筋肉と植物のハイブリットヒーロー (アルタイダ)
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1.始まりの話
父を見送る母親と子供
「おとうさん、いっちゃうの?」
「ああ、相手さんはお父さんを指名してるしな。まぁなんとかなるだろう」
「本当に大丈夫なの?あなた」
「大丈夫だ...と言いたいところだが今回は分からん」
父からは不安の顔が浮かぶ。いつ死んでもおかしくない仕事だ。そんな顔になるのは当たり前だ。
「ナトゥーアさん、そろそろ時間です」
後ろに控えていたサイドキックの人から声がかかる。
「ああ...それじゃ、行ってくるか」
「いかないで!おとうさん!」
「はははっ、全く菜木は心配性だな」
父の服を必死に掴む子供。それを母親が剥がそうとする。
「菜木、お父さんはどうしてもいかないと行けないの。大丈夫よ、お父さんはヒーローなんだから、必ず帰ってくるわ」
「ああ、お母さんの言う通りだ。必ず帰ってくる」
両親から大丈夫だと言われ、やっと手を離す子供。そうすると父親はいってくると言い、玄関を出た。
それが、子供...菜木が父親を見る最後の姿だった。
「9997...9998...9999」
その部屋からはゆっくりと数を数える声が聞こえる。部屋の中には沢山のトレーニング器具で埋め尽くされており、壁には懸垂ができるよう出っ張りがある。
そこに彼はいた。
「10000...ふぅ、ここもそろそろ限界か?やっぱり鉄骨とかで作らないとな」
片手で懸垂をしていた彼は手を離し、軽く汗をタオルで拭いていく。
そうしていると、部屋には彼の母親が入ってきた。
「菜木、朝食出来たわよ。汗流したら食べなさいよ。あと、玄関に響香ちゃん来てるわよ」
「あいつまた来てるのか。めんどくせえな」
「そんなこと言うと響香ちゃんにチクっちゃうわよー」
おっと、それはヤバそうだと思い、直ぐにシャワーを浴びて朝食を摂り玄関に向かう。
「よっ」
「おはよ、今日も遅刻するつもりだったの?」
「バカヤロー、遅刻した方がロックなんだぜ」
「アンタのロック精神はイかれてるよ。早くロックに謝って」
「ロックさんごめんなさい」
と言った馬鹿な会話をしながら学校に向かう。
また、音楽の趣味でも気が合いこうして仲良くなった。
「そういえば、菜木は学校どうするの?もう決めた?」
「ああ、雄英だ」
現在中学3年の俺たちは進路を決めなきゃいけない。まぁ今のご時世、殆どヒーロー科希望だと思う。
その中でも雄英高校のヒーロー科は倍率がかなり高い。
「アタシも雄英希望だけどアンタしっかり勉強してる?筋トレしかしてないイメージだけど...」
「模試は常にA判定、今更勉強したって大して変わらん。それよりも実技試験を合格するための身体作りは常に行ったほうが良い。響香も俺の家で筋トレするか?」
「良く筋トレ飽きないね...」
ん?筋トレを飽きる?良く分からん言葉だな。筋トレに飽きなど無い。ただひたすら鍛えるのみ。
「...そうか、お前も筋肉に目覚めれば良い。音楽プレーヤーに俺が筋肉と言い続ける音声を入れといてやる」
「考えることが怖い。アタシの半径5メートル以内に入らないで」
何故だ。どうして筋肉が嫌われる
このように鬼道菜木は幼き頃に父親を亡くしてからというもの筋トレにハマってしまった。
そんな菜木にもしっかりと受け継いだ個性がある。
今日も学校を終え、家に帰り、部屋に戻る。
部屋には沢山の植物が栽培されており、中には日本では手に入らないものもある。
「そろそろこれは良いか。少しいじるぞ」
菜木が植物の花に触ると花は光り始めやがてタネになる。
菜木の個性は『植物改造』自ら植物に触れることによって、様々な改造を施す個性。
「ふむ、良い種だ。さらにこれを育てるか」
受験までは後10ヶ月、菜木の準備は始まったばかりだ。
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2.受験
「でかいな」
菜木と響香は雄英高校の門に立っていた。今日は受験当日、これまでかなりの準備をしてきた。菜木のバックには10個のケースに十粒づつ種が入っている。
「まぁ何よりの準備はこの筋肉だな。俺のパンチ力はコンクリートの壁を壊せるぞ」
「そんな冗談信じないよ」
「いやほんとだぞ」
「え?いや待って行かないで、それ本当なの?本当だったら怖いんだけど」
信じてくれないなら仕方ない。さっさと中入って受付に急ぐか。
中に入り、筆記試験の会場を伝えられ移動する。
会場は響香と一緒なのでこんな方向音痴の俺でも迷わずにすむ。
「...と思ってたんだがなー」
まさか人混みで逸れたのちにトイレに行きたくなり、トイレから会場までの道がわからなくなるとは。
バックから種の入ったケースを1つ取り出す。形は向日葵の種と同じもの。これを軽く潰すと瞬く間に新芽が出て小さな花が咲く。
「目的地は第3受験会場」
そう呟くと向日葵のような花は廊下の方向を向く。
「こっちか」
花が向く方向に歩いて行くと会場まですぐに到着する。時間前に無事着いて良かったぜ。
試験は難しい事もなく確実に合格ラインは突破している。今は午後の試験の説明を受けているんだが...
「プロヒーローが説明係とはな」
「流石雄英って所じゃない?」
「まぁやる事は分かった。とりあえず全部殴れば良いんだな」
また馬鹿なことを、と響香は考えているのか呆れたような溜息を漏らす。ポケットに3つほどケースを入れて会場に向かう。
会場に着くともうかなりの人が集まっている。
(この数から数人を決めるのか。索敵、処理能力が高くないとダメだな)
ポケットのケースから種を1つ取り出し飲む。精神集中を高めるものだ。怪しい薬のように副作用とかは無い。ただ、あまり飲み過ぎると鼻血が出てしまう。
俺の『植物改造』では植物に様々な効果を付けることが可能だ。今回は飲んで胃酸に触れた時に効果が現れるタイプ。
道案内に使ったのは種を潰した時、急成長し花が効果を発揮するタイプ。他にも様々な種がある。
「ハイスタート!どうしたぁ!?実戦じゃカウントなんざねえんだよ!!走れ走れぇ!賽は投げられてんぞ!!?」
確かに
開始から約2分が経過した。
菜木が放つ拳は3P
個性も何も使ってない拳がこうも簡単に機械を壊す理由はただ一つ。
鍛え抜かれた身体ーーと言いたい所だがこれは亡き父、
鬼道流の目指した所は個性が無くても敵と戦う術。鬼道龍樹の個性は『植物変化』手で触れた植物を別の植物に変えるだけの個性だった。しかし彼は武闘派のヒーローを目指した結果、ある方法を思いついた。
それは、脳のリミッターの制御だ。言う事は簡単だが、これをモノにするのに龍樹は10年の歳月をかけた。
そして、リミッターを制御して100%の力でも身体を壊さない身体作りを行い、見事成功した事を事細かく本に残していた。
その父の鬼道流を菜木は受け継ぎ、5歳からたった5年でモノにしたのだ。それのお陰で菜木は戦闘状態の時、常に60%の力を使い殴っている。
ドォン!!
「意外と柔らかいな。50%でも何とかなるか?いや、大事な試験だ。慢心してはいけない」
この時点で42Pを持った菜木の勢いはまだ止まらない。
おまけ
中学2年の時
響香「菜木ってさ、筋肉ムキムキじゃん」
菜木「おお!やっと筋肉を分かってくれたか!」
響香「いや、そうじゃない。そんなにムキムキなら力んだだけで服とか破けないのかなーって」
菜木「ん?そんなの誰でも出来るだろ?」
響香「誰でもは出来ないし、面白そうだからやってみてよ」
菜木「良いぜ...フンッ!!」
バリバリッ(ズボンも破けパンツ一丁)
菜木「あっ」
響香「あーーーーー!!!」
パチンッ!!(強烈なビンタの音)
菜木「...今のは俺が悪いのか?」
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3.試験終了
現在は開始から4分が経過した。そんな中勢いを止めずに仮想敵を倒していると思う。
だが、目に見えて倒す数が減っているのは分かる。
「やっぱり無限に湧くって訳じゃないか」
それでも現在50Pは稼いでいるので合格は出来るだろう。
そう考えてるときゴゴゴゴッと地面が揺れる。音のなる方向を見てみると周りのビルと同じかそれ以上のサイズの仮想敵が動いていた。
「ーーこいつはすげぇ。それにこっちに近づいてきてるな」
「あんたも早く逃げろよ!あんなん戦ってたら時間の無駄だぞ!」
確かに時間の無駄だろう。この会場のほぼ全員が思いっている。
「しかぁし!この俺はヒーローを目指すもの!あの程度の敵に逃げる俺ではない!」
ポケットから
ーーまずは動きを止める。
奴が放ってきたパンチを両手で止める。
「ぐぅぅ!流石に100%の力でもこちらにダメージが来るか!」
それでも止めた。すぐに出していたケースから2粒種を取り出し、パンチで穴を開けて埋め込む。
埋め込んだ種はすぐに発芽して蔦のように0P敵に絡みつき始める。
それに気づいたのか、剥がすように動き始めるがそんな抵抗も無駄かのように蔦は一気に成長し始める。
「捕縛用シード『スナヅル』、機械に言っても分からんと思うがそいつは動けば動くほど絡まるぞ」
成長した蔓はガッチリと0P敵を捕まえて離そうとしない。
とうとう体制を崩し、倒れたところで頭の方に向かう。
「この手の機械は頭壊せば大丈夫だろう。俺の全力のパンチを受けて貰おうか。ーーただのパンチでは無いがな」
『スナヅル』を出したケースとは別のケースから種を取り出す。
それを右手で潰すと、黒い木で手が覆われていく。
「攻城用シード『コクダン』。喜べ、世界最高峰の硬さの木だ。それに加えてーーわが筋肉!!」
バリバリッと力んだことによって上半身の服が破ける音。そこから見えるのははち切れんばかりの筋肉。筋肉たちはもう準備完了と言っているのだ。
ならば解放してやろう、
大きく振りかぶり、一気に振る。
「ーーフンッ!!!」
ゴォォッと凶悪な拳が空を切る音がする、次の瞬間0P敵に当たってしまった。
ドンッとした音が鳴り巨大な0P敵が軽く宙に浮く。
そして『スナヅル』に掛かっても動こうとしていた0P敵の動きが止まる。
それと同時に終了の合図が鳴った。
試験も終わり、試験官たちが集まる。
「いやー、今年は中々豊作でしたね」
「ええ、まず実技試験一位の爆豪勝己くん。前半から後半までバテずに見事でしたね」
「救助ポイントが0Pで一位とはなぁ!」
「派手な個性で寄せ付け迎撃し続けた。タフネスの賜物ですよ」
「対照的に敵P0で7位」
「緑谷出久くんか。アレをあんなに派手にぶっ飛ばしちゃうとはなぁ」
「思わずyeah!!って言っちゃったからなー」
「彼はどうしですか?鬼道菜木くん」
「あの子も凄かったな。個性は明らかにサポート向けだが、しっかりと個性を生かして戦っている」
「アレの動きを止めた植物は凄かったなぁ!プロでも通用するレベルだ」
「それにあの鬼道龍樹の息子ですよ」
その瞬間会議室はざわざわし始める。
「あの戦闘狂ヒーローの息子だと?」
「おいおい、そんな言い方するなよ。誰もが認める実力だったろ?それに親と子は関係ないよ」
ヒーロー業界では鬼道龍樹は嫌われている。その理由は単純だ。
個性を使わず敵を倒し、尚且つ戦闘を楽しむからだ。
その癖さえなければ誰もが認めたヒーローだった。
「菜木くんもなんか変わってる感じしますよ。見ました?あれ」
「戦闘が終わった後「筋肉サイコーー!!」って言ってましたね」
「...相澤くん担任で大丈夫かい?」
「...問題ありません」
そう言い会議室を出て行く、A組担任の相澤消太。
彼はまだ知らない。鬼道菜木がどれほど筋肉好きかを
おまけ
菜木「ーーでな!1発よ1発!あんなに硬いもの殴ったの初めてでよ!もう、やばかったわ!」
響香「はいはい、ってか良くあれに立ち向かったよね。最高にパンクじゃん」
菜木「そうだろ!やはり筋肉は最強だったのだ!」
そう言いサイドチェストで筋肉を見せつける菜木
響香「えっ、普通にキモい」
菜木「....」
そのショックから約半日寝込んだ
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4.衝撃の事実
今日も今日とて家で筋トレをしている。試験が終わってから約1週間が経った。
今日はベンチプレスにて400kgを上げているところだ。俺は全然上げられるがベンチプレスの台がギィギィいっている。...そろそろ買い替えの時か。
「菜木ー、通知きてるわよー!」
母さんである
「おー、結果どうだったー!?」
「自分で見なさーい!」
母さんが教えてくれると思ったが流石に教えてくれないか、今は結果よりも筋トレがしたいんだが仕方ない。
一度中断して茶の間に向かう。茶の間の机にはもう開かれている封筒が落ちていた。
「なんだかんだ言って見てるじゃん」
「見てるけど教えないわよ。自分で見てドキドキ感を味わいなさい」
なるほどそういうことなら、袋の中身を広げると一枚のメダルが出てくる。
確か...映像投影機、そんな感じの名前だ。
おっ、裏側にスイッチみっけ。スイッチを軽く押す。
『私が投影された!』
「おお!オールマイト!映像からでも素晴らしい筋肉がわかる!」
『私が投影されたということは察しがいい人は気づくかな?今年から私は雄英高校の先生を務めることになった!早速だが、鬼道少年の結果を発表しよう!』
オールマイトが先生だって!?入学したらあの筋肉のつけ方を教わらなくては!!
おっと、今は通知のことだ。合格だとは思うがやはり緊張してしまう。
『筆記試験は合格。実技試験は敵Pが50P、これでもう合格だが...そこに!審査制の救助Pを加算して合計76P!見事合格だ!少年よ、学校で待ってるぞ!では!』
「...合格した。やったぞ母さん!合格だ!」
念願だったヒーローの第一歩をようやく踏み出すことができる。
柄にもなく飛び跳ねて喜んでいたが、母さんの顔は暗い。
「菜木、あなたはどうしてヒーローになりたいの?やっぱりお父さんの敵討ちなの?」
父さんの敵討ち、父さんは俺が小さい頃に敵と戦って負けて死んだ。確かに父さんが死んでしまったことは悲しかった。
「母さん、俺は一度敵討ちを考えたが今は違う。ヒーローになってたまたま父さんを殺した奴が出てきたなら俺が捕まえたいがそんなことどうでもいい」
「そうだったの?」
「ああ、俺の今の目的はただ一つ...この筋肉を全世界に見せつけるためだ!筋肉の良さを広める!」
そう言いフロントダブルバイセップスを決めながら母さんに見せつける。
一度溜息を漏らしながらも母さんは微かに笑った。
「お父さんってね。すっごい戦いが好きだったの」
「そうなのか?」
「うん、小学校から幼馴染でね。菜木みたいに体を鍛えてたの。将来の夢は何でも倒すプロヒーローだったからね。でも、菜木も知っての通り父さんの個性はヒーロー向きじゃなくてね。それで考えたのが鬼道流だったの」
それは知っている。脳のリミッターを常に制御して戦うことで、普通の増強系個性のヒーローと変わらず戦うことが出来る。
「菜木がヒーローになるって言うなら、しっかり教えなきゃいけないの。その鬼道流の使い方を」
「?いや、父さんの部屋で見つけたノートにすべて書いてあるのだろう?」
「あれはね、私が貸したノートなの。お父さんの旧姓は
あまりの衝撃の事実に驚きを隠せない。確かノートには高校のときから鬼道流を訓練していたと書いてあった。
つまり、母さんの話からそれよりも前に母さんが鬼道流を使っていたことになる。
「まあ、詳しい鬼道流の使い方は入学してから教えるわ」
「入学してから?」
「お母さん、プロヒーロー復帰と同時に雄英に勤めることになったからよろしくね」
「はあぁぁ!?」
母さん、驚くことが多すぎだよ...てか母さんプロヒーローだったのかよ。
おまけ(重要)
ここは雄英高校の校長室、椅子には根津校長と鬼道波奈が座っていた。
「お久しぶりです。根津さん」
「久しぶりだね。今日は重要な話があったんだ」
「何でしょうか?あ、もしかしてうちの菜木が試験の時に何か失礼なことを!?」
「いや、そんなことじゃないんだけど」
少し興奮気味な波奈を鎮めつつ話を続ける。
「...プロヒーローに戻らないかい?」
「...なるほど、戻って雄英高校の先生になってほしい。こんな感じの内容ですか?」
「君は察しが良いよね。その通りなんだけど、どうかな?やっぱり龍樹くんのことをまだ考えているなら、無理にとは「良いですよ」って良いのかい!?」
即答に驚いた根津、波奈がヒーロー界から居なくなったのは龍樹と結婚してからだ。子育てを大事にするためにヒーロー界から居なくなり、大切な人が敵からやられその恐怖で復帰しないのかと思っていた。
「いやー、ぶっちゃけ復帰出来るならしようと思っていたんですよ!人を助けるのも好きだし、でも菜木が高校に入るまではやめとこうと思っててやっと高校入るじゃないですか?だから、復帰します!あっ、復帰の手伝いしてくださいね」
「あ、ああ良いよ。てっきり龍樹くんのことで復帰しないのかと思ってたよ」
波奈からはハテナマークしか出てこない。ハッと思いついたかのように話し始める。
「ああ!夫から貰ってる手紙のこと話してませんでしたね」
「手紙?」
「そうです。あの現場に向かう前に書いた手紙なんですけど、『死んでもあんまり気にしないでくれ。強い敵と戦って死ぬんなら本望だからよ!』って書いてあったので、楽しめたならいいんですよ」
こうして、鬼道龍樹の死は別に悲しい話ではなかった事が分かった。
根津は驚きのあまり固まっていたが、まぁ復帰してくれるなら良いかと考えるのをやめた。
今回見えやすいように間を開けてみました。こちらの方が見えやすい感じならこれからはこっちで行きます。
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5.入学
季節は巡り、春になる。今日は高校初日ということで筋トレは軽く済ませて朝飯を食べる。
母さんからのメモで「先学校いってるね☆」とあったが、このメモからも分かる通り雄英高校の先生になった。
誰もいない家だがいってきますと声を掛け、家を出ると
「おはよ」
「おお、中々似合う制服姿じゃねえか」
「...ありがと」
家の前には響香が立っていた。響香も無事に雄英高校を合格したらしく、今日からも共に登校する。
「そういえばあの話本当だったの?」
「朝から母さん居なかったし、本当だろうな。これで担任とかだったら俺はどういう顔すれば良い?」
「笑えば良いと思うよ」
他人事のような反応にちょっとショック受けてしまう。俺とお前は腐れ縁じゃないか。もうちょい考えてくれよ。
教室に着くともう既に何人かは座っていた。席順は決まっているようで自分の席に向かう。後ろには既に赤髪の男が座っていた。
「おはよう、俺の名前は鬼道菜木だ。お前は?」
「おはよう!切島鋭児郎だ。今日からよろしくな!」
軽く挨拶を済ませてから椅子に座る。響香の方を見ると意外と周りと話しているようで安心する。
持っていたバックから30kgのダンベルを取り出し、いつものように筋トレを「待て待て待て!なんだそれ!?」始められなかった。
後ろの切島が声を掛けて来たようだ。
「なんだそれって、ダンベルだが?」
「いや、ダンベルってのは分かるけどここは隣や後ろの同級生と交流しようって思わねえの?」
「?ああ、なるほど。切島は良い奴だな」
「あ、ああ、分かってくれてよかったぜ」
「俺は筋肉と交流してるからよ。大丈夫だ」
「...何にも分かってねぇー」
切島はとても悩んでいる雰囲気だったから触れずに、いつも通り筋トレを始める。周りからの目線が少々気になるが、これは中一の時にも味わった目線だな。まぁ気にしないでおこう。
教室内もほとんど席が埋まり、なんか前の席の方で喧嘩をしているようだが気にせず筋トレしていると、
「お友達ごっこがしたいなら他所へ行け」
「....」
「ここは、ヒーロー科だぞ」
「相澤くんもいきなりそんなこと言わずにもっとフレンドリーに行こうよ」
「...波奈さん、調子が狂うんでやめてもらえますか?」
教室の入り口にいたのはねぶくろをかぶった男と、母親がいた。
嘘だろ...もしかしてうちのクラスの担任なのか?
チラリと響香を見ると「ご愁傷様です」とでも言いたいような顔をしていた。
もう絶望しかないです。
大変遅くなってしまい申し訳ございません。
大体あと1週間くらいは毎日投稿できませんのでご了承ください。
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