光に触れて、その先へ (ローグ5)
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光に触れて、その先へ

ある私立大学のキャンパスに開かれた喫茶店、多くの学生でにぎわうそこに設置された大型テレビは多くの客の注目を集めていた。何故ならその画面にう映っているのは昨日宇宙で起きたある事件についての報道であったからだ。

 

『次のニュースです。昨日深夜から未明にかけてディノゾールと呼ばれる宇宙怪獣の群れが地球へ来襲しようとしていた事が判明しました。』

 

 画面に映し出されるのは凶暴そうな面構えの怪獣だった。鋭角なシルエットを持ち一匹でも軽く都市一つを滅ぼす能力を持ったそれらは何十という数で構成された群れを成し、地球へ来訪しようとしていた。その光景に喫茶店の客が何人か息をのむ。強大な怪獣や邪悪な宇宙人への対策が何重にもなされている現在の地球においても、紛れもない緊急事態だった。

 

『しかし防衛隊宇宙軍の敷設した新型機雷の効果でそのほとんどは撃破され、残った何体かの個体も宇宙航空隊の戦闘機、それと」

 

そこでアナウンサーは一旦言葉を切る。彼は知っている。この次に彼の言う言葉こそ視聴者たちが最も望んでいるのだと。

 

『ティガとネクサス、二体のウルトラマンの活躍で見事撃滅されました!』

 

次に画面に映ったのは二体の巨人だった。赤と紫、銀の三色の体を持つティガが巧みにディノゾールをけん制し、蒼と銀の体を持ち何処か武士のような印象を与えるネクサスが光の剣でディノゾールを両断していく。20年前から地球を守り続ける光の巨人達はまさしく人類の希望だった。

 

『戦闘開始から十数分で怪獣の掃討は完了し、今回の事件は収束しました。今回の防衛隊宇宙軍の活動について

極東支部司令官の―――』

 

「ほう 蒼のネクサスとは珍しいですね。」

 

「珍しい? ネクサスは一番有名なウルトラマンじゃねえか?」

 

「はい。確かにネクサスは地球で最初に確認されたウルトラマンであり、今回までに累計60回以上の出現が確認されてます。ですが蒼を中心とした色のネクサスは今回を含めて4回しか確認されていないレアな形態なんですよ。そもそも個人情報は非公開なものの地球で活動するウルトラマンは皆地球人と一体化して活動するとされていて、ネクサスの色の違いもそうした変身者の違いによる―――――――― 」

 

「お、おう」

 

こうした会話は喫茶店のそこかしこで展開されている。多くの客は興奮冷めやらぬ様子で話し合っているが、窓際に一人で座る青年だけはどこか照れたような表情をしつつ無言だった。青年、銀城継(つなぐ)はそうしてしばらくした後に自分を呼ぶ声尾を聞き、顔を上げた。

 

「こんにちは先輩。」

 

「こんにちは烏丸さん。今日もきれいだね。」

 

継が待っていたのは大学の後輩である烏丸瑞生(からすま みずお)だった。継は育ちの良さをうかがわせる気品のある顔立ちに、長く黒い髪を持つ彼女を改めて綺麗だと思うあまり、うっかりその思いを口に出してしまう。

 

「えっ、あ、ありがとうございます。」

 

「あ、うん。」

 

素直な言葉に面食らったのか瑞生は顔を赤らめうつむき、継も同じような反応をする。そんな友達以上恋人未満の二人はほほえましい場面を作り出していた。最も、周囲の男性客は継を許されざる者を見る目で見ていたが。

 

 

 

 

 

二人は喫茶店を出て他愛のない話をしながら道を歩いていく。そうしてしばらくたった後、不意に瑞生が口を開いた。

 

「ところで先輩、昨日はお怪我はありませんでした?」

 

「ああ、大丈夫だったよ。ティガの人も防衛隊の人たちもすごい強かったし。あのディノゾールもそこまで強くなかったからね。烏丸さんと会った時のガーゴルゴンのほうがずっと強かったよ。」

 

「ああ・・・・あの怪獣ミサイルも吸収してましたしね。」

 

瑞生は継と初めて会った時、彼がウルトラマンネクサスとして戦っていた時のことを思い出す。あの時彼は石化する危険を冒して自分を助けてくれた。そしてその後も

 

「・・・・・・・・・ねえ 先輩 私以前から聞きたかったことがあるんです。」

 

「ん、なんだい?」

 

瑞生はどこか意を決したように口を開く。ずっと前から継に対してどうしても聞きたかったことがあった。

 

「私は先輩に凄い感謝してるんです。三年前先輩と会ってから沢山友達も出来たし、毎日がすごい楽しく過ごせています。でもふと思ったんです。そういう風に先輩が人にやさしくする理由って何ですか?」

 

「えっと、それは・・・・烏丸さんに一目ぼれしたから・・・・・」

 

「い、いやそういう事じゃなくてっ! 私先輩のことを結構よく見てるんですよ。横断歩道を渡れないご老人の方を手助けしたり、困ってる人がいたら積極的に相談に乗ったりとか、毎日のようにしているじゃないですか。」て

「えっ 気づかなかったよ。ネクサスになって以来勘が鋭くなってたんだけどなあ・・・・・」

 

ぽりぽりと継は頭をかくが、やがて意を決したように瑞生に向き直る。

 

「よし、分かった。まだ話したことなかったし烏丸さんには話しとくよ。三葉姉さんとは前会ったよね?」

 

「ええ、すごい元気な方でしたよね。」

 

継の姉、銀城三葉と瑞生はあったことがあった。過去継の実家を訪ねた際に会った三葉は明るく太陽のような温かさを持った女性であり、彼女を語る継の言葉の節々からも継が彼女を大切に思っていることが存分に伝わって来る。

 

「うん、この話は姉さんと関係があるだけじゃない、俺が初めてウルトラマンネクサスに変身した時の話なんだ。」

 

足を止めた継は語りだす。今から10年程前、今まで続く自分の原点となった一日のことを。

 

 

 

 

 

 

まだ継が小学4年生だった頃のことだった、その日継のクラスでは授業中に自分の夢を発表することになっていた。

 

自分の前の生徒が発表を始めたのを聞き、継はぎゅっと以前からこっそり持ち歩いている”お守り”を握りしめる。そしてとうとう継の番がやってきた。担任に名前を呼ばれ、継は勢いよく立ち、自分の夢を語りだす。

 

「木田君ありがとうございました。では、次は銀城君の発表をお願いします。」

 

「はい!! 僕の夢はウルトラマンになることです!もう何年も前から地球は悪い宇宙人や怪獣に狙われています。でもそんな地球をウルトラマンたちは頑張って守ってくれています。僕もそんなウルトラマンになってみんなを守れるようになりたいです!!」

 

その後も自分がその為にどうするかなど具体的なプランを語っていく継の顔は希望で輝いていた。自分の真心を込めた夢はみんな応援してくれると思っていたし、何よりこうした夢は現在の地球の子供たちにとってありふれたものだし、みんな共感してくれるだろうとも思っていた。

 

そうして継は自信満々に自分の夢を語り終える。だが帰ってきた反応は予想外の冷淡さだった。

 

「いや~銀城君は無理じゃないかな~お化け屋敷は入れないビビりだし。」

 

「お姉ちゃんのほうが可能性あると思うぜ!ははは」

 

そのどこか嘲笑を含んだそうした反応に継は呆然と立ち尽くす。夢見る少年に初めて冷たい現実が突きつけられた瞬間だった。

 

 

 

放課後、継は山中に作った秘密基地の中で落ち込んでいた。自分の夢を比較され笑われた事に傷ついていたが、

同時に納得する心の動きもある。

 

(そうだよな・・・・・僕は運動が得意なわけでもないし頭が良いわけでもない、それにビビりだし戦うとか無理だよな・・・姉ちゃんみたいな人気者でもないし)

 

運動神経抜群で皆の人気者の姉の三葉、方やパっとしない弟の継という周囲の評価には薄々感づいていたが、それでもいつか夢はかなえられると思っていた。だがその思いは今日面と向かって否定された。一年前から持っている”お守り”を眺めながらぼんやりと継は考える。

 

「おーい 継どうしたんだー? なんか嫌な事でもあったのかー?」

 

「姉ちゃん・・・・」

 

落ち込む継のもとに三葉が駆けつけてきた。友達と話していた三葉は弟が一人で校舎から走り出ていくのを見、弟のただならぬ様子に気づき友人に慌てて別れを告げて弟を追いかけた。弟の面倒を見るのは姉である自分の役目であると自負する彼女にとって当然のことであると三葉は思っている。

 

「なあ継、何かいやな事があったら何でも姉ちゃんに相談しろよな! どんな悩みでも姉ちゃんが聞いて・・・」

 

「いいよ。ほっといてよ。」

 

いつも通り元気で自信にあふれた姉の姿に一層継のコンプレックスが刺激される。姉から目をそらすように彼は顔をそむけた。

 

「え・・・継?」

 

「いいからほっといてよ! 姉ちゃんには僕の悩みなんてわからないよ!!」

 

継の目からはぽろぽろと涙がこぼれる。姉の言葉を聞くほど、姉の表情を見るほどよりいっそう自分が惨めに感じられ、とうとう敬は泣き出してしまった。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

三葉は自分の何かが弟を傷づけたことを悟り押し黙る。しかしそれでも弟を助けられるのは自分しかいない、そう意を決してなにか継に言葉をかけようとした時だった。ポケットに入れていた携帯電話が震え、どこか切迫した印象を与える音を立て始めた。

 

「これっ・・・・・怪獣注意報!?」

 

三葉の持つ携帯に搭載された怪獣注意報は、怪獣や敵性宇宙人の出現が感知された際に半径数十キロ圏内の人々に警報をならし、その出現を知らしめるアプリだ。今このアプリが鳴り出すということはつまり

 

「うわあああああああああああああああああああああああああっ!!!」

 

「きゃあああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

二人のいる山のすぐ近くに何かとてつもなく大きな何かが落ちてきた。その衝撃による揺れは大地震の様に激しく、二人は平地から滑り落ち、山の斜面を転がっていく。

 

「う・・! 継! 大丈夫か? どこか痛いところはない!?」

 

三葉は継を助け起こしながら落ちてきた物を確認しようとする。そして見てしまった。煙の彼方、当時はまだ十分でなかった防宙網を抜け、落ちてきた邪悪な宇宙怪獣を。

 

「キシェアアアアアアアアアアッ!!」

 

落ちてきたのは甲虫のような黒く禍禍しい甲殻にサソリのような長い尾、そして強い悪意をうかがわせる黄色の目を持った宇宙怪獣だった。

 

継や三葉は知らないことだが、その怪獣の名はスコーピスという。悪意の塊のような存在である異形生命体サンドロスにより創造され、主が滅びた後もしぶとく破壊活動を続ける悍ましい殺戮者の生き残りの内一体が今地球に降り立ち、三葉と継のもとに向かってきた。

 

「う、ううううううう・・・・・・・・・・・・・こっち来たぁ・・・・・」

 

その凶暴な姿に継は腰を抜かし立つ事ができない。だがそれは当然とも言える。数十メートルという圧倒的なサイズは人々に本能的な恐れを抱かせるには十分だったし、なによりその獰悪な表情は知性を持つ生命体全てへの悪意を感じさせた。そうしている間にもスコーピスは確実に継に近づいてくる。だが、彼の姉、三葉は違った。

 

「・・・・継、あたしがアイツを引き付けるから逃げろ。」

 

「姉ちゃん!? 何言って、ていうかその怪我・・・?」

 

三葉は震えながらもしっかりとその足で立っていた。とっさに転げ落ちる継をかばっていた三葉は頭から血を流しているがそれを気にした様子はない。ただ弟を守るため最善を尽くそうとしていた。

 

「大丈夫だって!!アイツよく見たら間抜けそうな顔をしてるし、アタシなら簡単に逃げ切れるよ!!」

 

「そんな・・・・・危険だよ!!姉ちゃん!!」

 

止めようとする継に答えず三葉は継のいるのと反対側に駆け出す。そしてしばらく離れた所でくるりと振り向き

 

「またな!!」

 

と言い再び駆け出した。

 

「姉ちゃん・・・・・こんな僕を・・・・」

 

三葉はいつもそうだった。弟である継を生まれた時から深く愛し、守ってきた。生まれたてから今まで継の記憶の中にはいつも三葉の笑顔があった。姉は頼りない自分を今も守ろうとしている、何よりも大切な継の家族だった。

 

そして涙をぬぐい継は立ち上がる。姉を守るために臆病な少年は少しだけ勇気を出した。

 

 

『そうだ、それでいい。君は恐怖に耐え大切なものの為立ち上がった。それはとても素晴らしい事だ。』

 

 

いつの間にか継の手に握られていたお守り、緑色の宝石が埋め込まれていた短剣のような物から深い声が響く。

 

 

『君は勇気を出した。ならば次にやることは一つだ。』

 

 

「うん!」

 

優しく語り掛ける声に背中を押され継は短剣を引き抜く。継が持つ”お守り”それの本当の名はエボルトラスターという。それはただの短剣ではない。ウルトラマンネクサスと一体化して戦う《デュナミスト》に受け継がれる神器であり

 

「ネクサスーーーッ!!」

 

ウルトラマンネクサス、この星で人々を守り続けていた巨人に変身する為に必要な道具である。エボルトラスターを引き抜いた継の姿は、雄々しき銀色の巨人に変わっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゃああっ!!」

 

まるでハエを打ち払うようにスコーピスの尾が三葉の近くに叩きつけられ、その衝撃で三葉は転倒し倒れ伏す。

持ち前の運動神経とサイズさを活かしてどうにかスコーピスを引き付けていた三葉だがとうとう限界が訪れようとしていた。

 

「う・・ぐう・・・継・・・・」

 

 

痛みと恐怖に震える三葉の頭にあるのは弟のことだけだった。弟は無事逃げられただろうか、自分を追いかけてきてないだろうか、自分が死んだら弟は泣くだろうな。そう思う三葉に向けてついにスコーピスの尾が鎌首をもたげしっかりと狙いをつける。

 

「元気で・・・・な」

 

涙のにじむ視界の中で三葉は死を覚悟する。だが、その無慈悲な尾が目的を遂げることはない。

 

 

「シェアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

「ピギャアアッ!!」

 

蒼い流星がスコーピスにぶつかりその巨体を弾き飛ばした。その蒼い流星、蒼と銀色のウルトラマンネクサス・ジュネッスブルーは立ち上がると、無事を確かめるようにどこか気づかわし気に三葉を見る。

 

「あれ・・・・継・・継なのか?」

 

三葉の目にはその仕草がどこか弟のそれに重なって見える。そして細かな理屈を超えた本能でネクサスは継であると理解する。弟が光の巨人と一緒に自分を助けに来たのだと。

 

「シェアッ!」

 

そしてネクサスはスコーピスと自分の頭上に清浄なエネルギーを放射し、その波動に包まれると蜃気楼のように消えていく。その様子を見て感慨深げに三葉はつぶやく。

 

「継のやつ・・・・大きくなって・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

スコーピスとネクサスが移動したのはメタフィールドと呼ばれる空間である。赤褐色の大地に青い結晶体が生えたその空間は光の巨人の戦闘能力を強化する空間であり、現実とは異なる位相に存在する為余計な被害を出す必要のない、ウルトラマンにとって理想的な空間だった。

 

「 ギシャアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

「ヘアアアアアアアアアアッ!!!」

 

その空間で怪獣とウルトラマンが激突する。

 

「ハアッ」

 

「ギガッ! ピギャアアッ!」

 

だがその趨勢は圧倒的にネクサスが有利だった。当然ではある。スコーピスは凶暴な怪獣であり、幾つもの惑星を滅ぼしているが、それは数十体での集団戦闘でのことである。自分より強い生命と一対一で戦い勝利した経験などなく、そんな程度の存在がウルトラマンに、ネクサスにかなうわけがない。

 

 

「ジェアアアアアアアッ!!」

 

スコーピスの爪の連撃をはねのけたネクサスは怒りを込めて全力のボディブローを叩き込む。その強烈な勢いに悲鳴を上げてスコーピスは吹き飛び、土煙をあげて大地にたたきつけられる。

 

「ハァーッ・・・!?」

 

「ギッ・・・ギギィ・・・・ギギャンっ!!」

 

油断なく構えるネクサスのもとへ土煙の中から二股に分かれた尾が飛び出しその首を捉える。よろめきながらも起き上がったスコーピスは甲殻を砕かれながらも怪獣兵器としての生命力を発揮し、まだ活動可能な状態だった。首に絡めた尻尾を使いネクサスの動きを制しながら、立て続けに赤黒い光弾を放つ。

 

「ウウッ・・ハアッ!!」

 

しかしその光弾がネクサスを捉えることはない。右腕の装甲部分から出した光剣で絡みつく尾を切断したネクサス

は一瞬で空中に退避し、地球上のどんな飛行物体にも不可能な軌道と速度で飛翔する。スコーピスはその姿を追尾し、光弾を放つがかすりもしない。そしてスコーピスの直上近くまで到達したネクサスは構えをとる。

 

両腕の装甲部を交差させガッツポーズのような形をとった後、L字状に組み合わせる。これこそがウルトラマンの代名詞、多くの悪を倒してきた必殺光線の構え、ネクサスの中で継はネクサス固有のそれの名をしっかりと叫ぶ。」

 

(オ ー バ ー レ イ・シュ ト ロ ー ム!!!!)

 

蒼く熱い光がスコーピスに全力で打ち下ろされ、スコーピスを貫く。必殺の一撃を受けたスコーピスは断末魔すら上げることなく蒼い粒子状に分解され消滅していく。それを見届けたネクサスはメタフィールドを解除し、元の空間に戻ってきた。

 

元居た山中に戻っていったネクサスは近くに板三葉と目が合う。そうすると三葉はにっこりとほほ笑んだ。

 

「おかえり継!!よく頑張ったな!」

 

三葉はサムズアップし、それにつられネクサスの中の継もにっこりと笑いサムズアップを返す。今でも昨日のことのように思い出せる美しい瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

既に夕方になった大学の構内にある桜の木の下、継の話は終わった。昔を懐かしむような表情の彼の手には昨日三年ぶりに手にした神器、エボルトラクターがあった。

 

「まあ・・・・大体そんな感じだったかな。」

 

「先輩はずいぶんすごい体験をしていたんですね・・・・。でもその剣?ていつの間に手に入れてたんですか?」

 

「ああ後で思い出したんだけどその時の一年位前に夢の中でリオさん・・・俺の前にネクサスだった人から受け取ったんだ。リオさんもその前にネクサスだった美花さんから受け取ったらしいよ。」

 

継は自らの先輩ともいうべき二人の名を口に出す。何度かあった二人はネクサスの変身者でなくなった今も自分に出来ることをして、多くの人々を助け笑顔にしているはずだ。

 

「そうなんですか。ネクサスになる人たちはそうやって光を受け継いでいってるんですね。」

 

「ああ、でも俺が受け継いだ光はあの二人からのだけじゃない。三葉姉ちゃんから受け継いだものでもあるんだよ。ほら」

 

そういって10年前撮った写真を瑞生に見せる。頭に包帯を巻いているが、笑顔の三葉と継が映ったその写真は見る者をどこか温かい気持ちにさせる力があった。

 

「俺があの時ネクサスになれたのは姉ちゃんがいつも俺を見守ってくれたから、俺を生まれたときから愛してくれたからなんだよ。そうやって姉ちゃんが臆病な俺に光をくれたから、あの時俺は戦えたんだ。」

 

少し照れ臭そうに継は話す。10年前からの気持ちを誰かに話すのは初めてで照れ臭かったのだ。

 

「だからかな。俺も少しでも人を助けでそういう誰かを思う心とか、そういう光を人に伝えていこうと思うんだ。まあほんの小さな事ばかりだけどね。」

 

「そんなことありませんよ。私も先輩の光に触れた一人ですから・・・・そういう先輩が私は好きですよ。」

 

えっ!本当に!?」

 

「そうですよ。 ふふふ」

 

二人は顔を見合わせ笑いあう。そうしてまた少し話した後、二人は連れ合って帰り道を行く。しっかりと手をつなぎ仲睦まじい二人は、どこか暖かい光を纏っているように見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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