サクラ大戦 大いなる意志のもとに (公家麻呂)
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01話 プロローグ

 

転生トラックとか神様転生とか関係なく。

50代で、酒タバコのやりすぎから来る急性肝不全で死にました。

私です。

 

今は、政治家やってます。

今の私の人生が、ヤバいくらいに上り調子。

12で司法省学校に入学、入学試験をトップで通過し、首席。

1年半で、東京帝国大学からお声がかかり、大学生をしながら大蔵省に入省。

この出世速度が、ひどいラノベの主人公みたいで自分でも引いた。

自分でも気持ち悪いくらいに頭脳明晰だったが、自分のあずかり知らぬところで転生特典があったようだ。まぁ、授かったものはありがたく使わせてもらおうということにした。

その途中で、帝国初の霊子甲冑の予算組まされた辺りで、サクラ大戦だって気が付いた。

正直なところ。

自分の子供のころから、蒸気併用霊子機関と言うものが存在していたが、霊子と言うオカルトな物質に関しては、正史でもあの時代はオカルトとか神秘が学問になっていたので、いずれは廃れるもんなんだろうと思ってた。

 

欧州大戦の前にスタアとか言うスチームパンクの人型蒸気が出てきた時点で違和感はあった。

時代が明治から太正に変わると、時の内閣総理大臣桂太郎より大蔵大臣として打診が来る。

ビビった。まじで、ビビった。当時の私の年齢15です。ちなみに14のときは大蔵省で主税局長、次官を歴任してました。そのまま政界入り、さすがはゲーム・アニメの世界。

物事がうまく運びすぎている。

そして、自覚はあるが頭脳と精神の釣り合いが取れない。

自分の感覚としては、何をやってもうまくいく、そんな感じです。

 

世界史上初の少年大蔵大臣誕生。

なんだこのパワーワード。

ちなみに、そのあとの山本内閣、大隈内閣でも大蔵大臣に就任してました。

シーメンス事件は起きない。ちなみにシーメンスのポジにいたのはノイギーア社ってところだった。

ぶっちゃけ、桂内閣時代から降魔戦争が問題化してたし、企業癒着しないと対応しきれなくなってた。

霊子甲冑関係の技術が絶対必要なのは解ってたので、大蔵省的には各省と連携して隠ぺいした。

 

そして、この大隈内閣、忠実より長く続きまして…。

欧州大戦を大隈内閣で乗り切っちゃいました。

山東半島・南洋諸島に加えて賠償金もたっぷりせしめましたよ。

 

帝国陸軍対降魔部隊の米田中将とは、この時に交友を持ちましたね。

ただ、サクラ大戦の前日譚は全く知らんかったし、物語も大筋しか知らんかったけど、原作開始前に解決できたらいいなと思って、対降魔関連予算をこれでもかと言わんばかりにぶち込んでおいた。

 

原作キャラに会えなくなるとか原作崩壊とか、第三者は思うかもしれないけど。

この当時の大日本帝国はマジでヤバかった。

だって、街歩てたら普通に化け物みたいなのが襲ってきた。

公用車で移動してたらいきなり襲われるとかあったからね。

一応陸軍車両や警察車両が護衛してくれるけど、あれの前じゃあ紙みたいなもんだからね。

 

公用車が真っ二つにされて、同乗していた秘書が肉塊になってたのを見た日にゃ、原作とかどうでもいい。奴らをどうにかしないと、自分たちの明日がないって思った。

 

結構な金を軍に回しましたね。

八八艦隊建設計画も陸軍二個師団増設計画も両方通した。

海軍は艦砲射撃による降魔殲滅をまじめに検討していたし、陸軍も人型蒸気の導入を検討した。

 

 

ただ、原作前日譚の段階で収拾をつけることには失敗した。

前日譚の事を全く知らなかったのが原因である。後々わかったことであったが、降魔=サクラ大戦の敵ではなかったということだ。

 

この時の、赤坂の料亭にて大隈重信ら閣僚との会話。

 

「対降魔部隊、山崎真之介…本当に死んでいるのか?」

「あの惨状ですので、死体が見つかってないだけで死亡しているというのが陸軍の見解です。」

 

大隈の言葉に、当時の陸軍大臣大島がしどろもどろに回答する。

 

「対降魔部隊は解散だな。若槻大臣もそれで構わんだろう。」

 

真宮寺一馬大佐の犠牲を持って、降魔討滅は成ったと考えている者たちが大半であった。

自分もその中の一人ではあったが、あれだけの予算をぶち込んでおいたのだからうまくいったと思っている一方で、原作通りの流れになっており、何かのどに引っかかるものを感じていた自分は大隈に異見した。

 

「今回の降魔と言う存在は、人知の及ばぬ化け物です。第二・第三の奴が現れる可能性は否定できません。今の対降魔部隊は解散させるとしても、形骸化するものだとしても対降魔戦闘のノウハウは軍に絶対に残しておくべきでしょう。それに万が一にも山崎真之介が死んでおらず、霊子甲冑の技術を外部に流すような事態があっては困ります。しばらくは軍縮の方向に舵を切るのは早計と若輩ながら考えます。」

 

今もだが、当時の自分は対降魔に関しては急先鋒と言う認識がなされていた。

また、軍拡路線を維持したかった元老山形有朋、元首相山本権兵衛は俺の意見に同調した。

 

「諸外国の主力兵器が人型蒸気に傾いている以上、我が国の霊子甲冑は頭一つ秀でた存在。我が国はこれを持って他国に先んじるべきであろう。」

「海軍も失速するようなことは容認できん。」

軍閥系の人間たちもこれに同調する。

 

俺の意見を後押しする軍閥。

事後処理を含む降魔戦争も、我が国に利益をもたらした欧州大戦も終了した。太正7年12月、一段落ついたこの時期、政界財界はさっそくであるが、軍縮へ舵を切り内需を高めようとする派閥と軍拡の維持もしくは軍縮の否定をする派閥とで割れ始めていた。

俺個人としては、降魔戦争が終わったようには思えなかったがゆえに、非軍縮派に籍を置き、形骸化するにしても対降魔を意識した部隊を残そうという姿勢は貫きたかった。

 

ゆえに、帝国華撃団構想を持つ米田中将と俺が再び同じレールに乗ることは当然と言えた。

 

 




ヒロインたちと絡ませるために、年齢を大改編。
俺tueeeee系主人公みたいな。今回の話ですが、俺tueee系はあまりしないつもり…。


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桜華絢爛
02話 一つの道に


藤枝あやめ視点です。


太正8年6月。

若槻麗次郎22歳、元大蔵大臣、憲政会総裁特別補佐。

 

米田が、帝国華撃団構想を自身の後援者である賢人機関のメンバーで貴族院議員の花小路頼恒伯爵から紹介を受けた人物。

かつて、陸軍対降魔部隊の支持者でもあった彼とは簡単な交遊もあった。

若すぎる知人と言う認識ではあったが、彼の多方面に持つ人脈、第二の降魔登場を予期していると言う共通点、彼に再び会おうと思ったのは当然の流れであった。

 

 

麹町中六番町若槻邸。

米田は、藤枝あやめ(当時19)を連れて、若槻麗次郎のもとを訪れる。

大蔵大臣時代から、異質な存在であった彼であったが、7年前の少年らしさを残していた男は、少年から青年となりさらに異質さを増していた。

 

そんな彼は、米田たちが持参した華撃団構想計画書をじっくりと目を通し終えるのを待った。

 

「実に興味深いですよ。米田中将…、対降魔計画を支援していたが、軍内でもこれに懐疑的なものも多くてな。軍内で妨害を跳ね除け貫ける人物がいない。何せ秘匿計画だ…、大蔵省や内閣のごり押しと言うわけにもいかんのです。軍との軋轢にもなりかねませんし。乃木大将が存命であれば彼にお願いしたのだが…。そういった意味でも、米田中将の帝国歌劇団…帝国華撃団の構想は中々に盲点でした。外郭組織ならば軍の横やりが入りにくい。そして、私としても援助しやすい。中将たちと私とは様々な点で一致している。ぜひ協力しましょう。ところで、不要な問いとは思いますが、降魔戦争は終わったと思いますかね?」

 

彼の問いに、米田中将は「いいえ。」と答える。

すると、彼も「その通り。」と答えて再び話し出す。

 

「そう、終わっていない。降魔の親玉は倒したはずなのに未だに降魔の出現が止まらない。一時ほどではないにしろ奇妙だとは思いませんか?」

 

「では、若槻さんは第二の降魔戦争が起きるとお考えなのですか?」

 

「えぇ、私はそう考えてます。世間では終わったかのような扱いで、軍内部も現状を残党狩りと捉えている者たちが大半です。確かに減りました。ですが、ある一定のラインから減る様子がない。最近では新種と思われるものの存在も報告されている。」

 

軍事畑の人間ではないはずの彼が、なぜそこまで知っているのだろう。

少なくても、敵対者ではないが大蔵の人間が軍の機密情報を知っているのは、さすがにおかしい。米田中将も同様に思ったのか、若槻氏に対して探りを入れるよ話し方に切り替わる。

 

「そうなんです。新種の存在は一部では問題になっています。軍上層の方でね…。」

 

米田中将の探りには気が付いていないのか若槻氏は特に反応を示さず、話を続ける。

 

「そうでしょう。我々の方でも非常に危険視しております。昨今の情勢を鑑みても…」

 

『我々の方でも』若槻氏の言葉は米田中将と私の頭の中で一つの結論に結び付いた。

自分たちと同じ考えを持った集団が存在するということだ。

米田中将は、手を前に出して若槻氏の言葉を遮る。

 

「失礼ですが、私たちは賢人機関の支援の下、賢人機関メンバー花小路伯爵から自分たちと近しい考えを持つ若槻氏とお会いして、ありていに言えば取り込むように言われました。ですが、若槻氏とお話しさせていただきますところ。どうも、花小路伯爵が把握している貴方と実際のあなたは違うように感じました。大変失礼ですが、どこの組織の人間ですか?」

 

米田中将は、若槻氏に直球で問いただす。敵ではないのは確実なので、ここで殺されるようなことはないだろう。刺客を潜ませているとしても、対降魔部隊に所属していた自分なら米田中将を守りつつ若槻邸から逃げるのは可能なはずだ。衰えたとは言え自分の霊能を使えば…。

 

若槻氏は、「これはしまった。」と額を叩てから、居住まいを正す。

 

「これは大変失礼をしました。私としたことが、対降魔で手詰まりだったところに貴方方が現れてつい嬉しくなってしまいました。貴方方が信頼に足る人物であることは重々承知しておりますが、壁に耳あり障子に目あり…ここで話すわけにはいきません。ここは実際に私の所属する組織…名前はないのですが、その組織の長である方々にお会いしていただいた方がよいでしょう。」

 

私たちは意を決して、若槻氏の提案を受け入れ、若槻氏の背後の組織と接触することになる。

若槻氏はそのあと、すぐに邸内にいた書生を呼びつけて車を用意させる。

そして、若槻氏自身がどこそこへ電話で連絡を入れる。

すでに、日が落ちかけ薄暗くなっていた。

 

「では、行きましょう。私の車に続いてください。」

 

玄関には若槻氏の乗る公用車と私たちが乗ってきた車を前後に挟むように配置された護衛の警察車両。

 

 

私たちは、先頭の警察車両と若槻氏の公用車に先導され、築地の料亭の前で止められる。

先に降りた若槻氏が出迎えに来た中居に何かしらを話しかけると、黙って料亭内に入っていった。

 

若槻氏の秘書が、私たちの車のドアを開け、私たちが車から降りるのを見計らって若槻氏が一緒に入るように促す。

 

若槻氏は自身の秘書官や警官たちを別室やこの場で待つように命じると、私たちの方に向き直り、「ついてきてください。」と言って中に入った。

 

私は、その場で固まってしまった。

何せ、この料亭は新喜楽と言う超一流料亭で、私自身はおろか米田中将ですら花小路氏と同伴でようやく入れるような、超一流料亭なのだ。

 

 

 

米田中将と私は、彼の背後にとてつもなく大きな存在を感じたのだった。

 

 

 

 



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03話 明治の元勲

 

料亭新喜楽の控室で、米田中将と藤枝中尉の3人で向こうの用意が済むのを待っていると花小路伯爵が入ってきた。

どうやら、我が忠誠を捧げる御方に呼び出されたようだ。

 

「若槻君。こういうことなら、もっと早く教えてくれればいいものを…。」

「申し訳ない、花小路伯爵。こちらも秘密厳守と念押されていましてね。正直、皆さんを御方々に紹介するのは私の独断なのです。手間を掛けさせるのはご理解いただきたい。」

 

 

廊下側の襖が空き、中居が御方々の到着を知らせる。

御方々の世話役もしくは護衛と思しき人物が、向かい側の部屋につながる襖の両側に控える。

彼らは襖を開ける係だ。

若槻はすでに頭を低くしている花小路伯爵は別として、こういった場の対応がわからないのであろう米田と藤枝の2人に頭を低くするように促す。2人が頭を低くしたのを確認して自分も低くする。

 

それを確認した襖の二人が、向こう側に確認して襖を開ける。

 

「この度は、私のようなものの願いをお聞き入れいただき恐悦にございます。この度は我々と志、同じくする者たちの目通りを願いたく思いお集まりいただきましたところ有り難う御座います。」

 

若槻が頭を下げたままに、御方々に礼を述べると、向こう側から返事が返ってきた。

 

「若槻よ。貴殿の忠勤は我が理解しているし、忠誠も理解しているつもりだ。そんな貴殿が選んだ人物に間違いがあるとは思わん。皆、面を上げて楽にするとよい。」

 

「っははー。」

 

若槻は万が一にも後ろの二人が頭を上げないように、手で制しておく。花小路伯爵も同様の事をしていた。

 

「面を上げなさい。」

 

若槻は少しだけ頭を上げる。

 

「貴殿の、堅苦しさは相変わらずか。……もそっとと言ってもほとんど動かないのだろうな。」

 

「恐れ多いこと、ご容赦ください。」

 

御方と若槻の会話に、御方の横に控えていた4人の人物の一人が声をかける。

 

「若槻、御方が良いと言ってる。我々もかの者たちを見ておきたい。後ろのもの顔を上げてよい。」

 

山縣有朋であった。山縣は手をくいっとやって面を上げるように促す。

花小路と若槻の合図もあって、米田と藤枝は面を上げる。

 

「ふ、伏見宮様…。」「!?」

 

米田と藤枝は御方のご尊顔を拝み思わず、再び頭を下げてしまった。

 

「山縣、この者たち、頭を低くしてしまったぞ。」

 

御方は不思議そうに二人を見る。

 

「殿下のご尊顔を拝謁したのです。市井の者たちなれば当然の反応でございます。」

 

御方の横に控える4人の元老の一人、大隈重信が答える。

また、大隈は元老としては新任であり、元老制度には批判的であったが、降魔や昨今現れる所属不明の人型蒸気の出現による情勢不安から、元老制度を持って国家の統制を図る方針に切り替えていた。

 

「ふむ、そのようなものか。」

 

御方はそう一言告げると口を閉ざした。

その代わりに、今度は4人の元老の一人西園寺公望が口を開いた。

 

「花小路頼恒、貴公の発案する帝国華撃団構想の書を見せよ。」

 

西園寺ら元老は用人を経由して、帝国華撃団計画書に目を通す。

暫しの間をおいて、御方が元老たちに意見を促す。

 

「して、山縣の、松方の、大隈の…どう判断す。」

 

「若槻が、我らを呼んだのもわかります。」

「帝国華撃団構想は、我々の危惧するところを押さえており、よくできている…。」

「霊子運用は軍でも検証されていますが、民間企業の参入も悪い手ではないかと…。」

 

御方の問いに元老たちは肯定の意を示す。

 

「左様であるか…。陛下も臣民の安寧を切に願っておられる。元老たちよ…この者たちに協力してあげなさい。」

 

「「「御意に…。」」」

 

「元老たち、そして若槻よ。後のことは任す故…よしなに。」

 

そういって、御方は退室される。

 

そして、残された元老の3人の一人松方正義が米田に質問する。

 

「して、神崎重工と結んでいるようだが独占はいかなものか?」

 

「げ、現状。霊子甲冑を動かせているのが、神崎財閥総裁神崎忠義の孫娘すみれ以外におりません故。」

 

「そうであったか。では仕方ないな…広くから知識を招集すべきと思ったが…。」

 

ここに来て、花小路がようやく口を開く。

 

「ですので、よろしくできるのでしたら…。」

 

花小路の言葉に、山縣が答える。

 

「わかった。我々の方でもできることはしよう。松方も財界には顔が利く。人材面に関しては大隈さんが各所に顔が利く。西園寺さんも政権にはうまく動いてもらうよう計らっていただこう。無論、軍にもだ。」

 

 

大正8年6月、明治の元勲たちの後援を受け帝国華撃団構想は急速に前進することになる。

 

 

 



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04話 流転

大正8年7月、欧州大戦から始まるごたごたを乗り越え、役目を終えたとして大隈内閣は総辞職をすることになる。

その次の内閣は、西園寺の推薦と政界力学が働き、原敬が指名された。

原内閣において、教育制度の改善、交通機関の整備、産業及び通商貿易の振興、国防の充実の4大政綱を重要な位置づけとしていた。特に国防の充実は、軍より華撃団構想への流れる金銭の補填と言う意味合いもあった。

また、原内閣は外交において国交関係の改善や協調路線をとることで、華撃団の人材確保を世界規模で行うための地ならしと言う側面も持っていた。

また、政権が華撃団構想に賛意を示したのは元老らの圧力があったとは言え、神崎重工において霊子甲冑桜武の起動実験成功の報が齎されたことも大きかった。

これらの後押しもあり同年秋には帝国劇場の建築が始まった。

 

 

 

 

大正9年春 台湾海峡

 

自分たちに絡んできた暴漢の哀れな犠牲を持って、藤枝あやめは、自身がスカウトした桐島カンナの腕前を、見せつけられることになった。

 

「桐島流継承者の腕前、しかと見せてもらったわ。」

「あたいが本気出したらこんなもんじゃないさ。東京にはあたいが本気になれる強ぇ相手がいるんだろ?」

「えぇ、とても強くて恐ろしい相手よ。あたしたちは、そんな奴らから帝都東京を守らなきゃならないの。」

 

いきり立った調子で話すあやめに対して、少し不思議そうにカンナは尋ねた。

 

「なんでそんなに、いきり立ってるんだよ?強い相手をぶっ倒すってだけじゃダメなのか?それとも、なんか特別な理由でもあんのか?」

 

「それは…。」

 

 

同時期 紐育

 

「我々にとって、帝都東京、否、我が大日本帝国、引いてはそこに住まう人々すべてが守るべく大切なものだからですよ。」

 

このスカウト活動には若槻自身も、限りある時間を割いて参加していた。

マリア・タチバナへの勧誘はよい例でもあった。

 

「…それだけなのですか?東京を守る理由は…?」

 

マリアは若槻の建前を見破り、本心を覗こうとしていた。

 

「東京には、わたしが特に守りたい者たちがいるからですよ。力になりたい人がいたと言うのではだめですか?」

 

「………」

 

マリアは、何も答えることなく空を見上げた。

その日は、回答をもらうことなくそのまま日本に帰ることとなったが、後日マリアより若槻の話を受けるという手紙が届いた。

 

 

 

大正10年 香港

 

香港の李紅蘭の元に日本の外交官がやってくる。

 

「李さん。お迎えに上がりました。」

「お迎え、おおきに。」

 

紅蘭の荷物から見える発明品を見た外交官は露骨に距離をとった。

 

「あんさん、うちの発明品が全部が全部、爆発するわけじゃないんやで…」

「そ、そうですよね。あ、あははははは…。」

 

カチっ(爆発)

 

「すまん、またやってもうた…。」

「ケホっ…(バタン)」

 

 

同時期 横浜港

 

「まもなく、横浜港に到着します!」

 

船員の一人が忙しそうに走りながら大声で叫ぶ。

 

「さっ、アイリス、ついたわよ。これからは貴女は一人じゃないわ。」

「うん。」

 

あやめに手を引かれ、アイリスは横浜港に降り立った。

 

 

 

11月4日 神崎重工

 

光武着工式典パーティーでは、政財界から多くの人たちが参加していた。

若槻も、その一人であった。

 

世間では、と言っても政財界内の話であるが、若槻は影の政府(仮称)の代弁者として認知され始めた。そう言ったおかげで、以前からでもあったが、少々目立つ存在となってしまった。

パーティーでも大勢に話しかけられ、少々疲れており、壁の方へと移動した。

光武着工の流れを示した写真が飾られている一角に目を移す。

 

「ふぁ~。」

 

手で隠してはいるが、紫色のドレスを着た少女が欠伸をしているのが見えた。

 

「おや、すみれ君もお疲れですか?」

「あ、あら、いやですわ。恥ずかしいところを…若槻さん。」

「まぁ、疲れるのも当然だよ。本来は軍人がやるようなことをやってのけたんだから。」

「褒めてくれたんでしょうけど…なんだか。軍人と同列に並べられたようで嬉しくないですわ。」

 

若槻とすみれは、ともに上流階級で壮年老年が多い社交界では比較的近い年齢と言うことで、特別親しいわけではないが、比較的見知った中ではあった。ため、他の人と比べれば私的な会話もできる方だった。

 

「女っ気のない独身男に、その手のセリフは期待しないでほしいな。」

「貴方、顔はいいんですから、その辺を直せばよろしいのに…。」

 

「あはは、善処させていただきます。」

「絵にかいたような政治家答弁でごまかさない。」

「ごめんごめん。」

 

軽くふざけた会話をした後で、すみれは若槻に話しかける。

 

「若槻さん、光武の件ですけど…。」

 

すみれが、深く話そうとした瞬間割込みが入る。

 

「若槻補佐っ!」

若槻の秘書である松尾が、若槻に耳打ちする。

松尾の報告を聞いた若槻はみるみる表情を硬くする。

 

「すまない、すみれ君。急用ができた失礼するよ。」

 

すみれが、答える前に足早に若槻はその場を立ち去ってしまう。

 

「あぁ、もう。なんだか、冷めてしまいましたわ。」

 

残された、すみれも周囲を少し見まわしてから、飾られている写真を一つ外してその場を去った。

 

 

 

若槻の公用車内

 

若槻は、社内で松尾から事の詳細の説明を受ける。

 

「東京駅にて、降魔が出現しまして破壊活動を行いました。その際に、帰宅のために偶然居合わせた原首相が降魔に襲われ、死亡されたとのことです。」

「な、なんということだ。」

 

日本国首相、降魔によって殺害される。

 

 

 

 

 

「号外!!号外!!原首相が魑魅魍魎に襲われて死亡!!」

 

 



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05話 運用試験

 

大正10年11月5日 総理府

 

総理臨時代理となった高橋是清は、警保局局長湯浅を呼び立てた。

 

「今回のようなこともありまして、降魔や不明人型蒸気に対して、警察力での対処は非常に困難であると思われます。」

 

「湯浅局長は、陸軍が帝都で戦闘することに賛成かね。」

 

「いえ、決してそのようなことは…。ですが、先ほども言いましたように警察力での対処は不可能です。まさか警察に野戦砲などを装備するわけにはいきませんので…。陸軍さんは、秘密部隊を用意されているようですが…それは?」

 

急に話題を振られた、陸軍大臣山梨は淡々と答える。

 

「一応、総理府主導なんですがね。私の知る限りでは物自体は半年ですが、人員がものになるのは最も短く見繕って2年くらいですかね。…総理。」

 

「私は臨時代理です。さっき、若槻さんから連絡が来て元老より指名を受けたばかりなのだ。そのような重要案件は把握しておらんよ。とにかく、今は原亡き後の混乱を抑えねばならんよ。しかし、東京駅の化け物どもは陸軍を出動させて何とかなったとは言え…。東京駅は…内務大臣。」

 

高橋に呼ばれた内務大臣床次もこれに応じる。

 

「東京駅の再稼働には半年、急ぎに急いで5カ月を目指してみます。」

 

「頼む、やってくれ。しかし、このようなことがまた起きては困る。秘密部隊の件は、私としても急いでもらうべきか。」

 

首相暗殺と言う、事態は高橋の臨時政権を動かした。

華撃団構想に対して懐疑的であり、建前上従っていた原政権とは対照的に高橋政権は次期政権への繋ぎ的存在ではあったが、身をもって危険を感じたこともあり、繋ぎ政権としてではあるが華撃団構想に積極的に協力し、陸軍の強化に動いた。

 

そして、高橋政権は大正12年3月まで続いた。

 

 

 

大正11年8月 海軍軍令部

 

海軍軍令部の一室、海軍で行われた霊力試験の様子が流される。その部屋には報告を行う下士官たちのほかに、海軍軍令部総長山下源太郎と海軍元帥の東郷平八郎と井上良馨。そして、海軍長老山本権兵衛がいた。

 

「日本初、否、世界初の男性霊子甲冑適合者が我が海軍から現れたことは喜ばしい限りであるな。」

 

この中で、最も大きい発言権を有する山本が第一声を発する。

 

「確かに、艦隊戦力の充実はできているが…陸軍が優遇されていることは変わらん。」

「かの青年は、未だ華撃団計画中枢に人を送り込めない陸軍から一歩先んじることが出来るやもしれませんな。」

 

二人の元帥の言葉に、山本は黙って頷く。

 

「では、華撃団の米田には軍令部から…。」

 

山下の言葉を、山本はふさいだ。

「いや、元老の方々を介さねばならん。元老の方々にたいして海軍の存在を示さねばならんだろう。元老の方々に、海軍の覚えめでたくしておかねば今後に差し障るというものだ。若槻を介して元老の耳に入れていただくことにしよう。若槻も、中枢に食い込むものゆえな。」

 

山本権兵衛は元来もていた政治力に加え、海軍として世界初の男性霊子甲冑適合者を国家計画である華撃団計画へ提供した功績を持って、大正12年4月より第二次山本政権を樹立させるのであった。

 

 

 

 

大正12年3月 仙台真宮寺邸

 

「今日は、お願いがあって参りました。」

米田は用意されていた座布団から降りて、さくらの母と祖母にさくらを上京させるように頭を下げる米田に、さくらを上京させれない訳を話す。

 

「覚悟はできていました。当家は破邪の血統を継ぐ裏御三家の末裔…。いつかこの日が来ることを常日頃よりお母さまから聞かされておりました。」

「それでは…!?」

 

さくらの母若菜の言葉に米田は許可が出ると思い顔を上げる。

 

「ですが…、今はまだその時ではありません。」

 

米田はさくらの修行の場に案内される。

そこには、霊力の修行。

 

「す、すごい力だ。」

 

さくらの放った霊力が木にぶつかる。その気が大きく削られる。

 

「まだ、だめだわ…。」

 

さくらがその場にへたり込む。

 

「では、木の代わりにこのわしを撃ちなされ、桜花放神には強い心の力が必要とのことじゃった。そのためだというのなら、この権じい命など惜しくはないですじゃ。」

「権じい・・・」

 

さくらと守役の権じいとの会話に米田は割って入る。

 

「その役、私が引き受けよう。」

 

「米田のおじ様、どうしてここに。」

「それは、今はいいんだ。それはそうと、その役、私を使ってやってくれませんか。」

 

米田の言葉に、若菜は一度は拒否したが、米田はひかなかったので受け入れることに。

 

「大丈夫だ。君は真宮寺一馬の娘だ。」

 

その言葉に、さくらは決意を固め刀を構える。

 

「私は真宮寺一馬の娘…………………………。破邪剣征・桜花放神!はぁああああ!!」

 

刀を振り下ろし、発せられる衝撃波で一直線上の木々を薙ぎ払い、岩が砕けた。

こうして、さくらは一子相伝の技を身に着け、上京することが許された。

 

「こ、腰が抜けちまった。」

 

 

 

大正12年3月 御殿場演習場

 

陸軍の輸送部隊が、指揮所が仮設されている陣幕群に到着する。

 

「帝国陸軍富士宮駐屯基地陸送部隊!!到着いたしました!!」

「ごくろう!!これより同部隊は本作戦に移行する。」

 

これら先行していた。陸軍部隊が実験の準備を終え、日が昇ったころに若槻たちは到着した。

陸軍技術本部筑紫熊七本部長、陸軍教育総監部秋山好古教育総監、陸軍参謀府上原勇作参謀総長と錚々たる面々であった。

 

彼ら陸軍の重鎮が列席するこの実験であるが、華撃団計画だけの試験ではない。

今回の試験は華撃団計画と並行して行われていた。陸軍の降魔に対抗しうる兵器群の検証と言う大規模試験であり、華撃団計画はその一環であった。その中でも華撃団計画は最有力なものであった。

 

若槻は、米田の隣の席に移動し話かける。

 

「光武の方はどうです?」

「あぁ、少なくても兵器としては問題ない。ある種の決戦兵力にもなってくれるだろうさ。しかし、あれはどういうことだ?」

 

米田は、奥の席にいる陸軍のお歴々に対して視線を向ける。

 

「原前首相の件は陸軍としても、だいぶ堪えたようです。」

 

純国産の戦車が、演習場を走り回り目標に向けて砲撃を行っている。

その様子をお歴々は満足そうに見守っていた。

 

「なるほどな。」

「もともと、そこの秋山教育総監は人型蒸気の導入には積極的でしたからね。」

 

陸軍の純国産人型蒸気である藤武が披露される。

 

「あれは、菖武か?」

 

光武を中心とする霊子甲冑の走りともいえる存在で、米田たちが対降魔部隊に現役だった頃に、実戦試験が実施されたということもあり、知りえた存在であった。

 

陸軍の技術士官が解説を行う。

 

「こちらの藤武は、かつて陸軍で実戦試験が実施されたという霊子甲冑菖武をもとに、開発された人型蒸気であります。」

 

技官が解説をするのをよそに、米田と若槻はひそひそと話を続ける。

 

「陸軍の軍人に霊子甲冑を動かせる連中はいないんじゃなかったのか?」

「えぇ、その通りです。ですから、あれは霊子甲冑ではありません。ただの人型蒸気です。」

 

「だが、それじゃあ降魔や降魔の相の子みたいな不審蒸人型蒸気とやりあうには物足りないだろう?」

「ですから、ほら。」

 

藤武が巨大な小銃を抱える。ちょうど、技官の解説がこの銃の説明の項目に移っていた。

 

「この藤武専用75mm加農銃は、軍の方々ならお察しした方もいらっしゃるでしょうが十一年式七糎加農を改造したものです!。」

 

藤武の射撃試験が行われるが、命中率は光武に比べて粗末なものだ。

移動目標はおろか固定目標も半分近く外してる。

 

「あれじゃあ、帝都防衛はできないだろう。帝都の建物に当たっちまう。」

「まぁ、そこは…。」

 

藤武が武器を持ち変える。さくら機の装備品である太刀を陳腐化させたような軍刀を装備している。

 

「あれか?」

 

米田が胡散臭げにその様子を見るが、それもそのはずで軍刀の切れ味はあまり良くなく。

標的機として使われたスタァは2・3撃加えたところで腕が切れるなどの、工場生産軍刀の問題点を浮き彫りにしてしまった。

 

「でも、ないよりはまし…。高橋首相はそう考えたようで、山梨陸相の提案を受け入れ陸軍で採用する動きがあります。山縣さんも賛意を示していますので、原前首相の死は大きかったと言うことでしょう。」

 

 

陸軍は機械化師団の編成を進めており、大隈内閣時代に通した陸軍二個師団増強計画は戦車や人型蒸気を軸にした機械化師団を目指したものとなり、すでに輸入しているフランスから輸入したルノー戦車やドイツから輸入した人型蒸気アイゼンゾルダートIIにイギリスから輸入したセイバーが配備されていた。ただし、兵器の国産化が軍内で大きく叫ばれていたため、機械化は国産化が完了するのを待つこととなり遅れている。

 

 

「若槻さん、始まりますよ。うちの光武虎型の試験が…。」

 

マリア機が移動する標的を拳銃で撃ち抜き、すみれ機がマーク A ホイペット中戦車を一刀両断する。

 

「おお。」「すごい。」「これは…。」

 

陸軍お歴々も、感嘆の声を上げる。

 

そしてその後ろにいるさくら機であったが…

 

「きゃあああ!?み、みなさ~ん!!よけてくださーい!!」

 

我々の居る天幕へ向かってくる。さくらの光武。

 

 

 

 

大正12年3月帝国劇場の貴賓室

 

包帯で患部を隠した米田と若槻。

成果報告を受けるためにお忍びで入った元老山縣と西園寺、そして花小路伯爵。

 

「いったいどうしたね。二人とも…」

 

「まぁ、見ればわかりますよ。」

 

若槻は半笑いになるだけで、代わりに米田が答える。

 

映像が流れる。

 

「特に問題はないようだが?」

「そう思っていただけるのも、ここまでです。」

 

映像が進む。

各種検証実験が進み、演習も行われる。

 

「これは…。」

 

西園寺のつぶやきから映像の雰囲気が変わっていく。

 

「さくらですよ。あの子が操縦を途中でしくじっちまった。」

 

さくら機を抑えようとした陸軍の藤武とアイゼンゾルダートが押し負けて、陣幕を突破していくところで映像が途切れる。

 

「霊力も十分、剣の腕も一流、才能も申し分ないのですが…。」

 

「米田君、わたしが花組に芝居をやらせたのは…。」

「帝都に仇名なす存在への目くらまし、かの音曲の持つ霊的意味合いですよね。」

 

「無論それもある。だがそれだけではないよ?」

 

米田と花小路伯の話に、しびれを切らせた山縣が割り込む。

 

「そういう話をしに来たのではない。当初の予定に比べて進捗が遅れているのではないかと言うことだ。伏見宮様の働き掛けもあって現状、大きなものはないが…。陸軍内部に華撃団ではなく、陸軍の実働部隊で対処すべきと考えている者たちもいることは考慮してくれ。君らの事を支援している我々としては…。」

 

若槻が山縣をなだめるように話し始める。

 

「まあ、霊子甲冑が陸軍の人型蒸気よりも強いということが示せたのがせめてもの救いですか。操縦差の未熟さを露呈した我々と、兵器全体の力不足を露呈させた陸軍の痛み分けと言うことでお互いになかったことにと言うことになりましたが…。」

 

若槻は「あちゃー」と言わんばかりに頭を押さえる。

 

「とは言え、兵器の改良よりは搭乗員の習熟の方が容易なはず。少なくても戦力としては華撃団は上、取り返すことは難しくないはずです。」

 

若槻のこの発言で、華撃団への元老他の重鎮たちによる支援は継続されることとなった。

 

 

 

 



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06話 相生橋初戦闘

大正12年、この年は華撃団曳いては大日本帝国にとって多くの始まりと言ってもよい年であった。

 

 

大正12年3月下旬20時頃

 

「どういうことですの!!」

 

帝国劇場のサロンで、すみれの声がこだまする。

 

「そ、それが、わたしもさっき聞いたばかりで何が何だか…。」

 

彼女たちがもめているのは、新しい劇の出演者に関してであった。

帝劇に加入して1月経つか経たないかで、最近は失敗ばかりのさくらが舞台に立つことへの反対であった。

 

責め立てるすみれはヒートアップし手を上げそうになる。だが、寸前のところでマリアがすみれの手首を押さえて止めに入るが、さくらを起用したマリアはすみれとは逆に出るように促し、間に挟まれたさくらは困惑してしまう。

 

そこに、鳴り響く警報。

 

 

「ついに来たか。」

「「「「出動!?」」」」

 

 

 

同時期同時刻

 

内務省庁舎では、山本政権において内務大臣就任受諾を受けた、若槻が登庁していた。

その、若槻は警視庁の湯浅警視総監へ直通電話で指示を出していた。

 

「あの人型蒸気を佃島に入れてはなりません!!警視庁は帝国華撃団到着まで人型蒸気の侵攻を阻止してください!!」

 

若槻からの指示で警視庁は佃島方面に侵攻を開始した人型蒸気と交戦を開始。

幾重にも構築された防衛線であったが、拳銃や小銃程度の火力では食い止めることは敵わなかった。

 

 

 

 

警視庁による防衛線が突破される。

 

帝国陸軍関東戒厳司令部の山梨半造中将は陸軍第一師団及び近衛師団に対し出動を要請。

陸軍第一師団の西川虎次郎中将は隷下の都内部隊に出撃命令を下した。

 

関東戒厳司令部に対し陸軍省の田中義一大臣は、陸軍による対処が可能か電話を入れていた。

 

「石川島、佃島、月島とその周囲には2個歩兵連隊を、さらに月島には出撃可能な第一砲兵大隊の部隊を配して強固な防衛線を築き上げております。万が一の時に備えて近衛師団を宮城に集結させております。なんとしても、佃島で敵を食い止ます!」

「山梨君!華撃団の到着を待たず陸軍だけで抑えきれるのか!?」

「田中大臣。最悪、月島の砲兵大隊に佃島を砲撃させます!」

「できるのだな。山梨中将・・・。」

「っは!お任せください!!」

 

佃島上陸阻止のために、相生橋にて関東戒厳司令部の山梨半造中将は佃島に防衛陣地を構築。相生橋が架かる佃島に土嚢を主体としたバリケードを構築し歩兵連隊の兵士達が機関銃陣地の隙間から小銃を構え、隣の石川島に連隊付きの軽迫撃砲部隊が布陣した。

 

 

「この先には、我が国の重要省庁がある!そして、宮城(きゅうじょう)には陛下がおられる!この佃島で人型蒸気を食い止めるのだ!!迫撃砲!放て!!」

 

現場士官が軍刀を振り下ろしたのを合図に、石川島陣地から迫撃砲弾が相生橋の越中島町側へ降り注いだ。

 

 

越中島町の敵人型蒸気に対し砲撃を開始。

 

 

若槻はその様子を内務省庁舎から伺っていた。

窓が開けられた内務省庁舎からは砲撃の赤い炎が見え、小銃や機関銃の音が聞こえてくる。

 

「宮城の前で砲撃戦だと!?陸軍の連中正気か!?通常兵器では効率が悪いのだぞ!?降魔戦争で解っているはずだ。霊子を使える華撃団でなくては・・・市街地で火砲など撃ったら帝国臣民の生活に影響が出るというのに・・・なぜそれがわからんのだ!誰か!山本首相に繋いでくれ!」

 

若槻の訴えによって、山本首相は陸軍の砲撃を中止させ華撃団に対して出動命令を出した。

 

「車を出してくれ、華撃団の実戦を見てみたい。」

 

 

警察車両の先導を受け、陸軍輸送部隊によって華撃団の光武が相生橋まで運び込まれる。

 

若槻が到着した時にはすでに花組の面子が光武に乗り込み、マリア機を先頭に低速前進し始めていた。

若槻は、今回の行動で失脚が決定して肩を落としている山梨中将を無視して、すでに指揮権を委ねられた米田に話しかける。

 

「米田中将、状況は?」

「今始まったところですからなんとも・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

「うぅむ。帝国華撃団に指揮権を委譲、ここはお手並み拝見と行こうか。」

 

陸軍第一師団の西川虎次郎中将から陸軍中将兼帝国華撃団の司令である米田一基中将へ指揮権が移譲される。

 

マリア機を先頭にすみれ機アイリス機が左右に並び進んでいく。

 

「双眼鏡を貸してください。」

 

兵士から双眼鏡を受け取った若槻は、米田の横に並びその様子を見届ける。

 

流れ弾が若槻達の至近に着弾するという事態も発生したが、戦闘はこちらに有利に進んでいた。ただ、彼女たちの会話こそ聞こえなかったが何かしらの問題もある様に若槻は感じていた。

 

すみれ機を一番槍に光武が敵人型蒸気の集団に突っ込んでいくのを皮切りに、アイリス機マリア機も戦闘を開始する。

 

『スネグーラチカ!』

 

マリア機から放たれた銃弾をすみれ機が華麗に躱し、その先の敵集団を吹き飛ばした。

 

「「「おぉ・・・。」」」

 

陸軍兵士達の驚く声が聞こえた。

 

『神崎風塵流・胡蝶の舞っ!』

 

相生橋を崩落させる程の勢いで敵を丸ごと倒して見せるすみれ機。

 

「「「「「おぉ・・・。」」」」」

 

さらに、陸軍兵士達の驚く声が聞こえた。

だが、米田は興奮気味に見つめる陸軍兵士達とは対照的に不満げに声を出していた。

 

「あぁ・・・てんでダメじゃねぇか。バラバラに戦ってたら勝てる戦も負けちまうぜ。」

 

「米田中将、素人目には優勢に戦っているように見えるのだが?」

 

「若槻大臣、あれじゃあダメなんです。複数で戦うのなら陣形は基礎中の基礎、機体性能や個々人の能力ありきで現状です。本来ならあの程度の敵ならもっと優位に立てるはずなんですよ。・・・あぁ、だから陣形をもっと大切に・・・!しまったっ!奴ら蒸気火箭を用意してたか!」

 

米田の視線の方に目を向けると巨大な蒸気火箭の姿が見えた。

 

「石川島陣地の砲兵にあれの対処をさせろ!!」

「石川島陣地に敵人型蒸気出現!現在対処中!こちらに手を廻せる状況にないとの事!」

「なんだと!!」

 

西川中将が大声で部下に指示を出すが、その返事は絶望的な物であった。

 

「行くんださくら!」

『で、でもまた失敗したら・・・。』

 

「バカヤロー!いつまでウジウジしてるんだ!芝居も任務も同じだ!しくじることを恐れたら何にもはじまりゃしないんだよ!帝都の平和も芝居の役も自分で勝ち取るもんなんだ!前へ進め!留まるな!行って勝ってこい!さくら!」

 

『帝国華撃団花組真宮寺さくら!行きますっ!』

米田の言葉に励まさられたさくらは、気合の入った返事で返す。

 

 

さくら機が単身走り出す。

敵の蒸気火箭も発射のエネルギー溜め始める。

 

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

 

『破邪剣征・桜花放神!』

さくら機から放たれた剣気の塊とでも言ったらよいのか桜色の光が、蒸気火箭のエネルギー弾と衝突し飲み込み押し込んでいく。

 

「す、すごい・・・。」

 

これが、光武の帝国華撃団の力か。

 

相生橋が崩落する結果になってしまったが些末なことだ。

帝都の、日本の平和は帝国華撃団なくしてありえない。

 

「今回の相生橋の崩落。被害は大きいものとなりましたが、それと引き換えに霊子甲冑光武の秘められた力の一端を垣間見えたことでしょう。かの力があれば必ずや日本から降魔を排除することが出来るでしょう。元老の皆々様に於かれましては今後ともご支援の方を賜りたく。」

 

「うむ。」

山縣、西園寺、松方、大隈らの了承を得ることに成功した。

そして若槻はもう一押しすることにする。

 

「華撃団より、隊長役を派遣して欲しいとの打診がありまして・・・。」

 

若槻の言葉に山縣と大隈が反応する。

「軍も警察も光武の適合者はいないはずではなかったのか?民間からの採用か?」

「部隊指揮など一般人ができるのか」

 

若槻は、自分と一緒に元老の下に参じた山本首相の方に視線を送る。

それを合図に、山本が歩み出る。

 

「皆さま、この度海軍より適合者・・・それも男性が現れたことをご報告申し上げます。同時に、この度の人事内閣総理大臣として、海軍の大神一郎少尉を推薦します。」

 

現職首相であり、海軍長老である山本権兵衛は華撃団計画へ海軍士官を推挙したのであった。

 

 



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