は終わりっと…」

 

「久し振りじゃな!エル。」

 

「あ、マミ姉ちゃん。久し振り!」

 

エルに声をかけてきたのは、化け狸の妖怪、マミゾウだ。部下である子狸達も一緒だ。

 

「遠くで、見させてもらったぞ?わしの力を上手く活用できてるじゃないか。」

 

「え!?見てたの!?」

 

「エルならわしに気づけたじゃろ?紫殿から聞いたが、記憶喪失なんじゃろ?能力…戻ってきたのか?」

 

「記憶はまだだけど、能力だけは…少しずつだよ。」

 

エルの暗い表情に、マミゾウが我慢ならずにエルの頭を乱暴に撫でる。

 

「ちょ…マミ姉ちゃん!?」

 

「暗い表情はなしじゃよ!」

 

子狸達がエルの足に掴まって、エルを見ている。

 

「撫でていいかな?」

 

子狸達は小さく頷いている。エルは子狸の頭をゆっくり撫でると、体を震わせている。くすぐったいようだ。

 

「ごめんね。」

 

謝ると、子狸が首を横にする。気にしていないようだ。

 

「かわいい…」

 

「よかったの…」

 

子狸達は嬉しそうにしている。

 

「そろそろ、戻らないとね。」

 

「エルは帰るのか」

 

「霊夢姉が心配するから。」

 

「そうか。なら、わしも当代の博麗の巫女に挨拶するかの。幻想郷に帰ったのは8年振りじゃ。」

 

エルとマミゾウは博麗神社に向かった。

 

「それにしても、エルが記憶喪失なのは、驚いたぞ。原因は?」

 

「紫さんからは、精神的な問題らしいけど…わかんない。」

 

「それは、困ったの…」

 

「余り、思い出したくないかな。」

 

「それは……」

 

「前の僕、霊夢姉に恨みがあるみたいなんだよね…原因……不明だけど。」

 

疲れたようで、エルは切り株に座る。

 

「……ふむ。今を楽しめ。そうすれば、何とかなるじゃろう…」

 

「マミ姉ちゃん…ありがとう。急いで、行こうよ!」

 

「そうじゃな!」

 

休憩を終えたエルは、急いで向かった。

 



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58

エルとマミゾウが博麗神社に向かっている頃。ニーナは人里で買い物をしていた。

 

(今の私は、人化してるから、妖怪とバレても騒がれない。元の姿に戻らなければ、問題ない。)

 

買い物を粗方終えると、荷物を異空間に入れ、身軽になる。

 

(さて、何処に行こうかな…)

 

鈴奈庵の前を通り掛かると立ち止まった。

 

(貸本屋。初めてだし…入ってみるかな。)

 

店内に入るニーナに気づいたのか、鈴奈庵の店番をしている少女、本居小鈴がニーナに挨拶する。

 

「いらっしゃいませ!」

 

「どうも…」

 

「何をお求めですか?」

 

「幻想郷の歴史に関する資料ありますか?」

 

小鈴が本棚から数冊の資料本を取り出すと、ニーナに見せる。

 

「こんなにあるんですか……店員さん。」

 

「なんですか?」

 

「この本……妖魔本ですよね?店員さんは、人間…ですか?」

 

「私は人間ですよ。私は本居小鈴です。妖怪…ですよね?貴女から妖気が出てますよ。」

 

小鈴の言葉に、ニーナは目を見開いたが、すぐに笑みを浮かべた。

 

「よくわかりましたね。私の名前はニーナです。猫又の妖怪ですよ。」

 

「妖怪の気配ありましたし…私は妖魔本を読みに来たと、思ったんですけど…」

 

小梅が壁に貼られている紙に指を指す。妖怪文字で、【妖魔本の入荷】と書かれていた。だが、小さな字で【条件あり】の文字が…

 

「……この本は誰が?」

 

「紫さんですよ。御得意様なんです!」

 

「………そうなんですね。」(あのスキマ妖怪が、御得意様!?何か、企んでるのか?)

 

ニーナは妖魔本の1冊に触れてみると、急に違和感を感じて、妖魔本から離れた。

 

(何、この違和感は!?)

 

「ニーナさん、大丈夫ですか?」

 

「だ、大丈夫です。ちょっと、適当に本探しますね。」

 

「自由にどうぞ。」

 

ニーナは本棚にいくと、冷や汗を流しながら体が震えている。

 

(あの妖魔本…あの感じ…私に対する魔除けか!他の妖怪は効かないだろう。あの小鈴、人間の少女が触れていても、問題はなかった。何処まで見透かしているんだ…)

 

適当に本を読みながら考えている。

 

(どうするかな。紫に警戒されている以上、エルの記憶を戻せない。それだけは何とかしないと。でも、どうする……)

 

悩ませているニーナに、小鈴が本棚の本のチェックをしながらニーナを見る。

 

(ニーナさん……妖魔本に触れた時、様子がおかしかったな。何かあったのかな?)

 

チェックを終えると、椅子に座り、妖魔本を開いて読書する。ちなみに、読んでいる妖魔本は、紫の新作で、【藍ちゃんの観察記録特集】と妖怪文字で書かれている。小鈴か紫以外は読めない妖魔本である。

 

(……紫さんも藍さんに、意地悪するんですね。)

 

 

本棚の本を読み終えたニーナは、本棚に戻すと帰っていった。

 

 



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59

真夜中の魔法の森では、魔理沙とニーナが魔法薬の調合のため、薬草や毒キノコを探していた。

 

「ニーナ、助かったぜ!」

 

「それはよかったです。」

 

「集めたこれを潰して、魔法薬に調合するぜ。」

 

集めた薬草や毒キノコを風呂敷に包み、魔理沙の家に向かう。飛行中にニーナは魔理沙に話し掛ける。

 

「魔理沙さんは…魔法使いには?」

 

「………種族的な意味での話なら……決めてないぜ…」

 

「……そうですか。」

 

魔理沙の家が見えてきて、ゆっくりと地面に降りていく。

 

「着いたぜ。」

 

「本当に魔法の森にありましたね。人間には、有害だと聞いてますが…」

 

「慣れれば問題無いぜ。魔法薬の研究には、最適な場所だからな。」

 

ニーナは魔理沙の話を聞きながら思っていた。

 

(この少女は毒キノコや薬草を活用して、魔法薬を調合している。魔力の発生は修行で得たらしいが…)

 

調合の作業を眺めているニーナ。それを魔理沙は気にせずに、作業を続ける。

 

「その魔法薬の効果は?」

 

「魔力増強だぜ!但し、毒キノコのエキスが入ってるから、死にはしないが…体が痺れて、動かなくなるかもだぜ。」

 

「無茶しますね。」

 

「無茶しないと、魔法使いにはなれないぜ。」

 

出されたお茶を飲むニーナに、魔理沙は魔法薬の調合が終わったようで、調合した液体を小瓶に入れる。

 

「終わったぜ。」

 

「お疲れ様です。」

 

「………眠いぜ。」

 

「休んだ方がいいですよ?体に悪いですから………」

 

目を擦りながら、魔理沙はベッドに移動する。

 

「ニーナはどうするんだぜ?」

 

「私は魔理沙さんが寝たら帰りますよ。」

 

「そうか?だったらもう……寝るぜ……」

 

魔理沙は眠ったようだ。それを確認したニーナは、懐から液体の入った小瓶を取り出した。

 

(この液体は生物の記憶を見ることができる。飲ませないとダメだがな…)

 

ニーナは液体を1滴、寝ている魔理沙に飲ませる。

 

(後は…エルの記憶を集めて、復元させるだけ…早く集めなければな………)

 

魔理沙の家から出る。すると、ニーナの目の前にルナが姿を現した。

 

「お久し振りです…マスター。」

 

「ルナ。何か収穫はあったの?」

 

「エル様が記憶喪失以降ですが、紅魔館にロードの名を持つ執事が来たそうで…」

 

「ロード…エルの兄だったよね。」

 

「そのロードなのですが、3つの力、霊力、魔力、妖力の気配が…」

 

ルナの言葉に、興味を示した。

 

「……エルは元々が人間で、霊力を持っていた。能力で妖怪、魔法使いと仮契約して、魔力と妖力を手に入れた。」

 

「ですが、エル様はまだ、本契約を結んでいません。」

 

「無理だからね。本契約は仮契約と違って、寿命を削る分、力を強くできる。エルと仮契約を結んだ妖怪達は、妖力が強力になったはずだよ。エルも強くなってるけどね。」

 

「どうしますか?マスター…」

 

「エルが本契約を結んだら、体に負担が来る。ルナ…エルの監視を続けて。本契約をさせないでね。私も様子を見るけど…」

 

「畏まりました。」

 

ニーナとルナが姿を消した。



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60

「嫌だ…逝かないで……」

 

 

エルは最近、就寝中に魘されるようになった。記憶喪失の影響なのかはわからず、原因不明だ。

 

「……まただ…あの夢は何?」

 

冷や汗をかいているエルは、居間から出て境内に出る。

 

(……頭が痛い。何か思い出しそうなのに…)

 

喉が乾いたエルは、台所に向かいコップに水を入れて一気に飲み干す。

 

「…………疲れた。」

 

疲労した体を無理矢理動かして、布団に倒れこんだ。暫くすると、疲れが消えて楽になった。

 

(早く寝ないと…)

 

寝ようと思って、目を閉じるが眠気が来ない。完全に眠れなくなってしまったようだ。

 

「どうしよう…眠れなくなっちゃった…」

 

エルはダメ元で、使い魔のレイを召喚する。

 

「マスター!やっと喚んでくれました!」

 

「夜遅くにごめんね。」

 

「大丈夫ですよ!」

 

レイは嬉しそうに、エルを抱き締めている。そのレイの表情に癒されているエルは、頭を撫でているのたが…

 

(マスターの体が震えてる。)

 

「マスター…」

 

「どうしたの…レイ…」

 

「怖い夢でも…見たんですか?」

 

レイの言葉に、エルの震えが止まらなくなる。

 

「そんな…」

 

「マスター…私は、マスターから…離れません。マスターが…大好きです…」

 

レイのその言葉に、我慢して耐えていたが、耐えきれなくなり涙を流す。

 

「レイ…暫く…一緒にいてよ。」

 

「わかり…「レイ…抜け駆け…禁止…」レイン、邪魔しないでくださいよ!」

 

エルの背中に張り付いているレインは、機嫌が悪い。

 

「エル…私には…甘えない…」

 

「そんなことないよ…」

 

「………私も……一緒……やっぱり…エルは…ワタサナイ…」

 

レインの黒い笑みに、レイは恐怖で体を震わせる。エルは平気のようだ。

 

「レイ、レイン…ありがとう。」

 

「マスター!」

 

エルはレイとレインの頭を撫でる。

 

「マスター…」

 

「エル…大事な…」

 

「どうしたの…レイン?」

 

 

 

「それは……エル…震え…治った…」

 

エルの震えがなくなり安心すると、エルが欠伸をしている。眠くなってきたようだ。

 

「眠い…レイ、レイン…おやすみ…」

 

エルは眠ってしまった。

 

「今回は…」

 

「休戦…」

 

レイとレインは、エルを挟んで眠った。

 

すると、ニーナが天井から顔を出して、レイとレインの様子を見て嫉妬していた。

 

「いいな……早くエルの記憶を直したいけど、準備に時間が掛かるし、記憶の欠片なんて簡単に集まるものじゃない。どうにかしないと…」

 

ニーナは少し焦り始めていた。でも、どうすることも出来ないゆえ、嫉妬してしまっていたのだ。

 

「時間はまだある。ゆっくりやろう。」

 

ニーナは姿を消した。



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61

エルは妖怪の山付近で、椛と弁当を食べていた。

 

「エル君、お肉食べないと…」

 

「体質で食べられないからね。椛姉ちゃん。」

 

「完全に忘れてましたよ。てか、エル君が記憶喪失になってるの知りませんでした。」

 

椛は妖怪の噂で聞くまでは、エルが記憶喪失になっているのを知らなかったようだ。

 

「半年も会ってないから仕方ないよね。僕も椛姉ちゃんと知り合いなの知らなかったから。」

 

「それは悲しいですよ。」

 

エルは椛の頭を撫でると、犬のように甘えてくる。

 

「気持ちいいです…」

 

「椛姉ちゃん、今日は仕事ないの?」

 

「非番です…わふん。」

 

「犬みたいだね。」

 

「今日は犬で良いですよ。もっと撫でてください。」

 

椛はエルを抱き締めると、そのまま寝てしまった。エルは苦笑しながらも、されるがままだ。

 

(椛姉ちゃん、仕事疲れたんだね。)

 

頭を撫でながら眠った。2時間くらいで、椛が目を覚ますと、エルを抱き締めたまま寝てたことに気づいた。

 

「…………!?」

 

離れようとするが、エルに掴まれてるので、離せない。

 

(ど、どうすれば…)

 

「………椛姉ちゃん…おはよう。」

 

漸くエルが目を覚ましたようで、椛から離れた。

 

「え、エル君。苦しくなかったですか!?」

 

「どうして?」

 

「えーと…」

 

「椛姉ちゃん…可愛いね。」

 

エルの言葉に、椛は顔を赤くしている。

 

(あれ?僕…変なこといったかな?)

 

「……そ、そんなことよりも、どうしてエル君……体が縮んでるんですか?」

 

「それは……あれ、そうだ。紫さんが僕に負担を与えないようにする処置かな。」

 

「そうですか。」

 

「椛姉ちゃん…顔赤いけど大丈夫?」

 

「え?」

 

エルが椛に近づいて、おでこ同士をくっつけた。

 

(エル君!?近いですよ!?)

 

「少しおでこが熱いね。風邪かな?」

 

「だ、大丈夫です。風邪は引いていないので…」

 

椛が風邪を引いていないとわかると、安心した表情になる。

 

「体調には気を付けてね。椛姉ちゃん。」

 

「ありがとう。エル君…さて、人里まで送ります。」

 

「1人で行けるよ?」

 

「妖怪に襲われたら、洒落になりませんから。」

 

「それじゃあ…お願い。」

 

エルと一緒にいられるので、椛は嬉しそうだ。

 

「餡蜜か団子どっちにする?」

 

「選べませんね。」

 

「両方頼んじゃう。どうする?」

 

餡蜜と団子両方を食べようか椛に聞いてみると、暫く考えて、両方選ぶようだ。

 

「人里に着いたら、買って帰りましょう。」

 

「そうだね。椛姉ちゃん!」

 

「開いていたら良いですね。」

 

「そうだね。」

 

人里に到着すると、エルと椛は団子と餡蜜を買って、帰ったそうだ。



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62

博麗神社の寝室で寝ているエルは、とある不可思議な夢を見ていた。

 

 

 

 

 

夢の世界

 

 

 

「この場所は夢の中?」

 

「漸く会えたな。」

 

エルが声のする方に振り向くと、記憶喪失前のエルが姿を現した。

 

 

「君は…僕なの?」

 

「その通りだ。俺が記憶喪失になった直後に現れたのが、お前だ。俺はお前の全てを知っている。」

 

「何が望みなの?」

 

「何も要らない。お前の望みを俺が叶えてやる。出来る限りの事は…」

 

「だったら……君に全てを返すよ。借りていた物を君に…」

 

「俺が霊夢に、復讐する企みがあるのを知ってるよな?その上で俺に返すと言ってるのか?」

 

エル(小)は、目の前にいるエルに、記憶を取り戻せと言っている。

 

「そうだよ。取り戻したくないの?本当は…仲直りがしたいくせにね。」

 

「うるさい!黙れ!?俺は…霊夢のせいで…」

 

「霊夢姉は後悔してる。それに、僕は既に許したよ。」

 

「何で……」

 

「君も知ってると思うけど、僕は自殺未遂をやらかした。その時にね…」

 

「霊夢が止めたのか………わかった。もう意地を張らねえよ。お前が許したのに、俺が意地を張っても意味がないな。だが、許すかどうかは別だ!」

 

「それは君の自由だよ。」

 

「……お前はどうするんだ?」

 

「………帰るだけだよ。決別して、後悔してしまった…あの頃に…僕の記憶も君にあげるね。」

 

エル(小)は小さな黄金の欠片を渡した。

 

「これは借りていた分と僕の記憶が宿ってる。大切にしてね。」

 

「ああ。もう後悔しない。ゆっくりだが、話してみるよ。」

 

「……じゃあね。」

 

エル(小)は姿を消して、エルの中に戻った。

 

「…………どんだけの記憶を俺に渡してるんだよ。」

 

エルの頭の中に、全ての記憶が流れ込んできた。

 

「……………何で…俺のことを…忘れてくれないんだよ……」

 

エルが目を覚ますと、夢の世界から姿を消した、

 

 

 

「……ここは…神社の一室…」

 

記憶を取り戻したエルは、暫く記憶の整理をする。

 

(…………そういうことか。ニーナも生きて……早苗も…幻想郷に…!?何があったんだ!)

 

記憶の整理が終えたエルは、霊夢が起きないように境内に出る。

 

「能力は……契約符【召喚・八雲紫】」

 

エルの目の前に、紫が召喚された。

 

「エル、どうし…その力は…」

 

「久し振りです。紫さん…」

 

「記憶が戻ったのね?お願い…があるのよ。」

 

「復讐ならしませんよ。もう、意味の無いことなので…」

 

エルの言葉に、紫が目を見開いている。

 

「本当?復讐はしないのよね!?」

 

「御心配をお掛けしました。ですが、あれは…まだ、続けます。」

 

「復讐しないなら、何でも良いわ!貴方の体を元に戻すわね。」

 

紫がエルの中にある仕掛けを解除すると、元に戻った。

 

「紫さん…俺の関係者を…」

 

エルは疲れたようで、眠った。

 

(任せなさい。今日は忙しくなるわね!)

 

紫は姿を消した。



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63

エルの記憶が戻って1週間。森の中にある小屋に戻ってきた。

 

「久し振りに戻ってこれたな。」

 

小屋に入って、中の掃除をするエルは、持っている小刀を取り出して、腕に少し刺と、血を小瓶に入れる。

 

(………俺は確かに、霊夢に復讐はしない。それだけは守ってやるよ。幻想郷に手を出すつもりもない。)

 

5つの小瓶に入れると、蓋をして、木箱に入れる。

 

(後は…これを仕掛ければ…だが、材料が足りないな。買い出しに行くかな?)

 

エルは小屋から出て、木箱を地中に埋めて隠す。

 

(これは…幻想郷に必要なことだ。掟にも違反していない。)

 

森から出て、人里に買い出しに向かった。

 

 

 

 

 

マヨイガ

 

エルの謎の行動を監視している紫は、暫く考えるが、異常はなかったので、監視を一旦中断した。

 

(小瓶に血を入れてたけど…吸血鬼にあげるのかしら?それだけならば、問題にはならない。)

 

「エルは何を企んでいるのかしら?幻想郷に影響を与えなければいいけど……」

 

 

 

 

 

人里に到着したエルは、紙を売っている店に向かうことに。

 

「エル君久し振りやな。今日はどうしたんや?」

 

「買いに来たんですよ。少し大きめな紙を5枚。御守りとかで使えるやつ。」

 

「珍しいな。まあ…ええやろ。ちょっと待ってな!」

 

店主が奥の方に行くと、暫くして、戻ってきた。

 

「この紙でええやろ?御守りや、魔除けの札にも使えるで…」

 

「ありがとうございます。金額は…これで足りますか?」

 

「……丁度や。また来てな!」

 

「いずれ……」

 

購入した物を異空間に収納して、鈴奈庵に向かう。何かを調べるようだ。

 

 

「エルさん。久し振りです!何をお探しですか?」

 

「久し振りに、調べ事だよ。神降ろし系の本はあるかな?」

 

「ありますよ!ですが…」

 

「待ってろ。」

 

異空間から1冊のノートを小鈴に渡した。

 

「妖怪が書いた日記だ。これが、欲しいんだろ?」

 

「ありがとうございます!この3冊になります。」

 

本に触れて、調べ始める。

 

(この本だな。妖気は……よし。)

 

「どうしましたか?」

 

「……何でもない。買うことはできるか?」

 

「大丈夫ですよ。販売もしてますから。」

 

「この本を買わせて貰うよ。」

 

「毎度あり!また来てくださいね!」

 

本を購入すると、隠れ家に向かった。

 

 

 

紅魔館で働いているロードは、窓拭きをしながら考え事をしている。

 

(本体の記憶が戻ったのはよかったが、あれから会いに来てないな。博麗の巫女に会いたくないのは、理解できるんだが…フラン、レイン、レイの3人にも会いに来ない。嫌な予感がする。外れてくれればいいが……)

 

ロードは窓拭きを終えて、部屋に戻るのだった。



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64

深夜の幻想郷の森で、エルは何やら作業をしていた。紙や血の入った小瓶を準備している。

 

(これが、成功したら…幻想郷の維持を強化できる。俺の計画を短縮できる。)

 

人里から買ってきた紙を人の形を作り、折り目をつけて、折っていく。

 

「結構大変だ。幻想郷の結界は、綻びが少しでもできると、脆いからな。大量に作らないとな。」

 

紙を切り、量を増やしていく。

 

3時間程して、5体の等身大の人形が完成すると、エルはその人形に血を染み込ませると、血を吸収した。

 

(後は…力を与えないとな。)

 

エルは5体の人形に霊力、魔力、妖力を送り続ける。この作業を毎日繰り返すようだ。

 

 

 

 

その頃、博麗神社の縁側で、お酒を飲んでいる霊夢は、落ち込んでいた。

 

(あれから、エルに会えてないのよね。何処にいるんだろ…)

 

お酒を飲み終える。すると、ニーナが姿を現した。何やら様子がおかしい。

 

「私に復讐に来たの?」

 

「違う!それはもういい。霊夢が後悔しているの知ったから…」

 

「何のようなの?」

 

「エルを探すのを手伝ってほしい。あれから、姿を見せなくて…誰にも会ってないらしいの。」

 

「なんですって!?」

 

「お願い…エルを探して!」

 

霊夢はニーナの頼みを聞き入れて、一緒にエルを探しに向かった。

 

「ニーナは何か知らないの?」

 

「エルからは、何も言われてない。」

 

ニーナは悲しそうな表情をしている。見ていられなくなった霊夢は、抱き締めた。

 

「霊夢!?」

 

「エルを見つけたら、ぶっ飛ばさないとね?ニーナを泣かせるんだから……」

 

「程々にしてね?」

 

霊夢は笑みを浮かべて頷いた。

 

翌朝、エルは人形のに力と血を送り続ける。すると、人形が動き出した。エルを見る動作をしている。

 

「完成したか。血と力を使いすぎたな。でも、急がないとな。命令を出す…俺の記憶と力の半分を渡す。各自の判断で、幻想郷を観測しろ。結界の綻びを発見したら、修復しろ。後、霊夢には絶対に見つかるな!今から渡すぞ。」

 

エルの体から力の玉が抜け出して、それが5等分されて、人形の中に入った。

 

「各自、行動を開始しろ!」

 

5体の人形が一斉に散らばった。

 

(………さて、今使える力は……霊力、魔力、妖力が少しか…弾幕は撃てるか。治癒能力。契約した力は…消えてやがる。無理しすぎたな。分身を取り込めば、力は戻るが…やりたくないな。)

 

 

エルは重い足を無理矢理動かして、隠れ家に向かい体を休める。

 

(今は体を休めないとな。負担がヤバイ……霊夢とかに知られたら…秘密がばれる。)

 

隠れ家に到着すると、布団に入り、眠るのだった。



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65

隠れ家で寝ていたエルは、目を覚ますと体の調子を確認する。昨日とは違い、調子が良さそうだ。

 

(体の調子は良いけど…僕は何やってたんだっけ?)

 

エルは再び、記憶を失っている。前回のとは違い、自らの意思での記憶喪失である。その目的を知る者は、誰もいない。その影響か、身長も縮んでいる。

 

(…うーん。何を忘れてたんだろ?)

 

隠れ家から出ると、霊力、魔力、妖力の玉を出して、力を確認する。

 

(ちゃんと、力は発動できるね。霊夢姉……あれ?何か違和感が…うーん…)

 

エルは背伸びをした後、荷物の確認をして、隠れ家を出ていった。それを見ていた藍は、直ぐに報告に急ぐ。

 

(何故だ!?エルがまた、記憶を失っている。今度は自らの意思で…)

 

 

 

マヨイガに戻ってきた藍は、紫に一部始終報告する。

 

「………エルが再び記憶を?」

 

「見るからに、自分の意思での行動です。」

 

紫が隙間を開いて、エルの周囲を確認する。別の隙間も開いて、幻想郷内を調べると、何かに気づいた紫は隙間を閉じた。

 

「良いわ。自由にやらせなさい。問題が解決したから。」

 

「え、ですが…紫様のプランが…」

 

「エルの行動は職務放棄に当たるけど、代案を用意したようね。私にプラスに働いたわ。藍、エルの監視は終わりよ。通常業務に戻りなさい。」

 

「よろしいのですか?」

 

「良いわ。エルの状態だけでも説明するわ。」

 

紫の説明だと、エルの能力…【契約する程度の能力】で、得た全ての能力が消滅しているが、霊力、魔力、妖力の3つの力は使うことが出来るらしい。

 

記憶の方だが、能力は消えているが、エルの知り合った人物との記憶は失っていないが、過去の記憶が消えていて、エルが10歳まで戻っている。

 

「種族は、エルの種族は?」

 

「特殊だけど…半人半妖になったわ。能力は消えても、複数の存在と仮契約してたから、力だけが定着したみたいね。もう、戻ることはないわね。エルの分身であるロードも、消えることない。」

 

「あの幻想郷を観測している5体の人形は?」

 

「エルが代わりに用意した観測者よ。エルの血、3つの力、記憶を受け継いだ存在ね。彼等は幻想郷の掟を破ることはないわ。私達の味方ね。」

 

「……あの存在に…過去の記憶…は?」

 

「エル本人が持ってるわね。あの悲しみの過去を与えるわけがないわ。エルの性格からして…妖怪堂の方はロードにやらせなさい。霊夢にはエルの監視を命じなさい………良いわね。」

 

「……………畏まりました。」

 

藍は紫から離れると、エルの元に向かう。

 

「藍さん!お久し振りです!」

 

「……今日は霊夢に会いに行くぞ。」

 

「………わ、わかりました。」

 

藍とエルは博麗神社に向かった。

 

 

 

 

博麗神社に到着すると、霊夢とニーナの2人が出迎えた。

 

「エル!?藍、どういうこと!?」

 

「説明するから待て!ルーミア、近くにいるんだろ?エルと一緒にいろ。レイとレイン、殺気を放ってないで出てこい!」

 

 

草村から、ルーミア、レイ、レインの3人が顔を出した。

 

「バレたのかー」

 

「マスターが!?」

 

「エル……」

 

「エルと一緒にいてやってくれ。レイとレインは記憶共有されてるだろ?」

 

「知ってますよ。」

 

「わかった……」

 

「任せろなのだー」

 

 

 

藍は霊夢とニーナにエルの状態を説明する。

 

「記憶喪失…」

 

「そんな…」

 

「だが、今回のは特殊だ。今、エルには知り合った存在の記憶は失っていないが、過去の記憶だけが失った状態だ。」

 

一部嘘を混ぜて、説明を続けるが、ニーナの視線は藍に向けられていない。

 

(ニーナは気づいたか……)

 

「霊夢にはエルの保護を頼みたい。」

 

「………私なんかでいいの?」

 

霊夢の表情が暗い。自分を責めているんだろ。だが、渋々藍の頼みを聞き入れた。

 

「頼む。暫くは、ニーナも一緒にいてくれ。」

 

「私もですか?構いませんが…」

 

「また、後で…」

 

藍は姿を消した。



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66

再び記憶を失ってしまったエルだが、博麗神社に預けられることになると、レイ、レイン、ニーナに泣き出されて、泣き止むまで抱き締められた。

 

 

 

エルは毎日の日課である境内の掃除をする。だが、余り落ち葉とかは落ちていないため、気分転換程度に掃除している。

 

 

「エル!霊夢さんが呼んでましたよ!」

 

「レイ。片付けたら直ぐに行くから。」

 

「わかりました!」

 

竹箒を倉庫に入れて、南京錠で鍵を閉める。

 

「さて、霊夢姉ちゃんに呼ばれてたね。」

 

井戸で水を汲み上げ、手を洗うと霊夢のところに向かった。

 

 

 

縁側に霊夢がいたので、声をかけて呼ぶ。

 

「霊夢姉ちゃん。呼ばれたから来たよ。」

 

「エル。今日は宴会をするから料理の準備をお願いできる?バタバタしてて、宴会をする暇がなかったのよ。」

 

「良いよ。何作れば良いかな?」

 

「お酒に合う料理を沢山できたらそれで良いわ。」

 

「なら、直ぐに買い出しに行かないとね。」

 

エルは鞄を用意して、お金(お昼代込み)を霊夢から貰う。

 

「お昼は外で、食べなさいな。私は用事があるから。」

 

「宴会は誰呼ぶの?」

 

「そうね。適当で良いわ。どうせ集まるし。」

 

忘れ物がないかどうか確認すると、買い物に出掛けた。

 

 

(酒に合う料理なら魚だよね。)

 

 

人里に到着すると、魚屋に向かうことにした。

 

「エルじゃないか。どうしたんだ?」

 

「魚を買いに来たんだ。」

 

「霊夢のお使いかな?宴会用の料理か。刺身なら酒に良く合うだろうな。ハマチとカツオでどうだ?」

 

「それ買うよ。これで足りるかな?」

 

魚屋の店主にお金を払う。

 

「確かに。そうだ…紫さんからこの札を渡すように言われたな。」

 

「………紫さんの能力が宿った札…」

 

今のエルは、能力が使えない状態になっている。正しくは、今まで契約していた力が消えたため、能力が使えないのだ。この札はエルを手助けするために、用意したものである。

 

 

「魚を隙間に入れて…さて、どうしようかな?」

 

悩みながら人里内を歩き回っている。

 

「買い物は後でもできるから、お昼を食べに行こっと。」

 

 

エルが買い物をしている頃、霊夢は神社の掃除を終えて、お札を作っていた。

 

 

「これで、完成。やることないわね。」

 

霊夢はエルが帰るまで、仮眠を取るのだった。

 

 

 

帰ってきたエルは、霊夢が寝ているのに気づいた。

 

「レイとレイン。暫く、料理お願いできる?」

 

「エル!お任せください」

 

「マスター……任せて…」

 

レイ、レインは台所に向かった。

 

「霊夢姉ちゃん、風邪引くよ。」

 

布団を取り出すと、霊夢を移動させて寝かせた。

 

「料理してこよ。」

 

エルは台所に向かった。

 

 

 

 

 

 

博麗神社から少し離れた場所に、まだ開拓されていない土地がある。その場所に5体の者達が情報交換をしている。

 

その者達は、数分間留まった後、姿を消した。



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67

その日の夜、博麗神社では宴会が開かれていた。人間、妖怪、妖精が楽しそうに宴会に参加している。

 

 

「レイとレイン。次の料理が出来たよ!」

 

「わかりました!レイン、運びに行くよ!」

 

「待って…」

 

 

エルは料理を一旦やめて、縁側で休憩する。

 

「疲れた。」

 

「お疲れ様。エル…」

 

「ニーナ、来てたんだ?」

 

ニーナはお酒の入ったがコップを差し出した。

 

「やっぱり、お酒はきついね。美味しいけど…」

 

「エルは楽しい?」

 

「うーん。楽しいかな?何か物足りないけど…」

 

エルの言葉に、表情が暗くなるニーナは、直ぐに表情を戻しお酒を飲む。

 

「エルも参加してきなよ。ルーミアが機嫌悪いよ。フランもだけど…」

 

「わかった。行ってくるね。」

 

エルが境内に行くと、ニーナはお酒を飲み干して、満月を見つめる。

 

「私も毒されたかな?霊夢に復讐するつもりだったのにな。」

 

「やっぱり、貴女があの時の妖怪ね。」

 

ニーナの隣に、隙間が現れて、紫が姿を現した。

 

「やっと現れたか。スキマ妖怪、八雲紫!」

 

「そんなに怒らないでね。」

 

紫の話し方に、ニーナは怒り出した。

 

「元はと言えば…アンタが!」

 

「あの時はごめんなさいね。先代の巫女があの様な行動をするとは、思わなくてね?」

 

「……あの巫女は、先代巫女とは違うみたいだからまだ…ましだわ。じゃなかったら、直ぐにでも復讐するつもりだった。」

 

紫はニーナの話を黙って聞き入れ、お酒を飲んでいる。

 

「私も貴女が復讐しなくて安心だわ。エルの友達を殺さなければ、ならなかったからし。」

 

「私は貴女が気に入らない。幻想郷のためだけに、エルを閉じ込めてるんだから。」

 

「そうしなかったら、エルは貴女と会えなかったわよ?私がエルを幻想郷に連れて来なければ、貴女はエルを救えなかった。それを巫女に言わなかっただけ、感謝してほしいわね?」

 

紫の言葉に、ニーナは言葉がつまる。何も言えなくなってしまった。

 

「貴女の能力は、【血を飲ませた生物を強くする】程度の能力。その血は強力で、生命力、肉体を強力に出来る。エルの能力は生まれつきで、外の世界で暮らさせるには、残酷すぎるわ。そのまま、外の世界で暮らしていたらエルは死んでいたわよ。」

 

「紫は何のために、エルを守ってるの?優先順位は巫女じゃなかったの?」

 

ニーナの疑問に紫は、笑みを浮かべながらいった。

 

「私の優先順位は幻想郷よ。只それだけの話だわ。」

 

 

「だったらなんで……紫はエルの能力が目当てだったの?」

 

ニーナは紫の目的に気づいたのか。睨み付けたまま一言いった。

 

「エルを手駒に出来ると思わないでね?足を掬われるわよ。」

 

「私は幻想郷のためなら、何だってするわよ。」

 

ニーナは境内にいった。

 

「……さて、計画を進めようかしらね。」

 

紫は姿を消した。



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68

紅魔館の厨房では、エルが大量の料理を作って、使い魔のレイと、式神のレインが料理を運んでいる。何故このような状況になったのか?

 

「エル。そろそろ、交代しなくといいの?」

 

「今の料理が完成したら…」

 

「頼んだ私も悪かったわね。」

 

「レインが仕出かした責任は、主の僕がやらないと。」

 

レインが大量に食べたのが、原因で他の妖精メイドと、なんとメイド長の咲夜が倒れてしまったのが原因である。

 

「料理作りで倒れたのは情けなかったわ…」

 

「咲姉は悪くないよ?今は休まないと。」

 

休もうとしない咲夜に、ロードが隣に現れて抱き抱えた。

 

「ロード!?」

 

「今は休め?今だけは、メイド長のプライドを捨てろよ。」

 

言う無を言わさずに咲夜を見ると、諦めた表情をして厨房から離れる。エルは安心して料理を続ける。

 

料理を作り続けて1時間後。落ち着いてきて漸く休憩に入ることに。

 

「結局、休まなかったわね?」

 

「半妖だから疲れてないよ。」

 

「無茶するのは、歓迎しないわね?」

 

「咲姉に言われたくないよ?」

 

エルの意味ありげの発言に、何も言えなくなってしまった咲夜。それを見て苦笑しているロードがいた。

 

「マスター……何か……食べたい……」

 

レインがエルの手を握り締めて見つめてくる。笑みを浮かべたエルは、厨房で簡単な料理を作ると、運んできた。

 

「今はおにぎりで勘弁してね。夜はちゃんと作るから。」

 

「ありがとう……」

 

「マスター!私にも作って下さい!」

 

「30個あるから仲良く食べなよ。」

 

エルは後片付けをした後で、厨房を離れると急に、疲労が出てきて倒れかけてしまった。

 

(ヤバイな…結構、力消費してたよ。)

 

料理中に倒れないように、エルは妖力での肉体強化で誤魔化していたようだ。勿論だが、人間の咲夜とロードにはバレていない。だが…

 

 

「マスター…無茶…ダメ…」

 

「マスター!ちゃんと休んでください!」

 

レイとレインにはバレているのだ。それを知りつつも、無理をしていたエル。

 

「怒ってるよね?」

 

「当然です!休んでください!」

 

「………………」

 

レインは主であるエルに、殺気を出す始末。

 

「ごめんね。2人共…」

 

「休も……」

 

「一緒に寝ますよ?」

 

「レイは寝相が悪からね……」

 

「そう……レイ……寝相……悪い……」

 

「いじめないで下さい!?」

 

部屋に戻っていった。

 

 

 

 

その日の夜。結局エルは夕飯を作っていた。復活した咲夜は時を止めて準備しようとするが、ロードに止められた。時止めは、体の負担になるからである。

 

皆で食べ終えると、エルは疲れたようで、ソファーに倒れて寝てしまった。

 

「エルも無理してるわね。」

 

「何も起きなかったら良いけどな……」

 

咲夜とロードは厨房の後片付けをしていると、レインが入ってきた。なにやら慌てているようだ。

 

「マスター……大変……」

 

ロードに後片付けを押し付けて、咲夜はエルの部屋に急いでいった。



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69

エルが紅魔館の客室のベットで寝込んでいるため、永遠亭から八意永琳を呼んで診てもらう。

 

「どうかしら?」

 

「………過労かしら。今までの疲労が、今になって出たようね。」

 

 

永琳はエルの症状が過労だと判明するが、咲夜はその診断に目を見開いている。

 

「過労?あのエルが…!?」

 

「このケースは初めてよ。この子は人間なの?」

 

「……半妖よ。半年前になったばかり。元々は人間で…能力の影響で…なったと、ロードから聞いてるわ。」

 

レミリアは半妖になった原因をロードから聞いているため、思い出しながら永琳に説明する。

 

「ロード?」

 

「寝込んでいるエルの分身体よ。」

 

レミリアの説明と同時に、ロードが入って来た。隣にはレイとレインの2人が一緒にいる。

 

「薬を出しておくわ。熱が出たら飲ませてね。」

 

「薬代だ。」

 

ロードはお金を永琳に手渡した。そのお金を受け取ると、追加で痛み止の薬を渡した。

 

「渡されたお金が少し、多かったから追加で薬出しておくわ。妖怪用と人間用の痛み止の薬を出しておくわね。異常が出たり、薬が効かなかったら、呼びなさい。」

 

「感謝する。」

 

永琳は永遠亭に帰っていくと、レインがエルの看病をするようで、部屋に残った。

 

「過労……結局、休んでねえじゃないか…本体は…」

 

「どうしたのよ。ロード?」

 

「倒れた原因が過労だろ?あの頃から本体は、休んだ記憶は余り無いんだよ。俺の中で…」

 

ロードは分身体であるため、エルが半妖になる以前の記憶を持っている。正確には、それまでの記憶しか持ってないわけだが。

 

「……エルの過去を教えてくれない?」

 

「………霊夢と魔理沙には、絶対に教えるな!それが教える条件だ。何処から聞きたい?」

 

「………エルが姿を消したと言われるあの頃。」

 

「わかった………それを説明するのは、レイの能力が必要になる。レイ、本体いや…エルの過去をレミリアに教えるから協力してくれ。」

 

「…………教えるのは、レミリアさんだけですか?私の能力で、マスターの過去に行けるのは、1人…最高で2人までです。」

 

「………エルの過去を知ってるのは?」

 

「八雲家、萃香、人里にいる慧音先生、妹紅だな。他にもいるが、エルが姿を消した原因を知っているのは、このメンバーだ。」

 

ロードの発言に、動揺はしているが落ち着いて、話を聞いている。

 

「聞いたのは私だけど…どうして、教えてくれるの?」

 

「そろそろ、協力者を増やすためだ。レミリアはエルの元契約者。教えても問題無い。エルからの信頼を受けている。だから、教えるんだ。」

 

レイの準備ができたようで、1枚のスペルカードを取り出した。

 

 

「スペルカード?」

 

「レミリアさんは知ってると思いますが、私の能力は【痕跡を辿る程度の能力】で、マスターの分身体であるロードを媒体にして、マスターの過去に向かいます。一度しか使えないスペルカードなので…レミリアさんの覚悟はいいですか?」

 

「何時でもいいわよ。」

 

レイがスペルカードを掲げると、ロードが霊力をレイに流した。

 

「レイの力だけだと、足りないだろ?俺の霊力を使え…」

 

「ありがとうございます。それでは…スペルカード発動!【記憶・過去の道標】」

 

 

スペルカードを宣言後、レミリア、レイ、ロードがその場から姿を消した。

 



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過去編
70


主人公、エルの過去編です。

キャラ、物語設定が少しズレがあるかもしれませんが、それでも、宜しければ…お読みください。


霊夢、魔理沙は同い年

エルは1つ下設定です。


現代の家にいた少年…エルは、突如幻想郷の森に迷い混んでしまったようだ。今の現状を把握できていないエルは、途方にくれていた。

 

「何処なの?」

 

森を迷いつつも、前に移動するエルの前に、人食い妖怪ルーミアが姿を現した。この当時のルーミアは、力を封印されておらず、全盛期の状態である。

 

「お前は人間か?」

 

「……お姉さんは……人間なの?」

 

その質問にルーミアは目を鋭くさせて、エルの質問に答えると、持っていた鞄の中から、お菓子やジュースを出して、ルーミアに差し出した。

 

「……全部…あげるから……食べないで……」

 

ルーミアはエルから差し出されたお菓子を食べると、気分がよくなり空腹を凌ぐと、そのお礼に人里まで連れていくことにしたようだ。

 

「今回は食べ物を貰ったから、見逃してやる。だが、次はそうはいかないからな!」

 

「ありがとう。お姉さん…」

 

人里に到着すると、ルーミアは姿を消す際に、エルから会えるかどうかを聞かれた。その答えとして、「いつかまた」と言って、エルの前から姿を消した。

 

 

エルが人里に来て数日後。人里に住んでいる少女、霧雨魔理沙と友達になり、よく人里の広場で遊んでいたのだが、魔法使いになりたいと言っていた。

 

「人里でその話はダメじゃなかった?」

 

「だって…自由になりたいし、家に魔導書があって読んでみたら…」

 

「わかった。でも、人里ではやらないでよ?」

 

「わかってるよ。」

 

魔理沙とは、その日の夕方に別れると、人里を出て迷いの竹林にいる藤原妹紅に会いに来た。修行をしてもらうためである。

 

「今日も来たのか?」

 

「お願いします。」

 

「手加減はしないぞ!」

 

妹紅の体が燃え始める。距離を取りながら、警戒を解かないエルに、火の玉を投げてきた。

 

「妹紅さんの魔法じゃないの?」

 

「これは、妖術だよ。」

 

「……僕はやっと、霊力が使えたところなのに!」

 

エルが霊力を圧縮させた弾を妹紅に発砲すると、火の玉を相殺させる。

 

「弟子もいないのに、凄いじゃないか!」

 

「まだまだ!」

 

「いや…これで終わりだよ。」

 

火を纏った不死鳥が出現すると、エルに襲い掛かった。予想外の火力にエルが真っ青になる。

 

「妹紅さんの鬼!?」

 

燃やされる寸前に、不死鳥が消滅するが、エルは完全に気を失ってしまった。

 

「気絶しちゃったか。慧音の家まで送るか。」

 

妹紅は中に浮いて、迷いの竹林を飛んで進むと、慧音の姿が見えたので、声をかける。気づいたようで手を振っている。

 

「妹紅…エルが傷だらけになっているんだが?」

 

「修行をしてたんだからな。手加減はしない方がいいだろ?」

 

「不死鳥は使ってないだろうな?」

 

「………………使いました。」

 

慧音は妹紅の頭を掴むと、頭突きを咬ましたのだった。

 

 

 

妹紅との修行をして翌日。エルは慧音に歴史を教えてもらいながら、午前中を過ごした。

 

「エルは幻想郷でやっていけそうか?」

 

「まだ、数日だよ?不便はあるけど…楽しいから…」

 

悲しそうな笑みを浮かべるエルに、慧音は昼の準備をするため、授業を終える。

 

「エルはどうする?森に行くのか?」

 

「うーん……」

 

「外の世界では友達は?」

 

「……友達…いないよ…家で、犬と一緒にいたし…」

 

昼食用のおにぎりを包んで鞄に入れると、出掛ける準備が完了する。

 

「…………気をつけて。」

 

「夕方までには戻るから。」

 

慧音の家を出ると、人里の外れに向かい、無人となっている門から出る。エルは3、4日のペースで人里を出ている。

 

「妖怪来たら、追っ払うか。」

 

野草採りが日課であるため、妖怪に襲われないように、妹紅と修行をしているのだ。

 

「………血の匂い。近くに妖怪がいるのかな。少なくとも、人間の匂いじゃないし…」

 

人間じゃない血の匂いを感じ取り、辺りを警戒するエルは、小刀を持ってゆったりと前を進むと、足を怪我している黒猫を発見した。

 

「黒猫…違う…猫又だ。」

 

小刀を鞄にしまうと、水の入った竹筒を用意して、応急処置をする。黒い猫又はエルに警戒してか、指を噛む。

 

「痛……応急処置が出来ないよ?」

 

痛みに耐えながら、足を水で洗い簡単ではあるが、綺麗な布切れで、足を結び固定する。

 

「これで大丈夫かな。妖怪は人里に入れないし…困ったな…」

 

猫又はエルの指から血が出ているのに気づいて、指を舐めている。

 

「くすぐったいよ。またね!」

 

エルは猫又から離れて、人里に帰っていった。

 



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71

翌日。人里で荷物運びの仕事をしているエル。慧音の家に泊めてもらってはいるが、週3日は人里内で仕事をしている。

 

「今日はありがとう。少ないけど、あげるよ。」

 

「ありがとうございます!」

 

「また、頼むね。」

 

人里の住人はエルが、外来人であることを気づいてはいるが、簡単な仕事を依頼して、手助けしている。

 

「そろそろ、昼になるよ。何処に行こうかな?」

 

「エル!一緒にお昼食べよ!」

 

魔理沙はエルに声をかけると、走って近づいてきた。どうやらお昼を一緒に食べたくて、誘っている様子。

 

「良いよ。僕もお昼まだだったから。」

 

「だったらうどん食べよ!」

 

「それにしよう!」

 

魔理沙とエルは近くのうどん屋に向かっている最中に、何かの匂いを感じ取った。少なくとも、昨日助けた黒い猫又ではない。

 

(これは…妖怪…でも、ちょっと違う。)

 

「エル?どうかしたの?」

 

「何でもない。早くいこう!」

 

お昼を食べ終わると、魔理沙から行きたい場所があると言われた。暇だったので、一緒に行くことにした。

 

 

 

到着したようだ。石階段を登り終えると古びた神社に到着した。博麗神社である。

 

「霊夢!遊びに来たよ!」

 

「魔理沙…隣の男の子…誰?」

 

「僕はエルだよ!魔理沙の友達だよね?名前を教えてくれない?」

 

「私は博麗霊夢。今はお母さんがいないから、お茶しか出せないけど…飲む?」

 

魔理沙とエルは、霊夢からお茶を淹れてもらい、飲みながら縁側の方で暇を潰す。

 

「魔理沙は明日来るの?」

 

「私は明日からの半年間は遠出するの。帰るのは…来年かな。師匠に魔法を教えてもらうの!」

 

「…………なるのは…人間の魔法使いよね。」

 

「妖怪に魔法使い…いるの?」

 

魔理沙の発言に、安心している霊夢は、エルを見ている。視線に気づいたエルだが、何かの遊びかなと思っている。

 

「そろそろ帰らないと。」

 

「霊夢。明日も来てもいいかな?」

 

「………お茶しか出せないわよ?」

 

「遊びに行くね!」

 

「待ってる。」

 

魔理沙とエルは人里に戻るが、その場で立ち止まった。

 

「魔理沙?」

 

「エル、また半年後ね!」

 

人里に入らずに、行ってしまった魔理沙。エルは嫌な予感を感じて、魔理沙を追い掛ける。

 

「魔理沙!?家に帰らないの?」

 

「私はいったよ?魔法使いになる。家を出ていくの…」

 

「………また、会えるよね?」

 

泣き出しそうになるが、必死に我慢して、魔理沙に聞いた。

 

「半年後に帰るよ。それまで、待っててよ!」

 

「待ってるね!」

 

魔理沙は魔法の修行に出掛けたのだった。

 

 

 

 

 

翌日。昼頃に博麗神社に来ていたエルは、霊夢に手土産を持ってきたようだ。

 

「人里で饅頭が売られてたから…一緒に食べよ…」

 

「……ありがとう。お茶淹れるから、縁側で待ってて……」

 

「わかった。」

 

縁側で待っていると、紅白巫女を来た女性が神社に来た。霊夢の母親で、先代巫女である。

 

「………こんにちわ。」

 

「こんにちわ。君は、霊夢の友達かな?」

 

「は、はい。エルといいます。」

 

緊張をしてしまい、話し方が変になっていた。先代巫女は笑わずに、エルの頭を撫でている。

 

「緊張しなくても大丈夫。霊夢と仲良くしてやってくれ。」

 

「……うん!」

 

「エル。お茶……お母さんお帰りなさい!」

 

「ただいま。友達が出来てよかったね。霊夢?」

 

「うん!」

 

お昼をご馳走してもらったエルは、お礼を言って夕方に神社を後にした。

 

「早く戻らないと…」

 

霊力で身体強化をしたエルは、凄い速さで走っている。人里に到着する寸前で、悲鳴を聞いてその場で立ち止まった。

 

「……泣き声?何処から……」

 

泣き声のする方に歩いていくと、木の天辺に妖精の少女がいて、泣いているのだ。

 

(助けないと…)

 

「誰か…下ろしてください!?」

 

 

(……まだ浮けない。木に登るしかない。)

 

 

決心したエルは、木登りを開始した。妖精の少女は、そんなエルを見て目を見開いている。

 

「もう少し……」

 

だが、エルは木の枝に足をかけた瞬間。枝が折れて足場を失って落ちてしまった。

 

妖精の少女が意を決して、木から飛び降りて、エルを抱えて中に浮いた。

 

「え…浮いてるの?」

 

「余り…動かないで!うわぁ!?」

 

エルと妖精の少女は地面に背中からぶつかり、怪我をしてしまったが軽傷で助かった。

 

「大丈夫?」

 

「なんとか…」

 

「私は妖精…レイといいます。」

 

「僕はエルだよ。ありがとう…」

 

妖精の少女……レイは、エルに助けられた事に、お礼を言っている。

 

「木登り…自信があったんだけど……」

 

「泣かないでください!」

 

悲しそうな表情に、レイは泣きそうになりながらも、エルを抱き締めた。

 

「……私も、泣いちゃいますよ…」

 

レイの感情表現が行動に出るようで、エルは抱き締められた状態で、動けなかった。

 

「ありがとう…レイ。」

 

「また…会えますか?」

 

「会えるよ。でも、僕は人里に住んでるよ。」

 

「私から会いに行きますよ。人里まで、送りますよ!」

 

エルはレイに見送られて、慧音の家に帰っていった。

 

 



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72

この頃。エルは人里を出て、あの黒猫に会うようになった。

 

「今日は魚の干物を持ってきたよ。」

 

黒猫は匂いを嗅いで、ゆっくりと干物を食べ始めた。それを邪魔しないように観察している。

 

「美味しい?」

 

エルの声に反応して、黒猫は近づいて、手を甘噛みしている。その様子を隙間で見ていた妖怪賢者の八雲紫。

 

 

「今のところは、問題ないわね。少しずつだけど、霊力に慣れてきているかしら?」

 

エルの成長を観察していた紫に、式神の藍がとある報告をして来た。

 

「エルの行動を怪しんでいる人間がいます。少し、段階を早めた方がよろしいかと…能力成長の妨げになりかねません。」

 

「厄介ね。エルは幻想郷のバランスを保つ必要な存在。暫くしたら、行動するわよ。」

 

「畏まりました。」

 

 

 

 

エルが幻想郷に来て半年が過ぎた。霊力の制御も完璧になり、低級妖怪なら戦闘も出来るようになったが、能力の方は、無意識に使っているからか、制御も出来ていない。

 

 

 

 

 

人里で荷物運びの仕事をしながら、魔理沙のことを考えていた。魔法使いの修行行ってから半年になるからだ。

 

「そろそろだと、思うんだけどな……」

 

「何がそろそろなんだぜ!」

 

エルが振り向くと、魔理沙が箒を片手に持っていた。魔法使いの修行から帰ってきたようだが…

 

「………魔理沙なの?」

 

「私は霧雨魔理沙だぜ!久し振りだな…エル!」

 

「う、うん。久し振りだね。魔理沙…」

 

 

帰ってきた魔理沙は、以前の魔理沙とは、かけ離れ過ぎていたが、帰ってきて嬉しそうである。

 

「魔法使いにはなれたの?」

 

「一応だぜ!魔法も使えるぜ。でも、主に使うのは魔法薬だけどな。もっと修行を続けないと、魔法は完璧にならないぜ。」

 

「この荷物運んでくるね。魔理沙はどうするの?」

 

「霊夢に会いに行くぜ!久し振りだしな。」

 

魔理沙と別れたエルは、荷物運びの仕事を終わらせると、慧音の家に帰った。

 

「エル。おかえり…お前に客が来ている。」

 

「僕に客……妖怪の匂いがする。慧音先生以外に2人いる?」

 

「な!?」

 

「流石ね。妖怪の匂いがわかる人間がいるなんてね。」

 

壁から隙間が開いて、紫と藍が姿を現した。エルは小刀を取り出して、警戒をする。

 

「僕に何のようですか?」

 

「自己紹介させてもらうわ。私は八雲紫…幻想郷を誕生させた妖怪賢者。」

 

「私は紫様の式、八雲藍だ。よろしく頼む。」

 

「………エルです。外から来た人間です。」

 

お互いに自己紹介を終えると、紫が話始めた。

 

「先ずは、エル。貴方に謝罪に来ました。」

 

「謝罪?」

 

「エルを幻想郷に連れてきたのは私なのよ。その謝罪にね。」

 

紫の謝罪を一応、受け入れたエルは、藍を見る。

 

「どうした?」

 

「お姉さん…狐の……妖怪?」

 

「よくわかったな。確かに私は、狐の妖怪だよ。」

 

「なんとなくだけど…紫さんは、謝罪だけに来たんですか?」

 

「……本題に入るわね。エルに頼みがあるのよ。」

 

紫がエルに頼むことは、妖怪と人間が共存できる幻想郷を誕生させること。そのために、エルには妖怪達の相談役になって欲しいとのことだ。

 

「相談役……何故、僕なの?幻想郷には、博麗の巫女がいましたよね。」

 

「博麗の巫女の仕事は、人間を襲った妖怪を退治すること。基本、人間の味方なのよ。」

 

「僕に、妖怪の味方になれと?」

 

「それは違う。信じられないだろうが…妖怪の中では、人間と仲良くなりたい者も存在する。慧音先生もその1人だ。」

 

「私は半獣だぞ?」

 

「だけど、人間と仲良くなりたいのは、本当だろ?」

 

藍に言われてしまい、慧音は黙ってしまった。その話を聞いてエルは、信用してもいいと思ったが、理由がわからない。選ばれた理由が…

 

「選んだ理由単純よ。貴方が妖怪の黒猫と仲良くしてたから。基本人間はそうはならない。それと、エルはルーミアに会いたいわよね?」

 

「…………会いたいです。」

 

「正直で良かったわ。でも、人食い妖怪のルーミアを人里に入れるわけにはいかない。大体わかるわよね?」

 

「考えさせてください。」

 

「勿論よ。協力する場合は、住む場所を変更してもらうわ。でも、人里に遊びにいったり、長期間の宿泊も許すわ。」

 

「余り深く考えなくても、大丈夫だ。妖怪の味方になるわけじゃない。また、会おう。」

 

紫と藍はその場から、姿を消した。



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73

その日の夜。エルは紫に言われたことが、頭に過った。頼まれた妖怪の相談役の話のことである。

 

「……………」

 

「エル。八雲に言われたことを考えていたのか?」

 

「うん。慧音先生…妖怪に詳しい人がいたら教えてくれない?」

 

「………アポが取れるかは、わからないぞ?」

 

慧音に言われて、小さく頷いたエルは、歴史書を読み進めるのだった。

 

 

翌朝。朝早くから魔理沙に誘われたエルは、魔法の森に来ていた。その理由は…

 

「エル。私の家に案内するぜ!」

 

「家あるの?」

 

「廃墟を見つけたんだぜ!」

 

魔理沙に案内されて魔法の森を歩いていくと、古びた一軒家がそこにあった。隣には【霧雨魔法店】と書かれた看板があった。

 

「……………この家は?」

 

「私の家だぜ!」

 

「持ち主は…」

 

「私だぜ!」

 

「………………魔理沙が普通の泥棒になった!」

 

「私は普通の魔法使いだぜ!泥棒は失礼だぜ!?」

 

家に入れてもらうと、中は案外綺麗に整理整頓されていた。戸棚には魔法薬の入った小瓶が置かれていた。

 

「魔理沙は掃除出来るんだね。」

 

「私じゃないぜ。」

 

「誰がしたの?」

 

「香霖だぜ!」

 

「…………霖之助さんにやってもらったの!?」

 

魔理沙の言っている香霖とは、香霖堂の店主…森近霖之助のことである。エルもお世話になっている男性だ。

 

「迷惑かけたらダメだよ?魔理沙…」

 

「迷惑になってないぜ!」

 

(なんだろう。来ただけで疲れたよ……)

 

精神的疲労が出てきたようで、溜め息をしているエル。魔理沙は珈琲を出した。

 

「魔理沙は珈琲…飲めるの?」

 

「修行の帰りの時に、師匠の家から貰ってきたぜ!」

 

「そう…………苦い!?」

 

「砂糖入れるか?」

 

平気で飲んでいる魔理沙を見て、ちょっと負けた感じがしているエル。

 

(………私だけは、魔法薬で苦味が消えてるぜ。)

 

苦いのを我慢して、飲み終えたエルは、マグカップを流しに置いておく。

 

「後でするから良いぜ!」

 

「後ですると落ちないよ?」

 

「………わかったぜ。」

 

魔理沙はマグカップを洗いながら、エルに話す。

 

「本当久し振りだぜ。今何歳だ?」

 

「半年、会えなかっただけだよね?今は8歳だよ。」

 

「人里で仕事してたよな。何でだぜ?」

 

「慧音先生の家に住んでるけど、迷惑はかけられないから。」

 

エルは悲しげな表情で、話している。

 

「そろそろ、お昼になるぜ。」

 

「ヤバ、紫さんとの約束忘れてた!?」

 

エルは紫との約束を思い出して、立ち上がる。

 

「約束?」

 

「うん。荷物運びの仕事を依頼されてるんだ。また今度ね!」

 

外に出たエルは、霊力を足に込め、地面を蹴ると同時に一瞬でその場から消えた。

 

「消えたぜ……瞬間移動か!?」

 

 

 

待ち合わせの場所である妖怪の森付近に到着した。

 

「この技は空を移動するより使えるね。霊力の消費が激しいけど…」

 

「遅かったわね。エル…」

 

 

「遅れてごめんなさい。」

 

「例の話は受けてくれるのかしら?」

 

「相談役でしたよね。僕みたいな子供に?」

 

その言葉に、紫は笑みを浮かべると、鬼の少女が酒を飲みながら姿を現した。

 

「紫~遅れてごめんね。」

 

「萃香。余り待ってないから大丈夫よ。」

 

「紫さん?隣にいるの……妖怪だよね?」

 

「久し振りに人間を見たよ。私は伊吹萃香。鬼だよ。」

 

萃香は酔っ払いながら、名前を名乗るが、エルが取り出した物を見て、酔いが完全に覚めた。

 

「何で…豆を持ってるんだ!?」

 

「紫さんから必ず持ってくるようにと、言われたから。」

 

「紫!?」

 

「冗談よ。楽しみにしていたお酒を全部飲まれたことは、恨んでないわ。」

 

「やっぱり、恨んでるじゃん!?」

 

萃香と紫のコントを見て、思わず欠伸を我慢するエルなのでした。

 

 



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74

紫と萃香のコントが終わり、エルの方を見ると歴史書を黙々と読んでいた。視線に気づいたようで、歴史書を鞄にしまった。

 

「僕は何をすればいいの?」

 

「今日は萃香と戦ってちょうだい。武器が欲しいなら渡すわよ?」

 

「戦うんですか?鬼…怖いし…」

 

萃香はエルの表情に、少し悲しげである。妖怪の立場としてなら、嬉しいかもしれないが、萃香本人はショックを受けている。

 

「嘘を言われるよりいいけど……」

 

「ご、ごめんなさい。」

 

「正直なのは、良いことだぞ……」

 

萃香の落ち込みようが激しいので、エルはやる気を見せるために、霊力で身体強化をする。

 

「…………やる気だね?殺しはしないけど、私の攻撃に耐えられるかな?」

 

萃香が試しに、近くにあった岩を持ち上げて、エルに投げつけると、霊力の玉を岩に放って破壊した。

 

「霊力が使えるのか。面白くなってきたよ!」

 

笑みを浮かべている萃香に、エルは右手に霊力を溜め込んで、萃香に放つ体勢をしていた。

 

「この私に、霊力を放つ気かな?だけど…」

 

萃香がその場から消えて、エルの背後に、瞬時に移動した。

 

(後ろから攻撃されたら…意味ないよな!)

 

エルに攻撃する寸前に、霊力の込められた右手が、萃香の腕を掴んだ。

 

「な、なんで!?」

 

「僕は妖怪の匂いがわかるよ。背後にいても、関係無い。」

 

絶体絶命の萃香は、エルから降参するように言われる。このまま攻撃しても、霊力の込められた右手で、倒されるのが先である。

 

「…………私の負けだよ。」

 

萃香の降参宣言に、エルは力が抜けて、地面に座り込む。

 

「助かった。」

 

「エルは賭けに勝ったようね。」

 

紫の発言に、萃香はエルを見ながら聞いてみた。

 

「何をしたんだい?」

 

「………そのまま前から攻撃されたら、僕の負けだよ。後ろからの攻撃は、避けられるけど、前からは少し苦手で………」

 

萃香は苦笑して、エルを見ながら興味を示している。

 

「私とまた、戦ってよ。」

 

「萃香さん!?紫さん…これどうなるの!?」

 

「…………想定外だわ。鬼が後ろ楯になれば、エルは妖怪に襲われなくなるわね。」

 

「エルの護衛なら何時でもするよ。気に入ったからね~」

 

萃香はご機嫌の状態で、姿を消した。紫は1枚の封筒をエルに差し出した。

 

「………これは?」

 

入っていたのは、1枚のカードだった。隙間移動できるように、紫の能力の一部が込められている。

 

「幻想郷のとある森に建物を建てたから、エルが使っていいわよ。このカードを使わないと、行けないから。無くさないように…」

 

「……いいの?」

 

「いつか、必要になるわ。」

 

 

人里まで送ると、紫は隙間で姿を消した。慧音の家に帰ると、妹紅も一緒にいた。

 

「おかえり…エル。遅めの帰りだったな。」

 

「妹紅さん…それが…」

 

昼の出来事を説明すると、妹紅と慧音が目を見開いてしまった。

 

「伊吹萃香に勝った!?」

 

「でも…萃香さんは手加減してましたよ。」

 

「手加減でも、勝つことはあり得ないからな!?運だとしてもだ。」

 

慧音は暫く何かを考えると、エルに紫の話を受けてみないかと、提案してみた。

 

「………でもそれは。」

 

「八雲紫は幻想郷を大切に考えているし、それについての危険は無いだろう。伊吹萃香は嘘を嫌う。認めてもらったことは、誇ってもいいことだ。」

 

「………紫さん。近くにいるよね?」

 

天井に隙間が開いて、紫が顔を出した。

 

「で、どうするの?」

 

「協力してくれる?」

 

「勿論だわ。」

 

エルは紫の提案を受け入れるのだった。



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75

エルが紫の提案を受け入れたため、妖怪達の相談役となった。相談役の役割は、ストレスが溜まっている妖怪の相談または、戦うことである。

 

「でも、萃香と私が後ろ楯になっている以上、エルを守護するわ。組手での戦闘は、エルに頑張って貰うしかないわ。」

 

「僕の修行になるから、構わないよ。」

 

「その意気だわ。私はそろそろ、帰るわね。」

 

「わかりました。」

 

隙間で姿を消すと、エルは荷物の整理を始める。近い時期に、人里を出るためだ。

 

(僕がいたら、人里の皆に迷惑になる。今月中には、人里を出ようかな…)

 

ある程度の荷物の整理が終わると、慧音が部屋に入ってきた。

 

「荷物整理をしてたのか?」

 

「はい。紫さんの提案を受け入れた以上、人里を出た方がいいと思ったので…」

 

「そうか。また、帰ってきなさい。」

 

「ありがとうございます。慧音先生!」

 

 

翌朝。エルは紫の隙間で人里を後にした。

 

 

 

 

紫が用意した建物に到着した。室内は案外見た目とは違い、広かったようだ。

 

「確かに、森の中だね。修行には良さそうだよ。」

 

荷物を置いて、寛いでいると、外に黒髪の少女が歩いていた。森の中を歩いている内に、迷ってしまったようだ。

 

「大丈夫?」

 

「……大丈夫よ。迷子になっちゃた。」

 

「それは大変だね。」

 

エルは黒髪の少女が、妖怪であると気づいた。だが、何もされていないので、黙っていることにした。

 

「僕はエルだよ。君の名前は?」

 

「私はニーナです。よろしくね。エル君。」

 

「此方こそ…」

 

 

 

夕方になると、ニーナは何処かに行ってしまった。

 

「さて、掃除は明日するかな。」

 

そう決めて、荷物を持って紫から貰ったマヨイガに通じるお札を使い、マヨイガに向かった。

 

人里の方では、妹紅が迷いの竹林で竹を切っていた。人里の人間の依頼で、竹が欲しいらしい。

 

(竹で笛でも作るのか?依頼されたからやるが…)

 

 

竹を切り終えた妹紅は、届けに向かう。

 

「妹紅さん。待ってましたよ!」

 

「待たせて悪いな。霧雨の店主。」

 

妹紅が竹を届けたのは、人里で唯一の道具屋【霧雨道具店】の店主である。道具だけではなく、玩具も販売しているらしいが。

 

「これだけの竹があれば、いろいろと出来ますよ。」

 

「そうか?」

 

「代金の方は、これでとうですか?」

 

「……丁度だ。」

 

「じゃあな。」

 

妹紅は帰っている最中に、霊夢と先代巫女を見掛けた。何かを探しているような様子だった。

 

(妖怪退治の依頼かな。声をかけたら、邪魔になるしやめとくか。)

 

 

 

 

その頃。黒猫は魔法の森で、のんびり歩いていると、目の前に霊夢と先代巫女が現れた。何かのお札を持って構えている。黒猫は危険を察知して人化する。その姿は、エルと会話していた黒髪の少女、ニーナであった。

 

「博麗の巫女が私に何か用事?」

 

「貴女が、人里の人間に悪さをしている情報が入ってね。」

 

「………それだけで、退治する理由になるの?私は人間に悪さしてないけど……」

 

「妖怪の言い訳が、通用するとでも?後から調べればわかることだ。」

 

先代巫女はニーナの話を聞くつもりなど、無いようだ。お札から弾幕が発射されると、ニーナは妖怪の身体能力で、段幕を回避する。

 

「妖怪風情が中々やるね!」

 

「だから、博麗の巫女は嫌いなんだ!」

 

霊夢が針を霊力で発射するが、何処からか霊力の弾丸が飛んできて、針を破壊した。

 

「………な!?何でいるのよ…」

 

「面白いな。君が、その妖怪を庇うなんてね。」

 

「………何してるんですか?霊夢と巫女様。」

 

ニーナの目の前に現れたのは、短剣を持って構えているエルの姿だった。



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76

霊夢と先代巫女の前に現れたエルは、後ろにいるニーナを守りながら、短剣を構える。

 

「何でいるのよ!?」

 

「それはこっちの台詞だよ。何で、ニーナを攻撃したんだ!」

 

エルの質問に、先代巫女が厳しい表情で、エルに教えた。

 

「その妖怪は、人里の人間に悪さをしている情報を得たんだ。巫女として、退治するのは当たり前だろ?」

 

「その情報の信憑性は何ですか?まさか、調べてないなんて、言いませんよね?」

 

「後から調べれば、わかることだ。」

 

先代巫女のやり方に、失望したエルは、霊夢にも睨み付ける。

 

「………妖怪よりも、人間の方が凶悪だね。妖怪はまだ、自分の欲望に忠実に行動する。人間は…ずる賢い…博麗の巫女は、人間の味方なら…無実の妖怪を殺す権限でもあるんですか?」

 

「エルは……」

 

霊夢が何か、言いたそうにしているが、言える状態ではない。

 

「失望したよ。ニーナはこの場から逃げて…」

 

「逃げるわけないでしょ!」

 

 

エルは霊力の弾丸を先代巫女に狙い発射する。発射された弾丸は、霊夢の針で相殺された。

 

「やっぱり、霊夢は強いよ。でも、負けるわけにはいかない!」

 

「仕方無いな。まとめて、退治するとしよう。エル君は人間だから、気絶程度に済ませてあげるよ。」

 

 

エルは小声で、ニーナに話した。

 

「僕が合図したら、妖怪の弾幕で、目眩ましをして…出来るだけ、逃げるよ。」

 

「………わかった。やってみるね。」

 

エルが合図を出すと、ニーナは妖力の弾幕を大量に発射する。霊夢と先代巫女を殺すつもりはない。逃げる時間さえ、稼げれば問題はないのだが…

 

「中々やるよ。」

 

先代巫女は、大量の弾幕をお祓い棒で素早く、弾き返しながら、前に進んでいる。

 

ニーナが怯んだ隙に、先代巫女が針を飛ばして、エルの足に命中する。

 

「痛い…動けない…」

 

「霊夢は攻撃しなくてもいい。戦闘に巻き込まれるからね。」

 

先代巫女はニーナを標的に、針を飛ばして攻撃する。流石の妖怪の身体能力でも、避けきれずに肩に突き刺さった。

 

(………仕方ない…痛いのは…)

 

足に刺さった針を抜いて、霊力で先代巫女に発射する。右肩に命中はしたが、余り効いてないらしい。

 

「反撃する余力が残っていたか?なら、大技で終わりにする。」

 

先代巫女の行動に、霊夢は動かない…いや…恐怖で、動けないのである。妖怪相手には、無慈悲に攻撃する姿に…

 

「この技を使うのは、君達が初めてだよ……【夢想封印】」

 

先代巫女の大技で、大爆発が発生すると、土煙で視界が悪く前が見えない。

 

「やり過ぎたかな?」

 

「母さん…何で…」

 

霊夢が正気に戻ると、先代巫女を見る。

 

「………巫女は、人間の味方なんだよ。妖怪は人間を襲わないと、存在が消える。幻想郷を維持するには、仕方のないことだ。土煙が晴れたようだね。」

 

土煙が晴れ、視界がよくなると、エルとニーナの姿は消えていた。

 

「………逃げられたか。私から逃げ切れたみたいだから、見逃すかな。」

 

先代巫女は笑みを浮かべた。

 

 

 

 

先代巫女の大技の際に、エルの持っていたカードで、ニーナと一緒に移動して、逃げ延びた。だが、技の一部が命中して、瀕死状態になっていた。

 

「エル!しっかりして!」

 

「……なんとか…逃げれたね。」

 

エルの意識が消え始めている。

 

「…………この方法しかない!」

 

ニーナは自分の歯で、血を流してから、エルに口移しで、血を飲ませた。

 

「…………な、なにしたのニーナ!?」

 

「……よかった。エルが生きて…」

 

エルの意識が戻ると、ニーナは安心して、その場から消滅した。一瞬の出来事に、目を見開いた。

 

「そんな…何で…」

 

エルの叫び声は、森全体に響き渡った。



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77

紫がエルの姿を発見した時には、闇落ち寸前だった。急ぎ、境界を操る能力で、エルの精神に繋げる。

 

(………先代巫女の襲撃で…黒猫は…)

 

状況を把握した紫は、エルの頭に触れると、一部の記憶を操作して、繋ぎ合わせた。

 

(これで、エルが黒猫を戦いから守れなかった記憶を改竄できたわね。)

 

エルをマヨイガの寝室に隙間で送った後で、博麗神社に向かい、寝ている霊夢と先代巫女の記憶を操作する。

 

 

(これで、エルの心は保たれるはず…霊夢と巫女の記憶は、エルと戦闘をしていないに改竄して…)

 

行動を終えると、マヨイガに向かいエルが目を覚ますのを待つ。

 

「……紫さん。僕は…」

 

「大丈夫。今は落ち着きなさい。話はその後で、聞いてあげるわ。」

 

「わかりました……」

 

エルは眠りについた。

 

 

 

 

博麗神社にいる霊夢と先代巫女は、紫が施した記憶操作を受けて、エルとの戦闘の記憶が改竄されている。

 

「……お母さん。昨日は、何してたんだっけ?」

 

「黒猫の妖怪を退治したじゃないか?」

 

「……その黒猫は、人化に…」

 

「霊夢。その妖怪は、黒猫の状態で、退治したじゃないか。忘れたのか?」

 

先代巫女の言葉に、霊夢はぼんやりしているが、小さく頷いた。

 

 

 

翌日。エルは人里に来ては、用事もなく歩いていた。黒猫であるニーナのことである。

 

(人里の噂で、黒猫は博麗の巫女に退治された。人間に悪さをしていたらしい…という情報だけで…)

 

 

すると、遠くの方に霊夢と魔理沙が一緒に人里を歩いていた。エルは霊夢を見た瞬間。黒い何かが、溢れる感覚に陥った。

 

(……今、霊夢に見つかったら、確実に……殺しちゃう……逃げなきゃ…)

 

 

 

霊夢に見つかる前に、場所を移動する。エルは人里の東側に移動すると、紫を呼んだ。

 

「どうしたの?」

 

「紫さん。黒猫の妖怪が、博麗の巫女に、退治されたのは知ってる?」

 

「噂で聞いたわね。」

 

「……調べてくれない?黒猫の妖怪が、人里の人間に悪さをしていたか。その情報が本当なら……お願い。」

 

エルからの頼みに、紫が考える。

 

(確かに、あの巫女と霊夢が情報の信憑性を調べていたのなら…納得はできるわ。でも、調べていないのなら………無実の妖怪を殺したことになる。調べてみましょうか。)

 

紫はエルからの頼みを聞き入れて、調べることにした。

 

 

1週間後。紫は調べた情報をエルに伝えることに。

 

「結果は白。黒猫の妖怪は、人里の人間に悪さをしていなかった。情報を調べもせずに、退治したみたいね。」

 

「…………無実で、殺されたの?紫さん。僕は…どうすればいいの?この憎しみを誰に、与えればいいかな?」

 

エルは黒いオーラを纏い、瞳の色が赤黒く染まっていく。

 

「あの巫女を殺れば…復讐は果たせるけど…」

 

「悪いけど、霊夢と巫女は殺させないわ。その前に、エルを殺さなければならない。幻想郷を破壊されるわけには、いかないから。」

 

「だったら…復讐はしない代わりに、立場がほしい。人間でありながら、妖怪側に発言できる権利がほしい。幻想郷の掟を破らない範囲で…」

 

その言葉に、紫は何かを思い付いた。だが、それをするとなると、エルに試練を与えなければならない。

 

(でも、それが成功すれば、私のプランも短縮できそうね。)

 

 

「良いわよ。私がスポンサーになってあげる。エルには、妖怪の依頼を受け持つ何でも屋をやってもらうわ。」

 

「何でも屋……」

 

「それが成功すれば、妖怪から襲われない程度で、自由に行動できるはずよ。」

 

紫からの提案に、断る理由がないエルは、受け入れることにしたのだった。

 

 

 



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78

あれから3年。エルは12歳になり、人里から離れて暮らしており、人里の保護を拒否した。その理由は、人里の人間達から、離れて暮らしたいからである。

 

今現在は、森で熊を狩っている最中である。因にだが、エルは肉が苦手である。狩っている理由は…

 

「ルーミアとレイ。熊を狩ってきたからちょっと、待ってね。」

 

「マスター、私も手伝いますよ!」

 

「私も手伝うのだー」

 

エルは薪を集めるように指示を出すと、ルーミアレイは集めに向かった。その間に熊を解体して、準備しておく。

 

「今日は紫さんからの用事はないから………暇だよ。」

 

熊の解体作業を終えると、ルーミアとレイが薪集めて戻ってきた。

 

「たくさん拾ったのだー」

 

「マスター!たくさんあったよ。」

 

エルはルーミアとレイから大量の薪を貰うと、焚き火を始める。結界内で、焚き火をするため安全である。

 

「肉まだ…」

 

「ルーミア待ってね。」

 

「熊焼き、熊焼き。」

 

熊肉の表面に焼き色がついたら、ゆっくりと回して、火を中まで通していく。暫くして、全体に焼き色がついたら完成である。

 

「熊肉焼けたよ。ルーミアとレイは、先に食べてもいいよ。もっと準備するから。」

 

「いただきます。」

 

「いただくのだー」

 

熊肉にかぶりつく、ルーミアとレイを見ながら、処理を続けていく。すると、見えない何かが通り過ぎる気配を感じたエルは、その位置に結界を構築する。

 

「痛い……これ……結界!?」

 

「何者なのかな?」

 

「私は古明地こいしだよ。ルーミア、久し振り!」

 

ルーミアとこいしは、はいタッチしている。知り合いのようだ。

 

「……………君は誰?」

 

「僕はエルだよ。よろしくね…」

 

こいしは興味津々で、エルを観察しているが、首を傾げながら、回りを一周する。流石に表情には出ていないが、イライラしているエルは、どうしたのか聞いた。

 

「……何だか、暗いよ?元気がないのかな……」

 

「何を言ってるの?それより、こいしは肉食べる?」

 

「…………食べようかな。」

 

エルは串焼きにした熊肉をこいしにあげた。ゆっくりと食べ始めたこいしは、目を輝かせて食べ続けていく。

 

(……こいしも妖怪だよね。人間は勘弁してほしいかな…)

 

熊肉を食べ終えたレイはエルと、火の後始末をする。ルーミアとレイは、妖怪の山に遊びにいくようで、飛んでいった。

 

「エルは予定あるかな?」

 

「なにもないよ?」(依頼がないから仮眠したいけど………)

 

こいしはそれを聞いて、嬉しそうにする。懐から封筒を取り出すと、エルに渡した。その封筒には、狐のマークがついていた。

 

(封筒に狐のマーク…依頼者なんだ。どんな依頼なのかな?)

 

「何を依頼するの?」

 

「お姉ちゃんが家に引きこもりなんだけど、外出させるの手伝ってほしい。」

 

こいしの依頼は、引きこもりの姉を外に出すことのようだ。家から追い出すのではなく、外出させる依頼。

 

「こいしのお姉ちゃんは、どんな妖怪なの?」

 

「覚り妖怪だよ。私もだけどね…」

 

「覚り妖怪。」(生物の心が読める妖怪だったね。ん……僕の心読んで、拒絶反応しなきゃいいけど…大丈夫かな。)

 

依頼を受けるか受けないか。どちらにしようか悩んでいる。

 

(悩むな。けど、依頼を受けなかったらコネのチャンスが………よし。)

 

「決まった?」

 

「依頼を受けるよ。こいしの家に案内してくれない?」

 

「ありがとう。」

 

エルはこいしの家に向かったのだった。

 



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79

幻想郷の地下にある地底に妖怪達が住む町に、エルがこいしの案内で、連れてこられた。人間がいることに、地底の妖怪達は興味津々で観察している。

 

「幻想郷の地下は、やっぱり暗いんだね。町があるよ!」

 

「余り、見ない方がいいよ。エルは人里の保護を放棄したから、襲われても巫女は動かない。」

 

「……別にいいよ。死んだらそれまで…」

 

エルの瞳が一瞬、漆黒に染まったように見えた。こいしはエルの手を握ると、笑みを浮かべている。

 

「エルは人間が嫌いなの?」

 

「まだ、妖怪の方が信用できるよ。自分の欲望に正直だし…隠した方がいいのも、確かだけど…」

 

「エルは珍しいね。お姉ちゃんと相性良さそうだよ!」

 

こいしの言葉に余り興味が湧かないのか、無言で歩いているエルに、機嫌を悪くしている。

 

「………つまらない。」

 

「何が?」

 

「エルは暗いままだよね?どうしてなのかな…」

 

「うるさい…」

 

こいしの言葉に、過剰反応したエルは地底の地面を足で力一杯踏むと、霊力での身体強化をしていたようで、小規模だが地面に穴が出来た。

 

「え、エル!?」

 

「地面の工事費は責任者に払うから……ごめんね………あそこか。」

 

エルは地霊殿の場所がわかると、足に霊力を流して瞬間移動のように走っていった。

 

「あれ!?エルに置いていかれた……」

 

その場に残されたこいしは、エルを追い掛けた。エルとこいしを遠くから見ていた妖怪は、その場からいなくなった。

 

 

 

地霊殿に到着したエルは、建物の大きさに目を見開いている。

 

「地下に大きな建物…凄い…」

 

「あれ…君はこの地霊殿に、何か用なの?」

 

地獄鴉の霊烏路空である。こいしからは、お空と呼ばれている。地底の見回りを終えて、地霊殿に帰ってきたところらしい。

 

「こいしの依頼で…」

 

「こいし様の依頼…こいし様を呼んできますね!」

 

「こいしならそろそろ、来るからいいよ。」

 

「そうなの?だったら、中で待ってなよ!」

 

お空とエルの会話が噛み合っていないため、エルはお空に苦戦している。すると、ピンク髮の少女が建物から出てきて、エルの方を見ている。正確には、少女の持つ眼のようなもので、見られている。

 

「さとり様。見回り終わりましたよ!」

 

「お空ご苦労様………君がエル君ね?こいしから依頼されたのね。」

 

少女はエルを見ただけで、言いたいことがわかるようで、自己紹介した。

 

「僕の名前は、エルだよ。貴女がさとりさんですか?」

 

「古明地さとりよ………妖怪専門店…」

 

エルの心を読んだようで、さとりは近づいて観察をしている。既に、エルのトラウマ、過去を心から読み取っているさとりは、信用できる人間と判断したようだ。

 

「僕の読んだ?」

 

「読んだわ。でも、妖怪の私には関係無い。」

 

「そうしてくれたら、助かるからいいよ。」

 

笑みを浮かべているエルに、さとりの持つサードアイが、エルを睨んでいるように見える。心を読む視線とかではなく、確りとエルの目を見ているような感じだ。

 

「地霊殿に案内するわ。」

 

「お邪魔します。それと…」

 

エルは空間から、饅頭の詰め合わせの箱をさとりに渡した。

 

「どうぞ。」

 

「ありがと。来なさい…」

 

さとりに地霊殿を案内されたのだった。



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80

地霊殿に招待されたエルは、さとりから紅茶を出されたので、一口飲んでみたら美味しかったようだ。

 

「美味しいです…」

 

「君に合ってよかったわ。」

 

安心した表情のさとりは、紅茶を飲みながらエルの心を読んで、観察を始める。

 

(博麗の巫女に、友達である妖怪を殺されたのが、原因なのね。それで、心を閉ざしている。人間を嫌う理由は、理解できるわ。私は妖怪だけど…)

 

さとりのサードアイの視線に気づいたエルは、紅茶を飲み終えると、気になったようで質問した。

 

「さとりさんのそれは、能力の一部なの?視線に気になったから…」

 

「そうよ。私の能力は、心を読む程度の能力。生物の心が読めるわ。君は読まれても、気にしないみたいだけど。」

 

エルはクッキーを食べながら、何も言わなかったが、さとりには何が言いたいのか、伝わっている。

 

「面白い人間ね。普通の人間なら、気味悪がって誰も、近付こうとしないもの。」

 

「……僕は普通の人間じゃないよ。妖怪の味方をする人間は、他からしたら…化け物当然だから…」

 

暗い笑みを浮かべるエルだが、足元にさとりのペットである猫が近寄ってきた。妖怪ではない普通の黒猫である。たまに、こいしが拾ってきて、地霊殿に連れてきているのだ。

 

「………どうしたのかな?」

 

「………なるほどね。黒猫から心配されてるわよ。敏感な動物もいるみたいだし。」

 

黒猫はエルの足に、頭を擦り付けている。気を許したらしい。黒猫の行動に、恐る恐る右手を黒猫に近付ける。

 

「………頭を撫でて、大丈夫かな?」

 

「………大丈夫よ。普段は人間を見つけた瞬間、威嚇するけど、君は大丈夫みたいね。」

 

黒猫の頭を撫でると、大人しく撫でられていると、他の動物達がエルに集まってきた。

 

「鳥もいるんだね……この子は妖怪だね。」

 

妖怪鳥の頭を撫でるエルは、嘴で指を噛まれた。痛くはないようなので、甘噛だろう。

 

「懐かれているわね。何かの体質かしら?」

 

「……動物には、懐かれてるよ。一部妖怪もいるから…」

 

「妖怪に懐かれるのも、変な話ね。でも、それは君が信頼されている証拠よ。基本、妖怪は人間を襲うのが、幻想郷での常識…なのかしら?」

 

「常識じゃないかな?人里に住む人達は、妖怪に恐怖して、人里から出ないから…」

 

人里に住んでいたことを思い出したエルだが、霊夢のことを思い出した瞬間。急に、激しい頭痛に襲われた。エルは椅子から転げ落ちて、頭痛に苦しんでいる。

 

「エル君!?大丈夫なの!」

 

「どうしたのお姉……エル君!?」

 

「こいし、私の寝室から頭痛薬を持ってきなさい!青の箱に人間用が入ってるから、急いで!」

 

「青の箱だね。わかった!」

 

さとりの寝室にある青の箱から、頭痛薬を取り出すと、さとりに渡した。

 

「頭痛薬よ、飲める?」

 

頭痛が酷すぎて、頭痛薬を飲める状態ではない。さとりは迷う暇もなく、頭痛薬をエルに口移しで飲ませる。頭痛薬を飲み込んだのを確認すると、エルから離れた。

 

「お、お姉ちゃん!?何してるの!?」

 

「何って、こいしは何で、赤くしてるのよ?」

 

「だ、だって…」

 

こいしは顔を赤くしながら、無言になる。

 

「エル君を寝室に運ぶわよ。」

 

さとりはエルを寝室に運んだ。



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81

さとりの寝室で、眠っていたエルが目を覚ました。寝ていた場所がさとりの寝室だとわかると、起き上がろとするのだが、体が動かない。こいしがエルの上で、寝ているようである。

 

(……僕は何で……頭痛で気を失ってたのか。心配かけちゃったな。)

 

すると、こいしが目を覚まして、エルの顔を見ると涙を流している。

 

「エルが目を覚ました!」

 

「こいし…おはよう。下りてくれたら、助かるんだけど…」

 

エルのその一言に、こいしは昨日のことを覚えてないか聞いてみた。

 

「お姉ちゃんにされたこと、覚えてない?」

 

「さとりさんにされたこと。うーん………覚えてないよ。」

 

間の長かったエルに、こいしは妖しげな笑みを浮かべると、妖怪としての力を入れて、エルの体を押さえ込む。人間のエルでは、起き上がることはできない。

 

「逃げられないよ。叫んでもいいけど、私の能力で、エルと私を無意識下にすることで、見えなくできるから。どう…私のこと怖くない?」

 

「………だから何が?」

 

「…………え、だから…」

 

「何で、僕がこいしを怖がらないといけないの?今すぐ、僕をこの場で…殺したいの?」

 

「それは、やらないけど…」

 

エルからの予想外の反応に、こいしは困惑している。妖怪としての一部の本性を出せば、エルが怖がると思ったようだ。

 

「ならいいよ。それと、こいしには言ってるよ。妖怪に殺されるようなら、それまでだって。」

 

「嫌わないの?」

 

「こいしが覚り妖怪だから?」

 

その質問に、こいしは小さく頷いている。昨日のさとりとエルの会話を聞いていないようだ。

 

「……僕は、覚り妖怪だからと言って、嫌わないよ。逆に嫌われたくないかな。覚り妖怪は、他の妖怪からも、嫌われてるの?」

 

「一部の妖怪からは…」

 

元気の無いこいしを見て、エルは起き上がるとこいしを抱き締めた。その行動に、驚いたようだが拒まなかった。

 

「全く、こいしは勘違いしすぎだよ。僕がこいしからの依頼を受ける時点で、嫌ってないよ。もし、嫌ってたら依頼を断ってるよ。」

 

「………ごめんなさい。痛くなかった?」

 

「やっぱり、妖怪は力が強いね。羨ましいや…」

 

平気な顔で、こいしを安心させるのだが、信用していないようだ。悩んでしまったエルは、暫く考えて何かを思い付いたようだ。

 

「こいし…」

 

「なにエル!?」

 

エルはこいしのおでこにキスをすると、顔を赤くして、硬直してしまった。正気に戻るまで、エルは待つことにした。暫くして、正気に戻ったこいしは、顔を赤くしたまま睨んできた。

 

「何するの!?」

 

「ダメだったかな?外の時に、機嫌が良くなるおまじないで、教えてもらってたんだけど…」

 

「……誰から?」

 

「外の世界に住んでいた時に、親から教えてもらったよ。」

 

「………………親から?」

 

「他に誰がいるのかな?」

 

本当に、純粋な行動でやっていたようだ。エルの様子から、嘘だと思えないようで、こいしは溜め息をしてしまった。

 

「……………悪いこと……しちゃったかな?」

 

「……………ある意味、悪いことだよ。」

 

こいしは寝室から出ていってしまった。理由がわかっていないエルは、首を傾げるのだった。



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82

エルが地霊殿に来て、1週間が経過した。今現在は、さとりからペットの世話を任されるようになった。

 

(確か、依頼期間は30日だから…残り23日。そろそろ、能力を試してみようかな?)

 

そう考えていると、さとりから書斎に来るように言われた。ペット世話を終えて、書斎に入る。 

 

「こいしも、さとりさんに呼ばれたの?」

 

「私は無意識だから…」

 

「エルが来たから、本題に入るわよ。」

 

さとりに呼ばれた理由は、エルの能力に関してだ。能力は、生物の潜在能力を上げる代わりに、その生物の能力を劣化コピーする能力らしい。因みに、エル本人も、能力を知らなかったようだ。

 

「生物の能力を…劣化コピー出来る能力?」

 

「能力名は別に決めればいいわよ。紫さんから、エル君の能力を教えてもらったわ。そろそろ、能力を使ってもいいそうよ。」

 

「能力の使い方は……対象者と手を繋いで、お互いが承諾すれば…使えるみたい。」

 

「意外と簡単なんなのね?」

 

試しに、さとりとエルが手を繋いで、お互いに承諾すると、お互いの体に金の十字架が出現した。

 

「この金の十字架は、仮契約の証だね。銀の十字架もあるみたいだけど、ランダムみたい。」

 

「この十字架は、軽いわね。金属じゃないみたい。」

 

金の十字架を興味深げに触れているエルとさとり。潜在能力を確かめるために、さとりはこいしの心を読んでみると…

 

「……………私のことを毎回、引きこもりだと思ってたのね。こいし…」

 

「え、お姉ちゃんは、私の心を読んだの!?」

 

「今の私は、こいしの心を読み放題よ…」

 

「え、そんな…エル!?なんとかしてよ!」

 

こいしは、さとりから離れて、エルの後ろに隠れる。溜め息をしたエルは、さとりに注意する。

 

「さとりさん。悪ふざけが過ぎるようなら、仮契約を解除するよ。契約解除の権限は、僕にあるから…」

 

「…………ごめんなさい。悪ふざけが過ぎたわ。実は、能力が自動発動じゃなくなったわ。」

 

「意地悪は嫌い…」

 

機嫌を悪くするこいしに、少しショックを受けてしまったさとりだが、心を読めるのは、さとりだけではない。

 

「こいし…さとりさんに気を付けてね。シスコンらしいから。」

 

「エル君!?私の心を呼んだわね!」

 

「仮契約しているから、さとりさんの心を読めるようになったよ。断片しか読めないけど…」

 

こいしも、エルと仮契約したいようで、頼んできた。仲間外れは嫌なようだ。エルの容量的に、後1人しか契約できない。

 

「本当に良いんだね?」

 

「証がほしい。私とも仮契約して!」

 

「それはいいけど、こいしも覚り妖怪だから…封印してある能力が、解放されるけど、覚悟はある?」

 

「…………」

 

こいしは、閉じられているサードアイに触れるが、既に覚悟はあるようで、頷いている。

 

「わかった。僕の手を握って…」

 

ゆっくりと、エルの手に触れるが握ろうとしない。少し、怖いようだ。

 

「大丈夫?」

 

「少し……怖い……」

 

エルはこいしの手を両手で、握ると安心させる。

 

「どうかな?」

 

「……大丈夫。」

 

エルとこいしの仮契約が成立して、金の十字架が出現した。すると、閉じられていたこいしのサードアイが開くと、こいしは気を失った。



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82

気を失ったこいしを寝室まで運んだエルは、目が覚めるまで、こいしの傍にいた。さとりは地霊殿の仕事があるため、エルに任せた。

 

「……」

 

こいしの手を握り、目が覚めるのを待った。さとりが寝室に入ってくると、エルを心配している。

 

「少しは休憩しなさい。私がこいしを見てるから…」

 

何も喋らないエルだが、さとりは心を読んで、話続ける。

 

「余り、自分を責めたらだめよ。仮契約をしたのは、こいしの意思なの。だから、エル君は悪くないわ。」

 

無言のエルに話続けるさとりに、エルは立ち上がって、寝室を出た。少し、客室で休むようだ。

 

「こいしが目を覚ましたら、教えるわ。」

 

「…………わかった。」

 

客室に入り、ベットに横になるエルは、眠気が来たようで、そのまま眠ってしまった。

 

 

 

 

翌日。客室で寝ていたエルが目を覚ますが、動けないでいた。こいしが腕を掴んだ状態で、隣で寝ていたのである。

 

「こいし…起きて。」

 

「ん…エル、おはよう。」

 

こいしが目を覚ますと、エルはこいしの開かれているサードアイを見た。

 

「……開いてるね。」

 

「エルと仮契約した影響かも。一応、エルの心が読めるよ…いろいろと、我慢してきたんだね。」

 

こいしがエルを抱き締めると、最初は抵抗しようと思ったが、すぐにやめた。こいしの好きにさせたのである。

 

「……無理したらだめだよ。私達、妖怪なら頼れるよね?無理して、笑わなくても大丈夫だよ。」

 

こいしの抱き締める力が強くなると、泣くのを我慢していたエルは、我慢できずに泣き出してしまった。それを拒まないこいしは、エルが泣き止むまで、抱き締め続けた。

 

「……………ごめんなさい。」

 

「謝らなくて良いよ。」

 

泣き止んだエルだが、こいしの目の前で、思いっきり泣いてしまったので、恥ずかしくなり後ろを向いている。だが、こいしも心が読めるので、余り意味がない。

 

「………さとりさん。隠れてないで、出てきてよ…」

 

扉の裏側に隠れていたさとりが、部屋に入ってきた。エルを心配しているようだが、誤魔化されない。

 

「さとりさん。僕は、さとりさんの弟にはなりませんよ。一応、人間なので…」

 

「エル君は、人里の保護を放棄したのだから、妖怪になれるわよね?3人目の覚り妖怪として、地霊殿に、一緒に暮らさない?」

 

「それは、良いアイデアだね。お姉ちゃん!エルも一緒に暮らそうよ!」

 

「さとりさん、こいし…紫さんを敵に回すつもりなの?僕は、妖怪専門の何でも屋だけど、限度があるからね?」

 

エルの説得により渋々諦めたようだが、油断ならない。

 

「こいしの依頼は、さとりさんを外出させることだよね?そんなに、地霊殿から出てないの?」

 

「出てないね。私は無意識状態で、頻繁に出掛けてるけど、お姉ちゃんは50年近く地霊殿から出てないよね?誤魔化してもわかるからね。お姉ちゃん?」

 

「やっぱり、こいしのサードアイ、閉じませんか?」

 

「それなんだけど、仮契約を解除しても、こいしのサードアイは、閉じないよ。元々、覚り妖怪だからのと、こいしがトラウマで、能力を封印しただけだから。解除したところで、意味がないよ。」

 

懇切丁寧にさとりに説明したエルは、眠くなったので、ベットに横になり寝たのだった。



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83

エルは地霊殿の客室を借りていて、さとりから何冊か、本を借りていた。今読んでいるのは、地底に住む妖怪が書いた小説である。妖魔本のようだが、人間が読めるように漢字が使われている。

 

「………鬼と人間の争い。鬼が書いたのかな?」

 

読んでいる内に、わからなくなってきたので、読むのをやめた。すると、こいしが部屋に入ってくるとエルを抱き締めた。

 

「え、何してるの?」

 

「エルが甘えないから…私がエルに、甘えてみたよ。心の中、読めるからね。」

 

「僕も読めるけど…さとりさんには、甘えないの?」

 

「お姉ちゃんには…………いいかな。甘えなくて…」

 

こいしが言ったら、さとりが客室のクローゼットから出てきた。驚いているこいしにエルの方を見る。

 

「お姉ちゃんが隠れてたの!?」

 

「僕は知らなかったからね。さとりさんは何で、クローゼットに隠れてたんですか。」

 

「エル君が構ってくれませんから……」

 

こいしとさとりは、エルに構ってほしいのか、見続けている。溜め息を我慢して、外出することを話す。こいしは一緒に行くようだが、さとりは部屋から出ようとしたので、捕まえて強制的に地霊殿から出発した。

 

「部屋に戻してください!?」

 

「観念して、外に出ようね。お姉ちゃん?」

 

「今日は外泊するからね。地霊殿の動物達に話したら、お願いしますと、言われたから。」

 

エルの衝撃発言に、さとりはぶつぶつと、「私の味方がいません」と、呟いていた。

 

「地底の町は賑わってるね。」

 

「何処に宿泊するの?」

 

「鬼が経営している居酒屋兼宿なんだけど、戦闘してくれたら、無料で泊まらせてくれるみたいで…」

 

エルの発言に、さとりは逃げ出そうとしているが、腕を掴まれているため、逃げられないようだ。こいしは平気そうだが…

 

「何で、鬼なんですか!?」

 

「萃香さんが、酒を飲みながら、言っちゃったらしくて…一鬼さんに頼まれました。」

 

「一鬼おじちゃんの居酒屋なら、大丈夫だよね。卵焼き美味しいから…」

 

「こいしは頻繁に行ってるけど、お金大丈夫なの?」

 

「地霊殿にいると暇だから、お手伝いしてるよ。皿洗いとか。それで、卵焼き2つとお菓子貰ってるよ。」

 

こいしの言葉に、感心しているエルだが、さとりは目を見開いて、小石を見ている。何も知らなかったようだ。

 

「………さとりさんは、知らなかったみたいだけど…」

 

「こいしは週毎だったり、帰る日数が疎らなのよ。」

 

エルはこいしを家出少女と、思っていると、こいしのサードアイに睨まれてしまった。

 

「…………ごめん。」

 

「私は何も言ってないよ?」

 

「心読めるから、わかるよね?」

 

「私は無意識だから…エルも無意識使えると思うけど…」

 

「無理みたい。僕が使える能力は、覚り妖怪の固有能力、心を読む力しか使えないみたい。使える能力にも、条件があるみたいで…」

 

エルの能力では、コピーできる能力の条件があり、自由にコピーできるわけではない。

 

「でも、エルは妖怪の匂いがわかるんだよね?」

 

「元々は、外から来たから…多分、犬を飼ってたから、犬の嗅覚の特性を劣化コピー出来たんだと思う。」

 

「犬でも、契約可能なんだね?」

 

鬼が経営している居酒屋兼宿に到着したのだった。



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84

エル、さとり、こいしが居酒屋に入ると、ハチマキ、エプロンをしている鬼である居酒屋の店主、一鬼がエルとこいしの姿を見て、手を振っている。

 

「エルとこいしじゃねえか。宿泊だったな。居酒屋の隣に部屋があるから、泊まりな。これが部屋の鍵だ。」 

 

一鬼がエルに鍵を投げ渡すと、仕事に戻っている。居酒屋を出ると、隣にある小さな家に入り、荷物を置いて寛いだ。さとりは落ち着かないのか、そわそわしている。

 

「落ち着かないね?」

 

「出掛ける必要がなかったので…」

 

「お姉ちゃんはこれから、毎日地底内を散歩してもらうからね。」

 

こいしに言われてしまったさとりは、信じられない表情で、こいしを見ている。

 

「こいしは私に死ねと言うんですか!?」

 

「外に出掛けるくらいで、妖怪は死なないよね?」

 

「いっそのこと、お姉ちゃんを無意識状態にして、外に連れ出そうかな。」

 

こいしの発言に、さとりは体を震わせている。エルからしたら、無理矢理でも出さなければ、さとりは何年も引きこもるだろう。

 

「今は13時だから、お昼はどうするの?」

 

「お昼は一鬼さんが、用意してくれるよ。」

 

「そうなの?」

 

さとりはエルの心を読んでいるが、何も聞かずに待つことにした。すると、一鬼が料理を運んできた。

 

「おでん、お浸し、塩鮭、白米、味噌汁…?」

 

「おでんは…ちくわ、大根、茹で卵だね。」

 

「おでんはサービルだからな。エル坊と嬢ちゃんは、ちゃんと食べないとダメだぜ。」

 

おでんは小鍋にグツグツ煮えている状態で、持ってきたようだ。さとりはちくわを食べる。

 

「熱々ですね……おいしいです。」

 

「茹で卵おいしいよ!」

 

「塩鮭おいしい…」

 

黙々と、料理を食べていると、さとりとこいしはお酒を飲んでいる。エルにも飲ませたいが、無言でお酒を下げた。心を読みながら無言で会話している。

 

「お腹一杯…」

 

「エルは食べなさすぎよ…」

 

塩鮭半切れ、おでんは大根とちくわ以外は、全部食べきれたようだが、明らかに少ない。

 

「これ以上は食べきれないよ…」

 

「たくさん食べないと、倒れちゃうよ?」

 

「こいし…山盛りの白米を食べたんだよ!?白米だけで、結構な量あったからね!?」

 

「男の子なら、たくさん食べないと。」

 

そう言って、さとりは小鍋から茹で卵をエルに差し出す。

 

「食べなさい。」

 

「……………」

 

さとりの無言で、茹で卵を近づけてくるので、諦めて食べた。

 

「…………御馳走様でした。」

 

「もう食べないの?エル…」

 

「勘弁してよ!こいし…」

 

エルは床に寝転ぶと、お腹一杯で眠くなったようで、眠ってしまった。その寝顔を見ているこいしは、料理を食べ終えて、エルの隣で寝転んだ。

 

「行儀が悪いわよ?こいし…」

 

「お姉ちゃんも、素直になろうよ?ほらほら!」

 

「……………仕方ないわね。少しだけよ?」

 

こいし、エル、さとりが、川の字で寝ているが、エルが目を覚ますと、両側にこいしとさとりが寝転んでいるので、少し驚いたがクスリと笑みを浮かべて、二度寝した。

 

 

数時間後。こいし、エル、さとりが欠伸をしながら目を覚ました。時間を見ると、16時になっている。

 

「エルは予定はないの?」

 

「……一鬼さんと戦闘する約束があったね。」

 

「人間と鬼が…戦闘するのはいいけど、地底を崩さないでよ?」

 

「壊さないから大丈夫だよ。」

 

余り信用していない様子のさとりは、起き上がると、こいしの体を起こした。

 

「エルが鬼と戦うの?炒り豆準備しないと…」

 

こいしが部屋から出ようとしたら、エルに腕を掴まれると、床に倒れそうになって、エルが咄嗟にこいしを抱き締めて、倒れるのを防いだ。

 

「大丈夫?」

 

「う、うん。大丈夫…」

 

顔を赤くするこいしだが、エルは気づいていないようで、部屋から出ていった。



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85

エルは一鬼と戦闘をするために、地底の広場に移動すると、人だかりができていた。萃香が噂でも流したのだろう。

 

「エル坊、大変だな。」

 

「萃香さんの仕業だね。後で、仕返しやらないとね。」

 

黒い笑みをしているエルに、一鬼は冷や汗をかいている。周囲が騒いでいるので、戦闘準備をすることに。

 

「俺のハチマキを取れれば、勝ちにしてやる。」

 

「何時ものですね。僕もやりますね…【契約能力モード…古明地さとり】」

 

エルは契約したさとりの能力を使用する。永続的に使えるため、使い勝手はいいが、能力の使用には負担が掛かる。

 

「一発目行くぞ!」

 

右手から大岩を出現させると、エルに目掛けて投げると、その場から動かないでいる。すると、大岩が突然周囲に散乱した。

 

「よく見極めたな。」

 

「偶然です。」(さとりさんの能力がなかったら、大怪我かな?)

 

楽しくなってきた一鬼は、足を踏み入れた瞬間、エルの目の前に現れて拳を当てる寸前に、エルの姿が消え、一鬼の真後ろに現れた。

 

「今度は…僕の番だよ。」

 

右手を霊力で纏い、黒く染まると、地面を殴って亀裂をいれた。この威力に、一鬼は焦りを見せずに、大岩を投げた。

 

「砕くよ。《バーストポイント》」

 

黒い右手で大岩を殴った瞬間、粉々に粉砕した。

 

「なんだよ、その右手は!?」

 

「右手に霊力を流す時に、霊力を過剰に流すことで、霊力を暴走させて威力を高める技術だよ。妖怪なら妖力になるかもね。」

 

「力を暴走させて…人間がやる技じゃないぞ!?」

 

「そうだよね。でも、戦うのは…楽しいよね。《バーストスペシャル》」

 

暴走状態の霊力で、身体強化をしたエルの体が黒く染まっている。その姿に、流石の一鬼は焦りを見せる。

 

「お前…は…仕方ない…殴ってでも、止めるぞ!」

 

「効かないよ…《バーストポイント改》」

 

体の霊力を右手に集中させて、一鬼を殴り飛ばしたが、右手を一鬼に掴まれているため、右手が動かせない。

 

「これで、技は止まっ…は!?」

 

「左手が残ってるよ。《バーストポイント改》」

 

左手から来る攻撃に、反応できずに一鬼のハチマキが取られた。エルの勝利である。

 

「…………疲れた。」

 

「あれはズルくないか!?」

 

「なんで?」

 

「殴ると見せ掛けて、ハチマキを取ったじゃねえか!」

 

一鬼はエルの戦い方に、不満があるようだが、勝利条件を決めたのは一鬼であり、戦い方に不正もないため、文句を言われる筋合いはない。

 

「鬼は嘘が苦手だよね?ルールを決めたのは誰かな?」

 

「う……」

 

エルに正論を言われてしまい、何も言えなくなった一鬼である。

 

「エルが勝ったね!」

 

こいしはエルを抱き締めている。嬉しそうにしているが、内心では…考えもなく抱き締めたため、恥ずかしいようだが、離れるタイミングを逃したたようだ。

 

「離れようか?」

 

「………もう少しだけ。」

 

抱き締めている腕の力が、少しだけ強くなったので、エルはこいしの好きにさせた。

 

「もう、良いよ…ありがと…」

 

「わかった。」

 

こいしはエルから離れると、無意識を発動してエルと一緒に泊まっている部屋に戻った。



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86

一鬼との戦闘を終えたエルは、こいしと宿泊している部屋に戻ると、床に寝転がった。結構辛そうにしている。

 

「無理するから…おとなしく寝てね?」

 

「無理して………わかったよ。」

 

エルは起き上がると、こいしが持ってきた布団に寝転んで、体を休める。

 

「エルが寝るまで、傍にいるよ。」

 

「……………」

 

体を横に傾けて、エルは無言になる。だが、こいしはエルの心を読んで、頭を撫でている。

 

「………お姉ちゃんと、呼んでいいよ?」

 

「……こいし……お姉ちゃん……」

 

エルは躊躇いつつも、顔を赤くしながらこいしをお姉ちゃん呼びした。その呼び方に嬉しそうにしている。

 

「こいしお姉ちゃんに、甘えていいよ。」

 

「僕はもう…寝るから。おやすみ…」

 

エルは眠ると、寝顔を見ているこいしは苦笑して、隣に寝転がる。

 

「おやすみ…」

 

後ろからエルを抱き締めて、こいしは眠った。

 

 

 

地霊殿に居候して、数日が過ぎた。エルは動物達の心を読んで、会話をしていると、天井に隙間が開いて、紫が姿を現した。

 

「久し振りね…エル。仕事は順調かしら?」

 

「お久し振りです…地霊殿で暇してます。」

 

「実はエルに、頼みたいことがあるの。」

 

「僕に頼みたいこと?」

 

紫はエルに、この依頼を終えたら外の世界にいって、手紙を渡してほしいようだ。誰に渡すかは、当日に教えると説明した。

 

「わかりました。手紙を渡せばいいんですね?」

 

「そうよ。私の友人は神社の神様なのよ…」

 

「神社の神様?」

 

「その時になったら教えるわ。じゃあね…」

 

紫は隙間で、姿を消した。エルは動物達との会話を終わらせると、客室に戻り読書をするようだ。

 

(地霊殿に保管されている本は、読み終えたから。何しようか悩む。)

 

何か暇を潰す方法を考えているエルだが、何も思い付かないため、仕方無く地霊殿から出て、散歩をすることにした。

 

(何処に行こうかな?)

 

 

エルが地底内を散策している頃、マヨイガにいる紫と藍は隙間で、エルの様子を監視していた。

 

「さとりの能力を得たようね。でも、まだエルには成長してもらわないとね。」

 

「紫様。地霊殿の依頼を終えたら、外に行かせるのは、まだ早くないですか?」

 

藍は紫の謎の計画を進めるために、エルの能力を成長させて、利用することを知っている。だが、外の世界に行かせるのは、早いと紫に指摘する。

 

「早い内に、外に行かせないと計画進行の妨げになるわ。エルの能力はある意味特殊だから、外の世界に行かせないとダメだわ。」

 

「あの神達に……何れは幻想郷に来るのですよね。エルに何もなければよいのですが…」

 

「何とかするわよ。そのためには、エルには強くなってもらわないとね。」

 

別の隙間を開いて、博麗神社にいる霊夢の監視を始める。

 

「先代巫女と霊夢が余計なことをしたせいで、エルの成長が遅くなったわ。本来なら、エルと霊夢を一緒に修行させて、強くさせる予定だったのに…」

 

紫は溜め息をすると、藍にエルの監視を任せて、マヨイガから姿を消した。監視を続ける藍だが、心配そうにエルの様子を見る。

 

(紫様の計画は、幻想郷を守護するための要である博麗大結界を強化するための策。ですが…この計画にエルを利用することは…可哀想すぎる。私では、紫様に逆らえない。対策を考えないと…)

 

藍は紫の対抗策を考えるのだった。



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