ISM インフィニットストラトスマニアクス (歯車固体)
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プロローグ
かつて大都会だった東京はある一人の男のなした
業によって、トウキョウという異界《ボルテクス界》へと変貌した
その業に巻き込まれた少年がいた、その少年はある《魔王》
に見初められ、少年は悪魔の力を手に入れた。
少年はその力を使い、自分の友人や恩師を助けるために
使おうとした、だがその力を使い友人たちを助けようとしたが
拒絶され、さらには考えの違いなどで敵となり
そして、この世界を作った男や、友人たちを殺し
次の世界を創るためのものを殺し
自らを作った《魔王》をも倒した。
集え
そして行こう
われらが真の敵のところへ
目が覚めるとそこは、暗闇だった。ここがどこだと思い、周りを見渡していると…
「お目覚めましたかな、わが王よ」
声のした方を見れば、黒いスーツに肩までかかる金髪の青年だった。
「ここはどこなんだ、ルシファー」
「申し訳ないが、この姿の時にはルイ・サイファーと呼んでもらえないだろうか」
「わかった」
だいぶ暗闇に目が慣れてきたのか、周りがずいぶんと見えるようになってきた、周りを見渡すとそこは、サッカーのグラウンド位の広さで文明があるような場所だった。
「で、ここはどこなんだ、まさかトウキョウじゃないだろうな」
「ッフ、あそこにこんな文明の塊のようなものが残っていない事はあなたが一番知っているだろう」
「じゃあ、いったいここはどこなんだ」
「一言でいい表すなら「平行世界だろ」…わかってましたか」
「当たり前だ、ところでこんなところにつれて来るくらいならなにか要があってきたんだろ」
「そうですね、あえて申し上げると、あなたの休息のためと言ったところでしょうか」
「なに」
「あぁ、勿論私の独断と言うわけではないんですよ、私は王が戦い疲れている様子でしたので、仲魔全体にこの意見出したところ満場一致で可決しました」
「本当か」
「えぇ、勿論なんなら全員分の署名でも見ますか」
そう言うと、どこに持っていたのか大分高級そうな紙束を取り出した、ならば、言ってることは本当なのだろう、いちいち署名を見るつもりはないが、それよりも話を戻すことにした。
「この場所はどこで見つけたんだ」
「おや、分かっていらっしゃると思ったのですが、あなたになじみのあるものなのですが、アマラ経絡を使ってこの世界を見つけました」
確かにアマラ経絡は様々な世界とある意味繋がっているといえるかもしれない、そう言うと、突然サイファーはなにやらSF映画で見るような、明らかにカードキーが必要そうな扉を開けていった…悪魔だから何でもありなのだろう。
しばらく淡く電灯がつく通路を進んでいると、突然サイファーが止まり何かをつぶやくと、また目の前の扉が開き、その部屋の照明が付いた、部屋の中は想像していた部屋の中身とはまったく違っていたが驚いたのは、そこではない、部屋の中央にはロボットのようなものが置かれていたのだ。
「どうですか、王よこの玩具は?」
「まぁ、すごいな」
「おや、ずいぶんと薄い反応ですね、これでもずいぶん驚くと思っていたんですよ」
「いや、十分驚いてるよ、で、これについての説明は」
「あぁ、そうですね、では、それに触れてみてください、それでこれについての事は大体わかりますよ」
サイファーの言われるままにそのロボット(?)に触れると様々な情報が一気に流れ込んでくる、隣でサイファーがなにやら何かを言っているが、まったく聞こえない、ようやくコレの情報が終わると、知らず知らずのうちに汗を掻いていた、周りを見てみるとサイファーがいなくなっていた、やつが言っていた事はどうやら「私はこれで失礼いたします」との、ことだったらしい。
「あのやろー今度あったらなg「貴様そこで何をしている」…え」
不意に声がした方に振り向いてみればあの世界で、もう会えるはずのないヒトがそこに立っていた。
いろいろ無茶苦茶なところもあると思いますけど、感想指摘ありましたらお願いします。
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第一話
ここIS学園では、『インフィニットストラトス』と呼ばれる特殊なパワードスーツを使う候補生を育成する教育機関なのだ。
時間は深夜、ここに二人の女性がいた、二人共誰もが見てもすぐに美人だとわかるくらいの人だった、だが美人といっても、タイプが違う二人だった、一人は黒髪ロングで目つきの鋭いスーツ姿の女性で、もう一人は緑の髪をショートにした眼鏡をした女性だった。
この二人の女性はこの広い学園内の見回りをしちる最中だった。
「織斑先生~いつまで見回りをするんですか」
眼鏡をかけた女性は半泣きの状態で織斑と呼ばれた女性の腕にすがり付いていた。
「山田先生、もう少ししたら見回りも終わりますのでそれまで我慢して下さい」
「うぅ~、なんでこんなときに監視システムが故障するんですか」
そう、なぜか数日前から監視システム等が以上をきたしたのだ。
「機械だって万能ではない、ですがここの警備システムは少しくらいの異常ではここまでの事態にはならないと思うのですが」
「ですけど、だとしたら今結構危ないんですよね」
「そうですね、あとは念のために格納庫を見て回るだけですから、早く行きましょう」
そう言うと二人は、格納庫の方に向かっていったが織斑と呼ばれた女性は何かに気がついた。
「おかしい」
「どうしたんですか?」
「いや、本来ならばこのような異常事態だったら格納庫の扉はよほどのことがない限り絶対開くことはないのに、見てみろコレを、この扉は力ずくで明けたものではない」
織斑先生が指をさした先には通常と同じように開けられた扉があった。
「だったら、もうシステムが修復されたんじゃないですか?」
「いや、それならば、もうとっくに私達に連絡が来ているだろう、だとしたら何者かがここを開けていったに違いない、山田先生念のため警備の人も呼んでください、出来ればある程度武装をしている状態で」
「はい、わかりました」
そうして数分後には武装をした人間が十数名集まってきた、そうして織斑先生は全員を見渡すと、満足したようだ、そして格納庫に入ってみるとそこには、上半身裸の少年がそこにいた、そしてISを起動させようとしていたがなぜか途中でやめている様子だった。
「あのやろー今度あったらなg「貴様そこで何をしている」…え」
少年が出した表情はばれて見つかってしまったという驚きよりも、むしろもっとほかの事に関して驚いている様子だった。
「もう一度聞く、貴様はここで何をしている」
すると少年はつぶやくように答えた。
「さぁ?どうしてここにいるんだろうな、それよりも話がしたいんだったら、後ろのソレは失礼だろ」
「あぁ、わかった彼らには下がってもらうとしよう、それからこんなところでなんだ場所を変えよう」
「俺を警戒しないのか」
「いや、十分警戒しているさ、何せそのISを起動させたんだからな」
そう言うと踵を返しついてくるとうに促した。
案内された場所は応接間のようだった、そこで目つきの鋭い女性が俺に尋ねたことは。
「どうして上半身裸なのだ?」
そういわれて、自分の身体を見てみると、身体には悪魔である自分を証明する為のもの、刺青が身体のどこにも入っていなかった。
「あんたに俺の身体はどう見える?」
「どうって、普通のお前くらいの年齢の年相応の身体だと思うのだがな、それよりもまずは自己紹介からだ、まず、私の名前は織斑千冬だ、山田先生」
「…っあ、はい、私の名前は山田真耶といいます」
自分の名前を出すことにためらったが、何より今は人間だということで名前を言うことにした。
「俺は……間薙シン」
「じょあ、これで自己紹介はすんだな、それではまずお前の方から話をしてもらおうか、なぜあそこにいたのかを」
「……じゃあ、俺の話を信じてくれるか」
「当たり前だ、それに嘘だとわかれば、すぐにわかる」
「そうか、まずはじめに言いたいことだが、俺はこの世界の人間じゃない」
少年、間薙シンが口に出した答えは私の頭を疑問で塗りつぶすのにはあまりにも容易かった、この世界の人間じゃない、誰が、この少年が、嘘だと信じて間薙の顔を見るが、その顔は真剣そのものだった。
「えっと、それはどういうことなのですか?」
はじめに口を開いたのは山田先生だった。
「そうだな、まず俺のいた世界では、あんなISなんていうものはなかった」
「お前が別の世界から来たという確証は?」
「俺のいた世界ではもう…ヒトが一人もいなかった」
「っ!どういうことだ」
「そのことを俺も言える範囲を出来るだけ言う」
「そうしてくれ」
「俺がいたところは、ヒトの変わりに悪魔がいた」
間薙が話してくれた話は、東京受胎、悪魔、創世、カグツチと本来ならばくだらない狂言か過剰妄想としかとらえられなさそうだが、彼の言葉には嘘だと思えないような気迫があった。
「それで、お前はこの後どこかに行く当てはあるのか?」
「いや」
「それではこのIS学園に入れ」
「なんでだ」
「お前はさっきISを動かしただろだからだ」
「動かせるのは俺以外にもたくさんいるんだろ」
「ああ、確かにだがそれは女の話だがな、動かせるのは今現在お前を含めて二人しかいない、今下手にお前が世界で二番目のIS操縦者だとわかったらお前は解剖されるおそれもある、しかもお前の身体は今は人間とはいえ悪魔だったのだろう、それなら世界中がお前を研究するために躍起になる、だがそれに比べIS学園は世界中いかなる組織、機関とここには手出しは出来ない、で、どうする、ここまで聞いてそれでもここから出ようものならただの変態だぞ」
そう目の前の女性、織斑千冬は話し終わるとどうだとばかりに俺の方を見てきた、前の世界でも異端の存在だったが、ここではまた特別な存在なのらしい、だったら少しでも自由な方に行くことにした。
「どうすればいい?」
「それは何の話だ?」
「この学校に入る条件だ」
「あぁ、それならISを使い教師と戦い少しでもいい成績を残せばいいだけだ、簡単だろ?」
「そうか、その方がわかりやすくていい、で、いつやるんだ」
「そうだな、時間は明後日の明朝に執り行う、それでいいな」
「ああそれでいい」
「ならこれでいいな、そしたら今日は解散にする」
そういい終わると、今まで話を聞いてボーっとしていた女性、山田真耶が久しぶりに口を開いた。
「あの~、織斑先生このシン君の寝るところや、食事はどうするんですか?」
すると真耶さんが当然の事を聞いてきた。
「あぁ、そのことなら適当に空いている教員用の部屋に入ってもらう、その間にISのことをしっかりと学んでもらう、それと山田先生このことは内密にお願いします」
そして、ようやく開放されて真耶さんに部屋まで案内されることとなった。
「それじゃあ、ここがあなたの部屋になります、あとISのことでなにかわからないことがありましたら、いつでも相談してきてください、それと部屋の鍵を渡しておきますね、鍵は出来ればなくさないようにしてくださいね」
そうして、真耶さんが部屋の鍵を渡して、戻っていくと、部屋の中に入ることにした、そこはちょっとしたビジネスホテル並みだった、そこで何よりも興味を引かれたものがあった、それは部屋に入る引きの光だった、それはカグツチとは違って精神を高揚させる事もない、気がつくと頬に涙が流れていた、それは人間だった頃と同じことが出来るという喜びだった。
今回は自分ではひどい出来だと思っていますorz
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第二話
最近はリアルでいろいろありました、P3の映画を見に行ったりしたいんですけど金と時間が無い…
山田先生が間薙を部屋まで送り、職員室で私に話しかけてきた。
「織斑先生、今さらですけど、間薙君の言っていたことを信じますか?」
「まぁ、私もいきなりあんな話を聞かされて、はいそうですか、と信じられるはずもないですが…」
そう言ってため息をつく、普通にあの話を聞かされては、精神異常者か過大妄想者としか思えないが間薙が話しているあいだはどこか自分の心の傷を抉っているように見えた。
「それと、彼と戦うのは私でよいのでしょうか?」
「えぇ、生半可な先生よりかはまだ山田先生の方が安定していますし、何よりも、彼の事情を知っているのは私と山田先生だけですし…」
「はい、それはわかりましたけど、もし間薙君が私に負けてしまった場合どうしますか?」
「さすがに、世界で二人目ということなので強制入学になりますね」
「はぁ、そうですか…」
そう言うと、山田先生は何処か暗い顔をしていた。
「どうしたんですか」
「いえ、どうしても彼の自由を奪っているような感じがして」
「ですが、こうでもしないと彼は何をするかわかりません。それに、彼は二人目の男性でISを動かすことの出来る人間ですし、このことが知られれば世界の様々なところから狙われることになります」
「はい、そうですよ…ね」
彼女はどうにも納得がいかないようだが、そう思われても仕方がない。そう、思いながら職員室の天井を見上げる、無機質な光がまぶしいがそんなことは他所にして彼の戦い方がどのようなものかを楽しみにしている自分がいた。
そこは、地獄ですらなまぬるいといえるところだった
戦う相手は新たな世界を創ろうとする元人間達
共に戦うは悪魔である仲魔達
ニンゲンだったモノを■し
新しい世界を創るための卵たるモノも■し
全ての悪魔の長である魔王を倒し
そして・・・そして・・・
久しぶりに夢を見た、周りを見渡すとそこは見知らぬ場所だった。
「…どこだここ」
だが徐々に頭がはっきりして来るにつれてここはどこなのか、そして俺の体の異常がわかってきたが、身体の異常は本来悪魔の身体が異常で、この人間としての身体が正常なのだと、少しずつ思い出してきた。
「……しかし、本当に人間なんだな…」
ボルテスク界で使っていた技が使えるかどうか試してみたが、当然だがまったく使えなかった。
「サイファー、いるんだろ?」
するとサイファーはまるで始めからそこにいたかのようにイスを回転させてこちらを向いてきた。
「はい、何でしょうか?」
「いろいろ、聞きたいことがある、答えてくれるか?」
「はい、私に答えられることなら何でも」
「じゃあ、聞きたいことはたくさんあるが今は大きく分けて二つある、なんで俺の身体は人間の状態に戻っているんだ、それと何でこんな平気がある世界につれてきたんだ?」
「せっかちですね、まず一つ目の理由としては、まず、無駄な力があるとあなたがおいそれと、休むことが出来なくなってしまいますからね。あと、その悪魔の力は私が苦労して引き離すことが出来ました……」
そういって、サイファーはやれやれ、といった様子で、いつのまにか、ティーカップを持って紅茶を飲んでいた。
「あなたもいかがですか?」
「いや、いい、それよりも二つ目の答えはどうなんだ?」
「そうですね、下手な世界で休まれて、戦いの勘を忘れてもらっては私達悪魔一同困り果ててしまいますからね」
「そのためにここまでしたのか」
「…おや、そろそろ暗くなってきましたね、では、私はこれで…」
そういってサイファーは、俺を煙に巻くかのようにどこかに去っていった。すると、まるでタイミングを見計らったように誰かが来た。
「間薙、明日のことで話があるんだが、大丈夫か?」
ドアをノックしたのは織斑千冬だった。
「大丈夫だ」
俺がそう言うと「わかった」と言って部屋に入ってきた。
「明日の試験の時間を伝えにきた、時間は明日の午前5時に山田先生と試験をしてもらう、それと4時頃に私がお前を迎えに来る」
「ISの操縦とかはどうするんだ」
すると彼女は思い出したようにとてつもなく分厚い教本と思わしきものを手渡してきた。
「今からでも遅くない、それを少しでも読んでISの操作方法を覚えておけ」
「わかった」
「それと…」
「――?」
すると突然手渡されたはずの教本で頭を殴られた、とてつもなく痛いがそれも久しぶりだと感じている自分がいた……
「最低限年上には敬語を付けろ」
「わかり…ま…した」
「まぁ、それで良しとしよう、では、私はこれで帰るがちゃんと勉強をしろよ間薙」
そう言って、千冬はこの部屋から出て行くと、再び静寂が部屋を支配し始めた、そして教本を渡されたが、勉強をする気にもなれない上に十分すぎるほど寝てしまったので、外の景色を眺めておくことにした、星の数を数えるのもいい、自然の空気の匂いをかぐのもいい、そして街の明かりをずっと眺めていても飽きることはしないだろう。
「間薙、起きているか」
千冬は試験のためにシンを起こしに来た、だがその返答は千冬の考えていたイメージとは違った。
「ああ、今行く」
時刻は朝の4時半、平均的な学生なら本来はまだ寝ている時間だった。
「間薙、勉強をしていたのか?」
「いや、全然していない」
シンがそう言うや否や千冬がシンを殴った、勿論グーで。
「少しは勉強をしようとは思わんのか、あと昨日も言ったとおり、年上には敬語を使え」
「…わかりました」
「少し間が開いたのは気になるがそれでいいだろう」
その後も少しずつ話しているうちに試験会場である第一アリーナに到着し、何やら見たことのあるハッチの前まで来た。
「それでは間薙これから試験を始める前に、ひとつ選んでもらいたいことがある」
「何を選ぶん……ですか」
「今回お前が使うISをだ」
そう言うと不敵に笑いながら、ハッチを開いた。
「これは?」
そこにあったのは、機械化された鎧と高機動運動が出来そうな機体がそこにたたずんでいた。
「さて間薙、右に置かれている機体が打鉄、そして左に置かれている機体がラファール・リヴァイヴだ、何か聞きたいことはあるか?」
「この二つの特徴はなんですか」
「あぁ、打鉄の機体特性は主に格闘戦に優れている、それとは逆にラファール・リヴァイヴは射撃戦に特化している、付け加えて言っておくと、山田先生が使う機体はラファール・リヴァイヴだ」
「あの人に試験を任せて大丈夫なんですか」
「なめるなよ小僧、山田先生はああ見えて代表候補生だったからな」
「代表候補生とは?」
「それはまた自分で勉強でもしておけ…それでどっちの機体にする」
シンは今まで戦ってきた戦い方で挑むと勉強はしなくてもそう考えていた、だから・・・
「打鉄で頼みます、あと姿からして、刀が武器だろうからそれをはずしてください」
「お前…正気か?」
「たぶん大丈夫です」
それは千冬にとっては予想をしても見ない答えだった、だがシンが勝つにせよ負けるにしても、ISの適正ランクがどれほどのものにせよ結局はIS学園に入学させることになる、その例はIS開発者である篠ノ乃束の妹である篠ノ乃箒の例があるからだ。
「…わかった、いいだろう、その代わりしっかりと結果を残せよ」
「出来る限りそうするつもりです」
そういって千冬は打鉄の唯一の武装である近接ブレードをはずしながらとある事を思い出した。
「間薙すまないがお前がISに乗るときに着るISスーツの男性用が今は無いのですまんがそのままで試験を受けてくれ」
ちなみにシンの姿は初めて千冬や真耶とあったときの姿、すなわち上半身裸の状態なのだ。
「それは主にどんな役割を?」
すると千冬は、まるでイタズラを思いついた子供のような顔をして言った。
「ああ、ISスーツの役割はISを効率的に運用するためのものだが…あぁ、そうか、さっきも言ったとおりISスーツに男性用は無いのだ、だからお前も女性用のISスーツが着たいなら着たいと早く言えば「断固拒否させてもらいます」…お前もつまらない奴だな冗談と言うものがわからないのか?」
シンはボルテスク界で様々な悪魔を見てきたが、千冬がシンに向けた目は、悪魔達が自分を襲い掛かってくるときの目に似ていたから全力で拒否をしたのだ。それに比べ千冬はISの準備をしながら溜息をついている様子だった。
「さて、間薙ここまでの事で何か質問はあるか?」
「いえ、特にはもう…」
「そうか、ならいい…」
「なにか問題でも?」
「いや、大丈夫だ、では今からISの装着をしようか」
「わかりました」
そう言ってシンがIS『打鉄』に触れると、この世界に来て初めてISを触った時のような強烈な目眩が襲ったが、その目眩が過ぎるとシンの身体に打鉄が始めからそうであるように装着されていた。
「ISの装着はこれで済んだな、では私は管制室に行く、私が管制室に着いたらお前に指示を出す、それまでの間ISを軽く動かしておいてくれ」
そうして千冬が管制室まで向かうとシンは自然に自分が悪魔だった頃、すなわち様々な悪魔からこう呼ばれていた、『魔人 人修羅』と、そしての相手と戦うために無意識に意識が切り替わっていた。
そうしていると、千冬からのアナウンスがかかった。
「間薙、カタパルトの方に移動してくれ」
シンは何も言わずにただ黙ってカタパルトに移動した。そしてシンは戦うために、アリーナへ飛び出した。
シンがアリーナへ飛んでゆくとそこには真耶が空中で待っていた。
「おはようございます、間薙君、大丈夫ですか、緊張とかはしてないですか?」
真耶はシンを心配しているようだったが、本当は聞いた本人が一番緊張しているのだった。
(緊張しているんですね、まぁ、私も代表候補生に選ばれたときはすごく緊張しましたけどね)
しかも真耶は自分が緊張をしすぎて自分が緊張をしていることにも気がついてはいなかった、するとまたアナウンスが流れてきた。
「では、間薙、山田先生用意はいいか?」
「はい」
「…」
「それでは、試験開始!」
「「…っえ」」
そんな間の抜けた声を出したのは、モニタリングルームにいる千冬とシンの試験管である真耶であった。
「そんな、まだISを使い始めたはずなのにどうしてイグニッション・ブーストをッ」
そうシンは試験の合図と同時に真耶に対してイグニッション・ブーストを使いそのまま殴りにかかった。だが、このままでやられている真耶では無かった、殴られたと反応した後すぐアサルトライフルを光を放出するように取り出しシンを探すが、ハイパーセンサーからの警告音がすると、次は死角から殴られていた。真耶もすぐに冷静になり、シンに対して間合いを取ろうとするが、すぐにシンは間合いを詰め、殴りにかかる、そのようなやり取りがいくらか続いた後、決着を告げるブザーが鳴り響き一方的な試験が終わった。
その一方的な試験が終わった後、シンはピットに戻り千冬からの試験の結果やISランクを聞いていた。
「間薙、試験ご苦労だったな、試験の結果としては、まぁ合格だろう、ISランクはBランクだ、いいとも悪いともいえないランクだがこの結果はあくまで目安だ、これからのお前のがんばり次第でランクも上がってくるだろう」
「ところで真耶さんは?」
「間薙、一応言っておくがお前はもうこの学園の生徒だ、だから今後、私や山田先生が勤務外でないとき意外呼ぶときは下に先生を付けろ、いいな?……それと山田先生は今とても重要な用事があるから今は会えない、だからまたあとで会うんだな」
そのときの千冬の顔はとても恐ろしかったという。
「織斑先生…で、大丈夫ですか?ひとつ聞きたいことがありますけど」
「いや、いまは勤務外だが問題ないが、今度呼ぶときはちゃんと普通に呼べ、それでなんだ?」
「千冬さん……もし、俺が真耶さんに試験で倒されていたとしても俺をこの学園の入れるつもりでしたよね?」
シンが千冬にそう言うと、さっきまでとは打って変わって表情が変わる。
「…どうしてそんなことがいえる?」
「いや、この世界中にこのISが使えるのが二人だけだと言うのならやっぱりどうしてもほしいと言うものじゃないですか、それに俺が悪魔の世界から来たなんてこと言っていたら、それこそ精神病として扱われるのがわかる、それで少なくとも俺を追い出す理由が無いと思っただけですよ」
「すまないが私はお前の言った事を信じる気にはなれない、だがそれでも私自身としてはお前のことを多少なりとも面白いと思っているつもりだ、何せあれだけのことを言う奴だ、面白いと思うことはあれ、つまらないということは無い」
「そうですか」
シンとしても、完全に信じているとは思ってはいなかったが、それでも少しだけ嬉しかった。
「そうだ、お前が悪魔だったと言うなら何か名前見たいなものがあるんじゃないのか?」
自分が悪魔だった頃である種族名と名前を告げた。
「魔人 人修羅、コンゴトモヨロシク」
戦闘シーンが短い上に酷くて申し訳ございません。
次回から本編に入っていきます。
誤字、脱字などありましたら教えてください。
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第三話
「全員そろってますね、それではHRをはじめたいと思います」
始めにそういったのはこのクラスの副担任である、山田真耶先生。
山田先生がそう言うも誰も反応が無く、ほぼ全員があるひとつのモノに注目していた……それは男である。
ここIS学園はISを授業などで使う特殊ななのだ。だからはっきりいってこの状況はかなりきつい。
「えっと…それではまず自己紹介のほうから…」
山田先生がそう言うもまた誰の反応も無くただ静かに時計の秒針だけがこの教室を覆っている。
「……斑君、織斑一夏君、あの~聞こえてますか?」
「っあ、はい、何ですか」
「えっと、ごめんね、今『あ』から始まって『お』だから自己紹介してもらえるかな?」
「あ……はい、わかりました」
ちなみに俺の席は真ん中の列の一番前という一番人の注目を集める位置に俺の席がある、だから俺が立つと今まで出来る限り無視することが出来た視線を感じてしまう。
「えっと、織斑一夏ですよろしくお願いします」
すると女子の視線がこれ以上何か無いのか?、という視線となって俺に襲い掛かってくる、俺の方から見て右側にいる俺の幼馴染、篠ノ乃箒を見るが自分は関係ないという顔で俺を見てくる、だが駄目もとでこのクラスにいるもう一人の男子を見るがずっと明後日の方向を見てボーッとしている、せめて少しくらい俺の方を見てくれ。
だがここで自己紹介を終わらせてしまっては今後暗い奴と言うレッテルを貼られてしまう、そして俺は大きく息を吸い込み言った。
「………以上です!!」
この日初めて俺は人が純粋にずっこけることが出来るのだと知った。
すると突然後頭部を殴られた。
「少しはまともな自己紹介も出来んのか」
「げぇ、関羽ッ」
「誰が三国の英雄だ、馬鹿者」
するとまたさっきと同じ位置をピンポイントで叩かれた。
「あっ、織斑先生。会議は終わったのですか?」
「あぁ、代わりをしてもらってすまない、山田先生」
そして俺の姉である、千冬姉が教壇に立った。
「私がこのクラスの担当である織斑千冬だ、新米であるお前達を一年間で操縦者に育て上げるのが仕事だ。逆らってもいいが、私の言うことは聞け。いいな」
うわぁ、普通こんなの新入生(勿論俺もだが)に言う言葉ではないだろう。千冬姉の傍若無人振りにみんなが固まっているじゃないk……
「「「「「「「「「「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」」」」」」」」」
「千冬様、本物の千冬様だわ!!」
「私ずっとファンなんです!」
「私、小笠原諸島から来ました、お姉さまに憧れて!」
いや、どこから来ても問題ないだろ。
「まったく、毎年毎年どうしてこれだけの馬鹿者が集まるのだ、それとも何か?私のクラスにだけ集中させているのか」
だが千冬姉がそう言うも千冬姉に返って来るのは黄色い声援ばかり。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!もっと叱って!罵って!」
「でも、時には優しくして!」
「そしてつけあがらないように躾をして~!」
元気があるというのはいいと思うが、流石にここまではどうなのだろうか。
「それで?挨拶もまともに出来ないのか、お前は」
「いや、千冬姉、俺は……」
バァン! これで本日三回目の主席簿アタック。仮にも生徒なんだし少しは優しくしてくれよ。
「織斑先生と呼べ」
「……はい、織斑先生」
俺がそう答えると途端に教室中がざわめき始めた。どうやらこのやり取りがまずかったらしい。
「え…………?それなら織斑君って、千冬様の弟?」
「いいなあ、替わってほしいなぁ」
「ねえ、織斑君、私の身体あげるから、織斑君の身体を頂戴」
……最後のだけは受け切入れてはいけないし、そもそも俺はそんなものは聴いてはいなかった………そう思いたい。
気がつくとなぜかみんなが俺の方に注目している、さっきまで窓の外を見ていた箒も俺の方を見ている、だけどやっぱりといっていいのか俺以外のもう一人の男子は明後日の方を見てボーっとしている様子だった。
そんなことを考えているとチャイムが鳴った。
「ではこれでSHRを終わる。お前達には半月でISの基礎知識を覚えてもらう、わかったのなら返事をしろそうでなくても返事をしろ」
「「「「はいっ!!」」」」
こうしてSHRが終わった。
千冬さんの弟である織斑一夏のわけのわからない自己紹介の後、その当の本人が逃げるように俺のところに来た。多分来た理由としては、教室の外と中からずっと見られているプレッシャーに耐え切れずに来たように思う。
「それにしても女子の視線がすごく辛いな」
突然こちらに来て何だと思ったが、前の世界では勇と初めて会った時にはなれなれしかったことを思い出した……
「……そうだな」
「悪い俺、名前まだ言ってなかったな、俺は織斑一夏よろしくな、えっと名前はなんていうんだ?」
「―――間薙シン、コンゴトモヨロシク、織斑」
「いや、一夏でいいよ。なんか、堅苦しいからさ」
「わかった―――なら俺も、シンでかまわない」
「それじゃあ、よろしくなシン」
「ヨロシク」
そう言いながら一夏と握手を交わしていると一人の女子が俺達のところに来た。
「すまないが、少し彼を貸してもらえないか」
「別にいいが……名前h「箒っ、久しぶりだな」」
一夏に箒と呼ばれた女子は、どこか恥ずかしそうにしていた。
「あぁ、一夏、ひ…久しぶりだな」
「ところで、俺に何か用か?」
「いや、少し話したいことがあるから屋上でかまわないか?」
「大丈夫だ、じゃあシン、また後でな」
そう言って一夏は箒と共に屋上まで行った、俺はまた女子達の視線に晒されたが、ボルテクス界に居た悪魔達の視線と比べるとずいぶんと楽なものだった。
なおその後、チャイムが鳴る前に箒が先に戻ってきたが。
「とっとと席に着け、織斑」
チャイムが鳴った後に戻ってきた一夏は千冬さんに、本日四回目のありがたい(女子生徒曰く)体罰を受けていた。
「……ご指導ありがとうございます、織斑先生」
「……このようにISと操縦者との関係はある種のパートナーといったところで……」
ISに関する授業に入り、シンは苦しみながらも何とか授業内容を理解していった。
「それでは、ここまでに何かわからないことはありませんか?」
そう言って振り向いた山田先生の顔はがんばって何とかできました、という顔だった。
「はいっ!!」
「はい、織斑君」
一夏が勢いよく手を上げ、それに応えるかのように山田先生は一夏をあてたが、それはある意味ではとても潔いことだった。
「何一つわかりません!」
『わからないことは先生に聞く』それは、普通の授業ならばとても良い事なのだが……
「え、えっと……織斑君以外で今の段階で分からないっていう人はいますか?」
『……』
山田先生が教室を見渡してたが誰も手を上げずむしろ『こんな事もわからないのか』というような目で一夏を見ていた、ちなみにシンは下手に授業中に聞くよりかは、授業が終わった後に聞こうと思っていた。
「……織斑、入学前に渡された参考書は読んだのか?」
静かに、ゆっくりと千冬が一夏に訊ねた。すると一夏の答えは……
「あの分厚いのだったら古い電話帳と間違えて捨てました」
すると、今日で何度目になるかかわからない千冬の怒りの鉄槌が一夏に落ちてきた。
「再発行してやるから一週間以内に全て覚えろ」
「いや、いくらなんでもそれは……「いいな」……………はい」
「ISはその機動力、攻撃力、制圧力と共に近代全ての兵器を遥かに上回る。そしてそれらを深く知らなければ必ず事故が起こる、そういった事を防ぐための基礎知識と訓練だ。理解しなくても覚えろそれがISを扱う上で重要な事柄の一つだ」
千冬の言葉に一夏は頷くが一夏の内心ではIS学園入学は一夏が望んだものではなかった。
一夏の本来の人生設計はまず私立藍越学園に入学し(ちなみにこの学園の学費は私立なのにとてつもなく安い)、そして無事卒業をし、そのまま学園の支援を受けて某有名企業に就職、そして千冬姉を楽にさせる。これが一夏の考えていた計画だった。
「織斑、お前は『自分は望んでこの学園に入ったわけではない』考えているな」
千冬にそう言われて少しひるんでいた。
「人は誰しも集団の中で生きなくてはならない、それは自分が望む望まないに関わらずだ。もしそのことがいやであれば人との関わりを完全に断ち切るか、人であることをやめることだな」
偶然にもこのとき一夏とシンの考えは同じであった、それは『この学園にいる限り前途多難だろう』と………
授業が終わり特にすることも無かったのでシンは一夏と暇つぶしにでもしゃべろうと思った。
「大丈夫か、一夏」
「あぁ、それにしても酷すぎるだろ」
「それでも覚えるしかないだろ」
「………そうだな」
そう言って一夏は黄昏ていた。
「ちょっと、よろしくて?」
「ん?」
「は?」
そこにはいかにも偉そうな女子がこちらに声をかけてきた。
「あら、せっかくこのわたくしが声をかけて差し上げたのにその反応はなんですの」
「悪いな、俺、君が誰なのか知らないし」
「俺もだ」
「わたくしを知らない?このセシリア・オルコットを?イギリスの代表候補生にして、入試主席のこのわたくしを!?」
すると、一夏がそのセシリアの言葉に口を挟んできた。
「すまん、少し質問いいか?」
「下々のものの要求に応えるのは貴族の務めですわ」
「代表候補生って何?」
その瞬間、このクラスにいたすべての人がずっこけた。
「一夏、そんなことも知らないのか」
「おう、知らん」
セシリアはもはや怒りが一周したのか、こめかみに人差し指を当て、ぶつぶつと何かを言い始めた。
「信じれませんわ。極東の人間はテレビの一つも持っていないというのですか、こんなこと常識ですわよ常識」
方やテレビを持っていてもほとんど見ない一夏と、方やこの世界に来たばかりで何も知らないシンに思うことは酷だろう。
「で、代表候補生って?」
「国家代表IS操縦者の、その候補生として選ばれるエリートのことですわ。……あなたその単語から想像したらわかるでしょう?」
そう言われると一夏は手をたたいて納得した。
「そう言われると、確かにすごそうだ。」
「そう!エリートなのですわ!わたくしは優秀ですから、教えてくれと泣いて頼まれたら教えて差し上げてもよろしくってよ。何せわたくしは入試でただ一人教官を倒したエリート中のエリートなのですから!」
そこまで聞いていた一夏とシンはあることに気がついた。
「なぁ、入試ってISを動かして戦うやつのことか?」
「はい、それ以外に入試などありませんわ」
「あれ?俺も倒したぞ教官。シンはどうなんだ?」
「俺もとりあえず倒したな」
「は……?」
「どうした?」
「い、いえ、入試で教官を倒したのはわたくしだけと聞いていたのですが…」
「「女子の中ではってオチじゃないのか?」」
「つ、つまりわたくしだけではないと……?」
この時一夏は氷が割れるような音を、シンは悪魔に襲われる前の感覚を感じていた。
「あなた!…いえ、あなた達も教官を倒したって言うの!?」
「そうだな」とシン
「そうだなって!あなた――」
セシリアが喋っている最中に三時間目開始のチャイムが鳴り、セシリアは席に戻らざるを得なくなってしまった。
「っ………!またあとで来ますわ!逃げないことで!よくって!?」
そうこうしている内に千冬と真耶が教室に入ってきた。
「それではこの時間はISが使用する武器の特性について説明する」
すると真耶が千冬になにやら耳打ちをしはじめた。
「――授業の前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決める」
クラスの何名かが何かと悩んでいるのを知ってか知らずか千冬が説明しだした。
「クラス代表者とは、そうだな……クラス長のようなものと捉えてもらってもかまわない、ちなみにクラス代表者になった者は一年間変更はないからそのつもりで」
ちなみにその時一夏とシンの考えていた事は、一夏は単純に面倒そうだと考え、シンは服を着れている事に感動していた。
「それなら私は織斑くんを推薦します」
「私も織斑くんがいいと思います」
「はいっ!私は間薙くんがいいと思います」
「わたしもまなぎんがいいとおもうな」
「待ってください、納得がいきませんわ!」
すると突然、さっき一夏とシンに話しかけてきていたセシリアが机を叩きそう言った。
「認められませんわ、男子にこの一年一組のクラス長を任せる事自体、間違いなのですわ」
そしてさらにセシリアはシンと一夏を見て、鼻で笑うようにしていった。
「それに、文化的にも後進的な国で暮らさなければいけない事こそ、わたくしにとって屈辱的な事なのに……」
「おい、そんな事言ったらイギリスだってたいしたお国自慢無いだろ、それに何年料理が不味い国一位の覇者だよ」
「それに、イギリスなんて、神話しか語るところが無いだろ」
シンは一夏がセシリアに反論することにつられてつい言ってしまった。
「あ…貴方達はわたくしの祖国を侮辱しますの!?」
その時のセシリアの様子はまさに怒髪天をつく、という言葉が似合う状態だった。一夏は割ってしまったという顔をしていた。
「決闘ですわ!!」
すると一夏は、情けない顔をやめるとすぐにセシリアに言い返した。
「あぁ、四の五の言うよりわかりやすい」
「それと、間薙シンさん、さっきから何も仰ってないようですが、あなたもわたくしと決闘してもらいますわ」
「…なんでだ?」
「わたくしの祖国にはよい神話が沢山ありますわ…ですが、貴方のその言い方では、まるでイギリスには神話しかないと仰ってるようなものじゃないですか!!」
すると、シンは少し考えてこう言った。
「あながち間違いじゃないと思うんだが…」
「もう許しませんわ!?貴方たちはハンデを付けて差し上げようかと思ってましたが、そんなに大口を言う余裕があるなら、大丈夫ですわね!」
「ねぇねぇ、織斑君、間薙君、謝るのなら早くしたほうが良いよ」
「いや、相手がそう決めたらそれでいい」
「それでは、話はまとまったな…それでは一週間後の月曜。放課後、第三アリーナで行う、織斑、間薙、オルコットの三名はそれぞれ用意をしておくように。それと織斑、間薙、お前たちには学園が専用機を用意する、来週には届くそうだ。それでは授業を再開する。」
少し教室がざわめいたが、しばらくすると何事も無かったかのようにして授業は再開した。
放課後になり一夏は机にうなだれていた。一方のシンはあまり疲れた様子は無く、淡々と教科書類を纏めていた。
「あぁ、よかった、まだ二人とも教室に残ってくれてたんですね」
「山田先生、どうしたんですか?」
すると山田先生が一夏とシンに鍵を渡してきた。
「二人の寮の部屋が決まったので、鍵を持ってきたんですよ」
「そうですか、ありがとうございます」
「どうも…」
「二人が入学することになったので急遽部屋割りを変更することになったんですよ……そこらへんの事って何か政府から聞いています?」
最後のところは一夏とシンにしか聞こえないように小さい声で言った、一夏とシンは世界で二人しかいない『男性操縦者』だから保護と監視の両方を付けている様だった。
山田先生はシンに何も喋るなという目をした、何しろシンは政府にさえもシンの情報は機密にしているからだ。
「そういう事なので、しばらくは相部屋で我慢してください。一ヶ月もすれば個室が用意できると思いますから」
「わかりました、ですけど俺の荷物は…」
「お前の荷物ならわたしが手配しておいた。お前に必要なのは生活必需品だけだろうがな」
「それじゃあ、時間を見て部屋に行って下さいね。夕食は6時から7時、寮の一年生用食堂で取ってください。各部屋にシャワーはありますけど、今のところ織斑君と間薙君は今の所使えません」
「え、どうしてですか?」
すると、千冬は一夏の頭を殴った。
「アホか、お前は同世代の女子と一緒に風呂に入りたいのか?」
一夏はしまったという顔をしていたが、そんな一夏を千冬はまったく見ずにシンの方を馬鹿にするような目で見ていた。シンもIS学園に入学したときに同じ事を聞いて似たような事をされたからだ。
そして一夏は山田先生やクラスの女子に散々勘違いされようやく解放されたのだった。
「えっと、俺の部屋は1025室だけど、シンの部屋は?
「1026室だな」
「それじゃあまた後で」
「あぁ」
そしてシンは一夏と分かれると、部屋に入り中を確認したが、一週間過ごした部屋と大して変わりはしなかったので、そのまま手前のベットに腰を下ろすと、ベットからバキッと音がしたので布団の中を見ると中には食い散らかされたお菓子が大量にあった。
「ああ~、ひどいよまなぎん、おかしをつぶすなんてさ~」
シンが後ろを振り向くとそこにはのほほんさん(名前は知らない)が居た。
「すまない、潰すつもりは無かった」
「だったら、ばんごはんおごって!」
だが、シンはいいぞとは言えなかった、何故ならシンは完全な無一文で昼御飯さえも完全に抜いていたからだ。
「ねぇねぇ、ばんごはんおごってよ~」
シンが何時までもうんとは言ってくれないのでとうとうのほほんさんが痺れを切らし始めたときに隣の部屋から突然、大きな音が聞こえてきた。
シンが外に出てみると一夏が居る部屋に人だかりが出来ていた。人だかりを割って奥まで見てみると一夏がドア越しに木刀で刺されそうになっていた。
「どうしたんだ、一夏」
「助けてくれシン!箒が俺を殺そうとしてるんだ!!」
「殺そうとはしていない!」
シンは少し頭を悩ませ、ドア越しに箒に言った。
「これ以上やると、見物客がさらに増えるぞ」
すると少し間を置いてドアが開いた。
「一夏、早く入れ」
部屋に入っていこうとする一夏にシンは一言言った。
「金を貸してくれ」
「わかった、いくらなんだ?」
「五万」
「…え!…わかった!!貸すよ」
「すまない」
そして、シンは一夏から五万を借り、部屋に戻りのほほんさんに言った。
「飯を奢ろう」
どうも、長い事お待たせしました。がんばって投稿していこうと思います!!
あと活動報告を見ていただけると幸いです。
感想、ご指摘などがあればよろしくお願いします。
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第四話
一夏とシンがセシリアと対決をすると決めて一週間がたち、とうとうその日がやってきた。二人とも戦うための準備はしていたのはずだが…
「なあ箒」
「どうした一夏」
「ISの事教えてもらってないんだけど」
「…………」
「目をそらすな」
二人が話していた内容は、一夏は本来なら箒にISの使い方を教えてもらうはずが、なぜか剣道の練習をしていたという事だった。シンの方はといえば…
「ねぇねぇ、まなぎん、まなぎん、せっしーつよいけどだいじょうぶなの?」
「たぶん、大丈夫」
シンはのほほんさんに懐かれていた。
懐かれた訳は一週間前、晩御飯を奢った後、久しぶりに普通の金を持っていたのと満腹状態だったため、のほほんさんについでだと思いケーキを2、3個奢ったら気づいたらなぜか近くにいたという訳なのだ。シンの方も特には気にはしていなかった、のほほんさんの雰囲気がピクシーに似ていたからである。
千冬と山田先生が二人そろってハンガーに来た。
「織斑くん、間薙くん、二人のISがやっと届きましたよ」
山田先生がそういうとピット搬入口から二機のISが姿を姿を現した。
そこには『白』と『黒』がいた
二機ともたいした特徴も無く、飾り気の無い。ただ、その色が自身を表しているようだった。
「この二つが、織斑くんと間薙くんの専用IS『白式』と『ケイオスインペリアル』です」
「では二人とも、まずじゃんけんをしろ」
「「はい?」」
「ちなみに負けたほうが先にオルコットと対戦してもらう。さあ、早くしろ」
すると、一夏とシンは向き直ってじゃんけんをした。
結果は一夏の負けだった。
「結果がわかったのなら、早く体を動かせ、すぐに装着しろ。時間が無いからフォーマットとフィッティングは実践で行え。出来なければ負けるだけだ。わかったな」
そうして一夏は急いでISを装着し、対戦前だというのにずいぶんと落ち着いた顔をしていた。
そしてピットゲートに行き、ゲートが開くと勢いよく飛び出していった。
シンは一夏が飛び出していくと、すぐに自分のISに向かった。
「どうした間薙、あいつの戦いを見ておかないのか?」
「いえ、相手を知らずに戦うのは慣れてますから」
「ほぅ…それは、お前が元悪魔としての自信か?」
「それもあります」
「まぁいい、とにかく早くそいつに慣れておけ、元悪魔」
「はい」
千冬が去るのを見送った後、シンは自身のISに向き直った。色は黒。それもただの黒ではなく、漆黒という言葉が似合う、吸い込まれそうな黒だった。次にISに触れると、前にISに触った時のように電流が流れるような感覚は無く、自らの半身がここにいるような感触だった。最後にISに乗り込んでいると、のほほんさんが来た。
「ねぇねぇ、まなぎん、そのISのぶきってなーに?」
操作方法を教えてもらいながら、武装展開の一覧を見ると、何も無かった。
「えぇ!!そしたらまなぎんどうやって戦うの!?」
「…まぁ、何とかなるだろ」
おろおろとするのほほんさんを横目に見ながら体を動かしていると、そのうち目の前に空中投影ディスプレイが現れ『初期化、最適化完了』と表示された。それと同時にブザーが鳴った。
『試合終了。――勝者、織斑一夏』
一夏がピットに戻ってくると、箒が一夏ところへ駆け寄り、遠目に見ていれば、嬉しそうにし、一夏対して怒っているようにも見える…あれがツンデレか。
「それではこれより、三十分の休憩を取る。織斑、お前は一度シャワーを浴びて来い。汗臭くてたまらん」
「あぁ、わかったよ」
そして殴られ、説教をされてから、更衣室のほうに一夏は向かっていった。
三十分経ち、今度はシンが一夏と戦う番になった。
シンがピットゲートへ向かい、深呼吸をし、ゲートが開いた瞬間、一気にアリーナまで飛んでいった。そして機体には人修羅の刺青が浮かんでいた。
シンがアリーナに行ったがまだ一夏がきていなかったので、体を動かしていた。しばらくすると一夏が来た。
「シン、お前のISって何かこう…かっこいいな」
「お前のISもいいと思う…」
シンと一夏が少し話しているとアナウンスが流れ、千冬の声が聞こえてきた。
「無駄話も程々にしろ。ではこれより第二試合をはじめる。それでは始め!!」
千冬が開始を告げると同時に、シンは一気に一夏の懐まで飛び込んで行くと思いっきり殴りかかった。
「うおっ!?」
一夏は殴られた衝撃で後ろに飛んで行くとすぐに体勢を整え自分の武器――雪片弐型――を展開し、追撃を加えようとするシンを切りにかかった。
シンもすぐさま斬撃が来る方向に腕を移動させ、片腕に斬撃が当ると同時にカウンターの要領で一夏の腹部に重い一撃を食らわせた。シンがシールドエネルギー残量を見るとさっきまで600まであったシールドエネルギーが418まで減っている事に気がついた、その事に気を取られ過ぎていたシンは一気に近づいてくる一夏への対応が遅れ、袈裟斬りにされてしまった。
コントロールルームでは、千冬と山田先生が二人が、ピットでは箒が試合を見守っていた。ちなみにのほほんさんは飽きたと言って部屋に戻ってしまった。
「二人とも結構やりますね」
「あぁ、そうだな。だが、今あいつが間薙を切れたのはまぐれと言っても過言ではない。間薙はもうあいつの攻撃にはもう当らないだろう…しかもあいつの左手を見てみろ」
「あ、手を開いたり閉じたりしてますね」
「あいつがそうする時は大抵簡単なミスをする。だからこの試合はもう間薙が勝ったと言っても間違いではないだろう」
「…やっぱり、弟さんが負けるのは悔しいですか?」
「さすがにな、愚弟とは言え私の家族だ」
そして、モニターの中では千冬が言った通りの展開になっていた。
もはや一夏がどんなに刀を振っても、シンには掠りさえもしなかった。シンは一夏に切られた後、二、三回、一夏の刀の間合いを見てから攻勢に移って行った。そして、決着は早々に着いた。
『試合終了。勝者、間薙シン』
「まったく、あれだけ善戦をしておきながら負けるとは…馬鹿かお前は」
試合が終った後戻るなり千冬から罵倒を浴びせられていた。
「でも聞いてくれよ、最後シンに一発入れられたけど、何で負けたかわからないんだ」
「武器の特性も考えずに使いすぎるからだ。今後は暇があれば少しでも訓練をしろ。いいな」
「…はい。そういえばシンは何処にいったんだ?」
「あいつなら疲れたと言って、先に部屋に戻った」
この時千冬はいたずらを仕掛けた子供のような顔をしていた。
シンは試合が終わり。ISを解除し山田先生からISの待機状態の指導を受け、自らのISの待機状態を知ると、仰天した。だから出来る限り人に見つからず、人目を避けて部屋まで戻っている時だった…
「あれ、どちら様?」
後ろから声を掛けられ、振り向くとそこには青い髪で扇子を持った女性がいた。
「あー、確かキミは、二人目の男性操縦者ね。よろしく」
「…あんたは誰だ」
「おねーさん、年上の人にそんな聞くのはダメだと思うな。けど、こっちから名前を言ってないのも事実だしね。私はIS学園生徒会長の更識楯無よ間薙シン君」
この時シンは本能で感じた、この女は色んな意味で厄介だと。そう感じたなら決断は一瞬だった。シンはすぐさま踵を返し一目散に自分の部屋まで逃げ帰った。後ろから何かを言われている様な気がしたが気のせいだと思い、この時、何人か人に見られたかもしれないが、もう気にしないことにした。
「あ、おかえり~、まなぎん…ど、どうしたのそれ…」
シンが部屋まで帰ると、晩飯も近いというのにお菓子を食べているようだったが、シンの姿を見るなり動きが止まってしまった。
そう、シンの体には人修羅の刺青が――もう製作者はわかっている――入っていたために今まで出来る限り人目を避けてきたのだった。
「うわぁぁぁぁぁん!!まなぎんがふりょうになっちゃった~!!」
「少し落ち着け」
のほほんさんを何とか宥めるのに一時間程掛かった。
「そうだ、まなぎん。まなぎん宛てに荷物が届いてたよ。すっごく重かったよ、おかしかな、おかしかな!」
シンが荷物を見ると約五十センチ四方の箱有り、その上にには一通、手紙が添えられていた。
『拝啓、我が王へ。元気ですか?私は元気です。…書き始めてなんですが飽きて来ましたので早めに終わらせます。荷物には貴方に必要な物を色々と入れて置きましたので役に立ててください。
PS 気が向いたら、偶にそちらに行きます。
貴方の配下のL・Sより』
シンは手紙を読み終わると握りつぶしてゴミ箱に放り込んだ。次に箱に目を向け開けると、一番上には昔着ていた、種類の違うパーカー二枚がまず入っていた。中を探って行くと、梱包など全然を梱包を考えず、ただ箱に放り込んだだけという有様で混沌としていた。
のほほんさんに手伝ってもらい、中身を種類別に分けて行くと大量の宝石、物反鏡、磨反鏡、磨石
、その他様々な物、極め付けによく発動しなかったと思ったメギドの石が入っていた。
この時のほほんさんにこの事を黙っておいて貰うため宝石を幾つか掴ませておいた。
「では、一年一組代表は織斑一夏くんに決定です。あ、一繋がりでいい感じですね」
クラス内は大いに盛り上がっっていた。
「先生、質問です」
「はい、織斑くん」
「俺は昨日の試合に負けたんですがどうしてクラス代表になっているのでしょうか?」
「それは俺が辞退させてもらったからだ。ついでにオルコットには副代表に推薦しといた」
「シン、何でだよ!」
するとシンは当然とばかりに言った。
「面倒だろ、代表なんて。とりあえずおめでとう」
そしてシンは一夏に向かって拍手をすると、みんなもそれに合わせて一夏に盛大な拍手を送った。
これで一夏はクラス代表を辞められなくなってしまったのだった。
はい、まぁ、久しぶりにこっちを投稿しました。
結構短いですがこれからも続けて投稿できたらいいなとは思っています。
感想、誤字脱字などがありましたらお気軽にお願いします。
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第五話
「ではこれよりISの飛行操縦をしてもらう。織斑、間薙、オルコット。試しに飛んで見せろ」
四月も下旬に入り、そろそろISの授業が本格的に始まり始めた。
「早くしろ、熟練の操縦者は展開まで一秒も掛からんぞ」
ISは一度フィッティングをすると、アクセサリーの形状になり待機している。セシリアは左耳のイヤーカフス。一夏は右腕にガントレット。ガントレットはアクセサリーではなく防具ではないかと思うが一夏の隣にいるシンに至っては全身刺青で、もはや防具でもなんでもないから、みんな気にするのはやめた。
一夏は右手を突き出し、左手でガントレットを掴むこうして一夏はISを展開する。一方シンは棒立ちになり目を瞑りながらISを展開している。セシリアも二人が展開するよりも早く展開していた。
千冬は三人がISを展開したのを確認すると言った。
「よし、飛べ」
言われてからセシリアの行動は早かった。それにシンも続いて飛んで行く。そして最後に一夏が飛ぶが二人に比べ、上昇速度はかなり遅かった。
「何をやっている。スペック上ではの出力はケイオスインペリアルと同等だぞ」
確かに一夏は授業はしっかりと受けていた。しかし、聞いたイメージと動かす感覚は違うものだったので悪戦苦闘をしていた。
「一夏さん、イメージは所詮イメージ。自分にやりやすい方法を摸索する方が建設的でしてよ」
セシリアはクラス代表が決まった後、一夏と親しくなっていた。もちろん一夏とシンに謝罪をした。
「そうなんだけど、どうしても空を飛ぶって感覚があやふやなんだよ。何で空を飛んでるのか分からないしさ」
「そうですか…ところでシンさんはどのようなイメージで飛んでいらっしゃるのですか?」
そう聞かれシンは少し考えていった。
「六十階あるビルから飛び降りる感覚」
「え?」
「いや、何でもない…ただ、何と無く…だな」
「そうですか…一夏さん、今度またお二人で……」
「それでは次に急降下と完全停止をやってみろ。目標は地面から十センチだ」
「了解しました。それでは、一夏さん先に行かせて貰いますね」
セシリアが先に行き、一夏とシンはその様子を見ていたが見事に成功していた。
「それじゃあシン、俺先に行くな」
一夏はシンの先に行くと、速度が速すぎたためか地面に激突しグラウンドに大穴を開けてしまった。
「大馬鹿ものが、誰がグラウンドに穴を開けろといった」
「大丈夫か一夏」
何時の間にかシンも急降下を済ませ、一夏に手を貸してやっている。
一夏とシンの後ろで何やら箒とセシリアが言い争いをしていたが、千冬の一声で止み、授業は進んで行く。
「間薙…は別にいい。織斑、武装を展開しろ。そのくらい自在にできるようになっただろう」
「はあ」
「返事は『はい』だ」
「は、はい」
「よし、でははじめろ」
そして一夏はまた右手を前に突き出し、左手で掴んで雪片弐式を出した。
「遅い、0,5秒で出せるようになれ。次、オルコット、武装を展開しろ」
「はい」
セシリアは左手を型の高さまで上げ、一瞬光が走ったと思った時にはその手には《ブルーティアーズMkⅢ》が握られていた。
「さすがだな代表候補生。だが、そのポーズはやめろ、横に向かって銃身を展開して誰を撃つ気だ。正面に展開できるようにしろ」
「しかし、これがわたくしのイメージをまとめるために必要な…」
「直せ、いいな」
「……はい」
一切の反論の余地も無くセシリアは黙らせられる。するとタイミングよくチャイムが鳴った。
「ではこれで授業を終わる。織斑、グラウンドを片付けておけよ」
一夏はチラッと箒を見ると顔をそらされ、手伝う気が無いのが分かった。セシリアはすでにいなくなっていた。シンを見るとまでいたので、頼むことにした。
「なあシン、グラウンドを片付けるの手伝ってくれないか」
「…一夏、二つ聞きたい事がある。これについて答えてくれたら手伝おう」
「おう、いいぜ」
「まず一つ目は、あの穴を掘ったのは俺か?」
「うっ!」
「二つ目に、俺の名前は織斑一夏か?」
「…違います…」
「そういうことだ。だから手伝おう」
「えっ!何でだ」
「俺はさっき言ったぞ。『答えてくれたら手伝おう』と、内容はどうあれ答えた。だから手伝うだけだ」
「ありがとなシン!」
その後何とか二人は授業が終わる前に穴を埋める事が出来た。
放課後になり、女子達から夕食後、『織斑一夏クラス代表就任パーティー』があるからきてくれと言われ、特に用事もなかったシンは行くと言った。しかし、シンはこれといってやる事が無かったので夕食まで学園の中をぶらつく事にした。
歩いていると何時の間にかアリーナの整備室まで来ていた。そして一番から順に見ていくと、第二整備室を見るとと誰かが一人でISを整備しているように見えた。
「…誰?」
立ち去ろうと思っていたら向こうから話し掛けてきたので、シンは興味を持った。
「ここで何をしているんだ?」
「あなたには関係ない」
そう言いつつもISを弄っていた。シンはその相手の容姿を見ていたがどこかで見たことのある容姿だったので聞いたみた。
「すまない、名前は何ていうんだ?」
「…更職…簪」
その名前を聞いた瞬間、シンは逃げようかと思ったが、簪を見ていれば、この前会った人とも性格が違いそうなので、一応は大丈夫だと判断した。
「どうして一人で整備しているんだ?」
「…あなたには関係ない」
「……」
「……」
シンはこれ以上いても仕方ないと思い何も言わずに整備室から出て行った。
「というわけでっ!織斑くんクラス代表おめでとう!」
「おめでと~!」
クラッカーが一斉に鳴らされ紙テープが一夏や隣にいたセシリアやシンにまで降りかかってきた。
「いやー、クラス対抗戦も盛り上がるねえ」
「ほんとほんと」
シンが知っている限りでは相槌を打っている女子は一組にはいなかったと思う。
一夏は憂鬱そうな顔で箒と話しながらお茶を飲んでいた。
「はいはーい、新聞部でーす。織斑一夏君と間薙シン君に特別インタビューをしに来ました~!」
すると女子一同が一気に盛り上がる。
「あ、私は二年の黛薫子。よろしくね。新聞部部長をやってまーす。はいこれ名刺」
そういって一夏とシンとセシリアに名刺を渡す。
「ではではずばり織斑君!クラス代表になった感想を、どうぞ!」
そして一夏とシンとセシリアは薫子に散々質問され、最終的にすべて捏造することで収まった。
「それじゃあ写真撮るから三人ならんでね。えーと、織斑くんが真ん中でセシリアちゃんがその右、間薙がその左でね」
そして三人が並ぶと、薫子はカメラを構えて言った。
「それじゃあ撮るよー。35×51÷24は~?」
「えっと…2?」
「ブッブー!答えは74・375でした」
言うと同時にカメラのシャッターを切った。シャッターを切る寸前にクラスの女子たちが一斉に写真に入るようにして集まった。
「何でみなさんが写真に入っておりますの!」
「まーまー、いいじゃん」
「クラスの思い出になると思ってさ」
クラスメイトにそう言われ、セシリアは我慢することしかできなかった。
時間は十時を回り、まだまだパーティーを続けようとしていたが、見回りに来た千冬に全員殴られお開きとなった。
次の日、教室は何やらざわついていた。するといきなり女子が話しかけてきた。
「おはよー、織斑くん、間薙くん。ねえ、転校生の噂聞いた?」
「シン、お前何か知ってる?」
「いや、全然」
この女子――名前は忘れた――から聞いた話だと二組に転校生が転入してきた事らしい。IS学園では転入するときには厳しい試験と国からの推薦が必要になる。
「ということは、どっかの国の代表候補生なのか?」
「そう、中国の代表候補生らしいよ」
「あら、わたくしの存在を知ってあわてて来たのかしら」
「それに今度クラス対抗戦があるからな、のんびりしている暇は無いぞ一夏」
話を聞いていたのかセシリアと箒が近づいてきた。
「それに、専用機を持っているクラスは一組と四組だけですし。一夏さんの優勝は間違いありませんわね」
「その情報古いよ」
すると教室の扉が勢いよく開き、誰かが入ってきた。
「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから」
シンが見たところ、活発さを絵で書いたような少女が扉に足をかけ立っていた。
「……鈴、お前鈴か?」
「知り合いか?」
「あぁ、セカンド幼なじみなんだ」
「そうよ。中国代表候補生、鳳鈴音。今日は宣戦布告に来たってわけ…って一夏、そいつ誰?」
鈴は自己紹介のようなものしてすぐにシンに指を指してきた。
「お前知らないのか?二人目のIS操縦者だよ」
「うん、知らない。だって別の国になんか興味ないし」
あっさりと知らないと言い、シンは少しさびしそうな顔をしていた。
「おい」
「なによ!?」
聞き返した鈴に千冬の強烈な出席簿打撃が決まり、鈴は涙目になっていた。
「ち、千冬さん…」
「もう、SHRの時間だ。さっさと自分のクラスにもどれ鳳。それと織斑先生呼べ、いいな」
「す、すみません…」
そうして鈴は腰が引けながら自分の教室へと帰っていった。
授業中箒とセシリアが千冬に叩かれていたが、その理由は本人たちしか知らない…
授業が終わり、シンは昼をどうしようかと考えていたら一夏がやってきた。
「なあシン、一緒に飯食わないか?」
「…別に構わないが…何でだ?」
「いや、箒たちと一緒に飯食うんだけど、せめて精神的な安らぎが欲しいから…」
シンは財布をの中身を確認した。しかし中身はもうほとんど無く一夏にまた金を借りるのはどうかと思い少し躊躇していた。そこでシンはある事を思い出しポケットに手をいれあるものを取り出した。
「一夏、すまないがコイツを買い取ってくれないか…」
シンが取り出したものは…ボルテクス界で集めていた宝石…それも大粒のルビーだった。
「え!?シン、そんな大きなルビー俺なんかには買えないよ!」
「いや、前と同じ五万でいいんだ。だから、頼む」
「いやそれでも…」
「一夏さん、何をしていますの?」
一夏が騒いでいるので、気になって見に来たセシリアはシンの持っている宝石を一目見ただけでその価値がわかった。
「あ…あの、シンさん…?そ、そのルビーはどうしたのですか?」
「一夏に買い取ってもらいたかったんだが無理みたいだ…」
「でしたらシンさん!わたくしがそのルビーを買い取って差し上げますわ」
「本当か?」
「えぇ、本当ですわ。それで幾ら払えばいいのかしら?」
するとシンは指五本を出した。
「わかりましたわ。今持ってきますわね」
するとセシリアはどこかに行き、数分で帰ってきた。
「では、これがお金ですわ」
セシリアが持ってきたものは茶色い封筒に入った分厚い札束だった。
「いや、五万でいいんだが…」
「それはいけませんわ!!」
セシリアが言うには、シンの持っている宝石は完璧といっていいほどの美しいブリリアンカット、さらにはその大きさ、色合いの深さ、傷の少なさ。本来なら五百万以上出しても惜しくは無い代物だと言う。流石は悪魔が集めていただけはある。
しかしシンもそういうわけにはいかなかった、さすがにそんな大金をポンと渡されてはこちらも困るからだった。そこで二人は話し合い、百万での取引となった。それでもかなりの額になったが。
シンがセシリアとの取引を終えると、セシリアは一夏の腕を掴み連れ去ってしまいシンは一夏が自分に助けを求めている姿を見送った。
その後、授業は無事に終わり。何かに誘われる事もやる事も無かったので部屋で寝ることにした。
部屋に戻り着替えもせずにそのままベッドの上に寝転がるとすぐ睡魔が襲ってきた。東京受胎前ならこんな事は普通の事だった、そう考えながら眠りに落ちた。
夢を見た。夢の中ではボルテクス界であった様々な事が映し出されていた。それはもしかしたらあったかもしれない世界。千晶の支えと共にヨスガの世界を造り、勇の言葉と共にムスビの世界を築き、氷川の願いと共にシジマの世界を創造する。そして一番自らが願った世界は裕子の祈りで元の世界、自分が住んでいた世界に戻すことだった……そこにあってはならない世界が見えてくる。カグツチは死に世界は産れず暗い暗黒の世界が広がるだけだ。
慟哭の声が聞こえる
目が覚めるとのほほんさんが傍にいた。
「大丈夫?まなぎん」
のほほんさんによると、シンが寝ていたので起こさない様に静かにしていたら突然シンが叫びだしたから起こそうとしたとの事だった。どうやら聞こえていた声は自分のものだったらしい。
「すまないな…」
「ううん、ぜんぜんへいきだよ。だけどちょっとうるさいかな」
何やら突然隣の部屋が騒がしくなってきた。しかしそれはあまりもうるさいのでシンは壁に思いっきり蹴りを入れると少し静かになり、一瞬騒がしくなった後、扉を勢いよく閉める音が聞こえ完全に静かになった。
クラス対抗戦までの日は近い。
はい、できる限り早く投稿しようと思ったので省くところは色々省いています。
あと箒がほとんどしゃべってないなと思います(ファース党の皆様すいません)
次回はもうこのままクラス対抗戦に入りますのでお願いします。
いつもこんな駄文を見てくださりありがとうございます。
感想、誤字脱字等がありましたらお気軽に言ってください。
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第六話
一夏と鈴の喧嘩から数日が過ぎ、クラス対抗戦当日が来た。
第一アリーナの観客席で箒とセシリアが並んで座っていた。周りが騒がしいなかこの二人だけは異様に静かだったが、先に口を開いたのはセシリアだった。
「一夏さん、大丈夫かしら」
「アイツなら大丈夫に決まっている、この私が訓練したんだぞ」
「お言葉ですが箒さん、あなたが一夏さんに教えていたのはISの格闘戦における基本中の基本ですわよ」
「何を言っている!今日アイツが闘う相手はその格闘が主体ではないか。それよりもお前が教えていたことが邪魔だったんじゃないか?」
「生憎ですが射撃は一夏さんの今後の為を思って教えていますのよ」
「だが一夏が使わなければ意味が無いではないか」
この箒の一言のせいでこの後、言い争いが始まり千冬に見咎められ喧嘩両成敗ということで、二人とも殴られ終了と、最早見慣れた光景が広がっていた。
シンは一人静かに試合が始まるのを待っていた。
以前アリーナを散策したさいにたまたま人通りが無い通路にアリーナ全体を観ることが出来る場所を見つけ密かに自らの特等席としていた。
「ほぅ、いい場所を見つけたじゃないか間薙」
突然の声にシンは思わず身構えてしまった。
「ふっ、そう構えるな。何もとって食うわけではない、それにこの通路は管制室の次に良い場所だと思っている」
その口許には微かな笑みが浮かんでおり、そして口ぶりはまるで猫や何かをからかっているような雰囲気だった。
「ところでシン、ここには慣れたか?」
「まだ、わからない……です」
それはシンの正直な感想だった。この世界、この場所に来てせいぜい数週間、慣れないことの連続で肉体的にも精神的にもあまり落ち着く暇がなかった。ただ良かったと言えるものは日々の食事と……ここまで考え心の中でかぶりを振った。
「シン、今ここには私とお前以外誰も居ないしカメラといった類いは無い。だからここでは教師と生徒ではなく…あまり良くないんだが友人と話すようにして構わない、だから何か言いたいことは無いのか?」
「大丈夫。特に無い」シンはただ一言呟くように言った。
「…わかった、そろそろ試合が始まるから私は持ち場に戻る。それから楽しめることは楽しんでおけ、何事もな。それとお前のISの待機形態についてだが化粧用のナノスキンシートを貼れば隠せる筈だ」
「すまない」
「私に礼を言うくらいなら山田先生に礼を言え。私の気が回らないところに気が付いてくれたのだからな」
シンはそうした千冬や真耶に気を使わせてしまった事に少し苦い思いが有ったがそれ以上に二人の思いやりが嬉しかった。
そう言うと千冬は何も無かったかのように通路を歩き、またシンも同じく何事も無かったかのようにアリーナへ向き直り、試合開始を待っていた。
もうすぐ試合が始まるというのに一夏はISも装着せずにただただ先日の鈴とのやり取りを思い返して悩んでいた。
「俺、鈴に何か起こらせるような事言ったかな?」
一夏がいくら考えようとも答えは出ず、自らを鈍いということすら気づいていない一夏が乙女心を分かるはずもなく無情に時は流れ、そして来た。
「馬鹿者、何をしている。さっさとISを展開してアリーナへ出ろ!」
千冬の怒声がピットに響き渡った。
「ち、千冬ねぇ!」
「織斑先生と呼べと言っているだろう、時間が押しているから早くしろ!」
一夏はアリーナで鈴に怒った理由を聞くことにして自らのIS『白式』を展開して、一気にアリーナへと飛び立った。
試合が始まり数分が経ち二人の戦いは一時均衡を保っていたが、徐々に一夏が鈴のIS『甲龍』の武装『衝撃砲』の前に押され始めていた。
「まずいな」
「まずいですわね」
箒とセシリアは一夏の試合を見守りながら互いに語り合っていた。
「私なら常に死角に回り込みそこから斬りに行くが…」
「えぇ、鈴さんの衝撃砲は広範囲で発射可能ですから近、中距離と隙が無いですわね」
「雪片弐型しか無い一夏ではやはりこの戦いは厳しいだろうな…」
勝負を焦った一夏が瞬間加速で距離を詰め、決めようとしたが、瞬間、アリーナの天井が割れ、一機の灰色のISが降り立った。
試合を見ていたシンは新たなIS、そして遮断シールドが発生したのを見て、直ぐ様ピットに向かった。
ピットは暗く、コンソールを見ても何がどうなっているのか分からなかった。
「千冬さん、私をアリーナに入れてください!」
「織斑先生、わたくしをあのISの迎撃に向かわせてくださいまし!」
「篠ノ之、ここでは織斑先生と呼べと言っているだろう……まったく、一夏といいお前といい覚えられんのか…」
箒とセシリアの二人もまた同じく遮断シールドが発生した事がわかった途端、急いで管制室にやって来たのだった。
「それにオルコット、今は教官や三年の人間が向かっている。お前のブルー・ティアーズは本来一対多、お前は多対一の訓練は受けているのか?」
「い、いえ…それは……」
セシリアはいままで全てを自分だけでこなせると思い、多対一の訓練は疎かにしてしまい、セシリア口ごもってしまった。
「そう言う訳だから早くここから避難しろ」
二人は渋々管制室から出ていくと千冬はため息をつきキーボードを叩いた、するとディスプレイに表示されたレベル4の文字、しかも現在遮断シールドは制御不能の事態に陥ってしまっている。これが意味することはアリーナ内は完全に隔絶され、逃げることも、助けに行くことも出来なかった。
今は三年生によって構成された10人から構成されたチームを向かわせているがどれだけ時間が掛かるか分からない。その一分、一秒が中にいる二人を危険に晒している。その事は千冬の眉間にシワを寄せるのに十分だった。
「鳳、一夏…」
千冬の口から知らず、二人の名がこぼれていた。
三年生、11人からなるチームが必要となる機材を抱えピット入ると、ピット内は暗く、何か濡れたものを叩き付けている音が聞こえ、思わず女生徒の一人が闇の中へ声を掛けた。
「誰!」
しかし返答は無く、依然として淡々と叩き付けている音が響いている、その事が女生徒達の恐怖を掻き立てた。そして誰かが灯りを付け、そこに居たのは間薙シンであった。
「ひっ…‼」
誰かが小さく悲鳴を上げた。彼女達の目の前にいるのは世界で二人目のISの男性操縦者、間薙シンであったがその姿を直視出来た生徒は少なかった。
彼女達の目に写る隔壁は血に濡れ、彼の姿も血の色に染まっていた。その事は一瞬で彼女達に悟らせた『彼は隔壁を壊そうとしていたのだ』と…
「間薙君、そこから下がって。ルミ、装置起動させて。エミ、準備して!」
彼女達のリーダーであろう人物は手早くチームに指示をするとシンに下がらせ一番後ろにいた生徒に彼を任せた、自身は隔壁の横にあるコンソールにケーブルを差し込もうとして隔壁を一目見て、血以外のなにが付着しているのが見えたので先にケーブルを差し込み、目を凝らして見るとそれは白く粉々になったシンの骨だった。彼女は吐き気を覚えたが、口に手をあてみんなの手前もあり何とか堪える事が出来た。
忙しなく動く彼女達の後ろでシンは一人の生徒の手当てを受けていた。
「大丈夫ですか?痛くないですか?それにISがあるのにどうして使わなかったのですが?」
「大丈夫だ、それに俺が傷つくのはいい、心を傷つけられる事がもっと痛い。だがISの事は完全に忘れていた」
「そうですか。ふふ、そうですか。えぇ、ですが手の傷は本当に大丈夫そうですね」
彼女はさも面白そうに笑った。すると彼女の手から淡い緑の光が出たかと思うとシンの傷は瞬く間に塞がり、シンの手は何事も無かったのように綺麗になった。
シンは誰にも聞こえないように小さな声で生徒に話し掛けた。
「……サイファーか」
「えぇ、正解です。どうです?この姿も良いでしょう」
サイファーの姿は一目見ただけなら金髪で何処かの国の生徒とも、自分と同世代とも思えるが、しかし中身は大魔王だから笑えない。
「しかし、貴方は貴方の力をもっと理解したほうがいい。貴方の力は今は失われていますが、その身にはしっかりと刻まれているのですから」
そう言ってサイファーはシンの頬の刺青を撫でた。
「…わかった、ありがとう。それともう少し余計な物を外しておいてくれ」
「わかりました、近いうちに更新しておきましょう」
そしてシンは血まみれの制服を脱ぎ捨て、ISスーツ姿になると、ISを展開した。
「ちょっと、間薙君何してるの‼」
しかしシンはそんな声も無視し、腰を落としスラスターを一度に吹かし、隔壁へと向かい、目の隅にISの投影ディスプレイが写った。そこに表示されていたのはワンオフアビリティー《貫通》。それを意識しながら隔壁へと殴りかかった。
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