聖王と軍師の子孫は世界最強 (ギムレー様)
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ルーク
17歳 男
種族:人とマムクートの混血
身長:160cm(人型)
体重:57kg(人型)
容姿:肩までの白に近い銀髪で一部に藍色のメッシュがはいっている。目も藍色をしている。顔付きは実の親であるマークやルキナに似ておりイケメン(上の中ぐらい)だが、まだ幼さが残っている。聖痕は右の手の甲にある。
好きなもの
家族、仲間、友人、訓練、冒険
嫌いなもの
大切な人を馬鹿にする者、罪無き者を虐げる者(賊など)、無責任な者
家族構成
父:マーク
母:ルキナ
妹:マキナ
祖父:ルフレ、クロム
祖母:チキ、スミア
ステータス(レベル1)
天職:聖王
筋力:550[+500]
体力:550[+500]
耐性:550[+500]
敏捷:550[+500]
魔力:550[+500]
魔耐:550[+500]
技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・状態異常耐性・複合魔法・魔力操作・想像構成・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解・神竜の加護・邪竜の血族・竜化・スキル【華炎・流星・滅殺・生命吸収・天空・王の器・回復・竜特攻・疾風迅雷・七色の叫び・限界突破・居合一閃・絆】
使用武器
神剣ファルシオン
聖書ナーガ
魔書ギムレー
マークとルキナの息子でファルシオンの継承者。イーリス王国第一王子。幼い頃からイーリス城で勉強と訓練に励んでいたが、15歳になったときに見聞を深めるためにと親の許可を得て旅に出る。その時に選別としてルキナよりファルシオンを継承する。その後、虹の降る山で神竜ナーガの儀式を受けてファルシオンを封剣から神剣へと覚醒させる。世界各地を巡っていたある日、異界の門を発見する。それからは自身の世界だけでなく、異界の門を利用してさまざまな世界を旅していった。幾つかの世界を見てまわったあと一度自身の世界に戻ろうと異界の門で移動している途中でなぜかハジメたちの異世界召還に巻き込まれてトータスへとやってきた。
父のマークや妹のマキナと比べて軍師としての才能は劣っているが、剣と魔法の才能は誰よりも高く、本来なら必要な魔道書を使用せずにある程度の魔法を扱うことが出来る。そのためファルシオンを用いた接近戦から魔法による遠距離戦、マムクートの特徴である竜化による空中戦とあらゆる戦闘に対応できる
細かいことは気にせず、少し大雑把だが家族や仲間、友人を大切にする情に厚い性格をしている。そのため多くの人からの人望が厚くて慕われている。また、その性格から大切な人や罪無き者を傷つけたりする者、敵と判断した者などには容赦はしない。それでも本当に改心した者は助けたりする。
幼い頃から祖父母の武勇伝を聞いて育ってきたため、冒険や旅をすることが好き。
マキナ
14歳 女
種族:人とマムクートの混血
身長:145cm(人型)
体重:40kg(人型)
容姿:腰に届くぐらいの藍色のロングで白に近い銀色のメッシュがある。藍色の目をしていて右目に聖痕がある。顔付きはルキナを幼くしたものである。
好きなもの
家族、仲間、友人、勉強
嫌いなもの
兄と同じ
マークとルキナの娘でルークの妹。イーリス王国第一王女。父のマークや祖父のルフレと同じで軍師の才能があり、幼い頃から戦術書などを読み、軍師としての勉強をしてきた。剣の才能はないが、魔法の才能は兄ほどではないが高く、複数の魔道書を同時に使用することができる。竜化での空中戦もしっかりできる中・遠距離戦闘を得意とする。
どんなことでも見逃さず、慎重に考えて行動するような思慮深い性格をしている。またどんな相手にも優しく、どれだけ悪人でもなるべく殺したくないという思いを持っている。しかし、もしものときは己の手を汚すことも辞さないという強い覚悟を持っている。家族に対して甘えん坊で兄のルークにはいつも一緒にいるぐらい懐いていた。そのためルークが旅に出るときには駄々をこねてしまったが、今は兄が戻ってきたときにしっかり支えれるように立派な軍師や参謀になるために必要な勉強をしている。
※本編には多分出てこないです
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1話
とある世界にある一つの島。
青々と茂る木々の間から日の光が降りそそぎ、森に住む動物たちを照らしている。
動物たちは争うこともなく仲良く遊んでいた。
一目見るだけで人の手が加わってないことの分かるその島はまさに生き物の楽園のようであった。
そんな島めがけて一匹の生き物が海の上を飛んでいた。
体長は約3mほどあり、全身を鱗に覆われている一対の翼を持ったその生き物。
鋭い爪を持つ四肢に二本の角と多くの牙を持った頭部。
鱗は白く輝きどこか神々しさを感じさせる。
その姿は古来より多くの伝説で語り継がれてきた生き物の姿と酷似していた。
その生き物の名は“竜”。
あるときは人々に危害を加え脅かす厄災として、またあるときは大いなる力の象徴として描かれ恐れられてきたもの。
その竜は島に近づくと徐々にその速度を落とし砂浜に着地する。
そして着地するのと同時に蕾のようなものに包まれる。
少しして蕾のようなものが霧散するとそこには一人の少年が居た。
「ん~~っ……やっとついた。」
体を伸ばしながらそう呟いた少年。
少しの間体をほぐしてから少年は島の森に向けて足を踏み出す。
森の動物たちは本来部外者であるはずの少年に対して襲うことも逃げることもせず、まるでそれが当たり前であるかのように受け入れていた。
しばらく歩いていると洞窟が見え、少年はそのまま洞窟の中に入っていった。
その洞窟の奥に辿り着くと、そこには門のようなものがあり、フードのついたローブで全身を隠した怪しげな人物がいた。
「おや?今回はいつもより早く戻ってきたね、ルーク。」
「ああ、この世界にはマムクートが今までの世界より多かったからな。そのおかげで心置きなく竜化が使えて移動時間を短縮出来た。」
「なるほど。そういえば君はマムクートの血も引いていたね。それで?今度はどこの異界にいくんだい?」
ルークと呼ばれた少年は怪しげな人物に話しかけられても警戒することなく、親しげにしている。
だが、それは別に不思議なことではない。
元々ルークとこの人物は知り合いだからだ。
洞窟の中にあるこの門は“異界の門”と呼ばれるもので、今いる世界とは異なる世界である“異界”に行くことができるものだ。
そしてこの人は異界の門を守っている番人のような人物だ。
「この二年間一回も帰ってなかったからな。今回は俺の生まれた元の世界に戻るつもりだ。じゃないとマキナにどやされちまう。」
「そうかい。でも気をつけて戻りなよ?今更君が賊なんかにやられるなんて思ってないけど何が起こるかわからないからね。」
「わかってるって。でも俺がどれだけ異界を旅してきたかはお前が一番知ってるだろ。」
「それもそうだけど……ま、いっか。それじゃあ待たね。」
「ああ、またな。」
ルークと番人の二人が別れの挨拶をすると、閉じていた異界の門から蒼白い光がひとりでに開いた。
門が完全に開ききるとルークは迷うことなく門の中に入っていった。
門をくぐってからは流れに身を任せながら蒼白い空間を漂っていた。
(感覚からしてあと少しでつくかな?父さんと母さんはげんきかなぁ。マキナは家出るときに結構ぐずってたから帰ったらいっぱい遊んでやろっと。)
考え事をしている間に今いる空間とは明らかに違う光が見えてくる。
あと少しで出口だとわかり、ルークが内心ではしゃいでいると突然足下に見たこともない魔法陣が展開される。
「なっなんだこれ!?引っ張られ………ッ!?」
何とか逃げようとするも魔法陣に強く引き付けられてしまい、そのままどこかへ転移させられてしまった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
突然教室に現れた魔法陣みたいなのが輝いたので思わず目を閉じていた少年―――南雲ハジメはざわざわと騒ぐ無数の気配を感じて目を開く。
そして、周りを呆然と見渡していた。
月曜日で今日からまた学校だったのとついつい徹夜ごゲームをして寝不足だったことから憂鬱な気分になりながらも学校に行き、いつも通りにすごしていた。
二大女神として人気のある少女―――白崎香織が話しかけてきて、それにつられるようにクラスのトップカーストの八重樫雫、天之河光輝、坂上龍太郎がハジメの周りに集まり、その結果クラスからのヘイトがハジメに集中する。
そんないつもの事(ハジメは本当は放っておいて欲しい)があり、誰かどうにかしてくれと思ったがこんな事が起こるとは少しも考えていなかったからだ。
周りを見渡しているとハジメと同じ様にしているクラスメイトたちの姿が見える。
どうやらあの時教室にいた全員がここにいるようだ。
他にも今ハジメたちがいる台座のような場所の前に三十人ほどの法衣集団がいる。
今居る大聖堂のような場所もそうだが他に教室に居た時と変わっていることがないか観察していると後ろの方から呟いたような声が聞こえてきた。
「…………どこだ、ここ?」
心当たりのないその声に反応して、その声のした方向に振り向くハジメ。
そこには中学生位の男の子がいた。
髪型は肩にかかるぐらいに整えられた白に近い銀髪で藍色のメッシュが一房入っており、同じく藍色の目をしている。
顔付きは整っているが、一見しただけでは性別が判断しにくい中性的な顔付きだ。
金色で縁取られた青色の膝ぐらいの長さまである上着に焦げ茶色のズボン、腰には金色のベルトがまかれ、上着よりも深い青色のブーツをはいている。
さらに上着と同じように金色で縁取られた青色の胸当てと肩当てを、腰のベルトには鞘にはいった剣をつけ、表が青色で裏側が赤色のマントを羽織っていた。
豪華絢爛という訳ではないが貴族のような風格を思わせる雰囲気の男の子や服装にハジメは思わず凝視してしまう。
だが考えてみれば、この台座の上にいるということは同じような状況なのだろうが見たことのない人なので、ハジメは男の子に話しかけていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
転移が終わったのか地面に足が着く感覚がしたので周りを見てみると、そこは見たことのない建物の中だった。
「…………どこだ、ここ?」
まず目に飛び込んできたのは巨大な壁画だった。
縦横十メートルはありそうなその壁画には、後光を背負い長い金髪を靡かせうっすらと微笑む中性的な顔立ちの人物が描かれていた。
背景には草原や湖、山々が描かれ、それらを包み込むかのように、その人物は両手を広げている。
一見すると美しい壁画だが、ルークはどこか薄ら寒さをその絵から感じたので視線をそらした。
(あの時の魔法陣にこの状況からして転移したのか。それにこの場所と周りの様子から召還かなんかの儀式にでも巻き込まれたのか?)
自身に起きたことと法衣をきた術者らしき人たちが何十人もいることなどから仮説を立てていく。
あれこれと考えていると近くにいた少年がルークに話しかけてきた。
「えっと、君も突然ここに連れてこられたの?」
「?ああ、そうだが…………誰?」
「あっごめん。僕の名前は南雲ハジメ。よろしくね。」
「ハジメか。俺はルーク、よろしく。」
お互いに自己紹介を終えて話を続ける。
「それでハジメ、さっき君もと言っていたけどハジメたちもか?」
「うん。突然魔法陣が現れたと思ったらいつのまにかここに居たんだ。」
「こっちもだいたいそんな感じだ。」
ハジメと話していると法衣集団の中でも特に豪奢で煌びやかな衣装を纏い、高さ三十センチ位ありそうなこれまた細かい意匠の凝らされた烏帽子のような物を被っている七十代くらいの老人が進み出てきた。
だけど纏っている覇気が強いため、皺などがなければ五十代と言っても通るぐらいだ。
錫杖をシャラシャラと鳴らしながら、外見によく合う深みのある落ち着いた声音でルーク達に話し掛ける。
「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ。」
そう言って、イシュタルと名乗った老人は、好々爺然とした微笑を見せたが、ルークにはどこか裏のありそうな感じがして警戒心を抱いた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
その後は場所を移り、十メートル以上ありそうなテーブルが幾つも並んだ大広間に通されていた。
メイドに飲み物を給仕され、それを確認してからイシュタルはこの世界について話し出した。
それをまとめると
1.この世界はトータスと呼ばれている。
2.トータスには人間族、魔人族、亜人族の三つの種族がいる。
3.人間族と魔人族は何百年も戦争を続けている。
4.魔人族による魔物の使役によって拮抗していた戦力が崩れた。
5.それによって、人間族は滅びの危機を迎えている。
となる。
「あなた方を召喚したのは“エヒト様”です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にして、この世界を創られた至上の神。おそらく、エヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと。それを回避するためにあなた方を喚ばれた。あなた方の世界はこの世界より上位にあり、例外なく強力な力を持っています。召喚が実行される少し前に、エヒト様から神託があったのですよ。あなた方という“救い”を送ると。あなた方には是非その力を発揮し、“エヒト様”の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい。」
(…………狂信者かよ。)
イシュタルはどこか恍惚とした表情を浮かべている。
ルークはその表情がこれまでの旅の中で見た狂信者と同じであることから思わず顔をしかめる。
狂信者は信仰する神のためならば平気で非道なことを行うことがあることを知っているルークはイシュタルに対しての警戒心を強めた。
その時、突然立ち上がり猛然と抗議する人が現れた。
だけどルークよりも低身長かつ童顔で見た目は少女といってもいいような彼女の行動はハジメと同じ世界の人たちをほっこりさせていた。
(こいつら状況わかってんのか?)
他の奴等のあまりにも緊張感のなさすぎるその様子にルークは呆れる。
だが、次にイシュタルの言った言葉にその場の空気が凍りついた。
「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です。」
場に静寂が満ちる。
「ふ、不可能って……ど、どういうことですか!? 喚べたのなら帰せるでしょう!?」
「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意志次第ということですな。」
「そ、そんな……。」
確かにそうだ。
ルークも転移魔法があることは知っているが、転移はその世界の中だけしか転移できず、異界への転移は不可能だからだ。
さらにその世界のどこにでも転移出来る訳ではなく、一度行ったことのある場所にしか転移できず、距離が遠いほど使用魔力も馬鹿みたいに多くなり、術式がしっかりしてないとすぐに失敗してしまうという繊細な魔法のためルークの行ったどの世界でも使い手はおらず、文献に乗っている位だった。
だからこそルークは異界に行くのには異界の門を使っていたのだ。
ハジメの世界の人たちはイシュタルの言葉に口々に騒ぎ始めパニックになっていた。
その様子を侮蔑の込められた視線を向けるイシュタルをみて、ルークは内心で「狂信者が。」と舌打ちをする。
未だパニックが収まらない中、一人の男子―――天之河光輝が立ち上がりテーブルを叩いた。
その音で他の者が天之河に注目し、それを確認するとおもむろに話し始める。
「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放って置くなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」
「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無碍にはしますまい。」
「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします。」
「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな。」
「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」
天之河のその宣言で絶望の表情だった人たちが活気と冷静さを取り戻し始める。
「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。……俺もやるぜ?」
「龍太郎……。」
「今のところ、それしかないわよね。……気に食わないけど……私もやるわ。」
「雫……。」
「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」
「香織……。」
そう言って三人の男女が賛成すると他の人たちも次々賛成していった。
一部の人はそれに反対したり、微妙な表情を浮かべていたが周りの雰囲気に押されて意味をなさない。
そんな状況にルークは思わず呟く。
「馬っ鹿じゃねぇの。」
ルークの発したその言葉は不思議と多くの生徒の声で騒がしかった大広間に響き渡った。
そしてそれを聞いた人たちが次々とルークの方に視線を向ける。
その視線にはルークが誰なのかという疑問と天之河に馬鹿と言ったことへの怒りが込められており、だいたい3:7の割合になっている。
静かになった大広間で直接言葉を向けられた天之河がルークに問い掛ける。
「君は誰なんだ?いきなり初対面の相手に馬鹿とは失礼だろ?俺たちは真剣に考えて決めたことなのに一体どこが馬鹿だと言うんだい?」
「真剣に………ねぇ。」
ルークは自身を見てくる天之河を観察する。
その顔には自分たちの決意を馬鹿と言われたことへの怒りや不快感が読み取れるがそれ以外には他の者たちと同じルークが誰なのかという疑問しか読み取れなかった。
(こいつ………もしかして自覚してないのか?)
そのことに引っかかるものを感じながらルークは話を続ける。
「お前はこれから何をするのかちゃんとわかっているのか?そして今自分が何をしたのかわかっているのか?」
「?ああ、もちろんわかっているさ。さっきも言ったように戦いを終わらせてこの世界と皆を救うんだ!!」
「ふ~ん、あっそ。」
(全くわかってないな。……結局話を戦いを経験したことのない一般人か。)
戦争をするということは相手を、人を殺すことがあるということなのに、そして自分が他の人たちをその戦争に巻き込み、命の危険にさらすことになっているということを理解してない天之河を冷たい目で見るルーク。
(正義感が強いのかは知らないが理想ばかりで現実が見れてない。ここで言ってもいいが…………辞めといたほうが得策か。)
本当は話した方が良いのだろうがイシュタルに見られていることに気づいて思いとどまる。
ああいう狂信者の前で神の不都合になることをするとどんなことになるかわからないからだ。
また元の世界に戻るために行動するのを邪魔されないようにするためでもある。
一応天之河たちにも力はあるようなので、それでもどうしようもない事態になったら自分が助ければいいかと結論ずけてルークは黙り込んだ。
敵意を向けてくる奴やいまだに話してくる天之河をながしながら。
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2話
あの後すぐに移動することになったが、さっきのやり取りが気に入らなかったのか、俺はハジメと一緒に召喚された奴らのほとんどに睨まれている。
敵意と一部からは殺気も感じられるがこれまで旅の途中で行ってきた戦闘の最中に感じたものと比べるとあまりにもぬるいものだった。
こんな戦闘のせの字も知らないような奴らを本当に戦わせるのかと考えていたが、そこら辺は既に対策をしていたようだ。
今向かっている場所で俺達の受け入れ先である国―――『ハイリヒ王国』ではこのような事態も考慮していてそういった訓練を受けれるようにしてあるらしい。
建物から出るとそこは太陽の光を反射してキラキラと煌めく雲海と透き通るような青空という雄大な景色が広がっており、回廊の先には柵に囲まれ魔法陣が刻まれた円形の大きな白い台座がある。
この台座を使って今いる場所―――『神山』から麓のハイリヒ王国に向かうようだ。
「彼の者へと至る道、信仰と共に開かれん、“天道”」
イシュタルがそう唱えると足元の魔法陣が燦然と輝いて台座が動き出し、麓へ向けて斜めに下っていく。
周りはこのことにはしゃいでいたが、それを無視してさっきの魔法について考え始める。
(詠唱での魔法の発動か。俺のいた世界と違って魔導書が必要ないのか。この世界の魔法は全部こんな感じなのか?それとも固定された魔法陣限定?もし全部だとしたら便利だな。だけど詠唱中に狙われたりしたら……)
今は少しでも情報がほしいためそのまま思考に没頭する。
ある程度考え終えたところで周りを見渡すと王宮らしき城にある高い塔の屋上に台座がついた所だった。
王宮につくとそのまま玉座の間に案内された。
その道中では騎士や文官、メイドなどの使用人達から期待や畏敬の念が向けられる。
この世界に神の使徒として俺達は召喚されたからその影響だろう。
だが……
(おかしい)
最初は偶然だと思った。
だけど移動中に会う人全員が微妙な違いはあれどほとんど同じ表情を浮かべており、ある疑問を抱く。
(なんで誰も不安を持ってないんだ?)
いくら神が召喚した者だとしても相手は全く知らない赤の他人なのだ。
そんな初対面の人をすぐに信用したり、信頼できる人など一部の例外を除いていない。
ちゃんと戦えるのか。
背中を任せても大丈夫なのか。
本当に自分たちを救うことが出来るのか。
普通はこのような疑問や不安を少しは抱くはず。
にもかかわらずここで会った人は全員が希望に満ちた表情を浮かべているのだ。
まるで俺達が来たことで自分たちの
しかしその疑問の答えは玉座の間についたときに知ることになった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
玉座の間の入口らしき美しい意匠の凝らされた巨大な両開きの扉の前に到着すると、その扉の両サイドで直立不動の姿勢をとっていた兵士二人がイシュタルと勇者一行が来たことを大声で告げ、中の返事も待たず扉を開け放った。
イシュタルは、それが
そこで目にしたのは玉座の前で覇気と威厳を纏った初老の男が
そう…………
玉座にいる国王らしき人物がたった一宗教の教皇を相手に。
さらに近づいておもむろに手を差し出たイシュタルに軽く触れない程度のキスをする国王。
(まじかよ)
その事実に思わず何匹もの苦虫をかみつぶしたような顔になってしまった。
それ程目の前の事実を信じたくないのだ。
昔から宗教は政治と密接に関わっていることは知っている。
なぜなら宗教は民衆の求心力が得やすいからだ。
それ故に有名で強大な宗教を国教とすることで国を纏めたり、より強カな権力を得ようとした者が多くいた。
だがイシュタルと国王の行動はそれらとは訳が違う。
国王は教皇よりも
(神を頂点とする国…か)
少し違う所もあるが同じような国―――かつて宗教が支配していた国を1つだけ知っていた。
ペレジア
邪龍ギムレーを崇めるギムレー教団の教主ファウダーが王をやっていた国だ。
イーリスなどの国々に戦争をしかけ、最後はかつて滅びたギムレーを復活させ、世界を破滅させかけた。
祖父のクロムやルフレ、その仲間達によってギムレーは倒され、破滅は防がれたが、それでも多くの者が巻き込まれた。
このような歴史を知っているからこそ
(善神か、悪神か。それが問題……か)
王族に続いて騎士団長や宰相等の自己紹介が行われる中、俺はこの不安杞憂であるよう祈るような気持ちで聞いていた。
その後、開かれた晩餐会に参加して、与えられた部屋で寝た。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
翌日から早速訓練と座学が始まった。
まず、集まった俺達に十二センチ×七センチ位の銀色のプレートが配られた。
不思議そうに配られたプレートを見る俺達に、騎士団長メルド・ロギンスが直々に説明を始めた。
騎士団長が訓練を指導している理由は至極単純で、神が至上とされ、その使者である俺達に半端ものをつけることなどできないからだ。
まあ、このこともメルド団長にとっては副長に仕事を押し付けれる言い訳みたいになっていたけどけど。
「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」
非常に気楽な喋り方をしているが、これは豪放磊落な性格をしている団長が「他人行儀に出来るか」と言ったからだ。
他の団員にも普通にするよう忠告していたぐらいだ。
「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。 “ステータスオープン”と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」
「アーティファクト?」
聞き慣れない単語に昨日、戦争参加宣言を真っ先にしていた男―――天之河光輝が質問をする。
「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからな」
「へぇ」
メルド団長の言葉にステータスプレートを見ながら小さく感嘆の声を漏らす。
これまで見た世界では広く知られている者の名を賊が騙って悪事を働いていることがあったため、これがあれば他人に偽装されないなと思ったからだ。
言われた通り血をつけると魔法陣が一瞬淡く輝いてステータスプレートに自分のステータスが浮かび上がった。
===============================
ルーク 17歳 男 レベル1
天職:聖王
筋力:550[+500]
体力:550[+500]
耐性:550[+500]
敏捷:550[+500]
魔力:550[+500]
魔耐:550[+500]
技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・状態異常耐性・複合魔法・魔力操作・想像構成・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解・神竜の加護・邪竜の血族・竜化・スキル【華炎・流星・滅殺・生命吸収・天空・王の器・回復・竜特攻・疾風迅雷・七色の叫び・限界突破・居合一閃・絆】
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しばらく自分のステータスを見ているとメルド団長からステータスの説明がなされた。
「全員見れたか? 説明するぞ? まず、最初に“レベル”があるだろう? それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない」
つまりレベルとは一種の目安ということか。
「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。それと、後で、お前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。何せ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大解放だぞ!」
やはりどの世界でも地道に訓練をする必要があるの変わらないようだ。
いくら初期ステータスが高くても努力しなければ宝の持ち腐れもいいところだ。
「次に“天職”ってのがあるだろう? それは言うなれば“才能”だ。末尾にある“技能”と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが……百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな」
天職の欄を見ると祖父のクロムや母のルキナと同じ、イーリスの王の呼称である聖王と書いてある。
そのことについ頬が緩んでしまう。
いつか受け継いでもいいように頑張ってきたことが少し認められたと思えたからだ。
「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな! 全く羨ましい限りだ! あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」
(ステータスは平均の約50倍、スキルの限界突破の分も含めると約100倍以上か。………これまでの戦いの経験もあるだろうけどこの感じだとあの狂信者が言っていたことは本当だったんだな。)
イシュタルの言葉を少し思い出していると、メルド団長の呼びかけで最初に天之河がステータスの報告にいった。
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天之河光輝 17歳 男 レベル:1
天職:勇者
筋力:100
体力:100
耐性:100
敏捷:100
魔力:100
魔耐:100
技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解
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「ほお~、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め! 頼もしい限りだ!」
「いや~、あはは……」
天之河のステータスにメルド団長は驚きの声を上げる。
それもそうだろう。
メルド団長のレベルは62ごステータス平均は300前後。
元々は一般人である天之河がレベル1でその三分の一のステータスを持っているのだから。
その後に続いて他の人達も見せていく。
その人達も天之河ほどではなくとも高いステータスを持っていてメルド団長も嬉しそうにしている。
しかし、それもある少年のステータスを見た時に固まってしまった。
ハジメである。
「ああ、その、何だ。錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛治職のことだ。鍛冶するときに便利だとか……」
歯切れ悪くそう言うメルド団長の様子を見て、数人の男子がニヤニヤと嗤いながらハジメに近づく。
「おいおい、南雲。もしかしてお前、非戦系か? 鍛治職でどうやって戦うんだよ? メルドさん、その錬成師って珍しいんっすか?」
「……いや、鍛治職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は全員持っているな」
「おいおい、南雲~。お前、そんなんで戦えるわけ?」
その様子を見て他の人達―――特に男子が同じように嗤っている。
「さぁ、やってみないと分からないかな」
「じゃあさ、ちょっとステータス見せてみろよ。天職がショボイ分ステータスは高いんだよなぁ~?」
執拗に聞く男子にハジメは投げやり気味にプレートを渡す。
===============================
南雲ハジメ 17歳 男 レベル:1
天職:錬成師
筋力:10
体力:10
耐性:10
敏捷:10
魔力:10
魔耐:10
技能:錬成・言語理解
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「ぶっはははっ~、何だこれ! 完全に一般人じゃねぇか!」
「ぎゃははは~、むしろ平均が10なんだから、場合によっちゃその辺の子供より弱いかもな~」
「ヒァハハハ~、無理無理! 直ぐ死ぬってコイツ! 肉壁にもならねぇよ!」
ハジメのステータスを見た男子達はそう言いながら爆笑し始める。
それにつられて他の者も爆笑している。
「ふっく…………アッハハハハハハ!!」
そんな奴らを見て我慢出来ずに俺も笑う。
今まで喋らずに静かだった俺が笑ったことに驚いたのか、他の奴らが静かになった。
ハジメは笑う俺を見てさっきよりも落ち込んでいる。
昨日この国の王子に話し掛けられていた女子―――白崎香織が憤然としている。
「おっやっぱりお前もこれだけ役立たずだと笑うの
「黙れ、愚か者が」
……なっ!?」
笑いがおさまった俺にハジメに絡んでいた男子の一人が話し掛けてくるが、それに対して表情を消し、冷めた視線を送りながら罵倒する。
「俺がハジメのことで笑ったと思っているのか?それだったら見当違いもいいところだな。俺が笑っていたのはお前らに対してだ」
俺の発言に周りが殺気立つ。
そんなことは気にせずに俺は自分の思ったことを周りの奴らに言う。
「非戦闘職だからなんだ、低ステータスだからなんだ。前提からして間違っているんだよ、お前らは。」
「非戦闘職は役に立たない?なら聞くが戦闘職の人だけで本当に戦争に勝てるのか?」
「答えは否だ」
「もし鍛冶士がいなかったら、もし農家がいなかったら、もし軍師がいなかったら」
「満足のいく武具が手に入らない、充分な食糧が手に入らない、敵を出し抜き有利になるための戦略がたてられない」
「それだといくら兵が強くとも勝てる戦いにも勝てなくなる」
「他にも要因はあるが、屈強な兵と優秀な後方支援、この二つがあって初めて戦いに勝てるようになる」
「それなのに力が無いからとあろうことか味方を虐げる。その愚かさに呆れたから俺は笑ったんだ」
「それに武力だけが力じゃない。知力に技術力、他にもいろいろとあるが、ハジメの場合はそういったステータスに反映されない力として出ているだけだろ。それがわかったのならもう黙ってろ」
言い終えると同時にハジメのステータスプレートを奪い取り、本人に渡す。
ハジメはさっきの言葉が嬉しかったのか、小さく「ありがとう」と言ってきたので「気にするな」と返しておく。
それが気に入らなかったのかハジメを嗤っていた男子の一人が怒鳴ってきた。
「そんなに言うんならお前のステータスはどうなんだよ!!」
それに続くように他の男子も同じように怒鳴ってくる。
どのみち見せなければいけないのでメルド団長にステータスプレートを渡す。
メルド団長がステータスプレートを確認すると、大きく目を見開き、驚愕の声を上げた。
「なっなんだこのステータスは!?基礎ステータスだけで全部500越えなのに追加ステータスでさらに500だと!?技能も多いし、天職も聖王と聞いたことが無いものだ。………本当に何者なんだ?」
メルド団長からの疑問に他の奴らからの視線が集中する。
メルド団長の言葉で俺のステータスを聞いた者は一部を除いて顔を青ざめて震えている。
「そうですね······では、改めて名乗りましょうか。俺の名前はルーク。嘗て邪竜を滅ぼした英雄の一人でイーリス国の王、聖王クロムの孫にして、神竜族と呼ばれし
そう言いながら俺は笑みを浮かべていた。
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