影になりたい海兵(笑) (夕千康成)
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プロローグ

プロローグは短めです


プロローグ

 

ークワーッ…クワーッ…

(鳥が鳴いてる…。これは、カモメか?)

重い瞼を開けると、最初に飛び込んで来たのは眩しい程の太陽光だ。

(うっ…眩しい)

あまりの眩しさにボクは手で顔を覆った。すると、眩しさは抑えられ青空と数羽のカモメが飛んでるのが見えた。

「ここ…は、どこだ?」

身体を起こしてみると、目の前にはどこまでも広がる海、そして、ボクのまわりには、木材が散乱していた。

「えーと…ボクは何をしてたっけ…?」

ナニかを思い出そうと頭に手をあてたとき…ズキッ

「…!痛っ!」

慌てて、手を見ると薄っすらと血が付いていた。どうやらボクは怪我をしていたらしい。

「…ってー、なんで怪我をしてるんだ?そもそも、ここは何処だ?」

もう一度、辺りを見渡してみた。

目の前には海、周りには散乱した木材と砂浜、そして、後ろには森があった。

「え…?島?なんで?」

ますます、混乱した。

何故、ボクはここに居るのか。

そして、ボクは何者なのか。

………グゥ〜…

「お腹…空いたな…」

頭を落ち着かせようとしていると、腹の虫が鳴いた。

「何か食べるもの…」

辺りを見回すと木材に紛れて木箱があった。

「食べ物…入っていると良いな…」

そう言ってボクは木箱に向かって歩いた。多少フラつきながらも木箱にたどり着いた。

木箱の蓋は簡単に空いた。

「…?なんだこれ?…写真?」

中には、写真が一枚入っていた。

その写真には、綺麗な女の人と…

「男の子だ…、あれ?でもこの男の子って…」

…ズキッ

また痛みが走った。しかし、傷が痛いんじゃない。

「…グッ!ッア!…ハァ…ハァ…な、なんだ…頭がッ……もう少しで、なにか…なに…カ…ガ……」ドサッ…

そこでボクの意識は途絶えた…

 

 

 

 

 

 

 

 

………アレ?…

 

「…ハッ!?」

どれくらい経ったのだろうか、僕は目を覚ました。

「僕は……、そうだ遭難したんだ。嵐に遭って…それから…ッ!」

その時、僕は全てを思い出した。

「アァ…アァ…、そうだ、僕たちは海賊に襲われて、けど嵐でみんな海に投げ出されて…」

心にぽっかりと穴が空いた気がした。

「生きなきゃ…みんなの分まで生きなきゃ」

その時、僕は決心した

「そうだ、海軍に入ろう。強くなれば、もう誰も失わずに済むはずだ」

……グゥ〜…

空腹だったのを忘れた。

「まずは、食べ物探さないと…」

そう呟くと僕は、森の方へと歩みを進めた

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで十数年後…

「カゲル少尉!おはようございます!」

ビシッとした敬礼をウッカリー三等兵がしてくれた

「あぁ、おはようウッカリー君」

今、俺は海軍少尉になってます。




初投稿ですので、色々な評価お待ちしています


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2話

ーー 富、名声、力、この世の全てを手に入れた男、海賊王 ゴールド・ロジャー 彼の死に際に放った一言は人々を海へと駆り立てた “俺の財宝か?欲しけりゃくれてやる。探せ!この世の全てをソコに置いてきた”男達はグランドラインを目指し夢を追い続ける。世は、まさに大海賊時代 ーー

大海賊時代開幕より24年、此処は東の海 シェルズタウン 海軍少尉 カゲルは、そこに配属されていた。

 

まだ朝日も登ってない時間帯、カゲルの姿は基地内のグラウンドにあった。

彼はそこで毎朝、素振りを行なっていたのだ。

 

(刀に手をかけ…)

スッ…

(居合、抜刀…)

…キンッ…

(そのまま、軸を回して後ろを切る…)

(右からの剣を受け流し、体勢が崩れた瞬間、首を切る!)シュッ…

(無防備な背中に銃が撃たれる前に…)「…瞬雷」……バチッ…

その瞬間、カゲルの姿が消え、離れた位置に姿を現し…

(突き刺す!)

刺突をした。

「……ッふ〜、まぁ、こんなもんか」

汗だくの状態でカゲルはのほほんと呟いた。

「さてと、戻って今日もモーガン大佐の恐喝に耐えますか…」

軽く汗を拭きながら、建物内へと戻ってい…

「あ、そうだ。アイツの様子でも見てみるか。」

…く前に、処刑場と呼ばれる場所へと向かっていった。

 

ーー処刑場ーー

あまり使われることのないこの場所には、一人の青年が磔にされていた。

しかし、その眼光は鋭く、獣のようだった。あまりの気迫にあまり海兵達は近寄ろうとはしなかったが、カゲルは臆することもなく近づいた。

「やぁ、今日も生きているかい?“海賊狩り”君」

「海賊狩り」そう呼ばれた青年は此方へとその眼光を向けた。

「あぁ?なんだ、またアンタか海兵のおっさん。朝の散歩でもしてたのかよ」

「お〜お〜、まだ元気そうじゃないか。ま、その調子で生き長らえてくれよ。あと、俺はまだ32だ、おっさんじゃねーよ」

「32だと、十分おっさんだろ。それより、もう朝日が昇るぞ?戻らなくていいのかよ」

「ありゃま。もう少し君とお喋りをしたかったのだが…残念。それじゃ、生き延びろよ、海賊狩りのゾロ君」

そう言うと、カゲルはスタスタと戻っていった。

一人残されたゾロは、内心こう思っていた。

(それにしても、あのおっさん何者なんだ…。さっきの刀捌き、ありゃあ本当に海軍少尉の太刀筋なのか?下手すりゃ此処の大佐よりも強いぞあのおっさん。まぁ、何にしても、あと10日…

それで俺は解放される。)

 

ところ変わって、東の海のどこか

 

「なぁ〜コビー、まだ着かねぇのか?俺、腹が減って仕方がねぇよ」

「もう少しですよルフィさん。このまま行けば今日中にはシェルズタウンに着くかと思います。」

麦わら帽子を被った少年が、向かいに座る丸メガネの少年に愚痴をこぼしながら船に揺られてた。

「そっか、楽しみだな!海賊狩りのゾロってどんな奴なんだろうなぁ、いい奴だったら仲間にしたーな。」

麦わらの少年 モンキーDルフィは笑った。




早速、原作主人公も登場させましたが、まだ本作主人公とは関わりません。
9/13 カゲルの年齢を32に変更しました。
感想、評価お待ちしております


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3話

投稿が遅れて申し訳ないです…


ー海軍第183支部 支部長室ー

基地内でも一番大きな部屋の中でカゲルはこの支部の支部長である男 ”斧手のモーガン大佐“と相対してた。

「俺は…偉い!そうだな?少尉」

「はっ!その通りでありますモーガン大佐」

「ならば、何故、住民からの税収が少ないのだ?」

「そ、それは…住民にも生活がありますし…今の状態でも、限界と言うか…」

「何だ?俺の行いに意見するのか?」

「っ!滅相もございません!」

「お前の目の前にいるのは誰だ?」

モーガンは威圧を込めた目線をカゲルに向けた

「はっ!海軍第183支部長 斧手のモーガン大佐であります!」

「ならば、さっさと住民から税金を集めてこい少尉。今度は前回の二倍だ」

「っ…分かりました大佐。では、行ってまいります…」

モーガンからの指令を受け取ったカゲルは部屋から退室した。

 

 

 

 

 

 

 

その後しばらく歩いて処刑場の前を通り過ぎようとした時

「おい!お前、そこで何をやってるんだぁ〜?」

何ともまぁ、腹立たしい声が処刑場の方から聞こえた。見ると、金髪おかっぱのいかにもお坊ちゃんと言う感じのモーガン大佐の息子 ヘルメッポが海兵二人を引き連れて何か揉めているようだった。

「はぁ〜、またあの坊ちゃんか…、今度は何だ?一応、行ってみるか」

カゲルはゲンナリしつつ、ヘルメッポに近づいていった。

 

「ヘルメッポ様〜、どうしたんですか〜」

カゲルは気の抜けてしまいそうな声でヘルメッポに呼びかけた。

「ん⁈な、何だ少尉か。いきなり声掛けやがって、何だ?」

「いや〜、モーガン大佐の命令で町に向かおうとした所で、貴方が何か揉めているように見えたんでね、ちょいと様子見にってことですわ」

「へっ!なに、ちょいとこの可愛らしい侵入者にお灸を据えてやろうとおもってな」

ヘルメッポは何とも殴りたくなるような薄ら笑いを浮かべつつそう語った。

「ん?侵入者ですかい?」

気になってのぞいて見ると、まだ幼さの残る女の子が地べたにある泥と何かが混ざった塊の前で目に涙を浮かべて

「あたしの…一生懸命作ったおにぎりが…」と、嘆いていた。

「あぁ、この子が」

そうカゲルが納得していると、

「おいおい、泣いちまってよ…それよりこの張り紙を見なかったのか?」

そう言って、ヘルメッポは一枚の紙を取り出した。

「ここには"侵入者は処刑する モーガン大佐"って書いてあんぞ?つまりオレの親父は侵入者は誰であれ処刑するとさ」

そう言うと、言葉を理解して女の子 リカちゃんは顔を青ざめた。

「けどなぁ〜、オレはそんなに鬼じゃないんでね、特別に見逃してやんよ」

(あー、良かった。こんな小さな子を処刑した瞬間に俺、暴れそうだわ)

そうカゲルが安堵していると…

「てな訳だから、少尉、丁度良いお前が投げろ」

「え?いま何と…」

「そいつを塀の向こうに投げろって言ったんだ」

耳を疑ってしまった

「いや…、まだ子供ですし…」

「俺の命令が聞けないって言うのか?親父に言いつけんぞ」

カゲルの胸ぐらを掴んでヘルメッポはそう言った。

「…っ、わかりました」

了承をすると、カゲルはリカちゃんの方へと歩いて行き屈むと耳元で

「…塀の向こう側に誰いる、そいつらに助けて貰って…」

「え?」

呟いた後塀の向こうに放り投げた

「…これで良いでしょうかヘルメッポ様?」

「へっへっへっ、良くやったぞ少尉。んじゃ、任務に戻んな。」

カゲルの行いで上機嫌になったヘルメッポはズカズカと基地に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

ヘルメッポが見えなくなるまで待った後に

「あ〜、何だよ親子揃いも揃って!

はぁ、後であの子に謝りに行こう…」

「大変だな、海兵のおっさん」

「ん?あぁ、そー言えば君も居たねゾロ君。ま、仕方ないさ、これがオレの此処での地位だからね」

「それより、あの子は無事なのか?」

「あぁ、それなら塀の向こうに二人くらいいたしね、どっちかが助けたさ。それより、オレは大佐の命令で町に行かなきゃいけないんで、またな」

そう言って手をヒラヒラさせて立ち去っていった。

 

 

 

 




感想などありましたら、どうぞよろしくお願いします


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4話

更新日が遅れて申し訳ありません。諸事情がありまして。
それと、皆様のおかげで1000UAを突破出来ました^_^
本当に感謝しております(≧∀≦)


--シェルズタウン 町中--

「はぁ〜、今月何回目だよ、この集金に来るのはよ…。あっ、申し訳ありません、税金の徴収です。……御協力ありがとうございます。それと、すいません。私では、大佐に意見できないので…」

カゲルは申し訳なさそうに税金の徴収に回っていた。

「あぁ、こっちにも生活がかかっているんだが、モーガン大佐がいる事で海賊共が近づかないからな…。それに、少尉さん。あんたがこうして集金しながらも謝ってくれるから俺たちゃ、海兵を恐れはするものの、嫌いにはなれんのさ。ま、元気だしな!」

今しがた集金をした八百屋のおじさんに励まされ、カゲルの心は少し軽くなった。

「そう…ですか…。では、まだ仕事が残ってるので私はこれで。」

照れ隠しのため、帽子を目深く被るとその場を後にした。

 

「あんな人がここの支部長なら、この町はもっと賑わっていたのかね…」

その一見頼りなさそうな背中を眺めつつ、八百屋の主人はそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

「さて…、もう集金は終わったか。

昼飯もまだ食べてねぇしな…。あ、そー言えば、この近くでリカちゃんが手伝いをしているレストランがあったな。謝罪がてらに行ってみるか。」

やはり、罪悪感があるようで件のレストランへとカゲルは向かった。

 

 

 

 

 

 

 

カラン♪カラン♪

「あ、いらっしゃいませー♪あ!海兵のおじさんだ!」

リカちゃんは元気に接客をしていたが、その声に反応して店中の客がカゲルへと視線を集めたが、その海兵がカゲルと分かると何事もなかったかのように食事へと戻った。

「あぁ、リカちゃん。お手伝いご苦労様。悪かったね、さっきは投げてしまって。」

苦笑いをしつつリカの頭を撫でた。

「ううん、だってあのお兄ちゃんがリカのこと助けてくれたから!」

そう言ってリカが指指した席には麦わら帽子を被った少年と丸メガネをかけた少年がこちらを見ていた。

「君たちか…、何はともあれ助かった礼を言う。」

カゲルが礼を述べると麦わら帽子を被った少年が

「いいってことよ。おっさん海兵なのにいい奴だな。」

そう明るく述べた。すると今度は丸メガネの少年が

「えぇ、本当に。この町では海軍が恐れられる対象なのに貴方には誰も怯えてない。きっと貴方がいい人だからかもしれないですね」

と、言ってきた。流石に、これにはカゲルも顔が少し紅くなっていた。

「いや〜、ははっ、照れるな。俺はそんな奴じゃねぇよ」

照れ隠しのつもりか店の奥の席へと座った。

 

しばらくしてカゲルが食事を楽しんでいる時

バンッ!

勢いよく店のドアが開いた

 

「へっへっへっ、おい、酒を持ってこい」

カゲルとは離れた位置から何ともまぁ鼻に付くようなヘルメッポの声が聞こえた。

チラリと視線を向ければ予想通りヘルメッポが御付きの海兵を連れてどかっとソファーに座りテーブルに足を乗っけていた。バレたら厄介な事になるのであらかじめ持っていた外套を羽織った。そして、あの声を聞きたくないので耳栓までして、知らない風を装った。少し経った頃、ドゴン!ガシャーン!とヘルメッポが座っていたであろう席から大音量が聞こえた。見ると、先程の麦わら帽子を被った少年が丸メガネの少年に抑えられながら尻もちをついているヘルメッポへと近付こうとしてた。見ればヘルメッポは頰を抑えており、恐らく殴られたようだ。

その後すぐに、ヘルメッポは何かを喚いて急いで店を出た。大方「親父に言いつけてやる!」とでも言ったのだろう。

「はぁ〜、頼むからモーガン大佐が動くような事するなよ…」

そんなカゲルのぼやきは誰にも聞こえなかった。




次話では時間通り日曜の21時に更新できるように頑張ります…


感想、評価、質問などなどお待ちしております。


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5話

麦わら帽子の少年が、あろう事かヘルメッポを殴り飛ばした影響で店内はざわめいていた。

「お、おい…どうすんだ…」

「ヤバい…モーガン大佐がお怒りになる」

「あぁ…あぁ…」

まぁ、モーガン大佐はこの町で恐れられているからこの反応も仕方ないだろう。次第にカゲルの座る場所へと視線が注がれていった、のだが、そこにカゲルの姿は無く、テーブルの上に数百ベリーと『まぁ、何とかなりますよ』と書かれた紙が置いてあった。

 

 

 

カゲルの姿はというと、基地の屋上にあった。

「よーし!引けー!」

モーガン大佐の号令に合わせて大きな石像を引っ張り上げていた。

「これは俺の偉大さを表す石像だ!つまり、これは俺自身なのだ!もっと腰を入れて引けー!」

『はっ!モーガン大佐!』

ゆっくりとではあるが確実に起き上がってゆく石像、しかし…

ゴンッ…

石像は両腕を広げた形なのでどっかしらにぶつかるのは目に見えていた。

「あぁん?貴様…ぶつけたな?これを俺自身だと分かったうえで」

ウッカリー三等兵は石像の腕を屋上の出っ張りにぶつけてしまったのだ

「も、申し訳ありませんモーガン大佐!」

ウッカリー三等兵はすぐに謝罪をするが、モーガンはそれを許す筈も無く

「俺の像を傷つけたお前は死刑だ!」

そう言って斧を埋め込んだ左腕をふりあげだ

 

 

 

 

 

その時、

「ゴムゴムの〜ロケット!」

何かが建物の陰から飛び出して来た

「うん⁉︎なんだ!」

これには、モーガンも驚いて振り上げ腕を止めた。そして、飛び出して来た何かは

「うわ〜!行き過ぎた!あ、丁度いい」

腕を『ゴム』のように伸ばして、モーガン石像の頭部を掴んだ。急な負荷がかかり倒れそうになる石像を抑えるために海兵達は縄を目一杯引っ張ったが石像の方が耐えられず首から折れてしまい、そのまま頭部が落下してしまった。

『…………………』

モーガンを含めて海兵一同は唖然としていた。

そして、その状況を作り出した本人 麦わら帽子の少年は

「あ、ごめんなさい。」

謝った。しかし、この一言でみんな我に帰り、

「あの小僧を殺せ!」

モーガン大佐はかなり頭にきたようでその場にいた海兵に指令を出した。もちろん、カゲルもその場にいるので、この指令に従い麦わら帽子の少年を追いかけた。

 

 

かくして、海軍第187支部を舞台にした麦わら帽子の少年

モンキー・D・ルフィと海兵達の追いかけっこが始まった。

 

「待てー!侵入者!」

「うわー!いっぱい来たー!」

 

ルフィの逃げ足は速かったらしく、なかなか追いつけなかった。そして、入り組んだ構造を利用して海兵達を次々ととまいていった。

 

「ぜぇぜぇ、どこだー!侵入者ー!」

ドタドタ…

「ふぅ〜、危なかった。さてと、ゾロの刀はどこかな?」

角に隠れていたルフィは、海兵達が過ぎ去ったのを確認すると目的を果たすため動き出した。どうやらゾロの刀を探しているようだ。

そんなルフィのことを影から見ている者がいた。何を隠そう、カゲルだ。

「急に出てきたと思ったらあいつ、ゾロの刀を探していたのか…。う〜ん、教えてやりたいが、立場上な…。うん?あそこにいるのはヘルメッポじゃないか、あ、少年に捕まって連れて行かれた。」

この状況で静観をしていた。




感想、評価、質問などなどお待ちしております。


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6話

読者の皆様、本当に申し訳ありませんでした。
今後も、このように投稿が遅れる場合には、あらかじめ予告するようにします。


ヘルメッポがルフィに連れて行かれて行くのを影から見送った後、角からスルリと姿を現したカゲルは、

「さて、あの少年が探しているゾロの刀はヘルメッポの部屋にあるわけだが…『うわー!撃つんじゃね〜!』(ドタドタ!バタン!)…どうやら、目的の部屋にたどり着いたようだな。うしっ、行くか。」

そう呟くやいなや、ヘルメッポの部屋に向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーヘルメッポの部屋の前ーー

 

ドンドン!ドンドン!

「ヘルメッポ様!無事ですか!返事を!」

ヘルメッポの部屋の前で海兵が二、三人ほどいて、何度もドアを叩いて、部屋の中へと声をかけていた。そこへ、カゲルは近づいていく。

「侵入者は見つかりましたか?」

「あ、少尉!えぇ、侵入者はヘルメッポ様を盾にして、この部屋に立てこもりました。」

本当は、予想がついていたのだが、後から、何かしら言われるのが嫌なので、あえて…

「そうでしたか!では、私も呼びかけてみます。」と、恰も今知ったかのように振る舞った。

しかし、いくらノックをして呼びかけても中からは何も反応がない。

「中からは何も聞こえませんね…。よし、このドアを壊して中に入りましょう。この場合は仕方のないことです。」

本当は、中がどんな面白いことになっているのかを見たいだけなのだが、それをヘルメッポの安全のためと言い張って、ドアを壊すのを海兵達に同意させた。

「た、確かにヘルメッポ様の安全のためだ。だが、誰がドアを壊すんだ?」

「私がやりましょう。私なら、このドアを体当たりで壊すことが出来ます。」

「本当ですか少尉?ならば、お願いします。」

「わかりました、では、行きます!」

カゲルは一瞬にしてその姿を消した。

そして………ドゴンッ

次の瞬間には、ドアが音を立てて砕けた。

衝突の勢いのまま、部屋に転がり込み、侵入者であるルフィを捕らえようとするが、その姿はなく、割れた窓が目の前にあった。

一瞬、何が起きたのかわからず、ポカンとしていたが、直ぐに我に帰り割れた窓へと近づいた。

すると突然、「撃てー!」パパパパン!

モーガンの号令と沢山の銃声が響いた。

そして、麦わら帽子を被った人物が銃の射線上に身体を滑り込ませた。

(あぁ、撃たれたなアイツ…)

直感的にそう感じた。そして、これから目の前に広がるであろう光景を想像しまいとして、軽く頭を振った。だが、彼は海兵だ。そのような光景は何度も目にすることになる。せめてあの少年の顔を覚えておこうと考え、処刑場に目を向けた。その時…

「効かーん!」ビョ〜ン!

元気な掛け声と、およそ人の体からは発せられない音を響かせ、銃弾を跳ね返した。

これには、カゲルも唖然とした。あの少年がなんらかの悪魔の実を食べたであろう事は予想していたが、まさか銃弾を跳ね返せる程の能力とは思わなかった。

「マジかよ…、アイツも能力者か…。こりゃあ、モーガン大佐でも相手にするのはキツイな。」

そんなことを呟いていると…、

「カゲル少尉、侵入者は!?」

「ん?あぁ、侵入者なら、ほら、あそこに」

そうして、処刑場を指差した。

「な!?いつの間に!少尉、どうしますか」

「とにかく、処刑場に急ぎましょう。ヘルメッポ様は…、とりあえず、二人程で医務室に。さぁ、行動開始!」

『はっ!』

ドタドタドタドタドタドタ…

海兵達は、慌ただしく部屋を後にした。

そして、カゲルは…

「さてと、どうしよ?」

どこに行こうか一人、部屋に残された状態で考えていた。

 




次の投稿は8月に入ってからになります。
感想、質問、評価などなどお待ちしております!
7/23 投稿びの変更
リアルの方が忙しいので、事前に告知していた日に投稿できませんでした。本当に申し訳ありません。


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7話

更新が遅れたこと、本当に申し訳ありません。
内容も短いです。


ーー支部長室ーー

ガチャガチャ…ガチャッ…

「う〜ん、なんで開かないのよ…」

誰もいない筈の支部長室で、一人の女が金庫を開けようと弄っていた。

ガチャッ…ガチャ…

「う〜ん…、どうしよう」

「まさか、もう一人侵入者がいたとはね」

「!?」

慌てて女が振り返ると、扉にもたれかかるようにカゲルが立っていた。

「海兵⁉︎全員、外に出た筈じゃあ⁉︎」

女の疑問はもっともである。

事実、ほとんどの海兵が侵入したルフィ達の元に向かったのだから、本来ならば、カゲルも他の海兵と一緒にいない筈のだから。しかし、カゲルはそこに立っている。

「嫌な予感するから、気になって来てみれば…、ビンゴだったというわけか。」

もちろん、嘘である。あまりにも、他の海兵達の行動が迅速だったために、置いてけぼりを食らってしまったのだ。

「くっ…、なんて鋭い感なの…」

しかし、目の前の女は気付かずにいるので、カゲルも訂正する気は無いようだ。

「それで?お嬢さんは、何で支部長室にいるのかな?」

そう尋ねるや否や、カゲルは緩んだ表情を引き締めると、相手に向けて威圧を放ち始めた。

「…っ⁉︎」

その威圧をもろに受けた女は、腰が抜けたのか、その場に座り込んだ。

その様子を見て、カゲルも威圧するのをやめた。

「ふぅ…、慣れない事すると疲れるな。んじゃ、お嬢さん、捕縛するからちょいと大人しくしといてくれよ。」

カゲルは侵入者の女に近づいていった。

「それにしても、何で支部長室に…。ん?」

女を捕縛しようとしたカゲルは、金庫が空いていることに気づいた。

(まさか…)

金庫に近づいて、中を覗いてみた。

すると、中には紙が一枚丸められて入っており、それを開くと

『海図は頂いた --道化のバギー--』

「なっ!?いつの間に!」

金庫の中身はこの紙以外にはなかった。

落胆しつつ、女を捕縛しようとしていた事を思い出し、後ろを振り向くと…

「フンッ!」 ゴチンッ!

「…クッ…」

ドサッ…

棒状の武器を振り下ろされ、カゲルの頭にヒットし、そのまま意識を落とした。

そして、カゲルが気絶するのを確認した女はそそくさと退散した。

 

 

 

 

 

 

ーー数分後ーー

「………っう」

激しい頭痛に見舞われながらも、カゲルは目を覚ました。

「痛っ……、あのお嬢さん、逃げる為とはいえ、あの威力はないだろ…」

幸いなことに、出血はしてなかった。

「はぁ〜、外の方がどうなったか見てみるか」

よっこいしょと言い、腰を上げると支部長室から出て、廊下にある窓から外の様子を伺った。

 

 

 

 

 

 

 




次の更新は、翌週の日曜を予定しています。
感想、評価、質問、誤字などなど、お待ちしてます。


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8話

お気に入りが100件を突破しました!
読者の皆様、本当にありがとうございます。


侵入者の女--ナミ--に気絶させられてから、数分経った後に意識を取り戻したカゲルは外の様子を伺うため、窓の方へと向かった。

 

窓から処刑場を除くと、立っているのはルフィとゾロ、後はコビーだけであった。背中合わせで立っているルフィとゾロの視線の先には、倒れ伏したモーガン大佐や他の海兵達と、何故かヘルメッポがおり、この支部に居るものの、ほとんどが倒されたのだと容易に理解した。

「ありゃま、ほとんど全員が倒されちゃったかぁ。さて、どうするか…」

同僚達が倒されてもなお、カゲルの態度は変わらなかった。

「窓を突き破っていけば、あいつらを捕まえることは可能だが…、モーガン大佐の手柄になりかねんからな…。よし、ゆっくり行って、モーガン大佐&ヘルメッポ以外を助けよう。」

そう言うや否や、カゲルは歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

--カゲルが意識を取り戻す数分前--

処刑場ではモーガン大佐とルフィが対峙していた。

「身分も称号も無ぇ奴が俺に指図するんじゃねぇ!俺は海軍大佐"斧手のモーガン"だ!」

「俺はルフィ、よろしくな」

突如として戦闘が始まった。

モーガン大佐はその右手に義手のように装着した斧を振り回し、ルフィに攻撃をする。このモーガン大佐、大佐と呼ばれるだけあって、斧を振り下ろせば地面に亀裂が入り、横に薙ぎ払えば、空気を切り裂く音が耳に届く。

しかし、そのどれもがルフィに当たることはなく空を切るだけであった。

一方のルフィは、モーガンの攻撃をかわしつつ、パンチを当てていった。

そして…、

「ぐぁっ!」

ルフィの放った蹴りはモーガンの顔を捉え、その巨体を地に倒した。

ルフィは倒れたモーガンの胸ぐらを掴み、その顔を殴った。

「何が海軍だ!コビーの夢をぶち壊しやがって!」

そう言うと、また、モーガンの顔を殴った。すると、そこに…

「待て、麦わら!これを見ろ!」

しかし、ルフィは見ない。

「待てつってんだろ!アホか!」

そこには、メガネをかけた少年--コビー--に銃を向けているヘルメッポがいた。

「コイツの命が惜しかったら動くんじゃね!ちょっとでも動いたら、コイツを撃つぞ!」

ヘルメッポはルフィを脅した。

しかし…

「ニヒヒッ」

ルフィは笑った。

何故なら…

「ルフィさん!僕、ルフィさんの邪魔をしたくありません!死んでも!」

「ああ、知ってるよ。諦めろバカ息子、コビーの覚悟は本物だぞ。」

コビーが覚悟を持ってここにいる事を知っていたからだ。

そして、ルフィは左手を右肩に置き、殴る構えをしつつヘルメッポの方へ近づいた。

「動くなー!動くなつったろ!う、撃つぞ!」

ルフィがパンチの射程内にヘルメッポを捉えたその時、

「う、後ろー!」

倒れていたモーガンが起き上がり、その左手を掲げていた。

「"ゴムゴムの〜"」

しかし、ルフィは後ろを見ずにヘルメッポを捉えていた。

「俺は海軍大佐"斧手のモーガン"だ!」

「お、親父!早くソイツを!」

モーガンの右手がルフィの頭上から振り下ろされた。

「"銃《ピストル》"!」

ルフィの放った拳は、見事、ヘルメッポの顔面を捉えた。

そして、モーガンの斧は、ルフィの頭上スレスレで止まっていた。

「ナ〜イス!」

「ぐっ、ぁあ…」

「ゾロ♪」

ルフィが拳を放つのと同時に、モーガン大佐をゾロが切っていたのだ。

「お安い御用だ、キャプテン」

そして、今度こそ、モーガン大佐は倒れた。

 




初めて戦闘シーンを描いてみました。
誤字、質問、評価などお待ちしております。


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9話

一月ぶりの投稿となります。
どうぞお楽しみください!


「お〜お〜、凄まじいこって…」

ようやく処刑場に着いたカゲルは、気絶している海兵と、それを介抱する海兵達を見て呟いた。

ルフィ達とモーガン大佐の勝負に決着が着いてから10分ほど経っているがまだ意識を取り戻さない海兵もいた。

「ん?カゲル少尉、今までどこに居たんだ!」

と、リッパー中佐がカゲルに気付き、声を掛けた。

「あ、リッパー中佐。いや〜、色々とありまして…。ちょっと向こうで話しません?」

カゲルは、頭をかきつついつもの困ったような笑いを浮かべていたが、一瞬その表情が真剣なものとなった。

「⁉︎、分かった向こうで話そう。」

モーガンに次ぐ階級に位置していたリッパー中佐は、その変化を感じ取り、カゲルの提案に応じた。

「いや〜、助かりますわ。ココだと話しづらか「テメェら!誰の許可を得て俺に触れてやがる!離しやがれ!」っ!」

突然、怒鳴り声が響いた。

見れば、気絶していたはずのモーガンが目を覚まし、拘束しようとした海兵達を振り払っていた。

「不味い、もう目を覚ましたのか!」

これには、リッパー中佐も焦っていた。

「中佐、おれが何とかしてましょう。」

この事態に対して、カゲルが名乗り出た。

「っ!出来るのか少尉」

「えぇ、何とかしましょう。」

「だが、距離があるぞ?どうするのだ?」

何とかする、そう言ったカゲルの言葉に表情が明るくなったが、少しとはいえ、離れたところにいるモーガンを止める方法が分からなかった。

「一つ、この基地のだれにも言ってない事があります…」

「な、何のことだ?」

「それは…、おれが悪魔の実の能力者って事です。"瞬雷"」…バチッ

何かが弾ける音とともにカゲルの姿がリッパー中佐の目の前から消えた。

(っ!消えた⁈ まさか!)

モーガンのところに目を向けると、そこにはモーガンの身体に手を当てたカゲルの姿があった。

「"伝雷--縛"!」バチバチバチッ!

瞬間、モーガン大佐の身体を電流が迸った。

「ぐぁっ…!きっ…さま…!少、尉!」

「モーガン大佐…、あんたは確かにこの基地の中じゃ一番の権力者だ。命令権があるのも当然だし、どんなルールを決めても構わない…。」

痺れて動けないモーガン大佐を前にして、カゲルは今までモーガン大佐に思っていた事を静かに吐き出した。

「だがな…、正義を掲げてる海軍が、町の住民に悪政を敷いちゃいかんだろうが!」

普段はのらりくらりとした態度を取っているカゲルがここまで言うのを見た事がある者は数少ない。それだけに、周りにいた海兵達は固まっていた。

「ぐっ…ぅあ…!お、れに…少尉ご…ときが…指図す、るんじゃ…ねぇ!」

しかし、傲慢なモーガン大佐には、カゲルの言葉は響かなかった。

恐らく、カゲルも分かってはいた。だが、せめて少しでも反省の色を見せて欲しかった。

「そう…ですかい…。せめて、牢屋の中ででも反省してくれ…。」

ドゴンッ!

カゲルはモーガン大佐の腹に一撃を入れ、再度その大柄な身体を地に沈めた。

「ふぅ〜、ほら、モーガン大佐が気絶したんだから早く手錠をかけて拘束してくださいな」

いつもと変わらない、へらっとした表情を浮かべたカゲルは固まっている周りの海兵達にそう言った。

「え…と、少尉?さっきの電撃は?」

ふと、一人の海兵がカゲルが先程使った電撃について尋ねた。

「ん?あぁ、コレ? おれは"バチバチの実"を食べた帯電人間でね。さっきのはその能力ってとこ。」

カゲルは『あ、忘れてたわ』とでも言うかのような軽さでそう宣言した。

「「「「えぇー!?」」」」

当然、海兵達は全員驚いた。カゲルの能力と、それを使った本人の実力に…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

--???視点--

ここは、偉大なる航路にあるとある街の海軍支部。

カリカリカリカリッ

カリカリッ

その支部長室で女性が一人で何かを書いていた。と、

コンコンッ「大佐、失礼します。」

ガチャッ

一人の海兵が入ってきた。

「只今、東の海の海軍支部で支部長が絡むトラブルがあり、支部長を拘束したとの連絡がありました。」

大佐と呼ばれた女性は

「そうですか、では、詳しい報告の為にそちらから海兵を一人…、あぁ、『カゲル少尉』をこちらに寄越す様に伝えてください。」

「は、はぁ…。了解しました。では。」

バタンッ

海兵が退室するのを見届けた彼女は、先程の真面目な顔を崩すと少し艶を含んだ笑みを浮かべた。

「ふふっ、また会えますねカゲルさん♡」

 




さぁ、新たな人物が登場しました。
さてさて、彼女は何者なのでしょうか!

感想、質問、評価などお待ちしてます。


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10話

今回は長めの文になります。



--モーガン大佐拘束より数日後--

朝日が昇る少し前、あいも変わらずカゲルは日課の素振りを行なっていた。

そして、一連の流れを終えた後、刀を収めると、ふと、自らの両手を見て、握っては開く動作を何度か繰り返した。

(先日、基地に侵入してきた少年も悪魔の実の能力だったらしい。それもゴム人間。おれとの能力の相性が悪い。この東の海には能力者はあまり存在しないが、偉大なる航路じゃあ化け物みたいな奴らが多い。このままだと、任務の最中に死ぬかも知れない…)

「とは思ったものの、偉大なる航路での任務なんて早々、まわってこないし暫くはここに配属されるだろうからな〜」

カゲルはその能力を持ったことによって力に溺れると言ったことはしない。しかし、何処かしら抜けている部分があり、そのせいで能力と普段の姿が一致しないのだ。だが、先日の一件で、海兵達の認識は変わった。変わったのだが……、当の本人がこの様じゃ、些か信じられない。

「さて、朝日が昇りそうだし、戻りますか」

今日もカゲルの一日が始まるのであった。

 

 

 

 

さて、モーガン大佐が拘束された事によって、この基地ではいくつか変化が起きた。まず、この基地の責任者にリッパー中佐がおさまった。この件に関しての不平不満はなかった。次に、雑用として新兵が増えた。先日の侵入者であったルフィと一緒にいた、丸メガネの少年--コビー--、それと…

「くそっ、何でオレ様まで雑用なんか…」

意外な事に、バカ息k…モーガン大佐の息子のヘルメッポが一緒にいた。

そして…、

「あ、おはようございます!カゲル大尉!」

そう、先日の件からカゲルの階級が少尉から大尉へと昇格したのだ。

「あ〜、うん。おはようさん。しかしまぁ、本部の方には、まだ報告してないから仮の階級だけどな。」

苦笑いを浮かべながら、カゲルは挨拶を返した。

「でも、カゲルさんの実力なら佐官になってもおかしくないんですけどねぇ。何で、それ以上の昇格を辞退したんですか?」

ふと、挨拶をした海兵はカゲルに尋ねた。

「ん?あぁ、佐官になると東の海でも高めの賞金首を相手にしなきゃいけないし、下手すれば、何処かの支部の管理を任命されちゃうし、そう言うことがやりたくないのよ」

要は、『めんどくさいからやりたくない』ということである。

「はぁ、そうですか…。けど、賞金首の相手は、どの階級であってもありますよ?特に、カゲルさんが強いって事は、この支部の全員が知っている事なので、リッパー中佐も貴方に優先的に回すと思いますよ。」

「うへぇ、そりゃ嫌だね…、まだ死にたくないし」

「あはは、何言っているんですか、貴方に勝てるのなんて、この東の海じゃあ、"ノコギリのアーロン"くらいなモンですよ。あ、いや、アーロンでもカゲルさんが勝つ可能性が…」

「それこそ嫌だね…、それじゃ、おれは、行くから」

「あ、では、また」

そう言って、敬礼をされながらカゲルはこの場を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

--支部長室--

以前までいた部屋の主人の姿はなく、別の人物がその椅子に座していた。

コンコンッ

と、誰が訪ねてきたようだ

「リッパー中佐、カゲルです。」

「ん、入ってもいいぞ」

ガチャッ

「失礼します。」

「あぁ、急に呼び出してすまないな」

どうやら、カゲルはリッパー中佐に呼び出されていたようだ。

「別に構いませんよ。それで?要件とは?」

「あぁ、先日の件を報告したんだが、第77支部基地でもトラブルがあったらしくてな、また後日ということになった。それで詳細を報告する為と君の昇格を正式に認定するために、偉大なる航路にある海軍支部に向かって欲しいのだが…、向かってくれるか?」

カゲルは目を見開いた。まさか、自分が偉大なる航路への任務を命じられたからだ。

「あの〜、本気ですかい?電々虫じゃダメですかね?」

「報告だけならそれでもいいのだが…、昇格の件は、なるべく本部に近い支部での認定が必要になるのでな、という訳で、向かってくれ。」

「はぁ…、了解しました。それで、その支部ってのはどこの町ですか?」

「あぁ、グランドラインにある春島の町らしくてな、何でも、最近支部長になった大佐が居るんだが、それがかなりのやり手らしくてな、その容姿にちなんで"紅の女大佐"と呼ばれて居るらしいぞ」

「へぇ〜、女性なんですね。」

「あぁ、くれぐれも失礼のないようにな」

「了解しました。では、明日から向かいます。」

再度、敬礼をしてカゲルは退室していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

--???大佐 視点--

グランドラインの春島、とある町の海軍支部基地、その支部長室にて紅色の長髪を後ろで結わえた女大佐が座っていた。彼女は、東の海で起こったトラブル報告のための海兵を待っていた。

その横顔には、窓からの光が当たり、

とても神々しくも思えた。その凛とした表情からは、微塵の焦りも感じられず、ただその時を待ち構えていた。

と、

コンコンッ

「大佐、報告のための海兵が参りました。」

来た。彼女は、緩みそうな口角を我慢した。

「そうですか…。では、どうぞ」

ガチャッ

「失礼します。」

部下である少佐に続いて一人の海兵が入ってきた。が…

(あれ?カゲルさんじゃない? え?)

大佐は一瞬ポカンとしたが、すぐに表情を戻したため、気付かれなかった。

「えと、所属と今回の報告をお願いします。」

「は!海軍第77支部基地所属、カケル少尉であります!」

(え?カケル少尉?しかも第77支部?

カゲルさんは第153支部じゃ?)

大佐が困惑している間に、カケル少尉は報告をしているのだが、右から左へと流れてしまっていた。

「〜〜〜〜と言うわけです!以上が今回の報告となります。」

「へ?あぁ、はい。わかりました。報告ご苦労様です。後ほど、記録として報告書をお願いします。」

「は!では、失礼いたします!」

そう言って、カケル少尉と部下の少佐は退室した。

その後、大佐の部屋から、苦悶に満ちた声が聞こえて来たと言う。

 




ここで、カゲルのデータを公開したいと思います。

カゲル (32歳) 海軍 大尉
悪魔の実:バチバチの実
能力:自身や、その持ち物に帯電させたり、電気を放電する ことができる。


感想、評価、質問等よろしくお願いします。


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11話

FGOに熱中してました。謝罪します。
お詫びとして、今回は二話投稿します。



クワー…クワー…

青い空、白い雲、そしてカモメが飛ぶ。海面は穏やかで、波の一つもない。ここは"偉大なる航路"と東西南北の四つの海を結ぶ海、通称"凪の海"

その海を一隻の海軍船が航行している。その甲板で一人の海兵が空を見上げていた。

「天気は快晴、波も穏やか、流石は"凪の海"噂に違わない静けさだ。実際は海王類達の巣窟らしいが、一匹も見当たらないな。」

そう呟くと海兵--カゲル--は、辺りを見回した。

と、一人の将校がカゲルに近づいて来た。

「"凪の海"は初めてですかな?カゲル大尉。」

「ん?えぇ、何せ第153支部からあまり出たことがありませんからね、ゴーワ大佐」

「ハハハッ、そうかそうか、大いに楽しめ!」

そう言うと、ゴーワ大佐はカゲルの背中をバシバシと叩いた。

「しかしまぁ、ウチの支部長も困ったものだ、報告のためにわざわざ海兵を寄越せなどと言いおって…」

「確か、"紅の女大佐"って呼ばれてる人でしたっけ。」

「そうだ、まだ若いが…実力は確かだな、わしじゃ勝てんな。」

「ほぅ、貴方も相当な実力をお持ちだと思いますが?」

「よせやい、確かに肩書きに見合った実力を持ってはいるが、あの娘っ子の前だと霞むさ。何せ、あやつは近々准将への昇格が考えられているくらいだからな。」

ゴーワ大佐は、どこか遠い目をしつつカゲルに答えた。

「そう言えば、段々とあったかくなって来ましたね。もうそろそろ島が近いんですかね?」

「む?そうだな、もうそろそろ島に着くと思うぞ。コートの準備をしておけ、わしと同じ大佐ではあるが、立場はわしやお前さんよりも上だからな、ちゃんとした格好をするのじゃよ。」

「しばらく袖を通してないので、変な気分ですがね…。ところで、これから会う支部長の名前を知らないのですが、教えてくれませんか?」

と、カゲルはここまで聞けなかったことを聞いた。

「なんじゃ、お前さん知らなかったのか?ウチの支部長の名前はグラナータだ。」

「え、グラナータ大佐?」

「そうじゃ、グラナータじゃ」

「………………………帰ってもよろしいか?」

「なぜじゃ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

--グラナータ大佐視点--

(はぁ〜、まさか第77支部の海兵が来るとは…、あぁ、カゲルさん、早く昇格して偉大なる航路の支部に配属されてください…)

"紅の女大佐"の異名を持つグラナータは現在、自室にて机に突っ伏していた。

普段の支部長としての彼女は女傑と言われるほど優秀なのだが、いかんせんまだ若いため、たまに精神的に不安定になってしまうのだ。

「はぁ、最近、昇格の通知が来てたわね、まずはそれから頑張らないとね。」

自らの頬を叩いて気を引き締めると、いつもの凛とした表情に戻った。

すると、扉がノックされた

「大佐、報告の為の海兵が支部長室で待っています。準備が出来たら支部長に来てください。」

「(あれ?まだいたかしら?まぁいいか)わかりました、その海兵には少々

お待ちいただくようにお伝えください。」

「はっ!了解しました。では。」

スタスタッ……

「さて、報告の為の海兵はもう来ないはずだけど…、まぁ、大事な用だと大変だから行きますか。」

そう言って、グラナータは支部長室へと向かった。

 

 

 

 

 




続きの話をお楽しみください。


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12話

今回は二話投稿ですので、前のお話を読んでいない方はそちらからどうぞ。


時が遡ること数刻前…

「オーライ!オーライ!そのまま……よし!止まれ!」

ここは、グランドライン春島『ブロッサ島』そこに、カゲルを乗せた軍艦が着港した。

「はぁ…着いてしまったか…」

「ハハハッ、何を落ち込んでおるカゲル大尉。ほれ、行くぞ!」

普段とは違い、コートを羽織っているカゲルの姿は、普通ならカッコよく見えるのだろうが、その落ち込んだ姿により、いつも通りのカゲルの姿となっていた。

「それにしても…」

ふと、カゲルは周りを見渡した。

「この島はかなり活気がありますね。」

「む?おぉ、ここは春島じゃし、何より支部長であるグラナータ大佐が頑張ったからな!」

「そうですか…、確かに彼女が好きそうな雰囲気の街だ」

ゴーワ大佐からの返答を貰ったカゲルは表情を柔らかくし街を眺めた。

「ふむ……、気になっておったが、お主と支部長は知り合いなのか?」

ふと、ゴーワ大佐が疑問に思っていたことを聞いてきた。

「えぇ、彼女とは私が軍曹の頃にとある島で出会いまして、その後しばらく保護していたんですわ。」

「おお!そうじゃったのか!しかし、何故グラナータ大佐の名前を聞いた時に帰りたいと言ったんじゃ?」

「あ〜、いや……、その、なんか彼女に嫌われている見たいで、時折、きつく当たられるんですわ。」

「ほ〜う、まぁ、ええじゃろ。よし、支部基地に行くぞ!」

そんなこんなで、カゲルはゴーワ大佐と共に支部基地へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

--支部基地--

海軍基地グランドライン第15支部

通称"G-15支部"

その建物の大きさにカゲルは驚いていた。

「流石は偉大なる航路の支部基地だ…、規模が違う。」

「ハハハッ、驚いたようで何よりだ。偉大なる航路ともなると、海兵の質と層が求められるからな、自ずと支部基地自体もでかくなるわけじゃ」

と、

「御苦労様です!ゴーワ大佐!」

門の見張りと思わしき海兵がこちらに向けて敬礼をした。

「うむ、早速だが支部長への報告のために東の海から海兵を連れてきた。

中へ案内してくれ。」

「はっ!かしこまりました。では、こちらです。」

そう言うと、見張りの海兵はカゲルを中へと案内した。

しばらく歩いて行くと

「こちらが支部長室です。『コンコンッ』グラナータ大佐!報告の為の海兵をお連れしました!」

しかし、中からの返答がなかった。

「あれ?おかしいですね、いつもならこの部屋にいるのですが…」

案内の海兵とカゲルが疑問に思っていると、

「あぁ、グラナータ大佐ならさっき自室に行きましたよ。」

偶々、通り掛かった海兵がそう伝えた。

「そうですか。では、中で待つことってできますかね?」

「ん?えぇ、大丈夫かと。では、中でお待ちください。」

そう言うと、案内の海兵はカゲルを支部長室に入れ、わたしは、これで

と、退室して行った。

一人残されたカゲルは緊張と色々な感情が混じった状態で立っていた。

しばらくすると、こちらに向かってくる足音が聞こえた。足音はこの部屋の前で止まり、ドアが開かれグラナータ大佐が姿を現した。

「すみません、わざわざ報告の為に来てくださ…ったの…に」

カゲルの顔を認識したグラナータはドアを開けて部屋に入ろうとした姿のまま固まった。そして、お互い無言で見つめ合っていた。

「ひ、久しぶり…グラナータ」

先にカゲルが沈黙を破って声をかけた。すると、

「あ、え、あ?カゲルさ、ん?」

…ギーーーバタン…

何故か一度、ドアを閉められた。

カゲルには、何が起きたのかわからなかった。腹を括って、面と向かったのだが、ドアを閉められたのだから。

「……あの〜、報告…したいんですけど…」

その呟きに答えるものはいなかった。

 




主人公とヒロインの初対面はこんな感じになりました。

感想、評価、質問などなどお待ちしております。


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13話

気がつけば、お気に入りが300件を突破していました。
読者の皆さん、本当にありがとうございます。


「………」

「………」

グランドライン第15支部

通称"G-15"支部

その支部長室にて、カゲルとグラナータ大佐は対峙していた。

「………あの」

「………は、はい」

「報告をしたいのですが…」

「ど、どうぞ…」

なんとも気まずい雰囲気でお互いとも黙っていたものの、此処には報告に来たと言うことを思い出したカゲルにより止まったかのような時間が動き出した。

「では…、今回の一件は------」

カゲルは、先程までの雰囲気が嘘のように報告をしており、グラナータ大佐もまた、徐々に落ち着きを取り戻し、上官として、カゲルの報告を聞いていた。

「-----。以上が第153支部で起きた一件の全容になります。」

「分かりました。ありがとうございます。」

「ハッ!」

一通りの報告を終え、カゲルは一度、グラナータ大佐に向けて敬礼をした。

「そう言えば、もう一つ要件があるそうですね?」

「あぁ、この度の一件でわたしの階級が少尉から大尉に上がりまして、その認定を、という事で…」

と、グラナータ大佐は表情を少し緩めた。

「そうですか、おめでとうございます。」

「まぁ、支部大尉ですから素直に喜べないのだけれどね。」

「それでもです。カゲルさんは、昔から昇進欲が余りありませんからね。」

「手厳しい限りです。」

グラナータ大佐の指摘にカゲルは参ったなと言わんばかりに頭をかいた。

「はぁ…、変わりませんね、貴方は。実力は十分にあるのですが、あまり出世をしたがらない為に今のように中堅どころの地位についている。」

「まぁ、努力はしてますよ。しかし、勤務地は"東の海"ですからね、そこまで凶悪な海賊は余り居ないんですよ。」

「はぁ…、何はともあれ、昇格おめでとうございます。後程、認定の書類を送ります。」

「了解しました。では、わたしはこれで。」

そう言って、カゲルは退室しようとした。

「あの!」

「ん?どうしました?」

グラナータ大佐はカゲルに声をかけて呼び止めた。

「あ…、いえ、帰りの道中はお気をつけて。」

「えぇ、それでは。」

バタンッ--

カゲルが退室をし、部屋の中にはグラナータ大佐だけが残って居た。

「はぁ…、食事…誘いたかったな…」

机に突っ伏したグラナータはそう呟くと、カゲルが出た扉を見つめた。

(カゲルさんは、余り変わってなかったなぁ。まぁ、そこがあの人の良いところなんだけどね。)

「…フフッ」

カゲルのことを考えると自然と笑みが零れた。

「さてと、あの人の昇格の書類をまとめなきゃね」

そう言って、グラナータ大佐は、第153支部基地から送られて来た資料に目を通した。

「さてと、『カゲル少尉の階級を"本部大尉"とす』え?"本部"⁉︎カゲルさん、まさか資料を読んでないんじゃあ…

つ、伝えないと!」

そう言って、グラナータ大佐は部屋を飛び出していった。

 




感想、評価、質問などなどお待ちしております。


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14話

---港町---

「今朝獲れたばかりの魚だよ!さぁ、買った買った!」

「瑞々しい果物を売ってるよ!よかったら買ってみな!」

「そ〜ら、もうすぐ焼き上がりだ!

串焼き一本200ベリー!買った買った!」

グランドライン春島『ブロッサ島』

その港町はたくさんの人で賑わっていた。

「それにしても、凄い賑わい様だなこれは…」

グラナータ大佐への報告を終えたカゲルは港町を散歩していた。

「おう!海軍将校の兄さん、あんたこの町は初めてか?」

と、『正義』と背中に書かれたコートを羽織ったカゲルは目立つようで、先程から町の住民に声を掛けられていた。

「えぇ、この島には任務で来たんですが、その任務が済んだので、こうして町を散策しているわけでして」

「ふ〜ん、そうかい、それじゃあ楽しんでいきな!」

「えぇ、そうさせてもらいます」

そう言って、カゲルは軍艦が停泊している港へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして数分後---

タッタッタッタッ!

「はぁはぁ…あ、あの…」

「ん?うぉ?!大佐さんじゃないか!一体、どうしたんですかい?そんなにも息を切らして」

カゲルに伝えないと行けないと大慌てで走ったグラナータが現れた。

「あ、あの…ですね…」

「とにかく、一度呼吸を整えてくだせぇ」

「あ、はい…(スー…ハー…)先程、海軍将校のコートを羽織った男性を見ませんでしたか?」

「うん?コートを羽織った男ねぇ…、あ、もしかして任務で来たとか言ってた兄さんの事ですかね?」

「!その人は今どこに!」

「み、港の方へ行きましたけど…」

グラナータの勢いのある反応に驚いたものの、男はカゲルの行き先を伝えた。

「ご協力、感謝します。では」

そう言ってグラナータは港へと走っていった。

「……あの大佐さんでも急ぐことってあるんだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

---軍艦にて---

一隻の軍艦が今まさに出航の準備を進めていた。

「さてと、あとはシェルズタウンに戻るだけか…」

その軍艦の甲板でカゲルは一人つぶやいていた。

「グラナータ…、久しぶりに会ったが、元気そうだったな。今じゃあ、俺よりも階級は上だし、町の人からも慕われていたな…。」

(拾った頃とは大違いだ…)

カゲルはふと、昔のことを思い出していた。

「出航ー!」

カゲルが思い出に浸っている間に出航の準備が進められ、軍艦は港を離れた。

「さてと、船室に入るか」

カゲルが船室へと入ろうとしたその時

「-----!」

何処からか声が聞こえた

「うん?」

「-----ん!」

「何処だ?」

「--ゲ--さーん!」

ふと、ブロッサ島の方角を見た。すると、なにかがこちらへ向かって飛んで来ていた。

「な、なんだ?」

「カゲ--さーん!」

「あの声はまさか…」

こちらへと近づくにつれてソレがなんなのかがわかって来た

「カゲルさん!」

「え!?グラナータ!?」

ソレは"月歩"を使ってこちらへと向かってくるグラナータだった。

スタッ

「はぁはぁ…やっと追いつきました…」

「えーと、なんでここに?」

「ち、ちょっと待ってください…息…整えるので…」

「あ、うん」

カゲルはグラナータの息が整うまで待った。

「ふぅ、整いました。」

「それで、改めて聞くけど、なんでここに?」

「それは、この書類の件でです。」

「ん?それはおれの昇格の書類だよね?何か不備でも?」

グラナータはカゲルの昇格について書かれた資料を見せた。

「不備もなにも、カゲルさん、この書類をちゃんと読みましたか?」

「えーと、一応は…軽く…」

グラナータの指摘にカゲルはそっと目をそらした。

「はぁ、その反応だと最後まで目を通してませんね」

「面目ないです…」

「良いですか?この資料には"支部"大尉への昇格ではなく、"本部"大尉への昇格と書かれています。」

「え?本当に?」

「本当です。加えて、勤務地の異動も書かれてますよ?」

「嘘…」

グラナータから伝えられた内容にカゲルの頭は追いつかなかった。

「はぁ、貴方って人は…」

グラナータも呆れたとばかりの反応を示した。

「ははは…、俺のことは分かったとして、グラナータ、きみは支部基地を放置してもいいのかい?支部長だろ?」

「あぁ、それなら、私もカゲルさんの異動先に用があるのでこのまま一緒に行きます」

「そうかい。それで、異動先って何処なんだ?」

「"東の海"ローグタウンです」

 




さて、次回に幕間の様なものを挟んでローグタウンでの物語に突入します。原作の時間軸ですと、今はルフィ達がバラティエでサンジを仲間にしようとしているところです。

感想、評価、質問などなどお待ちしております。


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幕間

*今回は若干、胸糞の悪い展開となっています。ご容赦下さい。


(熱い…苦しい…)

ゴゥ…ゴゥ…パチッ

(熱い…熱い…熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い!)

少女は目を覚ました。そして見た。大量の瓦礫を、燃え盛る炎の群れを。

「逃げなきゃ…」

何で燃えてるの?どうして?そう疑問が浮かぶ前に少女は歩き出した。少しでも炎から遠ざかるために。

「お母さん…みんな…どこ…?」

少女は探した。自身の他に誰かいないか、助けてくれる誰かがいないか。

しかし、歩けども歩けども、辺りには炎と瓦礫の山のみ。

「お母さん…みんな…どこ!ッ…ゲホッゲホッ…」

辺りに立ち込めた煙を吸ってしまい少女はむせた。

と…

「たす…け、て…。た、すけ…て」

「ッ!」

少女のすぐ近くで、誰かの声が聞こえた。声のした方へと目を向けると、自分と同じくらいの少年が瓦礫の間に挟まっており、その額からは血が流れていた。

「あ…」

その少年の顔には見覚えがあった。彼は近所に住んでいる少年で、よく一緒に遊んでいた。

「いまっ…助けるか…ら」

少女は勇気を振り絞って瓦礫の山に近づいた。

「大丈夫っ…助けるから」

「----ちゃん?…----ちゃん助けて、僕、動けなくなっちゃった…」

少女は少年の手を握って、「大丈夫…大丈夫…わたしが助けるから」

と言った。そして、少年の周りの瓦礫を少しずつ退かしていった。

しかし、子供の力だけで退かせる瓦礫には限界があった。

「はぁ…はぁ…何で…動かないの」

「----ちゃん、寒いね…、あとね、眠くなっちゃった…」

「え?…」

「寒い」こんなに火の手が上がっているのに、「寒い」少年は確かに言った。

「ダメッ…寝てもダメ、あともう少し、あともう少しで出れるから…助かるから!」

少女は先程より、強引に瓦礫を引っ張った。そして、瓦礫の一部をどかす事に成功した。だが、それが引き金となったか、はたまた、元からだったのか、瓦礫は大きな音を立てて崩れた。ようやく、少年を助けられる。そう思った少女の期待を押しつぶすかのように崩れ去り、さらに駄目押しとばかりに燃え盛る柱も重なった。

少年の断末魔は聞こえなかった。恐らく、瓦礫が崩れると同時に生き絶えたのだろう。

「あぁ…あ、あぁアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!」

しかし、少女の精神をを抉るのには十分すぎる破壊力を持っていた。

そして、少女はその場から逃げるように走り去っていった。

途中、何度も助けを求める声が聞こえたが、少女の恐怖心をさらに掻き立てた。そうして、気がつけば町外れの荒地で気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!」

軍艦の船室でグラナータは目を覚ました。しかし、その顔には疲労の色が浮かび、汗をかいていた。

「はぁ…、嫌な夢を見た…」

もう一度眠りにつこうとしたが、先程の夢のせいでなかなか寝付けないでいた。

「少し、夜風に当たりましょうか…」

そう言って、彼女は私服のコートを羽織ると、夜風に当たるために甲板へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

---甲板----

コツ…コツ…

月夜に照らされ、凪模様の海と相まって、静かな雰囲気の甲板には誰もいなかった。

その甲板をグラナータは一人で歩いていた。来る途中で見張りの海兵ともすれ違ったが、『少し夜風に当たりたかった』と答えれば、すぐに去っていった。

「ふぅ…、それにいても嫌な夢だったわね…」

先程の夢…、いや、昔の記憶を見た事で、グラナータは感傷的になっていた。

「やっぱり…、忘れられないわね…。」

と、グラナータが一人で呟いていると、

「おや?グラナータじゃないか」

誰かが声を掛けてきた。その声の主を確認するため振り向くと

「あ…、カゲル…さん。」

そこには、カゲルが立っていた。

「どうしたんだい?こんな夜更けに甲板に出て。」

「あぁ、いえ、目が冴えてしまったので、すこし夜風に当たりに…」

先程みた夢のことをカゲルには知られたくないため、そう答えた。

「……ふ〜ん、『目が冴えた』ねぇ…。まぁ、何にせよグラナータも夜風に当たりに来たのか。」

「カゲルさんもですか?」

「ん?あぁ、そうだね。それで、甲板にグラナータが居たからね、驚いたよ。」

「意外ですか?」

グラナータは少し苦笑いを浮かべつつカゲルに聞いた。

「あぁ、意外だね。そうだ、せっかくだから、少し話をしないか?。」

「?構いませんが…、どうしてまた?」

「いや、何となくだよ…、何となく。」

「はぁ…、まぁ、構いませんが。」

「そうこなくっちゃな」

グラナータに提案を受け入れられたため、カゲルは嬉しそうな笑みを浮かべた。

それから、二人は暫く話をしていた。最近の出来事、自分の体調や、思っていること、そして、"二人が出会った時のこと"。時間にして、一、二時間程ではあったものの、それだけで、グラナータの心を覆っていた不安などはいつしかなくなっていた。




今回は、幕間としてグラナータの過去を取り上げてみました。グラナータは戦争孤児になります。その後
、カゲルと出会いますが、二人の出会いについては、また次の機会に…
感想、評価、質問などなどお待ちしております。


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16話

本日からローグタウン編をお送りします。
それと、年内だと最後の投稿となります。



およそ20年前、今よりも海賊が少なかった頃…

東の海のとある町で、"ある海賊団の船長"が処刑された。しかし、船長の最期に放った一言は、時代そのものを動かした。後に、大海賊時代の幕開けと称されたこと出来事により、その町はこう呼ばれるようになった…

「『始まりの町ローグタウン』ね…、まぁ、あの処刑での事が無くとも、この島は、"偉大な航路"の入り口が、近いからね、二重の意味でもそう呼ばれてるんだろう。」

ブロッサ島から到着したカゲルは一人、港を歩いていた。

「さてと、海軍の詰め所に行って、挨拶でもしてきますか…」

カゲルは、この度本部大尉と昇格し、それに伴い、第153支部から、ここローグタウンの支部へと異動となったのだ。

「それにしても、グラナータの用事って何だろうな?先に行ってしまったし……。まぁ、道中で久し振りに話もできたし、いいかな。」

ここまで、グラナータ大佐も一緒に来たのだが、彼女の用事のため別行動となっている。それに関しては、カゲルも同意の上だったので、特に気にしてはいない。そんなこんなで、カゲルは海兵を探すため、町の中心部へ向けて歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---グラナータ視点----

『では、私は要件を先に済ませるのでここで別行動にしましょう。』

そう言ってカゲルと港で別れたグラナータは現在、通りを歩いていた。

「さて…、あのお店は何処にあるかしらね…?」

そう呟きながら、通りを歩くグラナータの格好は、いつものスーツ姿では無く、Tシャツの上からワイン色のジャケットを羽織り、下はスキニーパンツと普段着の格好で出歩いていた。

彼女の管理するブロッサ島でなら、顔を覚えられているが、当然、ローグタウンの住人は彼女が海兵である事を知らない。

暫く通りを歩いていると…

「あっ、見つけた…」

グラナータは目的の店を見つけた。

その店の看板には、三角のコーンに乗った丸いスイーツが描かれていた。

そう、まごう事なき、アイスクリーム屋である。女性であるグラナータは甘いものには目がないのだ。

「ふぅ…、要件自体は派出所に書類を届けるだけでいいのですが…、せっかく、ここまで来たのですから、甘いものでも食べたくなるものですね。」

半ば言い訳にも近いのだが、そんな事は御構いなしと、アイスを買う列へと並んだ。

 

 

「ふふっ、やはり三段にして正解でしたね。どれも美味しいですし、何より、こう…、なんとも言えない優越感がありますからね」

三段アイスを購入したことにより上機嫌となったグラナータは暫くの間、町を散策していた。

と…

「すいません!すいません!本当にすいません!」

何やら、大声で謝る女性の声が聞こえた。

「…?何かしら?ちょっと行ってみましょう。」

グラナータが気になって、声のした方へと行くと、アロハシャツを着て、刀を持った女性が、柄の悪い男二人に謝っていた。

「ごめんなさい!ワザとじゃないんです!」

「てめぇ…!ふざけんじゃねぇ!」

「そうだ!どうしてもって言うなら、誠意を見せなきゃなぁ、誠意をよぉ…」

柄の悪い男の片方は、ニヤニヤとした笑みを浮かべて、手でお金のマークを作っていた。

「っ!治療費を渡したいのは山々なんですけど…お金がなくて…」

「あぁん?金がねぇだと?ふざけんじゃねぇ!」

と、お金のマークを作っている男とは別の方が、女性に向けて拳を振るった。

「っ!?」

殴られた、そう思った女性は身を縮めた。しかし、いつまでたっても痛みはこなかった。何故なら…

「大丈夫?"たしぎ曹長"?」

「あ、貴女は…」

間に割って入ったグラナータにより、男の拳は受け止められていた。

「なっ!?くそ!動かねぇ!」

「なんだよてめぇ!」

自分たちよりも細身の女性に拳を受け止められて男たちは動揺していた。

「う〜ん…、通りすがりの女性かしら?」

「「は?」」

グラナータの謎の回答により、男たちは固まってしまった。

「さて、貴方達この拳を引く気はありませんか?ないなら、このまま捕縛しますが。」

「くっ!………、今日のところは勘弁してやる!ほら!行くぞ!」

「あ、待ってくれよ!」

そう言って二人組は去って行った。

「ふぅ…、なんとか穏便に済んだわね…」

「あの!」

「?」

「ありがとうございます、グラナータ大佐!」

アロハの女性---たしぎ---は、お礼を言った。

「別に良いわよ、偶々通りかかっただけだから。」

「それでもです。それにしても…、何故、グラナータ大佐がここに?G-15支部にいるんじゃあ…」

「えぇ、ちょっと貴女の上司のスモーカー大佐に渡す物があるのでね…、それを届けに来たのよ。」

「成る程、そういうことでしたら、私に案内させてください!」

「えぇ、よろしく頼むわ…」

そう言って、グラナータはたしぎ曹長と共にスモーカー大佐が居る派出所へと向かっていった。

 




クリスマスの番外編をやろうと思いましたが、虚しくなったのでやめました。
独り身って寂しいね!by作者

年内の投稿はこれで終了とします。また来年も宜しくお願いします。

質問、感想、評価などなどお待ちしてます。


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17話

しばらく更新出来なくて、本当にすみませんでした。インフルエンザに罹ったり、試験に追われていたりと、しばらくグロッキー状態になっていました。
それでも、読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。
これからの物語に関して、ちょっとした変更を加えます。
偉大なる航路→グランドライン



---ローグタウン派出所---

たしぎと共に派出所にやって来たグラナータは、目の前にいるマフィアのような男と対峙していた。

「……それで?用件ってのはなんだ?」

マフィア風の男が質問をした。

「その書類に載っている海兵の異動受け入れをお願いします。」

「コイツのねぇ…、用件は分かったが、なんでテメェが居るんだ?グラナータ大佐…、まさかコイツのお守りとかじゃねぇよな」

「まさか…、本部から"スモーカー大佐"への通知文書を持って来たんですよ…。コレです。」

そう言って、グラナータは一枚の紙を目の前の男--スモーカー大佐--へと渡した。

「ふんっ…どうせまた、グランドラインで働けとの文書だろう。いつも通り、却下だと上に伝えてくれ。」

「………わかりました。そう伝えておきましょう。」

「出来るなら、カゲル少尉……いや、今は大尉か…コイツの受け入れもしたくないんだかな…」

「………それは、何故ですか?」

「気に入らねぇんだよ。コイツは持っている力と立っている地位が釣り合ってねぇ…。だが、当の本人はそのことを気にしてもねぇ。そこが気にいらねぇんだよ。」

「あの人は……、ただ死にたくないだけです。」

「この大海賊時代に死にたくねぇって言って死んだ奴はごまんと居る。そんな理屈が通るわけがないだろ。」

「…………そう、ですね。では、用件は済みましたので、私はこれで…」

「あぁ…」

スモーカーからの返答を受け取ったグラナータは部屋から出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---カゲル視点---

グラナータがスモーカーと相対していた頃、カゲルは酒場で食事を取っていた。

ムシャムシャ…

モグモグ……

ゴクン…

「うん、美味い。やっぱりグランドラインの近くの町となると飯も美味いな…」

ムシャムシャ…

モグモグ…

「だか……、ほん……かい?」

「あぁ、絶対………だ!今度こそ…」

食事をしていると、なにやら話し声が聞こえた。ふと、その場所に目を向けると、酒場の一角で全身をローブで覆った集団が何やら話し込んでいた。

(怪しい……あからさまに怪しすぎる…)

海兵であるカゲルはその集団を怪しんでいた。が…

(まぁ、ここはローグタウンだしな、怪しげな集団の一つや二つはいるだろう。それに、悪さをしたらその時に捕まえればいいし。放っておくか。)

「マスター、ご馳走さま。お代ここに置いとくね」

そう言って、カゲルは店を後にした。

「さてと、そろそろ派出所に行ってスモーカー大佐に挨拶しなきゃな。あの人スゲー怖いから苦手なんだけどな…」

本人が聴けば殺されかねない事を呟きながら、カゲルは派出所へと向かって行った。




感想、評価、質問等お待ちしてます。


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18話

ようやく更新ができました。
短めですが、楽しんでください。


--処刑台前--

海軍派出所を目指して歩いていたカゲルは町の中心部にある処刑台の前で足を止めた。

「約20年程前だったか、海賊王があの処刑台で処刑されて、そして大海賊時代が幕明けたのは…」

そう呟いたカゲルは無意識に額を抑えた。

「あはは…、おかしいな、もう傷なんてとっくの前に治っている筈なのに痛いや…」

海兵になってから幾度となく傷を負っていたのだが、カゲル一人だけが助かったあの時の"痛み"が記憶と相まって彼の中で消えない傷として残っていた。

(グラナータには…、見せられないな、こんな姿…)

「よしっ、スモーカー大佐へ挨拶に行くとしますか。」

瞬時に気持ちを切り替えたカゲルは再び派出所へとその足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなカゲルの事を陰から見つめている女性がいた。

「カゲルさん…」

スモーカーへの用事を終えたグラナータだった。

「なんで…、私に一度も相談をしないんですか…」

カゲルの口から直接聞いたことはなかったのだが、夜、一人で涙を流すカゲルの姿を何度か目にしたことがあり、いつも心配になっていたのだ。

(けど…、聞いてしまったら、あの人を傷付けてしまうかもしれない。嫌われてしまうかもしれない。)

カゲルに嫌われてしまうかもしれない。そう思ってしまい、聞けずにいた。

「私じゃあ…ダメ、なのかな……」

ポロリと心の声が漏れた。

「いや、違う。私はあの人を守るために海兵になった。だからここで弱音を吐いたらいけない。」

そう言うと、グラナータはG-15支部に戻るため港へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---海軍派出所---

処刑台前から移動をしたカゲルは、海軍派出所へとやってきた。

「ん?何か御用ですか?」

と、入り口の方にいた海兵に質問された。

「あぁ、ここへと赴任する事になったカゲル大尉です。スモーカー大佐や、他の海兵の皆さんへの挨拶に参りました。」

「はぁ、兎に角スモーカー大佐へと確認を取るのでここで待っていてください。」

そう言うと、海兵は建物の奥へと引っ込んで行った。

「しかし、まぁデカイな、この派出所。ちょっとした支部くらいはあるんじゃないか?」

カゲルは派出所の建物を見上げてそう呟いた。

「シェルズタウンでの勤務とは違って、ここでの任務はリスクが大きいだろうな…。はぁ…、未だに20年近く前の事を引きずっていたままじゃ、グラナータに愛想尽かされるかもな。なら、彼女に並べるくらいの地位と力を付けないとな。」

改めてカゲルが覚悟を決めたその時、

「確認が取れました。どうぞカゲル大尉。奥でスモーカー大佐がお待ちです。」

先程、確認を取るために行った海兵が戻ってきて、カゲルへ中に入るよう促した。

「お、そうですか。では、これから同じ場所で働く海兵として、よろしくお願いします。」

そう言ってカゲルは手を出した。

「ええ、こちらこそ。」

それに対し、海兵もカゲルの手を握り返した。

「では、私は仕事があるのでこれで。」

「はい、私もスモーカー大佐へと挨拶に行ってきます。」

そう言って、カゲルは海兵と別れた。

「さてと、スモーカー大佐との仲が悪くならなければ良いのだが…」

そう一抹の不安を持ちながら、スモーカー大佐の待つ奥へと足を進めた。

 

 




感想、質問、評価などなどお待ちしております。


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19話

久しぶりの次の週更新ができました(苦笑)


バシッ バシッバシン!

「ふっ!」

バシーン!

「っぐ…」

カラン…

「ハァ…ハァ、ありがとうございます。カゲル大尉」

「えぇ、こちらこそありがとうございます。」

今しがた竹刀で打ち合った海兵へと礼を返しながら、カゲルは考えていた。

(どうしてこうなった?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遡る事、一時間前

奥の部屋へと案内されたカゲルは、この派出所の責任者であるスモーカーと相対していた。

「この度、この派出所へと異動することとなった、海軍本部大尉のカゲルです。」

「あぁ…、知ってる。始めに言っておくが、俺はてめぇが気にいらねぇ。」

カゲルの挨拶に対して、スモーカー大佐は少しの睨みを利かせてそう返した。

「……理由を聞いても?」

「簡単だ、何でかは知らんが、てめぇは実力を隠している。本来なら、本部少佐でもおかしくない実力を持っているにもかかわらずだ。」

「……それは過大評価では?」

「いいや、妥当な評価だ。なら聞くが、第153支部に移る前に賞金首を一人仕留めてるだろう?それも単独で。」

「あれは、成り行き上そうなっただけですし、掛けられた賞金も低かったですし…」

「それでも、単独で賞金首を仕留められる奴が、支部の少尉だったなんておかしいじゃねぇか。」

そう返され、カゲルは黙ってしまった。

「ともかく、ここはグランドラインの手前の町だ。今まで見たいに実力を隠したままだと死ぬぞ。」

(…っ!)

「何でもてめぇは死にたくねぇそうじゃないか。実力を出さなければ、その願いは叶わないぞ。」

「……まぁ、そうですね。」

「そこでだ、俺としちゃあ、てめぇの実力を把握しておきたい。俺が指名した海兵数人と模擬試合をしろ。場所はこの派出所の訓練場でだ。あぁ、それと悪魔の能力とかは禁止だ。純粋に剣の腕だけでやれ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

と、カゲルとスモーカーの間でのやり取りの結果、カゲルは海兵数人と模擬試合をしていたわけである。

バシンッ!

「……参りました。」

『お、おい、コレで6人だぞ。』

『いくら大尉でも、息切れ一つ起こしてないとかあり得ないだろ。』

ここまで6人の海兵と連続して打ち合ったが、カゲルは息切れ一つ起こしてなく、その事に周りの海兵達は恐れを抱き始めていた。

「それで?次の相手は?」

落ち着いた様子でカゲルはスモーカー大佐へと尋ねた。

「そうだな…次はー「私がやります。」ーあぁん?」

次の相手を告げようとしたスモーカーの声を遮って、たしぎが名乗り出た。

「やらせて下さい、スモーカーさん」

「まぁ、どの道たしぎには出てもらうつもりだったからな。構わねぇか?」

「えぇ、構いません。たしぎ曹長の剣の腕は確かですからね。」

カゲルからの返答を貰ったスモーカーはたしぎに目を向け、合図を出した。

コクンッ

たしぎもまた、スモーカー大佐からの目線を受け頷き返すと竹刀を片手にカゲルのいる中央へと躍り出た。

そうして、カゲルの前に立つと竹刀を構えた。

「合図は出さねぇ、てめぇらのタイミングでやりな。」

スモーカーからそう伝えられると、カゲルとたしぎはお互いに睨み合ったまま静止した。

お互い、こう着状態のなか、最初に動いたのは……

 




続きは明日にでも更新しようと思います。


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20話

投稿が遅れてしまい、申し訳ありません。
昨日の続きです。


お互いに竹刀を構えたままこう着状態が続いた。その状態を最初に破ったのは……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カゲルだった。

竹刀を正面に構えた状態から踏み込んだカゲルは素早く間合いを詰めると、たしぎの構えている竹刀へと強く当てた。

「…っ!」

そのあまりの力強さにたしぎは、思わず数歩後退してしまった。

そして、一瞬、ほんの一瞬だけ後退する際にカゲルから目を離してしまった。気がつくとカゲルが持つ竹刀が目の前に突き出されていた。

「えっ…」

「勝負ありです。たしぎ曹長。」

カゲルは唖然としているたしぎに向かって、静かに告げた。

「実力の把握は出来ましたか?スモーカー大佐。」

「あぁ、限界は見えなかったが、最低限の実力は把握できた。もう、模擬試合はやらなくていい。」

そうカゲルに言い渡すと、スモーカーは建物の中へと戻っていった。

それに続いて見物をしていた海兵達もそれぞれ散っていき、カゲルとたしぎだけが残された。

「さて、私たちも戻りますか。たしぎ曹ち」

「なんで…」

「え?」

「なんで…、最後に一撃を入れないのですか!」

「なんでって言われても…」

「私が女だからですか!」

「……それは違うよ、たしぎ曹長。」

「じゃあ⁉︎」

「君はスモーカー大佐の右腕だ。怪我でもさせて任務に支障が出るといけない。」

「………」

「それにだ、構えた時に君はいい眼をしていた。あれは『もっと強くなりたい』そう思っている人の眼だ。だから一撃を入れなかった。君はまだまだ強くなれる。また打ち合おう。今度は自分の武器を使って。」

そう言うと、カゲルはいつもの飄々とした笑みを浮かべた。

「はぁ…、今回は私の完敗です。では、私が強くなったらまた試合をお願いします。」

そう言って頭を下げたあと、たしぎも建物の中へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---港---

処刑台前広場でカゲルの姿を見た後、グラナータはG-15支部に戻るため、港へとやってきた。

「おや?グラナータ大佐、早いお戻りですね。」

と、軍艦のチェックをしていた海兵が聞いてきた。

「えぇ、出航の準備は出来てますか?」

「もう少しで終わりますので、船室でお待ちください。」

「そう…。」

そう言うと、グラナータは階段を上がり軍艦へと乗り込んだ。

ローグタウンへと向かう際に、グラナータへと充てがわれた船室へと入ると、ベッドへと倒れ込んで、手近にあった枕を抱きしめた。

(数年ぶりに会えたのに、もうお別れか……。あぁ、もう少し話がしたかったな……。)

「できれば、褒めて……もらいたかったな………。一緒に暮らしてたあの時みたいに。」

処刑台前でのカゲルの姿につられて、グラナータも感傷的になっていた。

と、

コンコンッ

「失礼します。グラナータ大佐、カゲル大尉から小電々虫が来ています。通信室にお越しください。」

「え?」

海兵からそう伝えられたグラナータは、混乱しつつ通信室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、グラナータ大佐、こちらの電々虫です。」

そう言うと、海兵はグラナータへと小電々虫を渡した。

「ありがとうございます?あの……、自室で話して来てもよろしいですか?」

「えぇ、構いませよ。」

海兵からの返答を聞くと、自室へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………カゲルさん、グラナータです。」

『あぁ、やっと繋がったよ。悪いね、ローグタウンまで一緒にいてもらって。』

「いえ……、私もスモーカー大佐には用があったので。」

『そっか……、でも、有難いよ。』

そうカゲルに言われ、グラナータの表情は柔らかくなった。

『数年ぶりに会って、正直驚いたよ。今じゃ、俺よりも立場は上になっているからね。初めて会った頃よりも感情も豊かになったしね。』

「全て……、あなたのお陰ですカゲルさん。あなたが私を拾ってくれなかったら、今の私はありませんから。」

『………迷いは消えたかい?』

「え?」

『さっきまでは、何か思い悩んでいるような声だったけど、今は、柔らかい声になっているよ。』

「あっ……、その、ありがとうございます。カゲルさん。」

カゲルに電々虫越しで心情を悟られ、その羞恥心で顔を赤く染めたグラナータは声が上ずらないよう気をつけつつそう返した。

(あぁ、やっぱりカゲルさんは凄いな……。)

「カゲルさん……、私もっと強くなります。」

『え?あー、うん。頑張って?』

「フフッ……、それでは、カゲル大尉も頑張って下さい。」

『了解です。グラナータ大佐。』

(ガチャ)

そのやり取りを最後に小電々虫は切れた。

「ふぅ……、さて、あの人に負けないように私も頑張りますか。」

そう言うグラナータの表情は先程とは違い、凛々しくも柔らかな表情となっていた。

 




質問、感想、評価などお待ちしております。


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21話

「フッ……フッ……フッ……」

ビュッ……ビュッ……

早朝、あと数分もすれば太陽が顔を出すであろう時間の訓練場に竹刀を振るう音が鳴っていた。

先日、異動されたばかりのカゲルである。環境が変わっても、その身に染み付いたルーティーンを崩す事はなく、こうして竹刀を振るっていた。

「フッ……フッ……」

ビュッ……ビュッ……

「ふ〜」

カゲルは素振りを終えると、息を吐いた。

ふと、自分の手を見た。

(シェルズタウンでは、今の腕前でも通じていた……、だが、ここはグランドラインの入り口。相手になる海賊たちの実力も上がっている。果たして、今の腕前で勝てるのか?)

先日の模擬試合の際に、カゲルが負けることは無かったのだが…

(それに、たしぎ曹長…、彼女には勝ったものの、それがいつまでも勝ち続けられるとは限らない。)

カゲルはたしぎの才能を感じていた。

「やっぱり、強くなるしかないか……」

そう呟くと、段々と明るくなってきた空を見上げた。

「……….そろそろ戻るか」

竹刀を片手に持つと建物の中へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---海軍本部---

カゲルの勤務するローグタウンより、"赤い土の大陸"を越えた先、グランドライン前半の島マリンフォード

人呼んで"海軍本部"ここには、並外れた実力を持つ海軍将校達が多数集まっている。その会議室にて、天然パーマにサングラスを掛けた海兵---ブランニュー少佐---が将校達の前で会議を進行していた。

「---次に、"東の海"にてアーロンパークが壊滅したとの情報がありました。この件の首謀者として上がっている海賊は、"モンキー・D・ルフィ"と言う海賊だそうです。」

「モンキー・D・…?」

「誰なんだ?」

事件の首謀者としてルフィの名前が挙がったが、将校達は誰なのか分からなく、互いに顔を見合わせていた。

「えぇ、初めて名前の上がったルーキーですが、アーロンの他にも、"首領 クリーク"、"道化のバギー"いずれも懸賞金が一千万ベリーを超える海賊を討ち取っていると言う、ネズミ大佐からの情報により懸賞金を三千万ベリーとしようと思います。これは情報提供をしたネズミ大佐からの要請もあります。」

「なっ!?」

「三千万だとっ!?」

「バギーやクリークらの一千万でも異例なのに!」

賞金首達の平均が三百万である"東の海"で、最初から三千万と言う大金が掛けられた事に将校達は驚きを隠せなかった。

「よって、この件については、全支部へと情報を回そうと思います。必ず仕留めるためにも。」

 

ブランニュー少佐の宣言により、ルフィの情報は瞬く間に全世界の支部へと回っていった。それは勿論、カゲルの勤務するローグタウン派出所にも届いていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---麦わらの一味---

「なぁ〜、ナミ〜まだなのか?」

帆に風を受け、順調に走っている海賊船--ゴーイング・メリー号--その船首の上に寝そべっていたルフィは、一味の航海士であるナミへと尋ねた。

「もう少しよ、ルフィ!そろそろ見えてくると思うけど……」

ナミは海図を片手に、水平線の向こうを見ていた。

「おいおい、本当に着くのかよ、ナミ」

と、鼻の長い男--ウソップ--が聞いてきた。

「うん、もうそろそろのはずなんだけど…」

「てめぇ!こらウソップ!ナミさんの言うことは絶対に正しいんだぞ!ねぇ、ナ〜ミさん♡」

ナミに向かって疑問をはいたウソップへと罵声が浴びせられ、金髪にぐるぐる眉毛の青年--サンジ--が近づいてきた。

「うるせぇぞ、ぐるぐる眉毛!」

「なんだと、コラ!三枚におろすぞまりもヘッド!」

そのサンジに対して、ゾロが喧嘩を売るように言い、サンジも喧嘩腰で返した。

「やめなさい、二人とも。まったくもう…」

この二人の言い合いにナミは頭を抱えた。すると、

「?おっ!島だ!島が見えたぞー!」

船首で寝転んでいたルフィは勢いよく起き上がると、仲間たちに向けてそう言い放った。

「楽しみだな〜、どんなところだろう?」

「ローグタウン、グランドラインへの入り口で別名"始まりと終わりの町"よ。そして、海賊王ゴールド・ロジャーが生まれて、処刑された場所でもあるのよ。」

「海賊王が処刑された町か……、なんか、ワクワクするな!」

そう言って、ルフィは目を輝かせていた。

 

 

 




ようやく、ローグタウン編へと入れそうですε-(´∀`; )
感想、評価、質問などなどお待ちしております。


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22話

長らく更新できず申し訳ありませんでした!


「そう言えば…、カゲル大尉」

朝の日課の素振りを終えたカゲルに、たしぎはふと尋ねた。

「あなたが腰に差しているその刀…、見たことがありませんが、銘はあるのですか?」

カゲルの腰に差している刀を指差すと、そう質問した。

「うん?あぁ、コイツか。それが俺も分からないんだ。何せ、貰い物の刀だしな。刀に詳しいたしぎ曹長が一目ではわからないとはな。」

「ふむ、少し見せていただけませんか?」

「あぁ、構わないよ」

そう言って、カゲルは刀をたしぎに手渡した。

カゲルから刀を受け取ったたしぎは、おもむろに観察を始めた。

「うーん、柄は黒色で鍔の形も円形で、これと言った特徴はありませんね。重さもやや重いくらいで…。」

「抜いても?」

「どうぞ」

「刃渡りも普通ですね…、ただ、刃文は特徴的ですね。なんと言いますか、禍々しいかと……。うーん、やはり分かりませんね。」

「ありゃ、そうかい。」

「お力になれず申し訳ありません。」

たしぎはカゲルに刀を返しつつ、力になれなかったことを謝罪した。

「あぁ、良いって、分からない事は誰にだってあるしさ。」

カゲルは気にするなと言うように手をひらひらさせた。

「そうですか…、あっ!そう言えば、今私の"時雨"を調整に出していて、そこの店主に聞けば何か分かるかもしれないです。」

「へぇ…、たしか、たしぎ曹長の刀の銘だったね。あの刀は業物って聞いたことがあるけど、その調整が出来るほどの腕のある店主か…」

「そうなんです!少々偏屈な方ですが、腕は確かです。」

「成る程ね。確かたしぎ曹長はこのあと見回りだろう?地図を描いてくれれば自分で行くよ。」

「はい、少し待っててください。」

そう言うと、持っていたメモ用紙にサラサラと店の住所や周りの特徴を書き込むとカゲルに渡した。

「うん、たしかに。それじゃあ行ってみるよ。」

そう言ってカゲルは訓練所を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、メモだとこのあたりのはずだけど……」

たしぎから貰ったメモを頼りにカゲルは町中を散策していた。

「うーん…、何処だぁ…。おっ、あった。」

しばらく町中を探していると、ようやく目的の店を見つけた。

「お、あったぞ『ARMS SHOP』見たところ武器屋のようだけど、たしぎ曹長が調整を依頼するくらいだからな、刀にも詳しいのだろう。」

そう言うとカゲルは店に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

「はい、いらっしゃ……、なんだよ海兵かよ…。」

「客に対して、その態度はないでしょうに…」

入店したカゲルを迎えたのは、店主のいっぽんまつの不機嫌な挨拶であった。そのあまりの太々しさに苦笑いを浮かべていた。

「それで?あんたは見ない顔だが、この店に何の用できたんだ?」

一切の営業スマイルを浮かべようとはせずに、いっぽんまつはカゲルに尋ねた。

「あぁ、たしぎ曹長から貴方の話を伺ってね、少しこの刀を見てほしんだ」

「刀だぁ?ちょいと見せてみろ」

カゲルはいっぽんまつに腰に差した刀を見せた。

「どれどれ……、鍔も柄も普通…、『カチャッ』刃はっと…、刃文は荒荒しく波打って…ッ!」

刃文を見たいっぽんまつは明らかに動揺しだした。

「ん?どうしました?」

「お、お、おい!若僧!こ、この刀を何処で!」

「いや、貰い物の刀なんで、何処でとは……」

「い、いいか!よく聞け、この刀はな!鬼徹一派のものだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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