白猫プロジェクトNega 学舎の英雄 集決編 (鳥面ダス)
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stage.00 学園都市再興

この作品におけるバックボーンの解説です。リメイク前よりちょっと細かくしました。


story0-1 災禍

 

少しずれた世界の、少し少し、先の未来のこと。

 

進級進学シーズンももうすぐのこの時期に誰が予想しただろう。悪夢の始まりとなることなど。

 

突如として発生した巨大な嵐は、日本全土で多大な被害をもたらすであろう。今思えばそんな大衆の予想など、足元にも及ばない。

 

嵐と言うものは、木を飛ばし、山を崩し、川というグラスに、あふれるほどの水を注ぐ。そして時として人の命を凪ぐものだ。しかし、奇妙なことにこの嵐による被害はゼロであった。ただし、この嵐による被害(・・・・・・・・)は。

 

この日を境にこの世界に巨大な変化が起きていた。

 

ああ今日も獣の遠吠えが響く。その声の主「魔物」の出現、蹂躙によって文字通り「私たちの日常、文明そのもの」を破壊していった。

 

日本政府はこの未曽有の事態収拾のため、軍隊を派遣。その弾丸で敵を討つことはできた。しかし一匹辺り数十名の人員と数十発もの弾丸を使用しなければ、あるいはそれでも倒せないという非情すぎる費用対効果や国全体の混乱から対応が難しくなり、内閣、国会も、ついに尻尾を巻いて雲隠れしてしまった。

 

海外諸国への協力要請も一向に応答はない。仮に応答があったとしても、核などを落とされたらひとたまりもないので、なんとも言えないが。

 

人々は各地で旅団としてコミュニティを形成しながら、逃げの一途をたどるほかなかった。

 

日本ももはやこれまで、そう思われた矢先、こんな事態も起こった。

 

quest0-1 最初の英雄

 

MISSION START

 

BOSS APPEARS

 

ハンマーウッホ があらわれた!

 

映画に出てきそうな二足歩行の大きなゴリラが、肩鎧とブーメランパンツををつけて、その丈に見合った大槌をもった魔物が、逃亡者の親子をじりじりと追い詰める。二人の表情は恐怖におぼれ、足もすくんでいた。そんなときである。

 

どこからともなく銀の鎧を纏った青年が現れ、背の鞘から剣を抜き距離を詰める。その動きはまさしく夜空をかける昴のように速く、美しくすらあった。

 

魔物も負けじと得物(えもの)を地面に叩きつける。アスファルトの割れる酷い音がしたが、そこに青年はいない。その動きをとらえきれていないのだ。

 

そしてその時、青年は、そのでかい図体の背後に回っていた!

 

青年「騎士の力、見せてやる!〈暗夜切り裂く聖十字(グランドクロス)〉ッ!」

 

白刃の閃きが魔物を裂き、光に還した!

 

先ほどまで魔物が居座っていたところに、かの青年は立っていた。巻き起こる土煙、そしてなびく白と青のマントが、白銀の剣と鎧の輝きを一層引き立て、その姿はまさしく騎士であった。 

 

彼が、そばで何が起こったかわからずただただ震えるその親子を目にすると、剣をおさめて駆け寄り、その手を差し出しこう言った! 

 

「安心してくれ!」

 

VICTORY

 

青年「当然の勝利だ!」

 

MISSON COMPLETE

 

story0-2 the first school city

 

かの白銀の騎士が現れた後、「冒険家」と名乗る者たちが、日本各地に現れるようになった。嬉しいことに、彼らは魔物に対抗する力を持っていた。彼らの協力によって、人々は付近のコミュニティを統合、拡大したことで、最低限の暮らしと生活を取り戻すことに成功した。

 

また、魔物の発生から二年。そんな破竹の勢いで九井学園という私立高校が復興。その学園に進学予定、あるいは在学中であった生徒約1200名のうち現在約380名が、現在学生寮にて生活中だ。

 

その噂を聞き付けて人々が集まり、学園近くには耕作地、居住区、近くのビルを復興させたりもした。その結果、学園都市の中心としての顔を九井学園は持つことになった。

 

逃げるだけだった学生たちは嬉々として勉学に励んでいる。最近は、臨時的ではあるが大学付属高校化しようという動きもあるらしい。喜びは、これまで抑圧された分だけ大きいものであった。

 

だがしかし、増長していく魔物たちはその希望をも奪おうと襲い掛かって来るだろう。

 

学び舎の選ばれし青年たちは、運命と絆で結ばれた仲間とともに、光を守り、戦い抜く。

 

これは白猫であり、また違った物語。

 

英雄は、いつも僕らのそばにいる。

 

???「いいねー!」




あらすじの注意書にに書いたことはとりあえず実践しています。これから読む人はちょっと目を慣らしておいてくださいね。

ちなみに、この冒険家の名前は…知ってる人には言うまでもない、クライヴ君ですね!(ちなみにこの章で彼の出番はこれだけっていうのは内緒な) 

拙い作品ですが、これからもどうぞよろしくです。

閲覧ありがとうございました!

(あ、ちなみに原作のプロローグの出だしとここの出だしを比べてみると…)


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脳内再生用メインキャスト一覧(敬称略)

更新がなく申し訳ありませんでした!

 

私の想定した脳内再生用のキャスト一覧を公開いたします

(キャラクター名:担当声優) という形式です

 

わかる方にはさらに作品をお楽しみ頂けるかと思いますが、わからない方にもお楽しみいただけるよう努めて参ります

 

また、本編とともにキャラクター紹介も更新していきますので、cvの確認やキャラクターの詳細についてはそちらもご覧ください

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

オリジナルキャスト

相良 勝磨:小林 祐介 / 真木 逸己:江口 拓也

巽 静流:寿 美奈子 / 玉木 翔:花江 夏樹

高尾 真楠:福島 潤 / 大輪田 時雨:雨宮 天

佐野 なでしこ:早見 沙織 / 田村 杏子:悠木 碧

ジャスミン・師縞:小松 未可子

西園寺 雛:堀江 由衣 / 神崎 宗次郎:村川 梨衣

朝鉦 豪:石川 界人 / 千石 了人:島崎 信長

早乙女 夏弥:鈴村 健一 / 野上 芹花:坂本 真綾

 

アレックス・B・ジョンソン:三宅 健太

ゲドー:江口 拓也

メルディオ・ホワイト:藤原 啓治

向井 浅葱:細谷 佳正 / 坂上 蒼:高木 渉

如月 緑:阿澄 佳奈 / 鷹村 八塩:西田 望見

原 藍奈:鈴木 みのり

 

ジェクト・スワルフィアス:小野 大輔

ドール、ドールの人形:東山 奈央

ステージャ・マッチリッター:岡本 信彦

チャァミィ・ヴァレンタイン:能登 麻美子

チャァミィ・ホワイト・デイ:諏訪部 順一

???:杉田 智和

 

 

以下本家白猫プロジェクトより続投

 

シャルロット・フェリエ:内田 真礼

シャナオウ・H・K・M:福山 潤

ゼロキス・チェリサージュ:下野 絋

ベンケイ・イワトウシ:乃村 健次

マール・アスピシャス:種崎 敦美

ガレア・アリスイ:津田 健次郎

ツキミ・ヨゾラ:佐藤 聡美

ヴィルフリート・オルクス:子安 武人

エスメラルダ・プロセイユ:喜多村 英梨

カスミ・アサミヤ:三澤 紗千香

プロフェッサー・カティア:村川 梨衣

アゾート・ヘルメス:手塚ヒロミチ

ハーブ・セルフィーユ:小若和郁那

闇の王:緑川 光

エピタフ:塩見 宗真 / ヴァルアス:三浦 勝之

グローザ・ノアイユ:渚 兎奈

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

一部、何度か見たキャストさんもいらっしゃいますが、キャラクターとしては別人であることもあります

 

今後の更新をお待ちください

 

そういえば堀江由衣さんは、本家にてアイリス役で出演してるけど...(とりあえず出演なさっていることは知っていることだけ弁明させてください)

 

それとどうして後記に書くべき内容をこっちに書いているかというと、文字数稼ぎです...

 

キャストだけだと1000文字超さない...



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Stage.01 determine part1

ようやく始まる...

一応作品紹介の注意文と、キャスティング表をあらかじめ見ておくと、楽しめる人には楽しめると思います。

キャラ紹介で、キャスティング理由などがある場合があるので、そちらもちょいちょい覗いてみてくださいね!

それでは、スタートです!


猛る焔。そして、現れ出立(いだ)つは金鎧(きんがい)の勇士。

 

巽 静流

「あれが…本当の神気共鳴(コンバート)…」

 

ー ー ー

 

アレックス

「…やはり適正者が存在する...ということか」 

 

ー ー ー

 

ゲドー

「…相良…」

 

ー ー ー

 

シャルロット

『勇者…ここに降臨…!』

相良 勝磨 

「勇気、闘志…燃えろ…光焔…ッ!」

 

  

白猫プロジェクトNega 学舎の英雄 集結編

 

 

story.1-1 different start

 

四月も中旬。平和なポカポカ陽気の中、登校するのは俺、相良(さがら)勝磨(しょうま)、17歳、高校一年。

年齢と学年が、読者のみなさんの常識と合わないのは、受験で入学が決定したクラスの生徒たちを、事件から二年の復興期間を開けて召集したからだ。

 

今じゃ、〈悪魔の門(デモンズ・ゲイト)〉なんて呼ばれるようになったあの竜巻から二年。今思えば、こうして道を堂々と登校することさえも、魔物ができなくしてたと考えると、冒険家の方々には感謝しかない。

約半年前、その知らせが来た時には三回はひっくりかえった。高校生活が送れるなんて話である。いろいろとびっくりした。長いブランクがあっても、畑で土を耕し、他のコミュニティから物々交換で物を得て、家畜を追う。父さんや母さんだって嫌かもしれないが、そんな都会人らしからぬ、原始的生活をいきなり強いられたのだ。その反動はあるのだろうが、俺たちみたいな若者に、もっと現代的な生活を送らせてくれるようになったわけだ。どの生徒も歓喜しないわけがない!

公立高校の受験に落ちた俺が、滑り止めで受かったこの学校に行く事になったおかげで、一足先に学園生活を取り戻せたのはとんだ幸運だった。

あ、そうそう冒険家の事で思い出した。俺たち家族が魔物から逃げている時の事

 

シャルロット

「光で、斬る…ッ!」

 

黄金の鎧、短く切られた金色の髪、そして燃え上がるような緋色、まばゆい金のオッドアイを持つ少女だった。

彼女は自信を『冒険家』、そして『元・光焔の御子 シャルロット』と名乗って、俺たちを近くの集落まで案内してくれた。

ただ、彼女は全く見ず知らずという訳ではなかった。魔物が現れてスマホが無用の長物になるまえまでハマっていたソシャゲ「白猫プロジェクト」に登場するキャラクターそのままだったのだ。といっても、恩人に失礼ではあるだろうから、本人に問いただそうとも思わなかったけど。

 

白猫プロジェクト。冒険家と呼ばれるキャラクターを操作して、魔物を倒していく、アクションRPG。白と黒の長き因縁や対立、闇との戦いなど、壮大なスケールで物語は進む。

 

その冒険家としてプレイアブルキャラクターとして、シャルロットは実装されているのだ。

 

彼女はおしとやかでありながらも面倒見がよく、魔物相手にも凛然と立ち向かい、誰からも愛されていた...が、そんな彼女のゲームにおける基本的な本性は自堕落で贅沢者、そこに尽きる。しかし集落での彼女からはそんなダメさは感じられない。今考えても、やっぱり他人のそら似だろうな、それもゲームだし。

しかし、それもつかの間、俺がこの学園都市から招待を受ける数日前、シャルロットさんは別の仕事が入ったらしく、村の用心棒を後任の冒険家に任せて、先に集落を去っていってしまった。

 

なーんて回想に耽っていたら学校に到着である。

 

相良 勝磨

「んじゃ、今日も頑張るか!おはようございまーす!」

 

ー ー ー

 

んでしばらくして昼休み、クラスの男子数人で食堂に行く事になった。この学校の食堂は、東京の平均的な建物の高さだと10階相当。天気が良ければ、スカイツリーとか、冬に空気が澄んでいると富士山も見えたりする。

ここでクラスの男子数人で食事をしていた時、とある人物が話を振った。

 

真木 逸己

「ところでなんだけどさ、冒険家に会ったことある?」

 

今朝ちょうどそれについて話したばっかりよ!?タイミング良すぎない!?

彼、真木逸己(まぎいつき)もこの学校の生徒でクラスメイトである。ニックネームは、安直に「マギー」。 

場がちょっとどよめいたあと、ウチのクラスの学級委員の玉木(たまき)が、周囲を代表していった

 

玉木 翔

「そりゃもちろん!学園にいるみんながお世話になったっての!」  

真木 逸己

「んじゃあさ、学園都市(ここ)についてから会ったことは?」

玉木 翔

「そういやないな。それで?」

真木 逸己

「俺が思うに、学園都市(ここ)にもいる気がするんだよなー。こんな壁とかもない大都市、いつ魔物が来るかなんてわかんないじゃん?なのに大きく表沙汰にならない...用心棒も街の規模に比例していっぱいいるはずなんだよな~…」

 

ここ一辺は、学校を中心に住宅街や耕作エリア、発電施設などを擁する学園都市として栄えている。それを守るために冒険家の一人や二人は、この街にいてもおかしくない。 

ここで高尾(たかお)(こいつもクラスメイト)も聞いた。

 

高尾 真楠

「それにしても、なんでまた冒険家の話なんか?」

真木 逸己

「いざってときは、俺たちでも戦えるようになりたいのさ。ろくな努力もしないまま、そういう大事なとこ人任せにするのも、遣られっぱなしになるのも、結局死ぬほど悔しいんだわ。それに、うまくできない自分が嫌いになるから。そのためにも、戦い方を教えてほしいなってだけ」

高尾 真楠

「お前ちょっと考えすぎなんじゃねーの?生徒会も気苦労ばっかだな」

 

と続いた。ちょうどいいのでマギーについて深く切り込んでおこう。

 

真木逸己。俺のクラスメイト、怪我でもしているのか左手に包帯を巻いてる。が、明らかに巻き方が「呪いの腕」系のそれなので厨二病説が濃厚だったりする。ただし、マジで怪我してるからか先生方はなにも言わないし、マギー本人もお茶を濁すので真相は闇の中。そしてなぜか終始眼が死んでる。わかりやすく言うと目のハイライトがマジで無い。

(そうでありながら)彼は一年生にして生徒会志望というもうひとつの顔がある。生徒を代表する立場として、学園生活を自分で守ろうとでも言うのだろう。仮に戦う方法を教わったとして、それで守れるかといったら別問題ではある。理想論ではあっても、心持ちとしては立派だ。ということでいつもの口癖をひとつ。

 

相良 勝磨

「いいねー!」  

 

気づくと、もう五限が始まる十分前だった。残っていた昼のうどんを完食し早いとこクラスに戻ることにしたが、急いでいたからか、ふと財布を忘れたことに気づいて、さっきまで座っていたところに戻ると、テーブルの下に落ちていた財布を見つけた...のだったが...

 

相良 勝磨

「あったあった!良かっ...」

???

「...」

 

窓際の席で、とある少女が黄昏ていた。少し露出度のある私服を着ているので、生徒ではないのはわかった。しかし、短く切られた金の髪が、ひときわ目を引いた。外国人か何かだろうか。

 

…って見とれている場合じゃない!急いで財布を回収して、クラスに戻った。

去り際、何て言ったか聞き取れなかったが、彼女が何かボソッと話したように見えた。

 

???

「今日…ビーフじゃねぇのか…」

 

ー  ー ー

 

時同じくして...

 

ゲドー

「敵の掃討を完了。佐野、周囲状況は」

佐野 なでしこ

『大丈夫です。増援ありません』

ゲドー

「了解…では…」 

 

黒い鋼鉄の肉体と銀の長髪、そして赤い鬼の仮面の青年は、目の前の禍々しい気を放つ壺のような物体(オブジェクト)を...

 

ゲドー

「ぬんッ!」

 

蹴り割った!

 

ゲドー

(ルーター)、破壊したぞ」

佐野 なでしこ

『反応なし。任務終了です。赤鬼さん、お疲れ様でした!』

ゲドー

「赤鬼じゃないゲドー...まあいい。ご苦労だった。共鳴・終了(コンバート・オフ)」 

 

そのとき、青年が二人に別れた…ように見えた。

 

ゲドー

「昼がまだだろう?もう持ち場を離れても良いぞ」

佐野 なでしこ

『じゃあ、お昼、ご一緒にどうでしょうか!』

ゲドー

「ああ、いや遠慮す...」

シャナオウ

女性(にょしょう)のアプローチをアンロードするは無礼ストレージ!ご相伴トゥギャザーせよ!」

ゲドー

「毎度のそのテンションマジでどうにかしろ!じゃかましい!」

 

民家の屋根に腰掛ける青年が二人。 

「ゲドー」と呼ばれた片方の青年は、山を走る清流のような銀の長髪を結んではいるが、目と鼻を、赤い鬼の仮面で隠しており、その素顔を伺うことはできない。学園のワイシャツとズボン、ネクタイはしているが、ブレザーは袖を通さず、金の紐を首にかけて羽織っているだけだ。分かれる前の銀の長髪と仮面は彼の要素だろうか。

シャナオウと呼ばれたもう片方は、短い黒髪に赤い瞳、その身体は黒い鋼鉄の装甲のそのもので、紫の光が常人の数周りは大きい籠手の装甲の隙間から発されている。冒険家、それもロボットの類であることは明白である。分かれる前の黒い装甲は彼の要素だろう。

ゲドーがゆっくり立ち上がりながら、

 

ゲドー

「被害も一向に増え続けている。早急に対応しなければ」

 

そしてシャナオウの方も立ち上がり、

 

シャナオウ

「続きはベースにてチャットせん!」 

 

二人は市街の屋根に黒い疾風となって駆けた。

 

ゲドー

「...佐野...まだいるか?」

佐野 なでしこ

「はい、なんでしょう?」

ゲドー

「...唐揚げ定食...頼んでおいてくれ...」

佐野 なでしこ

「...はい!了解です!」



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Stage.01 determine part2

story.1-2 襲撃

 

んで放課後!

 

勝磨()たちは教室でしばらくだべっていた。食堂で見かけたあの少女が頭から離れず、五限目の化学基礎の時間、眉間にチョークを食らってしまった。それがまだヒリヒリする...結構赤くなっていたのを鏡で見ると、なおさら痛く感じた。

一体誰なのだろう。妙に初対面という気はしないでもなかった。やっぱりあれはシャルロットだったのだろうか、と一抹の期待を寄せる。あのオッドアイを確認できれば一発ではあったのだけど...

そう考えた時である。学校中に、甲高い警報が鳴り響いた。誰かが消火栓のボタンでも押したか、と思ったがその警報とは違った音だった。その数秒後の先生からの全校放送のメッセージがその疑問を一瞬にして消し飛ばした。

 

❲校内に魔物が侵入しました。生徒の皆さんは速やかに避難して下さい。繰り返します…❳

 

魔物の出現というこの事態、生徒達がパニックを起こすのに、さほど時間はかからなかった。

廊下の階段は生徒でごった返しであった。魔物がグラウンドで暴れているらしく、そこに降りる避難用の梯子を使おうとする者は一人もいなかった。

やっと人混みを抜け、一階までたどり着いたそのときだった。

 

???

「シャルさん!面倒いのはわかるけど...」

???

「わーってるっての!」

 

食堂で見かけた金髪の少女とそしてよく知った人が、俺の横をすれ違った。逃げる俺たちに逆らって、魔物に向かうかのように。ほんの一瞬の出来事だった。

 

相良 勝磨

「あの人と...巽さん!?...!」

 

二人が心配だ、そう思うが早いか、俺はもときた道を、人混みを掻き分けて走った。

 

巽静流(たつみしずる)。玉木と並んで、うちのクラスの学級委員を勤める人だ。基本的にあんまり他のクラスメイトと打ち解けることはあまりない人だと思っていたが、どうして彼女とあの金髪の女性が一緒にいるのだろうか。

 

勝磨()が二人を追った先は、先程から魔物の暴れまわる校庭。そこには巽さん、そして黄金の鎧を見にまとった冒険家がいた。あの鎧は忘れもしない。シャルロットのものだ。そして巽さんがポケットから...スマートフォン...だろうか?それを取り出し、構える。

 

シャルロット

「巽、訓練通りにやりゃ大丈夫!」

巽 静流

「うん...実戦は初だけど、せめてゲドーさんが来るまでは!シャルさん、お願い!共鳴(コンバート)始動(スタート)!」

 

巽さんのかけ声とともに、まばゆい光に包まれ、思わず目をふさぐ。そして次に目を開けると、巽さんが...シャルロットの鎧を纏い、剣を携えていた。シャルロットの姿はどこにも見当たらない。いわば合体、と形容してもおかしくない気すらした。

 

ただ、巽さん...なのかはわからないが、どうにも身体の動きも、剣の構えも結構ぎこちないし、まださして動いてもいないのに呼吸が上がっているのが素人の俺でもよくわかった。

 

巽 静流

「はぁ...はぁ...やっぱり体力、結構もってかれる...」

シャルロット

「あいつが来る!」

 

向かってくる魔物をみる。そういえば、落ち着いて魔物を見るのは初めてだ。巨大な図体に対して、腕、足は筋肉質だが短い雄牛。その姿を見るやすぐに思ったその姿は「白猫」に登場する魔物、ミノタウロスそのものである。

シャルロットもそうだがまさか魔物まで酷似しているとは。すぐに避難するか、遠くに逃げていたので、魔物の姿をはっきり見たのはこれが最初だった。

姿形はおろか、その攻撃の挙動でさえ、ゲームのそれと全く同じだった。何から何まで似すぎている。いささかゲームから出てきたのかと、錯覚してしまいそうだったが、そんなことがあってたまるかと自身に言い聞かせ、目の前の戦いに再び目をやる。

 

魔物の大斧の攻撃を、かろうじていなしているが、次第に動きがさらに鈍くなってきている。それに対して魔物は体が温まってきたのか攻撃が大きくなっている。そして、早くも巽さんの体力が限界に達したのか、攻撃を食らって大きく後ずさりする。その瞬間、彼女の体が、巽さんとシャルロットに別れてしまった。戦いもヤバいが、この状況はそれ以上に意味不明だった。

 

シャルロット

「下がってろ!あとはあたしが!」

巽 静流

「シャルさん!待って!」

シャルロット

「時間稼ぎならできる!」

 

ー ー ー

 

巡回任務中だったゲドーとシャナオウは、神気共鳴して学園に急行していた。そんな中、佐野から連絡が入る。

 

佐野 なでしこ

『赤鬼さん、巽ちゃんが!』

ゲドー

「やはり実戦はきついか...すぐに...」

田村 杏子

『待って。ポイントC-26に魔物が群れてる。(ルーター)もそっちに!』

ゲドー

「巽とシャルの撤退を支援してから...」

アレックス

『C-26に向かってくれ!そこは紫電の戦線も崩壊寸前だ!』

ゲドー

「...各員に撤退を優先させろ!さっさと片付けてそっちに行く!シャナオウ!合わせろ(・・・・)!」

シャナオウ

『うむ!』

 

ー ー ー

 

向かっていくシャルロットの左目が金の光を宿す。

 

シャルロット

「受けよ!光で...斬るッ...!」

 

光覇滅陣剣だ!巽さんの呼び方といい、やっぱりシャルロットだ!あの一撃だ!あいつだって...そう思って魔物を見る...嘘だろ!向こうには大して効いていない!そしてそれはシャルも同感だったらしかった。

 

シャルロット

「クソッ...効いてねえ!?ああっ!」

 

斧の横凪ぎが彼女に襲いかかる!それをかろうじて剣で受けるが、彼女の身体は、野球のボールのように大きく吹き飛ばされグラウンドのフェンスに叩きつけられた。

 

巽 静流

「シャルさん!」

シャルロット

「巽ッ!…早く逃げろ!」 

 

時すでに遅しか。巽さん目の前には、攻撃対象を変えた魔物の斧が振り下ろされようとしている。助けなければ、そう思いながらも、すくむ足をうまく動かせない...まずい…

するといきなり、魔物に剣が飛んでいきその背にぐさと刺さった。ダメージはなさそうだったが不快感はあったのか思わぬ邪魔者の方を向いた。 

 

シャルロット

「こっち向けや!牛野郎!」 

 

啖呵を切った彼女に角を向け、猛スピードで突進してきた。とりあえず、巽さんは助かったみたいだ。

さっきのこともあって、足手まといにしかならないと思った俺が、グラウンドから逃げようとしたその時、まだ奴の背中に、彼女の剣が刺さっているのが見えた。

...剣?待てよ?

 

今の彼女は...丸腰なんじゃないのか...?

 

奴の鋭い角が、彼女の黄金の鎧を貫き、そのまま上に放り投げる。彼女の身体がいとも簡単に空中、それも結構な高さに放り出されている。

 

相良 勝磨

「!...やべえ!」

 

彼女が落ちる前に、今度こそ動いた足を回して、なんとか受け止めることに成功した...はいいが、抱えた彼女の傷は深く、出血も多かった。そしてちょうど巽さんも俺の存在に気づいたらしい。

 

巽 静流

「生徒!?...しかたないか...早く彼女をこっちに!」 

 

その隙に、俺はシャルロットを担いで、声のする物陰に隠れた。

 

巽 静流

「って…あなた相良君…?」

相良 勝磨

「やっぱり巽さん!…なんでこんなところに!」

巽 静流

「少なからず、あなたの台詞じゃないと思うけど…」

相良 勝磨

「えっと…それより、さっきのなんだ?シャルロットと合体?したような...」

巽 静流

「ごめん、それは言えない」

 

そういいつつ彼女は合体に使った真っ白いスマホ?に電源を入れシャルロットにかざす。しかし、画面にerror(エラー)と出るだけで何か起きる気配はない。

 

相良 勝磨

「それ、使えないのか?」

巽 静流

「ちょっと黙ってて!」

 

かなりぶっきらぼうに返されたが、彼女の顔を見れば、焦り、不安、いろんな感情がごたまぜになっているのがよくわかった。シャルロットの顔色も、どんどん悪くなっていく。ブレザーとハンカチで、一応止血はしているが、容態は悪くなっていく。

 

ただ、巽さんが持っているスマホ...それから目が離せない、というか不思議と視線を吸いこまれる...いや、呼ばれているような、スマホの方から使ってほしいと言われるような...

 

相良 勝磨

「...ごめん!ちょっと借りる!」

巽 静流

「っ!相楽くん!?」

 

その感覚に従ったのか、気づくと巽さんの手からスマホを引ったくっていた。

一見するとやっぱりスマホである。しかし、なんだろう。魅力だとか興味とかそういうのとは違った…なんとも語彙力が足らずはがゆいけど…いわば引力を感じた。

 

シャルロットの状態もあり、もうなりふり構ってはいられない。

 

頼む…動いてくれ…

 

そう念じながらスマートフォンのホームスイッチを押したそのとき、スマートフォンが赤く色づき、シャルロットの体を吸い込んだ! 

 

相良 勝磨

「ええ!なんだこりゃ!」 

シャルロット

『う…ここは…』 

 

スマホの画面、というかスマホの中の部屋にシャルロット入っていた(閉じ込められたとも言えるか)、目を覚ました。 

 

相良 勝磨

「あんた、大丈夫なのか!?」 

シャルロット

『心配には及びません。このとおりです』

 

目を覚ましたシャルロットには傷はおろか、鎧の破損すら修復されていた。会話もあってるし、発言にあわせて中のシャルロットも動いているようだから、どうやらスマホのプログラムとかではない、本物のシャルロットのようだ。

 

相良 勝磨

「よかった…」

巽 静流

「私も使えない機能を...まさか...」

 

おもむろに巽さんは、今度はポケットから手のひら大の機械(マシン)を出して、それに声をかけ始めた。

 

ー ー ー

 

巽 静流

『アレックス司令、まず状況を報告します』

アレックス

「ひととおり見ている。隣の彼がいたのは想定外ではあったが...彼に繋いでくれ」

 

ー ー ー

 

巽 静流

「相良くん、これ」

相良 勝磨

「ん?なにこれ?」

アレックス

『変わってくれたかな?』

相良 勝磨

「おおっ!これ通信機か!えっと...はい...変わりました...」

アレックス

『さっきの一部始終は見させてもらった。もしかしたらなのだが、君なら使えるかもしれない。神気共鳴(コンバート)

相良 勝磨

「こ…こんばーと?それって巽さんがさっきやってた…うッ!」  

 

そのとき頭に直接、声が…流れ込んできた?そんな不思議な感覚に襲われる。ただ、なんとなくではあるものの握りっぱなしのスマホの仕業であることはわかった。

 

ー Are you willing to fight ?(タタカウイシハアリマスカ?) ー 

 

女の人の声だろうか。やさしい、温もりを感じる声だ。まるで母親のような...でも戦う意志って...俺は学生だ。戦う訓練なんかしていない。事実さっきだって後先とか考えてなかったし...と戸惑っていたそのとき、マギーの言葉を不意に思い出した。

 

真木 逸己

『大事なとこ人任せにするのも、やられっぱなしになるのも、結局死ぬほど悔しいんだわ』

 

思えばあの日も、俺は母さんと逃げるしかなくて...正直悔しかった。滅茶苦茶悔しかった。滅茶苦茶泣いた。それに、あいつをほっといたら、学校は壊されるんじゃないのか?...それも嫌だ...そうだ...追っかけたのだって、二人に何かあったら嫌だったからだ。被害者になるのも、傍観者になるのもいやだったからだ。だったら...

 

相良 勝磨

「...ある!...もう俺は!悔し涙はもうごめんだ!」

 

啖呵を切ったその瞬間、焼けつくような感覚と共に左の手の甲に紅の剣の痣が浮かび上がった。

 

相良 勝磨

「これは...」

 

そして治癒が完了したシャルロットが、スマホから飛び出す。

 

相良 勝磨

「シャルさん、俺のこと覚えてます?相良勝磨」

シャルロット

「忘れてなんかいませんよ。ところで、お財布忘れてましたよね?」

相良 勝磨

「...それは言わないで...ともかく、あなたに守られたあの日々、改めてありがとうございました。今度は…俺も闘います、シャルさん!」

シャルロット 

「ここを…守りましょう!」

 

よくはわからないが、なんとなくこのスマホ...共鳴媒体(コンバーター)の使い方が...わかる。

そのまま機械を前に構えると、足元に魔方陣が浮かび上がる。 

 

そして心に浮かんだ言葉を叫ぶ!

 

相良 勝磨

神気共鳴(しんききょうめい)共鳴(コンバート)始動(スタート)!」

 

その瞬間、俺は遥か蒼穹に浮かぶ飛行船の上に転移していた。だが酸素は薄くなく、むしろ吸い込む空気からも命の息吹を感じる。少し視界が暗いと思ったら服装もベージュのローブに変わっていた。

何となく次はここから地面に飛び降りる…恐怖はない。むしろ前に出たがっている。そんな不思議な安心感すらあった。それを信じて、飛行船から身を投げる。

一度光に包まれ、ローブの色が紺に変わる。このときスマホによってデータ化された冒険者の力と装備、すなわちシャルロットの黄金の鎧(もちろん男物で、シャルロットが普段装備していない脚部の鎧が増えている)を纏う。

再び光に包まれて今度はローブが金色に変わり、シャルロットの精神がそっくりそのまま俺の肉体に入り込んでくる。やはり恐怖は感じない。そして...

 

相良 勝磨

武装(アームド)・〈栄光の一閃(グローリーフェンサー)〉!」 

 

光焔の力を宿した剣をその手に掴み、空中でローブを脱ぎ捨て着地。それと同時に火の粉が散り、その姿を鮮烈に映し出す。スピードが出たわりに、グラウンドに敷かれたゴムチップがけっこう吹っ飛んだくらいですんだようだ。足も痛くない。

 

猛る焔。そして、現れ出立(いだ)つは金鎧(きんがい)の勇士。

 

巽 静流

「あれが…本当の神気共鳴(コンバート)…」

 

ー ー ー

 

アレックス

「…やはり適正者が存在する...ということか...」

 

ー ー ー

 

ゲドー

「…相良…」

 

ー ー ー

 

シャルロット

『勇者…ここに降臨…』 

相良 勝磨

「勇気、闘志…燃えろ…光焔…ッ!」




わかる人にはわかるけど、飛行船の下りからの変身描写は、ガチャ演出のそれなんだなこれがまた。

わかんなかったら俺の文才を恨んでいい。


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Stage.01 determine part3

さて、今話のサブタイの「determine」

これはイメージソングとして定めていた、澁谷梓希さんの「determine」から取ってます。

戦闘シーンに合わせて聞いてみていただきたいです。

それでは、どうぞ!


相良 勝磨

「...って、なんだこりゃ!とりあえず力がわいてくるような…」

シャルロット

『体が勝手に動くようにも…自分で動いているようにも思える...不思議な感覚…』

 

シャルロットの声だ。もちろん周囲にはいない。

 

相良 勝磨

「シャル?いや、ここにいるってのはわかる。巽さん隠れてて!俺たちがやっつける!」

巽 静流

「…うん!」

 

目の前の魔物は、目の前が戦士のいきなりの登場という端から見れば訳の分からない事象を前にいきり立っていた。俺は一つ深呼吸する。

 

相良 勝磨

「...よし!ミッションスタートだ!」

 

quest.1-1 determine

 

MISSION START

BOSS APPEARS

 

ミノタウロス があらわれた!

 

相良 勝磨

「え?まってなにこの謎の字幕!?まんまじゃねーかよ!うーん...」

 

敵に向かって一直線に駆け出し、握った剣がその巨大な図体を一閃。走るスピードをそのままに、敵を斬りつけ、文字通り痛みに唸らせた!

 

シャルロット

『何てパワー…』

相良 勝磨

「感動してる暇はなさそうだ!」

 

共鳴接続した俺の危険性をようやく察知できたのだろう。角を突きだした姿勢からの突進、さっきの攻撃だ。ぶつかる前に横に避けるも、またこっちに向きを変えての突進。それをまた避け、の繰り返し。気分はまるで闘牛士だ。

 

シャルロット

『これじゃ埒が開かない!』

相良 勝磨

「大丈夫。ちょうど良いこと思い付いた!…チャージ…」

 

大きくその場に踏み込み力を溜める。

もう、この闘牛士ごっこも飽きた!さっきの字幕といい、やっぱり俺はこの戦いのシステムとゲームの「白猫」との類似性を理解していたような気がする。

攻撃が通るまであと十四歩。そのときには、少し見にくいが、俺の体になにかの力が集中する。

あと七歩。その体に、殺気、もしくは気迫のような力の迸りが、目に見えるほどに激しくなる。

あと五歩。ここだ!

 

相良 勝磨

「…スラッシュ!」

 

剣を横に薙いだその瞬間、その閃きから生み出された光の刃が、三日月型の弧を描いて飛び、猛牛の足を直撃。すっ転んできた魔物をさも余裕とばかりにひょいと避ける。

めったうちにされるのを危惧したのだろうか、すぐに傷ついたその足で立ち上がると、手に持った斧を頭の上で回転させる。

 

相良 勝磨

「あのモーション...しめた!」

 

敵に向かって一直線に走る!

 

シャルロット

『まっすぐ突っ込みすぎだ!』

相良 勝磨

「いいや、むしろ当てに来たほうがいい!」

 

敵が斧の回転をそのままに俺の方に投げる!斧は回転しながら飛んでくる。

 

相良 勝磨

「…今!」

 

斧が俺の胴を凪ぐ直前、前に転げた。そのとき、体が紅く輝き、勢いをそのままに左足で前に飛び出し、空中で回転しながら、凪ぎ払う。

その刃は、さっきの紅の光をそのまま力にしたかのように、赤白く光り、〈栄光の一閃(グローリーフェンサー)〉のリーチを伸ばしている。

 

相良 勝磨

「カウンター…スラッシュ…!」

 

光刃の一閃がまともに胴に入り、ミノタウロスの肉体を、大きく吹き飛ばし、その先の壁にめり込ませた。

 

相良 勝磨

「あれ!?カウンターそんな吹っ飛ぶ!?」 

シャルロット

『後ろ!』

相良 勝磨

「やべっ!」

 

ギリギリでしゃがむ。斧が大きな音をたてて壁に刺さる。その重量と威力が、改めて窺える。

 

相良 勝磨

「うへー、こっわ...あいつぶっ飛ばしても投げた斧やっぱり戻ってくるのか…」

シャルロット

『気を付けてください!(忘れてた?さっき前に飛び出したときもそうだけど、もうこいつの動きを知ってるってかよ?しかもさっきからこいつ、やけに戦い慣れしてやがる...?)』

 

シャルロットがそう考える間に、俺は壁にめり込ませた魔物と、壁に刺さった斧に挟まれる位置に走り込んでいた。

この位置取りはなんなのかというと、これで眼前の敵が、壁に刺さった斧を取るには、傷ついた足で、俺の付近を通らなければならなくなったのだ。

 

チャージスラッシュでの転倒といい、さっきの吹き飛び方といい...投げた斧もゲームでは必ず敵の手元に戻ってくる...細かいところがゲームの白猫と違うんだな...

 

とはいえ、この位置取りだ。もう魔物は斧による攻撃手段(言い換えれば、こいつの大体の攻撃手段)は封じられた。となれば、相手の残る手段は一つしかない…!

 

相良&シャルロット

「『さっきの突進!』」

 

怒り心頭の魔物は頭の角を向け突撃してきた!予想通りだ!

 

相良 勝磨

「よっしゃ!とどめいくぞシャル!」

シャルロット

『はい!』

相良&シャルロット

「『アクション!』」

 

二人の叫びと共に、光焔の剣が、影をも焦がす炎を纏う。まだ遠い距離を、地面を蹴って間合いを詰める!

 

シャルロット

『受けよ!』

相良 勝磨&シャルロット

「『燎焔斬(りょうえんざん)!』」

 

下から振り抜いた剣は地面まで軽く切り裂いて、激しい火花を散らしながら、紅蓮の刃を炸裂させる!

魔物はしばらく頭をふらつかせた後、大の字になって倒れた。

 

相良 勝磨

「んー...いいね!」

 

サムズアップでポーズを決め、程なくして魔物は光になってぱっと消えた。

 

VICTORY

 

相良 勝磨

「俺達の…勝ち!」

シャルロット

『つーわけで帰ります♪』

相良 勝磨

「...いろいろツッコみたい...」

 

MISSION COMPLETE  




ちなみに MISSION START とか VICTORY とかは、よくはわかりませんが、実際に実体が存在するサムシングなようです。

キルラキルみたいな要領です。(笑)


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Stage.01 determine part4

story.01-03 闇動く シャルサボる

 

見渡す限りの闇。そのなかに、漆黒の衣を纏った男が、写真を片手に話している。その写真には、共鳴接続した黄金の騎士が写っている。

 

また、よくみると円卓のようなもの越しに話している。

 

緑色の髪をした女性と、長い青髪に眼鏡をかけた美丈夫も席についていた。

 

女の方から話を切り出す。

 

グローザ

「エピタフ、あの男と言い、やはり魔物たちの動きが、あの青年に見切られているように思えるのだけれど」

 

そんなときであった。

 

キティ

「ネェネェキイタ?」

チックス

「ウン!ダイブオヨビゴシダネ~♪ネッ♪」

ドンキー

「❲カイリョクノマショウ❳モコノテイドミタイネ...ソウデショ?」

パピー

「ソーダネ...」

 

四体の人形が、三人の回りを飛び回る。キティと呼ばれたネコ、チックスと呼ばれたニワトリ、ドンキーと呼ばれたロバ、そしてパピーと呼ばれた犬の人形だった。

グローザが追っ払いながら文句をつける。

 

グローザ

「何よこのカトンボは!」

ジェクト

「部下の無礼をお許しください。グローザ興」

 

そこにいたのは、背が高く真っ黒な燕尾服姿の青年で、いかにも絵に書いたような執事のようだった。

さらにその傍らの人物は、青年の背よりもだいぶ低く、キャスケットを被り、マフラーを巻いていてその素顔は分かりにくく、ボロボロのマントが体も隠していた。そして不意にマントの中から出したその手には、マリオネットを操る、十字に組まれた木の棒。それを軽く動かし、人形を自身のところへ戻した。

道化は待っていたかのように、写真を手に取り、青年を紹介する。

 

エピタフ

トップバッター(・・・・・・・)はコノお方。ジェクトくん」

ジェクト

「お二人とも、ご無沙汰しております」

 

ジェクトと呼ばれたその青年は深々と例をした。続けて、傍らの人物を紹介する。

 

ジェクト

「会合などには連れておりませんでしたね。ドールにございます。失語症で、この手の操り木でその人形を自由自在に操れますほか、彼女の考えも代弁して話しておりますが、思ったことをすぐ話す点は、治す必要があるでしょう。」

グローザ

「『人形(ドール)』ね...空虚な名前だこと」

キティ

「ネェネェアノ顔引ッ掻イテイーイ?」

ジェクト

「ダメですよ、キティ。ちなみにグローザ卿、コードネームですので悪しからず」

グローザ

「...まあいいわ。子どもの戯言なんて気にするまでもないもの」

 

グローザは屈辱そうな表情をしていたが、すぐに切り替え、

 

グローザ

「ところで、我らが王は?どうしていらっしゃるのかしら」

ジェクト

「私が申し上げます。闇の王様は、まだ新しい肉体に抗われ、暫くは出られないとおっしゃっております」

 

またもジェクトだ。するとグローザは不服そうに彼を問い詰める。

 

グローザ

「なぜあなたがそんなことを!?」

 

彼はゆっくりと深呼吸して、

 

ジェクト

「僭越ながら私、闇の王専属の使用人なのでございます」

 

グローザは驚愕する。

 

(つまり、立場的には私たちと同格ということ!? とすると、そこの生意気な子供も、相当な実力があるというの?...いや?そもそもヴァルアスの他に王に近いやつっていたかしら?)

 

そしてジェクトがそれを置いておいて、本題に入る。

 

ジェクト

「それより、エピタフ興、少なからずあと五名、あの仮面の男と同類の力を得るかと」

ヴァルアス

「『陽照らす暦』後半を予定していた計画を早めた方がいい、ということか」

ジェクト

「お察しの通りでございます、ヴァルアス興。早急に準備を始めるべきかと」

 

話がまとまったのを見かね、エピタフがこの集まりを締める。

 

エピタフ

「デは解散といタシまショう」

 

三刃衆も席を立ち、先の見えない闇のなかに歩いて消えていった。そんななか、道家はヴァルアスを呼び止め、彼はそれに不服そうに応じた。

 

エピタフ

「あ、そうソウヴァルアス卿」

ヴァルアス

「なんだ?」

エピタフ

「ステージャが開発中のアレ、もう完成は近いとのことですヨ?」

ヴァルアス

「...わかった...こっちも進めておく...」

エピタフ

「それと...先ほどのグローザ卿のあの態度...これまで集めていた大いなるルーン...あの影響が出ているといっていいかと...」

ヴァルアス

「俺に話してどうする。王の命があらば俺は動くし、貴様にだって傀儡はいくらでもいるだろう?」

エピタフ

「味方うちデの情報ノ共有は重要デショウ?彼も言ッテまシタし」

ヴァルアス

「彼?...フン!まあいい」

 

その奔放さに痺れを切らしたか、ヴァルアスは闇のなかに消えていった...そして入れ替わるように現れたのは...

 

ジェクト

「ずいぶんと嫌われていらっしゃいますね」

エピタフ

「ソウですねェ...アイツノ処遇ハお任せしまス。始末スルモ...搾取すルも...」

ジェクト

「グローザ卿にはまだ利用価値があります。特にあの雷...」

エピタフ

「ナルホド...まだマだ楽シメそうですネェ...期待しテイますヨ?八剣閃...かツテ王の座を巡ッて争っタ、八人の猛将!ギャハハハハハハハ!」

 

* * *

 

変身を解除した勝磨()は、戦いの疲れがきたのか、その場にすとんと腰を下ろした。

 

相良 勝磨

「ところで、何で戦闘中、姿もないのに会話できたんだ?」

巽 静流

「共鳴中の体には、あなたの精神のほかに、シャルロットさんの精神がデータ化されて入っているかんじなの」

相良 勝磨

「要するに、一つの体に二人の精神を同居させてて、そのうちのシャルロットの精神と直接会話してるって感じか」

巽 静流

「それで問題ないと思う」

 

巽さんによる補足が終わった後、座りっぱなしなシャルロットさんは俺の顔をじっくりみたあと、周囲を見渡したあと、同じく腰を下ろし、

 

シャルロット

「さてと…疲れた、肩揉んで」

 

.....え?

 

シャルロット

「んで場所教えるから、基地まで連れてって…」

相良 勝磨

「待った待った!肩は揉むとしても、それくらいは自分でやれ!」

巽 静流

「しかもしれっと重要情報教えようとしないでくださいよ!」

 

そのものぐさ過ぎる注文にしびれを切らした俺は言い返した。

その言葉を受けた彼女はというと、

 

シャルロット

「まあいいじゃんいいじゃん!なんかぶっつけ本番で共鳴接続できたし?どのみち組織入ることになるわけだし」

相良 勝磨

「待て待て待て!いろいろ話が早過ぎるっての!ってか組織ってのも何なの!?さっきといいシャルさん、あんたゲーム同様クソニートだったってか!でもって、冒頭で出した素敵でかっこいい俺のイメージは…」

シャルロット

「仕事ってのは、本音と建前を使い分けるもんでしょ?ふつー。てか『やっぱり』ってなんだよ!まあいいけど」

相良 勝磨

「いいのかよ…」

シャルロット

「ま、そーゆーわけだし、昔のよしみってことで、お互いよろしくね~。あ、あたしのことはシャルでいいから」

 

思い出したはいいけど、彼女の境遇に疑問を感じたので聞いてみた。

 

相良 勝磨

「一応聞くけど、お前、元・御子様…なんだよな?」

シャルロット

「そうだけど、昔から好き勝手したいから利用してるだけの立場だし」

 

はい来たー!ゲーム同様のニート精神丸出しー!ある程度耐性があったとはいえなかなかつき合いにくい...そして矢継ぎ早に次の注文が来た。

 

シャルロット

「それじゃ、夕飯の支度ね。料理は、ビーフのワインソテーとシチューと、旬の果物を使ったフルーツパフェ。基本、肉とスイーツはセットで!あたし部屋でごろごろすっからおばちゃんにたのんどいて~」

相良 勝磨

「えー加減にせえ!」

巽 静流

「はあ、この性格と食費モンスターっぷりさえ無ければ...」

 

色々と情報を持っている巽さんもこれには呆れているらしい...

 

ー ー ー

 

 

その校舎の影から、二人をみているシャナオウ。その背後には、倒れている生徒と傍らにいた、仮面の青年、ゲドー。

 

ゲドー

「魔物の反応なし。(ルーター)も破壊した。シャナオウ、そっちの二人は?」

シャナオウ

「捻りなく喧嘩にビジーなり…」

 

仮面の青年はこの状況を見かねたのだろうか、

 

ゲドー

「わかった。シャナオウ、戻って報告を。俺はこのまま監視を続ける」

シャナオウ

「了解アセント!」

 

さっきまで彼らを監視していたシャナオウは影のごとく飛び去った。

 

ゲドー

「予言の通りになるとしたら...あと5人...戦わせるわけにはいかない...」 




結局、シャルのものぐさモード、ゲドーたちにもバレちゃってます。(笑)

ってか、いきなり闇サイドにも新キャラですよ!
ってか闇の王と同格だってよジェクトさん
そして、ドールのあの人形たちを演じ分けてる東山さんが眼と耳に浮かびます...(笑)


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Stage.02 Orion part1

story2-1 戦いの翌朝

 

朝七時。相良勝磨()、起床。『(とこ)』ではなく『(ゆか)』から起きると書いて起床。

 

しかし、改めて考えると大変なことに巻き込まれてしまった...シャルロットと再会して、神気共鳴(コンバート)の力を得て、魔物をやっつけて...んでシャルさんがいろいろゲーム通りだったのがわかって...それで、なんやかんやあって巽さんに帰るよう言われて...寮のドア開けて...そのまま床で寝た...変な寝違えと、着ていた制服のシワがあった。

とりあえずおなかも空いたので朝飯をすませる。

そういえば、としわの寄ったズボンから昨日巽さんからひったくったままのスマホを取り出す。左手には焼き付いた剣の痣。あの戦いも、あの再会も、あの魔物もみんな、夢なんかじゃない。現実なんだ...

小説やラノベではよくある話だが、当事者になってみると思いのほか気は乗らない。

ファンタジーの世界に行ってみたい、現実よりゲームの世界の方が気楽だ、そんなこと考える奴っていうのは、どうもそんな世界の良い面だけしか享受していないからなんだな…そんな実感が不意に沸いてしまった。

でも...もしこの力で、世界を変えられたら...よし!

 

相良 勝磨

共鳴(コンバート)始動(スタート)!...あれ?」

 

昨日みたいにはいかない。案の定というか、シャルロットがいないと変身できないらしい。

というか...俺、こんな朝っぱらから恥ずかしいこと言った...俺は....マギーとは...違う...!

 

ー ー ー

 

真木 逸己

「っへぶしっ!...んあ?」

 

真木逸己くしゃみで目が覚める。なんか締まらない起床である。目覚ましを見る...朝の6時...あと一時間...

 

ー ー ー

 

剣の痣は幸い手の甲にあったので、できるだけポケットに突っ込むことにして、今日も今日とで校門をくぐる。昨日あんなに激しく戦ったというのに、その痕跡は跡形もなく消えている。マジでか!?

教室。いつになくクラスが揃うのが早い。そして各々がみんな、新聞の号外の話で持ちきりだった。周りのクラスメイトの記事をちらと覗きこんだ俺は一瞬ドキッとした。というのも、その号外の内容が、新たな冒険者が学校に侵入した魔物を撃破したことであったからだ。学校に持ってきていたのを覗き込むと、思いの外記事の内容が正確で、添えられた写真には、その新たな冒険家が載っかっている。

 

シャルロットとコンバートした俺当人だ。

 

昨日あの周囲に人がいなかったはずだが、かなり近いアングルで撮影されている。顔は分からなかったのでそこは助かった。しかし、どこから撮られたのだろうか。そんな雰囲気をよそに、HRに入った。

 

山ノ下先生

「放課後、すぐに一階の職員室に来てくれ」

 

担任の山ノ下先生からそう呼び出された。何の用だろうか。宿題とかも出しているし、今のところ検討もつかない。かといってボイコットするわけにもいかないので顔を出すことにした。

 

* * *

 

んで放課後!いいね!この三分○ッキングスタイル!

 

山ノ下先生

「おっ、来たな。お前に会って欲しい人がいるんだ。ついてきてくれ」

 

まだいまいち状況を飲み込めない。が、先生にくっついていくことにした。

職員室隣の倉庫の奥。先生が壁を少し探ると、カチ、という音と共に棚の一つが、西洋扉のごとく回転し、金庫みたいなものものしい扉が現れたかと思えば、その横のパネル、暗証番号式のドアロックのボタンを、軽快に押していく。

その1から0までのボタンの横に、カードリーダーもある。こっちだけの方が、ロックが固い気がするのは俺だけだろうか。

見た目に違わず、重い音を立ててドアが開く。目に入ってきたのは閉鎖空間、いやエレベーターだ。先生に促されたので取り敢えず乗る。

 

巽 静流

「先生」

山ノ下先生

「お!巽か!んじゃこっから先は任せて良いな」

 

巽さんもあとから乗ってきた。

 

巽 静流

「はい。ここからは大丈夫です」

山ノ下先生

「OK!んじゃそういうことで!」

相良 勝磨

「はい?」

 

ドアが閉まり、エレベーターが動き出した。巽さんと二人っきり。昨日について話すなら、絶好の機会だろう。

 

相良 勝磨

「巽さん、昨日いろいろあって聞けなかったけど、スマホのことや神気共鳴(コンバート)のこと、あの通信機のこと...巽さんって一体何者なのさ?ああ、そうだ、このスマホ、借りっぱなしで持って帰っちゃってて。返すよ、これ」

巽 静流

「...昨日も見たと思うけど、そのスマホ、私にはうまく使えないから、いざって時とかには使える人が持ってた方がいいって。そのまま持ってて良いよ。あと、私が何者なのかっていうのは、多分すぐにわかる。もうすぐ着くよ」

相良 勝磨

「...」

 

巽さんがそう言い終わった直後、本当に到着した。

エレベーターから汚れ一つない綺麗な廊下に出る。さっきのエレベーターといい、まるで秘密基地だ。

廊下を抜けると、広い部屋に出ると、いきなり入ってきた光景に釘付けになった。 

前にはでかいモニターが3つ。その一つには、昨日の戦いが映っている。 

あとの二つも、戦闘記録のようだが、そこにいるのは、黒い鎧、というよりは機械的な装甲に近いものをまとった、長い白髪を結んだ、赤鬼の仮面の男だった。

 

その戦闘は、二つとも、昨日と比べてかなり大規模で、燃え盛る戦場に、その戦士が立ち尽くしている。壮烈な光景だった。

さらに片方は、女性だろうか、炎の奥から誰かを抱えて歩いているようにも見える。ただ、夜の暗さと炎の逆光で顔まではよく見えなかったが、どこかで見かけたような...

モニターに沿う形で長机が二つ並行に並び、その上にパソコンがずらりと並び、ヘッドセットを着けた人達が、キーボードを操作している。

マンガとかで見るような指令室のイメージと合致していた。 

しばらくその光景にあっけにとられ、立ち尽くしていたが、人の気配を感じて横を向いて驚いた。

 

アレックス

「巽、御苦労だった。あとは私が説明しよう。そして...相良勝磨くん...だね?」

 

昨日通信機越しに聞いた、低く落ち着いた声(通信機などの性質上正確にはちがうが)。そこには、背の高く、薄い金髪の髪をオールバックにしてまとめ、黒い軍服を着ている男性と、シャルロットが立っていた。

 

相良 勝磨

「はい..そうですけど...」

アレックス

「私はアレックス・B・ジョンソン。秘密組織Orionの総司令だ。よろしく」

 

と握手を求められた。突然入ってきた片仮名の羅列に戸惑いながらもなんとか理解した。この人こそ、先生の言っていた、『会ってほしい人』であるのだ。

それがわかったので、前に出された、がっしりした手を握り返し、

 

相良 勝磨

「えっと、ジョンソン司令...ですね。昨日ぶりです」

アレックス

「アレックスでいいよ。まず昨日の件について、礼を言わせてくれ」

シャルロット

「昨日は助かりました...ですけど...」

 

と言いかけて押しとどまった。やっぱりここでは御子モードらしい。

 

事実、俺が来なかったら、事態の収束が遅れていた。でも確かに、もともといち生徒である俺は避難するべきではあった。

 

相良 勝磨

「...そこに関してはすんませんでした!なんていうか...その...あん時はほっとけなくて...」

 

シャルさんはいきなり謝罪を返され、向こうもそれとなく先手を打たれたようで、どうも反応に困っていた。いくらか沈黙が続いたあと、少し間をあけてシャルロットが切り出した

 

シャルロット

「...あくまで昨日は、運が良かった...」

相良 勝磨

「...え?」

シャルロット

「怪我の功名というか、なんというか...昨日勇敢に戦ったあなたに救われた人も多かったはずです。ここでの再会も何かの縁。改めて、よろしくお願いしますね!」

 

また握手を求められた。さっきした司令との握手とはまた意味合いが全く違う。少し変な気分がしたが、それを握り返した。か弱さを感じるきれいな手だった。そして...

 

シャルロット

「あたしもこれからショーマって呼ぶから。昨日のあれはここじゃ内緒だから。つーこって!」

 

と耳打ちされた...昔のよしみもあるのか打ち解けた...でいいことにしておこう...

 

相良 勝磨

「...んじゃ、改めて、よろしく!」

メルディオ

「雨降ってなんとやら、ですね。よかったよかった」

 

口元をニマニマ、常に目を閉じた長く白い髪を垂らし、狐のような耳が頭にぴょこんと生えた男が、二人の関係が良くなったのを見るや、おっとりとかつねっとりと呟いた。痩せ気味な姿だが声を聞けばすぐ男だとわかった。

 

メルディオ

「申し遅れましたね、私、メルディオ・ファウンデーションCEO、メルディオ・ホワイトと申します」

 

と名刺を出された。 

 

巽 静流

「メルディオさんは、この組織だけじゃなく、学校や街の運営にも資金援助をしてくれてるの」

 

巽さんが補足しながら戻ってきた。

 

巽 静流

「グラウンド、きれいだったでしょ?毎回の戦闘の後始末の人材派遣と出資もしてくれてる」

メルディオ

「ありゃ?全部言われちゃいましたね...それでは私はこの辺で。あとは司令にお任せします」

 

メルディオさんが話を終えたの見て、司令が本題を切り出した。 

 

アレックス

「単刀直入に言おう。この組織に加入してほしいのだ。共鳴者(デヴァイサー)の一人として」




メルディオさんのcvは故・藤原啓治さんを予定していたんです...上げる前に亡くなるとは思いませんで...いち声優オタクとしてご冥福をお祈りいたします...


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Stage.02 Orion part2

story.2-2 これがOrion、神気共鳴(コンバート)

 

アレックス

「今日君を呼んだのは他でもない。この組織に参加してほしいのだ。共鳴者(デヴァイサー)の一人として」

相良 勝磨

「はあ...」

アレックス

「では、この組織の概要から説明しよう。Orion。私たちの基本行動目的は3つ。『周辺地域の民間人と学生たちの保護』と『人類に仇をなす存在の根絶』」

 

学園が全寮制なのは、ここ周辺で魔物が現れた際に、この組織に守ってもらうのが相対的に安全で手っ取り早いと組織側が進言したことが背景にあり、この学園都市とは様々な面から切っても切れない関係にあるのだ。

もちろん学生寮の建設費もメルディオ・ファウンデーションの提供だ。

話を聞いて一つ思ったのだが、はっきり言ってこの会社、羽振りが良すぎる。株取引でもやっているのだろうか。

 

アレックス

「ところでシャル、ゲドーの報告によると昨日の魔物はただの野良が迷い混んだのではなく、『(ルーター)』によって変質したソウルを流し込まれた、共鳴種(インバウンド・タイプ)だった」

 

ここでシャルロットはピンときたような顔をして

 

シャルロット

「どうりで...でも一日に二度も現れるだなんて…」

 

やっぱり俺が周りの話についていけていないので、司令に質問した。

『壺』というのは、その周囲の大気中のソウル、生きとし生けるものすべてが持つ命のエネルギーを変質させる、いわば変換装置であり、その特殊なソウルが特殊な波になって魔物に影響を与える、という代物らしい。見た目はゲームでの「瘴気の壺」そのものだ。

その魔物は、ステータスなどが強化され、冒険家たちでも太刀打ちできるものではなくなるほか、時折特異な能力を持つこともあるらしい。攻撃が通らなくなるレベルのバフなんて、ゲームではかからなかった。せめて「攻撃力アップ」「防御力アップ」みたいな単純なものだった。 

それを区別して、彼らは共鳴種(インバウンド・タイプ)と呼んでいるようで、シャルの反応から察するにこれまでは一日に二度現れることはなかったようだ。とすると、昨日はもう一回魔物が出たということか? 

 

アレックス

「その冒険家でも太刀打ちできない共鳴種に対抗する手段こそが、昨日君が行った『共鳴接続(コンバート)』。それができる人間は、私たちにとても貴重なのだ」

相良 勝磨

「えーっと...その、『壺』そのものには道具や兵器は通るのでは?先にそれを壊せば、強化自体は収まるのでは?それこそ、『瘴気の壺』みたいな...」

シャナオウ

「それは不可能ビッグエラー!」

ゲドー

「残念ながらあれは魔物だけでなく、変質したソウルを制御する端末らしくてな」

 

なんかようわからん言語とともに、さっき俺が通ってきた廊下から、赤鬼の仮面をつけた白い髪を結び、O学園の制服のブレザーを羽織った男と、機械的なボディを輝かせる黒い短髪に赤い目をした青年が現れた。 

 

シャナオウ

「以前、それをトライしオブザーブ。が、デリートしたしたそのモーメント、残りの魔物がエクスプロード!変質したソウルにより周辺の大気がポルートされ...」

相良 勝磨

「待った待った!翻訳が追いつかない!」

ゲドー

「要するに魔物を残して壺を破壊したら、魔物が爆発。それによる被害がでるだけでなく、変質したソウルに大気が汚染される。吸い込んだり、接触するだけでも生物の細胞に悪影響を及ぼす。この学園都市にも数ヶ所閉鎖された区域があるだろう?強力なものなら、総合的被害はまさしく核にも匹敵しよう。アレックス、哨戒任務の報告書だ」

アレックス

「色々とすまない。彼はゲドー。君と同じく接続者(デヴァイサー)だ。あっちはシャナオウ。見ればわかるが冒険家だ」

シャナオウ

「よろしく頼む」

相良 勝磨

「あ...ふつうのペースで喋れるのね...よろしく...」

アレックス

「ゲドー、左手を」

ゲドー

「...フン!」

 

仮面の青年は司令に書類を渡したあと、左手の手袋をはずして手の甲を見せた。黒に縁取られた黄色の拳の痣だ。俺の剣の痣とは色も形も異なっている。

 

手袋をもどした彼は俺を一瞥し、

 

ゲドー

「昨日の件については感謝する...が...決意の足らないやつはここにはいらない」

相良 勝磨

「!」

ゲドー

「いくぞシャナオウ。休息はとれるうちにとっておけ」

相良 勝磨

「...決意が足らないって言うけど、昨日はシャルさんも巽さんも死にそうだった。なのにあんたはどこにいたんだ!神気共鳴の力があったなら、まずはこの二人を助けるべきだろ!あんただって人のこと言えないじゃ...」

???

「相良くん!」

 

聞き覚えのある、つららのような冷たい声が俺に刺さる。そして俺のところに早足で詰め寄る。佐野なでしこ、彼女もクラスメイトだ。 

 

佐野 なでしこ

「赤鬼さんはすぐにそっちには向かいたかった。でも、魔物に別働隊がいた。壺もそちらにあったし、なにより一般市民の避難も完了してなかった!何も知らないくせして大口たたかないで」

ゲドー

「佐野、もういい」

佐野 なでしこ

「でも...」

ゲドー

「活発化した敵の動きに対応できなかった()の落ち度だ。次があっただけ俺も幸運だった。もどるぞ、シャナオウ」

 

そうしてゲドーとシャナオウは指令室をあとにした。

 

相良 勝磨

「...」

アレックス

「ああいうなりだが、その意志も、実力も本物だ。確実に頼りになる。さて、話を続けたいが、相良くん、なにか質問はあるかな?」

相良 勝磨

「えーっと...あー...これって言っちゃいけない感じですよね...ゲームというか...」

アレックス

「いろんなものが妙にゲームに酷似している...ということだろう?一応ここにいる全員がそれについては知っている。まだ言っていない第三の目的も含めて、こっちで話そう。他はそれぞれ持ち場に。警戒は怠るな」

 

ー ー ー

 

司令に連れられ指令室奥のエレベーターからさらに下に降りていく。その先の廊下を抜けると、そこには、青白く輝く水晶のような物体が、宙に浮いていた。

 

相良 勝磨

「これって...ルーン?」

アレックス

「やはり知っているみたいだな。その通り。といってもこのルーンに厳密な名前は付けられないんだ」

 

オーラ...いや、白猫準拠でソウルというべきか、それがなんとなく清くて、荘重なのだ。まさしく強大な力を秘めたシロモノであることはわかった。

 

相良 勝磨

「これを守るのが、第三の目的...でもゲームとそのままなのとこのルーン、一体どんな関係が?」

アレックス

「このルーンには名前が付けられない、と言っただろう?これは他のものとは違って、複数の、全く別ベクトルの能力を持っているんだ。」

 

まず一つめの力。昨日もマギーが話していた通り、この街には、魔物を防ぐ壁がない。その役割を担うのが、『守護』の力で、いわばバリアを張ってくれている。それで外からの魔物が寄りつかないのだ。

 

二つめ。二人の人間のソウルを、害無く変換・統合・共鳴させ、さらにそれと逆の行程を行える。

ただ、この力の行使には条件があり、「こちら側」の思春期の人間と、「あちら側」の強いソウルを持つ者。ソウルの相乗効果で肉体の力を引き出しつつ、冒険家の力を扱うことができるらしい。

ただ、冒険家の能力を扱うのが「こちら側」の人間であるため相応の訓練や知識が必要である、巽さんの一件から適する適さないが存在する、など、問題点も多いようだ。

 

そして3つめ。このルーン、直接脳にビジョンを送って、異世界の観測や予言を可能としているらしい。異世界というワードを真面目な会話で聞いてしまうとは思わなかったが、俺たちの世界の他にも、『白猫プロジェクトの世界』といういわば異世界が存在している。このルーンのビジョンを元に、異世界で起こった事象、出来事をシナリオとし、神気共鳴を扱うための訓練プログラムを思春期の若者に親しみやすい形に落とし込んだものがゲームの「白猫プロジェクト」だったのである。

 

相良 勝磨

「すっさまじい謎が解けた...あれ?ちょっと待ってください。遅くなったんですが、昨日の魔物は...まさか...!」

アレックス

「そう...君もゲームでよく知っているアイツらが元凶で間違いないだろう...」

相良 勝磨

「闇...だってのかよ...」

 

闇。ゲームでの白猫において、主な敵となる勢力だ。神出鬼没。ストーリー本編の他にも、ゲーム内イベントなどでも直接闘うこともあるほかに、そうでなくても何かしら裏で糸を引いていることも多い。

 

まさかそれもゲーム通りだなんて...もう脚の毛が逆立って痛いくらいだ...あんなヤツらからこれを守る...闇の驚異をゲームで目の当たりにしてきただけに、一気に実感が湧かなくなってしまった。

 

そんなときに警報だ。昨日に続いて、また現れた!

 

相良 勝磨

「俺たちが行きます!いくぞシャル!」

シャルロット

「わかりました!」

 

あ、やっぱり御子モードなのね...

 

ポケットからスマホを取りだし昨日と同じようにシャルロットをスマホに取り込み、グラウンドまで急行する。

 

相良 勝磨

神気共鳴(しんききょうめい)共鳴(コンバート)始動(スタート)!」

 

俺はローブと輝く炎に包まれる。その火球がグラウンドに触れると、巨大な火柱となって、天を焦がす!




ゲームの白猫のこの立ち位置は結構考えました(笑)

そして、白猫の初期案は、アバターの主人公が衣装を着て戦うという、神気共鳴に近いコンセプトだったようで、そこから掘り下げて設定を考えました。


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Stage.02 Orion part.3

quest.2-1  痛みを知る

 

アレックスから通信。

 

アレックス

『ゲドー。今回は...』

ゲドー

「待機とか言わないだろうな?昨日の件もある。それだったらふつうに無視るぞ」

アレックス

『うーん...じゃあ神気共鳴して戦況の観察...ヤバそうだったら交代(キャラチェンジ)。それなら文句ないだろう?』

ゲドー

「そんな悠長な真似をしてる場合があるか!」

アレックス

『彼を戦力として見定める...ということなら?実戦でなければわからないことも多いぞ?退役軍人の俺が言うんだ、間違いない』

ゲドー

「...了解した...」

 

校内での避難勧告ももう済んでいるらしかった。

 

「んじゃスタートコールいきますか」

『勇者よ、私に続きなさい!』

「切り替えのラインがわかんないな~!いいね!(サムズアップ)」

 

MISSION START

 

いつの間にか耳に着いていた、赤い石が付いたイヤホンマイクから巽さんの声が聞こえた。

 

巽 静流

『さっき聞いた通り。魔物をすべての掃討と壺の破壊を。魔物と壺の位置はナビゲーションするから』

相良 勝磨

「わかった!あ!なんか、なし崩し的に俺が変身しちゃった!たしか本当は...」

巽 静流

『昨日のこともあって、オペレーターに転向したの...それになんだかんだで、相良くん強いから』

相良 勝磨

「...!んじゃ、期待には答えなきゃな!」

 

目の前にいるのは剣と丸盾を装備した民族的な木の人形の魔物、マッド・パペット三体とと、赤い毛皮と大きな赤と白の尻尾。白猫を知る者ならお馴染み、星たぬきが六体。

 

フィーリングで右手を開いて出したレーダーの矢印。これが巽さんの言うナビゲートなのだろう。

 

しかしそれが指し示す先は、赤い光の壁に阻まれている。この魔物どもを倒さない限りは、この壁は消えないのだ。ゲームにもそんなシステムがあったなぁ。

 

魔物逹が俺を見るや向かってきた。

星たぬきが自慢の尻尾を振り回す。

 

相良 勝磨

「全部倒さなきゃダメなんだよな...あんまり斬りたくないな...」

 

攻撃があたる寸前に前転して回避、体が赤く輝く!

 

相良 勝磨

「ごめんね!カウンター!」

 

攻撃してきた一体と周りにいた星たぬき三体を巻き込んで、光の刃で凪ぎ払う。

 

次に一体のマッド・パペットが右手の剣を振りかぶって斬りつける。それを肩で透かし、バランスが崩れたところを反撃。こちらも一撃で仕留めた。

 

残りの二体が後ろから同時に斬りつけてきた!どうにかそれを剣で受け止める。壺で強化された故か、すごい力だ。

 

相良 勝磨

「それが…どうした!」

 

押し返してからの交差斬り!魔物も全滅したことで、光の壁が消えた。青い矢印が示す先へと走る。そこを抜けると、もう学園の敷地の外に出ていた。

 

だが、そこにあったのは、朝通学してきたあの住宅街ではない。太さや車線は変わらないが、道路の歩道と車道がかくかくと曲がり、住宅もそれに合わせて移動している。

 

しかも、今朝見ることのなかった鉄製のゲートが、蛇行した道路の先にある、青い矢印が示している道を塞いでいる。

 

相良 勝磨

「これどうなってんの?」

田村 杏子

『壺の力が強えーのか、空間がねじ曲がってるっぽい。気をつけて!』

相良 勝磨

「その声...B組の田村(たむら)さんか!えーっと紹介は...あとでいい?」

田村 杏子

『ヒドイ!ゾンザイ!ミソサザイ!』

相良 勝磨

「いやなんで最後鳥の名前出したの!悪かったって!」

 

田村(たむら) 杏子(あんず)。隣のクラス。陰キャではあるものの対人スキルの高さと、トレードマークの大きめの丸眼鏡、即興イラストに定評があるとか。まさか彼女もオペレーターだったとは...

 

シャルロット

『話を戻します。ご存じの通り、ゲートを解放するスイッチがどこかにあるはずです!』

巽 静流

『マップ情報を更新したから、それを頼りに!魔物の掃討もお願いします』

 

道路の真ん中を疾走するなか、いきなり挟み撃ちにされる形で狂い人形が前後に三体ずつ、計六体があらわれ、先への道と退路が絶たれる。後ろの魔物が若干近い。

 

相良 勝磨

「シャル!ちょっと早いがあれ使うぞ!」

 

後ろに立っていた魔物の背後を取った。前にいた敵もむかってきている。

 

相良&シャルロット

「『アクション!』」

 

炎をまとった剣が、敵をまとめて一閃する!

 

シャルロット

『受けよ!』

相良 勝磨

燎焔斬(りょうえんざん)!」

 

昨日もそうだったけど、やっぱりすごいなアクションスキル!

 

道路を道なりに進むと、また魔物があらわれた。

 

ハンマーウッホ。初めてあらわれた冒険者に討ち取られた魔物だ。そいつが一頭、立ち塞がっている。

 

しかし、その向こうに、攻撃して起動するタイプのスイッチがあるのを、俺は見逃さなかった。どうやらデザインもそのまま再現されていたようだ。

 

魔物が走り込み、手に持った巨大な木槌で叩きつける。が、そんな遅い攻撃を、俺が食らうはずもない。敢えてギリギリでかわしてからのカウンタースラッシュで、巨大なハンマーウッホを一撃でKOさせた。

 

その向こうにあったゲートのスイッチを攻撃して起動させ、道を塞いでいたゲートを解放して先に進もうとしたそのとき…

 

シャルロット

『ショーマ、後ろ!』

 

スイッチを起動したときに、背後に現れていたマッド・パペットが放つ三連撃の内、二発ほど背に受けてしまう。 

 

何とか魔物は斬り伏せたが、共鳴接続した体は痛覚がそのまま引き継がれているのか、ひどい痛みに俺は思わず膝を突いた。 

 

相良 勝磨

「うう...剣で斬られるってここまで痛いのな…」

 

ー ー ー

 

ゲドー

「最初はずいぶんよかったが、あの程度で膝をつくか...俺が出よう...一分とかからん」

アレックス

『いや、そうとも言えないみたいだぞ?』

ゲドー

「なんだと?」

 

ー ー ー

 

斬られた痛みに膝をつく。改めてこれはゲームではない戦いなのだと思い知る。

 

相良 勝磨

「シャル、大丈夫か?」

シャルロット

『気にすんな!よくあるこった!』

 

シャルも痛いのか...動いているのが自分であるだけに、変な感覚ではあるけど、俺の中には確かにシャルさんはいる...

 

そしてなにより、こういう怪我も日常茶飯事...唐突にではあるが、シャルとの考え方の違いを思い知る。

 

俺が学園に来る前も、シャルさんは膝をつくことはなかった。あのときはただそれをかっこいいと、英雄であると受け取っていたけど、いくらかの覚悟はしてきているんだろうか...(まあ、シャルさんだから、してないかもわかんないけど...)

 

だったら、俺はこんなところでへこたれてちゃやっていけない!やっぱりまだ、俺には決意がまだ足らなかった。シャルのためにも、学校や街のみんなのためにも、もう膝はつけない!

 

相良 勝磨

「ごめんシャル!痛かっただろ?それに、やっぱりゲドーは間違ってなかった!...これからは基本ノー被弾、あとはちゃっちゃと早期撃破でいく!シャルさん、力を貸してくれ!」

シャルロット

『...っしゃあ!とっととおわらせっぞ!』

 

少しシャルは唖然としていたが、俺の言葉に火がついたらしい。ものぐさな本性をさらに焼き捨てた、アツいシャルがそこにいた。まさしく共鳴するその意思に呼応するかのように、背中の傷も癒えていた。

 

ー ー ー

 

シャナオウ

『ダメージがコンスタントにリカバーした!』

ゲドー

「なるほど…自動回復効果(リジェネ)か」

 

ー ー ー

 

巽 静流

「赤鬼さん、自動回復効果(リジェネ)って…」

ゲドー

『ゲドーだ!相良(やつ)の周りの緑色のオーラ、あれが出ている限り...』

田村 杏子

「しばらく自身のHPがちょこちょこ回復するってやつ!さっき使った燎焔斬の追加効果っぽい!」

シャナオウ

『レクチャーをかっさらわれてしまったな...』

 

ー ー ー 

 

BOSS APPEARS

 

ミノタウロス があらわれた!

マッド・パペット があらわれた!×4

星たぬき があらわれた!×6 

 

相良 勝磨

「あ、なんか省略されてるけどいっぱいいる...」

シャルロット

『でも、今のウチらなら...』

相良 勝磨

「当然!」

 

剣を構えたそのとき、右目が赤く光り、熱く激しい赤き破壊の炎が、〈栄光の一閃(グローリーフェンサー)〉に宿る!

 

ー ー ー  

 

田村 杏子

「あれコネクトスキルじゃん!剣ジョブにさらに炎系かよ主人公しまくってんなぁおい!」

ゲドー

『偶然だな。『二つの心を一体とする』。それがどれだけ難しいかは俺達がよく知っている』

 

ー ー ー

 

相良 勝磨

「剣に炎が…!このまま!」

 

炎の剣が、敵を斬ると同時に焼き尽くす。強力な鋼と光焔の刃が、次々と魔物を打ち倒して行く。

星たぬき、マッド・パペットすべてを瞬く間に消し炭にした。

 

あとは昨日も対峙したミノタウロス...!

 

相良 勝磨

「ラスイチまで気張っていくぜ!」

相良&シャルロット

「『アクション!』」

シャルロット

『受けよ!この炎刃の閃き!』 

 

瞬く間に懐へ飛び込み、昨日やさっきとは違う、赤く燃ゆる破壊の炎を纏った剣で切り裂く!

 

相良 勝磨

「燎焔斬・炎昇(えんじょう)!」

 

輝く炎の高熱と、風をも裂く剣の鋭さが、敵を討ち倒す!

 

ー ー ー 

 

その瞬間、司令は彼にあるものを見いだしていた。 

 

アレックス

「戦力テストとしては...文句はないだろ?『ラセツ』」

シャナオウ

『バージョンアップ目覚ましいな。俺としても心強いと思うが?』

ゲドー

『...帰投する...』

田村 杏子

「あ、そういやあの二人の作戦時名(コードネーム)決めてないですよね?どうしましょっか?」

アレックス

「爆炎と共に現れ、熱く、激しき焔の英雄。うん、いいものを思い付いたぞ!」

 

ー ー ー

 

VICTORY

 

シャルロット

『私たちの勝利です!』

相良 勝磨

「んー...いいね!」



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Stage.02 Orion part.4

story2-3 Braze 

 

相良 勝磨

「巽さん、残りの魔物は?」

巽 静流

『反応なし。逃亡した魔物も確認されてないから、ひととおり、片付いたみたい。あとは(ルーター)を』 

「あった、これだな!」

 

目の前を壺を叩き割った。

 

相良 勝磨

「任務完了!」

アレックス

『市街地に出したとは言え、被害は最小限!よくやった、作戦時名(コードネーム)、ブレイズ!」』

相良 勝磨

「なんか無理やり感ありません?それ?言いたかっただけなんじゃ...」

アレックス

『あ!バレた?鋭いねぇ~』

 

司令の謎テンションはともかく、気づけば市街地も元に戻り、そこに続々と人が集まってきた。

 

「お前…今日の号外の!」

「学生くらいかしら...」

「その剣かっこいい!」

 

老若男女問わず、いろんな人に囲まれてしまった...のだが...

 

「おにいちゃん、ありがとう!」

 

すぐ近くにいた小さい子供の、あどけない言葉をかわぎりに、周囲の人々も、拍手と共に、「ありがとう」が溢れかえった。

 

シャルロット

『良かったじゃん!』

 

と茶化されつつ、基地に戻ったのだった。

 

ー ー ー

 

彼の対応の始終を見ていたゲドー()とシャナオウ、長居する必要もないので戻ることにした。不服そうに、といわれても、はっきり否定はできない。

 

廊下を歩くなか、シャナオウは赤鬼に問う。 

 

シャナオウ

『うらやましいか?あいつが』

ゲドー

「バカを言うな。ヒーローという名声のために戦うほど、俺ががめつく見えるか?」

シャナオウ

『それは失敬エラーコード!』

ゲドー

「いや、気にするな。そんな役回り手に余る...なにより、なろうだなんてもう思わん。俺は鬼で十分だ...」

 

廊下には、機械の鎧がきしむ音と、二つの足音だけが響いていた。

 

* * *

 

基地に戻ると、いきなり医務室に回され、腹と背を見せていた。無論作戦後の検診である。

 

???

「ほえ~...バッサリいかれたって聞いたから、大変だーって思ったけど、案外きれいに治るもんなんね~!」

相良 勝磨

「そんなまじまじと見ないで...あ、まだ内部施設とかは覗いてなかったな...」

 

(はら)藍奈(あいな)天真爛漫な医務室スタッフ。聞けば看護士志望らしいから、これくらい元気なのは向いているのかもしれない。俺身体を見るときの手際も良かったので、なかなか先行きが楽しみだ。

 

???

「遅れてごめんなさい。藍ちゃん、彼はどう?」

原 藍奈

「手の付けようどこにもないです!傷痕もない」

??? 

「それ、意味違う...にしてもすごい回復力...ほんとに魔術ってかんじね...」

 

大人~な女性の声に振り向くと...タイツに強調された健康的な脚!そして、何がとは言わないが周囲にもそうそういないであろうその大きさ!...そして白衣!イメージ通りの女医さんが来ちゃったので俺は文字通り生唾を飲んでしまった...

 

原 藍奈

「医務室主任の鷹村(たかむら)八塩(やしお)先生!実は医師免許持ってるバリバリのプロ!...そして...おムネとお尻...いいよね?」

 

うっかり吹きそうになってしまったがなんとか堪える。原さん...心にエロガキを飼っていやがる...手際がいいのはこういうことね...んでそのまま検診は進んで...

 

鷹村 八塩

「はい、おしまい。至って健康体。ゲドーさんもオートスキルで回復して帰ってくるから、あんまり戦闘後の検診は仕事が少なくて楽ね。まあ、実際怪我や病気なんて、誰にもして欲しくないもの」

相良 勝磨

「ごもっとも。あ、オートスキルってやっぱりあるんだ...」

 

ゲームでは、キャラクターごとに3つ、永続的に効果を発揮するオートスキルが存在する。キャラクターによってその内容は違ってくるし、ものによってはHP量などの条件があるものも存在する。シャナオウのオートスキルというと...ここでは、敵撃破時に回復、のことだろう。試せるなら俺もあとで自分のを試してみよう。とそんなときだった。

 

シャナオウ

「動くな!ここで何をしていた!」

???

「あいええええ!シャナオウ!?シャナオウナンデ!?」

ゲドー

「ええい、黙らんか!」

 

という仰々しいシャナオウ、ゲドーの声と、『なんとかリアリティショック』を受けている、やっぱり聞き覚えのある声だった...どうやら基地エレベーターから侵入者が正面突破しに来たらしい。

 

相良 勝磨

「えーっと...俺も行ってきますね...」

鷹村 八塩

「あ、相良くん、まだ言ってなかったと思うけど...」

 

と呼び止められ、顔を寄せられる。香水だろうか、きつすぎない良い香りがする...とか思ってたら小声で耳打ちしてきた。

 

鷹村 八塩

「...仮にこの組織が表沙汰になったとしても、藍ちゃんがここにいることは関係者以外には言わないで。いい?」

相良 勝磨

「はい?ええ、まあ、いいですけど...」

鷹村 八塩

「本当にお願いね。それじゃ、お大事に!」

相良 勝磨

「あ、はい!ありがとうございました!」

原 藍奈

「お疲れさま~!」

 

story.2-4 乱立するSingularity Point

 

途中で巽さんと合流し、エレベーターホールに急行すると、そこにはとある珍客がきて…というよりはお縄についていた。赤鬼とシャナオウも拘束にたちあっている。 

 

真木 逸己

「この縄ほどいて銃も降ろしてくれー!怪しいもんじゃないってばさ~!」

シャナオウ

「観念デバッグなり!」

ゲドー

「よりによってなぜ貴様が...」

 

俺と巽さんはその客の顔を見て二度びっくりした。 

 

相良 勝磨

「マギー!?」

巽 静流

「どうしてこんなところに!?っていうか同じこと昨日も言った気がする...」 

真木 逸己

「お!相良少年&巽っち!取り敢えず、経緯は話すからこの状況何とかしてくんない?」

 

ー ー ー 

 

相良 勝磨

「んで、何でこんなところに?」 

 

二人の説得でなんとかお縄を解いてもらったマギー、ブレザーのポケットから号外を取り出しながら告白する。

 

真木 逸己

「今日の号外...鎧とかは『白猫』のシャルロットだけど、これ相良少年じゃない?まあ憶測の域を出ないから言ってないけど」

相良 勝磨

「...!」

真木 逸己

「んでそこに照らし合わせたかのように、相良少年呼ばれたわけでしょ?気になったんで尾行し(つけ)てみたら、やっぱりビンゴ。ここにシャルロットもいたしね。まあ、山ノ下先生(ティー)に出くわしたときは言い訳考えるの大変だったけど」

巽 静流

「とはいえ…エレベーターの隠しスイッチは?結構探すのに時間かかるようにしてるけど...」

真木 逸己

「なんか足滑らしたときにカチッと」

相良 勝磨

「ナンバーロックは?10桁はあったろ?」

真木 逸己

「なんかテキトーに押したら開いた!」

相良 勝磨

「いいね!(サムズアップ)」

巽 静流

「いや、よくないでしょ...ナンバーロックの撤廃を打診しなくちゃ...」

シャナオウ

「あな、幸運オーバーフロウ!」

相良 勝磨

「いやあんたはその話し方なんとかなんない?」

ゲドー

「だから...なんで貴様が...」

 

そこに居合わせていたシャルロットたちもビビるしかない強運であった。

 

シャルロット

「...幸運...」

相良 勝磨

「どした?シャルさん」

シャルロット

「ん?あー...やっぱなんでもない!」

相良 勝磨

「いいね!(サムズアップ)」

シャルロット

「いや、いいね要素どこにもねーだろ!」

 

ー ー ー 

 

学校の屋上の縁に、天使のような少女というか、背中に白と黒の羽根が生えてるので、そのまんまな天使が足をぶらぶら、夕日を見ている。高所故、短い金色の髪が、少し風に揺れている。 

 

マール

「いっぱいあの人にラッキーあげたし、きっと喜んでるだろうなー」

ガレア

「こんなところにいたのか、マール」

マール

「あっ、ガレア!」

ガレア

「そうホイホイ使うなとあれほど言ったろう。ブロウはどうした」

 

鋼色をした重厚な鎧を身に付け、彼女と同じ白と黒の翼をで空に浮いていた。長い髪がかなり風に吹かれているがその声は鎧よりも重厚で落ち着き払ったものであった。

 

???

「やー、わりぃわりぃ!俺が頼んだんだわ!よっこいせっと!」

 

屋上のフェンスの上に腰掛けていた、青年がフェンスから屋上床に飛び降りる。

 

一年B組、神崎(かんざき)宗次郎(そうじろう)。たびたびの遅刻や、制服の着崩し等でたびたび生徒指導室に呼び出されている所詮問題児である。よく罰掃除を食らうことから、あだ名は「掃除屋ソウジ」。

 

ガレア

「それにしても、屋上は立ち入り禁止なんだろう?また罰掃除を食らうぞ。ブロウ」

神崎 宗次郎

「別に痛くもかゆくもねぇっての。でもま、確かに長居することもねぇな...帰って飯にしようぜ!」

マール

「はーい!先行ってるねー!」

 

マールは先んじて、学生寮目掛けて飛んでいく。

 

神崎 宗次郎

「なぁ、ガレア」

ガレア

「どうした?」

神崎 宗次郎

「あのスマホ...どうすりゃ手にはいるかねぇ?」

 

ー ー ー

 

冥界。そこは終わりのない深淵...身体を亡くした者たちが、裁きを求める審判の場所。

 

ヴィルフリート

「やはり、妙な死者たちが増えている...ソウルの質が違いすぎるな...あの探査依頼...一度調べる必要があるか...マリアへの土産も考えておくとしよう...」

 

ー ー ー

 

???

「...炎...」

 

相良くんとシャルさんの戦闘を、別室で見たジャスミン()。心傷の明滅。自分の全部を焼いた炎。温もりなど全くない...

 

???

「ジャスミンちゃん?...顔色、悪いよ?」

ジャスミン・師縞

「...ツキミちゃん...ごめん...」

ツキミ

「...おだんご食べる?」

ジャスミン・師縞

「...うん...もらう...ありがと」

 

...あの炎...あいつの意趣返しにもなるか...必ず私が...

 

ツキミ

「...」

 

ー ー ー

 

その夜。校舎屋上では男が二人。ひとりは「闇」の道化師エピタフ。彼が話しかけているのは...

 

エピタフ

「約束はちゃあんと...果たしておりますヨ?デスヨネ?千石(せんごく)了人(りょうと)くん」

千石 了人

「...」




ラストの「乱立するSingularity Point」。エンディングテーマの要領で、石原夏織さんの「Singularity Point」流してみてください。個人的にめっさ合うとは思います。

さてもういろいろおなかいっぱいではないかなと思いますが、次回もお楽しみに!


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登場人物紹介 学園編 Stage02まで (声優敬称略)

非常にキャラクターが多めなため、学園編、Orion編、冒険家編、闇編と四分割します

また、作者のスタンスから、現れる人物すべてを主人公と定めているので、キャラ紹介では主人公というワードを特別使わないことにしてます


私立九井学園高等学校。略して九学とも呼ばれる。この施設を中心に、人、市街地や商店などが集まったことで文字通りの学園都市として存在している。

 

Orionのスポンサーであるメルディオ・ファウンデーションの援助により、魔物の出現から比較的短い期間での学園再開を実現しており、事実上の役所としても機能している。

 

地下にはOrionの秘密基地の他に、「都市に防壁を張っているルーン(仮称)」が存在しており、基地のカムフラージュも兼ねて運用されているとのこと。

 

魔物も比較的学園の近くに現れるが、それはあくまでここが市街地の中心であるために、魔物に探させる際に無駄がないからだろうと推測されている。

 

一年A組

 

相良(さがら) 勝磨(しょうま)

cv 小林 裕介

基本的に彼を中心に物語は進んでいく。

基本的に明るく、「いいね!」と共にサムズアップを決めるのがトレードマーク。ただし、よく乱発するので、たまに適当に思われたりする。

かつてシャルロットに、自身の生活するコミュニティの用心棒を受け持ってもらっていたのだが、その人物との再会から、彼の学生生活は大きく変貌していく。

成り行きでシャルロットと神気共鳴したことからそのままパートナーとなる。彼女の性格に翻弄されつつも、白猫での前知識もあっていくぶんうまいことつきあっている。

 

真木(まぎ) 逸己(いつき)

cv 江口 拓也

剣道部、生徒会を掛け持ちする。

普段は名字の「木」を「義」に訂正し、「真の義をもって、己を逸する男」と称する中二病。ついでに左手に包帯まで巻いてる。あだ名は「マギー」。気になるものにはすぐ首を突っ込みたがるほか、人のお節介をよく焼いたり、気の許せる友人の怠惰を見かねて手刀を入れたりと、その場その場で動きがち。

ちなみに彼も白猫のユーザーだった。

 

また、どんな状況でも眼が死んでいる。相良おして、「わかりやすく言うとハイライトがない」

 

佐野(さの) なでしこ

cv 早見 沙織

PC研究会の一年にしてエース。クラスでは技術の授業の助っ人に回ることもある。が、巽同様に「Orion」としてのもう一つの顔があり、ゲドー(Orion編参照)の専属オペレーターであるが、彼に大して特別な感情を抱いているようにも思える。実際に、ゲドーに疑いを向けた相良に啖呵を切っている。

ゲドーも学生に対して唯一彼女には信頼を置いているようである。

 

ちなみにアニメ化したらキャスティングは絶対譲れないキャラの一人。というかcv早見女氏が前提といっても過言ではないらしい。

 

(たつみ) 静流(しずる)

cv 寿 美菜子

クラスの学級委員。基本的に物静かで、あまり人と接点を持とうとしないが、組織内ではわりと信頼はされている。

コンバートが思春期の人間にしか扱えず、他のメンバーも訳ありなことから、戦闘メンバーに回されたりなど結構というかめちゃくちゃ不憫。当初シャルロットのパートナーも彼女だったが、神気共鳴に不向きであること、相良の登場もあってオペレーターに転向した。

 

玉木(たまき) (かける)

cv 花江 夏樹

クラスの学級委員とバドミントン部を掛け持つ。あだ名は「委員長」。

 

高尾(たかお) 真楠(まくす)

cv 福島 潤

広報委員。マギーなどをたまにおちょくったり、ハッスルしやすい勝磨にも落ち着いた目線から話したりと、わりかし世渡り上手。ただし勉学は下から数えた方が早いとのこと。

 

大輪田(おおわだ) 時雨(しぐれ)

cv 雨宮 天

リケジョ。非常に高いコミュ力を持ち、男女ともに距離感が近い。あと人のノートを覗いて宿題の進捗をバラすなどちょっとデリカシーがない一面も。

 

ー ー ー

 

一年B組

 

田村(たむら) 杏子(あんず)

cv 悠木 碧

丸眼鏡がトレードマーク。美化委員。巽、佐野と同様「Orion」オペレーター。

元引きこもりのネット弁慶で、生活の他に独自のインターネットネットワークの利用目当てで参加したらしい。

陰キャではあれ対人スキルの高さとイラストに定評がある。

 

イメージソースも悠木女氏本人とのこと。

 

ジャスミン・師縞(しじま)

cv 小松 未可子

日本、フランス、フィリピン系のクォーター。褐色の肌をしていて目鼻立ちも良い美少女。

「炎」に対して思うところがあるようで...

 

西園寺(さいおんじ) (ひな)

cv 堀江 由衣

転入生。物語開始時点ではまだ学園には通っていない。

 

cvが原作における「白の王」アイリスと同じだが...?

 

神崎(かんざき) 宗次郎(そうじろう)

cv 村川 梨衣

学年随一のやんちゃ坊主で自他ともに認める人間のクズ。いろいろとやらかす生徒指導室の常連で、名前も絡めて罰掃除をさせられるため『掃除屋ソウジ』なんて呼ばれる。

マール、ガレアと行動をともにしており、「神気共鳴」の力を欲しがっているようだ。

 

cvがカティアと同じですが、れっきとした別キャラ。

りえしょんが男役?と思った方、シンカリオンをどうぞ

 

早乙女 夏弥

cv 鈴村 健一

 

野上 芹花

cv坂本 真綾

 

千石(せんごく) 了人(りょうと)

cv 島崎 信長

学年トップの成績を誇る大天才。なんでこの学校に来たのかと疑問の声が上がるほど。

 

エピタフと関わりがあり、エピタフ側のコネクションの獲得に協力する代わりに、闇側の情報を(嘘か事実かをきっちり考えつつ)手に入れている。ちなみに情報をOrionにリークすることもエピタフから許可されており、そこに関してもエピタフに疑念を抱いている。

 

 

三年A組

 

朝鉦(あさがね) (ごう)

cv石川 界人

年度をまたいで暴力沙汰で停学処分を喰らっており、その間に魔物が出現してしまったため、物語開始時点でも未だに復学できていない。



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登場人物紹介 Orion編 Stage02まで(声優敬称略)

Orion

 

「生活再生と発展を提供する組織」のイニシャルの一部を繋げたものが名前の由来。学園の地下に存在する本部・リゲル基地は勝磨たちの活動拠点にもなっているほか、旧エビス地区にベテルギウス支部を持つ。また、本部には「学守のルーン」が鎮座するスペースが最深部に存在し、その場所にはアレックス、ゲドーなどの上級幹部にしか立ち入りは許されておらず、「学守のルーン」保護が組織の最優先事項となり、魔物も優先的にそちらを狙うようである。

 

アレックス・B・ジョンソン

cv 三宅 健太

Orion総司令。もともとアメリカの退役軍人だったのだが、日本人の人徳と純粋さに触れ、日本に移住。普段は良いおっさんなのだが、青年たちが戦わなければならない事態については重く見ている。戦闘時は高い指揮能力を発揮する。ゲドーの正体を知る一人でもある。

 

ゲドー

cv 江口 拓也

たったひとりのOrion遊撃部隊にして組織の事実上のナンバー2。常に赤い鬼の仮面と背中に付くほどの白い長髪を結んでいる。仮面のモチーフに違わず冷酷な面を持ち、組織に入った相良を目の敵にしているようだ。学生服は着ているようだがその素性は不明。名前の由来はもはや愚問である。

 

共鳴接続しなくてもリアルファイトにおける実力は高い。シャナオウたちとは部下でありながら、戦闘などにおける師であるほか、佐野を『右腕』として専属のサポートにつけている。cvがマギーと同じだが...

 

メルディオ・ホワイト

cv 現時点未定

Orionのスポンサー「メルディオ・ファウンデーション」CEO。長い白髪と狐のような耳を持つ半獣。趣味は人間観察。この人がいないと組織も学校も回らなくなってしまうとのこと。

 

向井(むかい) 浅葱(あさぎ)

cv 細谷 佳正

前線部隊《紫電》隊長。

 

cv細谷佳正とありますが、本編と違って裏切ったりはしません。

 

三日(ミカ) 湯神(ゆがみ) 男鹿(おが) 或斗(あると) 茶戸(さど) 藻黒(もぐろ)

cv (おまかせします)

《紫電》隊員。

 

坂上 蒼

cv 高木 渉

兵器開発班チーフ。

アレックス同様ゲドーの正体を知っており、一人で戦い続ける彼を気遣う発言も。

 

作者おして、味方に欲しかった声その1とのこと。

 

如月 緑

cv 阿澄 佳奈

都市開発班チーフ。

 

味方に欲しかった声その2。「星ひな」の影響とのこと。

 

鷹村 八塩

cv 西田 望見

看護・衛生班チーフ。医師免許を持つバリバリのプロ。女医さんのイメージを体現したかのような人物で、組織内でもファンは多い。

 

原の存在をできるだけ秘匿しようとしているが...

 

 

(はら) 藍奈(あいな)

cv 鈴木 みのり

天真爛漫な看護・衛生班。そして心にエロガキを飼っていてシャワー中の佐野と田村を急襲したこともあるが、実際はどのような苦痛や困難にも真正面から立ち向かおうとする胆力とあきらめの悪さ、熱意を持つ。

 

鷹村からはかなり存在を秘匿されているようだが...

 

 

食堂のおばちゃん

シャルのビーフや、唐揚げ定食など、構成員の胃袋を支える影の大黒柱。何度かその存在は示唆されており、信頼(?)を寄せられているようだ。



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登場人物紹介 冒険家編 Stage02まで(声優敬称略)

〈悪魔の門〉以降、魔物とともに現れた。

人類では今のところ彼らのみが魔物を倒すことができるが、壺に強化されたタイプには歯が立たず、神気共鳴が必要となる。

 

定義的にはゲームでの白猫と同じであるどころか、彼らの存在そのものが白猫とまんまである。そのため勝磨などの白猫のユーザーだったメンバーからは疑問をもたれていたが、実はコロプラが観測した異世界の記録をもとに、神気共鳴が使える若者に親しみやすい形で制作した訓練プログラムが、ゲームの白猫であることが明かされる。

 

もともと、白猫の初期案も、アバターの主人公が衣装を着て戦う、という神気共鳴に近いコンセプトだったが、あえなく変更したという経緯がある。(ちなみに初期案は事実で、ファンブック1に実際に掲載されている)

 

あとなぜか日本語が通じるらしく、それもあってか学園都市にしれっととけ込めている。

 

 

シャルロット・フェリエ

cv 内田 真礼

剣士。勝磨のパートナーで共鳴接続して「ブレイズ」となる。紅と金色のオッドアイの美少女で、「元・光焔の御子」。人々の前では完璧を装うが、その本性は自堕落で、週二の休日(本人はそれでも不服らしいし、実際のところ組織の目的上つねに仕事だし、常に休みとも言える)のほかにも、一日三食のビーフなど、生活の面倒を見てもらうことを条件に協力している。材料の単価的な問題から月の食費の三割は彼女で消えている。

勝磨とは過去に世話をかけていたため、比較的素を出すのが早かった。

 

シャナオウ・H・K・M

cv 福山 潤

武闘家。ゲドーのパートナーにしてゲドーの副官。共鳴接続で「ラセツ」になる。黒い装甲を纏ったアンドロイドで、MINAMOTOの総大将マザーヨリトモの弟。だがその由緒正しい身でありながら、争いを好まない平和主義者。従者探しの旅をしていたところ、武力提携などを条件に現時点での従者とともにOrionに加わっている。ゲドーの格闘術、剣術は彼の教えらしく、彼の正体を知っている数少ない人物。

 

ゼロキス・チェリサージュ

cv 下野 紘

アーチャー。シャナオウの従者(ゼロキス本人は否定)

現在ベンケイとともに出向中。

 

 

ベンケイ・イワトウシ

cv 乃村 健次

武闘家。自称’シャナオウの子’(シャナオウ本人はその旨を聞くと悶絶する)。

現在ゼロキスとともに出向中。

 

 

マール・アスピシャス

cv 種崎 敦美

魔道士。幸運を司る天使。

マギーに幸運を与え遠巻きに組織介入の手助けをした。

茶熊学園でシャルロットとは面識があるが現時点ではそれらくらいしか接点はなし。

 

 

ガレア・アリスイ

cv 津田 健次郎

ランサー。幸運を司る天使。マールとは同僚ではあるが彼女の保護者に近い関係。

早いこと登場したが、マール、そして神崎をたしなめて早々に退散してしまった。

今のところ組織とは接点はないが、マールと同じく茶熊学園でシャルロットとは面識がある。

 

 

ツキミ・ヨゾラ

cv 佐藤 聡美

魔道士。旅のお団子屋さん。

ジャスミンと行動をともにし、彼女の行く末を案じる一面も。

 

 

ヴィルフリート・オルクス

cv 子安 武人

ウォリアー。冥界の帝王。吸血鬼であり永いときの中を生きている。

現時点で組織とは無縁。ただ、世界の異変に関してどうやら冥界にもなにか変化が起こっているようであるらしく、こちらの世界に足を踏み入れる事になる。

 

 

エスメラルダ・プロセイユ

cv 喜多村 英梨

クロスセイバー。肉体にルーンを埋め込み、その力を引き出して戦うルーンナイト。

現在とある施設に居候しているとのことで、組織とは今のところ関わりはない。

 

 

カスミ・アサミヤ

cv 三澤 紗千香

アーチャー。氏神の声を聞くことができ、その氏神より示された「まがこと」を祓う少女。

現時点で接点はない。

 

 

プロフェッサー・カティア

cv 村川 絵梨

アーチャー。天才科学者、ただしことあるごとに人体実験やらなんやらをおっぱじめようとしたり、奇声をあげたりと絵に描いたようなマッドなお方。



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登場人物紹介 闇編 Stage02まで (声優敬称略)

今作でも基本的な敵対勢力となる。(ルーター)を使って大気中のソウルを闇に変換し魔物を強化、召喚し、学生や市民の安全を脅かしているほか、詳細は不明だが、魔物が跋扈するきっかけとなったと考えられる〈悪魔の門〉を引き起こした元凶とされている。

 

闇の王

cv 緑川 光

闇の勢力を統べる王。cvなどからもわかるように、すでとある冒険家の肉体を乗っ取っている。

 

エピタフ

cv 塩見 宗真

三刃衆の一角。出で立ちまさしく道化。常にセリフに妙な変換が入る。常にふざけ、嘲り、斜に構えておりなにを考えているかを読ませる気はさらさらない。

 

千石とコネクションがあり、独自に情報を彼にリークしているなど、やっぱり目的が読めない。

 

 

ヴァルアス

cv 三浦 勝之

三刃衆の一角にして、「紫金の魔焔」の異名を持つ剣士。わざわざエピタフから「アレ」の進捗状況を伝えられているが...

 

グローザ

cv 渚 兎奈

三刃衆の一角。灰緑の魔性を名乗る女。ドールからの明確な侮辱に対する反応や、エピタフの発言から、本編通り、この物語に先駆けて、〈大いなるルーン〉である〈慈愛のルーン〉を入手し、その影響を受けているらしいことが示唆されている。

 

ジェクト

cv 小野 大輔

闇の王直属の執事であり、学園都市に壺を配置している張本人。常に物腰は柔らかく穏やか。現時点では実力は不明だが、エピタフからは「かつて現在の王と王の座を争った八人の猛将・八剣閃」と呼ばれているらしく実力は未知数。

 

壺を放り込んでくる張本人。

 

ドール

cv 東山 奈央

ジェクトの部下。キャスケットとボロボロのマント、マフラーを身につけている。常に糸繰りを手に、四体の人形を操っており、セリフもその人形が代弁する。ちなみに「ドール」という名前はコードネームであるとのこと

 

人形

cv 東山 奈央(四体すべて)

年長者なロバ「ドンキー」、物静かな犬「パピー」、おしゃまなネコ「キティ」、溌剌としたヒヨコ「チックス」の四体。常に浮遊しているほか、彼らには特別な役割があるようで...

 

動物の元ネタは言わずもがな「ブレーメンの音楽隊」

 

ちなみに、アニメ化したら絶対キャスティングは譲らないキャラクターの一角。東山女氏の演技の幅を買っているキャスティング。

 

 

愉快な道化の影芝居〈シャッテンシュピール〉

三刃衆の一角、エピタフを頭目とする一団で、原作ではその構成員はみな他者の破滅や絶望を好む危険人物たち。今作ではオリジナルのメンバーも登場する。

 

ステージャ・マッチリッター

cv 岡本 信彦

エピタフの報告にて登場。あるものを製作中のようだが...

名前を切り分けて日本語訳にすると、某ニチアサのデンジャラスなブラック社長の名前になるとかならないとか

 

ちなみに、普通にキャスティング方式がオーディションだとしてもたぶん岡本氏になる気がする。

 

 

この先、現時点で情報なし

 

???

cv 杉田智和

 

チャァミィ・ヴァレンタイン

cv 能登 麻美子

 

チャァミィ・ホワイトデイ

cv 諏訪部 順一

 



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Stage.03 penalty part1

課題連打がきついんですが!!

しかも情報の授業とかPC設定訳わかんないし...佐野さんに教えてもらいたいな...

ちょっとだけサービスシーンです


story.3-1 道化との取引

 

金曜日深夜の校舎屋上。奴は今週も待ち合わせに現れた。ひとりは「闇」の道化師エピタフ。

 

エピタフ

「約束はちゃあんと...果たしておりますヨ?ネェ?千石了人くん」

千石 了人

「あの剣士...俺の推測だが、多分A組の相良勝磨か真木逸己のどちらか...相良のほうが可能性は濃いだろう。こうして情報や推測を開示してはいるが、お前のような胡散臭い奴、いつ手のひらを返すともわからないからな...そっちに行くのはまだ先だ」

エピタフ

「胡散臭いトハ心外ですネぇ...それを言っテしマえば、アナタだって常人には到底デキることじゃないものをやってのけている。魔物の現れる間隔を計算して、見物しやすい高い建物に張り込み、しかも取引まで持ちカケた...正気の沙汰じゃあない」

 

確かに努力次第で誰でもできるとは思っていない。が、こんなオーラをまとった男...幹部クラスではあるのだろう。彼と接触して、できるだけ情報を引き出す...相良たちが表立って解決するなら裏からここを守る。こいつとコンタクトを取れたのはある意味幸運が重なった結果なのだろう。

 

エピタフ

「まあ、こちらも事情がありマスかラ...全くコネクションのない「こっちの世界」で情報を得るのは重要なことですしネェ...それに...ワタシの管轄の外で動かれたらドウしようもナイことは確かとだけは断っておきます...そろそろあの傀儡どもが動くことも考えうる...」

千石 了人

「傀儡...?どういうことだ?」

エピタフ

「今の三刃衆も八剣閃も...理由はどうあれあの王に盲従するダケ...」

千石 了人

「そういうお前は違うのか?」

エピタフ

「ソウデスネェ...今週の質問がソレで良いならお答えしますヨ?」

千石 了人

「今日は他に聞きたいことがある。パスだ。本格的に話を聞かせてくれ。夢に出てきて俺を誘う、『金色の破壊者』。光の届かない真っ暗な場所、天の光を受けた明るい場所、ところかまわず破壊し尽くす、あの怪物はなんなんだ?」

エピタフ

「...情景からも推察できますが、かつて白と黒が結託して封じ込めた『世界の我儘』...デスがキミを連れテハ行けない...ワタシたちの領分デスカラネェ...」

千石 了人

「...」

エピタフ

「あ、そうデシた。これまでの情報は別にアッチがわにながしてもいい。どノミちワタシの願いは果たサレル...ではマタ...」

千石了人

「!?それはどういうことだ!」

 

それに答えることなくエピタフは去っていった。エピタフのいる『闇』は一枚岩ではない...?最も知りたいことは望み薄だが、まだ情報入手は続ける必要があるだろう...

 

 

story.3ー2 シャワーシーンあれこれ

 

Orion基地シャワールーム。

湯の流れ、垢擦りで泡を吹く石鹸、女子(わたしたち)の声。あらゆる音が布の少ない個室で反響している。

 

田村 杏子

「マンガとかでさ、こういうシャワーとか着替えのシーンって、決まって覗きが穴開けてて『ニヒヒ』とか言ってるよな?」

佐野 なでしこ

「いろいろと偏見がひどいとは思うけどね...」

 

シャワーの蛇口を閉め、佐野(わたし)が脱衣スペースに出る。早々にインナー着替えて、水を飲もうとしたら、杏子が話を変えた。

 

田村 杏子

「ところで、なでちゃんって、ゲドーのやつ好きなの?」

 

たまらず口に含んだ水を吹きそうになったが何とかこらえて飲み込む。が、思いっきりむせてしまった。

 

佐野 なでしこ

「...ちょっと、話の変わり方が唐突すぎない!?むせちゃったじゃない!」

田村 杏子

「シャワールームという女子しかいない空間、しかも1対1(サシ)。聞き出すなら今かなって思って。んでそこんとこどうなの?昨日もすごい剣幕だったし、元々ゲドーの仲介で組織に来たわけだし」

 

お湯の温度が残っているのか、まだ顔が熱い。

 

佐野 なでしこ

「...私はただ、いろいろと恩があるだけだから...」

田村 杏子

「ほんとにそれだけぇ~?この前もこっそりお昼に誘ってたのをシャナオウさんに聞いたけど~...」

佐野 なでしこ

「!?もう!シャナオウさん!」

 

声にならない声が出て、猛烈に恥ずかしくなった...2人ともみっちり口止めしておかなければ...

 

と思ったそのとき、脱衣所のドアが開いて...

 

原 藍奈

「...ニヒヒ...」

田村 杏子

「そういやいたわ...オープンに覗くやつ...」

佐野 なでしこ

「覗き...って言うのかな...これ...」

 

変態という名の淑女のセクハラも、シャワーシーンの風物詩なのだろうか...



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Stage.03 penalty part2

story3-3 戦略構築

 

相良 勝磨

「んで...なんでお前も正所属になってるんだよ!」

 

あの一件のあと、彼の意思表示と俺や巽さんの弁護で組織の情報は伏せることを条件に組織の参加を認められた。まあゲドーのやつがなんとなくノイローゼ気味だけど...

 

真木 逸己 

「いやー、いつ見てもカッコいいな~。俺もしたいな~、神気共鳴(コンバート)。まあ、高望みしないけど」

相良 勝磨

「...それなんだけど、あれ以来剣に炎が出なくなったんだよなぁ」

真木 逸己

「炎?」

相良 勝磨

「えーっと、お前が来るちょっと前の戦闘でな」

 

俺は考えていた。以前、俺の発現させたコネクトスキルは、圧倒的威力を発揮し、大多数を相手に一方的な立ち回りを見せた。

あれが自由に使えたら…何度も思っていたのだが、一度使ったあの戦闘から何度か(ルーター)の出現はあったが使えたためしがない。

 

真木 逸己

「あの厨二野郎とシャナオウなら、なんか知ってるんじゃね?」

相良 勝磨

「厨二野郎?」

真木 逸己

「ゲドー。あんな仮面と『外道』なんて偽名なんて、厨二じゃなきゃ名乗れんでしょ」

相良 勝磨

「ゲドーも、マギーってあだ名と包帯に関しては同じ事思ってると思うぞ...」

 

典型的おまいう。

 

ー ー ー

 

相良 勝磨

「ゲドー、あのときの戦闘で出したあの炎。お前はなにか知っていないか?」

 

いつものように壁に寄りかかり、物思いに耽っていたゲドーは口を開いた。

ただ、返ってきたその言葉はというと...

 

ゲドー

「...コネクトスキル。発動条件は...いや、やはりこれくらいにしておくか」

シャルロット

「いや、それだけということも無いでしょう?」

ゲドー

「...」

 

シャルの追求をガン無視して司令室の出口に歩いて行こうとするゲドーをシャルロットが止める。

 

シャルロット

「結果的に、組織の総合戦力の向上になるとは考えないのですか?」

 

シャルにしては的を射た発言である。さて、ゲドーは...

 

ゲドー

「仮に戦力向上を念頭においても、事実か分からない情報を伝えるわけにはいかない。間違った情報は、無知であるより恐ろしい。それに相良、おまえがコネクトスキルを使いこなす日は一生来ない」

真木 逸己

「てめえこのやろう、それは俺も聞き捨てならないんだが!?」

 

あんまり人に喧嘩を売るようなやつじゃないはずのマギーがつっかかった...

それに対してゲドーはシャルに視線を向けて、

 

ゲドー

「外野は黙っていろ。それ以前に、貴様等にはもっと戦う以外にやることがあるはずだろう。それに俺の仮説があっていれば、コンビがシャルロットである時点で安定利用は難しいと思え」

シャルロット

「私になにか落ち度があると?」

ゲドー

「逆にそうじゃないとなぜ思う?相良も、真木も、知っている(・・・・・)んだろう?元ユーザー諸君?」

真木 逸己

「あ...」

シャルロット

「真木さん?」

ゲドー

「坂上に呼ばれている。もういいいだろう?」 

 

そう言い残し、彼はどこかへ行ってしまった。

 

相良 勝磨

「そういや、マギーってシャナオウを知ってたってことは...」

真木 逸己

「ああ、言ってなかったっけ?俺も白猫ユーザー。もちろんシャルロットのことも知ってる」

シャルロット

「ってことは御子サマモードやらなくてもいいかんじ?」

真木 逸己

「それ見たことか...」

 

もうマギーがみんな言ってくれたからノーコメント。

んで、司令にも話を聞いたが、自分でつかむものであるということしか聞き出せなかった。成果ゼロ...かぁ...

 

story3-4 戦略構築

 

ゲドー

「坂上、試作品が完成したと聞いたが」

坂上 蒼

「待ってました!」

 

坂上蒼(さかがみそう)、対魔物用の兵器の開発を扱う、ファクトリー戦術エンジニア班チーフ。

用意されたのは弾丸10発。ゲドー()俺の拳銃の口径に対応するものだ。

 

坂上 蒼

「現在開発中の弾丸。理論上は共鳴接続なしでも対抗戦力になり得るはずだけど、なにが起こるかわからないからね。性能テストをお願いしたい」

ゲドー

「誤射の危険を考慮し、神気共鳴は使用するし、できるだけ距離はあけておいてくれ」

坂上 蒼

「やっぱり、迷いはないんだね...」

ゲドー

「何がだ?」

坂上 蒼

「狩りをするにしろ、身を守るにしろ、殺すにしろ、銃を使うときは大概害意を伴う。そこについてまわる『悪』を、君は正義のために、仮面についたその牙で、無理やりかみつぶしているように見える。悪意だけじゃない。後悔や悲しみ、痛み、仮面の下に背負っているものが、僕らなんかよりよっぽど大きく見える」

ゲドー

「頭使って社会の中を生きていれば、誰だってそんなもの抱えるだろう。抱えすぎは当然良くないが、それを比べて薄っぺらいだの分厚いだのと比べるのも無粋だ。そういうお前こそ、こんなもの、作るにしたって精神衛生上よくないだろう」

 

「僕の心配かい?まあ、あの一件でつらかったのは君だけじゃないからね。どっちもつらいなら、せめて軽い方を選びたいかな。君って、歳に似合わず達観してるよね、仮面をつける前から」

ゲドー

「生意気なもんだろう?」

坂上 蒼

「いいや?それどころか、報われてほしいとは思うかな」

ゲドー

「...話が済んだら離れてくれ。跳弾なんかあったら、これが最後の会話になりかねん」

 

射撃訓練場。

壁越しにいくつかのスペースと台があり、そこには保護用のゴーグルとがおかれ、的を設定する端末がコードに繋がっている。

訓練用の広場は80×30mの空間で、仮想の的も、オーソドックスなものや、魔物をかたどったもの、軍隊が訓練で使うような人形のものまで数十種類あるらしい。

射撃用スペースに立ち、端末を操作すると、約50m先の正面にウッホをかたどった的が出てきた。あの的はルーンを媒介にソウルで実体を構成していて、プログラミング次第で戦闘シミュレータとしても使える。

グリップが少し歪んで、握られ慣れた拳銃に、弾丸をこめる。

呼吸と殺意を整えつつ、的に狙いを絞る。

引き金を引く。銃声…着弾...反応はなし。

 

坂上 蒼 

「やっぱりまだダメか...」

如月 緑

「あ!ゲドーさんここにいた!」

坂上 蒼

「緑ちゃん!ここに来たってことは、あれができたかんじね!」

 

如月緑(きさらぎみどり)、ファクトリー都市開発・生活改善班班長。戦闘員である俺に用がけすることは基本ないのだが...

 

如月 緑

「これ、試してみてくれる?」

 

また弾丸だ。彼女から受け取るのはかなり新鮮な気がする。

 

改めて装填する。鉛弾にしては妙な軽さが気になった。込めた拳銃も軽い。再び引き金を引く。ベシャ...『ベシャ』?

 

* * *

 

翌日の登校途中。

 

玉木 翔

「ショーマじゃーん!」

相良 勝磨

「いいねー!」

 

玉木や高尾、そしての大輪田さんの三人から、いつになくノリノリだなと話し掛けられ、無理やり話に混ぜられた。

引き続き、コネクトスキルについて悩んではいた。が、まあここでは一旦おいといて、ボーイズ...大輪田さんがいるからそうじゃないけど...まあ話に花咲かせるとしよう。

 

高尾 真楠

「あの物理の小笠原先生いるだろ、あの人の授業全然わかんないと思わね?」

 

玉木、高尾は同意するが、大輪田は首をかしげる。

 

初めて出てきた大輪田さん、巽さんよろしく彼女もリケジョ。理系教科は、一,二を争う才媛!さらに今どきの高校生には珍しく男女ともに交遊も広かったりとコミュ力もすごい。

 

ショートの黒髪をかき上げて

 

大輪田 時雨

「そう?」

相良 勝磨

「いいね!」

玉木 翔

「いやいいね要素どこにもないってば」

大輪田 時雨

「まずどこができないか分析してくのが一番だけど...今ノート持ってる?」

高尾 真楠

「持ってっけど...って聞くより先にカバンをガサ入れすんなってば!」

大輪田 時雨

「あった!あ、大問5答え合わせしてない」

玉木 翔

「全部バラされちゃってんな...」

相良 勝磨

「どこができないか分析...か...」

シャルロット

『いや、何ふつうに重要なことおいといて学生生活エンジョイしてんだ!』

 

スマホからのシャルの声が。ここでシャルの存在が露見するのは極めてまずいぞ、俺!

 

玉木 翔

「ん?なんかそっちから声しなかった?」

大輪田 時雨

「なになに?結構かわいい声だったけど...」

相良 勝磨

「ど、どっからかな~…?あは、あはははは...」

 

我ながらすっとぼけがやっすいもんで...

 

ー ー ー

 

グローザ

「...不服だわ!断然不服!」

 

以前の人形操りの侮辱と、あんな青二才ジェクトが闇の王の側近にいるという点が気に食わず、イライラしてたまらない。

 

ジェクト

「グローザ卿、失礼いたします」

グローザ

「何の用!?」

 

出た、張本人。それもあって必要以上に声をはってやったつもりが全く

 

ジェクト

「今回、グローザ卿に、(ルーター)の投入をお任せしようと思いまして」

グローザ

「...どういうことかしら?」

ジェクト

「普段魔物をあそこに送り込むのは私の領分。ですが今回はその一環今回は三刃衆の一角たるグローザ卿の雷撃の力を介在させられば、強力な魔物を産み出せるのでは、という可能性を考えております」

グローザ

「まあ、いいわ。それで?どうすればいいの?」

ジェクト

「壺に向けて電撃を浴びせてみていただければ」

グローザ

「こう!?」

 

指先から稲妻を走らせると、るーたー...だったかがおかしな闇の気を立てはじめた。吸い込んだら肺を丸々抜き出したくなるような、生ぬるく、気分の悪い、そんな気だった。

 

グローザ

「何よこのソウル...気持ちの悪い...」

ジェクト

「この力は…グローザ卿、これらの写真から位置をお選びください」

 

近くの卓上にバサバサと写真が置かれる。一瞬を静止画に切り取るのが写真。でも、写真というには、被写体が動いている…?

 

ジェクト

「この写真は、撮影した地点のリアルタイムの状態です。激写でしたね。ブレイズもいる(・・・・・・・)

グローザ

「そうね…実験台はいた方がいいわ。ここにして頂戴」 

ジェクト

「では、投下します」

 

ー ー ー

 

あのあとも一緒に帰っていた俺たち四人(シャルを含めると五人だが)の前に…壺が落ちてきた。ここまでピンポイントに落ちるとは。

 

シャルロット

『おいおいマジかよ…これって!』

相良 勝磨

「なんの!俺たちの真ん前にあるんなら!」

 

スマートフォンを構える!



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Stage.03 penalty part3

quest3-1 即刻戦闘あるのみ!

 

ちょうど俺たちの周囲に魔物が現れた!人間の白骨が皮手袋とブーツ、赤いマントを身につけ、弓術を使う魔物、ガイコツ・アロー。それが少なくとも5体。

 

相良 勝磨

「よっしゃ、シャル!一気に終わらすぞ!」

 

ここで掴むんだ、コネクトスキル!

 

シャルロット

『あー、はいはい』

相良 勝磨

接続・始動(コンバート・スタート)!」

 

爆炎を振り払って、共鳴接続...完了!

 

高尾 真楠

「マジかよ...ショーマ変身した!?てかあれって白猫のシャルロットの鎧じゃない?なんかちょっと違うけど...」

大輪田 時雨

「それよりどうする?委員長。逃げた方が良いんじゃない?」

玉木 翔

「逃げた先で鉢合わせると一巻の終わりだ。近くにいた方が、あいつも守りやすいんじゃないかな?」 

 

 MISSION START

 

スケルトン種お得意のその弓に、矢を継がせぬ間に四体を斬り、残り一体を幹竹割りで真っ二つにする。 

目の前の個体が光と消えたその時、彼の背中に鋭い痛みが連続で走る。 

 

相良 勝磨

「後ろから!?…何で…」 

 

いくらか鎧に防がれてはいたが、倒れているはずの敵から、矢傷を受けてしまっていた。 

 

ー ー ー

 

司令室でも巽、田村、佐野たちオペレーター陣が驚く。 

 

巽 静流

「あれ、致命傷だったはずなのに!」

 

この状況に対して黙っていられたのは司令のみであった。

 

佐野 なでしこ

「赤鬼さん、シャナオウさん、今どこですか!?」

ゲドー

『あと最長で三十秒で現着する。状況と後続の敵の数を伝達しろ』

佐野 なでしこ

「スマートフォンで確認してください」

 

ー - -

 

急行中のゲドーとシャナオウ。懐から取り出したスマホを確認すると、数分前の戦闘状況、現在の状況など多様な情報が送信、表示されていた。

確かに、真っ二つに斬っている。ただやられているのは、唐竹割りを喰らった個体だけ… 

そのとき俺は映像の、ある一点が目に入り...

 

ゲドー

「あのバカが!...あと三秒で現着する!紫電と護送車をポイントF6にまわせ!早急に民間人を保護する!」

 

二人とも、走っていた脚に一度急ブレーキをかけて

 

ゲドー

「シャナオウ、神気共鳴(コンバート)と同時に改造(チューン)

シャナオウ

『パターンDにコミットだろう?』

ゲドー

「上出来だ」

 

胸にたまった緊張と強ばりを、息と共に吐き出す。

 

ゲドー

神気共鳴(しんききょうめい)...接続(コンバート)...始動(スタート)...」

 

彼の前に、光の壁が現れ、彼の前に迫る。何となく飛行船のような模様も見える。壁が俺を通り抜けると、俺はローブを着て、紫電とどろく雷雲の中、飛行船に立っている。

そこから一気に飛び降り、そのまま重力に身を任せて落下、稲妻が身に打つほどに俺の肉体は、黒鉄の装甲をまとっていく。

 

ゲドー

武装(アームド)楯無EXⅡ(たてなしイーエックスツー)楯無EXⅡ!」

 

光撃刃爪(レーザークロー)装備の鉄拳を手になじませていく。

 

シャナオウ

『コンバージョン!コンプリート!』 

ゲドー

改造(チューン)...パターンDビルドアップ...!」

 

言い終えたかわからないほどのその刹那、残像すら残さず地面を蹴って ーーー

 

ー ー ー

 

相良 勝磨

「さっきは不意討ちだったから喰らったけど、あいつらの攻撃は予備動作の時間が長い…」

 

走りながら、弓の有効射程から距離を詰める。

 

相良 勝磨

「今度は念入りに斬り込む!シャル!」

シャルロット

『しゃーない!受けよ!』 

相良 勝磨

「燎焔斬!」

 

炎の刃が炸裂!

 

相良 勝磨

「やったか!?」

 

一体として倒れていない。残り四体が矢を放つ。しかしその方向は、俺のいる向きではない。

 

相良 勝磨

「どこを狙って…」

シャルロット

『おい、あの方向ってまさか!』

相良 勝磨

「あっ、しまった!」

 

玉木たちがまだ避難していない!しまった!…間に合わない...!矢が彼らに迫る!

 

相良 勝磨

「みんな...!」

 

と、その時。八発の銃声と共に、放たれた矢と魔物の手足が、ベタベタと磔にされた。

音の先を見るとそこから白い煙を吐く銃口と、普段の数倍の殺気を向けた...

 

シャルロット

『ゲドー...』

ゲドー

「如月のやつ、いい仕事をしてくれたな...」

 

 ✳ ✳ ✳

 

ー 弾丸の使用テスト中 -

 

的には茶褐色の何かがべったり張り付いている。

訝しげに坂上がピンセットで触れるとピンセットがくっついてしまった。無理やり取ろうと引っ張ったが、ピンセットが手から抜けて坂上が尻を打った。

 

坂上 蒼

「いったいなぁもう...しりもちついちゃったよ...」

ゲドー

「...トリモチ弾か...」

如月 緑

「それだけじゃなくて...」

 

一緒に持ってきていたらしいドライアイスを触れさせると、べったり張り付いたそれが、ピンセットごと簡単にとれた。

 

如月 緑

「『ガムボール』といいまして、魔物だけのほかにも、対人の拘束にも使えるってやつです。といってもこれができた訳が結構生々しいんだけどね」

 

名前の通りガムの性質を参考にしたこの素材、(ベタベタした不快感とともに)対象を足止めできると同時に、手錠等で身動きを制限すれば凍らせると楽に剥がせる。

その製作のきっかけがというと、戦闘後の舗装装置の小型軽量化に難航してるから、元から絶ってしまおうという、やっつけ極まりない発想だったらしい。最初はペイント弾のような使い方が想定されていたが、坂上が協力して弾丸に仕上げたらしい。

 

シャナオウ

『ルーツメディックに近いが...』

ゲドー

「使い勝手は良さそうだな...もし使えたら試してみよう。二人とも、感謝する」

 

* * *

 

Quest.3-2 諸行無常の証明

 

シャナオウ

『如月によきレポートができそうだな』

ゲドー

「ブレイズ、一般市民を避難させろ!」

相良 勝磨

「でも、やつら攻撃効かないんだぜ!?二人で協力して...」

シャナオウ

『すまないがここはチェンジしてもらう』

ゲドー

「ポイントF6、そこに連れていけ!それで貴様の仕事はそれは終わりだ!正体も神気共鳴もばらしやがって...さっさと動け、のろまの浮かれトンチキ!」

 

めちゃくちゃディスられたけどそう言われて、やっと玉木たちを遠くへ避難させることになった。

 

玉木 翔

「なあ、やっぱりショーマなんだろ?そのかっこは...」

大輪田 時雨

「あのひと大丈夫なの?あのガイコツ...再生したように見えたけど...」

相良 勝磨

「...今は避難が先だ...ついてきてくれ...」

 

ー ー ー 

 

さて、案の定だった足手まとい(ブレイズの奴)と一般市民はいったか...そっちは向井たちに何とかさせるとして...この驚異的な耐久...からくりを暴いた方が良いか...!

 

ゲドー 

「パターンA、ミッションは三分!」

シャナオウ

『近くば寄ってセンサーで見よ!』

ゲドー

「一切合切...台無しにしてやる...」

 

腕と壁をガムで付けられたガイコツに向かっていく。現場に向かうときよりはさすがに遅いが、間合いを詰めるにはいい速度をそのままに、

 

ゲドー

「腰骨から…」

 

ピンポイントに一発で、骨身を粉にしていく。するといっぺん節が外れたと思えばまた接合して動き出した。

 

シャナオウ

『これは…置きヒール!しかしリカバーがあな早し!』

 

置きヒール。読者様方の世界における白猫プロジェクトのテクニックで、プレイヤーキャラのHPがゼロになっても、戦闘不能扱い(ゲームではそれらしい言葉と共にひっくり返って気を失う)になるまでに、何らかの方法で回復できれば、戦闘不能状態を回避できるというもの。

スケルトン種は、多大なダメージを食らうと体がバラバラになり、動かなくなるが、油断してそのまま放っておくと、HPを大幅に回復して体を組み直す。

HPがゼロになるまでに、そのテクニックを使用することによって、不死身とも言える生命力を持っていたのである。

 

しかし『諸行無常』、形あるものいつか壊れる。不滅のものなどない。それを今、俺は証明しようとしているのかもしれないな。

奴が唐竹割りで斬った五体目、人間で言う正中線を見事に真っ二つにしていた。後続の数を考えると、弱点の位置を個体ごとにバラバラにするには、たとえ(ルーター)を用いてもソウルの総量(リソース)が足らないはず。狙いは正中線。 

 

ゲドー

「仙骨...腰椎...」

 

背骨の一個一個を殴る。砕けた骨が再生した瞬間にまた次の骨を砕く。数発攻撃を入れた段階から、足元に光る円が走っていく。

 

シャナオウ

脊椎(スパイナル)(ネック)...』

 

首、顎の骨を砕く。そして…

 

ゲドー

「『頭骸(スカル)!』」

 

頭を蹴り砕く。頭蓋骨が粉々に砕け散り、本体が光となって弾けた。

 

シャナオウ

『ヒット!ネクスト!』

 

次に、数瞬前に放たれたらしい後ろからの矢3本を、空で握り折り、払い落しつつ、残りのガイコツに肉薄。勢いのまま頭を砕く。再生...確認されず...!

 

ー - -

 

アレックス

「...勝ったな」

佐野 なでしこ

「当然です。ラセツは赤鬼さんは、強いですから」

 

ー - -

 

シャナオウ

『条件クリアー!一気にシャットダウンなり!』 

ゲドー

「白骨がァ...まとめて成仏しやがれ...チャージ...!」

 

肉体の気を集中しながら、身に緊張を走らせる。足元の円がその身に更なる力をともし...放つは...正真正銘の「必殺」...!

 

ゲドー

「アクション・コードα02...!」   

シャナオウ

『八艘...!アニヒレイトッ!』

 

構えをとると同時に地面から紫の光に照らされ、俺の体が、敵の頭蓋骨の一点に照準を合わせて、瞬間移動からの鉤爪での強撃。さらに別個体の付近に瞬間移動して今度は左で一撃。あっという間にこの場の残り三体を、頭蓋骨を砕いて撃破。そのままエリアをまたいで後続の二十一体を撃滅、残りの四体を一気に捕捉し、光撃刃爪(レーザークロー)の交差!紫の光を残し、殲滅...完了

 

ゲドー

「カウントストップ」

シャナオウ

『2ミニッツ9セコンド、勝利完結、快速ストレージ!』

 

 VICTORY

シャナオウ

『鬨のシャウトを上げよ!』

ゲドー

「All perfectには...まだ遠いな...」

 

相良(アイツ)は「いいね」とサムズアップを送るようだから、こっちはこれおくってやろう...こんなところに出てきた魔物、送り込んだ闇、資格のなきものたち、そしてAll perfectを未だ為せない自分に、ありったけの...サムズダウン...

 

 MISSION COMPLETE



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Stage.03 penalty part4

避難を終えたブレイズ(俺たち)が戻ったときには、魔物はあらかた片付き、(ルーター)も破壊されていた。結局、ラセツがみんなやっつけたかんじか…早期解決は良いことだとシャルロットは言ったが、内心、だいぶ楽できたとか思っていそうだ。

 

「アレックス、もう限界だよ。戦場(ここ)には立たせてもロクなことがない」

『処遇は...任せる』

 

なにか通信で会話していたラセツが俺たちのところの向かって歩いてきている。

 

「相楽勝磨、いや...ブレイズ」

「...」

「即刻接続(コンバート)を解除、コンバーターをこっちに返却しろ」

 

quest3-3 巣くった痺れ、切れた痺れ

 

突如言い渡されたコンバーター返却命令。それはすなわち、俺たち二人に対する戦力外通告と、解雇通知にほかならなかった。理由を問いたださずにはいられなかったのだが、ゲドーはその理由を事細かに提示した。

 

「まずシャルロット、貴様のものぐさを俺が知らないとでも思ったか」

『ぬ…っ!』

 

もともとシャルロットは、アレックス司令『光焔の御子』としての能力の爆発力を見込んでスカウトしたのだが、依然発現したコネクトスキルが安定しない原因は、十中八九彼女の性格に起因しているという結論が、幹部内で出ていたようだった。身体を動かすのが相楽()であることに胡座(あぐら)をかいていたということだった。そそてあの能力さえ使えれば、ゲドーなしでも早期鎮圧はできたはずであることも追い討ちに付け加えられた。

 

読者様方の知る彼女の性格上完全に図星である。シャルロットは何も答えられなかった。

 

「次に相楽、この戦闘お前は何を失敗した」

「みんなを避難させなかったこと…でも、次はもっとうまくやる!」

「7割5分ハズレだ...守るために戦ってる俺たちが『次』を望んでどうする!」

「...!」

 

赤点。守るために戦ってた...と思っていた。戦いが日常になってから初心が抜けて思考がすっかり凝り固まって、敵の殲滅、強くなると目的を取り違えて、クラスメイトを危険にさらした。もっと根底的な部分が抜けていたのである

 

揚げ足を取られたようで、完全に俺が掘った墓穴だった...

 

「逆に新たな『(タスク)』が発生したとして、うまくいったからと、今回の失敗(ミステイク)も良い教訓(マニュアル)として納得(インストール)する気か?」

「じゃあ聞くが俺たちは、おまえの身勝手であと何人見殺しにすればいい!」

 

二人の成長のために人の命を差し出すことが正当化なんてふざけたことがあってはならない。もし俺が間に合わなかったら、いきなり家族を失った遺族の無念、悲しみ、虚しさ、怒りを俺たちは背負うことになる、そう聞かされて、俺は今、身内に言われて良かったと思ってしまった。

あのままでは「もう同じことを繰り返さないから水に流せ」なんて、被害者遺族に言っていたかもしれない...

 

襲撃に居合わせたあの三人も、パニックを未然に防ぐためすでに記憶封印処置が決定していることも伝えられた。

 

それでも、まだコンバーターを手放そうとは思えなかった。思いたくなかった。でもまた墓穴を掘りそうで口から言葉が出てこない。それを見かねて再び共鳴接続(コンバート)したゲドーが、とある提案を持ちかけてきた。

 

「俺に一撃食らわせてみろ。それで今回は目をつぶってやる。敵と思って打ってこい!」

 

 MISSION START

 

 ラセツ があらわれた!

 

栄光の一閃(グローリーフェンサー)を再び召喚する。一撃でいい、とにかく剣を振るい、振るい、振るった。それをラセツが裁き、かわし、受け流す。当たらない。全く当たらない...!まだまだ!

 

不本意な形ではあるけど、一度、自分の本気がどこまでこいつに通じるか、試そうと思ったことはある。

 

「燎焔斬!」

 

必殺の一撃が...入った!いや…

 

「敵と思って打て、と言ったはずだが?」

 

燎焔斬が、今の全力が完全に止められた...右手の親指と人差し指で...生ゴミでも摘まむように...

 

『おい、冗談じゃない!こんな...』

 

ため息をついて、

 

「もう少し譲歩してやる。俺の一発を受けて接続を維持してみろ!」

「なにを...!」

 

ラセツがまっすぐ突っ込み、腕を振りかぶる。まっすぐの...最短距離。軌道は簡単に読めた。避けてはいけない、避けてカウンタースラッシュを狙っても対応されるだろうし、それではゲドーも俺を認めない。

 

「シャル、正面から燎焔斬だ!右腕を真っ二つに...っ!」

「...アクション...」

 

当たる、押し返せると読んで放った燎焔斬は、たちまちすかと空を切った。ゲドーがしゃがんでよけた...いや紫の光の奔流となって、高速で地を這っている!

 

 

『後ろだ、ショーマ!』

「防げ...!」

 

一瞬にして懐に入り、熱波を伴って拳で上に打ち上げた!

吹き飛ばされた拍子、接続が解除。シャルロットが出てきてしまった。そして近くに落ちていたスマホを拾い上げたゲドーは親指を下向きに立てる(リバース・サムズアップ)とともに

 

「気持ちも経験も判断力もない。かといって自分の言い訳を押し通す実力もない。まったくもって最悪だよ」

 

「いいね」の真逆、最大の意趣返しを食らわせるのだった

 

そのあと、俺たち二人はけがの手当を受けたあと、シャルロットは有用な能力をもつことから、謹慎処分で済んだが、俺は組織を追い出されることとなってしまった。

 

「俺たちも一緒にかけあうぜ?相楽少年!」

「ほんとに出て行くこと無いと思う...!」

 

マギー、巽さんのそんな言葉に対しても、何も返すことが出来なかった。戦う力、スマホを奪われた以上に、突きつけられた、ゲドーとの差、圧倒的な実力と確固たる信念、覚悟に、負けを認め、屈服してしまったのだ。完膚無きまでに...もう悪い例えばかりが頭を占めてしまっていた。

 

そんな失意の内に組織の名簿から、俺の名前が、消えた。俺は、元のいち高校生に戻ったのである。

 

ー ー ー

 

ゲドー()とシャナオウ基地をあとにする勝磨を一瞥していた。シャナオウは、手を貸したとはいえ、戦力のロスと、敵以上に徹底的に追い詰めるやり方に一周回った疑問を向けられた。

 

「当然だ。未熟なまま勝手に死なれても困る...完全な勝利しか、守りたいものを守れるものはないのだから...!」 

 

きっぱり返して、自室に戻ることにした。

 

...しかしブレイズを殴ったときの、あの硝子を突き抜けたような手応えはいったい何だったのか...

 

✳ ✳ ✳

 

「ここ最近、妙な魂が増えているな」

 

冥界の玉座に佇む帝王は今日も魂を裁いていた。死した人間の魂の偏りとその言い分はその時代に何が起きているかを如実に示している。吸血鬼として永い時を生きてきた彼だからこそわかることだ。

女や幼い子どもとともに、軍人の魂が多くなり、爆発やら銃撃戦やらに巻き込まれたと口を揃えたならば、地域紛争が激化しているのだとわかる。

 

しかし、最近多い魂は、これまでの魂とは、どこか波調(・・)が違った。

 

「あの新しい島、我も出向く必要がありそうだ...」

 

✳ ✳ ✳

 

草木も眠る丑三つ時。月光に冴える白い衣を纏った乙女は、魔物を前にし杖を構える。

 

『ここにも...いないね...』

「大丈夫。あいつが出るまで戦いつづけてやる...」

 

ジャスミン

「お前らも...違う...」



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