折れても再び立ち上がる (Seasoned Seaweed )
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長の覚悟は私を動かす

どうも、Seasoned Seaweedです。意味は味付け海苔です。私は味付けのりをポテトチップスのように食べるのが好きです。それは置いておいて、この作品が初投稿になります。ですので、至らぬ点は多々あるとは思いますが、よろしくお願いします。


「普通I科1年A組、夏樹涼(なつきすず)。至急、生徒会室に来るように。繰り返す。普通I科1年A組、夏樹涼。至急、生徒会室に来るように」

 

唐突に、私は生徒会室に呼ばれた。うちの生徒会は、面倒くさいやつがいるから、普段から目をつけられないように大人しく生活していた私は、何故、生徒会に呼ばれるのか分からなかった。

 

行かなければ面倒くさい事になるのは、目に見えていたため、足早に生徒会室に向かった。

 

コンコンコン

「どうぞ〜」

「失礼します。普通I科1年、夏樹涼です。生徒会が私に何の御用でしょうか?」

「来年度より、我が大洗女子学園で戦車道の授業を復活させることになった。そこで、戦車道経験者のお前に戦車道を受講してもらう」

「お断りします。私は戦車道を辞めたくてわざわざ大洗に来たんです。それに、選択必修科目は自由に決められるはずです」

 

私は、失礼しますと言って生徒会室から出ようとしたが、広報の河島さんがドアの前に立っていて、逃げることは出来なかった。

 

「まだ何か?話しは終わりましたよね?そこを退いてください」

「お前に戦車道を受講してもらわないと困る」

「そうなんだよね〜。もし取ってくれなかったら、この学校にいられなくしちゃうよ〜」

 

生徒会はどうしても私に戦車道を受講して欲しいようで、権力による脅迫までしてきた。実際に、この会長なら一生徒を学校にいられなくすることは容易だ。普通の生徒なら、この脅迫に屈してしまうだろう。しかし、私は違う。

 

「別に構いせんよ。この学校は戦車道がないってだけで入学しただけなんで、特に思い入れもないです。だから、転校することになんの躊躇いもありません」

 

私がそう言うと、河島さんは驚いた表情、小山さんは少し哀しそうな表情、会長は心底困ったような表情を見せた。生徒会は自分達が切れる最強の切り札が通じなかったから、かなり困惑しているようだ。この状況から察するに戦車道経験者を受講させなければならない理由があるようだ。

 

「何故ここまでして、私に戦車道を受講させようとしたのですか?」

「それはね〜、経験者がいたら他の生徒の見本になって、より戦車道が理解できるし、上達するからだよ」

 

会長の言った事は事実だろうが、そんなものは上辺だけのものにすぎないだろう。そんな薄っぺらい理由のためにわざわざ脅してまで受講させるとは思えない。

 

「会長、そんな上辺だけの事はいいので、本当の理由を話してください。脅迫してくるあたり、かなり切羽詰まった状況なのではないのですか?」

「……わかった。本当の事を話そう」

「会長!あれを言ってしまってもいいのですか!?」

「協力してもらうためには、言わないといけないからね」

 

そう言うと、会長は真面目な表情になり、深呼吸をした。

 

「我が大洗女子学園は今年度をもって廃校することが決まった。私達はもちろん抗議をしたが、年々、入学者が減少し、特に目立った成績がないからと廃校にすると言われてしまった。だから、20年前まで我が校で盛んだった戦車道を復活し、全国大会で優勝すれば廃校を撤回してもらうことに頼んできた。私達は、この学校が好きだから、なんとしてもこの学校を守りたいんだ。夏樹ちゃんがこの学校に思い入れがないのはわかってるし、協力してくれたとしても、夏樹ちゃんにメリットがないと思う。それに、初心者ばかりの急造チームで優勝しようだなんて無謀な事だってわかってる。それでも、私はこの学校を守るために、僅かな希望にかけたいんだ。どうか私達に協力してくれないか?」

 

 

そう言うと、会長は頭を下げ、それに倣って2人も頭を下げた。もし、私がここで断っても、会長は他の手使ってなんとかするだろう。しかし、私は会長の覚悟にとても感銘を受けた。廃校を阻止するために、政府の役人に立ち向かって、なんとか手に入れた最後のチャンスを逃さないために尽力する姿や絶対に廃校させないという覚悟は尊敬に価すると感じた。

 

「頭をあげてください。わかりました。会長の努力を無下にすることはできません。私も微力ながら協力しましょう」

「ありがとう!これで学校を守れるかも!」

 

こうして来年度の私の選択必修科目は戦車道に決まった。

 

 

 

 

4月、新学期が始まり私は2年生になった。だからといって何かが変わるわけでもなく、普段通りに登校して、クラス分けを確認した。そして、私は驚愕した。何故あなたの名前があるのかと。

 

 

 

 

掲示板に貼られた2年A組のクラス名簿、その中に夏樹涼の名前が書いてあった。そして、その下には去年まで黒森峰女学園に在籍していたはずの西住みほの名前があった。



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彼女が転校した理由を私は察する

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何故ここに西住みほがいるのかわからなかったが、とりあえず指定された席に着いた。しばらくすると、西住みほが教室に入り、後ろの席に着いたので、私は後ろを向いて彼女に声をかけた。

 

「久しぶりね、西住みほ。私の事覚えてる?」

「え?なんで夏樹さんがここにいるの?」

「その台詞、そっくりそのまま返すよ」

「えっと........そ、それは........」

ガラガラガラ

「はーい、新学期最初のホームルーム始めるよー!みんな席に着いてー!」

 

このまま話しを続けることはできないので、あとで改めて聞くことにした。

 

しかし、彼女はホームルームが終わったら、すぐ帰ってしまったので、聞きそびれてしまった。仕方ないのでとりあえず、知っているとは思うが一応西住みほのことを報告するために生徒会室に向かった。

 

生徒会室に入り、彼女のことを報告すると、やはり知っていたようだった。

 

「西住ちゃんのことは知ってるよ〜。転校届私が受理したし、それに西住流の子で、すっごく戦車道強いんだよね〜」

「そうですね、彼女は強いです。西住流ならではの力強い戦車道をして、時折混ぜてくる、常識はずれの戦法をする、優れた指揮官でした。」

「それは心強いね〜。西住ちゃんの勧誘頼んだよ〜」

「まずは、会長ご自身が勧誘しに行くのが筋なのではないですか?1番困っているのは会長ですし」

「貴様!会長の言うことが聞けないのか!」

「かーしま、そんなに怒るな。夏樹ちゃんの言う通りだよ。明日行こう」

 

今日はもう生徒会室に用はないので一言断ってから退室した。おそらく会長は私の時と同様に脅迫まがいのことをするのだろうと思ったが、彼女なら大丈夫だろうから特に気にすることはなかった。

 

次の日学食へ行く途中に教室に財布を忘れたことに気づいて教室に戻ると、

 

「へい、彼女!一緒にお昼どう?」

 

西住が婚活戦士にナンパされていた。武部のやつ男にモテないから、女に手を出すのはどうなんだと一瞬考えたが、優しくて面倒見のいい武部のことだから、転校したばかりで緊張している西住を気遣って敢えてナンパっぽく声を掛けたのだろう。さすが、大洗のオカンだ。五十鈴は武部と違って、落ち着いた雰囲気で西住が緊張しないように誘った。

 

西住は戸惑いながらも武部の誘いを了承した。私は聞きそびれたことがあるから、

 

「婚活戦士〜私も一緒にお昼いい?」

「もう〜西住さんの前で婚活戦士って呼ばないでよ〜。で、どうする?西住さん」

「私も大丈夫です」

「じゃあみんなで食べよう!」

 

こうして、私達は学食へ行き、長蛇の列に並んだ。しばらく並んでいると、武部と五十鈴が西住に話しかけた。

 

「えへへ、ナンパしちゃった!」

「私達一度西住さんとお話してみたかったんです」

「え、そうなんですか?」

「だって、いつもあわあわしてて面白いんだもん」

「面白い...」

 

面白いと言われて、西住は若干へこんでいたが、武部が自己紹介しようとしたら、西住が武部の名前と誕生日言って、さらに五十鈴の名前と誕生日まで答えた。西住によると、クラスの人全員いつ友達になっても大丈夫なようにするために覚えたそうだ。でも、誕生日まで覚えなくてもいいだろうと思った。まあ武部達は喜んでいたからいいか。すると武部が

 

「じゃあ、涼の名前も知ってるんだ」

「うん。夏樹涼さん。5月23日生まれ」

「そもそも、私達中学の時何度か会ってるし」

「え!そうなの?2人はどういう関係なの!?」

「そのうち話す」

 

私は中学の時のことをあまり話したくなかったから、適当にはぐらかした。武部は少し不満気な顔をしたが、とりあえず見逃してくれたようで、今度は西住に名前で呼んでいいかを尋ねた。西住は友達みたいだと喜んで、お盆を持ったまま一回転し、危うくガッシャーンするところだった。その後4人で座れる場所を探して席に着いた。

 

「よかった〜友達ができて。私1人で大洗に引っ越してきたから」

「そっか〜、まあ人生色々あるよね〜。泥沼の三角関係とか、告白する前に振られるとか、5股かけられるとか」

「それ全部武部のことじゃん」

「全部私のことじゃないよ!」

 

西住が答えないから、五十鈴が家族の不幸か骨肉の争いとか遺産相続かと聞いたが、家族の不幸はあるかもしれないが、後の2つはないだろう。ていうか、五十鈴のやつ、よくそんなこと思いついたな。

 

やはり、武部達の推測は全て違うようで、肯定はしなかったが、答えを話したくないようだった。しかし、私は自分の推測を言ってみることにした。

 

「もしかして、黒森峰でなんかあったの?」

 

そう言った瞬間、西住の表情が強張った。多分、戦車道関係で何かあったのだろう。後は、自分で調べることにして、早く食べようかと促した。

 

その頃、生徒会室では何やら企んでいるようであった

 

 



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彼女が転校した理由を私は確信する

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サブタイトルいいのが思いつかなかった......


「実は、相談があってさ〜」

 

教室に戻ると武部が西住に話しかけた。どうせ、いつものあれだろう。

 

「ちょっと悩んでで。私罪な女でさ〜」

「また、その話ですか」

「最近色んな男の人から声かけられまくりで。どうしたらいいかな?

「色んな?」

「いや、近所の人たちなんだけどね、毎朝「おはよう」とか「今日も元気だね」とか」

「ですから、それはただの挨拶では?」

 

五十鈴の言う通りただの挨拶だ。武部が声をかけられる所何度か見たことがあるが、その人たちは、散歩中のおじいさんだったり、八百屋のおじさんとかで、そこそこ年をとってる人で、決して若いとは言えない。若い男の人にモテなくて、ついにそこまで勘違いしてしまうとは。

 

「武部さん、明るくて親しみやすいもんね。だからみんな友達になりたくなるんじゃないかな?」

「武部に声かけてるの散歩中のおじいさんとか八百屋のおじさんだよ」

 

そう言うと、西住の顔が少し引き攣ったが、凹んでいる武部を見てすぐさまフォローを入れていた。

 

少し廊下が騒がしいから、チラッと見てみると、生徒会が歩いてくるのが見えたから、このまま居ると面倒なことになることを確信した私はトイレに行くと言って教室を出て、生徒会にバレないように隠れた。

 

生徒会が教室に入った後、すぐに生徒会と西住が出てきた。バレないように遠くから見ているから、詳しくはわからないが、どうやら私の時とは違って脅しているというよりも、「先輩が命令してるんだからやるよな」みたいな圧力をかけているように見えた。生徒会が去ると、西住の目は死んでいた。

 

西住の反応を見るに、私の推測はどうやら正しいようだ。少しに気になるし、次の授業は面倒だから自主休講して、調べることにした。

 

私が、授業をサボる時はいつも屋上に行く。そしてその屋上には大抵、あいつがいる。

 

「よ!冷泉。またサボり?」

「そっちこそサボってるだろ」

 

冷泉は私のサボり仲間で、学年首席の天才だ。ただ、遅刻が多すぎて単位が足りなくなるかもしれないらしい。

 

冷泉のことは、ひとまず置いておいて、早速私は、ベンチに座ってノートパソコン開き、黒森峰のことを調べた。そしてすぐに、西住が大洗に来た理由がわかった。

 

『黒森峰10連覇ならず。』

 

その記事の内容は、大雨の中、山の中を走っていた黒森峰チームの車両が増水した川に転落し、それを助けるために、フラッグ車車長の西住が戦車から降り、その結果フラッグ車を撃破され、10連覇を逃した。その転落した車両の隊員は全員無事だったそうだ。

 

西住の行動を賞賛する声もある一方、フラッグ車の車長が行くべきではないとか、増水した川に飛び込むのは、その車長にとっても危険な行為で最悪車長も死んでいたかもしれないという指摘もあった。

 

私としてはそういう批判に関しては同意するし、間違っていないと思うが、やはり勝利より人命を優先したことは素晴らしいと思う。しかし、西住の家ではそうはいかないだろう。

 

西住流はいわば勝利至上主義の流派であり、犠牲なくして勝利を得ることはできない、と考えている。だから、そういった流派の家元の子が、勝利よりも人命を優先したことは到底許すことはできない行動で、しかも10連覇がかかっていたとなると、家元にきつく叱責されたはずだ。さらに、他の隊員からも白い目で見られたり、責める声もあったはずだ。

 

西住が大洗に来た理由はこのことが原因で、家元に勘当されたか、もしくは......。もしそうなら、少しだけ腹立たしくなった。自分だって同じなのに。

 

授業のチャイムがなり、ホームルームが始まるから教室に戻ろうとすると、生徒会が全校生徒に体育館に来るように放送したため、体育館に向かった。

 

生徒会が呼び出した理由は選択必修科目のオリエンテーションらしい。すると体育館が暗くなり、動画が始まった。内容はいかに戦車道が、素晴らしいものかをPRするもので、最早、宗教の勧誘のようにも見えた。

 

動画が終わった後、戦車道の世界大会が開催されること、そのため戦車道を復活させることが伝えられ、戦車道の成績優秀者には、食堂の食券100枚、遅刻見逃し200日、通常の3倍の単位が与えるとのことだ。

 

事情を知っている者としては、ここまで必死だと逆に笑いそうになった。これなら、少しは履修する生徒はいるだろう。

 

西住達と教室に戻ろうとすると、会長に呼び出されたため先に戻ってもらうことにして、生徒会に向かった。

 

「いや〜どうだった?さっきの動画」

「まあ、いいんじゃないですかね。あれだけ特典がつけば、少しは集まると思いますし。でも、3倍の単位を与えるのは少々やり過ぎだと思いますよ」

「やり過ぎたのはわかってるよ〜。でも、こうでもしないとみんな履修しないでしょ?」

 

それに関しては首肯せざるを得ない。戦車道は危ないし、お金がかかるため、競技人口はあまり多いとは言えない。しかし、これだけ特典があるなら、多少のことは目を瞑る生徒もいるだろう。

 

その後少し話した後、ホームルームに向かった。

 

次の日、西住の選択必修科目の用紙には香道に丸がされていた。どうしても、戦車道をとりたくないとはっきりと言った。私は確認ために、昨日調べた事を言ってみた。

 

「西住が戦車道とらない理由って去年の決勝のことだよね?」

 

その瞬間西住は肩をビクッとさせた。やはり、図星だったみたいだ。

 

「え?どういうこと?」

「人のいないところで話す。あまり人に聞かせたくないしね」

 

と言って人気のない所へ向かった。

 

 

 

この時私は静かに怒っていた。自分のことを棚に上げて。

 



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私は激怒した

更新遅くなり申し訳ありません。私は大学生でレポートやら中間試験の勉強に時間を取られていたためなかなか執筆する時間がありませんでした。

サブタイトルは、走れメロスのあれからとりました

今回会話文が長くて結構読みにくいかもです


私は3人を屋上に連れてきて、人気(ひとけ)がないことを確認した。そして、武部たちに去年の高校戦車道の決勝のことを話し、私は西住問いただした。

 

「去年の決勝のことで、家元に勘当されたの?」

「いや...ま、まだされてないよ......」

「じゃあ、周りに色々言われて逃げてきただけなんだね?」

 

西住は静かに首を縦に振った。

 

ついに私は抑えていた怒りを抑えられなくなった。

 

「あんなに楽しそうに戦車道をやる人がたった1回怒られただけで戦車道やめるってどういうこと!?あんたにとって戦車道はその程度のものなの!?その程度の気持ちで戦車道やってる人に8回も負けて戦車道やめた私は馬鹿みたいじゃない!こんなことなら戦車道やめなきゃよかった!」

 

私は今まで出しことのないくらい大声で叫ぶように言った。西住は申し訳なさそうに黙って俯いた。突然叫んだ私に驚いて固まってしまっていた武部が我に返って

 

「ねえ、涼。どういうこと?」

「今から話すね西住もいいよね?」

 

西住は何も反応しなかったが、沈黙は肯定と見做して、私は中学の時の事を話すことにした。

 

「私は中学の時ソンム中学校って所で戦車道をしていたの。それでね、うちのチームは完全に実力主義のチームで、私は実力を認められて1年生の時から隊長を任されていたの。で、初めて全国大会に出て順調に勝ち進んで、決勝で黒森峰の中等部と戦うことになったの。私は西住流を研究して試合に望んで、最初は勝ってたんだけど、西住の部隊に主力部隊を壊滅させられて結局負けちゃったの。それが悔しくてその後、秋と冬に1回ずつ練習試合をしたんだけど、勝てなかった。まだこのときは、西住のお姉さんがいたから西住が楽しそうに戦車道をやってるようには見えなかった。絶対に負けられないという使命感に駆られてやってるように見えたの。2年の時も決勝で負けたんだけど、この年でお姉さんが引退するから次は倒してやると思って、西住みほの戦車道を研究して、練習試合を3回挑んで全部負けたの。でもね、その時の西住はお姉さんがいた頃とは違って本当に楽しそうに戦車道をしていて、本当に戦車道が好きなんだなって思ったから負けてもそこまで気分が悪くなることはなかったの。で、最後の夏も決勝戦で私は西住に負けたんだけど、その時は最悪だった。西住は号泣する私を見て、今まで嬉しそうにしていたのに急に申し訳なさそうな顔で私を見たの。私はこれを敗者に対する最高の侮辱だと感じたわ。だって勝利を喜ぶことは敗者に対する敬意の払い方の一つだと思っているし、私はそうしてた。だから、申し訳なさそうな顔されるのは屈辱的だった。大人がムキになってついやりすぎて泣かせてしまったように感じたの。それで、西住との実力の差を感じて絶望した私は、高校では戦車道をしない決心をしたの」

 

中学の時のことを一通り話し終わった私はとりあえずベンチに座った。西住はまだ俯いたままだったが武部と五十鈴は真剣な顔でこちらを見つめていた。

 

「こんなくだらないことで戦車道やめた私が言うのもあれなんだけどさ、西住は1回周りから怒られたぐらいでやめちゃうようなものなの?あんたにとって戦車道はその程度にものなの?違うでしょ?鉄と油の匂い、砲声やエンジンの駆動音、戦車の最悪の乗り心地、そんな中で、仲間と協力して勝ち取った勝利の喜びをあんたが1番わかってるはずでしょ?戦車道がどんなに楽しいものか知っているでしょ?今までの事を思い出してみて。辛いことや悲しいこともあったと思う。でも、それ以上の楽しさを戦車道は教えてくれたでしょ?」

 

西住は、はっと顔を上げてこちらを見つめ涙を浮かべた。

 

「思い出した?戦車道の楽しさを。ねえ西住、私たちともう一度戦車道はじめない?」

「うん、もちろん。ありがとう夏樹さん。今までの楽しかったこと全部忘れるところだったよ。一緒に頑張ろうね」

「うん。あと、夏樹じゃなくて涼でいいよ。わたしもみほって呼ぶから。あと、ごめんね、いきなり怒鳴って。ちょっと我慢できなくて。」

「大丈夫だよ、涼さん」

「ねえ涼、私のことも下の名前で呼んでよ。知り合って1年も経つのにずっと苗字で呼ぶじゃん」

「私も下の名前で呼んでください」

「武部はゼクシィって呼ぶね。華、よろしく」

 

その後、教室に戻り西住は香道につけた丸を罰で消し、戦車道に大きく丸を付けて提出した。これでとりあえず学校存続の確立を格段にあげることはできた。

 

放課後、生徒会に西住が戦車道を履修することを報告した。

 

「はぁ〜良かった〜。これで少し見えてきたよ。ありがとう夏樹ちゃん」

「いえ、大したことはしてないので」

 

生徒会は心底安心したようで、緊張が解れて今までよりも明らかに雰囲気が明るくなった。でもこれで漸く、スタート地点に立っただけなのはわかっているようで、会長はすぐに真剣な顔になり、

 

「夏樹ちゃん、西住ちゃんと一緒に私達を優勝に導いてね」

「私と西住だけでは、優勝なんて出来ないので会長達も頑張ってください」

「もちろんだよ。学校を守るためならなんでもしてやるよ」

 

会長の言葉は、以前感じた覚悟をさらに上回っているように感じた。だから、私は会長のために全力で協力することを決意した。

 

 

 

 



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見つけた戦車に私は不安しか抱けない

また、投稿が遅くなりました。すいません。

沖田オルタの実装きましたね!すっごい可愛くて悶えました。


私は、寮に戻ってすぐに、ベッドに突っ伏して今日のことを思い返して、ため息をついた。

 

「たった一回怒られただけで戦車道やめるってどういうこと、か。ははっ。私なんか8回戦って勝てなかっただけでやめちゃった愚か者なのにね。全く人のこと言えないや」

 

自分には、西住を怒る権利なんてないことは自分が一番わかっているのに、我慢できずに怒ってしまった。そんな自分が本当に情けなくて、嘲笑せずにはいられなかった。

 

私は勝つことよりも、楽しく戦車道をすることを目標にして戦っていたのに、いつしか、西住みほに勝つことだけを目標にしていた。私はそれができなくて、西住との才能と実力の差に絶望して、戦車道を楽しくできないようになって、心が折れたただの負け犬なのだ。

 

私は自己嫌悪を渦に飲み込まれ、なかなか寝付くことができなかった。

 

 

 

 

「思ったより集まりませんでしたね」

「全部で19人です。私達を入れて22人」

「まあ、なんとかなるでしょ。結果オーライ」

 

河島さんは不満気だったが、戦車道みたいなマイナーで危険な競技をやる人の方がは少ないのだからこれだけ集まったら十分だと思う。

 

「いよいよ始まりますわね」

「さらに、モテモテになったらどうしよう~」

「おじさんにモテてもしょうがないじゃん」

 

こら、ゼクシィ。無言で睨むな。西住は私たちのやり取りを見て、いつも通り苦笑いをした。授業の開始のチャイムが鳴り終わると生徒会が前に出た。

 

「これより、戦車道の授業を開始する」

 

ついに、戦車道の授業が始まった。そしてすぐに、授業が始まる前からそわそわしていたもじゃもじゃの髪の子が口を開いた。

 

「あの~、戦車はティーガーですか?それとも…」

「え~と、なんだったっけ?」

 

そういえば、私も聞いてなかったが、優勝を目指すぐらいなんだからティーガーとまではいかなくても、T-34とかシャーマンとかⅣ号クラスの戦車があるのだと思っていた。

 

しかし、重々しい戦車倉庫を開けると、そこには、錆びてボロボロになったⅣ号戦車が一両ぽつんと置いてあるだけだった。しかも、そのⅣ号はD型で割と初期型だからそこまで強いとは言えない。

 

私は、周りに聞こえないように会長を問いただした

 

「こんなので、優勝を目指すとか正気ですか?ほかになんかなかったんですか?」

「いや~、昔やってたんだから、もうちょっと強いのあると思ってたんだけど、予算の足しにするために強いのは全部売られちゃったみたいでね~。そこにあるのは、その時売れ残ったやつだよ~。ほかにもあるみたいだけど、それらはみんな行方不明なんだよね~」

 

予想外すぎて最早声も出なかった。よくこんな状況で戦車道で優勝するなんて言えたもんだと思う。これなら、他の競技で全国制覇することの方がよっぽど楽であろう。しかし、過ぎたことを嘆いてもしょうがないから今はできることだけしようと思った。

 

「あの、もしかしてこの後って戦車探しですか?」

「夏樹ちゃん、せいか〜い!私たちは明後日来る教官と電話で打ち合わせとか色々するから、そっちは任せたよ〜」

 

というわけで、私たちは戦車を探すことになった。一応戦車も車ということで武部に連れられて駐車場に来たが、あるはずもなく次は山に探しに行こうとしたが、こそこそついてくるもじゃもじゃの髪の子が目に入ったので、声をかけようとしたが意外にもみほが先に口を開いた。

 

「あ、あの~。よかったら一緒に探さない?」

「いいんですか!あ、あの〜、普通II科2年C組の秋山優花里と言います。えっと〜、不束者ですがよろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします。五十鈴華です。」

「武部沙織!」

「あ、私は...」

「存じ上げてます!西住みほ殿ですよね。それと夏樹涼殿ですよね」

「うん、そうだよ」

「では、よろしくお願いします!」

 

秋山を加えて戦車を探しに山へ入った。しばらくすると華が鉄と油の匂いで戦車を発見した。華道をすれば警察犬並みの嗅覚を身につけられるのかなと私は思ったけど、華が特別なのかもしれない。

 

見つけた戦車は38(t)軽戦車。エルヴィン・ロンメルが指揮した第7機甲師団でも主力を務めた名戦車である。ただ、戦車道で活躍するのは非常に難しい。

 

他のチームも1両ずつ戦車を発見し、最終的に5両になった。他のチームが発見した車両は89式中戦車甲型、III号突撃砲F型、M3中戦車リーだった。89式はともかく、IIl突やM3ならそこそこ戦力になる。とは言え、この戦力ではかなり厳しいことは明らかだ。正直不安しかない。

 

発見された戦車を見ている会長に河嶋さんが振り分けはどうするかを尋ねた。

 

「見つけたもんが見つけたものに乗ればいいんじゃない?」

「そんなことでいいんですか?」

「38(t)は我々が、お前たちはIV号で」

「会長、私も38(t)でいいですか?経験者は分散した方がいいと思うんで」

「そうだね〜夏樹ちゃんよろしく〜」

 

みほたちがIV号でAチーム、バレー部達が89式でBチーム、歴女がIll突でCチーム、1年生がM3でDチーム、生徒会with私が38(t)でEチームとなった。

 

とりあえず洗車をして、あとの整備を自動車に任せてこの日は解散となった。

 




そういえば、ソンム中学校のソンムって世界で初めて戦車が実戦導入された、ソンムの戦いが由来です。イギリス軍が塹壕戦をどうにかするために導入したのですが、あまり戦果を挙げられなかったそうです。
というわけで、ソンム中学校はイギリス戦車を主に使っていたという設定でいきます。

※追記※
最後の一文修正しました。


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新たな教官に私は驚愕する

投稿遅れてしまいすいません。大学入ればもっと時間あると思って投稿を開始したのですが、意外と忙しくてなかなか執筆する時間が取れません。出来るだけ早めに投稿できるように善処します。


放課後、秋山に寄り道しませんかと誘われて、戦車倶楽部に入った。

私は戦車道をやめて以来、戦車関連の店に入っていなかったから少し懐かしい気分になった。1人でぶらぶらと店内を歩いていると昔かなりやり込んだ戦車のゲームがあったので久しぶりにやってみることにした。

少し腕が鈍っていたけど、この店の最高得点を超えたところで秋山達が集まってきた

 

「夏樹殿、すごいうまいですね!こんなにスコアの高い人初めて見ました!」

「アクティブで楽しそうです」

「このゲーム昔かなりやり込んだからね。腕が鈍ってて前よりスコア低いんだよね」

 

ゲームの話で盛り上がっていると店内のモニターで戦車のニュースが流れた。そこにはみほの姉、西住まほのインタビュー映像だった。

 

「戦車道の勝利の秘訣とはなんですか?」

「諦めないこと、そして、どんな状況でも逃げ出さないことです」

 

この言葉はみほだけでなく、みほから逃げて大洗に来た私にも響いた。戦車道をやめるようなその程度の人間に勝利などないと言われているように感じて、嫌な気分になった。

 

私とみほの様子を見て、武部がみほの家でご飯にしようと提案した。こうやって気分を変えてくれるのはすごくありがたいと思った。さすがオカン武部。

 

食事会は普通に盛り上がって楽しかったし、秋山はいつでも野営できるように飯盒を常備していることや、五十鈴が料理できないことや逆に武部がめっちゃ料理がうまいなど新たな発見もあった。

 

 

次の日、みほが遅刻してきた。どうやら寝過ごしたらしい。私も時々やるから仕方ないと思う。朝が来るのが悪い。

 

この日は、戦車道の教官が来ることになっていて、会長に騙された?武部はうきうきしながら待っていた。戦車道の教官ならほぼ間違いなく女性なのにね...

 

しばらく待っていると輸送機が飛んで来て、駐車場に10式戦車を放り投げて飛び去っていった。その際に学園長の車を吹き飛ばし、さらにバックして踏み潰した。私は、チラッと学園長室の方を見ると学園長が涙目でこちらを見ていた。ドンマイです。

 

そして、10式戦車から女性の教官が降りてきた。武部は「騙された...」と不満を口にしていたけどこの人すごい人なんだよね。高校時代に全国大会で単騎で敵戦車十五輌抜き、十二時間に渡る激闘の一騎打ちなどの数々の伝説を残している名選手だ。実際の試合映像を見たときの衝撃は凄かった。

 

「特別講師の戦車教導隊、蝶野亜美一尉だ」

「よろしくね。戦車道は初めての人が多いと聞いていますが、いっしょに頑張りましょう。あれ?西住師範のお嬢様じゃありません?師範にはお世話になってます。お姉様もお元気?」

「あ...はい...」

 

西住は物凄く気まずそうな顔で答えたので蝶野さんはきょとんとした顔で西住を見た後、私と目が合ってこちらに近づいてきた。

 

「それに貴方、夏樹涼さんですよね?高校では戦車道を辞めたと聞いていたけど、また始めたのね。嬉しいわ。貴方の試合では毎回驚かされたから凄く印象に残っているわ」

「...蝶野さんに覚えていただいて光栄です」

「西住師範って?」

「有名なの?」

「西住流って言うのはね、戦車道の流派の中でも最も由緒ある流派なの」

「教官!教官はやっぱりモテるんですか?」

 

おい、武部。蝶野さんになんて質問をしてるんだよ。せっかく戦車道の教官が来てくれたんだから、戦車道に関する質問をしてよ。蝶野さんも困ってるじゃん

 

「モテるというより、狙った的を外したことは無いわ。撃破率は120%よ!」

 

いや、普通に答えないでくださいよ。あと、狙った的って絶対敵戦車ですよね。

 

秋山が蝶野さんに今日の訓練は何かと尋ねると、なんといきなり試合形式で行うことになった。その時の蝶野さんの説明は擬音語しかない大雑把な説明だったのでみんなは一瞬戸惑ったが、やる気は十分だった。

 

「会長、ポジションどうしますか?私は砲手がしたいです」

「とりあえず夏樹ちゃんが車長は決まりでしょ。後はかーしまが砲手で小山が操縦手かな。私は干し芋係で」

「会長は装填手してください」

 

各チームポジションを決め、初期位置へと向かって前進した。全車両初期位置に着いた後教官から通信が入った。

 

「みんなスタート地点に着いたようね。ルールは簡単、全ての車両を動けなくするだけ。つまり、ガンガン前進してバンバン撃ってやっつければいいだけ。わかった?戦車道は礼に始まって礼に終わるの。一同、礼」

「「「よろしくお願いします」」」

「それでは試合開始」

 

訓練が始まってすぐに砲声が聞こえた。方向的にAチームがいる方だ。この砲声は恐らく八九式だから、早速交戦が始まったようだ。

 

「多分AチームとBチームが交戦してます。BチームはAチームに倒してもらいましょう。私達はAチームを倒します」

「りょうかーい」

 

戦車道を再開していきなりみほにリベンジする機会があるとは思わなかった。私はこの機会を逃したくなかった。だから絶対に勝ちたい。

会長達には申し訳ないけど、私のリベンジに協力してください、と誰にも聞こえないように呟いて、Aチームのいる方に戦車を前進させた。



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久しぶりに私は戦う

デレステの無料10連で3人SSR出ました!加蓮ちゃん可愛いすぎてやばいです。



「ここで停車してください。恐らく、Aチームはそこの道を通るので、Aチームが通った後に気づかれないように後をつけます」

 

砲撃音や地形などでAチームが通るであろう道を予測して、そこから少し離れた場所に停車させ、少し待機することにした。そして、ここからの作戦を説明した。

 

「Aチームの後をつけて、AチームがBチームを倒した瞬間に側面若しくは背面に肉薄して、至近距離で砲撃し撃破します。撃破後はすぐに反転して、他のチームに気づかれる前に潜伏します」

「いいね〜。でもさ、もしあっちの装填が間に合ったらこっちも危ないけど大丈夫?」

「大丈夫です。相手はみほ以外初心者です。初撃破の余韻に浸って必ず反応が鈍くなります。それに、いきなり戦車が向かってきたらすぐに何をすべきか判断できるはずがないし、みほがすぐに指示を出したとしてもなかなか体はすぐに動けません」

「な~るほど~。じゃあそれでいこっか」

 

作戦を伝え終わったところでちょうどAチームが近づいてきたので、通り過ぎた後で後をつけ始めた。どうやら、逃げることに専念しているようで反撃していなかった。そのまま追っていると、Aチームの前からCチームが向かって来た。流石に、III突まで来たら分が悪いから、一度引く事にした。

 

「一度引きます。ここでAチームを倒してもCチームに撃破されるので、CチームもAチームに倒してもらいましょう」

「まだ気づかれてないんだから3両とも倒せばいいだろう」

「1両倒した時点で他の2両に気づかれます。最悪2対1になって不利になるので、極力リスクは避けたいです」

「ならどうするんだ?」

「とりあえず先回りして潜伏します。ここの曲がり角を右に行ったから、このあたりの山の中を無理やり突っ切って、この吊り橋のあたりに潜伏して様子見しましょう」

 

当然、初乗りの小山さんでは流石に整備されていない山の中は操縦できないと思ったので、走りやすいところまで私が操縦して再び小山先輩と交代した。すると、後ろからDチームがついて来た。

 

「ねぇ、どうする?撃っちゃう?」

「うーん、わかんない。とりあえずついて行こう!」

「おっけー」

 

一向にこちらを打つ気配がない。どうやらDチームは様子見しているようだ。しかし、いつ撃つかわからない不確定要素が後ろにいるのは、不安だから、先に撃破することにした。

 

「このカーブを曲がったら、加速してから山の中に入って停車してください。。後ろに他のチームがいるのは不安なのでここでDチームを撃破します」

 

小山さんは指示通りに操縦して上手く隠れることができた。初乗りとは思えない手際の良さだった。

 

私達が消えてしまったためDチームは困惑して停車してしまった。ハッチを開けて私達を探しているが見つけられないようだ。この間に私は河島さんに標準器の使い方や砲塔の回し方などをを教えて、初めてだから標準だけ合わせてあげた。

 

「以上で説明終わります。最初だけ標準を合わせたので、あとは撃つだけです。他のところは弄らないでください。Dチームもそろそろ動き出すので私の合図で側面を撃ち抜いてください」

 

Dチームは少し落ち着いた様でゆっくり進み始めて、私達の前に近づいてきた。

 

「3、2、1、撃て!」

「喰らえ!」

 

河島さんが撃った砲弾は見事にM3の側面を撃ち抜き、白旗が上がった。

 

「有効。Dチーム行動不能」

 

「よし、ナイスです河島さん」

「やりましたよ会長!」

「ナイスかーしまー。それにしてもすごい音だね〜」

「振動もすごいですね...」

 

会長たちは砲撃の衝撃に驚いていた。これで試合が終わるならもう少し余韻に浸らせても良かったのだが、まだAチームが残っているので意識を引き戻して次の指示を出すことにした。

 

「まだ試合は終わっていません。吊り橋まで行って偵察しましょう。吊り橋はもう近いので恐らく先に到着できるはずです」

 

吊り橋から少し離れた場所に停車して、しばらく偵察していると向かい側からAチームが来た。吊り橋の前で停車するとみほが降りて指示を始めた。交戦中に戦車降りるのは自殺行為だ。急いで砲撃中止させるために通信をしようとした瞬間にIII突が砲撃した。III突が放った砲弾はIV号の砲塔側面を掠っただけで特に被害もなく、みほも無事だった。その後すぐにみほは車内に戻ると急にIV号の動きがよくなり、B、Cチームを連続で撃破して橋を渡り切って停車した。そして、キューポラから顔を出してあたりを見渡し始めた。しばらく見渡した後車内に戻ったので、まだこちらを発見できていないようだった。

 

もう少し待ってから確実に仕留められるところまでゆっくり後ろから近付いて撃破しようと提案しようとしたら、河島さんが痺れを切らしてしまった。

 

「えーい、まどろっこしい!この私が撃破してやる!」

「え、ちょっと待って」

 

私が待ってと言う時にはもうすでに砲弾が放たれていた。しかも、Aチームから大きく離れた場所着弾した。

 

「小山さん!アクセル全開で離れて下さい!こちらの方が若干速いので多分追いつかれません」

「りょ、了解!」

 

「Eチームの砲手誰なんでしょうね?全然違う方向に着弾しましたよ」

「もしかしたら、わざと外して誘き寄せているのかもしれないので警戒は怠らないで下さい。このまま追いかけます」

 

これはまずいな。奇襲作戦が出来なくなった以上普通に戦わなければならなくなった。さてどうしたものか...

 




決着は次の話で


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私は再び敗北する

お久しぶりです。執筆時間が無さすぎてやばいです。うちの大学やたら課題が多くてキレそうです。
割と無理やり時間作って書いたので誤字脱字あるかもです

あとシトナイちゃんお迎えしました。可愛いですね


河島さんが痺れを切らして先に撃ってしまったため、追いかけっこになっている。辛うじて速度で優っているためほんの少しづつ距離は離れてきているが、砲撃はどんどん正確になってきていくら行進間射撃とはいえ、そろそろ当たりそうになってきた。

 

どうやって倒すか考えるために地図を見ると次のカーブを曲がったらしばらく直進になるようだ。直進になると狙いやすくなって危険だが、私はここで決めることにした。

 

「ここを曲がったらアクセル全開でしばらく走ってから反転して、私の合図山の中の入って背面に回りこんでください。ここで決めます」

 

この作戦は成功する可能性は低いというのは確信しているが、このままやられるよりはマシだ。しかし、やられるつもりは一切ない。何度も言うが相手は初心者だから、全速力で向かってくる戦車に焦ってミスをしてくれる可能性があるのでうまくいけば十分撃破できるはずである。

 

カーブを曲がり直進に入ってしばらくすると道の左端の方に少し大きな岩が落ちていた。私はそれを見てある作戦を思いついた。はっきり言ってかなり無理がある作戦だがうまくいけばみほでさえ出し抜けるはずである。

 

「作戦を変更します。説明している暇はないのでとりあえず指示通りに動いてください」

「りょ~か~い」

「次の砲弾を躱したら反転して、私の合図で右に寄ってください」

 

そして、辛うじて砲弾を躱して若干ドリフトっぽく反転して再び走ってきた道を全速力で逆戻りした。すると、Aチームは停車してじっくり狙いを定め始めた。そして、私は撃ってくるタイミングを見極めて指示を出した

 

「小山さん!合図で右に寄って岩に片輪だけ乗せてください!」

「え?何するの?」

「いいから指示に従ってくださいい。上手くいけば勝てます。3、2、1はい!」

 

合図で右に寄った瞬間にIV号が放った砲弾が砲塔の左側を飛んで行った。うまく片輪だけ岩に乗ることができた。全速力で片輪だけ岩に乗せるとどうなるか、岩に乗せたほうの履帯が宙に浮き、片輪走行になる。

 

「え!すごい!戦車で片輪走行なんて初めて見ました!」

「急いで次弾装填!砲塔も後ろに旋回して下さい!」

 

「うわぁぁぁ!傾いてるよぉぉぉ柚子ちゃぁん!」

「落ち着いてください!このまま左側を抜けます。片輪走行なのでぶつからないはずです。河島さん急いで砲塔を後ろに旋回してください。小山さん、IV号と行き違う少し前から減速して背面に来たら停車してください。停車の際すごく揺れると思うので気を付けてください。」

 

IV号とぶつからずに行き違い背面、IV号の後方1mほどのところに停車することができた。この距離なら確実に撃破できる。

 

「車体も旋回してください。間に合いません」

「了解」

 

「河島さん撃て!」

 

これで勝ったと思ったが、38(t)が放った砲弾はIV号には当たらなかった。

 

「桃ちゃんここで外す~」

「全速ぜっ…」

 

私が全速前進と言い切るまでに砲弾が直撃し、白旗が上がった。

 

「DチームM3、Eチーム38(t)、CチームIII号突撃砲、Bチーム89式、いずれも行動不能。よってAチームIV号の勝利!」

 

「わ、私達勝っちゃったの?」

「...みたいです」

「すごーい!西住殿のお陰です!」

「Eチームの最後の攻撃が当たってたら負けてただろうな」

 

また、負けた。今回は私の作戦ミスが原因だ。いきなり片輪走行させ、着地の衝撃に動揺したなかで撃たせるのは初心者には困難なことだ。以前のメンバーの時と同じような指示を出しても出来るはずがないのにそのような指示を出してしまったのは、私のミスである。やはり,一時期戦車道から退いていたとはいえ、体にはしっかりとあの時のメンバーとの戦車道が染み付いていてなかなか消えないようだ。

 

しかし、初乗りで片輪走行をして完璧な位置に停車した小山さんの操縦技術はなかなかのものだ。もっと練習すれば、強豪校の幹部クラスの操縦手にもなれるかもしれない。

 

「すいません、会長。以前のメンバーに出していたような指示を出してしまいました。初心者にはかなり厳しい指示だったと思います。ですが、初めてでこれだけ戦えたら十分だと思います」

「気にしなくていいよ〜。思ったよりは上手く動かせて良かったよ」

 

校庭へ戻ってきて、色々片付けなどを済ませると蝶野教官が練習試合の講評するから全員整列するように言われ、各チームごとに整列した。

 

「みんなグッジョブ、ベリーナイス!初めてでこれだけガンガン動かせたら上出来よ!特にAチームとEチーム 。よくやったわね。あとは日々、走行訓練と砲撃訓練に励むように。わからないことがあったらいつでもメールしてね」

「一同、礼」

「「「ありがとうございました」」」

 

授業が終わった後、会長に呼ばれて一緒に生徒会室に向かった。

 

「いや〜西住ちゃん強かったね〜。さすが、西住流だね」

「そうですね。私がもう少し上手く指示を出せたら勝てたかもですけど」

「最後かーしまが当てたら勝ってたのにね〜」

「まあ、初めてなんで仕方ないですよ。それで何か私に話があるんですよね?」

「うん。今日初めて戦車を動かしてみて思ったよりは出来たと思うし蝶野教官もそう仰っていた。だから練習していけばどんどん上手くなっていくと思うけど、あと3カ月で全国大会で勝てるレベルになれるかな?全国大会の試合を見たけど私じゃイマイチ力量差がわからなくてね」

「今のままだとトーナメントのあたりが良くて2回戦勝てるか勝てないかぐらいですね。そもそも戦車の性能があれなんで、いくら砲撃が上手くてもダメージが入らなければ倒せません。戦車の強化および新戦車の導入は必須だと思います。あとは実戦経験の少なさですね。実戦経験があるのと無いのでは大きく違ってきますから。ただまあ今の時期だとどこも練習試合受けてくれないでしょうけど」

「なるほど練習試合か〜。とりあえず虱潰しで申し込んでみるよ。今日はありがとね〜」

「失礼します」

 

私が生徒会室から出た後会長は戦車道チームがある学校に片っ端から電話を掛けるのであった

 



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嫌でも私は気づいてしまった

あけましておめでとうございます(激遅)
春休みに入ってようやく執筆できるようになってやっと投稿できました。
久しぶりの投稿なので誤字脱字あるかもです(ちゃんと確認してから投稿しろクソ作者)


模擬試合から数日後、私は生徒会に頼まれて燃料や砲弾などを仕入れに行った。最初は断ったが公欠扱いに生徒会権限で公欠扱いにすると言われ仕方なく戦車ショップに行き、上手く値切って注文して学校に戻ると信じられない事が起きていた。

 

ピンク色のM3、赤や黄色の三突、「バレー部復活」の白い文字が書かれた八九式、そして金色の38(t)が並べられ、みんな満足そうにしている。

 

「会長、これなんですか?」

「かっこいいでしょ?」

「会長、話しがあるので生徒会室に行ましょう」

 

とりあえず怒りを抑えこんだ私は、会長の言い分を聞いてからこのまま戦車道を続けるのか辞めるのかを判断する事にした。このふざけた塗装は戦車への冒涜であり、到底許されるものではなかった。しかし、あの会長はいつもヘラヘラしているが、実際には色んなこと考えている人だということはもう分かっている。今回も何らかの思惑があるのだろうからそれを聞くために生徒会に連れていった

 

しかし、会長は戦車の迷彩を何だと思っているのだろうか。敵に見つからないように目立たないにしたり周りの風景に同化させるための迷彩なのに、III突は派手な赤色だし38(t)は金色に輝いている。これはまるで敵に見つけて下さいと言っているようなものである。

 

 

「あのふざけた迷彩は何ですか?」

「かっこいいでしょ?」

「本気で言ってるなら私は戦車道を辞めますよ」

「勿論冗談だよ。これは皆の士気を上げるためだよ。近々他校と練習試合をしようと思ってるから、そのための飴みたいなものだよ。いきなり試合するって言っても初心者が多いからビビっちゃうでしょ?だから、とりあえず、

好きなようさせてみた。勿論、練習試合が終わったら元の塗装に戻させるよ」

 

正直ここまで考えているとは思わなかった。確かに初心者がいきなり試合すると言われたら尻込みしてしまうだろう。だから、試合前に少しでも士気を上げておこうという会長の判断は理にかなっていると感じた。

 

「このふざけた塗装は許せないですが、とりあえず納得しました。でも、この時期だと練習試合受けてくれるような学校なんてないと思いますよ?わざわざ大会前に情報を漏らしたくはないでしょうし」

 

だから、練習試合をしてくれるところなんてないないと思っていたが、次の日の練習後に

 

「急ではあるが、今度の日曜日に練習試合を行うことになった。相手は聖グロリアーナ女学院」

 

まさかこの時期に練習試合を受けてくれるところがあるとは思っていなかった。しかも準優勝経験もある強豪校の聖グロが相手してくれるとは。ただ、いきなり聖グロは厳しいだろう。

 

その後、生徒会と各チームの車長(Cチームは装填手のカエサルさん)を集めて作戦会議が行われた。河島さんが色々調べたようで作戦を発表した。

 

「いいか?相手の聖グロリアーナ女学院は強固な装甲と連携力を生かした浸透強襲戦術を得意としている。とにかく相手の戦車は硬い。主力のマチルダⅡに対して我々の砲は100メートル以内でないと通用しないと思え。そこで一両がおとりとなって、こちら有利になるキルゾーンに敵を引きずり込み、高低差を利用して残りがこれを叩く!」

 

初めて作戦立案した割にはそこそこよくできていると感じた。戦車の性能差を考えて有利なところにで待ち伏せするのはいい作戦ではある。しかし、詰めが甘いとも思った。それはみほも感じていたようで

 

「聖グロリアーナは当然こちらが囮を使ってくることは想すると思います。裏をかかれて逆包囲される可能性があるので...」

「あ~確かにね~」

「黙れ!私の作戦に口を挟むな!そんなこと言うならお前が隊長をやれ!」

「すみません...」

「みはが謝る必要はないし、隊長はみほがやるべきだと思うよ。河島さんがそこまで言うなら最初はその作戦で行きましょう。それで、その次の作戦はどうしますか?まさかこの作戦だけで全滅させられると思ってませんよね?」

「この作戦で全滅させるに決まっているだろう。私の作戦は完璧だ」

「河島さんの作戦だと全滅は難しいと思いますよ。自分でも言ってたようにマチルダやチャーチルは硬いのでそんな簡単に撃破できません。それに、囮だとすぐに気づくでしょうから簡単に誘い込めるとも思えません」

「うるさい!私に口答えするな!」

「河島さんは戦車道を舐めているんですか?そんな簡単に全滅させられるようなところが準優勝できるわけないでしょう。はっきり言って考えが甘いです」

 

こうやって熱くなってしまうあたり私は戦車道が好きで、本当は辞めたくなかったんだと嫌でも感じてしまった。3年間勝てなかったぐらいで戦車道を辞められるほど私の心は冷めていないようだ。

 

河島さんはどうしても隊長をしたいようで私やみほの意見を全く聞くつもりがないらしく何としても従わせたいようだ。

 

「黙れ!私の作戦は完璧だ!」

「だったら最初は河島さんが隊長をやればいいですよ。ただしこの作戦が終了するまでです。作戦終了後はみほが隊長、私が副隊長として指揮を執ります。最初は河島さんの好きにしたらいいです。でも、その後は口出しせずに私たちの指示に従ってください」

「いいだろう。まぁお前たちの出番はないだろうけどな」

 

かなり荒れた作戦会議は隊長を前半と後半で交代することでとりあえずまとまった。作戦会議が終わり生徒会室を出ようとしたら片づけを手伝ってほしいと言われたのでそのまま残って手伝った。河島さんが書類を職員室にもっていくと言って教室から出ていくと会長が話しかけてきた。

 

「夏樹ちゃん、本当にかーしまに任せてよかったの?」

「河島さんみたいな人は一度痛い目に合わないとわからないと思うのでこれでいいんですよ」

「なかなか厳しいこと言うね~」

 

こうして、練習試合向けての準備が進んでいくのであった。

 



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やはり私の思った通りに

お久しぶりです。最終章2話を見て、早く書かなきゃ(使命感)と思い、無理やり時間を作って、爆速で書き上げたので色々とおかしなところがあるかもです。

最終章2話激アツすぎません?私はすでに4回見に行きました。この小説を読んでくださっているガルパンおじさんやガルパンお兄さんは絶対に見るべきです。

次回は恐らくもう少し早く投稿できるかもです。多分…Maybe…できたらいいなぁ…


「会長、マジでやるんですか?」

「もっちろん!負けたらあんこう踊りやってもらうよ~」

 

会議の最後に会長が西住に聖グロに負けたら大納涼祭であんこう踊りという罰ゲームを提示した。流石に冗談だと思ったけどどうやら本気らしい。流石にアレを西住にやらせるわけにはいかないから絶対に負けられなくなった。アレはやると間違いなくネット上に晒されてとにかくやばいことになる。

 

そして、次の日。ついに聖グロとの練習試合が行わなれる。聖グロはこちらに数を合わせてくれたため、5両対5両の同数で試合は行われる。

 

戦車道は礼に始まり礼に終わる。試合開始前には整列してお互い挨拶をする。各車長が代表して整列しお互い向き合った。

 

「本日は急な申し込みにも関わらず、試合を受けていただき感謝する」

「構いませんことよ。それにしても、個性的な戦車ですわね。ですが、私たちはどんな相手でも全力を尽くしますの。サンダースやプラウダみたいに下品な戦い方は致しませんわ。騎士道精神でお互い頑張りましょう」

 

ダージリンさんはうちの戦車を見て。若干煽ってきた感じだったが、試合には手を抜かないらしい。ますます、勝てる気がしなくなってきた。

 

審判の合図で礼をして、お互い初期位置に着いた。そして、河島さんが試合が始まる前にほかの車両に通信した。

 

 

「用意はいいか?皆の者。私の指示に従えば必ず勝てるだろう。しっかり頼むぞ」

「はい」

 

しばらくして、審判からの合図により試合が始まった。

 

「今回は殲滅戦ルール行われる。どちらか一方のチームが全部やられたら終わりだ。まずは、作戦通りAチームが偵察に向かえ。我々は、100メートルほど前進して待機だ」

 

Aチームを偵察に向かわせて、他の車両はキルゾーンに待機した。

 

 

「よし、Aチームが来るまで休憩とする」

「じゃあ、大富豪しようよ」

「私たちはバレーの練習だ!いつも心にバレーボール!」

「貴様ら!今は試合中だぞ!集中しろ!」

「いいんじゃない?かーしま。西住ちゃんから連絡あってからでも間に合うでしょ」

「ですが…わかりました。」

 

私は、「いやダメでしょ」と言いたかったが、河島さんの作戦が終わるまで一切口を出さないと決めていたので、声に出すことはなかった。しばらく待っていると西住から通信があり、あと3分で到着するということだ。

 

「Aチームが戻ってきたぞ。全員戦車に乗り込め!」

「あと600メートルで敵車両射程内です」

 

敵車両が射程に入ると通信があり、各チームが緊張に包まれた。そして、Aチームが見えた瞬間に河島さんが砲撃命令を出した。流石にフレンドリーファイアはまずいので、次弾を装填する前に河島さんに一言だけ言った。

 

「いくら緊張していたとはいえ、味方を撃つとかどうかしてるんじゃないですか」

「なんだと!いいから次弾装填しろ」

 

そして、案の定包囲一両も撃破できずに少しずつ包囲され始めた。包囲が狭まりついに攻撃され始めた。激しい攻撃に一年生は車両を降りて逃げてしまった。この状況で戦車から降りるのは自殺行為だ。後でしっかりと注意しておかなくてはと思っていたら、履帯が外れて動けなくなってしまった。

 

「Eチーム大丈夫ですか?」

「撃破はされてないけど履帯が外れて行動不能。そろそろ予定通り指揮官交代しよう」

「まだ戦えるぞ!」

「河島さん、現実を見てください。Eチームより各車へ。隊長車をAチームに変更します。以後は、Aチーム西住が隊長、Eチーム夏樹が副隊長として指揮を執ります」

「了解しました。これより、私が隊長を引き継ぎます。B、Cチームは私のあとについてきてください。移動します。Eチームはしばらく待機して、履帯を修理したら合流して下さい。」

「わかりました」

「心得た」

「了解。なるべく早く合流します」

 

A、B、Cチームが撤退し、聖グロがそれを追ってこの場を去っていた。こちらの被害はМ3が撃破されただけだったから、想定より被害は少なかった。ただ、38(t)も履帯が外れてしまってしばらく行動不能のため、しばらく3対5の状態で不利な状況だ。できるだけ早く合流するために履帯を直さなければならないが、その前に河島さんと話をしなくてはならない。

 

「河島さん、これでわかりましたか?これが戦車道です。あなたが思っているほど戦車道は甘くありません。素人が一日や二日考えた程度の作戦が、強豪校に通用するわけがないんですよ。経験が違います。素人がその経験の差を埋めようと思ったら、一人で作戦を考えて周りの助言も聞かずに高圧的に命じるのではなく、周りの意見を聞いて綿密に作戦を立てて、相互に協力するべきなのです。あなたはもう少し周りの意見を聞き入れるべきです」

「黙れ!あのままいけば全滅させられたはずだ!」

「本気で言ってますか?現実を見てください。これがあなたの作戦の結果です。作戦は失敗です」

「まぁまぁ二人とも落ち着いて。早く履帯を直して合流するよ~」

「そうですね。すぐに修理に取り掛かりましょう」

 

全員無言で車両から降りて黙々と履帯を修理し始めた。38(t)の履帯は軽いほうなので、15分ほどで修理が完了し、車両に戻った。そして、合流する前に私が沈黙を破った。

 

「これより本隊に合流しますが、その前にポジションを変更します」




一応言っておきますが私は別に河島さんが嫌いなわけではないんですよ。私はガルパン箱推しなので、みんな好きです。
夏樹ちゃんは戦車道になると熱くなりすぎてきつく言っちゃうんですよ。だから優しい目で読んでくださると幸いです。


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対外試合で私は頑張る

予告通り(?)比較的早く投稿できました。今は夏休みなので何とか時間を作って少しづつ執筆しております。なので、次も多分……そんなにかからないと思いたいです。不定期投稿で申し訳ないですが、暖かく読んでいただけると嬉しいです。


「これより本隊に合流しますが、その前にポジションを変更します」

「いいよ~。それで、夏樹ちゃんが車長なのはわかるけど他はどうするの?」

「私が車長、会長が砲手、河島さんが装填手、小山さんはそのまま操縦手をお願いします」

「何故私が装填手なのだ!会長は砲手の練習はしてないし、砲手の練習をしている私のほうが適任だろう!」

「敢えて厳しい言い方しますけど、河島さんの砲手としての能力はその程度のものなんですよ。練習で一度も当てるどころか至近弾ですら一発も撃てない。はっきり言って砲手に向いてないですね。だから、この戦況を少しでも良くするためには、砲手を変える必要があります。それに会長はやるときはやってくれるので、会長に任せたいです」

「かーしま、場所変わって」

「……わかりました」

 

河島さんは納得できてないようだが、会長に言われたから渋々場所を変わった。そして、準備が整ったところで、全車に向けて通信をした。

 

「それでは、本隊に合流します。戦車前進」

 

「Eチームより各車へ。履帯修理完了。至急そちらに向かいます。」

「こちらAチーム。あと何分で合流できますか?」

「多めに見て15分くらいです。おそらく15分もかからないと思います」

「わかりました」

 

全速力で市街地に向かって数分後に2両の撃破報告があった。しかし、その数分後に再び通信があり、一両を撃破失敗した上に、こちらは2両撃破されてしまったそうだ。これで、2対4。さらに厳しくなってしまった。そして、市街地が近づいてきた。

 

「こちらEチーム。あと、2分で市街地に到着します。そちらの状況を教えてください」

「こちらAチーム。現在、敵全車と遭遇してFJ地点付近を東に逃走中です。」

「了解です。通信はつなげたままにしておいてください。」

「わかりました。合流お願います。」

 

私は地図を確認して、みほ達が進んでいる道を確認していくと、最近工事が始まった路地があり、行き止まりになっていることに気が付いた。通信の状況を聞く限り、この工事中の路地に進んでいるようだったから、すぐに報告した。

 

「Aチーム!そこの道は工事中で行き止まりになってるよ!」

「え、本当ですか?細いけどここの道通って逃げます。」

「待って、あと、一分で合流できるから、行き止まりに着いたら、なんとか時間稼いで」

「なんとかって……わかりました。やってみます。」

 

私は聖グロに奇襲するために地図に線を書き込み、会長たちに指示をした。

 

「小山さん、この線の通り走ってここで止まってください。会長は敵側面を砲撃してください。接射ならマチルダは撃破できます。河島さんは会長が撃ったらすぐに装填してください。」

「夏樹さん、ここって……」

「大丈夫です。多分…。とにかくあと少しですよ。小山さんお願いします。」

 

そして、小山さんは私が書いた通りに進み、民家を無理やり貫通して聖グロ隊の側面にたどり着いた。会長は目の前にいたマチルダの側面を砲撃し、マチルダに白旗が上がった。聖グロがこちらに驚いた隙をついて、みほがマチルダを撃破して転進し、それに続けて私たちも全速後退してその場を離れた。みほたちはもう一両のマチルダを撃破して、2対1になった。

 

「Eチーム聞こえますか?この道でチャーチルを挟み撃ちにすると見せかけて、回り込みます。」

「了解。盾になればいいんだよね」

「はい、すみません。お願いします」

 

作戦通りAチームが回り込み、その前に私の車体を入り込ませて盾となり、私は撃破された。そして、Aチームはチャーチルを砲撃したが、やはりチャーチルの装甲は硬く弾かれてしまった。Aチームは撤退しようとしたが、チャーチルの装填が恐ろしく早く、IV号に白旗が上がった。

 

結果として負けてしまったが、準優勝校をここまで追い詰められたのは大きな成果だ。しかし、負けは負けだから、あまり気分はよくなかった。しばらくして、聖グロが試合後の挨拶に来た。私はある事情があってダージリンさんに会うのが少し面倒だったので、少し離れたところから盗み聞きをすることにした。

 

「あなたが隊長さんですわね」

「あ……はい…」

「あなた、お名前は?」

「西住……みほです」

「もしかして西住流の?黒森峰にいたはずでは?それよりも、38(t)の車長はどなたかしら?」

「私だ」

 

負けたため少し不機嫌な河島さんが答えると、ダージリンさんは目を細めながら答えた。

 

「…38(t)の車長さんは途中で変わったのでしょう?あなたじゃなくて変わった後の車長さんに会いたいのだけれど」

 

流石に車長が変わったのはダージリンさんにはお見通しだったようだったので、盗み聞きをやめ会話の輪に交わることにした。

 

「お見通しだったようですね。流石です。お久しぶりですね、ダージリンさん。私が38(t)の車長です」

「あら、夏樹さんじゃない。戦車道やめたのではなかったかしら?」

「色々あって今年だけ復帰してます」

「ダージリンさんとお知り合いだったの?」

「以前に何度か会ったことがあって」

「そうなのよ。何度もアプローチを掛けたのだけれど、結局全部振られてしまったのよ」

「ちょっとどういう事!?二人ってそうゆう関係なの!?本当に女の子同士でそういうこともあるんだ!」

「婚活戦士は黙れ。あと、ダージリンさんもそういう言い方やめてもらっていいですか?普通に私が聖グロのスカウト蹴ったって言ってくださいよ」

 

これが、私がダージリンさんに会うのが面倒だと思っていた理由だ。




もう一度言います。私は河島さんが嫌いわけではないです。ガルパンは箱推しです。みんな好きです。河島さんが好きな人ごめんなさい。
もしかして、アンチ・ヘイトのタグ入れたほうがいいですかね?わかんないので入れておきますね。

あと、チャイナ服マリーさん可愛すぎてやばい


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だから、私は彼女に会いたくなかった

毎度投稿が遅くて申し訳ないです。お久しぶりです。この間ロシアの映画の「T-34」を見てきました。めちゃくちゃ戦車戦がすごかったのでドイツ戦車好きの私もソ連戦車もいいなと思ってしまいました。リアルな戦車戦に興味がある方は見ることをお勧めします。



「「「え!?」」」

 

私の発言にダージリンさんとみほと秋山さん以外は驚いた。ダージリンさんやみほはともかく秋山さんが納得した表情なのは少し疑問だったが、それよりも沙織たちの反応が大きかった。

 

「え!何で聖グロのスカウト蹴っちゃったの!?お嬢様学校だよ!お嬢様!」

「私が戦車辞めた理由は前に話したし、そもそも私ってお嬢様って柄じゃないでしょ?」

「あっ…確かにお嬢様って感じはないよね」

「ゼクシィ、後で倉庫裏ね。ていうか、そんなに驚くことでもないでしょ?一応中学三年間全国決勝進出校の隊長だったんだし、スカウトの一つや二つあっても不思議じゃないでしょ?」

「そうね。あなたの実力ならウチ以外からもスカウトあったでしょうね。」

 

ダージリンさんの言う通り聖グロ以外からも何件かあったが、もうやらないと決めていた私は全て蹴ってしまった。有難いことに戦車道の強豪と呼ばれるところはほぼ全てスカウトがあった。私が何度もスカウトを断ると諦める学校がほとんどだったが聖グロだけは何度も声をかけてくれた。大洗に入学してからも一か月ほどスカウトは続いたが、断り続けるとようやく諦めたのか連絡も来なくなった。

 

「夏樹さん、今からでもウチに来ないかしら?あなたならすぐにティーネームを名乗る実力もありますし、私たちはいつでも歓迎するわ。」

「私は大洗で戦車をやる理由ができたのでそれは無理ですね。それよりも聞きたいことがあるんですけど、チャーチルの装填手は誰ですか?最後の装填めちゃくちゃ速かったから気になっちゃって」

「今から呼ぶから少し待ってもらえるかしら。ペコ、こっちへいらっしゃい」

 

ダージリンさんが呼ぶと、オレンジ髪の小さい子がはしたなくない程度に小走りしてこちらに向かってきた。

 

「ダージリン様、何か御用でしょうか?」

「こちらの方が貴女に会いたいそうだから呼んだのよ。自己紹介なさい」

「聖グロリアーナ女子学園戦車隊一年、チャーチル装填手オレンジペコと申します。どうぞ、お見知りおきを」

「私は夏樹涼です。途中から38(t)の車長してました。それよりも、1年で隊長車ってすごいね。まあ、あの装填速度なら納得かな。最後の装填があと1秒遅かったらうちの隊長ならギリギリ避けれたかもだったけど、完全にやられたよ」

「恐縮です」

「次は負けないから」

 

その後は、軽く話した後お開きとなった。私は陸に特に用がなかったため、学園艦に戻るために港へ向かった。港には園さんとうさぎチームがいた。園さんに挨拶して学園艦に乗ろうとしたらうさぎチームに呼び止められた。

 

「夏樹先輩待ってください。さっきの試合で逃げ出してすいませんでした!」

「もう練習来なくてもいいよ。隊長と生徒会には私から言っておくから」

「私達、戦車道したいです!」

「先輩たちすぐ負けちゃうと思ってました。でも、そんなことなくてすごくかっこよかったです」

「次は頑張ります!」

「あなた達、何をしたかわかってるの?砲弾が飛び交うなか戦車から出ることがどれだけ危険なのか。はっきり言って自殺行為だし今生きてるの奇跡だからね。私はそんな危険なことをする人達をこれ以上戦車に乗ることは戦車道経験者として認められない。怪我をする方も辛いし、させたほうも辛いからあなた達のことは認められない」

「もう二度と戦車を放り出して逃げません。絶対に逃げません。だから、戦車道を続けさせてください。お願いします!」

 

そう言ってうさぎチームは全員頭を下げた。自分たちのしたことを後悔してきちんと謝罪し復帰を望む姿は非常に好感が持てた。だから、少し甘いなと思いつつ条件を出した。

 

「はぁ…わかった。隊長が許したらいいよ。次はないからね」

 

そう言うと、彼女たちは嬉しそうに頭を下げて再び謝罪しお礼を言った。そして私は自分の寮へと向かった。

 

寮に戻ってから今日の試合の総評をすることにした。これは中学の時からの習慣で試合が終わったらその日のうちに自分なりに試合の評価をして次の試合や生かしていた。今回は惜しくも敗れたものの聖グロをあと1両に追い詰めることができた。しかし、それは8割ぐらいみほの活躍のをおかげであるのは間違いない。つまり、みほ達のワンマンチームであるということだ。こうなるのはわかっていたけどこれは非常に危うい状態だ。みほ達が撃破されるとその瞬間戦力がガタ落ちしてしまう。これが今の大洗の現状だ、とノートにまとめてゆっくりと休むことにした。が、会長に呼び出されたので仕方なく学校まで向かった。ついさっきみほ達も帰ってきたようだった。うさぎチームも許してもらって嬉しそうにしている。

 

「ごめんね~夏樹ちゃん呼び出しちゃって。ダージリンさんから贈り物があったから早く渡しておこうと思って」

「紅茶ですか、ありがとうございます。後でダージリンさんにお礼の連絡しないと」

「そうだね~。それとこれからは二人に指揮を任せるよ」

「当然そのつもりですよ。次は公式戦で勝ちます」

「公式戦?」

「戦車道の全国大会です!」

 

そして、第63回戦車道全国高校生大会、大洗の1回戦の相手がサンダース大付属高校に決定した




文化祭みほはめっちゃ強いし、文化祭オレンジペコは殺傷力(可愛さ)が凄まじく高くて死にました。


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元部下と私は一年ぶりに再会する

毎度投稿遅くて申し訳ないです。なかなか執筆時間がとれ(ry。まあ、書き始めると早いんですけどね…
それはそうと、もうすぐ今年も終わりますね。この一年はめちゃくちゃ忙しかったです。課題とかレポートとかレポートとか。大学忙しすぎる!

今回はほとんど会話だけで書いてしまったので読みづらいかもしれないです。


ほんの少し時間を遡り…

 

「さてと、そろそろ帰りましょうか。それとアッサム」

「はい、わかってます。彼女が戦車道に復帰した理由を調べたらいいんですね」

「流石アッサム、話が早い。頼んだわよ」

「了解しました、すぐに始めます」

 

「あの、ダージリン様。お聞きしたいことがあるのですが」

「何かしらペコ」

「夏樹さんが優秀な選手というのは、今日の試合でわかりましたが、ダージリン様が彼女にそんなにも固執する理由がわかりません」

「私も最初は彼女に興味はなかったのだけれど、先代の隊長がかなりスカウトに躍起になってたのよ。それでね…「おっかえりなさいませえぇぇぇぇ!!!!ダージリン様!!!」ちょっとローズヒップ、近すぎるわ。少し離れなさい」

「すいませんでしたわ!ダージリン様、試合お疲れさまでしたわ!」

「ありがとう、ローズヒップ。ペコ、彼女についてはまた今度ゆっくり話しましょう」

「はい」

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「にしても、初戦がサンダースとかくじ運悪いね~」

「ごめんね、一回戦から強いとこに当たっちゃって…」

「サンダース大ってそんなに強いんですか?」

「強いって言うか、すごくリッチな学校で戦車の保有台数が全国一なんです。チーム数も一軍から三軍まであって」

「公式戦の一回戦は戦車の数は十両までって限定されてるから。砲弾の総数も決まってるし」

「でも十両ってうちの倍じゃん。それは勝てないんじゃ」

「さらに補足すると、相手は戦車をいっぱい持ってるから、予備の車両を簡単に用意できるから、試合当日に車両が調子悪くなっても問題ないの。まあ、車両のトラブルで走行不能になることってそんなにないけど。あと、お花摘んでくるね」

 

私は一言言ってから退席して花畑に向かった。数分後に席に戻ると沙織達と誰かが言い争っているようだった。

 

「何よその言い方!」

「あまりにも失礼じゃ!」

「あなた達こそ戦車道に対して失礼じゃない?無名校のくせに。この大会はね、戦車道のイメージダウンになるような学校は参加しないのが暗黙のルールよ」

 

沙織達と揉めている相手が誰かわかったのと発言にカチンときた私は、言い争いの中に突撃した。

 

「戦車道は礼儀を重んじる武道。こっちが無名校だからと言って、それを蔑むことは無礼。戦車道に対して失礼なのはどちらかしら?ねぇ、エリカ」!」

「え、夏樹隊長!何でここに?」

「私も出るから、戦車道の全国大会に。中学の頃はここまで弱小チームを見下すことはなかったのに、黒森峰に行ってさらに悪くなってるね。黒森峰並びに西住流は相手に対する礼儀軽んじてもいいと教えているんですか?西住まほさん。」

「ちょっと、西住隊長は関係な「うちの副隊長が無礼な発言をして申し訳ない。私から後できちんと注意しておく。ただ、これだけは言わせてもらう。黒森峰と西住流は決して礼儀を軽んじてはいない」

「わかりました。あなたが頭を下げるなら私からはこのことに関して何も言いません」

「ふんっ、あんたなんて一回戦で無様な姿を晒せばいいのよ!」

「あっそ。それにしてもエリカ。みほがいなくなったから副隊長になっただけなのにちょっと粋がりすぎじゃない?あんまり図に乗ってんじゃねーぞ一兵卒」

「強豪校が有利になるように示し合わせて作った暗黙のルールとやらで負けて、恥ずかしい思いをしないといいな」

「このっ「エリカ、行こう。」しかし!」

「今のはそっちが吹っ掛けてきたので。ちゃんと首にリード付けて、手綱握っといてください」

「お騒がして申し訳ない。失礼する。行くぞエリカ」

 

去り際にエリカにすごく睨まれたが気にせず席に座り、さっき注文したケーキをつつき始めた。すると、私が言い争いに乱入してから棒立ちだった3人が座ってさっきのことについて聞いてきた。

 

「ちょっと涼!さっきの人と知り合いなの?」

「知り合いって言うか、元戦友。中学の頃の私のチームの副隊長だったよ。」

「そうなんですか。ですが、戦友というよりは仇敵のように見えましたが」

「お互い我が強いから揉めるときはあんな感じになるだけ。普段はあんな風にならないよ」

「あのね、涼さん。エリ、逸見さんは私がいなくなったから副隊長になったわけじゃないと思うよ」

「そんなのわかってるよ。エリカの強さは私が一番分かってる。多分みほのお姉さんよりも」

「じゃあ何で?あんなこと言ったの?」

「別に。単にムカついたから」

「なんか前から思ってたけど、涼って戦車のことになるとかなり口悪くなるよね~」

「まあね~。割と自覚はあるけどついやっちゃうんだよ」

「そうだ、もう一つケーキ頼みましょう」

 

冷泉はさらにもう一つケーキを頼んで、しばらく喫茶店で駄弁って後、さっきのことを忘れて町をぶらぶらしてから学園艦に戻った。

 

秋山と戦車の話をしながら歩いているとみほが船の端の方で海を眺めていた。そのまま素通りする理由もないので声をかけるために近づいた。

 

「寒くないですか?」

「あ、うん。大丈夫」

「全国大会。出場できるだけで私は嬉しいです。ほかの学校の試合も見れるし、大切なのはベストを尽くすことです。たとえ負けたとしても」

 

秋山が話していると後ろから陽気だが、そこはかとなく圧のある声が聞こえてきた。

 

「それじゃ困るんだよね~」

「絶対に勝て。我々はどうしても勝たなくてはいけないんだ」

「そうなんです~だって負けたら…」

「しー。まあとにかく、すべては西住ちゃんと夏樹ちゃんにかかってるんだから。次負けたら何してもらおうかな~。考えとくね」

 

あれじゃ、負けると何かやばいっていうのが言わなくても伝わってくる。小山さんは言いかけてたし、意外と生徒会ってポンコツなのかなと思ってしまった。あ、でも河島さんは時々すごいポンコツになる。これは間違いない。そんなことを考えてながら二人と一緒に下校した。




改めてみると、会話文多すぎですね…
あと、河島さんの時も言いましたけど、私はガルパン箱推しです!河島さんもエリカも好きです!嫌いなわけではありません。


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設定

あけましておめでとうございます!今年もマイペースに書いていこうと思います。
今更かと思いますが、本作品の設定を書いておこうかなと思いました。基本的にはアニメ遵守でいくので、アニメと違う設定を説明します

2020/9/15/20:20(追記)
エリカの設定に誤りがありました。エリカはソンム中→大洗ではなくソンム中→黒森峰です。既に訂正済みです。大変失礼しました。



夏樹涼(なつきすず) 本作の主人公。オリキャラ。ソンム中学校→大洗女子学園

中学時代、一年生の頃から隊長としてチームを率いていた。全国大会では3年連続で決勝まで進出するほど隊長としての素質は高い。しかし、7回西住姉妹に挑んで一度も勝てなかったことで挫折し、戦車道をやめるために数多くの高校のスカウトを断り、戦車道の無い大洗女子学園に入学する。ある日、生徒会に呼び出され戦車道を復活させるから、必ず履修するように強要される。そして、その裏にある事情を聞いて一年だけ戦車道に復帰する。戦車道のことになると、熱くなりすぎて口が悪くなる。本人は自覚があり直さなきゃと思っている。

 

 

西住みほ 黒森峰女学園中等部→同校高等部→大洗女子学園

中等部の頃から戦車道で活躍していた。大洗に転校した経緯はアニメと一緒。

 

 

ダージリン 聖グロリアーナ女学院

2年生の時に先代の隊長と共に涼をスカウトするが断られる。先代隊長が卒業してからもしばらくはスカウトを続けたが、最終的に諦める。

 

??? 聖グロリアーナ女学院 先代の隊長

涼の試合を見て、スカウトしようと決める。スカウトする理由は、実力の高さと聖グロが抱えるとある事情が関係している。

 

逸見エリカ ソンム中学校→黒森峰女学園

中学時代、副隊長を務め涼と共に戦車隊を率いていた。涼とは仲は悪いわけではないが、お互い我が強いためよく口論になる。涼はエリカの実力を非常に評価している。

 

とりあえず、現時点で登場しているキャラのアニメ版と設定の違うところはここまでにします。他のキャラはアニメ版と同じです。

 

あと、後書きで少し言及したかもですが、ソンム中学校の設定も説明します

 

ソンム中学校

大洗女子学園と違い、中学しかないため小さめの学園艦。名前の由来は1916年のソンムの戦いから(ソンムの戦いでイギリス軍が初めて戦車を実践導入しました)。ソンム中学校はイギリス風の学校のため戦車隊が使う戦車もイギリス戦車のみ。聖グロと違い使用できる戦車に制限がないため、コメットやチャレンジャー巡航戦車を使用する。戦車道の強豪校である。

 

ここまでざっくり紹介しましたが、書いてるうちにどんどん設定が増えていくと思うので、またこんな感じで設定集を書こうかなと思います。あと、アンツィオ戦でオリキャラを登場させる予定ですのでご了承ください。

 

次回投稿は未定です。すいません。近いうちに時間を作って書きます。こんな感じですが今年もよろしくお願いします



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私とみほは作戦を練る

お久しぶりです。いつも投稿遅くてすいません。最近温泉カルパッチョとPFカルパッチョを引けたので、カルパッチョを自分で作って食べてみました。私は料理が下手なので、味は察してください。


「秋山さん、結局練習に来ませんでしたね」

「メールは返ってきた?」

「ぜーんぜん。電話かけても圏外だし」

「どうしたんでしょう」

 

この日、秋山は学校に来なかった。先生たちも知らないようだったので放課後秋山の家に突撃することになった 。

 

「いらっしゃいませ」

「すみません。あの、優花里さんはいますか?」

「あんたたちは?」

「友達です」

「いつも優花里がお世話になってます。優花里、朝早く家を出て、まだ学校から帰ってないんですよ。どうぞ2階へ」

 

秋山のお父さんがすごい反応をしたけど、あまり気にせず2回の秋山の部屋で待つことにした。しばらく待っていると、突然窓が開いて秋山がシュタッと入ってきた。

 

「あれ~?皆さんどうしたんですか?」

「秋山さんこそ」

「連絡がないので心配して」

「すいません。電源を切っていて」

「つかっ、何で玄関から入ってこないのよ!」

「こんな格好だと父が心配すると思って…でも、丁度よかったです!ぜひ、見ていただきたいものがあるんです!」

 

そして、始まったのが『突撃!!サンダース大付属高校』というタイトルのビデオだった。内容は秋山がサンダースに潜入して、相手の戦術や部隊編成を調べるというもので、新鮮撮れたての産地直送だった。最後に潜入がバレてしまったから、作戦を変えられるかもしれないが、それなりに有益な情報であることに間違いはない。映像が終わって沙織が心配そうに尋ねた。

 

「いいの?こんなことして」

「試合前の偵察行為は承認されています」

「実際にやる人はそんなにいなにけどね。まあ、私は一回やったあるけど、みほのチームの偵察」

「え、そうなの!?」

「もちろん負けたけどね。それはまあいいでしょ」

「西住殿、オフラインレベルの仮編集ですが参考になさってください」

「ありがとう、秋山さんのおかげでフラッグ車もわかったし頑張って戦術立ててみる!」

 

次の日の放課後、みほと二人でサンダース戦の作戦を立てるために、私の寮に呼んだ。そして、秋山の潜入動画を基に戦術を立てて、一段落したところで休憩することにした。

 

「とりあえず、こんなものでいいかな?ちょっとお茶しよ」

「うん、私も手伝うよ」

「いいから座ってて、お客さんだし」

 

私はダージリンさんに頂いた紅茶とお茶菓子を用意して、軽くつまみながら再び戦術についての話の続きを始めた。

 

「作戦通りいけば十分勝てそうだけど、そんなに上手くはいかないよね」

「うん、そうだと思う。それに、秋山さんの潜入動画を基に立ててるから、この間の潜入の後に作戦とか編成を変えられたら、流石に難しいかな。」

「作戦を変えてる可能性は十分にあるよね。最後に潜入バレたし。でも、多分変えてこないんじゃないかな?」

「どうして?」

「抽選会の時サンダースの人達うちと当たって、大はしゃぎしてたじゃん。まるで、一回戦は突破したみたいな。だから、相当うちのこと舐めてるし、私とみほの存在も知らないんだと思う」

「まあ、そうだよね。素人ばかりのチームだし下に見られてもしょうがないよね」

「でも、舐められてるからこそ、勝機がある。サンダースは上向いて足元掬いやすいからそこを狙っていこう」

 

最初に立てた作戦通りにいくことはほとんどないから、様々なシチュエーションを想定していくつか新たに戦術を考えるためにもう一度潜入動画を見ることにした。何度見ても映像やサンダースの作戦が変わるわけではないので、それ以外の背景や細部に注目してみることにした。すると、戦車倉庫の奥の隅に少しだけ気になるものが映っていることに気づいた。

 

「みほ、ちょっとだけ映像戻すよ」

「うん、いいよ」

「ここの奥の小さい気球っぽいのって、もしかして通信傍受器じゃない?」

「うーん…どうだろ?小さいからよく分かんない。でも、サンダースなら持っててもおかしくないよね」

「そうだね。流石に使ってこないと思うけど、一応頭の片隅にでも入れておこうか」

 

程なくして戦術が固まったのでお開きすることになった。それから数日後、ついに全国大会の当日となった。

 

 

戦車の整備が整い、河島さんから試合まで待機という号令がかかった。その直後にタイミングを見計らったようにサンダースの人がこちらの待機所に来た。

 

「暢気なものね。それでよくノコノコと全国大会に出てこれたわね」

「貴様ら何しに来た!」

「試合前の交流も兼ねて、食事でもどうかと思いまして」

 

これは恐らく、単純に試合前の交流ではなく、財力の差を見せつけこちらの戦意を削ぐのが目的である。これはもう既にこの時点で試合が始まっているということを意味していた。会長はこの食事会の意味をきちんと理解しているようで、敢えて堂々とこの申し出を受けた。

 

しかし、私はその食事会には参加せずに待機所で留守番することにした。流石に全員で行って待機所をすっからかんにするわけにはいかないからだ。しばらくして、全員帰ってきて試合の準備が始まった。

 

 

 




2020v-dayゼクシィ武部も引いたことを後書きにて報告します。あと。お気に入り50件ありがとうございます。


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ついに私は初戦に挑む

お久しぶりです。ようやくサンダース戦にたどり着きました。


どのスポーツでも試合前には必ず挨拶を行う。戦車道でもそれは同じで試合開始前にチームの隊長とその他数名(出席は任意)と審判を交えて挨拶を行う。一回戦サンダース大付属高校対大洗女子学園の挨拶に出席したのは、サンダース側はケイ、そして大洗側は角谷杏だった。

 

 

-------------------------------------------------------------------------------

 

「サンダース戦の作戦はこれで行きたいと思います。ただ、試合の状況によって戦術を変えていく必要があるので、情報共有を密にしてください。フラッグ車はカメさんチームにお願いします」

「あの、すみません。質問いいですか?」

「何かな?澤さん」

「何でフラッグ車が、カメさん何ですか?フラッグ車がやられちゃったら負けだったら強い戦車をフラッグ車にした方がいいと思うんですけど。IV号に乗ってるあんこうチームフラッグ車じゃダメなんですか?」

「それは私が答えるよ。基本的には澤の言ってる通り強い戦車の方がいいんだけど、うちの場合戦力が少なすぎるんだよ。うちの戦車で相手のシャーマンを倒せるのはIV号とIII突、あとM3の75ミリ砲ぐらい。一応38(t)も超至近距離でギリギリ装甲抜けるかなって感じだけど89式じゃゼロ距離でも多分無理。だから、IV号をフラッグにするとシャーマンを倒すために前線に出せるのが2両になるから火力面でさらに不利になるから89式か38(t)をフラッグ車にするしかないんだよ」

「なるほど、そういう理由があるんですね」

 

その後いくつかの質問にみほと二人で答えて順調に作戦会議が進んだ。特に澤からの質問が多く、以前の失敗を取り戻そうと一生懸命に戦車道を知ろうとしているようで少し嬉しくなった。作戦会議が終わりに近づいたところで、会議中に思いついた新たな作戦を提案した。

 

「あのさ、隊長を会長に変えない?」

「なんでかな、夏樹ちゃん?隊長は西住ちゃんの方がいいでしょ」

「もちろん、指揮はみほに任せますよ。あくまでも書類上の話ですよ。サンダースはほぼ間違いなくうちを舐めていますが、流石に隊長が西住流となれば少し警戒してくる可能性もあります。同じ理由で副隊長も別の人にお願いしたいかなって。うちのこと舐めてるなら、隊長を無名の人にしてとことん舐めさせてやればいいと思います。」

「確かに一理あるね~。相手に油断させて隙を作らせるってことだね」

「そうですね。まぁ抽選会の時にみほが代表でくじを引いたから、あまり効果がないかもですけど、念には念を入れておいたほうがいいので」

「じゃあそうしよう!それで、副隊長はどうするの?」

「ゼク...武部に任せたいです。理由はぶっちゃけカメさんチームとみほ以外なら誰でもいいんで、今一瞬目が合った武部でいいです」

「いやいやいやおかしいでしょ!」

「まぁ名前だけだからさ。それに、試合前の挨拶は隊長さえいればいいから。あと、名前だけでも副隊長だとモテるかもよ?」

「...わかった。やる」

 

うわっこいつちょっろwwwっていう言葉を喉の奥にしまって、一先ず付け焼刃の情報戦的なものを最後に立てて作戦会議は終わった。

 

-------------------------------------------------------------------------------

 

「それでは、サンダース大付属高校と大洗女子学園の試合を開始する」

「よろしく」

「あぁ」

 

挨拶が終わると、お互い待機場所に移動した。試合開始の合図があるまで少し時間があるので、みほが作戦の内容を改めて軽く説明した。

 

「説明した通り、相手のフラッグ車を戦闘不能にした方が勝ちです。サンダース付属の戦車は攻守ともに私たちより上ですが、落ち着いて戦いましょう。機動性を生かして常に動き続け敵を分散させてIII突の前に引きずり込んでください」

「「おぉー!」」

 

 

「試合開始!」

 

合図と共に作戦通り森の中に移動し、最初の潜伏地に到着した。そして、予定通りに偵察を出す指示をした。

 

「うさぎさんチーム、右方向への偵察お願いします。あひるさんチームは左方向を」

「了解しました」

「こちらも了解」

「カバさんと我々あんこうは、カメさんをも守りつつ前進します。パンツァーフォー」

 

2両を偵察に出し、森の中を前進しているとうさぎさんチームから通信が入った。内容はシャーマン3両を発見し、これからおびき出すとのことだった。しかし、そのすぐ後にまたうさぎさんチームから通信が入った。

 

「シャーマン6両に包囲されちゃいました!」

「うさぎさんチーム、南西から援軍を送ります!あひるさんチームついてきてください」

「じゃあ、私たちは単独で目標地点まで向かうね」

「お願いします。後ほど合流します」

「了解」

 

2両が援護に向かい、カメチームだけ予定通りに進軍することになった。状況を整理すると、こちらが一両に対し、サンダースはフラッグ以外の全車両を森の中に投入していて完全に行動が読まれている感じだった。強豪校の隊長ともなればこちらの行動を予測できるとは思うが、流石に戦力が過剰すぎることが引っ掛かり、少し悩んだが頭の片隅に入れておいた通信傍受機らしき物のことを思い出し、すぐにキューポラから頭を出し空を見渡すと白い気球が浮かんでいた。

 

「急にどうした?」

「やっぱりか。落ち着いて聞いてください。通信傍受機が打ち上げられています。みほたちと合流するまで通信は切って下さい」」

「何ぃ!それは反則だろう!審判に抗議しよう!」

「河島さん落ち着いてください。ルール上無線傍受は禁止されていません。まぁ正確には無線傍受に関するルールが存在しないだけなんですけど」

「それでも卑怯だ!」

「そうですけど、あの隊長は無線傍受をするような感じじゃないので、恐らく他の隊員の独断によるものだと思います。なので、みほ達と合流してから考えます」

 

しばらくして、みほ達が一両も撃破されずに合流してきた。私はキューポラから出て通信機を通さずに直接聞こえるようにみほに話しかけた。

 

「みほ!もう気づいてるよね?」

「うん、通信を傍受されてるね」

「どうする?」

「うーん...あ、そうだ!」

 

みほが考えたこの状況を打破する作戦を聞いて、やっぱり私はみほに勝てないと感じた。しかし、少し勝利への希望が見えて全体の士気が上がった。




次も恐らく遅くなります。どうか気長に待ってください。


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私も作戦を考える

どーも。激遅投稿主のSeasoned Seaweed です。この情勢で家から出れなくなったのでいっぱい執筆できるぞと思ったら課題の山のせいで書く時間なんてほぼなかったんですよね(言い訳)出来るだけ早く投稿できるようには頑張りますが気長に待ってください


「あの、沙織さん。各チームメンバーのメールアドレス知ってる?」

「うん、知ってるよ~」

「良かった~。それじゃ説明するね。これからの指示は全て携帯のメールでだして、偽の情報を通信に流すの」

「なるほど!相手の傍受を逆手に取るんですね」

「そうだよ。涼さんはどう思う?こんな戦車道っぽくない戦い方」

「携帯に関するルールは外部と連絡を取ってはいけないぐらいしか明記されてないから、内部で連絡する分には大丈夫だと思う。それに、あっちが先にルールの穴をついてきたんだから文句を言われる筋合いないよ。だから

みほの作戦で行こう」

 

みほが立てた作戦を沙織がメールで伝えて全員が持ち場についたので、偽の通信を流して作戦を開始した。

 

「全車、0985の道路を南進、ジャンクションまで移動して。敵はジャンクションを北上してくるはずなので通り過ぎたところを左右から狙って」

「了解です」

「こっも了解です」

 

作戦通り相手はこちらの偽の通信にまんまと引っ掛かり、2両をキルゾーンに誘い出すことに成功した。そして、カバさんチームの砲撃がシャーマン1両に直撃し撃破した。しかし、この大会はフラッグ戦で行われるため、フラッグ車を倒さない限り試合には勝てない。

 

「次はどうする?」

「私に任せてもらっていい?ちょっと作戦思いついたんだけど」

「内容を聞かせてもらっていい?」

「まずは、さっきと同じように偽の情報を流して敵の本隊を遠ざけるの。その後、傍受している相手にフラッグとのタイマンを申し込む」

「無理だよ。絶対相手してくれないよ」

「大丈夫、確実相手はタイマンに応じるはずだから。まぁタイマンを申し込むけどこっちはアヒルさん以外の全車両で迎え撃つ」

「何でうちはのチーム以外何ですか?」

「八九式だと火力不足っていうのと、敵本隊の妨害をしてほしいんだ」

「え!1両だけでですか!?」

「うん。発煙筒持ってきてるでしょ?それを相手車両に乗っけて視界を奪う。特にファイアフライには必ず乗せてほしい。あと、走るときは相手車両にべったりくっついて走って。相手は誤射の可能性があるから撃ってこないから」

「その作戦はいいと思うけど、相手はタイマンに応じるメリットがないからどうやってタイマンに持ち込むの?」

「ちょっと挑発するだけだよ。その辺は任せてもらって大丈夫」

「わかりました。その作戦で行きます。誘導する位置は...」

 

その後、細かい部隊配置などを急ピッチで決めて、全員の準備が整ったのを確認してみほに通信を流してもらった

 

「全車128高地に集合してください。ファイアフライがいる限りこちらに勝ち目はありません危険ではありますが128高地に陣地に陣取って上からファイアフライ一気にを叩きます」

 

通信を流してから数分後、敵の偵察をさせていたアヒルさんチームから敵本隊が偽の集合地点に向かったと報告があった。

 

「それじゃあやるよ」

「何か作戦名とかある?」

「うーん。『だましうち作戦』とかどう?」

「うん。いいと思う」

「それじゃあいくよ」

 

「こちら、大洗フラッグ車。サンダースフラッグ車に告ぐ。すでに私たちはそちらの通信傍受に気づいている。これはルール上問題ないけど、些かマナーに反していると感じる。もし、このままそちらが勝ったとしても弱小校相手に通信傍受の使用が私たちが公表すると、隊員の独断行為であったとしても、そちらの隊長の評価を著しく低下させることになるだろう。これはそちら側の望むところではないはずだ。そこで提案だが両校フラッグ車による一対一の勝敗を決めるのどうだろうか。この提案を受け入れない場合は試合終了後、通信傍受を受けたことを公表する。あと、この通信を他の隊員に知らせた場合も公表する。場所は405。一対一の勝負を楽しみにしている。以上だ」

 

『ちょっと挑発』というか完全に『脅迫』だけど、この戦力差で勝ち目を見出すには私にはこんな方法しか思いつかなかった。相手側も面子があるから恐らく脅迫されたことを言わないと思うけど、脅迫は明らかに戦車道の精神に反する行為であることは間違いない。もしかしたら、みほならこの状況でも何とかできるかもしれないけど、私も一指揮官としてのプライドがある。私のやり方は正しくはないけど勝つために、学園を守るためにどんな手をつかってでもこの作戦を成功させる。しかし、当然ながらこの作戦に反対する声が上がった。

 

「ちょっと!それは脅迫じゃん!」

「でも、相手は脅迫されたことを訴えると自分たちが弱小校に対して通信傍受機を使ったという醜態を世間に晒すことになる。それは相手も避けたいはずだから抗議はしてこないと思う。そもそも相手が通信傍受してこなかったらこうはなったないからお互い様でしょ。もし何かあったら私が全部責任取るから」

 

私は皆を黙らせて指示を出して予定地点に移動した。到着してからフラッグ車以外を隠すように配置しサンダースのフラッグ車を待ち構えた。数分後エンジン音が聞こえてきたので一応メールで指示を出した。

 

「そろそろ相手のフラッグ車が来ます。私の合図で全車砲撃してください。失敗したら全力で追いかけてください」

 

皆からの了解のメールを確認して相手が来るのを待った。

 

相手フラッグ車が単独で来ていることを確認して全員に合図を出した。

 

「全車砲撃!」

 

奇襲には成功したけど撃破には至らず、相手が逃げ出したため追撃するために、戦車道の試合では珍しい追いかけっこを開始した。

 



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私は追いかけ追われている(前編)

お久しぶりでございます。今回は初めて前後編という形で執筆しました。後編も同時に投稿してるから分ける意味ないやろ、という異論は認めません。(2年で17話しか投稿できてないから話数稼ぎしたかったんです。あと、文字数的に分けたほうがいいかなって)次回投稿も予定通り未定です。気長に待っていただけると幸いです。


「ちょっと、どうするの車長?盗み聞きばれちゃったよ」

「初心者ばかりのチームだからバレないと思ったのに...。でもまぁ38(t)ごときでシャーマンにタイマンを挑むだなんて馬鹿でしょ!負ける筈ないわ。相手の提案に乗りましょう。私たちを脅したことを後悔させてやる!」

 

大洗は初心者ばかりのチームだから、通信傍受を使ってもばれないと思ったのだが、もしかしたらさっきの通信の相手が経験者なのだろうかと考えながら、指定された地点に向かった。念のため指定された地点の100メートル先で停止して索敵をすると38(t)しかいなかった。

 

「車長、敵フラッグへ砲撃してもいいですか?相手はこちらに気づいてないですし、これで勝ちですよ」

「待ちなさい。このまま勝ったら隊長に迷惑をかけることになるわ。どうせタイマンでも負けないしこのまま約束通り向かいなさい」

 

そして、指定された地点に到着して砲撃しようとした瞬間、周りから敵車両が現れて一斉に攻撃を受けた。

 

「あいつらよくも騙したわね!とりあえず攻撃中止で逃げなさい!私は今から隊長に報告するから」

「だから言ったじゃないです!あの時撃ってれば勝ちだったのに」

 

本当は隊長に報告したくないが、さすがに援軍なしでは万が一ということもあるので、葛藤することもなくすぐに報告することにした。

 

「すいません、隊長。敵4両に見つかり追いかけられています。援軍お願いします...」

「ちょっとちょっと、話が違うじゃない。何で?」

「はい...。無線傍受が相手にバレて逆手に取られました...」

「ばっかもーん!!」

「申し訳ありません,..」

「戦いはいつもフェアプレイでっていってるでしょ」

「でも、こっちも脅さ...「言い訳しない!いいからとっとと逃げなさい。Hurry up!」

「イエス、マム!」

 

-------------------------------------------------------------------------------

 

作戦通りにサンダースフラッグ車を誘導したところまではうまく行ったのだが、奇襲がうまく決まらず、追いかけっこ状態になってある意味膠着状態になった。現状の大洗の練度では行進間射撃をしても当てるのは困難だし、当たっても有効打を与えられないの、距離を縮めるまで攻撃を停止した。すると、シャーマンのキューポラから相手の車長が顔を出し何か喚き始めた。しかし、距離も離れているし、エンジン音などで何を言ってるのわからなかった。

距離が縮まってきたので、みほが攻撃の指示を出した。

 

「目標との距離が詰まってきています。60秒後攻撃を再開予定。順次発砲を許可します。前方に上り坂、迂回しながら目標に接近してください」

「柚子、遅れるな」

「わかってるよ、桃ちゃん」

「頑張れ~」

「会長は芋食ってないで、早く砲撃準備してください」

 

攻撃を始めようとした瞬間、遠くからものすごい爆音が轟いた。

 

「今のは」

「ファイヤフライ、17ポンド砲です」

「4両だけ?」

「距離約5000メートル」

「ファイヤフライの有効射程は3000メートル。まだ、大丈夫です」

「アヒルさんチーム、そっちで相手車両確認できる?」

「はい!でも、やっぱり相手は4両しか見当たりません。どうしますか?」

「もうしばらくそこで、待機して相手が通り過ぎたら後ろから発煙筒を投げつけて。あとは思いっきりぶつかったり砲撃するなりして、とにかく相手攻撃に集中できないように全力で妨害して」

「了解!」

「こっちはどうする、みぽりん?」

「うさぎさんは後方をお願いします。カバさんと我々あんこうチームは引き続きフラッグ車を攻撃します」

 

後方から激しい猛攻を受けて徐々に砲撃が近くなり、ついにフラッグ車の護衛をしていたウサギさんチームが直撃を受けてしまった。

 

「うさぎチーム!怪我人は?」

「大丈夫です!」

「すみません。鼻の長いのにやられました」

 

フラッグ車の護衛がやられてしまい、撃破されるのも時間のうちとなってしまった。早く撃破したいと少し焦り始めたが、アヒルさんチームから通信が来た。

 

「こちらアヒルチーム。これより、敵部隊の妨害を開始します」

「了解。こっちも早めに撃破を狙うけど、できるだけ時間を稼いで

「了解!よし、このまま全速力で追いかけるよ!発煙筒を上のほうに準備して!あと、追いついたらファイヤフライから離れないで。そのほうが安全らしいから。根性で行くよ!」

「おう!」

 

------------------------------------------------------------------------------

 

「隊長、後方から89式が向かってきます。すぐ後ろですけど撃ちますか?」

「相手のフラッグ車は剥き出しだし、89式じゃシャーマンは倒せないから無視していいよ。それよりフラッグに集中して」

「了解」

 

相手フラッグ防御を減らしてまでこちらに89式を向けるメリットはさほどないし、相手は初心者ばかりのはずだから気にしなくてもいいと思い、このまま攻撃させているけど少しだけ気になる。できたとしても妨害くらいだけど89式じゃ大したことできないしフラッグに集中しようとした矢先、後方から赤い棒が飛んできてファイヤフライが白い煙に包まれた。

 

「発煙筒!?ナオミ、前見える?」

「すいません、まったく見えません!」

「やられた。他の車両は蛇行して発煙筒回避して!2号車は89式を迎撃して!」

「イエス、マム!」

 

発煙筒を投げつけくるなんて面白い事をするな思いつつも油断していたことを後悔した。次飛んでくるタイミング見るためにキューポラから顔を出し後ろを向くと、バレーのサーブのように発煙筒を手で打とうとしていた。まさかそんなはずはないだろうと見ていたが彼女の手から放たれた発煙筒はケイのシャーマンのすぐ前に落ちて一瞬白い煙に包まれた。

 

「ちょっと嘘しょ!?あの子やるわね。3号車も発煙筒に注意しつつ89式の迎撃に回って!」

「すいません、こちらファイヤフライ。2本目の発煙筒を乗せられました。」

「oops!ナオミは一旦離脱して安全なところで発煙筒を落としてから復帰して」

「イエス、マム!」

 

------------------------------------------------------------------------------

 

「攻撃の数が減ってきてるね。あっちは上手くいってるっぽいね」

「こちらアヒルチーム。ファイヤフライに2本目の発煙筒を乗せたら、敵本隊から離れようとしてるんですけどどうします?」

「2本目乗せたならとりあえずは大丈夫。敵部隊までの距離は?」

「あと、20メートルくらいです。あと発煙筒が2本しかないです。」

「了解。出来れば2本とも乗せて。可能であればそのまま横にへばりついて」

「了解」

 

戦車戦では非常に近い20メートルで砲弾を避け続けるアヒルチームもすごいが、行進間射撃とは言え、この至近距離で当てられないのは強豪校としてはどうなのかと少し思った。しかし、相手からの攻撃が明らかに減ったのは事実なので、今度はこちらが攻撃に集中しやすくなった。ここから反撃が始まる。

 

 

 



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私は追いかけ追われている(後編)

こちらは後編となっております。


その頃、逸見エリカは隊長である西住まほと共に大洗対サンダースの試合を観戦していた。

 

「サンダースのあのシャーマン達、あの距離で当てられないなんて情けないですね」

「確かに思うところはあるが、これは大洗が一枚上手だったようだ。相手が格下な上に最弱の戦車だった故に、油断していたところを発煙筒でファイヤフライを封じられ少しパニックになっているのだろう。それに行進間射撃だから当てるのがそもそも難しい。見た目以上に非常に計算された作戦だな」

「...おそらくこの作戦は夏樹隊...夏樹さんが考えたものだと思います。この嫌らしさは元副隊長でも難しいかと」

「恐らくそうだろう。私見だが、彼女は戦車を攻撃するというよりは選手を攻撃する戦車道という印象が強い」

「仰る通りです。彼女は以前『戦車道は戦争ではない、武道だ。戦っているのは選手であって戦車ではない。どんなに強い戦車に乗っていても乗員が攻撃出来なきゃ車と一緒だ』と豪語していました」

「確かに一理あるな。決勝まで勝ち上がってきたら注意しよう」

「流石に大洗はサンダースに勝てませんよ」

「油断して今まさに足元を掬われようとしているのがそのサンダースだ。注意しておくに越したことはない。サンダースが勝てばただの杞憂で済むがな」

「杞憂ですよ」

 

-----------------------------------------------------------------

 

先程までは回避に集中していたが、アヒルさんチームの防汚外のおかげでようやく攻撃できるようになった。しかし、やはり行進間射撃の練度が低く当てることができない。また、援護に来ていない相手の残り車両の存在も気がかりで涼は回避に集中しつつも相手の作戦や意図を読もうとしていた。何故4両しか援護に来ていないのか、単純に先に回りさせたと考えるのが普通なのだがそれにしては到着が遅い。他に考えるとしたら念のため偽の集合場所にも向かわせたのか。しかし、敵フラッグから直接こちらの位置が報告されているはずだから、わざわざ向かう必要もないし全車両で援護に向かうべきだ。

 

結局わからないまま状況が進んでいき、少しづつ焦り始めたところにアヒルチームから通信が届いた。

 

「こちらアヒルチーム。最後の発煙筒2本共シャーマンに乗せることに成功したんですけど撃破されました」

「アヒルチーム怪我人は!?」

「大丈夫です!」

 

怪我がないことをホッとしつつ、相手の攻撃できる車両が現状1両になったことを喜んだ。しかし、煙幕が晴れるまでのごく短い時間だけのことで早く仕留めなければならない状況なのは変わりない。距離も縮まってきたのでカバさんチームも後方に回して盾になってもらった。相手の砲撃のタイミング読み、何度も回避の指示を出し続けていたが、タイミングをずらされてついに38(t)の砲塔の側面を掠めた。

 

「あんなに近づいてきた!」

「追いつかれるぞ」

「だめだーやられた!」

「みんな落ち着いて!落ち着いて攻撃を続けてください。敵も走りながら撃ってきますから。当たる確率は低いです。フラッグ車をたたくことに集中してください。今がチャンスなんです。当てさえすれば勝つんです。諦めたら負けなんです!」

「西住殿の言う通りです」

「そうだよね!諦めたら負けなんだよね!華、撃って撃って撃ちまくって!下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるって。恋愛だってそうだもん!」

「いいえ、一発でいいはずです。冷泉さん、丘の上へ。上から狙います」

「稜線射撃は危険だけど優位に立てる。かけてみましょう」

「行くぞ」

 

あんこうチームと別れた数分後、IV号から放たれた砲弾がシャーマンのウィークポイントを正確に撃ち抜き白旗を上げさせた。試合終了のアナウンスの後、全員があんこうチームのもとに集合して勝利の喜びを分かち合った。

 

その後、会場に戻り挨拶を終えるとサンダースの隊長が話しかけてきた。

 

「あなたがキャプテン?と、38(t)の車長?」

「え?あ、はい」「そうですね」

 

ケイさんはニヤっと口角を上げてこちらを見るとみほもろとも抱きしめられた。

 

「Exciting! こんな試合ができるなんて思わなかったわ!」

「あの」

「何?」

「4両しか来なかったのは?」

「あなたたちと同じ車両数を使ったの」

「どうして?」

「That's 戦車道!これは戦争じゃない。道を外れたら戦車が泣くでしょ。盗み聞きなんてつまんないことして悪かったわね」

「とんでもないです。私は無線傍受されていることに気づいたことをサンダースのフラッグ車に伝えて、サンダースとケイさんの名誉を盾に脅してフラッグ車を誘き寄せたんです。こちらこそ本当に申し訳ないです。ですので、フラッグ車の子をあまり責めないで上げてください」

「そもそもあの子が無線傍受なんてしてなかったらあなたがそういう事しなかったんだからあの子の方が悪いよ。でも、正直に話してくれてありがとう。それと、おめでとう!」

「ありがとうございます!」

 

 

-----------------------------------------------------------------

 

ケイは大洗の隊長達と握手を交わしてチームメンバーの元に戻って物凄く申し訳なさそうに俯いているアリサに声をかけた。

 

「あの子に聞いたよ脅されたんだってね」

「はい...」

「でもそれとこれとは別だからね。後で反省会するから」

 

最後の大会で悔しいとは思うし、自分の部下が不正を働いたことを申し訳ないと思いつつ、非常に楽しい試合ができたことを心の底から喜んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アリサちゃんごめんね。嫌いじゃないんだよ。ごめんなさい。


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私は借りを作ってしまう

比較的今回は早めの投稿です、いい感じに課題が捌けて時間があったのと内容も大してこともないので一気に書いてみました。

次も早めに出せるといいのですが(遠い目)
努力はします。


帰り支度も粗方終わって夕陽を背景にサンダースのシャーマン達が撤収していく様をみほ達とじっくり眺めていた。シャーマン達が見えなくなり、そろそろ皆のもとに戻って帰ろうとした。

 

「さぁ、こっちも引き上げるよ。お祝いに特大パフェでも食べに行く?」

「行く」

「麻子、鳴ってるよ携帯。誰?」

「知らない番号だ。はい、え...はい」

「どうしたの?」

「いや、なんでもない」

「何でもないわけないでしょ!」

「おばぁが倒れて病院に」

 

皆がどうにかして病院に向かう方法を話している中私は携帯を手に取りある番号に電話を掛けた。

 

「もしもし、いきなりで悪いんだけどヘリを貸してほしい。友達の親族が倒れて病院にすぐに向かわなければならない。」

「何よいきなり!何であんたの頼みなんか聞かなきゃならないのよ!」

「エリカどうした?」

「た、隊長、夏樹さんがいきなりヘリを貸せと言ってきまして...」

「訳アリのようだ。代われ。西住まほだ、夏樹さんどういう事か説明してほしい」

 

まほさんに理由を説明すると2つ返事で貸してくれると言ってくれた。ついでにエリカも操縦手として貸してくれた。近くにいるようですぐに迎えに来てくれることになった。

 

「みんな落ち着いて。もうすぐここにヘリが来る。麻子はそれに乗って病院に向かって」

「え、どうしてヘリが?」

「黒森峰の隊長と副隊長に頼んで貸してもらった。黒森峰ならヘリで観戦に来ていると思ってエリカに電話したらビンゴだった。とにかくここで待ってて」

 

数分後ヘリが到着し、麻子と沙織がヘリに乗って病院へと向かっていった。残った三人が心配そうに飛んで行ったヘリを眺めているのを横目に、何事もなかったかのようにその場を立ち去そろうとしている西住まほを追いかけ声をかけた。

 

「西住さん、ヘリありがとうございます。でも何で、あっさり貸してくれたんですか?この間あんなに失礼なことを言ったのに...」

「失礼なことを言ったのはこちらも同じだ。それにこれも戦車道だ。気にするな」

「そうですか。お気遣い感謝します。」

「決勝で会おう」

 

彼女は颯爽とその場から立ち去って行った。決勝で会おうということはそれなりに期待してくれているのか、それともただの社交辞令か、その意図は読めなかったが、とにかく今回の件は感謝しかなかった。かと言って決勝では手を抜くのは相手にも失礼だし論外だ。ただこのまま借りを作ったままなのは癪なので、何らかの形で借りを返そうと決意し、3人と共に学園艦へと戻った。

 

翌日、麻子のおばあさんのお見舞いに行こうと誘われたが、先に会長から呼び出されていたし、あまり大人数で行っても迷惑かもしれないので少し迷ったが断わった。私は一人生徒会室へと向かい会長たちと試合の状況を確認することにした。

 

「明日はプラウダ高校、明後日は黒森峰女学院がそれぞれ一回戦の試合だな」

「まぁ、順当に勝つだろうね。夏樹ちゃ~ん今日の試合で勝ったほうがうちと当たるんでしょ?どっちが勝つと思う?」

「これまでの成績や戦車の性能で考えるとマジノ女学院でしょうけど、私の予想はアンツィオ高校が勝つと思います。噂によるとマジノ女学院は最近隊長が変わったので不安定らしいです。それに比べてアンツィオは隊長がかなり優秀で着実に力をつけています」

「へ~よく知ってるね~他には何か知ってる?」

「マジノはフランス風の学校なので使用戦車もルノーやソミュアとかですね。アンツィオはよく知らないですけど、イタリア風の学校なのでCV33とかセモベンテとかじゃないですかね?戦車道の試合でイタリアの戦車ってあまり出てこないので自信ないですけど」

「ほえ~ほかは何かある?」

「そうですね~。マジノは防衛戦が得意ってことぐらいですかね。アンツィオは機動力の高い戦車を使用してくることが予想されるのでそれを生かした戦術だと思います」

「なるほどねぇ。まぁ夕方には結果が出るし、2回戦までまだ時間あるからその時考えればいいよ~。それよりさ、2回戦はまだよくても準決勝と決勝って車両の上限増えるんしょ。今の戦力じゃさらに厳しくなるね~」

「戦力の増強は今後の課題ですね。夏樹、何か案はあるか?」

「いや、そんなこと言われましても...」

 

予算も大してないのに無茶言わないでよと思ったが、少し考えた後一縷の望みにかけてみることにした。可能性は低いためあまり期待はできないがやらない理由はない。

 

「あまり期待はできないですけど少しアテがあるので聞いてみようと思います。多分無理なので本当に期待しないでください」

「いいから何でもしろ。負けたら終わりなんだ」

「うまくいけば会長にもやってもらいたいことがあるのでそのつもりでお願いします」

「はいよ~」

 

寮に帰った私は早速携帯を開き、もう一年以上使っていないトークアプリのグループに目を付けた。それはかつてのチームメンバーであり、最も信頼できる親友だった。私が急に戦車道をやめると言った時、皆は何度も引き留めてくれた。しかし、それを振り切って戦車道のない学校に行ったから、ひどく私に失望しているだろう。さらに、これから頼むことなんて彼女たちからしたら何を今さらと言われるのは確実だろう。でも、少しでも勝てる確率を増やすために彼女たちを説得する必要がある。そんな葛藤があったが会長たちに言った手前、もう手を引けないので勇気を振り絞ってメッセージを送信した。

 

『久しぶり、元気だった?頼みたいことがあるんだけど』

 

 




次回はオリキャラを出します。


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仲間はずっと私を待っていた

大変お待たせいたしました。今回は文章中にチャットと会話文が出てくるのでチャットは『』で会話は「」で表記しました。

また、今回新オリキャラがでます。


『久しぶり、元気だった?頼みたいことがあるんだけど』

 

色々と葛藤し、何度も何度も入力しては消してを繰り返し、たったこれだけの文字入力するのに10分もかかってしまった。送信後しばらく何も反応のないスマホ画面を緊張しながらただ見つめていた。1時間しても反応がなく、もうみんなこのグループチャットを見ていないのかと諦めようとしたところ、先程送信したメッセージに既読になり、すぐに返信が来た。

 

『久しぶり、元気だよ。とりあえず大洗に行けばいいんでしょ』

『連絡遅いぞ。こっちはいつでも準備はできてるから』

『手続きとかで2回戦に間に合わないかも』

 

一年以上連絡していなかったし、まだ本題も話していないのに何故か私の頼み事がわかっているようだった。返信を待つ緊張感と相まってかなり動揺してしまい、何度もメッセージを推敲していたことも忘れてすぐに返信をした。

 

『まだ何も言ってないんだけど、何でわかるの?』

『サンダースが無名校に負けたって聞いたから気になって調べたら、涼の学校だったからまた始めたんだなって思って』

『それに涼ならどうせまた始めると思っていつでも行けるように準備してたよ。戦車乗ってたの雫だけだったけど、私たちも練習はしてたし』

『あとは、涼からの連絡待つだけだった』

『みんな何でそこまで...』

『涼が車長じゃないと、全力を出せないし』

『どうせ乗るなら涼が車長の戦車に乗りたいし』

『というわけで、私たちに何か言うことない?』

 

そう言われて、自分から本題を話していないことを思い出した。彼女たちの察しの良さに動揺していたがそろそろ落ち着いてきたため改めて本題を話すことにした。

 

『皆の反対を押し切って辞めたのにどの口が言うのかって思うかもしれないけど、もう一度だけ私と戦車に乗ってほしい』

『もちろん!』

『おk』

『いいよ』

『みんな...ありがとう』

『それで、私たちの乗る戦車はあるの?89式使ってるし5両しかないので察しはついてるけど』

『お察しの通りない』

『戦車は私が手配するね。”あの子”でいいでしょう?』

『最初からそのつもりだったよ』

『やったー!また”あの子”に乗れるのか』

『そうだね。私たちはすぐに転校手続きするから待ってて』

『わかった。生徒会長に頼んですぐに受け入れできるように手配するね。それじゃ』

 

かつての仲間の協力を得られてホッとしつつも緊張から解放されて疲労感に苛まれた。それと同時に、彼女たちは私が戦車道に復帰することを信じて待っていたことに、申し訳なさと嬉しい気持ちになった。

 

翌日すぐに会長に報告するために生徒会室に赴いた。

 

「会長、昨日の件ですけど、近々3名の転校の申請があると思います。スムーズに手続きを進められるように手配をお願いします。あと、“大きな荷物”の学園艦への搬入の申請もあるのでそちらもよろしくお願いします」

「はいよ〜。上手くいったんだね。ありがとね。それとね、小山と五十鈴ちゃんが書類を整理してたらね、この艦にまだ戦車があるみたいなんだよね」

「この書類なんだけど、見てもらえる?」

「いいですよ。......こっちは兎も角、何でこんなレア戦車がうちにあるんですか?」

「そんなに珍しい戦車なのか?それで、強いのか?」

「そうですね、戦車道の試合で見かけることはほぼないですね。足回りに難があり過ぎて碌に使えないので。ただ、火力だけで見ればうちのどの戦車よりも優秀ですね」

「なるほどね〜。要するに、足回りさえどうにか出来ればうちの最高戦力になり得るって事だよね」

「そうですね。そして、うちには、その足回りをどうにか出来る人達がいますよね」

「そうだね。発見次第自動車部に連絡してね。明日みんなで探すからよろしく~」

 

次の日練習を休止し、全員で戦車を探して、沙織とうさぎチームが遭難したこと以外は何も問題なく戦車を見つけることができた。見つけた戦車はルノーB1bisとポルシェティーガー、またIV号戦車に搭載可能な長砲身の43口径75 mm砲の2両と1つの武装だった。ポルシェティーガーは艦の下層部で見つかった上に状態もよくはなかったので準決勝にも間に合わないかもしれない。一方ルノーや75mm長砲身は2回戦には流石に間に合わないが、準決勝には十分間に合う。幸い2回戦も1回戦と同様に10両までしか出場できないため、とりあえずは5両でも決定的な戦力差にはならない。

 

また、次の相手はアンツィオ高校に決まり、使用車両が予想通りのCV33とセモベンテだったので、数的不利はともかく車両性能ではそれほど大きくない。噂によると新戦力を導入したようだが、アンツィオの資金力だと1両が限界だと予想されるので、油断はできないがサンダースの時ほど苦戦を強いられる可能性はそれほど高くないだろと涼は考えていた。

 

ただ、どの競技にもいえることだが相手の情報を知ることは非常に重要なことである。アンツィオの戦力がそれほど高くないとはいえ、新戦力という不確定要素を明らかにしておきたいと考えていた。しかし、アンツィオに知り合いなんていないし、もちろんハッキングなんてできないから、どうやって情報を手に入れるかを悩んでいると、秋山に声を掛けられた。

 

「夏樹殿、どうかされましたか?何か悩んでいたようでしたが?」

「噂のアンツィオの新戦力が気になって。イタリアの車両だと少ないからある程度予想できるけど全然違う国の戦車を導入してるかもしれないから、少し不安でね」

「それなら偵察すればいいんじゃないですか?確かルール上認められていましたよね?」

「まぁ一応認められてるけど...でも、形振り構ってられないか。私明日アンツィオに行ってくるよ。バレないように頑張るね」

「私に任せてください。それに副隊長が抜けると練習や指揮に問題が発生するかもしれません。私に任せてくれませんか?」

「確かにその通りだよね。それに秋山なら戦車に詳しいしより詳しい情報を入手できそうだね。お言葉に甘えてお願いしようかな」

「了解であります!まっかせてください!」

「一応会長には話して公欠扱いにしてもらうから安心して」

「ありがとうございます」

 

翌日、彼女はアンツィオ高校へと潜入するのだった。

 

 

 




涼の以前のチームメンバーを3人登場させました。一人だけ下の名前が出てますが、名前は後々登場するのでその時まで待ってください。

あと次回こそ早く投稿出来たらいいな...

ps UA10000越えました。ありがとうございます!

追記:1/19 優花里のアンツィオ潜入について少し内容を変えました。執筆間隔があきすぎてサンダース戦ですでに潜入済みなのを完全に忘れていました。お詫びして訂正し、内容も少し変更しました。


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私は技を身に着けたい

お待たせしました。毎度投稿が遅くてすいません。



「かーしまー、次のステージどこ?」

「アンツィオとの対戦は山岳と荒れ地ステージに決まりました」

「はーいしつもーんアンツィオってどんな学校?」

「あー確か創始者がイタリア人だったはず」

「イタリア文化を日本に伝えようとしたいたイタリア風の学校だ。だから戦車道もイタリアの戦車が中心。先の一回戦で使用した戦車はCV33とセモベンテM41」

「アンツィオが勝つとは思ってたけど、よくこの戦力で勝てたよね」

「夏樹の想定通りの車両ではあるが、新型戦車も入ったと聞いた」

「どんなの?」

「ちょっとわからないです」

「一回戦には出なかったもんね」

「だからこその秘密兵器か~。まぁいっかそのうち分かるし」

「なんでわかるの!?」

 

その瞬間生徒会室の扉がドンッという大きな音を立てて勢いよく開かれた。みんなが振り向くとコンビニ店員の制服を着た秋山の秋山の姿があった。

 

「秋山優花里、ただいま戻りました!」

「おかえり~」

「おー待っていたぞ」

「お疲れ様~」

「その恰好!?」

「優花里さんもしかして...また?」

 

サンダースの偵察でバレたのに...と言いたげな困惑したみほの表情に対し、これでもかというくらいドヤ顔で秋山は映像を流し始めた。

 

最初はアンツィオの風景が流れていき、戦車を飾っている店を見つけて向かい、鉄板ナポリタンの食レポが始まった。

 

「では早速...おいしいです!」

「だろぉぉ!」

「ところで戦車っていえば新型が入ったって聞いたんですけど」

「何ぃ、どこで聞いた?」

「はっすいません...」

「おめぇ通だねぇ。ここだけの話っつうか、超秘密なんだけど、重戦車を手に入れたんだー!聞いて驚け!えーっとイタリアの何だっけ?」

「イタリアの重戦車というとP40ですか?」

「そう、それそれ!P40をそりゃあもう気の遠くなるくらい前から貯金して私らの代でようやく買えたんだ!アンチョビ姐さん、あぁうちの隊長なんだけど、もう喜んじゃって毎日コロッセオのあたり走り回ってるよ。燃料もあんまねぇのに。それとね、通のおめぇに特別にもう一つだけ教えてあげるけど、P40のほかにもう一両手に入ったんだよねぇ!何だっけなぁ?「すいませーん。鉄板ナポリタン10人前くださーい」はいよー。ごめんなーちょっと忙しくなっちまったわ」

「わかりました。ありがとうございますー!どうやらP40の他にも新戦車を導入したようです。イタリアの戦車ですとL6やM15ですかね?」

 

その後、コロッセオの中央でP40の上に乗ったアンツィオの隊長が映ったところで映像が終了した。

 

「ちょっと強そうですねぇ」

「ちょっとじゃないだろ」

「私、P40初めて見ました」

「こりゃもう少しがっつり考えないとだめだねぇ」

「そうですね。それに、判明しなかった新戦力も警戒しなければなりません」

「夏樹ちゃん、新戦力の予想は?」

「秋山と同じでM15が妥当かなと思います。ただ、偵察で見つからないくらいにはしっかり隠しているあたりイタリア以外の戦車も十分あり得ると思います」

「なるほどね~まぁ今考えたってしょうがないか~」

 

今回の報告をチームに共有するとカバさんチームP40の資料を少し持っているようだったので、そちらはみほとカバさんチームに任せて、涼はバレー部のところに向かった。

 

「練習中ごめんね。ちょっと頼みがあるんだけど」

「え、もしかして入部してくれるの!?やったー!これで5人になったぞ!」

「そうじゃなくてね、まぁ全く関係なくはないんだけど」

「何だー。残念だな。それで頼みって?」

「バレーのサーブだけ教えてくれない?」

「やっぱりバレー部に入ってくれるの!?」

「最後まで聞いてよ。サンダース戦で皆んなに妨害をしてもらったでしょ。その時に発煙筒をバレーのサーブみたい飛ばしてたでしょ。あれ私も出来るようになりたいなって思って。アンツィオ戦までそんなに時間がないから、コントロールより遠くへ飛ばすことを重視して教えてほしいの」

「なるほど、そういうことかー。ちょっと残念だけど、いいよ。これを機会にバレーの楽しみを知ってもらいたいし。なんならそのまま入部してもらってもいいけどね」

「ありがとう。それで早速教えてほしいんだけどいいかな?」

「勿論!」

 

バレー部への勧誘をスルーしたことに気づいてないようだったが、すぐにサーブの練習を始めた。練習を始めて小一時間しか経ってないが、予想以上にバレー部の練習が厳しくて少しだけ休憩を貰った。

 

「ごめんね。ちょっと疲れちゃった。現役の運動部の体力はやっぱりすごいね」

「いや~それほどでも。それにしても結構上手いよ。このまま正式に入部しない?」

「それはちょっと無理かな」

「いや~残念だな~。そう言えばCV33って豆戦車ですよね?」

「そうだけど」

「もしかして89式でも倒せますか?」

「うん、全然倒せるよ。でも、弱点狙って撃たないと倒せないかも」

「やったぞ。ついに89式でも、撃破できるぞ!根性で全部やっつけるよう!バレー部ファイトー!」

「「「ファイト―」」」

 

その後もサーブの練習をして狙ったところにもある程度飛ばせるようになったし飛距離もそこそこ出せるようになったので次の戦車道の摸擬戦で試してみることにした。

 



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私は後輩と再会する

お久しぶりです。
ガルパンの最終章3話めちゃくちゃよかったです。やっぱりはガルパンはいいぞ



「んで向こうの装甲はどんな感じ?」

「P40の前面はカバさんチームなら相手の有効距離の外から貫通可能です」

「心得た」

「んじゃあ。ぴよぴよの相手はカバさんチームだね」

「ぴよぴよ?」

「P40のことですか?」

「そうそうぴよぴよ。んじゃあ敵味方に分かれて練習してみよっか。ぴよぴよ役どれがいい?」

「P40に比較的近いのはIV号ですね」

「じゃああんこうがぴよぴよ、アヒルさんがカルロベローチェってことで」

「では、IV号と八九式を仮想的として摸擬戦をやってみましょう」

「はい」

 

「また負けたかー。上手くいくと思ったけど詰めが甘かったかな」

「でも、発煙筒にあんな使い方があったなんてびっくりしちゃった」

「そんなこと言っても、全然通用してなかったしもう一捻り必要かな」

 

バレー部に教えてもらった発煙筒サーブを応用した作戦を実際に通用するか試してみたがみほには通用しなかった。相手がみほだから通用しなかった可能性は十分あるが、一度失敗した作戦を何の改良もせずに再び実行するのは涼の考え的には出来なかった。

 

「みほ的にさっきの作戦のどこが穴だった?」

「うーん...もう少し注意を引くものがあったら、やられてたのは私達だったかも」

「なるほど。えーと、それじゃあ......とかどう?」

「それならいいかも」

 

 

それから数日が経ちついに2回戦の当日となった。戦車の整備や作戦の最終確認をしているとアンツィオの隊長がやってきた。

 

「たのもー!」

「あーチョビ子」

「チョビ子と呼ぶな!アンチョビ!」

「で、何をしに来た?安斎」

「アンチョビ!試合前のあいさつに決まっているだろう。私はアンツィオのドゥーチェアンチョビ。そっちの隊長は?」

「おーい、西住」

 

隊長同士の挨拶が済んだところで涼は見覚えのある人物と目が合った。その相手は目が合った瞬間ものすごいスピードで近寄ってきた。

 

「涼先輩じゃないですか!!お久しぶりです!ここにいるってことは戦車道復帰したんですね!私すっごく嬉しいです!」

「色々あって今年だけ復帰してるだけだ。水瀬こそ、何でアンツィオにいるんだ?確か継続に入りたいって言ってなかったか?」

「そうなんですけど。CV33に乗りたくなっちゃって。それと今はアクアパッツァって名乗ってるのでできればそっちで呼んでほしいです」

「長いからやだ」

「そりゃないっすよ」

「なんだアクアパッツァ知り合いか?」

「そうですよ。中学の時の先輩です」

「ていうことは、アンタが夏樹涼か」

「はい、そうです。まさか、安斎さんが私のことを知ってくださっているなんて光栄です」

「アンチョビと呼べ!そりゃまぁ中学の時の活躍も少しは知ってるし、アクアパッツァからも色々聞いてるぞ。あんたなかなかやるみたいだな。でも、私たちは負けない、じゃなくて勝つ!」

「残念ですが勝つのはうちです。お互い正々堂々と戦いましょう」

「よろしくな」

 

安斎さんと握手を交わし、アクアパッツァこと水瀬と少し話しをしてお互い準備に戻った。準備を終えて試合開始を待っているときに一つ提案してみることにした。

 

「あのさ、みほ。あの子の相手、私に任せてくれない?」

「ん?あの子って涼さんの後輩の子?」

「そう、その子。元とはいえ、あの子の先輩だからさ、久しぶりに威厳を見せつけてやろうと思って。もちろんフラッグ車だから無茶なことしないよ」

「それなら大丈夫だよ」

「分かった。まぁ多分あの子が乗ってるのCV33だろうけど油断はしないよ」

 

合図が鳴り試合が開始された。しばらくして偵察のために先行させていたアヒルチームから十字路で敵を発見したと報告があり、うさぎチームを直行させて本隊は当初のルート通り進軍していた。

 

「街道南側、敵発見。すみません見られちゃったかも」

「発砲は?」

「まだ、ありません」

「くれぐれも交戦は避けてください。うさぎさん、相手の正確な情報を教えて下さい」

「カルロベローチェ4両せもべんて2両が陣取っています」

「数が合いませんね。合わせて11両もいる」

「P40も正体不明の新車両もいません。2回戦のレギュレーションでは10両までと」

「インチキしてるのでは?」

「もしかして!うさぎさんアヒルさん退路確保しつつ斉射してください。反撃されたら直ちに退却」

 

みほの読み通り街道に構えた相手車両は偽物ですべて看板だった。相手の欺瞞作戦を見破ったことでその次の作戦も分かった。

 

「ということは、十字路に私たちを引き付けておいて機動力で包囲、か」

「みほの言う通りだと思う。このままアヒルさんとうさぎさんに先行してもらって偵察を続けてもらおう」

 

その後すぐに偵察の2両が交戦に入ったため、本隊はそのまま直進し、包囲される前にフラッグ車を倒すことにした。木々が生い茂り見通しの悪いの森の中を走っているとちょうど動き始めたばかり敵フラッグ車と遭遇した。そのフラッグ車の護衛車両を見た秋山と私は驚きのあまり一瞬声が出なかった。

 

「...あ、あれは...もしかして...」

「あれの実物が存在するなんて...]

 

「ゆかりん、あれってそんなにすごい戦車なの?」

「あれは、P40よりさらにレアというか、最早幻の戦車です!」

「M16/43サハリアノ試作の1両しか作られてないはずなのに...何故あれがアンツィオに...」

 

アンツィオが隠していた新戦力とはサハリアノのことであった。そしてそのサハリアノから顔を出していたのは水瀬だった。

 

「みほ、サハリアノは私に任せてP40を追って!カバさんはセモベンテの足止めをして。可能なら撃破」

「分かりました。お互いの健闘を祈ります」

 

 

 

 

 




アンツィオの秘密兵器はなんとサハリアノでした。どういう経緯でアンツィオが所有しているかは後の話でだしていくつもりです。後は新キャラとして水瀬ことアクアパッツァを登場させました。ちなみに名前は響子です。一応由来としてはアクアパッツァはイタリア語で「狂った水」という意味なので水を名字に入れたかったのと、狂った子で狂子から→響子と名付けました。


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