学戦都市の桜姫(リメイクします) (雪楓❄️)
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プロローグ+設定

前に書いていた【学戦都市に咲く花】のリメイク版です。
前作については、活動報告にて詳しい事情を書いてあるのでそちらをお読みください。


〜登場人物〜

 

東雲琴音 (しののめ ことね)

 

星導館学園序列外→序列1位 (二つ名 桜姫)

 

この作品の主人公。

星導館には中学生2年生のときに編入。実家である東雲家は武道の名家であり小さい頃から剣術を嗜んでいた。軽度の男性恐怖症であり余程のことがない限り周りとは関わろうとしない。が、剣術や趣味の話になると人が変わったようによく話す。剣術の腕はかなり高く、型を重んじた状態のアーネストでは相手にならないほど。両親のうち、父親は事件に巻き込まれ亡くなっておりその真相を知るためにアスタリスクへと向かった。星辰力の量は、底が見えない程であった。ちなみに、大のブラコンである。

 

 

性格

基本的に他人と関わろうとしないが、少しでも仲良くなった人が傷つくことを酷く嫌う。

温厚で優しい性格だが、怒ったときには誰も止められない。

 

容姿

髪の毛は黒髪で、肩ぐらいまでの長さ。

通り過ぎる人が振り返るほど、整った顔で美人と可愛いの丁度中間。

スタイルは、可もなく不可もなく。

 

能力

事象の拒絶

星辰力を使って、起こったことをなかったことに出来る。

否定する事象の大きさによって、星辰力の使用量が異なる。例えば、殆ど瀕死状態の人の事象の拒絶を行うと自身にもかなりのダメージとなる。

ただし、死の概念は否定出来ない。が、致命傷でも生きている限りは治せる。

 

武器

千本桜(純星煌式武装)

母親から譲り受けたもの。

能力はBLEACHの原作に出てくるものとほとんど同じ。

刀身にウルム=マナダイトが使われており、通常状態は日本刀である。

現在は、卍解が十分ではなく卍解の際に咲く四枚の桜の花弁の花びらが全て散ると卍解は強制的に消えてしまう。

代償は、千本桜と戦い屈服させること。

 

家族構成

父(故人)

 

 

東雲光陽(しののめこうよう)

 

琴音の父親。ある事件に巻き込まれて亡くなるが、事件は無かったことにされた。

 

東雲紅葉(しののめもみじ)

 

琴音の母親。元クインヴェールの序列1位で星武祭二連覇を成し遂げるが鳳凰祭に出場せず三冠制覇を逃す。

千本桜は、元々クインヴェールのものだったが優勝した際に所有権を主張し私物となった。

 

東雲透(しののめとおる)

 

琴音の弟。琴音の三つ下で、琴音を追って中学から星導館に入学。剣術の腕は琴音には劣るがかなりのもの。魔術師としての能力は今のところなく純粋な剣技のみで戦う。

かなりのシスコンである。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ここ、星導館学園に編入してはや1ヶ月。

何でこーなったんだろう……。

 

「という訳で、俺はお前に決闘を挑む。」

 

こんなバカなことを言ってるのは、我が星導館学園序列1位の一ノ瀬翔さん。高等部1年生のときに序列1位になったらしいからかなりの実力なのだろうけど…。

 

「……そんな理由で言われても困るんですけど。」

 

そうただの決闘ならば受けても構わなかったのだけど。

 

「俺が勝ったら1日だけデートしてくれればいいんだ。頼む!」

 

序列1位がそんな事でいいのだろうか…。

この手の決闘が今まで無かった訳じゃない。けど、冒頭の十二人にまで言われるとは…。

 

「いいじゃないですか、琴音。面白そうですし」

 

こんな馬鹿なことを言うのは私の唯一の友達と言ってもいいであろう星導館の生徒会長であるクローディア=エンフィールド。

 

「…はぁ、わかりました。その決闘お受けします。」

 

後々、この決闘を受けたことを後悔することを私はこの時思いもしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




設定はこんな感じでいこうとおもいます。

意見、アドバイス頂けると嬉しいです。

追加キャラについて、募集したいと思いますので活動報告の方にお願いします。


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1話

お気に入り数0…。

面白くないのでしょうか、様子見て消すかも知れませんのでご了承ください。


私と序列1位の方の決闘は、瞬く間に学園中に広まり決闘をやる広場には大勢のギャラリーが集まっていました。

 

「…先輩、こんなに人がいるなんて聞いてませんよ?」

 

「これは俺も予想外でさ、ごめん」

 

この先輩、存外悪い人でもないらしく今のところそこまで嫌悪する対象ではないのだけど……。

 

「そうですか…。」

 

私は1度集中するため目を瞑り、相手の獲物を確認する。

先輩が使用するのは、一般的な片手剣型の煌式武装。確か魔術師としての能力は氷を操る?だったかな

 

「それじゃあ、始めようぜ。不撓の証たる赤蓮の名の下に、我一ノ瀬翔は汝東雲琴音への決闘を申請する」

 

「我東雲琴音は、汝一ノ瀬翔の決闘申請を受諾する」

 

私が受諾したことの証に校章が輝き、決闘が始まった。

 

 

 

始まるとほぼ同時に私の足元が凍り始めた。

 

(さすがは序列1位ってところか…。速い)

 

すぐに後ろに退き、体制を立て直す。

 

「今の避けるか。さすがは東雲家ってところか?」

 

「家のこと知ってたんですか…。それじゃあ、こっちから攻めさせて貰いますね」

 

とりあえずは様子見。

私は一気に距離を詰め、抜刀し斬りかかろうとするが氷の壁に阻まれる。

 

(…やっぱりあの壁を破るにはこの状態じゃ無理か…。)

 

さっき一撃入れたことで氷の壁は崩れたが、すぐに次の壁が出来上がっていた。

 

「そんなんじゃ、俺の防御は破れないぞ。次はこっちの番だ!」

 

そう言うと先輩の周りにはたくさんの氷の粒が出現し、こっちに飛んできた。

 

(……なるほど、物量戦か。流石にこの量は捌ききれない、出し惜しみしてる場合じゃないか)

 

私は千本桜に星辰力を送る。

 

「…卍解 千本桜景厳」

 

刀身が幾重もの刀の花びらへと変化し、私の周りを渦巻く。

さらに、私の後ろには四枚の桜の花弁が浮いている。

 

「…へぇ。それがお前の武器か」

 

先程の攻撃を防がれたのが意外だったのか、先輩は少し驚いた表情に変わっていた。

 

(…花びらの数はあと、17枚か…)

 

「えぇ。それじゃあ、そろそろ決めさせて貰います」

 

そのまま、花びらと化した刀身を先輩の方へと向ける。

もちろん、氷の壁によってそれは阻まれるがこちらには数千の刀があると言っても過言じゃない。

氷の壁を破壊し、そのまま先輩を包むように両サイドから攻める。

 

「…それじゃあ先輩、これで終わりです。吭景・千本桜景厳」

 

 

 

 

『校章破壊 勝者東雲琴音』

 

 

(ふぅ、あと15枚か…、勝ててよかった。悪い人じゃないんだろうけど、デートなんて無理だし……。)

 

「…先輩、どうもありがとうございました。」

 

「あぁ。いやー、かっこ悪ぃな、後輩の女子相手に完膚なきまでにやられるとは」

 

座りながら大笑いしているが、多分相当悔しいのだろう。地面を掴んでいる手が震えている。

 

「それよりも、今日からはお前が星導館学園序列1位だ。頑張れよ」

 

先輩はそう言って私の肩を叩いて、歩いていってしまった。

 

(……そうだった。あの先輩、序列1位だったんだ……)

 

余計なものを残していってくれた先輩に恨みを込めつつ、私は自分の寮へと戻った。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

翌日、学校へ行くとクローディアから二つ名が決まったと言われた。

 

「琴音の二つ名は【桜姫】です。………ちなみに、昨日でファンクラブ会員がとても増えましたよ」

 

クローディアはそう言って自分の席へと戻っていってしまった。

 

(いや、待って。姫って何、姫って。それにファンクラブ?なんて何であるの?あと、なんでクローディアが人数を知ってるのよ!)

 

とてつもなく腹黒い友人の一言によって、私はその日の授業に集中することが出来なかった。

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

自分の部屋に戻る際に、下駄箱に少し気持ちが悪い手紙が入っていた。

 

(……。よし捨てよう)

 

この日以降、何度か手紙となにかよく分からないものが下駄箱に入れられるようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




戦闘描写下手くそですみません。

最期のおまけの部分についてですが、詳しく書くかはまだ考えていません。

この作品、続けるかわかりませんが読んで頂けると嬉しいです。


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2話


お気に入り数、全く伸びなくこの作品続けていいのか絶賛悩み中です。
ただアクセス数だけ伸びていると考えるとやはりつまらないのでしょうか

一応2話目です、どうぞ


 

あの先輩との決闘から早いことで2ヶ月経った。

序列1位になってからというもの、周りの人からの視線も増えたし話しかけてくる人も多くなった。

 

「よっ東雲。朝から辛気臭い顔してんなぁ」

 

この人もその1人である夜吹英士郎。夜吹くんは編入してきた頃から良く話しかけてきていたが最近は更に増えたと言ったところだ。

彼の場合は下心とかそう言ったものは感じられないから別にいいのだけど。

 

「そりゃあね。これだけ毎日毎日、周りの人に見られたらこうもなるよ…。」

 

「まぁ序列1位ってのはそれだけ凄いんだろ?我慢も大事だぜ」

「まっ、俺なら耐えられないだろーけどな」とか言って夜吹くんはまた違う人に話しかけに行った。

 

(人懐っこい性格なのかなぁ。)

 

よく話しかけてくる男子と言えばもう1人……。

 

「よっ、東雲!」

 

……やっぱり居たか。

もう1人というのはもちろん"元"序列1位一ノ瀬翔先輩である。あれ以来、わざわざ私達の教室にまで来て話しかけにくるんだけどその度にクローディアが「あの方、余程琴音の事が好きなんですね〜。」といちいち嫌味のように言ってくるから少しは自重して欲しかったりもする。

 

「どうも、先輩」

 

「湿気てんなぁ。翔でいいって言ってるだろ?」

 

そして、会う度に呼び方について指摘される。

まだ名前で呼ぶほど仲良くもないと思うんだけど…。それに先輩も私のこと名字呼びだし。

 

「いえ、私にとっては先輩は先輩なので」

 

「ちぇ、つれないなぁ。そのうちちゃんと呼んでもらうからな!そんじゃまたなぁ〜」

 

(先輩、きっと呼ぶことはないと思います。)

 

朝からまさか2人両方に会うことになるとは…。

今日はツイてないのかもしれない。

 

「あらあら琴音、朝から辛気臭い顔してますね。」

 

今日はやっぱりツイてない。

 

「…はぁ。わかってるでしょ?」

 

「えぇ、もちろんです。人と関わるのが苦手な上軽度の男性恐怖症のあなたが、まして朝から男子生徒と話すなんてこの上なく辛いことでしょうからね。」

 

クローディアは私の事情を知る数少ない人で、私としてもクローディアには本音でありたいと思っている。

 

「…けれど、あの2人には琴音も少しは心を開いているように感じます。」

 

確かにあの2人はまだ話せる相手だと私も思っている。

他の人と話す時なんて軽く鳥肌が立ってしまうし、頭が真っ白になりかけたことだってあった。

 

「まぁね。あの2人は下心とかそういうのは全くないし、他の人よりは信用出来るからね。それよりも、クローディアあの手紙とかって……」

 

「例の件ですね。今のところは進展が無いと言ったところでしょうか。………言い訳ではありませんが、あなたの下駄箱は郵便ポストかなにかでしょうか?」

 

郵便ポストとは酷い言い草だ。

確かに、毎日毎日数十通を超える数の手紙が入ってはいるけど。

 

「郵便ポストではないよ…、多分。それに最近は、変なものも一緒に入ってることもあるんだから」

 

この間のアレにはビックリした。多分悪気はないとは思うんだけど、流石に写真はどうかと思う。しかも、私のだけじゃなくて自分の自撮りはね……。

 

「あぁ、あの写真のことですか…。写真と言えばこの間、夜吹くんが1枚500円という破格の値段で琴音の写真を売っていましたがかなり儲かったらしいですよ」

 

夜吹くん、そんなことしてたんだ。今度、桜で包んであげなきゃ。

 

「彼って確か、影星の一員だったよね?そんなんで大丈夫なの?」

 

「さぁ?ただちゃんと働く時は働いてくれているので今のところは大丈夫だと思いますよ。」

 

彼の忍としての能力は相当なものなのは、私も知っているがやっぱり普段を見てしまうと難しいところである。

 

「まぁとにかく、早期解決よろしくね。生徒会長様」

 

「えぇ。我が校期待の序列1位にストレスなんかで負けてもらっても困りますからね」

 

「そんなに期待されてもなぁ。」

 

「いえいえ、贔屓目なしでも琴音の実力はアスタリスクトップクラスですよ。それにまだ何か隠してるみたいですしね」

 

クローディアにはどこまで見えているんだろう。確かクローディアのパンドラの能力は未来視。そんなに遠くまで見れないらしいけどクローディアをみてるとそうじゃない気しかしない。

 

なんてことを考えているといつの間にか教室に着いていたらしく、クローディアもいつの間にか自分の席に座っていた。

 

(今日も1日何事も起こりませんように…)

 

ここ最近毎日こう祈りながら過ごしているが、何も無かった日は数えるほどしかない気がする……。

 

 

 

 

 

 

 

 





日常回でしたがどうでしたでしょうか。
感想など頂けると嬉しいです。

活動報告にて、追加キャラなどについてアンケートとっていますので宜しかったら参加下さい。

お気に入り登録して頂けると作者としてもモチベーションが上がるので宜しかったらして下さい。

それではまた次回。


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3話

続けるか悩んでいましたが、とりあえずは続けようと思います。
ただアクセス数は他作品に負けないほど伸びているのですが……難しいところですね。




私がアスタリスクに来てから初めての冬を迎えたが、今までほとんど毎日非日常と言ってもおかしくないほど忙しい毎日を送っていた。

 

(はぁ……。こんなに目立つつもりは無かったんだけどなぁ)

 

目立つと言っても、序列1位になった程度ならまだ良かったんだけど……。

まさか、あの有名なシルヴィア・リューネハイムと知り合うことになるとは……。しかも、一緒にライブやるハメになるなんて思いもしなかった。

シルヴィとライブをやったのはつい1ヶ月前の話で、あれ以降も何度か誘われたりもしてる。今のところはやるつもりなんてないけど。だって、あのライブやった所がアスタリスクでも1番大きいところでしかも満員だったから知らない内にアスタリスク内で有名人になっちゃったらしいし、シルヴィのライブだから世界的にもニュースになってたらしくて実家の方からも連絡くるほどだったんだから…。

 

「どうしたんだい?そんな顔して」

 

目立つ知り合いと言えばもう1人。絶賛話しかけてきている聖ガラードワース学園生徒会長であり序列1位のアーネスト・フェアクロウ。なんで知り合いになったかって?この間、クローディアの六花園会議?の護衛とかで付いて行ったときに知り合った。あの時はアーネスト以外にも虎峰くんや星露とも知り合った。虎峰くんは最初女子だと思ったから話しかけられても普通に会話出来てたけど男の子ってわかった時は少しビックリしたなぁ。

まぁそんなこともあり、アーネストとはよく模擬戦と称して打ち合いをしてるんだけど中々本気だしてくれないんだよね

 

 

「ううん、ただなんでこの面子でショッピングしてるのかな?って思ってさ」

 

「確かに周りの人から見たら豪華なメンバーなのかもね」

 

アーネストの言う通りだ。私達は今4人で歩いてるんだけど、まずガラードワース生徒会長でもあり序列1位で【聖騎士】の二つな持ちのアーネスト。そして、星導館生徒会長で【千見の盟主】のクローディア。極めつけは、何故かいつもの変装をしておらず素顔のクインヴェール生徒会長でもあり序列1位で【戦律の魔女】のシルヴィ。

傍から見たらとてもじゃないけど、近寄る気にはならないだろう…。私だってこの3人と一緒にいるのは少し気が引けるし序列1位で良かったと少しは思ったりもする。

 

「一応言っておきますが、私やアーネストよりもあなたの方が有名人ですからね?」

 

まるで私の心が見えてるかのようなクローディアの一言に少し驚いた。

 

「そ、そんな訳ないよ。だってね……、うん」

 

「琴音、今更無理だよ?私とライブして以来、事務所の方にいつライブやるかって質問が殺到してるんだよ?」

 

「これに関しては2人に同意だね。序列1位である実力に加えてその容姿だからね、我が校にも君のファンはたくさんいるよ」

 

……そんな馬鹿な。

ただでさえ、このあいだ手紙の送り主1人1人と決闘して止めてもらったって言うのに…。

 

「うちの学校にもたくさんいるよ〜。このあいだなんか、うちの学校に編入させて下さいって頼まれちゃったし」

 

「まぁ断られちゃったんだけどー」とシルヴィは言っているが、逆に断らない人がいるのだろうか?

それにクローディアには「星導館から居なくならないで下さい」って頼まれちゃったしね

 

「…そんなことより、シルヴィ変装は良かったの?」

 

さっきから流していたが、かなりの大問題だと思う。

 

「うん!だって、変装してても琴音がいるならあんまり意味無いし。だったら、素顔で歩いた方がいいじゃん」

 

…そりゃそうだろうけどさ。

さっきから、お店に入る度に店員さんが驚いてて可哀想だからやめて上げてほしい。

 

「そーいえば、琴音は来年の王竜星武祭は出るの?」

 

王竜星武祭かぁ。そう言えば丁度来年だったよね

 

「う〜ん。今のところは出るつもりかな」

 

「そっかぁ。(てことはかなり厳しくなりそうだなぁ)」

 

今回の王竜星武祭はあの【孤毒の魔女】オーフェリア・ランドルーフェンも出てくるらしいし、いい所までいければいいかな。

 

「…お互い頑張ろうね」

 

「うん!(琴音なら優勝も難しくないんだろうなぁ)」

 

シルヴィと2人で話してるうちにいつの間にか、アーネストとクローディアはかなり前を歩いていたせいかいつの間にかファンの人に囲まれていた。

 

「あちゃ〜、やっちゃったね」

 

シルヴィは随分呑気なことを言っているが、結構不味いと思うんだけど……。

 

 

案の定その後、アーネストとクローディアが助けに来てくれた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

シルヴィやアーネストと別れた後、クローディアと話をした。

クローディアは、パンドラの代償として自分の死を悪夢として見せられるらしい。

ついこのあいだ見た夢に、クローディアの死に際にある男の子が出てきたらしい。その子が誰かはまだ分からないらしいけどクローディアはその子に最期は看取って欲しいとのことらしい。

 

(私はクローディアには死んでなんか欲しくないよ……)

 

そう思うことは簡単だけど、いざ口に出すとなると躊躇われ直接言うことは出来なかった。

 

(クローディアが死にたくないと思えるように私がクローディアを支えよう)

 

私の決心が届くかは分からなかったが、まずは来年の王竜星武祭で優勝することを心に決めた。

 

 

 




オリジナル回って言うのは中々難しいものですね。
主要キャラ達との交流となりましたが、如何でしたか?

感想、意見頂けるとやる気が出るのでよろしければお願いします。
お気に入り登録してもらえると嬉しいです!


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4話

この作品の更新が1番楽しいこともあり連続になっていますが、そろそろSAOの方も考えが纏まり次第更新したいと思います。


なお、シルヴィやアーネストとの出会いについては番外編の方にて書いていきたいと思います。
前話にて、王竜星武祭がもうすぐのような感じでしたが時期が1年早かったのでまだ王竜星武祭にははいりません。申し訳ないです。

今回、少し時間が飛びますのでご了承ください。


激動とも言える、中等部2年生の1年間がようやく終わりを告げ私達は中等部3年生になった。

 

(……はぁ。またか)

 

決闘によって、一時期は無くなってた私の下駄箱の郵便ポスト化は最近になって復活してきた。

 

「…はぁ。琴音今日もですか?」

 

「私もため息吐きたいよ……。」

 

何故クローディアがため息を吐いたかというと、私の郵便ポスト問題の解決に尽力してくれ、私が決闘の際に壊した施設などの始末を全部してくれその際にかなりのストレスが溜まったとのこと。またその問題が起ころうとしていると考えればため息も吐きたくなるのだろう。

 

私はいつものように手紙をクローディアにそのまま預けようと思い、郵便ポストもとい下駄箱から手紙の類を出そうと思い手を入れたのだが

 

(…ん?なんだろう)

 

手の先には明らかに他の紙とは違う感触のものがあり、それを恐る恐る下駄箱から出してみた。

 

 

出てきたものは、一言で言えば箱だった。

 

「これは、初めて見ますね」

 

「……うん。箱が入ってたのは初めてかな」

 

恐る恐る箱を開けてみるとそこには、小さいメッセージカードと指輪?が入ってた。

 

「これはまた…。やりますね、琴音」

 

「いや、全く心当たりないから。私の知り合いの男子なんて、一ノ瀬先輩、夜吹くん、虎峰くんにアーネストだよ?こんなの送ってくるような人は1人もいないよ」

 

それに、この指輪多分高い…。

きっとアーネストぐらいしか買えないだろうけど、アーネストはこんな事しない。

 

「メッセージカードは読まないんですか?」

 

「あっ、そうだった。えーっと、『僕の婚約者へ ささやかなプレゼントだ、受け取ってくれたまえ。 菅生伸彦』…………誰?」

 

菅生伸彦?って、誰だろうか。まさか実家が決めた許嫁!?

いや、そんなわけない。お母さんが、私に恋愛しなさいって言ってたし…。

 

「まさか婚約者が居たんですね…。」

 

「いや、違うから。それにこの人知らないし」

 

「確か、一ノ瀬先輩の前の序列1位の方がそのような名前だったような…」

 

一ノ瀬先輩の前任か…。それなら手っ取り早い。

 

「クローディア、放課後に一ノ瀬先輩のところに行くから付いてきて」

 

「え、えぇ。構いませんが」

 

私は箱をカバンにしまい、手紙はクローディアに預けとりあえずクラスへと向かうことにした。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜放課後〜

 

私は今、一ノ瀬先輩のクラスへと来ていた。

クローディアはどうしたかって?クローディアなら、先生に呼ばれてどこかに行っちゃったよ…。

 

一ノ瀬先輩のクラスにはまだかなりの人が残ってて、私が一ノ瀬先輩を訪ねてきたということでかなり驚いている。

 

 

「……それでその菅生伸彦って人からこんなものが来てて、一ノ瀬先輩の前の序列1位ってクローディアが言っていたので何かご存知じゃないかなと思って」

 

私が菅生と言う名前を出したときに先輩の顔が険しくなったのはひと目でわかった。

 

一ノ瀬先輩は何だかんだで頼れる先輩でもあり、人当たりの良さもあってか周りの人からの評判はかなり良い。

そんな先輩が、明らかな嫌悪を示すような顔をするということは何かあったのだろう

 

「…先輩の知り合いですか?」

 

「知り合いじゃねぇよ。ただあいつは最低な人間だ。それは、俺が奴に返しとくから東雲は絶対に会いに行くな。絶対だぞ」

 

「は、はい。分かりました。ありがとうございます。」

 

一ノ瀬先輩にそれ以上は話させてはいけないと感じ、私はそのまま寮へと戻ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

私はこの時はまだ、一ノ瀬先輩が言ってた"最低な人間"の意味がよく分かっていなかった。

 

 

 

 

 

 

 




あまり面白くない回になってしまいました、申し訳ないです。

ただこの回がないと、王竜星武祭前に特に何もなくいってしまいそうだったのでちょっと不快かもしれませがこのような展開を入れました。

菅生伸彦という名前、わかる人なら分かってしまいそうですが元はもちろん某自称妖精王の彼です。
あまり活躍と言った活躍のなかった一ノ瀬先輩にも今回は活躍して貰おうと思っているので楽しみにしてください。

それでは次回お楽しみに


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5話

徐々にお気に入り数が増えてきてて、他作品と比べたらまだ少ないんですがなんか徐々にって感じがむしろ嬉しかったりもします。

この作品の連投となりますが、詳しい投稿ペースなどはユーザーページに掲載していますので宜しかったら見て下さい。


主人公の卍解について、制限(後々解放)を設けました。1話目の戦闘シーンにて変更してあるので良ければご覧下さい。



昨日、あんな事があったせいで1日中上の空だったということもあって転校生の存在を完全に忘れてた。

 

転校2日目にして誰も寄せ付けないオーラを放っているまるでお姫様のような彼女の名は…………

 

「リーゼルタニア王国民第一王女、ユリス=アレクシア・フォン・リースフェルト」

 

そうそう、ユリス=アレクシア………。ん?

 

「……普通に人の思考読むのやめてくれないかな?クローディア」

 

「いえいえ、それ程のことではありませんよ。それに彼女よりもあなたの方が凄かったですよ?」

 

いや、褒めてないから。

それに、私ってあれよりも酷かったの?

私だって、話しかけられれば答えるしアーネストみたいに剣術の話ならいくらでもするのに…。

 

「それで昨日の件はどうなりましたか?」

 

「一応、一ノ瀬先輩に話を聞きに行ったんだけどなんか事情があるみたいだった。箱に関しては一ノ瀬先輩が返しておいてくれるって」

 

今思い出してもあの時の一ノ瀬先輩の表情は凄かった。嫌悪、怒気とかの負の感情を全部持ち合わせたような。

 

「そうですか。それで済むといいのですが…。」

 

「クローディア何か知ってるの?」

 

私がそう聞くとクローディアは少し顔を俯かせた。

 

「えぇ、知っているというよりは聞いたのですが。」

 

クローディアによると、その菅生伸彦という人が序列1位だった頃に何人かの女子生徒が星導館を辞めるということがあったらしい。退学自体は珍しい事じゃないらしいんだけど、その時期は特に多かったらしい。そのうちの1人が一ノ瀬先輩の幼馴染みの人だったらしくその人が星導館をやめた時期と一ノ瀬先輩が序列1位になった時期は殆ど同じだったらしい。

 

「…けど、その退学とその人が関係あるの?」

 

「いえ、ただその時期に辞めた女子生徒の知り合いだった人に話を聞いたのですが菅生伸彦からストーカー被害にあっていたというのが共通でした。一ノ瀬先輩の幼馴染みの方も。けれど、全部公になることはなかったそうです。これは推測ですが、菅生家は統合企業財団には及びませんがそれなりに大きな家だそうなので、多分…」

 

一ノ瀬先輩のあの反応の理由は何となくだけど、わかったし一ノ瀬先輩が私に会うなと言ってくれたことの理由もこれでわかった。

 

「わざわざそこまで調べてくれてありがと。」

 

「いえ、我が校のトップには余計な心労は掛けたくありませんのでお気になさらず」

 

そうは言ってくれるけど、これだけの情報を昨日1日で集めるのはいくらクローディアでも大変だったはず。

……ほんとに私はいい友人に恵まれたよ。

 

「それでは、また後ほど」

 

「うん、また後で」

 

クローディアは自分の席に戻ったので、私は夜吹くんに見つかる前に狸寝入りすることにした。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

長い長い1日の授業が終わり、やっと放課後になった。

 

(そう言えば、ユリスさん?今日1日誰とも話してなかったなぁ)

 

割と目立つあの容姿は、前を向いて座っているだけでも目に入るので誰かと話していればわかるはずだから多分誰とも話してなかった。

 

「琴音、一ノ瀬先輩の所へ行かなくていいのですか?」

 

「そうだね、昨日のお礼も兼ねて少し行ってくるよ」

 

「えぇ。それでは」

 

「じゃあね、また明日」

 

クローディアと別れ、私は一ノ瀬先輩がいるであろう教室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「失礼します。一ノ瀬先輩は……」

 

と呼ぼうと思ったら今にも人を殺しそうな顔をした先輩がこっちに向かって歩いてきた。

 

「……悪い、少し場所変えてもいいか?」

 

「あ、はい。」

 

先輩は私の手を取り、廊下を早歩きで歩いていった。

 

 

 

 

 

「……ここら辺なら大丈夫か」

 

先輩がようやく止まったのは、中庭だった。

 

「悪いな、急にこんな所まで連れてきて。」

 

「いえ、別に拘りは無かったので。それよりもどうかしたんですか?」

 

「……あの教室だと、お前が奴に鉢合わせる可能性が高かったんだ。昨日、あの箱を奴に返しに行った時に言われたんだ『彼女は僕のものなんだから手を出さないで欲しいな。それとも、あの子のように壊しちゃってもいいのかい?』ってな」

 

あの子とは、先輩の幼馴染みの人のことだろう。

それに壊しちゃってもいい?ってなに?

 

「…先輩、もしかしてあの子って先輩の幼馴染みの……。」

 

「あぁ、なんだ知ってんのか。……そうだよ、俺の幼馴染みの香苗は奴のせいでここでの生活を諦めざるを得なくなったんだよ!」

 

 

 

 

 

 




今回はここで終わります!

次回は多分、一ノ瀬先輩と幼馴染みの人の話になります。
ちなみに、壊されたというのは精神的にであって決して肉体的にではないのであしからず。

新キャラについてのアンケートを現在取っていますので、参加のほどお願いします。

感想(批判なしで)して貰えると嬉しいので、遠慮なくしてください。

それでは次回また。


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6話

この作品の連投になってしまい申し訳ないのですが、1番楽しく書けるのがこの作品なのですいません。

SAOの作品の方ですが、今圏内事件をどういった終結に持っていこうか考えている最中でかたまり次第投稿したいと思います。

今回は一ノ瀬先輩の過去編です。


「俺と香苗は小さい頃から殆ど一緒に居てさ、ここアスタリスクに来たのも一緒だったんだ。けど、香苗は先にここから居なくなっちゃったんだ、3年前に。」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

〜3年前〜

 

 

「香苗、最近元気ないけど大丈夫か?」

 

「うん、大丈夫。少し疲れてるだけだから」

 

俺はその頃序列なんて興味もなかったから、序列外だった。けど、香苗は元々あった才能に加えて努力も惜しまない性格だったこともあってその頃には序列2位だったし東雲程じゃないにしろかなり容姿は整ってたからファンも多かった。

 

「そっか、あんま無理すんなよ。身体壊しちゃ元も子もないしな」

 

「うん、ありがと。」

 

今思えば香苗はもう限界がきてたのかもしれない。後で周りのヤツに聞いた話だともうその頃はかなり酷かったらしい。

あの時、しっかり俺が香苗に話を聞いてやれてれば少しは変わったのかもしれないのに。

 

 

香苗はその日を境に日に日に元気がなくなっていった。

 

それから10日ぐらい経った日にたまたま学校外で香苗を見かけて、見るからに様子がおかしかったから後をつけたんだ。

 

そのまま後をつけて行って辿り着いたのは、再開発エリアの中でも特に人が寄り付かないような場所だった。

俺は香苗にバレないよう、遠くのビルの屋上から見守ることにしたがこれが失敗だった。

 

「約束通り、一人で来たわよ」

 

「…くくっ、待っていたよ。僕の婚約者」

 

そこに現れたのがその時の序列1位菅生伸彦だった。

 

「私はあなたなんかの婚約者じゃないし、なるつもりもないわよ」

 

「……まだそんな口がきけるのかい。もしかして、幼馴染みとかいうあの序列にすらのっていない彼のせいかな?まぁいい、彼のことなんかこれからこの僕が忘れさせてあげよう」

 

と菅生が叫んだ瞬間に、香苗の周りからいつも菅生と一緒にいる取り巻きが出てきた。

 

「なんのつもり?こんな人たちで、私を抑えられるとでも?」

 

この時、香苗なら大丈夫と油断した俺がいけなかった。

 

「くくっ、まさか。君の動きを止めるのはあくまで僕さ!」

 

菅生はそう言うと香苗に向かって手を振りかざした。

 

(確か奴の魔術師としての能力は……!)

 

菅生の能力は対象にかかる重力を変化させること。

まず、対人戦じゃ役に立たないが周りに押さえつける人がいれば十分だ。

 

「……香苗!」

 

俺は急いで、ビルの屋上から駆け下り香苗の元へ向かった。

 

 

 

 

「……香苗!」

 

俺が香苗の元へ向かったときには、香苗はもう制服を着ていない状態だった。

 

「…翔……?なんで…?」

 

「おやおや王子様の登場かな?今からいい所だったんだ、邪魔をしないでもらえるかな」

 

菅生の指示で、香苗を押さえつけていた奴らが一斉にこっちに向かってきた。

香苗の方を見ると、菅生1人にしか掴まれていなかったがとても逃げ出せそうな状況じゃなかった。

 

「……お前ら邪魔だよ」

 

俺は氷で作った刀で、向かってきた奴らを全員切り伏せた。

 

「へぇ、少しはやるみたいじゃないか。まぁだとしても、雑魚には変わりないんだよ!」

 

菅生はそう言うと、香苗から離れ俺の方へと歩いてきた。

菅生から解放された香苗はその場に力なく倒れた。

 

「…香苗!?」

 

「なぁに、少し眠って貰っただけさ。君みたいなゴミを潰してる間にメインディッシュに逃げられたら適わないだろ?」

 

「……このクズが」

 

「僕は紳士だからね、君のようなゴミ相手にも決闘という形をとってあげようじゃないか。確か君の名は、一ノ瀬翔だったか? さて、不撓の証たる赤蓮の名の下に我菅生伸彦は汝一ノ瀬翔に決闘を申請する」

 

「……決闘申請を受諾する」

 

俺の受諾を受け、互いの校章が輝いた。

 

「全く、礼儀というものがなってないね」

 

菅生はレイピア型の煌式武装を構え、こちらに素早く向かってくる。

 

(……この程度で序列1位?)

 

菅生は前任の序列1位だった女子生徒の先輩に譲られる形で序列1位となった。その前任の女子生徒の先輩も菅生と何かあったという噂を聞いたことがある。

 

「どうした、そんなものかい?」

 

少し考え事をしながら、避けていたら少し調子乗ってきた。

 

「…よくそんなんで序列1位を名乗れたな」

 

「なっ、なにぃ〜!」

 

さっきの一言で怒ったのだろうか、ブンブン振り回し始めた。

 

「……興ざめだ、氷の中で反省でもしていろ『千年氷牢』」

 

大気中にある、水分を全て集め菅生の周りに氷柱を出現させ囲んでいく。

 

(…今日が曇で良かった)

 

「………沈め」

 

菅生は氷柱の中へと閉じ込められた。

 

『校章破壊 勝者 一ノ瀬翔』

 

「…香苗!」

 

倒れていた香苗の元へと駆け寄って、抱き上げた香苗の体はかなり軽かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ。ここは?」

 

あの後、菅生はそのままに香苗をすぐに病院へと運んだ。

医者が言うには、香苗は普通の人だったらとっくに動けなくなっていたほど体が衰弱していた。

 

「病院だよ、香苗。」

 

「翔……私、私もう無理だよ」

 

これが香苗が俺に見せた最初の弱みであり、この後退院した香苗はアスタリスクを去った。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「って、感じだ。悪いな、聞いてて気分のいい話じゃなかったろ。だから、この前は東雲を奴に会わせたくなかったんだ」

 

一ノ瀬先輩はこの話をしている間、ずっと後悔してるような顔をしてた。

きっと、今でも自分のことを責めているんだと思う。

 

「…いえ。それで香苗さんは……」

 

「香苗なら、今は俺の実家に住んで療養中だけど、元気にしてるよ。一応、こんなんでも菅生家と同じぐらい大きいんだ、俺ん家。俺がここを卒業したら結婚する予定なんだ。予定では、序列1位と星武祭優勝を手土産にするつもりだったんだけどな」

 

香苗さん、元気なんだ。良かった。…………ん?いや待って。

 

「というより、婚約者いるのに私とデートしようとしてたんですか?」

 

「いやぁ、それはまぁなんというか」

 

「……先輩、最低ですね」

 

私はそのまま去ろうとしたんだけど

 

「ごめん、ほんとに。別に邪な思いがあったわけじゃなくて、東雲家の娘が星導館に来たっていうからどれぐらいの実力かって気になって、ただそんな理由じゃ決闘に応じてくれなさそうだったからああ言っただけで」

 

いつの間にか、先輩が目の前に来ていて頭を下げてた。

それに、だからって勝ったらデートってねぇ…?

 

「…知りません」

 

そんな先輩を無視して私は寮へと向かって歩き始めた。

 

 

 

女子寮の前まで、先輩が何度も何度も頭を下げてたのには少しびっくりした。

 

 

 

 

 

 




書いてても胸糞悪い内容になってしまいましたが、これぐらいしないとダメかと思い思いっきり書きました。

次回か、その次あたりでこの件は終わらせようと思っていますのでお付き合いください。

感想待っています!

それではまた次回


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7話

連投申し訳ないです。



今回と次回で、菅生の件は終わらせようと思っています。




あの日、一ノ瀬先輩が返品しにいってくれてからも高価そうな贈り物は毎日のように下駄箱に入ってた。入ってるのは毎回同じ大きさの箱。だけどその日によって中身が異なってた。ネックレスの日もあれば、指輪の日もあった。ただ1度として同じものは入ってなかった。

私の下駄箱に入ってたそれは、毎回一ノ瀬先輩が返品しに行ってくれた。会うのも嫌な相手なはずなのに、嫌な顔一つせずに預かってくれて、最近では毎朝わざわざ聞きに来てくれるようになった。

 

(…一ノ瀬先輩にもクローディアにも迷惑ばっかかけてるなぁ。)

 

最近毎朝登校する度に、このことばかり考えるている。自分で直接言いに行ければ何も問題ないし、それが誰にも迷惑をかけない方法なのもわかっている。けど、多分そんなことをしたら先輩もクローディアも本気で怒るだろうし、それは2人への裏切りに繋がるとも思ってる。

 

「おはようございます、琴音。元気ないようですが、大丈夫ですか?」

 

「おはよ、クローディア。……うん、大丈夫。少し考え事してただけだから」

 

挨拶を交わした後、クローディアと2人で校舎へと入った。

 

(……お願いだから、何も入ってませんように)

 

毎日こうやって下駄箱を開けているけど、何も無かった日なんて殆どない。……それは今日も同じだった。

 

バサッ

 

「……なにこれ…。」

 

下駄箱から出てきたのは、何十枚もの写真だった。それも、学校だけじゃなく私の寮の部屋の中でのものや休日に出かけたときのものもあった。

 

「……これは酷いですね。」

 

下駄箱の中を見るとまたいつものように箱が入ってた。

中身は、私が部屋で無くしたヘアピンだった。

 

[我が婚約者へ

プレゼント気に入って貰えたかな?…君のことはいつで

も見守っているから安心してくれ給え

菅生伸彦]

 

これを訴えたら普通なら、あいつには罰が与えられる。だけど、先輩が言ってた話ではどこにあいつのことを言っても話なんて聞いて貰えない。

どんなに人間が力を持ったところでお金の力には抗えない。

 

(……私はどうしたら……)

 

私はその場に倒れた。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「んっ」

 

目を覚ますと、そこは私の部屋だった。

周りを見ると丁度台所の方からクローディアが出てきた。

 

「琴音、目が覚めましたか。部屋の鍵、勝手に開けてすみません。あのまま学校にいるのは得策ではないと思ったので今日は私も琴音も休み扱いになっています。」

 

クローディアはそこまで言うと、手に持っていたティーセットを机の上に置き、私の方へ近づいてきて思い切り頭を下げた

 

「クローディア!?」

 

「すみません、私の注意不足でした。軽度とはいえ男性恐怖症であるあなたがあのようなメッセージを何度も貰い、まして今回のような写真があればこうなることは予想できましたのに。」

 

「いや、むしろクローディアが居てくれなかったらもっと酷かっただろうし感謝こそあるけどクローディアを責めることなんて何も無いからね?だから、頭あげて?」

 

私がそう言うと、クローディアは渋々ながら頭を上げてくれた。

 

「ありがとうございます。菅生伸彦の件は、一ノ瀬先輩にお任せしました。それと夜吹くんにも調査を依頼しましたが多分ダメかと。」

 

「そっか、結局みんなに迷惑掛けちゃってるんだね」

 

これには少し落ち込まざる負えない。

 

 

コンッコンッ

 

「…ん?誰?」

 

クローディアと2人で話をしていたらベランダの方の窓が叩かれた。

 

「あぁ、きっと彼ですね。」

 

クローディアは誰か分かっているらしく、ベランダの鍵を開けに行った。

 

「よーっす、東雲。大丈夫か?」

 

ベランダから入ってきたのは夜吹くんだった。

 

「それでどうでしたか?」

 

「申し訳ないんだけど、こっちの立場から出来ることは何も無い。」

 

「やっぱりそうですか…。」

 

夜吹くんは見てわかるほど、悔しそうな顔をしてくれていた。ちょっと、失礼だけど彼があんな顔するんだと少し関心した。

 

「……それとさっき一ノ瀬先輩に会ったんだけど、「ごめん、何も出来なかった。」ってさ。かなり辛そうな顔してたから後で東雲の方から話に行ってくれ。」

 

「うん。ごめんね、迷惑かけて」

 

「いや、それが俺の仕事だし気にすんなって」

 

夜吹くんは、「またな」と言ってまたベランダから出ていった。

 

「…琴音、私から強制出来ることではありませんが少しの間学校には行かない方が……」

 

「いや、クローディアそれだけはダメ。私がここで折れたらまた新しい被害者が出るだけ。私が決着をつけに行く。」

 

「……はぁ、わかりました。ただし、菅生のところへ行く時は必ず私と一ノ瀬先輩と一緒に行くこと。これだけは約束して下さい」

 

今日のクローディアは、いつもの腹黒さなんて全く感じられないほど親身になってくれている。

 

(ほんとにいい友人に出会えたよ)

 

「…わかった。それじゃあ、明日の放課後、一ノ瀬先輩と一緒に菅生のところに行くからよろしくね」

 

「えぇ、お任せ下さい。」

 

明日で全部終わらせよう。一ノ瀬先輩のためにも私のためにも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ありがとうございました。

主人公のカップリングについて、ありにしようかなしにしようか現在悩んでます。自分のなかでは、綾斗だけはなんか嫌なのであったとしても綾斗以外で考えています。
それも含めて、活動報告でアンケート取ろうと思いますので参加お願いします。

次回も楽しんで呼んでもらえるように頑張ります。
感想、よろしくお願いします。


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8話

ストーカー篇、最終回です。

あと、琴音の魔女の能力を変更しました。能力は【事象の拒絶】です!これ大事です

楽しんで読んで貰えるか分かりませんが、読んで貰えると嬉しいです。

それではどうぞ!


倒れた翌日、クローディアが用事があると言うので一人で登校することになった。いつものように下駄箱を見ると、いつものプレゼントらしきものは入ってなく、代わりに1枚の手紙が入っていた。

 

[桜姫君へ

昨日はとんだ災難だったらしいね。

今日、一人で再開発エリアのここに来てくれないかな?もちろん、嫌なら来なくてもいいが君と仲のいいクローディア?って子に迷惑がかかるかもしれないけどね。それじゃあ、いい返事を待ってるよ

伸彦]

 

(今日、クローディアが一緒に居なくて良かった。………………ごめん、クローディア、一ノ瀬先輩。あと夜吹くん。)

 

私は菅生の言う通り、放課後一人で再開発エリアに行くことにした。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜放課後〜

 

「クローディア、ごめん。今日、どうしても外せない用事が入っちゃったから明日に変更する。一ノ瀬先輩にも、そう伝えといて貰えるかな」

 

「えぇ、わかりました。」

 

クローディアは少し疑っている雰囲気だったけど、一応納得はしてくれたみたいだった。

私は、クローディアに深く追求される前に急いで学校を出た。

 

 

クローディアside

 

(さっきの琴音の様子、少しおかしかったような……。考え過ぎでしょうか?念のため、彼女に居場所の追跡を頼みますか)

 

私の勘が当たらないことだけを祈り、私は一ノ瀬先輩と彼に連絡を入れ彼女との待ち合わせ場所へと向かった。

 

 

sideout

 

 

 

 

 

私が指定された場所に着いたのは、日が少し落ち始めた頃だった。

 

「…言われた通り、一人で来ましたけど?」

 

私の声に反応して、路地の奥の方から人が歩いて来た。

 

「やぁ、待っていたよ。あのクズの邪魔が入ったせいで中々会えなかったがやっと会えたねぇ」

 

対峙した相手にここまでの嫌悪感を与えるのは一種の才能だろう。

 

「それで、何のようですか?私はあなたに用事なんてないんですけど」

 

「釣れないなぁ。君はこれから僕のものになるんだ、少しぐらいお互いのことを知るのも悪くないと思うんだけどね」

 

人の体を舐め回すように見てくる視線にはかなり鳥肌が立つ。

多分、男性恐怖症じゃない人でもこいつと話してて気分が良い人はいないと思う。

 

「…私はあなたなんかに興味はありませんし、私は誰のものでもないので。用がそれだけなら、それでは。」

 

「君は何を勘違いしているのかな?君に選択権があるとでも思ったのかい?」

 

ゴミは、そう言うと私に向かって能力を発動した。確かに、自分の体重が何十倍にも感じて動けない程じゃないがこれは中々に厄介だ。けど、この能力を発動している間彼は殆ど動けないみたいだし。それに、ゴミは私の能力を知らない。

 

「くくっ、動けないだろう。今だ、押さえろ」

 

ゴミの号令と共に、私の両脇から数人の星導館の生徒が出てくる。中には、手紙の件で決闘をした相手も居た。

 

「……私は拒絶する」

 

私の周りを溢れた出た星辰力が包み、ゴミの能力による影響を無くしていく。

 

「な、なぜだ。き、君には魔女の能力なんて……」

 

「能力が無いなんて、言ったことないですよ?それに同じ手が何度も通用すると思ってるのが間違いなんですよ。………覚悟して下さい」

 

腰に差してある千本桜を抜刀し、周りにいた雑魚を一振りで沈めていく。

 

「…後はあなただけだ。今回の件は、全部これに保存されてる。あなたの横暴もここまで、大人しくアスタリスクを去ってください。」

 

「くくっ、いやぁ参ったね。まさか、この僕がいつまでも同じ手を使うと思われていたなんてね。」

 

「…えっ」

 

菅生の高笑いと同時に、私は突然上から現れたパペットに押さえつけられた。

 

「くくっ。君の実力くらい知っているさ、それにあのクズからあの女の時のことを聞くことぐらい分かっていたさ。つまり、ここまでは想定の範囲内さ。むしろ、ここからが本番さ。それに、そこで寝ているゴミ共になんて君を触らせたくもなかったからね」

 

…やられた。私はどうにかしてパペットの拘束から逃げ出そうとしたが私の筋力でどうにかなるものじゃなかった。

 

「くくくっ、楽しみだなぁ。これから、君をゆっくりと僕のものに出来るんだ。一緒に楽しもうじゃないか」

 

菅生は、私に1歩1歩手を伸ばしながら近づいてくる。

 

(……やめて、来ないで。来ないで。来ないで。)

 

もう私に冷静さなんてものは、残されてなかった。

 

「いやぁ、いい感触だ。この肌触り、この匂い、全て今までの奴らとは比べようもない。」

 

「……いや、やめて。私に触らないで」

 

私の脚を舐め回す菅生の姿が、あの時の男と重なる。

ただ一つ、あの時と違うのは私を助けてくれる人はここにはいない。

 

私の恐怖で身体が動かなくなり、菅生の手が私の服の中へとの伸びようとした瞬間……………菅生が後ろに吹っ飛び、私を押さえていたパペットも切り刻まれた。

 

「琴音、無事ですか?」

 

「……え、クローディア……?……なんで」

 

もうダメだと思って、つぶっていた目に写ったのは裏切ってしまったはずの親友の姿だった。

 

「すみません、遅くなって。シルヴィに頼んで、琴音の居場所を探したんですよ。それに私だけじゃありません。」

 

クローディアがそう言って指さした先には、アーネスト、シルヴィ、一ノ瀬先輩。そして、夜吹くんがいた。

 

「ど、どうして?…みんな」

 

……嬉しかった。私が勝手に一人で行動したせいなのに、私にはこんなにも心配してくれる友達が居たんだって。

 

「琴音、一人で行動したらダメでしょ!」

 

「琴音が強いのはよく知っているが、君も1人の女性なんだ。無理しないで欲しいね」

 

「俺だって友達だろ?少しは頼ってくれてもいいんだぜ?」

 

「………ごめん。」

 

 

「東雲、一人で行動するなって言ったろ?まぁ無事で良かった。後は俺が始末する」

 

一ノ瀬先輩は、今まで見たことが無いほどにキレていた。

 

「…すみません」

 

一ノ瀬先輩は私の謝罪を片手を上げる形で返事をし、菅生の元へと歩いていった。

 

「このゴミが………。おれの後輩に何してくれてんだ」

 

「ひっ、ひぃ」

 

そこからは一方的だった。

気を失わない程度凍らせては、解除して。また凍らせて。

一ノ瀬先輩はそれを繰り返し続け、何度目かにして菅生は気を失った。

 

 

「……こんなもんかよ。」

 

「…………先輩、もうそれ以上は」

 

一ノ瀬先輩の怒りはまだ鎮まっていなかったが、私の一言で留まってくれた。

 

「それじゃあ、私たちは先に戻るね。クローディア、ちゃんと琴音送っていってね」

 

「よろしく頼むよ」

 

「…俺もこれ以上こいつの顔を見てて、我慢出来る気がしない。悪いな」

 

そう言ってシルヴィとアーネストは歩いていき、一ノ瀬先輩も行ってしまった。

 

「さてさて、こいつの処分は影星じゃ残念ながら出来ない。どーする?」

 

「…そうですねぇ。確か夜吹くんは新聞部でしたね」

 

「あ、それなら。これ」

 

私は先ほどのことを保存した端末を夜吹くんに渡した。

 

「なるほどねぇ。そういうことね。明日楽しみにしといてくれ」

 

と言って、夜吹は気絶している菅生を抱えて一瞬のうちにどこかへ行ってしまった。

やっぱり、本物の忍なんだなぁと改めて思った。

 

「……クローディア、嘘ついてごめんね」

 

「今回ばかりは許しません。……あれほど、言ったのに何故ですか?」

 

私は、クローディアの顔を見てほんとに申し訳なく思った。あのクローディアの目から涙が零れていたのだ。

 

「ご、ごめん。菅生に一人で来なきゃ、クローディアに迷惑がかかることになるって……」

 

「私への迷惑なんて、気にしなくていいんですよ!あなたに何かあったらどうするんですか!」

 

初めてクローディアに叱られた。

でも、とても心が暖かかった。

 

「とにかく、もうこんなことしないでください」

 

「う、うん。わかった」

 

「それじゃあ、帰りますよ。………ちなみに、今日から琴音の部屋は私と共同ですからね」

 

私の手を取り前を歩き始めたクローディアは、ついでとばかりに、私の一人部屋が無くなったことを教えてくれた。

今回の事があったから、仕方なないとは思うけどクローディアも確か一人部屋だったよね?いいのかな

 

 

 

 

クローディアと私の新しい部屋は、今まで生活してた部屋よりもかなり大きかった。

 

 

 

 

 

 

翌日、菅生は下着1枚の状態で校門のところで発見され、新聞部である夜吹くんによって発行された記事とともに私が記録したあの映像によって学校での立場をなくし"星導館"を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




菅生への罰、甘いっ!と思う方が多いかもしれませんがこれが限界でしたすいません。

この後は、王竜星武祭に入ろうと思います。

活動報告にてオリキャラ、カップリングについてアンケートを取っていますので参加して貰えると嬉しいです。





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9話

今のところ、ギリギリ毎日投稿出来てますね。
できる限り、頑張って毎日投稿したいと思います。


今回は話自体は進みません。
それではどうぞ


「………お姉ちゃん、私を忘れないで」

 

目の前の少女は、今にも消えそうな声で私に語りかけてくる。

 

「…待って、あなたは……」

 

少女はいつの間にかいなくなっていた。

そこに私の叫び声が虚しく響いただけだった。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

(……またあの夢か…)

 

菅生伸彦の件から、早くも数ヶ月が過ぎ王竜星武祭の時期になった。

正直、この数カ月間は六花に来て初めてと言っていいほど落ち着いた日常を過ごすことが出来た。

この間にあったことといったら、不思議な夢を見る回数が増えたこと。それと、ユリスさんの序列が怒涛の勢いで上がっている事だと思う。相当実力が高いのか、決闘をよく挑まれているらしいけど全部返り討ちにしているらしい。なんで推測かって?私自身は、1度も見たことがないんだなぁ、これが。他人の決闘には元々興味が無いのが理由だと思う。

 

(それにしても王竜星武祭かぁ……。シルヴィも出るって言ってたし、あの弧毒の魔女も出てくるんだよね。)

 

「おはようございます、琴音。朝から窶れたような顔してどうしたんですか?」

 

クローディアは、最近忙しいのか毎日私よりも先に寮を出ているため朝はあまり顔を合わせることが少ない。

 

「あ、おはよ、クローディア。いやぁね、王竜星武祭のこと考えてたらやっぱり憂鬱だなぁって」

 

「あなたがそれを言いますか…。私からしたら、今回の王竜星武祭に出場する選手には同情しますけどね。(なんと言っても琴音とあの【弧毒の魔女】が出てくるんですからね)」

 

なんだかクローディアにはかなり失礼な事を言われた気がしたが、多分私の勘違いだろう。

 

「……琴音には、我が校の生徒全員に加えて総勢800人を超えるファンクラブ全員が期待していますから、頑張ってくださいね」

 

と、クローディアは最後に余計な一言を残し自分の席へと戻っていった。

 

(…私のファンクラブって、そんなにいるの?嘘だよね…)

 

「…残念ながら、これが嘘じゃないんだよなぁ。ちなみにこれ、会員証ね」

 

いつの間にか、後ろの席に座っていた夜吹くんは得意げな顔で私に会員証?なるものを見せてきた。

 

「………No.0000002?」

 

「そっ、おれ2番目なんだ。ちなみに、1番目はクローディア。3番目にアーネスト・フェアクロウ。4番目にシルヴィア・リューネハイム。学園問わず、各学園にそれこそレヴォルフにだっているんだぜ?あ、ちなみに10番目ぐらいに東雲透って名前があったな」

 

(そんなに私は目立つことしてないんだけど……。それに透、そんなものに入らなくても呼ばれればいつでも帰るのに…。)

 

↑一ノ瀬翔との決闘。シルヴィとのライブ。これで目立たない方がおかしいのである。

 

夜吹とクローディアによって、私の元々低いテンションは地へと落とされた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜放課後〜

 

朝から憂鬱にさせられた、1日はとても長く感じた。

ここに来てから、トップ10に入るほどの苦行だったに違いない。

私は少し気怠さを感じる身体をゆっくりと動かし、冒頭の十二人に与えられる修練場へと向かった。

 

 

 

 

 

最近、ここ数ヶ月私が行っていることは私の相棒である【千本桜】との対話。

この子、千本桜の代償は精神世界で千本桜と戦い屈服させることでそれによって、卍解を扱えるようにもなる。

私は、この子を母から譲られた時になんとか勝ち屈服させることには成功した。けど、私の卍解はまだ完成されていない。理由はわからない。けど、確かに私には何かが欠けている。そう言われている気がする。

 

(………私に何が足りないのか、少しでも見つけよう)

 

私は、千本桜へと意識を落としていった。

 

____________

 

 

次に目を開けると、そこは現実とはかなり異なる世界だった。目に見える限り、桜。

真っ白な世界に、ただ桜の花がいくつも咲き誇っている。

 

(…いつ見ても綺麗だなぁ。)

 

「あら、琴音。また来たのね」

 

声がした方を見ると、そこには着物に身を包んだ千本桜が立っていた。

 

「まぁね。今の私はまだあなたの力を半分も引き出せてない。………それに私自身の力も」

 

昔、母に言われたことがあった。「あなたの力は、とてもじゃないけど私たちじゃ抑えきれない」と。何故そんなことを言われたかなんて事は覚えていない。理由は、私の記憶は10歳より前のものは私の中に存在していないから。丁度、父がいなくなった頃の話だ。

それ以来だろうか、私の夢には1人の少女が現れるようになり、特に最近は多い。近づこうとすれば離れていき、追いかけても追いかけても追いつけない。話しかけても、いつの間にかいなくなってしまう。

 

「琴音の本来の力ならば、私の力を引き出すなんて造作もないことですよ………。まぁ悩んでいても仕方がありません、お茶でもどうですか?」

 

……千本桜、さっきまでの空気が台無しだよ。

 

「……うん、じゃあお願い」

 

「はい、畏まりました」

 

千本桜は、いつものようにお茶をいれ始めた。

 

(…私、本来の力か。)

 

 

 

私は、その後桜を見ながらゆっくりとお茶を頂いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回は、日常回に加えて琴音の過去・卍解が未完成な理由でした。

千本桜はBLEACH原作とは変え、女性とさせて頂きました。理由は、千本桜と琴音を描く際に女性の方が楽かなと思ったからです。

少しゆっくりした回になりましたが、次回は王竜星武祭に入ろうと思います。

それでは、また次回。


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10話

えー、1日空いてしまい申し訳ありません!

言い訳するつもりは無いのですが、話が中々纏まらなかったのと東京喰種の方に手を出してしまいました。

今回から、王竜星武祭です!
戦闘描写は徐々に上手くなると期待して、暖かい目でお願いします


結局、卍解の完成に至ることは出来ないまま王竜星武祭を迎えた。

 

 

『さぁいよいよ始まりました、王竜星武祭。実況は私エラ・マーリン。解説はナナ・セシルさんでお送りします』

 

『どうもです。』

 

『いきなりですが、今大会の見どころとはどこでしょうか』

 

『そうですねぇ、まずは前大会の優勝者であるレヴォルフ黒学園序列1位【弧毒の魔女】オーフェリア・ランドルーフェン選手。同じく、準優勝者であり絶大なる人気を誇るクインヴェール女学院序列1位【戦律の魔女】シルヴィア・リューネハイム選手。そして、リューネハイム選手に負けない人気を誇る星導館学園序列1位【桜姫】東雲琴音選手。この3人ですかね。』

 

『東雲選手の人気はこの六花においては、かなり高いみたいですね。かく言う私も、彼女のファンクラブ入ってるんです。』

 

『私も入っていますよ。彼女と言えばその人気とは裏腹に殆ど実力が明かされていないことも有名な話ですので、とても楽しみですね』

 

『えぇ!そして、このスタジアム最初のカードはこの2人。レヴォルフ黒学園序列12位ヤミ・レーモンド選手と星導館学園序列1位東雲琴音選手です!』

 

(……私の解説だけ多くない…?)

 

私は息を整え、ゆっくりと所定の位置へと向かった。

 

「へへへっ、初戦から【桜姫】と戦えるとはなぁ。お手柔らかに頼むぜぇ?」

 

対戦相手である、レヴォルフの生徒は煌式武装を構え、私を舐め回すように見てくる。まるで、菅生のようだ。

 

 

『さぁ、そろそろ試合開始となります。王竜星武祭1回戦!!』

 

『Start of the duel』

 

『バトル、スタート!!』

 

スタートと同時に相手は私に向かって走り出したが、私は1歩も動くつもりはない。

 

(………遅いなぁ)

 

「おいおい、どうしたんだ?びびっちゃったのか?」

 

相手は、スピードを緩めることなくそのまま突っ込んできた。

 

(まさか、このスピードが全力なのかな?多分、防がれるだろうけど…。)

 

私は、すれ違いざまに彼の校章目掛けて抜刀し、納刀。

 

 

………その一撃で彼の校章が切れた。

 

『ヤミ・レーモンド校章破壊。勝者東雲琴音』

 

(……嘘でしょ?)

 

『試合終了ー!勝者、東雲琴音選手!圧倒的でしたね』

 

『いやぁ、今の抜刀は見えなかったですね。正直、驚きしかないです。』

 

『私もです。気づいた時にはレーモンド選手の背後に回っていましたからね。』

 

『あの速さについていける選手は多くはないと思います。これは今大会わかりませんね』

 

〜〜〜〜〜〜〜〜

 

〜自室〜

 

あの後、帰ろうと思ったらファン?の人たちに追いかけられて大変だった。多分、試合よりも疲れた。

 

「琴音帰ってたんですか。試合、お疲れ様でした。」

 

「あ、ありがとう、クローディア。」

 

「それにしても、流石でしたね。」

 

流石?多分、試合の事なんだろうけど…

 

「いや、あの相手ならクローディアでもあの結果だと思うよ。」

 

「いえ、私はあんなに速くは動けませんよ。(私でさえ、ギリギリ抜刀したのが見えたぐらいなんですから。)」

 

「そんなことないと思うけどなぁ」

 

実際、クローディアの純星煌式武装の【パン=ドラ】の未来予知能力は厄介だしクローディアの双剣の速さは中々のものだ。

 

「いえ、それよりも次の試合も頑張って下さいね。」

 

「うん、シルヴィと当たるまでは負けないつもりだしね。それじゃあ、おやすみ」

 

「(…多分、シルヴィは出来ることなら当たりたくはないと思っているでしょうが…。あんなにも私の双剣を軽く流されたのは初めてですよ。)えぇ、おやすみなさい」

 

 

 

私はその後準々決勝に勝ち進むまで、抜刀以外の攻撃をすることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最後、雑!と思われた方が多いと思いますが、瞬殺をグダグタ描くのもどうかと思ったのでお許し下さい。

明日はしっかり投稿したいと思います。

新キャラなど、アンケート取っているので参加お願いします。


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11話


なんとか毎日投稿出来ていますね。

それでは、11話どうぞ


 

私は強い人と殆ど当たることなく、準々決勝まで駒を進めた。王竜星武祭に出れば、強い人と戦えるとクローディアに言われたのに…。

確か準々決勝の相手はレヴォルフの序列3位。

運良く、【孤毒の魔女】ともシルヴィとも違う山だったから当たるとしたら決勝戦だ。

 

 

(………強い人いないのかなぁ。)

 

控え室でそんなことを考えながら、前にやっている試合を観戦している。今やってるのは、界龍の選手とガラードワースの選手だ。

ただ、手を抜いてやってるのかあまりにもスピード感のない試合だった。

 

(……あれで本気なわけないよね。だって、あんなんじゃ総ちゃんの8割よりも全然遅いし。)

 

六花にはいない、親友のことを思い出しながら物思いにふけっていると試合が終わっていた。

勝ったのは、ガラードワースの選手。結局、あれよりもスピードを上げることは無かったようだ。

 

(……千本桜、この試合もお願いね)

 

心の中で、相棒へと声を掛け私は会場へと向かった。

 

 

 

 

『さぁ、いよいよ王竜星武祭も終盤!本日、二試合目の出場選手はこの2人!レヴォルフ黒学園【愚騎士】マルス・ヘンリー選手。』

 

会場がブーイングに包まれた。

 

(…彼なにかしたのかな?)

 

『そして、ここまで圧倒的な強さを見せている星導館学園序列1位【桜姫】東雲琴音選手です!』

 

「「「きゃあぁぁぁ!!」」」

 

初戦の時よりも圧倒的に歓声が増えたように感じる。

 

(……私なんかよりも魅力ある人なんて、たくさんいるのに。私でこんなにってことはシルヴィはもっと大変なんだろうなぁ)

 

『いやぁ、このカードは中々に見物ですよ。各学園の序列トップクラスの戦いですからね。レヴォルフと言えば、序列1位でもある【孤毒の魔女】があまりにも有名ですから他の選手が霞みがちですが、彼は戦い方こそアレですが実力者なのは変わりないですから。対して、ここまで居合いの瞬殺で勝ち上がって来ている東雲選手ですからね。楽しみです。』

 

「有名な【桜姫】ちゃんと戦えて嬉しいぜ。初戦では、俺の弟分が世話になったな。だからって、なんとかしようって訳じゃないぜ?なんたって、俺みたいなイケメンは心も広いからな。あんたぐらいの容姿だったら、付き合ってやっても構わないぜ?」

 

「……(この人大丈夫なのかな?容姿だって、一ノ瀬先輩やアーネストに全然勝ててないし。多分、ブサイクの範囲。)……遠慮します」

 

「恥ずかしがらなくたっていいんだぜ?去年、あの歌姫だって本当は俺に惚れてたんだぜ?なのに、俺が話しかけてやったのに「話しかけないで!」とか言いやがってよ。あの程度の女、いくらでもいるのによ。」

 

「…………。(シルヴィがこんな奴に惚れてた?あの程度の女?)」

 

私はゆっくりと千本桜を鞘から抜き構えた。

 

(……総ちゃんから教えて貰った唯一の技。こんな人に使うのは失礼だとは思うけど。こいつだけは、叩き潰す)

 

『両者準備が整ったようです。それでは、王竜星武祭準々決勝第二試合スタートです!』

 

『Start of the duel』

 

『バトル、スタート!!』

 

「へへっ、楽しもうぜ」

 

無闇に突っ込んでは来ない。多分、私の今までの戦いを見てきたんだと思う。

 

(………あなたはすぐに消えさせてあげる。)

 

私は千本桜を水平に構え、思いっ切り踏み切る。

 

「……一歩音超え」

 

「二歩無間……」

 

「三歩絶刀……」

 

「……無明三段突き!!」

 

『マルス・ヘンリー校章破壊。勝者東雲琴音』

 

『し、試合終了ー!勝者東雲選手!これは凄い、一瞬のうちに距離をつめ、実況の間もなく倒してしまいました。』

 

『いやぁ、今のはすごかったですね。今までとは、スピードもキレも段違いだったように思えます。正直どうやって倒したのか見えませんでした。』

 

『今までのスピードも目で追うのが難しかったですけど、今のは全く見えませんでしたし、これが本気ということでしょうか』

 

『それは分かりませんが、とにかく東雲選手のスピードは尋常じゃないですね』

 

私は腰を抜かしているマルスに聞こえるように呟いた。

 

「…あなた程度の男が、シルヴィの事を語らないで」

 

聞こえていなかろうが、これでいい。

これ以上、彼に関わるのは私の理性が持たないと思うから。

 

私はせっせと控え室へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…琴音、なにかありましたか?」

 

控え室に戻った私と会うなり、クローディアはそんなことを聞いてきた。

 

「どうして?」

 

「琴音は気がついてないかもしれませんが、殺気が溢れてますよ…。それに、あの戦い方琴音らしくありませんでしたよ」

 

どうりで、すれ違う人がすぐに離れて行くわけだ。

……私らしくないか。言われてみればそうかもしれない。六花に来てからは、自分から攻めに行くなんてことしてなかったから。

 

「ちょっとね。」

 

「もしかして、対戦相手がなにかしたんですか?」

 

流石にクローディアは鋭い。まぁあの状況で考えられる相手は彼ぐらいだろうけどね。

 

「うん、まぁね。あのレヴォルフの人がさ、去年シルヴィと当たったらしいんだけど。それでなんかシルヴィのことを馬鹿にされてさ、頭に血が登っちゃった」

 

「なるほど、それは仕方がありません。私でしたら、再起不能に追い込むところでした。」

 

クローディアは、さらっと怖いことを言ってくる。

あれでも、私は少し加減をして上げた。だって、全力でやったら彼死んでしまうし。

 

「さぁ、帰りましょうか」

 

「うん。そうだね」

 

 

(王竜星武祭もあと二試合。

次の試合、シルヴィと戦うためにも絶対に負けられない。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





どのキャラが出てきたか、わかりましたか?
後々、ちゃんと出てきますので安心してください!


それではありがとうございました。


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12話

なんとか毎日投稿出来ていますね。

頑張って投稿していきたいと思いますので、読んでもらえると嬉しいです


先日の準々決勝の後、いろんな人に物凄く心配された。

私って、そんなに温厚に見えるのだろうか……。

 

とは言え、先日の結果から今日の準決勝の組み合わせが決まった。

 

第一試合

東雲琴音VSノア・ローレン

 

第二試合

オーフェリア・ランドルーフェンVSシルヴィア・リューネハイム

 

全員、各学園の冒頭の十二人。特に第二試合は、前大会の決勝のカードということもあっていつも以上の注目を集めている。

 

「琴音、どうしたんですか?」

 

試合前の私の控え室に来る人なんて、物凄く限られている。それこそ、クローディアしかいない……。

まず、星導館に知り合いが夜吹くんとクローディアしかいない……。べ、別に悲しくはないけど。

 

「いや、今日の試合楽しめるといいなって」

 

今までの試合、相手が本調子じゃなかったのか千本桜を解放すること無く勝ててしまった。

こんなことを言うのは失礼かもしれないけど、もっと全力で楽しみたい。

 

「試合を楽しむですか……。なんというか琴音らしいですが、普段の琴音からは想像もつかない物言いですね…」

 

ほんとに、みんなの中の私はどれだけいい子なんだろうか。私だって、一応剣術の一家の生まれな訳だし?普通の子と比べたら小さい頃からやってるわけだから、強い人とやりたくなるのが普通だと思う。この辺はアーネストはよく分かってくれる。

 

「そうかな?…それじゃあ、そろそろ行ってくるね」

 

「えぇ、頑張って下さい」

 

クローディアに見送られながら、私はステージへと向かった。

 

 

 

『さぁ、この王竜星武祭も残すところあと2日!本日の準々決勝第一試合、出場選手はこの2人!』

 

『聖ガラードワース学園序列7位【志剣士】ノア・ローレン選手!!』

 

周りからかなりの歓声が上がる。

流石は、ガラードワースの冒頭の十二人【銀翼騎士団】の1人と言った所だろうか。準々決勝の彼とは大違いだ。

 

『そして!ここまで圧倒的な力を見せつけ続けている星導館学園序列1位【桜姫】東雲琴音選手!!!』

 

「「「「きゃあぁぁぁ!!」」」」

 

(毎回、これ定番なのかな………?)

 

「此度は、かの有名な【桜姫】と戦えて光栄です。僕の名前はノア・ローレンです。」

 

「えっと、私は東雲琴音。よ、よろしく」

 

前回との差に驚いて噛んでしまった。

ここまで、学園の特色が出るんだと少し関心してしまった。

 

「そこで、一つお願いがあるのですが。」

 

「えっと、なんでしょうか?」

 

「全力を見せて頂きたい。手を晒したくないと言うなら結構です。その時は自分の実力を持って引き出す迄ですので」

 

「(別に全力でやることぐらいなら、構わないのに……。けど、彼がああ言うんだ。楽しみにさせてもらおう)考えておきます。」

 

『さぁ、両者準備が整ったようです。王竜星武祭準決勝第一試合スタートです!』

 

『Start of the duel』

 

『バトル、スタート!』

 

「…参ります」

 

様子見に、一気に距離を詰め一閃。

これはギリギリの所で防がれた。

私は後ろに跳び、1度距離を取った。

 

「くっ、速いですね」

 

「いぇ、まだまだですよ」

 

今度は、さっきよりも1段スピードを上げ思いっ切り振り抜いた。

 

ザシュッ

 

捉えたが、浅かった。

 

(やっぱり抜刀した状態からじゃ、軌道が見えて避けられちゃうか…)

 

『これは凄い!開幕から東雲選手の怒涛の攻撃。特に二撃目は目視すら難しかったです』

 

『そうですね。けど、多分彼女はまだ上を隠してますよ。』

 

『これよりも上があるんですか!?』

 

『えぇ、多分。先程のは多分8割ぐらいではないでしょうか』

 

(…ごめんなさい、今ので5割です)

 

「いや、まだ上があるんですか…。見てみたいものですね」

 

「………後悔しないで下さいね」

 

キンッ

 

(……私の今出せる全力。)

 

「………。参ります」

 

足に溜めた力を逃さないように、思いっ切り横に踏み切る。

 

「なっ!?消えた?」

 

相手の正面まで到達すると同時に、勢いを殺さないように踏み出し相手の右腰から左肩向けて思いっ切り振り抜く。

 

「…東雲流抜刀術【紫電一閃】」

 

「これは凄いです……ね」

 

『ノア・ローレン校章破壊&意識喪失。勝者東雲琴音』

 

『決まったぁぁ!!試合終了ーー!勝ったのは東雲琴音選手!最後の攻撃は全く見えませんでした!』

 

『ここまで速いとは驚きしかないですね。先日の準々決勝といい今回と言い、東雲選手のスピードには底がないように思えます』

 

(……少し楽しめました。ありがとうございます)

 

意識の無いノア・ローレンに感謝を伝え、私は控え室へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

「試合お疲れ様です。ただ琴音、あなたどれだけ速いんですか…」

 

控え室へと戻って来るなり、クローディアに呆れられた。

 

(……そんなに速いかな?総ちゃんの方が私よりも速いんだけど……。)

 

「そんなことないよ。それより、一緒に次の試合見に行こ」

 

「えぇ、それなら星導館専用のVIPルームがあるのでそこに行きましょう」

 

 

次は、シルヴィと【孤毒の魔女】の試合。シルヴィにとっては、去年のリベンジマッチ。

 

(……シルヴィ頑張れ)

 

届くことはないが、それでも私は心の中でエールを送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうでしたか?

だんだん、琴音が戦闘狂になりつつありますね……。

剣術の名門の家の生まれなのに、なにも技出していないことに気がつき慌てて出させてもらいました。

次回は、シルヴィVSオーフェリアです!


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13話


もしかしたら、少しオーフェリアにアンチ入ってしまっているかも知れません。が、決してオーフェリアはアンチではないのでそこの所よろしくお願いします!


 

私はクローディアに連れられて、星導館専用のVIP席で試合を見ることになった。

元々は、銀河の人たちが見るためにあるらしいんだけど誰1人として来ていないため星導館の生徒に貸し出されているらしい。

 

「…それにしても凄いね。この部屋…」

 

「えぇ、一応銀河の幹部が見るための部屋ですからね。殆ど来ることはありませんが万が一来た時に粗末な部屋ではどうなる事やら…」

 

確かに統合企業財団の幹部はわざわざ星武祭なんて見には来ないだろう。聞いた話では、人間性を捨てた人しかなることが出来ないらしいし。

 

「…琴音、シルヴィ出てきましたよ。」

 

この部屋、実況も聞こえないらしい。

あれだけステージでは聞こえた歓声もこの部屋では何も聞こえない。

 

(……こんな部屋で見てて楽しいのかな…?)

 

一応、モニターはあることにはあるがこの場所から試合が見れるなら殆ど必要無いに等しい。

 

シルヴィの歌が聞けないのはほんとに残念だ。

 

「…クローディアはどっちが勝つと思う?」

 

「そうですね……。【孤毒の魔女】ですかね。前回大会でも、シルヴィは彼女の毒に対して打つ手がありませんでしたから。なにか対策をしているにしろ、シルヴィが不利なことには変わりないですから。」

 

クローディアの見立ては正しいと思う。

私自身【孤毒の魔女】の戦いを生で見たわけじゃないけど、あの毒は少々厄介だと思う。

まず普通の人なら太刀打ちできないし、シルヴィの歌の力がどれだけ対抗出来るかってところかな…。

 

「琴音、始まりますよ」

 

【孤毒の魔女】、現六花最強の魔女の力見せてもらうよ

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

試合開始早々に仕掛けたのはシルヴィだった。

 

「……あれがシルヴィの歌の能力……。」

 

シルヴィからしたらただ旋律を奏でているだけなんだと思う。けど、それは見る者を魅了するほど美しい光景だった。

 

「…流石は【戦律の魔女】ですね。歌うだけでここまで見る者を惹き付けるとは。」

 

シルヴィが旋律を奏でる度にシルヴィ自身の星辰力が高まっていく。

 

(…流石。星辰力の練り方が他の選手と比べて圧倒的に上手い。)

 

シルヴィは歌い終えると同時に、【孤毒の魔女】との距離を一気に詰めに行った。

 

「………あれが毒……」

 

シルヴィが【孤毒の魔女】へと到達する直前に彼女の周りから瘴気と言うべきものが溢れ出た。

 

「…やはり凄いですね。琴音を見すぎたせいでそこまで驚きませんが。」

 

(……クローディア、酷いよね!?

私はあそこまで化け物じゃないよ?星辰力だってあんなに多くないし……今は。)

 

私が内心クローディアに突っ込んでいる間に試合が動いた。

 

 

シルヴィが退くと同時に、【孤毒の魔女】から溢れ出たいた瘴気が彼女を中心にステージ全体を覆った。

 

「「シルヴィっ!」」

 

私もクローディアももうダメだと思ったが、今度はシルヴィがいた場所を中心に瘴気が消えはじめた。

 

「……あれは?」

 

「私にもわかりません。ただ、シルヴィの歌であるのは確かです。」

 

シルヴィの歌はステージ場に広がった瘴気を全て消し去った。

 

(……凄い。ただ、今のでシルヴィは星辰力を使い過ぎた。それに対して、【孤毒の魔女】にはまだまだ余裕がある。……………頑張ってシルヴィ)

 

祈ることしか出来ないのがもどかしい。

 

そこから、シルヴィは防戦一方となってしまった。

【孤毒の魔女】の攻撃に対して、なんとか攻撃を防いではいるが見るからに疲労がどんどん溜まっているのがわかる。

 

「…シルヴィには厳しいですね」

 

「うん。それでも、シルヴィはまだ諦めてないよ。まだ大丈夫。」

 

何度目かの攻防の後、一瞬【孤毒の魔女】の瘴気が明らかに弱まった。

その一瞬をシルヴィが逃すはずが無く、先程瘴気を消し去った旋律で【孤毒の魔女】を覆った。

 

「なるほど。これで瘴気は出せませんね」

 

(………怪しい。まだまだ星辰力に余裕があるはずなのに。)

 

シルヴィは旋律で【孤毒の魔女】の瘴気を抑え、右手に持った煌式武装で校章を斬りにいった。

 

ブワァ

 

シルヴィの武器が校章に届くその瞬間に、旋律が消え【孤毒の魔女】から瘴気が溢れ出た。

それはまるで手のように動き、シルヴィを捕らえた。

 

「……まさか、狙って?」

 

今のタイミングは、あまりにも完璧だった。

シルヴィを捕らえるには最適な……。

シルヴィの星辰力が弱まっているのは見るからにわかる。だとしても、あのタイミングで旋律が消える確信があったのだろうか…。

 

 

瘴気の手に掴まれたシルヴィは、何度もステージに叩きつけられボロボロになっていた。

 

「…これ以上やったらシルヴィが死んでしまいますよ!」

 

確かに不味い。

アナウンスがないということらシルヴィの意識がまだあるということ。

それに加え、シルヴィの全身には所々明らかに瘴気の影響からか毒々しい色へと変わっていた。

会場の雰囲気も先程までとは打って変わりお葬式のようだ。

 

「………クローディア、……どうやったらステージに行ける?」

 

「……試合中はステージに行くことはできません。それこそ、ここのガラスを破壊するぐらいしか……。」

 

「………ごめん、クローディア。」

 

「琴音!?何をするつもりですか?」

 

クローディアが私を止めようと手を伸ばして来るがもう遅い。

 

「散って、千本桜。………………卍解 千本桜景厳」

 

全ての刃を1点へと集める。

ガラスにはそこを中心に亀裂が入り始めた。

 

パリーン

 

「……よし。ほんとにごめん」

 

私は顔を真っ青にしたクローディアを置いて、急いでシルヴィの元へと向かった。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「……もうこれ以上やる必要はないよね?」

 

私は瘴気の手を数億の刃で消し去り、掴まれていたたシルヴィを開放し腕に抱きかかえた。

 

「シルヴィ、大丈夫?」

 

「こ、琴音…?」

 

「うん。ごめんね、勝手なことをして。」

 

「ううん、ごめんね。約束守れなくて」

 

『シルヴィア・リューネハイム降参。勝者オーフェリア・ランドルーフェン』

 

『えっと、試合終了です。』

 

「ううん、大丈夫だよ。シルヴィの雄姿ちゃんと見てたから。まずは、それ治さないとね。」

 

シルヴィを一旦ステージに寝かせ、1度集中する。

 

「……私は拒絶する」

 

私の星辰力がシルヴィの身体を包みこみ、変色していた所も治っていく。

 

「……はぁ、はぁ。……シルヴィ、…大丈…夫?」

 

「えっと、うん。さっきまでが嘘みたいだよ。けど、琴音こそ大丈夫なの?」

 

「……うん、大…丈夫。ちょっと…星辰力使いすぎた……だけだ…から。」

 

『これは凄い!突如現れた【桜姫】の星辰力がリューネハイム選手を包んだ瞬間にリューネハイム選手の傷が嘘のように消えました』

 

『これは彼女の魔女の能力でしょうかね。なんにしても凄いです』

 

(…流石にあの傷を治すには星辰力を喰うか…。そんなことよりも今は)

 

私は星辰力を使い過ぎて少し辛い身体を動かし、【孤毒の魔女】の方へと歩く。

 

「……なんで、あそこまでしたの?……私が止めなきゃシルヴィの命が危なかった」

 

実際、私の星辰力の消費から考えてもあと少し遅ければシルヴィはかなり危なかった。

 

「…彼女は降参しなかったわ。」

 

……降参しなかった?

だからといって、あんなに痛めつける必要はあったの?

 

「………校章を…破壊すれば良かったでしょ。……決勝戦、あなたには地獄を見せてあげる」

 

「……あなたには無理よ。………もう誰にも運命は覆せない…。」

 

…運命は覆せない?

彼女の過去に何があったかは知らない。けど、私の親友にここまでしてくれたんだ。

 

 

……決勝戦、全力で叩き潰す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





書いてて、シルヴィが可哀想になってしまった……。
シルヴィファンの方々申し訳ないです。ただ、話の感じからこうなってしまったのでお許し下さい。

シルヴィには後々活躍してもらうのでそれまでお待ちください。

あと、前書きでも言いましたがオーフェリアも今回はこんな感じですが決してアンチではないです

それでは次回。


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14話

今回は、決勝戦には入りません。
次回には入ろうと思いますのでお願いします。


準決勝と決勝戦の間には1日休憩日があり、今日はその休憩日。最初は今日一日千本桜との対話に使おうと思ってた。

 

「さぁ、早く行きますよ。琴音」

 

当初の目論みとは大きく異なり、私は今六花最大のショッピングモールに来ている。

 

もはや、出掛ける時の恒例の光景となりつつあるシルヴィ、クローディア、そして私の3人。

どうせ、対話しても最終的にはお茶をするのであまりやっている事には変わりないとはいえ明日決勝戦がある人を連れ出すのはどうなんだろう……。

 

(…シルヴィの気分転換と言われちゃえば断れるわけもないんだけどね)

 

シルヴィは昨日の準決勝のあと、かなり落ち込んでいたけど今日は少し無理しているとはいえ随分と良くなった。

 

「琴音〜、このお店入ろうよ」

 

「うん、いいよ」

 

ただ、例の如く変装を全くしないのはやめて欲しい。

ただでさえ、この3人でいると目立つのに尚更目立ってしまう。それこそ、私たちの前の道だけ人がいなくなる程。

 

 

 

 

シルヴィが入っていったお店はとても落ち着いた雰囲気で、とても静かな空気が漂って"いた"。

 

 

そう、漂っていたのだ。

 

 

シルヴィがお店に入った途端にその空気は崩れ、店員さんからお客さんまで全員の視線を集めていた。

 

((……またご迷惑を……))

 

私とクローディアは内心店員さんに謝りながらもシルヴィが座った席へと向かった。

 

 

注文をし、席に座ると先程までの落ち着いた雰囲気はどこに消えたのやら、視線が多すぎて落ち着いてもいられなかった。

 

「……ほんとはね、今日琴音を誘ったのは私の気分転換に付き合って欲しかったからだけじゃないんだ」

 

席に着くや否や、シルヴィは突然不思議なことを言った。

 

「……どういうこと?」

 

「先日、シルヴィが危なくなって助けたあと琴音言いましたよね?「地獄を見せてあげる」と。」

 

(………あぁ、言ったね。今でもそのつもりだけどね)

 

「そのことなんだけどね…。私は琴音にそんなことを思って戦って欲しくないんだ」

 

「……どういうこと?」

 

何を言っているのか分からなかった。

彼女は【孤毒の魔女】はしなくてもいい攻撃をして、シルヴィの命を危険に晒した。それは許すべきものじゃない。

 

「シルヴィは、あなたに戦いを純粋に楽しんで欲しいんですよ」

 

……クローディア、私はそこまで戦闘狂じゃないから。

 

「…戦いを楽しむかぁ……。」

 

「うん、琴音には怒りでなんか戦って欲しくないんだよ。だって、戦ってる時の琴音って凄く輝いて見えるから。」

 

「えぇ、私もそう思います」

 

……それって戦闘狂ってことなんじゃ……。

私はそこまでじゃないと思う。多分

 

「…シルヴィありがとね。お陰で目覚めたよ、決勝戦楽しんで来る」

 

「うん!頑張ってね」

 

ほんとにいい友達を持った。

シルヴィもクローディアもまだ知り合ってからの年数は経ってないけど多分私のことを誰よりも分かってくれている。

 

「それじゃあ、今日は目一杯楽しまないとね♪」

 

 

 

……そこからは大変だった。

会計の際にシルヴィだけじゃなくて、何故か私のサインも頼まれ。

お店から出るとシルヴィの出待ちであろうファンがとてつもない数居て、私とクローディアでどうにか出ようと思ったら何故か私が囲まれて……。

 

 

(……今日一日で余計に疲れた気が……)

 

決勝戦を控えた前日に今まで以上に疲れることをしたお陰で、寮の部屋に戻ってすぐにベッドへと向かった。

 

「…琴音、明日は頑張って下さいね。」

 

「うん、ありがとう。それじゃあ、おやすみ」

 

「えぇ、おやすみなさい」

 

 

 

 

(……明日は私の全力を以て、【孤毒の魔女】に…勝とう)

 

 

柄にもなく、明日の試合の決意を胸にしてから私は眠りについた。




次回は遂に決勝戦です!

お楽しみに!


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15話


今回は少し短いです。




 

『さぁ、白熱の王竜星武祭も残すところ決勝のみ!本日の決勝戦実況は私梁瀬ミーコと』

 

『解説は私ファム・ティ・チャムがお送りするっす。今回の王竜星武祭はかなりハイレベルっすから今日の決勝はかなりたのしみっすね』

 

『えぇ。なんと言っても今日の決勝の対戦カードは、前回優勝の【孤毒の魔女】オーフェリア選手と今や六花最強の剣士と名高い東雲選手ですからね!』

 

『そうっすね。東雲選手はかの【聖騎士】に自らよりも強いと言わしめた実力者っす。それにあのスピードを捉えるのは容易じゃないっす』

 

『いやー、今から楽しみですね。それでは選手の登場です!』

 

 

「「「わぁぁぁぁ〜!!」」」

 

『まずはこの選手。前回大会覇者!レヴォルフ黒学院序列1位!【孤毒の魔女】オーフェリア・ランドルーフェン!!』

 

『いやぁ、前大会よりもかなりパワーアップしてるっすね。溢れててる万能素量が格段に違うっす』

 

「「「「……………。」」」」

 

(……登場しただけで、会場を静まり返らせるなんて凄いプレッシャーなのかな…)

 

『そしてもう1人はこの選手。星導館学園序列1位!【桜姫】東雲琴音!!!』

 

『流石と言うべきっすか、ここにいても殺気を感じるっす。かなり鋭い殺気っす。』

 

「「「「「…………。」」」」」

 

「………来たのね……。でも、もう誰にも運命は覆せないの………。」

 

「……あなたの運命なんて私は知らない。(シルヴィにはああ言われたけど……。)私は、ここであなたを叩き潰すよ」

 

「………。」

 

『さぁ両者準備が整った様です!王竜星武祭決勝戦試スタートです!』

 

『Start of the duel』

 

『バトル、スタート!』

 

(油断はしてくれないか……。)

 

スタート直後、切り込もうと思ったら溢れ出ている万能素が全て瘴気へと変換された。

 

「……やってくれるね。」

 

「あなたはこれを止められるかしら……?[塵と化せ]」

 

瘴気の手がいくつも絡み合い、私に向かって突進してくる。

 

「(……これを受けるのは不味い。)[散って、千本桜]」

 

千本桜の刃を全て宛、瘴気の手を消した。

 

「……やるわね。」

 

「次はこっちの番。……逝って」

 

千本桜をオーフェリアの方へ向ける。

が、千本桜は当たることなくすべて瘴気によって阻まれる。

 

(……やっぱりこれじゃ無理か)

 

 

『開始早々、これは凄い!!両者の怒涛の攻撃、さらにそれを防いだ両者!いきなり魅せてくれます!!!』

 

「……【桜姫】あなたの力、侮っていたわ。………ここからは私も本気でいかせてもらうわ」

 

「………。(今の全力じゃないんだぁ……。)それじゃあ、私も本気でいかせてもらうよ」

 

「……私相手に手を抜くなんて、あなたが初めてよ」

 

「……それはどうも」

 

オーフェリアの周りの瘴気の腕が先程までよりも圧倒的に増える。

私も星辰力を高める。

 

「……行くわよ。………[死の国]」

 

「……行くよ。……[卍解千本桜景厳]」

 

 

 

 

 

 





中途半端ですみません!
ただ、この戦いの序盤という意味でここで区切らせてもらいました。


次回もお楽しみに!


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16話

今回は少し短いです。

オーフェリア戦は次回で終わる予定です。

それではどうぞ!!


「………死の国」

 

オーフェリアから溢れ出ている瘴気が、ステージ全体を埋めつくさんと勢いよく広がる。

 

「(……これは凄いね……。)………[桜吹雪]」

 

千本桜を勢いよく広がる瘴気へとぶつける。

 

 

『……凄い!!ステージが丁度半分ずつ灰色と桜色で彩られています!!!』

 

『見てわかるように今は拮抗してるっす。今のところ両者互角ってとこっす』

 

(……互角か。)

 

私は千本桜に送る星辰力を増やす。

 

ザァァァァ

 

千本桜はオーフェリアの瘴気を呑み込み、オーフェリアすらをも呑み込んだ。

 

『東雲選手の桜がオーフェリア選手を呑み込んだぁ!!』

 

(……これじゃあ決まらないか。でも、確実にダメージは入った。)

 

千本桜を私の周りへと戻すと、その中心からオーフェリアが出てきたが多少の傷こそあるが特に支障はなさそうだった。

 

「………あなたには驚かされてばかりだわ……。」

 

「それはどうも。(残りの花弁の数は……10枚…。ちょっと不味いかなぁ…)」

 

私の背後に浮いている桜の花弁は、簡潔に言えば私の卍解のタイムリミット。この花弁が全てなくなれば、卍解は消えてしまう。

 

「………塵と化せ…」

 

オーフェリアから先程と同じ攻撃とは思えないほどの威力でこちらへと向かってくる。

 

「(……不味いなぁ。どうしよう……。一か八か)………私は拒絶する…[桜吹雪]」

 

私の魔女としての能力を千本桜に付与し、向かい来る瘴気の腕にぶつける。

狙い通り、瘴気の腕は消滅したが……

 

 

 

しかし、瘴気の腕は1本ではなくもう1本あった。

 

「……ぐっ。」

 

迫ってきた瘴気の腕を避けることは出来ず、私は掴まった。

 

『おーっと、東雲選手掴まってしまいました!これはオーフェリア選手が優勢か!?』

 

『そうっすね。今の状態から、東雲選手が抜け出すことはかなり難しいっす。』

 

「………あなたもこれで何も出来ないわ……。」

 

ガッチリと掴まれてしまった私は抜け出すことは叶わず、何度もステージへと叩きつけられた。

 

「かはっ……。」

 

何時ぶりだろうか、吐血なんてしたのは……。

残りの星辰力は殆どない…。それに卍解も解けてしまった。

 

「………これで終わりね……。[死の国]」

 

『東雲選手、避けられるか!?』

 

目の前からかなりの勢いで瘴気が迫ってくる。

 

(……これは流石にきついかな……。ほんとに………。)

 

《……あなたらしくありませんね、琴音。今のあなたは自分で自分の力を制御しています。それを破れるのはあなた自身なんですよ?》

 

……この声は千本桜か。

私が私の力を制御してる?

何のために…。

 

《……あなたの全力を持って目の前の彼女を倒しなさい。あなたなら出来ます……、自分を信じなさい。そして、それが出来た暁には………。》

 

……最後は殆ど聞こえなかった。

でも、千本桜がどうすればいいか示してくれた。

あとは、やるだけ。

 

「……終わりね…。」

 

瘴気はもう私のすぐ目の前まで来ていた。

 

「(ありがとう、千本桜。思い出したよ)………私は……

 

 

 

 

 

 

 

……………私への制約を拒絶する……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




中途半端で、短文ですみません!

ただここからが区切りよかったので、すみません!

次回、お楽しみに!!


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17話

今回でオーフェリア戦は終わりです。

少し無理やり感あるかもしれませんが暖かい目でお願いします。



私の身体から、星辰力が溢れ出てくる…

 

(……身体がとても軽い。それにこの星辰力、嘘みたい。)

 

「……散って、千本桜。[桜吹雪]!!」

 

目の前の瘴気を桜が埋め尽くしていく。

 

『これは!!大ピンチから一転!!東雲選手が押し返しています!!!!』

 

『これは予想外っす。まだ力を隠してたんすね』

 

「……やるわね……。」

 

「まだ終わらない。ここからが本番。…………卍解千本桜景厳【桜花】」

 

千本桜が私の身体を包み桜色の一本の刀となり私の手に収まり、私の周りは千本の桜の刀が浮いている。

私の服装も制服から総ちゃんがよく来ていたピンク色の着物へと変化した。

 

(……桜の花もなくなったか。)

 

今まで卍解が未完だったため、存在した16枚の花弁はもうなかった。

 

「……行くよ。[桜花紅吹雪]」

 

手に持っている刀で一閃。私の周りを浮いていた千本の刀が花びらになり、その軌道をなぞるように斬撃となり飛んでいく。

 

「……塵と化せ」

 

オーフェリアは斬撃を瘴気の腕で止めようとするが、それすらを呑み込み斬撃はオーフェリアに直撃する。

 

(……校章には当たらないか……。)

 

『東雲選手、オーフェリア選手を寄せ付けない!!』

 

『正直言って驚いてるっす。あの六花最強の魔女がここまで一方的とは』

 

「くっ……。ここまでとはね………。」

 

オーフェリアはたちあがったがかなりボロボロになっていた。

 

「……これもあなたのお陰。(でも、まだ千本桜には……。)そろそろ決めさせて貰うよ…。」

 

私は腰を落とし、刀を水平に構えた。

 

(…総ちゃんから教えてもらったこの技で決める!!)

 

私の周りの刀は数千から5本へと変わり、私の刀と同期して水平になる。

 

「……一歩、音超え」

 

「二歩、無間……」

 

「三歩、絶刀……無明三段突き!!」

 

私の突きと共に、5本の刀も全てオーフェリアへと突き刺さる。

 

『オーフェリア・ランドルーフェン校章破損。勝者東雲琴音』

 

「「「「わあぁぁぁぁぁぁっ!!!!」」」」

 

『し、試合終了ーー!!勝ったのは東雲選手!!王竜星武祭を制したのは星導館学園の東雲琴音選手ですっ!!!』

 

『いやぁ、最後の攻撃は全く見えなかったっす。多分、今までの中で1番速かったと思うっす。あのオーフェリア選手ですら反応も出来てなかったっす』

 

『それにしても凄い戦いでした!!これにて、王竜星武祭全試合を終わります!』

 

(……勝ったんだ……。)

 

私はオーフェリアの方へと歩いた。

 

「……私の負けね。あなたは強いわ…。それと、【戦律の魔女】のことは悪かったわ…。」

 

「ありがとう。それはシルヴィに言ってあげて、私はあなたと戦えて良かったよ。……ちょっと待っててね、傷治すから。…………………私は拒絶する」

 

私から出た星辰力がオーフェリアを包み、オーフェリアの傷がみるみる無くなっていく。

 

(…今までならこの位の傷治すの大変だったのに…。なんとも無い……。)

 

前ならかなり辛くなっていたのに、今は息切れの一つもしていない。

 

「そう言えば、運命は変えられないとかなんとかってあれ何だったの?」

 

「……見れば分かると思うのだけど。…私は自分の万応素が制御出来ないのよ………。だから、花にも触ることは出来ない」

 

確かに、オーフェリアからは今も少なからず万応素が出ている。

 

「……そっか。それじゃあ、これ付けてみて。」

 

私は自分がつけていた髪留めをオーフェリアに渡した。

オーフェリアが私から髪留めを受け取り、髪につけるとオーフェリアから溢れ出ていた万応素が止まった。

 

「……なぜ?」

 

「その髪留めね、私が小さい頃星辰力が暴走しちゃってその時にお母さんが「これに能力を込めて付けてなさい」って渡してくれたもので私の事象の拒絶の能力が付与されてるから自分の意思と関係なく出る万応素は拒絶されて消滅するって仕組み」

 

「……あなたの能力は反則ね……。でも、ありがとう。……それと私と友達になってくれないかしら?」

 

「…それぐらいならおやすい御用だよ。宜しくね、オーフェリア。」

 

「…よろしく、東雲さん」

 

「琴音でいいよ。」

 

「……よろしく……琴音。」

 

「よし、じゃあ戻ろ」

 

私はオーフェリアの手を引き、控え室の方へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




琴音、チート化!
さらに、コミュニケーション能力の急上昇!!

この話だけで、琴音の成長が凄かったですね。

カップリングについてですが【なし】という意見が多いですね。
確かに、作者も軽度とは言え男性恐怖症なのにカップリングはおかしい気が最近します。
もういっそ、このまま百合百合しい感じで良いのでは?と思う今日このごろです。

後書き長くなりましたが、今回も読んでいただきありがとうございました!!
それではまた次回〜


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18話


更新が遅れてしまい申し訳ないです。

言い訳ですが、部活の関東大会があって宿泊生活だったので更新出来ませんでした

私事ですが、茨城県にもマッ缶が売っていることに感動しました!

それでは本編どうぞ!


王竜星武祭も終わり、私は統合企業財体に父の事件の真相を調べてもらうことにした。

調査には少し時間がかかるので待って欲しいとの事だった。………だけど、期待はしてない。

父の事件を揉み消したのは統合企業財体であり、いくら何でも願いを叶えると言っても多分大事な部分は隠蔽されるだろう。

 

 

 

「琴音、そろそろ始めますよ」

 

今日は、私の王竜星武祭優勝祝いと称してパーティーをしている。

 

(……こうやって見ると私の知り合いってまともな人がいないなぁ……)

 

今日のパーティーには私の六花での知り合いが勢揃いである。

クローディアに始まり、シルヴィ、アーネスト、一ノ瀬先輩、夜吹くん、虎峰くん、星露、そしてオーフェリア。

殆ど冒頭の十二人であり、このメンバーに勝てる人なんていないと思う。

もちろん、シルヴィとオーフェリアは和解しててむしろ仲が良すぎる程。

………ただ虎峰くんが、シルヴィの大ファンだったらしくてシルヴィを見るなりぶっ倒れてしまって今はシルヴィに介抱されてる。

 

「お主の知り合いは中々じゃのう」

 

いつの間にか、私の横に来ていた星露は私と同じことを思っていたらしい。

 

「……その中でも、アーネストと星露とオーフェリアは特にね」

 

ほんとに、この3人は洒落にならない。特に星露には勝てる気がしない。

 

「お主がそれを言うかのぉ。(お主ならワシといい勝負が出来ると思うんじゃがな)」

 

いくら私でもそこまで化け物じゃない………と思う。

 

星露と話しているうちに虎峰くんも回復したらしく、パーティーの準備が整った。

 

「それでは、琴音の王竜星武祭優勝を祝いまして乾杯」

 

クローディアが音頭をとり、それに合わせてみんなで乾杯する。

 

「「「「「乾杯〜!!!」」」」」

 

 

 

 

今回のパーティーの料理は、私とクローディアとシルヴィで作った。

パーティーが始まるなり、星露が料理にがっついたのを境にみんな料理に手をつけた。

 

(……それにしても、こんなに早くなくなるとは……)

 

パーティーが始まって30分。大量に作った料理は全て余すことなくなくなってしまった。

星露はもちろん、虎峰くんもシルヴィが作った料理をすごい勢いで食べてた。

 

「お主、料理も上手いとはのぉ。どうじゃ、界龍に来る気はないか?」

 

界龍かぁ。確かに1度は行ってみたいんだよね

 

「あら、いくら3代目万有天羅でも琴音は渡しませんよ?」

 

……クローディアからいつもは感じられない程のドス黒いオーラが出てる。

 

「星露もクローディアも、琴音はクインヴェールに来るの!」

 

……いや、シルヴィ?

 

「……いえ、レヴォルフに来るべきよ…」

 

…オーフェリアまで?

 

もうなんか4人とも良くないオーラを撒き散らしてる。

アーネスト達男性陣に助けを求めるべくそちらを見ると、夜吹くんには目を逸らされ、虎峰くんには首を全力で振られた……。

残りのアーネストはと言うと力強く頷いてくれた。

 

(さすがはアーネスト)

 

と期待した、私が馬鹿だった。

 

「いや、琴音はガラードワースに来るべきだ」

 

おい、アーネスト……。

 

ただでさえ、4人でも大変だったのにアーネストが加わったせいでもうどうすることも出来なくなった。

 

結局、5人の言い争いは戦闘になる前に夜吹くんの『私が全学園を訪問する』という形で収まった。

 

(……これ私が大変になっただけじゃ……)

 

クローディアからは「誠に遺憾ですが、頑張ってください」と言われてしまい逃げることは叶わなくなった。

 

 

 

 

 

パーティー自体は、その後星露が寝てしまったところで解散となった。

 

(……最初は界龍からか……)

 

界龍に始まり、クインヴェール、レヴォルフ、最後にガラードワースである。

 

 

 

あと、アルルンカントに行けば六花全制覇の偉業達成。とか馬鹿なことを考えてしまったのは悲しい性である。

 

 

 





これから数話は、他学園での話となります。
琴音の他学園での形としては、体験入学生という形になると思います。

それにしても、知り合いの面子が凄いですね。
ほんとに琴音をめぐって六花が吹っ飛びそうです




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19話


なんとか書き終えました。

一番書きたい部分だったのですが、急激に変化させるのは良くないと思ったら中々進みまず短くなってしまいました。


現在、他にもワートリと俺ガイル。東京喰種。SAO。の作品を書いてますのでよろしければお読みください。

それではどうぞ


 

今日から4日間の間、界龍にいることになってしまった私東雲琴音です。

 

星露に連れられて来たのは良いんだけど、この学園にここまで激しい派閥争いがあるとは知らなかった……。

 

「東雲さんには我々木派がご指導願う」

 

「いやいやぁ、東雲さんには僕ら水派と一緒に鍛錬してもらうんだよ」

 

「お姉様には水派が似合ってる」

 

先ほどからこの調子である。

界龍では強い人を慕うという風潮があるらしい。

この間の王竜星武祭を見てくれていたみたいで、放課後になるなり木派と水派?がずっと言い争っている。

ちなみに、先ほどから私のことをお姉様と呼ぶのは黎沈華。なんか私のファン?らしい。

女の子の知り合いが増えたのはいいんだけど、この学園ってやっぱり男子の方が多いみたいで……。ちょっと辛い部分もある。

 

それはさておき、いつになったらこの言い合いは終わるのだろうか……。

 

「あ、あのさ……私には派閥とか分からないからなんとも言えないんだけどもう少し仲良く出来ないのかな?」

 

私の言葉に両者とも固まってしまった。

が、すぐに回復したと思ったら「水派は卑怯」だの、「木派は脳筋」だの……。

 

「………どっちもどっち!!なんで仲良く出来ないのかなぁ?」

 

見ててとてもイライラしたからだろうか、ムカムカして仕方がない。

 

「……琴音さん?」

 

近くにいた虎峰くんが名前を呼んでくるがもう止まれる気がしなかった。

 

「どっちの派閥にもいい所があるの!それを認めないでお互い強くなんてなれる訳ないでしょ!!」

 

言い切った。

先ほどとは違いかなり強めに言ってしまい、周りの人は虎峰君も含めみんな固まってしまっている。

 

「「「「さ、流石です」」」」

 

「えっ!?」

 

てっきり文句を言われるものだと思っていた。他学園の者が自分の学園の事情に首を突っ込んできて更に文句を言われたのだから。…………まさかこうなるとは。

 

「お姉様の言葉、しっかりと胸に刻みました。」

 

「流石です、琴音さん。」

 

沈華、虎峰くん……。

あなた達だけが頼りだったのに……。

 

 

 

この後は言うまでもなく大変だった……。

木派と水派。仲良くとは言ったもののまだ少しは溝があるみたいで最初は関わろうとはしていなかった。

そのせいで、最初は虎峰くんと模擬戦をやって木派の人たちに色々教えていたら沈華が私のことを水派の方に連れていき沈華と沈華の兄である黎沈雲の2人と模擬戦をやる羽目になった。

この学園特有の星仙術というものはとても興味深くて教えてもらえて良かったがそれよりも疲労の方が大きかった。

 

(……やっぱり木派と水派、一緒に鍛錬したら強くなると思うんだけどなぁ。それに今まで星露はこんな大事なことをほっぽり出してたのか…………。)

 

怒涛の1日目が漸く終わり、明日からの3日間に多少の不安を感じながら眠りについた。

 

 

 





次回もお楽しみに!!


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20話

今回で界龍編は終わりです!!!

活動報告の方にこれからの作品の更新について載せたので良ければ見てください。


東京喰種の作品、出来たら読んでください



怒涛の初日を過ぎてしまえばそれからの2日目、3日目はとても楽だったと言える。

なにより、初日ではとてつもなく深い溝があった木派と水派が驚くことに3日目にはお互いに教えあっていたのだから驚きしかない。

虎峰くんや沈華に聞いたところ、私が木派のトップの虎峰くんを遠距離攻撃のみで倒したことと、水派のトップのセシリーを剣術のみで倒したのを見て考え直したとかなんとか。

そんな感じでルンルンで迎えた最終日なのだけど……………なんで【覇軍星君】と模擬戦をやる羽目になってるの……?

 

「お主手を抜くでないぞ?暁彗は妾の一番弟子じゃ、いくらお主とて簡単に勝てる相手ではないと思うぞ?」

 

それはそうだろう。なんと言っても彼は六花最強の魔術師と名高い。

多分、私が知りうる六花の人物ならオーフェリアの次か同等の強さ……。

 

「いや、そうじゃなくて!!なんで私が【覇軍星君】と試合しなきゃいけないの!?」

 

危なく星露に丸め込まれるところだった…。

 

「暁彗がどうしてもお主と一戦交えたいと言うもんでな……。ほんとじゃったら、妾がやるつもりじゃったのに…。」

 

いや、星露となんてやって勝てるわけないでしょ!?

それならまだ【覇軍星君】の方がいいよ!?

 

「……どういう理論かはもう突っ込まないよ……。やればいいんでしょ?やれば!」

 

こうなればヤケクソだ。

私自身、強い人と戦うことは好きだし…。人にもよるけど…。

 

「おぉそうか。お主の速さを近くで見れるとはのぉ。」

 

私よりも速く動ける人が何を言う。

 

「その代わり、卍解はしないからね。まぁそこまで追い込まれたら使うけど」

 

一応敵な訳だし、出来るだけ隠しておきたい。

 

「それはわかっておる。妾は全力の速さが見れれば充分じゃ。」

 

……卍解すれば今よりも数倍速くなるんだけどなぁ……。

まぁ黙っていよう。

 

「はいはい。それじゃあ、一戦やってくるよ」

 

星露にそう告げ、鍛錬場へ向かうと既に武暁彗は精神統一をしいつでも戦える準備が出来ていた。

 

「……すまない、こちらの勝手で」

 

「いえ、私もあなたとは1度やってみたかったので」

 

「……そうか。そう言ってもらえると助かる」

 

武さんは一言二言話すと所定の位置に立った。

 

(……口数少ない人だなぁ。)

 

私も無駄な感想を抱きつつ、所定の位置に立ち鞘に手をかける。

 

 

「………不撓の証たる赤蓮の名の下に、我東雲琴音は汝武暁彗への決闘を申請する」

 

「……我武暁彗は汝東雲琴音の決闘申請を受諾する…」

 

お互いが了承したことで交渉が輝き決闘開始の合図がかかる。の校章が交渉に

 

(…まずは様子見)

 

六分の速さに調整し、一気に距離を詰め抜刀

 

チッ

 

(……流石に避けられるか……。)

 

千本桜は【覇軍星君】の制服を掠めるに留まり、避けられてしまった。

 

(…う~ん。加減が難しいんだよね)

 

この間のオーフェリアとの一戦以来、星辰力(千本桜が言うにはまだ本来の半分程)が戻った影響で身体能力もかなり向上しているため、以前までの10割と今の6割ほどが同じぐらいのスピードなわけである。

 

「……流石ですね。それじゃあ、次も避けてくださいね?」

 

【覇軍星君】は私の発言に一瞬驚いた顔をしたが、すぐに平静を装い構え直す。

 

私は1度距離を取り、千本桜を鞘に戻しその場で足の調整をする。

 

トンットンッ

 

 

(……八分。……………いける)

 

腰を落とし、思いっきり地面を蹴る

 

 

ガキィィィン

 

(…………防がれるかぁ。)

 

千本桜は校章ギリギリのところで、【覇軍星君】の腕に防がれてしまった。

 

(……流石は界龍の序列2位か。セシリーより星仙術が凄いのも伊達じゃないと……。)

 

「……こちらからいかせてもらう………急急如律令」

 

私がいる所に雷が落ちる。

 

バリバリッ

 

回避しようとしたがギリギリ避けきれず足に当たってしまい足が使い物にならなくなった。

 

「……これでお主のスピードも出せないだろう……」

 

普通はそう思うだろう。

片足とはいえ焦げているのだから、もう勝負は決まったようなもの。

 

「………本当は使いたくなかったんだけど。負けるのも癪だし。…………私は拒絶する」

 

足に星辰力を集め傷を無かったことにしていく。

これには流石の【覇軍星君】も言葉を失っていた。

 

「……さて、それじゃあ敬意を評して今の全力でやらせてもらうね。」

 

腰を出来るだけ落とし、抜刀の構えをとる。

 

「(今の速さなら気付かれずにいける……。)……東雲流抜刀術[紫電一閃]!!」

 

キィンッ

 

パキッ

 

『武暁彗校章破損 勝者東雲琴音』

 

(……ふぅ。ギリギリかな)

 

武さんの方を見るとまだ信じられないのか、棒立ちしているので私は近くに歩いていって手を伸ばした。

 

「……ありがとうございました。」

 

武さんは一瞬驚いたように見えたがすぐに握手仕返してくれた。

 

「……最後のは斬られたことにすら気付かなかった……」

 

それだけ告げ立ち去ってしまったが、最後の一言はとても嬉しい。

気付かれない速さ。それは私が目指す速さ。

だけど、あっちにいる星露には見えていたみたいだ。

 

「いやぁ、お主は相当速いの。妾でもあの速さは出せん」

 

つまり、星露に速さでは勝てているのだろうか?

だとしても、今のままじゃ星露には勝てないのはわかりきっているし卍解したところでそれは変わらないだろう。

 

 

(……星露に勝つには千本桜が言う私があるショックから封印してしまった残りの半分を解放しないといけない。けど、さっぱり検討がつかない………いつも私の夢に出てくる彼女が関係しているのかな………?)

 

力が半分戻ってからというもの、前よりも強く出てくるようになった彼女。

彼女が誰なのか…それさえ分かればなにか掴めるかもしれない……。

 

 

 

 

 

 

 

武さんに勝った後、色んな人が押し掛けてきて大変だったのは言うまでもない…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




もはや、琴音がチートですね……
まぁまだまだ勝てない相手はいるので勘弁して下さい。



次回更新、出来るだけ早くしたいと思いますのでお楽しみに。

次回はクインヴェールの予定です!


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21話


更新遅れて申し訳です。

これからはこのぐらいになるかも知れませんが、時間がある時にしていきたいとおもいます。

それでは今回はクインヴェールです!!


 

界龍学院での体験が終わり、今日はクインヴェール。ここからはなぜか急に1日体験に変わったらしい。

クローディア曰く「「桜姫様がいない!」と生徒たちが騒いでいて大変です」とのこと。

正直言って、私の体験入学を勝手に決めたのってクローディアだったと思うんだけどなぁ。

 

「ほらほら、琴音。早くステージに来て!」

 

………折角の現実逃避が……。

界龍の時同様に、シルヴィにクインヴェールに連れてこられたまでは良かったんだよ?なのに、言われるがまま着いてきたらいつの間にかステージの裏に………。

 

「………歌うなんて聞いてないんだけど……。」

 

ステージ裏に着くなり笑顔のペトラさんに握手され、さらにシルヴィが私が来たことを言ったせいで今か今かと待つ生徒たち….。

 

(……私なんかよりも可愛いくて、歌が上手い人たちの前でステージしろなんて……。私って嫌われてるのかな……。)

 

「こらこら、また自分のこと卑下して。みんな琴音のファンなんだよ?」

 

 

いつの間にかステージから袖の方に来ていたシルヴィに考えていることを丸々当てられたことにツッコミを入れる間もなく、シルヴィにステージに出されてしまった。

 

「「「「「きゃあぁぁぁ!!!」」」」」

 

声の暴力とはこのこと。鼓膜が破けるかと思った。

 

「みんな知っての通り、今日は【桜姫】さんが来てくれたよ!!!!」

 

……シルヴィ、桜姫はやめて………恥ずかしい。

そんな私の気も知らず盛り上がる観客の生徒たち。

 

「それじゃあ、特別に1曲歌ってもらいましょう!!」

 

シルヴィがMCとしてどんどん進めていく。

 

(……シルヴィが1曲って言った時にため息が聞こえたのは多分気の所為。私なんかの歌1曲でも嫌なはず…。)

 

そんなことを考えているとシルヴィにマイクを渡され、もう周りは聞くモードに入ってしまっている。

 

「(……何でこんなに静かなの……。もう早く歌って終わらせよう……。)えー、それじゃあ1曲だけお付き合い下さい。【星の降る町】」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

地獄………とまではいかないけど中々な拷問だった。

シルヴィに頼んで1曲だけにしてもらったのに結局アンコールだのなんだので5曲も歌うハメに……。

 

(……喜んでもらえたのは良かったんだけど。これやる意味ある?)

 

ミニコンサート?みたいなのが終わりステージ袖に帰ったらペトラさんに速攻捕まりデビューしないかとせがまれ、シルヴィが助けに来てくれたと思い着いていった結果が今の握手兼サインである。

 

「あ、ありがとうございます!一生大切にします!!」

 

「え、あうん。……ありがとう」

 

さっきから100人ぐらいこの調子である。

中には感動しましたと大泣きする子もいて、みんなの中の私はどうなっているのだろうかとツッコミたくなった。

この学園にはシルヴィがいる訳だし、私なんかよりも断然可愛いし、歌も上手いし。何より世界のアイドルである。

 

「いやぁ、凄いね琴音は。うちの学園にもファンがいるのは知ってたけどここまでとは驚きだよ」

 

……私も驚きだよ!と突っ込まなかった私を誰か褒めて欲しい。かれこれ、200人近くと握手をしたが先程から列が減る様子は全くない。

 

(……これ終わるのかな?)

 

案の定、列が無くなるまで1時間ほどかかった。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「琴音、今日はありがとね。本当だったらあと3日あったのになぁ〜。クローディアの腹黒め〜。」

 

「そ、そーだね。(これなら界龍で模擬戦やってた方が楽だよ!!)」

 

内心、1日にしてくれたクローディアに感謝してしまった。

 

「東雲さん、本当にデビューしないかしら?あなたならいつでも歓迎よ?」

 

「……考えておきます。」

 

多分、いや十中八九有り得ない。

私がアイドルなんて誰得かも分からない。

何より私の意思はそう簡単には変わらない…………透に頼まれない限りは…。

 

「…そう、いい返事待っているわね」

 

「またね、琴音」

 

ペトラさんとシルヴィは手を振りながら帰っていった。

 

(……次はレヴォルフかぁ。何も無いといいけど……。)

 

 

 

 





また次回お会いしましょう!!


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22話


更新速度遅くて本当に申し訳ないです。


受験が終わるまではこんな感じになると思うのでご理解いただけると助かります。


 

(………気まずい。)

 

朝、今までのように星導館に迎えが来てレヴォルフに来た。………まぁオーフェリアが迎えに来たのにはだったのには驚いたけど。

そのまま、オーフェリアに連れられるままにレヴォルフの生徒会長であるディルク・エーベルヴァインのところへと行き許可書発行のためと言われ何故か色紙にサインを書かされ現在に至る。

 

現在、オーフェリアが生徒会長さんに呼び出されている関係で一人でいるせいかやたら視線を感じる。というより、私の周り確実に人が増えている……。

 

(……オーフェリア、お願いだから早く……。)

 

先程から、やたら凄い目付きで睨まれてて危うく殺気で返しそうになる。

 

(…まぁそんことしたら、絶対問題になるからやらないけど)

 

そんなかんやで、周りの視線と格闘すること数十分。その時は漸く来た。

 

「……ごめんなさい、琴音。待たせてしまって…」

 

「(やっと来た……)ううん、大丈夫だよ。もう用事は大丈夫なの?」

 

「えぇ。大したことではなかったから。」

 

少しオーフェリアの表情に陰りが見えたが、すぐに戻ったので気にするのはやめた。

それにしても、やっぱりオーフェリアは凄いと改めて感じた。先程まで私に向けられてた視線もオーフェリアが来てからというもの全くない。

流石は実力主義の学園といったところ。序列1位に逆らうような人はいないのだろう………………あれ?私ってオーフェリアに勝ったよね……?

 

「……どうしたのかしら?時間が勿体ないわ…」

 

「ごめん、それでどこに行くの?」

 

「……とりあえず、学園を案内するわ。……琴音にはVIP待遇をしろと言われたから……どういう風の吹き回しかしらね……」

 

【悪辣の王】と言われるレヴォルフの生徒会長がただの体験入学生にVIP待遇は有り得ないと思った。

悪辣と言われるだけあって、私も六花に来てからは彼の悪い噂はよく耳にしたし、正直レヴォルフにだけは来たくなかったのが本音。

それに、オーフェリアから簡単に許可が出たと聞いた時には一緒に居たクローディアもかなり驚いていたぐらい。

 

「……それじゃあ、案内お願いします」

 

「えぇ、わかったわ」

 

オーフェリアが歩き始めると周りに居た生徒は避けるようにどき、一本の道が出来る。

 

(……オーフェリア、怖がられてるのかな?)

 

数少ない友人のことが少し心配になりながら、私はオーフェリアの後を追った。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

オーフェリアによるレヴォルフの学園案内は一言で言えば驚きだった。

オーフェリアに案内してもらっている間もあちこちで決闘が行われていて、ゆっくり出来そうな場所はなかった。けど、VIP待遇に関しては凄いの一言に尽きると思う……。

一番驚いたことと言えば、プリシラちゃんの存在。彼女は本当に可愛かった。

姉であるイレーネさんのことをとても大事にしていたし、本当に星導館に欲しいぐらい。

ただ、イレーネさんはちょっと怖かったかな。

根は優しそうな人だったけど。

 

 

学園の案内も終わり、私は今ベンチに座っている。

ちなみに、オーフェリアはいない。

また生徒会長さんからお呼び出しされていて、私は例の如く一人ぼっち。

 

「あんた星導館の【桜姫】だろ」

 

……やってしまった。

やることがなくて、考え事をしている間に周りを囲まれてしまっていたらしい。

私は千本桜に手をかけ、いつでも抜刀できるようにする。

 

「……だったら、なにかな?」

 

相手の返答次第でいつでも攻撃できるように構える。

 

「……やっぱりな………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイン貰えませんか!!」

 

………えっ、今なんと??

いやきっと、私の聞き間違いだろう。

 

「……えっと、もう1回聞いてもいいかな?」

 

「………サイン貰えませんか?」

 

…聞き間違えじゃなかったみたい。

 

「……えっとそれで書くのはいいんだけど、私なんかでいいの?」

 

「「「「【桜姫】さんのが欲しいんですっ!」」」」

 

「えっと、ありがとう?」

 

それから、私の周りを取り囲んでいた生徒たちは綺麗に1列に並び順番待ちを始めた。

 

(……こんなに礼儀正しいの!?)

 

本日一番の発見にして、一番の驚き。

 

それから私は、オーフェリアが来るまでサインを書き続けた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

オーフェリアに見送られ、星導館に無事生還した訳なのだが………

 

「琴音っ、大丈夫でしたか?何もされてませんか?」

 

この通りである。

寮の自室に帰ってくるなり、クローディアが抱きついて来てかれこれ数十分この調子。

 

「うん、大丈夫だったから。」

 

「もし琴音になにかあったら、あの豚には絶望を味わって貰わないといけませんから」

 

………怖いよ、クローディア。

 

ドス黒い考えをし始めたクローディアを宥めてからお互いのベットへと入った。

 

(………そーいえば私、どこの学園も殆ど体験入学してない……。)

 

明日のガラードワースへの体験入学に少しの不安を抱きながら意識を落とした。

 

 

 







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23話


お気に入り数、漸く100人を超えました!!
1話、2話の頃は0人だったのになんか嬉しいです

更新速度遅くて申し訳ないです……。

それでは本編どうぞ


 

「それでは始めましょう」

 

私は今初めて体験入学というものを体験しています。

 

 

今まで三つの学園を体験入学という名目の元訪れたのだけど、界龍では殆ど毎日鍛錬。クインヴェールではライブ。レヴォルフでは案内とサイン会………。

今のところ私は他学園で授業というものを全く受けてないと言ってもいい。最早それは体験入学と呼べるのだろうか、いや呼べないだろう……。

 

そんな体験入学を経て、今日は最後のガラードワースである。

流石と言うべきなのだろうか、規律に厳しい学園と言うだけあって今日1日の予定がしっかりと立てられていた。

今日の予定は大きく分けて三つ。

まずは、授業の体験。

二つ目は、学園の案内。

三つ目は、生徒との交流。らしい

 

…………最後の三つ目はなんでしょうか?

そう思った私は悪くなかったはず。

生徒との交流。つまりは、知らない男子生徒とも関わらなきゃいけないわけで私にとっては地獄でしかない……。

 

 

「それでは本日はここまで」

 

いつもは楽しいと思えない授業でも、体験入学という特別な環境の中では同じものとは思えないほど楽しいものだった。

 

ザワザワ

 

「やぁ琴音。どうだったかな?我が学園の授業は」

 

周りが少しざわつき始めたと思ったら、どっかの爽やかイケメン生徒会長の登場である。

 

「いやぁ楽しかったよ、授業は。それと今まではね」

 

ほんとどうしてくれるの。

いやぁね、最終的には正体バレるのはわかってたよ?けどさぁ、折角変装までしてバレないようにしてたのにアーネストが名前呼んじゃったらバレちゃうじゃん!!

 

「えっ……もしかしてあれって……」

 

「【桜姫】様……?」

 

「【桜姫】様がなんでこんな所にっ!?」

 

案の定他学園と同じ状況である。

流石は規律を守る学園と言うだけあって、流石に押しかけては来なかったけど。

 

「それはすまなかったね。ここからは彼女が学園の案内をしてくれるからなんでも聞いてくれ」

 

「パーシヴァル・ガードナーです。よろしくお願い致します。」

 

「東雲琴音です。お願いします」

 

とても礼儀正しい人。それが第一印象……

流石は【優騎士】と呼ばれるだけはある。

 

「それじゃあ、パーシヴァルあとは頼んだよ」

 

「了解しました。それでは東雲さん行きましょうか」

 

「あっ、はい」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

一言で言えば、パーシヴァルさんはとてもいい人だ。

学園の案内はとても丁寧だし、入れてくれ紅茶はとても美味しかったし。

 

「それでは琴音さん、ここでお待ちください。それとこれを…」

 

そう言って、パーシヴァルさんはメモを渡してくれる。

 

「あ、ありがとうござい……ありがと」

 

仲良くなれたのは良かったんだけど、やっぱり敬語使われると敬語で返したくなっちゃうんだよね……。私には辞めてって言ったのにパーシヴァルさんは辞めてくれないし…。

 

(このメモってなんだろう…)

 

メモを開いてみるとメモの差出人はアーネストだった。

 

[琴音、シルヴィアから話は聞いたよ。うちの学園でもよろしく頼むよ]

 

………はい?

 

『東雲琴音のライブを始めます!!』

 

(………ん?ライブ?)

 

幕が上がるとそこにはクインヴェールのときと大して変わらない人数の生徒がとても盛り上がっていた。

 

(………アーネスト………やってくれたね……)

 

「「「「わぁぁ!!」」」」

 

……なんかごめんなさい、私なんかで盛り上がってくれて……。

 

『それでは東雲琴音さんお願いします!!』

 

「(……なんでこうなるかなぁ………まぁけど、盛り上がってくれてる生徒のみんなには悪いし)…………みんな!!今日はお願いね!!!」

 

「「「「わぁぁぁぁ!!」」」」

 

人生3度目のライブはとても罪悪感と楽しさが混在したものになった。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「琴音、今日はありがとう」

 

ライブが終わるとアーネストが挨拶しに来た。

 

「……アーネスト、今日で君の評価星露以下だからね」

 

当たり前だ。

クインヴェールではまだペトラさんがいたから諦めもついたけど、ここではそうはいかない。

 

「そんな………」

 

思いの外効いたのだろうか、アーネストは膝をついて落ち込んでしまった。

 

(………少しくらい反省してくれてもいいかな)

 

落ち込むアーネストを置いて私は星導館へと戻ることにした。

 

 

 

 

「琴音、おかえりなさい。どうしでしたか?他学園は」

 

星導館に戻ると、クローディアが出迎えてくれた。

 

「………うん、もう絶対にいかないよ」

 

あんな思いはもうしたくはない。

そう思ったのに、翌日アーネストとシルヴィに話を聞いたクローディアによって4度目のライブを行うハメになったのは言うまでもない……。

 

 

 

 

 

 

 





今回で体験入学編は終わりです。

次回からは原作入ると思います


ちなみに、私事ですがfgo沖田オルタ外したショックが結構きてます………メモデフはメモデフで10連でユウキの星五が被るし………もうやってられませんね


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原作開始
24話


少し遅くなりましたが、やっと原作入りです。

今回はあの方々が出てきますよ!



魔の学校見学から時間は流れ、私達は高等部へと進学した。

あれから変わったことと言えば、あの刀藤家の綺凛ちゃんが星導館に入学してきてくれたこと。流石は刀藤家の人間と言うべきか、純粋な剣術の腕は相当高く早くも序列2位まで登りつめていた。

クローディアは負けたのかって?そんな訳ないでしょ?

クローディア、綺凛ちゃんが入学して間もない頃に自分の序列を譲ったらしい。

理由を聞いたところ、「私が譲っていなければ、琴音が譲っていたのでしょう?それは我が星導館としても食い止めなければいけないことなので止めたまでですよ」と言われてしまった。…………そんなにわかり易かったのだろうか。確かに綺凛ちゃんが入学するとわかった時には譲ろうと考えてたよ?だって、序列1位って何かと目立つし…。

そんな訳で、クローディアは序列を譲り現在は序列3位である。いつの間にか、序列3位まで上がってる辺り流石だと思う。

 

そんな訳であれから割と平穏な日々を送れていた私なのだけど…、新学期というのは甘くないらしい。

 

「咲き誇れ!六弁の爆炎花!」

 

ドォーン

 

………どうしてこうなったの…?

 

遡ること数十分前

 

「それで、琴音には今からこの2人の編入生を迎えに行って欲しいのですが…」

 

そう言って、クローディアが見せてくれた生徒のデータの2人はとても見覚えがあった。

 

「……っ総ちゃん!?それに透!?どうして…?」

 

あれだけ頑なに六花には行かないと言っていた総ちゃんが編入してくるなんて……。

 

「理由は分かりませんが、お2人共特待献身生の案内を送ったところ二つ返事で了承して下さいましたよ」

 

……これは直接聞く必要があるね。

 

「分かった、クローディア。任せて」

 

私は急いで生徒会室から出て、2人の待つ駅えと向かった。

 

「あっ、琴音……。もう1人いるんですが…」

 

クローディアのそんな呟きが聞こえたとか聞こえなかったとか…。

 

 

 

全速力で飛ばすこと5分。

目的場所である、駅には弟との姿はなく淡いピンク色の髪をした少女が1人立っていた。

 

「あっ、琴音じゃないですか!」

 

「総ちゃ〜ん」

 

ガシッ

 

久しぶりの親友との再会だからだろうか、いつもはやらない様なことをしてしまう。

 

「それにしても琴音、見ないうちに大きくなりましたねぇ」

 

総ちゃんの視線を胸に感じ、思わず腕で隠してしまう。

 

「そ、そんなことよりも総ちゃん、どうして六花に?」

 

そう、これは忘れてはいけない。

あれだけ嫌がってたのになんで来る気になったのか。

 

「それはですねぇ………面白そうだからですね」

 

……はい?

 

「もう一回言って「だから面白そうだからですよぉ」……はい?」

 

「いやぁ、琴音が行くって行った頃は別にわざわざ行く必要はないかなぁって思ってたんですけどね、琴音が居なくなってから相手がいなくてつまらなかったんですよねぇ。それに王竜星武祭?でとても琴音楽しそうでしたし」

 

流石は総ちゃん。

 

「…そっか。それじゃあ、行こう。透も探さないといけないし。」

 

それから、星導館に向かいながら他愛ない話をした。

今まで何をしてたとか、王竜星武祭で見せた[無明三段突き]はどうだったかなど。

 

「そう言えば、透見なかった?」

 

……学園まであと少しという所まで来たが、未だに見つかる気配のない弟。

 

「見てませんねぇ。透くんならわかると……あれじゃないですかね?」

 

そう言って総ちゃんが指差す方には、見慣れた青色の髪の少年がいた。

 

「あっ、透〜!」

 

「姉ちゃん!!」

 

ガシッ

 

少し見ないうちに大きくはなっていたが、相変わらずで少し安心した。

 

「…それで透。なんでいなかったの?」

 

私と似て、方向音痴の透がここまで誰の案内もなしに辿り着けるとは考えにくい。

 

「あぁ、それならあそこにいる人と一緒に来たんだよ」

 

そう言って透が指差す方にあるのは女子寮。

 

「…え?女の人と来たの?」

 

「いやいや、違うよ。」

 

……どういうこと?

女の人じゃなきゃ男の人ってことだけど、女子寮にいるってこと??

 

「いえ、琴音。れっきとした男の人のようですよ」

 

総ちゃんが指さす方には、序列5位のあのお嬢様のお部屋がある。

もし、本当にあそこに居るのならそれは………

 

「咲き誇れ!六弁の爆炎花!」

 

……ほらね。

 

ドォーン

 

そんな爆風と共に、1人の男の人が飛び出してきた。

 

 

 

 

 

 

 




中途半端で申し訳ない。

ただやっと、刀藤綺凛と弟、沖田総司を出せてとても満足です!

次回の更新も早くしたいと思います!
感想お待ちしておりますので、遠慮なくどうぞ!!(批判はやめて貰えると嬉しいですが…)

それではまた次回!


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25話

原作に入ったら入ったで絡ませ方に悩みあまり上手く話が思いつかず遅れてしまい申し訳ないです





「咲き誇れ!銃槍の白炎花!」

 

ユリスの背後に青白い炎の槍が出現すし、謎の転入生くんに飛んでいく。

 

(……へぇ、やるねあの子…………じゃなくて、なんで決闘なんてしてるの!?)

 

ユリスが部屋で爆発なんかを起こしてくれたおかげで、事後処理をするハメになり遅れてここに来たのだけど……。

 

「総ちゃん、これどうなってるの…?」

 

「あ、琴音遅かったじゃないですか。えーとですねぇ、彼が何やら着替えを覗いたらしくてそれで決闘を申し込まれて今に至るってところですかねぇ……あ、この団子美味しいですねぇ」

 

団子を食べながらそう言う総ちゃん。

 

(…いつの間に団子なんて買ったんだろう…。そう言えば透は……?)

 

総ちゃんと一緒にいたはずの透がいないことに気がつき、周りを見渡して見るとすぐに見つかった。

最前列で盛り上がる透。その横には見たことのある後ろ姿が2つ。

 

(……何してんのよ、透。まさかあの2人と一緒にいるとは)

 

透の横にいるのは、夜吹くんに一ノ瀬先輩の2人。

流石と言うべきかなんというべきか。

私とは比べ物にならないほどコミュニケーション能力が高く人懐っこい透だが、ここまでとは流石に思わなかった。

 

(………ん、あれは)

 

戦っているユリスと転入生の奥に見える微かな光。

 

「琴音!!」

 

総ちゃんにも見えたらしい。

 

「私が弾くから、総ちゃんは二人の保護お願い」

 

「えぇ、わかりました」

 

見学人を飛び越え、2人との間に入る。

 

キィン

 

「……ふぅ。総ちゃん、2人は大丈……夫そうだね…」

 

無事を確認するために振り返ると、刀を抜いて構えている総ちゃんの後ろではユリスが転入生くんに押し倒されているところだった。

 

「……総ちゃん、私達は行こっか」

 

「そうですね」

 

そう言ってその場から去ろうと思ったのだけど

 

「「ちょっと待って〜!!!」」

 

と止められてしまったのだが、運の悪いことに私の袖を掴んだのは転入生くんだった。

 

「…やめっ」

 

そう言って転入生くんの腕を払おうとしたのだけど

 

「そこまでですよ」

 

クローディアが手を叩いて歩いてきた。

 

「確かに我が星導館学園は、学生に自由な決闘を認めていますが……残念ながらこの度の決闘は無効とさせていただきます………それと天霧くん、琴音から手を離した方が身のためですよ?」

 

そう言いながらパンドラを抜くクローディア。

 

「えぇ、早く離した方がいいですよ」

 

1度しまった菊一文字に手を掛ける総ちゃん。

 

「早く姉ちゃんから手を離しなよ」

 

いつの間にか煌式武装を構えている透。

 

(…透、煌式武装なんて持ってたの?)

 

そう思ったところ、「俺の煌式武装がない〜!!」と何処からか元序列1位の声が聞こえた。

 

「ご、ごめん」

 

と言って転入生くんは私から手をどけてくれた。

 

「……そ、それよりクローディア、一体何の権利があって邪魔をする!!」

 

「あぁ忘れていました、赤蓮の総代たる権限をもって、ユリス=アレクシア・フォン・リースフェルトと天霧綾斗の決闘を破棄します」

 

クローディアのその言葉に赤く輝いていた校章がその光を失った。

ユリスは未だに納得いってないらしく、不満そうな顔をしている。

 

「いくら生徒会長でも、正当な理由なく決闘に介入することはできなかったはずだが?」

 

「理由ですか…。それならありますよ、まだ彼らには転入手続きが残っていますので。」

 

笑顔で説明するクローディア。

これにはユリスも反論出来ずに歩いていってしまった。

 

「さて、天霧くん、沖田さんと東雲くん付いてきてください。それと琴音も来ますか?」

 

「んー、いいかな。やらなきゃいけない事があるし。」

 

先程多分ユリスを狙っていたであろう犯人を突き止めなきゃいけないこともあるが、あの転入生くんは少々苦手な感じがしたのもある。

 

「…そうですか。」

 

クローディアはあからさまに落ち込む。

 

「あ、そうだクローディア。特待生なら純星煌式武装の検査出来たよね?」

 

「えぇ出来ますが。」

 

「それじゃあ、透には必ずやらせてね。総ちゃんはもしかしたら断るかもだけど」

 

この間見学させてもらったときに透に丁度良さそうな純正煌式武装があった。

総ちゃんが断る可能性があるのは、総ちゃんが持っている菊一文字が理由。

彼女の持つ菊一文字は純星煌式武装と遜色のないほどの切れ味をもつ。故に必要がない。

 

「それじゃあ、私はここで」

 

「えぇ、また後で」

 

「またね〜、姉ちゃん!」

 

「琴音、さようなら!」

 

私の挨拶に各々返してくれる。

 

(…有難いんだけど、ちょっと恥ずかしいかな)

 

先程まで決闘していただけあってまだ人が大勢いる中で、あの挨拶をされて残されるのは中々に恥ずかしい。

 

(……さて、やりますかね)

 

私は1度感情を落ちつけ、事件?の調査を始めることにした。

 

 

 

 

 




久しぶりの一ノ瀬先輩の登場?でしたね


話が進む度思うことなのですが、やはりそのうち琴音をめぐって六花が吹き飛ぶ気が……。

沖田さんが加わったことで更に百合百合しい感じになりましたが後悔はしていません!!
ちなみに、もう1人追加予定のキャラも女性です。
弟とアーネストぐらいしか、男性キャラいませんがこれからもお願いします。


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26話

テスト勉強の息抜きに…。

ちゃんと原作通りには進んでいるのですが、書いていてなんか綾斗のキャラってISの一夏や俺ガイルの葉山に似ていてあまり好きになれないなぁと思ってしまい若干扱いが雑になってしまいます…。
皆さんは綾斗(ユリス狂一世by綺凛・凛綺さん)の扱いについてなにか希望などありますでしょうか?

宜しければ感想ついでに意見お願いします


透たちがここ星導館に来てから早いもので数日。

ユリスを襲った犯人については未だに特定は出来ていない。

 

(……手掛かりが少ないんだよねぇ)

 

ユリスを襲う際に撃った弓も私が弾いたことで真っ二つになっていたし、犯人はすぐに逃げてしまい追うことも叶わなかった。

 

(……それにしても…)

 

ガヤガヤ

 

朝から騒がしい方へと顔を向けると例の転校生。

彼はコミュニケーション能力が高いのか、馴れ馴れしいのか…。

毎朝のようにユリスに話しかけている……ユリスも満更でもなさそうにツンデレを発動させているが。

 

「琴音もおはよ!!」

 

「お、おはよ…」

 

…そう、困ったことに私の方にも来る。

しかも名前呼びで…。

正直言ってしまうと彼は私の苦手なタイプ。理由は、どことなく菅生に似ている。

浅い優しさ…そんな感じがして仕方がない。

 

「おはようございます!琴音!」

 

「おはよう、総ちゃん」

 

憂鬱な気分になっているとチャイムギリギリに総ちゃんが登校してきて挨拶される。

 

「どうかしました?……あぁまたですか」

 

「彼に悪気はないんだろうけど……ちょっとね」

 

彼に悪気はないのだろう……多分。

クラスの人も私の事情を知っている人が言ってくれたらしいけど、彼曰く「慣れないと変わらない」だそうで。

 

「いえ、あれは琴音に惚れてますね…………琴音は私の親友なのに」

 

後半の言葉は聞き取れなかったが、総ちゃんの周りにドス黒いオーラが見える。

 

「そ、そんなことないから!?だから、落ち着こう」

 

この後総ちゃんを宥めるのに団子を三つも使ってしまった。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

放課後になり、総ちゃんが団子屋に1人で行ってしまったため、一刻も早く寮に戻ろうと思ったのだが……声を掛けられてしまった。

 

「僕この後純星煌式武装の検査に行くんだけど琴音も一緒に来てくれないかな?ユリスは用があるらしくてさ」

 

……君は誰だ。

この発言には流石に言葉を失う。確かに序列1位になってから多少戦闘について聞かれることはあったがそれでも多少の面識がある人にだ。

それにユリスがダメだったから私?

私をなんだと思っているのやら。

私が言葉に詰まっているとタイミングよく救世主?が現れた。

 

「あら、琴音どうしたのですか?」

 

流石クローディアさん、ナイスタイミングです。

 

「ちょっとね……そうだ、転入生くんの純星煌式武装の検査なんでしょ?」

 

そう言って、そのまま逃げようと思ったのだけど……

 

「あれ、どうしたの?」

 

透の登場である。

 

「いや、ちょっとね。転入生くんをクローディアに引き渡してたところ。」

 

まさか透までいるとは思いもしなかった。

 

「あっ、琴音。これから透くんの純星煌式武装の検査もするので行きませんか?」

 

(…クローディアそれは狡くないかな)

 

透にぴったりな純星煌式武装を見つけ検査をさせて欲しいと言ったのは私であり、まして透がこれから使う武装を選ぶとなれば私が断れる訳がない。

 

「……行くよ」

 

そう言ってときに透とクローディアだけでなく、転入生くんも喜んでいたのはきっと気の所為に違いない、いや絶対にそうだと信じたい。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

純星煌式武装の保管庫に着くとそこには筋肉の塊…、レスターさんがいた。

 

「なんでお前がここにっ!」

 

と転入生くんを見るなり牙を向く辺り、一悶着あったらしい。

 

「……クローディア、それでそこのチビは誰だ?」

 

少しイラついてるレスターさんは透を見るなりチビ呼ばわり。

 

「むっ、チビとは…。どうせあんただって、姉ちゃんよりは弱いんだろ?」

 

「なにっ!?……ん?姉ちゃん?」

 

レスターさんは弱いと言われたことに腹を立てるが姉ちゃんという言葉が引っかかったそうで…。

 

「えぇ、彼の名前は東雲透。れっきとした琴音の弟さんですよ。」

 

「「なに!?弟っ!?」」

 

クローディアの発言にレスターさんだけでなく、何故か転入生くんも驚く。

 

「なんだ、東雲の弟か。俺は序列10位のレスターってもんだ、宜しくな坊主」

 

そう言って透の頭を撫でるレスターさん。

彼は見た目こそ悪者のようだが、とてもいい人である。

私の男性恐怖症を知るなり、無理に話しかけようとはせずに見守ってくれている兄貴分のような人。

一ノ瀬先輩と仲が良いらしく、時々戦闘についてのアドバイスを求められることもある。

 

「…坊主じゃない、透!」

 

「そうか、透か」

 

流石というべきか、すっかり馴染んでいる。

 

「はい、それでは皆さん行きますよ」

 

いつの間にか扉の前にいたクローディアの声で2人とも話をやめ、クローディアを先頭に中へと入る。

 

「それでは…」

 

「1番手は俺が行かせてもらうぜ」

 

レスターさんは純星煌式武装の検査は今回で何度目からしく、クローディア曰く中々合う物がないらしい。

 

「【黒炉の魔剣(セル=べレスタ)】ですか…。」

 

黒炉の魔剣。四色の魔剣の1つで、圧倒的な破壊力を誇る純星煌式武装。

 

(……気難しいらしいけど…、大丈夫なのかな、、)

 

私の心配は的中したらしく、適合率は下がる一方。

 

『危険です、すぐに辞めてください』

 

既に黒炉の魔剣は暴走しかけている。

 

「うるせぇ、俺に従え!!」

 

尚も力で押さえつけようとしているレスターさん。

 

ブウン

 

レスターさんの手から黒炉の魔剣が離れ、こちらへと切っ先が向く。

 

「……面倒なことになったね」

 

あぁなってしまえばそれこそ押さえつけるしかない。

私がやろうと思い前に出ようとしたが、先に転入生くんが前に出ていた。

 

「天霧くんっ!?」

 

これにはクローディアも驚いたらしく、声を上げている。

 

(……それにしても、あの転入生君なかなかやるね)

 

転入生くんは黒炉の魔剣をギリギリのところでかわし続けている。

所々掠りはしているが、致命的な傷はない。

 

 

 

 

何度目かの攻防の末、勝負に勝ったのは転入生くん。

黒炉の魔剣を鎮め、無事認められたようだ。

 

「おめでとうございます、天霧くん。それでは後ほど申請書類の提出をお願いします。」

 

「分かったよ、クローディア」

 

何故かこちらを見ながらドヤ顔してくるが、気にしないことにした。

 

「それでは次は透君の番ですが、琴音一緒に見ますか?」

 

「あ、うん。」

 

透の番になったので、一緒に純星煌式武装の一覧を見る。

 

(……あれはどこにあったかなー、、、あった!!)

 

お目当てのものはすぐに見つけることが出来た。

 

「透、これ試してみて!」

 

「え?あ、うん」

 

透は悩むことも無くそれを選び鞘から抜き、星辰力を込める。

 

『て、適合率95%です!』

 

透に選んだ純星煌式武装は透にピッタリだった。

 

「…流石というか、なんと言いますか。姉弟揃って規格外なようですね…。」

 

規格外とは失礼な。

私も透も一般的な星脈世代だ。

 

「それじゃあ、私は行くところあるから行くね。透、ちゃんとクローディアの言うこと聞いてね」

 

「うん。姉ちゃん、じゃあね〜」

 

そう言ってブンブン手を振ってくれる透はとても可愛らしい。

 

(……本当に透って男の子なのかな)

 

姉弟だからか、透は男性恐怖症になったばかりの頃でも別に大丈夫であった。

 

(…さて、調査続けますか)

 

私は夜吹くんと総ちゃんと合流すべく、待ち合わせ場所に向かった。

 

 

 

 

 

 




若干アンチ気味……。
明確なアンチではないのでその辺りはご理解ください!

ちなみに、追加キャラについてまだまだ募集しておりますのでお願いします!!!!
作者的にはSAO辺りから欲しいですね、あと入れやすさとしてはワートリとかですかね…。
遠慮なくジャンジャンお願いします!!!
活動報告の方にありますので!!!


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27話


勉強の気分が乗らない分、執筆はとても気分がのり割と短い期間で投稿することが出来ました!!




 

新学期が始まり早いもので数十日経ち、鳳凰星武祭が近づいてきたが未だに襲撃事件の犯人の特定は出来ていない。

 

 

ユリスが襲撃にあったのはあの決闘の以後2回。

その2度とも、犯人の姿は見えず遠距離からの攻撃だったらしい。

犯人の襲撃理由はわかっている。

十中八九、鳳凰星武装だろう。理由はユリスの他にも在名祭祀書(ネームド・カルツ)に名前が乗っている生徒が襲われるということは何件か起こっているから。

 

(…んー、ユリスたちが居なくなって喜ぶような人ねぇ…。)

 

あまりにも多すぎて絞り込むことが出来ない。

鳳凰星武祭はタッグ戦。星導館の十八番と言えるほど、星導館はタッグ戦が得意である。

 

(……わからない)

 

「あの、琴音大丈夫ですか?」

 

そんなこんなで唸りながら悩んでいたせいか、目の前にクローディアがいることにも気が付かなかった。

 

「あ、クローディア。いやー、犯人が分からなくてね」

 

「その事なのですが…、先ほどユリスが犯人に呼び出されたらしいんです。念のため天霧くんを向かわせたのですが……」

 

「……………はい??」

 

ユリスが犯人に呼び出された?

今まで奇襲という形だったのはユリスに正面から挑んでは勝てないと踏んでいたからのはず。

つまり、奇襲をやめ確実に仕留められる正面からの勝負を挑んできたってことはユリスに勝てる算段があるのだろう。

 

「…それでユリスは今どこに?」

 

「再開発エリアのこの辺りかと。私も影星を連れていきますのでお願い出来ないでしょうか?透くんも先日の純星煌式武装を渡してありますので一緒に行ってください」

 

「…わかった。」

 

クローディアから位置情報を貰い、タイミングよく廊下を歩いていた透を連れ急いでそこへと向かった。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

位置情報の辺りに着くと、近くの廃墟で爆発が見えユリスの位置はすぐに特定出来た。

 

「透、行くよ」

 

「はいよ、姉ちゃん」

 

千本桜を解放し、爆発のあった建物まで桜の足場を作り一気に駆け上がる。

 

「…よっと。ユリス無事?」

 

廃墟へと入るとそこにはたくさんのパペットに囲まれたユリスと転入生くん。そして、犯人と思しき星導館の生徒。

 

「それじゃあ始めようかな。転入生くんはユリスの事しっかり抱き抱えといてね………さて、君覚悟はできてるかな?」

 

今回は現行犯、情状酌量の余地はない。

 

「…卍解…千本桜景厳【桜花】」

 

私の周りに数千本の桜の刀が現れる。

 

「じゃあ、周りの処理は私がするから透は大きいの宜しくね………それじゃあ行こうかな、[桜花驟雨]」

 

周りに浮いている刀を全て雨の如くパペットの群れへと降らせる。

 

「これが星導館の序列1位……」

 

「流石だねぇ、姉ちゃん」

 

「……やはり、流石だな」

 

三者三様の驚きよう。

当の犯人はと言うと…

 

「ひいっ」

 

半泣きで腰を抜かしていた。

 

「……透」

 

「はいよ〜」

 

そう言って透が構えるのは脇差程度の長さの刀。

 

「…射殺せ、神鎗」

 

その刹那、脇差程度だった透の刀は一瞬にして伸び奥のでかいパペットへと突き刺さる。

 

「なんだと…」

 

これまた驚いたらしく、もう可哀想な顔に成り果てている。

 

「うん、やっぱり透にピッタリだね。」

 

透の得意な形は突き。

そして、私や総ちゃん程ではないけどかなりスピード。

つまりこの純星煌式武装はまさに透と相性抜群。

 

「まだ卍解は出来ないみたいだけどね」

 

「それは鍛錬だよ」

 

私の千本桜と同様に神槍にも卍解があるらしい。

そんなちょっとした会話に気が緩んだのもあるのだが……

 

「あっ…」

 

犯人である生徒がまだギリギリ動いたパペットに乗り、逃げてしまった。

そしてその直ぐあとを炎の力で飛びながら追う転入生くん。

 

(まぁ、大丈夫かな)

 

あれだけボロボロの相手に遅れを取る訳もない。

更に言えば、外でクローディアたちが待機しているのも連絡が来ているからわかっている。

 

「さて、私達も戻ろっか」

 

「だね。これから一ノ瀬先輩に姉ちゃんの学園での生活聞かないといけないし」

 

……ん?

私の学園生活?

 

「…そんなこと聞いて何になんの…」

 

「いやぁ、やっぱり弟として姉ちゃんに付くゴミは排除しなきゃいけないからね!」

 

元気一杯に宣言する我が弟。

嬉しいが、少し自重して欲しい。

 

「…一ノ瀬先輩にはきちんとお話しないといけないね」

 

学園に着いたらとりあえず一ノ瀬先輩をシメることを心に決め学園へと戻ることにした。

 

 

 

 

 

 





透の純星煌式武装は神槍でした!

神槍かっこいいですよね〜、僕の好きな斬魄刀トップ3には入りますね。
氷輪丸や袖の白雪も考えたのですが、袖の白雪卍解すると人死にますし、氷輪丸も魔術師の能力でありそうなので辞めました
あとは鏡花水月も考えましたが、あれ使ったら誰も勝てないことに気がつき却下しました。実際BLEACH原作でも、途中から使ってませんしね


新キャラまだまだ募集してますので、好きなキャラや登場させたいキャラいましたら遠慮なくどうぞ!!


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28話


奇跡の連日投稿……

話自体はあまり進みませんがご了承ください


そう言えば、ここで言うのも何ですが本当に東京喰種終わってしまいましたね……
あれはもう続編も期待出来ない終わり方でしたね…。最終話、少し詰め込んだ感はありましたが殆どのフラグ回収はされていましたしいい最終話でした!!
石田スイ先生の新作に期待と、アニメ2期、そしてゲームに期待ですね!!






 

鳳凰星武祭が近づいて来たこともあり、周りではペアを組む組まないの話がちらほら。

 

(……私は誰と組もうかなぁ。)

 

ここに来て露呈した私の友人の少なさ。

クローディアは獅鷲星武祭以外出るつもりはないって言ってたし、一ノ瀬先輩は「お前と組んだら優勝間違いないだろうけど、俺は自分の力で優勝したい」とのこと。

残りと言えば、透か総ちゃん、綺凛ちゃんぐらいなものなんだけど……。

透は、「まだ神槍の卍解も修得出来てないし、僕じゃ姉ちゃんのパートナーはつとまらないよ」とのこと。透の実力なら十分すぎるんだけど…。

綺凛ちゃんはまだ出るか悩んでいるらしいがこれまた「私じゃ実力不足なのでっ!」とのこと。

残りの総ちゃんはと言うと……、まだ聞けてない。総ちゃんはあまりそういうのに出たがらないと思い、後回しにした結果まだ聞いてすらないのだ。

例の転入生くんはどうしたかって?

先日「僕、ユリスと出ることにしたんだ。ごめんね」となんか一方的に謝られました。

彼は何を勘違いして私に謝ったのか、本当に謎です。

 

「おはようございます、琴音!」

 

漸く総ちゃんの登校である。

 

「あ、おはよ。琴音」

 

総ちゃんはいつものように金平糖をポリポリ食べながらの登校スタイル。

 

「それにしても、どこもかしこも鳳凰星武祭の話ばかりですねぇ。琴音はどうするんですか?」

 

早速痛いところを突いてくる総ちゃん。

 

「いやぁ、出ようとは思ってるんだけどね。なんせパートナーが見つからなくてね」

 

「そーいえば琴音、知り合い少ないですもんね。」

 

余計なお世話だ!と突っ込みたいところだが、残念なことに私にはそれを否定出来るだけの知り合いがいる訳でもないく、どうやって総ちゃんに話を切り出そうかと思っていると…

 

「…そんな寂しい琴音に朗報です!!なんと今ならこの沖田さんがフリーなんですよっ!」

 

「えっ?総ちゃん…鳳凰星武祭出るの?」

 

「えぇ、そのためにここに来たんですからね!」

 

そう言えば忘れていた。

総ちゃんは星武祭が面白そうだからここに来たと言っていた。つまり、星武祭に興味が無いということは無い。

 

「そっか。ごめんね、私勝手に総ちゃんが興味ないと思ってて誘わなかったんだ」

 

「そうだったんですか。それなら大丈夫ですね、私と一緒に出ましょう!」

 

「うん、お願いね」

 

私のパートナーも無事決まり、これで一安心と思ったのだが………

 

「そう言えば、私序列2位になりましたよっ!」

 

………はい?

我が学園は順位の変動は直接対決によるもの、もしくは譲渡。

つまり、総ちゃんが序列2位になったということは綺凛ちゃんは……?

 

「綺凛ちゃんの序列なら4位ですよ?元々沖田さん、序列4位だったので」

 

……そうですか。

いつの間にか、序列4位になっていたことにはもう驚かない。

総ちゃんの実力ならそれでも物足りないぐらいである。

 

「うんまぁ、鳳凰星武祭頑張ろうね」

 

「えぇ、優勝あるのみです!」

 

こうして私と総ちゃんが鳳凰星武祭出場することが決まった。

 

 

 

 

 





結局、沖田さんと出ることになりました!!

新キャラについてもここらで出したい思っているので出して欲しいキャラがいましたら遠慮なくお願いします!!

あと感想お待ちしております、感想頂けるとやる気も出るので宜しければお願いします


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29話


早く鳳凰星武祭に入りたいっ!

時間が出来たので更新です!!

これからは少し更新出来るかと思いますのでお楽しみにしてください


 

鳳凰星武祭、総ちゃんと出場することが決まり特訓の日々が続く中周りも続々と出場者が決まりつつある。

 

(それにしても…、透め………)

 

クローディアから貰った星導館の現状の出場ペアのリスト。

私と総ちゃんを始め、在名祭祀書に名を連ねる者たちのペアの名前が続く中気になるペアが一つ。

・東雲透&一ノ瀬翔

 

(……あの2人……)

 

私が誘った時には適当な理由を付けて断ったくせして、まさかあそこ2人で組んでくるとは……。

 

「…大丈夫ですか?琴音」

 

「うん、ちょっと叩きのめさなきゃいけないペアを見つけてね」

 

「そ、そうですか。それよりも始まりますよ」

 

「あぁ、うん」

 

私と総ちゃんは今決闘の観戦中。

現序列4位の綺凛ちゃんとあの転入生くんの決闘。

あの転入生くんが喚いていることから考えられるに、あの綺凛ちゃんの後ろにいる綺凛ちゃんの叔父がなにかした事に対して転入生くんが何かを言い、それを受けてあの叔父が決闘をさせたのだろう。

 

「見ものですねぇ、あの刀藤流と天霧辰明流の戦いとは」

 

「…天霧辰明流?」

 

私が知っている流派は私の実家の東雲流と刀藤流。

他にも小さな流派はいくつ知ってはいるが、天霧辰明流は聞いたことがない。

 

「琴音が知らないのも無理はありませんよ、細々とした小さな流派ですから。私もたまたま旅をしていた時に見つけた感じですから」

 

キィン

 

私と総ちゃんが話している間に、決闘は始まっていたらしく転入生くんがかなり攻めているように見える。

それに加えて、転入生君の持つ黒炉の魔剣の能力もありかなり優位に立っている。

 

(……なかなかの腕。けど、決闘はあれじゃ勝てないよ)

 

決闘慣れしてない。

つまり、彼は綺凛ちゃんの攻撃をギリギリのところで躱すだろう。それは戦闘においては有効な手だけど、決闘においては致命的になる。

 

そして、何度目かの攻防が続いたとき転入生くんの動きが一瞬鈍った。

その瞬間を綺凛ちゃんが逃すはずもなく

 

『校章破壊 勝者刀藤綺凛』

 

(……今の)

 

決闘が終わるなり、転入生くんはユリスの手によってどこかへ連れていかれてしまった。

周りの見物人もいなくなり、私と総ちゃんも行こうとした時

 

「あの程度の相手に手をこまねくとは…」

 

そう言って、綺凛ちゃんを叩こうと手を振りあげる叔父。

 

パシッ

 

「何してるんですか?綺凛ちゃんは勝ちましたよね?」

 

振り上げられた手が綺凛ちゃんへと届く前に、私はその手を止めた。

 

「き、貴様は」

 

「綺凛ちゃん、大丈夫?」

 

「え、あはい。ありがとうございます、琴音さん」

 

綺凛ちゃんの無事を確認し、もう一度叔父の方に向き直る。

 

「なんの権限があって綺凛ちゃんに手を上げてるのか知りませんが、これ以上手を上げるのは私が許しません」

 

「貴様のような小娘が…、くそっ」

 

綺凛ちゃんの叔父はそう言ってどこかへ歩いていってしまう。

 

「あ、ありがとうございました。琴音さん、鳳凰星武祭出るんですよね?」

 

「うん、そうだけど?」

 

「わ、私も出れたら出ようと思うのでその時はお願いします!」

 

綺凛ちゃんはそう言うとどこかへと走って言ってしまった。

 

「いやぁ、流石琴音ですね〜」

 

いつの間にか金平糖を食べている総ちゃん。

 

「見てたなら手伝ってよ…」

 

「いえ〜、私あの人苦手なんですよ。綺凛ちゃんは好きですけど、どうもあの人と関わるのは」

 

そう言いながらも金平糖を食べ続ける総ちゃん。

 

(私も別に得意な訳じゃないんだけど……)

 

そんなことを思いながら、総ちゃんの金平糖を1粒取って食べる。

 

「あー、琴音食べましたね!?」

 

すぐさま総ちゃんと距離をとる。

 

「いいでしょ?1粒ぐらい」

 

「いえ、許しません。食べ物の恨みは深いんですっ!」

 

そう言い追いかけてくる総ちゃん。

 

「逃がしませんよ、琴音」

 

 

 

私と総ちゃんの追いかけっこは総ちゃんが手持ちの金平糖を全て落とすまで続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





結局、透たちも出場します!!

鳳凰星武祭で、追加キャラを出していきたいと思いますので新キャラの案お願いします!!

あと感想もお待ちしております


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30話

皆様のお陰で、楽しく執筆出来ています。

勉強の合間ということで、あまり更新スピードは早くはありませんがこれからもしっかり更新したいと思いますので宜しくお願いします


「やっぱり琴音のスピードは凄いですねぇ」

 

「いやいや、総ちゃんもだよ」

 

2人して床に座り込む私達。

総ちゃんと鳳凰星武祭へ向け、絶賛特訓をするつもりだったのだけど途中からは模擬戦のような形になってしまい結果、2人とも疲れてしまった。

 

(…それにしても、私の戦闘スタイルと総ちゃんの戦闘スタイルがここまで合うとは思わなかったなぁ)

 

総ちゃんの戦闘スタイルは言わずもがな、スピードを活かした近接戦闘。

対して私は、千本桜を使った中距離戦闘。それに加えて、私達はお互いのことをよく知っている。

つまり、相性が悪いはずがないのだ。

 

「あっ、そう言えば今日綺凛ちゃんと天霧くん?でしたっけ?その2人の決闘があるらしいですよ」

 

「え?またやるの?」

 

「えぇ、なんでも綺凛ちゃんの方から申し込んだとか」

 

先日の2人の決闘は見ていたが、正直綺凛ちゃんに彼が勝てるとは思えない。

 

「…綺凛ちゃん、私には1回も挑んでくれないのに……」

 

綺凛ちゃんが入学してきて以来、ずっと待ちにまっている綺凛ちゃんとの決闘なのだが今のところ綺凛ちゃんから決闘の申し込みはない。

 

「それは、誰だって琴音となんか決闘したいとは思いませんからね。ちなみに、私だって嫌です」

 

総ちゃんに関しては嘘であると思う。

なんだかんだ言って毎回、模擬戦のようなものをやっている。

 

「千本桜使われたらやりませんよ。あれを使っている琴音に勝てた人をまだ見たことがありません」

 

さらっと心を読んできたことは置いておいて、確かに総ちゃんとの模擬戦では1度も千本桜を解放したことはないが、私に勝てる人はかなりいるように思える。例えば、お母さんとか……。

 

「それより、見に行きますか?」

 

「うん、行こうかな」

 

私と総ちゃんは決闘が行われている場所に向かうことにした。

 

 

 

 

 

「あ、琴音、総司さん来たんですね」

 

「東雲に沖田か。」

 

一般席は空いていないだろうと言うことで、冒頭の十二人の特等席の方に来てみたのだが、居たのはクローディアとユリスの2人と何故沙々宮さん。

 

「うん、綺凛ちゃんが決闘するなら見てみたいし」

 

「琴音あるところに沖田さんありですからね!」

 

総ちゃんの訳分からない発言は置いといて、闘技場の方を見ると決闘が始まるところだった。

 

(……黒炉の魔剣を持ってない…。何か策があるのかな?)

 

転入生くんは何かを隠しているようにみえた。

 

「琴音はどう見ますか?」

 

「うーん、そうだね。剣の腕だけなら圧倒的に綺凛ちゃんが有利だとは思う。けど、あの転入生くんも何かを隠してるっぽいから何とも言えないかな」

 

「………確かに剣技だけなら綾斗よりも刀藤の方が上かもしれない。けど、それよりも強い人と戦ってきた綾斗は負けないと思ってる。」

 

私の見解に対して反応したのは総ちゃんではなく、沙々宮さん。

 

「そ、そっか。沙々宮さんは彼のことよく知ってるんだね」

 

「うん、幼馴染みだから……それと、東雲は私が知っている中で圧倒的に一番強いから安心していい…。」

 

何故か安心していいと言われたが、私は別にそこまで強さに拘ってるつもりはないんだけどな……。

 

「あと、私のことは紗夜って呼んでほしい。」

 

「あ、うん。それじゃあ、私も琴音でいいよ」

 

そんな感じで紗夜ちゃんとの自己紹介を終え、もう一度闘技場の方を見ると決闘は始まっており早くも動きがあった。

 

(………なるほどね。あれが策ってわけか)

 

転入生くんの策は簡単に言うと手数を増やす。

槍であったり、剣であったり、素手であったり。その時その時で、最良の手を使い分けるというもの。

 

「考えましたね、天霧くん」

 

クローディアの言う通り、考えてはいるが何かがおかしい。

 

「……彼、この間みたいな演出ありませんでしたね」

 

「うん…、まぁそれがこの戦い方の理由なんだろうけどね」

 

決闘の方に動きがあったのは、転入生くんの攻撃を綺凛ちゃんが防ぎ、二本の小太刀を弾いた瞬間。

これを好機と綺凛ちゃんが攻めにいった瞬間に、彼が綺凛ちゃんを地面に叩きつけ勝負あり。

 

『校章破壊 勝者天霧綾斗』

 

決闘が終わり、ユリスと紗夜ちゃんはすぐに選手控え室の方に行ってしまった。

 

「琴音、綺凛ちゃんのところに行きます?」

 

「うん、行こうかな。クローディアは?」

 

「私も行きますよ、総司さんだけに琴音を独占されるのは癪なので。」

 

理由はよく分からないが、綺凛ちゃんの控え室へと3人で行くこととなった。

 

 

 

 

 

綺凛ちゃんの控え室へと向かう途中で綺凛ちゃんと会ったが、何やら綺凛ちゃんはこれから転入生くんの方の控え室に行くとのことらしく私は遠慮しようとしたが何やらクローディア曰くいた方がいいと言われ、渋々向かうことに。

 

「…失礼します」

 

転入生くんの控え室に居たのは、先ほど出ていったユリスと紗夜ちゃんの2人と転入生くん。

私は総ちゃんとクローディアの影にひっそりと居ることにした。

 

「あ、琴音。見てくれてたんだ」

 

と一瞬にして、私を見つけ笑顔でこちらに来る転入生くん。

 

(………無理)

 

「あ、あの!!お願いがあるんですが…」

 

突然綺凛ちゃんが大声を出したことで転入生くんも止まり、元の席へと戻った。

 

「それでお願いってなんだい?」

 

「え、えっと琴音さんと総司さんの練習に参加させて欲しいんですっ!!」

 

「「えっ?」」

 

これには流石の私でも驚いた。

今の流れからして、転入生くんたちの練習に参加させて欲しいと頼むなら分かるが何故私達なのだろうか?

 

「…別にいいけど、何のためにここに?」

 

「あっ!すみません、忘れてました。あ、あのっ!!紗夜さんが良ければ私と鳳凰星武祭に出てもらいたいんですっ!!」

 

「……うん。いいよ、琴音たちの練習には私も興味がある。それに琴音たちとも戦ってみたかったし」

 

そう言って綺凛ちゃんと握手をする紗夜ちゃん。

とてもいい雰囲気だったが、もちろんそのまま続くわけなく………。

 

「…綺凛っ!!なんだあのざまは」

 

と当然のように控え室に現れた綺凛ちゃんの叔父。

現れて数秒も経たないうちに、綺凛ちゃんの目の前までいき罵声を浴びせ続ける。

そして、ある程度言い終えたところで拳を振り上げた。

 

パシッ

 

拳が振り下ろされる前に、綺凛ちゃんとの間に入り拳を受け止める。

転入生くんも立ち上がろうとしていたが、それじゃあ間に合わないよ。

 

「……何してるんですか?」

 

「何って貴様には関係ないだろっ!!」

 

関係がないと言われて、目の前でまだ中学生の女の子が殴られるのを見てろとでも言うのだろうか。

 

「死にたくなければ、さっさと綺凛ちゃんの前から消え失せて」

 

殺気を出して、拳を掴んでいる手に力を込める。

 

「…くっ。綺凛、貴様の父親が…」

 

まだ何かを言おうとしていたので、殺気を全開にしてもう一度言い直す。

 

「……そう。死にたいのね」

 

チャキッ

 

空いている方の手を千本桜に掛け、少しだけ抜く。

 

「…ひぃっ。」

 

そんなだらしない声と共に、綺凛ちゃんの叔父はどこかに走っていった。

 

「…ふぅ」

 

殺気をしまい、みんなの方を振り向くと総ちゃんとクローディアを除いて全員顔を青ざめていた。

 

「ん?どうしたの?」

 

「琴音、流石にやりすぎですよ」

 

クローディアに言われ自分のせいだと自覚し、みんなの方に頭を下げる。

 

「あ、ごめんなさい。」

 

「いえ、私のためにありがとうございます。」

 

最初に反応してくれたのは綺凛ちゃんで、ほかの3人も苦笑いしているが許してくれた。

 

「それで、綺凛ちゃんと紗夜ちゃんは私たちの練習でいい?」

 

「はいっ!」

 

「うん、2人の強さはアスタリスクでもトップクラス。申し分ない」

 

「そうですか。琴音との2人きりの時間が減るのは残念ですが致し方ないですね。」

 

2人に聞いたはずなのに、何故か総ちゃんが最後を締めくくるという不思議な展開。

 

「…えっと、ユリスたちもそれでいいかな?」

 

「うむ、私達もまだまだなのでな」

 

「うん、僕もそれでいいよ」

 

2人も了承してくれたので、これでこれから鳳凰星武祭までは綺凛ちゃんたちと特訓することになる。

 

「これからよろしくね、2人とも」

 

「はいっ!」

 

「ばっちこーい」

 

紗夜ちゃんのそれはよく分からなかったが、納得してくれたようだ。

 

「あの、一つだけお願いがあるのですが」

 

これで解散と思ったら何やら綺凛ちゃんからお願いがあるらしく、引き止められてしまった。

 

「ん?なに?」

 

「え、えっと"琴音お姉ちゃん"って呼んでもいいですか!?」

 

何かと思ったら呼び方の話らしい。

常々綺凛ちゃんのような妹が欲しいと思っていたので、とても嬉しい提案である。

 

「うん、いいよ」

 

私が了承の旨を伝えると、綺凛ちゃんはとても喜んでくれた。

 

「そーいえば、琴音は綾斗のことずっと転入生くんって呼んでるけど理由あるのか?」

 

「うーん、特にないけど。名前知らなかったからかな」

 

そう言うと彼は見るからに落ち込んでいた。

 

「……それじゃあ、僕のことも綾斗って呼んでくれると嬉しいかな」

 

その言葉に、クローディアと総ちゃんが凄い目つきで彼のことを見始めたので私は総ちゃんとクローディアの手を引いて

 

「うん、わかったよ。天霧くん」

 

そう言って、総ちゃんとクローディアと控え室から出ることにした。

 

 

 

 

 

 




綺凛が綾斗に落ちるなんてことはさせないですよ!!
落ちると思ってたそこの貴方甘いです!!
綺凛ちゃんは、百合っていうより妹属性が強いと思ったのでこうなりましたが割と作者的には納得しております



追加キャラについてのアンケート、まだ募集しております!!

まだ4キャラしかいないので、あと4人ぐらいは欲しいです!!

感想と評価して貰えると、モチベーション上がるので宜しければお願いします!!!

ちなみに、綾斗アンチにするかは悩み中です…


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31話

今回も大して進んでないです……


皆様のお陰でランキングに載ることが出来ました!!
本当にありがとうございます




綺凛ちゃんたちと練習するようになって数日……

 

(……何かが惜しいんだよね)

 

遠距離の紗夜ちゃんに近距離の綺凛ちゃんと戦闘スタイルの相性の良さなら申し分ないし、お互いの力量もそこら辺のペアと比べたら十分過ぎるほどある。

 

「中々、以心伝心とはいかないみたいですね」

 

また例の如く団子を頬張りながら話す総ちゃん。

総ちゃんの言う通り、今までの訓練を通して紗夜ちゃんと綺凛ちゃんがお互いで潰しあってしまうことが少なからずある。

 

(んー、どうしたら……。私と総ちゃんにあって綺凛ちゃんと紗夜ちゃんに足らないもの……)

 

そう考えると思いついたのは一つだけだった。

 

「紗夜ちゃん、綺凛ちゃんちょっといい?」

 

私が呼ぶと、2人とも若干ヘロヘロになりながらこっちに向かって歩いてきた。

 

「ハァハァ、なにかあったんですか?」

 

「…ハァハァ、どうかしたのか?」

 

2人して息切れしているが、なんとか話そうとしてくれる。

 

「えっとね、明日は練習禁止。"2人"でお出かけしてきてね」

 

私たちにあって、2人に足りないものは[どれだけ相手を知っているか]の一点。

よくよく考えてみれば、2人が知り合ってからまだ数ヶ月。2人の意思疎通が大切なタッグ戦に於いて、最も重要なことでもある。

 

「…わかりました!」

 

「わかった」

 

2人とも納得してくれたらしく、いそいそと訓練に戻って行った。

 

「いいアドバイスでしたね〜。」

 

そう言う総ちゃんの手には今度は金平糖が。

 

(そんなにどこで買ってるんだろう……)

 

その後も綺凛ちゃんたちの訓練を見ながら総ちゃんは和菓子を食べ続けていた。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

翌日の放課後

 

綺凛ちゃんたちが休みということで、私達も休むことにし最近噂のカップルタッグを見に行くことにした。

 

「本当に総ちゃん、その2人って凄いの?」

 

「えぇ、沖田さんが聞いた話によると何でも高校から入学してきた男女らしいんですが男子生徒の方は序列11位で純星煌式武装持ちらしくて、何でも殺傷能力は一ノ瀬先輩の能力の数倍だとか。普段は真っ黒の剣と半透明の剣の二刀流らしいですが。もう1人の女子生徒の方は序列12位。武器は普通のレイピア型の煌式武装らしいんですが何でも速さがとんでもないらしいですよ」

 

そんな噂聞いたこともなかった。

先ほどクローディアに聞いてみたら、知っていて当然と言わんばかりに話し始めて最終的に私の友達の少なさを指摘されてしまった。

 

「えっと、それでどこでしったっけ?」

 

「さっきクローディアに聞いてきたよ。確か、あそこの訓練室かな」

 

クローディアから教えてもらったのは、私達がいつも使っている訓練室とは真逆にある訓練室。

どうりで、見たことすらないわけだ。

 

「さて、行きますよ!琴音」

 

「…うん」

 

先ほど、クローディアから貰ったキーをかざすと施錠が解け、ドアが開いた。

 

「失礼します…」

 

訓練室に入ると、丁度訓練を終えたところらしく2人してこちらを凝視している。

 

「…こんにちは!!私は沖田総司です!!」

 

そんな2人にお構い無しに挨拶をする総ちゃんのコミュニケーション能力に驚きつつも私も挨拶をすることにした。

 

「勝手に入ってごめんなさい。私は東雲琴音です」

 

そう言うと、目の前の2人は何度か瞬きをした後…

 

「「えぇぇぇ!!」」

 

と驚いていた。

 

「あ、明日奈なんでこんな所に【桜姫】と【瞬神】が!?」

 

「私だって知らないよ。和人くん、なにかしたの?」

 

(総ちゃんの二つ名【瞬神】なんだ………かっこよ過ぎない?)

 

2人の大慌てぶりに若干驚きつつ、総ちゃんの二つ名の格好良さに嫉妬していた。

 

「えっと、大丈夫?」

 

いつまでもあたふたしている2人を宥めようと思い、声をかけたら女の子の方が先に落ち着いたらしく自己紹介を始めてくれたのだが…

 

「さっきは取り乱してごめんなさい。私の名前は、結城明日奈。それであっちで、【瞬神】さんと手合わせしてるのが桐ヶ谷和人くん………手合わせ!?」

 

先ほどまで、私の横にいたはずの総ちゃんと打ち合いをしている彼。

 

「彼、中々凄いね」

 

総ちゃんも手を抜いているとはいえ、彼も本気ではないだろうし今のまんまでもかなりのスピードでの戦闘になっている。

 

「え、あうん。それで、序列1位と2位の2人がどうしてここに?」

 

「あ、ごめんなさい。偶々噂で、とんでもなく強いペアがいるって聞いたから気になっちゃって来たんだけど…」

 

「そうなんだ。あと私のことは明日奈って呼んでくれると嬉しいかな。あと敬語もなしで」

 

「うん、分かったよ。それじゃあ、明日奈も私のことは琴音って呼んで。あともちろん敬語もなしだよ」

 

「うん、わかった。けど、もう1人私の知り合いの子で琴音っているのよね。まぁそっちの子は違う呼び方してんるんだけどね」

 

そんな感じで明日奈と話していると、丁度2人も疲れたらしくこちらに戻ってきた。

 

「いやぁ、彼強いですねぇ」

 

「よく言うよ軽くあしらわれてた気しかしないぜ?こっちは。それはそうと、あんまり俺は近寄らない方がいいのかな?」

 

「なんでです?」

 

「いや、噂で聞いた程度なんだけど【桜姫】は軽度の男性恐怖症だからあまり男子とは関わらないって聞いたもんでな」

 

自分のことがそんなに広まっていたことに驚いたが、それとは別に彼の心遣いにはとても感動した。

どこかの転入生くんとは違い、相手のことを考えられるのは素晴らしいことのように思えた。

 

「ごめんね、慣れてくれば大丈夫なんだけど……。」

 

「いや、人それぞれ事情があるだろうし。それにしても、アイツと同じ名前なのに全くタイプは違うな」

 

「だよね、私もそれは思ったよ」

 

先ほどから出てくるもう1人の琴音さんはどんな人なのだろうか。

 

「琴音って名前の人がもう一人いるんですか?」

 

「あぁ、確かあいつも星導館だから今度紹介する機会があったらするよ。他にも数人だけど女の友達いるから、東雲さんにも紹介するよ」

 

「あ、うん。ありがとう、、それと、さん付けなくていいよ」

 

「それじゃあ、俺も敬語はなしで頼む。呼び方はそっちに任せるよ」

 

本当にどこかの転入生くんとは大違い。

私の事情を知っているからかは分からないが、絶対にある程度の距離を保ってくれている。

 

「それじゃあ、これ以上いるのも訓練の邪魔だろうから私たちはこれで」

 

「それじゃあ、また会いましょうね〜。」

 

訓練室を出ていく私達を、2人は手を振って見送ってくれた。

 

 

「いい人たちでしたね」

 

「…うん、そうだね。あの2人と知り合えたのは良かったかな」

 

私達は鳳凰星武祭に向け、新しい楽しみを見つけることができ更に訓練に力が入ることになった。

 

 

 

 

 

 




この2人以外にもまだまだキャラは追加されますのでご安心を。

まだまだキャラについての案は募集しておりますので、宜しければ参加お願いします


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32話

今回もまだ鳳凰星武祭には入りません……。

若干のゆるゆる回が続きますが楽しんでもらえると嬉しいです。


「いやぁ、たった1日でここまで変わるんですねぇ」

 

そう言う総ちゃんの目線の先にいるのは、訓練中の綺凛ちゃんと紗夜ちゃんの2人。

総ちゃんの言う通り、2人の変化は私の予想を大きく上回りそこら辺のペアの連携など目じゃないほど息が合うようになっていた。

 

「…私も予想外だよ。気休めのつもりで言ったのに、余程のことでもあったのかな?」

 

「案外あの二人の場合は共通点でもあったのかも知れませんよ。沖田さんたちだって、最初はただ剣術が好きなことしかお互いのこと知りませんでしたし」

 

確かに私と総ちゃんは最初は剣術のことで話があい、それから2人で模擬戦闘などやっていくうちに今の関係になった。

 

「そうかもね……あっ、終わったみたいだよ」

 

総ちゃんと話していると、2人の訓練中も終わったようでその場に座り込んでいた。

 

「お疲れ様、2人とも」

 

労いの言葉をかけ、手に持っていたスポーツドリンクを渡す。

 

「それにしても、たった1日でここまで仕上げてくるなんて凄いね。総ちゃんも驚いてたよ?」

 

「……総司さんは?」

 

「…ちょっと打ち合いに……。ごめんね」

 

先ほどまで一緒に見ていたはずの総ちゃんは、また桐ヶ谷くんの所に打ち合いに行ってしまった。

彼も楽しんでいるらしく、明日奈に迷惑を掛けていないかは心配だが私までここを離れる訳にもいかないのでただ祈るだけである。

 

「それなら、琴音に私たちの相手をして欲しい。もちろん全力で。」

 

「……いいけど、綺凛ちゃんは私1人でいい?」

 

総ちゃんがいないため、2対1となるが綺凛ちゃんが納得するかどうか……。

 

「い、いえっ!!琴音お姉ちゃんと出来るなら喜んでやらせてもらいます!!」

 

「…わかった。それじゃあやろう」

 

未だに呼ばれなれない綺凛ちゃんのお姉ちゃん呼びになれるにはまだまだ時間がかかりそうである。

 

 

 

「えっと、決闘のスタイルは取れないから模擬戦ってことで。一応、戦闘続行不可能は自己申告で怪我にだけは気をつけてね。」

 

「はいっ!!わかりました」

 

「了解した」

 

「それじゃあ、始めよっか。この鈴が地面に落ちたらスタートね」

 

そう言って鈴を真上に投げる。

 

チリーン

 

鈴が落ちると同時に真っ直ぐ突っ込んでくる綺凛ちゃん。

 

(……綺凛ちゃんに対して、紗夜ちゃんは1歩も動いていない)

 

綺凛ちゃんは間合いのギリギリ外までくると立ち止まった。

 

「…綺凛ちゃん、私には間合いなんて関係ないんだよ?…………散って、千本桜」

 

ザアァァ

 

桜の濁流が、綺凛ちゃんのいた場所飲み込む。

 

「……そんなことは百も承知ですっ!!」

 

間合いの外に居たはずの綺凛ちゃんはいつの間にか、私の間合いの内側にいた。

 

「……やるね。けど、まだ甘いよ」

 

私の千本桜は、一見攻め手に特化しているように見える。けど、千本桜の本当の特徴は攻守のどちらにも優れているところ。

 

ザアァァ

 

自分の周りを千本桜で覆い、桜の壁を作り出す。

 

「……くっ」

 

綺凛ちゃんは後ろへと跳び、紗夜ちゃんの元まで下がる。

 

「どうしたの?折角2人いるんだから2人で攻めてきなよ。」

 

そう言うと何やら2人でアイコンタクトをし、もう一度綺凛ちゃんが突っ込んでくる。

 

(……さっきと同じはずが無い。紗夜ちゃんから目を離さないようにしないと。)

 

綺凛ちゃんの連鶴を千本桜の壁で防ぎつつ、紗夜ちゃんの方へと意識を向ける。

 

(………あれは?)

 

紗夜ちゃんが持っているのは通常の煌式武装の大きさよりもかなり大きいランチャーのようなもの。

 

(あれは、煌式武装なのかな??)

 

「どどーん」

 

通常の煌式武装の数倍ほどのエネルギー量を持ったエネルギー弾がこちらへ向かって飛んでくる。

 

「(……あれは不味いかなぁ)……卍解 千本桜景厳【桜花】」

 

数千の刀を前方に展開し、エネルギー弾を防ぐ。

 

(……ふぅ。ちょっと危なかったかな)

 

卍解した状態では完全に防ぐことが出来たが、始解の状態では少し厳しいかもしれない。

紗夜ちゃんが打ったエネルギー弾はそれほどの威力を要していた。

 

「……あれだけまともに当たったのにまさか無傷とは。」

 

「私も軽くあしらわれてました……」

 

何故かその場に膝を付いて落ち込み始めてしまった2人。

 

「えっ、いや2人ともかなり強くなってるよ?だから、自信持って、ね?」

 

このあと、総ちゃんが来るまで2人を元気付け続けたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 




書いてて思ったことなのですが、琴音たちのペアに勝てるペアいるんでしょうか……。

これは断言出来ますが、いないですね。現状

可能性があるのは、透&一ノ瀬先輩。キリト&アスナぐらいな気が……。
皆さんはどう思いますかね?
宜しければ感想の方にお願いします


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33話

奇跡の連日投稿……。

夏の高校野球も始まり盛り上がることも多くなりましたが、こちらも遂に鳳凰星武祭が始まります!!


今回はちょっと長くなってしまいましたが、お許しください



綺凛ちゃんたちとの訓練の日々が続くこと数日。

漸く鳳凰星武祭当日となった。

 

「漸くですねっ!琴音」

 

「……そうだね」

 

ここ数日間で、六花も星武祭によって盛り上がりを見せ全体的に星武祭色に染まっている。

 

(………それにしても、裏切り者めぇ)

 

名簿で見ていて知っていたとはいえ、改めて直で見ると腹立たしい。

私が誘って以来、私を避けるようにして会うことがなかった透と一ノ瀬先輩の2人。

開会式ということで、久しぶりに会ったのだが私から逃げるように隅っこに行ってしまった。

 

(……それにしても、星導館のペア豪華だなぁ)

 

元序列1位の一ノ瀬先輩と透のペアに始まり、序列11位の桐ヶ谷くんと序列12位の明日奈のペア、元序列2位の綺凛ちゃんと紗夜ちゃんのペア、序列4位の天霧くんと序列5位のユリスのペア。そして、序列1位の私と序列2位の総ちゃんのペア。

これだけそうそうたる面子を揃えており、クローディアがかなり期待しているのも分からなくもない。

 

「さ、琴音行きますよ」

 

「あ、うん。」

 

総ちゃんに手を引かれ私は開会式へと向かった。

 

 

 

 

(………視線が…)

 

当然のように列の1番先頭へと並ばされ、今に至るのだが………。

全学園からの視線が明らかにここに集中している。

 

(……早く終わってください)

 

そう願い続けること数十分……漸く運営委員長の話が始まった。

 

「諸君、おはよう。星武祭フェスタ運営委員会委員長のマディアス・メサだ」

 

爽やかな感じを醸し出しているが、星武祭優勝のさいに銀河での地位を願うなど中々な策士である。

 

(……胡散臭くてこの人嫌いなんだよね。早く話を終えて下さい。お願いします)

 

そこから長々決まり文句の挨拶を続けること数分……

 

「これから諸君に重要なレギュレーション変更を伝える。従来煌式武装に制限を設けていなかったのだが、色々不都合が出てきた。」

 

「具体的にいうと、自立起動する武器をどう扱うか。武器の数に制限を設けるのは論外だ。自立起動兵器の使用を禁止すれば、この大会の衰退を招くことになるだろう……。そこで!今回に限っては代理出場という形を取ることにした。」

 

この発言によって辺りはざわめく。

 

「琴音、これって。」

 

「うん、明らかにアルルンカント優位なルールだね」

 

自立起動兵器の使用。

こんなルールは、アルルンカント以外の学園にとってはあってないようなルール。

なぜなら、他の学園には自立起動兵器なんて作る技術力はない。

 

「えぇ、これで少しは楽しめる大会になりそうですね!!」

 

(………忘れてた。)

 

周りの反応とは裏腹に、かなり嬉しそうに金平糖を頬張る総ちゃん。総ちゃんがわざわざ六花に来た理由は、何を隠そう強い人と戦うため。

そんな総ちゃんにとって、このルールはとても嬉しいものなのだろう。

 

(……まぁ確かにパペット相手なら手加減する必要もないしね。むしろ、好都合かな)

 

「賢明なる諸君には、これが特定の学園を有利にするものではなく、むしろ近い将来の平等性を確固するためだとわかってもらえると思う。そして星武祭を愛し、応援してくださっている皆さんには、これがより進化した、新たな星武祭へ繋がるものであるとご期待願いたい。」

 

一斉に観客席から歓声が沸き上がり、長い長い演説は終わりとなった。

 

 

 

 

 

〜控え室〜

 

「いやぁ、それにしても楽しみですねぇ。早く当たりませんかね?」

 

「うーん、残念だけど本戦までは当たらないかな。取り敢えず、ブロック予選2つ勝たないとね」

 

「…そうですかぁ、残念です。」

 

そう言って残念そうに団子を食べ始めた総ちゃん。

 

「取り敢えず、初戦行くよ」

 

「仕方ないですねぇ……。」

 

総ちゃんは渋々ながら食べかけの団子を口に頬張ると、ステージの方へと向かい歩き始める。

 

「ほら、琴音行きますよ」

 

「…はいはい」

 

何故、総ちゃんが先導しているのか突っ込むのはやめて、私もステージへと向かった。

 

 

 

『皆さん、お待たせしました!!今大会の開幕戦Aブロック第1回戦です!!!いやーこの大歓声凄いですね』

 

『そうっすね。なんと言ってもこの開幕戦出場ペアの中には、あの星導館の序列1位、王竜星武祭覇者【桜姫】東雲琴音選手がいるっす。相方の方も、たった1ヶ月であの星導館の序列2位までのし上がった【瞬神】沖田総司選手っすからこれは盛り上がらない方がおかしいっす。』

 

『そうですね!!会場のボルテージも上がってきたところで、選手の紹介です!!まずはこの2人、レヴォルフ学園のユサ・ローズ選手とエイラ・ホーミス選手のペアです!』

 

『そして、皆さんお待たせしました!!!星導館学園が誇る六花の姫!王竜星武祭覇者、星導館学園序列1位【桜姫】東雲琴音選手と序列2位【瞬神】沖田総司選手のペアです!!!』

 

「琴音人気ですねぇ。」

 

笑いを我慢しながらこちらに言ってくる総ちゃん。

 

「……笑い事じゃないよ。……まず、六花の姫ってなによ」

 

「いいじゃないですか、お姫様…」

 

未だに引き摺る総ちゃんを無視し、相手へと向き直る。

 

『両者準備が整ったようです!!それでは、鳳凰星武祭予選Aブロック第1回戦!!』

 

『Start of the duel』

 

『バトル、スタートです!!』

 

開始と同時に相手は二手に別れた。

 

「……総ちゃん、あんまり総ちゃんの手の内は見せたくないから私1人で行くけどいい?」

 

「むぅ。仕方ないですね、わかりました」

 

そう言うと総ちゃんは、その場に座り込む。

 

『おっと、二手に別れたレヴォルフのペアに対して沖田選手はその場に座り込んでしまいましたね。』

 

『えぇ、見たところ東雲選手が1人で相手にすると言ったところでしょうか』

 

左右、両サイドから攻めてくる相手。

 

(……まぁ私には関係ないけどね)

 

そのまま相手が自分から10mの位置に来るまで、私が動くことは無かった。

 

「あまり私たちを舐めないでよねっ!!」

 

「その制服ずだボロにして上げる」

 

「舐めてなんかないよ………散って、千本桜」

 

両サイドから斬りかかってくる2人を桜の濁流が包み込む。

 

『ユサ・ローズ、エイラ・ホーミス校章破壊。』

 

『End of duel』

 

『決まったァ。東雲選手は1歩も動くことなく、相手を沈めました!!』

 

『いやぁ、流石っす。情報戦でもあるこの星武祭において、情報の少ない沖田選手を動かすことなく自身も必要最低限の動きのみで倒してしまうとは。』

 

『そうですね!!東雲選手の強さは健在。いや、寧ろ王竜星武祭よりも上がっているように見えますね』

 

『そうっすね。これは今大会も楽しみっす』

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「琴音、今度は私に戦わせてくださいよ!!」

 

「えっ、あうん。けど……」

 

控え室に戻ってくるなり、凄い剣幕で迫ってくる総ちゃん。

 

「琴音の心配なら無用です!なぜなら、次の試合誰の目に写ることも無く終わらせますから!!」

 

そう自信満々に胸を張って言う総ちゃん。

 

(……そういう事じゃないんだけどなぁ)

 

総ちゃんの言う通り、私や総ちゃんが全力で動けば目で追える人はかなり限られてくる。

それでも、目で追える人はいる訳で…。

 

「……わかったよ。次の試合は総ちゃんに任せるよ」

 

「えぇ、この沖田さんに任せてください!!」

 

先ほどまでとは打って変わって上機嫌になる総ちゃん。

 

(…まぁ見えたところで関係もないしね)

 

よく考えてみれば、総ちゃんのスピードをいくら目で追えようが総ちゃんの動きについて来られる人を私は数人しか知らないし、その数人も今回の鳳凰星武祭には殆ど出場していない。

 

(………透と桐ヶ谷くんぐらいかな)

 

私が知っている中で、総ちゃんのスピードについて来られるのはこの2人。

 

「琴音、この後お茶屋行きません?」

 

「いいよ、行こっか」

 

私たちは、控え室を後にしお茶屋に向かうことにした。

 

 

 

 

 




モブキャラ考えるのかなり大変です……

追加キャラについて、まだまだ募集してますので思いついたのがありましたらお願いします!!


皆さんの感想お待ちしておりますので、ご遠慮なくお願いします!!


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34話

連日投稿!!!

この作品待っていてくれている人がいるかわかりませんが、この作品と東京喰種の作品を主体に更新して行きますのでよろしくお願いします!!


昨日の1戦以来、戦いたくてウズウズしているのか珍しく和菓子を食べずに菊一文字を眺めている総ちゃん。

 

「……ほら、行くよ」

 

「えぇ!!やっとですね」

 

珍しくスキップをしながら、会場へと向かう総ちゃんを私も後ろから追いかけるようにして会場へと足を向けた。

 

 

 

 

『さぁ、本日もやって参りました!!!Aブロック第2回戦。出場選手の紹介です!!!』

 

『まずはこの2人!!ガラードワース学園序列29位【優戦士】セレス・ローレンス選手と序列39位【良従士】セル・マルス選手』

 

『そして、1回戦圧倒的な強さを見せたこのペア!!星導館序列1位【桜姫】東雲琴音選手と序列2位【瞬神】沖田総司選手!!』

 

『前回は沖田選手は全く戦わなかったすから、今回はどう動くか楽しみっすね』

 

『えぇ、そうですね!!さぁ、両者準備が整ったようです!!』

 

『鳳凰星武祭Aブロック第2回戦!』

 

『Start of the duel』

 

『バトルスタートです!!!』

 

始まったが相手は1歩も動く気配がない。

私のカウンターを警戒してのものだろうけど、私の能力なら別に動こうが動くまいが関係はない。

 

「……総ちゃん、あとはお願いね」

 

「えぇ!!沖田さんにお任せ下さい!!」

 

私は総ちゃんから二歩下がったところで腰を下ろす。

 

『おっと?今回は東雲選手が座り込んでしまいました!!』

 

『これは、前回の逆っすね。』

 

私のやることと言えば今回は特にないので、ただ総ちゃんを眺めることにした。

 

「沖田総司、推して参る!!」

 

スパッ

 

『セレス・ローレンス、セル・マルス 校章破壊』

 

『End of duel』

 

『決まった〜!!!これが瞬神!!!』

 

『いやぁ、これは凄いっす。』

 

『これによって、東雲・沖田ペアの本戦出場が決定致しました!!』

 

『本戦でも楽しみっすね』

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「あなたたちは、本当に規格外ですね……。」

 

控え室に戻ってくるなり、唐突にクローディアに言われたこの言葉。

 

(……別に、予選ならこれぐらいが……)

 

「いえ、当たり前じゃありませんよ!!あなたたち2人に序列では次ぐ天霧くんとユリスのペアでもこんな試合はしてません!似たようなことを、桐ヶ谷くんと結城さんのペアと透くんと一ノ瀬先輩のペアはやっていましたが……」

 

「それはそうと、初戦の相手は誰なんです?」

 

総ちゃんはクローディアの言う事に興味すら持たずに、団子を頬張りつつクローディアに質問をする。

 

「えっとですねぇ、2人の初戦は……アルルンカントの自動起動兵器のペアですね」

 

…自動起動兵器のペアか。

 

「漸くですかぁ。楽しみですね、琴音!!」

 

「うん、少しは楽しめそうだしね」

 

「……あなたたちぐらいですよ、そんなことを言ってるのは……」

 

クローディアに何故か呆れられたが、私達からすれば手加減をする必要のない相手。

とても楽しみなのだ。

 

「あなたたちと戦う相手には同情しますよ…。」

 

クローディアはそう言うと用があると言ってどこかへ行ってしまった。

 

「そう言えば琴音。この間、いい和菓子屋さん見つけたんですけど行きませんか?」

 

「行く!!早く行くよ、総ちゃん」

 

それ以来、私がその和菓子屋さんに入り浸ることになるのは言うまでもない。

 




感想、追加キャラお待ちしてますので、遠慮なくお願いします!!

キャラについては、オリジナルキャラでもいいのでお願いします!!

あと、もしかした新作書こうと思っているのでよろしければ活動報告の方のアンケート参加お願いします


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35話

毎日更新!!!

これからは基本この作品は毎日更新していけると思います!!
喜んでくれる方がいるか分かりませんが、一応の報告でした





 

本戦と予選の間の1日の過ごした方というのは人それぞれだろう。

多くの勝ち残ったペアは、連携の確認であったり、作戦を考えたりと少なからず星武祭についてのことをするだろう。

 

「琴音、この団子美味しいですね〜」

 

何を隠そう私達はこの貴重な1日を和菓子屋巡りに使っている。

 

「総ちゃん、このお店はお茶がいいの。団子ならさっきも食べたよね?」

 

「そう言う琴音こそ、さっきからお茶とお餅しか食べてないじゃないですか!!」

 

私と総ちゃんが唯一分かり合えないもの。

それは…………食べ物の趣味。

総ちゃんは、日頃から分かる通り金平糖と団子が大好物。

対して私は、お茶とお餅が大好物。

団子とお餅が同じだという人が居たら、それは違う。

団子よりも断然お餅の方が美味しい。

 

「それはそうと、この後はどこに行くの?」

 

「ふふっ、なんとですね!!」

 

何故かテンションがハイになった総ちゃん。

 

「噂なんですが、再開発エリアの方に絶品の茶菓子屋があるらしいんですよ!!」

 

これには驚きを隠せなかった。

再開発エリアの方にそんなお店があるなんて、六花に来て1年になるが全く知らなかった。

 

「総ちゃん!!早く行こう」

 

「ちょっと待ってくださいよ、琴音〜」

 

まだ団子を頬張っている総ちゃんを置いて、私は駆け出した。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「………総ちゃん、本当にこんな所にあるの?」

 

「………えぇ、多分………」

 

総ちゃんが意気揚々と案内したのは、再開発エリアの中でも本当に廃れている地域。

そしてかれこれ、探すこと数分。

 

「……総ちゃん、噂は嘘なんじゃ……」

 

私も総ちゃんも心が折れかけ、商業区へと戻ろうと思ったのだが

 

「……琴音っ!」

 

私と総ちゃんの視線の先には、探していた茶菓子屋ではなく1人の少女が居た。

 

「うん。けど、あの子何かがおかしい……」

 

見たところ綺凛ちゃんと同じくらいの年齢のようだが、見て取れるほどの怪我に覚束無い足取りと明らかに普通じゃない。

 

ドサッ

 

「……あっ!」

 

少女はその場に倒れてしまい、私と総ちゃんは急いでその少女の元へと駆け寄った。

 

「……琴音、その子は?」

 

「…分からない。けど、このままほっとくと危ない…。」

 

抱き抱えた少女は、どんどん衰弱しており病院まで送っていられるほどの時間もない。

 

(……私なら治せる…。けど………)

 

私の魔女としての能力を使えばこの少女のことを救うことは容易い。

それでも、これだけの怪我を代償もなしに治せるほど私の能力は万能な訳じゃない。

 

「……琴音、助けてあげてください。星武祭ならまたありますし、後のことは私に任せてください!!」

 

胸を張ってそう言ってくれる総ちゃんは、とても頼もしく見えた。

だが、私がいなくても最悪総ちゃん1人でも勝てるのではないのだろうか?

そう思った、私の気持ちは総ちゃんの言葉ですぐにかき消された。

 

「……私は、琴音と一緒じゃなきゃ鳳凰星武祭は戦えませんし、戦うつもりもありませんよ。」

 

「……ごめんね、総ちゃん」

 

アルルンカントとの初戦。とても楽しみにしていた総ちゃんには本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

私は、少女を1度下ろし手をかざした。

 

「………私は拒絶する……」

 

その瞬間に私の治癒能力を上回った分の少女に蓄積された痛みが私へと流れ込んでくる。

 

(………こんなに……この子に何があったの?)

 

「………誰?」

 

最後に意識が戻った少女の声を聞き、私は星辰力を殆ど使い更に流れ込んできた痛みにより気を失った。

 

 




遂に出すことが出来ました!!!
アイディアを下さった方、遅くなって申し訳ないです!!


それではまた次回!!


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36話

作者自身もここからの展開を書くのが楽しみで、どんどん書けます

毎日更新ということで、他の作品を読みたいと言ってくれる人もいるかもしれませんが他の作品は話を思いつき次第投稿するのでご安心を……。


それでは本編!!
琴音たちの鳳凰星武祭はどうなったのでしょう……!




「……お姉ちゃん、私を忘れないで」

 

……またこの子。

私よりもずっと小さく、髪の毛の色も私とは違って総ちゃんのような薄い桜色。

 

「あなたは誰なの?」

 

「私は私だよ。お姉ちゃん」

 

いつも通りの返答。

この子がこの答え以外答えたことはない。

 

「………あなたは私なの?」

 

私自身10歳より前の記憶はないし、実家でも私の10歳より前の写真は存在していなかった。

だからだろうか、この子に妙な親近感を覚えるのは。

 

「………どうだろうね。その答えは私からは言えない。お姉ちゃん自身で見つけて……」

 

そう言うと少女は私からどんどん離れていってしまう。

 

「…待って………」

 

私の声はただ木霊するだけだった。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「………んっ」

 

身体が鉛のように重い。

窓から入ってくる日差しからして夕方だろうか。

 

(……またあの夢か。それにしてもここは………)

 

周りを見渡す限り病院のようだが、周りに人がいないため確認のしようがない。

 

「…すぅ」

 

身体を起こして足元の方をみると、総ちゃんが気持ち良さそうに寝ていた。

 

(………ありがと、総ちゃん)

 

総ちゃんの様子を見る限り、ずっとここにいてくれたのだろう。

 

「……ありがとう」

 

総ちゃんの頭を撫でながら外の景色を見ていると

 

「……ん…………、琴音っ!!」

 

起きるなり私が起きていることに気が付き抱きついてくる総ちゃん。

 

「ごめんね、総ちゃん」

 

「いえっ!!いいんです」

 

そう言う総ちゃんの目には若干だが、涙が浮かんでいる。

 

「それで私どれ位寝てたの?」

 

「そうですねぇ、倒れたのが一昨日の夕方頃なのでまる2日ですかね」

 

…まる2日。

総ちゃんはここからかなりの時間動いた気配がない。

ということは……

 

「琴音には申し訳ないですが、鳳凰星武祭の方は辞退しました。なんと言っても沖田さんは琴音のパートナーですから!!」

 

総ちゃんは胸を張ってそう言ってくれるが、相当悔しかっただろう。

 

「ごめんね、総ちゃん。本当にごめん」

 

「いえ、琴音があそこで助けなかったらそれこそ沖田さんは怒ってましたよ!!だから、そんなに謝らないで下さい………」

 

総ちゃんはそう言うと、私の胸に抱きついたまま泣き出してしまった。

 

「ごめんね、総ちゃん。あと、ありがとね」

 

私は総ちゃんが泣き止むまで、総ちゃんのことを撫でながら抱きしめ続けた。

 

 

 

 

 

 

「……ぐすっ。すみません、みっともない所を見せて…」

 

総ちゃんは泣いたことが恥ずかしかったのか、私とは目を合わせず下を向いたままである。

 

「ううん、今回のことは総ちゃんには感謝してばっかりだから。そう言えば、倒れてた女の子は?」

 

私と共にここに総ちゃんが運んでくれたのなら、この病院にいるはずなのだが……

 

「それなら……」

 

総ちゃんの言葉はそこでほかの人に阻まれてしまった。

 

「「琴音〜っ!!!」」

 

そんな病院で出してはいけない大きな声で私の病室に入ってきたのは、クローディアとシルヴィの2人。

その後ろには、透、一ノ瀬先輩、明日奈に桐ヶ谷くんまで来てくれていた。

 

「……ここ病院だよ、2人とも」

 

私は騒がしく入ってきた2人を手で食い止めながら、みんなの方を見てお辞儀をした。

 

「心配かけてごめんなさい」

 

そう言うとみんな優しく微笑んでくれたが、透だけは何故か大泣きしていた。

 

「お姉ちゃんがいなくなっちゃうかと思った……」

 

「お姉ちゃんはこの程度じゃ、居なくならないよ」

 

先ほどまで抱き着いていた総ちゃんも、騒がしく入ってきた2人も離れてくれて代わりに透が抱き着いてくる。

 

「……ぐすっ。………お姉ちゃんのバカ」

 

「馬鹿とは失礼だなぁ。これでも頑張ったんだよ?」

 

「そうじゃないよ………、もう無理しないで」

 

「………善処するよ」

 

透をあやしながら、私は総ちゃんに先ほどの続きを聞くことにした。

 

「それで総ちゃんあの子は?」

 

「その事なら、クローディアに聞いた方が早いです」

 

総ちゃんはそう言ってクローディアに話を振る。

 

「それでは話しますね。皆さんも中に入ってきてください。」

 

クローディアはまだ中に入っていなかった明日奈たちを呼んだ。

 

(………そう言えば綺凛ちゃんたちは来てくれなかったのかな…)

 

綺凛ちゃんたちがいないことに若干落ち込みモードに入ろうとしたのだが

 

「綺凛ちゃんと沙々宮さんに関しては、天霧くんたちの足止めを頼んであります。今回は、信用できるメンバーのみを呼んでありますので」

 

私の心情を読んだかのようなクローディアの発言にはかなり驚いた。

それにしてもクローディア、天霧くんたちの足止めって……。

クローディアの中では、天霧くんよりも桐ヶ谷くんの方が信用度が高いらしい………私もだけど。

 

「それでは話を始めましょうか。琴音が救命・保護した少女なのですが調べてみたところ数年前に凍結されていた事がわかりました。」

 

(……凍結?何のために……?それに凍結されていたのなら、あの傷はおかしい)

 

「更に彼女は銀河にとって、存在されては困る存在なんです。理由は言えませんが、このまま報告するのはかなり危険かと思います。」

 

クローディアの言葉に各々驚きの表情を見せる。

これなら、シルヴィもいるのだからアーネストにも言えば良かったんじゃ……

 

「……本当は星導館の問題に他学園の人を巻き込むつもりは無かったのですが……シルヴィにはバレてしまったので。」

 

「えへへ、琴音のいる所に私ありってね♪」

 

また心を読んで勝手に話をするクローディア。

私の心はそんなにも筒抜けなのだろうか…。

そんな私の疑問を他所にクローディアは淡々と話を続ける。

 

「そこでなのですが、琴音はあの少女のことをどうしたいですか?」

 

ここまで来て私に話を振ってくるクローディア。

 

「どうしたいも何も、助けたんだから最後まで面倒を見るよ。」

 

「……銀河と敵対することになるかも知れませんよ?」

 

「……今更それを言うかな?クローディアなら私と透がどういう人間か知ってるんでしょ?」

 

私達、東雲家の生業。

どこの統合企業財団だろうと私達と敵対することは、その統合企業財団の破滅を意味する。

 

「………はぁ、わかりました。それでは彼女は星導館で保護するということで」

 

「うん、ごめんね苦労かけて。明日奈たちも」

 

「ううん、琴音の決めたことなら私はついて行くよ」

 

「あぁ、そうだな」

 

まだ知り合って間もない私をこんなにも信頼してくれてるんて、正直思いもしなかった。

 

「ありがと、2人とも。」

 

私はもう一度2人に向かって頭を下げた。

 

「そーいえば、みんなは鳳凰星武祭どうなの?」

 

ふと浮かんだ疑問。

私と総ちゃんが、不戦敗したことを考えるとアルルンカントのペアは勝ち上がっているはずだが……

 

「…今、ベスト8が出揃ったですが我が星導館は桐ヶ谷くんと結城さん。綺凛ちゃんと沙々宮さん。一ノ瀬先輩と透くん。そして天霧くんとユリスの計4ペアが残っています。」

 

妥当な数なのだろうか分からないが、私の知り合いがこんなにも残っているのは何だか誇らしい。

 

「…そっか。みんな頑張ってね」

 

私のエールにみんな笑って応えてくれた。

 

「けど、総司と本気でやりあえなかったのは心残りだなぁ。」

 

ふとこんなことを言うのは桐ヶ谷くん。

 

「…沖田さんならいつでも受けて立ちますよ?」

 

「まじ?それじゃあ今から………」

 

「か・ず・と・くん?」

 

早速総ちゃんと一戦交えようとする桐ヶ谷くんを、とても怖い笑顔で押さえつける明日奈。

 

(……あれが尻に敷かれるか……。)

 

とても賑やかになった私の病室は、看護師さんが来るまでみんなの声で賑わっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




若干、頂いた設定とは変えてしまって本当に申し訳ないです。
今回の追加キャラに関しては、本当に詳細まで設定を考えていて下さって僕が勝手に変えてしまったのは本当に申し訳ないです。
文句ありましたら、御遠慮なく下さい。


感想、評価お待ちしております!!
感想とか貰えるとモチベーションが上がるので、よろしければお願いします!!


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37話

今回はまったり回です!

前話にて、琴音たちが鳳凰星武祭を辞退したことについて皆さんから残念だという意見を多数頂きましたがここからはオリジナルの話が続きますので楽しみに待ってもらえると嬉しいです




私も無事退院することができ、私と総ちゃんは例の少女の元を訪れることにした。

 

「それにしても、あの子の雰囲気何か違和感がありましたよねぇ」

 

そうボヤきながら、いつものように金平糖を手に持っている総ちゃんだがつい先程まで私の身体の心配ばかりしていたのだ。

 

「……そうだね。確かにあの子は普通じゃないと思う」

 

私自身、能力を使ったときに彼女に触れたが明らかに普通の怪我以外のダメージというのも存在した。

 

「あ、ここですかね?」

 

私達が着いたのは星導館にある寮の使われていない一室。

 

コンッコン

 

ドアをノックしたが反応はなく、 私と総ちゃんはドアノブに手をかけてみる。

 

ガチャ

 

「……空いてますね」

 

「…だね。」

 

私達は一度顔を見合わせた後、2人でドアを開けた。

 

「………失礼します」

 

部屋の中は電気も点いておらず窓もカーテンによって締め切られているため真っ暗であった。

 

(………何のために?)

 

そう疑問に思ったが、私も総ちゃんも明かりをつけることはせずそのまま中に入った。

 

「……暗いですね」

 

「………うん。殆ど見えない」

 

視界としては3~4mぐらい。

殆ど手探りの状況で、部屋の真ん中頃まで進んだときだった。

 

「………きゃっ!」

 

「どうしたんですか?琴音」

 

「……いや、ごめん。」

 

私が普段出さないような声で叫んでしまった理由……。それは、目の前にいる少女のせい。

ただでさえ真っ暗で視界が悪いのに突然壁際にこちらを向いて座っている少女が居ればどんな人でも驚いてしまうだろう。

 

「……あの子じゃないですかね?」

 

「うん、多分そうだと思うけど……」

 

私達の目の前にいる少女は、私達を見てからずっと震えている。

 

「………えっと、身体は大丈夫?」

 

怯える少女に手を伸ばしながら質問をすると少女はその手をずっと見た後、私の方を見て小さく頷いた。

 

「………そっか。良かったぁ」

 

「良かったですね、琴音」

 

この子の身体の無事さえ分かれば、今日の所は帰ろうと思い総ちゃんと一緒に退散しようと思ったのだが…

 

「……な……まえ………」

 

少女は私の制服の裾を掴むと小さな掠れ声で言った。

 

「私は沖田総司です」

 

「…私は東雲琴音だよ。あなたは?」

 

「…………神代………神代哀歌……」

 

少女は少し口籠もった後、小さく自分の名前を呟いた。

 

「……哀歌ちゃんか。ここにいればもう大丈夫だからね」

 

私は未だ少し震えている哀歌ちゃんの身体を包み込むように抱きしめた。

 

「………お姉ちゃん…」

 

哀歌ちゃんは、私のことをそう呼ぶとそのまま抱き締め返してくれた。

 

「哀歌ちゃん、私達と一緒に生活しないかな?」

 

これは事前にクローディアから頼まれていたこと。

私達の前に天霧くんが持ち前のお節介を発動させてこの子の元へ来たらしいんだけど案の定話も出来ず、余計に塞ぎ込んでしまったらしい。

 

「………………私は…………お姉ちゃんたちと一緒がいいです………」

 

哀歌ちゃんは弱々しいがしっかりと私の方を見て言ってくれた。

 

「そっか。それじゃあ、一緒に行こっか」

 

「……うん」

 

こうして私達の部屋に3人目の居住者が増えた。

 

 

 

 

 

 




新作についてのアンケート、活動報告の方でしてますのでよろしければ参加お願いします!

あと、追加キャラの募集まだやってますのでよろしければ。


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38話


一応、この作品では転入生くんは今のところ完全なアンチという訳ではないです!!
皆さんの意見次第で後々なるかもしれませんが…

それではどうぞ


 

(………それにしても、哀歌ちゃん人見知りなのかな…?)

 

私と総ちゃんと哀歌ちゃんは、透たちの応援のためにスタジアムの方に来たのだが

 

「……哀歌ちゃん?」

 

透たちの控え室に来たのだが……何故かユリスたちも同じ控え室におり、先程から天霧くんは哀歌ちゃんに話しかけ続けているのだが避け続けられている。

 

「ほら、哀歌ちゃん」

 

私は若干震えている哀歌ちゃんを抱き締めた。

 

「ごめんね、大きい男の人は無理みたいなんだ」

 

「ごめん…けど、やっぱりそのままじゃ不味いと思うんだ」

 

………はい?

 

(……そのままじゃ不味いって、トラウマもない人が何言ってるの?トラウマがどれだけ辛いか知らないくせに…)

 

同じトラウマを持つ者として、この言葉には怒りが湧いてきた。

私は"転入生くん"に向かって文句を言おうとしたが…

 

「……あなたでは無理なんですから、黙って琴音に任せていてください。」

 

私が文句を言う前に総ちゃんが転入生くんの前に割って入り、若干殺気を滲ませながらそう言った。

 

「はい、そこまでですよ。これから試合何ですから」

 

2人の間に割って入ったクローディアによって、険悪な雰囲気は解消されたが転入生くんは少し顔が青くなっている。

 

「透、頑張ってね。ついでに、一ノ瀬先輩も」

 

「ありがと、姉ちゃん」

 

「俺はついでかよ。」

 

私達はクローディアに連れられ、そのまま観戦室の方へと向かった。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「あ、琴音お姉ちゃん」

 

クローディアに連れられ、観戦室の方へと来ると既に綺凛ちゃんと紗夜ちゃんの2人が居た。

2人とも、前日の試合の際に負った怪我によって包帯を巻いている。

 

「2人ともお疲れ様。昨日は応援行けなくてごめんね」

 

「いえ、本当は勝って透くんたちと戦いたかったんですけど…。」

 

綺凛ちゃんと紗夜ちゃんが負けた相手はアルルンカントの自立起動兵器のペア。今日の透たちの対戦相手でもある。

 

(……私がしっかりしてればなぁ)

 

折角、透と一ノ瀬先輩を公に叩き潰せる機会だったのに…。

 

「そう言えば、その子は?」

 

綺凛ちゃんは私の後ろにいた哀歌ちゃんを指差して聞いてきた。

 

「あ、この子はね、神代哀歌ちゃん。綺凛ちゃんと同じ年だよ」

 

「神代さんですか。私は刀藤綺凛です、よろしくね?」

 

「…………よろしく……。」

 

哀歌ちゃんも同年代ということもあり綺凛ちゃんはギリギリ怖くないらしい。

 

「琴音〜、始まりましたよ」

 

綺凛ちゃんと話している間に、試合は始まってしまっていたらしく既に紗夜ちゃんとクローディアは見ている。

私も、哀歌ちゃんを連れ綺凛ちゃんと一緒に総ちゃんたちの元へ向かった。

 

 

 

 

ステージの方を見ると既に試合は始まっており、両者とも何故か1歩も動いていなかった。

 

(………何してんだろう)

 

「あの2体、1分間は動かないんです。相手を舐めて」

 

綺凛ちゃんはとても悔しそうにそう言った。

その後1分間、綺凛ちゃんの言う通り両者1歩も動かず動きがあったのは丁度1分経った時だった。

 

ピキッ

 

一瞬。

2体のパペットが動こうとした瞬間、一ノ瀬先輩によってステージの半分が凍らされた。

 

(………凄い。前に戦ったときよりも数段早くなってる。)

 

「………あの人………凄い…」

 

哀歌ちゃんは、今までからは想像出来ないほど食い入るように試合を見ている。

 

(……戦い好きなのかな?)

 

私が哀歌ちゃんを見ながらそんな風なことを考えていると

 

「あれには苦労する…」

 

「透くん、気をつけて」

 

二人の言葉で、ステージの方を見ると先程まで2体だったパペットが1体になっていた。

 

(……合体?)

 

まるで、ロボット映画のようなワンシーンだが合体するということはそれ相応の意味があるということ。

 

(……まぁまぁな速さかな。だけど、あのパワーは……)

 

合体したパペットは、普通の選手よりは少し早いぐらいの速さだが、破壊力が桁違い。

私の卍解と同等とまではいかないが、十分すぎる。

案の定、合体して以降透と一ノ瀬先輩は殆ど攻撃していない。

 

(今の透じゃ……。)

 

透はまだ卍解を習得していないし、始解の状態ではあの装甲を破るのは厳しいだろう。

 

(………あの構えは?)

 

パペットとの距離が空いたときだった。

今までとは、透の構えが変わっていたのだ。

神鎗の能力の性質上、突きの構えになることが多いのだが今の透の構えはただ棒立ちし神鎗を胸の前で並行に構えているだけ。

 

「………何をするんでしょうかね」

 

「……さぁ?分からない…」

 

その刹那、パペットが真っ二つになった。

 

「「「………」」」

 

クローディア、綺凛ちゃん、紗夜ちゃんの3人は今のが見えなかったらしく口が半開きなっている。

 

「……琴音、今のって」

 

「うん、私も完全に見えたわけじゃないけど透の神鎗が一瞬で伸びた……。まさか、卍解を習得したの……?」

 

あの伸び方は始解の状態とは大きく異なっていた。

まるで、刀身が伸びたのではなく粉々になったような……。

 

「まぁ後で透くんに聞けばわかる話ですけどね」

 

「そうだね、………哀歌ちゃん?」

 

私の横に居た哀歌ちゃんは、目をキラキラさせながらステージにいる透を見ていた。

 

(………今の見えてたのかな)

 

私の疑問に答えてくれる人がいるはずもなく、私たちはそのまま第2戦のユリスたちのペアと明日奈・桐ヶ谷くんのペアの試合を見ることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 





新作、新キャラアンケートまだまだやっておりますので参加お願いします


感想貰えるとテンション上がるので、毎日楽しみな方いましたら感想お願いします


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39話


なんとか毎日投稿です

部活動の大会と受験勉強が重なっているので、もしかしたら更新出来ない日があるかもしれませんがご了承ください


 

先程の透たちの試合が終わり、クローディアたちは一旦ユリスたちの控え室の方に行っていたのだがクローディアが戻ってきたと思ったらそのままみんなどこかへと行ってしまった。

 

(……総ちゃんも何か言われてたし、私だけ省かれるなんて……。)

 

若干残念がっていると、明日奈たちの試合が始まった。

明日奈たちとユリスたちのペアの1戦。

正直言えば、序列などを考えても前日ユリスたちが沈華たちに勝ったということを考えても、明日奈たちには厳しい戦いになるのではないかと思っていた。

 

(………まさか、これ程までとはね…)

 

戦いが始まってまだ数分しか経っていないが、現状から言って優勢なのは明日奈たち。

桐ヶ谷くんと明日奈による、完璧な連携。それに加えて、桐ヶ谷くんのあの二刀流の威力と速さ。

 

「いやいや、これ程までとは思いませんでしたねぇ。彼、沖田さんとやる時とは更に一段上げていますね」

 

手を抜かれていたことに少し残念がっている総ちゃんだが、私からしたら総ちゃんもかなり手を抜いていた訳だしお愛顧だと思う。

 

「それにしても、彼なんで黒炉の魔剣使わないんだろうね。純星煌式武装を使ってない明日奈たちになら効果的なのに……」

 

「…そ、そうですねぇ。なにか理由でもあるんじゃないでしょうかね」

 

(………下手過ぎる)

 

総ちゃんは元々嘘をつくのが上手くない。

と言うより、総ちゃんは嘘をつくことが好きじゃないから総ちゃんが嘘をつくってことは余程のこと。

 

「………総ちゃん何か隠してるよね?」

 

「…い、いえ。何も隠してなんかないですよぉ」

 

総ちゃんは自分を落ち着かせようしているのか、手元の金平糖を食べようとしては落としている。

 

「いいから、言って。言わなきゃ、もう総ちゃんのこと何もしないからね」

 

「そ、それは困ります…………。仕方ないですね、背に腹は変えられません。」

 

総ちゃんは一呼吸置いてから続けた。

 

「あのですね、ユリスの付き人であるフローラさんという方がいるのですが……その方が誘拐されてしまったらしいんです」

 

「…………はい?」

 

今、総ちゃんは誘拐と言った。

何故それをわざわざ私に隠していたのか意味が分からない。

 

「琴音には言っちゃいけないとクローディアに言われてまして、それで沖田さんが琴音の監視役としてここにいるんです。」

 

「………なんで?私に黙ってたの?」

 

これ程、総ちゃんやクローディアに対して怒りが込み上げてきたのは初めて。

それ程、私は総ちゃんの言っている意味が分からなかった。

 

「実はですね、琴音に黙っておくというのは皆の総意なんですよ。沖田さんもですし、クローディアもユリスも綺凛ちゃんも紗夜さんもそしてシルヴィアも。ついでに、夜吹さんと一ノ瀬先輩も。もちろん、桐ヶ谷さんや明日奈はこのことについて知りません………まぁ、若干一名琴音に頼もうとか言っていた馬鹿がいましたが…。琴音に何も伝えなかったのは、琴音にこれ以上無理して欲しくないんです。誘拐の事を言えば、フローラさんの事なんて何も知らないのに琴音は無理をしてでも助け出すでしょう。そして彼女が、いえ、その道中で誰かが怪我をしていたら自分の身体の事など考えずにその人を助けるでんしょう。だから、今回琴音には何も伝えなかったんです。琴音には前科がありますからね」

 

総ちゃんは1回も目を離すこと無く、私に向かって言い切り最後に試合を食い入るように見ている哀歌ちゃんの方を見た。

私は総ちゃんに言われて初めてどれだけ周りに迷惑を掛けていたかが分かった。

 

「……でも、そのフローラ?って子は大丈夫なの?」

 

「えぇ、シルヴィアがとっくに居場所は特定したそですから。そろそろ………」

 

総ちゃんが最後まで言い切ることなく、私はその結果が分かった。

なぜなら、殆ど実況など聞こえないここですら聞こえるほどの大きさでクローディアが何かを叫んだから。

 

「……大丈夫だったみたいだね。」

 

「えぇ、良かったです。琴音に殺されそうになくて。」

 

何故か的外れな心配をしていた総ちゃん。

私はそんな鬼のような人間ではない。

 

「……それにしても、戦況ひっくり返ったね」

 

クローディアが叫んだ後から転入生くんは黒炉の魔剣を使い始め、それによって純星煌式武装を持たない明日奈たちのペアは武器による防御が出来ない。

明日奈も、防御出来ずに校章を割られてしまった。

 

(………これはちょっと厳しいかな)

 

誰もがそう思っただろう。

だが、桐ヶ谷くんに転入生くんが黒炉の魔剣を振り下ろした瞬間それは変わった。

 

(………あれは?)

 

桐ヶ谷くんの持つ半透明な剣と似ているが、それ以上に美しさを感じさせる剣。

ここから分かるほど、その剣からは冷気のようなものが溢れ出ている。

 

「………あれが噂の桐ヶ谷さんの純星煌式武装ですか」

 

桐ヶ谷くんの純星煌式武装。

噂によると、その能力は一ノ瀬先輩をも凌ぐらしい。

 

(……どんな能力なんだろう…)

 

そう思った時、桐ヶ谷くんがその剣を地面に突き刺し何か言葉を発した。

すると、みるみるステージから氷で出来た蔦が生えてきてステージ全体を埋め尽くした。

 

(………けど、氷じゃユリスとの相性は。)

 

ユリスの魔女の能力は簡単に言ってしまえば炎。

つまり、あれを溶かすことは容易……のはずだった。

しかし、ユリスが魔女としての能力を使おうと星辰力を練れば練るほどそれは桐ヶ谷くんが発生させた氷の薔薇へと吸収されていく。

 

「……あれは凄いね」

 

「えぇ。魔女、魔術師殺しと言っても過言じゃないですね」

 

ステージを埋め尽くした氷の薔薇は、ユリスと転入生くんに絡みついていき2人とも意識を半ば失い勝負あったと思った。

 

「「あっ……」」

 

ユリスが僅かに残っていた星辰力で放った火球。

桐ヶ谷くんはそれを難無く避けたのだが………

氷の薔薇は桐ヶ谷くんを中心に広がっている。つまり、彼の周りの温度はかなり低くなっている訳で、そこに高温の火球がくれば……後は言わなくてもわかるだろう

 

「……彼らしいですね」

 

「うん、そうだね」

 

いくら校章が丈夫とはいえ、あれだけ急激に温度が上がれば嫌でも割れる。

 

「さて、私達も行こっか。多分、桐ヶ谷くん明日奈に叱られてるだろうから」

 

「ですね、行きましょうか」

 

私たちは、未だにステージを見続けている哀歌ちゃんを連れて桐ヶ谷くんたちの控え室に行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 





今回、大分はっしょっちゃいましたがどうでしたでしょうか。
わかりずらい方がいましたら、後日考えたいと思います。

感想、新作アンケへの参加遠慮なくお願いします!!
感想貰えるの割と楽しみなので、お願いします


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40話


先日は更新出来ず申し訳ないです。


最近思ったのですが、アスタリスクの2次作で女主人公ものを見たことがないのですが他の作品を知っている方いたら教えてもらえると嬉しいです

それでは本編どうぞ〜


 

私達が控え室に着いた時にはもう遅かった…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………和人くん、何であそこで油断しちゃうかな?」

 

控え室に到着した私達が見たのは、仁王立ちしている明日奈とその目の前で正座をさせられている桐ヶ谷くん。

 

「……明日奈、その辺で……。」

 

「あっ、琴音。………わかったよ」

 

私が声を掛けたことで、明日奈は私達が来たことに気が付いたようでそれによって解放された桐ヶ谷くんはほっとした顔をしている。

 

「………助かったよ、東雲さん、沖田」

 

「いえいえ」

 

桐ヶ谷くんのことは、仲のいい総ちゃんに任せ私は明日奈の方に行くことした。

 

「取り敢えず、今日はお疲れ」

 

「うん、ありがとう。」

 

明日奈は思っていたよりは落ち込んでいないようだった。実際、試合自体も転入生くんが黒炉の魔剣を最初から使っていたら結果は変わっていただろうし、桐ヶ谷くんが校章のことまで考えていたら負けることは無かっただろう。

 

「……さてと、総ちゃん私達は行こっか」

 

「えぇ、哀歌ちゃんも寝てしましましたしね」

 

先程、ここの控え室に着いたときに哀歌ちゃんは寝てしまい私が背負っている形である。

 

「それじゃあ、明日奈。桐ヶ谷くんもまたね」

 

「うん、またね」

 

「……もう行くのか……」

 

笑顔で送り出してくれた明日奈とは対象的に、絶望したような顔でこちらを見ている桐ヶ谷くん。

 

(………頑張って。)

 

心の中で桐ヶ谷くんの冥福を祈りながら、私達は控え室をあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

「明日奈たち惜しかったですね」

 

寮の部屋に戻った私たちは、そのままお互い部屋へと直行した。

別れる際に、総ちゃんが「何故クローディアだけ……」と呟いていたがそういう総ちゃんも綺凛ちゃんと同室なのだから私としては羨ましい。

そんな訳で、寝てしまっていた哀歌ちゃんをベッドに寝かせたあとで私とクローディアはティータイム中である。

と言っても、私は緑茶なのだけど。

 

「だね。桐ヶ谷くんもこっ酷く絞られてたし、あの2人はまだまだ強くなると思うよ」

 

「ですね、このままいけば星導館で3冠も夢じゃないですね。」

 

確かに王竜星武祭は私が、鳳凰星武祭も決勝は両ペアとも星導館。つまり、あと残るは獅鷲星武祭のみ。確かアーネストのところが強いらしいけど、星導館のトップでチームを組めば負けるようなことないとは思う。

 

(………実際、私の得意分野って多対一だし。)

 

「まだ先の獅鷲星武祭のことはまた考えるとして、明日は透くんの応援しないといけませんね。」

 

「だね。透と一ノ瀬先輩にはどうせなら優勝して欲しいからね。」

 

その後、少し談笑した後で私とクローディアはお互いベッドへと入り寝ることにした。

 

「それではおやすみなさい、琴音」

 

「うん、おやすみ。」

 

クローディアは最近寝るのが楽しみらしい。

理由は、パンドラによる悪夢を見ることが無くなったかららしい。

 

(……私の能力がまさか代償も無効化出来るとは思わなかったんだよね)

 

ものは試しようとクローディアに対して使ってみたのだが、これが上手いこといってクローディアの代償を無効化することに成功したわけである。

 

(まぁ、クローディアがこんなに安らかに眠れているならいいかな)

 

クローディアの代償を拒絶して以来私自身が時々自分の死ぬ夢を見るようになったが、毎日クローディアが悪夢を見るより数倍楽だし私が我慢すればいい話でクローディアが幸せそうに眠れるならばそれでいいと思う。

とても安心したような顔で寝ているクローディアの頭を撫でながら私は眠りにつくことにした。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「お姉ちゃん、また無理したの?」

 

(………またこの娘。)

 

私が悪夢を見ない時に、代わりに出てくるこの娘。

 

「お姉ちゃん、力がまだ万全じゃないんだよ?だから、ダメだよ?無理したら」

 

(……またか)

 

私の力がまだ封印されている理由は必ずこの娘にある。

それがどんな理由で封印されているのかは、まだ私には分かってない。

 

「…早く、私を見つけてね」

 

そういうと少女は消えてしまった。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「………ねっ、………とねっ………琴音っ!!」

 

「……んっ。どうしたのクローディア」

 

寝起きと共に聞こえて来たのは、珍しく焦ったクローディアの声。

クローディアが焦ることなんて滅多にない。

 

「……哀歌ちゃんが………哀歌ちゃんがいないんですよ!!」

 

「……クローディア、落ち着いて。今すぐシルヴィに連絡して!!」

 

「えぇ、分かりました。すみません、取り乱してしまって。」

 

私とクローディアは急いでシルヴィとの待ち合わせ場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 






そう言えば、フィリアの誕生日が決定するらしいですね!!
とても楽しみです!!

それではまた次回


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41話

まさかの1日2話……。

早く話を進めたくて、こうなりました…。
あとは感想からヒント貰い、それを早く形にしたかっただけなんですけどね

それではどうぞ


「お待たせ、シルヴィ」

 

「ううん、私も今来たところだから」

 

哀歌ちゃんがいなくなったことを受け、私が連絡したのは総ちゃんとシルヴィの2人だけ。

ちなみに、今はクローディアはここにはいない。理由は、簡単。今日は鳳凰星武祭の決勝戦。つまり、生徒会長には閉会式に出るという仕事があるわけであまり迷惑をかけられない。

シルヴィも、居場所だけ教えて貰ったら後は会場の方に向かってもらう予定。

 

「………哀歌ちゃんだけど、ここにいるよ。」

 

そう言ってシルヴィが教えてくれたのは、再開発エリアの中でも人が全くと言ってもいいほど寄り付かない一画。

 

「ありがと、シルヴィ。後は私と総ちゃんでどうにかするから。」

 

そう言って、シルヴィと別れようと思ったのだが……

 

「これだから、琴音は。私もクローディアも一緒に行くに決まってるでしょ?それに彼らも」

 

シルヴィは、そう言って私達の後ろを指差す。

そこには、会場に向かった筈のクローディアに加えて明日奈と桐ヶ谷くんが居た。

 

「仲間外れなんて、酷いじゃないですか。琴音」

 

「そーだよ。私達だって、哀歌ちゃんのことは心配なんだからね」

 

クローディア、明日奈と続いて桐ヶ谷くんも何か言うかと思ったら何も言わなかった。

 

「……ごめん。それじゃあ、行こう。」

 

私達は急いで哀歌ちゃんの元へと向かった。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「………なんですか、これは」

 

シルヴィが示した場所に辿り着いた私達の目に写ったのはたった1人の少女が大勢の大人を圧倒している景色だった。

 

「あれは……哀歌ちゃんなの?」

 

大勢の大人が倒れている中心に佇む少女の容姿は、まるで悪魔のようだった。

背中からはコウモリのような羽が生え、右肘から下は銃火器のようになっている。

 

(それに、彼らは……銀河の暗部……【影星】……)

 

少女を囲む彼らには見覚えがあった。

だが、クローディアもシルヴィたちがいることでそれを声に出すことは出来ずにいた。

 

(………仕方ない)

 

このまま見ていても、彼らが蹂躙される未来は確実。

だったら、シルヴィたちには退いてもらって私と総ちゃんとクローディアでやるのが一番効率がいい。

 

「ごめん、シルヴィ。明日奈たちと下がってて欲しいんだけど…」

 

折角来てくれたシルヴィたちにこう言うのがどれ程酷いことかは分かっているけど……。

 

「うん、分かった。琴音にも琴音の事情があるよね」

 

そう言うとシルヴィは、明日奈たちを連れて退いてくれた。

 

「……琴音、助かりました」

 

「ううん、私もシルヴィたちにバレるのはあんまり嬉しいことじゃないから」

 

彼女たちなら、私の実家のことを知っても変わらずに接してくれるだろうけど私にはそれを聞く勇気はない。

 

「琴音、早くしないと彼ら危ないですよ」

 

総ちゃんの言う通り、あと立っているのは数人。

倒れている人もギリギリ息をしているようだが、厳しそうだ。

 

「うん、行こう」

 

私達は、少女の元へと駆け出した。

 

 

 

 

私達は少女を取り囲んでいる【影星】のリーダー格らしき人物の元へとまず向かった。

 

「………あなたがリーダーですか?」

 

「あぁ、そうだが。貴様らは何者だ」

 

リーダー格の男は、明らかにこちらを見下したような言い方をしてくる。

 

「……私は東雲琴音。もう一度聞きます、あなたがリーダーですか?」

 

今度は、私の名を名乗った。

すると、リーダー格の男は顔を青ざめさせたあと答えた。

 

「………私がリーダーの夜吹です。」

 

「そうですか、夜吹さん。それでは、【影星】を撤退させて下さい。ここからは東雲家が受け持ちます」

 

「………わかりました。」

 

夜吹さんは、渋々と言った感じでメンバーに撤退を命じる。

撤退していく【影星】を追おうとする少女を総ちゃんが食い止めにかかった。

すると、撤退していく【影星】の中からこちらへ歩いてくる男女がいた。

 

「……よっ、東雲。あいつ、かなりヤバイから気をつけろよ」

 

「…夜吹くん、ちゃんと居たんだね」

 

「俺だってやる時はやるのよ」

 

夜吹くんはこんな軽口を叩いているが、身体はかなりボロボロだった。

私はもう1人こちらに歩いてきた女の子が気になり、そちらに顔を向けた。

 

「あっ、私竹宮琴音っていいます。」

 

「(…この子が、桐ヶ谷くん達が言ってた子か。)自己紹介ありがとね。私は東雲琴音。また今度ゆっくり話そう」

 

「う、うん。」

 

周りを見ると【影星】のメンバーの殆ど撤退が完了していた。

2人はと言うと、かなりボロボロのため自力で移動するのも難しそうだった。

 

「…クローディア、この2人よろしく。戦いが終わったら私が治すからそれまで守ってて」

 

「え、わかりました。琴音はどうするんですか?」

 

「もちろん、私はあの子を止めにいくよ」

 

2人をクローディアに任せ、私は総ちゃんの元へと向かった。

 

 

 

 

 




琴音(フィリア)今作でも出しちゃいました!
若干展開に無理やり感ありますが、そこは目をつぶって貰えると嬉しいです…


明日もちゃんと更新しますので、ご安心?下さい


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42話


なんとか今日中に書き上げられました!

感想いただいて、思ったのですが皆さんあまりフィリアのこと知らないのでしょうか?
確かに、SAOのゲーム限定キャラなのであまり有名ではないと思いますが知名度の低さに少しショックを受けました。
ちなみに、前回出てきた竹宮琴音というのはフィリアのリアルネームです!!




 

「…咲け、千本桜」

 

一旦、総ちゃんと哀歌ちゃんを引き剥がすために哀歌ちゃんを千本桜で包み込み、私は総ちゃんの元へと駆け寄る。

 

「…総ちゃん、大丈夫?」

 

私がクローディアたちと話している間、ずっと足止めをしてくれていた総ちゃんは少し辛そうだった。

 

「えぇ、なんとか。ただ早くしないと彼女が危ないかもしれません」

 

「……そうだね。取り敢えず、総ちゃん治すね。……私は拒絶する」

 

総ちゃんの言う通り、あのまま暴走し続けたら身体が持たないし何より星辰力を全て使い果たしかねない。

 

「…来るよ、総ちゃん」

 

哀歌ちゃんは、私の千本桜による包囲を星辰力のみで弾き飛ばした。

 

「……うわぁ。自信なくなるよ」

 

「さっきよりも、化け物じみてますね…」

 

星辰力のみで、私の千本桜を弾き飛ばしたということは"今の私"よりも数段星辰力が多いということ。

総ちゃんの言う通り、見た目も先程よりも禍々しく発している言葉も片言で何を言っているかも分からない。

何より、溢れ出ている星辰力がドス黒い。

 

「…それじゃあ、行こっか。総ちゃん」

 

「えぇ。琴音、鳳凰星武祭で溜まったストレスを発散しましょう」

 

(………やっぱり、出たかったのね)

 

総ちゃんの一言に若干心を痛めながら、総ちゃんの横に立ち哀歌ちゃんを見据える。

 

「「……推して参る」」

 

私と総ちゃんの戦法は、鳳凰星武祭のために練習していた総ちゃんが近距離で私がサポートに回るというもの。

 

(……速いね)

 

哀歌ちゃんは、私と総ちゃんの連携を意図も簡単に躱している。

千本桜で壁を作っても、それを溢れ出てくる星辰力で壊し総ちゃんの攻撃は手に持っている武器で防いでいる。

加えて、溢れでている星辰力のせいで総ちゃんも容易に近づけずにいた。

 

「……ハァハァ。すみません、琴音。火力不足みたいです」

 

元々、総ちゃんの剣は人を殺すためのもの。

今回のように、相手を殺さずに助けるためのものではない。

そのため、必然的に総ちゃんは手を抜かなければいけない。

 

「……そうみたいだね。総ちゃん、ありがとね。後は私に任せて。」

 

「すみません、あとは任せます」

 

そう言うと総ちゃんは、クローディアにいる場所まで退いていった。

 

(……正直、総ちゃんと2人がかりでも糸口すら見えなかった。でも、やるしかない。)

 

2人でも糸口すら見えなかった相手に対してわざわざ1人で挑むのは自殺行為だ。

だが、私の卍解は1人でこそ本領を発揮出来る。懸念があるとしたら、それは哀歌ちゃんを無事に助けられるかどうか。

 

(……迷ってる場合じゃないよね。)

 

「……行くよ、哀歌ちゃん。……卍解 千本桜景厳【桜花】」

 

「……ジャマ……スル……コロス」

 

「……[桜花驟雨]」

 

数千本の刀が、哀歌ちゃんの居た場所へと突き刺さる。

 

(……効いてなさそうかな)

 

土埃が晴れ、出てきた哀歌ちゃんは若干の傷こそ見えるが殆ど無傷に近かった。

 

「……これならどうかな。[桜花紅吹雪]」

 

オーフェリアに撃ったのとは威力も速度も違う。私の星辰力の殆どを上乗せした。哀歌ちゃんを殺すつもりで放った一撃だった。

 

「…………うそ」

 

私の斬撃が通り過ぎた後に見えたのは、私の斬撃を受けてもう立ち上がれないはずの傷なのに未だ暴走を続けている哀歌ちゃんの姿だった。

 

「……シンデ……」

 

……私は一瞬で迫ってきた哀歌ちゃんの刀に、なす術なく斬られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





キリがよかったので、今回は若干短いですがここまでです。


皆さんからの感想お待ちしております。


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43話

ギリギリ毎日更新。

なんとか、展開思いついたので若干無理があるかもしれません。


あと、フィリアの誕生日3月31日に決まったらしいですね!!
………てことはメモデフ、来年までガチャ来ない……


 

 

 

ザシュッ

 

「…くっ」

 

哀歌ちゃんは私を斬りつけた後、その手を弱めることなく二撃目を私の首を狙ってきた。

 

(……無理かな)

 

防ごうにも間に合いそうにもなく、私に迫る凶刃を私は受け入れようとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、その凶刃が私の首へと届くことは無かった。

 

「っ、琴音!!」

 

「………総………ちゃん?」

 

朦朧とする意識の中、私が最期に見たのはボロボロになりながら私を守るために剣を振るう親友の姿だった。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「……んっ。ここは?」

 

目を覚ました私が居たのは、真っ白な空間。

 

(………ここは、あの子の。)

 

最近よく見る少女の夢。

その少女がいつでもいる空間。何もなく、ただ果てしなく広く真っ白い空間。

 

「また来たんだね」

 

少女はいつの間にか目の前に座っていた。

 

「……うん。けど、早く戻らないと」

 

「ううん、今のお姉ちゃんが戻っても同じことになるだけだよ。」

 

 

この娘の言う通り。私が戻ったところで、彼女を押さえつける手立てすらない。

………それでも、私は戻らないわけには行かない。

 

「………でも、行かなきゃ。」

 

「…そっか。」

 

少女はそう言うと私の方へと近づいてきた。

 

「……ごめんね、お姉ちゃん。これはあなたの為でも私の為でもあるの。辛いだろうけど、我慢してね」

 

そう言って少女が、私のこめかみへと手をかざした瞬間私の意識は再び奪われた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

(………ここは……私の家?)

 

私の目の前にあるのは、いつもの私の家。

だけど、少しだけ色褪せているように感じる。

 

「……やめるんだっ!!」

 

(………この声は。まさか………)

 

もう二度と聞くことが叶わないと思っていたこの声。

だが、声の焦り具合からして何かが起こっているのは容易に分かった。

 

(……とりあえず、行ってみよう)

 

私は声の行く方へと向かった。

その途中で分かったことだが、周りの人に私は見えていないらしい。

先程、門下生とぶつかりそうになったが私のことはすり抜けて行ってしまった。

 

(………これは……なに?)

 

声がした方に辿り着くと、そこに居たのは死んだはずのお父さん。

そして、その向こう側には星辰力が先程見た哀歌ちゃんが比較にすらならないほど星辰力が溢れ出ている少女がいた。

 

(………あの娘なの?それにあの星辰力は……私なんか比べ物にもならならない…)

 

お父さんの目の前にいる少女は、いつも私の夢に出てくるあの娘にとても良く似ていた。

 

「……光陽さん、あの娘を助けてあげてください。」

 

「紅葉……もちろんだとも。あの娘は、琴音は私たちの大切な子供だ………紅葉、子供たちのことはよろしく頼んだ」

 

お父さんはそう言ってお母さんを抱き締めた。

 

「…………えぇ、わかりました。」

 

(……あれは私なの………?それに、お父さん何をするつもりなの…?)

 

お父さんはお母さんから離れると、暴走している私の方へと向かって歩き出した。

 

 

 




今回も短じかくて申し訳ないです!

このまま書いても良かったのですが、やっぱり切った方がいいと思ったので続きは次回に回しました。


皆さんの感想、評価お待ちしております


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44話

そう言えば、fgoの3周年そろそろですがほかのアプリに比べてfgoの何周年イベントって弱いと思うのは僕だけでしょうか………。
まぁ、課金者大好きゲーなので仕方ない気がしますが……。


ちなみに、僕はフィリアの誕生日決まってとてもテンション高いです!!


それでは、本編どうぞ〜


 

(………お父さん、なにを………?)

 

お父さんは、そのまま私の方へと歩き続け遂には吹き荒れる星辰力の中へと入っていってしまった。

 

(……そんなことしたら………)

 

あんな星辰力が吹き荒れている所に入って行けば、無事では済むはずがない。

お母さんの方を見ると、お母さんは今にも泣き出しそうな顔をして見守っている。

 

(……………まさか…)

 

私の頭に浮かんだ一つの答え。

それは私にとって受け入れ難い事実であり、そうでないことを信じたかった。

 

(……やめて、やめてよ。そんなことしたらお父さんが……)

 

私が幾ら心の中で叫ぼうが、その声は誰にも届くことはなかった。

 

(………お父………さ…ん)

 

吹き荒れる星辰力が収まって出てきたのは、虫の息のお父さんとお父さんに抱きしめられて眠っている私だった。

 

「…光陽さんっ!!」

 

お母さんは、お父さんの姿を見るなり駆け寄っていった。

 

「…紅葉……、琴音から……この…記憶を……」

 

「えぇ、分かっています」

 

そう言うとお母さんは、私の頭へと手を翳した。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「……これが真実だよ、お姉ちゃん。そして、私たちはその時のショックから無意識のうちに力を封印してしまった」

 

「………………………」

 

ずっと、父は統合企業財団に殺されたものだと思っていた。

今までお母さんも、家の人たちも父のことについて詳しくは知らないの一点張りだった。

それはそうだろう。

実の娘の暴走を止めるために命を落としたなんて、本人に言えるはずもない。

銀河にも事件の真相について、調査を頼んだのにあんな曖昧な答えしかかえってこなかった理由もこれで分かった。

 

「………私だったんだね。お父さんを殺したのは…。」

 

「……そう。そして、お姉ちゃんのことを守るためにお母さんが10歳以前の記憶を消した。そして、無意識のうちに封印されたお姉ちゃんの力が私。」

 

(………私なんか…)

 

私は哀歌ちゃんを、救い出すなんて大層なこと言える人じゃない。

まして、透たちの隣にいることすら……。

 

「お姉ちゃん、それは違うよ。私たちのお父さんがお姉ちゃんを、私を助けたのはお姉ちゃんに殺人の罪を負わせるためじゃないんだよ?」

 

「………そんなことはわかってるよ。それでも、私はお父さんを殺した。それは紛れもない事実」

 

お父さんは死ぬ必要はなかった。

なのに、私のせいで死なせてしまった。

 

「………お姉ちゃんは何をうじうじしてるの?」

 

「……なにって……」

 

「お姉ちゃんがうじうじしたところで、お父さんは返ってこない。そんなことよりも、お姉ちゃんにはやらなきゃいけない事があるんじゃないの?ちゃんとしなよ!!お姉ちゃんは、世界の暗部のトップ東雲家の当主なんだよ!?お父さん1人を殺したことが分かったぐらいでうじうじしてんじゃないよ!!」

 

「………そんな事言ったって…、お父さんを殺したんだよ?」

 

「お父さんは、お姉ちゃんの枷になるために死んだんじゃない。お父さんは、お姉ちゃんなら……私ならそれすら糧に強くなれるって信じてくれてた。お姉ちゃんは、お父さんの最期のお願いすら無下にするって言うの?」

 

……お父さんの願い?

お父さんが死んでから私は、東雲家当主として何度も手を汚してきた。その度にお母さんが、私を慰めてくれて優しく微笑んでくれた。

それは総ちゃんも同じ。

私が当主の座についてから、総ちゃんは私の一番近くで私と一緒に汚れてくれた。

 

「…お姉ちゃん、私たちがお父さんを殺した事実は消えない。それは私とお姉ちゃんが一生背負っていくもの。それでも、お姉ちゃんもう自分を責めるのはやめよう。今のお姉ちゃんなら、私の力も全部制御出来るよ。」

 

「…………今まで、あなたが私の分苦しんでくれてたんだね。」

 

この娘は、私が無意識に封印した力の半分だと言った。

つまり、この娘はその時のことをずっと覚えていた。私が忘れていたこの記憶とこの娘は一緒に過ごして来たのだろう。

 

(…………ずっと悩んでくれていたこの娘が、前を向いているのにずっと忘れていた私がうじうじする権利なんかない。)

 

「………お姉ちゃん、私を思い出してくれてありがとう。」

 

そう言うと、小さい私は消えていった。

 

(……今まで、ありがとう。これからは、私も一緒に背負っていくから。)

 

「漸くですか、琴音。いえ、我が主。」

 

先程まで、"私"がいた場所には千本桜が膝をついていた。

 

「うん、ごめんね。待たせたみたいで」

 

「えぇ、この瞬間をずっと待っていました。さぁ、皆さんが待っています。今のあなたなら、私の全てを引き出せるでしょう」

 

千本桜は、そう言うと桜の花のように散り私の視界は桜色に染まった。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 




無理があったでしょうかね……

精一杯考え抜いて書いたんですが、どうでしたでしょうか


それではまた次回


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45話

予告どおりの2話投稿!!!


喜んでくれる方いるかわかりませんが、宜しければ読んでいって下さい。


「……んっ」

 

「あ、琴音!!大丈夫ですか……?」

 

目を覚ました私の目に入ってきたのは、クローディアの顔。

クローディアは、斬られた私を保護してくれていたらしい。

 

「……ごめん、クローディア。迷惑かけたね」

 

「いえ、それはいいんですが。琴音、見た目が……」

 

「あ、これねぇ。」

 

クローディアに言われて気がついたが、元々ショートだった私の髪は肩にかかるほどの長さになっており色も黒から桜色へと変わっている。

 

「取り敢えず、あの娘助けてくるね」

 

私はクローディアの元を離れ、総ちゃんの方へと歩いていった。

 

 

 

 

「咲き誇れ…千本桜」

 

「琴音っ!?」

 

未だに哀歌ちゃんと戦ってくれている総ちゃんと、哀歌ちゃんの間に千本桜で壁を作り総ちゃんを一旦救出する。

 

「…総ちゃん、大丈夫?」

 

「えぇ、それよりも琴音は…大丈夫そうですね。後は任せてもいいですか」

 

「うん、ありがとう。あとは任せて」

 

総ちゃんはそのままクローディアの元へと退いていった。

 

(………さてと、取り敢えず哀歌ちゃんを救わないと)

 

千本桜で作った壁を壊すと、未だに暴走を続けている哀歌ちゃんが出てきた。

 

「………ジャマ………コロス……」

 

「………待っててね、助けるから。…………舞え」

 

千本桜によって哀歌ちゃんを包み込み、動きを封じる。

 

「……私は拒絶する…」

 

私の星辰力が哀歌ちゃんを包む。

 

(………まだ無理か。)

 

拒絶の力は、哀歌ちゃんから溢れ出す星辰力によって阻まれ哀歌ちゃんまで届かなかった。

 

(……あの星辰力が出なくなるまで弱らせるしかない。ごめんね、哀歌ちゃん。)

 

「……卍解……千本桜景厳【桜帝】」

 

見た目は今までとは何も変わらない。

だが、自分でも分かるほど今までとは格が違う。

 

「……[桜帝 桜吹雪]」

 

千本桜が波となって、哀歌ちゃんを飲み込む。

 

(……まだか)

 

濁流が通り過ぎた後に出てきたのは、ボロボロになりながらも未だ星辰力を出し続けている哀歌ちゃん。

 

「……これならどう[桜帝驟雨]」

 

数千本の刀が哀歌ちゃんへと突き刺さる。

 

 

 

が、それでも哀歌ちゃんは立ち続けている。

 

(………これ以上は不味い)

 

これ以上、私が攻撃すれば哀歌ちゃんの身体が持たずに哀歌ちゃん自身が死んでしまう。

 

「………シンデ……」

 

ガキィン

 

もう立てないほどの傷を受けているにも関わらず、剣を振るい続ける哀歌ちゃん。

 

(……これに賭けるしかない。)

 

展開していた数千本の刀1本1本に、星辰力を流し拒絶の力を付与する。

 

「……行くよ、哀歌ちゃん

一歩、音超え

 

 

 

二歩、無間……

 

 

 

三歩、絶刀……無明無限突き」

 

数千本の刀が哀歌ちゃんへと突き刺さり、その身体を星辰力の光が包み込む。

 

「………良かった。本当に」

 

光が収まり、哀歌ちゃんは元の姿に戻り溢れ出ていた星辰力も収まっていた。

 

「琴音、お疲れ様です。」

 

「うん、ありがと。みんな、こっちに来てくれるかな」

 

私が呼ぶと、夜吹くん、竹宮さん、総ちゃんがこちらへ来てくれた。

 

「……私は拒絶する」

 

以前ならば、1人ずつが限界だったが私の拒絶の光は3人を包み込み3人の怪我を癒した。

 

「……化け物じみてるな」

 

「凄いですね。流石序列1位ですね!」

 

「…むぅ。また琴音に離された気がします」

 

三者三様の反応を見せた後、総ちゃんはどこかへと走っていってしまった。

 

「あっ、行っちゃった」

 

「それじゃあ、俺はお暇させて貰うわ。」

 

そう言うと夜吹もどこかへと消えていった。

 

「……それでは、私たちも帰りましょうか。」

 

いつの間にか哀歌ちゃんを背負っているクローディア。

 

「そうだね。そうだ、竹宮さんも一緒に戻ろ?」

 

「えっ、あそれじゃあ」

 

私は私に気付かれないように、消えようとしていた竹宮さんを引き止めた。

 

「それと、敬語もなしね。それと折角、同じ名前なんだしさお互い下の名前で呼ぼうよ?ね」

 

「う、うん。宜しくね、琴音」

 

「うん、よろしく。琴音」

 

こうして、私に新しい友達が増えた。

 

「あの〜、私の事忘れてませんかね…」

 

「いやいや、忘れてないよ?さ、帰ろ」

 

不貞腐れているクローディアの手を引き、私たちは帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 

後日、哀歌ちゃんは星導館へ入学することになった。

その際、銀河の方々とお話したのは別の話。

 

 

 

 

 

 




今回でオリジナルキャラの話は一旦おしまいです。

次の話の展開は………まだ曖昧な感じです……。

それではまた次回!


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46話

今回、若干たらしくんにアンチがありますのでご了承を。

この作品で、たらしくんをアンチにするつもりは最初なかったのですが書いてるうちにこんなこと言いそうだなと思って書いた結果アンチになることが多々……。

僕は、どうすればいいんでしょうかね………


助け出したその日のうちに、銀河の幹部の方々とお話し哀歌ちゃんが星導館に入学することを認めさせた翌日…

 

(………はぁ。視線が辛い)

 

寮からここまでの短い道のりだが、通り過ぎる人や登校中の星導館の生徒から視線を嫌というほど感じる。

 

「大変ですねぇ、琴音」

 

「ほんとだよ……。見た目だけでこんなに変わるものなの?」

 

実際、以前も視線を感じることは多々あったがここまででは無かった。

 

「えぇ。今の琴音は、スタイルもいいですからね」

 

私は力が戻ったときに変化したのは髪だけだと思ってた。

だが、総ちゃんの言う通り身長も少しだけ伸び胸も若干大きくなっており総ちゃん曰く「琴音の裏切り者」との事らしい。

 

「それよりも、透くんたち惜しかったですね。決勝戦、またあの転入生くんが封印?を解いたらしいですよ。まぁ、負けた理由は一ノ瀬先輩のポカらしいんですけどね。」

 

私たちが哀歌ちゃんを助けに行った昨日は、鳳凰星武祭の決勝戦。

透と一ノ瀬先輩のペアとユリスのペアということで、星導館対決となったこの決勝戦だったが結果はユリスたちの優勝。

転入生くんと相打ちという形で透が倒れ、一ノ瀬先輩とユリスの一騎打ちになるはずだったのだが…………一気に勝負を決めようとした一ノ瀬先輩はあまりの冷気で自分の校章を凍らせ結果真っ二つに。

星武祭始まって以来の恥ずかしい負け方となった。

 

「それにしても、ユリスが優勝か。何故か私、ユリスに目の敵にされてるみたいなんだよね…。」

 

「ですねぇ。彼女プライド高いですし、何かしたんじゃないんですか?例えば……何でしょう?」

 

流石は総ちゃん。

かれこれ、何十年の付き合いになるが総ちゃんは剣術と和菓子以外のことにあまり興味がない。

 

「それがわかったらいいんだけどね…。」

 

総ちゃんと話をしているうちに、教室へと辿り着きお互い自分の席へと着く。

 

(………また食べてる…。)

 

総ちゃんは自分の席に着くなり、和菓子を机に広げ堂々と食べている。

もはや、恒例となりつつあるこの光景だが他の生徒は誰1人貰いに行こうなどとはしない。

理由は簡単。和菓子を取ると総ちゃんはかなり怒る。時々、金平糖ぐらいならくれることはあるが残念ながら今日食べているのは団子である。

 

「…相変わらず、美味しそう食べていますね」

 

「あっ、クローディア。哀歌ちゃん大丈夫そうだった?」

 

朝からやつれたような顔で総ちゃんを見つめるクローディア。

今日は朝早くから、哀歌ちゃんの手続きなどを1人でこなしており漸く落ち着いたところなのだろう。

 

「えぇ、色々大変でしたが……。琴音の要望通りに、透くんと綺凛ちゃんと同じクラスにしておきましたよ。」

 

「無理言ってごめんね?哀歌ちゃん、知らない人だらけだと大変だと思ってさ。」

 

「いいんです。琴音のお願いなら断れませんし」

 

クローディアは余程疲れていたのか、そう言うと机に伏せて眠ってしまった。

 

(…暇になっちゃったなぁ)

 

遅刻常連の紗夜ちゃんはまだ来ていないし、夜吹くんも新聞部が忙しいらしく先程から学校中を駆け回っていた。

残りの知り合いと言えば……明日奈たちぐらいなのだが残念なことに全員隣のクラス。

それなら、隣のクラスに行けばいいと言う人がいるだろうけどこの間行った時に群がられて大変だったこともあり、それ以来私は自分のクラスから出ないことにしている。

 

ガヤガヤ

 

先程まで、静寂とまではいかないがかなり静かだった教室もたった2人が登校することでガラリと変わる。

 

(……大変そうだなぁ)

 

何が大変かって、それはユリスの話。

元々、王女ということもあり近寄り難い雰囲気だったこともあり[第2のお姫様]なんて呼ばれ方もしていたユリス。今ではあの転入生くんのお陰もあり、ツンデレキャラとしてクラスにも馴染んで来てはいるがそれでも大勢に囲まれるのは彼女の性格からして辛いことだろう。

 

(………そう言えば、第2のお姫様ってことは第1がいるってことだよね…?誰なんだろ)

 

ユリスが第2ということは、それ以前に第1がいるということ。

だが、私はその手の話を聞いたことがない。

 

(……うーん、お姫様キャラの人なんていたかな?)

 

私が知る限り、ユリスがここに来る前にいた生徒でお姫様のような人はいない。

家がお金持ちや名家というものならば何人か心当たりがあるが、残念ながら全員本人がお姫様には見えない人ばかり。

 

「……はぁ。物好きなものだ」

 

私が斜め方向の考え事をしていると、ユリスは漸く人混みから抜け出せたらしく自分の席に着いていた。

 

「…大変そうだったね。」

 

「あぁ。あのようなものが毎日あると思うと、東雲の立場も楽ではないな」

 

ユリスとは、鳳凰星武祭以来少しだけ話すようになった。

元々、戦いのことで少しは話すことはあったけどこうやって日常会話をすることは殆どなかった。

 

「いいの?彼、まだ巻き込まれてるけど」

 

「あぁ、あいつは私たちと違ってああいうのが好きだからな。」

 

確かにユリスの言う通りかもしれない。

転入してきて以来、彼が誰かと話していない所なんて殆ど見ない。

むしろ、自分から話しかけることの方が多いくらい。

 

「あ、そう言えば忘れてた。ユリス、鳳凰星武祭優勝おめでとう。」

 

「……だが、お前達が辞退していなかったらと思うと素直に喜べん」

 

「私たちが辞退したのは事実なんだし、優勝は優勝。素直に受け取っとてよ。ね?」

 

「………あぁ、そうだな。済まない、ありがとう」

 

「うん!その方がいいよ、ユリス。」

 

「………東雲にだけは、言われたくないがな」

 

「………ん?なんで?」

 

私には言われたくないとは……?

これでも大分人と話すようになった方だと思うんだけど…

 

「本人に自覚がないなら何でもないさ。」

 

そう言うとユリスは、前を向いてしまった。

 

「あっ、琴音!!」

 

ユリスと話していて、接近に気付かなかった…。

満面の笑みを浮かべてこちらへ向かってきている転入生くん。

 

「俺とユリス、鳳凰星武祭優勝したんだよ!」

 

「……あ、うん。おめでとう」

 

何故彼がわざわざ報告に来たのか、その理由が知りたい。これだけ六花全体で盛り上がっている星武祭の優勝者を私が知らないと思ったのだろうか。

 

「…………それでさ、決勝戦見ててくれた?彼なんて言ったっけ、そう一ノ瀬翔さん。」

 

私史上、最大限に適当に返したはずなのにそれでもまだ話し続ける転入生くん。

決勝戦のとき、私は死にかけていたので透と転入生くんが引き分けたことぐらいしか知らない。

 

「彼さ、琴音の弟くんが頑張って俺と引き分けたのに結局やらかして負けちゃってさ。本当に弟くんが可哀想だったよ。それにさーーーー」

 

何故、この人はこんなにも嬉々として決勝戦の話をしているのだろう。

私の弟である透が負けた試合のことなど、普通聞きたくないのが姉である。

確かに、彼が勝ったのは素晴らしいことだしそれに関してはもうおめでとうと素直に言ったつもり。

なのに、なんでこの人は聞きたくないことを掘り返して言ってくるのだろうか。

それに、透が頑張って君と引き分けた?

それじゃあ君が透よりも実力が上みたいじゃない。そんな訳がない。確かに君の実力は高いけど、それでも透よりも上なわけが無い。

それに、その言い方は一ノ瀬先輩を馬鹿にしている。一ノ瀬先輩がどれだけ頑張っているか知らない癖に。

校章が凍りつくほどの冷気を出すのがどれだけすごい事か知らないくせに。

 

「ーーーーほんと、弟くん組む人間違えてたよね」

 

「…………君はさ、私を怒らせたいの?それとも、私に殺されたいの?」

 

……言ってしまった。

それも殺気全開で。

 

「…えっ、なんで?」

 

殺気全開にすれば、こうなることなんてわかってた。

案の定クラスメートは顔を青ざめているし、腰を抜かしている人が殆ど。中には動けなくなってる人もいる。

 

「……琴音、それ以上はダメですよ」

 

いつの間にか、真横に来ていた総ちゃんによって宥められ殺気を収めた。

 

「……私は君に決闘を申し込む。明日、覚悟しておいて」

 

私はそれだけ言って教室を出た。

 

 

 

(………今日は学校休もう)

 

やり切れない思いを収めるため、私は1日中千本桜と精神世界で過ごした。

 

 

 

 

 

 




今回、文字数増やしていこうと思ったんですがキリが良くなってしまいあまり増やせませんでした…。

次回は頑張るのでお許しください


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47話


本日も2話投稿…と言いたいところなんですが、実は昨日のうちに前回の話は書き終えていたので実質今日書き上げたのはこの話だけなんですよね

それよりも、遂に来ましたねfgoの課金ガチャ。
今回のエクストラクラスは回さないなんて選択肢はないですよね!?
僕もできたら回します!!
むしろ、エクストラクラス以外で回す気も起きませんけど

それでは本日2話目どうぞ


 

私が学校をサボった翌日。

私が教室で言ったこともあり、私の宣戦布告を聞いていた人はかなり大勢いたらしく結果見物人もかなりの人数となっている。

 

「や、やぁ琴音。昨日、あの後来なかったけど大丈夫だったの?」

 

来るなり挨拶をしてくる転入生くんだが、正直興味ない。

昨日の1件もあり、少しは私に対して恐怖を抱いているようだけどそれでも話しかけにくる彼の精神力は理解出来ない。

 

「………不撓の証たる赤蓮の名の下に、我東雲琴音は汝天霧綾斗への決闘を申請する」

 

「ちょっと待ってよ。なんで、俺と君が決闘する必要あるの?」

 

ここまで来て何を言うかと思えば、決闘の理由?

そんなもの分かりきっている。

 

「…あなたは私の大切なものを馬鹿にした。それ以外で他に理由いる?」

 

「…もしかして、一ノ瀬翔って人のこと?そんな訳ないよね。君の唯一の異性の仲間は俺だしね」

 

何を言ってるんだ、こいつは。

言っていることが菅生と何も変わらない。

 

「…………早くしてくれない?」

 

「それじゃあ、僕が勝ったら一つお願い聞いてもらっていいかな?」

 

何故彼が勝った時だけ私がお願いを聞かなきゃいけないのか。

そう思ったが、了承しなければ始めなさそうな雰囲気だったので一応了承しておくことにした。

 

「……勝てたらね」

 

「よし。約束は守ってもらうからね。我天霧綾斗は、汝東雲琴音の決闘申請を受諾する」

 

彼が了承したことで、お互いの校章が輝く。

 

「行くよ!…天霧辰明流 九牙太刀」

 

開始早々彼は黒炉の魔剣を使わずに私に対して突っ込んできて、技名を叫んだ。

 

パキンッ

 

 

 

 

 

「…えっ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………今のが技?」

 

私は彼が突っ込んできたのをすれ違う形で避け、その間に抜刀。

彼の煌式武装のマナダイトを叩き割った。

 

「…くっ。」

 

私にマナダイトを割られ武装が無くなったからか、彼は何かを呟き封印らしきものを解いたあと黒炉の魔剣を手にした。

 

「もう手加減は出来ないからね。天霧辰明流 夜紋塵」

 

(………手加減?)

 

これでも星導館の序列1位をずっと守り続けてきたし、前序列1位の一ノ瀬先輩に恥じないようにしてきたつもりだ。

それなのに、彼は私相手に手を抜いていた。

 

(……こんなのと引き分けたら悔しいよね、透)

 

私は迫ってくる黒炉の魔剣を避け、抜刀もせずに彼の横を通り抜ける。

 

「……その程度でよく優勝出来たね。」

 

実際、彼の技はキレも速さも私の知っている人達には及ばない。

 

「…技っていうのはこういうののことを言うの。…東雲流抜刀術 [紫電一閃]」

 

キィン

 

 

 

パキッ

 

『校章破壊 勝者東雲琴音』

 

「……あなたは弱いよ」

 

それだけ言い残して、私はその場から離れた。

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、一時はどうなることかと思いましたよ?琴音」

 

「ごめんね、迷惑かけて」

 

あの決闘が終わったあと、自室へと帰った私に待っていたのはみんなからのお説教?だった。

部屋に居たのは、クローディア、総ちゃん、明日奈、透、琴音の5人。あとは、入り口のところで桐ヶ谷くんが申し訳なさそうに待っていたので入れた。

桐ヶ谷くんに何故外にいたのか聞いたら、「俺が入るのは東雲に悪いと思った」との事らしい。

きっと男性恐怖症のことを心配してくれたのだろうけど、これだけ関わっていればかなり大丈夫なのだけど言わない方が面白いと思ったので黙っておいた。

 

「それにしても、懲りませんねぇ彼。」

 

「だよね。けど、一部の女子からは人気みたいよ?ほら、序列も高いし無駄に馴れ馴れしいし。」

 

「だよねぇ。この間、私も琴音と同じ名前ってだけで話しかけられたよ。」

 

私の説教会だったはずなのだけど、いつの間にか転入生くんの愚痴大会に。

案の定、透と桐ヶ谷くんは一歩引いたところで2人だけで話し始めてしまっている。

 

「あれ、そう言えば綺凛ちゃんとかは?」

 

「綺凛ちゃんたちなら、琴音の決闘を見て「…まだ背中も見えないです」とか言ってどこか行っちゃいましたよ。本当なら沖田さんも行きたかったのですが………」

 

綺凛ちゃんがそんなことを言っていたのは意外だった。綺凛ちゃんの実力は多分この六花でもトップクラスなのは間違いないと思う。

 

(……今度、鍛錬誘ってみようかな)

 

その後、私たちは少し話をして解散することになった。

 

 

 

 

みんなが解散し、総ちゃんも自分の部屋へと戻ろうとしていた。

 

「……総ちゃん、ちょっと良いかな?」

 

「どうかしましたか?琴音」

 

「うん、ちょっとここだと不味いから屋上でいいかな」

 

「えぇ。」

 

私と総ちゃんは誰も来ないであろう屋上へと向かった。

 

 

 

 

 

 

「……それで話とは?」

 

屋上に着くなり総ちゃんはいつものような気さくな話し方から実家に居た頃のような口調で話し始めた。

 

「そんな畏まらなくて大丈夫。今回は総ちゃんにプレゼント渡したかっただけなんだ」

 

そう言って、私はポケットに入っていたミサンガ型の待機携帯をした純星煌式武装を取り出した。

 

「…これは?」

 

「これは【煉獄】。総ちゃん専用の純星煌式武装だよ」

 

この煉獄は実家の東雲家の技術開発部の総力を挙げて作った一振り。

元々、当主である私の付き人である総ちゃんが純星煌式武装を持っていないことは少々問題になることがあった。

理由は、ただの日本刀では対抗出来ない相手が世の中には少なからずいるから。例えば、四色の魔剣はいい例。

それでも、総ちゃんの実力を鑑みて無理して持たせるよりは馴染んでいる菊一文字の方がいいというのが東雲家の答えだった。

そんなこともあり、総ちゃんには黙って総ちゃんの戦闘データや星辰力などのデータを収集し、解析して作ったのがこの【煉獄】。

 

「……いいんですか?こんなもの、私なんかが貰って」

 

「いいの、そのために作ったんだから。それに【煉獄】の力は総ちゃんにしか引き出せないしね」

 

この煉獄の最大の能力。

それは総ちゃんの能力を最大限まで高めるというもの。制限こそあるものの、その能力は今の私の卍解と退けをとらない程になるらしい。

 

「…ありがとうございます。この沖田、我が命に変えてもマスターをお守りします」

 

総ちゃんはそう言うと、私からミサンガを受け取り腕に巻き付けた。

 

「うん、ありがとう。けど、総ちゃんが死んだら私も一緒に死ぬからね?」

 

「…それは困りますよ!!それじゃあ、沖田さんは絶対に死にません」

 

「うん、その方向でよろしくね」

 

私と総ちゃんの主従関係は傍から見たら歪なのかもしれない。

それでも私は総ちゃんを従者だとは思いたくないし、あまり主人扱いされるのも嫌なのだ。

 

「……それじゃあ、おやすみ。総ちゃん」

 

「おやすみなさい、琴音」

 

そのまま、私たちはお互いの部屋へと戻った。

 

 

 

 

 

 





うーん、やっぱりたらしくんアンチになってしまいます……、ただ皆さん彼のこと嫌いなんですね。
僕も嫌いですけど…

彼をアンチにするかどうかは皆さんの意見に任せようと思うので、アンケート取るので宜しければ参加お願いします!!
ついでに、理由があって僕がそれに納得したら票数少なくてもそちらにすると思います。

ついでにですが、琴音にももう1本純星煌式武装持たせようか悩んでいるのでアンケートの方お願いします


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48話

今回はオリジナル回です!!
まぁ前回とかもそうだったんですけどね


綾斗アンチについて、様々な意見頂いていますが今のところアンチなしという意見はないのですがもし、アンチが嫌いな方いましたらアンケートの方にお願いします


今は学生にとって幸せな冬休みの真っ只中。

殆どの生徒が実家へと帰省するこの時期だが、私も例に漏れず実家へと戻るハメになった。普段はあまり帰って来いとは言われないんだけど、今回だけはお母さんからの指令があった為帰ることになってしまった。

こんなことになった理由は、たった一つ。

お母さんがパーティーを開くと言い出したせいである。

そのお陰で、ユリスから珍しく誘われたリーゼルタニアへ行くのを諦め総ちゃんと実家に帰省することになった。

 

(……はぁ。何でこうなったの……)

 

暗部のトップである東雲家が開くパーティーとは、どんなものか。

暗部のトップということでそう言う関係の人が集まると思いきや、ただの名家のパーティー。つまり、普通の晩餐会と対して変わらないのだ。

それでも、一応暗部の方々は挨拶に来るのだけど。

 

「折角のパーティーなのにそんなしんみりした顔してどうしたんだい?」

 

そう、先ほど言った通りただの名家のパーティーなので他国の人が沢山来るわけでしてこの男アーネスト・フェアクロウも来ているわけである。

 

「……私の性格知ってるでしょ?さっきから、知らない人にばっかり話しかけられて辛いの」

 

我が家主催のパーティーということで、表の当主であるお母さんはもちろん長女である私も挨拶しなきゃいけないわけで下心丸出しの他家の跡取りと挨拶を交わすのは苦痛でしかない。

 

「だろうね。」

 

「…そう言えば、アーネストこそ実家の方は良かったの?」

 

「あぁ、東雲家のパーティーと言ったら喜んで送り出してくれたさ」

 

何故、私の家のパーティーならいいんだろうか……。

フェアクロウ家とは暗部としての関わりはないし、表向きの東雲家は確かに名家ではあるが他にも同じような家は沢山あるわけで。

 

「……さて、後もつっかえているようだし。一旦お暇するよ」

 

「……あっ。ちょっと待ってよ……」

 

私の願い虚しく、笑顔でアーネストは歩いていってしまった。

 

(……また地獄のような時間が………)

 

アーネストがいなくなった事で再び挨拶の開始。

私にとっての地獄の時間のスタートのはずだった。

 

「よっ、東雲」

 

「………一ノ瀬先輩?」

 

アーネストがいなくなって、落ち込んでいた私の話しかけてきたのは馴染み深い声だった。

 

「湿気た面してんな、東雲。」

 

ここに来て馴染み深い顔を見るととても安心する。

それよりも、周りにいる下心丸出しの人たちと話すよりも数段楽である。

そして、先ほどから気になっている一ノ瀬先輩の隣に立つとても綺麗な女性。

 

「一ノ瀬先輩こそ。それに隣の方はもしかして……」

 

「あぁ、紹介するよ。月城香苗、俺の婚約者だ」

 

「月城香苗です。いつも翔がお世話になってます」

 

一ノ瀬先輩の婚約者である月城香苗さんは、一言で言えばとても美しい女性だった。

一つ一つの行動がしっかり洗練されていて、動き一つで魅せられるようなレベルである。

 

「いえ。一ノ瀬先輩には弟共々お世話になっています。」

 

私がそう言うと何故か誇らしげな顔をする一ノ瀬先輩。

 

(……褒めなきゃ良かった)

「…翔、女子同士で少しお話したいからちょっといいかな?」

 

「おう、それじゃあ俺はあっちで待ってるわ」

 

そう言って一ノ瀬先輩はパーティーの方へと戻っていった。

 

「えっと、東雲さん口調崩してもいいかな?」

 

「あっはい。」

 

「ありがとう。実はね、翔が家に帰ってくる度にあなたの話をするからどんな子かと思って話したいと思ってたの」

 

「そうなんですか。あの一ノ瀬先輩が……」

 

それからと言うもの、私は香苗さんとの会話で盛り上がってしまいそのまま話し続けてしまった。

 

「へぇ、琴ちゃんも大変ね。それだけ可愛くてスタイルもいいと言い寄ってくる人も少なくないんじゃない?」

 

「いえ、最近じゃあまり無いですね。何だかんだ、一ノ瀬先輩も守ってくれてますし」

 

「そう言えば、翔入学早々のあなたに決闘申し込んで負けたんでしょ?」

 

「えぇ。あの時は面倒な人だと思いましたよ」

 

「面倒な人?」

 

香苗さんはキョトンとした顔で聞いてくる。

ただでさえ綺麗な人が、こんな顔をしたらそりゃ周りの人の視線を一手に集める。

一ノ瀬先輩も例に漏れず、凄い見つめてるし。

 

(……さて、一ノ瀬先輩にはいつものお返ししとかないとね。)

 

「…えぇ。なんでも「勝ったら俺とデートしてくれ」と言われまして。」

 

その言葉を聞いた瞬間、先ほどまでの可愛らしい表情から一点。後ろに禍々しいものが見えるほどの怒りの表情に変わった。

 

「ごめんね、琴ちゃん。ちょっと席外すね」

 

「えぇ、大丈夫ですよ。私も少し行かなきゃいけない場所があるので」

 

香苗さんはそう言うと、その形相のまま一ノ瀬先輩の元へと歩いっていった。

 

(…さてと、私も仕事しますかね)

 

私はパーティー会場から抜け、ある場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……全員集まってる?」

 

「えぇ、マスター。全員欠けることなく。」

 

私がパーティーから抜けてまでしなければいけないこと………それは裏の仕事。

実家ということもあり、私に対して総ちゃんもしっかりとした口調に変わっている。

 

「さて、今日は仕事の話ではないんだけど。今日から私の直属の部下が1人増えます。」

 

前々から私の直属の部下が総ちゃんの1人というのは何かと不都合があったため幹部の方々からは心配されていたことでもある。

 

「……入って」

 

「…失礼します」

 

そう言って部屋に入ってきたのは、私と同じ名前の人物。

 

「紹介します。元銀河の暗部【影星】の竹宮琴音さんです」

 

私が紹介したことで、集まっている幹部の方々は琴音に視線を集中させる。

 

「彼女の実力は、私がよく知っています。隠密行動ならば、この中でも群を抜いています。異論ある方はいますか?」

 

私がそう聞くと誰も手を挙げず、静かに頷いた。

 

「ありがとうございます。それでは、堅苦しいのはここまでです。皆さん、親睦を深めましょう!」

 

この幹部会の定例でもある親睦会。

大体、毎回この流れになるのだけど殆ど私と総ちゃんは縁側に座って和菓子を食べている。

他の幹部の方はみんな成人しているためお酒でどんちゃん騒ぎ。なので、私たちは混ざれるわけもなく静かにお茶を啜るだけなのだ。

 

「琴音、びっくりしたよぉ。急に【影星】の方から異動届来るんだもん。それに琴音がこんな立場の人だったなんて知らなかったし」

 

確かに琴音のことに関しては、私が銀河の方にお願いしたので琴音からしたら驚くことだろう。

最初は夜吹くんにしようかとも思ったけれど、そうなると【影星】が立ち行かなくなると思いやめておいた。

実際、隠密行動ならば琴音の右に出る者は知らないし白兵戦ならば総ちゃんだけで事足りてる。

 

「ごめんね、私も騙すつもりは無かったんだけどね。あんまり公に言えることでもなくて…。けど、これからはよろしくね?」

 

「うん、よろしくお願いします。主」

 

「やめてよ、総ちゃんだけでも嫌なんだから」

 

琴音にもそのような呼び方をされてしまうと、私の名前を呼んでくれる人がお母さんと透しかいなくなってしまう。

透は透で、暗部の仕事となるとお姉ちゃんって呼んでくれなくなるし…。

 

「それじゃあ、琴音様かな?」

 

「……もう好きに呼んで」

 

琴音のイタズラ心に満ちた顔を見て、これ以上言っても無駄だろうと思い諦めた。

 

「お嬢様、お餅を持ってまいりました」

 

「あ、ありがとうございます。茜さんも参加して来たらどうです?」

 

琴音と話していると、わざわざ私の好物であるお餅を持ってきてくれたこの人はお母さんの直属の部下である霧嶺茜さん。

 

「いえ。私はパーティーの方でお嬢様がいなくなってしまったと皆様落胆していらしたのでそちらの対応に」

 

そう言って、茜さんすぐにパーティー会場の方に戻って行ってしまった。

 

(…申し訳ないです)

 

すぐにパーティー会場の方に戻ればいいのだが、あの地獄をもう経験したくないため戻るに戻れない。

 

「……琴音食べないんですか?」

 

何処から持ってきたのか、団子を頬張っている総ちゃん。少しは琴音にも分けてあげたらいいのに………そう思った私だったが……

 

「う〜ん、これ美味しい」

 

総ちゃんとは反対側に座ってこちらも、団子を頬張っている琴音。

 

(……私の直属の部下って、何でこう食べてばっかりなんだろう……)

 

自分の部下に些細な疑問を抱きながらも、私はパーティーが終わるまで縁側でゆっくりすることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私がパーティー会場から抜けたあと、女性に正座させられている男性が居たのはまた別のお話。

 

 

 

 

 

 

 




琴音に持たせる、純星煌式武装の方も案の方お願いします!!


あと、感想貰えるととてもやる気出ます


Fgoのほう、フレンド空いてるのでよろしければ…

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49話

1日2話投稿、3日連続という誰得なことを成し遂げました。
三日坊主とも言いますから、多分明日は1話になると思いますが上げれたら上げようと思います。





長い長い実家での挨拶周りを終えたころには、残念なことに冬休みも終わっていた。

唯一良かったことと言えば、仕事の話が一つもなかったことぐらいなものだ。

 

「……それにしても、クローディアが用があると言っていましたが何でしょうね?」

 

冬休み明け早々に生徒会長室に呼び出された私と総ちゃん。

私がここに来るのは総ちゃんたちを迎えに行くという仕事をクローディアに任せれて以来、つまり約1年ほどここには来ていない。

 

「……お待たせしました。」

 

何故か少しお疲れの様子のクローディア。

若干だが、肩で息をしていて顔を少しだけ青ざめている。

 

「…大丈夫?」

 

「えぇ、少し問題が起きていただけなので…」

 

後に分かったことなのだが、クローディアがここまで疲れていた原因は一ノ瀬先輩と透の仕業らしい。

何でもあのふたり、冬休み明け早々に訓練室を2つも破壊してみせたらしい。

 

「…それで話ってなんですか?」

 

総ちゃんはいつも通り金平糖を食べている。

そんな総ちゃんとは対象的に、クローディアは真剣な面持ちで話し始めた。

 

「………2人に、私のチームメンバーとして獅鷲星武祭に出て欲しいんです」

 

「えぇ、いいですよ。琴音もいいですよね?」

 

「うん、クローディアの頼みなら断る理由無いし。」

 

「……そんな簡単にいいんですか?琴音たちなら、他の人と組んだほうが確実に優勝出来るんですよ?」

 

私たちが即決したことが不思議だったのか、クローディアは逆に焦っている。

だが、私たちからしたらわざわざ誘ってくれたクローディアのことを断ってまで組む相手もいない。

 

「…ところで、他のメンバーは?」

 

「今のところ声を掛けさせてもらったのは、ユリスと紗夜さんと綺凛ちゃん。あとは…………天霧くんです」

 

「…そっか。それじゃあ、正式に決まり次第教えてくれるかな?」

 

「えぇ、わかりました。」

 

それだけ言って、私と総ちゃんは生徒会長室を出た。

 

(……獅鷲星武祭か。けど、私と総ちゃん入れて7人。確か試合は5人しか出れないから2人は補欠か。あのメンバーだと実力の釣り合い考えて私と総ちゃんが控えかな。)

 

なんてことを考えながら、私は教室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガヤガヤ

 

教室は冬休み明けということもあって、みんなの話し声で埋め尽くされていた。

 

(……みんなさぞ楽しい冬休みを過ごしたんだね……)

 

周りから聞こえてくるのは、楽しそうな思い出ばかり。きっとわざわざ帰省してまで地獄を見たのは私だけなのだろう…。

 

「どうしたんだ東雲。そんなこの世の終わりのような顔をして」

 

「あ、ユリス。いや、みんな楽しい冬休みを過ごしたんだなぁって思って」

 

実際、私の冬休みもユリスの方に行っていれば楽しい思い出が出来たの"かも"しれないけど現実は地獄のような日々だった。

 

「そ、そうか。」

 

ユリスは私の表情から何かを察したらしく、私から目を逸らし前を向き直してしまった。

 

 

それから、何人かのクラスメートにも話しかけられたがみんなユリスのように同情した目で私を見た後自分の席に着いてしまい数分後には入ってきた時の喧騒が嘘のように静かになっていた。

 

(……どうしたんだろ?まぁ過ごしやすくていいけど)

 

私好みの静かさが保たれたのは、ほんの数分の事だった。

 

「やぁ、久しぶり琴音!」

 

……例の彼の登場である。

 

「………おはよ」

 

大体の人はこれで全てを察したが如く自分の席に着いてくれていたのだが……それで引かないのがこの方。

 

「どうしたの?元気ないね」

 

「……ちょっとね」

 

「そっか。何かあったら相談乗るよ?」

 

「うん、大丈夫。」

 

幾らお人好しが過ぎる彼でもこう言ってしまえば何も言えないだろう。

 

案の定、彼も夜吹くんの元へと逃げるようにして話しかけにいった。

 

「…相変わらずですね。琴音」

 

クローディアはいつの間にか席に着いており、先ほどよりも顔色も良くかなり体調は良くなったようだ。

 

「………苦手なんだもん。」

 

彼に悪気があろうがなかろうが、私にとって男性で初めからこちらの内面まで踏み込んで来る人は恐怖もしくは嫌悪の対象でしかない。

確かにある程度話したりして、慣れてくればそれも頼りになるかもしれないが身内以外で一番付き合いの長いであろう一ノ瀬先輩にすら私はそういった相談はしたことが無いし、一ノ瀬先輩も聞こうとはしない。

 

「……確かに仕方がありませんね。それにしても、あれで彼が人気ある理由がわかりませんね」

 

クローディアの言う通り、彼の人気はかなりあるらしい。私が知っている限りでもユリスと紗夜ちゃんは彼に好意を寄せている。

私のせいで大分人気が落ちたと夜吹くんが言っていたが、私にそこまでの影響力があるとも思えない。

ただ一つ思い当たる節があるとすれば、冬休み前にやった決闘で新聞部が『叢雲、桜姫の逆鱗に触れる!!』なんていう見出しで新聞を出していたのは記憶にある。

 

「まぁ、私みたいなのは稀だと思うけどね。私が唯一最初から大丈夫だった男子なんて虎峰くんぐらいだし。」

 

虎峰くんは私には未だに女子にしか見えない。

むしろ、男子要素がどこにあるのか教えて貰いたいぐらい。

 

「まぁ琴音はそれでいいんですよ。ところで琴音、学園祭の件でお願いしたいことがあるのですが………」

 

「学園祭?私に出来ることならやるよ」

 

「……そうですか。それでは、時期が来たら詳しい説明しますね」

 

「あ、うん」

 

私はこの時のクローディアの表情をしっかり見なかったこととしっかり内容を聞かなかったことを後悔することになるがこの時はそんなこと知る由もない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日1日、お姫様の機嫌を損ねるなとの指令が学園中に出ていたことを私が知るはずも無かった。

 




綾斗のアンチについてと、琴音の純星煌式武装についてですが学園祭の話が終わった頃に締め切ろうと思いますので是非参加お願いします。

1話当たりの文字数が少ないとのご指摘を受け、代わりに出せる時は2話投稿にしてみたのですが如何でしょうか?


Fgoのフレンド空いてるのでお願いします!
セイバーの沖田さんがフレンド欲しい方はどうぞ、僕のユーザーページの方に書いてあるので。


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50話

今日はこの1話のみになります(多分)


この小説も早いものでもう50話です!
まだまだ先は長いですがこれからもどうぞよろしくお願いします



それではどうぞ


(………なに……これ……)

 

いつものように靴を出そうと下駄箱を開けてみたら………そこにあったのは私の上履きではなく下駄箱を埋め尽くすほどの箱と手紙の数々。

 

(………まさかね…………)

 

下駄箱の中に箱と手紙と言えば、私にとっては思い出すのも嫌な記憶しかない。

 

「やはり、琴音は人気ですねぇ」

 

「あ、クローディア。人気って、私女だよ?」

 

クローディアがそう言ってくるのには理由がある。それは今日が2月14日であるということ。

つまり、今日はバレンタインデーな訳である。

 

「…どうしよう、私全然作ってない」

 

元々、この学園に知り合いが少ししかいないということもあり殆ど作って来ていない。

 

「あの、これは私からです」

 

クローディアはそう言いながらカバンから装飾された箱を取り出すと、私に渡した。

 

「あ、ありがとう。それじゃあ、私からもこれ」

 

クローディアから箱を受け取り、代わりに私が作った和菓子を渡した。

 

「ありがとうございます、琴音。」

 

「ううん、いつもお世話になってるからね。それに作ってて楽しかったし」

 

今回は作る数が少ないということもあって、1人1人別の物を作ってみた。もちろん、その人の好みに合わせてだけど。

 

「それじゃあ、私透のところに行くからまた後でね」

 

「えぇ、それではまた」

 

クローディアはとてもいい笑顔のまま教室の方へと歩いていった。

 

(……そんなにいい事あったのかな?)

 

私は下駄箱に入っていた箱と手紙をカバンに詰めて、透の教室へと向かった。

 

 

 

 

 

ガラガラ

 

「………失礼します。透いますか?」

 

透の教室へ着いたのはいいのだが、廊下からでは透の姿は見えず泣く泣く教室に入るハメに。

 

「………スゲェ、本物だ」

 

「綺麗………」

 

「………サインとか貰えるのかな」

 

中等部には初めて来たけど、ここも高等部と大して変わらないみたいだった。

私なんかのサイン貰うよりも、シルヴィからサイン貰った方が絶対にいいと思うよ。

 

「あ、あの琴音お姉ちゃん!こ、これ良ければ」

 

中学生たちの反応に若干戸惑っていると、私の元へ来たのは透ではなく綺凛ちゃんだった。

綺凛ちゃんはかなり女子力の高そうな箱を手に持っている。

 

「ありがとう、綺凛ちゃん。……これ、私からなんだけど貰ってもらえるかな?」

 

綺凛ちゃんの装飾を見たあとだと、私のシンプルな装飾が残念に見える。

 

「…く、くれるんですか……?あ、ありがとうございます!!」

 

綺凛ちゃんは私から強奪するようにして箱を取っていった。

 

(……そんな急がなくても取らないよ…………)

 

綺凛ちゃんはそのまま席に着いて顔を真っ赤にして、伏せてしまった。

 

(……後は、哀歌ちゃんと透なんだけど……)

 

教室を見渡してみると、哀歌ちゃんはすぐに見つかった。

 

「哀歌ちゃん?これ貰ってくれるかな」

 

哀歌ちゃんは机に突っ伏すようにしていたが、私が声をかけるとこちらを向いて小さく頷いた。

 

「…………ありがとう。」

 

小さな声だったけど、哀歌ちゃんからお礼を言ってもらえ私はとても嬉しかった。

 

(………あとは透なんだけど…)

 

「…姉ちゃん、何してるの?」

 

哀歌ちゃんから一旦離れドアの方から透を探していると、何故か後ろから透の声が。

 

「……透、今登校したの?」

 

「うん。一ノ瀬先輩と話してたら遅くなっちゃった」

 

最近、透と一ノ瀬先輩が急激に仲良くなって気がする。それにしても、透がいないってこと誰も教えてくれなかったんだけど……。

 

「……まぁいいや。はい、これ」

 

「………ありがと。」

 

透に上げたのは例年どおり、チョコレートではなく羊羹で作った和菓子。

 

「それじゃあ、私行くから」

 

「うん、じゃあね。姉ちゃん」

 

私は、全力で手を振る透に見送られながら次の教室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

ガヤガヤ

 

私が教室のドアを開けるなり、騒ぎ始める隣のクラスの人たち。

 

(………そんなに嫌わなくても……)

 

このクラスに来る度にこれだけの視線と喧騒を受けると嫌われているのではと思ってしまう。

 

「あ、明日奈に琴音。それと桐ヶ谷くん」

 

透とは違い、ここのクラスの3人は基本的に一緒にいるのでとても見つけやすい。

 

「あ、琴音。これ、渡しとくね」

 

「私からもこれ」

 

私の方に来るなり、これまた女子力の高い装飾が施された箱を渡してくれる2人。

 

「……ありがとう。これ、2人に。こっちが明日奈でこっちが琴音ね」

 

一応、別々のものを作ったため2人にそれぞれ渡す。

すると、桐ヶ谷くんは何故呼ばれたのか混乱してキョロキョロして始めた。

 

「……はい、これは桐ヶ谷くんに。明日奈のほど凄くないけど、良ければ食べてね」

 

「あ、ありがとうな。」

 

桐ヶ谷くんはそれを受け取るとすぐさま席へと戻った。

よく良く見てみれば、彼の机には紙袋が2つ並んでおりどちらも名一杯入っているようだ。

 

「(…彼モテるんだね)明日奈、色々大変だと思うけど頑張ってね。それじゃあ」

 

「…うん、じゃあね。」

 

「じゃあね〜、琴音」

 

私は軽く挨拶を交わして、自分の教室へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガヤガヤ

 

私が教室に入るなり、何故か教室中の視線を一手に受けた。

 

(………怖いんだけど)

 

暗部のトップをやっているとは言え、これだけの視線を一手に受けることは無いわけで、人は慣れないことは怖いと感じるのが普通なのである。

 

「おはようございます、琴音」

 

そんな私に助け舟を出してくれるのは毎回決まって総ちゃん。

今回の場合は多分私の持っているものが楽しみなだけだと思うけど。

 

「おはよ、総ちゃん。はい、これ」

 

総ちゃんに渡すのはもちろん、自作の金平糖。

これだけは時間がかかるので前々から準備していたものだ。

 

「わぁ、ありがとうございます!琴音。それでは、私からはこれです!」

 

そう自信満々に出したのは、六花でも有名な高級茶屋のお茶。

総ちゃんは料理が得意ではないため、毎年こうして何かしら私の好物を買ってきてくれる。

 

「……ありがとう、総ちゃん。飲んてみたかったんだ、これ」

 

総ちゃんからお茶を受け取り、私は残りの人にも渡しにいった。

 

「…紗夜ちゃん、これ。」

 

「あ、ありがとう。まさか貰えるとは思ってなかった。私のはあの山の中にあるから探してくれ」

 

紗夜ちゃんはそう言うと私の机に出来た山を指差した。

 

(………なんでああなったの……。直接渡してくれたら、楽なのに……)

 

自分の机の上に項垂れながら、私は次の相手の席へと向かった。

 

「……ユリス、これ……」

 

私の数少ない知り合いと言えばユリスはその候補内。

むしろ、最近ではユリスのほうから話しかけてくれるようになったので以前とは違いかなり打ち解けられたと思う。

 

「あぁ、すまないな。私のはあの山の中に埋まってしまったから探して貰えると助かる」

 

ユリス満更でもなさそうな顔をしながら受け取り、再びあの山を指さした。

 

(………なんで……みんなあの山に…)

 

そんなにみんな直接渡したくないのだろうか。

現に私が教室に来てからも、あの山は大きくなっている。

 

(……あと、1人。頑張ろう)

 

このクラス、最後の1人は勿論この人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、夜吹くん。これ」

 

クローディアに続いて、お世話になっている相手といったら問答無用で夜吹くんだろう。

 

「「「「や、夜吹〜〜!?」」」」

 

何故か夜吹のときだけ、反応を見せるクラスメートたち。

 

「お、俺!?有難く頂かせてもらいます」

 

「うん、これからもよろしくね」

 

夜吹くんにはこれからもクラスメートとしても、暗部としても関わることがあるだろう。

 

「………程々に頼む」

 

「…それはどうかな?」

 

私はそう言って、自分の席にある山の処理へと取り掛かった。

 

 

 

後で知ったが、前々から私から貰えると言っていた人が私から貰えずその事について私が恥ずかしがったとか言っていたらしい。

 

(………私の友達には全員渡したんだけどなぁ)

 

私の悩みは増える一方である。

 

 

 

後日、シルヴィやアーネスト、パーシヴァルさん、星露、虎峰くん、沈華、オーフェリアに渡しに行った。

その時にシルヴィと沈華は私の分も作ってくれていたらしく2人からも貰った。

それぞれの学園に行く度に、知らない人からも渡された結果貰った総数は数えるのを途中でやめるほどとなった。

 

 

 

あと、私の知り合いで渡していないのは彼だけ。

何故彼にだけ渡さなかったのか。それにはちゃんとした理由がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、香苗さんから通達が来てたから。

 

 

「琴音ちゃんに迷惑かけた罰として、私も今年はあげないから琴音ちゃんもあげなくていいよ」とのこと。

今回に関しては自業自得だから、反省してくださいね。一ノ瀬先輩。




アンケートの方、ご参加お願いします


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51話

綾斗のアンチに関してはそろそろ決めようかと思っています。
ただ、アンチに反対という方の意見が今のところないんですよね………。皆さん嫌いなんでしょうか……。
ただ今から、完全アンチなしというのもかなり大変なんですよね…。

Fgo、ジャンヌ狙いで50連で大爆死しました……。



それでは、本編どうぞ〜


高等部1年もあと一ヶ月を切った今日……。

私はこの日のために、一ヶ月程前から準備してきたのだ。

 

(………どうやって渡せば………。)

 

丁度一ヶ月前。バレンタインデーの日に、下駄箱に詰め込まれていた無数の箱や私の机の上に出来ていた山。そして、星導館に送られた物の数々。

その中でも、くれた人の名前が書いてあり尚且つ星導館の人にだけでも返そうと思い作ってきたまでは良かった。

ただ、あまりにも人数が多すぎて返すに返せない。

 

「あら、琴音何かお悩みですか?」

 

私が下駄箱で唸っていると、先に学校に行っていたはずのクローディアに声をかけられた。

「…あ、クローディア。ちょっとね、これ一応作ってきたんだけどどうやって渡せばいいかわからなくて…。それに知らない男子は話しかけられないし………」

 

そう言って、私は持っている"3つ"紙袋をクローディアに見せる。

 

「そうですね……、私が全部貰うというのはどうでしょうか?」

 

悩んだと見せかけて、全く間を空けずに自分が貰うと言い張るクローディア。

これを作ったあまりを先日あげたばかりなのにまだ食べたりないのか。

 

「……真面目に考えてよ。じゃないと、もう和菓子作らないからね」

 

「ま、待ってください。そうですねぇ…………普通に配ればいいんじゃないでしょうか?」

 

「………普通に配るって?」

 

普通に配る。

それが出来たら苦労していない訳で、実際星導館の生徒であり、尚且つ名前が分かっている人というだけでも500人はいるのだ。

それを1人1人渡すというのは少々骨が折れる。

 

「ですから、学年、クラスがわかっているのでしたらその教室に行ってその人たちを呼び出せばいいんですよ」

 

「・・・・・・それ…時間、間に合うかな?」

 

渡す相手は中等部、高等部、大学部まで幅広くおり、少なくとも1時間ほどはかかる。

そうなると始業の時間には間に合わない可能性が大である。

 

「……まぁ何とかなりますよ、琴音なら」

 

なんとも投げやりなクローディアの言葉に、少し泣きそうになった。

 

「……わかった。それじゃあ行ってくる」

 

(始業時間までは、1時間半。

まだ登校していない人もいるかもしれないけど、その場合は誰かに渡してもらおう。)

 

私は始業時間に間に合わせるため、全力で廊下を駆け抜けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(………何でこんなに時間が………)

 

全力で廊下を駆け抜ければ、1時間もかからずに終わると思っていた。

確かに移動で時間は殆どロスしていない。

だが、渡すのにここまで時間を喰うことになるとは………。

 

中等部から回る事にしたのだが、その中等部で一つの教室に行く度に騒がれ、お返しを渡そうとすれば悲鳴が上がり、手渡しすれば感動され……。

こんな感じで、中等部ではかなりの時間をロスしてしまった。

 

次に向かったのは大学部。

流石は大学生、悲鳴を上げる人は誰もいなかった。

だが、その代わりに握手や何故か写真を求められることが沢山ありここでも時間をロスしてしまった。

 

ここまでで、所要時間1時間10分。

あと、20分しかない中でまだ高等部が残っている。

 

(……どうしようかな)

 

あと20分間では、とてもじゃないけど配りきれる自信はないのだが……

 

(…そっか。渡したら、すぐに次に行けばいいんだ)

 

配り始めて1時間10分経って、私は漸く気が付いた。

 

(よし、さっさと配って教室に戻ろう)

 

私はもう一度廊下を駆け抜けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

(………あとは、うちのクラスで最後。)

 

渡したらすぐに次のクラスへ行くということを心掛けた結果、たった10分で高等部は自分のクラス以外配り終えることが出来た。

 

ガラガラ

 

教室のドアを開け、自分の席に1度着く。

 

「……えっと、このクラスの人は殆ど全員かな?バレンタインのお返し渡したいから名前呼んだら来て欲しいんだけど……。いいかな?」

 

「「「・・・・・・。よっしゃー!!」」」

 

と何故かとても嬉しそうな男子生徒とは引換に、何故か女子生徒は泣き出してしまう始末。

 

(………そんなに要らなかったのかな………。)

 

女子の反応にかなり心を抉られながらも、1人1人名前を呼んで渡し始めた。

 

「…えっと、これで最後かな。……天霧綾斗くん」

 

「ありがとう、琴音。俺の"ため"に作ってくれて」

 

 

最後の1人に渡し終えたところで、丁度担任が入ってきてホームルームが始まった。

 

(………ごめんなさい。今回は量が多かったから皆同じものなんです。)

 

最後の彼の言葉に、申し訳なさを感じながら私はホームルームを過ごすことになった。

 

 

 

 

 

 

 

後日、寮の方に皆からお返しが届いた。

アーネストやオーフェリアの意外なお菓子作りのセンスや星露のセンスの渋さに驚いたり、虎峰くんの女子力の高さにショックを受け、より一層に男子とは思えなくなったり。

とても楽しみながら、美味しく食べることが出来た。

 

 

 

 

お陰さまで、この1ヶ月で体重が○kg増えたのはまた別の話である。

ちなみに、総ちゃんとクローディアは私よりもさらに体重が増えたらしい。

私が貰った分も、勝手に食べていたのだから自業自得な気もするが。

 




今回は若干短かっかたです。
この話は書こうか迷ったんですけど、一応書きました。


最近は感想たくさん貰えてとても嬉しいのですが、1つだけお願いが。
今作よりも原作の方がキャラクターがいいと言われるのは、言われなくてもわかっていますしわざわざ言わないで欲しいです。
豆腐メンタルなだけと思うかもしれませんが、わざわざ言うことでもないと思うのでお願いします。


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52話


今回は色々な事情で書きたいことが書けないので、閑話的な回です!


質問なのですが、皆さんはアイデンティティfiveやっていますか?
やっている方いました一緒にやりたいです!!


それでは本編どうぞ〜


 

特にこれと言った事件も起こることなく、私は高等部1学年を終え新学期を迎えることが出来るはずだったのだが…。

 

(…………流石に広過ぎるでしょ……)

 

ここ六花に来てからずっと私は寮に住んできたのだが…。

哀歌ちゃんの1件で銀河に当主であることがバレてしまったことや、実家の方に今まで全て任せていた仕事も主戦力である総ちゃんと私がこれ以上抜けるのは不味いということもあって何故か実家ではなく銀河の方が新居を用意してくれたのだ。

 

「いやぁ、広いですねぇ」

 

「うん、そうだね…」

 

普通のマンションの1室で良かったのに、銀河が用意してくれたのは星導館の序列1位の寮の部屋の倍程の広さの部屋だった。

今まで、クローディアと2人で生活していたこともありあの部屋も丁度よく感じていたのだがこの部屋に総ちゃんと2人というのは広過ぎる。

最低でも、あと3人は欲しい。

 

「それにしても、銀河もどういう風の吹き回しでしょうね?わざわざ用意するなんて」

 

総ちゃんの言う通り、本当は実家の方で私と透の住む家を用意する予定だったのだけどわざわざ銀河が実家に手紙を寄越して「沖田様と東雲琴音様の新居は我々が用意します」と言ってきたらしい。

お陰さまで、私の透との生活の夢は絶たれてしまったのだ。

 

「……うーん、多分用意した代わりに調べてほしいことでもあるんじゃないかな?それか私達に調べられたくないことがあって、私たちを監視するためとか」

 

実際、私と総ちゃんを一緒に住まわせる理由なんて監視ぐらいなものだろう。

襲撃するなら、1人ずつの方が圧倒的に楽だろうし。

 

「そう言えば、これ先ほど銀河の方から琴音にって」

 

総ちゃんは手に持った手紙のようなものをヒラヒラさせている。

 

「……わざわざ私に直接か」

 

私は明らかに面倒ごとであろう、その手紙を総ちゃんから受け取った。

 

『東雲琴音様

 

ご新居、お気に召したでしょうか。我々が六花で用意出来る最高級のお部屋ですが、何かあればお申し付け下さい。

 

 

統合企業財体 銀河』

 

 

私の予想と反して手紙には特に何も書いていなかった。

 

(……何かある)

 

銀河に限らず、統合企業財体というのは自分たちの利益にならないことはまずしない。

これは暗部として関わっていなくても分かること。

 

「……怪しいですねぇ」

 

「うん………。銀河が私達をわざわざ星導館の寮から出したってことは、遠ざけたかったんだと思う。」

 

今、銀河が星導館から私たちを遠ざける理由として思い当たるのは一つ。

それは哀歌ちゃんの存在。

実家の方に調べさせた結果、哀歌ちゃんは統合企業財体にとって色々とブラックな存在であることがわかった。

つまり、彼女に生きていられるのは統合企業財体にとって不利益でしかないということ。

 

(……流石に今は手を出さないだろうけど)

 

幾ら統合企業財体と言えど、安易に東雲を敵にすることはしてこないだろう。

家と全面的に敵対しようと思ったら、それこそ全統合企業財体でかかって来ない限り勝ち目なんてない。

 

(………それに、気になる人ならもう1人。)

 

私を遠ざけることで狙い安くなる人物はもう1人いる………それはクローディア。

普通に考えれば、銀河に母親もいるクローディアが狙われる通りなんてないのかもしれない。

ただそれでも、鳳凰星武祭が終わってからクローディアの表情が険しくなることが多くなっているのも間違いない。

 

(……そして、何よりあの時の…。)

 

私の能力でクローディアは悪夢を見ることは殆どなくなった。

だけど、クローディアはまだ悪夢を見ていた頃に言っていたことがある。

 

『私は、あなたと共には長くはいられないと思いますよ』

 

その言葉が私の脳裏から離れたことはない。

クローディアは最初のころ、ある男の子の腕の中で看取られて死にたいと言っていた。

それも言わなくなって来ていた。そんな矢先にクローディアから言われた言葉がそれだった。

 

(……クローディア大丈夫だよね…。念のため、琴音に調べさせようかな………。)

 

幾ら私が心配しても無駄なことは分かっていたが、それでも心配せざるお得なかった。

 

 

 

「……琴音っ!!」

 

そんな私を他所に家の探索を続けていた総ちゃんが、急に大声を出した。

 

「…どうしたの?総ちゃん」

 

驚いている総ちゃんの目の前にあった物、それは………

 

 

 

 

 

 

 

「……なんでダイエット器具が……?」

 

そこの部屋には、大量のダイエット器具。そして、一緒にあった手紙にはこう書かれていた。

 

『宜しければお使い下さい。東雲様たちのスタイルが戻ることをお祈りしております。

 

P,S

東雲様にはモデルのお仕事が来ているとの事らしいので、頑張って下さい。』

 

(………なんで銀河の人こんなこと知ってるの……?)

 

私と総ちゃんは、少し混乱しながらもこの器具を有難く使わせてもらうことにした。

 

 

 

 

後日、ペトラさんから銀河の予告通りモデルの仕事が来たがお断りさせてもらった。

その際に、ペトラさんに「それよりも、今度はよろしくね」と言われたがその今度の心当たりがない。

 

(……やらないって言ってるのになぁ)

 

私はこの時の、自分の騙されやすさを恨んだ。

 

 

 

 

 

 





今回はこの辺りで。

この話が関わってくるのはまだまだ先なので楽しみにお待ち下さい!!


新作のアンケ、参加お願いします!!
今のところ、さすおにかワンピ書こうかなぁと。
それもまだ先になりそうですがそれでは、また次回


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53話

今回は、若干他作と展開的なものが似てしまっていたので許可を頂くのに少し時間がかかってしまって投稿遅れました。
申し訳ないです






新居への引越しも無事終わり、体型の方も何とか元に戻すことに成功した私達は新学期を迎えた。

 

(………なんで私がこんな目に…。)

 

今日は入学式なのだが、例年ならば私は一般生徒と同様に休日なはずで今年も例に漏れず総ちゃんと共に茶菓子屋巡りをする予定だった。

だが、それも今年から叶わぬ願いとなってしまった。

 

「さっ、琴音お願いしますよ!」

 

そう、今年から何故か生徒代表の挨拶の他に出来た序列1位の挨拶。

何それと言う人がいるだろうが、私もそう思う。

誰が好き好んでこんなに目立つことをしなければいけないのか。

そして、生徒の挨拶が何故2度も必要なのか。

 

「絶対私の挨拶いらないと思うんだけど……。」

 

「いえいえ。序列1位である琴音だから言えることもありますからね」

 

そうクローディアに笑顔で送り出され、私は渋々壇上に立った。

 

『星導館学園序列1位の挨拶 東雲琴音』

 

「えー。新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。当学園に入学してきてくれたことを嬉しく思います。皆さんは、様々な思いを持ってこの六花に来ていると思います。当学園は皆さん知っての通り、あまり特色のある学園という訳ではありません。そんな中でも、星武祭で活躍出来ているというのはみんなの鍛錬の結果だと私は思っています……。」

 

私はここで一旦区切り、息を吸ってもう一度話し始めた。

 

「と、まぁここまでは生徒代表でもあるクローディアが話をしてくれたと思いますのでここからは序列1位として話をさせてもらいます。今、この中にはすぐに在名祭祀書に、いや冒頭の十二人に名前を連ねられると思っている人がいるかもしれませんが……そんな甘い考えを持っているうちは冒頭の十二人はもちろんのこと在名祭祀書にすら名前を連ねることは不可能です。今までどんな訓練を積んできて、どんな大会を経験してきたのかわかりませんが今のあなた方では無理だと断言出来ます。

厳しいことを言いましたが、あなた方はまだこれからです。困ったことや、戦闘のことで悩みがあればいつでも先輩方に聞いてください。もちろん、私でもいいですがあまり話すのが得意じゃないので他の人の方がいいかもしれないです。

これで、私の挨拶は終わりです。皆さんの健闘を祈ってます。」

 

そう締めくくり、私は壇上から降りようとした。

 

『ここで、新入生から序列1位に対して質問があれば挙手して下さい』

 

………そんなことは聞いてない。

序列1位として挨拶をしろとは言われたけど、質問コーナーまで設けられてるなんて聞いてない。

 

(……クローディアめ)

 

クローディアの目論見によって、余計な質問コーナーを作られてしまったが先ほど若干厳し目のことを言ったせいか誰1人も手をあげようとしなかった。

 

(……ふぅ。良かった。)

 

そう安心して、帰ろうと思ったのだが…

 

「質問いいっすか?」

 

そう発言したのは、ほぼ中央の方に座っていた男子生徒。

 

「………はい。どうぞ」

 

クローディアがあのように言ってしまった手前、断ることなど出来ず渋々質問を受けることにした。

 

「序列1位さんって、本当に強いんすか?」

 

「………はい?」

 

『はい?』

 

流石にこの質問には私だけではなく、進行役のクローディアも驚いてしまっていた。

 

「えっと、どういう事かな?」

 

「そのまんまっすよ。さっきから、序列1位だからって上から目線で俺らに言ってるっすけどあなたが優勝したのって王竜星武祭だけっすよね?しかも、かなりボロボロにされての。鳳凰星武祭に関しちゃ、途中で不戦敗でしたっけ?あれも負けるのが怖くて逃げたんじゃないんですか?あのペアの人なんて言いましたっけ?そう沖田でしたっけ?あの人と一緒にビビって。【瞬神】だの【桜姫】だの言われてますけど、実際はただのビビりなんでしょ?女子だからって、チヤホヤされていい気になってるだけじゃないんですか?」

 

おもむろに立ち上がった男子生徒はそう言い切った。

この学園に来て以来、序列1位はずっと守り続けてきた訳で、トップに立つものとしてみんなに恥じない戦いをしたつもりだった。

それに言えば、ここにいる新入生が誰1人強くないことなんて見ればわかる。

これは事象の拒絶の応用能力になるが、その人がもつ星辰力の量を私と比べてどれぐらいかわかるのだ。

なにより、彼は総ちゃんのこともバカにした。

鳳凰星武祭を私のせいで辞退することになったにも関わらず、私を一切責めることなく許してくれた総ちゃんを。

 

「………何様?」

 

「何様って、日本の古流剣術の一家の生まれってだけですけど?俺から言わせてもらえば、あなたたち程度の剣術で剣士とか名乗らないで欲しいですね。何よりあなたからは全く殺気を感じないんですよ」

 

何を言ってるんだろう。

こんな大勢に対して殺気を放つ馬鹿がどこにいるのだろうか。あぁ、居た。

彼は頑張って殺気を出しているが、精々隣の生徒の顔を青ざめさせる程度。

 

「………これで満足?」

 

殺気を全開にして壇上に立つ。

案の定、半分以上の生徒は気を失ってしまった。

 

「…ひっ。」

 

さっきまで威勢の良かった彼も腰を抜かして席に座っている。

 

「あなたが、私をどう思うおうが知ったことじゃない。だけどね、私は親友を馬鹿にされてまで笑っていられるほど優しくないの。」

 

私はそのまま壇上から降り、その男子生徒の元へと歩いていく。

 

「………クローディア、模擬戦やっても構わないよね?」

 

『えぇ。構いませんよ。ただ、外でやってくださいよ?ここまで壊されると困るので』

 

これでクローディアから、許可は貰った。

ただここも壊されると困るって……私はそんなに破壊の亡者じゃない。

 

「…さて、外出なよ。格の違いを見せてあげるから」

 

「へ、へぇ。そんなこと言って大丈夫なんすか?僕に勝てると思ってるんですか?」

 

顔を青ざめさせ膝が笑っているが、それでも強気でいようとする彼。

 

「…………二度と刀を握れなくしてあげようか?」

 

それだけ言って、私は腰を抜かしそうになっている彼を置いて先に外へと出た。

 

 

 




自分でも書いてて胸糞悪くなってきました。

ただ偶には、琴音に対するアンチが居ないのもアレだなと思ったので少し我慢してくれると嬉しいです。僕も我慢しながら書いているので…。


新作、アンチ、新純星煌式武装のアンケまだやっているので参加お願いします!

それではまた次回


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54話


いやぁ、何とか毎日投稿……。
本当に誰得なんでしょうね。他作の方がお気に入り登録とか多いんですけどね、僕はこの作品が一番好きなんですよね…。


他作もしっかり更新はしていくので、一応ご安心を…。


それでは本編どうぞ!!


 

「それでは、今回は模擬戦という形ですので序列の変動はありません。なお、今回は両者の同意の元相手が死に至らなければ何をしてもOKです。なお、どちらかが戦闘不能になるかどちらかがギブアップする。もしくは、審判である私が止めない限り続行となります。念のため、確認しますがそれでいいのですね?」

 

クローディアは、今回の模擬戦のルールを説明し新入生の方を見てもう一度確認をとる。

 

「えぇ、もちろん。なんで俺だけに聞くんですか?聞くならそっちの序列1位の人の方でしょ?」

 

先程まで腰を抜かしていたとは思えないほどの強気発言だが、今更もう気にする気にもならない。

 

「いえ、琴音には必要ないですよ。」

 

クローディアは、新入生の言葉をきっぱり切る。

 

「……そうですか。後悔されても知りませんよ?序列1位さんが戦えなくなっても。」

 

「………よく喋る口だね。黙らせてあげようか?」

 

別に喋るぐらいはいいだろうと許容していたが、幾らなんでも五月蝿い。

戦いを前に、よく喋る剣士なんて私は聞いたことが無い。

 

「………クローディア」

 

もう話を聞くのも面倒になったので、クローディアの方を向き催促する。

 

「えぇ、それでは模擬戦を始めます。両者準備はいいですか?」

 

「えぇ、俺は何時でも」

 

新入生はそう言っているが、鞘にすら手を掛けずただ立っているだけ。

私を舐めているのか、それともそういう構えなのか。だが、後者はないだろう。鞘にすら手を掛けない構えなんて聞いたことないし。

 

「……いいよ。」

 

私は、鞘に手を掛け相手を見据える。

 

「 ……それでは開始!」

 

ザシュッ

 

クローディアの開始の声と共に、彼の利き手である右手首を切り落とす。

 

「…っうわぁ」

 

「…………なに?騒がしいんだけど」

 

「模擬戦で腕斬るかよ、普通!」

 

ザシュッ

 

振り向きざまにもう一度。

今度は右肩から切り落とした。

 

「ぐわぁ!し、審判、模擬戦だろ?これ。」

 

「えぇ、模擬戦ですよ。殺し以外なんでもありの」

 

クローディアがそう言うと転入生は顔を青ざめさせる。

 

「くそ!油断してなければ、腕さえあればこんな奴余裕 なんだよっ!!」

 

転入生は周りに誇示するかのように叫ぶ。

 

「………へぇ。油断してなければね……」

 

戦闘において、その油断がどれだけ大きなものか。

本当の命のやり取りならば、それだけで命を落としてしまう。

 

「そ、そうだ!油断さえしてなかったら、あんたの攻撃なんて受けるわけがないんだよ!!」

 

「………そう。……私は拒絶する」

 

私の星辰力で転入生の腕を包み込み、腕を修復した。

 

「な、なにをした!」

 

「……治しただけだけど?それに腕さえあれば私を倒せるんでしょ?ほら、早く」

 

自分の腕が治ったことに驚いて、動こうとしなかったので少し煽らせてもらった。

多分、総ちゃんにこの戦いを見れば怒るだろう。それ程私は相手を愚弄した戦い方をしている。

けど、今私は剣士として戦っているわけじゃない。今の私はただのエゴイスト。それでいい。

 

「……ほら、早く刀抜けよ」

 

「こ、このっ!舐めやがって」

 

転入生は冷静さを欠き、型もなにもないただ刀を振り回すように斬りかかってきた。

そんな振り回すような剣筋に当たる筈もなくなんなく躱し続けた。

 

「…………そんなもんなのね」

 

「ハァ………、な、なんだと」

 

「………もういいよ。それじゃあ、さようなら。エセ剣士さん」

 

ザシュッ

 

ザシュッ

 

ザシュッ

 

ザシュッ

 

意識を奪わないギリギリ。

痛みが脳に届く前に、四肢を切り刻む。

 

「……私は拒絶する」

 

失血死してしまう可能性があるので、出血する前に治す。

そして、もう一度

 

ザシュッ

 

ザシュッ

 

ザシュッ

 

ザシュッ

 

私は転入生の意識が続く限り切り刻んでは治し、切り刻んでは治しを繰り返し続けた。

 

「………琴音、そこまでです」

 

転入生が意識を失いかけた頃に、クローディアが私を止めた。

 

「………なんで?周りには何も見えてないでしょう?」

 

周りには、私がただ移動しているようにしか見えない。

強いて言うなら、骨や肉が切れる音は聞こえるが彼の身体には傷一つないような状態なはず。

 

「………これ以上はあなたが可哀想です。」

 

「……なにを…」

 

「……心優しいあなたがこんな事をして、辛くないはずがないでしょう」

 

クローディアにそう言われるが辛かった。

私は何も感じていなかったから。ただ目の前の相手を痛めつけることしか考えていなかったから。

 

「………そんなことないよ。………ごめん、クローディア。私先帰ってるね」

 

私はクローディアから逃げるようにして、家に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、お疲れ様です!琴音」

 

家に帰ると、何処かいつもよりも笑顔の総ちゃんが出迎えてくれた。

 

「……ただいま。」

 

「ん?どうかしましたか?」

 

総ちゃんは当然のように聞いてくる。

 

「………ううん。ちょっと疲れたから先に寝るね」

 

「あっ、はい。」

 

私は総ちゃんから逃げるようにして、寝室に向かった。

 

(……やっちゃったなぁ)

 

総ちゃんに言い出せず、その日はそのまま眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、新聞部の『新入生、桜姫の逆鱗に触れる!』という題名のせいで総ちゃんたちにバレてしまいみんなに少し説教されたのは言うまでもない。

 

 

クローディアによると、あの新入生は一応在籍はしているらしい。ただ刀を握ることすら出来ないらしく居なくなるのも時間の問題とのこと。

 

 

 

その日以来、『姫の逆鱗に触れし者に命なし』という言葉が学園中で囁かれ始めたことは私が知る由もない。

 

 

 

 

 





新作、新純星煌式武装などなどのアンケの参加お願いします!!

それではまた次回


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55話


遅くなってごめんなさい!

今回は若干短いです…。


毎日投稿はしようと思っているのですが、中々次の展開が思いつかなくて短くなってしまい本当に申し訳ないです。


今回は久しぶりに例の彼の登場です!!
それではどうぞ



新学期も始まって早くも一ヶ月が経とうとしていた。

新入生たちも、私が入学式で言ったことが伝わったからだろうか。冒頭の十二人に話を聞きに行っているのをよく見かける。

ただ我が校の冒頭の十二人というのは中々に癖が強い人が多いせいか何人かがかなり人気になっているようだけど。

我が校の冒頭の十二人はというと…

1位 私

2位総ちゃん

3位クローディア

4位天霧綾斗くん

5位ユリス

6位一ノ瀬先輩

7位桐ヶ谷くん

8位透

9位レスターさん

10位明日奈

11位神里くん

12位プリエメさん

と言った具合だ。

これを見ても分かる通り、常識人と言えるのは明日奈と透と桐ヶ谷くんと一応、一ノ瀬先輩。あとは、何かしら問題がある。

まず、私だけどコミュニケーション能力に多大な問題がある。それでも少しは来てくれるけど。

次に総ちゃんは、言うまでもなく感覚派であるからか教えるのに向いてない。あと、お菓子食べてるか寝てるからあまり話しかけやすくもない。

3位のクローディアは、うん。言うまでもないないだろう。あの腹黒さに耐えられる新入生なんて早々いるはずも無く最初こそ人気はあったが今では極小数となりつつある。

次に4位の天霧くんだが、彼は結構女子の人気はあるみたい。だが、男子からの人気という点はあまりないようで殆ど女子のようだ。

5位のユリスは言うまでもなく、話し掛けにくい。まぁ、『第2のお姫様』なんて言われてるぐらいなのだから言うまでもないとは思うけど。

9位のレスターさんは言うまでもない。だって、怖いから。

他の2人は殆ど話をしたことも無いということもあって知らない。

結果的に、残りの人達に新入生が集まる形となっている。

 

 

(……なんかごめんなさい)

 

自分で言った手前、最近放課後を新入生の鍛錬に付き合うのに消費していると思うとかなり申し訳ない。

 

「………当主?大丈夫ですか?」

 

少し物思いに耽っていると心配されてしまった。

 

「…あ、ごめんなさい。それで対象の情報は?」

 

銀河が新たな新居を用意してくれたということもあり、私と総ちゃんも暗部の仕事も再開することになった。

とは言っても、当主である私が本家の方に全く関わらないと言うのは良くないということもあってテレビ通話という形では参加していた。

今回も統合企業財体の一つであるW&Wからの依頼ということもあって総ちゃんと琴音と共に会議に参加中である。

 

「今回の対象の名前は菅生信彦。依頼内容は、対象の調査と場合によっては抹殺です」

 

…菅生信彦。

私もいい思い出のない相手だ。

だが、私の知る限り統合企業財体から狙われるほど大物でも無かった気がするけど。

それにW&Wってことはクインヴェールの運営母体。

 

「……そんな小物がなぜ今回対象に?」

 

「W&Wからの依頼理由ですが……、一つ目は最近クインヴェールの生徒が数日行方不明になり戻ってきた後に何かに怯えるようにして退学するといったことがあるそうです。さらに、この菅生の実家の方ですが近頃人身売買に手を出しているとのことです」

 

(………なるほどね)

 

何故そんな小物がターゲットになったかと思ったが、実家絡みそれもクインヴェールの生徒に手を出したとなれば運営母体のW&Wが黙っているはずもない。

 

「……わかりました。それでは、そちらの方で菅生の実家については調査をお願いします。菅生本人は、私たちの方で調べます」

 

「……で、ですが…当主は今回は……」

 

東雲家の皆が私のことを心配することはわかりきっていた。

みんな、あのことを知っているから。

 

「……心配ありがとうございます。それでも、私の心配は無用です。被害者をこれ以上増やすわけにもいきませんから。」

 

「……失言でした。申し訳ありません」

 

「いえ、心配ありがとうございました。それでは、そういう事でよろしくお願いします。何かわかり次第連絡のほどお願いします」

 

「「「はっ!」」」

 

そこで通信は終わった。

 

(………まさか、まだ六花にいたとはね)

 

あの時、星導館から消えるようにしていなくなったことと何も出来ないであろうと踏んでいたため行方を調べることもしなかったのだが…まさか、六花にいるとは思いもしなかった。

 

「…マスター、ご指示を」

 

総ちゃんはこういった類のことが久しぶりだからだろうか、早く動きたくてウズウズしているようだった。

 

「…総司はいつも通り、アジトの捜索をお願い。琴音は、菅生の現在の居場所、そのグループの構成員の調査をお願い。」

 

「承知」

 

「了解」

 

そう言うと2人ともすぐさま何処かへ行ってしまった。

 

(……2人とも仕事好きなのかな…?さてと、私はクインヴェールに調査に行こうかな。けど、もしシルヴィが私のことを知ったらどう思うのかな…)

 

幾らこの六花の生徒会長が闇の部分を知っているとはいえ、深く関わっているクローディアやディルクさんの手はまだ穢れてなんかないだろう。そう考えれば、シルヴィなんてまだまだ穢れすら知らない可能性の方が高い。

 

(……今更そんなこと考えても遅いか…)

 

私は半ば諦めを感じながら、W&Wの幹部でもあるペトラさんの元へと向かった。

 

 

 

 




うーん、暗部目線になるとさらに難しいですね…

皆さんご期待の彼の再登場でしたが、如何でしたでしょうか?


新作、新純星煌式武装、アンチのアンケまだまだ取っているので宜しければお願いします!


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56話


何とか毎日投稿。
もうなんか意地でやってる部分あるのですが、皆さん的にはどうなんですかね?
毎日よりも、2日に1話ぐらいの方がいいんですかね?

今日、少し時間があったので自分の作品読み直してみたのですが中々酷いですね……。なんか読んで下さって、本当に有難いって感じでした。

そんな作品なのに、お気に入り数200人もして下さって本当に有難い限りです。




それでは!どうぞ!!


 

「あら、琴音ちゃん。私に用ってどうしたのかしら?デビューする気にでもなったかしら」

 

元々来る前に連絡を入れていた為、ペトラさん本人が出迎えてくれた。

 

「…いや、しませんって。それに今回は、星導館の生徒としてではなく東雲家の当主として来てますから」

 

この言葉で通じたのか、それとも元々そんな気はなかったのかわからないがペトラさんはすぐさま険しい顔つきになった。

 

「……冗談よ。理事長室でいいでしょうか?」

 

真面目になったのはいいのだが、幾らなんでも敬語まで使われるとこっちが気恥しい。

 

「えぇ。それと話し方はいつも通りでお願いします。話しにくいので」

 

「わかったわ。それじゃあ、着いてきてくれるかしら」

 

私は前を歩くペトラさんのあとを追って理事長室へと向かった。

 

 

 

 

〜~〜~〜~〜~〜~〜

 

 

 

「それにしても、簡単に着いてきちゃうのね」

 

それがペトラさんが理事長室について、最初に発した言葉。

暗部の案件であるのに、私が簡単に着いてきたことを言っているのだろう。

 

「えぇ、 それぐらいペトラさんのことは信用してますから」

 

これは本心。

ペトラさんとはシルヴィを通じて知り合ったが、初対面のときから怪しさというものは微塵も感じなかった。

 

「…それでも、私はW&Wの幹部よ?」

 

「それがどうかしましたか?もし、ペトラさんが私のことを殺そうと思ったらこの状況で有り得るのは襲撃、もしくは毒殺と言ったところでしょうか。襲撃ならばこの密室において、私は負けないですし。それに毒殺だろうが襲撃だろうが私を殺そうと思ったら即死させなきゃいけませんからね。人とか罠が近くにあれば気配で感じ取れますし。」

 

私の千本桜の能力は狭ければ狭いほど効果を発揮する。それは至極簡単なこと。狭ければ狭いほど、その空間を千本桜によって支配しやすいから。

それに私のことを殺すには先ほど言った通り一撃で心臓を貫かれようが星脈世代でもある私の身体は即死はしない。つまり、実質私を殺す術は修復が間に合わないレベルで私の脳を破壊するぐらいしかない。

そんなこと眠らされていない限り有り得ないし、まず眠らされることがない。

 

「そ、そう。それじゃあ、まず私に聞きたいことって何かしら?」

 

「えぇ。ペトラさんに私が聞きたいことは2点です。まず一つ目は、何故菅生の犯行ということが絞れたのかということ。もう一つは、行方不明になった生徒はどのような状況でそうなったのかです。」

 

私が気になったのはこの2点。

一つ目の質問は、何故犯人が分かっているのにW&Wが自分たちで動こうとしないのか。の理由が知りたかったから。

もう一つは、ただ単に調査に役立つと思ったから。

 

「そうね。まず一つ目だけど、彼が犯人であると断定出来たのには大きく2つの理由があるわ。一つ目は、1人だけ誘拐されそうになったときに抵抗して逃げた生徒が居るのだけどその子の証言のもと調べた結果彼が浮上してきたの。そして、もう一つの理由は……シルヴィアが調べたのよ。彼女、生徒会長として異変に気が付いたみたいでそれで行方不明になってた生徒から話を聞いてそれで、菅生に辿り着いたみたいなの。それでも決定的な証拠は上がらなかったみたいで、私の所にも話に来たのよ。もう一つの質問の答えだけど全員学園敷地外、殆どが学園の近くで攫われているみたいなの。」

 

一番関わって欲しくない相手が、この事件に既に絡んでしまっていることに私は肩を落とした。

シルヴィのことだから、自分で調べようとするだろうけどそれだとシルヴィに危険がないとも限らない。

相手は犯罪者だ。それに加えて、菅生の実家の話が本当だとすればシルヴィは絶好の獲物だろう。

それに、シルヴィが調べようとすれば必然的に学外へと出るということ。

シルヴィの腕を疑っている訳では無いが、それでも相手の戦力が分からないため危険が全くないとは言いきれない。

 

「……そうですか。ペトラさん、一つだけお願いがあります。シルヴィにこのことから手を引かせてください。私の名前を使っても構いません。」

 

「えっ、えぇわかったわ。でも、良いの?あなたの素性バラしてしまって」

 

ペトラさんはそう言うが、ペトラさんの言う「いいの?」とは私が東雲家の当主であることがバレてもいいのかということではなく、東雲家の当主が私であることがバレてもいいのかということだろう。

 

「それで親友の身を守れるなら安いものです。それに、私が当主であることなんて統合企業財体にバレてる時点で隠す必要もありませんよ。」

 

実際、東雲家を邪魔に思っているのなんて統合企業財体ぐらいなものでその統合企業財体にバレているのならどこにバレようと今更なのだ。

 

「…そ、そう。わかったわ」

 

「それでは、私は失礼します。これ、シルヴィに渡しておいてください。」

 

私はペトラさんにシルヴィへの贈り物を渡し、理事長室を後にした。

 

(……シルヴィが危ないかもしれない)

 

ペトラさんには一応言ったが、シルヴィの性格からして大人しくしているとは思えないし多分ペトラさんは私のことも話さないだろう。

ペトラさんは、統合企業財体の幹部にしては優し過ぎるから。

 

(……取り敢えず、総ちゃんたちの結果次第かな)

 

私は親友のことを考えながら、帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総ちゃんたちの調査が終わったのはそれから10日後の事だった。

 

「…それでは報告を」

 

今回は六花と日本の同時進行ということもあって、報告は逐一通信で受けていた。

そして、今回は両方の調査が完了したということで全員集まっての会議である。

 

「それでは、こちらから。菅生家ですが、情報通り人身売買を行っているようです。定期的にオークションという形をとっているようです」

 

定期的なオークションということは、それなりに商売相手がいるという事だ。

どんなに世界情勢が変わろうともそういう人たちがい無くならないから私達のような暗部が存在するわけなのだけど。

 

「お疲れ様です。それでは、こちらの報告を。」

 

「はっ。菅生信彦についてですが、彼は六花に今も潜伏しています。彼らの構成員は、確認できた中で5人。そのうち、2人は星脈世代でその2人が実質実行犯。残りの2人は、星脈世代ではないものの菅生の護衛というかたちです。」

 

「アジトについてですが、アジトは再開発エリアのビルの地下にありました。潜入した際には、誘拐されている人物はおらず構成員も存在しませんでした。ただ気にかかる写真が数枚。」

 

そう言って、総ちゃんは懐から写真を数枚出した。

 

「これは奴らのアジトにあったものですが、これら全てクインヴェール女学院の生徒会長シルヴィア・リューネハイムを撮ったものです。」

 

総ちゃんの持つ写真は、全てシルヴィのことを写したもの。

それは変装しているものであったり、変装していないものであったりと奴らが次のターゲットに狙っていることを示唆している以外には考えられないものだった。

 

「……他に写真は?」

 

「シルヴィア・リューネハイムのもの以外ありませんでした。」

 

「そう……お疲れ様でした。それでは、本日から2日後菅生家、菅生信彦を処分します。尚、菅生家の人間に関しては容赦はいりません。捕縛する必要はありません、抹殺して下さい。そちらの指示は、母に全権を委託しますので詳しい作戦は母の方からお願いします」

 

私がそう命じ、報告会議は終わった。

 

(………奴らの狙いはシルヴィか。あれ、渡しといて良かったな。)

 

私の杞憂で終わることを祈り、私達は作戦を練った。

 

 

 

 

 

 

 

 





菅生はあと2話か、次の話で存在消えると思います。




新作、新純星煌式武装、アンチのアンケートしているので参加お願いします




それではまた次回〜


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57話

今回も奇跡的に投稿出来ました!!

いやぁ、毎日投稿というのもなかなかに疲れるものですね……。本当に他の作者さんを尊敬します


それではどうぞ、!


会議のあった翌日、ペトラさんから来たのは私にとって最悪の連絡となった。

 

『シルヴィが攫われた』

 

その一言だった。

ペトラさんによると、シルヴィは確実に今日の朝までは寮の部屋にいたとの事。

シルヴィがいなくなったのは、つい30分前までは確実に寮の部屋に居たらしい。だが、シルヴィは理事長室に来る予定の時間になっても現れず中々来ないためペトラさんも心配になり、現在位置を見てみたら学園外になっていたとのこと。

 

(………ペトラさんにも渡しておいてよかった。)

 

私はすぐさま、母に連絡を入れ向こうの処分を今日に早める旨を伝えた。

 

『すみません、ご迷惑を』

 

『いえ、いいのよ。当主はあなたですもの。こちらは任せて、あなたはあなたのするべきことをしなさい』

 

『ありがとうございます。それでは』

 

『えぇ。しっかりやりなさい』

 

私は電話を切り

 

「……目標は全て殲滅する、容赦はいりません。総司は私と共に正面から潰しにいきます。琴音は、被害者の救助を最優先に。隠密に徹して。」

 

そう命じた。

 

「承知」

 

「了解」

 

私たちはすぐにシルヴィがいるであろう、奴らのアジトへと向かった。

 

 

〜~〜~〜~〜~〜~〜~〜~

 

シルヴィside

 

(……どこ、ここ)

 

学園内だから油断してた。

まさか、学園内で襲われるなんて思いもしなかったから。

私は身動きがとれないようにしっかり手足を固定されており、猿轡を噛まされているため声も出せない。

 

「お目覚めかな?歌姫様」

 

(あなたはっ!)

 

その男に私は見覚えがあった。

何故ならその男は、琴音を襲おうとした張本人だったから。星導館からいなくなったとは聞いていたがまだ六花に居たとは思わなかった。

 

「いいねぇ、その勝気な目。今すぐにでも穢してやりたいよ。まぁ、僕はメインディッシュはとっておくタイプなんだ。まだ君には手は出さない。精々怯えているがいい」

 

そう言って、男は部屋から出ていった。

 

(………助けて、琴音…)

 

私は来るはずのない親友にただ祈ることしか出来なかった。

 

sideout

 

〜~〜~〜~〜~〜~〜~〜

 

「………やっぱりか」

 

総ちゃんが案内した場所とシルヴィの反応があったのは同じ廃ビルだった。

 

「……それじゃあ、手筈通り宜しくね。」

 

「「はっ」」

 

私と総ちゃんは琴音と一旦別れ、正面の入口から入っていった。

 

「まさか、ここまでセキュリティが甘いとはね」

 

総ちゃんからアジトの情報を聞いたときに薄々わかってはいたけど、まさかアジトまでカメラは愚か巡回のひとりもいないとは。

 

「…さて、潰しますか。総ちゃん、よろしく」

 

「承知」

 

そう言って総ちゃんは扉を切り刻んだ。

 

ガシャン

 

「なんだ!?」

 

扉を破壊した先に居たのは計4人。

つまり、菅生以外の一人を除いた奴がそこにいた。

 

「どうも。そして、さようなら………咲き誇れ 千本桜」

 

私は死なないギリギリ、確実に動けなくなるように全員の両足のアキレス腱を切断した。

 

「「「「ぐぁっ!!」」」」

 

「…あとは、よろしく」

 

「えぇ。」

 

私は倒れている4人を総ちゃんに任せ、奥の部屋へと進んだ。

 

 

 

 

 

 

(………これは。)

 

私が進んだ部屋にあったのは、鎖と中央には大きなベット。

そして、壁には何十枚もの陵辱された女子生徒の写真。

 

「……やぁ久しぶりだね」

 

「……………。」

 

今回の対象はその中央のベットの奥に居座っていた。

 

「どうかしたのかね?そんな顔をして。あぁもしかして、この娘を探しているのかな?」

 

そう言って菅生は指を鳴らした。

 

ガチャ

 

「…残念。」

 

奥の扉から出てきたのは、菅生の仲間ではなくその菅生の仲間の死体を引き摺っている琴音の姿だった。

 

「なっ、誰だ貴様は!?」

 

「さぁ?私は、誰でしょう?」

 

そう笑顔で言う琴音だが、正直ただのホラーである。血塗れの少女が血だらけの死体を笑顔で引き摺っているのだから想像するのも容易いだろう。

 

「琴音、シルヴィは?」

 

「今はそちらの部屋で寝ていてもらっています。一応、顔を見られていいかどうかは当主の指示を仰ぐべきと。他の被害者については既に安全な場所に。」

 

普段はあんな感じで抜けているのに、こういう時は抜け目がないというかなんというか。

 

「…そう、ありがとう。」

 

「と、当主?なんのことを言ってるんだ、君は」

 

ターゲットは、琴音が現れたことで余計に混乱している。

 

「念のため聞く。あなたは菅生信彦で間違いありませんね?」

 

「はぁ?何を言ってるんだ君は。そんなこと当然だろう」

 

「…そうですか。」

 

本人確認も取れた。

もうこれ以上、この気分の悪くなる部屋にいる必要はない。

 

「………それでは」

 

ザシュッ

 

「ぐわぁぁぁ」

 

一撃で殺す。

そんな楽な死に方させるはずが無い。

 

「……一撃で死ねると思うな。貴様には苦しんでもらう」

 

「こ、この俺が誰だかわかっているのか!?菅生だぞ、菅生!!俺にもし何かあれば実家が……」

 

「五月蝿いですよっ!」

 

菅生が惨めな命乞いを始めたところで、琴音がその舌をギリギリ死なない程度で切り取った。

 

(……さっさと終わらせよう)

 

ザシュッ

 

ザシュッ

 

ザシュッ

 

四肢を切り、だるま状態にしたところで一旦攻撃をやめた。

 

「……あなたも、彼女に手を出さなければもっと楽に死ねただろうに。って、もう聞こえてないか」

 

菅生はもう意識がなく、口からは泡を吹いていた。

 

「それじゃあ、処分しますか。咲き誇れ 千本桜」

 

菅生の身体を千本桜で包み込む。

数秒後、千本桜が去り菅生がいた場所にはもう何もなかった。

 

「さてと、総ちゃんの方も終わったみたいだし、琴音は総ちゃんと一緒に他の被害者をお願い出来るかな?シルヴィは私が責任をもって送るから。」

 

「……わかりました。それではお気を付けて」

 

そう言って琴音は、総ちゃんの入る部屋の方へと向かった。

 

(………シルヴィは拒絶するのかな)

 

私は親友に拒絶される覚悟で、琴音が来た部屋へと入っていった。

 

 

 

 

「こ、琴音っ!?」

 

「……シルヴィ」

 

私が部屋に入った時には既にシルヴィは目を覚ましてしまっていた。

多分、琴音が気絶させるのを躊躇ったせいだろう。

 

「……大丈夫そうだね。それじゃあ、安全なところまで連れていくね」

 

今の私は血塗れとはいかないが、かなり血がついているためクインヴェールまでは送ることは出来ない。だが、シルヴィの実力があればある程度の所まで送れば無事に戻ることは容易いだろう。

 

「琴音、何でそんなに他所他所しいの!?」

 

私がすぐにシルヴィを送ろうと準備をしていたら、突然シルヴィに怒られた。

 

「…………私の格好見えてるでしょ?」

 

「見えてるよ!だから何?琴音は自分が汚れてまで私を助けてくれたんでしょう?さっきの子もそう!そんなに私が薄情な人に見えるの!?」

 

シルヴィは私に対して本気で怒ってた。

 

「……私は暗部の当主なの。今まで、何人、何百人とこの手にかけてきたの」

 

「うん、知ってる。この間の哀歌ちゃんを救う時からそんな感じはしてたんだよ?でも、それが何?暗部の当主だろうが琴音は琴音。私の親友だよ!」

 

シルヴィはクローディアたちとは違って表の世界しか知らないはずなのに、何故こんなに汚れた私を親友と呼べるのだろう

 

「………でも、シルヴィは私なんかとは…」

 

関わらない方がいい。そう言おうと思ってた。

 

パシン

 

「………えっ」

 

私の言葉を遮るようにシルヴィはその右手を振り抜いていた。

 

「もう!何でそう、卑屈になるのかな?今まで通り、琴音は私の親友なの!!暗部の当主だろうが、それは関係ない!!はい、以上!わかった!?」

 

「えっ、あ、うん」

 

シルヴィの勢いに押されるまま、私は頷いてしまった。

私の了承を聞いたシルヴィはそのまま私に抱き着いてきた。

 

「シ、シルヴィ!?汚れちゃうよ」

 

「…………ありがとう、琴音。助けてくれて…………本当に本当に怖かった。」

 

シルヴィは私に抱きついたまま、私の胸で泣き出してしまった。

 

「……良かった。シルヴィが本当に無事で」

 

私はシルヴィが泣き止むまで、頭を撫で続けた。

 

 

 

 

 

シルヴィが泣き止んだ後、私は血のついた羽織から星導館の制服に着替えてシルヴィをクインヴェールへと送り届けた。

その際、シルヴィに「私から逃げようとした罰として、今度お願い聞いてもらうからね!」と言われてしまったので後が怖い。

 

 

日本にある菅生家の方も、無事殲滅した。

人身売買に関わっていたのは、菅生家の全員。と言っても、菅生家の長男とその両親だけだが。

菅生家の使用人たちは、人身売買の事について知らなかったようで母がそれぞれ次の就職を探してあげたらしい。

菅生家に捕まっていた人たちも、目立った外傷はなく東雲家で責任をもってそれぞれの家へと送り届け、皆無事にそれぞれの生活に戻れたとのこと。

 

 

 

 

 

 

翌日から、菅生という名の家が一つ消えたがなんの事件としても扱われなかったのは言うまでもない。

 

 

 




漸く消しされました。
いやぁ、清々しいです

新作、新純星煌式武装、アンチのアンケートまだまだ開催しているので参加お願いします!!


それでは


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58話


先日はお休みして申し訳ありませんでした。

ただ毎日投稿と受験勉強に疲れてしまい、1日お休みを頂きました。


Fgoの水着ガチャ、ジャンヌ20連で出ませんでした……。
やっぱりあのガチャは闇ですね…


それでは、本編どうぞ


 

暗部の方もひと段落し、私にとって地獄でしかない六花の学園祭の期間となってしまった。

この六花の学園祭は3日間あって元々は星導館しかやっていなかったのだが何時しか全学園共通でやる恒例行事になっていたらしい。

そんなことはさておき、何故私がこんなにも嫌がるかと言うと例年ならばクラスでの出し物を手伝うだけで去年もそれで済んでたのだけど……。

今年は…、クローディアのせいで私の3日目の学園祭は残念なことになることとなった。

 

(………なんであんな目立つことを)

 

クローディアのお願いだけならば断ることも出来た。

だが、今回はクローディアに加えてシルヴィに頼まれてしまったのである。いつもならば、何かと理由を付けて断ることも出来たのだけど…。今回ばかりは断ることが出来ない理由があった。

その結果、『六花のW歌姫 幻のライブ』なんてものが学園祭の最終日に催されることになった。

 

(……それにW歌姫って何……。歌姫はシルヴィだけでしょ…)

 

まず学園祭如きでシルヴィのライブをやるということ自体世界中の大騒ぎなのだ。

それなのに、私のようなど素人が一緒にライブをやるなんて……。私は生きて帰れるのだろうか。

 

「どうしたんですか?琴音。そんなに辛気臭い顔をして。明日から学園祭だと言うのに」

 

「…総ちゃんは楽しみでいいね。」

 

今回の学園祭誰よりも楽しみにしているであろう、総ちゃん。理由は言うまでもなく、甘い物探索が出来るから。

 

「ええ!なんと言っても、最終日に琴音のライブが見れるんですから!」

 

「………えっ」

 

食べ物にしか興味がないと思っていた総ちゃんの口から信じられない言葉が聞こえた。

 

「楽しみですねぇ、琴音の歌声」

 

多分、総ちゃんの口から剣術のことと食べ物のこと以外で楽しみという言葉を聞いたのは初めてじゃないだろうか。

 

(……まさか、総ちゃんにそんなことを言われるとは。やっぱり少しは練習した方が……)

 

今回のライブはシルヴィと一緒にやるということで、監督はペトラさんがやってくれている。

そのペトラさんに、練習した方がいいのではと聞いたところ「あなたなら大丈夫よ。前日に少し確認だけすれば」と返されてしまったためそれに納得せざる負えずただその日を待つだけとなっていたのだが…。

よくよく考えてみれば、六花の学園祭でやると言うことは……つまり、知っている人に聞かれるということ。

ここで失敗でもした日には、卒業するまで笑いものになるに違いない。

しかも、この学園祭の間は星武祭同様沢山の人がここ六花に来る。シルヴィのライブとなれば、尚更だ。

つまり、失敗すれば六花だけでなく世界中に私の失態が広まる。そんなことが起きたら、私はこれからの余生生きていける気がしない。

 

(………今のうちに、透に当主の座譲っておこうかな…)

 

そんな私の見当違いの考えに誰も突っ込みを入れるわけでもなく、みんなはせっせと学園祭の準備に勤しんでいる。

 

「いやぁ、すげぇ事になってるな。まさか、学園祭で世界の歌姫さんのライブが見れるとはね。それも【桜姫】さんと一緒とは」

 

「……夜吹くん、死にたいの?」

 

夜吹くんはいつものように軽口で話しかけてくるが、今の私にその手の話をしてくるとはどうやら死にたいらしい。

 

チャキッ

 

「いや、待て待て。クローディアも言ってたぜ?「琴音とシルヴィのライブも無料で見れますし、何より今回の収益は半々ということになっていますからね……。」ってな。実際、みんなチケット取ろうと必死になってるって話だ。なんでも、各学園毎に振り分けられてるらしいんだが何処も倍率が半端ないらしいぜ」

 

「………そうでしょう。シルヴィのライブなんだから」

 

「いや、そうでもないらしいぜ。歌姫さんと東雲の事前のグッズ販売、どっちもかなり好評らしいぜ。」

 

……まさか。

ペトラさんにライブをやるにあたって、グッズの販売の許可が欲しいと言われ、どうせ売れないだろうと踏んで渋々許可を出したのだけど。

 

「……それ、ほんと?」

 

「あぁ。ほら、クローディアの持ってるあれ見てみろよ」

 

クローディアの腰から下がっているタオル。

とても可愛らしい桜色のタオルなのだが、よくよく見てみると私がペトラさんに頼まれて適当に考えたサインに加えて、桜姫との刺繍が。

 

(……クローディア。)

 

親友の思いがけない裏切りにもう手遅れなことを知り、再び落ち込むはめに。

 

「なっ?かく言う俺も、幾つか持ってるんだけどな」

 

そう言って、夜吹くんはポケットから幾つかの私関連のグッズを取り出す。

 

スパッ

 

夜吹くんの取り出したグッズのうちの一つを気付かれないように抜刀して切り刻んだ。

 

「あっ……。何すんだよ!東雲。」

 

「私の前で出したあなたが悪い。残りも切り刻んでくれる」

 

そう言って私は夜吹くんの持つものを狙う。

 

「やめろよ、東雲」

 

「問答無用っ!」

 

私は逃げ回る夜吹くんを追いかけ続けた。

 

 

 

 

 

 

 

その姿を見てか、星導館の全生徒の間で『グッズは本人の前で見せることなかれ』という暗黙のルールが出来たことは言うまでもない。

 

 





いやぁ、やっぱり話を考えるのも難しいですね…。

新純星煌式武装、新作、アンチのアンケートとっていますのでご参加お願いします。

それではまた次回〜


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59話


頑張りました!
Fgoのイベントやっていたら、完全に書くのを忘れていたので急いで書き上げたので誤字があるかもしれないです


それにしても、今回のFgoイベントクリアまで長い気がするのは僕だけでしょうかね…


それでは本編どうぞ!



 

結局、一度の練習もすること無く学園祭当日となってしまった。

とは言うものの、ライブは最終日の3日目にあるため初日、2日目に練習しようと思えば出来るのだがここまで来ると開き直って練習しない方向性で行こうと思ってしまうのが人間というものである。

 

「琴音〜、置いていきますよ」

 

てなわけで、私は初日と2日目を他学園の見学に使うことにした。

クラスの方はみんなが気を使ってくれたのか手伝わなくていいとの事らしいので有難く遠慮させてもらった。

 

「そんなに急がなくても大丈夫だよ。」

 

「甘いですよ!人気なもの、特に食べ物というのはあっという間に完売してしまうものなのです。」

 

といつになく急いでいる総ちゃんだが、現在時刻は午前8時30分。残念なことに、まだどこの学園も開店準備中である。

 

(………それにしても、総ちゃんはクラスのほう手伝わなくていいのかな?)

 

親友がサボっているのではないかという疑問も、彼女の普段を考えたらむしろ手伝わないのが当たり前なのではと思ってしまう私だった。

 

 

 

 

 

「おい、あれって星導館の」

 

「桜姫様じゃない?」

 

「2人とも、桜みたい…」

 

総ちゃんが最初に訪れたのは、聖ガラードワース学園。

そんな超人気学園に一番最初に訪れた結果、星導館の制服ということもあって見学に来ている人達からの視線を集めることとなった。

 

「いやぁ、楽しみですねぇ。琴音!」

 

「う、うん。そうだね」

 

周りの視線なんてないかのように、ただただウキウキしている総ちゃん。

名前を呼ばれたしまったせいで、もはや完全に正体がバレてしまった。

 

(……はぁ。まぁ、周りが空いたからいいんだけど)

 

元々、私と総ちゃんの周りだけ何故か人があまりおらず他と比べたら空いているという謎の空間だったのだけど総ちゃんが私の名前を呼んだことで尚更ガラガラになった。

 

「あっ、琴音行きますよ!」

 

そう言って、門が開くなりセールス時の主婦の如く先頭を突っ走る総ちゃん。

 

(………行っちゃった。)

 

完全に総ちゃんに置いて行かれる形となり、私はゆっくりと歩いて総ちゃんが行くであろう出店へと向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………で、アーネスト。なんで私は生徒会室にいるのかな?」

 

先頭を突っ走って行った総ちゃんを探しながら、ゆっくり教室巡りをしていたら何処からとも無く現れたパーシヴァルさんに言われるがまま着いてきた結果ここ生徒会室に辿り着いたという訳。

 

「いや、琴音とこうして話せる機会も中々ないからね。」

 

「すみません、琴音さん。私も久しぶりに会いたかったもので。それと、紅茶をどうぞ」

 

そもそも何故、アーネストたちが私がこの学園の学園祭に来ていることを知っているかだけど。それは、言うまでもなく門番をやっていた生徒からの情報らしい。

元々、アーネストから私が来たら報告するように言われていたらしいからその門番を責めることは出来ない。

 

「……それで、何か用でもあるの?私、総ちゃんを探さないといけないんだけど… 」

 

忘れてはいけない親友の行方。

総ちゃんの事だから、多分私のことを待っているなんて心配はしていない。

食べ物のこととなると、私の存在なんてすぐに忘れるから。

 

「あぁ、それなら心配には至らないよ。既に、レティシアが発見しているからね」

 

まさか、総ちゃんのことまで手を回しているとは。

そんなことを任せてしまったレティシアさんには本当に申し訳ない。

 

「まぁ、話という話もないんだけどね。………君を襲った菅生という男を覚えているだろう?その彼の実家の菅生家が何者かによって一家全員殺されたらしい」

 

アーネストは先ほどまでとは打って変わって真剣な顔つきでその事を話した。

 

(そっか。アーネスト、まだ心配してくれてたんだ……)

 

私の正体をまだ知らないアーネストからしたら、このことは私に伝えるべき案件かどうか悩んだのだろう。

そんなアーネストに私は自分のことで嘘をついたままでいるのがとても苦しかった。

 

「…そっか。ありがと、教えてくれて」

 

「いや、琴音にとっては忘れたい相手だろう。少し配慮が足りなかったよ」

 

アーネストは私の反応を見て少し悔やんだようだった。

 

(……態度不味かったかな。)

 

少しの沈黙が流れた。

 

「あ、琴音さん髪型と色変えたんですね。」

 

「あっ、はい。変ですか?」

 

「い、いえ。とてもよく似合ってます」

 

気まずくなった空気をパーシヴァルさんが、なんとか変えてくれた。

 

「その姿じゃ、益々桜姫って感じがするね」

 

その流れに便乗して、アーネストはそんなことを口走るが…。

 

「……桜姫ね……。まだその方が良かったかもしれない…」

 

「…ん?何かあったのかい?」

 

「私の二つ名って、桜姫でしょ?それなのにさ、最近じゃ私の戦ってる姿見て【桜帝】とかいう人いるの。まだ女子だから姫って言うのは渋々納得してたけど、帝ってさ最早女の子感0でしょ?」

 

この間たまたま透に聞いて知ったことなのだが、私の非公認のファンクラブでは【桜姫】以外に【桜帝】【姫】【桜皇】【紅姫】などなど。多種多様な二つ名が付けられているらしい。

ここまで来ると、最早ただ馬鹿にされているようにしか感じない。

 

「桜帝ね。確かに、戦っている時の琴音にはピッタリかもしれないね。戦闘時の琴音の佇まいは、確かに王者を通り越して君臨と言った方が正しいからね」

 

「……むぅ。アーネストまでそんなこと言う。」

 

「すまない、ただそれも一つの事実だよ。実際、普段と刀を抜いてる時とでは全くの別人と言えるからね」

 

半笑い状態のまま話されても、あまり説得力がないというものである。

 

「確かにそうですね。普段の琴音さんは、本当にお姫様って感じですし」

 

「うっ……。パーシヴァルさんまで……」

 

「あっ、別にそんなつもりじゃ」

 

パーシヴァルさんだけはそんな風に言わないと思っていたのだが、まさかこんな所に刺客がいたとは……。

 

私とアーネスト、それにパーシヴァルさんの談笑はレティシアさんからの連絡が入るまでずっと続くこととなった。

 

 

 

 

 

「おや、君の相方が漸く君がいないことに気が付いたらしいよ」

 

かれこれ、私がここに来て1時間。

総ちゃんはその間ずっと、飲食をしていたということだろうか。

 

「そっか。それじゃあ、私は迎えに行ってくるよ」

 

「あぁ。すまなかったね、ここに引き止めてしまって。」

 

「パーシヴァルさんの紅茶飲めたから許してあげるよ」

 

「ありがとうございます。またお会い出来ることを楽しみにしております。」

 

「今度は、私が緑茶ご馳走しますよ」

 

そう言って、私は生徒会室から出ようとした。

 

「あっ、琴音。ライブ楽しみにしているよ」

 

まさかのアーネストからの一言で、私は何も無いところで躓く羽目になった。

 

 

 

 

 

 

 

総ちゃんを探して、歩くこと数分。総ちゃんはアーネストから聞いた教室に未だに留まって何かを食べていた。

 

「あっ、レティシアさん。本当にごめんなさい」

 

「いいのよ。こちらこそ、アーネストがごめんなさいね」

 

レティシアさんはクローディアと外見こそ、若干似ているものの中身は大違い。

クローディアから、腹黒さというものを全てなくし淑女のレベルを最大限までカンストしたのがレティシアさんである。

 

「それでは、私は失礼するわね。楽しんでいってね。あと、ライブ楽しみにしているわ」

 

そう言うとレティシアさんは人混みの中へと消えていった。

 

(……まじですか)

 

まさかのレティシアさんからの一言で、私のテンションは地の果てまで落ちることとなった。

 

「…………ゴクン、琴音遅かったですね」

 

漸く食べるのがひと段落ついたのか、総ちゃんは私に気がついた。

 

「ちょっと野暮用でね。それで、次はどこ行くの?」

 

「次はですねぇ、腹ごしらえも出来たので界龍に行きましょう!」

 

総ちゃんはそう言うと勢い良く立ち、会計を済ませてさっさと歩いて行く。

 

(……私そう言えば、何も食べてない)

 

元気良く歩いていく総ちゃんの後ろを、アーネストを恨みながら私が歩いたのは言うまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 





新作、新純星煌式武装のアンケートとってますので参加お願いします!!

アンチに関するアンケートとってましたが、皆さんの意見考えて今まで通りの感じで行こうかなと思います。
完全なアンチになるか分かりませんが、これまで通りモブAとして彼も頑張るのでよろしくお願いします


それではまた次回!


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60話


なんとか今日中に投稿出来ました!

いやぁ、fgoにモンハンと中々に忙しいです!
受験勉強もしなきゃいけないし……、今年の夏はかなり忙しいです


それでは本編どうぞ


 

総ちゃんは我が道を行くが如く、人並みを掻き分けガラードワースから界龍まで最短で辿り着いた。

 

(それにしても、かなり雰囲気変わったなぁ)

 

私が体験入学する以前までは、水派と木派の二つの派閥でいつも睨みを効かせて決して交わろうとしていなかったが今ではその面影すら見えない。

 

「あっ、お姉さま」

 

「沈華。お疲れ様」

 

界龍の出し物は、学園の特色を全面に出した武術の講習会のようなもので水派と木派が協力して行っていた。

ちなみに、総ちゃんはさっそく乱入してます。

 

「それにしても、変わったね。あの頃が嘘みたい」

 

「これもお姉さまのお陰ですよ。最近は、兄やみんなと一緒に虎峰を女装させたりしてますからね」

 

虎峰くん憐れ…。

まさか、仲良くなったことでそんなことになっているとは。

 

「そっか。楽しそうで何よりだよ」

 

「はい。それでは、私はこの辺りで。お姉さま、ライブ楽しみにしてます」

 

沈華はそう言って自分の持ち場の方へと戻っていった。

 

(………まさか沈華まで…)

 

界龍に来てまで言われるとは思わず、私は思わず落ち込むこととなった。

 

 

 

 

「いやぁ、武術というのは奥が深いですねぇ。私には合いそうにありませんけど」

 

私が沈華と話している間に粗方武術のことが理解出来たらしい総ちゃんは、自分には合わないと戻ってきてしまった。

 

「まぁね。私も教えてもらったけど戦闘中使う余裕ないかな。それなら、剣で切った方が早いしね」

 

「それよりも、この学園ですよね?琴音に並んで六花最強と言われている3代目【万有天羅】がいるのって」

 

私の話など無かったかのように、次の話へと変えていく総ちゃんに若干ショックを感じた。

 

(………私よりも星露の方が強い気がするけど……。)

 

星露みたいな化け物なんかと並べられるほど、私は人間を辞めたつもりはない………多分。

精々勝てても、スピードぐらい。

スピードなら、総ちゃんでもいい勝負出来るだろうし【煉獄】を使った総ちゃんならば普通に勝てないこともないと思う。

 

「多分、星露なら生徒会室だろうから会いに行ってみる?」

 

「えぇ!見てみたいですからね!」

 

私は総ちゃんを連れて、星露がいるであろう生徒会室へと向かった。

 

 

 

コン、コンッ

 

「誰じゃ」

 

「琴音だけど、入っても大丈夫?」

 

「琴音じゃと!?入れ入れ!」

 

生徒会室へと入ると、とても退屈そうにゴロゴロ転がっている星露の姿があった。

 

「久しぶりだね、星露」

 

「久しぶりじゃのぉ。ところで、そっちのは?」

 

「こっちは、私の親友の沖田総司。星導館の序列2位だよ」

 

私が総ちゃんを紹介すると、総ちゃんは星露のことを驚いたような顔で見つめていた。

 

「おぉ、そうか。お主がかの【瞬神】か。我が学園に欲しいのぉ。一時的な能力ならば、妾や琴音と遜色なさそうじゃな。星導館が羨ましいのぉ」

 

星露は総ちゃんを見るなり、一目で【煉獄】についても見抜いていた。

星露の言う通り、確かに今の星導館は他学園の序列1位と遜色ないレベルの人が少なくとも5人。その他の冒頭の十二人も他学園と比べたらかなりレベルの高いものとなってる。

 

「こ、琴音………この子、喋り方おかしくないですか?」

 

「そこっ!? 」

 

「はっはっ、面白いこと言う奴じゃのぉ。」

 

てっきり総ちゃんは、万有天羅と呼ばれている星露がこんな年齢であることに驚いているものだと思っていた。

だが、総ちゃん曰く総ちゃんが驚いたのは星露の見た目に反した話し方だったらしい。

 

「それにしても、流石ですね。隙が一つもないですね」

 

「お主こそ、妾を殺すつもりか?」

 

先ほどからずっと、星露に対して殺気を放ち続けている総ちゃんだがその星露は一切の隙を見せることもない。

結果、こんなことになってしまった。

 

「2人とも、そこまで。折角の学園祭が台無しになっちゃうでしょ」

 

この2人に戦わせた日には、そこが爆心地になりかねない。

この間、【煉獄】を使った総ちゃんと私の卍解で力を制限して軽く模擬戦をしてみたら訓練室二つ分が蒸発した。

 

「そうじゃな。いずれお主らとは戦う機会も来るじゃろうしな」

 

「そうですねぇ。」

 

「さ、総ちゃん行こっか。星露も生徒会長だし、忙しいだろうからさ。じゃあね、星露」

 

「あっ、琴音……」

 

私は総ちゃんの手をとると、急いで生徒会室を出た。

理由は言うまでもなくこの2人を一緒の空間に置いておくと危険な気がしたから。

正直言って、私でも2人を止めるのは手こずる。

 

「いやぁ、やはり凄いですねぇ。」

 

「凄いですねぇじゃないの。星露、戦闘狂なんだからあんまり刺激して本当に戦うことになったら界龍がなくなっちゃうから」

 

私の心配など他所に総ちゃんはどんどん歩を進めている。

 

(……本当に、仕事のときとは大違いなんだから)

 

「あっ、琴音面白そうな事やってますよ!」

 

いつの間にか、私のかなり前を歩いていた総ちゃんが発見したのは『目指せ10人切り!! 10人切り達成者には豪華特典』という看板だった。

 

(……10人切りぐらいなら、誰でも出来そうなものだけど…)

 

特に他学園の序列1位とか。

 

「あっ、でも琴音は参加出来ないみたいですね」

 

総ちゃんは、その看板に書いてある小さな文字を見逃さなかった。

看板の右下には小さな文字で

 

『なお、各学園の序列1位、特に星導館学園 序列1位 東雲琴音様はご遠慮させていただきます。申し訳ありません』

 

と書かれていた。

 

「………私は化け物か何かかな?」

 

各学園の序列1位と言われている時点で私も含まれているのに、わざわざこんなことを書くなんて。

 

「えっへん。この沖田さんが、ちゃちゃっと10人切りして来ますよ!」

 

総ちゃんはそう言うと、私を置いて受付の方へと歩いていった。

 

(いいなぁ、総ちゃん。………………あれ?帰ってきた)

 

さっきまでルンルン気分だった総ちゃんが、受付で少し話をした後意気消沈と言った感じでこちらに戻ってきた。

 

「どうしたの?総ちゃん」

 

「…………私はブラックリストに載っているらしいです。」

 

総ちゃんが言うには、看板に書いてある以外にもブラックリストというものがあって各学園何人かは参加不可ということらしい。

 

(それもそっか。総ちゃんたちにやられたら、危ないもんね)

 

少し考えれば分かることだ。

序列1位以外にも各学園には化け物みたいなのがいる訳で、そんな人にやられたらこの企画がなりたたない。

 

「総ちゃん、次行こ」

 

「えぇ、どこでもいいから暴れたいです」

 

この後、総ちゃんが乱入出来るだけ乱入して暴れ回ったのは言うまでもないだろう。

 

 

 

 

こうして、私の学園祭初日は何もせずに終わった。

アーネストの妨害に始まり、総ちゃんの後始末といつもの方がまだ平穏に過ごせていたような気がする。

 

私の地獄のライブまであと2日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





新作、新純星煌式武装のアンケートとってますのでお願いします!!

あと、感想宜しければお願いします

それではまた次回


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61話


毎日投稿出来てますね…。

後書きにて、少しお知らせあるので宜しければ最後までご覧ください


それではどうぞ


 

「姉ちゃんと一緒に出掛けるなんて久しぶりだね」

 

学園祭の2日目。

初日と同じく総ちゃんと回る予定だったんだけど、総ちゃんは急遽?クラスのほうに引っ張られていってしまった為今日は仕事がないという透と一緒に回ることにした。

 

「どこか行きたい所はある?」

 

「うーん…………そうだ!クインヴェール行ってみたい。あそこ、普段じゃ絶対入れないし」

 

確かに男子禁制?のクインヴェールに入る機会なんて学園祭ぐらいしかないだろうけど。

 

「……じゃあ、行こっか」

 

「やった!あの人に会えるかな?姉ちゃんと一緒にライブする人」

 

「シルヴィ?どうかな、生徒会長だし忙しいんじゃないかな?」

 

今のところ行った学園の生徒会長さんはかなり暇そうにしてたけど、実際クローディアは忙しいみたいだしあの2人が例外なだけな気がする。

 

「そっか。とにかく早く行こうよ」

 

「そんなに急ぐと危ないよ」

 

私は一応シルヴィにクインヴェールに行くことを伝え、小走りでクインヴェールへ向かう透を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「わぁ、なんか凄いね」

 

透はクインヴェールの正門に着くなり、そんなことを口走る。

確かにクインヴェールは、ここ六花にある学園の中でも異彩を放つ学園でもある。多分、入学試験の内容に容姿が含まれるのなんて私の知る限りここぐらいだろう。

 

(………確かにみんな可愛いもんね)

 

以前、体験入学としてここに来た時も全員の顔立ちの良さには驚かされた記憶がある。

 

「ほら、姉ちゃん置いていくよ?」

 

透はいつの間にか、受付を通り抜け学園内に入っていた。

 

「……いつの間に…。ちょっと待ってて」

 

私は列に並び、受付を済ませて透の元へ向かった。

 

「あっ………」

 

透の元へ向かうと透は5人のクインヴェールの生徒に囲まれていた。

 

「あ、姉ちゃん〜。こっちこっち」

 

そんな5人を気にすることもなく、私を見つけて透は手を振ってきた。

 

「お姉さん?って、あんたは!」

 

と透が私を呼んだことで、周りにいた5人全員が私の方を向いて目を見開いていた。

 

「どうも、その子の姉の東雲琴音です……」

 

「「「「「知ってるよ!」」」」」

 

息ぴったりで否定されてしまった。

 

「そ、そっか。」

 

「それよりも、ライブするんでしょ?楽しみにしているから、精々頑張るのね」

 

そう言うと、5人組の方々(ルサールカ)は私が来た方とは反対側に歩いていった。

 

「何だったんだろ、あの人たち」

 

「さ、さぁ?」

 

六花に来て以来、初めてとも思えるほど対抗心を燃やされていたような気がしたのは言うまでもないだろう。

 

「透こそ、何してたの?」

 

「うーんとね、姉ちゃん待ってたらあの人たちに話しかけられて案内してくれるって言ってたんだけど何か行っちゃった。」

 

透相手にナンパとは…。

年下が好きなのだろうか。

 

「それよりも、姉ちゃんあの人ずっとこっち見てるよ?」

 

そう言って透が指差した先に居たのは、ここクインヴェールの理事長でもあるペトラさん。

 

「あっ、ペトラさん」

 

「お久しぶりね、琴音ちゃん。」

 

会ったのは暗部の時以来だが、あの時とは比べ物にならないくらい顔色が良かった。

 

「あら、そちらの方は?もしかして……」

 

「想像されてるようなものじゃないですよ。弟の透です」

 

「どうも。東雲透です」

 

「あら、お姉ちゃんに似てとても可愛らしい顔立ちね」

 

ペトラさんは透が私の弟と分かるなり、とても嬉しそうな顔に変わった。

 

「そうそう、シルヴィが貴女が居たら呼んできて欲しいって。本当はあの子が迎えに来たかったらしいんだけど、あの子が出てきちゃうとね。」

 

ペトラさんの言う通り、シルヴィがこんな所に出てきてしまったら大変なことになるだろう。

 

「わざわざありがとうございます。生徒会長室でいいんですか?」

 

「えぇ、場所はわかるかしら?」

 

「以前来た時に行ってますから、大丈夫です。」

 

「そう。それなら大丈夫ね。ライブ楽しみにしているわ」

 

ペトラさんも最後にそれを言って、また理事長室の方へと戻っていった。

 

(………もう慣れた……、多分)

 

「姉ちゃん、早く行こうよ。何かこの辺人多いしさ」

 

透は落ち込みかけている私の手を取って歩き出した。

確かに透の言う通り、ここだけ人口密度がおかしい。

 

(………誰か居たのかな?)

 

それが自分の事だと私が気付くにはまだ時間がかかりそうである。

 

 

 

 

 

コンコンッ

 

「はーい」

 

「東雲琴音です。入っても…………」

 

バタン

 

「琴音〜!!」

 

ドアが開くなり、私にタックルをかましてくるシルヴィ。

もし透がドアの前に立っていたらどうしたのだろうか。

 

「……ケホッ、シルヴィ……ちょっと重いかも…」

 

シルヴィは今、私のお腹の上に馬乗り状態である。

流石にお腹に力を入れていない状態で人が1人乗っかっているのは厳しいものがある。

 

「……あっ、ごめん」

 

シルヴィは現状に気がついたらしく、すぐにどいてくれた。

 

「姉ちゃん、大丈夫?」

 

丁度私の真横に立っていた透は無傷で、倒れている私に手を差し出してくれた。

 

「………姉ちゃん?……ってことは、君が琴音の弟くん!?」

 

再びテンションが天元突破したシルヴィ。

流石の透も若干引き気味である。

 

「あ、はい。弟の東雲透です……」

 

「そっかぁ、君が弟くんだったのかぁ。私は琴音の親友のシルヴィア・リューネハイム。よろしくね」

 

「は、はぁ。よろしくお願いします。」

 

「さ、さっ。入って」

 

シルヴィは倒れている私の手を引っ張って起こすと、部屋の中に入るように促した。

 

「失礼します。」

 

私と透はシルヴィに促されるまま、来賓用?のソファに座った。

 

「ありがとね、わざわざうちの学園まで来てくれて」

 

「ううん、一応知り合いがいる学園は全部回ろうと思ってたし。それに一度普通に来てみたかったから」

 

今まで2度、クインヴェールに訪れたことがあるがその2度ともある意味普通じゃなかったため、今回学園祭とはいえ普通に来れたことは少し嬉しかった。

 

「そっか。琴音なら何時でも大歓迎だけどね!それよりも、ここに来るまでに誰かにいちゃもん付けられなかった?」

 

何故シルヴィがその事を知っているのだろうかとは思ったけど、心当たりはあったのでそのまま伝えることにした。

 

「いちゃもんって言うか、対抗心剥き出しで何か言われたけど………」

 

「……やっぱり。ごめんね、あの子達一応私の後輩なんだけど…、負けず嫌いって言うか『何でライブが自分たちじゃないのか』ってペトラさんにも言ってたからさ」

 

うん、当然の反応だと思う。

あちらはプロで、私はド素人。誰がどう見ても、ライブをやるのはあちらだろう。

 

「また自分は素人だしとか考えてるでしょ?」

 

……なんで分かるの?

声や顔に出してたならまだしも、今のは流石に顔に出てなかったと思う。

 

「琴音の考えてることなんて、みんなお見通しだよ」

 

「……それはそれで怖いよ」

 

その理論だと私の人権がなくなりかねない。

 

「……ゴクン。姉ちゃん、このお菓子美味しいよ」

 

先ほどから透が異様に静かだと思ったらそういう事か。

透はシルヴィが用意してくれていたクッキーやらのお菓子を6割ほど食べ終えていた。

 

「ありがとね、それ私が焼いたんだけど美味しく出来てるか心配で。」

 

シルヴィの料理の腕の高さはバレンタインのときやパーティーの時で既にわかっているため今更驚かない。

 

「透、そろそろ行こっか」

 

「うん、時間もないしね」

 

透が粗方のお菓子を食べ終えたところで、時間も丁度いい感じになってきたので退散することにした。

 

「もうちょっと居てくれてもいいのに。」

 

私たちが帰るとわかるなり、シルヴィは不貞腐れたように頬を膨らませた。

 

「またね、シルヴィ」

 

「失礼しました」

 

「うぅ。またね、琴音。明日のライブ、成功させようね!透くんも、ばいばい」

 

シルヴィはそう言うと、生徒会室の扉を閉めた。

 

「ちなみに、俺も姉ちゃんのライブのチケットもう持ってるからね?楽しみにしてるから」

 

透はそう言うと先に歩き出した。

まさかの弟からの一言だったが、もう落ち込む私ではない。

 

(……透のためにも、頑張ろう!)

 

私はライブ前日にして漸く決心がついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時にして、弟の力というのは偉大なものなのである。

 

 

 

 

 

 

 






読んでくれて、ありがとうございました!



お知らせというかわかりませんが、この作品についてです。
以前より、参考にさせて貰っている他作者様の作品と似ていると言われてましたが確かに僕も展開など似ていると思います 。それに加えて、この作品にはオリジナリティがなく、かと言ってオリジナル展開は面白くないとのことらしく、それならこの作品を書く意味あるのかなと思いました。
なので、少し考える時間を作ろうと思いますので明日の投稿はお休みさせて頂きます。
続けるにしても消すにしても、活動報告にて報告するので宜しければご覧下さい。


作者の勝手な都合で申し訳ないです


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62話


前回、色々うだうだ言いましたが結局続けることにしました。
元々この作品の前身を消しているということもありましたし、僕自身この作品が一番好きなこともあって続けることにしました。
ただこれからは、他作と別展開に持っていけるよう頑張りたいと思います。
ただ原作があるので、若干似てしまう部分があるかと思いますがそこはお許しください。

それでは本編どうぞ!


 

クインヴェールから出たのは良かったのだが、次に行く学園を考えておらず私と透は絶賛立ち往生状態である。

 

「……うーん。どこに行こう………。レヴォルフは近寄り難いし………、かと言ってアルルンカントはなぁ………。どこか行きたい所ある?姉ちゃん」

 

「うーん、私もないかなぁ。オーフェリアに「あなたはレヴォルフには来ない方がいいわ。大変なことになるから」って言われちゃったし。アルルンカントは、透は行かない方がいいだろうしね」

 

鳳凰星武祭でアルルンカントのパペットを真っ二つにした時のアレがあるから行かない方がいいだろう。

 

「……あっ、そうだ。あるじゃん、一つだけ」

 

「……どこかあったっけ?もう全部回ったような」

 

既に行ったクインヴェール、ガラードワース、界龍にレヴォルフとアルルンカントを加えればもう回っていない学園はないと思うのだけど。

 

「……姉ちゃん、星導館回ってないでしょ?」

 

「………あっ」

 

自分の学園ということで、何故か行ったような気になっていた。

そーいえば、準備すら手伝わなくていいと言われてたから今回の学園祭がどんなものかすらよく知らない。

 

「それじゃあ、星導館戻ろうよ」

 

「そうだね。行こっか」

 

私と透は星導館へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(………1番学園祭っぽいなぁ)

 

星導館に辿り着いた私が一番最初に思ったことは、学園祭ってこんなものだったなぁということ。

今まで他学園を回ってきたが、その学園の特色というものが前面に出ていたせいか一般的な学園祭というイメージからは少しかけ離れていた。

 

「………なんか普通だね」

 

「まぁ確かにそうだね。星導館って、他の学園と比べて特色っていう特色もないからね」

 

透の言う通り。

星導館の特色と言われて、真っ先に思い浮かぶことと言えばなんだろうか。多分聞く人によってバラバラであると思える。

それに比べ六花の他の学園は、かなりの特色を持っている。

ガラードワースなら、規律正しい厳格な学園。

レヴォルフなら、ガラードワースとは正反対な危ない感じの学園。

アルルンカントなら、圧倒的な技術力。

界龍なら、武術や星仙術。

クインヴェールは言うまでもなく、華やかなイメージと唯一の女子校であるということは他学園とは一線を画していると言える。

 

「……まぁ確かにそーだね。けど、ある意味ここ六花で1番普通の学園ってことだからね。それはそれで特色じゃないかな?」

 

「まぁ確かにそうかも。そんなことよりも、姉ちゃん早く回ろうよ。時間勿体ないよ」

 

「う、うん。」

 

私は透に手を引かれるまま、学園内に入っていった。

 

 

「お帰りなさいませ、ご主人様♪」

 

一番最初に入ったのは私のクラスのメイド喫茶。

ライブが無ければ、私もこれをやらされていたと思うとぞっとする。

 

(……あれ、総ちゃんは……?)

 

今日のこの時間は総ちゃんのシフトが入っていた気がしたのだけど……。

 

「ご注文はいかがなさいますか?」

 

「あ、えっとお団子セットお願いします。」

 

「俺は……紅茶で」

 

「了解致しました♪」

 

係の子は注文を受けると裏手の方へと戻っていった。

 

「それにしても残念だったなぁ。姉ちゃんのメイド姿が見れないとは……」

 

あからさまに落ち込んだようにそう言う透だが、私からしたらやらなくて済むならやらない方が絶対に良いと言いきれる。

ただ、弟に頼まれると断るに断れないのが姉というものである。

 

「うーん、私もやりたかったんだけどね。クラスの子達に、やらなくていいって言われちゃったからね…」

 

と少し残念そうに言ったのが失敗だった。

忘れてはいけないのは、ここが私のクラスであること。

総ちゃんがこの時間のシフトに入っていること。

そして…………クローディアがこの教室に居る可能性を考慮しなかったこと。

 

「琴音、今の言葉本当ですか?」

 

どこから現れたのか、メイド姿の総ちゃんが私の背後に立っていた。

 

「………(…不味い)そ、総ちゃん似合ってるね。」

 

「……ちょっと待っててください!」

 

そう言うと、総ちゃんは急いで裏へと回った。

 

(………嫌な予感が……)

 

私は早く団子が来ることを今か今かと待ちながら、周りに気を配っていると私のすぐ隣にクローディアがやってきた。

 

「……なんでクローディアが…、生徒会長がなんでクラスの方にいるの?」

 

「いえ、たまたま来てみただけですよ。それよりも、総司さんから聞きましたよ……さぁ、こちらへ」

 

そう言ってクローディアは私を裏の方へと連れていった。

 

「ほら、琴音こっちですよぉ」

 

裏に連れてこられると、そこには笑顔でメイド服を持っている総ちゃんがいた。

 

「いやぁ、琴音のサイズあるか心配だったんですけどたまたまクローディアの分が余ってたので良かったです。」

 

総ちゃんは私にメイド服を渡してきた。

 

「それじゃあ、着替えて出てきて下さいね」

 

総ちゃんはそう言うとフロアの方に出ていった。

 

(………余計なこと言わなきゃ良かった。)

 

私は自分の発言に後悔しながら、もう既に遅いと思い諦めて着替えることにした。

 

 

 

(………絶対に似合ってない……。)

 

以前までならば、少しは似合う可能性はあったかもしれない。

ただ封印を解いてからというもの、髪の色は桜色で身長も少し伸びたため和服は以前よりも似合うようになったらしいのだけどこういう服は多分似合わないだろう……。

 

(……早く出て、早く着替えよう)

 

私は決心して、フロアの方に出た。

 

 

「あっ、琴音………」

 

総ちゃんはフロアに出てきた私を見るなり、言葉をつまらせた。

 

「やっぱり似合ってないよね。着替えてくる」

 

私はいち早く着替えたくて、すぐに裏へ戻ろうとした。

 

ガシッ

 

「…琴音、待ってください。」

 

私を止めたのは総ちゃんではなく、クローディア。

 

「……どうせ着替えたなら、少し働いていってもらえますか?(琴音のことですから、似合ってると言っても着替えそうですからね)」

 

「………え。わかったよ、少しだけね」

 

私はクローディアに言われるがまま、少しだけフロントの仕事をすることにした。

 

 

 

 

「ナイスです、クローディア」

 

「いえ、あれを着替えさせるには少し勿体ないと思っただけですよ。琴音、あれだけ視線を集めてるのにどうせ似合ってないとか思ってそうですからね」

 

この時クローディアの言う通り、琴音は似合っていなさすぎて見られていると思っていた。

 

 

 

 

(………はぁ、早く着替えたい……)

 

先ほど、クローディアに言いくるめられる形で仕事をしているのだが透は私の姿を見るなりどこかに走っていってしまった。

 

(……このままお客さん来なきゃいいな)

 

そんなことを思っている時こそ、お客というのは来るものなのだ。

 

ガラガラ

 

「…お帰りなさいませ、ご主人様」

 

私としては精一杯やったつもりである。

だが、お客の人は顔を真っ赤にして放心状態になっていた。

 

「あ、あのご主人様?」

 

「あ、すみません。」

 

私は放心状態のその人を席へと案内して、一先ずひと仕事は終えることが出来た。

 

(……やっぱり似合ってないよね………)

 

その後も、来る人来る人男女問わず顔を真っ赤にして放心状態になるという不可解な現象が起き続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

(………漸く終わった)

 

結局、私が仕事を始めたタイミングからお客の数がやたら増えたお陰で最後まで抜けることが出来なかった。

 

「ありがとうございました、琴音」

 

そこにはカメラを首からぶら下げたクローディアがいた。

 

「ううん、何もしないのもクラスに悪かったし大丈夫だよ。」

 

いくらライブがあるからといって、クラスの手伝いを何もしないというのはとても申し訳なかったので少しでも力になれたなら良かった。

 

「あっ、なんだよー。もう着替えちまったのか」

 

クローディアの後ろから現れたのは、某一族の新聞部員。

 

「……ところで、二人共。そのカメラはなにかな?」

 

仕事中もずっと気になっていたのだ。

明らかに、カメラを持ってこっちを撮っている人が数人いたことに。

 

「……それでは、私はこの辺で。まだ仕事が残ってますので」

 

「あ〜、俺も仕事あったんだった」

 

そう言って二人共逃げようとする。

 

「……逃げられると思ってる?」

 

「甘いですよ、琴音」

 

「…あっ………」

 

クローディアは私が回り込むのが分かっていたかのように、華麗に私を避けて逃げていってしまった。

 

「……クローディアは逃げられたけど、夜吹くんには少しお話を聞かないといけないみたいだからね」

 

私が仕事中に確認した限り、カメラを持っていたのはクローディア、総ちゃん、琴音、透、綺凛ちゃん、そして夜吹くん。そして、その他数人。

全員分とは行かなくとも、新聞部員である夜吹くんのカメラを奪うのが1番拡散の可能性が減る。

 

「それじゃあ、夜吹くん。覚悟はいいね?」

 

「うわぁぁぁぁ」

 

その日、星導館のある新聞部員が新聞部の命であるカメラを壊されたと絶望していたという。

 

 

 

 

 

その日、ある人物の写真が1枚1000円ほどで取引されたとのこと。

ある人物は「メイド服すら着こなすとは…。」と語り、

ある者は「明〇奈のメイド服もありだな」といい、

ある者は「やっぱり琴音ちゃんは可愛いよね」と言い、

ある者は「同じ名前なのに、ここまで差が……」と落ち込み、

ある者は「香〇のメイド姿見てみたいもんだなぁ」と言い、

そしてある者は「姉ちゃんがやっぱり1番だね」といい、

かの後輩は「私もお姉ちゃんのようになれるでしょうか…」と語った。

そして、メイド服を着させた張本人はと言うと「琴音のメイド服は永久保存版ですっ!」だそうだ。

たった1人、「俺の琴音は何を着せても似合うな」と妄想が激しい人が居たのは言うまでもないだろう。

 

 

その日、ある人物のファンクラブの人数が急上昇したとかしてないとか…。

 

 





…琴音のメイド姿……、僕も見てみたいですね。
僕の画力があれば、挿絵を入れられたのですが何分画力が皆無なものでして皆さんそれぞれの琴音のメイド姿を思い浮かべてください


Fgoのイベント未だに終わってませんので、更新さらに遅くなるかもしれませんが何卒よろしくお願いします


アンケートの方もお願いします。

それではまた次回


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63話

最近、アスタリスク作品とても増えてて読むのがとても楽しいです!
皆さん、構成とか設定とか凝っていて設定だけ読むのとかも楽しいんですよね。

僕も皆さんに楽しんでもらえるよう頑張ろうと思いますので、これからもお願いします


それではどうぞ


遂に学園祭最終日を迎えてしまった。

 

(……やだ…鬱だ……死のう……)

 

透に言われて少し前向きに考えてみたものの、実際冷静になってしまえば私のライブなんて誰得と言いたくなってしまう。

言うなれば、プロ野球選手の試合にアマチュアの選手が出るようなもので普通に考えればブーイングの嵐。

そんな事が分かりきっているのに、ライブをやれる人なんて多分いない。

 

「ほら、琴音。ここまで来たんだから諦めて」

 

朝起きたところで、何故か総ちゃんに捕縛されライブを行うシリウスドームまで連れてこられてしまった。

 

「……うっ、だってさぁ…。シルヴィのライブに私なんかが居たら絶対邪魔に思われるって…」

 

「(……私のグッズと琴音グッズ売れてる量変わらないんだけどなぁ)そんなことないから。ね?それにもう遅いし」

 

言われなくてもわかっている。

もう既に衣装も着せられてしまったし、もう開始まで1時間もない。

 

「そろそろいいかしら?」

 

「………ペトラさん……。」

 

私の姿を見て一番喜んでくれたのはペトラさんだった。 あれだけ喜ばれてしまうと断るに断れなくなってしまう。

結果、私はここにいるのだけど

 

「大丈夫よ、琴音ちゃん。あなたの歌声はシルヴィに負けてないわ。それにあなたのライブを楽しみにしてくれてる人は沢山いるわ」

 

私が嫌がっているのがわかってしまったのか、ペトラさんに慰められてしまった。

ペトラさんにこう言われてしまえば、納得せざる負えないわけでこういう所は流石だと思う。

 

「そうだよ!私だって楽しみだったんだからね?ずっと琴音のこと誘ってるのに、断られてばっかだったし……。」

 

「……それはごめんなさい」

 

シルヴィにライブをやろうと誘われれば殆どの人は十中八九了承するだろうけど、私のような素人がやっていいのかという疑問は残るわけで今までは断ってきた。

今回は、色々手を回され断れる状況になかったためこうなったのだけど。

 

「さて、最終確認するわよ」

 

それから、私とシルヴィはペトラさんから今日の予定の最終確認をした。

ライブ中のことは勿論、その後の握手会のことや打ち上げのことなどなど。

 

「でも、琴音大丈夫なの?握手会なんて」

 

シルヴィの疑問は、私のアレを知っていれば当然のことだった。

これだけの規模のライブとなれば、それなりに知らない人も沢山いる訳で握手会をすれば男の人とも握手をしなければいけなわけである。

 

「………う、うん。頑張るよ」

 

こんな所で私のせいで迷惑をかけるのも嫌だし。

なにより、ただの握手ならば少しは大丈夫になった。理由は、多分六花に来てから少しは男の人と関わるようになったから。

下心丸出しの人でなければ、多分大丈夫なはず。

 

「そうね。本人がそう言うなら問題ないけど、念のため1人あたりの時間を決めるのと警備員にも注意させておくわ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

流石はシルヴィのマネージャーをやっているという所だろう。

ファンへの配慮を忘れず、かつ私への配慮もしてくれている。

 

「それじゃあ、本番まであと少しあるけど2人でここに居てくれるかしら?」

 

「あっ、はい」

 

ペトラさんはそう言うと控え室から出て行った。

 

「言われなくても、この格好じゃどこも行けないしね。」

 

確かにシルヴィの言う通り、この格好で何処か行こうと思えば目立って仕方がない。

 

「……ところで、琴音のこの写真なんだけど…」

 

そう言ってシルヴィは、昨日出来たばかりの私の黒歴史の写真を出してきた。

 

「なっ………んで…。この写真!誰からもらったの?」

 

私はシルヴィに迫って聞いた。

 

「…えっ、さっき透くんとクローディアからだけど」

 

あの2人か。

夜吹くんのを潰したからって、あの2人のことをケアするのを完全に忘れてた。

 

「………そっか。あの2人かぁ」

 

まだ自分自身だけの中で留めてくれるなら、私は文句はない。

だが、広めるとなればそれは別の話だ。

 

「こ、琴音?」

 

シルヴィは私の顔を冷や汗のようなものをかきながら見ていた。

 

「ん?どうかした、シルヴィ。」

 

「………いや、凄い怖い顔してるよ?それにこの写真の琴音、とっても可愛いし!」

 

この笑顔は狡い。

こんなに満面の笑みでそんなことを言われれば、誰でも怒りなんて何処かに行ってしまう。

 

「……狡いよ、シルヴィ。今度シルヴィも着てみてね?」

 

「えっ、あうん。琴音が言うなら」

 

怒る気力なんてなくなってしまったが、このまま流すのも癪だったのでシルヴィに今度着させる約束をした。

シルヴィの容姿を考えても、メイド服が似合うのは見なくてもわかる。

多分、女の私が見ても惚れるぐらいのレベルだろう。もし男の人がそれを見たらどうなるか…。想像するのは容易いだろう。

 

コンッ、コンッ、コンッ

 

「二人共、準備大丈夫かしら?」

 

ペトラさんの言葉で現実に引き戻される。

忘れていたが今はライブの前だ。

 

「もちろん」

 

「あ、はい」

 

「それじゃあ、スタンバイよろしくね」

 

私とシルヴィは、控え室から出てスタッフの人の案内でスタンバイする。

 

「……頑張ろうね、琴音」

 

「…うん。よろしく、シルヴィ」

 

 

こうして、私とシルヴィのライブは始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




新作のアンケなどなど、活動報告の方にあるので宜しければお願いします!


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64話


投稿遅れて申し訳ございません。

理由は、ライブのところを書くかどうか迷ったせいです。
あとは評価を0にするってどういう意味なんだろうと考えていたせいです。
1ならわかるんですが、0ということはもう作品書くなと言いたいんですかね?
まぁ、0付けられる僕が悪いんですけどね。
という馬鹿な考えしてたら、書くの忘れてたのが本音です…。申し訳ありません




それでは本編どうぞ


「今日はみんなありがとね〜!!!」

 

シルヴィと私のライブは一応成功したと言っていいのだろうか。

私自身歌が上手いのかよく分からないけど、みんなが喜んで聞いてくれていたのはとても嬉しかった。

 

「……ほら、琴音も」

 

私が少しボケっとしているとシルヴィに小声で言われた。

言うことなど考えていなかったが、私はこのライブを通して感じたことを言うことにした。

 

「…今日は来てくれてありがとうございました!!もしかしたら、邪魔に思われたかもしれないですけど皆さんのおかげで緊張もなく、歌うことが出来ました!」

 

私の挨拶で、私とシルヴィは一旦退場。

次の握手イベントに備えることとなる。

 

実際今日のライブは、本当に来てくれた人に助けられたと言っても過言じゃないと思ってる。

こんなど素人が世界の歌姫と一緒にライブやるなんて普通に考えたら有り得ないことなのに、大きな罵声もなく喜んで聞いてくれたのは私としてもとても助かった。

 

『20分後に、握手イベントを行いますのでご希望の方はそのままお待ち下さい』

 

「………はぁ」

 

一旦控え室に戻ってしまえば、気も抜けると言うものだ。

幾ら緊張しなかったとはいえ、あれだけの人数の前であれだけの歌を歌うというのはしんどいものだ。

 

「お疲れ〜、琴音!!」

 

「きゃっ」

 

気が抜けて机にぐだる私に向かってシルヴィは突撃に近い形で抱き着いてきた。

 

「ちょっとシルヴィ。急にどうしたの?」

 

「いやぁ、前々から琴音の歌声いいなぁって思ってたけど今日で確信したよ」

 

質問の答えになってないと思うのは私だけじゃないだろう。

 

「ダーメ。今回限りって約束でしょ?それにこれ以上はシルヴィのファンの人に悪いよ」

 

シルヴィのファンは世界中に居る。

そのファンからしたら、一緒にライブをやるなんて夢のようなことのはず。だから、私はこれ以上はやるつもりは無い。

 

「ちぇ〜。まぁそう言うなら仕方ない…か」

 

少し残念気味に言っているが、実際どんな顔をしているのかは背中に抱きつかれてるお陰で私には見えない。

 

ガチャ

 

「失礼するわよ。あら………、1回出直した方がいいかしら?」

 

なんてタイミング。

控え室という密室で、抱き着いている状況を見れば知らない人なら誤解するだろう。

 

「……冗談よ、琴音ちゃん。そんな目で見ないでちょうだい」

 

「…あっ、すみません」

 

ペトラさんに言われるということは、余程変な目をしていたのだろう。

 

「握手イベントの準備が出来たから、そろそろ出てもらえるかしら?」

 

「わかりました。」

 

「んー。もうちょっと〜」

 

シルヴィはペトラさんに言われてなお、私の背中に抱きついたままである。

 

「シルヴィ、琴音ちゃんに嫌われちゃうわよ」

 

「……えっ!」

 

 

 

シルヴィは一瞬で私から離れた。

 

「ごめんなさい、琴音。」

 

さっきまでとは打って変わって、シルヴィのテンションが下落している。

 

「シルヴィのこと嫌いになんてならないから、安心して。ね?」

 

正直、シルヴィを嫌いになるような出来事があったら私はもう人を信じられなくなりそうなまでである。

それだけシルヴィのことを信用してるし、好きである。

 

「本当?」

 

「うん、本当」

 

「………琴音〜」

 

「うっ……」

 

本日2度目の突撃。

しかも、今回は背中ではなくお腹への突撃である。

力を入れていないお腹に突撃を喰らえばどうなるか言うより易いだろう。

 

「………シルヴィ。二人共、早く行くわよ」

 

「あっ、はい。ほら、シルヴィ行くよ」

 

「はーい。」

 

私はシルヴィを引き剥がして、ペトラさんの方のあとを追った。

 

 

 

 

 

 

「「「「「きゃあぁぁぁ」」」」」

 

私とシルヴィが席に座るなり、ライブの時のような盛り上がりをみせる。

 

『皆さん予めお配りした整理券の番号通り、お並び下さい』

 

そのアナウンスによって、私とシルヴィの前に長蛇の列が完成し、握手イベントが始まる。

 

「ありがとうございます!」

 

私とシルヴィは横に並んでおり、並び方の関係上シルヴィの方が先に握手をする。

 

(……やっぱり慣れてるなぁ)

 

シルヴィは笑顔を崩すことなく、最初の人と会話をしている。

それは数秒間のことだが、そのファンの人は握手をする前とした後では全く違った顔をしていた。

 

(……うっ。来てしまった…)

 

シルヴィのあと、私というのは並び方を間違えているような気がする。

私がシルヴィのファンなら、シルヴィと握手した後に私となんか握手したくない…。

 

「あのっ、とても歌良かったです!!次のライブも楽しみにしてます!!」

 

「あ、ありがとうございます」

 

私の様子とは反した反応だった。

 

「あっ、けど男の人は握手出来ないんですよね……」

 

目の前の人は握手をしようと手を差し出すのをやめ、そんなことを言った。

何故この人がそんなことを知っているのかは分からないが、とてもいい人だということは分かった。

 

「いえ。私で良ければ」

 

私はそう言ってその人が差し出しかけた手を握った。

 

(……大丈夫。この人は私に何もしない)

 

自分に暗示をかけるように心の中で何度も呟いた。顔には決して出さないように。

 

「あ、ありがとうございます!!ファンクラブで名誉会員の人が、「桜姫様は男性恐怖症だから男は近づくことなかれ」って言われてたので。本当にありがとうございます!!俺、この手一生洗いません」

 

そう言うと男の人は歩いて行った。

 

(……そんなことまでバレてるのね……。それより、手は洗った方がいいです)

 

男性恐怖症のことが何故バレてるいるのか理由は分かったが、その名誉会員とは誰なのか。という新たな疑問も浮かんだ。

 

(………さて、あと何人か分からないけど頑張ろう)

 

そう意気込み、私は来る人と握手をし続けた。

 

 

 

意気込んで握手をすること、数十分経っただろうか未だ列は途切れることを知らない。

 

(……シルヴィっていつもこんなに辛いことを……。)

 

改めてシルヴィの凄さを知り、シルヴィには頭が上がらないと思う私である。

 

「あっあの!!私、王竜星武祭のときから桜姫さんのファンなんです!!!」

 

1番最初の人と負けず劣らずのインパクトできたのは、透よりも小さな少女だった。

 

「あ、ありがとう。それと桜姫じゃなくて東雲って呼んでくれると嬉しいかな?」

 

女の子相手ということもあって、私も幾分話しやすかった。

 

「あ、あの私来年から星導館に入学するんですけど、どうしたら東雲さんのように強くなれますか?」

 

まさかこんな所で未来の後輩に戦闘面のことを聞かれるとは思いもしなかった。

 

「…私は強くないよ。私はみんなに支えられてるから。けど、剣術のことなら東雲流の門を叩くといいよ。入学まであと1年ある。それだけあれば、あなた次第でどうにでもなるよ。私から実家の方に推薦しておくから、あなた名前は?」

 

聞かれた相手1人1人にこんなことしたら、うちの門下生が大変なことになるが私自身この子には興味が湧いた。

この子の秘めてる星辰力に、私は惹かれたのだ。

 

「更識晶です!ありがとうございます、私頑張りますね!」

 

「うん、頑張って。来年、楽しみにしてるよ」

 

更識さんは握手を交わすと、そのまま流れに任せて外へ歩いて行った。

 

(……更識。まさかね)

 

私は同じ暗部の当主でもあり、同い年でもあるもう1人の幼なじみのことを思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(………漸く終わった…。)

 

握手イベントが始まってから1時間半。漸く列は終わり、イベントも終わりを告げた。

 

「お疲れ、琴音」

 

「うん、シルヴィもお疲れ様」

 

シルヴィは慣れているのか、私よりも疲れてはいなかった。

 

「さてと、私は先に着替えてくるね?なんかペトラさんが琴音に話あるって言ってたし」

 

シルヴィは後ろにたっているペトラさんの方を指差すと、控え室の方に歩いて行った。

 

「琴音ちゃん、お疲れ様。お陰様で、今回のライブは大成功よ」

 

「お疲れ様でした。それで私に用って?」

 

私がそう言うとペトラさんは、部下のような人に何かを持ってこさせそれを受け取った。

 

「これをあなたに渡したかったのよ」

 

そうペトラさんが差し出したのは、長い箱だった。

 

「なんですか?これ」

 

「この間の依頼の報酬の一つとでも言ったらいいかしら?この間は、W&W含め全統合企業財団を代表して改めてお礼を言います。ありがとう」

 

この間のことと言えば、シルヴィの件だろうか?

依頼者のW&Wはまだしも、全統合企業財団とはどういうことだろうか?

 

「実はね、菅生家には統合企業財団も手を焼いてたのよ。中々尻尾を出さない上に、被害はどんどん増えていくばかりで。そこで、わざわざあなた達に頼んだのよ」

 

「なるほど、そういうことですか」

 

幾ら統合企業財団と言えど、証拠のない家を潰すというのは簡単な話ではない。もしそんなことをしたことがバレたとすれば、そこが潰されるのは言うまでもない。

統合企業財団と言うのは、一枚岩という訳では無いのだ。

だからこそ、私たち東雲家のような存在があるのだけど。

 

「それでこれは?」

 

「開けてみれば分かるわよ」

 

私はペトラさんに言われるがまま、箱を開けてみた。

 

「……これって。」

 

「えぇ、その純星煌式武装の名前は「氷輪丸」。W&Wの技術力を結集して作ったものよ。あまり他学園の生徒に、純星煌式武装をプレゼントするのはあれなんだけど、シルヴィを無事に救出してくれたってことが大分大きかったのね。幹部、満場一致であなたへ贈ることが決まったのよ」

 

まさか他の学園の運営母体から、純星煌式武装を贈られるとは思いもしなかった。

そんなことをすれば、星武祭で不利になるのが目に見えているから。

それを抜きにしても、W&Wのシルヴィに対する期待というのは大きいのだろう。

世界の歌姫なのだから当たり前と言えばそうなのだけど。

 

「…これは有難く頂きます。」

 

「えぇ。それじゃあ、私は行くわね。ちゃんと、打ち上げに来るのよ」

 

ペトラさんはそう言うと、どこかへ行ってしまった。

 

(……新しい純星煌式武装か。獅鷲星武祭までには、どうにか形にしないと)

 

私は改めて星武祭への決心を固め、シルヴィがいる控え室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ライブの場面、書いて欲しいというリクエストありましたら書こうと思っています。

投稿遅くなって本当に申し訳ありませんでした。


また次回!


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65話

何とか投稿出来ました!


それではどうぞ



唯一の懸念であったライブも無事成功?に終わり、漸く落ち着いた日々を送れる。そう考えてたのだけど……。

 

「人気者は大変ですね」

 

「………こんなんじゃ、碌に買い物にも行けないよ…。」

 

家から星導館までの短い距離。

その短い道のりを普段なら殆ど人に会うこともなく、辿り着けるのだが今日は1日で見かけるであろう人の数を遥かに上回る人を見たような気分である。

話しかけてくるような人は流石にいなかったが、あれだけ視線を向けられるというのはあまり好きではない。

 

「そう言えば、この間隠れ家的な和菓子屋見つけたんですが行きません?」

 

「ごめん、少しやりたいことあるんだ。」

 

獅鷲星武祭までもう数ヶ月と迫っている。

それまでに、氷輪丸を使い物にしようと思ったら1日足りとも無駄にはできない。

 

「そうですか。それなら仕方ありませんね、透くんでも誘って来ます」

 

そう言うなり総ちゃんは私が言葉を発する前に消えるように教室から出ていった。

 

(……別に怒らないのに)

 

総ちゃんにそんなに簡単に怒ると思われていたことに少しショックを受けつつ、私は訓練場へと1人向かった。

 

 

 

 

 

 

(さて、どうしたものか)

 

千本桜とは小さい頃からずっと一緒だったので、あまりどうやって屈服させたとか覚えてない。

 

(……取り敢えず、対話出来るかやってみよう…。)

 

私は氷輪丸を自分の目の前に置き、意識をどんどん落としていく。

 

「………ここは…。寒っ…」

 

目を開けるとそこには一面銀世界が広がっていた。

 

(………名前からある程度は想像してたけど…、まさか一ノ瀬先輩の能力と似てるとはね)

 

千本桜の世界は一面桜が広がっていたことを考えると、その純星煌式武装の能力がこの世界にも反映されていると考えるのが妥当なのかもしれない。

 

「………お主が我が主か?」

 

私の目の前に現れたのは、氷の竜。

それも半端な大きさじゃない。

 

「一応、そうなるのかな?」

 

まだ私が主と決まった訳では無いし、それを決めるのは氷輪丸であって私ではないとそう私は思う。

 

「…なるほど。私は良い主に恵まれたようだ」

 

「……へっ?いいの?そんなに簡単に」

 

思わず変な声を出してしまった。

流石にそんなに簡単に答えを出すとは思いもしなかったから。

 

「あぁ。主に文句を付けていては他の者では、満足など出来ないだろう」

 

なんか褒めてくれているようなのだが、そこまで言われると少し恥ずかしい。

 

「そっか。それじゃあ、これからよろしくね。氷輪丸」

 

「こちらこそよろしく頼む、主。ただ一つだけ問題と言うよりは、私と主の親和性の問題なのだがまだ卍解は完成していないのだ。すまない」

 

「ううん、卍解は一緒に頑張ろう?あ、代償とかってないのかな?」

 

「それなら、もう既に済んでいる。私は1度決めた主以外に使われる気は毛頭ない。代償というならば、私を手放すことが出来ないということぐらいだろう」

 

「そっか。それなら、大丈夫だ。」

 

こうして私に2人目のパートナーが出来た。

 

サアァァァァ

 

そんな心地よい風の音と共に、一面銀世界の氷輪丸の世界に桜の花が現れる。

 

「あら、もう終えてしまったんですか?」

 

桜と共に現れたのは言うまでもなく千本桜。

 

「あ、千本桜。どうやって入ってきたの?」

 

簡単な話、ここは氷輪丸の世界であって私の世界じゃない。私の世界ならば、千本桜が入ってくるのは分かるのだが氷輪丸の世界に千本桜がどうやって入ったのかは見当もつかない。

 

「それなら、琴音を経由しただけですよ。琴音からなら、ここに来れますから」

 

納得?でいいのだろうか。

精神世界というのがそんな感じになっているとは知らなかった。

 

「それでどうしたの?」

 

「そうですね。ここで言うより、やった方が早いと思うので1度出て氷輪丸を始解した状態で私を始解してもらえますか?その後に卍解も。」

 

「あ、うん。わかった」

 

私は千本桜に言われるまま、現実へと意識を戻した。

 

(……さて、やりますか)

 

私は立ち上がり、まず氷輪丸を抜いた。

 

「……霜天に坐せ…氷輪丸」

 

氷輪丸は千本桜とはまた違った形状をしている。

むしろ、剣術といった点ではこちらの方が扱いやすいかもしれない。

 

私は氷輪丸を右手でもち、左手で千本桜を抜く。

 

「咲き誇れ…千本桜…」

 

いつも通りの解号で、いつもの様に柄の部分を残し刀身のみ散りゆくはずだったのだけど。千本桜は私の予想に反して、私の手の中から柄すらも消えていった。

 

「…えっ!?どういうこと……」

 

『こういうことですよ、琴音。今まで、私しかあなたの刀はありませんでした。そのため、私は柄を残しあなたが剣術を振るえるようにしていました。しかし、氷輪丸がいればそんな事しなくていいんです。あなたなら、もう私を意のままに操れるでしょう』

 

(……意のまま。)

 

千本桜のその言葉通りだった。

私が動かしたいように考えるだけで、千本桜はその通り動いてくれる。

手を動かす必要もない、ただ念じているだけで千本桜はその通りに動く。

 

(……これは訓練が必要かな)

 

今のように、余裕があれば剣を振るいながら千本桜を動かすことも出来る。

だが、完全に扱おうと思ったら慣れるしかない。

 

(…次は卍解か)

 

氷輪丸の卍解。

出来るかどうか分からないけどやってみないと。

 

「……………卍解………氷帝桜花」

 

ただ頭に流れ込んで来た言葉をそのまんま発した。

 

(……これって。)

 

自分でやっておいて、自分が1番驚いている。

まさか千本桜と氷輪丸が卍解で一緒になるなんて思いもしなかったから。

 

『これが私の言いたかったことです』

 

(………なるほどね。これは扱いが難しそうだね)

 

見た目は千本桜単体の時に比べて、少し雪女感が追加されたぐらいだと思う。

 

『まさか、こんな形になるとは私も思いもしなかったな』

 

(氷輪丸の卍解は完成してないんじゃないの?)

 

『千本桜殿と混ざったお陰で、またそれは別の話になったようだ。』

 

いい事なのか、悪いことなのか。

明らかに自分の能力が格段に上がってることは分かる。それこそ、今なら星露だろうが総ちゃんの切り札だろうが切り伏せることが出来るくらいの自信はある。

 

『あとは、琴音がどれだけ使いこなせるかだけよ。』

 

『主ならば出来る。私は信じている』

 

(……ここまでやってくれたんだからね、期待には答えるよ)

 

私は、獅鷲星武祭までに完璧に操れるようほぼ毎日1人で訓練室に籠ることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、一時的に六花全体の気温が急激に下がったのは言うまでもないだろう

 

 





最後までお読み下さりありがとうございました!

それではまた次回


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66話


先日は投稿出来ずごめんなさい。
理由は君の膵臓を食べたいを見てたからなんですけど、あの作品何度見ても泣けますよね。
アニメーションの方が僕としては原作沿いなので、とても楽しみにしています。

実写しか見てないかたは、アニメーションの方を見ることをお勧めします!!
100パーセント泣けますよ!



それでは、本編の方どうぞ!

ちなみに、まだ獅鷲星武祭には入りません!

少し閑話や、オリジナルストーリーを挟んでいこうかと思っているので



 

六花の最低気温更新から数ヶ月。

あの日以来、六花の気温は夏にも関わらず瞬間的に氷点下を下回るという不思議な現象が起きることがしばしば。

 

「夏休みも近いというのに、最近は寒いことがありますね」

 

そう言いながら、総ちゃんはマフラーを首から取る。

 

「うん、そうだね。」

 

外がどれだけ冷えているか分からないが、私はその時は殆ど訓練室で卍解の鍛錬をしているため訓練室でしか体験したことが無いがそこまで寒さを感じたことは無い。

 

「琴音ぐらいじゃないですか?防寒対策何もしてないの」

「えっ、うそ」

 

総ちゃんに言われて気が付いたが、周りのクラスメート全員何かしら防寒グッズを常備している。

 

「……私おかしいのかな…」

 

総ちゃんにそう言われ、寒さを肌で感じていないのは私だけだと言うことが判明し、私はショックを受けることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……まだまだ扱いきれてない…)

 

放課後になり、私はいつもの様に訓練室に篭もって卍解の鍛錬を始めた。

 

「………ふぅ。」

 

なんとか卍解は形にはなりつつあるが、一つだけ大きな問題があった。

それは、氷輪丸の能力。「天相従臨」というらしいのだが、これがまた制御が難しい。

この「天相従臨」は星辰力に応じ範囲が決まるらしく、結果かなり広大な範囲となってしまっている。

 

(……それに卍解するとなぁ)

 

ある程度技や、卍解の長所など理解し扱える様はなったのだがこの卍解周りへの影響が半端ない。

以前までは、千本桜だけだったため千本桜の性質上周りへの被害ということは考えることはなかった。

だが、氷輪丸と融合?したことで氷輪丸の能力である水を氷に変えるというもののお陰で訓練室を何度も冷凍庫に変えている。

氷輪丸のおかげか、私自身は寒さを感じないのだが獅鷲星武祭では今のままでは使えない。

 

(………使えても始解かなぁ)

 

元々千本桜の得意戦術は多対一だったが、更にその傾向が強くなったように思える。

使えそうな始解ですら、かなり扱いが難しい。

両方始解するということ自体は星辰力の量が多い私にとって問題ではないのだが、両方始解した場合に能力がお互いの能力が使えるようになるため千本桜の散っている刃に触れるだけで凍りつかせることが出来てしまう。

味方に、千本桜が掠った日には大変なことになる。

 

『それにしても、流石は琴音ですね…。この短期間で、ここまで扱えるようになるとは』

 

『流石は主だ。』

 

(………私はここまでとは思わなかったよ。あなたたちがこんなに相性がいいと思わなかったから)

 

流石は統合企業財体の一画のW&Wといったところだろう。ここまでして、大丈夫なのだろうかとも思う。自分に自信がある訳では無いけど、これでも王竜星武祭の覇者。そんな人物に新たな、しかもこんなに凄い純星煌式武装を送るなんて普通はしない。

クインヴェールという特殊な学園の運営母体だからこそなのだろうか、なにせ他の統合企業財体から文句が来ても私のせいではないと言い張りたい。

 

(氷輪丸、あなたの卍解の時のこの溢れ出る冷気ってどうしようもないの?)

 

『あぁ。こればかりは、使用者の星辰力をそのまま反映させてしまうのでな。抑えようと思って抑えられるものでは無い。』

 

(………そっか。)

 

自分に味方がいるという前提を取り払ってしまえば、なんのデメリットでもないのでそこまで悩むことではない。

 

(………でも、この格好はなぁ)

 

『『それは変えるつもりはない!』』

 

(…あなたたちが決めてたのね)

 

この卍解使用時の1番の悩みと言ってもいい。

以前までの、着物のような卍解も少し恥ずかしさはあったのだがいつもと大して外見が変わらないということでそこまできにしていなかったのだが……、今の姿は普通には絶対に居ない、そんな格好である。

白と水色で彩られた着物、そして真っ白に染まる髪の毛。まるで、雪女である。

そして、卍解中の私の周りは気温が低いらしい。この間、クローディアが私の元へ来た時に触ろうとしたが触る前に冷たさのあまり諦めたほど。

 

(………もしかして、六花の気温がおかしいのって………私のせい?)

 

ここまで来て漸く犯人に心当たりが出来た。

よくよく考えれば、気温が氷点下を下回るのは私が訓練室に居るときに限ってのこと。そして、氷輪丸のこの能力、効果範囲。

全てそう考えれば、辻褄があう。

 

『……ようやく気がついたんですか?』

 

『そこまで鈍いとは…。』

 

(……あなたたち、知ってたの?)

 

『『…もちろん』』

 

自分の斬魄刀ですら、分かっていたことに自分が今の今まで気がついていなかったということに私はショックを受けざる負えなかった。

 

コンッコンッコンッ

 

「琴音、いますか?………って、またですか」

 

「あっ、クローディア」

 

クローディアは訓練室に入ってくるなりまたため息をついて居た。

今の私は、卍解中。つまり、見た目からして言い逃れはできない。

 

「……琴音、毎回毎回気温を下げないで下さい!!あなたが能力を解放する度に六花中は大騒ぎですよ」

 

「………ごめんなさい」

 

クローディアに言われ一応謝るが、こればかりはどうしようもないのだ。

氷輪丸の言うように制限出来るような代物でもなく、かと言って外からの力で防げるものでもなかった。

以前、訓練室が凍ってしまうのでユリスに凍らないように炎で気温を上げてもらおうと思ったのだが残念ながら私の卍解中はユリスの炎は出現させることすら叶わなかった。

 

「………破壊されるよりはマシですが、そのうち海まで凍らせそうで私は心配です」

 

クローディアの言う通り、気温が下がっているだけで特に私は学園のものを壊してはいない。

凍らせても、卍解さえ解けば溶ける。卍解さえしていなければ、私は周りへは何も影響を与えてないのだ。

 

「いやぁ、それは流石に………」

 

「言い過ぎとは言わせませんよ。」

 

「………はい」

 

別にこれに関しては前科がある訳じゃない。

ただ最近、温水プールが温水じゃないということがあるらしい。ただの機会の故障のような気もするんだけど、どうやらそうじゃないらしい。

 

「…全く、琴音はどれだけ強くなれば気が済むですか」

 

クローディアは呆れたように、私に聞いてきた。

 

「私は自分が強いとは思ってないよ。強さに限界なんて、ないと思うし」

 

私のその言葉にクローディアは目を丸くして、呆れていた。

 

「………琴音らしいですね。それでは私は少しお話しなきゃいけない方がいるので」

 

そう言うとクローディアは訓練室から出ていった。

 

(………少し自重しないと)

 

私はクローディアに言われ、卍解するのを自重することにした。

 

 





うん、もう琴音に敵う人いませんよ。これ
まぁ、主人公最強なんでなんの問題もないですけどね!!

むしろ、ユリスの炎すら消し去るなんて山爺の残火の太刀の逆バージョンみたいですよね。
残火の太刀使ってる時、氷輪丸使えませんでしたからね

まだまだ琴音より強いひといるので、ご安心を。
次回は夏休み、実家編入ろうと思います!

それではまた


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67話



なんとか毎日投稿出来てます!

新作で、進撃の巨人の2次を書いてみたので良ければ見てみてください!


それではどうぞ!


 

夏休みに入り、私も実家へと帰省することとなった。

理由は特にないが、強いて言うなら実家の方が仕事がしやすいからでもある。

本心は母に手合わせを願いたいだけなのだけど。

 

「あら、琴音。また見た目変わったわね?色気づいたのかしら?」

 

「………これには少し深い事情がありまして……」

 

実家に着くなり、目敏い母は私の容姿の変化に気がついていた。

よく人は掛けられた言葉によって容姿が変わると言われているが、それよりも変わりやすいのは他の容姿を自分の容姿として生活すること。

これも一種の自己暗示のようなもの。他の容姿を自分のものと思い続ければ少なからずそれに近づくというものだ。

結果から言うと、私の髪は少し桜色が薄くなり肌も今までよりもかなり白くなっている。

 

「あなたのことだから、また何かしたのでしょう。あまり無茶ばかりしてはいけませんよ?」

 

「なんで私が何かしたことになってるの!?」

 

「だって、あなたですもの」

 

母はそう言うと、居間の方へと歩いていった。

 

「流石は琴音のお母様ですね。よくわかってらっしゃる」

 

「………どういうことかな?総ちゃん。」

 

今回の帰省にあたって、琴音は自分の実家の方に帰っているため総ちゃん単体。

総ちゃんの場合、ここが実家のようなものなのである意味帰省と言えなくもない。

 

「い、いえ。なんでもないですよ?」

 

「………へぇ。まぁいいよ、家にいる限りおやつ抜きだから」

 

「せ、殺生な…」

 

私はあからさまな落ち込み方をしている総ちゃんを置いて、居間のほうへと足を向けた。

 

 

 

 

 

「お嬢様、どうぞ」

 

私が居間に座るなり、茜さんがお茶をいれて持ってきてくれる。

茜さんは私のことを"お嬢様"と呼ぶ数少ない人。

みんな"当主"と呼ぶため、その度に仕事中以外は呼ばないでとお願いしているのだが中々みんな聞いてくれない。

 

「ありがとうございます。茜さんも一緒にどうですか?」

 

「いえ、私は使用人ですから。お邪魔する訳にはいきませんよ」

 

「……むぅ。こういう時だけ意地悪いんだから」

 

茜さんは私の言葉に少し笑みを浮かべると、そのまま下がってしまった。

 

「いやぁ、美味しいですねぇ。琴音」

 

総ちゃんは先程までとは打って変わって、元気に団子を口に頬張っている。

本来、総ちゃんも茜さんと同じような立場なのだが如何せん私の幼少の頃からの親友ということもありかなりの特別待遇を受けている。

本当なら、皆でこのような雰囲気の中で生活をしたいのだけど皆一歩引いて見守るようにしているのが現実。

ちなみに、琴音も総ちゃんと同じようなものである。

 

「それで、琴音。何か私に用があったのでは?」

 

「………えっ?」

 

「あら、違ったかしら?あなたが、わざわざ透を連れずに実家に帰ってくるなんて私に用があるとしか思えないでしょう?」

 

母は全てを見透かしたような眼差しで、私の事を見ている。

 

「……はぁ。なんでこうわかっちゃうかなぁ」

 

「それはそうでしょう。あなたの母親を何年やっていると思っているんですか?」

 

これだから、母には頭が上がらない。

気高く、優しい。そんな母だからこそ、私と透は父がいなくても今まで成長出来た。

 

「お願いって程じゃないんだけどね、私と……手合わせをして欲しいんだ。手加減なしで」

 

「そんなことでいいのかしら?私もあなたとやりたかったのよね。それじゃあ、早くやりましょう!」

 

母はすんなり受諾すると、せっせと鍛錬場(外)の方へと歩いていった。

 

「沖田さんもやりたいです!」

 

母が居なくなるなり、総ちゃんはハイテンションで戦わせろアピールをしてくる。

 

「………総ちゃん、今煉獄の使用制限時間どれくらい?」

 

「………………………10分」

 

私の質問の意味が分かったのか、総ちゃんは先程までのハイテンションから急にしおらしくなった。

 

「……1時間になったら、やってあげるよ」

 

「えぇー…………。」

 

再び膝を地面に付けて、落ち込む総ちゃんを置いて私も外へと向かった。

 

 

 

 

 

 

鍛錬場へと辿り着くと、既に全員集合していた。

 

「………みんないつの間に……」

 

「お嬢様と奥方様の決闘ですからね。中々見れるものでもありませんから」

 

私の呟きにわざわざ答えてくれたのは言うまでもなく、茜さん。

それにしても、さっきまで屋敷内には確実にいなかったのによく集まったものだと思う。

 

「琴音、もう準備は出来ているかしら?」

 

そう言う母の腰元には、母の現在の愛刀【流刃若火】が差してある。

【流刃若火】は炎熱系の純星煌式武装で、私の氷輪丸はかなり分が悪い。更に、卍解の【残火の太刀】を使われれば多分この辺り一体が廃墟と化すのも時間の問題かもしれない。

 

「………うん。いつでもいいよ」

 

私は腰に差してある愛刀に手をかけ、母にそう言った。

 

「それじゃあ、茜ちゃん。お願い出来るかしら?」

 

「承りました、奥様。」

 

そう言うと、茜さんは結界のようなもので私たちの周りを包んだ。

 

「さっ、これで遠慮なく出来るわよ?」

 

「………ご親切にどうも」

 

茜さんにこんな能力があったのには、驚きだが見る限り囲いを作っているというわけでもなく特に変わりはない。

だが、母が遠慮なくやっていいと言うのだから大丈夫なのだろう。

 

「……それでは、これから決闘を始めます。」

 

茜さんの声で私と母は戦闘態勢に入る。

 

「……開始!!」

 

「「参る!」」

 

キィンッ

 

甲高い音が鳴り響く。

 

「……くっ。」

 

「……やるわねぇ。」

 

バッ

 

「………咲き狂え 千本氷花」

 

「あら、いつの間にか変わったのね。…………万象一切灰塵と為せ 流刃若火」

 

母の流刃若火から炎が吹き荒れる。

少しでも、気を抜けば私の冷気なんて吹き飛ばされ兼ねない。

 

「凄いわね、まさか私の炎と張り合うなんてね」

 

「よく言うよ。こっちは限界感じてるって」

 

今も流刃若火から発せられる熱気は、周りの全てを燃やし尽くさんとその炎の勢いを増し続けている。

 

「…撫切」

 

「…桜吹雪」

 

母の流刃若火による攻撃を、千本氷花によって防ぐ。

 

「……あら、防ぐのね。それじゃあ、決めさせてもらおうかしら。………卍解……残火の太刀」

 

「………卍解……氷帝桜花」

 

私の卍解と母の卍解。

以前までなら、確実に押し負けていた。

 

「………成長したわね。琴音」

 

「まだまだ甘いよ…」

 

私と母が動き出したのはほぼ同時。

そして、技の発動も。

 

「残火の太刀…東 旭日刃」

 

「…氷帝桜花 驟雨 」

 

ジュウゥ

 

氷と炎。

その最大威力がぶつかり合えばどうなるか。

それは言うまでもない。

 

「………ハァハァ」

 

「…………ハァ。やるわね、琴音」

 

私も母もギリギリながらも、なんとか立っていた。

 

「…………相打ち!この勝負、引き分けです!!」

 

私は茜さんのその言葉で、その場に膝を着いた。

対して、母は以前としてギリギリながらも立ち続けていた。

 

(…………私の負けか)

 

私はそのまま瞳を閉じた。

 

 

 

 

 





戦闘描写難しい……。

下手くそですが、これからも読んでもらえると嬉しいです

次回はこの間出てきた人の姉が出てきますよ!!
誰かは次回のお楽しみ〜


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68話


2日間もサボってしまって申し訳ありません!!

理由は特にないですが、気分が乗らなかったって所です

今回はある方の感想から、考えたことです!
思いのほかしっくり来たので、それではどうぞ!!


 

気絶した私が目を覚ました頃には、辺りはもう暗くなっていた。

 

(………まだ勝てないか)

 

六花に行ってからというもの、私自身行く前とはかなり成長した。

それでも、簡単に破れるほど母の壁は薄いものじゃなかった。

 

「あら、琴音起きたのね」

 

「あっ、お母さん。」

 

母は戦ったときからは想像が出来ないほど、優しい笑みを浮かべている。

 

「あなたがあんなに強くなるなんてね。千本桜たちも、あなたを認めているようですし、抜かれるのも時間の問題ね」

 

「………よく言うよ」

 

この化け物母を抜かせる未来なんて、全く見えてこない。

相性が悪いのもあるのかもしれないけど

 

「……どうかしらね。それよりも、明日はあの子が来ると言っていたわよ」

 

「えっ、嘘。大丈夫なの?」

 

「えぇ、なんでも話したい事があるとか。もしかすると、当主として接しないといけないかもしれませんから心持ちはしっかりね」

 

そう言うと母は私の部屋から出ていってしまった。

 

(…………本当に来るのかな?)

 

私は長らく会っていない親友の顔を思い出しながら眠りについた。

 

 

 

 

 

翌日。

朝一番に透が帰省してくると聞いて、私もかなり早起きをして透を出迎えることにした。

あの子が訪問してくるのは昼頃と言っていたから、透も一緒にいてもらうことにしよう。

 

「………ただいまぁ」

 

朝一ということで、誰も起きていないと思ったのだろうか。透は静かに玄関を開け家に帰ってきた。

 

「「「「おかえりなさいませ、お坊っちゃま」」」」

 

透としては静かに帰ってきたかったのだろうが、母に言ってしまった時点で既に甘い。

私なんて、最近はいつ帰るか言っていないのにこの出迎えを受けている。

ちなみに、未だに寝ているのは母と総ちゃんぐらいなものだ。

『朝の弱さ』は、母の唯一の残念なところと言ってもいい。

総ちゃんの場合はただだらしないだけだけど。

 

「うへぇ、やっぱり皆起きてるんだね…」

 

「お母さんに言った透が悪いね。それに、この時間じゃ皆もう起きてるよ」

 

現在の時刻は朝の6時。

使用人も兼任している皆は、この時間から既に仕事を始めている。

総ちゃんは恐ろしいぐらい家事が出来ないから、仕事がないのだけど。

実際、同居生活も殆ど私が家事をしているし。

 

「あ、そう言えば。お昼頃に、あの子来るらしいから逃げないでね。」

 

「えっ……。姉ちゃんの親友でしょ!?なんで、俺まで」

 

「だって、透いないと私が危ないもん。総ちゃんもお昼頃予定あるらしいし」

 

別に悪い人とかそういう訳じゃないんだけど、なんというかスキンシップが激しいというか…。

それに今回は、会わなかった期間が長かったからかなり気を引き締めていかないと危ない。

 

「とにかく、ちゃんと家に居てね」

 

私は未だにごねる透を玄関に置いて、朝食を食べに居間へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………こら、透。どこに行くのかな?」

 

あの子が来る時間が近づき、透が中々客間に来ないと思ったら案の定どこかへ出かけようとしていた。

 

「………だって、俺まで巻き添え………」

 

スーッ

 

「お嬢様、更識様がお見えになりました」

 

茜さんが襖を開け、そう告げる。

 

(………oh......)

 

そう思った時にはもう遅かった。

茜さんが襖の影に隠れるなり、その人物はすっ飛んで来た。

 

「久しぶり〜!!」

 

ドスンッ

 

「…うっ。」

 

すぐ近くにいた透に全く被害はなく、私のみに的確に突撃をかましてきたこの子の名前は更識楯無。本名、更識刀奈。

東雲家の唯一の親族?なのか分からないが、一応親戚にあたるらしい。

更識家も東雲家とは違い、対暗部用暗部。つまり、私たちのような組織を取り締まる側。

何故、親戚同士で役割が違うのかというと簡単な話役割を別々にしたかったというだけである。

そんなわけで、仕事で会う機会もほとんどなく会うのもこれで4年ぶりぐらいなわけである。

 

「それにしても、見ないうちに随分変わったわね…。」

 

とさも当然のように、私の体に抱きついたまま私を凝視してくる刀奈。

 

「まぁね。そういう刀奈だって、随分成長したね」

 

さっきから抱き着かれてるせいで嫌という程よく分かる。私よりも確実に大きい。

 

「そうかしらね?それよりも…………透くんも久しぶり!!」

 

「うわぁ!?」

 

刀奈は、私から器用に透へと飛び移る。

突然のことで、透も反応出来ずに押し倒されるような形に。

 

「刀奈、透息出来てないよ。」

 

どこがとは言わないが、クローディアに負けず劣らずのある部位が丁度透の顔に覆いかぶさっているため透は息が出来ていない。

 

「えっ?あぁ、ごめんね?透くん♪」

 

言葉とは裏腹に、悪戯心に溢れた笑顔の刀奈はそのまま少し押し付けるようにして抱き着いたあと透の上からどいた。

 

「………俺、ちょっと行くところあったからそれじゃあ。刀奈さん、ゆっくりして行ってください」

 

そう言うと透はせっせと部屋から出ていってしまった。

 

「あっ、ちょっとやり過ぎたかしら…。まぁいいわ、まだ琴音がいるし」

 

刀奈は、私のことを餌を見つけた狼のような目で見つめてくる。

 

「……はいはい。そんなことしてるといつまで経っても相手見つからないよ?」

 

私も刀奈もお互い当主でもあり、長女である。

そのため、後継ということも考えなくてはいけない立場な訳なのだがお互いにそういう話は全くと言っていいほどない。

 

「……むぅ。いいもん、そうなってもまだ妹いるし」

 

「へぇ、妹ちゃん達にそんなことを…」

 

「う、嘘だからね?私だってその辺のことは頑張ってるのよ!?」

 

刀奈は大のシスコンと言っても過言じゃない。

なので、後継なんて言う問題に妹を巻き込むなんて考えははなからありえない。

 

「琴音こそ、大丈夫なの?」

 

「うーん、多分無理かなぁ。まだ男の人とそういう関係になるってイメージが出来ないし。」

 

どんなに男の人と親しくなっても、それ以上の関係となると想像もつかない。

 

「そうね。まだ高校生なんだし、これから考えればいいんじゃないかしら?それよりも、この間妹が琴音のライブに行ってからここの門下生になったのだけど知ってるかしら?」

 

「………うちの門下生?刀奈の妹が?うーん……………」

 

私のライブ。うちの門下生。そして、更識という珍しい苗字……。

 

「あっ、もしかしてあの子…刀奈の妹だったの!?」

 

「そうよ?東雲家からチケットが送られてきて、本当は私が行こうと思ってたんだけど、丁度用事が出来ちゃってそれで晶ちゃんがどうしても行きたいって言うから譲ったの。確かに晶ちゃんとは琴音会ったことなかったもんね」

 

これには流石に驚いた。

刀奈以外の会ったことのある更識家の人は、刀奈の両親と妹の簪ちゃん。それと、2人の専属メイドである布仏姉妹。

よく考えれば、殆ど毎回こちらの家に来てくれているため私が更識家に行ったことは殆どなく結果それ以外の人と交流の機会もない。

 

「そういえば、彼女星導館に入るって…」

 

「対暗部だから、六花には行けない」。それが刀奈が私が誘った時に言った言葉。

あの頃は丁度、刀奈のお父さんが亡くなって刀奈が楯無の名を継いだ頃だった。

 

「うん。あの子、ずっと琴音に憧れてるから。それに、この新学期から簪ちゃんもアルルンカントに編入することになってるのよ?確か…特待生だったかしら?」

 

「ほんと!?そっかぁ、簪ちゃんも来るのかぁ。刀奈は来れないんだよね……。」

 

対暗部の当主ということで、私以上に家を空けずらい刀奈。

妹2人が六花に行くということは、尚更刀奈は家にいなくてはいけなくなる。

 

「………そうだったんだよね。」

 

「えっ?」

 

「実はですねぇ、私も六花に行けることになりました!」

 

ジャーンという効果音でもつきそうな勢いで、ドヤ顔をしている刀奈。

 

「でもねぇ、まだ迷ってるんだぁ。界龍と星導館の両方から特待生?のやつが来ててねぇ。星導館に行けば琴音たちと一緒で楽しそうなんだけど、界龍のあの子も面白そうでね」

 

「星露と会ったんだね…。それよりも、家の方大丈夫なの!?」

 

刀奈が六花に来るのはとても嬉しいことなのだが、家の方はどうするのだろう…。

 

「それがね、琴音が六花に行ってるっていうのを私のお母さんが聞いてそれでお母さんが「もう家も落ち着いたから、家は私に任せていってらっしゃい」って。多分、琴音のお母さんが協力してくれたんだと思う」

 

「そ、そう。」

 

こういう時お互いの母の凄さがよく分かる。

私の母も刀奈の母も普段は、だらしないという言葉が良く似合うがやる気になったときは想像もつかない程人が変わる。

 

「でも、晶ちゃんだけに琴音を取られるのも嫌ね」

 

「………いや、とられないからね?」

 

刀奈の馬鹿な妄想はその後数十分間続くこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





オリキャラのオンパレード……そして、新たな百合の誕生…。
まぁこの作品の特徴ですからね!百合農場は。
男主人公では見られない、女主人公ならではの百合農場をこれからもお楽しみください

それではまた次回



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69話


眠れず、続きを書くことにしました…
なので、誤字脱字があるかもしれませんが優しく教えて貰えると助かります…。

今回は少し短めですが、それではどうぞ


 

刀奈によって、振り回れる1日も終わりを告げ私は実家での最終日を道場で過ごすことにした。

今日も総ちゃんはどこかへ出掛けてしまい、透は透で綺凛ちゃんの家にお邪魔するとか。

てなわけで、完全に手持ち無沙汰な私は道場に来るぐらいしかやることが無いのだ。

 

(……それにしても、門下生多くないかな?)

 

私が六花に行く前は、数十人しかいなかった門下生も今では数百人にまで増えたらしい。

母曰く、「誰かさんのせい」とのことらしいが我が家の門下生が増えるようなことをした人がいたのだろうか?

そんな疑問はさて置き、門下生の殆どは剣術を嗜んだことがある程度。あのレベルじゃ、六花じゃ通用しない。

 

(………あの子…)

 

私の目を引いたのは、つい先日見たばかりの刀奈と同じ水色の髪をした少女だった。

私は出来るだけ気配を消して、その子に恐る恐る近付き声を掛けた。

 

「………ねぇ、あなた更識晶さんだよね?」

 

「ひゃっ!?」

 

少女は私が急に現れたことで、驚いてしまった。

その声に反応して、周りの門下生も私へと視線を向ける。

 

(………不味い)

 

そう思い少女の手を引き即座に退散しようと思ったのだが…

 

「「「「「さ、桜姫様っ!?」」」」」

 

盛大に2つ名を呼ばれてしまい、逃げるに逃げられなくなってしまった。

 

「…どうも。」

 

「す、すげぇ。本物だ」

 

「綺麗…」

 

「あれが六花最強の剣士……」

 

羨望の眼差しだとしても、これだけの大人数の視線を集めるのはあまり気分が良くない。

私の性格が悪いのだが、あまり長居したいとは思えなかった。

 

「……あの、聖奈さん。この子少し借りても大丈夫ですか?」

 

私は直ぐにここから離れるため、東雲流の師範代をしている轟聖奈さんに確認をとる。

 

「えぇ。私よりもお嬢様が教える方がいいですからね」

 

「ありがとうございます。それじゃあ、ちょっとこっちに来て」

 

私は聖奈さんに頭を下げ、少女の手を引いて道場から出た。

 

 

 

私は道場から出てすぐにある、東雲家の鍛錬場の方に少女を連れてきた。

 

「ふぅ。ごめんね?勝手に連れてきちゃって」

 

少女は未だに戸惑っているのか、1度息を吸い込む。

 

「……フゥ。いえ、東雲さんと話せるなんて夢みたいです!」

 

「あ、ありがと。それで、あなたが更識晶さんであってるよね?」

 

「は、はい!先日は姉がお世話になりました」

 

とてもあの刀奈の妹とは思えないほど、礼儀正しく落ち着いた子。

唯一刀奈と似ているのは、まだ小学生とは思えないその胸元ぐらいだ。

 

「そっか、良かった。私、君に会いたかったんだよ」

 

「え!?私にですか?」

 

「そう、君に」

 

私の言葉に再び驚いたのか、目を見開いて固まってしまっている。

 

「………おーい。」

 

目の前で手を振りながら声をかけると、瞬きを数回して漸く元に戻った。

 

「あ、すみません!そ、それで東雲さんが私に何用でしょうか?」

 

「琴音でいいよ、その顔で東雲さんって呼ばれるのもなんか違和感あるし」

 

この子の顔も含め、更識家の姉妹はどうしてこうも顔が似るのだろうか。

 

「あ、分かりました。それでは、琴音さんで。そ、その…私のことも下の名前で呼んで欲しいのですが…姉も居ますし分かりずらいと思うので……」

 

「うん、分かった。晶ちゃん」

 

ボンッ。そんな音でも聞こえて来そうなほどの勢いで、晶ちゃんの顔は真っ赤に染めあがった。

 

「大丈夫……?」

 

「は、はい!!」

 

私に話しかけられたことでもう一度平静に戻ったのか、晶ちゃんは少しばかり落ち着いたようだった。

 

「えっとね、晶ちゃんに会いたかった理由なんだけどただ単に私が晶ちゃんの実力を知りたかっただけなんだよね」

 

「そ、そうですか」

 

「うん、さっき晶ちゃんの素振りを見てたけど凄かった。一刀一足がしっかりしてたし、キレも良かった。」

 

晶ちゃんは褒められ慣れてないのか、少し照れ臭そうに私の話を聞いていた。

 

「それでね、もし晶ちゃんがもう少し上を目指したいならもう1段階上のことを私が教える。本当は今日で戻る予定だったんだけど、晶ちゃんに教えるために目一杯ここに残るよ」

 

晶ちゃんは基盤である素振りは既に完璧だった。

だが、あれだけ完璧であると完璧であるが故に勝負になると勝てない。

 

「それに、もし私が教えることが出来るようになったら私があなたを特待生として推薦するように生徒会長に頼むよ」

 

晶ちゃんは来年度の入学としか言っていなかった。

だが、特待生となれば色々優遇されることも多くなるし何より純星煌式武装も優先的に使える。

 

「………特待生とか関係なく、私!琴音さんの指導受けたいです!」

 

「…そっか。それじゃあ、この夏休みで刀奈をギャフンと言わせるぐらい強くなろう!」

 

「は、はい!!」

 

私の言葉に、晶ちゃんはとてもいい笑顔で返してくれた。

 

 

「それじゃあ、まずは木刀じゃなくてその腰に差してる真剣で素振りしてみてくれるかな?」

 

「は、はい」

 

晶ちゃんは木刀を丁寧に壁に立て掛けると鞘から刀を抜き中段に構えた。

 

(………あれは確か【雪羅】)

 

晶ちゃんが持っている刀は、更識家にある名刀の中でも比べ物にならないほどの名刀である。

 

スッ

 

(……うん、やっぱり綺麗)

 

晶ちゃんの素振りには一切の無駄もなく、風を切る音以外何も聞こえないほど鋭かった。

 

「うん、やっぱり綺麗だね」

 

「あ、ありがとうございます」

 

チャキッ

 

「それじゃあ、いきなりだけど私の手合わせしよう」

 

「あ、はい!!」

 

私が構えたことで、晶ちゃんも慌てて構え直した。

 

「それじゃあ行くよ、、はじめ!」

 

キィンッ

 

私の掛け声と共に、素直に振り抜いてくる晶ちゃん。

私はそれを難なく受け流し、一旦間合いをとる。

 

(……速さは綺凛ちゃんと同じ。技のキレは少し劣るかな)

 

晶ちゃんは私が距離をとったことで、少し戸惑っていたがすぐに距離を詰めてきた。

 

ガキィン

 

「……これで終わり」

 

私は先程同様切りかかってきた晶ちゃんの刀を弾き、首筋に刀身を当てた。

 

「参りました……」

 

手合わせとはいえ、簡単に負けてしまったのが悔しかったのか晶ちゃんはとても落ち込んだ様子だった。

 

「……うん。やっぱり、晶ちゃんは強くなるよ」

 

「え?」

 

晶ちゃんは私の言葉に信じられないと言った様子で、こちらを見ている。

 

「確かに今のままなら、六花じゃ勝てない。つまり、晶ちゃんの剣は素直過ぎるんだよ。確かに剣道なら、それでいいのかもしれないけど、実践じゃ素直な剣は相手には届かない。だから、私が晶ちゃんに剣術ってものを教える。ちゃんと着いてきてね?」

 

「はい!」

 

(………この年にして、あの速度と技のキレ。ひょっとしたら、ひょっとするかもね)

 

私と晶ちゃんの長い夏休みは、これから始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





今回で夏休み編は終わりの予定です

次回から新学期→獅鷲星武祭という形で行きたいと思います
また原作に戻り、他作品と似てしまう気がしてきていて書くのが若干億劫になりますが頑張って書こうと思います…


それではまた次回!



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70話


更新ペース落としてごめんなさい…。

他作品との同時進行を理由にするつもりはありませんが、進撃の巨人の新作を書き始めたことで少しそっちで時間をとられてしまっているのが原因です…。

ただ僕としては中々の出来だとおもっているので、よろしければそちらも読んでくださると嬉しいです!


それでは、本編〜レッツラゴー!!


 

晶ちゃんとの長い稽古も終わりを告げるとともに、夏季長期休暇という名の夏休みも終わり、私たち学生は新学期を迎えた。

 

(……そう言えば、刀奈どうしたんだろ)

 

この夏休み明けの新学期から、星導館か界龍に編入すると言っていた親友だがあれ以来どちらかに決めたという報告はなく、晶ちゃんに聞いても「秘密です」との一点張りで結局分からずじまいに終わった。

 

「えー、今日から新しい編入生が入ることになった」

 

新学期早々の担任によるその一言によって、私の平穏無事な学園生活は完全に瓦解した。

 

「それじゃあ、入ってこい」

 

ガラガラ

 

担任に呼ばれて入ってきたのは、見覚えのある水色の髪。そして、ムカつくほどに成長している上半身。

 

「どうも、更識楯無です♪よろしくお願いしますね?」

 

もはや、恒例となっている初見殺しの猫被り。

刀奈の元来持っている人懐っこさを最大限にまで引き出したこの技。

あの顔、あのスタイルであんなことされたら男女関係なくひとたまりもないだろう。

事実、教室の半分以上が既に刀奈に釘付けである。

 

「そうだな……更識はあそこの東雲の隣の空いている席にでも座ってくれ。」

 

今まで埋まることのなかった、私の隣は最悪の形で埋まることとなった。

 

「はーい」

 

そう言って、刀奈は周りの視線を釘付けにしたまま私の隣の席へと座る。

 

「よろしくね?東雲さん」

 

「え、あうん。よろしくお願いします」

 

まさか刀奈から苗字で呼ばれるとは思っていなかった私は、一瞬呆気に取られてしまった。

 

「よし、それじゃあ始めていくぞ」

 

それから、担任が何か話していたが私は殆ど何も覚えていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………それで刀奈。報告がなかったのはどういうことかな?」

 

新学期初めということもあって、授業なとが午前中で終わり私は誰も来ないであろう裏庭にて刀奈を正座させている。

 

「いやぁ………、サプライズの方が驚くかなって……」

 

(………そうだった。刀奈の性格、完全に忘れてた…)

 

刀奈の大好きなこと。それは悪戯であり、むしろそれを生き甲斐にしていると言っても過言じゃない。

 

「……理由は分かったよ……でもね?あれは酷くないかな?なんで、あんなに目立つことした後に普通に私に話しかけてくるの??あれじゃあ、私が目立っちゃうよ!」

 

今更何を言っている。

琴音のこの言葉を聞いた人、百人中百人がそう答えるだろう。

もちろん、刀奈も例に漏れずポカンと口を開けて呆然としている。

 

「………いや、琴音今更何を言ってるんですか?」

 

琴音にこんなことを言える人物。そんな人物は、そう易々と居るわけがなく星導館にも実質1桁の人数しかいない。

 

「……クローディア、どういうこと?」

 

琴音は、後ろから現れたクローディアに向かってそう言った。

 

[琴音は本気で思っているのでしょうか?]

それがクローディアの頭に真っ先に浮かんだ言葉であった。

しかし、クローディアがそれを口にする前にクローディアはある事も思い出した。

[琴音はかなりの鈍感の天然である]と。

それさえ思い出せば、地雷を踏むことは無い。

 

「いえ、琴音は星導館の序列1位なのですから目立たないはずがないでしょう。」

 

「……………あ、そうだった……。」

 

クローディアに言われ、漸く理解した琴音だが時既に遅し。

振り翳してしまった怒りというのは、落とし所に迷うものなのである。

琴音は少し考えたあと、名案が閃いたかのように嬉しそうな顔をして刀奈にこう言った。

 

「………そうだ、たっちゃんが序列1位になれば全部解決…………」

 

「いえ、却下です」

 

琴音の渾身の案は、クローディアによって最後まで言い切ることなく終わった。

ちなみに、なぜ琴音「たっちゃん」と呼ぶかというと刀奈の今の名前は更識楯無。つまり、刀奈という名前は外では呼んではいけないのだ。

その結果、楯無じゃ堅いということもあり「たっちゃん」に落ち着いた。

 

「それは以前にも言いましたが、琴音はもう星導館の象徴なんですから貴方が卒業するか、もしくは序列戦で惨敗しない限りは序列1位の譲渡は私が認めません」

 

「……そんな…………」

 

クローディアの言葉にがっくりと肩を落とす琴音。クローディアの言う通りならば、序列戦でボロボロに負ければいい話なのだがそれは琴音の剣士としてのプライドが許さない。

簡単な話、琴音は決闘だろうが模擬戦だろうがわざと負けるということが出来ない。

 

「………序列戦?なにそれ」

 

肩を落として落ち込んでいる琴音を他所に、刀奈は初めて聞く[序列戦]という言葉に疑問を感じていた。

 

「……更識さん、序列戦を知らないんですか?」

 

「うんまぁね。最低限の知識はあるんだけど、何せ六花とは程遠い生活してたからさ」

 

「あ、そうだったんですか…。」

 

クローディアは刀奈に若干不安を感じつつも、刀奈に丁寧に説明をした。

 

「へぇ、面白いシステムだね。」

 

「面白いかわかりませんが、大まかにはそういうことです。後、特待生である更識さんは純星煌式武装の検査が優先的に出来るのですがどうしますか?」

 

「たっちゃんなら、要らないと思うよ。もう持ってるから」

 

クローディアの質問に答えたのは刀奈ではなく、いつの間にか復活していた琴音。

 

「…そうなんですか?」

 

「えぇ♪」

 

(……正直あれはちょっと狡いからね。)

 

刀奈の純星煌式武装は、技の威力も能力の汎用性もかなり高い。

それに加えて、刀奈の元々の実力を加味すればクローディアと同等かそれ以上。

今期の序列戦は荒れそうである。

 

「それじゃあ琴音、また後でね〜」

 

そう言って先程まで正座させられていた刀奈は逃げるようにして、どこかへ行ってしまった。

 

「……また独特な個性を持つ方が増えましたね」

 

「……たっちゃんを呼んだのは、クローディアでしょ?大丈夫、単純な戦闘能力だけなら総ちゃんと引けを取らないから。」

 

「………そうですか。それなら、安心ですね」

 

私の思った通り、刀奈は編入して直ぐに冒頭の十二人入りを果たすことになるがそれはまた少し先の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ただいま……って、刀奈っ!なんでここにいるの!?」

 

「あっおかえり〜、私と簪ちゃんお隣に住むことになったからよろしくね?あと、来年からは晶ちゃんも」

 

[唯一の平穏であった自宅すらも、安心して過ごせそうにない。]

そう、私は確信した。

 

 

 

 

 





これからも、これぐらいのペースになると思いますのでご了承ください。

あと、今回少し三人称視点と一人称混ぜてみたのですが読みにくいなどありましたらよろしくお願いします


それではまた次回〜


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71話

大分、間が空いてしまってごめんなさい。

学校が始まってしまい、色々忙しくなってしまってあまり執筆の時間がとれませんでした。

多分、これからもこれぐらいのペースになってしまうと思いますが何卒宜しくお願いします。


それでは本編へ、レッツラゴー


刀奈たちが隣に引っ越してきて、さらに減った私の静かな空間。

簪ちゃんがいなければ、あれよりも酷くなっていたかと思うと簪ちゃんには感謝してもしきれない。

 

(……私の唯一の至福)

 

結果、私が静かに過ごせるのは私に与えられている訓練室のみ。

尚且つこの訓練室はどんなことがあっても20度ぐらいに室温が保たれるようになっていて、私が卍解して幾ら室温を下げても直ぐに室温を元に戻してくれるという優れ機能付き。この機能がついて以来、私が卍解しても六花の気温に影響を与えることも少なくなったので安心して卍解の訓練が出来る。

 

「……琴音〜!!」

 

そんな声とともに、私の訓練室に入ってくるのは勿論刀奈。

 

「うへぇ、この部屋寒いね」

 

刀奈は訓練室に入ってくるなり室温に愚痴るが、私にはとても過ごしやすい室温だった。

むしろ、これ以上高いと暑くて過ごしにくい。

 

「………いいの、私はこれぐらいが好きなんだから。それで、刀奈はなんの用なの?」

 

琴音は自分の個人スペースを侵害されたため、若干不機嫌そうに刀奈に聞いた。

幾ら刀奈や総司であろうとも、琴音は自分の領域を侵害されるのを好まない。

 

「あっ、いやね……鍛錬しようと思ったんだけど、私の純星煌式武装は本番以外は人に見せない方がいいって琴音に言われたからクローディアに聞いて琴音の所に来たんだけど………」

 

刀奈は琴音が不機嫌なことを察したのか遠慮気味だった。

 

「…………そう言えばそうだったね。ごめんね?不貞腐れたように言って。」

 

今回ばかりは私が悪い。

ただ日頃からこれぐらいは、刀奈にも遠慮というものを覚えて欲しいものである。

 

「あ、でも、少し待たないと刀奈の純星煌式武装の能力使いにくいかも…」

 

先程まで卍解の訓練をしていたため、未だに室温が低くて所々に氷の華が存在しているため刀奈の純星煌式武装の能力を使うにはあまり良いコンディションとは言えない。

 

「あ、うん。それじゃあ、少しだけ外で待たせてもらうね」

 

「別に中でもいいよ?」

 

刀奈は私の質問に苦笑いすると、そのまま訓練室の外へと出ていってしまった。

 

(………はて?どうしたんだろ)

 

私の疑問は募るばかりである。

 

 

 

(…………琴音、よくあんな部屋にずっと居られるわね…)

 

刀奈は夏明けだと言うのに、10度の室温の中で適温と言える琴音の感覚を疑った。

 

 

 

 

 

 

 

「刀奈ー、もういいよ」

 

氷の華も溶け、室温が少し暖かくなってきた所で刀奈を呼び入れた。

刀奈は訓練室に入ってくるなり、少し身体を震わせていたが琴音には理由がよく分からなかった。

 

「……やっぱり涼しいんだね、ここ。」

 

「そう?少し暖かいと思うけど…?」

 

「ううん……なんでもない」

 

刀奈は私に目をやると、ポケットから純星煌式武装を取り出し構えた。

 

「………ふぅ。」

 

刀奈一つ息を吐き、集中を高める。

私は邪魔にならないよう千本氷花で壁を作って、お茶を入れて見学することにした。

 

(………よくあんなに槍を操れるなぁ)

 

刀奈の純星煌式武装である蒼流旋は簡単に言えば水を纏った槍。

私の千本氷花が大気中の水分を凍らせるのならば、刀奈は大気中の水分を使って攻撃をすると言った感じである。

これだけを聞けば、圧倒的に分があるのは私の方だと思う人も多い。だが、純星煌式武装というのはあまりそう言った一般常識が通用しない部分が多々ある。

私の千本氷花が、母の流刃若火の前でも凍らせる能力を使えたこともその影響。

それに、刀奈の場合はただ大気中の水分を水として使うと言うよりは大気を振動させていると言った方が正しいかもしれない。

なんにせよ、私の方が少し有利なことには変わりないのだけど。

 

パアァン

 

そんな破裂音と共に爆発が起こり、刀奈は蒼流旋を下ろしこちらへと歩いてきた。

 

「ありがとね!琴音!」

 

「もういいの?」

 

お茶を啜りながらずっと刀奈の動きを見ていたが、殆ど動きの確認のような動作のみで本格的な技は最後の[クリア・パッション]のみ。

確かに1番の大技をここでやられたら、幾ら銀河自慢のこの訓練室でも蒸発しかねないけど。

 

「うん、あとは序列戦でのお楽しみってことで」

 

「そう言えば、あったね…。」

 

序列戦があることなんて完全に忘れていた。

一学期を終え、新入生も学園に慣れたこの時期に毎年やっている序列戦なのだが何故か毎年私は戦うことなく終わる。

あの総ちゃんですら、何人か挑んで来て貰えるのに私には1人もいない。

 

「まぁ、琴音には挑まないけどね♪」

 

「…………それじゃあ、誰に?」

 

「えっとね…、誰だっけ?あのやたら、話しかけて来る人。確か………天霧?だっけ?」

 

転入初日から、クラスに溶け込んでいた刀奈だが私と仲が良いとバレて以降みんな急に腰が低くなったとこの間ボヤいていた。

そんな中でも、転入初日から薄っぺらい笑顔を浮かべ妙に優しくしてくる元転入生くんのことは時々面白そうに話をしていた記憶がある。

私自身は、彼のことがあまり好きではないが友達の好みまで左右するつもりはなく刀奈が彼のことを気に入ったのならそれはそれでいいと思っていたのだけど。

 

「……刀奈…彼と仲良いんじゃなかったの……?」

 

「え?そんなこと言ったっけ……?」

 

刀奈は記憶にないかのように人差し指を口にあて、小首を傾げている。

 

(…………あざとい…)

 

こんな姿を男子生徒の前でやった日には、多分刀奈に惚れない人はいない。

恋愛に疎い私ですら簡単にわかる。

 

「………あー、思い出した!だってね?彼、下心隠してるつもりなんだろうけどバレバレで面白かったんだもん」

 

(………この悪女め……)

 

彼としては多分好印象だと思っていただろう。

確かに相手がこの悪女でさえなければ、その予感は確実に的中していたに違いない。

ただ相手が悪かった。

 

「……そう………。別にそこはいいんだけど、なんで彼と?一応序列4位だよ?」

 

星導館の序列は基本入れ替え。

その中でも、彼は一応序列4位を守り続けている。序列1位の私は全く、序列2位の総ちゃんはほんの少し、序列3位のクローディアは総ちゃんよりも少ない人数しか毎回挑まれないため結果4位の彼にはかなりの人数が挑んでいる。

基本的に序列外の人間は冒頭の十二人には挑めず、挑むとすれば冒頭の十二人から申請する他はないため基本的には不可能である。

 

「彼、少しお願いしたら喜んで申請してくれたわよ?」

 

(…………それでいいのか、天霧辰明流……)

 

私はその現場を見ていないが、目に浮かぶようにその現場を想像することが出来る。

元来、人懐っこさでは刀奈の右に出る者はいなかったが、今ではその順調に成長しすぎた2つの丘を用いて男を落とせないなんてことはないらしい。

 

「……そのうち痛い目見るよ?」

 

「嫌ね、何を想像したのかしら?琴音。私はただこうやってお願いしただけよ♪」

 

そう言って刀奈は私より少し目線を落とすと、その体制から伝家の宝刀と言わんばかりの上目遣いをしてきた。

 

(…………うっ)

 

女の私ですら少し見惚れるほどのクオリティ。

正直狡いと思う。

 

「ねっ?イヤらしいことはなにもしてないでしょ?」

 

「………うん、そうだね」

 

イヤらしいことかそうじゃないかと言われれば、そうじゃないという方に軍配が上がるだろう。

ただこれをやられた時の男子の心境を考えるのならば、前者に軍配が上がってもおかしくはないような気もする。

 

「よし!それじゃあ、序列戦楽しみにしててね♪」

 

刀奈は元気一杯といった様子で手をぶん回しながら、廊下を駆けて行った。

 

(………私も序列戦、参加したいなぁ)

 

私のこの願いが通じたのか、数日後私は驚かされることとなるがまだこの時は知る由もない。

 

 

 

 

 

 




刀奈のキャラ、上手く出すのがかなり難しいです…。

お姉さんキャラと悪戯っぽさを兼ね合わせるのって、本当に難しいです…。


あと、fgoのイベントを完全に忘れてしまいクリアできなかったことがとてもショックです……。

それではまた次回!


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72話

更新ペース、当分これ以上あがらないと思います。
ごめんなさい。

土日はもしかしたら、投稿出来るかもしれませんが他作品含め2話が限界なのでご了承ください。



それでは、本編へ~レッツラゴー!


何の変哲もない日々を過ごしているうちに、気付けば序列戦の期間を迎えた。

 

「いやぁ、遂に来ましたね~」

 

「うん、そうだね…………ところで総ちゃん、何を食べてるのかな?」

 

冒頭の十二人の序列戦というのは大抵最後の方に行われるため、私と総ちゃんは冒頭の十二人に与えられた観戦室で試合を観戦することにした。

この部屋には普通にお菓子など様々なものが揃っているのだが、総ちゃんが持っているソレはそこらで手に入るような代物には私には見えなかった。

 

「……え……えっとこれはですね……」

 

「…それってさ、まさかこれじゃないよね?」

 

私はポケットから1枚の紙切れを出し総ちゃんに見せた。

 

「……………う…っ……」

 

私が見せた紙切れには『京都の老舗 栄のわらび餅』と書かれている。

これは先日、私の実家からわざわざ送ってもらったもので総ちゃんには食べられる気がしたので秘密に隠しておいたものだ。

 

「………確かに総ちゃんに言わなかった私も悪いよ?けどね?誰のものかも分からないものを勝手に食べるのは良くないと思うんだよね、私」

 

私は総ちゃんが逃げ出さないように1歩ずつ、敢えてゆっくりと総ちゃんへと近づく。

 

「え、えぇ。沖田さんもそう思いますよ!!」

 

総ちゃんは私とは決して目を合わせず、冷や汗のようなものをタラタラ流している。

 

「………そっか。それじゃあお仕置きしてもかわまないよね?」

 

私は千本氷花に手をかけ、総ちゃんの目の前に立つ。

生憎、他の冒頭の十二人はまだ来ていないので今ならやりたい放題やれる。

 

「………い、1回落ち着きません?……ひっ、逃げるが勝ち!」

 

総ちゃんは私が刀を抜く前ならば逃げられると踏んだのか、その場から素早く逃亡を図った。

 

ピキッ

 

だが、私がそんなことを許すはずもない。

 

「………甘いなぁ、総ちゃん。いつから、私が刀を抜かなきゃ能力を使えないって錯覚したのかな?」

 

実際、鞘にしまったままでも凍結の能力だけは使えるようになったのはつい最近のことだが今はそんなこと関係ないだろう。

 

「………お、お許しを!」

 

総ちゃんは凍りついた足をなんとか動かそうともがいているが、中々動き出せないようでその顔からは焦りが垣間見える。

私はそんな総ちゃんに向かって、できる限り微笑んでこう言った。

 

「…………………総ちゃん……………ダウト」

 

「ひえぇぇぇぇぇぇ!!」

 

この総ちゃんの悲鳴を聞いたクローディアが来るのにそう時間が掛からなかったのは言わなくてもわかるだろう。

 

 

 

 

 

「全く、琴音も琴音です!!」

 

あの後、10分もしないうちにクローディアがやって来て総ちゃんを正座させた。

私はクローディアが来てしまったため、何も出来ないと思いその場から立ち去ろうとしたのだが何故かクローディアに引き留められ私まで正座させられてしまった。

 

「……確かにやり過ぎたけどさ……」

 

クローディアが珍しく怒っている理由は至って簡単。

ここ、冒頭の十二人に与えられた観戦室を小一時間は使用できないほどの低温にしてしまったためである。

 

「………食べ物の恨みは深いって言うし…………」

 

「そういう問題じゃありません!!」

 

また怒られてしまった。

私にしてはかなり我慢した方である。刀も抜刀していないため氷の華もないし、所々に霜が張っているがそれも1時間もすればスグに元通りになるレベルだ。

 

「……はぁ。兎に角、あなたたち2人は自分の番が来るまでここで大人しくしていてください!!寒くても自業自得です!」

 

「………クローディア……正気ですか?凍死してしまいますよ!」

 

先程まだ氷漬いたように固まっていた総ちゃんが急にクローディアに凄い勢いで反論を始めた。

 

「…別にいいけど?過ごしやすいし」

 

私は総ちゃんが反論している意味は分からず、素直に率直な感想を述べた。

 

「……大丈夫ですか?琴音?病院に行くなら今すぐにでも連れていきますよ!?」

 

私の感想を聞くなり、クローディアは驚いたように私の肩を揺さぶって聞いてきた。

 

「…………なんで?」

 

私はクローディアの言っている意味が分からず、小首を傾げていると何やら総ちゃんがクローディアの耳元に駆け寄り何かを囁いた。

 

 

 

総ちゃんがクローディアの耳元から離れると、何やらクローディアは納得したように頷き私に「まだまだ琴音の順番には時間があるのでここでゆっくりしていてください」と言って震えている総ちゃんを連れて出ていってしまった。

 

(………はて…どうしたんだろ?それに私の順番って、私の対戦相手がいた事すら知らないんだけど…まぁいっか、それより誰だろうなぁ)

 

もしも対戦相手がいた場合のために毎回ここに来るだけ来てはいたのだが、まさか対戦相手がいるとは思わずその衝撃の事実に未だに私は喜びが爆発しそうであった。

 

(………それにしても暇だなぁ。まだ序列の下の方の人たちだし、眠くなってきちゃった………)

 

私は勝てそうにない睡魔との戦いを戦う前から諦め、念の為千本氷花の能力を発動させ自分の周りの室温を最適な温度まで下げ、千本桜に周りの警戒を頼み睡魔に従って瞼を閉じた。

 

 

 

 

私が目を覚ましたときには、既に冒頭の十二人の序列戦が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 




序列戦を書くはずだったのに、いつものような駄べり話に………。

次回は多分、序列戦なのでお楽しみに!!


あと、これからは更新していく話をお気に入り数とか感想によって決めようかと思うので楽しみな方いましたら感想、お気に入り登録の方お願いしますね!
あとは作者の気分次第なのでこの作品と進撃とSAOに関しては最近モチベが高いので更新の可能性は高いです!!


それではまた次回


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73話

どうもお久しぶりです?

最近、どのタイトルの2次作もクオリティが高く自分のクオリティの低さに萎えてる日々です。



今回、戦闘シーンという点ではかなり物足りないとは思いますがよろしければ読んでいってください



それでは本編どうぞ!




今回、冒頭の十二人で戦いが組まれているのは私が知っている限りで計4名。

そのうち、対戦相手を知っているのは天霧くんのみなので他の総ちゃん、ユリス、そして私の対戦相手は未だに分からない。

 

(………それにしても、彼顔がニヤけてるのは気の所為だよね…?)

 

冒頭の十二人の序列戦、最初の登場は天霧くん。対戦相手はもちろん刀奈である。

刀奈の対戦相手である彼は普段こそあれだが、剣術については少なくとも真剣に向き合っていると思ってたんだけど…。

 

(あれは完全に舐め切ってる…)

 

少し離れたここからでも分かるほど、彼から発せられる空気には緊張の欠片もない。

序列4位という肩書きがある以上、相手を油断させる必要など無いわけで彼が相手を舐め切っているのは明らかである。

 

(………瞬殺かな)

 

彼の醸し出している舐めた空気に刀奈は気が付いているだろう。

刀奈は戦闘という面に置いてそう言ったことを許さない。

「手加減して相手をするということは相手に対して失礼である」

それが私と刀奈が武術を教わるときに1番最初に教えられたことだから。

 

『Start of duel』

 

開始のアナウンスとともに動いたのは刀奈ではなく、対戦相手である彼。

もちろん、黒炉の魔剣ではなくただの煌式武装を構えている。

 

(………刀奈相手にそれは愚策だよ、きみ)

 

彼は開始と同時に動き出し、一気に刀奈との距離を詰めにかかっていた。

対する刀奈はただ"水を纏った"純星煌式武装を持ち立っているだけ。

 

パァッン

 

彼と刀奈との距離が2mをきったところで、甲高い音とともに彼のいた場所が水蒸気爆発した。

 

(あれを避けるんだ…)

 

試合終了の合図もなく、水蒸気爆発によって起こった霧がはれると満身創痍と言った様子の彼が現れた。

刀奈が威力を下げていたということもあるだろうが、あの近距離から避けられたというのは流石なのかもしれない。

 

 

彼は今の1発で目が覚めたのか刀奈から距離を取り、彼のパフォーマンスだと思われていた封印を破ると改めて黒炉の魔剣を構えた。

確かに力を解放した彼の能力は制限こそあるものの、六花でも上位に食い込めるかもしれない。

だが、今回は相手が悪い。

力を解放した彼と刀奈の実力は多分そう大差ない。だけど、刀奈の純星煌式武装【蒼流旋】には一撃必殺とも言える技がある。

その技の唯一の弱点は発動までに条件があり、その条件を満たすには時間を有することがある。

だが、今の会場には先程霧が発生するほど水分が満ちている。つまり、この試合刀奈に圧倒的に分がある。

 

「………それが君の甘さだよ」

 

私は勝負の決まった試合を最後まで見届けることなく、自分の試合に向けて精神統一をするため控え室の方へと向かった。

 

 

 

『end of duel』

 

『勝者 更識楯無』

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

「………ふぅ」

 

自分の控え室に着き、ずっと瞑想をしていたが近付いてくる気配によって私は瞑想を中止した。

 

「琴音、入りますよ?」

 

「………どうぞ」

 

瞑想を邪魔され若干不貞腐れて返答してしまったが、クローディアは何も気にした様子もなく控え室に入ってくる。

 

「お邪魔してしまったようですね。念の為、琴音の対戦相手を伝えに来たのですが」

 

私の姿勢を見るなり、クローディアは私がしていたことを理解したようで申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「あ、いや私こそごめん。それで対戦相手は?」

 

今の今まで教えて貰えなかったせいである意味私にとって最重要事項となっている対戦相手。

私の了承がないということは多分冒頭の十二人の誰かであるはずなのだが。

 

「琴音の今回の対戦相手は、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

序列2位沖田総司です。」

 

私はその名前を聞いた瞬間、思わず口角が上がってしまった。

 

 

 

 




今回、少し短くなってしまいましたがキリがよかったのでごめんなさい


次回の投稿もできる限り早くしたいと思うのでお楽しみに!!


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74話


かなり間が空いてしまい本当にごめんなさい。

最近、忙しくて中々執筆が出来ませんでした


受験勉強もそうなんですが、君の膵臓をたべたいのアニメ映画が公開中ということで2度も見に行ってしまいました。
やっぱりあの作品は素晴らしです!
多分、僕の知っている作品の中で1番感動する作品だと思いますので、まだ見に行っていない方は見ることをお勧めします!!


それでは本編、短いですがどうぞ!


 

クローディアから対戦相手を報された私の意識は、既に総ちゃんとの対戦のみに集中していた。

それこそ、私の前の試合になど興味が湧かないほどに。

 

(………いよいよ、総ちゃんか)

 

総ちゃんが六花に来てから今か今かと待ち続けていた総ちゃんからの挑戦。

自分の力が上だと自信を持って言えるわけじゃないが、立場的な問題もあって私から挑むつもりはなかった。

 

(…あの負けず嫌いの総ちゃんが挑んでくるってことは、確実に勝てるだけの切り札がある。私の卍解を総ちゃんが最後に見たのはお母さんとの戦いのときだからあの時の私に確実に実力は近いはず。)

 

夏休みに私と母との戦いを見て以来、総ちゃんは何処へ出掛けることが多かった。

つまり、総ちゃんはその間ずっと鍛錬に費やしていたのだろう。私を打ち負かす自信が着くまでに。

 

「………簡単に負けるつもりは無いけどね」

 

私は前の試合の終了のブザーと共に自分の控え室から出た。

 

 

◇◇◇

 

 

『さぁ今季序列戦もこれが最終戦となります!!最終戦のカードはこの2人!!我が学園序列2位、【瞬神】沖田総司!!!そして、その挑戦を受けるのは我が学園が誇る六花最強の剣士【桜姫】東雲琴音!!!』

 

いつもならば恥ずかしさすら感じる歓声も、今は気にもならないほど私は目の前にいる好敵手の存在を意識していた。

 

「…ちゃんと来てくれて良かったです」

 

「逃げるわけないでしょ?こんなにも楽しいことからさ」

 

私の言葉に反応して総ちゃんも顔に笑みを浮かべる。それも、いつもならば出すことの無い殺気を全面に出して。

 

(…………これは…………大変そう)

 

母や私と比べても遜色ないほどの殺気。

これだけでも、その実力が半端なものではないことがわかる。

 

「………始めようか」

 

「えぇ」

 

私と総ちゃんは自身の刀に手をかける。

 

『両者準備が整ったようです!!!それでは、試合開始です!!!』

 

『start of the duel』

 

『バトル、スタート!!』

 

試合開始の合図とともに、ステージ全体を凍らせる。

 

(………捉えきれないか)

 

試合開始の合図とほぼ同時にステージ全体は凍りついたが、それでも総ちゃんは一瞬の判断で空中へと逃げていた。

 

(それでも、あの地面じゃ総ちゃんのスピードは活かせないはず………?)

 

凍りついていたはずの地面に着地した総ちゃんはまるで、地面が凍ってなどないかのようにその場に立っている。

 

(………まさか………お母さんが………)

 

総ちゃんの足元の氷は元々なかったのではなく、総ちゃんによって溶かされていた。その証拠に総ちゃんの足元からは蒸気のようなものが上がっている。

私の冷気がステージを包んでいる中、私の氷を溶かせるのは私は母の流刃若火の能力以外しらない。

 

(……お母さん、それは少しばかり酷いと思うんだけどなぁ)

 

凡そ東雲家の技術を結集でもして作ったのだろう。

母は流刃若火の能力を1番よく知る人物でもあるし、尚且つ当主である私が知らないということは母の命令だろう。

 

勝負に置いて、他人の手を借りることを嫌う総ちゃんが知恵だとしても他人から力を借りた。その事実が、私にとってはとても嬉しかった。

 

「………総ちゃん本気なんだね…」

 

「………えぇ、今更気が付くなんて琴音も甘いですねぇ」

 

「……………でもね…………私の氷をその程度で防げると思わないで」

 

私は刀を鞘から抜き、地面へと突き立てた。

 

「……卍解………氷帝桜花」

 

 

 

 



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75話



随分とお待たせして申し訳ないです。

中々時間がないので、このぐらいの間が空くかもしれませんがご了承ください


それでは本編どうぞ!


 

「…卍解 氷帝桜花」

 

 突き立てた刀を中心にステージ全体が凍りつき、会場を冷気が包み込む。

 

「くっ」

 

 いくら技術力で私の氷を溶かしても、溶かした瞬間に凍りついていく。私の氷が総ちゃんの足場を奪うのにそう時間はかからなかった。

 

「総ちゃんアイディアは良かったけど、まだまだ甘いよ。貴方の1番の武器である速さはもう使えない」

 

「……えぇ、そうですね。でも、それは琴音も同じなのでは?」

 

 総ちゃんの言う通り、この状態では私もいつもの様に動くのは難しい。ならば、なぜわざわざそんな状況にしたのか…それは私は動く必要がないから。

 

「………うん。でも、私は動く必要なんてないから。」

 

「…氷帝 桜吹雪」

 

 数億枚の桜の花びらが絶対零度の冷気を纏って飛んでいく。少しでも掠るだけで傷口から凍りつく、今の総ちゃんじゃ確実に避けられない。………そう思っていた。

 

(………あー、そうだった)

 

 桜吹雪が止み、煙が晴れると総ちゃんがいた場所には若干総ちゃんの面影を残した人物が立っていた。

 

(………へぇ、あんな見た目になるんだ)

 

 煉獄を使った総ちゃんの姿を見たのは初めてだった。

 煉獄を渡して以来、完全に使いこなせるようになるまでは私の前では使わない。そう言って総ちゃんは私の前で煉獄を解放することはなかった。

 そんな総ちゃんが解放したということは完全に使いこなせるまでに仕上げてきたのだろう。

 

「………へぇ、楽しみだ」

 

 主従関係や序列など気にすることなく、ただの東雲琴音としてただただ楽しみで仕方がなかった。ー自分と同等の相手と戦うということは。

 

「…………参る」

 

 総ちゃんは煉獄を水平に構え、私へと切っ先を向ける。

 

 ガキィン

 

「………速っ」

 

 一瞬。

 凍りついているステージの上を、私の知る限り最も早い速さで私の目の前まで総ちゃんは辿り着いた。

 

(………参ったな)

 

 総ちゃんの速さを奪う為に凍りつかせたステージも、理由は分からないが普段と変わらぬ速さで動ける総ちゃんの前では私の足枷にしかならない。

 

「………解除」

 

 ステージの氷を全て水蒸気へと変え、普段のステージの姿へと戻す。

 だが、それでも現状は変わらなかった。

 私は、自分よりも速い相手とは戦ったことが無かった。あの母でさえ、私の速度を超えることは無かったし自分自身速度が自分の武器だと思っていたからこそ、自分よりも速い存在と戦う想定なんてしたこと無かった。

 

「………くっ」

 

 防戦一方。

 そんな言葉が頭に過ったのは私だけではないだろう。この試合を見ている生徒全員がそう思ったはず。

 それほど、私は総ちゃんの速さについて行くのがやっとだった。

 

(……お母さん、許してね)

 

 速さにプライドがない訳じゃない。ただそれ以上に、プライドを優先してこの好敵手に負ける。そんなことだけはしたくなかった。

 

 総ちゃんから一瞬距離をとり、総ちゃんとの間に氷で壁を作り出す。

 

「……霧幻の桜氷帝」

 

「…………まだ上があったんですね」

 

「まぁね」

 

 出し惜しみするつもりなんて更々なかったが、使わなかった理由はただ一つ。この状態、加減なんてものは効かず相手はもちろん周りへの影響も想像がつかない。

 ただ1つ分かっているのは、卍解の能力を遥かに上回るってことのみ。故に母によって、普段は禁止されていた。

 

「……舞え、桜吹雪」

 

 先程とは質量が段違いの桜吹雪がステージ全体を包む。

 

「………これで果てて。」

 

 ズドォォォン

 

 轟音とともにステージへと桜吹雪が雪崩込み、総ちゃんをその濁流へと引きづりこんでいった。

 

『・・・・・。』

 

 桜の濁流による轟音の後に残ったのは、嵐が過ぎ去ったあとのような静寂。

 校章破壊も、総ちゃんの意識の消失も何もアナウンスされなかった。

 

「…………うへぇ。」

 

 静寂に包まれていた会場は、桜の濁流が去ったステージに立っている総ちゃんの姿によって一気に歓声に包まれる。

 

「………痛たたた。今のは危なかったですよ、琴音」

 

「いや、私としては今ので決めたかったんだけど?」

 

 避けることなんて出来ない範囲だった。

 それでも総ちゃんは身体の所々が凍りついているものの校章の周りは殆ど無傷の状態だった。

 

「……それはそうとそろそろ決めさせてもらいますかね。これ以上、琴音がその状態ですと茜さんの負担が計り知れませんし」

 

「……どうりでか」

 

 卍解したときもそうだし、もう一段階解放したときもそうだったが周りの観客は寒がりさえすれど観客がいる場所が凍りつくようなことは無かった。つまり、私の能力のステージの外への干渉力が弱まっているということでその事が疑問で仕方がなかったが茜さんが居るとなれば全て納得がいく。

 

「……そうだね、そろそろ沈めてあげよっか」

 

「そうですね、これ以上寒いのは私も勘弁なので」

 

 忘れてはいけないが茜さんの能力の恩恵があるのはステージの外の話であってステージ内にいる総ちゃんには恩恵はない。

 そのため、総ちゃんは私の冷気の影響をもろに受けているわけである。

 

 総ちゃんと私はお互い、ステージの端っこへと移動し私が中央に作った氷柱が落ちてくるのと同時に動き出す。

 

「無量、無碍、無辺、三光束ねて無窮と成す」

 

「絶剱・無窮三段突き」

 

「……全て氷の華と化せ…」

 

「霧幻氷桜」

 

 

 

 

 

 

 

 





戦闘描写があまり上手くないのでこれが限界でした……。

上手くなるにはまだまだ時間がかかるかもしれませんが、長い目でお願いします。


次回も早く投稿出来るように頑張りますので、よろしくお願いします


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76話


更新ペースバラバラで申し訳ないです…。


思い付き次第、時間が作れ次第書いてるので誤字など多いかもしれませんが暖かい目でお願いします。




 

(……お嬢様、加減というものをお考えください…)

 

総司ちゃんとクローディア様からの依頼という形で、周りへの被害を防ぐため結界を張り続けていたが、お嬢様の干渉力に加えて、2人の全力の一撃になす術もなく私の結界は砕けてしまった。

 

(お嬢様は一体どこまでお強くなるつもりかしら)

 

私の疑問を他所に、会場にいる観客はこの一戦の勝者を大いに称えていた。

 

 

◇◇◇

 

「………はぁ、はぁ」

 

お互いの技による砂ぼこりが晴れたステージ。そこには煉獄を杖替わりに立つ総司と、桜に包まれて立っている琴音の姿があった。

 

 

 

「……なぜで…すか?沖田さんの技は当たっ…た…は…ず」

 

総ちゃんの言う通り、私は総ちゃんの一撃を喰らったにしてはあまりにも傷がなかった。

それどころか、今も尚桜に包まれているため傷は回復し続けている。

 

「うん、総ちゃんの技は確実に私を捉えていたよ。ただ、総ちゃんの技は私を倒すには足りなかった。」

 

総ちゃんは私の言葉の意味が分からないと言った様子でこちらを見ながら首を傾げる。

 

「私の最後の技。あれ、唯一千本桜と氷輪丸の合体技じゃないんだ。氷輪丸の方は言うまでもなくわかってると思う、問題の千本桜の方は攻撃ではなく私の防御に回ってるんだ、あの技。ただこの状態じゃないと出来ない技なんだけどね」

 

この状態だからこそ出来る、攻防一体の私の一撃必殺。

とはいえ、総ちゃんの煉獄による攻撃は拒絶の力を付与した千本桜だけじゃ防ぎきれず、喰らった直後はかなり危なかった。

 

「……そうですか……琴音の壁はまだまだ高いですね……」

 

ドサッ

 

『沖田総司 意識喪失』

 

『勝者 東雲琴音』

 

「……主が負ける訳にもいかないよ、総ちゃん」

 

私は倒れてしまった総ちゃんを、駆け寄ってきた救護の人へと預け私自身も控え室まで辿り着いた時には倒れるように眠ってしまった。

 

 

◇◇◇

 

「………ん。ここは?」

 

控え室まで辿り着いた記憶はあったが、今私の目の前に広がっている天井は控え室のものではなかった。

 

「控え室で倒れていたので、僭越ながら救護室まで運ばせて頂きました。」

 

私の呟きにそう答えたのは、リンゴの皮を剥きながらこちらを微笑みながら見ている茜さんだった。

 

「あ、茜さん!?てっきり、もう戻ってるのかと……」

 

「えぇ。ですから、お嬢様にご挨拶をしてから戻ろうかと思っていたのですが控え室の方をお尋ねしたところあらぬ姿で倒れているお嬢様を見つけた次第でして、あのままでは色々危険だったので失礼ながらここへ運ばせて貰った次第です。ちなみ、総司さんもそちらに寝ていますよ。あと、これはクローディア様からの差し入れです」

 

「あ、ありがとうございます。今日は色々と迷惑かけたみたいで……」

 

茜さんは特に疲労を感じさせないが、あの試合中ずっと結界を張っていたのだから相当星辰力をすり減らしているはずなのだ。

 

「いえ、お嬢様たちが気兼ねなく戦えたのなら私は満足です。それにお嬢様のお綺麗なお姿を拝見出来ただけので充分な報酬は頂けましたから」

 

「………母に写真など送ってないですよね?」

 

総ちゃんとの戦いに集中していて忘れていたが、あの姿を観客全員に見られていたのだ。

あの最早雪女と言っても刺し違えないあの姿を。

 

「……………では、私はこれで」

 

「あ、茜さん!」

 

私が手を伸ばすよりも先に、茜さんの姿はなくなっていた。

 

(………行ってしまった………。これからどうしようかな……)

 

卍解の状態で能力を解放してしまったため、残念なことに今までの卍解を扱うということが出来なくなってしまった。

つまり、簡単な話。卍解する度にあの姿を晒さなければならなくなる。あの、白髪で長髪の最早私とも分からないあの姿を。

 

「……はぁ、憂鬱だぁ………」

 

憂鬱以外の何でもない。

ただでさえ、集団戦では使えなかった卍解が更に使えなくなったのだから獅鷲星武祭にも影響が出る。

始解の状態でどのレベルで影響が出るか分からないが、下手をすれば獅鷲星武祭のメンバーを考え直してもらう必要すら出てくるかもしれない。

 

「………はぁ」

 

2度目のため息。

ため息を吐くと不幸が訪れる。そんな言葉信じている人はこの世にどれぐらいいるのだろうか。

私はこの時まで信じてなんかいなかった。

 

バンッ

 

「……へっ?」

 

「「お姉ちゃん!!!」」

 

勢いよくドアが開いたと思ったら、私の元へと飛びかかる影が2つ。私は突然のことになす術もなく、その2つの影の激突をもろに受止める。

 

「…………けほっ。哀歌ちゃん……透……私、一応怪我人なんだけど?」

 

私のことをお姉ちゃん呼びし、且つ飛び込んでくる相手など私の知る限り3人しかいない。

そしてそのうちの1人がドアのところに見えている時点で、この2人が誰なのかを絞るのは容易いことだ。

 

「琴音、お疲れ様でした。」

 

未だに抱きつている2人は見えないかのように、クローディアは落ち着いて私を労う。

 

「ありがとう、クローディア。」

 

「では、私たちはこれで。そういえば、桐ヶ谷くんが「氷の扱いで教えて欲しいことがある」だそうです。明日奈達も心配していたので後で声を掛けに言ってあげてください」

 

そう言うとクローディアは綺凛ちゃんとともに、私にしがみついている2人を連れて救護室から出ていった。

 

(……桐ヶ谷くんが氷の扱いか……。もしかしたら、例の純星煌式武装のことかな)

 

持っているという情報はあれど、それを使っているところを見た事はない桐ヶ谷くんの純星煌式武装。

 

(……どんな武器なんだろう)

 

一ノ瀬先輩の能力を超える威力の純星煌式武装に心踊らせながら私はもう一度横になった。

 





感想お待ちしております。


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77話

大分更新が遅れてしまい、本当にごめんなさい。


多分これからもかなり亀更新になるかと思いますが、ご了承ください。

それではどうぞ


「琴音には私のチームから外れて欲しいんです…」

 

「……てことは、私は用無し……?」

 

クローディアからのそんな私への戦力外通告は序列戦の熱も冷めやらぬまま、獅鷲星武祭まで残すところあと数ヶ月となり、私達も今日から本格的に訓練を始めようとした矢先のことだった。

 

 

▽▽▽

 

 

「………どうしようかなぁ」

 

序列戦での総ちゃんとの一戦以降、以前にも増して集団戦に向かなくなってしまった千本氷花の能力に私は1人悩んでいた。

 

「あら、琴音。そんなに唸ってどうかしたのですか?」

 

「あっ、クローディア丁度良かった。それがさ、クローディアもわかってると思うんだけど……獅鷲星武祭役に立つどころか邪魔にしかならないかもしれないんだよね……」

 

王竜星武祭とは違い、チームプレーが求められる獅鷲星武祭において私の能力はかなり扱いにくいしチームとして戦うのなら迷惑になる可能性が高い。

 

「琴音の実力ならばあまり関係はない気がするのですが………。それも含めてお話があるのですが、放課後少しよろしいでしょうか?」

 

「うん、大丈夫だよ?」

 

「ありがとうございます。それでは、後ほど」

 

クローディアは一礼して私の席から離れると、いつもと変わらぬ振る舞いで自分の座席へと着いた。

 

(………もしかして、私チームから外されるのかな)

 

クローディアの口ぶりを改めて振り返り、最悪の展開が見えてしまった私は1人落ち込みはじめた。

 

 

◇◇◇

 

「……クローディア…入るね」

 

放課後になり落ち込みに落ち込みまくった私は、そのテンションのままクローディアのいる生徒会長室へと足を運んでいた。

 

「失礼します……あれ、総ちゃんに琴音?」

 

呼び出されたのは私だけと踏んでいたのだが、どうやらクローディアが呼んだのは私だけではなかったようだった。

 

「皆揃ったので、始めさせてもらいますね。単刀直入に言います。琴音、あなたには獅鷲星武祭には出ないで欲しいのです。」

 

「……えっと…」

 

「ですから、琴音には私のチームから外れて欲しいんです」

 

「……え?私用無しなの?」

 

一応覚悟はしていたとはいえ、友達からの直接の戦力外通告はかなり堪える。

案の定、私は周りから見ても分かるほど落ち込み膝までついてしまった。

 

「……………わかったよ、クローディア。ごめんね、役に立たない序列1位で。」

 

クローディアに戦力外通告をされた以上、潔く去るのが道理である。

とは言え、少しばかり嫌味を言いたくなる年頃なため少し遠回しに嫌味を言ってから私はその場を立ち去ろうとする。

 

「琴音、少し待ってください!誰もそんなことは思ってませんから」

 

「いや、慰めなら大丈夫だよ……」

 

部屋を出ていこうとする私の手をクローディアは懸命に掴んでくるが、これ以上私を落ち込まさせる気なのだろうか。とかなり的外れなことを考えていた私の身体は総ちゃんによって拘束されてしまった。

 

「全く、本当にこういうことに耐性がないんですから。クローディアがわざわざマスターを外した意味を考えて下さいよ」

 

「うぅ……。」

 

従者に戒められる主人。

そんな言葉だけを聞けば違和感しかないが、琴音の場合対人スキルというものはかなり低い。というのも、六花に来るまで友人と呼べるのは総司と刀奈の2人だけ。元来のコミュ障に加えて、家柄のこともあって殆ど他人との関係を持ってこなかった琴音は対人耐性が極端に低い。

 

「……それで、話を続けても宜しいでしょうか?」

 

「えぇ、マスターは私が抑えてますので」

 

(………失礼な)

 

逃げないようとした前科ある手前、黙ってに受け入れるしかないもどかしさを押し殺し私はクローディアの話に耳を傾けた。

 

「琴音はもしかすると既に知っているかもしれませんが、私の存在は銀河にあまりよく思われていないんです。」

 

(……あぁ。そういうことだったのか、あれは。)

 

数日前の話。

母からわざわざ連絡があった。なんでも、銀河から直接東雲家に銀河のやることに少し目をつぶって欲しい、との御用達があったらしく母も"東雲家"としては何もしないと返事を返したとの連絡だった。

その話を聞いた時はなんのことだろうかと思ったが、クローディアの話を聞いて漸く理解した。

 

(お母さんも、あんな言い方じゃなくて直接言ってくれれば良かったのに…。)

 

などと1人納得していたところ、そんな話全く知らない2人は急に声を上げた。

 

「それって…」

 

「まさか」

 

「「マスター(当主)のせい!?」」

 

「…………失礼な」

 

この2人が持つ私のイメージとはなんなのだろうか。

心当たりがなくはないが、それでもクローディアには迷惑をかけないように"最近"は気をつけている。

私よりも迷惑の度合いならば、あの男3人の方がかけていると思う。

 

「いえ、琴音の能力には確かに困ってはいますがあれぐらいは統合企業財体にとっては許容範囲内だと思いますよ。あくまで可能性の話なのですが、私は銀河に殺されるでしょう。そして、その可能性はこの獅鷲星武祭中なんです。」

 

私は以前クローディアから聞いたことを思い出していた。あれは出会って間もない頃、クローディアはパン=ドラの見せる夢にでてきたある人物の腕の中で死にたい、と。そして、私はあなたとは長く一緒にいられない、とも。

 

「……今回の獅鷲星武祭で優勝したら、クローディアが願うことと関係があるの?」

 

「…………はい。」

 

クローディアは1度大きく息を吸うと、もう一度表情を厳しくし話を続けた。

 

「……以前、琴音には言ったと思いますが私は本当は死ぬつもりでした。ですが、今は私は貴方たちと一緒にもう少し居たいんです………。お願いします、どうか私を助けてくれないでしょうか。」

 

クローディアは頭を深々と、それこそ髪の毛が地面に着くほどに深く頭を下げた。

 

「………クローディア、頭を上げて?」

 

私は総ちゃんの拘束を解き、クローディアの前まで歩いて行き、ゆっくりとしゃがんだ。

 

「お願いなんてする必要ない。私達は友達なんだからさ、お安い御用だよ、それぐらい。でも、今回は東雲家当主としてじゃなく星導館学園序列1位のクローディアの友達の東雲琴音として手を貸す。少し事情があって、東雲家は手を出せないからね。だから、私一人で頼りないと思うけど勘弁してね?」

 

「………ありがとうございます、琴音」

 

「うん!任せなさい。という事だから、総ちゃん獅鷲星武祭の方はよろしく!琴音は私と一緒に行動ね」

 

私1人とは言ったが、隠密に関しては琴音の方が詳しいだろうし何より銀河が手を出してくるということは【夜吹の一族】が出てくる。元々あそこにいた琴音ならば、私よりも詳しいだろう。

 

「承知」

 

「了解」

 

二人とも先程までの巫山戯た雰囲気はなく、仕事の時の顔つきに変わっている。

 

「よし、それじゃあ解散?琴音は、情報収集のほうよろしくね。今回は実家には頼れないから大変だとは思うけど」

 

「いえ、大丈夫です。何かわかり次第連絡します」

 

二人とも私の指示を仰ぐなりすぐ様どこかへと消えていった。

 

「……やっぱり琴音って凄いんですね。」

 

「ん?いやいや、凄いのは私じゃなくて部下の方だよ。私はただ戦闘しか出来ない脳筋みたいなものだからね。それよりも、私を外したんだから獅鷲星武祭優勝しなかったら承知しないからね!」

 

「……わかりました。それでは、私は琴音の代わりの方に声を掛けに行ってきますね」

 

クローディアもそう言うなり、先程までの不安そうな顔を拭いいつもの気丈な振る舞いで生徒会室から出ていった。

 

「……さて、私の友達に手を出そうとした覚悟は出来ているのかな?」

 

みんながいなくなった部屋の中で、私の呟きに答えが返ってくることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




書き上げてから思ったのですが、また批判くらいそうな展開にしてしまったなぁ、と。
星武祭が見たいという方は、次の王竜星武祭までお待ちください。(それまでに戦闘描写が上手くなっている事を祈って……)


ちなみに、ツイッターのアカウント作ってみたので何か作品のことなどで送りたいことがある方はご利用ください


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78話


お久しぶりです、、

活動報告には載せたんですが、これからの更新は相当先になるかもしれません。
読んでくださっている方々には申し訳ないのですが、ご了承してくださると助かります。

それでは。どうぞ


クローディアから依頼されて以降、琴音だけではなく私自身も情報収集をしているが流石は統合企業財体の暗部といった所だろう。実家の力を使えない現状では殆ど影も掴めず、未だに動きが把握出来ていない。簡単な話、打つ手なしと言ったところである。

 

(……うーん。銀河の暗部の詳細なら、彼が詳しいと思うけど無理だろうなぁ)

 

幾ら交友があるとはいえ、彼も又暗部の一員である。暗部に携わる者ならば情報というものがどれだけ重要なものかぐらい理解しているし、いくら普段抜けているとはいえ彼ほど優秀な人物が簡単に口を割るとも思えないし、口を割ったところでその情報の信用はかなり薄い。

 

(……結局手詰まりかぁ。せめて、彼をこっち側に加えられたらな)

 

彼を琴音のように東雲家に加えられればいいのだが、彼の場合そう簡単にはいかない。

【夜吹の一族】と呼ばれる忍びの一族の当主の息子である彼がその一族を裏切ってまで私側につくとも考えにくい。

 

(……それにこの機を、見逃しはしないよね)

 

クローディアを狙っているのが【夜吹の一族】であることは分かったが、銀河直属の暗部である【影星】がこの機会をみすみす見逃すはずもない。東雲家の六花への干渉がほとんど無いこの機会は、銀河にとっては哀歌ちゃんを始末するにはこれとない機会である。

まさに八方塞がり。私1人でどうにかなるような問題ではなかった。

 

「……はぁ」

 

せめて、もう1人戦力に数えられる人がいれば、、。

 

「どうかしたの?琴音。盛大にため息なんか吐いて」

 

「…あ、刀奈…」

 

周りに誰もいないと思って、完全に気を抜いていたせいか刀奈の接近に全く気が付かなかった。

 

「それにしても珍しいわねぇ、琴音が周りの警戒を一切しないなんて。熱でもあるのかしら?」

 

いつもの様に冗談を混じえながら話をする刀奈。いつもならば、その存在に少しは楽になったかもしれない。だが、その姿は今の私にはとても羨ましく思えた。

同じ暗部の当主なのに、刀奈には悩みなどないように思えてしまったから。

 

「………………少し1人にしてくれないかな」

 

私から発せられたのは、冷たくとても低い声。

私自身発せられた自分の声を聞き驚き、直ぐに刀奈に謝ろうとした。

 

「………ごめん、琴音」

 

私が謝るよりも早く私の耳に入ってきたのは刀奈の謝罪の言葉だった。

 

「私、本当は知ってるのよ…琴音が今何に困っているのか。でも、私は家の都合で琴音には表立って手を貸すことが出来ないくて、、琴音が私のような人の手を借りたいのがよくわかってるのに。それでどんな顔をして琴音に会えばいいか分からなくなっちゃって、、、ごめんなさい」

 

そう言うと刀奈はその大きな瞳に涙を浮かべ、地面に膝を着いてしまった。

対暗部用暗部である更識家の当主である刀奈が暗部の当主である私に表立って手を貸すということは更識家の信用に関わる大問題になりかねないため刀奈の判断は正しい。それなのに、刀奈は私に謝罪をした。

それに対して、私は。

 

「………謝るのはこっちの方だよ、刀奈……ごめん」

 

この歳で暗部の当主の座に着く大変さはよく分かっているはずだったのに、同じ立場の親友のことを少しでもあの様に思ってしまった自分がとても恥ずかしく思えた。

私の言葉が聞こえたのか、刀奈は顔を俯いたままその小さな肩を震わせていた。

 

「…………刀奈?」

 

「……クスッ…なんで、琴音が謝るのよ」

 

「………………むっ。この雰囲気で笑うかな?」

 

先程までの沈んでいた空気などなかったかのように、刀奈はいつものような笑みを浮かべた。

 

「まぁ、気にしない!それでね、琴音に提案なんだけどーーーーーっていうのはどうかな?もう事情は話してあるから、琴音からの連絡待ちってとこ。」

 

「………なるほど。それなら、同時に襲撃を受けてもどうにかなるね。」

 

「えぇ、本当は沖ちゃんが居れば楽だったんだけどね。これなら、沖ちゃんの分ぐらいはカバー出来ると思うわ」

 

刀奈の提案は、私の悩みを半分ほど解消してくれた。

 

「……ありがと、刀奈」

 

「いいえ。でも、そう言うならこのお礼は今度琴音に払って頂こうかしらね」

 

刀奈は満面の笑みを浮かべてそう言うと、そのままどこかへと小走りでいってしまった。

 

(…………私に払ってもらうって、私のお礼なんだから私がお礼をする以外ないのに……)

 

刀奈の去り際の台詞が不意に落ちなかった私はその後、琴音が報告のために私の元に来るまでその事を考え続けた。

 

 

 

 

 

 





久しぶりなのに、短くてごめんなさい。
事情が知りたい方は活動報告を是非ご覧下さい。

それではまた次回、、



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79話

更新、1ヶ月ぶりぐらいになってしまいごめんなさい

ただこれからもこんな調子になるかと思います。
失踪の予定は無いので、暫くお待ちください


「ありがとう、琴音。そこまで調べてくれれば、十分だよ」

 

「いえ、力足りず申し訳ありません」

 

琴音はそう告げると、私の意を汲んでかその場を去った。

 

(………状況は芳しくはないか)

 

琴音から報告によれば、銀河は予想通りクローディアと哀歌ちゃんの2人を狙っており、クローディアには夜吹の一族、哀歌ちゃんには影星がそれぞれ着いているらしい。

刀奈の協力者が居たとしても、少数で影星と銀河を相手取るのは不測の事態にも対応出来ない上にクローディアたちを確実に守りきれる可能性は限りなく低くなる。

さらに、刀奈が調べている彼のこともある。

 

(手詰まりかぁ…………、あの二人が幾ら強いと言っても相手は暗部。真っ向からなら負けることは無いだろうけど、実戦となると変わってくるし……)

 

どんな作戦をたてようと、結局物量戦で圧倒的に不利な状態を前にどこかで綻びが出てしまう。

相手がいる以上、完全な作戦などないことは頭では分かっていたが、それでも私は考えることを辞めることが出来なかった。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

数日後……

 

 

 

打てる限りの手を打ち、迎えた獅鷲星武祭当日。

クローディアは出場選手として総ちゃんたちとともに開会式に参加し、哀歌ちゃんは協力者の2人とともに開会式の観戦をしており、私は自由に動けるように1人で身を隠している。

 

「主、今のところ影星・夜吹共にこの会場には来ていません」

 

私の前に突然現れた琴音は膝をつき、まるで忍者のような体制で私に連絡を告げる。

 

「ありがとう。引き続き警戒お願いね、あと彼はなんて?」

 

「彼なら「俺は名誉よりも命が惜しいよ」だそうです」

 

半笑いの琴音の様子を見るに彼が参加をしないのはほぼ確実だと言える。

彼が参加しないというのは、こちらにとっては願ってもない朗報である。理由が彼らしいと言えばそうだが、家の方は大丈夫なのだろうかと心配になる。

 

「そっか。ありがと」

 

「はっ」

 

琴音は来た時と同様にすぐさまその場から消え、警備へと戻った。

 

(多分、クローディアが参加する試合がある今日は襲ってくる可能性は低い。攻めてくるとすれば、クローディアが1人になる可能性がある寮?いや、流石に学園に踏み込むことはしないか………)

 

この獅鷲星武祭が始まるまで、クローディアは疎か哀歌ちゃんにすら接触を試みてこなかったことを鑑みても、彼らが襲撃を決行するのはこの獅鷲星武祭の最中であることはまず間違いない。それでも、私は彼らが襲撃する時間帯までは未だに絞れないでいる。

 

「あらあら、また難しそうな顔してるねぇ?琴音」

 

「そっちは随分楽しそうね、たっちゃん」

 

私の目の前に現れた刀奈は片手に飲み物を持ち思いっきり観戦を楽しむ気満々の刀奈である。

日ごろと変わらないその笑顔に満ちた表情も、今見るととても安心出来てしまった。

 

「えぇ、漸くこの目で星武祭が見れるんだから!!」

 

目を輝かせながらそう言う刀奈はさながら、星武祭を見に六花に訪れている幼い子と変わらなかった。

 

「そ、そうだね」

 

「あっ、そろそろ始まるわね。琴音も考えてばかりじゃなくて少しリフレッシュした方がいいわよ!…………彼と裏の繋がりはほぼ確実のようね」

 

刀奈は私の耳元で呟くと、大手を振って立ち去っていった。その時の刀奈は無理して笑っているように見えたがそれでも、私の気持ちは多少楽になった。

 

(刀奈の言う通りか………)

 

私は琴音に対象の警護のみでいいと伝え、私自身も哀歌ちゃんが見える場所へと移動し少し休息することにした。

 

 

 

 




短くて本当にごめんなさい


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80話


お久しぶりすぎて、忘れられていないか心配です……。


センターが終わったので、気持ちの切り替えに執筆したのですがかなり長くなってしまったこと先に謝ります。


まだ試験が残っているので更新速度が早くなる訳ではありませんが、あと少しで終わるのでご了承ください。




「…………私の考えが甘かったのよ」

 

暗部の当主としての自分、そして星導館の序列1位としての自分の力を過信した結果がこれだ。

クローディア以外の人間に手を出してこないだろうという、自分の考えの甘さを呪いたかった。暗部の世界がそんなに甘いところじゃないことぐらい知っていたはずなのに。

 

(自分1人じゃ、従者一人守ることも出来ないのに…)

 

私は傷ついた琴音を抱きかかえて、爆発したクローディアの部屋をただ見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間前

 

 

 

影星も、夜吹の一族も襲ってくる気配もなく、星武祭自体も残り4組となり、明日準決勝と順調に進んでいる。

そんな中、私と琴音も張り詰めていた緊張の糸を少し緩めつつあった。

 

「琴音、哀歌ちゃんの方の2人は?」

 

「あちらも今のところ、何も問題はないようです。哀歌ちゃんも星武祭の間は彼らの元で生活するようなので当分は大丈夫かと」

 

「そう。それじゃあ、この後はいつも通りクローディアの周辺の警戒をお願い」

 

「はっ」

 

琴音は直ぐにその場から立ち去り、クローディアの元へと向かっていった。

 

(……哀歌ちゃんの方は彼らに任せておけば大丈夫かな。特に彼は実力だけなら総ちゃんと大差無いし……)

 

私は俯きながら考えに浸ろうとしたが、それは途中で遮られてしまった……それも最悪な形で。

 

「……琴音〜!!」

 

考えに没頭するため下を向いていた私の頭をクリーンヒットしたその人物に若干の殺意を感じただろう、もしクリーンヒットした相手の部位に柔らかさがなかったらの話だが。

 

「……刀奈、どうやって入ってきたの?」

 

「あら、そんなの合鍵を持っているからに決まってるじゃない」

 

玄関の鍵は閉まっていたはずなのだが、いつの間にか合鍵を作っていた刀奈にはそんなものは何の意味もなさなかったらしい。

 

「まぁそんなことはどうでもいいのよ。貴女に急いで伝えておかなければいけないことがわかったのよ……」

 

刀奈はいつものように、お茶目な顔からすぐさま真剣な表情へと切り替えると私の目を見ながら続きを話した。

 

「…彼ら…いえ、桐ヶ谷くんと結城さんに護衛を任せている彼女………あの子は危険過ぎるわ。いくら桐ヶ谷くん達の腕が立つとは言っても彼女は手に余る。協力を仰いだ私が言うのもおかしな話ではあるのはわかっているのだけど、もしあの子が暴走でもしたら、幾らあの二人でも……死ぬわ」

 

刀奈の話は私自身、心当たりがあった。初めて琴音たちと会ったとき、哀歌ちゃんは自分の力を制御出来ていなかった。だが、それは…。

 

私が少し考えをめぐらせていると、私の考えていることが分かっているかのように刀奈は話を再開した。

 

「………琴音はあの子が暴走したのを見たことがあるわよね?でも…本当の暴走はあんなものじゃないわ、それこそ琴音や私、琴音のお母さんですらまともにぶつかったらどうなるかわからない。あの子がいつ暴走するかわからないこの状況で桐ヶ谷くんたちにあの子の護衛を任せるのは危険すぎるの」

 

刀奈の言葉に私は反論出来なかった。

刀奈の情報はほぼ確実に事実だろうし、私は否定出来るほど彼女のことをよく知らなかったから。

何より、暗部でも無い桐ヶ谷くん達にそんな危険を負わせるわけにはいかなかった。

 

「…………わかった……ありがとね、刀奈。哀歌ちゃんの方はもう一度検討するよ。とは言っても、使える駒は私しかいないんだけどね」

 

「ごめんなさい………私がもっとしっかり調べておけば」

 

刀奈は私に頭を下げて謝った。

巻き込んだのも私なら、調べてなかったのは私も同じであるのに。

 

「……それじゃあ、私は桐ヶ谷くんたちの所に哀歌ちゃんを預かりに行ってくるよ。ありがとう、刀奈」

 

頭を下げたままの刀奈に対して私はそれ以上言葉をかけることなく家を出た。

慰めは暗部の当主として、私に頭を下げた刀奈に失礼だと思ったから。

 

 

 

◇◇◇◇

 

桐ヶ谷くんたちに星武祭期間の潜伏先として、提供しているアパートに着いた私を待っていたのは、最悪な光景だった。

 

「………明日奈!!桐ヶ谷くん!!」

 

2人共地面に座り込んでおり、その容態は確認出来ない。

だが、その周辺の様子からして何かあったことには間違いなかった。

 

「琴音ちゃん………ごめんなさい」

 

「そんなことより、2人共大丈夫なの!?」

 

「あぁ……まぁな」

 

桐ヶ谷くんはそう言いながら立ち上がり、明日奈も桐ヶ谷くんに手を貸してもらい立ち上がる。

 

「……2人が無事でよかったよ」

 

立ち上がった2人を見て、致命傷になり得る傷がないことを確認して私は安心した。

 

「でも、哀歌ちゃんが……」

 

明日奈は少し言い淀んだ後、何があったか私に話し始めた。

明日奈の話によると、獅鷲星武祭の会場からこのアパートへと戻ってくる間に影星による襲撃を受けたとのことだった。それ自体は桐ヶ谷くんが退けたのだが、その際に明日奈が哀歌ちゃんを庇って負傷してしまったらしい。その光景を見た哀歌ちゃんはその人物に対して攻撃を試み、接触。哀歌ちゃんはその場へと座り込み、影星は退散したらしい。影星が退散した後、哀歌ちゃんは駆け寄ったきた明日奈をはじき飛ばしてそのまま影星を追うようにしていなくなってしまったとのこと。

 

(………暴走……ではない。影星と接触したことが何かの原因だろうけど、だとしてもなんの理由で…)

 

近くにいた明日奈や桐ヶ谷くんが殆ど無傷な点と刀奈の情報を照らし合わせても暴走では無いことは理解出来る。だが、それならば何故逆に哀歌ちゃんは明日奈たちの元を去ったのだろうという疑問が私の頭に浮かんだ。

 

「……そっか、とにかく2人が無事で本当に良かった。でも、後は私に任せて2人はもう手を引いて。依頼した私が言うのもあれだけど、これ以上は明日奈たちの手は借りられない」

 

「でも……」

 

「………あぁ、分かった」

 

私に反論しようとした明日奈を抑えて、桐ヶ谷くんが顔を下げたまま納得してくれたように、呟いた。

 

(………それにしても、影星が動いたにしてはあからさま過ぎる。桐ヶ谷くんが実力者だとはいえ、いくら何でも手応えが無さすぎる…)

 

影星の暗部としての動きはもちろん、今まで動いてこなかったにも関わらず初動がお粗末過ぎるのだ。

 

(…………もしかして…狙いは)

 

そう思い私が琴音に連絡を入れようとした時だった。

私の元に総ちゃんから連絡が来た。

 

『マスター!!早く寮に来てください!!』

 

それだけ言うと総ちゃんからの連絡は切れた。

 

(………無事でいて、クローディア)

 

私は何か言おうとしている2人を無視して、急いで星導館の寮へと向かった。

 

 

 

◇◇◇◇

 

「…マスター!!」

 

私が寮に到着すると総ちゃんが私のことを迎えてくれた。その腕の中に琴音を抱きかかえながら。

 

「……琴音!?」

 

私は総ちゃんの腕に抱きかかえられている琴音を受け取った。琴音の身体にはいたる所に火傷や切り傷の後があった。

 

「………申し訳……ありません。護衛の任を遂行出来ませんでした……」

 

琴音は私の顔を見るなり琴音は開くのも億劫な口を懸命に動かしながら、私に謝罪した。

 

「琴音が生きているだけでも十分。悪いのは………私の考え。私の考えが………………私の考えが甘かったのよ」

 

自分の力を過信したがあまり、自分の従者にすら傷を負わせてしまった。

完全に私の失態だ。

 

「……総司、琴音を病院に」

 

私は総司に琴音を渡し、歩きだそうとした。

 

「……どこ………行くんですか?」

 

立ち去ろうとした私を引き留めたのは、総司に肩を借りて何とか立っている琴音だった。

 

「……どこって決まってるでしょ?クローディアを助けに行くの。私はクローディアと約束したの、どんなことがあってもクローディアを死なせないって。死にたがってた、クローディアが私に初めて助けてって頼んだんだよ?私が助けなくて、誰が助けるの?」

 

「………居場所も分からないのに……どうやって助けるんですか?冷……静な…琴音らしく……ありません………よ?」

 

琴音は立っているのでさえ辛いのに、無理して喋っているからかその息遣いは荒さをましている。

 

「…………主、これを…持って行って下さい」

 

そう言うと琴音はポケットから取り出したそれを私へと差出した。

 

「……これは?」

 

琴音から受け取ったそれには赤い点が常時表示されている。よく見るとその点は移動しているようにも見える。

 

「……それが…クローディアの……居場所です。念の為……渡しておいたん………です。結局……私は影星の当主相手では爆発から逃がすことしか……出来かった……」

 

琴音はそこまで言うと総ちゃんに全体重を預けて、気を失ってしまった。

 

「……従者にそこまで言わせて、まさかまだ自分のせいとでもいうつもりかしら?」

 

その声は私にはとても聞き覚えがあり、まさか来るとは思いもしていなかった人物の声だった。

 

「………なんで?みんなが…」

 

私の疑問に答えたのは、歩いてきた人たちではなく目の前で琴音を介抱していた総ちゃんだった。

 

「えっへん、琴音に連絡を入れた後に沖田さんが連絡をいれておいたんです!」

 

介抱中の琴音に影響がない程度に、誇らしげに胸を張る総ちゃん。

そして、それに呼応するようにして私の目の前まで来ていた刀奈が続ける。

 

「それで私が桐ヶ谷くんたちにも声をかけたのよ。まさか、総司ちゃんがシルヴィアさんまで巻き込んでいるとは思わなかったけど。それに琴音ちゃんのことなら、簪ちゃんに任せなさい!」

 

「事情を聞いた時は驚いたけど、クローディアも私の大事な友達だからね!相手がなんだろうと、困ってるなら助けるのが友達でしょ」

 

2人の言葉に桐ヶ谷くんと明日奈も頷いており、刀奈に無理やり連れてこられたであろう簪ちゃんも頷いてくれていた。

 

「………でも、大丈夫なの?相手は…」

 

私がそこまで言ったところで、刀奈は遮った。

 

「いいの。これは更識楯無としてじゃない、クローディア1人の友人として譲れないのよ。それにそれを言うなら琴音だって、大して変わらないでしょ?」

 

「そうだよ、私も結城さんも桐ヶ谷くんも友人としてここに居るんだから」

 

刀奈とシルヴィの有無を言わさぬ表情に私は納得せざるを得なかった。

 

「…………わかったよ。シルヴィたちの事後の身の安全は東雲家が責任を持つ。これは反論受け付けないからね」

 

「えぇ」

 

「それなら安心ね」

 

私の提案にシルヴィたちは反論するどころか、喜んで頷いていた。

 

「それじゃあ、まずは優先順位を決めよう。まず、この人数で2つを同時に追うのは危険だし、それに哀歌ちゃんについては居場所が特定出来てない。だから、まずは居場所がわかっているクローディアの保護を最優先で。哀歌ちゃん居場所については、シルヴィにお願い出来るかな?残りの私達は、クローディアを保護し次第シルヴィと合流する。なにか異論ある人はいる?」

 

みんなの顔を見ると、みんな横に首を振る。

 

「それでいいんじゃないかしら?」

 

「うん、居場所なら私に任せて!」

 

「ありがとう、シルヴィ。だけど、無理だけはしないで」

 

私はシルヴィが頷いたのを確認して、簪ちゃんに介抱されている琴音の方に目をやった。

 

「琴音、お疲れ様。あとは、私たちに任せて」

 

眠っていて聞こえてないのは分かっているが、それでもわたしは労いの言葉を伝えたかった。

 

「それじゃあ、簪ちゃん琴音のことをよろしくね」

 

「は、はい」

 

私は簪ちゃんの頭を少し撫でてから、もう一度みんなの顔をしっかり見た。

 

「………みんな、クローディアを救いに行くよ」

 

「「「「えぇ(おう)」」」」

 

掛け声と共に、私達はまだ浅い夜の闇へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




もし、俺の社畜物語は間違っているをお読みの方がいましたら、活動報告にてお知らせがあるのでどうかお読み下さい。





感想などお待ちしております!!

それではまた次回〜。


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81話

かなりお久しぶりです。

ようやく私生活が落ちついたとはいえ、中々モチベーションが上がらず全く執筆が進まない日々…。

失踪するつもりだけはないのでこれからも作品を読んでいた抱けると幸いです


琴音がくれたGPS端末を頼りに私達は夜の闇の中を全速力で駆け抜けた。クローディアの無事をただただ信じて。

 

「全員、止まって」

 

GPSによる位置情報からしてこの近くにクローディアが居ることには間違いはない。何時もなら、直ぐにでもお互い会える距離だ。目の前の雑魚達さえ居なければ。

 

「おやおや、これは東雲家と更識家の当主様たちじゃないですか。どーしたんです?こんな夜中に、お友達を引き連れて」

 

そう言いながら一歩前に出たのは、こちらを嘲笑うかのような表情をした男。この雑魚たちのリーダー格と言ったところだろうが、夜吹の一族が1人も見当たらないあたり、傘下の者共だろう。

 

「あなたこそ、誰?急ぎのようがあるの、そこどいて貰えるかな?」

 

夜吹の一族がここにいないということはクローディアが全員を相手取ることになっている。

尚更、こんなとこで1秒足りとも無駄にはできない。

私が一歩踏み出した時点で、みんなは私から距離をとった。私のとる行動が完全にわかっているように。

 

「残念ながら、俺達もあなた方を通す訳には行かないんですよ」

 

そう、1秒足りとも。

 

「……そう、なら仕方ないわね。卍解 霧幻氷桜帝」

 

遠慮なんてものは無い。暗部に身を置いている以上彼らも私も命のやり取りをする覚悟なんてとうに出来てる。

私の卍解はほぼ全員を制圧するのには十分だった。一部、若干動ける人も居るが役には立たないだろう。

 

「さて、みんな行こっか」

 

距離をとっているみんなは無事だろうと思い、私はみんなの方を振り返りそう言ったのだが、みんなは少し無事ではなかったようだ。

 

「……琴音、あなた星辰力強過ぎないかしら?」

 

「まぁ皆さん、ぎりぎり無事ですから!マスター、早くクローディアを助けに行きましょう!」

 

ゆうに、100メートル以上は離れていたはずの刀奈たちはかなり寒そうにこちらへと歩いてきた。

卍解しただけでこれでは獅鷲星武祭では使えない。改めて私はそう思った。

 

 

 

 

 

(これまでですかね…)

 

まるでいつか見た夢のように冷たく誰の目にも触れないような場所。いつかの夢のようにここで死んだら誰が私の最後を見とってくれるのだろうか。天霧くん?それとも、知らない人だろうか。欲を言っていいのなら、琴音がいい。私が死ぬことになれば彼女は必ず自分のせいにしてしまう。それならば、せめて自分の口から感謝の言葉を伝えるだけでも少しは彼女の負担を減らせるのでは無いだろうか。それが私に出来る最後の恩返しかもしれない。

 

「ここに居るのはわかっているんだ、さっさと出てこい。時間を稼いだところで、東雲琴音は来ない」

 

先程からこれの繰り返し。琴音が来ないとでも言えば私が素直に出ていくとでも思っているのだろうか。

私はそれからもできる限りその場で息を潜め続けた。死んだあとのことを考えているのにどこかで琴音が来てくれることを期待してる。行動と思考が矛盾していることなど既に私の中ではどうでもよかった。

 

 

あれから何分経っただろう。

私の精神力は限界を迎えようとしていた。

 

(一旦落ち着きましょう、こんな時琴音なら…)

 

そう思ってふと周りを見回した時だった。

 

「………おやおや、こんな所に居たんですか」

 

(………この狭い場所でよく隠れたほうですかね)

 

既に満身創痍の私が足掻いたところで、殺される未来は変わらないだろう。竹宮さんがボロボロになりながらも足止めをして逃がしてくれたにも関わらず私は逃げることすら出来なかった。

 

「…クローディア・エンフィールド。最後になにか言い残すことはないか?」

 

いつの間にか私の周りは夜吹の一族で囲まれていた。中心にいるのはこの一族の当主。今更ながら、あの夜吹くんの父とは思えない。

 

「……ないですね」

 

思い残すことなんてない。そう言い切れればどれだけ楽だっただろうか。いや、以前の私ならそう言い切っていた。これも琴音の影響だろう。

 

「……殺れ」

 

「…恨みます、琴音。ありがとうございました」

 

 

 

 

「………舞え 桜吹雪」

 

聞き覚えのある声と共に私の目に映ったのは、夜に舞う綺麗な桜吹雪だった。

 

 

 

 

 

 

(………クローディア、無事で居て)

 

みんなの身体が十分に動くのを少し待ってから、あの場を桐ヶ谷くんと明日奈さんに任せて私と刀奈、そして総ちゃんの3人で急いで先に進んだ。

 

「琴音!」

 

「えぇ。舞え……桜吹雪」

 

クローディアの姿こそ見えないが、私たちの視界にはしっかりと夜吹の一族が映っていた。それに加え、そこにクローディアがいるのは位置情報からしても確実だった。

 

「…総司!」

 

「はっ!」

 

私の桜吹雪がなくなると同時に総ちゃんはクローディアがいるであろう夜吹の一族が取り囲む中心へと入り込み、私もそれに続き中心へと降りる。

 

「……クローディア、無事?」

 

「えぇ、全く危ないところでした」

 

クローディアは総ちゃんの腕に抱かれながらも私の声に反応してくれた。それだけでどれだけ私の心は軽くなっただろうか。

 

「総ちゃん、そのままクローディアを連れて退却。この人たちは私と刀奈に任せて。クローディア、また後でね」

 

「えぇ、竹宮さんから上司の愚痴の1つや2つ聞き出さないといけませんから」

 

クローディアはそのまま総ちゃんに抱き抱えられながら、その場を去った。

 

「……逃がすと思うか?」

 

威圧感の効いた声でそういうのは夜吹の一族の当主。既に何人か総ちゃんを追いかけ5mほど離れている。

 

「いやいや、そっちこそ。私"たち"があなたたちをここから逃がすと思ってるの?」

 

「清き激情(クリア・パッション)」

 

刀奈の声とともに激しい爆発が起こる。もちろん、巻き込まれたのは総ちゃんたちを追いかけていた夜吹の一族。

 

「くっ……まさか更識家の当主まで出てくるとはな」

 

「あら?更識家って何かしら?私は星導館学園の生徒として生徒会長を助けに来ただけよ?」

 

「戯言を…」

 

私一人なら追っ手を出すぐらい出来ると考えていたのか、急激に顔色が悪くなる。もちろん、私も刀奈も慈悲なんてもの考えていない。

 

「私たちの友達を傷つけた分はきっちりと支払ってもらう。それにあなた達は琴音に…東雲家の者に手を出した。覚悟は出来ているよね?」

 

「あぁあの小娘のことかな?邪魔だったので排除させてもらったよ。それに東雲家の者?今回東雲家は不干渉のはずではないのかな?」

 

当主では無い、年配の男の言葉に私は怒り以外の感情を覚えることは出来なかった。

それに東雲家の不干渉に関しては関係がない。幾ら琴音が作戦の邪魔だったとはいえ、手を出した時点で東雲家として動く理由が出来る。東雲家の不干渉は、クローディアの処置についてだけ。だからこそ、今回母さんは動かなかったのだから。

 

「……排除ね。そういうのならあなた達も覚悟出来てるわよね?私たちにとってもあなたちは邪魔なの。死んで……氷桜驟雨」

 

私は数千の氷と桜の刃を夜吹の一族へと降らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




とても読みにくい文章でごめんなさい……。

リハビリして行くのでこれからも読んでもらえたら嬉しいです。


また次回!!!


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82話


お久しぶりです。
時間が空いた割に長くなく、申し訳ございません。
これからも、毎日とはいきませんが少しでも早く更新していきたいと思うのでお願いしますm(_ _)m


若干、以前の内容の中に少し改良を加えてあるので宜しければそちらをご覧になってから読んでください。


「………何をしてるの?………きみ」

 

わたしの攻撃によって夜吹の一族は当主を除いて、全員その場に倒れた。当主以外誰も立っていないはずのその場には、夜吹の当主を切り伏せている1人の人物が立っていた。それは私たちのよく知る人物だった。

 

「……なんで君がこんな所に居るのかな?天霧綾斗くん」

 

まるで影のような彼の風貌は異様そのものだった。

いつもの制服姿ではなく真っ黒の服に身を包み、偽善に溢れていたその表情も見る影もない。

刀奈から彼が暗部とは違う裏社会と繋がりがあるという報告は聞いていた。彼の姉である、天霧遥は未だ昏睡状態であるにも関わらず彼がこちら側に身を落とした理由はたったひとつだろう。

 

「……そんなに力が欲しかった?」

 

彼が六花に来た理由は行方不明の姉を探しだすこと。それには、少なからず力が必要だということが分かった彼が選んだ手段がこれだったのだろう。

刀奈に倒された彼の自尊心に付け入るのはさほど難しくない。

大方、力を与えることと、彼の姉の昏睡状態を回復させるとでも言えば彼はいとも簡単に落ちる。だからこそ、刀奈が彼を追っていたのだが。

 

「やぁ、東雲さん。いきなりだけど、単刀直入に言わせてもらうね?哀歌ちゃんを渡してくれないかな?僕も君たちを斬りたくはないんだ」

 

そう言った彼の手に黒炉の魔剣ではなく、赤い純星煌式武装が握られていた。

その純星煌式武装から漂う禍々しい雰囲気は今の彼の雰囲気そのものを表しているようだった。

 

「あら?哀歌ちゃんを私たちから預かってどうするつもりかしら?」

 

口調こそ、いつも通りの刀奈だが彼の雰囲気を感じ取ってか、刀奈も臨戦態勢は解いていない。

 

「君たちには関係のないことでしょ?まぁ、見たところここにはいないみたいだし、僕はもう行くよ」

 

そう言うと彼はその場から消えた。

 

「………あんなに星辰力が高まってるなんて聞いてないよ、刀奈」

 

「私も予想外よ…。元々高い方だったけど、あれじゃ、まるで……」

 

「……哀歌ちゃん…か。それも暴走したときの」

 

「えぇ、あれでもまだ力を抑えてるでしょうし、理性を保ってるあたり哀歌ちゃんよりも厄介よ」

 

私と刀奈は2人でため息を吐いた。

それとほぼ同時にシルヴィから、哀歌ちゃんの居場所が分かったと連絡が入り私と刀奈は急いでみんなの元へと向かった。

 

 

◇◇◇◇

 

「……そうですか、天霧くんが」

 

クローディアたちと合流した私たちは、一連の出来事を2人に説明した。

クローディアの表情は明るくはなかったが、現実を受け止めてはいる。

 

「クローディアのことは総ちゃんと桐ヶ谷くんと明日奈に任せてもいいかな?」

 

「えぇ、ですがマスター。お二人で大丈夫ですか?」

 

総ちゃんの疑問はもっともで、桐ヶ谷くんと明日奈も疑問に感じているようだった。

 

「うん、私とたっちゃんのふたりで行く」

 

「分かりました…」

 

総ちゃんが渋々ながら了承してくれたところで、私と刀奈は急いでシルヴィの元へと向かった。

3人に天霧くんのことで話していないことを聞かれる前に。

 

 

 

 

 

 





ありがとうございました


感想など貰えるとモチベが上がるので宜しければお願いしますしますm(_ _)m



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