嘘予告詰め合わせ (耳音戈)
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魔法使いと魔王殺し

魔法先生ネギま!の麻帆良学園にドラゴンクエスト3後の勇者が転移して……
3勇者が使えない呪文を使っていますがノリでご容赦くださいませ。


 裏切られた。

 裏切られた。

 裏切られた。

 

 人に裏切られたならば、まだいい。

 罵るなり見捨てるなり、いくらでも道はあるだろう。

 

 運命に裏切られたならば、まだいい。

 都合のいいことを考えていた己を笑うなり次善策を練るなり、いくらでもやるべきことはあるだろう。

 

 だが。

 

 敬愛し、一度は自ら救った神に裏切られたならば。

 

 そのとき、人は何を信じ、何を拠り所とすればよいのだろうか――?

 

 

 これは、ある勇者の挫折と長い彷徨と出会いと再起、そしてある魔法使いの少年の物語である。

 

 

 

 

 

「本当に、いいのか」

 

 人を壊れ物のように扱う、仲間の声が鬱陶しい。

 

「くどい。何度も話したはずだ」

 

 だから、突き放す。

 

「何故私とここで一緒に生きてはくれないの……!?」

 

 勝手な夢を押し付けてくる、恋人の声が耳に障る。

 

「諦観を押し付けるな」

 

 だから、突き放す。

 

「……良いのじゃな?」

 

 何もかもを諦めた、老人の声が心に痛い。

 

「ああ、やってくれ」

 

 だから、突き放した。

 

 

 故郷からこの異世界まで、全ての苦楽を共にした仲間たちを眺めやる。

 

 戦士は、その剛毅な顔を辛そうに伏せていた。

 

 虫唾が走る。お前とて故郷に帰ることを、栄達を夢見ていたはずだ。

 

 女賢者はその場に泣き崩れている。

 

 悟りの書も主を間違えたとしか思えない。何が賢き者だ。

 

 最後の一人、老魔法使いは……くそ。

 

 何もかもを見通したような、いつもの目。

 居たたまれず、私は目を逸らした。

 

 魔法陣の中央に立つ。

 

 大魔王の城の廃墟から世界移動のための手がかりを探すのに一年。

 その再現に更に数年を費やした。

 

 魔王を倒し、世界を渡り、勝利の為に父さえ見捨て、大魔王を倒して。

 

 得られた物は、故郷との永遠の別離。

 

 そんな結果は、認めない。

 

 何が、伝説の勇者だ。

 何が、光ある者だ。

 何が、ルビスの使いだ。

 

 そんな言葉が欲しくて戦ったのではない。

 

 呪いあれ精霊の神。その名はルビス!

 呪いあれ神の中の神。その名はミトラ!

 私を、父を、仲間たちを謀り、異世界に封じた神々め!

 

 私は、お前たちの思惑どおりになどならない!

 

「……始めてくれ」

 

「わかった。……もう会う事は二度とあるまい。

 さらばじゃ、勇者どの」

 

 

 その言葉を最期に 私は 忌々しい アレフガルドと呼ばれる地から 消え失せた。

 

 

 ▼

 

 

「どこだ、此処は……?

 あれは! 世界樹か!?」

「……そこまでにしておけ侵入者」

「なんだ? 子供?」

「何だ? 私の知らん言語だと?」

「言葉が通じていない……!?

 ここは懐かしき故郷ではないということか。

 ふ、はは、最期の賭けにも敗れたか……!」

 

「マスター。彼の話す言語は87%の確率で地球上には存在しません」

「異世界人だとでも言うのか?

 まぁいい、捕まえれば分かる話だ! 捕らえるぞ茶々丸!」

「イエス、マスター」

 

「面白い! 魔法で私と張り合うか!」

「ちっ、ベギラマ!」

「! 早い、ワン・ワードで触媒も無しにこの速度でこの熱量か!

 茶々丸!」

「イエス、マスター」

「戦う気は無い! ええい言葉が通じんか!

 降りかかる火の粉は払わせてもらうぞ! ライデイン!」

 

 

「これは何の騒ぎだい、エヴァ?!」

「あの人は、いったい――」

「えーと……ファンタジーに出てくる勇者って感じ?」

「話は後だタカミチ、ぼーや、カグラザカアスナ。

 気をつけろ、手ごわいぞ!」

「く、あの少女たちだけでも手一杯だというのに――!」

 

「仕方あるまい、人相手に使いたくはなかったが――

 ギ ガ デ イ ン!」

 

 

 ▼

 

 堕ちた英雄と魔法使いたちの邂逅。

 

「異世界の……勇者!?」

「ホントに勇者あ?!」

「魔王殺し、だと!?」

「文字通りの、英雄というわけかい?」

「私を勇者と呼ぶな。吐き気がする」

 

 

 ▼

 

 勇者は、英雄に憧れる少年にかつての自分を見る。

 

「ネギは、英雄を目指しているのか?」

「そう言うわけじゃ、ないですけど。

 父さんは英雄と呼ばれるほど強い魔法使いだったんです。だから――」

「やめておけ。英雄など、ろくなものじゃない」

「え――」

「あのねえ!

 あんたがどんな目に遭ったか知らないけど! ネギに当たるなんて最低よ!」

「最低、か。まったくだな。

 悪かった。

 ただ、私は、先達として、英雄の裏にある真実に気付いてほしかっただけだよ。

 ……試みに問うがねお嬢さん」

「……何よ」

「何もかもに裏切られた時、神にさえ裏切られた時、人はどうしたらいいと思う?」

「……」

「いや、悪かった。私はこれで退散しよう。おやすみ」

 

「……あの人は、何で……いったい、何があんなに悲しいんでしょう」

「……そんなの、私に分かるわけないじゃない」

 

 

 ▼

 

 悪の魔法使いにも嘲られる日々。

 

「最初に見せた魔法の腕から期待してみたが……腑抜けか、貴様」

「何とでも言うといい、吸血鬼」

「……フン! 貴様を僕にしてくれようと思ったが、腑抜けは要らん。どこへとなりと去れ。

 それともその血、吸い果たしてくれようか?」

「そうしたければ、好きにするがいい」

「……とっとと失せろ、亡霊が。貴様など吸う価値も無い」

 

 

 ▼

 

 異世界での、日常。

 

「あのー。異世界の勇者って、貴方ですか?」

「私を勇者と呼ばないでくれ。それで、何か用かな可愛いシスター」

「サインください」

「……は?」

「だからサインですってば」

「……こちらの字が分からない」

「ありゃりゃ。そうなんですか? じゃあ、何か記念に下さい」

「………………大した物は無いが、祈りの指輪でいいかね?」

「あ、ココネの分もお願いします」

「…………分かった」

 

「あの子たちに不用意に物をあげないで下さい。付けあがりますから」

「……申し訳ない、シスターシャークティ」

 

 ▼

 

 騒がしい異界の街は、堕ちた勇者の思いも彼自身も、お祭り騒ぎに飲み込んでいく。次第に馴染んでいる事に気付いてしまう勇者。

 

「……楽しい、か。

 そういえば、あの世界に落ちた後、楽しいことなど一つもなかったな」

「本当に~?」

「どういう意味だね?」

「気付かなかっただけじゃないですか?

 オジサン、意外と目の前しか見てないし」

「そうかな?」

「そうですよ」

「そうか。そうかもしれんな。ところでオジサンは止めてくれ。私はまだこれでも二十代だ」

「十も違えばオジサンです」

「そうか。じゃあ私はチビッコと呼んでやる」

「誰がチビッコですか!」

「主に精神年齢かな?」

 

 

「最近随分と楽しそうじゃないか勇者」

「私を勇者と呼ぶな。

 だがまあ、そうだな。この街を守るのも、悪くはないと思っている」

「フン……今のお前なら下僕にしてやっても良いぞ」

「遠慮しておこう」

 

 

「やあ。国語の勉強かい?」

「タカミチか。まあ、会話できるとはいえ、看板くらい読めなければ不便でな」

「聞いたよ。鳴滝姉妹の悪戯に引っ掛かって婦人服店に――」

「言うな」

 

 

「ふぉっふぉっふぉ。随分と振り回されておるようじゃのう」

「元気が良すぎるぞ。ここの学生は」

「じゃが、楽しいじゃろう?」

「……ああ」

「最初に会うた時より、はるかに良い顔になっとるの」

 

 

 ▼

 

 しかし、かつての世界からの魔の手に平穏は破られる。

 

 

「かの世界の護り手は勇者ロトに託すと決定があった!

 異界で朽ちることなど許されぬ」

「ふざけるな! 誰が神の言うことなど聞くものか!」

「今生の貴様の意志は関係無い。我が使命は貴様の魂を持ち帰ること――

 守るべき大地を投げ棄てた愚かな勇者よ。死ぬがいい!」

 

「ぐぅっ……強い。ゾーマの足元にも及ばないが――」

「他愛もない。仲間を棄てた貴様は既に勇者足り得ぬ。

 さて、とどめだ――「雷の暴風!」?! 何奴!」

「勇者の仲間なら、ここに居るでござるよ」「独りで戦うな。そう仰ったのは貴方ではないですか」「報酬は、高くつくよ?」「すいません、誰かあの怪物の名前を――」「本屋、あんたは引っ込んでた方が――」「それは朝倉もだと思うです」「影使い・高音! 助太刀いたします!」「わ、私も!」「勇者など胡散臭い限りですが、この学園を守るためなら、致し方ありませんな」「生徒は下げた方がよいのじゃないかなあ刀子さん。聞くとも思わないけど」「もう遅いのではないかと」「ふぉっふぉっふぉ。異界の神の使いとは、久方に腕が鳴るのう」「……学園長も戦われるのですか?」「ジジイがこんな面白そうな事見過ごすわけないだろう。茶々丸、準備はいいか?」「イエス、マスター」

 

「勇者さん! 僕たちも、戦います!

 だって、僕らの街ですから!」

 

 

「……ありがとう。

 すまないが皆の力を貸してくれ」

 

 

「そんな、馬鹿な――」

 

 

「人間を舐めすぎだ、神の使いよ。

 ――ミナデイン」

 

 

 ▼

 

 そして、別れの刻。

 

「帰っちゃうんですか?」

「また、ここに来られても敵わないしな。

 自分のやった事の後始末を付けにいくさ」

「また、会えますか?」

「無理だろうな。……泣いているのか?」

「泣いちゃ、悪いんですか?」

「……いや」

 

 

「私の言えたことではないが……ネギ」

「はい」

「……独りで何もかもやった気にはなるなよ。

 仲間が居てこそ。

 すべてはたぶん、そんなものだ」

「……お元気で」

「そちらもな」

 

 

 

 かくて、魔法使いと勇者の道は分かたれた。

 

 勇者はかの地にて永きに残る伝説となったという。

 

 魔法使いがどうなったかは――また、語る機会もあるだろう。




オリ主タグはこの拗らせた3勇者くんのために付けました


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ドラゴンクエスト2後伝 叛逆の三勇者

ドラゴンクエスト2の二次創作に見せかけて実はほとんどドラゴンクエストモンスターズ+からの設定流用とかいうアレ
実のところサマル王子は天然ぼんやりキャラ設定の方が好きですが、それだと話が締まらないので。
無駄にシリアスです。


 世界に覇をとなえた大神官ハーゴンの野望は、彼の崇める破壊神シドーと共に潰えた。

 

 破壊神を破壊した三人の勇者たち。

 ローレシアの王子、戦士ロラン。

 サマルトリアの王子、魔法戦士パウロ。

 ムーンブルクの王女、賢者ナナ。

 

 世界に平和を齎した勇者たちに、しかし世界はやさしくはなかった。

 

 魔力を一切持たぬ身でありながら、神を滅ぼした王子ロラン。

 人は彼に怖れを抱き、異端を見出した。

 いわく「人の身でありながら数多の魔族を退けたのは、人にあらざる身であるから」と。

 

 そしてある夜、王子は王宮から姿を消し。

 暫くして、サマルトリアとムーンブルクからも勇者は姿を消した。

 

 諸国の懸命の捜索をもってしても、三人の行方は杳として知れなかった。

 

 復興のための担ぐべき象徴を失ったムーンブルク地方は北大陸の二大国からの圧迫に対しムーンペタ-ルプガナ都市同盟を成立させこれに対抗。

 ローレシア王国はサマルトリアに対しけん制を行いつつムーンブルク地方の切り取りを目論んでいた。

 サマルトリア王国はアレフガルドから流入する難民に頭を悩ませ、その解決策としてムーンブルク北部の領有を画策していた。

 デルコンダル王国は不穏な大陸を他所に平和を謳歌しつつ、海洋貿易をルプガナと二分し上手く住み分けていた。

 地下都市ペルポイは戦いが終っても地下に潜り続けた。地上など知らぬかのように。

 湖上都市ベラヌールは冷静に大陸の情勢を眺めていた。

 テパは元の平穏な暮らしを取り戻していた。

 メルキド、リムルダールを失い、また戦時に国王が王宮から逃亡したアレフガルド古王国では王の威光が失墜。メルキド公とリムルダール公という大貴族を失ったために政争の歯止めが利かず、ついに貴族同士で泥沼のような内戦が始まっていた。

 

 ロンダルキア崩壊より三年。

 世界は、まだ見てくれは平穏と言えた。

 

 そして、物語はアレフガルドより始まる。

 

 

 

「ここが、ラダトームの城下町だっていうのか?!

 この荒れ果てたスラムが!」

「どうやら間違いなさそうだ。

 不死鳥ラーミアの紋章をルビス神をあらわす紋章と並べるのはアレフガルド地方の教会特有の慣習だからな」

「……還って来てしまったのね。わたしたちは。

 あの、不思議な少年のいた未来から」

 

 *

 

「勇者だと? ハ、信じられるか!」

「信じる必要は無い」

「何ぃ……?」

「お前たちでは、俺を倒せないからだ」

 

 戦士ロラン。

 

「ばかな、ホークアイの大集団とも伍する俺の兵団が、たった一人に……

 きさま、ほんとうに人間か?」

「ばかはお前らだ。俺が何だと思っている?」

「まさか、まさか本当に!?」

 

 破壊神を――破壊した男。

 

 

 *

 

 

「ゆ……ゆうしゃ、どの?

 何を……剣など抜いて、どうされるおつもりじゃ!」

「アレフガルドの玉座、貰い受けに来たんですよ」

「ぎょ、玉座が欲しいのであればやるぞよ。

 余はもう王を辞めたいのじゃ!」

 

 魔法戦士パウロ。

 

「残念だが、そう簡単にはいかないんだよラルス様。

 貴方が生きていては困るんだ」

「ひぃっ!? じゃ、じゃから譲ると言うておる!」

「大丈夫、ラルス様もロランにもあまり傷がつかないように事を運ぶつもりだから。

 死ぬ事には変わりないんだけどね――ザラキ」

「い、いやじゃ、死にとうない、余は死にとうない、死にと、うな……」

 

 仲間のため、幾度と無くその命を捧げた少年。

 

 

 *

 

 

「ナナさま! ああナナさま! おお、大神ミトラも照覧あれ!

 ムーンブルク王国の正統がご帰還なされた……!」

「久しいですね、じいや。いえ今はもう都市長と呼ぶべきかしら?」

「い、いえいえ、ナナさまがご帰還なされたならば同盟などに固執するつもりはございませぬ!

 すべてはムーンブルクを渡さぬがための方便!」

「いえ、都市長。都市同盟は維持してもらいます。

 ベラヌールとの協定も」

 

 賢者ナナ。

 

「な、何ゆえに」

「今の状況でムーンブルクの復興は不可能だからよ。

 私はムーンブルクを寸土たりともローレシアにもサマルトリアにも渡す気はありません」

「では、では何を。何をなさるおつもりなのです。

 どうかこのじいめにお聞かせください」

「――返してもらうの。私の、私たちの失ったものを」

「ナナさま、貴女様はまさか……世界を、恨んでいらっしゃる?」

 

 有り余る魔力を武器に、復讐に身を投じた少女。

 

 

 *

 

 

「準備が調った、とは言いがたいな。もう二、三百ほど傭兵を集めたかったが」

「仕方無いな。これ以上は隠し通せない」

「ルプガナの方も、もう少し時間が必要ね。海軍は動かせないわよ?」

「なに、ローラの門から入り込んだネズミを叩き返すだけなら俺でじゅうぶんだ。

 ルプガナに言ってやれ。勝ち馬に乗りたいなら今のうちだってな」

「……油断するなよ」

「油断はしないさ」

「もう、冒険の書は効果が無いのよ」

「わかってるって」

 

 

 *

 

 

「まさか、あれは……アレフガルドの王旗?」

「何で、ムーンブルクにアレフガルドの王軍が居るんだ!

 そんな報告は受けていないぞ!」

 

「ロラン陛下。サマルトリアの王軍です。数は百といったところでしょうか」

「陛下……か」

「陛下? ご命令を」

「ムーンブルクはムーンブルクの民のものだ。それを奴らに教えてやろう。

 できるか?」

「陛下。我らは陛下の兵でございます。獅子の下に弱兵は居りませぬ。

 ましてやロトの勇者ならば」

「よく言った。ならついて来い。おれが先陣を切る!」

「は!」

「皆の者、陛下につづけ!」

 

「遠くば音に聞け!

 近くば寄って目にも見よ!

 おれの名はロラン! ロトの勇者!

 そしてアレフガルドの王なり!」

 

「そろそろ始まる頃かしら?」

「ああ、もう始まった頃だろう」

「世界を私たちの手に」

「世界を俺たちの手に」

「――世界を、覆しましょう」

「ああ。世界を、覆そう。俺たち三人がともにあるなら、なんだってできるさ

 そして新しい世界を創ろうじゃないか」

「ロトに依らない、世界を」

「犠牲に頼らない世界を。

 俺たちが要らなくても済む世界を」

「そうしたら、また旅に出ましょう。

 あの少年が見せてくれた、あの世界がいいわ」

「ああ、そうだな。

 きっと楽しい旅になる」

 

 

 *

 

 

 世界がたった三人によって守られるちっぽけな存在なら。

 世界がたった三人の犠牲で守られるちっぽけなものなら。

 

 世界の価値は、たった三人にも劣るのではないか?

 

 神は応えを返さない。

 人は答えを持とうとしない。

 ならば、たった三人で世界を覆すことに、何のためらいがあるだろう。

 

 今ここに。

 たった三人の勇者による世界への反逆が始まろうとしていた。

 

 

 世界は、彼らの想いをまだ知らない。

 



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麻帆良学園の赤いあくま

Q:ネギま世界じゃFateの魔術とか使えるわけないよね?
Q:内容Fateの設定的に考えると辻褄合ってなくね?
A:ただ転移させる口実だけが欲しかった。破綻してるのは承知してる。まあいいじゃん。


「久しぶりね、士郎」

「ああ、久しぶりだ遠坂」

「……もうすっかり、アーチャーにそっくりね?」

「やっぱりそう思うか。

 俺は正直なところ、あいつが俺だったなんて信じたくないんだが」

「並行世界の貴方の未来の姿だから、厳密には貴方の未来じゃないはずだけどね」

「お、おい、遠坂?」

「……少しだけ、こうさせてて」

「……分かった」

「……桜には?」

「いや、来る事は教えてない。家にも、藤村の屋敷にも寄ってない。

 合わせる顔なんて、俺にはないし……多分、逢っても俺だと分からない」

「……そう」

 

 ※

 

「この実験が上手く行けば、私は第二魔法への道を大きくショートカットできる」

「で、俺は日本での活動拠点を手に入れられる……と、そういうわけか。

 分かった、遠坂。俺は何をすればいい?」

「もちろん、衛宮君の力を使ってもらうわ。

 見せなさい。貴方の魔術(ちから)……固有結界を」

 

 それはもしかしたら、あったかもしれない協力関係。

 それはもしかしたら、あったかもしれない未来の欠片。

 

「これって……これが、あの“鞘”なの?!

 全く、なんてデタラメ。協会が封印指定にしようとするのも道理ね」

「この鞘には、何度助けられたか知れないな。

 俺が信じる最強の守りだ」

「アヴァロン……英霊を汚染する、あの聖杯の泥でさえ遮断する結界宝具。

 いけるわ、きっと。これなら大師父の領域に手が届くかもしれない!」

 

 ※

 

「なぁ……さっきから気になってる事があるんだが」

「今話し掛けないで。

 普通の魔術がへっぽこな衛宮くんには今する事ないんだから」

「いや……あのな遠坂」

「黙りなさい」

「そこの宝石の配置、昨日の説明だと位置が逆じゃないか?」

「え? ……あ」

「遠坂? おーい遠坂さん?」

「やば。ごめん、やっちゃったかも」

「待て。ちょっと待て。それってどういう――!?」

 

 閃光とともに。

 彼らは、遠坂凛と衛宮士郎は、その世界から消失した。

 

 ※

 

「うーんいたたたた……」

「大丈夫か? 遠坂」

「……森? ここ、何処?」

「分からない。植生からして、多分日本だとは思うんだけど」

 

「見つけたぞ侵入者。

 ほほう……人の夕食を邪魔しておきながら、森でいちゃつくとは悠長な話だな?」

「空を飛んでる……この気配、人間じゃないわね。

 貴方こそ何物かしらおちびちゃん?」

「……ほほう、命が要らないようだな人間」

「ちょっと待て遠坂! まだ此処がどこかも分からないんだぞ!?

 そっちもちょっと待ってくれ、話し合いがしたい!」

「「お前(衛宮君)は黙ってろ(て)」」

「……はい」

 

 ※

 

「あいつ、強い! 少しは手伝いなさいよ士郎、このあんぽんたん!

 こっちは手持ちの宝石があんまり無いんだから!」

「……殺すまではやらない。そうなったら俺は遠坂を止める。それでいいか?」

「ああもうそれでいいから!「闇の九矢!」って来た!」

「下がってろ遠坂! 熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス )!!」

「な……! 私の知らない魔法だと!?」

 

 ※

 

「異世界……大師父の域に、一瞬だけ届いてたなんて!」

「うっかり成功しすぎた、ってことか?」

「む。そうなるわね……」

 

 ※

 

「それで、マギステル・マギっていうのは?」

「うむ。魔法使いは世界各地でNGOとして活動し、人々を救済しておるのじゃよ。それに従事する魔法使いを『偉大な魔法使い』、マギステル・マギと呼ぶのじゃ」

「……つまりこの世界の魔法使いは衛宮君をやってるわけね……」

「近衛さん! 俺がそれに参加するためにはどうすれば!?」

「まぁまぁ、落ち着いて衛宮君。学園長も目を白黒させてるし」

「……いつもああなのか、あの男?」

「……いつもああなのよ、衛宮君は」

「大変だな」

「……ありがと。複雑だけど」

 

 ※

 

「……まさかこんなに早く、本当に行っちゃうなんて」

「ごめん遠坂。でも俺は」

「はいはい。理想のためだもんね。

 夢が叶う世界に来れたんだし、行ってくれば?

 でも、たまには帰ってきなさいよ。あんたの帰る場所くらい作っておいてあげるから」

「分かった。じゃあ、行って来る。

 元気でな遠坂」

 

 ※

 

「助かるが、いいのかの?

 追いかけんで」

「まぁ……いいんですよ。気にしないで下さい」

「それでじゃな。仕事じゃが、まず警備の仕事がひとつ。それから教職としての仕事がひとつ。

 研究に関しては、毎月のレポートと研究結果の共有を条件に資金協力を考えておるのじゃが、どうじゃね?」

「んー……まぁ、研究に協力してもらえるという御話ですから願ったり叶ったりですけどね。まさか教職として、とは思いませんでしたけど。

 数学とか英語なら、本職の方にも負けない自信が今でもあります」

「ふむ。それじゃあ細かい事は後日として。

 遠坂先生、今後ともよろしくの」

 

 ※

 

「君がネギ・スプリングフィールド?

 話には聞いていましたけど、本当に子供なんですね……」

「あ、あの、貴方は」

「私は遠坂凛、貴方の指導補佐を務めます。

 よろしく、ネギ先生?」

 

 ※

 

「ちょっとエヴァ!

 こんな所で子供相手にどういうつもり!?」

「遠坂先生!?」

「ちょっとネギ、なんでこんなトコに凛先生が来るのよ!」

「チッ、嫌な奴と会ったな。リン、お前には関係無い!」

「ああもうっ、関係無いわけないでしょうにっ……。

 とにかく! 双方とも止めなさい! この場は私が預かりますっ!」

「そんなわけに行くか! 黙ってろこのうっかりあくま!」

「うっかりあくま?」

「凛先生まで魔法使いなの……? はぁ、もう何信じていいのやら」

「……聞かないならこちらにも考えがあるわ」

「……いいだろう。相手になってやる」

「えーと?」

「……なんか私ら、忘れ去られてない?」

「リク・ラク・ララック・ライラック! 来たれ氷精(ウェニアント・スピーリトゥス) 闇の精(グラキアーレス・オブスクーランテース)!!」

「遅い! Fixierung(狙え),EileSalve(一斉射撃)――!」

「クッ!? 以前とは威力の桁が違うだと!

 何をやったリン!」

「奥の手のひとつや二つ、あって当然でしょう?」

 

「マスター! 計算より復旧が7分27秒早いです!」

「ええい、いい加減な仕事をしおって――!?」

「エヴァンジェリンさん!」

 

「で? 狙った相手に助けられて、それで本当のところどうするつもり?

 ネギ先生はあれで納得して帰ったけど」

「ちっ……次の機会が来るまで、適当に言う事を聞く振りをしてやるさ」

「随分と人がいい話ね」

「お前はどうなんだリン?」

「何が?」

「人がいいどうこうと言うなら、等価交換が口癖のお前が何故ぼーやの味方をした?」

「……似てるのよね、あの子。あのバカに」

「……心の贅肉だな?」

「うっさいだまれ」

 

 ※

 

「……うそ。なんで、ここが」

「最初に学園に帰ったら、京都に修学旅行で行ったっていうしさ。

 そしたら、学園長が心配だから行ってくれんかって。

 間に合ってよかった。遠坂になにかあったら、俺は――」

「……スクナを無視していちゃつくたぁいい度胸でおすなぁ、西洋魔法使いの方は」

「やっちゃいなさい、士郎。

 アレ、使ってもいいわよ? 私も支援してあげられるし」

「支援って、遠坂と俺じゃパスが――むぐ!?」

 

「な……何考えてますのやあの御二人!?」

「て、敵の眼前でキス……?」

「うわー。凛先生だいったーん」

 

「――っはぁっ。超特急で繋げちゃった。

 仮契約って奴よ。便利よね、こっちの世界の魔法ってのも」

「とお、さか? いいいいい今、なななな何を!?」

「いいから、――やりなさい」

「い、Yes,Mom!」

 

I am born of my sword(体は剣で出来ている)

 

 ※

 

「ねぇ士郎?」

「な、何だよ遠坂」

「私ね、――もう後悔はしない事にしたの」

「そうか。何のことか分からないけど、よかった」

「うん、だからね――

 もう、桜にもイリヤにも、セイバーにも遠慮はしない事にしたの」

「え――?」

「好きよ、士郎。だいすき」



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異境の三勇者と伝説の勇者

当時のわたしはドラゴンクエストモンスターズ+が好きすぎやしないかな……


 不思議な少年と出会ってから数ヶ月。

 無事再会を果たしたロトの末裔たちは、はるか未来のローレシアを見物するために船出し――

 

「なあ。嵐に遭ってから何日経ったっけ……」

「さぁ。とりあえずまだ水と食料はあるけど」

「あんまり喋らない方がいいわよ貴方たち。陸地、見えないし……」

 

 ――出航直後に嵐に見舞われ、ものの見事に大海原を漂流していた。

 

 

 

 ※

 

 

 

 通りすがりの探索船に拾われ九死に一生を得た一行は驚愕の事実を知る。

 

「ぺるぽい? るぷがな? 聞いたことねーな。よっぽどド辺境から来たんだなあんたがた」

「勇者ロト? すまないが知らんな。勇者といえば、有名なのはアリアハンのオルテガかサマンオサのサイモンだ。……もう、二人ともこの世には居ないが」

 

「まさか、異世界だっていうのか?」

「ロランを追っていつのまにか未来に行っちゃったりしたけど、今度は異世界なのかー。退屈しないね」

「あのな」

「僕とナナはもう気付いてたけど」

「え?」

「星の配置がぜんぜん違うのよね……」

「いや、そういうことは教えてくれよ。俺がそういうの分からないって知ってるだろう」

「何日漂流してたと思うの。もうとっくに気付いてるものと思ってたわ」

「ぐ」

「うん。僕もそう思ってた。ごめんね」

「ぐぐぐ」

 

 訂正。驚愕したのはロランだけだった。

 

 

 ※

 

 

 探索船にて仕事を手伝う代わりにどこかの町まで送ってもらうことになった一行。彼らは徐々に奇妙なことに気付く。

 

 しびれくらげの大群との戦いにて。

「ベギラマッ!」

 パウロの手から放たれた火炎の渦は、しかし大群のほんの一部を焼き払うだけに終る。

「あれ?」

「首かしげてる暇があったら前に出て戦ってくれよ魔法戦士さん!」「うあーしびれる~」

「あ、ごめん」

(えーと……ベギラマの範囲がちっちゃくなってる?)

 

 大王イカ戦にて。

「丸焼きにしてあげるわ。イオナズン!」

 舷側に這い上がった大王イカを爆砕した挙句、燃えカスが帆に乗って大騒ぎ。

「あー。その、なんだ。船のために戦ってくれるのは助かるがイオナズンは勘弁してくれ。船が壊れる」

「ご、ごめんなさい船長さん」

「可愛い顔してスゲェよな……」「俺、口説くのやめとこう……」

(呪文の威力が桁違いになってる……? なんで?)

 

「ねぇ、気付いてる?」

「うん。ちょっとおかしいよね」

「呪文の威力が上がってるのよね」

「効果範囲がおかしくなってるんだよ」

「え?」

「あれ?」

 

 稲妻の剣が唸りを上げ、凄まじい一撃が繰り出される。テンタクルスは足を数本まとめて斬り飛ばされ、返す刀で一刀両断された。

「おおー、毎度すげぇな兄ちゃん!」

「若ぇのにたいしたもんだ」

「この世界のモンスターも僕の敵じゃないのか……」

「うんうん。ある意味で悩みが無くていいよね」

「どういう意味だよ」

「いいのよ、貴方はそれで」

「だから、何の話だよ!」

 

 一人例外も、いた。

 

 

 ※

 

 

 ついに町を発見し、探索船から下りることにした一行。

 

「私としてはこのまま乗っていってほしいがな」

「勝手を言ってすまない、船長」

「ま、いいさ。おっと、こいつはせんべつだ。もらっておいてくれ」

「こんなに……?(この金貨、見たこと無いわ) ありがとうございます」

「ところで、あの町の名前、なんて言いましたっけ?」

「あれはダーマ神殿の門前町さ」

 

 謎のスカウトとの邂逅。

 

「へーいそこ行く戦士どの! アリアハンで勇者のお供しない?」

「……は?」

「んんん? なんだ無職なのか? その技量でもったいない! 神殿で職に就いて来な、きっともっと強くなれるぜ!」

「えーと……職ってなんだ?」

 

 新たなる、道。

 

「戦士、武闘家、魔法使い、僧侶、商人、盗賊、遊び人……まさか、ここって」

「勇者ロトの伝説に出てくる……」

「……転職の神殿?!」

「そ、それじゃあ、今度は過去に来たってのか!?」

 

 

悩むままに転職を終え、一行はアリアハンの自称スカウトに導かれるがままついに時を越え再会を果たすが――

 

「オレは旅になんか出ねぇっつーの!」

 

――未来の勇者は、この上なくやさぐれていた。

 

 

使命を果たしたはずのロトの末裔と、未だ伝説に至らぬ勇者の卵。

運命は彼らに何をさせようというのか。

一行が見る伝説の真実とは。

 

 

ロトシリーズ、夢のコラボレーション。

 

「異境の三勇者と伝説の勇者」

 

Coming Soon!(しません)

 



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