黙示録への転生者 (空手KING)
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プロローグ

処女作ですが、頑張って書きました。


それはある日の朝だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーそう、俺は死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや〜、これはひどいw

グチャグチャだよ、グチャグチ!w」

 

俺は今、何も無い真っ白な空間で‘‘神”を名乗る超絶イケメン野郎と対面していた。

自称‘‘神”のイケメン野郎が言うには俺は死んだらしい。

死因は俺が朝高校に行くために大好きなバイクで通学していて、

反対車線を走っていた大型トラックの運転手が居眠り運転をしていたらしく、真っ直ぐ俺に向かって突っ込んできたらしい。

俺もかなりのスピードを出していて、それはもうグチャグチャだったらしい。

実を言うと俺はまったく事故について覚えていない。

脳が事故のことを拒絶しているからだと思う。

では何故死んだはずの俺がここにいるのか?

答えは簡単だ…超絶イケメン野郎が俺をここに呼んだからだ。

そして俺を呼んだ本人はというと…

 

「ねぇねぇ、グチャグチャな自分見たい?w

あ!、僕のオススメなのは……えーっと…あったあった、これだよこれ!

突っ込まれる寸前の顔、ぷっ、クククッ、アッハッハッハ〜w

死を受け入れたのか知らないけど仏みたいな顔してるんだよw

この時の君、神である僕より神々しいよw

せっかくのイケメンが台無しだよw

そうだ!待受にしよーっとww」

 

俺の死んだ時についてツボっていた。

俺の死ぬ寸前の顔を携帯の画面に出して爆笑している…携帯持ってたんだな。

 

「おい、神!

何故俺をここに呼んだ⁇」

 

俺は神に俺を呼んだ理由を問う。

 

「あっ、これもオスス「聞けよ⁉︎」メ…」

 

神は俺の問いを華麗にスルーしてきた。

俺は普段ボケる方なのについ大声を出してツッコミを入れてしまった。

俺のツッコミに神は「ハァー…」と溜息をついた後、今までに見せたことのない真面目な顔で口を開いた。

おっ、ついに話す気になったか⁇

 

「これなんかも良いと「また無視⁉︎」思うんだ…」

 

神はまたも華麗にスルーしてきた。

またツッコまれたからか今度は「チッ…」と舌打ちをしてきやがった。

舌打ちしたいのはこっちだよ!

俺の怒りはふつふつと溜まっていく。

 

「あぁもう、分かったよ!

君を呼んだ理由だっけ⁇

理由は転生して欲しいから、はい以上!w」

 

神は今度こそ、俺を呼んだ理由を話した。

その内容に俺は歓喜の混じった声で神にさらに問う。

 

「転生⁈

転生って、あの転生⁈

じゃあ俺はもう一度人生をやり直せるのか?

ん?おい神!

神様ってぇーのは人間が死ぬ度に転生させているのか⁇」

 

「そうそう、あの転生だよw

ただし、小説とかの異世界転生ってやつだよ?w

それで構わないなら転生さしてあげるw

あと転生させてあげるのは僕の気まぐれかなw

退屈しのぎにもなるしね。

ちなみに転生してみたい世界ってある?」

 

異世界転生だろうが何だろうが、もう一度人生をやり直せるならなんでもいい!

それに行ってみたい異世界にまで行かせてくれるのか⁉︎

なんだよ神、お前良い奴じゃねぇかよ。

俺は内心で神を称えつつ、行ってみたい世界について考えた。

やっぱり平和でファンタジーな世界がいいよな、Love and Peace‼︎

 

「全然異世界でも構わないぞ!

転生したい世界は平和でファンタジーな世界だな‼︎」

 

「平和でファンタジーな世界かぁ、なるほど…

行けるといいねww」

 

ブチッ

 

あ、何かが切れた。

いや切れたじゃなくて、キレたの方が正しいのか?

俺は血が出るほどに手を握り締めると、プロボクサー顔負けのスピードで右ストレートを神の顔面目掛けて放つが…

 

「なっ…⁈」

 

「もぅ危ないなぁ〜w

神に手を挙げるとは何事か‼︎…なんちゃって、テヘペロww

まぁ落ち着こうよw」

 

神は右手の小指一本で俺の本気の右ストレートを受け止めると、またふざけた様子で俺の怒りを宥めてきた。

 

「すまん、ついカッとなってしまった。」

 

いくら簡単に受け止められたからといっても、先に手を挙げた俺に被があるので素直に謝った。

 

「いいよ、気にしてないから!w

行く世界は実は決まってるんだw

どんな世界かはまだ言えないけどね…ゴメンねw

じゃあ特典だけど…」

 

「特典⁇」

 

俺は世界が決まっていることに落胆しつつ、特典という気になるワードについて神に問う。

 

「そう、特典だよw

君が異世界で安全に楽しく暮らせるようにするためのものだよw」

 

「そうか…そんなものまで用意してもらって悪いな。」

 

「気にしなくていいよw

じゃあ特典1つ目はあらゆる武器を創造できる能力だ「ちょっと待てぇぇえええ」よ…もぅ、次は何⁇」

 

神は呆れた様子を見せてきた。

 

「何故そんな危険な能力なんだ⁉︎」

 

俺は平和がいいんだよ!

別に世界征服がしたい訳じゃない‼︎

 

「念のためだよw

身を守るために少し過剰な能力を与えるだけだよw

使わないのに越したことはないけど…w」

 

「むっ…」

 

少し過剰ってレベルじゃないが確かに身を守るためなら仕方がない、か?

本当に危険なら使う、それでいこう!

 

「じゃあ続けるよんw

2つ目はあらゆる乗り物を乗りこなせる能力w

3つ目はあらゆる格闘技や拳法、銃の使い方、剣術、槍術etc.etc.を達人級の様に使える能力w

2つ目と3つ目に関しては体と脳に経験した事として染み込ませておくからねw

そして1つ目だけにはデメリットがあるんだよ。

それはさすがに兵器級までのものは創造できないことと、マンガとかに出てくる魔剣とか聖剣とかレーザー銃なんかの空想上のものは創造できません、以上w」

 

「じゃあ俺がレーザー銃なんか発明できたりしたら、レーザー銃は創造できるのか?

それとあらゆる乗り物っていうのには動物は含まれるのか⁇」

 

「今の最初の疑問に疑問で返すけど…君にレーザー銃が発明できると⁇

もちろん君が発明したらいくらでも創造できちゃうよ☆

でもね未だ現在たくさんの科学者が知恵を振り絞っても発明できない物を君は1人でできると⁇…いーや、できないねw

君の前世の成績からでも良くわかるw

乗り物はもちろん動物もいけるよ…馬、象、闘牛などなど何でもこいだよw

乗れるならハムスターでもいけるよw

でも勘違いしないでね、乗りこなせるだけで乗り物自体の耐久値、速さは変わらないからね。

ちなみに人はダメだよw

何でダメかというと…何となく(爆笑)」

 

 

 

神は俺の疑問に疑問で返してきた後に、かなりバカにされた。

まさか死んでから成績について言われるなんて…言い返せない自分が憎い。

来世では勉強頑張ろう‼︎

神は俺をバカにした後にもう一つの疑問にも答えると、やりきった感を半端じゃないほど醸し出し、汗も出ていないのに汗を拭うふりをして爽やかな笑みを浮かべている。

そして俺は今更だがとてつもなく聞きたいことがあったので口を開いた。

 

「ありがとう…。

最後にもう一つ聞いていいか⁇」

 

「ん⁇なんだい?」

 

俺は大きく一息吸い、

 

「俺をどこの戦場に生かせる気だ、あ''ぁ⁈

絶対今から行く世界平和じゃないよな⁉︎

何?魔王と戦え的なあれか⁉︎」

 

俺は激しく取り乱しながら神の返事を待つ。

 

「Zzz…」

 

しかし俺の疑問は虚しくも空回りでおわった。

 

「寝てんじゃねぇよ‼︎」

 

「ん…ふぁああ。

あれ?まだいたの⁇

もぅ早く行きなよ‼︎w

んじゃ逝ってらっしゃい。ww」

 

神が指を上から下へと垂直に振るうと、俺が立っている場所に大きな穴があいた。

 

「え⁇ちょっ、まて‼︎

か、漢字が違うような気がする〜〜

ああああぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーー」

 

俺の叫びはだんだんと小さくなっていった。

 

 

 

 

 

 

 




使用して欲しい銃、乗り物等のリクエスト、ご指摘、感想受け付けます。
そして原作が休載中のため内容をゆっくり濃く書いていきます。
それでも休載で原作に追いつくならば、そこからオリジナルストーリーになります。


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転生からの17年間

今回は少し短いですが、次から徐々に量を増やしたいと思っています。


俺が転成して17年という時が経った。

転成はやはり赤子からだった。

当時精神年齢16歳の俺には若くて綺麗な‘‘こちらの世界”の母の胸を吸うという赤ちゃんプレイは相当に効いた。

 

 

ちなみに今の精神年齢は17歳と17年間で1歳しか成長していない。

それは仕方のないことだ…。

何故なら赤子からやり直すということは前世で死んだ時より若返り、経験してきたことの大体を繰り返すということだから、前世で経験した事のないことがあまりない。

さらに親類や友達の親、学校の教師などの大人は俺を当然子供の様に対応してくるのだから、精神が自分は子供と認識し、精神の成長も自然と遅れてしまう。

まぁ今は高1で死んだ俺は高2になっている…前世で体験することの無かった未知の世界に足を踏み入れた。

だから精神の成長はちゃんと正常に戻り、17歳の身体にあった精神になっている。

 

 

話を‘‘こちらの世界”に産まれた頃のことに戻す。

俺は赤子で産まれることはだいたい予想をしていたので大して驚きや困惑はしなかった。

俺が産まれてから1番驚いたことはこの世界についてだ。

この世界は地球だった。

さらには地球の中の日本。

日本の中の東京。

前世と大して変わっていない。

変わってしまったのは産まれた市、産んだ親くらい……だと思っていた。

神は元いた世界とは別の世界に転生させると言っていた。

確かにこの世界は神が言っていた様に異世界だった。

世界の国、日本の経済、県の数、市の数は何1つ変わっていなかった。

いや、市はさすがに数えれなかったが…。

でも、明らかに前世と違う点があった…それは人だ。

初めて気がついたのはTVだった。

TVに出る俳優、女優、芸人、ニュースキャスター、アナウンサー、各国の総理や大統領、大臣全てが違った。

最初は歴史の偉人だけは同じだから未来にでも来たのかなどとも考えた。

しかしあまりにも各国の経済が変わらな過ぎた。

さらには西暦まで同じと来た…そこで俺は悟った。

‘‘こちらの世界”は地球ではあるものの、前世の地球とはまったく違うということに。

 

 

‘‘こちらの世界’’…もう‘‘地球’’と呼ぼう。

‘‘地球’’が俺のいた地球とは別物であると悟った俺は身体と心を徹底的に鍛えることにした。

 

 

神が俺にあれだけのチートを与えるということはこれから先、俺の未来に何か世界を脅かすようなことが起きると考えたからだ。

何故チートがあるのに身体と心を鍛える必要があるのかって?

答えは簡単だ…いくら技に磨きがかけられ、キレのあったとしても身体が貧弱であれば技を行使するだけで自爆に繋がる。

力1に技10をかけても所詮は10だ。

技にどんなに隙の無いものだとしても行使するものの心に油断という曇りが入るだけで例え一瞬だったとしても隙ができてしまえば命に関わる。

だからこそ身体と心を鍛え、基礎というしっかりとした土台を作り、技という建物を建てる。

つまりは心・技・体は常に3つ全て揃ってようやく成り立つ。

土台がしっかりしていなければ、いくら建物が頑丈でも足元から崩されてしまう。

扇風機に羽が無いのと同じだ。

だからこそおれは身体と心を鍛えた。

 

 

 

 

 




西暦は勝手に同じにしちゃいました。
床主市も存在するという設定です^^;


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黙示録への足音

文章確認していません。
ご指摘、感想よろしくお願いしますm(_ _)m


‘‘地球”の中の日本。

そして日本の中の東京都床主市の住宅街のある1室。

そこにはベッドの上で気持ち良さそうな顔をしながら寝ている男がいた。

男の容姿は一言で言うと、かなり整っていると言えるだろう。

肌の色は薄い褐色で、

髪の色は美しい白とも取れそうな銀色で髪型はソフトモヒカンである。

スッと違和感のないほどに高い鼻。

細筆で書いたかのような左右絶妙なバランス、絶妙な太さの眉。

目は開いてなくて今は分からないが、実は紅い瞳をしている。

まさにかなりのイケメン。

身長は目視で180〜185くらい、身体は服越しでも分かるほどに鍛え上げられていて、無駄な肉、脂肪が一切無い、もはや一種の芸術品と言っても過言でないだろう。

その男の名は桂木龍一。

17年前にこちらの‘‘地球”に転成した人物である。

列記とした日本人であり、両親も共に日本人である。

目、髪、肌は産まれた時からだ。

彼の容姿が何故こんなに日本人離れしているのかというと、それは前世に関係している。

本当のことをいうと彼の容姿は前世と全然変わっていなかった。

彼の前世の両親はそれぞれに違う国と日本人のハーフだった。

綺麗な白銀色の髪は母親から、

紅く、闇の中でも強く輝きそうな瞳と薄い褐色の肌はは父親からの遺伝だ。

彼はこちらの‘‘地球”でもこの容姿で産まれられたことを心から喜んだ。

何故なら前世で彼を可愛い可愛いと育ててくれた大好きな両親の特徴を持っていられる。

前世の自分の名前、両親の名前はとっくに忘れてしまっている…だけど鏡で自分を見るたびに両親の顔を思い出すことができるからだ。

こちらの両親は産まれた時の俺の容姿にかなり驚いていたが、前世の両親と同じようにたくさんの愛情を注いでくれた。

しかし両親はもういない…1年前に事故で同時に亡くなった。

だから今は親戚の名を借りて両親と16年間暮らした思い出の家にバイトと高校の勉強、身体の鍛錬をこなしながら1人で暮らしている。

△▼△▼△▼△▼△

 

ベッドのすぐ近くの窓。

その窓のカーテンの隙間からさす陽光がベッドの上で眠る俺の顔にかかり、俺は深い眠りから覚醒する。

 

「ふぁ…ふぁ〜ぁぁあ」

 

俺は背中を思いっきり伸ばし、寝て動かしていなかった関節をほぐすかのようにポキポキと鳴らした後、目を擦って時計を確認する。

時計の針は現在AM7:57の位置を指している。

 

「げっ⁉︎もぅこんな時間かよ。

えーっと、校門は8時25分に閉まるはずだから…ヤバっ‼︎」

 

俺は慌てて「よっ!」という掛け声とともに跳ね起きをしてベッドから飛び出す。

そのまま部屋のクローゼットに向かい、クローゼットから高校の学ランを取り出し着替え始めた。

俺は着替え終えた後自室から1階に降りると、洗面所で寝癖を水と手櫛で直すと顔を洗ってから歯を磨き、リビングへと駆け足で向かう。

リビングに向かうと昨日コンビニで買って置いたスティックパンを口に詰め込み、コップいっぱいに入れた牛乳で無理やり流し込む。

 

「モグモグ…ゴクッゴクッ……ぷはっ、うまい‼︎」

 

牛乳でできた白い髭を腕で拭い、ダッシュで玄関に向かう。

玄関に辿り着くと俺は両親への挨拶を忘れていたことを思い出し、和室に向かう。

和室の襖を開け、奥の仏壇へと駆け寄る。

チーンと金属音が和室一帯に響く。

俺は目を閉じ合掌をし終えると、仏壇に向かって微笑みを浮かべ一言。

 

「行ってきます。」

 

 

 

 

 

 

俺は外に出るとガレージに向かい、シャッターを上げる。

ガレージの中に入ると俺は愛車であるハーレーに跨る。

ハーレーは1人ぐらしの高校生がバイトだけで帰るような代物ではないが、親戚がバイク屋をしているので、無理を言って安く譲り受けた。

半キャップ型のヘルメットを被ってからサングラスをかける。

サングラスをかけた後サイドミラーで顔を確認する。

 

「うん、今日も決まってるな」

 

俺はツッコミの無いボケを1人でかます…す、素じゃないんだからね‼︎

 

「さぁ、出発だ相棒!」

 

俺は愛車に一声掛けるエンジンを蒸かし、家を後にした。

 

 

 

 

 

「相棒は今日も絶好調だな!

ん?あれは…。」

 

俺が愛車を走らせながら愛車の調子良さに満足気に頷いていると、左前方の歩道を爆走中の同じ高校の生徒がいた。

しかもその生徒は俺のよく知る生徒だった。

 

「おーい、孝〜!」

 

俺は片手をハンドルから離し孝に手を振った。

孝は走るのを止めて辺りを見渡した後、俺の存在に気が付いたのか俺が走っている車道に近づいて手を振り返してきた。

 

「龍一!後ろ乗せてく『ビューン』…オイ、止まれよ!」

 

俺は孝を無視して素通りをすると、孝はすごい勢いで走ってきた。

しばらく必死に追いかけてくる孝をサイドミラーで笑いながら眺めてから止まる。

 

「やっと…ハァハァ…止まっ、た…ハァハァ」

 

「お前かなり速かったぞ?

お前はボルトか⁉︎」

 

「ハァハァ…ボル、トって…ハァハァ…誰だよ⁉︎」

 

「ん?誰だっけ?

速いって言ったら自然と頭に浮かんできたw」

 

孝は「なんだそりゃ」と言いながら溜め息を吐いている。

 

 

そうそう遅くなったが彼の名前は小室孝。

顔はまぁまぁのイケメンだと思う。

髪型はよく分からん。

特徴は意思の強そうな鷹のような瞳をしているとこだ。

身長は目視で175前後だろう。

体格は…まぁ運動はできそうな身体だ。

学ランのフックと第一ボタンを開けている。

その隙間からは真っ赤なTシャツが見える。

俺と同じ高校に通い、同じ学年同じクラスだ。

彼とは幼い頃から仲がいい、幼馴染という奴だな。

 

 

「なんで普段授業にちゃんと出席しないお前が遅刻を逃れるためにダッシュしてるんだ⁈」

 

 

「分からない…だけど今日は学校にいた方がいいような気がするんだ。

嫌な予感がする。」

 

嫌な予感か…今日何か起こるのか?

考えすぎか…。

 

「そうか。それなら学校に行こう。

ほらよ!」

 

俺はそう孝に声をかけるとフルフェイスのヘルメットを孝に投げ渡した。

孝は「ありがとう」と一言俺に礼を告げると俺の愛車の後ろに跨った。

俺は孝が跨ったのを確認すると愛車をまた走らす。

 

「このバイクはハーレーとか言ったよな?

ハーレーって大型車だろう⁇

18歳になってないのに大型車の免許をとれるはずもないし…無免許運転⁈」

 

そう、大型車の免許を取るのには18歳にならなければ取ることができない。

つまり俺は無免許運転をしている。

孝はそれに気が付くと素っ頓狂な声をあげて驚いた。

 

「無免許運転って…転ばないでくれよ⁇」

 

「はっ!誰に言ってやがんだよ‼︎

俺が乗り物で転ぶことは死んでもないな。

俺はどんな乗り物でも乗りこなせる天才だぜ。

白バイ、青バイに追われてもルンバでも逃げ切れる自信あるねw

それに無免許運転は高校生の特権だろ?」

 

「ルンバって乗り物じゃないよね⁉︎

あれ操縦できないし…。

だいたいルンバってのはな、

お掃z「小っさいことをグチグチ言うなよ。

ほら、もうすぐ学園着くぞ!

あそこのスーパーに止めるからそこから徒歩だ。」

 

ルンバについて語りだそうとしだす孝を戒め、バイクを降りるように指示をする。

 

「そういえば学園はバイク許可していなかったな…。」

 

孝は「ハァー」と大きな溜め息を吐くとバイクから降り始める。

俺は孝の溜め息を無視し、学園のすぐそばのスーパーの駐車場にバイクを起き時間を確認する。

 

「げっ⁈孝!走るぞ。

もう2分切ってやがる。」

 

「マジかよ⁉︎」

 

俺達は学園に走り始めた。

 

これから世界を変えるようなことが起きるとも知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




少し量を増やしました。
次回から原作に触れて行きたいと思います。


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黙示録の始まり

あれから俺達は学校に全速力で走った。

俺は余裕で間に合ったが、孝はかなりギリギリだった。

走っている間に結構な距離が開いていたようだ。

まぁ俺は毎朝ランニング、坂道ダッシュ、階段ダッシュ、たくさんの種類の筋トレを水に濡らしたマスクを付けながら行っているからな。

雨の日も強い風の日もジメジメした暑い日も毎朝だ‼︎

台風の日は流石に両親が許してくれなかったが…。

でも今日は珍しく寝坊したな…珍しくっていうより初めてのだったような…。

 

 

俺達は人口100万人級の地方都市、床主市に存在する私立高校藤美学園に入ると校門のすぐ前にある無駄に広いグラウンドの横を2人で会話しながら通り、綺麗な桜並木の間を通りながら校舎の入り口を目指した。

校舎を目指す際、桜の木が風で仰がれる度に綺麗な薄ピンク色の桜の花びらが宙をヒラヒラと舞い、木々の隙間からさす春の陽光は暖かく、心地よい。

その様は、まるで俺達を正面にある学園の校舎へと誘うかのように感じられた。

校舎に入ると2年生のクラスがある3階へと上がり、俺達2人のクラスに向かう。

ちなみに1学年9クラスで1クラス40人学級である。

俺たちが長い廊下を歩き、教室に入ると

 

「おっ‼︎孝と龍一が来た。

龍一がこんなに遅れてくるなんて珍しいな!」

「りゅ、龍一君おはよう!

龍一君が遅刻ギリギリなんて本当に珍しいね。」

「本当だよ〜、桂木が珍しく遅いから私心配しちゃったよ!」

 

クラスのほとんどに迎えられた…主に俺が…主に女子に。

俺の容姿が周りの男性より少しはイケメンだと前世から一応認識している。

よくある鈍感系な男ではないし、俺はかなりの好色だ…だから少なからず好意を寄せられていることぐらいは分かる。

このクラスにも少なからず俺に好意を寄せてくれている子もいるくらいだ。

俺はみんなに「おはよう」と明るく返し、朝珍しく寝坊したことについて話した。

俺が寝坊したことにみんな驚いた様子を見せたが、すぐに笑いに変わった。

俺はみんなと一通り挨拶すると1番前の席に座っている体が肥満体型の男に声をかけた。

 

「平野おはよう!」

 

「お、おはよう。」

 

肥満体型の男の名前は平野コータ。

彼は陰気で休み時間でもいつも1人席に座っている様な男だ。

整えるということを知らないのかという程にボサボサの髪が肩の位地らへんまで伸びていて、明らかに体を動かしていない様な体型、黒縁メガネを掛けていて、そのレンズ越しに見える瞳には覇気が見られない。

しかし俺は彼の瞳に覇気が宿る時を知っている。

それは銃について語る時だ。

銃…趣味について語る時の彼の瞳は他の誰よりも爛々と輝いている。

俺は自分の好きな事をこんなにも熱心に語れる奴を他には知らない。

俺は自分の夢や目標、自分自身のことを語れる奴が大好きだ。

語れるということは自分をしっかり理解できているということだからだ。

そういう奴は大概大きなミスを起こさない、自分の限界を知っているからだ。

だから俺は平野を友だと胸を張って言える。

俺は平野と少し会話してから、ジッとこちらを睨みつけている女のところに向かった。

睨みつけてくる様は「何で私には挨拶しに来ないのよ‼︎」と言っているようだった。

 

「高城、おはよう。」

 

「…フンッ!」

 

俺が挨拶するとそっぽを向いて、自分は不機嫌ですよっと雰囲気を出している女の名前は高城沙耶。

艶やかな綺麗なピンク色の髪を白い紐2つでリボンを作ってできたツインテール。

キッと少し釣り上がった目元の奥に輝く黄金に輝く宝石。

眉も綺麗に整えられており、スッと違和感を感じさせない絶妙な高さの鼻、綺麗な桃色でぷっくりとした柔らかそうな唇。

途轍もないほどの美少女だ。

実際に学園内でもかなり男子から人気があり、頭脳明晰でもある。

顔から分かるように性格はキツめで、彼女が人気あるのもMっ気のある男子からの場合が多い。

身長は目視で155〜158くらいで、友達の森田が言うには着痩せするタイプでグラドル並みの巨乳らしい。

まさにボンッ、キュッ、ボンッだ!

実は彼女も幼馴染であり、昔はよく2人で遊んでいた。

ちなみに彼女の父親はこの県の国粋右翼の首領でありかなり恐い。

高城はいつからか俺に対する態度がキツくなってきた。

昔は可愛かったのに…。

今も何故か頬を朱色に染めそっぽを向いている。

これはあれだな…触らぬ神に祟りなしって奴だな。

俺は踵を返し高城から離れる。

背中から痛いほどの強い視線を感じるがスルーだ…。

次に向かったのはカップルの元だった。

 

「おはよう、井豪、麗。」

 

「あぁ、おはよう龍一。」

 

「………。」

 

俺が挨拶すると爽やかな笑顔で挨拶を返してきた男は井豪永。

俺の白色に違い銀髪とは違い、完全なる銀色の髪を持つイケメン野郎だ。

俺は別に井豪と特に仲が良い訳ではないが、井豪の横に立つ女と親しかったから偶に話す。

さて、井豪の横に立ち、俺の挨拶を無視してきた女だが…

彼女の名前は宮本麗。

甘栗色の艶やかな髪を背中の真ん中の辺りまで伸ばしており、どういう構造をしているのか分からないが、頭のてっぺんから2本の触覚が伸びている。

日に当たっていないのかという程に美しく白い肌、意思の強そうな俺の瞳とはまた別に赤い瞳、絶妙なバランスで整った髪と同じ色の眉、スッと違和感を感じさせない絶妙な高さの鼻、桜色のぷっくりとした唇。

高城に負けず劣らずの美人だ。

身長は目視で165cmあるかないか程で、胸もかなり大きいがグラドル並みではない。

いや、高城と同じで着痩せするタイプかもしれない。

高城ほどではないが頭が良い。

だけど、麗は留年生…俺や孝の1つ上だ。

麗が留年したのには彼女の父親の仕事の関係で留年したとか…。

俺が無視されているのも留年したことに関係している。

麗が留年した時に孝が彼女にしつこく問い詰めたらしい、俺は彼女が留年したことについてあまり触れて欲しくなさそうだったので理由を聞くことを諦めた。

なのにだ!あのバカ孝がしつこく問い詰めたせいで俺まで巻き込まれて無視されるようになってしまった。

昔は俺の嫁になると言って、ゆびきりげんまんまでしたのに…。

まぁ話しがかなり変わるが麗の情報は森田からは手に入らない。

森田は彼氏のいないフリーの美女にしか興味を示さない。

つまり麗は彼氏持ちだということだ。

相手はみんなお気付きだろうが、麗の隣に立つ井豪だ。

ちなみに麗はまたまた俺の幼馴染であり、‘‘地球”での初恋の相手だったりする。

今はおれはなんとも思っていないが、孝が俺と同じくらいの時期から麗に惚れているらしい。

だからこそ彼女の留年の理由が気になったのだろう。

嫌われたら元も子もないだろうが…。

 

俺は1度溜め息を吐くと2人に分かれを告げて孝の元に向かう。

 

「孝、今日も授業すっぽかして屋上に行くのか⁇」

 

「うん。」

 

俺の質問に孝は首を縦に振り肯定する。

 

「そうか…今日は俺も行くわ!

なんか授業を受ける気分にならねぇ。」

 

「僕は構わないけど…龍一が授業サボるなんて珍しいな。」

 

「ば〜か、サボりじゃねぇよ。

休息だ、休息!」

 

「はいはい。」

 

俺の屁理屈に孝は苦笑いしながら受け流した。

くそッ、はいは1回だろう!

俺は内心愚痴りながらも孝と共に教室を後にした。

 

 

 

 

俺達が廊下を歩いて屋上を目指していると不意に後ろから声を掛けられた。

 

「よ、小室と桂木‼︎

またサボりか小室⁇

桂木の場合は珍しいが…」

 

その声に俺たちが振り返ると、さっきから話にたびたび登場する森田が立っていた。

 

「森田か…。

お前もサボりか?

僕は昨日あんまり寝てないんだ、授業もタルいし…。」

 

森田の問いに答えたのは孝だった。

孝は欠伸をしながら頭をボリボリと掻く。

確かに眠そうだ。

そんな孝を見て森田は悪戯を思いついた子供のような笑みを浮かべて、孝を指差しながら口を開いた。

 

「女にもフラれたし…か?

噂になってるぜ。

留年して同級生になった幼馴染のおねーさま、井豪とつきあってるんだろ?」

 

それは悪戯で触れてもいい話じゃないぞ⁉︎

俺が内心で慌ていると、孝が静かな声で口を開く。

 

「永は…麗が自分で決めたことだ。

それにそういうの面倒なんだよ。

ま、井豪はいい奴だし、見かけも頭もいい、スポーツも万能だ。

麗が好きになるのも当然さ。」

 

孝は儚げな笑みを浮かべた。

一瞬の沈黙…。

やっぱり空気が悪くなってしまった。

話に触れた本人も何を言っていいのか分からず困惑顔だ。

 

「僕達は屋上へ行くよ。」

 

「そっか…。

俺は寄宿舎に潜り込むよ。

んじゃまたな、小室、桂木。」

 

「「あぁ。」」

 

気まずい空気になったことを察した孝の1言で森田と別れ、また俺達は屋上に向かって歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 

「あぁ、気持ちいい!」

 

俺は屋上に着くと、コンクリートを背に大の字になりながら、雲一つ無い青い空を仰ぎ見る。

孝は現在屋上の柵にもたれかかりながらグラウンドを見ていて、俺に背中を向けている。

 

「孝、俺少し寝るから何分かしたら起こして…く…れ?」

 

俺が孝の背中に声をかけると、孝がグラウンドの奥の校門辺りを見ながら「な…なんだってんだ一体……。」とかなり恐怖に満ちた声でつぶやきながら震え出した。

俺が孝にどうしたのかと尋ねようとした瞬間、孝はダッシュで階段に向かって走り出した。

 

「お、おい孝!」

 

俺の声にも反応せず、孝は階段を降りて行ってしまった。

俺は孝の行動に不安を感じたため、孝の後を追うことに決めて走り出した。

 

 

 

この時、まだ俺は気が付いていなかった…。

すでに黙示録が始まっていることに。

 

 

 

 

 

 




中間テスト1週間前なので1週間ほど更新止まります。
ご了承ください。


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始動‼︎黙示録

お久しぶりです。
ようやくテストが終わりました。
それではどうぞ^_^


「なぁ〜孝〜、いきなりどうしたんだよ⁇

ってか、俺らはどこに向かってんだ?」

 

「ハァハァ…ん、ハァハァ……」

 

俺は屋上からどこかに走って行ってしまった孝にすぐに追いつくと、並走しながら孝が慌てている様子を聞く。

だけど孝は疲れているのか、それとも慌て過ぎて耳に俺の声が届いていないのか…何の返事もすることなく一心不乱に走り続けている。

しばらくそのまま走っていると孝がある部屋の前で足を止めた。

 

「ここは…俺らの教室じゃねーか‼︎

なんだよ…急に授業を受けたくなったのか?」

 

「………。」

 

またもや返事をしない孝。

孝はいきなりすごい勢いでスライド式のドアを開けて教室の中に入った。

俺も「はぁー」と溜め息を吐きつつも孝の後ろに続いて入る。

中に入ると授業を受けていた皆の視線が一斉に孝と俺に送られる。

ザワザワと皆がザワつき出すが孝は気にすることなく麗がいるところへ進んで行く。

 

「小室!

サボるだけじゃ足りずに授業の妨害まで‼︎

それに桂木まで‼︎」

 

授業を行っていた教師も怒るが、孝は無視したまま歩みを緩めない。

孝は麗の元へと行くと、麗の腕を掴み上げた。

 

「一体何よ!

授業中「いいから来いっ!」。」

 

麗も理由も分からずついて行くはずもなく抵抗する。

 

「ハハハ、何考えてんだアイツ。」

「イカれてんじゃね?」

「あれって告白?」

「超強引〜〜w」

 

麗を無理矢理連れて行こうとする孝に対して皆口々に孝をバカにする。

孝と麗のやり取りを見ていた麗の彼氏の井豪が立ち上がり麗と孝の元へと近づいて行く。

井豪が立ち上がった時に何故か高城も立ち上がり「何してんのよ桂木ぃっ!」とさらに何故か何もしていない俺を怒鳴りつけてきた…それに対して俺はスルー。

今から勃発する修羅場を見逃す訳にはいかないからなww

井豪は孝の麗を掴んでいる手とは反対の手を掴み取り怒りの形相を顔に浮かべる。

 

「孝!麗をどうするつもりだ!」

 

井豪が孝に怒鳴りつけると、孝と井豪がボソボソと話し始める。

「こらっ!聞いているのか小室っ‼︎」と孝と井豪がボソボソ話している間も教師は怒鳴り続けている。

ちなみに俺は教室の入口付近にいるため、2人が何を話しているのかまったく分かりません‼︎

 

2人がボソボソ話していると、麗が孝の腕を振りほどき口を開く。

 

「ちょっと待ってよ!

ちゃんとした説明を受けない限り私は…『パンッッ』」

 

…「「「「⁉︎」」」」…

 

しかし麗の言葉は甲高い音で遮られた。

孝が麗の頬を平手打ちしたのだ。

今までのクラスのザワつきが嘘のように止んだ。

その行動にはさすがの俺も目を見開いた。

 

「いいから言う事を聞け!」

 

「…………。」

 

孝が井豪と麗に怒鳴りつけると井豪は神妙な面持ちで頷いた。

 

「先生ちょっと失礼します。

麗、行くぞ。」

 

「おいっ、井豪までーーー」

 

孝を先頭に井豪が麗の肩を抱きながら、教師の言葉を無視して出て行った。

が、孝が頭だけを教室に覗かせ

 

「龍一、何してんだよ。

早く来い‼︎」

 

と、俺に言ってきた。

 

「またどっか行くのかよ〜。

分かった、俺は歩いて行くから先に行ってろ。」

 

「時間が…クッ、いいか‼︎絶対に来いよ龍一。」

 

孝はそれだけ伝えるとクラスから走ってどこかに行ってしまった。

さぁーて、親友との約束を違える訳にはいかないからな…俺も行こうかな。

俺は頭の後ろで手を組み、前世で好きだった曲を口笛で吹きながら教室を後にした。

俺が出て行く時、高城と教師の怒鳴り声が聞こえたがスルー♪

 

 

 

 

孝side

 

僕は絶句した。

龍一と授業をサボり屋上に来ていた僕が、麗の事を考えていた時だった。

校門の辺りで教師陣が何やら騒いで

いた。

 

「なんだあれ?

不審者か?」

 

僕が屋上から見た感じでは校門の閉まっている門に何度も体をぶつけ、校内に入ろうと?している人がいた。

すると教師の手島がその不審者らしき人の胸ぐらを校門の閉まっている門の隙間から掴み、思いっきり引き寄せ顔を門にぶつけさせた。

しかし熟女でグラマラスの肢体を持つ教師、林に怒られたのかちょっと戸惑った様子を見せた時だった…不審者が手島の腕に噛み付いたのだった。

手島は腕を噛まれると地面に倒れすごい形相でもがき苦しみだした。

そして思いっきり仰け反った後、手島は一切動かなくなった。

 

「死んだ、のか?

噛まれただけで…⁈」

 

僕がパニックになりかけた時、手島が動いた様で僕はホッと肩を落とす…が、今度は手島が近くにいた林の襟元を掴み引き寄せると林の首に噛み付いたのだ。

 

「な…なんだってんだ一体…。」

 

その時、どうして即座に動けたのか自分でもよく分からないーーーともかくそうしなければならないと思ったんだ。

僕は龍一に何も伝えることなく走り出した。

後ろから龍一の制止の声が聞こえた気がしたが、それどころではない…。

僕の頭の中にあるのは‘‘麗”の身の安全…ただそれだけだった。

 

 

 

 

 

 

僕は今、麗と永を連れて廊下を走っていた。

 

「……………。

校門で何かヤバい事が起きてる。

自分が可愛ければ逃げろ!」

 

「校門で何かって…それだけなの?」

 

「校門に誰かいた。

体育教師どもが見に行って…何かがあった、今は…教師どもが殺し合いをしてる。」

 

僕は校門であったことを時間がないのでかなり簡潔に麗に説明した。

 

「そんなバカなことが…「じゃあ勝手に死ねよ。」………!」

 

麗は僕の説明に納得がいかないようで否定しようとするが、僕は言葉を重ねる。

麗は「勝手に死ねよ。」という言葉が気に入らなかった様でムスッとした表情を作る。

麗と僕が話していると永が制止の声をかけてきたので足を止め、忘れ物をしたのかと問うと、永は武器が必要になると言ってきた。

それには激しく同意だ。

永は麗の槍術が得意なのを生かすために、掃除ブラシの柄の部分をブラシから外し武器を作る。

僕は野球部のバッグから金属バットを拝借する。

ふと永が武器を持っていないことに気がつき聞いてみると、自分は空手の有段者だから必要ないと言われた。

 

「ともかく学校を出よう。」

 

「実家か…」

 

「まず警察よ‼︎

お父さん警部補だからすぐ来てくれる…。」

 

麗の提案に乗り、僕は麗に携帯を渡して警察に電話するように促す、が…

 

「うそ…」

 

麗は携帯を耳にあてながら呟いた。

 

「どうした?」

 

「110番がいっぱいだなんて…そんな…。」

 

麗は目を見開き動揺を隠せない様子だ。

その時だった。

 

『全校生徒・職員に連絡します!

全校生徒・職員に連絡します!

現在校内で暴力事件が発生中です。

生徒は職員の誘導に従って直ちに避難してください‼︎』

 

学園中に放送が響きわたった。

 

「何だ何だ⁇」

「マジ?」

「ちょ、何〜〜。」

「ウソだろ?」

 

と、各クラスから困惑の声が上がり始めた。

 

「ようやく気づいたな。」

 

僕は今頃になってようやく放送があったことに苛立ちを覚える。

すると放送が繰り返し流され始めた。

 

『繰り返します。

現在校内で暴力事件が発生中d『ブッ‼︎キィィ…ン……ン…ガキン…ン…』…』

 

「まさか…。」

 

僕は放送に雑音、ハウリングが混ざったことで嫌な予感を感じ、嫌な汗が背中を伝う。

そして僕の嫌な予感はやはり当たった。

 

『ギャアアアアアアアアアッ!

あっ、助けてくれっ、止めてくれっ‼︎

ひぃいいいいっ‼︎

たすけっ、痛い痛い痛い痛い‼︎

助けてっ、死ぬっ、ぐわぁぁぁあ‼︎‼︎』

 

し………………ん

 

各クラスからの困惑の声が止み、静寂が支配した。

しかし、それは一瞬…

 

『ワァァァァァァアアアアア‼︎』

 

人が波のように全クラスから飛び出し、皆我先にと逃げ出す。

そこには男女の性別関係なく、前にいる者の髪、服、腕を引っ張り、倒れた者がいたならば平気で上を踏んで逃げる。

それは僕たちも同様だ。

僕と永はアイコンタクトを取ると頷き合い、校舎の出口とは真逆の方向に走り出した。

 

「えッ、外に逃げるんじゃなかったの⁉︎」

 

「教室棟は人で溢れかえってる‼︎

管理棟から逃げる‼︎」

 

僕は麗の疑問に走りながら答える。

しばらく走っていると階段付近の曲がり角から人影がノソノソとやけに遅い動きで現れた。

 

「あれって現国の脇坂?」

 

「まさか邪魔するつもりじゃ…。」

 

そして僕は気がついた。

脇坂の足から血が滴っていることに。

 

「避けろ!」

 

「えっ……。」

 

僕が叫んだ瞬間、脇坂はこれでもかという程に口を開け、麗に襲いかかってきた。

麗は困惑した声を上げながらも2、3歩後ろに下がりながら尖った先端を持つ柄を振り回し牽制する。

が、麗の牽制を気にする様子を見せずノソノソと麗に近づいていく。

 

「なっやだっ、近寄らないで‼︎」

 

麗は悲鳴に似た声を上げる。

 

「おらっ、何やってんだよ脇坂ァ‼︎

こっちだこっち‼︎」

 

俺も囮になろうと声を出すが振り向きすらしない。

すると麗は顔をキッと切り替え…

 

「槍術部を……なめるなぁ!」

 

と左足を前に出し体重を込めて脇坂の心臓を貫く。

しかし脇坂は「ゔっっ」と奇妙な呻き声を上げ意にも介した様子はない。

麗は柄が抜けないのか、柄ごと壁際まで吹き飛ばされる。

 

「心臓を指したのに、な、なんで動けるのよ⁉︎」

 

麗は壁に背を預けたまま座り込み、悲鳴を上げる。

麗は心臓に指した柄をつっかえ棒の様にし、脇坂を近づけられないようにしている。

すると永が脇坂を後ろから抑え込み、麗に柄を抜くように指示をする。

麗は永の指示に従い柄を心臓から引き抜く。

しかし俺は気がついた…心臓を指したのに出血がかなり少ないことに。

 

「永、直ぐに離れろ‼︎

脇坂は……普通じゃない‼︎」

 

「心配するな、こんな奴俺が投げ飛ばして……⁉︎」

 

永が笑いながら投げ飛ばしてやると言った直後、脇坂の首が常人では曲がらないほどに首がギギギっと回りだす。

永は慌てて首が回らないように頭を抑えつけるが…

 

「なっ、こ、こいつなんで…こんなに力が⁉︎」

 

永が困惑の声を上げた瞬間、脇坂は永の左腕に噛み付いた。

僕が慌てて脇坂を殴りつけ、麗が刺すが

 

「永ッ‼︎

なんで…どうして、どうして離れないのよ!」

 

「やはりそうだ…。」

 

「何言って…。」

 

僕がいきなり呟き出したことに麗が問う。

 

「死んでいるんだこいつは…。

死んでいるのに動いているんだ‼︎

でなければ心臓を刺されて動けるわけがないし…傷から血が吹き出してるはず…。」

 

僕が呟いた直後、さらに噛む力が上がったのか永が悲鳴を上げる。

 

「永っ‼︎

じゃあどうしたらいいのよ⁉︎

男でしょ‼︎

なんとか…なんとかしなさいよ‼︎」

 

麗が瞳に涙を浮かべた時だった。

永に噛みついていた脇坂が崩れ落ちた。

 

「「「え⁉︎」」」

 

何が起こったのか分からないが、僕と麗が永に小走りで近寄る。

 

「永!大丈夫⁉︎」

 

「ちょっと肉を裂かれただけだ。

大したことない。

それよりも……。」

 

僕、永、麗が脇坂に目を向ける。

 

「矢⁇」

 

脇坂の後頭部に矢が刺さっていた。

 

「いったいどこから⁇」

 

3人でキョロキョロと周りを見渡すと、こちらに弓を持って歩み寄って来る男がいた。

 

「「「龍一(桂木)‼︎」」」

 

そう、そこにいたのは龍一だった。

 

 




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少女との出会い

龍一は孝達と別れてからも相変わらず、後頭部のあたりで手を組み、唇を尖らせて口笛を吹きながら廊下を歩いていた。

授業中であることや、廊下であることもあり綺麗な透き通った口笛はよく響くため、ここに来るまでに5回ほど教師に怒鳴られた。

 

「ーーーーー♪」

 

龍一は口笛で一曲を歌いあげると次は何の曲を吹こうかと思考を走らせる。

そんな時だった…グラウンドの方がワァーワァーと騒がしいことに龍一は気がついた。

 

「何だ何だ⁇

どんな体育の授業をすればこんなに騒がしくなるんだ…授業中の人に迷惑だろう!」

 

龍一は自身の口笛のことを棚に上げ、体育の授業が騒がしいことに対しての文句を述べる。

そして龍一は近くの開いている窓によりグラウンドの方を眺める。

するとそこには教師と共に鬼ごっこをしている生徒たちの姿があった。

鬼は先生なのだろう…生徒達が必死に逃げている。

中には泣いて逃げる者まで…。

 

「あ、捕まった!」

 

龍一が眺めていると一人の男子生徒が教師に捕まった。

そして教師はそのまま生徒の首もとに口を持って行き…喉を食いちぎった。

 

「…え?」

 

そう教師は生徒の喉を文字通り食いちぎったのだった。

龍一は突然の残酷な光景に思考を何処かに置き去りにしてしまう。

喉を食いちぎられた生徒はというと首を抑えたまま転げ回り、もがき苦しんでいた。

そんな生徒に対して教師は再び容赦無く襲い掛かる。

教師は転げ回る生徒の腹に噛みつき、肉を食いちぎり、腸を引き出し、内臓をぶちまける。

生徒は涙を溜めた瞳を大きく見開きビクッビクッと痙攣していたが、しばらくするとピクリとも動かなくなり、死んでしまった…はずだった。

突如死んだはずの生徒はユラユラと力なく立ち上がり近くにいた生徒に喰らいかかった。

そこからは阿吽絶叫の死地と言っても過言ではないほどの光景が広がっていた。

アスファルトでできた床は赤黒い液体に侵されていく。

 

「な、なんだよ…これ…⁉︎」

 

龍一はようやく思考が戻ってきたのか驚きの声を上げる。

まるでゲームに出てくるゾンビのような光景だ、と。

 

「俺は何ちゃらハザードとかいうゲームの世界に来たの、か?」

 

龍一はこの残酷な光景を見て始めて理解したことが2つあった。

1つ目は神が龍一に何故過剰防衛(チート)を持たせたのか…。

神はこの世界がこうなることを知っていたのだろう。

いや、こうなる世界だからこそ送り付けたのかもしれない。

だがそれはこの世界を救えなどというテンプレ的なものではないだろう。

神は龍一が過剰防衛を持ってして何をなすか見たかったのか、あるいはただ単に龍一を観察して楽しみたかったのか…。

それは今となってしまっては分からない…神のみぞ知る、というやつだ。

 

そして2つ目は孝が何故あんなにも焦っていたのか、である。

孝は恐らく屋上で既にこの光景を見ていたのだろう。

そして孝の取った行動は愛する者を守ること。

例え自身が嫌われていようと身体が心が麗を守りたいと考えたのだろう。

彼の取った行動は正しい。

だから龍一は孝に対して怒らない。

教室で別れる前に今起きていることを説明せずに麗達を連れて行き、龍一を置いて行ったことを…。

 

「まずは外の奴らが入ってこないように校舎の扉を閉めないといけないな。

いや待てよ?

まずは今何が起こっているのかを学園の皆に説明する方が先か?」

 

龍一は頭に?を浮かべながら考える…この思考こそ時間の無駄だというのに。

 

「あぁークソっ!

俺はやっぱり考えるのは無理だわ。

勘だ!勘でいこう‼︎」

 

そう言って髪をワシャワシャと掻き乱し、ある方向へと走り出す龍一。

この方向からして扉を閉めることにしようだ。

扉を先に閉めるということは行動としては正しい。

学園の皆に話すのは奴ら(・・)が入ってくる経路を絶った後にならいくらでもできるからだ。

そう行動()正しかった…正しかったのだが…。

そこで龍一が足を止める出来事が起きてしまう。

その出来事とは…

 

『全校生徒・職員に連絡します!

全校生徒・職員に連絡します!

現在校内で暴力事件が発生中です。

生徒は職員の誘導に従って直ちに避難してください‼︎』

 

そう奴ら(・・)は既に校舎内に入って来ていたのだ。

各クラスから困惑の声が上がる。

 

「はぁ〜…間に合わなかったか。」

 

龍一は放送を聞いて小走りで走っていた足を止めて、重い溜め息を吐いた後にボソッとそんな言葉を呟いた。

そして放送は続く。

 

『繰り返します。

現在校内で暴力事件が発生中d『ブッ‼︎キィィ…ン……ン…ガキン…ン…』…。』

 

「………。」

 

教師が再度校内での暴力事件があると呼びかけようとした時、耳が痛くなるほどのハウリングが起き、放送が止む。

 

『ギャアアアアアアアアアッ!

あっ、助けてくれっ、止めてくれっ‼︎

ひぃいいいいっ‼︎

たすけっ、痛い痛い痛い痛い‼︎

助けてっ、死ぬっ、ぐわぁぁぁあ‼︎‼︎』

 

「………。」

 

マイク越しに聞こえる布が破ける音と肉が避ける音。

そして教師の悲鳴。

教師や生徒たちを恐怖に陥れるのには十分だった。

しかし龍一は先ほどの放送を聞いたように何処吹く風といった風に涼しい顔をしたまま目を瞑っていた。

龍一が目を瞑ってからしばらくするとある異変が起きた。

彼の手、背中、腰のあたりに光の粒子が集い始めたのだ。

光の粒子は徐々に形を成して行き、それ(・・)が現れた。

光のの粒子が消えると彼の手の中にコウモリが羽を最大限に開いた様な形をした弓、背中には矢筒が背負われており、矢筒の中には30本近くの矢が詰め込まれていて、左右両腰には変わった形の刃を持つ刀が携えられていた。

彼は過剰防衛(チート)を使って武器を作ったのだ。

 

そして龍一はゆっくりと瞼を開ける。

すると同時に各クラスから人の波が廊下へと押し寄せてきた。

龍一はそんな生徒や先生達に必死に声を張り上げ、外に出てはいけないと呼びかける。

が、当然パニックに鳴っている皆に龍一の声は届くはずもなく校舎の門…出口を目指して皆は我先にと死地へと向かって行ってしまう。

しばらくしてから悲鳴や絶叫が聞こえてくるが誰も足を止めることはなかった。

いや落ち着いている龍一だからこそ悲鳴や絶叫が聞こえたのかもしれない。

例え誰かが異変に気付き、引き返そうとしたとしても、後ろからくる人達は前で何が起きているかも分かるはずもなく前へ前へと進もうとする。

結局異変に気付いた人は人の波に攫われて奴ら(・・)に噛まれてしまう、という訳だ。

龍一はその光景を見て思った。

「生きたい!」と思う人間の渇望が逆に死地へと向かって行ってしまっている矛盾を…。

龍一の唇から一筋の赤黒い液体が流れる。

彼の表情は何かに対する遣る瀬無い気持ちが出ているかのように悔しそうな面持ちをしていた。

そして龍一は人の波とは逆の方向へと足を向けた。

彼は皆が外に出て行くのを引き止めることを諦め、孝達が向かったであろう方向に歩き始めた。

つまり彼は皆を見捨てたのだ。

龍一は他人を見捨てることに対して抵抗を感じていない訳ではない。

むしろ他人をも守ってやれない自分の力の無さに心苦しく思っている、努力してきた自分にもっと努力できただろう?と呪ってやりたいほどに。

それでも彼は人の波が押し寄せてくる中を歩み進める。

例え見捨てることになったとしても大事な人たちを守るために…。

不思議なことに人の波の中を歩み続ける彼にぶつかるものは誰一人としていなかった。

まるで彼を避けて通っているかのように…まるで死に急ぐように…。

しかしある時龍一のお腹のあたりに軽い衝撃が押し寄せた。

そう、唯一彼にぶつかる者が現れ

たのだ。

 

「きゃっ!」

 

その子…少女は龍一にぶつかった衝撃で尻もちをついてしまった。

そして少女は「痛たたた。もう!一体誰ですか⁉︎」と鼻を摩りながら、自分にぶつかってきたであろう人物に恨みがましそうな視線を向ける。

そう実際は少女からぶつかって来たのではなく、龍一自身からぶつかる形になってしまったのだ。

つまり彼女はその場に立ち尽くしていたことになる。

 

「せ、先輩⁉︎」

 

「ん…?君は確か〜…神奈月さん?であってたよね⁇」

 

少女はぶつかって来た人物が龍一だと分かると一瞬思考が止まったがすぐに目を見開いて驚きの表情に変えた。

龍一自身もかなり驚いているところと名前を呼んだ点から2人は何処かで接点があるようだ。

彼女の名前は神奈月 奈々。

この高校の1年生である。

彼女の容姿は非常に良いものであった。

この高校で最高クラスの容姿を持つ高木や麗に負けず劣らずと言っていいほどに…。

高木や麗が綺麗な美人系であるのに対し、彼女はリスやウサギと言った可愛らしい小動物を連想させる様な可愛い美人系であった。

きめ細かい病的な物を一切感じさせない雪の様な白い肌。

麗と同じ甘栗色の髪はボブカット風であり、髪と同色の眉は綺麗に整えられている。

クリクリっとした大きな瞳に形よく通った鼻。

ふっくらとした潤いと柔らかさを見ただけで感じさせる桃色の唇。

残念なのが胸が断崖絶壁だということくらいな完璧美少女。

彼女は学年ではドジっ子な点と天然な点、可愛らしいことからマスコットキャラのような存在である。

実際学年だけでなく、学園全体でも知るものは少なくないほどに有名である。

身長は目視で150cm程度。

 

「お、覚えていてくれたんですね⁈」

 

神奈月は龍一に名前を呼ばれて目を輝かせた。

 

「あぁ…覚えていたよ。

でも、うる覚えでゴメンな?」

 

龍一は神奈月の頭に手を置き、優しく撫でながら謝った。

 

「はうぅ〜。」

 

神奈月は龍一に頭を撫でられたことにより顔を真っ赤にさせつつも、気持ち良さそうに目を細めている。

 

こんなピンク色な雰囲気を出している2人だが、今もなお2人の周りではすごい形相で外を目指す者たちでごった返していた。

 

「おっと!こんなことをしている暇じゃなかったな…。

神奈月さんついて来て!」

 

龍一は今もなお顔を真っ赤にさせている神奈月の手を取ると再び人の波とは逆の方向へと歩き始めた。

 

「せ、先輩!

何処に行くんですか⁈

皆みたいに外を目指さないと!」

 

神奈月は龍一の取った行動に驚きの声を上げると、注意を促す。

が、龍一は「訳は歩きながら話す!」ということだけを伝えて、再び前を向き歩き始める。

神奈月も龍一の真剣な表情を見て龍一には何か考えがあると考え、大人しく追従することにした。

そして2人はどんどん、どんどんと人の波を掻き分け孝達が向かった方向へと歩いて行くのだった。

そして神奈月は、龍一に握られている手を眺め頬を朱色に染め、ニヤニヤと嬉しそうに笑っていた。

 




神奈月 奈々はオリキャラです。
HOTDには後輩キャラがいないので…。
誤字脱字、おかしな文があれば報告お願いしますm(_ _)m
感想もいただけたら嬉しいです。
あと今回の書き方についての感想も出来ればお願いします。


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不安

ショボい戦闘シーン…。
戦闘シーンに入るの、かな?
まぁ短いですが…どうぞ!


あれから龍一は神奈月の手を取りながら人の波を縫う様に歩き、なんとか人のいない場所を見つけたため、足を止める。

 

そして龍一は後ろの神奈月の様子を見る。

 

神奈月の顔は血の気が引いたように酷く青褪めており、困惑した表情を浮かべていた。

 

「は、はははは…。

や、やだなぁ〜先輩…。

私を騙そうとしたってそうはいきませんよ…?

だいたい私はホラーとかすっごく苦手なんですから…嘘はやめて下さいヨ。」

 

そう彼女がそんな表情を浮かべているのは、現在進行形でこの学園で起きている事…つまり奴ら(・・)が生者の肉を噛みちぎり、噛まれた生者がまた奴ら(・・)の仲間入りになるということを人の波を掻い潜りながら説明したのだ。

 

神奈月は乾いた笑いを上げた後、龍一が自分を騙して笑い者にしようとしているのではないか、と疑問の声を上げる。

 

しかし龍一からの返事は神奈月が待ち望んでいた答えではなかった。

 

「神奈月さん、俺がさっき言ったことは紛れもない事実だ。

俺は確かにこの目で悲惨な光景を見たんだ!

だから俺達は今は生き残るための行動をしなければならないんだ‼︎」

 

龍一は神奈月の両肩をガシッと掴み、紅の眼光で神奈月の瞳を射抜く。

 

神奈月は両肩をガシッと掴まれた際、ビクッと肩が跳ね上げたが、龍一の真剣な顔と曇りのない瞳を正面から受けたせいか、先ほど自身が否定していた…いや、否定していたかった龍一の話が真実なのだと始めて理解した。

 

しかし、やはり心の何処かに信じられない…信じたくないという心が残っているのか、龍一にまたもや否定の声を上げる。

 

「私はやっぱり信じられま『ギャァァァァアアアア』…。」

 

しかし彼女が言葉を言い切る前にどこからともなく、もはや性別すら分からないほどの悲鳴が上がった。

 

そのせいで彼女の表情はよりいっそう青くなり、目尻に涙を溜めて屈み込んでしまった。

 

そんな神奈月を見て龍一は彼女の頭に優しく手をやり、口を開く。

 

「大丈夫だ…俺がそばにいるぞ。

大丈夫だ…俺が守るから。

なんたって俺は…最強、なのだから。」

 

龍一の穏やかな笑みを見て涙を流す神奈月は龍一の胸に飛び込み、心の中にある恐怖心を追い出すかのようにさらに涙を流した。

 

(チッ‼︎さっきの悲鳴はなかなかに近かった…。

奴ら(・・)はもうかなり中に入ってきてやがる。

今は生き残ることが大切だ…孝たちは心配だが神奈月さんもいるんだ、まずはこの学園からの脱出を優先的にするべきだろう。

ならば更に奥の管理棟からの脱出が好ましいだろうな。)

 

 

龍一は神奈月を腕の中に抱いたまま、思考を頭の中で走らせていた。

 

ーーーーーーーーーー

 

「…もう……大丈夫です。

ありがとうございました…。」

 

神奈月は真っ赤に染めた瞳を手で一拭いすると、笑みを浮かべて龍一の胸からそっと静かに離れた。

 

「本当に大丈夫か?

今なら更に5分サービスしとくぞ?」

 

龍一は場を和ますためか、戯けたように冗談を口にする。

 

その冗談は効果があったらしく…

 

「フフッ。

有り難いお話ですが今は遠慮させていただきます。」

 

神奈月は先ほどの乾いた笑いではなく、心の底からの笑みを浮かべた後、龍一の冗談を丁寧に断わった。

 

龍一はそれに対して「それは残念…。」と、また戯けて返した。

 

そのやり取りが面白かったのか2人はククッと笑いを堪えたような笑みを浮かべて笑いあった。

 

しかし突然、龍一がキッと目を鋭くさせるとある方向を睨み付けた。

 

「せ、先輩?」

 

龍一のあまりの変わりように驚きを隠せない表情で龍一の名を呼ぶ。

 

が、龍一は一方を鋭く睨んだままで神奈月の呼ぶ声に反応をしない。

 

そんな龍一を怪訝に思ったのか、龍一が鋭く見据える方に神奈月も釣られるように視線を向ける。

 

そこに居たのは男子生徒だった。

 

廊下ということもあり、30m近く距離はあるようだが足を引きずりながらも徐々に徐々にとこちら側に近づいて来ている。

 

顔は下を向いているせいで、確認することができない。

 

そんな男子生徒を見た神奈月は…

 

「先輩!

あの人きっと、足の怪我で逃げ遅れたんですよ!

その証拠に…ほら、右足を引きずっているじゃないですか!

あっ、血も出ているようですし肩を貸してあげないと‼︎」

 

そんなことを口にしながら男子生徒に近づいて行こうとする神奈月の前に手がスッと横から行くてを阻む。

 

「待て。」

 

神奈月の行くてを阻み、一言だけ呟くように口にする龍一。

 

「そこの男子生徒!

学年、組、名前を述べろ‼︎」

 

「………。」

 

男子生徒は龍一の言葉に返事をすることなく、ゆっくりゆっくりと近づいて来る。

 

その奇妙さと異常さにようやく気が付いたのか、神奈月は龍一の後ろに周り、龍一の脇腹の位置から覗き込むように男子生徒を見据える?

 

「もう一度聞くぞ!

学年、組、名前を述べろ‼︎」

 

「……………。」

 

先ほどよりも声を張り上げ、怒鳴りつけるように声を出す龍一だが、やはり返事はない。

 

龍一は矢筒からスッと無駄一つ無い動きで矢を抜き去ると、左足を前に、右足を後ろにし、やや半身の体勢で弓を構え、右手でグッと弦を引く。

 

「せ、先輩⁉︎」

 

龍一の行動に目を見開き、驚きの声を上げる。

 

「止まれ!

それ以上こちらに近づくな!」

 

「…………。」

 

「これが最終宣告だ!

それ以上近づくな‼︎」

 

「……………。」

 

龍一の最終宣告を聞いてなを、足を止めない男子生徒。

 

龍一はその男子生徒目掛けて、めいいっぱい引いた弦を離し、矢を放つ。

 

その矢はヒュッと風を切る音だけを鳴らし、男子生徒の左太ももに突き刺さるとその肉を掻き分けて太ももの裏から飛び抜けて行った。

 

龍一の創造した弓はコンパウンドボウと呼ばれる弓である。

 

あの有名な映画「ランボー 怒りの脱出」のヘリコプターを爆撃した際に使っていた弓である。

 

残念ながらランボーが使っていた弓はコンパウンドボウのなかでもトルクボウという種類の弓であるのに対して、龍一が創造した弓は当時アメリカで競技用などに使われている弓である。

 

しかし強力なテンションのワイヤーを弦に使用されているため、威力は折り紙付きの上に大型ボウガン並みに矢の最大到達点は数kmとされている。

 

「そ、そんな⁉︎」

 

神奈月は悲鳴に近い声を上げる。

 

それは龍一が男子生徒に矢を放ったことに対してではなく…男子生徒が足を射抜かれたというのに悲鳴を一つ上げることなく、さらには体勢を一瞬ぐらつかせただけであって、先ほどとまったく変わらない速度でこちらに近づいて来る。

 

龍一はそんな男子生徒に対して、今度は心臓目掛けて矢を放つが、先ほどと変わらず一瞬ぐらつくだけであった。

 

龍一はチッ!っと小さく舌打ちをすると、さらにもう一発矢を放つ。

 

放たれた矢は吸い込まれるように男子生徒の眉と眉の間…眉間に突き刺さると、男子生徒の脳みそをぶちまけながら後方の壁にヒビをいれながら突き刺さった。

 

そして男子生徒は今度こそ立ち上がることが無かった。

 

龍一は右の手を見つめたままニギニギと開いては握り、開いては握るを繰り返していた。

 

龍一は右手にある男子生徒を撃ち抜いた感触に対して何の気持ち悪さも感じず、また男子生徒を殺してしまったことに対して何の罪悪感も湧いてこなかったのだ。

 

それは神奈月も同じだった。

 

龍一が男子生徒の眉間を撃ち抜いた瞬間を見ても何の気持ち悪さも感情も湧いてこなかったのだ。

 

2人は自分の感情への不安を感じつつも、これからの方針に語り始めるのだった。

 

 




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