世界チャンピオンになれるはずだった男の孫(休載中) (無理やー)
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原作前
プロローグ
ある山奥に一人の老人と青年が住んでいる。その青年の両親は交通事故で亡くなっている為祖父である猫田銀八と一緒に暮らしている。祖父は昔世界チャンピオンになってもおかしくない程ボクシングが強かった。しかし、全盛期の頃ちょうど第二次世界大戦があり、尚且つパンチドランカー症状をおこした為なることができなかった。
俺はその話を生前の父から聞かされ、俺は世界チャンピオンになると決めた。
俺の名前は猫田一……世界チャンピオンになる男だ
時が過ぎ俺が17歳になりやっとプロボクサーのライセンスを取れる歳になった
それまで俺はずっと山奥で祖父と共にボクシングの練習をしていた。梺の学校まで20㎞以上の道のりを走っていた為スタミナとダッシュ力は自然と身に付いていた。山奥の中は川の流れが急流の為、スクワットをやるにはちょうど良く、薪割りを毎日やっているおかげで広背筋を身につけ、ボクシングに必要な筋肉は鍛え続けてきた。
だが、スパーリングを未だ一度もやったことがない。たまにじいちゃんとマスボクシングをやっているくらいだ。(70過ぎの老人相手になにやってんだ~⁉)
17歳になった今、俺は東京に上京している。じいちゃんの親友がボクシングジムをやっているからだ。そこに俺が入門する。場所は昔じいちゃんと来たことがあったため知っている。
そこは鴨川ボクシングジム
(ガラガラガラ………)
「こんちはー‼」
ジムに入った俺に対し練習生達は『誰!?』という反応だった。そこに八木さんが声を掛けてきた
「あ‼一君良く来てくれたね」
「お久しぶりです八木さん。今日から宜しくお願いします」
「うん。期待しているよ」
そう言い二人は握手をかわす。
「今日からこのジムに入ることになった猫田一君だ。みんな仲良くしてあげてね」
『はい』
八木さんの紹介により練習生は返事を返した。そして俺は八木さんに会長室へ連れてかれた。
「会長一君を連れて来ました」
「うむ」
会長室に入るとじいちゃんの友人鴨川会長がいた
「久しぶりじゃな 猫田。猫ちゃんは元気か?」
「じいちゃんが元気じゃないところなんて想像できないよ」
「それもそうじゃな⁉お主は基礎はできとるがまだ実戦経験がまるでない。じゃから暫くはスパー中心でいく。いいスパーリング相手がおるぞ」
「わざわざ言うってことは相当かな?」
「歳は主の4つ下だがのう、強さは保証するぞい」
「わかった。じゃあ明日から宜しく」
そう言い俺は会長室を出た。
「やっとこのジムに世界チャンピオンになる奴が来たのう八木ちゃん!!」
「しかし彼はまだスパーの経験がありません。そこまでスゴいのですか 彼は?」
「…きた」
「会長?」
「燃えてきおったぞい。八木ちゃん‼」
「(ここまで会長が期待しているなんて。なんだか僕も楽しみになってきたよ)」
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もう一人の怪物
一がジムに来て一月がたった。練習はスパー中心でやっているが他にもちゃんとロードワークやミット打ち等もちゃんとやっているだが誰も一の練習量にはついていけてなかった。一はじいちゃんとずっと二人で練習していた為じいちゃんの現役時代と大差ない練習していた。
じいちゃん達の時代は一日おき、もしくは連日、伝説のボクサーピストン堀口は一日4試合したという。そういう時代で生きてきた為この時代の人間にとって厳しい練習なのだろうが、じいちゃん達にとってはそれが当たり前の感覚なのだ。
一もそんな感覚で練習してきたので周りからは試合前の選手じゃないんだからみたいな目を向けられている。
ただし一人だけ一と張り合っている人間がいる。それは宮田一朗。しかし彼ですら一の相手にはならない。歳が13歳中1だからと言われればそれまでだが、彼とて子どもの時から始めているボクシングのエリート。決して弱くはない。ここ最近スパーではほとんど負けたことがなかったにもかかわらず、一と出会ってからいつも負けている。
「はぁ~ 」
俺は会長からいいスパーリング相手がいると言われ楽しみにしていた分少しガッカリしていた。溜め息もつきたくなるものだ。
宮田side
「(何なんだアイツは?スパーリングもやったことがないと言われてやってみれば、いつもタコ殴りにされる。しかも最近はかなり軽いパンチをしていたぶりやがって)」
本人いわくすぐに倒したら『すぐに倒したら練習にならないだろう』とのことだ。プライドの高い宮田にとってこれ以上の屈辱があるだろうか?
しかも一は万能のボクサータイプ、さらにスイッチヒッターなのだ。カウンターパンチャーの宮田にとって相性は最悪だ。
「(でも……面白い……)」
宮田にとって一は最高の相手だった。宮田がボクシングを始めたキッカケは父がプロボクサーで子どもの頃その姿に憧れていたからだ。その父は東洋太平洋タイトルマッチで最終round相手のたった一発のラッキーパンチを受けて負けてしまった。そして引退した。
だが後になり気付いた。カウンターを打ちにいった刹那相手はスイッチをしカウンター返しをしてきたのだ。
「(初めてスパーをやったとき、まさか親父と同じパンチを受けるとは思わなかったな。だが、だからこそ俺は負けられない。いつか超える。)」
そんなことを考えていた。すると猫田がロードワークに出掛けた。
「ちっ、行くなら声かけろよ(ボソッ)」
猫田side
俺がロードワークに出掛けた。走っていると案の定宮田が何も言わずについてきた。
「おいおい!別に俺について来なくてもいいんだぜ」
「別に…たまたま俺もロードの時間だったからさ…」
「ふ~ん。そうかい……じゃあ自分のペースで走りな 」
そう言い俺はペースを上げた
「おおおおおおおおお」
どんどん宮田との距離が開いていく。
「(くっ、この体力バカが!!)」
宮田も張り合うようについてくる。
「虚弱のわりにはよくついてくるな?」
「誰が虚弱だ。」
宮田がスピードを上げ俺と並んだ。
「おっ、小癪な❗」
しかし、坂道ダッシュを何度も往復をし、やはり徐々に距離が開いていく。ジムに着いた頃には、宮田は既にバテバテだった。宮田は少し休んでから練習に入るのにたいし、俺はすぐにミット打ちに入った。
「どうだ一朗。アイツがこのジムに来るようになってずいぶん練習に身が入るようになったな」
「そんなんじゃないさ。ただ猫田さんに敗けっぱなしっていうのが嫌なだけさ。」
「ふふっ、(猫田には感謝せねばならんな。これでまた一回りボクサーとして成長できる)」
リングの外で何やら宮田親子が会話していたが、俺は練習に没頭していた。
ミット打ちが終わりサンドバックを叩いているとき会長が帰ってきた。だが、会長の後ろにもう一人でかい男がいた。一目見てわかった。こいつは強いと…
「おお、帰ったぞい。八木ちゃん。」
「お疲れ様です会長!!ところで彼は?」
「今日からこのジムに入ることになった。鷹村じゃ。ほれ、どうした?」
「けっ、俺はただ殴らせてもらえるって言うからきてやったんだ❗」
「気にせんでええ 八木ちゃん‼ん?猫田ちょうどいい。ちょっとこい」
「何だよ!じいさん」
「今日からこのジムに入ることになった鷹村じゃ。お前も入ったばっかだからのう。張り合える相手を連れてきたぞい」
「ふ~ん。宜しく」
「けっ。」
「それでは早速スパーじゃ。猫田相手をしてやれ。」
「はああああ?何いってんだ。どう見てもそいつ重量級だろ?Jr.フェザー級の俺とじゃ階級が違いすぎんだろうが!!俺を殺すきか?クソジジイ!!」
「当たらなければいい話じゃろう。それとも、こんなずぶの素人に負けるほどお前はよわっちぃのかのう……」
「ちっ、わぁったよ!やるよ」
「うむ!鷹村準備ができしだいリングにあがれ。」
「おっしゃ、ひとあばれしてやるぜ」
これが猫田一と鷹村守。このジムに二人の世界チャンピオンが現れようとはこの誰も知るよしもなかっただろう。
鷹村がこのジムにやってきた。だがいきなり階級差を無視してのスパーリング。一ははたしてこのあと無事なのだろうか……
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スパーリング
猫田side
会長に言われ何だか無茶苦茶なスパーをやらされることになった。だってそうだろう、中軽量級の俺が重量級の相手とスパーとかありえねぇし。そんなことを考えていたらもうすでに準備を整えている。
「(はぇぇよ!!もう少し心の準備とかさせろよ!!)」
「よぉ、準備できたぜ‼」
鷹村が声を掛けてきた。こいつヤル気満々だな。と言うより早くぶっ飛ばしてぇんだろうな。なんて考えていた。相手は重量級だ。一発でもくらったらアウトだろうな。
「よいか!!ルールは本番と同じ4round3ノックダウン制じゃ‼ヘッドギアもなしグローブも8オンスじゃ」
「って、ヘッドギアもなしかよ。ジジイ!本当に殺すきか?」
「ふん‼だから言っておるじゃろ?当たらなければよいのじゃ…」
「マジかよ……」
俺のツッコミもまるで聞く耳持たず無茶苦茶だ。
『カァーーーーーン』
そんなことを言っているうちにゴングが鳴り出した。それと同時に鷹村は突っ込んできて右を振ってきた。
「おらぁぁぁぁ」
それを猫田は避けた。そして鷹村はすぐさま左を振ってきた。まだボクシングの型を教わっていない鷹村のパンチはストレートもジャブもない。ただ振り回しているだけだ。しかしケンカ慣れしているためか避けてもすぐに対応してくる。
それに対し猫田は、距離を取りながら左ジャブを打ち抵抗している。そんなことなどお構い無しに鷹村は突っ込んでくる。
要所要所にカウンターを合わせるが、まるで気にせずその度々に振り回してくる。
「(しつこすぎ。一体何発浴びせたら倒れんだよ。猪かコイツは?)」
「(クソが!!何で当たんねぇんだよ。逃げてばかりいやがって、この俺様がパンチくらってやってんだ。テメェもくらいやがれ)」
猫田と鷹村はデッドヒートといってもいいスパーやっている。そのスパーは結局最終roundまでいったにもかかわらず、二人のスタミナはまだまだ十分残っていた。
正直信じられない。二人ともまだデビューすらしていないひよっこなのだ。なのに4roundやってまだ1roundと同じ攻防を繰り返している。まるでビデオを巻き戻して観ているようだ。猫田はまだ一月、鷹村はまだジムに来て初日の為練習すらしていない。そんな二人がこれ程までのスパーを見せてくれるのだ。
練習生達も練習を忘れ、二人のスパーを観いってしまっていた。猫田に毎日のようにフルボッコにされている連中だ。いつも全員1roundの途中で倒されているのだ。それが鷹村は20発以上はクリーンヒットを浴びている。しかし一度もダウンせずにすぐに打ち返しているのだ。
猫田はけっしてパンチが軽いわけではない。Jr.フェザー級だがフェザー級でも上位に入る位のパンチ力をもっている。(原作で言えばフェザー級時代のヴォルグクラス)いくら階級差があるといっても限度がある。
だが猫田も最終roundまで一度もパンチを当たっていない。2、3どパンチを受け止めているぐらいだ。ノーヘッドギアなので一発でも当たれば終わるのだろうが……
しかし鷹村にとっては屈辱意外のなにものでもない。彼は一度もケンカで負けたことがなかったのだ。それが先程から後数㎝のところで避けられている。必要最低限の動きで避けているのだこれ程の屈辱があろうか…その為か最終roundではこれまでにない程のフルスイングをしてきた。
(ブォォォォン ブォォォォン ブォォォォン)
「おわっと」
(ブォォォォン ブォォォォン)
「ちょちょちょちょっと、物騒な音だしてんじゃねぇよ」
「ケンカ中にしゃべってんじゃねぇ。ずいぶん余裕そうだな おい!?」
猫田がしゃべってきたのをキッカケによりいっそう振り回してきた。だがそれが幸を制したのか猫田はコーナーに追い詰められた。鷹村はすぐさま陣取り猫田を逃がす気がないようだ
「漸く追い詰めたぜ、今までの鬱憤をここで返させてもらうぜ」
そこで鷹村はコーナーにいる猫田に突っ込んでいった。猫田はコーナーから出る気配がない。
鷹村はそんなことをお構い無しで右、左と打ち続けていた。しかし猫田はコーナーにあるロープの反動を利用し今まで以上のスピードを上げ、鷹村のパンチを避ける避けるそして鷹村の右をクロスカウンターをしコーナーから脱出。振り向いた鷹村に対し、猫田はパンチを連打連打。その途中ゴングが鳴りスパーはここで終わった。
ボクシングをまだ始めてなかった鷹村だった為、まだ器用なボクサー相手には振り回され空回りされてしまうのだ。
原作で鷹村とリカルド・マルチネスが戦ったらどっちが勝つかと思いこの猫田一を作って見ました。将来は、フェザー級に上がりリカルドと対戦させる予定です。現時点ではまだ猫田の方が上でも後数ヶ月もすればどうなるか?これから展開を期待してください
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練習
鷹村side
「ちっきしょう‼結局一発も当たんなかったじゃねぇか!!」
猫田とのスパーリングが終わり第一声に上げた言葉これだ。
「どうじゃった、あやつは?」
「どうもこうもずっとテレフォンパンチするだけじゃないですか。あれじゃあ俺じゃなくても避けられますよ。」
「なんだとこのやろう‼」
鴨川会長が猫田に今のスパーの感想を聞いたが、話しにならないとのことだ。それを聞き俺は後ろからおもいっきり殴りにいった。
(スカッ)
だが猫田は意図も簡単に避けてしまった。と言うより相手にしていない。
「ほれ鷹村。」
「ああん‼」
ジジイが俺に紙を渡してきた。
「暇潰しじゃ。走りに行くぞ。」
そう言われジジイに無理矢理外に連れ出され走りにいかされた。
「ほぉれ走れ走れ!」
「チキショーーーーー」
猫田side
鷹村がじいさんと走りいった後
「で?本当のところどうだったんですか?」
宮田が俺に近づき聞いてきた。
「正直ヤバいな。とても素人の動きじゃねぇ。これで練習積んでまた挑まれたら正直勝てるかどうかわからん。」
「ヘッドギアつければいいじゃないですか?」
「練習ってのは本番の為にやるんだ。常に本番の緊張感を保ってやんねぇと意味ねぇんだよ‼」
「はぁ そうですか?」
「話が終わったんならもう走りに行くぜ。」
「え!?また走りに行くんですか?今スパー終わったばかりじゃってもういねぇし……ったくどんだけ体力有り余ってんだか……」
鷹村side
「ほぉれ走れ走れ!」
「これが終わったらちゃんとアイツをブッ飛ばせるパンチ教えてくれんだろうな⁉」
「フン‼安心せいちゃんと教えてやるワイ。」
「おっしゃ、じゃあとっと終わらせてやるぜ‼」
ジジイと走りながらそんな会話をしていたが、
「ほぉ、俺をブッ飛ばすねぇ。そんなことができんのかい?」
そんな声が聞こえ隣を見ると、猫田がいた。
「あっ!!テメェ何でいやがる!」
「なぁに俺をブッ飛ばすなんて戯れ言を言う奴にちょいと身の程を教えようと思ってな⁉」
そう言い猫田はスピードを上げ俺の先に行きやがった。
「ハッハッハッハッハッ」
「あのやろう‼」
猫田の笑い声が聞こえる。完全にバカにしてやがんな。そのことに気付き鷹村は怒りに打ち震えていた。
「待ちやがれェェェェェェ!!」
そう言いながら猫田を追いかけていった。
「……フン。猫田の奴め、やっと張り合える相手を見つけて嬉しいじゃろうな……」
そんなことを思いながらジジイは鷹村の後を追いかける。
猫田side
「おらおら待ちやがれェェェェェェ」
鷹村を挑発し先を走っていた俺に対し、鷹村が声を張り上げながら追いかけてきた。
「おおぅ、無理することはないんだぜ?さっきのペースで走ってなくて大丈夫なのかい?」
「けっ、俺様がテメェに敗けっぱなしでいると思ってんのか?ざけんな‼」
「ヘェ~……じゃあついてきな」
そう言いいつもの坂道をジグザグダッシュを繰り返した。だが鷹村はそれについてきている。俺は坂道をジグザグダッシュしている分ジムの奴らより多く走っている。そんな俺に初日からついてきやがる。
「(マジかよコイツ!本当はマラソンでもしてたんじゃねぇか?)」
「オラオラオラオラァァァァァァまだまだ行けんぞぉぉ。」
二人は張り合うようにロードワークをしていた。じいさんは何も言わずスクーターで後を付けてきていた。
鷹村side
ロードワークが終わり二人はサンドバックを叩いていた。しかし鷹村だけ左ジャブしか打たせてもらえなかった。その為か、鷹村は気合いが入らなかった。
(ズドォン ズドォン ズドォン ズドォン)
(ポスッポスッポスッポスッ)
それに痺れを切らしジジイは声をかけてきた
「ほれ、もっと気合いいれんか」
「おい‼右は打たなくていいのか?」
「さっき教えた左ジャブだけじゃ」
「いつまでだよ」
「ワシがいいと言うまでじゃよ」
「だからそれはいつなんだ❗」
「さぁな……」
「くぉの~…ふざけんな‼」
鷹村が頭にきてサンドバックを右で打った。
(ズドォォォォォン)
「どうだ❗やっば右も打たなきゃボクシングって感じしねぇだろ。」
「会長…」
「うむ!」
猫田がロープを会長に渡し、右手を縛りつけた。
「このヤロウ……」
「終わったらそう仕上げじゃ!スカッとするぞ‼」
「右か?」
「走れ走れ~」
「クソォォォォォォ」
そして3ヶ月が経ち猫田と鷹村のデビュー戦の日がやってきた。だがあれから鷹村は猫田どころか誰ともスパーをやらせてもらえず、左ジャブとロードワークしかやっていなかった。
笑えるシーンを作りたかったんですけど思ってたより難しくうまく書けませんでした。
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デビュー戦
猫田side
今日は俺と鷹村のデビュー戦だ。ジムに入ってから4ヶ月やっとプロデビューができてワクワクしている。
今俺と鷹村、後はセコンドをやるじいさんと八木さん達が来ているが相変わらず鷹村はじいさんと言い争っている。
「俺様は納得してねぇぞ!」
「八木ちゃんもう一度頼む。ほれ、ちゃんと聞いとれ」
「まず鷹村君の相手の桜選手は、4戦4勝1KOインターハイチャンピオンからプロ転向して現在無敗、左右のスピードのあるストレートとフットワークを使わせれば『相手なんざどうだっていい!』……」
「結局俺はジャブとロードワークしかやってねぇんだぞ!」
「八木ちゃん続けてくれ」
「はい。そして猫田君の相手の4戦3勝3KO1敗勝った試合がすべてKO!、早い回で右を打って決めているからその右は要注意だね。でもディフェンスが甘いところがあるからジャブで距離はかりながら戦えば猫田君ならいけると思う。」
「うっす」
鷹村を無視して話を進めている。というより鷹村を除いたメンバーが輪になって話を進めていることから鷹村は完全に無視されている。
「くぉの~…。無視すんな‼」
「ほれ、周りの人に迷惑じゃ」
「大体何で俺様が猫田より前なんだよ‼」
「お主が猫田に負けたからじゃ」
「負けてねぇよ‼倒れなかったろうが‼」
「本番の試合じゃあ猫田の判定勝ちじゃ」
「プププ………」
「このやろう✊ 」
俺はその話を聞き鷹村を笑っていた
「ほれ、もう出番じゃ!行くぞい」
「後で覚えてやがれ‼」
鷹村は俺に笑われた為、殴りかかろうとしたがじいさんに止められ試合会場に向かった。
鷹村side
俺は今リングの上にいる。始めてのリングの上の為、自然と辺りを見回す。
『鷹村君、やっちゃってよ❗』『君ならやれる‼』
観客席からは同じジムの練習生達が観に来ていた。声援を受けるのも悪くない。そして向かいにいる対戦相手を見た。調子は良さそうだ。
「さすがの鷹村君も緊張している見たいですね。」
「アイツの場合緊張しているふりかもしれんがな?」
「余裕そうですね、心配事とかまりませんか?」
「そんなことはないぞ。これでも心配している。」
「今更ながらスパーを入門した時の一回だけというのは不味かったのでは?」
「いや、わしらが心配しているのは相手の方じゃ」
「えっ‼」
「あのわしらっていうのは?」
「猫田じゃよ」
「猫田が?」
『ピーーーーー‼セコンドアウト』
それを聞き、リングから外に出た
「(俺様は世界チャンピオンになれる男だ。しかしボクシングを舐めようなんて考えてたわけじゃねぇ。もしこれで負けるようなことになればこんなジム絶対辞めてやる。)」
リングの外で会長は
「1roundもってくれればいいんじゃがな。それがダメなら1分でも」
『カァァァァァァン』
ゴングが鳴り試合が始まった。お互いコーナーから出て
相手に近付いたと同時に相手はいきなり左ジャブを打ってきた。
「(はぇぇぇ‼)」
その後左右のフットワークを使いペースを乱そうとしたが相手はそれについてきている。
「(これがプロか……ワン・ツー、避けきれねぇ)」
そんなことを思っていたが簡単に避けれてしまった。
「(避けられた?)」
鷹村は相手に接近するが
「(逃げ足もはぇぇ‼これじゃあ攻撃しようにも)」
だが簡単に懐に入ってしまった。
「(速くねぇ?いや、俺様が速いのか?)」
そこで鷹村の左ジャブがクリーンヒット。続けてもう一度左ジャブを放ちまたもクリーンヒット。
「(……なるほど……そういうことか‼)」
すかさず鷹村のワン・ツーが決まった。
「ダウン!!ニュートラルコーナーへ!!ワン……!」
レフェリーが途中でカウントを止め試合を止めた。試合終了
「勝者!!鷹村!!」
1round25秒 驚異のタイムで試合が終わった。
猫田side
俺はすでに会場に来ていた。どうせすぐに試合が終わるだろうと思い。そしたら案の定、1round25秒という本当にあっさり終わりやがった。
「(さすがだな。さすがにこんなタイムで俺は終わらせられないぜ。)」
「スゴいな?鷹村はまさかこんなに早く終わらせるなんて。」
俺の隣にいる篠田さんがそう呟いた。
「だから言ったじゃないですか。1分持てばいい方だって…」
そんな話をしていたら鷹村達が近づいてきた。
「おう、終わったぜ!お前もさっさとけりつけろよ‼」
「まかせろ‼」
そう言い俺と鷹村はグローブとグローブをくっつけた。
そして俺はさっそくリングに上がった。対戦相手もすぐに来てお互い準備万端だ。
「おっしゃ、じゃあとっと終わらせてやるぜ!」
『ピーーーーー‼セコンドアウト‼』
そう言われ会長達が外に出た
『カァァァァァァン』
ゴングが鳴り試合開始‼
猫田sideout
最初は様子を見ていたが相手はそうはいかずいきなりステップインしてきた。そのままスピードに乗ったまま左を打ってきた。だが避ける、そのまま左ジャブを連打してくるが、猫田はその左を避ける避ける。
そして相手が打ちやみ距離をとる。
それを無視するかのように相手は頭を振りながら近づいてきた。そしてワン・ツーをしようとしてきたが、猫田はツーのタイミングで左のカウンターを打ちクリーンヒット。相手が体制を崩したところですかさず左ジャブの連打それがすべてヒットし相手はたまらず後退する。
しかし猫田はチャンスと思い相手が落ちつく暇をあたえず、相手に近づき左ジャブの連打。それに耐えられなくなり相手は無造作に右を打ってきた。だが猫田に届くより先に右ストレートがカウンターで入りそのままダウン
「ダウン‼ニュートラルコーナーへ!ワン…ツー…スリー………」
レフェリーはカウントを途中で止め両手を交差した
「勝者!猫田!」
「おっしゃあ‼」
(*’ω’ノノ゙☆パチパチパチパチパチ)
観客から拍手と歓声がなり、猫田は両手を上げ観客に応えた。
「ふぅ 」
「どうしたの、猫田君?」
「八木さん。いや正直あっさり終わりすぎて…」
「お主とまともに戦える相手なんぞ滅多におるかい‼」
「はぁ~…そうなんですか…」
「だがその分じゃとまだまだやり足りんようじゃのう……八木ちゃん一月後もう一度試合を組んでやれ。」
「えっ‼そんないきなり」
「なぁにこやつなら大丈夫じゃよ」
そんな無茶苦茶な会話をしながら会場を出た。
「おう、お前も勝ったみてぇだな?」
「俺が負けるわけないだろ?」
「ちげぇねぇ‼」
「ここから俺達のチャンピオンロードが始まんだからな‼」
「あん?俺達?」
「俺とお前以外誰がいる?どっちが先にチャンピオンになるか勝負だ‼」
「おう、俺様は負けんがな‼」
猫田のデビュー戦 KOタイム 1round53秒 圧勝
そんなやり取りし二人は共に高め合っていった。それから4ヶ月がたった今猫田と鷹村は次々と試合をこなし、東日本新人王戦の時期がやって来た
これまでの猫田の戦績
3戦3勝3KO 全試合1roundKO
鷹村の戦績
3戦3勝3KO 全試合1round1分以内
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青木村
新人王戦が始まる1ヶ月ほど前新しく入門してきた奴等がきた。
木村達也、青木勝の二人だ。
この二人は鷹村に喧嘩を売って返り討ちにあったらしい。(青木は二度も……)バカな奴等だ。よりによって鷹村に喧嘩を売るとは……。その鷹村に一発だけでもブッ飛ばさなきゃ気がすまないらしい。
そして青木と木村が入門して3ヶ月が過ぎ、そろそろスパーしてもいい頃だろうと思い猫田が相手になった。
最初は青木だ。最初は自信満々でリングに入った為自信があるのかと思っていた。青木が左ジャブを放ち避けたがすぐさま左ボディ右ボディ
(ズドォン ズドォン ズドォン ズギャァァァァン)
止めの右ストレートを放ち青木撃沈。ゲロを吐きながら
「こ、殺せ……ひ、一思いに……殺せ………(沈)」
「おおし、次!!」
「だらしねぇ。3ヶ月も何やってやがった‼どけ❗俺が手本を見せてやる。」
木村もいきごんでリングにあがった。
(ドギャン ズガァン バキャン)
「「あ………が……………が………」」
10秒もたたず、木村も青木の隣でゲロ吐いて倒れていた
「二人ともまだまだ話にならねぇな。続きは明日だ‼」
「……クッソー」
「……イマニミテロヨ」
死にかけている二人がやっとの思いでいった言葉であった。
2ヶ月後
「ただ突き出せば言い分けじゃねぇぞ‼」
「ぎゃあぎゃあうるせぇぞコラァ‼」
「その負けん気をいかせ‼手数を出して打ち合いに巻き込むんだ‼」
(ズギャァァァァン)
青木撃沈………
(パンパン)
「つー、コラァ‼」
(ズガァン、ズガァン)
「打たれても熱くなんな‼お前にはスピードがある。無理に打ち合わずリズムで対抗しろ‼」
(ズガァァァァァン)
木村撃沈………
練習後
「クッソー毎日タコ殴りやがって…」
「(手数だ。数打たなきゃあたんねぇ)」
「(もっと動き回んなきゃ。もっと。)」
2ヶ月後
「手数はどうした⁉」(ズガァン)
「(チキショウ‼当たれ❗当たれ❗当たれ❗当たれ❗)」
(スカッ スカッ スカッ スカッ スカッ)
(ズガァン)
青木撃沈
「足使えっつっただろ‼」
「(止まるな動き回って撹乱するんだ❗)」
(キュキュッ キュキュッ キュキュッ)
(ズガァン)
木村撃沈
その後も青木と木村は練習にあけくれ、毎回スパーで猫田もしくは鷹村にタコ殴りにされている。
それからさらに2ヶ月。今日は鷹村が木村と青木の相手をしていた。
「「ブハァー、ハァー、ハァー、ハァー、ハァー 」」
「つくづく進歩のねぇ奴等だな。また明日だ‼」
そう言い鷹村はリングから出た。
「何であたんねぇんだよ‼」
「こんなに一つの事に夢中になんの初めてだってのに❗」
「何だかバカらしくなってきたぜ 」
「しかも鷹村だけじゃなく、猫田にまで……」
木村と青木はあまりの不甲斐なさに馬鹿馬鹿しくなってきていた。
「鷹村さん。はい、タオル」
「おう、わりぃな」
「ずいぶん汗かくようになりましたね?」
「ったく、できの悪いやつらのお守りも大変だぜ。」
「「汗?」」
「いつも余裕かましてたアイツが?」
「息切れしてやがる。」
「青木ぃ」
「おおぅ。」
それから青木と木村はまたももう練習を繰り返していた。
「「あと少し、あと少し、あと少しで届くんだ。あのヤロウ共に‼」」
それから、三週間が過ぎ、鷹村と木村がスパーリングをしていた。
(びしっ)
「む……」
「い 今拳の先の先の方にかすかなてごたえが……」
「ヤロォ、かすりやがった」
木村の右が僅かに鷹村の頬をカスったのだ。
「みたかかぁ⁉カスっただろ?ビシッて‼」
「もう少し踏み込んでりゃガツンだったぜ!!」
「…………テメーらカスったぐらいで大騒ぎするなよ。なんか恥ずかしいことが起こったような気がするじゃねぇか…」
「うるせぇ!おれたちにとっちゃ事件なんだよ‼」
「よーしいけるぜぇ。その調子で当ててこい‼」
「っしゃあ‼」
その後結局は鷹村にタコ殴りにされた二人だったが今までにない充実感を得ていた。自分達が確実に成長しているという感覚を味わっていたのだ。
そして2ヶ月後青木と木村はプロデビューを果たすことになる。
その半年前に猫田と鷹村は東日本新人王をとり、さらに2ヶ月後全日本新人王を取った。
最優秀選手を獲得したのは鷹村だった。
それからさらに一年が過ぎ、ちょくちょくとチャンピオンに近づいてきていた。
猫田の戦績、11戦11勝11KO無敗 全試合1roundKO
日本Jr.フェザー級3位
鷹村の戦績、9戦9勝9KO無敗 全試合1分以内でKO
日本ミドル級5位
青木の戦績、4戦3勝1敗2KO
木村の戦績、4戦3勝1敗1KO
新人王戦は飛ばしてしまいました。鷹村と同格クラスなので新人王クラスでは相手にはならない為。原作では、鷹村は8戦めで日本チャンピオンになってますが、原作とは異なります。
次回は一人原作キャラを出そうと思っています。そのせいで原作と大きく変わってしまうかもしれませんのでよろしくお願いします ⤵
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原作開始
いじめられっこの覚醒
今猫田と鷹村はロードワークにでていた。だが、鷹村は機嫌が悪い。ここ最近試合がないのだ。デビュー戦以来毎回1roundKOそれも、全試合1分以内でKO。強すぎるため日本ランカーですら試合を避けているのだ。
猫田も毎回1roundKOしてはいるが3ノックダウン制で倒している試合も多い為、鷹村のように敬遠されているわけではない。それでも避けられていないわけではない。
「あ~暇だぜ。早く試合が決まらねぇかなぁ」
「同感だ。」
「おめぇはこの間やったばかりじゃねぇか❗」
「2ヶ月も前の話だろ?俺はさっさと世界にいきてぇんだよ‼」
「まだ日本チャンピオンにもなってねぇ奴が世界だぁ‼」
「俺は今すぐタイトルマッチやってもいいんだぜ?」
「けっ、それは俺も同じだ‼」
「お前の場合4ヶ月も試合やってねぇよな?」
「ああ、ったく暇だ~……おい、あれなんだ?」
鷹村が指を差し猫田に聞いてきた。すると一人の学生が3人の男達にリンチされていた。
「いじめか?」
「ったく、俺はああいう弱い者いじめなんぞする奴は大っきらいなんだ!」
「んじゃ行くか?暇潰しにはなるだろ…」
そう言い二人はその現場にいった。
一歩side
学校からの帰り道ボクはいつも通りウチの手伝いをするために家に帰るところだった。その帰り、いつもボクをいじめている梅沢君達3人と出会ってしまった。
案の定『ミミズ臭い』と言われ殴られてしまった。『ミミズじゃなくてイソメなんだけど』と呟いたら、更にタコ殴りにされた。
その後母さんをバカにされ言い返そうとしたが、ガンとばされ何も言えなかった。
「たまには根性みせてみろってんだ‼」
梅沢君に腹を蹴られ後ろに蹴っ飛ばされた。その時誰かが受け止めてくれた。
一歩sideout
猫田と鷹村がその現場にきたときすでにいじられてた奴はボロボロだった
「うわぁ~ひでぇなこりゃ」
「強そうに見えねぇけどな。こんなヤツラ」
鷹村がイジメっ子達をかなり見下していた。
「なんだぁお前ら?」
「いきがってんじゃねぇよ。」
「バーーーーーカ」
猫田と鷹村が3人を挑発した。
「「「いきがってンのはどっちだコラァ‼」」」
3人は猫田と鷹村に殴りかかってきたが、あっさり避けられた。
「「扇風機か?お前ら…」」
「ちきしょう逃げ足だけははぇーみてぇだが……!!」
梅沢達3人の制服のボタンと、ズボンのベルトが無くなっていた。
「「いきがってンのは俺らか?それともてめぇらか?」」
すると鷹村の右手には制服のボタンが、猫田の右手にはベルトが握られていた。
「「「~~~~~~うわぁぁぁぁぁ」」」
3人はすぐに逃げていった。
「す、すごい」
それを見ていた一歩は一言呟き気絶した。
「お、おい‼起きろ‼起きろっておい‼」
「とりあえずジムに連れてくぞ。あそこなら治療器具もあるからな。」
そう言いながら二人はジムにまで連れていくのだった。
猫田side
ジムに戻りとりあえず手当てしてやった後自分の練習に戻った。猫田は一人でサンドバッグを叩いていたら。
「猫田さん。目覚ました見たいですよ‼」
練習生の一人が俺に声を掛けてきた。すると、気絶していた奴が目を覚ましていた。初めてボクシングジムに来たのか目を回している。
「初めてか?ボクシングジムは?」
「えっ!あっ!は、はい。」
「ここなら治療器具が置いてあるからよ。」
そう言われ一歩は自分の体を触り確認した。
「あ、ありがとうございます!」
「ふん!」
「終わったんなら早く帰んな!」
猫田の後ろから鷹村が出てきた。
「俺は弱い者いじめなんぞでぇっきれぇだがな、やられっぱなしで何もしねぇ奴も虫酸がはしるんだよ!」
そう言われメソメソしながら黙って帰るのだった。
((イライライライライライラ ))
だが帰ろうとしていた一歩に猫田が待ったをかけた。
「ちょっと待ちな!」
そう言い一歩の首根っこを掴み無理矢理サンドバッグの前に立たせた。そこに鷹村が横から先程のいじめてた奴等の絵を描いてサンドバッグに張った。
「コイツをあいつらだと思っておもいっきり殴りな‼」
「ええ、似てな「つべこべ言わずさっさとやれ❗」………」
「そうだぞ、こんな下手くそでもお前のために書いたんだからやってやれ」
「うるせぇ!」
そんなやり取りを一歩の後ろでやっている猫田と鷹村だった。
「はぁ、…じゃあ」(……ポフッ)(ドカッ)
「悔しかったらおもいっきりやれ❗おもいっきり‼」
「やる気あんのか⁉」
「はい‼」
練習生達はそんな二人に
「何怒鳴ってんですか?先輩達。」
「うるせぇ。」
「お前らは練習してろ。」
「えっと、こうかな?」(……バァン)
「そうだよ。その気合いだよ!」
「は、はぁ?」
「どうだ?痛そうな顔になってきたろ?」
見ると書かれていた似顔絵がクシャッとなっていた。
そこに猫田がアドバイスをする。
「もっと踏み込みを強くしてみろ。踏み込んだ瞬間腰もグイッと入れる。肩も内側に捻り込むように。」
「はい。えっと…踏み込み…腰…肩……ようし。………でぇぇぇぇい❗(ドギャァァァァァン)………えっ⁉」
『オオオオオオオオ』
「気んっもちー!!」
一歩がそんなこと言いながら振り向いたがその時猫田の顔に血がついた。
「見て見て、言われた通りにやったらほら‼」
猫田はそんな一歩の言葉を無視し一歩の右拳を見た。すると一歩の右拳がえぐられていた。その時鷹村もその異常に気づいた。
「こい‼」
猫田はそのまま一歩の右拳の治療をしに鷹村と一緒に連れ出した。
「おい、見たか?アイツの手。皮がずりむけてたぜ」
「ハードパンチャーによくあるっていうあの?」
「まさか、アイツが?」
今日この日、1つの才能が開花した瞬間でもあった。
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マジかよ……
サンドバックを叩いた結果右拳の皮がずりむけていた為猫田は今一歩の治療をしている。(鷹村はその場にいるだけだが……)
「ははっ、サンドバックって固いんですね。」
治療を終えた直後、
猫田と鷹村が同時に一歩の体をペタペタ触り出した。正直やられている一歩にとってたまったもんじゃなかった。
((モミモミ、モミモミ、モミモミ、モミモミ、モミモミ))
「なななななな何ですか?今の…」
「一歩とか言ったな。オメェ華奢に見えるがいい肉のつきかたしてんじゃねぇか。何かやってたのか?」
「いやぁ、家の手伝いが忙しくてクラブとかやったことないんですよ。ウチ釣り船屋だから朝も早いし……」
「ふーん (釣り船ねえ…)」
鷹村が一歩にそんなことを聞いていたら、猫田が
「まぁ、パンチのセンスはあるみてぇだから、ためしに今度あいつらを一発ぶん殴ってみろよ。」
「と、とんでもない‼そんな事したら逆にコテンパンですよぉ!殴りあいなんかしたことないし……ご覧の通りいつもやられっぱなしだし……」
「オメェが変わんなきゃいつまでも今のままだぞ!……お前それでいいのか?」
「……そ……それは………でも………ぼくは………」
猫田に言われまたも一歩はウジウジし始めた。
「(あ~~イライラしてくる いつまでもウジウジウジウジ)」
猫田がそんなことを思っていたとき鷹村が一歩に声を掛けてきた。
「それに、あのマイク・タイソンだっていじめられっこだったんだぜ。」
「ええ⁉あのスーパーチャンピオンが?そんなバカな……」
「タイソンっていやぁ超不良ってイメージあるけどよ、ガキの頃はそりゃあ気の小さい男だったらしいぜ……いじめられて泣いて帰っちゃあ鳩の世話をしてたそうだ」
「(……そんなこと話していいのかよ……自分もそんな風に生まれ変わりたい‼何て言ってきそうなパターンじゃねぇか?バカな事を考えさせる前に止めるか…)」
鷹村が一歩にそんなことを話していたとき猫田はそんなことを考えていた。
「おう、鷹村そろそろロードワークの時間だ行こうぜ!」
「おっと、そうだな。」
「あっあの……」
一歩が声を掛けてきたが猫田は無視し、鷹村は1本のビデオを一歩渡した。マイク・タイソンのKO集だ。
「(おいおい、何やっちゃってんの!)」
「貸してやるよ。返すのはいつでもいいからよ。」
そんなことを考えてた猫田を無視し、鷹村が一歩にそんなことを告げて二人はロードワークにでた。
俺はいつもの道を鷹村と一緒に走りながら声をかけた。
「なぁ、あんな話をしてアイツ自分もボクシングやりたいなんて言ってこねぇだろうな?」
「ん?別にいいじゃねぇか。あんな軟弱なヤツならよ!最近じゃあ体を鍛えるためとかシェイプアップとかの理由で入門するヤツも多いんだ。別にボクシングやってもおかしくねぇだろ?」
「いや、俺が心配してんのは、タイソンみたいにプロになりたいとか言ってこねぇだろうなってこと。」
「……そ、それは……まぁ大丈夫だろ。あんなウジウジしてるヤツがプロ?ないない」
「だといいがな……」
そんなことを思いながらロードワークしてジムに帰ってきたら八木さんに声をかけられた。
「一くん‼ 」
「八木さん?どうしたんですか?そんなにあわてて」
「決まったんだよ‼3ヶ月後君の次の試合。タイトルマッチ初挑戦だ‼」
「おっ、ようやく決まりましたか。」
「ああ、僕らに9年ぶりの興奮をあじわわせておくれよ!」
「八木さんこそ、ちゃんとハデな祝勝会の準備ヨロシク」
「勿論さ!! 」
「おう‼ 」
そんなやり取りを俺は八木さんとやっていた
「ところで俺様の試合はまだ決まんねぇのかい?」
鷹村が八木さんに聞いてきた。
「ああそうだった。君の試合も3ヶ月後に決まったよ。相手は日本ミドル級3位平野和彦…………」
「おっしゃあやっと試合だぁ‼って3ヶ月後?てことはまさか?」
「一君の試合のセミファイナルだ。頑張って。」
「何だと❗俺様が前座だと‼ふざけ(ぽんっ)…あん?」
鷹村が一言文句を言おうとしていたとき、猫田が鷹村の肩を叩き一言
「まっ、頑張ってくれたまえ、前座君‼」
そんなことを言われて鷹村が黙っているはずもなく
「この❗この❗この❗この❗」
(スカッ、スカッ、スカッ、スカッ)
そんなやり取りをし、1日が終わった次の日の練習の時間、猫田はロードワークにでていた。そこで鷹村が昨日いじめられていた一歩の胸ぐらをつかんでいた。
「おい、鷹村‼どうしたんだ?」
「一か?はぁ 、お前の予想が当たりやがった。こいつプロボクサーになりたいんだとよ。」
「何?」
「真剣に考えたんです。本気でボクシングやろうって決心したんです。僕も二人みたいに強くなりたい。…鷹村さん…猫田さん……強いって……一体どんな気持ちですか?」
猫田が鷹村にそんなことを聞かされ文句を言ってやろうとしたが、そんなことを言われ言えなくなった。
「わかったよ。よく見てろ。」
猫田がそう言い木を蹴った。すると葉っぱが落ちてきて素早く拳を打ち込んだ。すると葉っぱがいっぱい猫田の両手に握られていた。
「うわぁ~~~‼」
「俺のスピードはジムの中でもピカイチだからな。いきなりここまでやれとは言わねぇが、1週間以内に10枚とれるようになったらボクシング教えてやる。」
猫田がそう言い鷹村とその場を離れた。走りながら俺達二人は言い争っていた。
「お前がタイソンの話なんかするからだぞ!」
「お前が右ストレート教えたからだ!」
「どう見てもプロボクサーって性格してねぇだろ!」
「んなこたぁわかってんだよ!」
そんな不毛な争いをジムにつくまで続けていた。そして約束の1週間の朝、猫田は早朝ロードワークで走っていたところ、鷹村と一歩にあった。
「猫田さん、待ってましたよ。」
「おう、お前か?待ってたって俺に何かようか?」
「やだなぁ。今日が約束の日じゃないですか……」
「一、こいつ本当に10枚とっちまったぞ」
「はああああ‼ 」
「これで今日からプロボクサー目指します。宜しくお願いします。」
「…………マジかよ」
「なかなかいいジャブだったぜ。」
鷹村にそんなことを言われ興味がわいた猫田は気になった。
「ホレ、ためしに打ってきな?」
「は…はいっ‼」
一歩はジャブを打ってきた。
「シッ‼」(パン)
「おっ❗」
「シッ‼シッ‼シッ‼」(パンパンパン)
「おお、いいね。」
確かに鷹村の言う通りいいジャブだ。すると調子にのったのか。
「ようし、がんばるぞぉ。プロボクサーになるぞぉ‼」
(パン、パン、パン、パン、パン、パン)
「おっ、おいおい(^_^;)、ちょっと待てコラァ‼」
「だああああああ‼」(パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、パン、)
「調子にのんじゃねぇよっ‼」
横で見ていた鷹村に一歩は突っ込み拳骨をくらった。
「~~~~、まぁいい。俺のことは今度から一でいい。宜しくな?」
「はっ、はい。一さん‼」
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タイトルマッチ前
あれから1ヶ月がたった。猫田のタイトルマッチも後1ヶ月が過ぎた。にもかかわらず、何故か猫田は猛練習をしてはおらず気の弱そうな新人を鷹村と一緒にジムに連れてきていた。
「おう、オメェら、実は今日からこのジムに来ることになった幕ノ内一歩だ。」
「よ、よろしくお願いします!」
鷹村がジムにいる人達に一歩を紹介したところで会長がきた。何故か一歩を睨み唸りながら俺達に近づいてきた。
(うわぁ~これはひと騒動あるかもなぁ)
そんなことを考えてた猫田を無視し鷹村が会長に一歩を紹介しようとした。
「おう、ジジイ。こいつなんだがよ…」
「話は聞いたワイ、ちょっとこい。一もじゃ。」
そう言われは俺は会長についてった。鷹村は何故か杖で首を絞められながらついてった。一歩が声を聞こえないところまで連れてこられ会長が話をしてきた。
「お前達が連れてきたと言うからどんな豪傑かと思い来てみたら、なんじゃあれは?闘争心のヤツがまるで感じられんぞ。」
そう言われ二人で一歩を見る。一歩の見た目は、ちっちゃいうえに華奢に見える、顔は歳のわりには幼い、性格も気が弱くボクシングをやる性格だとは思えない。
そう考えた猫田の結論。
「確かに。」
「おれも。」
猫田だけじゃなく、鷹村も同意した。すると会長が。
「~~~~~、お前達の目はふし穴か⁉勝てる見込みのないやつなんぞいらねぇんだよ。」
「「やってみなきゃわかんねぇだろ?」」
「ほう、たいした自信じゃのう?じゃあ試してみるか?わしゃあどうしてもあやつがボクシングに向いてるとは思えんのじゃ。ヤツの実力をためさせてもらうぞ。」
「何させるきだ?」
「まさか、スパーリングとか言わねぇよな?」
「そのまさかじゃ。」
「ど、ド素人だぜ。」
「ボクシングとは生死を関わる危険なスポーツじゃ。向いてないとわかったら即刻やめさせるべきじゃ。」
「(まぁ確かにそうだよな。正直俺もアイツにボクシングやらせるのは反対だし、ま、いっか)」
猫田はそんなことを考え一歩をすぐに控え室に連れていき準備をさせた。一歩のスパーの相手は宮田だ。このじいさんさっさとこんなこと終わらせたいんだな。そんなことを考えてはいたが一歩をリングにあげ指示をだそうとしたが、緊張のしすぎで体がガチガチ、こっちの声もまるで聞こえてない。こんな状態でどうやって宮田相手にいいところを見せろってンだ。
猫田はもう鷹村任せにして放置した。実際猫田は後三週間後タイトルマッチを控えている。その為一歩に構っている暇などないのだ。(本音をいえばめんどくさくなった)
そんなことを思ってはいたが、一歩と宮田とのスパーをチラチラチラチラ見ている。1roundはとにかくガードを固め耐える作戦のようだ。2度ダウンはしたがなんとか耐えた。2roundは一歩も攻撃をしたがことごとく避けられる。右ストレートで宮田のガードを吹き飛ばし惜しいところまでいったが、それも避けられてしまい2roundも終了。3roundで宮田が顎を的確に当てることで一歩もボロボロ。結局宮田のカウンターをくらい。スパーは終了した。
その姿に会長も納得したようで明日から正式に一歩がこのジムに通い出す。
俺と鷹村は試合に向けて練習を開始した。試合前の二人の練習メニューはいつもの3倍はやっている。ほとんど休憩をとらないほどだ。
普段の練習メニューは猫田の方がやっているのだが、試合前でも猫田の練習メニューは変わらなかった。その為か、昔は、鷹村の方が試合前の練習メニューはキツかった。(鷹村の場合減量もあるため)。しかし、鷹村に負けるのだけは嫌だった。新人王戦で最優秀を鷹村にとられたのがよほど悔しかったのだ。それ以降猫田は負けじと鷹村と張り合っている。(それは鷹村も一緒だが)
そんな毎日が続きいよいよ試合の日がやって来た。
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祖父を越えた男
いよいよ俺のタイトルマッチ。俺がチャンピオンになる日が来た。だが、俺にとって日本チャンピオンなど通過点にすぎない。俺の目標は世界チャンピオンなのだから。
試合が順調に進み現在セミセミファイナルをやっているところだ。次のセミファイナルは鷹村だ。その鷹村が俺の控え室にやって来た。
「どうした、鷹村?」
「何、タイトルマッチ前で緊張してるんじゃねぇかと思ってよ。俺様が直々激励にきてやったん「よう、一歩じゃねぇか来てくれたのか?」…って無視してんじゃねぇ‼」
「ああ、わりぃわりぃ。で?なんだって?」
「ふん。まぁいい。俺様の試合を見ればどっちがメインにふさわしかったかはっきりするからな。」
「残念だけど今回は無理だ。今日の俺の前では誰であろうとただの前座にすぎない。それだけインパクトのある試合をしてやる。俺は日本では収まらない、それだけの強さがあることを日本中にしらしめてやる。」
猫田の異常なまでの気合いにあの鷹村ですら何も言えなくなってしまった。
そんなことをしているうちに鷹村の試合が始まったが、
やはり秒殺、1分もたたずに終わってしまった。
猫田はそんなことがわかっていたがごとくすでに戦闘態勢が整っている。そして、ついに出番が来た。
『只今より本日のメインイベント、日本ジュニアフェザー級タイトルマッチ10回戦を行います‼
今夜のダイナマイトグローブはボクシングファン待望の黄金カードをお送りします。日本中軽量級のタイトルを6度防衛中のチャンピオン高橋広明が最強のチャレンジャーを迎えての一戦です‼
デビュー以来11連続1roundKOという驚異の男!挑戦者猫田一‼
迎え撃つのはチャンピオン高橋広明!22戦19勝とキャリアは挑戦者を上回ります。その老獪なボクシングで7度目の防衛なるか⁉間もなくゴングです‼』
司会が二人の解説をしている間両者はリングにあがっていた。会長は俺のとなりで、チャンピオンベルトをジッと見ている。
「そんな物欲しそうな顔しなくてもすぐ獲ってくるさ」
『セコンドアウト‼』
会長達はリングからでた。
「(俺は日本タイトルに興味がねぇ。世界をとれる男だ。その事を教えてやるぜ。)」
『カーーーーン』
ゴングがなり試合が始まった。
チャンピオンの高橋はアウトボクサーの為距離をおく。対する猫田は様子見、最初は距離をとって戦うようだ。両者時計回りに動きながら遠い間合い、しかし同時に手を出す、電光石火の拳の刺し合い。両者の拳が交差する激しいペース争い。足を使い移動しながらお互い左を打ち合っている。しかし、猫田は相手の左を避けているが、チャンピオンは何度かほほを掠めたり、手でガードして防いでいる為手数は猫田の方がおしている。
このままでは不味いと思ったのか、チャンピオンがギアをあげてきた。その為、避け続けるのも辛くなってきた為、猫田もギアを上げた。
相手の左を避ける避ける。きわどいがしかしさわらせない。しかし危ない。何度か前髪が当たっているため、
あたるのが時間の問題か?そこでチャンピオンの右が当たる‼と思わせられるタイミングで首を捻り避け様に左のカウンター。チャンピオンはよろけながらも歯を食い縛り、直ぐ様反撃に左をだすがそこに猫田はいなかった。チャンピオンの死角に回り込み右のカウンターを打っていたのだ。それがクリーンヒットしたが相手は気にせず猫田を見つけ拳をだそうとしたが、その瞬間ダメージを自覚したチャンピオンは、糸が切れたように倒れる。
『……はっ、チャンピオンダウン‼一体何がおきたのでしょうか?激しい左の刺し合いから一転、チャンピオンがダウン‼カウンターか⁉レフェリーが駆け寄る!猫田は振り返らない、すでに勝利を確信している。さあっどうだ⁉立てるのか⁉それとも……あ……レフェリーがノーカウントで両手を交差❗試合終了~~‼新チャンピオン誕生~~‼猫田またしても1roundKO‼わずか96秒でタイトル奪取に成功しましたぁっ‼』
「おっしゃあ~~‼」
猫田がベルトを手にしながら右手を高く上げガッツポーズをした。観客からも大歓声。
『いいぞーーっ猫田一ーっ』
『強すぎるーーっ』
『お前なら世界を狙えるぞーーっ』
その頃会長はベルトをとったことは確かに嬉しかったがそれ以上に最後に猫田が放ったカウンターに驚いていた。
「今のカウンターはまぐれでではできん。あの激しい攻防の中、一は時計回りで動いた後、一度カウンターで相手を怯ませその間逆に回り込み見えない角度から顎の先端を確実に撃ち抜いたのじゃ。
あやつが受け継いだモノは全ての面で猫ちゃんを凌駕しておる……」
会長は1人呟いていた。
猫田 12戦12勝12KO無敗
日本Jr.フェザー級チャンピオン
全試合1roundKO
鷹村 10戦10勝10KO無敗
日本ミドル級3位
全試合1round1分以内KO
青木 7戦5勝2敗3KO
日本ライト級ランク外 6回戦
木村 7戦5勝2敗2KO
日本Jr.ライト級ランク外 6回戦
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ボクサーの休日①(前)
日本チャンピオンになって3ヶ月が過ぎた。昨日早くも初防衛戦をクリアして今日は試合の後の休暇でゆっくりしていた。ここまでずっとボクシングづけだったからな、ゆっくりするのも悪くない、そう思い町をぶらぶらしていた。正直上京してこんな風にぶらぶらすることなんて初めてのような気がする。鷹村達と違いスナックやキャバクラで遊んだりしないためお金も食費ぐらいにしか使わない。
そんなことを思いながらぶらぶらしていると一歩の家の釣り船屋を見つけた。ちょうどいいと思い少しお邪魔しようと店に入った。
「ゴメンください‼」
「は~~い。あれ?一さん、どうしたんですか?」
「休暇とはいえ打たれてねぇから疲れてねぇんだよ。正直暇してんだ。外をぶらぶらしてたら知らぬ間にここに来ててさ。」
「そうだったんですか。」
「なぁ、暇なら付き合えよ。一緒に釣りでもしようぜ。」
「えっ、でも……」
「行ってきな、一歩?」
一歩の後ろから母親だろうか顔を出してきた。
「か、母さん‼」
「店の方はいいから。練習行く前ぐらいゆっくりしてな。」
「ん~~~じゃあせめて荷物だけでも積んでくるよ。」
「おっ、じゃあ俺も手伝ってやるよ。」
「えっ、いやでも悪いですよ!」
「いいからいいから、これだよな。~~っしょっと⁉」
俺はそんなことをいいながら氷の入っているケースを4つ持っていった。
「……すいません。荷物運びなんてさせて。」
「いやいや、どうせ暇だから。」
そんなやり取りをしながら一歩と俺は3往復していった。だが、一歩は毎回俺の倍持っていった。
「(氷が入っているからか結構重いな。一歩は俺の倍を平然と持ち運んでいるが、なるほど一歩は小さい頃からやっているというが小柄ながらあの筋肉を維持しているのはこういうことか…)」
荷物もおき終わり一歩は母親に断って俺と一緒に釣りをしに行く。釣りをしながらのんびり~と一歩と二人で話をしていた。
「どうだ、最近?もうすぐプロテストだろ?」
「あっ、はい。正直どこまでやれるかわかりませんが精一杯頑張ります。」
「まぁ、実技の方は心配してねぇけどな。なんたって宮田に勝ったんだ。実技のせいで落ちるなんてことはないだろ。」
「そんな、僕なんてまだまだです。」
「ほう、つまり実力がまだまだな奴に宮田は負けたと…?」
「えっ、…あっ……いや……そういうわけではなくてですね……その……」
猫田の指摘に一歩は慌てだした。1ヶ月前一歩は宮田と再びスパーをやったのだが、3roundの激闘の末一歩が逆転KOをしたのだ。それがキッカケで宮田はジムを辞め一歩と新人王戦の決勝で会おうと約束したらしい。その宮田が昨日の俺の試合の前座としてデビュー戦を飾ったのだ。
そんな何気ない会話を一時間釣りをしながら俺と一歩はしていたのだ。
「それじゃあ一さん。そろそろジムに行く時間なのでこれで…」
「おう、そうだな。じゃあ俺も帰るわ。明後日からジムに顔を出すかんな。頑張れよ⁉」
「はっ、はい‼」
そして一歩に釣竿を返して俺は家に帰る。ちなみにお互い一匹も魚は釣れなかった。
俺は今日の夕飯の買い物を済ませ帰ろうとしていた。すると路地裏の方から女の人の悲鳴らしき声が聞こえたので俺は声のする方にいってみた。すると女の人が野良犬に襲われていた。
噛まれそうになっていたならわかるが、その犬は発情期なのだろうか?女の人を覆い被さり別の意味で襲われていた。
「(犬に犯されそうになってる人なんて始めてみた)」
「いや~~っ」
そんなことを考えていたが、俺はその犬を蹴飛ばし助けた。
「このエロ犬…何人間様を襲ってやがる。さっさと消えな‼」
すると、その犬は逆切れをし俺に襲いかかってきた。
「なんだやる気がこのエロ犬が!これでも俺は日本チャンピオンだぞ‼」
そんなことをいいながら俺は犬と何故か格闘をしている。(犬は何故か2本足で立ちながら…)そんなことを1分近くしており、結局犬はその後逃げていった。
「チキショー、あの犬っころ。意外につぇーじゃねぇか。」
今の猫田を見ると、顔に肉球の跡がついていて日本チャンピオンの顔とは思えなかった。
「あっ、あの…」
「ん?」
俺が助けた女の人から声をかけられた。
「助けていただいてありがとうございます!」
「////////っ、別に気にしなくていい。(やべぇ~、助けたときはよく顔が見えなかったから気づかなかったけどメチャメチャ綺麗じゃねぇか?///////)」
女の人は見た感じ、艶やかな黒髪が背中まであるストレートヘアー。出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいるモデルのようなスタイル。あまり日本人のような体型ではないが、大和撫子を連想させる和風の美少女だった。
「あの、よろしければお名前を教えてください。」
「俺は猫田一だ。」
「私は伊藤爽歌といいます。」
名前を言うと二人はだんまり。お互い何を話したらいいのか分からないようだ。
俺は実は女の人と話した経験がないのだ。東京にくるまでずっとじいちゃんと二人暮らし通っていた。母親も物心ついた頃にはすでになくなっている。学校も一クラス10人しかいなく、女子がいなかったのだ。それは中学に上がってからも変わらない。
東京にきてからも、ボクシングづけのわりに怪我をしたことがないため病院にいって看護師さんと話すという些細なことすらしたことがないのだ。
長い間二人は俯いて沈黙していた(路地裏で…)
「……あ、あのとりあえず何処かで話しませんか…?」
「……はっ、はい。」
向こうも気まずかったのか、簡単に了承してくれた。
爽歌side
少し前、私はいつも通り病院から帰るところだった。
私は腎臓の障害をもっており、定期的に人工透析を受けなければいけない体だからだ。今日はその帰り道かわいい野良猫を見つけた。ニャーニャー泣いていたからかわいくて相手をしたくなった。その猫を路地裏にまでつれていき、先程コンビニで買ったエサや牛乳をその猫にあげたら、すごい勢いで牛乳を飲んでいく。
(ん~~かわいい‼家に持ち帰って育てようかなぁ。でもこれ以上連れて帰ったら怒られるよね~。ん~~どうしよう⁉)
私の家は猫屋敷と言っていいくらい猫がいる。総勢10匹はいる。でもそれはいつも爽歌が野良猫を拾ってくるからだ。
そんな猫好きな私がどうするか考えていたとき、後ろから野良犬唸りながら近づいて来て猫は急いで逃げていったが、私は逃げ遅れてしまい犬が飛び込んできた。
「キャーーー‼(…………あれ?意外に痛くない…)」
犬の方を見ると私に覆い被さり噛もうとしているように見えなかった。そしたらいきなりその犬が腰を振りだした。
「いや~~っ‼(違う意味で襲われてる~~!)」
そんなことをされていると誰かが私を助けてくれた。正直はずかしすぎて暫く俯いていた。暫くすると落ち着いて来て顔をあげると助けてくれた人がそのまま帰ろうとしたので声をかけた。
「あっ、あの…」
「ん?」
あれ?この人って……
「助けていただいてありがとうございます!」
「別に気にしなくていい。」
私はお礼を深く頭を下げた。男の人は素っ気ない返事を返した。
「(この人…もしかして…)あの、よろしければお名前を教えてください。」
「俺は猫田一だ。」
「(やっぱり…)私は伊藤爽歌といいます。」
私は驚いた。あの日本チャンピオンの猫田さんだ。私は体が弱いため激しい運動ができない。友達の付き添いで偶々ボクシングの試合を見に行き、それが猫田さんの試合だった。私は華麗に相手の攻撃をかわす猫田さんの動きに見とれてしまった。人ってこんなに速く動けるんだと…。それから私は驚いていた猫田さんの試合は必ず見に行くようになってしまった。
その猫田さんが目の前にいる。平静を装っているが内心パニクっている。
(どうしよ、どうしよ、どうしよ、どうしよ……いえ、落ち着くのよ。今目の前にいるのは猫田さんなのよ。だから落ち着いて話を………)
そう思い猫田さんに話をしようとしたら目があった。
(ドッキン、ドッキン、ドッキン、ドッキン、ドッキン)
心臓の音がうるさくて落ち着けない。再び私は俯いてしまった。それから暫くたつと猫田さんが。
「……あ、あのとりあえず何処かで話しませんか?」
「……はっ、はい。」
正直助かった。何を話したらいいのか分からなかったから……こうして二人は近くのファミレスに入っていった。
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