英雄語―エイユウガタリ― (おののっきー)
しおりを挟む

外刀・【典】
特別編・猪口語―チョコガタリ―



書きたいから書きました。後悔はちょっとだけしてます。




 

 

 

 

 

 

 

 

カルデア内が何か騒がしい。職員の皆はソワソワしてるし、所々で何かを渡しているのが見える。そんな周りを観察しながら歩いていると、前から六華がやってくるのが見えた。

 

「おう六華、おはよう。」

 

「おはよう。はい、七花にい。」

 

「六華もか。皆何を渡してるんだ?」

 

「もう七花にい忘れたの?今日はバレンタインだよ。」

 

バレンタイン。そうか、今日は2月14日だったか。

 

「七花にい毎年毎年チョコ貰ってたのに忘れちゃったの~?」

 

「カルデアにいると時間感覚狂うんだよ。日曜日とかないし。てかそもそもお前料理出来たのか?」

 

「失礼な!私の女子力をなめないでよね!……まあ、エミヤさんにちょこっとだけ作り方教えてもらったけど……。あ、そうだったそうだった、七花にいは後で食堂行ってね!絶対だよ!!」

 

「え、何で……」

 

「何でもなにも!絶対!」

 

「分かったよ……」

 

「フフフー♪じゃあねー♪」

 

六華が何を目論んでいるのかは分からないが、楽しそうに去っていったので悪いことではないのだろう。俺は早速食堂へ行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩!」

 

「あれ、マシュ!どうしたの?」

 

「その、今日はバレンタインだということで……その、これを、渡しに来ました!」

 

「これって……チョコ?」

 

「はい、今日は、その、好きな人にチョコをあげる日だとドクターから聞いたので、それで………」

 

「そっか。(ロマングッジョブ!!!)ありがとうマシュ。私からも、はい。」

 

「え、いいのですか!?私が貰っても!?」

 

「私がマシュにあげないわけないでしょ。ほら、一緒に食べよ?」

 

「はい、先輩!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「む、マスターか。どうしたのかね?」

 

「お、エミヤ。六華に言われて来たんだが……お前こそ何してるんだ?」

 

「フム……端的に言えば、後処理、という言葉が最も合いそうだな。」

 

そこには厨房の片付けをするエミヤと山のようにそびえ立っているチョコを前にするアルトリアがいた。

 

「モガ、モグガ、モグモガモグガ?」

 

「何て言ってるかわからないぞアルトリア。」

 

「モグモグ……ふぅ、どうしたんですか、七花?あなたもチョコを食べに来たんですか?」

 

「その量のチョコは食えそうにないなあ……六華に言われてここに来たんだけど、二人とも何か知ってるか?」

 

そう聞くと二人は互いに顔を合わせ意味深そうににやけた。

 

「残念だが、マスターが求めていたものは少し前にいなくなってしまったよ。いやはや、あそこまで苦労した生徒はなかなかいなかったが、なんとか形にはなったな。」

 

「そうですね。その後処理をこうして私達がやっているのですから。」

 

「???どういうことだ?」

 

いなくなったっていうことは、人のことか?

 

俺の呟きが耳にはいったのか、エミヤは深いため息をついた。……なにもそんなにわざとらしくしなくてもあいと思うのだが。

 

「はあ……とにかくマスターが求めるものはここにはない。早く行くといい。」

 

「わ、分かったよ……」

 

俺はすごすごと食堂から追い出される。行くったってどこに行けばいいんだよ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よいのですか?七花に何も説明しないで。」

 

「いいんだセイバー、一人ずつならまだしも、二人揃ったら胸焼けが酷くなってしまう。」

 

「なるほど、ところでアーチャー。」

 

「なんだね?」

 

「私にチョコはないのですか?」

 

「……………君ってやつは。待っていたまえ。最高のチョコレートを用意しよう。」

 

「はい、楽しみにしています。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どこに行けばいいかも分からず俺はとりあえず廊下をぶらぶらしていた。バレンタインだということで周りの甘い雰囲気も理解できたが、どうにも耐え難い。

 

ふと視線を感じ、振り替えるとそこには

 

「………………………」

 

「うぉっ!?…………ど、どうしたんだ、清姫、その格好は。」

 

廊下の陰からこちらをじっと見ている、自分にリボンを絡ませた清姫の姿があった。

 

「………………………」

 

清姫はこちらから視線をそらさないまま近付いてきた。いつもの清姫と様子が違いすぎてどう接すればいいか分からない。

 

「今だけは……」

 

「え?」

 

「今だけは譲ってあげます。マイルームに行ってください。」

 

「え……?」

 

それだけ言うと清姫はきびすを返して去っていってしまった。

 

「マイルーム、か……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅いぞ七花!!待ちくたびれたぞ!!」

 

「とがめ……」

 

マイルームで待っていたのは何を隠そうとがめだった。え、知ってた?

 

「今日が何の日かは知っているな!」

 

「……バレンタインか?」

 

「そうだ!というわけでこのチョコを!……このチョコを……あれ?」

 

ベッドの上でふんぞりかえっているとがめだったが、手に持っている小包みを見て顔色が変わった。

 

「これ……失敗したやつだ……まさか、出来たのエミヤの所に置いてきてしまったのか!?ちょっと待って、今とってくるから………ぎゃふん!」

 

「あーもー………ベッドの上で急に動くから……」

 

バランスを崩したとがめはおもいっきりベッドにずっこけた。下が柔らかいベッドで良かった……。ずっこけた拍子に手に持っていた小包みも放り出されていた。

 

「とがめ、これチョコなんだろ?」

 

「だ、ダメだダメだ!それは失敗したやつなの!美味しくないの!!」

 

「ふーん……」

 

俺はすぐに小包みをあけて中のチョコ(のような黒い物体)を口に入れた。

 

「ちぇりおー!」

 

「ぐふっ!」

 

「何で食べた!?吐き出せ!はーきーだーせー!」

 

がら空きの腹にボディーブローは効くぞとがめ……だが俺は絶対に吐き出さない。とがめに腹を凄い殴られるけど吐き出さない。

 

「うまいよ、とがめ。」

 

「うまいわけあるかー!エミヤが味見してまた硝子になってたくらいだぞ!」

 

「うまいよ、とがめが気持ちを込めて作ってくれたんだ。まずいわけない。エミヤは後で俺が殴ってやる。」

 

「でも……七花……」

 

「いいんだよ。……少し、甘すぎるくらいだ。」

 

「……七花!!」

 

「うおっ!?」

 

腹を殴るのを止め、ベッドに押し倒してくるとがめ。急な力に耐えきれず、そのまま押し倒されてしまった。

 

「何するんだよとがっ……」

 

重くなる体。口の中に、チョコ以外の味がする。

 

「………ぷはぁ、七花!こんなもので満足されては困るな!!も、もっともっと甘いチョコをくれてやるから、覚悟しておけよ!!」

 

「………」

 

「な、何だその顔は!?阿呆な面をしおって!そんなことでは……あふゅっ!?」

 

耐えきれなかった。否、耐える気持ちなど残っていなかった。俺はとがめを抱きしめ、キスをした。長く、長く。だんだんと息が荒くなっていく。顔が火照り、赤くなっていく。とがめも暴れず、こちらへしなだれてくる。

 

「…はぁっ、ごめん、とがめ。……………とがめ?」

 

「………ハァ………」

 

惚けたように口を半開きにし、目を涙ぐませたとがめの魅力に、俺は理性が消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後のことはよく覚えていない。起きたときにはとがめが隣で俺に腕を絡ませて寝ていた。俺はそのまま、とがめの頭を軽く抱いて一緒に眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

未刀・【始】
始語―ハジマリガタリ―


初投稿です。お願いします。


 

【虚刀流】という武術を知っているだろうか。

 

 

虚刀流とは、剣を全く使わない剣術であり、鑢家の一子相伝の流派である。剣を使わないのに剣術とはおかしな話かもしれないが虚刀流は剣術なのである。

 

何故このような現代には似つかわしくない剣術の話をするかというと、俺、藤丸七花はこの世唯一の虚刀流の使い手であるからだ。

 

 

俺は【転生者】と言うらしく、生前は【鑢 七花】という名前であり、虚刀流七代目当主だった。島で暮らしていた俺はある日島に来た女性、とがめとともに刀集めの旅に出た。いろんな場所へ行き、いろんなやつと戦った。刀集めは順調だった。だけど、最後の一刀【炎刀:銃】の前に、とがめは殺されてしまった。その後、とがめの仇を討ったあとはよく覚えていない。いつの間にか俺は死に、この世界に産まれていた。

【藤丸七花】として。

 

 

この世界でも俺は虚刀流を続けている。俺に残った最後のものだからな。まあ、あんまりおおっぴらに出来ないから、朝早くの公園や山の中でやってたりする。たまに妹がついてくるが見ているだけなので大丈夫だろう。

 

 

高校を出て、一人暮らしを始めた俺はバイトをしようとチラシを見ていた。そして、その中の一つに目を奪われた。

 

 

「検査を受けるだけで日給三万だと…?主催は…カルデア…?」

 

 

凄い胡散臭いが一人暮らし初めで金がない俺はすぐさま応募した。そこからが、俺の人生の転機だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだここ…」

 

俺は某市で一次検査を受け、日給三万を貰って喜んでいた時に職員に

 

「あなたは二次検査に選ばれました。もしよければ、受けられませんか?長丁場になりますので、受けられる場合は準備をしてきてください。」

 

 

面倒くさかった俺は断ろうとしたが「日給五万です」という言葉に逆らえなかった。

 

 

そして連れてこられたのは凄い綺麗な空間だった。何か特殊な器具を付けられ、横になった。よく分からんがこれで金がもらえるのならいいだろ。

 

 

 

…いつの間にか眠っていたようだ。暖かい毛布の中で目を覚ました俺は辺りを見回すと、誰だか知らん優男がいた。

 

「やあ、目が覚めたかい?君、検査中に寝ちゃったらしいね。えと…藤丸七花くん?」

 

「そうらしいな…。あんたは誰だ?どうして俺の名前を?」

 

「初めまして、僕はロマニ・アーキマン。皆からはDr.ロマンって呼ばれてるからロマンでいいよ。僕はここの医者でね。君が運び込まれた時にカルテを見させて貰ったよ。君凄い大きいね。僕もそのくらいほしかったなー」

 

「…はぁ。で、えーと、ロマン。ここはどこなんだ?」

 

「ここかい?ここは医務室さ。普段は人が来ないから僕の休憩室みたいになってるけどね。あ、お饅頭食べる?」

 

「ふーん…。饅頭は貰っておく。」

 

ロマンから饅頭を貰い口に入れる。意外とうまいなコレ。

 

「君は一般人のようだが、どうしてここに来たんだい?」

 

「ああ、それは…」

 

そのとき

 

ドォォォォォォォォォォォン

 

「!何だ!?」

 

「爆発!?今のは…中央管制室の方か!?まずい!!」

 

部屋から飛び出し駆け出したロマンを追って現場へたどり着いた俺が見たのは

 

「…嘘だろ、なんだよこれ…」

 

俺の目の前には天井が崩れ下敷きになった人、さっきの爆発に巻き込まれ体の一部がない人、既に何人もの人が息絶えていた。

 

「なんなんだよ、ここは…!」

 

「七花くん、来てしまったのか!?僕は管制室に行く!君は早くここから逃げるんだ!」

 

俺が呆然としている間にロマンは走り去っていってしまった。

 

昔の俺なら、きっと耐えれたのだろう。とがめが死に、多くの人を殺した俺なら。

 

しかし、今の俺は【虚刀:鑢】ではない。【藤丸七花】なのだ。この世界に転生し、藤丸七花として生きてきた俺には、耐えることが出来なかった。

 

『まだ逃げていなかったのか!七花くん!そこはとても危険だ!早く逃げるんだ!!」

 

ロマンの声が遠くから聞こえる。俺はここで死ぬのかもしれない。こんなことだったらあんな検査受けなければ良かったな。ああ、父さんに、母さんに、妹に会いたい。

 

とがめに、会いたい。

 

アンサモンプログラムスタート

霊子変換を開始します。

 

 

その言葉をきっかけに、俺は意識を失った。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

冬木語―フユキガタリ―

「ここは…俺はどうなったんだ?」

 

周りは火の海に包まれ、瓦礫の山が積まれている。先程の部屋と違うところは、ここがどこかの街だということだ。

 

「一体何がどうなってんだ…。はぁ、面倒だ…」

 

辺りを見回そうとすると、

 

ガタガタッ

 

背後から音がする。振り返れば、

 

「うおおっ!?」

 

体大の剣みたいなものが今いた場所を振り下ろされていく。

とっさに反応できたが次はわからない。相手を確認しようとすると

 

「…骨?骨が動いているのか!?」

 

相手は人形の骨だった。今日1日どれだけ濃い時間を過ごしているか。

 

さっきの気配からするにまともに対すれば反応できないスピードではない。俺は久々に構えを取る。

 

「虚刀流一の構え 【鈴蘭】 」

 

この構えなら相手がどんなスピードでも対応できる。骨が剣を振り上げ襲いかかってくる。

 

「遅い!」

 

鈴蘭で骨の攻撃を避け、振り下ろした隙をつく。

 

「虚刀流【百合】!!」

 

骨の胴体に回し蹴りをぶちこみ骨をぶっ飛ばした。

 

「…意外と弱いな」

 

吹っ飛んだ先でバラバラになっている骨を見て俺は先に進んだ。ここがどこだか分からないが動かなければ何も始まらないからな。

 

「…しかし、ここも酷い荒れ様だ。世界が滅びでもするのか?」

 

まあ、流石にそんなわけはないと思うが。

 

ギャリン!

 

「!」

 

近くから剣戟の音が聞こえた。俺は建物の影に隠れ気配を殺し、戦っている奴らを見た。

 

そこにいたのはフードを被って大きな鎌を持った女と、対称的に大きな盾を持った女だった。

 

て、待て待て待て!?あそこにいるのは…!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フッ、貴女、その程度なの?それでも本当にサーヴァント?」

 

「クゥッ…」

 

「マシュ、頑張って!!」

 

「しっかりしなさいよ!あんたに私達の命がかかってんのよ!」

 

「どぉぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

「グハァッ!」

 

「「「はぁ!?」」」

 

よーし不意討ち成功!!

明らかにこの悪そうな鎌持った女が敵だろう。というか…

 

「六華ァ!何でこんなところにいるんだ!!」

 

「え、し、七花にい!?」

 

先程見たときに見えたのが、特徴的なオレンジの髪、クリッとした目、可愛らしい顔立ち。

そう、俺の妹の【藤丸六華】だった。

 

「危ないだろうが!そこの盾の娘のところに隠れてろ!」

 

「ていうか、何で七花にいがここにいるの!?あと、危ないのは七花にいだよ!」

 

「先輩!?この方は先輩のお兄さんなのですか!?」

 

「また一般人!?誰!?もういやー!レフー!助けてレフー!!」

 

現場は混沌を極めていた。

が、

 

シュイン!

 

「!おっと!」

 

俺は鈴蘭の構えをとり鎌の女と対峙した。

 

「なかなか効いたわ…まずはあなたから殺してあげる!」

 

「バカッ!逃げなさい!相手はサーヴァントよ!人間が太刀打ちできる相手じゃないの!」

 

「ハッ!」

「虚刀流 【百合】!」

 

鎌女の攻撃を避けて反撃を打ち込む。が、

 

「無駄よ!」

「チッ」

 

鎌の柄でガードされダメージが入らない。後ろには六華達がいる。ここは一気にけりをつける!

 

「虚刀流七の構え 【杜若】」

「なに?あなた格闘家なの?」

「違うね。俺は剣士だ!」

 

杜若の構えからトップスピードで相手の懐に潜り込む。

 

「な、はやっ」

「虚刀流一の奥義【鏡花水月】!!」

 

相手の心臓目掛けて強力な拳底を叩き込む。その拳は相手の霊核を砕き消滅させた。

 

「…ふぅ。六華、無事か!?それと、他の二人も!」

 

振り返って三人を見てみれば

 

「「「………」」」

 

ポカンとした顔で俺を見ていた。

 

「どうした?何処か怪我でもしたのか!?」

 

「七花にい何あれ!?何あの動き!?私にも教えて!」

 

「なんの魔術的な加護も掛かってない人間がサーヴァントを…?嘘よ、こんなの嘘…」

 

「フフフ…デミ・サーヴァントとして力を得たのに、私の力、一般人の先輩のお兄さんに負けるんですか…」

 

…二人ほど目がおかしなことになっている。あと六華、お前は前から見ていたはずだが。

 

パチパチパチパチ

 

後ろから来る気配に俺はすぐさま構えを取る

 

「いやぁ、そう警戒なさんな!お前らの戦い、見させてもらったぜ。俺はキャスターのサーヴァント、クー・フーリンだ。お前ら、この地の人間じゃないだろ?ご覧の通り、ここ冬木はおかしなことになっている。お前ら協力してくれねえか?」

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

縁語―エンガタリ―

正直これが書きたいだけだった。


「クー・フーリン…?知らねえな」

 

「嘘!知らないの!?あのアイルランドの光の御子!影の国の女王スカサハから教えを受けた大英雄よ!?」

 

銀髪の少女がヒステリック気味に騒いでいる。正直耳がキンキンする。

 

「おおっと、俺も有名だな。まあ、そこの兄ちゃんには知られていないようだが…。俺はこの冬木の聖杯戦争に呼ばれたキャスターのサーヴァントだ。今この地はおかしくてな。セイバーの野郎が聖杯を手にしてここら一帯をこんなにしちまいやがった。お陰でまともなサーヴァントは俺一人よ。てなわけで、お前ら、俺と契約してセイバーと戦ってくんねぇか?」

 

「…すまんが、話がよくわからん。サーヴァントってなんだ?」

 

「「そこから(なの)!?」」

 

いや、俺この間まで高校生だった一般人だし。

 

「はいはーい!私もサーヴァントについて聞きたい!前の話は寝ててよく聞いてなかったし!」

 

「先輩…サーヴァントとは簡単にいうと神話や教科書に出てくる偉人、英雄達のことです。聖杯戦争ではセイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、アサシン、キャスター、バーサーカーのクラスに合った七騎のサーヴァントを召喚し戦いあい、最後に勝ち残った一組のマスターとサーヴァントが聖杯を手にして願いを叶えるんです」

 

「ほへー…てことは、織田信長とか豊臣秀吉とかも呼べるってこと?凄いね!」

 

「ふーん…よくわからん」

 

「あなた達ねぇ…魔術のまの字も知らないでしょ。なのにこんなとこまで来てしまって…ああもうどうしましょう…レフ…あなただけが頼りなのに…」

 

「魔術?魔法とかのことか?こう、火を出したりとか」

 

「あー…魔法と魔術はちげえんだか、火なら俺も出せるぜ。『アンサズ』!」

 

クー・フーリンと名乗った男が持った杖から頭大の火の玉が出てくる。

 

「おー!!すげえ!!カッコいいな!!」

 

「へっ、といったわけで、そこのでっかい兄ちゃんかオレンジ髪の嬢ちゃん、銀髪の嬢ちゃんは…あらら、マスター適性ないのか。なら二人のどっちかから…」

 

そんな話をしていたとき

 

『―ピッ、っ繋がった!!無事かい、七花くん!?』

 

「ロマン!無事だったのか!俺は一応無事だ。」

 

『良かった…こちらは何人か無事だった人がいて、全員で管制室にいるよ。そっちは、て所長!?無事だったんですか!?それに…マシュに、えーと…藤丸、六華…藤丸!?君たち兄妹なのかい!?』

 

「Dr.ロマン!なぜあなたが管制室で指揮をとっているの!?レフは、レフはどうしたの!?」

 

『所長…申し訳ありませんが、レフ顧問は、爆発に巻き込まれ…』

 

「嘘…嘘よ…レフがいないなんて…私はどうすればいいのよ…」

 

『所長…』

 

所長と呼ばれた娘、ヤバそうだな。活でも入れて…六華?

 

「所長!私達はその、魔術も知らない一般人です!今何が起きているのかさっぱり分かりません!聖杯戦争とかサーヴァントとかもやっぱり分かりません!今頼れるのはオルガマリー所長、貴女だけなんです!どうか、私達のリーダーとして、私達を引っ張っていって下さい!!」

 

六華が俺の方を向いて頭を下げるようにジェスチャーしている。俺もやれってことか。

 

「あー…その、所長。俺もたまたまここにきた一般人だ。所長は魔術にも詳しいんだろ?俺は戦うことはできても、考えることはさっぱりなんだ。だから、所長の能力を、俺達のために活かしてくれないか?頼む、所長だけが頼りなんだ!」

 

「オルガマリー所長、私からもお願いします!」

 

「「「所長!!!」」」

 

「…なに適当なこと言ってるのよ。あなたたちに私の何が分かるのよ」

 

…俺は何も言えないな…

 

「分かるよ。所長はこんなに怯えて、怖がっているのに皆の先頭に立って、皆を引っ張ってきたんでしょ?カルデアの代表として。それはとても凄い、立派なことだよ!私はそんな所長を認めるし、尊敬する!」

 

「はい!所長は先程の戦いも後ろから攻撃を仕掛けてくれてとても助かりました!所長は凄い人です!」

 

「二人とも…ありがとう…。ええ、そうよね。こんなところで廃れてちゃ、アニムスフィア家の名が泣くわ!ロマン!そちらの状況を教えなさい!ここからは私が指揮を取るわ!クー・フーリンも私と一緒に、情報共通を行います!」

 

「「所長!!」」

 

『わかった!』

 

「…化けるもんだな。さっきまであんなに怯えてた女だったのに。こりゃ、面白くなってきやがったぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

…なんかよくわからんがうまくいったようだ。

 

「とりあえず…六華?何でお前ここにいるんだ?」

 

「七花にいこそなんで?私は検査受けてたらよくわかんないうちにここにきてた。」

 

「俺もそんな感じだ。えっと、そっちの娘が…」

 

「はい、私はマシュ・キリエライトといいます。先輩と契約しているデミ・サーヴァントです。よろしくお願いします、先輩のお兄さん!」

 

「よろしく、俺は藤丸七花。六華の兄だ。六華を頼むな。その大きな盾で守ってやってくれよ。」

 

「はい!ところで、あの…七花さん。さっきのサーヴァントを倒した動きは…」

 

「それ私も知りたい!七花にいなんだったのあの動き!ブパーンて!ズビューンて!」

 

「ああ、あれは虚刀流って言って…」

 

『君たち、話しているところ悪いけどいいかな?これからの方針を決めるから皆で集まってくれ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

「これから私達はここを特異点Fと呼び、キャスター、クー・フーリンと協力してセイバーを倒し、特異点を修復します。そこで、戦力増強のためにここでサーヴァントを召喚します。」

 

「え、サーヴァント召喚ってそんなに簡単にできるもんなのか?」

 

「本当は儀式や呪文だったりがいるんだけど、マシュの盾と一級の霊地、そしてこの『召喚石』があれば誰でも召喚できます。六華にはマシュとキャスターがいるので、ここは七花に召喚してもらいます。」

 

「…え、俺!?え、俺がやって大丈夫なのか!?」

 

「六華には十分な戦力がいます。あなたも生身で戦闘ができるようですが、今マスターに怪我を負われるわけにはいかないんです。正直あんまり期待していないので気軽にやっていいわよ。クー・フーリンがいれば大体はどうにかなるでしょ。」

 

「だったらよかったんだがな…俺一人で終わるんだったらとっくに終わらしてるよ。キャスターの俺じゃあセイバーには勝てねえ。しかも、セイバーに心酔している番人までいやがるしな。」

 

「…え?セイバーってそんなに強いの!?一体誰よ!?」

 

「まあ見りゃ一発で分かるが…星の聖剣を持つ騎士王、アーサー王だ。」

 

「前言撤回よ藤丸七花!!めちゃくちゃ強い凄いサーヴァントを引きなさい!!いいわね!!」

 

「は、はい!」

 

思わず返事をしてしまったが、誰がくるか分からないんだろ?なんか、織田信長とかそんなのは聞こえたが…

 

誰でも召喚できるのか…

 

俺は手に持っていた石を設置されたマシュの盾の上に投げた。すると、光が立ちあがり三つの光帯を作り回転し始めた。

 

『これは…不安定な霊基だ。あまり強いサーヴァントではなさそうだぞ。』

 

「いやー!ヘラクレスとかきてー!!」

 

俺の目の前で強い光が爆発し、視界が一瞬光で包まれた。光が消えその中に一人の女性が立っていた。重そうな十二単に白髪の短い髪。こちらを見据える理知的な双眸は…

 

 

 

「キャスター、元尾張幕府家鳴将軍家直轄預奉所軍所総監督、奇策士とがめ。召喚に応じ参上した。あなたが私のマスターか?」

 

「……とがめ…とがめなのか…?」

 

「如何にも、私はとがめと…って七花ぁ!?」

 

「とがめ!!」

 

俺は脇目も降らずにとがめを抱き締めた。周りの視線なんて知ったことじゃない。とがめだ!とがめがここにいるんだ!!

 

「とがめ!とがめ!!」

 

「ええい、止めんか七花!恥ずかしいだろうが!嬉しいのは私も一緒だが、こんな衆目の前で…、って周りの人が見てるじゃないか!!恥ずかしいからやめろ!!早く!!」

 

ポカスカと頭を殴られ、仕方なくとがめから手を放した。

 

「えっと…七花。そのサーヴァントは?まさか、知り合いなの?」

 

「七花にいのあんな嬉しそうな姿、初めて見た…」

 

『えっと…こっちからはキャスターの霊基のサーヴァントがいるってくらいしかわからないや。でも、とんでもなく弱々しい霊基だな…』

 

「なによ、外れじゃない!!キャスターだし、あなた攻撃できるの!?」

 

「とがめを悪く言うな!とがめは確かに攻撃なんてこれっぽっちもできないし耐久力も障子に毛が生えた程度だけど、とがめを外れというのは許さないぞ。」

 

『というか…その、真名をとがめという女性、どんな文献を見てもでてこないんだけど、どういうことだい?』

 

「それは私から説明しよう。私は、この世界ではない別の世界から呼ばれたサーヴァントだ。私はその世界では『刀語』という物語を書き、その著者として歴史に名を刻んだ。そのつてもあり、「座」に登録されたのだ。まあ、七花ほどの縁がなければ呼ばれるはずもないんだがな!というか七花、なぜお前がここにいるんだ?」

 

「ああ、それは俺が『転生者』だからだな。とがめといた時代から死んだ俺は記憶を持ったままこの時代を生きてきたんだ。それで、今はこの通り。」

 

『「………」』

 

「え、七花にいは私のお兄ちゃんじゃないってこと?どうゆうこと?」

 

「おいおい六華。俺は前世の記憶があるってだけのお前の兄ちゃんだ。それで、ここにいるのが俺の前世の…そうだな、「鞘」だった人だ。」

 

「それって、相棒とか、私とマシュみたいな、そんな感じ?」

 

「…そんな感じだ。」

 

「…七花、そこの娘は、お前の妹なのか?」

 

「ああ、そうだぞ。可愛いだろ。」

 

「七花、お前はそんなに妹バカだったのか…じゃなくて、似てなさすぎだろう!?」

 

「…ちょっと待ちなさい。あなた、キャスター、別世界のサーヴァントですって?それに七花、前世の記憶を持ったまま別世界から転生した、ですってぇ!?」

 

「「そうだぞ(な)。」」

 

「…もういいわ。あなた達のことは後にするわ。頭が痛くなるから。とりあえず、キャスター、貴女は何ができるの?」

 

「…うーん…私に出来ることと言っても、せいぜい奇策を考えることくらいなのだが…。そういえば、サーヴァントとしてスキルと宝具を得ていたんだった。」

 

「…そういえば、作家系サーヴァントは他人へのエンチャントが出来るって聞いたわね…」

 

「よし、七花、私の正面に立て!」

 

「おう。これでいいか?」

 

とがめの正面に立ちとがめを真っ直ぐに見つめる。

 

「…そう見つめるな。恥ずかしい。まあいい、いくぞ!『エンチャント』!」

 

そういうと、俺の体が光り、俺の服が昔の、下は袴、上は腕のみ布がついている動きやすい格好に変わっていた。

 

「これは…体が動かしやすい…。いや、『戻っている』…?」

 

「ふふふ、七花、そなたの体はあの時よりもずっと弱くなっていたからな!私のスキルにより、『刀語』に書いたあの頃の強さになっているのだ!ついでに格好もな!うん、その方が七花らしいぞ!」

 

「すごいな…俺もこの世界に来てからできるだけ鍛えてきたんだが、まだまだ未熟だったな…」

 

…当たり前か。俺は「刀」じゃないんだから

 

「凄い!七花にい凄い格好いいよ!それが七花にいの昔の格好なの?」

 

「確かに、神秘もさっきよりも格段に上がってるし、侮れないわね…これ私にも使ってくれる?」

 

「すまないな、銀髪の娘。これは『刀語』の主人公である七花にしか使えんのだ。」

 

「そう…て、はぁ!?あなたが書いた物語の主人公なの!?七花は!?」

 

「そうだぞ。そっかー、俺達の旅路を書いたものががそんなに売れたんだな。でもあれ、結構嘘っぱちなところもあったんだろ?」

 

「い、言うな!馬鹿者!ばれなければいいのだ!」

 

「…もう驚かないわ。それで、宝具の方は…」

 

「ッ、嬢ちゃん!」

 

「はい!」

 

ガキィィィン!!

 

「え、な、何!?攻撃!?」

 

「アーチャーの狙撃だ!全員建物に隠れろ!!いいかマシュ、お前に宿っている英霊は一級品だ。あの矢からも後ろの奴らを十分に守れる。あとはお前の気合次第だ。合図を出したらマシュの後ろを六華とオルガマリーが走れ!七花、矢を見切れるか!」

 

「この姿なら大丈夫だ!!」

 

「よし、七花はキャスターの嬢ちゃんを背負ってマシュの後ろを付いてきてくれ!俺は先に行ってあいつを牽制しておく!あいつとは因縁があるんでな、お前らは俺がアーチャーを引き付けている間にセイバーを叩け!行くぞ!」

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

咎語―トガメガタリ―

 

 

倒壊したビル群、火に包まれた街の中を走る一団。

 

 

キィン!

 

「くっ…矢の一発一発が重いです!あまり進めません!」

 

「真っ正面から受け止めるんじゃねぇ!力を受け流して逸らす感じだ!」

 

俺達は絶え間なく続く矢の中を一丸となって走っていた。六華と所長はマシュの後ろに、俺は早々に気を失ったとがめを背負いながら、クー・フーリンは飛んでくる矢を見切りながら進んでいた。矢を見切るうちに俺は違和感に気付いた。

 

「…っ!おい!前からなんかヤバい『剣』がくるぞ!!」

 

『膨大な魔力反応!これは、アーチャーの宝具だ!!皆、そこから逃げるんだ!』

 

「ちっ、アーチャーも本気ってことだ!この距離じゃどうしても当たっちまう。…マシュ!」

 

「!はい!」

 

「お前の宝具でアーチャーの宝具を耐えきれ!その間に俺がアーチャーを何とかする!」

 

「でも…私は宝具が使えなくて…」

 

「いいか、マシュ。お前に宿っている英霊は一級品の英霊だ。サーヴァントには必ず宝具がある。お前にもだ。お前が宝具を使えないのは、気持ちが足りないからだ。難しいことは考えなくていい。私の後ろに攻撃は通さない!先輩達を守る!そう強く思えば、お前の中の英霊は答えてくれる!」

 

「私が…先輩達を守る…」

 

「マシュ、マシュの盾で、私達を守って!マシュなら出来るよ!私はマシュを信じてるからね!!」

 

「マシュ、貴女なら出来るわ。この私、オルガマリー・アニムスフィアが認めたのよ!このくらい、出来なくちゃ困るわ!」

 

「先輩…所長…!はい!マシュ・キリエライト、頑張ります!!」

 

マシュも気合が入ったようだ。だけど、この先から来るのは今までの比じゃないほどの重圧だ。

 

「…マシュ、頼んだぞ。お前しか俺達を守ることは出来ないんだ。なあに、お前の力は本物だ。しっかり防いでくれよ!」

 

「七花さん…はい!」

 

「マシュ、準備しろ…来るぞ!」

 

 

見えないほど遠くから重圧が近付いてくる。遮るはマシュの盾。守りたいと思う穢れなき心の力の一端!

 

 

「やあああああああ!!!!!!!!」

 

 

マシュが叫んだ時、盾からシールド状に光る幻想的な盾が発現した。その盾は飛んできた矢と衝突し、拮抗。

 

 

「うううううああああああ!!!!!!!」

 

 

アーチャーの矢が消滅、マシュの盾が六華達を守りきった。

 

 

「やったぁぁ!!やったよマシュ!凄い!流石私のサーヴァント!!凄いよ!!」

 

「ええ、やったわね!貴女のおかげよ、マシュ。」

 

「先輩、所長…はい、やりました!私、宝具を発動できました!!先輩達を守ることができました!!」

 

マシュの宝具発動の成功を祝うなか、遠くでまた巨大な重圧を感じた。山の方を見てみれば、

 

「…なんだありゃあ!?」

 

巨大な藁人形のようなものが山の中に立っていた。

 

『あれはクー・フーリンの宝具のようだ。皆はクー・フーリンがアーチャーを足止めしている間にセイバーの下へ向かってくれ!」

 

「分かった!…宝具って何でもありなんだな…」

 

俺達は妨害がなくなった道を進み、セイバーがいるという洞窟の中へ入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ…ここは?」

 

「お、とがめ。目を覚ましたのか?今はセイバーのいるところに向かってるんだぞ。」

 

「とがめさん、おはようございます!具合は大丈夫ですか?」

 

「う、うむ。大丈夫だ、問題ない。それより、今ここに居るというのは、アーチャーを倒したということなんだな?」

 

「ああ、アーチャーならクー・フーリンが足止めしてくれている。今のうちにセイバーを倒そうって話だ。」

 

「ふむ…それで、どうやってセイバーを倒すのだ?てっきりあのクー・フーリンが倒すものだと思っていたが。」

 

「「「「あ…」」」」

 

「まさか…考えてなかったのか?」

 

「ちち、違うのよキャスター!急いでいたからって作戦がないわけじゃ、その…」

 

「…ないのだな。」

 

「…はい。」

 

「えー、今は俺とマシュしか戦闘要員がいないんだし、マシュが六華達を守って俺が切り込む、でいいんじゃないのか?」

 

「ちょっと待ちなさい。セイバーはあのアーサー王よ。宝具はもちろんあの聖剣エクスカリバーだろうし、生半可な防御じゃ…」

 

「マシュなら大丈夫さ。さっきだって、俺達を守ってくれたじゃないか。俺はマシュを信じるよ。」

 

「…所長!私、やります!アーサー王の聖剣でも、私の盾と、私に力を残してくれた英霊に誓って、先輩達を守ります!」

 

「…分かったわ。でも、決め手がないわ。クー・フーリンが戻るまで耐えるしか…」

 

「うーん…俺もその、アーサー王とどれだけ戦えるか分からないしな…」

 

「フッフッフ、七花、私を誰だと心得る!この、奇策士とがめを!」

 

「とがめ!何か奇策があるのか!?」

 

「ない!!」

 

「「「「ないんかい!!」」」」

 

「まあそう焦るな。奇策はないが切り札はある。私の宝具を使う!」

 

宝具…そうか、とがめはサーヴァントだから宝具があるのか…

 

「私の宝具は七花には見覚えがあるだろう、これだ!」

 

とがめが手を挙げたと思うと光が起こり、その手のなかには一本の刀を持っていた。それは、俺が前世で集めた刀の一本。

 

「これを…こうだ!」

 

「…え?」

 

とがめは持っていた刀をそのまま振り下ろし、俺の胸に突き刺した。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

人理語―ジンリガタリ―

感想ありがとうございます!!追記修正を行っているのでご指摘あったらどうぞ。


 

 

 

前回のおさらい、とがめに刺された。

 

「七花にい!?大丈夫!?今抜くからね!!」

 

「なにやってるのよキャスター!!あなた、自分のマスターを殺す気なの!?」

 

「そういうわけではない。六華も抜かなくていいぞ。七花、調子はどうだ?」

 

「調子ってキャスター、刀で刺されたら調子もどうも…」

 

そのとき、俺の胸に刺さっていた双刀・鎚が光り、傷口もなく消えた。

 

「とがめ…どういうことだ?さっきよりも格段に体が動くぞ!!」

 

「「って大丈夫なのー!?」」

 

「フッフッフ、これが私の宝具、【刀語・完成形変体刀】の十二本がうちの一本、【双刀・鎚】だ!そして、この宝具のもう一つの能力は、『刀の能力を付与できる』ということだ!四季﨑記紀が作った刀ならば十分に伝説に名高い名刀!その能力を七花に付与したのだ!メタ的に言うと【双刀・鎚】だったら筋力をニ段階あげる感じだな。C→Aみたいな感じで。」

 

メタ…?よく分からんが、さっきエンチャントをされたときよりも動きが力強くなっている。

 

「とがめ、凄いな!!今ならあの頃の俺よりも強いって確信があるぞ。だけど、俺が刀を持っても大丈夫なのか?ほら、俺が刀を持ってるとだるんだるんのでろんでろんになっちゃうだろ?」

 

「そこに関しては問題ない!形式上刀を刺したが、あれは刀の能力を付与するためであって、刀を持っているわけではないから七花には影響はないはずだ。もちろん、刀としても使えるぞ?」

 

「はー…凄いもんだな。とがめも今なら戦えるんじゃないか?」

 

「馬鹿者、私は奇策士なのだ。戦うのが本分ではないのだぞ!」

 

「えーっと…とりあえず、七花は無事で、パワーアップしたのね?七花、アーサー王とも戦えそう?」

 

「七花にい、本当に大丈夫?とがめさんも、そうならそうって言ってからやってよね!心配したんだから!!」

 

「そうですよ!先輩の言うとおりです!」

 

「すまんすまん。いや、なんていうか、私の出番少ないっていうか、なんか影薄いなー?って思ったから、つい。まあ、私の宝具のお陰で勝利の算段ができたんだ。早く行こうじゃないか。」

 

「…なんか納得いかないわね…。はぁ、まあいいわ、皆、行きましょう!この先が決戦よ!」

 

「「「「おう!!(はい!!)」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーほう、面白いサーヴァントがいるな。」

 

黒い人影を目にした時、俺達は一歩も動けなくなってしまった。不用意に動けば、やられると分かったから。

 

「なるほど、純潔の騎士が…。盾の娘、名は。」

 

「…!わ、私の名前は、マシュ・キリエライト!!アーサー王、あなたを倒します!!」

 

「ふっ、中身も似てるか…。ならば来い。その実力、試させてもらう。私程度に手子摺っているようでは先には進めんぞ!!」

 

「来ます!!先輩達は私の後ろに!」

 

アーサー王の圧力が上がる。アーサー王の周りだけ空間が歪んでいるようだ。

 

「卑王鉄槌…極光は反転する。光を呑め!

『約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)』!!!」

 

黒い極光が迫ってくる。しかし、

 

「宝具、展開します!!」

 

極光を防ぐは光の盾。今はまだ名を知らない純潔の騎士の宝具。人理を守るカルデアの盾!!

 

(いい、マシュ。あなたの宝具はまだ真名が分かってない、不完全なの。いえ、あなたが悪いってわけじゃなくて…。あなたは『宝具を発動する』じゃなくて『六華達を守る』って心で宝具を発動したでしょう?だから、宝具の真名までは分からなかったのよ。だから、今のあなたの宝具に名前をつけてあげる。あった方がいいでしょ?あなたの宝具の名は…)

 

 

 

仮想宝具 疑似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)!!!』

 

 

 

 

マシュが叫び、光はよりいっそう激しさを増す。終わらないかに思えた光の衝突は唐突に幕を下ろした。

 

「はぁ、はあ、はぁ…」

 

「…やはり、その盾は私では破れんか。止むを得まい、マスターを殺すとしよう。」

 

「その必要はないぜ!!」

 

「っ、何だと!?」

 

マシュが守りきり、宝具後の硬直した隙を狙い、俺は強化された体でアーサー王の懐に入る。その構えは虚刀流

四の構え【朝顔】。そこから繋がる技こそ、

 

 

「虚刀流最終奥義…!【七花八裂・改】!!!」

 

 

 

一の奥義【鏡花水月】

 

ニの奥義【花鳥風月】

 

三の奥義【百花繚乱】

 

四の奥義【柳緑花紅】

 

五の奥義【飛花落葉】

 

六の奥義【錦上添花】

 

七の奥義【落花狼藉】

 

虚刀流の奥義であるこの七つの技を全部同時に打ち出す奥義こそ、七花が考えた奥義【七花八裂】である。その組み合わせ、実に5040通り。その中でも最大の効果を発揮する組み合わせこそ、最終奥義【七花八裂・改】である。その威力、敵を八つ裂きにし、城を砕く!!

 

 

「ぐっ!!」

 

 

鎧通し、掌底、打撃、踵落とし、飛び膝蹴り、手刀が入り、アーサー王は完全に動けなくなる。最後に放つは神速の貫手【花鳥風月】!!

 

 

「ちぇりおおおおおおお!!!!!!!」

 

 

ドパン!!

 

 

アーサー王の胸部に貫手が入り、爆ぜる!!その七撃はアーサー王の体に傷をつけ、霊核を消滅させる!!

 

 

「…ふっ、見事だ。たかが人間のマスターが私を倒すとはな。だが、もう遅い。人類は滅びている。聖杯を巡る戦い【グランドオーダー】は始まっている。精々、あがくんだな…」

 

「人類が滅びている、だと…!?おい、待て!!」

 

アーサー王が意味深な言葉を発した直後、金の器を残し光となって消えていった。

 

「どういうことだ?まさか、本当に人類が…」

 

「やったー!!!やったよ七花にい!!私達勝ったんだよ!!やったよマシュ!!やったよ所長!!やったよとがめさん!!」

 

「はい先輩!!私も、先輩達を守れました!!七花さんも凄い動きでした!!七花さんがいないと勝てなかったかもしれません。ありがとうございます!」

 

「…もうなにも驚かないわ。マシュ、ご苦労様。あなたの宝具はアーサー王のエクスカリバーにも劣らないことが証明されたわ。おめでとう。そして七花!…アーサー王に勝利するという快挙、カルデアの所長として称賛します!最初は一般人だなんて言ってごめんなさい。ありがとう、あなたがこの場にいてくれて良かったわ。」

 

「さすが七花だな!!いや、まあ、あの極光見たときは死んだかと思ったけど、マシュの盾は凄いな!あの極光を防ぎきるとは!あ、もちろん七花も凄かったぞ?あと、最後にちぇりおって言ってくれたの、嬉しかったぞ!!」

 

…照れるな。

 

『――やっと繋がった!君たち、大丈夫かい!?セイバーは倒したのか!?』

 

「あれ、ロマン。どうしてたんだ?アーサー王なら今俺が倒したぜ。」

 

『そうなのか…って七花くんが!?えっ、君、人間だよね?いくらエンチャントをされたからって…』

 

「その辺は帰ったら説明するよ。このあとはどうすればいいんだ?」

 

『ああ、君が持っているその器、聖杯を回収すればその特異点は崩壊し始めるはずだ。今から君たちをレイシフトでカルデアに帰すよ。少し待っ…』

 

 

パチパチパチ

 

 

「!誰だ!」

 

少し上の高台からこちらを見下ろす影が一つ。邪悪な気にまみれた、人とは思えない圧力を感じる。

 

「まさかここまでくるとは、いささか予想外だったよ。マシュ、一般人のマスターに…君は誰だ?マスター候補ではない、本当にただの一般人か!フッ、フハハハハ!!これは笑い話だ!!魔術師でもない一般人が我が王に抗うと言うのか!!」

 

「なんなんだ、あいつは…?」

 

『そんな、まさか…生きていたのかい、レフ教授!何故そんなところにいるんだ!?』

 

「…レフ?レフなのね!良かった!さぁ、早くここから離脱しましょう!」

 

「ロマン…君は死ななかったのか。またサボっていたのか、君のような優秀な人材を殺しておきたかったのだが…。それにオルガか…はっ、グズもここまでくると滑稽だな。まだ気づかないのか?君はとっくに死んでいる。今ここにいる君は魂だけの存在だ。カルデアに戻れば肉体のない君は消える。何の意味もなく死ぬんだよ、君は。」

 

「…えっ?何を、言っているの?」

 

「君はあの爆発で死に、魂だけがレイシフトした。良かったなオルガ、念願のレイシフト適性が得られたぞ?」

 

「嘘…。嘘よ。私が、死んでいるなんて…」

 

「君は誰にも認められず、一人のまま死んでいくんだよ!これ程滑稽なことはあるまい!ハハハハハ!!!!」

 

「違う!!!」

 

「…ほう?」

 

「六華…?あなた…」

 

「所長はヒステリックで、高慢ちきで、すぐ怒るけど、どんなに怖くても逃げない立派な私達の所長なんだ!!お前なんかが私達の所長を悪く言うな!!このモジャモジャ!!」

 

「六華…」

 

「モ、モジャモジャ…そこの小娘に何ができる!?いつも『レフ~レフ~』と私に頼ってばかりだった、私がいなければ何も出来ないグズな小娘に!!」

 

「…ごめんなさい、レフ。私はずっとあなたに頼っていました。ずっと優しく教えてくれたあなたに甘えていた。そんなことじゃ、あなたに嫌われて当たり前だわ。でも、今の私は、あなたがいなくても立ち上がれます!前に進めます!!今までありがとう、レフ・ライノール。私は、彼女達が認めたカルデアの所長、オルガマリー・アニムスフィアです!!私は私の誇りにかけて、認めてくれた彼女達のために、『これから』をやり遂げます!!」

 

「…そうかね。小娘の戯言など何を言っているのか分からないな。精々あと少ししか生きられない命、無駄にするんだな。」

 

そう言うと、レフの背後の空間が開き、レフは中に消えていった。

 

「六華、マシュ、ロマン。それに、七花とキャスター、とがめも、今までありがとう。あんなこと言ったけど、私、もうすぐ死んじゃうみたい。あなた達には、これからとても重い使命が任されるわ。私はここでリタイアだけど、あなた達は、死なないでね。」

 

「そんな、嘘でしょ…?所長、本当に死んじゃうの?」

 

「…ごめんなさい。」

 

『…所長、申し訳ありませんが。』

 

「ええ、ロマン、レイシフトを始めてください。このままでは特異点の崩壊に巻き込まれて私達全員が死ぬでしょうから。」

 

「…少し、いいか?」

 

「とがめ?」

 

「…出来るかどうかわからないが、私に考えがある。オルガマリーが生き残る奇策だ。」

 

「っ!本当なの!!とがめさん!!」

 

「本当か!とがめ!」

 

『本当かい、キャスター!』

 

「…キャスター、私の肉体はもう死んでいます。どうやっても…」

 

「ああ、だから魂だけを保護するんだ。これを持ってくれ。」

 

「これは…刀の柄と、木刀?」

 

「【誠刀・銓】と【王刀・鋸】いう。この二刀には持ち主の精神を安定させる効果がある。そして…」

 

「っ、とがめ、その刀は…」

 

「…うむ、【毒刀・鍍】という。この刀には人の魂、怨念、妄執をのせることができる。しかし、この刀には今、四季﨑記紀という男の魂が入っている。オルガマリー、その二刀を持ってこの刀に入ることでオルガマリーの魂は保護できるはずだ…理論上は。」

 

「その…大丈夫なのか?その刀ってそうとうヤバイもんだったよな。」

 

「わ、分からん!けど、オルガマリーを救うにはこれくらいしか方法が思い付かなかったのだ!!王刀と誠刀を持っていれば大丈夫だと思うが、オルガマリー、どうする?」

 

「…やるわ。どっちにしろ、このままじゃ消えてしまうだけだしね。その二刀を持てばいいのね?」

 

「ああ、じゃあ始めるぞ。」

 

とがめは王刀と誠刀を持ったオルガマリーに毒刀を刺した。すると、オルガマリーの体が光り、毒刀の中に刀身に吸い込まれていった。

 

「…これは、見るのは心臓に悪いな…。これで大丈夫なのか?」

 

「…多分な。あとはオルガマリーの心次第だ。四季﨑の魂に呑み込まれなければよいが…」

 

『所長の処置は終わったんだね?じゃあ今から皆をレイシフトするよ!意識を強く保って、意思消失をしないようにね!』

 

そう言うと俺達の体が光り、消え始めた。

 

俺はただ検査を受けに来ただけだったのに面倒なことになったものだ。

 

魔術に英霊、果てにはこんなところで妹ととがめに会う。

 

そして、人類絶滅に、グランドオーダー。

 

俺には分からないことばっかりだが…

 

六華やとがめと一緒なら、俺は全てを守ってみせよう。

 

なぁ、虚刀流七代目当主【藤丸七花】

 

 

 

 

ここから、俺達の人理修復の旅が始まった。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

決意語―ケツイガタリ―

説明回です。ぐだぐだ明治維新きましたね。自分は一年前このイベントからfgoを始めたので感慨深いです。


 

 

 

 

 

 

カンッ、カンッ

 

鉄を叩く音がする。刀を鍛える音がする。

 

カンッ、カンッ――――

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「ここは…?」

 

…変な夢を見た気がする…。

 

「気がついたかい?藤丸七花くん。」

 

俺はどうやらベッドの中にいるようだった。そして声をかけてきたのは…

 

「…モナリザ?」

 

そう、あの絵画で有名なモナリザその人であった。いやおかしいだろ!

 

「フフッ、初めまして七花くん。私はレオナルド・ダ・ヴィンチ。気軽にダヴィンチちゃんと呼んでくれたまえ。カルデアに召喚された英霊第三号さ。起きてすぐで悪いけど、管制室に行ってくれないかい?皆がそこでブリーフィングをやっているから。」

 

「…色々分からないが、分かった。」

 

俺は寝惚けた頭で管制室に向かった。何故か体がだるい。強化の後遺症だろうか。

 

 

 

 

 

「…頑張れよ、人類最後のマスター達。ここからは、君達が主人公の物語だ。」

 

 

 

 

 

俺は迷いながらも管制室に辿り着いた。

 

「あっ、おはよう七花にい!具合は大丈夫?」

 

「おはようございます、七花さん!昨日は本当にありがとうございました!!」

 

「おはよう七花、よく眠れたか?私の宝具を使ったんだ、体が筋肉痛なんじゃないか?」

 

「おはよう、みんな…。ちょっと体がだるくてさ…。」

 

「おはよう、七花くん。よし、皆集まったところでブリーフィングを続けるよ。」

 

「おーい、ちょっと待ってくれないかなーロマン。私の紹介がまだなんだか。」

 

「お、ダヴィンチちゃん、さっきぶりだな。」

 

「七花くん、コイツと会ってたのかい?他の二人はまだだろうから紹介するよ。」

 

「フフーン、改めて名乗ろう。私はレオナルド。かの有名な万能の人、レオナルド・ダ・ヴィンチさ!気軽にダヴィンチちゃんと呼んでくれたまえ!」

 

「モナリザだーー!!!」

 

「先輩!この人は、サーヴァントです!でも、レオナルド・ダ・ヴィンチは男のはず…」

 

「はいはい、その辺はいいんだよ。性別なんて大した問題じゃないさ。私は美を追求する者。そして、私にとっての美とはモナリザ…。だったら当然こうなるのは自明の理だろ?」

 

「なに言ってるか分からないだろ?こういうやつなんだ。それでも能力は一級さ。やることは主に支援物資の提供に開発、僕の補佐だね。ダヴィンチちゃんはカルデアに召喚されたサーヴァントだから、君達に着いていくことは簡単には出来ないんだ。そうだ、これからのことについて話してなかったね。」

 

「ああ、俺達はあの燃え盛る街の異常を攻略したんだよな?これからも、あんなことが起きるのか?」

 

「…違うんだよ七花くん、みんな。これを見てくれ。」

 

ロマンはコンソールを操作し、紅蓮に燃えた球体を表示した。

 

「これはカルデアス。人類史を表示するための疑似天体だ。」

 

「うわぁ、真っ赤っかだねぇ。」

 

「未来は燃え盛り、人類は焼滅した。()()()んじゃない。()()()んだ。今残っているのはここ、カルデアだけだ。この状況を打破するために、君達には七つの特異点にレイシフトし、これを調査、修正してほしい。」

 

「特異点ってのは、前の街みたいなものか?」

 

「ああ、これを見てほしい。」

 

真っ赤だった球体は色を変え、世界地図を表す。そこに光る七つの点。

 

「何故人類が滅びたのか。それは歴史の転換点、ターニングポイントが変わったからだ。『もし戦争が終わらなかったら。』『もしあの発明がされなかったら。』『もしあの国が独立しなかったら。』その『もし』が実際に起こり、人類史は変わってしまった。僕らに未来はない。けど、僕らだけは抗える。結論を言おう、藤丸七花、藤丸六華。君達が人類を救いたいのならこの七つの人類史に戦いを挑まなければならない。君達には、人類を背負う覚悟はあるかい?」

 

その言葉の重さに、俺は少し怖じ気づいた。だが、

 

「はい!!私は、この世界が大好きです!七花にいも、マシュも、お母さんお父さんも、みんなのことが好きです!!だから、私は、みんなのために戦います!!ね、七花にい!!」

 

即答する六華。…どうやら俺はこの妹には敵わないらしい。とてもいい笑顔でこちらを見つめてくる妹に応え、

 

「ああ、覚悟は出来た。虚刀流七代目当主、藤丸七花。俺は、この世界を守るために戦うことにしたよ。な、六華。」

 

「…えへへ!ありがとう、七花にい!」

 

「…酷なことを押し付けてすまない。あと、大事なことがある。所長は今どうなっているんだ?」

 

「…分からん。毒刀の中がどうなっているかは私にも分からんのだ。せめて依代となる肉体があれば…」

 

「ああ、肉体だったら今私が作っているよ。人造人間(ホムンクルス)としてね。だけど、設備も時間も足りないから出来上がるのは何時になるか分からない。所長には悪いけど、もう少し待っていてくれ。」

 

「…分かった。所長には申し訳ないが、今は特異点を修正する方が大事だからね。特異点を修正するには、前に七花くんが持ってきた『聖杯』をできる限り回収、やむを得ない場合は破壊するんだ。聖杯でもなければ時間旅行や歴史改変なんて到底行えないからね。どこかに聖杯が絡んでくるはずだ。

だから、君達には『特異点の調査及び修正』と『聖杯の回収及び破壊』を主題にして活動してほしい。この戦いを人理守護指定『グランド・オーダー』として決行する!みんな、頑張ろう!!」

 

「「「「「おおーー!!!」」」」」

 

 

 

 

 




次回はサーヴァント召喚したいと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

召喚語―ショウカンガタリ―

さーて、ぐだぐだしてきたぞー?


 

 

 

ブリーフィングも終わり、決意を新たにした俺達は戦力増強のために英霊召喚を行うことになった。

 

 

「君達にはこれから英霊召喚を行ってほしい。」

 

「英霊召喚?っていうと、俺がとがめを召喚したような感じか?」

 

「そうだね。六華ちゃんにはマシュしかサーヴァントがいないから、戦力として新たにサーヴァントを召喚してほしいんだ。もちろん、七花くんもね。」

 

「おおー!!でも、昔の英雄さんが私に力を貸してくれるかな…」

 

「大丈夫です先輩!私の中の英霊も私に力を貸してくれました!だから、先輩にもきっと力を貸してくれます!!」

 

「マシュの言うとおりだ。英雄っていうのは基本的に正義の味方だから、人類を救うために戦う君達には力を貸してくれるさ。僕が保証しよう。まぁ、反英雄と呼ばれる人類に反する英霊もいるけどね…。今は触媒がないから縁召喚になる。君達に縁のある英霊が呼ばれるはずだよ。」

 

俺に縁のある英霊か…。とがめとは特別縁が強かったんだろうな。

 

「……よし!じゃあ私からやるね!」

 

六華は元気よく歩きだし、マシュの盾が設置してあるサークルに近づく。その手には6つの聖晶石が握られている。大量に魔力を内包した石の内の3つをサークルに投げた。

 

 

光が走る。三本の光が回り、虹色の光が飛び散っている。

 

 

「この魔力量…!凄いぞ、トップサーヴァント並みだ!」

 

 

光が収まり、召喚されし英霊は

 

 

「問おう。あなたが私のマスターか?」

 

 

金色の髪に蒼銀の鎧、持っているのは星の聖剣。特異点で会ったときと違い禍禍しさは感じないが、このサーヴァントは……

 

「サーヴァント、セイバー。真名をアルトリア・ペンドラゴン。……冬木では、迷惑をかけました。この聖剣、次こそは人理のために振るいましょう。」

 

「うん!私がアルトリアのマスターの藤丸六華です!これからよろしくお願いします!!」

 

「星の聖剣、エクスカリバーを持つ騎士王を呼ぶなんて六華ちゃんは凄いね!よーし、この調子でもう一回召喚いってみよー!」

 

「おー!!」

 

六華が残った石をサークルに投げる。光が走り、収まる。召喚されたのは……

 

 

「よう、サーヴァント・ランサー クーフーリン。召喚に応じ参上したぜ!」

 

「クーフーリンだー!!アニキー!!」

 

「よう六華!今度はランサーで召喚してくれてありがとな!あのあとアーチャーの野郎を倒した時に俺の体が消えてったからセイバーを倒したんだろ。よくやったな。」

 

「えへへ、ありがとう!これからよろしくね!」

 

「おう!魔槍の力、見せてやるぜ!おうセイバー、お前も来てたのか!あとで手合わせしようぜ!」

 

「ランサー…いいでしょう。マスターには私達の実力を知ってもらわないといけませんしね。」

 

「騎士王に光の御子、最高レベルのサーヴァントだね!六華ちゃんの方は問題ないね。じゃあ次は七花くん、いってみよう!!」

 

「俺もか…。」

 

「七花、私の同僚となるのだ。理知的な英霊を呼んでくれよ?」

 

「んな無茶な…。」

 

正直とがめがいれば他のサーヴァントはいいんだが…。まあ、戦力は多いに越したことはないだろうしな。

 

俺は貰った6つの聖晶石の半分を投げ、英霊を呼んだ。

 

光が走り、収まる。現れたのは……

 

 

「サーヴァント・アーチャー。召喚に応じ参上した。」

 

召喚されたのは筋肉ムキムキの赤い弓兵だった。

 

「俺がお前のマスターの藤丸七花だ。よろしく。」

 

「七花の第一のサーヴァント、キャスターのとがめだ。よろしく。」

 

「ああ、よろしく頼む。…ところでマスター、何故あの二人がいるのかね?」

 

「アーチャー 、あなたも来たのですね。あなたと共に戦えることが嬉しいです。」

 

「よおアーチャー、お前特異点ではキャスターの俺によくもやってくれたな?あとで手合わせしようぜ?」

 

「ああ、セイバー、君と肩を並べて戦えることはとても嬉しいよ。…ランサー、私のような弱い英霊にいちいち腹をたてるのはどうなのかね?光の御子様?」

 

「…はっ、減らず口は変わんねぇな。あとでぼこぼこにしてやるよ。」

 

「フッ、出来るものならやってみたまえ。」

 

…なんか、アーチャーとランサー、凄い仲悪いな。セイバーが微笑ましい顔で見てるぞ。

 

「…七花七花。あいつら全然理知的じゃないぞ。互いのことけなしあってるぞ。」

 

「まあそうだけど…。とがめだって、否定姫とあんな感じだったじゃないか。」

 

「うっ…、あの女のことは思い出させるな…。反吐が出る。」

 

否定姫、か。あいつもよくわからないやつだった。

 

「…えーっと、次の召喚いってみようか!七花くん、お願いね!」

 

「…お、おう。」

 

俺は残った石をサークルに投げた。

 

光が走り、収束する。現れたのは……

 

 

 

「セイバー、千子村正。(オレ)を呼んだのはお前か?」

 

 

赤い短髪に切れ長の双眸。刀を強く思わせるその姿は奇しくもも俺と重なった。

 

「…ああ、よろしくセイバー。俺がマスターの藤丸七花だ。そして」

 

「私が七花の第!一!のサーヴァントのとがめだ。」

 

「あともう一人…アーチャー?どうしたんだ?」

 

アーチャーにも挨拶させようとするが変な顔で固まっている。よく見たら他二人もだ。

 

「な…」

 

「な?」

 

「なんでさ!!??」

 

「士郎!?士郎なのですか!?あなたが何故その姿でサーヴァントに!?」

 

「あー…(オレ)は少しは名の知れた鍛冶士なんだが、ちぃと信仰が弱くてな。だから、なんだ、疑似サーヴァント?っていうのか?(オレ)の存在に近い体を寄代に現界してるってわけだ。お前ら、この体の知り合いか?」

 

「……………もう二度と顔を見なくていいと思ったのに……。」

 

「ア、アーチャー、気を確かにしてください。あなたと彼は別人なのです。体が士郎でも中身は違うのですから。」

 

「……千子村正って俺がけっこう好きだった人なのに………。」

 

 

おっと、心は硝子だぞ?

 

 

「アーチャーーーー!!!!」

 

光の粒がアーチャーの体から浮かび上がっていった……

 

 

 

…カ、カオスだ。

 

「えーっと、まあその、色々あったけど皆無事にサーヴァントを召喚できたね!皆、七つの特異点の最初の一つ、フランスのオルレアンに明日レイシフトしてもらうよ。今日の内にサーヴァントのことを知っておいたり、体を休めたりしておいてね。僕はまだまだやることあるから!それじゃ!!」

 

ロマン…お前まさか逃げた訳じゃないよな…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…すまない、無様なところを晒した。もう大丈夫だ。」

 

「…お、おう。大丈夫ならいいんだけど…。」

 

「いやぁすまんな兄ちゃん。まさかこの体が兄ちゃんの若い頃だとはなぁ。」

 

「言わないでくれ千子村正!!俺は若いときの俺が大嫌いなんだ!!」

 

「ハハハ、まぁ、改めまして、(オレ)はセイバーのサーヴァント、千子村正だ。(オレ)は基本的に刀を作ることしかしないからそのつもりでな。」

 

「…刀鍛冶なのは分かったが、戦わないのか?サーヴァントなのだろう?…」

 

……とがめがそれを言うのか……

 

「戦えないわけじゃないが、(オレ)は鍛冶士だ。刀を作るのが仕事ってもんさ。」

 

「おっと、刀のことに関しては私も負けてられないぞ?」

 

「あ、なんだ白髪の嬢ちゃん。あんたも鍛冶士なのか?」

 

「生憎私は鍛冶士ではないが、この刀を見よ!出でよ、【斬刀・鈍】!!」

 

「!!なんだその刀は!!…(オレ)が刀を見てどうやって作っているのか分からないだと…!?おい嬢ちゃん、こいつの作り方を教えてくれ!いや、やっぱりいい。この刀を越える刀を作ってやろうじゃねえか!!部屋を一つ貸せ!!」

 

…セイバー、戦線離脱。

 

「…とがめ、何やってるんだよ…。セイバーどっか行っちゃったじゃねえかよ。」

 

「ハハ…いやまさかあんなに興奮するとは思わなくて…。」

 

…まあ、あの【斬刀・鈍】を越える刀を作れるってんなら見てみてえけどな。どんな風に越えるんだろうな…とがめにはまだまだ色々な刀があるしな…ほんと四季崎のやつ頭おかしいな…

 

「…私は少しこの施設を見て回る。用があったら呼んでくれ。」

 

「よーし!俺達は手合わせするか、セイバー!六華も付いてきな!英霊の力ってやつを見せてやるよ!」

 

「わーい!行く行く!!マシュもアルトリアや兄貴に手合わせしてもらったら?特訓だよ!」

 

「わ、私もですか!?でも、私のような未熟なサーヴァントでは…」

 

「マシュ、あなたはデミ・サーヴァントです。私達英霊は完成された存在ですが、あなたにはまだまだ成長する余地があります。私達も手助けしますから、特訓しましょうか。」

 

「アルトリアさん…。はい!マシュ・キリエライト、頑張ります!!」

 

…俺も、もっと特訓を積まなきゃだめだな…。アルトリアやクーフーリンに特訓してもらうか…。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「…あの刀は形有るあらゆる物を斬る。そういう刀だった。……あれを越えるには、もっと上のもの、空間、概念、いや、()()()()()()()()()()()……。」

 

 

 

 

 

 

 





結局いつもの面子におさまってしまった。村正さんは仕事があるのでどうぞ。口調は分からないので適当になります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

聖刀・『旗』対 邪刀・『竜』
幕間語―マクアイガタリ―


感想やお気に入り登録ありがとうございます!!とても嬉しいです!!


誠に勝手ながらストーリー展開上の都合により一部改編しました。誠に申し訳ございません。


「それでとがめ、俺達はどうする?」

 

「ふむ…そうだな。」

 

誰もいなくなった部屋で俺達は相談していた。というか、英霊が無茶苦茶すぎて辛い。一人はすぐに部屋に引きこもるし一人は硝子のハートだし。

 

「私達もこの施設を見て回ろうではないか。私もまだ分からないところが多いしな。」

 

「了解。俺はとがめに付いていくよ。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

とがめと一緒に廊下を歩いていると、

 

「フォーウ!」

 

「あ?なんだ?」

 

自分の足元にすり寄ってくる白い獣がいた。

 

「ほう!ほうほう!!なかなか愛くるしいではないか。どれ、こっちにもこないか?ん?」

 

獣はとがめの方を見て首を傾げ、どこかへ走っていった。

 

「あ、ああ…七花だけずるいぞ!私にも触らせてくれ~!」

 

「俺に言われてもな…。」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「ここは…」

 

「む、マスター。どうしたのだね?なにか食べに来たのか?」

 

厨房らしき場所に立っているのはアーチャーだ。てことは、ここは食堂なのか。

 

「いや、俺達も施設の中を見て回ってるんだ。アーチャーはどうしたんだ?」

 

「私はキッチンがあったので、つい料理をな…。どうだ、食べるか?」

 

「いいのか?とがめも食おうぜ。」

 

「う、うむ…。アーチャー、そなた、料理できるのだな…。私、女子力負けてる…?」

 

俺達は机に座り、アーチャーが持ってきた料理を一緒に食べた。まさか、英霊にもなろう人物が家庭的とはな…。

 

「これは…!美味い!!すげえ美味いぞ、とがめ!!」

 

「ああ!!今までにこんなに美味しい料理は食べたことがないぞ!!すまなかったアーチャー!そなたのことを硝子メンタルの面倒な奴だと思っていた!!」

 

「…誉めてくれるのは嬉しいんだが、そんな風に思っていたのか?…キャスター、その、少し頼みがあるんだが構わないか?」

 

「ん?美味しい食事の礼だ。なんでもしてやろう。あ、私の体とかは駄目だぞ?」

 

「とがめ…。」

 

「その、君の宝具の刀を見せて欲しいんだ。」

 

「そんなことか?ならばお安いご用だ。」

 

そう言うととがめは宝具(王刀、誠刀、毒刀以外)を全部出した。

 

「な…!君の宝具はあの斬刀とやらだけではなかったのか!?なんだこの刀は…って、鎧!?人形!?銃!?もう訳が分からないよ!!」

 

…また壊れてしまったようだ。徒名は硝子メンタルに決定した。

 

「…失礼した。いや、このことは私の能力に関するものでな。聞くより見た方が早いだろう。『投影開始(トレース・オン)』」

 

その言葉をきっかけにアーチャーの手から光が発された。そこにあったものは、

 

「ッ、馬鹿な!?その刀は…!!」

 

そう、アーチャーの手元にあった刀は【斬刀・鈍】だった。

 

「どういうことだ!アーチャー、何をした!!」

 

「落ち着け。これが私の能力…剣を複製、投影する能力、『無限の剣製』だ。」

 

「剣を複製…ってことは、この斬刀は偽物ってことか!?」

 

「そういうことだ。そのオリジナルに比べれば私のは何段階も下の偽物だよ。だが、戦力にはなる。キャスターの刀を解析したい。少しの間、貸してくれないか?ああ、その、刀らしい刀は解析し終えたんだが、その…鎧や銃は…もう少し時間がかかりそうなのでな…。(というかそもそもあれは剣なのか!?なぜ解析では剣とカテゴライズされるんだ!?)」

 

「…分かった。戦力増強のためだ。」

 

とがめはアーチャーに【賊刀・鎧】と【炎刀・銃】を渡し、他の刀はしまった。

 

「すまないな、だが…この防御性、この連射性…ふむ…すまないマスター、解析に集中していてもいいかね?」

 

「あ、ああ、別にいいよ。俺達は他のところを見てくるから。」

 

「そうだな。まだ見てないところもあるし、出発するか、七花!」

 

「ふっ、君達は仲がいいな。…そういえば真名をまだ言っていなかったな。エミヤ。エミヤシロウだ。腹が減ったら何か作ってやる。いつでも食堂にこい。」

 

アーチャー…エミヤはそういうと刀(鎧と銃)に目を向け集中し始めた。

 

「とがめ、今度はトレーニングルームにでも行ってみるか。多分アルトリア達もいるはずだし。」

 

「ああ、六華もそこにいるはずだしな。六華とはまだまだ話したいことが多いからな!現世での七花とか、な!」

 

「ッ、待てよとがめ!恥ずかしいから!!」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

キィン、ギィン!!

 

「ハアッ!!」

 

「オラァ!!」

 

 

 

 

「…すげえ…。」

 

トレーニングルームに来た俺達は、アルトリアとクーフーリンの戦いに魅了されていた。

 

「あ、七花にい!来てたんだ!見て見て、凄いよねあれ!キィンて!ドカーンて!!」

 

六華は一般人だから興奮しっぱなしでよく分かっていないようだが、俺には分かる。―――強い。力、スピード、技、どれをとっても普通の人間の比じゃない。これが本当の英霊というものか……。

 

「七花にい?どうしたの?」

 

「ッ、ああ、大丈夫だ。戦闘が凄すぎてびっくりしていたんだ。」

 

……俺のとこの英霊は、とがめはまだいいとして、引きこもりと硝子メンタルだからな…。

 

「ね!凄いよね!英霊っていうのはみんな凄いんだな~!」

 

「せんぱーい!!どこに行って…あ、七花さん!お疲れ様です。七花さんも見学ですか?」

 

「フォーウ!」

 

「そんなところだ。お、さっきもあったなちっちゃいの。」

 

「む!さっきの小さい動物か!見れば見るほど何の動物か分からんが…可愛いから何でもよい!!触らせろ~!!」

 

「わわっ、危ないですよ!!」

 

マシュの腕の中にいる獣に突っ込んでいくとがめ。……見ていてほんわかする。

 

「ドフォーウ!!」

 

「あいた!!この、やってくれたな獣め!私は障子紙よりも弱いんだぞ!!」

 

「いや、それはどうかと…どうしたんですか、フォウさん?」

 

「そいつの名前、フォウって言うのか?なんの生き物なんだ?」

 

「なんの生き物かは分かりませんが、私が名付けました。フォウさんです!」

 

「フォウフォーウ!」

 

「ほー…よろしくな、フォウ。」

 

俺が撫でようとすると頭を動かし撫でやすい体勢になってくれた。………可愛いな………

 

「フォーウ。」

 

俺が撫で終わると興味がないとばかりにどこかへ行ってしまった。

 

「何故だ!?何故私には触らせてくれないのだ!?ずるい~!私も触りたい~!!」

 

 

 

 

プシュー

 

 

 

 

「よぉ!お前らも来てたのか!」

 

「模擬戦が終わりました。マスター、どうでしたか?」

 

「うん!!もうすっごく、すっごく、凄かったよ!!!」

 

「ハハハ!そこまで言われると照れるなおい!」

 

「はい、私も良い経験となりました。」

 

俺から見ても二人の戦いは凄いものだった。俺、あのアルトリアによく勝てたな…とがめの援護もあったからか…。

 

「おうそうだ、七花!」

 

「ん?」

 

「俺と戦おうぜ!冬木で見たときから気になってたんだよ!」

 

「…は?」

 

あんなに速い動きをしていたやつと、戦う?………いや、いい機会だ。とがめの強化で強くなったからって、それは俺が強くなった訳じゃない。俺自身が強くならないといけないんだ。『刀』として。

 

「……ああ、分かった。やろうぜ、クーフーリン。」

 

「お、受けるか。やるじゃねえか。」

 

俺とクーフーリンはトレーニングルームに入り、双方構えをとった。

 

「虚刀流七代目当主、藤丸七花!参る!!」

 

「クーフーリンだ。来い!!」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫?七花にい。痕がすごいよ?」

 

…………当然の如くボコボコにされた。

 

「いやー強かったぜマジで。スピードもあるし力もまあまあ。それに虚刀流っつったか?あの動きは良かったぜ!」

 

「ハハハ…」

 

「そう卑下するものではありませんよ。英霊相手に生身の人間があそこまで渡り合えたのですから。むしろ称えられるべきです。」

 

「七花、派手にやられたなぁ。やっぱり私の強化を受けておけば…。」

 

「……それはいらない。俺は、俺自身が強くならないといけないんだ。」

 

「…そうか。励めよ、七花。」

 

「うっし、じゃあ次は盾の嬢ちゃんの番だ!行くぞ!」

 

「え、えええ!?私もですか!?」

 

「…マシュ、あなたはデミ・サーヴァントです。私達のように完成された英霊ではなく、まだ弱い。ですがそれは、まだ成長の余地があるということです。あなたに宿った英霊はとても強い。その力を引き出せるように頑張りましょう。」

 

「アルトリアさん…はい!マシュ・キリエライト、頑張ります!!アルトリアさん、クーフーリンさん、特訓お願いします!!」

 

「おうよ!まあ手加減はしてやる。感覚を掴め!こういうのは経験あるのみだ!!」

 

「はい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「七花にい。ちょっといい?」

 

「ん?なんだ六華。」

 

「七花にいととがめさんってさ、恋人なんだよね?」

 

「……まあそんなところだな。」

 

「馴初めとかは?私聞きたーい!」

 

「……そういうのはまた今度な。六華にはまだ早い。」

 

「えー、私もう18だよ!じゃあとがめさんに聞いちゃおー!」

 

「あ、待てって…。」

 

「とがめさん!七花にいとの馴初め教えてー!」

 

「む、六華……七花との馴初め、か。むう、長くなってしまうな…。ここは私の著書【刀語】を読んでくれ!!みんな、よろしくね!」

 

「とがめ?どこに喋ってるんだ?」

 

「3次元だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




エミヤさんキャラ崩壊中。

ここらでとがめのステータスでもいれます。


真名:とがめ

クラス:キャスター

性別:女性 出典:刀語

属性:混沌・善

身長:約145㎝ 体重:秘密

筋力:EX 耐久:EX 魔力:C 敏捷:EX 幸運:C
宝具:EX

スキル
奇策:C 奇策を考え敵を倒す。奇策士とがめの真骨頂ともいえるスキル。だが活躍の場は少なかったようだ。
fgoでは対象のサーヴァントのNPアップ&宝具威力アップ

虚刀の担い手:A 虚刀・鑢の担い手だったために持つスキル。本来なら虚刀・鑢を召喚するスキルだが今回は本人がいるので必要ない。
fgoでは対象のサーヴァントの攻撃アップ、バスターアップ

■■■■:EX


宝具

【刀語・完成形変体刀】

『刀語』にて登場する完成形変体刀十二本を召喚することができる。そのまま使うもよし、能力を付与するもよしの宝具。しかし本人はとてつもなく弱いので注意。本作では七花は『刀語』の主人公のためこの宝具の力を強く受ける。他の人に使うよりも能力の増大値、自由度が高い。

fgoでは全体に攻撃アップ、防御アップ、弱体解除


【■■■・■■■■■■■■■■■】










目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

仏蘭西語―フランスガタリ―




申し訳ないですが重要なテストが近いので更新速度が落ちます。危険物取扱試験とらなきゃ………


 

 

 

 

「よーし皆揃ったね!これからブリーフィングを始めるよ!」

 

翌日、俺達は特異点修復のために管制室に集まっている。

 

「いや、俺のところのセイバー…村正がいないんだけど。」

 

「ああ、あれは何を言っても無駄だよ。職人っていうのは自分のことにしか興味がないのさ。もちろん、この私含めてね!…やだなぁ、ちゃんと君達のサポートするよ、事態が事態なんだし。それに、彼には刀を作ってもらってた方が良さそうだしね。」

 

「……なら別にいいけどさ。」

 

俺のところにはとがめとエミヤ、六華のところにはマシュとアルトリア、クーフーリン、何故かフォウもいる。

 

「じゃあ改めて、今から向かうのはフランスのオルレアン、百年戦争の舞台だ。ここは比較的揺らぎが少ない特異点だけど、何が起きてるかは分からない。僕達もこっちから通信して連絡を取り合うから何かあったら報告してくれ。探すのは異変の原因となっている聖杯とこちらから物資を遅れるようにする霊脈だ。よろしく頼んだよ。」

 

…意外と頼もしくみれるな、ロマンのやつ。

 

「むっ、七花くん。なにか失礼なことを思わなかったかい?」

 

「……なんでもねぇよ。それで、どうやって特異点に行くんだ?」

 

「ああ、それに関しては今回は大丈夫だ。前ほど不安定なものじゃない。このコフィンに入っていればほぼ確実に特異点にレイシフトできるのさ。」

 

「ふーん…サーヴァントはどうするんだ?」

 

「サーヴァントは君達がレイシフトすればその縁を辿って君達のところに行くよ。時間差があるかもしれないから基本的にサーヴァントがくるまで待機しててね。マシュはデミ・サーヴァントだからコフィンに入って。」

 

「分かりました。早速行きましょう、先輩!皆様!」

 

「お、やる気に溢れてるねマシュ!よーし、私も頑張っちゃうぞ~!」

 

先に六華とマシュがそれぞれコフィンに入った。

 

「じゃあ、行ってくる。後で会おうぜ、とがめ。」

 

「ああ、すぐに行くさ。」

 

「……私もいるんだがね。」

 

俺はコフィンに入り目を瞑った。……緊張していないというと嘘になる。総人類を救うための戦いなんて、俺には荷が重い。だけど、とがめや、六華がいる。そのためだけでも、俺は頑張るとしよう。

 

 

――アンサモンプログラムスタート――

 

――霊子変換を開始します――

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは…。」

 

目を覚ました俺がいたのは見渡す限りの草原の原っぱ……

 

 

 

 

ではなく、竜と人との戦いの真っ只中だった。

 

 

「殺せ!!『竜の魔女』の手下どもを皆殺しにするんだ!!!」

 

「グラァァァァァ!!!!」

 

人が叫び、竜が吠える。人が数人がかりで竜を殺し、竜は一匹で何人もの人を殺していく。

 

「なんだ!?何が起こってるんだ!?」

 

「きゃあああああ!!」

 

「!!六華!!」

 

パニック状態になりかけていた俺は理性を取り戻し、叫び声の方へ向かった。

 

「六華!!無事か!!」

 

「!!七花にい!!」

 

「七花さん!!先輩は無事です!!これは、どういう状況ですか!?」

 

「んなもん俺が知るか!!だけど…。」

 

見渡すと、そこにあるのは人と竜の死骸ばかりだった。

 

「……サーヴァントがくるまで待機って言う風に言われたが、無茶ってもんだろ。…マシュ、お前は六華を守っていてくれ。俺は、あの竜どもを倒してくる。」

 

「待ってください、七花さ…」

 

マシュの言葉を待たずに俺は走り出した。狙うは近くにいた一匹。

 

「虚刀流【薔薇】!!」

 

飛び膝蹴りが竜の頭に入り、一瞬怯む。が、

 

(こいつ、硬い……!!)

 

たいしたダメージにはなっていない。竜が反撃とばかりに爪を振るって攻撃してくる。

 

「……やることは前と変わらねぇ!攻撃を食らわないでお前を倒すだけだ!!虚刀流四の奥義【柳緑花紅】!!!」

 

竜の頭に鎧通しの一撃が入り、脳が揺れ竜は倒れた。しかし、

 

「ちっ、数が多すぎる!!どうすればいいんだ!!」

 

七花が一匹を倒したところで竜の数は百匹以上いる。このままでは焼け石に水だった。

 

「うわぁぁぁ!!」

 

遠くの方で一人、また一人と倒れていく。とどめを刺すように竜が近づいていく。

 

「止めろぉぉぉ!!!」

 

七花のフルスピードでも竜の凶行は止められない。

 

(駄目だ、間に合わない……!)

 

爪が振り下ろされるその時、

 

 

ヒュン!!

 

 

星の煌めきが走る。光の後には、バラバラとなった竜の死体があった。

 

「遅れてすみません。サーヴァント・セイバー、参上しました。このワイバーンを倒せばよいのですね?」

 

他の場所では、蒼き彗星が走る。

 

「よっと、サーヴァント・ランサー参上ってな!どうしたどうした、その程度か堕竜ども!!」

 

また他の場所では、紅き魔弾が走る。

 

「赤原を行け、緋の猟犬!!『赤原猟犬(フルンディング)』!!

……サーヴァント・アーチャー、参上した。逃げれるものなら逃げてみろ。その猟犬は永遠に貴様らを追うぞ。」

 

「アルトリアさん、クーフーリンさん、エミヤさん…!!」

 

「マシュ、よく耐えました。ここからは、私達がやります。」

 

「おうよ!マスターにいいとこ見せねぇとなぁ!!」

 

「…そこの騎士達、巻き込まれるから離れていろ。このワイバーンは私達が何とかする。」

 

「「「ひ、ひぃぃぃぃ!!!!」」」

 

…一目散に逃げていったな…。

 

「…遅いぜお前ら。危うく俺が全部倒しちまうところだったぜ。」

 

「ふ、よく言うな君は。まあ、君の戦力も馬鹿には出来ない。そこにいるとがめ嬢からエンチャントを受けるがいい。君にも手伝ってもらうぞ、マスター。」

 

「…しちか~!七花~!!」

 

「え、とがめ!?何処だ!?」

 

「ここだ~!助けてくれ~!」

 

声のする方に行くと、そこには、穴に落ちているとがめがいた。

 

「……何やってるんだ?」

 

「違う!私がここに来たときちょうど下にこの穴があったんだ!……本当だもん!!私のせいじゃないもん!!」

 

……駄々をこね始めてしまった。

 

「あーもー分かったから!」

 

俺は穴の下に降りてとがめをおんぶし、穴の中から飛び出た。

 

「ほら、大丈夫か、とがめ。」

 

「そなた、そこはこう……いや、いい。私は大丈夫だ。ほら、七花も行ってこい。」

 

「いやそんな犬みたいな…、って似たようなものか。」

 

俺はとがめの刀だしな…。

 

俺はとがめの強化を受け他のサーヴァントとともに竜を倒し尽くした。強化を受けた俺はさっきよりも楽に竜を倒せた。けど…

 

…やっぱり強いな。英霊っていうのは。剣の一振り、槍の一薙ぎで竜がたちどころに吹っ飛んでいく。エミヤはいつの間にか弓から双剣に持ちかえ、接近戦を展開している。……アーチャーっていうのは、弓を使うクラスなんだよな?いや、さっき弓使ってたけど、あれ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……こんなところでしょうか。」

 

「あー終わった終わった。やっぱ雑魚じゃもの足りねえな。」

 

「目標は達成したからいいだろう。」

 

あの量の竜を簡単に倒してみせる……。俺も、もっと強くならなきゃな。

 

「……七花にい、大丈夫?」

 

「皆さん、怪我はありませんか!?」

 

「お、六華にマシュ。お前らこそ大丈夫だっか?」

 

「うん、私はマシュが守ってくれた。けど……。」

 

「…?どうした?」

 

「…ううん!何でもない!マシュ、守ってくれてありがとね!流石私のマシュマロサーヴァント!」

 

「先輩、マシュマロサーヴァントって、きゃっ!抱きつかないでください!!……でも、ありがとうございます…。」

 

マシュに抱きつく六華を見て、さっきの暗い顔と合わせて違和感を感じたが…気のせいだろう。

 

「あの!!ここは、皆さんが守ってくださったのですか!?」

 

聞き慣れない声が耳に入り、声の方を向くと、立っていたのは、一人の少女だった。

 

「ええと、あんたは誰だ?確かにこの竜を倒したのは俺達だが…」

 

そう伝えると少女はとても嬉しそうな顔をしてこう言った。

 

「我が名はジャンヌ・ダルク!!今回はルーラーのサーヴァントとして呼ばれました。どうか、あなた方の力を貸してください!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

湖面語―コメンガタリ―

注意※この回には重大な刀語のネタバレが含まれます。刀語を読みたいと思っている方は注意してください。

昨日は風邪引いてダウンしてました。申し訳ありません。

本当に申し訳ないのですがストーリー展開上厳しいものがあったので幕間語の話を改編しました。本当に申し訳ございません。


 

「ジャンヌダルク…?ああ、知ってるぞ。救国の聖女ってやつだろ。」

 

「ておい!!俺の時は知らなかったのになんであんな小娘のことは知ってんだよ!!」

 

いや、日本でも教科書にのってる聖女とマイナーなケルト神話を比べられてもな…

 

「それで、力を貸してくれってのはどういうことだ?」

 

「はい、それは……。」

 

「いや、それは先程の騎士達の元に向かいながらにしましょう。彼らに無事を伝えなくては。」

 

「……分かりました。」

 

彼女は少しだけ暗い顔をして了承した。何か問題でもあるのだろうか……。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

『ええ!?レイシフトが終わったと思ったら戦場のど真ん中で、ワイバーンと人が戦っていて、加勢してワイバーンを全部倒したと思ったらジャンヌ・ダルクと名乗る聖女が力を貸して欲しいと言ってきて、更にはジャンヌ・ダルクが二人、それももう一人はフランスを滅ぼそうとしているだってー!?』

 

「ロマン、長い!!」

 

『通信が繋がったと思ったらこんなにアクシデントが起きてるんだ!!長くもなるよ!!えっと…初めましてジャンヌ・ダルク。僕はロマニ・アーキマン。皆からはロマンと呼ばれている、彼らの協力者だ。それで、もう一人の君とは一体なんなんだ?』

 

「初めまして、ロマン…良い名ですね。詳しいことは分かってないのですが、私とは違うもう一人、『竜の魔女』と呼ばれる私がいて、このフランスを滅ぼそうとしているのです。」

 

「だからさっきの砦でも、『竜の魔女だ!!竜の魔女が攻めてきたぞ!!お前らも竜の魔女の手下だったんだな!!』って話も聞かずに追い出されたって訳なの?」

 

「はい…私のことではないとは言え、申し訳ありません……。」

 

「いいよ、あんたのことじゃないんだろ?それで、これからどうするんだ?その『竜の魔女』のジャンヌを倒せばいいのか?」

 

「………もう一人の私と会って、話がしたいです。何故こんなことをしたのか、と……。でも、私一人の力では出来ないと思います。身勝手ではあると分かっていますが、あなた方の力を貸していただけないでしょうか?」

 

「当たり前だな。戦力は一つでも多い方がいいし、どう考えてもそのもう一人のジャンヌ・ダルク……長いな。邪ンヌでいいか。邪ンヌは怪しいし、聖杯に関係してそうだしな。な、六華?」

 

「……あ、そうだね!困っている人がいれば助けるのは当たり前だよ!」

 

「はい、戦力的にも道徳的にも問題ありません!」

 

「私達はマスターの指示に従います。」

 

「まあ、サーヴァントだしな。主の命を第一に、ってな。」

 

「私も異論はないぞ。…だが、あまり七花には近づくなよ。七花は浮気性だからな。その豊満なボディで七花をたらしこむんじゃないぞ。」

 

「キャスター……、その言い方はどうかと……。もちろん、私もマスターに付き従おう。」

 

『まあ、そこの聖女様と邪ンヌがこの特異点と無関係には思えないし、邪ンヌの情報を集めることが先決かな。あ、霊脈にサークルを設置することも忘れないでおくれよ。』

 

「皆さん……ありがとうございます!!!」

 

ジャンヌは深々と頭を下げ、俺達に礼を言った。

 

……やっぱり、六華の様子が少しおかしい気がする。後で少し話でもするか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここをキャンプ地とする!!」

 

「いきなりどうしたんですかアーチャー。普段のあなたらしくもない。」

 

「いや、何故か言わなければならない気がして……

サンタム……?サンタムとはいったい………………。」

 

霊脈を見つけた俺達はエミヤの言う通り霊脈を拠点にした。マシュのサークルのおかげで食べ物が送られてくる。本当にありがたい、いやマジで。

 

「ここは私の出番というわけだな。投影(トレース)開始(オン)

 

エミヤはフライパンとフライ返し、まな板、包丁、エプロンを投影した。エプロンまで出すなんてマメな奴だな……

 

「っていうか、剣とか以外にも投影ってのは出来るんだな。」

 

「剣の方が魔力効率が良いというだけで基本的には何でも投影できる。魔力が足りればだがね。戦闘に使用できるのは剣くらいだ。このような調理器具や日用品などにはあまり強度はいらんだろう?だから少ない魔力で投影できるわけだ。」

 

「へー…投影ってすげえんだな。」

 

「アーチャー、早くしてください!!マスターが料理を待っています!!」

 

「待ってるのはマスターじゃなくて腹ペコセイバーだろ。ま、お前の飯はうまいから早く作れよ。」

 

「……はぁ、すまないマスター、六華。ランサーはともかくそこのセイバーはとにかく大食らいだ。量を作るため少し遅くなる。キャスター、ジャンヌ、味に注文はあるか?」

 

「いや、エミヤの作るご飯は美味しいと知ったからな。何でもいいぞ。」

 

「……そうなのですか?なら、あなたにお任せします。」

 

「…了解した。I am a apron boy…(体は調理で出来ている…)

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エミヤの飯も食い終わり全員が眠りについた頃

 

 

ガサガサ

 

「んぁ…?六華…?」

 

俺の隣で寝ていた六華がいなかった。周りではアルトリアとクーフーリン、エミヤが見回りをしているので危険はないと思うが……

 

「よっと……。」

 

俺は起きて六華を探し始めた。すると、近くの湖の方から声がした。俺は近づいて声をかけようと思ったが六華の弱々しい声が聞こえたので木のそばに隠れてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんね、とがめさん。こんな時間に。」

 

「いいぞ、六華とはいつか話したいと思っていたのだ。七花の妹なんだし、かしこまる必要はないぞ。」

 

月の光が湖面を美しく照らす夜、二人は話し合っていた。

 

「うん……そのね、とがめさんって凄く弱いんでしょ?」

 

「む、まあ弱いが、私は私自身が戦う必要はないからな。私は奇策士だ。七花を勝たせるために戦うと言ってもよいな。」

 

「…………なんで、戦えるの?」

 

「……なんで、とは?」

 

「………今日、私は軽い気持ちで特異点修復に挑んでたの。でも、いきなり人が死んで、ワイバーンに殺されて、死んで、死んで、死んで!!!………ごめんなさい、取り乱しちゃって。

私、怖くなったんです。私達もあんな風にあっさり殺されちゃうんじゃないか。何も出来ないで終わっちゃうんじゃないか、って。七花にいはこんなカッコ悪いところなんてないのに、皆戦っているのに、私は、死ぬのが怖いんです……。」

 

「………六華、それは当たり前だ。人は死ぬのが怖い。当然の感情だ。」

 

「じゃあ、皆はどうして戦えるんですか!?とがめさんは、どうして戦えるんですか!?」

 

六華がとがめに強くのしかかる。抵抗せずにとがめはそのまま押し倒された。月の光に照らされ、六華の眼からは大きな涙がこぼれていた。

 

「私は……人類なんて重いもの、背負えない!!私には出来ない……人理修復なんて、私には………。」

 

「…………六華、お前には大切な人はいるか?」

 

「えっ……」

 

「私にはいるぞ。七花だ。私が生きていた頃にはそれはもう睦まじく、一緒に旅をした仲だ。……私は最初、七花を利用しようと思っていた。七花の父親……六華の父親とは違うぞ?昔の七花の父親は、私の父親を殺したのだ。それ以来、私は復讐の念に囚われていた。その息子である七花を、殺そうと思っていた。

しかし、一緒に旅をする中で、私は七花に惹かれていったのだよ。まあ、運命はその結果を許さず、私は死に、七花とは死に別れしてしまった訳だが……。今、こうして七花と過ごせているのは奇跡にも等しいのだ。だから、今この時間を、七花を守るために、私は私の出来る全力で戦っているのだ。六華にはいないか?この人のために全力を尽くしたい、この人を守りたいっていうのは。」

 

「…………七花にい、マシュ……。」

 

「そうだ。あんまり大勢の人間のことを考えるな。普通の人間にはそんな業は背負えん。自分の守りたい人を、自分にとって大切な人を守る。そのために戦う。それだけでいいんだ。………どうだ六華、気分は落ち着いたか?」

 

押し倒した体勢から戻り、乱れた呼吸を落ち着かせ、決意を語る。

 

「……まだ、決心はつきません。死ぬのは怖いです。でも、七花にい、マシュ……皆のためなら、少しずつでも頑張っていきます!!」

 

未熟ながらも、その目には強い意志が宿っていた。

 

「よし、いい目だ!!…………その、私からも、六華と話したいことがあってだな……。」

 

「なんですか?」

 

「その……お前の兄としての七花は、どうだ?」

 

「……フフッ、とがめさん、本当に七花にいのこと好きですよね!」

 

「な、べ、別に、最初に好きだって言ってきたのは七花からだし!?私は七花のことなんてただの刀としか思ってないし!?勘違いしないでよね!?」

 

「アハハ、ツンデレは七花にいにしてあげて…。いや、七花にいのことだからそのまま受け取りそうですね。そういえば、高校時代にこんな話があって………。」

 

「なに!?どんな話だ!?」

 

「実は七花にいが…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………六華。気づいてやれなくてごめんな。お前にそんな負担をかけさせちゃってごめん。情けない兄ちゃんでごめんな。六華………。

 

「マスター。盗み聞きとは品がないな。」

 

「ッ!エミヤか…。」

 

「それで、六華嬢の心は晴れたのかね?………あのような少女にあまりにも重い業を背負わせるとは、まったく、世界は残酷なものだ。」

 

「……俺は気づいてやれなかった。六華が、あんなにも苦しんでいたのに、六華を守れなかった。俺は………。」

 

「………マスター、六華嬢の心の問題はキャスター……とがめによって解消された。君が悩む必要はないだろう。」

 

「だけど、俺が…」

 

「いい加減にしないか、マスター。なにが『俺が、俺が』だ。君は私やとがめ、六華のことをそんなに信頼していないのかね?だとしたら、君の心の器はその程度のものだったということだ。恋人に妹をとられて嫉妬したのか?いや、その逆か?」

 

「違う、俺は…!」

 

「何が違うというんだ、この愚か者が!!いいか、とがめも、六華も、このオレも、全員が『仲間』なんだ!!なんでも自分で背負い込むな!!

………はぁ、酷いブーメランが刺さった気がするが、まあいい。マスター、君だけが彼女を支えている訳ではない。君も声をかけてやればいい。君ととがめ、二人で彼女を支えてやればいいじゃないか。」

 

「………そうだな、俺の独りよがりだった。すまなかった、エミヤ。」

 

「なに、『守りたかった』という気持ちなら痛いほど分かるさ。君の守りたいものはまだあるんだ。手放すんじゃないぞ。」

 

「ああ………明日からも頼むぞ、エミヤ。」

 

「ふっ、了解した。別に明日に片をつけてしまっても構わんのだろう?」

 

「ハハッ、なんだそれ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月光が湖と木々を照らすなか、二人のマスターの心の闇は晴れた。守りたいもの、大切なものがある人間は、時に不可能すらも可能にするだろう。輝きは、鮮明に二人を照らしていた…………

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

聖邪語―セイジャガタリ―


お気に入り200件越えありがとうございます!!!!これからも頑張ります!!!





 

 

 

 

太陽の光が煌めき、木漏れ日が俺達を照らしていた。俺達はエミヤが作る朝食を食べ終え、邪ンヌの情報を集めるために近くの街へ向かっていた。

 

 

 

「……六華、その、具合は大丈夫か?なにかあったら、俺でもとがめでも、アルトリアやクーフーリンでもいいから言うんだぞ?」

 

「……ありがとう七花にい、私は大丈夫。昨日だって、とがめさんと七花にいのことたくさん話したんだからね!」

 

「ああ、六華なら大丈夫だ。七花の学生時代のことも聞いたぞ~?意外とプレイボーイだったのだな……。」

 

「ッ!六華!お前あのこと話したのか!?」

 

「とがめさんは七花にいの恋人なんでしょ?なら話したって問題ないでしょ~。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

「羨ましいのですか?」

 

「ひゃぁっ!?ア、アルトリアさん。驚かさないでください。」

 

「フフッ、ごめんなさい。マシュも交ざってくればいいではないですか。」

 

「え、いやでも、兄妹で仲良く話しているのに私が割り込むわけには……。」

 

「マシュ、あなたは少し引っ込み思案なところがありますが、もっと自分を出していった方がいいと思いますよ。さあ。」

 

マシュの背中を軽く押す。それに勇気付けられたのか、

 

「……はい!ありがとうございます、アルトリアさん!先輩、私もお話に交ぜてもらっていいですか?」

 

「マシュ?もちろんいいよ!ほら、マシュももっとこっちに来なよ!」

 

「はい、先輩!」

 

 

 

 

「……健気な娘だな、彼女は。」

 

「アーチャー……ランサーはどうしたのですか?」

 

「奴なら斥候に行っている。先の街を見てくると言って先に行ってしまったよ。」

 

「なるほど……。ところでアーチャー、あなたはマスターのことをどう思いますか?」

 

「六華のことかね?……彼女はいたって普通の人間だよ。この状況の重さに耐えきれず、死の恐怖に怯えるような、ね。しかし、芯は通っている。だから今、彼女は立って足を進めていられるのだろう。」

 

「……私も同意見です。しかし、彼女は危うい。何か切っ掛けがあれば容易く崩れ落ちしまいそうな……。」

 

「……大丈夫だろう。彼女には支えてくれる仲間がいるのだから。君だってその一人だろう、セイバー。」

 

「アーチャー……その通りですね。私はマスターのために、マスターの剣として敵を薙ぎ払うとしましょう。」

 

「それならマシュは六華の盾、だな。」

 

「違いない。あの騎士が認めた者だ……。強くなるでしょう、彼女は。」

 

 

 

 

 

 

 

「おいお前らやべぇぞ!!この先の街が燃えてやがる!!」

 

『七花くんたち、この先の街にサーヴァント反応だ!!数は……四騎、それになんだこの反応は!?サーヴァントを越える、超極大な魔力反応があるぞ!?なんだこれ!?』

 

「何だって!?」

 

「急ぐぞ、七花!私をおぶれ!」

 

「威厳も恥じらいもないな!皆、行くぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんだ、あれ……。」

 

俺の目の前には燃える街、崩れた家が広がっている。そして、街の中心にはサーヴァント数騎と、原因と思われる()()()()()()が存在していた。

 

『ワイバーンとは比較にならない、真性の竜だって!?あんなものに攻撃されたらひとたまりもないぞ!?早く撤退するんだ!!』

 

「待ってください!!あの竜の上に乗っているサーヴァント、あれは、もう一人の私です!」

 

竜の上に一つの黒い影、あれが邪ンヌか……。周りにもサーヴァントがいる。だが、

 

「………それじゃ、逃げるわけにはいかないな。皆、行けるか?」

 

「……怖いけど、戦える。私は大丈夫だよ、七花にい!」

 

「はい!私も、先輩を守ります!」

 

「よく言ったぜてめえら!あの竜は俺がやる。他のサーヴァントは頼んだぜ。ビビることはねえ!お前らは強い!あんな奴らに負けることはねえ!」

 

「ランサーの言う通りです。私達がサーヴァントを分断します。あなた達は自分の目の前の敵にのみ集中してください。」

 

「マスター、君は生身の人間、しかも替えの効かない人類最後のマスターだ。くれぐれも死ぬんじゃないぞ。」

 

「なに、私がサポートするのだ。死なせてたまるものか!……でも、怪我するんじゃないぞ。」

 

「みなさん………ありがとうございます!!私は、もう一人の私の真意を問います。どうか、あなた達に神のご加護を。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、狂ってしまいそう!やばいの、とってもおかしいの!ねえ見てジル、あの薄汚れた哀れな小娘を!あんなちっぽけな小娘に国を背負わせていたのよ!?滑稽すぎて……全て燃やしたくなるわ。そう思わない?……ってジルは連れてきていなかったなわね。」

 

竜の上に立ち、こちらを見下ろすもう一人のジャンヌダルク。その憎悪、その狂気に俺は身がすくんでしまった。

 

(どうしたら、ここまで何かを憎むことが出来るんだ…?)

 

「あなたは…あなたは誰なんですか!?どうしてこんなことを…!」

 

「私が誰かですって?とっくに気づいてるのでしょう、もう一人の私。私はジャンヌダルク。このフランスを滅ぼすために召喚されたサーヴァントですよ。」

 

「何故こんなことを…!」

 

「何故?決まってるじゃないですか。復讐ですよ。

私を裏切ったこの国に。私は裏切りを許さない。私は人間を許さない。私は人類を滅ぼすまで復讐する。それが私、『竜の魔女』ジャンヌダルクです。まあ、あなたには理解できないでしょう。死んでも成長できていない頑固な田舎娘には。」

 

(………分かるかもしれない。邪ンヌの気持ちが)

 

俺はとがめを喪った時、全てがどうでもよくなった。とがめのいない世界なんて、滅びればいいとも思った。だから、俺は死に場所を求めあの城に攻めこんだ。だが邪ンヌは違う。邪ンヌは自分がこの国に殺されたことを恨んでいる。そして、聖杯の力を使って本当に世界を滅ぼそうとしている。俺も一歩間違えれば、あんな風になっていたかもしれないのか……。

 

「あなたは……本当に『私』なのですか?」

 

「くどいですね。もうこれ以上の問答は無用です。焼き尽くしなさい、ファヴニール!!」

 

ファヴニールと呼ばれた竜が動く。少し体を動かしただけで風が吹き荒れ、大地が震える。ファヴニールは大きく息を吸い込み、まるでブレスを吐くような体勢をとる。

 

「この魔力量……宝具の真名解放級だぞ!!」

 

「みなさん下がってください!!ここは私が防ぎます!!」

 

「マシュさん、私も宝具を発動します!!でも、時間が……!」

 

ブレスが放たれる。ジャンヌの宝具を発動するには時間が足りない。

 

「仮想宝具展開……!『人理の礎(ロード・カルデアス)』!!!」

 

マシュの盾が邪竜の炎を遮る。しかし、『竜の魔女』の強化を受け増大したブレスが圧力を増す。

 

「くぅぅぅぅ!!!」

 

マシュの盾が破れる、そう思われた時

 

 

 

 

I am the born of my sword(体は剣で出来ている)

 

 

 

 

詠唱が戦場に響き渡る。

 

「とがめ、君の宝具を借りよう。」

 

「な、こんな状況で何を……。」

 

詠唱の元であるアーチャーは手をファヴニールに突き出し、言葉を紡ぐ。宝具の真名解放を。

 

「新たな力をお見せしよう。

『我が信念は鉄の如く』『賊刀・【鎧】』改め、『偽・護刀・【鉄】(くろがね)!!!

 

 

マシュの盾と炎の間に、鈍く光る盾が出現する。それは、『賊刀・【鎧】()()()()()だ。その盾は刀の面影を残しながら、五角盾の形状を取り邪竜の炎を完全に防ぐ。だが、それでも炎の勢いは止まらない。炎が盾を越え、七花達へと迫る。だが、

 

「……あとは任せたぞ、ルーラー。」

 

最後に阻むは聖女の護り。聖女の信仰が彼女に神の加護を与える、その護り、

 

「皆さんは私の後ろに!!『我が旗よ、我が同胞を守りたまえ!我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)!!!』

 

後ろに如何なる物も通さぬ、EXランクの守護宝具である。

 

 

 

 

 

 

「……ちっ、耐えきられたのね。まあいいわ。あなた達を殺す機会なんていくらでもあるもの。じゃあ…」

 

「おいおい……そちらさんだけやってこっちはなしってのはいただけねぇな?」

 

「何よ、あなたも燃やされた……ヒィ!?」

 

殺気。ファヴニールの炎により熱された空間はこの男の殺気により急速に冷えていった。

 

「次はこっちの番だろ?」

 

クーフーリンは槍を高く蹴りあげ、自分も槍に追い付く程に高く跳んだ。

 

「サ、サーヴァントども!!あいつを、あいつを止めなさい!!」

 

邪ンヌの命令に従い、後ろに控えていた三騎の英霊、狂気に堕ちた漆黒の騎士、血を求める仮面の伯爵婦人、狂化に逆らえない十字架の聖なる淑女はクーフーリンを妨害しようと動く。しかし、

 

「そうは」

 

「私達が」

 

「させねえよ!!」

 

アルトリアが魔力放出で黒い騎士を、エミヤが剣戟で仮面の婦人を、七花が宝具『双刀・【鎚】』により強化された鏡花水月、及び打撃混成接続技により十字架を持つ女性をそれぞれ吹き飛ばした。

 

「マシュ、あなたはマスターとジャンヌを守って、七花のところに行きなさい!」

 

「アルトリアさん、分かりました!ご武運を!先輩、ジャンヌさん、動けますか?」

 

「うん、行こう…七花にいのところへ。」

 

「私も………行けます………ギリギリですけど………。」

 

マシュが六華、ジャンヌを連れて離れた頃、邪魔出来なかったクーフーリンの宝具が解放される。

 

「師匠直伝だ。存分に喰らうがいい。『蹴り穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)!!!』

 

蹴りあげた槍を空中で更にオーバーヘッドキックをし、超高速で蹴り下ろされる死翔の朱槍。その数は十、百を越え、無数の雨となりて降り注がれる。

 

「キャアアアア!!!ファヴニール!!私を守りなさい!!早く!!」

 

邪ンヌの命令に応じ、甲殻の形を変え邪ンヌを覆い被せ、更に翼を重ね完全に守護する。しかし、その代償は大きく、ファヴニールには多くの槍が刺さり、抉り、身を貫かれた。

 

「よっと……。さすがは真性の竜、俺の槍を受けて死なないか。」

 

「ファヴニール……私のファヴニールが………。」

 

「ただの小娘が大層なこと考えるからだ。

………その心臓、貰い受ける。」

 

クーフーリンの魔力が高まり、殺気を向ける。殺される、そう思った邪ンヌは

 

「……ファヴニール!上昇しなさい!!撤退するのよ!!」

 

逃げることを選んだ。聖杯を持ち、英霊、邪竜をも従え、自分の思い通りになることしか知らなかった少女には、自分の命を脅かす目の前の男の存在が耐えきれなかった。

 

「逃がすわけねえだろ!!」

 

クーフーリンは槍を振るいファヴニールに追撃を加えようとするが、

 

「ッ!ちっ、あの小娘か……。」

 

目の前で黒い炎が立ち上り、動きを阻害される。その隙にファヴニールは遥か空中に上がり、逃げていった。

 

「………ハァ、不完全燃焼だ。やりたりねぇな……どっかの戦いにでも交じってくるか……。」

 

 

 

 

 

 

 





やっぱり戦闘描写書くの好き。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

戦場語―センジョウガタリ―

投稿遅くなってしまい申し訳ありませんでしたーーー!!!!リアル事情(テスト、ぜんそく)とネタが全く思い付かず時間がかかってしまいました……。ネタがない……ぐだぐだしてしまう……


 

 

 

 

 

バラバラになる戦場のなか、アルトリアは漆黒の騎士と、エミヤは血の伯爵婦人と、七花達は十字架の聖女と戦っていた。戦場の一辺では……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Arrrrrrrrrrrtherrrrrrrrrr!!!!」

 

「第四次聖杯戦争以来ですね、ランスロット卿……。」

 

戦場の一角、蒼き騎士王と黒き湖の騎士が剣を交える。ランスロットの相貌は既に晒され、手には黒い無毀なる湖光(アロンダイト)が握られている。狂っていても無窮の武練に衰えはなく、騎士王と互角の剣戟を交わしている。

 

「狂っていてもこの技量……流石はランスロット卿。ですが!!」

 

アルトリアは風王結界(インビジブル・エア)を解放、その風圧でランスロットを吹き飛ばす。

 

「行きますよ、ランスロット!!!」

 

魔力放出で飛ばしたランスロットに即座に追い付き真横に一閃。大きく魔力の乗った一撃だったがアロンダイトにより阻まれる。衝撃を十分に吸収し耐えたランスロットがお返しとばかりに斬撃を放つ。斬撃を全て回避し、距離をとる。

 

「Aaaaaaaa……」

 

「…………」

 

言葉を交わさずに対峙する二人。だがそこに乱入者が入る。

 

「一番強い奴の所にきたつもりだが……なるほど、技量では騎士王をも上回る湖の騎士か。」

 

「………ランサー、手を出したら私はあなたを斬ります。」

 

「おお恐い恐い。安心しろ、お前の部下の不始末を俺がやったりしねーよ。存分に死合いな。」

 

「……感謝します。ここで決着をつけましょう、ランスロット卿。」

 

「AaaaaaaaaaaaaaTherrrrrrrrrrrr!!!!!」

 

聖剣が光る。本来極光を放ち相手を屠る対軍宝具としての魔力を放出せず、刀身に凝縮させる。

 

魔力が蠢く。アロンダイトから黒い霧状の魔力が放出されステータスが上昇する。その力、速度、もはや人には捉えられず。

 

斬りかかるは同時。袈裟斬りが交差し、衝撃が辺りの瓦礫を吹き飛ばす。一瞬の膠着、それは続かずに勝負は決まった。

 

 

 

「………アーサー王、私は………」

 

「よい、何も言うな。私達は既に終わっている関係だ。安らかに逝くがいい、ランスロット卿。」

 

 

 

アロンダイトを折り、ランスロットの身体には斜めに光の跡が残っていた。聖剣の光に身体は耐えきれず、ランスロットは消滅していった。

 

 

「………いい死合いだったぜ。」

 

「………マスターの元へ向かいましょう。」

 

 

 

言葉を交わすことなく、二人はマスターの元へ急ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「アハハハハ!!男の血なんてどうでもいいのよ。早くあの聖女の血を飲ませない!!」

 

「フッ!!」

 

戦場の一角、紅い弓兵と女吸血鬼が戦闘を行っていた。その戦闘スタイルは両方とも異端に尽きた。アーチャーでありながら双剣を用い白兵戦で戦うエミヤ、アサシンでありながら拷問器具や謎光弾(拷問したいな~という思いを込めてエネルギー塊として放つ『拷問弾』というらしい)を使って攻撃するカーミラ。互いに異端な戦いとなったが勝敗は最初から決していた。

 

 

「痛ッ!何で…何で私の攻撃は当たらないのよ!?」

 

「血を吸う、アイアンメイデン……なるほど、貴様はエリザベート・バートリー……いや、こう言おうか。女吸血鬼カーミラ。」

 

 

錬鉄の守護者として死後も戦い続けた男と、人々の思い描く怪物像を押し付けられた女とでは戦闘経験が違いすぎた。その上、

 

「何よその剣!!普通の剣じゃないでしょ!!」

 

エミヤが扱う双剣『干将・莫耶』。その特性は『魔性』に対しての特効であり、吸血鬼であるカーミラにはその傷の一つ一つが呪いのように痛んでいた。

 

「お察しの通り、この剣は宝具だ。まあ偽物だが、限りなく本物に近い。その特性も投影されている。だから……こんなことも可能というわけだ!!」

 

エミヤが両手の剣をカーミラを狙い放物線状に投げる。その剣はブーメランのようにカーミラを狙う。

 

「そんな見え見えの攻撃、当たるわけないでしょ!!」

 

しかし、アイアンメイデンにより弾かれ、あらぬ方向に飛んでいく。

 

 

ーーー鶴翼、欠落ヲ不ラズ(しんぎ むけつにしてばんじゃく)

 

 

 

その隙にエミヤはもう一対の干将・莫耶を投影し、先程と同じようにカーミラを狙い投げる。

 

 

ーーー心技、泰山ニ至リ(ちから やまをぬき)

 

 

「だから、そんなもん当たらないのよ!!」

 

またも弾かれ、あらぬ方向に飛んでいく。

 

(何を狙っているの……?嫌な予感がするわ……。)

 

 

ーーー心技、黄河ヲ渡ル(つるぎ みずをわかつ)

 

 

(今あいつはチマチマ剣を投げてるだけ、私から攻めていくわ!)

 

エミヤへと向かって急接近するカーミラ。アイアンメイデンを振るい攻撃体勢に入る。が、

 

 

ーーー唯名、別天ニ納メ(せいめい りきゅうにとどき)

 

 

三度投影された干将・莫耶の剣戟により吹き飛ばされる。

 

「キャアアアア!!!」

 

吹き飛ばされたのは、先程まで立っていた位置。エミヤは急接近し、投影した干将・莫耶に過度な魔力を送りオーバーエッジ化させる。

 

(逃げなきゃ!!)

 

正面からくるエミヤに対し回避を試みるカーミラ。しかし、

 

「え…!?」

 

先程弾き飛ばした干将・莫耶がまるで共鳴するかのようにカーミラの元へ迫っていた。干将・莫耶のもう一つの特性、互いを引き寄せあう夫婦剣としての力によりエミヤは全方向からの攻撃を可能とした。

 

 

ーーー両雄、共ニ命ヲ別ツ(われら ともにてんをいだかず)

 

 

鶴翼三連(かくよくさんれん)!!!

 

 

全方向からの斬撃により、カーミラの霊核を砕き消滅させた。

 

「終わったか…。早くマスターの元へ向かわねばな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦場の最後の一角、七花対十字架の聖女、マルタでは

 

「おらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「どりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

殴り合いがおこなわれていた。来いよ人類最後のマスター!!十字架なんて捨ててやるからかかってこい!!みたいな感じだった。

 

『こ、これがあの聖女マルタだって!?祈りでタラスクを鎮めたっていう!?拳で沈めたの間違いだろ!?はっ、まさかこれが邪ンヌの狂化の力なのか!!なんて強力なんだ!!』

 

「頑張れ頑張れし・ち・か!負けるな負けるなし・ち・か!」

 

「うおおおお!!!虚刀流最終奥義【七花八裂・改】!!!」

 

「鉄・拳・聖・裁!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…あんた……強いな………。」

 

「はぁ…はぁ…あんたも、生身のマスターのくせに、なかなかやるわね……。」

 

七花とマルタは、橋の下で殴り合い、友情を深めた不良達のように、大の字になって倒れていた。聖女とは一体。

 

「はあ……あのくそ女の呪いさえなければ、あんた達に手を貸してあげるんだけど……。早く私にとどめを刺しなさい。」

 

「マルタ……。」

 

「いいのよ……私は人類を滅ぼした奴らに加担したの。早く私を倒しなさい。」

 

夕陽が二人を照らしている(気がする)。青春の一幕にありそうなシーンだった。が、ここにいるのは人類最後のマスターの一人とそのサーヴァント。

 

「その~、呪いとかをどうにかするなら、多分私の宝具でどうにかなるぞ?」

 

「「マジで!!??」」

 

「本当かとがめ!?マルタを救う手段があるのか!?」

 

「軽く言ってるけど対魔力Aの私でもどうにもできないのよ!?方法はあるの!?」

 

「あることはある。まあその……あんまり長く使えないから早めに終わらせるぞ。」

 

そう言って取り出したのは……

 

『「【王刀・鋸】じゃねーか!!!」』

 

『それって所長のために使ってる刀だよね!?え、何で出してるの!?』

 

「とがめ!?それ取り出してよかったのか!?」

 

「う……うるさーい!!少しの間だし大丈夫だ!!………多分。【誠刀・銓】だけでも精神保護はバッチリだし……。とにかく、この刀でそこの女を斬れば、呪いやなんやらは解除される!!いくぞ!!」

 

「………刀っていうか、木刀よねそれ。私もよく持ってたわ……。」

 

「問答無用!!ちぇりおーー!!」

 

とがめが【王刀・鋸】を振り下ろす。珍しく転ぶこともなく、けっこうな勢いのままその刀はマルタの頭に直撃した。

 

「あいったーー!!!痛いじゃない!!そんなに強くする必要あったの!?」

 

「………すまない。ちょっと私怨が入ってしまった。だが、これで呪いは晴れたはずだ!!調子はどうだ?」

 

「え……あ、確かに、狂化も解除されてるし、本当に……?」

 

「ならいいではないか。…………オルガマリーには悪いことしたな……大丈夫かな……しまいしまいっと。」

 

【王刀・鋸】を消し、マルタの状態を確認する。

 

「……本当に、狂化とあの女との契約も解除されてます。本当にありがとうございます。」

 

「な、なんだ。さっきとは随分態度が違うな。」

 

「あれはあの女の狂化によるものです。本来の私は聖女として慎ましく、穏やかな性格をしているのです。」

 

『それ自分で言っちゃうんだ……。まあ、さっきまでの君が聖女マルタだとは思えないし、そういうことなのかもね。』

 

「……俺はさっきまでのマルタの方が良かったな。」

 

「………七花?」

 

「違う。とがめ、俺はお前一筋だ。だから目のハイライトを消さないでくれ。」

 

「フフフッ、これからは私もあなた方の旅に付いていきたいと思います。そしてあの女に制裁を与えて地獄まで送ってあげるわ……。」

 

『やっぱり狂化がまだ解けてないぞ!?邪ンヌの呪いはここまで強いのか!?』

 

「何か言ったかしら?」

 

『ナンデモナイデス』

 

「とりあえず、マルタが仲間になってくれるってんなら歓迎だ。戦力は一つでも多い方がいい。」

 

「戦力で思い出しましたが……あの女が従えていたファヴニール、あの竜に加え、まだ何人ものサーヴァントがあちらには控えています。こちらもサーヴァントを揃え、戦力を増やしていくべきでしょう。」

 

「一理あるな。しかし、サーヴァントはどうするのだ?あちらと同じく、召喚するしかないんじゃないか?」

 

「いえ、この特異点では聖杯……まあ偽物ですが、聖杯によって抑止力と成りうるはぐれサーヴァントが呼ばれています。私の知る限りでもファヴニールを倒した英雄、ジークフリートがリヨンの街にいます。」

 

『ジークフリート!?伝説に名高い竜殺しじゃないか!?そうか、ファヴニールのカウンター・サーヴァントとして呼ばれているのか……。彼がいればこれからの戦いがもっと楽になるぞ!!』

 

「なるほど、じゃあまずはそのジークフリートってやつを探せばいいのか。」

 

「そうですね。あなた方のお仲間も来たようですし、一段落してら出発しましょう。」

 

「七花にい~~!大丈夫~!?」

 

「七花さん!大丈夫ですか!?そこにいるのは……先程のサーヴァント!?離れて下さい、七花さん!!」

 

「あー…俺は大丈夫だから、六華、マシュ。彼女はマルタ。さっきまで敵だったが、とがめのお陰で仲間になった。」

 

「初めまして、私の名はマルタ。ただのマルタです。私もあの女には思うところがあり、あなた方のお力添えをしたいと思いまして、微弱ながらお仕えしたいと思います。マスター、手を。」

 

「……あ、マスターって俺のことか。はいはい。」

 

マルタと手を握り、光が放たれる。自分の中に何か他のものとのラインが入ったような感じだ。異物感はなく、暖かいものが流れてくる。

 

「これで私とマスターとのラインが刻まれました。仮のマスターですが、よろしくお願いします、七花。」

 

「おう、こちらこそよろしくな。」

 

「えっ、聖女マルタ殿ですか!?」

 

「えっ?」

 

そこにいたのは六華とマシュより少し遅れて到着した救国の聖女、ジャンヌ・ダルクだった。

 

「あの凶暴極まりないタラスクを祈りのみで鎮めたというあの!?うわ~~!!尊敬しています!!あの、私は、ジャンヌ・ダルクと言います!!あの、よろしければ握手を…。」

 

「え、ええ……いいわよ。」

 

「本当ですか!?きゃーーー!!!」

 

この時、全員の心が一つになっていた。すなわち、

 

『「「「「ミーハーだ…………」」」」』

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

王妃語―オウヒガタリ―

時間が明いてしまい誠に申し訳ありませんでしたぁぁぁ!!!リアルで危険物の試験勉強してて書く暇ありませんでした!!終わったので少しは更新ペース上がると思います。頑張ります!!




アルトリア、クーフーリン、エミヤが七花達と合流し、マルタの助言通り一行は竜殺しを探しに向かった。

 

 

「ところでリヨンの街ってどっちにあるんだ?」

 

「七花さん、そういうのはドクターの仕事ですね。ドクター!」

 

『はいはい、聞こえてるよ。リヨンの街……らしき場所は今の場所から北側に三キロほど行ったところだね。』

 

「三キロか……とがめ、歩けるか?」

 

「あまり馬鹿にするなよ七花。私は英霊となって体力が増えているのだ!三キロなどちょちょいのちょいだ!」

 

(……三途神社でも同じことを言っていた気が……)

 

 

 

 

――10分後――

 

 

 

 

「七花~!疲れた~!おんぶして~!!」

 

「はいはい……。やっぱりこうなるんじゃないか……。」

 

「違う!普通の道だったらもっと歩けるのだ!この道は凸凹してたり坂道が多かったりと体力を削るトラップが多いからだ!!」

 

「トラップっていうか山道だからな……。」

 

しっかりとおんぶをする七花。

 

「ふふふ、七花の背中…」

 

「マスター、君は疲れているだろうしここは私が……」

 

「「…………」」

 

「悪かった!!私が悪かった!!だからお前を殺すと言わんばかりの目で私を見るのは止めたまえ!!」

 

「アーチャー、あれはあなたが悪いですよ。」

 

「そうだぜ。仲睦まじい奴らの仲を引き裂こうなんてサーヴァントの風上にも置けねえな。」

 

「エミヤさん……空気よんでください。」

 

「エミヤさん最低です。」

 

「私はそこまで言われないといけないことをやったのか!?」

 

……とがめが俺の背中にいる。俺のそばにいる。それだけで力が出てくるのは何でだろうな……

 

『―皆!話の途中だがワイバーンだ!!大量ワイバーンが君たちのところに向かっている!』

 

ワイバーンぶっ殺す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おらぁぁぁぁ!!!!」

 

虚刀流奥義を使い次々とワイバーンを倒していく七花。……その体からは赤々しいオーラが溢れている、気がする。

 

「……な、なぁ……七花の体から、なんかオーラが出てないか?私の強化ってそんなん出ないんだけど……」

 

「もぉ~とがめさんったら、分かってるくせに~♪」

 

「へ……?」

 

「マスター……いや、若いとはいいことだと思うがね。」

 

「いやあ若いってのはいいねえ!惚れた女のために戦う、これほど分かりやすいもんもねえだろ!」

 

「ふふっ…シロウも昔は張り切ってましたもんね。」

 

「セ、セイバー!」

 

若い二人を構いながらワイバーンを淡々と処理していく。ちなみにこの時は七花が一番多く倒していた。

 

「よし、これで全部だな。」

 

「七花……その、大丈夫?変なたがとか外れてない?殺意の波動みたいなの出てたよ?」

 

「とがめ、俺は普通だよ。……そう、邪魔をしたワイバーンを皆殺しにするくらい普通だよ。

 

「へっ?」

 

「七花にいはとがめさんとの一時を邪魔されたから怒ってるだけだよ。……まあ、あそこまで怒るとは思わなかったけど……。」

 

「へっ?そ、そうなの?」

 

「……六華、口が軽いのはこの口か~?」

 

「痛い痛い!頬をひっぱらにゃいで!!」

 

「……ふふっ、そっか……七花。」

 

「ん?」

 

「ありがとう♪」

 

ズキューン!!

 

銃声の音ともに七花の膝が倒れる。もちろん本物の銃声ではなく七花の心の中でのみ発砲された音である。とがめの満面の笑みの前では一時最強を誇る剣士も形無しであった。

 

「七花!?大丈夫か!?七花!!」

 

「……とがめさん、わざとじゃないの?」

 

『―皆、お疲れ様。イチャイチャしてるところ悪いんだけど2騎のサーヴァント反応が君達に近づいている。速度を考えてライダーがいるだろう。』

 

「サーヴァントがくるのか?それってやばいんじゃ……」

 

『いや、邪ンヌだったらこんな少数ではなくもっと多くのサーヴァントを引き連れて来るだろう。それにあの戦闘からそれほど日は経ってない。でも斥候の可能性とかもあるから気を付けてね!』

 

「……ロマン、お前、危機感薄くない?」

 

『えっ……ほ、ほら、もうすぐサーヴァントが来るよ!?戦闘準備に入りなよ!!』

 

「……あいつ、切りやがった……。で、本当に来てるのか?」

 

「ああ、来てるぜ。だがちと妙だ……殺気も何も感じねえんだよな……。」

 

 

山道の真っ正面、獣道のはずだが前方から何かが走ってくる音がする。

 

「全員警戒しろよ!」

 

歴戦のサーヴァント達は何が来ようと対処出来るよう身構える。マシュも六華の前に立ち、六華を守る意思を見せる。そして、前から馬の蹄の音ともに来たのは………

 

「ヴィヴ・ラ・フランス!!」

 

満面の笑みを浮かべ小ぶりな馬車の窓から身をのりだしこちらへと手を振る女性だった。

 

「あなた方がさっきの大きな竜と戦っていた方々よね?すっごいわ!とても感動したわ!!」

 

「「「「「「…………」」」」」」

 

「あら?あなた方どうしたの?」

 

「マリー、素性の分からないサーヴァントがいきなりこんな風に出てくればそりゃそうなるよ。」

 

マリーと呼ばれた女性とともに現れたのは細い男性。どうやら、敵ではなさそうだが、

 

「いや、誰だよ!?」

 

いち早く復活を遂げた七花が叫ぶ。他の人(サーヴァント)達も心のなかで思っていた。

 

「そう言えば自己紹介をしていなかったわね。私はマリー・アントワネット。フランス王妃と言えば分かるかしら?」

 

「あー、僕はヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。知ってるだろ?」

 

フランスの王妃に、世界屈指の音楽家。どちらも教科書に載っているが……

 

「……なんか、今までで一番馴染みのある偉人に会った気がする……。」

 

「七花にい、私も……。」

 

「なっ!私は!?アーサー王伝説は馴染みがないと!?」

 

「ケルト神話に馴染みがねえってか!?」

 

「「うん。」」

 

「「あぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」」

 

すまん、二人とも。日本生まれの日本育ちにはアーサー王はまだしもケルト神話は分からないし、アーサー王が女だということも知らない。アーサー王が女だなんて知っててたまるか。

 

「あら?そこにいるのは、もしかしてジャンヌ・ダルク?」

 

「あ、は、はい!マリー王妃に会えて恐悦至極……」

 

「やだ、そんな堅苦しくしなくていいのよ。私は今はただのマリー。あなた方も私のことはマリーって呼んで?」

 

「………で、お前らはここになにしに来た?マスターはどこだ?サーヴァントならいるだろ。」

 

「ええ、至極もっともなお言葉ね、青い偉丈夫なお方。私達はフランスを救うために戦おうと思ってるの!でもほら、私達って弱いでしょ?だから、戦っている人たちと合流して力になろうと思ったのよ!で、マスターなんだけど、私達にも分からないわ!!」

 

「……まぁ、フランスの王妃と音楽家が強いとは思ってないけどさ。」

 

「もちろん僕は戦えないぜ?何故かキャスターで召喚されたが、僕に出来ることと言えば音を奏でるくらいさ。」

 

……本当になんで来たんだ。

 

「マスターが分からない?どう言うことだ。」

 

「私が召喚されたときは、誰もいなかったのよ。いつの間にかこの地に召喚されたって感じで。それでまあ、私はフラフラ~っと旅をして、アマデウスと出会って、色々な町で話を聞いて気になったことがあるのよ。」

 

「気になったこと?」

 

「今聖杯はあなたじゃないジャンヌ・ダルクが持っているんでしょう?じゃあこの聖杯戦争はもう終わっているじゃない。でも、私達は呼ばれた。」

 

「……そうか、君達が抑止力(カウンター・サーヴァント)か!」

 

守護者の英霊、エミヤが言う。

 

「先程マルタが言っていたようにこの特異点では聖杯自らがカウンター・サーヴァントを呼んでいるはずだ。我々が今探しに行くジークフリートもあの邪竜ファヴニールのカウンター・サーヴァントとして呼ばれているようにな。」

 

「なるほど……じゃあ彼女達以外にも仲間になってくれるサーヴァントがいるかもしれないってことか……。」

 

「……召喚されたサーヴァントの性格にもよると思うが、そうだな。」

 

「あら?あなた達は今どこかを目指していて?」

 

「はい、マリー……王妃。私達は…」

 

「もう、ダメよジャンヌ!私のことはマリーって呼んで!私もあなたのことをジャンヌと呼ぶから!」

 

「え、ええっ!?…じゃあ、あの、マリー……。」

 

そう呼んだ時、マリーの顔がこれ以上にないほど満面の笑みを浮かべる。美しい花のようだが、傍らのアマデウスは何故か苦労そうな顔をしていた。

 

「マリー!!とてもいい響きだわ!!ええジャンヌ!私達は何処を目指しているのかしら?」

 

「私達は【竜殺し】ジークフリートがいると言われるリヨンに向かっています。そして途中でマリー達と合流したわけです。」

 

「まぁ!だったら急いで向かわなきゃいけないわね!」

 

「はい、ですが、私達サーヴァントはともかく、マスターは人間ですのであまりスピードは出せず……。」

 

「それなら私の宝具を使いましょう!」

 

「でも、マリーの宝具の馬車では小さい気が……」

 

「大丈夫大丈夫!!さっ、マスターや非戦闘員の方々は入って?」

 

「えーっと……マシュ、どうする?」

 

「ここはお言葉に甘えるべきかと。先輩は一般人ですからそちらの方が速いですし。」

 

「とがめも入っとけよ。疲れるだろ?」

 

「……七花はどうするのだ?」

 

「あ~……俺も疲れたかもな。中で休むよ。」

 

「そ、それなら私も入るぞ!」

 

とがめが一番に馬車の中に入る。見た目はとても6人も入れそうにないが、

 

「うわ広っ!!!」

 

とがめの叫びが馬車の中に響くくらいには広かった。

 

「これが私の宝具『百合の王冠に栄光あれ(ギロチンブレイカー)』よ。中の大きさは自由自在なのよ!」

 

「さすがサーヴァント……なんでもありだな。」

 

七花も中に入る。位置はもちろんとがめの隣だ。

 

「他の皆は?」

 

「俺は走った方が速えし、外の方がいいからな。」

 

「私も外の警備ということで、外にいますね。」

 

「……だそうだ。私も外の警備にまわろう。疲れを癒すといい。」

 

六華とマシュとジャンヌ、アマデウスとマリーも入り、それ以外のメンバーは外を走って行くことになった。

 

……俺も、強くならなくちゃ……

 

七花も外に出て走ろうかと思ったが

 

「~♪」

 

……隣でこんなに嬉しそうにしているとがめがいるんじゃ動けないな。

 

「リヨンの町はすぐだと思うけど、少しの間私とお話しましょう!ジャンヌ!あなたのお話とか、私とーっても聞きたいわ!」

 

「分かりました!分かりましたから!」

 

 

戦乱多き特異点、その中で数少ない癒しの時間を過ごす七花達だった。

 

 




ぐだぐだイベント来ますね。魔神セイバーは本当に好きなサーヴァントなので本気(課金)出します。坂本竜馬の宝具ってやっぱり自爆宝具なんですかね?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

音楽語―オンガクガタリ―



ぐだぐだイベント来ましたねー。皆さん調子はどうでしょうか?(ストーリーとりあえず終わった)ぐだぐだしてたのって本能寺だけですよねほんと。

自分帝都聖杯奇譚が大好きだったので今回はちょっとハッスルしましたね。鬼武蔵出せや。おじいちゃん出せや。魔神セイ……ゲフンゲフン、沖田オルタさんも大好きです!!!(宝具5)




 

リヨンの街、崩れた街を彷徨う二人の男。

 

「感じる……感じるぞ………あの男が近づいてくるのを………。」

 

「……あの男と言うのは、かの天才ですか?『灰色の男』」

 

「おぉぉぉぉ………アマデウス……アマデウスゥゥゥゥゥゥ!!!!」

 

獣の慟哭が響く。無辜の怪物として歪められた男は、仮初めの復讐者として、今は亡き■■の前に立つ。その邂逅に、彼は何を見るか―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いたわね!」

 

マリーの宝具、『百合の王冠に栄光あれ(ギロチンブレイカー)』に乗ってリヨンの街に辿り着いた七花達。アルトリアにクーフーリン、エミヤ、マルタは先に付き入り口て待っていた。

 

「ここにジークフリートってやつがいるのか?しかしここは……。」

 

辿り着いたリヨンの街、そこは家屋は崩れ、瓦礫の山が多く積まれており、壊滅されていた。

 

「……これも邪ンヌ達がやったのか……。」

 

「七花……。」

 

「……七花にい!!落ち込んでても何も始まらないよ!皆も!今はジークフリートさんを探して、邪ンヌのところに行って、聖杯を取り戻すんでしょ!!」

 

「六華……ごめんな、兄ちゃん暗くなってたな。今は仲間を一人でも増やして、この特異点をなおさないといけないもんな!」

 

「うんうん、仲良きことは美しきかな。未来ある若者達は眩しくていいね。何か一曲弾こうか?」

 

「うわっ、急に出てこられるとびっくりするだろ、モーツァルト。」

 

「やだなぁ、アマデウスでいいよ。僕ほどの男が一曲弾こうって言ってるんだよ?歓喜して僕に礼を尽くすのが筋というものだろう?」

 

………まあ、あのモーツァルト…アマデウスの曲が聞けるのは凄いと思うが。

 

「今はジークフリートを探すんだろ。曲なら後でな。」

 

「つれないねえ、国王でも頭を下げるというのに。」

 

「アマデウスさん!私は聞いてみたいので、後で演奏をお願いします!」

 

「おや、マシュは聞いてみたいかい。……君みたいな真っ白な楽譜を僕みたいなクズが作詞する一部になると思うと、いやぁ人間ってのは死後も面白いものだね!!」

 

「あら、アマデウスの人間性はクズでも音楽性は天才だから、私にもピアノを聞かせてね?」

 

「マリー、君ってやつは変わらないな!」

 

 

―――空気が変わる。

 

 

「……!マシュ!!」

 

「はい!」

 

ガキィィン!!

 

マシュが構えた盾に強力な衝撃が走る。攻撃してきた黒い男は反転、距離をとり七花達と相対する。

 

「気配を感じなかった……六華はよく気付けたな。」

 

「なんか嫌な予感がしたの。たまたま当たって良かったけど…。」

 

「それで、あれは一体……。」

 

黒い男は七花達全員を一瞥し、一人の男に目が止まる。

 

「ようやく……ようやくだ………会いたかったぞ、アマデウスゥゥ………。」

 

「………君はまさか………。」

 

「アマデウス、知り合いなのか?」

 

「……ああ、僕の古い顔馴染みさ。皆、悪いがここは僕に任せてもらえるかな?」

 

戦闘系サーヴァントは皆頷き、後ろに下がる。

 

「アマデウスゥゥ……。」

 

「やぁ、久しぶりだね。『サリエリ』」

 

「サリエリ……まさかアントニオ・サリエリ!?」

 

「知っているのか、マシュ!?」

 

「はい、アントニオ・サリエリとはアマデウスさんの親友とも言われた音楽家です。それが何故あんなにも禍禍しい姿に……。」

 

「サリエリ、今日はどうしたんだい?一応僕は世界を救う旅をしているんだけど。」

 

「私の目的は一つ……アマデウス、お前を殺すことだ…!」

 

黒い男……サリエリの姿が変わる。先程の鎧姿がより禍禍しく、より凶悪な獣のような姿になっていく。

 

「そうか…!サリエリは『アマデウスを殺した男』としても有名です。実際に殺したかは不明だったんですが、まことしやかな噂が流れ、サーヴァントとなった際にその噂に引っ張られ『無辜の怪物』のスキルを得たと思われます。」

 

「……何言ってるのか全然分からん。」

 

「とにかく!あれはアマデウスさんを殺すという一面で召喚されたサリエリです!アマデウスさんは戦えないんだから隠れてください!」

 

「隠れる?何で?僕は昔の友人と話をするだけじゃないか。」

 

「相手は話が出来ないじゃないですかー!」

 

「おぉぉ……殺す……コロシテやるぞアマデウス……我が名はサリエリ……サリエリの、はずだ……。」

 

「大丈夫だよ。ほら………」

 

「ウオォォォォ!!!!」

 

サリエリが動き、アマデウスの体へと剣が吸い込まれていく。それに対してアマデウスは何しない。反撃も、防御をとろうとすらしない。ただ首もとを掻いてるだけだ。

 

「アマデウスさん!!」

 

遂に首が跳ぶ。その直前で、サリエリの剣が止まる。

 

「ゥゥゥゥ………。」

 

「な?サリエリは僕のことが大好きだからなー、僕を殺せるわけないんだよ。」

 

サリエリの鎧が消え、素顔が晒される。その顔は殺意に歪んだ顔ではなく、不快と羞恥により赤らめた顔だった。

 

「違う!貴様が好きなのではない、貴様が作る曲が好きなのだ!!貴様の指を切ったらもう演奏できないではないか!!」

 

「うわ、急に饒舌になったぞあいつ。」

 

「ぐぅぅ……そういうところだぞアマデウス!そういうところが嫌いなんだ!!」

 

「だったら僕を殺せばいいじゃないか。」

 

「ぐぅぅ……そうだ、殺す、殺してやるぞ…!!」

 

「なんか情緒不安定なやつだな。」

 

「いや、あれは……可愛そうな人ね。」

 

聖女マルタが哀れんだ顔をする。その目はどこか悲しそうだった。

 

「マルタ?どういうことだ?」

 

「彼のクラスはアヴェンジャー…復讐者のクラスよ。けど、話を聞く限り彼はそんな男じゃない。人のイメージを押し付けられアヴェンジャーというクラスを押し付けられたのね。殺したくない人を殺す衝動にずっと身を焼かれている…残酷なことね。」

 

「マルタ……あんた、本当に聖女だったんだな。」

 

「本当にって何よ本当にって!」

 

「ああ、そういう感じの方がマルタらしい。」

 

「……ふん。」

 

「殺す…!殺してやるぞ…!」

 

またも黒い鎧を装着し戦闘体勢に入るサリエリ。憎悪が激しく燃え上がり殺気が目で見えるようだが、

 

「まあまあ、これから一曲弾こうと思ってるんだけど聞いてく?」

 

「聞こうか。」

 

すぐさま鎮圧され装備を解いてしまう。そういうところだぞサリエリ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すげえな。やっぱ教科書に載るだけあるな。」

 

「感動です!!音楽は普段嗜みませんが、とても素晴らしい演奏でした!!」

 

アマデウスの演奏は神がかっていた。全員がその演奏に聞き入っており、エミヤやアルトリアは警戒の任すら忘れているようだった。

 

「……さすがアマデウスか、やはり天才とは憎いものだ。私の努力の粋をすぐに越えてしまう。」

 

「いやいや、天才の僕に努力だけであそこまでこれる君は凄いと思うぜ?何より、君は教えるの上手いじゃん。僕の子供も世話になったしね。」

 

「……昔の話だ。」

 

「あ、それはそうと君って邪ンヌ側の人間だろ?演奏代として邪ンヌの情報おいてってよ。」

 

「いやいや、アマデウス。それはいくらなんでも無理だろ。昔の友人とは言え、そもそもお前を殺そうとしてきたやつだぞ?」

 

「いいだろう。神の子の演奏代と思えば安いものだ。」

 

「いいのかよぉ!?」

 

綽々とアマデウスの言葉を受け入れるサリエリに突っ込む七花。復讐者とは何だったのか。

 

「といっても知ってることなどほとんどないが……そうだな、あの小娘は子供だ。生まれてまもない、未熟なガキだ。」

 

「……それはどういうことですか?」

 

ずっと黙っていたジャンヌがサリエリに問う。

 

「分からんよ。私があの小娘を見て感じたことだ。あとは、真に注意すべきはあの青髭だ。やつが……ぐぅぅ!?」

 

「サリエリ!?」

 

サリエリが苦悶の声をあげる。サリエリの胸からは巨大な爪のようなものが出ていた。

 

「いけませんねサリエリ、それ以上話しては。」

 

「ぐぅ…ファントム…!」

 

「ファントム……オペラ座の怪人、ファントム・ジ・オペラ!?何故サリエリさんを!?」

 

「サリエリがかの天才を殺すと言うので見届けに来ましたが、何故か仲良くなっているので裏切ったと判断したので。」

 

本当はもっと早くに殺そうとしたがアマデウスの演奏を聞いて放心していたため少し遅れてしまった。

 

「それでは目的も達成し、この量のサーヴァントを相手取るのは無理ですので、失礼。」

 

サリエリから手を離すとすぐさま逃げ出すファントム。敏捷Aは伊達ではなくどんどん差が開いていく。

 

「てめえ、待ちやがれ!」

 

「待って、クーフーリン!あなた、魔術が使えるでしょ!?サリエリさんを助けられないの!?」

 

「……くそっ、覚えてろよあの野郎。」

 

クーフーリンはルーン魔術でサリエリを治そうとする。だが、

 

「……マスター、こいつはもう駄目だ。霊核がやられちまってる。俺のルーンでは完全には治りきらねえ。よくて時間稼ぎだ。」

 

「……そっか……。」

 

「……サリエリ。」

 

「…はっ、なんだアマデウス。無様に殺された私を笑うか?」

 

アマデウスは空間からピアノを生み出し、椅子にかける。

 

「……何か、聞きたい曲はあるか?」

 

「……レクイエムを。」

 

「ははっ、意地悪だなぁ、君は。」

 

「……うるさい。お前が早死にしたのが悪い。」

 

サリエリの要望に答え、アマデウスの指が動く。死を悼む曲がサリエリを運ぶ。

 

「……何故完成されている。」

 

「ははっ、まあ僕は天才だからね?」

 

「……そういうところだぞ、アマデウス……。」

 

レクイエムに送られ、サリエリは消えた。死を悼む中、アマデウスだけは揚々とした様子でいた。

 

「じゃあ、どこぞの竜殺しを探しに行こうか。」

 

「……悲しくないのか?」

 

七花は問う。別れというものを嫌う七花は、友であるはずの男が死んだにも関わらず、揚々と振る舞う男に問わずにはいられなかった。

 

「んー……まあ、僕は周りのやつらとは感性が違うって分かってるから答えに困るけど……悲しくないわけじゃない。」

 

「なら、どうして…」

 

「また、どこかで会える気がするからさ。また会ったときは二人で演奏会でもするさ。」

 

憎たらしい笑顔で彼はそう言った。また会えるということを確信している、そういう表情だった。

 

「はぁ……サリエリさん、あんた苦労してたんだな……。」

 

「どういう意味だいそれ。」

 

「何でもねえよ、さっさとさっきのやつぶっ飛ばして、ジークフリート見つけて、邪ンヌを倒すぞ。」

 

「…ああ、そうだね。まあ僕は戦えないから、頑張ってね~!」

 

「そういうところだな、アマデウス!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……カルデアのサーヴァント、危険ですね。これ以上の戦力を保持させるわけにはいきませんね。やはり、傷ついた竜殺しにとどめを指すのが先ですね……。」

 

逃げ切ったファントムはもともとの命令の竜殺しの殺害を実行しようとする。だが、

 

「いくらジークフリートと言えど呪いにより弱体化した状態なら私でも殺せるというもの……。」

 

「はて、それはどうかな?」

 

「!誰だ!」

 

確かに誰もいなかったはずの道に、紺色の着物を来た男が立っている。

 

「貴様が言っていたジークフリートとはあの怪我をしていた男のことだろう?あの男は貴様では倒せんよ。信念が違う。」

 

「……貴様は何者だ。」

 

「外道に言う名はない……。早々にこの世から去るがいい。」

 

男は刀を抜き構える。その刀は普通の刀ではなく、三尺はある長刀だった。

 

「竜殺しの前の前座といこう。その程度の霊基で私に勝とうなどとはおこがましい。消えるがいい!!」

 

ファントムが消える。敏捷Aの速さにより男の正面から消え背後から攻撃をしかける。しかし、

 

「フッ!」

 

心眼によりその攻撃は弾かれる。

 

「なんだとっ!?」

 

「なかなかの速さ、次はこちらの番かな?」

 

そう言うと次は男が消えた。敏捷A+の男はファントムよりも速く動き、ファントムの反応を越え攻撃を繰り出す。

 

その剣は、かつて男が燕を切るために会得した『奥義』であった。一太刀で三本、全く同時に放たれる剣は時空を越え、多重次元屈折現象を起こす。その名は…

 

燕返し

 

「なっ…」

 

ファントムはその剣を感知できないまま、霊核を破壊され消滅した。残るは紺色の男だけだった。

 

「ふむ…かるであ、とか言っていたな。その者達ならあの男を治せるか…まあ、話をしてみれば分かるだろう。」

 

「竜か……あの日の燕を越える強敵となり得るだろうか……。」

 

 






キャラが分からん!!(サリエリ)(ファントム・ジ・オペラ)自分の文才のなさが憎い……!
あとレクイエムを説明するとアマデウスがレクイエム作ってたんですけど完成しないまま死んで、死後に完成した曲なんですよね。

関係ないですがドリフターズ読みました。あれヤバイですね。ちょっとそこのバーサーカー、ちょっと世界救わない?(出してぇ……島津豊久出してぇ……!!)

あと零閃って多重次元屈折現象じゃね?



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

竜娘語―ドラクルガタリ―


二万UA&お気に入り300人達成ありがとうございます!!更新速度は一定しませんがこれからもよろしくお願いいたします!!



――炎が荒れ狂う

 

「逃げろ!!巻き込まれるぞ!!」

 

住民達は巻き込まれないように街の外側へと避難していた。幸い被害は街の中心で起きていた。

 

家屋の窓は砕け、綺麗に敷かれていた道はボロボロになっていた。街の観光名所であっただろう噴水広場前は無惨にも崩れ、その面影をなくしていた。

 

人間を超越した英霊、その中でも幻想種『竜』の力を持つ二人の戦いは、周りの被害など考えずに戦っていた。日本で言う着物を着た少女の英霊は口から出す炎で相手を焼こうとするが、もう片方、ゴスロリ服のような服を着た少女の英霊は高く飛び上がって炎をかわし、落下する勢いのままに生えている尻尾で着物の少女を叩き潰そうとした。

 

更に街は壊れ、人は逃げ惑っている。唯一助けがあるとすれば少女二人が人に危害を加えないようにしていることくらいだ。圧倒的な力を持つ二人の少女の口から出るのは、

 

「バーカバーカ!!アオダイショウ!!」

 

「バーカバーカ!!エリマキトカゲ!!」

 

この被害を起こしたとは思えぬほど、幼稚な言葉だった。

 

「極東の蛇が竜とか名前負けしてんじゃないの!?さっさと消えなさい!!」

 

「それはあなたの方では?何ですかそんなに肌を出して。恥を知りなさい。」

 

「私の肌はツヤッツヤのピッカピカだから何も恥ずかしくありませんー!もう怒ったわ!これでけりをつけてあげる!!」

 

ゴスロリ服の少女が持つマイク状の槍を地面に構え魔力を増大させる。現れるは彼女の宝具。彼女が持っていたチェイテ城が顕現する。が、城壁にはところどころスピーカーのようなものが付けられ、どことなくライブ会場を思わせる。

 

「宝具、ですか。それなら私も宝具で対抗しましょう。」

 

和服の少女の体が燃える。その体は白き竜へと転身し、敵を燃しつくそうと白き炎を燃え上がらせる。

 

鮮血(バートリ―)……」

 

「転身………」

 

互いに宝具をぶつけ合おうとするとき、ゴスロリ少女の動きが止まる。

 

「……聞こえるわ。分かるわ!この音楽は私のために奏でられているわ!待っていなさい音楽家!この私のバックミュージシャンにして、私のユニットの一人にしてあげるわー!!」

 

そう言うと彼女は宝具を解除し、音楽のなる方(普通の人の聴覚では聞こえない。彼女のライブにかける情熱からなせる技)に向けて一直線で走り出した。

 

「………は?」

 

残された少女は竜の状態から少女の姿に戻り、ポツーンと一人立っていた。少し放心状態だったが、何かに気づいたように体を強張らせる。だがその表情は何よりも蕩けそうな顔をしていた。

 

「この気配は……まさか、あなた様なのですか?安珍さま!!」

 

そう言うと彼女もゴスロリ少女と同じ方向に走っていった。

 

二人の英霊がいなくなり、閑散とした街。幾時もせずに街の住民が帰ってくるが一同は漏れなくこう思った。

 

((((((よそでやれ!!!!))))))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凄い嫌な予感がする。」

 

俺たちはジークフリートを探しにリヨンの街を探索していた。

 

「どうしたんだ?アマデウス。」

 

「いや、なんかこう、よくないものに目を付けられた気がして……。」

 

アマデウスが本気で嫌そうな顔をしている。あのアマデウスが嫌がるなら相当なことだろうな。

 

『七花くん、サーヴァント反応だ。弱い反応が一つと、今にも消え入りそうな反応一つ!場所はこの先だ!!』

 

「分かった!皆、急ぐぞ!」

 

ロマンの焦った声に俺たちは急ぐ。建物の中に、その二人はいた。

 

「ほう。お主たちがかるであとやらか?」

 

奥で寝ている鎧の男と、紺色の着物を着た男がそこにはいた。

 

「……ああ、あんたは誰だ?」

 

もしも邪ンヌ側のサーヴァントだったらここで一戦交えるが、奥の男を守っているようにも見えた。敵ではない可能性が高いだろう。

 

「ふむ、本来はただの農民、英霊などという柄ではないのだが……アサシン、佐々木小次郎。この地に呼ばれ召喚に応じた。奥の男はじぃくふりぃとと言う。」

 

「佐々木…小次郎……だと!?」

 

いくら俺でも聞いたことがある。あの錆白兵とも戦った巌流島での宮本武蔵との戦いでも有名なあの……!!

 

「あ、あの佐々木小次郎なのか…!?ぐわっ!」

 

「佐々木小次郎!?巌流島の戦い、燕返しを使うあの佐々木小次郎なのか!?あの宮本武蔵との戦いはどうだったんだ!?燕返しはどうやって会得したんだ!?これは私の作家魂が燃え上がるぞ!!」

 

俺の背中におぶられていたとがめが俺の背中を踏み台に飛び上がって着地し、佐々木小次郎に突撃インタビューをしていた。

 

「おうおう、そんなに一度に聞かれては困ると言うもの……。む、そこにいるのはあのときの……」

 

「ええ、お久しぶりですね、アサシン。」

 

「セイバーか、それにアーチャーにランサー。懐かしい顔ぶれだな。ところで、あの女狐は居らんな?」

 

「キャスターですか?キャスターはまだいませんね。」

 

「はいはい、昔話に花を咲かせるのもいいけど、今はあの竜殺しでしょ。」

 

マルタが場を仕切り、話を戻す。さすが姐御。

 

「あなた、ジークフリートでしょ?名高い大英雄がなんでこんなことになってるのよ。」

 

「……いかにも、俺がジークフリートだ。街や人々を脅かすサーヴァントが攻めてきた。人々を守りながら戦っていたが、深手をおってしまった。俺の力を当てにしてきたのならすまない。」

 

……なんか誠実そうな奴だな。

 

「今はあなたの力が必要なの。治療なら私達がしてあげます。ジャンヌ、手を貸してください。」

 

「は、はい!!」

 

竜を祈りで鎮めた聖女と救国の聖女、二人の聖女によりジークフリートが負っていた怪我、呪いは全て解消された。

 

「……すまない、感謝する。」

 

「おお、よくなったかじぃくふりぃと。怪我だらけで倒れていたときは心配したが良かったな。」

 

「すまない。小次郎には迷惑をかけた。」

 

「なに、これも縁よ。」

 

「良くなったところ悪いんだが、こっちの話も聞いてくれるか?」

 

俺はフランスでの戦いを話す。

 

「……そうか、ファヴニールが。だから俺が召喚された、というわけか。」

 

「ああ、手伝ってくれるか?」

 

「俺は竜を殺すことしか取り柄がない。それがあの邪竜ともなれば尚更だ。喜んで力となろう。」

 

ジークフリートは意気揚々と快諾してくれた。

 

「ふむ、私もやることがなくなったしな。お前たちの旅路についていこう。」

 

「本当か!?」

 

俺よりも早くとがめが反応する。

 

「佐々木小次郎!その生涯をじっくり聞かせてもらうぞ!」

 

「はは、手柔らかにな。」

 

……なんか、嫌だな。

 

「とがめ。」

 

「?なんだ七花、ってうわぁ!?」

 

俺はとがめの肩を引っ張って俺の体にすっぽりと入るように抱き寄せた。

 

……鼓動が速くなる。身体も熱が入っていく。

 

「しち、七花ぁ!?ど、ど、どうしたのだ!?」

 

「……俺はとがめの刀で、とがめは俺の担い手だからな。」

 

「……は?」

 

ぽかんとするとがめをよそに小次郎が面白そうに笑い声をあげる。

 

「はっはっは!!若いマスターよ。そこの女子を取る気はさらさらない。いやぁ若い若い!」

 

「……はぁ!?七花、そういうことではないぞ!!私はただあの佐々木小次郎が目の前にいるから好奇心でだな……」

 

……それでも、俺は怖かった。

 

佐々木小次郎と言えば日本では有名な剣豪だ。アーサー王やクーフーリン、エミヤとは違い、とがめが興味を持つには十分すぎる。そして…俺より強い。とがめの刀が俺じゃなくなることが怖かった。嫉妬した。

 

「……フフッ。」

 

そんな俺にとがめは笑いかけ、俺を抱き締めた。

 

「馬鹿者。私がそなた以外の刀に目移りするわけないだろう。そなたは、私のたった一本の刀なのだからな。」

 

「……とがめ。」

 

俺は少し泣きそうになりながらとがめを抱き締めた。嬉しかった。俺は今世でとがめと会えて良かったと心から思った。

 

「ドクター!ちゃんと録画してる!?カルデアに戻ったら鑑賞会だよ!!」

 

『ばっちりだよ六華ちゃん!お暑いねぇ……僕にもそんな相手がほしいよ……マギ☆マリ更新してるかな。』

 

「先輩!ドクターが現実から目を逸らしています!」

 

「諦めるんだマシュ、人にはそういうときもあるのさ。恋人がいない人は特にね……。」

 

「せんぱーい!!??」

 

場がカオスと化してきた頃

 

『ってごめん、伝え忘れた!!サーヴァント2騎がそちらに接近中!!』

 

「もっと速く言ってよドクター!!皆は臨戦態勢に入って!!七花にい達も後にして!!ジークフリートと小次郎も戦力期待してるよ!!」

 

「ああ、了解した。」

 

「面白いものも見れた礼だ。存分に刀を振るうとしよう。」

 

「僕逃げていい?」

 

「だめよアマデウス、あなたも後方で待機してなきゃ。」

 

「ほら七花、マスターとしての務めを果たすのだ。」

 

「ああ、行ってくるよ、とがめ。」

 

「それでこそ私の刀だ!!」

 

【双刀・縋】を付与され、体力、気力ともに充実した俺は今から来るサーヴァントを迎え撃つ。今ならどんな敵にも負ける気がしない。邪ンヌでもファヴニールでもどんとこい!!

 

だが、

 

「ぼぇぇぇ~~♪」

 

「「「「「「ぐぁぁぁぁぁ!!!!」」」」」」

 

これはあまりにも酷いだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうよ私の美声!!さっきの音楽家にも聴こえたかしら?私のバックミュージシャンにしてあげるから光栄に思いなさい!」

 

高らかに述べる少女を前に、俺達は死屍累々としていた。原因はもちろん、彼女の歌だ。

 

酷い。酷すぎる。

 

歌に詳しい訳ではないが、彼女の歌は鼓膜どころか脳を揺らし強制的に膝をつかせられた。無事だったのは六華とマシュ、マリーとジャンヌくらいだ。

 

「これが音楽だと?ふざけるのも大概にしろよドラ娘!!僕の耳が腐り落ちるところだったぞ!!」

 

アマデウスが真っ先に声をあげるが、これには皆同意だろう。

 

「……そんなに酷かった?」

 

――戦慄が走る。今の言葉を口に出したのは、まさか―

 

「……六華、正気か……?」

 

我が妹、六華。そんな……

 

「あら、私の歌の良さが分かるなんていいじゃない!決めたわ。そこの子ブタ、私のマネージャーになりなさい!!」

 

「あ、お断りします。」

 

「なんでよ!!」

 

「私は今人理を修復して世界を救わないといけないの。だからあなたのマネージャーをする暇はないの。ごめんなさい。」

 

「私をプロデュースできるのよ!?断るなんてあり得ないわ!!……もういいわ、せっかくいい子ブタに会えたと思ったのに……。」

 

残念そうに顔をうつむかせる少女。……もしかしたら、彼女も孤独だったのかもしれない。かと思っていたら急に顔つきが変わる。

 

「もう来たのねあの蛇女!!速すぎでしょ!!」

 

なんのことかと思っていたら遠くから幼い、緑基調の着物の少女が走ってくる。

 

「あ……んさ…!!」

 

何かを叫びながらこっちに向かってくる。こっちっていうか、俺に向かって走ってくる!?

 

「安珍さま~~!!」

 

さっきの歌で動けなくなっているところに少女がダイビングアタックして胸に飛び込んでくる。そのまま押し倒され馬乗り状態にされる。

 

「あ、あんたは……」

 

「好き!!(挨拶)」

 

……そっととがめを確認する。

 

そこに居たのは一つの修羅。限定宝具

【嫉刀・咎】を発動したとがめの姿だった。

 

「と、とがめ、誤解だ!誤解なんだ!!」

 

「うるさい!!七花のバカ!!もう知らない!!」

 

「がふっ!!」

 

知らない………知らない……知らない…

 

俺の意識は闇に飲まれていった……。





ぐたぐだイベント終わりそうですが皆さんはどうですか?自分は通信制限かかって最後のミッションだけ終わってないです。高難易度やらせろや。

仕事めんどくせえよ……覚えること多すぎるよ……書く時間ねえよ……



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

恋愛語―ラブコメガタリ―

否定姫の声優が頼光ママと一緒なの知らんかった…



知らない……知らない……知らない……

 

「安珍さま?どうなさいました?あなたの清姫が参りましたよ?」

 

「ハハハハハ」

 

「ポンコツお兄ちゃんになっちゃった。」

 

とがめに嫌われた……とがめに嫌われた……

 

「とがめさん、あの人知ってる?」

 

「知るもんか!七花のやつ、私の知らないところで女つくってたんだ!あんなやつのことなんて知らない!!」

 

とがめの言葉が響く。だがこっちにも言い分はある。

 

「待ってくれ!俺は本当にこの女のことを知らないんだ!」

 

「まあ安珍さまったら冗談がお上手♥️私とあなたは生前から結ばれていましたではありませんか♥️」

 

「だから知らない!!俺の恋人はとがめだけだ!!」

 

ピクッ

 

とがめの耳が七花を向くが七花は気づかない。

 

「俺が前世から愛しているのはとがめただ一人だ!お前のことは知らない!」

 

ピクピクッ

 

とがめが七花を横目で見るが七花は気づかない。

 

「嘘ではない……何故ですか?」

 

「そもそもお前なんて俺は知らない!人違いだ!!俺の名前は藤丸七花だ!!」

 

俺は女を振り払いとがめの元へ駆け寄る。とがめはこっちを見ずにずっと下を向いている。……俺はもう愛想が尽かされてしまったのだろうか。

 

「とがめ、俺は……うっ!?」

 

声をかけようとした瞬間、俺は息ができなくなった。

 

とがめとの距離が近い。そう思う間もなく俺は口を塞がれた。

 

「……ぷはっ……はぁ……はぁ……この男は私の(もの)だ!!お前の安珍とやらではない!!お前なんかに私の七花を渡さないからな!!」

 

「とがめ……」

 

俺は何を思うわけでもなくとがめにキスをしていた。ほとばしる感情のままに。ただ愛を伝えたいがために。

 

「とがめ、俺はお前の(もの)だ。俺という一振りはとがめに使われてこそ意味がある。改めて、俺はあんたに惚れることにしたよ、とがめ。」

 

その刀が力を振るうは、

 

「~!あ、当たり前だ!この私から逃れられると思うなよ!……これからは、ずっと一緒だぞ、七花。」

 

「ああ!!」

 

ただ、たった一人の自分の担い手のために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ねえ、一つだけ言っていい?」

 

「……はい、先輩。」

 

「みんな口の中どう?」

 

「甘いです」「甘いな」「甘すぎる」「甘い」「甘くて」「苦くて」「目が回りそうです」

 

「私さ~あの二人のことは大好きだよ?でもね?恋人いない歴=年齢にとってはけっこうきついものがあるわけよ。分かる?目の前で身内がイチャイチャイチャイチャ恥ずかしいことくっちゃべってさ。それで二人とも顔真っ赤でしょ?見てて恥ずかしいんだけど。とがめさんとかさっきまであんなにツンツンしてたのにデレるの速すぎでしょ、やだ、私のお義姉(ねえ)ちゃん、チョロすぎ…?

カルデアに戻ったらベッドに即直行してね、いい?」

 

「先輩!?酷いキャラ崩壊をおこしていませんか!?先輩!?」

 

六華の心が何者か()に呑まれかけてたり六華の発言であたふたしてさらに顔を赤らめる二人。だが、

 

「どうしてですか?」

 

恋する乙女(バーサーカー)は止まらない。

 

「どうしてまた私から逃げるのですか?」

 

「だからお前のことを俺は知らないって……」

 

「どうしてまた私から逃げるのですか?安珍さま。」

 

女……清姫の体から炎が燃え上がる。俺を見る目は全く笑ってない。いや、あの目は俺を見ているが、俺ではない()()を俺を通して見ているようだった。

 

「何で……何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好きです………」

 

『七花くん、彼女の霊基は狂戦士、バーサーカーだ!まともに話が通じる相手じゃない!!』

 

「私から逃げるのなら、寄り添えぬのなら、燃やしましょう。一片も残さず、全て灰にしましょう!ええ、あなたと生きられない世界なんて、いらないんですもの。」

 

「ちっ!とがめ、離れてくれ!」

 

俺は鈴蘭の構えをとり女と向き合う。だがそこに待ったがかかる。

 

「待ってくれ七花。こいつとは私がやる。」

 

声の主は自分の隣、まさかのとがめだった。

 

「と、とがめ!?どうやって戦うんだよ!?」

 

「七花、私を誰だと思っている。『奇策士』とがめの名は伊達ではないことを教えてやる!!行け、【微刀・釵】!!」

 

とがめの合図とともに召喚されるのは完成形変体刀の一本、人の形を持つ刀【微刀・釵】真名・日和号だった。

 

「……サーヴァント、認識。即刻斬殺。」

 

「人形ごときが、燃え尽きなさい!!」

 

清姫が持つ扇子から炎が飛ぶ。普通の人間が当たれば焼死は免れないその炎を日和号は

 

「人形殺法・旋風」

 

4つの腕に装着されている刀を高速回転させ炎を断ち切る。刀を回した勢いを推進力に清姫の方へ高速移動し、清姫を狙う。

 

「人形殺法・春一番」

 

「くっ!」

 

勢いのままに跳び蹴りを放つが横に避けてかわす清姫。だが日和号の攻撃は止まらない。

 

「人形殺法・嵐」

 

足を地面に突き刺し体を回して真横に刀を振り切る。

 

「調子に乗らないでください!」

 

真横に振られる刀の下へ潜り込み下から炎を打ち上げる。少なくないダメージを与えるが、それは日和号の攻撃範囲に入るということでもある。

 

「人形殺法・砂嵐」

 

足を固定し4本の刀を円形にめった斬りにして清姫を斬りつける。

 

「あああぁっ!!」

 

懐に入っていたがために弾き飛ばされた清姫。肩から血を出し息が荒れる。

 

「燃やす………燃やす燃やす燃やすっ!私の恋路を邪魔するなら、全て燃えてしまえっ!」

 

清姫の体からまた炎が燃え上がる。その炎は身を包み、清姫の体を変えていく。腕、足、体がその身を龍に変えていく。

 

「……対象の魔力増大を感知。」

 

日和号が刀を捨て、逆立ちをするように体を反転させる。空を向いた4つの足を高速回転させ、最高の切れ味を出す。

 

「人形殺法・微風刀風」

 

その回転力により、日和号は空を飛ぶ。

 

日和号に続くように清姫は宝具を解放する。

 

「燃やしつくす!!『転身火生三昧』!!!」

 

その身を龍に変え蒼白い炎を纏い日和号を追い空を泳ぐ。

 

微風刀風と龍に転身した清姫が衝突する。その瞬間、とがめが不敵な笑みを浮かべる。

 

空中で大きな爆発が起き、2つの影が落ちてくる。片方は人間に戻った清姫、もう片方は…スクラップとなった日和号だった。

 

「日和号っ!とがめ、大丈夫なのか!?」

 

「大丈夫だ、というより、私が自爆させた。」

 

「とがめー!?」

 

「日和号があの女とぶつかり合う時に自爆……魔術師風に言うなら『壊れた幻想(ブロークンファンタズム)』というべきか?まあ、これであの女も致命傷を負った。」

 

その言葉のように、空からドシャッと傷だらけの清姫が落ちてきた。日和号は役目を終えたかのように光となって消えた。

 

「ううっ……」

 

「これで懲りたか?私の七花にまだ手をだそうと言うのなら……。」

 

とがめは手に『斬刀・鈍』を持ち、清姫へと向ける。

 

『って待った待った!!貴重な野良サーヴァントなんだ!七花くん、彼女を止めてくれ!!』

 

「わ、分かった!」

 

今にもとどめを誘うとしているとがめを止めようと間に入り、

 

「とがめ、嫌なのは分かるがそこまでにしておこう!!お前ももう懲りただろ!?今この世界は邪ンヌのせいで危ないんだ。戦力が一つでも欲しいんだ!お前の力が要るんだよ!今までのことは水に流して力を合わせよう?な?」

 

「っ七花…ちっ、しょうがない。戦力が必要なのは正論だ。許してやる。」

 

とがめからは許可を得た。……本当に危なかった……また嫉刀・咎が出るんじゃないかと怖かった……。

 

「……」

 

「……どうした?」

 

清姫は俺の方を向いてずっと固まっている。だがだんだんと顔が赤くなっていき……

 

「好き!!!(再度)」

 

「何でだよ!?」

 

「ええ、あなたの言う通り安珍様のことは水に流しましょう!そして改めてあなたのことを好きになりましょう!七花様、でしたね?これからも()()()よろしくお願いしますね?マスター?」

 

……恐る恐るとがめを見る。

 

限定宝具『嫉刀・咎』発動

 

「ちぇりおおおおおおおおお!!!!!!!」

 

「なんでこうなるんだぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『よし、目的だったジークフリートに佐々木小次郎、ついでに野良サーヴァント2人が仲間になったね!!戦力としてはけっこういいんじゃないか!?』

 

「うんうん!これだけのサーヴァントがいればきっと邪ンヌ達にも勝てるよ!」

 

「……おい、なかったことにするなよ。」

 

『嫉刀・咎』を発動したとがめにボコボコにされ地面に倒れ伏している俺。

 

「まあ大丈夫ですかマスター?ささ、私の膝を枕に……」

 

「調子にのるなよ貴様ぁ!!!」

 

「よかっなマスター、両手に花だぞ。」

 

「エミヤてめえ……。」

 

「……これが君たちの通常運転なのか?」

 

「……ジークフリート、残念ながら……。」

 

「……騎士王よ、恥じることはない。……とても良い仲間達だな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




キャラが分からない(深刻)書くの遅くてすみません……



宝具『嫉刀・咎』

種類:対人(七花)宝具

ランク:A

レンジ:0

最大捕捉:1人

七花が女の子と良い関係になっていると確認(誤認)すると発動する宝具。般若面(かわいい)になったり七花相手へ特効(物理、精神)が入る。今回は清姫と七花が良い関係になっている(誤認)ために発動された。(かわいい)参考:紅羽襲さんありがとうございます!!

全く関係ありませんが二万課金して欲しかったエレナママ来ませんでした(´・ω・`)




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

幻想語―ゲンソウガタリ―(上)



遅くなってしまい誠に申し訳ありません。仕事が忙しくなってきてしまい書く時間がありません。あと三周年イベント忙しすぎ。(ゲームする暇あるなら書けや)

今回短めですがよろしくお願いします。





 

 

 

 

 

 

 

「ジル!あいつらが、あいつらが攻めてくるわ!!どうするのよ!!」

 

ジャンヌ・ダルクは狼狽えない。

 

「嫌……私はフランスを滅ぼす聖女……私には復讐する権利があるのよ!!」

 

ジャンヌ・ダルクは恨まない。

 

「ジル、全戦力であいつらを叩き潰すわ!!うって出るわよ!!」

 

ああ、やはり彼女は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺たちはジークフリートや他の野良サーヴァントを仲間にして、邪ンヌの居城へと向かっていた。

 

「しっかし、大所帯になったな。」

 

俺、とがめ、六華、マシュ、アルトリア、クー・フーリン、エミヤ、ジャンヌ、マルタ、ジークフリート、佐々木小次郎、エリザベートバートリー、清姫……あ、セイバーもいたな、カルデアに。

 

「13人だね。こんなにいるんだからきっと大丈夫だよね!!」

 

まともな聖杯戦争でもこれほどのサーヴァントが共にいることを見るのは不可能だろう。

 

「ああ、竜を殺すことしか取り柄のない俺だが、敵にファヴニールがいるなら俺ほどの適任はいないだろう。」

 

「竜か……まだまみえたことはないが、燕よりも速いのだろうか……。」

 

旦那様(ますたあ)のためにわたし、頑張りますね?」

 

「カーミラをあなた達が倒したことを聞いたときは怒ったけど、そこの小ブタに免じて許してあげるわ。私も力を貸してあげるわよ。」

 

……佐々木小次郎よ、お前が斬った燕は本当に燕なのか……?

 

「ロマン、邪ンヌがいるっていう場所はまだなのか?」

 

『ああ、もうすぐ見えるくらい……て、なんだこの反応は!?七花くん、急いで城が見えるところまで行ってくれ!!』

 

「わ、わかった!!」

 

少しの丘を越え、城を見渡せる位置までたどり着く。そこから見えるのは……

 

「なんだこれ……」

 

見渡す限りの黒、黒、黒。大量のワイバーンが空を、地を塗りつぶしていた。そして、その奥には巨大な悪竜が鎮座している。

 

「ファヴニール……」

 

『大量の魔力反応に何騎ものサーヴァント反応……!!もはや総力戦だ!!あっちはここで勝負をつけるみたいだぞ!!』

 

大量のワイバーンとサーヴァント、そしてファヴニールがこちらへと進撃をしてくる。

 

「おいおい、この数は………」

 

「いくらなんでも勝てっこないよ……」

 

絶望が包む。死が間近までやってくる。竜でできた波が押し寄せてくる。

 

 

 

だがしかし、こちらは人理保障機関カルデア。人理を救うために戦う者達が集う場所。この程度の死線を幾度も乗り越えてきた万夫不当の英雄達が集う場所!!

 

「マスター、宝具の使用許可を。」

 

問うはサーヴァント、アルトリア・ペンドラゴン。

 

応えるはマスター、藤丸六華。

 

「宝具の使用を許可する!!やっちゃえ、セイバー!!」

 

その瞬間、アルトリアの魔力が増大する。常に『風王結界(インビジブル・エア)』により隠されていた聖剣が光を放つ。その光は束となり、光の柱を建てる。

 

「束ねるは星の息吹。輝ける命の奔流。受けるがいい!」

 

その聖剣の名は……

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!!!!』

 

極光が世界を包む。一瞬の閃光のあと、ワイバーンの波はモーセが起こした奇跡のように真っ二つに割れていた。

 

「ああ、ピクト人の進撃を思い出しますね。それよりもこちらの方が数も少ないし柔な分楽ですが。」

 

『ア、アーサー王の宝具で敵ワイバーン6割消滅!!だけど敵サーヴァントの魔力増大確認!!この魔力はアーチャーだ!!宝具がくるぞ!!』

 

アルトリアの宝具に放心していたがロマンの報告で我に帰る。敵から一つの矢が射ち上がった。その矢は雲を越え、大量の矢となって降り注いでくる。

 

「うおおおお!!??」

 

アルトリアはまだ魔力が溜まりきってない。だが、

 

投影、開始(トレース・オン)

 

物量には物量を。エミヤが投影する大量の剣が矢に向かって発射される。更に、

 

壊れた幻想(ブロークンファンタズム)

 

足りない分は宝具の自壊による魔力爆発で矢を迎撃し、俺達に当たる部分を完全に消滅させる。

 

「その心臓貰い受ける!!」

 

更に燃え滾る紅い魔力。高く飛び上がった青い体から槍に向かって凝縮された紅い魔力により獰猛さを増した槍は、狙われた心臓へ向かって今か今かと解き放たれるのを待っている。そして今、

 

突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルグ)!!』

 

敵のアーチャーに向かって放たれる。紅い彗星と化したゲイ・ボルグはアーチャーへと一直線に向かい、大きな爆発を起こす。が、

 

「……おい、ランサー。」

 

「わーってるよ。奴さん避けやがった、素早いことで。」

 

爆発の粉塵から抜け出す影が一つ、避けたといっても損傷は大きく、その体からは片腕がなくなっていた。しかし、敵アーチャーは残った片腕で取り出した獣の毛皮のようなものを被る。その瞬間、魔力の質が変わる。失った片腕が生え、先ほど負った怪我は全て治癒されていた。そして、黒い弾丸と成りてこちらへと向かってくる。

 

「俺の槍を避けたからにはあいつは俺の獲物だ。ちょっと行ってくるぜ!!」

 

対するはカルデア最速の英雄、クー・フーリン。こちらも戻ってきた槍を構え、神速と呼んでもいい速さで迎え撃つ。ランサーとアーチャー、神代の英雄同士がぶつかり合い、衝撃を撒き散らしながら戦場から離れていく。クー・フーリンが上手く誘導しているのだろう。

 

目の前に映るのはエクスカリバーから外れたワイバーン、敵サーヴァント、ファヴニール、そしてファヴニールに陣取る邪ンヌだ。

 

 

 

 

「…行くぞ、とがめ。ここが、最初の決戦だ!!!」

 

「ああ、まずはここから始めてやろうではないか、私達の『英雄語(エイユウガタリ)』を!!

 

 

 

 

第一特異点、フランスでの最終決戦が始まる。

 

 

 

 

 

 

 





なんか最終回みたいになった。(まだまだ続くよ!俺の気持ちが続く限り!)

ところで皆さんは福袋どうだったでしょうか?自分はメルトリリスメルトリリスメルトリリス狙いで金枠アルターエゴ→メル……→人 類 悪 顕 現でした。絶対許さねえ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

幻想語―ゲンソウガタリ―(下)





まず始めに、本当に申し訳ありませんでしたぁぁぁぁ!!!!この一ヶ月間色々忙しく、小説を書く時間がありませんでした……水着イベも伝承結晶全部集まらなかった……無念……これからは出来たら更新速度上げていきたいと思いますが、暖かい目で見守っていただけたら幸いです。






 

 

 

 

 

 

 

 

「ジャンヌ……私に策があります。貴女の令呪を一ついただけないでしょうか?」

 

「え?ええ、いいわよ!ジルの頼みだからあげるんだからね!勘違いしないでよね!」

 

(……私、ジャンヌにツンデレ属性を与えましたかな?まあ、これはこれでCOOOOOL!!!なので、よしとしましょう……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦場に咆哮が満ちる。

 

周りを見渡すと、それぞれのサーヴァントがそれぞれの相手を見つけている。

 

 

 

「串刺し公、ワラキアの王よ。あなたとはもっと別の形で会いたかったが、戦場で出会ったならばやることは一つ。そうだろう。」

 

「騎士王よ。余もこのような形は無粋だ。だがしかし、狂化により思考は妨げられている。ここは、槍と剣、己の得物で語るとしようか。」

 

「異論はない。」

 

セイバー   アルトリア・ペンドラゴン vs バーサーク・ランサー  ヴラド三世

 

 

 

 

 

 

「ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」

 

「……意識がほとんどない状態であんな宝具使うからだ。完全に狂化に呑まれてやがる。あーあ、美人が台無しだな。……今のお前は英霊に非ず。魔猪となりきる前に引導を渡してやるよ。この俺がな。」

 

ランサー   クー・フーリン vs バーサーク・アーチャー バーサーカー  アタランテ

 

 

 

 

 

 

「あああっ!マリー!マリー!マリー!また君の首を跳ねることが出来るだなんて!」

 

「……サンソン。私とあなたは、もう終わった関係なのよ。」

 

ライダー   マリー・アントワネット vs バーサーク・アサシン  シャルル・アンリ・サンソン

 

 

 

 

 

 

 

「……やっと会うことができましたね。私。」

 

「はっ、前にも言ったでしょ?あなたと話すことなんてなにもないのよ。」

 

「いいえ、私はあなたを理解しなければなりません……そう、拳(マルタ直伝ヤコブ神拳)で!!」

 

「………は?」

 

「さあ、行きますよ私!!」

 

「ちょ、ま、あんた旗はどうしたのよ!このアーツゴリラ!!」

 

ルーラー   ジャンヌ・ダルク vs ルーラー  

ジャンヌ・ダルク・オルタ

 

 

 

 

 

 

「貴様らに私の野望を止めさせる訳にはいきません!!来なさい我が従僕、我が手足よ!!」

 

「へえ、その気持ち悪いヒトデがあんたの宝具か?……とがめ。」

 

「ああ……《斬刀・鈍》。」

 

「数が多いな……マシュ、六華を頼むぞ。」

 

「お任せください!先輩は必ず私が守ってみせます!!」

 

「期待してるね!七花にいも、おもいっきりやってね!!」

 

「全て!全てを犯しつくしなさい!!ジャンヌを殺したフランスの崩壊を、この手に!!」

 

「……うるせえよ。その口黙らせてやる。ただしその頃には、あんたは八つ裂きになってるだろうけどな。」

 

 

マスター   藤丸七花 vs キャスター   ジル・ド・レェ

 

 

 

 

 

 

「グォォォォォォォォォォォ!!!!!!」

 

「やかましい竜ね。そんなにシめられたいのかしら?」

 

「ふむ、これは斬り甲斐がありそうだ。」

 

「ファヴニールよ、貴様との決着、ここでつかせてもらおう!!」

 

セイバー   ジークフリート  ライダー  マルタ アサシン   佐々木小次郎 vs 邪竜  ファヴニール

 

 

 

 

 

 

「ボエ〰️……なんで私たちがこんなことやってんのよ!!」

 

「こんなこととはなんですか。ますたぁが私たちに頼んだ立派な役目ではごさいませんか。」

 

「こんな堕竜の相手するのなんてダルいだけなのよ!!」

 

「これだけの数です。あなたお得意の広範囲無差別音響毒電波の見せ所でしょう。」

 

「言ったわね!言ったわね!?見返してあげるんだからよく聞いてなさい!!『鮮血魔孃(バートリ・エルジェーベント)』!!!」

 

「ああもううるさい!!なんで僕がこっちなんだ!!『死神のための葬送曲(レクイエム・フォー・デス)』!!」

 

ランサー エリザベート・バートリー バーサーカー 清姫 キャスター ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト vs ワイバーン

 

 

 

 

 

 

「……ふむ、私たちもそろそろ始めようかね?」

 

「…構えをとらない戦士を殺すのは騎士の名折れだ。早く構えろ。」

 

「すまないな()()()()()()。あいにく自分は騎士などという高尚なものではなくてね。」

 

エミヤは干将・莫耶を投影し、水平に構えをとる。

 

「……貴様、名はなんだ。私の真名を知っているのか。」

 

「なぁに、私は名もなき掃除屋だよ。……フランス、男とも女ともとれる両性的な顔立ち、そして竜騎士、ここまでくれば分かるというものだ。

()()()()()()()()()()。」

 

真名を晒されたデオン。だがそこに戸惑いはなく、狂化に侵された表情で細剣を構え殺意を放つ。

 

「そうか、なら……私の技量、とくと味わうがいい!!!」

 

一突。エミヤが反応できたのはランサーの敏捷を見ていたからだろう。それほどに素早い刺突がエミヤを襲った。

 

「ふんっ!!」

 

エミヤは干将・莫耶を交差させ重なった腹で刺突を受け、弾き返す。

 

「はっ!!」

 

弾き返されたことをものともせずに素早く距離を詰め細剣を振るう。それをエミヤは干将・莫耶で的確に防御していく。

 

「その腕……ただの英霊ではなさそうだな。」

 

「過大評価ごめん被る、な!!」

 

干将・莫耶を振るい再びデオンを弾きとばす。その隙にエミヤは弓を投影し、遠距離戦に移行する。

 

「貴様、アーチャーか!!二刀使いの弓兵など聞いたことがないぞ!!」

 

「なぁに、アーチャーにしかなれない紛い物でな!!」

 

『我が骨子は捻れ狂う』

 

投影されたカラドボルグに紅い魔力が走り、矢として放つに適した形状に変化する。

 

偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)!!!』

 

捻られた魔剣は空間を捻切りながら一直線にデオンへと向かい、着弾、爆発を起こす。

 

「……!!上か!!」

 

手応えを感じなかったエミヤは魔力を感じ空を仰ぐ。そこには大きく白百合を咲かせる騎士がいた。

 

「王家の百合よ、永遠なれ。『百合の花咲く豪華絢爛(フルール・ド・リス)』」

 

空を白百合が覆う。それを見たものは目を奪われ、魅了されるだろう。それを直感的に判断したかは分からない。が、エミヤは白百合を見る直前に目をつぶった。

 

「馬鹿め!そのまま貫かれるがいい!!」

 

宝具を放ち、上空からエミヤに向かい流星のように突きを放つデオン。白百合は未だ健在であり、目をつぶっているままのエミヤ。その手には弓ではなく、新たに投影したであろう()()()()()()()()()()があった。

 

「……投影、装填(トリガー・オフ)

 

向かってくるデオン、それに合わせるようにエミヤは()()を使い、ある剣士の絶技を放つ。

 

全工程投影完了(セット)…………是・零閃(ゼロセン・ブレイドワークス)

 

 

しゃりん

 

 

「え……?」

 

音がした。デオンはあと一秒もあればエミヤを突き刺せるはずだった。しかし、そうはならなかった。

 

「……はぁ、この技をただの浪人が使っていたと思うと、恐ろしいな。」

 

デオンの体は剣ごと両断され、地面に横たわっていた。

 

「……私の負けか。紅の騎士よ、一つ聞いてくれないか。」

 

「だから騎士ではないのだが…何だ。」

 

「王妃を頼む。彼女は、フランスの華なんだ。」

 

そう言い残すと、デオンは光となって消えた。

 

「……努力しよう、シュヴァリエ・デオン。さあ、他のところは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風王結界(ストライク・エア)!!』

 

ヴラド三世が産み出す杭の壁を聖剣が放つ風が砕き、アルトリアの聖剣がヴラド三世の胸を貫く。

 

「ふ……見事だ。此度の聖杯戦争は少し不愉快なこともあったが、よしとしよう。武人として終われること、感謝しよう。」

 

「ヴラド公、高潔なる武人よ。次に見える時は狂化がないときに。」

 

「違いない。フハハハハハ!!!」

 

ヴラド三世の笑い声が戦場に響きながら、光となって消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

「ぅぅぅ……ぁぁ……コロ…シテ…クレ…!」

 

クー・フーリンは何度も槍を振るう。だが狂化に呑まれ異常な再生力を持つアタランテには浅い傷だった。本能のままに暴れまわるアタランテ。その体はほとんどが魔猪となり、意識が呑まれる寸前であった。

 

「……その心臓貰い受ける。」

 

クー・フーリンは静かに魔力を高める。先ほど放ったものとは違い、この槍は必ず心臓を貫き、命を止める。狙うは心臓、穿つは必中。

 

刺し貫く死翔の槍(ゲイ・ボルグ)!!』

 

懐に潜り込み放たれた絶死の槍は、宣言通り心臓を貫き、付近の肉ごと、抉り飛ばした。

 

「……………ありがとう………。」

 

感謝の言葉とともに、アタランテは光となって消えた。

 

「……ちっ、胸くそわりぃ……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何でなんだマリー!何故僕に殺されてくれないんだ!!」

 

「サンソン、私とあなたの関係はもう終わっているの。第一、処刑人であるあなたの剣は無辜の民殺しすぎてしまったわ。あなたは、もう処刑人ではなくなってしまっているのよ。」

 

「そんな……マリー……」

 

「だからね、あなたはあなたを許していいのよ。サンソン。」

 

「マリー……」

 

「というわけで、はーい!『百合の王冠に栄光あれ(ギロチンブレイカー)』!!!」

 

「マリーーー!!??」

 

馬に轢かれ光となって消えたサンソン。その顔は困惑しつつもどこか嬉しそうだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「虚刀流『木苺』から『遊蝶花』まで斬撃技混成接続!!」

 

 

斬刀・鈍により手刀、足刀の斬撃に補正が入り、海魔を切り刻んでいく七花。 しかし、

 

「くそっ、数が減らない!!」

 

ジル・ド・レェの宝具『螺煙城教本(プレラーティズ・スペルブック)』により現れる大量の海魔は数を減らすことなく七花達を襲っていた。

 

「マシュ!!」

 

「はい!仮想宝具疑似展開 『人理の礎(ロード・カルデアス)』!!」

 

海魔から身を守るために人理を守る盾が創られる。七花は一旦盾に身を隠し、海魔の攻撃をしのいだ。

 

「どうする、このままじゃジリ貧だぞ!!」

 

「ここは、私が令呪で誰か呼んで……」

 

「いや、七花、刀を変えるぞ。」

 

「え、ってうわぁぁ!?」

 

とがめが七花の胸に手を当て、斬刀・鈍を抜き取る。

 

「何度やっても慣れないな……。それでどうするんだ?」

 

「ようは本体、あの男を叩けばいいのだ。この刀を使う。」

 

「それは……」

 

「皆さん!!もう盾が持ちません!!早く!!」

 

「仕込みは終わった!マシュ、放射している魔力だけ爆発させてあのヒトデどもを倒すことができるか!?」

 

「や、やってみます!」

 

人理の礎(ロード・カルデアス)の盾として放射された魔力部分を擬似的に壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)をすることで盾にまとわりついていた海魔を大きく吹き飛ばすことに成功した。海魔は数を大きく減らし、七花は少なくなった海魔をけちらしながらジル・ド・レェに向かって走る。

 

「おのれぇぇぇぇぇぇ!!!!この匹夫めがぁぁぁぁ!!!!」

 

叫ぶとともに海魔の勢いが増す。至近距離まで迫っていた七花は海魔の波に呑まれ、体を失っていった。

 

「七花にい!?」

 

「あとはあなた方だけですか……。苦悶の声をあげながら狂い死になさい!!」

 

「それは無理な話だな!!」

 

「なっ!?」

 

ジル・ド・レェの背後に衝撃が走る。それは虚刀流四の奥義『柳緑花紅』だった。

 

「あなたは……海魔に呑まれて死んだはずでは……!」

 

柳緑花紅を放ったのは先ほど海魔に呑まれて消えた七花だった。

 

「これが『千刀・鍛』の効果、魔力を使い分身を造ることができる!!先のは魔力で造った分身を囮にして、本物の七花は爆風にのり貴様の背後まで飛んでいたのだ!!」

 

「馬鹿なっ…ありえない!!」

 

「虚刀流最終奥義『七花八裂・改』!!!」

 

柳緑花紅からはじまる鎧通し、掌底、打撃、踵落とし、跳び膝蹴り、手刀の6つの奥義を叩みこんでいく。

 

「これで終わりだ!ちぇりおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」

 

ジル・ド・レェの胸に『花鳥風月』が入り、勢いのままに吹き飛ばされていく。

 

「終わったか…。あとはファヴニールだけか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グォォォォォォォォ!!!!!」

 

「しゃらくさいのよ!!!」

 

振り下ろされる巨大なファヴニールの爪を、マルタがアッパーで打ち返す。衝突しあった拳は振るった爪が打ち上げられ体勢を崩すほどの強さであった。

 

「はっ!!」

 

その隙を見逃さず即座に懐に入り、長身の得物を振るう佐々木小次郎。だが堅牢な甲殻にはばまれ、刃が通るには至らなかった。

 

「くらえ!!」

 

ジークフリートが高く飛び上がりファヴニールの頭に兜割りをくり出す。その一撃は直撃し、少なくないダメージを与える。

 

「グギャァァァァ!!!」

 

反撃と言わんばかりに息を吸い込み、ブレスを吐き出すファヴニール。

 

「ちっ!『幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)』!!!」

 

溜めがなく中途半端な威力の真名解放となったがブレスと相殺することには成功した。

 

「やはり威力が足りないか……。少しでも隙があればな……。」

 

全員が硬直状態となった瞬間、遠くからなにかが吹き飛ばされたような勢いでファヴニールにぶつかった。それはボロボロになったジル・ド・レェだった。

 

「わ……私は、死ぬわけには、いかない……ジャンヌ……」

 

その生への執着心をもって命を繋いだジル・ド・レェは最後の手段を使う。それは、

 

「令呪をもって我が肉体に命ず!!宝具を発動し、ファヴニールを取り込み更なる災厄として生まれ変われ!!!」

 

令呪を用いた強制的な宝具の発動によりおびただしい数の海魔が産まれ、交わり、一つとなっていく。

 

「グォォォォ!!??」

 

産まれ出でた巨大海魔は近くにいたファヴニールと主たるジル・ド・レェを取り込む。ファヴニールは抵抗するも海魔の物量に呑まれ、姿を変え、魔竜として生まれ変わった。

 

「なんだ、あれは…?」

 

魔竜の姿はファヴニールの全身に目のようなものが生まれ、竜の心臓によって生まれる魔力で海魔の柱……海魔柱が幾本も生えていた。主たるジル・ド・レェは外からは見えず中に潜んでいるようだった。

 

「おお……おおおおお!!!!これこそ我が力!!我が復讐!!貴様らを、フランスを滅ぼすにふさわしい!!!」

 

「……!言葉だけで、なんて圧力……!!」

 

魔竜と化したジル・ド・レェから発される魔力はすさまじく、三人の動きが止められてしまう。

 

「まずは貴様らが、我が復讐の第一歩となれぇぇぇ!!!!」

 

口に魔力が溜まっていく。放たれるであろうブレスは先ほどファヴニールが放った比ではなく、三人をそのまま消滅してありあまる力だった。

 

「これは……ちとまずいな。」

 

「なに悠長に言ってんのよ!!」

 

「バルムンクを……ダメだ、間に合わん!!」

 

ブレスが放たれるその時、

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!!!』

 

相殺させるように希望の光が放たれる。極光とブレスがぶつかりあい、対消滅した。

 

「ジャンヌ…?何故、何故あなたが邪魔をするのですか聖処女よぉぉぉ!!!」

 

「ジル・ド・レェよ。まず第一に私はジャンヌ・ダルクではありません。そして、私の使命は狂った人理を直し、貴様のような外道を倒すことだ!!!」

 

「よく言ったぜセイバー!『蹴り穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)』!!!』

 

偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)!!!』

 

「ちぇりおおおおおおお!!!!!!!」

 

三人の攻撃が穿ち、貫き、叩き潰す。だが、

 

「な……まじかよ。」

 

「この巨体でこの再生力……厄介だな。」

 

削られた部分はすぐさま再生し傷一つない体に戻った。

 

「貴様らの攻撃など今の私の前には塵芥にも等しいのですよ!!」

 

「どうするとがめ!!何か奇策はあるのか!?」

 

「わかるか!!こんな化け物見たことないわ!!ええい、ここが正念場よ!!全員でかかるぞ!!」

 

「力技だな!!そういうシンプルなのはいいぜ!!ちょっとばかしイライラしてんだ、相手してもらうぜ!!」

 

「なら舞台を整えよう。『I am the born of my sword(体は剣で出来ている)』……『無限の剣製(アンリミテッド・ブレイドワークス)』!!」

 

エミヤの魔力が練られ、その心象風景を写し出す。幾多の剣が刺さり立つ錬鉄の世界にその場の全員が移動する。

 

「その程度で私を止められると思うな!!この匹夫めがぁぁぁぁ!!!!」

 

魔竜ファヴニールは翼を羽ばたかせ空に飛びあがる。

 

「空中から全員消してくれるわぁぁぁぁ!!!」

 

ブレスを放つために魔力を溜めるファヴニール。だが竜には竜殺しを。特に今回は、竜を鎮めた聖女が跳びあがる。

 

「飛ぶのとかうざいのよ!!!来なさい、『愛を知らない悲しき竜(タラスク)』!!!」

 

マルタは呼び出したタラスクに乗りファヴニールの上まで行く。そのままタラスクを踏み台にして高く飛び上がる。

 

「行きなさいタラスク!!」

 

タラスクは高速回転しファヴニールの胴体にぶつかる。そこへ向かい、力を溜めながら拳を振りかぶる聖女がいた。

 

「逝きなさいタラスク!!『荒れ狂う哀しき竜(タラスク)』!!!」

 

タラスクが衝突した位置へマルタが殴りかかる。その勢いは止まらず殴打の勢いでファヴニールの高度がどんどん下がっていく。

 

「これで終わりよ!鉄☆拳☆聖☆裁!!!」

 

その言葉を皮切りにファヴニールを地面まで叩きつけ、宝具であるタラスクを壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)させる。

 

「ぐぅぅぅ……まだです、もう一度飛んで……」

 

「いやいや、それは遠慮させたいでござるな。」

 

「同感だ!」

 

叩きつけ大きな隙を見せるファヴニールに対し二人の剣士が走る。狙うはその翼。人類最高峰の剣技をもって斬り落とす。

 

「秘剣・『燕返し』」

 

是・零閃編隊 二機(ゼロセン・ブレイドワークス)

 

同時に襲いかかる斬撃によりその翼を落とすファヴニール。

 

「まだ終わらせねぇぞ!!マスター!!」

 

「うん!令呪をもって命ずる!ランサー、敵の足止めを!!」

 

「あいよぉ!!」

 

令呪の発動によりクー・フーリンの持つ槍が大きくなっていく。その大きさはかのワルキューレ、ブリュンヒルデの宝具並みに大きくなった。

 

「これでもくらっときな!!」

 

その巨大な槍を持ちながら平然と飛び上がり、ファヴニールの体へと投げつける。その槍はファヴニールの体を貫き、地面へと縫い付けた。

 

「今だぜ嬢ちゃん!!決めちまいな!!」

 

「令呪をもって命ずる!セイバー!!やっつけちゃえーー!!」

 

「心得ました。ジークフリートよ、力を貸してもらおう。」

 

「いいだろう。竜を殺すことしか能がないが、竜殺しでは誰にも負けん!!」

 

今ここに2つの柱が並び立つ。金色の希望の光と蒼青の真エーテルの光が充填され、放たれる時を待つ。

 

「させるかぁぁぁぁ!!!!」

 

そうはさせじとファヴニールが最後の力を振り絞りブレスを溜める。発射される寸前、

 

「ちぇりおおおおおおおおお!!!!!!」

 

下顎に向かって最速の一の奥義 『鏡花水月』が入る。その勢いのまま強化した身体能力で飛び上がり、頭に向けて七の奥義 『落花狼藉』を決める。ブレスを放つ直前で開いた口が閉じられたため口の中でブレスが暴発し、口から煙が上がる。

 

そして、充填が終わる。

 

「束ねるは星の息吹「邪悪なる竜は失墜し

「輝ける命の奔流「世界は今落陽に至る

「受けるがいい!!「撃ち落とす!!」

 

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!!』

 

 

幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)!!!』

 

 

星の造りし聖剣、竜殺しの魔剣の二振りの光がファヴニールを襲う。対軍宝具2発による極光は拘束されたファヴニールをたやすく呑みこんだ。

 

「ああ……この光は……また、あなたに倒されるのですか、ジャンヌ……」

 

「これで終わりだ、ファヴニール(ジル・ド・レェ)!!!」

 

ファヴニール(ジル・ド・レェ)が完全に光に消える。再生することはなく、細胞の一辺まで消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

第一特異点  フランス最終決戦、決着。

 

 

 

 

 

 

 








ゼロイベ周回が終わりません。時間が欲しい。頼むから時間をくれ……イスカンダル来たからOKです!




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

聖女語―セイジョガタリ―



毎度毎度遅くなってしまい申し訳ありません。出来たら月1投稿にはしたいと思います。ちなみにギル祭はエンジョイ勢だったため75箱で終わりました。ギルは四万課金したけどきませんでした。あと今回少な目ですがご了承下さい。





ジル・ド・レェを倒した七花達は固有結界を解きフランスへと戻った。その場所で見たものは、

 

「私は!あなたが悔い改めるまで!殴るのを止めない!!」

 

邪ンヌに馬乗りになり顔を殴るジャンヌの姿だった。

 

「あ...あんたら...助け...聖杯でも...なんでもあげるから...このバカ...どうにかして...」

 

「「「「ジャンヌゥゥゥ!!??」」」」

 

「あら、悪くない拳ね。」

 

全員が呆気にとられるなか一人(凄女)は弟子の才能を褒め称えていた。

 

「てかあれあんたの仕業か!!聖女様に何させてんだよ!!」

 

「はぁ!?天使をも倒すヤコブ神拳に文句あんの!?」

 

現場がてんやわんやしながらもジャンヌを邪ンヌから離して落ち着かせた。

 

「これに懲りたらもう復讐なんてしてはいけませんよ!分かりましたか!」

 

「うっさいうっさい!!早く帰れぇぇぇ!!!」

 

半ギレしながら聖杯を投げつけ、邪ンヌは光になって消えた。

 

「・・・これでフランスは助かったのか?」

 

『そうだね!聖杯を回収したからその特異点は修復された。もうすぐ君たちを世界が異物として排除するだろうからカルデアに戻ってくるんだ!』

 

・・・俺達さっきまで強大な魔竜と戦っていたんだよな?え、落ちがこんなの?

 

「藤丸さん。」

 

「どうした、ジャンヌ・・・って、体が!」

 

ジャンヌの体からは光が散り、徐々に透けていた。

 

「これも世界の修正力です。正史にジャンヌダルクが復活した、なんて起こってはいけないでしょう?私たちはぐれサーヴァントも座に帰ります。」

 

「そうか・・・。」

 

「ですが、縁は繋げました。カルデアで召喚を行えば、その縁を繋ぎ必ず召喚に応じましょう。そして、あなたにはこれを。」

 

そう言うとジャンヌは戦闘中一回も使わなかった腰の剣を抜き、七花へと渡した。

 

「これは?」

 

「私の宝具の一つ、『紅蓮の聖女(ラ・ピュセル)』です。これは概念結晶武装といい、私の心象風景を実体化し、この剣に写すものです。」

 

「そんな武器があるならどうして使わなかったんだ?」

 

「・・・この宝具なんですが、写し出される心象風景が私の最期で...この宝具使うと、私死んじゃうんですよ。まあマルタ様直伝のヤコブ神拳があればどんな相手でも鉄拳制聖裁できるんですけどね!」

 

・・・誰がこんなバーサーカーにした。

 

「そんなものを貰ってもいいのか?」

 

「あ・・・嫌ならいいんです。聖女が死ぬ宝具なんて不吉ですもんね。」

 

「いや、そうじゃなくて、宝具ってのは英霊にとって大事なものなんだろ?俺なんかが貰っていいのか?」

 

ジャンヌは少しポカンと呆けたあと楽しそうに少し笑った。

 

「ええ、あなたは私が宝具を託すに足る人ですよ。私の宝具を上手く使って下さい。」

 

ジャンヌの宝具を受け取り、七花達にも退去が始まった。

 

「これは...」

 

「時間のようですね。」

 

「ではますたあ?私はお先に失礼しますね?」

 

「へ?」

 

どこからともなく現れた清姫は光になって消えた。座に帰った・・・んだよな?

 

「子ブター?人理ってのを修復すれば私をプロデュースしても大丈夫なんでしょ?なら私も手伝ってあげるわ!存分に感謝しなさい!だからちゃんと召喚しなさいよ!」

 

「・・・俺がまた邪竜を倒せたのもお前たちのおかげだ。お前たちがまだ力を求めているのなら、俺はお前たちの剣となろう。」

 

「竜・・・悪くない手応えであったが、燕の方が難敵であったな。我が剣技、未だ閃かず・・・また、良い相手と巡り会えることを待つとするか。」

 

「音楽を聴きたくなったらいつでも呼びたまえ。今度はデュエットを聴かせてあげよう。」

 

「ありがとう!あなた達のおかげでフランスは救われたわ。生前でもこんなに楽しかったことはないわ!ヴィヴ・ラ・フランス!」

 

「あなた達に出会えたことに感謝を。あなた達は正しく世界を救う者達です。あなた達の歩みは祝福されています。私も微力ながら尽力いたしましょう。」

 

全員と言葉を交わし、縁を紬ぎ、そのときが来た。

 

「ありがとう。あんたらがいなかったら戦いはもっと辛かったと思う。だから・・・また戦おうぜ!!」

 

「皆ありがとー!大好きだよー!!!」

 

意識が徐々になくなり、退去が始まった。・・・色んなことがあった。六華の弱さを垣間見たり、英霊達の頼もしさを感じたり、敵の容赦のなさを知った。だけど、最後は皆が笑顔だった。・・・俺は強くならなければならない。この笑顔が続くように。この笑顔を守れるように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―第一特異点 邪竜百年戦争オルレアン 修復完了―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意識に光が戻ってくる。レイシフトが終わり、コフィンから出てきた。ロマンやダヴィンチちゃんが待っていてくれている。そう思って目を開けると、

 

「ますたあ♥️お待ちしていました♥️」

 

清姫が俺の前で腕を開いて待っていた。もう一度言おう。清姫がいた。

 

・・・・・・・・??????????

 

「七花にい、お疲れ様・・・ってうわぁぁぁぁ!!??」

 

「お帰り七花くん、六華ちゃん!ところでこれどういうことかな!?」

 

「いきなりこっちの召喚サークルが回り始めたと思ったら清姫が召喚されて「ますたあを待ちます♥️」とか言ってそこで待ってたんだよ。いやはや、愛の力というのは恐ろしいね。」

 

「は???は?????」

 

「七花ぁぁぁぁぁ!!!!!!これは一体どういうことだぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「ますたあ♥️さあ、まいるぅむに参りましょう?」

 

・・・・・俺は、考えるのを止めた。

 

ゴキッ

 

「七花にいが場の空気に耐えきれずに倒れたぁぁぁ!!!てか頭からいったぁぁぁぁ!!!」

 

「君たち修羅場するんだったら後にしてくれないかな!!七花くん大丈夫かい!?早く担架持ってきてー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・何か、とんでもないものに巻き込まれた気がする。俺は、特異点を修復して、カルデアに帰ってきて、それから・・・・

 

「俺はとがめ一筋だぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「うひゃぁ!!??」

 

「あれ・・・ここは・・・」

 

見慣れたベッドと薬の匂い、ここは・・・

 

「お帰り、七花くん。帰還そうそう大変だったね。」

 

「ロマン・・・俺は・・・」

 

「無理に動かなくていいよ。頭を床に強打したからね。異常はないかい?」

 

「・・・何か、思い出してはいけないことがあるような・・・」

 

「うーんそれに関して思い出さないことは無理かな!!」

 

「七花!!無事か!!おのれ蛇女が!!邪魔をするな!!」

 

「邪魔なのはあなたですよ仏頂面!!ますたあ?お怪我はございませんか?」

 

「(絶句)」

 

「ハハハ・・・七花くん、後は任せた!!」

 

「あ、てめえ逃げんじゃねえ!!待てこら!!」

 

「「七花!!(ますたあ!!)」」

 

「うぐ・・・」

 

 

 

 

 

 

治療室からロマニが逃げ出した後、部屋の近くの柱の影で二人が話していた。

 

「先輩は行かなくていいんですか?」

 

純粋な顔で聞いてくるがなんというムチャブリか。

 

「マシュ、あの二人の間に入ってこいと?」

 

「・・・愚問でしたね。」

 

「まあ落ち着いたら会ってくるよ。話したいこともあるし、ね・・・。」

 

そう話す六華の顔には影が射し、いつもの活発的な六華とは違う顔を見せていた。

 

「先輩?どうしました?」

 

「うん?いや、何でもないよ。ほら、今エミヤがご飯作ってくれてるんだって!早く行かないと全部食べられちゃうよ!」

 

「!それは大変です!エミヤさんのご飯だけは譲れません!!行きましょう先輩!!」

 

そう言って六華の先を早足で進むマシュ。前を見る姿は、後ろの六華の顔は見えなかった。

 

「・・・もっと、強くならなきゃ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある者は修羅場を修めるために奮闘し、ある者は自分の力のなさを嘆き、ある者は名コックの料理を貪る、束の間の日常が帰ってきた。

 

彼らに待っているのは希望か、絶望か。それとも

 

 







次回は召喚編だと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

内緒語―ナイショガタリ―



毎回毎回時間が空いてしまい申し訳ありません。仕事もうやだ。
ハロウィンはイバラギン神イベでしたね。今回でイバラギン宝具5にしました。ちなみにシトナイはきませんでした。





 

 

 

 

フランスから帰ってきた俺たちはロマンの呼び出しで中央管制室に集まっていた。

 

「どうしたんだ?俺と六華、マシュととがめだけだなんて。」

 

「あはは・・・まあ呼び出しのメインはダヴィンチちゃんから話してもらうよ。きっと驚くよ。とがめさんを呼んだのはとがめさんの宝具が必要でね。」

 

「宝具が必要・・・?」

 

「あ、来たみたいだよ。」

 

ロマンの言っている意味が分からず悩んでいるところに、人一人ぶん入りそうな透明なタンクを持ってダヴィンチちゃんがやってきた。というか実際に入ってた。

 

「ってこれ、中の人・・・」

 

「「所長ぉぉぉぉ!!!!????」」

 

そう、タンクの中に三角座りで眠っているのはカルデアの所長、オルガマリー・アニムスフィアだった。

 

「ふっふーん、大変だったんだぜ?フランスで君達の存在証明を確認しながら所長の肉体を作るのは。おかげでほとんど出番がなかったよ。そこ、作者が忘れてただけとかいうなよ!」

 

「・・・なるほど、肉体を作った・・・私のいた時代からだと考えられないが、人の手で造られた人間、人造人間というやつか。ということは私が呼ばれた理由は、」

 

「そう、君の【毒刀・鍍】にいる所長の魂だよ。君のその刀を空っぽの肉体に刺すことで、所長の魂を肉体に移す。そうすれば、所長は復活できるって手だてだよ。」

 

ダヴィンチちゃんととがめが神妙な顔で話しているが・・・

 

「・・・おい六華、二人の話していること分かるか?」

 

「私が分かるわけないでしょ七花にい。」

 

「だよなあ。」

 

話についていけない俺たちだった。

 

「あー・・・君達に簡単に説明すると、オルガマリー所長が生き返るんだよ。」

 

「あー、冬木でとがめがやった奇策か。本当に出来るもんなんだな。」

 

「所長の胸に刀刺したときはビックリしたね・・・。」

 

こっちでロマンから説明を受けている間にダヴィンチちゃんととがめの方では話が進んだようだ。

 

「では所長をタンクから出すよ。君は【毒刀・鍍】の準備を。」

 

「ああ・・・大丈夫かな・・・。」

 

「?なにか言ったかい?」

 

「ああいやなにも。ではいくぞ!」

 

解放された所長の肉体に【毒刀・鍍】が刺さる。その瞬間、場の雰囲気が明確に変わった。毒々しい、粘っこい悪気だった。

 

「とがめ!!」

 

「先輩!!」

 

雰囲気が変わったのを察知し、俺とマシュでとがめと六華の盾になるように庇う。ロマンはダヴィンチちゃんが庇ったようだ。

 

「・・・お前は、所長か?」

 

()()は濁った目でこちらを見、答える。

 

「いいや、違うな・・・俺は、()()()()()だ。」

 

「「!!」」

 

恐れていたことが起こった。あの肉体にはオルガマリーの魂ではなく四季崎記紀の魂が入ってしまっていた。つまり、オルガマリーの魂は・・・

 

「とがめ!!!」

 

すぐさまエンチャントを施され、四季崎へと向かっていく。貫手を放ち動きを抑えようとするが、

 

「おいおい、血気盛んだな。【虚刀・鑢】」

 

四季崎により容易くいなされる。柔術の応用だろうか、直に食らった七花は訳も分からずに後ろに投げ飛ばされた。

 

「そんなに殺気をぶつけるなよ、お前らが待ってた所長とやらはちゃんとこの体に入ってるぞ。」

 

「「「「「「!」」」」」」

 

「四季崎記紀、と言ったね。今のはどういうことだ?」

 

ダヴィンチちゃんが殺気をぶつけるように言い放つ。だが四季崎記紀は殺気を風のように受け流して答える。

 

「そもそも俺は【虚刀・鑢】が完成した時点で生きる未練はねえんだ。ここにいることが不可解だっての。・・・それであの嬢ちゃんだが、まあ俺と一緒にいたからだろ、魂が衰弱してて意識が覚醒できていねえ。最初は【王刀・鋸】と【誠刀・銓】を持っていたようだから守られてたが、一時【王刀・鋸】が消えやがった。そんときに俺にアてられたらしい。」

 

「・・・つまり、【王刀・鋸】がなかったせいでこうなったってことか?」

 

「そうだな。」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「とが「だって!!!あのときマルタをどうにかしたいって言うから!!!マルタの契約をとくには【王刀・鋸】を使うしかなかったんだもん!!!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「いやそりゃあね!?王刀使ってオルガマリーを保護してたのに使っても大丈夫かなー?とは思ったよ!?だけどもう取り出しちゃったし、それ使えばマルタが仲間になるんだから「とがめ」はひぃ!!!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「とがめ、君は【王刀・鋸】を使えばこうなるかもしれないことは分かってたね?」

 

ダヴィンチちゃん、今までで見たことないほどヤバイ顔してるぞ・・・。

 

「・・・はい。【王刀・鋸】を使う時、オルガマリーから刀が離れるのでヤバイかなーとは思ってました…。」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「「「とがめ(さん)ーーー!!!!」」」

 

「だってー!!だってー!!!」

 

俺たちは叫びとがめが喚く、中央管制室は阿鼻叫喚と化した。誰もが混乱している最中、その場を落ち着けたのは思いもがけず奴だった。

 

パン!!

 

大きな手の叩かれる音に反応し、全員が音の発生源を見る。

 

「だー!世界を救うって奴らが情けねえ、そんな調子で世界救えると思ってんのか!!人の話は最後まで聞け!!」

 

それはオルガマリー…ではなく、オルガマリーの体をした四季崎記紀だった。

 

「まず早とちりするな!!あの嬢ちゃんは生きてるぞ。今は俺が出てるってだけで嬢ちゃんは眠ってるだけだ。俺がいなくなれば起きるさ。」

 

「お前がいなくなる?どういうことだ?」

 

「この体にいる俺は残留思念みたいなものだ。生きた魂に比べればちっぽけな存在さ。今ここにいるだけでも存在は消えていっている。」

 

「お前、消えるのか………?」

 

「ああ、消える。まあ嬢ちゃんと魂少し混じったから残るっちゃ残るけどな。」

 

「………おい今なんて言っ」

 

「時間だ。せいぜい足掻いて見せろよ。【虚刀・鑢】。」

 

「だからお前今何て言ったーー!!!」

 

バタン

 

四季崎記紀……オルガマリーの体が糸が切れたように前に倒れてしまった。顔面からいったが大丈夫なのだろうか……。

 

「……七花くん。奴は消えたのか?そして、奴は何者なんだ?」

 

「ダヴィンチちゃん……奴は、四季崎記紀は元々はとがめが持ってる十二本の完成形変態刀、そして、俺を造った男だ。そして【毒刀・鍍】は奴の怨念を込めて造られた【最も毒気の強い刀】だ。」

 

「そこから先は私が説明する。」

 

「とがめ。」

 

「【毒刀・鍍】は私の宝具として召喚できるが、私の宝具では【魂を内包している】という点に強調されている。この特性を活かしてオルガマリーの魂をこの刀に内包させた。まあ、先に四季崎記紀がいたのだから、互いに干渉してしまったようだが……。」

 

「そこだ。奴は魂が混じったと言っていた。あれはどういう……」

 

「ん……」

 

倒れていたオルガマリーから声があがる。俺たちは全員がオルガマリーを見て反応を伺った。

 

「私は………」

 

「所長、大丈夫ですか!?」

 

「……あれ、ここどこ……?宮殿……?」

 

「……所長?」

 

ロマンがオルガマリーと顔を合わせて必死に語りかけるが、オルガマリーの目の焦点が合っていない。

 

「何よあの黒い柱……!!やだ、止めてぇぇ!!!」

 

「所長!!しっかりしてください!!所長!!」

 

ロマンがオルガマリーの肩を揺らしながら語りかけているが、オルガマリーの錯乱は止まらなかった。結果、またもや意識を失ってしまった。

 

「これは、どういうことだ……宮殿……黒い柱……?」

 

「いいから担架を!!所長を早く医務室へ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

医務室に運ばれた所長は意識を覚ますことなく、また寝たきりになってしまった。

 

「ロマン、オルガマリーの体調は……」

 

「七花くん……あれから意識は戻ってない。魂が体に定着してないのもあるかもしれないけど、やっぱりあの四季崎記紀の魂が混ざった、というのが問題だろう。」

 

「………目を覚ますのか?」

 

「分からない。僕たちも全力を尽くしているが、今の状態を維持するので手一杯だ。加えて次の特異点の捜索もしなくちゃいけない。」

 

「………そうか。ごめんな。」

 

「いいんだよ。ああ、そんな悲しそうな顔するもんじゃないよ。ほら、僕のとっておきの豆大福あげるから。マシュには内緒だよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は豆大福をもらい、医務室を出た。フラフラとあてなく歩き、近くにあった廊下のベンチに腰かけた。

 

「………」

 

第一特異点、フランス。本物の戦争、ワイバーン、サーヴァント、そしてファヴニール。あの戦争に、俺はこれからついていけるのか?あの巨大な竜に太刀打ちできたか?俺の力は通用するのか?ロマンやダヴィンチちゃん、職員の皆の頑張りに応えられるのか?

 

 

俺は、とがめ達を守れるのか?

 

 

「七花にい!!」

 

「!」

 

どうやらかなり深く考え込んでいたらしい。目の前には気づかない間に息を切らしてうつむいている六華が立っていた。

 

「ハァ…ハァ…」

 

「六華、そんなに慌ててどうしたんだ?何かあったのか?」

 

六華が顔を上げる。その顔には後悔と不安が纏っているが、それを振り払うように目からは強い光を放っていた。

 

「七花にい!私に虚刀流を教えて!!」

 

「虚刀流を?」

 

「私も強くなりたい……私も皆と戦えるようになりたい!!お願いします!!」

 

頭をさげ懇願される。

 

……ああ、俺はやっぱりバカなんだな。六華の言う通りだ。六華は一歩踏み出し、俺は立ち止まっている。それだけの話だったんだ。なら、兄として、妹より遅れるわけにはいかないな!

 

「……ああ、いいぜ。俺でよければ虚刀流を教えてやる。」

 

「本当!」

 

「ああ……まあ、最初は体力づくりからだけどな。」

 

「体力には自信あるよ!フルマラソンだって走ったことあるんだから!」

 

……眩しいな。純粋に、ただ先だけを見ている。

 

「……俺も強くなるよ。六華。」

 

「……うん。強くなろう、七花にい。」

 

互いに顔を見合い、俺が拳を出すと六華がそれに合わせ拳を返した。こっぱずかしくて顔が赤くなってしまったが、それは六華も同じようだ。

 

「おーい!七花ー!六華ー!何してるんだ~?」

 

とがめが来たようだ。そう言えば廊下で話していたことを忘れていた。俺と六華は声を合わせてこう言った。

 

「「内緒(だ)!!」」

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

召喚語仁―ショウカンガタリ 二―

遅くなりました。申し訳ありません。一度作ったのですが設定間違えて六割ほど書き直してましたw

本当にすみませんでしたぁぁぁぁ!!!!


「よーし、心機一転して召喚の時間だよ!!!」

 

「どうしたロマン、テンションおかしいぞ。」

 

「だって召喚!!ガチャの時間さ!テンション上がらない方がどうかしてるよ!」

 

「いや、前回は何か荘厳な感じで……」

 

「 いやっふぅぅぅ!!!七花にい!召喚の時間だよ!石の貯蔵は十分か!?」

 

「六華!?お前まで!?」

 

「七花、諦めろ……。」

 

「とがめ!」

 

「あの二人はガチャの闇に呑まれている……。」

 

「ガチャの闇……?」

 

「ガチャの闇に呑まれた者は欲しい鯖を当てるために何万も課金して石を買う………そして、爆死するのだ。」

 

「課金?鯖?何をいってるんだとがめ!」

 

「クッハッハッハッハッハ!!!いいことを教えてやるよ【虚刀・鑢】!」

 

「この声、まさか四季崎記紀!?」

 

「俺が見たところお前は………十万課金してピックアップイベント限定鯖が出ずに爆死したぞ!!クッハッハッハッハッハ!!!」

 

「お前まで何を言っているんだー!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ!?……夢か。」

 

六華との約束から数日経ち、六華には虚刀流を教えることになった。まあ最初は体力づくりってことでトレーニングルームでマラソンと筋トレからだけど。俺達の特訓を見て、クーフーリンやエミヤ達も訓練をしているようだった。……やはり英霊ともなると力、スピード、技量も桁が違う。俺も特訓しないとな……。

 

「そう言えばロマンが今日英霊召喚するから集まってくれって言ってたな……。」

 

俺は寝ていたベッドから起き上がって外に行こうとしたとき、何かが腕に当たった。

 

「?」

 

やけに柔らかいものだと思いかけていた毛布をめくった。

 

「おはようございます♥️ま す た あ♥️」

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

七花 は にげだした!

 

「もう、どこに行くのですか、ますたあ♥️」

 

しかし まわりこまれてしまった!

 

「き、清姫!お前、いつの間に!?」

 

「私はいついかなるときでもますたあと一緒ですよ♥️」

 

くそっ、唯一の逃げ場のドアは清姫に回り込まれた。こうなったら誰かに助けを………いや、とがめはだめだ。前回の二の舞になる。ここはロマンを……って、通信手段がない!!念だ!念を送れ藤丸七花!

 

ウィーン

 

来た!ロマン、この状況をなんとか……

 

「七花ー!おはよー!朝だぞー………」

 

「………」

 

「………」

 

メトメガアウー

 

「【嫉刀・咎】!!!」

 

「転身火生三昧!!!」

 

何の罪もないマイルームを嫉妬の暴力が襲う!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ、待ってたよ七花くん。………どうしたんだい?何だかやつれてないかい?」

 

「………マイルームでとがめと清姫がな。」

 

「分かったもういい。」

 

どうにか宝具を使う前に止めることが出来たけど、マイルームで宝具使うとか普通やらないだろ……

 

「それで、今回もあの石を使って召喚するのか?」

 

「そうだね。でも、前回と少し違うのは今回は『縁の清算』というところかな。」

 

「縁の清算?」

 

「フランスで色々なサーヴァントに会っただろ?ジャンヌ・ダルク、マルタ、マリー・アントワネット………彼女らと紡いだ縁を使ってカルデアに召喚するんだ。ほら、清姫が勝手にカルデアに召喚されただろ?あんな感じ。」

 

「ああ……てことは、またジャンヌ達に会えるってことか!」

 

「そういうこと。さあ、召喚に入ろうか。ところで六華ちゃん達はまだこないのかな?」

 

「あー……六華だったらトレーニングかもな。」

 

「トレーニング?」

 

その話をしていると管制室の扉が開き、六華とマシュが入ってきた。

 

「ハァ……ハァ……朝の走り込み、終了……。」

 

「お疲れ様です先輩!ドリンクをどうぞ!」

 

「お疲れ様、だな。きついか?」

 

「まだまだぁ…!」

 

ドリンクを飲みながら息を整える六華。言ってただけあって体力はあるな。

 

「っていうか、七花にいも走ってよ!」

 

「いやその、今朝はちょっと、な……」

 

「六華ちゃん、マシュもお疲れ様。時間に遅れたのはよくないから、ちゃんと連絡してね。さ、今から召喚を始めるよ。そこに立って。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

召喚の光が部屋に満ち溢れる。俺達はサークルの前に立ち召喚される英霊とまみえる。最初に召喚されたのは、

 

「サーヴァント・ルーラー、ジャンヌ・ダルク。お会いできて、本当によかった!」

 

「ジャンヌ!!」

 

一番に召喚されたのはフランスで俺達を助けてくれ、俺に紅蓮の聖女を譲ってくれたジャンヌだった。

 

「人理焼却、人理保障機関カルデア……事情は把握しています。私の力が少しでも役に立つよう、務めを果たさせていただきます!」

 

「改めて、俺の名前は藤丸七花。で、こっちの橙髪のは俺の妹、藤丸六華。こっちのは俺たちの後輩のマシュだ。よろしくな。」

 

「実際に会うのは初めてだね。僕はロマニ・アーキマン。皆からはDr.ロマンと呼ばれているよ。彼らのサポートをしている。後はここにはいないけど、技術局特別名誉顧問としてレオナルド・ダ・ヴィンチ、それに他のサーヴァントと職員がいるよ。今は次の特異点まで時間がある。このカルデアを見回ってくるといいよ。」

 

「よろしくお願いします、七花、六華、マシュ。それにドクター、お言葉に甘えますね。それでは、失礼します。」

 

シューン

 

俺達は扉を開けて出ていくジャンヌの背中を見送った。

 

「さーどんどんいくよ!ここからは連続で召喚されるよ!」

 

ロマンがワクワクしながら石を大量に消費する。

 

召喚の光が回り、三本の線を現す。

 

「さーて、この霊基反応は……五人分だね。」

 

「五人も一気にくるのか……」

 

光が収束する、現れたのは

 

「やあ、キャスターのサーヴァント。ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトだ。僕の音楽が恋しくなかったか「アマデウスゥゥゥゥゥゥ!!!!」ウワァァ!!」

 

アマデウスが召喚された瞬間、上にのし掛かるように新たな英霊が召喚された。アマデウスとの縁を繋ぐように召喚されたのは、

 

「クラスア、アヴェンジャー!アントニオ・サリエリだ!!」

 

フランスでアマデウスを殺そうとしてきたが、敵のアサシンに殺されたサリエリだった。

 

「アマデウスゥゥゥゥ!!!!今こそ貴様を、お前を、天才(モーツァルト)を!!殺してやるぞ、アマデウ「…召喚されたのか。サーヴァント、アサシンってうわぁぁ!!??」「サーヴァント・セイバー、今からあなたの剣となりぃぃぃ!!??」「ヴィヴ・ラ・フラーンス♥️」

 

………いっぱい召喚された。

 

「……はは、初めてだったからね。位置座標とか召喚待機時間とか間違えちゃったかな。」

 

「……これ、そんな話でオチつけていいやつか?」

 

「ハハハ…下から順にアマデウス、サリエリ、敵方だったアサシンのシャルル・アンリ・サンソン、セイバーのシュヴァリエ・デオン、そしてマリー王妃だね。」

 

「カルデアの皆さん、お久しぶり!あら、デオンにサンソン!それにアマデウスに……サリエリ!あなたサリエリね!」

 

「お久しぶりですマリー王妃。本日はお日柄もよく……」

 

「なんだい君マリー相手にだけ態度変わりすぎだろ!てか重いから降りてくれ!!僕の耐久はEなんだぞ!」

 

「あー……マリー。先にジャンヌが来てるから一緒にカルデアを回ったらどうだ?」

 

「まあ!ジャンヌが来ているの?楽しみだわ、行きましょうデオン!」

 

「はい、王妃!」

 

「王妃さま!お久しぶりです!私もついていってもいいですか!?マシュも行く?」

 

「へっ!?あ……そうですね。私もマリーさんともっと話をしてみたいと思っていました。」

 

「まあ、六華!マシュ!変わらず可憐なままね!あと王妃、なんて使わなくていいわ。デオン、あなたもよ。私のことはマリーと呼んでちょうだい?」

 

「そ、そんな恐れ多い……あ、マスター、私はセイバー、シュヴァリエ・デオン。フランスでは狂化に呑まれ敵となっていたこと、本当に申し訳なく思う。」

 

「いいよいいよ、そんな頭下げなくて!これからは仲間なんだから!……ところでデオン、その、あなたって男性?それとも女性なの?」

 

「……一番に聞くことがそれとは、面白いマスターですね。今は男性ですよ、今は。」

 

「ということは男の娘…!すごい!」

 

「挨拶は終わったかしら?ではデオン、六華、マシュ、行きましょう!」

 

男組の上から女性(男性?一人)二人が飛び降り、二人と一緒に六華とマシュも管制室から出ていく。

 

「……おつかれ。」

 

「……私とはあまり面識がありませんよね。アサシン、シャルル・アンリ・サンソンです。アサシンとしては不得ですが医術には多少の心得があるので、よろしくお願いします。あと、このくそ男とは一緒の部屋にしないようお願いします。」

 

「何でだ?」

 

「多分殺してしまうので。」

 

「……そっか。サリエリとも離しておくな。」

 

「いえ、彼とは気が合いそうなのでよいです。それでは私もカルデアを回ってきます。」

 

サンソンも管制室から出ていった。残ったのが、

 

「ゴッドリープ……殺す……貴様を殺してやる……。」

 

「そろっと上からどいてくれないかなー!?」

 

アマデウスに馬乗りになり剣を突き刺そうとしているサリエリと下敷きになってるアマデウスだけだ。

 

「君さっきまで借りてきた猫みたいに大人しかったじゃないか!」

 

「王妃の前ではしたない真似をできるわけがないだろう。では死ね。」

 

「お前ら~!いい加減そこをどけ!召喚するとこにずっといたら召喚できないだろ!」

 

「まあそうだね~。アマデウス、サリエリ、レクリエーション室にはピアノなどの楽器類もある。そこで演奏してきたらどうだい?」

 

「ぬぐっ……」

 

(……見える。アマデウスを殺したい『灰色の男』とアマデウスの演奏が聴きたいサリエリの心の戦いが見える…!)

 

「あとでエミヤくん特製のケーキも持っていくからどうだい?」

 

「いただこう。なにをしているアマデウス!!早くレクリエーション室に行くぞ!!……Mr.ロマン、約束は違わずに。」

 

「はは……(知っててよかった。彼が大の甘党だって)」

 

サリエリは鎧を解きアマデウスの首根っこを掴み引きずりながら管制室を出ていった。あれだけ殺しやすい位置にいるのに殺さないのはそういうことなのだろう。

そういうところだぞサリエリ!!!

 

「ところでケーキはどうするんだ?」

 

「あとでエミヤくんに連絡しておくよ。彼なら大抵のものは作れるだろうし。」

 

「ふーん……じゃあ召喚を続けるのか?」

 

「そうだね、じゃあレッツ召喚といこうか!」

 

石を使い、召喚サークルが回る。

 

「今回は……四人の反応がある。しかも凄い反応だ!今回はちゃんと位置を調整してっと……」

 

英霊が召喚される。サークルに並んで立っていたのは、

 

「サーヴァント・ライダー。真名はマルタ。召喚に応じ参上したわ。」

 

「セイバー・ジークフリート。召喚に応じ参上した。」

 

「……アサシン、佐々木小次郎。ここに参上つかまつった。」

 

……竜殺しトリオ。

 

「マルタ!来てくれると思ってたぜ。」

 

「マスター、お久しぶりです。フランスと同じく、私の力を人理のために……。」

 

「いやそういうのいいから、あとで一戦やろうぜ!ちょっと特訓つけてくれよ!」

 

「………あんたは……っいい度胸ね!もう取り繕うのはいいわ!!足腰たたなくやるまでしてやるから覚悟しておきなさい!」

 

「おう!望むところだぜ!!」

 

二人のやり取りを見てロマンは

 

(ここにとがめちゃんがいなくてよかったな……)

 

心からそう思った、らしい。

 

「ふむ……聖女どの、マスターとの手合わせが終わったら是非私とも一手。そなたとはなにか感じるものがあるな。」

 

「いやないわよ、どこの田舎剣士よ。」

 

「佐々木小次郎、お前とも勝負してみたい。俺の虚刀流がお前にどれだけ通じるのか試してみたい。」

 

「……ふむ、承諾しようマスター、拙者もマスターの虚刀流という拳法には興味がある。」

 

「言っとくが虚刀流は拳法じゃなくて剣術だからな。ていうかロマン、召喚された英霊は四人じゃなかったのか?」

 

ここにはマルタ、ジークフリート、佐々木小次郎の三人しかいない。あと一人は……

 

「アイドルは遅れて現れる!!」

 

嫌な予感がする。ロマンを見るとさっきまでの場所にはおらず管制室の扉が閉まる音がした。

 

マルタ達の方を向くと

 

「あ、マスター、私カルデア見てくるから、後でね!」

 

「拙者も。」

 

「………すまない。」

 

全員が霊体化して管制室からいなくなっていった。

 

お前らぁぁぁぁ!!!!

 

そうこうしているうちにサークル上に全体が形成される。さっきの声でもう誰が召喚されたのかは分かっている。逃げ切れなかったのは俺だけだ。

 

いや、まだだ。まだ負けたわけじゃない。あの最悪の歌声を一度は経験したのだ。二回目なら耐えることができる!!耐えられる!!

 

「ランサー、エリザベート・バートリー、爆誕よ!!早速私の召喚ライブ、聴いていきなさい!!」

 

俺は、勝つ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が次に目を覚ましたのは医務室だった。

 

 

 

 

 






仕事忙しいので次いつになるか分かりません。どうかご容赦を。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

信刀・【愚駄】
人斬語―ヒトキリガタリ―




毎度毎度時間が空いてしまい本当に申し訳ありません。話覚えていないという方はまた読み直して下さっても構いませんことよ?(すみません調子のりました)





 

 

「ここは……」

 

見覚えのある天井。ていうかさっきまでここにいたぞ。俺は医務室のベッドからのっそりと起き上がった。

そうだ、俺はエリザベート・バートリーに……

 

「~~~~!!」

 

ダメだ、思いだそうとすると頭が痛くなる。俺はフラフラと立ちながら部屋を出る。記憶を辿りながら、召喚室まで戻ってくる。

 

「あ、七花くん!おか、え、り………」

 

「ロマン!!お前逃げやがったな!?」

 

「いやーあれは誰でも逃げるでしょ!?」

 

召喚室にいたロマンの襟を掴み持ち上げる。あれは許されない。

 

「……そういえば、エリザベートはどうしたんだ?」

 

「いや下ろして!ぎぶ!ぎぶ!」

 

仕方なくロマンを下ろす。苦しそうにむせているが、俺が味わった苦しみはそんなものではない。

 

「エリザベートならライブ(公害)が終わったあと召喚室からでて『子豚はどこかしら?私がきたって言ってあげなくちゃ♪』って六華ちゃんを探しに言ったよ。いやはや、あれを聞いて立っていられる六華ちゃんは一体どんな耳をしているんだ……」

 

「……同感だ。」

 

「まあ、逃げちゃったのは事実だし、七花くんにはお詫びに、はい。」

 

「これは……」

 

「余った聖晶石だよ。お詫びとして、今回は君の縁を使って召喚を行ってみよう。」

 

「俺の、縁?とがめとの縁みたいなものか。」

 

「そうだね……そう言えば君は前世からの記憶があるんだっけ。そんな稀な人なかなかいないからなあ……。もしかしたら、知り合いとか出てくるかもしれないよ?まあ、座に刻まれるような偉業を持つなんてそうそういないと思うけど。」

 

「うーん………」

 

 

「え、心当たりがあるのかい!?」

 

「……なきにしもあらず、って感じかな……」

 

俺の縁、か。前がとがめだったから、これでまにわにのやつらとか、右衛門左衛門とか来たらいやだなー……あ、姉ちゃんとは、また会いたいな。

 

召喚サークルに石を投げる。サークルが回り、三本の光が軌跡を成す。そこに現れたのは、俺が全く見覚えのない、刀を持ち、鋭い殺気を放つ黒い外套の男だった。

 

「わしが土佐の岡田以蔵じゃ。人斬り以蔵の方が通りがええかの?」

 

「岡田……以蔵?」

 

正直生前の奴らをイメージしていた俺は肩すかしをくらった。

 

「幕末の時代、幕末の四大人斬りと言われた男だね。何でも十人以上の武士を闇討ち……『天誅』として殺してきた近代の英霊だ。クラスはアサシンだね。」

 

「勘違いすな。わしのクラスは人斬りじゃ。」

 

ロマンと以蔵のやりとりも聞き流しながら、俺はその以蔵を見ていた。俺と同じだ。直感的にそう思った。どこが、までは分からないが、俺と以蔵は同じ穴の狢のように同じ種類の生き物だった。

 

「よろしくな、以蔵。」

 

「……ハッ」

 

俺は握手をしようと手を伸ばすが、

 

「わしはおんしと仲良うするきはなか。マスターは殺す相手だけ言えばいいんじゃ。それを殺すのが、わしの役目じゃ。」

 

以蔵はその手を払い、以蔵は召喚室を出ていった。

 

「あ、あんな英霊もいるけど、気にしないでね七花くん!これから会話して、好感度を上げていけばいいんだよ!召喚早々殺されないだけまだましだから!」

 

ロマンがフォローするが、手を払われた瞬間、感じたものがあった。体の重心に響く、とても、とても久しぶりの感覚だった。

 

共感覚。いや、それに似た何かを以蔵からは感じた。俺との縁って、そういうことか。

 

「ロマン、俺が以蔵を召喚した理由がよく分かったぜ。あいつは俺とよく似ている。ちょっと以蔵の所に行ってくる。」

 

「あ、七花くん!」

 

俺は以蔵と話さなきゃいけない。そう思って召喚室を後にした。召喚室に起きた異変には気づかずに。

 

「もう、七花くんは……でも、あれが七花くんの良いところだね。さっ、僕も休憩室いってエミヤくんからケーキもらおう!サリエリくん達にもケーキあげないとね!」

 

ロマンが召喚室を去る。誰もいなくなった部屋で召喚サークルが回る。特異点からのラインにより英霊が呼び出される。数多の謎の生物と共に。

 

「ノブノブゥ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、七花にい!倒れたって聞いたけど大丈夫だったの?」

 

「六華。それに……」

 

静かに杜若の構えをとる。

 

「ちょっと!なんで逃げようとするのよ!!私の独占ライブを観てたんだからありがたく思いなさい!!」

 

ありがたくとか言う前に倒れた原因お前なんだが。

 

「あ、それがさっき言ってたライブ?今度私にも観せてね!」

 

「ふふっ、流石私の子ブタね!次のライブはバックバンド(アマデウスとサリエリ)を引き連れて更に素晴らしいライブにしてあげるわ!!」

 

……今度ロマンに防音室とかないか聞こう。

 

「っと、そうだ。六華、黒い外套のサーヴァントを知らないか?岡田以蔵って言うんだが。」

 

「?知らないよ。七花にいサーヴァント召喚したの?」

 

「ああ。俺と似た奴でな、ちょっと話がしたくてな。」

 

「うん。じゃあ見かけたら声をかけてみるね。」

 

ウーッウーッ

 

突如カルデア内に警報が響き渡る。その瞬間なにかが六華の後ろをよぎった。

 

「六華!!」

 

即座に戦闘への意識に切り替える。なにかは六華の足元から飛びあがり六華を襲う。

 

「虚刀流【牡丹】!」

 

俺は六華の体を足で引き寄せ、なにかからの攻撃を避けさせる。空中で攻撃を空ぶったなにかは何が起きたかわからず「ノッブゥ!?」と叫んでいた。その隙だらけのなにかに、

 

「虚刀流【桜】!!」

 

六華を引き寄せた反動を使い勢いをのせて手刀を放ち、なにかを貫く。

 

「ノブ、ノッブ……」

 

貫かれたなにかは光となって消えていった。

 

「一体何が起こってるんだ!?」

 

「七花にい、まずは管制室に行こう!あそこなら、ドクターもダヴィンチちゃんもいるはず!」

 

「ああ、急ごう!エリザベートも六華を守ってくれよ!」

 

「当たり前じゃない!私のライブを観る前に怪我するなんて許さないんだから!」

 

俺たちは襲ってくるなにかを倒しながら管制室へ向かった。管制室には予想通りロマンとダヴィンチちゃん、あととがめとエミヤ、クーフーリン、そして岡田以蔵がいた。

 

「七花くん、それに六華ちゃんとマシュも、よく来てくれた。今現在何者かが召喚サークルからの逆介入によりあのぐだくだしたなにかを送っている。調べてみたら、極少ながらも特異点が発生している。原因が不明な以上、この特異点になにかあると思って間違いはないだろう。」

 

「おい待て、何であのドラゴン娘がいるんだよ!まさか喚んじまったのかよ!?」

 

「……ダヴィンチ、一刻も早く音を一切通さない防音室の設置を頼む。」

 

「何よー!いいわよ、だったら今ここでゲリラライブを始めてやろうじゃない!私の歌声に聞き惚れなさい!」

 

「やめろやめろ!今そんな話してる場合じゃないだろ!それでロマン、その特異点に行って原因を解明すればいいのか?」

 

「う、うん。とりあえずはここに集まってもらったメンバーでレイシフトを行ってもらう。七花くんにはとがめさん、エミヤくん、岡田くんが付いてくれ。六華ちゃんにはクーフーリンとエリザベートにお願いするよ。」

 

チーム分けが決まり、それぞれで別れた時、とがめが俺の方にとことこと歩いてきた。

 

「七花七花、あの岡田以蔵というやつだが……どことなく、雰囲気が似ているな。昔の七花に。」

 

「あ、やっぱりか?とがめには分かるんだな。」

 

「ふっ、私を誰だと思っている?一年間七花、貴様を所持していた女だぞ。……まあ、今の七花とは似ても似つかないがな。」

 

「よし、レイシフトの準備が整ったよ!コフィンに入っ……」

 

「そこから先は、」

 

「私たちが説明しましょう!!」

 

いきなり管制室の扉が開く。そこにいたのは軍服のようなものを着た少女と桜色の着物を着た少女がいた。

 

「て、あれ?もう全部終わった感じ?」

 

「ちょっとノッブ!あなたがあのナマモノにてこずってるから大事なところ終わっちゃってるじゃないですかヤダー!」

 

「しょうがないじゃろ!今のわし☆0,5レベル1状態じゃぞ!」

 

いきなり現れた少女二人はわーきゃーと騒ぎながらこちらへと向かってきている。害意は感じられないが、なんというかこう、あの二人からはぐだぐだした何かを感じる。具体的に言うと頭身が変わる的な。

 

「き、君たちは?」

 

「紹介が遅れましたね。私のことは桜セイバーとでもお呼びください。でこっちのくぎゅうが」

 

「第六て…ゲフンゲフン、魔人アーチャーじゃ!てか、くぎゅうって何じゃ?」

 

「今回の原因は私たちにも一因があります。私たちにも手伝わせてください!」

 

頭を下げ懇願してくる桜セイバー。魔人アーチャーの方はふんぞりかえってやがる。

 

「……どうする?七花くん。」

 

そこで俺にふるのか、ロマンよ。

 

「んー……いいんじゃないのか?そんなに悪い奴らには見えないし、桜セイバーって言ったっけ?お前相当腕がたつだろ。このあとの特異点で役に立つんじゃないか?」

 

「おいいいいい!わしはスルーかの!?」

 

「いや、そっちからは……なんか危ない気配しかしないし。」

 

「危ないとはなんじゃ危ないとは!」

 

 

 

 

 

 

 

こうして、桜セイバーと魔人アーチャーを加えて再度特異点へと向かうことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたんだいロマン、難しい顔をして。」

 

「あ、ダヴィンチちゃん。いや、あのナマモノ(仮称)とさっきの魔人アーチャー、なんか似てない?」

 

「そこは気にしてはいけないね!!」

 

 

 

 

 

 






最後がぐだぐだになるのは是非もないよネ!
バレンタイン頑張ろー!(なおリアル)



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

流星語―リュウセイガタリ―


大変遅くなってしまい申し訳ありませんでした。書く時間、気力ともになくなっていましたが、昔の感想を読み返し、書く気力が沸き上がりました。これからもよろしくお願いします。




 

 

 

 

 

「ここは……」

 

「七花にいも着いたね、ちょっとあれ見て。」

 

レイシフトした先は森の中、その場は俺が最後だったようで周りには六華、マシュ、とがめ達サーヴァントも揃っていた。六華が指差した先には

 

「なんだ、あの人数……」

 

月明かりに照らされ、青白く光る開けた野原を、何百、何千もの軍勢が居座っていた。

 

「うーわ、なんじゃあの量。めんどくさいことこの上ないのお。」

 

「魔人アーチャー、あれ、どうにかできるか?」

 

「無理……と言うのは簡単じゃが、この第六……ゲフン、このわしにかかれば、まあ首魁を討伐するくらいなら出来るじゃろ。この夜はわしらに味方してるからの。」

 

「……夜襲か!」

 

「そう、夜襲じゃ!この薄光、わしらが少し動こうが隠してくれるからのぉ、その機に乗じて、じゃ。」

 

「はっ、下らん。」

 

声をあげたのはアサシン、岡田以蔵だった。

 

「こんなもん、わしが行って全員首跳ねればそれでしまいじゃ。悩む必要なか。」

 

「以蔵……それは流石に無理ってもんだろ。何千人もいるんだぞ?」

 

「はっ、それがどした!わしは剣の天才じゃ!こんくらいのこと、なんちゃないわ!」

 

「あまり大声を出すでない!あちらに気づかれたらどうする!」

 

だが、その注意は少し遅かったようだ。

 

「誰だ!」

 

「ほら、以蔵が大声出すから!」

 

「は、わしの首級が一つ増えるだけじゃ!」

 

以蔵が勇ましく飛び出していく。

 

「さてはよしつね様を狙う不届きものだな!この松平アーラシュが成敗してくれる!この岩をも砕く強弓を受けてみよ!!」

 

「そんな矢っころ、当たると思うか!!」

 

松平アーラシュが放つ矢を以蔵は軽々と避け、切り捨てていく。外れた矢はその豪語の通りに木を凪ぎ払い、どこまでも突き進んでいった。

 

「天、誅!」

 

そんな矢には目もくれずアーラシュ目掛けて斬りかかる以蔵。足場の悪さを気にかけず森だとは思えない速度で走っていく。

 

「ぐぁぁぁ!!」

 

袈裟斬りがもろに入り、深手を負い後ろへ距離をとるアーラシュ。明らかな致命傷だが、頑強EXにより霊基にまでは至っていない。が、それでもこのままでは消滅するのは免れないだろう。

 

「ぐ、ぐぐ、こうなっては、我が奥義を見せるしかない!『陽のいと聖なる主よ……

 

その詠唱とともに、アーラシュの魔力が高まっていく。

 

「おい、これなんかやばくないか?」

 

その魔力の高まりにより、森全体が揺れ始めていた。まるで地面が怯えているかのように。

 

「は、先に首とってしまえば勝ちじゃ!」

 

「ダメだ以蔵!あれだけ力を込めてるんだ、死んだ時にどうなるか分からん!逃げるぞ!!」

 

俺は今にも飛びかかる以蔵を取っ捕まえ、他のやつらと同様に逃げ出した。

 

「で、どこに逃げるんだよ!」

 

「こうなったらこのまま突撃じゃ!あの大軍の中に突っ込むぞ!!戦わんくていいからそのまま逃げろ!!」

 

「嘘だろー!!」

 

森から飛び出し、一気に敵軍に突っ込んでいく俺達。

 

「ライダーの一人でも連れてくればよかったー!」

 

「んなこと言っててもしょうがねえだろ!!俺が道を空ける、そこを通れ!おい竜娘、お前も手伝え!」

 

「はー!?何で私が青いのの手伝いなんかしないといけないのよ!……って言いたいけど、こんな状況だし、なにより子犬を守らないとね!!ランサー、私に合わせなさいよ!」

 

「お前もランサーだろうが!!『突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)』!!」

 

「『鮮血魔嬢(バートリ・エルジェーベント)』!!」

 

二人の対軍宝具により、軍の一部に穴が出来る。そこに俺達は飛び込み、一気に走り抜けた。ここまでくれば以蔵も諦め、一緒に走ってくれた。これでとがめを背負うことに集中できる。

 

「て、敵襲!敵襲ー!!」

 

敵軍も何が起きたのかを理解し、臨戦態勢に入った。だが俺達は戦をしにきたわけではない。一刻も早くここから離れるために全力で走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ……ハァ……これだけ離れれば大丈夫か?」

 

「あの軍が追いかけているのが見えるが、これだけ離れていれば大丈夫だろう。七花、ありがとう。」

 

俺はとがめを背中から下ろし、辺りを見回す。こちらに欠けた人員は見当たらず、敵からも十分に距離をとれている。完全に安心しきっていた。その光が見えるまでは。

 

「……!?超巨大な魔力反応!!さっきの山からだ!!この距離でも届くというのか……!?『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』でも耐えられんぞ!!」

 

「さっきのやつか!何か手は……」

 

目視でも見えるほど巨大な光がこちらへ向かっているのが見えた。その大きさは、周辺一体を呑み込んで余りあるものだった。

 

「……仕方ない。ランサー、マスターと六華を連れて逃げろ。お前が一番速い。」

 

「なっ、待てエミヤ!お前……」

 

「マスター、我々サーヴァントはここで死んでもカルデアで再召喚できる。だけど、君達は替えが効かない、人類最後のマスター達だ。ここで失う訳にはいかない。」

 

「……そういうわけだ。マスター、七花、行くぞ。」

 

「えっ、あ、待っ」

 

クーフーリンは有無を言わさず六華を担ぎ走り出した。

 

「とがめ……」

 

「……エミヤの言う通りだ。これでお別れということはない。私では足手まといになる。」

 

「だからって……」

 

「行け、七花!!また私を悲しませる気か!!」

 

「………」

 

俺は黙ってとがめから背を向ける。

 

「……七花、餞別だ。」

 

背中から、刀が刺される感覚がした。それは刀とも呼べないほど、短い感覚だった。

 

「『悪刀・鐚』、これでどこまでも走ることが出来るだろう。………またな。」

 

「……やっぱり無理だ、とがめ。」

 

「へ?」

 

悪刀・鐚によって強化された体を使い、とがめをすぐにお姫様抱っこする。

 

「エミヤ、以蔵!!絶対にまた会うぞ!!」

 

「フッ、君らしい。さらばだ、マスター!!」

 

俺はとがめを抱いて走り出した。悪刀・鐚により、疲れや苦しみはない。前のクーフーリンに追い付けるよう、全力疾走でどこまでも走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿者!!私を置いていけばもっと早く逃げれただろうに!!」

 

「それでも、俺は後悔しないやり方をしたかったんだよ。」

 

とがめを抱いて走る。以蔵達と別れる際『嫌じゃ、わしはまだ死にとうない!!』『あ、おい、ワープ使うの卑怯だぞ沖田ぁ!』『ヘヘーン私だけでも逃げ延びてみせ……コフッ!』とか聞こえたが、以蔵達は無事逃げ切れただろうか。エミヤやエリザベートは、あの光に対して少しでも時間稼ぎをしてくれている。例えここでは会えずとも、お前達の心意気は絶対に無駄にはしない。

 

少し走ると、六華を担いだクーフーリンが待っていた。

 

「とがめの嬢ちゃんも連れてきたのか……まあ、それがお前の選択だ。ちゃんと最後まで貫き通せよ。」

 

「言われずとも。とがめは俺が守る。」

 

数瞬後、大地が揺れた。大爆発が起きたように土煙が上がり、昔見た爆弾のように空への柱が立った。

 

「……ここから先は俺達だけだ。気をつけて進むぞ。」

 

「……ああ。」

 

悲しんでいる暇はない。たとえ四人でもこの特異点は修正しなければならない、それが俺達に託された使命だから。

 

 

 

 

……ァ……

 

「?」

 

「どうした、七花。」

 

「いや、何か聞こえたような…」

 

……ター……

 

「……聞こえたな。一体どこから……」

 

……スター……

 

「……まさか。」

 

先程の爆発痕を見る。煙は未だに上がっている。そのなかから、幾人かの人影がこちらへと飛んできているのが見えてしまった。

 

「マスターーー!!!!」

 

「うわぁぁぁぁ!!!!」

 

エミヤ、以蔵、エリザベート、魔神アーチャー、桜セイバーの全員が爆風により飛ばされてきた。全員が全員顔面から落ち、土下座のようなポーズで滑り込んできた。

 

「……だ、大丈夫か?」

 

「……ああ、大丈夫だ、マスター。私たちは全員無事だ。」

 

「よくあの爆発で生きてたな。ギャグ補正か?」

 

「それはよく分からないが……あの光は私たちに落ちると思っていたが、眼前にいた軍隊を呑み込んで落ちたのだ。私たちはその余波を受けてしまったがね。」

 

「ハッ!生きとる!わしゃ生きとるんか!!」

 

「ノッブ、あなたあのとき私を撃ちましたよね!何してくれてんですか!!」

 

「一人だけ逃げようとするからじゃ!!当てなかっただけありがたく思え!!」

 

「……とりあえず、皆無事で良かったよ。あんだけ大見得はってたのにな。」

 

「マスター、私の心は硝子だぞ?」

 

「どや顔で言われてもなあ……」

 

何にせよ、皆が生きていてくれたのはとても嬉しく、ありがたかった。とりあえず帰ったらエミヤとの別れのシーンを皆で見てやることにしよう。珍道中はまだまだ続くことになりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~一方その頃~

 

時間は少し遡る。

 

「逃げたか……しかし、我が弓の射程距離は2500km!!逃げられることなし!!『流星一(ステ)』……ぐぁっ!!」

 

ステラを放つ瞬間、先程の戦闘に耐えきれなかった木がアーラシュに倒れ込み頭を強打した。

 

「……やべ、ちょっとずれたな。」

 

その言葉が最後となり、アーラシュは消滅した。一筋の冷や汗を残して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





アーラシュさんを強く書きたかったけど本気だすと勝てる気しなかったので早々に退場。是非もないよネ!



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

漂流語─ヒョウリュウガタリ─




毎度毎度遅くなってしまい申し訳ありません。今回fate関係ない人出るので先に謝っておきます。






 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おい、あれ、あの女!!なんであいつがここにいるんだ!?」

 

「それを言うなら俺達も、何でこんなところにいるんだろうな……。まあ、またお前達に会えて嬉しいぜ、俺は。」

 

「ば、馬鹿野郎!!恥ずかしいだろ!!……俺だって、嬉しくない訳じゃないからな!!」

 

「ふふ、私も嬉しいです。蟷螂さん、蝶々さん。」

 

「そうだな、蜜蜂……とにかく今は、相手の戦力をバーサーカー達に伝える方が先だ。」

 

「それもそうだな!まさかあの白女がいるとはな……俺達を裏切ったことを後悔させてやる!!……ところで、あの女はいないよな?」

 

「あの女?……ああ、あの化け物は見当たらない。あれがいたら俺は早々に逃げている。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何者かに見られているとはつゆ程も思わず、七花一行は旅路を続けていた。

 

「む……この磯の香り、海が近いな。先程の場所からは随分遠くきたようだがマスター、ここで一つ食事とするか?」

 

「お、釣りか!お前は料理の腕だけは一流だからな。旨い飯頼むぜ。」

 

「貴様のために作るわけではないことを肝に命じておけ。だが、この人数分となると相当な量が必要だな。」

 

「エミヤの飯か……楽しみだな。とがめもそう思うだろ?」

 

「む……まあ、エミヤの料理の旨さは確かだ。女子としては、少々複雑な気分だが……」

 

俺の頭は海の幸を使ったエミヤの料理でいっぱいになっていた。潮風の香りは徐々に強くなり、高台に出ると、森の向こうに一面の海が見えた。

 

「海か……毛利との合戦を思い出すの。あいつら固いから面倒じゃったのー。まあうちの船の方が固かったんだけどね!物理的に!」

 

「ところで私の水着ってまだですかね?今年の夏に出る?本当ですよね?」

 

海が見えたからか、テンションが上がっている奴がちょびちょびと。サーヴァントにも水着とかあるのか………

 

とがめの水着か………

 

「む、七花。どうした?」

 

「へ?や、何でもない。」

 

いつか一緒に海で遊べたらいいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

森と同化し、風のように走り去る三つの影。忍びならば当たり前だと言わんばかりの速度で駆け、森の抜けた先、4つの人影へと向かう。

 

 

「おう、戻ったか。して、どうじゃ。敵の数は。」

 

「ああ、総勢8人。うちサーヴァントが6、マスターが2だ。2人ほど、見知った顔があった。」

 

「てことは、」

 

「ああ、俺達の世界の住人だ。名を奇策士とがめ。そして、恐らくだがマスターの1人は鑢七花だ。」

 

平行世界のサーヴァントという言葉に多少驚いた様子もあったが、4人のうちの1人、バーサーカーは動揺を見せずに話を続けた。

 

「どこが出とかはいい。そいつらの戦力は。」

 

「とがめと呼ばれる白髪の女の戦力はほぼ0だ。サーヴァントとしてのスキルがあるかもしれんがあの女自体は戦えない。そして鑢七花だが……聞いた話によれば、日本最強の剣士だそうだ。(あの化け物の弟ならば、それもおかしくないだろう)」

 

自信の知る最も恐れるものの名は事態をややこしくするために口をつぐむ。蟷螂は七花本人には生前会ったことがないため真庭忍軍の又聞きでのみ聞いている。

 

「へえ、日本最強。」

 

話を聞いたとたん、バーサーカーの空気が変わった。

 

「そりゃえいぜよ。わしの血が滾って止まらん!!伯父貴はどうじゃ。うずうずしてこんか!」

 

「いや、俺は確かに島津とかいう訳の分からん属性をつけられたが、お前の伯父貴って訳じゃ……」

 

「それを言うなら私は長曽我部だぞ。」

 

「あんたら男どもの名前なんてどうでもいいわよ!!何で神代の魔女であるこの私が極東の、一時代の武将なんかにならなきゃいけないのよ!!」

 

「細かいことはよか!!敵が攻めてきちょる。その首を取る。ワシがやるのは、それだけじゃ。」

 

「「「のぶのぶぅ!」」」

 

「おう!ちびどももええ気迫じゃ。……格好は似ても似つかんが……おもしい鬨の声じゃ!信も喜んどるじゃろ!」

 

理知的なバーサーカーは他のサーヴァントと軍義を行い、策をたてる。決戦のときは近い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうそろそろ海に着くか?」

 

高台から降り、また森のなかを進むことになった。

 

「いいや、まだ先だろう。」

 

「たまには海で遊ぶのも楽しそうだねー!」

 

「六華、ここが特異点だってことを忘れるなよ。」

 

「はーい!」

 

分かっているのか分かっていないのか、能天気そうに六華は答える。その本質がどうかは、すぐに分かることになった。

 

「……!!」

 

最初に気付いたのはクー・フーリン。続いてエミヤ。

 

「マスター、俺の近くによれ!」

 

「I am the born of my sword……熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!!!」

瞬間、剣の雨が降り注ぐ。空に淡い光で開かれた七つの花弁が、数多の火花を散らしながらそれを防ぐ。打ち漏らしはクー・フーリン、他サーヴァントが防いでいく。一部こふってるのもいるが気にしてはいけない。

 

「マスター!敵サーヴァントには()がいる!物量にはきりがないと思った方がいい!!」

 

剣の雨が花弁を切り裂くが、花弁は未だ健在である。さなか、森の奥から獣のように練り穿たれる魔力の渦。

 

「…!!」

 

一本の赤い光が森から飛び出し花弁の中央へと向かっていく。狂暴な牙は花弁を食い散らかし、魔力が籠りきっていない熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)をパリンパリンと割っていき、最後の一枚まで数秒も持たなかった。

 

「ぐっ……この槍は……!!」

 

最後の一枚が割れ、牙が七花達を襲う。その瞬間を、蒼いランサーは見逃さない。溜めた魔力を使い槍の真価を解放させる。全速、全力を用いて槍を振るい赤い光を弾き飛ばす。

 

「………ゲイ・ボルク。これを持ってるとしたらスカサハか、もしくは………」

 

弾き飛ばした赤い光……ゲイ・ボルクは自然落下から動きを変え、意識があるかのように直線的に飛翔する。その先には青い戦士が一人。

 

「……俺か。」

 

「ご名答。カルデアの俺か。自分自身と戦えるとは、面白いこともあるもんだ!!」

 

ゲイ・ボルクを受け止め、俺たちの前に現れたのは、俺たちを今さっき守ってくれたクーフーリンだった。

 

「あー、島津セタンタ、貴様らの相手となってやる!!」

 

「………島津セタンタ?クーフーリンじゃないのか?」

 

「俺もわからねえんだよ!!こんな特異点に呼び出されたと思えば島津って名付けられるし、変なバーサーかーになつかれるし!俺もわからねえんだよ!」

 

「……変なバーサーカー?」

 

「……喋りすぎた。まあ、これから死ぬやつらには関係ないな。」

 

おちゃらけた空気から一転、緊迫した空気が流れる。だがそれはこちらも同じこと。

 

「おいおい、こっちにも俺がいることを忘れるなよっ!」

 

己を獲物と割りきり、槍に魔力を込めるカルデア側のクーフーリン。互いに同等の圧力を感じる。だが、互いに同等の実力なら、勝負はつくのか?

 

「安心しろ、俺はマスターのサーヴァントだ。負けることはねえよ!」

 

その言葉を皮切りに、クーフーリンは島津セタンタへと突撃する。ためた魔力は推進力として十分な役割を持ち、島津セタンタとつばぜり合い、森のなかへと消えていった。

 

「こっちは任せろ!マスター、七花!お前らはそっちを頼んだぞ!」

 

その言葉を最後に槍戟の音を鳴らしながらクーフーリン達は見えなくなっていった。

 

「こっちの敵……?そうだ!エミヤは……」

 

「あの赤いのなら『敵に私がいるなら、それは私が相手をしなければならない』とかいって跳んでったぞ。さぁヴんとっていうのは何でもありか?」

 

「以蔵、お前はこっちに残ったんだな。」

 

「………ますたぁを守るのが、さぁゔぁんとの役目なんじゃろ。わしは剣じゃ。おまんが振るえばええ。んなことより、来るぞ。」

 

以蔵が指差した先、森の奥から何かが来る。ぞろぞろと大量の足音を引き連れて現れたのは……

 

「「「「ノッブゥ!」」」」

 

「ってわしの偽物どもか!!」

 

「あ、いたんだアーチャー」

 

「セリフ少ないからって忘れないでね!?」

 

「待て、まだいる。」

 

小さい魔神アーチャー達よりも後方、鎧のような音をガッチャガッチャと鳴らしながら赤い影がそこにはいた。

 

──視線が、合う。

 

ゾゾゾッ!

 

「、七花にい?」

 

「先輩、私の後ろに!」

 

隠す気もない殺気の波。俺は臨戦態勢であったにも関わらず、構えるのが遅れてしまった。マシュ、以蔵、桜セイバー、魔神アーチャーも自分達の思うように構えをとる。

 

「おんしが、カルデアのマスターか?」

 

「……そうだ。」

 

「で、名はぁ?」

 

「……?」

 

「戦場じゃ、名乗るのは当たり前じゃろぉ。」

 

「……藤丸七花だ。」

 

「……そうか、そうか。七花、やはり『日本最強』の鑢七花か!」

 

「……!!何故その名前を知っている!!」

 

「おんしが名乗ったんじゃ。わしも名乗らん訳にはいかん。」

 

暗がりから赤い影、光る瞳が光に照らされてその風貌が明らかになる。

 

黒髪黒目、日本刀と思わしき刀、赤い鎧武者の風貌。

 

「わしの名は島津家久の息子、島津豊久!!日本最強、そん首おいてけ!!」

 

 

 

 

 

 







ドリフターズにはまったので出しました。後悔はあまりしてないですが、刀語のキャラにちょうどいいのがいなかったので……



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

首刈語─クビガリガタリ─



間が大幅に空いてしまい、本当に申し訳ありませんでしたぁぁぁぁ!!!仕事内容が変わって大変だったり、モチベーションが上がらなかったのもありますが、本当に申し訳ありません。これからも亀更新になると思いますが、頑張って早く書けるようにします!!感想、評価をよろしくお願いいたします!!






 

 

 

 

 

 

 

 

 

「島津豊久……?あいつがさっきいっていたバーサーカーか?」

 

「かもしれん。島津と言えば、九州の家名だ。九州一強を誇った戦闘集団。それが島津だ。」

 

「ハッハッハ!おんしらもワシらを知っとるか!おいの家族は、どこまでいっても戦馬鹿じゃのう!……あぁ?」

 

ダンダンダァン!

 

「後ろががら空きですよ!!」

 

「すまんな、わしら戦前の名乗りとか知らん系女子なのじゃ!」

 

魔神アーチャーによる射撃、そして桜セイバーが一瞬のうちに島津の背後へと回り込む。だが、

 

「こざかしゃぁぁぁ!!!!」

 

鎧姿でありながら、その重さを感じさせない速度、そして完成形変体刀12本にも見られなかった、特徴的な長い刀。それを振り抜き、自分を狙った弾丸を致命傷になる最低限の数だけ弾き飛ばす。振り切った勢いを使い、背後から襲いかかる桜セイバーへと回し蹴りを行い牽制する。

 

「島津……薩長同盟……慈悲はない!沖田総司、参る!」

 

「火縄避けるとかうっそじゃろ。」

 

「薩長……?前にどこかで聞いたかもしれんが、よか。あんなに大量の鉄砲使うっちゃあ、信が喜びそうじゃ!」

 

「信……?貴様、ワシを天下の織田信長と知っての狼藉か!!」

 

魔神アーチャー……織田信長の名前を聴いたとき、島津の顔が、少しだけ緩んだ。

 

「お前が織田信長?はっ、冗談はその格好だけにしときぃ。第一、お前は女子じゃ。織田信長は男じゃ。わしゃこの目で見たんじゃ。」

 

……確かに、俺も歴史で習った織田信長は男と記されていた。そのことを突かれた女信長は……不敵に笑っていた。

 

「……確かに、そなたが会ったのは『織田信長』なのかもしれん。近頃わしも増えたからのお。じゃが、今お前の目の前にいるわし、ここにいるわしは、誰がなんと言おうと『織田信長』じゃ。それは誰がなんと言おうと、ここにわしがいる限り、永劫変わることはない!!」

 

その体から沸き上がる覇気は、戦国を統べる一歩手前まで行った、まさしく魔王と呼ばれるにふさわしいものだった。さっき「おにぎりの具は鮭にかぎるの~」とか言ってたやつと同一人物とは思えない。

 

「……くはっ!この気迫、まさしく信か!まさか女子の信長に会えるとは思いもせんかった!!……んだが、女子は切らん。今切るのは、戦国最強。おまんの首じゃ。」

 

バーサーカーは沖田と信長切っ先を変え、こちらへと向ける。その目は人が人を見る目ではなく、獣が獲物を見る目だった。

 

「織田信長と認めた上で、わしを侮るか!沖田!」

 

「はい!サポートお願いしますよ、ノッブ!」

 

再度バーサーカーを狙う沖田と信長。しかし、

 

「「「「「「ノブノブゥ!」」」」」」

 

ちびノブが大量に集まり文字通り壁になって信長達に立ちふさがる。

 

「「んなぁぁ!!??」」

 

信長の火縄銃、沖田の突撃もそのちびノブの壁に飲まれ、意味をなさない。二人はそのままちびノブによって運ばれ、視界から消えていった。

 

「これであの女狐にも義理は果たしたじゃろ。あとは……お前じゃ、戦国最強。」

 

こちらを指差し、刀を肩にかけるその姿からは、今までに感じたこともないほどの殺気を放っていた。お前の首をもらう、その意思がはっきりと伝わってきた。その中、気配を遮断し、命を狙う影ひとつ。

 

「戦国最強戦国最強と、さっきから聞いてりゃこのわしを無視かぁ!」

 

「以蔵!」

 

背後から不意打ちを狙う以蔵。以蔵の突きを担いだ刀でいなし、弾く。不意打ちは通用せず、距離をとらされる以蔵。

 

「このわしが、なめられたままでひけにゃあ!!!」

 

先程の沖田の突撃に負けず劣らずの勢いでバーサーカーへと突撃する。それを目で追いながらバーサーカーは、

 

「…何じゃ!?」

 

口角を高く上げ、笑顔を作っていた。

 

「よか。おまんのような功名がきは大好きじゃ。わしの首、獲れるものなら獲ってみろぉ!!」

 

沖田や信長と相手した時とは明らかに違う、戦いに対する異常な熱量。その熱量が、意思を、体を持ちながら以蔵へと突っ込んでいった。

 

「ぅうらぁ!!」

 

恐怖を振り払うように声を出し、更に速度を上げる以蔵。だが、

 

「おまん、その構え、ジゲン使うんか?中々いいが、まだ甘かぁ!!」

 

その速度より更に速く、以蔵に突っ込み鍔迫り合いにさせるバーサーカー。だが、勢いがあまりにも違いすぎた。

 

「そん首、よこせぇ!!」

 

「ぐあぁ!!」

 

勢いのままに振り抜かれる刀。首を狙って振り抜かれた一撃は、刀を半ばから折り、以蔵を森の奥へと吹き飛ばした。その異常な飛び方から自分から後ろへと跳んだのだと理解するのに数瞬かかったが、俺は未だ動けずにいた。

 

「七花!」

 

「、とがめ!」

 

「六華もマシュもここから離れた、私たちも引くぞ!」

 

「……ああ。」

 

「待たんかぁ!戦国最強!!」

 

以蔵が時間を稼いでいる間に、俺ととがめはバーサーカーから引いた。

 

「待てぇぇぇぇぇ!!!!!戦国最強ぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐぅ……何じゃあの馬鹿力は………」

 

(自分から後ろに跳んだはいいが、ここまで飛ばされるとはな……刀も折れとる……)

 

辺りは一面緑。相当森の奥まで飛ばされたようだ。幸い致命傷はないが、服は破かれ、頭から少し血が流れている。受けた刀は半ばから折れていた。

 

「ここは……」

 

瞬間、殺気。

 

「ぬわぁ!!」

 

首元を何かが通る。足元が滑ったために何とか服が切れるだけですんだ。

 

「避けたか、我が真庭忍法爪合わせを。」

 

「なんじゃ貴様ぁ!」

 

体勢を整えながら声のする方へ構える。そこには木の影に潜みながらこちらを見る緑の影、真庭蟷螂がいた。

 

(切れた感じ、刃物持ちか……見た感じ忍びみたいなもんか?てことはクナイか……)

 

「真庭忍軍虫組、貴様を殺すものだ。」

 

「忍びが簡単に姿現すもんじゃなぁ!!」

 

突撃、足元が緩いとはいえ、それほど距離がないこともありすぐに距離を詰められた。避けるか、懐からクナイでも取り出すか、空いた両手を見ながら対応を見ていた。だが忍びは空いた手のままこちらへ手を突き出し、

 

「ぬわぁぁ!!」

 

爪が伸びた。その爪は刀とかちあっても折れることなく、こちらへ伸び続けた。

 

「な、なんじゃあ!?」

 

刀で受け流しながら退却、忍びを見ると伸びていた爪がどんどん縮んで元の長さへ戻っていた。

 

「これが我が忍法爪合わせ。その強度は刀をも上回る!!」

 

再度爪を伸ばしこちらへと襲いかかる。だが、一度見てしまえば、

 

「そんな曲芸が、このわし相手に届くかぁ!」

 

岡田以蔵に対応できない訳がない。爪の軌道を見切り、折れた刀で首を狙う。

 

「ああ、そうだろうな。俺は囮だ。」

 

「!?ぐっ!?」

 

刀を振り切る瞬間、腕に強い痛みが走り、腕が鈍った。その隙に忍びは飛び退き、刀は空を切った。

 

「仲、間か!!」

 

「当然だ。我らは虫組、誰も私一人で戦うとは言っていない。お前の仲間も、私の仲間が狙っている。」

 

「あぁ?」

 

「女子供を手にかけるのは忍びないがな……喋りすぎた。では死ね。」

 

……敵は少なくとも二人。目の前の忍びと、なにかを飛ばしてくる敵。腕の感触から、小石のようなもののはず……感覚を研ぎ澄ませ。このわしが、忍びなんぞに手玉をとられてたまるか!!

 

「忍法爪合わせ!!」

 

「うらぁ!」

 

刀と爪が切り結ぶ。以蔵は鍔迫り合いになることなく、すぐに離れ、森の中を駆け始めた。

 

(狙いをつけられなければ、弾も当たらんじゃろ!!)

 

しかし、その狙いはすぐに外れることになる。

 

「ぐっ!!」

 

(今度は足か!!)

 

動き回っているにも関わらず狙いは外れない。今度は足へと刺さり、以蔵の動きを阻害する。

 

「流石は蜜蜂。百発百中の名は伊達じゃないな。」

 

(追撃が来る!)

 

以蔵は何とか体を動かし、不恰好に転がりながら弾を避ける。今まで自分がいた場所に弾が刺さる。そこへ刺さっていたのはまきびしだった。

 

「まきびしをうっとったんか!!」

 

「今さら気づいても遅い!!」

 

爪合わせが体勢を崩した以蔵に襲いかかる。

 

(これは、避けられん!!)

 

ならばと以蔵は刀で迎撃しようとする。だが、

 

「ぐあっ!!」

 

両手首を撃たれ、刀を落とす。迎撃する術もなく、爪合わせが以蔵へと向かう。

 

(ここまでか……!!)

 

「で、諦めてたまるかぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「令呪を持って命ずる!以蔵を守って!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

直後間に割り込まれる黒い盾。その盾は以蔵へと向かう爪合わせを阻み、爪を折ってみせた。

 

「大丈夫ですか、以蔵さん!!」

 

「助けに来たよ!!」

 

そこにいたのは盾を持つ少女と、橙髪のマスターの妹、六華。六華はすぐさま以蔵へと駆け寄り、魔術礼装による回復を行った。

 

「バカな、お前らは蝶々が……!!蝶々がやられただと!?ありえない!!」

 

明らかに狼狽える蟷螂。爪も折れ、体勢は大きく崩れている。ならばやるべきことは一つ。

 

「がぁぁぁぁ!!!」

 

回復した体を無理やり跳ね上げる。回復したといっても微々たる程度、手首は使えない。

 

(その程度で刀を下ろすか!わしは、わしは!!)

 

「剣の、天才じゃぁぁぁぁ!!!」

 

落ちた刀を殴り、無理やり空へと浮かせる。撃たれていない足を使い、力を集中させて飛び上がる。蟷螂からはマシュの盾が死角となり以蔵の行動は読めなかった。

 

それは剣客の意地か、はたまた己の証明か。体が悲鳴を上げながら以蔵は飛ぶ。浮かぶ刀を口で取り、自由落下に身を任せる。蟷螂が気づくがもう遅い。

 

「……蜜蜂、逃げろ。」

 

それが、蟷螂の最後の言葉だった。

 

「い、以蔵さん!!大丈夫ですか!?」

 

「わしゃあいい!!まだ敵はおるぞ!!」

 

空中から自由落下したことで土へと突っ込んだ以蔵。体はあちこちから血が出ており、見た目は全く大丈夫ではなかった。以蔵の言葉に気を引き締め、盾を構えるマシュ。六華もマシュの盾に隠れ、索敵している。

 

「……来ませんね。」

 

「まさか、本当に逃げたか……?」

 

パキリ、枝を踏む音がした。全員で音がした方を向く。そこにいたのは真庭蜂蜜、ではなく、赤い外套の男だった。

 

「君たちが探している相手なら、私が倒したぞ。」

 

「アーチャー!!無事だったんだね!!」

 

「おまんは……ああ、二刀使いの優男か、覚えちょるぞ。」

 

「一応私はアーチャーなんだがね。これで敵は全部か?」

 

「……分からん。そういうお前はどうなんや。これまで何しとった。」

 

「私は私で戦っていたよ。自分とね」

 

「あ?そりゃどういう……」

 

「……敵からの攻撃も落ち着いたようだ。視界が良好な場所まで移動するべきだろう。マシュは警戒を解かないよう。」

 

「は、はい!」

 

「話はそこへ着いたらでいいか、岡田以蔵。」

 

「……分かった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

射手語─アーチャーガタリ─



もう誰も待ってないかと思いますが大変長らくお待たせしました。時間を見て頑張って書いていこうと思います。今でも読んでくれたら嬉しいです。






 

 

「では、状況を整理しよう。」

 

エミヤと合流した六華、マシュ、以蔵は戦闘後安全を確認した後、他のメンバーとの合流をはかりながら、今までの状況を振り返っていた。

 

「私は敵の攻撃が刀や剣の射出、という極めて特殊な攻撃法から敵側にも私がいると判断し、先行して私を叩いた。そのため、マスター達とは早めに別れたんだ。マスターが今どこにいるかは分からないな。」

 

「私とマシュは七花にいと一緒にいたんだけど、バーサーカーが現れて、とがめさんが逃げろって言って、私たちだけ……だから、七花にいたちがどこにいるかは私たちも分からない……」

 

「逃げてる途中で敵サーヴァントと遭遇、戦闘になりました。敵は素早い動きで翻弄してきましたが、先輩の指示でどうにか倒すことができました。その後は、音のする方へ向かったら以蔵さんが戦っているところと合流し……」

 

「今に至る、ってわけじゃな。おい、エミヤ。当然向こう側のお前も倒したんやろなぁ。」

 

以蔵の質問にエミヤはニヒルな笑みをもって返す。煽り耐性の無い以蔵はそれだけでキレそうになったが魔力が少ないのと六華、マシュに抑えられたため事なきを得た。

 

「当然だ。私自身と戦うのに私ほどもってこいのサーヴァントはいないだろう。……まあ今回は、策が上手くいったというのが大きいがな。」

 

「策?確かエミヤさんは投影魔術という強力な魔術の使い手でしたよね。どうやって勝ったのかをお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 

「ああ、歩きながらになるが、いいかな?」

 

「けっ、聞いてやらんこともなか。」

 

「………」

 

「あぁ?なんや?やんのか?」

 

「まあまあまあ、仲良くね?ね?エミヤさんも剣出すの止めてね?」

 

「…はあ、まあいい。あれは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いきなりローアイアスを使わされるとはな……!」

 

敵側にクーフーリン、そして私がいることを察知し弓を投影、私を狙い打つ。だがそれを理解っているのか、森の奥から大量の矢が飛んでくる。

 

「ちっ!」

 

私は弓を捨て即座に干将・莫邪を投影し矢を叩き落としながら私を追っていった。追った先では拓けた広場があり、待ち伏せていたように赤い外套の男が待っていた。

 

「やはり私か。逃げながら狙撃していればいいものを、どういうつもりだ?」

 

「……ふん。私はこの戦いに積極的ではないだけだ。何故……何故私が長曽我部なのだ!!!もっも他に良い武将がいただろう!!!」

 

「島津セタンタに続き貴様もか……」

 

広場で待っていたのはエミヤ……ではなく、長曽我部エミチカ。乗り気ではないと口では言うものの、その殺意は衰えていない。

 

「……まあ敵方に私がいるのならば話は別だ。ここで死んでもらおう。」

 

「どの世界でも私同士は殺し会う運命か。私たちも特異点修復のためだ。ここで消えてもらう。」

 

二人のエミヤは互いに干将・莫耶を投影し構えをとる。互いに相手の隙を狙っているように動きはない。

 

 

 

風が一陣吹く。

 

 

 

「「ハァッ!!」」

 

互いに干将・莫耶を相手に向かって投げつける。互いの干将・莫耶は引かれあい、空中で激突、エミヤにぶつかる前に地面に落ちていった。それを二人は読んでいたかのように二振り目の干将・莫耶を投影、相手に向かって一気に駆け寄り、二刀による接近戦へともつれ込んだ。

 

「互いに考えることは一緒というわけか!!」

 

「ならば、これはどうだ!?」

 

長曽我部エミチカが仕掛ける。干将をエミヤの足元へと投擲し『壊れた幻想』を発動、爆風による目眩ましと距離を取らされる。

 

「ちっ……どこにいる?」

 

土煙が舞い長曽我部エミチカが姿を消す。無闇に動くのは危険と判断しその場での対処を行おうとするが、それは悪手だった。

 

ヒュンヒュンヒュンヒュン

 

風切り音が煙を裂く。

 

「!?しまった……罠か!!」

 

エミヤが長曽我部エミチカを見失っている間に干将・莫耶を三対投影し、エミヤに向かって投擲した。干将・莫耶の性能を知らないエミヤではない。煙に混じって引かれ合う双剣は確実にエミヤへと向かっていた。

 

「これで終わりだ!!『鶴翼三連』!!」

 

煙を突っ切って干将・莫耶と共にエミヤへと切りかかる。全方向からの攻撃にエミヤは対応することができない……はずだった。

 

「な……バカな!?」

 

「どうした私。その程度か?」

 

エミヤは真っ正面から攻撃を受けていた。それならば引かれ合う干将・莫耶が背後からその身を襲うはず、ならば……エミヤの背後には、鈍く光る黒い『盾』がそびえ立っていた。

 

「『護刀・鉄』……干将・莫耶程度では、この守りは突破できないぞ?」

 

「私の知らない防御宝具、だとぉ!?」

 

「ハァッ!!」

 

「くっ!」

 

動揺する長曽我部エミチカを切り捨てる。剣は体へと届いたが後方へ飛び下がったことで浅くなってしまった。

 

「それならばこれならどうだ!!『偽・螺旋(カラドボル)……」

 

魔力がうねる。長曽我部エミチカが宝具を投影する。それは捻れた剣の矢。射たれれば『護刀・鉄』といえど護りきることは出来ないだろう。

 

パァン

 

そう、射つことが出来れば。

 

「なん……だと……!?貴様、それは、()()()()()()()()?」

 

長曽我部エミチカが声を荒げる。空気を鳴らし『偽・螺旋剣』を邪魔したのは、慣れ親しんだ弓の音でもなく、火花散り会う剣戟の音でもなく、銃声だった。

 

「ありえない、拳銃をその速度で投影するなど……!?」

 

「【炎刀・銃】これは確かに銃だが……同時に剣でもある。」

 

【炎刀・銃】の速射性を遺憾なく発揮し、エミヤは抵抗することなく弾丸の雨に沈んだ。

 

「くそっ…そんな格好いい武器を使うなんて、うらやましい…!」

 

「これが、私と仲間達との力だ。……貴様も、良いマスターと出会えるといいな。」

 

パァン、銃撃音を最後に、敵エミヤは消滅した。

 

「……ふぅ、やはりとがめの刀を投影できるのはかなり強いな。私だけの切り札があって良かった。さて、他の連中はどうしているか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうして散策していたところ、君たちを見つけた訳だ。」

 

「ふわあ~~~!!!かっこいい~~~!!!」

 

「は!つまりはあのとがめちゅう女がいなきゃ負けてたゆうわけか!」

 

「……負けはしないさ。マスターのサーヴァントだからな。それより以蔵。体の方は限界が近いんじゃないか?」

 

「あぁ!?大丈夫に決まっとるじゃろうがピンピンしとるわぁ!!」

 

「ああ、以蔵さん落ち着いて、傷が開いちゃうから……えーと回復魔術回復魔術は……こうやってこう……」

 

エミヤと以蔵が煽り合いながら一行は他のサーヴァント及び七花を探す。エミヤとマシュは比較的万全に近いが以蔵の怪我が酷いため六華がカルデア魔術礼装を用い拙い回復魔術をかける。

 

「……おまん、ますたぁの妹らしいのぉ。」

 

「うん、そうだよ!七花にいはめちゃめちゃ立派な私の自慢のお兄ちゃんなんだ!!」

 

「……くくくっ、立派ときたか!あれはわしと一緒じゃ。命令されれば人を斬る、そういうことをしてきたやつの目じゃった。ま、わしとしてはやりやすいがのぉ。」

 

「………え?七花にいが、人を殺した……?」

 

「ありえません!!七花さんがそんなことをするはずが……!!」

 

「わしには分かる。同じ穴の狢というやつじゃ。ますたぁはその手を血で染めていぶっっっ!!何すんじゃぁ!!!」

 

話の途中で拳が入る。放った先はエミヤだ。

 

「……言い過ぎだ。お前の過大妄想を語る場所ではない。」

 

「……興が冷めた。……回復してあのバーサーカーを斬ったらエミヤ、次はお前じゃ。」

 

「はっ、カルデアでなら相手してやろう。」

 

以蔵とエミヤの間に雷のような亀裂が走る。空気は最悪を越えてどん底にまで落ちていた。

 

「先輩………」

 

「…………七花にいが、人殺し………?」

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。