マスクドライダー・ストラトス (ピカリーノ1234)
しおりを挟む

各種設定
主人公設定(ネタバレ注意)


とりあえず主人公の紹介をしておきます。ここの欄は進むごとに更新予定です。
なお、主人公プロフィールの一部設定はネタバレ必死なので、嫌な人はブラウザバック推奨です。

H.30/05/26追記:Mチャリオットの項目を追加しました。

H.30/06/02追記:ホッパーキメラの項目を追加しました。

H.30/06/30追記:打鉄改の項目を追加しました。

H.30/10/17追記:一部内容を修正いたしました。


立花竜馬/仮面ライダーメーデン/ホッパーキメラ

年齢:25

誕生日:4月1日

一人称:「僕」、「俺(変身時)」

イメージCV:櫻井孝宏

 仮面ライダーメーデンに変身する青年。

 織斑千冬と篠ノ之束とは小学生時代からの幼馴染で、一夏や箒、五反田兄妹や鈴にとっては頼れる兄貴分である。

 中学時代に束と千冬の三人で「未来科学同好会」なる部活を立ち上げ、来る宇宙時代の人類のあり方について議論し合った。

 生まれてすぐに両親を失い、両親と交友関係にあった滝博士に引き取られるが、小学校卒業と同時に博士が失踪、それ以降は中学卒業まで篠ノ之家でお世話になっていたが、篠ノ之家が政府の要人保護プログラムの対象になったため、一夏の友人である五反田家の食堂で住み込みでバイトしながら大学に通っていた。

 左寄りの両利きで、食事以外は左で道具を操る。

 また、オートバイの腕に関しては自身があり、ロードレースのアマチュア大会で優勝した経験を持つ。

 ある人物からギターを教わっており、「日本じゃあ二番目のギター演奏者」を自称する。

 ギターは八弦タイプのクラシックギターを愛用する。

 極真空手の使い手で、素手なら千冬すら太刀打ちできない程と言われている。

 大学の卒業式を終えた帰りに秘密結社「オリンポス」によって拉致され、飛蝗の遺伝子を組み込んだキメラサイボーグに改造されてしまうが、記憶消去手術の寸前に滝博士に助けられる。

 しかし潜伏していた廃倉庫で滝博士はオリンポスの刺客によって殺害されてしまう。

 怒りに身を任せてその刺客を倒すも、偶然その場に居合わせた束に保護される。

 それから半年間束と行動を共にし、変身ベルト「ケイモ―ン」を受け取り、仮面ライダーとしてオリンポスと戦う事を決意する。

 それ以降はオリンポスとの刺客と戦いながら、各地を旅していた。

 束からの情報で千冬がオリンポスに狙われている事を知り帰国した。

 

●仮面ライダーメーデン

・キャラ概要

身長:180cm

体重:72kg

跳躍力(初期値):垂直跳び15m、幅跳び50m

パンチ力(初期値):15t

キック力(初期値):30t

走力(初期値):60km/h

最高飛行速度:マッハ1

最高飛行高度:35000ft

 篠ノ之束がISの技術を応用して開発した特殊強化服を立花竜馬が身に纏った姿。

 装着時、竜馬の顔に第三の目(サードアイ)と手術跡のような模様が出現するが、これはキメラボーグとしての身体能力を引き出すためにあえて中途半端な状態で肉体を変異させており、この状態は〔中間形態〕と呼ばれている。

 微量の大気圧若しくは風圧を風車ダイナモが取り込む事で竜馬の改造された能力を大幅に増幅させる。また異形の怪人であるキメラボーグの姿を隠すという束なりの気遣いが込められている。

 ISの技術を参考にしているため拡張領域(バススロット)が存在し、そこに後付け装備(イコライザ)を収納できるが、竜馬の戦闘スタイルの関係上、無用の長物と化している。

 キメラボーグは戦闘経験を積むことで能力が成長するため、戦闘データを分析しても次の戦闘ではデータ以上の力を発揮するという強みがあるため、その可能性は無限大である。

 マスクは着脱可能で、着脱方法はG3システムに準ずる。

 メーデンとは古代ギリシア語で「0」を、ケイモ―ンは「嵐」を示す言葉である。

 

・主な技

ライダーキック:滑空中に風車ダイナモが風圧を取り込んでエネルギーに転換、転換されたエネルギーを左足に集束させて相手に放つ必殺の跳び蹴り。

 

ライダーパンチ:エネルギーを集束させた左腕から叩き込む正拳突き。

 

ライダーチョップ:相手を真っ二つに切断する手刀。

 

ライダークロスチョップ:滑空中に風車ダイナモが風圧を取り込んでエネルギーに転換、転換したエネルギーを両腕に集束させて相手にX字に斬り裂く。イメージ的には太陽戦隊サンバルカンでバルイーグルが使用したイーグルダイビングに近い。

 

ライダーフライングパンチ:滑空中に風車ダイナモが風圧を取り込んでエネルギーに転換、転換されたエネルギーを両腕に集束させて相手に放つパンチ。イメージ的には宇宙刑事ギャバンのディメンションボンバーに近い。

 

ライダー反動三段蹴り:複数の敵を倒す際に使用するライダーキック。イメージ的には電人ザボーガーで大門明が使用していた飛竜三段蹴りに近い。

 

・主な内部メカニック

ケイモ―ン:変身ベルト。バックル中央部のメインダイナモには開閉式の防御シャッターが存在し、通常時は閉じられているが、変身ポーズと竜馬の音声コードでシャッターが展開し、メイン風車ダイナモと二つの小型風車サブダイナモが大気圧を取り込む事で、強化服を形成し、竜馬を仮面ライダーメーデンに変身させる。

 メインダイナモを守る防御シャッターには中学時代の部活である未来科学同好会のエンブレムが刻印されている。

 

ツインアイ:複眼。暗視機能や透視機能、望遠機能などを備えている他、相手の弱点や技を解析する機能も備わっている。人間の60倍近い視覚能力を持つ。

 

Bシグナル:通称「第3の目」。キメラボーグの発する特殊な脳波をキャッチする。探知範囲は半径10km。

 

マルチセンサー:飛蝗の触角を模した超高感度アンテナ。Bシグナルと連動している。

 

ニードルイヤー:半径10km範囲の鍼の音を聞き取る事が出来る聴覚器。

 

ジェットコンバーター:ケイモーンの左右に装備されている飛行用のブースター。これを作動させる事で音速と同じ速さで飛行する事が出来る。

 

●ホッパーキメラ

・キャラ概要

身長:180cm

体重:72kg

跳躍力:垂直跳び7.5m(初期値)、幅跳び25m(初期値)

パンチ力:7.5t(初期値)

キック力:15t(初期値)

走力:30km/h(初期値)

 飛蝗の遺伝子情報を組み込んだキメラボーグにして立花竜馬の“本来の姿”。

 竜馬の怒りの感情が頂点に達した時に遺伝子レベルで細胞が急激に活発化し、ホッパーキメラに変異する。

 この姿では本能の赴くまま敵を攻撃する野獣の如き戦闘スタイルになっている。

 ただし理性までは失っておらず、テレパシー能力で意思疎通が可能である。

 竜馬自身はこの姿を嫌っている他、この姿を人に見られる事を恐れている。

 

・必殺技

ホッパーネイル:湾曲かつ鋭利な爪。高周波振動を引き起こして相手を引き裂く。

 

ホッパーカッター:前腕部と脹脛に生えている鮫の牙を模した毛爪。相手を両断する。

 

 

専用マシン設定

 

M(メーデン)チャリオット

・マシンスペック

全長:2.08m

全幅:0.71m

全高:1.15m

重量:210kg

最高速度:1300km/h

最高出力:2100PS

・マシン概要

 篠ノ之束が竜馬の為に開発したスーパーメガマシン。

 ロードレースのアマチュア大会で優勝経験を持つ竜馬のオートバイテクニックを生かした作りとなっている。

 マトリクス機能という色彩変化装置を搭載しており、これは電気信号で車体の色を変化させるという機能である。普段は黒一色だが、変身時は未来科学同好会のマークが車体前面部に刻印された白と赤のラインで構成された色に変化する。

 モデルマシンは「スズキGSX-R1000R ABS」である。

 

・必殺技

 

チャリオットアタック:最高速度の状態で強行突入する荒技。既存作品で例えるなら、仮面ライダーZOの「Zブリンガーアタック」に近い。

 

●打鉄改

・マシンスペック

分類:第2世代型IS(第2.5世代相当)

動力:ISコア

開発者:倉持重工、篠ノ之束(改良)

待機状態:キーホルダー

単一仕様能力(ワンオフアビリティー):起死回生

・マシン概要

 立花竜馬の専用IS。篠ノ之束が裏ルートで入手した打鉄を徹底的にチューンナップした改良型。

 打鉄最大の特徴である堅牢且つ強固な装甲を敢えて極限まで削り取り、機動性を高めたほか、瞬間加速(イグニッションブースト)の瞬間最高速度及び出力を極限にまで上げており、最早人間には扱えない代物となっている。

 いわば、改造人間である立花竜馬だからこそ使いこなせる機体なのだ。

 また、束によって単一仕様能力(ワンオフアビリティー)「起死回生」を加えられており、これは一種のエネルギー増幅能力であり、万が一の事態に陥った際にこれを発動すると、SE(シールドエネルギー)を一時的にチャージする能力である。だが、このアビリティーは一度の戦闘で一回しか使えない。この反省は、後に束が開発する箒専用ISこと紅椿の絢爛舞踏に活かされる事になる。

 

後付装備(イコライザ)並びに固定武装

スタンナックル:突起部に対IS用スタンロッドが仕込まれたナックルダスター型の装備。相手のISの電子機器を一定の間ショートさせる程の威力を持つ。

 

近接ブレード:打鉄の標準装備。あまり使われない。

 

トンファーブレード:前腕部に装備されている高周波振動ブレード。使用時に刃の部分が白熱したかのように発光する。

 

スピンソード:脛部に装備されている近接装備。

 

レッグスラッシャー:両足裏に固定された履帯型の超硬度カッター。

 

・必殺技

フックトンファー:前腕のトンファーブレードを使った拳打。フックの機動で相手を引き裂く。

 

稲妻正拳突き:スタンナックルを装備した状態で相手に放つ正拳突き。主に繋ぎとして使われる。

 

疾風回転蹴:脛のスピンソードを使った回し蹴り。

 

スラッシュキック:レッグスラッシャーを起動した状態で放つドロップキック。

 




竜馬の外見イメージと仮面ライダーメーデンのデザインイメージはpixivで掲載しておりますので、下記リンクをご参照ください。

仮面ライダーメーデン: https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=68690428

立花竜馬: https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=68758726


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

主要登場人物設定(ネタバレ注意!逐次更新)

 こちらでは、今作品における登場人物の設定について書いていきます。

※H30.06.23:一夏と箒の欄を追加しました。

※H30.07.21:真耶と楯無の項目を追加しました。


●主人公周り

・織斑千冬

 IS学園の教師にして竜馬の幼馴染。今作のメインヒロイン。

 竜馬とは口喧嘩の絶えない謂わば喧嘩友達みたいな関係だったが、次第に竜馬に惹かれていき、意識するようになったが、その素直になれない性格が災いして想いを告げられないまま竜馬がオリンポスに拉致されてしまった為、なぜもっと早く自分の思いを伝えなかったのかと悔いていた。

 墓参りを終えた帰りにオリンポスのカメレオンキメラ率いる部隊の襲撃を受けるが、駆け付けた竜馬に助けられ、竜馬が目の前で変身した事に驚愕する。

 その後束から空白の3年間に起きた事を聞く中で、たった一人で戦い続ける竜馬の支えになりたい事を決意する。

 しかしその竜馬からオリンポスとの戦いに手を引くよう迫られるが、この時意を決して告白してしまう。

 以来、竜馬との関係を周囲に悟られないようにしているが、周りからはモロバレである。

 今作における滝和也のポジションを担う。

 

・篠ノ之束

 竜馬の幼馴染にして良き理解者。ISの生みの親であるが、その裏では竜馬が提言した数多くのアイデアによるものが大きく、束曰く「ISはりょーくんがいなかったら数年近く完成が遅れた」との事。ケイモーンとMチャリオットの開発者である。

 千冬の竜馬に対する想いを理解しており、その恋路を応援しているが、時にそれをネタにして二人を茶化す事の方が多い。

 竜馬が失踪した際にあらゆる手段を用いて行方を探っていたが、偶然にもオリンポスのスパイダーキメラに襲われていた竜馬がホッパーキメラに変態化する姿を目撃してしまう。

 意を決して彼の前に現れ、彼を自分の活動拠点である『吾輩は猫である(名前はまだ無い)』に保護する。

 その後、事の事情を聞いたうえで、竜馬の戦いを支援する事を決意し、彼に変身ベルト『ケイモーン』を与えた。

 現在は自分の研究に没頭する傍ら、オリンポスの動向を探っている。

 今作のおやっさんポジションに当たる。

 

・クロエ・クロニクル

 束と行動を共にしている謎多き少女。竜馬から掃除や料理に至るあらゆる家事のイロハを教わった。

 

・織斑一夏

 千冬の弟にして世界初の男性IS操縦者。そしてもう一人の主人公。竜馬にとって弟みたいな存在。今作では原作の超朴念仁気質を竜馬によって更正されているばかりか、中学でも剣道を続けているため、全国大会で箒と再会している。

 

・篠ノ之箒

 束の妹。竜馬にとって妹みたいな存在。一夏サイドのメインヒロイン。

 

・滝正春博士

 故人。

 生体医工学の世界的権威。

 竜馬の両親とは交友関係で、生後間もなく両親を失った竜馬を引き取り、彼を育てた。いわば竜馬にとっては育ての親である。

 13年前に蒸発していたが、実際は博士の才能を見込んだオリンポスによる拉致である。

 それまで10年間オリンポスのキメラボーグ製造に携わってきたが、良心の呵責に耐えかね、組織への離反を決意。

 記憶消去手術寸前だった竜馬を助け、竜馬と共に廃倉庫へ身を潜めていたが、スパイダーキメラによって殺害されてしまう。

 

・凰鈴音

 一夏のセカンド幼馴染にして竜馬の妹分其の二。一年前オリンポスの事件に巻き込まれたところを竜馬に救われた。竜馬が仮面ライダーメーデンであることをしる数少ない一人。

 

●IS学園

・山田真耶

 1年1組の副担任。打鉄改の初陣となった実技採用試験で対戦相手となった。少々天然気味かつドジっ子属性持ちである。

 

・更識楯無

 IS学園生徒会長にして日本政府の対暗部用暗部「更識家」の現当主。竜馬の存在に興味を持っており、オリンポスの情報を一方的に提供している。その提供元には謎が多い。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

秘密結社オリンポス設定(随時更新)

 この欄では本作の敵対組織であるオリンポスについてと、本編に登場したキメラボーグについて紹介いたします。

H.30/05/26追記:幹部の項目に???を追記しました。

H.30/06/02追記:怪人の項目にスパイダーキメラを追加しました。

H.30/07/21追記:怪人の項目にマンティスキメラを追記いたしました。

H.30/09/12追記:怪人の項目にモスキメラ幼虫態の追記とタナトスの項目を修正いたしました。


●組織概要

 選ばれた人間による理想郷の実現を目論む謎の秘密結社。キメラボーグを使った作戦を展開し、目的のためには手段を選ばず、目撃者や裏切り者には容赦しない。

 世界各地に根を張り、現代社会の裏で暗躍している。

 

●構成員設定

・幹部

???

イメージCV:関俊彦

 オリンポスの支配者。その正体は謎に包まれており、基本的に獅子のレリーフに埋め込まれた通信機を介して指令を伝えている。

 

謎の紳士/死神タナトス

イメージCV:成田剣

 オリンポス日本支部支部を束ねる最高幹部の一人。人間態はティアドロップ型のサングラスをかけた黒服の紳士だが、性格は惨忍非道。

 現場主義者で、キメラボーグが展開している作戦を支援する。

 加熱式たばこを愛煙しているが、作戦が失敗するとカートリッジを外して怒りをぶつける様に踏みつける。

 怪人態はアニメ版スカルマンエピローグに登場するスカールに近い外見をしており、(違いとしては腰部にオリンポスのエンブレムが備わったベルトを身に着けている点)巨大な人斬り鎌を武器として使う。

 モチーフキャラはMr.タイタン(一つ目タイタン)で、外見イメージは40代前半頃の石原裕次郎である。

 

・下級構成員

スパルタ兵

 オリンポスの戦闘員。タクティカルフリッツヘルムとフルフェイスマスクで顔を覆い、黒の全身タイツに四肢を革製のブーツとグローブを身に着け、腹部にオリンポスのエンブレムをバックルにしたベルトを装着している。掛け声は「ゲェーッ!」

 ゲノム編集で肉体を強化された強化人間で、人間の倍近い身体能力を持つ。

 また、その中でも特に強化が施された強化タイプの「ケルベロス」も存在する。

 戦闘行動時は、ナイフやロッドといった近接武器の他に、銃火器などを使用する。

 

オリンポス科学グループ

 白い防護服とガスマスクで身を包んだオリンポスの科学者たち。キメラボーグの製造とBC兵器の開発を主に行う。科学陣には主任と呼ばれる研究員がおり、防護服に黄色いラインが入っているのが特徴である。

 

●キメラボーグ概要

 

 人間の遺伝子情報に動植物の遺伝子情報を組み込んだ生体改造人間(バイオサイボーグ)の総称にしてオリンポスの基本戦力。名称の語尾は「~キメラ」に統一されている。

 改造過程は、まず素体となる人間に対しゲノム編集で肉体強化手術を施した後に動植物の遺伝子情報を組み込むといったものである。最後に素体となった人間の記憶を消去し、洗脳処置を施して終了となる。

 既存のライダーシリーズの作品で近いものを挙げるならば、「真・仮面ライダー序章(プロローグ)」に登場した改造兵士(サイボーグソルジャー)レベル3のそれに近いが、どちらかというと「変身忍者嵐」の化身忍者に近い。

 

●怪人紹介

 

・カメレオンキメラ

登場回:第1話、第2話

分類:爬虫類型キメラボーグ

 カメレオンの力を持つキメラボーグ。皮膚組織を瞬時に組み替える事で保護色化して周囲の景色に溶け込む原始的なステルス能力を持つ。

 口から長い舌を伸ばして攻撃したり、相手の首を絞めたりする。

 新たなキメラボーグの素体に選ばれた織斑千冬の誘拐が目的で、あと一歩のところでメーデンの妨害に遭う。

 

・スパイダーキメラ

登場回:第4話

分類:蜘蛛種型キメラボーグ

 ジョロウグモの力を持つキメラボーグで、立花竜馬の拉致、及び奪還と滝博士の抹殺が任務。

 滝博士の抹殺には成功したが、キメラボーグに覚醒した竜馬によって惨殺された。

 

・マンティスキメラ

登場回:第10話

分類:昆虫型キメラボーグ

 オオカマキリの力を持つキメラボーグ。日本近海にあるオリンポスの要塞島の指揮を任されている。

 両腕が鋭利な鎌になっており、その鎌で対象を引き裂く戦闘スタイルだが、仮面ライダーメーデンには効かなかった。

 

・モスキメラ(幼虫態)

登場回:第14話~16話

分類:昆虫型キメラボーグ

 チャドクガの幼虫の力を持つキメラボーグ。口から火炎放射をするほか、テレキネシスで誘導可能な火炎弾を発射する。四川省の山々で登山者を襲っていた。イナズマンとライダーメーデンの前に敗れたが……

 

モスキメラ(成虫態)

登場回:第16話、第17話、第19話~第22話

分類:昆虫型キメラボーグ

 ライダーメーデンに倒されたモスキメラが完全変態を遂げた状態。劇中では表現されなかったが、マッハ2のスピードで飛行できる他、全ての力が強化されている。

 クラス別対抗戦に乗じてIS学園を襲撃した。




この欄に関しては本編が進むにつれて更新していく予定です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

本編
第1話「衝撃の再会!」


 お待たせしました。ハーメルン復帰作品第1号です。しばらくはチラシの裏で展開していきたいと思います。

H30.07.21:冒頭の千冬視点の推奨BGMを追記しました。いいよね。劇場版コブラのオープニングテーマ。

H30.08.03:最後っ屁の文章構成を修正いたしました。


千冬side.

 

≪推奨BGM:デイドリーム・ロマンス(「スペースアドベンチャー コブラ」より)≫

 

(あれから、もう3年も経つのか……)

 

 その日、私は自分が生まれ育った町にある寺院墓地に来ていた。

 この日は、私にとって忘れられない日であり、そして、私の心に大きな穴を開けた日であった。

 三年前のこの日、一人の青年が命を落とした。

 最も、正確には行方不明であり、遺体は発見されていないが……

 既に警察による捜索も打ち切られて久しく、当時その人物を引き取っていた家が形だけの葬式を執り行い、墓には遺骨の代わりに彼が御守り代わりに持っていたワッペンが埋められた。

 そのワッペンは、彼と私、そして親友である篠ノ之束(しのののたばね)を繋げてくれた大事な宝物であった。

 

(本当にお前は死んでしまったのか……?竜馬……)

 

 彼の名前は、立花竜馬(たちばなりょうま)

 私と束の、共通にして唯一の男友達である。

 彼は、生まれてすぐに両親を失い、12の時に育ての親であった科学者が謎の失踪を遂げ、天涯孤独の身であった。

 だが、彼はそんな不幸にもめげず、誰とも分け隔てなく接し、人前では笑顔を絶やさず、自分よりも他人を優先し、誰かの不幸を見過ごせないお節介やきだった。

 そして、誰よりも“宇宙(そら)”へ憧れた男であった。

 中学の頃、私と束、そして竜馬は〔未来科学同好会〕なる部活を立ち上げ、来たる宇宙時代に向けての人類のあり方についてよく議論しあった。

 その過程で生まれたのが、“IS(インフィニット・ストラトス)”であった。

 最も、IS自体は束が小学生の頃から一人で開発を進めていたが、この時は解決すべき課題が数多く残っており、まだまだ完成には程遠いものであった。

 その問題の多くを解決させたのが、この部活で竜馬が出した数多くのアイデアであった。

 もしあの場に竜馬がいなかったら、ISの完成はもう数年遅くなっていただろうし、歴史は変わっていただろう。

 そんな彼を、私はいつしか〔ただの幼馴染〕としてではなく、〔一人の異性〕として見るようになっていった。

 だが、私の勝ち気な性格が仇となり、その想いを伝えきれず、彼と私は別々の道へ進んでしまい、会う機会が少なくなっていった。

 そして、竜馬が姿を消したあの日、私の心にポッカリと穴が開いてしまった。

 それは、今でも埋まる事なく私の中に残っている……

 ああ、これが後悔というものなのか。

 もっと早くこの想いを伝えていれば、もっと素直だったら、こんな想いをしなくて済んだのに……

 ああ、私の心はこんなにも弱かったのか。

 いまだに、私は竜馬の死を受け入れられないでいる。

 一夏も、鈴も、五反田家の人達も御手洗もあいつの死を乗り越えて未来へ生きようとしているのに、私だけ立ち止まっている。

 いい加減受け入れようとしても、私の想いがそれを許さない。

 

「せめて、せめて幻でもいい……もう一度、もう一度だけ私はお前に会いたい。会ってこの想いを伝えたいんだ……竜馬……」

 

 私は竜馬の墓の前で弱々しく内に秘めた心をさらけ出すように呟いた……

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、墓地から数キロ先にあるビルの屋上で、千冬を監視する怪しい人影があった。

 男は全身を黒の紳士服を着込んでおり、目元をティアドロップ型のサングラスで隠し、左手には加熱式たばこを指で挟んでいた。

 本来、人間の視力では双眼鏡がない限り数キロ先の人間の様子を視認することは不可能の筈が、その男はハッキリと千冬の様子を目で追えていた。

 男は千冬が墓から去るのを確認すると、内ポケットから何かを取り出した。

 それは、メモ帳型の小型光無線通信機であった。

 

「ターゲットはIS学園への帰路についた。到着するまでに捕らえよ。殺してはならん、絶対に生捕りにするのだ」

 

 男は無線機越しにそう言うと、無線機を内ポケットにしまい、煙草を一服した。

 その顔は、邪悪な微笑みをしていた。

 

「おめでとう織斑千冬。貴方は選ばれた。栄光ある“オリンポス”の一員にね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 墓参りを終え、IS学園への帰路についていた千冬は、突如として謎の集団に囲まれていた。

 集団は全身タイツに四肢にグローブをまき、ベルトのには蛇が巻きついたオリンピア宮殿を象ったバックルが付き、顔をフルフェイスタイプのフェイスマスクとフリッツヘルメットを身につけていた。

 いや、一人だけ黒いコートにソフト帽を深々と被り、黒縁のサングラスをかけた男がいた。どうやらこの男がこの集団のリーダーらしい。

 さらに、集団は全員右手に両刃の剣を持っていた。千冬はこの男達の姿に見覚えがあった。

 3年前、第二回モンド・グロッソ大会の決勝直前、一夏を誘拐したあの集団によく似ていたのだ。

 

「貴様ら一体何者だ?この私を織斑千冬と知っての犯行か?」

 

 千冬はリーダーらしき男に問いかけた。男の顔はガーゼマスクのせいで見えないが、その様子は余裕に溢れて居るように見えた。

 

「おめでとう織斑千冬。あなたは選ばれました」

 

「選ばれた?何に?」

 

「オリンポスの栄誉ある一員にです」

 

「オリンポス?」

 

「そう、“オリンポス”です!世界のあらゆるところに網を張り、その国の選ばれたもののみが我ら“オリンポス”に加わる。やがて世界中に無能な人間共は“オリンポス”によって家畜のように支配されるのです!」

 

「何だと……」

 

「さて?返事をお聞きしましょうか?」

 

 人類を家畜のように支配するだと?正気の沙汰とは思えん。確かに今の世界はISの影響で女尊男卑に染まっている。しかし、そんな世界でも人のぬくもりは確かに存在する。人のぬくもりのない世界など、あってはならない!千冬の答えは自ずから決まっていた。

 

「断る!そのような得体の知れない組織に加わることなど、こちらから願い下げだ!」

 

 千冬は強い意志を以て断った。しかし、男は余裕の態度を変えなかった。

 

「そうですか、それならば仕方ありません。“スパルタ兵”!彼女を捕らえなさい!」

 

「ゲェーッ!ゲェーッ!」

 

 男が号令をかけると、“スパルタ兵”と呼ばれた集団が千冬に襲いかかった。

 

「ふん!」

 

「ゲッ!?」

 

 スパルタ兵の一人が剣を振りかざしながら向かってくると、千冬は慣れた手つきで受け流し、剣を持っている右手に強烈な手刀を叩き込んだ。

 

「ハァッ!」

 

「ゲェッー!??!」

 

 スパルタ兵はその衝撃に耐えきれず剣を落とすと、千冬は即座に地に落ちた剣を拾い、その男を斬り伏せた。斬られた男はそのまま倒れると、泡になって溶解してしまった。

 

「ぬかったな!ISが無くともこの織斑千冬、ただでやられんぞ!」

 

 千冬は集団に対し剣を突き立てて威圧した。手下達は私の覇気に怯むが、リーダー格の男は未だに平静さを保っていた。

 いや、寧ろこの状況を楽しんでいるように見えた。

 

「確かに。並大抵の人間では、貴方に敵う者などおりますまい。ですが、もし相手が“人知を遥かに超える存在”でしたら、どうでしょうかな?」

 

「何だと?」

 

 千冬は男が何を言っているのか理解できなかった。千冬の困惑を見て、男はさらに嘲笑った。

 

「ふっふっふっ……つまりはこういう事ですよ」

 

 男は笑いながら顔を帽子で隠した、その時だった。

 男は、一瞬にしてカメレオンのような怪物へと姿を変えてしまったのだ。

 千冬は目を疑った。目の前の人物が突然化け物に変わってしまうという常識外の現象が今まさに起こったのだから。

 

「貴様は!?」

 

「オリンポスのキメラボーグが一人カメレオンキメラだ!織斑千冬、是が非でも貴様を連れていく!ハァーッ!」

 

 怪物―――カメレオンキメラはそういうと、口から長い舌を伸ばしてきた!

 

「グッ!こ、これは……!」

 

 あまりの咄嗟の攻撃で千冬も対応が遅れ、舌は私の首を絞めあげた。あまりの苦しさに、手に持った剣を落としてしまった。

 

「ふっふっふっ。俺の舌は人間では解けん。だが安心しろ、殺しはせん。貴様を気絶させた後基地へ運び、俺と同じキメラボーグへと改造する」

 

「くっ……死んでも、貴様等の操り人形にはならんぞ……!」

 

「誰しも始めはそうだろうが、それも今の内だ。改造手術が済めば、貴様もオリンポスの一員である事に感謝するようになるのだ」

 

 これで奴らの目的がわかった。千冬を誘拐し、“キメラボーグ”と呼ばれる怪物へ改造し奴らの尖兵にしようというのだ。そんなものは真平御免だ。しかし、今の状況では満足には戦えない。舌を噛み切って自殺しようにも、息をするだけで精一杯だ。

 このままでは酸欠で気を失ってしまう。それこそ奴らの思う壺だ。

 

(万策尽きたか……)

 

 千冬は心の中で“自分”の最後を悟った。“肉体としての織斑千冬”は生きるだろう。だが、“一人の人間としての織斑千冬”はここで死ぬのだ。意志のない世界など、死の世界と同義だ。

 千冬の頭に、様々な記憶が過ぎってきた。愛する弟一夏との思い出、親友である束との思い出、そしてなにより、竜馬と一緒に築いてきた数多くの思い出が、私の頭を過ぎていった。

 

(竜馬、やっとお前の許に行けるのだな……)

 

 意識が薄れゆく中、千冬は唯一愛した男の事を思い、意識を手放そうとした、その時だった。

 

「む!なんだ!?」

 

 突如、爆音が轟いたのだ。

 スパルタ兵達が爆音が聞こえた方向を向くと、その方向から、オートバイが猛スピードで接近していた。

 オートバイには黒いフルフェイスヘルメットに紺色のライダースジャケットを着た男が乗っていた。

 スパルタ兵達はカメレオンキメラの盾になるように接近してくるオートバイの前に立ち塞がるが、オートバイはそれを意に反さず接近してきた。

 ある程度の距離まで近づいたその時、突如男はバイクを走行させたまま飛び降りた。

 高速走行したままジャンプした為、男はスパルタ兵の頭上を軽々と越えて、カメレオンキメラと千冬の間に着地し、カメレオンキメラの舌を手刀で引き裂いた。

 

「グワァッ!お、俺の舌がぁ~!」

 

 カメレオンキメラは口を押えて悶えた。一方の千冬は、力が抜けた舌を解くと、咳き込みながら体勢を持ち直した。

 男はその千冬を守るようにカメレオンキメラの前に立ち塞がった。

 

「ゲホッゲホッ!……すまない、助かった。しかしこの場は危険だ。早く……」

 

 千冬は男に警告するが、男は去ろうとしなかった。男は振り向くと、優しく問い掛けた。

 

「大丈夫かい?千冬」

 

「えっ……」

 

 その声には、聞き覚えがあった。男は何も言わないまま、ヘルメットを外した。

 その時、千冬は我が目を疑った。

 

(嘘だ。これは夢か?もしこれが夢なら覚めないでくれ……)

 

 男の正体は、3年前に行方を眩ました立花竜馬だった。

 竜馬は一瞬だけ微笑んだが、直様険しい表情に変えてカメレオンキメラの方向を振り向いた。

 カメレオンキメラは痛みが和らいだらしく、その周りをスパルタ兵達が取り囲んでいた。

 

「貴様、一体何者だ!?」

 

 竜馬は一旦深呼吸して気持ちを落ち着かせると、ライダースジャケットを脱ぎ捨て、ジャケットで隠れていた変身ベルト≪ケイモーン≫を晒した。

 そのベルトを見た怪物たちは一歩後ずさりした。

 

「そのベルトは!まさか、貴様は!?」

 

 怪物の驚く声に竜馬は表情を変えず、まるで相手を威嚇するかのように両腕を大きく動かしながら、まるでスイッチを押すように叫んだ。

 

「変っ……身!」

 

 すると、ケイモーンのバックル中央部が展開して赤い風車ダイナモがその姿を現すと、風車が高速で回転しながら風を取り込みながら、竜馬の姿が一瞬で“変身”した。

 立花竜馬は、変身ベルト「ケイモーン」の風車ダイナモが風圧を受ける事で、仮面ライダーメーデンに変身するのだ!

 その光景に、千冬は我が目を疑った。

 それは、竜馬が変身した姿が、かつてドイツで誘拐された弟を助けた、あの仮面の戦士に酷似していたからだ。

 変身した竜馬は、怪物たちの前でポーズを取りながら名乗りを上げた。

 

「俺の名は、仮面ライダーだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 今ここに、新たな仮面伝説の幕が上がった!

 その名は、仮面ライダーメーデン!

 人間の自由を守るため、世界征服を企む悪の組織、オリンポスと戦うのだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 




 我らの仮面ライダーメーデンを倒すべく、オリンポス本部が送り込んだ刺客は「怪奇カメレオンキメラ」

 変幻自在の攻撃を繰り出すカメレオンキメラに、仮面ライダーメーデンはどう立ち向かうのか!?

 次回マスクドライダー・ストラトス「怪奇カメレオンキメラ」にご期待下さい!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2話「怪奇!カメレオンキメラ」

 今回のカメレオンキメラ戦は初代の死神カメレオンおよび蜂女戦をオマージュしてます。

 尚、推奨BGMに関しては手持ちのサントラから場面に合う奴を厳選しておりますので、決してこのBGMを脳内再生してくれというものではございません。


 名乗りを上げた立花竜馬———仮面ライダーメーデンに対し、カメレオンキメラ達は一瞬怯んだが、すぐに冷静さを取り戻し、逆にこの場を好機と見た。

 

「貴様が噂の仮面ライダーか!組織内で俺の名を高めるまたとない好機だ!者ども、仮面ライダーを殺せ!織斑千冬は後回しだ!」

 

「ゲェーッ!ゲェーッ!」

 

≪推奨BGM:戦士 M-13(仮面ライダークウガより)≫

 

 カメレオンキメラの号令と同時に、スパルタ兵が片手剣を手に持ってメーデンと千冬に襲い掛かった!

 

「トォッ!」

 

 集団で向かってくるスパルタ兵に対し、メーデンと千冬は軽く受け流すが、スパルタ兵達は巧みな連携で千冬とメーデンを取り囲んだ!

 

「竜馬、その姿は……」

 

「千冬、訳は後で話す。ここは僕に任せて先に逃げるんだ」

 

 千冬の問いかけにメーデンは答えず、逃げるよう催促した。しかし、この状況下で逃げる事など千冬にはできなかった。

 

「ふっ、貴様は馬鹿か?この状況で奴らが簡単に逃がすはずがなかろう?それに奴らの狙いは私だ。それならここで貴様と一緒に戦った方がまだ好都合だ。それに、雑兵程度にやられる私ではない。それに……」

 

 そう言いながら、千冬はメーデンに背中を合わせた。

 

「それに、私は誰かに守られるなど、私は性に合わんからな」

 

 それを聞いたメーデンは、仮面の下の顔を微笑ませた。そうだ。織斑千冬とはそういう女性だ。

 

(そうだよね。君ならそう言うだろね。ふふっ、僕としたことがすっかり忘れていたよ)

 

 メーデンは心の中でそう思うと、心を切り替えて、ファイティングポーズを取った。

 

「よし、なら共に戦おう!」

 

「おう!背後(うしろ)は任せろ!」

 

 今この瞬間、仮面ライダーメーデンの頼もしい仲間に織斑千冬が加わった!

 そして、ジリジリを間合いを詰めていたスパルタ兵達が、一斉に襲い掛かった!

 

「ゲェーッ!ゲェーッ!」

 

「フン!トォッ!」

 

「ハァッ!」

 

 しかし、メーデンと千冬はそれを全て受け流すと、一気に攻勢に転じた!

 

「トォッ!トォッ!」

 

「フンッ!タァッ!」

 

 次々と襲い掛かるスパルタ兵に対し、メーデンと千冬は巧みな連携でそれを封じ、相手を優位に立たせなかった。

 スパルタ兵の一人がメーデンに剣で突こうとしたが、メーデンは逆に剣を持っている方の腕を掴み、関節技で武器を奪うと、奪った剣でスパルタ兵を斬り伏せた。

 その様子を見ていた千冬は、心の中で驚いた。

 

(アイツ……いつの間にあのような関節技を覚えたんだ?それにあいつは武器は使わない筈だ……)

 

 千冬が知る限り、竜馬は極真空手を学んでいたが、それ以外の武道は学生時代に授業で教わった柔道ぐらいだ。

 さらに、竜馬は剣道やなぎなたといった武器を使った武道を苦手としていた筈であった。

 その筈なのに、目の前にいる竜馬は、まるで自分の手足の如く使いこなしていた。

 スパルタ兵を相手にしていたメーデンだったが、そこへカメレオンキメラが再生した舌を伸ばして攻撃してきた!

 

「おっと!」

 

 メーデンはそれを巧みに躱すと、カメレオンキメラの方へ向いた。

 カメレオンキメラは不利を悟ると、一目散に逃げ出した。

 

「竜馬、雑兵どもは私に任せろ!お前はアイツを頼む!」

 

「わかった!ジェットコンバーター起動!トオォォォッ!」

 

≪推奨BGM:疾風-セイリングジャンプ-(組曲 仮面ライダーより)≫

 

 スパルタ兵の相手を千冬に任せたメーデンは、ケイモーン左右の脇に装備されたジェットコンバーターを起動し、空高く飛翔した!

 仮面ライダーメーデンは、ケイモーン左右の脇に装備されたジェットコンバーターを起動する事により、音速と同じ速さで空中を飛行できるのだ!

 

(と、飛んだだと!?あの強化服はISの一種なのか!?だが、今はこの雑兵どもを倒す事が先決だ!)

 

 千冬はメーデンが飛んだ事に内心驚愕していたが、考えるのを後にし、襲いかかるスパルタ兵に集中した。

 その頃、空からカメレオンキメラの場所を探るメーデンは、Bシグナルと触覚型超高感度アンテナをフル活用してカメレオンキメラの居場所を突き止めた!

 仮面ライダーメーデンのBシグナルは、半径10km圏内にいるキメラボーグの特殊脳波を探知し、触覚型アンテナであるマルチセンサーと連動して、怪人の場所を特定できるのだ!

 

「あそこだな!」

 

 視線の先には、近くの雑木林が見えた。どうやらここにカメレオンキメラの反応を探知したらしい。

 メーデンはカメレオンキメラの反応を特定した林に着地したが、林には何も見えなかった。

 メーデンは相手がカメレオンのキメラボーグである事を思い出した。

 

「そうか、奴は保護色で周囲に溶け込んでいるのか。ならば、ツインアイ!」

 

 メーデンはそう叫ぶと、頭部の複眼が点灯した。

 仮面ライダーメーデンの複眼であるツインアイは人間の60倍近い視覚能力を持ち、赤外線暗視やX線透視能力などの様々な機能を搭載しているのだ!

 メーデンはツインアイでカメレオンキメラが身を潜めている木を見つけ、手に持っていた剣を投げつけた。

 

「そこだな、トォッ!」

 

「グワッ!?……何故俺の場所がわかった!?」

 

「仮面ライダーの索敵能力を侮ったなカメレオンキメラ!俺に貴様の特殊能力は通用しない!」

 

「ぬぅっ!こうなれば正々堂々戦って貴様を殺してやる!」

 

 カメレオンキメラはそう言うと、隠し持っていた両刃剣を取り出し、メーデンを突こうとするが、メーデンはそれを巧みに躱すと、木に刺さった剣を抜いてカメレオンキメラの剣戟を防いだ。

 

「ハァッ!ハァッ!」

 

「トォッ!トォッ!」

 

 メーデンとカメレオンキメラは熾烈な剣戟を繰り広げるが、メーデンは一瞬の隙をついてカメレオンキメラの右手に蹴りをいれた。

 

「トォッ!」

 

「グワァッ!おのれぇ~!」

 

 あまりの衝撃に剣を落としてしまったカメレオンキメラに、メーデンは剣を突き出すが、何故かその手に持っていた剣を地面に突き刺した。

 

「カメレオンキメラ!貴様のような人間の自由を踏みにじる奴は断じて許せん!」

 

メーデンはカメレオンキメラに対し怒りの言葉をぶつけると、ファイテングポーズを取って天高くジャンプした。

 

「トオォォォッ!」

 

 跳躍したメーデンは、滑空しながらベルトの風車ダイナモが風圧を取り込み、胸部のフリューテッドコンバーターて取り込んだ風圧をエネルギーに転換、転換されたエネルギーを左脚に集束させた!

エネルギーが集束した左足が緑色に光ると、メーデンは前方宙返りをして必殺の一撃を放った!

 

「ライダァァァキィィィック!」

 

「ハアァァァァァッ!?」

 

 必殺のライダーキックの直撃を喰らったカメレオンキメラは、その衝撃に耐えきれず吹っ飛ぶと、メーデンはその反動を使って後方宙返りをして地面に着地した。

 吹っ飛んだカメレオンキメラは地面に叩きつけられ、一度は立ち上がるが、体内に送り込まれた爆発エネルギーが改造された肉体に反作用を起こし、身体の節々で火花が上がった。

 

「ハアァァーッ?!?!!?」

 

 断末魔の叫びをあげたカメレオンキメラは、その場に倒れ爆発した。

 同じ頃、スパルタ兵達と大立ち回りを演じていた千冬はスパルタ兵達が突如苦しみ出すのを見て一旦距離をとった。

 スパルタ兵達はその場へ倒れこむと、そのまま泡になって溶けてしまった。

 

「人間が溶けた……これは一体……はっ、そうだ!竜馬は!?」

 

 千冬は竜馬の事を思い出すと、直様竜馬の許へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 仮面ライダーメーデンにカメレオンキメラが倒される様子を、数キロ先で見つめる一人の男がいた。

 先程千冬の様子を探っていた紳士服姿の男だ。

 

「おのれ、仮面ライダーめ!」

 

 男はメーデンの存在に苛立ちを覚え、タバコのカートリッジを捨て、吸い殻を踏みつけた。

 

「しかしあの男、どこかで見た事がある……」

 

 男は竜馬の存在に既視感を感じながら、その場を後にした……

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦い終えた竜馬はマスクを外し、汗だくの素顔を晒した。マスクを外すと同時に、竜馬の身を包んでいた強化服は光を放って消失し、先程の私服姿になっていた。

 竜馬は脱ぎ捨てたライダースジャケットを拾ってバイクに乗ろうとするが、千冬が近づいてくるのを感じ取り、それを思いとどまった。

 千冬は竜馬の無事を確認すると、三年間溜め込んできた想いが鉄砲水の如く溢れ出し、一目散に走り出した。

 竜馬は千冬と距離をとろうとするが、千冬の顔を見た途端、動きが止まった。

 その顔は、涙で溢れていたのだ。

 

「竜馬ぁ!」

 

 千冬は竜馬の前までくると、竜馬の顔を平手打ちした。その手には、多くの想いが詰まっていた。

 

「千冬……」

 

「馬鹿、馬鹿ぁ!今までどこに行ってたんだ!?お前がいなくなったせいで、色んな人に迷惑がかかったんだぞ!生きているならどうして連絡の一つも寄越さないんだ!」

 

「そ、それは……」

 

「大体お前はいつもそうだ!他人の厄介事には自分から首を突っ込む癖にいざ自分の厄介事の時は人には黙って自分だけで解決しようとして!もう少し他人を頼れと何度言った事か……」

 

「…………」

 

 泣きながら怒鳴るように問い詰めてくる千冬に、竜馬は何も言えなかった。言える筈がなかった。

 この3年間、自分が世界各地でオリンポスと戦っていたせいで、連絡する暇がなかったというのもあるが、竜馬自身は、千冬を巻き込みたくなかったのだ。

 いつ果てるとも知れないオリンポスとの終わりなき戦いに……

 

「千冬、実h「ちょぉぉぉっと待ったあぁぁ!」……えっ?」

 

「ん?」

 

 竜馬は何とか千冬を納得させるため取り繕うとしたその時、第三者の声がそれを遮った。

 その声には、聞き覚えがあった。

 二人は声のした方向を向くと、街路樹の枝の上にあまりに場違いな服装にウサミミカチューシャを頭につけた女性が立っていた。

 

「トゥッ!」

 

 女性は1m以上はある高さから飛び降りると、二人の前に三点着地した、しかし……

 

「アイタタタ……やっぱ慣れない事はしない方がいいね~」

 

 女性は片膝を抑え悶えていた。その光景に二人はなんとも言えない顔で見ていたが、二人は彼女を知っていた。

 女性は片膝を抑えながら立ち上がると、ケロっとした表情で挨拶した。

 

「久しぶり!ちーちゃん!」

 

 そう、この女性こそ、織斑千冬と立花竜馬の共通の親友にして大“天災”の篠ノ之束その人である。

 

「何が久しぶりだ束……」

 

「まぁまぁそんなぶっきら棒な態度とらないで、折角想い人と再会でk「フン!」ぐぇっ!」

 

 顔を真っ赤にした千冬が束の尻に蹴りを入れた。

 赤く腫れた尻を束は手でさすった。

 

「ケツに蹴りをいれられたいのか?」

 

「お尻を蹴ってから言わないでよ~」

 

「まぁまぁ、千冬も束もその辺で」

 

 流石に収集がつかないと判断した竜馬が二人を抑えるようなだめるが、今度は束が竜馬に甘えようとした。

 

「うぅ~りょ~くぅ~ん、チミのコレがいじめる~」

 

「竜馬に甘えようとするな!竜馬も束を甘やかそうとするな!それと誰がコレだ!//ま、まだ告白もしてないんだぞ……//

 

「じょ、冗談はよしてくれよ束!?//流石にこ、コレはないだろう……//

 

 二人は顔を赤くして下を向いてしまう。その様子を束はニヤついた。

 その時、ある事を思い出した竜馬は、顔を上げて束に問い掛けた。

 

「って、そうじゃなくて。束、どうして君がここに?」

 

「んっふっふっ~よくぞ聞いてくれたねりょーくん!お待ちかねのお品がやっと完成したから届けに来たんだよ!」

 

「なんだって!遂に完成したのか」

 

 束の報告を聞いて、竜馬は期待に胸を心躍らせた。それは、前々から束に頼んでいた専用マシンが遂に完成した事であった。

 

「なあ竜馬、その品とはなんだ?もしかして、お前の先程の姿に関係しているのか?」

 

 千冬の言葉を聞いた束は竜馬に目を合わせるが、竜馬は黙ったままだった。束は何かを決意した表情をして千冬の方を向いた。

 

「ちーちゃん、これにはちょっと深い訳があるんだけど、ここだと色々と不味いからね。少し場所を変えて話そうか。りょーくんも、それでいいよね?」

 

 竜馬は答えなかった。ただ、無言でうなずいた。

 

「さ、という訳でレッツラゴー!」

 

 束の号令と共に、3人は別の場所へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 オリンポスのカメレオンキメラを倒した仮面ライダーメーデン。

 その秘められた過去とはなにか?空白の三年間に一体何が起きたというのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




次回予告

 さて次回は、立花竜馬の過去にまつわる話だ。

 竜馬の蒸発事件の真相は何か?

 そして、オリンポスとはなにか?

 謎が深まる次週仮面ライダーメーデン「空白の3年間前篇」にご期待下さい!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話「空白の3年間:前篇」

 お待たせしました。第3話です。
 今回は記念すべき初代第1話「怪奇蜘蛛男」と「スーパーヒーロー作戦~ダイダルの野望~」版の蜘蛛男パートをベースに、ストロンガー第2話「ストロンガーとタックルの秘密」の要素を加えた話になっております。


 仮面ライダーメーデンがカメレオンキメラを倒して数時間後、竜馬と千冬は束に案内され、彼女が用意したセーフハウスに来ていた。

 

「へぇ、束にしてはかなりお洒落なセーフハウスだね」

 

「ちょっとりょーくん!束さんを美意識の欠片もないような人間みたいに言うのやめて!」

 

「いや、事実だろ」

 

「ちーちゃんにだけは言われたくないよ!?流石に泣いちゃうよ!本気と書いてマジで泣いちゃうよ!?」

 

 玄関前でそんな茶番をする三人だが、竜馬はそそくさとガレージの方へ向かった。

 

「おい竜馬!どこへ行くんだ!」

 

「新しいマシンの試運転に出かけてくる。束、(キー)を頼む」

 

「ほーい。後は任せてちょ♡」

 

 束から投げ渡された鍵を受け取った竜馬は、そのままガレージに向かった。

 千冬は止めようとしなかった束に問い詰めた。

 

「束!なぜ止めなかった!?」

 

 束は冷淡な表情をした。

 

「今のりょーくんは、まだちーちゃんに本当の事を話せる程心の準備ができていないんだ。だから、今は一人でそっとしておこうよ。訳は中で私が話すからさ」

 

 束にそう言われた千冬は、ガレージに向かう竜馬の背中が、とても悲しそうに見えた。その背中を、千冬は見覚えがあった。

 

(あいつのあの背中……あの時と同じだ……13年前、親代わりだった博士が忽然と失踪した時に神社の境内で見せたあの時と)

 

 その時の事を思い出した千冬は、竜馬の心情を理解し、束と共にセーフハウスの中に入った。

 その頃、ガレージについた竜馬は、兼ねてより束に頼んでいた専用マシンを眺めていた。

 そこには、メガスポーツタイプのオートバイの形状をしたオートバイがあった。

 

「遂に完成したか……M(メーデン)チャリオット……」

 

 このマシンこそ、仮面ライダーメーデンの専用マシン、Mチャリオットである!

 竜馬は早速乗り込むと、ガレージの扉を開いて、試運転に向かった。

 その様子を、束と千冬はセーフハウスにあるリビングで眺めていた。

 

「いやはや、りょーくんのバイク好きにも困ったものだね」

 

 束はやや呆れ気味に言うと、窓のカーテンを閉めて、テーブルの椅子に腰掛けた。

 テーブルには、千冬が対面するように座っていた。

 

「さて束、そろそろ話してもらうぞ。竜馬のあの姿と、“オリンポス”とやらについてを」

 

 千冬の問いに、束は少し悲しい表情で話し始めた。

 

「ちーちゃん。心して聞いて……りょーくんは、りょーくんはもう、人間じゃないんだ」

 

「何……?」

 

 束はある書類を千冬に手渡した。それは、竜馬の身体検査カルテであった。

 

「それは私がりょーくんの身体をナノマシンを使って検査した際にわかった事だよ」

 

 それを手に取った千冬は、書類に目を通した。

 そこには、信じられないような情報が記載されていた。書類には、竜馬のゲノム情報が編集された事と、その編集された遺伝子配列に飛蝗の遺伝子配列が意図的に組み込まれ生命の根源から改造されている事が記されていた。

 驚愕の表情を浮かべる千冬に、束は再び話し始めた。

 

「りょーくんの肉体はもう、人間を遥かに越える身体能力を持った、改造人間なんだよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 人気のない無人島。ここに、世界征服を企む悪の秘密結社「オリンポス」の秘密基地がある。

 その基地内のコンピュータールームでは、とある人物の情報について調べていた。

 そしてそこには、先程の紳士がいた。

 

「どうだ?」

 

 紳士が白い防護服とガスマスクを身に着けた科学グループの研究員に問うと、研究員の一人が返事をした。

 

「はい、閣下。例の男に関する情報について組織内のデータベースにアクセスしたところ、一人の人物が該当しました」

 

 研究員はそう言うと、コンピューターの言語再生装置を作動させた。

 

『立花竜馬。年齢24歳。城南大学生物学部主席卒業。極真空手八段所有。公式戦ニオイテハ、全国高校空手道選抜大会男子個人組手3年連続優勝。オートバイノアマチュアロードレース大会ニ個人エントリーデ優勝。3年前ニキメラボーグ素体トシテ連行、作戦指揮、スパイダーキメラ……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、とある広大な空き地では、立花竜馬がMチャリオットの試運転を行っていた。

 

(3年前のあの時、あの時からすべては始まった……僕は大学の卒業式を終えた帰り、奴らに誘拐された。それこそが、すべての始まりだった……)

 

 竜馬は空白の3年間に起きた事を回想した……

 

 

 

 

 

 

 

 

 立花竜馬。城南大学生物学部を首席で卒業した稀代の秀才で、極真空手八段の腕前を持ち、オートバイロードレースのアマチュア大会に個人エントリーで優勝、プロ顔負けの腕前を発揮し、その将来は約束されたかのように見えた……

 だが、彼の未来は、恐るべき悪魔の集団によって踏みにじられてしまった……

 

 

 

 

 

 

 

 

竜馬side.

 

三年前、某所———

 

『目覚めよ……立花竜馬……栄光ある“オリンポス”の一員に選ばれし者よ……』

 

 誰だ?誰が俺を呼んでいるんだ……

 

『目覚めるのだ……』

 

 今度ははっきりと聞こえた。その声に従い、僕は瞼を開いた。

 まだ意識は朦朧としているのか、ライトが回転しているように見えた。

 

『立花竜馬……』

 

 またあの声だ。聞き覚えのない声でどんどん意識がハッキリとし、遂に目が覚めた。

 

「はっ!」

 

 目を覚ました時、防護服にガスマスクを身に着けた得体の知れない集団が僕の顔を覗き込んでいた。

 僕は手足を動かそうとしたが、四肢は手首と足首の部分から止め金で繋がれて、手術台に拘束されていた。

 さらに、僕は下着こそ身に着けていたが、何も着ていない状態である事に気付いた。

 

「ここは一体どこだ!?君達は一体何者なんだ!?」

 

 僕の質問に対し、手術台が点滅しながら、先程の声が響いた。

 

『ようこそ立花竜馬、栄光ある“オリンポス”の戦士よ……』

 

「オリンポス?一体何なんだそれは!?」

 

 

 

 

 立花竜馬が耳にした、オリンポス。それは、世界各地に網を張る。悪の秘密結社だ。

 立花竜馬はなぜか、某国の人里離れたオリンポスの秘密基地に運ばれていた。

 オリンポスの目的は、世界各地にいる優秀な人間を改造して意のままに操り世界征服を計画する、恐るべき組織なのである!

 

 

 

 

『我々が求めている人材は、人より並外れた知性を持ち、尚且つ鋼の如き強靭な肉体を持つ人間だ。立花竜馬、君はその中から選ばれた栄誉ある存在なのだ』

 

 僕は声の主が何を言っているのかさっぱり理解できなかった。だが、彼等の考えがあまりにも狂信的だというのは理解できた。

 

「馬鹿な!僕はオリンポスに入った覚えはない!」

 

 僕は即座に否定した。そうだ、僕はそんな狂信的な組織に入った覚えはないし、推薦された記憶もない。だが、声の主は僕に驚愕の事実を告げた。

 

『ふっふっふっ……もう遅い。遅いのだよ立花君。君の肉体はほぼ既にオリンポスの一員なっているのだよ。君が意識を失って既に五日、その間にオリンポスが誇る科学グループが、君の遺伝子情報に改造手術を施した。君は最早“キメラボーグ”なのだ。キメラボーグが世界を支配し、そのキメラボーグを支配するのがこの私だ。いずれ世界はこの私によって家畜のように支配される運命にあるのだ』

 

 僕が奴らの一員?それにキメラボーグだって?馬鹿な。未だ遺伝子工学は倫理学的問題から生体工学同様未だ発展途上にある分野だ。そんな短期間で人間の遺伝子情報を改造するなど常識的にあり得ない。

 

「キメラボーグだって……ふっ、馬鹿な!僕の身体はこの通り人間じゃないか!」

 

『なれば信じざるを得ないよう身を以て知るがいい』

 

 声の主に従い、防護服の人間たちが僕を拘束している止め金に電極らしき機器を取り付けていった。

 

「これから、お前に5万A(アンペア)の電流を流す。並の人間なら一瞬にして全身黒こげの死体になる。しかし、改造されたお前の肉体なら……」

 

 黄色のラインが入ったガスマスクを装着した主任らしき男はそう言うと、電源スイッチを押した。

 その瞬間、僕の肉体を強力な電流が襲った。

 

「う゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛!」

 

 僕の全身を強烈な痛みが襲い、僕はもだえ苦しんだが、表面の皮膚には火傷の一つも出来ていなかった。

 主任らしき男はその光景を横目で見ながら、高説を始めた。

 

「火傷ひとつ、お前の身体には残らない。苦痛を感じるのは記憶消去手術と洗脳プログラムを終えていないためだ。人間であった頃の記憶を無くし、洗脳プログラムで指令のまま動くようになれば、君は完全なる!オリンポスのキメラボーグの一員になれる!」

 

 主任らしき男が高説を終えると、電源のスイッチがオフになり、止め金に繋がれていた電極が外された。

 全身から汗が噴き出していたが、僕はまだ意識を保っていた。

 

「た、例え死んでも、僕はお前達の思い通りにはならないぞ!」

 

 僕は疲弊した身体で否定するが、主任らしき男は狂信的に怒鳴った。

 

「誰しも始めはそう思う!しかしそう思っていられるのも今だけだ!これより立花竜馬の記憶消去手術を開始する!」

 

 主任らしき男の指示の下、防護服の男達が手術の準備を始めようとした、その時だった。 

 突如、大きな爆発音が轟いたのだ。

 爆発音と同時に、室内の照明や、機材が次々と火花を散らし、部屋は闇に包まれた。

 

「どうした!何が起こったのだ!」

 

 主任らしき男が報告を要請すると、部屋にフルフェイスマスクとタクティカルヘルメットを着けた黒い全身タイツの男が入ってきた。

 

「何者かが発電室にある主電源と補助電源を破壊しました!」

 

「なんだと!こんな時に!直ちに修理に向かうぞ!」

 

 主任らしき男がそう言うと、部下達を従え全身タイツの男と共に僕を置き去りにして出ていった。

 

「お、おい待て!くそっ、どうにかしなきゃ……」

 

 僕は止め金を引き千切ろうと軽く力を入れたその時だ。

 

「あっ!」

 

 突如、四肢を繋いでいた止め金の鎖が引き千切られたのだ。僕の感覚では、軽く力を入れただけで、流石に千切れるとは思っていなかった。

 

「く、鎖が……まさか、本当に僕は……っ!?」

 

 僕は引き千切られた止め金の鎖を見て本当に改造された事にショックを受けたが、ふと、部屋の中で僕以外の人が入った気配を感じ取り、身構えた。

 しかし、気配には殺気を感じなかった。

 気配は近づいてくると同時に、僕の目が暗闇に慣れてきたその時、その正体がわかった。

 その人は、僕が最もよく知る人間だった。

 

「貴方は!?滝博士じゃないですか!?」

 

 気配の正体は、生まれて間もない頃の僕を引き取り、育ててくれた滝正春(たきまさはる)博士その人だった。

 

「でも、博士は10年前に僕を残して……」

 

「竜馬君。事情は後で話す。兎に角今はここから逃げねば」

 

「しかし、逃げると言ってもどこから……」

 

「あの天井の窓を破れば出口はすぐだ」

 

 博士が指さしたのは、9m近い高さの天井にある円形の窓だった。とてもじゃないがあそこまでは届きはしない。

 

「無理です。この高さでは届きません」 

 

「竜馬君。君はチタン合金の止め金を苦も無く切れた。人間には不可能なことだが、君は改造人間なんだ。皮肉にもオリンポスが、実験用に使用された5万アンペアの電流が、君の改造された肉体組織を活性化させたんだ」

 

「そんな事が……」

 

「出来る。今の君なら。ぐずぐずしてはいられん。既にこの基地の動力室の最深部に仕掛けた爆弾がそろそろ爆発する。やってみるんだ」

 

 滝博士の言葉の数々に僕は驚いていたが、博士の話を聞く限り確かに時間はない。ここは一か八かかけて見るしかない!

 

「わかりました。博士、しっかり捕まってください!」

 

「うむ!」

 

 僕は滝博士を抱えると、天井の窓めがけてジャンプした!

 

 その後、僕と滝博士は出口に到着すると、出口に駐車されていたオートバイに乗って基地を脱出した。

 

 僕が囚われていた基地は、脱出してすぐに大爆発を起こし、消滅した……

 

 

 

side end.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 滝博士の協力によって記憶消去手術寸前に脱出した立花竜馬。しかし、その先に待っていたのは、更なる悲劇だというのを、この時点ではまだ知る由もなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




次回予告(イメージCV:政宗一成、推奨BGM:襲撃 M-47
+チャンス M-72b(超人機メタルダーより))

 無事に基地を脱出した竜馬だが、脱走の果てに待っていたのは恩師との辛い別れであった。

 迫りくる刺客スパイダーキメラの猛攻!

 恩師を殺したオリンポスへの怒りが、竜馬を異形の戦士へと変えた!

 次回「空白の3年間:中篇」

 こいつは凄いぜ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4話「空白の3年間:中篇」

 お待たせしました。第4話です。
 今回はこれまでのと比べて少し短めです。
 尚、次回予告に関しては、話によって異なります。
 あ、グロ注意です。


現在、束のセーフハウスにて———

 

 束の話を聞いていた千冬は、竜馬を誘拐した黒幕が、先程自分を襲ったオリンポスと呼ばれる組織で、13年前の滝博士蒸発事件も奴らの仕業だというのを始めて知った。

 

(まさか、あの事件の黒幕が全てオリンポスだったとは……)

 

 千冬は内心驚愕していた。それだけではない。竜馬自身もオリンポスによって、キメラボーグに改造されていた事にも驚いていた。

 だが、ここである疑問が生じる。

 

(ん?そういえば、先程束は「竜馬は記憶消去手術寸前に滝博士に助けられ、博士と一緒に脱出した」と言っていたが、ならその滝博士は今どこに……)

 

 考え込む千冬を、束は少し冷静に見つめた。

 

(ま、そりゃあ驚くだろうねぇ。やっと再会できた想い人が得体の知れない組織に化け物に改造されましたーっなんて、与太話に思えても仕方ないよね)

 

 束はそう思案していると、千冬がある事を聞いてきた。

 

「束。お前は先程竜馬は滝博士と共に脱出したと言ったな」

 

「ん?そうだけど?」

 

「ならその滝博士はどこにいるんだ?こちらにはいらっしゃらないのか?」

 

 千冬の質問に、束は目を瞑り、顔を俯かせた。その仕草を見た千冬は、全てを察した。

 

「まさか……」

 

「そうだよ……確かに基地は脱出できた。けど……」

 

 束は再び、竜馬の過去を語り始めた……

 

 

 

 

 

 

 

 

3年前、某国港湾地区の廃倉庫にて……

 

 オリンポスの秘密基地を脱出した立花竜馬と滝博士は、某国港湾地区にある廃倉庫の物置に身を潜んでいた……

 その物置で、滝博士は自身が取った行動に悩んでいた。

 

「私はこれで良かったのだろうか……」

 

 苦悩する博士を見て、竜馬は落ち着かせようと口を開いた。

 

「落ち着いてください。博士のとった行動は正しい事です。オリンポスの恐るべき計画を、世論に訴えられる事ができるただ一人の証人ではありませんか!」

 

「わかっている。わかってはいるが……奴等の前では、私の力など巨像を前にした蟻のようなものだ」

 

「及ばずながら、僕も全力を賭して、人間の自由のために戦います!」

 

「竜馬君……」

 

 竜馬のその決意に、滝博士は強い衝撃を受けた。10年前、見捨てるように姿を消した自分を、今でも信じているのだ。

 そして、改造された哀しみに耐え、前のみを見つめる彼の透き通る瞳に、安らぎを覚えた。

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、その平穏を壊す魔手が近づいていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

 竜馬は、物置の外で何かの気配を感じ取った。

 キメラボーグである立花竜馬は、普通の人間以上の第六感を持っている。その第六感が、迫りくる気配を察知したのだ。

 

「この気配は……博士、ここで待っていてください。調べてきます!」

 

「わかった。だがあまり遠くへは行かないでくれ」

 

「わかりました」

 

 気配が気になった竜馬は、物置を扉を開くと、廃倉庫の中を徹底的に調べ始めた。

 しかし、なにも見つからなかった。

 

(気のせいなのか?しかし、確かにあの時何者かの気配を感じたんだ……)

 

 竜馬は思案していると、床に何かが落ちている事に気付き、それを拾った。

 それは、蜘蛛の糸だった。

 

「これは……ジョロウグモの糸だ。しかしなんでこんなところに……」

 

 竜馬が蜘蛛の糸に気を取られていた、その時だった。

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 突如、物置から悲鳴が響いた。

 

「あの声は博士の!くそぉっ!」

 

 竜馬は博士の身に何かがおきた事を察し、直様物置に戻った。

 竜馬が物置に戻った時、既に事は終わっていた。

 物置には、滝博士が床に倒れていた。

 

「はっ!博士!博士!しっかりしてください!博士!」

 

 竜馬は滝博士の許に駆け寄ると、博士の身体を揺さぶった。

 その時、竜馬の手をドロッとした感覚が襲った。

 

「?……っ!?」

 

 竜馬は恐る恐る掌を返した。

 感触の正体は、博士の血であった。

 この時、竜馬は滝博士が殺された事を悟った。

 

「そんな……こんな事って……やっと、やっと会えたというのに……っ!」

 

 竜馬は博士の身体を抱えようとしたその時、滝博士の肉体は泡状に溶解してしまった。

 

「こ、これは一体…………っ!?誰だ!」

 

 竜馬は目の前で博士が溶解した事に動揺したが、背後からの殺気を感じ取り、後ろを振り向いた。

 その時、天井から蜘蛛のように糸を伝って、怪物が下りてきた。

 竜馬は先程の糸はこの怪物のものである事と、怪物が博士の命を奪った事を理解した。

 

「お前が博士を!」

 

「オリンポスのキメラボーグが一人、スパイダーキメラだ!立花竜馬、組織を裏切ればお前もこういう運命に遭うのだ!だが安心しろ。お前の命はとらん。お前を捕え基地へ連れて帰り、改造手術を完了させるのだ!」

 

「断る!お前達のような人間の意思を奪うような組織の一員など、絶対になるものか!」

 

 竜馬は眼前の怪物———スパイダーキメラに対し言い放つと、鋭い拳打をスパイダーキメラに喰らわせるが、その悉くを防がれてしまう。

 

「くっ!」

 

「ふん、愚かな男だ。ならば死ねぇ!」

 

 スパイダーキメラは竜馬の身体を掴むと、そのまま倉庫の外へ投げ飛ばした。

 

「うわあぁぁぁぁ!」

 

 投げ出された竜馬は受け身を取って投げられた衝撃を抑えたが、それでも背中への衝撃は強く、身動きができなかった。

 スパイダーキメラはその竜馬に止めを刺そうと、ジリジリと近づいていた……

 

(まだだ、まだここで死ぬわけにはいかない。僕は戦わなければならない。僕が倒れたら、誰がこの世界をオリンポスから守ると言うんだ!ここで、倒れるわけにはいかないんだ!)

 

≪推奨BGM:DIE SET DOWN≫

 

 竜馬の負けたくないという思いが、竜馬の肉体を急激な熱が込み上げた。

 竜馬は立ち上がると、雄叫びを上げた。

 

「うおぉぉぉぉおおおお!!」

 

 雄叫びと共に、竜馬の肉体は、異形の怪人へとその姿を変えた!

 改造人間立花竜馬は、怒りの感情が頂点に達した時、体内の細胞が異常活性化し、ホッパーキメラへと変態するのだ!

 

「馬鹿な!?まだあいつは変態化を覚えていないんだぞ!」

 

 竜馬がホッパーキメラへと変態を遂げる様子を見たスパイダーキメラは、まだ改造されて間もない竜馬が変態化した事に驚愕した。

 

「――――――――――――――ッ!!!」

 

 ホッパーキメラは雄叫びを上げ、スパイダーキメラに襲い掛かった。

 

「おのれ!」

 

 スパイダーキメラは口から糸を放出し、ホッパーキメラを拘束しようとするが、ホッパーキメラは直感でジャンプし、スパイダーキメラの頭上を軽々と越えて、背後を取った。

 

「!!!」

 

 ホッパーキメラは前腕部のホッパーレザーでスパイダーキメラの腕を全て引き裂いた。

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!俺の腕があぁぁぁぁぁ!」

 

 スパイダーキメラは全ての腕を斬られ悶えるが、ホッパーキメラは容赦なくスパイダーキメラの首を引き裂いた。首を斬られたスパイダーキメラの首から大量の血が飛び出し、ホッパーキメラにも降りかかる。

 そして、スパイダーキメラは倒れると、肉体は瞬時に腐食するかのように溶解した。

 戦いを終えたホッパーキメラは、血溜りに自分の姿が写った。

 

(これが……これが僕の姿なのか……)

 

 肉体が徐々に元の姿に戻っていき、直ぐに竜馬の姿へと戻った。

 竜馬の身体には、無数の返り血が付着していた。

 

「…………」

 

 竜馬は、いわれない焦燥感に襲われていた。

 怒りに我を忘れたとはいえ、竜馬は始めて人を殺めた。

 その手の感触は、今も竜馬の手に残っていた。

 

「第三者から見れば、僕は遠い星からやってきた遊星人かもしれない……そして、僕は一生この身体で生き続ける事になる……だからこそ、戦わなければならない……奴らと戦えるのは、僕だけなのだから」

 

 竜馬は夜空を見上げながらそう言うと、その場を去ろうとしたその時だった。

 

「そうやってまた一人でなんでも抱え込むの?」

 

 突然、後ろから声が聞こえた。

 その声には、聞き覚えがあった。

 竜馬は後ろを振り向くと、そこには、見知った顔がいた。

 

「……た、ば、ね?」

 

「久しぶり、りょーくん」

 

 それが、篠ノ之束と立花竜馬の再会であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




次回予告

 親友である束と再会した竜馬は、人間の自由を守るためオリンポスと戦う決意を固める。

 そして、束はその竜馬に新たな力を与えた!

 変身!仮面ライダーメーデン

「空白の3年間:後編」

 お楽しみに。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5話「空白の3年間:後編」

お待たせしました。空白の3年間3部作、これにて完結です。


現在——————とある空き地にて

 

 竜馬は、Mチャリオットの試運転をあらかた終えて、セーフハウスへの帰路につこうとしていた。

 

(あの時、滝博士を失った僕は、怒りの感情と共にキメラボーグとして覚醒し、本能のままオリンポスの刺客を殺した……今でもハッキリ覚えている……始めて人を殺めたというあの感触を……)

 

 竜馬は一瞬だけ、ハンドルを握っている自身の右手を見た。

 

(そして、僕がその場を離れようとした時、束に再会した……)

 

 竜馬は、再び3年前の事を回想した——————

 

 

 

 

 

 

 

 

3年前——————某国廃倉庫外にて

 

 竜馬は目の前に写る人物との再会に驚いていた。そこにいたのは、僕がオリンポスに拉致される一週間前に行方を眩ました幼馴染にしてISの生みの親である“天災”こと、篠ノ之束だった。

 竜馬は驚きのあまり止まってしまったが、自分の手にこびりついた返り血が滴る音で我に返り、ある事を思い出した。

 

(どうして束がここに?彼女は確か政府によって国際手配を受けていた筈だ)

 

 そう、束は失踪したその日のうちに、日本政府を経由してICPO(国際刑事警察機構)が国際指名手配に指定していたのだ。その彼女が何故この国に?しかも、どうしてこの場所にいるんだ?

竜馬はそれを聞こうとしたら、束は竜馬の心を読み取るように話を切り出した。

 

「なんでここにいるかって?いや〜、探すの本当に手間取っちゃったよ。最初にりょーくんがいなくなったのをニュースで見て取り組んでる研究ほっぽって各国捜査機関のデータベースを虱潰しにハックしながら調べてやっと居場所を突き止めたってわけ」

 

 今サラッととんでもない事を自白したような気がするが、竜馬は気のせいという事にした。だが、このタイミングで束が僕の前に現れたということは……

 

「ま、それでここに来たら……」

 

「……見たんだね。僕のあの姿を」

 

「うん。それに、あの怪物と戦うところもね」

 

「そっか…………」

 

 竜馬は少し諦めがついた表情で夜空を見上げた。見られた。あの姿を。“キメラボーグとしての姿”を。よりにもよって束に見られたのだ。

 だが、竜馬は逆に安堵していた。あの姿を最初に見たのが、束だという事に。

 

「りょーくん。一体何があったの?それにあの姿は一体……」

 

 束の問いかけに、竜馬は答えようとしたが、彼の改造された聴覚が、遠くから複数の足音が近づいてくるのを察知した。

 

「束、事情は別の場所で話す。兎に角……今はここを離れたい……」

 

 竜馬は顔を俯かせてそう言った。近づいてくる足音がオリンポスの追手の可能性があるからだ。もしそうなら、束の命が危ないからだ。

 

「……わかった。りょーくんがそう言うのなら、話せる場所に連れてけば良いんだね!」

 

 だが、束はとても斜め上な返事を返した。連れてく?どこに?竜馬はそう思案していると、束は返り血がこびりついた彼の腕を引っ張った。

 

「ちょ、ちょっと!?どこに連れて行くんだ!?」

 

「いいからこっち来て!」

 

 束に引っ張られながら、竜馬はその場所を後にした……

 

 

 

 

 

 

 

 

現在——————束のセーフハウス

 

「……で、お前は竜馬を自分のラボに連れていって、その国を後にしたと」

 

「そゆこと。りょーくんの肉体組織を調べたいっていう束さんの知的好奇心もあるけど、それ以前に近づいてくる足音が組織の奴らの可能性があるからね」

 

「確かに、妥当だな」

 

 束の話を聞きながら、千冬は竜馬の目の前で滝博士が殺された事に、少なからず衝撃を受けていると同時に、竜馬の悲しみを察していた。

 

「ラボに連れてった後、まずりょーくんの身体中に染み付いた返り血を洗い流してから、これまでの事を説明してもらったっけなぁ……」

 

 束は再び、3年前の事を話し始めた——————

 

 

 

 

 

 

 

 

再び3年前——————移動式ラボ「吾輩は猫である(名前はまだ無い)」にて

 

「そんな……滝博士が……」

 

「ああ……」

 

 束は竜馬からこれまでの経緯をラボの研究室で聞いていた。それは最初こそ信じられないものだったが、先程の戦闘をその目で見ていた束は、それが現実である事が理解できた。

 

「まぁ、直ぐに信じられる話じゃないよね。それg「信じるよ」……えっ?」

 

「信じるよ。だってりょーくん、束さんやちーちゃんの前では絶対に嘘をつかないもん。それに、りょーくんは隠し事を絶対にしないから……」

 

「……」

 

 束のその言葉を聞き、竜馬の心は少なからずの安らぎを得ると同時に、素晴らしい親友(とも)に恵まれた事に、感謝した。

 

「それで、これからりょーくんはどうするの?」

 

「束、僕は戦う!オリンポスという悪を知った今、僕はそれと戦う力を得た。僕はこの力で、人間の自由のために戦う!それに……オリンポスの被害者は、僕を最後にしたいんだ……」

 

 竜馬のその決意に、束の心に強く響いた。

 

(そうだね。りょーくんならそう言うと思ったよ。束さんはそれを見守る事しか出来ない。けど……)

 

 束は、ある事を考え、口を開いた。

 

「りょーくん。折り入って頼みがあるんだけど……暫く、このラボに居てくれないかな?」

 

「えっ?どうしてだい?」

 

「いや、深い理由はないんだけど、りょーくんの力になれる者を作るには、りょーくんの助けが必要なんだ……だめ、かな?」

 

 束の頼みに、竜馬は少し考えた。

 

(確かに、束の協力が得られれば、オリンポスの情報を得やすくなるし、今後の戦いの手助けになるかもしれない。でも、束をオリンポスとの戦いに巻き込むわけには……)

 

 竜馬は、親しい人を自分の厄介ごとに巻き込みたくなかった。しかし、そこへ先程あの廃倉庫で束が言った言葉を思い出した。

 

『そうやってまた一人でなんでも抱え込むの?』

 

(そうか……そうだよね。僕も、誰かを頼ってもいいんだよね)

 

 束のあの言葉を思い出し、そう決意した竜馬は、口を開いた。

 

「わかった。暫くはここにいるよ」

 

 こうして、竜馬は束と行動を共にする事にしたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

現在——————とある公道にて

 

 竜馬はMチャリオットを駆り、セーフハウスに向かっていた。

 

(その後、僕は束と行動を共にしながら、彼女の研究に付き合った。そして……)

 

 竜馬は左手を腰に巻いているケイモーンにやった。

 

(このケイモーンが出来た……)

 

 

 

 

 

 

 

 

三度3年前——————吾輩は猫である(名前はまだ無い)にて

 

「出来た!遂に出来たよぉ!“ケイモーン”が!」

 

 束は、研究室の机に置いてあるケイモーンを手に取って喜びを表していた。

 

「遂に完成したのかい!」

 

 そこへ、何故かエプロンを着けていた竜馬と、銀髪と白と青のゴスロリドレスを着た少女が入ってきた。

 その少女は、束と行動を共にしている少女「クロエ・クロニクル」である。

 

「うん!ってりょーくんは何故にエプロン姿なの!?」

 

「いや、クロエちゃんにオムライスの作り方教えてて……」

 

「はい。竜馬様の料理はどれも素晴らしいものばかりなので、私も竜馬様のように素晴らしい料理を作れたらと思いまして……」

 

「ほほ~。つまりりょーくんはくーちゃんの家事スキルを上げていたと!これ以上くーちゃんの家事スキルが上がっちゃったら束さんがもっとダメ人間になっちゃうよ!」

 

「いや、元から束は生活無能力者じゃないか」

 

「いきなり辛辣な事言うねりょーくんは!もうやめて!束さんのメンタルライフはもう0よ!」

 

 竜馬と束がそんな茶番をしていると、クロエが本題を聞いてきた。

 

「ところで、完成したというのは?」

 

「そうそう!りょーくん!遂に完成したよ!“ケイモーン”が!」

 

 束はそう言うと、竜馬にケイモーンを見せた。

 

「これが……ケイモーン」

 

 竜馬はケイモーンを手に取ると、バックル部分に描かれたあるものに目を囚われた。

 それは、竜馬、束、そして千冬を結ぶ「友情の証」であった。

 

「このマーク、まだ覚えていたんだね」

 

「うん。だって、忘れられないもん。それが私達を繋いでくれた、“魂の紋章”だもん」

 

 バックルには、かつて中学生の頃に束と千冬と一緒に立ち上げた「未来科学同好会」のエンブレムが刻まれていた。

 竜馬はそれを見て、かつての思い出が込み上げてきた。

 かつて、宇宙(そら)に想いを乗せ、語り合ったあの日々を……もう戻ることはない、あの日々を……

 

(思えば、遠くまできてしまったな……)

 

 竜馬は、自分達が遠くまできてしまった事を思いながら、エプロンを取りケイモ―ンを腰に巻いた。

 

「とてもお似合いです竜馬様」

 

 クロエは、装着されたケイモ―ンを見ながら、少し微笑んで頷いた。

 

「おいおい、まだ腰に巻いただけじゃないか。このベルトの真価はこれからだよ」

 

「そうそう!さぁ、やっちゃって!」

 

「わかった!」

 

 竜馬はそう言うと、一旦目を閉じて、深く息を吸うと、竜馬の顔に変化が起きた。

 額に真紅の「第三の目(サードアイ)」が開眼し、目元に改造手術の傷跡を思わせるような「キメラライン」が伸びていた。

 これこそ、立花竜馬がキメラボーグとしての身体能力を発揮させる〈中間形態〉だ。

 中間形態に変身した竜馬は、両腕を大きく動かしながら、スイッチを押すように叫んだ。

 

「変っ……身!」

 

 すると、未来科学同好会のエンブレムが施された防御シャッターが展開し、風車ダイナモが姿を現すと、ダイナモが高速で回転しながら大気を取り込み、竜馬の姿を〈戦士〉に変えた。

 

「これが……竜馬様の新たな力」

 

 クロエはそう言うと、脇に置いてあった姿見を竜馬の前に出した。

 竜馬は姿見に目をやった。

 そこに映っていたのは黒を基調とするスーツに緑色の胸部プロテクター、四肢にはダークグリーンのグローブとブーツを身に纏い、、首には真紅のマフラーを巻き、顔は飛蝗を模した朱色の複眼に黒のラインが入ったダークグリーンのマスクを身に着けた異形の戦士だった。

 

「これが、僕の新たな姿か……」

 

「そうだよりょーくん。君こそ……君こそ仮面ライダーなんだよ!」

 

「仮面ライダー?」

 

「うん!」

 

 束は頷くと、研究室のモニターにある画像を映した。そこには、今の竜馬の姿によく似た。異形の戦士たちが映っていた。

 

「私達のおじいちゃんの代から、この世界の裏で戦っている仮面の戦士たちの事だよ。束さんはね、りょーくんの話を聞いて、この人達の事を思い出して、このケイモーンを作ろうって思ったんだ」

 

 束は、どこか懐かしげな顔で説明した。竜馬はその説明を聞きながら、画面に映るライダー達に心奪われていた。

 

「仮面……ライダー……」

 

「りょーくんもその一人だよ」

 

「えっ?」

 

「りょーくんも、その仮面ライダーの一人なんだよ」

 

 束の言葉に、竜馬は再び姿見に映る自分を見た。

 そして、決意を固めるように拳を握り、宣言した。

 

「僕は……俺の名は、仮面ライダーだ!」

 

 今ここに、仮面ライダーメーデンは誕生したのである——————

 

 

 

 

 

 

 

 

現在——————束のセーフハウス

「—————その後、りょーくんは束さんにMチャリオットの開発を任せて私と別れて、オリンポスとたった一人で世界各地で戦っていたんだけど、組織がちーちゃんを狙っている事を知って一月前に帰国して、今に至るってわけ。以上が、ここまでのあらましかな」

 

「…………」

 

 千冬は無言で聞いていた。そして、顔を俯かせて先程の行いを恥じていた。彼の気持ちを考えずに、突っかかってしまったあの時の自分を。

 

(すまない竜馬。お前がこれまで、たった一人のあの巨大な組織と戦っていたと知らずに、私はあの時、自分の事ばかり考えて怒鳴ってしまって……)

 

「…………」

 

 そんな千冬を、束は黙って見ていた。それは、何かを見定めるような顔をしていた。

 そうとは知らず、千冬は心の中である決意を固めた。

 

(……私では、恐らくISを使わなければ組織のキメラボーグには太刀打ちはできないだろう。だが、それでも私は竜馬の役に立ちたい!後ろに隠れて守られるなど、私が許さない!)

 

「束!少し頼みたいことがある!」

 

 千冬は顔を上げて束にそう言うと、束はニヤッとした表情でその提案を伺う事にした……

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




次回予告

≪推奨BGM:幕間 M-32a(仮面ライダークウガより)≫

「3年前のあの日以来、私はお前の事を片時も忘れた事はなかった。それはな……」

「それは……」

 決意


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第6話「決意」

 お待たせしました。当初のプロットでは原作2巻まで引っ張る予定だった千冬の告白ですが、自分があまり恋愛モノを読まなかった事と、書くノウハウが足りてなかった為、早めに決着をつける事になりました。

 また、チョクチョク平成ライダーネタを仕込んで文章で息抜きをしております。

 次回よりIS原作に突入!……出来るかな?


 Mチャリオットの試運転を終え、セーフハウスに戻ってきた竜馬は、ガレージにMチャリオットを駐車すると、束と千冬がいるリビングに向かった。

 リビングに到着した時、リビングには千冬だけがいた。

 

「あれ?束は?」

 

「あいつなら用事を思い出して飛んでいったぞ」

 

「飛んでいったって……まぁ、束らしいからいいけど」

 

 竜馬は苦笑しながら台所にある棚を開けようとした。

 

「まて竜馬」

 

 唐突に千冬に言い止められ、その手を止めた。

 

「どうしたんだい、千冬」

 

 竜馬は千冬の方を振り向く。千冬は、とても真剣な顔をしていた。この時、竜馬は千冬が言いたい事がすぐ理解できた。

 

「竜馬、頼みがあr「駄目だ」っ!?まだ何も言ってないだろう!」

 

「君の言いたい事はわかるよ。僕の手助けをしたいんだろう?なら駄目だ」

 

 竜馬の言葉は、千冬の心を的確に射抜いていた。だが、それで退く千冬ではない事を、竜馬は知っていた。

 

「何故だ!束にはそのベルトやマシンを作ってもらったのに、何故私には頼ろうとしないんだ!」

 

「君の気持は確かにわかる。けど、僕は君をこの戦いに巻き込むわけにはいかないんだ」

 

「何だと!」

 

「束から3年前の事を聞いていると思うけど、これは、僕が背負わねばならない十字架なんだ。わざわざ君が出張る必要はない。それに……」

 

 竜馬は、千冬を引きさがらせるため、一人の少年の名を口に出した。

 

「それに、君にもしもの事があったら、一夏君はどうなるんだい」

 

「っ!?」

 

 千冬は目をハッとさせた。

 織斑千冬は幼い頃、弟である一夏と共に両親に捨てられてから、千冬は一夏と二人で懸命に生きてきたのだ。

 もし自分が死ねば、一夏はどうなる?千冬は顔を俯かせた。

 竜馬は続けた。

 

「僕には家族はいない。育ての親だった滝博士も、オリンポスによって殺された。だが君には血の繋がった弟がいる!僕は、一夏君の悲しむ姿を見たくないんだ。だから……」

 

 そこまで言った時、竜馬は千冬に背を向けた。

 

「だから……戦うのは、僕だけでいいんだ」

 

「…………」

 

 千冬は黙っていた。竜馬はこれで千冬が引き下がってくれるだろうと思った。竜馬は千冬を巻き込みたくなかった。束を巻き込んでしまった事に対する罪悪感もあったが、ここにきて千冬を巻き込むことを、竜馬の良心が許さなかった。

 しかし、竜馬は侮っていた。織斑千冬という女を。彼女がこのまま引き下がる女ではないという事を。

 

「それは出来ない相談だ」

 

「っ!?」

 

 竜馬は振り向くと、右手で千冬のシャツの襟首を掴んだ。

 

「千冬!今君が言っている意味がわかっているのか!?僕の戦いはモンド・グロッソのようなスポーツじゃない!生死を分けた戦いなんだぞ!」

 

「わかっているさ!私は束のように頭は良くないし、何かを作れるという技量もない!だが戦う術は知っている!お前の足は引っ張るような事はしない!」

 

「それでもだ!君が太刀打ち出来ても、精々スパルタ兵が限度だ!あの時僕がいなかったら!君は間違いなくカメレオンキメラに倒されていた!」

 

「ISがあれば遅れは取らなかった!」

 

「確かにISなら対等に戦えるかもしれないが、活動時間がある!キメラボーグは命を絶たない限り戦い続ける!もし持久戦に持ち込まれたらどうするんだ!」

 

「気力でどうにかなる!」

 

「精神論で相手が倒せるものか!兎に角駄目だ!奴等と戦うのは僕一人で充分だ!これを見ろ!」

 

 竜馬は千冬の襟首を掴んだまま、左手でテーブルに置いてあったコップを触った。

 すると、コップは一瞬にして砕け散ったのである。

 竜馬の右掌に無数の瓶の破片が刺さり、血が滴り落ちていたが、その傷は一瞬して完治した。

 その一部始終を、竜馬は千冬に見せつけるように行った。自分が人であって人ではない。改造人間である事を証明するかのように。

 

「見ての通り、僕の身体は改造人間だ!改造人間には、改造人間でなければ太刀打ちできない!それに僕が君を助けたのは、君が幼馴染だからじゃない!君がオリンポスに狙われていたから助けただけだ!」

 

 竜馬の言っていることは嘘である。だが、今の千冬を引き下がらせるためにも、竜馬はあえて千冬を突き放すように口にした

 

「…………っ!」

 

「だから……君と僕が出会うのは、今日が最後だ」

 

 言葉を失った千冬に、竜馬はやっと納得してくれたと思い、右手を放した。

 

「本気で言っているのか……」

 

「ああ、もう会う事はないよ。僕も、そして君も……っ!?」

 

≪推奨BGM:Sorrow(Fate/stay nightより)≫

 

 しかし、今度は千冬の方から竜馬の背中に手を回すと、自身の唇を竜馬の唇に押し当ててきたのだ。

 ドクンと、竜馬の身体が震えた。ただキスをしただけなのに、体温が上がってくる。

 

「んん…んっ………」

 

「お、おいっ。千冬、待っts……んんっ!」

 

 気付いた時には、竜馬は自分から千冬の身体を求めるように身を寄せていた。

 暫くの間、千冬の口はたっぷりと竜馬の口を独占した後に離れた。

 

「これでも、お前は私から離れたいのか……」

 

「ち、千冬……君は……」

 

 竜馬は、千冬の頬が紅潮している事に気付いた。恐らく千冬自身も、さっきのキスはかなりの決意があったのだろう。

 

「3年前のあの日以来、私はお前の事を片時も忘れた事はなかった。それはな……」

 

「それは……」

 

「……それは、お前が好きだから!お前を愛しているからだ!もう嫌なんだ!お前のいない世界が!頼む!私の前から消えないでくれ……お願いだ……」

 

 感極まったのか、千冬は己の内に秘めた思いを全て曝け出した後、泣いてしまった。この時、竜馬はすべてを察した。

 

(ああ、そうか。僕は、ずっと泣かせてきたのか……20年間、僕は一人の女性を泣かせていたのか……僕は馬鹿だ。僕の事を想っている人が、こんな近くにいた事を知らずに、今までずっと一人で無茶しまくってたのか……)

 

 竜馬は、この状況では、自分の説得はなんの意味もなさない事を理解した。

 そして、竜馬はまっすぐな瞳で千冬の顔を見た。

 千冬の顔は、涙でぐちゃぐちゃになっていた。

 

「千冬……泣かないでくれ」

 

「竜馬……」

 

「僕は……僕はなんて馬鹿なんだ……千冬が昔から僕の事を想ってくれていたのに、僕はずっとそれを無視し続けたんだ……」

 

 竜馬は千冬の身体を抱き締めると、再び千冬の顔を見た。

 

「千冬、愛している。」

 

 飾らない。素直な言葉。

 それが、千冬の心に深く突き刺さった。

 

「私も愛してる。例えお前が人間でなかろうと、私はお前を愛してる」

 

「千冬……ありがとう……!」

 

 二人の顔が近づき、再びキスをしようとした、その時。

 

「お~め~で~と~う~!」

 

 空気を読まない駄兎が入ってきた。

 キスをしようとしていた二人は、突然の来訪者に驚きを隠せなかった。

 

「た、束……帰ったんじゃ……」

 

「ん~?ちーちゃんは「飛んでいった」とは言ったけど「帰った」とは言ってないよ~?(ニヤニヤ)」

 

「~~~~~~~(パクパク)!!」

 

 千冬は顔を真っ赤にして口をパクパクさせていた。それを束はニヤニヤして眺めていた。

 

「まさかとは思うけど、束……」

 

「言っておくけど、ちーちゃんから頼まれたのは「りょーくんと二人っきりで話したい」ってだけで、別に仕組んだわけじゃないよ〜。まぁまぁお気になさらずにそのままちゅっちゅっしちゃってベッドでギシギシアンアンt「わ……」……わ?」

 

「忘れろおぉぉぉーーーっ!」

 

 恥ずかしさがMAXになった千冬は、何処から取り出したかわからない竹刀を振り回して束に迫った。

 

「ちーちゃんストップ!ストォーップ!流石に竹刀はあかんって!束さん死んじゃう!死んじゃうからマジで!りょーくん助けて!後生だから助けて!」

 

 束は竜馬に助けを乞うが、現実は残酷だった。

 

ギルティ(イッテイーヨ!)

 

「りょぉぉぉちゃぁぁぁん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

※暫くお待ちください

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァーッ……ハァーッ……」

 

「あ、あははは………」

 

「きゅ〜ピクピク……」

 

 事態が収まった時、リビングは燦々たる光景が広がっていた。怒りが収まった千冬は肩を上下しながら息を整え、竜馬はその惨状に苦笑いし、(諸悪の根源)は頭にたん瘤を二つ作って倒れていた。

 

「さ、さて……茶番はこのくらいにして、これからについて話そうじゃないか……」

 

 束は傷ついた身体(笑)に鞭打って立ち上がると、本題を切り出した。

 

「実の所、束さんはりょーくんに頼みたい事があってここに来たんだよ」

 

「頼みたい事?」

 

「うん。ちーちゃんも知ってると思うけど、いっくんの事でね」

 

「一夏の事か?」

 

 束が切り出したのは、千冬の弟である織斑一夏であった。

 この一月前、一夏はひょんな事からISを動かしてしまい、「世界で初の男性IS操縦者」として世間に大々的に報道されたのである。

 勿論この事は竜馬の耳にも届いていた。

 

「確かに、今の一夏君は世界中の国々がその身柄を狙っているし、その中にオリンポスがいる可能性も充分あり得るね」

 

「そゆこと。そこでりょーくんにはIS学園の先生として、いっくんを守って欲しいんだ」

 

「なるほど、そういうことか……」

 

 千冬は束の言いたい事が理解できた。一夏は政府の方針でIS学園への入学が決まっており、この結果各国も迂闊には手出しできない。しかし、相手が国際常識の通じないオリンポスともなれば……IS学園のセキュリティを突破して一夏を襲う可能性は十分あり得た。

 だが、問題材料がある。

 

「しかし、竜馬は男だぞ?男では……」

 

「ノープロブレム!そこは束さん!こんなこともあろうかとりょーくん専用ISを開発していたのだ!といっても、打鉄のカスタム機だけどね」

 

 一体何処から打鉄を入手したのかについては突っ込まないことにして、束はポケットから待機状態の打鉄を取り出すと、竜馬に手渡した。

 竜馬は右掌に乗った打鉄を少しの間見つめると、決意を固めた。

 

「わかった。どちらにせよ、僕は日本に残ってオリンポスと戦うつもりだったし、束の頼みに応えるよ」

 

「やった!」

 

 そう言うと、束は台所にある棚を開け、ある物を取り出した。

 棚から取り出したのは、年代モノのウヰスキーと三人分のロックグラスであった。

 

「飲むかい?○崎の25年ものだよ~」

 

「どこから調達してきたんだって突っ込みたいところだけど、折角束が用意した酒だ。ありがたく貰うよ」

 

「私ももらおう」

 

 束はグラスにロックアイスを入れてウヰスキーを注ぐと、テーブルに置いた。

 

「そういえば、こうして3人で飲むのはじめてだよね」

 

「ああ、そうだな」

 

 実を言うと、竜馬と千冬と束は3人だけで酒を呑んだことはない。彼等は高校卒業後違う進路へ進んだため、会う機会が減ってしまったからだ。

 

 

「じゃ、3年振りの再会を祝って……」

 

「「「乾杯」」」

 

 三人はグラスを掲げると、一口飲んだ。

 

「……うぉっ!かなり効くな。これは」

 

「そりゃぁ、○崎の最高級品だもん。ちーちゃんはハイボールが良かったかな?」

 

「ふん、これしきで倒れる私ではないぞ」

 

「そんじゃぁ、今日は昔話で盛り上がろっかー!」

 

 その日は、竜馬は夜が明けるまで千冬と束の三人で語り合ったという。その間だけ、三人は昔に戻ったように思えた。

 かつて、宇宙(そら)に想いを寄せた。あの頃に。

 もう戻る事はない、あの日々に。

 だが、オリンポスがいる限り、立花竜馬に安息の日々は訪れないのだ。

 戦え!仮面ライダーメーデン!オリンポスから、人間の自由を守るのだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




次回!仮面ライダーメーデン(イメージCV:檜山修之)

「げぇっ!関羽!?」

「だれが三国志の英雄だ馬鹿」

「本日より山田先生と共にこのクラスの副担任となる立花竜馬です」

第7話「自・己・紹・介」青春スイッチ、オン!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第7話「自・己・紹・介」

 お待たせしました。いよいよIS原作に突入しました。

 ここから暫くは原作に沿った展開で進行していきます。


 立花竜馬と織斑千冬が三年ぶりの再会を果たして、二週間が経過した頃…………

 

 4月の頭、IS学園の1年1組の教室では、今年の新入生が入学式を終え、最初の授業が始まろうとしていた。通常、入学式の日は授業はなく、あってもHR(ホームルーム)が常識なのだが、IS学園は専門分野中の専門分野であるISについて学ぶ都合上、授業は入学式の日から始まる事になっている。

 さて、この1年1組、他のクラスとは違う特色がある。

 それは、クラスメイトに唯一、男子がいる事だ。

 

(き、気不味い……)

 

 さて、読者諸君には恐らくここで察してくれるだろうが、この男子こそ、世界初の男性IS操縦者である織斑一夏その人である。

 なぜ彼がこの女の花園であるIS学園にいるのかについては、今更聞くまでもない事だろうが、折角なので教えよう。

 今から遡る事一月半前、一夏君は私立藍越学園の入試会場に向かっていたんだけど、何を勘違いしたのか手違いでIS学園の入試会場に入ってしまい、そこでISを動かしてしまったからさあ大変。一夏君は世界初の男性IS操縦者として世間に大々的に報道され一躍時の人となってしまったんだ。

 勿論、こうなったら彼を狙う存在も出てくるワケで、身の安全を踏まえてIS学園に入学する事になったってわけ。

 いやぁ、ラノベ主人公ってどうしてこう災難に襲われるんだろうねぇ。マジでムカつく。

 

(おいぃぃぃっ!何本音書いてんだ作者ぁぁ!いくらハーレム系ラノベ主人公が嫌いだからって自分の作品に書くことはないだろおぉ!せめて前書で書けぇぇっ!)

 

 まぁまぁ、抑えて抑えて。

 

(これが落ち着いてられるか!)

 

 さて、心の声で第四の壁を全力で壊してくる一夏君はさて置いて、教室ではSHRが始まろうとしていた。

 

「それでは皆さん。1年間よろしくお願いしますね」

 

 副担任の山田真耶先生(先ほどの茶番の間に自己紹介をしてました)が、教卓の前で微笑んだ。が……

 

「…………」

 

 悲しいかな。生徒達の反応は無かった。

 

「そ、それでは、自己紹介を始めますね。出席番号順にお願いします」

 

 小動物の如く狼狽える副担任だが、教室は奇妙な緊張感に覆われていた。

 その原因である我らが一夏の席は、最前列のど真ん中という、否が応にも目立つ場所だから、周囲の視線が集中していた。

 一夏は窓際の席にいる幼馴染の篠ノ之箒に目をやるが、箒は一夏と目線が合うと、顔を外に向けてしまった。

 

(おいおい!それが久しぶりに会った幼馴染に対する態度かよ!もしかして俺、嫌われてるんじゃ……)

 

「……くん!織斑一夏くん!」

 

「は、はい!?」

 

 大声で呼ばれた一夏は、思わず声が裏返ってしまう。どうやら自分の番らしい。

 いつも以上に緊張した状態で、一夏は席を立った。

 

「えっと……織斑一夏です。よろしくお願いします」

 

 一夏は儀礼的な挨拶をするが、周囲の視線が一夏の緊張感をさらに高めていった。

 

(いかん!このままでは俺が根暗な奴に思われてしまう!)

 

 一夏は一呼吸置くと、意を決した。

 

「……以上です!」

 

 一夏のその一言で、周囲の生徒はズッコケた。

 

「あ、あのー……」

 

 後ろの生徒が涙成分二割増しで声をかけてきた、その時だった。

 スパァンッ!と、一夏の頭を叩く音が響いた。

 その叩き方に、一夏は見覚えがあった。

 一夏は恐る恐る振り向くと、そこには修羅がいた。

 

「げぇっ!?関羽!」

 

 スパァンッ!と、また頭を叩く音が響いた。

 

「誰が三国志演義の英雄だ馬鹿」

 

 一夏は叩かれた後頭部を抑えた。

 

(あれ?てかなんで千冬姉はここにいるんだ?)

 

 実を言うと一夏は、姉である千冬が現在どのような仕事をしているか本人に全く聞かされていないのだ。

 

「あれ?織斑先生、もう会議を終えられたのですか?」

 

「ああ。山田君。クラスへの挨拶を押し付けてすまなかったな」

 

「い、いえ!副担任ですからこれくらいはしないと……ところで、“あの人”は?」

 

「あ、ああ。あいつなら今廊下で待たs「ホイッ!」ッアタ!」

 

 千冬が真耶の問いに答えようとしたその時、千冬の背中に衝撃が走った。

 千冬は後ろを振り返ると、そこには竜馬が立っていた。

 

「貴様……呼ぶまで廊下で待っていろと言っていた筈だが……」

 

「いやぁ、授業初日で生徒の頭を出席簿で叩く“暴力教師”に教育的指導をね……」

 

「ほほぉ、私の背中を叩く事が教育的指導だと?貴様も大概ではないか」

 

「僕は手加減したはずだけど?」

 

「どの程度の手加減か見ものだな」

 

 二人は生徒を置き去りに口論を始めてしまい、真耶以下、生徒達は呆気に取られていた。

 そんな中、一夏と箒は、何故か懐かしさを覚えていた。

 その光景は、二人がいつも見ていた“日常”そのものであった。

 

「あ、あのー……織斑先生、立花先生。そろそろ……」

 

「なんだ山田君?今取り込み中だ。この“わからず屋”に社会というものをわからせる必要があるのでな」

 

「山田先生。後にしてくれませんか?この“ブラコン怪人”にギャフンと言わせないとね」

 

 真耶が止めようとするが、二人の覇気に耐えきれず半分涙目になっていた。

 

(不味い不味い!!今ここで千冬姉と竜馬さんの“痴話喧嘩”が始まったらそれこそこの世の終わりだ!)

 

 一夏は内心焦っていた。そう、このまま行けば、二人は間違いなく痴話喧嘩を始めてしまうからだ。

 

 

 

 

 織斑千冬と立花竜馬は、過去に何度か“痴話喧嘩という名の決闘”をやらかしている。

 つまり、口論でどちらも譲らなかった場合、大抵拳と木刀による異種格闘技戦に発展するのだ。

 こうなると周囲の事などどちらも考えずにやってしまうため、喧嘩が終わるとその周囲の被害はまるで竜巻の被害を受けたかの如くボロボロになるのだ。

 主な被害者は一夏の友人で一時期竜馬が居候していた五反田家が営んでいる五反田食堂、箒と束の実家である篠ノ之神社境内にある剣術道場、そしてその神社地下にある束のラボ、そして織斑家邸宅である。

 この決闘は過去に竜馬がオリンポスに拉致される3年前までに20回この事態に発展し、内10回は束が余計な事を言ってしまったのが原因である。

 この他にも、約30回近くこの事態に発展しかけたが、その時は束若しくは一夏が命懸けで二人を止めた事で事無きを得ている。

 

 

 

 

 兎も角、一夏はこのままではこの教室が新たな被災地(戦場)になる事を危惧し、二人の間に入った。

 

「二人とも!ストップ、ストォップ!千冬姉、ここで“痴話喧嘩”なんて始めたらそれこそヤバいって!竜馬さんも抑えてください!後生ですから!」

 

「そ、そうですよ!周りの生徒がポカーンとしてますから!お二人とも自己紹介をしてください!」

 

 二人の間に入った一夏は二人を窘めるよう説得すると、それに続くように真耶も二人を説得した。

 すると、二人が吐き出していた覇気が徐々に薄れていった。

 

「……確かに、山田君と織斑の言うとおりだ。この決着は何れ着ける事にしよう」

 

「……そうだね、山田先生と織斑君の言う通りだ。ここで始めたら、周りに被害が出ちゃうからね。この勝負は預けておくよ」

 

 二人の怒りが収まった事を確認した一夏は、ホッと胸を撫で下ろした。だがそれと同時に、ある事に気が付いた。

 

(……あれ?なんで竜馬さんがここにいるんだ?あの人は確か3年前に……)

 

 そう、3年前に行方をくらました筈の竜馬が、自分の目の前に立っている事だった。

 姉である千冬がいない時、いつも面倒を見ていたのが竜馬であった。

 その為、織斑一夏にとって立花竜馬は実の兄のような存在であった。

 そして、一夏は姉千冬にとっても竜馬が特別な存在である事を勿論悟っていた。

 今でも覚えている。竜馬がいなくなって半年後に開かれた葬式で、千冬が手を震わせて悲しみに耐えているあの光景を。

 だからこそ、失踪したはずの竜馬がなぜここにいるのか疑問を募らせた。

 それを見ていた竜馬は、一夏の心情を理解すると、笑顔で彼に“一教師”として説いた。

 

「織斑君。今君が僕に問いたい事があるのはわかる。でもここは学校だ。ここでは僕も、君も、そして織斑先生も“一人の生徒と教師の関係”にすぎない。それを心に留めておくように。わかったね」

 

「……はい。りょうm「立花先生ね」……立花先生」

 

 竜馬に言い含められるように、一夏は心に疑問を残したまま、自分の席に戻った。

 もっとも、このやりとりのせいで一夏と千冬が姉弟である事が判明してしまったのだが……

 

「えっ……もしかして織斑君って千冬様の……?」

 

「苗字でもしかしてとは思ってたけど……」

 

 周囲がざわつくが、千冬が手を叩いて黙らせると、自己紹介を始めた。

 

「……さて。先程は見苦しいものを見せてしまったが、諸君。私が織斑千冬だ。君達新人(ヒヨッコ)を一年の間に使い物になる操縦者に育て上げるのが私の仕事だ。私の言う事は良く聴き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。私の仕事は若干15歳から16歳までに鍛えることだ。逆らうのもいいが、私の言う事は聞け。いいな」

 

 千冬が自己紹介を終えると、生徒達から歓声が沸き起こった。

 

「キャ――――――――!千冬様!本物の千冬様よ!」

 

「私、ずっとファンでした!」

 

「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しいです!」

 

「私、お姉さまの為なら死ねます!」

 

 ちょっと最後の人がなんかヤベーイ事を言っている気がするが、竜馬は気のせいという事にした。

 

「……まったく、毎年よくもこれだけ馬鹿者どもが集まる者だ。それともなにか?私のクラスにだけ馬鹿共が集中しているのか?」

 

(相変わらず、素直じゃないね)

 

 千冬のうっとおしそうな態度に、竜馬は懐かしさを覚えた。

 

「……さて、次はお前だ。手短に済ませろよ」

 

「はいはい。我らが担任は時間厳守がモットーのようで」

 

 千冬と入れ替わりで竜馬が教壇の前に立つと、黒板に自分の名前を書き、自己紹介を行った。

 

「さて、山田先生と共にこのクラスの副担任を受け持つ事になった立花竜馬です。まだ公にはされていませんが、私は世界で2番目の男性IS操縦者で、こちらにいる織斑先生とは学生時代からの友人です。教師としてはまだまだ至らない点もありますが、皆さんよろしくお願いします」

 

 簡潔で、どこか爽やかな自己紹介をすると、教室は一旦静寂に包まれたが、すぐに黄色い奇声が沸いた。

 

「キャァ――――――!二人目!二人目よ!」

 

「しかも爽やか系イケメン!」

 

「でも千冬様と学生の頃から友達ってもしかして!」

 

「きっと愛の力でISを動かしたんだわ!」

 

 周囲の反応は様々であった。だが、竜馬の事を知る箒と一夏は、どことなく懐かしさを覚えていた。

 

「ふっ。初日から生徒の心を鷲掴みにするとは、教師の方が板についているんじゃないのか?」

 

「いや、君程じゃないさ。さて、そろそろSHRも終わりだから、僕と織斑先生は教室の隅に行こうか。それじゃあ山田先生、授業を頼みます」

 

「は、はい!任せてくだしゃい!か、噛んじゃった……

 

 そう言うと、竜馬と千冬は教室の隅に向かった。

 向かう途中、竜馬は一夏と箒と目が合うと、笑顔で返した。

 この時、二人は目の前の教師が、自分達のよく知る立花竜馬である事を悟った。

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 




仮面ライダーメーデン!(イメージCV:立木文彦)

「お前にはこれからISに乗って試験官と模擬戦を行ってもらう。」

「……よし、行くぞ!打鉄改!」

「私が気になるのは“IS操縦の技量”よりも“改造人間”としての彼の力量ですから」

 第8話「怪しいS/羽ばたく打鉄改」

 これで決まりだ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第8話「怪しいS/羽ばたく打鉄改」

お待たせしました。第8話です。今回は少し時系列が前後して、教員採用試験の時の話になります。


 自己紹介を終え、教室の奥で待機していた竜馬は、真耶の授業風景を観察していた。

 

(しかし、まさか真耶ちゃんと同じクラスになるとはね。てっきり違うクラスになると思っていたんだが……)

 

 竜馬は腕を組み、先週の事を思い出していた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 一週間前、竜馬がIS学園の講師になるに際し、彼を講師としての採用するか否かの試験が急遽執り行われる事になった。

 一次試験の筆記と二次試験の面接に関しては、竜馬は苦も無く合格し、最後の三次試験を残すのみであった。

 

「さて?最後の試験は何なのかな?」

 

「最後の試験は模擬戦を通した実技試験だ。お前にはこれからISに乗って試験官と模擬戦を行ってもらう。ここでの勝敗は採用試験には影響しない」

 

「ならなぜ行うんだ?」

 

「お前がISに対してどれだけの適性があるか測るには、実戦に勝るものはないからだ」

 

「成程、僕がどれほどISとの相性が良いかを見極めるって事だね」

 

「そうだ。本来であれば訓練機としてラファール若しくは打鉄に乗るべきなのだが、お前は専用機持ちだから、そちらで適性を見極める事になる」

 

「相手の試験官は?」

 

IS学園(ここ)の教師がお前の相手だ。教師だからと言って油断はするなよ?教師の多くは各国代表候補生にまで上り詰める程の実力者なのだからな」

 

「わかってるよ。でも……」

 

「でも……?」

 

「別に、勝ってしまっても構わないんだろう?」

 

 竜馬は笑顔で応えた。それに千冬も釣られて、笑顔になった。

 

「ふっ、お前らしいな……っと、そろそろ時間だな。頑張ってこい」

 

「ああ、行ってくる」

 

 竜馬はそれだけ言うと、カタパルトに向かった。

 

「……よし、行くぞ!打鉄改!」

 

 竜馬はキーホルダーを掲げると、キーホルダーが輝き、一瞬にしてISを形成、竜馬の身体に装着された。

 これぞ立花竜馬専用IS、「打鉄改」である。

 

「立花竜馬、打鉄改。行きます!」

 

 カタパルトから出撃した竜馬は、眼前にISを纏った女性を見つけた。

 

(形状からしてラファール・リヴァイヴか……)

 

 ラファール・リヴァイヴとは、フランスのデュノア社が開発した第2世代型ISで、汎用性の高さから打鉄以上の人気を持っていた。

 竜馬はラファールの前で静止した。

 

「貴方が今回の試験官ですね?」

 

「は、はい!本日の試験官を担当します山田真耶と言います!」

 

 女性―――山田真耶はそう言うと、深くお辞儀した。

 すると、管制室に到着した千冬が、マイクで竜馬に話しかけてきた。

 

『竜馬、ルールは簡単だ。制限時間内にSE(シールドエネルギー)が0になった方、若しくはタイムアップ時のSE残量が少ない方が負けだ。空手の試合のようなポイント制ではないのを忘れるな』

 

「わかってるって。まったく、心配性だな千冬は」

 

『なっ!?し、心配などしてはいない!!お前のためにルールを確認しただけだ!』

 

 千冬は少し顔を赤くして否定した。

 

「(やれやれ。素直じゃないな)山田先生。今日はよろしくお願いします」

 

「あっ、はい!よろしくお願いします!」

 

 真耶はお辞儀で返した。

 

『よし、では始め!』

 

 千冬の号令とともにゴングがアリーナに鳴り響いた。

 

「フンッ!トォォッ!」

 

「ッ!?ハッ!」

 

 竜馬は拡張領域(バススロット)から後付装備(イコライザ)である〔スタンナックル〕を呼び出して両手に装着すると、一気に距離を詰めて拳打を浴びせようとするが、真耶は急速上昇し、アサルトライフルで牽制した。

 

「むっ、ならば!」

 

 竜馬は真耶の射撃が牽制と読み、そのまま追いかけて上昇した。

 

「(牽制を見抜いた……!?)だったら!」

 

 真耶は拡張領域からキャノン砲を呼び出してラファールの両肩に装備し、砲弾を発射した。

 

「甘い!トォッ!」

 

しかし竜馬は、両腕の固定武装であるトンファーブレードを使って砲弾を両断した。

 

「嘘!?至近距離の砲弾を切断するなんて!?」

 

 真耶は竜馬の人外じみた行動に戦慄した。それも無理はない。如何にISを装着しているとはいえ、竜馬は今日初めてISに乗った初心者だ。とてもはじめての挙動とは思えない。

それは、打鉄改が改造人間である竜馬の身体能力を反映したカスタマイズが施されているからなのだ。

 

 

 

 

 打鉄とは、日本の倉持技研が開発した量産型第2世代ISで、デュノア社のラファールとともにIS学園の訓練機として採用されている。

 打鉄の特徴はなんといっても、堅牢な装甲と近接格闘能力の高さである。

 汎用性と豊富な装備が売りであるラファールに対し、打鉄は安定した性能に加え近接格闘戦を基本とした設計と操縦者の生残性を考慮した為、ラファールに比べて防御力が高められている。これは開発グループの中に剣道有段者を始めとした武道の有段者が関わっているとされるが、詳細は不明である。

 だが、竜馬が駆るこの打鉄改は束によって極限にまでチューンナップされており、打鉄の特徴である装甲を敢えてギリギリまで削り取って機動性を確保したほか、反応速度と出力は最早人では扱えないほどの調整が施され、実質的なトータルスペックはそこら辺の第3世代ISを軽く上回っている。

まさに、改造人間である立花竜馬だからこそ扱える機体なのである。

 

 

 

 

「よし、今度はこちらから行くぞ!トオォォッ!」

 

 竜馬は瞬間加速で一気に真耶との間合いを詰めると、反撃を開始した。

 

「トォッ!トォッ!トォッ!」

 

「くっ……早い……」

 

 真耶はなんとかギリギリのところで一撃一撃を回避するが、竜馬の拳打の早さはあまりに人間のそれとは思えない程の速度であった。

 そして、遂にスタンナックルの一撃が真耶を捉えた。

 

「っ!?機体がショート!?」

 

 スタンナックルの直撃を受けたラファールは、駆動系がショートしてしまった。

 

「今だ!トオォォォッ!」

 

 竜馬は天高く飛翔すると、足裏部のレッグスラッシャーを起動した。

 

「スラアァァッシュ、キイィィック!」

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 スラッシュキックの直撃を受けた真耶は、そのまま地面に激突した。それと同時に、ラファールのSEが0になった。

 

『それまで!勝者、立花竜馬!』

 

「よし!」

 

 竜馬は小さくガッツポーズを取ると、そのまま真耶の許へ向かい、手を差し伸べて、彼女を起こした。

 

「大丈夫かい?」

 

「うぅ……お、お強いですね……」

 

「まぁ、鍛えてましたから」

 

竜馬は笑顔で答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その様子を、千冬は管制室で見ていた。

 

「全くアイツは……いや、アイツだからか……」

 

 千冬は竜馬という男をよく知っていた。彼が自分よりも他人を優先するお人好しで、しかもお節介やきだという事を。

 誰にも優しく、笑顔で接する彼を……

 千冬が懐かしさに浸っていると、背後にいる気配を察していた。

 

「ふっ……で、貴様はいつまでそこにいるつもりだ?」

 

 千冬は振り向きながらそう言うと、管制室に赤い瞳に水色の髪の女生徒が入ってきた。

 

「随分と新しい教師を買っているようですね?で、噂の二人目の男性操縦者の腕前はどうですか?」

 

「ふっ、私の見立て通りだ。と言っても、貴様は別の方が気になるのではないのか?楯無」

 

 女生徒——————更識楯無は扇子を開いて口元を隠した。扇子には、

 

「勿論」

 

 と、草書体で書かれていた。

 

「その通り、私が気になるのは“IS操縦の技量”よりも“改造人間”としての彼の力量ですから」

 

「ほぉ、よくご存知だな。さしずめ“組織”の事もリサーチ済か」

 

「勿論。で、彼の返事はどうですか?」

 

「ほう、本人に聞かないのか?」

 

「白々しいですね織斑先生。彼には内緒話など意味をなさないでしょう?ねぇ、立花竜馬?」

 

 楯無はそう言うと、扉の方を振り向いた。

 すると、先程までアリーナにいた筈の竜馬が現れた。

 

「やれやれ。僕の聴力も調査済とはね。流石は政府のの対暗部用暗部〔更識家〕の現当主だ」

 

 竜馬は、楯無の正体を見抜いていた。

 更識楯無。IS学園現生徒会長兼ロシア代表で、〔学園最強〕の異名を持つ生徒。

 しかしてその正体は日本政府直属の対暗部用暗部〔更識家〕の17代目当主である。

 

「あら、盗み聞きとは感心しませんね。立花竜馬……いや、“仮面ライダー”と言った方が宜しかったですか?」

 

 竜馬は千冬を守るように楯無と向き合い、彼女を警戒した。

 それは、自分が仮面ライダーである事を楯無が見抜いていたのだ。

 

「……それで、何が望みだい?」

 

 楯無は再び扇子を開いて口元を隠した。扇子には先程とは異なり

 

「情報提供」

 

 と、書かれていた。

 

「私が提示する条件は、貴方が腰に巻いているベルトのデータを私に提供する事。その見返りとして、我々更識家から国内で暗躍している“組織”の情報をそちらに最優先で提供する。悪い話ではないでしょう?」

 

 竜馬は警戒心を解かなかった。

 

「悪いけど、君の申し出は受け入れられない」

 

「ほぉ、理由を聞いてもよろしいですか?」

 

「理由は三つ。一つは情報提供役はもう既に間に合っている事。もう一つは君が“組織”と内通していないという証拠がない事。そして最後は……」

 

 竜馬は一旦間をおくと、ハッキリとした声で答えた。

 

「……最後は、本心を見せない人間は信用できない事だ」

 

「…………」

 

 室内に、張り詰めた雰囲気が漂っていた。千冬は2人の駆け引きをただ見つめ、竜馬と楯無は向かい合ったまま、動こうとはしなかった。

 しかし、それは長くは続かなかった。

 

「…………ふふっ」

 

「…………?」

 

 唐突に、楯無が笑みを浮かべたのだ。その意図を竜馬は理解できなかった。

 

「いえ、貴方のそのお言葉が聞きたかったのですよ。どうやら、貴方は敵ではなさそうですね」

 

「一応、信用されたと見ていいのかな?」

 

「勿論です。ベルトのデータは諦めますが、“組織”の情報に関しては逐一貴方にお届け致します。貴方もそれをお望みでしょう?」

 

「まだ僕は君を信用したわけではないけど、ないよりマシだね。良いだろう」

 

「では、私はこれで。バアァ〜イ〜」

 

 楯無は手を軽く振りながら、部屋を後にした。

 

「やれやれ。貴様も厄介な奴に目をつけられたな。しかし良かったのか?更識家と本格的な協力関係を結ばなくて」

 

「まだ僕は更識家を完全に信用しているわけじゃないからね。それはあちらも同様だろうさ」

 

「貴様いつからそんな策士めいた事をするようになった?」

 

「長い間一人で戦って来たからね。いやでもそうなるさ」

 

「そうか……」

 

 束から聞かされていたとは言え、竜馬はこれまでたった一人でオリンポスと戦い続けていた。だがそんな過酷な事にもめげず、人前では絶対に笑顔を絶やさない竜馬に、他人が見れば痛々しく思うだろう。

 そう考えると、千冬の顔は少し沈んでいた。

 それを見た竜馬は、あえて話題を変えた。

 

「さて、試験で一杯身体を動かしたからお腹空いちゃったな。千冬、ご飯にしようか!」

 

 竜馬は笑顔で言った。千冬はその笑顔を見ると、何故か心が安らいだ。

 

(ふっ、そうだな。私はあの時誓ったのだ。たとえ人ではなかろうと、絶対に竜馬を支えると!)

 

「全く、酒の肴も頼むぞ」

 

「了解!」

 

 そう言うと、二人は管制室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在––––––1年1組教室

 

(まぁ、あの後酒を飲んだ千冬に絡まれて色々あったけどね……)

 

 竜馬はそんな事を思っていると、一限目も終盤に差し掛かろうとしていた。

 

(って、もう一限目も終わりに近いな。それにしても……)

 

 竜馬は最前列中央に座る一夏の様子を見た。

 一夏は頭を抱えて授業に苦戦していた。

 

(う〜ん、一夏君のあの様子、恐らくちゃんと予習してこなかったんだろうな。それにしても、一夏君はどうして参考書持ってきてないんだ?)

 

 竜馬は一夏が参考書を持ってきていない事に気付いた。IS学園に入学する際、生徒には入学式一月前に参考書が無償供与される決まりになっている。

 

(ま、それは後で聞くとするか。二時限目は僕の授業だからね)

 

 そう考えると、授業終了のチャイムが鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 




次回予告

 一夏に接触するイギリス代表候補生セシリア・オルコット。果たして彼女の目的は?

 そして、クラス代表を決める投票で教室で波乱が起きる!

次回「珍騒動!?英国淑女は世間知らず?」にご期待下さい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第9話「珍騒動!?英国淑女は世間知らず?」

 お待たせしました。第9話です。

 基本的にマスクドライダー・ストラトスは平均5000文字以内でまとめているのですが、今回は5000字を僅かに突破してしまいました。これも自分の構成力のなさが故です。


一夏Side.

 

(これは……想像以上にやべぇ……)

 

 一限目であるIS基礎理論の授業が終わり今は休み時間に入っていたが、この異様な雰囲気はどうにもしがたかった。

 それもそのはず、クラスメイトが全員女子なのだ。

 知っての通り、IS学園は女性しか扱えないISについて学ぶ実業学校である為、相対的に女子校となる。

 つまり俺は、ISを動かしてしまったがためにこの女子校に放り込まれたのだ。

 

(動物園のパンダってこんな感じなんだろうな)

 

 改めて、動物園のパンダの気持ちが分かる気がする。パンダ達は毎日こんな感じで見られていると思うと、少し同情してしまった。

 

(こんな時に限って竜馬さんはいないし……誰でも良いからこの状況をどうにかしてくれ……)

 

 ふと、今この場にはいない竜馬さんの事を思い出してしまった。

 3年振りに再会したらなんとIS学園(ここ)の教師になっていたのには驚いたけど、この3年間何処にいて、何をしていたんだ?

 

「……少し良いか?」

 

「ん?」

 

 俺が竜馬さんの事を考えていたら、背後から声をかけられた。この状況で俺に声を掛けてくるとは、かなり度胸の座った奴だろう。

 

「……箒か?」

 

「ああ」

 

 振り向くとそこには、去年の全国大会で再会した幼馴染の篠ノ之箒がいた。

 

「廊下でいいか?」

 

「お、おう。いいぜ」

 

 俺は箒と一緒に廊下に出た。その際、モーゼの十戒の如く周囲の女生徒達が道を空けてくれた。

 そんなこんなで廊下に出たものの、周囲4m先では他の教室から来た生徒達が聞き耳を立てていた。これなら教室内でも変わらないと思うのだが。

 

「大会以来だな。一夏」

 

「ああ、久し振りだな。箒」

 

「剣道はまだ続けているのか?」

 

「まぁ、腕が落ちない程度にはやってるよ。そういうお前は?」

 

「私も似たようなものだな」

 

 俺と箒の会話は、剣道の話からだった。さっきも言った通り、俺と箒は去年の全国大会の会場で再会している。もっとも、種目が違っていたため、打ち合うことはなかったが。

 

「それより……まさか竜馬さんがIS学園(ここ)にいるなんてな。久し振りにあの“痴話喧嘩”を見たぞ」

 

 すると、箒は竜馬さんの事を話した。そういえば、箒は3年前に起きた事を知らないのか?

 

「俺だってびっくりだよ。あそこで俺が止めなかったら今頃大惨事だったぜ」

 

「よくあの間に入ってこれたな……」

 

「まぁ、束さんがいない時は俺が引き止め役をやってたから……」

 

「まぁ、その……心中察する」

 

「その言葉だけでも嬉しいよ……」

 

 俺は溜め息をついた。実際、あの痴話喧嘩のせいで俺が何回死にかけた事か……

 

「やれやれ。それは心外だな」

 

 突然、箒や俺とは異なる第三者の声が聞こえた。声がした方を向くと、そこには竜馬さんが立っていた。

 

「りょ、竜馬さん!?いつからそこに!?」

 

「いやなに、次の授業は僕が担当するから5分前に教室につこうと思ってね。箒ちゃん。6年振りだね」

 

「は、はい!お久し振りです竜馬さん!」

 

 箒は竜馬さんに対し最敬礼でお辞儀した。

 

「ははっ。相変わらずお堅いなぁ箒ちゃんは。もう少し肩の力を抜いたらどうだい?」

 

「い、いえ!?そ、それにしても、よく私とわかりましたね」

 

「だって、髪型が6年前と変わってないし」

 

 竜馬さんが頭を指差すと、箒は長いポニーテールをいじりだした。

 

「あ、あと……」

 

「「……?」」

 

「二人共、剣道全国大会、優勝おめでとう」

 

「「な、なんで知ってるんですか!?」」

 

 見事に俺と箒の声がハモった。

 

「いや、インターネットで見たから」

 

「「なんで見てるんですか!?」」

 

 そこは新聞で見たでしょ竜馬さん!?いや間違っては無いけど!?

 と、ここでチャイムが鳴ってしまった。

 

「おっと、時間切れのようだね。続きは僕の授業が終わってからにしようか」

 

 竜馬さんはそういうと、教室に入っていった。

 

「俺達も戻るか」

 

「あ、ああ。そうだな」

 

 俺と箒も、席に戻る事にした。

 

一夏Side out.

 

 

 

 

 

 

 

 

 二時間目は、IS運用に関する法定規則で、これを竜馬が担当した。

 

「——————であるからして、ISの基本的な運用に際しては、国家の認証が必要であり、この枠内を逸した運用は、刑法で——————」

 

 竜馬はスラスラと教科書に記載された事を朗読しながら、重要な点を黒板に記載していた。

 しかし、一夏は全くついていけなかった。

 

(やべぇ、超難しい……)

 

 正直なところ、一夏はバリバリの体育会系で、頭を使うような問題はサッパリなのだ。

 本来の志望校であった藍越学園に合格するため、一夏は剣道の修練をしながら猛勉強をした程であった。

 一夏は隣の女子をチラ見した。隣の女子は竜馬の話に頷きながらスラスラとノートに書き込んでいた。

 

(ぐ……このIS学園に入学する子は事前学習してるってのか……俺も一応やってはいたけど、ここまでとは流石に思わなかったぞ)

 

「織斑君。何か分からないことがあるのかな?」

 

 その時、一夏が隣の女子をチラ見しているのに気付いた竜馬が話しかけてきた。

 

「あ、えっと……」

 

「分からない事があるなら遠慮なくどんどん聞いてくれ。教師を利用してドンドン教養を深めるのは、学生の特権だからね」

 

 笑顔で語る竜馬に、一夏はああ、教師でも竜馬さんは竜馬さんなんだなと感じ、決心した。

 

「先生!」

 

「はい織斑君!」

 

「ほとんどすべてわかりません!」

 

 一夏は素直に自分の本心を明かした。

 

「ああ、まぁ、そうだろうなとは思ってたよ」

 

「……へ?」

 

「ああ、みなまで言わなくて結構。恐らく君の家の事だ。入学前に届いた必読の参考書を頭だけ読んだけどいつの間にか“どこぞの誰かさん”が間違えて捨ててしまったんだろうね」

 

(流石です竜馬さん。まるでエルキュール・ポワロみたいな推理力です)

 

 竜馬の推理は、あながち間違いではない。実は一夏は入学前に学園が送った必読の参考書を頭のみ読んでいたのだが、その翌日に古い電話帳と間違えて捨ててしまったのだ。

 

「はぁ~…仕方ない。新しいのを発行してあげるから、一週間以内に要点のみ抑えてくれ」

 

「いや、一週間であの分厚さは……」

 

「何も全部覚えろとは言っていない。要点だけ抑えればいい。君ならできるだろう?」

 

 笑顔でサムズアップ。それを見た一夏は納得せざるを得なかった。そして、そこへ千冬が現れた。

 

「ISはその機動性、攻撃力、制圧力は既存の兵器を遥かに凌ぐ。しかし、そういった“兵器”を深く知らずに扱えば必ず事故が起きる。そうしないための基礎知識と訓練だ。理解できなくても覚えろ。そして守れ。それが規則だ」

 

 全く持って正論である。しかし、竜馬は千冬が何気なく発言した“単語”が、残念に思えた。

 

「……だが、本来ISは兵器としてではなく、宇宙開発のために使われるべきではないのだろうか?」

 

「……なに?」

 

「織斑先生。僕はこう思うんだ。ISは兵器としてではなく、平和の為に使われるべき技術なんだと。それを兵器としか使えない人類には、まだISは早すぎたのではないかとね」

 

「……確かに、立花先生の言にも一理ある。だが、一度定まった価値観を変えられないのもまた人間だ。」

 

「……それもそうだな」

 

「それに望む望まざるにも関わらず、人は集団の中で生きなくてはならない。それができなければ、人間をやめなければならない」

 

「…………」

 

 竜馬は黙っていた。恐らく一夏の為に、あえてあの発言をしたのだろう。だがその発言は、()()()()()()()竜馬にとって、重すぎる一言であった。

 

「いや、織斑先生の言う通りだ。確かに人は何かの集団の中でしか生きてはいけない。もしそれが出来ない時、人は“化け物”になってしまうからね……」

 

 竜馬は笑顔で答えたが、千冬にはその笑顔が痛々しく思えた。

 

(あんな事言われたにも関わらず、お前は笑顔を絶やさないのか……)

 

「さて、なんか重苦しい空気になっちゃったけど、授業を再開しようか!」

 

 竜馬が手を叩くと、千冬は教室の奥に行き、一夏は自分の席に座った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「先程はすまなかった」

 

「ん?」

 

 二限目終了後、千冬は職員室で三限目の授業の準備をしながら、隣の席にいる竜馬に頭を下げた。先程の件で、千冬は罪悪感を覚えていたのだ。

 

「お前の身体の事を考えれば、あの時の発言はするべきではなかった」

 

「いや、僕の方こそあんな事を言ってしまったからね。そう言っちゃうのも当然だよ」

 

「竜馬……」

 

 千冬は改めて、自身の発言の重さを実感した。

 

「それより、一夏君の参考書の件だけど、まぁ、君の事だからね」

 

 すると、竜馬は話を参考書に切り替えてきた。

 

「うっ!?そ、それはだな……」

 

「ま、深くは聞かないけど、全く君は変わらないな。未だに黴と埃を友にして生活しているのかい?」

 

「う、うるさい!誰が生活無能力者だ!///こ、これでも少しは片づけられるよう進歩はしているんだぞ…///

 

「??」

 

「と、兎に角!早く準備しないと授業に間に合わないぞ!教師が遅刻しては生徒に示しがつかんぞ!」

 

「はいはい。わかったよ」

 

 そう言うと、二人は教室へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三限目は、実戦で使用する各種装備の特性についての授業で、千冬が担当する事になった。

 僕も真耶も、メモ帳を手に取って書き取る準備を整えていた。

 

「ああ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出場する代表者を決めないとな」

 

 ふと、思い出したかのように千冬が言った。例によって事前知識が皆無な一夏は首を傾げていた。

 

「クラス代表とはそのままの意味で、対抗戦の他に、生徒会会議や委員会への出席……まあ、既存の学校で言うクラス委員みたいなものだね。クラス代表になった者は一年間余程の事がない限りは変更しないと思ってほしい。ちなみにクラス対抗戦は入学時点での各クラスの実力推移を見極めるものだ。現時点はそれほどではないけど、競争によって向上心が増すからね」

 

 僕は生徒達にわかりやすく補足説明した。一夏君は何となく意味を理解したようで、面倒くさそうな顔をしていた。

 

「自薦他薦は問わないが、選ばれたものは拒否権は無しだ」

 

 これには流石の僕も顔をひきつらせたが、ここの担任は千冬なので、あえて何も言わなかった。

 

「はい!織斑君が良いと思います!」

 

「私もそれが良いと思います!」

 

 案の定、票は一夏君に集中した。まぁ、そうなるだろうね。当の本人は嫌がっているけど。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれよ!」

 

 一夏君は思わず立ち上がり、千冬に抗議しようとするが……

 

「拒否権は無しと言った筈だ。さて、他にはいないのか?いないのならこのまm……」

 

「待ってください!納得がいきませんわ!」

 

 千冬の言葉を遮るかのように、窓際真ん中の席にいる金髪縦ロールにカチューシャをつけた女生徒が大声を上げて立ち上がった。確か彼女は、今期の入試主席だったイギリス代表候補生のセシリア・オルコットだったかな?

 

「このような選出など認められません!クラス代表にはこのセシリア・オルコットが立候補いたしますわ!」

 

 なんと、この状況下でクラス代表に立候補してきたのだ。僕は一夏の方に目を向けると、彼は何故か安堵する表情をしていた。そんなにクラス代表が嫌なのかな?僕は高校時代クラスメイトが誰もやらないからクラス委員長や生徒会長やってたけど、面倒くさいとは思わなかったな。

 

「大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ!実力からいけば私がクラス代表になるのは必然。それを物珍しいからと言って極東の、しかも雄猿にされては困ります!私はこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをしに来た覚えは毛頭ございませんわ!そもそも、文化も科学技術も後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、私には耐えがたい苦痛で……」

 

 この子は自分が何を言っているのかわかっているのか!?仮にも“国”を代表する国家代表候補生が、他国の暴言を大声で高らかに言うとは。もしこれが国内世論に知られれば日本に反英世論が吹き荒れかねない事を知らないのか!?

 僕は彼女を止めようと動いたが、先に動いたのは一夏君だった。

 

「イギリスだって大したお国自慢ないだろ。世界一不味い料理何年連続覇者だよ?」

 

 しまった——————一夏君はこういう暴言にはつい反応してしまう性格だった。それを聞いたセシリアは怒りを露わにして一夏君の方へ向かっていった。

 

「あ、あなたねぇ!私の祖国を侮辱しますの!?」

 

 こうなってしまっては覆水盆に返らず。一夏君とセシリアは口論に発展してしまった。

 僕は千冬の方をチラ見すると、そこには修羅が覇気を溜め込んでいた。

 このままでは不味い!僕はそう思うと、直様行動に走った。

 

「はいそこまで!」

 

 僕は手を大きく叩いて二人の口論を遮った。そして、生徒たちの視線が僕の方に集中した。それは、真耶ちゃんと千冬、そして先程まで口論を繰り広げていた一夏君とセシリアも例外ではなかった。

 

「りょ、竜馬さん……?」

 

「織斑君、立花先生ね。それよりオルコットさんはクラス代表に立候補するという事でいいんだね?」

 

「え、あ、はい。そうですわ」

 

「よし、そういう事ならこの続きは来週の放課後にアリーナでやろうか!」

 

「へ?」

 

「は?」

 

 僕のこの一言で、一週間後に1年1組クラス代表決定戦が行われる事が半ば強引に決定したのである……

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 




次回予告

「やぁ!暑い日は熱中症に気を付けて、こまめな水分と塩分の補給を心掛けるんだぞ。次回はこれだ!」

 楯無からの情報を受け、オリンポスの要塞島に突入する仮面ライダー!

次回「初公開!ライダーメーデンの超パワー」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第10話「初公開!ライダーメーデンの超パワー」

 お待たせ致しました。第10話です。
 さて、本来なら寮室での一夏と箒のイチャイチャを書きたかったのですが、気付いたらこうなってました。やっぱオリジナル回は筆が進むなぁ……

H30.08.05追記:推奨BGMを追加しました。羽田サウンドは重厚かつジャズチックでいいよね。


竜馬side

 

 僕が半ば強引にクラス代表決定戦の日取りを決めて六時間後……

その後は何事も無く、何とかIS学園での教師生活1日目を終えた僕は、職員室で今日の授業に関する報告書を纏めていた。

 本来であれば向かいと隣に居るはずの千冬と真耶ちゃんは、一夏君の寮室の部屋割などの件で今は席を離れていた。

 

(はぁ……いくら一夏君を守るためとはいえ、学校の先生がこんなにも大変な職場とは思いもよらなかったよ。初日からいきなりこれだから、先が思いやられるなぁ……って、いかんいかん!早く報告書を書き終えて夕食の準備を……)

 

 僕はネガティブになり掛けていた気持ちを切り替えて、報告書の纏め作業を手っ取り早く済ませて印刷すると、付箋を貼って隣にある千冬の机に報告書を置いた。

 

(良し、後は千冬が戻ってくるのを待つだけだな……)

 

 そう思い、僕は荷物を纏めようとしたその時、ジャケットの内ポケットに入れていたスマホが振動した。

 僕はポケットからスマホを取り出すと、新着メールが1通届いおり、フォルダを開いた。

 

(差出人は……更識楯無だと?……)

 

 差出人は、あの更識楯無だった。何故彼女が僕のメアドを知っているんだ?

 取り敢えず、メールを開き内容を確認した。

 

(…………なんだと!?)

 

 メールには驚くべき内容が書かれていた。何故なら、そのメールには、予てから束に頼んでいたオリンポスの秘密基地の情報が書かれていたのだ。

 

(場所は……ここから南西4海里先にある無人島か!流石は更識家現当主といったところか……だが……)

 

 正直言って、何故彼女がこのような重要な情報を僕に教えるのかについて、疑問が残った。それは、3年間オリンポスと戦い続けた僕の経験からくるものであった。

 確かにこの情報は実に有益だ。しかし、奴らの罠という事もある。僕は慎重になっていたが、僕はかつて束が言った言葉を思い出した。

 それは中学の頃、未来科学同好会で宇宙人との対話を議題にした討論を行った際に束が言った言葉であった。

 

『宇宙人との対話をする前に、まず人間同士が相手を信じることが重要だよ。それができないから、人間はいつまでも争いばかりを続けてしまうんだ』

 

 束の言葉を思い出した僕は、楯無を疑っていた自分を恥じた。

 

(くっ!僕はなんて馬鹿なんだ!こんな事で人を疑うなんて……今回ばかりは束に借りができちゃったな)

 

 僕は心の整理を済ませると、直様千冬に電話を入れた。

 

「もしもし、千冬か?」

 

『ああ、竜馬か。丁度良かった。報告書を打ち終わったらすぐ教室に来てくれn「残念だけどそれは真耶ちゃんと一緒にやってくれないか。急用ができてね」話を遮るな!それに急用とはどういう事だ!?』

 

「“奴ら”のアジトがわかったからね。すまないが……」

 

『…………そうか、それならば仕方ないな。夕食までには帰ってこい。お前の手料理が食べれないのは嫌だからな』

 

「くれぐれも酒は呑まないでくれよ。明日も授業があるんだから」

 

『よ、余計なお世話だ!用が終わったのならさっさと切れ!』

 

「はいはい」

 

『“はい”は一回だけでいい!まったく……』

 

「わかったよ。じゃぁ……行ってくる」

 

『…………あぁ、頑張ってこい』

 

 僕は電話を切ってスマホをしまうと、直様走り出した。

 

Side out.

 

 

 

 

 

 

 

 

 屋上に辿り着いた竜馬は、ジャケットのボタンを外してケイモーンのバックル部分を露出させると、腕を大きく動かしスイッチを押すように叫んだ

 

「変っ……身!」

 

 すると、バックルのシャッターが展開し風車が露わになると、風車が高速で回転した。

 改造人間立花竜馬は、変身ベルト「ケイモーン」の風車ダイナモが風圧を受けることで、仮面ライダーメーデンに変身するのだ!

 

「ジェットコンバーター、起動!」

 

 変身したメーデンは、ケイモーンの両脇に備わったジェットコンバーターを起動して、空高く飛翔した!

 

「現在高度1万…1万5千…2万…2万5千…3万…3万5千!」

 

 メーデンは高度3万5千ftまで上昇すると、南西方向へ進路をとった!

 メーデンは飛翔して数分足らずで、楯無が示した無人島の上空に到着した!

 

「楯無が指定した場所はここだな。よし、ハイパーセンサーとニードルイヤーで奴らの基地を特定しよう!」

 

 そう言うと、メーデンのハイパーセンサーが微動に可動し、ツインアイが点滅を開始した。

 仮面ライダーメーデンのニードルイヤーは、半径10km範囲先の心臓の鼓動音を的確に聞きとる事が可能で、超高感度アンテナであるハイパーセンサーと連動させることで、特殊な極超短波を探知する事が出来るのだ。

 仮面ライダーメーデンは、過去の戦いでオリンポスが使用している各種周波数を特定しており、それと符合させて、オリンポスの基地を特定した。

 

「…………これだ!極超短波、384MHz(メガヘルツ)!」

 

 メーデンは周波数を特定すると、オリンポスの基地にめがけて急降下した!

 その頃オリンポスの基地では、スパルタ兵が基地周辺の警備にあたっていた。

 スパルタ兵の一人が双眼鏡で周囲に監視の目を光らせていると、上空から聞こえる轟音に気付いた。

 

「ん?なんだこの音は?」

 

 スパルタ兵は上空に目をやると、空から急速に接近してくる物体を確認し、双眼鏡でそれを拡大した。

 それは、猛スピードで接近してくるメーデンであった!

 

「か、仮面ライダーだ!仮面ライダーが来たぞ!」

 

「なんだと!なぜここの基地がばれたのだ!ええい、警報を発令しろ!」

 

 スパルタ兵のリーダー格である赤いラインの入ったスパルタ兵が部下に指令を出すと、基地に警報が発せられた。

 

「残念だが、お前達に用はない!」

 

 メーデンは上空1000ftまで降下すると、ジェットコンバーターの電源を解除し、滑空状態で敵に突っ込んだ!

 

「とおぉぉぉぉぉぉっ!」

 

「ゲェッ!?」

 

「たあぁぁぁぁぁぁっ!」

 

「ゲェッ!?」

 

「はあぁぁぁぁぁぁっ!」

 

「ゲェーッ!?」

 

 滑空状態のメーデンはリーダー格のスパルタ兵に蹴りを喰らわせると、その反動を使って周りのスパルタ兵に次々と蹴りを喰らわせていった。

 これこそ仮面ライダーメーデンの必殺技、「ライダー反動三段蹴り」である!

 

「いくぞ!オリンポス!」

 

 メーデンは着地すると、ファイティングポーズを取って周囲を囲むスパルタ兵に立ち向かった!

 

「かかれぇ!」

 

「ゲェーッ!ゲェーッ!」

 

「フン!トォッ!トォッ!」

 

 メーデンは次々と襲い掛かるスパルタ兵を一人一人叩き伏せていき、徐々に移動していった。

 

「これ以上ライダーを侵入させるな!なんとしても死守せよ!」

 

「そうはさせん!Mチャリオット!」

 

 メーデンの呼び声と同時に、マスクに内蔵されたオートコントロール装置で誘導されたMチャリオットが、スパルタ兵を薙ぎ倒しながらメーデンの前に停車した。

 メーデンはMチャリオットに誇ると、アクセルを吹かして、基地の外壁目掛けて突進した!

 

「チャリオット、アッタァック!」

 

 これぞ仮面ライダーメーデンとMチャリオットの合体攻撃である「チャリオットアタック」である!

 外壁を突き破って基地内部に突入したメーデンは、Mチャリオットを停止させ、向かってくるスパルタ兵に応戦した。

 

「トォッ!トォッ!」

 

「ゲェーッ!ゲェーッ!」

 

 スパルタ兵を蹴散らしながら、メーデンは基地の中枢部まで駆けようとした、その時だった。

 

「キキキキキキキキキキ!」

 

「っ!?」

 

 突如、歯軋りのような奇怪な鳴き声が鳴り響いた。その声にメーデンは一瞬立ち止まると、目の前にカマキリの怪人が現れた。

 

「貴様がこの基地の司令官か!」

 

「オリンポスの幹部キメラボーグ、マンティスキメラだ!仮面ライダー!よくもオリンポスの要塞島を滅茶苦茶にしてくれたな!」

 

「要塞島だと?この基地にはなにが隠されているんだ!」

 

「それを貴様に教える必要はない!ここで死ね!キキ―ッ!」

 

 マンティスキメラは両腕の鎌でメーデンに襲い掛かった!

 

「おっと!悪いがそう易々とやられるわけにはいかないんでね!」

 

 メーデンはマンティスキメラの攻撃を軽やかに躱していった。

 

「ふん!いつまで逃げきれるかな?」

 

 マンティスキメラは回避に専念しているメーデンを嘲笑した。たしかに、側から見ればマンティスキメラがメーデンを圧倒しているように見えた。

 しかし、メーデンは待っていたのだ。攻撃の瞬間を。

 そして、その瞬間はすぐ訪れた。

 

「キキキキ!お遊びはここまでだ!死ねぇ!」

 

 マンティスキメラは勝利を確信し、両腕の鎌を振り上げたその一瞬の隙を、メーデンは見逃さなかった!

 

「っ!今だ!ライダアァァ、チオォョップ!」

 

 メーデンはエネルギーを集束させて緑色に発光した左手を振りかざし、マンティスキメラの両腕を切り裂いた!

 仮面ライダーメーデンのライダーチョップは、チタン合金で構成された柱すら両断する斬れ味を持つのだ!

 

「ギャアァァァァァァ!お、俺の腕があぁぁぁぁぁぁ!」

 

「俺はこれまで何体ものキメラボーグと戦っている!この程度の攻撃で俺が倒せるものか!」

 

「お、おのれぇぇぇ!」

 

 マンティスキメラは痛みに耐えながらメーデンを睨みつける。その時、切断された両腕が徐々に再生を始めた

 

「再生などさせん!行くぞ!ライダーパワー!」

 

 メーデンは三度ファイテングポーズを取ると、ケイモーンが高速で回転を始めて大気を吸収し体内でエネルギーに転換、再び左腕に集束された!

 再び緑色に発光した左腕で、メーデンはマンティスキメラに必殺の一撃を叩き込んだ!

 

「ライダアァァァ、パアァァァンチ!」

 

「キキィーーーッ!!?!?」

 

 ライダーパンチの一撃をモロに喰らったマンティスキメラは身体をくの字に曲げて吹っ飛ぶと、そのまま爆散した。

 メーデンはマンティスキメラの爆死を見届けると、基地の中枢へと再び走り出した……

 

 

 

 

 

 

 

 

 マンティスキメラが倒された事により、基地にいたスパルタ兵が次々と溶解していく中、メーデンは要塞島の指令室に来ていた。

 

「ここが基地の指令室だな。メインコンピューターは……あれだな。よし……」

 

 メーデンは専用マスクに内蔵されているスーパーコンピュータを使って、基地のメインコンピューターをハッキングしようとした、その時だった。

 

「っ!?これは……」

 

 突如、メインコンピューターの回線から火花が飛び散り、ショートしてしまったのだ。すると、オリンポスのシンボルマークである獅子のレリーフが点滅した。

 

≪推奨BGM:スペースコブラより「死の行進(M-12)」≫

 

『残念だが仮面ライダー。これ以上貴様に我等の計画を知られる訳にはいかんのでね。この基地のコンピューターは破壊させてもらったよ』

 

「っ!?その声は!?」

 

 レリーフから発せられる声に、メーデンは聞き覚えがあった。その声は、三年前に自分を改造したオリンポスの首領の声であった。

 

『冥土の土産に教えておこう。この要塞島は日本にあるオリンポスの前哨基地の一つに過ぎん。この国にはまだこのような前哨基地が無数に潜んでいるのだ。だが、それを貴様が潰し切れる事はないだろうがね』

 

「なんだと!」

 

『何故なら……貴様はこの要塞島と共に死ぬのだ!死ねぇ、裏切り者の虫けら(ワーム)!』

 

「待てオリンポス!!うおっ!?」

 

 オリンポス首領が言い終わると、基地の至る所で爆発が発生し、程なくして要塞島は爆発した。

 爆煙が島を包む中、煙の中からMチャリオットに誇ったメーデンが姿を現した。

 

「結局奴らの本部に繋がる情報は得られなかったか……」

 

 メーデンはそう呟くと、Mチャリオットの水上走行モードを起動させて、IS学園への帰路についた…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オリンポス首領の恐るべき罠を潜り抜けた我らの仮面ライダーメーデン。オリンポス本部の居場所を突き止めるのは、果たしていつの日か?

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 




次回予告

 いよいよ始まったクラス代表決定戦。しかし、肝心の一夏の機体が届かない。
 そこで千冬は竜馬に自分と戦えと詰め寄った!

次回マスクドライダー・ストラトス「クラス代表決定戦前哨戦!」にご期待下さい!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第11話「クラス代表決定戦前哨戦!」

 お待たせいたしました。第11話です。今回は千冬VS竜馬です。当初は一夏の特訓回だったのですが、諸々の事情でキングクリムゾンしました。
 今回もまたしても本文字数が5000を超えてしまいました。書いていたらドンドン文字数が膨れ上がってしまいまして……
 それでは、本編です。


 仮面ライダーメーデンが、オリンポスの要塞島を壊滅させて一週間後――――――

 その日の放課後、IS学園の第3アリーナで1年1組のクラス代表決定戦が行われていた。

 対戦カードは、イギリス代表候補生のセシリア・オルコットと、世界初の男性IS操縦者である織斑一夏であった。

 現在注目の男性IS操縦者が代表候補生と対戦するという事で、他のクラスは勿論のこと、上級生もこの第3アリーナに押し寄せて、アリーナの会場は満席状態になっていた。

 そしてそんな第3アリーナでは、ある問題が発生していた。

 そう、一夏のISがまだ来ていないのだ。

 この6日前、一夏は千冬を通じて専用機が受理される事を通達されており、その関係で今回の決定戦の日程が調整されていた。

 さらに、竜馬はその機体を束が開発している事を束本人から前もって聞かされていた。

 束なら期日までに機体を完成させてくれるだろうと思った竜馬は、それに安心していた。

 それにも関わらず、一夏の専用機がまだ来ていないのだ。

 この事態に、控室にいた竜馬はある一つの考えに行き着いていた。

 

(まさか束の奴、相当機体に熱を入れたのか?……それならこんなに遅くなるのもわかるが……)

 

 竜馬は、篠ノ之束という女性をよく知っている。彼女はあのような見た目と性格に反してかなりの職人気質であり、一切の妥協を許さないのだ。恐らく、当日ギリギリまで機体の調整にかかりっきりになっていたのだろう。それならば、この遅れに説明がつく。

 竜馬は周囲に目をやると、顔には出していないが確実に苛立っている世界最強と、そんな事はいざ知らずで幼馴染の妹と談笑している弟がいた。

 ちなみにこの一週間、一夏は箒と剣道の打ち合いや竜馬によるマンツーマンの補習授業を受けていた。

 打ち合いは兎も角として、補習授業に関しては、一夏が竜馬に直々にお願いしたもので、曰く

 

「竜馬さんならなんとかしてくれる!」

 

 との事らしい。

 

(僕は便利屋じゃあないんだけどなぁ……まぁ、いい経験にはなったけど)

 

 兎にも角にも、この一週間、竜馬は教師として教鞭をとる傍ら、一夏の補習に付き合っていたのだ。

 しかし、竜馬には気がかりな点があった。

 

(しかし、この一週間オリンポスの前哨基地に関する情報を僕なりに集めていたが、結局奴らの尻尾を掴めなかったな……)

 

 そう。この一週間、竜馬は合間を縫ってオリンポスの情報を可能な範囲で収集していたのだが、結局めぼしい情報は得られずじまいだったのだ。

 これまで世界各地でオリンポスと戦って来た竜馬にとって、この静けさは却って不気味に思えて仕方なかったのだ。

 

(奴らの基地に関する情報も、あれ以来一向に掴めずじまいだ。ひょっとしたら、日本(この国)のオリンポスは一筋縄ではいかないかもしれないな…………)

 

 竜馬が深刻な面持ちでオリンポスの事を考えていると

 

「うぉっと!?」

 

 突如、背後から出席簿が飛んで来た。竜馬は驚異的な反射神経でそれを避けた。

 出席簿が飛んで来た方向を見ると、其処には苛つきを顔に出してきた千冬(阿修羅)が舌打ちをしていた。

 

「ちっ、外したか……」

 

「ど、どうしましたか織斑先生?」

 

 竜馬は恐る恐る千冬に尋ねると、千冬は気持ちを切り替えて、竜馬と向かい合った。

 

「どうしましたか?ではない。貴様、散々私が声を掛けていたのに気付いていなかったのか?」

 

「すみません。少し考え事をしていまして」

 

「まったくお前というやつは……まぁいい。実は、織斑の専用機の到着が少し遅れると先方から連絡が入った」

 

「どれくらいかかるのですか?」

 

「少なくとも、あと20分はかかる」

 

「大幅な遅刻だね」

 

「そこでだ。この際前哨戦(余興)として私とお前で模擬戦を行おうと思うんだが……」

 

 千冬のその言葉に、竜馬は疑問に思った。既に竜馬は、山田先生との模擬戦でそれなりの実力を発揮している。にも関わらず、千冬は竜馬に模擬戦を所望してきたのだ。竜馬はいつもの口調で千冬に尋ねた。

 

「えっと……それはどうしてかな?」

 

「一つはIS学園教師の実力というものを生徒達にこの際ハッキリさせる事。そして、私が直々にお前の実力を見てやろうと思ってな」

 

「僕の実力を?」

 

「そうだ。一応、世間的にはお前も世界で二人目の男性IS操縦者だ。山田先生は兎も角、学園内ではお前の実力を疑問視する教師や生徒の声が少なくない。そこで、私と模擬戦を行う事でお前の実力を改めて再確認させておこうと思ってな」

 

「なる程ね。僕は別の理由があると思ったけど」

 

 竜馬の余計な一言に、千冬は顔を紅潮してしまった。少し照れを隠しながら理由を付け加えた。

 

「け、決してお前と久し振りに組手をしたいとか、そういうのではないからな!あくまで、織斑の専用機が来るまでの間を埋めるためだからな!」

 

 千冬のその仕草に、逆に竜馬は可愛く見えてしまい、微笑みを浮かべた。

 

(やれやれ。素直じゃないな)

 

「と、兎に角!私は向かいで機体を準備するから、お前もさっさと準備しろ!」

 

「ああ、わかったよ。そんなに照れなくても良いじゃないか」

 

「て、照れてなどない!先に行って待ってるぞ!」

 

「ああ、行ってらっしゃい」

 

 千冬は顔を少し赤くしながら向かいの控室へ向かうのを見送ると、竜馬も準備を始めようとした、その時

 

「あの、竜馬さん」

 

「ん?」

 

 不意に、背後から声をかけられた。竜馬は後ろを向くと、それまで二人で話し合っていた一夏と箒がいた。どうやら先程の会話を聞いていたらしい。

 

「あの、大丈夫なんですか?相手はあの千冬さんですよ」

 

「おいおい箒ちゃん。僕の実力は君達もよくご存知だろう?そう簡単にやられはしないよ」

 

「それはあくまで“痴話喧嘩”での話じゃないですか!流石に竜馬さんでもISを纏った千冬姉じゃあ……」

 

「一夏君。僕は間接的にとはいえ一応ISの開発に携わった人間の一人だ。そう簡単にやられはしないよ」

 

「しかし……」

 

「ま、死なない程度には頑張るよ」

 

 竜馬はそう言うと、準備に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピットに到着した竜馬は特注のISスーツを身に纏い、待機状態になっていた打鉄改を取り出した。

 

「さて……行きますか!」

 

 竜馬は打鉄改を装着し出撃すると、既に打鉄をその身に纏った千冬が空中で仁王立ちをしていた。さらにその姿からは強者の風格が満ち溢れており、まさに世界最強(ブリュンヒルデ)の名に相応しいものであった。

 

「来たか。まさかこういう形でお前と打ち合えるとはな」

 

「僕も驚きだね。しかし、やっぱり良いものだね。空は」

 

「ふっ。お前は変わらんな」

 

「そうだね。だが、今は目の前の事に集中しないとね!」

 

 竜馬は拡張領域(バススロット)からスタンナックルを呼び出して、両腕に装備した。それに応えるかのように、千冬も拡張領域からブレードを取り出した。

 二人が出す殺気に、アリーナに詰め寄った生徒達も静かになり、周囲が静寂に包まれた。

 その様子を控室で見ていた一夏と箒も、真剣な表情になった。

 そして、試合開始のブザーが鳴った。

 

「うぉぉぉぉぉぉっ!」

 

「ハァァァァァァッ!」

 

 ブザーと同時に、両者は瞬間加速(イグニッションブースト)で一気に距離を詰めてきた。最初に攻勢に出たのは、千冬の方だった。

 

「フンッ!セイッ!ハァッ!」

 

「トォッ!トォッ!トォッ!」

 

 千冬の鋭い剣戟を、竜馬は時には受け流し、時には両腕のトンファーブレードで受け止め、時には回避した。

 

「まったく、本当に君は引退したのかい!これなら現役復帰した方が生徒の為だと思うね!」

 

「こんな時にも皮肉とは随分余裕があるな!」

 

「まさか!こういうのを言わないとやってけない程だよ!」

 

「ふっ、ならもっと飛ばさせてもらうぞ!」

 

 千冬はさらにその剣戟を速めた。一発一発の重く、そして鋭い一撃を、竜馬は丁寧に対応していった。

 その様子を、一夏と箒は控室のモニターで観戦していた。

 

「すげぇ……千冬姉の剣戟に正確で対応している……」

 

「流石は竜馬さんと言うべきか……」

 

 二人の戦いはモンド・グロッソのような「スポーツ」では表せない。言うなれば、「決闘」と言うに相応しい戦いであった。

 その戦いを見て、一夏と箒はある事に気付いた。

 

「一夏、これは……」

 

「箒もか。実は俺もそう思っていたところなんだ」

 

「ああ。今の状況では確かに千冬さんが優勢だが……」

 

「決定打に欠けている。それに対して竜馬さんは、千冬姉の攻撃に対応しながら、常に逆転の機会を伺っている」

 

「いつもの“痴話喧嘩”では見られなかった戦法だ。竜馬さん。いつの間にあのような戦術を……」

 

 箒と一夏が知らないのも無理はなかった。この3年間、竜馬が《仮面ライダー》として戦ってきた事で、かなりの戦闘経験を培ってきた。その過程で、竜馬の戦闘スタイルは徐々に変化していったのである。

 その頃、竜馬は千冬の剣戟に対応しながら、次の手を模索していた。

 

(千冬の剣戟は3年前に比べて更に洗練されている。それに一発一発の間に隙が全然見当たらない……だが、この攻防が徐々に千冬の体力を消耗させている……このまま行けばいずれ息切れを起こす。そこが勝負の時だ!)

 

 しかし、それは千冬も同様であった。

 

(改造人間である竜馬との戦いは長期戦になれば必ず私は負ける。だからこそ短期決戦で奴を倒す以外に方法はない。しかし奴のガードは頑丈だ。だが、どんな頑丈な守りにも必ず綻びがある筈だ……そこを突ければ勝てる!)

 

 お互いに一進一退の攻防に、会場は唾を飲んだ。そして、それは別室の控室にいたセシリア・オルコットも同様であった。

 

(なんという凄まじい戦い……男は貧弱と思っていましたが、これ程の強者(つわもの)がいましたとは……次の戦いで織斑さんに謝罪せねばなりませんね)

 

 暫くして、千冬の顔から疲労の顔が出始めてきた。それを見た竜馬は、旗色がこちらに傾いている事を薄々感じ取った。

 

「どうしたんだい千冬、息が上がってきてるぞ。昔に比べて体力が続かないのか?」

 

「はっ!この程度で根が上がる程私も軟弱ではない。お前こそもう限界じゃないのか?」

 

SE(シールドエネルギー)残量はまだまだ余裕があるけど?」

 

「そっちの事ではない!そろそろケリをつけさせてもらうぞ!竜馬ぁ!」

 

 千冬はそう言うと、渾身の袈裟懸けを振り下ろそうとしたその一瞬の隙を、竜馬は見逃さなかった。

 

「!!今だ!トォォォッ!」

 

≪推奨BGM:交響詩ザ☆ウルトラマン第四楽章 栄光への戦い~勝利の闘い~(ザ☆ウルトラマンより)≫

 

 竜馬は千冬の右腕に強烈な手刀を叩き込んだ。

 

「グッ!?しまった……私としたことが……」

 

 手刀の衝撃に、思わず千冬は手にしていたブレードを落としてしまう。

 竜馬は間髪入れずに千冬の身体を両腕で掴んだ。

 

「いくぞ!必殺、竜巻シュート!」

 

 竜馬は両腕で掴んだ千冬の身体をまるで独楽のように振り回すと、その遠心力で投げ飛ばした。

 

「ぐぅぅぅっ!姿勢制御が追いつかない……!?」

 

 投げ飛ばされた千冬は独楽のように投げ飛ばされたため、姿勢制御もままならなかった。

 

「トォォォォォォッ!」

 

 投げ飛ばされた千冬目掛けて、竜馬は空高く飛翔し、足裏に装備されたレッグスラッシャーを起動した!

 

「スラァァァッシュ、キィィィック!」

 

「グワァァァァァァッ!」

 

 竜馬は必殺のスラッシュキックを手負いの千冬に叩き込んだ。

 スラッシュキックの直撃を腹部に受けた千冬は、その衝撃をモロに受け地面に激突した。

 そしてその衝撃で、千冬の機体のSEが0になり、試合終了のブザーが鳴った。

 

『それまで!勝者、立花竜馬!』

 

 アナウンスが流れると、アリーナは一旦静寂に包まれたが、程なくして大歓声が地響きの如く響き渡った。

 

「千冬、大丈夫かい?」

 

 竜馬は地面に激突した千冬の方に駆け寄ると、そっと手を差し伸べた。

 

「ふふ……ISなら遅れはとらんと思っていたが、私も歳かな?」

 

「おいおい。まだ20代半ばでそれを言うのかい?ほら」

 

 千冬は差し伸べられた手を掴むと、自力で立ち上がった。

 

「しかし、これ程の試合をやっちゃったら本題の代表決定戦が霞みそうだね。一夏君とオルコットさんには悪い事をしてしまった気分だよ」

 

「ふっ、それだけは貴様に言われたくないな。貴様もノリノリだったではないか」

 

「それを言われると僕も手厳しいね」

 

「ふっ……さぁ、戻るか」

 

「ああ」

 

 二人はそんなやり取りをすると、それぞれのピットに戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピットに戻った竜馬を待っていたのは、一夏と箒、そして真耶が迎えてくれた。一夏に関しては、見た事もないISをその身に纏っていた。

 

「どうやら一夏君のISが届いたようだね」

 

「は、はい!織斑先生と立花先生が試合を行ってくれたおかげでなんとか初期化(フォーマット)最適化処理(フィッティング)まで行えました!」

 

 竜馬は真耶の話を聞きながら、一夏に目をやった。

 一夏がその身に纏ったISは綺麗な純白の装甲に、かつて千冬が現役時代に使っていた刀をその右手に持っていた。

 

「これが……一夏君のIS……白式(びゃくしき)か……」

 

「はい。竜馬さんほど上手く動かせるかわかりませんけど、千冬姉の顔に泥を塗らない程度には頑張ります」

 

「そうか。それでいいよ。ああ、それと一夏君」

 

「はい?」

 

「この一週間で僕が出来るのはここまでだ。後は君次第、実践あるのみだ。ほぼぶっつけ本番だけど、君ならできると、僕は信じてる」

 

「……はい!頑張ります!」

 

「うん、いい笑顔(かお)になった!じゃあ、僕は控室で観戦してるよ」

 

 竜馬は一夏の肩をポンと叩くと、打鉄改を待機状態に戻して、ピットを後にした……

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数分後、織斑一夏とセシリア・オルコットによる1年1組クラス代表決定戦が執り行われた。

 試合は先の試合同様の激戦となり、結果は僅差で一夏が勝利した。その時のセシリアと一夏のSE残量差は、コンマ1ミリだったという。

 これによって、1年1組のクラス代表は、晴れて織斑一夏が就任する事になったのである…………

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 




次回予告

「やぁ!暑い日は夏野菜をふんだんに使った料理を食べて、夏バテに気を付けるんだよ。次週はこれだ!」

 クラス代表決定戦から一夜明けた朝、一夏と箒の寮室と寮長室にちょっとした異変?

次回「それぞれの朝」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第12話「それぞれの朝」

 お待たせいたしました。第12話です。
 今回は箸休めとして前回から一夜明けた朝の寮で起きるちょっとエッチな風景です。これを基に別枠でR-18の番外編でも作ろうかな……
 それでは、どうぞ!


一夏Side

 

 クラス代表決定戦から、一夜明けた朝……

 

「――――――ぅん……」

 

 窓から射し込んできた朝日の明るさで、俺は目を覚ました。

 軽く身を起こしたその時、ある事に気付いた。

 自分が、一糸纏わぬ姿で寝ていた事に。

 俺はすぐに部屋の周りを見渡した。

 部屋には脱ぎ散らかした制服と無数のティッシュペーパーが散乱していた。

 俺は即座に昨日の事を思い出した…………

 

 

 

 

 

 

 

 

※ここから回想

 

 

 

 

 

 

 

 

 昨夜、なんとかセシリアとの試合に勝った俺は、箒と一緒に自分の部屋に戻っていた。

 

「あーーーーーーー!すっげぇ疲れた!」

 

「だ、大丈夫か一夏?ほら、水だぞ?」

 

「あー、わりぃ。助かったぜ箒」

 

 ベッドに座った俺は、箒から渡されたペットボトルの水を一気に平らげると、空になったペットボトルを棚に置いた。

 そんな中、俺はセシリアとの試合を思い出していた。

 正直に言って、勝てたのが奇跡に近かった。零落白夜の特性に気付くのが遅かったら、恐らく自滅していたかもしれない。

 それにセシリアの機体――――――≪ブルー・ティアーズ≫もかなりの強敵だった。竜馬さんのBT兵器についての講習がなかったら間違いなく良い的になっていたかも知れない。

 だがそれ以上に、ティアーズがまだ2基あった事に関しては凄く焦った。あれを切り返せなかったら間違いなくやられていただろう。

 その結果が、あの激戦だ。やっぱり俺はまだまだ千冬姉や竜馬さんの足下にも及ばない。

 果たして俺は、クラス代表としてこのままやってけるのだろうか……

 

「一夏」

 

「ん?」

 

 突然、箒が俺に声をかけてきた。どうやら俺が考えてるうちに俺の横に座り込んでいたらしい。

 すると、今度は俺に寄り添うかのように俺にもたれかかった。その顔は、少し恥じらう様子が出ていた。

 

「ど、どうしたんだ箒?」

 

「な、何でもない。ただ……しばらくこうしていたいだけだ……」

 

 箒は恥ずかしそうに俺に答えた。俺にはその動作の一つ一つが、凄く愛おしく思えて仕方なかった。

 そんな事を思いながら箒を見ていると、視線に気付いた箒が俺の方に目を向けた。

 目と目が合い、そして顔が合う。俺の心臓の鼓動がドンドン早くなる。

 俺と箒の顔が徐々に近づいて、そして――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

※回想終わり

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――とまぁ、その後トントン拍子で俺達は一線を越えてしまったわけだ。

 

「……やっちまった……」

 

 俺は頭を抱えた。何やってんだよ俺!もう少しシチュエーションとか雰囲気とかあっただろ!

 正直に告白すると、俺は小学校の頃は極度の唐変木で、特に恋愛感情に関してはかなりの鈍感だった。

 実際、箒を“異性”として意識するようになったのは、六年前に箒が政府の方針で遠くへ引っ越す一週間前だった。

 あの時、もし竜馬さんがいなかったら箒の想いを知らずに箒を見送っていたかもしれない。その事に関しては、本当に竜馬さんには頭が下がらない思いだ。

 ってか、閑話休題(それは置いといて)

 あの時の箒が妙に色っぽかったのは認めるが、幾らなんでもこれはないだろう!

 もしこれが千冬姉に知られたら、俺の人生は速攻で終了だよ!

 途方にくれた俺だったが、近くに脱ぎ捨てたYシャツを見つけると、とりあえずそれを上に羽織った。

 

「ああ、起きたのか一夏」

 

 すると、部屋の奥から箒の声が聞こえてきた。どうやら俺より先に起きていたらしい。

 

「ああ、おはよう……ッ!?」

 

 俺はクローゼットにある着替えを取るために立ち上がろうとしたが、腰に痛みを感じ、ベッドに座り込んでしまった。

 我ながら恥ずかしい……俺は腰を抑えて痛みを和らげながら、そっと立ち上がった。

 すると、部屋の奥からYシャツを羽織った箒がコーヒーを淹れたマグカップ二つを両手に持って現れた。勿論下には何も着ていない。それが凄く官n……って落ち着け俺!煩悩退散煩悩退散!

 

「おいおい大丈夫か?ほら、目覚めのコーヒーだ」

 

「お、おう。すまねぇな」

 

 俺は箒からカップを受け取ると、心中に潜む煩悩を洗い流すようにコーヒーを飲む事にした……

 

一夏Side out.

 

 

 

 

 

 

 

 

 同じ頃、寮長室にて……

 

「――――――ん、と」

 

 立花竜馬の朝は早い。彼は千冬の朝食や弁当を作る都合上、毎朝5時頃には目が醒めれるようにしていた。

 竜馬は昨日の模擬戦で疲れた身体を起こそうとするが、その時に隣で静かな寝息をたてて眠る千冬に気付いた。

 しかも、一糸纏わぬ姿で。

 それは竜馬も同様であった。

 

(しかし、まさか千冬から誘ってくるとはなぁ……)

 

 竜馬は昨夜の出来事を思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

※ここから回想

 

 

 

 

 

 

 

 

 クラス代表決定戦の事後処理を終えた竜馬と千冬は、寮長室に戻って少し早い夕食を食べていた。

 

「……ごちそうさま。竜馬、このたけのこグラタン美味かったぞ」

 

「お粗末様でした。食器は僕が洗うから、先にシャワーをどうぞ」

 

「む、そうか。ではお言葉に甘えさせてもらうぞ」

 

 千冬はそう言うと、シャワールームに足を運んだ。それを見届けた竜馬は、食器を洗いながら今日の試合について考えていた。

 

(……今回の千冬との戦い、一歩間違えれば僕の方が負けていただろう。やっぱり千冬は凄いよ。改造人間である僕を相手にあそこまで戦うんだから。それにしても、一夏君はあの“癖”がやっぱり出ていたな。一夏君は調子に乗ると左目の頬が緩む癖があるな。近いうちに久しぶりに空手の稽古をつけさせようかな……っと、いかんいかん。今はこの洗い物を済ませないとね)

 

 竜馬は手早く食器を洗うと、千冬が出るまでの暇を潰すべく、今日の出来事を日誌に纏める事にした。

 この日課は滝博士がオリンポスによって拉致されてから竜馬が自主的に書き始めたもので、現在持っている物は3冊目に当たるものであった。

 日誌を書き始めた理由は

 

「みんなとの思い出を忘れないため」

 

 という、なんとも竜馬らしい理由であった。

 オリンポスに拉致されていた5日間を除くと、竜馬はこの日課を欠かすことなく続けていた。

 そしてその思いはオリンポスとの戦いを決意してからなお一層強くなった。

 

(僕の戦いはいつ果てるとの知れない戦いだ。だからこそ、一日一日の思い出を大事にしていきたい。みんなと一緒に描く、この思い出を……)

 

 今日の出来事を書き終えた竜馬が、日誌をしまおうと机の引き出しを開こうとしたその時だった。

 

「っ!?ち、千冬!?どうしたんだいきなり!?」

 

 不意に、千冬が背後から竜馬に抱き付いてきたのだ。あまりに突然すぎる行動ゆえに、さしもの竜馬も驚いた。

 しかも千冬は、バスタオルこそ躰に巻いているだけの状態で抱き付いてきたのだ。

 千冬は抱き付いていた手を放すと、顔を赤くして話し始めた。

 

「……き、今日は竜馬が勝ったから、その、ご褒美をあげようと思ってな……」

 

「ご、ご褒美って……」

 

「つ、つまりだな!あの、その……だ、抱いてくれ……」

 

「えっ?」

 

「わ、私を抱いてもいいと言っているんだ!ま、まぁ最近ご無沙汰だったし、そ、そろそろだな……」

 

「千冬……」

 

 実を言うと竜馬と千冬は、この2週間前に“関係”を持っている。もっとも、三人で語り合った翌日に、束は二人に

 

「別にりょーくんとちーちゃんがナニしようが構わないけど、子供を作るのは待っただね。キメラボーグと人間の子供なんてそれこそオリンポスや各国が欲しがる存在になりかねないから、ちゃんと避妊はする事!これは絶対事項だからね!」

 

 と厳命し、千冬に《束さん特製ピル》を渡している。

 この薬を千冬は欠かさず服薬しており、定期的に束が一月分郵送してくるのである。

 閑話休題

 それまで千冬と竜馬がスる時は、大抵その場の勢いでヤってしまう事が多く、どちらかが誘ってくるというのは、今日が初めてだった。

 

「…………い、いやか?」

 

 恥じらいのある千冬の言葉に、竜馬は意を決した。

 

「…………まさか。ここで断ったら男じゃないよ」

 

「竜馬…………」

 

 竜馬は千冬を自分の方に寄せた。そして――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

※回想終わり

 

 

 

 

 

 

 

 

(しかし、誘われたとはいえ、激しくヤってしまったなぁ。今日の千冬の腰が心配だな……ってそうじゃなくて!そろそろ朝ご飯の準備しないと……)

 

 竜馬は物思いを終わらせると、そそくさと着替えて、キッチンへ向かった。

 

「昨日は和食だったから、今日は洋食にしようかな。献立はベーコンエッグにトースト、コーヒーで行くか」

 

 キッチンに着いた竜馬はトースターに食パンをセットすると、冷蔵庫から卵とベーコンを取り出してベーコンエッグを作り始めた。

 

「……んん……おはよう、竜馬……」

 

 すると、千冬が朝食の匂いに釣られて起きてきた。流石に全裸で起きるのは不味かったのか、上にYシャツを羽織った状態であった。それでも官能的だが。

 

「おはよう千冬。もうすぐ朝ご飯が出来るから、顔を洗って服を着替えて待っていてくれ」

 

「ああ、わかった……」

 

 千冬が洗面所に向かう間にトーストが出来上がると同時にベーコンエッグを食器に盛り付け、テーブルに運んだ。

 

「おお、今日は洋食か」

 

 すると、着替えを済ませた千冬が戻ってきた。

 

「さ、座ろうか」

 

「ああ、では……」

 

「「いただきます」」

 

 こうして、双方の朝は過ぎていった……

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 




次回予告

 一夏のクラス代表就任パーティが行われる最中、竜馬は妹分の一人である凰鈴音と1年半ぶりに再会する。
 再会した鈴と竜馬は、1年半前に起きたある事件を思い出した!

次回「再会!中国娘」にご期待下さい!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第13話「再会!中国娘」

 どうも、暑中見舞い申し上げます。
 今回は過去篇となる「中国篇」の導入部です。
 鈴ちゃんって書くとゆるキャン△のリンちゃんを思い浮かべる俺はゆるキャン△難民。


一夏Side

 

「と、いうわけで織斑くん、クラス代表就任おめでと~!」

 

 その日の夕方。寮では1年1組の生徒が集結し、『織斑一夏クラス代表就任記念パーティ』が執り行われていた。

 この日の授業は、ISを使用した飛行訓練だったのだが、俺の結果は散々たるものだった。

 ちなみにその日の授業中、時折千冬姉と竜馬さんが腰を抑える仕草をしていたけど、一体昨日ナニをしていたんでしょうねぇ……まぁ、俺と箒が言えた口ではないけど。

 そして今、俺はというと……

 

「はいは~い、新聞部で~す!今話題の織斑一夏君に突撃取材しにきました~!」

 

 …………新聞部のエサにされています。竜馬さん。頼むからこっちに来てください!

 

「さて、まずは織斑君のクラス代表就任をこの場でお祝い申し上げます!それではクラス代表として一言意気込みをどうぞ!」

 

「えっ!?えーと……頑張ります!」

 

「え~それだけ~?もっとないかな~、例えば『命、燃やすぜ!』とか、『ひとっ走りつきあえよ!』とかさ~」

 

 なんか何処かで聞いたようなフレーズだが、兎に角もっと記事映えしそうな台詞を言えって事だろうな。その時、俺の脳内に竜馬さんが空手の公式戦の時に験担ぎでよく言っていたある言葉を思い出した。

 

(竜馬さん。貴方のフレーズ、お借りします!)

 

 俺は脳内で竜馬さんに謝罪すると、ある言葉を引っ張り出した。

 

「銀河の光が俺を呼ぶ!」

 

 何故か無意識に決めポーズを取っていた。

 

「おぉ~!そういうのを待ってたんだよ~!」

 

 新聞部の子の他、クラスメイトの殆どが今の俺を写真に撮り始めた。正直、凄く恥ずかしいです。

 

「とまあ、クラス代表就任取材はこの辺にして、織斑君にはもう一つ聞きたい事があります!」

 

「へ?」

 

「ズバリ!『立花先生と千冬様の関係』についてです!お二人の事をよく知る織斑君に、お二人の関係について何か知っていることがあれば一言お願いします!」

 

 いやなんで俺に聞くんだよ!と言いたいところだが、竜馬さんなら兎も角、そんな事千冬姉に聞いたら確実に殺されるだろうな。うん。俺に聞きにくるわけがわかった気がする。

 だがここで俺が下手な事喋ったらそれこそ俺の人生がヤバイ!取り敢えずボカしとこう……

 

「あー…多分付き合ってると思う」

 

「なぜボカして言うんです?」

 

「深掘りしたこと言うと殺される」

 

「あー…………」

 

 新聞部の子は何かを察したようだった。ホッ、助かった。

 

「まぁ、その辺はチョチョイと捏造するとしますか」

 

 良くねえぇぇぇぇぇぇ!これ絶対後日捏造した記事が校内新聞に載るだろ!はい死んだ!今俺の人生終わったわ!竜馬さん。頼むから助けてください……

 

一夏Side out.

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、竜馬と千冬は

 

「……まったく、たしかにお前の言いたい事は分かるが、些か性急すぎるぞ」

 

「そ、そうかな?」

 

 この日の放課後、IS学園の各教員が集まって話し合う教員会議が行われ、竜馬と千冬はその帰りについていた。

 この会議において、竜馬は真っ先に外部侵入対策としてセキュリティの強化を訴えたが、提示した青写真の殆どが些か過剰すぎた事が問題となり、保留となったのである。

 無論、これには訳がある。竜馬はここ一週間暇さえあればオリンポスに関する情報を独自に調査していたものの、その成果は微々たるものであった。

 さらに先週潰したオリンポスの要塞島がこの学園近辺にあった事がなりより気掛かりだったのだ。

 もしオリンポスがIS学園を狙うとなれば、現状のセキュリティ設備で防ぐ事はまず不可能だ。そうなる前にも、なんとかセキュリティ設備の充実しなければと、そう考えていた。

 

「確かにお前のいう通り、オリンポスのキメラボーグでは現状のセキュリティでは心もとないのはわかる。しかし、そんな奴等が現実にいる事を知らない人達からすれば、IS学園のセキュリティに対し行き過ぎていると言われかねないんだぞ」

 

「それは、そうだけど……」

 

「それに万一に備えて、白式には一夏の危機をお前のマスクに知らせるブザー装置が搭載されている。それでも不満なのか?」

 

「“備えあれば憂いなし”という言葉があるからね。念の為というものだよ」

 

「むぅ……」

 

 千冬と竜馬がそんな事を談笑していると

 

「…………って…………け」

 

「ん?」

 

 ふと、声が聞こえて来た。竜馬が声がした方向に目をやると、正面ゲート前で大きいボストンバッグを持った小柄な少女が、皺だらけの紙切れと格闘していた。

 その少女に、竜馬は見覚えがあった。

 

「おい、どうしたんだ竜馬?」

 

「あの子…………もしかして」

 

「…………あの子?っおい竜馬!」

 

 千冬の制止を振り切り、竜馬は少女の許へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「本校舎1階総合事務受付……ってどこにあんのよこれ?」

 

 その日、凰鈴音(ファン・リンイン)は少し遅れたIS学園への入学手続きのため、この正面ゲートまで来ていた。

 なぜこの時期まで入学が遅れたのかというと、話が長くなるので割愛する。

 鈴はヨレヨレの紙切れに向かって悪態をついた。最も、紙が返事する筈がない。

 

「取り敢えず、歩けばなんとかなるでしょ」

 

 ぶつくさ言いながら、鈴の足はその場から去ろうとしていた、その時だった。

 

「そっちの方向行くと本校舎からどんどん離れるけど?」

 

「へ?…………」

 

 ふいに、背後から自分にアドバイスするような声が聞こえた。

 鈴は背後を振り返ると、そこにはまさかの人物が立っていた。

 

「えっ!?りょ、竜馬さん!?」

 

「やぁ、久し振りだね鈴」

 

「…………(溜息)」

 

 声の主は、日本にいた頃兄貴分として、優しく接してくれた立花竜馬であった。

 その背後には、かつて想いを寄せ、今は良き親友となった幼馴染の姉が頭を抱えて溜息をついていた。

 

「な、なんでここにいるのよ!?」

 

「いやぁ、色々あってね。それはそれとして、鈴ちゃんはこれから受付で入学手続きかい?」

 

「え、ええ。そうだけど……」

 

「良ければ僕が受付まで案内してあげようか?」

 

「よ、余計なお世話よ!こう見えても私は国家代表候補生なのよ!自分でいけるわ!」

 

「逆方向に歩いてたのに?」

 

「うっ!?そ、それは……」

 

「やれやれ…大雑把な性格は“去年”から変わってないね」

 

(ん?去年、だと…………)

 

 千冬は竜馬が発した“去年”という言葉が気になった。

 鈴が親の転勤で帰国したのは、あの事件から一年が経過した頃のことだ。つまり、竜馬は何らかの形で中国に来て、鈴と再会したことになるのだ。

 考え込む千冬の様子を察した竜馬は鈴に目で合図を送ると、千冬に話を振った。

 

「千冬。これから鈴ちゃんを受付まで案内するけど、一緒に来るかい?」

 

「なっ!?なぜ私がお前と一緒に凰を案内しなければならないんだ!?」

 

「話し相手が欲しいから」

 

「子供か!話し相手なら凰がいるだろう!」

 

「まぁまぁ千冬さん。“旅は道連れ”という言葉もあるし」

 

「いやおかしい!何かがおかしいぞ凰!」

 

「さて、それじゃあ総合受付まで出発進行!」

 

「話を聞けぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 千冬の有無を聞かず、竜馬と鈴は千冬を連れて総合受付まで向かう事になった…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 数分後…………総合事務受付近くの自動販売機前にて

 

「ほら。飲み物いるかい?」

 

「…………」

 

 鈴を受付まで案内した竜馬と千冬はは、近くの自販機で小休止していた。不機嫌な表情を崩さない千冬に、竜馬は機嫌を直すべく飲み物を買って来た。

 

「…………」

 

「あの、黙ってると渡しにくいんだけど」

 

「…………もらおう

 

 千冬は小さく返事をすると、竜馬は飲み物を手渡した。

 

「さっきは、ごめん」

 

「ん?」

 

「千冬があまりに真剣な表情をしていたから。多分、僕が何気なく言った“去年”という言葉に引っ掛かりを感じたんだろ?」

 

「ああ。竜馬、凰と何かあったのか?」

 

「話せば長くなるけど…まぁ、“組織”関連の事だね」

 

「…………!?」

 

 千冬は栓を開けようとしていた手を止めた。

 

「…………重要な事を聞くが、まさか…………」

 

「察しの通りだよ。鈴ちゃんは……

 

 

 

 

 

 

 

 

“僕に近い人間で僕が仮面ライダーだという事を知る数少ない一人”なんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 




次回予告(推奨BGM:レッツゴー!!ライダーキック(インストver.)予告版)

 我らの仮面ライダーメーデンを狙うオリンポス本部が送った次なる使者は、「火を吹く毛虫怪人モスキメラ」
 突然鈴の前に現れた人喰い毛虫の正体は、オリンポスの怪人モスキメラだった!
 鈴を襲うモスキメラの脅威!
 急げ竜馬!鈴を救え!

次回マスクドライダー・ストラトス「火を吹く毛虫怪人モスキメラ:前編」にご期待下さい!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第14話「火を吹く毛虫怪人モスキメラ:前編」

 どうも、最近暑さで頭がおかしくなって近隣をサイクリングしまっくてるピカリーノです。
 さて、今回は中国篇の第2回です。今回は初代仮面ライダーより「火を吹く毛虫怪人ドクガンダー」をモチーフとしています。
では、どうぞ!


前回のあらすじ

 

 学園寮で1年1組の生徒が織斑一夏のクラス代表就任記念パーティを行なっている中、千冬と竜馬は道に迷った妹分の凰鈴音と再会する。

 竜馬と鈴は半ば強引に千冬を連れて総合受付まで向かった後、鈴が手続きを行う中、竜馬は千冬に衝撃的な発言をする。

 それは、鈴が千冬と束以外の人間で、竜馬が仮面ライダーメーデンだというのを知る数少ない一人だという事実であった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 千冬は竜馬の告白に一瞬だけ放心状態となったが、すぐに持ち直して、竜馬に問い詰めた。

 

「竜馬。何故凰がお前の正体を知る事になった?まさか……」

 

 竜馬は、重苦しい口調でその経緯を話し始めた。

 

「…………あれは、去年の夏の事だった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 四川省山岳部、某所――――――

 

「ここが問題の集落か……」

 

 失踪事件が発生している集落に到着した竜馬は、ヘルメットのバイザーを上げて周囲を見渡した。

 この頃の竜馬は、Mチャリオットが完成するまでは市販のオートバイを移動手段として使用しており、この時期はモトクロッサー型のオフロードバイクに跨っていた。

 竜馬は、束からの情報でこの四川省にある集落まで来ていた。

 この集落を含む山岳地帯で、実に奇怪な事件が相次いでいた。

 それは、人間大の大きさの芋虫が目撃されたというものであった。

 さらにこの近辺では、外から訪れた登山客が次々と失踪するという事件も相次いでおり、竜馬は芋虫の化け物が“オリンポスのキメラボーグ”ではないかと睨み、この集落に来ていたのだ。

 

「まずは情報収集……と行きたいところだけど、この状況では流石に望み薄だね」

 

 竜馬は集落の方に目を向けるが、そこに人の影はなく、まるでゴーストタウンのように静まり返っていた。

 

「兎に角、まずは山に向かった方が良さそうだ」

 

 竜馬はバイザーを下ろすと、エンジンをふかして走り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 同じ頃、山岳部にて…………

 

「まったく……なんであたしがこんな事に……」

 

 その日、凰鈴音(ファン・リンイン)は父の友人と一緒に、四川省へハイキングに来ていた。

 別に、来たくて来た訳ではないのだが、これには訳があった。

 この昨年、鈴は家庭の事情で帰国していたのだが、4年ぶりに踏んだ故国の土地を、彼女は1年が経過した今でも馴染めずにいたのだ。

 これを心配した鈴の父は、交友関係にあった日本人が今度四川省へハイキングに行く事を知り、彼女を誘ってくれないかと頼んだのだ。

 勿論彼女は乗り気ではなかったのだが、ここ最近の彼女を案じた父の勧めもあり、仕方なく行く事にしたのだ。

 そして、現在に至るのである。

 

「ほらほら、そんな暗い気持ちでいたら幸せが逃げちゃうぞ」

 

 そんな鈴に、青い登山帽を被った男性が話し掛けてきた。

 

「大体なんで四川省で登山なのよ……四川省といえば料理でしょ……」

 

「いやぁ、四川省の山々も中々魅力はあると思うけど」

 

「ヒマラヤに比べたら地味じゃない!日本の山々はそれこそ四季折々の風景でどこでも見所があるけど四川省の山なんてヒマラヤに比べたら地味すぎるでしょ!」

 

「はっはっはっ。鈴ちゃんは怒っている顔もかわいいな」

 

「茶化さないで!」

 

 全くもって調子が狂うが、鈴は男に何故か懐かしさを覚えていた。

 似ていたのだ。あの人に。

 日本に来たばかりの頃、鈴は小学校でイジメを受けていた。その時、とある青年が彼女を助け、手を差し伸べた。その後、彼は鈴の良き相談相手にして良き兄貴分として、彼女の世話をしていくれた。

 そんな彼に、男はよく似ていたのだ。

 

「もうすぐ中間地点だから、そこで休憩しようか」

 

「わ、わかったわよ!……渡さん」

 

 男=渡五郎は鈴の返事を聞くと、少し笑顔になってそのまま道を進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃――――――

 

「えっ?怪物?」

 

「んだ」

 

 竜馬は、奇跡的に外に出ていた村民を見つけ、情報を聞いていた。

 

「先々週ぐらいだったかな……近くの家が飼ってた鶏が一匹残らず消えちまっただ」

 

「鶏が?」

 

「最初は狼か狐の仕業かと思ったんだけどな、食い散らかした後は無いし、何より猛獣対策用の罠が“何か”に溶かされた後があっただ」

 

「溶かされた……」

 

「そっから数日経って、今度は山に出た村の者の悉くが神隠しに遭っちまっただ」

 

「神隠し?」

 

「実を言うと、この辺には昔っから怪物伝説があってな、夜な夜な山に登ると怪物が現れて、其奴を食っちまうっていう言い伝えがあるんだや」

 

「怪物伝説……」

 

「あんた、もしかしなくても今から山に登ろうなんて思ってねぇだろな?やめといた方がいいべよ。おめぇさんはまだ若ぇんだから、そんな歳で死んだら故郷のおっかさん悲しむべよ」

 

「ご忠告どうも。それじゃ」

 

 竜馬は村民の忠告を程々に聞くと、そのまま山へと走り出してしまった。

 

「あっ!おい!?喰われても知らねぇべよー!」

 

 村民の忠告を聞き流して、竜馬は山へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃鈴と五郎は、小休憩を終えて再び山を登り始めたのだが……

 

「何よこれ……一体どうなってるの……?」

 

「鈴ちゃん。決して僕の側を離れないように……」

 

 突如、霧が立ち込めてきたのだ。山の天気は変わりやすいとはいうが、先ほどまで雲一つない晴れ渡った青空だったのが、あっという間に一変したのである。

 鈴はこの霧に嫌悪感を覚えると同時に、背中に悪寒を感じた。それは、鈴の第六感がこの霧を“ただの霧ではない”と感じ取っていたからに他ならなかった。

 

「兎に角足下に気をつけよう。こうも視界が利かないと、うっかり踏み外してしまうからね」

 

「う、うん!」

 

 鈴は五郎の忠告に頷くと、渡の右手を左手で掴んだ。

 

「よし、行こう」

 

 二人はゆっくりと、足下を注意して進もうとした、その時だった。

 

「残念だが、お前達の道はここで終わりだ」

 

「っ!?」

 

 突如、聞き覚えのない声が二人の耳に入った。

 二人は周りを見渡すが、霧のせいで何も見つけられなかった。

 

「誰!?誰なのよ!?姿を現しなさい!」

 

「鈴ちゃん!少し落ち着くんだ!」

 

 五郎の制止を遮り、鈴が少しヒステリックに叫んだ。

 すると、突如として霧が徐々に晴れ始めたのだ。

 霧が完全に晴れると、謎の声の主がその姿を現した。

 

「!!?」

 

「!!?!?」

 

「エケケケケケケ!」

 

 声の主の正体は、水色の体毛を携えた芋虫の怪物であった!

 

「お前達はここで死んでもらう!エケケケケケケ!」

 

 芋虫の怪物は構えをとってジリジリと詰め寄り始めた。

 五郎は足下に落ちていた枝を持つと、鈴を守るように立ちふさがった。

 

「鈴ちゃん!早く逃げるんだ!ここは私が囮になる!その間に逃げるんだ!」

 

「逃げるったってどこに逃げるのよ!」

 

「いいから早く!」

 

 鈴は五郎に促されるように来た道を逆に辿るように逃げた。怪物は鈴を追おうとするが、五郎に妨害されてしまった。

 

「愚かな奴め!お前から先に死ね!」

 

 怪物はそう言うと、口から火炎放射を吐いて五郎に襲いかかった!

 

「くっ!うう!」

 

 五郎は何とか炎を掻い潜ろうとしたが、その時足を踏み外してしまい、山から転落してしまった。

 

「う、うわあぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 山から転落した五郎を見届けた怪物は、鈴が走り去った方向に目をやった。

 

「エケケケケケケ!逃げても無駄だ。このモスキメラが目を付けた獲物は必ず仕留められる運命にあるのだ!精々束の間の命を楽しむがいい!エケケケケケケ!」

 

 怪物……モスキメラは高らかに宣言すると、そのまま姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 鈴は必死に怪物から逃げていた。来た道を逆に辿りながら、険しい山道を力一杯走り抜けていた。

 

(冗談じゃないわよ!なんで私がこんな目に遭わなきゃなんないのよ!)

 

 思えば、鈴は故郷である中国に帰りたくなかった。彼女にとって本当の意味での“故郷”は、海を隔てた隣の島国だった。

 楽しかった日本での思い出。鈴にとって日本は、一生住んでいても良いとさえ思えたのだ。

 家庭の事情で帰国したとはいえ、鈴は祖国の土を踏んだ時、違和感を覚えたのは言うまでもない。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…流石にここまでは追ってはこないようね……」

 

 鈴は汗を手で払いながら後ろを振り向くが、追ってきている様子はなかった。

 緊張感の糸がほぐれた鈴は、その場に座り込んでしまった。

 

「渡さん……大丈夫かな…」

 

 鈴は自分の身代わりになって逃がしてくれた王の身を案じながら、リュックから水筒を取ろうとした。その時だった。

 

「……鈴ちゃん?」

 

 ふと、自分の名を呼ぶ声が聞こえた。

 しかもその声は、聞き覚えのある声だった。

 鈴は声がした方向を向くと、そこには信じられない人が立っていた。

 

「…………りょ、竜馬さん?」

 

「やっぱり、鈴ちゃんだったか……」

 

 そこにいたのは、かつて日本にいた頃、自分の面倒をよく見てくれた兄貴分で、二年前に行方知れずになっていたはずの、立花竜馬であった。

 

「うそ……どうして生きているの……葬式だって済んだのに…」

 

 鈴は目の前にいる男が本物か信じられなかった。なぜなら、既に死んだと思っていた人間が、目の前に立っていたのだから。

 

「大丈夫、足はちゃんと二本あるよ」

 

 竜馬は太腿を軽く叩きながら死人ではないことをアピールした。

 その一つ一つの仕草が、鈴に目の前の青年が立花竜馬である事を認識させていった。そして……

 

「…………んでよ

 

「えっ?」

 

「なんで突然いなくなったのよ!」

 

「!?」

 

 突然の大声に思わず目を見開いた竜馬だったが、鈴はそんなの御構い無しで続けた。

 

「生きてるならちゃんとこっちに連絡の一つや二つ寄越しなさいよ!弾の家なんてあんたが死んだと思って葬式やって墓標まで立ててるのよ!」

 

「そ、それは…」

 

「大体あんたがいなくなってどれだけの人に迷惑かけたと思ってるのよ!ちょっとは反省してるの!千冬さんなんて貴方がいなくなってからいっつも目が死んでるのよ!」

 

「え、えっと……」

 

 鈴の怒涛のマシンガントークの前では、流石の竜馬も何も言い返せず、目をそらすしかできなかった。

 しかし、迫り来る脅威の影を、竜馬の第六感は確実に捉えていた。

 

「っ!?危ない!」

 

「えっ?きゃっ!?」

 

 竜馬は鈴の手首を持って自分の方に寄せると、先程まで鈴がいたところに投げナイフが刺さった。さらにナイフの柄の部分は、秒間で点滅していた。

 

「な、なによこれ!」

 

「伏せるんだ!」

 

 竜馬は鈴の頭を抑えて地面に伏せると、投げナイフは突如爆発した。

 

「大丈夫かい!?」

 

「う、うん!なんとか……」

 

 竜馬は身体を起こして鈴の無事を確認すると、鈴を立ち上がらせた。

 

「エケケケケケケケ!とうとう追い詰めたぞ」

 

 その時、二人の目の前にモスキメラが地面を割って現れた!

 竜馬はモスキメラから鈴を守るため、鈴を自身の背後に立たせた。

 

「出たなオリンポスのキメラボーグ!」

 

「エケケケケケケケ。この俺をオリンポスのキメラボーグと知っているとは、貴様只者ではないな。何者だ!」

 

(オリンポス?キメラボーグ?一体なんのこと?竜馬さんは何を知っているの?)

 

 鈴は状況が飲み込めなかった。何故竜馬が自分と王を襲った怪物のことを知っているのか?オリンポスとはなんなのか?この時の凰鈴音は知る由もなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 鈴との再会も束の間、二人に襲いかかるモスキメラの魔の手!

 果たして立花竜馬は、鈴を守ることが出来るのか?そして転落した渡五郎の運命や如何に!

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 




次回予告
 我らの仮面ライダーメーデンを狙うオリンポス本部が送り出した次なる刺客は、前回に引き続き「火を吹く毛虫怪人モスキメラ」!
 鈴と竜馬に襲いかかるモスキメラの魔の手!
 果たして竜馬は勝てるのだろうか!?
 そして山の底へ落ちた渡五郎の運命は!?
 次週マスクドライダー・ストラトス「火を吹く毛虫怪人モスキメラ:中編」にご期待ください!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第15話「火を吹く毛虫怪人モスキメラ:中編」

お待たせいたしました。第15話です。
今回はモスキメラ戦の中編です。
当初はここで終わるはずでしたが、執筆中に5000字を越えていた事に気付いてしまい、止む無く三部作になりました。申し訳ありません。
では、どうぞ。


前回のあらすじ

 中国四川省のとある山へハイキングに来ていた凰鈴音と渡五郎は、道中で人間大の大きさの毛虫怪人に襲われる。

 怪物の正体は、オリンポスのキメラボーグ、モスキメラだった。

 リンを逃すべく、果敢に立ち向かった王は、山の底へ落ちた。

 そして、辛くも逃げ出した鈴は、2年前に失踪した筈の立花竜馬と再会する。

 その再会も束の間、2人の前にモスキメラが現れた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 竜馬は状況がまるで飲み込めていない鈴を庇うようにモスキメラの前に立ち、構えをとった。

 

「エケケケケケケケ!オリンポスの名を知っている以上、生かしておくわけにはいかん。スパルタ兵!二人を殺せぃ!」

 

「ゲェーッ!ゲェーッ!」

 

 モスキメラの号令と共に、スパルタ兵が茂みから現れ、二人を包囲した。

 

「ちょっ!?なによこいつら!?」

 

「鈴ちゃん!僕の側から絶対に離れないで!」

 

 竜馬は狼狽える鈴に言い聞かせた。

 

「かかれぇ!」

 

 モスキメラの命令の下、スパルタ兵が一斉に二人へ襲いかかった!

 

「フン!ハァッ!」

 

「ゲェッ!?」

 

 竜馬は臆せず襲いかかったスパルタ兵の一人を受け流すと、次に襲いかかったスパルタ兵が持っていたククリナイフを奪い、それで斬り伏せた。

 

「トォッ!トォッ!」

 

「ゲェーッ!」

 

 竜馬は鈴を守りながら、次々と襲いかかるスパルタ兵を斬り伏せていった。

 しかし、形勢が不利なのには変わらない。竜馬は鈴と逃げることにした。

 

「こっちだ!」

 

「きゃっ!?」

 

 竜馬は鈴の手を引っ張ると、そのまま逃げ出した。

 

「逃すな!追えぇっ!」

 

 モスキメラは命じると、スパルタ兵が二人を追跡し始めた。

 スパルタ兵の一人が竜馬めがけてナイフを投げると、ナイフは竜馬の右腕を切り裂いた。

 

「グッ!?ハァッ!」

 

「ゲェーッ!?」

 

 竜馬は痛みを堪えながらククリナイフを投げてそのスパルタ兵を倒すと、そのまま鈴と共に走り去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

「ぜぇ…ぜぇ…ぜぇ…」

 

 二人は山中で洞窟を見つけ、その中に隠れていた。

 竜馬は右腕の傷を抑えながら息を整えていた。その傷を見た鈴は、自分の不甲斐なさを実感すると、スカーフを引き千切ってそれを巻こうとしたその時、我が目を疑った。

 それは、先程の傷が既に治癒していたのである。そして、鈴は恐る恐る問いかけた、

 

「竜馬さん、あの……」

 

「あぁ、傷ならもう治ったよ」

 

「そうじゃなくて、竜馬さんはアイツらについて何か知ってるの?それにこの二年間、どこで何をしていたの?」

 

 鈴の問いに、竜馬は一旦目を閉じて深呼吸をすると、自嘲気味に口を開いた。

 

「…………そうだね。こうなった以上、鈴ちゃんにも話さなきゃダメだろうね。でも、一つ約束してほしい」

 

「約束?」

 

「今から話す事を、決して他人には口外しないこと。例えそれが一夏くんや弾くん、蘭ちゃんでも話さない事。千冬にもだ」

 

「そんなにヤバいことなの?」

 

「その言葉で済むなら、ね……」

 

 竜馬は重い口調で話し始めた…………

 

 

 

 

 

 

 

 

※説明中

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………以上が、僕がここに来たわけだ」

 

 竜馬が全てを話し終えた時、鈴は衝撃を受けた。信じられない。目の前にいる兄貴分が、先程の化け物と同じ身体だという事が。だが竜馬の悲しそうな瞳が、それを真実だということを物語っていた。

 

「……まぁ、信じられないのも無理はないよね。目の前にいる友達が化けm「人間よ!」えっ……」

 

 鈴は思わず反論した。その反論に竜馬は驚くが、そんな事はいざ知らずとばかりに、鈴は続けた。

 

「人間よ!だって竜馬さんは、あたしを助けてくれたじゃない!アイツらとは違う!竜馬さんは竜馬さんよ!だから…その顔で、そんなことを言わないでよ……うぅ…うわあぁぁぁぁぁぁん!」

 

 感極まった鈴は、遂に泣き出してしまった。竜馬はそんな鈴にハンカチを取り出して、鈴の涙を拭った。

 

「ごめん鈴ちゃん。たしかに君の言う通り、これは僕らしくなかったね。ありがとう」

 

「竜馬さん……」

 

 感謝の言葉を聞いた鈴の顔に、笑顔が戻った。

 その時、竜馬は思い出したかのように鈴に問いかけた。

 

「そういえば、どうして鈴ちゃんはあそこにいたんだ?」

 

「あぁ、そのことね。実は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

※説明中

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なるほど。つまり、その渡さんのおかげで君は逃げられたのか」

 

「うん……」

 

 鈴は肩を落として頷いた。それは、五郎を犠牲にしてしまったという罪悪感があったのだろう。竜馬は鈴の肩を軽く叩いて勇気付けた。

 

「大丈夫。その渡さんだって簡単にはやられはしない筈だ。きっとどこかに隠れているのかもしれない」

 

「でも…」

 

「信じるんだ。他人を信じられなくなったら、その先には絶望しかないよ」

 

「竜馬さん…」

 

 竜馬は笑顔でサムズアップを掲げた。

 それは、元気の証であった。

 

「……うん。あたし信じるよ。今は多分、それしかできないから」

 

「よしよし、それで良いんだ」

 

 竜馬はそう言うと、鈴の頭を撫で始めた。あまりに唐突だったので、鈴はびっくりした。

 

「ちょ、ちょっと!いきなり撫でないでよ!」

 

「ははは、変わってないなぁ鈴ちゃんは」

 

「茶化さないでよ!」

 

 かつてのように馴れ合う二人だったが、それに近づく足音が聞こえてきた。

 

「っ!?」

 

 竜馬はすかさず鈴を庇いながら立つと、鈴の口元に指を立てた。鈴は声を抑えながら聞いた。

 

「まさか、もう追手がきたの!?」

 

「わからない。だが、足音は一人だけだ」

 

「わかるの?」

 

「改造人間である僕の聴力は人間の十数倍に強化されてるからね。数キロ先の足音を聞き分ける事ができるんだ」

 

「す、凄いわね……」

 

 竜馬は鈴を庇いながら、足音が聞こえる方向を向いた。

 足音が聞こえる方向は、洞窟の入り口からだった。

 二人は近くの岩に身を潜めて様子を伺った。

 すると、入り口から人影が入っていくのが見えた。

 人影は一つだけで、連れはいなかった。

 どうやら二人には気付いていないようだ。

 

(あいつらかしら?)

 

(それはわからない。兎に角様子を見よう)

 

 人影は徐々に二人が隠れている岩に近づいており、二人は息を殺しながら身を潜めた。

 人影は岩から三間先の所で立ち止まった。そして……

 

「いるのはわかっている。出てきたらどうだい?」

 

「っ!?」

 

(あれ、この声って……)

 

 人影は二人に呼びかけるように声をかけた。声質からして、男性のものだ。

 竜馬は警戒するが、鈴は異なる反応を示した。

 

「何も心配はいらない。今から灯りを灯す」

 

 人影はランタン型の懐中電灯を取り出すと、電源を入れた。

 LED電球が洞窟の中を照らし、人影はその正体を晒した。

 

(わ、渡さん!?無事だったの!)

 

 人影の正体は、鈴と共にこの山に来ていた渡五郎だった。竜馬は鈴に確認をとった。

 

(鈴ちゃん。あの人が渡さんかい?)

 

(このあたしが見間違える筈がないじゃない!あの顔と声は間違いなく渡さんよ!)

 

(しかし、キメラボーグの擬態という可能性も……)

 

(このあたしがそんなに信用できないっていうの!?)

 

(そうじゃない。だけど、鈴ちゃんがそう言うのなら、彼の言う通りにしよう)

 

 二人は五郎の支持通り、岩陰から姿を見せた。

 

「渡さん!」

 

「鈴ちゃん!無事だったんだね!」

 

「怖かった…怖かったよぉ…」

 

「よしよし、もう大丈夫だよ」

 

 姿を見せた途端、鈴は五郎に抱きついた。五郎はそれを受け止めると、鈴の頭を撫でた。

 竜馬はその光景を優しい表情で見つめた。

 すると、竜馬の視線に気づいた五郎が話しかけて来た。

 

「ところで、君は…」

 

「渡さん。この人が前に話した竜馬さんよ」

 

「立花竜馬です。はじめまして」

 

「君があの立花竜馬くんか。鈴ちゃんから話は聞いているよ。渡五郎だ。はじめまして」

 

 竜馬と五郎は握手を交わした。その際、五郎の手に触れた竜馬は、ある違和感に気付いた。それは五郎も同様だった。

 

(ん?なんだこの違和感は……)

 

(この感触は……)

 

 手を離し、二人は互いに自分の手を見つめた。それを不思議に思った鈴が、二人に話しかけた。

 

「ねぇ、手がどうかしたの?」

 

「いや、大した事じゃないよ。それより渡さん。貴方はどうやってここへ?」

 

「あぁ、あの後僕は怪物の攻撃で山から転落してね、気が付いたら茂みに倒れていたんだ。それで近くを探索していたらここに来たんだ」

 

「なるほど……」

 

「ところで、竜馬君はどうしてここへ?」

 

「それは……っ!?危ない!」

 

 竜馬が五郎の問いに応えようとしたその時、洞窟の入り口から殺気を感じ取り、二人の身体を引っ張り岩陰に隠れた。

 すると、先程までいた場所が爆発したのである。

 

「エケケケケケケケ!とうとう追いつめたぞ!」

 

 竜馬は洞窟の入り口に目を向けると、そこにはスパルタ兵を引き連れたモスキメラが立っていた。

 

「嘘!?もう嗅ぎつけられたの!?」

 

「馬鹿め!この山はこのモスキメラの庭のようなものだ!どこへ隠れようと逃げ場はない!それにしても仕留めたと思った相手がまだ生きていたとはな…これは好都合だ。丁度いい、この場で貴様ら三人を皆殺しにしてくれる!」

 

 モスキメラが構えを取ると、スパルタ兵達は右手にロッドを持ち、ジリジリと三人に近づいた。

 

「……っ!?渡さん!何の真似ですか!?」

 

 竜馬はモスキメラを睨みながら、上に羽織ったジャケットを脱ごうとしたその時、五郎が竜馬と鈴の前に立った。

 

「二人共、この場は僕が引き受ける。早く逃げるんだ」

 

「渡さんこそ早く鈴ちゃんを連れて逃げるんだ!奴らは人為的に肉体を強化改造された改造人間だ!“ただの人間の貴方”では……」

 

「そうよ!渡さんもあたし達と一緒に逃げようよ!」

 

 鈴と竜馬が五郎を説得するが、五郎は引かなかった。

 

「…………“ただの人間”か」

 

「えっ……」

 

「渡さん、まさか貴方は……」

 

 五郎は小さな声で呟いた。鈴はそれを全く聞き取れなかったが、改造人間である竜馬の聴覚は、その呟きを完璧に聞き取っていた。

 五郎は両腕を上げて、扇子の端のように動かすと、両手を胸の前でクロスし、念じるように言葉を発した。

 

「剛力招来!」

 

 すると、両手から生糸状の線が現れ、五郎の全身を包むかのように繭を形成し、その繭から芋虫のような見た目の戦士が現れた!

 

「!?」

 

「わ、渡さ…」

 

 二人は五郎の変身した姿に呆然となったが、すぐに平静さを取り戻し、近くの岩陰に隠れた。

 

「な、何者だお前は!」

 

 モスキメラが変身した五郎に問いかけると、五郎は構えをとって答えた。

 

「お前達のような人々の平和を脅かす悪魔から人類を守る戦士、サナギマンだ!」

 

「サナギマンだと……面白い、我らオリンポスに楯突くとはいい度胸だ。者共、サナギマンを殺せぇ!」

 

「ゲェーッ!ゲェーッ!」

 

 モスキメラの号令と共にスパルタ兵がサナギマンへ一斉に襲いかかった。

 

「フン!トォッ、!トォッ!」

 

 しかし、サナギマンは持ち前の怪力でスパルタ兵を圧倒した。

 

「すごい……」

 

「なんて強さなの……」

 

 岩陰に隠れていた竜馬と鈴は、サナギマンの奮戦ぶりに圧倒されてその場を動けずにいた。

 襲いかかるスパルタ兵に対し獅子奮迅の活躍を見せるサナギマンだが、そこへモスキメラが乱入した。

 

「ええい不甲斐ない奴らめ!こうなればこのモスキメラの火炎攻撃をくらえ!エケケケケケケケ!」

 

 モスキメラは口から火炎放射をサナギマンに浴びせた!

 

「うっ!?くうぅぅっ!?」

 

 火炎放射をモロに受けたサナギマンの身体に炎が燃え移った。

 

「エケケケケケケケ!どうしたさっきまでの勢いは?お次はこれだ!」

 

 モスキメラは苦しむサナギマンを嘲笑うと、今度は口から粘着質や糸を吐き出してサナギマンの首を絞めつけた。

 

「ぐっ!?く、苦しい……」

 

 首を絞められ苦しむサナギマンを、二人は岩陰でじっと見ていた。

 

「このままじゃ渡さんが……」

 

「…………」

 

 鈴はサナギマンの身を案じるが、竜馬はサナギマンの腰に巻かれたベルトのバックルは、着々と光を灯しているのに気付いた。

 サナギマンは、ベルトのゲージが頂点に達する時、彼はイナズマンへの変身が可能になる。

 だがその間、サナギマンは敵の攻撃にじっと耐えねばならないのだ。

 サナギマンは待つ。イナズマンに成長できる時を、ひたすら待ち続けるのだ!

 

(おそらく渡さんは今の姿では真の力を発揮できない。だから敵の攻撃に耐えているんだ。だが、このままではいずれ限界がくる……なら!)

 

「鈴ちゃん。ここでじっとしているんだ。いいね?」

 

「えっ?ちょ、竜馬さん!?」

 

 竜馬は岩陰から飛び出すと同時に上に羽織ったジャケットを脱ぎ捨て、そのまま変身ポーズを取った!

 

「変っ…身!」

 

 竜馬の音声を認識したケイモーンがメインダイナモの防御シャッターを展開し、大気を吸収し始めた!

 改造人間立花竜馬は、変身ベルト「ケイモーン」の風車ダイナモが大気圧を吸収することで、仮面ライダーメーデンに変身するのだ!

 

「トオォォォッ!」

 

 メーデンに変身した竜馬は、そのまま手刀でモスキメラの糸を断ち切った。

 

「エケェッ!き、貴様は!?」

 

「き、君は……」

 

 モスキメラは一歩下がって構えを取り直し、サナギマンは首に巻きついた糸を解くと、突然現れたメーデンに視線を向けた。

 メーデンはサナギマンの前に立つと、名乗りを上げた。

 

「俺の名は、仮面ライダーだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 窮地のサナギマンを間一髪のところで助けた仮面ライダーメーデン。

 果たして二大ヒーローは、強力怪人のモスキメラにどう立ち向かうのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 




次回予告
 さぁ、3話にかけてお送りしたモスキメラとの戦いもいよいよクライマックス。
 果たしてサナギマンとライダーメーデンの二大ヒーローはモスキメラに勝てるのだろうか?
次週マスクドライダー・ストラトス「火を吹く毛虫怪人モスキメラ後編」にご期待ください!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第16話「火を吹く毛虫怪人モスキメラ:後編」

 お待たせいたしました。中国篇遂に完結です。
 結局8月いっぱいまでこの話を引っ張ってしまいました。
 これも僕の編集力の無さが故です。本当に申し訳ありません。
 では、どうぞ!



前回のあらすじ

 モスキメラの追跡を辛くも逃げ切った立花竜馬と凰鈴音は、山の中の洞窟に身を潜めていた。

 その中で、竜馬は鈴に口外しないことを条件にして、今までの経緯を打ち明けた。

 その洞窟で離れ離れになっていた渡五郎と再会した鈴だが、そこへモスキメラが乱入した。

 変身しようとする竜馬を遮るかのように、五郎はサナギマンに変身した。

 オリンポスと戦うサナギマンだが、モスキメラの攻撃で劣勢を強いられてしまう。

 窮地のサナギマンを助けるべく、遂に竜馬は変身した!

 

 

 

 

 

 

 

 

「エケケケケケケケ!そうか、貴様があの仮面ライダーか!これは歯応えのある獲物だ!こうなれば貴様等の首をわが勲章にしてくれる!エケケケケケケケ!」

 

 モスキメラはメーデンに対し口から火炎弾を発射した。

 

「危ない!」

 

 サナギマンとメーデンは向かってくる火炎弾をギリギリのタイミングで避けた。

 しかし、火炎弾はまるで生き物のように軌道を変えたのだ。

 

「何!うわぁっ!」

 

 火炎弾はメーデンの胸部に直撃し、コンバーターラングに黒い煤ができた。

 

「ライダー!大丈夫か!?」

 

 サナギマンが呼びかけると、メーデンは胸を抑えながら立ち上がった。

 

「くっ!これは……」

 

「エケケケケケ!このモスキメラの火炎弾からは逃げられはせん!この火炎弾は俺のテレキネシスで自由自在に操ることができるのだ!」

 

「テレキネシスだと!?」

 

「次はお前だサナギマン!死ねぇ!」

 

 モスキメラは再び火炎弾を飛ばすと、サナギマンへ誘導した!

 

「サナギマン!逃げろ!!」

 

「渡さん!」

 

 火炎弾がサナギマンに当たる直前、ベルトのゲージが頂点に達した!

 サナギマンは、ベルトのゲージが頂点に達する時、彼はイナズマンへと変身するのだ!

 

≪推奨BGM:チェスト!チェスト!イナズマン≫

 

「超力招来!」

 

 サナギマンの掛け声と共にサナギマンの外殻が爆発四散し、その中から水色の戦士が姿を現した!

 

「ゼーバー・逆転、チェースト!」

 

 水色の戦士はベルトの脇に装着された携帯電話ほどの大きさの機器を掲げると、機器の突起部が閃光を発した。

 すると、火炎弾は突如軌道を変えて、モスキメラの許へ戻っていった!

 

「な!?ば、バカな!?俺のテレキネシスが反射されただと!?エケーッ!」

 

 モスキメラは再び火炎弾を発射して戻ってきた火炎弾を相殺した。

 

「あ、貴方は一体……」

 

 メーデンが水色の戦士に呼びかけると、水色の戦士は名乗りを上げた。

 

「自由の戦士、イナズマン!」

 

「イナズ……?」

 

「マン?」

 

 鈴とメーデンは首を傾げるが、モスキメラはその名を聞いて突然怯んだ。

 

「い、イナズマンだと!?あの新人類帝国ファントム軍団とデスパー軍団をたった一人で壊滅させたというあのイナズマンか!?」

 

「モスキメラ!罪もない人々を襲う貴様の残虐な所業、このイナズマンが許さん!チェースト!」

 

 イナズマンはジャンプすると、メーデンの側に着地した。

 

「イナズマン。貴方は……」

 

「ライダー、詳しい話は後だ。まずはこいつ等を倒すぞ!」

 

「は、はい!」

 

「よし行くぞ!チェースト!」

 

「トオォォォッ!」

 

 二人は同時に跳躍すると、モスキメラの近くに着地した。

 

「おのれぇ!こうなれば小細工は無用だ!まず貴様達を血祭りにあげてからあの小娘を火炙りにしてくれる!エケケケケケケケ!」

 

 モスキメラは構えをとって二人に襲いかかるが、イナズマンとメーデンは軽く受け流した。

 

「トォッ!トォッ!トォッ!」

 

「タァッ!タァッ!タァッ!」

 

 メーデンとイナズマンはモスキメラに対し交互に拳打を食らわせていった。

 

「エケェッ!?」

 

 モスキメラはそのコンビネーション攻撃で洞窟の外に追いやられた。

 二人もそれを追って、洞窟の外に出た。

 すると今度は洞窟の外で待機していたスパルタ兵たちが二人に襲いかかった。

 モスキメラは二人の相手をスパルタ兵に任せて逃走した。

 

「くそ!しつこい奴らだ!このままでは逃げられる!」

 

「ライダー、こいつ等の相手はイナズマンが引き受ける。君はモスキメラを追うんだ!」

 

「わかった!ジェットコンバーター起動!トオォォォッ!」

 

 メーデンはスパルタ兵の相手をイナズマンに任せ、ジェットコンバーターを起動して空高く飛翔した!

 

「ゲェーッ!ゲェーッ!」

 

 スパルタ兵たちはイナズマンに狙いを絞ると、マシンガンで攻撃した。

 

「無駄だ!その程度の攻撃はイナズマンには通用しないぞ!」

 

 しかし、イナズマンの肉体は銃弾を軽く跳ね除けた。

 

「今度はこちらからいくぞ!チェースト!」

 

 イナズマンは空高く跳躍すると、反撃に転じた。

 

「念力パンチ!」

 

「ゲッ!?」

 

「念力キック!」

 

「ゲェッ!?」

 

「念力チョップ!」

 

「ゲェーッ!」

 

 イナズマンは念力を込めた打撃攻撃でスパルタ兵達をなぎ倒していった。

 

「ゲェーッ!ゲェーッ!」

 

 しかし、スパルタ兵の数は多く、イナズマンを取り囲んだ。

 

「これではキリがない!よし、こうなったらあの技を使おう!」

 

 イナズマンは再びベルトの脇に装着された超能力増幅装置“ゼーバー”を取り出すと、それを上に掲げた。

 

「ゼーバー・イナズマン、フラッシュ!」

 

「ゲェーーッ!??!!?」

 

 すると、ゼーバーの先端部から稲妻状の光線が放射され、囲んでいたスパルタ兵を一網打尽にした。

 これぞイナズマンの必殺技、“ゼーバー・イナズマンフラッシュ”である!

 

「よし!」

 

 イナズマンは小さくガッツポーズをとった。そこへ、洞窟から鈴が出てきた。

 

「渡さん!大丈夫!?」

 

「あぁ、大丈夫だ。それよりもモスキメラを追っているライダーが心配だ。早く彼と合流しなければ……」

 

「でもどうやって行くのよ?」

 

「それは問題ない。ゴー、ライジンゴー!」

 

 イナズマンが手を掲げてそう言うと、明後日の方向から独特のカラーリングが施された車が飛んできた。

 

「く、車が飛んでる!?ていうか何あの色!?」

 

「そこは気にしないでいいよ。さ、乗って!」

 

「う、うん!」

 

 鈴とイナズマンはライジンゴーに乗ると、そのままメーデンの後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、仮面ライダーメーデンは遂にモスキメラを追いつめていた!

 

「見つけたぞモスキメラ!」

 

 メーデンはBシグナルとマルチセンサーの反応を辿ることでモスキメラの逃走経路を割り出し、最高速度で空中から追跡し、とうとう目視できる距離まで詰め寄ったのである。

 

「ええい鬱陶しい奴だ!これでもくらえ!」

 

 モスキメラは口から火炎弾を乱射するが、空を自由自在に飛ぶことが出来るメーデンは、その尽くをヒラリと躱してモスキメラの眼前に着地した。

 

「モスキメラ!お前はこの仮面ライダーが倒す!」

 

「ええい煩い!死ねライダー!」

 

 モスキメラは格闘攻撃でメーデンに襲いかかるが、メーデンはそれを軽く受け流し、反撃に転じた。

 

「トォッ!トォッ!トォッ!」

 

「エケェッ!?」

 

 メーデンの鋭い拳打と蹴り技の前に、断崖に立たされたモスキメラの身体は遂によろめいた。

 

「トオォォォッ!」

 

 モスキメラが怯んだ隙を見計らうと、メーデンは空高く跳躍し、ケイモーンの風車ダイナモがエネルギーを吸収した!

 

「ライダー、フライングパァンチ!」

 

 メーデンは滑空しながらモスキメラの身体にエネルギーを集束させた左腕を叩き込んだ!

 

「エケェェェーーーッ!!?!?」

 

 モスキメラはその鉄拳を喰らって吹っ飛ぶと、光が差さない崖下へと転落した。

 奈落へと転落するモスキメラを見つめたメーデンの心に、小さな不安がよぎった。

 

(妙だ。ライダーパンチは確実に奴の致命傷になった筈……しかしなんだ?この違和感は……)

 

「竜馬さぁーん!」

 

「ライダー!」

 

 考え込むメーデンだが、遠くから自分を呼ぶ声を耳にして、その方向に目をやった。

 そこには、後から追ってきていたイナズマンと鈴が駆け寄ってきていた。

 

「竜馬さん!あのオバケ毛虫は!?」

 

「大丈夫。奴は倒したよ」

 

「ライダー……」

 

 イナズマンはスッと右手を出した。メーデンはその意図を察し、無言で右手を出して握手をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――現在、IS学園本校舎総合受付近くの自動販売機前

 

「――――――というわけで、三人で下山した後、二人と別れたんだ」

 

 竜馬は全てを話し終え、肩の荷を下ろしたかのようにため息をついた。

 千冬は竜馬が自分より先に鈴に事の全てを話していたことに衝撃を受けたが、それ以上に仮面ライダー以外にもオリンポスと戦う戦士がいたことに衝撃を受けた。

 そんな中、竜馬は空になったアルミ缶をゴミ箱に捨てると、腕を組み考え込んだ。

 

「だけど、どうも気にかかる」

 

「モスキメラのことか?」

 

「あぁ。あの時、確かに僕のライダーパンチは奴に対して致命傷を負わせた筈だった。でも……」

 

「でも……?」

 

「あの時、モスキメラの顔は一瞬だけ、邪悪な笑みをを浮かべたような気がするんだ」

 

 竜馬は真剣な表情で上を向いた。すると……

 

「なぁに辛気臭い顔してるのよ!」

 

「うぉっと!り、鈴ちゃん。手続きは終わったのかい?」

 

「まぁね」

 

 パァン、と、鈴が竜馬の背中を叩いた。どうやら手続きが終わったらしい。

 

「あの後四川省で怪物の噂がないってことは、倒したって証でしょ。もっと自分を信じなきゃ!」

 

「凰……」

 

「それに、たとえ化けて出たとしても、一度戦った相手に遅れをとる竜馬さんじゃないでしょ?」

 

「それもそうだね」

 

 鈴と竜馬は互いに笑顔でサムズアップを交わした。

 その光景に、千冬も自然と笑顔になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 日本の、人里離れた奥地。

 ここに、世界征服を企む悪の秘密結社オリンポスの秘密基地があった。

 基地内の司令室に、一人の男が“何か”の到着を待っていた。

 その男は、以前織斑千冬の拉致しようとしたカメレオンキメラの作戦を遠くから監視していたあの紳士であった。

 加熱式たばこを吸う男の前に、スパルタ兵が入室してきた。

 

「ゲェーッ!タナトス様、モスキメラの繭が中国支部より到着しました!」

 

「すぐここへ持ってこい」

 

 “タナトス”と呼ばれた紳士の指令を聞いたスパルタ兵が退室すると、程なくして司令室に人間大の繭が運ばれた。

 それは、一年前に仮面ライダーメーデンに倒されたモスキメラの繭であった。

 

「よし……」

 

 紳士はクルリと一回転した。

 その瞬間、紳士は別の姿に“変身”していた。

 頭部は髑髏を模したマスクに、紳士服の上に黒いマントを羽織った、まるで“死神”のような姿へと変身したのだ。

 死神は右手に巨大な鎌を出現させると、その刃をモスキメラの繭に向けた。それと同時に、司令室を照らしていた照明が消えた。

 

「モスキメラよ。貴様は一度は仮面ライダーに敗れ、奈落の底へと消えた。しかしそれは貴様が未だ不完全な幼虫形態だったからだ。その証拠に貴様は繭の中に篭り、戦いの傷を癒すと同時に、更なる力を蓄え、仮面ライダーに対し復讐の闘志を滾らせている。目覚めよモスキメラ!この死神タナトスの名において、その完全なる姿を解き放つのだ!」

 

 呪詛の如く紡がれた言葉と同時に、青い稲妻状の光線が鎌から放たれ、繭に直撃した。

 すると、繭が激しい閃光を放ち、その幕を破り一体の怪人が姿を現した!

 

「ガガガガガガガガ!」

 

 それは、モスキメラが成虫へと完全変態した姿であった!

 

「フフ、フハハハハハハ!」

 

 そして、司令室に悪魔の笑い声がこだました……

 

 

 

 

 

 

 

 

 倒したと思われたモスキメラだったが、繭となって一年間と言う長い眠りののち、死神タナトスの儀式によって成虫へと完全変態を遂げた。果たして仮面ライダーメーデンは、成長したモスキメラに勝てるのだろうか!?

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 




次回予告(推奨BGM:仮面ライダーV3予告BGM)
 新たに二組のクラス代表となった鈴は、来週に迫ったクラス代表対抗戦に先駆けて、一夏に対し宣戦布告を告げる。
 その影で、オリンポスの幹部タナトスは恐るべき計画を進めていた。
 一方その頃、中国で戦っていた一人の戦士が、久し振りに故国の土を踏んでいた!
次回マスクドライダー・ストラトス「セカンド幼馴染襲来!それぞれの思惑」にご期待下さい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第17話「セカンド幼馴染襲来!それぞれの思惑」

 遂に9月に入りました。この月で原作1巻までは終わらせたいです…


 人里離れた奥地に建てられたオリンポスの日本支部――――――

 その基地内部の工場に、成虫形態に成長したモスキメラと人間態に戻ったタナトスが歩いていた。

 工場では、ISによく似た“何か”が製造されていた。

 

「見ろモスキメラ。これがわがオリンポスが開発した新兵器。その名も“タロス”だ」

 

「おお、これがタロスですか」

 

「そうだ。性能は現行の主力である打鉄やラファール・リヴァイヴを遥かに上回り、第3世代とほぼ同等だ。しかし、未だこのタロスは未完成。そこで近日中にIS学園で開催されるクラス代表対抗戦で試験的に投入し、戦闘データを入手する」

 

「しかし、IS学園にはあの仮面ライダーがいるとの事ですが…」

 

「心配はいらない。こっちだ」

 

 タナトスは促すように、モスキメラを案内した。

 案内した部屋には、これまた異質な存在が訓練を受けていた。

 その外見はオリンポスの戦闘員であるスパルタ兵に酷似していたが、頭部マスクがゴーグル付のガスマスクになっている他、所々にアーマーが施されていた。

 

「これはスパルタ兵ですか?」

 

「いや、ただのスパルタ兵ではない。これは私が厳選し、訓練と強化ゲノム手術を施した強化タイプのスパルタ兵、通称“ケルベロス”だ」

 

「ケルベロス……“猟犬”ですか」

 

「如何に仮面ライダーといえど、この多勢のケルベロスにかかればひとたまりもあるまい」

 

 二人は司令室に戻ると、タナトスは作戦の説明を始めた。

 

「皆も知っていると思うが、来月未明、IS学園では学年別クラス代表対抗戦が執り行われる。この催しは6月に行われるであろう学年別トーナメントの予行演習を兼ねると同時に、今年入学したIS学園生徒の実力指標を決める催しだ。このクラス対抗戦にタロスを投入し、この際一挙にIS学園を壊滅させるのが今回の目的だ。しかしこのIS学園には、あの仮面ライダーが潜入している。そこでケルベロスを使ってライダーを誘き寄せ、その間にタロスを学園内に侵入させる。モスキメラ!この作戦の実働指揮をお前に任せる!」

 

「ははっ!」

 

 モスキメラは一礼すると、指令室を退室した。

 それと同時に、獅子のレリーフが点滅した。

 

『タナトス。わかっていると思うが、本作戦の真の目的は、来る“死の福音作戦”をライダーに悟らせない為の陽動に過ぎない』

 

「わかっております。だからこそ、この作戦が成功すればライダーを暫くIS学園に釘付けにさせることができます」

 

『一ヶ月後には北米支部から“シルバリオ・ゴスペル”の詳細情報がこの日本支部に届く。それまで何としてもライダーや“他のヒーロー共”に気取られるな。よいな』

 

「ははっ!」

 

 レリーフの光が消えると、指令室は暗黒に包まれた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのような事が進められているとはいざ知らずのIS学園では……

 

「ねぇねぇ織斑君。今日二組に転校生が来るんだって」

 

「転校生?この時期にか?」

 

 その日、1組の教室は2組に来たという転校生の話題で持ちきりであった。

 

「そう、なんでも中国の代表候補生なんだって」

 

「ふーん…」

 

「あら、私の存在を危ぶんでの転入かしら?」

 

 そこへ、セシリアが腰に手を当てながら入ってきた。

 あのクラス代表決定戦の後、セシリアは一夏や竜馬に対する態度を改め、親しい友人として接するようになっていた。

 

「別にこのクラスではなく二組の話だろう?騒ぐことでもない」

 

 さらにそこへ箒がやってきた。

 

「どういうやつだろうな」

 

「む、気になるのか?」

 

「ん?まぁ、少しはな」

 

「はぁ…」

 

 一夏は聞かれたことに素直に答えたら、箒は溜息をついた。その態度に、一夏は首を傾げた。

 そこへ、教材を手に持った竜馬が現れた。

 

「やれやれ。それより一夏くんは他人のことを気にしている暇があるのかい?」

 

「あ、りょ…立花先生。おはようございます」

 

「あぁ、今は今まで通りでいいよ。何せまだHRには時間があるからね」

 

「あ…す、すいません」

 

「いや、気にしなくていいよ。それより今話していたのは、二組に転入した子の話だよね?」

 

「そうですが…もしや立花先生は何かご存知ですか?」

 

「うーん、知らないと言えば嘘になるかな。それより一夏くん。今日の放課後にアリーナでクラス対抗戦に備えた実戦的な訓練を行うから、僕とオルコットさんと一緒にアリーナに来てくれ」

 

「えっ?どうしてですか?」

 

「現状一組(このクラス)で専用機を持っているのは君とオルコットさんだけだからね」

 

「あ、なるほど」

 

 一夏はすぐに納得するが、箒は頬を膨らませて露骨に不機嫌な表情をした。それを見た竜馬は、さらに付け足した。

 

「その代わり、明日は箒ちゃんと僕の三人で打ち合いを行うから」

 

「竜馬さんも竹刀を持つんですか!?」

 

「ん?そうだけど?」

 

((い、嫌な予感しかしない……))

 

 一夏と箒は、心の中で念仏を唱えたという……

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………あれ?あたしの出番は?」

 

 ごめん。書いてたら鈴ちゃんの出番なくなっちゃった。(´・ω・`)

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、羽田空港国際線ターミナルにて――――――

 

「…………おっせぇなぁ…」

 

 腕時計で時刻を何度も確認する一人の女性が、ある人物の到着を待っていた。

 その顔は、女性には似つかわしくない苛立ちの表情が目立った。

 その苛立ちは、その人物の搭乗している便が遅延していたのが原因であった。

 当初、その人物は8:30着の香港発羽田便に乗っていたのだが、その便が天候の影響で大幅に順延してしまい、羽田到着が30分遅れの9:00になってしまったのである。

 苛立つのも無理はない。

 

「こんな事なら喫煙室で煙草の一服でも吸っとくんだったぜ……」

 

「やれやれ、そいつぁ申し訳ないね」

 

「っ!?」

 

 背後からの唐突な声に驚いた女性は、後ろを振り向いたのち、パッと2間ほど退いた。

 そこには、紺色のジャケットにハンチング帽を被った青年がそこに立っていた。

 

「お、驚かすなよ!寿命が縮むじゃねぇか!」

 

「ほほぉ~今をときめくインターポールの美人捜査官殿はドッキリに弱いとはね。これは新発見だ」

 

「茶化すな!全く…」

 

 女性は少し紅潮した顔を隠すようにそっぽを向いた。青年はちょっと気まずそうな顔をして、頭をかいた。

 

「お〜い!」

 

 するとそこへ、灰色のジャケットを着た初老の男性が二人に呼びかけてきた。

 

「おお!お前も来ていたのか!」

 

「相変わらず元気そうだな!」

 

 二人の男性は握手を交わした。どうやら古い付き合いらしい

 

「ま、再会の喜びは後にして、例の件だが、情報は確かなのか?」

 

 青年は女性に確認すると、女性はスマートフォンを取り出して情報を確認した。

 

「更識の当主からの情報だ。恐らくは間違いないだろう」

 

 すると、初老の男性は何かを思い出したかのように言いだした。

 

「更識といえば、現当主が通っているIS学園には、“()()()()()”がいるって聞いてるが…」

 

「ああ、そういやそうだったな」

 

 青年はそれを指摘すると、二枚の写真を取り出した。

 

「ま、会えたら会えたで少しお話でも聞きますか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 青年が持っている写真に写っていたのは、大勢のスパルタ兵を相手に無双する仮面ライダーメーデンと、IS学園で教鞭を取っている立花竜馬の姿だった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 刻々と迫るクラス対抗戦の陰で蠢くオリンポスの恐るべき企み!

 はたして“死の福音作戦”とはなにか?

 そして日本にやってきたこの青年とそれを出迎えた二人の人物は、一体何者なのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 




次回予告≪推奨BGM:見よ!仮面ライダーストロンガーインストversion(次回予告仕様)≫

 クラス対抗戦の準備に追われる竜馬の前に、謎の青年が現れる。
 はたして青年の正体は何者か?

 次回「敵か味方か?謎の青年」にご期待下さい。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第18話「敵か味方か?謎の青年」

 どうも、投稿は9月だけど、執筆時点では8月な第18話です。
 今回は遂にあの男が登場!多分前回の話でもう誰かは察している人は多いと思います。
 ちなみに本作での箒は丸いです。ツンツンしてません。そっちの方が好きだという人は戻るボタンを押してください。
 では、どうぞ!



 クラス対抗戦まで、後数日と迫ったある日のこと――――――

 

「ふん!やぁっ!たぁっ!」

 

「トォッ!トォッ!トォッ!」

 

 その日の放課後、立花竜馬は一夏と久しぶりに空手の稽古を行っていた。

 既に知っている読者も多いと思うが、立花竜馬は極真空手の使い手で、過去に高校の空手大会で優勝した実績を持っている。

 そんな彼は教えるのも得意で、時折一夏に対しこのようにして稽古をつけている時もある。

 

「ハァァァッ!」

 

「甘い!トォォォッ!」

 

 一夏の正拳突きを軽く受け流すと、竜馬はがら空きの脇に蹴りを入れた。

 

「ウワッ!」

 

 一夏は何とかそれを躱したが、膝をついてしまった。

 

「ふぅ…よし、今日はここまでにしよう」

 

「あ、ありがとうございました!」

 

 一夏は胴着を整えると、立ち上がって竜馬に一礼した。竜馬も、それを返すように一礼した。

 

「お~い!」

 

 そこへ、箒と千冬が飲み物を持って現れた。

 

「お疲れ様一夏。ほら、麦茶だぞ」

 

「あ、すまねぇな箒」

 

「竜馬、稽古もいいが、教師としての業務も忘れるなよ。ほら」

 

「ああ、いつもごめんね千冬」

 

 二人はペットボトルを受け取ると、それを勢いよく飲んだ。

 

「しかし、竜馬さんは昔と比べてかなり動きにキレが増してますね。殺されるかと思いましたよ」

 

「ふふ、伊達に武者修行に出ていたわけじゃないからね」

 

 竜馬は空白の三年間について、一夏や箒に

 

「世界各国の空手道場を渡り歩く武者修行の旅に出ていた」

 

 と説明していた。

 一夏と箒は取り敢えずは納得してくれたものの、それでも疑いは晴れない。

 だがそれよりも竜馬にとって気がかりなのは、オリンポスの動向だった。

 三日前、竜馬はIS学園の近郊で上空を飛行する人間大の蛾が目撃されたというSNSを見かけた。

 その投稿には空を飛ぶ茶色い物体を撮影した写真が添付されていた。

 竜馬はその物体がかつて中国で倒したモスキメラが成長したものではないかと考察していた。

 

(確か…あの時僕が倒したモスキメラはチャドクガの幼虫に近い姿をしていた。チャドクガは完全変態型の昆虫…もしオリンポスが完全変態を可能にしたキメラボーグを作り上げたのならば、あの時僕はモスキメラを倒し損ねたということになる…くそっ、僕としたことが…)

 

 竜馬は神妙な顔でそんな事を考えていると、それを不思議に思った一夏と箒はジッと竜馬の顔を見つめていた。その光景を見た千冬は竜馬の肩をゆすった。

 

「おい、竜馬」

 

「あっ!?ご、ごめん。少し考え事をしていてね…」

 

「考え事……ですか?」

 

「うん。こうも癖の強い生徒たちを相手にしているとね」

 

「は、はぁ……」

 

 箒は少し気の抜けた顔をしたが、一夏は千冬の少し神妙な顔を一目で見てそれが嘘だと直感で感じた。

 

(違う……竜馬さんと千冬姉は俺達に隠し事をしている…だって竜馬さんは嘘をつくのが下手だ。なんだ?竜馬さんは何を隠しているんだ……?)

 

 一夏は竜馬に疑いの目を隠さずにはいられなかった。

 その視線に気づいた竜馬は、膝を叩いた。

 

「さて!もうすぐ日も沈むから、そろそろ寮に戻ろうか!明日は箒ちゃんと一緒にISを使った実戦訓練を行うから、アリーナに来てくれ」

 

「えっ!?わ、わかりました!」

 

「うん!じゃ、また明日!」

 

 竜馬は千冬と共に寮に足を進めた。その光景を、一夏はただ見つめていた。

 

「……箒」

 

「ん?どうした一夏?」

 

「竜馬さん、変わったな」

 

「考えすぎではないか?確かに教職員というのはかなり精神的にくるらしいから、それであんな顔をするんじゃないか?」

 

「そうかもしれないけど、何かが違うんだ」

 

「“何か”とは、何だ?」

 

「ああ、なんか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんか、無理して笑ってるようにしか見えないんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日――――――

 その日、竜馬と千冬は一限目の授業を真耶に任せ、生徒会長である更識楯無と共にとある人物と面談することになった。

 その人物は最近発生している失踪事件を調べているフリーカメラマンとのことで、その手掛かりを探っている内に二人に行きついたというのだ。

 当初二人はその人物がオリンポスの人間ではないかと考えていたが、楯無の紹介もあって、仕方なく会うことにしたのである。

 

「しかし、あの楯無が記者と紹介するとはな…」

 

「更識の人間なのかな?」

 

「なくはないな…と、ここだな」

 

 二人は話しながら、面談室のドアの前に着いた。

 竜馬はドアをノックした。

 

「どうぞ」

 

 部屋から声が聞こえた。男性の声だ。

 

「失礼します。遅くなりました」

 

 面談室に入ると、そこには紺色のジャケットを着た青年が楯無と面を向かって座っていた。

 

「初めまして。立花竜馬さんと織斑千冬さんですね?」

 

「ええ、そうですが……」

 

「ああ、すみません。自己紹介がまだでしたね。私はフリーカメラマンの一文字隼人と言います」

 

「あ、これはご丁寧に…」

 

 青年――――――一文字隼人は名刺を出すと、竜馬はそれを受け取った。

 名刺には、オートバイとバッタを組み合わせたような「T」と赤字の「R」が組み合わさったエンブレムがプリントされていた。

 

「ああ、そのプリントは私がよく贔屓にしていたレーシングクラブのエンブレムですよ」

 

「レーシングクラブ…ですか?」

 

「ええ、聞けば立花先生はアマチュアのロードレース大会で優勝したとか…」

 

「ははは、あくまでアマチュアですよ。こう見えて私はモトクロスレースが苦手でして…」

 

「ほほぉ、それは耳寄りな情報を頂きました」

 

 竜馬と隼人がそんな談笑をしていると、楯無が本題を切りだしてきた。

 

「すみません隼人さん。そろそろ本題を…」

 

「ああ、すみません。御二方もお掛けください」

 

「ああ、では遠慮なく…」

 

 三人はソファに腰掛けると、早速本題を切り出した。

 

「さて、現在私は国内で相次いで発生している失踪事件について調査しているのですが…その件で楯無さんにお話を伺っていたのですが、そこで貴方の名前と貴方を引き取っていた滝正春博士の名前が出てきまして」

 

「…なるほど、確かに立花先生は生まれてすぐ両親を失い、滝博士に引き取られましたが…博士が失踪したのは13年も前の話ですが?」

 

「そうです。それについては敢えて私も聞くつもりは御座いません。ですが織斑先生、貴女は確か…先月怪しい連中に攫われかけたところを立花先生に助けてもらったとか…」

 

「……」

 

 隼人の言動に、竜馬は疑念を持たずにはいられなかった。

 

(この人は何処まで知っているんだ?…“オリンポス”について感づいているのだろうか…いや、そんな事はありえない…であれば、奴らについて話すべきだろうか…いや、駄目だ。話したとしても信じてはくれまい…たとえ信じてもらえても、絵空事として世間は見るだけだ。それが奴らの…“オリンポス”の非常識さだ)

 

「立花先生」

 

 心の中で葛藤していた竜馬に、隼人が話を振ってきた。

 

「え?な、なんでしょうか?」

 

「織斑先生を襲った奴らについて、何か知っている事は御座いませんか」

 

「…わかりません。あの時は幼馴染である織斑先生を助けるのに必死でしたから」

 

「しかし、人相とか言語くらいは…例えば、そんな些細な事から国籍などの目星はつきませんか?私はこの事件を国際的な事件だと思っているのです」

 

 隼人は卓上に置かれたコーヒーカップに手を取り、それを啜った。

 その一連の動作を見た竜馬は、ある事に気付いた。

 それは、隼人の手の甲に何かの傷跡があったからだ。

 それも、手術の傷跡であった。

 

(まさか…)

 

 竜馬は何かを感じ取ると、即座に立ちあがった。

 

「すみませんが、今日はこのあたりでよろしいでしょうか?そろそろ二限目の授業が始まるので……思い出したら、また連絡します。織斑先生、そろそろ行きましょう」

 

「え…あ、ああ。そうだな」

 

「…そうですか。では、そういうことに」

 

「更識、一文字さんを送ってくれ」

 

「わかりました。」

 

 竜馬は千冬と一緒に面談室を退室した。

 竜馬と千冬は面談室からある程度離れた、人気のない場所まで歩いた。

 

「どうしたんだ竜馬」

 

「千冬…あの一文字というカメラマンの手の甲に、手術跡があった」

 

「なに……」

 

「もしかしたら、彼は…」

 

「…わかった。束に連絡を取ってみよう」

 

「うん。でも、束には僕から連絡する」

 

「そうか」

 

 二人はそんなやり取りをしていると、チャイムが鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 同じ頃、面談室に残った隼人と楯無もまた、竜馬について話し合っていた。

 

「やれやれ、ガードが堅いねぇ。流石は世界最強(ブリュンヒルデ)とその彼氏といったところか」

 

「ならなんであの傷跡を見せたんです?」

 

「嫌なに、反応を確認したかったのさ。俺が“奴ら”の手先かそれとも…

 

 

 

 

 

 

 

 

“自分と同じ存在”なのかってのをな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 突然竜馬の前に現れたカメラマン、一文字隼人。

 はたして彼は何者なのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 




 もう次回予告思いつかない……
 はい、今回から次回予告やめて普通に後書き書きます。
 今回の一文字隼人との対面シーンは萬画版の隼人初登場回をオマージュしました。
 さて、次回から最初のヤマ場です!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第19話「怪人モスキメラ、死の二正面作戦!」

 どうも、原作にある話だと途端に執筆スピードが遅くなるピカリーノです。
 さて、遂に原作一巻の最後を飾るクラス代表対抗戦までやっと漕ぎ着けました。これも皆さんの応援あっての事です。
 では、どうぞ。


 立花竜馬と織斑千冬が、謎の青年一文字隼人と面談して二週間後……

 IS学園の第二アリーナでは、クラス代表対抗戦の第一試合が今まさに始まろうとしていた。

 対戦カードは、織斑一夏と凰鈴音という、はやくも注目も新入生同士の対戦であった。無論、観客席は満員で、会場入りできなかった生徒や関係者は、リアルタイムモニターで試合の模様を鑑賞するほどであった。

 しかし、その会場に立花竜馬の姿はなかった。

 その理由は、この日の朝にまで遡る……

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の早朝、立花竜馬は日課である朝のジョギングを行なっていた。それ自体は改造される前から行っていた日課であったが、竜馬は以前篠ノ之束からこのように指摘されていた。

 

「元々、りょーくんはスポーツマンとしても人並み外れた運動神経の持ち主だったけど、生体改造を施されたことがそれがさらに輪をかけて強化された。しかもそれは鍛えれば鍛えるほど強化できるよ」

 

 この指摘に基づき、竜馬はたとえ戦いがない時でも、このように自身の肉体に鍛錬を施すことで、その身体を地道に強化していたのだ。

 しかし、その過程で問題点が浮上しつつあった。

 

(確かに、かつての頃に比べて、僕の肉体は大幅に強化されている。しかし、問題は強化服の方だ)

 

 そう、それは強化服の性能限界が近づきつつあることであった。

 元々この強化服は、束がキメラボーグとしての能力を最大限に引き出す為の補助器具であった。しかし、成長する竜馬の肉体に、徐々に強化服は限界を迎えつつあったのだ。

 

(近いうちにケイモーンを束に渡しておく必要があるかもしれないね…その前に何事も無ければいいけど)

 

 竜馬にとって最大の懸念は、ここまで目立った動きを見せないオリンポスの動向だった。竜馬は、オリンポスがもし動くとすれば、このクラス代表対抗戦の前と予測していたが、奴らの動きはなかった。

 竜馬はそんな事を考えながら走っていた、その時だった。

 

「っ!?」

 

 刹那、竜馬に目掛けて猛スピードで何かが飛翔してきた。竜馬はそれを咄嗟の判断で躱すと、それは竜馬の眼前に刺さった。

 何かの正体は、矢文であった。

 竜馬は慎重に矢に結ばれた紙切れを解いて開き、その内容を確認した。

 

「…………っ!?」

 

 矢文には

 

『立花竜馬、いや仮面ライダー。お初にお目にかかる。私の名は死神タナトス。オリンポス日本支部を束ねる最高幹部だ。我々はこれよりこの日本に対し総攻撃を開始する。止めたければ本日10:00までにここより10km先の廃工場まで来るといい』

 

 と、書かれていた。

 

「オリンポス…遂に総攻撃を仕掛けてくるのか……」

 

 竜馬は直様寮長室に足を進めた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 寮長室に戻った竜馬は、直様千冬を起こし、秘匿回線で束を呼び出して作戦会議を行っていた。

 

『まっさかクラス代表対抗戦に総攻撃を仕掛けてくるとは…敵さんも大胆なことするねぇ』

 

「呑気なことを言っている暇があるか。束、この事を事前に察知できなかったのか?」

 

『流石の束さんもそこまでは予測できないよ。今までだってここ最近に発生した都市伝説的な事件をピックアップしてりょーくんに送ってただけだし』

 

「それに、あの時潰した要塞島からは何の情報も得られなかったからね」

 

『う~ん。しかし“タナトス”とはねぇ…』

 

「タナトス」とは、ギリシア神話に登場する『死』を司る神で、凡人の魂を冥界に運ぶ死神である。

 

「名前に関しては置いておいて、問題はこの文章の内容だね」

 

「ああ、しかも時刻を指定してくるとはな」

 

 文章に記載された時刻は、丁度クラス代表対抗戦の第一試合が開始される時間帯だった。竜馬はこの時点で、この矢文が罠であることが見抜いていた。しかし……

 

『だけど、ここまで露骨に罠ですよ~なんてわかるような内容を書いちゃうと、本当に日本(この国)を潰すつもりなんだろうね』

 

「あり得なくはないね」

 

「で、お前はどうするんだ?無視するのか?」

 

「…………」

 

『……りょーくん?』

 

 竜馬は目を瞑って考えていた。この矢文の内容そのものが、罠であることは明らか。しかし、もし本当に奴らが日本を総攻撃するなら、なんの罪もない大勢の人たちが、オリンポスの毒牙にかかってしまう。見捨てることはできなかった。

 

「……例え罠だとしても、オリンポスの非道を見過ごすわけにはいかない!」

 

「…ふ、お前らしいな」

 

『うんうん。それでこそりょーくんだね』

 

「千冬、対抗戦の事は任せる」

 

「わかった。万が一の時は特殊無線で連絡する」

 

『私も何か手伝うことはある?』

 

「現時点ではないけど、もしもの時には頼む」

 

『ほいほ~い』

 

 そう言うと、束は手を振って通信を切った。

 

「竜馬……」

 

 竜馬が立ち上がろうとしたその時、千冬が竜馬の腕を掴んだ。

 

「千冬……」

 

 千冬の行動に竜馬は少し戸惑ったが、掴んでいる千冬の身体が震えているのを察すると、その場に立ち止まった。

 

「……必ず帰ってこい。いいな」

 

 千冬は紅潮した顔を竜馬の耳元に近づけると、小声で囁いた。

 

「……ああ、必ず帰ってくる」

 

「竜馬……」

 

 竜馬はその囁きを確かに聞くと、震える千冬の身体を抱き締めた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、現在……

 管制室に佇む千冬は、アリーナの時計を見ながら試合開始の時を待っていた。

 

(にしても、この時期に攻めてくるとは…)

 

 一応、千冬は万一に備えて現場でオリンポスが|IS学園に攻めてきた際は、鈴に対応してもらう手筈となっているが、大事な生徒にそのようなことはできない。いざという時は、自分が竜馬が来るまでの間、時間稼ぎを行う覚悟を決めていた。

 

(杞憂であってほしいものだ……)

 

 千冬はそう言い聞かせると、この場にいない竜馬のことを想い、空を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の空は、暗雲が立ち込めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃立花竜馬は、単身指定された廃工場に来ていた。

 

「奴らが指定してきた廃工場はこのあたりの筈だ……」

 

 竜馬はMチャリオットから降りると、廃工場へ向かった。

 錆びついた扉を開けると、機材も何も置かれていない、まるで倉庫のような屋内が広がっていた。

 その光景は、竜馬の辛い過去を思い出させた。

 あの日、恩師を守れなかった、不甲斐ない自分を。

 竜馬は扉を開けたまま屋内に入り、中を見渡したが、人影を見つけることはできなかった。

 竜馬はさらに奥へ進もうとしたその時、突然工場の扉が勝手に閉まった。

 

「っ!?しまった!謀られたか!」

 

「ガガガガガガガガガ!待っていたぞ立花竜馬!いや仮面ライダー!」

 

 竜馬が再び扉を開けようとしたその時、背後から声が聞こえた。

 竜馬は声がした方向を向くと、そこにはSNSで見かけた蛾の怪物が黒ずくめの集団を引き連れて現れた!

 蛾の怪物の声に、竜馬は聞き覚えがあった。そう、あの時中国で倒したはずのモスキメラの声であった。

 

「その声はモスキメラ!やはり生きていたのか!」

 

「ガガガガガガガガガ!いかにもその通り!このモスキメラはチャドクガのキメラボーグ、貴様が戦ったのは俺の幼体に過ぎない!この姿こそモスキメラの真の姿なのだ!完全体へと進化した俺の前ではお前など敵ではない!」

 

「黙れ!何度蘇ろうと、お前達オリンポスの野望は僕が打ち砕く!」

 

「ふん!やれるものならやってみろ!“ケルベロス”!立花竜馬を殺せ!」

 

「!!」

 

 モスキメラの号令と共に、背後に引き連れていた黒ずくめ=ケルベロスは一斉に襲いかかった。

 

「フン!トォ!」

 

 竜馬は襲いかかるケルベロス達を難なく躱すと、一人に横蹴りを喰らわせた。

 

「……?」

 

「っ!?何!」

 

 しかし、ケルベロスは怯まず、ただ首を傾げた。竜馬はそれを見て、一旦距離をとった。

 

「コイツら、今までのスパルタ兵とは違う…」

 

「ガガガガガガガ!やっと気付いたか。其奴らは只のスパルタ兵ではない。スパルタ兵の中から厳選して更なる強化ゲノム手術を施した個体に強化服を纏わせ、特殊な訓練を施したスパルタ兵の中のスパルタ兵、その名も“ケルベロス”だ!」

 

「ケルベロス…猟犬か」

 

虫けら(ワーム)の貴様にはもってこいの相手だと思わんかね?」

 

 余裕綽々の態度を取るモスキメラに、竜馬は苛立ちを隠せなかったが、同時に疑念を感じ取った。

 

(妙だ。以前のモスキメラは己が筆頭になって相手と戦っていた。それが今回は手下に全てを任せている。なんだ?何か裏があるのか?)

 

「!」

 

「トォッ!」

 

 思案する竜馬だが、次々と襲いかかるケルベロスが、竜馬の思考を遮っていた。

 

「くそ!まず此奴らをどうにかしないとな!」

 

 竜馬はまず、眼前の敵に集中する事にし、ケルベロスに立ち向かった。

 その様子を見て、モスキメラはほくそ笑んでいた。

 

(ふふふ……そうだ、戦え仮面ライダー。それこそが我々の狙いなのだからな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、IS学園近くの森林に怪しい影が潜んでいた。

 影の正体は、オリンポスの輸送トレーラーであった。

 コンテナの中には、新兵器である3機のタロスが今か今かと出撃の時を待っていた。

 トレーラーの外側では、スパルタ兵達が周囲を警戒していたが、スパルタ兵の一人がトラック部分に向かった。

 トラック部分には、野戦帽を深々と被った男がどっしりとした態度で助手席に座っていた。

 

「ゲェーッ!報告します。立花竜馬が“陽動”に引っかかりました」

 

「……よし、これで準備は整った。時刻はどうだ」

 

「まもなく10時10分を回るところです」

 

「そうか……」

 

 野戦帽の男がトラックから降りると、その姿が一瞬にして怪物に変化した。

 その姿は、()()()()()()()()()()()()()()であった。

 

「これより、作戦を第二段階に移行する!」

 

「ゲェーッ!」

 

 怪物の号令と同時にコンテナが展開し、格納されていたタロスが順次に起動していった。

 

「ガガガガガガガガ…これでIS学園も終わりだ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 怪物=モスキメラは邪悪な笑みを浮かべ、作戦の成功を確信した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 立花竜馬とIS学園を襲うオリンポスの卑劣な作戦。

 果たして立花竜馬は、オリンポスの策略を切り抜くことができるのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 




次回予告
 我らの仮面ライダーメーデンを狙う、オリンポス本部が送った次なる使者は「毒蛾怪人モスキメラ」
 オリンポスの陽動作戦に引っ掛かった立花竜馬の運命は?
 そして、クラス代表対抗戦に突如乱入したオリンポスの新兵器「タロス」に立ち向かう織斑一夏と凰鈴音のコンビの活躍は?
 次週マスクドライダー・ストラトス「対決!クラス対抗戦(リーグマッチ)」にご期待ください!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第20話「対決!クラス対抗戦」

 どうも、パワプロ2018ではマイライフばっかやっててサクセスアイテムが徐々に宝の持ち腐れになりつつあるピカリーノです。
 今回はクラス対抗戦編の中編です。
 果たして仮面ライダーメーデンはオリンポスの二正面作戦を打ち破ることができるのか!?
 では、どうぞ!


前回のあらすじ

 いよいよ迎えたクラス代表対抗戦(リーグマッチ)当日の朝。いつもの日課である校内ジョギングを行なっていた立花竜馬にオリンポスの挑戦状が届く。

 その内容は、オリンポスによる日本列島総攻撃を宣言する内容であった。

 挑戦状が罠であることを承知しながらも、竜馬は学園を千冬に任せて単身廃工場に向かった。

 しかしそれは、オリンポスの陽動作戦であった。

 オリンポスの本隊は、既にIS学園の近くまで迫っていたのである……

 

 

 

 

 

 

 

 

 立花竜馬が、オリンポスの陽動部隊と熾烈な戦闘を繰り広げている中、ここ第二アリーナでも熾烈な死闘が繰り広げられようとしていた。

 試合開始の合図を待ちながら、一夏は鈴の纏っているIS『甲龍(シェンロン)』を眺めていた。

 

(すげぇ肩だな。あんなのにタックルされたらひとたまりもないな。それにしても“シェンロン”ねぇ…なんか七つのボールを集めたら降臨する願いを一つだけ叶える龍みたいな名前だな。よし、俺は“甲龍(こうりゅう)”と呼ぶか。同じ漢字だし)

 

 そんな事を考えていると、鈴がオープンチャンネルで話しかけてきた。

 

「ねぇ一夏」

 

「ん?なんだ鈴」

 

「竜馬さんから聞いたけど、あんた代表候補生に勝ったのよね?」

 

「ギリギリだけどな」

 

「ふぅん…本当かしらねぇ…」

 

「おい、なんだその意味深な言い方は」

 

「別に。でも、やるからには本気でいかせてもらうわよ」

 

「ああ、こっちも手加減はしねぇよ」

 

 互いに火花を散らし、二人の闘争心は滾りに滾っていた。

 そして、試合開始のゴングが鳴った。

 

「うおおおおっ!」

 

 最初に動いたのは一夏の方だった。一夏は瞬時に『雪片弍型』を展開するのと同時に瞬間加速(イグニッション・ブースト)で鈴との間合いを詰め、すれ違いざまに切り裂く。抜刀術の容量を応用したヒット&アウェイ戦法で、かつて現役時代の千冬が多用した戦法であった。

 一夏の鋭い居合斬りが鈴に襲い掛かるが、鈴もまた自身の武器である青龍刀型の近接武器である『双天牙月』でそれに対応した。

 

「全く!“蛙の子は蛙”とはよく言ったものね!それとも“蛙の弟は蛙”と言ったほうがいいかしら!」

 

「お前の《龍砲》を使われたくないからな!短期決戦でいかせてもらうぜ!」

 

「ちょ、なんであんた《龍砲》のこと知ってるのよ!?」

 

「竜馬さんに教えてもらった!」

 

「また竜馬さん!?教えるなって言ったのに!」

 

 鈴は舌打ちしながらも、一夏の鋭い斬撃になんとか対応していた。形勢としては、若干一夏の方に傾いていたが、実際には五分五分といったところであった。

 

(まったく、これがISを動かしてまだ一月の動きだって言うの?これじゃ龍砲を撃つ暇もないじゃない!なんとか隙を見つけないと……)

 

(鈴の奴、的確に俺の斬撃をガードしてきやがる……これじゃ決定打に欠ける…《零落白夜》を使うべきか?いや、アレを使うにはまだ早い。もう少し様子を見るべきか……)

 

 一夏のIS《白式》の武器である《雪片弍型》には《零落白夜》と呼ばれる単一仕様能力(ワンオフアビリティー)が存在する。これは現役時代の千冬が使用していたIS《暮桜》の武器である《雪片》と同じ“バリーア無効化攻撃”を行う事が可能である。しかし、この能力は大量のSE(シールエネルギー)を消耗する為、まさに一撃必殺に特化した能力なのだ。

 

(だが、このままでは形勢はいずれ鈴に傾く!なら……)

 

≪推奨BGM:Theme from"A Fistful of Dollars"(荒野の用心棒より)≫

 

 一夏は決意を固めると、一旦距離をとり、鈴もそれに呼応して一旦退がった。

 実の所、この時こそ鈴が龍砲を放つ絶好の機会だった。しかし、鈴にはそれができなかった。それは、一夏の放つ凄まじい闘気が、それをさせなかったのである。

 

「鈴」

 

「な、なによ?」

 

「この戦い、次の一撃でケリをつけさせてもらうぜ」

 

 闘志が溢れる一夏の目は、まさに“剣豪”と言うに相応しい、漢の目であった。

 それに押された鈴は、曖昧な表情を浮かべた。一夏にはそれが動揺していると、直様見抜いた。

 

「い、言ってくれるじゃない…なら、コッチも受けて立つわよ」

 

 鈴は双天牙月を振り回すと、刃の切っ先を一夏に向け、一夏もまた、居合術の構えを取った。

 アリーナの観客も、固唾を飲んでそれを見守り、ピットで観戦していたセシリアと箒も、真剣な眼差しで見守った。

 アリーナに静寂が訪れ、微かな風の音が聞こえた。

 鈴の顔から滴る汗が、甲龍のアーマーを伝って一つの雫となり、地面に落ちた。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 両者が雄叫びを上げて同時に瞬間加速を発動し、すれ違いざまに、ほぼ同時に両者は武器を抜き、互いに斬り裂いた。

 まるで、時代劇や西部劇の世界に入り込んだかのような両者の決闘に、アリーナ中が息を飲んだ。

 互いに動かない両者だが、先に膝をついたのは、一夏だった。

 鈴はその音に勝利を確信したが、それは大きな間違いであった。

 

『試合終了!勝者、織斑一夏!』

 

「えっ!?どういう事!?」

 

 鈴は驚き、自身のISのハイパーセンサーで確認したが、甲龍のSE残量は、残酷にも「0」を指していた。

 すると、膝をついていた一夏が、少しフラつきながら立ち上がると、鈴に手を差し伸べた。

 

「鈴、たしかにお前は強い。だが、俺の方が一枚上手だったな」

 

 鈴は少し呆気に取られたが、一夏の優しい笑顔に、何故自分が負けたのか、すぐに理解し、微笑んだ。

 

「…………ふっ、完敗ね」

 

 鈴もまた手を出し、互いに握手を交わそうとした、その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

《ドォォォォォォォォン!》

 

「!?」

 

「えっ!?何!?」

 

 突如、アリーナを鋭い衝撃が襲った。

 アリーナの中央から煙が立ちこめ、そこから三つの影が姿を現した。

 

「な、なんなんだこいつら……」

 

「…………あのマークは!?」

 

 影の正体を見た一夏は息を飲んだ。

 影の正体は、まるで古代ギリシアの重装歩兵を様相を思わせる、漆黒のISであった。

 さらに鈴は、肩に彫られたマークに見覚えがあった。

 大蛇が巻き付いたドーリア式建造物のマーク……それは、漆黒のISがオリンポスのものだという事を物語っていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、立花竜馬は迫り来るケルベロスの大群と死闘を繰り広げていた!

 

「はぁ…はぁ…トォッ!」

 

「!?」

 

「タァッ!」

 

「!??!!」

 

 竜馬はケルベロスの攻撃を受け流しつつ、間髪入れずに投げ技で反撃するが、ケルベロスには効果がなかった。

 さらに竜馬も、襲い来る大群のケルベロスとの連戦で着実に疲労していた。

 

「よし…こうなったら!」

 

 竜馬は意を決し、上に羽織ったジャケットのジッパーを開くと、ケイモーンのバックル部分を露出させた。

 

「変っ……身!」

 

 竜馬は腕を大きく動かしながら声を発すると、ケイモーンの防御シャッターが展開し、風車ダイナモが大気を吸収し始めた。

 改造人間立花竜馬は、変身ベルト「ケイモーン」の風車ダイナモが大気圧を吸収することで、仮面ライダーメーデンに変身するのだ!

 

「さぁ、来い!」

 

「!!!」

 

 メーデンはファイティングポーズを取ると、再び襲い来るケルベロスに立ち向かった。

 

「トォッ!トォッ!」

 

「!!?」

 

 如何にケルベロスといえど所詮は戦闘員、変身したメーデンの前に一人、また一人と倒れていった。

 しかし、それを指揮するモスキメラ?の態度は、未だ余裕があった。

 

(ふふふ……そうだ。戦えライダー。お前がここで時を消耗すればするほど、我々の作戦は着実に成功へ歩み寄っているのだ…よし、ここでもう一手加えるか)

 

 モスキメラ?は右手を掲げると、廃工場の壁を巨大な車輌が突き破った。

 

「なんだ一体!?」

 

「!」

 

「おっと!?」

 

 あまりに突然の出来事にメーデンも困惑するが、その隙を突いたケルベロスの攻撃をなんとか受け流した。

 メーデンは目の前に君臨する黒い車輌に見覚えがあった。

 それは車輌の外見が、かつて束が趣味で集めていた歴代仮面ライダーの資料に載っていた組織の戦車によく似ていたからだ。

 

「これは……ネオショッカー戦車!何故これがここに!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネオショッカー戦車……かつて、世界征服を企んだ影の組織「ネオショッカー」の大型移動戦闘車輌の通称である。過去にネオショッカーはこの戦車にバリチウム弾と呼ばれる特殊兵器を用いて日本大壊滅作戦を展開しようとしたが、その目論見は当時日本を守っていた仮面ライダー第8号ことスカイライダーと日本に駆けつけた栄光の七人ライダーの活躍で未然に防がれた。その後、ネオショッカー戦車は量産され、スカイライダーを足止めとして全車両が出撃したが、その全ては破壊されたと言われている……

 

 

 

 

 

 

 

 

 メーデンは、既に喪失されたと思われたネオショッカー戦車が眼前に現れたことに驚愕した。その様子を見て、モスキメラ?は邪悪な笑みを浮かべて答えた。

 

「ガガガガガガガ……これは我々オリンポスが“とある廃墟”で偶然入手したネオショッカーの置き土産でね。そのままにしておくには勿体ないので此方でレストアと改修を施したものだよ」

 

「まさか……お前たちはこれを使ってこの国を火の海にするつもりだったのか…」

 

「無論だ。オリンポスの目的は新世界の確立!その為には現人類の文明は全て滅びる必要があるのだ。そしてそれは我らキメラボーグも、この戦車と同じ兵器に過ぎん!」

 

 その言葉に、メーデンは…竜馬は怒りを覚えた。此奴らのために、一体に幾人の人々が犠牲になったのか……

 

「確かに……この身体は兵器には違いないだろう。だが!俺はこの力をお前たちを倒す為に使う!それが、俺の生きる道だ!」

 

 メーデンは腕を振り払って反論した。それは、彼の決意が表現されていた。

 

「ふん、愚かな奴め!ならばこの遺産であの世に逝くがいい!行けぇっ!ネオショッカー戦車!」

 

 モスキメラ?の指揮の下、ネオショッカー戦車が旋回してその主砲をメーデンに向けた。

 

(千冬……約束、守れそうにないな…)

 

 メーデンは愛する女性(ひと)の事を想い、死を覚悟した、その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

《ブオォォォォォォン!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如、爆音が轟いた。

 メーデンとモスキメラ?は爆音がした方向を向くと、そこには三点ボタンが取り付けられた白いジェットヘルメットに紺色ジャケットを身に付けた青年が少し古めのオートバイに乗って現れた。

 

「お、お前は!?」

 

 モスキメラ?は、その青年を見て初めて動揺を露わにした。

 

「貴方は……まさか!?」

 

 その青年の姿を見て、メーデンは驚きを隠さなかった。何故なら……

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう、待たせたな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 バイクに乗っていたのは、あの一文字隼人だったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 




次回予告
「やぁ!食欲の秋とも言うけど、食べすぎには気をつけるんだよ。次週はこれだ!」

 モスキメラの二正面作戦の前に窮地に陥るライダーメーデンに、あの伝説の男が帰ってきた!

次週「逆転!ダブルライダー只今参上!:前編」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第21話「逆転!ダブルライダー只今参上!:前編」

 9月中にやり抜けなかったぁ!


前回のあらすじ

 クラス代表対抗戦の第一試合。織斑一夏は死闘の末凰鈴音を打ち破った。

 その喜びもつかの間、突如、アリーナの遮断シールドを破って、三体の黒いISが乱入する。

 一方その頃、仮面ライダーメーデンはオリンポスの精鋭部隊であるケルベロスと一進一退の攻防を繰り広げていたが、モスキメラ?が呼び寄せたネオショッカー戦車の前に窮地に陥ってしまう。

 ネオショッカー戦車の砲身がメーデンに向けられたその時、爆音と共に一文字隼人が駆けつけた!

 

 

 

 

 

 

 

 

「き、貴様は一文字隼人!?何故ここに!」

 

 モスキメラ?は先程までとは打って変わり、かなり動揺した態度で問い詰めた。

 隼人はバイクから降りると、その質問に答えた。

 

「はっはっはっはっ!インターポール本部がオリンポスの暗秘匿号無線を解読したんだよ。お前達が日本でどでかいことをやろうとしていると察知して、遥々中国から追ってきたのさ」

 

「一文字さん、まさか貴方は……」

 

 何かを察したメーデンの態度に、隼人を口をニヤつかせると、右方向に両腕を水平に揃えると、身体の前で徐々に反転させた。

 その仕草に、メーデンは既視感を覚えた。

 

(あの動作は、拓殖大学柔道部の選手が行う柔道の型だ。何故一文字さんがそれを?)

 

 反転させた両腕を左側で力こぶを作るように立てると同時に、隼人は決意を固めるように声をあげた。

 

「変身!」

 

 すると、隼人の腰部に紅いベルトが出現すると、バックル部のシャッターが展開し、ケイモーンと同じ形の風車ダイナモが露わになった。

 

「トォォッ!」

 

 隼人は天高く飛翔すると、ベルトの風車が高速で回転し、眩い光を発した。

 改造人間一文字隼人は、ベルトの風車に風圧を受けると、仮面ライダーに変身するのだ!

 

「トォォォォォッ!」

 

 前方宙返りをしながら、地面に着地した隼人は先程とは全く異なる姿に変わっていた。

 それは、黒と銀のマスクに、白い一本線ラインが入った黒いスーツに、紅く染まった両手両足のグローブ、そして首にはメーデンと同じ真紅のマフラー……

 さらに身体の節々には、数々の修羅場を潜り抜けた事を表す無数の細かい汚れとキズがついていた。

 その姿を見て、メーデンは無意識のうちに呟いた。

 

「仮面…ライダー…」

 

 その呟きと同時に、隼人は名乗りを上げた。

 

「仮面ライダー、2号!」

 

≪推奨BGM:かえってくるライダー≫

 

 名乗りを上げたライダー2号を前に、ケルベロスとモスキメラ?はかなり動揺したが、すぐに平静さを取り戻した。

 

「ええい!例えライダー2号といえど所詮は旧世紀の産物!最新のバイオテクノロジーで改造された我らの敵ではない!者共!かかれぇ!」

 

「!!」

 

 モスキメラ?の号令と同時に、ケルベロス達はライダー2号に襲い掛かった。

 

「ドォォォッ!!」

 

 しかし、ライダー2号はその場をジャンプすると、メーデンのすぐ側に着地した。

 

「一文字さん。貴方もライダーだったんですね!」

 

「竜馬くん、話は後だ。君は今すぐにモスキメラを追うんだ!」

 

「えっ…まさか!ツインアイ!」

 

 ライダー2号の指摘を受け、メーデンは直様モスキメラ?をツインアイで透視した。

 すると、そこにモスキメラの姿は無く、代わりに赤いラインが入ったスパルタ兵が出現した!

 

「すると本物は……まさか!」

 

「!」

 

「くっ!邪魔だ!」

 

 メーデンはオリンポスの本当の意図に気付き、直様戻ろうとするが、ケルベロスに羽交締めされてしまう。

 

「ドォッ!」

 

「!??!」

 

 そこへ、ライダー2号がケルベロスを引き剥がすと、ケルベロスに強烈な右ストレートを叩きつけた。

 

「ここは私が引き受ける!君はIS学園に向かうんだ!」

 

「わかりました!Mチャリオット!」

 

 メーデンはマスク内部のリモコン装置でMチャリオットを側に呼び寄せると、アクセルを全開にしてその場を後にした。

 

「!!」

 

「おっと!そうはさせんぞ!」

 

 追跡しようとするケルベロス達に、ライダー2号が立ちふさがった。

 

「おのれライダー2号!だがもう遅い!今頃IS学園は我等の新兵器によってすでに廃墟と化している!動くのが遅過ぎたな!ガガーーーッ!」

 

 そこへ、モスキメラに変装したリーダー格のスパルタ兵が再び余裕の態度を見せて、ネオショッカー戦車の車体に飛び移った。

 

「ネオショッカー戦車とはまた懐かしいものを引っ張り出したな。だが、戦車程度でやられるライダー2号ではない!」

 

「ほざくな!やれぇ!」

 

 号令とともに、ネオショッカー戦車の主砲が火を吹いた。

 

「ドォォォォォッ!」

 

 ライダー2号は至近距離からの砲撃を難なくジャンプで躱すと、自身の相棒である新サイクロン号に跨った。

 

「目には目を、マシンにはマシンにをだ!いくぞ!」

 

 ライダー2号はアクセルを蒸し、新サイクロン号のウィングを展開すると、ネオショッカー戦車に突っ込んだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃IS学園では、アリーナに乱入してきた3機のタロスが、一夏と鈴に狙いを定めていた!

 

「鈴!俺が時間を稼ぐからお前は逃げろ!」

 

「はぁっ!?何言ってんの!一夏を残して逃げるわけないじゃない!」

 

「お前さっきの試合でシールドエネルギーが0になったの忘れたのかよ!いいからここは俺に任せて逃げ…あぶねぇ!」

 

「えっ、きゃっ!?」

 

 間一髪、一夏は鈴の身体を抱きかかえてさらった。すると、先程までいた場所をタロスが放った熱線が直撃した。

 

「熱光学兵器かよ…しかもセシリアの奴より威力が段違いだ」

 

 一夏はハイパーセンサーの簡易解析でその熱量を確認すると、背筋が凍った。

 しかし、間髪入れずにタロスは次の攻撃に移ろうとしていた。

 

「くるぞ!」

 

 背後に待機していたタロスが背部からミサイルランチャーを乱射するが、一夏はなんとかそれを躱しきった。

 すると、3機のタロスはフワリと浮き上がると、機械的な声を発した。

 

『ヒトよ…』

 

「っ!?なんだ…この声は……?」

 

 一夏はその声を聞き、不思議に思った。その声は、あまりに無機質だったからだ。タロスは続けた

 

『神は…嘆き悲しんでいる…愛さなければよかった…とな……そうして流れた血の涙から…我らは生まれた……』

 

「この言い方……どこかで…」

 

 鈴はタロスから流れる言葉の一句一句に、デジャヴを感じ取った。

 

『我らは“オリンポス”……神々の子……』

 

「オリン…ポス……?」

 

『ヒトよ。既に手遅れだ…キサマ等に……未来はない……』

 

 それは、まさにオリンポスの宣戦布告だった。

 観客席にいた生徒たち、そしてこの模様をモニター越しで見ていた生徒たちは、タロスから吐き出される威圧感に戦慄した。

 そして、タロスたちは再び活動を再開した!

 

『お、織斑くん!凰さん!今すぐその場から脱出してください!すぐに先生たちがISで制圧に行きます!』

 

 すると、プライベートチャンネルを通じて真耶が一夏と鈴に離脱するよう指示した。こころなしか、その声はいつもより威厳があった。

 しかし、一夏にそれはできなかった。奴らはあの遮断シールドを突破した。つまり、今この時点で誰かが戦わなければ観客席にいる人たちに危害が及ぶかもしれない。一夏の決意は既に固まっていた。

 

「いや……先生たちが来るまで俺が食い止めます。鈴、お前だけ離脱しろ」

 

「あ、あんたこの期に及んでなに言ってんのよ!一人であいつらを相手取る気!?」

 

「さっきも言っただろ!今のお前はSEがもう0で足手まといになるだけだ!だったら、俺が時間を稼ぐ間に逃げろ!」

 

「で、でも……」

 

 鈴がさらに反論しようとした、その時だった。

 

『いや……一人ではない!』

 

「えっ……?」

 

 突如、プライベートチャンネルに第三者の声が聞こえた。呆気にとられる鈴と一夏だが、その声が聞こえたと同時に、上空から爆音が轟いた。

 二人は上を見上げると、スポーツタイプのオートバイがアリーナを超える高さでジャンプしていたのだ。

 

「トォォォォォォッ!」

 

 すると、バイクに跨っていたドライバーが飛び上がり、一夏の前に着地した。

 二人は呆気にとられるものの、鈴はその戦士を見てすぐに答えた。

 

「仮面ライダー!」

 

「仮面ライダー?……!!」

 

 戦士の姿に、一夏は既視感を覚えた。それもその筈だ。

 その戦士の姿は、若干の相違点はあるものの、3年前に自分を助けたあの戦士に……黒いボディに真赤な目が特徴的な戦士に酷似していた。

 戦士―――仮面ライダーメーデンは二人の方を振り向き、安否を確認した。

 

「大丈夫かい、二人とも」

 

「あ、ああ!」

 

「このくらい平気よ!それよりライダー、気を付けて!あれはオリンポスの新兵器よ!」

 

「やはり狙いはIS学園だったか。鈴ちゃん。君の機体はSE残量がないから、ここは僕と一夏君に任せて逃げるんだ。いいね?」

 

「う、うん!わかった!一夏!アイツらに負けたらあんたの顔地面に埋めてやるからね!」

 

「なんでそうなるんだよ!」

 

 鈴は甲龍をピットに向かわせるが、それを見たタロスが鈴に狙いを定めた!

 

「おっと!そうは……」

 

「させねぇっての!」

 

 そこへ、ライダーメーデンと一夏が攻撃を加え、タロスを妨害した。

 

「一夏君。君も零落白夜を使用したこで残量が少ない。出来る限り攻撃を避けるんだ」

 

「あんたどうして俺の名前を…いや、今はこいつらの相手か!」

 

 一夏とメーデンは、迫りくるタロスに敢然と立ち向かった!

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの人……いったい何者なんでしょう……」

 

 真耶は、新たに乱入してきた異形の戦士に驚いていた。しかも一夏と協力して、所属不明機……いや、オリンポスと称するテロ組織に敢然と立ち向かったのだ。戦士はどう見てもISを纏ってはいない。それなのに、彼はISとほぼ同じ大きさは相手と互角に戦っていたのだ。

 

「山田先生。今は彼等に任せましょう」

 

「お、織斑先生!何を呑気なことを言ってるんですか!?」

 

「織斑の方はまだしも、もう一方はかの“仮面ライダー”だ。彼ならばこの状況を打開できる」

 

「“仮面ライダー”って、あの都市伝説の?」

 

「ああ。それに今の私達は見ているだけしか出来ないからな」

 

 千冬はそう言うと、タブレット型端末を操作して、第二アリーナのステータスチェックを表示した。

 するとそこには、遮断シールドがレベル4に設定されたほか、扉の殆どがオートロックされていたのだ。

 現在3年の精鋭チームがクラッキングを行っているが、それでも時間はかかると踏んだ千冬は、束に緊急信号をうち、クラッキングの支援を行わせていた。

 現状、千冬に打てる手は、これだけだった。

 

(竜馬……頼むぞ……)

 

 千冬は、ただ竜馬の勝利を願っていた。そんな中、同じ部屋にいたセシリアが、あることに気付いた。

 

「あら……篠ノ之さんはどちらに……」

 

「…………!?」

 

 セシリアの言葉に、千冬は周囲を見渡した。いない。箒が……千冬は最悪の事態を想定した。

 

「山田先生!ここは任せる!」

 

「えっ!?ちょ、織斑先生!?」

 

 千冬は箒を探すべく、部屋を後にした……

 

 

 

 

 

 

 

 

「トォォォッ!ライダー、フライングパァンチ!」

 

「おらぁ!」

 

 その頃、一夏とライダーメーデンは、3機のタロスのうち2機を破壊することに成功した。

 この少し前、メーデンがツインアイの解析で敵が無人機であることを見抜いたことで、二人はAIの演算処理能力の裏をかく戦法で優位に立ち、形勢を逆転していたのだ。

 

「よし!残るはあと一機だ!」

 

 一夏は一機だけになったタロスを見て、勝利を確信していたが、一途の不安を抱いていた。

 

(おかしい……ライダー2号の情報では、モスキメラはIS学園にいたはず…それなのにこの場にはいない…なんだ…いやな予感がする…)

 

 メーデンの不安をよそに、一夏は最後のタロスに狙いを定めた。

 

「これで……終わりだ!」

 

 一夏の白式の雪片弐型が、タロスに振り下ろされようとした、その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこまでだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!?何!?」

 

「この声……まさか!」

 

 突如、第三者の声がアリーナに響き渡った。一夏は振り下ろそうとした雪片を止めると、メーデンと共に声が聞こえた方向を向いた。

 

「ガガガガガガガガガ」

 

「っ!?貴様は!?」

 

 そこには、本物のモスキメラが姿を現した。

 

「ガガガガガガガガガ!織斑一夏!そして仮面ライダー!お前達の活躍もここまでだ!あれを見ろ!」

 

「何……!?」

 

「あ、あれは!?」

 

 モスキメラは電光掲示板の上面を指差した。

 そこには、十字架に磔にされた箒が、グッタリと気絶していたのである……

 

 

 

 

 

 

 

 

 卑劣なモスキメラは、遂に箒を人質にとり降伏を迫った。

 果たして仮面ライダーメーデンは、箒を救えるのだろうか?

 そしてオリンポスの別働隊と戦うライダー2号の運命や如何に!?

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 




 劇中でどうやってメーデンがレベル4のシールドを突破したかというと、Mチャリオットに装備された「バーリア中和装置」でマシンが入れる程度の隙間を作ってアリーナに侵入した設定です。








次回予告
 さぁ、8月から足掛け2ヶ月かけてお送りしたモスキメラ篇もいよいよラスト。
 果たして仮面ライダーメーデンは、人質となった箒を助けられるのか?そしてライダー2号の運命は?
 次週の「逆転!ダブルライダー只今参上:後編」にご期待下さい!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第22話「逆転!ダブルライダー只今参上!:後編」

 やっとやり抜けたぁ!
 今回に関しては5000字越え覚悟で執筆しました。


前回のあらすじ

 ネオショッカー洗車の前に窮地に陥ったメーデンを救ったのは、仮面ライダー2号だった。

 ライダー2号からの情報を受け、メーデンは単身IS学園に向かい、一夏の窮地を救う。

 しかしそこへ、モスキメラが箒を人質にして現れた!

 

 

 

 

 

 

 

 

「箒!てめぇ!」

 

「動くな織斑一夏!動けばこの女の命はないと思え!」

 

 一夏は激情に駆られてモスキメラに襲い掛かろうとするが、モスキメラが手を上げたその時、スパルタ兵が箒の首筋に剣を突き付けた。

 

「…………くっ!」

 

 一夏は悔し気にも、雪片を拡張領域にしまった。

 そこへ、ライダーメーデンが怒りを露わにしてモスキメラを問い質した。

 

「モスキメラ!貴様……人の命を何だと思っている!?」

 

「なんとでも言え!どんな手を使っても勝てばいいのだ!それが世の理だ。仮面ライダー!この女を助けたければ、我々の条件を呑むことだ!」

 

「要求だと!」

 

「そうだ!それも簡単な要求だ!」

 

 モスキメラがそこまで言ったその時、メーデンの脳内にメッセージが入ってきた。

 

『ふふふ…何、簡単な条件だよ。立花竜馬くん』

 

(…………!?その声は!)

 

 その声は、オリンポス首領の声であった。

 

『篠ノ之箒を助けたければ、我らの許へ来ることだ』

 

『何!?』

 

『お前のその力は、本来我らオリンポスの…この私“ウラノス”のために使われるべき力だ。ちっぽけな人間など守るに値せぬ。私と共に新たな世界を創るために、お前の力は必要だ。さぁ、戻って来い。我がオリンポスに……』

 

『…………』

 

 メーデンは迷っていた。ここで箒を助けるには、自分がオリンポスに下った方が良い。しかし、それは自らの敗北を意味していた。それは出来ない。だが、箒は助けたい……メーデンは、いや、立花竜馬は、世界と友の間で板挟みになっていた。

 

(どうすればいいんだ?……どうすれば……博士……僕は……)

 

 悩むメーデンに、モスキメラは痺れをきらしつつあった。

 

(ええい……首領の命令とはいえ、こうも待たされては俺の気が晴れん!ならば……)

 

モスキメラは手で合図すると、タロスが動き始め、レーザーの照準を観客席に合わせた。

 

「早くしろ仮面ライダー!言わねばここの観客全てを皆殺しにするぞ!」

 

「なに!?」

 

「てめぇ、それでも人間かよ!」

 

 一夏は激しく罵倒するが、モスキメラはそれを嘲笑った。

 

「ガガガガガガガガガ!卑怯もラッキョウもあるものか!さぁどうするライダー!」

 

 モスキメラの非情な脅しに、メーデンの心は遂に折れつつあった。

 

「僕は……」

 

 メーデン…竜馬が弱弱しく答えようとした、その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「待てぇい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガガッ!?だ、誰だ!?何処にいる!?」

 

 突然、アリーナに響き渡る第三者の声に、モスキメラは周囲を見渡した。二人も周囲を見渡すと、箒が捕らわれている電光掲示板の上を見た。

 

「あ、あそこだ!」

 

「何!」

 

 モスキメラは電光掲示板の方を向くと、そこでは、箒に剣を突き立てていた二人のスパルタ兵が倒れており、さらに拘束されていた箒を、黒の革ジャンを着た男が解放していた。

 

「トォォォォォォッ!」

 

 男性は箒を抱きかかえてジャンプすると、一夏の眼前に着地した。

 

「ほ、箒!しっかりしろ!」

 

 一夏は男性から箒を譲り受けると、箒の身体をゆすったが、起きる様子はない。

 一夏はハイパーセンサーでバイタルを確認しようとするが、男性は優しい声で語った。

 

「大丈夫、今は気を失っているだけだ」

 

「あ、貴方は……」

 

 メーデンは男性が何者なのか、直感で察した。あの高所から傷一つなく着地する身体能力…間違いなく人間ではないのは確かだ。つまり…自分と同じ……

 

「貴様!何者だ!?」

 

 そこへ、モスキメラが新たにスパルタ兵を呼び寄せて、男性に問い質した。

 すると、男性は静かに立ち上がりながら、モスキメラの方を振り向いた。

 そして、その男の顔を見た時、モスキメラは男性が何者か、すぐにわかった。

 

「な!?き、貴様は!?」

 

「一文字隼人だけが仮面ライダーではない。俺は本郷猛…仮面ライダー第1号だ!」

 

 男性……本郷猛は、構えをとって名乗りを上げた。

 

「本郷猛!?馬鹿な!なぜ貴様がこの日本にいる!?帰国していたのは一文字隼人だけのはずだ!?」

 

「はっはっはっはっ!こんな事もあろうかと密かにアメリカから帰国していたのだ!モスキメラ!貴様のような人間の自由を乱す奴は断じて許せん!フン!」

 

 本郷は右腕を左上に掲げると、左腕を胸に合わせた。そして右腕を徐々に右へずらしながら自身のスイッチを入れた。

 

「ライダァァァ……変身!」

 

 刹那、本郷は今度は左腕を右上に掲げたと同時に右腕を胸に合わせると、腰部に赤地のベルトが出現し、バックル部に装備された風車が高速で回転した。

 

「トォォォッ!」

 

 本郷はすかさずジャンプすると、風車から強烈な光が放たれた!

 改造人間本郷猛は、ベルトの風車に風圧を受けると、仮面ライダーに変身するのだ!

 

「あの姿は!」

 

 メーデンはライダー1号の姿に驚愕した。大まかな外見こそ2号に酷似していたが、ボディラインは1本ではなく2本になっており、頭部を覆うマスクも銀に近い明るいメタリックグリーン、さらに両足はまさにヒーローを体現したかのような銀色に輝いていた。

 

「仮面ライダー、1号!」

 

 ライダー1号はファイティングポーズを取り、再び名乗りを上げた。

 

「えぇい!ライダー1号といえど所詮旧世代の改造人間(サイボーグ)!虫けらが一匹増えただけにすぎん!タロス、ライダー1号を殺せぇ!」

 

「!」

 

 モスキメラの号令と同時に、タロスの右腕に装備されたビーム砲の砲身がライダー1号に向けられた。が……

 

「そうはさせませんわ!」

 

 その時、青白い閃光がタロスの右腕に直撃し、爆散した。

 

「このビームは!」

 

 一夏はビームが発射された方を向くと、そこにはスターライトMk-Ⅲを構えたセシリアが浮遊していた。

 

「このセシリア・オルコットとブルー・ティアーズの存在をお忘れでしたわね!」

 

「なっ、バカな!あのクラッキングには少なくとも半日はかかるはずだ!」

 

「まさか……」

 

『そのまさかだよりょーくん!』

 

 そこへ、プライベートチャンネルを通じて束が話しかけてきた。

 

『いや〜中々強敵だったけど、この束さまの前にかかればチョチョイのチョイってね♡』

 

『助かったよ束!今度いいデザート送るよ!』

 

『クーちゃんの分もよろしく!』

 

『はいはい!さて……』

 

 メーデンは動揺を隠せないモスキメラの方を向き、指差して宣言した。

 

「モスキメラ!お前の企みも最早ここまでだ!」

 

「ええいうるさい!まだ俺は『モスキメラ!』!!この声は!」

 

「だ、誰だ!?」

 

「みんな、上を見ろ!」

 

 その時、上空に巨大な髑髏の仮面が姿を現した。

 

「た、タナトス様!」

 

「なに!?」

 

「あれがタナトス…オリンポスの最高幹部か!」

 

 髑髏の正体は、死神タナトスの頭部ホログラムであった。

 

『モスキメラ。IS学園の襲撃失敗にライダー1号の入国を察知できなかった失態、いかに寛容な私でもここまでは看過できん!』

 

「た、タナトス様!お慈悲を!?この私に今一度チャンスを!?」

 

『黙れ!作戦の失敗は死をもって償うのがオリンポスの掟!貴様も栄誉あるオリンポスの幹部ならば、戦場で戦って死ね!』

 

 タナトスはモスキメラにそう命じると、雲のように姿を消した。

 

「くぅぅぅ!聞いての通りだ仮面ライダー!俺の栄光は貴様たちによって全て失われた!こうなればこのIS学園ごと地獄の道連れにしてやる!かかれぇ!」

 

 背水の陣となったモスキメラの号令と同時に、スパルタ兵とタロスがメーデンたちに襲いかかった!

 

「もうやめろ!お前達は負けたんだぞ!大人しく降伏しろ!」

 

 一夏は襲い来る敵勢に降伏を迫ったが、スパルタ兵は聞く耳を持たず、ただ特攻していた。そこへ、メーデンがプライベートチャンネルで話しかけた。

 

『一夏くん。こいつらは脳髄まで“組織”に改造されている。説得は無意味だ』

 

「じゃあどうすればいいんだよ!」

 

『今の俺達に出来るのは、彼等の魂を楽にさせることだけだ。残酷かもしれないが、それしかないんだ……』

 

「そんな……うぉっ!」

 

 その時、白式のハイパーセンサーがミサイルの接近を感知したため、一夏は回避に専念した。

 この時、一夏は気絶した箒を両手に抱えていたため、武器が使用できずにいた。

 

「くそ!箒を抱えた状態じゃあ満足に戦えねぇ!」

 

「一夏さん!」

 

 愚痴を溢す一夏だったが、そこへセシリアが近づいた。

 

「一夏さん!篠ノ之さんは私が安全な場所に運びます。貴方はあの“ISモドキ”をお願いします!」

 

「頼む!」

 

 一夏はセシリアに箒を預けると、直様雪片弐型を呼び寄せた。

 

「さぁ…覚悟しろよこの分からず屋ども!」

 

 一夏は怒りを露わにしてタロスに斬りかかるが、タロスは瞬時に拡張領域からグラディウス型のヒートソードを取り出して受け流した。

 

「こいつ剣持ってたのかよ!さっきの二体は出してなかったのに!」

 

『織斑!』

 

『織斑くん!』

 

 悪態を吐く一夏に、ISを装着した千冬と真耶が駆けつけた。

 

「山田先生に……千冬姉!?」

 

『学校では織斑先生と……いや、そんな事を言ってる場合ではないか』

 

『織斑くん!後は私達に任せて退避してください!』

 

「で、でもコイツらは!」

 

『馬鹿者、白式のSE残量を良く見ろ』

 

「えっ……」

 

 一夏はハイパーセンサーでSE残量を確認すると、既にレッドゾーンに突入しつつあった。

 

『後は我々が引き受ける……少しは姉を頼れ。この馬鹿が』

 

「……わ、わかりました」

 

 一夏は雪片を仕舞うと、その場を退避した。

 

『さて……真耶、背後は任せたぞ』

 

『が、頑張ります!』

 

 千冬は近接ブレードを両手に持つと、真耶もまた拡張領域からアサルトライフルを取り出して、タロスに銃口を向けた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 同じ頃、ライダー1号とメーデンはモスキメラと相対していた。

 

「ライダー共!貴様らだけはこのモスキメラが倒す!」

 

 ファイティングポーズをとるモスキメラに対し、メーデンはライダー1号を制した。

 

「ライダー1号。ここは俺に……僕にやらせてください……一夏くん達を頼みます」

 

「…………」

 

 その決意に1号は無言で頷くと、一夏達の方へ向かった。

 

「モスキメラ……貴様が一人で戦うというなら、俺もまた一人で戦おう。それが、戦士の流儀だ!」

 

 すると、相対する二人の間から風が吹き抜け、ケイモーンの三連ダイナモがその風圧を吸収すると、メーデンのツインアイが赤く光った。

 それが、決戦の合図となった。

 

≪推奨BGM:矛盾螺旋-M24-(空の境界より)≫

 

「いくぞ!」

 

「来い!」

 

 モスキメラの両手から光弾が放たれ、メーデンはそれをグローブで弾く。

 次にモスキメラの触角から稲妻状の光線が照射されるが、メーデンはそれをステップで回避すると、一気に距離を詰めた。

 

「トォッ!トォッ!」

 

「ガァッ!ガァッ!」

 

 両者は互いの拳打を受け流しながら、激しい死闘を演じた。

 メーデンの鉄拳がモスキメラの溝落ちに直撃したかと思いきや、モスキメラの回転蹴りがメーデンの脇腹に強打する。まさに一進一退であった。

 片や己が死を覚悟し組織に最期の忠義を尽くすため…

 片や愛する者と掛け替えのない存在を守るため…

 互いの信念と信念がぶつかり合い、火花と血飛沫となって飛び散った……

 

「オォォォォォォォォォッ!」

 

「ガガァァァァァァァァッ!」

 

 見事なクロスカウンターが入り、両者はその場に倒れそうになるが、満身創痍の肉体を何とか持ち直して、その場に踏み止まると、一旦距離をとった。

 

≪推奨BGM:ネバーギブアップ(超人機メタルダーより)≫

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

「ぜぇ…ぜぇ…ぜぇ…」

 

 荒くなった息を何とか整えて、両者は構えを取り直した。

 既にメーデンの強化服には、無数の傷跡から大量の血を流していた。

 一方のモスキメラも、肉体の節々から物凄い量の血を流しており、それでも息が絶えないのはまさにキメラボーグだからこそだろう。

 再び、両者の間に静寂が訪れ……二人の間に風が吹き抜けた。

 その静寂の中で、両者は次の激突が、おそらく最後になるであろうと直感していた。

 短い静寂の後、どこからかで流れた一滴の雫が落ちたとき、両者は動いた。

 

「ライダー!死ねぇ!ガガァァァァァァッ!」

 

「トォォォォォォォォッ!」

 

 両者は天高く飛翔すると、メーデンは前方宙返りの直後に飛び蹴りの姿勢を、モスキメラはフライングヘッドバットの体勢を取った!

 

「ガァァァァァァァァァァッ!」

 

「ライダァァァキィィィック!」

 

 両者の攻撃が交差した時、空中で爆煙が広がった。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

「ガァァァァァァァァッ!」

 

 両者は衝撃で落下し、地面に激突して倒れるが、その際、メーデンのマスクにヒビが入った。

 メーデンは頭から血を流して倒れるが、モスキメラは、最後の気力を振り絞って立ち上がった。

 

「か、勝った!勝ったぞ!俺は仮面ライダーをこの手で地獄に送ったぞぉ!」

 

 モスキメラは勝ち誇り、勝利の万歳をとった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、既にモスキメラの肉体は、限界であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「オリンポスに……我らの偉大なる原初の神に……栄光あれぇーーーーーーー!」

 

 モスキメラはその場に倒れ、爆散した。

 その爆発は、地に伏したメーデンをも巻き込んだ。

 そこへ、タロスを倒した千冬たちとライダー1号が駆けつけた。

 

「!?」

 

「!!!」

 

「ーーーっ!」

 

 真耶はその壮絶な最期に唖然とするが、千冬は爆発に巻き込まれたメーデン……竜馬のことを案じた。

 爆破が晴れ、煙の中から、一人の人影が姿を現した。

 それは、身体の至る所に傷を負った、ライダーメーデンであった。

 

「ライダー!」

 

 千冬は泣きそうな顔を抑えながら、メーデンに駆け寄った。真耶もそれに続いた。

 

「ライダー…」

 

「…無人…ISは……」

 

「大丈夫だ。私達とライダー1号で倒した」

 

「そう……か……」

 

 メーデンがその場に倒れるが、それを千冬が受け止めた。

 すると、マスクの一部が割れて竜馬の素顔が晒された。

 その顔は、頭から血を流していた。

 

「えぇっ!仮面ライダーって立花先生だったんですか!?」

 

 真耶はライダーの正体が竜馬だったことに驚くが、千冬は小さい声で、優しく呟いた。

 

「…………バカ(ボソッ)」

 

「…………」

 

 竜馬は答えず、ただ、微笑んだ。

 

「おぉーーーい!」

 

 そこへ、新サイクロン号に跨ったライダー2号が駆けつけた。

 

「一文字、そちらはどうだ」

 

「心配いらない。囮の部隊は全て倒したぞ。ところで、そっちは……」

 

「ライダー2号……」

 

 竜馬は千冬に支えられながら、満身創痍の身体をなんとか立ち上がらせると、ダブルライダーの許へ近づいた。

 

「よう……派手にやられたな」

 

「ライダー1号が……本郷さんがいなかったら、僕はやられていたでしょう……」

 

「気にするな、ライダーは助け合いだしな」

 

 ライダー2号は右手を差し伸べると、竜馬もまた右手を出して、握手を交わした。

 そこへライダー1号も右手を差し伸べ、竜馬と握手を交わした…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 オリンポスの恐るべきIS学園襲撃作戦を阻止した仮面ライダーメーデンとダブルライダー。しかし、オリンポスのある限り、彼等の戦いは続くのだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 




マスクドライダー・ストラトス!《イメージCV:マダオ》
「楯無、君はどこまで知っているんだ?」

「私がオリンポスの存在を知ったのは貴方が海外でオリンポスと戦っていた頃まで遡ります……」

第22話「Tの告白/知られざる戦い」

 これで決まりだ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第23話「Tの告白/追憶の始まり」

 今回はかなり短いです。何故なら今回からは外伝ともいえる「ダブルライダー篇」の導入部だからです。
 中々原作を消費できない……


 オリンポスによるIS学園殲滅作戦は、仮面ライダーメーデンとダブルライダーの活躍で阻止された。しかし、その代償は小さくなかった。

 第二アリーナは激しい戦闘で長期間の使用禁止となり、クラス対抗戦も延期となった。

 また、目玉であった一組クラス代表の織斑一夏の専用機である白式はこの戦闘でBランクのダメージを負った。

 更にライダーメーデンの強化服も今回の戦闘でかなりのダメージを負い、竜馬は束に連絡して強化服の修繕を依頼し、近日中にクロエが学園に来ることになった。

 今回は、IS学園本校舎屋上で束と電話する竜馬から、物語を始めよう。

 

「じゃあ、頼むよ束」

 

『まっかせてりょーくん。でもちょっち時間かかるかもしれないから、その間は打鉄改で頑張ってちょ☆』

 

「首を長くして待ってるよ」

 

 竜馬は笑顔で電話を切った。

 

「束との話は終わったか?」

 

 そこへ、千冬が屋上に入ってきた。

 

「ああ、近日中にクロエがケイモーンを受け取りにくることになったよ」

 

「そうか……まだ、支えは必要か?」

 

「いや、もう大丈夫だよ」

 

 先の戦いで、竜馬はかなりの重傷を負っていた。

 傷の程度は尋常ではなく、常人であればもはや生きてはいないだろう。

 だが、改造人間である竜馬の自己再生能力によって身体の傷は驚異的なスピードで治癒していき、現在の状態まで回復していた。

 しかし、それでもまだ全快とはいかず、数日間は安静にしなければならなかった。

 

「そうか……楯無から私達に話があるそうだ。応接室に来てくれ」

 

「ああ、わかった」

 

 竜馬は右足を引きずりながら、屋上を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 応接室に入った竜馬と千冬を待っていたのは、楯無と談笑する二人の青年と見慣れない初老の男性が座っていた。

 竜馬は、その男性に見覚えがあった。

 かつて、自分が出場したアマチュアロードレース大会で自分のトレーナーを務めたバイクショップのオーナーだ。

 

「貴方は……滝さん!滝和也さんじゃないですか!」

 

「よう、思ってたより元気そうじゃないか竜馬」

 

 その男性の名は滝和也。一夏の家の近くで経営しているバイクショップ《滝モータース》のオーナーである。

 竜馬はかつて、この滝のすすめでオートレースをはじめ、彼の指導のもとでアマチュアロードレース大会で優勝していた。

 

「でも、どうして滝さんがIS学園に……」

 

「ああ、そういえばお前には話していなかったな」

 

 滝はスーツのポケットから手帳を取り出すと、それを竜馬に見せた。

 

「これは……」

 

 手帳には、『インターポールオリンポス対策班特務捜査官 滝和也』と記載されていた。

 

「滝さん…これは本当ですか?」

 

「おいおい。俺が嘘をついてると思うか?俺はれっきとしたインターポール捜査官だよ」

 

「ま、非常勤だけどな」

 

「おい隼人!余計なことは言うなよ!」

 

「ひ、非常勤って……」

 

「笑うな楯無!」

 

 竜馬は隼人の余計な一言で笑いそうになるが、そこへ本郷が本題を切り出した。

 

「……滝、楯無。そろそろ本題に入りたいのだが……」

 

「え?……あぁ、すまねぇな、本郷」

 

 本郷の一声のおかげで、一同は再び平静さを取り戻した。

 すると本郷と隼人は、竜馬に右手を差し伸べた。

 

「さて、改めて自己紹介しよう。私は本郷猛、仮面ライダー1号だ」

 

「俺は一文字隼人、仮面ライダー2号だ」

 

「立花竜馬、仮面ライダー……仮面ライダー、メーデンです」

 

 竜馬は改めて自己紹介をすると、二人と固い握手を交わした。

 

「“メーデン”……“0(ゼロ)”か……」

 

「なかなかいい名前じゃねぇか、後輩」

 

「いえ……貴方方に比べれば、まだまだ僕は若輩者です」

 

 いつになく緊張している竜馬に、本郷は肩を軽く叩いた。

 

「謙遜しなくていい竜馬くん。君はこの三年間、たった一人でオリンポスと戦っていたんだ。君も立派な仮面ライダーの一人だ」

 

「本郷さん……」

 

「ま、その辺はあんまり気にするなってことだ。さ、かけてくれ」

 

 竜馬と千冬は、隼人の言葉に甘えてソファに腰掛けた。

 

「さて……今回の一件、本当にお世話になりました」

 

「いや、俺たちは当然のことをしたまでさ。ところで、今回君達に用があるのは……」

 

 隼人はおもむろに楯無の方を向いた。

 すると、楯無は重い口を開いた。

 

「実は、お二人に私から改めてお話ししたいことがあります」

 

「…………」

 

「以前、私が貴方に協力を申し出た際、何故私が“組織”のことを知っていたのか、おわかりですか?」

 

「君が更識の当主だから……ではないのかい?」

 

「確かにそれもあります。しかし、私がオリンポスの存在を知ったのは、『貴方が仮面ライダーとして戦い始めて半年が経過した頃』なんですよ」

 

「何…………」

 

「更識、それはどういうことだ?」

 

 二人は楯無に問い詰めた。楯無は、そのまま話し続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれは、私が“楯無”の称号を受け継いでまだ間もない頃でした…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 遂に楯無の口から語られる知られざる戦い。

 果たしてその戦いに、ダブルライダーはどう関係しているのか!?

 物語は、2年前の日本に遡る!

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 




次回予告

 我らの仮面ライダーを狙うオリンポス本部が送り込んだ次なる使者は「人喰いアイヴィーキメラ」
 植物の力を持つキメラボーグの恐怖!
 更識楯無の妹、簪に伸びる不気味な魔の手!
 今こそ戦え!伝説のダブルライダー!
 次週マスクドライダー・ストラトス「人喰いアイヴィーキメラ:前篇」にご期待下さい!


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。