試験に出るリリカルなのは? (MIRI)
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<試験前-1>

というわけで始めまして。MIRIです。
2次創作は初めてなのに、気がついたら書いてました。
投稿は不定期になるかと思いますがよろしく!


 アストライア=dr423*fは苛立っていた。

 「神」と呼ばれる存在であろうと、「神界」と呼ばれる組織に組み込まれる存在である以上、上下関係はある。

 また、地上の人間達が想像しているよりも完全無欠ではない。

 感情的になってトラブルが起きることもあれば、対神関係がこじれることもある。

 非常に人間的な面がある、というか人間が彼らに似せて作られたのだ。

 というわけで、アストライア=dr423*fは上司である姉にせっつかれて、現場に向かっているところなのである。

 彼女は姉であるデュケー=ch582*dが好きであった。立派なシスコンであると言っていいほど好きであった。その姉を困らせない為に彼女は仕事に打ち込んでいた。

 彼女にとって「仕事の不都合=姉が困る」なのである。

 その意味で彼女は己の仕事に滞りが起きている現状に腹を立てていたのだ。

 (いったい、いつまで待たせる気よ!?)

 一見無表情で現場に向かう彼女の周りには神にあるまじき鬼気が纏わり付いていた。

 彼女をこれほど悩ませている仕事とは「神候補選定」である。

 その候補者の一人がいつまで待っても用意が終わらない為にこうして彼女がわざわざ現場まで出向くことになったのだ。

 

 その場に一歩足を踏み入れたとたん、アストライア=dr423*fは絶句した。

 そして次の瞬間

 「何やってるのよーーーーーーー!!!!!!」

 彼女の叫びがその場に響き渡った。

 

 

 アストライア=dr423*fを絶叫させる、という快挙?を成し遂げたのは第29853680f世界の神候補である天使ヘルパイgz8889#hである。

 性格は堅実で地味。上昇志向があまりなく、既に同世代の殆どはそれぞれ神へと昇格しているのだが、それをうらやむでもなく、素で「おめでとう」と言ってのける。

 通常の天使が引き受けようともしない半端仕事を押しつけられても笑顔で引き受け、相手の役に立てたと喜ぶ。

 少し要領のいい天使からは馬鹿にされ、友人には気の毒がられる。そんな天使であった。今回、今まで真面目にやってきたことが(友人が上司に報告して)ようやく評価されて、神へとなる機会が回ってきたのだ。

 事前にそのような情報を得ていたアストライアとしては、これほどの遅れを引き起こすような天使とは思えず,何かトラブルでも起きたのだろうと踏んできたのだが…。

 さすがにこれは予想外だった。

 目の前にあった光景。

 それはヘルパイと寛いでお茶を飲む今回の試験用の「魂」だったからだ。

 



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<試験前-2>

とりあえず連続投稿です。


 女神(アストライア)の剣幕に恐れをなした天使(ヘルパイ)がしどろもどろになりながら、そもそもの事情を説明を始めたところによると、それは次のような事情だった。

 

 3単位時間前。

 「君の願いを3つまで聞くよ。」

 目の前に現れた「魂」にヘルパイgz8889#hは語りかけた。

 時間は余り残されていない。できる限り手際よくしなければならないのだ。

 しかし、目の前の「魂」は沈黙したまま。

 「えっと、聞こえてる?」

 「…聞こえてはいるが。」

 「じゃあ、早くしてくれると助かるんだけど。」

 「意味が分からん。」

 「え?」

 目の前にいるのは確かに試験用の「魂」である。胸元についているタグにもそのように記載されている。それが何故?

 「だいたいここはどこで、あんたは誰なんだ?」

 「…えっと説明受けてない?」

 「目の前が暗くなったと思ったら、いきなりここにいたんだが?」

 「何だってー!?」

 慌てて調べてみても、通常の手続きを経て、ここに来たことに書類上はなっている。

 しかし。

 「魂」に確認していくと、いろいろ困った点が出てきた。

 まず、事前説明はなし。

 そもそも目の前が暗くなる直前、自分は目の前の老人を助けようとして自動車にはねられた記憶が最後。死んだことは理解しているが、何故ここにいるかは不明だという。

 ヘルパイgz8889#hは頭を抱えたくなった。

 (そりゃ、いきなり「3つの願い」なんて言っても理解できないよね。)

 仕方なしに貴重な時間を費やして、「魂」に事前説明を行う。

 曰く今回は神候補の自分の為に、或る世界に行き、その世界の変革を促してもらうこと。

 曰く自分以外にも神候補はいること。

 曰く変革の度合いによって、その世界の主神と副神が決まること。

 曰く変革の度合いを測る為に、何も干渉がない場合ある物語どおりに歴史が進むこと。

 曰くその世界で自分の為に働いてもらう代わりに「3つの願い」をかなえること。

 曰くその「仕事」を引き受けた「魂」が神候補の前に送られてくること。

 曰く…等々

 

 長い事情説明が終わって、ようやく目の前の「魂」が頷いた。

 「なるほど、事情は分かった。」

 その「魂」をヘルパイgz8889#hが見つめながら問いかける。

 「で、やってくれるかな?」

 「拒否権はあるのか?」

 「うん、まあ何とか。」

 「たとえばあんたが棄権するとか?」

 「たぶんそうすれば、大丈夫。」

 「そうした場合、あんたの立場は?」

 「格下げになるくらいだから、気にしなくていいよ。」

 「…分かった、やろう。」

 「いいのかい?」

 「それなりにおもしろそうだし、あんたがいい天使(ひと)みたいだから、な。」

 「ありがとう。」

 というわけで、「3つの願い」を選ぶことになった。

 



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<試験前-3>

今日はここまでです。


 「…信じられないようなミスだけど、あんたが嘘つくような天使じゃないことは分かってる。」

 「ありがとうございます。」

 しかし、そこでアストライア=dr423*fは天使をギロリと睨む。

 その迫力にうろたえて挙動不審になるヘルパイgz8889#h。

 「でも、それで何で二人して寛いでお茶を飲むことになったのよ!」

 「実は…」 

 

 2単位時間前。

 「じゃあ、3つの願いを教えてくれるかな?」

 「魂」に「3つの願い」を聞くヘルパイgz8889#h。

 「確認だが、その世界に行った時に役立つ能力を願う、ということでいいのだな?」

 「そうだね。」

 「で、それは自分が知っている創作物の中から選ぶ、と。」

 「そうだよ。人気なのは『○輪眼』とか『ド○クエの呪文全部』とかが多いかな?」

 「ならば…」

 「魂」が選んだのは次の3つだった。

 ・「魔界○市」の白い医師の能力全て。

 ・「魔○都市」のせんべい屋の能力全て。

 ・「吸○鬼ハンターD」の主人公の能力全て。

 「…好きなんだ、菊○秀行」

 「ああ、愛読書だな。」

 「分かったよ。じゃあ、それで。」

 

 

 「…何も問題ないように聞こえるけど?」

 「ところが、ですね。」

 

 

 -エラー-

 「これで20回目。」

 「何故だ?」

 3つの願いを付与しようとすると先ほどから原因が分からないエラーが出るのである。

 これは一度原因を探った方がいいだろう、ということで一息ついたところに女神がやってきたのだった。

 

 

 「願いの付与でエラー?」

 そんな事象は聞いたことがない。

 「ちょっとやってみてくれる?」

 「わかりました。」

  ヘルパイgz8889#hは21回目のトライを試みる。結果は…。

 -エラー-

 「確かにエラーが出るわね。」

 ここで、アストライアは上司である(デュケー)に連絡を入れる。

 『姉さん、妙なことが起きてるから、かまわず他の4人を進めて。』

 『でも同時に行わないと審査に歪みが…』

 『もう歪みが出てるの。』

 『どういうこと?』

 『実は…』

 『…なるほど。起きるはずのないミスに原因不明のエラーね。』

 『この件は慎重に捜査するからとりあえず、審査を進めてもらうということで。』

 『分かったわ、彼は後から送り込んで、その偏差を後から計算で取り除きましょう。』

 『ごめんなさい。』

 『あなたのせいじゃないことで謝る必要はないわ。それじゃ。』

 通信を終えるとアストライアは2人に向き直る。

 「とりあえず上司(姉さん)の許可をもらったから、エラーの原因を突き止めるわよ。」

 ここに臨時の原因究明チームが結成された。




後書きらしきもの
 というわけで、無謀な挑戦を始めたMIRIです。
読んで少しでも面白いと思ってもらえればうれしいです。


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<試験開始?-1>

それでもまだ転生しないんです。
こんなに引っ張って良いんだろうか? 



 「やっと開始、ですか。」

 ほっとしたような表情で自分の代理人である「魂」と話す1人の天使(神候補)がいた。

 長く光る白銀色の髪に満開の花を思わせる美しい容姿。女神と言われても信じられるだけの美しさだった。彼女の名前はアフィaa0012#a。

 「待たされたわね。」

 「たぶん『彼』のせいですね。」

 「彼?」

 いぶかしげな「魂」の問いに微笑みながら天使は返事を返す。

 「ええ、昔から要領が悪いんです。」

 「でも、いい天使(ひと)なんでしょ?」

 「どうしてそう思うんですか。」

 「貴方がそんな優しい表情(かお)してるから。」

 思いがけない指摘に、内心少し焦るがそこは表情に出さないようにして頷く。

 「昔から、他の天使の雑用まで引き受けて走り回ってましたから。今回もそれで取りかかりが遅れたんじゃないか、と。」

 「あきれた。今から試験だというのに頼む方も頼む方なら、引き受ける方も引き受ける方よね。」

 「それはさておき、貴方を送り出しますから。」

 「わかった。がんばるからね。」

 「お願いします。」

 「じゃあ、今度会えるのは死んでからかな?」

 「多分そうです。」

 「すぐ会わないように気を付けるわ。」

 「私たちにとってはすぐですけどね。」

 そう言って「魂」を送り出す。

 送り出した後、先程の話題に上がった天使のことを思い浮かべる。

 (できれば一緒に神になりたいんですけど…。がんばってくださいね。)

 

 

 「ようやく開始か。」

 自分の担当の「魂」を送り出した後、つぶやくもう1人の天使(神候補)

 彼の名前はアープad1212#d。今回試験を受ける天使の中でも1,2を争う実力者である。

 「彼女の隣に立つのは私か、それとも残りの3人か。」

 送り出した「魂」の行方を見ながら、自分にできるだけのことをした達成感がその顔には浮かんでいた。少なくとも残りの3人に引けを取らない自信はある。それでダメなときはダメなときだ。そう考えて彼は結果が出るのを待った。

 今回の試験は実質トップ合格は決まっているようなもの。彼女に勝てるものはいない。

 ならばそれに次ぐ成績をいかに収めるか、そこにかかっている。

一緒に試験を受ける天使(神候補)のことを思い出した。

 (まあ、負けるとは思えんが。ただ、あいつとは競いたくなかったな。)

 友人である天使(神候補)の困った顔が浮かぶ。

 (しかしこれも試験だ。手を抜くわけにはいかん。)

 そう考えると、結果が出るまで待機することにした。

 

 -神界某所での会話-

 「始まったな。」

 『ああ。』

 「誰が勝っても」

 『恨みっこなしだ。』

 「彼ら3人の内、誰が彼女の横でも構わん。」

 『だが、あいつだけはダメだ。』

 「ああ、奴はダメだ、ふさわしくない。」

 『まあ、そうならないように…』

 「手は打ったけど、な。」

 『そもそも、何であんな奴が試験を受けられるんだ?』

 「功績ポイントが貯まっていたらしい。」

 『あいつでかい仕事なんかやってなかっただろうに。』

 「他天使(たにん)の雑用ばかりやってたゴミポイントが貯まりまくってたらしいぞ。」

 『…』

 「で、それを彼女が見つけて申請したらしい。」

 『彼女の優しさにつけ込んだわけか。』

 「全く許せん奴だ。」

 『ああ。』

 




後書きらしきもの
 この場合、神候補の試験とは「いかに変革を起こしそうな魂を見つけるか」ということになります。幾つか保管されている魂からどれを選ぶか、ということですね。
もちろん、どんな能力を求めるのか、ということまでを含めて。そのような観測力、未来予測力等が世界を管理する神に求められる力となります。


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<試験開始?-2>

 (まさかこれが原因とはね。人間の想像力を侮っていたわ。)

 さすがは女神。エラーの原因を突き止めることに成功した。(ただし8単位時間かかったが。そのせいで、美しかった顔には若干隈が浮いていた。)

 「結論から言うわ。原因は彼の力不足。」

 指さされたヘルパイgz8889#hががっくりうなだれる。神にダメ出しされたに等しいので無理もない。

 「落ち込む必要はないわよ。他の神候補でも一緒だから。」

 「魂」が選んだ3人の能力。そこに問題が潜んでいたのだ。

 白い医師の治療は神の呪いや神の力すら凌駕し、死者さえ蘇らせる奇跡を行うことができる。

 せんべい屋の身に潜みし本性は全てを破壊する破壊神そのもの。

 ハンターの剣はあらゆる敵を切り、ついには外つ神すら切り伏せる。

 神の力を凌ぎ、神そのものになり、神すら殺せるもの。

 そんな存在を神候補にすぎない天使が生み出せるはずもない。

 「ここは素直に人間に感心しておくべきね。」

 「ということは」

 「願いを変更すればいいはずよ。」

 ならば、ということで再トライ。

 

 

 

 -エラー-

 

 「どういうこと?…願いが固定?」

 

 ここで新たな問題が発覚した。いかなるバグか、「魂」に上級神試験の設定が為されていたのである。

 上級神試験は、限られたポイントの中でできる限り「魂」の能力を高めることが求められる。

 神試験が基礎力を見るのなら、上級神試験は応用力を試される。ここにさらなる問題が潜んでいた。

 「…詰んだわね。」

 「詰んだ、な。」

 「詰んで…ますね。」

 一息入れるためにお茶を飲みながら状況を確認する3人。なんだか空気が煤けている。

 「魂」に使えるポイントは100ポイント。

 一方、「魂」が願った願いは、それぞれ300ポイント。

 その内、2つはバグのためか固定されてしまっている。最後のハンターの願いは外すことができたので、必要ポイントは実質600ポイントである。

 「いろいろ制限つけても能力だけで300ポイントくらい必要よ。」

 「後200ポイントをどうやって削るか、ですね。」

 ここで「魂」が提案する。

 「いっそのこと、『(自分)』を交換するのはどうだ?」

 しかし、即座に二人に却下された。

 「それはダメ。」

 「ダメですよ、それは。」

 理由を聞くと、試験用の「魂」は試験に使用されない場合、通常の転生サイクルから外れて消滅してしまう。そしてそのような結果を引き起こした場合。

 「担当した天使は罰として二度と神試験を受けられなくなるの。」

 「魂が消滅すると貴方という存在が消えてしまうんです。」

 2つの理由で却下された。

 かといってエラーが解消されなければ転生プロセスを開始することができない。

 「しかし能力に制限を付けても、ポイントはこれ以上減らないんだろ?」

 「ええ、せんべい屋の方は破壊神を封印すれば50ポイントくらいになるんだけど…。」

 「白い医師の方は制限はせいぜい死者蘇生禁止くらいですよね…。」

 「それだけだと、240ポイントなのよ。」

 「他にポイントを減らす方法はないのか?」

 「あるにはあるけど、お勧めできないわね。」

 「何をするんだ。」

 「使用条件で縛るか、身体能力制限を付けるか、環境条件制限を付けるか、のいずれかね。」

 「ただし、試験の目的である事象の変革には著しく不利になります。」

 「だが、残り190ポイント下げなければ先に進めん。」

 「ゴメン、それ以上下げなきゃダメ。」

 「?」

 「必ず『3つの願い』が必要なの。」

 「3つめの願いの分のポイントもいる、ということか。」

 「そう言うこと。」

 とにかくやるしかない、ということで3人は条件の洗い出しに入った。

 




 後書きらしきもの
 やっと転生への道筋が見えましたが、まだ転生できません。
 転生物の筈なのに転生しない。これで良いのでしょうか?
 後2話くらいはかかりそうです。


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<試験開始?-3>

 結果として全部やることになった。

 まず使用条件では。

 一度にどちらかの能力しか使えない。更に一度使ったら白い医師の能力は1週間使用不可。この条件で-70ポイント。

 更に医師の能力を使うためには「患者」からの依頼と「対価」を貰うことが必須。これで-30ポイント。

 「合わせて-100ポイント。これが限界ね。」

 さらに身体能力条件の制限に入る。

 「とりあえず魔力のディフォルトはAだからここから考えましょ。」

 「?」

 「そうですね、どこまで下げるかですね。」

 「ちょっと待て、魔力って何だ?」

 「「えっ!?」」

 慌てて確認を始める女神と天使。その結果。

 「まさか…原作知識がないとはね。」

 「さすがに盲点でした。」

 「二人で納得してないで、どういうことか説明しろよ。」

 「ああ、あなたが行くはずの世界は通称『リリなの』の世界なのよ。そこでは魔力が必要なわけ。」

 「で、変革に必要なので原作知識のある『魂』が選ばれる筈なんです。」

 「なのに俺には知識がないと。ならば、それはマイナスポイントにできないのか?」

 「できるわね。原作知識の削除で-50ポイントよ。」

 「しかも、もともと無い知識ですから実質デメリットはありません。」

 「これで後40ポイントちょっとか。」

 その後、とにかく魔力をぎりぎりのDまで引き下げて-20ポイント。

 身体能力的には殆ど差がないので、その部分はいじらないことにした。(「人間の体力なんて誤差の内よ」女神談)

 後は環境状況制限だけとなった。しかし。

 「これで後20ポイントはきついわね。」

 「デバイスを最低の物にしても-5ポイントですからね。」

 「またわからん物が出てきた。デバイスって?」

 「ああ、魔法を使うために必要な道具ですよ。魔力をDにしたので使えるデバイスも性能は低くなるんですけどね。」

 「で、それは転生者は全員持ってるのか?」

 「そうです。」

 「じゃあ、それを持たない、という設定にしたら?」

 「うーん、それでも-10ポイントね。…ちょっと待ってね。うん、これなら…。」

 「何か方法があるのか。」

 「まず、あなたのデバイスは封印されてる設定にする。見つけなければ使えない。これで-10ポイント。」

 「それで?」

 「しかも壊れている。そのままでは使えない。これで-5ポイント。」

 「それでも-15ポイントですよ?」

 「最後にそのデバイスだけしか使えない。これで-4ポイント。」

 「合計-19ポイントか。あと一息だな。」

 後は何をいじるか。3人は頭を悩ませた。

 「いじれるところは、後は家族構成だけなんだけど。」

 「天涯孤独で-1ポイントですね。」

 「それ以外は?」

 「もう無いわ。身体能力と同じで誤差になっちゃうから。」

 「じゃあ、それしかないだろう。」

 「良いの?転生ってのは最初からやり直し。つまりあなたに家族がいなくなるって事だけど。」

 「まずはスタートに立つことだ。後はどうとでもする。」

 これで-190ポイントになった。後は3つめの願いの分を産み出すだけになったのだが…。

 「1ポイント、1ポイントで良いのよ。何か無いの?」

 「最初から見直してるんですけど…。」

 「…なあ。」

 「何、何か見つけた?」

 「俺を不運にすることはできるか?」

 「え?」

 「つまり、いつでもやっかいごとに巻き込まれる体質にすることはできるか?」

 「それをすれば確かに-1ポイントですけど…。」

 「天涯孤独でそれだと…、原作が始まるまでに死ぬかも。」

 「しかし、他にポイントが付きそうなものがない。」

 「僕のためにみすみすあなたを不幸にするわけには…。」

 「不運と不幸は違うぞ。不運でも幸せはつかみ取れる。無理矢理にでもな。」

 「…じゃあ、それにしましょう。後悔しないわね。」

 「ああ。」

 こうして、3つ目の願い分の1ポイントが生まれた。




後書きらしきもの
 次回やっと転生です。ついでに主人公の名前がやっと出てきます。
 相変わらず、それで良いのか?作者。って自分だよ。


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<試験開始?-4>

 やっと3つめの願いまでこぎ着けた3人。

 既に他の4人の魂が出発してから丸1日が過ぎていた。

 「で、願いは何にするの?」

 「あまり大きな願いにはできないよな。」

 「1ポイントしかないからね。」

 「ならば…修羅の門の○奥圓明流を使えるようにして貰おうか。」

 「…うん、人間の身体能力限界範囲だから1ポイントで何とかなるわね。」

 これで全て整った、と言いたいところだがまだ残っていた。

 「後は名前と容姿ね。」

 「名前は生前と同じ出門亜門(いずかどあもん)で性別男。容姿は普通で良い。」

 「了解、生前と同じ容姿でなくて良いんだね。」

 「違う人生だからな。」

 「なら、名前も変えればいいのに。」

 「考えるのがめんどくさい。正直疲れた。」

 確かに3人とも疲れていた。 

 「では、これで決定。送り出すからね。」

 「ああ、頼む。」

 それを見ていた女神はあることに気づく。

 (出発1日遅れで-0.5ポイント?面倒ね。容姿に入れちゃいましょう。)

 結果、本人の指定とは違い、イケメンになっていた。

 無事「魂」が送り出された後、女神も仕事に戻ることにする。

 「それじゃあ、貴方はしばらく待機…、って、何、仕事を始めようとしてるのよ!?」

 「いやあ、試験が始まる前に頼まれたレポートがあるんですよね…。」

 「…本当に底抜けのお人好しよね。」

 

 

 『やっと送り出せたわ。姉さん。』

 『ご苦労様。』

 『それじゃこれから調査にかかるわよ。』

 『それはちょっと待って。』

 『どうしたの?』

 『この件に関して、上からストップがかかってるの。』

 『どういうこと?』

 『私の部屋に来てちょうだい。直接じゃないと話せないの。』

 『了解、すぐ行くわ。』

 

 神界某所のトップ会議

 「デュケー=ch582*dにはストップをかけました。」

 「ご苦労だったな。」

 「いえ、そう大したことではありません。」

 「しかし、愚か者達は後できっちり絞めておかねばならんの。」

 「神候補昇進試験で不正など前代未聞の不祥事ですが…。」

 「ただ、都合が良かったことも事実です。」

 「そうじゃの。本来、既に上級神になるほどのポイントを貯めた天使が未だに神ではない、などということはあってはならんことだ。」

 「そこで慌てて上級神用試験を混ぜ込んでしまう、などという荒技をしたわけですか?」 

 「だいたい、どうしてこんな事が起きたのかしら。」

 「それが本人自身がポイントの把握をしていなかったことが最大の原因です。それと…、」

 「それと?」

 「驚くべき事に彼は今まで天使のプロジェクト関係に一度も正式参加をしていません。」

 「は?」

 「つまり彼は全くの無名でして、それで漏れたらしいです。」

 「それがどうしてそんな莫大なポイントをため込むことになったわけ?」

 「ほぼあらゆるプロジェクトの外部協力者として、下準備に参加。しかもパーフェクトにやり遂げているからです。」

 「あらゆるプロジェクトの下準備って…。」

 「ある意味、無茶苦茶有能すぎて、あちこちから仕事を頼まれ、結果としてプロジェクトに参加している暇がなかったらしいです。」

 「おもしろいわね。」

 「とにかく、今回の試験は注目だな。」

 「ですね。」

 「では、次の件に移ろう。第18659340世界の滅亡の件だが…。」

 




後書きらしきもの
 というわけでやっと転生しました!
 次回やっと原作キャラが出てくる予定。


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<試験開始-無印前1>

 というわけで転生した出門亜門だ。

 誰に説明しているか分からんが。

 とりあえず現状を認識してみたいと思う。

 うん、我ながらよく頑張った。よく生きていた、と褒めていいんじゃないか?

 大晦日に生後1ヶ月で孤児院前に捨てられ。

 1歳の時に身代金目的で間違って誘拐され。

 3歳の時は銀行強盗に遭遇。哀れ人質に。

 細かい事故は数え切れないし、もはや道を歩くたびに何か起きるのは日常の風景だ。

 これで孤児院の職員がいい人じゃなかったらもはや救いがないところだった。

 といっても最初の院長達はひどい奴らだったから早速排除したけど。

 どうやって?

 もちろんせんべい屋の「妖糸」を使ってだよ。

 俺の能力はさすが、あんだけ酷い目に遭うほど強力なだけあって、ほぼ万能なんだよ。

 まあ、生後1ヶ月で使った時は、それだけで力尽きたけど。

 というわけで現在6歳。

 何とか6年、生き延びたよ。

 納得いかんこともあるけど。

 俺、たしか容姿は普通、って言ったはずだよな?

 何かやたらとイケメンになってるんだが?

 4歳の時、じっくり鏡を見て疑問に思った瞬間に上から「0.5ポイント余ったからだよ。」ってメモが落ちてきやがったのには、思わずすぐに死んで問い質しに行こうか、と思ったくらいだ。

 後、原作に関わるのか?という事件にも一度遭遇したな。

 近所の神社の側で、子狐が怪我しているのに出会ったんだが…。

 何でか知らんけど呪われてたんだよね。

 で、本人に「呪い解いてほしいか?」と聞いたら頷いたんで、対価をもらって解いてやったんだけど。

 現在その子狐は、俺の横を走ってる。

 「…って…。」

 「コン」って名前をつけようとしたんだけど、全身全霊で拒絶された。

 どうやら雌だったらしくて男の名前は嫌だったらしい。何気に賢い。

 いろいろ相談?した結果「クオン」に落ち着いた。そんなに変わらんと思うんだが。

 「…待って、くだっ、さいっ。」

 現在は日課の朝のランニング中。たいていこの時にクオンは付いてくる。

 「お願い、待って、くださいっ、てば!…あっ!」

 ドサッ、ゴチッ!

 クイクイッ。

 分かったよ。

 最初の音は俺を追っかけてた中学生くらいの女子(ショタ好きストーカー疑惑あり)がすっ転んだ音。

 「今、失礼なこと考えませんでした?」

 無視無視。で、2番目がクオンが俺の裾を引っ張った音。助けてやってくれ,ということらしい。

 やさしい子だ、クオン。

 手を引いて助け起こしてやる。どうでもいいけど6歳児に助けられるなよ、中学生。

 ぱたぱたとスカートの土を落としているストーカー?に仕方なしに声をかける。

 ちなみに容姿は結構可愛い。きっとクラスではモテる方だろう。ストーカーだけど。

 「で、何の用事?ストーカーさん。毎朝追っかけてきて。よっぽど大事な用だよね。」

 「私はストーカーじゃありません!神崎那美です!」

 「それで用事は?ストーカーさん。」

 「だから那美です!」

 「じゃあストーカーの那美さん。何の用事?」

 「だからストーカーじゃないってば!」

 「じゃあ、それでいいから。で何の用事?」

 「うう、なんか納得いかない。」

 「用事がないなら行くよ。」

 そう言って背を向けると、慌てて声をかけてくる。

 「だ、だからちょっと待って!久遠のことなんだけど…。」

 「…。」

 「どうやって『呪い』を解いたの?」

 「…。」

 「久遠に聞いたら貴方に解いてもらったって…。」

 「もう答えたはずだけど。」

 「で、でも…。」

 「それだけ?」

 「え?」

 「用事はそれだけ?」

 「え、えーと…。」

 「じゃあ、もう用はないね。」

 「う゛、え、あ、あの…」

 もう無視して走り始める。いちいち相手なんかしてられない。これから帰って朝飯作って、学校へ行かなきゃいけないんだ。クオンはさっきの那美(ストーカー)の側に残ったまま。クオンに任せて、俺はトレーニングに戻った。

 

 「う~、また逃げられちゃった。」

  久遠を抱きしめながら那美はつぶやいた。

 「あんな強い『呪い』を解けるなんて、すごいよね。」

 (やり方が分かれば自分ももっとたくさんの人を助けられるのに。)

 「よし、明日こそしっかり聞きだそう!」

 既にこのやりとりを何度も見てる久遠は、那美の腕の中でそっとため息をついた。




後書きらしきもの
 これはリリなのの二次創作です。とらハではありません。多分…。
 なお、亜門君の口調が若干幼くなっているのは、肉体年齢に精神が引っ張られているからです。
 亜門君の久遠の呼び名がカタカナのクオンになっているのはこの時点では、久遠が本当の名前だと知らないからです。久遠はそのことを伝えようとしていたんですが…。後から那美に聞いて知ることになります。
亜:「そう言えば何故その子がクオンだと知ってるんですか、ストーカーさん。」
那:「へ?久遠は前から久遠だよ?」
亜:「え?」
那:「え?」
九:「…。」
というような会話があったとかなかったとか。
 後、「白い医師」の能力の使用条件として基本、対価にはその対象に関わりの深い事柄から選ばれます。久遠の対価は「友達」を増やすこと。で、亜門君を友達にしました。対価の内容に亜門君が干渉することはできません。


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<試験開始-無印前2>

 「おそーい。」

 不機嫌そうな声で俺を出迎えたのは金髪の少女だった。

 うちの孤児院の年長者組に入る凶暴女。

 確か年は今年で9歳だったか?俺より年上だ。まあどうでもいいことだが。

 将来はひょっとしたら美人になるかもしれない。

 「あんた、また失礼なことを考えたわね。」

 「別に。」

 少女はため息をつくと、

 「まあ、いいわ。それより早く朝食の準備よ。」

 と声をかけてくる。

 それには俺もうなずいて、すぐに台所へ向かう。

 うちの孤児院は人手が足りないので、こうやって朝食当番があるのだが…。

 たいていこいつと俺になる。

 というより、他に料理ができるやつがいない。

 大人達はこの時間、年少の連中のおねしょの始末とか、着替えとか、とにかくてんやわんやなのだ。

 凶暴女がトーストをしている間に、俺がどんどん目玉焼きを作っていく。

 後はサラダとスープか。

 「ほんと、いつ見ても手際がいいわね。」

 横にいる凶暴女が俺の方を見ながらつぶやく。

 「ほめても卵の追加はないぞ。凶暴女。」

 言った途端、足に衝撃が走る。

 こいつ、思いっきりローキックをかましやがった。

 それも上から下へ打ち下ろすタイプのだ。衝撃を逃がしにくいから痛いんだよ。

 フライパン持ってたからかわせなかったし。

 「あんた、また私を『凶暴女』呼ばわりしたわね。」

 「文句言う前に足が出るんだから当然だろ?」

 「たまにはちゃんと名前で呼びなさいよ!」

 そこで俺はフライパンを置いて隣の少女を見つめる。

 「な、なによ。」

 見つめられて、心持ち顔を赤らめる少女。

 目尻に溜まっているのは涙。

 「痛かったんだろ?」

 「べ、別に痛くないし。」

 「涙出てるぞ。」

 「こ、これは、タ、タマネギよタマネギ。」

 今朝の朝食にタマネギはない。

 やせ我慢するのでつま先で足をちょっと突っついてやる。

 「い、痛ったーい!」

 思わず足を押さえてうずくまる凶暴女。

 自慢じゃないけど鍛えてるから俺の足なぞ蹴った日にゃ、自分の足がダメージ受けるってのに。

 全く学習しないやつだ。本当に俺より年上か?

 「だからすぐ足が出る癖は直せ、アリサ。」

 この凶暴女(アリサ・ローウェル)は有名私立学校から奨学金が出るくらい頭がいいくせに、時々こういう馬鹿なことをする。

 「大体、毎回同じ事してるだろ、お前…。」

 「う、う、うるさい、分かったわよ。直せばいいんでしょ、直せば。」

 「ああ、ぜひそうしてくれ。」

 「大体あんたがちゃんと名前で呼べば…。」

 「わかった、アリサ。」

 「…わかればいいのよ。」

 小さな声で言って黙ってしまった。

 なんだか急に黙ってしまった凶暴女(アリサ)に、

 「足は冷やした方がいいぞ。」

と声をかけると、出来上がった人数分の目玉焼きをテーブルに並べていく。

 「できたぞー。」

 すると孤児院の連中がわっと集まってくる。

 「「「「いただきまーす。」」」」

 「ほら、こぼしてる。」

 「きょふもおいひい。」

 「口に入れたまま喋るな。」

 「いつもありがとうね。」

 「別にたいした手間じゃない。」

 「アリサ姉ちゃんと亜門ちゃん夫婦みたい。」

 「え?え、えーと…」

 「そんな恐ろしいことを言うな。」

 「亜門、後で話し合おうね。」

 「俺に話すことははない。」

 まあ、このにぎやかなのがいつもの朝の風景だ。

 ただし、今日は特別なことがある。

 「今日から亜門君も1年生だね。」

 そう声をかけたのはこの院の院長先生。今年50だったかの男の先生で、白い髭が特徴的な、優しい顔立ちの人だ。顔に似合わずやり手だけど。

 その言葉を聞いて俺は内心げんなりする。

 (行きたくねー。)

 そうなんだよ。今までは別に行かなくてもいい、ってことで保育園は回避してたんだよ。

 でも、今日からはピカピカの1年生。けっこうダメージがでかい。

 「あたしは先に行くから遅れちゃだめよ。」

 アリサが先輩みたいな口ぶりで話しかけてくる。

 いや、先輩になるんだけど。

 何でか知らんが俺も奨学金でアリサと同じ学校に通うことになったんだよね。

 しかし何で俺が…。

 ん?、そう言えば何ヶ月か前に院長先生が、

 「これやってみて?」

って問題を持って来たことあったっけ。

 …。

 ……。

 ………。

 まさかあれか?

 内容はけっこう難しかったぞ?中学生レベルのもあったし…。

 ちっ、ハメやがったな。

 ジロリと院長先生をにらむとにっこり微笑んで見つめ返された。

 こういうところはこの人に敵わない。いつか仕返ししてやる。

 まあ、ここまで来たら行くしかないんだけどな。

 院を出て十数分。

 私立聖祥大学付属小学校校門前に到着した。

 院長に連れられてやってきたけど、正直楽しくない。

 確かに今は6歳だけど、前世では立派な大人だったんだから。

 しかし駄々をこねたって仕方ないものは仕方ない。

 しぶしぶ校門をくぐった。

 入学式はまあ、俺の知ってるとおりのもの。

 校長の話とか長かったんで、ほとんど寝てた。

 まあ、これからしばらく小学生やるしかないんだから、まじめにがんばるか。

 いくら何でも小学生から「原作」が始まることはないだろ。多分。

 




後書きらしきもの
 だからとらハじゃないんです。説得力無いけど…。
 ちなみにアリサは孤児院にいる子達の中では、精神年齢的に中学生か亜門君としか話が合いません。
 また、外では周りと若干壁を作っていますが亜門君としょっちゅう掛け合いしている影響で、原作よりクラスの中での状況は良好で、いじめも受けていない、という設定になっています。
 アリサからすると亜門君は、ちょっと意識している相手になってます。神様の悪戯でイケメンになってますし。ただ、年下なので恋してるか、といえば?です。
 後、孤児院は慢性的な人手不足で「使える者は誰でも使う」的な環境になっています。昔、孤児院を食い物にしていた職員を全員亜門君が叩き出してしまったので。
 次回はやっと「リリなの」の原作組が出てきます。


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<試験開始-無印前3>

今回は視点が切り替わるためsideで表しています。


side 亜門

 

 同じクラスになった子の中に前に会ったことがあるのがいた。

 (えっと、確か翠屋の子だよな?)

 何故覚えているかというと、家まで送っていったことがあったからだ。

 確か去年の秋頃。

 もう暗くなってるのに海鳴公園でブランコで泣いてたんだっけ。

 一緒にいる友達が何とかなだめて帰そうとしてるんだけど、泣くばっかりで。

 よく見れば、その時の子達も一緒にいるじゃないか。

 友達と一緒のクラスになれたんだ、良かったねぇ。

 名前は何だっけ?高下?竹町?何かそんな名前だったかな?

 で、買い物に行く方向がたまたま同じだったから一緒に行ったんだけど、帰りが遅れて院長先生に叱られたっけ。

 まあ、向こうは覚えてないみたいだし、良いんだけどね。

 そうそう、何でか知らないけどあいつの父ちゃん呪われてたんだよな。

 まあ俺の「白い医師」の力で呪いを叩き返して治療しておいたから大丈夫だけど。

 ちなみに対価は「戦闘しない」こと。戦闘って何だよ。

 「白い医師」の対価は自動で決まるから時々訳判らない対価になるんだよね。

 呪いをかけた野郎は…多分死んだろうな。あの手の呪いは破られると術者本人を滅ぼすタイプだったし。まあ、自業自得ってことで。

 そう言えばもう1人ビックリした奴がいた。

 うちの凶暴女(アリサ・ローウェル)を小さくした奴がいたんだよ。名前も「アリサ」。まあさすがに名字は違ったけど。

 思わず「ちびアリサ」とつぶやいてまじまじと見たら、文句を言われちまった。まあ、失礼だったよな、うん。さっきから睨んでるし。係わらんことにしよう。

 何だか小学校生活が無事に終わらないような気がするんだが…。

 気のせいだよな。

 

side なのは

 

 今日から1年生なの。

 お友達の真白ちゃんとも、紅介君とも一緒なの。

 えっと、後ね。

 どっかで会った気がする人も一緒なの。

 どこだったかな?

 「出門亜門です。よろしくお願いします。」

 あっ、この声!

 思い出した、あの時の子だ。

 お父さんが怪我して入院していたころ。

 真白ちゃんや紅介君と友達になった日。

 二人は「もっとわがまま言って良いんだよ。」ってなぐさめてくれたけど。

 どうしても言えそうになくて泣くしかできなかったら。

 「お前らいいかげんに帰らないと夜になるぞ。また明日遊べばいいじゃん。」

 って声かけてくれたんだ。

 だけど真白ちゃんも紅介君も帰る方向が違ってさみしかったら、

 「買い物のついでだから一緒に行ってやるよ。」

 って手をつないで帰ったんだ。

 途中で泣いてたわけを話したら、

 「よくがんばったな。」

 ってほめてくれたの。

 「子どもだって大人だってがまんしなきゃいけない時はいっぱいある。」

 「だから、それをがんばったお前はすごい。」

 「がまんできない時は今みたいに泣けばいい。」

 「泣いてすっきりしたら、またがんばれるさ。」

 よくわかったような、わからないようなことだったけど、なのはががんばったことをほめてくれたの。だから、

 「今度はがんばって話せばいいんじゃね?」

 って言ってくれた言葉に素直にうなずけたの。

 そのおかげでお母さんに話せたの。

 お礼を言いたいけど…。

 なのはのこと、覚えてないみたい。

 それなのに話しかけるのは何だか恥ずかしい気がする…。

 あうぅ、どうしよう。

 

side アリサ

 

 もう、腹立つ、腹立つ!

 何でいきなり

 「ちびアリサ」

 なんて初対面の奴に呼ばれなきゃいけないのよ!

 せっかくの入学式だったのに、もう気分は台無し。

 おまけに出席番号はアイウエオ順。

 すぐ後ろにあいつがいるのよ。

 何でこんな気にくわない奴の側にいなきゃいけないのよ。

 何だか、むかつく。

 そんな気分だったから、思わずおとなしそうなクラスの子のリボンを取っちゃった。

 そんなことするつもりもなかったのに…。

 その後、なのはって子にひっぱたかれて、リボン取った子に謝って…。

 名前を教えあったら。

 何だか知らないうちに友達になっちゃった。

 まあ、友達ができたから今日はいい1日だったわ。

 あいつは気にくわないけど。

 

side すずか

 

 今日は何だか良いような悪いような不思議な日。

 突然、金髪の女の子にリボンを取られちゃって、それをなのはって子が友達と助けてくれて。

 それで金髪の子が謝ってくれて。

 アリサって名前を教えてくれて。助けてくれた子達も名前を教えあって。

 友達がいっぺんに増えちゃった。

 うん、きっと今日はいい日なんだ。

 帰ったらお姉ちゃんにいっぱい話そう。

 でも、アリサちゃん。

 「みんな出門の奴が悪いのよ。」

 ってブツブツ言ってたけど、それを聞いて、どうしてなのはちゃんが困った顔してたのかな?

 明日聞いてみようかな?




後書きらしきもの
 ほっ、少し「リリなの」らしくなってきた、かも?
 しかし、やっと原作主人公登場って…遅いよねえ。
 ちなみに亜門君は「リリなの」としか聞いていない上、原作知識がないためなのは達が主人公であることにこれっぽちも気がついていません。当然関わろうともしないので、同じクラスにいる転生者達にも「ちょっと顔が良いだけの男の子」としか思われていません。
 名前だけちょこっと出てきたのが転生者の内の二人です。次回は2人を含む他の転生者に少し話を振る予定です。


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<試験前-或る転生者の場合>

修正しました。

ジュエル・スカリエッティ→ジェイル・スカリエッティ

スカリエッティの口調を修正。



side 真白

 あの天使さんに頼まれて、私はこの「リリカルなのは」の世界に転生した。

 もともと良く知ってるお話だったし、どうせ来るんなら、悲しむ人はなくしたい。

 何よりなのはちゃんと友達になりたい!

 だから私は特典に貰うものはすぐに決まった。

 ・「ねぎ○!」の木乃香の治癒能力

 ・「ねぎ○!」の明日菜の魔法無効能力

 ・「ねぎ○!」の刹那の剣術

 だ、だって「ねぎ○!」も好きなんだよぉおおお!

 で、そこから役に立ちそうなのを選んだわけ。

 治癒能力は「リリなの」って怪我とかする人が多いからその人達を助けるため。

 後、魔法世界で魔法無効って役に立ちそうでしょ?

 それに剣術やっとけば高町家と接点ができやすそうだし。

 もちろん予定通り、なのはちゃんとはお友達になれたよ。

 変なのも1人くっついてきたけど。やっぱり転生者だった。

 まあ、なのはちゃんに悪いことしようとしてる訳じゃないみたいだから良いけど。

 変な事しようとしたら…潰す。

 学校もクラスも一緒。これからがんばって、無印が始まるまでにしっかりアリサちゃんやすずかちゃんともお友達になるんだ!

 でも、ちょっと気になることもある。

 なのはちゃんと出会った時に、なのはちゃんのお父さんは入院してた。

 だからこっそり怪我を治そうとしたんだけど…治せなかったんだよね。

 ちゃんと治癒術を使ったのに…。

 まだ子どもで力が足りなかったのかな?

 うん、本編が始まるまでにいっぱい訓練して力を付けとこう!

 

side 紅助

 「リリなの」の世界に行く、と決まったとき僕が考えたのは戦闘力が必要、ってことだった。

 だけど同時にある程度は応用力がないと困る。だから僕は

・聖杯戦争を繰り返してる世界の「セイバー」が使う力

 ・ツンツン頭の忍者の世界の「写○眼」

 ・かっこいい、だけど日本人離れはしていない容姿

 を特典として貰った。

 最後のは…。やっぱり女の子とは仲良くしたいじゃないか!!

 せっかく可愛い子がいっぱいいる世界に行くんだし。

 ニコポやナデポは?それこそ失敗フラグじゃないか。そこらの踏み台君のようにKYなことはしないようにして、嫌われないように心掛けるけどね。

 それに、主人公とかと付き合えたら、それだけで改変OKでしょ?

 まずはなのはちゃんと仲良くならないとね。

 そう思ってテンプレの海鳴公園に行ってみると会えましたよ、なのはちゃん。

 そこでさっそくなぐさめるんだけど、ちっとも泣きやんでくれなくて、どうしようかと思ったよ。

 途中で「女の子を何泣かせてるのよ」なんて言って乱入してきたのもいるし。

 まあ、今も隣にいるんだけど。

 こいつも僕と同じ転生者。

 で、その時から何となく3人で遊ぶようになったんだよね。

 あれ、これってもう両手に花?

 これからアリサちゃんやすずかちゃんも増えるからハーレム状態!?

 待て待て、落ち着け僕。だいたい性格的にハーレムは無理だって!

 誰か1人に絞らなきゃ。

 まず、なのはちゃんの場合は…。

 真白の奴がうるさいから、やっぱりアリサちゃんかすずかちゃんかな?

 好みとしてはすずかちゃんかな?

 でも、月村家は厄介なんだよな。

 アリサちゃんは頭よすぎるから絶対僕の方が下、って感じになっちゃうし。

 これからに期待するなら…。

 フェイト?

 はやて?

 どうしよう、誰にしたらいいのかわからないよ。

 まあ、本編が始まるまでにまだ時間あるし、ゆっくり考えよう。

 

side ?1 

 世界の改変を頼まれたとき俺は確認を取った。

 「誰かを殺すことで改変を図っても良いんだな?」

 答えはOK。ならばこれで勝つる!!

 そこで俺が貰った特典は

 ・某ホラー小説の相手を呪い殺せる力(遠隔地から)

 ・魔法戦闘力総合SSS

 ・魔力SSS

 これで安全に相手を殺せるし、万が一戦闘になっても安心だ。よく、無限の剣製とか王の財宝とか望む馬鹿がいるが、そんなものは必要ない。

 安全な場所から重要人物を殺す。それだけで改変は完了だ。

 本編が始まるまで何故待つ必要がある。

 まずターゲットは高町士郎だ。

 あいつが怪我をして入院したところで「呪い」をかける。

 「呪い」は怪我や病気じゃないからたとえ治癒魔法をかけたって治りゃしない。

 父親に死なれたらなのはは歪む。

 主人公が歪んだら…。原作改変はばっちりだぜ。

 後は少しずつ周りの人間を呪い殺していけばいい。

 士郎の次は桃子、次は恭也と順繰りに高町家を殺していけば…。

 クククッ。どんな「リリなの」になるんだろうな、楽しみだぜ。

 予定通り士郎に「呪い」はかけた。後は死ぬのを待つばかりだ。

 「呪い」の効果が出るのは7日後。それで士郎は死ぬ。

 今日は5日目。

 あと2日で最初の改変は終了だ。楽なもんだ。

 ガッ!

 な、何だ?全身が痛い!!

 苦しい!

 声が出ない!

 『呪…は失敗…ればその…果がかけたも…に跳ね返…』

 どこか遠いところで話している奴がいる。

 (誰だ?切れ…切れでよく…聞き取れ…ない。)

 全身を苦痛に苛まれながら、俺の意識が消えていくのだけわかった。

 …ああ、俺は死…。

 

side ?2

 リリなの世界の改変。

 それを聞いた時、俺の中にはある計画が生まれた。

 最初から重要人物と関わりを持てるようにしとけば有利だ!と。

 俺が目を付けたのはジェイル・スカリエッティ。無限の欲望さんだ。

 そのために俺は慎重に特典を選んだ。

 ・最高の戦闘機人のボディ(IS複数を持っている)

 ・魔力SSS

 ・スカリエッティと同じ知能

 特に最初のが肝心だ。こうしておけば俺はスカリエッティの研究所で生まれるはず。

 後は上手くスカリエッティとナンバーズを利用してミッドチルダの方から改変していけばいい。

 しょせん地球なんぞは辺境なんだよ。

 馬鹿は気づかないだろうがな。

 俺が目を覚ましたのは予定通り培養ポッドの中だった。

 目の前でスカリエッティがしゃべっている。

 「いやいやいや、完璧な戦闘機人がいきなりできてしまうとは!」

 そうだろ、ここから早く出してくれ。

 そして世界を改変だ!

 「しかし、何故!このような素体がいきなり生まれたのか?実に興味深い!」

 よし、俺に興味を持っている。これならアプローチもしやすいはずだ。

 「これはいろいろ調べてみなければ!」

 ん、何をしてるんだ?早く出してくれよ。

 「この実験から決して!決して生まれるはずのない完成体!実に興味深い!。」

 え、何でドリルとかメスとか近づいてくんの?

 「まずは…解剖から試そうか。」

 ええええええええっ!?

 し、しまった!スカリエッティの探求心に火を付けちまった。

 逃げようにも培養ポッドの中には逃げ場はない!

 おまけに溶液に麻酔薬を混ぜられたようで、意識もなくなってきた。

 詰…んだ…な、俺…。

 次に目が覚めた時、俺はバラバラにされた身体を首だけになった状態で眺めていた。

 これから待っているのは人体実験の嵐。

 いっそ殺してくれえええ!




後書きらしきもの
 今回は亜門君以外の転生者について少し補足説明を長めに。
 真白
転生者の中で唯一女性。生前は「リリなの」と「ねぎマ!」のファンだった女子高生。性格は明るく善良。少し百合っ気があるかも?と思うくらい、なのはが大好き。でも一応ノーマルの筈。原作のハッピーエンドを目指している。容姿は結構可愛い方。ヒロインずに負けないくらい。

 紅介
 転生者。目標は「踏み台にならず主要キャラの誰かとゴールイン」
 生前は3流大学の平凡な大学生。「リリなの」については結構詳しい。性格は一応善良、少々優柔不断なところあり。容姿が良いため基本女性陣からは一定の好感は持たれている。ただ優柔不断なところが災いして現状は「いいお友達」のポジション。真白と同じく原作のハッピーエンドを目指している。

 ?1
 名も無き転生者その1。出番はこの回限り。結構鬼畜な考え方をする。キモオタ系で生前はニート。
 自分の手を汚すのでなければ殺しもOK。血は見たくないけど死んでも構わない、という思考をする。
 主人公の関係者を殺しまくることで改変を狙うが、亜門君に呪いを返されたため自滅。
 なお真白の治癒術が聞かない理屈は、怪我を治療→すぐ呪いが傷つけるというループになるため。

 ?2
 名も無き転生者その2。出番はあるのか?一応死んでないけど…多分ない。生前は廃ゲーマー。効率や裏技的なことを重視する。敗因はスカリエッティのマッドな性格を読み間違えたこと。試作品を作っている過程でいきなりできるはずのない完成品ができたら…。そりゃマッドな人には解剖・分解してでも調べ尽くしたい対象になるでしょう。おそらくこれで終了。ただし改変、という視点で行けばスカリエッティの作品に影響するのか?微妙なところ。

 現状の改変度 真白、紅介>?2>?1、亜門

 亜門君の場合、変わりかけた筋道をもう一度叩き戻しましたからね。


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<試験休憩中-閑話>

 亜門が転生して3単位時間が過ぎたころの神界。

 とりあえず休憩を取ろうと、書類仕事を一端中断し、ヘルパイgz8889#hは休憩所に足を運んだ。基本、試験が開始されてしまえば終了までの時間は自由時間となる。通常はそれが休暇になるのだが、ヘルパイgz8889#hの場合、その時間も他の天使から頼まれた仕事が待っていたため、自室から出たのは試験が始まってからこれが初めてだった。

 休憩所には友人であるアープad1212#dが他の天使と談笑していた。

 (会話の邪魔しちゃ悪いよね。)

 そう思い、軽く会釈して横を通り過ぎようとしたヘルパイをアープが呼び止めた。

 「どうだ、試験の手応えは?」

 「え、んーまあまあかな。善い『魂』だったからね。」

 「ほぅ、そんなに優秀だったのか。これは楽しみだな。」

 「優秀って言うより善い、って感じだったよ。」

 「なるほど、お前に似ているのだな。これは手強そうだ。」

 「そんなこと無いよ。アープの方がきっと…。」

 「お前はもっと自分に自信を持った方が良いと思うが…。」

 そんな会話をしていると、横から

 「ヘルパイは真面目だけど、さすがにアープに勝てるわけはないだろ。」

 と横から口を挟んできたのは共通の友人であるヘルメdf3543#eだった。

 それにヘルパイ自身が同調する。

 「うん、やっぱりアープには勝てないと思うよ。」

 「とにかく今回は組み分けがひどい。アフィにアープがいるなんて。」

 「…あのな。」

 アープが思わず反論しようとしたところでさらに声がかかる。

 「そんなことはありません。ヘルパイさんも優秀ですから。」

 そこにはヘルパイとアープを見つけて近づいてきたアフィの姿があった。

 アープもその言葉に同意する。

 「ヘルパイ。お前は自分が考えている以上に優秀なんだぞ。」

 「そんなこと無いと思うけど…。」

 と、そこに放送が入った。

 『第29853680f世界の神試験を受けている天使に連絡があります。至急、第498265会議室まで集合しなさい。』

 「何だろう?」

 「試験結果が出たにしては早いが…。」

 「とにかく行きましょう。」

 そこで3人はヘルメと別れると第498265会議室に急いだ。

 そこには既に2人の天使と、試験官である女神デュケー=ch582*dとその補佐であるアストライア=dr423*fの姿があった。

 「全員そろいましたね。」

 そう声を発したのは女神デュケー。さすがは神だけのことはあり、天使である自分達には真似できないような威厳がある。

 (やっぱり神になんてなれないよね、僕じゃ。)

 自分との違いに思わず落ち込むヘルパイ。

 「何があったのですか?」

 そう問いかけたのはアフィだった。

 「試験が終了した天使がいたため、その通達です。」

 このように通常より早く試験終了者が出る場合はいくつか考えられる。その中で最もポピュラーなのが「転生者の死亡」だった。過去の試験でも、何度かそのような例がある。

 だから、それを聞いたときヘルパイは自分のことだと思った。

 (善い『魂』だったけど、あんだけ制限があったらやっぱり無理だったよね。しょうがないよ。)

 「試験終了者はハーデag1165#d。及びテュータbs2312#fの2名です。」

 「え?」

 「は?」

 「嘘だ!」

 「何故俺が!?」

 「僕、じゃない?」

 さらにアストライアが理由を告げる。

 「ハーデの選んだ転生者は死亡、テュータの選んだ転生者は活動不能となった。よって、2名の試験は此処までだ。なお、残りの3名の試験は引き続き続行となる。では、解散。」

 その声で呆然としたまま解散する天使達。

 その一人ハーデag1165#dはブツブツと呟きながら自室に向かって歩いていた。

 「…何故だ、あの愚図の魂が…俺のより…ちゃんと手は回したはず…何故だ?」

 「その話もう少し詳しく聞きたいわね。」

 「え?」

 気がつくとハーデの背後にいつの間にかアストライアが立っていた。

 「誰の『魂』にどう『手を回した』のかしら?」

 「俺じゃない、俺はやってない!」

 「じゃあ、『誰』がやったかを詳しく教えてもらうわね。こっちへ来なさい!」

 ハーデの行く先は自室からアストライアの調査室へと変更になった。




後書きらしきもの
 というわけで、小細工をした人は全員アストライアにとっつかまりました。
 ハーデ君は首謀者ではありませんが首謀者から魂に細工したことを聞かされていました。テュータ君は単純に計画失敗です。スカリエッティに解剖されちゃった人を選んだのが間違いでした。


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<試験開始-無印前4>

 いつの間にかもう2年生だ。月日の経つのは早いもんだ。

 これまでにも、いろんな事があったよな。

 相変わらず巻き込まれ体質は絶好調。

 孤児院のみんなでSEETA?JEENA?とかいう歌手のチャリティコンサートに行ってテロに巻き込まれかけたり。

 クラスの癇癪女(ちびアリサ)文学少女(すずか)が誘拐されたり。

 それを何でか知らないけどクラスメイト(真白と紅介)が助けに行ったり。

 それをさらにこっそり助けたり。

 まあ、どれも「妖糸」で全部解決。

 いやあ、相変わらず「妖糸」は便利だわ。

 これを選んだ自分の先見の明に感心するね。

 まず何でも切れる。ハイクロムチタン製の糸は1ナノメートルの細さしかないから、その鋭さで切れないものは何もない、といっていいくらい。

 そのくせ丈夫で、相手を縛ることもできれば操ることもできる。

 情報収集にも使えるし、鉄壁の防御にも使える。

 現状このせんべい屋の「妖糸」>白い医師の能力だね。あの力は時と場合によっちゃめちゃくちゃ有効だけど、本気で時と場合によるからな…。

 それに比べて3つめの能力は今まで殆ど使ってこなかった。まあ、身体能力は向上してるし役に立たないわけじゃないけど、とにかく「妖糸」が便利すぎるんだよね。

 まあ、長々とこんなことを思ってたのには訳がある。といっても思考にしてほんの3、4秒だけど。

 今日、俺は初めて3つめの能力に陸奥圓○流を選んだことに感謝した。

 何せ目の前の下種どもに俺の怒りを直接叩きつけられるからな。

 「妖糸」で斬るなんざ、生ぬるい。

 俺の手で直接叩きのめさないと気が済まない。

 そんな俺の目には4人の下種と地面に倒れているうちの凶暴女(アリサ・ローウェル)が映っていた。

 アリサの服は引きちぎられ、下着がむき出しになっている。

 叩かれたのだろう、頬が赤く腫れている。

 ぐったりしているのは気を失っているのだろう。幸い、まだ事前のようだが…。

 「何だお前?」

 「どこのクソガキだ?」

 「俺たちは忙しいんだよ!」

 「さっさとあっち行け、さもねえと痛い目にあうぞ?」

 口々に頭の悪そうなことをほざいてやがる。

 俺は黙って一歩前に出る。

 「聞こえてんのか、こら!」

 「殴られたいのかよ?てめぇ!」

 その中の1人が不用心にこっちに近づいてくる。

 「ガキはお家に帰んな、てめえに構ってる暇はないんだ。これから大人の時間なんだよ。」

 そう言うと俺を突き飛ばそうと手を伸ばしてくる。

 ペキ。

 枯れ枝を折るような音が響いた。

 それは下種の指が180°折れ曲がった音。

 「ぅおげええええぇ!」

 自分の指が何故そうなったのか、訳がわからない顔をした後、そいつは絶叫をあげて地面を転げ回った。

 情けない奴だ、たかが指を5本まとめて骨折したぐらいで。

 「な、何しやがった、このクソガキ!」

 「もう、許せねえ、よくもマサを!」

 相変わらず頭の悪そうなことをほざく馬鹿ども。

 おっ、ナイフを出したな、面白い。そんなものが通じると思ってるのか?

 向かってきた馬鹿に「紫電」を使う。

 思わず顔をかばったところで蹴りの軌道を変化。膝を蹴り砕く。

 地面に転げる二人目の馬鹿。

 横からナイフを振るってくる阿呆には、わざと後方に倒れてナイフをかわしてから「弧月」で顎を蹴り砕いてやる。

 悲鳴も上げられず顎を押さえて転げ回る馬鹿。

 残りの一人が後ろから俺を抱きすくめる。

 「捕まえたぞ、クソガキ!」

 そのまま俺を持ち上げて地面に叩きつけようとするが…。

 陸奥圓○流には相手の投げにも対応できる技があるぞ?手が触れているだけでな。

 「指尖」で俺をつかんでいる腕と脇腹に穴を開けてやる。

 激痛で俺を離す下種。そのまま身体をひねって「旋」で頭部を蹴りとばす。気絶しないくらいの力加減で。

 今、目の前にはそれぞれ痛みで転げ回ってる下種どもがいる。そいつらに声をかける。

 我ながら怖い声だ。まあ殺気100%の声で怖くないわけはないんだが。

 「お前ら、この程度で終わるとは思ってないよな?」

 その声に転げ回っていた馬鹿どもがピタリと動きを止める。

 そして下種どもには不幸が訪れた。

 

 いやあ、人間の身体って案外丈夫だね。うん、壊しがいがあった。もちろん殺しちゃいないよ。

 死なない程度にきちんと加減したわけだし。

 最も奴らにとっては死んだ方がましだったかもしれないけど、な。

 感想を聞こうにも、白目むいてよだれ垂らしながらヘラヘラ笑ってる。完全に壊れたな。

 まあ、どうでもいい奴らはほっておいて。

 アリサの側に近寄ると、背負って院に帰ることにする。

 さて、院長にはどうやって説明するかな。

 っと、やることを一つ忘れてた。

 人差し指をクィッと動かす。

 プツン、と手応えが伝わってくる。

 これであいつらは一生EDだ。ざまあみろ。

 




後書きらしきもの
 繰り返しお知らせします。これはリリなのの2次創作です。とらハではありません。
 なのに、何故こうなる?
 まあ、3つめの能力も使わないと、ということにしといてください。
 無印が始まったら高町恭也とのバトルがあるかも。


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<試験中-無印開始?>

 小学3年生になった。

 2,3日前に夜中に動物病院の辺りでガス爆発があったとかで、騒いでたな。

 パトカーや救急車のサイレンがうるさかったことを覚えてる。

 奇跡的に怪我人はいなかったとか。

 なのはがフェレットを学校に連れてきてた。良いのか、そんなもん学校に連れてきて。

 クラスの女子連中が固まって騒いでるが、俺には関係ないか。あの集団に近づく勇気もないし。

 よくそこに平然と混じっていられるな、紅介。お前は勇者だよ。

 というわけで、学校が終わったら速攻で孤児院に帰ったんだが…。

 来客があった。2人も。

 それも俺を名指しで。

 1人は知らない女の人。まあ美人だね。ちょっと雰囲気に鋭いものが漂っているかな?

 隣は毎朝絡んでくるストーカー。何とか那美。

 「…また失礼なこと考えてる気がする。」

 何かつぶやいているようだが、聞こえない。

 俺の隣には院長が座ってるから4人で話をしてるわけだが。

 …院長。

 美人だからって鼻の下を伸ばすな。教育上悪いぞ。

 「それでは改めて自己紹介をします。うちは神咲薫ていいます。」

 「妹の那美です。」

 院長は2人の自己紹介が終わった後、やっと大人らしい表情を取り戻したが…、遅いんじゃないか?

 「それでどのようなご用件ですか?」

 「実は出門君に一緒に行って欲しいところがあるんです。話せば長いのですが…。」

 以下薫さんの話を俺なりにまとめると。

 1,薫さんは退魔師をしている。

 2,沖縄に厄介な妖怪が現れた。

 3,退魔に行ったが、どうしても見つけることができない。

 4,「運の悪い」犠牲者は増える一方。

 5,妖怪を見つけるためには「運の悪い」人間が必要。

 6,退魔師の伝手で信頼の置ける某所で託宣を受けると俺の名前が出てきた。

 7,その俺の居場所を那美が知っていた。

 8,そこで薫さんと那美がここに来た。

 9,どうか沖縄に一緒に行って欲しい。←今ここ

 ということらしい。

 「もちろん、出門君に危険がないよう全力で守ります。お願いします。」

 そう言って深々と頭を下げる薫さん。

 どうやら院長は退魔師なる存在は知っていたようで、別段話を疑うこともせず(どうしますか?)

と俺に目で聞いてくる。

 俺が決めて良いのか?

 まあ、人助けならやっても良いか。「運が悪い」で選ばれるのはちょっと泣けるけど。

 自業自得だしなぁ…。俺が選んだ特典?だし。

 だから一言で応えた。

 「良いですよ。」

 

 返事をした後は早かった。すぐに空港に向かい沖縄に専用の小型ジェットで向かう。

 ああ、パイロットには「特別運が良い」人をお願いしといた。

 行くまでに飛行機が落ちたら目も当てられん。薫さん、ちょっと顔が引きつってたけど。

 というわけで沖縄。

 薫さんは車を用意すると言って、俺と那美を残してどこかへ行った。

 しかし南国、って雰囲気がするね。

 (孤児院の連中にサータアンダギーでも買ってくか?ちんすこうも捨てがたいよな。)

 なんて土産物を見ながら馬鹿なことを考えていると、薫さんが車の手配をして戻ってきた。

 「それじゃ、行くよ。出門君、那美。」 

 車の中で、今回の妖怪の説明を受けた。

 何でも「運が悪い」人間の魂を抜き出し、それを嬲りながら絶望させ、負の感情に染まった魂を捕食する、という妖怪らしい。詳しい形状は不明。

 「現在の被害者は8人。これ以上犠牲になる人を出すわけにはいかないんや。」

 そう締めくくった薫さんの顔は厳しいが、その内にどこか脆さを秘めている感じがした。




後書きらしきもの
 もうあきらめよう。うん、これはとらハの2次創作です…というわけじゃないんですが。
 ユーノなんて名前すら出てこないし。
 原作キャラほったらかしだし。
 おかしいなあ、リリなのの2次創作だったはずなのに…。
 というわけで、亜門君は沖縄へ行ってきます。
 なお彼の中では、那美はそれなりに付き合いが長いので呼び捨て、薫は初対面で年上なのでさん付けというように区別しています。


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<試験休み-沖縄?編1>

 移動中、隣に座っている那美が何度か話しかけてきたが、全無視してたら落ち込んだ。

 仕方がないので相手をしてやることにする。

 「…で、いつまで落ち込んでるんですか?ストーカーさん。」

 「っ、ストーカーじゃないもん。」

 「小学生を毎朝待ち伏せして、1時間近く追いかけ回すのはストーカーじゃないとでも?」

 「…那美、あんた何してるのよ…。」

 「ち、違うよ。聞きたいことがあるだけだもん。」

 精神年齢が下がってないか?大丈夫か?

 「もん」って何だよ。確か今はもう高校生の筈だろ?

 「まあ、那美が聞きたいことはうちも聞きたいんやけど…。どうやって久遠の『呪い』を解いたの?」

 俺と薫さん達だけになったせいか、口調が若干砕けてきている。

 「久遠に呪いを解きたいかどうか聞きました。久遠が解きたいと返事したので解きました。以上」

 「「それだけ!?」」

 「それだけです。」

 「どうやったのか、とかは?」

 「言えません。」

 別に技術を隠してる訳じゃないんだよね。

 「白い医師」の力って言葉で表現できないんだよ。

 「依頼」されて「対価」をもらい能力の発動条件が整い「治療」。久遠の時は指一本触れるだけ。

 どうやって治療しているか、なんて自分でもわからない。

 ただ「治療」するためにどうやって、どれだけ「力」を使えばいいかがわかる。

 ンなもの説明できるわけがない。でも大抵相手は誤解する。

 「なんか事情があるか、秘密厳守を義務づけられているか、ってとこ?」

 ほらね、薫さんも誤解した。誤解を解くのも面倒なので、そのまま沈黙する。

 何だか車内が微妙な沈黙に包まれたまま、目的地近辺に到着した。

 何の変哲もない海岸沿いの道。そこが今回の事件現場だった。

 「ここら辺で被害者が襲われているのよ。」

 薫さんの説明を受けて辺りを調べてみることにする。

 三人でその道をたどりながら数分歩くと…。

 那美が滑って転んだ。 

 「きゃ!?」

 身体を支えようとして那美が俺にしがみつくが、体格差で引っ張られて何故か反対側にいた薫さんに倒れ込んでしまう。

 「えっ?」

 3人がまとまって横の土手を転がり落ちると。

 景色がぐにゃりと歪んだ。

 そして、俺たちは今までと違う場所にいた。

 足下には石畳のような床。

 周囲は石の壁。

 ちょっとした道場くらいの広さの部屋だった。

 「なるほどね。『運悪く』あそこで転ばないとここへ来れない訳か。」

 俺が納得していると、

 「そんなこといってる場合じゃないでしょ!」

 「そうだよ!早くさがって!」

 那美と薫さんが口々に叫ぶ。

 そう、俺たちの目の前には目的の妖怪がいた。

 形はサザエの殻にカタツムリの身体、と言えばわかるだろうか。

 トゲの付いた殻とゆらゆらと動く伸びた目玉。

 5メートルもある事を除けば、ユーモラスでかわいらしいと言っても良かったかもしれない。

 一瞬そんな感想を持ったが、殻のトゲに刺さっているものに気づくと吐き気がした。

 トゲに刺さっていたのはぼんやりと光る人型。

 目を凝らすとそれは苦しみのたうつ人間のように見えた。

 「魂を串刺しにしてる…。」

 「…ひどい。」

 那美が悲痛な呟きを漏らす。

 なるほど、ああやって魂に絶望を味わわせている訳か。

 「十六夜。行くよ。」

 そう言うと薫さんが駆け出す。

 持っていた刀を抜き放つ。

 その一瞬、確かに金髪の女性のような姿が浮かんだ。

 そのまま妖怪に近づくと一閃する。

 ガキィッ!

 瞬間、殻の中に肉体を引っ込めた妖怪は殻で薫さんの一閃を受け止める。

 と、その場で回転を始めた。

 「くっ!」

 力強い一撃を打ち込むには回転している状態は不利だ。さらに。

 「魂に攻撃が当たっちゃうよ!」 

 そう、魂の救出に来たのに魂を傷つけるわけにはいかないのだ。

 さらに悪いことに、妖怪は回転を続けたまま、殻からトゲを打ち出してくる!

 壁に突き刺さるところを見ると、そこそこ威力もありそうだ。

 「何とか動きを止める術とか無いんですか?」

 二人に聞くと、那美と薫さんが

 「あるにはあるけど効くかどうか…」

 「効いてもあの殻を斬れるかどうか判らない。」

 と答えた。

 「それでもやるしかないんじゃ?」

 こっそりフォローする用意をして背中を押す。妖糸を使えば何とかなるだろ。

 「そうね。」

 「うん。」

 二人が精神集中に入る。と、それぞれ技を放った。

 「封月輪!」

 「閃の太刀 弧月!」

 封印ないし弱体化と居合い系の技か。

 それに合わせて俺は妖糸を跳ばす。

 左手の人差し指と中指を動かして、妖怪の全身を絡め取り動きを止める。

 次に右手の小指を動かして薫さんの斬撃よりほんの少し早く、斬撃が通るはずの太刀筋に切れ目を入れる。

 これでお仕舞いだな。

 と、思った時、妖怪が空間ごと裏返った。

 次の瞬間、俺は妖怪の身体から生まれた次元の裂け目に飲み込まれていた。




後書きらしきもの
 離れた場所にいたはずの亜門君が、次元の裂け目に飲み込まれたのは妖怪の体に妖糸が巻き付いていたからです。で、裏返るときに妖糸ごと引っ張られたわけですね。自業自得です。
 というわけで亜門君は沖縄からさらに別の場所に行きます。そこでやっと亜門君のデバイスが手に入る予定です。
 次は海つながりです。と言っていいのだろうか?


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<試験休み-沖縄?編2>

 目の前に現れたそれは女性の形をしていた。しかし。

 「妖糸の分析だと生命反応は無し。ロボットか?」

 「あれはマリアージュですね。戦闘用に産み出された屍兵器です。」

 「何だそれ?」

 会話の合間にもマリアージュからの攻撃がやってくるが、それを妖糸で逸らしながら問いかける。

 「冥王イクスヴェリアが産み出すことができる戦術兵器です。」

 なるほど、ならば。

 「斬っても問題ないな。」

 「…あ。機能が停止すると自爆します。」

 「そう言うことは先に言え!」

 慌てて妖糸で切り裂いたマリアージュを巻き取ると遠くに放り出す。

 「伏せろ!!」

 人形娘の頭を押さえつけて床に伏せる。

 ズゴゥウウウン!

 爆音と爆風が通り過ぎる。

 「っ痛え…!」

 「御主人様。今ので他のマリアージュが寄ってくると思います。」

 「あんなのがまだいるのか?」

 「知識が確かなら後40体ほど。イクスヴェリアならさらに追加もできます。」

 「どうするのがベストだ?」

 「イクスヴェリアを見つければマリアージュを制御できます。」

 「ならば、探すしかないか。お前、この遺跡の地図データはあるか?」

 「残念ながら。」

 「いい、やりようはある。」

 俺はそう言うと妖糸を遺跡中に跳ばした。

 (ここか?)

 何か棺のようなものが設置されている部屋がある。他にはめぼしいものはない。

 「行くぞ、つかまれ。」

 そう言って人形娘を背中に掴まらせると、俺は|空中を飛んだ≪・・・・・・≫。

 「御主人様は飛行魔法をデバイス無しで使えるのですか?」

 背中から人形娘が声をかけてくる。

 「いいや、単なるワイヤーアクションだよ。」

 そう、これは妖糸を使った移動だ。天井近くに張り巡らした妖糸に別の妖糸を通してぶら下がっているのだ。

 走るのより速いので急ぐときには重宝する。

 途中で出くわしそうなマリアージュも妖糸で拘束しながら目的の部屋にたどり着いた。

 「ビンゴ!」

 部屋には何かを封印しているような装置が中央に置かれていた。

 その横にはパスワードを打ち込むような装置がある。

 「パスワードは知っているのか?」

 「はい、古代ベルカ語ですので、私の言うとおりに打ち込んでください。」

 人形娘に言われたとおりパスワードを打ち込むと封印が開いた。

 そしてその中から身を起こしたのは。

 俺と同い年ぐらいのブラウンヘアの少女だった。

 「え?」

 「ああ…また目覚めさせてしまうのですね。」

 「えっと…。」

 「貴方が新しい操主様ですか?」

 「…多分、そうだと思う、が…。」

 俺は人形娘の方を見る。

 「これが?」

 「はい。冥王イクスヴェリアです。」

 俺は頭を抱えたくなった。

 何で冥王なんて大層な名前を持つ存在が幼女なんだ?

 「古代ベルカってバカばっかりか?」

 「あの…操主様?」

 「ああ、ごめん。それで君はマリアージュを制御できる?」

 「できません。私はマリアージュを産み出すのみです。」

 「おい、話が違うぞ?」

 人形娘の方を睨む。

 「制御は操主様の役割です。」

 そこにイクスヴェリアから思わぬ声がかかる。

 「俺?」

 「はい。」

 「どうやって?」

 「特殊術式の念話で行います。」

 また判らん単語が出てきたぞ。念話って何だ?

 「通常の念話さえできれば簡単なアレンジで済みます。後は操主としての認識コードがあれば…。」

 説明を始めたイクスヴェリアの言葉を俺は遮る。

 「悪い。無理だわ。」

 「は?」

 「俺、念話って何かわかんないし。」

 「え?え?」

 さすがに驚いた表情を見せるイクスヴェリア。

 「で、御主人様。どうされますか?」

 「ま、こいつ連れて力押しで脱出、て事になるな。面倒くさいけど。」

 「了解しました。」

 「え?えっと…」

 「というわけでお前も一緒に来い。ちなみに拒否権はない。」

 「あの…。」

 文句を言わせず、背中に人形娘、前にイクスヴェリアをお姫様だっこで最初の部屋まで連れて行く。 マリアージュはもちろん、途中で全て無力化していく。

 俺たちの通り過ぎた後で、次々と爆発が起こる。

 この遺跡大丈夫か?さっきから嫌な揺れ方してるんだが。




後書きらしきもの
 調べても、マリアージュの制御法が判らなかったので、ここでは特殊な念話による、とさせていただきました。
 今までデバイスに縁がなかった亜門君がもちろん魔法を使えるわけもないですね。だから念話も無理。
 ちなみに魔力Dなのでユーノの声も聞こえなかった、というわけです。


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