沢田綱吉、逆行。 (ちびっこ)
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プロローグ

タイトル思いつかなかったのでそのまま。
私は女体化は書けないと思ってたんだけどなぁ。
死にかけたら変わるものですね。
後、最近作品を読んでないから、もし似た感じのものがあったら教えてね。消すから。
誤字脱字はあると思う。いつものことですね。
iPadで書いたから、最初とかに余白ないです。めんどかった。いつか直す。多分ね。


では、私の合言葉を。
無理だと思ったらすぐにUターン!ストレスが溜まるだけですよ!


オレが今日死ぬってずっと前からわかってたって言ったら、みんな怒るかな。ユニほどじゃないけど、オレの超直感がずっとそう訴えてたからオレは心残りはないけど、やっぱりみんなが悲しむ顔を見るのは辛いや。

 

「10代目……」

 

はは。久し振りに獄寺君が泣いてるのを見たよ。オレの右腕だからって起伏が激しかったのに抑えるようになったもんね。まぁオレ達しか居なかったらふざけあったりはしたけど。それでも泣いてるところを見るのは随分昔のことだ。

 

「ツナァ……」

 

こっちも懐かしいなぁ。ずっとボンゴレって呼んでいたのに、ガキのころの呼び方に戻ってるよ、ランボ。お前は大きくなっても泣き虫だったよな。お前が一番若いんだからしっかりしてほしいんだけど……。でもランボらしいかな。

 

「沢田、極限起きるのだ!」

 

無茶言わないでくださいよ、了平さん。でも無茶振りのこの明るさに随分と救われたな。それにオレより年上だからって言って、オレ自らが動こうとした仕事を奪っていきましたよね。オレに兄が居れば、こんな感じなのかなぁ。

 

「ツナっ!」

 

そんな辛そうな顔しないでよ、山本。オレ結構生きたと思うんだ。後悔もないし。あ、でも……山本がプロ野球選手で活躍するところは見たかったな。そりゃお兄さんも思うところはあるけど……やっぱりお兄さんにはどこか甘えてるのかな。山本は自分で選んだっていうけど。野球の道をなくしてしまったのは申し訳なく思うよ。オレが死んで落ち着いたら野球の監督とかしてほしいな……。

 

「……ボス」

 

泣かないで、クローム。なんとか力を振りしぼって、クロームの頭を撫でる。女の人に泣かれるのは一番くるからと思って頑張ったけど、もっと泣いちゃった。ごめんね、クローム。

 

骸、そこにいるんだろ。死にかけてるからって言っても、オレの目は誤魔化せないからな。クロームのこと頼んだよ。……お前との約束守れたかな。ボンゴレを継ぐって決めた時にした、黒のマフィアを全部潰すっていう約束。……最期なのに、溜息つくなよ。

 

「あなたほど、バカなマフィアは僕は知りませんよ」

 

それ褒めてるのかな。………褒めてるんだろうな。ありがとう、マフィアなんて嫌いなのに、オレの言葉を信用してついてきてくれて。そう言ったら、利害が一致したまでですとかお前は言うんだろうな。

 

「……君が死んだらつまらない」

 

ポツリと聞こえた声に、少し笑ってしまった。……ああ、拗ねないでくださいよ、ヒバリさん。群れることが嫌いなあなたがここに来てくれただけでオレ嬉しかったんです。だってヒバリさんが群れてまで現れる時はオレが迷ったりどうすればいいかわからなくなった時ですから。本当にピンチになったら現れるヒバリさんはオレのヒーローでしたよ。

 

オレは最期の力を振りしぼって口を開く。

 

「リボーン……後は頼んだ」

「……バカツナが」

 

ありがとう、最期にその言葉を聞きたかったんだ。オレの心を読んだのか、リボーンはボルサリーノを深くかぶり直した。オレ、ダメツナだったけどお前のおかげで胸を張って死ねるよ。そりゃあの時はいろいろ文句ばっかり言ってたけど、振り返るとお前が来てからのことからしか思い出せないんだ。それだけ濃い日常っていう意味もあったんだろうけど、楽しかったんだ。お前と会えて本当に良かったよ。

 

……ああ。もうここまでだな。みんな、今までありがとう。

 

 

 

 

 

 

沢田綱吉。ボンゴレファミリーのボスだった彼は50歳という年齢で命を落とした。彼は数ヶ月前に自分の病に気付き、ボンゴレや白蘭の力をもってしても治せないことを超直感で知っていた。師であるリボーンだけには伝えてあった。最期にリボーンが守護者を強制的に集合させ、ツナがひっそりと亡くなろうとしたことを防いだ。

 

 

 

 

 

 

 

ここ、どこだろ?

 

「デーチモよ」

「プリーモ!?あれ?ここってもしかしてボンゴレリングの中?」

 

超直感で導き出した答えにプリーモも満足したように頷いた。……そっか、オレの一部はここに残るんだ。ボンゴレの試練の時に歴代のボスが居たんだった。

 

「栄えるも滅びるも好きにしろとオレは言った」

「え、あ。はい」

 

結局どうなんだろ。ボンゴレ自体はオレの方針に従わないところは離れていったけど、付いて来てくれる人も居たから、そんなに変わってないと思うんだ。プリーモのような自衛団にはならなかったけど、警察とは協力関係を築けたし……。

 

「だからデーチモがボンゴレで何をしても構わなかった。だが……ボンゴレリングを継げるものが居ないのは問題だ」

「へ?」

「デーチモもわかっているだろう。トゥリニセッテの問題になるのだ。しかしボンゴレリングは血筋しか受け付けない」

 

そういえば……オレしか居ないからボンゴレファミリーを継ぐ羽目になったんだっけ。オレ、子ども作ってないよ……。

 

「どうしよー!やっちゃった!?」

「ああ」

 

そこは否定して欲しかった……。

 

「ボンゴレは縦の時空軸」

 

確か、過去から未来への伝統の継承。昔ユニから教えてもらったっけ。

 

「その力を使ってお前を過去に戻そう」

「えーーー!?なんでオレが!?」

「デーチモのミスだろう」

 

……そうでした。

 

「本来の力とは違った使い方をする。多少世界に影響を与えるかもしれないが、このまま継ぐ者が居ないより遥かに世界が安定する」

「世界に影響って……」

「もう一度お前にこの言葉を送ろう。栄えるも滅びるも好きにせよ」

 

ハッと息を飲む。オレは未来を知っているからこそ、プリーモはこの言葉を送ってくれたんだ。オレが前と同じ道を歩まなくてもいいと伝えてくれたんだ。

 

「お前には辛い道になるかもしれない。お前以外は覚えていないからな」

「あはは。大丈夫、また友達になればいいから」

「……そうか。デーチモよ。後は任せた」

「はい」

 

光が溢れ、オレは流れに身をまかせるように目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

……多少って言ったよね!?多少じゃないから!オレ、なんで女の子なのーー!?




沢田綱吉。
身内の前では気が抜けたのか、ダメツナがひょっこり出る。
そして、やらかした。


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幼少期


オレ、前世では沢田綱吉という名でボンゴレファミリーのボスをやっていました。今世では沢田ツナという名で女の子をやってます。意味わかんねー!?

 

はぁと溜息を吐いていると、家綱が睨んできた。あ、家綱はオレの双子の兄。これもオレが過去に戻った影響らしい。家綱は事あるごとに眠ってるのに何でも出来るオレを疎んでる。言っとくけど、情報量の多さに身体が休もうとしているだけだから!オレだって起きていたいの!……今ならリボーンが昼寝していたのがわかる。オレ赤ん坊の時はびっくりするぐらい眠ってたみたいだからね。母さんじゃなかったら、絶対病院に連れ回されていたよ。

 

とにかくオレは今世では女だし、同じ日に生まれたって言っても兄が居るから家綱がボンゴレボス筆頭になるんだと思うんだよね。父さんだって、巻き込むならオレじゃなくて家綱を選ぶと思う。オレ、今世も母さん似で小さいころの母さんとそっくりらしいし。髪の毛は爆発頭じゃなくなったけど、金髪なんだよね。父さんじゃなくて、プリーモの血から来てる。超直感がそう言ってるんだ。

 

あ、家綱?父さん似。髪の毛も普通の短髪だし、色は茶髪。母さんの色だよ。双子なのにここまで似ないのはある意味すげーと思ってる。後、家綱は昔のオレほど酷くないからダメダメ呼びはされてない。まだ小学生だから何とも言えないけど、でもオレよりはましだと思う。だからこそ、昔のオレみたいに諦めるんじゃなくて疎むようになったのかも。正直、了平さんみたいなお兄さんを想像していたから、ちょっとショックなんだけど……。

 

まぁ家綱との関係はこれからなんとかするってことで。超直感でこのままって言ってるけど……。しょ、小学生になってやっとオレは眠くなくなったんだ。どこでも寝るオレを知ってるからか、今まで1人で外に出かけることは出来なかったけど、やっと許してもらえるようになったんだ。

 

「母さん、出かけてくる」

「わかったわ。気をつけてね」

「うん。あ、何か買い物があれば、帰りに寄っていくよ」

 

母さんに偉いわねと頭を撫でられて少し恥ずかしいけど嬉しい。父さんはあんまり帰ってこれないし、オレもボンゴレを継いでからなかなか帰ることが出来なかったから親孝行出来なかったんだよな。だからちょっとでもって思うんだけど、多分それがまた家綱には気にくわないみたいなんだ。家綱のことを思えばやめた方がいいってわかってるんだけど、前世の分もあるから母さんを優先してしまうんだ。

 

「じゃぁ、お豆腐買って来てくれる?」

「うん」

「余ったお金でお菓子を買ってきていいからね」

「母さん!!」

 

ああ、オレだけ贔屓したから家綱が怒ってる。どうしようと思ったら、母さんはなんてことないように笑って家綱にお小遣いを渡していた。チラッと見た感じではオレの方がちょっとだけ多くなる金額。多分お手伝いをしてくれたってことで多くくれたんだ。ここは母さんの好意をそのまま受け取っておこう。なんだか親孝行したいのに、恩が増えてるような……。

 

「い、いってきまーす!」

 

いろいろ思うところはあるけど、まだオレは小学生。あんまり遅い時間まで出かけていれば、母さんが心配する。体は小さいし、何をするにしても時間がかかる。早め早めの行動を心がけないといけないんだ。

 

やっぱ何年も昔だとオレが知ってる街と違うんだよな。それこそヒバリさんが風紀財団を立ち上げてから特に変わった。多少迷いながらも超直感のおかげで見つけることが出来た。そうそうこの不動屋さん。

 

「いらっしゃい。ボク、1人なのかい?」

 

この人がハルの言ってたおばあさんかな。未来に行った時に亡くなったって聞いていたけど、理由がわかったよ……。

 

「うん!おじさんに話があったんだ」

「おじさんとは酷いじゃないの。私はおばあさんだよ」

「でも用事があるのはおじさんの方だから。生粋の地球人のおじさん?」

 

ピクリと反応したおばあさんは、オレを店に入れてから扉を閉めた。その瞬間部屋が隔離されたことに気付いた。

 

「末恐ろしい子だ。それにどこでそれを?」

「前世。オレ、前世でアルコバレーノの呪いを解いたから知ってたんだ」

 

こんなにも簡単に認めたのはオレを殺せばいいと思ってるからかな。超直感が反応していないから、オレは気にせず呪いの解き方を教える。彼は仕方なくやっただけで、悪い人っていうわけじゃない。だから方法があると知って、ホッとしたように息を吐いた。

 

「オレが知ってるのはこの方法だけだから、まだ解けないんだ」

「そうだろう。炎が足りない」

「うん。オレ、今世はボンゴレを継ぐことになるかはわからないけど、呪いを解くことについては協力するから」

「そうか。ありがとう」

「後、ユニのお母さん……アリアさんだったかな。彼女の延命のために、オレの炎をおしゃぶりに込めてみたいんだけど……」

 

外すためじゃなくて延命のために出来るかわからないけど、試してみようと言ってくれた。本当はユニのおばあさん、ルーチェさんの時に出来れば良かったんだけどオレが小さいから間に合わなかった。オレが落ち込んだのがわかったのか、チェッカーフェイスは頭を撫でてくれた。前世も含めるといい歳しているけど、今しか味わえないことだから嫌がらないことにした。

 

「何かあればいいなさい。君の力になろう」

「え!?ほんと!?」

「その様子だとあるのだね」

 

あはは……と誤魔化すように笑う。やりたいことがいっぱいあるのに、出来ない方が多いんだ。

 

「いいだろう。話してみなさい」

「うーんと、骸はすぐにでも助けないといけないし、炎真はいつかわからないから、炎真のお父さんに伝えて……、獄寺君はもう城を出ちゃってるかなぁ。XANXUSはいつだったっけ?」

 

今すぐ思いついたことを話せば、チェッカーフェイスが笑っていた。

 

「前世の君と深い人物のことばかりだね」

 

そんな変なことを言ったかなと首をかしげる。

 

「前世に居なかった兄に任せて、君は何も知らないフリを出来たのに選ばなかった」

「出来ないよ!みんなが苦しんでるってわかってるのにほっとけるわけないじゃないか!」

「そんな君だから私も賭けたと思ったんだ。君は次のアルコバレーノになる覚悟だってあるんだろう?」

 

誤魔化すことも考えたけど、オレは素直に頷いた。前が上手くいったからって今回がうまく行くとは限らない。だからもしもの時はあの時と同じようにオレはアルコバレーノになるつもりだった。

 

「抱え込みすぎないように気を付けなさい」

「え?う、うん」

 

オレは当然のことだと思ってるんだけど……。これ以上は遅くなるから帰りなさいと言われ、慌てて時計を見る。そんな長く話したつもりはなかったけど、思った以上に時間がたっていた。帰りに買い物に行かないといけないし、母さんが心配するかもしれない。また会う約束をして、オレはその日は慌てて帰っていった。

 




沢田綱吉改め、沢田ツナ。
前世のこともあり、母に弱い。またリボーンのスタルパのせいでハイスペック。
ダメツナを演じることも考えたけど、みんなを助けるためにはそんな暇はないと判断した。


チェッカーフェイス
ツナにとって頼りになる人は小学生か、イタリアに居る。
そのためこの人を頼るしかなかった。


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あれから川平さん……迂闊に外で生粋の地球人やチェッカーフェイスとは言えないからね。川平さんと話し合った。オレが場所を覚えていたのはボンゴレにいるXANXUSと黒のマフィアを一掃するために調べたエストラネーオファミリーのシマ。一度骸と一緒に行ったから、人体実験をしていた場所はなんとなくわかる。あいつは顔も出さなかったし何も言わなかったけど、ああ……そこなんだなってその時思ったから。

 

だから先にその2つを川平さんは調べてくれたんだ。XANXUSはもう揺りかご事件を起こした後だった。間に合わないかもとどこかで思っていたのもあったし、たとえ間に合ったとしてもオレも9代目のようにする道しかなかったと思うんだ。次にオレが出来るとすれば、目を覚ましたXANXUSのストレス発散に付き合うぐらいかな。

 

骸はオレが予想した場所にいた。川平さんも言葉を濁していたから、かなり非道なことをしていたんだと思う。オレは前世を経験してるし、ボンゴレの業も知っている。だから言葉にしても問題ないんだけどと思ったけど、川平さんはオレの見た目が子どもだから言いづらかったみたい。アルコバレーノは自分が赤ん坊にしたから割り切れるらしい……。

 

それでも復讐者に目をつけられてる可能性があるエストラネーオファミリーに川平さんが動くのは危険で、オレが潰すことになった。川平さんは申し訳なさそうだったけど、そもそもオレのワガママでもあるし、今世はどうかわからないけど、骸はオレの守護者だったんだ。オレが動くのが当然だ。

 

いろいろ相談した結果、オレは普通に飛行機に乗って移動することになった。川平さんは幻覚でおばあさんと子どもを演じて、孫の友達も一緒に連れて行きたいって母さんを説得したんだ。家綱はオレも行きたいって言ったけど、家綱にかまう余裕があるとは思えないし、川平さんとは初対面。家綱のワガママが通ることはなかった。

 

家綱には最後までオレに恨み言を言っていたけど、いっぱいお土産買ってくるからと言って振り切った。ランボもワガママが凄かったけど、恨むような子じゃなかったからなぁ。どうすればいいのかわからない。2回目なのにやっぱりオレは不器用でダメツナだよ、リボーン……。

 

ちょっと落ち込みはしたものの、川平さんのおかげで飛行機に乗って骸のところまでやってこれた。

 

「大丈夫かい?」

「はい。鍛えてましたから」

 

フードを深くかぶって、息を吐く。川平さんにそうは言ったものの、不安はある。流石に50歳も生きていれば、死ぬ気丸や小言弾がなくてもハイパー化出来るようになっている。でもずっとハイパー化すればオレは多分筋肉痛で気を失うことになる。性別が違うっていうのも少しはあるけど、オレが幼すぎてそこまで筋肉がつかなかったんだ。そのかわり死ぬ気の炎のコントロールはオレの思い通りだった。だから必要な時だけ一瞬死ぬ気の炎を灯すつもりだ。

 

一般人には負けないとは思うけど、銃を使われたら避けるしかない。手に炎を灯したいけどグローブもない。XANXUSはどうやってるんだろう。オレ、うまくいかないんだよな。超直感も何も反応しないことから、やり方が間違ってるのか、そもそもグローブがないと出来ないのかもしれない。前は使えたんだけどなぁ……。

 

「いってきます」

 

川平さんに声をかけてからオレは進んだ。死ぬ気の炎が飛ばせないから、普通に窓から侵入してバタバタ倒していくけど……この感じヒバリさんっぽい。普通じゃない自覚はあるけど、オレあの人ほど強くないから!ただオレが想像していたよりも弱いだけなんだ。もしかしてオレの基準がおかしいのかも。

 

「わわっ」

 

超直感が反応して、慌てて壁の裏に隠れればすぐに銃声の音がした。あっぶねー。相手はマフィアだった、油断禁物。リボーンに知られれば、ねっちょりだよ。また基準をリボーンにしちゃったー!?と心の中でツッコミながらもオレは次々と倒していく。出来るだけ死ぬ気にならないようにしていたけど、徐々に身体がギシギシと痛む。ハハ、懐かしいや。

 

オレの限界が来るよりも先に、誰も来なくなった。超直感に従って骸達を探す。オレの超直感がここと訴えると同時に、嫌な予感も訴え始めた。骸が危険な気がすると慌てて扉をぶち破った。

 

「骸……?」

 

どこかボーッとしながら三叉槍を持った骸がそこに居た。右目は赤く、六の文字が刻まれていた。間に合わなかった……。

 

「ごめん。ごめん。骸……」

 

気付いたらオレは骸に抱きしめていた。

 

「はぁ。相変わらず君は甘ちゃんですね」

「……え?骸?」

「いい加減、離れなさい。邪魔です」

「ご、ごめん」

 

謝りながらも、問題なく会話が続いていることに疑問を持つ。

 

「えっと、骸……?オレのことわかるの?」

「ええ。といっても、この目が無ければわかりませんでしたよ」

「あ!六道の力!」

「そうです」

 

あれ?でも骸は目を得てすぐこのマフィアを潰したんじゃなかった?

 

「いでででで」

 

急に骸に頭を掴まれた。なにすんだよっ!

 

「あなたがボーッとしているのが悪いのです。さっさとここを出ますよ。あなたのことだから憑依弾も壊したのでしょう?」

「あ、うん」

 

骸が前世の記憶を覚えてるから、すっげー話が楽。またどこからか出てきた人達が骸が幻覚でバタバタ倒してるけどいいのかな。や、でも殺してはいませんよとボソッと言ったから大丈夫かな。しばらく悪夢を見ることにはなりそうだけど……。

 

「子どもたちはどうするつもりだったんですか」

「ええっとオレが出ていった後、川平さんがボンゴレにタレコミするって言ってたよ。9代目なら動くと思うから」

「……まぁいいでしょう」

 

気のせいかな。オレが川平さんの名前を出した時に、呆れたような視線を向けられたような……。

 

「では僕が彼らに助けを呼びにいくと声をかけておきます。外に出れば迫害されるとわかっていますからね。彼らが眠っているとわかっていても、下手に外にも出れないはずでしょうから。人数は多いですが、後はボンゴレがなんとかするでしょう」

「そんなに多いのか?」

「そうですね。今回はそこそこ生き残ってると思いますよ」

 

骸は間に合わなかったけど、助かった人がいるとわかってホッとした。

 

「それに僕1人なら何とか生きていけますが、彼らは難しいでしょうから」

「は!?お前、もしかして犬と千種を連れていかないつもりかよ!?」

「当たり前です。彼らは以前と違って、そこまで人体実験は進んでいませんから」

 

え、じゃぁなんでお前はもう……?もしかしてオレがズカズカと乗り込んで行ったから?慌てて骸だけ実験を進めた……?

 

「余計なことは考える必要はありません。僕はこれで良かったと思っています。マフィアの世話になるなんて僕が許しませんよ」

「…………わかった」

 

オレが渋々頷いたのを見て、骸はため息を吐いた。

 

「いいですか。あなたが来なくても同じことになりました。くだらないことを考えている暇があるなら、手と口を動かしなさい。あなたはこれからどうするつもりですか?」

「くだらないってお前なぁ……。はぁ。どうするって?」

「あなたはマフィアに関わりたくないのでしょう。僕が名前を出さなかった時点で察しなさい」

 

お前、この状況でよくそこまで気がまわるな。すげー。

 

「あなたとは頭の出来が違うんです」

「ははっ。オレは今回マフィアになるかなって思ってるよ」

「……なぜです」

「後で詳しく話すけど、ボスになるかはわからない。でもお前と約束しただろ?だからマフィアになる方が都合がいいと思うんだ」

 

骸の足が止まったので、オレも慌てて止まった。

 

「骸?」

「僕は散々あなたにバカだの、お人好し、甘ちゃんと言いましたが、死んでも治らなかったのですね」

「そこまでいう必要ねーじゃん!」

「はいはい。……仕方ありませんね、手伝ってあげますよ」

「え?いいの?」

 

確認すると骸は呆れたようにオレを見た。でもどこか笑ってる気がした。

 

「随分僕も絆されたものです」

「……そうは見えないんだけど」

 

骸に倒されて呻く人達を見ながら思わずオレはツッコミを入れた。

 

 

 

 

 

 

この後、川平さんと合流したオレ達はさっさと逃げ出した。2人はオレとは違って幻術を使えるから、簡単にその場から離れることが出来たんだ。

 

相変わらず骸は暗躍するつもりらしいけど、拠点が欲しいということでオレ達と一緒に日本へ行くことになった。

 

「沢田家綱ですか」

「そう、オレの双子の兄貴。仲はあんまり良くないんだけど……」

「それは助かりました」

「はぁ!?何でだよ!?」

「仲が良くないということはあなたと性格が違うということです。あなたみたいな人が2人もいれば、虫酸が走ります!」

 

ヒバリさんじゃないんだから……と思いながらも、オレが2人いることを想像したのか、骸がブルブルと震えていたから声に出すのはやめた。

 

「そういえば、あなたは誰と結婚するのです?あのボクシング馬鹿の妹ですか?それともマフィアの嫁になると馬鹿げたこと言っていた人ですか?」

 

え、京子ちゃんとハルのことだよな……?特にハルに対してひでぇ……。

 

「でも今回は家綱がいるじゃん」

「また甘いことを言ってるのですか。巻き込みたくないと言って、好いた女には手を出せず。かといって、好いた女じゃないと抱けないなんて、馬鹿でしょう」

「そうなんだけどさぁ……。まぁお前の言いたいことはわかったけど、2人は絶対に無理だよ。いい人、頑張って見つけるよ」

 

どうせ出来ないと思われたのか、肩をすくめる骸にオレも意地になって睨む。

 

「ってか、川平さん、笑いすぎっ!」

 

オレ達の会話を聞いてるのはいいけど、笑うのはやめてよ!?

 

「すみませんね。ですが、彼に教え忘れている君も悪いと思いますよ」

 

あれ?何か骸に言ってなかったっけ?

 

「あなたのフルネームは?」

「あ!そうだっ!骸、オレはツナなんだ!」

「はぁ?知ってますよ。髪は違いますが、顔は変わってませんしね」

 

ええっと、そうじゃなくて!とワタワタしていると、川平さんが口を開いた。

 

「私は一度も沢田さんに彼とは言ってませんよ」

 

骸は川平さんを怪しむような目で見ていたけど、オレが言いたいことが伝わったのか、途中からオレを上から下まで見てから言った。

 

「……僕はお断りしますからね」

「え!?何も言ってないのに、オレ振られたの!?」

 

今世もモテないダメツナライフなのー!?と頭を抱えていると川平さんが爆笑していた。……川平さんのイメージかわっちゃったよ!?




沢田ツナ
なんだかんだ言いながらも、女ということを受け入れてる。今世もモテないと思い込んでしまった。

チェッカーフェイス
作者によって性格が捏造された人。
ツナの手助けをしたいが、今の段階で復讐者にバレればツナが危険な目に合うため下手に動けない人。
骸が現れて一番ホッとしている。

六道骸
目を手に入れたから、前世のことも思い出した。
そのため守護者の中で一番のツナの理解者になる。本人が一番驚いている。
随分ほだされたとは思ってるが、仕方がないとも思ってる。
そして前世のことを知っているからこそ、ツナの相手はお断り。
他の守護者が相手をするだろうというのもある。またその方が面白いとも思ってる人。


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日本に帰って一番驚いたのは、オレが海外に行ってる間に父さんと9代目がオレん家に来ていたことだった。本当はオレが帰ってくるまで居るつもりだったらしいけど、急用が出来て帰ったらしい。特に父さんは泣く泣くだったらしい。オレ、母さん似で娘だから……。

 

その話を聞いて、2人が慌てて帰った理由に心当たりがあったオレは苦笑いするしかなかった。死ぬ気の炎を封じられるのは回避出来たけど、父さんの置き土産を見るとちょっと可哀想かなって思う。

 

「可愛いクマさんだけど、ちょっと大きいわよね」

 

オレの苦笑いはテディベアの大きさに引いていると母さんは思ったらしい。オレがあんまり女の子らしいものが好きじゃないのを知ってるから。

 

「せっかく父さんが買ってくれたんだし、大事にするよ」

「ふふっ。あの人も喜ぶわ」

 

父さんが喜んでくれるならいいかと今回は諦める。昔は苦手だったけど、父さんはオレが出来なかったことをしたから少し尊敬しているんだ。オレは京子ちゃんやハルを守れる自信がなかったから……。

 

テディベアを母さんと一緒にオレの部屋に運ぶ。記憶と少し違ってオレの部屋は少し小さい。多分家綱の部屋があるから。性別が違うから部屋を別々に作ったと思うんだ。

 

「……今度から父さんに大きいのはもうやめてって言うよ」

「そうね。母さんからも伝えるわ」

 

前世の影響で、あまり欲しいものがないオレの荷物は少ない。だから大丈夫だったけど、オレじゃなかったら何も置けなくなってたよ……。

 

「ツーちゃん、何か欲しいものある?」

「え?なんで?」

「イッ君はお父さんだけじゃなくて、お父さんの上司の人からもいっぱい買ってもらったの」

 

そう言って母さんは溜息を吐いた。母さんが困るぐらいだから、家綱は相当買ってもらったのかもしれない。あ、でもだから家綱はテディベアを見ても何も言わなかったんだ。オレの方がもらってるって感じで。

 

「欲しいもの、ね」

 

オレが欲しいのはグローブなんだよな。母さんに頼んでも意味がない。でもオレがないと言えば、母さんは困ると思うんだ。何かあったかなぁ……。

 

「あ、あった」

「なに?なに?」

「貯金箱」

 

机の引き出しを開けて、母さんに袋に入っているお金を見せる。

 

「このままだと味気ないし、何かに入れたいと思ってたんだ」

 

それに家綱が勝手に使ってることも知ってるし。オレは別にお菓子とかいらないから買わないだけで、チビ達が来た時のために残してるのに。

 

「そうね。ツーちゃんだったら、割らないと開けれないものでも大丈夫そうね」

 

その言葉に驚いて母さんの顔を見てしまった。母さんは何も言わずにオレの頭を撫でた。……ああ、そっか。家綱のお小遣いを渡しているのも母さんだよな。買える量にも気付いていないはずがなかったんだ。

 

「今度一緒に買いに行きましょうね」

「うん!」

 

オレは何も言わなかったのに、母さんはちゃんとオレ達を見てるんだなって思った。

 

 

 

 

「骸ー」

 

いったいどうやってこのマンションを買ったんだろ。いや、もちろん幻術を使ってるのはわかってるけどね。骸はちゃんとまともな方法でお金を用意しましたよって言ってるからその言葉を信じるけどさ。

 

「おや、また来たのですか?」

「母さんからの差し入れを持ってきたんだよ」

「そうですか」

 

少しは標準体型になったかな?と思う。子ども好きの母さんは骸を見て、燃えちゃったからね。オレもちっこいけど、骸はガリガリだったから。

 

母さんは骸を引き取るぐらいの勢いだったけど、骸がもう落ち着いたからと言って断ったみたい。それ以来、時々持って行ってあげてとオレに頼むんだ。もちろんオレも協力する。骸はチョコばっかり食うからね。母さんの子ども好きに助かったよ。

 

「……なに、お前どこか行くの?」

 

カバンに服が入ってるのを見て、オレは眉間にシワがよった。

 

「ええ。ですが、君の言う無茶はしませんよ。復讐者に目をつけられたくはありませんから。ただ僕が記憶していた通りなのか確認しに行くだけです。君の兄のように何か違うかもしれませんから」

「あんま無理するなよ?」

「はいはい、分かってます」

 

オレもついていけたらなと思う。でも何度も家を出る説明なんか出来ない。

 

「いでっ」

「少しは僕のことも信用しなさい」

「……えー?お前を?」

「クフフ。そうです、僕をです」

 

前世では出来なかったやりとりに笑ってしまう。骸はオレが笑っても嫌な顔はしなかった。これなら、大丈夫そうかな。それにコイツのことだから、犬と千種の様子も見に行くと思うんだ。

 

「うん。わかった、信じるよ」

「ええ。では、いただきましょうか」

「食べて食べて。あ、今回オレも手伝った」

「大丈夫ですよね……?」

 

ビアンキじゃないから!とオレがつっこめば骸は何も言わずに食べた。ほんと、コイツとの関係は変わったな。骸は察しがいいから、オレが寂しいことに気付いてるのかもしれない。

 

「そういえば、ヒヨコと会いましたよ。彼、この頃にはもうあの武器だったんですね」

「ぶはっ、お前何してんの!?」

 

ヒヨコって絶対ヒバリさんのことだろ!?オレもまだ会ってないのに……なんで一番会っちゃいけない組み合わせが出会ってんの!?

 

「僕は何もしてませんよ。ただ向こうが……」

「ヒバリさんが?」

「僕の頭が気にくわないと言って、いきなりトンファーをふるってきたのです!」

 

余程苛立ったのか、骸は箸で玉子焼きを突き刺した。まぁちゃんと食べたからいいけど……。

 

「お前、手加減したよな?」

「もちろんです」

「あー良かった!」

 

オレも骸も前世の影響か、ふつーに強いからな。いくらヒバリさんでも今のオレ達には敵わないよ。

 

「まぁ返り討ちにしてあげましたけど」

「お前、何してんの!?絶対ヒバリさん、お前のこと探しまわってるよ!?」

「その時はまた返り討ちにしますよ」

 

……この2人は今世でも相容れない仲なんだとオレは察したよ。

 

「しかしやはり彼は面白いですね。このまま行けば、彼は随分強くなりますよ」

「まぁあの人、根っからの戦闘狂で負けず嫌いだからなぁ」

 

オレも何回手合わせしたことか。ヒバリさんにお願いしに行ったはずなのに、着ていたスーツが綺麗なままで帰ってきたことはないよ。草壁さんには随分お世話になったなぁ。

 

「あ、話かわるけどさ。お前小学校とか行かないの?」

「今更行ってどうするのですか」

「それもそうか」

 

ヒバリさんってことで、学校のことを思い出したけど、骸は行かないのか。

 

「ああ、でも黒曜中学には行くかもしれませんね」

「なんで?お前、あれはする気ないんだろ?」

「今のところは」

 

いや、するなよ?と心の中でツッコミする。骸がボカした言い方をした時は何か考えがあるんだろうなって、長い付き合いでわかるから口には出さないけどさ。

 

「それと僕が帰ってきた後、クロームを迎えに行くのでそちらに通わせますから」

「え?クローム?」

「あの子もまともな環境で育ってませんからね。本人が望めばここで一緒に住む予定です」

 

そっか、クロームのためにもこの家を用意したんだな。1人にしちゃ大きいと思ったよ。

 

「先程も言いましたが、今更僕が小学生に混じる気はありません。だから頼みましたよ」

「わかった。オレも女だし、前より助けれると思う」

「……そうでしたね。時々忘れそうになります」

 

あははと笑う。小学校は私服っていうのもあって、スカートは履かないからなぁ。

 

「君はその口調をどうにかする気はないのです?」

「それこそ、今更じゃん。それにオレが私とか言ったら、気持ち悪くねぇ?」

「たしかに。僕が一番ダメージを受けそうです」

 

そうかもとオレはまた笑ってると骸が食事を終えた。だから話も終わりだ。骸は食事の間だけ、文句も言わずに付き合ってくれるから。

 

「帰ってきたら顔ぐらい出せよ」

「もちろんです。あなたの家にせびりに行くつもりですから」

「はは。母さんは喜んで作ってくれるよ」

 

母さんは骸のことを幼馴染とか思ってるだろうし。

 

「ではまた会いましょう」

 

パタンとしまった扉に寂しさを覚える。わざわざ付き合ってくれてる骸のためにも、山本と接触した方がいいのかなーと思う。でもオレと関わったら野球出来なくなるかもしれないし……。せっかく家綱は人気者の山本にはいい印象は抱いてないのに。

 

やっぱり関わらない方がいいよなーと思いながらオレは家についた。




沢田ツナ
骸が何も言わないから、甘えてる。
以前とは築けなかった関係でちょっと嬉しい。

六道骸
ツナが死んでからはつまらないと思っていたのもあって、くだらない言い合いをするのも割と気に入ってる。
雲雀に関してはあっちから絡んで来たので、遠慮なく巻き込む気になった。「向こうが悪いのです」
そしてツナが女だということを度々忘れる人。


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「ツナ、また見てるの?」

 

黒川の言葉にハッとオレは我に返った。

 

「今日もツーちゃんは山本君の応援してるんだね」

「うん。そうなんだ」

 

別に隠すことじゃないから、素直に認める。山本にはずっと野球をして欲しかったから、見ているのが好きなんだ。

 

ちなみにオレに話しかけてきたのは、黒川と京子ちゃん。幼稚園から一緒でオレがどこでも寝るから、小さい時からしっかりしていた黒川がほっとけないって面倒見てくれたのがきっかけ。

 

京子ちゃんは黒川と仲良かったのもあったけど、髪の色のこともあったと思う。オレも京子ちゃんも変わった色をしてるからね。みんな話しかけづらそうにしていたもん。

 

最初、京子ちゃんはツナちゃんって呼んでくれたんだけど、オレがゾワってしたから変えてもらった。ツナちゃんって呼ばれた時、真っ白い人が思い浮かんだからだと思う。だから呼び捨てか、ツーちゃんなら母さんで慣れてるからどっちかにしてって頼んだんだ。

 

「はぁ。もったいないわ」

「え?何が?」

 

京子ちゃんと一緒に首を傾げれば、黒川はまた溜息を吐いた。

 

「いい、あんたはね。美人で可愛い、勉強もスポーツもできる。ちょっとドジだけど、そういうところがあったほうがポイントが高いの」

 

ますます黒川が何を言いたいのかわからなくて首をかしげる。

 

「あんたがいいっていう男は多いのに、そのあんたが見てる男は野球一筋でなーにもわかってないのよ!」

「大げさな。それにそういうところが山本のいいところだよ」

 

オレの言葉になぜか黒川は首をふった。

 

「あんたが男なら私が付き合ってたわ」

 

ハハハ……。それは絶対ないよ、黒川……。

 

「花の言いたいこともちょっとわかったかも。ツーちゃんは山本君を見てるだけで全然話しかけないんだもん」

「いや、それは邪魔しちゃ悪いから」

「なに、この可愛い子!」

 

黒川に抱きしめられながら、そんな変なこと言ったっけ?と思う。

 

「オレは見ているだけでいいんだ」

 

今日も山本が野球頑張ってるなって見れるだけで十分だよ。あ、また打った。やっぱりすごいなー、山本は。

 

「なんでこう不器用なのかしら……」

 

山本の野球を見ていたオレは黒川の呟きは聞こえていなかった。

 

 

 

 

 

 

今日は野球部の活動はないことを確認したオレは帰ろうとしたところで山本に話しかけられた。

 

「沢田」

「……えっ、なに?」

 

山本に沢田って呼ばれるのは地味にショックだ……。

 

「今週の日曜、ここで野球の練習試合するぜ」

「そうなの!?」

「ああ」

「わー、ありがとう!山本!」

 

良いこと聞いたと喜んでたけど、なんで山本はオレに教えてくれたんだろう。

 

「お前、野球好きなんだろ?ずっと見てるの知ってるのな!」

「ごめん!山本!オレ、山本の集中の邪魔しちゃってたんだ!」

 

やっぱりオレ疫病神かも!と頭を抱えると、山本は笑った。

 

「ハハッ、逆だぜ。お前、熱心に見てるだろ?だから不甲斐ないとこ見せられねーなって気合いが入るんだ」

 

山本、やっぱカッコいい!とオレが思ってると、周りにいるみんなも同じこと思ったのか、キャーキャー聞こえる。

 

「つっても、オレはまだ1年だから試合に出れるかわかんねーけどなー」

 

そっか。忘れてたけど、山本は一年なんだ。上級生と同じぐらい打ってるからってだけで試合に出れるとは限らないんだ。

 

「今回の試合は無理でも、山本ならすぐにレギュラー取れるよ」

「お?そこまで言われたら期待に応えるしかねーな」

「あ、でも怪我には気をつけてよ」

「わかってるって」

 

今世でこんなにも山本と話せたの初めてだったんだ。だからちょっと浮かれていたんだ。

 

「あ、あのさ……山本、もし良かったら……」

「ん?」

 

ゴクってオレが喉を鳴らしていると、いつのまにかクラス中がオレ達のことを見ていることに気付いた。

 

「わっ。ご、ごめん!オレ、うるさかったよね!」

 

オレ、なに言おうとしてたのー!?山本とは関わらない方がいいって考えてたじゃん!

 

「ツナ!もうそこまで言ったのよ!最後まで言っちゃいなさい!」

「うぇっ、でも……」

「ツーちゃん、頑張って!!」

 

黒川と京子ちゃんだけじゃなくて、みんながオレに言えって目で訴えてくるー!?

 

「沢田?オレになんか言いたいことあるのか?」

 

ああ、もう知らない!オレ、言っちゃうよ!?

 

「や、山本!」

「おう?」

「オ、オレと……友達になってください!!!」

 

バッと頭を下げると、教室中が静まったのがわかった。オレ、終わった……。山本、嫌な顔したんだ……。

 

「ハハッ!もちろんいいぜ!」

「ほんと!?」

「おう!」

 

やっぱ山本は山本だったーー!オレなんかと友達になってくれるなんて、すっげーいい奴!

 

「あ、隣のクラスに双子の兄が居るからさ、オレのことはツナって呼んでいいよ」

「オッケ。よろしくなっ、ツナ!」

「うん!」

 

今度、野球の話を聞かせてって山本と約束出来たし、すっげーいい日だった。

 

「黒川、京子ちゃん、ありがとう!オレ、2人のおかげで山本と友達になれたよ!」

「よかったね!ツーちゃん!」

 

京子ちゃんと一緒にキャッキャッとはしゃいでると、黒川は額に手をおさえてた。

 

「黒川、大丈夫?体調悪いの!?」

「……大丈夫よ。ただ私があんたの精神年齢を勘違いしただけだから……思った以上に低かっただけの話よ」

 

え。もしかして黒川はオレに前世があると怪しんでたのかな。

 

「オレ、そんなに高くないよ!?」

「大丈夫、ちゃんとわかったから」

 

慌てて否定したけど、大丈夫そう……かな?

 

「あんた、日曜日見に行くの?」

「もちろん!」

 

山本は出ないかもしれないけど、練習頑張ってると思うし!

 

「あ、でもあいつ帰ってきたらどうしよー……」

 

家に来ると思うから長時間出かけてるのはまずいよな。あいつ、母さんとは話すけど家綱とは話さないし。いや、家綱が悪いんだよ?あいつ、骸の髪を見て爆笑したから……。ケイタイがあれば良かったんだけどな。

 

「あいつ?」

「えーと、幼馴染?」

「私、会ったことはないわよ。京子は?」

「私も知らないよ」

 

まぁ基本的にオレがあいつの家に行くからね。2人が会うことはないよな。

 

「すぐ否定したりするけど、いい奴なんだ。人見知りが激しいから、2人は会えるかわかんないけど」

「そう。なら写真は?」

「無理無理。あいつ写真とか絶対うつらない」

 

骸のことだから幻覚を使って誤魔化しそうだよ。

 

「おや?僕の悪口ですか?」

「悪口なんか言うわけないだろ!?って、骸ー!?お前、何してんの!?」

 

ここ、学校だから!窓から入ってくるなよ!?

 

「あなたが帰ってきたら顔を見せろって言ったのでしょう」

「いや、そうだけどさ」

 

学校に来るとは思わないじゃん!

 

「それより手伝ってください」

「どうしたの!?」

「あの子と買い出しです。僕より君の方が適任でしょう」

「わ、急いでそっちへ行くよ!」

 

今ここにいるのは本物だ。骸のことだから、幻覚を置いていってると思うけど、クロームは不安だと思うし。

 

「ごめん!黒川、京子ちゃん、オレもう帰るね!」

 

えーっと何を買えばいいんだろう。服とかも絶対ないよな?父さんが買ってくれたから一度は着たけど、オレは落ち着かなくてそのままタンスに仕舞われてる服を持って行こう。クロームなら似合いそうだし。

 

「骸、お前もオレん家に来て。服とかオレ1人じゃそんなに持てないから」

「仕方ありませんね」

 

そう言いながらも、今もちゃっかりオレの手提げ袋を持ってくれてるじゃん。いやまぁそれはオレが鈍臭いからだけど。荷物を持って走ったらたまに転ぶんだよ……。多分死ぬ気になった感覚で動いちゃうからだと思う。

 

「先に行ってますよ」

「わかった!」

 

大変だー!って慌ててるオレはこの時気付かなかった。次の日に黒川に骸のことについて詰め寄られるなんて……。




沢田ツナ
山本から話しかけてくれて嬉しさのあまり暴走しかけた。
慌てて何もなかったことにしようとしたが、クラスメイトの視線に耐えきれず言葉にした。
今世でもぶっちぎり頼まれたら断れないマフィアランキングナンバーワン。

山本武
ツナの視線に実はずっと気付いてた。
自分ではなく、野球が好きな奴と認識している。
異性にしては珍しく会話があうから楽と思う。

黒川花
幼稚園で気付いたら眠ってるツナに驚愕した人。
よく先生に教えに行っていれば、なぜかツナ担当になっていた。
眠ってることさえ除けば、頭もいいし、バカなことを言わないツナは大人っぽい子だとずっと思っていた。が、今回の件でそっちの面では子どもと判明。

笹川京子
自分より目立つ色の髪をしたツナに驚いた人。
ツナが周りを気にしないので、自分も気にしなくていいんだと思えた。
黒川やクラスメイトとは違い、ツナが本当にただの友達になりたいと気付いていた。

六道骸
面白そうだったので、少し前から成り行きを見ていた人。
幻術を使えばツナに気付かれるので、普通に隠れてた。
あまりにもツナが鈍臭いので荷物は持ったが、一緒には行かない。


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オレの朝は早い。前世では考えれなかったけど、朝の方がランニングに行きやすいんだ。夜だと母さんが心配するからさ。朝から走っているといつも同じ場所でお兄さんと会う。お兄さんも毎朝走り込みしてるからね。

 

「沢田ツナ!今日も極限だな!」

 

ちょっと意味がわからないけど、なんとなくわかるからオレも笑って返事をする。

 

「お兄さんも元気ですね!」

「おう!そうだ!昨日、沢田の知り合いが転校してきたんだってな!京子が仲良くなりたいと嬉しそうに話していたぞ!」

「それは良かったです。クロームも友達欲しいと思うから」

「ああ!極限青春だ!!」

 

お兄さんは変わらないなぁと思いながら別れる。その場で足踏みしながら話しているけど、あんまり止まるのは良くないから。お兄さんも走りながら話すのはダメだと思ってるから、毎日ちょっとずつ話して終わり。前の時は不良に絡まれて額に怪我をしたって聞いたけど、今のところは不良に目をつけられてる様子はない。あれかな、オレに負けられないな!って言いながら必死に走ってるからかな。まぁまだどうなるかわからないから、油断しないようにしよう。

 

それにしてもクローム、大丈夫かな。予定通りクロームは六道凪という名前で転校して来た。一応、骸と兄妹っていう設定らしい。クロームは骸とオレがつけたあだ名ってことにした。オレのことはツナって呼ぶように頼んで、骸は……骸様だったけど、オレ達とは普通に話せてたからこれなら大丈夫かなって思ってたんだ。でも学校では骸も居ないし、オレにべったり。やっぱまだ小さいのに自分の意思で家を出たんだから、甘くみるのは間違いだった。

 

今日も迎えに行った方がいいかなと考える。クロームは可愛いから、いろんな奴が寄って来るんだよな。もちろんオレが防波堤になるつもりだけど、黒川の話だと喜ばせてるだけって言うんだよ。オレ、そんなにナメられてるのかな……。あまりに酷いなら、骸が学校まで迎えに来るって言ってたけど、あいつはあいつで大変なんだよな。

 

この前出かけた時に、あいつ炎真のお父さんと接触したらしいんだよ。川平さんは炎真の顔がわからないからってのもあるけど、まさかすぐに骸が見つけるとは思わなかった。どうするつもりなのかわからないけど、あいつ炎真のことは任せろって言うし。今度の3連休にオレがアリアさんのおしゃぶりに大量の炎を込めるっていうのもあるんだろうけど。骸の負担が多すぎないか?って思うんだよな。炎真達を守るのは自分の身を守ることに繫がるのですって骸はいうけどさー。

 

「はぁ」

「ツナ、ため息吐いてっと怪我するのな」

「あ、山本!おはよう!そうだね、ありがとう。気をつけるよ」

 

今日は山本とも会った。山本は日によって走る場所を変えるみたいで、会う日と会わない日があるんだ。

 

「で、どうしたんだ?」

「いやさ、やりたいこといっぱいあるのに、オレ器用じゃないからさ。何をどこからすればいいのかなって」

「んー、1個ずつやっていくしかねーんじゃね?オレも野球の試合に出たいけど、体力ねーと先輩についていけないって思って毎日走り込みしてるのな。遠回りに見えっけど、ツナはちゃんと進んでるって」

「……うん!ありがとう、山本!」

「いいってことよ」

 

やっぱ山本はすげー。ちょっとオレ気が楽になったもん。

 

「オレ、もっと鍛えるよ」

「ははっ。ツナは強くなりてーのか」

「うん。それが一番の近道だと思うんだ」

「そっかそっか」

 

なにかあった時にみんなを守る力がいる。オレがみんなを守るんだ。

 

「ツナ……?」

「って、ごめん。時間だ!」

「えっと……もうそんな時間か?」

「や、まだ大丈夫。オレはクローム迎えに行くからさ。山本も遅刻しないように気をつけてね」

「おう。また学校で会おうぜ」

 

バイバイと手を振って山本と別れ、オレはダッシュした。急がないと遅刻するー!!

 

 

 

 

家に帰ったオレはシャワーを浴びて、朝ご飯を食べる。家綱はまだ起きていないらしい。……こういうだらし無い感じは前世のオレとそっくりだ。まぁオレと違って家綱は遅刻しないけど。

 

「ツーちゃん悪いけど、イッ君起こしてくれる?母さんが言っても起きないのよ」

「う、うん……」

 

母さんはオレが言えば起きるとわかってるから頼むけど、あんまり気が進まないんだよなー。母さんが困るから起こすけど。

 

「家綱、起きてる?起きてるなら入らないよ」

 

ノックしたけど返事はない。今日は二度寝したな。仕方ないから、布団に近寄って声をかける。

 

「そろそろ起きないと遅刻するよ、家綱。おーい、家綱?」

「……うるせー!見てわかんねーのかよ、起きてるだろうが!」

 

さっきまで寝てたじゃん……ってツッコミしたいけど、グッと我慢する。オレが言い返した方が家綱は機嫌が悪くなるから。

 

「着替えるんだ、出て行け!」

「ご、ごめん」

 

慌てて部屋を出る。まぁあそこまで怒鳴ってたなら、完全に目が覚めただろう。

 

「母さん、家綱起きたよ。多分もうすぐ来るよ」

「ありがとうね、ツーちゃん」

 

よしよしと母さんに頭を撫でられた。あいつ怒鳴ってたからな、さっきの声が聞こえてたのかも。母さんは自分が言っても起きないのもあると思うけど、オレが全然気にしてないから頼むんだろうな。はっきり言って、ヒバリさんが怒った時に比べれれば家綱の怒りはなんてことないから……。

 

ヒバリさんで思い出した。骸、あれから会ったのかな。……あいつの性格を考えてると、会ってそうだ。今度やり過ぎてないか確認した方がいいのかなぁ。でも行けばヒバリさんに目をつけられる気がする。早いか遅いかの違いってオレの超直感が訴えてるのは気のせいと思いたい。

 

さよなら、オレの平穏ライフ。……川平さんに会いに行った瞬間から、平穏は諦めてたけど。

 

「っと、母さん。オレそろそろ行くね。クローム迎えに行くんだ」

「そうね。今度連れてきてね。骸君と一緒に」

「うん。わ、弁当もありがとう」

 

母さん、骸とクロームの分まで用意してくれてるじゃん。母さんのことだから、これからずっと作ってくれるんだろうな。

 

「重いから気をつけてね」

「わかった!母さん、いつもありがとう!行ってきます!」

 

うわー、ほんとオレ母さんの子どもで良かった。オレだけじゃ絶対そこまで気がまわらなかったよ。クロームはまだしも、骸も母さんのこと気に入ってるみたいだし、変われば変わるもんだなーって思いながらオレは骸の家に向かった。

 

 

学校では、クロームの防波堤をしつつ京子ちゃんと黒川との間に入る。多分恥ずかしがってるだけだと思うけど、まだ会話は成立していない。京子ちゃんはおっとりしてるし、黒川は精神年齢高くて気にしてないから何とかなってる。オレの超直感だと、今回骸はクロームを戦士にする気はなさそうなんだよな。そりゃクロームの体質のことはあるから、危険回避っていう意味で少しは幻術のやり方を教えるみたいだけど。本人が望まない限り、骸はクロームに平穏を歩んで欲しいのかも。オレの山本みたいな感じなんだろうな。だから早い内から京子ちゃん達と会わせたと思う。未来を選べるように。

 

「オレ達、歳とったなぁ」

 

しみじみ呟いていると、黒川に何言ってんのよってツッコミされた。いやでもさ、そう思うんだって。オレは2人で霧の守護者って感覚だったけど、今回は違うって思ったよ。だって骸と一緒にクロームを見て和むもん。流石オレ達の紅一点だった。問題児が多い守護者のなかで、唯一の癒し枠だった凄さを改めて思い知ったよ。オレ、父親?いや母親の気分だよ。まぁこんなこと黒川達には説明できないから笑って誤魔化すけどさ。

 

不思議そうな顔をしてオレのことを見ているクロームの頭を撫でる。なんでパイナッポーにしたのかな。クロームが嬉しそうだから何も言わないけど。

 

ちなみに家綱はクロームのことを可愛いと思ってるのか、チラチラとクロームを見にくる。あいつ隣のクラスだからさ、休憩時間になったらわざわざやってくるんだ。オレと視線があえば、そらすけど。珍しくオレと骸との意見が完全一致して、家綱にクロームには近づけさせないという協定を結んだ。他の男子にはあまり効果がないけど、家綱にはオレの防波堤は効いてるみたいでちょうど良かったよ。

 

そんなことをしつつ授業を真面目に受ける。ほとんどわかることが多いけど、理科とかだと結構忘れてて面白い。そんな名前だったー!って懐かしく思うから意外と飽きずに過ごせてる。女の子3人はちゃんと真面目に授業を聞いてるけど、山本はよく寝ている。この時からだったんだってちょっと苦笑いしながら、オレがまとめたノート貸してあげようかなって考え中。山本はやればできるし、勉強のせいで野球が疎かになるのはオレが許しません!




笹川了平
京子を通して幼稚園の時にツナと会った。
出会った当初、京子の呼び方から勘違いし沢田ツーと呼んでいた。また間違えてるとツナは笑っていたが、京子が怒って覚え直させた。
女子ということで勝負を仕掛けないが、ツナの努力を見てライバルだと思っている。負けないためにも極限努力するのみ。不良とケンカしている時間は極限にない。

クローム髑髏改め、六道凪
生きている意味があるのか、子どもながら薄々疑問に思い始めたところで骸とツナに出会った。
今までなんだったのかというぐらい愛されて幸せ。だからこそ2人が居なくなるのが怖く、べったり。2人が何かしていることに気付いているから尚更。

沢田ツナと六道骸
クロームを見てオトンとオカン気分になった人。
将来もしクロームが彼氏を連れて来たら、ひっそりと泣くかも知れない。

山本武。
知らない間に家庭教師がいた。
押し売り加減が某赤ん坊と同レベルのため、流されてしまう。
蓋を開けてみれば、野球に絡めて問題を作ったりしてくれるので、超ラッキーだった。
テストを親父に見せれば、泣いて喜ばれた。


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今日は前々から計画していたアリアさんのおしゃぶりに炎を込める日だ。最初、オレはまた飛行機で移動するのかなって思ったけど、川平さんの力で夢で会うことなったんだ。骸の時と違ってわざわざ会いにいく必要はないからね。

 

「本当に出来るのですか?」

「うーん、多分……?」

 

骸が心配するのはわかる。オレ、結局手に炎を灯すことは出来なかったんだ。おしゃぶりを通せば出来ると思うんだけど、オレの超直感はユニほど正確にわからない。大空のおしゃぶりを見ればはっきりすると思う。以前、川平さんに白のおしゃぶりを見せてもらったけど、オレの超直感は何も反応しなかったから。

 

「まぁやるだけやってみるよ」

「……そうですね」

 

夢で会うのは川平さんとオレだけ。出来るだけ大空の炎以外の人は入れたくないのもあるし、オレが戻ってきた後のこともある。絶対疲れて倒れると思うから。だから連休中にして、今日と明日は骸ん家に泊まることになってる。川平さんはもしオレが炎を込めれれば、しばらくアリアさんから目を離せれないからね。だから事情を知っている2人に頼むしかないんだ。熱とか出なきゃいいんだけど……。

 

「私の方は準備出来ましたよ」

「……めちゃくちゃ怪しいね」

 

川平さんはリボーンが鉄の帽子の男って呼んでいた姿に変わったから、ちょっとビビった。

 

「間違っても私を川平さんと呼ばないでください」

「うん、わかった。川平さんもオレの名呼ばないでね」

「もちろんですとも」

 

やっぱその姿でいつものノリで話されるとすっげー違和感。クロームもちょっと怖いのか、骸の後ろに隠れてるし。

 

「よし、オレの方も準備いいよ!」

 

エストラネーオファミリーに乗り込んだ時と同じ服を着た。もちろんフードは深くかぶってる。あの時も今回も川平さんが幻術でいろいろ誤魔化してくれてるけど、もし見破られたら困るからさ。実際、骸には効かなかったし。……いや、それはあいつが凄すぎるだけな気もするけど。

 

ベッドに寝転ぶ前にオレは頬をパンパンと叩く。こうやって気合いを入れないと、怖気付きそうになるんだよ。自分の全盛期を知ってるからこそ、今の自分を見ると不安しかないから。

 

「じゃ行ってくる」

「……気をつけて」

「早く終わらせた方がいいですよ。明後日の夕方までしか僕のベッドは貸しませんから」

「はは、ありがとう」

 

クロームの頭をポンと撫でてからオレは目をとじた。

 

川平さんが何かしたのか、オレはもう夢の中にいた。さっきの骸の言葉を思い出し、クスクス笑いながらオレは進んでいく。あの言い方、オレが絶対成功させるって言ってるようなものじゃん。

 

ここは骸の夢に入ってしまった感覚に似てるかも。オレの意思はあるんだけど、動けるかはわからない感じだ。オレが動けるかは川平さんが決定権を持ってるからそう感じるのかもしれない。

 

リボーンもこんな感じだったのかなって思えるぐらい、心に余裕がある。……骸のおかげかな。

 

オレが川平さんの後ろをついていくと、ユニに似た人が待っていた。

 

「私のためにありがとうございます」

 

何も説明していないのに、彼女はそう言った。……ああ、予知で全部知っていたんだ。

 

「ふむ。どうやら君の仮説は間違いなかったようだ」

「みたいですね」

 

大空のおしゃぶりを見ても、オレの超直感も警告を出さなかった。

 

アリアさんはオレがおしゃぶりに手を伸ばそうとしても、何も言わなかった。ただオレがおしゃぶりを掴むと、その上から手を重ねた。

 

「オレが今出来る全てを込めます。だから……諦めないで」

 

リボーンみたいにロクな死に方を期待していないなんて思わないで。この呪いは解けるんだから。

 

ボッっとオレの額に炎が灯る。オレの想いに反応するかのように、おしゃぶりからオレの炎が吹き出す。しばらくそのまま炎を放出していると、おしゃぶりにどんどん吸い込まれていく。大空は頂点に立つからなのか、呪いの負担も大きい。リボーン達が炎を消費しているのに比べて、大空は多分量が多いんだ。だから寿命が短くなる。

 

オレが炎を込め続けていると、アリアさんは重ねていた手に力を込めて、おしゃぶりからオレの手を離させた。

 

「もう十分過ぎるぐらいよ。これ以上はあなたがアルコバレーノになってしまうわ」

 

大空のおしゃぶりがオレを選ぶってことなのかもしれない。もう一度オレが手を伸ばそうとすれば、アリアさんに首を振られ止められた。

 

「ありがとう」

 

ふわっと笑った姿が、ユニが消えた時にそっくりでオレは唇を噛んで耐えた。

 

「とても優しい子。だからどうか自分を傷つけないで」

 

口に手を添えられた。これ以上オレが噛まないように……。

 

悔しい。

 

オレ1人が純度の高い炎を出せても全然足りない。前世ではリングに炎を灯せる人は限られていた。オレ達は簡単に灯したけど、そもそもそれが難しいことなんだ。中学の時に10年後へ行った時は使える人が多かったけど、あれは白蘭の力があったからだった。まして呪いを解くほどの純度の高い炎を出せる人はもっと限られてるし、それに耐えうるリングも少ない。

 

グッと歯を食いしばり、我慢する。オレが今泣くのはダメだ。この人の前で泣くのは絶対に間違ってる。

 

「……必ず。必ず、呪いは解きます」

 

プツンと唐突に夢の世界が終わった。

 

「おや?随分早かったですね」

「む、くろ……?」

「ええ、そうですよ」

 

そっか、もう我慢しなくていいんだ……。

 

オレが目を両腕で隠していると、パサっと何かが乗った。……骸がタオルをかけてくれたみたいだ。

 

「……オレ、お前の言った通り甘くてバカだった」

「そうですね」

「呪いは解きたい。でも、オレの世界に巻き込みたくないんだっ」

「あなたならそうでしょうね」

 

オレの言葉に骸は呆れることもなく、ただ肯定した。それがオレだと言ってるかのように……。

 

「そもそもあなたがいろいろと考えていても、あの赤ん坊はやってきて引っ掻き回しますよ」

「ゔ。そうかも……」

「少し前にも言いましたが、明後日の昼までしかこのベッドは貸しませんから。うだうだ考えるよりも先に休んだ方が賢明ですよ」

「……ん、そうする。骸、サンキュ」

 

オレはこの時、タオルの向こう側で、骸はやれやれと肩をすくめてるのかなって思ったんだ。

 

 

次の日、案の定熱を出したオレは散々骸に文句を言われながらも看病してもらった。今度高級チョコ持っていこうと、オレは熱にうなされながらもお小遣いの計算をしていた。

 

 

 

 

 

数日後、大空のアルコバレーノは晴のアルコバレーノに会いに来ていた。

 

「ちゃおっス」

「ひさしぶりね、リボーン」

「随分機嫌がいいみたいじゃねーか、アリア」

 

あら、わかるかしら?とアリアはリボーンにウインクする。明るい予知を見れたのかもしれねーなとリボーンは考える。彼女が予知のせいで苦しんでいることに気付いていたから。

 

「今日はね、あなたに伝えたいことがあって来たの」

「言ってみろ」

「私達の呪い、解けるかもしれないわ」

 

全く想像していなかった内容に、また軽はずみで言えるはずのない内容だからこそ、リボーンは殺しの時のような雰囲気を無意識に出していた。

 

「みんなには秘密よ」

「……なんでだ?」

「その未来が見えたわけじゃないの。ただ、あの子の言葉を信じてみようと思えたの」

 

あの子って誰だ?とリボーンが聞いてもアリアは笑うだけだ。

 

「信じていいと思うわよ。あれほどあたたかい炎、私は知らないわ」

 

その炎を感じて、アリアの機嫌がいいのかとリボーンは気付いた。

 

「どうしてオレを選んだんだ?」

 

アリアはその質問を待っていたかのように微笑んだ。

 

「あなたとその子が笑い合っていたから」

 

リボーンは自分のその姿を想像出来なかったのか、珍しく驚き固まっていた。

 

「あなたの未来は明るいわ。私に諦めないでってあの子は言ったけど、あなたに伝えたかった言葉のように思えたの」

「……そうか。サンキューな」

「気にしなくていいわよ。私、とっても機嫌がいいもの!」

 

アリアの笑顔を見て、ほんの少しリボーンも笑ったのだった。




沢田ツナ
前回のように幸せを掴みたい。
2回目だからこそ叶えたい願いもある。

六道骸
2回目だからこそ犬と千種を巻き込まない道を選んだので気持ちはよくわかる。
そしてツナは悩み苦しんでいるが、マフィアのボスを経験した2度目の人生なのに根本が変わらなかったから、ついてきた。
そのことを一番自分が理解しているからツナの弱音に付き合った。

アリア
ツナとチェッカーフェイスが会った日に、寿命がのびる未来が見えた。
確定ではないため、誰にも話さなかった。
ツナの炎に触れたことで新たな未来が見えたが、話すとたどり着かない可能性もあるため、ツナの容姿はリボーンに教えなかった。

リボーン
アリアのおかげで、少し未来が楽しみになった。


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今日は朝から変だ。お兄さんには連休中は走り込みに行けないと説明していたのに、会って早々肩をベシベシ叩かれるし、クロームはいつにも増してオレにべったりだし。京子ちゃんと黒川は弁当のおかずをわけてくれた。それも確か2人の大好物。他にも休憩時間には山本にキャッチボールを誘われた。なんだなんだ?と疑問に思ってる間に放課後になっていた。

 

「ツーちゃん、今から遊ばない?もちろんクロームちゃんも一緒に」

「あ、うん。いい……ん?」

「なに、なんか予定あるの?」

 

予定はないんだけど、オレの超直感が何か訴えてる。

 

「ごめん!ちょっと急用!クロームはみんなと帰って」

 

クロームは絶対離さないというようにオレの腕を掴み、フルフルと首を振った。ひ、引き離すことなんて出来ない……。

 

「あーうー。わかった。走るけどいい?」

「……うんっ」

 

急いだ方がいい気がするから、京子ちゃんと黒川にまた明日とだけ伝えてオレは超直感に従って走る。クロームは大丈夫かなと何度か振り返るけど、何とかついて来ている。でもこれ以上遠ければ一度止まった方がいいかもと思ったところで、骸の姿が見えた。

 

「骸!!」

「おや?どうかしたのですか?慌てて」

 

骸が三叉槍を持っているから敵!?と警戒すれば、相手はヒバリさんだった。

 

「お前、やりすぎだろ!?」

 

ヒバリさん汗だくじゃん!?

 

「彼がいつにも増してしつこいせいです」

 

あくまでヒバリさんが悪いという骸にオレは頭を抱えた。

 

「……咬み……殺す」

「わー!もう動かないでください!ええっと……」

「彼は雲雀恭弥です」

「ヒバリさん!もうやめましょうよ!」

 

骸から良く名前を言わなかったですねっていう視線を向けられた。オレだってそれぐらいわかってるっての!

 

「僕に……命令しないで……」

 

ヒバリさんは小さくてもヒバリさんだった!話すのも辛いはずなのに……。でもオレの予想は正しかったみたいで、ヒバリさんはオレにトンファーを振るおうとしたところで充電が切れたように倒れ込んだ。

 

「っとと。なんでぶっ倒れるまでやるかなぁ……」

 

ヒバリさんを支えながら溜息を吐いていると、骸がクロームを連れて帰ろうとするからオレは慌てた。

 

「お前、ここで帰んの!?」

「ええ。行きますよ、クローム」

 

ありえねーと骸の行動に引いていると、クロームがオレと骸を交互にみて困っていたからオレは大丈夫だからと言って骸と帰ってもらった。

 

「オレん家がいいよな?」

 

ヒバリさんの家は知ってるけど、そこに連れて行くのはおかしいだろうし。オレは落ちているトンファーをランドセルにしまって前に背負いなおして、ヒバリさんをおんぶする。今日ほど鍛えてて良かったと思った日はないよ……。それでもオレの家につくころには疲れた。死ぬ気になるわけには行かなかったから。

 

「ただいまー」

 

声をかけたけど母さんの反応はない。出かけてるみたいだ。家綱は居るかもしれないけど、オレの部屋に運ぶから文句言わないだろう。なんとかヒバリさんをベッドに寝かせたら、オレも休憩。パタパタ服をあおぎながら、ヒバリさんの様子をみる。ちゃんと骸は手加減しているようでちょっと汚れがついてるけど、怪我はないみたいだ。

 

「えーっとタオル、タオル……」

 

オレが濡れタオルを取りに行ってる間にヒバリさんは起きていた。

 

「……ここ、どこ?」

「オレん家ですよ。骸んとこじゃないです」

 

絶対ヒバリさんは骸の世話になるのは嫌だと思ったから教えると「そう……」と呟いた。ヒバリさん、ちょっと元気ない?やっぱまだ疲れてるのかな?

 

「汗で気持ち悪いですよね?オレの服どうぞ使ってください。オレ男物も持ってるんで」

 

濡れタオル渡した後、服を見せれば問題なかったみたいで頷いた。うわー、まだ小さいからかヒバリさんが素直だ……。

 

ジロジロ見られるのは嫌だと思ったから、ヒバリさんが着替えてる間は後ろを向きながらストレッチをする。ちょっと無理したからケアしとかないと。

 

しばらくすると着替え終わったみたいで、オレに声をかけてきた。

 

「……ねぇ、君。あれとどんな関係?」

「え?骸のことですよね。幼馴染ですよ」

「ふーん」

 

骸のことを知りたいんだろうな。あいつのことだから調べてもわからなくしてそう。

 

「ヒバリさん、大変でしょ。あいつに目をつけられて」

「……逆、じゃないの」

「あいつわかりにくいから。ヒバリさんのこと相当気に入ってますよ」

 

じゃなきゃ、幻術使って誤魔化してる。ヒバリさんが見つけれるようにしてるよ。それもヒバリさんが探さなきゃ見つけれないレベルで。それなのに絡んで来る方が悪いってあいつは言うんだよ。

 

「オレが相手をすればいいんですけど、オレ今武器ないんで。あいつ変なところで律儀だからオレに相手しろって言わないんです」

 

一度だけ骸がオレのグローブを有幻覚で出したけど、オレの超直感のせいで維持するのは大変だったらしい。一応その状態で柔の炎だけでだけどX BURNERとかは使えた。けど、維持している骸と戦うのは無理だし、骸が倒した方が現実的で使うことはないと思う。

 

「……君も強いんだ」

 

うわっ、オレやっちゃった!?……誤魔化してももう意味ないよな。

 

「あははは……」

 

ヒバリさんにジッと見られて笑うしかない。オレ、骸と違って家までバレたから絶対逃げれねー。

 

「君達、何者なの」

 

流石ヒバリさん……オレ達が普通じゃないって気付いているよ……。

 

「うーん、ヒバリさんは関係ありませんよね?……や、そういう意味じゃなくて。オレ達が何者でもヒバリさんが咬み殺したいのは変わらないんじゃないかなって」

「……そうだよ」

「ですよね」

 

なんか今日のヒバリさん変だよなーと思っていると、立ち上がった。帰るのかな?

 

「あ、待ってください。ヒバリさん!」

「なに」

「トンファー忘れてます!」

 

慌ててランドセルから出して見せたけど、ヒバリさんが手を伸ばすことはなかった。

 

「いい。君にあげる」

「え!?」

「これ以外にも持ってるから」

 

まだ持ってるんだ……。じゃなくて、なんでオレにトンファーを?

 

「何も持っていないよりはいいでしょ」

 

あ。オレが今武器を持ってないって言ったからかな。

 

「でもオレ、トンファー使えませんよ」

 

銃の使い方ぐらいは覚えろってリボーンに言われて習ったことはあるけど、他の武器は使ったことがないよ。

 

「……毎週日曜日、開けときなよ」

「へ?」

「さっき君が言ったのに?僕がこのまま逃すはずがない」

 

相手しろってことですね……、ハハハ。

 

「……それ持ってきたなら、少しは使い方教えてあげる」

「えーー!?」

「なに」

「いえ、ちょっと驚いただけです」

 

10年後の世界に行った時に家庭教師してもらったことがあるけど、まさかこのタイミングで教えてもらうことになるとは思わなかった……。

 

「えっと、よろしくお願いします」

 

いつもなら恐れ多いとか、嫌だなって思うのに、どうしてかわからないけど日曜日が待ち遠しく感じる。

 

「……また連絡する。じゃぁね」

「は、はい。わかりました」

 

あ、玄関から帰るんだ。いつから窓が出入り口になるんだろう……。

 

 

 

 

 

 

次の日曜日、ほとんど実戦形式だったけどヒバリさんにトンファーの使い方を教えてもらった。

 

「……君」

「はい?」

「才能ないね」

「よく言われます……」

 

なんとか形にしただけと、早々に気付かれてしまって、ヒバリさんにリボーンと同じような反応をされた。相変わらずダメツナだったー!




沢田ツナ
隠しているつもりだったが、ちゃんとツナを見ている人には元気がないのはバレバレだった。
迷ってる時に相手をしてくれると言ったヒバリさんは、今でも心の中でヒーロー扱い。ただし無自覚。

雲雀恭弥
実は骸に負け続けてプライドをバキバキに折られ、大事なところが変わりそうだった。
トンファーをあげたのは思い出させてくれたお礼。
無茶苦茶な使い方をするくせに咬み殺せないツナの強さに興味津々。

六道骸
戦いながらも雲雀がどこか変だと感じていたところにツナが現れ、これ幸いと押し付けた。
ただしツナがなんとかするだろうという信頼からの丸投げ。


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短い


「骸、頼むって」

「嫌です」

 

そんなーと項垂れる。オレのマネをしたのか、クロームが頭を撫でてくれた。ありがとう、クローム。

 

「あーもうどうしよー」

「どうせ向こうから訪ねて来るのです。ほっといても問題ありません」

「でも絶対無茶してるって」

「知りません」

 

オレと骸がもめている内容は獄寺君についてだ。骸が獄寺君を見つけた時、ちょうど獄寺君が城から出るタイミングだった。

 

それから獄寺君の行動を予想しようとしたけど、この頃の獄寺君は一匹狼。骸がめんどくさいと思うぐらい、好き勝手行動していた。獄寺君の場合は直接会わないと止まるようなタイプじゃないってわかっているから、オレの移動時間を考えないといけない。更にオレは何日も日本を離れることは出来ない。会おうと思っても結構難しい。

 

骸はいろんなマフィアのことも探ってるし、炎真のことも任せているから負担が多いのはわかっているけどさ。

 

もう1人の頼みの綱の川平さんはアリアさんの結果から、Aランクオーバーのリングを探しに世界中をまわっている。リングは代々受け継がれる場合ほどランクが高いことが多い。手に入れるのは至難の技だ。けど、抗争や血筋の関係から持ち手がなくなったリングもあるんじゃなかってことで、川平さんの記憶を元に探してもらってるんだ。

 

当然長旅になる。オレが小学生の内に動くしかないんだ。中学に通い始めるとリボーンがやってきて、いろいろと起きるのはわかりきってるから。

 

オレが動ければいいけど、母さんになんて言い訳するのか。例え母さんがうまくいったとしても、長期間ってなると父さんが動きそう。絶対護衛をつけようとする。それに骸の話だと、ちょうど今ボンゴレ10代目の後継者争いが始まった。もしオレの存在がマフィアにバレれば、一般人には手を出さないとは思うけど母さんと家綱は巻き込まれる。家綱は多分巻き込まれるから諦めがつくけど、母さんが巻き込まれるのは絶対ダメ。今までの父さんの努力を思うと余計に。

 

「誰でもいいからボンゴレ継いでくれないかなぁ」

「クフフ。けしかけましょうか?」

 

なんでそういうのにはヤル気を出すんだよ……。

 

「それも1つの道ですからね」

 

骸の言いたいこともわかる。川平さんが高ランクのリングを見つけてくれるなら、別にボンゴレリングに拘る必要はなくなる。XANXUS以外の候補なら、血筋の問題もないと思うし。

 

「でもオレそういうの大っ嫌いなんだよ」

「知ってますよ。言ってみただけです」

 

このまま何もしなければ、ボス候補の人達は死ぬのはわかってるんだけど、ここでオレが手を出すのは違うような。骸のために動いたオレが思うのもなんだと思うかもしれないけど。

 

「またくだらないことでウダウダと考え込んでるのですか。本当に君はバカですね」

「いやだってさぁ……、オレ好き勝手してるじゃん」

「プリーモに好きにせよと言われたのでしょう。いいではないですか。それに……」

「それに?」

「……簡単にボンゴレリングを手に入れられるのは癪です」

 

ああ、そっか。オレもそうだったのかもしれない。

 

「いろいろあったもんなぁ……」

「主に君が一人バタバタしてましたけどね」

 

ハハハ……そうかもしれない。苦労して手に入れたボンゴレリング砕いた未来もあったし……。

 

「話を戻しますよ。彼にはこの経験も必要だと思って、獄寺隼人のことは諦めなさい」

 

すぐに返事が出来ないオレを見て、骸はため息を吐いた。

 

「言い方を変えましょう。今君が彼を救ったとします。彼の性格から君についてくるでしょう。ですが、候補にもあがっていない今の君が彼と一緒にいることは周りを危険にさらすことになります」

「…………骸、ごめん」

 

オレのためにわざわざ嫌な役を買ってくれた。ほんとオレって成長しないよなぁ……。

 

「あなたの立ち位置は難しいですからね。バカな君には難しいのでしょう」

 

わかりにくいけどフォローもされちゃったよ……。パンパンと頬を叩いて顔をあげる。骸にそこまで言わせておいて、これ以上うじうじするのはダメだ。

 

「ん、もう大丈夫」

「そうですか」

「クロームもごめん。よくわかんないことばっかり話して」

「……大丈夫」

 

ありがとうという意味も込めて頭を撫でる。寂しかったと思うし、今から遊ぼうと誘ってみる。

 

「それなら、買い物に付き合ってあげてください」

「何か欲しいものあるの?」

 

オレが聞けば、クロームは首を横にふった。でも骸がそう言ったなら何かあるよな?

 

「料理をしてみたいと思ったのでしょう?僕も助かりますし、君が居る時ならそこまで変なものは出来ないでしょう」

「……骸様」

 

話が完結しちゃったけど、オレそこまで料理うまくないんだけど……。そりゃ母さんの手伝いはするから、出来なくはないけどさ。女になってから覚えたから教えれるほどじゃないよ、絶対。

 

「何も今すぐ作れとは言いませんよ。何しろこの家には炊飯器すらありませんから」

「って、そこからー!?」

「僕が料理すると思っていたのですか?」

 

うん、思わない。チョコばっかり食べる奴がするわけない。

 

「ってことは調味料とかもないのか?」

「チョコレートはありますよ」

 

質問したオレが間違いだった。

 

「勝手に見るけどいいよな?」

「ええ。かまいません」

 

クロームと一緒に台所へ行って、何もねぇ……とショックを受けながら、2人でメモする。ほとんどオレが思いついたけど、クロームもちょっとは調べていたみたいで不思議そうな顔はしなかった。

 

骸の食生活はクロームにかかってるよ……。ってことは教えるオレにも責任重大!?

 

母さんに頼みたいけど、クロームに家綱を近づけたくない……。オレが母さんに習うしかないよな?

 

オレが作れればビアンキを台所に近づけさせない理由にもなるし、覚えて損はないと思うことにしよう……。

 




沢田ツナ。
知ってるのに、2度目なのに何も出来なかった。
骸に諭されて何も言わなくなったが、獄寺を心配しない日はない。

六道骸
獄寺の行動を誘導しツナと会わすことは出来る可能性もあった。が、ついてきたら術師である自分の負担が増すのはわかりきっていたので試さなかった。

六道凪
黙っているだけで、2人の話はしっかりと聞いている。骸は気付いていたが選ぶのは本人の意思というスタンスを崩さなかった。
まだまだ意味がわからない内容が多いが、2人の帰る場所を作りたいという気持ちだけはかたまった。その一歩が料理だった。なぜそれを選んだのかというと、奈々の料理をみんなで食べていて身近だったから。



作者のミス。
よくマンガを見れば、家光のお父さんの名前が家綱だった。
ご、悟空だってじいちゃんの名前を息子につけたしセーフだよね?……セーフってことにしてww

次、中学まで飛びます。


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小話1

雲雀さんの誕生日記念にこっそり挿入。


やっぱオレって抜けてる。

 

明日は恒例になってしまったヒバリさんと手合わせの日。……違った。手合わせはオレもなんか楽しくなってきたから、そんな風に思わなくていいんだよ。身体に染み付いた癖だよねぇ。ヒバリさん、前の時怖かったもんなぁ。

 

そりゃまだヒバリさんがオレを咬み殺せそうにないのもあるけど、ちょっと取っつきやすいんだよ。理不尽の塊じゃない。理不尽だけど。

 

って、また思考がズレた。ええっと、毎週日曜日に当たり前のように会ってるから先週気付かなかったんだよね。明日、ヒバリさんの誕生日だから手合わせ出来ないんじゃない?確かヒバリさん家は名家だったから。家も大きいし、間違いないはず。

 

ちょっとアバウトなのは、前の時にオレはあえて調べなかったから。リボーンや父さんは知っていたと思うけど、そういうのオレは気にしなかったから。なにか家のことで問題があれば、ヒバリさんが言うって。まぁ問題があってもヒバリさんは死んでもオレには言わない気がするけど。誕生日だってオレが聞いたわけじゃないしね。確かハルが聞きまわってて知ったんだよ。ヒバリさんが隠してるわけじゃないからオレも知ってただけ。

 

んー、まぁいっか。ダメならオレん家に電話するだろうし。ヒバリさんのことだから、調べればわかるはず。最悪草壁さんが待ち合わせ場所に居るよね。

 

 

 

なんて思ってた時期……瞬間がオレにもありました。

 

「ええええ!?」

「なに」

 

普通に待ち合わせ場所に居たよ、この人。

 

「今日、誕生日ですよね!?いいんですか、ここに居て……」

 

もちろんオレはヒバリさんがまだ幼いといっても、家族そろってお誕生日会しているイメージはないです。だからにらまないでくださいね。オレがそういう意味で言ったんじゃないとなんとなく察したのか、ヒバリさんは問題ないよと軽い感じで言った。

 

ヒバリさんがそういうなら、オレは気にしなくなった。ヒバリさんが決めたことだからね。

 

「それより、僕の誕生日どこで知ったの?」

「いっ!?ええっと、む、骸から……」

 

骸、ごめん。今度おごる。オレが心の中で骸にチョコを捧げていると、ヒバリさんが溜息を吐いた。……うん、これってばれてるよね。オレがウソついたの。じゃないと、骸にイラついて機嫌悪くなってるはずだから。

 

ははは……っと目をそらして笑って誤魔化していると、ヒバリさんが睨んだ気がした。ひぃ!と殴られないように、トンファーをかまえる。

 

けど、いつまでたっても衝撃はこなかった。

 

「ヒバリさん……?」

 

どこか機嫌の悪そうなヒバリさんに恐る恐る声をかける。いや、機嫌が悪いのはオレのせいってわかってるけどね。

 

「よくわからない、君って」

「ええっと?」

 

オレにもわかるように説明してくれないかなーと心の中でお願いする。オレの直感では勝手に誕生日を調べあげたことじゃないって訴えてるからさ。その思いが通じたのか、ヒバリさんは口を開いた。

 

「強いのに、どうして草食動物のフリするの」

「フリじゃないですよ。オレは根っからのビビリだし、鈍くさいし、……悪いところをあげればキリがありません。そりゃケンカはちょっとできるようになったけど、やりたいとは思わないし……。それでもヒバリさんがオレが強いって思うなら……譲れないことがあるからです」

 

オレは恥ずかしくなって思わず頬をかく。だって、教えてくれたのはヒバリさんだもん。前のヒバリさんだけど、ヒバリさんにはかわらない。オレがまた迷ったら、ヒバリさんは同じことをする。だって、ヒバリさんには譲れない誇りを持ってるから。……あまりにもオレが情けなくて失望しちゃったら教えてくれないかもしれないけどね。でもなんだかんだいってヒバリさんは手を伸ばしてくれる気がするんだ。

 

「……やっぱり、君はよくわからない」

 

うーん、オレの伝え方が悪かったのかな。結構がんばったつもりだったんだけどなー。あの時、ヒバリさんはどうしてくれったっけ?

 

「あ、そうだ!」

「なに」

「オレを見てください!」

 

……ん?なんか違う気がする。

 

ヒバリさんが言ったときは、かっこいい感じだったのに。オレが言ったら、全然かっこよくない感じになった。

 

「……君が考えなしってことはわかった」

 

あああ、やっぱりそんな感じになったー!

 

「ちょ、ちょっと待ってください。リベンジさせてください」

「もういいよ」

「オレが嫌なんですって!」

「知らない」

 

この後すぐにヒバリさんがオレが鬱陶しいと思ったみたいで、トンファーを振るわれた。そのままの流れでいつもの手合わせが始まってしまって、結局オレのリベンジは叶わなかった。

 




雲雀恭弥
幼少期時代からツナは天然を炸裂していたので、慣れた。
雲雀は慣れたくなかった。

沢田ツナ
憧れであるヒバリに習ったが、失敗。
ちなみにプロポーズ紛いの言葉を口にしているが、前と違ってヒバリと性別が違うことをこの時すっぽり抜けている。
抜けてはいるが、ちゃんと自分が女子と自覚しているためおかしいとは感じた。

六道骸
どこからか電波を受信し、ツナにカマをかけた結果、チョコを奢らせることに成功する。
雲雀はウソと気付いていたため、本当は奢る必要はなかったのに奢らせたため、ツナからお前の方が理不尽!と言われる。


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中1①


本日は雲雀さんの誕生日!
おめでとうございます!
大好きです!←

ということで雲雀さんの出番が多め。


今日からオレは中学生になる。オレが外に出れるようになってすぐ、いろいろと動いてやりきったからかな。この数年の間、特に大きな事件も起きなかった。

 

何かすることあるかもと何度も考えたけどオレの頭では浮かばなくて……。骸にも相談したけど、「君の好きな平穏でしょうに」と呆れられた。……リボーンの影響で平穏が不安になるなんて思いもしなかったよ。

 

でも今ならそれがどれだけ幸せなことなのかわかる。

 

オレはちゃんとリボーンが来たら振り回される覚悟はしていたよ。でもさ、中学初日から平穏が壊されるとは思わなかったよ……。

 

「オレって本当にバカ!」

 

なんでこんなことにと思いながら、オレは学ランに手を通す。……そう、学ランだ。

 

事の発端はオレが世間話にヒバリさんに言った言葉。並中の制服が嫌だなって。

 

もちろん並中を愛するヒバリさんはその言葉に反応した。でも何年も毎週手合わせしているからか、すぐに咬み殺すような雰囲気は出さなくて、理由を聞いてくれたんだ。それでオレはスカートだと気になって動きが制限されそうだからって教えたんだ。小学校では私服だったからズボンを選んでたからさ。

 

この時にはもう並中で風紀委員長に君臨していたヒバリさんは、オレにあっさりと男物でいいって言ってくれたんだ。

 

でもその時にはオレはもう制服を予約しちゃってて、ヒバリさんに先に聞けばよかったって後悔すれば、それなら手を回してくれるって言ってくれたんだ。

 

ヒバリさんがめちゃくちゃ優しいってこの時感動したオレに言いたい。この人、オレを風紀委員にする気だよって。後、届いた時に確認しろって。

 

気付いたのは入学式の日。つまり今日だったけど、早起きのオレは余裕があってヒバリさん家に突撃した。この数年の間に知る機会があったからね。そして運良くヒバリさんはまだ家に居たんだ。

 

「ふわぁ、朝から何?」

「何じゃないですよ!オレの制服学ランだったんです!」

「僕、君の希望を叶えてあげたよね」

 

そうですけどーー!とオレは叫んだ。

 

もうこうなったヒバリさんは止まらないと知っていたオレは必死に交渉した。ヒバリさんもオレに他の風紀委員のようなことを求めてなかったからか、オレの希望が通ったのは不幸中の幸いだったよ……。

 

「あら、ツーちゃん似合うじゃない!」

 

オレの母さん、やっぱすげー。オレが男物を着ていることにも、同じ中学なのに家綱と制服が違うことにもスルーしたよ……。

 

「お前、その服なんなの」

 

今日は入学式だから早めに起きていた家綱にはちゃんとつっこまれた。

 

「先輩に風紀委員に入るように言われたんだよ……。風紀委員はみんな学ランだからオレも着てんの」

「優等生は大変だな」

 

いや、違うから……。一応、風紀委員は不良の集まりだから。ヒバリさんのせいで不良ってなんだっけ?ってなってるけど。

 

後からわかったけど、家綱は嫌味を言ったつもりだったらしい。オレが何も反応しないから、舌打ちして席を立ってしまったから。

 

「……母さん、ごめん。写真とろうと思ってたよね?」

「大丈夫よ。入学式でとるわ」

「そっか。母さん、後で一緒に撮ろうね」

「ええ」

 

よしよしと頭を撫でられる。ああもう、本当に母さんには敵わない。オレの気遣いなんてバレバレだったよ……。

 

 

 

いつものようにクロームを迎えに行くと、骸に爆笑された。その反応を予想していたオレは耐えた。コテンと首をかしげるクロームがオレの癒しだったよ……。

 

「はぁ………。朝から疲れさせないでください」

「だったら笑うの我慢しろよ!?」

「これほど面白いことはないので無理ですね」

 

キッパリと言い切った骸にイラッとしながらも、オレは骸の服を見ていた。

 

「……その制服みると、お前に会った頃を思い出すよ」

「クフフ。僕もまさかまた着ることになるとは思いませんでしたよ。やはり君といると面白いですね」

 

それ、絶対褒めてないだろ。

 

「僕はそろそろ行きます。ここから黒曜中は遠いですからね」

「お前も並中に行けばよかったのに」

「絶対にお断りします」

 

だよなー。骸が中学に通う理由の1つはリボーンから逃れるためだし。骸が学校に通ってないってバレれば、無理矢理入れようとするだろうからな。動きにくくて嫌って言ったコイツの考えもわからなくはない。

 

「まっ、ほどほどにな?」

「クフフフ」

 

あ、ダメだ。コイツ、絶対何かやらかす。オレが遠い目をしている間に骸は行ってしまった。

 

「……はぁ。クローム、行こうか」

「うん。……あの」

「どうしたの?」

「骸様、生徒会長になるって……」

「へ、へぇ……」

 

もう嫌な予感しかしない。なんで生徒会長になるっていう内容なのに、安心できないんだろう……。

 

「ツナ……?」

「うん、ごめん。撫でさせて」

 

嫌がらないクロームはほんとオレの癒しだよ……。

 

オレ達が並中に向かっていると、2年と3年は学ランの意味を知ってるからギョッとしてオレを見る。……オレ、リーゼントじゃないしね。もちろんヒバリさんは交渉するまでもなく女のオレにはしろって言わなかったよ。

 

後、群れてるのもあるのかも。ヒバリさんの前では気をつけるってことで許してもらった。多分ヒバリさんはオレは群れてる方が強いっていうのを気付いてるからだと思う。いつ知ったかはわからないけど……。

 

「ツナ?」

「山本!おはよう!」

「やっぱツナだったぜ!なんで学ランなんだ?」

 

登校途中に山本に会って、並中の門では京子ちゃんや黒川に会った。みんなには家綱にしたような説明をする。黒川は噂を知っていたのか、引きつりながらも誰に誘われたか聞かれた。

 

「ヒバリさん」

「……あんたの友好関係どうなってるのよ」

「そう言われても……」

 

オレとしては普通なんだけど。

 

「さっきあんたの兄貴みたけど、普通のブレザーだったじゃない。どうせあんただけ知り合いなんでしょうに、変だと気付きなさいよ」

 

言われてみれば家綱はヒバリさんとは会ってない?いつも同じ場所で待ち合わせだからヒバリさんがオレの家に来ることはないもんな。ヒバリさんのことだからオレの事調べてると思うけど……。家綱は昔のオレよりはマシってだけで、ヒバリさんが興味を持つようなところは無さそうだからかな。

 

うーん……とオレが考え込んでいると、黒川はため息を吐いていた。ごめん、心配かけて。

 

「でもまぁ大丈夫だよ。ヒバリさんとは付き合い長いから。基本的にオレは風紀を乱している人を捕まえるだけでいいって言ってくれたよ」

「えっ、ツナそんなことするのか?」

 

あれ?なんで山本びっくりしてるんだろう。

 

「怪我したらあぶねーじゃねぇか」

「そうだよ!ツーちゃん!」

「ああ、それなら大丈夫だよ。オレそこらの不良より強いから」

「……ツナ、強い。私、知ってる」

「ありがと、クローム。ヒバリさんもそうじゃなきゃ、オレを風紀委員に誘わないって」

 

ヒバリさんからすれば、未だにトンファーの使い方は壊滅的らしいけど……。

 

「私、あんたの規格外に慣れてきてるのが怖いわ……」

 

え、だから普通だってば!

 

そんな感じでわいわいと教室に向かったからか、オレの制服がみんなに違うってことも、風紀委員の噂を聞いていた人達も好意的に受け取ってもらえた。先生にはビビられたけど……。

 

あ、ちなみにオレ達はみんな同じクラスだった。そして家綱とも初めて同じクラスになった。双子だから今まで一緒になったことなかったのに。

 

入学式は普通に終わった。変わったことといえば途中でヒバリさんが風紀を乱さないようにと言ったぐらい。2年と3年は必死に首を縦に振ってたよ……。

 

入学式が終わるとみんなが教室に戻る中、オレはそのまま体育館に残った。ヒバリさんから他の風紀委員と顔合わせするって朝会った時に言われていたから。オレ以外の風紀委員ってデカイ人ばっかりだと思ってる間に草壁さんがオレの説明をしてくれる。話していた通りオレは他のみんなと違って風紀の乱れた人を捕まえるぐらいしかしないこととか。

 

「沢田、何かあるか?」

「ええっと、沢田ツナです。よ、よろしくお願いします……!」

 

急に草壁さんに振られたけど何も考えてなかったオレは無難な内容を口にし頭を下げた。すると、後ろから殺気がしてオレはその場から飛び退く。ついでに誰か確認するため振り向きながら。

 

「って、ヒバリさん!?何するんですか!?オレじゃなかったら怪我してますよ!?」

 

さっきまでオレが居た位置の床がトンファーでへこんでるよ……。

 

「これでわかったよね。彼女、君達より使えるって」

「そんなことのためにオレは咬み殺されかけたんですか!?」

「そうだけど?」

 

ヒバリさんの行動にオレは頭を抱えた。

 

「もう君、行っていいよ。そろそろ教師が説明に行く頃だから」

「はぁ。すみません、ではオレは行きますね。これからよろしくお願いします」

 

相変わらず優しいのか優しくないのかわかんない人だなぁと思いながら、オレは教室に向かう。それにしてもオレの中学生活はやっぱ波乱なんだなーっておかしくなって思わず笑ってしまった。




沢田ツナ
相変わらず身内には油断し、墓穴をほる。
スカートよりはましかな?と思うあたり、その場限りの反省。

雲雀恭弥
使えるものは使う。
ただ変なところでツナが頑固と知っているので、ちゃんと見極めている。
あまりにもツナがナメられそうだったので、トンファーをふるった。

六道骸
黒曜中に通い始めた。


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「は?お前それでいいのかよ」

「ええ。それが一番良さそうですから」

 

ほんとに?骸の負担多すぎない?とオレは首を傾げるけど、骸の中でそれは随分前から決めていたみたいで全く気にしていなかった。

 

「それよりも気をつけてくださいよ。君の記憶より随分早く来るのでしょう?」

「う、うん……」

 

オレの記憶ではリボーンが来るのは夏前だった。確か半袖だったから。それなのに骸が掴んだ情報によるともう来るらしい。まだ入学式から一週間もたってないんだけど……。骸はオレ達を見極めるという意味もあって早まったと予想している。オレもそんな気がするから早まったのは別にいいんだ。オレも会いたかったし。骸が心配しているのはオレの記憶がアテにならなくなってるということ。後、オレのうっかり。

 

特にうっかりが心配だったみたいで、それを減らすためにも骸はこれを提案してくれたんだろうけど、本当にいいのかなぁ。オレの心配をよそに骸はリボーンや父さんの反応が楽しみですねと笑っていた。……父さん、ショックで倒れなきゃいいけど。

 

 

 

 

そして唐突にそれは訪れた。オレが見回りついでにクロームを家に送ってる時に起きたんだ。

 

「すっげー、嫌な予感がする」

「……?」

 

リボーンが来るから?と一瞬思ったけど、それはわかっていたことだし多分違う。なんだろう?って思ってるとパンツ一丁の家綱を見てオレは悟った。

 

「六道凪!!オレと付き合ってください!!」

 

最悪だ……。前世のオレ、こんなことしてたんだ……。オレは頭を抱えたくなったけど、それよりもクロームだ。恐る恐るクロームの方を見る。

 

「嫌」

 

ぐはっ、なぜかオレにもダメージが来た。そうだった、クロームは意外とはっきりと言う子だった……。

 

崩れ落ちた家綱のフォローをするべきか、兄の行動についてクロームに謝るべきか、京子ちゃんの心広さに拝んだ方がいいのか、でも出来ればショックで寝込みたい……。

 

「ツナ、行こう」

 

オレが困ってると思ったみたいで、クロームはオレの手を引く。数秒迷ったオレはそっと体操着を置いて離れた。家綱もオレに慰められても嫌だろうし……。

 

 

クロームを送った後、オレはヒバリさんに連絡を入れて帰らせてもらった。もともとオレはノルマとかないからね。他の人達に申し訳なくて見回りぐらいはやってるけど。

 

家に帰ると家綱に「お前のせいだ!」と指をさされた。オレのせいじゃないと思うけど、前世のオレより結果が酷くて言い返すことは出来ない。

 

「妹のせいにするなんて情けねーぞ」

 

ボコッという音すら懐かしいよ、リボーン。殴られたのはオレじゃないけど。

 

「つーか、お前なんなんだよ!?」

「オレはリボーン。家綱とツナの家庭教師だぞ」

「あはは……。よろしくね、リボーン」

「妹の方が聞き分けがいいじゃねーか」

 

いや、オレも家綱みたいな反応したよ……。

 

「ガキの遊びに付き合ってられっかよ!お前が面倒みろよ!いってぇ!!」

「家綱がうるせーから説明してやるぞ。家綱の部屋に行くぞ」

「あ、待って、リボーン。オレの部屋使ってよ」

 

リボーンはオレと家綱を交互に見た後、頷いた。家綱は部屋にオレが入るのを嫌がるって聞いていたのかな。

 

それからリボーンはオレ達がボンゴレ10代目候補という話をした。昔のオレもそうだったけど、家綱も信じられなくてリボーンに掴みかかって返り討ちにされていた。

 

「お前ら2人のどっちをボスにするかの判断を9代目からオレに任されてんだ。ただ、ツナは女だからな。ボンゴレNo.2の奴が反対してっけどな」

 

ああ、やっぱり父さんはそうだよね。9代目が優先されるからオレにも説明はしたみたいだけど。

 

「……もしオレがボンゴレ継けば、こいつの扱いは?」

「本人に選ばせてやれっていうのが9代目の話だ。兄を支えるためにボンゴレに入るのも良し、護衛はつくだろうが普通に社会へ出るのもいいぞ」

「はぁ!?不公平だろ!?」

「もしオレがツナを選んだら、家綱にも同じことが言えっぞ」

 

9代目らしいなぁ。オレ達が今までマフィアに関わってなかったのもあると思うけど。

 

「一応参考までに聞くぞ。おめーらはマフィアのボスになりてーのか?」

「そんなの、知るかよ!?」

 

あー家綱は考えを放棄したな。気持ちはわからなくないけど。でもオレみたいに嫌って言わなかったな。

 

「ツナ、おめーはどうだ?」

「んー……オレは……お前がオレを選んだなら継ぐよ」

「……随分、物分かりいいじゃねーか」

 

……やべっ。骸の言った通りになったよ。オレはリボーンを信頼しているから、どこかでやらかすって。

 

「えーと、実はオレ……ボンゴレ10代目候補って知ってたんだ」

 

家綱が叫んでるけど、オレはリボーンが今何を考えているのか気になって仕方がなかった。

 

「リボーンが近々くるって話も知っていたから、家綱みたいになんでってならないんだ」

「おい、なんで話さなかったんだ!」

「信じられないだろうなーって思って……」

 

ふんっと家綱はそっぽを向いた。言い返さないってことは自覚はあるみたい。

 

「……ツナ、おめーは誰から聞いたんだ」

「骸」

「はぁ!?なんであいつが!!」

「あいつ、一応マフィアだから。あ、クロームは一般人だよ」

 

家綱はホッとしようとしたけど、フラれたことを思い出したのか微妙な顔をしていた。リボーンはオレの友好関係も軽く調べてるはずだから、幼馴染の骸のことも知ってるはず。もちろんクロームが義理の兄妹ってことも。だからオレのフォローは疑問に思わなかったけど、骸がマフィアとは思ってなかっただろうから動揺してると思う。相変わらずポーカーフェイスがうまくて見ただけではわからないけど。

 

「骸がさ、リボーンに本気で調べられたらバレると思うから言っていいって。ちょっとデリケートな話だからリボーンだけにしたいんだけど……」

「……わかったぞ。家綱、おめーは部屋に行ってろ」

 

家綱は文句を言っていたけど、リボーンが実力行使に出て外へ追い出した。

 

「ありがとう、リボーン」

「気にすんな。オレには話してくれんだろ?」

 

うんとオレは頷いて、骸がエストラネーオファミリーの人体実験の被害者ってこと、その人体実験で能力を手に入れた骸がファミリーをボコって逃げ出したこととか、その時旅行中だったオレが骸と出会ったこととか。ちょっとウソが混じっていたり前世のこととかは黙ってるけど、ほとんどは真実。前世でリボーンにねっちょり鍛えられ、読心術が効かないはずだからリボーンがどう判断するかわからないけど。……まぁ骸の話だと、オレはよく顔に書いてるらしい。オレ、マフィアのボスだったのに……。

 

「ボンゴレがエスラネーオファミリーの被害者の子ども達を保護したんだろ?それでボンゴレのことも詳しいんだ。あいつ、何も言わないけど見に行ってるんだと思う」

「……そうか」

 

骸の言う通り話したけど、本当に大丈夫かなぁ。後でバレた時の方が警戒されてやりにくいってあいつは言ったけど、絶対オレが動きやすいようにだと思うんだよ。

 

「あいつ、わかりにくいけどいい奴なんだ。だからさ、無駄に警戒してほしくないつーか、うーん……」

 

リボーンの立場上、警戒しなくちゃいけないのはわかるから、なんて伝えればいいんだろう……。

 

「おめーの言いたいことはわかったぞ」

「ほんと!?」

 

良かったーって喜んでると、リボーンが真剣な表情をしてオレに聞いた。

 

「もしそいつが裏切ったらお前はどーすんだ?」

「え?骸が?……ないと思うけど。んー、その時はオレが責任もって止めてみせるよ。友達だから」

「ならオレからは何もねーぞ」

 

ニッと笑った姿が懐かしくて、オレも笑った。




沢田ツナ
家綱の告白を見て、前世の自分の行動に引いた。
この後、京子の家の方角を向いてこっそり拝んだ。

リボーン
今のところ圧倒的にツナがボスに向いていると判断した。
一応骸のことは調べた。日付けからツナと出会う可能性は確かにあった。いろいろ引っかかるが、矛盾はない。
ちなみにボンゴレへのタレコミは骸がしたと勘違いしている。

沢田家光
リボーンから手紙が届く。
ツナが10代目候補ということを知っていたことに固まり、小さい頃からマフィアと関わっていたことを知り青ざめた。
追伸で「恐らくおめーがNo.2と気付いてんぞ」という内容が書いてあり、泣いた。
その後復活した彼は娘に会いにいくと言って暴れる。10代目については9代目がリボーンへ依頼したので、No.2が出しゃばると問題になるので部下が必死に止めた。


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リボーンが来てから数日、隣の部屋から家綱の悲鳴が何度も響き渡っていたけどオレには暴力を振るうことはなかった。……あいつ、女に優しいから。

 

想像していたスパルタ教育がないことにオレはちょっと寂しさを覚える。もちろんオレだって痛いのは嫌だけどさ。なんていうか身体にしみてんだよ。

 

そんな感じでオレと家綱で対応に差があるから、当然家綱は怒った。リボーンの主義に文句をいったからボコられていたけど。それでも納得出来るかって言ったら違うから、オレとの関係が更に悪化。

 

オレが困っていたのもあるし、多分骸のことを調べ終わったからのもあって、今日からしばらくの間はリボーンはオレにつくことになった。……これ、2人見ないといけないリボーンは大変じゃない?

 

「ランニングに行くだけだからついてこなくてもいいんだぞ?」

「問題ねぇぞ」

「じゃぁオレの頭に乗っていいよ。トレーニングにもなるし」

「サンキューな」

 

ピョンとオレの頭に乗ったのを確認して、オレは走り始めた。いつもの道を走りながら懐かしいなと思う。リボーンはオレの頭にはあんまり乗らなかったけど、今のオレの身体はちっこくて肩には無理だから仕方ないんだけどさ。

 

いつもみたいに了平兄さんにちょっと会話したり、毎日顔を合わせている人にも挨拶する。今日は途中で山本ともあった。

 

「……ツナ、おめー毎日これもやってんのか?」

「ん?そうだけど?」

 

やっぱりちょっと変かなと思いながら、日課の崖登りもする。今では慣れて朝のコースに組み込まれてるけど、小3ぐらいまでは登りきれなくて、放課後骸に何度も付き合ってもらったよ。流石に落ちたら危ないからね。そういや、ヒバリさんにバレた時は呆れられたっけ。

 

崖を登り切ると、ちょっと休憩。その間、リボーンがオレの腕を触っていた。

 

「この細腕のどこに力があるんだ?」

「あ、それはオレも変だと思ってるよ。なんでだろうね」

 

そういやヒバリさんもそこまで腕が太くないのに、力あるよな?まぁヒバリさんは身体の使い方がうまいってのも関係してるけど。

 

「リボーン、そろそろ行くよ?」

「ああ」

 

リボーンの体重分、ちょっといつもより時間がかかって家に着いた。了平兄さんや山本と話し込んじゃった時よりは早いから学校には間に合うけどね。

 

いつものようにシャワーを浴びて制服に着替える。オレが学ランなのは早々に質問されたから、リボーンはオレが風紀委員に所属しているのを知っている。骸のこともあったから、ヒバリさんとはまだ接触してないみたい。リボーンのことだから数日中の問題だと思う。

 

オレがシャワーを浴びてる間に家綱は起こされたみたいだ。今まではオレが担当だったけど、家綱の態度を見た次の日からリボーンがやってくれてるんだ。……ほんと、女子に甘いよな。助かってるからお礼にエスプレッソをいれてあげてる。オレ好みだぞって褒められたけど、前世で仕込んだのはリボーンだったから当然なんだけどね。

 

「母さん、いつも助かるよ」

「気にしなくていいわよー」

 

そうはいうけど、毎日4人分の弁当を作るのは大変だと思うんだけど……。クロームも料理が出来るようになったけど、やっぱ朝は忙しいからさ。今でも2人の分を母さんが作ってくれてるんだ。

 

「いってきまーす」

 

リボーンはどうするのかなって思ったけど、隠れる気配はないみたい。骸と直接会う気になったのかな。

 

オレの予想通り骸ん家についてもオレの足元でリボーンは堂々と立っていた。

 

「クローム、迎えにきたよー」

「うん……!」

 

ほんと、かわいいなぁ。もう何年もやってることなのに、嬉しそうにするんだもん。今でもオレがクロームの頭を撫でるのは仕方ないと思う。

 

「ちゃおっス」

「おや?ついにきたのですね」

 

リボーンの声に反応したのか、骸が奥から出てきた。

 

「おめーの情報がねぇからな。この目で見ることにしたんだ」

「ボンゴレも大したことはありませんね」

 

いや、お前が凄すぎるだけだから。いちいち煽んなよ。

 

「なんでおめーは並中じゃねぇんだ?」

「僕には僕の都合がありますから」

「あーもう。ほら、骸。お前の弁当」

「ありがとうございます」

 

こういうことにはちゃんと礼をいうのに……。

 

「おめーの都合ってなんだ?」

「なぜ僕がアルコバレーノに話さないといけないのです?」

「骸!!」

「はいはい。わかりましたよ。僕はもう行きます」

 

煽るだけ煽ってオレに丸投げかよ……。まぁこれ以上続くよりはいいけどさ。

 

「あ、骸」

「なんです?」

「お前の気持ちもわかるから家に来いとは言わないけどさ。たまに母さんには顔を見せてあげて。心配すると思うから」

 

お前なら偶然道端で会うってこともできるだろ?って言えば、仕方ありませんねと骸は返事をしてくれた。これでちょっとは悪い奴じゃないってわかってくれればいいけど。

 

「相変わらず君は甘ちゃんですね」

「ゔ」

 

オレがここで言った意味全部気付かれてるよ……。骸はやれやれと肩をすくめた後、学校に向かっていった。と思ってたんだけど、振り返ってあいつは言った。

 

「君の兄が僕のクロームに失礼なことをしたのは知っていますからね」

「家綱、逃げてーー!」

 

思わず叫んだオレは絶対悪くないよ。あいつわざとこのタイミングで言っただろ!?と骸が行ってしまってからオレは頭を抱えた。

 

「……ツナ。私、気にしない。あの人と血が繋がってても私、ツナのことは好き」

 

ハハハ……。嬉しいけど、それ家綱が聞いたら泣くと思うよ……。

 

朝からいろいろあったけど、学校では特に問題なく過ごせた。リボーンは木の上から観察していたみたいだけど。

 

放課後は見回り。相変わらずノルマもないし、その日の気分でフラフラと歩くだけだけど。今日は野球部の練習があるから学校にしようかな。もちろんクロームを家に送ってからだけど。

 

オレが歩いてると、他の風紀委員と違うタイプって噂が流れたみたいで、ちょっとしたこととか話してくれる。特に破損の報告が多い。気付いたのはいいけど、自分がやったわけじゃないのに咬み殺されるから言えなかった人が多かったみたい。最近では町の人にも声をかけられる。

 

先生に至っては休みの相談とか。例えば家族の結婚式に出たいっていう理由で。ヒバリさんも鬼じゃないんだから、普通に説明すれば休めると思うんだけどね。

 

2、3度オレが間に入ったところで、ヒバリさんからケイタイを支給された。昼寝中に連絡しそうで怖いんだけど……と思いながらも、ちゃんとした理由があるからか今のところヒバリさんが怒ったことはない。

 

リボーンはそんなオレを観察していたけど、姿を見せることはなかった。

 

チラチラ野球の練習を見ながらも、5時半を過ぎたので見回りを終える。後は『今日は何もありませんでした』とメールで報告するだけ。返事はないけど、いつものことだから大丈夫。

 

「ツーちゃん!」

 

聞こえてきた声に振り返る。オレの予想通り京子ちゃんが居た。そういえば今日は委員会で残るって言ってたっけ。

 

「結構長かったんだね」

「うん。ツーちゃんも終わったなら一緒に帰ろ?」

 

そうだね、危ないから家まで送るよって返事をしたところで、持田先輩の姿が目に入った。……あの人、京子ちゃんと一緒に帰りたかったんじゃ……。

 

「ツーちゃん、行こうよ!」

 

オレと帰ることに嬉しそうにしている京子ちゃんを見れば、どっちを優先するかは決まっていた。まぁいっかとオレはそれを見なかったことにした。




沢田ツナ
頼まれたら断れない性格から、一応風紀委員活動をしている。
基本笑ってヒバリさんに報告しておくねと言われるから親しまれ、ツナに嘘をついて報告した人からは恐れられている。
なぜかすぐバレて今回は見逃すけど次はヒバリさんに話すからねとガッツリと釘を刺されたから。

六道凪
家綱のことは嫌い。
大好きなツナと骸を悪く話すから。

六道骸
煽ってはいるが、骸からすれば随分甘い対応。
昔の自分はもっとやった。
家綱にはちゃんと報復した。もちろん気づかれないように。
ただツナにはバレてちょっと怒られた。


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いつものようにクロームと一緒に通っていると、オレは靴箱で持田先輩からと果たし状を突きつけられた。

 

「……ツナ、無視しよう」

「うーん、一応行くよ」

 

なんで人通りの多いところでするかなーとオレは思いながら、体育館へと向かう。さっきのを見ていた人も付いてきているのもあるけど、持田先輩が集めたのか野次馬がいっぱい居てオレは溜息を吐いた。

 

「沢田ツナ!風紀委員という立場を利用し、女子生徒を甘い顔で騙し嗾すお前をオレが成敗してくれる!!」

 

あ、京子ちゃんや黒川もいる。おはようと声をかけていれば、持田先輩が周りに声をかけていた。

 

「見ろ!これが証拠だ!彼女達も騙された被害者だ!お前のような男のクズは神が許してもオレが許さん!」

 

持田先輩の言葉に一部の人達は「何言ってんだ?」みたいな反応する。見てみるとクラスメイトや同じ小学校出身の人達だった。オレが女と知ってるからだと思う。それでも2年や3年の人達は知らないから、敵意みたいなものも感じる。

 

「どうしよっかなぁ」

「私が言ってあげようか?」

 

黒川の言葉に笑って大丈夫と答える。オレが困ってるのは教えるのを躊躇しているからじゃない。別にオレは女ってことを隠してるわけじゃないし。オレが困ってるのはここまで話を大きくしたなら、お咎めなしっていう訳にはいかないから。オレがヒバリさんに怒られるよ。それに草壁さんみたいに本気でヒバリさんの考えに共感してについて行ってる人にも申し訳ない。オレのせいで風紀委員全体がナメられちゃうから。

 

オレがボコボコにすればヒバリさんは納得すると思う。持田先輩も勝負を仕掛ける気みたいで剣道着を着ているし。でもオレはそういうのは好きじゃない。だから昔やったみたいに持田先輩を坊主にするのはもっとない。

 

うーん……と悩んでるとオレが怖気付いたと思ったようで、持田先輩はさらに調子に乗った。

 

「賞品は笹川京子だ!」

 

リボーンじゃないけどカチーンときた。ちょっと痛い目にあってもらおう。持田先輩の発言に怒ってるみんなをオレはまぁまぁと宥める。オレの笑顔を見て黒川が「目が笑ってないわよ……」と呟いた。え?気のせいだって。

 

「あのー、オレ剣道やったことないんで普段使ってる武器がいいんですけど……」

 

あの重たそうな竹刀や防具をつけても動けると思うけど、筋を痛めそうで嫌だ。

 

「武器?」

「えっと、これなんですけど……」

 

そう言って、シュッと仕込みトンファーを出す。すると、その姿が誰かを連想するのか、今まで強気だった持田先輩達が怖気付いた。

 

「さ、沢田……その武器はどこで……」

「毎年ヒバリさんがくれるんですよ」

 

あの時だけとオレは思っていたけど、調べたのかオレの誕生日が近い日曜日に新しいのを毎年くれるんだ。それもオレの体格にあったものを。

 

「覚悟はいいですか?」

 

オレはあえてヒバリさんが言いそうな言葉をつかう。チラッと審判に目を向ければ、勝負開始の宣言をした。ヒバリさん、どんだけ怖がれてんの……。

 

ヒバリさんから見れば、トンファーの使い方はダメダメらしいけど、素人から見れば脅威だと思う。伊達に何年もトンファーを使ってないよ。

 

オレは簡単に持田先輩の竹刀を弾いて、トンファーを喉につきつける。

 

「ヒバリさん直伝のトンファー、味わいます?」

 

耳元でボソッと呟けば持田先輩は気絶した。ちょっとやりすぎちゃったかな?

 

これでも持田先輩は後輩たちに慕われてるみたいで、真っ青な顔をしながらもオロオロしていた。それを見てオレは笑って言った。

 

「もう怒ってないよ」

 

後はオレが女っていうことを教えたら終わりかなって思ってたんだけど、体育館の入り口の方からバキッ!ドコッ!っていう音がし始めた。……ほんと前の時は運が良かったよな。ヒバリさんが学校にいれば絶対気付くはずだもん。

 

「なに、この群れ」

 

オレの姿が見えたからか、ヒバリさんに説明しろって話しかけられた。

 

「うーん、正義感からの暴走ですかね?」

 

これ以上持田先輩が痛い目にあうのは可哀想と思って考えながら口にする。

 

「男のオレが女の子を誑し込んでると思ったみたいで……風紀の乱れだって怒ったんですよ」

「……君、いつから男になったの?」

 

さぁ?と首を傾げながらも話が逸れ始めてるしちょっとは機嫌が直ったかなと思う。でも確かにヒバリさんの言う通りなんで持田先輩は勘違いしたんだろ。そりゃ学ランを着てるのもあるだろうけど、ちゃんと見れば胸があるのはわかるはずだよね?

 

「そんな小さいかな?」

 

オレが服の上から胸の大きさを確かめていれば、ヒバリさんがトンファーを振るってきたから慌てて避ける。

 

「いきなり何するんですか!ヒバリさん!」

「今のは君が悪い」

 

ヒバリさんに断言されるだけじゃなく、女子達もウンウンと頷いていたからオレが悪いみたいだ。

 

「はぁ。君はもう行きなよ」

「え、でも……」

 

オレのせいでもあるし、後処理もするつもりだったんだけど、黒川と京子ちゃんに腕を掴まれた。

 

「ツナ、あんたはあっちで説教」

「うん。ツーちゃん、さっきのはダメだよ」

 

え?え?ってオレが疑問に思ってる間に引っ張られていく。無理矢理外すことも出来るけど、女の子にそんな手荒なことは出来ないし。ヒバリさんの目の前でオレが群れたのに見逃してくれたし、出て行った方がいいのかな。

 

その後、黒川と京子ちゃんに男子の前で確かめちゃダメと怒られた。男子がイヤらしい目で見るからって。でもさ、オレもそうだったけど男子って女子が何もしなくてもそういう目で見てると思うんだけど……。

 

それをいったら、尚更やっちゃダメってわかるでしょうが!って黒川に怒られた。

 

 

数日後、家に帰るとなぜかリボーンを抱いて機嫌が良さそうなビアンキが家に居た。




沢田ツナ
ツナの笑顔を見て、本気で怒らせてはいけない人種だと黒川達は思った。
ヒバリさんにトンファーを毎年もらうので、引き出しの中の1つがコレクションみたいになっている。

雲雀恭弥
いち早く反応していたが、ツナの行動に一瞬だけ固まっていた。ありえなさすぎて。

リボーン
ツナの実力が見れるし、面白そうだと楽しそうに観察していたが、ツナの行動にボルサリーノを深くかぶり直した。


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ビアンキの姿を見たオレは数秒固まった後、どちら様?と呟いた。なんでこのタイミングでビアンキ?骸から何も聞いてないんだけど……。

 

「紹介すっぞ。こいつはビアンキだ。ツナ、おめーの教育の一部を担当してもらうためにオレが呼んだんだぞ」

「そうなんだ。えっと、よろしくね、ビアンキ」

「ええ。よろしく」

 

おっかしいなぁ。ビアンキがオレを殺そうとしてない。最初の頃はオレを暗殺しようとしていたはずなんだけど……。

 

「ビアンキの担当って何?」

「ヒミツだぞ」

 

自分で考えろってことかな。うーん、今更オレのどこを教育し直すんだろう。うっかりならリボーンで問題ないはずだし……。

 

「まっいっか。ゆっくりしといて。お茶でも入れるからさ」

 

ビアンキにはお茶をリボーンにはエスプレッソをいれながら、平和だなぁって思う。ビアンキが普通に来ただけでこんなに違うんだなーって……。ハハハ……オレの前世、人生濃すぎ……。

 

あ!ビアンキに獄寺君のこと聞けないかな。でもオレがこんなこと聞けば絶対リボーンに怪しまれるよな。獄寺君が来なくなっちゃう可能性もあるし……。

 

2人に飲み物を渡した後、ちょっと骸のとこ行ってくる!って言えば、リボーンがオレの頭に乗った。

 

「え?お前も行くの?」

「なんだオレがいちゃマズイのか?」

「そういうわけじゃないけど、せっかく入れたのに……」

「問題ねぇぞ。持って行くからな」

 

さいですか……。ビアンキはいいの?と視線を向ければ、家で待っててくれってリボーンが言ったから来ないみたい。骸もマフィア関係者が家に来るのは嫌だと思うから助かったよ。

 

骸ん家につくと、オレは早々「ビアンキって知ってる?」って骸に聞いた。これだけでオレん家にビアンキが来たってことも骸ならわかるだろうし、オレのうっかりを防ぐために少し説明してくれるはず。

 

「ほぉ。確か毒を操る殺し屋ですよ。間違っても彼女の手料理は食べてはいけませんよ。死にたくなければですが」

「死にたくないっての。骸、サンキュ」

「かまいませんよ。君に死なれたら面白くありませんから」

「あ、うん。気をつけるよ」

 

随分前にオレの死んだ後のことを聞いたことがあるけど、骸はあれからボンゴレに近づくことはなかったみたい。だから多分オレが死んだら本当に面白くないんだろうなって思う。

 

「しかし彼だけじゃなかったのですね」

「え?」

「僕が掴んだ情報ではもう1人殺し屋が来ています。君が呼んだのでしょう?」

「まぁな」

「んなっ、誰!?」

 

オレが骸に聞いても笑うだけで教えてくれない。わかってるなら教えてくれたっていいのに……。

 

「君には害はありませんよ」

「んーわかった。お前が言うならそうだと思うし……」

 

にしても害のない殺し屋って誰だろ。彼って骸は言ったよな?死んだフリができるモレッティとか?でもあの人って殺し屋じゃなくて殺され屋だったような……。

 

「そろそろ戻らないと君の母親が心配するのではないのですか?」

「え?もうそんな時間?」

 

風紀委員に入ってると放課後が潰れるから時間がないんだよな。骸に会う時間もめっちゃ減ったし、リボーンが来てからは川平さんにも会わなくなったし。何かあった時は来ていいって言われてるけどさ。リボーンは警戒すると思うんだよな。前もそうだったし。呪った張本人だからリボーンの勘は間違ってないんだけどさ。

 

「あ、でも今日は大丈夫。母さん、町内会の集まりで出かけてるから帰ってくるの遅いって言っ……」

「ツナ?」

 

リボーンに声をかけられたけど、オレは説明を後回しにした。

 

「骸、悪い。帰る」

 

オレの行動に慣れてる骸は気にすることもなく見送った。リボーンもついてきたので、走りながら説明する。

 

「ごめん、リボーン。なんか嫌な予感がして……」

「よくあることなのか?」

「そうでもないかな?でも外したことはないよ」

 

それっきりリボーンは話しかけて来ることはなかったから、オレは家まで急いで走った。

 

リビングに入ってすぐオレの超直感が何に反応したのかわかった。

 

「家綱ー!?なんで食べちゃったのー!?」

 

ビアンキの手料理を食べてヒクヒクしている家綱を見て頭を抱える。見た目で絶対食べちゃダメってわかるじゃん!ビアンキも「喜びのあまり気絶しちゃったのかしら?」じゃないよ!?無意識にポイズンクッキングしてるから!

 

「リボーン、どうしよーー!?」

「心配すんな。こう言う時のためにドクターを呼んであるぞ」

「え?それって……」

 

オレがもしかして?と思ったところで、チャイムが鳴った。って、ビアンキが見に行っちゃダメだって!

 

「死ね!」

 

あーもう!オレのツッコミ追いつかないから!シャマルがポイズンクッキングの餌食になってるじゃん!

 

オレがオロオロしていると、シャマルはビニールでガードしていたみたいで、普通に起き上がってビアンキの頬にキスをしていた。やっぱシャマルってつえー!

 

「あ、あの!家綱を診てやってくれませんか?医者なんですよね!?」

「お?こっちにも可愛い子ちゃん居るじゃねーか。どれどれ……」

 

えっ?とオレが思ってる間に、シャマルの顔が近づいていた。頭ではわかっているのに、身体がすくんで全然反応出来なくて……絶対絶命ー!?

 

「っと、こえーこえー」

 

シャマルがピタッと動きを止めたのはリボーンが銃を構えたからだった。安心したオレはへなへなと腰が抜けた。もうちょっとで頬にキスされるところだった……。

 

「た、助かった……。リボーン……ありがとう……」

 

うぅ……とオレが情けないところを見せても、リボーンは「オレは女を泣かせる趣味じゃねぇからな」と言って許してくれた。

 

「あー……すまん。生真面目な子だったのね」

「まったくだぞ。誰にも構わず手を出そうとするのはシャマル、お前の悪い癖だ」

「女の敵よ、敵。ツナ、もう大丈夫よ」

「ご、ごめん……」

 

ビアンキに背を撫でられるし、オレ本当に情けねぇ……。なんで動けなかったんだろう……。

 

「嬢ちゃん、怖がらせた詫びだ。オレに診てほしい奴がいるんだろ?」

「そ、そうだった!オレの兄、家綱をお願いします!」

「男は診ねー主義だが、今回は仕方ねぇか……」

 

良かったー!とオレが感動している間に、シャマルは家綱を治してくれた。やっぱシャマルの能力すげー。

 

「家綱、大丈夫?」

「っつ、触んな!」

「ご、ごめん……!」

 

つい心配して揺すってしまった。やっちゃったー!

 

「おいおい、誰のおかげで治ったと思ってんだ?」

「うるせ!オレは頼んでねぇよ!」

「うん、そうだね。オレが勝手にお願いしたことだから。シャマルありがとう」

 

オレがそう言ったら、3人揃って溜息を吐かれてしまった。オレ、そんな変なこと言ったかなぁ……。

 

「ツナ、食事にしましょう。あなたはまだ食べてないんでしょう?作ってあげるわ」

「えっ……。だ、大丈夫。オレ料理できるから自分でつくるよ!ビアンキは座ってて!」

「あら?そう?」

 

あっぶねー。家綱の二の舞になるところだった。ホッと息を吐いてる間に2階からはドカドコと音が聞こえてきた。うわー、迂闊にビアンキの料理を食べたし絶対怒られてるよ。

 

「や、やりすぎてなきゃいいんだけど……。家綱はさっきまで死にかけてたし……」

 

リボーンを止めれないオレを許してっと家綱の無事を祈ってるとシャマルに言われた。

 

「嬢ちゃんの優しさは美点でもあるが、欠点でもあるな」

「あはは。それ、何度か言われたことあるよ」

 

よくみんなに苦労かけちゃったよなーと笑ってると、シャマルはオレの頭を撫でて帰っていった。




世界観の補足
ツナが死んだ未来は残っています。過去が変わったので、完全に分断された状態ですが。
原作の未来編の10年後のツナ達の世界みたいな感じです。分断されたからツナの日記の文字が消えましたし。
なので世界が存在しているため、骸は死ぬまでの記憶があります。
まぁその世界は衰退していくしかありませんけどね。

ビアンキ
2人の、特に女性であるツナの抹殺計画を立てている時にリボーンから依頼が来た。
ツナが女性として全く育ってないことを知り、態度が急速に軟化。
女性としての情緒や身の守り方を教えるためにやってきた。

Dr.シャマル
ツナの反応を見て、遊びで手を出してはいけないタイプと察した。
そして帰る前にツナにアドバイスしたつもりが、ツナは自分の甘さから招いた結果で起きた問題は自分で対処する覚悟を持っていた。
どうやったらこの歳でそう育つもんかね……とちょっと心配になった。

リボーン
骸の情報収集能力の高さやツナが超直感に目覚めていることを知った。
ただボスとしては優しすぎる性格から、家光が娘の可愛さだけで反対しているわけじゃないことも理解できる。
しかし家綱は家綱で性格に難ありなので、前途多難。

沢田ツナ
女として生きることを受け入れているが、女としての生き方がわかっていない。
恐怖で身体が竦んだことはあるが、覚悟をもって何度もそれを乗り越えて来ている。
が、今回は今までと違う種類だったので完全に動けなくなった。


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オレが普通に授業を受けていると「1−A沢田ツナ。応接室へ来るように」という放送が流れた。オレ、ちゃんと授業中はケイタイの電源切ってるからなぁ。でもヒバリさんには授業中とか関係なかったよ……。

 

「さ、沢田。早く行きなさい」

「すみません。ちょっと行ってきますね」

 

何の用だろうなぁと呟きながら立ち上がると、勇者だ……と誰かが呟いた。相変わらずヒバリさんは怖がられてるなぁ。オレからすれば、今のヒバリさんめっちゃ優しいから。トンファーを振るう前に話聞いてくれるんだよ!?そりゃ歳をとって落ち着いてきてからはバトルが条件だったけど先に話を聞いてくれたけどさ。この頃のヒバリさんは理不尽の塊だったから!

 

オレが応接室に顔を出すと、ソファーに視線を向けられたからお言葉に甘えて座らせてもらう。

 

「わぁ。ありがとうございます、草壁さん」

「いえ。では私はこれで失礼します」

 

お茶まで入れてもらえたよ。ヒバリさんの許可がないと出ないから、やっぱりこのヒバリさんは優しいよね。

 

「さっき、僕のところに赤ん坊がきたんだけど」

「ぶはっ」

「……汚い」

 

すみません!すみません!と言って慌ててハンカチで拭く。いつかはリボーンがヒバリさんと接触するのはわかっていたけど、まさかオレが居ないところでするとは思ってなかった。

 

「君、マフィアの跡取りなんだってね」

 

うわー、リボーンの奴、どこまで話したんだろ。

 

「あはは。ヒバリさんには迷惑かけないように気をつけます」

 

用件はこれだけかなっと思って、残りのお茶を飲みこむ。

 

「……君の要求の中で1つ気になっていたのがあった」

 

要求って、風紀委員に入る時に言った条件のことだよな?

 

「え?何かありましたっけ?」

「中学まで」

 

ヒバリさんってなんでそんなに鋭いのかなぁ。それともオレが迂闊なだけ?

 

「最初は進路かなって思ったけど、決まっているなら君なら僕に言うはずだ。あの赤ん坊の話を聞いて納得した。……君、卒業すればここから出て行く気?」

 

ここっていうのは並盛じゃない。表社会からってことだ。多分オレが誤魔化せばヒバリさんは一生許さないと思う。だから本当のことを言った。

 

「骸と約束しましたから。……あ!オレから言ったんですよ!骸はどっちかといえばオレに付き合ってくれてるだけです」

 

ヒバリさんが骸に良い印象を持ってないから慌ててオレは説明を付け加えた。

 

「……僕は君と出会って、強さにも種類があると知った」

「ヒバリさん?」

「君の場合、ここは足枷にならない。強さの源だ。それを捨てるっていうの?」

 

さっきお茶を飲んだはずなのに、喉がかわく。

 

「危険が及ぶから?確かにそうだろうね。でも……選択肢すら与えないのは、君のエゴだ」

「エ、エゴって……オレは……みんなを思って……」

「選ぶのは君じゃない。それに……あの南国果実だけじゃ、君は無理だ」

 

ハハハ……。ほんと、ヒバリさんって容赦ないよな……。

 

「……そんなのわかってますよ。オレと骸だけじゃどうしようもないって」

「ふぅん。それならいい」

 

オレは頭を下げてヒバリさんの前から少しでも早く去ろうと足を動かす。

 

「僕は内容次第だよ。……君が僕にくだらない用件を持ってくるとは思わないけどね」

 

最後の最後にズルい。そう思いながらオレは扉を閉めた。

 

 

 

 

ゴロッとオレは寝転がる。屋上はヒバリさんがよく昼寝をする場所だけど、多分今日は来ない。学校でオレが1人になれる場所なんて限られてるから……。

 

「……リボーン、そこに居るんだろ?」

「よくわかったな」

「お前、ヒバリさんに何言ったんだよ」

 

はぁとため息を吐く。気を遣ったのか、リボーンはヒバリさんとの話は聞かなかったみたいだけど。その気遣いはいらないって。

 

「オレはそんなに話してねーぞ」

「ウソつくなよ。あの人、そんなちょっとやそっとでは動かないっての」

「ウソじゃねーぞ」

 

話す気はないってことかよ。子どもみたいにスネたオレはリボーンを見ないように横向きに寝る。

 

「オレはそんなにヒバリのことを知らねーからな。もしお前の話が本当なら、ツナ……ヒバリはお前のために動いたってことじゃねーのか?」

「……なにそれ、全然笑えないじゃん」

 

ああもう!と今度は仰向けになって腕で目を隠す。

 

「なぁリボーン」

「なんだ?」

「オレにとってさ、ヒバリさんはヒーローだったんだ」

「……過去形なのか?」

 

リボーンの疑問にはこたえず、オレは口を開く。

 

「やっぱ、ヒバリさんはオレのヒーローだよ」

「……そうか」

「あーもう!本当にいいとこ持って行くんだから!……オレ、ずっとヒバリさんみたいになりたかったんだよ。でもなれないや。オレはオレだから……。ダメツナなりに頑張るよ。だから頼んだよ、リボーン……」

 

言いたいこと言ってスッキリしたのか、オレは眠くなって寝た。

 

 

 

 

ツナの寝顔を見ながら、リボーンはポツリと呟く。

 

「おめーのどこが、ダメツナなんだ……?」

 

はっきり言って欠点の方が少ない。家光もよくこれだけの逸材を隠しきれていたと思うほど、ツナは優秀だ。たとえ家綱以外の候補者が残っていたとしても、ツナなら張り合えただろう。

 

確かにボスにしては甘すぎる。だが、シャマルが表現したように美点でもある。特にボンゴレのボスには相応しい。「全てに染まりつつ全てを飲み込み包容する大空」という使命をツナは体現しているようなものだから。

 

これのどこを見てダメツナと呼べるのか。

 

更にリボーンが困惑しているのがある。リボーンを見るツナの眼差し。……あの眼からは絶対の信頼しか感じられない。

 

骸からリボーンが凄腕の殺し屋であって、ディーノを育て上げた家庭教師と聞いただけで、あそこまでの眼差しを送れるとは思えない。

 

ツナが女ということもあるが、それを抜きにしてもリボーンはツナとの距離感を掴みかねていた。

 

「ツナ、おめーはオレにどーしてほしいんだ?」

 

理由はわからないが、そこまで信頼してくれるなら期待にこたえたい気持ちはある。が、いったいツナはリボーンに何を望んでいるのか。

 

リボーンを信頼しきって眠ったツナを見て、リボーンは溜息を吐いた。




雲雀恭弥
幼少期にツナと出会い、強さの答えは1つじゃないと知った。
ツナが弱くなることを許さなかった。だから動いた。

沢田ツナ
雲雀のようになるのは無理とやっと気付いた。
でも自分から巻き込む勇気はなく、リボーンに導いてとSOSを出した。

リボーン
一番困惑してる人。
雲雀の性格から盗み聞きはしない方がいいと判断したが、聞けば解決していたかも?


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今日はオレの部屋でビアンキと刺繍しながら、昔話を聞いている。ビアンキの場合、ほとんどリボーンの話だけどね。どこがカッコいいとか、こんなところに惚れたとかだけど、オレの知らない話もあるから結構面白い。

 

「出来たわ」

「すげー」

 

ビアンキは料理さえしなかったら、完璧だよな。このスーツもリボーンに贈るために作ったんだろうし。あ、オレはそんな凝ったもの作れないよ。ハンカチにカーネーションの刺繍をするのが精一杯。母の日が近いから母さんにあげるんだ。

 

「ツナも惚れた男のために縫う日がきたら、すぐに上達するわよ」

「あはは。そんな日が来ればいいね」

 

じゃないと、今度こそプリーモに怒られる……。

 

「そうね……。何か贈りたい相手とか居ないの?お礼とかでもいいわ。私達みたいにスリリングな出会いもあるけど、そこから恋に発展するのも多いわ」

 

男の人にってことだよな?えーと、骸?あ、後ヒバリさんにも迷惑かけちゃったし、山本は今度試合って言ってたし、了平兄さんも試合が近いって言ってたよなー。って、オレの元守護者ばっかりだ……。

 

「ビアンキ、オレにはそういうの早いかも……」

 

ファミリーしか浮かばない時点でダメダメだった。

 

「そうかしら?何人か浮かんだように見えたわよ」

「また顔に出てたんだ……。でも友達とか先輩だし、オレが相手だと嫌だと思う」

「……どうして?」

「昔、骸に言われたんだよ。何にも言ってないのに、オレの相手は絶対嫌だって。だからみんなもそうだと思うよ」

 

オレの事、好きになってくれる人が居ればいいんだけど……。前回の経験からすると、裏社会で探した方がいいんだろうなぁ。ただ、オレと付き合いが深かった裏社会の人って、ロクな人居ないんだけど……。

 

「その骸っていう子がそう言ったからといって、全員がそうとは限らないわよ?」

「そうだったらいいね。っと、オレも出来た!」

 

結構、上手くなったよな。後はラッピングして、当日に花を買うだけだ。

 

「ふぅ。……そうね、よく出来てると思うわ」

「だよね!」

 

母さん喜んでくれるといいなぁ。まぁ母さんの性格なら喜ばないことはないんだけど。

 

ドンっ!という大きな音にオレは警戒する。今のは家綱の部屋からじゃなかった。多分庭から聞こえたような……。

 

「ビアンキ、危ないから下がってて。オレがみるから」

「私はプロなのよ?ツナが下がってなさい」

 

ゔ、確かに。つい癖でオレが前に出ようとしたけど、今のオレじゃ説得力がないんだった……。

 

「牛がいるわ。子どもね」

「え?牛!?それも子ども!?」

 

絶対ランボじゃん!こいつも来るのが早いって思ったけど、ランボはリボーンを追いかけてきたんだった。そりゃ来るのが早くなるよ。ビアンキが警戒する必要はないわって言ったからオレも覗き込む。って、大泣きしてるじゃん!

 

「大変だー!!」

 

慌てて一階におりて、庭へと向かう。ランボはその場からまだ動いてなかった。

 

「あーもう!泣くなって」

 

ポンポンと背を叩き、落ち着かせる。こりゃこっ酷くリボーンにやられた後だな……。家綱の部屋がなんか騒いでた気がしてたけど、いつものことだと思って放置してたのが間違いだった。

 

「ラ、ランボさんは、泣いてないもんね……グスッ」

「えらい、えらい」

 

はぁと溜息を吐く。どうすっかなー。ランボはまたリボーンにケンカを売るだろうし……。とりあえずお菓子で釣るかなぁ。

 

「母さん、何か甘いものある?」

 

リビングに戻って、母さんに聞いてみる。でもちょうど運悪く切らしていたみたいで何にもなかった。

 

「ランボ、何が欲しい?頑張って泣き止んだご褒美に買ってやるからさ」

「ほんと!?……お前だれ?」

「ツナだよ」

「ツナ、ツナ、ランボさんはねー、ぶどうが好きなんだもんね」

「わかったから。落ち着けって」

 

懐かしいなぁ。昔はこうやってオレの周りをうろちょろしてたよ。いつの間にかボンゴレ呼びになるし、女の子から奢ってもらってオレには催促しなくなったもんなー。

 

「ちょっと待ってろよ、財布とってくっから」

「ツーちゃん」

「ん?なに母さん?何か買って来るものある?」

「はい。これを使いなさい」

「えっ。わ、悪いよ!オレが勝手に決めたことだし……」

「いいのいいの」

 

結局母さんに押し切られてしまった。

 

「ランボ、オレの母さんが出してくれるって。お礼、言えるか?」

「んー?」

 

あー、ダメだ。まだちゃんと教えてもらってない時期だ。

 

「ありがとうって言うんだ。それを言えれば、また次があるかもしれない魔法の言葉だよ」

「次!?ありがとうだもんね!」

「ふふ。どういたしまして」

「えらいぞ、ランボ」

 

慣れたもんだなーって思う。オレの執務室を何だと思ってるのか、子どもを置いていくんだよ。託児所じゃないから!って何度ツッコミしたか……。

 

オレに抱かれながらランボはここになんで来たのかとか、夢とかの話をした。それマフィア関係者以外に言っちゃダメだからな……。そう思いながらも呆れずに相槌を打っていたからなのか、ランボはオレのことを気に入ったようで部下にしてやるって言った。

 

「オレがランボの部下かぁ。あはは、平和で楽しそうだね」

「ツナ?」

「いや、こっちの話。ほら、あんまり高いのはダメだけど好きなの選んでいいぞ」

「やったもんね!」

 

中学を卒業したら、どっぷり裏の社会につかるつもりのオレからすれば、ランボが眩しく感じるよ。だからこそオレはコイツの未来を守らないとな。

 

「これとこれにするもんね!」

「どれどれ?……うん、これなら大丈夫。ちゃんと考えて選んで偉いぞ」

 

褒められて上機嫌なのか、ランボは買い物中も無茶苦茶なことをしなかった。

 

「せっかくだし、ここで食べよっか」

 

公園のベンチに座って、お菓子の包装を外してランボに渡す。目がキラキラしちゃって、ほんとお菓子好きだよなぁ。

 

って、食べ終わったのはいいけど頬についてるじゃん。あーもう、これからはハンカチとティッシュは必需品だよ。出来るだけ入れるようにはしてるけどさ。

 

「動くなよ。とってやるから」

「んー」

 

絶対聞いてねぇ……と思いながら、拭ってやる。

 

「ツナ!」

「ん?どうした?」

「いいもの見せてやるもんね!ジャジャーン!10年バスーカ!!これを撃たれた者は5分間10年後の自分といれかわるー!」

 

それボヴィーノファミリーの秘宝だから。そんなに簡単に出しちゃダメだから。……なんであそこのボスはこんなチビに渡したのかなぁ。それだけランボが可愛いってことなんだろうけど。

 

ドオン!

 

「え?使っちゃったの!?ってことは……」

 

オレの予想通り、煙がはれるとそこには成長したランボが居た。

 

「お久しぶりです。若きボンゴレ。10年前のオレがお世話になってます」

「え、あ、うん」

 

オレの知ってるランボと変わってねぇと思いながら見てたけど、あることに気付く。

 

「若きボンゴレってことは、結局オレがボンゴレを継いだんだ」

「ええ。あなた以外誰も認めませんよ」

「……そっか。家綱はどうしてるの?」

 

あいつもマフィアになってんのかな?それとも普通の一般人?

 

「家綱さんですか……」

「え?なに?」

「……すみません。オレは幼かったのでよくわかってないんですが、彼はこの時代ではもう亡くなっています」

 

は?とオレはランボの顔を見る。冗談じゃないよな……?

 

「すみません。聞ける雰囲気じゃなくて死因は……」

「あー……うん。オレこそごめん。ランボは悪くないから。それに教えてくれてありがとう」

 

いろいろ思うところはあるけど、今ランボに聞けて良かったと考えよう。

 

「あ、家綱には黙っててくれよ?その話を聞けば気分良くないだろうし、オレがちゃんと守るからさ。お前のおかげだよ」

「はい。……あなたは本当に優しい人だ」

 

10年後のランボに面と向かって言われるとちょっと恥ずかしい……。オレは慌てて話題をかえようと考える。

 

「あ、そうだ。オレって結婚してる?」

「ふむ……」

「誰とかは聞かないからさ。それだけ教えてよ、ね?」

 

ジッとオレを上から下まで見るランボに頼むよっと期待をこめて見つめる。

 

「実は……」

「う、うん」

「……ボンゴレはオレと結婚しています」

「ええええええ」

 

オ、オレとランボが……?泣き虫で、ちっこいランボと……!?

 

「ですから、オレ以外の男と付き合ったり結婚しないでくださいね」

「う、うそだーー!」

 

誰かと結婚しているだろうなぁとは思っていたけど、まさかランボだったなんて……。

 

「ほ、本当にランボとなの!?オレ絶対お前をそういう風に見れないって!」

「ぐはっ」

 

ご、ごめん……。過去のオレに全否定されると傷つけちゃったよね……?

 

「よ、よく考えてください。オレはもうこんなに成長しましたし、身長だって今のあなたより大きい」

「そうだけどさ……」

 

ランボの顔を見ようと思ったら、ちょっと首が痛いぐらいだし……。でもオレがランボとーー!?

 

「そうでした。あなたは少し強引でないと手に入らないんでした。だからあの男が……」

「へ?」

「いえ、なんでもありません」

 

いやでもさっき大事なことを言いかけていたような……。

 

「オレを男としてみてください。お願いします」

「えっ。ちょ、待って。オレ、心の準備が……!」

 

ひぃ!ランボ近いって!オレの知ってるランボじゃない……!

 

思わずギュッと目をつぶると、ドガッという音がした。

 

「大丈夫か?ツナ」

「リ、リボーン!!ありがとーー!!……って、ランボ!?」

 

うわー、リボーンの一撃で完全に伸びてるよ……。

 

「ランボ?」

「ええっと、あれは10年後のランボ。10年バズーカに当たると、5分だけ入れ替わるんだ。あ、ほら」

 

ボフンという音と共にちっこいランボが戻ってきた。あーあ、食べて満足したのか寝ちゃってるよ。

 

「エロガキに成長したのか……」

「いや、でもなんかランボの話だとオレと結婚してるらしくて……」

 

はぁぁと溜息が出る。オレ、こいつと結婚するの……。

 

「……ツナ、おめーからかわれてっぞ」

「へ?」

「このランボが10年たっても、15だぞ。おめーと結婚出来るわけねーじゃねぇか」

「ほ、ほんとだーーー!!」

 

え?オレ、ランボに遊ばれたの!?そ、それはそれでショックなんだけど……。

 

ってか、前世ではオレ、マフィア界の保母さんっていう不名誉な二つ名まであったのに、ランボの教育間違っちゃったの!?

 

「オレがちゃんと育てないと……!!」

「……逆効果だと思うぞ」

「大丈夫!任せて!」

 

オレがランボの教育に燃えていると、リボーンは呆れたのか溜息を吐いていた。

 




沢田ツナ
自分がボンゴレを継いでると聞いて、結局そうなるんだとホッとした。
家綱のことも気になるが、ランボの将来も不安。
ちゃんとした男に育ててみせる!と意気込む。

ランボ(5歳)
優しくてあったかくていい匂いがするツナを気に入った。
ツナにいい男になれよと言われ、よくわからないままも素直に頷く。

大人ランボ
一発逆転を狙った。
ツナのいい男になりたかった。
未来では年齢差で勝負すらできず敗北した。

リボーン
ツナの将来が心配になった。
無防備すぎてロクでもない男に引っかかりそうで。
とりあえずツナを大人ランボに近づけさせないことは決定。


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オレは鼻歌を歌いながら、骸ん家でお菓子を作っていた。なんで骸ん家かというと、オレん家は今ランボがいるから。絶対ぐしゃぐしゃにする。別にみんなと食べる分ならいいんだけど、今回はヒバリさんの誕生日ケーキがメインだから、それは阻止しなきゃってことでクロームと骸の許可を得て作ってる。……骸には高級チョコを渡したけど。ヒバリさんのケーキのためだしね。

 

「クロームも手伝ってくれてありがとう。助かったよ」

「ううん。私も作れるようになりたかったから」

「それなら良かった。あ、骸に言われても作りすぎないようにね」

 

子どもの頃から頑張った甲斐があったのか、食生活の大事さを知ったクロームは素直に頷いた。いや、ほんとあいつチョコ食べすぎ。

 

「余計なことを言うんじゃありません」

「はいはい。お前の分もあるから、あとで食べろよ」

「当然です」

 

こいつの態度を見てるとなんか腹たつ。母さんにはお礼を言うのに、オレには言わねぇもん。

 

「それにしても、よく誕生日会なんてものを彼が許可しましたね」

「いや、ヒバリさんは許可してないみたいだよ。風紀委員メンバーが勝手に集まって祝うんだって。だから咬み殺されるらしい」

 

骸がなんとも言えないような顔をしたからオレも頷く。よくやるよなってオレも思うから。

 

「それであなたも強制参加なのですね」

「強制参加っていうわけじゃないけど、声かけられちゃったからさ。オレ毎年トンファー貰ってるし、それならケーキ作りますよって言ったんだ。後は咬み殺される前に逃げればいいかなーって」

 

ただなぁ、オレこの前からヒバリさんに全然会ってないんだよ。いや、ケイタイで連絡はとってはいるんだよ。ただ直接会ってないだけ。毎週日曜日のバトルも野球部の応援ってことで一回休ませてもらったし。……ヒバリさんにはため息をつかれたけどさ。

 

「なぁ骸。オレさ、10年後のランボにオレがボンゴレを継いでるって聞いて、守護者の顔が浮かんだのはみんなだったんだ。だからオレって超ワガママだなーって思った」

「今更でしょう」

「ははっ、だよな」

 

昔っからオレはウジウジ考えすぎなんだよなぁ。答えはわかってるのに、誰かに背を押されないとわかんないんだもん。

 

「悪いけど、オレん家の分はまだ冷蔵庫に入れさせて。帰りによって持って帰るから」

「かまいませんよ。……ああ、少し待ってください」

 

ん?とオレが首を傾げてると、骸は自分の部屋に向かった。しばらくすると戻ってきたけど、骸の手には箱があった。

 

「ケーキと同じようにあつかってください」

「え。わかった」

 

あんまり揺らすなってことだよな。オレは慎重に受け取る。

 

「君からと言って渡してください」

「……もしかしてヒバリさん?」

「ええ」

 

まじで。すっげー怖いんだけど。いやでもオレからっていうから、そこまで変な物じゃないはず。変な物なら、骸なら自分で渡すと思うから。

 

「珍しいじゃん」

「……僕も君と同じということですよ」

 

どういうことだろう?ってオレは疑問に思ったけど、骸は何も言わないだろうなと思ったからオレはそのまま出て行った。

 

オレが学校に向かってると、「助けて、ツナ姉!」という声が聞こえた。ツナ姉って、もしかしてオレのこと?

 

聞こえてきた方向に顔を向けると、誰かが腰に抱きついてきた。

 

「え?誰?」

 

殺気を感じないから大丈夫だと思うけど、顔を見せてほしい。あれ?でもこの髪色って……。

 

「やっと追い詰めたぞ!」

「お前、追われてんの!?」

「頼れるのツナ姉だけなんだ……!」

 

うるうるとオレを見上げたのは、小さいフゥ太だった。

 

「わかった。これケーキだから気をつけて持ってて」

 

3人だったのもあって、オレは簡単に気絶させることが出来た。

 

「もう大丈夫だよ」

「やっぱツナ姉は凄い!僕のランキングで一位が多いんだよ!」

「へぇ?そうなんだ?」

 

話しながらもコレってヒバリさんより、リボーンに連絡した方がいいよな?と思ったところでリボーンがやってきた。相変わらず情報を掴むの早いよな。

 

「リボーン、この子知ってる?」

「こいつはランキングをつくらせたら右に出るものがいないというランキングフゥ太っていう情報屋だ」

 

……骸のせいでランキング能力なくなっちゃったもんなぁ。情報屋としては活躍してたけど。

 

とにかくリボーンの話で今回もフゥ太がマフィアに狙われてることがわかった。

 

「心配すんなって。オレが守ってやるから」

「ツナ姉……」

 

ポンって頭に手を置くと、余程怖い目に合ってたのかフゥ太の目が潤んでいた。

 

「オレこの後用があるんだけど、一緒に行くしかないよな。流石にまだ居るかもれないし……。リボーン、悪いけどこの人達のこと頼むよ」

「いいぞ」

 

リボーンのことだから、この人達をボンゴレに引き渡したら追っかけてくると思うけどね。

 

フゥ太と一緒に学校へ向かってると、フゥ太はいろんなランキング結果を教えてくれた。

 

「ツナ姉はね、マフィアのボスで総合的な戦闘力が一位なんだよ」

「……そんなに強いんだ、オレ」

 

ボス限定だから父さんや骸は入ってないんだろうけど、9代目より上だと思わなかったよ……。まだグローブ持ってないのに……。

 

「そして頼まれたら断れないランキングも野望のないボスランキングでも一位なんだよ」

「え?オレ、一応ボスになったらやりたいことあるんだけど……」

 

別にボスじゃなくてもいいけど、黒のマフィアはぶっ潰したいと思ってるはずなんだけど。

 

「僕のランキングは外れないよ。それは野望じゃないんじゃない?」

 

野望ってどういう意味だっだっけ。身の程を超えた……とかだったかも。戦闘力が一位なら身の程にならないのかもしれない……。

 

「他にも将来有望なボスランキングや温厚ランキングなんかも一位なんだよ。怒らせたら一番怖いボスもツナ姉だけどね」

「えええ!?オレそんなに怖いんだ……」

 

やっぱこれも戦闘力のせいなのー!?

 

「よくオレを頼ろうと思ったな。怒らせたら怖いってわかってたのに」

「ツナ姉が温厚なのはランキングでわかってたし、子ども好きランキングでも上位だったからね!」

 

ちゃんと考えて来たってことか。じゃないとフゥ太は生き残れなかったと思うし。オレがボンゴレの後継者候補ってのも関係してるんだろうなー。ボンゴレは大きいし、9代目は穏健派だしね。

 

「怒った……?」

「そんなことないよ。よく考えて偉いなぁって。もう不安にならなくていいよ、オレが守ってやっから」

「ツナ姉!!」

 

あはは。ぎゅうぎゅうと抱きつかれるのも久しぶりだなぁ。っと、学校についたよ。

 

「ちょっと怖そうな人達がいっぱい居るけど、その人達は見た目と違って優しい人達だからね」

「うん!わかった!」

 

寄り道したから遅くなっちゃったかなぁと思いながら、集合場所の体育館に向かう。

 

「こんばんはー……失礼しました」

 

オレは何も見てないと開けた扉を閉める。……いやでも流石にほっとけないよな。

 

「フゥ太。トンファー振るう人がいるけど大丈夫だからね。オレが相手するから」

「はーい!」

 

これなら大丈夫かなともう一度扉を開ける。……ハハハ、やっぱ見間違いじゃなかった。風紀委員のみんなが山のようになってるし、その上にヒバリさんが座ってるのも……。

 

「はぁ。君もなの?」

「まぁ。……みんなヒバリさんのことを思って集まったのに」

「僕の前で群れた方が悪い」

「わぁー。すごーい」

 

フゥ太はいろいろ危ないことも経験してるからか、意外と順応性が高いんだよな。普通、人の山を見て凄いとか言えないから。

 

「なに勝手にいれてるの」

「すみません。オレの方の関係者で。1人にしちゃ攫われそうなので連れて来ました。一応倒しては来たんですけど……」

「そう」

 

良かった。ヒバリさん、そこまで怒ってないよ。

 

「あ、これ良かったらもらってください。下の大きいのはケーキです」

 

受け取ってもらえそうなのは良かったけど、こっちに来るために何人か踏まれたよ……。いやでもあのままヒバリさんが座ってたら誰も動けなかっただろうし……。

 

「こっちは?」

「ええっと……開けてみてください」

 

チラッと視線がきたけど、ヒバリさんはリボンの紐をといてくれた。あっぶねー。オレも何入ってるか知らないから答えられないっての。

 

「ぶっ」

「……どういうつもり?」

 

一体何が入ってるんだろうと思って、オレも興味津々で見ていたんだけど、開けた瞬間に飛びだってヒバリさんの頭に乗った。……ヒバードが。

 

「た、たんまっ。……あはははっ」

 

いや、無理だって。我慢しようと思ったけど絶対無理。……骸、お前ヒバリさんの頭に居ないのが違和感あって、わざわざ探して連れて来たの!?

 

「ひぃ、ちょっとむりぃ……」

 

オレはトンファーを避けながらも、笑い続ける。骸、お前どうやったの!?すっげーヒバリさんに懐いてるじゃん。頭から逃げないし。

 

「すみませんっ。あはは。すっげー似合ってると思って」

「そうは見ないけど」

「でも、ヒバリさん嫌いじゃないでしょ?オレはいいと思いますよ。ヒバリさんらしくて……好きですよ」

 

オレの言葉にヒバリさんは呆れたようにため息を吐いてトンファーを直した。

 

「君と話していると気が削がれる」

「すみません?」

 

またオレ変なこと言った?

 

「ねぇねぇ。ツナ姉、今の告白?」

「え……。や、そういう意味じゃないですよ!?」

「知ってる」

「なーんだ。ツナ姉の憧れランキング一位の人だから僕凄いとこ見ちゃったって思ったのに」

 

慌ててフゥ太の口を塞いだけど、ヒバリさんが聞き逃すはずがない。絶対今オレ顔が赤い……!

 

「アハハハ。……オレ、帰りますね」

「……今週は見逃さないから」

「は、はい……」

 

オレ、次にヒバリさんにどんな顔して会えばいいのー!?と思いながらフゥ太と一緒に帰った。

 




フゥ太
ランキング結果から、ずっと前からツナを頼ることを決めていた。
ツナに後ろ盾が出来たからツナの前に顔を出した。

リボーン
春の子分達から情報で慌ててツナのところへ向かった。
マフィアが倒れてるのをみて、ツナの強さを上方修正した。
この後、フゥ太に見せてもらったランキングで頭を抱えたくなる。

雲雀恭弥
幼少の頃からの付き合いで、ツナの純粋で真っ直ぐな好意や言葉には慣れている。
慣れてはいるが、気は削がれる。
咬み殺せないのは骸と同じだが、骸との対応の違いは主にこれ。

六道骸
あの鳥がいないと、雲雀恭弥じゃないと思って連れてきた。
後日、お似合いですよといい、トンファーを振るわれる。

沢田ツナ
骸の行動に笑うのを我慢できなかった。


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GWや母の日も終わって、そろそろ獄寺君が来るかなーと考えていると山本に家へ来て欲しいと誘われた。オレが山本の成績をあげたことを知った山本のお父さんが年に数回奢ってくれるんだけど、この時期じゃない。なんだろう?と思ったけど、あんまり人に聞かれたくない話だと察したオレは山本の家にやってきた。小学生の頃から何度も行ってるし、緊張しないしね。

 

「わりぃな、ツナ。わざわざきてもらって」

「それは別にいいんだけど……どうしたの?山本」

「お前も気づいてるだろ?最近、打率が落ちてきてるし守備も乱れちまってる……。どうすりゃいいかなって思って……」

 

オレがずっと野球を見てるから、早めに相談してくれたのかも……。オレの記憶じゃ、山本の自殺騒ぎは獄寺君が来た後だったから。よかったー、仲良くしてて。

 

「オレ、野球は見るだけだからそんなに参考にならないと思うけどいいの?」

「ああ」

 

藁にもすがる思いなのかもしれない。じゃなきゃ、あの山本があんなことしないよ。

 

「まずさ、一年と三年じゃ体格が違うとオレは思う」

「オレは大きい方だぜ?」

「んー身長はあっても筋肉のつき方とはやっぱ違うよ。了平さんは知ってるよね?あの人見てるとよくわかるよ。去年より引き締まってるから」

 

お兄さんはコロネロが認めたぐらいだしね。

 

「そんな先輩達から打つのが難しくなるのは普通だと思う。打つ威力が強ければ、守備するのも難しくなるはずだろうし。特に男の人の方がその差ははっきりと出るはずだから」

「……そっか」

「うん。前にさ、山本が言ったことだけど……一個ずつやっていくだけだよ。そりゃ立ち止まる時だってあるけど、そう見えるだけであって、ちゃんと進んでるし、それも必要なことだってオレは山本に教えてもらったよ」

 

だから追い詰めないでと山本の顔色を窺う。

 

「……だな。サンキュー、ツナ。オレ考えすぎてたみたいだわ」

 

山本にポンポン頭を撫でられて、オレは良かったと笑う。

 

「お?ツーちゃんが来てんのか?」

「お邪魔してます」

 

山本のお父さんにペコっと頭を下げれば、カッと目を見開いた。ひぃ。オレなんかしたっけ!?

 

「武!茶ぐらい出さんか!」

「わ、わりぃ、ツナ!忘れてた!」

 

そんなことで怒ったの!?おかまいなくとオレは慌てて手を振る。

 

「そうはいかねぇ!ガキの頃から野球ばっかのバカ息子をここまで育て上げてくれたのはツーちゃんなんだぞ!」

「オレじゃないですって!それは山本のお父さんです!」

「それなのに……気がきかねぇで、すまねぇ!」

「だ、大丈夫ですって。オレ気にしてないですし……」

 

し、知らない間に山本のお父さんがオレを見る目が変わってる……。

 

「ハハッ。でも親父の言う通りだぜ。オレ、ツナのこと家族みたいだと思ってるのな」

 

お茶を持って戻って来た山本が、オレに向かってそう言った。家族かぁ……。

 

「だったら中学卒業すればオレ海外へ行きますし、寂しくさせちゃいますね」

 

何気なくオレは口にしたけど、山本と山本のお父さんは寝耳に水だったみたいで固まってしまった。言っちゃまずかったかな?

 

「ツ、ツナ……。海外へ行くのか……?」

「うん。やりたいことがあるんだよね。もしかしたら跡を継がなきゃいけないし、拠点をこっちに移すにしても10年はまともに帰ってこれないんじゃないかなぁ。あー、でもヒバリさんが協力してくれるみたいだし、もうちょっと早くなるかも?」

 

並盛に被害がない限り黒のマフィアを潰すのは手伝ってくれないと思うけど、オレが拠点を作りたいって言ったら少しは融通してくれると思うんだよね。

 

「ツーちゃんは跡継ぎだったのか……」

「は、はい。父さんの仕事の方の関係で……、家綱の可能性もあるけど、多分オレが選ばれると思うんだよね」

 

リボーンのことだからフゥ太からランキングを見せてもらうだろうし。

 

「他にいい人いないのか?」

「血筋を大事にするところでさ。オレと家綱しか継げる人居ないんだ。父さんも泣く泣くだったみたいで、この前手紙が届いたよ」

 

その時のことを思い出してちょっと笑ってしまう。その日なんかつけられてると思ってたけど、父さんの部下の人でリボーンには秘密にしてっていうから、バレちゃまずいのに書いたみたいで……。で、肝心の中身は「すまん」の一言だけ。……気持ちはわからなくはないんだけどね。父さん結構不器用だから。いろいろ書きたかったけど、書けなくなっちゃったんだと思う。

 

「武」

「ん?」

「お前もついていけ!」

「ちょ、何言ってんですか!?」

 

なんでそうなんのー!?

 

「オレは真剣だ。ツーちゃんを海外に行かせるなんて心配でならねぇ。今まで受けた恩、ここで返すしかないだろう。そうだろ?武」

「んー……だな!野球はどこでも出来るしな!」

「いやいやいや、ちょっと待ってください。そんな簡単に決めることじゃないですし、危ないですし……」

「危ない……?」

 

え。オレ、またやっちゃった……?

 

「武。家族同然のツーちゃんが危ないというんだ。これでいかねぇのは男じゃねぇ!」

「いや、だから……」

「うし。親父、剣道教えてくれよ」

「よく言った!それでこそ、オレの息子だ!!」

 

なんなのこの親子ーー!?

 

 

 

 

結局説得できないまま家に帰ったオレはリボーンに泣きついた。

 

「オレのせいで山本の野球の夢がーー!」

 

うわあああと嘆いていると、リボーンなら「ファミリーGETだな」とか言いそうなのに、あまりの嘆きっぷりからか、ポンっとオレの肩を叩いてくれた。




山本剛
男手ひとつで息子を育てようと奮闘中にツナがやってきた。
勉強やら何やら世話になるし、娘同然に可愛がってた。
元々もってた親バカ気質に拍車がかかっていた。

山本武
父親に言われたのもあるが、ツナが見てないのに頑張ってもなーと思い、ヤル気の源がツナだったと気付いた。
危ないって聞いたら尚更引くわけにはいかない。家族だから。

沢田ツナ
リボーンに振り回されて山本がファミリーに入るなら……と思っていたところで墓穴を掘った。
天然2人には勝てなかった。
泣きつく場所はやっぱりリボーン。

リボーン
ランキングの結果もあり、家光にもう諦めろと手紙を送ろうと思っていた時に、ツナに泣きつかれた。
嘆くばっかりで説明になっていないが、女には優しくするというモットーのリボーンには怒ることもできず慰めた。


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10

山本が野球道具以外に竹刀も持ち歩くようになった。

 

あれからオレは支離滅裂になったけど、ちゃんとリボーンに説明したんだ。マフィアとかは話さなかったけど、不良を倒せるオレが危ないっていうなら尚更ついていくって山本が言って、野球選手になる夢がぁぁぁってまた嘆いて……。オレがあまりにも落ち込んでいたからか、リボーンがずっと応援していたオレの気持ちも理解できるけど、山本の意思を受け入れてやれって優しく諭してきてさ。リボーンにそんなことさせて、オレもう情けなくてボロボロ泣きながら、うんうんって頷いて……。もうその日は散々だった。

 

家綱にはバカにされるし、リボーンにやられて何も言えなくなったけど……。ランボもフゥ太もうつったのか、わんわん泣いちゃって。だからしっかりしなきゃって思えて泣きやめたんだけどさ。ビアンキには一緒の布団に潜りながら男のプライドというものを教えてもらった。前世で男だったのに……と思いながらも性別がかわるとわからなくなるもんだなーって思った。

 

ちょうど次の日が日曜日で、オレの目が泣きはらした後ってわかるぐらい腫れていたから、ヒバリさんもギョッとしてさ。笑って誤魔化したけど、バトルする気にはならなかったみたいで、ご飯に連れてってくれた。ヒバリさんがありえないぐらい優しくて、自分の頬を引っ張ってたらトンファーで小突かれた。オレも失礼だと思ったから、これは避けなかったんだ。でもそれはそれでヒバリさんは気にくわなかったみたいで、さっさといつものオレに戻れとため息混じりに言われた。

 

そんな感じでいろいろあったから、山本が竹刀を持っていてもオレは何も言わないことにしたんだ。骸にもその話をしたら、本当に君はめんどくさいですねって言われたけど……。なんで一番付き合いが長いコイツが優しくないんだよってちょっと思ったけど、骸にも優しくされたらオレは完全に立ち直れるかわかんなかったから、骸が居て良かったと思ってる。

 

ちょっとずついつもの日常に戻ってきたオレの家の前に、黒服の人たちがいっぱい居てびっくりしたんだ。

 

流石に付き合いが長かったから部下の人でも見覚えのある人がチラホラ居て、誰がきているのかすぐにわかったオレは慌てて家に通させてもらったんだ。

 

「よっ。お前が沢田ツナか」

 

や、やっぱりディーノさんだ!!

 

「ツナ、骸から聞いてお前もよく知ってんだろ?オレがお前らの前に家庭教師をしていたディーノだ。お前の兄弟子だな」

 

オレ、骸から何にも聞いてないのに知ってることになってるよ……。あいつが何も言わなかったのはオレに害がないからだろうけど。

 

「ええっと……」

「ツナ姉、ツナ姉」

 

ぴょんぴょん飛び跳ねてオレに何か伝えようとするフゥ太のためにオレはしゃがんだ。

 

「リボーンがね、ツナ姉のために呼んだんだよ。僕のランキングだとツナ姉の憧れランキングでディーノ兄は三位だからね」

「リボーン、お前……」

 

感動してリボーンを見つめながら気づいたけど、ランキング怖ぇ……。知り合ってないはずの人もランキングしてんじゃん!?今回も骸のおかげで乗り切れたよ……。

 

「んだよ、うまくやってんじゃねーか。こっちへきて早々にオレを呼びつけるから心配してたんだぜ?」

「そうか」

「リボーン?」

「……おめーと違ってツナは優秀だかんな。やることがねぇんだ」

「あはは。よく言うよ。オレこの前泣き言をいって迷惑かけたのに……」

 

でもそのおかげでこんなに早くディーノさんに会えたんだけど。

 

「あ、良かったら泊まってってくださいね!」

「ん?そうしたいところだが、泊まるとこねーだろ?」

「オレの部屋を使ってくれていいですよ。オレ、母さんやチビ達と寝ますし」

「……気持ちだけにしておくぜ。部下がホテルとってくれてるしなっ」

 

それならしょうがないよね。ちょっと残念だなぁ。昔みたいに夜まで話したかったんだけど……。

 

「それなら、ご飯ぐらいは食べてってくださいね!」

「わーった。わーった」

 

うわー、ディーノさんに頭撫でられるの久しぶりだよ。オレがボンゴレ継いでからは流石にやってもらえなくなったしなぁ。

 

「なに、やった本人が照れてんだよ、ボス」

「うるせー。こうも喜ばれると可愛いだろ……」

「あはは。またまたー」

 

あ、可愛い妹分っていう意味だったのかも。オレ、自惚れちゃったのかも……恥ずかしい……。

 

「ツナ、行きましょう。穢れるわ」

「げっ、ビアンキ!?って、そりゃねーぜ」

「ビアンキ、行くってどこへ?」

「ママンの手伝いよ。この男の分も増えるのでしょう?私も手伝うわ」

 

うわーっとオレは慌ててビアンキを追いかける。このままだとみんながポイズンクッキングの餌食になっちゃうよ!

 

 

オレがビアンキの料理を阻止しつつ母さんの料理を手伝ってる間に家綱と顔合わせは済んだみたいで、リボーンが何かしたのか4人で食事をすることに家綱は何も言わなかった。流石に人数が多いからね。ちび達は母さんとビアンキに任せた。

 

「そういや、お前らファミリーはできたのか?」

「ええっと……」

「ツナは優秀だぞ。オレが目をつけた奴はみんな手懐けてんぞ」

「手懐けてるっていうなよ!?協力してくれてるだけだから!」

「へぇ。リボーンが目をつけた奴ってことはこりゃ本気で凄そうだな」

 

いや、そんな……とディーノさんの言葉にオレは照れる。みんなが褒められるとやっぱり嬉しいから。

 

「家綱はどうなんだ?」

 

そういや、どうなってるんだろ……とチラッと顔色をうかがう。家綱は完全に無視をしていた。

 

「全然ダメだな。一応同じ奴にも声をかけたが、『面白い冗談ですね』や『嫌』、『誰?……ああ、口だけの草食動物ね。興味ないよ』、『わりぃ、オレはツナを守るって決めちまったからよ』、『極限に誰だーー!』という感じで散々だったぞ」

 

うわ、誰の言葉かわかっちゃったよ……。というか、いつのまにかお兄さんにも声をかけてるし……。

 

オレがリボーンの行動に引いていると、ガタッと家綱が立ち上がった。……ああ、機嫌悪くなっちゃったよね。

 

「おい、後でオレの部屋に持ってこいよ」

「自分でやれ。ツナに命令すんな」

 

わかったとオレが返事をする前に、リボーンが家綱に言ってしまった。オレは気にしてないからって言おうと思ったけど、リボーンに視線を向けられてオレは何も言えなくて……。それでも家綱のフォローしなきゃって思って、お盆をそっと差し出した。食べないと身体に悪いし、後で母さんに作ってもらったりしたらリボーンの制裁を受けるハメになるから。ひったくる勢いだったけど、家綱は受け取ってくれてオレは良かったとホッと息を吐いた。

 

家綱が料理を持って部屋に戻るのを見送った後、オレはディーノさんに頭を下げた。

 

「すみません!オレのせいで……」

「ツナ、オメーのせいじゃねぇんだぞ。謝んな」

「で、でも……」

「オレは気にしてねーから、大丈夫だ。な?」

 

ディーノさんの言葉にオレは安心したように座った。

 

「んで、ツナのファミリーはどんな奴なんだ?」

 

空気をかえるようにディーノさんは明るくオレ達に質問してきた。やっぱこういう気遣いがサラッと出来るディーノさんは、カッコいいなぁ。

 

「どんな奴……?こ、個性的かな」

「一筋縄ではいかねー連中なのは確かだな。特にあいつのヤバさは別格だ」

「あいつってもしかして骸のこと?」

「ああ。オレでも勝てるかわからねぇからな」

「は?」

 

ディーノさんが驚いてるけど、オレもちょっとその気持ちはわかる。リボーンが負けるとは思わないけど、骸は術師だから勝つのは苦労するよ、絶対。

 

「それ大丈夫なのか……?」

「大丈夫ですよ。リボーンにも言いましたけど、もしもの時はオレが止めてみせますよ。骸もオレにはやりにくいだろうし」

「おいおい。もしもの時の場合なら、情を計算に入れるのはよくないぜ」

「違いますよ。オレ、あいつの術のほとんどが効かないんですよ。なんとなくこれは幻術だなーってわかるんで」

 

ギョッとしたようにリボーンとディーノさんがオレを見た。え、何かまずいこと言ったっけ?

 

「……いや、この歳でもう幻術に対抗できるとは思わなくてな」

「そうですか?最近、ヒバリさんもわかってきてる気がするんですけど……」

「ヒバリもなのか……」

「あの人、天才だから。小学生の頃から、骸の幻術うけてるしね」

 

本当にヒバリさんは凄いよね。オレみたいに血じゃなくて、自力で耐性つけようとしてるから。末恐ろしいな……と呟いたディーノさんの言葉にオレも同意して何度も頷いちゃったよ。

 

「……いつもこうなのか?」

「そうだぞ」

 

ん?とオレが首を傾げれば、ディーノさんに頭を撫でられた。2人の会話が気にはなったけど、今でしか味わえないことだからオレは素直に喜んだ。

 

やっぱり部下がいないディーノさんは半人前で、ご飯をポロポロこぼしてたし、片付けを手伝おうとして転んで食器を割ったりした。でもそれはわかっていたことだし、ちび達で慣れていたオレは笑って流した。

 

「キャアア!」

「母さん!?」

 

オレは聞こえてきた悲鳴に急いで母さんのところへ向かう。オレがついた時には母さんは腰を抜かしながらも、風呂場へ指をさしていた。

 

「へ?」

「ディーノのペットのエンツィオだぞ」

 

いったい何!?と思っていたら、エンツィオが風呂場で暴れていただけだった。そういえばそんなこともあったなー、忘れてたよ。

 

「いててっ。うわっ、いつのまに逃げ出したんだ?っと、そんなこと言ってる場合じゃねーか。ツナはあぶねーから……」

 

よいしょっとオレはエンツィオを転がしてひっくり返す。まだそこまで大きくなかったし、オレが本気で殴ったらエンツィオが危ないからね。動けないようにするのが一番だと思ったんだ。

 

「言ったろ。優秀でやることがねぇって」

「……だな」

 

母さんにもう大丈夫だよと声をかけに行ってたオレは2人の会話を聞いていなかった。




ディーノ
冗談でリボーンに心配したんだぜ?と言ったのに、リボーンが言い返してこなかったので、何かあるなとすぐに察した人。
異性に部屋やベッドを譲ろうとしたりする迂闊なところは、ビアンキが担当していることにもすぐに気付く。
教えるまでもなく幻術耐性、強さ、咄嗟の判断が出来ているため、リボーンが優秀というだけはある。
ここまで出来て、本人は威張るようなことはなく、性格もよし。
ちょっと謙虚気味なのでそこを注意するぐらい。
家綱がグレたくなる気持ちもわからなくはないと思った。
ただツナに対する甘えが滲み出ていたグレ方だったので、リボーンを止めることはしなかった。
自分とまったく違うタイプで、さらにツナは女で、やりにくいんだろうなと理解した。
これから時間がある限り顔を出すことを決めた。

リボーン
ツナを元気付けたかったのもあるが、ディーノへの態度も見たかった人。
ランキングに入っていたのでわかっていたが、ツナは自分に向けるような信頼の視線をディーノにも送っていた。
まだ何か隠しているのは気付いているが、害がないので暴くべきか悩んでる。

ツナの憧れランキング
一位、雲雀恭弥
二位、リボーン
三位、ディーノ
四位、沢田奈々
五位、沢田家光
ツナのランキングでは基本この5人が上位に組み込む。


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11

すぐにディーノさんはイタリアに帰っちゃったけど、風呂場の修理代と直るまでの銭湯代と迷惑料をポンっと置いて行ってくれた。オレもあんな感じにサラッと出したい。ボンゴレのボスだったのに、貧乏性が抜けなくて恐る恐る使ってたから……。

 

まぁそんな感じでしばらくオレ達は銭湯通いなんだけど、女と男で別れるっていっても家綱はオレと一緒が嫌みたいで、母さんが家綱と一緒に通ってる。母さん達の護衛にはビアンキがついてくれた。家綱も料理さえしなければビアンキは大丈夫とわかったみたいだし。

 

だからオレはちび達やリボーンと一緒。みんなで女湯に入ればいいのに、リボーンだけは男湯に行っちゃうけどね。まぁでも呪いで赤ん坊になっただけだから、無理には言わなかったけど。

 

今日もいつものように帰っていたんだけど、家の前でマンガみたいに風呂敷を被った怪しい人がいた。……ハルだったよ。

 

「ちゃおっス。ハル、何してんだ?」

「この声はリボーンちゃん!」

 

どうやらオレの知らないところでリボーンとハルは出会っていたらしい。

 

「はひー!こんなにも子どもに好かれてる人、保育園の先生以外でハル初めて見ました……」

「って、それオレの事!?」

 

ハルの言葉にビックリしたけど、よく考えればオレはランボを抱っこしてるし、フゥ太はオレの腰に掴まってて、リボーンはオレの頭に乗ってるもんな。でもこれでもまだイーピンが来てないんだけど……。

 

「ハル、安心しました!家綱さんはリボーンちゃんを邪険にして心配だったんです!あなたがいれば、リボーンちゃんは大丈夫そうです!」

「えっと、ありがとう?」

「はい!では、ハルは帰ります!」

 

相変わらず、一度決めたら突っ走っちゃうんだよなーと思いながらハルの腕を掴む。

 

「はひ?」

「ちょっとここで待ってて。お願いだから」

「はい。いいですよー?」

 

ちび達を母さんに預けたオレは、すぐにハルのところへ戻る。リボーンはついてきちゃったけど、まぁいいか。

 

「ごめん、お待たせ」

「大丈夫です!あの、どうかしましたか?」

「もう夜も遅いし危ないから送ろうと思って。オレこう見えても強いから安心してよ」

「はひ……。あなたが女性で良かったですぅ。危うくハルの心は盗まれるところでした……」

 

ハルは変わんないなぁ。よくわかんないところもあるけど、明るくてオレの事ずっと好きでいてくれて。女になっても、好意的に見られるなんて思わなかったよ。

 

この後ちゃんとハルと自己紹介しあって、同じ年で女になったのに、また「ツナさん」って呼んでくれるからオレもつい嬉しくって、気付けば連絡先まで交換していた。

 

「相当ハルのこと気に入ったんだな」

「あはは。わかっちゃった?」

 

ハルを送った帰り道にリボーンに言われてオレは素直に認めた。

 

「リボーンありがとう。オレ、お前のおかげで毎日楽しいよ」

 

上機嫌だったオレは気付かなかった。リボーンがオレの頭の上で難しい顔をしてるなんて……。

 

 

 

 

次の日、いつものようにクロームを迎えに行ってると骸に声をかけられた。

 

「君にいいことを教えてあげましょう」

 

ん?とオレが首を傾げてると、骸がリボーンの顔をチラッと見てからオレを見たから背筋を伸ばす。

 

「今日、君のクラスにスモーキンボムという名の殺し屋が転入してきますよ」

「ええっ!?」

 

あぶねー。合図されなかったら、オレ顔に出てただろうし、骸にほんと?ほんと?って詰め寄ってたよ。

 

「精々気をつけることですね」

 

がっつり釘を刺されたオレは素直に頷いた。別にオレとしてはリボーンにならバレちゃってもいいかなって思うんだけど、なんかの弾みで呪いが解けなくなっちゃったら怖いし、骸にオレのことだからズルズルとバレていくだけじゃなく、元男だとわかればまた結婚出来ませんよと言われてしまえば隠すしかないというか……。オレももう女として生きる気になってるから、みんなに男として見られると困るし……。

 

ここまでは良かったんだよ。オレも獄寺君を見ても顔に出さないようにしたし、家綱の机を蹴られてオレが睨まれても苦笑いだけで済ませたよ。でも骸の話を聞いたクロームがオレにべったり。山本も朝の獄寺君の態度に警戒しちゃって……。今の山本ってもしかしてマフィアとか気づいてるんじゃないかなって思う時がある。昔みたいに遊びみたいな雰囲気はないんだよ。

 

だから獄寺君とうまく接触出来なくて、どーしよーかなーと思ってたんだけど、家綱が授業に来なくて、よく見れば獄寺君も居なくて、これってオレの時みたいにケンカ売られてるんじゃ!?と思って先生に「オレが探してきます」と言って授業を抜けさせてもらった。クロームと山本もついてきたかったみたいだけど、何人も抜けれるわけもない。それにほとんど名ばかりだけど風紀委員のオレが動くといえば先生はオレだけで十分と判断するしね。

 

どこだったかなぁと思いながら歩いてると、ドンドンと聞こえてきて、オレは2階に居たけど家綱が校舎の壁に追い詰められてるのを見て飛び降りた。

 

「家綱!!」

「なっ」

 

爆発音で獄寺君の声なのか、家綱の声だったのかわからなかったけど、オレはなんとか家綱を掴んでその場から離れた。

 

「家綱!大丈夫!?」

「離せっ!お前がなんか居なくても……これぐらい……」

 

そう家綱が言ったタイミングで家綱の額が撃たれた。殺気がなくて反応出来なかったから、ちょっとビビったよ。

 

「復活!!死ぬ気で逃げ回る!!」

 

えっ逃げ回るなんだ……。オレの時はなんで消火活動だったのかなぁ……。よくわかんないけど、これで家綱は大丈夫。あとは獄寺君を止めるだけと思ったんだけど、次のダイナマイトがふってきた。うん、やっぱり家綱は問題なさそうだ。ってことは、少し前からオレの超直感が訴えてるのは……。

 

「獄寺君、もうやめるんだ!」

「果てろ!2倍ボム!」

 

オレは避けながら、獄寺君へ近づく。これ以上は危険だ!

 

「3倍ボム!!」

 

ポロッと落ちたダイナマイトを見て、オレは獄寺君の周りにあったダイナマイトの火を手で消していった。

 

「獄寺君、怪我はない!?」

「……は、はい」

 

よかったぁと安心したオレはホッと息を吐いた。……やっちゃったなぁ。

 

「オレ、あなたに一生ついていきます……」

「へ?」

 

ポツリと聞こえた声にオレは首をかしげる。なんか獄寺君っぽくないよね。前の時は土下座までして、ちょっと強引なイメージだったんだけど……、顔は真っ赤だし視線も合わないような……。

 

「んなこと言ってる場合か」

「ぐはっ」

「ご、獄寺君!?」

 

リボーンに蹴られて獄寺君が吹っ飛んじゃったよ!?せっかく獄寺君は怪我しなかったのに……。

 

「ツナ!」

「ひぃ!」

 

怒気を含んだリボーンの声にオレは反射的にビビった。けど、鉄拳制裁は来なくて……そのかわりグイグイと腕を引っ張られて慌ててリボーンについていったんだ。やっとリボーンの足が止まったと思ったら、場所は保健室だった。

 

「シャマル!」

「ん?おっ、リボーンとツーちゃんじゃねーか」

 

え、いつの間に……シャマルが保健室の先生になってたんだろう……。それもオレのアダ名まで知ってるし……。

 

「ツナ、シャマルに手を診せろ」

「あ、うん」

 

うわー、やっぱ素手ですることじゃなかったよなー。オレの両手が火傷で凄いことになってるよ。

 

「なっ!……よく我慢したな」

「見た目ほど痛くないというか……これぐらい大したことないかなー……なんて……ハハハ」

 

やべっ、シャマルとリボーンがなんか怒ってる……。でも全身の骨が粉々になったことがあるオレからすれば今回の怪我なんて可愛いもんだと思うんだけど……。いや、治療してくれるのは助かるんだけどね。

 

「ツナ、なんで獄寺のボムを手で消したんだ」

「まじか……。こうなったのは隼人のせいかよ……」

「その話は後だ。おめーなら、家綱にやったみたいに獄寺を引っ張って逃げれただろ」

 

そういえばなんでだろう。グローブをしてる感覚でやっちゃったのかなって思ったけど、リボーンの言う通り家綱の時はちゃんと出来てたよな?

 

「うーん……。あ、わかった」

「なんだ?」

「獄寺君のことを大事に思ってる人がいるってわかってもらうには、避けるだけじゃ伝わらない気がして……。守ってみせないとって考えたみたいで、気づいたら身体が勝手に動いてた」

 

オレがそういうとリボーンには溜息を吐かれちゃうし、シャマルは天を仰いだ。あ、でももう怒ってはなさそうかな?

 

「わぁ、シャマルありがとう」

 

会話中にもシャマルは手を動かしてくれたみたいで、両手にはしっかりと包帯を巻いてくれていた。

 

「こらこら、どこへ行く気だ。ツーちゃんはこのままベッドだ」

「へ?」

「ツーちゃんが思ってるより怪我はひどい。熱も出るだろうよ。ったく、隼人の奴め……」

「オレそんな軟な身体はしてないから、大丈夫だと思うけど……」

「医者の言うことは聞け」

 

リボーンにも睨まれて、しぶしぶオレはベッドに寝転ぶ。これぐらいは大丈夫なのになぁと思っていたけど、身体は回復しようと思ったみたいでオレは気付けば眠っていた。

 

 

 

次に起きたらなぜか骸がベッドの近くの椅子に座って本を読んでいた。

 

「……なんでお前がここに?」

「感謝しなさい。病人の前でうるさくしていた彼らを追い出してあげたんですからね」

 

うわー、みんなに心配かけちゃったのか……。骸の話では獄寺君はずっと土下座して謝っていたらしいし、そんな時にクロームと山本が来てくれたみたいで、獄寺君の態度で許したみたいだけど最初はちょっと怒ってたらしい。で、クロームが来たからシャマルが暴走して幻術の餌食になった。……さっきから、うんうんと聞こえるのはシャマルの声だったんだ。絶対骸も追加でくらわせてるよ……。

 

それだけで終わればまだ良かったんだけど、京子ちゃんや黒川も来てくれて……京子ちゃんに聞いたのか、お兄さんまで来て……。骸はため息を吐きながらもそこからは話すまでもないでしょうと言ったから、オレは察した。……群れを見たヒバリさんまで来たって。

 

「助かったよ、骸」

 

クロームに聞いて骸がすぐ来てくれなかったら、みんな保健室でお世話になっていたよ。それも肝心の医者がクロームにやられちゃって寝込んでるし……。

 

「そう思うなら、怪我なんてしないことですね」

 

ほんとわかりにくいなぁ。感謝しろって言ったのに、オレが素直にお礼をすれば、怪我するなって言うんだから。

 

「雲雀恭弥から伝言です。本調子じゃないあなたと戦っても面白くないからしばらくはいい、ですって」

 

うわ……、骸に伝言を頼むぐらいだし、この人もわかりにくいけどすっげー心配してくれてるよ。こんなことになるなら死ぬ気になれば良かったなぁ。火を手で消すぐらいなら、たいして痛くないからって気にしなかったんだよね。

 

「そろそろ休みなさい。今日ぐらいは静かに寝させてあげますよ」

 

オレは骸の言葉に甘えて、ゆっくりと目を閉じた。




三浦ハル
同じ年齢なのに大人っぽくて「さん」付けで呼ぶことにした。
ハルが呼べば、嬉しそうに笑うので大人っぽいのに可愛いとメロメロ。
連絡交換しなければ後悔すると判断し、すぐさまGETした強者。

リボーン
ツナの言動に怪しんでいた。
が、そんなことより怪我をさせてしまったことに反省。
獄寺が喧嘩っ早いとわかっていたので、ツナが居ないところで家綱と獄寺をあわせたのに、意味がなかった。
ツナの観察眼の良さに怒りたくても怒れなくなった。

Dr.シャマル
ツナも隼人と同じタイプかと思ったら、話を聞けば隼人のためだった。
過去の自分の行動に頭が痛くなる。なんで隼人にちゃんと教えなかったのか、と。
今からでも教えなおすべきかと、うなされながら考え中。

沢田ツナ
怪我の基準がおかしい。
みんなに心配をかけたので、死ぬ気でさっさと治すことにした。

六道骸
ツナが怪我をしたと聞いて駆けつけた。
本当はぐちぐち嫌味(わかりにくい優しさ)でも言おうと思って来たのに、ツナの安眠を守る羽目になった。
山本や了平とは初対面だった。

獄寺隼人
……(言うまでもないので語りませんw)


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12

死ぬ気で治す気ではいたけど、流石に1日では治らなくて朝から四苦八苦しながらもオレは日課の走り込みのために外へ出た。

 

「おはようございます!10代目!」

 

……いったい、いつから獄寺君は家の前に居たんだろう。オレが学校前に走ってることを話してないのにもう居たよ。

 

「ランニングですか?お伴します!」

「今日は走るだけだから、手を使わないし大丈夫だよ?」

「いえ、自分も鍛えたいので!」

 

そこまで言うならとオレも気にしないことにした。獄寺君が強引なのは昔っからだし。責任を感じて世話をする気満々だったから。

 

まだ怪我も治ってないし、身体が鈍らないために走っただけだから、いつものコースは当然やめて早目に切り上げた。

 

「流石です、10代目!オレも鍛えてるつもりでしたけど、もっと必要だと痛感しました」

「獄寺君は制服だったしね。走りにくかったよね、ごめんね」

 

オレの知ってる獄寺君なら「滅相もありません」とか言いそうなのに、真っ赤な顔してそらすからやっぱりこの獄寺君はちょっと変だよなぁ。

 

「良かったら家で休憩しながら待っててよ」

「い、いえ……」

「でもオレまだ朝食べてないし、着替えないといけないから気をつかっちゃうよ」

「10代目がそうおっしゃるなら……」

 

どうぞあがってあがってと玄関まで来たのは良かったんだけど、オレすっかり忘れてたんだよ。前世ではビアンキは常にゴーグルしてくれたからさ。

 

「ツナに悪い虫がついたと思ったら隼人だったのね」

「ア、アネキ……」

 

ぐぎゅるるるというお腹の音と共に、獄寺君は倒れてしまった。

 

「ご、獄寺くーん!!」

 

オレの叫びもむなしく、ビアンキがこの場にいる限りどうしようもなかった。仕方なくオレは朝食を抜いて、さっさと着替えて獄寺君を外へ連れ出した。

 

「すみません!荷物持ちます!10代目!」

「リュックの許可もらったから大丈夫だよ。あ、でもそう言ってもらえるなら弁当は持って欲しいかも」

「もちろんです!」

 

手が使えないから腕に通して持ってるけど、やっぱり持ちにくくて獄寺君の言葉に甘えることにしたんだ。クロームの家に向かいながら、獄寺君の壮絶な過去の話を聞く。何度聞いてもビアンキの料理は恐ろしいよ……。

 

「10代目はアネキと親しいんですね……」

「そうだね。料理は……うん、作らないように防いでるけど、よくしてもらってるね。今日だって手を使えないから手伝ってもらったよ」

「オレに言ってくだされば……」

「えっと、汗を拭いてもらったり、着替えの手伝いだったから……」

 

ボンっと獄寺君の顔が赤くなった。……うん、ごめんね。オレももうちょっと言葉を濁して言えば良かったよ。でも両手が使えないと不便だなー。よく考えるとオレはいろんなところを怪我したけど、手を怪我したことはないかも。グローブつけてたし。

 

「そ、そういえば……10代目の弁当は大きいですね」

「ごめんね。重いよね」

「いえ、そんなことはありません!」

 

獄寺君、もうちょっと肩の力を抜けれないかなぁ。懐かしい気持ちもあるけど、しんどくないかなって心配になるよ。

 

「実はそれ3人分なんだ。骸とクロームの分もあるから」

「……骸。昨日の優男……」

 

え、骸……獄寺君に何したの。事件を起こしてないのに、もう険悪なんだけど……。

 

「む、骸はオレの幼馴染なんだ。昔っからオレの事を知ってて、頼りになるし、悪い奴じゃないよ」

「じゅ、10代目は……骸の野郎と付き合ってたりは……」

「ないない。オレ、フラれてるもん。……あ、弁当」

 

なんか変な音がしたなーと思ったら、獄寺君が弁当を落としてた。割れてなきゃいいんだけど……。

 

「えっと……獄寺君、どうしたの?」

「すみません!オレ驚いた後、一瞬でも喜んでしまいました!右腕失格です!」

 

あ、やっぱり右腕を目指してるんだ。オレも右腕は獄寺君のイメージだから、嬉しいなぁ。じゃなくて、獄寺君はオレがフラれたのを喜んでしまって謝ったんだよね?……ハハハ、そんなにオレにモテて欲しくないんだ。

 

「……どこかで縁があればなーって思ってるから、その時は獄寺君に応援して欲しいな」

「じゅ、10代目のためなら……オレは、オレは……」

 

……すっげぇ嫌そうなんだけど、オレ泣いてもいいのかな。

 

「この話はもうやめようよ、獄寺君……。オレまだそういう人と出会ってないし……」

 

オレのライフが0になる前にと思って言ったら、獄寺君が嬉しそうに頷いてくれた。そんなにオレがモテるの嫌なのー!?

 

クロームの家についたオレ達は、骸とクロームに弁当を落としてしまったことを説明した。漏れてなさそうだから、割れてはないと思うんだけど崩れてるだろうから。

 

説明が終われば、すぐにオレ達は学校に向かった。獄寺君が骸にガンを飛ばしてたからね。骸は何が面白いのか笑ってたし、クロームの機嫌も悪くなってきたからさ。

 

オレの予想通り、骸と獄寺君が絡まなければ大丈夫だったみたいで、オレが間に入って学校につくころにはなんとか普通に会話もできるようになっていた。

 

「ツーちゃん、大丈夫?」

「そんなに痛くないんだけどね。シャマル……医者の人の話だと後数日はこのまま無理させないようにだって。教室による前に診てもらえたんだ」

 

クロームがシャマルを見た途端、三叉槍を出した時はビビったけど。ヒクッと頬を引きつらせながらも、オレの手を見るだけで何もしないとシャマルは必死に弁明してたけど、これは間に入らなかったよ。シャマルの自業自得だし。

 

心配して声をかけてくれた人達にオレは何度も大丈夫だよーと教えてると、お腹が鳴った。朝食食べ損ねたからね……。

 

「ツナ。腹減ってんのか?」

「聞こえちゃったんだ……」

「まぁな。オレいいもん持ってるぜ」

 

山本にそう言われてオレは目を輝かす。なんでもいいから恵んでください!

 

「ほら、あーん」

「あーん」

 

クッキーもらえちゃったよ。ラッキー。もぐもぐとオレが食べてる間に、獄寺君がプルプル怒りに震えていて驚いた。

 

「山本!10代目になんて失礼なことを!」

「ん?そう言われてもガキのころから何度もやってるしなー。な、ツナ」

「そうだね。山本ん家に行けば、お菓子絶対もらえるもんね」

 

子どもの頃の遊びの延長みたいな感じで、オレ達はあんまり気にしてない。クラスのみんなも慣れてるのか誰も気にしてないし。山本のファンの子達に恨まれるかもってちょっと思ったことはあったけど、オレ達にそういう感じの雰囲気は一切ないからね。すぐに誤解が解けて今のところ問題になったことはない。

 

「ははーん。さてはあんたもやりたかったのね」

「なっ」

「お?そうなのか?ほらよ」

 

黒川が真面目な獄寺君をからかって楽しんでるよ……。山本は天然だから純粋に信じちゃって獄寺君に渡しちゃったなー。オレとしてはどっちでもいいんだけど……。いや出来れば貰えるなら食べたい。一枚じゃ足らないし、手がこんなだし。

 

チラッと期待を込めて獄寺君を見ると、恐る恐るだけどクッキーをオレの前に持ってきてくれた。やったねとオレが食べれば、獄寺君はプルプルと震えていた。……怒ってはないみたいだね。どっちかというと感動かな。そういえば瓜に初めてちゃんと餌を食べてもらった時もそんな感じの反応をしてたよ。

 

その流れで面白いと思ったのか、順番にみんなからも食べさせてもらった。

 

「なんだがみんなに餌付けされてるみたい。オレ、家でもそんな感じだよ」

「昼食の時間が楽しみだわ」

「あはは。頼むよ」

 

オレはいつも一緒に食べてる京子ちゃん達に向かってお願いした。

 

朝の出来事が広まったのか、休憩時間にオレが歩いてると女の子達がお菓子をくれる。もちろん、あーんって感じで。お腹が減ってたのもあって相手は女の子だし、遠慮なくいただく。流石に山本と獄寺君以外の男の子からは恥ずかしいから貰わないけど。まぁそんな感じで歩いてたのが悪かったのか、後ろから殺気がしてオレは振り向いた。

 

「なに、君が風紀を乱してるの」

「アハハハ……」

 

笑って誤魔化したけど、ヒバリさんの機嫌は直るはずもなくオレはうなだれた。

 

「はぁ……。廊下は禁止。教室の中でして」

 

チラッとオレの両手をみて、ヒバリさんが譲歩してくれた。あのヒバリさんが、だよ!オレもう感動しちゃって笑顔でお礼を言っちゃったよ。

 

「……君、本当に反省してるの」

「すみませんでした!」

 

まぁすぐに頭を下げるハメになっちゃったけどね。

 

それからはみんなの協力もあって普通に過ごせていたんだけど、ハルから放課後に遊べないかっていうメールが届いたんだ。ちょっとぐらいなら大丈夫だけど、長文を打つのはしんどいから京子ちゃんにお断りの内容を代筆してもらった。もちろん手のことを書いて、かわりに打ってもらってるってこともちゃんと説明して。しばらくすると電話がかかってきたんだ。まぁメールよりはいいよね。

 

『ツナさん、大丈夫なんですか!?』

「うん。大丈夫だよ。心配してくれてありがとうね。後、持つのがちょっと痛いからスピーカーにしてるから」

『はい!ハルもちゃんとわかってます!』

 

よかったよかった。伝え忘れてても怒られることはなかったみたいだよ。

 

『それでですね、ハルも一緒に銭湯行きます!ランボちゃん達の面倒はハルに任せてください!』

 

話を聞いてるみんなが銭湯と首を傾げた。ハルは銭湯帰りに会ったから、オレん家の風呂が壊れてるのを知ってるもんな。みんなにそのことを説明しつつ、なんとかなるかなーと思う。そりゃ家綱は嫌がるかもしれないけど、リボーンと2人で銭湯行ってもらえれば問題ないはず。でもこのことをハルに説明すれば、反対するだろうしなー。

 

と、オレがいろいろ考えていると京子ちゃんとクロームも行くって言い出した。黒川にはなぜか謝られた。子どもが居なけりゃ……とブツブツ呟いていたから、蕁麻疹出るもんなーとオレは一緒に行けないことを謝ってくれたんだって気付いた。

 

「や、ちょっと待ってよ。気持ちは嬉しいけど、お風呂に入ってると遅くなっちゃうし女の子がそんな時間に外に出ちゃ危ないよ」

 

ハルにみんなを会わせられるしいいかもって一瞬思ったけど、ダメだダメだとオレは首を振る。

 

「なら、オレと獄寺も付き合うぜ。みんなを送ればいいだけなんだろ?」

「なんでオレも……!?」

「ん?じゃオレ1人でするのな。獄寺はいかねぇって」

「誰も行かねぇとは言ってねぇだろうが!」

「お兄ちゃんにも声をかけるね」

『はい!では決まりですね!』

 

決まっちゃったよ……。でも獄寺君と山本とお兄さんが来てくれるなら大丈夫だし、オレも嬉しいしお願いしよっかな。

 

 

その日の夜、みんなと集まって銭湯に向かった。お兄さんがヒバリさんを誘ったのに来なかったって怒ってたり、獄寺君がフゥ太を男湯に無理矢理連れて行ったりとか、一緒に入ることはなかったけど骸がクロームの迎えに来てまた獄寺君が睨んだりといろいろあったけど、オレはずっと楽しくて笑っていた。オレは女になったし出会い方も全然違ったのに、変わらなかったから。




沢田ツナ
風紀委員なのに、女子に大人気。
イタリアでの生活でレディファーストが体に染み付いている。

六道骸
忠犬が期待を裏切らなくて、心の中で爆笑中。


次から新章です。
時期は飛びませんし数話で終わる予定ですが、わけた方がいいと思ったので。
ついに?あの人が出ます。


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中1・体育祭編


オレの手が治って、テストとかも終わり一学期の終業式を終えた日、ヒバリさんに呼び出された。獄寺君はオレがヒバリさんの下についてるのが気にくわないみたいで怒ってたけど、まぁまぁと落ち着かせてオレは応接室へとやってきた。……まぁ折れたのは一度ヒバリさんに返り討ちにされたのもあるんだろうけど。

 

ヒバリさんに呼び出されたのは、夏休みの間のことだろうなー。風紀委員なのに、オレよくわかんない立ち位置だしね。と、思っていたんだけど違うみたい。すっげー機嫌悪いし。

 

「ええっと……どうしました?」

「さっき僕のところにふざけた男が来てね。それを置いていったよ」

 

視線が机にある紙だったので、オレはなになに……という感じで軽い気持ちで読んで叫ぶハメになった。

 

「黒曜中と合同体育祭ーー!?」

 

ふざけた男って絶対骸じゃん!つーか、あいつ何やってんの!?お前、こんなこと企画するキャラじゃないじゃん!

 

「これから向こうの代表がその企画の説明をしに来るらしいから、君もそこの端で聞いといて」

「えっ」

「やるとなれば、ここの代表は君が適任だろうからね」

 

……オレもそんな気がして来た。こんな企画を持ってくるんだから、黒曜中のトップにもう骸が君臨してそうだし……。

 

「ヒバリさんはこの話に乗る気なんですか?」

「…………」

 

これは悩んでる感じだね。まず骸が持ってきたからこの話に乗るのは癪。でもヒバリさんは売られたケンカは買う主義。ただこんな企画を実行すれば、風紀が乱れるに決まっている。まぁだから話を聞く気になってるんだろうと思うけど。骸の考えも知りたいだろうしね。あいつなんか絶対企んでそうだから。

 

とりあえずオレは紙に書いてある内容を頭に入れる。うわっ、結構ちゃんと考えてるじゃん。

 

ますます何企んでるんだろうと思ってると、ノックの音がした。草壁さんが黒曜中の人をここへ案内してくれたみたいだ。

 

「委員長、お連れしました」

「そう。君はさがってて」

 

チラッとオレを見たから、今回お茶とかはオレの仕事ね。と、はいはいと頷く。これ以上、人口密度をあげたくないんだろうね。向こうの代表ってどんな人かなーとオレは目を向けて、驚きのあまり名を呟いてしまった。

 

「……エ、ンマ」

 

なんでここに……?至門中の制服だし、そもそもオレが見間違うはずがない。なんで黒曜に?とかいろいろ疑問を浮かべていたオレだったけど、ヒバリさんの殺気で我にかえった。

 

慌ててお茶を出しながら、炎真の様子を窺う。相変わらず怪我をしているみたいだけど、殴られた感じのようなものはない。多分ドジでやった怪我だ。骸は約束通りちゃんと炎真達のことを見てくれていたんだ。

 

ただ最初にオレを見てから、一度もこっちには視線を送らない。ヒバリさんと話してるのもあるんだろうけど、なんか態とらしくて……見ないようにしている気がするんだ。

 

炎真の話はほとんど紙に書いてあることだった。これ以上はもっと話し合わないと決まらないのもあるから、仕方がない部分もあるんだろうけど。

 

「それで、こんなことを企画した理由は?」

 

うわっ、ヒバリさんズバッと聞いたよ。

 

「骸君……生徒会長は……他校と交流することで生徒達の意識を高めたいって……」

 

う、うそくせーーー!そう思ったのはオレだけじゃなかったみたいで、ヒバリさんの機嫌が急降下した。

 

「生徒会長は1週間だけ返事を待つ、と。では、オレはこれで……」

 

それだけ伝えると炎真が帰っちゃったのでオレはヒバリさんに「門まで案内して来ます!」と言って慌てて追いかけた。

 

「ま、待って!炎真!」

 

ヒバリさんに名乗っていたのを聞いていたから、オレは前みたいに呼んだんだ。すると、炎真も止まってくれた。

 

「あ、あの……」

「……断ってくれていいから」

 

なんて声をかければいいのか、躊躇していれば炎真がそう言った。それって合同体育祭のことだよな?

 

「隠さなくていいよ。君に頼まれたから骸君がシモンを守ってるって聞いてる。父さんからもボンゴレとシモンの関係は教えてもらったから」

「そ、そっか……」

 

関係って、シモンを陰から支えるとかだよな?そういや、前世では炎真のお父さんは死んじゃったけど、その話を聞いたってことはちゃんと知っていたんだ。正しい歴史を。……ボンゴレはなんで途絶えちゃったんだよ、はぁ。

 

「えっと、骸はちゃんとしてくれてる?」

「……良くしてもらってるよ。骸君のおかげでシモンの至宝のシモンリングも見つかったから」

「そうなの!?良かったー!」

 

前は未来の戦いから帰ってきた地震の影響で見つかったんだよね。シモンの土地にあるのは骸も知っていたから、探してくれたんだ。シモンを守るにもリングがあった方がいいっていうのもあるんだろうけど、あいつ本当にちゃんと見てくれてたよ。もっと報告してよ!とも思うけどね。いやでも骸だし……。

 

「僕は父さんと違って……陰になる気はなかった。完全に覚醒してないとはいえ……リングもあるんだ、表舞台に出たくなったんだ」

「うん!うん!オレもそれに賛成だよ!」

 

いつまでもシモンが日の目が当たらないところにいるのもおかしいからね。今回は争うこともなく決まってオレすっげー嬉しかったんだ。だから炎真が「でも……」と言って続けた言葉にオレは固まった。

 

「オレが間違っていた。ファミリーの反対を押し切って、骸君に頼んで1人で転入してまでここまで来たけど……父さん達が正しかったよ」

「な、なんで……」

「君と僕は違う」

 

え?なんで?オレと炎真は似た者同士だよね?

 

「骸君が君を知る機会だからと言って、この企画を考えてくれたけど……、ここでちょっと話を聞くだけでわかったよ。日の当たる場所にいる人っていうのは君みたいな人なんだって。オレ達とは違う」

「そんなことないよ!!もしオレがそうなら、君達だってそうだよ!」

 

オレの必死の訴えも、炎真には届かなくて首を振られた。

 

「……心配しないで。初代から続く誓いは守るから。君がボンゴレを継ぐなら、シモンは理不尽な扱いは受けないだろうしね」

「ま、待って!炎真!」

 

オレの言葉に、炎真は止まることも振り返ることすらなかった。

 

 

 

 

グッと手に力をいれ顔をあげたオレは、応接室に戻ってきた。

 

「ヒバリさん、合同体育祭の企画、受けてください」

「……ふぅん。マヌケ面じゃないようだね」

 

あははとオレは笑う。殺気送られたし、動揺してたのはバレバレだったよね。

 

「いいよ。そのかわり……負けることは許さないよ」

 

はい!とオレはヒバリさんに返事をした。




古里炎真
本編で度々名だけ登場していた人。
骸のおかげでまともな人生を歩んでいた。
両親と妹が生きてることもあり、ドジでも割としっかりしている。
次期ボスとして、これからのファミリーの行く末に悩んでいた。
ツナを見て、陰で生きていくことを選んだ。

沢田ツナ
今世ではダメダメな人生ではなかったため、炎真には届かなかった。
でもみんながいるから、選択を間違ったとは思っていない。
すぐに炎真と向き合うと決めた。

六道骸
ちょっとめんどくさいことになりそうと察し、ツナを知る機会を与えようとした。
黒曜中との合同なら代表者はツナになるとわかっていたから、計画した。
後はツナ次第。

草壁哲矢
いろんな人がツナを褒めた中、彼が一番ベタ褒めした。


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炎真との距離が縮まった。オレが思ったような感じじゃないけど。……あの2人が悪いんだよ!ヒバリさんはまだわかるよ。あの人、昔っからそうだし。骸……お前、オレと炎真のために企画してくれたんじゃないの!?なんでそんなにも勝つ気満々なの!?ただの体育祭だよ!?もう2人で話し合ってよ!顔を合わせるとバトルになるのはわかってるけど……!オレと炎真がどんだけ2つの学校を行き来してると思ってるの!?少しでも自分の学校に有利なルールにしようとしないで!調整するオレ達が大変なんだから!

 

と、オレと炎真が2人に振り回される夏休みを送っている。その間を縫って、みんなと遊びに出かけたりするからまた忙しい。いや嬉しいし楽しいんだよ?ただ体育祭のことを思い出すと頭が痛いというか……。

 

「ツナ」

「ん?リボーン、なに?」

 

今日もあの2人のせいで疲れたーと休んでるとリボーンが声をかけてきた。

 

「明日海行くぞ。炎真も誘え」

「えっ、ちょっと!」

 

と、まぁオレが言っても何か企んだリボーンが止まるわけもない。仕方なくオレは炎真に連絡する。オレが炎真の連絡先を知ってるのは仲良くなったからじゃなく、連絡先を交換しないと合同体育祭の日までに間に合いそうになかったからだけど……。

 

『……もしもし?』

「あ!オレ、ツナ。あの良かったらだけど明日海に行かない?いやその、疲れを癒すにいいかなぁ……なんて……ハハハ」

 

自分で言ってて、海なんて行ったら余計疲れるじゃん!って思ったよ……。でもオレも炎真と少しでも仲良くなりたいし、なんとか来てもらおうと必死に言葉を考える。

 

「ええっと……」

『……いいよ』

「ほ、ほんと!?いいの!?」

 

やったーとオレは喜んだけど、リボーンから何も詳しいこと聞いてねぇ……。

 

「く、詳しく決めてすぐに連絡し直すね」

『わかった』

 

オレは炎真との電話を切った後、すぐに「リボーン!明日のことなんだけどー」って叫んだ。

 

 

 

 

オレ達はいつものメンバーと炎真で海にいた。黒川とお兄さんは居ないけど。黒川はいつも通りの理由でお兄さんは部活。代わりにっていうわけじゃないけどリボーンが何か言ったのか、家綱も居る。

 

「ビアンキは自分で大丈夫だと思うけど……、クローム、京子ちゃん、ハルはオレから離れちゃダメだからね」

「どうしてですか?ツナさん」

「みんな可愛いし、ビアンキは綺麗だけど……まぁナンパされると思うよ。特に1人になっちゃ、すぐにね」

 

前の時もそうだったしなーと思っていたら、クロームがオレの腕に抱きついた。怖がらせちゃったかな。

 

「クロームちゃん、ナイスです!」

「大丈夫よ。心配しなくてもみんな私が見ているわ」

 

ビアンキがそういうとみんなホッとしたような顔をした。いや、オレもビアンキがそう言ってくれるなら助かるんだけどさ。

 

「行こう、ツーちゃん」

「あ、うん……」

 

なんか違うような……と思いながらも、オレは男子との待ち合わせ場所へと向かった。

 

「みんなー!」

 

ブンブンと手をふると、獄寺君が思いっきり目をそらした。あれ?ビアンキには獄寺君は恥ずかしがり屋だからゴーグルつけてあげてって言ったから、ずっとつけてくれてるはずんだけど……。うん、やっぱりつけてるよね。

 

「獄寺君、大丈夫?体調悪いの?」

「い、いえ……」

「でも顔真っ赤だよ」

 

熱中症かなとオレは心配していたんだけど、リボーンは相変わらず男に厳しくてほっとけと言われた。もちろんそんなことは出来ないオレは下から獄寺君を覗き込んだんだけど……。

 

「ご、獄寺君!鼻血、鼻血出てるよ!?」

 

テッシュテッシュと慌ててカバンから取り出す。いやほんといろいろと持ってきてて良かったよ……。

 

「すみません……10代目……。オレ、しばらく頭冷やしてきます……」

 

ふらふらと歩いて行くからオレも付いて行こうと思ったけど、フゥ太に捕まってそれは叶わなかった。

 

「ツナ姉、しばらくすれば隼人兄は大丈夫だよ!」

「お前何か知ってんの?」

「まぁね。でもツナ姉は知らない方がいいと思うよ。隼人兄はまだ知られたくないみたいだから」

 

教えてくれてありがとうとオレはフゥ太の頭を撫でる。えへへと喜ぶ姿で誤魔化されそうになるけど、フゥ太はほんと昔っから周りをよく見てるよなー。

 

まぁこんな風にフゥ太を褒めてると、オレっちも!ってランボもやってくるんだけどね。撫でてやるけど、今度はフゥ太がもっとって言うんだよ。

 

オレがちび達に振り回されてると、家綱が炎真に絡もうとするのを山本が仲裁していた。ちょ、あいつ何やってんの!?

 

「家綱!」

「んだよ。こいつ、ボンゴレの傘下なんだろ。それも弱小」

 

家綱に教えたの、絶対リボーンだ!

 

「傘下じゃないから!同盟だから!弱小とかそんなの関係ないよ!それと……ボンゴレを継ぐと決めてもないのに、そういう態度はダメだよ!」

「うるせー。継げばいいんだろ、継げば」

「本気で言ってるのか?」

 

家綱が腰を抜かした。自分でもこれはまずいと思った。……オレ、結構怒ってる。

 

「……ごめん。でもいい加減な気持ちで口にすることじゃないよ」

 

極力家綱を見ないように視線をそらす。オレが後ろを向くのは違う気がしたから。何も言えずにただ離れていく家綱の足音を聞いてると、やっちゃったなぁと後悔が押し寄せる。そんなオレに気付いたのか、山本が「ツナ、任せとけって」と言って家綱を追いかけてくれた。こういうところ、ほんと山本には頭があがらないや。

 

「僕達のために怒ってくれて……ありがとう」

 

炎真がそう言ってちび達の相手をし始めたのを見て、オレは後悔していた気持ちが少し軽くなったんだ。

 

 

ちび達を選んだのは知り合いがオレしか居ないからというのもあるんだろうけど、炎真はちび達の相手がうまいってすぐわかった。

 

「まみ……妹が居るからね」

「あ、そっか」

 

どんな子だろう。オレ会ったことないんだよなぁ。

 

「やっぱり可愛い?」

「わがままだけど」

 

炎真とこんな話が出来るなんて思ってなかったから、オレすっげー嬉しい。

 

「今度の体育祭で会えると思うよ」

「え!?紹介してくれるの!?」

「……次期ボス候補を見たいはずだろうから」

 

そっちなんだ……とオレはちょっとショックを受ける。友達だからって言ってほしかったなぁ。いやでも、諦めないよ、オレ。

 

「妹いいよね。みんな男だし、オレも欲しいや」

 

イーピンはまだ来ないのかなぁとオレが思ってると、炎真は軽く息を吐いてから言った。

 

「そんないいものじゃないよ。さっきも言ったけどわがままだよ」

「でも炎真、可愛い?ってオレが聞いたら否定しなかったじゃん」

 

しばらく考えた後、炎真はそうだねって、今度は声を出して笑ったんだ。

 

久しぶりに炎真がちゃんと笑ったところを見たから、オレも声を出して笑う。オレが急に笑い出したから、炎真は驚いちゃったみたいだけど、また笑った。

 

もっと話したいなぁと思ったんだけど、炎真と2人で来てるわけじゃない。いつの間にか復活した獄寺君がオレのところへ来て、向こうで泳ぎましょうと必死に声をかけてきた。少し寂しかったのかなって思ったオレは獄寺君に付き合うことにした。

 

そのままなんでか知らないけど、少し機嫌が戻った家綱と一緒に戻ってきた山本と4人で勝負することになった。いや獄寺君がケンカを売ったからなんだけどね。戻ってきた山本が声をかけたから、せっかくオレと2人っきりになったんだぞって。相変わらず獄寺君はオレを慕ってくれてるみたいで……。ちなみに家綱はリボーンに言われて強制参加。

 

その勝負だったんだけど、オレは昔っから泳ぐのは苦手だし、女だから不利じゃない?って思ってたんだ。結果は……山本の次で2位だった。獄寺君はすげーオレを褒めてくれたんだけど、家綱と一緒に女のツナに負けて情けねぇぞとリボーンにボコられてた。オレからすれば、家綱が泳げるだけ凄いと思うんだけど……。獄寺君はまだ調子悪かったんじゃないのかな?

 

その流れで他の泳ぎ方でも勝負することになって、オレが基準みたいでオレより下の人達はリボーンに罰ゲームをくらっていた。といっても、泳ぐのは得意じゃないから獄寺君にも負けるようになったけどね。家綱は……うん。もちろんオレも最初は止めたんだよ?でもオレが止めた分は後でねっちょりらしい……。リボーンのねっちょりは本当にねっちょりだから……止めるのやめたよ。

 

炎真も巻き込もうとしたところで、オレはもう疲れたと言って勝負は終わらせてもらった。本当はまだまだ大丈夫だったけど、リボーンが仕方ねぇなと許してくれてよかった。……あの目、オレがウソついたの絶対気付いてたし。

 

オレが男子達と遊んでいたのもあって、午後からは女の子に捕まった。オレの身体は一つしかないから……って何度か思ったよ。

 

結局、ほぼ1日一緒に居たのに、炎真君とはちょっとしか話せなかった。

 




沢田ツナ
2度目で、鍛えてハイスペックだけど泳ぐのは苦手。
泳ぐぐらいなら空を飛ぶ。
それでも女子の中ではかなりヤバイ。

山本武
順調に鍛えられ、強くなってる人。
山本とたまに朝のランニングで出会う了平もそのことに気付き、負けてられん!とツナが知らない間に少しパワーアップしている。

獄寺隼人
リボーンの言う通りで、鍛え直すべきだと本気で考え中。
ツナの朝のコースも付いていくのが精一杯なのもあって。
一応ある人物の顔も浮かんでいるが、まずは自分1人で出来るところから。
ツナの手を見たことで、無意識に危ないことはしなくなった。

リボーン
骸が選んだ代表なので炎真のことを調べて、シモンファミリーの次期ボスだと知った。
ツナと家綱が同盟ファミリーをどう扱うか見ようとした。
……家綱が予想通りの行動でため息が出た。
そしてツナがランキングで怒らせたら怖い1位に入る理由がわかった。
普段からは感じられないが、ボスの風格がツナにはあった。
家綱が腰を抜かすのは当然だと思ったので、これについては怒らなかった。


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夏休みの全校登校日の朝礼でヒバリさんから合同体育祭のことが発表された。

 

「うおおおお!!極限、燃える展開ではないか!!」

 

……うん、わかってたよ。お兄さんが知ればこうなるって。ヒバリさん、お兄さんの声で眉ひそめてるよ。でもなんだかんだで慣れてるから見なかった……というより、見ないことにするから問題ないけどね。体育祭ではお兄さんにも頑張ってもらわないといけないし。

 

これが発表されたことにより、オレは更に忙しくなる。今から憂鬱だ。いやちゃんとやるけどね?オレがお願いしたことだしさ。でもこれから風紀委員は当然だけど、他の委員会とも連携を取らなくちゃいけない。そのまとめ役がオレなんだよ……。まぁオレだけじゃないけど、大変なのは。

 

「スポーツ委員会、運営委員会、放送委員会の委員長は、今日の放課後、会議室に来るように。委員に所属している者も近々呼び出すだろうからそのつもりでいてね」

 

体育館に悲鳴が響き渡った。

 

「何か問題でもある?……うん、ないみたいだしよろしくね」

 

……ヒバリさん、それ脅しです。オレも協力してほしいから何も言わないけど。夏休みが消えた人達はご愁傷様。

 

こうして朝礼は終わったんだけど、オレが教室に戻るとみんなに囲まれた。他の風紀委員には聞けないからしょうがないんだけどね。でも詳細はまだ話せないんだよ。ごめん、ヒバリさんに口止めされてるんだと言って手を合わせて許してもらう。クラスメイトはそれでわかってくれたんだけど、他のクラスの人達もやってくる。キリがないなーと思ってたら、獄寺君と山本がオレのところへ来るまでに止めてくれた。

 

「ごめん、2人ともありがとう!助かったよ」

「当然のことをしたまでです!」

「気にすんなって」

 

やっぱ2人は頼りになるよ。オレが困ってたらすぐに助けてくれるんだもん。だから2人が困った時はオレが助けるんだ。

 

「オレ、2人と友達になれて良かった」

「おう!オレもだぜ!」

「……じ、自分もっス」

 

獄寺君は友達って言ったのが気になったのかな。オレの部下っていう気持ちが強いもんなー。

 

「ごめんね。今はまだ友達でいたいんだ」

「……10代目?」

 

なんでもないよって言おうとする前に、オレは山本にちょっと強めで頭を撫でられた。獄寺君が怒っていたけど……山本はもう完全に知っているんだ。薄々そうじゃないかなと思っていたけど、これではっきりしちゃった……。

 

「ツナ、謝んのはなしだぜ」

「……うん。ありがとう、山本」

 

オレは出来る限りの笑顔で山本にお礼を言ったんだ。すると、隣から不穏なオーラが流れてきた。ご、獄寺君!?

 

「……山本、死にやがれ」

「うわわわ!獄寺君、たんまっ!危ないし、オレ風紀委員だから見逃せないから!」

 

前と立場が違うから学校ではお願いだから大人しくしてー!

 

 

 

放課後、ヒバリさんに呼ばれた委員会の委員長がやってきた。オレはその人達に今回の合同体育祭について説明する。

 

「まず黒曜中との合同なので、普通の体育祭と違って種目は全員参加ではありません。出場の機会がない人は応援団や体育祭に飾る垂れ幕を作成してもらいます。こちらも勝敗に関係してくるので、体育祭には参加という形です」

 

二校同時で、それも勝負という形だからね。全員参加させれば1日で終わるのは無理だとすぐに想像できた。でも喜ぶ人は多いと思うんだよね。運動が得意じゃない人は他のところで協力できるから。全員参加だと迷惑かけるあの感じ……オレ、すっげー気持ちわかるもん。

 

「こちらの方で種目ごとに男女はもちろんですが……どの学年で何名選出するとかの調整はしました。なので、学年ごとで代表者の選出をお願いします」

 

オレがそういうとホッとしたような顔をした。学年だけでも決まっていれば、楽に聞こえるもんね。

 

「同じ人ばかり出ないように1人2種目までと制限しています」

 

これは普通の体育祭でもあることだから受け入れられた。

 

「棒倒しの総大将はそれしか出れませんけどね」

「それしかですか?」

「はい。でもそこは流してくれていいですよ。ヒバリさんがするらしいですから」

 

みんなが目を輝かせたけど、オレからすれば恐怖しかないからね。もしヒバリさんを落とせばどうなるかわからないもん。

 

「問題はこれです……。全種目で一度だけ。代わりの人が出れるのは……」

 

え?と驚いたような顔があがった。これも散々話し合ったんだよね。真剣勝負だからこういう形にするしかなかったんだよ……。

 

「その日、出場が決まっている人が風邪をひいて2人休んだとします。1人は代理で出場出来ます。これは誰でも代理可能です。誰でもなので総大将も一応可能です。もう2種目出ると決まってる人でも大丈夫です。当然男子がかわりに女子限定の競技に出ることは不可能ですけどね。そこで使うともう1人の方は交代できません。例えばリレーだとそのチームは勝負する前から失格です。最下位でもありません。0点です」

 

うわぁとスポーツ委員長が頭を抱えた。すぐ理解してくれて良かったよ。……これ、メンバー決めは結構大変だからね。オレ達もそう思ったから学年までは絞ったんだよ。まぁ一年と三年では違うからバランス調整のためもあったけど。でも山本とかなら三年といい勝負出来るから、スポーツ委員のためにやってあげたんだよ。

 

「すみません。怪我もですよね……?」

「はい。怪我人が毎年出る棒倒しは、最後にしましたけど……。あ、その競技だけは総大将以外は出れなくなっても失格にはなりません。代理は使ってなければ1人だけ可能です」

「……あの」

 

放送委員長が手をあげたので、どうぞとオレは話を促す。

 

「このルール、うまく使えば1人3種目出ることを計算して選出も出来ませんか?」

「誰も病気や怪我がないという前提になりますが、可能です」

 

ますますスポーツ委員が頭を抱えた。

 

「ああでもそこは普通にベストメンバーで考えてくれて大丈夫ですよ。そのカードを切るところを決めるのはヒバリさんが担当してくれますから」

 

責任重大なところをヒバリさんがやってくれるって感動してるけど違うからね。あの人、本気だから譲らなかっただけだから。ちなみに骸もね。まじなんなの、あの人達!

 

「並中開催なのもあってスポーツ委員の負担が多いので、実行委員の方でも協力してあげてください。オレも手伝いますので最後に振り分けしましょう」

 

大方予想していたみたいで、実行委員長の方は頷いてくれた。そういう時のためにある委員だしね。

 

「風紀委員からのお願いです。当日、一部の教室と体育館は黒曜中生徒のために解放します。風紀委員はトラブルが起きないように見回りをしますが、用がない限り近づかないようにそちらでも注意を促してください。恐らく人数の関係でグラウンドの方が割かれるでしょうから」

 

グラウンドもいつもの倍の人数だからね。生徒達だけならまだいいけど、保護者も来れるから。1人の生徒に対して2人までって制限したけど。参加証がなければ入れない仕組みで、門のところにも風紀委員が立つ予定。

 

ちなみに炎真のところはお父さんとまみちゃんが来る。お母さんはいいの?って聞けば、まみちゃんがもう行く気満々だったみたいで現ボスであるお父さんは外せないからそうなったんだって。

 

「あ、そうだ。オレちょっと忙しいんで、競技を決める時にオレが出席出来るかわからないんで、もし居なければそっちで相談して決めてください。2種目出るのはいいんですけど、棒倒しはなしで」

「ええっ。女子もあれ出れるんですか!?」

「ヒバリさんがオレを出せるように抜け道を作ってます。棒倒しが一番点数が高いですからね。でもそれは怪我人や病人が続出した時ぐらいの保険で。そこで使えるかもわかりませんし。最初からオレを棒倒しに出すくらいなら、女子限定の競技に出て2種目分の点数を稼いだ方が得なんですよね。運の要素が絡む借り物競走とかは抜きますが、個人種目ならオレが一位取ります。……取らないと咬み殺されます」

 

あはは……と遠い目をする。ヒバリさんの中で個人種目ならオレは一位を取ると決まってるだろうからね。競技に集中出来るようにオレは見回りはないけど。まぁ本部にいるけどね。

 

「ただ個人種目よりリレーの方が点数が高いですし、そっちにオレを選ぶのもアリです。本当にここはみんなと相談しないとわからないんで、オレも出たいと思ってるんですけどね」

 

ヒバリさんもオレを出席させたいと考えてると思うんだよね。オレ結構重要なポジションらしいから。

 

「オレの出場種目はこれで置いといて。代表メンバーがかなり重要だと理解はしてもらえたと思います」

 

みんな頷いたからオレは話を進める。

 

「この情報が黒曜中に漏れると対策を取られるので、前日に選出した内容の書類を交換するまでは絶対にバレないようにしてください。もしバレたとわかれば、選考し直しだけじゃなく、ヒバリさんがキレます。徹底してください」

 

みんな真っ青になった。放送委員が今日呼ばれた意味を理解してもらえてよかったよ。練習するのはいいけど、持ち出し禁止にしないと本当に怖いから。

 

「会議中、基本生徒達はメモはなし。自分の出る競技だけ覚えればいいですし、もし忘れれば委員かオレに聞けばいいでしょう。プログラムや注意事項とかは別で渡しますし。前日……黒曜中に渡した後ですが、ちゃんとみんなの手にも配られますから」

 

とりあえず大事なところを話したので、オレはゆっくりと息を吐いてから残りの細かい注意事項などの説明をし始めた。

 




山本武
ツナが嘆きながらでも納得したのでリボーンから話を聞いた。
最初は子どもの遊びとして真剣に受けとらなかったが、リボーンの殺気を肌で感じて信じた。
中途半端な覚悟なら今のうちに引けと言われ尚更燃えた。
そのため獄寺からは野球バカと呼ばれていない。

リボーン
ツナがまた泣かないようにと裏で動いている。

獄寺隼人
ツナが知らないところで、近々リボーンに試される。

雲雀恭弥
リボーンに試されることもなくファミリーにカウントされている。本人はまだ認めていない。
体育祭で勝つために真剣。
どこでカードを切るべきか本気で悩んでる。
わざわざ自分が代わりに出なくても一位を取りそうな候補はいる。が、自分が出れない女子限定の競技になると一位を取れそうなのはツナしか浮かんでいない。
でも棒倒しの勝敗の点数を考えるとツナを出して確実にとりたい気持ちもある。もちろんヒバリも落ちる気はないが、下を支える草食動物もかなり重要なので実力を知るツナを入れたい。
怪我や病気でカードを切らない前提。切ることになれば、咬み殺す。

沢田ツナ
実はかなり重要なポジションにいる。


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合同体育祭前日、オレはヒバリさんに睨まれていた。まぁ理由はわかるけどね。黒曜中の出場選手の資料を受け取ったのはオレだから、真っ先に確認したし。

 

「ねぇ、これどういうこと」

「さ、さぁ……?」

 

オレが聞きたいってば。あいつの考えなんて、わかんないことも多いし……。でもオレも黒曜中の総大将が骸じゃないとは思わなかった。

 

「ふざけてるの?」

「それはないと思います。骸と炎真は小学生の頃からの付き合いですから、骸に鍛えられている可能性があります」

 

まぁシモンリングは使えないけどね。そういうのアリになったら、ずっと骸を見張らなくちゃいけないから。一番最初になしってオレが言った。……なんでもありなら、オレも手段選ばないからね。オレの副音声が聞こえたのか、骸はすぐにしませんと断言した。

 

そのことを思い出しながら、ヒバリさんの様子を伺う。……うん、機嫌が悪そうだけど大丈夫かな。嫌々ながらも骸の実力は認めてるし、ヒバリさんも骸と出会ったことでかなり強くなったからね。ヒバリさんは骸のおかげなんて死んでも言わないだろうけど。

 

「あいつ本人が出ないのは、暗躍が好きだからだと思います。オレ、あいつがみんなと一緒に競技するなんて想像出来ませんよ」

 

これはヒバリさんにも言えるけどね。でもまだヒバリさんの方が可能性はある。ヒバリさんは学校のためなら動くから。骸が動くなら誰かに成り代わってやる。今回の体育祭ではできないけど、やってもオレが見破っちゃうよ。

 

「ですので、あいつが代理で出たとしても総大将しかありません」

「その根拠は?」

「オレが笑うから」

 

何言ってるの?というような視線をオレはヒバリさんに向けられた。

 

「もし骸がリレーとか出たなら、爆笑します。我慢出来ませんよ」

 

絶対無理。オレ、お前そんなキャラじゃないじゃん!!って思って爆笑する自信しかない。総大将ならまだわかるけど、みんなと走るとかもう……。

 

「ぶっ、あはははっ。……す、すみませんっ」

 

ひぃひぃ言いながらもオレは謝る。想像しちゃったじゃん!

 

「……ふぅ。ええっと、そんな感じでオレに笑われるのはあいつのプライドを考えると耐えれないと思います。総大将も炎真なら変わる必要がないので、出ないと考えていいと思いますよ」

 

オレがそう言うと、ヒバリさんは納得出来ないという顔をしていた。まぁあれだけ勝つ気でいたのに、自分は出ないんだもん。骸の実力を知っているヒバリさんからすれば、気にくわないよね。でも骸って昔っからそういうところあるよなー……。

 

「あ。骸の行動ちょっとわかったかも」

「なに」

「あいつ、人の企みを理解したら放置とかあるんですよね。なに考えてるのかわからなかったら積極的に動きます。で、内容次第ではオレか誰かに情報をさりげなく流すんです」

 

そうそう、昔っからそうだった。あいつどこから調べてるのかわからないけど、モスカに入ってた9代目のことや、大空戦後のヴァリアー隊のこともそうだし、ユニがおしゃぶりに炎を込めて復活させようとしたことだって知ってたんだよ。白蘭の能力だって自ら乗り込んで調べてたし。で、ちょっと教えてくれるんだよ。オレ達の命がやばい内容なら。

 

「……ふぅん。つまり僕たちの考えが読めたから、出ないってこと」

「ひっ」

 

ヒバリさんの機嫌がやばいことになってたー!!いやでも、オレが言ったことはそういうことだよね!?

 

「オ、オレが勝手にそう思っただけで、違う可能性の方が高いですよ?だって向こうの代表を見る限りでは情報は漏れてなさそうですから」

 

黒曜中の生徒をヒバリさんの力で調べて、要チェックした人達の種目を見たけど、獄寺君とお兄さんと被ってたからそれはない。あいつが本当にわかってたなら全部避けるよ、絶対。

 

「それにあいつは人を煽るのが好きってヒバリさんも知ってますよね?今回もそうですって」

「……君がそう感じて口にした時点で、僕はそれを考慮しなくちゃいけないんだ。負けるわけにはいかないからね」

「確かにオレは骸と幼馴染ですけど、そこまであいつのこと知ってるわけじゃ……」

「それが理由じゃない。君は……厄介なんだ」

 

オレは首を傾げるしかない。いきなり厄介とか言われたけど、どういうことかさっぱりわかんねぇ……。ヒバリさんがそこまで悪い意味で言ってないことはわかるんだけど……。

 

「……それ」

「え?どれ?」

「はぁ。もう後で自分で考えなよ。僕は忙しいんだ。君もさっさとコピーして配って」

「は、はい。わかりました」

 

ヒバリさんの言う通り、今日中に全生徒に配らないといけないオレは後で考えることにした。……さっぱりわかんなかったけど。

 

 

 

 

ヒバリさん結局どうするのかなーと思いつつ、体育祭当日を迎える。オレは始まる前に家族のところへ向かう。オレはずっと本部に居なくちゃいけないから、次は昼休憩ぐらいしか帰ってこれないからね。

 

「みんな来てくれたんだ」

「もちろんだよ!」

 

とオレの言葉に真っ先に反応したのはフゥ太だった。もうその流れでちび達の相手をしつつ母さんに声をかける。

 

「今日の弁当は大変だったよね。手伝えなくてごめん」

「ツーちゃんが前の日に手伝ってくれたし、ハルちゃんが朝から来てくれたの。だからツーちゃんが気にするほど大変じゃなかったわ」

「はい!ハルもお手伝いしたんですー!」

「ありがとう、ハル。助かったよ」

「ええ。それにビアンキちゃんも頼もしかったわ」

 

えっ。とオレは声をあげる。オレ、ビアンキには観戦するために必要なものとかの準備を頼んだんだけど……。

 

「ツーちゃんがお願いしてくれたんでしょ。ランボちゃん達のものまで全部揃えてくれて助かったわー」

「う、うん!!そうなんだ!!」

 

よ、よかったー!!ポイズンクッキングはやってなかったー!!ビアンキにもちゃんとお礼しとこ。料理回避のためっていっても、前の日に準備出来ることだったのに、当日急に頼んだからさ。まぁリボーンにはよくやったと珍しく褒めてもらったけど。

 

「ビアンキありがとう!」

「どういたしまして」

 

ビアンキは料理さえしなかったらほんといい女の代表って感じだよな。オレにはあんなクールな感じでお礼を言える気がしない。

 

オレんところが大所帯みたいな感じになってるけど、不正はしていない。山本のとこはお父さんだけだから1枚くれて、獄寺君から2枚。クロームも使わないから2枚。京子ちゃんからも2枚。お兄さんの分があるから大丈夫って言ってくれたんだ。それに加えてオレと家綱の分もあるから余裕でいけた。逆に余っちゃったぐらいで、オレは慌てて炎真に連絡したんだ。みんなのおかげで炎真のお母さんも来れるようになったんだ。

 

炎真は最初遠慮してたけど、オレが押し切ったらやっぱり嬉しかったみたいで笑ってお礼を言ってくれたんだ。というか、骸が譲ってやれば良かったんじゃない?って一瞬思ったけど、オレのためかなーなんて炎真の笑顔を見てそう思った。

 

「ツーちゃん、骸君は黒曜中の本部なのよね?お弁当持って行こうかしら」

「あ、それならオレが持っていくよ。ついでだし」

 

真ん中を基準に2つの学校を分けた形にしたし、本部も2つに分けたけど、正面にあることもあってそこまで遠くない。

 

「でもせっかくだし……」

「うーん、あいつも忙しいだろうから。でも、骸ならどこかで母さんにはお礼言いにくると思うから会えるはずだよ」

「そう?なら楽しみに待ってるわ」

 

そうしてとオレは頷く。真剣勝負のせいかちょっと殺気立ってるし、母さんが行くとなればビアンキとかもついていくと思うんだよね。母さんだけならいいけど他のマフィアがいれば骸も嫌だろうし。リボーンはオレのセットみたいに考えて諦めてるみたいだけど。

 

骸の弁当を預かってオレは本部へと戻る。本当はもっとゆっくりしたかったけど、そろそろトラブルは絶対起き始めるはずだからオレは本部で待機しないと。

 

「遅い」

 

本部に戻ってきすぐヒバリさんに怒られた。もうトラブルが起きてるらしい。とりあえずトンファーをしまってください。風紀の乱れが発覚すれば黒曜中でも咬み殺すとは伝えて許可をとってるけど、常に出してると相手の代表選手を強襲しに行くようにも見えるから。

 

オレが苛立つのはわかりますが、誤解が生まれてさらに風紀が乱れるのも体育祭が中止になるのも嫌ですよね?というとヒバリさんは渋々トンファーをしまった。風紀や学校行事を出すと素直になるよなーってオレが思ってるとトンファーで殴られそうになった。避けたけど。

 

「いきなりなんですか!?」

「顔に書いてる」

 

またか……とオレは遠い目しながらも弁当を片手に頬を揉む。って、骸に届けないと。

 

「すみません。ヒバリさんちょっとオレ向こうの本部へ行ってきます」

「何かあったの?」

「えーと……ハハハ」

 

骸に弁当を届けるって言ったらヒバリさんがどんな反応するかわかんねぇ。とりあえず笑って誤魔化したけど、行くときに持ってなかった弁当袋があるから、頭のいいヒバリさんは想像できたらしく、機嫌が悪いながらも視線で行ってこいと送ってきた。これはここに置いてる方が嫌だと思ったかな。

 

ヒバリさんの機嫌がこれ以上損ねる前にオレはさっさと骸のところに顔を出す。ちょっとピリっとした空気が流れてるけど、オレは気にせず歩く。黒曜中の生徒もオレを止めることはない。この体育祭のために何度も黒曜中にも顔を出してるからね。

 

「骸ー」

 

と、軽い気持ちで顔を出して後悔することになる。なにあいつ、めっちゃ慕われてるんですけど。すっげー気持ち悪い。

 

「相変わらず失礼ですね、君は」

「……オレの顔どうなってんの」

 

はぁと軽くため息を吐いて、骸に弁当を渡す。いつものことなので骸もふつーに受け取った。

 

……そう、ふつーに受け取ったんだよ。

 

「……君はもう行きなさい」

「悪い!骸!」

 

女の子ってこえぇぇ!すっげー睨んできた!!母さんからとか、オレと骸はそんな関係ないからとかそんな説明出来る感じもなかった。

 

とにかくオレは安全地帯へと逃げた。そりゃもちろんヒバリさんのところ。だってあの人不機嫌なオーラが全身から出てて誰も近づこうとしないんだもん。

 

「ヒバリさんのところが安全なんて思うようになるとは……」

「君、さっきから僕にケンカ売ってるの?」

「まさか!逆です!頼りにしてます、ヒバリさん!」

 

オレの言葉にヒバリさんは大きな溜息を吐いた。え?なんで?




沢田ツナ
ピリピリした空気は怖くないのに、女子に睨まれるのは怖かった。

雲雀恭弥
ツナの一番厄介なところは強さじゃないと気づいてる。
無自覚で飄々とやってのけるからタチが悪い。

六道骸
黒曜中ではいい人を演じている。
演じてるだけなので、内側には絶対入れない。
察しのいい人と炎真は笑顔でも拒絶していることに気付いている。

ツナが想像した六道骸
リレーでアンカーを走り一位を取った後、「この一位は皆さんが頑張ったからですよ」と爽やかな汗を流していた。
目的のためなら言いそうなので流せたが、爽やかな汗の部分でツナの腹筋は崩壊した。


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ヒバリさんを隠れ蓑として使っていたオレの判断はある意味正解だったらしい。ヒバリさんの近くにオレがいると知った風紀委員や他の委員はオレを間に挟むようになった。ヒバリさんが動くまでもない内容なら、オレの判断で処理してから報告するだけでいいからね。草壁さんも同じことをやってるだろうけど、オレの方がそういうの慣れてる。これでも前世ではボスだったからね。それにオレはヒバリさんのトンファー避けれるし。まぁ基本的にオレの判断は正しいみたいでトンファーが飛んでくることはないんだけど。

 

トラブルに追われながらも、無事に合同体育祭は開幕した。両校から長ったらしい挨拶とかは辛いけど。一応まじめに聞いてるフリをする。近くに一番厳しい人が居るからね。寝たりしたら怖い怖い。

 

眠気覚しを兼ねて、オレは自分のクラスを観察する。みんな本部の方を見ながら立ってるから見やすい。女子達は真面目に聞いてるね。黒川はうんざりしたような顔をしながらだったけど。男子はどうだろうなーと思ったら、山本と目があった。オレと同じようなことをしてたらしい。ちょっと笑ってしまった。……すぐにヒバリさんに睨まれて口は閉じたけど。獄寺君の方へ視線を向けると、オレのことをずっと見ていたらしくて山本に苛立ちの念を送っていた。オレの視線に気付いたら、嬉しそうな顔になったけど。獄寺君らしくて笑わないように笑顔だけ送ると、真っ赤な顔して視線をそらされちゃった。オレに笑われたと思っちゃったのかな?そんなつもりなかったんだけどなぁと思いながら、家綱の様子も見る。……あ、寝そう。ガクッと首が動いた瞬間、どこからか狙撃されていた。ちょっと驚いたけど嫌な感じはなかったからすぐに正体に気付いた。家綱は痛がってたけど気絶するほどじゃなかったから、リボーンにしては優しい対応。

 

そういや家綱は今回選手として出ない。リボーンにこっそりいいの?って聞いたけど、死ぬ気弾を打っても逃げる方に死ぬ気になるから意味ねーんだって呆れたように溜息を吐いていた。それを聞いてオレは思ったよ。なんでオレは逃げなかったんだろう……って。嫌だったのに練習までしちゃってたよ……。

 

っと、そんなこと考えてる場合じゃないや。オレはフラッと本部から離れて生徒の方へ向かう。

 

「大丈夫?ちょっと向こうで休もう?」

 

オレが声をかけた時点で限界だったらしく、その子は頷くことは出来たけど動くのは無理そうだった。女同士だしいいよな?とオレはその子を抱き上げる。周りの女の子達がキャアァとちょっと叫んだけど、静かにねと声をかければすぐに頷いてくれた。協力ありがとうとオレは笑顔を向けて彼女を抱えたまま本部に隣接している救護室へと向かう。

 

あんまり目立たないようにしたかったけど、それでもやっぱ目立っちゃって、寝かせた後もその子はちょっと気にしてたみたいだから大丈夫だよと頭を撫でる。オレの言葉に安心したようにその子は目をつぶった。

 

「……ツーちゃんが女の子で良かったぜ。オレのライバルになるところだった」

 

それはないよ……シャマル……。オレ、女の子と喋れなくてシャマルに同情されたぐらいだから。

 

そりゃボスの女という座を狙う人は居たけど、オレ自身はモテないダメダメライフだったよ……と遠い目をしながらオレは本部へと戻る。ヒバリさんはオレが戻ってきたことに気付いているだろうけど、何も言わなかった。ちゃんとした理由があったし、大事にならなかったのもあるし、代表選手じゃなかったという3つの理由かな。

 

開会式もちょっとトラブルが起きたけど、本格的に体育祭が始まるといっきに落ち着いた。みんな勝負の方へ興味が移ったのもあるだろうし、慣れてきたんだと思う。生徒達もだけど、トラブルを対処するオレ達も。これなら大丈夫そうかなとオレは本部の端で準備体操する。結局オレは400メートル走とスウェーデンリレーのアンカーに出る。ヒバリさんからは何も言われてないけど、絶対負けちゃ咬み殺されるし油断はしない。

 

「気合い入ってますね!10代目!」

「わっ、獄寺君!わざわざ応援にきてくれたの!?」

「もちろんです!」

 

ありがとうと言いながら思い出す。獄寺君ってそろそろ出番じゃなかった?

 

「覚えてくれたんですか!10代目!」

「感動してる場合じゃないから!行かないと失格になるから!」

「そうっスね。行ってきます!」

 

ふぅとオレが息を吐いていると、ヒバリさんに「君、負けたらどうなるかわかってるよね?」と怒られた。なんでオレが怒られるのー!?理不尽だー!と嘆きながらも、ちょっとどこかでオレのせいかもって思うから、結局いつものようにオレは頭を下げた。

 

獄寺君はやっぱ凄くて、一位だった。オレも頑張らないと!と気合いを入れて走ったらオレも一位だった。小学校の時もとったことがあるけど、やっぱり感動。前の時はダメダメすぎて、万年ビリだったから。リボーンとヒバリさんにいい報告ができるなーとか、でも2人とも見てただろうしなーとか、いろいろ思いながら本部に帰っていたのに一瞬で吹き飛んだ。

 

「勝手に入ってこないでくれる?」

「わりぃ、わりぃ。ツナに会いにきたんだよ。ここに居るって聞いたんだけどなー」

「ディーノさん!?……と、ロマーリオさん!」

 

なんでこの2人出会ってんの!?そしてディーノさん相変わらず懐大きすぎ!機嫌が悪くて殺気を出してるヒバリさんを笑ってかわしてるよ……。

 

「お?ツナ!見にきたぜ」

 

ヒバリさん、オレにも殺気を向けないでください。呼んだのは絶対リボーンですから。チケット余ってたのあいつも知ってたからなぁ……。

 

「ええっと、それは嬉しいんですけど……どうしてここに?」

 

オレに会いにきたのはわかるんだけど、昼になったらそっちに行くってみんな知ってるはずなんだけどな。オレの言いたいことが伝わったのか、ディーノさんは答えてくれた。

 

「ちょっと骸って奴を見ようと思ってな。後、雲雀恭弥っていう奴も」

「わー!ヒバリさん、ストップ!咬み殺しがいがありそうな人が来たとか思ってるでしょ!そうだけど!今、体育祭中!それも合同!」

 

一応オレの言葉に納得したのか、ヒバリさんはトンファーをおろした。あっぶねぇ……。ディーノさんなら付き合ってくれるだろうけど、このタイミングはさすがにマズイって。

 

「ディーノさん、ヒバリさんはもう見たでしょ!骸のところ、案内しますよ!」

「お?そうか?」

 

ヒバリさんが追っかけてこなかったことに、ふーと息を吐く。あの人、ほんと戦闘狂。

 

「いやぁ、悪かったな」

「いえ、オレもすみません……。ディーノさんのこと強いって教えたから、今度会ったらバトル仕掛けられると思います……」

「それぐらいどーってことねぇよ」

「それならいいんですけど……」

 

ディーノさんなら大丈夫だよね?前回よりヒバリさん相当強くなってるんだけど……。

 

「……油断して死なないでくださいね」

「お、おう。そんなになのか……。わーった、そん時は気合入れるぜ」

 

ぜひお願いしますとオレは何度も頷く。

 

「骸でしたよね?会って話しますか?」

「あー、そいつマフィア嫌いなんだろ?遠くからでいい」

「ありがとうございます」

 

骸のことだから視線で気付くだろうけど、多分ディーノさんなら大丈夫。苦手なタイプだろうけど、嫌いじゃないはずだから。

 

案の定、ちょっと遠い位置から教えたのにあいつはすぐに気付いた。オレの顔を見たら警戒をといたけど、ごめんと手を合わせてジェスチャーする。

 

……うん、怒ってなさそうで良かったよ。

 

「普通の奴に見えるが、反応の速さから考えてもリボーンが言うだけのことはあるな……。あいつ、あれで術士なんだろ?」

「そうですよ。格闘できる術士ですね」

 

感心したようにディーノさんは息を吐いた。あいつ、ゲームでいうとラスボス級だもんな。

 

「ついでだ。古里炎真はどいつだ?」

「ええっと、骸の席の近くにいる赤い短髪です」

 

ついでって言ったし、同盟ファミリーだから気になるっていう感じかな?

 

「リボーンから聞いたぜ。ツナが継ぐなら、シモンファミリーはボンゴレにつくすって」

 

あいつ……いつの間に聞いたんだ?オレが炎真と初めて会った時は居なかったから知らないはずだもん。というか、前はオレを積極的に巻き込んでたのに、最近はオレの知らないとこでいろいろやってない?

 

「炎真が言ったんですか?」

「そう聞いてるぜ」

 

いつリボーンが動いたか知らないけど、多分海よりも後。炎真を巻き込もうとしたのはその時だけだし。

 

「嫌なのか?」

 

今回はオレも顔に出たとわかっていたから、眉間を揉む。

 

「……オレだって子どもじゃないからわかってるんです。ボンゴレは大きいし、まだ何も実績のないオレにそう言ってくれるのはどれだけ有難い話なのかって。……でもオレはボンゴレとかシモンとか、そんなの関係なしにまず友達になりたいんです」

「言いたいことはわかるが……あいつは次期ボスとしての自覚があるんだぜ?ツナを次期ボンゴレとして見ないわけにはいかねーだろ」

「オレを次期ボンゴレボスとして見るつもりだったら尚更です」

 

ディーノさんはオレをジッと見た。

 

「昔……ある人にオレはヒーローになれないって言われました。オレは1人じゃ何も出来ない。誰かに背を押してもらってやっと動けるんです。……オレは甘ちゃんって散々言われてますけど、線引きできないほど子どもでもない」

 

ハッと息を飲んだのはディーノさんなのか、後ろにいるロマーリオさんだったのか、オレにはわからない。……違う、知りたくない。

 

「……まだそんな風に考えたくないから、気付かないフリをしてますけどね」

 

はぁーと大きな溜息を吐いて、オレは頭を切り替える。

 

「オレにつくすって言ってくれるなら、オレのことちゃんと知ってほしい。そして背を押してほしいんです。じゃないと、オレはどっかおかしくなる」

「……そういうことか」

 

ディーノさんもオレがマフィアのボスに向いてないと思ったのかもしれない。元々オレにはそんな器はないんだ。すっげーしんどかったし、泣きたくなる日もいっぱいあった。でもみんなが居たからオレは頑張れた。

 

「今の関係のままなら炎真の覚悟を背負いきれないんだな……」

 

ディーノさんの言葉をオレは否定出来なかった。もちろん、オレはシモンが日の目が当たるところに居るべきだと思ってる。でもボンゴレのボスだったオレは、他のファミリーの決定に口に出すことも出来なかった。だからあの時、「なんで?」とか「そんなことはないよ」とは言えたけども「絶対にダメだ」とは言えなかった。

 

「覚悟した炎真からすれば、オレが友達になりたいっていうのは迷惑だと思うんです。でもオレはこのままじゃ嫌で。すっげーオレ、ワガママ……」

「……ツナ、それはワガママじゃなくて、優しいっていうんだぜ?」

 

ポンっとディーノさんがオレの頭に手に置いたのが合図になったのか、オレはほんの少しだけ泣いた。




ディーノ
リボーンに誘われたのでイタリアからやってきた。フットワーク軽い。
ツナをボンゴレボスにするつもりでリボーンが動き始めたのも知っている。
だからついでに骸と、雲雀恭弥を見に来た。
でもディーノの中では今回来た一番の目的はみんなの応援だった。
ツナは線引きは出来るといったが、うまく出来ず、傷つきながらも進むタイプだとすぐに察した。
女の子で、あまりにもボスに向かない性格だが、家綱をボスにススメたくはないという複雑な心境。
またツナがボスになる覚悟もしているので、ツナが男だったらなーと本気で思った。
とりあえずリボーンには報告。
本人も自覚があるためまだマシだが、ボロボロになる前に周りが気付いてあげないといけない。
ツナをボスにするつもりなら、ケアは必須。


沢田ツナ
実は一度もシモンの決定に口出しはしていない。心の中は別でも。
あまりにも他ファミリーを心配しすぎるので、前世でリボーンが徹底的に教育していた。
そうしなければ、ツナの心が持たないと思ったから。


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あの後すぐに、ヒバリさんから「いつまで油売ってるつもり?」という電話がかかってきて、オレはディーノさんに謝って慌てて本部へ向かって走った。ディーノさん迷惑だっただろうなーとか、また情けないこと言ってリボーンにバレたらボコられるとか浮かんだけど、今のオレの頭の中はヒバリさんの機嫌の方が優先されたんだ。

 

「すみません、遅くなりました!」

 

あんまり怒ってませんように!とオレは祈りながら恐る恐るヒバリさんの様子を窺う。

 

「……君……はぁ。もういいよ」

 

呆れられちゃったっぽいけど、大丈夫そう。助かったーとオレはホッと息を吐き、どんな感じかなぁと体育祭の得点表をみる。並中の生徒も頑張ってるみたいだけど、なんとか勝ってるっていう程度。油断すると簡単にひっくり返っちゃうだろうなー。

 

でもこうみんなわいわいしている感じをみると大変だったけど頑張った甲斐があったなぁって思う。ヒバリさんは勝たないと納得しないだろうけど、オレとしてはみんなが笑顔だったらいいかなって思うんだ。

 

「ツナ」

「山本?」

「差し入れ持ってきたぜ。親父がツナにって」

「うわー、いつもありがとう!」

 

相変わらず、山本のお父さんは太っ腹だ。保冷バッグに入ってるし、朝から作って持ってきてくれたんだろうなー。ヒバリさんも確かお寿司好きだったはずだし、おすそ分けしようっと。オレが喜んでると山本に頭をガシガシと撫でられた。え?なに?なに?

 

「なんかあったんだろ?力になるぜ」

「また顔に出ちゃってたの!?」

「んー。目、赤い」

 

うそーっと顔を隠す。これ、絶対ヒバリさんにもバレてたじゃん!ヒバリさんにも情けないって思われてたんだ……。って、今はオレを心配してくれてる山本に返事しなきゃ。

 

「あ、いや、大丈夫。オレまたパニックになっちゃっただけ。1個ずつ頑張るから」

 

ディーノさんと話してるからマフィアのボスとしての考えが出ちゃったけど、今は何も考えずに炎真と友達になりたいって思いを大切にしたい。

 

「そっか。何かあったら声かけてくれていいんだぜ。力になるのな!オレも獄寺も、ヒバリだってそうだろ?」

 

うぇ!?って変な声が出ちゃったよ。山本急に何言ってんのー!?恐る恐るヒバリさんを見たけど、オレ達の存在を無視してた。ただちょっと機嫌悪くなってるから多分聞こえていたと思う……。

 

「本当に大丈夫だって!……でも、ありがとう。ダメそうなら相談するね」

「おう。もちろんそん時は力になるぜ」

 

ありがとうとオレがもう一度お礼を言えば、山本はもう一回オレの頭をガシガシと撫でてから、クラスのところへ戻っていった。

 

山本ってやっぱいい奴ー!とオレはしばらく感動していたんだけど、ハッとヒバリさんのことを思い出した。いろいろ悩んだオレは、貰ったばかりのお寿司をそっと差し出した。

 

「……なに」

「ヒバリさんもどうです?オレ一人じゃ食べきれないですし」

 

さっきの話題には触れない。ヒバリさんが聞かなかったことにしたんだから。オレもなかったことにする。だから最初の予定通り、おすそ分け。

 

オレが別に機嫌を取ろうとしたわけじゃないとわかったヒバリさんは、椅子に座った。ってことは食べるってこと。こう見えて育ちのいいヒバリさんは立って食べたりしないからなぁ。食べ歩きを意図した料理ならわからないけどね。

 

オレもギリギリお寿司が届く位置の椅子に座って、いただく。昼食の時間じゃないけど、こうやって食べれるのは責任者の特権だ。オレはまぁ選手の方でも活躍しなきゃいけないから昼ご飯の時間は確保させてもらってるけど、ヒバリさんは昼休憩の方が忙しいだろうからね。風紀が乱れるだろうし。だから食べられるタイミングで食べる。まぁヒバリさんに文句を言える人なんていないけど。

 

「そういえば、どこで使うつもりなんですか?」

 

点数から考えて後半まで残しておくのはオレでもわかるけど、結局ヒバリさんはどうするつもりなんだろうね。誰が聞いてるかわからないところで聞いたから、話題をふっただけでオレは答えを期待してなかったんだけど、ヒバリさんは口を開いた。

 

「……君ならどこで使う?」

「え?オレですか?……うーん、やっぱ棒倒しかな。この感じじゃ棒倒しの結果次第になる可能性が高い気がしますから」

 

垂れ幕や応援を入れても、そこまでハッキリと差は感じられない。みんな得意なことを選んでるし、それは向こうも一緒だから。飛び抜けて結果を出してるのはオレ達だけど、そこで一位とっても、他のところで落としちゃ一緒だし。あ、そう思ってるそばからお兄さんが圧勝した。

 

「というか、オレがそう思うぐらいだし、ヒバリさんも似たようなこと考えてますよね?なにか引っかかることでもあるんですか?」

 

オレに意見を聞くなんてヒバリさんらしくないよ。ってことは、なんかあるよ、絶対。

 

「……気にくわない」

 

一瞬、オレに向かって言ってるのかなーと思ったけど、ヒバリさんは黒曜中の方を見ていた。つまり骸の行動が気にくわないんだ。まっ、あいつ競技出てないもんな。ここでオレも棒倒しで投入したら、いくら炎真が総大将でも勝てないだろうし。

 

ちなみに棒倒しに出るオレの知り合いはお兄さんと獄寺君。山本は他の競技を優先して出てもらってた。山本は陸上部より足速いからね。棒倒しに出場するのはもったいなさ過ぎ。

 

お兄さんと獄寺君が揃うと超攻撃型の2人だなーなんて、思ったりする。……やっぱなし。クロームとランボ以外はみんな超攻撃型だった。

 

オレが若干遠い目をしながらも、ヒバリさんの気持ちを考える。相手が余力を残した状態で勝っても嬉しくないんだろうなぁ。

 

「なら、ヒバリさんが出なきゃいいのに」

 

オレが未だ咬み殺されてはないとはいえ、並中の生徒からすればヒバリさんがトップで、柱なのは間違いないよ。ヒバリさんが出なくて勝てば、こっちも余力を残しての勝利だから条件は一緒だ。

 

「あーでもヒバリさんが譲るわけないよなぁ」

 

自分で提案しといて、ないないとオレは否定する。他に何かいい案はないかなーと考えてる間に、黒曜中の方でトラブルが起きたと聞いてオレはそっちに顔を出すことになった。

 

「炎真」

「ツナさん」

 

オレが来たことに気付いた炎真はこっちにわざわざ来てくれた。朝よりもちょっとピリピリしてるもんね。……案内された場所が黒曜中の救護室だから、すぐに理由は察したけど。

 

「……怪我?」

「うん……。骸君がかわりにオレを出すって」

「そう……」

 

誰も怪我なく終わればいいと思っていたけど、そうはならなかった。

 

「相変わらず、君は甘ちゃんですね。敵の心配をしなくてもいいでしょうに」

「敵って……。オレは誰も怪我しないのが一番いいの!」

 

真剣勝負してるとはいえ、相手が怪我したって聞いても喜べないっての。お前が一番オレの性格を知ってるだろとオレはムスッとしながら骸を睨む。

 

「君が心配だけで終わるなら、僕は頭を痛めません」

 

うぐっと言葉が詰まる。何度かやらかした記憶があったオレは睨むのをやめて、そっと視線を逸らした。

 

「……まぁいいでしょう。彼から聞いたみたいですが、ここで僕達は交代の権利を使います。代わりは古里炎真がします」

「わかった。ヒバリさんに伝えるよ」

「そうしてください」

「怪我酷いようなら、救急車の手配するからちゃんと言えよ」

「……ただの捻挫です」

 

あ、そうなんだ。骸がちょっと呆れるのも仕方ないかな。捻挫で救急車はないってオレも思うよ。まぁでも並盛にある病院を教えておかないと。あんまり痛むようなら最後まで見ずに行った方がいいだろうし、体育祭が終わってもすぐ黒曜中に帰れるわけじゃない。片付けを待ってる間に行った方がいいだろうし。オレの考えがわかったのか、骸は軽く息を吐いたけど最後まで聞いていた。

 

「調べる手間が省けました」

 

相変わらずオレに礼は言わなかったけど。




山本武
目が赤くなってることを指摘しようかちょっと悩んだ。
でも自分が気付くぐらいだから、ヒバリも気づいてるよなーと思って、言った。
クラスのところへ戻りつつ、ヒバリもツナのこと気に入ってるよなーっと考えていた。
ヒバリが一度もこっちを見なかったのは恥ずかしがってるツナのためと山本は判断していた。

沢田ツナ
山本には泣いたことがバレても恥ずかしくない。
情けないところを見せるのは嫌なのはやっぱり憧れてる人達。

雲雀恭弥
泣いたことに気づいていたが、めんどくさいので関わるのを全力拒否した。
ただ、マフィア関連ということは察している。
裏とか似合わないタイプだから、パニックになるんだと心の中で思ってる。
壊しちゃえばいいのにって考えてる人。

六道骸
時間がたったのもあり、流石にツナが泣いたことまでは知らない。
でも何か起きたら、一番自分に被害が来ると予想している。
頭が痛い。


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念のために再確認を。
私は書きたいようにしか書きませんよ。全員が納得するような作品なんて作れるわけありません。
だから無理と思えばすぐにUターンしてね。


黒曜中が交代のカードを使うと決まったから、オレはヒバリさんに報告をした後は放送委員会やスポーツ委員会のところにも確認にまわる。黒曜中からも報告はあっただろうけど、今回のルールだと絶対にミスを起こしちゃいけないところだからね。オレが動き回ってると昼休憩の時間になった。ヒバリさんからもそのまま休憩に出てと電話があったから、本部へ寄らずにみんなが居るところへ向かう。

 

「ツーちゃん、おかえり」

 

母さんの声でオレが帰ってきたとわかったのか、みんなが駆け寄ってくれる。オレの走ってるところもちゃんと見てくれてたらしく、みんなから褒めてもらえて凄く嬉しい。

 

「悪くなかったぞ」

「リボーン!」

 

でもオレの中でやっぱ一番嬉しかったのはリボーンに褒められたこと。万年ビリだったのにお前のおかげで出来るようになったんだよって思えるから。オレがあまりにもニコニコしてるからか、リボーンはボルサリーノを深くかぶって視線をそらした。呆れられちゃったかな?

 

リボーンの様子を見て興奮がおさまったオレは、チラッとディーノさんの様子を伺う。ディーノさんはやっぱ大人で、オレがいろいろとやらかしたのにそんな素振り一切みせない。心配はしてると思うけどね。やっぱディーノさんはカッコイイなーと思いながら、みんなとわいわい食事を取る。応援も白熱しているからか、ハル達も飽きなかったみたいで楽しんでるみたい。

 

「向こうは代理を使うと決めたみたいっスね」

「うん、そうなんだ。リレーに出る選手だったみたいで、外せないから骸も即決したみたい」

「オレ達はどうするんだろうな?」

「ヒバリさんも随分悩んでるみたいだよ。オレに意見を聞くぐらいだったし」

 

ヒバリさんを知っていればいるほど驚くことだよなーと山本達の反応にオレもわかると頷く。

 

「でもまぁオレ達はヒバリさんの指示に従うだけだよ。ヒバリさんほど真剣に考えてる人はいないから」

 

オレの言葉に納得したのか、この話はそれで終わったんだ。

 

その話が終わったとしてもオレの周りは相変わらず賑やかだ。だからなのか、最近家綱とあんまり話せてない。……元々話してるってほどじゃなかったけど。今も家綱は完全にオレ達のことは無視。そのおかげで獄寺君とのトラブルは防げてるんだけどね。獄寺君の前でいつもの態度すれば怖いから。オレ達はそういう関係なんだと思って、獄寺君は流してくれてる。

 

ちび達とかは気にせず突撃するかなーと思うんだけど、フゥ太は家綱のことが苦手みたいで絶対にそっちへ行かない。ランボもやりそうに見えるけど、最初のうちだけだった。似たような反応をする獄寺君には懲りずにやらかして泣かされるのにね。もちろんすぐにオレがあやすけど。不思議だなーと思ってリボーンに一度聞いたことがある。ガキの方がよくわかってんだって言われて、オレは首をかしげるハメになったけど。

 

家綱とどんどん距離が離れて行ってる気がする。なんとかしたいとは思ってるんだけど、家綱はオレを嫌ってるし。どうすればいいのか本当にわからない。今までもオレのことが嫌いっていう人は居たんだけど、なんか違うんだよ。カッ消すとか死ねとか言われる感じで来るからさ。うーん、この中で家綱とまともに話せるのは山本ぐらいだよなー……。今度相談してみよっと。

 

「ツナさん」

「炎真!」

 

オレが今後のことを考えてると、炎真達がやってきた。後ろに両親と妹さんもいるし、もしかしたら会いにきてくれたのかも。今日はオレ腕章をしてるって言っても他の風紀委員とは違って普通の体操服だし、よくわかったなーって思う。いやでも周りから見たらこの人数だと目立つかな。オレだけじゃなくディーノさんも居るから、遠くからみても髪の色でわかるだろうし。

 

みんなにちょっとごめんねと謝って、少し離れたところで挨拶する。

 

「父さん、母さん、真美……この人が沢田ツナさん」

「こんにちは、はじめまして!沢田ツナです!」

 

オレがバッと頭を下げてから顔を上げると、炎真のお父さんは困ったように笑った。うわー、歳をとった炎真とそっくり。お母さんも美人だし、まみちゃんも可愛いなー。ってなんで困ってんだろ?

 

「ツナ、おめーが頭を下げると、シモンは土下座しねーといかなくなるぞ」

「んなっ。オレそんなつもりじゃ……!」

 

リボーンに言われてオレってバカーーって頭を抱えたくなる。とにかく身振り手振りで違うと否定する。そんなことされればオレは胃に穴が開くよ……。

 

「……うん。炎真からよーく聞いているから、そういうのは望んでないってわかってる。大丈夫だよ」

「炎真!ありがとーー!!」

 

良かったー、オレの事話してくれててーー!……って、オレの事、家で話してくれてるんだ。次期ボンゴレボスの可能性もあるからだろうけど嬉しいや。

 

「今日はありがとうね。チケット譲ってくれて。おかげで家族みんなで楽しめているわ」

「いえっ、そんな、オレじゃなくてみんなが譲ってくれたおかげで……。でも家族みんな揃ってるのはオレも嬉しいですから喜んでもらえてよかったです」

 

本当に良かったと思う。こうやって家族揃ってるのは骸のおかげだよな。あいつは聞き飽きたとか言うだろうけど、改めてお礼しないと。

 

「えっと、まみちゃんだよね?楽しんでる?」

 

オレがかがんで声をかけると炎真の後ろに隠れちゃった。恥ずかしがり屋なのかな?

 

「こら、話したいって言ってたのは真美だろ?」

 

あ。なんか新鮮。炎真がお兄さんしてるよ。

 

「だって、こんな可愛い人なんて聞いてないもん!お兄ちゃんのバカ!」

「……僕のせいにするなよ」

「あはは。ありがとうね。でもまみちゃんの方が可愛いよ。炎真が言ってた通りだったね」

 

あれ?言っちゃまずかったかな。炎真の顔が赤くなったし、まみちゃんが面白そうに炎真を見ている。

 

「お兄ちゃん、私のこと可愛いって?」

「えっと……うん。可愛いって言ってたよ」

 

期待するような目で見られちゃったから、教えちゃった。炎真にごめんっと心の中で謝る。

 

「……ツナさん、お兄ちゃんと付き合ったりしない?」

「え?オレが炎真と?」

「まーみー!!」

 

うわー。本当に新鮮。炎真が妹にはそんな感じになるなんて知らなかったよ。オレは我慢できずに思いっきり笑ってしまう。

 

「っごめん、ごめん。ちょっと楽しくて」

 

2人を笑ったわけじゃないよとオレは説明する。そしてまみちゃんに向かってオレは一応返事をかえす。

 

「オレに炎真はもったいないよ。すっげーいい奴だし。あ、でも友達にはなりたいかな」

「……お兄ちゃん、フラれちゃったね」

「えっ、そんなつもりは……」

「だって!チャンスはあるみたいだよ!」

「真美っ!!」

「きゃー!お兄ちゃんが怒ったーー!」

 

ついに堪忍袋の緒が切れたのか、炎真はオレに謝ってから逃げたまみちゃんを追いかけて行った。仲のいい兄妹なんだなーってオレは微笑ましく思う。2人が行っちゃったからか、炎真の両親はこれからも炎真をよろしくお願いねと頭を下げて戻って行った。

 

炎真は次期ボスを見たいからって言っていたけど、炎真の友達に会いにきたって感じだったなー。……オレの希望でそう見えるだけかも。

 

「よかったじゃねーか。あの2人はツナを炎真のダチと思っておめーを見てるぞ」

「……うんっ!」

 

でもリボーンがそう言ってくれたから、オレは素直に信じることができたんだ。

 

その後もみんなとわいわい過ごしたけど、昼休憩が終わる10分前には本部へと戻る。……うん、やっぱりヒバリさんの機嫌は悪くなってたよ。いろいろあったんだろうなー。でもまだ大丈夫な範囲。

 

「休憩ありがとうございました」

 

御機嫌斜めのヒバリさんからは返事はなかったけど、オレが帰ってきたからフラッと本部から出て行った。群れを咬み殺しに行くようなオーラを漂わせてたけど、多分休憩に行ったんだろうね。ヒバリさんはほんと忙しいからね。

 

ヒバリさんに任されたのもあるし、オレは周りに状況を聞いてトラブルの対処をしていく。午後の部が始まるころにはちゃんとヒバリさんは本部に帰ってきた。ちょっと気分転換できたみたいで、さっきより機嫌はましになってたよ。

 

午後からはリレーのような協力するような競技が多くなる。1人のミスがチームみんなに響くからちょっと不安。その分盛り上がって面白いんだけどね。一応、運動神経が良くてもチームプレイが苦手な人は個人種目にまわってもらってる。……獄寺君とお兄さんとかね。棒倒しは乱闘になってあんまり関係ないから出てるけど。

 

だから人当たりのいい山本はこれからが本番。昼休憩で気合いが入ってた。オレもリレーに出るけど、一回だけだし棒倒しの一つ前。女子限定競技の中では一番最後になるからまだ先。女子の中では一番距離が長いしね。アンカーなのもあって、オレはまた400mだし。

 

トラブルは競技が始まるとまた減ったからオレも競技へと集中する。山本頑張れー。

 

「あっ!」

 

思わず声が出たのはオレだけじゃなかった。並中の生徒のほとんどが出したんじゃないかな。山本のチームの1人がバトンを落としちゃったから。体育祭でバトンを落とせば失格っていうのは厳しすぎるかなってなしになった。もともと、欠席とかあれば失格だったからね。重なって失格続出ってのも避けたかったのもあるから。だから山本達は失格にはならないけど、かなり痛いミス。いくら山本でもここから挽回するのは厳しいんじゃないかな。それでも山本は凄くて、バトンを受け取った時は最下位だったのに、ゴールした時には2位だった。

 

「危なかった……」

 

確実に1位を取れる計算だったから、ここで最下位とかだったら本当にやばかったよ。……だからそんなに機嫌が悪くならないでください。怖いです、ヒバリさん。バトンは落としましたけど、みんな最善を尽くしてますって。

 

オレは出場表を見ながら、計算し直す。ヒバリさんなら頭の中でやってのけるだろうけど、オレそこまで頭良くないからね。ちゃんと資料を見て考えるよ。

 

「えーっと……」

 

オレが頑張ってる計算している間に、次のリレーが始まった。わっ!っと盛り上がる声にオレは一度顔を上げる。

 

「……速い」

 

予想はしていたけど、やっぱり炎真は凄かった。普段ドジでちょっと不運だから怪我とか多いけど、本当にやるときはやる男。骸が動いたのかわからないけど、ちゃんと炎真は鍛えていた。

 

この種目は全部黒曜中に一位を取られたこともあって、午前に貯金してた差がなくなってしまった。

 

「あー……」

 

オレは思わず頭を抱えた。これほぼ確実だ。棒倒し落とせないじゃん。多分いい結果が続いても、棒倒しで負ければひっくり返されると思う。最後の競技ってのもあって盛り上げるために点数を高くしすぎたかなーなんて思う。いやでも出場選手の数も一番多いからなー。

 

「ねぇ」

「は、はい!」

 

ヒバリさんどうするのかなーなんて思ってたオレは、そのヒバリさんに話しかけられてビビった。

 

「負けたら許さないよ」

「え?……えっと、わかりました。勝ちますよ」

 

これはオレも棒倒しに出ることだよな?と判断して、オレは返事した。ヒバリさんはオレの返事に満足したのか、もう話しかけてくることはなかった。




リボーン
ツナの純粋な視線に戸惑う。
こんなに喜ぶならもっと褒める言葉をかければよかったとちょっと思った。

炎真の両親&妹
作者によってねつ造された人達。
炎真の両親だよ?優しい両親に決まってる!
その両親と炎真の妹だよ。のびのびと育つでしょ!でも炎真の妹だし絶対しっかりしてそう!
という私の偏見によって出来上がった。

炎真
妹の言動に頭が痛い。
本気で聞いたわけじゃないことにも気付いているから尚更。
怒るために追いかけたのに、しっぺ返しをくらう。


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リレーってやっぱり盛り上がるよなーってオレは軽く身体を動かす。ポツポツあったトラブルも全くなくなったからね。オレは集中できるしすっげー助かる。まぁヒバリさんもオレには仕事まわすつもりはなかっただろうけど。ちょっとあれから流れが黒曜中にいっちゃったみたいで、バトンを落とすミスとかはないんだけど黒曜中が押せ押せって感じになってるんだ。棒倒しの前に流れを戻したいだろうからね。

 

集合場所につくと、オレはすぐに緊張しているみんなに大丈夫だよと声をかける。オレが言っても効果があるのはやっぱこの腕章のおかげなんだろうなー。みんなの顔がちょっと明るくなった。

 

一年のオレ達が上位二つを独占したのもあって、少し流れがかわる。二年と三年も一位はとった。それでも黒曜中は二位と三位をちゃんと確保するから凄い。結局オレ達が予想した通り、棒倒しの結果次第になったんだ。

 

リレーが終わったオレはみんなと一緒に退場する。そのままここで待機の方がいいのかな。ヒバリさんにははっきりと言われたわけじゃないけど、多分オレは出ることになるから本部に戻っちゃダメな気がするんだよなー。と、いろいろ考えてるとヒバリさんを見つけた。

 

……そうだった、ヒバリさんは総大将だったよ。でもみんなと入場するイメージなんかないんだけど……。そう思ったのはオレだけじゃなかったみたいで、ちょっとざわざわしながらヒバリさんが通る道をみんな譲る。ヒバリさんはオレの前にとまった。

 

「やっぱりオレが出る感じですか?」

「勝つって言ったよね?」

「はい?そりゃ言いましたけど……」

 

うわっとオレの視界が黒に染まる。なんだなんだ?と思いながら、オレの視界を遮った物を広げる。

 

「え……?」

 

オレが驚いてる間にヒバリさんはもう居なくて、放送が流れた。

 

『そ、総大将……ひ、雲雀恭弥さんにかわり……さ、沢田ツナ』

 

えーーーっという声が並盛側から響き渡る。オレはオレで「ハハハ……」と苦笑いが出た。言ったのはオレだけど……そりゃないですよ、ヒバリさん……!それならせめて先に言ってください!!

 

あーもう!とオレはヒバリさんの上着をきて、動揺している棒倒しのメンバーに声をかける。

 

「みんな、落ち着いて!ヒバリさんが出なくても勝てると判断したんだ。だったら、オレ達は勝つだけだ!」

 

オレの声に少し動揺が収まる。それでもやっぱりヒバリさんはみんなにとって大きな柱で、オレはヒバリさんにはなれない。どうしようとオレが困ってると大声が響き渡った。

 

「沢田の言う通りだ!!極限、勝つのみ!!!!」

「お兄さん!!」

「何より沢田はオレが認めた奴だ!極限に総大将として不足はない!!」

 

お兄さんはボクシング部主将というのもあって、説得力がある。オレが言うよりも動揺が収まったんだ!不利な状況を変えるのはやっぱりお兄さんだよ!

 

「10代目ー!!この右腕の獄寺隼人が来たからにはもう安心してください!必ず勝ってみせます!」

「獄寺君!」

「てめぇら、10代目……沢田さんを落とすようなことがあってみろ、果たすぞ!」

 

……うん、それはやりすぎだよ。獄寺君。

 

なんだがいつもの感じになった気がしたオレは、ヒバリさんの上着をギュッと握ってから頭を下げる。

 

「みんな、話を聞いてほしい」

 

ヒバリさんの誇りに泥をつけるわけにはいかないんだ。

 

 

 

トラブルを避けるために黒曜中と入場門を別にしてよかったよ。作戦を立てる時間があったし聞かれる心配がなかったから。

 

「獄寺君、ごめんね?わがまま言っちゃって」

「それはいいんですが……。10代目の負担が多いような……」

「そう?オレが考えた作戦だとみんなの方が負担が多いと思うよ」

 

そこがなーってオレも気にかかってる。ちょっと怪我しやすいんだよね。でも短期決戦狙いなのもあって、意外とみんなの反応は悪くなかったんだよなー。もともと怪我の危険があると考えていたのもあると思うけど。って、そんな話をしている間に時間が来ちゃったよ。

 

「じゃ、獄寺君よろしくね。この作戦、獄寺君が居なかったら出来ないから」

「え?」

 

靴を脱いだオレは、よいっしょっと登りきって棒の上に立つ。うーん、懐かしいなぁ。あの時は、相手はヒバリさんだった。それが今ヒバリさんのかわりにオレが出てるんだもんなー。2度目ってすげーって思う。死ぬ気なったら変わったけど、死んだらもっと変わったよ。

 

「炎真、行くよ」

 

女のオレが総大将になったことで、優しい炎真は動揺してるだろうけど勝負だからね。悪いけど炎真の優しいところも利用させてもらうよ。負けるわけにはいかないから。

 

『開始!!』

 

号令がかかったと同時に並盛のみんなは黒曜中へと攻める。オレの周りに残ったのは棒を支える数人と獄寺君のみ。上から見ていた炎真が目を見開いてるのがわかった。多分オレが女だし、守備重視にすると思ってたんじゃないかな。でもお兄さんが居るんだよ?ここはもう行くしかないじゃん。本当は獄寺君にも特攻して欲しかったんだけどね。

 

「みんな、行くよーー!」

 

上から見て、割といい感じになったからオレは声をかける。いくらオレが軽いっていっても、衝撃はあるからね。それも死角である後ろからだしね。

 

驚いた声があちこちから上がる。でもオレは気にせずそのままみんなの肩を借りてぴょんぴょんと飛び跳ねて黒曜中の陣地へ突っ込む。目指すは前のオレがたどり着かなかった総大将!!

 

「よいしょっと!炎真、来たよ!」

「ツナさん!?」

 

ついに相手の棒に掴んだオレはそのまま駆け上がる。下の方で黒曜中の生徒が動揺してるなー。でもまぁそうだよね。落としたいけど、オレを落とそうとすれば、炎真も落ちちゃうかもしれないからね。

 

「炎真、ごめんっ」

「わわっ」

 

オレが殴ろうとしたら、炎真はやっぱりやり返すことはせずにオレがしたみたいに飛び跳ねる方を選んだ。オレとしてはこのまま拳で語り合う感じでもよかったんだけどね。炎真が居なくなったことで、オレは黒曜中の生徒が支えてる棒にいるのもあって当然ピンチになる。周りも黒曜中の生徒ばっかりだしね。

 

「次は逃げるが勝ちってね」

 

死ぬ気の状態だったら絶対出来ないことだよなーって思いながら、並中の方へと同じように引き返す。これでどっちも棒が倒れてしまった。

 

「獄寺君!!」

「はい!10代目!!ぐはっ」

 

……うん、ごめん。出来るだけ減らしたけど勢いは残ったし、重かったよね。でもやっぱり獄寺君はオレを落とすようなことはしなかった。

 

オレは獄寺君に抱っこされながら炎真を見る。

 

「あー、やっぱ炎真はおりれないかぁ」

 

もしかしたらいけるかもって考えもあったけど、炎真はオレと違って男だからね。いくら勢いを落としても衝撃は凄まじいはずだよ。数人かがりで受け止めないとキツいんじゃないかな。炎真は棒から降りたら飛び続けるしかないんだ。どこかで停止しようとすれば、衝撃が全部いっちゃって下の人が怪我しちゃうよ。

 

1回目にオレが止まれたのは棒を掴んだから。炎真のために何人もの人が棒を支えていたからね。2回目はまぁこの作戦をみんな知っていたから。オレは靴を脱いでいたし、体格の良い人の肩を優先するけど獄寺君のとこに行くまでに小刻みで飛んで衝撃を減らす必要があった。だから近くにオレが居たらもう来ると思っててと言ったのがあったと思う。2回目はオレは黒曜中の方からやってくるから、みんなからはよくオレが見えたはずだしね。でもやっぱ体重差かな。

 

「きょくげーーん!!」

「あ、お兄さん」

 

やっぱお兄さんには難しいことを頼まなくて正解だった。炎真を目指して一直線って言っただけの作戦で、本当にたどり着いた。他の人たちにはオレが棒にたどり着いた時点で、黒曜中を囲むようにしてねって伝えてるからね。オレを守る人が少なすぎるのもあるけど、飛び跳ねる炎真の体重を支え続ける黒曜中の生徒の負担がキツくて自滅を促したのもあるんだ。

 

『勝者、並盛!』

「勝ったよ、獄寺君!」

「はい!10代目!」

 

やったーとオレはそのまま獄寺君の首に抱きつく。

 

「へ?うわぁ!ちょ、獄寺君大丈夫!?やっぱり重かった!?」

「……い、いえ。10代目が軽くてやわら……、驚いたほどですから……。だから大丈夫ッス。怪我はないですか?」

 

獄寺君が尻餅ついちゃったけど、横抱きなのもあってオレは獄寺君のお腹の上に居るし怪我はない。というより、獄寺君、よく気絶しなかったね。いくらオレが軽いって言っても絶対この体勢は重い。だからオレは大丈夫と答えてすぐにおりたよ。

 

「ツナさん」

「っと、炎真!お兄さんの拳受けたけど、大丈夫!?」

 

見た目からはわからないけど、お兄さんだから容赦しなさそうだもん。ちょっと混戦すぎてあんまり見えなかったんだよなー。

 

「うん、僕は大丈夫。でもあの人凄いね。ガードしたのに、手がしびれちゃった」

「お兄さんだもんね」

 

手がしびれただけで済んだ炎真も凄いと思うけどね。

 

「僕たちの完敗だよ」

「うーん、でもそれは仕方がないんじゃないかな」

「え?」

 

あ、バカにしたわけじゃないよと慌ててオレが手を振る。

 

「オレには獄寺君が……信頼できる友達が居たからね。絶対オレを落とさないってわかっていたから」

 

そりゃ前の時は落としちゃったけど、あれはコンビネーションがちょっと悪かったからだし。急に立てた作戦で騎馬戦を組んでオレを支えてくれたんだよ。最初からお願いしていた今回の状況とは全然違うよ。

 

「炎真も信頼できる友達が居れば違ったんじゃない?」

 

今日シモンファミリーのみんなが居れば、炎真もおりることは出来たはずだよ。オレの言いたいことがわかったのか、炎真は笑った。

 

「そうだね。……今度、オレの友達を紹介するよ」

「ほんと!?」

「うん。みんなに……新しくできた友達ってツナさんを紹介したいから」

 

えっ……とオレは炎真をジッと見つめる。オレ結局何もしてないよな?拳で語り合うみたいなことも出来なかったし。

 

「君と話していると、ファミリーのみんなと居る時みたいに楽しいんだ。……真美にも、怒られちゃったしね」

「まみちゃん?」

「もううるさかったよ」

 

まみちゃん何言ったんだろ……。オレの疑問が顔に出てたのか炎真は口を開いた。

 

「ヒミツ」

「えー!そりゃないよ、炎真!」

「……ぷっ、あはは」

 

オレの反応に炎真は笑い出した。でもオレもつられて笑ってしまった。

 

なんか思っていた形とは違ったけど、オレ達はまた炎真と友達になることができたんだ。




沢田ツナ
何もしていないように見えるが、炎真の家族を助けたいと願ったのはツナ。
ちゃんと普段の行いが返ってきている。
総合MVPで表彰される。みんなのおかげと思ってるので、いいのかなー?と思いつつ受け取る。

笹川了平
雲雀が総大将でも燃えたが、ツナが総大将になって燃えるに燃えた。
わかりやすい作戦で極限に突き進んだ。
棒倒しのMVP。

獄寺隼人
あげて落とされた人。
いろいろと幸せだったが、『信頼出来る友達』とはっきりと言われる。
それでもやっぱ幸せ。
ツナの中でMVP。

雲雀恭弥
ツナの強さの根源を知っているので、保険をかけた。
腕章はもちろん外して自分の腕。
ツナだけならましも、いろんな人がベタベタと触ったので、ツナにクリーニング後の返却を命じる。ツナは喜んでクリーニングに持って行った。


次は小話集です。
後書きだけではもったいないかなと思ったから。
①炎真と妹(炎真視点)
②応援席にて(黒川花視点)
③報告(ツナ視点)
④雲雀の学ラン(ツナ視点)
以上の4本です。
この小話集で体育祭編は終了予定。


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①炎真と妹

 

妹の真美の態度に僕は怒ろうと追いかけていたはずなのに、真美はある程度すれば止まって僕を待っていたように仁王立ちしていた。

 

「お兄ちゃんってほんとヘタレ!頑固!」

「……何が」

 

ほんと、なんでこういう風に育っちゃったかなぁ。いきなりなんだよって思うのは僕だけじゃないと思う。

 

「だって友達って認めてないのはお兄ちゃんぐらいだよ」

「……ツナさんは次期ボンゴレボスになる人だよ」

 

はぁと僕はため息を吐く。僕が次のボスになると決まってるのもあるんだろうけど、真美はちょっと疎すぎ。ツナさんは友達なんて言ったらダメな人だ。

 

「……お兄ちゃんからツナさんの話、聞かない日ないんだけど」

「え?そう……かな」

 

でも父さん達も知りたいと思うし話すのは当然じゃないのかな。

 

「家綱っていう人の話は全然聞かない」

「あんまり接点ないからね」

「お兄ちゃん、最初は2人を見てくるっていったよ、覚えてないの」

 

僕は言葉を詰まらせる。確かに僕は2人のボス候補を確かめに行くと言って黒曜中へ行ったはずだった。

 

「お兄ちゃんが一番私情を挟んでる」

 

グサッときた僕は何も言えなくなった。それをいいことに真美は好き勝手僕に言いだした。

 

「こっちはね、お兄ちゃんがツナさんの毒牙にかかっちゃったとかいろいろ心配したんだよ!?今日会ってみて違うってわかったけど。まぁツナさんは天然人誑しっぽいから、お兄ちゃんが落ちちゃったのは間違ってなかったけどね」

「……天然人誑しって……」

「お兄ちゃんは楽しかったからツナさんとばっかりといるんでしょ!」

 

僕のつぶやきには真美は無視して言いたいことだけ話すんだ。でも言い返せなかった。真美の言う通り僕が一番私情を挟んでいた。

 

「それなのにお兄ちゃんは!変に頑固だから!このまま至門中に戻って接点がなくなってもいいの!?」

「……あ」

 

いつかは戻らなくちゃいけなかったことを僕はすっかり忘れていたんだ。みんながこっち来ないかなぐらいの感覚で居たことに気付いた。

 

「ツナさんはもうお兄ちゃんに気持ちを伝えてるんだよ。それなのに返さないなんて、ヘタレ!意気地なし!」

 

……意気地なしまで増えたよ。

 

「はぁ。わかった、ちゃんと考えるよ」

「お兄ちゃんが考えると、ボンゴレやシモンの関係とかごちゃごちゃ考えるからダメ」

「……まみ」

「お兄ちゃんがどうしたいか、それがシモンの決定なんだよ!」

 

黒曜中に来る前に僕の希望を伝えた時は、みんな反対したじゃないか……。僕の考えが顔に出ていたのか、真美は「だからお兄ちゃんはお馬鹿さんなの!」と言いながら行ってしまった。ああもう1人じゃ危ないだろと僕も追いかけようとしたけど、父さんと母さんがまみのことは見ておくから、僕のやるべきことをしなさいって言ってくれたから本部へ戻ったんだ。

 

考えれば考えるほど、真美の言ってる意味がわからないし、みんな反対したじゃないかというムッとする。でも僕はシモンのみんなに怒りを向けたくなくて、真美の言葉から逃れるようにリレーへ没頭したんだ。結果ちゃんと集中できたみたいで、一位を取れたことにホッとする。骸君にはお世話になってるし、恩を仇で返すようなことはしたくなかったから。

 

「リレーの時はうまくいったようですが、他のことを考えていれば、沢田ツナに勝てませんよ」

 

骸君の言葉にギクッと肩が跳ねた。なんで気付くんだろう、骸君は。でもなんでツナさん?

 

「ほぼ間違いなく、向こうの総大将がかわって沢田ツナが出てきますからね」

「え?ツナさんは女の人だよ!?」

「ルール上、問題ありません」

「そうだけど……。いくら次期ボンゴレボス最有力候補だからって……」

 

僕は最後まで言葉を続けることが出来なかった。骸君は大きなため息を吐いたから……。

 

「君もめんどくさい人ですね……」

「君も?」

「こっちの話です。いいですか、この体育祭ではマフィアは関係ありません。最初になしと決まりました。だから僕は術を使ってませんし、君も完全ではないとはいえ、シモンの力を使っていません。ここまではいいですね?」

 

ツナさんが真っ先に力を使うなよと骸君に約束させていたことを覚えている僕は頷く。

 

「僕が約束したことで、この体育祭はアルコバレーノですら好き勝手出来なくなりました。もしやっていれば、それ相当の報いを受けてもらってから外へ放り出します」

「ええっ!?」

「おや?言ってませんでしたか?僕は大のマフィア嫌いですよ。マフィアがいきがってる状況など、僕は我慢なりません。クフフフ」

 

骸君のこの笑顔は本当だと僕は知っている。……知りたくないと今ほど思ったことはないよ。でも骸君が大のマフィア嫌いなら、なんで僕たちの世話をしてくれてるんだろう?

 

「……まだわかりませんか。僕は次期ボンゴレに命じられていれば捻り潰しています。……僕は沢田ツナの手伝いをしているだけです」

 

同じようにみえて、とてつもなく大きな違いだと骸君は言っている。一緒にしないでほしいという嫌悪感を持っているほどだ。

 

「僕が関わっている限り、この体育祭ではマフィアは一切介入出来ません。ですから、良い機会だと僕は言ったのです」

 

次期ボンゴレじゃない、ツナさんを見ろってことだよね……と僕が理解して返事をする前に骸君は居なくなっていた。

 

棒倒しでツナさんが総大将として出てきた。骸君から聞いていたけど、それだけでも僕は驚きなのに、ツナさんは僕へと向かってきた。……無理だって!僕には女の人は殴れないよ、骸君!

 

向き合うとかそんなどころじゃないと僕はツナさんから逃げた。僕が逃げてしまったから追い込まれてしまった。いつか捕まってしまうとわかっていたのにどうすることも出来なくて、こんな時みんなが居ればと思ってしまった。

 

だから負けてしまった後に、「オレには獄寺君が……信頼できる友達が居たからね。絶対オレを落とさないってわかっていたから。炎真も信頼できる友達が居れば違ったんじゃない?」とツナさんに言われて……、僕は一緒じゃないかって思えたんだ。

 

……まみ、お前の言う通りだよ。僕がバカだった。みんなが反対するのは当然だよ。僕の友達なんだから。ボンゴレとシモンの未来じゃなくて、僕たちシモンの未来を考えないといけないことだったんだ。

 

何もかも考え直しだ。でもきっとみんなは僕の答えを待ってくれる。

 

……ああ、でも少しは進んだよって教えたいな。

 

まずツナさんに返事をかえすことから始めよう。僕と同じようなことを考えた君と友達になりたいって思ったから。みんなを紹介するのはその後になるけど、遅くはならないと思うよ。だから待ってて。

 

 

 

 

 

②応援席にて

 

『そ、総大将……ひ、雲雀恭弥さんにかわり……さ、沢田ツナ』

 

この放送が流れた時、私は京子とクロームと一緒にいた。周りが叫んでるけど、私はそんな気持ちになれなくてツナが心配で声も出せなかったの。それは京子の顔色を見れば一緒のようで、なんとかして止めないとという気持ちで私は頭の中はいっぱいだった。

 

「花ちゃん、京子ちゃん、大丈夫」

 

そんな大きな声じゃなかったのに、不思議とクロームの声は私達に届いた。

 

「で、でも……男子と混じって参加するだけでも危ないのに、総大将って……」

 

私だってツナがそこらの男よりは強いと知っている。最初は驚いたけど、ケンカの仲裁をしているのも見たこともあるから。でもそれとこれは別よ。いくらなんでも複数の男子に狙われる総大将は危険の度合いが違うわ。

 

私達の心配をクロームはキョトンとした表情で見るだけ。大丈夫っていうなら、せめてもうちょっと安心させてと思うのは私だけかしら……。クロームがそういうのが苦手と知っているから口には出さなかったけど……。

 

「山本!あんたも止める気はないの!?」

「ん?」

 

こうなったらと私は矛先をかえた。山本も動く気がないみたいだし、ちょっとでもいいから大丈夫と思う根拠を教えなさいよ!

 

「ツナなら大丈夫なのな」

「ツナが強いから!?心配する必要ないってこと!?」

「んー……それは違うな」

 

は?と私は山本に聞き返す。強いから安心して見てるんじゃないの?

 

「オレはツナが強いとこはあんまり知らないぜ」

「じゃなんであんたは動かないのよ」

 

山本が知らないっていうのは意外だった。そこそこ仲良いと思っていたけど……。でも私達が知らないのだから山本が知らないのは当然よね。ツナって仲裁する時はちょっと相手の腕をおさえたりするけど、それ以上は力を使おうとはしないのよ。トンファーを持ってるのも知ってるけど、持田先輩の時に出したぐらいで、結局あの時もツナはトンファーで殴らなかった。

 

「ツナはやると決めたらやるからなー」

「まぁ……ツナはなんでも出来るわね」

「ん?ツナは不器用な方だろ?」

 

私達、ツナについて話してるのよね?と首を傾げたくなる。それこそ幼稚園のころから、なんでもすぐ出来て寝落ちするイメージしかないんだけど。私が少しそのことを話すと「器用なら体力残せると思わねー?」と言われて、ポンっと思わず手を叩いてしまったわ。「ツナはそんなころから全力投球だったのな」と山本が笑ったのを見て、目からうろこが落ちるってこういうことなのねって思ったわ。

 

あの子のことわかっていたつもりだったけど、まだ知らないことも多いのね。ってそうじゃない。天然の山本のペースに引っ張られてしまったわ。棒倒しよ、棒倒し!

 

「ツナがやると決めたらやるなら、余計に心配になるじゃない!」

「心配はする必要ねーじゃねぇか?ツナは凄いのな。獄寺と笹川の兄貴もいるし、問題ねーって」

 

結局山本の説明では私は安心出来なかったのだけど、京子はちょっとホッとしたのよね。ちょっと私だけ置いていかないで!

 

「お兄ちゃんがツーちゃんの努力を見てね、いつかツーちゃんに頼られるような男になりたいっって言ったことがあったの」

 

京子のお兄さんだから深い意味はないわ、絶対。聞く人が聞けば告白みたいに聞こえるわよ……。相手がツナで良かったわね。あの子、自分がモテないって思い込んでるから。

 

「そしたらツーちゃん、『それならもう叶ってますよ』って言ったの。お兄ちゃんがいつだろうって疑問が顔に出たみたいで『オレ本当は根性ないんです。お兄さんを見てオレも頑張んなきゃって思えるんです』だって」

 

……ツナなら言いそうだわ。煽てるのがうまいというか、あの子はそんなつもりはないんだろうけどね。

 

「なんとなく言いたいことわかったわ。あの子人の気持ちに敏感だし、私達が躊躇しそうな恥ずかしい言葉も伝えることができるものね。こういう集団戦の方があの子は得意かもしれないわ」

 

風紀委員なのに頭を下げたりするものねー。変なプライドもなくて、人を頼れるっていうのもツナの凄いところの一つだわ。

 

あの子なら男子達とうまくやるでしょと思った私はおとなしく京子達と観戦することにした。

 

総大将自ら敵陣に突っ込んで行った時は、ツナはふつーじゃなかったわっていうことを思い出して、呆れて心配しなくなったんだから、私もツナのことちゃんとわかっていたみたい。

 

ただ……そんなところでわかりたくはなかったわ。

 

 

 

 

 

③報告

 

「リボーン、棒倒しでオレ勝ったんだよ!」

 

体育祭の後片付けも全部終わったオレはリボーンのところに行ったんだ。あいつのことだからちゃんと見てたと思うけど、それとこれとは別だよ。死ぬ気になっても出来なかったことが出来たんだよ。

 

「よくやったじゃねーか」

「だよね!だよね!」

 

やったーとオレはリボーンに抱きつく。リボーンも機嫌がよかったみたいで、オレがこんなことしても怒らなかった。

 

「ツナ、ご褒美に何が欲しいんだ?」

 

え?リボーンがオレにご褒美?あまりにも驚いたオレはリボーンを離して、ちゃんと向き合う。

 

「総合MVPも取ったしな。なんでもいいぞ」

「……い、いや……いいかな」

 

こいつからのご褒美ってロクなものじゃなかった。ご褒美という名目で、やりたい放題。オレの希望が叶うことはなかったし……。

 

「遠慮すんな」

「そう言われても……」

 

オレがボスになる前は、ボスになるためのものだった。ボスになったら、ボスに必要なものだった。だからそのほとんどでスパルタの特訓が用意されていたんだよな。……いやでもこいつのおかげでこんなにも成長したのは事実だし。オレに必要だったんだよな?

 

「と、特訓……」

 

まさかあんな嫌がっていたオレが自ら頼むようになるなんて……。

 

「……ツナ、お前は少し休め」

「え?わかった。お前がそういうなら……」

 

最近忙しかったもんな。リボーンが休めっていうぐらいだし、オレ結構疲れてんのかも。さっさと風呂入って寝ようと腰をあげる。

 

「あ、そうだ」

「なんか欲しいのがあったのか?」

「え?だからそれは特訓だって」

 

オレがそう答えたら、リボーンはしばらく黙った後「オレに言いたいことあるんだろ?」って聞いてきた。そうだった、そうだった。

 

「炎真と友達になれたんだ。今度シモンファミリーのみんなも紹介してくれるって約束したんだ」

「そうか。叶って良かったじゃねーか」

「そうなんだ。ありがとうね、リボーン」

 

元々はこいつのおかげだよなーって思っていたオレはちゃんと伝えられたこともあって、「お風呂行ってくるー」って上機嫌で部屋を出ていったんだ。

 

 

 

 

 

④雲雀の学ラン

 

オレは時間をとって、骸ん家に来ていた。聞き飽きたと思うけど、お礼を言いにね。……聞き流されたよ。

 

「そういえば、あの時の学ランは雲雀恭弥の物だったと風の噂で聞きましたが本当なのですか?」

「そうなんだよ!あれ、ヒバリさんの学ラン!」

 

やっぱお前はこの凄さわかってくれるよな!とオレが興奮しても、骸は呆れることはなかった。その反応にオレは喜ぶ。ヒバリさんの学ランだよ!?これがどれだけ凄いことかをほんとみんなわかってほしい。語っても引かれないのは草壁さんぐらいだから言えなかったんだよ!

 

「それもクリーニングして返してって言われたんだよ!」

「おや、『いらない。君にあげる』とは言われませんでしたか」

 

ほんとにそれ!

 

「並中の学ランってのもあっただろうけど、オレすげー嬉しかったんだ」

 

人は変われば変わるものですねと骸が呟いた。それ、お前にも言えるからな?

 

「あ、そうだ。ヒバリさんからお前への伝言預かってたんだよ」

 

ちょっと興奮が収まって、思い出した。あぶねー、完全に忘れてた。また顔に出てたのか、骸はちょっと呆れつつもオレへと向き直った。ヒバリさんからの伝言だからだろうね。でもオレこの伝言よくわかんなかったんだよなー。

 

「『これで満足?』だって。お前わかる?」

 

骸は一瞬固まった後、笑い始めた。うーん、この様子だと意味はわかったみたいだね。

 

「クフフフ。流石、雲雀恭弥と言ったところでしょうか」

「どういうこと?」

「あなたは知らなくていいですよ。これは僕と雲雀恭弥での駆け引きですから」

 

駆け引きって……。でもこの様子だとヒバリさんが勝ったのかな?

 

「僕は負けてはいません」

 

……だからなんなのこの人達。

 

オレは思わずもう少しで体育祭で負けたじゃんって言いそうになった。口にするだけ疲れるだけ。こいつのことだから、僕は出てませんとか言うだろうし。オレがヒバリさんも出なかったじゃんとか言っても、僕と雲雀恭弥を一緒にしないでくださいとか言うんだよ。付き合ってられないっての。

 

骸はオレが黙り込んだのをどう判断したのかわからないけど、ヒバリさんの伝言の意味を教えてくれた。

 

「あの伝言は、今回彼は僕の思惑に気付いているにも関わらず、乗ってあげたという意味ですよ」

「それならヒバリさんが勝ったと言っても良くね?」

「違います」

 

うん、もうオレはどっちでもいいや。

 

「ちなみに、返事は?」

「そうですね。『とても楽しめました』としましょうか」

 

うわぁとオレは引いた。

 

「一応伝えるけどさ。あんまヒバリさんを煽んなよ。オレが疲れる」

「本音が漏れてますよ」

 

あえて言ったの!どうせどっかでバトルするくせにオレに伝言残すんだから。律儀に伝えるオレもオレだけど。

 

「……ですが、実際僕にも読めないことがありましたからね」

「ん?そうなの?」

「ええ。ですから、ウソではありませんよ」

 

ふーん、それならまぁいいけど。

 

「やはりあなたと居ると面白いですね」

「って、なんでオレ!?」

 

オレのツッコミは無視されて、骸は本を読み始めた。




古里炎真の両親と妹
嘘でも誇張でもなく、本当に『よーく』ツナの話を聞いていた。
妹のまみちゃんはしっかり者という設定にしたので、ツナとの会話でいろいろ探っていました。

古里炎真
誰よりもボンゴレとシモンの関係に拘っていた人。
妹と骸のおかげでやっと気付いた。
気づいたら早かった。

黒川花
一般常識がしっかりと根付いているので、たまについてこれなくなる。
幼稚園の時にツナの面倒を見てしまったのが運のつき?
苦労人。でもツナのことを友達と思ってるので後悔はない。

山本武
ツナの強いところはあんまり知らないが、強いところがあるのも知っている。
獄寺と了平がいるので心配はしていない。
ただ自分も出たかった。

リボーン
褒めてあげたいのにうまくいかない。
特訓という答えから、いろいろと追い詰めてしまっているのかと考え中。

六道骸
自分が体育祭に出なければ、ツナが総大将に出てくることを読んでいた。
少しでもツナと炎真のために動いていた。
雲雀が気付く可能性までも読んでいた。その可能性を入れても問題ないと判断していた。
だから負けていない。
唯一骸が読めなかったのは雲雀が自分の学ランをツナに預けたこと。
その変化を起こしたのは誰かとわかっているから、褒めたつもり。
体育祭編、影のMVP。


次からは章がかわって、中1②です。
ラブ?コメディに戻ります……?
ごめん、まだ何も考えてないんだwww


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中1②


帰っているといいんだけど……と思いながらオレは暖簾をくぐる。

 

「こんにちはー」

「いらっしゃい!お、ツーちゃんじゃねぇか!待ってろ、なんでも好きなもの握ってやっから」

「えええ!悪いですって。オレ山本に用事があるだけなんで……」

 

ほんと、山本のお父さんは太っ腹すぎ……。オレが来るたびに奢らなくていいから。

 

「なに!?ツーちゃんを待たせるとは……!」

「ち、違います!急にオレが来ただけですって」

 

約束するのも良かったんだけど、そうすると獄寺君がやってきそうなんだよね。ちょっと2人っきりで話をしたかったのもあって急に来たんだ。今日は午後から野球の練習がないのも知っていたから。

 

「だから待たせてほしいなぁなんて」

「そうかそうか。ゆっくりしてってくれよな」

 

いやだから……と思いながらもオレは諦めて椅子に座る。もう山本のお父さん、お寿司握って置いちゃったんだよ。

 

「すみません。いただきます」

「おう!」

 

もぐもぐ食べながら、山本のお父さんの動きを見る。ちょっと忙しそうだよね。手伝った方がいいかな。って言っても、オレが出来ることは洗い物ぐらいだけど。母さんには習ったけどオレが出来るのはふつーの料理だから。

 

ちょっと手伝う手伝わないで山本のお父さんと勝負したけど、見事オレの勝利。洗い物ぐらいは今までに何度か手伝ってるから、山本のお父さんもオレを見てなくていいからね。前の時もバイトしたから食器の場所だけは完璧。ただ2回目なのにそれしか出来ないんだけど……。

 

「ツーちゃんはいい子だなぁ……」

 

だからそんなに感動しないで。山本は配達も出来るんだから。この前のこともあるし、山本のお父さんの中でオレはどんな位置になってるんだろう……。怖くて聞けない。

 

「山本に継いでもらいたいって思ったことはないんですか?」

 

そういやと思ってオレは声をかける。オレが継ぐって話た時に山本のお父さんは山本に継げと言わなかった。

 

「一度は夢を見たな」

「やっぱそうなんですね」

「ただこの店はオレがやりたくてやった店だ。武がやりたいって言わねー限り、手伝わせても教える気はなかったな。それに……武は継いでくれた」

 

あ。とオレは思わず声をあげた。山本はもう時雨蒼燕流を継いだんだ。

 

「筋は悪くねぇ。毎日振ってるみてーだし、ツーちゃんの助けになるだろうよ」

「……ありがとうございます」

「そりゃオレのセリフだ。ツーちゃんのおかげで夢が叶った」

 

オレ、山本の夢を壊してしまったと思っていたけど、山本のお父さんの夢は叶えていたんだ……。

 

「オレのところはまだいいが……ツーちゃんのところは大変じゃねぇのか?」

「え?」

「いや、オレはまぁ考え方が昔気質つーのもあるんだろうが、息子はいつか出て行くもんだと考えて、娘はそうじゃねーとどっかで思い込んじまってな……。お母さん、よく送り出す決意したもんだと思ったんだ」

「……あ、あの……男と女じゃ、そんなに違います?」

「ツーちゃん、まさか……」

 

ハハハ……とオレは乾いた笑いを繰り返す。前回の時は何も言わずに送り出してくれたのもあって、まだ母さんに言ってなかったよ、オレ……。

 

「帰ったら、話します……」

「……相談は乗ってやるからいつでもここに来ればいい。オレ達は味方だからな」

 

山本のお父さんの中で反対は確定なんだ……。えー、母さんに反対されたらどーしよ!オレは頭を抱えたくなる気持ちを抑えて、食器を洗い続けた。

 

ちょうどひと段落したタイミングで山本が帰ってきた。バイト代を渡されそうになったのをなんとか回避したオレは、山本の部屋にお邪魔する。

 

「急にごめんね、山本」

「いいってことよ。それに親父の手伝いをしてくれたんだろ?サンキュ」

「大したことしてないよ」

 

実際、洗い物しかしてないからね。オレと山本の仲だしということもあって、この話はここで終わりという空気が流れる。急にオレが会いにきたっていうのもあるんだろうけど。

 

「あのさ、ちょっと家綱のことで相談が……」

「仲悪りぃもんな」

 

山本のストレートの言葉にオレは大ダメージを受けた。変に気をつかわれれるよりはいいけど……。

 

「山本は家綱と話せてるみたいだし、何かアドバイスみたいなものが欲しいなぁって」

「オレは兄妹いねぇからなぁ」

 

あーそうだよ!オレのバカー!山本もこんな相談、困るっての!

 

「んー、家綱とケンカしたことあるのか?」

「ケンカはどうなんだろう?」

 

家綱は怒ってるけど、オレは別に怒ってるわけじゃないしなー。この前オレが怒った時は、家綱は何も言ってこなかったし……。

 

「ツナがそういうの苦手ってわかってるけどよ。家綱はツナとケンカしたいんじゃねぇの?」

「え?家綱がオレとケンカ?」

「そ。ダチだって、ケンカして分かり合えることもあるだろ?そんな変わらねーんじゃねぇかと思ったんだ」

 

そうかもと納得したオレは山本にお礼を言って、家綱とケンカなーと思いながら帰っていった。

 

「リボーン、居るー?」

 

家についたオレはリボーンを探す。

 

「ツナ、呼んだか?」

「うん。ちょっと相談したいことあってさ」

 

オレの言葉にリボーンは驚いた表情をした。相変わらずポーカーフェイスでわかりにくいけど。

 

ちび達に突撃されつつ、オレはリボーンを部屋に案内する。オレが女ってことで、リボーンは勝手に入らないようにしてるみたいだからさ。

 

「で、何があったんだ」

 

オレが無理矢理ちび達を追い出そうとしないから、この2人なら聞かれても問題ない話だと判断したリボーンはさっそく聞いてきた。だからオレは山本からのアドバイスの内容を話す。

 

「ツナ。お前、家綱とケンカしたことがなかったのか?」

「うーん、多分。帰りながら考えていたんだけど、記憶にないんだよね」

「それもあんのか……」

 

ん?とオレが首をかしげるとリボーンは首を振った。あ、これは教える気ないな。

 

「ま、いいや。でさ、オレケンカしてみようと思ったんだけど、どうしたらいいのかなって。最近じゃ家綱はオレに何も言ってこなくなったし、オレもそんな怒りっぽくないというか……」

「ツナはママンに似てるからな」

「あはは。母さんもあんまり怒らないよね」

 

ちゃんと怒るところでは怒るけど、八つ当たりみたいな感じなのは一切ないからね。

 

「あとオレ、怒ると怖いみたいだからさ。そういうのも気になって、どうしよっかなーって」

「ツナ姉が怒るなら先に言ってね。僕、みんなを連れてディーノ兄のところに行くから」

 

え。そんなにー!?遊びつつも会話に入ってこなかったフゥ太の言葉にちょっとオレは自分のことなのにビビる。尚更、家綱とケンカしたくないんだけど……。

 

「なくはねぇぞ」

「え!?なに、なに?」

 

流石リボーンだよ。オレの頭じゃ浮かばなかったことをすぐに提案してくれるなんて……!

 

「ツナ、お前が家綱を怒らせればいいんだ」

「え?オレが家綱を怒らせる?」

「ああ」

 

でもオレが居るだけで、家綱は怒ってるよな。オレがそういえば、リボーンは似てるようで全く違うと言ったんだ。リボーンがそういうならそうなんだろうなー。

 

「ただおめーが家綱を怒らせるようなことがあるのかって話だ」

「うーん」

 

オレ、そういうの苦手なんだよなーと考え込む。あ、ごめんごめん。ランボ、手が止まってたね。

 

「……ツナには無理か」

「ちょ、ちょっと待って。考えてるから」

 

リボーン、見捨てないでー!とオレは心の中で叫ぶ。ランボとフゥ太と遊びつつ、家綱を怒らせること……と考えていると一つ浮かんだ。

 

「あ、あった」

「あんのか!?」

 

え。そんなにびっくりすることなの?お前が提案したんだろ?

 

「うーん、多分ね。オレがこれ言ったら、あいつ怒ると思う」

「やってみろ」

 

心の準備の時間とか、リボーンにはないよね……と、もう慣れたオレは素直に行動する。

 

「今家綱部屋にいる?」

 

リボーンが頷いたのでオレは早速家綱の部屋の前に移動する。フゥ太が空気を読んで、ランボの面倒を見てくれたんだ。まぁフゥ太も興味津々だったのもあるみたいだけど。ランボを抱きながら、オレの部屋からのぞいてるしね。

 

オレは家綱の部屋をノックして声をかけた。相変わらず無視されたけど、リボーンが居るっていうんだから居る。ノックした時にちょっと反応したっぽかったしね。

 

「あのさ、そのままでいいから聞いて欲しいんだ。ちょっと大事なことだから」

 

チラッとリボーンを見れば、頷いた。んじゃ言うよ。

 

「オレ、中学卒業したら家出るつもりだから、母さんのことお前に頼みたいんだけ……」

 

最後まで言えなかった。家綱がドアを開けてオレの前に出てきたから。

 

「えっと……ごめん」

「……入れ」

 

うわ。めずらし……じゃなくて、家綱絶対怒ってる。怒らせたのはオレだけど……。

 

「お、お邪魔しまーす……」

 

そーっと部屋に入ったオレはドアを閉めて家綱と向き合った。

 

「こいつか」

 

リボーンを見ながら言ったからオレは違うと必死に手を振る。

 

「ボンゴレは関係ないよ。ずっと前に決めていたから」

 

ドンっと机を叩く音にオレは驚く。家綱ってオレを嫌ってるけど、殴ったりはしないんだよ。

 

「ええっと、ボンゴレのことはあるけど、オレがこの家を出て行くつもりなのは変わらないからさ。お前が継ぐことになったら……その時はまた考えるよ」

 

もちろん大人ランボが言っていたこともあるし、家綱のこともちゃんと対策するつもり。父さんにも話して、あっちからも気をつけてもらうよ。でもそういうのとは別で母さんのことを頼みたかったんだ。

 

「……母さんには話したのかよ」

「えっと、まだ。今日の夜には話そうと思っていたけど……」

「言うな!」

 

……ああ、やっぱそうだよな。家綱はオレのことは嫌いだけど、母さんとはうまくやってるもんな。

 

「……ごめん、それは出来ない。ずっと前から決めていたんだ」

「母さんの気持ち考えろよ!」

 

ごめんとオレは呟くことしか出来なかった。

 

「……出てけ。この部屋から出て行け!」

 

家綱に言われてオレは部屋を出る。オレが扉を閉めた途端、物が扉に当たったような音がした。

 

自分の部屋に帰ったオレはやっちゃったなぁと頭を抱える。母さんを味方につけてからと思っていたから……。

 

「……なぁ。本当にこれでいいのかよ、リボーン」

「さぁな。だが、進んだのは確かだぞ」

「そっか……」

 

ちび達とも遊ぶ気力もなくなったオレは少し1人にしてと頼んで、ベッドでうずくまった。

 

晩御飯の後、オレは母さんに大事な話があるって言って、2人きりにしてもらって話したんだ。いつかは言わないといけないから……。

 

「そう。わかった。いつでも帰ってきていいからね。この家はツーちゃんの家なんだから」

「……いいの?母さん」

「時々ね、ツーちゃんはお父さんみたいな顔をするから、そうじゃないかなって思っていたの」

 

まいったなぁとオレはちょっと泣きそうになる。今の父さんは前みたいに変な設定とか作ってないけど、仕事の都合で簡単に帰ってこれないってことになってるからさ。オレも同じだと思っていたんだ……。

 

「ごめん……母さん……」

「滅多にないツーちゃんのお願いですもの。叶えてあげたいと思うのは当然よ。だから謝らなくていいわ」

 

ああもうとオレは我慢できずに涙が溢れた。なんでオレが泣いてんだろう……。泣きたいのは母さんのはずなのに……。

 

「母さん」

「……家綱?」

 

オレがグズグズ泣いていると、家綱がいつのまにか扉のところで立っていたんだ。

 

「オレは出ていくつもりはないから。ずっと居るから。こいつと違って」

「あら、イッ君が居てくれるなら心強いわ」

「……おい。だからお前が継げ。いいな!」

「え、あ、うん。わかった」

 

オレがそう返事をすると家綱は二階へ行っちゃったんだ。

 

「みんなに大事に思われてる母さんは幸せものね」

 

母さんの言葉にオレは何度も頷いたんだ。

 

 

 

 

 

次の日、リボーンがオレの部屋にやってきた。オレも話したかったからちょうど良かった。

 

「お前も昨日の話聞いていたと思うけど、オレがボンゴレ継ぐから」

 

まぁ最終決定はリボーンにあるのはわかってるんだけどね。オレ達の意思はちゃんと伝えとかないと。

 

「今んとこ、オレもツナで文句はねぇぞ」

「そっか。それなら良かった」

 

この確認だけかなーと思っていたけど、リボーンはまだ話があったみたい。

 

「んで、お前の用は?」

「この家を出て何すんだ?」

 

それかーとオレは思わず天をあおぐ。しばらく悩んだ後、オレはリボーンを見た。

 

「言ってもいいけど、誰にも言わないで欲しいかも。特に父さんには」

「わかったと言いてぇところだが、理由次第だぞ」

「それならわかってくれると思う。父さんには自分の口から言いたいんだ」

 

予想通りリボーンも納得したみたいだったから、オレは口を開いたんだ。

 

「黒のマフィアを一掃する」

 

……あれ?なんか反応があるかなーって思ったんだけど。まぁいっか。

 

「ちゃんと考えてるから安心して。今骸に証拠とか集めてもらってるし、復讐者と交渉してからやるから」

「…………そうか」

「うん。あ、お前ならわかってると思うけど迂闊に話さないでよ。計画してるのバレたら逃げられちゃうからね」

「……やる時はオレにも声をかけろ」

「え?まじで?助かるよ、リボーン」

 

リボーンも手伝ってくれるならもっと早く潰せそうだなーとオレは中学卒業後の予定を考え直すことした。

 




山本武
海の時に家綱を追いかけた時の様子から、もしかしたらと思っていた。
ただツナの性格もあって、ケンカしろと言っても出来ないだろうなーとも思っていた。
それでもツナに聞かれたので教えた。

沢田奈々
ツナは顔や性格は自分に似たが、行動力などは父親似と察していた。
家を出るのもかなり早い段階からわかっていた。
居候含め沢田家では誰も彼女に勝てない。

沢田家綱
ボンゴレを継がないことを決めた。
ツナのことが気に食わず嫌いだったが、今回の件で大っ嫌いになった。
ただ何かが変わった。
その一つとして、今まで近づいて来なかったフゥ太が話しかけてくるようになった。
ツナにするような甘えや遊んでほしいとは言わないので、話ぐらいは付き合う。

リボーン
ツナとママンが話している時に家綱に発破をかけた。
良くも悪くも、進んだなと一安心したところでツナに爆弾を放り投げられた。
怒らせてはいけない人のランキング一位をとる意味をよーく理解した。
家光に美味いものでも奢りたくなった。



おまけ

作者
オリキャラの考え、性格をどこでどこまで出すか散々悩んだ。
悩んで悩んでこのタイミングにした。後で後悔しませんようにと祈ってる。
自分で作ったのに家綱のことは苦手だし好きじゃない。
でも嫌いとは一言も言ってない。


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最近、フゥ太が家綱と話しているのを見る。いつのまにか仲良くなったみたい。オレとはサッパリだけど。リボーンの話では進んでるみたいだから、その言葉を信じるけどね。

 

そういうこともあって、フゥ太にちょっとお願いした。家綱にリボーンの誕生日を教えてプレゼントを用意しておいた方がいいってうまく伝えてって。あいつ、毎年なんかするからさ。ボスになってめちゃくちゃ豪華な誕生日パーティとか開いてもらったけど、前の日で疲れてほとんど無意識にこなしてたからね。リボーンのスパルタのおかげで問題なかったらしいけど。

 

家綱はこれで多分大丈夫だと思うけど、問題はオレなんだよな。何あげよ。今までいろいろやったけど、なんか全部微妙な感じになったんだよな。いやまぁリボーンが無茶苦茶にするからだけど。

 

ってことで、オレはアドバイスが欲しくて黒川に聞いた。

 

「大人の男性ってプレゼントにどういうのを貰ったら嬉しいの?」

「相手は誰!?」

 

ガクガクとオレは揺さぶられながらも、リボーンと口にする。予想外だったらしく黒川の動きは止まった。

 

「あいつ小さいけど、精神年齢高いっつーか。普段からスーツでエスプレッソとか好きだし」

「……はぁ。そういうことね」

 

それならと黒川は買い物に付き合ってくれるって言ってくれたんだ。オレ達がそう話してると結局いつものメンバーが集まって、みんなで行くことになった。

 

「じゃ、ちょっとヒバリさんのところ行ってくる」

 

もう今日の放課後に行こうという話になったから、ヒバリさんに一応許可をもらってくる。別にオレはノルマないんだけど、それはそれ。休ませてって頼むんだから、直接言った方がいいよなーと応接室に向かったんだ。

 

「今日の放課後、誕生日プレゼント買いに行くんで休ませてくださいっ!」

「プレゼント?君の?」

 

ああ、そっか。ヒバリさんオレの誕生日知ってるもんな。毎年トンファーくれるし。ってか、家綱にはあげないと思ってるのかな……ヒバリさん……。家綱のことまた忘れかけてるのかも……。いやまぁ家綱はオレからもらってもあんまり嬉しくないだろうから、誕生日ケーキをオレが毎年作ってるんだけどね。母さんが忙しいとオレが料理したりするから、そういうのは大丈夫だから。

 

「リボーンのです。オレと1日違いなんですよ」

「あの赤ん坊ね」

 

リボーンのことは覚えてるみたいだし、強いってこと知ってるんだろうなぁ。最初に接触した時にリボーンが仕掛けたのかも。

 

「制服で行くとか言わないよね?」

「大丈夫です。ちゃんとわかってますって」

 

つまり許可はもらえたってことだ。

 

「あ、参考にしたいんですけど、ヒバリさんなら何が欲しいです?」

「君との時間」

 

……聞くんじゃなかった。トンファー構えないでください、ヒバリさん。

 

「……君、そろそろ武器用意出来ないの?」

「それ、オレも気になってるんですよね。頼んでみようかと思ったんですけど、オレの直感が意味ないって訴えるんですよねー」

 

本当にどうしようとオレも考えてる。レオンに作ってもらっても、死ぬ気の炎に強いグローブしか出来ない気がするんだ。あのグローブはオレ専用のアイテムだったから、オレが炎を灯しても大丈夫だったみたい。

 

ちなみにヒバリさんはオレの直感のことは知っている。オレが嫌な予感がするって呟いた後、大抵オレが何かに巻き込まれてるから。ヒバリさんといる時に一番ビビったのはヒバリさんとのバトル中に車が突っ込んで来たこと。その時あんまり信じてなかったヒバリさんを引っ張って移動させた瞬間、どーんって来たからね。そのあと物凄く胡散臭い目で見られたけど。

 

「そんなに特殊なの?」

「ヒバリさんならいいかな、言っても。オレ、炎を使うんですよね。両手からブワッて出る感じで」

 

……うん、久しぶりに胡散臭い目で見られたよ。まぁ骸のことを知ってるから否定されなかったけど。

 

「あっちの血筋なんです。専用の道具があれば、簡単に灯せるんですよね。正確にはなくても灯せるはずなんですけど……なんかサッパリで」

 

オレ昔どっかで使えたはずなんだよ。一度作ったらレオンは作れるみたいだから、確か新しいのもらったもん。あれってどこの戦いだっけ。多すぎてわけわかんなくなってるんだよなー。オレの前世、濃厚すぎ。……骸に聞けばいいじゃん。あいつなら覚えてるはず。いやでも一度幻覚で試した時、あいつ何も言わなかったよな。ってことは使えないってこと?

 

あれ?でもXANXUSや9代目は武器持ってるよな。ってことはやっぱり頼んだら作ってもらえるの?いやでもそれならオレの超直感が引っかからないはず。

 

「はぁ。君がちゃんと考えてるのはわかった」

「あ、すみません」

 

ヒバリさんをそっちのけでウンウンと悩んでたよ、オレ。これも前だったら絶対出来なかったよな。トンファー飛んでくるから。

 

「しばらくはトンファーで乗り切りますよ」

「その腕で?」

「……ですよね」

 

普通の人なら問題ないけど、ある一定のところまで行くとオレのトンファーの使い方なら歯が立たなくなるよ。最悪、川平さんからリングもらってトンファーに灯そうかと思ってたけど……リングの無駄遣いな気がする。川平さんも頑張ってくれたんだけど、大空のリングはあんまりなかったんだよ。なんとかAランクが一個あったけど、オレが本気で灯せば終わるって超直感が訴えてきたんだ。そっと指から外したよ、そん時。

 

「ヒバリさん、ちょっとオレを咬み殺してくれます?」

「……どこでそういう発想になったかは知らないけど、無抵抗の君を咬み殺しても僕は面白くない」

「オレも言ってて、なんか違うと思いました」

 

オレ達は2人揃ってため息を吐いた。オレの頭の悪さにうんざりして。

 

 

 

放課後一度家に帰って着替えたオレ達は、リボーンへのプレゼントをあーでもないこーでもないと言いながら探した。実はこっそりリボーンがついてきていたと気付いていたオレは微妙な気持ちになったけど。本人がそれでいいならいいやと思ってそのまま続けたけどね。結局、ハルがリボーンの服を作ってみたいってことでスーツとパジャマを作ることになった。みんなで割り勘して生地を買った。ちょっと男子の方が大目に出したけど。女子が作ることになったから。黒川も乗りかかった船ってことで、子ども嫌いだけど最後まで付き合ってくれることになった。

 

だからなのか、そのままオレ達女子はパジャマパーティーに。リボーンの服を作るからってのもあるんだけど、多分やりたかっただけ。オレ達はまた一旦帰って、京子ちゃんの家に集合した。そん時にオレはビアンキに頼んで服の型を借りてきた。前に作っていたの知ってたからね。

 

ハルと京子ちゃんが得意でオレ達は2人に指示のもと喋りながら縫う。オレもあんまり出来ない方だと思っていたけど、クロームが一番苦手だった。家庭科の授業で習ってるからできるけど、家ではやってなかったらしい。骸はダメになったら新しいの買いそうだもんな。ちょっと意外と盛り上がった。クロームは女の子!って感じだからね。

 

本人が気にしてないのと、そういうところがギャップでいいって感じの盛り上がりだったからオレも止めはしなかった。まぁみんないい子だから、そう言う流れにならないってわかってるんだけどね。つい昔のオレが悪い方でからかわれたから敏感になっちゃうんだ。黒川に過保護って囁かれたよ……。オレもちょっとそう思ってたからうなだれるしかなかった……。

 

女子同士の会話はコロコロ変わって、オレがなんで黒川は下の呼び名じゃないのかという話にもなった。ハルがずっと不思議だったみたいで。黒川の話だと幼稚園の頃にオレが寝ぼけながらも「黒川は黒川だから」って言ったらしい。それでもう黒川は諦めたらしくて……。オレが全然覚えてないってまた顔に出てたみたいでみんなでまた盛り上がった。

 

恋愛話にもなったけど、これにはオレが一番サッパリで。クロームもサッパリだったけど、今のところ興味がないみたいという意味で。オレは興味があるのにわからないという一番残念な感じだったんだ。

 

で、なんでか知らないけど、オレは獄寺君とヒバリさんと骸のことをどう思ってるか聞かれた。獄寺君とヒバリさんは友達と先輩って即答できた。両方とも良いって言葉がつくね。ただ骸だけはなんて答えたらいいかわからなくて……。オレが言い淀んでるとクローム以外のみんなはオレの答えを期待した感じで待ってるし……。仕方なく悩んで悩んで出した答えが、「共犯者」で。オレとしては結構納得する答えで、よく出てきたなぁと心底頑張ったって思ってたんだけど、みんなから微妙な顔をされた。まぁ共犯者って良い意味じゃないしね。

 

それはそこで話が終わったんだけど、恋愛話は終わらなくて……。みんないろんな理想があるんだなーって素直に感心した。オレも結婚はしたいと思ってるけど想像がつかなくて。前の時は京子ちゃんの顔が浮かんだのにね。自分がドレスを着ているところは想像出来るから、女として生きているのは間違いないと思うんだけど……相手がいない。

 

オレがそう言えば、憧れてる人とかいないのって聞かれたけど、オレにとっての憧れはヒバリさんで。でも絶対憧れの意味が違うと思うんだ。結局焦る必要はないって黒川に慰められた。いやでも少しは焦った方がいい気がする。オレこのままズルズル行っちゃって、同じ繰り返しをしそうで怖い。リボーンはそういうのうぜーと思うタイプだから、今度ビアンキに相談しよ……。良い提案してくれると思う。やりすぎる気もしなくもないけど。今の状態よりはマシなはず。

 

ビアンキに要相談とオレが頭にメモしている間に、話はコロコロと変わる。これが結構楽しい。女子がおしゃべり好きになる理由が今になってよくわかったよ。……遅いっての。オレってなんでいつも後から気付くかなーと思いながら、その日は更けていった。

 

 

リボーンの誕生日、当日みんな一緒にプレゼントを渡した。ふつーに。オレの中で激震が走ったよ、ほんと。多分みんなで用意してるのを知っていたからだと思うけど。そのかわりかはわからないけど、家綱でリボーンは遊んでいた。「だから僕、言ったのに」というフゥ太のスネた声でオレは察した。

 

 




雲雀恭弥
今年もツナへトンファーを贈った。
はやく本気のツナと戦いたい。

リボーン
女子であるツナが一生懸命考えてくれていたので、引っ掻き回さなかった。

沢田ツナ
後日ちゃんと忘れずに骸に聞いた。
「君は危機的状況でもなく、死ぬ気の境地になれるのですか?」と呆れながら言われて項垂れた。
普段の状況で超直感が反応するわけがなかった。
またボンゴレに頼んで作ってもらった場合、前と違いしっくりこないとどこかで察していたから意味がないと訴えていた。
誕生日も普通にみんなから祝われた。
ただ学校につくと机の上にトンファーの入った箱があったのはちょっとビビった。


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相手が想像つかなくて危機感を覚えていたオレはビアンキに相談した。ビアンキはオレの話に呆れることもなく、ちゃんと聞いてくれたんだ。

 

「そうねぇ。デートしてみてはどうかしら?」

「デート!?」

「ええ。デートすれば少しは想像がつくはずよ」

 

ビアンキの言葉にビックリしたけど、よく考えたら前の時もこの頃に京子ちゃんと動物園に行ったっけ。でもあれって結局デートじゃなかったような。まぁいいや。

 

「でもその相手がいないんだよ?」

「隼人なら喜んで付き合ってくれるわ」

 

獄寺君かぁとオレは考える。……うん、オレのためって協力してくれそう。

 

「オレ、明日誘ってみる!」

 

よしっと気合いを入れたオレだったけど、ビアンキにはそんな頑張らなくていいわと言われちゃった。今回、誘うのは仕方ないけど、あとは男性に任せろだってさ。ちょっと考えて納得したオレはビアンキの言葉に素直に頷いた。

 

 

次の日、オレは朝一で獄寺君に頼んでみた。

 

「獄寺君、今度の土曜日にオレとデートしてくれない?」

 

あれ?とオレは何度か獄寺君の前で手を振る。固まっちゃってるよね?

 

「獄寺くーん」

「隼人」

「ぐはっ」

 

ゴーグルを外したビアンキが声をかけたことで、獄寺君は元に戻った。……元に、って言っちゃダメだね。とにかくビアンキも固まった獄寺君をどうにかしたかっただけみたいで、すぐにゴーグルをつけてくれた。よかったよかった。

 

「ア、アネキ……」

「耳を貸しなさい、隼人」

 

嫌そうな顔をしながらも、獄寺君はビアンキに耳をかした。何を話してるのかわからなかったけど、獄寺君がキラキラした目でオレを見てくるからそんなに悪い内容じゃないはず。多分だけど。

 

「任せてください、10代目!デートしましょう!」

「え?あ、うん。よろしくね」

 

昨日のオレみたいに獄寺君が燃え始めたけど、獄寺君が気合いを入れるとロクなことがないんだけどなー。でもまぁオレが頼んだことだし、仕方ないよね。

 

……そう思っていたんだけど、獄寺君の気合いにオレはちょっと引いてる。授業とかそっちのけで、いろいろと計画してるんだもん。そこまでしなくていいよ!って言いたくなるんだけど、黒川達に止められた。獄寺君の様子が変だったから、学校きてすぐに教えたからみんな知ってるんだ。オレのためにここまでしてくれているんだから……という気持ちもあるから、オレはもうヒバリさんに知られませんようにと祈るしかなかった。獄寺君の授業態度が酷すぎるから。

 

そんな祈りも虚しく、オレはヒバリさんに呼び出された。なんでバレちゃったのー!?

 

「僕の耳にふざけた噂が入ってきたんだけど」

「すみません!」

「……節度ある行動なら、僕も口うるさく言う気はないよ」

 

はぁ?とオレは首をかしげる。これって獄寺君の授業態度はバレてないよね。

 

「…………交際するって聞いたけど」

「誰がですか?」

「君と獄寺隼人」

 

ヒバリさんの言葉を何度か心の中で復唱したオレは、んなっ!?と叫んだ。なんでそうなってんの!?

 

「違いますって!オレが跡継ぎって知ってますよね?その関係でオレもいつかは跡継ぎを作んなきゃいけなくて。でもオレそういうのよくわかんないから、仲良くしてもらってる女の人にそれならデートしてみれば?ってなった感じです」

 

オレがあたふたしながら説明すれば、ヒバリさんは残念な子を見るような目でオレを見た。オレだってそういうのに疎いって自覚してるから、デートしてみようと思ったんですって!

 

「それ、向こうは理解してるの?」

「えっと多分。獄寺君はその女の人の弟ですから」

「……そういうことね」

 

ヒバリさんが頭を押さえ出したけど大丈夫かな。……でもそれはオレのせいな気がする。理由はわかんないけど。

 

「事情は理解したから、もう行っていいよ。君と話していると疲れる」

「す、すみません……」

 

結局ヒバリさんを疲れさせただけだったよ……。まだ獄寺君のことがバレてないのにね。

 

 

 

なんとかヒバリさんにバレずに土曜日を迎えたオレは、朝からビアンキに言われて女の子らしい服を着ることになった。まぁデートだしね、それもオレから頼んだデート。

 

「……家光泣くんじゃねーか?」

「え?なんで?」

 

リボーンの呟きに反応する。今日の服一式、今年の父さんからの誕生日プレゼントだったんだけど、そんなに似合ってないのかな。

 

「泣いて喜ぶという意味よ」

「ならいいけど。今度写真送ろうっと」

 

父さんには手紙しかダメだからなー。ボンゴレでケイタイ用意してもらおうかな。そうすればもうちょっと連絡しやすいのに。いやでも連絡できると思った方が母さん寂しく感じちゃうかな。でも前の時より連絡取れる手段があるだけずっとましだけど。

 

「まっ、行ってくるね」

 

いつものように門のところで獄寺君は待っていた。ちょっと待たせすぎたかな、うろうろしてるしイライラしてるかも。

 

「ごめん、待たせちゃったね」

「いえ、そんなことは……!っ10代目、そのお姿は……!」

「オレらしくないけど、せっかくだからと思って……。へ、変かな?」

 

ブンブンと音が聞こえるぐらい獄寺君は首を振ってくれた。さすがにオレもちょっとテレる。

 

ビアンキ、オレにもちょっとわかってきたかも……!

 

心の中でビアンキにお礼をしていると、獄寺君が手を出してきた。数秒オレはなんだろうと思っていたけど、ああ!という感じでオレも手を出した。……うーん、獄寺君と手を繋ぐとは思わなかったなぁ。

 

「なんか変な感じだね」

「ゔ。嫌っスか……?」

「あ、や。嫌というわけじゃないんだけど……想像してなかったというか……。ええっと、とにかく今日はよろしくね!」

「は、はい!!お任せください!!」

 

嫌な空気になりそうだったから誤魔化せたことにホッとする。今日はどこに行くのかなーと思ったら、ビッシリと予定が詰まった紙を見てオレは思わず引きつった。……獄寺君がオレのためを思って頑張って考えてくれたんだよ。付き合うよ、付き合うけど……ミスったなーとも思った。靴、もっと楽そうなのにすれば良かったって。今からまた待たせるのは悪いから言わないけど……、服も変えた方がよくなるし。

 

「では、行きましょう!10代目!」

「あ、うん!」

 

ちょっと不安だったけど、何とかなるかなと思ったオレは獄寺君についていくことにした。

 

獄寺君とのデートは楽しい。何が一番いいかって会話に困ることはないから。問題は……なんでリボーンとビアンキが尾行してるんだろう。なんで気付かないの、獄寺君!?って何回ツッコミしたくなったか。空気を読んで我慢してるオレめっちゃ偉い。

 

「10代目、ここの料理はすっげー美味いスよ」

「う、うん」

 

危ない危ない。リボーンとビアンキに気をとられるところだった。ちょっと2人のことは忘れよう。ここの料理は本当に美味しいらしいから。実は山本が何度か付き合って食べに行ったんだって。オレの中では獄寺君が山本を誘ったことに衝撃だったんだけど、店を見て理由はすぐにわかった。この店、男1人で入るのは恥ずかしいよね。山本は気にしないタイプなのもあっただろうし、獄寺君の性格ならオレとのデートの下見なのに他の女の子は誘えないよね。意見だって聞きたいだろうし。いやでも噂だと獄寺君は毎食ここだって聞いたけど……。

 

……店員さんにめっちゃ微笑ましく見られてるって、獄寺君!!オレ、超恥ずかしい!!

 

結局、何食べたかよくわかんなかった……。美味しかったとは思うけど。

 

その後も女の子が好きそうな店を一緒にまわる。……父さんと似てるとちょっと思ったよ。選ぶ趣味というかなんというか。可愛いとはオレも思うんだけど、気後れするんだよね、こういうの。京子ちゃん達へのプレゼントの参考にはさせてもらうけど。

 

「なにか良い物ありましたか?」

「うぇ!?ええっと……じゃぁこの子かな」

 

このぬいぐるみはナッツっぽくて好きかなー。早く会いたいなって思う。

 

「……ライオンですか?」

「えっ、オレに似合わないかな……?」

「そ、そんなことは!!」

 

うーん、これはウソだよね。獄寺君に気をつかわせちゃったなぁ。前の時もオレはライオンって感じじゃなかったし、今は女だしもっと合わないんだろうなぁ。ちょっとションボリしつつ、この子とお別れする。いいんだ、オレにはナッツがいるから。

 

「ちょっと待っててください、10代目」

「えっ、ちょ、獄寺君。いいって!オレ、自分のお金で買うから!」

 

獄寺君がレジに持っていこうとするからオレは慌てて腕を掴んで止める。お昼ご飯も奢ってもらったし、流石に悪いよ!デートっていっても練習だし。獄寺君がバイトしてるのオレ知ってるからさ。

 

って思っていたんだけど、結局買ってもらうことになってしまった。獄寺君に負けたわけじゃないよ。オレ達が言い合ってると、うるさかったのか周りから睨まれちゃって……。その視線に耐えきれずオレが折れるしかなかったんだ。いやでもあれはなんか恨みもこもっていたような……。

 

そんなにも恨まれるほどうるさかったのかなーと思いながら、ぬいぐるみを受け取った。包装するか聞かれたけど、ナッツを思い出したのか寂しくなってさ。ちょっと抱きたい気分だったから、そのままにしてもらったんだ。もちろん袋はもらったけど。

 

「ありがとう、獄寺君。大事にするね」

「その言葉だけでオレは……!」

 

前の時は気付かなかったけど、獄寺君って悪い女の人に騙されそうだよね。気をつけとこ。

 

オレが獄寺君の将来の心配をしていると、獄寺君は自分の手を見たと思ったら項垂れながら歩き出した。……あ、そっか。手を握れなくなっちゃったのか。オレがぬいぐるみ抱いちゃったから。

 

ちょっと悩んだオレは獄寺君の腕を掴む。うーん、こっちの方がいいや。手を握るより違和感ないかも。

 

「って、獄寺君!?」

「ず、ずびまぜん」

 

なんで泣いてんの!?……多分感動してると思うんだけど。え、そんなに!?

 

オレはわちゃわちゃしながらも、バッグからティッシュとハンカチを取り出して獄寺君の顔を拭く。……ちび達と同じような感じだなーって思っちゃった。……ごめん、獄寺君。

 

すぐに獄寺君は落ち着いたけど、また手を握られてしまった。さっきの間でぬいぐるみは袋に直したからいいけど……。オレ、腕の方が良かったな……。そう思いながらも獄寺君についていくために足を動かす。ちょっとスピードが速いのは今ので時間をロスしたから。獄寺君の性格からしてきっちりこなしたいんだろうね。

 

獄寺君の計画を順調に消化していると、珍しいところでシャマルと出会った。学校では見るけど、それ以外で会うのは久しぶりかも。

 

「げっ、シャマル」

「お?隼人にツーちゃんじゃねぇか。ほぅほぅ、かー!青春してるねぇ」

「うるせー!」

 

ああ、ケンカしないでとオレはどうやって仲裁しようかなと2人の様子を窺ってると、腰に手がまわった。シャマル?

 

「てめぇ!10代目に!」

「黙ってろ、隼人」

 

さっきまでの雰囲気と違うシャマルにオレ達2人は驚く。

 

「さぁて、ツーちゃん。ジッとしてろよ」

「わわっ」

 

ひぃ!シャマルに抱っこされてるー!?パンツ見えるって!と思ったけど、シャマルはちゃんと考えていたみたいで縦抱きだった。

 

「えっと、どうしたの?シャマル」

「足、痛いんだろ?ったく、隼人何やってんだ」

 

ひぃ!獄寺君の顔が真っ青になってるー!?

 

「や。違うって。オレも楽しくて、言いたくなかったというか……」

 

獄寺君、絶対気にすると思うし、せっかく楽しい雰囲気を壊したくなかったんだ。

 

「そうだとしても、こういうのは気付かないヤローが悪いんだ」

「すみません!またオレのせいで……」

「ああ、もう……!ほんと、たいしたことないんだって!気にしないでお願いだから!ね?」

 

オレは獄寺君にそんな顔をさせたくないんだって!ちょっと靴ズレしただけなんだから、オレの回復力なら明日には治ってるって絶対!

 

「すみませんっ!」

「ご、獄寺君!!」

 

どーしよー!?獄寺君がどっか行っちゃったー!追いかけたいけど、出来ないしー!

 

「ほっとけ。どうせ頭冷やしたら、慌てて帰ってくんだろ」

「や、でも……」

「それより……反省しない子には、ちょっと痛い薬でも塗るかなー?」

 

ひぃ!とオレは思わず悲鳴をあげた。許してー、今回はこの前とは違うんだって。自分でも悪いと思ってるからー!

 

オレがあまりにも情けないぐらい嫌がったら、シャマルは許してくれた。オレ、女でよかった……。女じゃなかったらシャマルに診てもらえなかったけど。

 

「確かにたいしたことはなかったな」

「だよね!慣れない靴だから余計にそう見えただけなんだよ!」

 

そんな獄寺君が気にしてどっか行っちゃうほどじゃなかったんだよーとオレは嘆く。リボーンが追いかけたみたいだけど、あいつキツイこと言うって絶対。うぅ、獄寺君大丈夫かなぁ。追い詰めてなきゃいいんだけど……。

 

「隼人と一緒に居て疲れないか?」

 

え?とオレが声があがると同時にさっきまで近づいていた気配が止まったことに気付いた。もしかして、獄寺君?

 

オレが振り向こうとしたら、シャマルが手を軽くひいた。……教えてやれってことかな?

 

「疲れるわけがないよ。楽しいよ、一緒に居て。ちょっと暴走するところもあるけど、ビアンキもそういうところもあるし、そっくりだなーってオレはもっと楽しくなるんだ」

「……まいった。おじさん、ツーちゃんをナメてたわ」

 

ボソッとオレだけに聞こえるようにシャマルは言った。もしかしてオレがビアンキの気配にも気付いてると思ってなかったのかな?

 

どうなんだろうと気にはなったんだけど、オレは一瞬で現実に引き戻された。

 

「そんな優しくて可愛いツーちゃんにはおじさんから熱い口づけのプレゼントー」

「ひぃ!」

 

やめてー!とオレが手をバタバタさせていると、どかっと音が聞こえた。

 

「この変態ヤブ医者が!10代目になにしようとしてんだっ!」

「獄寺君!!」

 

オレは獄寺君の登場に感動した。けど……、これって獄寺君が戻りやすくするためだよね?

 

そう思ってシャマルを見たら、ウインクされた。獄寺君はそのウインクにもキレてたけど、シャマルも大人なんだなぁとオレは思ったよ。なんで普段からしないのかなーとも思ったけど、獄寺君のいる前だったし、オレは口を閉ざしたままシャマルと別れたんだ。

 

「えっと、シャマルもたいしたことないって、だからさ……」

「……オレが気にすると10代目が悲しむので、反省は後にします」

 

反省もしなくていいんだけど……。でも獄寺君なりに考えた結果だと思ったオレは何も言わないことにした。

 

「あんまり無理しない程度なら許可もらえたし、その……オレが行きたかったところに行ってもいい?」

「もちろんです!」

「あ、ごめん。聞くの忘れてた。お腹減ってる?」

 

獄寺君は頷いた。無理をした感じじゃなかったし、ゆっくりとオレの案内でそこへと向かった。

 

「ここっスか?」

「あはは。ごめんね、こんなところで。デートっぽくないとは思ったんだけど、どうしても食べたくなってさ」

 

オレ達が向かったのは、よくあるハンバーガーショップ。女の子達だとこういうところ来ないんだよね。でも前の時は獄寺君達と放課後によく寄ったからさ。それにこういうジャンク系は女になっても変わらず好きなんだ。

 

いただきまーすとオレはかぶりつく。うーん、久しぶり!この味だよ、この味!

 

オレが感動していると、獄寺君も笑った。肩の力が抜けた感じの笑い方だったから、デートってことでいろいろ気をつかわせちゃったんだろうなぁ。

 

「獄寺君、今日はごめんね。オレにはやっぱちょっと早かったみたい。……そうじゃないからね?うーん、なんていうか、楽しすぎた、かな」

 

こんな経験もう出来ないだろうなぁとオレは思っちゃったんだよね。

 

「……10代目?」

「うん……、凄く楽しかったよ。ありがとうね、獄寺君。今日のこと、死んでも忘れないよ。って、ちょっと重いね」

 

あははとオレは笑ったんだけど、獄寺君はちょっと怖い顔になってた。獄寺君のことだから、嫌がることはないかなと思ってたんだけどなぁ。

 

「……デートの時間ぐらい作ってみせます。オレは10代目の右腕になる男ですよ。それぐらい叶えてみます」

 

獄寺君……。

 

「……うん。でも相手を先に探さなきゃ」

 

結局そこだよなーとオレは行儀悪いけどストローをくわえる。獄寺君がオレのためにと言ってくれたけど、そこで引っかかるんだよ。

 

「オレはいつでも大歓迎ですよ」

「獄寺君、ありがとうね。でもオレばっか相手にしてると、獄寺君が良い人逃しちゃうよ」

「あ、いや……オレは大真面目なんスけど……」

「え?そこまでしてもらったら悪いよ。ちゃんと探しなよ?」

 

オレがそういうと獄寺君はガクリと肩を落とした。オレと一緒で獄寺君も苦手だもんねー。

 

まぁでも獄寺君のおかげでオレでもデートは出来るんだなぁって思えたから、ちょっとは進んだよね。




雲雀恭弥
分をわきまえていると思ったのもあり、呼び出した時は軽く釘をさすだけのつもりだった。
説明を聞き、一応風紀委員にツナは所属しているので、憐れな被害者が出ないか確認した。
その結果、被害者はツナになる可能性が出た。
襲われてもツナの身体能力なら逃げれられるだろうと放置したが、頭が痛くなった。
跡継ぎとかいるの?と本気で思った。
が、口出すと余計に頭が痛くなりそうだったのでツナを視界に入れないようにした。

シャマル
ビアンキにいきなり場所だけ告げられ何も知らないまま来た人。
2人に会ってすぐ、弟の楽しみを止めたくはないが、ツナの足を悪化させたくなかったんだろうなと察した。
ツナに答えさせたのは、ビアンキのためでもあった。
が、ツナの方が上手だった。

ビアンキ
顔には出さなかったが、ハラハラしながら弟の成長を見ていた。
ツナのことも気に入ってるので、悩むに悩んでシャマルに連絡した。
変態で女の敵だが、隼人との関係も知っているのでうまくやってくれるだろうと思ったから。

リボーン
ないとは思うが、獄寺が暴走した時のために居た。
まだツナはうまく逃げれないと思ったから。
ただ見てるだけだとうざったいので、獄寺の行動を採点していた。
たまらずビアンキが連絡を入れてしまうぐらいなので、0点。
もちろん獄寺に点数を伝えた。

獄寺隼人
そんなつもりはないのに、ツナに怪我をさせてしまう。
思わず逃げてしまったが、リボーンに喝を入れられ戻ってきた。
ツナの様子を見て、マフィアのボスになるというのはどういうことなのか、やっと気付いた。
リボーンからの採点結果は素直に受け取った。

沢田ツナ
自分の中では進んだ。実際は大して進んでいない。
前世で男だったのもあり、少し時間をもらえれば男性側の気持ちも察せれる。
相手がそうしたいならと寛容すぎて、母親化しそうな勢い。
リボーンにさらにロクでもない男に引っかかりそうと思われた。

六道骸
面白そうなイベントだが、骸は絶対に見ない。
ツナが女と感じさせるような内容は前世を知ってる身ではキツイから。
過程や結果の方で楽しんでいた。
ほとんどの情報源はツナ本人なので、それがまた面白い。


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デートの一件から獄寺君はちょっと変わった。獄寺君は獄寺君なんだけどね。なんていうか、肩に力が入りすぎていたのがなくなったんだ。オレとしても疲れないかなと心配していたから嬉しい。なにがキッカケかはわかんないけど。

 

ちょっとした変化はあったけど、オレはいつものように授業を受けていたんだ。

 

そんな時、オレはハッと顔をあげた。クロームも気付いたようで、オレの方を見たから頷く。オレが見に行くよって。

 

「すみません、ちょっと抜けます」

 

オレを先生は止めることはない。ヒバリさんの力ってすげーと思いながら、獄寺君や山本に大丈夫って視線を送る。気にはなったようだけど、無理してついてくるほどじゃないと思ったみたいで、見送ってくれた。

 

「……なんで屋上にするのかなぁ」

 

ヒバリさんの出没場所ってわかってるだろうに……とオレは文句を言う。

 

「おや?僕としては人目につかない方がいいと思って選んだのですよ?」

 

うん、わざとだね。オレ、知らないよ?ヒバリさんに見つかっても。

 

「で、何しにきたんだよ。骸」

「君に預けた方がいいと思いまして」

 

そう言って、骸は何かを投げたのでオレはキャッチする。って、イーピン!?

 

「ちょ、なにしてんの!?」

 

かわいそうに、イーピン縛られてるじゃないか!

 

「それ、人間爆弾と呼ばれる殺し屋でイーピンと言う名ですよ」

 

っと、サンキュー。リボーンが見ていることに気付いた骸がわざわざ教えてくれたよ。でもなんでイーピンは骸のところへ行ったの?いやイーピンがド近眼なのは知ってるよ。でもオレか家綱のところに来ると思ってたんだよ。

 

「お前に何かしたの?」

「古里炎真にですよ。ターゲットを間違えたらしいです」

 

……炎真だったよ。たしかにオレと同じぐらい不運だもんな、炎真って……。

 

「なんでも前の日に犬に追いかけられてるところを助けてもらったらしいですから、やりすぎないようにしてほしいと頼まれましてね」

 

オレ、今思い出したよ。見間違えて殺されかける方の印象が強くて忘れてた……。確か、オレも犬に追いかけられてたところを助けてもらったのがイーピンと最初の出会いだった。オレより犬に嫌われてる人、居たんだった……。

 

「うん、わかった。こっちで相談する」

「そうしてください」

 

オレが預かるという話になったから、骸はイーピンを縛ってる縄を消した。有幻覚って便利すぎ。

 

これでもう骸は用がないよねとホッとしたところで、扉が開いた。オレは超直感に従ってイーピンを背に隠した。

 

「ワォ。死ににきたの」

「クフフ。さて、どうしましょうか」

 

オレ、今絶対遠い目になってる。2人とも武器を出してヤル気満々みたいだし、勝手にしてくださいね。オレは関係ありませんから。

 

骸が適当なところで切り上げるだろうと思ったオレはいつものように帰ろうとしたんだけど、ヒバリさんがオレを見た。え、なんでオレを見るの!?

 

「なに、隠してるの」

「……えーと、ヒバリさんは見ない方がいいです。オレの直感がそう訴えました」

 

咄嗟の判断だったけど、オレの行動は正解だったんだよ。イーピンはヒバリさんを見ると惚れて、爆発しちゃうから。

 

「僕の学校に持ち込んだんだ。いくら君の言葉でも確認しないわけにはいかないよ」

 

普段ならいけるのにー!とオレは思った。絶対骸が関係しているってわかってるから譲れないんだよ。

 

「え?」

 

聞こえてきた言葉にオレは驚いた。今、イーピン出るって言ったよな。オレは大丈夫だよって声をかけた。専門用語とかはダメだけど、日常会話ぐらいは覚えてる。最近使ってなかったから忘れかけてるけど。……他の言語もヤバイかも。復習しなきゃ。

 

「誰?」

「ええっと、イーピンという名の殺し屋です」

 

……殺し屋って言うんじゃなかった。ヒバリさんの機嫌が急降下したよ。主に骸に向かってだけど。何連れてきてるの?ってね。もう完全にヒバリさんの中で骸が連れてきたってことになってるよ。あってるけど、これは普段の行いだよね。

 

「気をつけた方がいいですよ。彼女が筒子時限超爆という技を使えば、この校舎を壊すほどの威力ですから」

 

いやそうだけど、そうだけどー!とオレはヒバリさんの視線から逃れるように、距離を取ろうと一歩ずつ下がる。骸、お前笑ってる暇があるなら助けろよ!?

 

「ほ、ほんと勘弁してくださいっ!」

「……沢田ツナ、いい加減にしなよ」

 

ヒバリさん本気で怒ってるー!?オレがどうしようとアタフタしていると、リボーンが出てきた。

 

「見せてやればいいじゃねぇか」

「や、絶対ダメだって。嫌な予感するもん」

「イーピンは極度の恥ずかしがり屋だが、本人が出てもいいって言ってんだぞ」

 

イーピンからも大丈夫という声が聞こえ、リボーンとヒバリさんの2人に敵うわけもなく、オレはなくなくイーピンを前に出した。

 

「……イーピン、大丈夫?って、ヒバリさんに惚れてるーーー!」

 

やっぱりオレはそうなったよー!と頭を抱えたくなる。イーピンを持ってるから出来ないけど。

 

「おやおや。カウントダウンが始まりましたね。僕はここで失礼します」

「ちょっ。お前ならなんとか出来るだろ!?このまま放置する気かよっ!」

「ええ。彼は僕の手を借りたくないでしょうから」

 

そうでしたーとオレは項垂れる。骸が行っちゃったよ……。

 

「な、投げなきゃ」

 

もうそれしかないとオレは空を見る。すると、ヒバリさんがオレに手を出してきた。

 

「貸して。僕がする」

「や、オレがしますって」

「いい。元はといえば君の忠告を僕が無視したからだ」

 

そうそう、ヒバリさんって結構律儀なんだよ。じゃないよ!

 

「絶対ダメ!!」

 

なんで?という顔をしているヒバリさんに向かってオレは言った。

 

「惚れた相手に投げられるなんて、イーピンがあまりにもかわいそうです!!同じ女としてそんなことさせたくありません!」

 

ああ、話してたから時間もないよ。仕方ないとオレは額に炎をともす。こうしないと時間がなさすぎて、そんなに飛ばないから。ヒバリさんにそう言った手前、オレは校舎に傷ひとつつけるわけにはいかない。

 

オレの言葉になのか、変化なのかはわからないけど、ヒバリさんは驚いて固まった。

 

だからそのスキにオレは思いっきり空に向かって投げたんだ。

 

「わっとと」

 

オレは落ちてきたイーピンをキャッチして、ふぅーと息を吐いてハイパー死ぬ気モードから普通に戻る。音は凄かったけど、校舎に被害はない。もちろんオレ達も。

 

「……ツナ」

「えへへ」

 

別に隠してるつもりはなかったんだけど、なんとなくリボーンの視線に気まずくて笑ってごまかす。そんなオレの態度をリボーンはため息一つで飲み込んでくれた。うぅ、ごめんって。

 

「……君」

 

ヒバリさんの声が聞こえ、オレはそっちを見た。……見るんじゃなかった。

 

「まだ本気じゃなかったんだ」

「あ、ちょっ、待って、ヒバリさん!」

「やだ」

 

ひぃ!とオレはトンファーを避ける。

 

「イーピンのことはオレに任せとけ」

「ちょ、リボーン!?」

 

結局、その日は暗くなるまでヒバリさんは逃してくれなかった。




リボーン
ランキングで戦闘力一位を取れる理由が少しわかった。
もちろんまだ何か隠していることには気付いている。
ハイパー死ぬ気モードだけで一位を取れるはずがないから。
この年齢で死ぬ気がコントロール出来ることもあり、骸を警戒。
ツナの人の良さをつけこんで鍛え上げたのは骸だと思っている。

雲雀恭弥
ツナの底はまだだと知っていたが、武器以外にも隠していたことを知った。
ひぃひぃ言いながらも、さっきみたいにならないのでご機嫌ナナメ。
「誰かを守るために使いたいんですっ」とツナが叫んだため、仕方なく見逃した。
ツナの譲れない部分だろうとわかったから。

六道骸
リボーンが警戒していることに気付いているが放置。
それもまた面白いから。

古里炎真
犬に呪われてるかもしれない。
イーピンが悪い子に見えなかったので、骸にやりすぎないでと頼んだ。
ツナのところに預けると言ってくれたので、一安心。
後日、ツナにもだが、イーピンにも会いに行く。

イーピン
2人の話やツナの目を見て、悪いようにはされないとは思っていた。
カウントダウン中にツナの言葉が心に響いて懐く。
お師匠様にも許可をもらえたので、ツナの家に居候。
かけれないけどないよりはいいと、ツナにメガネを買ってもらった。よく見える。


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今日はディーノさんが来て、ボス同士交流しようぜってことで炎真と3人で出かけている。あ、あとリボーンとロマーリオさんも一緒。

 

ディーノさんって本当に面倒見がいいよね。オレがボス候補筆頭になったから今回はオレだけを誘ったけど、家綱とも交流を深めてるもん。リボーンの話では家綱はディーノさんのお古のムチをもらったらしい。前はオレがもらったけど、数回使っただけで申し訳なかったんだよな。家綱はちゃんと使ってるみたいで、オレとしても嬉しい。使ってるといってもリボーンの話では、屁っ放り腰でダメダメらしい。逃げなくなっただけ成長したとリボーンの機嫌は良かったけど。ちょっと対応が優しくなったのは、オレをボス候補と考えてるからだと思う。っても、あんまオレにも厳しくないんだけど。

 

「なんだ?」

「あ、いや」

 

チラッとリボーンを見れば、バレちゃって慌ててなんでもないよと手を振った。でもその途中でオレは聞きたかったことがあったことを思い出した。

 

「ごめん。やっぱある」

 

コソコソとリボーンに声をかければ、オレの頭に移動した。ディーノさんがオレ達がゆっくり話せるようにと、炎真に話題を振ってくれた。やっぱ気遣いもできるディーノさんはカッコいい。

 

「あのさ、父さんって元気にしてるよね?」

「家光?オレんとこにはなんも情報は来てねぇぞ」

 

なら大丈夫だよねとオレはホッと息を吐く。

 

「なんでだ?」

「いやさ、前に手紙を送ったんだけどまだ返事がなくて……。毎年、プレゼントのお礼に写真とって送ってるんだ。いつもならこの時期までには返事が来てたからさ」

「……ツナ、お前獄寺と一緒の写真を送ってねーよな?」

「え。あ、うん。せっかくだしと思ったんだけど」

 

こいつの反応からしてダメだったのかな。

 

「や、でも。オレさ、お前に言ったのもあったし……会って話したいことがあるって書いたから、そっちで困惑してるのかも?」

「……家光、生きろ」

「んなっ!」

 

リボーンのつぶやきにオレは思わず声をあげた。ディーノさんと炎真が何事って感じでこっちを見たけどそれどころじゃないって。

 

「父さんにやっぱ何かあったの、リボーン!」

 

はぁと大きなため息を吐いたリボーンは、ディーノさん達に声をかけた。

 

「溺愛している娘から、男と一緒にうつった写真を送られて、会って話したいことがあるって手紙に書いてあったらオメーらならどう思う」

「……そりゃまぁ、付き合ってるから紹介したいって思うだろうな」

「僕もそう思うかな」

 

オレはうそーと叫んだ。違うんだ、父さん!とオレは伝えたくて仕方がない。

 

「この様子だと、ツナはやっちまったのか……」

「それも可愛い娘のためにと送った服をきてな」

「……ツナさん、それはまずいよ」

 

炎真にも言われちゃったよー!

 

「ど、どうしよう……リボーン!」

「もう一回送り直すしかねーな」

 

帰ったらすぐに書くよとオレはうなだれた。しょんぼりしたオレを見て、ディーノさんは美味いものでも食って元気出せってことで食事を奢ってくれることに。ディーノさんのことだからもともとその予定だったと思うけど、優しくて泣いちゃいそうだよ。トホホ……。

 

ディーノさんが連れてってくれたところは、見るからに高級店でオレと炎真はぼけーっと口を開けてしまった。

 

「ボスならこういった店にも行くことになるんだ。今のうちに慣れておかねーとな」

「……僕には縁はなさそうだけど」

「おいおい、何言ってんだ。オレんとこのパーティはこれより上のランクになるぜ」

 

炎真は他人事のように見ていたけど、ディーノさんの言葉に青ざめた。気持ちはわかるよ、でも本当のことだから。それにディーノさんの中ではもう炎真は呼ばれることは決定されてるよ。あと、ボンゴレはもっと凄いからね。

 

「ツナ、人の心配してるがお前は大丈夫なのか?」

「えっと、多分大丈夫。切り替えたらだけど……」

 

ふぅと息を吐いて、背筋を伸ばす。良かった、身体は覚えていたよ。感心したような息をディーノさんが吐いたけど、オレはあんまりこれ好きじゃない。食べた気がしないんだよね。

 

「……ダメだな」

「え?なんで?」

「おめーはこれ誰に教えてもらったんだ?男なのは間違いねーだろうが」

 

はぁと呆れた感じでリボーンにため息を吐かれてしまった。いや、教えたのお前だよ。前世だけど。

 

「ディーノ」

 

ひょいっとリボーンはディーノさんの肩へと移動した。そのあとコソコソ話しているけど、オレと炎真は聞こえなくて一緒に首をかしげた。なんだろうねって。

 

「……なるほど。試してみりゃすぐわかるな」

「ああ」

 

2人の話が終わると、リボーンは肩から降りた。ディーノさんはオレのところへ来て、そっと手を出した。

 

「ツナ」

「今日はよろしくお願いします」

 

どういう設定なんだろうと思いながらも、無難にオレはディーノさんと握手をした。

 

「……ツナさん、今のは僕でもわかった」

「え?なにか間違った?」

「リボーン、ビンゴだな。これはダメだ」

 

ディーノさんからもダメだしをくらってオレはキョロキョロと周りを見渡し、リボーンの姿を探す。オレ、お前の教え通りやってなかったの?

 

「基礎は出来てるんだ。そこまで不安にならなくていい」

 

ポンポンとディーノさんに頭を撫でられ、ちょっとオレは落ち着いた。つい昔の癖でリボーンに助けを求めてしまったよ。

 

「ちょっと引っ掛けたのもあるが、普通ならあそこはエスコートのためにオレが手を出したと思うんだ」

「あ」

 

オレもディーノさんみたいにやったことがあったよ。うわー……全然気づかなかった……。

 

「ってことは、オレ、女の子?」

「ツナは女だろ」

「いやまぁそうですけど」

 

オレが女ってのはわかってるよ。わかってるけど、混乱する。

 

「……パーティとか男のフリして出ちゃダメです?」

 

無理だろうなーと思いながら聞いたら、みんなに首を横に振られた。やっぱりダメかー。

 

「この感じだと炎真よりツナの方が手こずりそうだな……」

「……オレもそんな気がします」

 

炎真が心配そうにオレを見ているから、大丈夫だよと笑おうとしてところで気付いた。……気付いてしまった。

 

「ツナさん?」

「……オレ、ダンスとかも男の方で覚えてる」

 

え!?と2人は声を揃えて叫んだ。オレはもう叫ぶ気力もなかったよ……。

 

「覚えちまったもんは仕方ねぇ。地道にやって覚え直すしかねぇぞ」

「だよね……」

 

リボーンの言葉にオレは素直に頷いた。今日のところはどれだけ出来るかの確認だったみたいで、普通に食事が出来た。けど、危機感しかなかったオレは、帰ってすぐリボーンに泣きついた。

 

「リボーン、どーしよー!!」

 




沢田ツナ
はじめて女になったことに後悔した。
いろんな人に手伝ってもらってるのに、なかなか進歩しない。
オレはやっぱりダメツナなんだーと嘆く日が続く。

リボーン
誰だ、ツナに教えたのは……!とツナの嘆きを聞くたびに思う人。
骸ではないのはわかっている。
探したいがツナ優先。
相手役が必要なので立場からしても炎真がちょうどいいので、ねっちょり鍛える。

古里炎真
相変わらず不憫属性。巻き込まれた。
ツナが困り果ててるのを見たのもあって、リボーンのスパルタを耐えきった。

ディーノ
ツナが男だったらなーと何度か思ったこともあり、罪悪感がきた。
出来る限り日本に来て教えつつ、焦る必要はないんだと何度も伝えた。
そしてもっと周りから女の子扱いされた方がいいんじゃないか?と考えた。
その結果、雲雀恭弥のところへ向かった。
一番ツナを女の子として扱ってない気がしたから。

沢田家光
ツナからの手紙のせいでゲッソリ中。
リボーンが思い出すまで頑張れ。


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オレ、ボンゴレ継ぎたくない……。

 

冗談だけど。家綱と約束したのもあるし。でも久しぶりに本気で思ったよ。性別が変わるだけで、こんなにわかんなくなるなんて思わなかった。前は男の立場だったからさ、望んでいることは考えればわかるんだ。でもすぐに気付かない。答えがわからないならまだ諦めもつくけど、考えればわかるからもどかしいんだ。

 

リボーン達は焦る必要ないって言うし、ビアンキは好きな人が出来れば自然と身につくっていうけどさ。オレのことだからスパルタじゃないと無理な気がする。

 

それなのに炎真がスパルタ教育受けちゃうし。炎真はいつかは覚えないといけないことだからって言ってくれたけどさ。絶対オレに気をつかってるよ。だってオレが炎真の立場だったらそう言うもん。

 

頭が混乱しているのもあって、身体を動かしたかったのに、今日はヒバリさんの都合でバトルがお休み。今までヒバリさんの都合で休みと言われたことがなかったからオレはショックで。

 

先週、グチっちゃったもんなぁ。いやだってさ、ヒバリさんぐらいなんだもん。オレがこんな戸惑ってることに聞き流してくれるの。知らないっていう一言で終わらせちゃうからね、あの人。他のみんなはなんでオレが戸惑ってるか不思議に感じると思うんだ。骸はわかってくれるだろうけど、あいつは聞きたくないだろうし。

 

ついにヒバリさんにも呆れられたんだー!ってマイナス思考に陥ったら、リボーンに外でも行って気分転換して来いって言われた。怒るついでに蹴ってくれてもいいんだよ?と思ったオレは多分重症。そしてうじうじしながらも体がリボーンの言葉で動くのも、多分重症。

 

オレってちょっとヤバいんじゃない?と明後日な方向に思考が行ったことで、ちょっと復活。せっかく休みになったんだし、ちび達をどっかに連れて行こうかな。元気なちび達はオレが誘ったら、喜んでついて来た。イーピンも増えてまた賑やかになったなぁ。

 

「……オレは休めという意味で言ったんだぞ」

「え?うん。わかってるって。ちび達と遊んでくるね」

 

オレの体がもうひとつあれば、もっとちび達と遊んでやれるのになぁと思いながらその日は過ごしたんだ。

 

 

 

次の日、学校に行くと先生に捕まった。必死な感じだったから、ヒバリさん関連かなと思ったら正解だった。すっげー機嫌悪いんだって。オレに懇願されても、どうすることもできないんだけどなーと思いながらもヒバリさんを探す。ふつーに応接室に居た。

 

「……ヒバリさん?」

「なに」

 

うわー、機嫌悪っ!じゃなくて、なんでそんなに怪我してんの?

 

骸かなって一瞬思ったけど、あいつはオレがヒバリさんと日曜日に会ってるのを知ってるから、昨日は見つからないようにしてるはず。それにあいつはヒバリさんが並盛を牛耳ってるのもあるから、ここまで怪我を負わせる前に切り上げる。煽りながらだけど。

 

でもヒバリさんがここまで傷を与えれる相手は限られてる。いったい誰だろう。尋ねれば、もっと機嫌悪くなりそうだから聞けないしなー。

 

まぁでも昨日会えなかった理由はわかった。ヒバリさんはオレを呆れたわけじゃないっぽい。良かったー。

 

「それで?」

「っと、すみません。ヒバリさんの機嫌が悪いから怖いって声があがってますよ」

「……誰、言ったの」

「ひみつです」

 

これはダメだなー。機嫌悪すぎ。今すぐにでも咬み殺しに行こうとしてるもん。普段ならもうちょっと寛容。

 

うーん、咬み殺しきれなかった。が、正解かな?逃げられたんだと思う。でも学校に来てるから、風紀を乱したとかそういう事件じゃない。

 

……ディーノさんぐらいだよな?こんなこと出来そうなのって。怪我はしてるけど、問題なさそうな程度だし。リボーンは昨日オレと居ただろ。ディーノさん、ヒバリさんに見つかっちゃったのかな。

 

「ヒバリさん。オレでいいなら、付き合いますよ?」

 

オレが仕込みトンファーを出せば、ヒバリさんは迅速だった。ちょっとでもムカつきをなくしたいんだろうね。オレはヒバリさんを追いかけ、屋上へと向かった。

 

 

 

ひぃひぃ言いながら、オレは避ける。また強くなってる気がするよ……。ほんと、この人天才。オレは2回目なのにもう追いつかれそうで怖い。

 

本当はもっと打ち合えたらいいんだけど、トンファーだと咄嗟の時に出来るのは防御ぐらいで。たまにオレからも仕掛けるけど、そのまま殴る感じになる。ヒバリさんのようにトンファーを使いきれないんだよ。

 

「た、たんま……」

 

ヒバリさんが止まってくれたので、オレは息を整える。こういう時、やっぱスタミナ落ちたなぁと実感する。後、ちょっと脆くなったかな。トンファー越しなのに、ヒバリさんの攻撃が痛いと感じる時がある。いやまぁそれでも何時間もヒバリさんと戦えているんだから、前のオレと比べれば天と地の差があるんだけどね。毎日走りこんでるだけあって、ちょっと休憩すればすぐに復活するし。

 

「……君、戦い方も男っぽいね」

「え?」

「そう感じた」

 

感じたってことはヒバリさんもよくわかってないのかな。まぁ女の人と戦う機会もそうないよな。それにトンファーは仮の武器だしわかりにくいはずだから。

 

「でもオレこれでずっとやってきてますし」

「君にあった戦い方は本当にそれなの?」

「……違う、気がする」

 

無意識に出た言葉だった。そういえば、オレ……ハイパー死ぬ気モードになった時間ってどれぐらいだった?骸と実験した時が最長だったかも。あれだって試すだけ試したら終わったよな。多分5分もなかった。骸を助けに行くときに使ったけど、そのたびに使ってて一瞬しかならなかった。敵という敵の前で、まだまともに戦ってない?

 

「いいよ。今度は僕が付き合ってあげる」

 

ヒバリさんの言葉に、オレは戸惑った。いや、言ってる意味はわかるよ。オレにハイパー死ぬ気モードになれって言ってるんだ。しばらく沈黙が流れたけど、オレは頭を下げた。よろしくお願いしますという意味で。強いオレと戦いたい気持ちもあるだろうけど、オレのためな気がしたから。

 

ボッと額に炎を灯す。ヒバリさんには悪いけど、オレはトンファーを地面に置く。手から炎が出ないけど、今のオレの状態なら素手がいい。

 

ヒバリさんと手を合わせていると、オレの超直感が教えてくれる。リボーンの教えは間違っちゃいない。本当の死ぬ気は体がぶっ壊れようと食らいつく覚悟だ。でもオレの今の体ではそう何度も耐えれないし長く戦えない。今はヒバリさんがリングの力を使ってないから問題ないけど、もし使うようになればもっとはっきりする。オレは多分ヒバリさんに簡単に負ける。前の戦い方のままなら。……答えはわかっていたんだ。

 

ガンッとヒバリさんにトンファーで殴られた。けど、殴られた瞬間に死ぬ気をコントロールし、防御力を高めたオレにダメージがあるわけがない。ヒバリさんはリングの力を使ってないしね。一瞬、驚いたヒバリさんにオレは殴り返した。

 

「す、すみません。大丈夫ですか……?」

「……問題ないよ」

 

いやでも絶対入ったよ、今の。ヒバリさんは認めないとは思うけど……。だからオレが考えを整理したいってことで休憩にした。本当に考えたかったし。

 

「オレってやっぱバカだなー」

 

ほんとバカ。骸を助けに行った時にもう死ぬ気の炎が思い通りにコントロール出来るって気付いていたのに。あの時にそう思ったんだよ。全盛期の時と同レベルか上ってことじゃん。脆くなったとかスタミナが減ったとか、全部なんとかなるよ。さっきみたいに防御力あげれるだろうし、無駄な消費だって減らせるよ。それに今のオレはまだ発展途上中。

 

「ヒバリさん、ありがとうございます!!」

 

なんかスッキリしたオレはまたヒバリさんに頭を下げた。ヒバリさんのストレス発散に付き合っていたはずなのに、結局オレが得しちゃったよ。

 

「少しはマシな顔になったようだね」

 

ヒバリさん……!とオレは顔をあげて感動した視線を送ろうとしたけど、ヒバリさんはもう屋上から去っていた。

 

「えー……」

 

でもヒバリさんらしくてオレは笑った。ヒバリさんは借りを返しただけなんだろうね。あと、先週のオレがあまりにも情けなかったのもあるんだろうけど。

 

こういうところがオレのヒーローなんだよなーと思いながら、オレは教室に向かった。




沢田ツナ
応用出来ないオレがダメダメなだけで、リボーンの教えは間違ってなかったんだ!と全てスッキリした。
男だろうが女だろうが、リボーンの教えは絶対だった。
それがグラついたから、嘆く時間も長かった。

ディーノ
ツナの話から雲雀が戦闘狂とわかっていたが、話が通じないのは聞いてないと思った人。
個性的と表現したツナの器のデカさに素直に感心した。
雲雀からなんとか勝ち逃げした。
でも本来の目的だった話を聞いてもらえなかったので、また行くことになる。

雲雀恭弥
ディーノの武器を見て軟弱と口にすれば、柔軟性があると言われた。
それなら女のツナの方が柔軟性がないとおかしいと感じた人。
ツナは雲雀の想像の斜め上の回答を出したが、マシな顔になったので良し。
ディーノの言い分は全て無視したが、雲雀なりにちゃんとツナを女扱いしている。


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正月。振袖を着たオレはみんなと一緒に神社へと向かう。

 

この振袖は父さんからのクリスマスプレゼント。高すぎっ!ってオレは思って躊躇したんだけど、父さんは察してたみたいで、返事が遅くなったのと、まだしばらく帰れないという2つの詫びと一生物だからって手紙に書いてたんだよ。返事が遅くなったのはオレがもう一回送り直すのを忘れてたせいでもあるんだけどね……。

 

母さんの話だと、オレが大きくなってもサイズ直し出来るように作ってて、本当に一生物なんだなーってオレは感心したんだけど、みんな揃ってため息を吐いたんだ。

 

「パパンがツナのことを大好きなのはわかるわ。けど、一生物の意味が違うでしょうね」

「そうよねぇ。お父さんがツーちゃんにお嫁に行って欲しくない気持ちはわかるのだけど……」

 

教えてもらうまでオレは知らなかったけど、結婚すれば振袖は着なくなるんだって。娘が出来れば譲ったりするから一生物というのは間違いなんだけど、今回は多分違うって。父さんらしいちゃ、父さんらしいけど……。あの写真が原因だよね、絶対。

 

誤解が解けて、これだもんなぁ。不安だったオレはちゃんとリボーンに確認してもらってから送ったし。

 

あれ?オレが結婚するのに一番の障害になりそうなのって、もしかして父さん?

 

なんだろう、ドラマでありそうなオレに勝てる奴じゃなきゃ認めんとか言い出しそうな気がする。……超直感はこんなところで仕事しないで、お願いだから。

 

「父さんに勝てる人って何人居るんだろう……」

「数える程しか居ねぇのは確かだな」

 

オレが脈略もない呟きにでもリボーンはきっちり返してくれた。嫌な肯定だったけど。

 

「ツーちゃん、どうしたの?」

 

声をかけてくれたのは京子ちゃんだったけど、オレがズーンと落ち込んだのはみんな気付いていたらしい。せっかくだし、女の子達の親はみんなどんな感じなのかなって聞いてみた。あ、クロームはオレと骸が認めた奴ね。

 

「……あんた、父親のことあんまり言えないわよ」

「父さんよりは絶対マシ。オレ達に勝てとか言うつもりはないから」

 

それにオレがそう言ったら、クロームが嬉しそうにしてるからいいの。

 

「ツナさんのお父様はお強いんですか?」

「そうだね。見えないけど、めちゃくちゃ強いよ。ヒバリさんですら、一撃を耐えられるかどうか……」

 

わかりやすい例でヒバリさんを出したら、みんなギョッとした。ヒバリさんがリングの力を使ってないのもあるけど、それを抜いてもほんとあの人強すぎ。下手したら9代目より強いんじゃない?まぁ9代目は年齢のこともあるんだけど。

 

獄寺君、そんな真っ青にならなくても大丈夫だよ。ちゃんと誤解は解いたからね。

 

「まっいけんだろ。ツナのこと本気で好きなら、それぐらいやってみせねーとな。オレの親父もツナが結婚するつったら、やりそうだかんなー」

「山本のお父さんもなの!?」

 

ハハッ、って笑ってるけど、山本のお父さんは時雨蒼燕流の使い手じゃん。山本のお父さんに勝てる人も少なそうなんだけど……。

 

「オレ、結婚できるかな……」

 

この歳から神頼みしないといけなくなるなんて……と思いながらオレは賽銭を多めにいれた。

 

お詣りした後、オレ達はわいわいとふつーに屋台をまわる。……リボーンが何にも企んでないのが怖い。あいつの無茶振りが普通になるなんて、オレの前世濃すぎ。

 

でもリボーンのことだから、ここがオレの帰って来る場所って教えてくれてる気もするんだ。前の時と違って、オレは継がなきゃって考えてるから。ヒバリさんにもバレてたし、こいつが気付かないはずがないもんなぁ。

 

「あ、コラ。ランボ、こっちにおいで」

 

黒川の反応を楽しむんじゃないっての。まぁオレの抱っこが好きなのもあって、前よりは聞き分けがいいから助かってるけど。

 

「アホ牛。10代目は振袖なんだ。こっちに来い」

「やだもんね!」

 

ああ、獄寺君が無理矢理ランボを掴んじゃったよ。絶対ランボが嫌がって暴れるって。こんな人が多いところでそれはマズイってば。そう思ってオレは2人の間に入ろうとしたんだけど、悪寒が走って振り向く。

 

「っ!」

「ツナ?」

 

オレの様子にいち早く気付いたリボーンが声をかけてきたけど、すぐには答えられない。誰かに見られていた。今は感じないけど、間違いないと思う。

 

「うわあああん!」

 

ランボの泣き声にオレは意識が逸れる。ひぃ!10年バズーカ使おうとしてるよ!

 

「ちょ!ランボ、たんま!」

 

なんでか知らないけど、今のリボーンはランボが10年バズーカを使おうとすれば、鉄拳制裁するんだよ。だからリボーンが手を出す前にとオレは止めようといつも動いているんだけど、すっかり忘れてたんだ。……オレ、今振袖きてた。

 

「あっ」

 

オレが転びそうになってるのを見て、みんな焦ってるなぁ。オレはもう、またやっちゃったなとしか思えなくて。死ぬ気になれば、なんとかなるかもしれないけど、場所もだけど、こんなことですることじゃない。

 

「いてっ」

 

地面にダイブするよりも、断然軽い衝撃だった。それもそのはずで、オレは人にぶつかって転ばなかったんだ。

 

「す、すみません」

 

オレとしては助かったんだけど、迷惑だったよねと恐る恐る顔をあげる。って、大人ランボ!?

 

あれから会ってないのもあって、大人ランボには悪いんだけどちょっと苦手意識がある。そーっと離れようとしたんだけど、バッチリ目が合ってるし肩を掴まれていた。

 

「若きボンゴレ、お久しぶりです」

「う、うん。久しぶりだね」

 

ランボなのは間違いないんだよ。でもオレの知ってるランボとやっぱり違って……。どこがって言われたらわからないけど。

 

「10代目、お知り合いですか?」

「え、うん。まぁ」

 

そっか。リボーンが阻止してるってことは、獄寺君達も大人ランボと会ったことがなかったんだ。

 

「いつまでツナに触ってやがる、エロガキ!」

 

……止める間もなかったよ。流石、リボーンだよ。オレの意識がそれた瞬間だった。

 

「って、感心している場合じゃないよ!」

 

大変だーと大人ランボの様子を見たけど、リボーンだからね。一撃できっちり気絶していたよ。

 

「おめーら、あいつを見たらぶっ飛ばせ。オレが許可する。ツナに近づくエロガキだぞ」

「今すぐトドメを刺しましょう」

「ひぃ!」

 

リボーン何教えてんの!?獄寺君、ダイナマイトしまって!山本もクロームも警戒しないであげて。黒川も前は大人ランボに一目惚れしたじゃん、そんな汚物を見るような目で見るのはやめてあげて。

 

みんなを抑えてる間にランボは元に戻った。10年バズーカ使わないように教えてないと……。それがランボのためだから。

 

 

 

リボーンが企んでないのに疲れた……と思いながら帰っていると、リボーンに何があったか聞かれた。そういえば、アレなんだったんだろう。

 

「誰かに見られてたとは思う。いやーな感じの視線だったけど、嫌な予感はしなかったんだ」

 

オレを見ていたんだろうなぁ。だってリボーンが気付かなかったんだよ。狙いはオレなんだろうけど、超直感が反応しなかったのが気になる。リボーンも同じところで引っかかってるんだろうね。腕を組んで考えていた。

 

「今、殺し屋とか来てないの?」

「そういう情報は掴んでねぇぞ」

 

骸にも確認するけど、多分一緒。ヤバイのが来ていれば教えてくれるはずだから。

 

「念のため、みんなの周りを強化しといてくれない?」

「ああ」

 

オレの超直感は身内にも反応するから、ないと思うんだけどね。でも何かあれば怖いから、今日は獄寺君と山本にみんなを送ってって頼んだけど。オレは振袖だったのもあって断られたから。ちび達も居るしね。

 

「出来れば、お前は家綱についてほしい。家綱が狙われる可能性も高いから」

 

少し悩んだ後、リボーンは頷いた。リボーンにハイパー死ぬ気モードになれるって知ってもらっててよかったよ。じゃなきゃ、リボーンはオレから離れられなかったと思う。ボンゴレボス候補筆頭はオレだからね。

 

「オレは着替えたらすぐに骸のとこ行ってくる。あいつと連携とったほうがいいし」

 

本当はこのまま行きたかったけど、あいつ今のオレの姿みたら絶対嫌な顔する。超直感が反応していれば、そんなこと言ってられないけどさ。

 

「……おめーは骸を信用すんだな」

「うん。大丈夫。後でお前にも報告するから安心しなよ」

 

なんであいつはそんなに信用されないんだろうね。でもそれが骸らしくてちょっとオレは笑った。




大人ランボ
出番が激減。
出てくれば、死にかける。

リボーン
ツナの悪寒、ドジのダブルコンボでランボの10年バズーカを防げなかった。

沢田ツナ
正月から嫌な感じ。
今年もいろいろありそう。


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骸とも話したけど、やっぱりあいつも何にも掴んでなくて。人が多いところじゃなかったら、誰かわかったのになぁってオレは思ってたけど、骸はそれが狙いと考えてたみたいで、オレの顔を確認してきたのが一番可能性が高いって話になった。リボーンもそう考えてたみたいだし、多分間違いない。

 

それでもオレはちょっとは効果があるかなぁと一人でウロウロしたりしたんだけど、反応はなし。学校が始まってからもしばらくは続ける予定だけど。ヒバリさんにも軽く話して協力者になってもらった。風紀委員としてじゃないと、獄寺君と山本が怪しんで付いて来ちゃうんだよ。それじゃ囮の意味ないからね。いやまぁオレを危険な目には合わせたくない気持ちもわかるけど。ちょっとでも情報が欲しい。

 

オレ達がボンゴレボス候補ってのは、ボンゴレ内部と同盟だと有名な話らしい。まぁリボーンをつけちゃってるからね。そしてオレが筆頭候補っていうのも一部の人は知ってるみたい。それでも敵対しているところには流れていない。誰かが話してしまった可能性もあるけど、オレ達しか候補が居ないのもあってかなり情報制限されているらしい。それにどこかで漏らしちゃったら父さんのところが気付くと思う。そういう時のための組織だし。

 

……そうそう、そういう組織。

 

「ツナ、こいつはラル・ミルチっつーんだ。オレ1人じゃ手がまわんねぇから、助っ人を呼んだぞ」

「オレのことは気にするな。お前はいつも通りに過ごしてろ」

 

オレの護衛兼、視線を送った相手を探すために来たんだろうな。父さんの組織って構成員は多いけど、精鋭は少ないんだけどなぁ。まさかラルを送ってくるとは思わなかったよ。まぁ今回は娘のオレが可愛いっていうだけじゃないだろうけど。

 

「うん。わかった。ラル、よろしくね」

 

オレが手を出せば、フンっと言いながらも握り返してくれた。相変わらずツンデレだよな。

 

「ラルはどうするの?リボーンみたいにするの?」

「オレはオレのやり方をする」

 

ってことは、隠れてオレを見る感じかな。

 

「ツナ、いけるか?」

「大丈夫だよ」

「なんだ?」

 

オレ達の確認にラルは怪訝な顔をしていた。

 

「おめーの視線にツナは神経を使うだろうからな」

 

ムッとしたような反応をしたけど、ラルは何も言わなかった。ラルの腕はリボーンも知ってるからね。そういうウソをつくとは思えないだろうし。

 

「オレの場合、悪意があるかないかで判断するからさ。ラルはオレを守るために来てくれたんでしょ。リボーンが心配するようなことはないと思うよ」

「悪意か……。どれぐらい信用できるんだ?リボーン、お前は気付かなかったんだろ?」

「殺気はなかったからな。ツナも嫌な予感はしなかったんだ。あの場でどうこうする気はなかったんだろう」

 

2人が確認し合ってるのを見ながら、オレは別のことを考えていた。はやく呪いを解いてあげたいなぁって。オレが声をかけたら手伝ってくれそうな人は増えている。それでもまだ足りない。川平さんの話だとまだ猶予はあるけど、苦しんでるのは知ってるからさ。せめて呪いを解く方法があるって教えたいんだけど、復讐者がなぁ。アルコバレーノの行動を把握してると思うから、迂闊に伝えられないんだよ。川平さんの力で夢で伝えてもいいけど、誰も信用しないと思うし。まぁオレも居ればリボーンとアリアさんは信用してくれそうだけど。まだ条件が揃ってないから予知は見えないだろうし、みんながみんな信用してくれることはないよなぁ。

 

そういや骸がヴェルデと接触する予定って言ってたけど、どうやるんだろ。予定ってことは見つけてはいるんだろうけど、ヴェルデも変わり者だもんな。ちょっと今回のせいで予定がズレちゃったから、春休みにするみたいだけど。骸は冬休みに入ってすぐ動けばよかったみたいなこと言ってたけど、クロームが寂しくならないように年末年始ぐらいは……って考えてたことを知ってるオレからすれば、お前のせいじゃないんだからって言いたくなる。口にすれば、呆れた感じで何言ってるのですかとか言うから言わないけど。

 

「ツナ、聞いてんのか」

「うぇ!?あ、うん。死ぬ気になれるから、オレは後回しにしてくれていいよ。ラルの邪魔にはならないようにするから」

 

話半分に聞いていたから、ラルに本当に大丈夫かっていう目で見られちゃったよ……。ごめんごめん、大丈夫だって。怪しい奴がいればそっちを優先してね。

 

「あ、骸にはあんま刺激しないでね。まぁあいつのことだから、ラルが来ていることも知ってるだろうけど、あいつは根っからのマフィア嫌いだからさ」

 

あれ、オレなんか言い方悪かったのかな。ラルが骸を警戒しちゃってるよね?

 

「骸がどこで情報を掴んだとか気にするだけ無駄だぞ。オレはもうあいつはそういう奴だと思ってる」

「ハハハ……」

 

オレも笑って誤魔化すしかなかった。非道なことはしてないだろうけど、ギリギリアウトなことはしてそうだからね。オレも助かってる手前、あんま強く言えないし……。いやでもあれでマシになったんだよ。昔は……、うん。思い出すのはやめよう。

 

ラルにやっぱり大丈夫かというような視線を向けらながら、新しい生活がスタートした。

 

 

オレの中で一番の家庭教師はリボーンだけど、ラルも家庭教師の一人で。見られてると思うと、自然と背筋が伸びる。かっこ悪いところを見せたくないなぁってね。そう思ってもやることは変わらないんだけど。日課のトレーニングをやって、ちび達と遊んだり、同級生と遊びに行ったり、一人でフラフラ歩いて囮になったり、ヒバリさんと毎週恒例のバトルをしたりってね。

 

予想はちょっとしてたけど、ヒバリさんはやっぱり凄かった。すぐにラルの視線に気付いたんだよ。まじあの人、どこ目指してんの?これ以上ハイスペックになってどうするの?ヒバリさんの将来が怖い。

 

そしてもう1人ラルに気付いた人が居た。ヒバリさんほど気づくのは早くはなかったけど、「ツナの知り合いか?」ってふつーに聞かれたんだよ。生まれながらの殺し屋って怖いね。去年の今頃は普通の野球少年だったのに。

 

獄寺君、対抗意識持たなくていいんだよ。ゆっくりでいいから。そうはいかないって?うん、知ってた。それでもそう思うんだよ。オレの周りがおかしくなってきてるから。お兄さんも最近体の引き締まり具合が凄くなってきてるんだよ。元守護者で変わらないのはランボぐらいだよ。……10年後はオレの知らない感じになってたけど。

 

「オレの周り怖い」

「みんな、おめーに追いつこうとしてんだ。諦めろ」

 

家綱を護衛中のリボーンにちょっとグチったらそんなことを言われた。

 

オレは2回目だからー!って声を大にして言いたくなった。骸に言われたのもあるけど、オレがそう叫んでも意味ない気がしたから。

 

みんなが普通じゃなくなってきているとオレはガクリと肩を落とした。

 




ラル・ミルチ
家光に言われてやってきた。
表向きはリボーンに依頼された形。
ツナの周りに驚いたけど、鍛えたいとも思った。
怪しい奴は姿を見せないが、家光に将来は安泰かもしれないと良い報告が出来そう。
ただ男ばかりなのもあって、伝えにくい。

六道骸
相変わらず裏でコソコソ動いている。
ヴェルデが作った装置が欲しいけど、接触したい一番の理由は別。
そうでなければ、ツナに報告していない。

沢田ツナ
元守護者達の成長が凄まじくて引き気味。
原因は自分だった。


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活動報告にも書いてたけど、体調崩してました。


せっかくラルに来てもらったけど、あれから怪しい視線を感じることはなかった。オレの超直感もまったく反応しないし。まぁラルがいつまで居るのかの判断は父さんに任せるけどね。ちょっと申し訳ないかなーと思いながら毎日を過ごしている。

 

変わったことと言えば、ディーノさんのシマで裏のマフィアが活動し始めようとしていたから教えたぐらいかな。情報源は骸だけど、オレの判断に任せるみたいだから被害が出る前にと思ってリボーン経由で伝えてもらった。ディーノさんがお返ししようとしてくれたから、チョコが欲しいって頼んだよ。あいつに渡せば、趣味は悪くないですねって言ったから、わかりにくいけど喜んでいたと思う。クロームはほんのちょっとだけでわけてもらったんだって。……オレにはなかったけど。いやまぁ元々はあいつのおかげだから、あいつの好きにすればいいんだけど。

 

「どうしようかなー」

 

オレ、なんでディーノさんにチョコ頼んじゃったんだろう。ハードルあげちゃったよ。

 

「どうかしましたか?10代目」

「んっと、今年のバレンタイン何しよっかなって」

 

タイミングがなぁって思う。あんな良いチョコの後だと、下手なもの渡せないっての。

 

うーんとオレは考えながら歩いていたんだけど、獄寺君の足が止まっていた。

 

「獄寺君?」

「だ、誰に渡すんスか……?」

「骸だよ。あいつ普段オレを女扱いしないくせに、チョコをもらえる機会は逃さないんだ」

 

毎年用意するの大変なんだよってオレがグチったら、獄寺君がダイナマイトを両手に持っていた。なんで!?

 

「ご、獄寺君。落ち着いて、ね?」

 

ここ学校だからね?頼むからやめてよ、オレが怒られる。懇願するように下から覗いていると、獄寺君が「うっ」って呟いて、懐にしまってくれた。よかったー。なんでか知らないけど、獄寺君ってこうすると止まってくれるんだよ。すっげー助かる。

 

「小悪魔度あがってない?」

 

黒川の呟きにオレは首をかしげる。黒川と一緒にいた京子ちゃんとクロームも不思議がってるし、わからなくてもおかしくはなさそう。

 

「……まぁいいわ。あんた、バレンタインとかやってたんだ。山本にも渡さないから興味ないと思っていたわ」

「父さんと骸には渡してるよ。骸は大のチョコ好きでさ。ね、クローム」

 

オレが話を振ると、クロームはコクコクと頷いていた。オレが知らないところで、いっぱい食べてるんだろうなぁ。

 

「ツーちゃん、手作りするの?」

「まさか。うるさいから、ホテルとかで買って用意してる。クロームは手作りだよね?」

「うん。骸様、喜んでくれるよ?」

 

それはクロームだからだよ。オレが手作りなんて渡したら絶対文句言う。またオレの顔に出てたのか、黒川には相変わらず変な関係ねと言われるし、獄寺君にはなぜか喜ばれた。

 

そうやって骸のはどうしようかなーと難しい顔をしていたオレだけど、よくよく考えれば今年はちび達が居るわけで。ちび達に渡すならリボーンも居るよなと考えたら、ラルやビアンキも必要かなって思う。だってイーピンにも渡すんだもん。そうなってくると、線引きが難しくなってきて、友チョコも用意した方がいいかなぁなんて。

 

しばらく考えた結果、オレは貯金箱の一つを割った。真面目に貯めてて良かったよ。女の子って大変。

 

父さんと骸には高級チョコ。他のみんなには悪いけど、まとめて買ったクッキーを3枚ずつラッピングして渡すことにした。あの2人と同じのを用意しようと思ったら、何個貯金箱割ればいいかわかんないし。同じホテルで買ったのだから許して。義理チョコだしね。ちび達には質より量を選んだけど。

 

 

 

バレンタイン当日。朝からみんなに配る。ちび達は喜んでくれたし、母さんには驚かれて頭を撫でてくれた。まだ数年猶予があるけど、嚙みしめるように喜んでしまった。あれ?これオレが得してない?

 

ビアンキとリボーンは一緒に渡した。恨まれたら嫌だしね。そんなオレの心がまた顔に出ていたのか、ビアンキに言われた。「あなたならいいのよ?でもそうなると隼人が悲しむかしら」って。なんで獄寺君が出てきたんだろうね。前半は勘違いしないから大丈夫よっていう意味だと思うんだけど……。オレが首をひねっていれば、リボーンに「女には優しくするが、オレはガキに興味ねぇぞ」って言われた。

 

え?オレ……リボーンにもフラれたの?なんも言ってないのに!?義理チョコなのに!?

 

どうせオレはモテないってわかってるけど、改めて言わなくてもいいじゃないかと思う。

 

「リボーン、あなたが拍車をかけてどうするの?」

「……わりぃ、ビアンキ」

 

オレが不貞腐れていると、ビアンキがリボーンを説教するという光景が目に入ってきた。驚きのあまり、オレはリボーンとビアンキの熱を測っちゃったよ。やってしまった後に怒られるかなって思ったけど、可愛い子ってビアンキに抱きしめれちゃった。慰めてくれるなんてビアンキってほんといい女。

 

日課のランニングに入る前に、ラルにも手渡す。このタイミングぐらいしかラルは顔を出さないからね。いつもリボーンとオレに夜中に何もなかったか確認するからさ。チョコを渡せばそっぽを向きながらも受け取ってくれた。ラルらしいなぁって笑ったら銃を向けられた。……うん、ラルだった。怒鳴りながらも去るのもラルだったよ。

 

ラルが落ち着いたと思ったぐらいにオレは外へ出る。今日も朝から獄寺君お疲れさま。毎日付き合わなくていいんだよ?と思いながらも、獄寺君が来なかったらどうしたんだろうってオレは思うよね、絶対。

 

いつも通りに走ってるとお兄さんとも会えた。ポケットから取り出してクッキーを渡せば、お礼を言いつつその場で食べてくれた。うーん、お兄さんは相変わらず豪快だね。極限に喉が渇いたぞ!って叫んでるけど、そうだと思う。ランニング中に食べるものじゃないからね。オレが苦笑いしていると、隣から不穏な空気が流れてきてビビった。

 

「獄寺君どうしたの!?」

 

オレが声をかけると、獄寺君から出てる不穏なオーラがなくなった。そのかわり、ブワッと泣きながらどこかへ行ってしまった。ええっ!?

 

「お、お兄さん、すみません!獄寺君、待ってーー!」

 

オレ達がドタバタ去っても、お兄さんは寛大で「おう!」と見送ってくれた。

 

昔のオレなら、絶対見失ってただろうなぁと思いながら獄寺君を追いかける。なかなか追いつけないのは獄寺君も鍛えてる証拠。それでも日々の努力が実ったのか、獄寺君の服をつかむことができた。けど、やっぱりそこはオレで……安心して気が抜けたところで足がもつれてしまった。

 

「うわっ!」

「10代目!?」

 

獄寺君の心臓がめっちゃドキドキしてる……なんて場違いなことをオレは考えていた。いやだって、思いっきり抱きついちゃったんだもん。オレの焦る声に振り向いた獄寺君の胸にダイブしたって感じ。体育祭でもやったけど、あれはやるってわかってたのもあったから今回とは別な気がする。

 

「ご、ごめん」

「い、いえ……」

 

すぐに離れたけど、なんか顔を合わせづらい。多分獄寺君も同じ。事故だったのはお互いにわかってるんだけど、恥ずかしくなったというかなんというか……。

 

「お前ら、こんなところで何してんだ?」

「山本ー!」

 

良いタイミングー!とオレは感動する。

 

「ちょっとドジちゃって、獄寺君に助けてもらったんだ」

「いえ、元はと言えばオレが……」

 

2人で違う違うと言い合っていれば、山本がオレの頭と獄寺君の肩に手を置いた。

 

「おめーら、今日も仲良いのな」

 

ハハッ、って笑ってる山本を見て、オレはつられて笑ってしまう。獄寺君が当たり前だろうが!と山本に絡みに言ったけど、さっきみたいに気まずい空気は完全になくなったんだ。うーん、さすが山本って感じ。

 

いつものコースから完全に離れてしまったのもあって、今日は山本についていくことにした。オレも結構走ってる方だと思ったけど、山本も凄かった。この後に素振りとかもするんだって。オレの場合は崖登りかな。今日はしないけど。ちなみにオレが崖登りしている間、獄寺君はダイナマイトを使った修行をしている。最初はオレについて行こうとしたけど、命綱もなしにいきなりすることじゃないし、獄寺君の戦闘スタイルにも合わないと言ったら渋々だけど納得してくれた。

 

時間がきて山本と別れた後は獄寺君と一緒にオレん家に向かう。オレが準備している間は獄寺君はソファーに座って待ってくれる。たまに朝食も一緒に食べるんだ。母さんは気にしないタイプだし、毎日でもいいって言ったんだけどね。ビアンキがいるとつい警戒しちゃうんだってさ。……だからこれはオレが折れた。

 

いつもお茶を出すからついでにオレはクッキーも渡す。

 

「……オレにですか?」

「うん。たいしたものじゃないんだけどね。今日はバレンタインだから」

「家宝にします」

 

食べて!?とオレは思わずツッコミしたよ。いやだってさ獄寺君のことだから本気でやりそうなんだもん。結局、獄寺君は大事に懐にしまったよ。腐る前に食べてね?お願いだから。

 

不安になりつつオレは学校へ準備を始めた。

 

いつも家綱が食事をする席にもこっそりと置いていたら、オレがシャワー浴びてる間になくなっていた。食べたかポケットにしまったんだと思う。良かった良かった。

 

準備を終えたオレは、獄寺君と一緒にクロームを迎えにいく。いつもはクロームが出るのに、今日は骸だった。……その手はなんだよと心の中で思いながらオレはチョコを置く。

 

「……まぁいいでしょう」

 

ほんと、なにこいつ。オレがちょっとイラっとしながらも、今度は母さんの弁当を渡せばきっちりお礼を言った。もう一度思うよ、ほんと、なにこいつ。

 

炎真には直接渡せなさそうだから、骸に預ける。対価としてクッキーもくれって言われたよ。言われる気がしたから用意していたオレって偉くない?

 

「クローム、行こう」

「うんっ!」

 

ああ、こっちは癒しだよ。オレはついクロームの頭を撫でた。

 

オレ達は雑談しながら学校へ向かう。クロームも朝から骸に渡してきたんだって。昨日から作ってたのを知ってたのもあるんだろうけど。体育祭のあの様子だとチョコいっぱい持って帰ってきそう。いやでも、あいつは口にしないかも。そういう意味ではディーノさんからのチョコを食べたのはすごいことだよな。

 

オレ達が学校につくと、さっそく獄寺君は女子に捕まった。助けを求められたけど、オレは頑張ってと手を振ったよ。いやだって女子に恨まれるのは怖いし。

 

その間に女子達と挨拶を交わす。みんな盛り上がってるねーって感じで。ハルはいないけど、みんなが揃ってるのもあって友チョコを配る。用意してるならいいなさいよって黒川に怒られた。みんなの反応を見て、交換したかったことにオレは気付いた。そういえば毎年オレが興味なさそうだったから、他の女子みたいに交換しようって話にならなかったもんな。ほんと、気付かなくてごめんって。気まずくならないように怒ってくれる黒川っていい奴だなーなんて思ってたのがまた顔に出てたのか、京子ちゃんとクロームにそうだねって同意してくれた。黒川は顔が真っ赤になっちゃったけど。

 

女子同士でわいわい過ごしてると山本が登校してきた。獄寺君みたいに女子に囲まれてるね。どうしよっかなーとオレは思ったけど、山本と目があったから、フラッとオレは渡しに行った。

 

「お?サンキュ、ツナ」

「うん」

 

いつもより強めに頭を撫でられたけど、山本とはそこで話は終わり。オレ達はそういう関係じゃないってみんなわかってるけど、今日はね、ちょっと怖い。山本もなんとなくわかってるのか、引き止めることはしなかったよ。

 

後はヒバリさんぐらいかなぁと思っていたら、放課後に応接室へ来るようにと電話があった。今日のヒバリさんは応接室に引きこもってるからね。バレンタインだからどこも群れが多くて鬱陶しいんだって。風紀の乱れだし咬み殺してもいいけど、治安が悪化するだけだから見ないことにしているらしい。ヒバリさんにそう判断させた女子ってある意味すごい。

 

でも呼び出した理由はなんだろうね?とオレは首をかしげる。用意はしているけど、ヒバリさんは骸みたいに催促するとは思えないんだけどなぁ。ハルにも渡しに行きたいからすぐに終わるといいけど。

 

休憩時間のたびにモテる人って大変だなぁって京子ちゃん達と話す。特に獄寺君はごめんって思う。毎回、「10代目ー!」っていう叫び声が聞こえるんだ。今日は女の子たちに付き合ってあげてねってオレは聞こえなかったフリをするけど。

 

そんな風に過ごしているとあっという間に放課後になった。オレはちゃんと忘れずに応接室に向かった。

 

「うわー、すげー」

 

ヒバリさんに挨拶するのも忘れて、目に入ったダンボールにオレは反応した。ヒバリさんモテモテじゃん。ダンボール2箱あるよ。もしかして山本と獄寺君より多くない?

 

「え?これヒバリさんが受け取ったんですか?」

「要望があって職員室に置いてる」

 

淡々と答えたから、これは今年が初ってわけじゃなさそう。まぁ直接ヒバリさんに渡せる人って少ないだろうし、そういう形にしたんだろうね。

 

「オレのも入れときますね」

 

こんなにもあるから困るかもしれないけど、気持ちだしね。

 

「その箱は君。僕のはその隣」

「あ、はい」

 

間違っちゃったよと思いながらオレは隣に入れ直す。って、おかしくない!?

 

「これ、オレの!?」

「みたいだよ。持って帰って、邪魔だから」

 

うそー!?と思いながら覗き込む。よく見ると、オレがみんなに渡したようなクッキーみたいなものが多い。隣を見れば本命って感じのものが多い。

 

「義理チョコですね」

「……交換する?」

「頑張ってください」

 

絶対めんどくさいって思ってるよ、この人。いやまぁ無視するんだろうけど。受け取るだけ、ヒバリさんの優しさだよね。

 

ヒバリさんのため息を聞き流しつつ、オレは一緒に添えてある手紙に目を通す。助けてくれてありがとうみたいな内容が多い。オレのトラブル体質のせいか、絡まれたりする人とよく見つけるからなぁ。そういうお礼が多いんだと思う。

 

「オレ、人生で一番モテたかも……!」

 

もちろん前世を合わせてだよ。ボンゴレを継いだらそりゃ貰えたけど、オレへっていうのは少数で……。義理だけどこれ全部オレへのチョコなんだよ!ちょっと感動。

 

ジーンっとオレが喜びを噛み締めてると、ヒバリさんは呆れたようにオレを見ていた。モテる人にはオレの気持ちなんてわからないよ!

 

心の中でヒバリさんに八つ当たりしていると、睨まれた。また顔に出ていたんだろうね。怖い怖い。

 

これ以上ヒバリさんの機嫌を悪くする前にオレはダンボールを持って退散する。クロームを送った後にハルのところへ行こうっと。いやその前にこのダンボールを家に一度持って帰るけど。

 

予定通りハルん家に向かってると、その途中にハルとばったり会った。

 

「ツナさん!お会いできて良かったです!」

「ね。オレもハルに会いたかったから本当に良かった」

「はひ!ツナさんはハルの心をわしづかみにする天才です!」

 

思わずオレは笑った。似たようなことを前世でも言われたよ。

 

「はっ、そうでした!ハルはツナさんに友チョコをお届けしようと思っていたのです!」

「そうなの?オレもなんだ」

 

一緒です!というハルが嬉しそうに笑ってるのを見て、黒川が怒るわけだなーって思った。ホワイトデーにくれるって話になったけど、女子同士なら交換の方が楽しいんだね。

 

またひとつ勉強になったなぁと思いながらハルと別れて、いつものように見回りをしてから家に帰ろうとすればオレの超直感が反応した。すっげー嫌な予感がする。なんだろう……。

 

ラルに視線を送った後、オレは家へとダッシュした。

 

「おかえりなさい。ちょうど焼きあがったところよ」

「……ハハ、そうなんだ。ビアンキ」

 

死んだ目をしたのはオレだけじゃなかった。ちび達と家綱に心の中で謝る。ごめん、すっかり忘れていた。

 

「私はリボーンを探してくるから、先に召し上がってくれていいわよ」

「う、うん。ありがとうね、ビアンキ」

 

あいつ逃げやがったなと思いながら、オレはビアンキを見送る。いやだってさ、ビアンキには悪いけど食べれないし。残られる方がまずいから、探しに行って欲しいんだもん。

 

「おい」

「うん」

 

ビアンキが去った後、珍しく気が合ったオレと家綱は必死に証拠隠滅した。ビアンキが戻ってくるまでの時間との勝負だったからね。

 

ふぅとオレ達が息を吐いていると、ビアンキがリボーンを連れて帰ってきた。……あいつオレ達が処理したから顔を出したな。いやまぁオレ達がそれをできる時間を稼いでくれたんだろうけどね。

 

「あら?全部食べてしまったの?」

「えっ!?もしかしてリボーンの分もあった?」

 

ごめんってオレが謝ると、ビアンキは大丈夫よって微笑んだ。……リボーン、ごめん。本命は別にあったみたい。

 

チラッとどうするんだろうと思ったら、リボーンはびっくりするぐらい寝ていた。……まぁ寝たフリだろうけど。

 

悪い顔をした家綱が鼻ちょうちんを壊そうとしたけど、寝たフリをしながらリボーンは家綱を殴った。……家綱がぶっ飛ばされたのを見て、オレの超直感はこれに反応したんだろうなって思ったよ。それぐらいリボーンは本気の一撃だった。オレに来るなら反応できたと思うけど、守れなかったぐらいだからね。

 

「シャマルー!って男は診ないんだったー!」

 

どうしよーとオレは頭を抱えているだけだったけど、ラルが医者を手配してくれたみたいで家綱は大事には至らなかった。リボーンが寝たフリを終えたら、護衛対象を殺しかけてどうする!とラルが説教してくれたけどあいつは可愛い子ぶって流したんだ。それだけならまだラルは我慢できただろうけど、コロネロにあげてねぇのか?とかいろいろ煽った。

 

その結果、……ラルが銃をぶっ放した。

 

今まで風呂ぐらいしか壊れなかったのが奇跡だったよなってオレは遠い目になった。




沢田ツナ
人生で一番モテたバレンタインだったけど、一番いろいろあったバレンタインだったかもしれない。

沢田家綱
ツナに止められたのに、リボーンを起こそうとした。
気付けば怪我をしていた。前後の記憶もとんだ。

リボーン
ビアンキの料理は食べない。
家綱の記憶が曖昧なので、サラっと嘘をついて自分がやってないことにした。

家光
ママンとツナからバレンタインのチョコが届く。
数日後、ラルから家の修理代の請求書も届く。

ディーノ
ツナに忘れ去られた人。
日本に滞在中じゃなかったので本人も貰えると思ってなかったのでセーフ。

シャマル
ツナに渡す対象と思われなかった人。
ナンパに勤しんでたのでセーフ。

大人ランボ
10年後のツナから、明らかに子ども向けのチョコを渡される。
こっそり泣いた。


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10

バレンタインが終わってすぐ、オレは朝からちび達がテレビを見て騒いでいたから声をかけた。

 

「ガハハハ、雪だもんね!」

「え!?今度の日曜日積もりそうなの!?」

 

ちび達と一緒にオレはやったーと喜んでいれば、リボーンと家綱にガキだなという視線を向けられた。この2人って案外相性いいのかもって思ったよ。

 

オレは獄寺君に会ってすぐに声をかけた。

 

「獄寺君っ、獄寺君っ」

「か、かわ……んんっ。どうしたんスか?」

「今度の日曜日はみんなと雪合戦だよ!」

「雪合戦?」

 

うん!とオレは頷く。すっげー荒れたけど、雪合戦はオレの中でかなり良い思い出の一つだし。オレ達があの時遊んだような平和な未来を作りたいって思えたからさ。絶対やりたいことだったんだ。

 

「楽しみだねっ、獄寺君!」

 

獄寺君もオレと一緒で楽しみなのか、何度も頷いてくれたよ。この調子でどんどんみんなを誘おうっと。

 

 

 

「……雪合戦?どうして僕がそんな低俗な遊びをしなければならないのです?」

 

日課のトレーニング中に会えたお兄さんと山本を誘えたのもあって、オレは上機嫌だったけど、骸の一言でテンションが下がった。いやオレも簡単に誘えるとは思ってなかったよ。でも低俗って酷くない?獄寺君に下で待っててって頼んで本当に良かったよ。

 

「ツナ、私は参加する」

「クローム!」

 

ありがとうとオレは抱きつく。骸と暮らしてるのに、ほんと良い子に育ったよ。

 

「……君、今失礼なこと考えました?」

「気のせいだって」

 

やれやれというように骸は息を吐いた後、まぁたまにはいいでしょうって言ってくれた。絶対クローム効果だよ。オレが誘うメンバーって、いろいろヤバイからね。

 

「しかし日曜日ですか。君、雲雀恭弥と会ってるのでしょう?」

 

そうだった!とオレは骸にお礼を慌てて言って、クロームに学校へ行こうって誘ったよ。また骸にため息を吐かれたけど、これはしょうがないよね。オレまたうっかりして忘れてたし。

 

まぁでも今のヒバリさんなら許してくれると思う。土曜日にズラしてもいいしね。誘えれば一番いいんだけどね。群れるの嫌いだからこればっかりは期待していない。

 

って思ってたんだけど……。

 

「いいよ」

「えええ!?」

「なに」

 

いやだって群れるんですよ?いいんです?ってオレは思わず確認してしまった。せっかくヒバリさんがいいって言ってくれたのにね。気分がかわったらどうしよう……。

 

「六道骸を咬み殺せるチャンスだからね。後、君とのバトルは前日にズラすよ」

 

……今回もオレが想像してるような雪合戦にならなさそう。京子ちゃん達を誘わなくて正解だったよ。でもヒバリさんも参加してくれるんだから、土曜日にバトルをズラすぐらい問題ない。オレは笑顔で頷いたんだ。

 

あ、イーピンにヒバリさんが来ること先に教えないと。わかってたら多分大丈夫だろうし。

 

 

 

 

雪合戦当日。オレは命の危機はあるけど来る?って家綱に声をかけ、何言ってんだみたいな視線を浴びてからやってきた。嘘じゃないのに……と思いながらも、変なことを言った自覚もあった。オレの誘い方が悪かったのもあって、家綱は留守番。だけどリボーンはやってきた。ラルに護衛を交代してもらったみたい。このメンバーが集まることはそうないし、いい機会だからだってさ。

 

ちび達とビアンキと一緒に学校へ向かってると、門のところで山本とお兄さんの姿が見えた。挨拶しつつ、他のみんなはまだかなって話す。どうせ待つなら雪合戦の準備でもしようってことになってグランドに向かった。獄寺君やクロームは違うだろうけど、骸やヒバリさんは好き勝手なタイミングで来そうだしね。

 

「えー!?」

 

オレはグランドについて思わず叫んだ。だって、なんか凄いんだもん。オレの中では何個か塹壕を作ればいいかなって思ってたのに、迷路みたいに入り組んでる。

 

「10代目ー!」

「ご、獄寺君!これ、どうなってるの!?」

「へへっ。実は跳ね馬のところをこき使いまして」

 

何してんの!?ディーノさん達人良すぎ!!

 

「結構、面白そうだぜ。しっかり考えてるみてーだしな」

「ディーノさん!?と、ロマーリオさん」

 

すみませんとオレは頭を下げる。ディーノさんも楽しみにしてるからいいって言ってくれたけど……。オレがやりたいって言って来てくれたのに、手伝いもしなくて申し訳ないなぁってなる。

 

「ツナ、ディーノさんもそう言ってくれてるんだ。楽しもうぜ。笹川兄なんて、もう燃えちまってるのな」

 

山本の指をおうと、うおおお!とお兄さんは叫びながら塹壕へと向かっていた。それを見て獄寺君が一番最初にオレに入ってもらうつもりだったのにって追いかけちゃって。なんかそれを見てると、山本の言う通り楽しまなきゃって思った。ディーノさんも2人の姿をみて笑ってるしね。

 

「ほぅ。あれがバトルフィールドですか」

「って、骸!?」

 

普通に歩いてきたんだろうけど、気配消すなってビビるから。遅れてやってきたクロームの気配で気付いたよ。クロームに手を振りながらも、オレは心の中でつっこむ。バトルフィールドってなに!?ただの雪合戦だよ!?

 

「あそこで咬み殺せばいいんだね」

「あ、ヒバリさん」

 

ちょっと離れた位置に現れたヒバリさんだったけど、咬み殺す場所としてしか見てなかったよ。トンファー出してるし……。

 

2人の間で視線がバチっとなった気がした。そのまま2人は無言で迷路のような塹壕に入っていった。

 

「仲良いのな」

「……絶対違うだろ」

 

ディーノさんのツッコミにオレは何度も頷いた。

 

「えっと、クロームはオレと一緒に行く?骸はあんな感じだし」

「うん」

 

山本とディーノさんはどうするのかなーって思ったら、2人は竹刀とムチを出してやる気満々だった。あの、雪合戦……。

 

オレはいってらっしゃいと2人を見送ったよ。ルールとかいろいろ考えてたけど、もういいやって。オレ達はチーム組んで楽しもうっと。リボーンは高みの見物なのか、ちゃっかりよく見える位置でビアンキに抱かれてるし、オレはちび達とクロームでみんなが居るところへ向かった。

 

わけわかんない感じになってるけど、オレ達は雪合戦として楽しむ。迷ってるお兄さんに雪玉をぶつけたり、方向がバレたら全部拳で防がれたけど。どこからか降ってきた獄寺君のダイナマイトに悲鳴をあげたり、そん時は山本が助っ人登場って斬ってくれて危機は免れた。ディーノさんにもぶつけようと探していたら、ロマーリオさんとはぐれたらしく埋まってて掘り起こすことになったり。

 

最後にはみんな合流して、バトルしている骸とヒバリさんに雪玉を投げた。オレと部下がいる状態のディーノさんが示し合わせたタイミングだったからか、全部は当たらなかったけど2人に当たった。

 

バトルに夢中になってたのもあるだろうけど、当たると思わなかったオレはポカンってした後に爆笑。オレにつられたのか、みんなも笑い出す。

 

「……良い度胸だね。咬み殺す!」

「クフフフ。いいでしょう、まずは君達からです」

「みんな、逃げてーー!!」

 

オレ達は必死に2人から逃げたよ。最後にはあの2人以外みんな雪の上に転がっていた。なんとかオレは逃げ切ったけど体力切れ。ちび達とクロームも同じ。他のみんなはあの2人にやられた。普段仲悪いのに、息が合いすぎ。基本骸の幻術に対応出来る人はいないのに、そこにヒバリさんもやってくるんだよ。逃げ切れるわけがなかった。

 

「ぷっ」

「ツナ?」

「いやさ、またやりたいなって」

 

オレの言葉にみんな寝っ転がりながらも、笑って頷いてくれた。

 




沢田ツナ
新たな雪合戦の思い出をつくれた。

リボーン
各々の戦闘能力を把握しつつ、ツナが居ないとこの集まりは無理だなと思った。


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中2


オレはひぃひぃ言いながら過ごしたけど、今日始業式が終わってやっとで落ち着いた。卒業式と終業式が終わってちょっとすれば、入学式と始業式って続いたからさ。風紀委員という名の雑用係のオレはみんなにいろいろ頼まれて走り回ってた。まぁわかる気もするんだけどね。オレ、絶対風紀委員の中で一番人当たりいいもん。ヒバリさん以外はみんな大きくてリーゼントだからね。先生にも喜ばれるから、悪い気はしなかったし。

 

相変わらず合間を縫って、春休みの間はちび達と出かけたり、みんなと遊びに行ったりと忙しく過ごしてた。そのほとんどに炎真も付き合ってくれた。2年にあがると同時に炎真が至門中に戻るのもあったからね。まぁオレが雪合戦に誘ったけど行けなかったのもあるかな。ちょうど家庭科の補習だったらしい……。なんというか運が悪いのも炎真らしいからオレは気にしなかったんだけどね。次はシモンのみんなも誘ってしようって約束した。もちろん真美ちゃんも良ければってね。

 

春休みってことで今度こそ骸はヴェルデと接触しに行った。どうなったかは知らないけど。その間クロームが1人になっちゃうってのもあって、女の子達とパジャマパーティとかしたりした。意外にも部屋さえ入らなければいいって骸が言ったから、骸ん家でやったよ。クロームのために何日でも泊まってほしいんだろうなって思ったオレは春休みのほとんどそっちに居た。だから夜にリボーンがそばに居ないのもあって、ラルもパジャマパーティに参加したよ。本人は嫌がってたけど、オレの護衛も兼ねてるよねって言えば渋々付き合ってくれたよ。めっちゃ京子ちゃんとハルに可愛がられて、ツンツンしてた。ラルは赤ん坊だけど、大人っぽいから黒川は近づかなければ大丈夫だった。後オレと友達なのもあって、ちょっと耐性が出来てきたんだって。そこまでガキっぽくなければ、なんとかなってきたらしい。

 

そんな中でも、毎週恒例のヒバリさんとのバトルは継続。あ、でも一回だけバトルじゃなくて花見に付き合ったね。1人で花見したいから誰にも来ないようにしてって頼まれて見張りしたんだよ。前のヒバリさんはサクラが嫌いになったけど、今回はオレ達がケンカふっかけなかったから楽しめたみたい。そして驚いたことにヒバリさんが帰る時、占領した後の場所は好きに使っていいって言ったんだ。まじで!?ってオレは叫んだよ。いやだってさ、オレにそんなこと言ったらみんなと花見するってヒバリさんはわかってると思うんだよ。まぁすぐに睨まれたから口を閉ざして見送ったけどね。その後、みんなに連絡して急遽花見をしたよ。すっげー楽しかったんだ。

 

 

始業式が終わってみんなが教室に移動して担任の話を聞いている時間だけど、オレはクラス表を見ながら少し考えていた。家綱も友達もみんな同じクラスだったんだ。京子ちゃんと一緒なのは記憶通りだけど、クロームや家綱も居るんだよ。みんな一緒は無理かなってちょっと思ってたんだ。特に双子の家綱とは。

 

「さっさと教室行きなよ」

「あ、ヒバリさん」

 

すみませんとオレは謝る。始業式も終わって雑用がなくなったオレはもう戻るべきなのに、まだこんなところに居たからね。

 

「自分のクラスがわからないの?」

「見つけましたよ」

 

2−Aのところにある自分の名前をオレは指をさした。普段のオレなら、すぐに教室に向かうんだけど……。

 

「あの、ヒバリさん」

「なに」

「ありがとうございます」

 

ヒバリさんは何も言わなかった。オレのお礼の意味はわかってるけど、肯定する気はないんだろうね。前は多分リボーンがみんな同じクラスになるように根回しした。でも今回は多分……ヒバリさんがした。オレが授業を抜ける可能性もあるから、クラスに馴染めやすいようにって動いてくれたんだと思うんだ。

 

何を言ってもヒバリさんは認めないだろうなと思ったけど、ヒバリさんにお礼したくてオレはまた口を開いた。でもこれはオレの本心でもある。

 

「オレ、並中に来てよかった」

 

この学校に来たのは前と同じだったからのもあるし、家から近いのもあった。けど、もしまた通うならって考えたらオレは並中って即決する。まぁもうないことを願うよ。というか、そうならないようにする。

 

独り言のようなオレの言葉にヒバリさんは反応しないだろうなって思ったんだけど、ヒバリさんは校舎へ視線を向けて少し口角をあげた。獲物をみつけた時のようじゃなくて、小動物を愛でてる時のような笑みだ。

 

これにオレはちょっと驚いた。もちろんオレに向けた笑みじゃないのはわかってる。ヒバリさんは自分の今までの行動が誇らしかったから緩んだんだと思う。でもオレの目の前で緩むとは思わなかったんだ。

 

「なに」

「あ、いえ……。オレ、教室戻りますね」

 

頭を下げてから歩き出したオレだったけど、ふと足が止まって空を見た。

 

「ヒバリさん……。もしヒバリさんのいる立ち位置を横から来た奴が急に奪ったら、許せませんよね」

「当たり前だよ」

「……ですよね。オレもそう思います」

 

それでもオレは奪うしかない。

 

「何考えてるか知らないけど、それは多分君らしくない」

「え?」

「奪うという言葉が君らしくない。そういうのは南国果実があってる」

 

ぷっとオレは笑ってしまった。骸はオレの体を奪おうとしてたもんな。いつのまにか眉間のシワが寄ってたことに気付き、オレはもみほぐす。

 

「そうですね。ちょっと考え方変えます。じゃないとオレは戦えないから」

「そうしなよ」

 

最近よくヒバリさんに導いてもらってるなぁと思いながら、今度こそオレは教室へと向かう。

 

今日は骸のとこへ行って相談しよう。さっきまでの考えだったら、骸に怒られていただろうなぁ。君はバカですか、奪うも何も向こうは初めから資格がないじゃないですかってね。頭ではわかってるんだけど、感情はそうはいかないんだってと言ってもあいつはわかってくれなさそうだし。

 

でもオレらしいってなんだろうね。

 

うーん、怒られはしなくなっただろうけど、骸にめんどくさい人ですねってまた言われる気がするよ……。




沢田ツナ
雲雀のおかげでうだうだ悩んではいるものの、引きずってはいない。
周りもツナが何かに悩んでるだろうなと気付くが、そこまで心配はしていない。

雲雀恭弥
またツナらしくないから口を開いた。
ツナは手のかかる小動物。

六道骸
まためんどくさいことになっていた。
相手の背景を知っているから、前のような気持ちだけでは戦えないことはわかっているが、めんどくさいのはめんどくさい。
氷漬けのままでいい気がしてきた。
でもそれはそれでめんどくさいことになりそうな気もする。


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新しいクラスに馴染んできて、ふとオレは気付いた。リボーンが来て、もう一年たってるじゃん。せっかくだしと思ったオレは、土曜日に出かけようって誘った。もちろんラルにもちゃんと声をかけたよ。オレとリボーンが出かけるなら家綱の護衛はラルに任せなきゃいけないしね。

 

「久しぶりだね」

「まぁな」

 

特に行きたいところはないからフラフラと歩きながらリボーンと話す。前はどこに居たの!?っていうぐらい一緒に居たけど、同性のラルの方がオレの護衛に向いてるのもあって、リボーンと2人っきりっていうのは本当に久しぶりだ。

 

「そういや、お前の目から見てオレはどうなの?」

 

オレはリボーンとなら会話がなくても気にはならないけど、ちょっと聞きたかったんだよねと思って言ってみた。

 

「……オレに相談したいことがあるんじゃなかったのか?」

「あはは。やっぱ悩んでること気付くよね」

 

でも今回はその話をしたいから誘ったんじゃないよって教える。リボーンはそれがオレの本心なのか確認するためにオレの目をみた。

 

「そうか」

「うん。あ、別にお前を信頼してないとかそういうのじゃないよ。骸にはまぁ相談というか愚痴みたいな感じで話してはいるけど……。それはあんま意味がないっていうか……」

 

うーん、なんて言ったらいいかなと考えながらも口を開く。

 

「オレってさ、すっげー頑固なんだよ。骸と話してるけど、結局自分が考え抜いて出した答えじゃないと嫌なんだ。決めるのにすげー時間もかかるだろうし、情けないことも言うけど、ちゃんと答えを出すつもり。だからあまりにも遅いと思ったら、お前が声をかけて」

 

多分お前がみてられないって思ったら、オレはすぐ答えを出すよって言葉を続けて、つい笑ってしまった。尻を叩かれて一番効果があるのはやっぱりリボーンなんだなーって。

 

「おめーが何に悩んでるかオレはしらねぇぞ」

「あ、そっか。んーでもお前なら気付くよ、絶対」

 

今オレが悩んでることと結びつくかはわかんないけど、その時が迫ったらオレに何か言うよ。だってリボーンだよ。

 

「オレは一流だからな」

 

そうそうとオレは何度も頷く。

 

「おめーが何か隠してることも。その秘密でオレを信頼しているのもオレはわかってるぞ」

「ハハハ……」

 

さすがリボーンだよ。ほとんどバレてるじゃん。……どうしよーー!

 

「暴くつもりはねーけどな」

「え?そうなの?」

「ああ」

 

なんでだろうってまた顔に出てたみたいでリボーンは口を開いた。

 

「おめーの性格もわかってる。自分1人の問題なら、オレに相談してんだろ」

「……うん。そうだね」

 

ああ、やばいなぁ。前より一緒にいる時間も少ないし、話してる量だってびっくりするぐらい少ないのに、お前がちゃんとオレを見てくれるってわかってすっげー嬉しい。

 

「ツナ、オレはそんな顔をさせるために言ったんじゃねぇぞ」

「うん。ごめん」

 

リボーンにハンカチを渡されたけど、大丈夫と言って服の裾で勢いよく拭く。オレの男っぽい行動に呆れてリボーンはため息ついちゃったけど、オレが笑って顔をあげるとあいつは満足そうな顔をしたんだ。

 

 

まだ家に帰るのも早いのもあって、公園で何か飲もうっていう話になった。どっかの店に入ってもいいけど、オレ達の話って微妙な内容になることも多いからね。家が使えないとなると公園のベンチとかの方が無難なんだ。盗み聞きとかしにくいからね。ずっとオレ達の近くにいればすぐ気付くから。

 

オレはコーラで、リボーンはエスプレッソをお持ち帰りする。女に払わせるわけにはいかないってリボーンが奢ってくれたことには驚いたけど。母さんには奢ってもらうのにね。いやまぁ母さんがリボーンをただの赤ん坊だと思ってるのもあるんだけど。

 

リボーンとベンチに座って、オレはゴクゴクとコーラを飲む。すっげー平和。まぁ中学卒業すればそんなことも言ってられないぐらい忙しくなるんだろうなぁ。オレこの体で何徹まで出来るんだろうね。ある一定まで行くとハイになって元気になるんだけど、そこまでこの体もつかなぁ。普段から死ぬ気になるわけにはいかないし。今のうちに試しておこうかなぁ。

 

「何考えてんだ」

「いやさ、今のうちに限界を知っとくべきかなって。リボーンは何徹までいけると思う?」

「……体にわりぃからやめろ」

 

ええっ!?ってオレは驚いた。お前、三徹時にオレが寝そうになったら何度も蹴って起こしたくせに!?

 

「おめーは女だからな。無理すると子どもが出来なくなるぞ」

「あ、それはダメだね」

 

そういうのも影響するのかーってオレはまた一つ勉強になった。

 

「子どもで思い出した。お前に頼みたいことがあったよ」

「なんだ?」

「まだまだ先のことだけど……オレに子どもが出来てさ、ある程度大きくなったらお前に家庭教師してほしいんだ」

 

前の時もそのつもりだったんだよ。……出来なかったけど。

 

ハハハ……と心の中で苦笑いしながらも変だなって思った。リボーンから返事がないや。

 

「リボーン?」

「……ツナ、お前は骸からどこまでアルコバレーノのことを聞いてんだ?」

「どこまでって……」

 

今ここで全部って答えてもいいのかなって、オレが躊躇している間にリボーンは何でもねぇと呟いた。あれ?これ言った方が良かったよな?オレが口を開こうとする前に、リボーンが先に開いた。

 

「いいぞ。おめーに子どもが出来たら、立派なマフィアのボスになるためにビシビシしごいてやる」

「え?ほんと?」

「ああ」

「絶対?約束できる?」

「……ああ。約束すっぞ」

 

ニッと笑った姿が、嘘じゃないと思ったオレはやったと喜んだ。けど、男だったら大変な目にあう気がすることに気付いた。だからオレはすぐ家綱みたいに理不尽なことはやめてよって言った。けどあいつはさぁなって言うんだよ。産まれる子が女の子でありますようにと心の中で呟いたよ。いやでも今の段階でもマフィアのボスなら男の方がいいよなって思うことが多いから、男の子の方がいいよな?

 

うわっ、すっげー悩む……。どっちも経験してるからこそ悩む。いやまぁ選べるわけじゃないんだけどさ。

 

「肝心なことを忘れてんぞ。1人で子どもは出来ねぇぞ」

 

ああ……とオレは頭を抱える。結局そこに行き着くんだーって。

 

いやでも今日はリボーンと約束出来たし十分だよね。

 




沢田ツナ
リボーンと未来の約束が出来て満足。
大事なところをすっ飛ばして進んだ。

リボーン
最初はウソだった。が、ツナの目を見てウソは通じないと気付いた。
約束してしまった手前、生きるしかねーかと思った。
アルコバレーノのこともどこまで知ってるんだか……と約束後にまた思ったが、ツナが知っても知らなくても一緒だと思い、聞くのはやめた。


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「GWにマフィアランドへ行くのでしょう。クロームも連れて行ってあげてください」

 

へ?ってなったけど、骸はオレの反応を無視して僕はヴェルデ博士のところへ行きますからって続けた。……相変わらずどこでその情報を知ったんだろ。オレまだ聞いてないんだけど。

 

まぁいっか。あそこはマフィアが経営しているけど、あんまりマフィアっぽくないところだしね。クロームは行ってもいいと思ったのかも。いやでもこいつのことだからこれも社会勉強とか言ってそう。

 

「あ、でもオレの記憶じゃスカルが攻めてきたような」

「その件はもう問題ありません」

 

うわっ……。オレも過保護かもって思う時あるけど、こいつも酷いよな。とにかくクロームを連れて行くことにオレも反対じゃないから、了解って返事をしたんだ。

 

家に帰ったオレはさっそくリボーンを探せば、家綱の部屋にいることがわかった。ちょっと悩んだけどノックする。

 

「家綱、ちょっといい?リボーンに用があるんだ。お前も聞いた方がいいかも?」

「……入れ」

 

渋々だったけど、許可をもらえたよ。仲良くはなってないけど、態度が軟化した気がするんだ。なんでかはしらないけど。

 

「ごめん、ありがとう。あのさ、今度のGWのことなんだけどクロームも連れて行っていい?」

 

ピクリと家綱が反応した。そういやフラれたけど、まだ好きなのかな。あれ?家綱も居るのになんであいつはクロームのこと頼んだんだろ。……やっぱあいつの考えわかんねぇ。

 

「いいぞ」

「サンキュ。って、やっぱマフィアランドに行くんだ」

「マフィアランド!?」

 

なんだそれというような家綱の反応が新鮮に感じる。オレも最初は意味わかんなかったし。リボーンが家綱にどうやってマフィアランドが出来たか説明してくれた。家綱は微妙な顔をしていたよ。それでもあそこは白のマフィアがお金を出しあって出来たところだからね。悪いマフィアはいないよ。

 

「ただの遊園地と思ったらいいよ。受付とかはオレがするから」

「……いや、やっぱなんでもねぇ」

 

家綱って割と危機回避能力が高いよな。絶対オレなら受付ってなに?とか聞くよ。

 

「まぁそっちは問題ないと思うんだけど……、ラルも連れて行くんだよね?」

「そうだぞ」

 

うわぁ……リボーンが悪い顔してる。今回騙されるの絶対ラルだ。

 

「ほどほどにしとけよ。オレやだよ、銃撃戦の中であの2人を止めるの」

「なんだそこまで知ってんのか」

「あーうん、まぁね。確かラルの教え子だったっけ?」

「ああ」

 

オレの中では傍迷惑な夫婦の印象が強い。結婚するまですっげー時間はかかったし、夫婦喧嘩もすごくて。まぁほとんどラルがテレて一方的に怒ってるだけだった。リボーンに言われてオレが何度か止めに行ったよ。毎回なんでオレが!?ってなったけど、建物とかの被害がすごいから行かなくちゃいけなくて……。そういう点を考えると、前のヒバリさんはちゃんとしてた。基本、アジトの中でだったから。いやまぁ骸が絡むと違ったけど。

 

「……マフィアランド行きたくねぇ」

 

オレ達の会話を聞いて呟いた家綱だったけど、リボーンとラルが行くって時点で強制参加は決定していた。まぁそっちに被害が行かないように頑張るから、普通に楽しんで。

 

 

 

 

 

「行き先はマフィアランドだと!?」

 

ラルの大声にオレは思わず耳を塞いだ。ってか、この反応からするとコロネロが今どこにいるかは知ってたんだね。

 

残念ながらもう船は出ているし、オレの護衛だろってリボーンに煽られたラルは真っ赤な顔をして怒鳴りながらも逃げようとはしなかった。リボーンにラルがイジられる未来しか見えない。それでいい雰囲気になったらうぜーとか言うんだろ。ラルが怒りたくなるのもわかるよ……。

 

船の中ではクロームと一緒にちび達と遊んで時間を過ごした。ちなみに今回獄寺君は居ない。バイトを入れてたみたいで泣く泣く諦めたみたい。そんなにお金厳しいのかなって思ってビアンキに相談したら、デート代を貯めてるんでしょうね、だって。ついに獄寺君に彼女が出来たんだ!?ってオレは喜んだんだけど、ビアンキに隼人には絶対言っちゃダメよって迫られた。だからまだ片思いなのかなって思ってオレは頷いた。オレがいうと変に遠慮とかしそうだしね。

 

マフィアランドにつくと、オレはみんなと別れて受付へと向かう。

 

「って、クロームも遊んで来たらいいよ」

「ダメ。骸様がツナと一緒にいるようにって」

 

骸のことだからオレはコロネロと顔を合わせておきたいってわかってるはずだよな。少し考えて、一緒に行くことにした。何かあってもオレがクロームを守ればいいし。ラルもオレの護衛だからついてくるみたい。めっちゃそわそわしてるけど。いやまぁそれでも気付ける人は少数だよね。

 

受付で推薦状や紹介状を聞かれたけど、オレは持ってない。リボーンにも渡されなかったし。でもオレはここの裏コードを知ってるからそれを口にする。オレが言ったのはコロネロの面会コード。だから今回は普通に電車に乗れた。

 

「沢田ツナ、どこへ向かってる」

 

オレが変なところへ行こうとしてるからラルが出て来たよ。電車はオレ達しか乗ってないしね。それにしてもラルはここのことあんまり知らないんだなぁ。でもそうだよなぁ、遊園地とかラルは仕事でしか行かなさそう。父さんのとこにいるなら、なかなかそういう仕事はないだろうし。

 

いろいろオレが考えてる間に、電車はついて扉が開いてしまった。咄嗟にラルは武器をかまえたけど、目の前にいた人物を見て頬を染めた。

 

「オレに会いたい奴は誰……ラル?」

「コロネロ……」

 

えっと、オレ達は邪魔だよね?クロームとどうしよっかって目で会話する。どうする?ってコテンと首をかしげるクロームは今日もオレの癒しだよ。

 

「ちゃおっス」

「リボーン!?コラ!!」

 

……一瞬で空気が変わっちゃった。挨拶がてら2人で銃をぶっ放してるけど、ラルがプルプル震えてるよ。そろそろキレる気がする。

 

「やめんか!リボーン、沢田家綱の護衛はどうした!」

「その辺は抜かりねぇぞ。他の奴に頼んで来た。オレも久々に顔を合わせようと思ってな」

「本音は?」

「面白そうなんだもん」

 

オレが聞いたら、リボーンはぶりっ子しやがった。この後の展開を読めたオレはクロームと一緒に端へ移動し隠れる。……懐かしいなぁ、この発砲音の嵐。はぁ。

 

「キリがないから止めてくるよ。クロームはここで待ってて」

「ツナ、私がやる」

「え?」

 

クロームの方に視線を向けると、もう三叉槍をかまえていた。ハッと3人の方へ視線を移すと、地面に大量の花が咲いた。突然のことに3人の動きが止まる。

 

「やるな。一瞬だが錯覚しちまったぞ」

「ああ。なかなかの腕だぜ、コラ」

「悪くはない」

 

この3人から評価もらえるって凄いことだよ!オレはクロームを褒めようとしたんだけど、肝心のクロームが首を振った。

 

「骸様が言った通りだった……」

 

骸のやつ、何言ったんだよ……と思いながら、クロームになんて声をかけようかとオレは悩む。そういえば、前にも似たようなことがあった気がする……。

 

「クロームは……戦いたいの?」

「……一緒にいたい」

「そっか」

 

クロームは中学卒業すれば、オレ達はどっか行っちゃうってわかっちゃったんだ。小さい頃からオレ達の会話聞いてたもんな。でも戦いたいとは言わなかった。さっきの幻術も人を傷つけるようなものじゃなかったしね。2度目でいろいろ変わったと散々思って来たけど、一番変わったのはクロームだったかもしれない。悪いことじゃないけどね。それにオレ達もそういう風に見ていたから。

 

うーん……。オレ達と一緒いて、危ない目にあう可能性はクロームもわかってるよね。クロームは覚悟の上で言った。けど、オレは危ない目に合わせたくないし……。いやでも元はと言えば、オレが何も考えずクロームの前で話してたからだし……。

 

「ツナ」

「リボーン……」

 

うー、わかってる。今決めなきゃいかないことだって。そしてオレ次第なことも。クロームはもうどうしたいか伝えたし、骸もオレの判断に任せるってことだろ。

 

「……なら、一緒に行ってアジトでご飯作って待っててよ。クロームがいるなら骸は帰ってくるからさ。もちろんオレも」

 

いいのかなーと思いながらも口にした。でもクロームの顔を見て、オレは間違ってなかったと思った。

 

「うんっ!」

「わわっ」

 

クロームを抱きとめて、ぽんぽんと背中を叩く。クロームはずっと悩んでたんだろうなぁ。気付かなくてごめんね。リボーンには発破をかけてくれてありがとうと口パクし、成り行きを見守ってくれてた2人にもごめんってオレは視線を送った。

 

 

 

今度こそコロネロに自己紹介する。クロームが落ち着いたのはいいけど、恥ずかしくなったのか向こうへ行っちゃったけど。まぁオレの目の届く位置にはいるから、止めはしなかった。

 

「えっと、オレは沢田ツナ。一応次期ボンゴレボス筆頭」

「オレはコロネロだぜ、コラ!」

 

ジッとコロネロに見つめられ、居心地が悪いなぁなんて思う。いやだってさ、コロネロもリボーンと同じですぐに手や足が出るイメージが強くて……。ジッと我慢していたら、笑われた。

 

「典型的な見た目に騙されると痛い目にあうタイプだぜ」

 

これって褒められたんだよな?やっぱ顔のせいなのかな。オレが顔をペタペタ触っていると、リボーンとラルもコロネロの意見に賛同したのか深く頷かれた。

 

「それでオレに何の用だ、コラ!」

「なんだ?コロネロに会いたかったのか?」

「まぁね」

 

ラルから視線を感じたから、そういう気持ちはないよって慌てて弁解する。真っ赤な顔して銃を乱射されたから、ひぃと言いながらも避ける。コロネロが居るからすっげーラルが怒りっぽいよ。オレは何も言ってないっていうなら、撃つのをやめてってば。

 

「ちょ、ちょっとアルコバレーノに会ってみたかっただけなんだって!」

 

オレがそう叫ぶとラルがピタリと手を止めた。はぁと安心したように息を吐く。いやでも言っちゃダメだったかな。でもこれぐらい言わないと止まる気がしなかったんだよ。

 

「ツナ、お前は深入りするな。これはオレ達の問題だ」

「やだよ。この前言っただろ。オレは頑固って。これは絶対譲れない」

 

ジッとオレがリボーンを見つめると、はぁとため息を吐かれちゃった。

 

「相変わらず女に甘いな、コラ」

「うるせーぞ。お前も人のこと言えねぇだろ」

 

そう言ってリボーンはラルを見た。うわー2人とも顔真っ赤だ。そういや、ラルを庇ったからコロネロがアルコバレーノになっちゃったんだっけ。

 

「ツナ、行くぞ。もう目的は果たしたんだろ」

「え、あ、うん」

 

すっげー珍しい。うぜーとか言わなかったし、この空気を壊さなかったよ。まぁオレもあの2人には幸せになってほしいからクロームに声をかけて大人しく電車で帰ったよ。そのあとはみんなと合流して遊んだ。まぁちょっとしか時間はなかったけどね。

 

その日から時折ラルが動揺する気配を感じるから、コロネロと連絡でもしてるのかなーってわかって、オレはちょっと笑ってしまった。

 




六道凪(クローム)
出会い方やツナと骸の接し方で戦う気持ちは芽生えなかった。
でも2人が帰ってくる場所を守る覚悟はあった。

六道骸
クロームに教えながら、以前とまったく違う成長をしたことに気付いていた。
そのため超一流には通用しないと教え、戦士の素質はないとはっきり伝えていた。
下手に前に出て来られると邪魔だから。
あとはクロームが覚悟を見せれば、ツナは連れて行くだろうと思っていた。

沢田ツナ
自分のうっかりもあるが、クロームの意思を尊重した。
雲雀の言葉がなければ置いていった可能性もあった。
そしてもし今回も男だったら、クロームと結婚していた可能性もあった。

リボーン
ツナと約束したため、少しでも生存率をあげようとした。
コロネロとラルを接触させようとしたのは実はそれが理由。
ただツナもアルコバレーノの行く末を気にかけてしまったのは予想外。
コロネロの言う通り、女には甘い。自覚はある。

コロネロ
リボーンが絡んだとわかっているが、ラルと会えたことには感謝している。
会うと我慢できず、連絡先を交換した。

ラル・ミルチ
護衛中だぞとリボーンに言われた時、ツナにも同じようなことを言われたことを思い出した。
嫌なところを似たと本気で思った。
その後、コロネロから連絡が来てアワアワしている。
それでも仕事中なので超一流でなければ気付かないレベルの動揺。
もしツナが笑っていることに気づけば、ショットガンをぶっ放している。


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一時、除外設定になりました。ごめんなさい。
そうか、これって転生になるのか!と驚いたw
ツナの感覚では巻き戻ったんだけど、骸なら転生だよね。そりゃそうだと納得。
失礼しました!


いつものようにクロームを迎えに行ったら、骸ん家にヴェルデが居た。最近アルコバレーノとの遭遇率が高いなぁ。……川平さん大丈夫かな。見つからなきゃいいけど。あれ?もしかしてよく出前を頼んでいたのはそのせい?

 

「うむ。六道骸ほどの男がついた人物はどれほどかと思ったが、ただの女ではないか」

「なんだとっ!?」

「わーわー、獄寺君おさえて。相手はアルコバレーノだから」

「マフィア界に君臨する、あの?リボーンさんと同じ?」

 

そうそうとオレは頷く。ってか、獄寺君ってアルコバレーノのこと知ってたんだ。

 

「えっと、オレは沢田ツナ。よろしくね」

「断る。慣れ合う気はないからな」

 

……ヴェルデと獄寺君の相性って最悪じゃん。なだめるの大変なんだけど。

 

「そもそも私はボンゴレ10代目を暗殺しに来た。……よ、よせ。私はただの科学者だ。私の科学がどこまで通用するか腕試しをしに来ただけだ」

「無駄な労力と僕は言ってるのですけどね」

 

はぁと呆れた感じでため息を吐くなら暇があるなら、獄寺君を止める手伝いしてってば。あーもう!

 

「さっきから何をしている。む、ヴェルデか」

「久しいな、ラル・ミルチ」

 

ラルー!って感じで様子を見にきてくれたラルに感動する。多分いつもより遅かったからだろうね。

 

やっとちょっとは落ち着いたので、ヴェルデの話を聞く。ヴェルデは光学迷彩の研究をしていたらしいけど、骸に無駄と言われたんだって。そこまでいうのなら、試してみようってオレのところへ来たらしい。はいはい、無茶振りね。……無茶じゃないや。

 

「えっと、オレがヴェルデの部下を倒せばいいってことだよね?」

「ああ。ある一定の年齢以下の人間には見えるように設計しているからな。そこの男もラル・ミルチも文句はないだろう」

 

どうする?とラルに視線を投げかけられたから、オレは別にいいよって答える。獄寺君もオレの安全が確保されてるから渋々だけどいいみたいだし。あ、もちろん手を出すのはオレだけにしてって条件はつけたよ。

 

ってか、これヴェルデの方が不利じゃない?って思ったんだけど、ヴェルデは光学迷彩に自信があるらしい。だから今から仕掛けるってオレが聞いてもいいんだって。……すっげー、自信。

 

「なぁ骸。オレ絶対見つけると思うんだけど」

「いいのではないですか?」

 

助言を聞かなかったヴェルデの方が悪いって考えなのね。はいはいと頷いていれば、オレのケイタイが鳴った。ヒバリさんからだよ。こんな時間に珍しい。

 

「おはようございます、ヒバリさん。……えっ、あ、はい!多分そうです。すみませんっ!あとで回収しに行きますので、すみません!」

 

はぁとため息を吐きながらオレは通話をきった。骸はオレの声だけで察したらしく、笑っていた。

 

「……ヴェルデごめん。ヒバリさんが見つけちゃて、咬み殺したみたい。オレ案件っぽいから連絡きた。邪魔だから回収してって」

「なっ!?どこのガキが協力したんだ」

「違いますよ。あの男のことです、気配に反応したのでしょう」

「オレの存在にもすぐ気付いた男だからな。やれるだろう……」

 

ラルもヒバリさんにすぐバレちゃったもんね。あの人、ほんとどこ目指してるんだろ。獄寺君も対抗しなくていいからね。オレにも試せとか言わなくていいから。オレの予想だと、気配だけでは厳しいだろうけど殺気には反応できると思うから。

 

「だから時間の無駄と言ったのです。雲雀恭弥にバレる程度では、彼女には通用しませんよ」

「お前なぁ、ヒバリさんは普通の枠から出てるからな」

 

ヒバリさん程度とか言ったら、他の人達はどうなるのって話だよ。……オレのツッコミは無視された。はぁと再びため息を吐いたオレは、成り行きを見守っていたクロームに声をかけた。もうほっといて学校に行こうって。ヒバリさんが放置した場所は教えたし、あとはそっちでしてね。骸も多分目的を達したからいいはずだし。

 

案の定、オレが出て行っても誰も止めはしなかった。なんもしてないのに朝から疲れたよ。

 

 

学校についたらすぐオレはヒバリさんの姿を探した。朝から迷惑かけちゃったからね、謝りに行ったんだ。

 

オレがマフィアの跡取りって知ってるのもあるんだろうけど、今のヒバリさんまじで優しい。小言をもらったけど、許してくれたからね。……骸が関わってるって知ったら怖いけど。

 

ちゃんと黙ってた甲斐があったのか、ふつーにオレは授業を受けられた。けど、今日は授業の一環で小学校の夢について班にわかれて調べることになった。それも宿題という形で出た。仕方ないからオレはヒバリさんにメールを送信。授業だし許可をもらえた。といっても、返事はなかったんだけど。ないってことはセーフだから。

 

なんで中学生にもなって小学校のころの夢なんか調べるのかなぁって思ったけど、高校の進路を見据えてかも。受験があるし、一度原点に戻れってことなのかな。わかんないけど。

 

前の時は何にも考えず、ただ京子ちゃんと同じ班になったことを喜んだっけ。……いろいろ思い出してきた。そういや暗殺者きたよ。でももう倒しちゃったね、ヒバリさんが。

 

それよりジャンニーニだよ。……家綱が大変な目に合いそう。リボーンがオレの部屋に武器を広げるとは思わないし、京子ちゃんと同じ班になっていたから。ちなみにオレは山本と同じ班になったから、放課後は山本ん家に集合。どうしよっかな。

 

この頃のジャンニーニは抜けてるからなぁと思いながら、オレは避ける。なんでオレがいる位置に着地しようとするかなぁ。ラルも反応していたけど、ジャンニーニの顔は知っていたみたい。じゃなきゃ、撃ってる。もしくはリボーンに聞いていたのかな。朝のこともあったから、途中で絶対報告はしているだろうし。獄寺君が珍しくいそいそと帰ったのはジャンニーニが来るのを聞いたからだよね。それならオレにも言ってほしいんだけど、知っていると思って言わなかったのかな。

 

「初めまして10代目候補の沢田ツナ様。私、ボンゴレファミリー御用達、武器チューナのジャンニーニと申します」

「ええっと、よろしくお願いします」

 

これから世話になるだろうなぁと思ったオレは真面目に頭を下げる。アジトとかアジトとか作ってほしいから。イタリアと日本には最低でも必要だもんね。あれ?でもジャンニーニっていろんな人が暗殺されているから来たとかじゃなかった?骸のあの感じだと真っ先にオレで使えるか調べた気がする。え?じゃあなんで来たの?

 

「リボーン様からの依頼です」

「あ、そうなの?じゃあとりあえずオレん家に案内するよ」

 

リボーンは家綱についてるから仕方ないよねって思いつつ、こっそり家綱にオレは謝った。

 

家に帰ると家綱の叫び声が聞こえた。部屋が武器だらけなんだろうなぁと懐かしく思い、遠い目をしてしまう。現実逃避をしながらも、ジャンニーニを家綱の部屋へ連れてったけど。

 

「ほぉ。これは改造しがいがありますなー。おっと失礼」

 

ジャンニーニは目の前の光景に興味津々だったけど、すぐに思い出したのか、家綱とリボーンに挨拶していた。家綱になんで連れて来たんだよって目で訴えられたけど、お前も同じことするだろって目で訴え返す。家綱はリボーンを見て、うなだれた。……なんかごめん。

 

「仲がよろしいですな」

「誰がだ!」

 

家綱の反応にオレは苦笑いする。まぁ目だけで意思疎通できるのは双子だからであって、仲良いわけじゃないもんね。

 

「えっとオレ、宿題があって山本ん家に行かないといけないんだけど……」

 

もういいかなって確認したら、リボーンに呼び止められたから首をかしげる。

 

「おめーはこの中で欲しい武器はねぇのか?」

「え?」

「ヒバリにもらってるトンファーじゃ、実力の半分も出せてねぇからな」

 

やっぱ見る人が見ればわかるよね。相手が弱かったら、トンファーでも普通に使えるんだけどなぁ。にしても、武器なぁ。ぐるーっと家綱の部屋に飾ってあるリボーンの武器を見渡す。前の時にリボーンに徹底教育されたから銃だけはまともに使えるけど、オレ好きじゃないんだよね。言い方はあれだけど、感触が残らないから。

 

「んー、どれもピンとこないかな」

「そのグローブもか?」

 

オレの日課のトレーニングからリボーンは初代と同じ武器と思ったのかも。

 

「うん。さっぱり」

「そうか」

 

もしかしてこれが合ってるなら、オレに合わせてチューニングしてもらおうとしてジャンニーニを呼んだかな。本当はレオンが生み出すのが一番いいんだけど、オレに試練がやってくるのかリボーンは気になっているんだろうなぁ。オレもそこが気になってるし。

 

用意してくれたリボーンにちょっと悪いことしたかなぁって思いながら、オレは山本の家に向かった。

 

山本の家で班のみんなと一緒に小学校の夢を調べる。やっぱ山本の夢は野球選手になることだった。みんなが応援しているのもあって、オレは俯いてしまった。

 

「んー、オレは野球よりやりたいことが出来たんだ。な、ツナ」

「うぇっ!?えっと……」

 

オレが言い淀んでると、山本はみんなにあっさりとオレの手伝いをするって言っちゃった。みんなは当然オレのとこ?って疑問になっちゃって、なんとかオレは父さんの仕事の関係の跡継ぎ候補とだけ答えた。跡継ぎっていう響きから金持ちと思われたみたいで、羨ましいという話に移り変わった。大変なだけだよって言いながらも、チラッとオレが山本の様子を窺うと、頭を撫でられてしまった。

 

山本にはオレの気持ちなんてバレバレなんだろうなぁ……。

 

「じゃツナの将来の夢は会社を継ぐって書いてるのか?」

「へ?いや多分違うと思う。そん時は他にも跡継ぎ候補がいっぱいいたし、オレにまわってくる可能性は低かったから」

 

オレ自身何書いたか覚えてないんだよなぁと思いながら、小学生の時に書いた作文をちゃんと読む。いくらオレがうっかりしてるって言っても、流石に黒のマフィアを一掃するとかは書いていないはず。

 

「うーん、たいしたこと書いてないね。結婚して子どもを産みたいだって」

 

ウソは書かずに無難な内容を選んだんだろうなぁとその時のオレの心境がわかってしまった。あんまりこの宿題には役に立たない内容だなーとオレは思っていたんだけど、同じ班だった女の子達にものすごく賛同された。ちょっとオレが引くぐらいに。憧れの中の一つではあるんだけど、作文とかでは恥ずかしくて書けなかったんだって。へ、へぇ……とオレと男子はその勢いに押されながら、なんとか宿題を終えた。

 

また明日学校で、と山本ん家の前でみんなと別れる。オレはちょっと山本に用があったから最後まで残った。

 

「あのさ、山本。オレもう引きずるのやめる」

「ん?」

「だからさ……。山本、オレについてきて」

「おう!」

 

ニカッと笑った山本は多分オレが知ってる中でも上位に入るぐらい嬉しそうな顔だった。

 

 

今日一日いろいろあったなぁとオレは帰っていたんだけど、まだ終わりじゃなかった。

 

「……獄寺君、だよね?」

「じゅ、10代目……」

 

獄寺君は小さくなった姿をオレに見られたくなかったみたいで、すっげーショックを受けていた。前も10年バズーカの影響で縮んだけど、リボーンが防いでるから起きないと思っていたよ。

 

「いろいろあったみたいだし、今日は泊まっていきなよ。その姿じゃ大変でしょ。ね?」

「う……。は、はい……」

 

ショボーンとした獄寺君をオレが抱き上げると、獄寺君は真っ赤な顔になった。どうしたんだろ?

 

「そ、その10代目、当たってます……」

「ん?あ、そっか」

 

ちび達と同じ感覚で抱き上げたのはまずかったね。ごめんごめんと思いながらも、獄寺君がちっこいのもあってすぐ忘れてしまって、その度にビアンキにダメよって注意された。

 

「獄寺君もごめんね。オレに子ども扱いされるのは嫌だよね」

「そんなことないっス……」

 

あ、そう?とオレが良かったとホッとしていれば、急にリボーンが獄寺君をボコり始めた。なんで!?

 




ヴェルデ
研究をしているといつのまにか骸が部屋で寛いでいたのが、2人の出会い。
さらに無駄な労力と言われるが、自分の科学力では倒せなかった。
この男を従えている人物に興味が出てやってきた。
ツナに試す前に敗れた。

雲雀恭弥
誰もいないところで気配がしたから、トンファーで殴った。
骸じゃなかったが、咬み殺すのは決定。
自分のところで処理をしてもいいが、ツナ案件だろうと判断し連絡をいれた。

沢田ツナ
クロームのこともあって、いろいろと吹っ切れてきた。
ちっこい獄寺君は可愛いなぁといっぱいかまった。

獄寺隼人
災難だと思っていれば、役得だった。
一応、獄寺自身も止めている。
最後にはツナに一緒にお風呂入る?と聞かれ、鼻血が出た。
リボーンに何度かボコられたが、幸せすぎて効果はあまりなかった。

リボーン
ツナがいないので、ランボが10年バズーカを使うのを防がなかった。
のちにその判断を悔いることになる。
獄寺もツナを止めているが、顔が緩みきっているのでアウト。



作者の独り言。
原作沿いのはずなのに、オリジナル要素が多すぎ。
なんでだぁぁ!と思いながら書いてる。


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また体調崩してました。ごめんなさい。


夏休みに入っても相変わらずオレはバタバタと過ごしていた。理由は黒曜中との合同体育祭が今年もあるから。オレの中では去年限定だったんだけど、あの2人がヤル気満々で……。もう2人でやってよって言いたくなったよ。

 

というか、まだヒバリさんはわかるんだよ。骸だよ、骸。あいつはヴァリアーが攻めてくる可能性があるってわかってるはずだよね!?なんで開催する気満々なの!?

 

あいつの言い分としては、リング争奪戦がある軸とは限らないから。まぁそれはわかるよ、パラレルワールドって話だよね。あと骸の記憶だと、ヴァリアーが攻めてくるのは10月らしい。僕が仕掛けてこないだけありがたく思いなさいだって。ふざけんなってオレは一瞬思った。最後に、去年やったのにやらないのはおかしいから。……これは絶対去年負けたのが関係している。いろいろ理由をつけて勝ちたいだけだろ!ってなった。もうこれ伝統行事になりそうだよ……と思いながらオレは走り回ってる。

 

そんな中でも風紀委員としての仕事もまわってきた。普段はないんだけど、夏祭りにひったくりが出たからオレも駆り出されたんだ。並盛でひったくりなんてよくやるよね。

 

実はこのひったくり、オレは知ってるはずなんだけど、思い出せない。屋台をやったのとみんなと花火を見たことは印象に残ってるから覚えているんだけど、ひったくり犯の顔はさっぱり。相変わらずオレの記憶力って酷いよなと思いながら、制服で歩き回る。

 

「ツナさーん」

 

ハルの声が聞こえたので、キョロキョロと周りを見渡す。女の子達みんな揃ってるじゃん。しかもみんな浴衣だ。クロームの浴衣は骸が買ったんだろうなぁ。この中の誰かのところで着せてもらったんだろうね。

 

「みんなすっげー可愛いよ!」

 

うんうんとオレは満足そうに頷いた後に気付いた。お兄さんもいる。

 

「お兄さん、お疲れ様です」

「む?」

 

あれ?お兄さんはナンパ避けじゃないのかな。

 

「よくわかったじゃない。私が京子のお兄さんに頼んだの」

「あ、やっぱり」

 

黒川はやっぱしっかりしてるなー。このメンバーなら絶対やってくるってわかりきってるもんね。そしてお兄さんは付き合ってくれてるけど、意味はわかってないんだ。でもまぁ嫉妬の視線に気付いてないみたいだし、いいよね。

 

「ツナさん、風紀委員のお仕事はまだ終わらないのですか?」

「え?」

「一緒に花火見たいなって」

「うーん、どうだろ。花火会場の方は厳しいけど、並盛神社のところだったら間に合うかも」

 

あそこは穴場だからよく見えるよとみんなに教えれば、そこに集合しようってことになった。……って思い出した。あそこでひったくり犯と戦った気がする。あっぶねー!

 

「あそこは混まないし、ギリギリに来てくれない?いやさ、さっきからいい匂いでお腹減っちゃって……出来ればあったかいの買っててくれない?」

 

そういうことならとみんなが頷いてくれた。いやほんと助かる。実際ちょっとお腹減ってたし。クロームにお金を預けて、みんなに楽しんでねーと言って別れた。

 

あの2人ってやっぱ相性いいよねと思いながら、フラフラとオレは歩く。黒川にはオレも気をつけろって言われたけど、オレなんかにナンパする人なんていないんだよね。迷子を見つけたっていう声はかけらるけど。

 

「あれ?獄寺君?それに山本も」

「10代目!?」

「よぉツナ」

 

オレが忙しいのもあって町内会の出し物に出なかったから、屋台をしてるとは思わなかったなぁ。

 

「あの、もしかしてだけど……また獄寺君バイト?」

「え、ええ……まぁ」

「獄寺が1人じゃ大変だっていうからオレは助っ人なのな」

「バカ、山本!言うんじゃねぇ!」

 

獄寺君が怒ってるのは変わりないけど、この2人は前より仲良いよね。これはオレが女だからかな。獄寺君はいつも側に居てくれるけど、女の子達と話すときは譲ってくれるもんね。女子同士で盛り上がってる間とか、気まずいのもあって山本と話すことが多いんだろうなぁ。前は3人でつるんでたからちょっと寂しい。……その分、オレは京子ちゃん達と一緒にいるから仕方ないよね。

 

「じゃぁオレもちょっとは貢献するよ」

 

前に大人イーピンに教えてもらったことを2人に話す。オレってこういうのは覚えているんだよね、楽しかったし。

 

「さすが、10代目です!」

「や、これ受け売りなんだよね」

「受け売りでも覚えていたのはツナだろ。すげーことには変わりねーのな」

 

えへへ、そうかなってちょっとテレた。オレの記憶は偏りすぎって思っていたから、ちょっと嬉しい。って、オレがテレてる間に、獄寺君が山本にケンカ売っていた。なんで!?

 

「ちょ、獄寺君!?」

 

オレが慌てて2人を止めようとしたら、人の気配がしたから振り向く。お客さんかな。

 

「あれ?ヒバリさん?」

「いつまでサボってるの」

「わー!すみません!」

 

そうだった、オレは風紀委員として活動中だった!

 

「君達はさっさと5万出しなよ」

「ショバ代ーー!」

「活動費だよ」

 

違うって否定されたけど、みんなからすれば一緒だってば。……あれ?でもオレには集めろって言わなかったよね。

 

「適材適所」

「あ、はい」

 

……オレどんな顔してたんだろ。とにかくヒバリさんはオレがそういう得意じゃないと思って振らなかったってことだよね。ヒバリさんの言う通りだよ、オドオドしながら集める自分の姿が浮かんだよ……。

 

「君はいい加減仕事に戻りなよ」

 

そうでしたとオレは何度も頷く。2人にひったくりが多発しているからお金の管理だけは気をつけてねって伝え、歩き出そうとしたところで獄寺君に小声で呼び止められた。あんまり聞かれたくない話かなと思って、オレも小さい声で返事をする。

 

「どうしたの、獄寺君」

「チョコバナナ、持って行ってください」

「え、でも……」

「ヒバリの野郎にバレなきゃいいんスよ」

 

いや、そのヒバリさんがめっちゃ睨んでるんですけど……。オレがどうしようと悩んでいると、山本がヒバリさんにチョコバナナを渡していた。……すっげー。山本のそういうところ感心する。ヒバリさんが受け取ったらオレも受け取ってもいいって山本は考えたんだろうなぁ。考えることは出来るけど、なかなかヒバリさんに渡せないよね。ふつーは。

 

「ありがとうね、2人とも。あ、もし良かったら後で花火一緒に見ようね。オレは間に合うかわかんないけど、京子ちゃん達は行ってるよ。場所は山本が知ってるから」

「おう、任せとけって」

 

またねーと別れたけど、獄寺君がなんでおめーは知ってんだよってイラついている声が聞こえた。まぁそこまで怒ってはなさそうだし、山本なら大丈夫だよね。

 

山本とは小学生の低学年の時に一緒に行ってるから、あの場所を知ってるんだよね。山本のお父さんは店は開けてないけど祭り関係の注文が毎年入ってるみたいで。子ども1人でウロウロさせるわけにはいかないから、それならオレん家と一緒に行けばいいじゃんってなったんだよ。懐かしいなぁ、家綱はよく花火が始まる前に寝落ちしちゃって次の日に文句言ってたね。オレからすればあの音の中でよく眠れるなーって思ってた。

 

食べながら歩くのは危ないと思って近くのベンチを探す。ラッキー、空いてるじゃん。……って、ヒバリさんが居るからだった。

 

「いいよ」

「え?まじで?」

 

……睨まれちゃったよ。いやでもさ、普通許可貰えるとは思わないじゃん。まぁさっさと食べて見回りに戻れってことなんだろうけど。

 

ヒバリさんのお言葉に甘えて、ベンチの端っこに座ってオレもチョコバナナを食べる。うん、こだわってるだけあって美味しい。

 

「今日はひったくり被害出てます?」

「まだ」

 

一応見回りの効果は出てるってことかな。よかったよかったと思っていれば、ヒバリさんはもう食べ終わったみたいで立ち上がった。

 

「これ捨てといて」

 

はいはいとオレは頷く。どうせオレも捨てに行くからね。ゴミをオレに渡したヒバリさんはフラッと歩き始めた。お金回収するんだろうな……。

 

チョコバナナを食べ終わったオレはゴミを捨てた後、再びふらふらと歩く。途中で母さんとちび達に出会って、財布が軽くなった。まぁちび達は喜んでるし、フゥ太が家綱と一緒に食べようと誘っていたのをみてるとなんか和んだし。それにこっそり母さんがオレの財布を心配してくれたからね。大丈夫って答えたけど、気持ちは嬉しい。つか、母さんとビアンキが持ってる景品の袋で思った、リボーンは射的したな。屋台のおじさん泣かされたね。

 

後、炎真の家族とも出会った。家族で来ているし邪魔しちゃ悪いかなって思っていたんだけど、オレの姿を見つけたらみんなこっちに向かって来てくれたから挨拶した。ここの祭りは骸から聞いたんだって。まぁその骸は来てないんだけど。家でゆっくりしてるのかな、あの家からは花火見えるからね。炎真達にも穴場スポットを教えた。

 

そんな感じで知り合いと会いつつ、さらに花火を誘いながら歩いていたら、オレと同じぐらいの体格の男の子が引ったくりしているところのを見つけた。すぐさまオレはその子の腕を掴んで、お金をおじさんに返す。

 

「痛い痛い痛い!!」

「え?ご、ごめん」

 

そんな強く掴んだつもりはなかったんだけど……と、力を緩めれば、逃げられた。

 

「……うそーん」

 

やばいやばいとオレは引ったくられたおじさんに気をつけてねと声をかけて、その子を追いかける。このまま逃げられたらヒバリさんに咬み殺される。

 

その子が逃げた先は階段をあがった神社のところだった。って、やっぱりここなんだ。オレが階段をかけあがると、体格の良さそうな人が10人ほど待ち構えていた。でもまだ隠れているみたいで、オレの感覚では50人近いかも。

 

この人なんか見たことあるなぁっていう人が、いろいろと話してくれた。なんでもヒバリさんに恨みがあるんだって。海でライフセイバーのバイトしていただけなのに咬み殺されたみたい。

 

「あ!オレが言ったよ、それ。ガラ悪いって苦情きてたから」

 

街を歩いてたら、いろんな人から聞いてさ。ヒバリさんに報告したよ。あれ、ヒバリさん自ら動いたんだ。つーか、一回咬み殺されたのに懲りなかったんだ……この人達。

 

「あれ?でもなんでオレ?」

 

この人達の反応からして、このことを知ってたみたいじゃないし、わざわざオレをここに誘き出す必要ってあるのかな?って首を傾げる。

 

「ヒバリの女だろ」

「……誰が?」

「お前が」

「わぁ」

 

相変わらずオレは巻き込まれ体質でした……。でもまぁ理由はわかったよ。オレはヒバリさんの人質なのね。

 

「えっと、じゃぁヒバリさんを呼べばいいんですね?」

「……お、おう」

 

オレが素直に動いたから、ちょっと動揺された。いやだってさ、呼んだ方が絶対いいもん。とりあえず電話をかけながら、ラルに大丈夫と口パクする。手を出す必要ないよって。残念ながら電話をかけ終わると拘束されちゃった。素直に動いたのにね。

 

「あ、ヒバリさん」

「……君、なにしてんの」

 

オレの首元にナイフがあるのをみて、ヒバリさんはそう言った。……まぁそうだよね。

 

「動くなっ!この女がどうなってもいいのか!?」

「いい加減にしなよ。フザげてるの?」

 

これ、オレが人質にされて怒ってるようにみえるけど、オレに言ってるからね。ちょー怖くて、すぐさま拘束から抜け出して相手を気絶させた。

 

「すみませんっ!この人数だと何人か逃しそうで、ヒバリさんを呼びました!」

「ふぅん」

 

周りの気配を探ったヒバリさんはちょっとは納得してくれたっぽい。いくらオレでもこの人数が全員逃げに徹されると、流石にキツイ。好きでヒバリさんの手を煩わせたわけじゃないんだってば。

 

「あ、この人達は多分ひったくり常習犯ですよ。手慣れてたので可能性は高いです」

「ワォ。許してあげるよ」

「ありがとうございますっ!」

 

オレ達はのんきに会話しながら、バタバタと相手を倒していく。ヒバリさんはトンファーを使ってるけど、オレは素手。こういうタイミングぐらいしかトンファーの使い道がない気もするんだけど、手加減が難しいしオレは気絶させれば十分だから。

 

 

 

「終わったー」

 

前は4人で倒したけど、今回はオレとヒバリさんだけで済んだよ。まぁ逃げられる可能性がなかったら、どっちか一人でも問題なかったもんね。

 

「後はこっちで処理するよ」

「あ、はい。オレは見回りに戻りますね」

「いい。これがひったくり犯なら、君の仕事は終わりだよ」

 

そういえば、オレはひったくりが出たから駆り出されたんだ。

 

「ってことは……花火みれる?」

「そうだね」

 

やったー!って喜んだけど、ヒバリさんならオレ達の会話を聞こえていたかも……。もちろんヒバリさんの言う通り、オレの仕事が終わったってのもあるだろうけど、これってヒバリさんの優しさだよね。

 

「あの、ヒバリさん」

「なに」

「ヒバリさんも、花火楽しんでくださいね。あ、いや……風紀委員活動があるのはわかってますけど、空を見上げる時間ぐらいはあるかなって」

 

オレ達と一緒に見ようとかは言えないけど、ヒバリさんにも見てほしいなって思ったんだよ。

 

「……気が向いたらね」

「はいっ!」

 

オレがニコニコと返事をすれば、ヒバリさんはため息を吐いた。え、なんで!?

 

「10代目ー!」

 

獄寺君の声が聞こえたと思って視線を向けると、みんな揃って階段をのぼっていた。ブンブンと手を振ってたオレは忘れていたけど、まだひったくり犯が転がっていたよ。

 

「なんなの、これ……」

「あはは……」

 

黒川のツッコミには笑ってごまかして、こっちこっちと誘導する。ヒバリさんは獄寺君の声が聞こえたところで、別のところから下へおりたけどこれの回収に風紀委員のみんなが来るからね。邪魔にならないように動く。

 

女子達に感謝しつつ、ご飯を食べてる間に花火が始まった。わぁ、綺麗だなぁ。

 

「ん?」

 

誰か人の気配がしたからオレは振り向いた。こっちに来ることはなかったし離れた位置に居たけど、ちょっとオレは驚いた。

 

「ツナ、オメーが誘ったのか?」

「花火楽しんでくださいとは言ったんだけどね」

「そうか」

 

まぁここは穴場スポットだし、知っていても不思議じゃないよね。

 

「リボーン、楽しいね」

「ああ」

 

やっぱり、みんなと見たこの日の花火は最高にキレイだった。

 




沢田ツナ
ナンパされないのは学ランのせいとは気付いていない。
みんなと花火見れてよかった。


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本日は骸の誕生日らしい(ぇ
だから骸の出番が多いよ。おめー。


新学期も始まり、合同体育祭の件でドタバタはしているけど、オレはその日もいつも通り過ごしていたんだ。家に帰って来るまでは……。

 

あれ?と思ったオレは部屋の窓を開けたんだ。やっぱり気のせいじゃなくて、そいつは窓から入ってきた。それも念入りに幻術を使って気配を誤魔化してやってきたんだ。

 

この時点でただ事じゃないなって思ったオレは骸が入ってすぐに窓を閉めたんだけど、幻術でこの部屋に誰も入ってこれないようにした。

 

「骸?」

「……やられました」

 

はぁと疲れたように骸は壁に背をもたれた。こいつがここまで言うなんて相当だよな?

 

「一体どうしたんだよ」

「XANXUSの氷が溶かされました」

「あ、そうなんだ」

 

オレとしてはこのタイミングで溶けなきゃ、オレがいつか溶かしてただろうし気にはしないんだけど。って、それぐらい骸もわかってるよな。

 

「えっと?」

「……覚えていますか。XANXUSの氷を溶かした人物がわかっていないことを」

「んーチェルベッロかなってオレは予想していたんだけど」

 

いやまぁそのチェルベッロもよくわかってないんだけどさ。探しても見つからないし、いつも向こうからの接触らしいし。オレには接触してこなかったけど。

 

「前はどうだったかわかりませんが、今回はおそらく違います」

「え?誰?」

「わかりません」

 

は?とオレは声を出す。チェルベッロじゃないのはわかんのに?

 

「ってか、さっきからの話だと、お前XANXUSの様子見てたんだろ?」

「ええ。ですが、最初に言ったでしょう」

 

は?とオレはもう一度言った。こいつ、最初にやられたって言ったよな……。まぁ本体はここに居るけどさ。こいつが作った幻覚を倒すのはどれぐらい大変かはオレはよくわかってる。前の経験を上乗せしている骸は術師としてはこの世界で間違いなくトップだ。そう簡単には倒せるはずがない。少なくともチェルベッロでは無理だよ。

 

「相手の手がかりはあるのか?」

「残念ながら」

 

うわ……。骸が完全に後手に回ったじゃん。

 

「失礼ですね。君と違って僕はちゃんと考えています。その証拠に、ヴェルデ博士から連絡がありました」

「ヴェルデ?」

「ええ。僕としてもこんなに早く連絡が来るとは思わなかったんですけどね」

 

……もしかして、と思う。こいつ、誰かわかってるんじゃないのか?

 

「確証はありませんから」

 

あ、これ確証がないだけでほぼ間違いないって思ってるな。

 

「オレも行く」

「いえ。あなたはこのままここに残った方がいいでしょう。XANXUSが復活したことは確認しましたし、僕はその二人がどのように接触したのかを見れませんでしたから、どのように変化が起きるかわかりません。……クロームのことを頼みます」

「……わかった」

 

それを言われれば、オレは残る道を選ぶしか残されてなかった。だから骸はオレに名前を言わないんだ。器用じゃないオレは名前を聞けば、そっちに気をとられるから。

 

「正直こちらのことを見る余裕があるかわかりませんので、シモンのことも任せますよ」

「わかってる。お前はそっちに専念して。けど、絶対に無茶はするなよ」

 

骸がリングをつけてることに気付かないほど、オレはバカじゃない。川平さんにもらったんだろうけど、それヘルリングだろ……。対峙したこいつが必要と判断したならオレはつけるなって言わないけど、倒す必要はないんだからな。

 

「そうそう、あなたのことです。どうせ9代目のことでグダグダ悩むでしょう。しかし僕もあなたも動けません。ですから、あなたの父親のところにXANXUSが目覚めたことを流してみては?」

「え、あ、うん。なら、そうする」

 

父さんがうまく動けるかはわかんないけど……。確かXANXUSに追われたはずだから。でも何もしないよりは気持ちは楽だよね、うん。

 

「では、僕はいきますね」

「骸!」

 

なんですか?っていつものように骸は振り向いたけど、さっきオレの言葉に返事しなかったのはわざとだろ。流そうとしたみたいだけど、そう簡単に騙されないっつーの。でもこいつもオレの指示に素直に従うような男じゃないし……。

 

「……骸、オレの霧の守護者はお前だからな。それを忘れんなよ」

 

ちゃんとわかってるよな。今回はクロームとお前の二人じゃないんだ。お前一人しかオレは認めないぞ。

 

「……霧の対決までには戻ってきますよ」

 

その言葉を信じて、無茶するなよと思いながらオレは骸を見送ったんだ。

 

 

 

 

骸のことにばっかり気を取られていたオレはすっかり忘れていたんだ。……さっきまで幻術でこの部屋が隔離されていたことを。

 

ドカッという音とパリンという音が同時に聞こえ、オレの部屋の扉が派手に吹っ飛ばされ、窓からガラスが消えた。

 

「ツナ!」

「沢田ツナ、無事か!?」

 

……あちゃーとオレは顔を手で覆う。だよね。心配するよな。どう考えたって。だってあいつが本気を出して隔離したんだよ、絶対心配するって。オレの部屋が凄いことになっちゃったけど、怒れない……。というか、オレが謝らないと。

 

「ごめん!ちょっと骸と話してたんだ……」

 

あいつ絶対こうなることわかってただろ……とか思いながら、何の話をしていたと詰め寄る二人に、XANXUSが目覚めたことを話して父さんに連絡をいれてと頼んだ。

 

けど、次の日には父さんとは連絡が取れなくなった。ラルに戻っていいよって伝えたんだけど、首を横に振られた。尚更オレ達から離れられないって。そしてあまりにも不穏すぎるから、ラルとリボーンの担当が入れ替わった。ラルは手を出せるけど、リボーンは手を出せないからね。家綱はオレと違って戦えないのもあって、3人で話し合ってそうしたんだ。3人はオレとリボーンとラルね。

 

母さんはオレ達よりも危なくはないけど、ビアンキについてもらってる。だから、大丈夫のはずなんだけど……。ちょっと気になることがある。

 

「……あのさ、リボーン」

「なんだ」

「やっぱいい」

 

もしかして、と思う。幻覚とはいえ骸がやられたこと、XANXUSの氷を溶かすことが出来る人物。骸から情報を聞いてすぐに話したのに、父さんと連絡が取れなくなったこと。こんなこと出来そうな人物ってオレは一人しか浮かばなかった。

 

……なあ。お前なのか、白蘭。

 




沢田ツナ
超直感が発動して全て繋がってしまった。
骸がここから離れるなと言った意味を本当の意味で理解した。
繋がる前にも不穏だと感じていたため、クロームの家に泊まらずに、家に呼んでいた。
骸とも連絡がないので、心配が尽きない。
ただうだうだ悩む感じはなく、眉間にシワがよってる状態。
近寄りがたい感じが出て、周りは積極的に話しかけるようにしている。
みんなと話しているといつものように戻るから。
周りには父と連絡が取れなくなったと説明し、母だけは知らないからと教えている。

六道骸
ヴェルデにある人物が訪ねてきた場合、連絡してほしいと頼んでいた。

雲雀恭弥
ツナから骸が野暮用で合同体育祭に出ないと思うと聞いた。
かなりムカついたが、ツナの様子をみて文句を言うのをやめた。
ツナらしくはない状態だが、言われた仕事はしているので放置。
ただ跳ね馬も最近来ないのもあり、表向きの説明は嘘でかなり厄介なことが起きていることには気付いている。

沢田家綱
当事者の一人なので、説明は受けた。
は?なら、そいつが継げばいいじゃんと言えば、お前よりも性格が悪いとリボーンに言われた。
男なので、扱いが酷かった。
ラルから候補者の家族は全員皆殺しタイプだと教えられた。
どっちもキツイ。
ビビっていれば、ツナにラルもいるし、もしもの時はオレが守るよと言われて反抗し、普段通りの生活に戻った。
ただし、ラルには頭があがらない。


次からVSヴァリアー編です。



作者の独り言。
最後まで白蘭の名前を出すか悩んだ。
でも骸がヴェルデに接触したい理由は別とか、わかりやすく書いたしいいよねと思って出した。


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中2・リング争奪戦


お久しぶりです。
更新再開します。
ただ体調が崩れたらまた急に更新ストップするかもしれません。
その時はまたか!と思ってくださいw

前の話をちょっとだけ修正してます。
原作の解釈を間違っていたので。
ただ流れはかわってません。


骸と父さんと連絡が取れなくなって、一ヶ月以上経った。父さんはまだわかる。問題は骸だよ。最悪の場合はクロームを通じて連絡してくるだろうから、なんとかやってるのはわかる。たとえ白蘭でも今の技術で骸を閉じ込めれるとは思わないし。だから連絡を一度も寄越さないってどうなの。昔っから秘密主義なところあるけどさ、一ヶ月以上も連絡が途絶えるとは思わなった。

 

「そろそろ怒ってもいい気がする」

「なんか考えがあるんだろ」

 

オレがイラだってるのもあって、珍しくリボーンが骸のフォローをした。いやまぁリボーンも骸の性格を掴んできたのもあるんだろうけど。

 

「イッ君、ツーちゃん、大変よー!」

 

母さんの声が聞こえたオレは一階におりる。リボーンも一緒についてきた。一階にはクロームが居るから、そういう心配はしてないんだけどね。幻術使った気配がしたなら母さんが叫ぶ前にオレが気付くから。

 

「お父さんが帰ってくるわよ!」

 

母さんが乙女のような顔をして喜んでるところ悪いけど、どうやって父さんが帰ってくるって知ったか聞いた。

 

「アナログだねぇ」

 

父さんからのハガキを見ながら呟く。この時期じゃ、やっぱアナログが一番安全だよね。家綱もホッとしたように息を吐いているけど、オレとリボーンは顔を見合わせて二階へと戻る。もちろん家綱も強制参加。ラルも呼んで父さんから手紙が届いたことを話す。

 

「なんだよ」

「ちっとは考えやがれ。このタイミングで家光が家に帰るなんて愚策もいいとこだぞ」

「ああ。ここには守るべき存在がいるんだからな」

 

うんうんとオレも頷く。前の時はリボーンも知らなかったから、ただの里帰りと最初は考えていたはずなんだ。ちょうど9代目からの課題を初めてクリアした後だったのもあるし。けど、今回はXANXUSが目覚めて、向こうが大変なことになってるのを知っているんだよ。それなのに帰るって、相当ヤバイってオレの頭でもわかるよ。

 

「ツナ、お前はどう考える」

「んー、父さんがかなり追い詰められて、ここで籠城作戦をするしか道が残ってない。または別の場所でする。次期ボンゴレボス候補であるオレ達や母さんが危険な情報を掴んだ。次期ボンゴレボス候補筆頭であるオレの出番がきた、ぐらいかな。他になんかある?」

「悪くはない。が、あの手紙自体が偽物というのを候補から入れ忘れてる」

 

ラルの指摘で気付く。父さんの手紙と見せかけて偽物がやって来るパターンも考えとかなきゃいけなかったね。

 

「まぁあれは家光からだろ」

「だね」

 

うんうんとオレ達3人は頷く。数年ぶりに帰ってくるのに、あのズボラな内容は父さんしかありえない。母さんじゃなかったら絶対離婚しているよ。それにオレの超直感にも引っかからなかったから。オレ達はそれで納得したんだけど、家綱は頬を引きつらせていた。まぁオレがあげた候補だけでもかなり物騒だもんね。無事だったから顔を見せにきたっていう選択肢は最初からないし。

 

「こんな時、骸が居ればなぁ」

 

多分前と同じ理由で帰ってきてると思うんだけど、確証はないし。情報収集はあいつに丸投げしていたのがここでツケがきたよ。

 

「あいつは何をしている」

「んー、別件で動いてもらってる」

 

オレが言葉を濁したから、ラルがイラッとした。……この状況じゃ下手に黙ってると混乱させるだけかな。

 

「あいつにはXANXUSの眠りを覚ました人物を追ってもらってる。ほっとくことも出来ないでしょ?」

「今回の件にも関係あるだろ!そういうことは共有しろ!」

「ご、ごめん。でもなんか分けた方がいい気がしたんだよ。オレの直感が」

「直感かよ」

 

家綱に呆れたようにツッコミされたけど、オレは真面目にそうだよと頷いた。

 

だからこそ白蘭な気もするんだよ。あいつなら、絶対自分のために動くから。まぁユニに救われていたらユニのために動いたりするだろうけど違うだろうし。

 

「まだおめーは目覚めてはいないようだが、超直感は侮っちゃいけねーぞ」

「ブラッドオブボンゴレー?んだよ、それ」

「そこからなのか……。まぁ家光に言われても、オレも迷信だと信じていない派だったが……」

 

チラッとオレを見てラルはため息を吐いた。今までのオレの行動で信じるしかなくなったんだろうね。

 

「簡単に説明すっぞ。ボンゴレボスに流れる血筋で、常人を遥かに凌ぐ直感力のことを指すんだ。見透かす力と言われるぐらいだぞ。ツナは子どもの頃からそれに目覚めてるんだ」

 

宝くじ当て放題?って家綱は呟いた。危機的状況とかに優れてるし、未来が見えてるような動きをする時もあるけど、未来が見えてるわけじゃないよってオレは教えた。すっげー家綱はガッカリした。オレも似たようなこと昔思ったよ……。

 

「話は戻すぞ。ツナ、どう感じたか説明してみろ」

「ええっと……、XANXUSを目覚めさせたけど、次期ボンゴレとか関係ない気がするんだよね。もちろんオレ達が振り回されてるのはわかってるんだけどさ。それに拘っちゃいけないような……」

「まったく関係ないとも言えないのか」

「うーん、多分」

 

やっぱり言葉にするのは難しいとオレは唸る。リボーン達もそこまで期待してなかったようで、オレのあやふやな説明に怒りはしなかった。

 

「まぁこの件は骸に任せてるし、父さんから状況を聞く方を優先しようよ」

 

手がかりを掴んでるのは骸しか居ないのもあって、その日はそれで落ち着いたんだ。

 

 

次の日、日曜日だったけどヒバリさんとのバトルは昨日電話して休ませてもらった。父さんが帰ってくるかもしれないと言ったら、一応納得してくれた。一応なのは、なんか気付いてそうな気がするから。ヒバリさんが察しよすぎて怖い。

 

その日は家でクロームと一緒に母さんの手伝いをしていたんだけど、オレは嫌な予感がした。母さんにちょっと急用と声をかけて、家を出る。家にはビアンキとラルがいるからね。こっちは大丈夫。リボーンは何も言わずについてきてくれた。

 

超直感に従って辿り着いた場所を見て、やっと思い出した。……オレって相変わらずポンコツ。ここでスクアーロから逃げてるバジル君と会ったじゃん!ってもう、なんか物騒な感じになってるー!スクアーロ暴れすぎー!暗殺部隊なんでしょ、もっと忍んで!いやまぁ一般人に手を出さないようにあえて暴れて逃げる時間を作ってあげたんだろうけどさ。

 

「ツーちゃん?」

「って、京子ちゃん!?」

 

ひぃ!なんでこんなとこに居るの!?そうだよ、今日は日曜日だよ。オレ達が誘わなくても、出かけてる可能性はあった。アタフタしながらもここは危ないからオレは逃げようと声をかける。オレの言葉に首を傾げる京子ちゃんは可愛いけど、ちょっとは焦って!?

 

「でもお兄ちゃんを待ってるの」

「お兄さん!?」

「うん。逸材が現れたからボクシングに勧誘してくるって」

 

お兄さーん!

 

「オレが見てくるから、京子ちゃんは家に帰って待ってて。お兄さんの行動なんとなくわかるし」

「いいの?」

 

もちろんと何度も頷けば、京子ちゃんはわかったって言ってくれた。説得できてよかったーと息を吐いたオレは京子ちゃんと別れた。安全と判断できるところまではリボーンについて行ってって目で頼んだから、京子ちゃんは大丈夫。問題はお兄さんだよ。絶対スクアーロとバジル君のところにいるよ、あの人……。前から京子ちゃんは天然っぽかったよ。でもたとえボクシングの勧誘でもお兄さんが危ないことをするのは止めていたと思うんだけど、なんでだろ?

 

……そういや、お兄さん額の怪我なかったっけ。

 

え!?これもしかしてオレのせい!?いやでもオレ何もしてないよね??あーもうどうなってんのー!?と思いながら、オレは走った。

 

 

 

「極限、ボクシング部に入部しろ!」

「ゔぉぉぉい!邪魔だぁ!!!」

「お逃げください!ここは危険です!」

 

似合わないのはわかってるんだけどオレが呟きたい。カオスって。

 

「お兄さん、危ないから下がって!」

「む、沢田ではないか!」

「なっ!」

「沢田だぁ?」

 

……オレ、やっちゃった?スクアーロがすっげーオレのこと見てるんだけど。そりゃそうだよね、父さんのフルネーム知ってるもんね。バジル君もオレを見て反応しちゃったし。

 

いろいろ思うこともあったし、考えたい気持ちもあったけど、とにかく言わないといけないことがあった。

 

「修理代、ヴァリアーと門外顧問で話し合ってよ!」

 

絶対にオレは出さないよ!

 

前に継いだ最初の頃、請求書の山にほんと苦労した。途中でヴァリアーの予算から差し引いたらやっとマシになったんだよ。最初からそうしろって思うかもしれないけど、9代目の時は問題なかったからさ。急に変更するのもどうかと思ったし、ほとんどないんだけどオレにもプライドがあったし……。結局、オレがキレちゃったんだけどね。……こういうところが怒らせたら怖いってなるのかな。

 

あ、もちろん変更するにあたってヴァリアーの予算はちゃんと増やしたよ。そこまでオレは鬼じゃない。そこそこぶっ壊しても問題ないぐらい予算はあげた。ただヴァリアーはXANXUSの食費問題があったからね。すっげーかかってたらしい。それでもXANXUSの食費代を抑える考えは一切なかったみたいで。みんなXANXUSのこと大好きなんだなーってほんと思ったよ。まぁスクアーロはXANXUSのわがままにイラっとしてたけど。

 

前のことを思い出したし、先手を打ったことですっげーオレはいい気分だったんだけど、スクアーロの殺気がその状態を許さないんだよね。

 

「沢田殿っ!」

「わっ、と」

 

驚きながらも、バジル君が投げたものをキャッチする。懐かしい箱だなぁ。

 

「それを持ってお逃げください!」

「逃すかぁ!」

 

スクアーロがオレに向かってくるのを横目に、オレはバジル君から渡された箱を開く。

 

……あー、ほんとオレこういうの嫌い。

 

仕方がなかったんだろうけどね。軽く息を吐いたオレは、箱を締めてポイっと放り投げた。バジル君には悪いとは思ったんだけどね……。

 

オレを斬ろうとしたスクアーロも、命をかけてでもスクアーロを止めようとしたバジル君も、一瞬動きが止まる。そして二人とも標的が箱に移る。

 

その隙にオレはお兄さんとバジル君をオレの後ろに隠すように腕を掴んで引っ張った。バジル君が必死に箱へと手を伸ばそうとしたけど、オレはそれを許さなかった。

 

「ボンゴレリングがっ!」

「お兄さん、お願いします」

「おう!」

 

絶対にお兄さんは状況がわかってない。けど、バジル君を抑えるのをかわってくれた。オレの頼みっていうより、お兄さんは大事なところを外さないから。このまま離せば、バジル君の命が危ないことに本能で察してるんだと思う。

 

「う゛お゛ぉい!!てめぇ、何を考えてる!」

 

まぁそうだよね。オレは2人の関係がわかっていた。リングの意味もわかってると思うよね。

 

「オレ、その箱に入ってるリングに拘ってないんだよね」

「いいのか?ツナ」

 

京子ちゃんを護衛し終えたリボーンがひょっこりと現れてオレに質問してきた。オレはもちろん「いいよ」って答えた。……っと、早く言わないとダメだよね。

 

「スクアーロ、XANXUSに伝えてくれない?オレの大事なものに手を出すなら……容赦しない」

 

途中から死ぬ気の状態になってしまった。ちょっと釘をさすぐらいの軽い気持ちだったのに。……それだけオレの誇りってことだ。

 

けど、ちょっと失敗しちゃったなぁ。スクアーロが身構えちゃったから。ここでオレを殺さないとまずいと思ったのかもしれない。でも……大丈夫。

 

「そこまでだ、S・スクアーロ」

「跳ね馬だと!ッチ」

 

ディーノさんが来たことで、状況が悪いと判断したスクアーロは逃げていった。相変わらず状況判断が早いなぁ。

 

「……これで良かったか?ツナ」

「はい。ありがとうございます、ディーノさん」

 

ディーノさんはスクアーロを捕まえたかったんだと思うんだよね。リボーンは手を出せないけど、オレが居るし。2人で組めば捕まることは可能だった。けど、オレがディーノさんの存在に気付きながらも、XANXUSに伝言を持ち帰るように言ったのを聞いたから変えたんだと思う。

 

色々と話したいことはあるけど、先に声をかけなきゃ。

 

「バジル君。君が頑張ってあのリングを運んでくれたおかげで、時間を稼ぐことが出来たよ。ありがとう」

「え……」

 

君の今までの苦労は無駄じゃなかったんだよと伝える。ショックを受けてる決定打はオレの行動だろうけどね、……父さんでもあるかな。

 

「とにかく休んで。大丈夫、ボンゴレはオレが継ぐよ」

 

オレの言葉で緊張状態が切れたのか、バジル君は意識を失ってしまった。ディーノさんはオレの頭を撫でた後、バジル君を抱えて病院の手配をし始めた。……でもなんでオレの頭を撫でたんだろ?

 

「バジルを安心させたからだぞ」

 

またオレの疑問が顔に出てたのか、リボーンが教えてくれた。そういや、本物のハーフボンゴレリングは今ディーノさんが持ってたんだっけ。ディーノさんからは声をかけにくいよね。

 

「っと、お兄さん。大丈夫でした?」

「おう!」

 

問題ないというようにお兄さんは腕を構えた。いつもの元気なお兄さんの姿に、晴だなぁと思ってしまった。お兄さんはわかってないけど、これが普通じゃないことは気付いているはずだから。

 

「沢田、オレに話があるのだろう?」

「あはは。また顔にかいちゃってました?」

「極限に」

 

そんなに!?とオレは驚きながらも笑ってしまった。

 

「明日の朝、いつもの場所で時間もらえますか?」

「ああ!また明日な!」

 

京子ちゃんは家で待ってますよと伝えてオレ達は別れた。お兄さんの姿が見えなくなったら、オレはすぐにディーノさん達を追いかけていった。リボーンが何も言わずにオレの頭に乗ったのは、リボーンなりの優しさだよね。




沢田ツナ
骸から連絡がないのでプリプリ中。
リボーンに言われたのもあって、一応怒りはおさまった。
スクアーロを見て、真っ先に思ったのが修理代。
請求書の金額を見て、何度も悲鳴をあげたせい。
ヴァリアーの中でスクアーロは一番壊さなかったのに。

スクアーロ
ツナを見て、こいつヤバイと思った。
が、リングを優先。
それさえあれば、ツナのことはどうとでもなるから。

バジル
ツナの行動に大ショック。
が、ツナの言葉を聞いて安心して気絶。
心のアップダウンが激しい。
この後真実を知り、ツナがあの一瞬で気付いて行動したことに尊敬。

笹川京子
周りが逃げている中で、お兄ちゃん楽しそう!と喜んでいた。
幼少期に了平の怪我が起きる事件がなかったため、心配性ではない。
危機管理能力がどこかへ行った。

笹川了平
実はちゃんとお兄ちゃんしている。
危ないと察したので、妹には離れた場所で待機させた。
それでも、スクアーロとバジルにボクシングの勧誘は忘れない。


作者
久しぶりに書いたら、あまりにも進まなくてビックリ。
リング争奪戦の話数が心配。


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バジル君の怪我は命に別状がないことがわかったから、ディーノさんは本物のハーフボンゴレリングをオレに見せた。

 

「やっぱ気づいていたのか」

「……はい。リングを見てすぐに偽物とわかりました」

 

ディーノさんだけじゃなく、リボーンも薄々察していたらしい。オレ、このリングはって言ってたし、ちゃんと確認までしたから。

 

「ツナ」

「大丈夫です。わかってます」

 

わかってるって言ったのに、ディーノさんに頭撫でられたよ。うーん、また顔に出てるのかな。とりあえず眉間にシワがよってないよね?と確認する。

 

「それをディーノさんが持ってるってことは父さんと会ったんですよね?」

「ああ。オレと一緒に来たんだ」

「じゃぁ今は家に居るかな」

 

一応、オレが強いという報告は聞いてるはずだし。だから父さんは母さん達の方へ向かってると思う。前の時のことを思い出せればいいんだけど、オレの頭じゃそんな細かいところまで覚えてないんだよね。あの頃、すっげー嫌いだったし。

 

「……あーでも、何から話せばいいんだろう」

 

どーしよーとオレは頭を抱える。前みたいに反抗していないのに、なんでこんなに気まずいのー!?

 

「なんとかなんだろ」

「え?ほんと?」

 

リボーンがそういうなら大丈夫だよね?とオレはちょっと楽観的になる。おいおい……って感じで、ディーノさんは困った感じに頬をかいちゃったけど。

 

「順番がわからないだけで、話したい内容は決まってるみてーだからな」

「……そうかも」

 

オレ、さっき何から話せばいいとしか言わなかったよ。黙ってたこともあったし……まぁそれはお互い様だけど。父さんは母さん似のオレのこと大好きだしなぁ。説得が難しそうな気がするのも気が重いんだよね。前はオレの判断に任せてた部分が大きかったし。放任主義って言えばそれまでだけど、オレがボスになって困ってたらさりげなくフォローしてくれたんだよなぁ。……最初はそれすら腹がたったけど。オレ、やっぱり歳とったね。

 

「とにかく帰ろっか、リボーン」

「ああ」

 

そろそろ帰らないとクロームが心配するだろうしね。バジル君のことをディーノさんにお願いして、オレはリボーンと一緒に家に帰った。もちろん、ハーフボンゴレリングはディーノさんから預かって。

 

 

家に帰ったらすぐにクロームが出迎えてくれた。ただいまとありがとうを伝えてから、クロームに父さんが帰ってないと聞くとリビングに案内してくれた。

 

「……逃げたね」

「だな」

 

ぐーすか、お酒を飲んで寝ている父さんを見て呟いたらリボーンが肯定してくれた。

 

「えっと、ラルは?」

「あの子なら、ママンと家綱の護衛よ。パパンが全部食べちゃったから食料の買い出しに行ったわ」

 

ビアンキが教えてくれたから、そっかそっかと何度も頷く。ラルが居なくなったから飲めたんだね。ビアンキは父さんがお酒を飲んだとしても止めないだろうし、クロームはこういう相手はしたことはないからね。仕方ないよね。

 

「みんな、オレの部屋で遊ぼっか」

 

オレの言葉でちび達が嬉しそうに二階へあがっていった。もちろんクロームとビアンキも一緒に連れて行く。リボーンはどうするかなって思ったら、気配を消すように隠れた。……そうだよね、リボーンはとばっちりを食らう可能性あるもんね。

 

数十分後、オレの予想通りラルの怒鳴り声と銃声が響いたよ。ラルはきっちりしてるから、一般人には手を出さないからね。母さんと家綱の心配はしていない。心配するとすれば、この家かな。

 

 

 

母さんの晩御飯が出来たわよという声でラルのお仕置きが終わった。長かったし凄かった。家綱がオレの部屋で過ごしてたぐらい。まぁフゥ太と話してたけど。

 

それでもあの家綱がオレと一緒に居るぐらいだから、ラルのキレっぷりは相当凄かった。オレはそんな中でもご飯を作ってた母さんが一番凄いと思う。いや、オレも手伝おうとしたんだけどね。あの中に入っていけるのはオレぐらいだし。でも母さんはちび達の面倒を見てほしそうだったから、そっちを優先。父さんが助けてほしそうだったのは無視したよ。自業自得だから。

 

せっかくまともに父さんと顔を合わすことが出来たけど、母さんの前ではマフィア関係の話はしない暗黙のルールがうちにはある。だから家綱も何も言わない。一応、オレの独り言という感じでさっきの間に家綱に今日あったこと説明したけどね。それでも父さんに聞きたいことはあるはず。

 

それにしても、前の時オレは父さんにめっちゃムカついてたけど、家綱はそこまで反抗してないんだよね。この差ってなんだろ……。

 

母さんがちび達と風呂入ってる間、父さんと家綱は話をした。オレは長くなるかもしれないから、譲ったんだ。

 

席を外そうと思ってたんだけど、初めてリボーンがオレの膝に乗ったんだ。だからオレは動かなかったよ。ビアンキが居るのにオレのところに座ったってことは聞いとけってことだから。家綱は嫌そうな顔をしたけどね。リボーンには逆らえないから……。

 

ポツポツと語る家綱の内容に耳を傾ける。マフィアとかについてはちょっと怒ってるけど、父さんが無事でよかったという内容だった。

 

え、なにそのすっげー大人な感じ。オレは前に一度ボスを経験したから、やっと父さんの気持ちとか理解出来たのに。

 

そのあとは前にオレに宣言したように、家綱は家に残るから継ぐ気はないと言った。父さんはただ「そうか」としか返事をしなかった。最初は知らなかったけど、ボンゴレのNo.2が誰か家綱もわかっちゃったからね。だから父さんが家綱に継いでほしいと考えてたことも知ってる。どっちも複雑なんだと思う。

 

家綱の話はそれで終わりみたいで、席をたった。けど、その場から動くことはなくて。言うか迷った素振りを何度かした後に口を開いた。

 

「……何かあったら母さんが悲しむんだから、まじめに仕事しろよ」

 

父さんはフッと笑って「任せろ」って答えた。父さんが笑ったことが気に食わなかったのか、ドスドスと足音を立てながら、家綱は二階へあがっていった。あの感じだと風呂も入らずに寝ちゃう気がする。

 

「愛されてんなぁ」

「へ?あ、うん。よかったね、父さん」

 

くぅーという感じで感動してるから、ほっとこうかなと思ったんだけど、リボーンがオレの膝を叩いたから、父さんに付き合って返事をする。

 

オレが慌てて合わせたことに気付いたのか、父さんは苦笑いしてオレの頭を撫でて部屋を出ていった。その時にオレも風呂に入っちゃおうかなー?って風呂場に向かって叫んだから、すっげー微妙な気持ちになったよ。オレ、結婚は出来なかったけど、経験がないわけじゃないからね。微笑ましい感じに取れないから。父さんはオレが純粋と信じ込んでるみたいだけど。

 

「なぁ、リボーン」

「なんだ?」

「夜中に父さんと話そうと思ったけど、今日はちび達と寝た方がいいのかなぁ?」

「……ツナ、その質問は予想外だったぞ」

 

え?そんな変なこと言った?もしかしてリボーンもオレが純粋だと信じ込んでたのかな。それなら悪いことしちゃったね。

 

 

 

リボーンが問題ないと言ったから、みんなが寝静まった後にリビングへと向かう。父さんはやっぱり起きていたみたいで、ベランダで腰をかけながらお茶を飲んでた。

 

父さんが不器用なのは知ってる。そしてオレ自身も不器用。お茶を挟んでオレも座ったのはいいけど、会話はなかった。

 

そんなオレ達がじれったく感じたのか、気を遣って隠れていたはずのリボーンが姿を見せてオレの名を呼んだ。

 

「……うん。えっと、父さん」

「ああ」

「リングなんだけど、オレからみんなに渡してもいい?」

 

前は父さんが勝手に配った気がしたけど、門外顧問が選んだ守護者に渡す決まりだから、一応正しかったんだよね。オレの気持ちはアレだったけど……。

 

父さんからの返事はないから、慌てて付け加える。

 

「や、多分、父さんが考えてる人と同じだと思うよ。あ、後さ、オレからじゃないと受け取らない人もいるだろうし」

 

骸とか骸とか。

 

オレは絶対そうだと何度か心の中で頷く。今居ないのを抜きにしても、骸はオレからじゃないと納得しない。勝手に家に置いても、リングのことを知ってるのに無視する。

 

「……オレはいい父親じゃねぇな」

「……うん、そうだね」

 

一瞬、そんなことないよって言おうとしたけど、オレの本音を聞きたいと感じたから誤魔化すのはやめた。

 

オレは確かに父さんのことを凄いと思ったよ。けどそれは強さであったり、部下をまとめたり、影から支えることとか、母さんを守り通す覚悟をしたこととか、そういうのであって、子ども目線でみる父親としては凄いと思わなかった。

 

オレの返事に「だよなー……」と父さんは項垂れた。いやでも父さんは頑張ってたんだよ。オレが前の記憶があるせいで、マフィアのことを知っちゃっただけで、ボンゴレの筆頭候補が相次いで亡くならない限り、本当は知ることがなかったんだから。

 

「母さんがさ、オレは父さんそっくりなんだって」

「ツナが、か?」

「うん。オレもそう思った。気付いたのは今日だったけど」

 

父さんと話すから、いろいろ考えたんだよね。それで気付いたんだよ。家綱とオレってそっくりじゃんって。家のことをほったらかしていた父さんのことが大っ嫌いだった前のオレとさ。前の記憶のこともあって、母さんの手伝いとかはしてたけど、オレ子どもの時から外のことばっかり考えてたじゃん。そりゃ腹たつよ。前のオレがそうだったから。

 

「オレはいい妹じゃなかったと思うよ。そんなとこまで似ちゃったよ」

 

今でも家綱とは微妙な関係だけど、多分みんなが居なかったらもっと酷くなってた。10年後のランボが家綱が亡くなってるって教えてくれなきゃ、そこまで気にかけなかったかもしれないし。山本やリボーンがアドバイスくれなきゃ、今日一緒の部屋で過ごすことは無理だったと思う。

 

あーもう心当たりがありすぎる。それもオレは家にいるし、家綱はもっとモヤモヤしただろうなぁ。当たり散らすぐらいしたくなるよね。オレが女ってのもあって、手を出すのを我慢してるんだから。

 

「なぁに、大丈夫だ。家綱も成長してる。さて、もう寝ないと明日が辛いぞ。リングは自分で配るんだろ?」

「え、あ、うん」

 

ほらほら寝ろーと父さんに言われて、自分の部屋に戻る。ずっと気配を消していたリボーンがそのまま残ったから、2人で話でもするのかな。報告書だけじゃ伝わらないこともあるだろうしね。




沢田家綱
ツナはそう感じたが、ダメツナや記憶がない状態でも家綱の性格はどこかで捻くれる。確定事項。
兄貴分のディーノと弟分のフゥ太と出会い、リボーンのスパルタで心境の変化が起きた。
もしかしたら、門外顧問になる未来もどこかにあったかもしれない。
ラルは怖い。

沢田家光
複雑な親心。家綱とツナに悪いとは思っている。
家綱の言葉の意味をちゃんと理解した。
またツナはそっち方向では何も知らない純粋な子だと信じて疑わない。

リボーン
家綱の言葉を聞かせてやろうとして、ツナを残した。
ツナが気付かないまでは想定内だった。
意外とツナがおませさんだった。めんどくさいから家光には教えなかった。

沢田ツナ
実は経験者だった。
経験済みなのに、性格が入れ替わっても受け入れられる。
これが大空なのか(違っ
相手はヒミツ。


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夜更かししたのもあってちょっと眠いなと思いながらも着替える。いつもはランニングウエアで、毎朝の日課が終わったら学ランだけど、今日は黒のパンツスーツ。このスーツはリボーンに頼んでレオンに作ってもらったんだ。ちょっと前に頼んでたのもあって、レオンはやつれるほど無理をしなくてすんだ。ちょっと前のオレ、グッジョブ。

 

そしてリボーンから何も聞いてないけど、このスーツは死ぬ気の炎でも簡単に燃えない素材で出来ている。嬉しくてレオンにお礼を言ってなでなでしてたら、リボーンにレオンはオレの相棒だぞって言われたんだ。だから恐る恐るだったけどリボーンも撫でた。正直……え、なにこれ。って思ったけどね。あいつ、女に甘すぎない?知ってたけど。

 

ネクタイをキュッとしめて、オレは鏡を見る。前も思ったけど、レオンってセンスいいよね。黒のパンツスーツなのに、可愛いって感じるもん。これなら持田先輩でも女に見えるよ。

 

着替え終わったオレはちょっと朝早いけど、雲雀さんと京子ちゃん達に家の用事で休むとメールを入れた。さっさと送らないと忘れそうな気がしたからね。クロームも今日は休むことにしたみたい。約束したからだと思う。帰りを家で待ってるっていう約束。母さんはオレ達の顔を見て、学校を休むと聞いても止めなかった。学校に連絡しておくわねって言ってくれたぐらいで。

 

ふぅと息を吐いて、家の前で獄寺君を待つ。基本的に順番は決めてなかったけど、最初だけは獄寺君って決めていたんだ。だって獄寺君はオレの右腕だから。

 

「10代目!?すみません、遅くなりました!」

「違うよ。オレがいつもより早かっただけで。それに獄寺君を待ちたかったんだ。おはよう、獄寺君」

「……おはようございます、10代目」

 

オレの顔や服装を見たからか、獄寺君はいつものような元気いっぱいの挨拶じゃなかった。

 

「獄寺君、これ受け取ってくれない?」

「……リングっスか?」

 

うんって返事をしてから、このリングについて説明した。獄寺君はオレの説明が終わるまでずっと黙ってたまま最後まで聞いてくれた。だからオレの嵐の守護者になってほしいってちゃんと伝わったと思うけど、獄寺君は前みたいに感動はしなかった。けど、喜んでないわけじゃない。

 

「……10代目はオレでいいんですか?」

「え?」

「オレはまだ未熟です。10代目を守護するのに相応しいのか……」

 

ちょっとネガティブになってるのかな。いろいろ言うより、ちゃんと伝えた方がいいよね。

 

「んー、オレは獄寺君がいい。それじゃ、ダメ?」

「……いいえ」

 

あ、今よりも大人になった時の獄寺君の顔だ。随分久し振りにみた気がする。落ち着いたというか、オレを第一じゃなくて、オレの考えを第一に考えるようになった獄寺君の顔。こんなにも早く見れるとは思えなかった。

 

「すみません。オレしばらく学校休みます。あなたの右腕になれるような男になってきますから!!」

「うん。無茶だけはしないでね」

「はい!」

 

獄寺君の返事を聞いて、前みたいに止めなくて良さそうだなって思った。これは超直感じゃなくて、信頼から。

 

「成長したな」

「うん。ますますカッコよくなっちゃうだろうね」

 

獄寺君が居なくなってから現れたリボーンに返事をしながら、お兄さんの待ち合わせに遅れないようにオレは歩き出した。

 

 

 

お兄さんと合流したオレは近くの公園で説明する。お兄さんはボクシングのシャドーをしながら話を聞いてくれた。トレーニングの時間をもらってるからオレも止めなかったよ。

 

「沢田」

「はい」

「さっぱりわからん!」

「だと思いました」

 

お兄さんだからね。予想はしてた。トレーニングしながらだったし。

 

「けどな、沢田に頼りにされていることはわかる。そして、京子を……いや、京子達を巻き込みたくないからオレに遠慮しているのもわかる」

 

……ほんと、そういうところお兄さんだよね。

 

「大丈夫だ!沢田、オレに極限に任せろ!」

「話はあんまりわかってないんですよね?」

「おう!」

 

あははとオレは笑った。どっピーカンだよ。お兄さん以上の晴の守護者なんて絶対いないよ。こういうところで巻き込んでるってわかってるのに、甘えちゃうんだよね。お兄さんに晴のハーフボンゴレリングを渡すと、リボーンがまた顔を出した。ちょ、待って、その服。

 

「こっからはオレの出番だな」

「む、パオパオ老師!」

 

えっ、いつの間にリボーンはパオパオ老師として接触してたの!?オレ、女になってから初めて会うんだけど……。そうこうしているうちにコロネロ来ちゃうし、オレのツッコミが追いつかないって!

 

「ではな、沢田!」

「あ、はい」

 

途中から完全に置いていかれたよ。オレの守護者になるっていう話だったよね?最後にオレが置いてけぼりってどうなの……。

 

「ツナ、まだ半分も配ってねぇぞ」

「……うん、次行くよ」

 

置いていかれたオレが悪いのね……と思いながら今度は学校に向かった。もう時間が時間だったから。

 

 

オレが学校についたのは朝のHRには間に合うけど、遅刻している時間。そして制服じゃない。けど、担当の風紀委員に止められることはなかった。オレが風紀委員で顔が知られているからじゃない。オレが門をくぐる前に校舎の窓のところからチェックしているヒバリさんと目を合わせたから。お咎めなしって伝わったんだろうね。

 

スーツ姿で上履きはなんか変な気がしたから、スリッパを借りる。さっきヒバリさんと目が合ったけど、オレは教室に向かう。家の用事で休むとメールして、スーツで学校に来た意味を察しのいいヒバリさんがわからないはずがない。だから後でも怒らないと思う。あまりにも遅かったら呼び出されるだろうけど。

 

ちょうど先生が来るような時間なのもあって、教室の扉を開くと視線が集中した。朝から会わなかったのもあって、家綱はオレの服装に驚いていた。けど、理由はわかってるから家綱の方へ質問したクラスメイトには父さんの仕事関係と軽く答えていた。

 

「ツーちゃん、今日はお休みじゃなかったの?」

「うん、休んでるよ」

「休んでないじゃないの」

 

黒川のツッコミにあははと笑う。まぁ普通休みって言ったら、学校には来ないよね。オレが声をかけるまでもなく、山本はオレのところに来てくれた。竹刀を持って。

 

「オレも休む感じか?」

「んー、山本次第かな」

「そっかそっか」

 

山本はみんなに今んとこ遅刻ってことにしといてと伝言を残した。今んとこってなんだよってみんなからツッコミされたけど、そこは山本、笑って流したよ。

 

オレと山本は屋上に行って、今日三度目の説明をした。山本はもうマフィアのことを知っているし、親父さんから時雨蒼燕流を継いでいる。だからヴァリアーを誤魔化してる時間をどう過ごすかは本当に山本次第なんだよね。リングを受け取る、受け取らないとか、そういうのはオレと山本の間ではとっくの前に終わった話。だからすぐに雨のハーフボンゴレリングは渡した。

 

「ツナはどうするんだ?」

「オレはしばらく学校には行かないつもり。顔ばれちゃったし」

 

多分スクアーロは家綱の顔を知らないんだよね。前の時、オレの顔を知らなかったから。オレ達は双子でも全然似てないのもあって、オレが学校に行かない方が家綱は安全なんだよね。まぁラルがついてるけど、隠れてるかどうかでまた違うし。

 

「おっけ。なら、オレは普通に通うのな。もしなんかあっても任せとけって」

「ありがとう、山本。助かるよ」

「いいって、オレとツナの仲じゃねーか」

 

ラルの強さを知ってるけど、それとはまた別の話だよね。だって、山本はオレが選んだ守護者だもん。

 

山本が教室に戻るのを見送ったオレは、ヒバリさんに会うために応接室に向かう。どーしよーかなー。どう考えても今日一番の難関だよ。ヒバリさんがリボーンからマフィアのことを聞いた後に、協力してもいいって感じの言葉はもらってるけどさ。ちゃんと話は通してないからね。ぶっちゃけ今日スーツを着たのは、ヒバリさんと話すから。学ランだとオレは風紀委員の一員になっちゃうし、普通の私服で学校に行ったら怒られそうだしねぇ。

 

……思い出してきた。前もこんな感じだった。ボスを継いだ後でもヒバリさんに頼むのはちょっと気をつかうというか、ヒバリさんのアジトに行くのが気が重いというか、説得が出来ればこれ以上のない味方なんだけど、説得するまでが大変なんだよ……。そういう意味では骸も似たようなものだったんだけど、あいつは普段からどこにいるかわかんないし、基本的に非協力だったから諦めもついた。ヒバリさんは説得できる可能性がある分、失敗できないプレッシャー。説得できなかったら全部最初から計画を練り直さないといけないぐらい大きな穴になるし、リボーンにはしばかれるし……。

 

あああ……と応接室の前でしゃがみこんで頭を抱えていると扉が開いた。恐る恐る見上げるとそこにはヒバリさんがいた。オレがいつまでたっても入ってこないから開けたんだろうね。ラルの気配に気付くぐらいだし。

 

「はぁ。いい加減、入ってきなよ」

 

呆れた顔をしているヒバリさんを見て、ちょっと落ち着いた。そうだよね、前とは違うんだ。一応ヒバリさんとも幼馴染って言えるぐらい付き合いは長いんだよ。それこそ咬み殺す前に、話を聞いてくれるぐらいで。オレの目が真っ赤に腫れていたら、ご飯に連れてってくれるぐらいに。

 

応接室に入って誰もいないと確認したオレはすぐに頭をさげた。

 

「ヒバリさん、オレの雲の守護者になってください!!」

「やだ」

 

……今のはオレが悪かった。オレはヒバリさんに守護者になってほしいけど、他の守護者と同じことをしてほしいわけじゃないから。

 

「ちょ、ちょっと待ってください。ちゃんと説明しますから……」

 

オレは必死に説明した。ヒバリさんは今まで通り自分の理念に沿って行動してほしいと思ってるし、邪魔をする気はないって。ボンゴレの力を使って欲しいと思うぐらいだよ。そのかわりにオレの相談を聞いてくれれば嬉しいなって感じで。もちろん話に乗るか乗らないかはヒバリさん次第。オレは出来ればヒバリさんとは対等な関係でいたいんだよ。

 

「僕はボンゴレの力なんていらない。交渉不成立だよ」

「ま、待って。えっと多分ヒバリさんにとって一番のメリットはそのリングです」

 

オレがそう言うとヒバリさんは何言ってんのっていう顔をした。いや気持ちはわかるけどね。そのリングはオレの守護者っていう証だし。

 

「前にオレ、手から炎をブワッて出すって言いましたよね。そのリングがちゃんと揃えば、オレの炎に対応出来ると思いますよ」

 

ははは……。獲物をみるような目で見られたよ。まぁわかってて言ったんだけどね。

 

「これから先、オレや骸と戦う気ならそのリングは必須です。リングにはランクっていうのがあって、このリングを超えるようなものはありませんね。同等のものは1つ知ってますけど、それは他のマフィアが代々管理してますからヒバリさんがもらえるかはわかりません」

「ふぅん」

「えっと探せばいいと考えてるかもしれませんけど、ほとんど残ってないかも?数年かけて所有者のないリングを探してもらって、オレが管理してますから」

 

正確に言うと川平さんだけどね。でも多分オレが欲しいって言ったら、川平さんが使わない分は全部くれるよ。

 

ジロッて睨まれたちゃったなぁ。でも、集めちゃったんだもん。それなのに欲しかった大空のリングは全然なかったし。ボンゴレリングもだけど、大空のリングにはわかりやすくファミリーの紋章が入ってるから砕いちゃったんだと思う。もう見つけれるのは白蘭ぐらいじゃないかな。

 

「作るっていう手がありますけど、今のヒバリさんにはツテはないと思いますし……」

 

オレもまだタルボじいさんと接触できてないんだよ。まぁたとえ接触できてもリングがないと話にならなかったから後回しでいいやってなって。それに前みたいに9代目からの紹介の方がいいと思って。そっちの方が信頼もあるだろうし。

 

「あ、後お金も」

 

確かすっげーお金がいったはず。前にヴァリアーリングってどうやって作ったか聞いたことがあるんだよ。オレ目ん玉飛び出るほど驚いた記憶があるから。いくらヒバリさんでも無理だよ。額がおかしいから。ランクを落とせば作れるかもしれないけど、それじゃ意味ないよ。

 

「……リング、本当に必要?」

「間違いなく。あ、これは秘密ですよ。この情報を知ってるのはマフィア界でも一部でしょうから」

「君は未来でも見えてるの」

 

どういう意味だろ?また顔に出てたのか、ヒバリさんが教えてくれた。

 

「君はいつから集めてるのっていう話。僕ならその情報を掴んだ時点で集める」

「……あ」

 

うん、やっちゃったね。骸の呆れた顔が浮かんだよ。

 

「うーん……産まれる前からかな」

 

嘘をついて誤魔化してもよかったけど、そうすればヒバリさんはもうオレを信じない気がしたからやめた。

 

……ほらね。ヒバリさんは何か言おうとしたけど、オレの顔をみてやめたもん。相変わらずオレの顔どうなのって話だけど。

 

「……交渉成立だよ」

 

その言葉を聞いて、ジーンと感動した。オレ、頑張ったなぁ……。小さい時から目をつけられて、骸との間に何度も入って、全部、全部無駄じゃなかった……!

 

「これから日曜日が楽しみだよ」

「すみません。やっぱなしで」

「やだ」

 

オレなんでヒバリさんに武器を与えちゃったのー!?




獄寺隼人
守護者の中で弱い分類に入るだろうと気付いていた。
それなのに、ツナが自分に一番最初に声をかけるなど右腕として扱ってくれるから、弱音が出た。
すると、これ以上のない言葉をもらえる。
この後シャマルにしっかり頭をさげて頼み込んだ。

笹川了平
実はなんとなくわかっている。
ただ彼にとっては些細なことだった。
幼い頃から京子と一緒に妹のように可愛がっていたツナが頼ったことが何よりも大事。

山本武
守護者の中で恐らくツナが望んでいることを一番理解して動いている。
しかし本人は前と違って右腕に興味ない。
ツナが獄寺と決めているから。
もう父親から時雨金時を受け取っているので、修行の時間は無理に取らない。ただ部活は休んで剣は振るう。

雲雀恭弥
これでも手伝う気はあった。多分ツナが泣いてすがってきたら、渋々引き受けるぐらいの情はあった(全面協力するとは言ってない)
ツナがどう頼み込んでくるかは興味があったので様子見しただけ。
予想以上のものが釣れた。
これからもツナに情報をポロポロこぼさせる。


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細かい話し合いを終えたオレは応接室を出た。悪い内容はなかったんだけど、やっぱガックリと肩を落としたよ。

 

ツナと声をかけられて振り向けば、ディーノさん達がこっちに向かって歩いていた。いつものように挨拶した後、ディーノさんに心配そうな目を向けられてしまった。まぁ今回は態度に出てるって自覚してるけどね。

 

「……恭弥を説得できなかったのか?」

「大丈夫です、出来ましたよ。ただ、ヒバリさんを強くしてしまうことに頭を抱えたくなって」

「そ、そうか」

 

まさかそんな内容とは思わなかったみたいで、ディーノさんが引いていた。

 

「すまん、ツナ。今から恭弥を鍛える」

「もうダメだー!」

 

今度こそオレは頭を抱えたよ。

 

「うるさいよ。……ワォ。懲りずにまた来たんだ」

 

あはは、仲良いですね。嬉しそうにトンファー出しちゃってるし、ディーノさんはディーノさんでムチかまえちゃってるよ。

 

「ちょっと君、今度の日曜日は逃げないでよ」

「……はい」

 

はぁぁぁと大きなため息を吐きながらオレは2人から離れたよ。このまま学校を出る前に一応職員室に顔を出す。しばらく休むことの報告をしにね。ヒバリさんの許可を取ってますし連絡がいくと思いますって言えば、引き止められなかった。学校に来ないのもあって最後に念押しされたんだよね……。

 

今週の日曜、オレ死ぬ気にならない状態でヒバリさんの相手出来るのかな。……というか、今度の日曜って絶対リング争奪戦の途中でしょ。オレ、何やってんだろ。マジで。

 

 

 

一度家に帰って、クロームにただいまと声をかける。いやまぁ夜までまた出かけるけど、クロームに待ってもらうのとは違うから、顔を出したんだよ。後、着替え。

 

クロームはちゃんとしてるから、今から学校に行くみたい。オレだったらサボるよ。……ごめん、嘘。ヒバリさんとリボーンが怖いから行くかも。

 

母さんにしばらく学校休むけど、もう許可取ってるから連絡しなくていいって伝える。それと休むけど、出席扱いになることも。

 

「あら?そうなの?」

「うん。ヒバリさんに風紀委員の仕事を頼まれたんだ」

 

学校に来れないなら、遠出してきてって。いつも放課後しか見回りしないのもあって、オレの活動場所は学校周りになるんだよね。風紀委員の中でやっぱオレが一番人当たりがいいから、暇なら行ってきてだってさ。もちろん風紀を乱した人がいれば捕まえるように言われた。

 

別に高校に行くつもりのないオレは、出席数とか関係ないんだけど、学校を休む言い訳にもなるし、ヒバリさんの話に乗ったんだ。オレの場合、修行すれば使えるようになるとかの話じゃないし。

 

ちなみに見回りしている時にヴァリアーが襲ってくる可能性があるから最初は断ろうとしたんだよ。でもヒバリさんが、君がそんなヘマするの?という一言でその話は終わった。これで建物とか壊しちゃったらどうしよう。怖い。

 

学ランに着替えたオレは並盛の街を見回りするために家を出た。

 

「……いいの?聞かなくて」

「おめーに任せるって家光が決めたんだ。オレからは文句ねぇぞ」

 

ヒバリさんとの会話を聞いていたのにね。そのことにはスルーしたよ。オレが何か隠してるのも知ってるし、大空ってそういうものと思ってるのかなぁ。

 

オレの首には今3つのリングがかかってる。大空はオレ、霧の守護者候補である骸は今居ないから渡せない。問題は雷のリング。

 

「決めてはいるんだ。ただ、今渡していいのかわからないんだ」

 

甘いと言われるだろうけど、オレはやっぱランボが大怪我するのをわかってて渡せないよ。けど、大人ランボが幼いオレをどんどん連れ出してくださいと言った言葉も覚えている。

 

「おめーのそういうところ、オレは嫌いじゃねーぞ」

「……リボーン?」

「マフィアのボスとしては失格だがな」

「ははっ」

 

オレが男なら、つべごべ言ってねぇで渡しに行けって蹴られていただろうなぁ。こういう優柔不断なところはリボーンに何度怒られたか……。それでもまたギリギリに答えを出すんだろうな、オレは。

 

「でもお前がオレの優柔不断なところ嫌いじゃないとは思わなかったなぁ」

「おめーだからな」

「……リボーンってオレのこと結構好きだよね」

 

なんだかんだ言いながら、前の時もオレが死ぬまでほとんど一緒に居たもんな。そりゃ依頼を受けたりしたら出かけてたけど、戻ってきたもんな。9代目の依頼はオレが継いだ時点で終わっていたのにね。

 

ピタッとリボーンの足が止まったから、オレも足を止めて振り返る。

 

「どうしたの?リボーン」

「……アリアを知ってるか?」

「うん。知ってるよ。確かジッリョネロファミリーのボスで、アルコバレーノのボスでもあるんだよね?」

「そうだぞ」

 

……大丈夫かな。オレ、ちゃんとポーカーフェイス出来てるかな。

 

だってリボーンだよ、もしもの時はオレがアルコバレーノになる覚悟をしていることに気付いちゃうかもしれない。そのことがバレたら、どっか行っちゃう気がするんだ。オレをボンゴレ10代目にするために、リボーンは自分を切り捨てる。呪いを解いても、戻ってはこない。だからリボーンにはオレが呪いを解こうと考えているだけって思わせないといけない。

 

「リボーン、オレとの約束覚えてる?」

「おめーの子どもの家庭教師だろ」

「うん。絶対に叶えようね」

 

オレがそう言うと、リボーンは帽子を抑えて歩き出した。もしかして、ちょっとテレた?……そんなことあるんだ!?驚きつつも、初めて見るリボーンの姿にオレは笑いを噛み殺しながら追いかけたんだ。

 

 

 

 

 

 

平和な時間は5日しかなかった。

 

オレはその日の朝から超直感が反応した。まだそれほど強くないから、前みたいに夜に来るんだろうね。まだ時間があるのに、超直感が警告するのは今の状態ではXANXUSには敵わないからだと思う。まだ手から炎出せてないしね。そう思うとやっぱフゥ太のランキングが一番謎だなー。なんでオレが一位なんだろうね。

 

「父さん」

「おー、どーしたー。父さんの目玉焼きはあげないぞー。ツナがどうしてもっていうなら、わからんけどなー」

 

いや、別にいいよ。自分の分があるし。ってツッコミしてる場合じゃないや。まぁ母さんがいる朝食中に声をかけたオレも悪いんだけどさ。いやでも念のためさっさとオレはこの家から離れた方がいいし。

 

「今日、オレに会いに来る人達がいるんだけど、やっぱ失礼がないようにスーツの方がいいと思う?」

「そうだなー。それがいいかもなー」

「そういうことだから、母さん今日帰ってくるの遅いから心配しないでね」

「家に連れてきてもいいわよ?」

「んー仲良くなったら連れていくね」

 

オレの言葉に父さんが噴いた。家綱も意味が通じていたみたいで、ポカーンって顔をしていた。そんな中でも「その時を楽しみにしてるわー」って返事する母さんって凄いよね。オレは2人の反応に腹筋が鍛えられてるよ。

 

家を出る前に、ちび達のなかでも一番大きいフゥ太に今日の夕方以降は家の中に居るように言いつけた。情報屋でもあるフゥ太はその意味をしっかり理解してるんだろうね。ランボとイーピンだけじゃなく、家兄のことも任せて!って返事をしてくれたよ。

 

クロームにもお願いをした。オレの帰りを待ってていたいだろうけど、今日はクロームの家で京子ちゃん達とパジャマパーティしててほしいって。フゥ太へのお願いを聞いていたのもあって、夕方からずっと一緒にいるって返事をしてくれた。ほんと、いい子に育ったよねぇ。

 

ヒバリさんにも今日は風紀委員の活動をしないことをメールで報告する。ついでにちょっと騒がしくなったらすみませんっていう一文も入れた。返事はかえってこなかったから多分大丈夫。後はオレが人気がないところでいるだけかな。

 

「ツ、ツナ……、さっきのは……」

 

用が済んだし、さっさと家から離れようとしたのに、父さんに引き止められた。さっきのXANXUSのことかな?

 

「そのままの意味だよ。オレは仲良くしたいと思ってるから」

「……そうか」

 

難しいことだと父さんはわかってるのに、反対しなかったよ。オレも仲良くなるのは難しいとは思ってるけど、家には来る可能性はあるよ。前にもオレの部屋にきたしね。

 

「ツナ、父さんはまだ手が出せない」

「うん。大丈夫だよ。いってきます」

 

いや、手から炎はまだ出せないんだけどね。でもまぁ今回も父さんはギリギリに間に合うだろうなぁってなんとなく思ったんだ。そういうところが父さんだから。

 

でもなぁ、ちょっと気になる。父さんが9代目がやられる可能性に全く勘付いていないことに。やっぱ、こういうとこで白蘭っぽいなぁって思うんだよね。オレらが簡単に振り回されてるところがさ。

 

 

人気のないところって、なんで不良が居るんだろうね。オレ、今日学ランじゃないのに。……学ランじゃないから、襲われそうになるのかな。はぁとため息を吐きながら、気絶させて草壁さんに連絡を入れたよ。今ヒバリさんに連絡入れるのはダメかなと思って。でもオレの予想を反して、後で電話かかってきた。なんで僕に連絡しないのって。思わず隣に居たリボーンを見ちゃったよ。マジで?って感じで。

 

オレとしてはヒバリさんがバトル中だから気をつかったんだけど、前と違ってヒバリさんは事情を知っている。ディーノさんが戦いを仕掛けた理由もヒバリさんはわかってる。鍛えるという考えにはムカついてるだろうけど、ディーノさんが逃げないならいいってことだと思う。ヒバリさんはディーノさんを咬み殺したいはずだから。そして逃げないってわかってるなら、風紀活動もちゃんとするよね。

 

そんなトラブルがあったものの、オレは今日一日中暇だった。多分夜だろうと予想しているけど、念のために居るだけだからね。することもない。ゲームもマンガもないし。せっかくだからリボーンと話をして過ごしたよ。いろんな国の言葉でね。やっぱちょっと忘れてるのもあって、詰まったりはしたけど、リボーンには悪くねぇと言ってもらえた。

 

コンビニで買った晩飯を食べ終わると、やっと人の気配がし始めた。朝みたいな不良じゃないのは動きでわかってる。でもオレの超直感は反応なし。正確にいうと、反応はしているけど強くなることはなかった。

 

「それ使うのか?」

「うん。せっかくだしね」

 

オレがトンファーを出したらリボーンに声をかけられちゃった。これぐらいでしか使うことないんだよ、マジで。一般人にトンファーを使うのは過剰な気がするし、強いと思う人にはオレのトンファー使いでは通じないしね。

 

ボコボコとトンファーで殴った。うーん、雷撃隊だね。気絶してるところ悪いけど、無線を使わせてもらう。

 

「やるならもっと強い人寄越さないと、怪我人が増えるだけだよ」

『貴様……!』

 

ごめんね、レヴィ。他のところ、特にランボのところに行かれちゃ困るから挑発した。レヴィが部下思いなのを知っているから。

 

効果はあったみたいで、すぐにレヴィ達が姿を見せた。

 

「やったのはお前か。……罠か!」

 

それでもやっぱ暗殺部隊の一員だよね。オレの挑発には乗ったけど、首からリングを3つ下げてるのを見て警戒したもん。

 

「違うよ、レヴィ。大空のリングも持っている。彼女が沢田ツナだよ。どうやら守護者を集めきれなかったようだね」

「はっ」

「油断は禁物だよ。僕の存在に気付いていたんだ」

 

それでマーモンは姿を見せたんだ。せっかく幻術で隠れていたのに、変だなって思ってたんだ。

 

「ツナ、行けるか」

「大丈夫。でもトンファーは使えなさそう」

 

マーモンの姿を見て、リボーンの警戒があがったから聞いたみたい。アルコバレーノかもしれないって疑ってるからしょうがないけど。呪いをといたマーモンの凄さはオレもよく知ってるからね。……でもなぁ、正直あいつより怖くない。

 

「それもそうだな」

「え、またオレ顔に書いてた?」

 

リボーンは手を出せないから2対1の状況のはずなのに、一向に警戒しないオレ達にしびれを切らしたのか、レヴィが武器に手をのばした。

 

「待てェ、レヴィ!」

「一人で狩っちゃだめよ」

「よくも騙してくれたなぁ」

「って、二人しかいねーじゃん。つまんねーの」

 

言いたい放題だなぁと思いながらも、こんな感じだったと思うオレがいる。

 

「そんなことないよ、来るよ」

 

オレがそう言ったら、人の気配がし始めた。ヴァリアーのみんなも気付いたみたいで、オレを警戒した。オレの方が感覚が鋭いって思ったのかもしれない。でも多分そこまで変わらないよ。みんなが来るってわかっていたから。前がそうだったとか、超直感とかじゃなく、信頼でわかる。そういう意味ではヒバリさんは来ないだろうなぁ。オレがやられるなんて思ってなさそう。

 

「10代目!」

「ツナ!」

「沢田!」

 

父さんから聞いて、慌てて駆けつけてきてくれたんだろうなと思ったオレは嬉しくて、ヴァリアーと緊張状態が続いてるけど、みんなに手を振ったんだ。




沢田家光
ツナの発言に驚いきつつも、ボンゴレのボスに相応しいと感じた。
9代目からの回答がはやく来ないかと待機中。
残念ながら、9代目がやられたとは思ってない。XANXUSが目覚める前から、9代目の行動にちょっと疑問を持っていたから。

リボーン
アリアがみた予知の相手がツナかと思って、カマをかけたが、わからず。
ただツナに叶えようねと言われ、ツナだったらいいなと思った。

沢田ツナ
ヴァリアーからの殺気の中でも通常運転。
多分ヴァリアーから殺気を感じない方が慌てる。
感覚が相変わらずおかしい。


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オレはそこまで気にならなかったんだけど、オレに近づけば近づくほど獄寺君達の足が重くなった。やっぱりヴァリアーの殺気ってすごいんだなぁ。あ、でも前と違ってヒバリさんはちょっと優しいし、黒曜組も攻めてこなかったもんね。経験不足なだけかも。オレは慣れちゃっただけだし。

 

でもちゃんとオレの側に来てくれたよ。

 

「みんな、ありがとう」

 

声をかけると、ちょっとホッとしたような顔をした。これなら大丈夫かなーって思ったんだけど、オレの超直感が反応した。まぁ少し前から気配は感じていたから、わかってたけどね。誰が来るかって。

 

「でたな……。まさかまた奴を見る日が来るとはな、XANXUS」

 

相変わらずXANXUSは暴君で、オレと目があっただけなのに手に炎を込め始めた。ヴァリアーのみんなも焦ってるじゃないか。……って、オレも焦った方がいいよね。

 

どーしーよーかなー、なんて思いながらも、みんなを守るために一歩前に出る。今のオレの死ぬ気のコントロールなら、防げるはず。でも、消費が激しいから何発も無理だよね。死ぬ気の零地点突破改、使えないかな?

 

「死ね」

 

懐かしいなぁ。って思うオレは多分重症。そしてもうちょっと焦った方がいいよね。でもXANXUSが来たことに超直感は反応したけど、今からの攻撃には反応していない。

 

だから、前の時みたいに父さんが間に合う。

 

「待て、XANXUS。そこまでだ」

 

オレの予想通り、ツルハシが地面にささった。……うん、ささったよ。

 

「ちょ、父さん。壊さないでよ!ヒバリさんに怒られるじゃん!」

「……父さん、もうちょっと喜んでほしいな。最近、ツナが冷たい」

「昔からこんな感じだったよね」

 

別にふざけてるつもりはないんだよ。だからXANXUS、殺気をビリビリ送るのはやめて。

 

「真面目にやれ。家光」

 

リボーンってほんと女に甘いよね。怒られたのは父さんだった。空気を壊したのはオレなのに。……壊す前から、オレだけこんな感じだったから怒られなかったのかも。

 

父さんにはXANXUSが目を覚ましたっていう情報しか流さなかったから、9代目がどうなってるか知らない。確認する間もなかっただろうし。9代目からの勅命をバジル君から受け取ったけど、これ偽物なんだよなぁ。

 

えーっと、なになに。イタリア語だよ、懐かしい。

 

「うげっ、読めねぇのな。なんて書いてあるんだ?ツナ」

「極限わからんぞ!」

 

お兄さんにもわかりやすく説明した方がいいよね。

 

「9代目とNo.2であるオレの父さんが次期後継者を別々で選んだから、同じリングを持つ同士で勝負しろって」

「なるほど。わかりやすい!極限、晴は誰だー!」

「指示があるんだとよ。今すぐじゃねぇ」

 

あはは、オレのツッコミを獄寺君がしてくれたよ。お兄さんがもう戦う気でいたからね。

 

ただなぁ……。オレの記憶力じゃあんま自信はないけど、後継者がXANXUSが相応しいと思って9代目が目覚めさせたって書いてあるんだよ。そもそも揺りかご事件のことを知ってる人も少なかったよね?これって何かのヒントかな。……なんのヒントだよ。お願いだから骸はやく帰ってきて!

 

骸がXANXUSの氷をとかした人物を追っていることを知っているリボーンは、オレの顔を見た。この紙、変だよねぇ。9代目の死炎印が入ってるから、やるしかないんだけどね。父さんが不思議に思ってないから、リボーンとラルがまだ教えてないのは確実だし。これはオレ達が掴んだ情報だから勝手に流さなかったのかも。オレが分けた方がいいって言ったのもあるかもしれないね。

 

新たな人の気配がしたから、オレはそっちに視線を向ける。うーん、チェルベッロはまた居るのかぁ。この人達ってほんと何考えてるんだろうね。出てくるタイミングを考えると7³関係なんだけど、川平さんとの関係はないみたいだし。

 

チェルベッロが審判することにXANXUSは異存はないみたい。父さんは異議ありって言ったけど、認められなかったね。これも前と一緒。

 

「オレもちょっといいかな?あ、審判に反対とかじゃないから。聞きたいことがあって」

 

チェルベッロ達は顔を見合わせた後、オレに顔を向け頷いた。

 

「チェルベッロ機関って普段どこに居るの?」

「…………」

「うん、もういいよ」

 

答えられないというより、答えになっちゃうから言えないが正解みたい。オレの仮説が正しいかな。チェルベッロは未来から来たんだ、10年以上も前から。

 

「ツナ、何か知ってんのか」

「うーん、オレの中だけに留めた方がいい気がする」

「……そうか」

 

ごめんね、とリボーンに謝る。いやでも黙ってた方がいいと思うんだよ。オレが話したことでまた未来が変わっちゃうし、難しい。

 

XANXUSから更に殺気を送られちゃったけど、どうしようもないよと流す。いつものことだったから。

 

「場所は深夜の並盛中学校。詳しくは追って説明いたします」

「ちょっと待った!」

「……なんでしょうか?」

 

オレが止めたら、チェルベッロが警戒したよ。さっきのそんなに嫌な質問だったんだなぁ。

 

「並中でするなら、風紀委員長にちゃんと許可とって!一応オレからも口添えするからさ」

「風紀委員長、ですか?」

「そう。オレが許可とってもいいけど、オレ達は許されてもチェルベッロ機関は許さないと思うよ。それでもいいならいいけど、オレは助けないよ」

「……わかりました」

 

よかったよかった。ヒバリさん怒らせると大変だから。オレに同調するかのように、獄寺君達も何度か頷いた。前の時、ほんとよく無事だったよね。

 

そんなことを思ってる間に、チェルベッロは明日の時間を言ってから去っていった。そしてXANXUS達も。

 

獄寺君達にお礼をしたし、このまま解散のつもりだったんだけど、父さんに捕まった。リボーンに任せようと思ってたけどダメみたい。

 

「ツナ、チェルベッロ機関のことを教えろ」

「家光」

 

リボーンは止めたけど、父さんは首を振った。門外顧問として聞き流せないんだろうね。

 

「んー、オレから言うとすれば、父さんと一緒でチェルベッロ機関なんて聞いたことがないってこと」

「ツナ」

「……骸も情報を掴んでねぇってことか」

「うん、そういうこと。本当に9代目に仕えているなら、あいつが知らないわけないよ」

 

特にオレと一緒で骸も前のこと知ってるんだよ。チェルベッロの存在を探さないはずがない。オレに報告がないってことは見つかってないってこと。まぁ黙ってる時もあるけど、チェルベッロの存在は前の時からオレが気にしているのを知っていたからね。

 

骸がボンゴレに詳しいことはリボーンから聞いて父さんも知ってるみたいで頷いた。チェルベッロに対しては結局何もわからなかったから、納得はしてないけど。

 

「オレの超直感には引っかからなかったから、敵じゃないよ」

 

味方とも言えないけどね。オレがあえて隠した言葉は二人ともちゃんとわかったみたい。難しい顔をしている。

 

「それより父さんはイタリアに行った方がいいよ」

「ああ。9代目が心配だ」

「どういうことだ」

 

簡単にオレらが掴んでた情報を教える。氷をとかしたのが9代目なら、遅くても骸はこのタイミングに戻ってきてるよ。今のオレだとボンゴレじゃそんなに権限もってないし、結局オレはなんもできないんだよね。だから後はリボーンと父さん達に任せて獄寺君達に声をかける。オレ達の話が終わるの待ってくれてたから。

 

「みんな、お待たせ」

 

帰ってくれても良かったのにって言ったら、オレを送るために待ってくれてたんだって。学校の帰りとかも前は同じ道までだったけど、遅い時間だと家まで送ってくれるようになったもんね。こういうところで自分が女って再確認するよね。いやまぁちゃんと女と思ってるけど。

 

「ツナ、明日から学校来れるんじゃね?」

「あ、そっか。ほんとだね」

 

山本に言われて気付いたよ。ボンゴレ公認の決闘だから、他のところで手を出しちゃ問題だよね。反則負けでオレが10代目に決まっちゃうし。最悪、復讐者がくるよ。

 

「よ、良かったスね……10代目……」

「うむ。京子も寂しがっていたから極限喜ぶぞ!」

 

……お兄さんは本気でそう思ってるね。獄寺君はまだ修行が終わってないから、悔しそうに山本を見ているよ……。

 

「みんな、よく聞いて。この勝負、勝たなきゃいけないことはないから」

 

いつもなら真っ先に獄寺君が口を開く気がするのに、オレを見て何も言わなかった。正直、オレの本音は出なくていい、なんだよね。でもそれは言っちゃダメ。みんなが覚悟してオレからリングを受け取ってくれたんだから。そういうのもわかって、何も言えなくなったのかも。オレ、顔にいろいろ書いてるみたいだから。

 

「みんなには言っておくね。オレの雷の守護者はランボなんだ」

「ランボって、あのちっこい?」

「なんであのアホ牛が……」

「おお!わかったぞ、あのちびっ子か!」

 

そういえば、お兄さんとランボってそんなに接点なかったかも。2人のヒントを聞いてわかったみたい。まぁ晴と雷だしね。

 

「みんなが言う通り、ランボはまだちっちゃくて、戦ってと言えないのに、勝てなんてもっと言えないよ」

 

オレは首から下げている雷のリングを触りながら、また口を開く。

 

「リングもいつ渡せばいいのか、オレはまだわからない。けど、オレの雷の守護者は、他の誰でもない、ランボ。オレが決めた」

 

みんなわかってほしい。どの守護者もオレが選んだ。勝ち負けとか気にしなくていい。オレが選んだのは君達なんだ。

 

「ツナ、それを言われるとますます負けれねぇって」

「え!?なんで!?」

 

どうしてそうなったの!?とオレはツッコミしたけど、言葉にした山本は笑ってるしお兄さんも頷いちゃったよ。獄寺君はオレの味方だよね?と視線を向ける。

 

「……自分、まだ10代目のことをわかってなかったみたいです」

「へ?」

「改めて、尊敬します!10代目!」

「ええええ!?」

 

獄寺君にキラキラした目で見られるし、山本には頭を撫でられるし、お兄さんはめちゃくちゃ燃えてるし……。なんでこうなっただろうね。




チェルベッロ
作者によって捏造された人達。
基本的に私の作品では、15代目のポスターに彼女達が載っていたことから、その未来から来たことにしています。
今回もそうしました。

沢田ツナ
大事なのは勝敗じゃないと伝えたら、士気があがった。
不思議に思ってるのはツナだけ。
この後、パジャマパーティーをしながら待っているクロームにちゃんと連絡して帰った。

沢田家光
イタリアに向かう。

ラル・ミルチ
ツナが掴んだ情報はリボーンに勝手に話すなと釘をさされている。
思うところはあるが、ツナの家庭教師はリボーンなので従う。ラルは護衛のために来ているから。
家綱の護衛は継続中。


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久しぶりの学校だけど、オレはまずヒバリさんに報告へ行く。後回しなんて出来ないから。そう思ってたんだけど、いろんな人に捕まった。ヒバリさんが怖いって感じで。デジャブだよ……。

 

でも気持ちはわかる。ヒバリさんとディーノさんが戦ってる音がたまに聞こえるんだよ。他の風紀委員には聞けないし、オレに言いたくなるよね。まぁオレも答えられないんだけど。そもそもオレのせいだしね。

 

みんなにはなんとか誤魔化して、オレは屋上へと向かう。ひぃ、2人とも怪我でボロボロじゃん!

 

「シャマルー!って女しか診ないんだったー!」

 

ダメだー!と頭を抱える。オレが騒いでるのもあって、2人は手を止めた。

 

「お?ツナ、どうした?」

「なに、今いいところなんだけど」

 

……うん、黒川に何度か普通じゃないって言われるけど、この2人よりはマシだよね。怪我とかそっちを気にしようよ。

 

言ってもしょうがないし、昨日決まったことを伝える。並中でするからヒバリさんの機嫌が悪くなったけど、チェルベッロ機関に許可をもらいにくるように言ったことを伝えたら、少しは良くなった。オレみたいにチェルベッロも交渉する羽目になるんだろうなぁ。ヒバリさんなら修理は当然として、夏祭りの時のようにお金取りそう……。

 

約束通り伝えたからオレは退散する。オレもって言われたら嫌だし。日曜日だけで勘弁してください!

 

この後ふつーに授業を受けた。京子ちゃんに何か言われるかなって思ったけど、何もなかったよ。お兄さんが変だなーとは思ってるけど、オレが関係していることに気付いていないのかもしれない。前と違って、オレの欠席は風紀委員活動で、オレはお兄さんからボクシングの勧誘は受けてないしね。朝のジョギングでは会うけど、それぐらいだから。何よりパンツ一丁で走り回ってないし……。

 

京子ちゃんで思い出した。コロネロってお風呂一緒にはいってないよね?まさかそんな自殺行為してないよね?ラルがここに居るんだからほんとやめてよね!オレ、止めないよ!?

 

気にはなったけど、藪をつついて蛇は出さないよ。オレ、やっぱ成長した。前のオレなら絶対口にしてたから。

 

 

 

夜遅く、スーツに着替えたオレはこっそり家を出た。ちゃんとクロームには伝えてるから、母さんが気にしたら誤魔化してくれると思う。……少し悩んだけど、ランボを連れて。

 

「みんな!」

 

学校につくとみんなが居たから手を振る。ちょっと驚いたけど離れた場所にヒバリさんも居た。勝敗というより、他の守護者のことが気になってるのかな。だから当然なんだけど、ディーノさんも居た。でもこれが終わればまたバトルするんだって。……この2人っていつ寝てるんだろう。それも明日は日曜日なのにね。

 

「厳正なる協議の結果、今宵のリング争奪戦の対戦カードは決まりました。第1戦は晴れの守護者同士の対決です」

「ねぇねぇ、あれなぁに?」

 

オレの腕の中にいるランボはこの勝負に用意されたリングに興味津々だった。

 

「……わかってはいたんスけど、何もわかってねぇ」

 

獄寺君の言葉にハハハ……と苦笑いする。でもそうだよな、オレはランボになんも説明してないよ。

 

「ランボ、よく聞いて」

「んー?」

「ちびのお前には眠いだろうけど、ちゃんと見ててほしいんだ」

 

ジッとオレの顔を見ていたけど、ランボはすぐに横を向いちゃった。やれやれというような反応をみんなしてるけど、多分コイツはわかってる。お前はオレ達の背中を見て、どう感じるんだろうね。

 

お兄さんが特設リングに入っていったのを見て、なんか忘れてるなぁと思った。サングラスについては悩んだけど、渡すのをやめたんだよね。そりゃ渡した方がいいに決まってるんだけど、なんか違う気がしたから。前の時のお兄さんの覚悟を知っているから余計に。

 

「ツナ、どうしたんだ?」

「あ、思い出した」

 

山本に話しかけられて思い出したよ。大事な思い出だったのにね。円陣組んでなかったや。でも……。

 

「10代目?」

「……ううん。なんでもない。大丈夫だよ」

 

ちゃんとみんなわかってる。誰一人欠けない、欠けさせないって。

 

「晴のリング、ルッスーリアVS笹川了平。勝負開始!!」

 

この言葉の後すぐに照明がついて、リングが光る。オレは前の時と同じようにリボーンに借りた。獄寺君と山本がサングラスをお兄さんに渡そうとしたけど、チェルベッロのルールに阻まれる。

 

「……ランボ、ごめん。自分で立って」

 

誰かがオレを呼んだかもしれないけど、反応できなかった。お兄さんにサングラスを渡さないって決めたのはオレだ。……でも後悔ばかりだ。

 

「沢田!!!」

「っはい!」

「極限に問題ない!!!」

 

グッと両手を握りしめ、歯も食いしばる。お兄さんは照明のせいで何も見えてない。見えてないけど、オレがどんな顔をしているかなんてお見通しだったんだ。

 

「よく言ったぜ。了平!それでこそオレの弟子だ、コラ!」

「あら?美しい恋情?友情それとも師匠愛かしら。んまぁ、なんでもでもいいわ。強がりはよしなさい、あなたのパンチは通用しないんだから」

 

ルッスーリアに言われても、お兄さんは諦める気配はなかった。

 

「この右拳は圧倒的不利をはね返すためにある!!」

 

うおおおというお兄さんの掛け声の後、お兄さんは極限太陽(マキシマムキャノン )を放ったんだ。

 

パリンという音と共に、照明が割れる。お兄さんの宣言通りに不利な状況は終わった。

 

「沢田、お前は勝つ必要はないと言ったな」

 

ヴァリアーがざわっとしたけど、オレはお兄さんの言葉に頷いた。

 

「オレもその意見に賛成だ。負けて得るものもある。だがな、沢田がオレを選んだことに後悔だけはさせん!だから……オレはこの勝負勝つ!!」

 

お兄さんの覚悟に応えるかのように、右拳が光り始める。

 

極限(マキシマム )!!太陽(キャノン )!!!」

 

一撃でルッスーリアのメタル・ニーが砕けた。リボーンに呼ばれて、自分が泣いてることに気付いた。ハンカチを用意してくれてたけど、また断ってオレは袖で勢いよく拭って、口を開いたんだ。

 

「ありがとう、お兄さん!」

「おう!」

 

オレに向かって右拳をあげるお兄さんの姿はカッコよくて……。オレはもっとちゃんとしないといけないなぁって思ったよ。リングを受け取ってくれたみんなに悪いや。そりゃオレは優柔不断だからこれかも迷うだろうけど、これだけは迷っちゃいけないことだった。

 

「ツーナっ」

 

ガシッと山本に肩を組まれて、あわわとよろけつつも笑った。そうだよね、山本が一番お兄さんの気持ちわかるよね。

 

獄寺君が山本に怒ってるのをまぁまぁとなだめつつ、お兄さんがいるリングに視線を向ける。もうルッスーリアにお兄さんのパンチを防ぐことは出来ない。だけど、ルッスーリアは簡単には負けを認めない。……ううん、負けれないんだ。

 

どんっという音とともに、ルッスーリアが倒れる。ゴーラ・モスカに攻撃されて。

 

「弱者は消す。これがヴァリアーが常に最強部隊である所以の1つだ」

 

わかっていた、オレはこの結末がわかっていた。けど、やっぱりオレは認めれないよ。でも今はまだ口に出せない。……言っても、届かない。たとえオレがルッスーリアを庇ったとしても、今しか守れない。それじゃ意味がないんだ。

 

「……わからせ、なきゃ」

「10代目?」

「あ、いや、ごめん。なんでもないよ」

 

獄寺君に慌てて大丈夫と伝えてる間に、チェルベッロから明日は雷の守護者同士の対決と発表された。獄寺君達はオレの足にしがみついてるランボに視線を向けた。明日ってわかっていたけど、わかっていたけど、どーしよー!

 

オレがああああと頭を抱えてると、特設リングが壊れてヴァリアーが行っちゃった。

 

なんだか悩んでばっかりいるなぁとため息を吐いていたら、後ろから殺気がしてしゃがむ。こんなことする人って、あの人しか居ないよね……。

 

「何しやがる、ヒバリ!!」

「明日、わかってるよね?」

「……そうでした」

 

いや、忘れてなかったよ!?ちゃんと覚えていたから!と思いながら振り返ったけど、ヒバリさんはもうオレに背を向けて歩いていた。ディーノさんが慌てて追いかけていったからこの後バトルするんだろうね。

 

「10代目、ご無事ですか!?」

「あ、うん。それは大丈夫」

 

さすがです!って感じで獄寺君が感動しているけど、苦笑いするしかない。

 

「ふむ?極限、なんだったのだ?」

「あ、お兄さん、今日はありがとうございました!」

「おう!それで、ヒバリはなんだったんだ?」

 

そういやお兄さんは知らなかったっけ。毎週オレがヒバリさんと会ってること。軽くその説明をして、上の空の状態でくるなっていう意味ですよって教えたんだ。オレが次から次へと悩むから、喝をいれたんだろうね。

 

「ハハッ、ヒバリらしいぜ」

「うん。優しいよね、ああ見えて」

 

オレらがこんな会話してたら咬み殺されそうだけど……。うん、ちょっとブルっときたよ。怖い怖い。

 

「こういうところでポイントをかせーでるんだな」

「ポイントですか?」

「ああ。フゥ太のランキングでツナの憧れランキング1位はヒバリだぞ」

「あ、うん。そうなんだ。……って、リボーン、なんでバラしちゃうのー!?」

 

わー!って言いながら、ランボを抱えてダッシュして家へと逃げる。超恥ずかしいじゃん!!

 

 

 

湯船に顔までつかってブクブクと息を吐く。思いっきり逃げちゃったけど、別に逃げなくて良かったじゃん。逃げた方が気まずいよね、どう考えても。

 

「ぶはぁっ。もぉ、リボーンのバカ」

 

まぁリボーンもオレがランボのことで思い悩んでるから、一瞬忘れさせようとしたんだと思う。オレってドツボにハマるタイプなのに、時間がもうないし。……いやでもやっぱアレはないよ。フゥ太もそう思ったんだよ、みんな勘違いしちゃうじゃんか。ちゃんと訂正しとかなきゃ、ヒバリさんに怒られる……。

 

風呂から出たら、ケイタイの着信履歴が獄寺君で埋まっていた。山本とお兄さんは特に触れることもなく、また明日という内容のメールがきていた。うーん、すごい差。とにかく獄寺君に電話だなぁと思っていたら、かかってきた。

 

「ごめん、獄寺君。お風呂入っていたんだ」

 

ごふっ、っていう声が聞こえた。オレが出たことにびっくりしたのかな?

 

「えっと、さっきのことは変な勘違いしないでね。オレ、ヒバリさんの心の強さに憧れてるだけだから……」

『だ、大丈夫ス。リボーンさんから聞きました』

「そうなの!?良かったー!」

 

オレが女だからちゃんとフォローしてくれてたんだ。それならなんであんなに電話を?って疑問に思ったけど、オレの言葉で聞きたかったのかな。それとも何か用事?

 

『その、10代目』

「うん?なに、獄寺君」

『10代目がどの選択をしても、オレ……達は支持しますよ』

「……うん、ありがとうね。獄寺君」

 

この後、ちょっと話をして電話を切った。オレにこれを伝えるために電話してくれたんだなぁ。獄寺君の優しさに感動したよ。みんな、成長するの早いよね。リボーンはオレに追いつこうとするからって言ったけど、もう追い抜かされた気がする。オレが勝てるのって後何があるんだろ。2回目なのに。

 

やっぱオレはダメツナだよなぁと思いながら、飲み物が欲しくなってリビングへと向かう。明かりがついているしリボーンかな。

 

「……大人ランボ」

「お久しぶりです。若きボンゴレ」

 

そういえば、雷戦の前に話した気がする。すっかり忘れていたよ。でもオレは前と違って女だから、風呂の時間が長いと思うんだ。それなのに会ったってことは、父さんの仕業かな。まぁ父さんはイタリアに居るから、父さんに言われてラルがしたんだろうけど。

 

ランボが椅子に座ってるから、オレも座ることにした。これぐらい離れてたら、苦手意識ないかも。前に会った時はオレが転びそうだったのもあって近かったもんね。

 

「……何か聞いてる?」

「メモが置いてましたよ、これと一緒に」

 

20年後のランボの角を大人ランボが持っていた。オレがどう判断するかわからないけど、手は打ったんだろうね。

 

「あのさ、大人ランボ」

「いいですよ」

「へ?」

「子どものオレの代わりに戦ってほしいんですよね?」

 

まさか大人ランボからそう言われると思ってなかったオレは息をのんだ。




沢田ツナ
風紀委員に入ったことで、怪しさはあっても雲雀さん関係とスルーされている。
ランボの試合の件で頭を悩ませ中。

笹川了平
年長組ということもあるが、元々お兄ちゃん体質。
ツナのために負けられなかった。

雲雀恭弥
群れることになるが、試合はみる。
ツナに引っ張られてどこまで強くなったか興味津々だから。

大人ランボ
ツナを驚かせる天才かもしれない。




作者
しれっと更新する。
割とそんな感じの性格(ぇ


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前と全然違う大人ランボの態度に、オレはすぐに返事をできなかった。そんなオレを見て大人ランボはまた口を開いた。

 

「ボンゴレがオレを守ろうとしてくれてるのはわかってます。ですが、オレはもう大人ですよ」

「いや、それはわかってるけど……」

「それにオレはボンゴレの雷の守護者です」

 

ハッと顔をあげたら、大人ランボはまっすぐオレを見ていた。

 

「……うん。ありがとう、決心がついたよ」

「やれやれ。……あなたは本当に優しい人だ」

 

あはは。大人ランボにも、オレの顔を見れば何を考えてるのか、バレるようになるんだ。

 

決まったのもあって安心したのか急に眠くなってきたなぁ。オレはもう寝るよって声をかけて立とうとすれば、大人ランボがそういえば……と続けた言葉を聞いて動けなくなった。

 

「ちょ、ちょっと待って。今、なんて言ったの?」

「ですから、白蘭さんとはお会いしましたか?」

 

こんなタイミングで白蘭の名前を聞くと思わなかったオレは混乱しながらも、なんでって聞いたんだ。

 

「以前、白蘭さんに頼まれていたんですよ。オレが過去に行くことがあれば、過去の白蘭さん宛に郵送して欲しいものがあるって」

「はぁ!?ちょ、お前、何やってんの!?」

「え?ちゃんとボンゴレの許可はとってますよ。もちろんオレの時代のボンゴレからですが……」

 

オレの……?と聞き返せば、オレは獄寺氏に散々アホ牛と呼ばれてますが、そこまでアホではありませんって大人ランボに言われたよ。

 

「中身は?」

「さぁ?未来のボンゴレも苦笑いするだけで、中身は見ませんでしたから」

 

未来のオレ、何してんだろ……。え、ちょっと待って。これ、オレが骸に怒られるパターンじゃない?いやでも、超直感には引っかからなかったから大丈夫なはず。そうだよね?そうであって、お願いだから!!!

 

「受け取ったオレも、過去に行けるかわかりませんよと伝えたんですが、白蘭さんですからね。オレが送ったのは間違いないので、あの人の力を考えれば、もうボンゴレと接触していると思ったんですけどねぇ」

 

いや、牛乳飲んでる場合じゃないから。っていうか、大人ランボも白蘭の能力知ってるんだ。

 

「あ、あのさ。お前から見て、白蘭ってどんな奴?」

「……変な兄ちゃん、ですね」

 

ボフンという音がして、10年バズーカの効果が切れてちっこいランボが戻ってきた。……寝てるし、勝手に10年バズーカ使っちゃダメかな。……使ったとしても、これ以上情報を得れないと思うから使わないけど。

 

あーなんで1つ解決したのに、また悩みが増えるのー!?

 

 

 

 

結局オレは一睡も出来ずに、ヒバリさんの元へ向かった。だから、ため息を吐かれちゃったよ。言われたのに、こんな状態だったから。

 

「違うんです、ちゃんと解決しました!でも別の問題があぁぁぁ……」

 

ヒバリさんの視線に耐えきれず、オレは嘆いた。

 

「あー……ツナ、恭弥もそういう気分じゃねーみてぇだし、話してみろよ。相談に乗るぜ?」

 

ディーノさんにそう言ってもらえたけど、オレは口ごもる。どう説明すればいいかわからなかったから。オレが何も言わないから、ディーノさんがチラッとリボーンを見たよ。でも朝からリボーンにも話してみろって言われたんだよ。結局言えなくて……だからリボーンも首を横に振った。

 

「ふーん。僕があれだけ言ったのに、理由も話す気がないんだ」

 

あ、あの、意気揚々とトンファーかまえるの、やめてくれませんか。元々骸のせいで鍛えられていたヒバリさんが、ディーノさんに鍛えられたんだよ。すっげー怖い。つい根っからのビビリ体質のオレは必死に話しますと首を振った。

 

「なるほど。だが、これは女に優しくするリボーンには厳しいな」

 

ギロってヒバリさんがディーノさんをにらんだけど、これでも褒めてんだぜ?って流したよ。もうヒバリさんの性格掴んでる……。そしてオレもリボーンに蹴られてたら、話してたって思った。これについてオレは頑固だったわけじゃなかったみたい。

 

3人が話を聞く体制になったのもあって、オレはしどろもどろになりながら説明し始めた。

 

「ええっと、オレと骸が警戒していた奴がいて、10年後のランボが10年後のそいつに頼まれて、この時代のそいつに情報を流したみたいで……」

「なっ!?」

 

ディーノさんの反応に、慌てて未来のオレの許可はあったことを教える。このままじゃ大人ランボが怒られるから。リボーンはそれを聞いて、補足としてヒバリさんに10年バズーカのことを教えていた。知ってる程でオレが話しちゃったからね。

 

「それで、そいつが多分?リング争奪戦を企てた?た、タンマ。黒幕とかそういうのじゃないと思います。うーん、きっかけ?」

「……XANXUSの氷をとかしたのはそいつか」

「あ、それは間違いないと思う。骸からはまだなんも聞いてないけど、多分そう」

 

オレの気持ちがわかったのか、ディーノさんが頬をひきつらせていた。だよね、そうだよね!未来のオレ何してんの!?って言いたくなるよね!

 

「君と南国果実が警戒するんだ。強いよね?」

 

気にするのはそこですか……、ヒバリさん……。

 

「強い、ですよ。でもまだ骸の方が強いと思う。ただ……あいつの力がやっかいで」

「力?」

「そいつ、パラレルワールドの自分と情報を共有できちゃって。多分目覚めちゃってます」

 

未来のオレのせいで、と付け加える。頭の良いこの3人なら、目覚める前からオレがどうしてその力のことを知ってるのかとか疑問に思ってるだろうけど、そこは聞かないみたい。オレがどっか変ってのはなんとなく気付いているのもあるけど、多分オレを信用してるからだろうなぁ。

 

「おめーが許可したってことは10年後のそいつは悪いやつじゃねぇだろうな」

 

数少ないオレの長所をまたリボーンが見つけてくれた。ちょっと感動。

 

「大人ランボも変な兄ちゃんって言ってたし、そうだと思う。でもそいつが酷い奴になる可能性があるってオレはよくわかってるはずなんだよねぇ」

「そこまで危険なのか?」

「3:7……、やっぱ2:8かも。それとも1:9?あ、酷い奴になる可能性が後ろです」

「……何考えてんだ?」

「だから寝れなかったんです!」

 

未来のオレ、ほんと何してるんだろうね。自分のことなのに全然わかんないよ!

 

「それだけか?」

 

へ?とリボーンの言葉に首をかしげる。

 

「未来のおめーが何考えてるかなんて、この際、どうでもいいだろ。……ツナ、おめーはどうしたいんだ」

 

あ、そっか……とオレは腑に落ちた。未来の自分のことばっかり考えてたけど、そんなの後でいいんだ。

 

「あいつと……友達になりたい」

「答えは出てんじゃねーか」

 

うんとオレが頷けば、リボーンは満足そうな顔をした。相変わらずポーカーフェイスでわかりにくかったけどね。

 

なんかすっげースッキリしたから眠くなってきた。……昨日の夜も同じことを思ったね。ってことは、オレの経験上、ロクなことがない。

 

「さっさと準備しなよ」

「……そうでした」

 

ハハハと乾いた笑いを浮かべる。この人がいたよ、寝させてくれるはずがない。

 

「恭弥、オレが相手するから。な?」

「君はまだ逃げない。けど、日曜じゃなきゃ彼女は逃げる」

 

……ヒバリさんオレの性格よくわかってる。基本、日曜の代わりにとかそういう交換条件じゃなきゃ、オレって戦おうとしないよね。そして状況がわかってるから、ディーノさんの性格も読んで動いてるよ……。

 

「ヒバリ、ツナの代わりにオレが相手すっぞ。それならいいだろ?」

 

ブワッとヒバリさんから殺気が膨れ上がった。殺気は殺気でも、歓喜の殺気だったけど。

 

「ちょ、リボーン、お前どうしたんだよ」

 

やる気満々のヒバリさんを見て、オレはリボーンに慌てて確認する。正直オレが女っていうのを入れても、リボーンがわざわざオレの代わりに相手するなんて思わなかった。

 

「ツナ、おめー超直感がずっと反応して、本調子じゃねーだろ」

「……そんな顔に出てた?」

「こいつらの顔見れば、答えはわかんだろ」

 

言われて、ヒバリさんとディーノさんに目を向ければ、うまく隠せてたんだなぁって思った。ディーノさんが難しい顔をしていたし、ヒバリさんは睨んでるし。超直感が反応してるってことは厄介ごとだからね。

 

「ヴァリアーが来てから、ずっと何かに反応してるんです。XANXUSが来た時に少し強く反応したから、それかなって思ったんですけど、それからも弱いけど継続中で……」

 

オレの場合、明確に何に反応してるかわかんないんだよ。だから白蘭のことかな、母さんや家綱かな、ちび達かな、勝負のことかな、それとも炎真達に危機が迫ってるとか、京子ちゃん達は?まさかの骸!?って考えたんだけど、これだ!って感じでどうも反応しないんだよね。前の経験もだけど、小さい時から使ってるのもあって超直感は使いこなせてると思ってたのになぁ。

 

「何か気付いたら、ちゃんと相談するよ」

 

まぁそんな時間があればだけど。

 

一応それで納得してもらえたみたいで、リボーンがヒバリさんの相手をし始めた。

 

うーん、ヒバリさんが凄いのは間違いないけど、やっぱリボーンは別格だなぁ。強すぎ。……というか、あいつマジでやってない?ゴム弾だけどさ。

 

「……ディーノさん頑張ってください」

「おう」

 

ヒバリさんはやっとリボーンと戦えたけど絶対満足しない。機嫌悪くなるだろうし大変と思って声をかけたら、ディーノさんは軽く返事したよ。オレの言った意味をちゃんとわかってるのにね。やっぱそういうところが兄貴分って感じでカッコイイや。今度こそ、身につけたいよね。




大人ランボ
ツナを驚かせる天才かもしれない(2回目)

沢田ツナ
実はずっと超直感が反応していた。
ツナの超直感は外れないので、ツナが例にあげたこと以外で反応中。
忘れているだけ。
白蘭については方針が決まったのでスッキリした。

リボーン
ツナの話を聞けば簡単な話だったのですぐ導けた。
しかし話してくれなければ意味がない。
女であるツナに無理強いが出来ないため、ツナに無理強いが出来る雲雀を鍛えようと考えた。
強くなければ、話してくれない内容の可能性があるため。
ちなみにツナが本気で隠していることに気付くのは、今のところリボーンと骸だけ。
ただし骸は聞き出そうとはしないため、リボーンの中では論外。



沢田家光
泣いていいと思うよ。


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お久しぶりです、ちびっこです。
この章までは書き上げたので、今日から7日連続更新です。
書き終わった感想をするならば、続き書かないとこれは怒られるかも…でした。
でも見届け人を終わらせたいんですよね、あと数話だから。
だからちょっと寄り道してからかな?
多分一番書きたいと思っている章だから、そこまで待たせないと思います。私の感覚で、ですが。
では、しばらくよろしくお願いします。


相変わらず仲の悪いリボーンとランボの仲裁しながら学校に向かうと、校門で獄寺君達の姿が見えた。雨降ってるのに、外で待っててくれてたよ。悪いことしちゃったな。

 

「ごめん!みんな、お待たせ!」

「オレらもさっき来たところスよ」

 

それなら良かったってオレが笑うと、獄寺君の顔が赤くなった。最初の頃は変なのって思ってたけど、獄寺君の反応に慣れてきた。良いことだよね。オレの中で前の獄寺君を押し付けようとしてないんだから。

 

チェルベッロが現れて、雷戦は屋上でやるって宣言したから揃って移動する。今日の戦いはランボだからみんな心配してたけど、オレの顔を見て納得したみたい。また顔に書いてたんだろうね。ヒバリさんが来ないのも、わかったんだろうなぁ。

 

「雷の守護者は中央へ。対戦相手は2時間前からお待ちです」

 

……屋上についてから思い出したよ。レヴィが殺る気満々で2時間前から待ってたことを。

 

「んーツナが気にする必要なくね?」

「オレがお伝えしたかったことを!……そうですよ、10代目。あの野郎が勝手にしたことです」

「うむ。試合前にどう過ごすのかは個人の自由だ」

 

その流れでお兄さんがボクシング語りが始まって、獄寺君が怒っちゃったけど、みんなのおかげで納得できた。

 

「沢田氏、雷の守護者を……」

 

レヴィのことばっかり考えてたから、チェルベッロに再度催促されてしまった。オレは慌てながらもしっかり伝えた。オレ達の不戦敗でって。

 

そっちには不都合がないはずなのに、すっげー警戒されちゃった。何企んでいる!?って感じで。

 

「えっと、オレの雷の守護者はまだちっこくて、意味がわかってないんだ。時期がきたら、ちゃんと声をかけるつもり」

 

なぁなぁじゃなくて、オレはランボの意志でリングを受け取ってほしいんだ。余裕があるとは言えないけど、前の時と比べたらあると断言できるよ。だからその時までオレが雷のリングを持つことにした。

 

「一敗しちゃうけど、それはしょうがないかなって」

 

オレの出した答えに獄寺君達は反対の声をあげなかった。……ううん、むしろ喜んでそう。リボーンも甘いとは思ってるだろうけど、満足そうな顔をしていた。

 

「ぶはっ」

 

オレの発言でのほほんとした空気が流れてたんだけど、耐えきれず噴き出した声で、流れが変わる。出来れば、XANXUSが来るまでに終わりたかったんだけどなぁ。

 

「反吐が出る」

 

吐き捨てたように言った言葉から、機嫌の悪さが底の底かもしれない。オレの甘さは9代目と近いから。……ううん、2度目のオレはもっと甘いのかもしれない。ケンカすら売られないしね。ただカッ消す存在でしかないんだろうなぁ。

 

「……ゆりかご」

 

ポツリとオレは呟いた。本当は最後までオレは知らないままで終わらせるつもりだった。けど、家綱の時みたいにオレはXANXUSをちゃんと怒らせないといけない気がしたんだ。

 

「てめぇ、その目……!」

 

前と違ってオレは同情はしていない。当然オレはこの戦いが起きる前から知っていたし、ヒバリさんや骸に言われたのもある。けど、お前ではボンゴレのボスにはなれないっていう目はしていると思う。XANXUSだけじゃなく、スクアーロからも殺気が凄いから。

 

「ツナ、お前なんか知ってんのか?」

 

リボーンに聞かれたけど、オレは答えない。だけど……。

 

「この戦いをする理由はいっぱいあるけど、その1つにお前に認めてほしかったんだ。あ、いや、オレも今気付いたんだけどさ」

 

オレはいろいろと知っている。なのに、この戦いを止めようとは思わなかった。いろいろと誤魔化して、モスカの中に9代目がいるってリボーンに教えれば、それだけで話が変わってくる。そりゃモスカに入ってる9代目には悪いとは思うよ、けど。

 

「……うん、だってお前9代目の息子だもん」

 

ボンゴレの後継の話だから、養子のXANXUSには関係ないっておかしいよね。XANXUSに認められる可能性があるなら、戦う理由の1つになるよ、絶対。

 

「ぶっ殺す!!」

 

……火に油を注ぎすぎたかもしれない。XANXUSが武器に手をかけてるじゃん。え、オレやばくない?みんなが後ろいるから逃げれないって!

 

「XANXUS様!!」

 

チェルベッロが止める前に、銃から炎が放たれた。ハイパー死ぬ気モードにはなったけど、正直今のオレに防げるとは思えない。それでも死ぬ気の炎をコントロールして、最大限に防御力をあげる。

 

「……あれ?」

 

技と技がぶつかり合う音や光は凄いけど、オレには全く衝撃が来なかったんだ。

 

「ツナさん、怪我はない?」

「……炎真っ!!」

 

でもなんで?炎真の大地の炎で防いでくれたのはわかるよ。なんでここに居るんだろ。XANXUS達が誰だ!?って言ってるけど、炎真はそっちには目もくれずオレの疑問にこたえてくれた。

 

「僕たちにも関係する話だからね。昨日の戦いも見ていたんだよ?」

「え?そうなの?」

 

全然、気付かなかったよ。殺気とかないとオレの直感には引っかからないもんなぁ。

 

「それに骸君にも頼まれていたから。ツナさんはどこか抜けてるからって」

 

……あいつ、オレにシモンのことを頼んでおきながら炎真にはオレのことを頼んでたのかよ。まぁそれはいいや。助かるし、と言うか……助かったし。ただ……なんつーか、あいつがオレを心配して手を回してるって聞くと、なんか企んでそうって思っちゃうよね。

 

オレが脳内で頷いてると、XANXUSが痺れを切らしたみたいで再び銃をオレ達に向けた。

 

「答えろ、カス」

「……僕は同盟のシモンファミリーだよ」

「聞いたことねぇぞぉ!!」

「弱小ファミリーだからね」

 

炎真、絶対弱小に見えないって。オレは心の中でツッコミを入れた。だって、XANXUSの一撃を防いでピンピンしてるんだよ!無理があるって!

 

「ツナさん、僕たちのことは気にしなくていいよ。あの人がボンゴレの後継者になったら、シモンはボンゴレと同盟破棄するから」

 

えぇ!?とオレが驚いた声をあげたら、今度は炎真が驚いた。

 

「昨日の試合をみればそう思うよ。これは僕たちシモンの総意だから。それにツナさん……友達を殺す気なんだよ。同盟なんて続けられるわけないじゃないか」

 

……確かに。今のXANXUSがボスになれば、絶対にオレを殺すよね。シモンのみんながそのままボンゴレとの関係を継続するはずがない。オレだって、未来の白蘭は許せなかったし。

 

「XANXUS様、これ以上の行為は失格とさせていただきます。…………では、今回の守護者対決は沢田氏側の棄権によりヴァリアー側の勝利です」

 

チェルベッロの言葉で、XANXUSは止まった。ただオレの発言は忘れていないだろうから、暗殺しかけてきそう。

 

「はぁぁぁ……」

 

久しぶりにおっきな溜息が出た。平穏とは言えなかったけど、前と違って大きなトラブルはなかったのに自分から作っちゃったよ……。って、それよりシモンのことだよ。

 

「さっき言ったよ、ツナさん」

 

……だからオレの顔どうなってんの。

 

「ツナ、きっかけはボンゴレでもこれはシモンの問題だぞ」

「ゔ。……わかったよ。みんなに気をつけてってだけでも、伝えてくれる?」

「うん、もちろん。じゃ僕は帰るね」

 

うーん、炎真を見送りながら思った。こういうのは炎真の方がしっかりしてるよね。オレはリボーンに言われて止まったのに、炎真はボンゴレの問題だからってあっさり帰ったから。そりゃオレが声をかけたら協力はしてくれるみたいだけど。実際、骸に頼まれてオレのこと助けてくれたし。

 

「おめーらも帰れ。オレはツナと話があるからな」

「あはは……」

 

オレが遠い目をしてるけど、獄寺君達も帰っていった。相手がリボーンだからってのもあるだろうけど。

 

「ツナ」

「うーん、わかった。話すよ」

 

そのかわり話してる間の警戒はお前がしてって頼んだ。危険がないとオレは見逃しちゃうから。

 

「XANXUSは養子だよ」

「……そうか」

 

疑ったり、怒ったりするかなーと思っていたけど、リボーンは冷静だった。

 

「止めなくていいの?」

「今さらオレが止めねーと思ったから話したんだろ」

「まぁね」

 

やれやれと言った感じでリボーンは息を吐いた。けど、すぐに切り替えたのか、あいつらにもいい経験になるしなとニッと笑った。

 

「……あー、やだやだ。オレ、お前に似た気がする。今それ聞いて、頷いてるオレがいるもん」

「そこはオレ様に似て光栄に思うところだぞ」

 

えーって言いながらも、オレはそこまで嫌じゃなかった。リボーンは機嫌がいいのか、オレに似たならボンゴレは安泰だなとか言ってる。

 

「にしても、ツナ。おめー、家光に冷たくねぇか?」

「だって父さんだし」

 

フゥ太のランキングに入ってるけど、ダメな父親だと思ってるのは事実だし、好きか嫌いかって聞かれるとビミョー。尊敬はしてるけど。それにこの情報を知ってても、父さんが9代目のところへ向かう覚悟に差はつかないし。

 

「あ、そうだ。オレの超直感、さっきから反応しなくなったんだ」

「あの攻撃か」

「みたい」

「ツナ、勝たねーと認めてもらえる以前の話だぞ」

「それはわかってる」

 

ただ超直感が反応してたってことは、オレの今の力では防げなかったってことだよな。リボーンもちょっと難しそうな顔をしていた。俺に合う武器がないもんね。

 

「んーでも何とかなるよ」

 

もう超直感もひっかからないしねってオレが笑えば、リボーンもそれもそうだなって頷いた。リボーンにしては楽観的だなとは思ったけど、それだけオレを信頼してくれてるってことだもんね。

 

 

 

 

 

 

一方その頃。

 

少々目立つ男2人組が歩いていた。一人は全身真っ白で、もう一人は黒を基調とした服を着ていたのだから、対比で目立たない方がおかしい。

 

黒の方はポイントで藍色が入っているため、白ほど目立たないのかといえば、それはないと誰もが答えるだろう。彼の肩にはフクロウが乗っていたのだから。……それに髪型も変だった。

 

それでも彼らの歩みを止めるものはいない。いくら変だと思っても、止めるほどではないのだ。

 

「んーまだ時間があるし、マシマロ買いに行こうよ♪」

「どうして僕が付き合わないといけないのですか。さっさと行きますよ」

「えー。そうだ♪骸クンはチョコ買いなよ」

「……まぁ少しぐらいならいいでしょう」

 

仲がいいのか、悪いのか。恐らく2人に質問すれば、どちらの答えも聞ける。

 

「お父さんを助けてあげれば、ツナちゃんは喜んでくれるよね、骸クン」

「何度言えばわかるのですか。僕は沢田ツナではありませんから、わかりませんよ」

「もぅイジワルだよね、骸クンは。あーあ、早く会いたいなぁ、ツナちゃんに」

「僕は愛しのクロームに会いたいです」

 

息が合うのか、合わないのか。変な2人組は洋菓子店に向かってから、ボンゴレ本部へと乗り込んだ。もちろんモスカという兵器の資料を盗んでいくのも忘れない。

 

9代目の影に撃たれ、重傷を負って身を潜めるように隠れていた沢田家光はそんな変な2人組に助け出されることになる。

 

そしてこの2人が動いたことで、ツナの超直感がおさまったことに誰も気付かなかった。

 




沢田ツナ
リボーンの指摘通り、家光には冷たい。
ただ今回気付かなかったのは、前の時に聞いてなかったと言うのもあるが、家光がやられるとは思ってないという信頼から。

沢田家光
怪我は痛いし、可愛い可愛い娘に忘れられたし、めんどくさそうな人物にも絡まれる。
通信が妨害される可能性があるので、ツナが信じた骸に情報を託す。
なお、白蘭の情報がなければこのまま死亡していた。
ラルが日本にいたことで救出作戦が失敗したため。

六道骸
割と本気でクロームに会いたい。
仲がいい?そんなわけがないでしょう。もしや、目が腐ってますか?

白蘭
早くツナちゃんに会いたいなぁ〜♪
僕と骸君の仲?もちろん、いいよ(ニッコリ


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せっかく学校に通えていたのに、今日からまた外でウロウロする羽目に。いやまぁオレが悪いんだけどね。XANXUSの地雷を踏んだのはオレだし。もちろんヒバリさんに許可をもらって休んでる。理由を説明したら、ああそう、って言われたよ。正直ちょっと呆れられるかなと思ってたんですけどって言ったら、君だからねという返事をもらった。……意味わかんないんですけど。まぁいいけど。

 

そして予想通りというかなんというか、雇われたのか殺し屋がやってきたよ。やっぱあれは禁句だったね。なんて考えながらも気絶させる。

 

「殺さねーの?」

「そうだね。オレのそういうの嫌いだし」

「ふーん。つまんねーの」

 

なんて言いながらも、オレの後ろをベルフェゴールがついてくる。にしても、なんで居るんだろうね。手を出したいけど出せないから、秘密裏に雇ってるはずなのにね。お前、ここに居ていいの?あ、もちろんリボーンも一緒にいるよ。リボーンもベルには手を出せないから居るだけだけど。

 

「オレ、そろそろ飯にするけど一緒に食う?」

「うししっ。いいぜ」

 

財布に入ってるお金を確認して、オレは山本ん家に向かった。

 

「いらっしゃい。おー、ツーちゃんじゃないか。学校はいいのかい?」

「こんにちはー。今日は家庭の事情で休みました」

 

リボーンはオレが女だから自分で払うけど、こいつは絶対気にせず食うよね。だから先にお金を相談しようとしたら山本のお父さんの眼がカッと開いた。

 

「ツーちゃん、誰だその男は!まさか恋人とか言わねーだろうな」

 

……山本の話は本当だったんだね。オレ、今まで本気にしてなかったよ。

 

「違いますって。ちょっと危険人物なんで、この店を頼らせてもらったんです。ふつーの店じゃ危なっかしくて」

「おー、そうかそうか。おじさん、ツーちゃんに頼られるなんて嬉しいね」

 

いや、ほんとにオレに激甘じゃない?山本のお父さん、それでいいの?と思いながらも頼らせてもらった手前、何も言えない。ベルはオレ達の会話を気にもせず、珍しそうに店内を見ていた。寿司屋には来たことなかったみたい。その間に、ちゃんと予算を伝えた。山本のお父さんだから割引してくれるんだろうなぁ。申し訳ないけど、すげー助かる。

 

「オレの奢り。つっても、お前らみたいに稼いでないから、上限はあるけどね」

「なに、賄賂?」

「ある意味そうかも。ちゃんと獄寺君の相手をしてほしいから」

「当たり前じゃん。殺すぜ」

 

頑張ってねといい、オレは握ってもらった寿司に手を伸ばす。ベルも普通に食べ始めた。笑ってるし、気に入ってくれたっぽい。山本のお父さんの寿司は美味しいもんね、わかる。

 

「そんな強いの?」

「強さでいえば、オレの守護者の中では弱い方かも」

「なにそれ、つまんねー」

「それはちょっと違うかな。オレんとこ、規格外がいるから基準が変なんだよ。だよね?」

「ああ。あいつはちょっと別格だな」

 

だよねーとオレはため息を吐く。おかげでヒバリさんもつられておかしくなって来てるんだから。あーやだやだ。次から相手するの怖くなって来た。

 

「ん。そんな奴、居たっけ?王子の勘には引っかかってないぜ」

「そりゃ居ないもん。今オレの頼みで動いてもらってんの。もう1ヶ月ぐらい連絡なくってさ。酷いと思わない?」

「死んでるんじゃね?」

「ないない。オレへの扱いが雑なだけ。でもちゃんとオレがキレる前に帰ってくるよ」

 

なんだかんだ言いながら付き合い長いしね。あいつはそれをちゃんとわかってる。

 

「期待して損した。お前より弱いってことじゃん」

「今のオレは弱いからね。けど、オレの強さを一番知ってんのはそいつなの。オレの逆鱗に触れないよう、誰よりも気を付けてるね」

「ふーん?」

「ちなみにこれ二度目の忠告だからね。まったく、誰に言ってもお前ら共有しようとしないから困っちゃうよ。オレ一人一人しないといけないの?」

「オレ、王子だしー」

 

あーほんとコイツらヤダ、バラバラ過ぎ。XANXUSに話を通さないと聞きやしない。まぁそれがコイツらの良いとこでもあるんだけど。

 

結局、真面目に話をしたのはこれだけでふつーに一緒に食事してベルと別れた。その後も暗殺者は襲ってきたけどね。でも明日までかなぁ……なんて思う。スクアーロ、XANXUSのこと大好きだから。

 

 

 

 

5分前になっても獄寺君は姿を見せない。けど、オレらはいつも通り駄弁ってた。みんな、獄寺君は来るって信じてるからね。そんなオレらの緊張感のない様子を見て、ヴァリアーからは殺気がガンガン飛んでくるけどね。これはいつものことだからスルーする。けど、その殺気に混じってヒバリさんも飛ばすからオレは窓を開けて叫んだ。

 

「廊下の広さはヒバリさんが一番知ってるでしょ!!」

 

プイッと横向いたよ、あの人。そんなことはわかってるけど、群れてるのを見るのはムカつくんですね、わかります。や、わかんないけど。

 

「ヒバリはあんなところに居たのか」

「ははっ、ヒバリだもんな」

 

オレの発言でお兄さんと山本は校舎の屋上から見ていたことに気付いたらしい。ってことは、オレにだけ殺気を送ってたんだ、あの人。

 

「まっ、そんだけ恭弥が気に入ってるってことだろ?」

「ディーノさん!と、ロマーリオさん。……よかったですね、ディーノさんも好かれてますよ!」

「……いや、オレのは違うだろ」

 

やってきたディーノさんにだけ、またまた器用に殺気を送ってたから思わず言えば、頬を引き攣らせてたよ。この後もバトルらしい。頑張ってください。

 

そんな事をしてる間に、針が進み11時になろうとしていた。流石にみんなが心配そうな顔をしてピリピリした空気になる。けど、オレは近づいてきた気配にふわりと笑う。後1秒もないところで、みんなが見ていた時計が爆発した。

 

「おまたせしました10代目!!獄寺隼人いけます」

「……うん、来てくれてありがとう獄寺君。でもね、あっち見て」

「なんスか?……うげっ!」

 

オレらはヒバリさんが居るのを知ってたからね。ばっちり見られていた獄寺君にオレ達は心の中でエールを送った。

 

「ほんと、しまんねーな」

 

呆れつつも、リボーンの口角が上がってるのを見て、これがやっぱ正解だったと思えた。そりゃヴァリアーからすれば、ふざけた態度にしか見えないよ。けど、これがオレらの肩の力の抜き方だ。前と違ってボスであるオレが裏の世界にどっぷり浸かる気でいて、守護者の中で一番真面目なのが獄寺君だ。オレの影響を一番受けやすい。こう言う時だからこそ、獄寺君は肩の力を抜かないといけない。いつも通りわちゃわちゃしてるのが一番なんだよね。

 

「獄寺君、お願いね」

「はいっ!10代目!!」

 

獄寺君の眼を見て、オレはこれ以上何も言わない事を決めた。

 

嵐戦の試合内容も前と変わりなかった。や、オレの覚えてる範囲だけどね。ほら、オレはポコポコと色々抜けてるからさ。強いて言うなら、観覧席とフィールドの間に赤外線感知式レーザーがないくらいかな。あれはオレが雷戦を妨害したから出来たからね。今回は端から棄権したもん。

 

開始合図の前にベルが獄寺君の肩に手を置いた。ピクっとオレが反応したことに気付いたのか、触れたことを誤魔化すためかは知らないけど、ベルがオレに向かって「昼はご馳走さん♪」といいつつ手を振ってきた。

 

予想はしてたけど反応は凄かった。獄寺君はギギギと首を機械のように動かして、オレがはいはいと手を振り返してるのを見た途端、膝から崩れ落ちたよ。スクアーロもうるさかったね。後はそこまでかな。オレとベルがそういう性格だからと流したんだよ、多分。

 

「……10代目。オレ、このいざこざが終われば、10代目と食事に行きたいです」

「へ?あ、うん。行こうね」

 

なんでわざわざ今から声をかけたんだろうと不思議に思いつつオレは返事した。だってね、獄寺君とだよ。行かない理由ないじゃん。でもまぁその約束で獄寺君が元気出て、切り替わることができたみたい。……なんかみんな優しい目で獄寺君をみてるよね。オレとお兄さんは一緒に首を傾げたよ。なんだろ、この空気って感じでさ。

 

オレとお兄さんが不思議でいっぱいになってる間に、チェルベッロが試合開始の合図を出したから意識を切り替える。

 

気流に乗ったナイフが獄寺君の頬を切り裂いたのをみて、やっぱりとオレは軽く息を吐いた。お兄さんの時といい、ちょっとズルいよね。黙ってたオレが思うのは微妙かもしれないけどさ。

 

「ツナ」

 

あぁ、リボーンのその一言だけでオメー気付いてたんだろとオレに訴えてるのがわかる。そうだよね、お兄さんの時は言い訳が厳しいけど、獄寺君には言ってもよかったんだよ。オレがこの目でベルが細工したことに気付いていたんだから。うーん、獄寺君の眼を見て決めたから?前の時に見破ったから?……違う。オレはベルが他の仕掛けをしたとしても獄寺君には言わなかった。

 

「……獄寺君はオレの右腕だから。オレの側に一番いることになるし、オレが居ないところで采配することも一番多くなる。オレがそう決めちゃったから、他のみんなより求めるものが多くなっちゃうんだ。獄寺君からすれば酷い話だよね、負わなくてもいい怪我をしてるんだから」

「ツーちゃんの期待に応えろよ、隼人」

「あったりまえだろうが!!」

 

シャマルってば女の子に甘すぎ、獄寺君はオレに甘すぎだよ。

 

オレが苦笑いしてる間に、獄寺君は試合前にワイヤーを肩につけられたことに気が付き、ベルの技を見破った。その勢いのまま、獄寺君は新技のロケットボムでベルに一泡吹かせた。けど、ベルフェゴールの本領はここからで、獄寺君は前と同じように追い詰められていく。そんな中でも獄寺君は活路を探し続け、ベルのワイヤーを利用して獄寺君のボムを食らわせた。

 

「これが嵐の守護者の怒涛の攻めだぜ」

 

ズキっとオレの超直感が反応する。前の時は全然気づかなかった。だからシャマルが必死に声をかけて、オレが土壇場で怒鳴った。……気付いてくれ、獄寺君。オレは君をもう一度怒りたくない。オレは今まで君に目一杯伝えたつもりだよ。

 

「……ッチ。仕方ねーか」

 

最初のハリケーン・タービンの爆発音が聞こえてすぐ、獄寺君はベルフェゴールに自分が持っていた嵐のリングを投げた。周りが驚きの声をあげる中、オレは画面越しじゃなくて獄寺君の顔を見たくて駆け出した。

 

オレが辿り着いた時、獄寺君はリングを持って喜んでるベルを引きずり、ヴァリアーの前に置いていくところだった。

 

「ゔぉぉい!テメェなんのつもりだ!」

「オレは10代目の意志を尊重したまでだ。オレはもちろんのこと、こいつが死ぬことも悲しむ優しいお方だ。右腕のオレがリングに拘って、10代目のお気持ちを蔑ろにすれば、他の守護者に示しがつかねーだろうが」

「……獄寺君!!」

 

オレが近くに来ていると思ってなかったみたいで、獄寺君はちょっと焦っていた。けど、オレの顔を見てホッとしたんだ。この判断は間違ってなかったとわかったから。それでも獄寺君は真面目だからね、最初の一言は予想がつく。オレはそれに被せるように声をかけた。

 

「すみません、10代目」

「ありがとう、獄寺君」

 

ぷっとオレ達は吹き出す。そして獄寺君はオレの後ろに続いてやってきた山本に声をかけた。

 

「後、頼むぞ」

「おう!」

 

やっぱオレが女なのもあって一緒にいる機会が多いのか、この2人は仲良くなるのが早いよね。獄寺君がいやいや言ってないもん。

 

ヴァリアーには理解できないだろうけど、これがオレ達だよと視線を向ける。オレを馬鹿にするのはいい、けどもし獄寺君の行動を笑うようなら許さないという視線だったからなのか、ヴァリアーは何も言ってこなかった。

 

少しの沈黙のあと、チェルベッロがベルフェゴールの勝利を宣言し、明日のカード「雨」の守護者の勝負と発表した。前と違ってヒバリさんは理解してるから暴れることもなく、スクアーロが勝利宣言だけして去っていったよ。随分平和だなぁ。や、ディーノさんは慌ててヒバリさんを追いかけてったけどね。あそこだけ嵐だよ。あれ?雲雀さんって雲じゃなかった?

 

「って、獄寺君、治療しなきゃ!シャマル!」

「……しゃーねぇな。ツーちゃんの頼みだ」

 

ありがとうと視線を向けると、これぐらいかすり傷ですよと獄寺君が強がるからオレはムッとした。

 

「カッコつけないの!すごい傷なんだよ!」

「ゔっ、すみません……」

「や、ごめん。えっと、そんなことしなくても、獄寺君はカッコよかったよ。すっごく!……あれ?獄寺君?」

 

気を失ってない?やっぱ無理してたんだよ!!とオレはシャマルに獄寺君は大丈夫なの!?と詰め寄った。

 

「ぁー、隼人はここで死んでも悔いはねぇから大丈夫だろ」

「んなっ!?シャマル、どうにかして!?」

「……ここまで耐性がない奴いるか?オレはお手上げだな」

「そこをなんとか!」

 

いや無理だろ、これ……と呟きながらもシャマルはちゃんと手を動かしてくれて、獄寺君は無事に目を覚ましてくれた。

 




沢田ツナ
今回は怒る必要がなくて、とても喜んでる。
獄寺君、かっこよかったなぁ。

獄寺隼人
最後の最後に致命傷を負った。
ツナと了平、子どものランボ以外にはバレバレ。
ヴァリアーにもバレバレ。

シャマル
正直、匙を投げたい。
悩ませつつアドバイスを送るが、日頃の行いのせいで獄寺は聞きやしない。
どうすりゃいいんだ……?

リボーン
全然ダメだなと獄寺に呆れている。


作者
ベルとベルフェゴールの表記の違いはなんとなくで深い意味はないです。


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10

今日はベルが来なかったぐらいで昨日と大体同じような感じで過ごし、夜になったから並中にやってきた。リボーンが一緒に居たからまだマシだったけど、寂しかったのもあっていつもより少し早めだけどね。

 

「みんな、どうしたの?」

 

なんか重い空気になってるから声をかけると弾かれるように山本とディーノさんがオレを見た。すっかりオレは忘れてたけど、ディーノさんとスクアーロは同級生で、スクアーロのことを山本に教えてくれていたらしい。本当は昨日教えてあげたかったけど、ヒバリさんをほっとくことも出来なくてギリギリになったみたい。ディーノさんにすまんって言われちゃったよ。

 

「んー謝る必要ないですよ。山本が継いだ時雨蒼燕流は凄いですから」

「……ツナ、オレの話をちゃんと聞いてたか?」

 

もちろんとディーノさんに頷く。

 

「ははっ。だな!親父も時雨蒼燕流は完全無欠最強無敵だ!って言ってたのな」

「そうそう。山本なら大丈夫だよ」

 

山本はもうディーノさんの話は気にならなくなったみたいで、うしっ!とストレッチを始めた。ディーノさんは困ったように頬をかいてたけどね。

 

オレらがわちゃわちゃしてるとスクアーロとチェルベッロがやってきた。やっぱB校舎かぁと軽く頷きつつ、ディーノさんにチラッと視線を送ればウインクをもらったよ。

 

「跳ね馬、テメェなに10代目に色目を使ってやがる!」

「ぁ、いや、今のはそのだな……」

 

まぁまぁとオレは仲裁に入る。スクアーロの性格と強さを同級生だからこそ知ってるからね。それでなくても今回のような誤魔化せそうなステージなら優しいディーノさんが手を回すのはわかるもん。

 

「獄寺君、まだ安静が必要なんだよ。だから無理しちゃだめだよ、ね?」

「ぐはっ」

 

ディーノさんみたいに意思疎通できるかなってオレも獄寺君にウインクしてみたけど、獄寺君の意識が飛びかけていた。そんなに酷かったのかなぁ……。そりゃディーノさんと比べるとオレはブサイクだよ。それでもオレ今は女だよ。ちょっとショックなんだけど……。

 

「ツナ、さっさと行くぞ」

 

ズーンと落ち込みつつも、リボーンに言われたからと身体が勝手に動くオレはやっぱ重症だよねと思った。

 

 

 

試合が始まりディーノさんは唖然と画面モニターを見ているから、オレは口を開いた。

 

「ディーノさんは毎日手を合わせてるから、ヒバリさんが才能の塊で天才だと思ってたでしょ。や、ヒバリさんも天才と呼ばれる分類に入るんですけどね。オレもしょっちゅうあの人は天才だからって言いますし。でも、オレの守護者の中で一番の天才は誰かと聞かれたら、オレは山本と答えるんです。普通なら刀を持ってまだ一年っていうでしょうけど、山本の場合は一年も握ったっていう表現になるんです。これが初めての実戦とか関係ないんです、山本の才能の前には……」

 

そしてその山本がマフィアごっことは思ってなくて、オレについていくと覚悟を決めている。……オレは野球にだけ使って欲しかったよ。

 

「ツナ。おまえが気付かなくても、オレが山本の才能に気付いていたぞ」

「だよねー。オレもそう思って覚悟してたんだよ。ヒバリさんにも怒られたのもあるしさ、リボーンが巻き込んだらもう諦めようって。相変わらずの逃げ腰で、また骸には呆れられたけどさ。でもまさかオレ自身がやらかして山本をこの道に進ませるとは思ってなかったよ」

 

ハハハ……と笑って誤魔化しながら、画面モニターを見る。スクアーロが時雨蒼燕流を知っていて見切ったとしても、山本はスクアーロの見越した想像の上を行く。

 

「流派を超えるか……。ツナおまえのいう通り、オレの心配は杞憂だったんだな」

 

ほんと、オレの周りって規格外ばっか。なんとか技の出先がわかっていたから致命傷を避けていたけど、山本が放った攻式・八の型……山本のお父さんが作った『篠突く雨』の前にはなす術もなく、スクアーロは敗れた。

 

「勝ったぜ」

 

カメラに向かってリングを見せる山本の笑顔に、フッと息を吐いた。いくら山本が凄くても無傷とはいかなかったよ。けど、今までの試合の中じゃ圧倒的だった。だから恐怖心というもの少しは生まれるはずなのに、この山本の笑顔を見たら吹き飛んじゃうんだよね。

 

「……すみません。オレ、もっかい修行してきます」

「きょくげーん!」

 

って思ってたんだけど、獄寺君とお兄さんの闘争心に火をつけちゃったよ。

 

「や、ほら、山本もオレの幼馴染だから。ガキの頃からつるんでるからね。山本はあの2人と交流なかったけどさ。なかったから真っ直ぐに育ったというか……ちょっと影響受けて規格外になっちゃったけど」

 

あれ?フォローになってる?と首を傾げる。なんかついでにヒバリさんと骸に喧嘩売ってない?大丈夫?とわけわかんなくなってきた。

 

オレがうーんと頭を抱えて悩んでると、スクアーロが負けたことにXANXUSが笑い始めた。

 

「なんで……わかんないのかな」

「沢田?」

「10代目?」

 

2人の驚いた姿で気付いた。どうやらオレは無意識にハイパー死ぬ気モードになってたらしい。

 

「オレは……オレには出来そうにないだけで、恐怖で人を束ねることが悪いとは思わない。オレの周りにも居るしな」

 

そういって、オレはヒバリさんに視線を向ける。けど、ヒバリさんとXANXUSは違う。

 

「お前はボンゴレのボスの座についた時、どんな景色を見るつもりだ」

「はっ。カス如きがボンゴレのボスを語るのか」

「……お前はなにも見えてない。頂点に立つからこそ、見なければならないものがある。それが見えてなければ、たとえ頂点に立ったとしてもほんの一瞬だ」

 

そう考えると、XANXUSは前の時に出会ったばかりの頃のヒバリさんに似ている。今のヒバリさんとは出会ってすぐでもそんなこと思いもしなかったけどね。恐怖で縛りながらも、ヒバリさんはちゃんと見えている。自分についてきてくれてる人達の顔が。

 

ふぅと息を吐いて、ハイパー死ぬ気モードを解除して画面モニターに視線を向ける。

 

「……山本。疲れてるところ悪いんだけどさ、スクアーロを連れて帰ってきて。色々言うだろうけど、オレの誇りもかかってるからよろしくね」

「もとよりそのつもりだったぜ。獄寺がみせてくれたしな」

「うん。ありがとう、みんな」

 

もう一度オレはXANXUSに視線を向ける。

 

「スクアーロはオレが一旦預かる。お前らに殺させないよ」

「カスには似合いの行き場だな」

「……ほんとうにお前はなにもわかってないんだね」

 

はぁとオレはため息を吐いて、チェルベッロに進行を促す。雨のリングの争奪戦はもちろん山本の勝利で明日の対決は霧と発表された。それを聞いたXANXUS達はスクアーロに一瞥することもなく、去っていった。

 

戻ってきた山本にお礼を言いつつ、ボロボロでも色々と叫んで暴れようとするスクアーロにオレは一発入れる。オレが容赦なく気絶させたから、みんなちょっと引いてたよ。あのままだとスクアーロが自殺しちゃう可能性もあったのも気付いてたからか、なにも言っては来なかったけどね。

 

「あの、ディーノさん。オレ偉そうに言っちゃったんですけど、今のオレの伝手じゃどうしようもなくて……スクアーロのこと頼んでもいいですか?」

 

いや、ヒバリさんに頭を下げれば何とかなるのはわかってるけどね。それは最終手段です……。心優しい兄弟子のディーノさんは軽く引き受けてくれた。

 

「あ、あと……すみません。手を回してくださったのに」

「ん?オレが勝手にやったことだしな。ツナが謝る必要はねーよ」

 

よしよしと頭を撫でられて、えへへと照れる。やっぱディーノさんはカッコイイ大人だよ!

 

オレは幸せだったんだけど、獄寺君がイライラしてきた。随分大人っぽくなったかなぁと思ってたけど、獄寺君はまだ年上の人はあんまり得意じゃないみたい。ディーノさんもそう思ったのか、慌ててオレの頭から手を離して話題を振ってきた。

 

「そ、そういや、明日は霧の試合だが六道骸は間に合いそうなのか?」

「間に合わせてきますよ。そういうのにあいつは抜かりないんで」

 

オレが来るって信じてるから、みんなも納得してくれたね。……結局あいつって、守護者の中だとヒバリさん以外とは大して交流してないんだよな。そりゃ前よりはマシだけど。クロームのおかげで、そこまで悪い印象はないだろうし。よくもないけど。

 

んー、仲良くして欲しいところだけど、オレがみんなを誘導してあいつの心に踏み込ませるのは間違ってるだろうし。やっぱ様子見かな。

 

「とにかく明日の試合はやりすぎないように注意するぐらいだよ」

 

試合には心配する必要が全くないのもあって、オレは家に帰って爆睡した。

 

なんて余裕な態度で居たのが悪かったのか、骸の性格をすっかり忘れてたのが悪かったのか、オレは頭を抱える羽目になった。




山本武
覚悟決めて一年たってるため、規格外の仲間入り。
骸と雲雀さんに隠れていたけど、間違いなくやべぇ奴。
後日、新しい型とか作らないの?とツナに言われ、いろいろと編み出す。

雲雀恭弥
早い段階で部下が見えてる。
ツナがわかりやすい例で、無駄なことはせず適材適所に指示を出す。
あと聞く耳を持つぐらいは、大人に成長している(骸を除く)
毎週訴える人物がいたから。

沢田ツナ
ウインクはビアンキに教えてもらった。
獄寺には今後やらなくなる。ビアンキの顔を見た時と似たような反応だったため。
ちなみにビアンキは相手のハートを撃ち抜くために教えたが、ディーノの使い方を見て、ツナは意思疎通のために使うんだと学習。
そのため守護者の中で一番貰えるのは山本。


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11

念のために今日も学校を休んだけど、オレが予想した通りピタリと暗殺者が来なくなった。リボーンとはこれについて何も話し合わなかったけど、多分全部察してる。オレ自身の性格が甘いっていうのもあるけど、無意識にハイパー死ぬ気モードになるぐらいスクアーロに肩入れしたのもわかってくれたんだろうなぁ。オレが決めたから何も言わなかったけど、多分リボーンはオレの甘さにも心配してたと思うから。あそこまでした理由がわかってスッキリしてるんじゃないかな。や、説明もなく爆睡したオレが悪いんだけどね。

 

お兄さんと獄寺君は普通に心配で、ランボはどうするか悩んでだし。そりゃ山本は試合については心配してなかったよ。でも勝った後に山本らしさがなくなるんじゃないかなという心配はしてたんだよ。オレが心配する必要無かったぐらい、山本はいつも通りだったけど。まぁそういうのもあって、やっとオレはスッキリと眠れたの。リボーンもそれがわかってたから、何も言わなかったんだよ。もしオレが男だったら蹴り飛ばして、オレの考えを言わせてたと思うけど。……や、でも、そんなこともなかったかもしれない。前よりオレはしっかりしてるから。リボーンはオレがちゃんと考えて出した結論だったら、理不尽に怒ったりしないもんね、昔っから。

 

……にしても、相変わらずあいつは来るのが遅いなぁ。コロネロももう来ちゃってんだけど。体育館なのもあって、すげーヒバリさんイライラしてるんだよね。って、来た来た。気配が守護者の中じゃ一番わかりやすいんだよな。

 

「お前、おっそい」

 

はぁとオレがため息吐きつつ、体育館の入り口に視線を向けた。

 

「「「クローム!?」」」

 

獄寺君と山本とお兄さんが慌てて駆け寄って行ったのを見て、首を傾げる。

 

『骸様が間に合わないから……私が代理……』

 

お前マジかよ……とオレは膝から崩れ落ちた。頼むから嘘だと言ってくれ。骸がそういう奴だと知っていたけど、オレ悪くないよね?悪いのはあいつだから。絶対オレじゃないよ?と現実逃避する。

 

もうやだと嘆いてる間に、マーモンのペットが興奮してるのもあって、代理でもいいみたいな空気になっていた。チェルベッロも代理は認めるけど途中交代はできませんとか言ってるし。あの、勝手に話を進めるのやめて。え?オレが現実逃避してるから悪いの?

 

オレがどうにかするのが嫌だから、崩れ落ちたまま期待を込めてヒバリさんに視線を向ける。……つまんなさそうにヒバードと戯れてた。

 

「うん。オレ、帰る」

 

パッと切り替えたオレは立ち上がり、出入り口に向かう。

 

「ツナ、待ってて。まっ気持ちはわかるけどな」

「ディーノさん……!」

「間に合わなかったのは仕方ねーんだ。棄権するにしても、霧のボンゴレリングはあいつらに渡す必要があるだろ?」

「……ちょっと待ってください」

 

オレ、すげー感動したから落差が激しいんだけど。落ち着くように息を吐いて、リボーンに視線をむける。お前はオレの味方だよね?

 

「しっかりしろ、ツナ。おめーがボスなんだぞ」

「……リボーン、お前……本気で言ってんの?」

「当たり前だぞ」

 

マジかー。マジかー。とオレは天を仰ぐ。体育館の照明ってこんなに明るいんだなぁ……。やだなー、やりたくないなー。女に優しいリボーンなら、絶対助けてくれるのに。もうこの際、XANXUSでもいいよ。ぶち壊して欲しいんだけど。

 

「はぁぁぁぁぁ」

 

肺の中の空気を全部出す勢いのため息が出たよ。幸せが逃げていっちゃったなぁ……ハハハ。

 

「あーもう!いい加減にしろ、骸!!」

 

キッ!とオレは骸に睨みつける。オレのことをよく知ってる人から順に正解に辿り着いていく。だってね、オレがクロームを睨むとかない。つーか、そもそもオレがクロームを放って帰ろうとするわけないじゃん。

 

「ま、まさか……」

「……六道、骸」

「クフフフ。お久しぶりです。僕がいない間に腕が落ちたのではないですか?ああ、あなた方に見破られるとは露程も思ってません」

 

うわぁぁぁとオレは頭を抱える。ヒバリさんだけじゃなく、獄寺君達にも喧嘩売ったよ、こいつ。いや、予想はしてたよ?だからオレは帰りたかったの!だって、これだけで終わるわけないもん!

 

「しかし余興のつもりでしたが、ボンゴレが誇る暗殺部隊ヴァリアーも、マフィア界最強と呼ばれるアルコバレーノも、大したことありませんね。期待外れです」

 

ほんと、ありえねぇ……全方向に喧嘩売ったよ……。

 

「骸!!」

「事実でしょうに」

 

いやだから、お前が規格外なの!なんで『仕方ありませんね、僕が大人になりましょう』みたいな態度なの。お前が煽ったから、こんなギスギスした空気になってんの!……でもまぁ元気そうでよかった。

 

「……あなたは変わりないようで。胸焼けしました」

「それがオレなの!」

 

はぁとまたため息を吐きつつ、霧のハーフボンゴレリングを取り出す。

 

「オレの霧の守護者は、骸……お前しか居ない。だからお前に渡すけど、いつ捨ててもいいよ。や、流石にリングは返してもらわないと困るけど。……オレの最期まで付き合う必要ないから」

「……当然です。あなたは図々しくも最期の最期まで僕に頼み事を言いそうですからね。絶対に嫌です」

 

ごめんってば。でもお前オレが頼まないとクローム達の前からも消えそうな気がしたんだよ。

 

「骸、お前に霧のリングを預ける」

「ええ。僕の気が変わるまでの間は引き受けましょう」

 

あははと笑いつつ、オレは骸にリングを投げた。多分みんな思うところがあるけど、オレの顔を見て飲み込んだね。相変わらず、オレの顔はどうなってんのって話だけど。

 

「あ、やりすぎんなよ」

「はいはい、わかってます。それに彼を殺せば、アルコバレーノの呪いを解く難易度があがりますからね。僕としても面倒です」

 

お前……そういうとこだから……。コロネロとマーモンは骸を見てるけど、リボーンはオレから視線を離さない。ふぅと軽く息を吐いて、リボーンと視線を合わせる。どうせどこかのタイミングで言わなきゃいけなかったしね。復讐者のことは気になるけど、悪い予感はしないしなんとかなるかな?

 

「道筋は見えてるんだ。ラルもちゃんと解けるよ。でもまだ全然。あれもこれも足りてないから黙ってた、ごめん」

「……ウソつくんじゃねーぞ」

「や、本当に解けるってば」

「そっちじゃねぇ。オメーのことだ、その方法を話せばオレが反対するから黙ってたんだろ」

 

あはは……と苦笑いする。ほんと、リボーンはオレのことなんでもお見通しだよ。

 

「うん、でもお前の負けだよ。オレは絶対諦めないし、みんなが今の話を聞いちゃったから。手伝ってくれるでしょ?」

 

そういってオレは周りを見渡す。オレの守護者はもちろん、ディーノさん、コロネロ、立場が問題だから態度には出さないけど、呪いを解きたいマーモンもオレの味方だもん。あ、ヒバリさんには交渉しに行きますから怒らないでくださいと視線を送る。すげー楽しそうな顔された。いっぱい搾り取る気ですね、知ってました。

 

「……おめーと約束したからな」

 

はぁとため息を吐きつつも、リボーンが協力する気になってくれたから、ごめんねと笑う。あの約束をした時も黙ってたことに気付いたけど、オレが女だから飲み込んで何も言わなかったみたいだし。

 

よし、と切り替えて、XANXUSに視線を向ける。

 

「待ってくれてありがとう。チェルベッロ、進めていいよ」

 

チェルベッロが頷きあい、霧戦が始まった。

 

当然というように骸の圧勝。マーモンは骸の余興でヤバイとわかってたから、すぐに抑えていたアルコバレーノの力を解放したんだけどね。骸には敵わなかったよ。マーモンも薄々察していたからか、死んだ風に見せかけてやっぱり逃走。呪いが解ける可能性が出てきたからね。絶対逃げると思ってた。

 

今回は骸が逃走したと教えなかったけど、オレの態度でマーモンが生きてるのはみんな察してたよ。あとは最初にいっぱい煽ったからか、骸は大人しかったかな。ヴァリアーが帰ってから、ヒバリさんとはバチバチしてたけど。

 

明日は雲戦だから慌ててディーノさんがヒバリさんを宥めてたよ。オレは何もしなかったよ?基本的にやり過ぎないなら、オレは止めないことにしてるし。止めてたらキリがないんだもん、この2人と幼馴染という時点で察して。

 

 

 

 

日付けがかわり、深夜。オレは骸ん家に居た。霧戦後に骸と一緒にオレん家に居るクロームを迎えに行って、そのままオレも一緒に骸ん家に来たんだ。骸はオレん家で休まないからね。ガキの頃と違って今はマフィア関係の居候が多いから。

 

「んで、遅くなった理由は?」

「僕は遅刻してませんよ」

 

これは詳しく話す気はないな。オレはまぁいいけどよ、クロームにはちゃんとフォローしろよとベッドがある部屋の方角に視線を向ける。オレも前に京子ちゃん達に似たようなことしてたけどさぁ。やっぱ自分がしちゃったのと、見るとでは感じ方も違うんだよ。そりゃクロームは我慢強い子だから泣きはしなかったけど、寂しがってたのはわかったし。だからオレはクロームと一緒にベッドに寝転んで、骸はクロームの枕元で眠るまでそばに居た。本当はそのまま一緒に眠ってあげたかったんだけど、流石に報告を聞かないとまずいかなって。朝にはリボーンに報告しないといけないし。

 

実はこの場にリボーンがいない。多分すげー着いてきたかったと思うんだよ。でもリボーンが居ると骸がクロームを甘やかせることができない。オレら3人ともクロームに甘いから、暗黙の了解だったよ。

 

「なら、白蘭は?」

「……正直なところ、僕にはわかりません」

 

オレが白蘭の存在に気付いていたことには動揺しなかったけど、接触したはずの骸が答えに窮するのか……。

 

「んっと、あいつから聞いたかも知れないけど、未来のランボが未来のオレの許可を得てなんか送ったらしい」

「ええ。内容まではわかりませんでしたが、本人から聞きました。ですから、彼の興味は大空のアルコバレーノではなく、君に向かってます」

「うーん、それはいいよ。未来のオレのせいだし。ユニに興味持っちゃって、アリアさんから世代交代しようと暗躍されても困るから」

「それはそうですが……いえ、君が判断するでしょう」

 

これはマジで骸が困惑してるね。元々、白蘭は何考えてるかわかりにくいからなぁ。

 

「今のところおかしな動きはありません。僕が置いてきた監視も壊す様子もありませんね」

「そうなんだ。ってか、オレはお前と一緒に来るかと思ってたんだけど」

「そうしたいところでしたが、間に合いませんでした」

 

間に合う?と首を傾げる。え?何かやってんの?

 

「僕とヴェルデ博士の研究に白蘭が手を貸している状況で。後もう少しでしたが……最後まで付き合えば間に合わなくなると予想しました。出来上がり次第、やってくるそうですよ」

「お前、結局遅くなった理由を話してるじゃん。って、そこじゃないや。お前とヴェルデ博士がなんか作ってるのはいいよ。なんでそこに白蘭が??そもそもお前よく手を借りたよな。白蘭のことよくわかってないんだろ?」

「ヴェルデ博士が保証しましたから」

 

だったら、大丈夫かな……?うーん、ヴェルデ博士とは会ってるから、そういう嘘はつかないだろうなってのはわかるけど、白蘭がなぁ。会わないとなんとも言えないや。まぁ近々来るみたいだし、そん時に判断するしかないね。




沢田ツナ
前回に最期まで付き合ってくれたからこそ、骸に最期まで付き合う必要はないと伝えた。

六道骸
少しはストレス発散ができた。ただストレスが溜まってなくても、多分やった。
白蘭の手を借りたのは、ヴェルデが保証したからだけではない。
ツナに伝えた通り、白蘭のことはわからないから。ヴェルデが保証しただけでは骸は信用できない。

リボーン
本当にいろいろと飲み込んだ。


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12

スーツをきた状態で、オレは朝から並中にやってきた。いくらなんでも今日はディーノさんとバトルしてないだろうからね。ディーノさんが休ませようとして逃げてるはずだから。

 

校門がよく見える位置にやっぱ居たよ。この前と一緒でヒバリさんと目で会話してお咎めなし。今回は教室に寄らないから、ここでクロームと獄寺君と別れ、応接室にオレは向かった。

 

「お茶」

 

……開口一番それですか。オレ結構気合入れてきたんですけど。いやまぁいいけどさ。草壁さんが居ないみたいだし、ヒバリさんが自分で入れるわけがないからね。それにオレの分のお茶も入れていいっていう意味だから、前と比べればすげー優しい。

 

「早速で悪いんですけど、これ見てもらえます?このメガネをかければもっと詳しく読めますよ」

「ふざけてる?」

 

メガネをかけずにチラッと見ただけで、ゴーラ・モスカの設計図とわかってもらえたみたい。

 

「オレが意味もなくヒバリさんの楽しみの邪魔をすると思いますか?」

 

言ったのはいいけど、素直にヒバリさんが手を伸ばすとは思わなくて驚いたよ。もしかして前のオレはコミュニケーションが足らなかったのかな。いやでもコミュニケーションの取り方が、バトルってどうなの……。若干遠い目をしつつも、ヒバリさんを見る。

 

「ヒバリさんってメガネも似合いますね。カッコいい人ってなんでも似合うからずるいなぁ」

「……君、その思ったことを口に出すのやめれば?」

「き、気をつけます。これでも昔よりマシになったと思うんですけど……」

 

どこが?っていう顔をされたよ。ガキの頃からの付き合いだとこういう時に困るよね。前と比べれば絶対マシになってるから、骸は同意してくれるんだけどなぁ。……あれ?骸の呆れた顔が思い浮かんだんだけど。え?もしかしてそんなことないの?

 

「君の要件はわかった。僕も校内で死人が出ると困るからね。うん、いいよ」

「ヒバリさんっ……!」

 

対価もなく引き受けてくれたのもあって、すげー感動した目でヒバリさんをみていれば、ため息を吐かれてしまったよ。なんか最近こういうこと多いよね。

 

「それで、あのボス猿を君はどうする気?」

「え?……XANXUSですか?うーん、とりあえず殴るかな」

「いつ?」

 

まさか僕が負けると思ってるの?って感じで睨まれたよ。負けると思ってるなら頼んだりしませんっていう意味で机にある資料をトントン叩く。納得してくれたのか、睨まれることは無くなったよ。いやほんとコミュニケーション取れてるね。昔のオレが見れば腰を抜かすよ、絶対。

 

「大空戦やろうかと思ってるんです」

「へぇ。君が?」

「ヒバリさんも気付いてるでしょ。オレ、怒ってるんです」

 

そう言いつつも、オレは微笑んだ。つっても、怒ってるのを隠す笑顔だけど。

 

「うらやましいな」

 

へ?とオレはヒバリさんを見る。オレがいつもの雰囲気に戻ったからか、ヒバリさんはつまらなそうに窓の外を見ながら言った。

 

「出会い方が違えば、僕にもそれを向けてもらえたのかな」

「それは……無理じゃないかな」

「どうして?」

 

いや、だってさ。前の時と出会い方が違ったのに、全然変わんないんだもん。そりゃ優しいなぁとは思うよ。けど、根っこの部分は変わらない。ガキの頃から骸に負け続けてプライドがボロボロだったはずなのに、ヒバリさんは折れなかった。

 

「んー……ヒバリさんがヒバリさんである限り無理な気がします。オレ、ヒバリさんの生き様が好きなんで。オレを本気で怒らせるってことはもうそれはヒバリさんじゃないような……」

 

なんか自分で言っててよくわかんなくなってきた。うーん……とオレが悩んでると、またヒバリさんがオレを呆れて見てたよ。

 

「君って僕のこと好きだよね」

「へ?そりゃもちろん、好きですよ。さっき言ったじゃないですか」

「……君のそういうところ、ムカつく」

 

うわっ、オレなんかやらかしたっぽい。すぐさま咬み殺すほど怒ってはないけど、ヒバリさんがムカついてるのは本当だから。

 

「えっと、その……」

「別にいいよ、わからなくて。ムカつくけど、現状に僕は満足してるから。けど、もし……」

「もし?……や、やっぱいいです!失礼しました!」

 

ヒバリさんの眼を見て、オレはすぐさま逃げ出した。あれは狩る者の眼だよ。ヒバリさんをこれ以上怒らせないように、気をつけなきゃ。今日は大丈夫だったけど、本気になったヒバリさんにオレは逃げれるような気がしないもん。

 

 

 

 

 

 

前の時はちゃんと見れなかったもんなぁとオレは周りを見渡す。有刺鉄線にガトリング……地雷もあるかな。他の守護者の中でも殺傷力が高い気がする。

 

「ヒバリはまだ来ねぇのかよ」

「多分、ギリギリに来るんじゃないかなぁ。ほら、ヒバリさんって群れを見るの大嫌いだから。オレらが来るのは諦めが入ってるけど、見たくないものは見たくないだろうから」

「ヒバリだしな」

 

オレらもオレらでヒバリさんだからって諦めが入ってるよねとみんなで笑う。

 

「む。六道兄もいないのか?」

「ちゃんと来てますよ。ヒバリさんは目が離せない存在ですから。オレも総合的に見れば、一番恐ろしいのはヒバリさんですし」

「ああ。普通なら骸と答えるだろうが、ヒバリは底が見えねぇからな」

 

そうなんだよ!とリボーンの補足にオレは大きく頷く。オレも気が気じゃないもん、ヒバリさんにガッカリされたくないから。

 

わちゃわちゃといつものように話していたら、ヒバリさんがやってきた。ムスッと機嫌が悪くなってるから、苦笑いしつつ見送っていれば呟かれた。

 

「貸しひとつね」

「んなっ。朝はそんなこと言ってなかったじゃないですか!」

「今、僕の前で群れてる君が悪い」

 

そ、そんなぁ〜……とオレは肩を落とす。言いたいことはわかるけどさぁ。昨日まではまだ見逃せるけど、今日はヒバリさんの試合だからダメってことでしょ。オレの嘆きや獄寺君の抗議を無視して、ヒバリさんは雲のフィールドに入っていった。

 

チェルベッロからの試合説明が終わり、開始合図をした途端、オレはゆっくりと歩き出した。

 

「10代目?」

「ツナ?」

「沢田?」

 

みんなが不思議そうにしているけど、オレは歩みを止めない。ちゃっかりリボーンがオレの頭に乗ってるよ。約束通り報告したから、リボーンからすれば当然か。

 

一瞬だった。本当に一瞬だった。別に疑ってたわけじゃないけど、やっぱ凄いなぁと感心する。ヒバリさんに言えば、呆れられるだろうけど。オレの足音が聞こえていたはずだから。どの口が言ってるの、みたいな感じでさ。

 

「ふぅん。これ、そんなに凄いの?」

 

カチリと嵌め、ヒバリさんは月明かりでリングをまじまじと見ていた。最後までしてくださいよと思いつつ、ヒバリさんが参加した理由だもんなぁと思うオレもいる。あとオレが歩いてきてるのを知ってるからっていうのもあるんだろうけど。

 

「チェルベッロ、入るよ?」

「は、はい」

「んっと、質問の答えですけど、ヒバリさんが一番実感すると思います」

 

オレはまだ死ぬ気の炎を身体から出せるからね。骸はあのヤバいヘルリングを使いこなせるし。というか、波動に耐えれなくてリングを砕くってどういうことなの。や、オレも砕いちゃうけどね。でもね、オレは血筋という言い訳が出来るから。

 

なんて話つつ、オレはゴーラ・モスカの外装をぶっ壊した。XANXUSが手を出さなかった理由は、リボーンがキレてるから。後、骸が動いてるのもあるだろうね。

 

「すみません。遅くなりました、9代目」

「……ああ、そうか。君が沢田ツナちゃん、だね」

「無理して話さないでください。後はオレに任せて」

「すまない。ありがとう……」

 

ホッと息を吐く。衰弱から気を失ったけど、命の別条はないみたい。

 

「ディーノさん、頼めますか!」

「ああ!」

 

オレが動けば怪しまれる可能性があったからリボーンから話してもらって、ディーノさんに医療班の手配をしてもらっていた。9代目が運ばれるのを横目にしつつ、オレはXANXUSに視線を向ける。

 

「ネタばらしってわけじゃないけど、骸はボンゴレに詳しくてさ。それはマフィアが大っ嫌いだからなんだけど。まぁそれでお前のことも知ってたんだ。お前の性格も、苛烈さも。つっても、骸には別件で動いてもらってたから、ゴーラ・モスカの情報を持ち帰ってくるとは思わなかったけど。だからお前の持つ直感に引っ掛からなかったのかもしれないね。ってか、本当にそんな余裕どこにあったの?」

「ついで、でしたから」

「……うわっ、わかりたくないけど、わかった」

 

白蘭がゴーラ・モスカの情報を欲しがったってことだろ。ついでにヴェルデも見てるでしょ、絶対。最悪の組み合わせじゃん!

 

「というか、そういうのも報告して!?」

「察することができない君がおバカなだけです」

「悪かったな!」

 

なんでオレお前と喧嘩してんの!?今回、お前にすげー感謝してたのに。……だからなのかもしれなけど。

 

「まっお前が何を考えて、ゴーラ・モスカに9代目を入れたとか、そういうのはいいよ。9代目からも話を聞ける状況じゃないしね。……ううん、今だから出来るんだ、大空戦。やろうよ、10代目の座をかけてさ」

 

XANXUSとジッと見つめ合う。

 

「お待ちください!……沢田氏、本当によろしいのですか?」

「うん。頑張ってくれたみんなには悪いけど、XANXUSを殴らないとオレの気が済まないんだ」

 

オレがやる気だから、みんなも武器を持ち始めた。ほんと、オレの守護者って好戦的だよね。まぁそれはヴァリアーも一緒だけど。

 

結局、チェルベッロの仲裁が入って明日が大空戦となった。今日じゃないならって、オレは帰ることにしたけど、オレが去る最後までXANXUSの視線が外れることはなかった。

 




笹川了平
クロームの方が妹を通して交流が多いので、骸のことを六道兄と呼ぶ。
骸は違和感があると思ってるけど、絡みたくないのでそのまま。


雲雀恭弥
興味がツナ≧リング>XANXUSだったので暴れなかった。
なお、そっち方面の興味は今のところないので現状維持。
ツナが垂れ流し状態だから少しムカつくが、気付いたら気付いたでツナの反応が予想できないのもあってスルー。
恥ずかしがられてバトルできなくなるのが一番困る。
その気になったら一番簡単に手に入れることができる人物なのは間違いない。
そのためリング争奪戦が行われない未来で、10年後のランボが言っていたツナを掻っ攫った人物は彼。


沢田ツナ
好きな人ほど無意識に対象外にしている。
対象にできるなら、そもそも逆行していない。
ただ迂闊にポロポロこぼすからタチが悪い。


XANXUS
ツナの考えが読めない。
ゆりかごを知りつつ、9代目への仕打ちも知りつつ、圧勝していたのに大空戦をやると言い出した。
深読みしすぎているだけで、ツナはちゃんと全部口に出してる。


念のため
この世界はリング争奪戦が起きた未来なので、ルートは不明。
作者もまだ決めていない。候補は今のところ4人かな。


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13

大空戦当日、オレは朝からリボーンとバジル君と一緒に、いつもの日課の崖のぼりコースのところにやってきた。普段なら獄寺君も一緒だけど、まだ怪我がちゃんと治ってないから訓練は禁止って言いつけてるから、泣く泣く学校に行ってる。……や、ほんとに。捨てられたような目で見てくるんだもん。だからノートとか頼んだよ。クロームに借りて休んでた分をまとめてくれたら嬉しいなとお願いしておいた。多分今頃、授業そっちのけで頑張ってると思う。

 

「えっと、バジル君頼めるかな?」

「は、はい」

 

ここに来たのは、バジル君に手合わせを頼んだから。ヒバリさんに頼んでも良かったんだけど、切り上げてもらえるかわからなかったからね。いくらオレでも大空戦の前に体力を削るまではやりたくない。

 

「待て、バジル。おめーもハイパー死ぬ気モードになれ」

「しかし沢田殿は身体を動かす程度という話では?」

「ただの死ぬ気じゃ、ツナと打ち合いすらならねぇぞ」

 

えっ。なんかすげーリボーンに過剰評価されてない?バジル君がキラキラした目で見てくるから、オレは曖昧に微笑むしか出来ないんだけど。

 

「失礼しました!本気で行きます、沢田殿!」

「あ、うん。よろしくね」

 

バジル君がハイパー死ぬ気モードになったのを確認して、オレもその状態になる。

 

「いつでもいい」

「い、行きます!」

 

相変わらずオレの手に炎を灯ることはないけど、バジル君とは問題なく手合わせ出来ている。……いや、これは問題がないことが問題だ。チリっと殺気を感じ取り、最小限の動きで避ける。この弾は……リボーンだ。

 

「リボーン殿……?」

「今のを避けんのか……」

 

あははと苦笑いしつつハイパー死ぬ気モードを解く。バジル君が驚いて解けちゃってたしね。

 

「認めたくはねーが、コロネロを連れてきた方が良かったか……」

「うーん、でも今から?」

 

リボーンにどうしよっかと視線を送る。コロネロの技だと失敗したら大怪我だからねぇ。いやまぁリボーンの弾も避けれなかったら死んでたけどね。

 

「沢田殿、すみません。拙者では沢田殿の相手に務まらず……」

「や、バジル君は悪くないんだ。どっちかというとオレの問題だよ」

「ああ。ツナが死ぬ気になりきれてねぇだけだ」

 

うんうん、そんな感じとオレは頷く。

 

「先ほどの沢田殿はハイパー死ぬ気モードなのでは?」

「うーん、そう聞かれれば頷くけど、もっと死ぬ気になれる気がするんだ」

 

そりゃ死ぬ気の到達点に入れることは知ってるけど、なんか普通のハイパー死ぬ気モードにもなりきれてない気がするんだよ。でもこれをなんて説明したらいいだろうと悩んでいると、リボーンが補助輪だなと呟いた。オレとバジル君は揃って補助輪?と首を傾げる。

 

「今のツナは補助輪をつけて自転車に乗ってんだ。補助輪をつけたまま、自転車競技で周りを魅了しつつ優勝するといえば、ツナのヤバさが伝わるだろ」

 

え。お前から見て、オレはそんな感じなの?あと魅了ってなに?

 

「一度でも外して乗ることさえ出来れば、あとは身体が覚えるんだがな。外す必要性をツナ自身が感じてねぇんだ。だからオレがツナの意識外から殺す気で撃ってみたんだ。だが、ツナは今の状態でも問題なく、避けやがった」

「それはお前が殺気を出すからじゃん」

「殺す気でいかねーと、外せねぇ」

 

……なんかグルグル回ってるー!外すには殺気が必要で、殺気があるとオレが反応して避けちゃうとか、どうすんのー!?

 

「オレの弾を避けたんだ、案外今の状態でも勝てるんじゃねーか」

「や、流石にXANXUSの炎は無理だって。あいつの攻撃範囲広すぎ。そりゃ接近戦に持ち込めれば、いけなくもないけど……」

 

接近戦ならいけんのかって感じで、リボーンには呆れられてバジル君にはポカーンとされた。え?そんなに驚くこと?お前だってできるだろ?とリボーンを見たけど、もっと呆れられた気がした。

 

 

 

 

午後からはディーノさんに頼んで、スクアーロの様子を見にきた。今のところ、ヴァリアーは仕掛けて来てないらしい。……ほんと、そういうところだよね。

 

「せっかく来てくれたところ悪いが、まだ睡眠薬が切れてねぇんだ。すまん、ツナ」

「いえ、気にしなくていいですよ、ディーノさん。だって、スクアーロは起きてますから」

 

は?という顔をしたけど、流石はディーノさん。ちゃんと武器を構えて、警戒したよ。病室の警戒度が上がったからか、オレには通じないと観念したのか、スクアーロは目を開けた。

 

「なぜわかったぁ゛」

「お前が認めたくない超直感かな」

 

本当に忌々しいんだろうなぁと殺気を浴びながら思う。

 

「うん、でもよかった。下手すりゃお前自殺するかと思ってたからさ。オレを殺す気があるならまだ大丈夫だね」

「……なに考えてやがる、沢田ツナ」

「XANXUSにはお前が必要だから生かした。って言えば、お前は納得する?」

 

なんかさらに警戒されちゃった気がする。言葉通りなんだけどなぁ。オレ、ずっとあいつの面倒見れる気がしない。

 

「とにかく、今日の夜は大空戦でさ。お前も強制招集かかると思う。って、何かやってとかないから。好きにすりゃいいよ、オレの首を狙うのもいいしさ」

 

言ったそばから、スクアーロはオレの首に手を伸ばしてきた。けど、オレは一歩も避けなかったよ。ディーノさんのムチが間に合うから。

 

「ツナ」

 

あぶねーから下がれとディーノさんに視線を向けれらたけど、僅かに首を振って拒否する。そりゃ、ディーノさんには悪いとは思うけどね。スクアーロを締め付けて抑えてくれてるしさ。ギリギリという音を聞きつつ、オレはスクアーロと視線を合わせる。

 

「オレはオレのやりたいようにするし、お前もやりたいようにすればいいよ。とりあえずオレはXANXUSをぶん殴る予定だから。お前にも教えておこうと思ったんだ」

「テメェ程度で殴れるわけねぇ゛」

「オレはやるよ。決めたから」

 

フッとオレは力を抜いて、窓に視線を向ける。チェルベッロが来たみたい。オレはいない方が良いかなと思って、ディーノさんに任せてオレは帰った。

 

 

 

 

母さんに不審に思われないように、オレはいつも通り夜は過ごしたんだけど、家綱はいつも通りとはいかなかったみたい。食事中とかすげーチラチラと視線がくる。オレには聞いてこないけど、リング争奪戦の流れはラルに聞いてるみたいだし、なんか言いたいことでもあるのかな。もしかするとやらなくていい大空戦をやることにしたから、怒ってんのかも。巻き込まれてる家綱からすればいい迷惑だもんね。

 

うーん、どうしよっかなぁと頭を悩ませる。母さんの居ないところで声をかけたけど、なんでもねぇって言われちゃったし。もう一回聞きに行っても、多分同じ答えしか返ってこないんだよね。

 

散々悩んで、家を出る前にオレは家綱の部屋に来た。オレと声をかけつつノックしたけど、相変わらず返事はなし。音がしたから部屋には居るっぽいけど。

 

「行ってくるね」

「…………勝てよ」

 

へ?とオレはドアの前で固まる。いやだってさ、返事がかえってくるとは思わなかったんだもん。オレは固まってる間にドアが開いて、目の前に家綱がいた。

 

「おい、返事」

「ご、ごめん。勝ってくるよ、絶対」

「あっそ」

 

バタンと閉まった扉を見つつ、オレは思う。……あっそ、ってなに。すげー矛盾してるの、あいつ気付いてないの?とオレは笑いを堪える。や、我慢できてないけど。でも声に出さないようにはしてる。

 

声を出しちゃうと笑っちゃうから、リボーンに行こっかと視線を向ける。家綱の態度に呆れつつも、リボーンも機嫌が良さそうだった。

 

「あら、ツーちゃん。いい事あったの?」

「うん。家綱とちょっとね」

「まぁ!よかったわねぇ」

 

でしょでしょとオレは頷く。母さんも嬉しそうだよ。行ってくるねーとオレは母さんに声をかける。もちろんリング争奪戦のことは言ってないよ。オレは今日クロームのところで泊まることなってるの。実際、そのつもりだし。オレと骸の帰りをクロームは待ってるっていう約束だから。ちなみにランボはこっそりリボーンが連れ出してくるんだってさ。参加はしないけど、オレが見て欲しいと思ってるから。一応リボーンに泣かすなよと声をかければ、渋々返事がかえってきたから大丈夫だと思いたい。ほんとあの2人って相性悪いよな。

 

「気をつけてね」

「うん。いってきまーす」

「いってらっしゃーい」

 

あと何回聞けるかなぁと思いつつ、母さんに手を振りつつオレは走り出した。

 

時間を確認して、予定変更。並中に行く前に、クロームのところへと向かうことにした。本格的に裏の世界に入ってしまえば、突発的に色々起きて見送ることも出来ないだろうなぁと思ったんだよ。こういう時ぐらい、ちゃんと声をかけなきゃね。

 

「ツナ……?」

「急にごめん。あ、これお泊まりセット置いとくね。じゃ、行ってくるよ」

 

相変わらずオレは後先考えず行動したから、すげードタバタ。しっかりしてる骸はオレと違ってちゃんと声をかけて行ったんだろうなぁなんて思いつつ、ブンブンと手を振りつつ走る。

 

「ツナっ!……いってらっしゃい」

「うん!いってきまーす」

 

って、ほんと急がないとマズイ。これで遅刻とか笑えないから。

 

 

 

 

 

「ま、間に合ったー……」

 

結局、オレが並中に着くのが一番遅かった。まさかのヴァリアーより遅かったよ。スクアーロもディーノさんが連れてきてくれたみたいで、向こうにいるしさ。本当にオレが一番最後だった。

 

ちなみに獄寺君達には何かあったのかとすげー心配されたけど、骸達には呆れられた。オレの守護者って両極端すぎ。とりあえず、あははー……と笑って誤魔化す。だってさ、説明したらもっと呆れられるし……。まぁ誤魔化したら誤魔化したで、すげー呆れられたけどね。

 

チェルベッロのルール説明を聞くと、やっぱ全員参加でみんなは各フィールドに移動することになった。チラッと見れば、骸はもう移動し始めてた。そういう奴だよなと軽く息を吐きつつ見送る。

 

ふと殺気がして、慌ててしゃがみこむ。ブオンっとオレの頭上で空気が移動した。試合前にそんなことをするのは1人しか思いつかなくて、ヒバリさんの姿を探せばスタスタと歩いていた。

 

「って、それだけですか!?」

 

あれ?このツッコミであってる?って言ってて思った。ヒバリさんなりの激励ってのはわかるけどさ。もうちょっと優しいのが欲しいです。や、激励をくれるだけ前より随分優しいけど。なんか遠い目をしたくなるよね。ディーノさんもオレと似たような表情してた。

 

いろいろと思うところがあるけど、さっさと復活する。獄寺君がイラッとしてるからね。ブチギレてないだけ、獄寺君も成長したなぁなんて。

 

「えっと。みんな、無理はしないでね」

「10代目も」

「ツナもなのな」

「沢田もな!」

 

考えることはみんな一緒だねっと笑いあって、オレは見送った。

 

みんなが移動してる間に、見にきてくれた人達に視線を向ける。

 

シャマルはオレが女だから怪我した時は任せろって言ってくれた。……前と対応が違い過ぎぃ。

 

コロネロにはお前の実力が楽しみだぜって珍しく笑っていた。……あれ?オレってコロネロからの評価、すげー高くない?

 

バジル君には親方様の分も応援しますと気合を入れて言われた。……なんかすげー複雑。嬉しいのは嬉しいけど、素直に喜べない。これでも父さんのことを理解してるつもりなんだけどね。

 

ディーノさんには応援してるぜと声をかけてくれた。……オレの味方って宣言する意味を前と違ってオレはちゃんと理解している。

 

炎真にはツナさん頑張ってと言ってくれた。……ここに炎真がいるのがオレはすっげー嬉しい。

 

ランボは眠そうな目をしていた。……ちびにはキツい時間だよな。オレのわがままでごめんなと頭を撫でる。

 

よし、と気合を入れたオレは、最後にリボーンに視線を向ける。

 

「オレの言いたいことはわかってんだろ」

「うん。死ぬ気でやるから見てて」

「ああ」

 

リボーンとコンっと拳を合わせたオレは、今日初めてXANXUSと向き合ったんだ。

 

 

 

チェルベッロから守護者のみんなに毒を注入されたと聞いても、オレはXANXUSから視線を逸らさない。いつものオレなら、すげーうるさいだろうから、ディーノさん達はオレらしくないと思ってそう。多分不思議に思ってないのはリボーンぐらいじゃないかな。

 

結局ボンゴレリングをセットできるチェーンをチェルベッロからもらってる時すら、オレは視線を逸らさなかった。だからなのか、ふつーにチェルベッロが試合の合図を出したよ。そこでやっとオレは動いた。つっても、口だけ。

 

「悪い。オレ、XANXUSに集中したい」

「……相変わらず、君は人使いが荒い。仕方ありません、わかりました」

 

は?みたいな声が複数から聞こえた。XANXUSすら目を見張ったよ。なぜ……とつぶやいたチェルベッロにオレは声をかける。

 

「多分毒を注入したと機械を勘違いさせたんじゃないかな。一流の術師は機械すら欺けるから」

 

つっても、リングの力を使わずに出来るのはあいつぐらいだよ。オレと違って、術師は経験値がそのまま上乗せできるのがほんと大きい。イメージが出来ても、身体が動けなかったら意味ないし。まぁだからあいつもヒバリさんとバトってたんだと思うけど。ほら、骸って完璧主義だから。

 

「あとは……他人から貰ったものを信用しないからかな。オレが大丈夫って声をかけたら、疑わなかっただろうけど」

 

前の記憶云々とかじゃなくて、多分あいつの人間不信は酷くなってる。みんなの性格を知ってるのに、馴染まないのはそういうことだろ。キャラじゃないってのもあるだろうけど、それならオレの頼みを聞くってのもキャラじゃないだろ。なんつーか、2回目だからこそのひねくれ方をしちゃってるよ、あいつ。オレが間に入るとかしたら、もっとひねくれそうだし。基本好きにさせてツッコミするぐらいしか出来ないんだよね。だからオレとしてはヒバリさんに期待したいところ。……あれ?詰んでね?

 

ま、まぁ骸はオレが見てるから大丈夫ってことにして……XANXUSだよ、XANXUS。

 

「このままだとあっちはあいつの独擅場になるけど、お前はそれでいいの?」

 

あ、なんかヒバリさんがキレてる気がした。すみません、ヒバリさんが骸の助けを必要ないってのはわかってますと心の中で訴えつつ、XANXUSの出方を見る。

 

「ッチ。カスども、これ以上オレの足を引っ張るんじゃねぇ」

 

そういってXANXUSは銃を抜いて撃った。方角からして、嵐と雷。そして……雨。

 

前の時は勝利した者だけだった。今回は……動ける者っていう意味、かな。それでもオレは嬉しいよ。スクアーロの忠誠心を疑ってないことが。お前さ、気付いてる?スクアーロに追手を出さなかったのも、あわよくばオレを殺すと思ったからじゃないの?

 

聞けば、全部否定するだろうね、お前は。あり得ないって、お前自身が否定するんだよ。

 

「やっぱ、オレ……お前に負けれないや」

 

お前は敗北を知る必要がある。

 

「本気で来い、XANXUS。さもないと、死ぬぞ」

「はっ。イキがるんじゃねぇ、カスが」

 

オレの額に死ぬ気の炎が灯ると同時に、XANXUSの銃がぶっ放された。

 

けど、それはオレに向かってじゃなく、移動のために。XANXUSは銃を持ちつつだけど何度か拳を交える。オレがついてきてるからか、時折銃からもぶっ放されるけど至近距離だから問題ない。手首や銃に当てたりして軌道逸らせるから。

 

「ぶははは!!所詮、その程度か」

「…………」

 

オレは答えるすべを持たない。今オレらが戦えてるのは、XANXUSが至近距離で戦ってくれてるから。懸念してた通り、XANXUSが空中から一方的に撃てば、オレは超直感を頼りに避けるだけしかない。それでも……それでもオレは口を開く。

 

「試してみるか?」

「はっ、己の力量もわからねぇとは」

「どうだろうな」

 

ザッとXANXUSが後ろに下がる。そして飽きたという一言と共に、空中に飛び上がった。

 

「それ程消えたきゃ、かっ消えろ!!」

 

迫り来る大炎にオレは動こうとしなかった。ああ言いつつも、XANXUSはオレの超直感を最大限に警戒していたみたい。逃げ場がない程の炎をオレを中心に放っていた。

 

このままだとオレは死ぬ。超直感も肯定している。死んじゃったら、みんなは悲しむだろうなぁ。それでもみんなは進んでくれると思う。けど、骸はどうかな。あいつが一番心配かも。普段は心配してないんだけど、オレが死んだらってなると心配。

 

なんか時間の感覚が変だなと冷静に思いつつ、今のオレの後悔ってなんだろうなぁと考える。もっと死ぬ気になればよかった?うーん、でもなぁ、出来ないのは出来ないし。これは今のオレが出来る本気だもん。後悔はないかって聞かれれば、意外とないのかもしれない。よく考えればオレって2度目の人生だもん。気になると言えば、アルコバレーノの呪いだけど、それだけは骸がちゃんと導いてくれる。あいつ結構律儀だから。

 

――あれ?そういや、オレ……まだXANXUS殴ってないや。

 

気付けば、オレの全身から炎が噴き出していた。




沢田家綱
勝ったのに大空戦をやるとラルに聞いた時、ばっかじゃねーの!?と叫んだ。
残念ながらラルは同意してくれず、沢田ツナの決定だ、という返事しかくれなかった。
晩御飯中はなんでコイツいつも通り食ってんの?という感じでチラチラみてた。
返事がおかしかったのは、死ぬなよと本当は言いたかったから。口から出た言葉は違って動揺していた。


六道骸
実はツナが一番心配している人物。
多分もしツナが死んだら、アルコバレーノの呪いだけ解き、その後復讐者と交渉せずに黒のマフィアを殺して消える。
クロームすら置いていく。
雲雀さんがクロームの面倒を見ることになるかな。


沢田ツナ
ずっと抑えられてた理由は、子どもの身体でハイパー死ぬ気モードになったから。
出来だけ負担を減らそうと超直感が導いた結果、手から炎は出なかった。
その状態で問題なく過ごせていたため、きっかけがなかった。
さらに2度目の人生だからこそ、後悔がなく死ぬ気になりきれない。
守護者のことはやることはやったから後悔はなく、骸は心配だけど、命の心配はしていないのもあって乗り切れない。
走馬灯の中、ヴァリアーのためにXANXUSを殴らなきゃ死ぬ気で後悔すると思って覚醒。
今回は身体が出来上がってたため、死ぬ気の到達点までいった。


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14

観覧席にいた者は、ツナが不利と誰もが思った。リボーンですらツナには眠っている力があるとわかっていたが、死ぬ気とは逆にある境地に辿り着く程度と予想していた。程度と表現したが、それは決してナメたわけではない。ツナのポテンシャルがあればXANXUSに勝てる程の力を得ると確信していたレベルだ。マフィア界最強のアルコバレーノと同等、もしくはそれ以上の力を得るとは思ってもいなかった。

 

「わかってなかったのは、オレの方か……」

 

リボーンは独り言ちる。その言葉を拾ったディーノが不思議そうに視線を送る。その視線を感じ取ったのか、リボーンは先程と違い観覧席にいる者に聞こえるように口を開いた。

 

「今から約一年前だ。フゥ太のランキングでツナは……マフィアのボスの中で総合的な戦闘力が一位だった」

 

は?という声を漏らしたのは誰だったか。ここに居るものは誰もがツナのポテンシャルは認めている。認めてはいたが、果たして一年前に教えてもらっても頷けたかといえば、出来なかっただろう。リボーンですら疑った内容だった。信じるとすれば、六道骸だけだ。

 

ツナの性格、出会ったタイミング、腐れ縁など、六道骸というほどの男がツナの下にいる説明ができるものはあった。しかし、そんなタマか?と首を傾げるような男だった。ツナ自身も言っていたのに、骸はツナの強さを一番知っていると。

 

9代目に依頼され、立派なマフィアのボスに育てる家庭教師としてリボーンはやってきた。蓋を開けてみれば、リボーンが必要なのかと首を傾げたくなるほどしっかりしていて、守護者になり得る者も手懐けていた。随分あめぇ考えをもつが、周りの助けを借りつつ進んでいけるだろう。……だが、今ならわかる。リボーンをつけた理由が。

 

ツナは一度決めてしまえば、恐ろしく頑固だ。今だってとっくに決着をつけれるのに、XANXUSに認めて欲しいと思ったからという理由で、あの手この手でXANXUSが放った炎を無効化しやがる。側から見れば、XANXUSに同情しそうになる内容だ。実際はそのXANXUSのプライドがエベレスト級なので、ツナがそうせざるを得ないだけなのだが。

 

……9代目も人が悪りぃな。ツナがやると決めていたからって、全部託しやがった。

 

ボスとしての資質はXANXUSが今まで圧倒的だった。そのXANXUSを圧倒的に上回るのがツナだ。ツナ本人は至って温厚でのほほんとしているが、ツナと距離があればあるほどツナの強さに恐怖するだろう。だからこそ、最強の殺し屋でキャバッローネのディーノを導いた実績をもつ、リボーンの盾が必要になる。

 

旧知の仲でも、9代目の狸っぷりに思うところはある。それでも何も言わないのは、リボーン自身がツナに惚れてしまったから。恋だの愛だのと説明できない程、惚れてしまった。ツナが歩む道を特等席で見たくなってしまい、家庭教師の座を誰にも譲る気などさらさらない。

 

しかしだな……とリボーンは思った。ツナは碌でもねぇ男を引っ掛ける天才だな、と。

 

 

 

 

 

 

人の集まる気配がして、オレはXANXUSから視線を外さないまま横目で見る。骸がうまくやったようで、どちらも大した怪我がない状態でいた。出来れば、みんなが集まる前に認めさせたかった。……いや、それは傲慢だったな。XANXUSにとってボンゴレ10代目になることこそが誇りだ。炎の量で圧倒し、零地点突破で吸収したり、初代エディションでXANXUSの炎を凍らせたりもした。が、オレは未だにXANXUSを殴ってもいない。力量の差はコイツもわかってる、でもそんな中途半端な態度では譲れるわけがない。

 

「死ぬなよ、XANXUS」

 

XANXUSが持つ直感ですら、オレの移動が見えていない。それでもオレは拳を握った。

 

「これが……オレの誇りだぁぁぁ!!」

 

オレの拳を受け、XANXUSは宙をまった。

 

『ボス!!!』

 

今のお前なら見えるものがあるんじゃないか?と視線を送れば、くだらねぇと呟いた気がした。ほんと……そういうとこだよ、お前……。オレは呆れつつ、ハイパー死ぬ気モードを解除した。

 

「あー!疲れたー!」

 

オレやっぱ戦いとか好きじゃねぇー!!と叫びたくなってると、獄寺君達はオレの名を呼びつつ駆け寄ってきてくれた。

 

「みんな、大丈夫だった!?」

「はい!……まぁほとんど骸のヤロー1人でケリをつけましたが……」

「ははっ。あいつ、ほんとつえーのな!オレらの出番なかったぜ」

「何を言ってる。オレを助けたのはお前らじゃないか!」

 

なんとなく状況が読めてきた。あいつ、ヴァリアーが暴れてるところだけ押さえて、あとは獄寺君達に丸投げしたな。まぁ骸だし、ほっといても大丈夫ってとこまでやってくれただけマシかなと、サンキュと視線を送る。相変わらずオレの感謝を素直に受け取る気は無いようで、目をつぶっていた。

 

「僕は君らと違って、あの男の助けなんて必要なかったけどね」

「あ、はい。それはもう、わかってます」

 

あれはXANXUSの行動を見たかっただけですから!と、ヒバリさんに必死に視線を送る。まだちょっと機嫌が悪そうだけど、一応納得はしてくれた。ふぅとオレは汗をかきつつ、やっぱ骸はヒバリさんには手を出さなかったんだなぁと思った。毒を自力で解除できるからとかじゃなくて、ヒバリさんが骸の手を借りたくないと知ってるから。他のみんなを助ければ、誰かが行ってくれるからね。相手のことを知ってるからこそ、動きにくいのかなぁ、なんて。

 

「いい加減、チェーンにリングをはめなさい」

「えっと、うん。……そうする」

 

もうXANXUSは動けないだろうしね。他のヴァリアーもオレらの戦いの結末に水を差す気はないみたいだし。

 

骸に促されて、みんなからリングを預かりチェーンにはめていく。前の時はXANXUSの血を拒んで、オレは結局やってないんだよな。うわー、緊張するー!と思ってると、さっさとしろという視線も来たから慌ててつける。オレってやっぱ締まらないね……。

 

「あれ?なんもないね」

 

キョトンとオレが不思議そうにしていれば、獄寺君達も不思議そうな顔をしていたよ。

 

「えっと、なんか起きるだろうなぁと思ってたんだよ」

「ムム。確かにおかしい。7つの完全なるボンゴレリングが継承される時、リングは大いなる力を新たなるブラッド・オブ・ボンゴレに授けると言われている」

「それは事実です」

 

マーモンの言葉が世迷言と切り捨てられるのはどうかと思ったのか、骸が肯定したよ。や、多分オレが何か起きるかもって言ったからだと思うんだけど。

 

――おまえを待っていた。

 

へ?とオレは慌てて大空のリングを見る。オレが込めたわけじゃ無いのに、リングからは炎が噴き出し、ボンゴレの紋章が浮かび上がってきた。

 

「も、もしかして……今の声……ボンゴレ……プリーモ?」

 

浮かび上がった紋章から、プリーモが現れた。

 

『久しいな』

 

うぇ!?とオレは思わず反応してしまった。やっちゃったー!と思うけど、オレが反応しなくても無理じゃん!

 

『ふっ。随分、可愛らしく育ったな』

 

……なんか褒められてる気がしない。

 

『胎児の頃からボンゴレリングの影響を受けたため、どう転ぶかと思っていたが……オレの杞憂だったようだ』

 

あれ?もしかして……オレのフォローをしてくれてる?

 

「胎児の頃からとはどういうことだ?」

『その頃からリングの適応者だった、それだけのことだ。大空のアルコバレーノなら、その意味がわかるだろう』

 

リボーンの質問に答えたプリーモはまたオレの方を見た。その視線が移動している時、一瞬だけどエンマの顔を見て止まった気がした。ほんの一瞬すぎて、オレの気のせいかと思えるぐらいだったけど、絶対間違いない。だからこの光景をプリーモに見てもらえたのが嬉しいよ、前には出来なかったから。

 

『……お前なら大丈夫だろう。栄えるも滅ぶも好きにせよ、デーチモ』

「は、はい!」

『ボンゴレの証をここに継承する』

 

前の時は1人だった。けど、今回はみんなと一緒にいる時に継承できた。だからかわかんないけど、涙が出てきた。

 

「10代目……」

 

みんなが静まってる中、獄寺君に気遣うような声をかけられ、慌てて袖で涙を拭う。

 

「オレ、頑張る。マフィアなんて怖いし、正直好きじゃないけど、オレは繋いでいく。正しい道なんてわかんないけど、オレが信じた道を進んでいくよ」

「ついていきます!10代目!」

「オレのこと忘れてねーよな!ツナ!」

「きょくげーん!!」

 

チラッと期待を込めつつ視線を向けると、ヒバリさんはため息を吐いていて、骸はやれやれって顔をしていた。その反応が嬉しくて思わず笑顔になる。

 

……ランボ、見てるか?これがオレ達だよ。お前が付いてくる覚悟ができたら、その時は歓迎するよ。

 

「あの、10代目」

「ん?どうしたの?獄寺君」

「ボンゴレリングの形が変わってませんか……?」

「んなーっ!?」

 

え?プリーモ?なんで!?とオレはアタフタする。これ、オリジナルのボンゴレリングじゃん!

 

「僕が調べた限りでは、初代の頃はそのような形だった、と。恐らく継承のために形が変わったものが、今……元の形に戻った、それだけのことです」

 

骸のフォローが凄すぎて、思わずポカーンって顔になっちゃった。今すぐその阿呆面はやめなさいという視線をもらって、すぐに口を閉じだけど。

 

「なんにせよ、彼女がボンゴレ10代目でいいのでは?」

「はい。それではリング争奪戦を終了し、全ての結果を発表します。大空戦の勝者は沢田ツナ氏。よって次期後継者となるのは沢田ツナ氏とその守護者です」

 

前と違って、やったー!と元気いっぱいにオレは喜んだ。XANXUSの意思を汲んだのかはわからないけど、ヴァリアーの襲撃もなさそうだし、観覧席のみんなも無事に出てくることができた。

 

「……あ、そうだ。XANXUS」

 

XANXUSを守るかのように、ヴァリアーのみんなが前にたったから、嬉しくて笑う。オレの顔に毒気が抜けたのか、力を抜いてXANXUSが見えるようにしてくれた。

 

「あのさ、良かったらだけど……オレと結婚しない?」

 

ピシッと空気が凍った気がした。ヴァリアー側ならわかるんだけど、オレの方からもなんだよね。

 

「……ツナ、お前なに言ってんだ?」

「いやだってさ、それが一番かなって。リボーン、お前もそう思わない?」

 

あれ?おかしいな。リボーンのポーカーフェイスが崩れてる気がする。そんな変なこと言ったかな?

 

「その、ツナ。オレもマフィアのボスだからな、その考えは理解できる。だがな、リボーンもオレも、というか……みんなだな。ボンゴレを継ぐからといって、お前の気持ちを殺してまではボンゴレに身を捧げろとは考えてないぜ?」

「オレもそのつもりですけど……。えっと、オレ、XANXUSのこと嫌いじゃないですよ?どっちかというと、好きかなーって」

 

あれ?今度はディーノさんが固まったよ。

 

「んっーと、ツナ。XANXUSのどこが好きなのか、オレらに教えて欲しいのな。親父も絶対聞くと思うぜ」

「え。山本のお父さんを納得させるのは難しいかも。だって、ボンゴレのこと誰よりも愛してるのがXANXUSだからだもん」

「んー……。理由を言わねぇと、親父は絶対認めないぜ」

 

やっぱり?とオレはベルを連れていった時のことを思い出す。山本のお父さん、あれ本気だったよね。

 

「それでもオレ、XANXUSぐらいしか思いつかなくって。……ほら、オレってモテないし。そりゃXANXUSは死ぬほどオレが相手とか嫌だろうけど、ボンゴレのためならギリギリ我慢してもらえる、はず。結構ギリギリかもしれないけど!そこをなんとかってオレが頭を下げ続ければ、可能性はゼロじゃないような。他の人を見つけるよりはある気がする!」

「でもよ、オレ。ツナのこと好きな奴を知ってるぜ?な、獄寺」

 

え?そうなの!?と獄寺君に視線を向ける。獄寺君は山本に肘で小突かれてるけど、すげー焦ってない?獄寺君は知らないんじゃないの?

 

「えっと、山本の気のせいじゃないの?」

「……じゅ、10代目。オ、オレは……」

 

あれ?もしかして知ってるのかなと期待を込めて見つめる。けど、獄寺君は口をぱくぱくするだけで続きがなかなか聞けない。

 

「ええい、鬱陶しい!!沢田!!!話はよくわからんが、後ろ向きの考えはよくないぞ!当たって砕けろ!」

「はい!って、オレはやっぱ砕けちゃうのー!?」

「それはやってみなければわからん!!」

 

うん、確かにそうかもと頷く。リボーンも言ってたじゃん、ボンゴレのボスたるもの、竹を割ったような性格じゃなきゃって!

 

よしっと気合いを入れてXANXUSの方を見ようとしたら、不機嫌なオーラに気付いて恐る恐る振り返る。

 

「ねぇ、僕もう帰っていい?」

「うわぁぁぁ!すみません!付き合わせて!!」

 

やっぱり機嫌悪くなってるー!とオレは頭を下げたよ。いやまぁヒバリさんからすれば、どうでもいいよね!そりゃ機嫌が悪くなるよ。……つーか、なんで骸は腹を押さえて蹲ってんの?まぁいいや、骸だし。

 

「あはは♪盛り上がってるところ悪いけど、ツナちゃんと結婚するのは僕だよ♪」

 

ハッとオレは顔を上げた。今までなかった気配に、帰ろうとしていたヒバリさんも足を止めて顔をあげていたのが視界の端で見えた。

 

「会いたかったよ、ツナちゃん♪」

「……白蘭」

 

背に翼を生やして飛んでいる現実離れをした光景に、オレ達はただ見上げるしかできなかった。

 

 




プリーモ
ツナに試練とか今更なので、もちろんリングも。
今のツナがそう簡単に死にかけることがないから外すタイミングがないだろうと判断したのもある。炎真の存在も後押し。
デーチモを困らせる気はないので、ちゃんとフォローした。
可愛らしいと思ったのは、ほんと。


沢田ツナ
そうだ、今回オレは女だから、XANXUSとオレ、結婚できるんだ!と本人曰く名案を浮かべた。
一度流れかけたのに、再びXANXUSに戻ったので、まだ諦めてない。

リボーン
周りには自分はいい男というが、一般的になら碌でもない男に自分が入るのは理解している。
ツナが天才すぎて、頭を抱えてる。

ヴァリアー
ボス、どうするの?という視線を送り続けてた。
ドカスという視線しか返ってこないが、一番いい縁談なのは間違いないとみんな察してるから、送り続けていた。

ランボ
終わった途端、炎真の腕でおねんね中。
仕方ないね、子どもには遅い時間だもの。

山本武
満塁にしたところで、打席を獄寺に譲ったのに試合中断された。
ツナは一応?XANXUSで、獄寺はツナだから、どうすっかなぁーと悩んでる。

獄寺隼人
チャンスをものにできなかった。
本気すぎて言えなかったんだよ、多分。
リボーンにあとでボコられる。

笹川了平
せっかちさん。
獄寺ではなく、ツナに声援を送った。期待値のせい。

雲雀恭弥
複雑な男心。
周りに気付かれてないが、一番知られたくない人物に、察せられた。

六道骸
リボーンの言葉じゃないが、カオスすぎてお腹が痛くなるほど笑った。
ただ白蘭が来てすぐ、すんっと真顔になった。
もちろん監視していたので、もう来るとは分かっていた。発言のせい。

白蘭
やっと会えたね♪
もちろんタイミングは狙ってやって来た。


これで、この章は完結です。つまり連続更新はここでおしまい。
来月ぐらいには……と思ってます。
で、せっかくなのでアンケート。
どっちを選んでも話の内容は変化しません。次章のタイトルに悩んだだけですから。
このアンケート機能を使ったことがないので試しです。
期限は次の更新の時までです。


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