怪獣娘—かいじゅうがーるず 地球の叫び (先詠む人)
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大地の叫び
大地(ガイア)の叫び


他のウルトラマンならともかく、ガイアの化身である彼らはこの世界にいてもおかしくないと思うんだ……


って考えたら発作的に書いちったw(プロット制作:15分,本文制作:47分)


『ギリギリまで頑張って、ギリギリまで踏ん張って。それでもどうしようもないときは……』

 

 なぜだろう。こんな時にあいつの言葉を思い出した。

 目の前にはガッツさんたちみんなと一緒に力を合わして倒したはずのシャドウジェネラル。一緒にGIRLSから帰る途中だったミクちゃんもウィンちゃんも……そして私も地に倒れ伏している。

 

 ガッツやピグモンさん、レッドキングさんやキングジョーさんのみんなと力を合わしてガッツの分身体を乗っ取ったシャドウジェネラルを倒したあの日から数か月。

 僕はあれから少しでも強くなろうと頑張ってきた。それはミクちゃんもウィンちゃんも一緒だ。けれど、それは今目の前にある現実において否定された。

 

「く……」

 

「カハッ…」

 

 ミクちゃんは口から血を零しながら倒れ、ウィンちゃんは気を失っている。そして僕は今、お腹の上を抑え込むようにストンピングを繰り返されていた。

 

「アギ……ちゃん…!!」

 

 ミクちゃんは必死に立ち上がろうとするけれどダメージが大きすぎるからかその場に再び崩れ落ちてしまう。

 

「…………」

 

 シャドウジェネラルは粒子をまき散らしながら僕を何度も何度も踏みつける。そして僕の体はそれにあらがうだけの力も残していない。

 

 ただ……これだけは………

 

 これだけは言いたかった。

 

『俺の名前を呼べよ。』

 

「助けてよ大地……」

 

 勢いよく振り上げられた足に対してぽつんと零すように口から出た言葉。それはとても小さくて、誰にも届きそうも無い言葉。

 だけど

 

「………?」

 

 来ると思っていた衝撃は来なかった。だけど代わりに

 

「キシャァーーー!!」

 

 何処からか飛来した紅い閃光によって目の前のシャドウジェネラルは吹き飛ばされていた。

 

「あ……あ……」

 

 体の奥底に眠っているカイジューソウルが「ここから逃げろ今すぐに。少しでも閃光(それ)から遠くへ」と目の前で徐々に像を結ぶ閃光へ向けて悲鳴を上げる。だけど僕は……

 

「だい……ち?」

 

 最初に執拗に攻撃されたせいで痛む変な方へと曲がってしまった左腕を押さえてそうポツリとつぶやく。その零した言葉に応えるかのように赤と銀の人影となった閃光は

 

「ジュワッ!!」

 

 の掛け声とともに着地。そして周囲に突発的かつ小規模な地震を引き起こした。

 

「うわっ!?」

 

 揺れによって体が跳ねあげられ、今度はうつぶせに倒れてしまう。

 

「イタタタタ……え…」

 

 ダメージで痛む体を無理やり動かしてシャドウジェネラルがいる方を見るとそこには、銀地に赤色の紋様が浮かび上がり、所々に金色のラインを走らせた背中が僕を守るかのようにシャドウジェネラルを抑え込んでいた。

 

「キシャー!!キシャー!!」

 

 あの時と違ってシャドウジェネラルはそんな奇声を上げながら目の前に立つ何者かにつかみかかるけれども、

 

「デュアッ!!」

 

 目の前のその誰かはその掴みを的確にさばき、カウンターで肘を入れたりなどして着実に攻撃を加えている。しかし、シャドウジェネラルはその体の一部から彼のガードを抜けて触手を伸ばして僕を狙ってきた!!

 

「あ!!」

 

「デュアッ!?」

 

 当たる!!そう思って目をつむり、少しでもダメージを減らそうと顔の前に手を当てる。

 

 

 

 

 ………しかし、攻撃は()()()当たらなかった。

 

「デュゥッ!」

 

 衝撃の代わりに耳に聞こえてくる苦悶の声。ゆっくりと目を開き、顔の前に合わせていた獣殻に覆われた手越しに前を見るとすぐ近くに青く光る逆三角形の塊。そしてそれを囲むように描かれた紋様。最後に僕のすぐ横にある金色の楕円状のラインが二本入ったとんがり頭。

 

 あの赤い閃光が変化して僕を庇うかのように戦っていた誰かが僕の代わりに触手の攻撃を受けていた。

 

「デュゥッ!」

 

 触手が直撃するたびに彼は苦悶の声を漏らす。

 

「なん…で……」

 

 みんなが倒れちゃった今。ボクがやらなきゃ……いけないのに…

 そう思いながらボクが立ちあがろうとしたその瞬間だった。

 

「デュアァアアアアア!!」

 

 雄叫びを上げながら彼は後ろ手に触手を掴み、一気に体を反転させて触手を左手に巻き付けた。そしてそのままの勢いでシャドウジェネラルへと頭から突っ込んでゆく。頭から突っ込んでいきながら彼は回転し、その身がドリルであるかのようにシャドウジェネラルを貫通した。

 貫通してすぐに彼は土煙を挙げながらこちらを向きながら額に両腕をあてつつ屈み、勢いよく後ろへと上半身をそらしてから前へと突き出した。

 それに連動するかのように頭部の尖ったところから飛び出した赤い光の(ライン)がしなりながらシャドウジェネラルへと直撃し、切り刻まれたかのように光のエフェクトを放ちながら小規模の爆発を起こした。

 

「うわぁっ!?」

 

 そのあまりの威力にボクは爆風だけで再び吹き飛ばされて転がっていく。

 

「………」

 

 転がるのが止まってやっと顔を上げたボクが見たのは彼が息を切らすかのように肩を上下している様子だった。

 ゆっくりと立ちあがってさっきまでシャドウジェネラルがいた位置を見る。そこには少し焼き焦げたかのような跡があることを除いてもうなにも存在していなかった。

 

「………」

 

 ボクがそんな状態の地面を見て唖然としていると、彼はちらりとこちらを見てから赤い光の粒子となって消えていこうとしている。

 

「待って!!」

 

 ボクがそう声をかけるも彼は

 

「ダッ!!」

 

 そんな掛け声を挙げて光になって消えながら西の空へと飛んで行ってしまった………

 

「あれって……ウルトラマン…?」

 

 前にカイジューソウル関係のデータベースを探しているときにピグモンさんに見せてもらった宇宙(ソラ)のかなたにあるといわれるM78星雲にいる光の戦士、ウルトラマンに彼は色合いと言いそっくりだった。

 

「アギちゃん!!」

 

「………あ、ミクちゃん。」

 

 その場に呆然と立ち尽くしていたボクをミクちゃんが心配して肩を叩き、ボクはそれで漸く現実に復帰した。

 

「ウィンちゃんはおなかを強く蹴られたから内臓を痛めてるかもしれないけどソウルライドしていたからそんなに重症じゃないだろうってさ。ただし万が一に備えて病院にだって。それで私もそうだけどアギちゃんも結構やられてたから病院に一応行きなさいってピグモンちゃんが。」

 

 そう言いながら心配そうにこちらを見るミクちゃん。ボクはそれに対して

 

「うん。」

 

 と答えてミクちゃんと一緒に赤いランプが光っている方へと歩き出した。

 

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 アギラの怪獣娘、宮下アキ。ミクラスの怪獣娘、牛丸ミクの両者がソウルライドを解除したとたんにダメージの反動で救急車の中で倒れてしまったのと同時刻。彼女たちがいた場所から少し離れた道で一人の青年が膝から崩れ落ちて四つん這いになりながら息を切らしていた。

 どこにでもいそうな雰囲気の黒髪のその青年は何か激しい運動でもしたのか、それとも恐ろしいものでも見たのか顔色は真っ青で汗を大量に掻いている。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 ほんのり点った街灯でぼんやりと見えるその瞳孔は開いており、心臓がおかしなビートを刻んでいるのか、呼吸も浅く、回数がとても多いものになっている。

 

「……はぁ……」

 

 少しの間その体勢のままで青年は呼吸を荒げていたが、口もとを手でぬぐいながら立ちあがり、ポケットの中に入っていたものを取り出す。

 

「……これが地球の意思ってことなのか…?」

 

 誰に告げるわけでもなくそう青年は呟くと握りしめた光電子管を再びポケットにしまい直し、やけに背中を気にしながらゆっくりとした歩みですぐ近くにあった城南大学と書かれた看板が置かれている校門をくぐって行った。

 

「………あの青年……今光に包まれて現れた…?」

 

 青年が校門をくぐってから数十秒後、最強の怪獣と呼ばれた宇宙怪獣ゼットンの怪獣娘が現れ呟いたことを見られていた張本人である彼を含めてまだ誰も知らない……

 

 




感想が欲しいです。


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大地の目覚め
大地(ガイア)の目覚め 光は立つ。


嬉しい感想をいただいたことと、卒論関係の授業で発表する際に使うレジュメ制作があったのでPCを起動していたこと。
その二つがあったので書きました。今回は資料集めとかやりながらやってたから2時間ぐらいかな?かかったの。
今回はあまりアギちゃん出てきませんし、怪獣娘要素は薄いですけど前話の謎の解明の手助けになればいいかな…と思います。


「高山!お前本当にやるつもりなのか!?」

 

 曾祖父(ひいじぃちゃん)が研究室に残していた装置をいじっていると同じゼミの先輩である吉田さんに後ろから肩を叩かれる。

 

「えぇ。これに関してはひぃじいちゃんが『実験したかった…いや、しないといけなかった…』って言い残して死んだのにじいちゃんも親父も怖気づいて起動させようともしなかった。だから俺がやらないといけないんです。」

 

 そう言いながらも俺は手を休めない。それに起動させようとしている理由はもう一つある。

 

 ……実は最近寝苦しい夜に夢である光景を見たのだ。

 

 大量の崩れてしまったビル、火が立ち上る道路、そしてたくさんの死人と動かなくなった怪獣娘と目の前で怪物(シャドウ)に頭を踏み砕かれる幼馴染の年下の少女。

 

『うわぁあああ!?』

 

 その日、大きな叫び声をあげて目を覚ましたのは未だに記憶に新しい。

 

 ひいじぃちゃんは俺と似たような夢を見て何かにとりつかれたかのようにこの装置を作ったとひいばぁちゃんから聞いている。ただ、結局作ることができても原因不明の不調により装置は起動しなかったそうだが。

 ひいじぃちゃんは未だに学会などで天才と呼ばれる科学者だったため、それでも原因がわからないならだれにもわからないと当時は言われていた。

 

 だけど、俺には何故か不調の原因が分かった。当時の技術で作られたこの装置は量子を加速するための電子管などの精度がこの装置の起動に求められていたものよりもわずかに甘かったのだ。

 今の技術ではそれは既に解決されており、一昨日テストで起動させたときは無事に起動した。ただ、量子空間へのダイブは起動テストをした時間が遅かったこともあって行っていなかったのだ。

 

 だから俺はこの装置を大学の授業が終わった今、19時から始まる飲食店でのバイトが始まるまでのわずかな時間を使って起動させ、量子空間へのダイブを行おうとしていた。

 

「だからと言ってお前がいきなりやるなんて危険すぎるぞ……」

 

 吉田さんはそう言いながら俺の手を無理やり止めようとする。しかし俺は

 

「だけど俺がやらないと誰がやるんですか?この装置は俺以外誰も触ろうとしない。この高山研究室の邪魔な物体(はれもの)としてみんな扱っている。だからなおさら俺がやらないとだめじゃないですか。」

 

 そう言って俺は装置につながるヘルメットを被った。ひいじぃちゃんが残した書類によるとこの状態で装置を起動すると量子空間へダイブし、地球の意思を知ることができ、それが世界を救うカギになるはずだった。

 

「量子加速装置……起動。」

 

 俺はそう言って装置につないだパソコンのキーボードをたたき、プログラムを起動させる。

 

 装置がうなりを上げながら起動した瞬間、激痛が頭に走り、装置内からあふれ出した電流が空間に走り出す。

 

「高山ぁ!!」

 

 吉田さんのそんな叫びを聞きながら俺の意識は加速領域内の世界へと意識を飛ばした……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 前から後ろへと光の粒子が線を描きながら高速で流れていき、光のトンネルが奥にある闇へと続いていく。

 トンネル内は無重力空間のようになっており、俺は何かに導かれるかのようにトンネルの奥へ進んで行った。

 トンネルの奥には広い空間が広がっており、そこには赤い光に覆われた巨人が立っていた。

 

「あなたは……?」

 

 その偉大さに心が震えてそう呟く。しかし、巨人は俺の問いに応えずその手をサッと振るった。

 巨人の振るわれた左手から伸びてきた紅い光が俺を包んでいく。

 

「うわぁぁぁぁぁああああああ!?」

 

 熱くはない、だが、目が焼けそうなほどまぶしい光が網膜を焼き……

 

「っ!?」

 

 装置のすぐそばに倒れた状態で目を覚ます。

 

「装置は!?」

 

 後ろを急いで振り返ると装置は先ほど起動したときの電流を放つなどしていた状態が嘘であったかのように静かにアイドリング状態を保っていた。

 

「……今のイメージは……」

 

 脳裏に焼き付いた巨人の姿を思い浮かべながらそう呟いたところで

 

 bbbbbbbbb

 

 突然スマートフォンのバイブが響き、俺はスマホの画面を覗く。画面には18:45という時間とバイト!と表示されており……

 

「やっべ……遅刻する!?」

 

 慌てて転びながら手近にあるものを全部ポケットに入れたりして研究室から飛び出す。バイトの場所は今いるこの研究室から十分ぐらい走ればギリギリ間に合う距離にあるコンビニ。

 そうして慌てて飛び出したために俺は忘れてはならぬことを忘れていた。

 

 俺が研究室から飛び出してから数分後、何かを警戒するかのようにゆっくりとした足取りで影が近くの柱の影からにじみ出てくる。

 そして陰は誰もいないことを確認するかのようにゆっくりと扉を開いて研究室へと入って行った……そして()()()が研究室から漏れ出し……数秒後に消えた。

 

 

 

 結局バイトに遅刻し、店長に怒られ、バイトが終わると同時に掛かってきた大学からの電話で研究室の鍵が開いていたことでさらに怒られ、凹んだ状態で家路を歩む。

 

「くっ!?」

 

 家まであと少し……というところで突然激しい頭痛に襲われるのと同時に遠くで火柱が上がった。

 

「……火事…か?」

 

 ふらりと何かに導かれるかのように火の手が上がった場所へと家から離れて歩みを進める。

 

 ますますひどくなる頭痛に耐えるために左手で頭を押さえながらゆっくりと火柱が上がった場所へと向かうとそちらから逃げ惑う人の波が津波のように襲い掛かってきた。

 

「!?」

 

 慌てて塀沿いに立ち、その津波が通り過ぎるのを待つ。時間にして十数秒ほどだっただろうか、人の並みは一時的に消え、俺はその隙に波が来た方を見た。

 そこには……

 

「シャドウ……と怪獣娘!?」

 

 俺が驚くのも無理はない。なぜなら怪獣娘と会うことはかなりの頻度であったとしても、それがシャドウと戦闘中という状況に鉢合うのはほとんどない確率と言っても過言ではないものだったからだ。

 

「なんて日だよおい……」

 

 そのまま陰から怪獣娘たちが戦っているのを見ているとひとりの少女が吹き飛ばされてきた……と思ったのと同時にシャドウと戦っていたすべての怪獣娘が吹き飛ばされていった。

 

「おいおい嘘だろっ!?」

 

 こちらに吹き飛ばされた8つの龍の頭を背中側に持ち、クリーム色の髪に龍を模したヘッドセットをつけた怪獣娘の変身が解除され、どこかの高校の制服に身を包んだ姿に変わる。

 

「あんた大丈夫か!?」

 

 俺が急いで駆け寄りながら声をかけるも、少女は一瞬だけこっちを見てからそのまま気を失ってしまった。

 

「クソが!状況最悪だぞっ!?」

 

 近くには意識を失ってしまった怪獣娘、後ろには下がれるが戦闘の余波のせいか近くの電柱が倒れそうになっている。

 そして前にはこちらを完全にとらえているシャドウ。

 

 頭痛は未だに収まらない。逃げたいと本能が叫んでいるが、逃げるわけにはいかなかった。

 

「俺がやらなきゃ……この人も危ないじゃねーかクソったれ!!」

 

 近くの民家から攻撃の余波で壊れたときに道路の方へと転がってきたのだろうか、落ちていた木製バットを手に持って俺は少女を守る様に構えた。

 

「いつも守ってもらってんだ……ここで守らずに逃げるぐらいなら俺は!!」

 

 木製バットを振り上げるように構え

 

「俺はぁああああああ!!」

 

 叫びながらシャドウの方へと駆け寄り、勢いよく振り下ろす。

 

 コーンッ!!

 

 そんな軽快な音と同時に俺の手元から重さが消える。

 見るとバットは途中で圧し折れ、前を向くとシャドウは未だに健在だった。

 そして俺は未だに宙に浮いており、シャドウはを触手を後ろへと振りかぶっている。そこからはすぐだった。

 

「ガッハッ……」

 

 立ち込める土煙。背中から聞こえる何かが壊れる音。そして崩れ落ちてくるブロックの衝撃。

 口端からは血が垂れ、背中には激痛が走る。

 崩れ落ちてきた大量のブロックは重しとなって俺に覆いかぶさり、俺の動きを完全に奪ってしまった。

 

「ちく……しょう……」

 

 霞んでいく視界の中でシャドウがさっきの少女に触手を振りかざすのが見えた。その瞬間、その少女の顔に幼馴染の顔が重なった。

 

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!!!」

 

 叫びながら必死に立ちあがろうとする。その瞬間頭痛が走り、脳裏にあの量子ダイブの時に視たトンネルが走る。痛みに一瞬だけ目を細めた次の瞬間、世界は灰色になって完全に静止してしまった。

 

「……?一体何が…」

 

 鳥も、燃え上がる炎も、舞い上がる新聞紙も、そして風も。何もかもすべてが時間を奪われたみたいに固まってしまっていた。

 

「……」

 

 俺が無言で固まって周りを見ていると周囲から赤い光が線のように走りながら俺の真下へと集まっていき……

 

「うぉ!?」

 

 俺の真下にあったマンホールが抜け、そこから俺は地下へと一気に落ちて行く。

 

「どこまで落ちるんだぁあああああ!!!」

 

 ただ下水道に落ちたのならというレベルを超えて俺はさらに下へと落ちて行く。

 そして世界は真っ暗闇に変わった……と思ったのもつかの間、今度は量子ダイブしたときのように光の線がトンネルのように広がり、下への道を創り出していく。

 

「……!!」

 

 そして俺はたどり着いた。

 

「赤い………巨人!!」

 

 あのダイブしたときに視た巨人のいる空間へ。

 

「俺は……俺はあなたのような力が欲しい!あなたの光が欲しい!………今この瞬間だけでもいい!俺に力を貸してくれ!!」

 

 宙に浮かぶ俺の悲痛な叫びが届いたのか、巨人はうなずくかのようなしぐさを見せた後俺にその両手を三角形のように向けて構えた。

 

「俺を……認めてくれるのか…?」

 

 俺はその手の隙間を通り抜けて巨人の胸にある逆三角形の青い光を放つ宝玉へと吸い込まれていく。

 宝玉の中は赤い光で包まれており、俺はその中に入り込んでいた。

 

「……この光……あたたけぇ……」

 

 光は俺が負っていた傷を癒し、そして体の中へと吸い込まれていく。

 

「俺を包んで?……いや違う、これは俺自身が光となって………」

 

 その瞬間、俺は爆発的な光に包まれて………

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 私は、あの戦闘の途中で気を失ってしまった。

 だから後で記録として残っていた所々が飛んでいる映像を見ているとそこには

 

「体の底にあるカイジューソウルが喜んでいる?これはいったい……」

 

 画面に突然現れた銀色の超人。それを見た瞬間、私の奥底に眠るカイジューソウルは喜んでいるかのように温かくなった。

 これまでに一度も起きたことがなかったその現象に私は驚きを隠せない。

 目の前の画面には銀色の超人が地響きを鳴らしながら土煙を上げて着地する様子が映っていた。

 

 超人はどこか困惑した様子を隠せずにいたが、すぐに目の前に立つシャドウに相対するかのように構え、

 

「デュアッ!!」

 

 そして駆け出した。

 

 




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その名は大地(ガイア)

短編ランキング15位、お気に入り登録11人って確認してたらなってたので書きました。

……これ連載に切り替えた方が良いのかな?


 光に包まれてぐんぐん大きくなっていく感覚に襲われる。

 

 しかし、ある程度大きくなったと思ったところでシュンッという音とともに俺は普通の大人のサイズまで引き戻された。

 

 そして光を裂くように出現したのは地面から少し宙に浮いたシャドウのすぐそば。

 

「一体何がどうなってんだ…」

 

 急に開けた視界の中で手を動かすとあの巨人のように銀色の光沢に包まれた手が見えた。

 

「キシャァァーー!!」

 

 目の前でシャドウが俺を威嚇するかのように叫びをあげる。俺はそれに対して

 

「デュアッ!!」

 

 両手をボクサースタイルで構え、

 

「ダァッ!!」

 

 一気に距離を詰めるかのように走り出す。

 シャドウは詰め寄ってくる俺に対して触手を何本もぶつけようとはなってくるが、俺はそれを

 

「ダァッ!デュアッ!ダァッ!!」

 

 ボクシングのパリングの要領で払い、逸らし、そしてこぶしを握り締める。

 

「デュァッ!!」

 

 右手を一瞬だけ腰を回すように後ろへと下げ、足、腰、肩、そして拳の順に運動エネルギーを伝えて赤い光に包まれた右こぶしをシャドウの顔面にぶち込む。

 顔面に直撃した拳は光を開放し、シャドウを数メートル吹き飛ばした。

 

(行ける……守れるぞ!!)

 

 そう思いながら俺は無意識のうちに腰をわずかに落とし、左手を握りしめて右手を手刀でも放つかのように構える。

 そして伸ばした右手を左手でTの字を描くように交差させると交差した両手を中心にエネルギーが球状に一瞬広がり、収縮するかのように交差している場所で高熱の炎となる。

 

「デュァァァァァ」

 

 交差したその拳を今度は野球のピッチャーがボールを投げるかのように上に構え、左手を右ひじに乗せてL字を作る。

 

「ダァァァアアアアアッ!!」

 

 叫びながら動かしたL字に組まれた腕からはマグマのようなオレンジ染みた光が一直線に光線となってシャドウに直撃した。

 

「キシャァァーーアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 シャドウはその抗戦を受けて一瞬だけ固まったのち、

 

「ッ!?」

 

 内側から光があふれだすかのように爆散した。爆散したことによってシャドウの破片が光となりながら辺り一面に飛び散っていく。そんな中で俺は

 

「デュゥゥ…」

 

 目の前にかなり巨大な赤い光のシールドを張って少しでも被害を抑えようとしていた。

 結果的に爆散した破片と衝撃波俺がいた場所から()()()かなり抑えることができた。しかし……

 

(これは……まずいかも…)

 

 俺が立っていた場所の後ろではなかった場所、即ち怪獣から見て俺が経っていた方とは違う三方には衝撃波も破片もすべてが問答無用で飛び散ったことによってすぐ近くの家は半壊、そして遠くの家の窓ガラスは何枚も割れていた。

 

「デュゥ(やべぇ)……」

 

 俺は周囲をちらっと見渡す。遅い時間であるために近隣住民はみんな避難しているだろうということ、そして先ほどの戦いの中で怪獣娘は皆気絶していることはわかっていたが、今もそうなのか気になったのだ。

 幸いなことに怪獣娘以外の生命反応は感じられなかった。

 

「デュ(に)……デュアッ(逃げるが勝ちだ)!!」

 

 俺は慌ててその場から走って逃げだそうとした……その時だった。

 

「デュッ!?」

 

 足先から赤い光の粒子に体が覆われていく。そしてそのまま俺は光となって……

 

「あばっ!!」

 

 家の目の前にある駐輪場へ頭から突っ込む形で元に戻った。

 

「いってぇ………」

 

 頭から突っ込んだ際に擦れてしまって出血している鼻を抑えながら立ちあがる。すると目の前に

 

「これ……さっきの光…?」

 

 黄色い光が俺が何かをするのを待つかのようにふわふわと目の前に浮かんでいた。

 

「光なら光電子管に納められるかも……ってあれ実験室にあるじゃん……ン?」

 

 光の前で何かを思いついたり絶望して崩れ落ちたりした後で俺は着ているコートのポケットに見覚えのある形を見て引っ張り出した。

 

「あった……これを…」

 

 ポケットの中に入っていたのは上下を鉄で蓋された光電子管。俺がそれをゆっくりと目の前で浮遊する光へと当てると

 

「入って行った……」

 

 光は吸い込まれるかのように電子管の中へと入っていき、その中で淡く輝き始めた。

 

「……これからも力を貸してくれるってことなのか?」

 

 俺がそう呟くと光はその問いに応えるかのように一瞬だけ強く発光したのだった。

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「これがかろうじて残っていた例のアンノウンが現れたときの映像の一部始終です。」

 

 少し幼さを感じる声がそう言うと暗かった部屋が明るくなった。

 そこはとある一室で、3人の少女が画面と向かい合うような形で座っている。

 少女たちは皆同じ青地に黄色などのラインが入った服を着ているが、背の高さは小学生ぐらいから高校生ぐらいまで様々だった。

 その中で、一番背が高く、凛とした印象を受けるピンク色の髪の少女が画面の一部分を指しながら告げる。

 

「このとき、この瓦礫の下に埋まって行った少年ってどうなったのかわかるかしら?」

 

 その細い指は画面左端に辛うじて映っている崩れ落ちた瓦礫を指していた。

 

「えっとですねぇ……」

 

 少女の指摘に対して紅い髪の小学生くらいの背の宝の少女が手元の資料をあさり出すが、探している情報が見つからないのか焦った様子で資料をめくり出す。

 しかし……

 

「ない………どこにも書いてないです……」

 

 シュンとした様子で顔を下げる赤い髪の少女の様子を見てすぐ横に座っていた黒髪の少女が頭をなでながら

 

「ないってこたぁ無いだろう。ちょっと見せてくれ。」

 

 そう言って紅い髪の少女から資料を受け取るとそれを自分もペラペラとめくって探し始めた………が

 

「本当にない……それどころかいた形跡すらなかった扱いになってるってことはこいつ一体どこに消えたんだ…?」

 

 黒髪の少女は資料を見て『ない』という言葉の意味を理解し、呆然と呟く。そんな二人の様子を見てピンク色の髪の少女は

 

「恐らく、彼がきっとアンノウンの鍵を握ってるとみてもいいわね……」

 

 そう言うなり、立ち上がった。

 

「おい、どこ行くんだよ!」

 

 黒髪の少女がその突然の行動に驚いて声をかけると

 

「少し、急用があるの。それと、水野さんを一度こちらに呼んで話を聞いた方が良いかもしれないわね。そちらは任せるわ。」

 

 ピンク色の髪の少女はそう言ってさっそうと部屋から立ち去って行った。

 部屋に残された赤い髪の少女と黒髪の少女が顔を見合わせる中でピンク色の髪の少女と入れ替わる様に同じ制服を着た茶色い髪の少女がぴょこんと顔を出す。

 

「あの……」

 

「あれ~?アギアギどうかしましたか~?」

 

「おぅアギラ。どうかしたのか?」

 

 部屋に残っていた二人が顔を出した少女、宮下アキにそう声をかけるとアキは困った様子で

 

「なんかお二人を探していたみたいなので連れてきたんですけど……取り込み中ですか?」

 

 そう言いながら後ろに控えていたらしい少女をアキは二人に見せる。そこに立っていたのは高校からの帰りにそのまま本部に来たのか、高校の制服姿の流れるような銀髪の少女だった。

 二人の前に堂々と立ち、銀髪の少女は神託を受けた巫女のようなオーラを感じさせながら

 

「あのアンノウンについて、私のカイジューソウルが伝えてきたことがあったので報告に参りました。」

 

 先輩二人にそう告げた。

 

「なんだって!?」

 

「それでカイジューソウルはなんといっているのですか~?」

 

 その告げられた内容に黒髪の少女は驚いた様子で、赤い髪の少女は恐る恐ると言った様子で尋ねる。そしてアキは黙ってその様子を見ていた。

 3対の視線を集められた少女は鈴のような声で

 

「あれは、あのアンノウンはウルトラマンガイア。この星のが生み出した大地の化身(ヒカリ)です。」

 

「「………」」

 

「大地…?」

 

 告げられた聞き覚えこそあるが、しかし聞いたことのないその名に部屋の中は静まり返る。

 誰も言葉をそれ以上発せず、ジジジジジとスクリーンにガイアが着地する瞬間を捉えた映像が投影される音だけが部屋に響いていた。




感想、評価をもらえるとテンションが上がります。


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